366: 2014/04/10(木) 00:00:27.75 ID:XU/fnc4Zo

【ラブライブ】穂乃果「時の旅人」【1】
【ラブライブ】穂乃果「時の旅人」【2】
【ラブライブ】穂乃果「時の旅人」【3】


穂乃果「中吉!」

にこ「半凶!?」


海未「恋愛運はどうですか?」

穂乃果「そこが気になるの? えっと……待ち人……まだ来ず」

海未「……来年がありますよ」

穂乃果「鬼が笑うよ!」

ことり「にこちゃん……半凶って……」

にこ「な、なにこれ……大凶の方がスッキリしていいわよ……!」


「稲作文化の基本はお米で、お米をおにぎりにしたのがおむすびと呼んでて」

「ふむふむ」

「願い事がしっかり結びますように、と……その由来でおみくじを結ぶようになったそうだよ」

「なるほど~、お米に関してかよちんの右に出る人は居ないにゃ!」


にこ「半凶……むむむ……中途半端に嫌な結果だわ」

穂乃果「ほら、さっさと結んでよ~。希先輩が待ってるよ~?」

海未「希先輩はどうして神社が苦手なのでしょうか……?」

ことり「なんだか、トラウマがあるって言ってたけど……」

海未「トラウマ……」


……



367: 2014/04/10(木) 00:02:25.10 ID:XU/fnc4Zo

―― 立春:廊下


穂乃果「年の暮れは、大雪降ったのに……」

ことり「年が明けたら降らなくなったね」

海未「札幌の雪まつりに行きたいですね」

穂乃果「どうして突拍子もない事を……?」

海未「穂乃果が雪の話をするからです……!」

ことり「北海道かぁ……、私は青森がいいな。りんご♪」


「あったかい」

「あんたね……いい加減にしなさいよ」


穂乃果「希先輩とにこちゃん?」

ことり「どうしたんだろう?」

海未「……?」


ガラガラ

穂乃果「こんにちは――」



希「寒いんよ、にこっち~」

ギュウウ

にこ「……鬱陶しい」



穂乃果「おじゃましました――」

ガラガラ


ことり「図書館にでも行こうか」

海未「そうですね」

穂乃果「今日の復習しておこうかな」


「変な気遣いしてないでさっさと入ってきなさいよー!!」


……



368: 2014/04/10(木) 00:03:08.46 ID:XU/fnc4Zo


―― 春


「おはよう、お母さん」


「あら……学校は明日からでしょ?」


「うん、そうだよ」


「どうして制服を着てるの?」


「ちょっと、用事があるから」


「今日は入学式のはず……もしかして、手伝い?」


「そうだよ。ボランティア部に依頼があってね」


「なにか、良いことがあるって顔ね」


「うん。とっても大切な日だから」


「そう……。それじゃ、お父さんの手伝いしてくるから」


「わかってるって」


「あまり浮かれすぎないで、行ってらっしゃい」


「行ってきます!」



……



369: 2014/04/10(木) 00:09:24.52 ID:XU/fnc4Zo

―― 音ノ木坂学院


穂乃果「似合ってるよ、真姫の制服姿」

真姫「あ、ありがとう……」


にこ「まったく……なんで手伝いなんてしなきゃいけないのよ」

海未「部活動の一つですから」

ことり「えっと、私たちは何を……?」

希「簡単に言えば案内役やね。迷ってる生徒がいたら教えてあげて」

ことり「わかりました!」

にこ「あ、そうだ~、クロが気になるから部室に戻ってみるね!」

希「クロちゃんならそこにおるよ」


猫「……」


にこ「あれぇ? にこにはみえないよぉ~? どこにいるのぉ?」

スタスタ

希「……待ち」

ガシッ

にこ「わ、わかったから。サボらないでちゃんと働くから……」

海未「なんですか、今のキャラは……」

ことり「か、可愛かった!」

海未「あ、そういう……。そうですね、いいと思います、はい!」

にこ「あのね、前から言おうと思ってたけど……その奇妙な気遣いは止めなさい」


穂乃果「式までまだ時間があるね」

真姫「あの……ね。……ほのちゃんにお願いが……」

穂乃果「うん?」

真姫「少し、歩きたいって……」

穂乃果「わかった、案内してあげる」

真姫「う、うん……」


希「そうやな、周りを歩いて、困ってる子がいないか探してみるんよ」

海未「わかりました」

ことり「……あれ、クロちゃんが居ない?」

にこ「猫の気まぐれに付き合ってたら疲れるだけよ、放っておきなさい」

海未「さっきと言ってることが違いますね」

370: 2014/04/10(木) 00:10:42.77 ID:XU/fnc4Zo

―― 校舎内


「あ、あれ……ここ……どこ……?」


猫「……」



―― グランド


「あれ~、かよちん~?」


穂乃果「困ってる子、発見!」

真姫「……」




―― 花壇


にこ「……忘れてた」


キュッキュ


ジャー


希「…………」


にこ「希に見つからない内に、はやく終わらせないと」


希「理事長に言われたんは、春休み前やったな」

にこ「!」ギクッ

希「うちらが春休み中に花壇の水やりをしたから、心配いらんよ?」

にこ「……」


ジャーー


にこ「……新入生に、潤った花々を見て欲しいじゃない?」

希「そうやなぁ。にこっちは優しいんやねぇ」

にこ「ごめんなさい。すっかり忘れていました……」

希「うん、素直が一番やな」

にこ「なんで私だけなのよ! 穂乃果たちもいるでしょ!?」

希「開き直った……。うちら言うたやん、穂乃果ちゃんたちも水やりをしとったよ?」

にこ「……」

希「ほとんど毎日、部活前に花壇に水をやって――」

にこ「悪かったわよぉ」

371: 2014/04/10(木) 00:12:03.51 ID:XU/fnc4Zo

―― うさぎ小屋


穂乃果「ここがうさぎ小屋だよ、――凛ちゃん」


凛「うーん……いない……」


真姫「どうしてこんなところに?」

凛「かよちんなら、ここで眺めていると思ったから……」

穂乃果「それらしい人物はいないね」

真姫「……」



―― 玄関


猫「……」

「あ……玄関に戻ってこれた……」



―― 花壇


希「そろそろ時間やね」

にこ「式に出席しないといけないなんて、生徒会は大変ねぇ」

希「登校しとるにこっちも参加しとるようなもんやけどね。……ほな」

スタスタ


にこ「……希なら副会長にでもなれるのに、どうして遠慮なんて…」


ジャー


猫「にゃ」


にこ「あまりウロウロするんじゃないの。そこで大人しくしてなさい」

猫「にゃー」

にこ「なによ?」

猫「……」

にこ「?」


「あ、あの……」


にこ「あ……人がいたのね。……迷ったの?」


「は、はい……」


にこ「しょうがないわね~、案内してあげるから待ってなさい」

「……お、お願いします」


372: 2014/04/10(木) 00:14:01.55 ID:XU/fnc4Zo

猫「にゃ」

にこ「ほら邪魔よ、どきなさい」

猫「……」

にこ「なによ、反抗期? ……ホースは後で片付けましょ」

猫「にゃー」

にこ「だから、なによ? 邪魔だからどきなさいって」


「ね、ネコと喧嘩してる……」


猫「……」ピョン

にこ「あ、こら! 今花壇に入ったら泥だらけに――」


猫「……」ゴロン


にこ「あんた、喧嘩売ってんの!?」

「泥だらけだ……」


猫「……にゃ」

テクテク

にこ「な、何考えてるの……?」

「こ、こっちに来る……!」

猫「……」

テクテク

にこ「ちょ、ちょっと止まりなさいよっ」

「……あわわっ」

にこ「えいっ」

ジャーッ

猫「……」サッ


「ひどい!?」

にこ「ドロで汚れたら、あなたは入学式に出られないのよ? 背に腹は変えられないの」


ジャーッ

猫「……」ササッ

にこ「ほら、洗ってあげるからジッとしてなさい」

ジャーッ

猫「……」サッ

にこ「素早い……。私と遊んで欲しかっただけなのね」


ジャーッ

猫「……」ササッ


ジャーッ

猫「……」サッ

373: 2014/04/10(木) 00:15:39.55 ID:XU/fnc4Zo

ジャーッ

猫「……」ササッ


にこ「横に逃げるだけじゃ、私に近付けないわよ」

猫「……」サササッ


ジャーッ

バシャァ


真姫「……」


にこ「あ……」

「あ……」


凛「ここに居たんだね、かよちん」

「り、凛ちゃん……」

穂乃果「花陽ちゃんが見つかってよかったね」

凛「はい、ありがとうございましたぁ!」

穂乃果「一件落着……――と言いたいところだけど!」


真姫「信じられない……」ポタポタ


穂乃果「なんで水をかけるのにこちゃん!?」

にこ「違うのよ、クロが悪いのよ」


ジャー

猫「……」ブルブル


花陽「自分で泥を洗い落としてる……!」

凛「あれ、もしかしてポテトの人にゃ?」


ことり「どうして真姫ちゃんがびしょぬれになってるのかな……?」

海未「とりあえず、部室へ――」

374: 2014/04/10(木) 00:17:10.74 ID:XU/fnc4Zo

―― ボランティア部


凛「かよちん! 入学式が始まっちゃう~!」

花陽「で、でも……」


穂乃果「はい、真姫。このタオル使うといいよ」

真姫「ありがと……」

穂乃果「そこに座って。髪を拭いてあげる」

真姫「……うん」


海未「それで、他に言うことはありますか?」

にこ「無罪よ、無罪を主張するわ」

ことり「クロちゃんの泥を落とそうとしたっていうけど、汚れてないよ?」


猫「……」


にこ「自分で泥だらけになって、自分で落としたのよ」


穂乃果「にこちゃん!」

にこ「本当なんだって……。ね、あなたも見たでしょ? 見たわよねぇ?」

花陽「……はい」

穂乃果「新入生を脅してどうするの!?」

凛「凛は、ネコが自分でそんなことをするとは思えないな~?」

海未「そうですね、意味が分かりません」

ことり「無罪は遠いみたいです」

にこ「信じてよぉ~……!」


真姫「……はぁ」

穂乃果「真姫は私と制服を交換しよ?」

真姫「……ありがとう、ほのちゃん」

にこ「原因は私にあるんだから、私と交換するわよ」

穂乃果「サイズが合わないよ」

にこ「む……!」カチーン


375: 2014/04/10(木) 00:18:31.87 ID:XU/fnc4Zo

―― 体育館


~♪


海未「あ……!」

ことり「入場しちゃってる!」


凛「あぁー!」

花陽「そ、そんな……!」

真姫「……まったくぅ!」


にこ「こ、こういうこともあるわよ」

穂乃果「ないよ!!」



……




にこ「……ふぅ、なんとか席に着いたみたいね」

海未「希先輩が気づいてくれたからですよ」

ことり「後でお礼言わないとね」


穂乃果「……」


猫「……」


海未「ほのか……?」

穂乃果「?」

ことり「部室に戻ろう?」

穂乃果「あ、うん……そうだね」


にこ「どうして、寂しそうな顔してるのよ?」


穂乃果「え?」

海未「に、にこ……!」

ことり「……っ」


穂乃果「寂しそうって……私が?」

にこ「……そうよ」

穂乃果「そんな、嬉しい日なのに寂しい訳がないよ~」

にこ「……」

海未「……」

ことり「……」

376: 2014/04/10(木) 00:19:49.33 ID:XU/fnc4Zo

猫「にゃ……」

穂乃果「?」

猫「にゃぁ」

穂乃果「部室に戻ろっか」

猫「……にゃ」


……




377: 2014/04/10(木) 00:20:49.81 ID:XU/fnc4Zo


―― ボランティア部


希「にこっち」

にこ「あ、あんたたち、余計なこと言ったわね!?」


真姫「事実でしょ」

凛「……」

花陽「……」


穂乃果「事実だよね」

ことり「……」

海未「……」


希「新入生の三人は、罰としてボランティア部で1ヶ月の活動ね」


真姫「私はほのちゃんたちがいるから、別にいいけど」

花陽「しょうがないよね……」

凛「ポテト先輩のせいにゃー!」

にこ「誰がポテトよ!」

海未「ポテト?」

ことり「ぽてと?」

穂乃果「なんでポテト?」

凛「初めて逢った日、覚えてませんか?」

穂乃果「あれ、今日が初めてじゃないの?」

花陽「……去年の夏の演奏会で、お逢いしました」

穂乃果「あ、クロちゃんを追いかけた子?」

凛「そうで~す」

真姫「そんなことあった……?」

花陽「入学式の途中で思い出したの……」

海未「あぁ、そういえば、凛にポテトをたかっていましたね。だからポテトなんですか」

ことり「なるほどぽてと~」

希「ポテっち、なんの話なん?」

にこ「変なアダ名付けないで」


猫「……」スヤスヤ


……



378: 2014/04/10(木) 00:22:52.59 ID:XU/fnc4Zo

―― 翌日:ボランティア部


にこ「さぁ、今日は大掃除をするわよ! みんな気合入れなさい!」

真姫「昨日の今日で、すぐ?」

にこ「当然でしょ。これからお世話になる部屋なのよ、綺麗にするのが礼儀ってものよ」

凛「良いこと言ったにゃ!」

海未「そうですね、部屋に対しても心遣いを忘れないでいたいものです」

穂乃果「希先輩は?」

にこ「生徒会よ。今日は私が指揮を執るから安心しなさい」

ことり「じゃあ、水を汲んでくるね」

にこ「つり目のあんたは、本を棚に戻して。並びは後で揃えるから適当で」

真姫「真姫よ!」

にこ「凛はそっちにある道具で埃を落として」

凛「は~い」

にこ「その後に、花陽が軽く掃いてくれればいいから」

花陽「わ、わかりました」


にこ「よし、完璧な指示だわ」

穂乃果「希先輩の真似しただけだよね……」

海未「ほのか、いい機会ですから、模様替えをしましょう」

穂乃果「よしきた!」


にこ「ちゃんと頑張りなさいよ~?」

真姫「……あなたは、何をしてるの?」

にこ「誰が一番働いているのか見守っているのよ」

真姫「……」

スタスタ


にこ「ちゃんと見守るのもリーダーとしての努めね。……えっと、持ってきた雑誌はどこだっけ」ガサゴソ


真姫「ほのちゃん」

穂乃果「うん? どうしたの?」

真姫「あの人……サボってる」

穂乃果「にこちゃん!」


にこ「告げ口された……」


穂乃果「希先輩に言いつけるよ!?」


にこ「さらに告げ口する気なのね……わかったわよ」


……



379: 2014/04/10(木) 00:24:59.84 ID:XU/fnc4Zo


ガラガラ

希「おぉ~、掃除は順調やね~」


にこ「あんたも手伝いなさいよ」

希「うちはもう、必要無いやん」

にこ「……」

希「生徒会で決まったことを報告しに来たんよ」

にこ「……なによ?」

希「新入生歓迎球技大会の話~」

にこ「また私たちをこき使う気?」

希「一緒に盛り上げようって気持ちなんよ? 生徒会長も頼りにしとるようやし」

にこ「……」

希「この大会では特別なチームを編成――」

にこ「どうして、副会長に立候補しなかったの?」

希「え……?」


穂乃果「?」

真姫「あの人、またサボって……」

穂乃果「待って、真姫」

真姫「?」


希「どうしてって……」

にこ「3年生になって、私はあんたが副会長になると思ってた」

希「……」

にこ「希なら、生徒会長の補佐として最適な役だと思うから……」

希「買いかぶりすぎ」

にこ「……」

希「でも、にこっちがうちをそんな風に認めてくれていたなんて――」

にこ「じゃあ、どうして最近、この部に通わなくなったのよ」

希「書記や言うても、色々忙しいんよ?」

にこ「……」

希「生徒会に戻るわ」

にこ「あ、ちょっと、話はまだ――」


「……――ほなぁ」


ガラガラ


にこ「……」

穂乃果「どうしたの、にこちゃん?」

にこ「なんていうか、様子が変なのよね」

穂乃果「……」

380: 2014/04/10(木) 00:27:02.96 ID:XU/fnc4Zo


―― 廊下


希「……こほっ」


猫「……」


希「……?」


猫「にゃ」

希「付いてきたんやね」

猫「……」

希「にこっちは、たまに鋭いから困ってしまうわ」

猫「……」

希「それはそうと、……――創立記念に写ってたのはキミなんかな?」

猫「にゃ」

希「なんて、それはないね。……60年も前の写真やし」

猫「……」

希「もし、子孫だったら……それは運命やなぁ」

スタスタ


「こほっ、こほ」


猫「……」


……



384: 2014/04/11(金) 19:24:34.01 ID:3/OZWwNRo

―― 3日後:グラウンド


凛「今日の占い?」

穂乃果「そうだよ。趣味なんだって」

花陽「タロット占いなんて……本格的」


希「はい、引いて」

にこ「……」スッ

海未「ちょっと待ってください、どうしてにこが引くのです」

にこ「え……私がこのチームのキャプテンであり、部長だから……」

海未「今年のおみくじ、半凶でしたよね」

にこ「そ、それとこれとは話が別でしょ……?」

ことり「じゃあ、クロちゃんが引いてみて?」

猫「……」スッ

真姫「ほ、本当に引いた……」

希「……ふむ」

穂乃果「結果は?」


希「THE SUN……――太陽」

猫「……」


希「全ての生命に熱と光によってエネルギーとパワーを与え、
  また、生きる歓びと力強い生命力を与えてくれることを暗示している」

にこ「……」

希「――生きるもの全てに平等に明るい未来を与えてくれることを示すカード」


穂乃果「『未来』……」

にこ「みらい、ね」


真姫「ねぇ、ほのちゃん」

穂乃果「うん?」

真姫「本当に、このメンバーで野球なんてするの?」

凛「野球じゃなくてソフトボールにゃ!」

花陽「わたしも……スポーツはあまりしないから……足を引っ張っちゃうよぉ」

ことり「歓迎球技大会なんだから、楽しもう~!」

穂乃果「そうだよ!」


「いや、勝負は勝たないと面白く無いだろ」

「あなたはまた、そういうこと言って……」

385: 2014/04/11(金) 19:26:51.25 ID:3/OZWwNRo

真姫「……誰?」

穂乃果「剣道部の主将と副主将だよ。去年の全国大会でも活躍してたでしょ?」

真姫「……あ」

にこ「どうしてその二人がここに居るのよ」

希「にこっち達は7人やから」

にこ「希を入れて8人でしょ」

希「うちは見学」


主将「これでボランティア部のメンバーが揃ったのか?」

穂乃果「そうです!」

主将「ふむ……、矢澤が部長ねぇ」

にこ「な、なによ」

副主将「ほら、矢澤さん、対戦相手を抽選で決めるみたいよ」

海未「いえ、ここは他の人に」

にこ「私が行くわよ! なによ、おみくじの結果が悪かっただけで……」

スタスタ

凛「嫌な予感が……」

花陽「うん……」

真姫「……」

ことり「なんだか……不安になってきた……っ」

穂乃果「相手が誰であっても楽しめばいいんだよ~」

猫「……」


……




海未「相手はソフト部……ですか」

真姫「負け決定ね」

花陽「うぅ……」

凛「……」

ことり「えっと……」

穂乃果「にこちゃん……引き運悪すぎ……」

にこ「あんた、楽しもうって言ってたじゃないのよ……」

386: 2014/04/11(金) 19:29:11.07 ID:3/OZWwNRo

希「はい、にこっち」

にこ「なによ、この紙は?」

希「それぞれのポジションをうちが決めとったんよ。みんな確認しといて~」

穂乃果「どれどれ~?」

主将「あたしがファーストか」

副主将「私はセカンドね」

海未「サードですね」

ことり「れふと……?」

凛「センターにゃ!」

真姫「しょーと……?」

花陽「らいと……?」

穂乃果「ピッチャー!」

にこ「キャッチャー!?」


希「何人か、自分のポジションが解ってないみたいやな」

猫「……」



……




審判「プレイボール!」


新聞部長「さぁ、試合が始まりました! 注目の一戦です!」


新聞部長「実況はあたし、新聞部の部長がお送りしまーっす」


新聞部長「そして、解説には今年の活躍が期待される剣道部の主将をお呼びしました!」

主将「あたしも選手なんだが」

新聞部長「この放送は学校内、全てに流れているのでーっす!」


「主将ー!」


主将「……守備に付くか」

スタスタ



新聞部長「ボランティア部チームは後攻なので、主将には後で解説してもらいましょう」


タッタッタ


新聞部長「おっと、プレイボールと宣言されて間もなく、
       ピッチャーの高坂穂乃果選手がこちらに向かって走ってきました~」


穂乃果「クロキャッツです!」

新聞部長「え?」

387: 2014/04/11(金) 19:31:23.65 ID:3/OZWwNRo

穂乃果「私たちのチームはクロキャッツです!」

タッタッタ

新聞部長「そういい残し、高坂選手はマウンドへ戻って行きました」


新聞部長「では改めて……。ソフト部対クロキャッツの試合開始です!」



穂乃果「よーし、新入生のためにも盛り上げよう」


にこ「なんで私がキャッチャーなのよ……」


穂乃果「いくよ、にこちゃん!」ザッ


にこ「……」グッ


新聞部長「ピッチャー振りかぶって、第一球……投げましたぁ!」


シュッ


にこ「……!」

バシッ


新聞部長「おぉっと、キャッチャー、ボールを受け止めきれず弾いてしまいましたー」


打者「……」


穂乃果「に、にこちゃん!」


にこ「た、タイム……」

審判「ターイム!」


新聞部長「試合開始早々、第一球目でタイムが入りましたー」


にこ「ちょっと集まって」


穂乃果「大丈夫?」

にこ「今ので、怪我とかはないんだけど」

海未「意外と早いですからね、穂乃果の投球は」

真姫「昨日の練習サボるからこうなるのよ」

にこ「う、うるさいわね。なんで私にだけトゲがあるのよあんたは……」

副主将「それで、どうするの?」

にこ「……あんたがキャッチャーしなさいよ。主将なんだから、穂乃果との息は合うでしょ」

主将「高坂はそれでいいのか?」

穂乃果「……」

にこ「勝負は勝たないと面白くないって言ったでしょ」

主将「あたしら二人はあくまで助っ人だからな」

穂乃果「……」

388: 2014/04/11(金) 19:32:42.27 ID:3/OZWwNRo

主将「高坂がいいって言うなら、引き受けるよ」

穂乃果「……にこちゃんがいい」

にこ「……」

穂乃果「もし、無理なら――」

にこ「わかったわよ」

穂乃果「……」

にこ「ほら、守備に付きなさい」

スタスタ


主将「打たせて取る。でもいいぞ」

副主将「えぇ」

穂乃果「……」

真姫「どういう意味?」

海未「バッターに打たせて、私たちが守るって意味です」

真姫「外野は……」



凛「?」


花陽「?」


ことり「どうしたのかな?」


真姫「打たせても……取れない……?」



新聞部長「さぁ、試合再開です」


にこ「遠慮なんかしなくていいわよ!」


穂乃果「それじゃあ――」ザッ


穂乃果「遠慮なくっ!」


シュンッ


にこ「……!」

バシッ


新聞部長「あぁっとぉ……また弾いてしまったぁ」


にこ「むぅ……」


穂乃果「……」

389: 2014/04/11(金) 19:34:51.61 ID:3/OZWwNRo

にこ「……」グッ


穂乃果「にこちゃん……!」



主将「へぇ……矢澤って、意外と熱いやつなんだな」


新聞部長「バッテリーは変わらず、そのまま続行のようです!」



希「昨日は……うちのせいで練習に参加できなかったんよ」

猫「……」


……




新聞部長「一回の表を4点に止め、クロキャッツの攻撃に移ります」


にこ「素人相手に……ちょっとは遠慮しなさいよ」

穂乃果「遠慮するなって言ったよ!?」

海未「いざとなれば、私が代わりますから」

にこ「じゃあ、次からお願い」

穂乃果「いざって意味、解ってないよね」


ことり花陽「「 ごめんなさい 」」

真姫「ほのちゃん、二人が……」

穂乃果「うーん、凛ちゃんがフォローしてくれてたけど……」

凛「一人で外野を走ってたにゃー」

副主将「ずっとは無理ね」

海未「にこがフォローすればいいのでは?」

ことり「それは助かるけど……ホームからライトまで走るの?」

真姫「ずっとは無理よ」

にこ「一回でも無理よ。上級生を酷使するんじゃないわよ」


穂乃果「じゃあ、先頭バッター行ってくるね」

真姫「頑張って、ほのちゃん」

穂乃果「うん!」


新聞部長「先頭打者の高坂選手」

主将「期待してもいい打順だな」


にこ「私が4番!?」

凛「かよちん、袋に土を入れるにゃ」

花陽「ど、どうして……?」

凛「記念になるからだよ」

にこ「あ、あんた……新入生なのに……!」

390: 2014/04/11(金) 19:36:16.06 ID:3/OZWwNRo

カキーン


真姫「やった!」

ことり「穂乃果ちゃーん!」


新聞部長「高坂選手が出塁しました」

主将「本当になんでも出来るな、高坂」


穂乃果「へへー」ブイッ


海未「ことりも続きましょう!」

ことり「わかった!」


投手「……」


ことり「よぉし!」


投手「……」ザッ

シュンッ


ことり「えいっ」

コツン


投手「!」


新聞部長「おっとぉ、これは送りバントだー!」

主将「おぉ、虚を突いたな。打つぞっていう気合が相手を引っ掛けた」

新聞部長「ランナーは2塁へ進み、1塁はアウトです!」


ことり「アウトになっちゃった」

海未「上出来ですよ。では、私も続いて」


穂乃果「うみちゃーん! かっとばせー!」


主将「園田ー! ホームランだー!」


花陽「ほ、ホームラーン」

凛「ホームラーン!」


海未「ちょ、ちょっと、やめてください!」


スパァン

海未「あ……」

審判「ストライーック!」


穂乃果「あらら……」

391: 2014/04/11(金) 19:38:54.46 ID:3/OZWwNRo

にこ「なんで、私が4番なのよ」

希「にこっちならやれると信じてるんよ」

にこ「勝手なことを……」

希「にこっち」

にこ「……?」

希「穂乃果ちゃんと、キャッチボールする気持ちでええんと違うかな」

にこ「打たれちゃうでしょ」

希「思い出になるなら、それでもいいと思うんよ」

にこ「……」

希「みんなが……楽しく遊んでいる姿を……見たいから」

にこ「……わかったわよ」

希「……うん」

猫「……」

にこ「こんなとこに居ないで、ベンチで座ってなさいよ」

希「こっちの方が見渡せるから」

にこ「……」


カキーン


希「おぉ……大根切りや」

にこ「剣道部だから、あの打ち方が攻撃力高いのよ、きっと」

スタスタ


希「続いてほーむらーん」


「無理に決まってるでしょ」


希「ふふ」

猫「……」

希「うちは……いい友だちに、めぐり逢えたね」

猫「…………」


希「……こほっ」


……



392: 2014/04/11(金) 19:41:28.75 ID:3/OZWwNRo

新聞部長「1回の裏、園田選手のホームランで2点を返しました」


新聞部長「その後の期待が高まった矢澤選手の三振に続いて、
       新入生、星空選手のセカンドフライによりチェンジです」


主将「この打順に法則とかあるのか……?」

副主将「どうでしょうね」

にこ「助っ人のあんたには悪いけど、私たちはこれから、勝負に拘らないわよ」

主将「そうか、分かった」

にこ「……あれ? 勝たないと面白くないって言ってなかった?」

主将「勝つから面白いんだろ」

スタスタ

にこ「どういうことよ?」

副主将「勝ち負けよりも大切なことがあるってことじゃないかな。
     そうじゃなかったら後輩に慕われないわよ」


にこ「……よくわからないわね。体育会系のノリ?」


穂乃果「にこちゃん、やっぱり手を痛めたりしたの?」

にこ「違うわよ。希がみんなで楽しくやれって」

穂乃果「そっか……」

にこ「希も一緒に楽しめるような試合をしましょ」

穂乃果「えへへ」

にこ「な、なによ」

穂乃果「にこちゃんのそういうところ――」

にこ「言っておくけど、勝つから面白いのよ? 手を抜けってことじゃないんだからね」

穂乃果「主将と同じこと言ってる~」

にこ「いいから、笑ってないで向こうに行きなさいよ」

穂乃果「はぁい」


にこ「……まったく」


新聞部長「2回の表、ソフト部の攻撃です」


穂乃果「えいっ」


打者「……!」

カキーン


副主将「……」

パシッ


オォー!


新聞部長「歓声が上がりました。打った先は剣道部、副主将の真ん前。
       ファーストへ送球してワンアウトです」

393: 2014/04/11(金) 19:43:19.05 ID:3/OZWwNRo

新聞部長「難しい球でしたが、持ち前の運動能力で対応しました」


穂乃果「そりゃっ!」


打者「……!」

カキーン


新聞部長「打ち上げましたー! ボールはライトまで伸びて行きます!」


凛「かよちーん!」


花陽「わ、わわっ……こっち来る!」


海未「凛!」


凛「はいー!」

ダダダダッ


新聞部長「小泉選手のフォローへ全速力で走る星空選手!」


「はやっ!」

「あの子疾い!!」

「部長、掘り出し者ですよ」

陸上部長「そうね、試合が終わったら勧誘してみましょう」


花陽「えっと……こっちかな」

ウロウロ


凛「もっと後ろにゃー!」


花陽「こ、こっち……!?」


凛「多分!」


真姫「当たっても痛くないから平気よ」


シュー

ボスッ

花陽「あいたっ!」


タッタッタ

凛「任せてかよちん!」ガシッ


主将「セカンド!」


凛「よいしょー!」ブンッ


新聞部長「しかしノーコン! サードへと送球され、ランナーは2塁へ!」

394: 2014/04/11(金) 19:44:57.38 ID:3/OZWwNRo

穂乃果「ナイスフォローだよ、凛ちゃん!」


凛「難しいにゃ……」

花陽「ご、ごめんね……」

凛「いつでもフォローするから。凛が困ったらフォローして!」

タッタッタ

花陽「うん……。でも、凛ちゃんが困ることってあるのかな……」


にこ「こらー! ちゃんと取りなさいよー!」


花陽「ご、ごめんなさい」ペコリ


穂乃果「それじゃあ、次、行くよにこちゃん!」


にこ「……!」グッ


穂乃果「それっ」

シュンッ


バシッ


にこ「あ……」


主将「こらー! ちゃんと取れよ矢澤ー!」


希「ちゃんと取らなー!」


にこ「ぐ……っ」


海未「しっかりしてください」


副主将「バッテリーにかかってるのよー」


凛「ちゃんと取るにゃー」


新聞部長「ここぞとばかりに、キャッチャーへの叱咤が飛びます」


真姫「ちゃんと取りなさいよ」


ことり「あはは……真姫ちゃんだけ本気で言ってる……」


にこ「真姫は私に恨みでもあ――……る、あるわね、水かけちゃったし」


穂乃果「えいっ!」

シュッ


カキーン


新聞部長「また打ち上げました。今度はレフトへ流れます」

395: 2014/04/11(金) 19:46:34.01 ID:3/OZWwNRo

ことり「あれ、こっちに来る……?」


海未「凛!」


凛「はーい!」

ダダダダッ


主将「つり目の――……えっと、西木野! 中継入れ!」


真姫「チュウケイ?」


走者「……」ジー


新聞部長「2塁ランナー、落とすと予想して大幅に足を進めております!」


ことり「おーらい、おーらい~」


猫「……」


ボスッ

ことり「あうっ」


走者「……!」ダッ


新聞部長「ランナー走ったぁー! ホームまで駆け抜ける勢い!」


コロコロコロ

猫「にゃー」チョイチョイ


にこ「クロなにやってんのよー!?」


猫「にゃ」チョイチョイ

コロコロコロ


花陽「あ、遊んでる……」


海未「遊んでますね……」


ことり「クロちゃんっ、ボール返してっ」

猫「にゃー」チョイチョイ

コロコロコロ


穂乃果「あはは、しょうがないな~」


アハハハ

 ハハハハ


新聞部長「和やかな空気に包まれるグラウンド内!」

396: 2014/04/11(金) 19:48:31.59 ID:3/OZWwNRo

走者「……!」

ダダダダッ


新聞部長「そして3塁を蹴り、ホームへ一直線です!」


凛「おいたしちゃ駄目ッ!」

猫「……」


副主将「バックホーム……は、間に合わないわね」


凛「それーっ!」ブンッ


真姫「あれ?」


主将「なぜこっちに来たんだ……」


走者「なっ!?」


主将「まぁいいか。はい、アウト」


新聞部長「結果オーライ。西木野選手への中継のはずがファーストへ送られ、
       塁を離れていたランナーへタッチアウトです」


……





新聞部長「ソフト部に2点追加され、2回の裏、4点のビハインド」

主将「センターの星空に負担がかかってるな」


凛「ふぅ~」

花陽「大丈夫?」

凛「だいじょうぶ~」

花陽「……」

凛「楽しいから、平気」

花陽「うん……私も」

凛「えへへ~」

花陽「ふふ」


海未「和やかなところ悪いのですが」

穂乃果「次、花陽ちゃんだよ?」

花陽「え!?」


にこ「あんた、最近悪さばっかりするわね。なんなの?」

猫「……」


……



397: 2014/04/11(金) 19:50:21.65 ID:3/OZWwNRo

新聞部長「剣道部二人と高坂選手のヒットで2点を返したクロキャッツの攻撃が終わり、
       ソフト部の攻撃に移ります」


ザワザワ

 ザワザワ


新聞部長「あたしの実況の効果でしょうか、観客が増えてまいりました」


「「 主将~! 」」

「高坂せんぱ~い!」

「園田せんぱーい!」


希「黄色い声援やな……こほっ」

猫「……」

希「はぁ……ふぅ……」

猫「にゃ」

希「ちょっと、寒い……かな……」


……




新聞部長「ソフト部最後の攻撃が終わりました。
       歓迎球技大会の特別ルールで、試合は5回まで」


主将「点差は3点、面白いじゃないか」


新聞部長「バッターは西木野選手から始まります」


穂乃果「真姫、ファイト!」

真姫「うん……」

穂乃果「ボールをよく見て、力いっぱい振ればいいから」

真姫「……うん、行ってくるね」

にこ「必ず出塁しなさいよ~?」

真姫「……」

スタスタ


にこ「む…無視された……」

海未「あんな言い方するからです」


投手「……」


真姫「……」ギュッ


投手「……ッ!」

シュンッ


真姫「……よく見て」

398: 2014/04/11(金) 19:52:01.95 ID:3/OZWwNRo

スパァン


審判「ストライーック」


真姫「……」


投手「……ッ!」

シュンッ


真姫「振る!」ブンッ


カキン!


