1:◆UeZ8dRl.OE 2014/05/11(日) 07:30:14.46 ID:BkitVJHAO
・初SSです

・史実は詳しくありません

・書くの遅いです


2: 2014/05/11(日) 07:31:03.84 ID:BkitVJHAO
――ここは、とある場所のとある鎮守府。

大鳳「ここが、次の鎮守府……今度こそ、演習ぐらいはさせてもらいたいのだけれど……」

この大鳳、他の鎮守府で建造されたものの、あまりにも提督が資源を使いすぎて備蓄が底を突き、運用不可と判断されて出撃する機会すら与えられぬまま他所へ放り出されたのだ。

その後も運2は伊達ではないのか、行く先々で不幸が続く。

到着して早々、某艦娘の第三砲塔が爆発して受け入れ拒否。

某艦娘姉妹が入渠ドックを占領しており、今はそれどころではないと受け入れ拒否。

某艦娘が轟沈した妹の名前を壁に向かって呼び続けており、提督がそのことに責任を感じてノイローゼになってしまい受け入れ拒否。

これは、そんな彼女が最後に行き着いた鎮守府での話。
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録

3: 2014/05/11(日) 07:31:52.87 ID:BkitVJHAO
大鳳「あの! すいません!」

無人の玄関ロビーに、彼女の声が響く。返事はない。

今日この時間に来ることは事前に伝わっているはずなので、迎えが無いどころか誰も居ないというのは、早くも雲行きが怪しいのではないかと不安が募る。

?「――――アレ? うちの鎮守府に何か用?」

後ろからかかった声に、大鳳は振り返る。そこに居たのは、上下ジャージ姿の女性。手にはコンビニの袋を提げている。

大鳳「えっと、ここの鎮守府の方ですか?」

北上「そうだよ、私は軽巡北上、よろしくー」

大鳳「あの、今日からここにお世話になる大鳳といいます、どうかよろしくお願いします」

今まで何ヵ所もたらい回しにされてきたことがそうさせたのか、大鳳の物腰は異常な程に低い。丁寧に頭まで下げる彼女を見て、北上は溜め息を吐く。

北上「そういう堅苦しいの、私嫌いなんだよねー他の子にもしない方がいいよ?」

大鳳「そ、そうなんですか? ところで、提督にお会いしたいのですが執務室はどちらにあるのでしょうか」

北上「私は大井っち待たせてるから、案内役呼んであげるよ」

4: 2014/05/11(日) 07:36:47.50 ID:BkitVJHAO
玄関ロビーへと足を踏み入れ、北上は受付の様な場所にあるベルを2回鳴らす。すると、大鳳の目に信じられないような光景が飛び込んでくる。

?「はわわ、新しい方が来られたみたいなのです」

?「ご主人様のところへご案内しないといけませんね」

?「提督さんの部屋まで案内するっぽい!」

大鳳「っ!? 貴女達、今どこから……」

壁から一人、床から二人、駆逐艦らしき艦娘が姿を見せた。それを確認すると、北上はその場を去ろうとする。

北上「じゃあ私は行くよー……ん? 何なのさ、コレはアンタ達に買ってきたんじゃ――あぁもうウザいって、このチョコやるからさっさと案内してきな」

コンビニの袋をジッと見つめていた三人に、板チョコが手渡される。それで満足したのか、今度は大鳳を三人で取り囲む。

電「こっちなのです」

漣「ちょうど今日は駆逐艦かくれんぼ大会の日なので、あまり皆さん部屋から外へ出て来ないんですよ」

夕立「夕立達は秘密の場所に隠れてたっぽい、でも案内役の方が大事だから出てきたっぽい!」

大鳳(かくれんぼ大会? 秘密の場所? どういうこと!?)

混乱する大鳳の手を引き、背中を押し、駆逐艦娘達は提督執務室を目指し始めた。

5: 2014/05/11(日) 07:40:26.85 ID:BkitVJHAO
廊下を右に曲がり、左に曲がり、道なりに四人は進んでいく。すると前から、誰かを小脇に抱えた、巫女服のようなモノを着ている長身で眼鏡の女性が現れる。

?「あら?貴女達はまだ見付けていないはずだけれど……あぁ、新しく配属された艦娘を案内しているのですね」

?「その役目は不知火が仰せつかっていました。ですが時間はヒトヨンマルマルのはずです」

大鳳「いえ、ヒトフタマルマルですよ。ここにちゃんと書いてあります」

自分が間違えたなどと誤解されては困ると、大鳳はすぐにその場にいる全員に見えるように書類を広げる。そこには確かに、ヒトフタマルマルと書かれていた。

不知火「不知火に、何か落ち度でも?」

霧島「睨んでどうするのですか……」

電「不知火は今日のかくれんぼ大会を楽しみにしていたのです。だからきっとそれで時間を間違えちゃったのです」

漣「開始早々いきなり見付かったみたいだけどね」

不知火「……しらぬいに……なにか……おちど……」

出迎えの時間を間違えた挙げ句、楽しみにしていたかくれんぼ大会では真っ先に見付かり、不知火は徐々に涙目になって落ち込んでいく。

霧島「今からでも案内すればいいではありませんか、かくれんぼ大会はまた来月頑張ればいいのですし」

夕立「不知火も一緒に案内するっぽい!」

霧島は抱えていた不知火を下ろし、頭を撫でる。夕立も励まそうとしているのか、手を引っ張って一緒に行こうと誘う。

不知火「そういうことなら早く行きましょう。執務室はこちらです」

大鳳(立ち直るの早いわねあの子……)

先程まで涙目だったのが嘘のように、不知火は廊下をスタスタと先導するように歩いていく。鬼役をしている霧島に一礼して、三人の駆逐艦娘と共に大鳳もその後を追った。

6: 2014/05/11(日) 07:48:42.38 ID:BkitVJHAO
不知火「ここが司令官の執務室です」

電「司令官、大鳳さんをお連れしたのです!」

?「どうぞ、入ってもらって構わないわ」

大鳳(女性の声? ここの鎮守府の提督は男性のはずなのだけれど……)

漣「じゃあ私達はここまでね」

夕立「今度は一緒に遊んでほしいっぽい!」

大鳳「えぇ、ありがとう。これからよろしく頼むわね」

若干の疑問はあるものの、大鳳はここまで案内してくれた四人に手を振り、走って戻っていくのを見送る。

改めて執務室の扉を見つめると緊張したのか、ドアノブを握る手にはうっすらと汗がにじんでいる。しかし、待たせるわけにはいかないので平常心平常心と心で唱えながら彼女はその扉を開いた。

大鳳「失礼します! 本日付けでこの鎮守府に着任しました大鳳です。提督、この度は――?」

挨拶の途中で、ある重要な事実に気付く。執務机に座っているのは提督ではなく、艦娘だ。

?「ここではそのような挨拶は不要よ、楽にして構わないわ」

大鳳「あ、ありがとうございます……あの、一つよろしいですか?」

大鳳「いえ、相談ではなくて、その……何故艦娘である貴女が提督を?」

加賀「勘違いしているようだけれど、私は提督ではないわ。一航戦、加賀。貴女と同じこの鎮守府に配属されている同僚よ」

それならば、何故に執務室の執務机で書類仕事を一人でしているのか、という疑問が沸き上がる。それを見透かすように、加賀は大鳳にこちらへ来いと手招きする。

加賀「彼が私達の、提督です」

大鳳「・・・・・・」

恐る恐る近付いて彼女が目にしたものは、加賀の膝枕で寝ている二十代前半位の若い提督の姿だった。

7: 2014/05/11(日) 07:50:16.44 ID:BkitVJHAO
大鳳(やけに椅子が横に広いと思ったら、寝るため? そもそも、何故提督が加賀の膝枕で寝ているの? どうして私を受け入れてくれる鎮守府は何処もみんな変なの!?)

