580: 2014/04/14(月) 08:07:33.51 ID:svCzqJmho

【ラブライブ】穂乃果「時の旅人」【1】
【ラブライブ】穂乃果「時の旅人」【2】
【ラブライブ】穂乃果「時の旅人」【3】
【ラブライブ】穂乃果「時の旅人」【4】


―― 梅雨:穂乃果の部屋


コンコン


穂乃果「どうぞー」


スーッ

絵里「穂乃果、お風呂の掃除当番なんだけど、交代してくれないかしら」

穂乃果「いいけど、どうしたの?」

絵里「おばあさまから連絡があって、調べ物しなくちゃいけないのよ」

穂乃果「ロシアから、わざわざ調べてくれって?」

絵里「……そう。悪いけどよろしくね。次は私が掃除するから」

穂乃果「あ、どこ行くの?」

絵里「都立図書館よ。夕方には戻ると思うから」

穂乃果「わかった。気をつけてね~」


……




―― お風呂


穂乃果「数星霜のストーリー 忘れてるだけ~♪」

ゴシゴシ


母「穂乃果、電話よ」

穂乃果「後でかけ直すから、放っておいていいよ~」

ゴシゴシ

母「携帯電話じゃなくて……ほら、子機持ってきたから、出て」

穂乃果「だれ?」

母「おばあちゃん」


穂乃果「もしもし……どうしたの、お祖母ちゃん?」


……



581: 2014/04/14(月) 08:09:25.35 ID:svCzqJmho

―― 夜:絵里の部屋


コンコン

「絵里ちゃーん」


絵里「どうぞ」


スーッ

穂乃果「昼に調べたことってなんだったの?」

絵里「大したことじゃないから、気にしないで」

穂乃果「お祖母ちゃんが、ロシアのおばあちゃんに連絡したんでしょ?」

絵里「……どうしてそう思うの?」

穂乃果「電話があったんだよ。偶然とは思えなくて」

絵里「……鋭いわね」

穂乃果「言えないことなの?」

絵里「というより、伝える必要のないことだから。
    時期が来たら教えてあげる」

穂乃果「わかった。……それでね、お祖母ちゃんと話をして思い出したことがあるんだ」

絵里「?」

穂乃果「一緒に押入れで探しもの手伝って欲しいんだけど、いいかな」

絵里「いいけど、なにを探すの?」

穂乃果「将棋盤。小さいころ教えてもらったよね」

絵里「……そうね。……久しぶりに指しましょうか」

穂乃果「やったっ!」


……



―― 翌朝


穂乃果「行ってきまーす」

絵里「行ってきます」


母「行ってらっしゃーい」


穂乃果「……やっぱり悔しい」

絵里「まだ言ってるの?」

穂乃果「だって、駒を触ってないのって同じくらいでしょ?」

絵里「そうよ」

穂乃果「それなのに、全然敵わなかったんだもん」

絵里「穂乃果に負けるわけにはいかないものね」

穂乃果「むぅ……」


……



582: 2014/04/14(月) 08:11:08.09 ID:svCzqJmho

―― 夏休み前日:2年生の教室


友人「ねぇ穂乃果、夏休みって予定あったりする?」

穂乃果「うーん、……そうだなぁ……これといってないかも」

友人「それならさ、たまにでいいから私と遊ぼうよ」

穂乃果「いいよ」

友人「あっさりオーケーしたけど……穂乃果って、夏休みどう過ごしてるの?」

穂乃果「どうして?」

友人「だってさ、学校で話す人はたくさんいるのに、誰かと遊んだりしてないでしょ?」

穂乃果「あ……うん、そうだね」

友人「他に遊ぶ人とか、約束は?」

穂乃果「……無い、ね」

友人「じゃあ、私が誘わなかったら、この夏休みどうするつもりだったの?」

穂乃果「うーん……絵里ちゃんとどこか行ったり、してたと思う」

友人「それだ」

穂乃果「どれ?」

友人「穂乃果と絢瀬先輩、ほとんど一緒に居るでしょ」

穂乃果「……うん」

友人「だから、他のみんなが遠慮しちゃうんだよ」

穂乃果「えぇー、なにそれ?」

友人「例えばさ、私にこの学校の彼氏が居たとするよ。
    そして、毎日一緒に登下校してたら……穂乃果は私と下校しようって、誘える?」

穂乃果「難しいよね」

友人「そういうこと。……あ、別に一緒にいるのが悪いってわけじゃないからね」

穂乃果「……うん」

友人「多分だけど、私以外にも、穂乃果と一緒に遊びたい人はいると思うよ」

穂乃果「そ、そうかな?」

友人「さぁ、どうでしょ」

穂乃果「もぅ……適当言って!」

友人「あはは、ごめんごめん」

穂乃果「そういうあなたこそ、遊びに行く友達とか居ないの?」

友人「私の事、色眼鏡なしに見てくれるのって、穂乃果くらいだから」

穂乃果「……」

友人「まぁ、そういうことなんで、電話番号、教えてよ」

穂乃果「うん」


……



583: 2014/04/14(月) 08:12:47.73 ID:svCzqJmho

―― 夏休み:高坂邸


絵里「王手」パチ

穂乃果「う……!」

絵里「……」

穂乃果「……ま、待った」

絵里「それはダメよ」

穂乃果「うぅ……」

絵里「……ここを」

穂乃果「それもダメ!」

絵里「わかったわ。じっくり考えて」

穂乃果「むぅぅ……」


絵里「……」


……




穂乃果「参りました」

絵里「はい、お疲れさまでした」


穂乃果「あぁーもぅー! 勝てないー!」ジタバタ

絵里「ちょっと、子供みたいにしないの」

穂乃果「プロ棋士の人生、諦めるよ」

絵里「目指していたのね」

穂乃果「うぅー、あぁー! 悔しい~!」

絵里「穂乃果の指し方、結構好きよ?」

穂乃果「……?」

絵里「私は、ほら……守りを重視してしまうでしょ」

穂乃果「うん、とても固い守りだよ」

絵里「でもね、穂乃果は……自由っていうのかな、自在に駒が動いていくの」

穂乃果「……」

絵里「そういうの、私にはできないことだから」

穂乃果「隙だらけってことだよね」

絵里「そうじゃなくて……、常識を覆すってニュアンスね」

穂乃果「勝てなきゃ意味ないよ」

絵里「そんなに勝ちたい?」

穂乃果「うん!」

絵里「たとえ、セオリー通りの知識を持って、私に勝ったとしてもね、
   それはもったいないことだと思うのよ」

穂乃果「……」

絵里「これは、穂乃果の強みだと思うから」

584: 2014/04/14(月) 08:14:18.05 ID:svCzqJmho

穂乃果「でも、勝たないと……」

絵里「穂乃果は穂乃果の強さを持ってて欲しい」

穂乃果「……」

絵里「これは、私のわがままになるけどね」

穂乃果「……もう一回」

絵里「えぇ、いいわよ」


穂乃果「……」

パチ

絵里「……」

パチ


穂乃果「強いって、なにかな」

絵里「それは……」

穂乃果「……」

絵里「そうね、偉そうに言ってみたけど、
    私にもよく解ってないのかもしれない」

穂乃果「……」

絵里「私と一緒に、探してみましょ」

穂乃果「……うん」


……




穂乃果「……」

パチ

絵里「……」

パチ

穂乃果「絵里ちゃん、進路どうするの?」

絵里「あれ、言ってなかった?」