真姫「あ……!」


穂乃果ことり「「 やった! 」」

海未「やりました!」

にこ「……中々やるじゃない」

凛「にこ先輩、まだノーヒ――むぐ」

花陽「だ、駄目だよ、先輩に対して」


新聞部長「ライト前ヒット! 西木野選手、初めてのヒットです!」

主将「やるなぁ……このタイミングでよく打ったもんだ」


投手「……ッ!」

シュンッ


副主将「……」

カキーン


新聞部長「続く副主将もライトへ飛ばしました! ノーアウトランナー、1,2塁です!」


新聞部長「そして――!」


主将「よーし!」


新聞部長「本日、打率10割! 剣道部主将の登場だぁー!」


「「 主将ー!! 」」

穂乃果「ホームラン!」

ことり「ホームラン♪」


主将「とりあえず、二人は返しておくか」


投手「……」

シュッ


主将「敬遠……だと……?」

399: 2014/04/11(金) 19:53:45.84 ID:3/OZWwNRo

新聞部長「これでノーアウト満塁!」


新聞部長「そしてー、現在、最も勢いのある高坂穂乃果選手ー!」


穂乃果「よーし、全員返して同点にしちゃうよー!」


新聞部長「実力に裏打ちされた自信!」


投手「……」コクリ

捕手「……」グッ


新聞部長「ここは勝負をしかけるソフト部のバッテリー!」


にこ「当然ね。主将はともかく、穂乃果にまで勝負を避けたらソフト部の面子が立たないわ」

凛「もっともらしいこと言ってる!」

花陽「頑張ってください、穂乃果先輩!」


投手「……ッ!」

――シュン

スパァン

審判「ストライーック」


穂乃果「は、はやい……」ゴクリ


新聞部長「ここへ来て、本気を出してきたようです」


投手「……ッ!」

――シュンッ


穂乃果「負けない――!」

ブンッ

カキン!


新聞部長「意地で当てました――が!」


穂乃果「~っ!」

ダダダダッ


真姫「……っ」

タッタッタ


ショート「……」パシッ


新聞部長「ショートゴロ!」


主将「ちっ」


副主将「あら……」

400: 2014/04/11(金) 19:54:52.66 ID:3/OZWwNRo

新聞部長「ホームへの送球を止め、サードへ」


新聞部長「そしてセカンドへ送られ、ダブルプレイ!」


真姫「1点は返したけど……」

凛「あと、2点もある……」

花陽「……」



希「……――、……――」

猫「にゃ」

希「――……、――………――…」

生徒会長「希はん……?」

希「……あ」

生徒会長「こないなトコで寝たら……」

希「寝てないんよ。ちょっと、ぼんやりしとっただけ」

生徒会長「……」


希「クロちゃんが抱っこさせてくれるなんて、珍しいなぁ」

ギュウ

猫「……」

希「おかげで……――、……――暖かいわぁ……」



新聞部長「試合も終盤です。ツーアウト、ランナー1塁。
       続いてのバッターは南ことり選手でーす!」


ことり「よぉし、どうしよ~」

海未「爽やかに困ってますね」


穂乃果「ことりちゃーん! ファイトーっ!」


ことり「うん、わかった!」


投手「……」


ことり「……」ギュッ


投手「……ッ!」

シュッ


ことり「打つ!」ブンッ

スカッ


ことり「ふぅ……」


401: 2014/04/11(金) 19:55:55.94 ID:3/OZWwNRo

穂乃果「かっとばせー!」


ことり「わかった!」


投手「……」

シュッ


ことり「えいっ」

コツン


投手捕手「「 っ!? 」」


新聞部長「セーフティーバントだー!」


ことり「~っ!」

ダダダッ


投手「……ッ」ガシッ


にこ「滑り込めー!」


主将「いや、駆け抜けろー!」


シュンッ


一塁手「……!」バシッ


ことり「――っ!」

ダダダッ


審判「セーフ!」


オォォー


穂乃果「やったぁ!」


海未「やりました!」


ことり「わっ、っとっと」


花陽「あ、危ない!」

凛「転んじゃう!」

真姫「ことちゃん!」


ことり「わ……わわっ!」

猫「……」

ことり「クロちゃ――むぎゅう」


ズサーッ

402: 2014/04/11(金) 19:57:21.69 ID:3/OZWwNRo

穂乃果「ことりちゃんッ!」


海未「ことりッ!」


にこ「た、タイム!」


新聞部長「南ことり選手、勢いのあまり足を取られて転んでしまいました」


新聞部長「仲間たちが南選手に集まります」


ことり「あいたたた……」


穂乃果「ことりちゃん!」


ことり「だ、大丈夫だよ……」


海未「あ、頭から地面に倒れたように見えましたが……」

ことり「クロちゃんが居たから、怪我もない……いたっ」

真姫「膝を擦りむいてる……」

花陽「救急箱ですっ」

穂乃果「ありがと、花陽ちゃん」

真姫「私がやる」

穂乃果「お願い、真姫」

真姫「染みるけど、我慢してね」


シュッ


ことり「いたい~っ」グスッ


にこ「こうなったらしょうがないわね、代――」

主将「代走、星空だ」

凛「わかりました!」

にこ「わ、私の台詞なのにっ」


ことり「クロちゃんは……?」

穂乃果「えっと……希先輩のところにいるよ?」

ことり「……クロちゃんがクッションになってくれたから」

穂乃果「え!?」

海未「く、クロは大丈夫なのでしょうか……?」

審判「試合を続けても平気かな」

穂乃果「は、はい……」


真姫「掴まって、ことちゃん。希先輩のところへ」

ことり「ありがとう~」


ことり「よいしょ、よいしょ」

403: 2014/04/11(金) 19:58:36.51 ID:3/OZWwNRo

副主将「大事にならなくてよかった……」

にこ「クロが守ってくれたみたいね……」


希「だいじょうぶ?」

ことり「はい、大丈夫です」

猫「……」

ことり「クロちゃん……」

猫「にゃ」

ことり「……平気みたいだね、よかった」



新聞部長「怪我の方は大丈夫なのでしょうか」

主将「浅い擦り傷で済んだみたいだ」

新聞部長「不幸中の幸いですね。……選手の無事が判明したところで試合が再開されます」

主将「初回と同じく、奇をてらう行動だった」

新聞部長「南選手の代わりに星空選手が1塁走者となります。そして――」


海未「……」


新聞部長「園田選手の打順となりました」


海未「……」ギュッ


新聞部長「気迫が伝わってきますね」

主将「何事にも真剣に向き合う園田だが……」


スパァン

審判「ストライーック」


海未「……」ススッ


新聞部長「どういうことでしょう、バッターボックスの後ろへと下がりました」

主将「なにか面白いことをやるみたいだな」


投手「……ッ!」

シュンッ


海未「――ッッ!」

ブンッ


スパァン

審判「ストライーック」


海未「……」


新聞部長「今の動きはなんでしょうか」

主将「剣道で、相手に飛び込むような姿勢だな……――矢澤、チームのキャプテンだろ」

404: 2014/04/11(金) 19:59:35.36 ID:3/OZWwNRo

にこ「だ、だからなによ」


主将「園田にそんな付け焼刃で打てるわけがないと、教えてやれ」


にこ「全校放送なんだから、言葉を中継する意味無いでしょ」


海未「……」


にこ「そんな付け焼刃で打てないわよ、海未!」


海未「打ちます」


にこ「穂乃果たちを返すことは考えなくていいから、塁に出ることだけを考えなさい」


海未「……?」


にこ「私が三人をホームに返して、試合終了よ」


海未「……!」


新聞部長「これは……! クロキャッツのキャプテンがサヨナラ宣言しました!」


投手「これで――」ザッ


凛「……!」ダッ


穂乃果「……!」ダッ


新聞部長「ランナー走ったー!」


投手「終わりよ!」

シュンッ


海未「――!」ブンッ

カキン!


投手「――!?」


新聞部長「打ったぁ――!」


ことり「ほ、ホームラン!?」

希「おぉ~……」

猫「……」



主将「いや、浅いな……」

新聞部長「それでもセンターヒット!」


副主将「高坂さん、ストップ!」


穂乃果「おっとっとぉ」

405: 2014/04/11(金) 20:01:10.14 ID:3/OZWwNRo

凛「やったにゃー!」


海未「ふぅ……」



主将「園田がヒットを打つと読んで深い守備をされたか」

新聞部長「さすがソフト部です。しかし、これでランナー満塁!」


新聞部長「点差は2点! 全員返れば逆転サヨナラでーっす!」


新聞部長「次の打者は、クロキャッツのキャプテンであり、4番!」


新聞部長「矢澤にこ選手――!」


にこ「ふふん、主役は遅れてくるものよ」


新聞部長「打率0割の矢澤選手! 豪語! 豪語です!」

主将「0割ってなんだよ」


穂乃果「にこちゃーん! 信じてるからねぇー!」


にこ「任せなさい!」ドン


投手「実力を隠してた……!?」


捕手「……今までどおりでいい」グッ


投手「そうよね……!」ザッ


にこ「……」


投手「……ッ!」

シュンッ


にこ「やぁ!」ブンッ

カキン!


真姫「あ……!」

花陽「や、やった――」


審判「ファール!」


花陽「――おしいっっ」

副主将「期待できそうね」


にこ「ふふ」


希「したり顔やな」

ことり「したり顔だね」

406: 2014/04/11(金) 20:02:54.91 ID:3/OZWwNRo

新聞部長「したり顔です!」


にこ「脳ある虎は爪を隠すのよ」


投手「トラ……?」


海未「前は獅子で……今度は虎ですか」


穂乃果「なぜかネコ科なんだよね。ネコ被ってたって言えばいいのに」


投手「……ッ!」

シュンッ


にこ「やぁっっ!」

カキン!


審判「ファール!」




投手「……ッ!」

シュンッ


にこ「えいっ!」

カキン!


審判「ファール!」




投手「……ッ!」

シュンッ


にこ「そりゃっ!」

カキン!


審判「ファール!」



穂乃果「おぉ……! だんだんタイミングが合ってきてるっ!」


ことり「にこちゃーん!」


海未「頑張ってください!」


凛「にこ先輩~!」


真姫「……」

花陽「頑張れ~!」

407: 2014/04/11(金) 20:04:15.38 ID:3/OZWwNRo

穂乃果「にーこーちゃん!」


穂乃果「にーこちゃん!」


「にーこ!」

 「にーっこ!」

  「にーこ先輩!」


真姫「こ、これは……?」


新聞部長「会場が矢澤選手をコールしております!」


「「 にこ先輩! 」」

 「にーこ!」

  「にこちゃん!」


   「「「 にぃこ! 」」」


    「「「「 にぃこっ!! 」」」



穂乃果「にーこちゃん!」


新聞部長「湧き上がるグラウンド! 凄い盛り上がりを見せております!」



にこ「希の為にも……勝って終わらせてやるんだから……」ギュッ


希「にこっち……」


穂乃果「ボールをしっかり見て! ホームランだよ、にこちゃんっ!」


にこ「見てなさいよぉ~!」


投手「……ッ!」

シュンッ



にこ「よく――」


―― シュッ ――


にこ「見て――!」



スパァン!


にこ「振るっ!」ブンッ


穂乃果「え?」

408: 2014/04/11(金) 20:05:45.72 ID:3/OZWwNRo

捕手「え?」

投手「え?」


にこ「――あれ?」


審判「す、ストライーック! バッターアウト! ゲームセット!」


「「「「 だぁぁぁあああああ 」」」」


新聞部長「会場全体がズッコケたぁあー!!!」



穂乃果「な、なな……!?」


にこ「…………」


穂乃果「に、にこちゃん……?」


にこ「あ、あんたがじっくり見ろっていうから」


穂乃果「見過ぎだよ!?」


希「ふふっ」

ことり「あはは」


海未「ふふ、私たちらしい終わり方ですね」


凛「楽しかったにゃ~!」


真姫「……」

花陽「うん……楽しかった」


主将「あっはっは! 矢澤おもしろいな!」


副主将「あの人が大口開けて笑うなんて……初めて見た」



新聞部長「これにて、ソフト部対クロキャッツの試合終了!」


主将「あー、面白かった」


新聞部長「おっと、最後に今年の剣道部の目標を教えてもらいましょう」


主将「もちろん、全国制覇だ」



……



409: 2014/04/11(金) 20:07:24.20 ID:3/OZWwNRo

野球部長「高坂さん、ソフトボールの経験は?」

穂乃果「ありません……けど?」

野球部長「そ、それなら……今年から本格的にやってみない?」

穂乃果「え……ソフト部にですか?」

野球部長「そう、今の試合を見る限りじゃ、うちのソフト部の戦力になるから」

穂乃果「え、えっとぉ」

副主将「はい、そこまで」

野球部長「う……剣道部の……」

副主将「高坂さんはうちの大事なメンバーなのよ。悪いわね」

野球部長「そこをなんとか……!」

副主将「ならないわよ?」


陸上部長「星空さん、陸上部に入らない?」

凛「?」


花陽「か、勧誘されてる……」


吹奏楽部長「西木野さん、確か、中学校でコンクールに出場していたわよね」

真姫「……そうだけど」


希「ボランティア部は、優秀やな……」

ことり「希先輩……?」

希「?」

ことり「少し、様子が……」

希「……」

猫「……」


にこ「負けてしまったわ……」

希「楽しかった?」

にこ「まぁね」

希「それならええやん」

にこ「……まったく、あんたが『あの時』ことりの邪魔をしなければ……」

猫「……」

希「勝負の世界に、たられば、はないんよ……よいしょ」

にこ「それで、私たちは次、どうすればいいのよ」

希「……にこっちは、うちとキャッチボールやな」

にこ「?」

410: 2014/04/11(金) 20:08:29.20 ID:3/OZWwNRo

穂乃果「まさか、サッカー部にまで声をかけられるなんて……」

海未「穂乃果の身体能力の高さに注目されたのですよ」

穂乃果「色んな部で体験するのはいいかもしれないね」

海未「やるからには本気でやらないといけません。
    それだと穂乃果の負担が大きいはずです」

穂乃果「そうだよねぇ……」

海未「穂乃果のやりたいようにやるのが一番ですが――」


シュー

パシッ

希「最後……どうして、空振りなん?」シュッ


パシッ

にこ「穂乃果の声を聞いたら、気が抜けてしまったのよ」シュッ


パシッ

希「ふぅん……」シュッ


パシッ

にこ「というか、このキャッチボールはなんなのよ」


希「深い意味はないよ。ほら、ボール返して」


にこ「……」シュッ


パシッ

希「にこっち」シュッ


パシッ

にこ「……なに?」シュッ


パシッ

希「……楽しかった?」シュッ


パシッ

にこ「さっきも聞いたでしょ。まぁまぁよ、まぁまぁ」シュッ


パシッ

希「そう……なんや……」


にこ「……」


希「……」


にこ「ほら、返しなさいよ」


希「……」シュッ

411: 2014/04/11(金) 20:09:15.99 ID:3/OZWwNRo

パシッ

にこ「……希」シュッ


パシッ

希「……ん?」


にこ「その……、あんたに言っておきたいことが……あって」


希「……」シュッ


パシッ

にこ「……えっと」


希「……」


凛「生徒会長が手伝ってほしいことがあるんだって」

花陽「う、うん……」

真姫「次の試合の邪魔になる……」

ことり「……そうだね」

海未「……」

穂乃果「……」


にこ「……やっぱり、また今度にする」シュッ


パシッ

希「変な、にこっちやなぁ」

にこ「ほら、生徒会長が呼んでるみたいよ」


希「……」


にこ「置いて行かれるわよ?」


希「それは困るね」


猫「……」


穂乃果「にこちゃん、私たち、ことりちゃんを保健室に連れて行くから」

にこ「わかった。じゃあ、手当が済んだら部室に来て」

穂乃果「……うん」

タッタッタ

412: 2014/04/11(金) 20:10:31.25 ID:3/OZWwNRo

にこ「……」

希「ことりちゃん、大丈夫やろか」

にこ「大丈夫でしょ。あんたは人のことより自分の心配しなさいよ」

希「?」

にこ「熱が出てるでしょ」

希「……少しだけね。どうしてわかったん?」

にこ「じっとして動かないからよ」

希「鋭いなぁ、にこっちは……」

にこ「まったく……。ほら、行くわよ、クロ」

猫「にゃ……」


希「……」

にこ「希……?」


希「先に行っててええよ」

にこ「どうしてよ」

希「ちょっと、歩くの遅いから」

にこ「いいわよ、ゆっくりで」

希「部室の鍵を開けな」

にこ「待たせておけばいいの」

希「冷たいリーダーやなぁ」

にこ「あんたが言ったのよ?」

希「え?」

にこ「うまく合わない、足でも――……ゆっくり歩けば揃う、って」

希「……」

にこ「みんなで一緒に、進んでいけばいいって」

希「今の状況と、違うと思うんやけど」

にこ「一緒よ」

希「……」

にこ「あんたも居なくちゃいけないの」

希「……」

にこ「最近、体の調子……悪いでしょ」

希「うん……――しばらく、休むかも……」


にこ「……」

413: 2014/04/11(金) 20:10:58.14 ID:3/OZWwNRo

希「にこっち」

にこ「?」

希「いつか見た、空のようで、綺麗やな」

にこ「……そう?」

猫「……」


希「あの日と……同じ空。…………きれいな、そら」


……




416: 2014/04/12(土) 11:29:00.88 ID:cYCvkz/vo

―― 翌日:ボランティア部


にこ「いたたたた……!」

穂乃果「ここが痛いの?」ギュウ

にこ「痛いって言ったでしょッ!」

真姫「マッサージしていれば治るわよ」

海未「筋肉痛ですか……」

猫「……」


ガラガラ


ことり「……」


海未「ことり……?」

真姫「どうしたの……?」


ことり「にこちゃん……希先輩が今日、休んでいるって」

にこ「そうよ」

穂乃果「え……どうして……?」

にこ「体の調子が悪いのよ。1年の時も、何度かそういうのあったから」

穂乃果「……」

にこ「ほら、マッサージ続けなさいよ」

穂乃果「戻って……くるよね」

にこ「当然でしょ」


ことり「……」

海未「……」

真姫「……」


凛「にゃー!」

花陽「こ、こんにちは……?」

凛「あれ、どうしたんですか?」


にこ「希が休んでいるって話をしてたのよ」


花陽「え……」

凛「……」


417: 2014/04/12(土) 11:30:45.71 ID:cYCvkz/vo

にこ「深刻になられると、希が嫌がるわよ?」

穂乃果「そ、そうだね」

ことり「……うん」

海未「心配ですが、私たちはいつものままでいましょう」

真姫「……」

凛「……精神的支柱が……」

花陽「む、難しい言葉使ったね」


にこ「なんか、部長の私に対して聞き捨てならない台詞が聞こえたけど。
    とりあえず、今月の定例清掃、全員参加よ」

真姫「清掃?」

凛「うん~?」

花陽「定例……」

穂乃果「掃除の後に子供たちと遊んだり、お喋りしたりできるんだよ」

凛「楽しそう~!」

海未「お菓子やジュースも出ますから、気楽に参加しましょう」

花陽「は、はい……」

真姫「ことちゃん、足は……?」

ことり「すぐ治りそうだよ」


にこ「……」


猫「にゃ」


にこ「ん?」


猫「……」


にこ「なに?」


猫「……」スッ

テッテッテ


にこ「……?」


……




418: 2014/04/12(土) 11:33:29.48 ID:cYCvkz/vo

―― 翌日:登校途中


穂乃果「おはよう」


ことり「おはよ~」

海未「おはようございます」

真姫「おはよう、ほのちゃん」

穂乃果「真姫と一緒に登校できるって嬉しいよね、やっぱり」

真姫「あ、……うん……っ」

ことり「それもそうだね」

海未「中学は別々でしたから、新鮮ですね」


……




穂乃果「去年は定例清掃が中心だったけど、今年はなにかできないかな~って」

真姫「なにかって……?」

穂乃果「今は7人……じゃなかった、
      8人居るからもっと手広く活動ができると思うんだよね」

真姫「……」

穂乃果「生徒会に許可とか取ったほうがいいのかな」

海未「活動内容によりますが、穂乃果はどうしたいのですか?」

穂乃果「吹奏楽部に入ってトランペットを吹くとか」

海未「前にも言いましたが、真面目にやってる部員としては迷惑ですよ」

穂乃果「そうだよねぇ、部外者が隣で変な演奏した日には怒られちゃうよね」

ことり「じゃあ、手芸部に来たらいいんだよ。部長さんも歓迎してたよ」

海未「じゃあってなんですか、ことり……」

穂乃果「私じゃなくて、真姫とか凛ちゃん花陽ちゃんの活動だよ」

真姫「わ、私も……?」

海未「また人を巻き込むのですか」

ことり「あ……噂をすれば」


花陽「陸上部に入るの?」

凛「うん、入ってみたかったから」

花陽「ボランティア部は……?」

凛「1ヶ月の約束だから、それでおしまいかな~?」


穂乃果「えぇ!? 凛ちゃん辞めちゃうの!?」


凛「わっ、びっくりしたにゃ」

花陽「あわわっ」

419: 2014/04/12(土) 11:35:28.40 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「驚かせちゃってごめんね。それで、ボランティア部、辞めちゃうの?」

凛「その予定ですけど~」

穂乃果「花陽ちゃんも?」

花陽「わ、わたしは……その」

海未「あまり強引に引き止めてはいけませんよ。それぞれの学校生活がありますから」

ことり「そうだよ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「そう……だよね……」

真姫「わ、私は残って――」

穂乃果「あ、にこちゃーん!」

タッタッタ


真姫「あ……」


穂乃果「おはよう~!」

にこ「……」

穂乃果「朝の挨拶しようよ~」

にこ「なんでそんなに元気なのよ……」

穂乃果「なんでそんなに元気がないの?」

にこ「オウム返ししないで放っておいてよ……まったく、朝から騒がしい」

穂乃果「また深夜の通販見てたんだね」

にこ「通販じゃないって何度言えばわかるのよ。
   夜更かしもしていない、普通のテンションよ」

穂乃果「目の下にクマができてるよ」

にこ「うそっ!?」

穂乃果「嘘だよ~」

にこ「こらっっ!」


真姫「……」


海未「こら、って怒る人そうそういませんよね」

ことり「うん……そうだね……」

海未「どうかしましたか?」

ことり「ちょっと、気になることがあって……えへへ」

海未「?」

花陽「わたしも、ボールをうまくキャッチできなくて怒られちゃった」

凛「あれは注意しただけ、怒ってないにゃ」


……



420: 2014/04/12(土) 11:38:26.51 ID:cYCvkz/vo

―― 教室


穂乃果「全校朝礼なんて珍しいよね」

海未「そうですね……なにかあるのでしょうか」

ことり「はやく行こう?」



……



―― 放課後:ボランティア部


穂乃果「……」


にこ「珍しいわね、机に突っ伏して……どうしたっていうのよ」

穂乃果「にこちゃん平気なの? 廃校だよ?」

にこ「生徒数が減少してるんだから、しょうがないじゃない」

穂乃果「冷静だ……、はぁぁぁ」

にこ「あれ、クロはまだ来てないのね」

穂乃果「……一緒じゃないんだ?」

にこ「なんで一緒だと思ったのよ。今日は私がお茶を淹れてあげ――」

穂乃果「私が淹れるからにこちゃんは座ってて!」

にこ「一度失敗しただけで、そんな嫌がらなくてもいいじゃない……」

穂乃果「お茶にジャムを入れるなんて信じられないよ」

にこ「どこかの国にそんな文化があるでしょ」

穂乃果「紅茶であって、お茶ではないよ」

にこ「穂乃果はそういうの詳しいわよね。ことりに教えてもらったとか?」

穂乃果「ううん、小さい頃におばあちゃんに教えてもらったんだ」

にこ「ふぅん……」

穂乃果「おばあちゃんには大切な――友達が居たんだって。その人から沢山のことを学んだって」

にこ「この学校での話しよね」

穂乃果「そう……だよ……」


穂乃果「はぁぁ……、その学校が……廃校、だなんて……」


にこ「私たち3年生が3クラス、穂乃果たち2年生が2クラス、花陽たち1年生が1クラス」

穂乃果「……」

にこ「来年は……0で、廃校……。これも時代の流れね」


穂乃果「私……この学校……好きなんだけどなぁ」

にこ「……」


穂乃果「にこちゃんと出逢えて……みんなで楽しく過ごせてるのがこの学校でしょ」

にこ「……そんなに嫌なら、なにか行動してみればいいじゃない」

421: 2014/04/12(土) 11:41:01.76 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「行動……?」