とうとう許容量をオーバーしたのか、頭を抱えて床に座り込む。それを当然の反応と捉えているのか、加賀は特に咎めることもなく、話を続ける。

加賀「大鳳、貴女にはこの鎮守府のルールを覚えてもらう為にも、早速働いてもらいます」

大鳳「っ!? 出撃させて頂けるのですか!?」

予想だにしていなかった不意打ちに、大鳳の目に光が宿る。建造されて既に一月、ようやく出撃出来る高揚感に、今までに見聞きしたおかしなことなどどうでも良くなっていた。

加賀「明朝マルキュウマルマル。旗艦、軽巡洋艦神通。他、駆逐艦睦月、如月、弥生、卯月と共に――」

旗艦ではなく、艦隊編成は近海の警備程度の戦力。それでも構わないと、姿勢を正して最初の出撃命令に心を躍らせる。

加賀「北方鼠輸送作戦に参加して下さい」

大鳳「はい! この大鳳にお任せ…………はい?」




初任務、北方鼠輸送作戦に参加。艦隊帰投時に赤疲労であったのは、そのショックの大きさを物語っている。だが皮肉なことに、遠征自体は大成功を収めるのだった。

8: 2014/05/11(日) 07:52:33.17 ID:BkitVJHAO
書き溜め投下終了

浜風とあきつ丸以外なら要望あれば次回更新より出します

13: 2014/05/11(日) 08:47:48.73 ID:BkitVJHAO
――――大鳳着任から一週間後。

大鳳(何なのこの鎮守府、正規空母である私を遠征に丸々一週間出しっぱなしだなんて……)

確かに大鳳が同行していれば、不意に深海棲艦に見付かっても迎撃出来るだけの戦力になる。しかし、真の目的である資源確保には、正規空母ははっきり言って燃費が悪すぎるのだ。

更におかしいことと言えば、結局のところこの一週間、まともに艦隊が出撃した形跡が全く見られない。警備任務などで近海へ出向くことはあっても、敵地への出撃は一切していないのだ。

瑞鳳「お疲れ様、この鎮守府にはもう慣れた?」

大鳳「正直、馴染む自信が無いわ……」

一緒に遠征に出向いていた瑞鳳の問いかけに、大鳳は苦笑で返す。ここに来てから何かと話す機会が多かったのもあり、この二人の仲は(一部分が似ていることもあって)比較的良好だ。

瑞鳳「そのうちに慣れるわよ、ここは『入ったら抜け出せない鎮守府』って呼ばれてるから」

大鳳「え? それってどういう――」

瑞鳳「じゃあ私は艦載機の整備があるから、またね。今度暇な時にでも九九式艦爆の足について話そ」

大鳳「あっ、ちょっと待っ――行ってしまったわね……」

呼び止める間もなく、瑞鳳は走り去っていく。

どうしようもなく気になることを言い残されてしまった大鳳は、意を決して近くを通りかかった重巡洋艦に話しかけるのだった。

14: 2014/05/11(日) 08:55:04.12 ID:BkitVJHAO
>>6に脱字っていうか脱文があった…



大鳳「あ、ありがとうございます……あの、一つよろしいですか?」

大鳳「いえ、相談ではなくて、その……何故艦娘である貴女が提督を?」



大鳳「あ、ありがとうございます……あの、一つよろしいですか?」

加賀「来て早々何か相談? いいけれど」

大鳳「いえ、相談ではなくて、その……何故艦娘である貴女が提督を?」

15: 2014/05/11(日) 09:08:41.64 ID:BkitVJHAO
古鷹「急にそれだけ言われたら、確かに気になりますよね。ちょうど今なら時間もあるので、良ければ理由を説明して回りましょうか?」

そんな心優しい受け答えをしてくれた古鷹の提案に首を縦に振り、大鳳は着任早々遠征続きでろくに見て回れなかった鎮守府内を、案内してもらうこととなった。

古鷹「何処か気になるところはありますか?」

大鳳「そうね、なら――」




唐突ですが、安価↓1~3でどこに行くか決めます

工廠とかの場所指定でも艦娘の名前でも可、書き込み無ければ適当に決めます

18: 2014/05/11(日) 10:01:43.65 ID:BkitVJHAO
募集は継続、懲罰房ネタ浮かんだので投下します

――――

古鷹「懲罰房、ですか?」

大鳳「えぇ、少し気になってしまって……ダメかしら?」

古鷹「んー、見て面白いものは無いと思いますけど、いいですよ」

もう少し渋るかと大鳳は考えたが、意外にすんなりと古鷹は目的地へと歩き始める。

大鳳(脱走しようとしたら酷い拷問を受ける、そういう理由だと思ったのだけど……違うのかしら?)

冷静に考えてみれば、駆逐艦娘達の表情はとても生き生きとしていて、そんな鎮守府には到底思えない。それならば、一体何故“抜け出せない”などと呼ばれているのか、幾ら考えても大鳳には明確な答えを見出だせなかった。

そうこうしている内に、懲罰房の入り口へと到着する。どうやら地下に存在しているらしく、重い鉄の扉を開いて階段を下りた先にあるようだ。

古鷹「どうぞ、足下に気を付けて下さいね」

大鳳「ありがとう」

古鷹は途中で貸出し許可を得て受け取った鍵を開け、中へと入るよう大鳳に促す。言われた通り、気を付けなければまっ逆さまに落ちてしまいそうな階段が、そこにはあった。

慎重に階段を二人で下りていくと、何やら下から啜り泣くような悲鳴のような声がするのに大鳳は気付いた。

大鳳(やはりここでは艦娘が拷問されているの!?)

階段を下る足音の間隔が、自然に短くなる。二十段程下りたところで、ようやく目当ての懲罰房が彼女の目に飛び込んできた。

大鳳(一体どんな酷い仕打ちを――?)