穂乃果「聞いてないよ?」

絵里「おかしいわね、てっきり知ってるものだと思ってたわ」

585: 2014/04/14(月) 08:15:30.53 ID:svCzqJmho

穂乃果「よしっ、ここで!」

パチッ

絵里「……」

パチ

穂乃果「あ……」

絵里「攻める時こそ、周りをよく見ないとね」

穂乃果「あぁ……、チャンスだと思ったのに」

絵里「ちょっと待ってて、学校の資料取ってくるから」

穂乃果「……うーん」


穂乃果「香車を横に移動しておけば……なんて、香車は横に動けない――」


穂乃果「……」


穂乃果「……あれ、今の……デジャヴ?」


絵里「ほら、ここへ受験するのよ」


穂乃果「えっと……――音ノ木坂学院?」


絵里「そう、おばあさま達が通った学校」


……



586: 2014/04/14(月) 09:02:51.42 ID:svCzqJmho

―― 新学期:2年生の教室


友人「いやぁ、夏休みは楽しかったねぇ~」

穂乃果「うん……」

友人「なに、悩みごとでもあるの?」

穂乃果「あなたって、進路決めてる?」

友人「ううん、全然。まだ早いでしょ」

穂乃果「そんなことないよ」

友人「穂乃果はいいよね、選択肢が広くて。あの進学校でも余裕じゃない?」

穂乃果「うん……そうだね」

友人「嫌味だったんだけど」

穂乃果「よしっ、先生に相談してこよう!」ガタッ

友人「えぇ、今から!?」

穂乃果「善は急げ!」

タッタッタ


友人「……」

女生徒「ねぇ、あなた」

友人「……なに?」

女生徒「夏休みに、高坂さんと一緒に居るところ見たけど……」

友人「それがどうしたってのよ?」

女生徒「あまり、高坂さんに悪影響を与えるようなことしないでね」

友人「……どういう意味?」

女生徒「自分がどういう風に見られているのか、知らないわけじゃないでしょ」

友人「……」

女生徒「来年には高校受験なんだから、変なことにならないようにしてってこと」

友人「…………」


……



587: 2014/04/14(月) 09:09:06.44 ID:svCzqJmho

―― 夜:絵里の部屋


穂乃果「私も音ノ木坂学院に受験するよ!」

絵里「……」

穂乃果「あれ、喜んでくれてない……?」

絵里「穂乃果、その進路を決めたのは私に影響されたからじゃないわよね」

穂乃果「えっと……」

絵里「やっぱり……。あのね、穂乃果……」

穂乃果「絵里ちゃんと一緒に通いたいんだもん」

絵里「先生に相談した?」

穂乃果「したよ」

絵里「なんて言ってたの?」

穂乃果「……高坂なら、他の学校でも通用するとかなんとか」

絵里「そうでしょうね。……それを聞いてどう思った?」

穂乃果「絵里ちゃん、私が同じ学校に通うの嫌なの?」

絵里「いいから、答えて」

穂乃果「そうなんだ。って、思ったけど……よくわからないよ」

絵里「高校を決めるということは、将来を決めるということでもあるのよ?」

穂乃果「……」

絵里「それなのに、私の――」

穂乃果「一緒に同じ学校に通いたいって思うのはいけないこと?」

絵里「……」

穂乃果「小学校、中学校も一緒だったから、高校も一緒に居たいって……」

絵里「ほのか……」

穂乃果「そう、思ったんだよ」

絵里「できれば、自分の意志で決めて欲しい。
    人に左右されないで、穂乃果自身で決めて欲しい」

穂乃果「……」


絵里「取ってつけた理由で決めたりしてない?」

穂乃果「してない。一緒に通いたいって思うのは本当だから」


絵里「後悔しない?」

穂乃果「しない」

絵里「……」

穂乃果「やっぱり、いや……かな?」

絵里「そんなことないわ。……本音を言うとね」

穂乃果「?」

絵里「穂乃果が、そう言ってくれて……とっても嬉しい」

穂乃果「――!」

絵里「ありがとう、ほのか」

穂乃果「絵里ちゃん!」

588: 2014/04/14(月) 09:10:13.43 ID:svCzqJmho

……




―― 翌日:学校


「おはよー」

「おはよう~。今日も暑いね~!」


穂乃果「進路を決めたはいいけど、これからどうすればいいのかな」

絵里「とりあえず、今までどおりね。特に変化は要らないわよ、穂乃果の場合」

穂乃果「うーん……決めてしまったから、なんか、落ち着かない」

絵里「?」

穂乃果「ジッとしていられないっていうか……なんだろう、この気持ち」

絵里「自分でもわかってないのね。……今は中学校生活を楽しみなさい」

穂乃果「そうだね」


友人「……」


穂乃果「あ、それじゃあね、絵里ちゃん」

絵里「今日は一緒に帰れないから、先に帰ってて」

穂乃果「わかった~」

テッテッテ


穂乃果「おーはよう~」

友人「あぁ、穂乃果か……」

穂乃果「どうしたの?」

友人「……べつにぃ?」

穂乃果「元気ないよね」

友人「朝だからテンション低いだけ」

穂乃果「ふぅん……」


絵里「……」

589: 2014/04/14(月) 09:11:58.05 ID:svCzqJmho

上級生「おはよう、絢瀬さん」

絵里「おはよう」

上級生「穂乃果さん、あの子とよく一緒にいるわよね」

絵里「……そうね。仲がいいみたい」

上級生「……あの子の噂話って知ってる?」

絵里「えぇ、聞いてるわ」

上級生「いいの?」

絵里「なにを心配しているの?」

上級生「その……良い噂じゃないから。
     穂乃果さんも先生方に目をつけられるんじゃないかって」

絵里「そんなこと気にする子じゃないわ」

上級生「……」

絵里「行きましょ」


……





―― 秋:絵里の部屋


コンコン


絵里「どうぞ」


穂乃果「もう寝ちゃう?」

絵里「まだ起きてるわよ。話でもあるの?」

穂乃果「……うん。友達のことで」

絵里「そう……。そこ座って」

穂乃果「うん。……くしゅっ」


絵里「またそんな格好して……」

穂乃果「えへへ、暑くなったりするから、つい」

絵里「風邪ひいたら大変よ、これを着て」

穂乃果「ありがとー。……絵里ちゃんの匂いがする」

絵里「何言ってるのよ。……それで?」

穂乃果「うん……。2年に上がってから友達になった人がいるんだけど、
     最近、登校してもすぐ帰っちゃって……」

絵里「……」

穂乃果「理由をクラスのみんなに聞いても知らないって。……どうしよ?」

絵里「穂乃果は、その子が周りからなんて呼ばれてるか、知ってる?」

穂乃果「不良だって、みんなが言ってた」

絵里「……」

590: 2014/04/14(月) 09:13:04.00 ID:svCzqJmho

穂乃果「でも、不良って……なんて言うんだろ、悪いってイメージがあるでしょ?」

絵里「……そうね」

穂乃果「その人は、そんなイメージじゃないから」

絵里「穂乃果はどうしたい?」

穂乃果「学校に居て欲しい。また、一緒に遊んだりしたい」