にこ「どうして廃校になるのか、それを調べて……
    その原因を解消するためにはどうしたらいいのかを考えるの」

穂乃果「…………」

にこ「なに? 私がリーダーとして頼りになることを言ってるから驚いてるわけ?」

穂乃果「ううん……そうじゃなくて……」

にこ「なによ」

穂乃果「にこちゃんも、廃校になるのが嫌だって思うんだ?」

にこ「……さぁ?」

穂乃果「大切なところなんだから誤魔化さないでよ~」

にこ「いいから、どうするか考えなさいよ。それとまんじゅう」

穂乃果「今日は持ってきてないよ」

にこ「……あ……そう」

穂乃果「なんてね、じゃん!」

にこ「なんでいちいち嘘をつくのよ」

穂乃果「にこちゃんをからかいたくなって~」

にこ「忘れてるようだから教えてあげるけど、私は一応上級生なのよ、上 級 生 !」

穂乃果「わかった」

にこ「今頃わかったの?」

穂乃果「そうじゃなくて……部活動を盛んにすればいいのかも」

にこ「何の話?」

穂乃果「廃校を阻止するためにはどうすればいいのか」

にこ「話がコロコロと変わるわね……」


穂乃果「よし、みんなで相談だっ」


……




穂乃果「みんなに集まってもらったのは他でもありません」

ことり「……」

穂乃果「我が音ノ木坂学院は廃校の危機に直面しております」

海未「……」

穂乃果「そこで、廃校を阻止するためにはどうすればいいのか、みんなで考えたいと思います」

真姫「……」

凛「はい! 質問です」

穂乃果「凛ちゃん、どうぞ」

凛「廃校になる原因ってなんですか?」

穂乃果「張り紙にもありましたが、主な原因としては生徒数の減少が挙げられると思います」

花陽「生徒数を増やせば……いいんだよね」

422: 2014/04/12(土) 11:42:37.07 ID:cYCvkz/vo

海未「手っ取り早いのは、注目を集めること、ですね」

ことり「学校の名前を広めると言ったら、部活でいい成績を収めるか……」

真姫「偏差値を上げたりして、有名校にする……とか」

穂乃果「ことりちゃんの案が一番の手、かもしれないね」


にこ「すやすや」


穂乃果「ちょっと、なんで寝てるのにこちゃん~!」

ユサユサ

にこ「ん……、んん……?」

穂乃果「熟睡してた!?」

にこ「……変な夢を見てたわ」

海未「夢……ですか」

凛「どんな夢にゃ?」

にこ「私がメイド喫茶で働いてる夢……」

穂乃果「なぜメイド喫茶?」

にこ「……ぅ…ぃ…」

花陽「目がうつろです……」

穂乃果「にこちゃんも真剣に考えてよ~」

にこ「生徒数を増やせばいいのよ……簡単でしょ……?」

穂乃果「口で言うのは簡単だよ! 具体案だしてよ!」


コンコン


花陽「お客さん……?」

ことり「あ……もしかして」

穂乃果「どうぞ?」


ガラガラ


「失礼します」


真姫「誰?」

ことり「演劇部の部長さん」

演劇部長「ボランティア部に……依頼というか、相談というか」

穂乃果「相談?」


にこ「すやすや」


穂乃果「お客さん来てるのに寝ないでよ~」

にこ「ん……」

穂乃果「今日から通販番組は禁止だからね!」

にこ「……ん」

423: 2014/04/12(土) 11:44:45.47 ID:cYCvkz/vo

凛「穂乃果先輩とにこ先輩、どっちが上級生なのかわからないにゃ」

花陽「……仲がいい証拠だよね」

海未「物は言いようですね」

真姫「……」


ことり「こっちに座ってください」

演劇部長「……ありがとう、南さん」


……




にこ「演劇部の助っ人……ねぇ」

演劇部長「1年生から3年生、全員が揃った演劇を完成させたいんです」

穂乃果「おぉ……」

にこ「それで、どうして欲しいのよ?」

演劇部長「人を貸していただければ」

にこ「雑用?」

演劇部長「いえ、ステージに上る人を」

にこ「ステージ? 演劇をしろってことよね」

演劇部長「手芸部である南さんに、演劇部の衣装作成を依頼していて、
       その時にボランティア部の話を聞いて」

ことり「にこちゃん、演技上手だよね」

にこ「……は?」

花陽「初耳って顔してる……自分のことなのに……」

ことり「適任かなって思いました」

海未「たしかに……少し前に、可愛いキャラを演じていましたね」

にこ「演じたわけじゃなくて、あれは素な私よ」

真姫「じゃあ、今は演技をしているのね」

凛「器用にゃ」

にこ「減らず口が止まらないわね1年生……!」

穂乃果「やってみようよ、にこちゃん!」

にこ「人事だと思って……。あんたがやればいいでしょ」

穂乃果「剣道部と手芸部、ボランティア部でいっぱいいっぱいだよ」

にこ「というか、どうして私なのよ。花陽、やりなさい」

花陽「ゑ……!?」

凛「ちなみに、演目はなんですか?」

演劇部長「まだ確定ではないんだけど……――ロミオとジュリエットを」


にこ「……」


……



424: 2014/04/12(土) 11:46:34.75 ID:cYCvkz/vo


―― 体育館・舞台上


にこ「ああ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなのっ?」



穂乃果「ノリノリだ……!」


部員「どうですかね」

演劇部長「まだ荒削りだけど……いいもの持ってるんじゃないかな?」


海未「意外に高評価ですね……」

ことり「あはは……」



……



425: 2014/04/12(土) 11:47:56.85 ID:cYCvkz/vo

―― 3日後:ボランティア部


ガチャガチャ


「あれ……、鍵がかかってる?」


ガチャリ

ガラガラ


穂乃果「あ……そっか、にこちゃん……演劇部に行ってるんだった」


穂乃果「まんじゅう……置いておこうかな。……気付くよね」


穂乃果「……」


ガラガラ

花陽「こ、こんにちは」

穂乃果「花陽ちゃん……」

花陽「どうかしたんですか?」

穂乃果「ううん……ただね、誰もいないから寂しくなって」

花陽「さびしい……?」

穂乃果「此処にはにこちゃんが必ず居たから。……クロちゃんも最近見てないし」

花陽「……どこに行ったのでしょう」

穂乃果「その内戻ってくると思うけど……。……おっと、私も道場に行かないと」

花陽「……」

穂乃果「花陽ちゃんは部に入らないの?」

花陽「どの部に入るか迷ってて……」

穂乃果「そっか。……それじゃ、決まるまで此処に居てよ」

花陽「は、はい……」

穂乃果「終わったらまた来るけど、暇なら帰っていいからね」

花陽「……はい」

穂乃果「じゃあね~」


ガラガラ



花陽「……どうしよう」


……




426: 2014/04/12(土) 11:49:56.08 ID:cYCvkz/vo

花陽「……」

ペラ

花陽「色んな人が居たんだ……」


ガラガラ


花陽「っ!」ビクッ


にこ「あれ、花陽だけ……?」

花陽「は、はい……」

にこ「何見てんの? 卒アル?」

花陽「そうです。暇だったので……」

にこ「これも、都立図書館に移動することになるのね……」

花陽「……」

にこ「ずっと此処に居たんでしょ?」

花陽「はい……そうです」

にこ「クロは来てないの?」

花陽「来てないです」

にこ「……今日で3日目」

花陽「?」

にこ「毎日欠かさず来てたのに……」


……



427: 2014/04/12(土) 11:51:17.47 ID:cYCvkz/vo

―― 翌日:ボランティア部


穂乃果「うーん、お茶とまんじゅうが美味いっ」

にこ「おいひぃわ」モグモグ

海未「絶品ですね」

ことり「凛ちゃんは今日、来ないのかな?」

花陽「あ、えっと……もうそろそろ来ると思います」


真姫「……」


穂乃果「にこちゃん」

にこ「ふぁによ?」モグモグ

穂乃果「こっちも食べてよ」

にこ「どうひへ?」

穂乃果「こしあんばっかり食べてる」

にこ「好き好きよ」

穂乃果「つぶあんも美味しいから食べてよ~」

にこ「その内ね」スッ

穂乃果「またこしあん取って……」

にこ「だから、人それぞれよ、しょうがないの」

穂乃果「お子様」

にこ「なにか言った?」

穂乃果「いいえ」

海未「あなたがピーマンを食べられないのと同じですよ、ほのか」

にこ「お子様ねぇ~」

穂乃果「もう克服してるよ!」


真姫「……」

ことり「どうしたの、真姫ちゃん?」

真姫「……べつに、なんでもない」

ことり「……」


穂乃果「クロちゃん、今日も来てないよね……」

にこ「他にお気に入りの場所を見つけたのよ」

海未「そうだといいのですが……、なにか事件に遭ったのではないかと」

花陽「心配……ですね」

穂乃果「大丈夫だよ、クロちゃん素早いから。……戻ってくるよ」

にこ「私はどっちでもいいんだけど」

穂乃果「素直じゃないよね……」

428: 2014/04/12(土) 11:52:38.68 ID:cYCvkz/vo

ことり「穂乃果ちゃん、こっちにもおまんじゅうを~」

穂乃果「あ、ごめんね。どうぞ」

ことり「ありがとう」

穂乃果「はい、真姫も取って」

真姫「……うん」

穂乃果「そういえば、吹奏楽部に入ったんだよね、真姫」

真姫「入ってない……手伝いだから」

穂乃果「手伝い?」

真姫「ピアノの音で練習がしたいっていうから……仕方なく」

穂乃果「そうなんだ……、いいよね、そういうの」

真姫「どういうの?」

穂乃果「なんていうか……世界が広がっていく感じで」

真姫「……」

穂乃果「よし、吹奏楽部も全国目指して頑張ろうっ」

海未「勝手に目標を作らないでください」

穂乃果「言ってみただけだよぉ」

真姫「……あ、あのね……ほの――」


穂乃果「にこちゃんの演劇部はどう?」

にこ「まぁまぁよ」

穂乃果「楽しんでいるんだね。……そうだ」

にこ「なに?」

穂乃果「明後日の休み、カラオケに行こうよ!」

にこ「定例清掃の後でいいでしょ……」

穂乃果「それだと来週になっちゃうでしょ」

にこ「別に慌てて遊ぶ必要もないでしょ」

穂乃果「そうだけど、いいでしょ?」

海未「会話がおかしいですね……」

花陽「……語尾が……」


真姫「……」

ことり「あぁ、もぅ……穂乃果ちゃん……」


429: 2014/04/12(土) 11:53:39.60 ID:cYCvkz/vo

ガラガラ


凛「お邪魔するにゃ~」


穂乃果「あ、いらっしゃい凛ちゃん」

凛「あ、おまんじゅうだ~!」

穂乃果「凛ちゃんの分もあるよ」

凛「やったー!」


穂乃果「グラウンドにクロちゃん居なかった?」

凛「見てないですよ~?」

穂乃果「そっか……」

海未「こっちに座ってください」

凛「はーい、失礼しまーす」

穂乃果「凛ちゃんはつぶあんでも平気?」

凛「はい~♪」

花陽「どっちも食べられるよね」

穂乃果「ふぅん、そっかぁ……大人だなぁ」チラ

にこ「そういう派閥を作ると争いが起こるわよ」

穂乃果「じゃあ、今度牛乳持ってくるから食べてみてよ」

にこ「はいはい、わかりました」

穂乃果「話を流したっ」


真姫「……」



……



430: 2014/04/12(土) 11:54:49.60 ID:cYCvkz/vo

―― 2日後:街中


にこ「……ここにも居ない」



―― 物陰


穂乃果「ほら、ね?」

海未「ほら、と言われても……」

ことり「にこちゃんは何をしてるの?」

穂乃果「クロちゃんを探しているんだよ、きっと」

海未「隠れて見てないで、一緒に探せばいいのでは?」

穂乃果「それだとにこちゃんが探すの止めちゃうでしょ」

ことり「うーん……」

真姫「それより、早く集合場所へ行かないと……」

穂乃果「あともうちょっとだけ観察していようよ」

真姫「……」

海未「あまり、良い行いとは言えませんが……」

ことり「海未ちゃん、私たちは先に行こう?」

海未「……そうですね」

穂乃果「観察しないの?」

海未「しません」

スタスタ

ことり「真姫ちゃんも、時間には遅れないでね」

スタスタ

穂乃果「面白いのになぁ~」

真姫「……」



―― 日向


にこ「……なにか、視線を感じるわね」


―― 物陰


穂乃果「キョロキョロしだした」

真姫「あのね……、ほのちゃん……」

穂乃果「うん?」

真姫「吹奏楽部の話なんだけど……」

穂乃果「うん」


―― 日向


にこ「……話しくらい……できるわよね」

ピッピッピ

431: 2014/04/12(土) 11:56:12.87 ID:cYCvkz/vo

―― 物陰


穂乃果「……?」

真姫「私一人じゃ……その……ね」

穂乃果「誰に電話してるんだろ……」

真姫「…………」

穂乃果「あ、ごめん。なにかな?」

真姫「だから……吹奏楽部の話で……」

穂乃果「うん」

真姫「私、まだ新入生だから、色々と……」

穂乃果「そうだよね、萎縮っていうか……難しいところだよね」

真姫「……うん。練習の時、最初だけでいいから……」

穂乃果「……」



―― 日向


にこ「じゃあ、来週辺り見舞いに行くから、しっかり休んで――……え?」


―― 物陰


穂乃果「?」

真姫「一緒に……その……居てくれない……?」

穂乃果「……」

真姫「……ほのちゃん?」


―― 日向


にこ「な、なんで演劇部のこと知ってんのよ? どこからの情報よ!」


―― 物陰


穂乃果「希先輩かな……」

真姫「……」


―― 日向


にこ「あ、ちょっと、希!」


にこ「まだ話は終わってないのに……」


穂乃果「希先輩、なんて言ってたの?」

にこ「見舞いには来なくていいって……なんなのよ、まったく」

432: 2014/04/12(土) 11:57:53.16 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「体の調子はどうなのかな」

にこ「声はいつもと変わらないんだけど――……って、いつからそこに居たのよ?」

穂乃果「さっきだよ」

にこ「あ、そう」

穂乃果「どのくらい探してたの?」

にこ「えっと……今は10時だから……30分位――……って、なんで探してたの知ってるのよ」

穂乃果「5分位まえから観察してたから~」

にこ「ち、違うわよ、クロを探してたわけじゃないんだから……」

穂乃果「クロちゃんって、一言も言ってないよ?」

にこ「うるさーい!」

タッタッタ

穂乃果「逃げた」

真姫「……」

穂乃果「私たちも行こうか」

真姫「……」

穂乃果「あ、それで……話の続きなんだけど」

真姫「ううん、いい」

穂乃果「え、本当にいいの?」

真姫「……うん」


……




―― 待ち合わせ場所


ことり「話した?」

真姫「うん……。だけど、いいから」

ことり「……」

真姫「頼らないで、自分でやってみる」

ことり「真姫ちゃんがそういうなら……」

真姫「……」


凛「初めてだね、こうやって遊ぶの~」

花陽「そうだね……」

海未「この会話……前にも聞いたことがあるような……」

にこ「ほら、早く行くわよ。時間は限られているんだから」

スタスタ

穂乃果「そっちじゃないよ」


にこ「……」

……



433: 2014/04/12(土) 11:58:40.94 ID:cYCvkz/vo

―― 翌日


穂乃果「おはよう~」

海未「おはようございます」

ことり「おはよう、穂乃果ちゃん」

穂乃果「昨日は楽しかったね~」

海未「そうですね。久しぶりに羽を伸ばせたと思います」

ことり「凛ちゃんと花陽ちゃんも楽しんでたみたいだし」

穂乃果「良かった、よかった~」

海未「……思いのほか、元気ですね」

穂乃果「え、なにが?」

海未「学校が廃校になる、と聞いて……落ち込んでいるのかと」

穂乃果「廃校の危機、だから……まだ決定じゃないよ」

海未「それはそうですが」

ことり「やっぱり、部の活性化しかないのかな?」

穂乃果「うん、色々話し合ってみたけど……それが一番の近道かなって」

海未「『時間』はあるようで、ありませんからね」

ことり「……ねぇ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「うん?」

ことり「真姫ちゃんのことなんだけど」

穂乃果「あ、そういえば……昨日、なにか言いかけて止めちゃったんだよね」

海未「相談事ですか?」

穂乃果「たぶん、そうだと思うけど……大丈夫じゃないかな」

ことり「……」

穂乃果「ちゃんと自分の意志を持ってる子だもん」

海未「……」

穂乃果「あ、噂をすれば~」


真姫「?」


穂乃果「おはよう、真姫」

真姫「おはよう、ほのちゃん」


……



434: 2014/04/12(土) 12:00:19.22 ID:cYCvkz/vo

―― 放課後:ボランティア部


花陽「……」


ガラガラ


にこ「あれ……花陽だけ?」

花陽「は、はい……お邪魔してます」

にこ「お邪魔って……あんたも部員の一人でしょ……あと1週間だけど」

花陽「……」

にこ「私はお客さん扱いしないわよ?」

花陽「そ、そうですか」

にこ「よいしょ」

ギシッ

花陽「お茶淹れますか?」

にこ「お願いね」


にこ「……ふぅ」ガサゴソ

花陽「?」

にこ「これは台本。台詞を覚えてこいって」

花陽「ロミオとジュリエットの……」

にこ「まさか、本格的に役を与えられるなんて思わなかったわ……」

花陽「ジュリエット役ですか?」

にこ「モンタギュー夫人よ」

花陽「……」

にこ「そうだ、暇なら手伝いなさいよ」

花陽「はぁ……」


……




花陽「おのれキャピュレットめ、多勢でうちの若い者を取り囲みおって。このモンタギューが成敗してくれる。
    皆、卑怯者に鉄槌を食らわせてやるのだ」

にこ「あなた、止めてください。大公との約束を忘れたのですか」

花陽「えい、止めるな、約束よりも怨みを晴らすのが先だ。みな、かかれ」

にこ「……花陽の方がセリフ多いわね」

花陽「そうですね……」

にこ「それにしても、台詞がスラスラと出てるけど……」

花陽「本を読んでるだけですけど……」

にこ「どこの部に入るか決めてるの?」

花陽「いえ……まだ……」

435: 2014/04/12(土) 12:02:39.42 ID:cYCvkz/vo

にこ「それじゃあ、演劇部にしましょう」

花陽「ゑ」

にこ「大丈夫、始めは誰もが素人だから。行くわよ」グイッ

花陽「い、今からですか!?」

にこ「善は急げって穂乃果がたまに言うでしょ」グイグイ

花陽「ちょ、ちょっと待って下さいっ」ズルズル


―― 廊下


にこ「いい声してるんだから勿体無いわよ。昨日のカラオケも良かったし」グイグイ

花陽「だ、誰か助けてっ」ズルズル


真姫「なにしてるの?」


にこ「人材を発掘したからふさわしい場所へ連れて行くのよ。適材適所ね」

花陽「に、西木野さんっ、たすけてっ」

真姫「怯えているんだけど」

にこ「え?」

花陽「む、無理ですっ、舞台であんな……っ」

にこ「……」

花陽「……ご、ごめんなさいっ」

にこ「無理にとは言わないけど……行くわよ」グイッ

花陽「っ!?」

真姫「言ってることとやってることが真逆なんだけど」

にこ「こういうのは踏み込んでみた方がいいの。待ってるだけじゃ何も変わらないわよ?」

花陽「そ、それは……」

真姫「まるで経験者のような言い方ね」

にこ「……」

花陽「……ごめんなさい…」

にこ「なにか、やりたいことでもあるの?」

花陽「えっと……」

にこ「毎日ボランティア部に来るってことはそういう事なんじゃないの?」

花陽「え……」

真姫「なによ、それ」

にこ「月に一度の活動しかないんだから……毎日来る必要はないのに」

花陽「……」

にこ「それでも来るってことは……なにか変えたいから来てるんだと思って」

花陽「……」

真姫「……」

にこ「入学してまだ1ヶ月だけど――……」

436: 2014/04/12(土) 12:04:54.36 ID:cYCvkz/vo

海未「あれは……」

穂乃果「なにしてるんだろ?」

ことり「……?」


にこ「――部室に来るのは、なにか理由があるんだと思ってたから」

花陽「……」

真姫「勝手な押し付けじゃない?」

にこ「……」

真姫「他にやることがないから、あの部室に行った、じゃダメなわけ?」

にこ「……そうね、私の勝手な思い込みだったわ。……悪かったわね」

花陽「い、いえ……」


にこ「…………」


穂乃果「にこちゃん、今日もまんじゅう持ってきたよ」

にこ「牛乳は?」

穂乃果「あ……忘れてた」

にこ「しょうがないから、こしあんだけでいいわね」

穂乃果「料理部へ行って分けてもらってこよう」

海未「図々しいですよ」

ことり「あはは……」


穂乃果「はい、真姫はこれもって部室へ行っててね」

真姫「……うん」

穂乃果「ほら、行くよにこちゃん」

にこ「そこまでしてつぶあんを食べさせたいわけ……?」

穂乃果「食べなれたら美味しいんだから」

にこ「この強引さはなんなの……はぁぁ」

437: 2014/04/12(土) 12:06:47.43 ID:cYCvkz/vo

花陽「ため息が深い……」

海未「休憩時間は限られているんですから、ゆっくりできませんよ、穂乃果」


「分かってるって~」

「なんで休憩中にまで部室に来るのよ……」

「だって、あそこが一番落ち着くんだもん」

「変な人ね、あんた」

「にこちゃんに言われたくないよ!」

「どういう意味よ!」


海未「本当に分かっているのでしょうか……」

花陽「それが袴……ですか?」

海未「そうです。……あまりこの姿で校内を歩きたくはないのですが」

真姫「……」

ことり「行こう、真姫ちゃん」

真姫「……うん」


……





―― 翌日:1年生の教室



「おはよう~」

「おはよー」


真姫「……」


凛「昨日はボランティア部に行けなかったけど、なにか楽しいことあった?」

花陽「あったような……なかったような……。いつもと同じだったよ」

凛「そうなんだぁ……、今日は行けるかな~……」

花陽「忙しいの?」

凛「ちょっとだけ」

花陽「……」


……



438: 2014/04/12(土) 12:09:22.22 ID:cYCvkz/vo

―― 休み時間:中庭


真姫「こんな所で何してるの?」

花陽「西木野さん……」

真姫「ひょっとして……昨日、あの人に言われたことを気にしてるとか」

花陽「…………うん」

真姫「そんなの、気にするだけムダよ。思い込みの激しい人みたいだから」

花陽「でも、わたしの為に……言ってくれたことだから」

真姫「……」

花陽「……」

真姫「本当にやりたいことがあるの?」

花陽「…………うん」

真姫「それはなによ」

花陽「……がっしょう」

真姫「合掌?」

花陽「合唱部……に」

真姫「そういえば、カラオケでいい点取ってたわね。……そんなに歌ってなかったけど」

花陽「……」

真姫「入ればいいじゃない」

花陽「でも……人前で歌うの……恥ずかしくて」

真姫「あ、そう」

花陽「西木野さんは……人前で演奏するの……怖くないの?」

真姫「小さい頃からコンクールに出てたから……そういうの忘れたわ。慣れよ、慣れ」

花陽「楽しそうに演奏してた」

真姫「?」

花陽「去年のコンクール」

真姫「そういえば、会場に来てたんだったわね」

花陽「素敵な演奏だった……」

真姫「あなた、音楽が好きなの?」

花陽「うん」

真姫「それなら、演劇部に入るより合唱部に入ったほうが絶対に良い」

花陽「……」

439: 2014/04/12(土) 12:11:17.86 ID:cYCvkz/vo

―― 渡り廊下


凛「うにゃ~……昨日の晩御飯、ちゃんと食べればよかったにゃ~……」

どんっ

にこ「ふぎゃっ」

凛「いたっ」

にこ「あいたたた……」

凛「ご、ごめんなさい……って、にこ先輩?」

にこ「なにフラフラして歩いてんのよ……」

凛「お腹すいてて……」

にこ「お昼まで後1時間あるけど……大丈夫なの?」

凛「ポテト……ポテトが食べたい」

にこ「持ってないわよ。……持ってたとしてもあげないけど」

凛「ふぇ~ん……ひどいにゃ~」


穂乃果「にこちゃんが凛ちゃんをいじめてるっ」

海未「討ちましょう」

ことり「だ、ダメだよ」



―― 中庭


花陽「穂乃果先輩たちとの……想い出……」

真姫「――そう。『あの時』の演奏は昔を思い出しながら弾いてたから」

花陽「なんだか……素敵」

真姫「音楽の大切さを教えてくれた」

花陽「……」

真姫「今でもピアノを弾いていられるのは、ほのちゃんのおかげなの」

花陽「……ふふ」

真姫「な、なによ」

花陽「ご、ごめんなさい……笑ったりして……」

真姫「……」

花陽「とっても……優しい顔してたから……羨ましいなって……」

真姫「な、なに言ってるのよっ」

花陽「…………」

真姫「その……だから、……花陽」

花陽「……?」


真姫「やりたいなら、やってみた方がいい」

花陽「……でも」


440: 2014/04/12(土) 12:15:30.52 ID:cYCvkz/vo

真姫「苦手があって、怖いかもしれないけど……」

花陽「……」


真姫「音楽はもっと、自由だから」

花陽「――!」



凛「……」

穂乃果「あれは……花陽ちゃんと……真姫だね」

ことり「……邪魔しちゃいけないみたい」

海未「見てください、にこ」

にこ「矢?」

海未「いつも常備している破魔の矢です。あなたの悪の心を取り除くために譲りますよ」

にこ「そういう気遣い、いらないんだけど。というか、悪ってなによ!」



花陽「あ……凛ちゃん」

凛「どうしたの、こんなところで?」

花陽「お話……してたの」

穂乃果「お話って?」

真姫「そ、それは……その」

花陽「あのね――……凛ちゃん」

凛「なぁに?」

花陽「わたし……その……」

凛「……」

花陽「合唱部に……入ろう……と思ってて」

凛「うん」

花陽「あの……だから、陸上部のマネージャーは……」

凛「ううん、気にしなくていいよ」

花陽「……ご、ごめんね」

凛「謝ることなんてないよ。かよちんが、やりたいことをやるのが一番なんだから」

花陽「凛ちゃん……」

凛「凛もね、頑張る」

花陽「?」

凛「陸上部で、全国大会目指しちゃう!」

花陽「ぜ、全国……?」

凛「部長さんに、目指してみないかって、言われてたんだけど……あまり気乗りしなかったんだよね」

花陽「……」

凛「だけど、かよちんが頑張るなら、凛も……なにか一生懸命になってみたいって思った」

花陽「……うん」


穂乃果「…………」

441: 2014/04/12(土) 12:16:48.96 ID:cYCvkz/vo

にこ「あれ、演劇部には?」

花陽「あ、えっと」

真姫「入るわけ無いでしょ」


穂乃果「よーっし、部を盛り上げていこう、凛ちゃん!」

凛「はい!」

穂乃果「頑張るぞー、おー!」

凛「おー!」

穂乃果「海未ちゃんも、おー! ってするの!」

海未「遠慮しておきます」

穂乃果「にこちゃんも!」

にこ「穂乃果って、勉強も運動もできるけど、根っこは子供っていうか、子供よね」

真姫「あなたが言わないで欲しいんだけど」

にこ「……なんで私にだけ風当たりが強いのよあんたは」


ことり「その理由……なんとなく、わかった気がする」

花陽「理由……?」

ことり「ううん、なんでもない~」


……




―― 放課後:ボランティア部


真姫「どうしてあなたが鍵を……?」

花陽「穂乃果先輩に持ってて、って言われて……」

真姫「合唱部は……?」

花陽「すぐ行くつもり」

真姫「何しにここへ来たのよ」

花陽「クロちゃんが来ているかもしれないからって」

真姫「……」

花陽「今日も来てないね」

真姫「相手はネコだから、気まぐれなのよ」

花陽「――真姫ちゃんは」

真姫「……?」

花陽「が、合唱部に入らないの……?」

真姫「どうして私が……」

花陽「昨日、部長さんに聞かれちゃって……あの子は入らないのかって」

真姫「……」

花陽「一緒にどう……かな?」

真姫「べつに……」

442: 2014/04/12(土) 12:31:59.14 ID:cYCvkz/vo

花陽「部長さん、わたしたちがボランティア部で一緒なの知ってるから……」

真姫「私が入るよう、頼まれたってわけね」

花陽「ご、ごめんなさい」

真姫「なんで謝るのよ」

花陽「……」

真姫「……考えておくけど」

花陽「あ、ありがとう……」

真姫「……べつに」

花陽「真姫ちゃんが……ピアノを弾く理由ってあるのかな……?」

真姫「え……?」

花陽「昨日の……穂乃果先輩との話を聞いてて……気になっちゃって」

真姫「理由って言われても……」

花陽「わたしも……その、音楽が好きだから……
    何か楽器を演奏できたらよかったなって、時々思うの」

真姫「……そう」

花陽「声なら……楽器を必要としないから……」

真姫「その理由で合唱部に?」

花陽「う、うん……」

真姫「あ、そう……」

花陽「た、大した理由じゃなくて……ごめんなさい」

真姫「だから、なんで謝るのよ」

花陽「呆れられた……よね」

真姫「何かを始める理由なんて、大抵そんなものかもしれないじゃない」

花陽「……そうかな?」

真姫「私だって……今でもピアノを弾いていられるのは、ほのちゃんと出逢えたからで……」

花陽「……」

真姫「私の演奏を聞くとね、必ず褒めてくれるの」


真姫「専門的なことじゃなくて……気持ちを、感情を伝えてくれる」


真姫「だから、とても嬉しくて……もっと、もっと弾きたいって思えるの」

花陽「…………」

真姫「私がピアノを弾く理由は……それかもしれないわね」

花陽「……――そうなんだ」


「褒められたいから弾いてるってわけ?」


真姫「――!」


にこ「まるであんた達、二人だけの世界って感じ」

真姫「な、なんで……あなたにそんなことを……」

にこ「ま、別にどうでもいいんだけど……。今日も来てないみたいね」

443: 2014/04/12(土) 12:33:11.63 ID:cYCvkz/vo

真姫「人のために弾くってことが……悪いみたいに聞こえたんだけど」

にこ「人のためっていうより、自分のためだったりして」

真姫「そ、それのどこが悪いって言うの――!」

にこ「二人だけの世界って言ったでしょ。閉鎖的なのよ、あんたが特に」

真姫「な……!」

花陽「あ、あの……ケンカは……っ」

真姫「あ、あんたに私たちの――……私の何が分かるっていうのよ!」

にこ「……」

花陽「ま、真姫ちゃん……っ」

真姫「音楽を捨てたけど……ッ……もう一度……取り戻せたからっ」

にこ「……」

真姫「嬉しいから続けていられるのにッ」

にこ「それは『過去』の話でしょ」

真姫「…………」

にこ「穂乃果があんたから離れたら……もう一度、音楽を捨てるの?」

真姫「な、なにを……」

にこ「あんたは甘やかされて、守られているだけじゃないの?」

真姫「……ッ!」

にこ「私も、そうだったから……何となく分かるのよ」

花陽「……」

にこ「だけど、『今』はそうじゃない。自分で変えていくわ」

真姫「人の真似をして?」

にこ「え……」

真姫「あなたがしてることって、希先輩の真似でしょ」

にこ「…………」

真姫「やっぱりね。昨日、花陽を強引に連れて行こうとしたのもそれなのね」

にこ「……」

真姫「そんなんでよく、人に説教できるわね」

花陽「ま、真姫ちゃんっ、言い過ぎだよっ」

にこ「……そうね」

真姫「……」

にこ「海未やことりに言われるならまだしも……新入生のあんたに言われるなんて……」

スタスタ

花陽「にこ先輩……?」


にこ「……」


ガラガラ

ピシャッ

444: 2014/04/12(土) 12:35:16.53 ID:cYCvkz/vo

真姫「…………」

花陽「……」


「あれ、にこちゃんも部室に――……どうしたの?」

「べつに」

「どこ行くの?」

「どこへ行こうと私の勝手でしょ」

「ちょっと、にこちゃん!」

「何かあったようですね……」


ガラガラ


花陽「あ……」

海未「花陽と……真姫……?」

穂乃果「ねぇ、いったい何が――」


真姫「……っ」


穂乃果「――真姫、なにがあったの?」

真姫「そ、それは……」

穂乃果「にこちゃんがあんな表情するなんておかしいよ」

海未「穂乃果、話をちゃんと聞かなくては」

穂乃果「真姫が、なにか言ったんだね」

花陽「……っ」

真姫「……」

穂乃果「何を言ったかは知らないけど、人を傷つけるようなこと言っちゃ駄目だよ」

真姫「わ、私たちの――ッ」

穂乃果「にこちゃん、痛そうな顔してたよ」

真姫「な、なんで……あの人ばっかり……!」

海未「穂乃果……!」

真姫「…………っ」

スタスタ

花陽「ま、真姫ちゃん……!」


真姫「……帰る」


ガラガラ

ピシャ

445: 2014/04/12(土) 12:43:02.15 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「……」

海未「どうして、真姫の話をちゃんと聞かないのですか」

穂乃果「悪いことをしちゃ駄目だっていうの、おかしいこと?」

海未「一方的に真姫に非がある決めつけていませんか?」

穂乃果「うみちゃんは知らないんだよ、あんなに辛そうな顔をするにこちゃんのこと」

海未「それを理由に真姫を傷つけてもいいことにはなりません」

穂乃果「……」

海未「追わないのですか」

穂乃果「『今』は、真姫より……――にこちゃんだよ」

タッタッタ


ガラガラッ


タッタッタ......