そこに居たのは、二人の艦娘。格好は初日に出会った霧島と似ている。

?「早くここから出すネー! ちょっと提督を借りようとしたぐらいで懲罰房送りなんて加賀は横暴デース!」

?「ヒェー! もう二度とレシピ通りにしかカレーは作りませんからここから出してー!」

大鳳「」

古鷹「誰かが今入っていると聞いていましたが、また金剛さんと比叡さんでしたか……ここの懲罰房にお世話になるの、決まってあのお二人なんですよ?」

お見苦しいところを見せてお恥ずかしい、とでもいった感じで古鷹は苦笑いを浮かべる。どうやら、ここの鎮守府の懲罰房は反省部屋とイコールのようだ。

特に二人に話を聞くわけでもなく、大鳳はさっさと懲罰房を後にするのだった。




金剛「テートクゥー!」

比叡「ヒェー!」

21: 2014/05/11(日) 10:33:04.33 ID:BkitVJHAO
古鷹「では次の場所に――」

?「やっと見付けたわ、こんなところに居たのね。古鷹さん、加賀さんが探してたわよ? 何でも加古がどこかで昼寝してて艦隊演習の重巡が一人足りないとか……」

次の場所へと案内しようとする古鷹を、茶色い長髪の艦娘が呼び止める。どうもトラブルのようだ。

古鷹「またですか……すいません大井さん、お手を煩わせてしまって」

大井「いいのよ、この前はうちの姉二人を炬燵から引きずり出すのに協力してもらったし」

横で聞いていた大鳳も、二人が抱える共通の事情にすぐに気付く。

大鳳(手のかかる姉妹艦を持つと大変のようね……)

大井から連絡事項を確認している最中、はっと何かに気付いたように、古鷹が大鳳へと申し訳無さそうに頭を下げる。

古鷹「ごめんなさい、そういうことだから案内はここまでになっちゃいました」

大鳳「いえ、十分助かったわ。どうもありがとう」

古鷹「それじゃあ行ってきます」

任務であるのならば仕方がないと、古鷹を見送り、大鳳は自室へと戻ろうと踵を返した。その背に、引き留める声がかかる。

大井「今から明石さんのところへ行きますけど、良かったら案内ついでに一緒に行きますか?」

ここの鎮守府に居る艦娘は優しい人達ばかりだと感じながら、大鳳はその提案を受け入れるのだった。




大井(北上さんと提督に仕掛ける超小型盗聴器、もう出来てるかしら?)

24: 2014/05/11(日) 11:44:28.96 ID:BkitVJHAO
――――アイテム屋。

大井「明石さーん!」

明石「はいはーい、今行きまーす」

呼び掛けに応じて、色々な工具をそこかしこにぶら下げた艦娘が店の奥から出てくる。どうやら何かを作っていたようだ。

明石「あぁ大井さん、例のブツは出来てますよ。そちらは――大鳳さん、でしたよね? 何かご入り用ですか?」

提督だけでなく艦娘にも色々販売しているようで、明石は大鳳に接客を始める。

大鳳「いえ、私は……」

大井「彼女はここへ来たばかりだから、案内がてら連れて来たの」

明石「そういうことでしたら、この機会に覚えていって下さい。この鎮守府では何か欲しい家具や家電、電子機器、娯楽設備、その他諸々などがあればここで要請するシステムになってます。蟻装や装備関連は工廠で夕張が担当してますから、そちらにお願いしますね」

営業をするように、いや、文字通り営業として明石は色々と説明する。矢継ぎ早に言われて全ては把握しきれなかったが、気になった部分について大鳳は質問を返すことにした。

大鳳「あの、欲しいと言えばいいだけですか? それと、何でお支払いすればいいのでしょうか」

明石「言ってもらうだけで大丈夫ですよ、代金は遠征に出て開発資材を回収さえしてきてもらえれば特に要求しません。修理も無料で請け負います」

大井「うちは艦娘も多いから遠征も常時誰かが出ているし、開発資材に困ることはまずないわ」

明石と大井の言うことを総合すると、何を頼んでも無料だということになる。

大鳳「それだと割に合わないんじゃ……」

明石「心配してもらわなくても大丈夫ですよ。むしろ頼んで貰わないと、私も妖精さん達も暇で暇で――っと、店先で愚痴るのはいけませんね」

大井「それじゃあ明石さん、例のモノは確かに受け取りました。またよろしくお願いしますね――あっそうだ、北上さんと二人で寝られるようにダブルベッドを用意してもらえない?」

明石「お安いご用です。1~2週間もすれば出来ますので、古いのを処分するついでにお部屋に運んでおきます」

大鳳(暇ってどういうことかしら……やっぱりこの鎮守府、出撃は一切しないってことなの?)

新たな謎を残したまま、大鳳と大井はアイテム屋を後にするのだった。

29: 2014/05/11(日) 12:34:03.95 ID:BkitVJHAO
大井「私はこのまま部屋に戻るけど、貴女はどうするの?」

大鳳「私も部屋に戻ろうと思います」

大井「そう、じゃあまた遠征か演習でご一緒しましょ、それじゃ」

割り当てられた部屋の方向が違うので、大鳳は大井と別れ、一人部屋へと歩く。

誰かに会うこともなく、宿舎に到着して中へと入ろうとした矢先、真後ろで何かが落下してきた音がして振り返る。

?「張り込んでいた甲斐がありました! 今から密着取材させて下さい!」

大鳳「いや、あの――」

?「させてもらいます!」

大鳳「私は――」

?「します!」

大鳳「」

絶句。今まで大鳳が出会った艦娘達の中で、これ程までに会話を成立させる意思がない者はいなかった。

許可を求めているのかと思いきや、次の瞬間には勝手に決定事項にされている。はっきり言って、かなり迷惑なタイプだ。

青葉「申し遅れました。青葉です。ここの鎮守府で自作新聞を作ってます」

そう言って、青葉は言葉を失っている大鳳へと一枚の新聞を手渡す。第一印象が最悪だったこともあり、内容にもあまり期待せず読み進めていくと、自然にある言葉が口から漏れた。

大鳳「――コレ、面白いわ」

記事の内容は、ここで起こった日常の中にある出来事や小さなトラブル、珍事件など多岐に渡っていた。多少は過剰表現であったり、事実か怪しいものはあるものの、読む側に対しても取材された側に対してもきちんと配慮されており不快感は無く、素直に大鳳は感心する。

青葉「いやーそう言って頂けると恐縮です。それで、取材の方なんですが……」

褒められたことで多少落ち着いたのか、改めて青葉は取材の許可を求める。少し悩んだ後、この記事の内容ならば問題ないかと大鳳は取材を受け入れるのだった。




『私達の新たな仲間、大鳳さん。なんと彼女はここに来るまでに四つの鎮守府を渡り歩いていた!? 何が彼女の身に起こったのか、青葉、聞いちゃいました!』

この新聞のお陰で、大鳳が一部の艦娘達とかなり親密になるのだが、それはまた別のお話。

32: 2014/05/11(日) 14:06:28.96 ID:BkitVJHAO
――――大鳳が着任して三週間後、その時は訪れた。




『全艦娘に通達、提督がお目覚めになりました。繰り返します、提督がお目覚めになりました。直ちに集まってください』




大鳳(え? え!? 何なのこの意味不明な緊急召集!)