絵里「それじゃ、それを伝える方が先ね」

穂乃果「……でも、そんなこと言われて迷惑かも」

絵里「そこで遠慮してはダメよ」

穂乃果「……うん」

絵里「私と最初に出会った日のこと覚えてる?」

穂乃果「絵里ちゃんと……?」

絵里「穂乃果ったら、おばさまの後ろにずっと隠れていたのよ」

穂乃果「あ……そうだっけぇ?」

絵里「ふふ、私が怖かったのね」

穂乃果「そうだったかなぁ……」

絵里「でも、私に……声をかけてくれた」

穂乃果「……」

絵里「子供だったから、とても勇気がいると思うわ」

穂乃果「……」

絵里「今必要なのはそれじゃないかしら」

穂乃果「いいのかな……?」

絵里「穂乃果は穂乃果でいて。それが一番よ」

穂乃果「……うん、わかった」


……



591: 2014/04/14(月) 09:14:39.33 ID:svCzqJmho

―― 翌朝:台所


絵里「おはようございます、おばさま」


母「おはよう、絵里。弁当箱出してくれる?」

絵里「はい。……いつも用意してくださいますけど、大変ではありませんか?」

母「夜のうちに大体は準備してあるから、それほどでもないわよ」

絵里「そうですか……。私も料理を始めたほうがいいかな……」

母「それはいいけど、受験生なんだから支障がない程度にしてね」

絵里「はい、わかっています」

母「……こうやって、台所で二人、料理をしてるのって楽しいのよ」

絵里「あ――……、はい、私も」


母「そうそう、懐かしい夢をみたのよ」


絵里「……?」

母「絵里と穂乃果、二人が初めて会った日のこと」

絵里「……昨日も、穂乃果とその話をしていました」

母「あら、偶然ね」

絵里「あの頃の私、無愛想だったから……穂乃果を怖がらせてしまって」

母「……怖がってないわよ?」

絵里「え……?」

母「あの時の穂乃果は、恥ずかしがってたんだから」

絵里「……そう、でした?」

母「えぇ、嬉しそうにして、でも恥ずかしくて、どうしようって」

絵里「嬉しそう……」

母「新しい友だちが出来るってことじゃないかな……、
  でも、恥ずかしいって、もぞもぞさせて」

絵里「……」

母「その本人はまだ寝てるのね」

絵里「……はい」


592: 2014/04/14(月) 09:15:59.09 ID:svCzqJmho

―― 穂乃果の部屋


コンコン

「穂乃果、入るわよ?」


スーッ

絵里「10分経ってるけど――」


穂乃果「えり…ちゃん……」


絵里「どうしたの?」

穂乃果「からだ……おもい」

絵里「……」スッ

穂乃果「かぜかな……」

絵里「熱があるから、風邪ね」

穂乃果「……んん」

絵里「なにしてるの?」

穂乃果「きがえ……」

絵里「今日は休んで、安静にしてなさい」

穂乃果「……」

絵里「どうしたの?」

穂乃果「また、あした……って、言った」

絵里「昨日の友達の話?」

穂乃果「……うん」

絵里「私から言っておくから……、ほら、早く横になって」

穂乃果「……」

絵里「言うこと聞きなさい」

穂乃果「…………うん」


……



593: 2014/04/14(月) 09:18:00.51 ID:svCzqJmho

―― 学校


友人「あれ、穂乃果は一緒じゃ……?」

絵里「風邪をひいてしまって、今日は休みよ」

友人「……あ、そうですか」

絵里「あなたのこと気にして、登校しようとしてたのよ」

友人「え……?」

絵里「この意味、わかるわよね」

友人「……」

絵里「今日も学校をサボった、なんてこと、穂乃果に報告させないでね」

友人「…………」


……




―― 夕方:高坂邸


絵里「…………ただいま」


穂乃果「おかえり~。今日は早かったね」


絵里「……なにをしてるの?」

穂乃果「病院行って、薬飲んだら治っちゃった」

絵里「……」

穂乃果「本当だよ? ほら……体温計みて」

絵里「37度2分……まだ微熱じゃないの」

穂乃果「大丈夫だよ、体は軽――」

絵里「いいから来なさい」グイッ

穂乃果「あう……」


594: 2014/04/14(月) 09:19:21.17 ID:svCzqJmho

―― 穂乃果の部屋


穂乃果「大丈夫なのに」

絵里「薬を飲んで、熱が一時ひいてるだけかもしれないでしょ」

穂乃果「だって、今日一日暇で」

絵里「だってじゃないわよ、まったく……おばさまの目を盗んでテレビ見るなんて」

穂乃果「盗んでないよぉ、人聞きの悪い。……ちょっと隙を狙っただけ」

絵里「はいはい」

穂乃果「流さないでよっ」

絵里「いいから、大人しくしてなさい」

穂乃果「はぁい」

絵里「それと、これ」

穂乃果「……漫画? 買ってきてくれたの?」

絵里「違うわよ。あの子が見舞いにって」

穂乃果「学校……来てたんだ」

絵里「えぇ、一日ずっといたわ。
   学校に持ち込んでいることは一応、注意したけど」

穂乃果「あはは……そっか」

絵里「この本、穂乃果が読みたがっていたって」

穂乃果「うん、ちょっと読んでみたら面白くて」

絵里「……そう。……あまり字を追い過ぎると気分を悪くするから、ほどほどにね」

穂乃果「うん、わかった」

絵里「安静にしてるのよ?」

穂乃果「わかってるって」

絵里「……本当に?」

穂乃果「もぉ、信じてよぉ」

絵里「さっき、テレビを見ていたのは誰だったかしら」

穂乃果「……私です」

絵里「またあとで、様子を見に来るからね」

穂乃果「はぁい」


……



595: 2014/04/14(月) 09:20:44.50 ID:svCzqJmho

―― 冬


友人「ふぅ……さぶっ」


穂乃果「それーぃ」

パシッ


友人「こんな日でも元気だよね、穂乃果って」

パシッ


穂乃果「体動かしてたら温まるって~」

パシッ

友人「バトミントンってそんな動かないでしょ」

パシッ

穂乃果「じゃあ――」スッ

パシッッ

友人「うわっと!?」

パシッ

穂乃果「もう一丁!」

パシッッ

友人「くっ……!」

パシッ

穂乃果「これなら――どうだ!」

パシッッ

友人「……っ!」

スカッ


トントン


穂乃果「ふふん、私の勝ち~」

友人「はぁ~ぁ、体育で本気出しちゃって~」

穂乃果「本気出さないで負けたらつまらないでしょ」

友人「……嫌味も通じない」

穂乃果「ほら、もう一回勝負」

友人「穂乃果ってさ、どうして運動部に入んないの?」

穂乃果「え?」

友人「運動神経良いんだから、活躍できるよ、きっと」

穂乃果「……これと言って、やりたいものもなくて」

友人「なんか、もったいない気がする」

パシッ

596: 2014/04/14(月) 09:22:19.01 ID:svCzqJmho

穂乃果「……そっちこそ、部に入らないの?」

パシッ

友人「私が? いやぁ、邪魔でしょ」

パシッ

穂乃果「邪魔って……」


トントン


友人「勝ち~」

穂乃果「どうして自分のことそういう風に言うの?」