海未「花陽、何があったのです?」

花陽「そ、それは……」


ことり「穂乃果ちゃん、走っていったけど……なにかあったの?」



……





―― うさぎ小屋


にこ「……」


にこ「あんた達はいいわね……悩みがなさそうで」


うさぎ「もしゃもしゃ」


にこ「ほら、人参よ」


うさぎ「もしゃもしゃ」


にこ「あ、こら……独り占めしたらダメじゃないの」


うさぎ「もしゃもしゃ」


にこ「…………」


にこ「はぁ……うさぎになりたい」


穂乃果「センチメンタルすぎるよ……」


446: 2014/04/12(土) 12:44:46.83 ID:cYCvkz/vo

―― 音ノ木坂学院校門前


「待って!」


真姫「あ……」


ことり「ごめんね、穂乃果ちゃんじゃなくて」

真姫「……」

ことり「かよちゃんから聞いたよ」

真姫「……」

ことり「穂乃果ちゃんが怒ることって、そうそうないから……驚いたよね」

真姫「……うん」

ことり「私も、話を聞いて驚いちゃった」

真姫「……私が、悪いの?」

ことり「それは分からない」


ことり「真姫ちゃんが大切なことに触れられて怒ったように……」


ことり「にこちゃんも大切なことを触れられたんだと思うから」


真姫「……」


ことり「覚えてるかな、真姫ちゃんが私たちと同じ高校へ進学するって決めた日のこと」

真姫「……?」

ことり「『あの時』の穂乃果ちゃん、とっても嬉しそうにしてたでしょ?」

真姫「……でも、それは」

ことり「嬉しい事、楽しいことを全身で表現する穂乃果ちゃんだから、
    いつものことみたいに見えたかもしれないけど――」


ことり「それから暫くの間、ずっとこの学校での話ばっかりしてた」


ことり「穂乃果ちゃんがこの学校へ進学するって決めて、私もそうしようと決めて。
    海未ちゃんは……少し迷ってたけど、結局一緒にいてくれることに決めてくれて」


ことり「そして、真姫ちゃん」

真姫「……」

ことり「楽しい高校生活が待ってるって、すごく楽しみにしてたの」

真姫「……」

ことり「だから、穂乃果ちゃんが真姫ちゃんを嫌いになるなんて絶対にないからね」

真姫「……ほんと?」

ことり「もちろん♪」

447: 2014/04/12(土) 12:46:15.69 ID:cYCvkz/vo

―― うさぎ小屋


にこ「私のところより、真姫の所に行きなさいよ」

穂乃果「どうして?」

にこ「あんた達、幼馴染でしょ。私の事よりあっちをフォローしたほうがいいんじゃないの」

穂乃果「ケンカらしいケンカはしたことないけど、大丈夫だよ」

にこ「……」

穂乃果「真姫は真姫だから」

にこ「……なによ、それ」

穂乃果「……」

にこ「……」


にこ「最初はね、希とネコ――……クロだけだったのよ」


穂乃果「?」


にこ「ボランティア部のこと」

穂乃果「……希先輩がだいたい同じ頃って言ってた」

にこ「そう、私が入部したのはクロの後ってことになるわね」

穂乃果「……」

にこ「時期は、夏休みが終わった9月の頭……」

穂乃果「……」


にこ「今でもハッキリと覚えてる。……だって、学校でネコと一緒に歩く生徒がいるんだから」


穂乃果「…………」


にこ「そして、あの笑顔でいうのよ、うちの部に入らないかって」

穂乃果「……」

にこ「ボランティア部って聞いて、すぐ遠慮したのに……しつこく勧誘してくるの」


にこ「楽しめるかもしれないよ、って」


穂乃果「……」


にこ「『あの時』の私は……退屈してた。どうしてこの学校に入ったんだろうって、毎日思ってた」

穂乃果「にこちゃん……」

にこ「この制服が気に入ったから、っていうのもあるんだけど……それだけじゃなかったのよ」

穂乃果「……?」

にこ「なんとなくね、受験前に、この学校の資料を見て……惹かれたから。
   何かが待ってるような気がするって……そんな感じ」

穂乃果「……」

にこ「でも、そんなことはなくて。……それは気のせいで」


にこ「『今』思い返してみれば、それは当然なのかもしれないわ」

448: 2014/04/12(土) 12:47:37.30 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「当然って……?」

にこ「待ってるだけだったから。……楽しい高校生活が、私の所へ勝手に来るものだと思ってたから」

穂乃果「……」

にこ「だから、部にも入らないで、バイトもしないで……ひたすら待ってた」

穂乃果「……」

にこ「退屈するのは当たり前よ」

穂乃果「…………」

にこ「だけど、そんな私の声を掛けたのが希だった」

穂乃果「……どうして誘ったのかな?」

にこ「あんたが入部した頃に言われた。退屈そうにしてたから、って」

穂乃果「……そっか」

にこ「定例清掃なんかにも仕方なく参加して、あの部室で二人と一匹で過ごして」


にこ「今思えば……少しずつだけど、私の世界は広がっていってたのよ」

穂乃果「……」

にこ「それなのに、去年の春まで、私はそれに気づかなかった」

穂乃果「……どうして?」

にこ「あんたが入ってきたから」

穂乃果「私……?」

にこ「希は辞めてしまったけど……穂乃果が入部して、一気に部室の雰囲気が変わった」

穂乃果「……」


にこ「退屈だなんて思う暇はなかった」

穂乃果「……!」


にこ「……私、いつも気付くのが遅いのよね。……考えて行動するから」

穂乃果「……」

にこ「あんたは、私と違って……行動してから考えるでしょ?」

穂乃果「そうかな……?」

にこ「そうよ。……私はその逆で、
   ボールがキャッチャーミットに収まってから、バットを振るような遅さ」

穂乃果「……」

にこ「だけどね……」


穂乃果「……」


にこ「希は……そんな私にいつも合わせてくれてたのよ」

穂乃果「……」

にこ「歩くのが遅い私の……歩幅を合わせてくれた」


にこ「そのおかげで、『今』……高校生活を楽しめてるの」


穂乃果「にこちゃん……」

449: 2014/04/12(土) 12:49:08.81 ID:cYCvkz/vo

にこ「――だから、悩んでいる花陽を見ていると、私と被ってしまって」


にこ「無理矢理にでも何かを始めさせようって気になってしまったの」

穂乃果「……」

にこ「でもそれは、希の真似なんだから……私じゃ……無理なのよね」

穂乃果「そうだよ、にこちゃんは希先輩とは違うんだから」

にこ「……」

穂乃果「にこちゃんが、どうしてボランティア部に入ったのかって、聞いたことあるよね」

にこ「学校の選択を間違えたんじゃないかって、零しからだったわよね」

穂乃果「それもあるんだけどね……。……もう一つ理由があるの」

にこ「……?」

穂乃果「うみちゃんと電話で話してたでしょ?」

にこ「……うん」

穂乃果「そのやりとりを見て、思ったんだ。……面白い人だなって」

にこ「……間抜けね、私は」

穂乃果「ちがうよ。滑稽に見えたわけじゃなくて、楽しい気分になるって意味だよ」

にこ「……」

穂乃果「球技大会で、最後……空振りで終わって、みんな笑ってたよね」

にこ「笑われてたのよ……」

穂乃果「そうじゃなくてね」

にこ「……?」

穂乃果「もし、『あの時』ヒットを打って、同点……もしくは、逆転勝ちしてたとしても」


穂乃果「みんなのヒーローになっていたとしても」


穂乃果「私は……空振りをして、みんなを笑顔にした――」


穂乃果「にこちゃんが好きだよ」


にこ「――!」


穂乃果「愛嬌がある、とは少し違う……にこちゃんが持つ、にこちゃんだけの雰囲気」


穂乃果「希先輩は、それに気付いていたんだと思う」

にこ「……だから、私を誘ったってこと?」

穂乃果「うん。……間違いないよ」

にこ「それはただの憶測でしょ」

穂乃果「そうなんだけど……」

にこ「そこを認めると、今まで言ってきたことがブレちゃうでしょ」

穂乃果「えへへ」

にこ「真姫にそれを指摘されたのよね。……希の真似をしているだけだろう、って」

穂乃果「……」

にこ「図星だったから」

450: 2014/04/12(土) 12:50:06.04 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「花陽ちゃんのために、したことでしょ?」

にこ「さぁね。……結局、花陽を変えたのは真姫だから、私は意味が無いことをしたのよ」

穂乃果「きっかけを作ったのはにこちゃんだよ」

にこ「……あのね、あんたが私を励まそうとしてるのはわかるけど」

穂乃果「真姫も、にこちゃんも、花陽ちゃんにとっては大切な『分岐点』になったと思う」

にこ「……」

穂乃果「だから、意味はあったんだよ」

にこ「……そう、かもね」

穂乃果「うん、そうだよ」

にこ「……あ…――がと」

穂乃果「え?」


にこ「ありがと……って言ったの」

穂乃果「……」


にこ「あ、あんただから言ったのよ……他の人に言うんじゃないわよ、こういうこと」

穂乃果「言わないよ」

にこ「……それなら、いいけど」

穂乃果「部室に戻ろ」

にこ「…………うん」


451: 2014/04/12(土) 12:51:00.01 ID:cYCvkz/vo

―― ボランティア部・部室前


にこ「……」

穂乃果「あ……」


真姫「……」

ことり「あ……」


にこ「演劇部に行かないといけないから」

スタスタ

穂乃果「ちょっと、にこちゃん!」


真姫「……あの、ほの――」


穂乃果「行ってくるね……もう、しょうがないんだから」

テッテッテ


ことり「部室で待ってよう……?」

真姫「……もういい、帰る」

スタスタ


ことり「……あぁ……穂乃果ちゃん……」


ガラガラ


海未「どうかしたのですか?」

ことり「うまくいかないね……」

花陽「……」


……



452: 2014/04/12(土) 12:52:55.42 ID:cYCvkz/vo

―― 翌日:ボランティア部


『試合の勝敗を左右させたり、彼女の怪我を軽くしたりと、試行錯誤を重ねているみたいね』


「これだけの変化があるのですから、慎重に判断しなくてはいけません」


『それで、見通しは?』


「高坂穂乃果を中心にした、8人への干渉では大した変化は起きませんでした」


『彼女――、園田海未の家柄についてはどう説明するの?』


「それも大きな変化ではないと判断します」


『彼女の人生には影響しないと言うのね』


「はい。彼女の人間関係に変化があれば異常とみなしますが」


『……異常、ね』


「西木野真姫の夢へ干渉したことで、園田海未の環境は一変しました」


『……』


「そして私が、矢澤にこを入学させるため、前理事長への干渉したことで――……」


『高坂穂乃果は大切なモノを失った』


「――そうです」


『そして、東條希の変化』


「はい。この二つは大きな異常をきたしていると判断できます」


『……――……なにも……――知らない……高坂――』


「……」


『――は……幸か不幸か……――……』


「……」


『――……』


「目覚めさせる力はあと僅か……」


『――』


「人と人との絡みあう糸が、これ程のものとは思いもよりませんでした」



「しかし、だからこそ大きな力を発揮するのです」

453: 2014/04/12(土) 12:53:39.75 ID:cYCvkz/vo

「あと少し、それがとてつもなく大きい」


「……」


「そろそろ時間ですね」



ガチャ

「あれ、鍵がかかってる」


「……――」スゥ


ガチャリ


ガラガラ


穂乃果「……誰もいない」


穂乃果「みんな忙しいよね……」


穂乃果「いつも……にこちゃんとクロちゃんが居たのになぁ……」



……



454: 2014/04/12(土) 12:55:52.22 ID:cYCvkz/vo

―― 翌日:登校中


海未「……真姫は、昨日に続いて来ませんでしたね」

ことり「ねぇ、穂乃果ちゃん……真姫ちゃんと話をした?」

穂乃果「ううん、してない」

海未「年上のあなたから動くべきではありませんか?」

穂乃果「動くって?」

海未「それは……」

穂乃果「真姫が、いつもにこちゃんによくない態度を取ってたのも事実だよ」

海未「……真姫の性格、だとも言えますが」

ことり「にこちゃんに……贔屓しすぎ……なんじゃないかな」

穂乃果「贔屓……?」

ことり「私から見て、今までの穂乃果ちゃん、真姫ちゃん、にこちゃんを見てると、
    やっぱり穂乃果ちゃんがにこちゃんに寄って行ってる気がする」

穂乃果「そうかな」

ことり「心当たり、あると思うけど」

穂乃果「……そんな、真姫はもう子供じゃないんだから」

海未「穂乃果」

穂乃果「な、なに……?」

海未「真姫に限らず、私たちはまだ子供ですよ。あなたも例外ではありません」

穂乃果「……」

海未「周りを見えていないのがその証拠です」

穂乃果「そんなこと……」

海未「……先に行っています」

スタスタスタ


穂乃果「……」

ことり「……真姫ちゃんを見ていなかったという点では、海未ちゃんと同意見かな」

穂乃果「見ていなかったわけじゃないよ」

ことり「……」

穂乃果「真姫には真姫の……学校生活があるから」

ことり「かよちゃんや、凛ちゃんたちと過ごす学校生活?」

穂乃果「うん。……今まで一緒だったから、私たちとだけじゃなくて、もっと……」


穂乃果「自分の世界を広げていけたらいいなって……」


ことり「そっか……」

穂乃果「自分勝手かな……」

ことり「ううん、きっと……言葉が足りてないだけなんだよ」

穂乃果「……そうだね、ゆっくり話をしないと」


……


455: 2014/04/12(土) 12:58:20.25 ID:cYCvkz/vo

―― お昼:1年生の教室


真姫「……」

スタスタスタ


花陽「あ……西木野さ――」


凛「行っちゃったね」

花陽「……お昼、一緒にって思ったんだけど……」

凛「おぉ~」

花陽「?」

凛「かよちんが積極的にゃ!」

花陽「そ、そうかな……?」

凛「いつも引っ込み思案で、遠慮してしまうかよちんが……っ」

花陽「り、凛ちゃん?」

凛「とっても嬉しい気持ちと少しの寂しさで胸がいっぱいにゃ」ウルウル

花陽「……そ、そうなんだ」

凛「あれ? でも……かよちんって、西木野さんのこと、名前で呼んでいなかった?」

花陽「そうなんだけど……や、やっぱり……その、迷惑かなって」

凛「そこで遠慮してちゃダメだよ~」

花陽「うん……」

凛「どうする? 追いかける?」

花陽「でも、西木野さんにも都合が……」

凛「断られたらその時に考えればいいにゃ、行くよ!」グイッ

花陽「ま、待ってぇっ!」



―― 廊下


穂乃果「――送信、と」

ピッ

穂乃果「もうちょっと内容を増やせばよかったかな……」


凛「あれ、穂乃果先輩?」

穂乃果「あ、凛ちゃん……花陽ちゃんも」

花陽「こ、こんにちは」

穂乃果「どうしたの?」

凛「ここを西木野さんが通りませんでしたか?」

穂乃果「真姫?」

花陽「……はい」

456: 2014/04/12(土) 12:59:34.22 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「あ、気付かなかった」

凛「そうですかぁ」

穂乃果「メール打つのに集中してたから。……先生に内緒ね」

花陽「……メール?」

穂乃果「希先輩にね。……それより、追いかけているんなら急いだほうがいいんじゃない?」

凛「そーですね。それでは~」

花陽「し、失礼します」

穂乃果「……うん。……真姫のことよろしくね」



―― 中庭


trrrrrrrr......


にこ「……」

ピッ

にこ「……まだ寝てるのね、きっと」


真姫「……」


にこ「……あ」


真姫「……」

スタスタスタ


にこ「……」


にこ「……気まずいわね」



花陽「西木野――……真姫ちゃん!」

真姫「?」

花陽「や、やっと追いついた……っ」

真姫「何か用? ……というか、どうしてフルネームで呼ぶのよ」

花陽「えっと……お昼……まだだよね?」

真姫「……そうだけど」

花陽「一緒に……どうかなって……」

真姫「……」


凛「にこ先輩、ここでなにをしてるんですか?」

にこ「電話をかけてたのよ」

凛「あー、放課後まで使用禁止なのにー」

にこ「だから隠れて使用してたんじゃないの」

457: 2014/04/12(土) 13:00:37.39 ID:cYCvkz/vo

―― 廊下


穂乃果「……」


ことり「何を見てるの?」

穂乃果「ほら、見て」

ことり「あ……真姫ちゃんたち……」

穂乃果「…………」

ことり「ふふ」

穂乃果「?」

ことり「穂乃果ちゃん、真姫ちゃんを見守るお姉さんみたい」

穂乃果「えー、そんなことないよ」

ことり「うん、それはいいとして……ほら、みて」

穂乃果「?」


海未「……」ジー


ことり「海未ちゃんが気にしてる」

穂乃果「あ……」


海未「――ッ!」サッ


ことり「どうして隠れるの~」

穂乃果「もう怒ってないのかな……?」

ことり「それは分からないけど……多分、
    朝のこと言い過ぎたって気にしてるんだと思う」

穂乃果「私も……言葉が足りないね」

タッタッタ


穂乃果「うみちゃ~ん!」


ことり「想っていることは、ちゃんと伝えないとね」


……




458: 2014/04/12(土) 13:02:05.12 ID:cYCvkz/vo

―― 休み時間:3年生の教室


にこ「はぁ?」

穂乃果「うん、そうしよう」

にこ「待って、まだ頷いたわけじゃないから」

穂乃果「善は急げだよ」

にこ「嫌よ。……なんで私から動いて真姫と仲直りしなくちゃいけないのよ」

海未「先延ばししていては余計に修復が難しくなるものです」

穂乃果「そうだよ」

にこ「いやよ! いーや!」

ことり「頑なだね……」

穂乃果「廊下ですれ違ったら挨拶するだけだよ?」

にこ「だけって言うけど、ハードルが高いって気付いてる?」

ことり「そうかなぁ……?」


女生徒「なになに、またボランティア部で面白いこと考えてるの?」

にこ「そうじゃないわよ。ややこしくなるからあっち行ってて」

穂乃果「冷たっ!」

海未「もう少し、人には優しく接する心がけを――」

にこ「だから、あんたは私の母親なの?」

女生徒「くすくす」

女生徒「にこさん達って面白いよね~」

海未「お、面白い……ですか」

穂乃果「いやー、照れちゃうね」

ことり「あはは……」

にこ「あの球技大会以来、私はお笑いみたいな接し方されるんだけど」

穂乃果「それのどこがおかしいの?」

にこ「私はお笑い芸人とは違うの。もっとこう……違った魅力があるのよ」

海未「……たとえば?」

にこ「そうねぇ……ほら、可愛さとか☆」キャピ

ことり「……」

穂乃果「話を戻すけど、ちゃんと挨拶しないとダメだからね」

にこ「えー、にこってば、ちょっと困っちゃう~」キャピ


主将「お、ちょうどいいところに」

海未「あ……」

穂乃果「部活の用ですか?」

にこ「……」キャピ

主将「それもあるけど、東條のことで――……って、なにしてんだ、矢澤?」

にこ「なんでもないわよ」

女生徒「あははは」

459: 2014/04/12(土) 13:52:26.51 ID:cYCvkz/vo


―― 放課後:廊下


にこ「……」

スタスタ


真姫「……」

スタスタ


にこ「ぁ……ぅ……」


真姫「……」スッ


スタスタスタ


にこ「……」



―― 物陰


穂乃果「……ダメだ」

ことり「海未ちゃん、今の……」

海未「真姫に問題がありますね。……にこは足を止めたのに」

ことり「……そうだよね」




―― 廊下


にこ「あーもう、やってらんない」

穂乃果「も、もう一回だけ!」

にこ「なんで私が恋する相手に勇気を振り絞るような雰囲気出さなくちゃいけないのよ」

穂乃果「なんか物語性を感じるね」

にこ「もうやだ、演劇部に行ってくるから! じゃあね!
    今日はボランティア部に顔出さないから、じゃあね!」

タッタッタ

穂乃果「……」


穂乃果「じゃあね、って二回も言った……」

460: 2014/04/12(土) 13:57:43.45 ID:cYCvkz/vo

―― 合唱部


真姫「……」

ガラガラ


ことり「待って!」

海未「真姫!」


真姫「……?」

ことり「今から……部活、だよね」

真姫「……うん」

海未「それでは、下校時間に玄関で待ち合わせをしましょう」

真姫「どうして?」

海未「話をするだけですよ」


……




―― 下校時間:玄関


穂乃果「先に帰ってるね」

ことり「え……?」

穂乃果「私は居ないほうがいいと思うから」

海未「わかりました。それでは、また明日」

穂乃果「うん、ばいばーい」

タッタッタ


ことり「話をしないのかな……」

海未「私たちに任せる、ということです」

ことり「……そうだね」

海未「……来ましたか」


真姫「……」


……



461: 2014/04/12(土) 14:09:10.62 ID:cYCvkz/vo

―― 公園


海未「にこが苦手、ですか?」

真姫「話って、それなの?」

海未「今話すことは他にないはずですが」

真姫「……」


ことり「…………」


真姫「もうどうでもいい」


海未「え?」

真姫「……帰る」

スタスタ


海未「ちょっと、真姫!」

ことり「海未ちゃんっ」

海未「こ、ことり……?」

ことり「……いまは、そっとしておこうよ」

海未「な、なぜですか……!」

ことり「真姫ちゃんは……――嫉妬してるんだよ」

海未「は……? シット?」

ことり「うん。……ずっと一緒にいた穂乃果ちゃんが、にこちゃんと楽しそうにしてて」


ことり「それが嫌なんだよ」


海未「それは……いくらなんでも」

ことり「ありえない、って思う?」

海未「……」

ことり「私たちは一年間、ボランティア部でにこちゃんと一緒だったから、
    立場的ににこちゃんの味方をしているって感じているんだと思う」

海未「…………」

ことり「高校生にもなってそんなことで……って、思う?」

海未「そんなことは……」

ことり「……本当に?」

海未「いえ、正直に言います。思いました」

ことり「……」

海未「穂乃果と真姫の距離が近かった分、
    穂乃果とにこの距離に戸惑いを感じている、と言いたいのですね」

ことり「うん」

海未「確かに、私も……にこを擁護するような言い方をしていましたから」

ことり「……」

海未「真姫は拗ねているのですか?」

ことり「うん、そうだよ、きっと――」

462: 2014/04/12(土) 14:15:16.48 ID:cYCvkz/vo

……




―― 3日後:ボランティア部


「にゃー!」

ガッ


「あいたぁっ!?」

「だ、大丈夫?」

「うぅ……思いっきり引いたからダメージも大きいにゃ」クスン

「鍵かかってるから……ちょっと待ってて」

ガチャリ

 ガラガラ


凛「放課後に誰もいないなんて珍しいよね……?」

花陽「最近は、いつもこんな感じだけど……」

凛「ふぅん」

花陽「……やっぱり、今日も来てないよね……クロちゃん」

凛「かよちんの分もお茶淹れるね~」

花陽「あ、今日はわたしが……」

凛「うん?」

花陽「玄米茶を持ってきたの」

凛「……凛は遠慮するにゃ」

花陽「お、美味しいよ?」

凛「……」

花陽「……おいしいのに」


ガラガラ

穂乃果「開いてる……?」


花陽「こ、こんにちは」

凛「お邪魔してるにゃ~」

穂乃果「昨日の定例清掃、お疲れさま。ご褒美のまんじゅう!」

凛「わーい!」

花陽「いま、お茶を淹れます」

穂乃果「ありがとう」

凛「海未先輩たちは?」

穂乃果「すぐ来ると思うよ。にこちゃんも」

凛「なんだか久しぶりにゃ~」

花陽「そうだね……たった数日だけど……みんな集まらなかったから」

穂乃果「そして、特別ゲストー!」

凛花陽「「 ? 」」

463: 2014/04/12(土) 14:43:21.06 ID:cYCvkz/vo

希「やっほー」


凛花陽「「 希先輩! 」」

希「良いリアクションしてくれるやん」

凛「体調は大丈夫なんですか?」

希「平気平気~」

花陽「よかった……」

穂乃果「うんうん」

希「心配かけたようやね……」


ダダダダッ

にこ「希ッ!」


希「?」


にこ「だ、大丈夫なの?」

希「見ての通り~」

にこ「主将から……病院で見かけたって聞いて……」

希「ちょっとした診察やから。……主将も居たんやね」

穂乃果「軽い怪我をしたそうです。稽古にも全然問題は――」

にこ「来るなら来るって連絡しなさいよ!」

希「学校に来るだけやのに、わざわざにこっちに連絡を?」

にこ「そ、それは……そうだけど」

穂乃果「にこちゃん、とっても心配してたから」

にこ「ち、違うわよ。そんなんじゃなくて……、
   そう、先生に気に留めておくようにって言われてるだけよ」

穂乃果「さっき、走って来たよね。急いでたんだよね」

にこ「廊下で運動することもあるでしょ」

穂乃果「ないよ」


希「二人とも、昨日の定例清掃で1ヶ月の活動は終わりのはずやけど?」

凛「凛とかよちんは、かけもちで入部することにしました~」

花陽「よ、よろしくお願いします」

希「ふふ、そうなん」


にこ「部長として把握しておかなくちゃいけないから」

穂乃果「いい加減、素直になればいいのに」

にこ「勘違いしているようだけど、私は心配なんてしてなかったんだから」

穂乃果「元気になるって信じていたんだよね」

にこ「ちが……くないけど、なんなのよ、そのポジティブさは」

穂乃果「よかったね」

にこ「さぁ……?」

穂乃果「もぅ! どうしてそこでとぼけちゃうの!?」

464: 2014/04/12(土) 14:47:06.39 ID:cYCvkz/vo

海未「二人とも邪魔です」

ことり「中に入れないよ~」


穂乃果「あ、ごめん」

にこ「ことり、お茶を淹れてちょうだい」

ことり「はい、ただいま~」

花陽「あ、私が淹れます」

ことり「?」

花陽「玄米茶を持ってきたんです!」キラキラ

にこ「……あ、私はいいわ」

花陽「え?」

にこ「穂乃果に牛乳を持ってきてもらう約束だから」

穂乃果「初耳なんだけど……」


希「いつの間にか、名コンビになっとるみたいやなぁ」

海未「他の生徒達にも笑われています……」

希「それはそうと、真姫ちゃんは?」

ことり「あ……」

海未「……あれ?」

希「ん?」

ことり「……もぅ~」

スタスタ


凛「まんじゅう美味しいにゃ~」

にこ「もぐもぐ……やっぱり、お茶が欲しいわね」

花陽「わかりました」ガタ

にこ「玄米茶以外にないの?」

花陽「……おいしいのに」ションボリ


ことり「ほら、真姫ちゃん~」

真姫「あ、ちょっと……ことちゃんっ、引っ張らないでっ」


希「ん~? どうして恥ずかしそうなんやろなぁ~?」

にこ「もぐもぐ」

穂乃果「……」


真姫「えっと……っ」

海未「そこに座ってください」

真姫「う……うん」

希「全員揃ったね」

穂乃果「あ、でも……クロちゃんが最近、姿を見せなくて」

希「そこにおるよ。いつもの場所に」

穂乃果にこ「「 え? 」」

465: 2014/04/12(土) 14:49:01.58 ID:cYCvkz/vo

猫「……」


穂乃果「いつの間に!?」

花陽「さっきは居なかったよね、凛ちゃん?」

凛「うん、居なかった」モグモグ


にこ「まったく……あんたもいい加減ね」

猫「……」


希「真姫ちゃんはどうするん?」

真姫「……なに?」

希「この、ボランティア部のこと。吹奏楽部と合唱部で活動しとるんやろ?」

真姫「……」


穂乃果「……」


真姫「残る……つもりだけど――」


穂乃果「そっか」


真姫「あ……」


穂乃果「そっかそっかぁ! よかったー!」


海未「……」

ことり「……」


穂乃果「辞めるって言うのかと思ってヒヤヒヤしてたよー」

真姫「……そんなこと」

穂乃果「これから、楽しもうね、真姫」

真姫「あ――……うん」

穂乃果「それと、ごめんね。あまり構ってあげられなくて」

真姫「そ、そんなこと……べつに」

ことり「ね?」

真姫「あ、うん……こっちこそ、ごめん……なさい」

穂乃果「真姫……」


希「楽しくなりそうやな、にこっち?」

にこ「……さぁね」

466: 2014/04/12(土) 14:50:32.34 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「よしっ、ボランティア部、全員揃ったところで、パーティだ!」

凛「賛成、だ!」

海未「うるさくしては駄目ですよ」

穂乃果「もぅ、お母さんみたいなこと言わないでよ~!」

花陽「あ、じゃあ、わたしがお茶を」

にこ「ことりぃ! あの煎茶はどこよぉ!?」

ことり「えっと……」

花陽「……おいしいのに」ウルウル

ことり「ごめんなさい、ちょっと切らしてて」

にこ「しょうがないわね」

花陽「あ、それじゃあ」

にこ「誰か、買い出し行って来なさい」

花陽「……」

凛「あぁっ、かよちんが今までにないダメージを受けてるにゃ!」

真姫「あなた、これ全部飲みなさいよ」

ドン

にこ「ポットごと!?」

穂乃果「まんじゅうだけじゃ足りないね」

希「そうやな、うちと真姫ちゃんとにこっちで買い出し行こか」

にこ「はぁ?」

真姫「……二人で充分でしょ」

希「それもそうやな。ほな、頼んだよ?」

にこ「……」

真姫「……」

希「ん?」

にこ「い、行くわよ、希」

希「最初からそのつもりやったのに~」

真姫「……」

穂乃果「ほら、真姫も行ってらっしゃい」

真姫「……どうして」

穂乃果「真姫が、ピアノの演奏で私を励ましてくれたように――」


海未「え――」

ことり「……!」


穂乃果「にこちゃんも私を元気にしてくれたんだよ」

真姫「ほのちゃん……?」

穂乃果「私……どうしてかわからないけど、テンションっていうのかな……」


穂乃果「気持ちがもの凄く落ちる時があるの」

467: 2014/04/12(土) 14:54:11.53 ID:cYCvkz/vo

にこ「え……?」

希「……」


穂乃果「寂しくて、胸にぽっかり穴が空いたような……、
     悲しくて……心が寒く冷えたような……気分になるの」


穂乃果「だけど……そんな時は、うみちゃんが話しかけてくれて、
      ことりちゃんに気分を明るくしてもらって」


穂乃果「真姫が、素敵な音を奏でてくれて」

真姫「……」

穂乃果「それと同じように、にこちゃんが楽しませてくれるの」


穂乃果「凛ちゃんと花陽ちゃん、希先輩……みんなが胸に空いたモノを埋めてくれるようで」


穂乃果「私……この部で、みんなと一緒で、楽しくてしょうがないんだ」


真姫「……」


穂乃果「だから、真姫も……にこちゃんと仲良くして欲しいって思う」

にこ「……」

真姫「……」

穂乃果「わがままだってことは、分かってるけど――」

真姫「――うん、わかった」

穂乃果「え?」

真姫「私に……何が出来るかわからないけど、ほのちゃんには笑っていて欲しいから」

穂乃果「真姫……!」

真姫「……行ってくるね」

穂乃果「うん、気をつけてね!」

にこ「というか、なんで部長の私が……」


希「ひょっとして、何か知ってるん?」

猫「……」


にこ「希、行くわよ」


希「話は後、やな」

猫「……」


穂乃果「希先輩が戻ってきて、クロちゃんも戻ってきた!」


穂乃果「今日はいい日だっ!」

468: 2014/04/12(土) 14:57:16.71 ID:cYCvkz/vo

凛「クロ猫はどうやって入ったのかな?」

花陽「動物だから、気配を消した……とか」

凛「なるほどにゃ」

花陽「……」

凛「この学校に入って良かったね、かよちん」

花陽「うん……よかった」


海未「無意識的に、あの表情をしているのだと思っていましたが……」

ことり「……自分でも気付いていたなんて」


猫「…………」



……




希「真姫ちゃん、そんなに離れないでこっちにおいで~」


真姫「べつに、ここでいいでしょ」


にこ「……のぞみ」

希「?」

にこ「その……助かった」

希「いろいろと、複雑そうやなぁ」

にこ「……なんか、事情を知ってそうね」

希「穂乃果ちゃんから、少し聞いてるから」

にこ「……」

希「ほんと、素直になれないんやね」

にこ「上級生でしょ、弱いとこなんてみせたくないわよ」

希「ま、それもにこっちやし、ええと思うけど」

にこ「……安心する」

希「え?」

にこ「希がいると、やっぱり安心できる」

希「……同い年やからね」

にこ「そういうことじゃなくて……、もういいわよ」

希「ふふ」


真姫「……」


……



469: 2014/04/12(土) 14:59:38.03 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「えー、それでは、パーティの音頭を部長にとってもらいたいと思います」


にこ「えっと、よく分からない催し物だけど……」


にこ「この部は最初、希と、ネコのクロだけだったわ」


希「……」

猫「……」


にこ「私が入っても、大した変化は起きなかったけど」


穂乃果「……」


にこ「穂乃果が入部して少しずつ、この部は変わり始めた」


ことり「……」

海未「……」


にこ「ことり、海未が入って、大きく変わっていった」


真姫「……」

凛「……」

花陽「……」


にこ「そして、どういう縁かは分からないけど、
    新入生も入部して……8人が集まって、いま此処にいる」


にこ「これからも、もっとこの部は変化していく。ぼんやりしている暇はないわよ、花陽」

花陽「は、はい!」

希「……」

にこ「今思えば、希と二人だけで定例清掃に参加した日々は――」


希「かんぱーい!」

穂乃果ことり海未「「「 乾杯! 」」」

真姫「……」

凛花陽「「 かんぱーい 」」

にこ「ちょっとー! これからがいいところなのに!!」

穂乃果「長いよっ!」

海未「これはなんでしょうか……?」

ことり「人生……ふんだり蹴ったり菓子……?」

真姫「あの人が買ってみようって」

希「パーティ用のおもしろお菓子やな」

凛「えっと……9個のお菓子の中にそれぞれバラエティに富んだ味が隠されています」

花陽「どんな味かは食べてみてからのお楽しみ……?」

470: 2014/04/12(土) 15:02:17.96 ID:cYCvkz/vo

希「8人しかおらんのやけど」

穂乃果「9人目は――……クロちゃん?」

猫「……」フルフル

花陽「首を振って」

穂乃果「拒否した!」

希「にこっち、部長権限で二つ食べてええよ」

にこ「わーい、スリルがあって胸がドッキドキ☆」

穂乃果「じゃあ開けるね」

バサッ

にこ「って、冗談じゃないわよ!? ハズレの可能性が高くなるじゃない!」

真姫「私が止めたのに聞かないからよ」

穂乃果「今日のにこちゃん、テンションが高いよね」

海未「希先輩が居て、嬉しいのでしょう」


ことり「見た目は普通のマカロン? だね」

凛「もぐもぐ」

海未「もう食べてますね……度胸があります」

凛「っ!?」

真姫「ハズレ?」

凛「マシュマロが入ってたにゃ」

穂乃果「このお菓子の方向性がわからないね」

海未「選択の余地がある、今のうちにいただきましょう」

真姫「もぐもぐ」

穂乃果「真姫はどう?」

真姫「チョコクリーム、ね」

花陽「当たりだね」

海未「私のは……せんべいですか」

凛「反応に困るにゃ」

にこ「なんかもう、グダグダね」

希「うちは、虹色マカロン~」

ことり「わぁ、綺麗~」

海未「希先輩の中身だけが本格的ですね」

凛「かよちんは?」

花陽「抹茶だった」

にこ「からっ、辛いっ!」

ことり「にこちゃんのはハズレだね」

穂乃果「くんくん……甘くていい匂いだ。いただきま――」

にこ「……っ」サッ

穂乃果「あっ……ちょっと! 人の取らないでよ!」

471: 2014/04/12(土) 15:04:06.02 ID:cYCvkz/vo

にこ「弱肉強食よ」パクッ

真姫「その内、天罰がくだるわよ」

にこ「か、からっ、すっぱ……苦いっ」

希「早々に下ったようや」

にこ「舌が痺れてきたっ……みずっ、水!」

花陽「ど、どうぞ」

にこ「ごくごくっ――うっ、なにこれ、ドロドロしてるっ」

花陽「玄米ドリンクです」

にこ「なんでこんなの用意してんのよぉっ」

穂乃果「ふんだり蹴ったりだね」

真姫「自業自得よ」

凛「用意しておいてよかったね、かよちん」

花陽「あまり、喜ばれてないけど……」

ことり「お口直しにマカロンをどうぞ~」

海未「またですか?」

真姫「……7つしかない」

希「早い者勝ちやな」

サッ

にこ「ごくごく――……ふぅ、ただの水がこれほど美味しいなんて」

穂乃果「これは……!」

ことり「美味しい~♪」

海未「とろけるような恋のようですね」

真姫「うーちゃん、もしかして……?」

海未「いえっ、違いますよ!」

凛「うまうま」

花陽「おいしいっ♪」

にこ「ちょっと待って、みんな何を食べてんの?」

穂乃果「マカロン」

にこ「わ……私のは?」

凛「そっちに一つ余ってるにゃ」

にこ「これふんだり蹴ったりの方でしょ!」


希「楽しそうやな、にこっち」

猫「……」


希「うちも頑張らないと……」


……




472: 2014/04/12(土) 15:08:14.59 ID:cYCvkz/vo

―― 梅雨


凛「負けたにゃ~!」

穂乃果「ふふん」

海未「素人相手に手を抜くという考えはないようですね」

穂乃果「おばあちゃんだって、子供の私に手加減なんてしなかったんだから!」

にこ「じゃあ、次は私と勝負よ」

穂乃果「負けた方は、駅前のパン屋さんで限定一日10個の焼きそばパンを買ってくる」

にこ「臨むところよ!」


希「……けほっ」

猫「……」


……




―― 初夏


穂乃果「のど自慢大会に出ることになったんだ」

希「君たち、アクティブやね。ボランティア部、全員?」

穂乃果「そうです」

海未「……私は聞いていませんが?」

穂乃果「あ、……参加することになったからね」

海未「……」

ことり「全員って、8人で?」

穂乃果「そうだけど……。希先輩はどうですか?」

希「そうやな、思い出になりそうでええやん。……でも、うち……歌は得意じゃないんよ」

穂乃果「大丈夫です! 私も得意じゃありませんから!」

ことり「それは大丈夫って言わないよ~」

穂乃果「真姫と花陽ちゃんに歌い方を教わればいいんだよ」

ことり「……そうだね」

希「ふぅむ」

穂乃果「どうですか?」

希「うちより先に、説得するべき相手がいるんと違うかな?」

穂乃果「え?」


穂乃果「……えっと?」

ことり「あ……」


穂乃果「うみちゃんが居ない!?」


ガラガラ......ピシャ

タッタッタッタ......