提督が起きたから集まれ、確かに意味不明だ。というか、最初に執務室で見かけてから今までずっと寝ていたのかと問いたくなる。

瑞鳳「大鳳、一緒に行くからついてきて」

RJ「うちも一緒に行くで」

大鳳「え、えぇ、分かったわ」

部屋に迎えに来た仲良し二人に連れられ、他の艦娘達も足早に目指している集合場所へと向かう。

この鎮守府にいる艦娘全員が一堂に会する場所、そこは――。

大鳳「体育館……?」

何故にこんなものが鎮守府にあるんだと言いたくなるほど、立派な体育館が指定された集合場所だ。確かにここなら、百人程居るであろう艦娘を一ヶ所に集めても余裕がある。

何時も緩い雰囲気に包まれていた艦娘達も、今は黙って整列し、前方にある壇上を見つめていた。

加賀「今月も第四週となりました。分かっているとは思いますが、私達の存在意義は深海棲艦から人類の平和を守ること。そして何より、提督の恩義に報いることです」

壇上に居るのは二人、秘書艦である加賀と、初めて起きている姿を確認出来た提督だ。

提督が話す前の恒例行事ということなのか、決まっているセリフを話すように加賀が言葉を続ける。

加賀「――それでは、今週の作戦を提督から発表して頂きます」

33: 2014/05/11(日) 14:18:13.25 ID:BkitVJHAO
体育館ということもあってか、学校の全校集会のような進行に思えてくる口上の後、提督がマイクの前に立つ。

提督「おはよう皆。じゃあ早速だけど、第一艦隊旗艦、金剛。他、比叡、夕立、瑞鳳、赤城、大鳳。最近現れた新型の深海棲艦倒しに行くぞ」

金剛「私達の出番ネー!」

提督「次、第二艦隊旗艦、神通。他、吹雪、伊勢、千歳。鎮守府近海の潜水艦の掃除、頼んだ」

神通「お任せ下さい」

提督「次、第三艦隊旗艦、シオイ。他、ハチ、イク、ゴーヤ、イムヤ、まるゆ。各自疲れたら適宜休憩を挟みつつ、好きな場所泳いでこい」

シオイ「運河が私を呼んでいる!」

提督「最後、第四艦隊旗艦、長波。他、秋雲、夕雲、巻雲、時雨、五十鈴。今週はお前達の担当ってことで、資源回収よろしく」

長波「任せろ司令官」

提督「残りの者は演習頑張ってくれ。――以上、解散」




大鳳はここにきて、ようやく抜け出せないと言われた理由に行き着く。

大鳳(提督と艦娘の、異常とも思える信頼関係……)

不平や不満、文句を言えない雰囲気なのではなく、誰も異を唱える気など微塵も持ち合わせてはいない。命令を受けて飛び出していく艦娘達の目には、やる気と闘気だけが満ち溢れていた。





―――――提督階級、大佐。平均月度戦果、750。ただし、この鎮守府から第四週以外に出撃したという記録は、存在しない。

36: 2014/05/11(日) 16:53:36.40 ID:BkitVJHAO
金剛を旗艦とした第一艦隊は、南方海域にて新たに確認された新型深海棲艦を撃滅するべく、提督の乗るPUKAPUKA丸と共に出撃する。

まだまともに提督と話したことすらない大鳳は、何故自分が選ばれたのか理由が分からず、待ちに待った初出撃だというのに浮かない顔をしていた。

瑞鳳「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ、提督はとってもいい人だから。たまに寝惚けて格納庫まさぐってくるけど……」

夕立「提督さんと一緒なら、とっても素敵なパーティーになるっぽい!」

緊張を察したのか、大鳳に二人が話しかける。今は集まっていた時とは違い、二人ともいつもの緩い雰囲気に戻っていた。

大鳳「二人ともありがとう。でも、万全な補給はしてもらったけど、訓練の方が……」

今から向かうのは、今最も激戦地だと言われている海域だ。着任後にしたことといえば、遠征と鎮守府内の散策だけの大鳳にとって、緊張するなというのは無理な相談だった。

瑞鳳「大丈夫だよ、今日は多分実際に肌で体感してもらうのだけが目的のはずだから」

夕立「この艦隊なら何も心配することは無いっぽい!」

提督への信頼なのか、自分達の実力を信じているのか、はたまたその両方なのか、二人に緊張の色は全く見られない。それは他の艦娘達についても同様だった。

金剛「テートクゥ! たまには秘書艦を加賀から私にチェンジするネー!」

提督「加賀が許可したらなー」

比叡「提督、帰ったらカレーの味見を……」

提督「赤城、帰ったらカレーが待ってるぞ」

赤城「今なら魔の五分すら容易く乗り越えられそうです」

比叡「ヒェー! せめて金剛お姉様と二人で一口でいいから食べてください!」

金剛「提督、武運長久を……」

提督「こらこら逃げるな、カレーの海に沈む時は仲良く一緒に逝こうじゃないか」

金剛「嫌デース! もうあの紫の大海は懲り懲りデース!」

こんな調子で本当に大丈夫なのかと、ますます大鳳は表情を曇らせていく。聞き及ぶ限り、新型深海棲艦は砲撃・雷撃・航空戦の全てを行える異質な艦らしく、数々の艦隊を返り討ちにしている悪魔と呼ばれていた。




赤城「――――報告、前方約70000。敵艦影を捕捉しました」




――戦闘開始の合図は、唐突に打ち鳴らされた。

37: 2014/05/11(日) 19:13:38.52 ID:BkitVJHAO
赤城の報告を受けた瞬間、またしても全員の雰囲気が一変する。

提督「艦種は?」

赤城「新型レ級1、タ級2、ヘ級2、カ級1。新型以外はフラッグシップです」

提督「よし、赤城、瑞鳳、敵の艦載機を叩き落とせ。多少はとり逃しても構わんから、とにかく減らすんだ」

赤城「撃墜数分だけ間宮アイスをおごって下さい」

提督「許可する」

赤城「百は絶対に落としてみせます!」

瑞鳳「それ私も貰えるのかな? 全機発艦!」

大鳳「私も発艦を――」

提督「いや、制空権を確保するだけなら赤城と瑞鳳だけで十分だ。大鳳は制空権を確保出来次第、砲撃戦に乗じて爆撃を頼む」

大鳳「は、はい、了解しました」

提督「――そろそろか? 赤城、瑞鳳は十時の方向、残りの艦は四時の方向、五秒後に最大戦速で回避!」

大鳳「回避って何を!?」

夕立「とにかくこっちに来ればいいっぽい!」

金剛「相変わらずテートクのは謎予測ネー」

提督「黙って避けろ舌噛むぞ」

赤城「敵艦からの魚雷発射を確認。魚影3、来ます!」

大鳳「っ!?」

比叡「間一髪でしたね、あのままなら当たってました……」

提督「じゃあ魚雷のお礼をするとしよう、タ級二隻は金剛と比叡に任せた、新型の砲撃を回避しつつ迅速に仕留めてくれ」

金剛「私達の出番ね! フォロミー比叡!」

比叡「気合い! 入れて! いきます!」

提督「夕立は潜水艦さっさと潰して軽巡よろしく」

夕立「最っ高に素敵なパーティーしましょ!」

提督「大鳳は軽巡に爆撃後、金剛達のフォローに回ってくれ、頼んだぞ」

大鳳(まだ緊張は解けてない……でも、やるしかないわ)