友人「え?」

穂乃果「寂しいよ」

友人「……」

穂乃果「ねぇ……学校サボって、どこ行ってたの?」

友人「それ聞くかな、普通」

穂乃果「聞くよ。友達だから」

友人「穂乃果と私はさ、育った環境が違うんだよ」

穂乃果「え……?」

友人「きっと、両親や絢瀬先輩に大切に育てられたんだ。見ていたら分かる」

穂乃果「……」

友人「こんな私でも、普通に接してくれる。貴重な人物だよ」

穂乃果「……?」

友人「きっと、世界が認めてる。
    高坂穂乃果を中心に世界が回ってる、みたいな」

穂乃果「……意味がわからないよ?」

友人「逆に私は、居てもいなくても同じ。世界の隅で振り回される人物」

穂乃果「哲学?」

友人「かもね」

穂乃果「それで、学校をサボってどこに行ってたの?」

友人「いや、今の話しでわかってよ。どうでもいいことなんだって」

穂乃果「私にとってはどうでもいいことじゃないよ」

友人「私の噂話、聞いてるでしょ?」

穂乃果「……うん」

友人「黒い話も色々あったよね」

穂乃果「……」

友人「本当の事を言って、距離を取られるのが嫌なの。だから言わないの」

穂乃果「……」

友人「誰にでも分け隔てなく接して、楽しそうにしてる穂乃果を見て、和んでいたりしてね」

穂乃果「……でも」

友人「?」

穂乃果「……でもね、私――」

597: 2014/04/14(月) 09:24:36.66 ID:svCzqJmho

穂乃果「絵里ちゃん以外に……深く付き合えている友達っていないんだよ」


友人「……」


穂乃果「絵里ちゃんは、友達っていうか、お姉ちゃんっていうか……」

友人「……」

穂乃果「同学年で、親しくしてくれる人っていない」

友人「……そっか」

穂乃果「……」


キーンコーン

 カーンコーン


穂乃果「着替えに戻ろ」

友人「そだね」


穂乃果「……」

友人「写真、撮ってた」

穂乃果「?」

友人「風景とか、人とか、建物とか、動物とか、色んなの」

穂乃果「学校休んでまで?」

友人「面白くてしょうがないんだよね。……それが理由で補導されたこともある」

穂乃果「呆れた……、土日に行けばいいのに」

友人「その日がいい天候になるとは限らないでしょ。思い立ったが吉日っていうじゃん」

穂乃果「絵里ちゃんに相談しよ」

友人「……なにを?」

穂乃果「友達が写真撮るために学校サボってるって」

友人「やめて?」


……



―― 夜:絵里の部屋


絵里「困った子ね」

穂乃果「本当だよね~」

絵里「……」

穂乃果「あ、今度見せてもらおう、そうしよう」

絵里「嬉しそうね」

穂乃果「そうかな……?」

絵里「噂が外れたから?」

穂乃果「……ううん、違う。……ちゃんと話してくれたから」

絵里「……そう。良かったわね」

穂乃果「……うん」

598: 2014/04/14(月) 09:25:43.08 ID:svCzqJmho

……




―― 3日後:学校


女生徒A「……無い」

女生徒B「なにが?」

女生徒A「腕時計が無くなってる」

女生徒B「どこかに置き忘れたんじゃないの?」

女生徒A「ちゃんと、ここに置いたよ……」

女生徒B「しょうがない、ほら、探しに行くよ」

女生徒A「……きっと、アイツだ」


……




―― 教室


女生徒A「ほら、もう居ない!」

女生徒B「……」

女生徒A「先生に言ってくる」

女生徒B「ちょっと待って」

女生徒A「え、なに?」

女生徒B「本当にやったっていう証拠がないよ?」

女生徒A「じゃあ、どうして居ないのよ」

女生徒B「それは……知らないけど」


穂乃果「もぉ……またサボってるし」


女生徒B「あ、穂乃果さん」

穂乃果「?」

女生徒B「最近、あの人と仲いいよね」

穂乃果「あの人って?」

女生徒A「あの不良よ!」

穂乃果「……」

女生徒B「ちょっと、落ち着いて。それでね、今どこに居るのか知らないかな?」

穂乃果「知らないけど、何かあったの?」

女生徒A「私の腕時計が無くなってるのよ!」

穂乃果「……ちゃんと探した?」

女生徒A「当たり前でしょ! 大事なものなんだから!」

女生徒B「だから、落ち着きなさいって!」

女生徒A「っ!」ビクッ

599: 2014/04/14(月) 09:26:55.94 ID:svCzqJmho

女生徒B「大切な時計失くして焦るのはわかるけど……ちゃんと判断しないと」

女生徒A「……」

穂乃果「ちょっと待ってて、電話してみるから」

女生徒B「……お願い」

女生徒A「アイツが盗ったに決まってる」

女生徒B「私は……そうは思えない……」

女生徒A「どうしてよ?」

女生徒B「穂乃果さんと一緒のところを見てると……どうしてもね……」

女生徒A「…………」


穂乃果「あ……出た」

『えっと、今日は線路を撮りに行こうかなぁなんて』

穂乃果「それはいいから、今どこ?」

『……バスの中だけど?』

穂乃果「戻ってきて。大事な話があるから」

『話し……?』

穂乃果「……うん」

『……』

穂乃果「ちゃんと戻ってきてよ?」

『なにがあったの?』

穂乃果「それは……」

女生徒B「貸して」

穂乃果「……」

女生徒B「私の友達が腕時計を失くしたんだって」

『……なるほどね、わかった』

女生徒B「急いでね」

『はいはい』


穂乃果「……」


……



600: 2014/04/14(月) 09:29:11.92 ID:svCzqJmho

―― 昼休み:2年生の教室


絵里「えっと、穂乃果は……」

クラスメイト「あっ、絢瀬先輩っ」

絵里「見当たらないんだけど……どこに行ったか知らない?」

クラスメイト「高坂ですかっ、し、知らないです」

絵里「……そう。ありがと」

スタスタ


クラスメイト「あ…絢瀬先輩と話が出来た……」

女生徒「なに鼻の下伸ばしてんのよ」

クラスメイト「この学校の有名人だぞ……嬉しいに決まってる」

ハンサム男子「キミには高値の花だよ」

女生徒「あんたもね」


……




―― 中庭


絵里「あら?」



女生徒A「ほら、言ったとおりじゃない!」

友人「……」

穂乃果「どうして……」

女生徒B「どうして盗ったりなんか……」

友人「さぁね」

女生徒A「信じられない……。謝るどころかこの態度……」


絵里「穂乃果」

穂乃果「あ……」

絵里「なにがあったの?」

穂乃果「……」


友人「これで停学かな?」

女生徒B「あなたね、今自分がどういう立場にあるか分かってるの!?」

友人「……」

女生徒A「もういいよ! 先生に言ってくるから!」

友人「……」


絵里「ちょっと待って」


601: 2014/04/14(月) 09:30:43.14 ID:svCzqJmho

女生徒A「な、なんですか?」

絵里「一つ聞きたいことがあって。先生に報告するのはその後でいいわよね」