473: 2014/04/12(土) 15:11:45.41 ID:cYCvkz/vo

ことり「走り去っていく足音が……」

穂乃果「逃げた!?」ガタッ

タッタッタ


ガラガラッ


「うみちゃ~ん!」

タッタッタ......



……




海未「嫌です! 人前で歌うなんてっ!」

穂乃果「ほ、ほら……旅の恥は掻き捨てっていうでしょ?」

海未「地元で何を言っているのですか!」

穂乃果「可愛い子には旅をさせよって――」

海未「私の指摘が耳に入らないのですか?」ズイッ

穂乃果「ち、近いよ……!」


希「にこっちはどう言うとるん?」

ことり「それが……」


ガラガラッ


にこ「さぁ、発声練習するわよー!」


ことり「と、ノリノリで」

希「なにか、裏がありそうやな」


海未「絶対に嫌です」

穂乃果「うみちゃんの歌声、綺麗なのになぁ」

海未「……」

穂乃果「みんなに聞いて欲しいって思ったんだけどなぁ」

海未「……本当に?」

穂乃果「うん!」

海未「……」

穂乃果「ね、参加しようよ」

海未「お断りします」

穂乃果「あれっ、心が揺れたように見えたんだけどっ!?」

にこ「なによ、まだ海未を落としてないわけ~?」

穂乃果「難攻不落なんだよぉ」

にこ「私に任せなさいって」

474: 2014/04/12(土) 15:13:47.32 ID:cYCvkz/vo

海未「……誰が何を言おうと私は参加しません」

にこ「いいから聞きなさい。のど自慢大会の優勝者には豪華賞品がプレゼントされるのよ」

海未「豪華賞品……ですか?」

にこ「そうよ。とても注目されてて、
   都内の強者たちが参加するとかしないとかもっぱらの噂よ」

希「……それはなんなん?」

海未「も、もしかして……北海道旅行とか……?」

穂乃果「あれ、心が揺れてる」

ことり「北海道に行きたいのかな……」

にこ「優勝者には……なんと!」

海未「……」ゴクリ

にこ「ジャラジャラジャラジャラ……」

海未「口ドラムはいいですから、さっさと言ってください」

にこ「どこでも歌えるカラオケマイクが贈呈されるのよー!」

海未「……」

希「……」

にこ「あまりにも衝撃的で声が出ないみたいね。だけど、驚くのはこれからよ。
   なんと、6万5000曲が内蔵された――」

海未「そろそろ剣道部の時間です。遅れないでください、穂乃果」ガタ

穂乃果「あ、うん……」

ことり「私もそろそろ……」

希「プレゼン、下手やな……にこっち」

にこ「どこでも歌えるなんてとっても魅力的じゃない。
   学校の屋上でも、中庭でも体育館でも、場所があれば問題ないわ」


ガラガラ......ピシャ


にこ「海でも山でも歌えちゃうのがいいわよね。ストレス解消に持ってこいよ」


にこ「まぁ、私にストレスなんて縁のないものなんだけど」


にこ「誰もが小さい頃から憧れてるアイテムの一つよね~」


にこ「あんた達が貸して欲しいってどうしても頼むのなら、一緒に歌ってあげてもいいけど――」


にこ「――って、誰もいないんかーい!」


……




475: 2014/04/12(土) 15:16:21.91 ID:cYCvkz/vo

―― のど自慢大会の日


凛「あ、あれ……? カラオケ大会じゃなかったの?」

花陽「……そうだよ?」

凛「どうして人がたくさん集まってるの?」

花陽「のど自慢だから……」

凛「えー!? 聞いてないにゃー!?」

花陽「わ、わたしも怖いけど……みんなと一緒なら」

凛「かよちんは人前で歌の練習してるから慣れてるだろうけど、凛は……!」

花陽「でも、全国大会に出場するんだから……」

凛「人の前で歌うのと走るのとでは全然違うよー!」

花陽「い、一緒に歌の練習したよね」

凛「あれは、合唱部で役立つのかと思って参加しただけだよ。
  凛は、のど自慢大会に出るって一言も聞いてないのに……」

花陽「凛ちゃん、歌上手だったよ?」

凛「そんなことないよ……」

花陽「真姫ちゃんも……褒めてた」

凛「……」

花陽「人前で何かをするって……勇気がいるよね」

凛「……」

花陽「凛ちゃんが陸上部で頑張ってるから……わたしも頑張ろうって思って……」

凛「…………」

花陽「本当に嫌なら――」

凛「ううん、凛も勇気を出すよ!」

花陽「凛ちゃん……」

凛「かよちんに負けないにゃ!」


にこ「意外とあっさり壁を乗り越えたわね」

真姫「あっさりなわけ無いでしょ。
    花陽の努力を知っている凛だからできることなのよ」

にこ「……相変わらず冷たい風を吹かせるわね」


希「頑張ってな、みんな」

海未「頑張ってください」

穂乃果「なんで海未ちゃんも応援側に回ってるの! こっちでしょ!」グイッ

海未「や、やっぱり無理ですっ」

穂乃果「うみちゃんの歌声、私すきだよ?」

海未「……」

穂乃果「芯のある強くて優しい声」

海未「……ほのか…」

穂乃果「だから、みんなに聞かせてあげようよ」

海未「……」

476: 2014/04/12(土) 15:18:08.92 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「本当に嫌なら――」

海未「いやです」

穂乃果「あぅ」

海未「……どうなっても、知りませんからね」

穂乃果「うみちゃん!」ダキッ

海未「ちょ、ちょっと穂乃果!」

穂乃果「そんな勇気を出すところ、大好きだよっ」

海未「……もぅ……怖いんですからね」

穂乃果「私たちがいるから大丈夫だよ!」

ことり「想像以上の人が集まってる……」

希「そうやなぁ……」

猫「……」


にこ「優勝は私たちのものよー!」


……




カーン


 ワハハハハ

アハハハハ



……



477: 2014/04/12(土) 15:21:32.14 ID:cYCvkz/vo


―― 翌日:ボランティア部


にこ「……」ズドーン


希「お笑い枠にされてたね」

真姫「誰かさんが最初に外すから、審査員が勘違いしたのよ」

穂乃果「鐘一つ……」

凛「凛も外しちゃったから、勢いに任せたにゃ」

花陽「それも原因だね……」

海未「こうなると思っていました」

ことり「海未ちゃんは、そんなに気にしていないんだね」

海未「会場のお客さんを羊だと思えば、どうということはありません」

穂乃果「なぜ羊?」

ことり「ほら、ジンギスカンってラム肉を使った料理があるから」

穂乃果「?」

ことり「北海道の定番なんだよ」

穂乃果「そんなに北海道に行きたいの!?」


にこ「私の……カラオケマイク……っ」ズドーン

真姫「あの優勝者、やるわね」

花陽「うん、上手だった」

穂乃果「確か、鈴音って名前だった」

にこ「覚えてなさいよぉ……!」

海未「逆恨みですか」

ことり「思い出にはなった……かな?」


希「……ふぅ」

猫「にゃ?」

希「だいじょうぶ」


……



478: 2014/04/12(土) 16:12:17.69 ID:cYCvkz/vo

―― 午後:ボランティア部


希「夏がすぐそこやな……」

にこ「午前中で授業が終わるって開放感、たまんないわねー」

希「うん……」

にこ「今年の夏は、それとなく盛り上がってるわね、この学校」

希「……そうやなぁ」

にこ「私たち演劇部を筆頭に、剣道部、陸上部、合唱部……活躍が目覚ましいわ」

希「この力は、……なんやろな」チラッ


猫「……」スヤスヤ


希「……ふぅ」

にこ「ねぇ、のぞみ」

希「ん?」

にこ「どこか、出かける?」

希「どこか、って?」

にこ「映画とか、ショッピングとか?」

希「珍しいやん、そんな誘いなんて」

にこ「じっとしていられないっていうか。……せっかくだから、いいでしょ?」

希「うーん……、どこか行きたいところでもあるん?」

にこ「そういうわけじゃないけど。私と二人で出かけたことってないじゃない」

希「あるよ。山にピクニックへ行ったことが」

にこ「あの時はクロがいたでしょ。というか、自治会の集まりでしょ!」

希「そうやったな」

にこ「なによ、反応が鈍いわね……私とじゃ嫌なの?」

希「逆に、にこっちは積極的やな……どうしたん?」

にこ「だから、じっとしていられないのよ。なんか、胸がむず痒いっていうか」

希「……」

にこ「あぁ、もう! 『時間』がもったいないから、ほら、行くわよ!」ガタ

希「にこっち……」

にこ「?」

希「おいで」

にこ「なによ……?」


希「そのまま――」

にこ「?」


スルスル


にこ「ちょっと!?」

希「……」

479: 2014/04/12(土) 16:13:50.32 ID:cYCvkz/vo

にこ「な、なんでリボンを外すのよ!?」

希「ふふ、……ええから」


ぷちぷち


にこ「ちょちょちょ!?」

希「ボタン、かけ間違えてるよ」

にこ「え?」

希「そそっかしいなぁ」

にこ「……体育の時間に慌ててて……って! なにボタンまで外してんのよ!?」

希「うちが直してあげる」


ぷちぷち


にこ「脱がされてるようで恥ずかしいわよ……!」

希「ウブやなぁ……。Tシャツは着とるんやし、女の子同士やから平気やん?」

にこ「~~ッ!」

希「そんな、照れると……うちも恥ずかしくなってくるわぁ」


ぷちぷち


にこ「やぁぁ……っ」

希「動かないで」


にこ「……っ」

希「……ふぅ」

にこ「……?」

希「……にこっちの肌、白くて綺麗」

にこ「あ、あのね……そういうこと言わないでよ」

希「……」


ぷちぷち


にこ「ま、まだぁ?」

希「もうちょっと」

にこ「こういうところ、穂乃果に見られたら――」


ガラガラ


穂乃果「あっつぅー、もうすっかり夏だよねー」

海未「心頭滅却すれば火も――え」

ことり「――っ!?」


希「……」

にこ「ち、ちがっ!」

480: 2014/04/12(土) 16:15:08.67 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「……」

海未「まさか、そう来るとは思いましませんでした」

ことり「い、いくらなんでもっ……場所を選んだほうがいいと……思うよっ!」


希「……」

にこ「待って、待って!」


穂乃果「クロちゃん、おいで」


猫「……」ピョン

シュタッ

猫「……」チラッ


にこ「……」


猫「……」

テッテッテ


にこ「なによ!?」


穂乃果「私たち……邪魔だったんだよね」

海未「それでは、ごきげんよう」

ことり「さ、さようならっ」

穂乃果「今まで楽しかったよ!」


ガラガラッ

ピシャッ


にこ「あ……あれ? お別れなの?」

希「はい、出来た」

にこ「あんたはあんたで続けてたわけ……?」

希「ふぅ……」

にこ「希……あんたまさか……」

希「追わんの?」

にこ「そ、そうだった!」

タッタッタ


ガラガラッ


「待ってよーっ!!」

481: 2014/04/12(土) 16:15:39.11 ID:cYCvkz/vo


希「…………」


希「はしゃぎすぎたかな……」


希「もうちょっと……一緒に居たかったのに……」


希「……はぁ……はぁっ」


希「みんなと……学校で……過ごして……っ」


希「……ッ」


希「…っはぁ……はぁっ……うぅ……っ」


……



482: 2014/04/12(土) 16:20:34.86 ID:cYCvkz/vo

穂乃果「だよねー」

にこ「あんた、さっきまで目を合わせてくれなかったじゃない」

穂乃果「もう、あの頃には戻れないんだなぁって思っちゃって」

ことり「あはは……」

にこ「……海未?」

海未「あ、えっと、空が綺麗ですネ」

にこ「なによその外国人ばりの発音!」


「にゃー!」


穂乃果「クロちゃん?」

にこ「部室からね」

海未「そういえば……」

ことり「いつの間にか居なくなってたね」


「にゃーー!!」


穂乃果「……!」ダッ

タッタッタ

にこ「穂乃果……?」

海未「ただ事ではない、という声です!」

ことり「え、え!?」


穂乃果「希先輩!」


希「――」


海未「ど、どうして寝て……?」

穂乃果「倒れたんだよ! 先生呼んできてッ!」

にこ「のぞみ……?」


穂乃果「はやく!!」


ことり「あ、うん!」

タッタッタ


にこ「な、なによ……これ……」

海未「ほ、ほのか……」


希「はぁ――はぁ――ッ」

穂乃果「凄い熱……」


猫「……」


……



483: 2014/04/12(土) 16:23:50.06 ID:cYCvkz/vo

―― 翌日:生徒会室


生徒会長「――そう」

穂乃果「……」

生徒会長「……わざわざ、報告……ありがとう」

穂乃果「いえ……」


生徒会長「…………」


副会長「書類の方、目を通しておいてください」

生徒会長「……ん」


穂乃果「それでは、失礼します」



―― 廊下


「高坂さん!」


穂乃果「?」

副会長「私からもお礼を言うわね」

穂乃果「……希先輩が伝えて欲しいって言われてたことを……言っただけです」

副会長「東條さんが……」

穂乃果「……」

副会長「生徒会長ね、東條さんのこととても心配していたの」

穂乃果「……はい。いつも……二人が話をしているところ、みていました」

副会長「あなた達、ボランティア部のように、仲良く……とはいかなくても、
     生徒会の中で、誰よりも信頼していたのね」

穂乃果「……」

副会長「書記という肩書だけど……実質、副会長のような働きをしてて」


副会長「二人とも、此処……東京では馴染みのないしゃべり方するでしょ?」

穂乃果「……はい」

副会長「だからかな、私たちには分からない、共通のナニカがあったんだと思う」

穂乃果「……」

副会長「高坂さんの報せを聞いて、今……相当ショックを受けているのよ」

穂乃果「……」

副会長「変なことを言うようだけど」

穂乃果「……?」

副会長「私たちの分まで……、えっと……うーん……上手く言えないわね」

穂乃果「大切な人ですから、また戻ってくるって、信じます」

副会長「うん。……私たち、生徒会も……東條さんが戻ってくるの待ってるって伝えてね」

穂乃果「……はい、必ず」

486: 2014/04/13(日) 03:33:11.05 ID:tBzZ27J8o

―― 2年生の教室


穂乃果「……あ」


凛「穂乃果先輩……」

花陽「……」

真姫「……」


穂乃果「今、ここでは話せないから……放課後に、部室でね」


……




―― 放課後:ボランティア部


穂乃果「元々、体の弱い体質だってことは知ってるよね」

凛「……うん」

穂乃果「球技大会が終わって、
     しばらく休んでたけど……その時は改善してたって」

花陽「……」

真姫「まだ、ちゃんと回復していなかったってこと?」

穂乃果「……うん。……平気だからって、家族の人にそう言ってたみたいで」

海未「……どうして、そんなことを」

穂乃果「…………」

ことり「それで、希先輩は……」

穂乃果「昨日、私が病院で聞いた話では――」


穂乃果「当分、学校には通えないだろうって」


ことり「え……」

海未「そんな……」

真姫「……当分って…」

凛「な、夏休みが終わったらまた逢えるにゃ!」

花陽「……っ」

穂乃果「うん、そうだよ。きっと」

ことり「……」

海未「……」

真姫「……あの人には?」

穂乃果「ううん、言ってない」

凛「そういえば、どうして居ないの?」

穂乃果「にこちゃんには、聞かせないほうがいいと思って」

花陽「どうして……?」

穂乃果「私がね、希先輩に……学校の状況を伝えてて……」

海未「……?」

487: 2014/04/13(日) 04:07:22.87 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「その日にあったこととか、楽しかったこと、面白かったこと、……不安に思ってること」

ことり「……それって、もしかして」

穂乃果「うん。――真姫とにこちゃんのことも相談してた」

真姫「……!」

穂乃果「にこちゃんのこと、よく知ってる希先輩なら、どうするんだろうと思って」

花陽「……」

穂乃果「だけどね、……昨日、病院で……無理していたんじゃないかって話を聞いて……」


穂乃果「頼りすぎていたのかなぁって……」


海未「いえ、それは違いますよ」

穂乃果「……」

海未「確かに、希先輩がこの部室に顔を出したことで……ボランティア部はいつもの雰囲気に戻りました」


海未「穂乃果を中心とした、にこと真姫のわだかまりも……解消したと言っていいでしょう」


海未「ですが、希先輩が学校へ来たのは、希先輩自身の意志です」

穂乃果「……」

海未「その意志を、穂乃果が気に病むのは間違いですよ」

穂乃果「でも……私が……もっと真姫やにこちゃんに――」

海未「ほのか……、それを言ってしまったら、真姫やにこの行動を否定することになるんですよ?」

穂乃果「……!」

海未「ハッキリと言わせてもらいますけど――……真姫」

真姫「え……?」

海未「『あの時』のあなたの行いは、幼い子供、そのものでした」

真姫「――!」

ことり「……」

海未「ですが、それは穂乃果との間にある大切なモノがあるからこそです」


海未「それと同じく、にこにも思っていたことがあるはず」


穂乃果「あ――……」

海未「思い当たる節が?」

穂乃果「うん……ある」

海未「……『その時』、『その時』の行動をああすればよかった等と、
   思い返すのは意味の無い事だと私は思います」

穂乃果「……」

海未「さっも言いましたが、あなたは真姫の行動を否定するのですか?」

穂乃果「ううん、しない」

真姫「……」

穂乃果「もっと早くに……希先輩の様子に気づけなかったのかなって……思うけど」

ことり「今考えるのは、それじゃないんじゃないかな?」

穂乃果「え――?」

488: 2014/04/13(日) 04:09:21.41 ID:tBzZ27J8o

ガラガラッ


にこ「よしっ、みんな揃ってるわね!」

穂乃果「にこちゃん……?」

にこ「さぁ、やるわよ!」

凛「え?」

花陽「なにを……?」

にこ「まずは穂乃果!」ビシッ

穂乃果「はい!」

にこ「あんたと海未は剣道部でいい成績を……全国優勝しなさい!」

穂乃果「はい!」

海未「……?」

にこ「凛も陸上部で全国一位になるのよ!」

凛「にゃ?」

にこ「花陽と真姫も合唱部で頑張って一位!」

花陽「?」

真姫「待って、いきなりなんなの?」

にこ「ことりは私と演劇部で全国大会、最優秀賞よ!」

ことり「はい……?」

にこ「よし、完璧な指示だわ」

海未「あの、穂乃果以外の6人がよく分かっていないのですが」

にこ「まったく、鈍いわねぇ」

海未「……」

にこ「夏休みが終わって、学校に来た時に垂れ幕が下がってたら凄いでしょ」

ことり「スゴイです」

穂乃果「私たちで、その偉業を成し得ようってことだよ!」

にこ「そうよ」

489: 2014/04/13(日) 04:10:06.32 ID:tBzZ27J8o

真姫「どうしてよ」

にこ「……それは……その」

海未「なぜそこで口ごもるのですか」

凛「なぜ~?」

花陽「もしかして……希先輩のため……?」

にこ「近からず遠からずね」

穂乃果「ううん、ピンポイントだよ、花陽ちゃん」

にこ「……」

穂乃果「希先輩が戻ってきた時に驚かせよう!」


ことり「そういう意図だったんだね」

海未「にこと穂乃果は、思考回路が似ているところがありますね」


真姫「……」

凛「凛も、もっと頑張るにゃ!」

花陽「わ、わたしも……!」


にこ「……」


……




490: 2014/04/13(日) 04:10:50.32 ID:tBzZ27J8o

―― 夏休み前日:ボランティア部


にこ「合宿?」

穂乃果「うん。真姫のおかげで、海の合宿に行くんだ」

にこ「学校でやりなさいよ」

穂乃果「学校と海とじゃ、環境が全然違うよね」

にこ「……ことりも?」

ことり「はい、そうです」

にこ「……」

真姫「……なによ」

にこ「一人くらい空いてるでしょ?」

真姫「そんなことないわ」

にこ「みんなで全国へ行こうって誓ったわよね」

真姫「あなたが勝手に誓わせたんでしょ」

にこ「……」

凛「う~っ、海で合宿なんて、楽しみにゃ!」

花陽「り、凛ちゃんっ」

にこ「花陽はともかく、どうして凛まで……」

真姫「陸上部だから、ついでよ、ついで」

凛「頑張るよ~!」

にこ「わ、私一人だけ……お留守番……?」

真姫「そういうことね」


穂乃果「――真姫」

真姫「……」


……



491: 2014/04/13(日) 04:13:56.42 ID:tBzZ27J8o

―― 夏休み初日:西木野家別荘


花陽「ご、豪華な建物……」

凛「すっごいにゃ~!」

にこ「な、中々ね」

穂乃果「にこちゃんも、ちゃんと練習するんだよ?」

にこ「わかってるわよ。遊びに来たんじゃないんだから」


真姫「……どうして、いつもいつも……あの人ばっかり」

ことり「まぁまぁ」

海未「穂乃果に言われて断れる真姫でもありませんからね」


……




凛穂乃果にこ「「「 海だー! 」」」

テッテッテ


海未「あ、こらっ!」

花陽「えっと、買い出しは……?」

真姫「もう知らない」

主将「どうして矢澤がいるんだ?」

副主将「今更、何を言ってるのよ」

次鋒「みんな元気だなぁ……重圧とかないのかなぁ」


……



492: 2014/04/13(日) 04:15:01.54 ID:tBzZ27J8o

―― 夜:波打ち際


ザザーン

 ザザーン


にこ「……」


主将「びっくりした……こんなところにいたのか」

にこ「……ボンヤリしてただけよ」

主将「矢澤も料理できるのな」

にこ「……まぁね」

主将「どうした?」

にこ「……べつに」

主将「?」

副主将「主将、ミーティングをするから、こっちに」

主将「おう」

スタスタ

副主将「……」

スタスタ


にこ「……気を遣われたわね」



にこ「…………」


にこ「なんで……ここに居ないのよ……」


「にこちゃーん」


にこ「……こっちよ」


穂乃果「あぁ、いたいた。副主将が……」


にこ「なに?」

穂乃果「ううん、なんでもない。……独りでどうしたの?」

にこ「……月を見てた」

穂乃果「綺麗だね……、蒼白い光」

にこ「同じこと言ってる」

穂乃果「え?」

にこ「自治会の遠足があったって、言ったでしょ?」

穂乃果「うん」

にこ「その帰りにね、この月を見たのよ。……二人と一匹で」

穂乃果「……」

にこ「月の光を受けて……今にも消えそうな雰囲気で」

穂乃果「……」

493: 2014/04/13(日) 04:16:23.49 ID:tBzZ27J8o

にこ「綺麗な光……って」

穂乃果「……そっか」

にこ「……」

穂乃果「『今度は』……8人で来ようね」

にこ「『今度』って?」

穂乃果「いつの日か、必ずって意味」

にこ「……足りないけど」

穂乃果「じゃあ、訂正。8人と一匹で、一緒にいよう」

にこ「……あんた、年下なのに……よくわからない安心感があるわね」

穂乃果「初めて言われた」

にこ「念を押すようだけど、こんなこと他の人にいうんじゃないわよ?」

穂乃果「あ……もう、遅いかも」

にこ「え?」


花陽「そういえば、またクロちゃんが居ない……よね」

凛「うん、学校の周りにも居なかったよ」

海未「また、来なくなったのでしょうか」

ことり「もしかして、希先輩と一緒にいる……のかな?」

真姫「……」


にこ「――ッ!?」

穂乃果「あはは、みんな後ろにいたんだよねぇ」

にこ「今のは演技の一つなんだから、誤解しないでね」

海未「はい」

ことり「分かってます」

にこ「物分かりいいのがすごく嫌なんだけど」

凛「ふにゃぁぁ……ネムい」

花陽「明日もあるから、早く寝ようね」

真姫「…………」


……



494: 2014/04/13(日) 04:18:19.90 ID:tBzZ27J8o

―― 8月6日:東京駅


ガヤガヤ

 ガヤガヤ


穂乃果「なにかのイベントをやってるみたいだよ」

にこ「結構な人だかりね」

ことり「なにかな?」


「みんな~っ! きてくれてありがとね!」


穂乃果「あ……、テレビによく出てる子だ」

花陽「たしか、同い年だったはず……」

にこ「イベントねぇ……」

ことり「あまり興味なさそうだね」

にこ「まぁね。……知り合いに頑張ってる子がいるけど、辛いことばっかりで楽しそうじゃないのよね」

海未「知り合い……ですか」

にこ「ほら、のど自慢で優勝した子よ。あの後に会って、少し話をしたの。
   知名度が低いから、苦労してそうだったわ」

穂乃果「ふぅん……。やっぱり芸能界って大変なんだね」


「早く行かないと……」


どんっ


にこ「おっとっとと」

「あ、すいません。前をよく見ていませんでした」ペコリ


穂乃果「同じ髪型だ……」


にこ「こっちも前を見ていなかったから、気にしないでいいわよ」

「……はい。……それでは」

テッテッテ


にこ「……」

穂乃果「観光客かな?」


「どうした、私たちの縄張りへ入ってくるんじゃないって絡まれたか?」

「何を言っているんですか、ぶつかっただけです」

「本当に、何を言っているんだおまえは」

「いやぁ、東京って恐ろしいトコだって聞いてるからさぁ」

「それより、早く行きましょう。乗り遅れたら大変ですよ」

「そうだな。おバカな部長は置いていこう」


「都会は怖ぇなぁ、牛さ歩いてねぇべ、って……ちょっと待ってぇー!」


495: 2014/04/13(日) 04:20:50.46 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「愉快な人達だね」

にこ「……そうね」

花陽「仲良さそうです」

にこ「私たちも移動しましょ。主将たちが待っているんでしょ?」

穂乃果「待ち合わせの時間よりまだ早いから、もう少しのんびりできるよ」

海未「そういえば……真姫と凛は?」

ことり「お手洗い」



「みんな待って~」

スッ

にこ「?」


「あ、あれ? 先に行ったと思ってたけど」

「お土産を買ってたの。雷おこし! 略してかみおこ~!」

「略し方、たぶん間違えてる」

「逆に都会で牛が歩いてたら、そっちのほうが怖いよなー」

「まだ言ってるのか。そんな事考えているお前のほうが怖い」


にこ「……」


にこ「私もそろそろ、この髪型を卒業したほうがいいのかもしれないわね」

穂乃果「そんなっ、そんなことしたらにこちゃんだと判別できなくなるよ!」

にこ「……」バサッ

花陽「解いちゃった……」

ことり「いまのは失礼だよ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「あはは、ごめんごめん」

にこ「……」

穂乃果「あ、ごめん! にこちゃんはにこちゃんだよ!」

にこ「ふん」プィッ

穂乃果「あぁっ、そっぽ向いた! 
     にこちゃんの好きなアイス、買ってあげるから機嫌直して~!」

にこ「うるさいわね。髪を解いたから、私はもうにこじゃないわよ」

穂乃果「あぁ……」

海未「へそを曲げてしまいましたね」

花陽「わ、わたしもアイス追加しちゃいます!」

にこ「……」チラ

穂乃果「アタリが出たら3本だよ!」

にこ「……」ソワソワ

穂乃果「もうちょっとだ……うみちゃんもフォローしてよ、お願い!」

海未「4本も食べるのですか、お腹を壊さないか心配です」

ことり「当たりは確実なんだね」

496: 2014/04/13(日) 04:22:03.82 ID:tBzZ27J8o

凛「お待たせしたにゃ」

真姫「どうして騒いでいるの?」

ことり「にこちゃんが……」

穂乃果「じゃあ、じゃあ……私のもう片方を結って~……」

にこ「?」

穂乃果「にこにこにーこ♪」

にこ「あんたバカじゃないの?」

穂乃果「」ピシッ

海未「石化しましたね……」

ことり「笑顔のままで……」

真姫「バカはないんじゃない?」ギロ

にこ「ふーんだ」


海未「あ、主将たちが来ましたよ」

ことり「穂乃果ちゃん~」ユサユサ

穂乃果「うぅ……結構なダメージが……ひどいよにこちゃん」


真姫「バカ」

にこ「バカとはなによ、バカ!」


凛「子供が二人いるにゃ」

花陽「……うん」

海未「今日から全国大会です。気を引き締めて行きますよ、穂乃果」

穂乃果「そうだね。一つ一つ、相手を見て……うん」


穂乃果「よぉっし!」


……



497: 2014/04/13(日) 04:24:12.58 ID:tBzZ27J8o

―― 8月31日:音ノ木坂学院



生徒会長「頑張ったんやね」

副会長「はい。吹奏楽部は全国とはなりませんでしたが、健闘していました」

生徒会長「……」

副会長「秋には合唱部と演劇部の全国コンクールがあります」

生徒会長「あと1年早ければ、何か変わっとったんやろか」

副会長「……それは、誰にも分からないことです」


凛「わぁー! ちゃんと用意してあるにゃー!」

穂乃果「本当だー!」


生徒会長「二人ともおめでとう」


穂乃果凛「「 ありがとうございます! 」」


副会長「陸上部、凛さんは全国三位。剣道部、全国制覇……」


凛「言い訳じゃないけど、あの時、頭痛がなかったら一位になってたのに……!」

穂乃果「三位でも凄いよ凛ちゃん!」


生徒会長「ウチは生徒会室に戻ってるわ」

副会長「わかりました」


生徒会長「……」

穂乃果「……?」


スタスタ......