大鳳「第一次航空隊、全機発艦、始め!」





提督「お疲れー加賀ー膝枕ー」

金剛「加賀ー! 今日という今日は秘書艦を代わるネー!」

比叡「赤城さん、ちょっと待って下さい、全部食べないで下さいよ!?」

赤城「大丈夫です、間宮さんのアイスが待っていますから鍋一つ程度に抑えます」

比叡「ヒェー!? それ全部って言ってるのと変わりませんってば!」

瑞鳳「早く九九艦爆コレクションの整備しなきゃ」

夕立「ごっはんーごっはんー」

大鳳(おかしい……この人達絶対におかしい……)




――――戦果報告。新型深海棲艦の撃滅に見事成功す。被害、レ級の砲撃により大鳳大破、他、無傷。

明石「修復材減ったの久しぶりね、次はいつになるやら……」

49: 2014/05/11(日) 22:30:54.00 ID:BkitVJHAO
大鳳「貴女は最初に会った子よね?」

電「はい、電なのです!」

大鳳「そちらの二人も、名前を教えてもらえるかしら」

響「響だよ、その活躍ぶりから不氏鳥の通り名もあるよ」

菊月「菊月だ」

大鳳「教えてくれてありがとう。それで一つ聞きたいんだけど……ここは、何?」

電「秘密通路なのです!」

響「妖精さん達が一晩で頑張ってくれた」

菊月「大鳳、共にゆこう。ここならばすぐには見付かるまい」
大鳳「えぇ、そうね、そうするわ」

大鳳(そもそも私がかくれんぼに参加させられている理由が謎なのだけれど……)

~現在、毎月恒例駆逐艦娘かくれんぼ大会開催中~

電「最後まで逃げ切るとお菓子の詰め合わせが貰えるのです」

響「今回は鳳翔さんと間宮さんのコラボお菓子も入っているらしい」

菊月「以前にコラボした時も心が揺さぶられるような絶品だった。今回も期待せざるを得ない」

電「菊月ちゃん、涎が垂れてるのです」

菊月「うっ……そ、そんなことゆり今回の鬼は誰なんだ?」

響「利根だよ、強敵だね」

大鳳(そういえば、この前改二になって索敵能力が更に向上したとか言ってたわね)

?「むっ? この辺りに四人程隠れているな?」

電「ば、バレたのです!?」

響「各自散開、ポイントファイブで落ち合おう」

菊月「あぁ――あっ、ちょっと待ってくれ、スカートが引っかかって……」

大鳳「大丈夫? 見せてみて、取ってあげるから」

菊月「なるべく早く頼む。でないと、でないと――」

利根「やはり吾輩の索敵は航巡随一じゃな。大鳳と菊月、見付けたのじゃ」

大鳳「残念、見付かってしまったわね。ごめんなさい菊月――菊月?」

菊月「ぐすっ……コラボお菓子……今度も食べれると思っていたのに……」

大鳳(コレ、マジ泣きよね? え? 私のせい!?)

利根「そういえば今回の景品は吾輩ですら欲しくなる一品じゃったな……菊月、後で吾輩のところに来い。鬼役に支給されるケーキを分けてやる」

菊月「……うん」




大鳳(……後で私もケーキあげたらなついてくれるかしら?)

50: 2014/05/11(日) 23:11:20.53 ID:BkitVJHAO
電「菊月と大鳳さんが捕まったのです」

響「――悪気はなかったんだ」

電「響?」

響「ちょっと糸が解れているのが見えたから、何となくその辺の柱に結んでしまった」

電「……今度菊月にお菓子分けてあげるのです」

響「そうする」





安価↓1~3でまた募集(乳風とあきつ丸除く)

57: 2014/05/12(月) 00:11:48.47 ID:LcmRwtqAO
大鳳「そういえば、ここに来てから加賀以外が秘書艦をしているのを見たことがないですね」

加賀「大鳳も秘書艦になりたい?」

大鳳「い、いえ、私はまだ着任して日も浅いですし……」

大鳳(何より、そこでまた眠り続けている提督をどうしていいのか分かりません)

提督「熊野が12……鈴谷が8……弥生はどんだけうちに来たいんだ……レア艦とは一体……むにゃ……」

加賀「ふふっ……ここは簡単には譲れません――譲れないと言っているでしょう瑞鶴」

瑞鶴「艦爆隊、全機発艦、目標加賀さん!」

大鳳「きゃあっ!? な、なに!?」

加賀「伏せていなさい大鳳、当たりますよ――――全機撃墜を確認、着艦して」

瑞鶴「くっ……まだ錬度が足りないっていうの!?」

加賀「もう五航戦だからと馬鹿には出来なくなったわ、でも秘書艦の座を明け渡すにはまだまだね」

瑞鶴「くっそー……お茶淹れるけど、飲む?」

加賀「頂くわ」

瑞鶴「大鳳はいる?」

大鳳「――へっ? えっと、お願いするわ」

瑞鶴「良い焙じ茶を間宮さんから分けてもらったの」

加賀「良い香りがするわね、流石に気分が落ち着きます」

大鳳(いきなり爆撃、動じずに全部撃墜、その後は何事もなかったようにお茶……何だかこういう突拍子の無い流れにも慣れ始めてきてしまったわ……)

瑞鶴「お茶菓子ある?」

加賀「羊羹ならそこの戸棚にあります」

瑞鶴「やっぱり日本茶には和菓子よね。この前お茶請けが金剛の作ったスコーンしかなくってしょうがなく食べたんだけど、途中でどっちも美味しくないって感じたわ……」

加賀「それは流石に取り合わせとしてあり得ないわ、赤城さんなら気にせず食べるでしょうけど」

大鳳(一航戦と五航戦は仲が悪いって聞いていたのだけど、そういうところもここでは例外のようね)




提督「むにゃ……七面鳥食べたい……」

58: 2014/05/12(月) 00:46:33.35 ID:LcmRwtqAO
大鳳「前から気になっていたんだけど、どうやってドラム缶で戦っているの?」

熊野「神戸生まれの淑女のたしなみよ」

大鳳「神戸生まれなら誰でも出来るということ?」

熊野「私のように自分を磨くことに余念がない淑女だけでしてよ」

大鳳(ドラム缶と神戸と淑女にどんな関係性があるというの? 謎だわ……)

熊野「今度機会があれば大鳳さんに私の華麗なドラム缶さばきをお見せするわ」

大鳳「えぇ、是非。本当に気になるから……」




――――後日。東京急行作戦にて敵輸送船を発見。




熊野「とおぉぉぉぉっ!」

大鳳(ドラム缶を紐でくくって振り回して殴り付けてる!?)