女生徒A「え……」


絵里「ねぇ、あなた」

友人「……はい?」

絵里「どうして戻ってきたりしたの?」

友人「え……?」

絵里「反省したのなら、ちゃんと謝るはずよね」

友人「……」


女生徒A「泥棒なんだから、常識なんて持っていないんですよ!」


絵里「滅多なこと口にしないで」


女生徒A「――!」

穂乃果「……」


絵里「穂乃果から話を聞いただけだけど、あなたの行動がおかしいわ」

友人「……」

絵里「魔が差したのなら……物は処分してくるはず」

友人「……そ、それは」

絵里「本当はあなた、盗ってないんじゃない?」


女生徒A「なにを言っているんですか!」

女生徒B「本人が持ってたんですよ……?」


絵里「私はその本人に聞いてるの」


女生徒A「……」


絵里「答えて?」

友人「……」

絵里「それじゃ、質問を変えるわね。……その腕時計、どこにあったの?」

友人「……水飲み場です」


女生徒A「は――?」

女生徒B「どういうこと?」

穂乃果「……」

602: 2014/04/14(月) 09:32:25.06 ID:svCzqJmho

友人「いつも、体育の時間……顔を洗ってるの見てたから」

絵里「そこに置いてあるだろうって思ったわけね」

友人「……」


女生徒B「ちょっと!?」

女生徒A「えっと……」

穂乃果「なぁんだ」


絵里「――どうして、本当のことを言わなかったの?」

友人「……えっと」

絵里「あなた――……穂乃果を試したわね」

友人「っ!」ビクッ


絵里「――ッ!」

パァン

友人「――っ」


女生徒A.B「「 っ!? 」」

穂乃果「絵里ちゃん!?」


絵里「……」

穂乃果「どうして叩くの!?」

絵里「どいて、穂乃果」

穂乃果「いやだよ!」

絵里「……」

友人「どいて」

穂乃果「え……」

友人「絢瀬先輩の言うとおり……私が停学になったら……穂乃果はどうするんだろうって思ってた」

絵里「……」

友人「友達でいてくれるのかなって……」

絵里「あなたがどういう境遇に居るのかは知らないけど――」


絵里「穂乃果の信頼を裏切るようなことだけは、絶対に許さないわよ」


友人「――はい、すいませんでした」


絵里「謝るのは私じゃないわよね」


友人「……ごめん、穂乃果」

穂乃果「い、いいよ別に。……というか、どうして私が謝られないといけないの」

友人「いや、だって……」

穂乃果「気にしてないから、ね?」

603: 2014/04/14(月) 09:33:38.52 ID:svCzqJmho

絵里「あなた達も、この子に謝りなさい」


女生徒B「は、はい……」

女生徒A「いえ、謝るのは私です。……ごめんなさい。泥棒扱いして」

友人「……」


絵里「……これで、一件落着かしら」

穂乃果「……じぃー」

絵里「な、なに?」

穂乃果「叩かなくてもいいよね」

絵里「つい、ね」

穂乃果「……」


……



604: 2014/04/14(月) 09:34:26.29 ID:svCzqJmho

―― 夜:穂乃果の部屋


コンコン

「ほのか」


穂乃果「……」


「ちょっと、居るんでしょ? 返事して?」


穂乃果「穂乃果はもう寝ました」


「やっぱりまだ怒ってるのね」


穂乃果「叩かなくてもよかったよ」


「それは……、感情的になってしまって」


穂乃果「そうですか、わかりました」


「どうして敬語なのよ……」


穂乃果「おやすみ」


「あ、ちょっと、開けるわよ?」


穂乃果「ダメ」


「……どうしてそこまで怒るの」


穂乃果「謝ってないよね」


「あそこで私が謝るのは違うでしょ」


穂乃果「でも、フォローは出来たはずだよ?」


「それは、そうだけど……」


穂乃果「おやすみ」


「あぁ、穂乃果ってば……」


「なにしてるの、あなた達……」


「お、おばさま……」


穂乃果「……」



……



605: 2014/04/14(月) 09:36:04.26 ID:svCzqJmho

―― 居間


母「――それで引っ叩いてしまったと」

絵里「……はい」

母「気にすることないわよ。放っておけばそのうち出てくるでしょ」

絵里「でも……」

母「絵里が怒っているところをみて、ちょっと驚いているだけだから」

絵里「……」

母「これを機に、お互い距離を置いたほうがいいのかもね」

絵里「……そうですね」


……




―― 翌日:2年生の教室


友人「お、おはよう」

穂乃果「……おはよう」

友人「その……昨日はごめんね?」

穂乃果「いいよ、別に」

友人「あ……怒るよね、それはもちろん」

穂乃果「ねぇ、どうして写真に拘るの?」

友人「え……?」

穂乃果「だって、学校をサボってまですることなんでしょ?」

友人「まぁ……うん」

穂乃果「理由を聞かせてよ」

友人「えっと……」

穂乃果「言いにくいかもしれないけど、昨日の今日だから。
     これからはサボれないんだよ?」

友人「……そうだよね」

穂乃果「……」

友人「私の家、色々と複雑でさ……。家族とあまり、話をしてないんだよね」

穂乃果「…………」

友人「だから、気を紛らわす為に……色んなとこに行ったりしてた」

穂乃果「色んなとこって?」

友人「そこは、穂乃果が知らなくていいとこ。
    ……まぁ、常識はずれのことはしてないから」

穂乃果「……うん」

友人「それでも、私の年齢の子が居るような場所じゃなくて…
   注意されたりするんだよね」

穂乃果「……」

606: 2014/04/14(月) 09:38:36.46 ID:svCzqJmho

友人「そこでさ、私が持ってる……その、写真を……見られてしまって」

穂乃果「……うん」

友人「いい写真だって、褒められた」

穂乃果「……」

友人「初めて他人に……自分の……なんだろ、趣味……実力……能力?」

穂乃果「特技?」

友人「そう、それ。……自分の持ってるモノを褒められたから嬉しくて」


友人「写真を撮っては、そこへ持って行ったりしてた」


友人「だけど、もう来るなって言われて。
   その写真を撮ることで、人生やり直せーみたいなこと言われて」

穂乃果「……」

友人「行くことをやめても……見せられる人が居ないから、撮るだけしかなくて」

穂乃果「……」

友人「どんな写真なら、人に認められるのかなって考えたら……ちょっと楽しくて」


友人「色んな写真撮ってみたくて……、だから……サボって行ってました」

穂乃果「そっか」

友人「昨日、絢瀬先輩に怒られて……ちょっと、嬉しかったりして……あはは」

穂乃果「すぐ素直になったよね」

友人「先生や人に怒鳴られることはしょっちゅうあるけど、みんな、所詮は他人事なんだよね」

穂乃果「……」

友人「だから、何のために怒っているんだろって……一歩引いて見ちゃって」


友人「誰のために怒っているんだろ、って冷めちゃう」