凛「穂乃果先輩を見てたような?」

穂乃果「……」

副会長「ボランティア部に所属する生徒が活躍してるって、注目してるのね」

穂乃果「でも、なんだか寂しそうな表情でした……」

副会長「東條さんが、生徒会であなた達のことをよく話してたから……」

穂乃果「そうですか……」

凛「戻ってきたら、褒めてくれるよね?」

穂乃果「……うん!」


……



498: 2014/04/13(日) 04:26:05.08 ID:tBzZ27J8o

―― 9月中旬:ボランティア部


にこ「穂乃果と凛が頑張って誓いを守ったんだから、私も頑張らないとね……」

穂乃果「頑張るのはいいけど、楽しまないとだよ?」

にこ「全国経験者は言うことが違うわね」

穂乃果「なんていうのかな……私は、剣道部での活動も楽しかったから」

にこ「……」

穂乃果「主将に稽古つけてもらって……うみちゃんと本番さながらの練習試合をして……」
     みんなで合宿に行って。一つ一つの時間を、ちゃんと楽しんでた」

にこ「……」

穂乃果「にこちゃんは、演劇部楽しいでしょ?」

にこ「……そうね。……舞台に立って注目を浴びるのは楽しいかも」

穂乃果「うん。それが大事なんだよ、きっと」

にこ「……」

穂乃果「それで……入学希望者が増えて、
     廃校を阻止できたらもっと嬉しいなぁ、なんて」

にこ「欲張りねぇ」

穂乃果「だって、失いたくないもん」

にこ「……そうね」

穂乃果「……」

にこ「演劇部のみんなも、真剣に取り組んでるし、ことりも手伝ってくれてる」


にこ「やっぱり、参加して終わりじゃ嫌。……最優秀賞取らないとね」

穂乃果「頑張ってね!」

にこ「まぁ、ちょい役なんだけど」

穂乃果「希先輩もきっと応援してくれてるよ」

にこ「……」

穂乃果「希先輩、まだ……?」

にこ「うん……、出席日数が危なくなってきてるのに」

穂乃果「そうなんだ……。お見舞いには……?」

にこ「行ってない。……部活を優先しろって言うから」

穂乃果「……」


にこ「……」


……



499: 2014/04/13(日) 04:27:31.94 ID:tBzZ27J8o

―― 10月上旬:中庭


ピッピップ

にこ「……明日が本番だってのに……連絡もよこさないなんて」


『おかけになった電話番号は、現在使われておりません』


にこ「え……?」


にこ「番号変えた……?」


にこ「う、嘘でしょ……?」


ピッピッピッピッ

ピップッピップップ


にこ「…………」


ピッ


にこ「……」


pipipipipipipi


にこ「……な、なによそれ!」


にこ「メールも送れないってどういうことよ……希ぃッ!」


……




―― 放課後:ボランティア部


穂乃果「ここにもいない……」


穂乃果「……」

ピッピッピ


trrrrrr


『はい』

穂乃果「部室にもいないよ」

『……そうですか。電話はかけてみましたか?』

穂乃果「何度かかけてるんだけど……」

『繋がるということは、どこかに置き忘れたか……或いは――』

穂乃果「……」

『出たくない、という意思表示かもしれません』

500: 2014/04/13(日) 04:28:57.49 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「にこちゃん……何かあったのかな……」

『それは見つけてから聞きましょう』

穂乃果「そうだね……」

『あまり、悪い方向に考えないでくださいね』

穂乃果「うん……ありがとう、うみちゃん」

『いえ。こっちはことりと合流して一緒に探しますから』

穂乃果「うん。……お願い」


プツッ


穂乃果「もぅ……みんな心配して――」


pipipipipi


穂乃果「あ――! もしもし!」

『……』

穂乃果「どこに居るの、にこちゃん!」

『希の……家の前』

穂乃果「ど、どうして……?」

『見舞いよ、見舞い。……みんなから着信があったけど、なんなの?』

穂乃果「なんなのじゃないよ! 突然いなくなるからみんな心配してたんだよ!?」

『……そう。……悪かったわね』

穂乃果「……なにかあったの?」

『…………』

501: 2014/04/13(日) 04:30:27.47 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「にこちゃん……?」

『ねぇ、穂乃果……』

穂乃果「な、なに?」

『とても辛いことがあったら、あんたならどうする?』

穂乃果「え――」

『……』

穂乃果「……」

『……聞かせて』

穂乃果「ことりちゃんが居る。うみちゃんが居る。真姫が居る」

『……』

穂乃果「凛ちゃん、花陽ちゃん……そして、にこちゃんが居る」

『……』

穂乃果「だから、乗り越えられる」

『……そう』

穂乃果「ね、にこちゃん、話を聞かせて?」

『……どうしてよ』

穂乃果「ふつうじゃないからだよ」

『……大丈夫だから』

穂乃果「大丈夫って声じゃないよ」

『ありがと、穂乃果』

穂乃果「ちょ、ちょっとにこちゃん?」

『今は独りでいたいから……。また、明日ね』

プツッ


穂乃果「にこちゃん!?」


ピッピッ


『おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか――』


穂乃果「……!」


……



502: 2014/04/13(日) 04:31:30.89 ID:tBzZ27J8o

―― 夜:高坂邸


『まだ連絡が?』

穂乃果「うん……ずっと切ったままみたい……」

『……』

穂乃果「なにあったんだよね……」

『にこは、「また、明日」と言ったんですよね』

穂乃果「うん……」

『それなら大丈夫です。明日を待ちましょう』

穂乃果「……」

『その時に、心配させるなと、穂乃果が怒ってやればいいんです』

穂乃果「……そうだね」

『それでは、また明日』

穂乃果「うん、おやすみ」


プツッ


穂乃果「…………」


穂乃果「……なにが、あったんだろ」


猫「……」


穂乃果「気になって眠れそうにな――」


猫「……」


穂乃果「ネコ? ……あれ、クロちゃん?」


猫「私の声が聞こえますか?」


穂乃果「どこから入っ――……えっ!?」

猫「聞こえるようですね。意思の疎通を図ったわけではないのに」

穂乃果「ネコがしゃべった!?」

猫「『その時が来た』ということでしょうか――」


……



503: 2014/04/13(日) 04:33:05.45 ID:tBzZ27J8o

―― 翌日:ボランティア部


真姫「しょうがないわよ、ことちゃん」

ことり「……うん」


ガラガラ


花陽「あ、あれ……?」

凛「ことり先輩がいるにゃ」

ことり「いらっしゃい」

花陽「演劇部の応援に行ったはずでは……?」

ことり「うん、さっき戻ってきたんだよ」

花陽「そうですか……。あの、それで……」

真姫「残念な結果よ」

凛「残念……?」

ことり「にこちゃんが出られなくなったから、代役が入ったんだけどね……」

花陽「……」

凛「にこ先輩……、朝、見かけたのに……」

真姫「様子はどうだった?」

凛「話しかけられなかった……」

真姫「……そう」

ことり「……」

花陽「穂乃果先輩は……?」

ことり「……生徒会長と一緒に、理事長室へ」

凛「理事長室……?」

花陽「ど、どうして……?」

真姫「さぁね……」

ことり「……」


チクッ


ことり「――っ!」

真姫「ことちゃん……頭抑えてるけど……どうしたの?」

ことり「なんだろう、この痛み……」

真姫「風邪……?」

ことり「ううん、たまにチクッてするだけだから……平気だよ」

真姫「なにかあったら、すぐに言ってね?」

ことり「うん、ありがとう、真姫ちゃん」

504: 2014/04/13(日) 04:34:43.09 ID:tBzZ27J8o

ガラガラ


海未「……にこはまだ来ていないのですね」

真姫「あ……うーちゃん……」

ことり「穂乃果ちゃんは……?」

海未「少し、学校内を歩きたいと言っていました」

真姫「……どうして?」

海未「理事長との話にショックを受けているようでしたが……わかりません」

花陽「な、なにがあったのかな……」

ことり「話の内容って……海未ちゃんは?」

海未「知りません。理事長室に入ったのは穂乃果と生徒会長だけでしたから」

ことり「…………」

凛「わからないことだらけで、モヤモヤするにゃ……」

真姫「希先輩のこともあるし……」

ことり「……そうだよね」


ことり「……」

海未「……」

真姫「……」

凛「……」

花陽「……」


ガラガラッ


穂乃果「みんなお待たせー! にこちゃん捕まえてきたよ~!」


ことり海未「「 え――? 」」


にこ「ちょっと、離しなさいよ!」

穂乃果「離したら逃げちゃうでしょ」

にこ「今は、そっとしておいてってば!」

穂乃果「にこちゃん、ボランティア部の部長なんだから」

にこ「だからなによ」

穂乃果「ちゃんと、みんなに伝えなきゃ駄目だよ」

にこ「……っ」

穂乃果「みんな、心配してたんだからね」

にこ「……」


花陽「演劇部の舞台……どうして……」

にこ「悪いとは思ったけど……演技なんてできなかったから……」

海未「理由を聞いてもいいですか?」

にこ「……」

505: 2014/04/13(日) 04:38:45.23 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「にこちゃん」

にこ「集中できないんだから、舞台に立ってもしょうがないじゃない」

真姫「なによ、それ」

にこ「今の私が――……演劇部として、中途半端な私が役をこなせられるわけ無いでしょ」

真姫「怖気づいたってこと?」

にこ「……そうよ」


穂乃果「どうして嘘をつくの!?」

にこ「……」

穂乃果「にこちゃん、言ってたよ! 舞台に立つの楽しいって!」

にこ「……っ」

穂乃果「なにかあったんでしょ、それなのにどうして教えてくれないの!?」

にこ「……ッ」

穂乃果「私たちを……もっと頼ってよ……!」

にこ「だって……嫌じゃない……こんな……情けない姿見せるのッ」

穂乃果「――!」


にこ「希――……引っ越して行ったわ……」


ことり「え――」

海未「な、なぜ……」

にこ「空気の綺麗な所で療養させるって……」

真姫「…………」

凛「そ、そんな……」

花陽「で、電話に繋がらないのは……!?」

にこ「解約したって……手紙が」

穂乃果「手紙……?」

にこ「生徒会宛に届けられたって……これ」


――

   東條希です。

   療養のため、通信機器は一時解約することにしました。

   せやから、手紙で伝えるね。


   いきなりやけど報告があって、事後報告になるんかな。

   うちは、休学することになりました。

   音ノ木坂学院へは通えなくなってしまったんよ。

   残念やけど、しばらくお別れになるね。

   うちは居なくなるけど、その分、穂乃果ちゃん達と高校生活楽しんで欲しい。

   また、手紙書きます。


―― 

506: 2014/04/13(日) 04:41:29.09 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「……」

ことり「嘘……」

海未「そ、そんな……」

真姫「……文章、明るめだけど……」

凛「こんな別れ、嫌だよ……っ」

花陽「……っ」グスッ

にこ「まだ続きがあるから……」


穂乃果「……」


―― 

   うちな、とっても楽しかったんよ。

   毎日顔を出してくれる、ことりちゃん、海未ちゃん。

   賑やかにしてくれる、凛ちゃん、花陽ちゃん。

   真姫ちゃんは、いい刺激になってるみたいやし、

   なにより、穂乃果ちゃんがにこっちを変えていった。

   みんなが楽しそうにしてるだけで、嬉しかった。

   こんな気持になれたのは、にこっちが居てくれたからだと思う。

   だから、お礼を言うね。


   ありがとう、にこっち。

――


穂乃果「希先輩……っ!」

にこ「…………」


海未「……ことり」

ことり「……うん」

花陽「……」

凛「……」


真姫「……」

ことり「真姫ちゃん」

真姫「……うん」


海未「わたし達、少し外へ出ていますから」

ガラガラ


穂乃果「……」

にこ「なによ、それ……」

穂乃果「にこちゃん、辛そうにしてるから」

にこ「……」

穂乃果「……」

507: 2014/04/13(日) 04:45:03.20 ID:tBzZ27J8o

にこ「はぁ……。……――結局、ちゃんとしたマフラー渡せなかった」

穂乃果「……」

にこ「……お礼も言ってないし。……自分で自分が嫌になるわ」


穂乃果「……」


にこ「まったく……いつもいつも、自分のことは後回しで……人のために……」


にこ「そのせいで、――私のせいで」

穂乃果「自分を責めないで」

ギュウウ

にこ「――!」

穂乃果「きっと、誰も悪くないから」

にこ「違う、あんたはわかってない……」

穂乃果「にこちゃん、悪くないよ」

にこ「ううん……希は私のせいで体を悪くしたの……。
   万全じゃないのに学校に来て、此処へ様子を見に来てた」

穂乃果「……」

にこ「真姫とのことがあって、心配させてたからっ、無理して来たのよっ」

穂乃果「にこちゃんこそ、希先輩の事解ってないよ」

にこ「え――?」


ギュウウ


穂乃果「希先輩、此処に居たかったんだよ。
     にこちゃんが居て、みんなが居る、此処に……」

にこ「……っ」グスッ

穂乃果「無理してでも、『同じ時間』を過ごしたかったんだと思う」

にこ「……一緒に」ボロボロ

穂乃果「……」

にこ「一緒に……卒業したかったっ」ボロボロ

穂乃果「――うん」

にこ「一緒に、歩いて行きたかったのにっ」ボロボロ


穂乃果「私もだよ――」



穂乃果「だから――、私が『今を変える』」

508: 2014/04/13(日) 04:48:34.97 ID:tBzZ27J8o

にこ「ぐすっ……?」
   

穂乃果「クロちゃん、お願い」


にこ「え……?」


猫「……」ピョン


猫「最後の確認です。意志は揺らぎませんね」

穂乃果「うん。……だって、嫌だもん」

猫「……」

穂乃果「8人、みんなで、過ごしたい」


にこ「な、なに……?」


穂乃果「音ノ木坂学院は、廃校が決定したよ」


穂乃果「来年の新入生はいない。
     真姫、凛ちゃん、花陽ちゃん、1年生が卒業すると同時に廃校になる」


にこ「それじゃ……希は……、休学が長引けば……卒業……」


穂乃果「卒業できないかもしれない」


穂乃果「そんな不安が残る『未来』はいやだから」


穂乃果「だから、『今を変える』」


猫「……」


にこ「……どういうこと?」

穂乃果「クロちゃんの力を借りる」

にこ「……話が見えない」

穂乃果「やっぱり、ただのネコじゃなかったんだよ」


穂乃果「クロちゃん、お願いします」


猫「わかりました」


猫「先に伝えておくべきことは三つです」

穂乃果「?」


猫「一つ、――私の力はもう残り少ないということ」

穂乃果「あまり頼れないって意味?」

猫「そうです。余力が無いため、この先、願いを叶えるための確実な判断が必要になるということです」

穂乃果「……」

509: 2014/04/13(日) 04:50:03.60 ID:tBzZ27J8o

猫「二つ、――高坂穂乃果、あなたの直感を疑うこと」

穂乃果「疑う……?」

猫「まっすぐではなく、脇道へそれてください。それが『分岐点』なのです」

穂乃果「……」

猫「東條希のトラウマを消し去ることが、『今を変える』ことに繋がります」

穂乃果「……よくわからないけど、わかった」


猫「……」

穂乃果「もう一つは?」

猫「それは――、伝えません」

穂乃果「え?」

猫「『今』は伝えられません」

穂乃果「……」

猫「それでは、そこに座ってください」


穂乃果「……」


にこ「クロと話してるの……?」

穂乃果「うん。そうだよ」

にこ「……」

穂乃果「待っててね、にこちゃん」

にこ「……」



猫「高坂穂乃果」


穂乃果「…………」


猫「みらいで待っています」


穂乃果「――」


穂乃果「―」


穂乃果「」


「」


…………


………


……





510: 2014/04/13(日) 04:51:04.64 ID:tBzZ27J8o

―― 高坂穂乃果 小学5年生 ――



「遠足、えんそっく~♪」

「楽しそうだね、穂乃果ちゃん」

「楽しいよ~、あ、山だ!」

「本当だ、葉っぱが赤くて綺麗~♪」

「うぅ……」

「大丈夫、うみちゃん?」

「はい……」

「海未ちゃん、冷たい水だよ」

「ありがとうございます……」


「海未さんの体調は?」


「まだ気分が悪そうです」

「車酔いするなんて……意外ね」

「……すいません…先生」

「責めてるわけじゃないからね、……遠くを見てたほうがいいわよ」

「……はい」


「楽しくなれば気分もよくなるよ! よぉーし、カラオケだっ」

「穂乃果さんは元気ね~」


「ほら見て、海未ちゃん、あの山に行くんだよ」

「……はい。……楽しみで――……あれ?」

「どうしたの?」

「狸……?」

「あれは……ネコだね」


『ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴る~♪』

「「「 鈴が鳴るー! 」」」

「盛り上がってるけど、クリスマスにはまだ早いのよ……穂乃果さん」


……




511: 2014/04/13(日) 04:52:45.73 ID:tBzZ27J8o

―― 山


穂乃果「山だっ!」


先生「穂乃果さん、私より先にバスから降りないでね」

穂乃果「は~い!」

先生「注意事項があるから、整列して待ってて」

穂乃果「せいれつ~!」

テッテッテ


海未「うぅ……」フラフラ

ことり「だいじょうぶ、海未ちゃん……?」

海未「はい……だいじょうぶです……」

ことり「あれ……、あのバスは……」


ブォォォォオオオン


先生「はーい、みんなこれから大切な話をするから、ちゃんと聞いてね~!」


男子1「なぁなぁ、おまえお菓子持ってきたか?」

男子2「もちろんだ、ほら」

男子1「おぉ~、って、おもちゃ付きじゃん! すっげ!」


先生「はい、没収~」


男子1.2「「 あぁー!? 」」


先生「話をちゃんと聞かない人はお菓子も没収しますからね~」


男子「……」

女子「……」


し ー ん


先生「ここから少し離れた場所に、神社があります。
    今はもう使われていないそうなんだけど、建物が老朽化していて――」

穂乃果「ろーきゅーか?」

先生「古いってことよ。危険だから近づかないようにね~!」

男子3「面白そうだな」

男子4「よし、度胸試しだな」

先生「はい、リュックサック没収~!」

男子3.4「「 えぇー!? 」」

先生「お弁当食べたかったら、先生と一緒にいましょうね」

男子3「行かないから、神社に行かないから!」

512: 2014/04/13(日) 04:54:45.08 ID:tBzZ27J8o

先生「みんな、わかったかなー?」


生徒たち「「「 わかりました! 」」」

先生「うん、いい返事ね」


海未「穂乃果さん……」

ことり「穂乃果ちゃん……」

穂乃果「い、行かないよっ」


先生「それともう一つ、別の学校の生徒たちも遠足に来てるから、
    会ったらちゃんと挨拶をして仲良くするのよ~?」


女子1「あれだよね?」

女子2「そうみたい……」

女子1「何年生だろ……」

穂乃果「6年生だね」

ことり「どうして分かるの?」

穂乃果「勘だよ」

海未「少し、頭も痛い……」


先生「みんな、返事がないわね~?」

生徒たち「「「 はい、わかりました! 」」」

先生「それじゃ、少し休憩してから湖に出発しま~す」

生徒たち「「「 はい、わかりました! 」」」


運転手「神社の件、伝えないほうがよかったのではありませんか……?」

先生「そうですね、好奇心を煽ったみたいになりましたから。
    ですけど……昨日、変の夢をみまして」

運転手「夢……?」

先生「古い神社に迷い込む生徒たちの夢です。
    これはきっと、神の啓示なのではないかと――」


……



513: 2014/04/13(日) 04:57:36.72 ID:tBzZ27J8o

―― お昼:憩いの場


穂乃果「きんぴらごぼうがうまいっ」

ことり「あ……天気が悪くなってきたみたい……」

海未「本当ですね……。あ、ことりさん……ほっぺたにご飯粒が」

ことり「え、どこかな?」

海未「取りますから、ジッとしててください」

穂乃果「ごちそうさまっ!」


ガサガサ


穂乃果「キツネだっ!」

ことり「ありがとう、海未ちゃん~」

海未「いえ……これくらい……って、穂乃果さんっ!?」


穂乃果「キツネだよ!」

タッタッタ

海未「エキノコックスという怖い寄生虫がいるんですよ、触ってはダメですぅ!」

ことり「……それは北海道のキツネじゃなかったかなぁ?」


シトシト


穂乃果「あ、雨だ……」


ことり「集合場所に戻ったほうがいいよね?」

海未「……そうですね」


穂乃果「キツネの嫁入りだっ!」


……




―― 集合場所


シトシト


ことり「止まないね……」

穂乃果「もぅ! どうして降るの!?」

海未「私に言われても困ります……」


先生「山の天候は変わりやすいっていうけど……せっかくの遠足日に降らなくてもいいのにねぇ」


ことり「真姫ちゃんも一緒に来られたらよかったね」

穂乃果「うん! あーもう! どうして違う学校なんだろう!」

海未「あ、誰か来ますよ……」

514: 2014/04/13(日) 04:59:34.82 ID:tBzZ27J8o

......タッタッタ

「すいません~!」


先生「他校の……?」


「私、佐士巣瀬小学校の者ですが」

先生「はい……」

佐士巣瀬「うちの生徒、みかけませんでしたか?」

先生「いえ、こっちでは見ていませんが……」

佐士巣瀬「そうですか……」

先生「穂乃果さん達は、見た?」

穂乃果ことり海未「「「 いいえ 」」」

先生「綺麗にハモったわね。……見当たらないのは何人ですか?」

佐士巣瀬「一人です。生徒の名は――東條希さん」

穂乃果「……?」

先生「わかりました。うちの生徒たちにも聞いてみます」

佐士巣瀬「手間かけてすいません」

先生「いいえ、こういう時はお互い様ですよ」

佐士巣瀬「特徴は、髪を二つにまとめて下げている子なので、すぐにわかるかと」

先生「わかりました」

佐士巣瀬「何かありましたら連絡をお願いします!」

タッタッタ......

先生「ということだから、先生、みんなに聞いてくるわね」

ことり「は~い」

海未「雲がどんよりしています……」

穂乃果「……」

ことり「穂乃果ちゃん……?」

穂乃果「独りでいるのかな……」

海未「……?」

穂乃果「……ちょっと探してこようかな?」


……




ザァーー


男子1「うわっ」

女子8「雨が!」

先生「ちょっと早いけど、今日はもう帰りましょうか」


生徒たち「「「 えぇー!? 」」」

515: 2014/04/13(日) 05:02:05.39 ID:tBzZ27J8o

先生「だって、しょうがないじゃない」

男子6「全然遊んでないのにー!」

男子12「そうだそうだー!」

先生「じゃあ、ちょっとだけ待ちます。さ、みんなはバスに乗って雨宿りよ」

男子8「嘘だ! みんなが乗ったら出発する気だ!」

男子4「だまされないぞー!!」

男子7「俺は乗らないぞぉぉぉおお!!」

女子2「男子しずかにして!」

先生「あれ、穂乃果さんは?」

海未「え、えっと……」

ことり「その……」

先生「……?」



―― 同時刻:山の中


穂乃果「あれ……ここはどこ?」



―― バス停留所


先生「穂乃果さんも迷子!?」

海未「は、はぃ……」

男子14「いーけないんだ、いけないんだー! 高坂はみんなに迷惑――」

女子4「男子うるさいっ」

ドゴッ

男子14「ぐはっ」

男子8「やべえ、回し蹴りやべえ!」


先生「東條さんを探しに……?」

海未「……はぃ」

ことり「穂乃果ちゃん……」



―― 山の中


穂乃果「えっと……真っ直ぐに進むか……左に曲がるか……どうしよ」



穂乃果「よし、ここを真っ直ぐだね!」

テッテッテ


「にゃー」


穂乃果「ん?」


猫「にゃー!」

516: 2014/04/13(日) 05:03:37.84 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「おぉ、ネコちゃん!」

猫「……」

穂乃果「あなたも迷子……?」


ザァーーー

ピカッ


穂乃果「うわっ、光った!」

猫「にゃー」

テッテッテ

穂乃果「あ、ネコちゃん!」


穂乃果「付いて行けばいいのかな……?」


ゴロゴロゴロ


穂乃果「雷だっ! ま、待ってよー!」

タッタッタ



―― バス停留所


海未「……」

ことり「……」

女子7「二人とも、乗らないの?」

海未「……ここで待ってます」

ことり「ことりも、探してくる……」

テッテッテ

海未「ことりさん! 危ないですよ、待ってください!」

テッテッテ


運転手「あ、駄目だ!」


女子2「あぁ……二人とも……」

女子5「先生に動くなって言われてるのに……」

女子2「……どうしよう」

女子5「待ってるしかないよ……」

ハンサム男子「なんだってぇ、南さんと園田さんがっ!?」

ボス男子「あぁ、さっき走って行ったぜ」

ハンサム男子「女子を危険な目に遭わせるわけにはいかない!」ガタッ

女子たち「「 きゃーかっこいー 」」

ボス男子「俺も付き合うぜ」

ハンサム男子「心配はいらない。僕は空手を習っているんだから」

ボス男子「こんな面白いこと、おまえだけにさせるかよ」

517: 2014/04/13(日) 05:05:02.82 ID:tBzZ27J8o

運転手「……」


ウィーン バタン


ボス男子「しまった!」

ハンサム男子「扉がっ!」


運転手「これ以上、生徒たちを降ろすわけにはいかない」


……




―― 神社


猫「にゃー」

穂乃果「……ここ、行っちゃ駄目だって言われてるとこだよね」

猫「……」

テッテッテ


穂乃果「中に入っちゃった……」


「けほっ……けほッ」


穂乃果「誰か居る……」



―― 山の中


犬「ガルルルル」


ことり「きゃっ」

海未「ことりさんっ!」


猫「……――」スゥ


犬「っ!?」


猫「……」


犬「バウバウッ! バウバウッ!!」


ことり「こ、怖いよぉ!」

海未「うぅ……っ」


猫「……」チョンチョン


海未「え、ネコ……?」

猫「……」スッ

コロンコロン

518: 2014/04/13(日) 05:06:09.37 ID:tBzZ27J8o

海未「木の枝……?」

猫「にゃー」

海未「……」


犬「バウバウ!」


ことり「ひっ!」


海未「ことりさんから――……ことりから離れなさい! 私が相手です!」

犬「ガルルルル!」

海未「……」

犬「ガルルル……」

海未「…………」

犬「クゥーン……」

海未「そこをどいてください」

犬「きゃいんきゃいん!」

テッテッテ

海未「……何もしていないのに、あの怯えよう……?」

ことり「ありがとうっ、海未ちゃんっ」ガバッ

海未「わっ!」


猫「……」


……



519: 2014/04/13(日) 05:07:07.11 ID:tBzZ27J8o

―― 神社


「……っ……ッ」

穂乃果「ど、どうしよ……」

「っはぁ……はぁ……ッ」

穂乃果「だ、大丈夫だからね!」

「く……っ……はぁッ……っぅ」

穂乃果「うぅ……!」


穂乃果「そうだ……!」


「はぁっ……はぁッ」


穂乃果「お願いです、神様。この人を――……東條希さんを助けて下さい」


希「ッ……っ……ぅっ……」


穂乃果「辛そうにしているんです、お願いですから助けてください!」


ピカッ


ゴロゴロゴロゴロ



希「……どう……して……」


穂乃果「助けてください神様!」


......タッタッタ


ギイィィ


ことり「穂乃果ちゃん!」

海未「穂乃果!」


穂乃果「あ――!」



………


……




520: 2014/04/13(日) 05:08:31.42 ID:tBzZ27J8o

―― 高坂穂乃果 高校2年生 ――



穂乃果「すやすや」


「よく寝ていますね……」


穂乃果「……ん…」


「起きてください、ほのか」


穂乃果「……ん……ん?」


「コタツだからといって油断していると風邪をひきますよ」


穂乃果「……あっ」


「?」


穂乃果「……うみ……ちゃんッ!」


海未「はい、私ですが……?」


穂乃果「……あれ? ここはどこ?」

海未「部室です」

穂乃果「うん?」

海未「寝ぼけているようですね……」


「うぅん……海未ちゃん……」

ギュウウ

「くる…し……っ」


海未「……」

穂乃果「それは真姫だよ、ことりちゃん」


ことり「ふ…ぇ……?」

真姫「う……うん……ん……」

ことり「……」

真姫「……う……うぅ」


海未「うなされていますね……」

穂乃果「真姫も寝るなんて……珍しいね」

海未「……そうですね」


ことり「ま、いっか♪」

ギュウウウ

真姫「ん……んん……っ」

521: 2014/04/13(日) 05:10:40.98 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「ふぁぁぁ……」

海未「ほら、ちゃんと毛布をかけないと」

ファサ

穂乃果「ありがと……」

海未「コタツは人を駄目にするといいますが……本当ですね」

「人がコタツを駄目にしているように見えますが」

海未「文明に頼りすぎということですか……言い得て妙ですね」

穂乃果「ん?」


ガラガラッ

「こったつにゃ~♪」

「こ、こんにちは」


穂乃果「あ、凛ちゃんに花陽ちゃん……部活は?」

凛「今日は雨が降りそうだから、お休みになりました~。あったか~い!」

花陽「合唱部の今年の活動終わってるから……」

穂乃果「あ、そうなんだ」

海未「降っている雨が雪に変わりそうな寒さですね……」


ことり「でも、ここはあったかい♪」

ギュウ

真姫「う……ぅぅ……ん……」


花陽「うなされてる……」

凛「すやすや」

花陽「もう寝ちゃったの!?」


海未「ネコはコタツで丸くなるといいますからね」

「……」

海未「あなたは丸くならないのですか?」

「いいえ」

穂乃果「ねぇ、うみちゃん……誰と話をしてるの?」

海未「え?」

穂乃果「にこちゃんの声じゃないよね……」

海未「昨日の今日でもう忘れてしまったのですか!?」

穂乃果「?」


ガラガラッ


「うぅっ、寒い寒い!」

522: 2014/04/13(日) 05:12:45.77 ID:tBzZ27J8o

凛「誰かさんの……小芝居……みたいに……寒い……にゃ」ムニャムニャ

海未「上手い例えですね」

「なんか言った?」

凛「すぅすぅ」

花陽「今の寝言だったの!?」

穂乃果「あ、ついでにココア淹れてほしいな、にこちゃん♪」

にこ「もうここまで来たから無理よ、自分でやりなさい……って、なにしてんのあんた達」

ことり「真姫ちゃんあったかくて」

真姫「ん……んん……ぅ」

にこ「悪夢見てるって表情してるけど……。ことり、お茶をお願い」

ことり「もうちょっとぉ~♪」

ギュウ

真姫「ぅ……だめ……髪の毛が……離れない……っ」

穂乃果「愉快な夢を見てるんだね」

海未「愉快というか、ホラーのようですが」

にこ「どんな夢よ……」

スッ

にこ「はぁ、あったかぁい」

穂乃果「にこちゃん、演劇部は?」

にこ「今日は休み」ゴロン

穂乃果「さっそく寝た!」

海未「やはり……コタツは撤去したほうが良さそうですね……」

にこ「それはダメよ。部長として認めないわ」ゴロゴロ

海未「威厳が少しも見当たらないのですが」


にこ「……ちょっと」

「なんですか?」

にこ「くすぐったいから少し離れてくれない?」

海未「あなたが後から来たのですよ?」

にこ「ひっくしゅっ!」

「――!」

にこ「ほらみなさい」

「わかりました」クシクシ


穂乃果「ねぇ、誰と話してるの……?」

海未「ネコですよ」

穂乃果「うみちゃんがおかしくなった」

猫「私です」

穂乃果「本当だ、ネコがしゃべって……ネコがしゃべった!?」

523: 2014/04/13(日) 05:14:50.72 ID:tBzZ27J8o

凛「うんん……静かにしてほしいにゃ」

花陽「だめだよ、寝るために集まったわけじゃないんだから」


真姫「うん……ん……ことちゃん?」

ことり「すぅ……すぅ……」

ギュウウ

真姫「どうしてぇ!?」 


にこ「真姫、うるさいわよ」


凛「もぅ、うるさいにゃぁ」


海未「……話をする気はなさそうですね」

猫「何か当てはありましたでしょうか」

海未「いいえ、さっぱりです」

猫「そうですか……」


穂乃果「うみちゃんが……猫ちゃんと普通に話をしてる……!」

花陽「……穂乃果先輩、どうしてびっくりしているんですか?」

穂乃果「驚くよ! だって、ネコがしゃべっているんだヨ!?」


にこ「今、ちょっと外国人風なしゃべり方しなかった?」

凛「したよねぇ」


猫「来たようですね」

海未「?」


穂乃果「えぇ……どうしてみんな普通に受け入れてるの?」


ガラガラ


「お邪魔~」


穂乃果「あ――……」

「みんな、のんびりくつろいでるね」


穂乃果「――希ちゃん」


希「うちも入らせてもらうわ~」


524: 2014/04/13(日) 05:16:45.97 ID:tBzZ27J8o

にこ「こっち、こっちが空いてるわよ」

希「穂乃果ちゃんの周りは埋まってしまってるようやね」

花陽「代わりますか?」

希「うん、ありがと――」

にこ「ちょっと!? こっちが空いてるって言ったでしょ!」

希「あ、にこっちが寂しそうやから」

花陽「……そうですか」

にこ「誰が寂しがってるのよ」

希「にこっち」

にこ「わざわざ花陽をどかせる意味ないでしょって言ってんの!」


穂乃果「それで、あなたは誰?」

猫「そうですね、私の正体を説明するのは難しいことです」

穂乃果「ふぅん……」

海未「ほら、ことりも目を覚まして」

ことり「う…ん……?」

真姫「ふぅ……やっと離してくれた」

にこ「真姫、お茶を淹れてちょうだい」

真姫「嫌よ」

にこ「つめたいっ!」

真姫「あなたね、髪を切りなさいよ。迷惑よ迷惑」

にこ「誰に迷惑をかけたっていうのよ?」

真姫「夢の中で、私に巻き付いてたでしょ」

にこ「なにを言ってるのこの子……」

花陽「巻き付いてた……真姫ちゃんだけに」

希「……」スッ

凛「かよちん! 希先輩が手をワキワキさせながら近付いてるにゃ!」

花陽「ひゃっ!?」

希「気づかれたか……可愛いこと言ってるからワシワシしよう思ったんやけど」

にこ「下級生いじめるのやめなさいよね~」

真姫「いつ切るの?」

にこ「切らないわよ!」


海未「はぁ……話ができません……」

穂乃果「話って……?」

猫「昨日、話したと思いますが」

穂乃果「えっと……ごめん、覚えてないや」

海未「夢だと思っていたのでしょうね……」

穂乃果「あはは……正解」

ことり「猫ちゃんがしゃべるなんて、現実的じゃないよね」

525: 2014/04/13(日) 05:22:11.56 ID:tBzZ27J8o

猫「わかりました。今まで話したことを踏まえた上で、
  私の願いをお伝えしましょう」


花陽「凛ちゃん、起きて」

凛「むぅ……せっかくの休みなのにぃ」


希「にこっちも起きな」

にこ「聞いてるから、このままでいいわよ」


ことり「昨日のおさらいをしている間、お茶を淹れますね」

海未「私も手伝います」

真姫「ほのちゃん、なにがいい?」

穂乃果「えっと……それじゃ、ココアで」

真姫「うん」

にこ「私もココアで」

真姫「お茶って言ってたでしょ」

スタスタ

にこ「……つれない子ね、ほんと」


希「うちは、いい情報を手に入れたんよ」

猫「期待しています」

穂乃果「いい情報?」

希「音ノ木坂学院を廃校から救う方法やな」

穂乃果「……」

猫「8人目、東條希が仲間になっても、廃校を回避することはできませんでした」

穂乃果「……8人目?」

猫「2人目、――南ことり

  3人目、――園田海未

  4人目、――西木野真姫」


凛「ふむふむ」

花陽「順番があったんだね」


猫「5人目、――星空凛

  6人目、――小泉花陽」


にこ「順番って言われてもピンとこないわね」

希「うちは、なんとなくわかる気がする」


猫「7人目、――矢澤にこ

  そして、8人目――東條希」


穂乃果「…………」

猫「高坂穂乃果、貴女の仲間が増えていく毎に、
  この学校への想いは強まり、力が蓄えられていました」

526: 2014/04/13(日) 05:25:13.22 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「チカラ?」