赤城「熊野のドラム缶でタ級フラグシップ大破。輸送ワ級フラグシップ撃沈」

熊野「少し服が汚れてしまったわ、帰ったらクリーニングに出さないといけませんわね……」



――――ドラム艦娘熊野。他鎮守府でもその名は有名である。

61: 2014/05/12(月) 02:01:37.71 ID:LcmRwtqAO
大鳳「――あら? 見かけない顔だけど、どうしたの?」

?「ぴゃあぁぁぁぁっ!?」

大鳳(今の変な声は悲鳴?)

大鳳「ごめんなさい、驚かせてしまったみたいね。見たところ軽巡洋艦のようだけど、名前を聞いてもいい?」

酒匂「阿賀野型四番艦、末っ子の酒匂だよ。ねぇねぇ大鳳さん、近くに矢矧達居ないよね?」

大鳳「他の阿賀野型姉妹を探してるの? それなら一緒に――」

酒匂「ぴゃあぁぁぁぁっ!? ダメダメ、絶対ダメ! 見付かったら連れ戻されちゃう!」

大鳳「貴女、何か悪いことでもしたの?」

酒匂「何かしたくても出来ないの、未だに遠征すら出してもらってないの、この鎮守府で酒匂だけだよ?」

大鳳(遠征すら出してもらえない? どういうことかしら……)

?「見付けた! 阿賀野姉ぇ、矢矧、酒匂居たわよ!」

?「能代、確保! 阿賀野は待機!」

?「阿賀野だけなんで待機なの!?」

酒匂「ぴゃあっ!? 見付かっちゃった!?」

能代「急に居なくなったら心配するじゃない」

矢矧「ほら酒匂、部屋に戻るわよ」

阿賀野「阿賀野と一緒にお昼寝しましょ」

酒匂「やだやだ、酒匂も出撃したい!」

矢矧「わがまま言わないの、貴女は大人しく阿賀野と部屋で留守番してなさい」

大鳳(過保護な姉三人に囲まれて、何もさせてもらえないってことだったのね)

酒匂「今日こそは酒匂も遠征に行くの! このままじゃいつまで経っても司令の秘書艦になれないもん!」

能代「悪いことは言わないわ酒匂。加賀さんに勝つのは貴女じゃ一生無理よ、だから阿賀野姉ぇと留守番、いいわね?」

阿賀野「そうそう阿賀野と……アレ? 阿賀野も何気に箱入り娘状態?」

大鳳(まだ暫く続きそうね。私も今日は遠征に出撃する日だし、今のうちに行きましょうか)




酒匂「何でケッコンカッコカリしてるのに遠征も出撃もダメなの? 演習飽きたよぉ!」

62: 2014/05/12(月) 03:09:46.22 ID:LcmRwtqAO
赤城「今日こそは一航戦の誇りにかけて、勝ち越してみせます」

間宮「鎮守府の台所を預かる身として、負けるわけにはいきません!」

大鳳「アレ、何やってるの?」

瑞鳳「鎮守府日曜名物、赤城対間宮だよ。赤城さんがテーブルの上に次々と並べられていく料理を食べ尽くすのが先か、食堂営業時間が終わるのが先かで勝負してるの。龍驤が1間宮アイス券から賭けられる賭博も主催してるよ」

RJ「まだ間に合うでー賭けるんなら今のうちや」

大鳳(もうこの程度じゃ驚けなくなってしまったわ……)

電「この前は僅差で赤城さんが勝ったのです」

神通「その前は間宮さんが怒濤の口中乾燥甘味攻撃で勝利していましたね」

瑞鳳「赤城さんのあの食べるスピードと量も凄いけど、アレについていける間宮さんも凄いよね――あっ始まるみたい」

赤城「いざ尋常に――」

間宮「勝負!」

赤城「焼き魚はサンマ、味噌汁の具は豆腐。肉じゃがは箸で崩れず、口に入れれば噛まずに舌で解れる……流石間宮さん、やりますね」

間宮「今日の漬物は沢庵と白菜の浅漬けの二種類です。玉子焼きは今日はだし巻きにしてあります」

赤城「くっ……一口一口に食べる者への愛情が籠められている。味わわずには、いられない……!」

間宮「今までは多少質を落としてでも量を増やしていました――ですが、私は皆さんの台所を預かる身、妥協などしてはいけなかったんです!」

赤城「コレが、間宮さんの本気……」

間宮「さぁ、この二日煮込んだ大根と小芋の煮っ転がし、高野豆腐もどうぞ」

赤城「――参りました。今日は私の覚悟が足りなかったようです。この料理を一気に食べても味わえるだけの準備をして出直します」

間宮「次も負けませんよ? さぁ、どうぞ召し上がって下さい」

RJ「おぉっとー!? まさかの開始五分で間宮さんが赤城さんに敗北を認めさせたー!」




大鳳(だし巻き玉子ってお代わり出来るのかしら?)

63: 2014/05/12(月) 03:15:56.06 ID:LcmRwtqAO
ドラム缶+艦娘=ドラム艦娘の爆誕

書いてたら熊野が出たよ、やったね!(カーンカーンカーン)

安価↓1~3でまたまた出す艦娘募集(駆乳艦とあきつ〇除く)

二回目の艦娘はこの鎮守府に来た理由とか書くかも

多分次の更新は昼から夜になります

67: 2014/05/12(月) 03:34:59.89 ID:LcmRwtqAO
~次回~

・キラキラ鈴谷

・榛名対加賀

・マントの中からこんにちは

の、三本でお送りします

69: 2014/05/12(月) 08:29:19.38 ID:LcmRwtqAO
更新は昼と言ったが、昼前に書かないとは言っていない

――――

大鳳「次は夜戦になりそうね……」

瑞鶴「大丈夫よ、夜戦用の娘をちゃんと連れてきてるから」

鈴谷「うわっ! さっきの戦闘のせいで服が何かヌメヌメする……テンション下がるわぁ……」

大鳳(見るからにあの子だけやる気無さそうなのだけど……)

菊月「そろそろ彼女から目を逸らしておいた方がいい、先程の戦闘のMVPを取ってもらったからな」

電「電はちゃんとアレを持ってきたのです!」

夕立「夕立もちゃんと持ってきたっぽい!」

菊月「私もしっかりと――あっ、昨日机の上に出して……すまない、後で貸してくれないか」

大鳳(片面が赤で、もう片面が青の薄いプラスチックのカードかしら……?)

提督「鈴谷」

鈴谷「なぁにぃー……?」

提督「さっきは良く頑張ったな、偉いぞ。帰ったら前から行きたがってた買い物に行って、カレーも食おう」

鈴谷「…………」

大鳳(急に動かなくなったわね、どうしたのかしら?)

瑞鶴「来るわね」

夕立「来るっぽい!」

菊月「来るな」

電「なのです!」

鈴谷「………………エヘヘー」

大鳳(うわっ!? 眩しい!?)