友人「だけど、絢瀬先輩は……穂乃果の為に怒ってたから……怖かった」

穂乃果「……」

友人「そういう怒りって、わかるでしょ?」

穂乃果「うん」

友人「……」

穂乃果「そっか……そういうことだったんだ」

友人「呆れた?」

穂乃果「ううん、そんなことないよ」

友人「そっか……」

穂乃果「一つ気になるんだけど、どうして写真を撮ってること隠してたの?」

友人「そ、それは……その……」

穂乃果「いつから撮ってるの?」

友人「えっとぉ……中学に……入ってから、かなぁ」

穂乃果「大体2年位まえだよね。
     その持ってる写真って、今でも持ってる?」

友人「……見せないよ?」

607: 2014/04/14(月) 09:40:11.42 ID:svCzqJmho

穂乃果「どうして? 褒められるくらい良い写真なんでしょ、見せてよ」

友人「いやぁ……穂乃果には見せらんないわ」

穂乃果「どういう意味?」

友人「友達でいられなくなるかも……」

穂乃果「……?」

友人「でも……本人に、承諾を得ないとダメだよね……」

穂乃果「???」


友人「……ごめん、穂乃果。これなんだ!」

スッ


穂乃果「……」


穂乃果「いつ撮ったの?」


友人「入学して、少し経った頃。
   二人、楽しそうだったから……パシャッって」

穂乃果「…………」


女生徒B「穂乃果さんと、絢瀬先輩……か」

女生徒A「……隠し撮り?」

友人「ちがっ、くないけど……!」


穂乃果「そっかそっか……」


友人「ほ、穂乃果……?」


穂乃果「写真……撮られてて……知らないトコで褒められてたんだ……びっくりだねぇ」


友人「あの、距離を取らないでくれるかな……」

女生徒B「普通は引くよね」

女生徒A「……うん」

友人「だから見せたくなかったのに……!」


穂乃果「えっと、次の授業は……」

友人「ごめんって、これあげるから!」

穂乃果「他にも撮ってたりしないよね」

友人「まぁ、その……すいません」

穂乃果「……」スッ

友人「目をそらさないで……、今、結構キツイ!」

女生徒A「……良い写真だよね」

女生徒B「そうだね。……二人並んで、笑顔で」

穂乃果「そう言われると……ちょっと恥ずかしい」

友人「……」

608: 2014/04/14(月) 09:41:18.50 ID:svCzqJmho

穂乃果「……どうして言ってくれないの?」

友人「?」

穂乃果「言ってくれたら……よかったのに」

友人「穂乃果と絢瀬先輩ってさ、二人一緒に居る時が……自然っていうか、
   良い空気を出しているんだよね」

女生徒B「それは……わかるかも」

女生徒A「二人でいる時のほうが笑ってるって気がする」

穂乃果「……そうかな?」

友人「そうなんだよ。……その空気を壊したくなかったからさ」

穂乃果「ふぅん……」

友人「ほんと、ごめん! 穂乃果!」

穂乃果「わたし達、芸能人じゃないんだからね」

友人「はい、そうですね」

穂乃果「絵里ちゃんにも、ちゃんと自分で話ししてよ?」

友人「――え!?」

穂乃果「当たり前のことだよ?」

友人「ま、マジで……?」

女生徒A「昨日の絢瀬先輩……怖かったからね」

穂乃果「いつもはあんな風じゃないから、平気だよ」

友人「いやいや、穂乃果だからでしょ」

穂乃果「いいから、ちゃんと話ししてね」

友人「……わかった」


女生徒A「それから、私からも。本当にごめんなさい」

女生徒B「私も……ごめん」

友人「……いいって。……そういう、疑われるようなことしてたんだから」

穂乃果「これからは、ちゃんと授業に出ないとダメだよ?」

友人「……そうだね」


……



609: 2014/04/14(月) 09:42:32.93 ID:svCzqJmho

―― 冬休み前


友人「穂乃果って、もう進路を決めてるんでしょ?」

穂乃果「うん。――音ノ木坂学院」

友人「そこってどんなとこ?」

穂乃果「資料でしか見たことないから……上手く説明できない」

友人「資料ってどこにあるの?」

穂乃果「進路室。興味あるなら先生に相談してみたら?」

友人「そうしてみる」


……




友人「渋い顔された」

穂乃果「……そっか」


……




―― 高坂邸


穂乃果「ねぇ、お母さん……絵里ちゃんは?」

母「図書館に行ったわよ」

穂乃果「勉強?」

母「そうだと思うけど」

穂乃果「私も行ってこようかな……」

母「せっかくの冬休みなんだから、手伝って」

穂乃果「……帰ってからでいい?」

母「受験生の邪魔をしないの」


……




610: 2014/04/14(月) 11:29:18.89 ID:svCzqJmho

―― 夜:穂乃果の部屋


穂乃果「……」


コンコン

「私だけど、ちょっといい?」


穂乃果「どうぞー」

絵里「……勉強してるのかと思ったら、漫画読んでるのね」

穂乃果「さっきまでしてたんだよ」

絵里「それなら、別にいいんだけど」

穂乃果「……なにか用?」

絵里「なんだかトゲがあるような気がするんだけど、気のせいかしら」

穂乃果「最近……置いていくよね」

絵里「なにを?」

穂乃果「私を」

絵里「拗ねてるの?」

穂乃果「拗ねてなんかないよー」

絵里「一人でゆっくり勉強したかったのよ。気分転換にもなるから」

穂乃果「ふぅん、穂乃果がいると邪魔なんだ」

絵里「そうは言ってないでしょ」

穂乃果「そう言ってるように聞こえた」

絵里「なんだか虫の居所が悪いみたい。……邪魔したわね」


スーッ

 パタン


穂乃果「……」


……



611: 2014/04/14(月) 11:33:54.60 ID:svCzqJmho

―― 絵里の部屋


絵里「……やっぱり、おばあさまの危惧していた通りなのかしら」


絵里「このままだと、穂乃果が入学する頃には……」


絵里「私一人じゃ、どうにもならないけど……」


コンコン


絵里「はい」


「……」


絵里「……穂乃果?」


「えっと……」


絵里「……」


「あのね……」


絵里「ふぅ……まったく」


「開けていい……?」


絵里「今日は機嫌が悪いみたいだから、話なんてできないわね」


「そんなことない……よ」


絵里「今、勉強中なのよ」


「邪魔……しないから」


絵里「もぅ……しょうがないわね。入っていいわよ」


スーッ

穂乃果「ごめんね……?」

絵里「どうして謝るの?」

穂乃果「なんか、態度……悪かったよね」

絵里「……」

穂乃果「……嫌な気分にさせたよね」

絵里「はぁ……、私も、まだまだダメね」

穂乃果「?」

絵里「そこ座って。久しぶりに話しをしましょ」

穂乃果「勉強は……?」

絵里「今日はお終い。ついでに明日……、一日中ってわけにもいかないけど」

穂乃果「……?」

612: 2014/04/14(月) 11:34:43.03 ID:svCzqJmho