猫「想いのチカラ。私の願いを叶えるために必要な力です」

希「その願いを聞く前に、何が足りないのか伝えたほうがいいね」

穂乃果「足りないもの……?」

猫「高坂穂乃果、貴女の願いはこの学校を守ること」

穂乃果「……うん」

猫「しかし、8人の仲間でも、その願いは届いていません」


猫「『この時間』でも、全国制覇をした、高坂穂乃果、園田海未の所属する剣道部」


猫「陸上部、全国大会で上位入賞を果たした星空凛」

凛「頑張ったにゃ!」

希「誰にでもできることじゃないんよ、凛ちゃん」

凛「あ――、うんっ!」

希「会場で見てて、とても勇気がもらえた」

凛「うぅっ、希先輩に褒められるとくすぐったいにゃぁ」

希「ふふ、えらいえらい」ナデナデ

凛「ふにゃぁぁ」


猫「上位入賞は逃しましたが、特別賞を獲得した、南ことりと矢澤にこが所属する演劇部」

にこ「褒めて」

希「偉い偉い」

にこ「凛とは違って、この雑な感じ」


猫「全国コンクールで賞を逃しましたが、特別合唱団に選ばれた、西木野真姫、小泉花陽」

花陽「あ、あの時は緊張したよぉ……」

真姫「私は演奏だけだけど……。はい、ほのちゃんのココア」コト

穂乃果「……花陽ちゃんと二人で、とてもいい音楽を聞かせてくれたよ」

真姫「あ――……」

穂乃果「素敵な音楽だった」

真姫「……うん。ありがとう、ほのちゃん」

穂乃果「お礼を言うのはこっちだよ」

真姫「……っ」

穂乃果「頑張ってたのも知ってるから」ナデナデ

真姫「ほ、ほのちゃんっ、みんながいるのにっ」

にこ「にこも褒めてあげる」ナデナデ

真姫「ちょっと、やめて?」

にこ「この温度差、温度差!!」

穂乃果「脈絡のないことするから」

花陽「にこちゃんの好感度が低いのはどうしてかな……」

希「穂乃果ちゃんとにこっち、たまに仲良くしてるからね」

花陽「あ……なるほど」

527: 2014/04/13(日) 05:28:10.42 ID:tBzZ27J8o

猫「話を続けます。それらの部活動を陰から支えた生徒会」

希「……」


猫「注目を集めたにもかかわらず、それでも入学希望者が増えることはありませんでした」

穂乃果「……うん」

猫「その足りないものは何か。……それを考えて欲しかったのです」

穂乃果「……そっか。……わかった」

凛「凛は考えるのに~がて!」

花陽「考えること止めちゃダメだよっ」

海未「どうぞ、饅頭です」

穂乃果「……ありがと」

海未「どうしました?」

穂乃果「……話を聞いてて思ったんだけどね……」


ことり「どうぞ~」コト

希「ありがとう~」


真姫「ほら」コト

にこ「ありがとう、にこ☆ ……って、なんかドロドロしてない?」

真姫「花陽が持って来た、玄米ドリンクよ」

にこ「ねぇ、これって嫌がらせよね?」


凛「甘くてあったかいにゃ~」

花陽「……うん……あったかい」


穂乃果「――遅いのかなって」

海未「遅い?」

穂乃果「うん……1年早ければ……もっと大きく変化していたんじゃないかって」

ことり「大きな変化って……?」

穂乃果「例えば、私とうみちゃんが1年生の時に全国制覇していたら、
     音ノ木坂学院の知名度はもっと維持できるよね」

凛「ん~?」

希「全国制覇して、廃校が決定するまでの時間が短すぎるってことやんな」

海未「私たちが1年生の時に全国制覇ですか……。それは可能なのですか?」

猫「不可能です」

にこ「言い切ったわね……ごくごく」

穂乃果「どうして?」

猫「高坂穂乃果、貴女の剣士としての成長が全国制覇の鍵となりますが、
  剣道を始める時期を早めたとしても、それだけでは全国制覇には届きません」

海未「……」

猫「『今のこの時間』……主将と副主将の役割が大きいからです」

穂乃果「……そうだね。……主将の全勝と」

海未「副主将の縁の下の力持ち……二人は剣道部にとって必要不可欠です」

528: 2014/04/13(日) 05:31:15.93 ID:tBzZ27J8o

猫「こういったことが複雑に絡み合い、
  高坂穂乃果が高校2年生である『今の時間』がとても重要になるのです」

花陽「……」

猫「1年生である、貴女方も重要ですから」

凛「重要って、そんな、照れるにゃ」

真姫「楽天的ね、凛は」

凛「えへへ」

真姫「褒めてない」

にこ「ごくごく……ドロドロしてるけど……意外と……?」


ことり「……部活以外で……なにか方法はないのかな?」


猫「高坂穂乃果を中心として行動を起こすことが必要ですから、それは難しいかと」

穂乃果「私……?」

猫「私の声が聞こえるのは、貴女だけでしたから」

穂乃果「どういう意味?」

猫「全ての時間を改変することが出来るのは、貴女だけだということです」

にこ「私は?」

猫「違います」

にこ「即否定されたわ」

真姫「そうね……、私も……ほのちゃんが居なければ……ピアノを続けれられなかった」

希「うちもやな。……穂乃果ちゃんが『あの時』助けてくれなかったら……此処には居なかったかも」

ことり「私も。お母さんを説得してくれたの、穂乃果ちゃんだから」

海未「ことりが居なければ……私はどうしていたのでしょうか……」


花陽凛「「 あれ……? 」」

猫「どうしました?」

凛「凛とかよちんは……穂乃果先輩とあまり関わってない……?」

花陽「……と思う」

猫「西木野真姫、矢澤にこ、東條希がいなければ、貴女方は此処には居られなかったでしょう」

真姫「なんか、無理やり話を繋げているみたいだけど」


猫「星空凛、小泉花陽。二人の『分岐点』が非常に困難でした」

凛花陽「「 ? 」」

猫「先ほど挙げた3名の繋がりが重要になるからです」

凛「よく分からないよ」

花陽「……うん」

529: 2014/04/13(日) 05:33:50.67 ID:tBzZ27J8o

猫「高坂穂乃果の想い――それは信念にも通じるものがあります」

穂乃果「……」


猫「信念は恐怖や愛と同じく受け入れるしかないもの。

  相対性理論や不確定性原理を理解し、受け入れるように

  信念は人生の航路を決定づけます」


凛「にゃ?」

にこ「早退生……?」


猫「星空凛、小泉花陽の人生は今とは違う、別の方向へ向かっていました。

  それが、高坂穂乃果と出会うことで別の方向へ向かいます。

  先日までの二人なら、決して行うことはなかったであろう行動があったはず」


花陽「……うん……あった」


猫「時間や空間さえ変えてしまうこれらの力は人の将来像まで変えてしまいます。

  その力は人が生まれる前から存在し、氏後も消えることはありません。

  貴女方の人生や選択は量子の奇跡ごとに、瞬間毎に意味づけられます」


希「……」


猫「人生が交差する瞬間
  
  それぞれの出会いが新たな方向を指し示すのです」


穂乃果「…………」

ことり「……」

海未「……」


真姫「ふぅん……」

凛「出会いが人生を変えるってことだよね」

花陽「……うん」


にこ「ということは、穂乃果が居なければ……
    このボランティア部でコタツに温まっている時間はなかったってことよね?」

猫「はい」

ことり「なるほどです」

希「それだけじゃないよ。
  うちら8人が揃ったのは意味があって、これからも変化が起こせるってことやな」

猫「重要な手がかりを見つけたようですね」

希「確認なんやけど、『現時点』で行き詰まってるってことでええんやな?」

猫「はい」

穂乃果「行き詰まってるって?」

海未「そこまで忘れてしまったのですか」

穂乃果「えっと……なんだっけ」

530: 2014/04/13(日) 05:35:37.53 ID:tBzZ27J8o

ことり「穂乃果ちゃんの願い――音ノ木坂学院の廃校を阻止する手立てがもう無いってことだよ」

穂乃果「……え」

海未「ですから、各自、新たな可能性がないか考えてくるという宿題を与えられたのです」

にこ「そんな宿題、ポイッよ」

凛「あー、考えるの止めてるにゃー」

真姫「しょうがないわよ。考えるの苦手みたいだし」

花陽「凛ちゃん、考えてきたの?」

凛「ポイッ」

希「話を戻すけど、猫ちゃんは……穂乃果ちゃんの可能性を見い出せないってことやな」

猫「そうです」

希「それで、うちらに相談……になるのかな? 
  話をして、考えてくるよう頼んだ、と」

猫「……」


希「さっき、猫ちゃんは言うたよね、

  人生が交差する瞬間
  
  それぞれの出会いが新たな方向を指し示すのです。って」


猫「……はい」

希「ここまで言っても、わからへん?」

猫「生憎ですが……」

にこ「もったいぶらずにさっさと教えなさいよ。なにか案があるんでしょ?」

希「昨日な、猫ちゃんとうちの部屋で話をしててん」

穂乃果「……ん?」

猫「そうですね」

穂乃果「猫ちゃん、希ちゃんの部屋に行ったの?」

猫「はい。彼女とは話が合います」

穂乃果「話の流れで、一番付き合いが長いのは私ってことになるよね!?」

海未「穂乃果、話の腰を折らないでもらえますか?」

猫「私と貴女方との過ごした時間は刹那的です。
  園田海未や南ことり、西木野真姫の方がよほど長いのですよ?」

穂乃果「でも、希ちゃんとは――むぐっ」

海未「いいから、黙っていてください」

ことり「えっと、話の続きをお願いします」

希「ほんでな、猫ちゃんから聞いた話がひっかかってて、学校の歴史を調べてみたんよ」スクッ

スタスタ

にこ「話って、どんな話よ?」


希「――神話になるんかな」


531: 2014/04/13(日) 05:40:34.09 ID:tBzZ27J8o

花陽「神話……?」

猫「この星にも受け継がれている話です」

凛「どんな話なのにゃ?」

猫「星の神話、異世界の伝説、馴染みの昔話など」

穂乃果「私にはしてくれなかったのに」

海未「この星、と言いましたが……あなたは宇宙人のような者なのですか?」

猫「そうです。私は地球上の生物ではありません」

にこ「サラッと爆弾発言したわね」


希「うちがひっかかったのは、ギリシャ神話なんよ」スッ


真姫「何をしてるの?」


希「昔の卒アルを取ってるだけよ」

スタスタ

猫「夢を壊すようですが、その話は創作です」

希「まぁ、そうやろな。……人が生み出した話しやし」

猫「ですが、その話をした幾つかは事実があり、実話があります」

希「星の話にも実話が?」

猫「はい。創作が先か、実話が先か、ですね」

希「よう分からんのやけど……。人が想像できることは、必ず人が実現できる。ってことなん?」


穂乃果「フランスの作家の言葉だね」

ことり「ついて行けないっ」


猫「そうですね。これから先、新たな神話が生まれる可能性もあるということ」

希「ふぅん……神秘的で面白いなぁ。……うぅ……さむぃ」

にこ「ほ、ほら……ちゃんと毛布かけなさいよ」

希「ありがと、にこっち」


海未「地球外生命体と言いますが、ネコの姿をしているのですね。模しているだけでしょうか」

猫「そうです。この姿は何かと都合がいいので」

真姫「ねぇ、話を早く進めてくれない?」

海未「真姫は猫の存在理由が気になりませんか?」

真姫「気になるけど、話の順番が大切だと思うから……」

海未「……そうですね」

凛「なんの話だったかな?」

花陽「えっと……神話から、なにかヒントを得たんだよね」

希「そう。新たな出会いが必要ってところが重要なんよ」

穂乃果「新たな出会い……」


希「――9人目、やな」


532: 2014/04/13(日) 05:44:24.36 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「9人目……?」

にこ「誰よ、それは」

希「猫ちゃん、その9人目の心当たりは?」

猫「ありません」

花陽「言い切っちゃった……」

凛「もしかして、あの人が~とかはないの?」

猫「はい」

真姫「えらく言い切るわね」

猫「高坂穂乃果の周辺人物を徹底的に調べていましたが、該当する方は居ませんでした」

穂乃果「そっかぁ……、ちょっと胸がドキドキしたんだけどなぁ」

海未「ここに、もう一人……ですか」

ことり「あ……、穂乃果ちゃんの言うとおり、少しドキドキする」

凛「その卒アルがヒント?」

希「そう、凛ちゃんは鋭いなぁ」

凛「えへへ」

にこ「コホン。……ひょっとしてぇ、その卒アルに9人目のヒントがあるのかなぁ?」

希「そう、にこっちは鋭いなぁ」

にこ「ふふん」

真姫「なに澄ましてんのよ、パクリじゃないの」

海未「あの、ちょっといいですか」

猫「なんでしょう」

海未「その9人目……穂乃果の部活仲間はどうなのでしょうか」

ことり「あ、それは私も思いました」

猫「人それぞれには役割があるようです」

凛「役割?」

猫「主将には高坂穂乃果を剣道部で鍛え、全国へ連れて行くという役割が」

海未「……」

猫「他の人物も同じような役割がありますが、
   この場にいる高坂穂乃果を除いた7人は、そのような役割から外れているようです」

穂乃果「へぇ……そうなんだ」

ことり「外れているって……よくわからないよ」

猫「それぞれの役割も重要ですが、高坂穂乃果と繋がる、最も重要な存在だということです」

ことり「……ふむふむ」

海未「……」

真姫「海未先輩、まだひっかかるの?」

海未「あ、いえ……。私たちを輪の外から見ると、そんな風に見えるものだと思って」

穂乃果「なんだか面白いよね」

海未「……といいますか、どうして私だけ先輩付けなのですか」

真姫「……」

533: 2014/04/13(日) 05:49:59.21 ID:tBzZ27J8o

にこ「古い写真ね」

希「そうやな。……なぁ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「なぁに?」

希「この方が、穂乃果ちゃんのお祖母ちゃんでええんやな」

穂乃果「そうだよ」

猫「……」

希「そして、隣に写ってるこの人は?」

穂乃果「お祖母ちゃんの友達。……たぶん、親友だったと思う」

希「それや」

穂乃果「どれ?」

希「その親友さんに、孫はおらんの?」

穂乃果「……それはわからないけど」

希「どうなん?」

猫「わかりません。――彼女は、祖国へと帰ってしまいましたから」

にこ「ソコク?」

真姫「……外国人なの?」

猫「そうです。ソビエト連邦という国でした」

にこ「ソビエト?」


希「今の……――ロシア」


穂乃果「そうそう、そのお友達にロシアンティーの淹れ方を教わったって」

海未「……」

穂乃果「お祖母ちゃん、その人の話をする時とても楽しそうな顔してた」

ことり「……」

穂乃果「えっと……希ちゃん、その人のお孫さんが9人目?」

希「うん。……前に、穂乃果ちゃんから聞いたお祖母ちゃんの話が頭の隅に残ってて、
  猫ちゃんの神話を聞いて、ナニカが繋がった気がしたんよ」

凛「ほぇ~」

花陽「……穂乃果先輩と同じ年……じゃないといけないよね」

海未「そうです。穂乃果が高校2年である『今』が重要なのですから、一つ下か、一つ上、もしくは――」

にこ「モスクワ?」

真姫「くだらないこと言わないで」

海未「同い年でなくてはいけませんよね」

希「そうやね、可能性に過ぎないわけやから、候補の一つにしかならないかも」


猫「…………」

534: 2014/04/13(日) 05:53:09.08 ID:tBzZ27J8o

希「うちな、小学6年生の遠足で、穂乃果ちゃんに助けてもらって……
  ずっと感謝してたんよ」

穂乃果「私じゃなくて、ことりちゃんとうみちゃんだけどね」

希「ううん、穂乃果ちゃんが助けてくれた」

穂乃果「?」

希「6年生の『あの時』……引っ越してきたばかりで、クラスに馴染めてなかったんよ」


希「それで遠足やんな。一人で居ることが自然になってしまってて、
  独りで散歩してたら道に迷って……気がついたら神社の前にいた」


希「雨が降り出してきたから、喘息持ちのうちは雨にぬれるわけにもいかなくて、
  少しだけお邪魔することにしたんよ」


希「だけど、発作が起きてしまって……薬を落としてしまってて……」


希「苦しくて……、独りで寂しくて……怖くて怖くて仕方がない時――」


希「穂乃果ちゃんが現れた」


穂乃果「……」


希「うちのために、神様にお祈りしてくれたやん?」

穂乃果「あ……うん……」

希「見知らぬうちのため、一生懸命の姿に……とても救われたんよ」

穂乃果「えへへ……ちょっと恥ずかしいね」

希「そして、この学校で再会した時――運命ってあるんやなって思った」

にこ「……」

真姫「……」

希「穂乃果ちゃんから、この学校が好きな理由を聞いて、お祖母ちゃんの話を聞いて、
  そして、猫ちゃんから話を聞いた時、点と点が結ばれた気がして」


希「そのためにうちは、穂乃果ちゃんと出逢ったんやろなって感じたんよ」


穂乃果「ううん、それは違うよ」


希「え……?」

穂乃果「希ちゃんと出逢ったのは、そういうことじゃなくて」

希「……」

穂乃果「私たちは仲間になるために出逢ったんだよ」

希「穂乃果ちゃん……」

穂乃果「順番が逆だからね」

希「あぁもぅ、可愛いなぁ~!」

ギュウウ

穂乃果「の、のぞみちゃ――むぎゅう」


真姫「あ……!」

にこ「ちょ、ちょっと……希!」

535: 2014/04/13(日) 05:57:24.32 ID:tBzZ27J8o

希「はぁ~、あったかいわぁ」

ギュウ

穂乃果「の、希ちゃん……っ」


真姫「ほら、ほのちゃんも困ってるから、離れて!」


希「もう少し~」


にこ「まったく、年下に甘えて……なんなのよ」


希「ええやん~、うち、人に甘えるの下手やから~」

ギュウウ

穂乃果「く、くるしいよっ」

希「あ、ちょっと強く抱きしめすぎたようやね」

穂乃果「……ふぅ」


真姫「まったくぅ」


穂乃果「『あの時』、ことりちゃんが持ってた薬のおかげなんだよ」

希「そうなん?」

ことり「うん……、猫ちゃんが持ってたの」

猫「……」

海未「やはり、あの時の不思議な猫はあなたでしたか」

猫「……」


花陽「……ん」

凛「かよちん、どうしたの?」

花陽「ちょっと、頭が痛くて……」

凛「大変にゃ! にこ先輩、その毛布貸して!」

にこ「私が今使っているんだけど……」


希「それじゃ、ソフトハグ……」

ギュ

穂乃果「う、うーん……」


真姫「ちょっと、なにしてるのよっ!」


希「真姫ちゃんも混ざる?」


真姫「……」


真姫「何言ってるの!?」


ことり「ちょっと考えたね」

海未「考えましたね」

536: 2014/04/13(日) 06:00:46.08 ID:tBzZ27J8o

真姫「ことちゃんも海未先輩もからかわないでっ」

海未「……ですから、どうして私だけ先輩付けなのですか」

ことり「海未ちゃんが言ったんだよ、呼び方を変えなさいって」

海未「言いましたが、なぜ二人はそのままで、私だけ変わったのかが疑問なのです」

ことり「海未ちゃんは、厳しいお姉さん♪」

海未「本当でしょうか。……距離を感じるのですが」


希「穂乃果ちゃんとの出逢いは運命なんよ」

穂乃果「……そうだね」


真姫「そ、そういうことは男の人に使いなさいって!」


希「ええやんなぁ、女の子同士でも」

穂乃果「……そうだね」

希「あ……、嫌われる前にやめとこ」

スッ


にこ「……」

希「どうしたん、にこっち?」

にこ「……べつにぃ~」


海未「なんだか、面倒な人間関係ですね」


真姫「だいじょうぶ、ほのちゃん……?」

穂乃果「うーん……なんというか、弾力、圧力が……」


凛「すやすや」

花陽「すやすや」


ことり「二人とも寝ちゃった……」


猫「……」


――……

―…


『――ノス』

「……はい」


『焦っているみたいね』

「残された時間は僅かです。使える力も同じく」


『高坂穂乃果を誘導したり、薬を南ことりに渡したり、戦う道具を園田海未に――』

「そうするしか他に、東條希を仲間にする手立てがありませんでした」

537: 2014/04/13(日) 06:05:10.75 ID:tBzZ27J8o

『担任の夢への干渉するしか、方法は――ったのね――』

「確実に変えなければいけませんでした」


『あなた――……介在することで――……』

「はい。大きな変化が生まれるでしょう」



『成し遂――……うなの?』

「東條希が微かな光を導きました」


『――……――……』

「……」


――……

―…


穂乃果「猫ちゃん」


猫「……はい」


穂乃果「何度も呼んでたのに……どうしたの?」

猫「いえ、なんでもありません」

穂乃果「猫ちゃんって、名前とかあるの?」

猫「名付けてくださった名があります」

穂乃果「なんて言うの?」

猫「それより、私の願いを伝えておきます」

穂乃果「う、うん」


にこ「希、体をこっちに向けてくれる?」

希「ん~?」

にこ「動かないでね」

スルスル

希「……?」


海未「なにを……」

ことり「大胆です」


にこ「体育の時間、着替えに急いでたでしょ」

ぷちぷち

希「……そうやけど、どうしてボタンを外してるん?」

にこ「ボタンかけ間違えてるわよ」

ぷちぷち

希「脱がされてるみたいで恥ずかしぃ」

にこ「女の子同士でしょ、なに恥ずかしがってんのよ。って、
   間近で見ると迫力あるわね」

希「触ってもええよ?」

538: 2014/04/13(日) 06:15:10.63 ID:tBzZ27J8o

海未「場所をわきまえて欲しいのですが」


にこ「あ、あれ……ボタンが閉まらない……」

希「コツがあるんよ」


真姫「なにをしてるの、この人達……」

ことり「知らぬが仏だよ」


にこ「やましいことしてないわよっ」

希「今日のにこっち優しいやん……どうしたん?」

にこ「私はいつでも優しいでしょ」

希「そんなことないよ」

にこ「肯定しなさいよ……!」

希「たまに、優しいんやね。でも、そこがいいんよ♪」

にこ「そ、そうでしょぉ?」


海未「自分で肯定しろと言っておいて動揺してますね」

穂乃果「仲がいいのが一番だよね~。って、猫ちゃんの願いってなんだっけ?」

猫「とある方を目覚めさせて欲しいのです」

穂乃果「とある方って?」

猫「貴女の力が満ちた時、お連れします」

穂乃果「……どこへ?」

猫「その御方が眠る場所です」

穂乃果「……」

猫「まずは貴女の願いを叶えましょう」

穂乃果「……うん」


にこ「眠い……」

ことり「また深夜の?」

にこ「通販じゃないってば!」

ことり「映画かなって……」

真姫「ことちゃんを苛めないでくれる?」

希「みんなに優しくしないと、また凛ちゃんにカラオケマイク隠されるで~」

にこ「なんなのよあんたたちは、誰か私に優しくしてよぉ、もぉ……!」


海未「希先輩の案を採用した、ということでいいのですか?」

猫「そうです。他に何かあれば教えてください」

海未「残念ながら、私には思いつきません……」

ことり「9人目……」

穂乃果「お祖母ちゃんの友達の孫に当たる人だよね。
     日本に留まらせるってこと、できるのかな?」

猫「可能性が無いわけではないのです」

539: 2014/04/13(日) 06:18:09.58 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「どうして?」