瑞鶴「鈴夜はあぁして提督から褒められると、疲労がマックスからでもテンションマックスになるの。オマケに探照灯も無しに光るのよ」

電「やっぱり鈴谷さんはスゴいのです!」

夕立「とってもキラキラしてるっぽい!」

菊月「夕立、私にも見せてくれ」

鈴谷「鈴谷褒められて伸びるタイプなんです!」

瑞鶴「目標捕捉、前方約30000。艦種、リ級フラグシップ2、チ級フラグシップ2、ヘ級フラグシップ2」

鈴谷「さてさて、突撃いたしましょー!」

大鳳「単艦で突撃!? 大丈夫なんですか!?」

電「大丈夫なのです」

夕立「後からついていけばいいっぽい!」

菊月「あまり近付くと直視出来ないしな」

瑞鶴「そうこう言ってるうちに、リ級フラグシップ2隻大破、チ級フラグシップ1隻撃沈、ヘ級フラグシップ1隻中破、1隻撃沈」

大鳳(この鎮守府の艦娘は、常軌を逸しているとかいう条件でもあるの……? 私は普通のはずよね? 何だか自信が無くなってきたわ……)




鈴谷「また頑張ったら、うーんと褒めてね!」

75: 2014/05/12(月) 09:59:55.35 ID:LcmRwtqAO
鈴谷……01……いや、何でもないです

――――

加賀「――来るわ」

大鳳「え? また瑞鶴ですか?」

加賀「いえ、『一人だけまだ改二になれないので花嫁(武者)修行してきます』と言って、長期遠征に出ていた子が帰ってきたようです」

大鳳(花嫁修行……?)

?「加賀さん、お待たせしました」

加賀「久しぶりね、榛名」

榛名「はい、お久しぶりです」

加賀「息災のようで何よりだわ」

榛名「今の榛名はレ級が相手だろうと一人で大丈夫です」

大鳳(あの怪物倒せるのが何人居るの、この鎮守府……)

加賀「ここでは流石に場所が悪いわ、演習場に行きましょう。大鳳、提督を頼めるかしら?」

大鳳「私でいいんですか?」

加賀「すぐに帰ってくるから、寝返りをうって落ちないように見ていてくれるだけでいいわ」

榛名「その余裕の表情、榛名が崩してみせます!」

加賀「最近あまり出撃していないし、良い運動になりそうね」
大鳳(本当に行ってしまったわ……あっ、提督って睫毛長いのね)





加賀「艦攻隊は三時、八時、十一時の方向から牽制。艦爆隊は四時、六時方向より対空砲を爆撃」

榛名「勝手は! 榛名が! 許しません!」

加賀(やはり対空に磨きをかけてきたわね……でも、まだまだ勝ちは譲る気はないわ)

榛名「このまま全機撃ち落とし――っ!? 被弾!? 何処から!?」

加賀「余所見をする暇はありませんよ、全機発艦」

榛名(損傷は小破で済みましたが、全て爆撃が砲門に……)

榛名「――また花嫁(武者)修行をしないといけませんね」

加賀「コレでまた艦隊全体の錬度が向上するわ。お疲れ様、榛名」




加賀「――大鳳、見ていてとは言ったけど、そんな近くで見つめていいとは一言も言ってないわよ?」

榛名「勝手は、榛名も、許しません」

大鳳「っ!?」

77: 2014/05/12(月) 10:38:13.47 ID:LcmRwtqAO
大鳳(加賀から球磨と多摩を探すように言われたけど……全然見付からないわ)

?「どうした? 何か探し物か?」

大鳳「あっちょうどいいところに、貴女のお姉さん達知らない? アニマルズの方」

木曾「アニマルズって……姉貴達なら今日はまだ見てないぞ、どうせどっかでまた昼寝してるんだろうよ」

大鳳「そう……じゃあ見かけたら声を――」

?「クマー……」

?「タマー……」

大鳳(アレ? 今声が……)

木曾「なぁ大鳳、今何か聞こえたか?」

大鳳「えぇ、何かの鳴き声のようなものが聞こえたわ」

木曾「…………ふん!」

球磨「痛っ!? 酷いクマー!」

多摩「ぱっとくるりん三回転にゃ」

大鳳(マントを翻したら中から二人!? あのマントの中どうなってるの!?)

木曾「何で姉貴達が俺のマントの中で寝てるんだよ。道理で今日はやけに体が重いわけだ」

球磨「明石に頼んで木曾のマントの中で寝れるようにしてもらったクマ」

多摩「他と違う変な顔した妖精なら可能って聞いたにゃ。居住性抜群にゃ」

木曾「この前解れたのを直してもらった時か、明石の奴余計なことを……」

球磨「ずっと一緒に居られて木曾もきっと喜ぶと思ったクマ」

多摩「姉妹仲良くが一番にゃ」

大鳳(さらっと流してるけどオーバーテクノロジーにも程かあるわよ!?)

木曾「別にマントの中に入るのは構わないが、出撃はちゃんとしろよな」

球磨「分かったクマ、姉の威厳を守る為にも行ってくるクマ」

多摩「多摩も行くにゃ、今日は確か軽巡対抗潜水艦十五隻早落とし大会にゃ」

球磨「景品は球磨達のものだクマー!」

木曾「全く……手間のかかる姉貴達だぜ」

大鳳「仲良いのね、貴女達」

木曾「変わっちゃいるけど、アレでも一応大事な姉妹艦だからな」

大鳳(優しい微笑み……本当に大事に思ってるのね)




大井「北上さん、あぁ北上さん、北上さん」

大井「大井っち、ちょっと離れて、マジで歩きづらい」

木曾「……」

大鳳(アレ? 今視線を二人から自然に逸らしたような……)

88: 2014/05/12(月) 12:26:44.47 ID:LcmRwtqAO
大鳳(そういえば、整備ぐらいでしかお世話になってなかったけど、工廠で装備を作ってもらえるって明石さんが言ってたわね。行ってみようかしら)

夕張「武蔵さん、次はコレお願い」

武蔵「あぁ、任された」

大鳳(アレは……夕張と武蔵? 砲の試し撃ちでもしているの?)

武蔵「少し重いな――撃てっ!」

大鳳「っ!?」

大鳳(何あの主砲!? 撃った反動であの武蔵が後ろによろけるなんて……というか、何処まであの砲弾飛んだの?)