絵里「明日のお昼、どこか出かけましょうか」

穂乃果「いいの?」

絵里「えぇ。穂乃果の言う通り、最近は一緒に居る時間が少なかったから」

穂乃果「……!」

絵里「どこ行きたい?」

穂乃果「あ…明日って、クリスマスイヴだよ? 本当にいいの?」

絵里「変な気を遣わないで。そんなこと言ってると、行くの止めるわよ?」

穂乃果「じゃ、じゃあ商店街に行こうよ! イルミネーションが綺麗だって」

絵里「お昼って言ったでしょ」

穂乃果「あ……そっか」

絵里「わかったわ、夕方に変更しましょうか」

穂乃果「――うん!」


……



613: 2014/04/14(月) 11:35:58.56 ID:svCzqJmho

―― クリスマス・イブ


穂乃果「うわっ、綺麗……!」

絵里「……――。」

穂乃果「凄いね、光が溢れてる!」

絵里「えぇ、本当に綺麗……」

穂乃果「ついでに雪も降ればいいのにねぇ~」

絵里「それは贅沢よ」

穂乃果「あはは、そうだよね……」


絵里「……」

穂乃果「……」


絵里「あと、何回……こうして、穂乃果と一緒にイルミネーションを見られるのかしら」

穂乃果「?」

絵里「少なくとも、私が高校を卒業するまでの……3回よね」

穂乃果「……そう考えたら、少ない気がするね」

絵里「あ、でも……穂乃果に素敵な人が現れるかもしれない」

穂乃果「えぇ~?」

絵里「そうなったら、これが最後かも?」

穂乃果「もぅ~、変なこといわないでよ~」

絵里「ふふっ」


……




絵里「寒くない?」

穂乃果「だいじょうぶ~、暖かいよ~」

絵里「なんだか、急に冷え込んできたわね……」

穂乃果「そうかな? マフラー借りる?」

絵里「まだ平気よ」

穂乃果「我慢しなくていいからね?」

絵里「してないわよ。……穂乃果こそ、私に貸して風邪ひいちゃいそうじゃない」

穂乃果「そんなことないよ!」

絵里「ふふっ」

穂乃果「……今日の絵里ちゃん、よく笑うね」

絵里「え、そう?」

穂乃果「うん。だから、暖かい」

絵里「もぅ、なんだか恥ずかしいじゃない……」

穂乃果「えへへ」

614: 2014/04/14(月) 11:36:56.15 ID:svCzqJmho

絵里「あ――……」


穂乃果「?」


絵里「雪よ、穂乃果……」


穂乃果「あ、本当だ……」


絵里「…………」


穂乃果「ホワイト・クリスマスだ」


絵里「…………」


穂乃果「ラッキーだね」


絵里「ねぇ、穂乃果」


穂乃果「?」


絵里「どこか、遠くにね……、綺麗なオーロラの見える場所があるんだって」


穂乃果「オーロラ……」


絵里「おばあさまが生まれた、ロシアでも見られるそうよ」


穂乃果「絵里ちゃん、見たことあるの?」


絵里「ううん、まだ見たことないわ」


穂乃果「そっかぁ……見てみたいね」


絵里「そうね……」


穂乃果「見てみたい、じゃなくて……見に行こうよ」


絵里「……オーロラを?」


穂乃果「オーロラを!」


絵里「そうね……穂乃果と一緒に……、オーロラを見られたら、素敵ね」


穂乃果「うん! きっと、宝物になるよ!」


絵里「えぇ、きっとね――」


……



615: 2014/04/14(月) 11:38:00.51 ID:svCzqJmho

―― 大晦日


絵里「穂乃果、そっち持って」

穂乃果「はーい」

絵里「いい? せーので、持ち上げるのよ?」

穂乃果「わかった」


絵里穂乃果「「 せーの 」」


絵里「よいしょ」

穂乃果「よいしょー」


絵里「後ろ気をつけて」

穂乃果「大丈夫だよー」


母「あ、こっちに持ってきて」


絵里穂乃果「「 はーい 」」


母「ゆっくり、ゆっくりね」


絵里「だいじょうぶ、穂乃果?」

穂乃果「余裕余裕~」


母「はい、ストップ」


絵里「それじゃ、ゆっくり降ろすわよ」

穂乃果「うん」


母「気をつけてよ、二人とも」


絵里「よいしょ、っと」

穂乃果「……ふぅ」


母「箒でちゃんと掃いてね」

絵里「わかりました」

穂乃果「箒ってどこ?」

絵里「廊下の隅よ」

穂乃果「わかった、取ってくる!」

テッテッテ

母「蕎麦を用意してるから、掃除が終わったら食べましょ」

絵里「はい」


絵里「今年も、もう終わりなんですね……」


……



616: 2014/04/14(月) 11:40:05.88 ID:svCzqJmho

―― 節分


穂乃果「鬼はーうちー」

パラパラ


絵里「ちょっと、穂乃果! 私は鬼じゃないわよ?」


母「なんで豆まきなんかしてるの、片付け大変なのよ」

穂乃果「季節を体験」

母「子供じゃないんだから、――って、この豆、小豆じゃないの!」

穂乃果「ちゃんと洗って返すから」

母「商売品なんだから……もう使えないじゃない……」

絵里「だから言ったのに」

穂乃果「じゃあじゃあ、おやつに作ってもらおう、そうしよう~」

母「反省の色、ゼロね……。希望通り、飽きるまでまんじゅうを食べさせてあげる」

穂乃果「やった! 好きなモノは飽きることはないよ」

絵里「それはどうかしらね」


絵里「あ、おばさま。先日話した件ですけど」

母「あぁ、うん。どうだった?」

絵里「出席してくれるそうです。入学式も」

母「そう、よかったじゃない」

絵里「……――はい」

穂乃果「絵里ちゃんのおばあちゃんとお母さんが来てくれるんだ!」

母「穂乃果、おばあちゃんに連絡しておいてね」

穂乃果「わかった!」


……



617: 2014/04/14(月) 11:41:37.32 ID:svCzqJmho

―― 高校入試当日:学校


友人「絢瀬先輩、大丈夫かな?」

穂乃果「大丈夫だよ、絵里ちゃんなら余裕余裕~」

友人「穂乃果がそう言うんなら、そうなんだろうけどさ」

穂乃果「やっと試験が終わる……ということは」

友人「……ということは?」

穂乃果「いっぱい遊べる!」

友人「本当、穂乃果って絢瀬っ子だよね」

穂乃果「……なにそれ?」

友人「さぁ……? 言った自分でも分からん」


男生徒「こ、高坂っ! こ、これをっ」

穂乃果「手紙……?」

友人「もしかして、ラブレター……?」


「おぉー! アイツ本当にやりやがった!」

「すげー」


穂乃果「え?」

男生徒「あ、違くて……その、絢瀬先輩に……」

友人「渡せって?」

男生徒「女子高に受験してるんだろ、来年にはもう会えないから……た、頼むっ」

穂乃果「…………」

友人「いやぁ、わざわざ穂乃果を中継しないで自分で渡しなよ」

男生徒「これに場所を書いてあるから……!」

穂乃果「うーん……」

友人「下駄箱にでも入れておけばいいんじゃないの?」


女生徒B「似たような手紙が零れ落ちたの見たことある」

女生徒A「え、本当に……?」

女生徒B「うん、凄い人気だよね」

女生徒A「……へぇ」


友人「そういうこと?」

男生徒「……あぁ」