猫「彼女もまた、悩んでいたのですから」

ことり「後押しができるかもしれないんだね」

希「創立記念の写真に写ってたのはキミだったんや?」

猫「そうです」


海未「そろそろ下校時間ですね、二人を起こしましょう」

ことり「かよちゃん、凛ちゃん、起きて~」

凛「……う……にゃ」

花陽「……う……んん」


にこ「くかー」

真姫「この人は放っておきましょ」


穂乃果「可能性があるんだ?」

猫「はい。私が最初に声をかけたのが、貴女の祖母である、彼女ですから――」


……



540: 2014/04/13(日) 06:20:24.58 ID:tBzZ27J8o

―― 夜:高坂邸


穂乃果「お祖母ちゃんには、猫ちゃんの声が聞こえなかったの?」

猫「そうです。その因果関係は私には理解できていませんが」

穂乃果「そっかぁ……お祖母ちゃんが……。
     ひょっとして、お母さんにも声をかけたりした?」

猫「鋭いですね。一度だけ試しましたが、無駄だと判断したためすぐに離れました」

穂乃果「お祖母ちゃんの傍にはずっといたんだよね?」

猫「はい。彼女との『時間』が、高坂穂乃果――貴女との意思疎通に繋がったのだと思いますから」

穂乃果「なんだか難しいけど……。
     お祖母ちゃんからよく、猫ちゃんの話をきかせてもらってたから、そういうことなのかな」

猫「恐らくは」

穂乃果「ふぅん……」


猫「それでは、よろしいですか?」


穂乃果「9人目だよね!」


猫「そうです」


穂乃果「くぅ~、ワクワクする!」


猫「……」


穂乃果「まだ見ぬ人に、――早く逢いたい」



穂乃果「お願いします!」


猫「高坂穂乃果」


猫「みらいで待っています」


穂乃果「――」


穂乃果「―」


穂乃果「」


「」


…………


………


……




541: 2014/04/13(日) 06:21:45.59 ID:tBzZ27J8o


―― 60年前 ――


「……――」


「……」


「?」


「おかしいですね、此処は……」


「まさか!?」

テッテッテ


……




―― 空き地


「このような変化を生み出してしまうとは……」


「迂闊でした……」


「…………」


「高坂穂乃果の守りたい物、そのものが消えてしまうなんて――」



………

……



543: 2014/04/13(日) 11:11:42.03 ID:tBzZ27J8o

―― 45年前 ――



「……」


「……」


「……」


「……」



………

……




―― 35年前 ――



「……」


「……」


「……」


「……」



………

……




―― 25年前 ――



「ねぇ、お母さん」

「なぁに?」

「よくこの公園に連れてくるけど、なにかあるの?」

「私、この公園好きなのよ」

「それは分かるんだけど……」

「ほら、あの木……ずっと倒れずにいるの」

「ふぅん……」



「……」



………

……




544: 2014/04/13(日) 11:12:34.72 ID:tBzZ27J8o

―― 16年前 ――



「……」


「……」


「……」


「……」



………

……




―― 14年前 ――



「うわぁぁああん」

「あらら、転んじゃったのね」

「うぇぇええん」

「ほら、痛いの痛いの飛んでいけ~」

「わぁぁあああん」

「あ、ほら、ネコちゃんよ~」

「ぐすっ?」

「あら、泣き止んだ」



「……」



………

……




545: 2014/04/13(日) 11:13:42.13 ID:tBzZ27J8o

―― 10年前 ――



「奥さん、聞きましたぁ~?」

「あら、なにかしらぁ~」

「なんでも、この公園を潰して、図書館を建てる計画が出てるらしいのよぉ~」

「まぁ~」


「!」


「うちの旦那が役所に勤めてて、その話を聞いたらしいのよぉ~」

「この公園、小さい子供たちが集まってくるのに、残念ねぇ~」

「ほんとよねぇ~」

「しょうがないことなのかしらぁ~」



『動くべきでしょうか……』


「あら、ネコがいるわよぉ~」

「あらほんとぉ~」


『しかし、これ以上の力を使うわけには……」


『場所の力を信じるしか、他にありませんね』



………

……




546: 2014/04/13(日) 11:17:16.41 ID:tBzZ27J8o

―― 8年前 ――



「わぁ~い」

タッタッタ


「転ばないように気をつけてね~」


「だいじょー……わぁぁ!」

ドテッ


「あらあら」

「ふぇ……っ」

「いたいのいたいの、とんでいけ~」

「うぅ……ぐすっ……だいじょうぶっ」

「あなたは強い子ね」

「……ぐす」

「ほら、つかまって」

「……うん」

「ふふ、今日も素敵な想い出が出来たわ」

「……?」

「おばあちゃんね、ここが好きなの」

「……すき?」

「そうよ。……本当は、学校が建つはずで、お友達と通っていたのかもしれない場所なの」

「……」

「だから、あなたにも好きになってくれたらいいな、って思う」

「……」

「少し、難しかったわね」

「……すき」

「……?」

「ここ、すき!」

「ふふ、そう。……嬉しいわ」

「えへへ」

「――守れてよかった」



「……」



………

……



547: 2014/04/13(日) 11:18:17.69 ID:tBzZ27J8o

―― 5年前 ――



「「 えぇっ!? 」」

「登ってみようよ!」

「無理ですぅ、こんな大きな樹ぃ!」




「……」



………

……




―― 3年前 ――


「おやっさん、無理を言ってくれるぜ……」


「……」


「記事だから、適当にってわけにもいかないしなぁ」


「……」


「お、いい被写体」


「……?」


「とりあえず、一枚」

パシャ


「――!」サッ


「あれ、タイミングが悪かったな」


「……」


「動くなよ~……、もう一枚……」


パシャッ


「……」サッ

「なにぃ!?」

548: 2014/04/13(日) 11:19:28.05 ID:tBzZ27J8o

「……」

「こんにゃろぉ」

パシャ

「……」サッ

「ぐぅ……! いい度胸してるな!」

パシャパシャ

 パシャパシャッ


サッ サッ

ササッ サッ


「はぁ……!?」


「……」


「必ず写真に収めてやる……!」


「……」



………

……




―― 1年前 ――



『そろそろ……ですか……』


『来なかった時は……それも運命だと思って……』


『諦めましょう』


「……」


「……」


「……」



………

……



549: 2014/04/13(日) 11:21:08.69 ID:tBzZ27J8o

―― 現在 ――



「ここで待ち合わせ、ですか」

「そうだよ」

「まったく……、待たせるのはいいのですが、
 待たせる理由を言わないのは困ります」

「海未ちゃん、気持ちは分かるけど、怒っちゃ駄目だよ?」

海未「怒ってなど……、いえ……またテストで負けてしまいました」

「悔しいんだよね」

海未「ことりは悔しくないのですか?」

ことり「どうして?」

海未「運動もできて、勉強もできる。……それはいいんです」

ことり「……」

海未「 で す が ! 私と比べて、勉強量は少ないはずなんです!」

ことり「そうだね。勉強時間はそんなに取ってないはずだよね」

海未「それなのに……! それなのに……!」

ことり「でも、私は……二人に勉強を教えてもらったから、
     同じ高校に入れた訳ですから……」

海未「……」

ことり「そんな風にケンカできる二人を見てると……複雑です」

海未「……よくわかりませんが。……わかりました、負けたことはもう、忘れます」

ことり「うん、それが一番だよ」

海未「やっぱり悔しいです! なぜ……! なぜ!?」

ことり「そう簡単に忘れられないみたいだね……」


「……」


ことり「今度一緒に勉強の仕方を教えて貰ったほうが――……あ、ネコちゃんだ」

海未「……?」


猫「……」


ことり「なにか、食べ物あったかなぁ?」ガサゴソ

海未「駄目ですよ、簡単に餌を与えては」

ことり「だってぇ」

海未「暇つぶしに、遊び相手くらいにはなってあげてもよさそうですね」


「ねぇ、いいでしょぉ? 行こうよぉ~」

「別の日ならええよ?」

「その日じゃないとぉ、だぁめぇなのぉ」

「その猫なで声はなんなん?」


550: 2014/04/13(日) 11:23:19.22 ID:tBzZ27J8o

猫「……」


ことり「おいで~、ちぃ、ちっちっち」

海未「ことり、それは違うと思います」


「おねがぁい、いいでしょぉ?」

「なにか企んでそうやな」

「こんなに甘えてるのに駄目なの?」

「普通にしてくれたら考えるんやけど」

「ね、いいでしょ、希……行きましょうよ」

希「その日は予定があるんよ、ごめんね」

「結局駄目なんじゃないのよー!」



猫「……」


ことり「動かないね」

海未「……そうですね。……ひょっとしたら置物かもしれません」ツンツン


猫「……」


海未「この感触は……いきもののようです」

ことり「……」


「おねがぁい、希ちゃん~」スリスリ

希「歩きにくいから、ちょっと離れて欲しいんよ」

「結構ドライなのね、あんた……」

希「……あ」


ことり「抱っこしてみようかな」

海未「急に暴れるかもしれませんから、気をつけてください」


希「なぁ、そこのお二人さん」


ことり海未「「 ? 」」


希「間違ってたらごめんやけど……――小学校の遠足で逢わなかった?」

ことり「小学校の……」

海未「遠足……ですか?」

希「あ――うん、間違いない、『あの時』の二人や~!」

「なに、なにを急にテンション上げてんのよ?」

希「うちの命の恩人なんよ」

「……恩人?」

ことり「……――あ!」

海未「『あの時』……神社の!」

551: 2014/04/13(日) 11:25:30.55 ID:tBzZ27J8o

希「そうなんよ、嬉しいなぁ~!」

ことり「わぁ、こんなところで逢えるなんて!」

海未「あの後、体の様子は……?」

希「おかげさまでな、あれから発作も軽くなって、
  運動も少しやけど、できるようになったんよ」

ことり「よかった……!」

海未「……はい、本当に」

希「ありがとう」

ことり「いえ……」

海未「再会出来てよかったです」

希「あれ、もう一人んほうは?」

ことり「すぐ来ると思いますよ」

希「ちゃんとお礼を言いたかったからよかったわぁ」

海未「きっと、喜びます」

希「自己紹介しとくね、うちは――東條希」

ことり「――南ことりです」

海未「――園田海未です」

「……」

希「こっちはにこっち」

海未「外国の方ですか?」

ことり「こんにちは、コッチハニコッチさん」

「生粋の日本人なんだけど……」

ことり「?」

「――矢澤にこ、よ」


猫「……」


……




「――星空凛です!」

「こ、――小泉花陽……ですっ」

ことり「初めまして」

海未「初めまして」

希「凛ちゃんはうちの学校の陸上部エースで、花陽ちゃんは合唱部のエースなんよ」

にこ「私は演劇部のエースよ」

凛「二人とも、あの進学校の生徒なんですね」

ことり「うん、そうだよ」

花陽「勉強、できるんですね……」

海未「いえ、それほどでは……」

にこ「謙遜ね、ふーんだ」

552: 2014/04/13(日) 11:26:46.58 ID:tBzZ27J8o

海未「勉強できると……いえるのでしょうか、私は……」

希「落ち込んだ?」

ことり「ちょっと、悩みがあるみたいで」

海未「星空さんの活躍は、私のところまで届いていますよ」

凛「えっへん」

にこ「私の名声は?」

海未「……えっと、園芸部でしたっけ」

にこ「演劇部よ」

花陽「少しも届いてない……!」

希「2人はここに、何しに来たん?」

凛「ただ、かよちんと、なんとな~く散歩してました~」

希「なんとなく、ね……」

花陽「希先輩は……?」

希「うちは、この雑誌に気になる記事があって、実際に見に来たんよ」

海未「雑誌……?」


猫「……」


希「まぁ、ちょっとした好奇心やな」

にこ「帰りましょ。ずっと居る理由もないし、……なにかとスルーされるし」

凛「かよちん、ラーメン食べに行こ!」

花陽「で、でも……太っちゃうよぉ」


ことり「それじゃ、また」

海未「さようなら」


希「あの子に逢えなかったのは残念やけど。また今度、必ず逢おうな~」

にこ「……いつっ」

希「どうしたん?」

にこ「なんか、頭に痛みが……」

希「だいじょうぶ? 病院行こか?」

にこ「……平気よ」


「――ほのちゃん」

「……うん?」

「ふふ、なんでもない」

「どうしたの、今日は嬉しそうだけど」

「2人で歩くことってそんなにないから」

「そういえば、そうだね」


海未「あ、希さん!」


希「?」

553: 2014/04/13(日) 11:30:07.71 ID:tBzZ27J8o

海未「穂乃果が来ました」


希「おぉ~!」

にこ「……え、なに? 戻るの?」


花陽「あ、西木野真姫さんだ……」

凛「かよちん、ラーメン~!」


真姫「……あ、ひょっとして」

花陽「は、はい……合唱コンクールでお逢いしましたね……」

真姫「へぇ……こんなところで逢えるなんて、奇遇ね」

凛「にゃ?」


希「ありがと~!」ダキッ

「わぁ!?」

希「逢いたかったんよ……!」

ギュウウ

「むぎゅう――」

真姫「ちょ、ちょっと、なんなのっ、ほのちゃんから離れてっ」

にこ「ちょ、ちょっと、なんなのっ、希から離れてっ」

真姫「真似しないでっ!」

にこ「どう、私の演技力」

海未「人をバカにする演技は認めたくありません」

ことり「……うん」

にこ「うぐっ……しまった」


猫「全員、揃いました」


穂乃果「ん?」

希「どうしたん?」

穂乃果「あれ、今……」

海未「穂乃果……?」

554: 2014/04/13(日) 11:31:23.50 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「……違和感のある声が聞こえたような」


猫「希望が見えたようです」


穂乃果「あれ、ネコ?」


猫「かつて、この場所には学校が存在していました」


穂乃果「……」


猫「音ノ木坂学院という名の、
  貴女が守りたいと願った学校が存在していたのです」


穂乃果「……ネコがしゃべった!?」



……



555: 2014/04/13(日) 11:33:33.57 ID:tBzZ27J8o

猫「――どうですか?」


希「くちゅん!」


猫「――!」


希「あ、ごめんなぁ」

猫「いえ、大丈夫です」クシクシ


にこ「あわわっ、ねっ、ネコがしゃべってる!?」

凛「……これは夢にゃ」

花陽「ううん、現実だよ」

凛「かよちんの精神が強いにゃー!」

にこ「み、みんな離れてっ、魂が抜かれてしまうわ!」

真姫「じゃあ、確かめてみて」グイッ

にこ「押さないでよ!? いくら可愛いからって、にこを生贄に捧げないでっ!」

希「楽しそうやんなぁ」


穂乃果「……うぅん……頭が痛い……」

猫「少しだけ、『前の段階』の記憶を渡しました」

穂乃果「……これは……教室……? コタツ?」

猫「そうです。ここにいる全員で、コタツの中で温まっていた『時間』が存在するのです」

穂乃果「…………」

ことり「穂乃果ちゃん……?」

穂乃果「……うん、わかる。……みんな、いる」

海未「みんな……?」

穂乃果「ここにいる、――ことりちゃん、海未ちゃん、
     真姫、凛ちゃん、花陽ちゃん、にこちゃん、希ちゃん」

にこ「……あれ、私……自己紹介した?」

真姫「自分で自分の名を言ってたでしょ」

穂乃果「にこちゃん……演劇部だよね」

にこ「え……?」

希「穂乃果ちゃんには伝えてなかったことやな」


穂乃果「あぁ――……うん、――温かい時間が、そこにある」


猫「……」


穂乃果「ちゃんと説明して、猫ちゃん」


猫「わかりました」


穂乃果「……どうして、学校が消えちゃったの?」


猫「恐らく、8人全員を揃える為に私が起こした行動の結果が、
  この事態を招いたのだと考えます」

556: 2014/04/13(日) 11:41:00.35 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「……」


猫「高坂穂乃果――」


穂乃果「……はい」


猫「ここが『最終分岐点』です」


穂乃果「最後なの……?」


猫「そうです」


穂乃果「どうして?」


猫「私の力が限界に近いということ」


穂乃果「……」


猫「この選択をどうしますか」


穂乃果「選択……」


猫「学校を再建させるか否か――」


ことり「なんだか、難しい話をしてるね」

海未「……はい。最後、ということは……今までも『分岐点』というものがあったのですね」


真姫「よく分からないけど、選択させるってことは……そんなに悪意はなさそうね」

凛「8人みんなで、一緒に居たってことだよね」

花陽「うん……。……楽しそう」


にこ「みんな鵜呑みにしすぎじゃないの? 
   年上である私たちが注意を促さないとね」

希「……」


穂乃果「……――みんなと一緒に、学校へ通いたい」


猫「わかりました」


穂乃果「無くなった学校を再建させるなんて、できるの?」

猫「これから調べた上で判断をしますが、可能性は高いと思います」

穂乃果「……」

猫「そして、――9人目を探してきます」

穂乃果「9人目……」

猫「全ての情報を得た後、また貴女のところへ伺い、その時に跳んでもらいます」

穂乃果「……」


希「話の腰を折るようで悪いんやけど」

猫「なんでしょう」

557: 2014/04/13(日) 11:42:49.61 ID:tBzZ27J8o

希「話しを聞く限りでは、猫ちゃんは、
  穂乃ちゃんを『過去』へ跳ばして『今』を変えているんやな?」

猫「そうです」

希「それっておかしない?」

猫「あなた方、人間の解釈と、私たちの時間の解釈が異なるのでそう感じるのです」

希「詳しく教えて?」

真姫「ちょっと待って」

猫希「「 ? 」」

穂乃果「どうしたの、真姫……? 今の話について行けないなら、聞き流してもいいんだよ?」

真姫「そうじゃなくて、どうしてあなたがほのちゃんって呼んでいるのよ」

希「ええやん」

真姫「よくない。その呼び方は私――むぐっ」

海未「真姫、少ししずかにしていてもらえますか」

真姫「むぐぐ」

凛「凛はついていけないにゃ~」

ことり「……私も」

にこ「わけ分かんない!」


猫「園田海未」

海未「は、はい」

猫「貴女が現在、所属している部を教えて下さい」

海未「……弓道部ですが」

猫「ここにも変化が起きたようです」

希「どういう意味?」

穂乃果「……『前の段階』では、うみちゃんと私……剣道部に入ってたよ」

海未「剣道……、私がですか?」

穂乃果「そうだよ。うみちゃんに稽古つけてもらってたもん」

海未「私が……穂乃果に剣道の稽古を……」

ことり「……私は?」

穂乃果「手芸部」

ことり「今と変わりないみたいです」

希「まだ時間の解釈のズレを教えてもらってないんやけど」

猫「園田海未の家柄がとても重要になります」

海未「……」


猫「この宇宙に流れる時間には秘密があり、

  それがこのズレを引き起こしているのです」


希「……秘密、ね」

558: 2014/04/13(日) 11:46:23.92 ID:tBzZ27J8o

猫「人の生命に始まりと終りがあるように、この宇宙にも終わりがあります」

希「終わった後、どうなるん?」

猫「再生します。始まりが訪れ、再び同じ時間が流れ、終へ向かう」

希「なるほどね。時間が生まれ変わったから、海未ちゃんの家柄が変化したんやな」

猫「そうです。同じ時間を行き来しているわけではありません」

穂乃果「これって……相対性理論……?」

猫「その数式を見つけ出した人物も、
  宇宙の秘密を解き明かしたといえるでしょう」

穂乃果「おぉ……!」

希「天才と言われるだけあるね」

海未「……なるほど」

真姫「秘密って言ったけど、簡単に伝えてもいいの?」

猫「貴女方、人間がその秘密に気付いたとしても、大きな変化は生み出せないでしょう」

凛「なるほどにゃ」

花陽「凛ちゃん、わかったの?」

凛「わかった気がするだけだよ」

にこ「解ってないじゃないの。これはサイエンス・フィクションよ」

猫「フィクションではありません」

真姫「そっちは無視してもいいから」

猫「わかりました」

にこ「ないがしろにしないでくれる?」


猫「それでは、私は移動します」

穂乃果「学校のことを調べるんだよね……、その後どうするの?」

猫「――ロシアへ向かいます」

穂乃果「ロシア……?」

猫「貴女の祖母である、彼女の友人がいる土地」

穂乃果「お祖母ちゃんの……」

希「そのお孫さんが、うちらの9人目になるんやね」

猫「孫が居ればの話になりますが」


希「はやく……会いたいかも」

穂乃果「うん……、会いたい!!」


猫「それでは、後は高坂穂乃果のお任せして……私はこれで失礼します――」スゥ


穂乃果「あ――……消えちゃった」

559: 2014/04/13(日) 11:49:14.11 ID:tBzZ27J8o

ことり「もうちょっと聞きたかったことがあったけど……」

海未「なんだか、いろんな事が起きて、頭がパンクしそうです」

穂乃果「それじゃ、私が教えてあげるよ。――ボランティア部での、楽しかった時間を」

真姫「私も……いたの?」

穂乃果「もちろん」

真姫「よかった……」

穂乃果「凛ちゃんや、花陽ちゃん、にこちゃん、希ちゃん」


穂乃果「ここにいるみんなが一緒にいたんだよ」


凛「なんだか、胸がムズムズしてきたにゃ」

花陽「うん……、ワクワクする……ドキドキする」

にこ「……そうね、なんだか……落ち着かないわ」

希「……っ」

にこ「どうしたの、希……?」

希「ちょっと、頭が……」

にこ「た、大変! 穂乃果、その話はまた今度よ!」

穂乃果「え、あ……うん」

にこ「ほら、帰るわよ!」

希「大丈夫やから。ちょぉっと刺激が走った程度なんよ」

にこ「そう言って、また学校を休まれたら困るじゃないの!」

希「……うん、ごめんね、にこっち」

にこ「べ、べつに謝る必要は――」

希「穂乃ちゃん、一緒に帰ろ?」ギュ

穂乃果「うん……って、どうして腕を……」

希「ええやん、今日は特別な日やし♪」

穂乃果「そうだね!」

真姫「ちょ、ちょっと!」

にこ「ちょ、ちょっと希!?」


ことり「穂乃果ちゃんが遠くへ行ってしまう……」グスン

海未「まだ近くにいるではありませんか」


凛「これから楽しくなりそうだね、かよちん!」

花陽「うん……、新しい出会い……じゃなくて……再会したんだよね、わたしたち」


……




560: 2014/04/13(日) 11:51:35.16 ID:tBzZ27J8o

花陽「ライブ……?」

にこ「そう、ミニコンサートがあるのよ。鈴音って子、知ってる?」

花陽「ううん、知らない」

にこ「まぁ、そんなもんよね。……2枚の招待券貰ったんだけど、一緒に行ってくれる人がいないのよ」

花陽「……どうしよう」

真姫「いいんじゃない? 一緒に行ってきたら?」

花陽「……」

真姫「そういうのを見て勉強することもあるし、あなたならもっと歌の幅が広がりそう」

花陽「……そうかな?」

真姫「えぇ」

にこ「あなた……いい事言うじゃない! 券は譲らないけど」

真姫「いらないわよ」

凛「凛にもちょうだい! かよちんと行きたいにゃ!」

にこ「いいわよ、ほら。って、これ私の分よ!」

凛「むぅ~! ちょうだい!」

にこ「私が貰ったから、だ~め」

凛「ケチ~!」

にこ「ケチで結構よ、チケットだけに……」

真姫「それはない」

にこ「……」

花陽「傷ついちゃった」


希「仲良くなるの早いね」

海未「真姫がすぐに打ち解けるなんて……」

ことり「珍しいよね」

穂乃果「希ちゃん、どうしてこの公園に来たの?」

希「これも運命なのかもしれないね」

穂乃果「?」

希「この雑誌に、公園を守った人の記事が書かれているんよ」

穂乃果「ふうらい……?」

希「主に旅をテーマにした内容なん。……この公園でおかしな猫がいたって、触れられててな」

穂乃果「あの猫ちゃんのことだよね」

海未「ずっと待っていたのですね」

ことり「たった独りで……」

穂乃果「守ったって、どういうこと……?」

希「この公園を無くして、図書館を建てるという計画があったそうなんよ」

穂乃果「え……そうだったんだ。
    小さい頃から連れてきてもらってた場所だから、無くなってたら寂しかったかもしれないよ」

希「その、守った人が……この写真に写る人」

穂乃果「――お祖母ちゃん!?」

561: 2014/04/13(日) 11:52:35.48 ID:tBzZ27J8o

海未「本当ですか?」

穂乃果「間違いないよ!」

ことり「ほぇ~……」

希「名前に、高坂さん、ってあるやろ? 
  それで穂乃ちゃんを思い出して、来てみたら、大当たり」

穂乃果「……確かに、運命だ」


にこ「ほら、希~、帰るわよー」


希「おっと、もうこんなとこまで来たんやね」

穂乃果「また、逢えるよね」

希「明日でも、明後日でも、毎日でもええよ?」

穂乃果「えへへ」

希「ずっと、逢いたかったから」

穂乃果「――うん」

希「それじゃ、またね」

穂乃果「うん、またね」


にこ「じゃあね」

穂乃果「にこちゃんも、またね!」

にこ「うん、……また、逢いましょ」


……




凛「それじゃ、凛たちはここで!」

花陽「さ、さようなら」

穂乃果「凛ちゃん、花陽ちゃん、またね」


凛「またね~!」

花陽「またお逢いしましょう」


……



562: 2014/04/13(日) 11:53:38.58 ID:tBzZ27J8o

真姫「……」

穂乃果「今度、いつ逢おうっか?」

真姫「明日、学校で逢えるじゃない」

穂乃果「あはは、そうだよね」

真姫「……また、明日ね。――穂乃果先輩」

穂乃果「え……?」

真姫「なんて……一度、呼んでみたかった……から」

穂乃果「そっか……」


真姫「――ッ!」ズキィ


穂乃果「真姫……?」


真姫「ん……なに、今の……」

穂乃果「どうしたの、頭が痛いの?」

真姫「あ、うん……だけど大丈夫」

穂乃果「本当に?」

真姫「本当に、大丈夫だから」

穂乃果「うん……それならいいんだけど」

真姫「それじゃ……」

穂乃果「うん、それじゃ」

真姫「またね、ほのちゃん」

穂乃果「また、明日ね」


……



563: 2014/04/13(日) 11:54:39.62 ID:tBzZ27J8o

海未「頭の整理が必要ですね……」

ことり「そうだね。……明日、学校でおさらいしてみよう」


穂乃果「希ちゃんと再会できて、にこちゃんと出逢えて、凛ちゃんと花陽ちゃんにも出逢えた」


穂乃果「うーん、なんていい日なんだろ!」


海未「――ほのか」


穂乃果「うん?」


海未「私はここで失礼します」


穂乃果「あ、うん。……また明日ね!」

海未「はい。……――また、明日」


ことり「私もここで」

穂乃果「うん、バイバイ!」


ことり「……あ、そうだ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「?」


ことり「みんなと……ずっと一緒に居たいよね」

穂乃果「うん、もちろんだよ!」


ことり「――それじゃあね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「うん、また明日~!」



穂乃果「……」



穂乃果「みんな、またね」



………

……



564: 2014/04/13(日) 11:55:59.88 ID:tBzZ27J8o


一つの意志が、その土地へ舞い降りる。


「……」


遠い記憶を辿る。


かつて、二人が肩を並べて歩いた日々を。

交わした言葉の数々を。

ともに過ごした時間を。


「……」


しかし、その者の足取りは頼りない。


少しずつ、歩を進める速度が落ちていく。



そして、姿を消した。



深い地下。


「……」


深い眠りにつく。



―― そして。


目を覚ました時は、冬。


数ヶ月の眠り。


「……」


力を蓄えた意志を持つ者。


地上へと戻り、再び歩を進めた。


深い雪の上を歩く。

凍てつく大地を歩く。


かつて、交わした約束を守るため。


自らの願いと、少女の願いをかなえるため。


終わりの近い時間の中を、唯一の希望を見つけるため。


歩いていく。

566: 2014/04/13(日) 11:58:06.29 ID:tBzZ27J8o

何度目かの、夜。


キラキラと瞬く星。


降り積もった雪が月の光を反射させる。


白い世界。






「――……xopoшo」






少女が空を仰いでいた。


光のカーテンがそこにあった。



「……」



輝く星と、オーロラを。


一人、白い世界の中で眺める。

567: 2014/04/13(日) 11:59:15.49 ID:tBzZ27J8o


同じ空の下。


同じ時。


違う場所で、もう一人の少女もまた、空を仰ぐ。



「――9人目かぁ」


「はやく、会いたいな」



時は流れる。


最後の時を。



568: 2014/04/13(日) 12:00:35.92 ID:tBzZ27J8o

…………

………

……



……

………

…………

………

……



……

………

…………

……………

………………

…………………

……………………

………………………

…………………………

……………………………

…………………………

………………………

……………………

………………

……………

…………

………

……





穂乃果「すやすや」


「よく寝ているわね……」


穂乃果「……ん…」


「起きて、ほのか」


569: 2014/04/13(日) 12:01:38.99 ID:tBzZ27J8o

穂乃果「……ん……ん?」


「おはよう」


穂乃果「……あと、5分」


「……」


穂乃果「すやすや」


「……しょうがないわね」



……




―― 台所


「おはようございます、おばさま」


「あら、おはよう。……穂乃果はまだ寝てるのね」


「はい。一度起きたけど、また寝てしまいました」


「まったく、しょうがないわね」


「……いつものことですけど」


「いつも起こしてもらって、悪いわね」


「いいえ、これくらい」


「あ、お父さんの手伝いしてくるから、料理の続きお願いできる?」


「はい、任せて下さい」


「穂乃果と一緒に、ちゃんと食べてね」


「いつも、すいません」


「いいのよ、これくらい。娘が二人になって、私も嬉しいんだから」


「ふふ、ありがとうございます。おばさま」


「穂乃果のことよろしくね」


「はい」


570: 2014/04/13(日) 12:03:52.16 ID:tBzZ27J8o

―― 5分後


「あ、そろそろ起こさないと」


スタスタ


穂乃果「おはよう~」


「おはよう、穂乃果。ちゃんと一人で起きられたのね」


穂乃果「ふぁぁ……顔洗ってくる……」


スタスタ


「きっかり5分で起きるのね」


「それにしても、穂乃果と私の好きな食材ばかり……」


ドタドタドタッ


「気づいたわね」


穂乃果「――絵里ちゃん!」


絵里「朝からそんな大声出さないの」


穂乃果「おでこに落書きしたでしょ!?」


絵里「自分の持ち物には自分の名前を書きなさいって、教わったでしょ?」


穂乃果「もぉー! これ油性だよぉー!」


絵里「え?」


571: 2014/04/13(日) 12:05:10.22 ID:tBzZ27J8o

―― 洗面所


ジャー


絵里「……落ちないわね」

ゴシゴシ

穂乃果「どうするのこれ! 絶対に笑われるよ!」

絵里「ちょっと、動かないで」

穂乃果「って、近いよ」

絵里「こうしないと落ちないでしょ?」

穂乃果「もぉ……」

絵里「……」

ゴシゴシ

穂乃果「い、いたいっ」

絵里「あ、ごめん……」

ゴシゴシ

穂乃果「……」

絵里「……諦めましょう」

穂乃果「もぉー!!」

絵里「ほら、早くしないと、ジョギングに行けなくなるわよ」

穂乃果「これを落とすほうが先だよ!」

絵里「帰ってきてからでいいじゃない。今日から2年生。学校に遅刻はできないわよ?」

穂乃果「絵里ちゃんのせいでしょ!」

絵里「ほーら、怒ると可愛い顔が台無――」

穂乃果「誤魔化さないでよ」

絵里「……最近、この手が通じなくなってきたわね」


……




572: 2014/04/13(日) 12:06:19.88 ID:tBzZ27J8o

―― 学校


上級生「おはよう、絢瀬さん」

絵里「おはよう」

穂乃果「おはようございまーす」

上級生「高坂さんはそんな髪型だった? 前髪揃えてたかな……?」

穂乃果「これは、その……」

上級生「進級したから雰囲気を変えてみたのね」

穂乃果「そういうわけじゃないんですけど。……じぃー」

絵里「……」

上級生「?」

絵里「ほら、クラスを確認してこないと」

穂乃果「すぐ話題を変えるんだから。……絵里ちゃんは?」

絵里「春休み中に確認してあるのよ」

穂乃果「そうなんだ。……えっと、一緒に帰れるの?」

絵里「えぇ、今日は平気よ。終わったら迎えに行くわね」

穂乃果「わかった。それじゃあね」

絵里「最初が肝心よ、穂乃果。……しっかりね」

穂乃果「はーい」

スタスタ


上級生「可愛い妹って雰囲気ね」

絵里「つい、そういう風に接してしまうのよね……」


……



573: 2014/04/13(日) 12:08:03.75 ID:tBzZ27J8o

―― 放課後:2年生教室


「高坂さん、高坂さん!」

穂乃果「な、なにかな?」

「絢瀬先輩と一つ屋根の下で暮らしてるって本当なの!?」

穂乃果「えっと……あなたは……」

「自己紹介は後でするから、どうなの!?」

穂乃果「そうだよ」

「えぇー!?」

穂乃果「そんな驚くこと?」

「いや、確かに今のリアクションは大袈裟だったけどさ。
 失礼なこと聞くかもだけど……」

穂乃果「?」

「複雑な家庭環境ってヤツ……?」

穂乃果「そうだねぇ……絵里ちゃんは、ちょっと複雑かも」

「……そっか」

穂乃果「絵里ちゃんの家族は、ロシアに住んでて……絵里ちゃん一人だけ日本にいるから」

「あ、意外と単純だった。それっていつからなの?」

穂乃果「小学校……4年生……あれ、5年生だったかな?」

「ふぅん……」

穂乃果「考えてみたら、そんなに経ってないんだよね。……感覚的にはもっと長く居るものだと思ってた」

「高坂さんって面白いね。友達になろうよ」

穂乃果「うん。私は高坂穂乃果、よろしくね」

友人「私の名は――」

穂乃果「あ……」

友人「?」

穂乃果「迎えに来たみたい」

友人「おぉ、噂をすれば。……まぁいいや、明日ね」

穂乃果「うん、明日ね~」

テッテッテ


友人「ふむふむ……ようやく友達になれたぞ」

574: 2014/04/13(日) 12:09:31.45 ID:tBzZ27J8o

―― 廊下


穂乃果「お待たせ!」

絵里「話をしていたみたいだけど、よかったの?」

穂乃果「平気だよ」

絵里「真っ直ぐ帰る? それとも、寄り道する?」

穂乃果「じゃあ、近くの公園で――」

絵里「あ、お店の手伝いしないとね」

穂乃果「選択肢ないじゃん!」



……




―― 下校中


穂乃果「ねぇ、絵里ちゃん」

絵里「?」

穂乃果「その……家族に会いたいって思う?」

絵里「どうしたの、急に……」

穂乃果「さっきね、その話してて……どうなのかなって、気になっちゃって」

絵里「そうね、今の私の状況って、特殊だものね」

穂乃果「……寂しくない?」

絵里「寂しくない、って言ったら嘘になるけど……」


絵里「おばさまやおじさまは穂乃果と別け隔てなく接してくれるし、
    間違ったら叱ってくれて、家での役割も与えてくれる」


絵里「……穂乃果も居るから、両親に会いたいっていう寂しさは、そんなにないかな」

穂乃果「そっか……」

絵里「でも、そろそろ身の振り方を考えないとね」

穂乃果「え――……」


……




575: 2014/04/13(日) 12:10:38.65 ID:tBzZ27J8o

―― 高坂邸


ガラガラ


絵里「ただいま戻りました」

穂乃果「ただいま……」


「あら、お帰り」


絵里「店番、代わります」

「助かるわ。……穂乃果は店前の掃除を……どうしたの?」

穂乃果「……えっと、お母さんに話があるんだけど」

母「いいけど、今すぐ?」

穂乃果「……うん」

母「それじゃ、居間で待ってて。……絵里は鞄を置いたらお願いね」

絵里「は、はい」


絵里「……話?」



……



576: 2014/04/13(日) 12:12:21.55 ID:tBzZ27J8o

―― 夜:穂乃果の部屋


コンコン

「私だけど」


穂乃果「どうぞー」


絵里「話があるんだけど、いい?」

穂乃果「うん、いいよー」

絵里「勉強していたのね」

穂乃果「ちょっと、予習をしとこうかと思って。話ってなに?」

絵里「そこに座って」

穂乃果「う、うん……真面目な話なんだね」


絵里「おばさまに相談したそうね」

穂乃果「あ……うん」

絵里「怒られちゃったわ。――まだ子供なのに何を遠慮しているのかって」

穂乃果「……」

絵里「本当言うとね、来年には出ていかなくちゃいけないって思ってたの」

穂乃果「来年……」

絵里「いつまでも迷惑かけているのは悪いな、って」

穂乃果「……」

絵里「他人の家に転がり込んでいる私は早く出て行かないと、って考えてた」


穂乃果「…………」


絵里「だけど、言ってくれたわ。――私たち家族でしょ、って」


穂乃果「……!」


絵里「だから、もう少し。……自立出来るその日まで、居させてもらうことにしたの」


穂乃果「絵里ちゃん……!」


絵里「そういうことだから、これからもよろしくね、穂乃果」


穂乃果「うん……、うん! よろしくね絵里ちゃん!」


絵里「ふふ、そんなに喜んでくれるの?」

穂乃果「もちろんだよ!」

絵里「なんだか、照れるわね」

穂乃果「そうだ、コレを機会に呼び方変えてみようかな」

絵里「え?」

穂乃果「絵里姉ちゃん。絵里お姉ちゃん。絵里ねぇ。絵里姉さま」

絵里「今までどおりでいいわよ」

577: 2014/04/13(日) 12:14:44.74 ID:tBzZ27J8o

……




―― 翌日:学校


友人「おはよー、穂乃果」

穂乃果「おはよう。……って、あなたの名前、なんだっけ?」

友人「私の名前は――」


「高坂さーん、お客さん~」


穂乃果「え……、あ、絵里ちゃんだ」

テッテッテ


穂乃果「どうしたの?」

絵里「ごめん、お弁当渡すの忘れてて。……はい」

穂乃果「あ、こっちこそごめんね。持たせたままだった」

絵里「それくらいいいわよ。それじゃあね」

穂乃果「お昼、一緒に食べようよ」

絵里「……友達と一緒に食べたほうがいいんじゃない?」

穂乃果「……そうかもしれないけど、絵里ちゃんと一緒に食べたい」

絵里「やっぱりダメよ。学級を優先して。……それじゃ」

穂乃果「わかった。ありがとね~」


友人「弁当?」

穂乃果「そうだよ。お父さんが作ってくれたんだ」

友人「へぇ……、羨ましいなぁ」

穂乃果「いいでしょー」

友人「お父さんって、なにしてる人?」

穂乃果「和菓子作ってるよ」

友人「それじゃ、弁当の中身も和菓子……とか」

穂乃果「そんなわけないよ。日本食だから」

友人「いいなぁ」

穂乃果「いつも二人分作ってくれるんだよ。感謝しないとね」

友人「出来た娘だね。穂乃果って姉妹はいるの?」

穂乃果「ううん、私も絵里ちゃんも一人っ子だよ」


……


【ラブライブ】穂乃果「時の旅人」【4】

引用: 穂乃果「時の旅人」