夕張「弾速・射程・威力は申し分無いわね、ただちょっと反動が強すぎるか……」

武蔵「この武蔵にたたらを踏ませるとは中々のものだ。しかし、これでは戦場で使うのに些か難があるぞ」

夕張「重すぎて航行速度にも支障が出ますもんねぇ……ん? 大鳳さん、どうしたんですか?」

大鳳「明石さんにここで装備を作ってもらえると聞いてきたのだけど……新しく艦載機を作ってもらってもいいかしら?」

夕張「いいですよ、お安いご用です。艦攻ですか? 艦爆ですか?」

大鳳「艦戦をお願いできる?」

夕張「分かりました! ちょっとここで待ってて下さいね、妖精さーん! お仕事ー!」

武蔵「ふむ……まだ実験は続くようだし、夕張が戻るまで暫し待つとしよう」

大鳳「あっごめんなさい武蔵、邪魔してしまったかしら?」

武蔵「いや、気にするな。私はどうせ“鎮守府完全待機組”の一人だ。コレも数ある暇潰しの一つに過ぎん」

大鳳「“鎮守府完全待機組”?」

武蔵「私を含む、加賀・大和・利根・木曾・島風の六人がそう呼ばれている。不測の事態が発生しても必ず対処出来るよう、私達だけは基本出撃しないことになっていてな」

大鳳(そういえば、確かにその六人だけ出撃したのを見たことがないわ)

武蔵「重用してもらえるのは有難いのだが、どうにも時間が余って仕方がない。待機組で演習するのも悪くはないが、加賀があまり長く手を休めると書類仕事に支障が出てしまう」

大鳳「加賀が苦戦したのをここに来てから見たことが無いのだけど、武蔵は勝ったことがあるの?」

武蔵「アレはもう空母という形をした別の何かと言って差し支えない化物だ。大和と二人で共闘して一度勝ったが、次は勝てるか分からん。少なくとも、加賀がこの鎮守府内に置いては最強と認識して問題ない。他の待機組もそれぞれ強者揃いだがな」




大鳳(島風、そういえば彼女もまだ見たことないような……)

90: 2014/05/12(月) 13:17:29.59 ID:LcmRwtqAO
電「今日は皆で遠征なのです!」

響「久しぶりだね、この四人で行くのは」

雷「暫く鳳翔さんに料理を教えてもらってたの、これでまたもっと頼ってもらえるわ!」

暁「一人前のレディーのたしなみとして、暁は熊野さんにドラム缶を上手に振り回すコツを教えてもらっていたのよ」


大鳳(あの子達は今日の遠征組ね、旗艦は確か天龍だったはず)

長門「この長門、例えただの練習航海とはいえ全力を尽くそう」

大鳳「何をしているの長門、天龍を何処へ隠したの」

長門「私はただ天龍が居なくなったと聞き、この子達を遠征に連れていく役目を買って出ただけだ」

龍田「天龍ちゃーん? どこー?」

大鳳「この前天龍をからかい続けて泣かせた那珂の二の舞になりたいの? あれから2~3日引きこもった挙げ句に、龍田を見かけたら一瞬で存在感を消すようになったのよ?」

龍田「天龍ちゃーん? また誰かにいじめられたのー? 私がお仕置きしてあげるから大丈夫よー」

長門「こ、このビッグセブンが軽巡洋艦に恐れを抱くなど――」

龍田「ねぇ長門さん、天龍ちゃんどこ? 長門さんから天龍ちゃんの匂いがするの」

長門「天龍ならきっとアイテム屋脇の倉庫に居るが私は関係無いし遠征に遅れてしまうからコレにて失礼する」

龍田「大丈夫よーさっき名取ちゃんに代役お願いしたからーじゃあ一緒に倉庫まで行きましょうねー」

長門「は、離せ龍田、私はただあの子達と遠征に……このビッグセブンの力を持ってしても振りほどけないだと!?」

龍田「駆逐艦の子達を可愛がるのは構わないけどー天龍ちゃんをいじめるのは絶対にー……ゆ・る・さ・な・い」

長門「」




大鳳(どっちも大概ね、私も早く演習に行かないと)

93: 2014/05/12(月) 20:21:53.58 ID:LcmRwtqAO
なりすまし出るのは想定外、酉つけます

寝落ちってたんでもう少々お待ちを

大鳳(最初から付ければいいのに……)

?「おっそーい!」

大鳳「誰っ!?……誰も居ない……」

95: 2014/05/12(月) 21:09:12.39 ID:LcmRwtqAO
大鳳(あの子は確か――不知火だったかしら)

不知火「失礼します。間宮さんと差し入れを作って持ってきました」

加賀「ありがとう、頂くわ」

不知火「では、不知火はコレで」

加賀「えぇ、ご苦労様――――定番ね、おにぎりを砂糖で握るなんて」




不知火「水雷戦隊、出撃します」

不知火(今日はちゃんと言えた)

伊勢「ちょい待ち不知火、今から行くの何処だか分かってる?」

不知火「鎮守府近海と聞いていますが?」

伊勢「毎月湧いてくる鎮守府近海の潜水艦を一掃しに行くの。今の不知火、何装備してる?」

不知火「……10cm高角砲二門と五連装酸素魚雷ですが、不知火に何か落ち度でも?」

伊勢「ソナーと爆雷、取ってきなさい」

不知火「ルートが逸れれば必要です」

伊勢「今日出撃するの、千代田と私とアンタと睦月、羅針盤娘が指す方向固定されてるから」

不知火「……沈め!」

伊勢「バカな事してないでさっさと爆雷とソナー持って来てね」




不知火「司令……不知火にご指導ご鞭撻……よろしくです」

提督「どうした不知火」

不知火「おにぎりを作るのに砂糖と塩を間違えました。対潜水艦作戦に高角砲を持っていこうとしました。演習で蹴躓いたら扶桑さんの蟻装にぶつかって、扶桑さんがよろけて山城さんにぶつかって、山城さんが陸奥さんの第三砲塔に突っ込んで、翔鶴さんが誤射されて艦載機の着艦に失敗して、大鳳さんが着艦し損ねた彗星一二型甲に突っ込まれて、全員大破しました。演習で大鳳さんを中破させて安全だと思ったら爆撃で不知火が大破しました……」

大鳳(最後のは私が中破でも艦載機を飛ばせるのをまだ知らなかったからみたいだけど、後のは弁護のしようが無いわね)

提督「何だその程度か、来た頃に比べたら落ち度はだいぶ減ったじゃないか。これからもその調子で頑張ってくれ」

不知火「司令……はい、期待に応えてみせます!」

大鳳「少々彼女に甘すぎませんか?」

司令「いや、出撃さえすれば駆逐と軽巡相手に眼光で威圧して動けなくさせる働きしてくれるし、あのままでいいって一部から可愛がられてるんだ」

大鳳(色々突っ込みたいけど私には処理できそうもないわ)




不知火「水雷戦たん、出撃します!」

大鳳(あっ、今日は噛んだ)

96: 2014/05/12(月) 21:29:36.18 ID:LcmRwtqAO
その後、長門と那珂は出会うなり無言で頷き合い熱く抱擁を交わしたそうな…

安価↓1~3で次の艦娘指定お願いします(乳風とあきつ除く)

?「出番おっそーい!」

大鳳(姿が見えないのに声が!?)

102: 2014/05/12(月) 21:38:00.48 ID:LcmRwtqAO
~次回~

・五十鈴にはお見通し

・艦隊の頭脳筋

・でちでちでちでち

の三本でお送りしますでち


引用: 【艦これ】大鳳「一度入ったら抜け出せない鎮守府?」