穂乃果「……」

友人「まぁ、決めるのは絢瀬先輩だよね」

男生徒「恥をしのんで頼む、高坂!」

穂乃果「多分ね――……」


……



618: 2014/04/14(月) 11:42:35.66 ID:svCzqJmho

―― 夜:穂乃果の部屋


絵里「悪いんだけど、返しておいてくれる?」

穂乃果「……そういうと思って、受け取ってないよ」

絵里「あら、そう……」

穂乃果「下駄箱にも手紙が入ってるって、本当?」

絵里「……誰から聞いたの?」

穂乃果「クラスの友達から」

絵里「……」

穂乃果「それで、どうなの?」

絵里「あのね、穂乃果……」

穂乃果「?」

絵里「私、明日も試験なのよ」

穂乃果「そだね」

絵里「わざわざ呼び出して、それなの?」

穂乃果「うん」

絵里「…………部屋に戻るわね」

穂乃果「リラックスする為にも話し聞かせてよ!」ガシッ

絵里「あ、ちょっと! 余計なストレス感じるわよ!」

穂乃果「本当なんだ!?」

絵里「……まぁね」

穂乃果「ふぅん……」

絵里「でもね、私はそういう手段、どうなのかと思うのよ」

穂乃果「直接渡せってこと?」

絵里「そうよ。気持ちを伝えるなら直接がいいと思うわ」

穂乃果「……なるほど」

絵里「でも、今はそんなこと考えられないんだけど」

穂乃果「どうして?」

絵里「やりたいことがあるからよ」


……



619: 2014/04/14(月) 11:43:26.05 ID:svCzqJmho

―― 中学卒業式


穂乃果「はい、どうぞ」

絵里「ありがとう」

穂乃果「ついに卒業だね」

絵里「えぇ。……コサージュを付けると、いよいよって気がしてくる」

穂乃果「……」

絵里「?」

穂乃果「……?」

絵里「どうしたの、首なんか傾げて……」

穂乃果「ううん、なんでもない」

絵里「……?」


穂乃果「あ、お母さんたちだ」

絵里「あ……来てくださったのね」


穂乃果「先に言っておくね」

絵里「?」


穂乃果「卒業おめでとう、絵里ちゃん」

絵里「……――ありがとう」


……



620: 2014/04/14(月) 12:14:14.71 ID:svCzqJmho

―― 春休み


友人「お邪魔します」


絵里「あら、いらっしゃい」

友人「……」

絵里「どうしたの?」

友人「普段着の絢瀬先輩を見るのって初めてだから、なんか、変な感じです」

絵里「…………」

友人「?」

絵里「隠し撮りはもうやめてね?」


友人「…………」

ガクッ


友人「」


穂乃果「あれ、どうして膝をついてるの……?」

絵里「ちょっと苛め過ぎたみたい」


……




絵里「あなたも音ノ木坂学院に?」

友人「……はい」

絵里「なんだか、元気が無いわね」

穂乃果「会うたびに隠し撮りの話しされたら、それは落ち込むよ」

友人「」

絵里「隠し撮りって、表現は悪いけど……割りと正面からの画が多いのよね」

穂乃果「うん……私たちが気づかないのも変だよね」

友人「二人って、意外と周りを見てないんですよね。話に夢中って感じで」

絵里「……そう?」

穂乃果「そうなのかな?」

友人「……そうだよ」


……



621: 2014/04/14(月) 12:15:11.42 ID:svCzqJmho

絵里「それじゃ、勉強頑張ってね。私は出かけてくるから」

穂乃果「どこ行くの?」

絵里「友達と遊びに行くのよ」

穂乃果「そっか……気をつけてね」

絵里「帰るのは夕方になるから、おばさまに伝えておいて」

穂乃果「うん、行ってらっしゃい」

絵里「行ってきます」

スタスタ


友人「家族って感じだね」

穂乃果「……家族だよ?」

友人「いやぁ、血が繋がってないのに、より家族らしいって意味」

穂乃果「そんな風に見えるんだ……」

友人「よし、それじゃ、穂乃果先生……よろしくお願いします」

穂乃果「うん、任せて。……と言いたいけど、今日は少しだけにしよう」

友人「え、なんで?」

穂乃果「まだ勉強を初めてそんなに経ってないでしょ。少しずつだよ」

友人「……わかった」


……



622: 2014/04/14(月) 12:16:39.21 ID:svCzqJmho

―― 高校入学式当日


絵里「どうかしら?」

穂乃果「凄い似合ってる! 胸元のリボンがカワイイよ!」

絵里「ふふ、私も気に入ってるのよね」

穂乃果「……うん、私も頑張るよ!」

絵里「ほら、早く行かないと、学校に遅刻するわよ」

穂乃果「あ……そうだった。絵里ちゃんと登校できないんだよね」

絵里「何を今更……」

穂乃果「はぁ~あ、早く1年過ぎないかなぁ」

絵里「油断してると、取り返しの付かないことになるわよ」

穂乃果「脅かさないでよ~」

絵里「本当のことよ。これからの1年、穂乃果にとって大事な時期なんだから」

穂乃果「はぁい」

絵里「見送ってあげるから、外に出ましょ」

穂乃果「おばぁちゃんたちは?」

絵里「後から来るって。今日中に帰るから、ちゃんと挨拶してね?」

穂乃果「わかってるよぉ。……帰っちゃうんだよね」

絵里「えぇ、残念だけど」

穂乃果「おばぁちゃん達、数年ぶりのはずなのに……なんだか、変わらないって雰囲気だった」

絵里「……そうね、ずっと変わらない、友達の関係」

穂乃果「その二人の孫が、こうして一緒に居るって、不思議だよね」

絵里「本当にね。……不思議で済ませていいことなのかなって思うけど」

穂乃果「……?」

絵里「運命、っていうのかしら」

穂乃果「おぉ、絵里ちゃんからそんな言葉が聞けるとは」

絵里「もぅ、茶化すなんて……置いていくからね」

スタスタ

穂乃果「あ、待って!」


……



623: 2014/04/14(月) 12:17:38.16 ID:svCzqJmho

―― 初夏


友人「どうよ?」

穂乃果「結構間違えてる」

友人「くはっ……もうダメだ」

穂乃果「少しずつだけど、確実に点数上がってるよ」

友人「ほんと?」

穂乃果「うん」

友人「……よし、頑張ろ」

穂乃果「私も頑張らないと」



……





―― 初秋


女生徒A「ねぇ、来週の日曜日、遊びに行かない?」

穂乃果「先週もそう言ってたよね」

女生徒A「息抜きも大事」

穂乃果「それも言ってた」

女生徒A「穂乃果は余裕でしょ?」

穂乃果「油断大敵だけど……どうしよっかな」

友人「私は気にしなくていいから、遊んできてよ」

穂乃果「……やっぱり止めとく」

女生徒A「あぁ、もう……あんたも来てよ」

友人「私は余裕がないの。2年間のツケを払ってるところだから」

女生徒A「はぁ……わかったよ。……じゃあ、来月には行こうね」

穂乃果「うん……来月なら、いいよ」


……



624: 2014/04/14(月) 12:18:16.51 ID:svCzqJmho

―― 初冬


穂乃果「今日は寒いねぇ~」

友人「うわっ、もうこんな季節!?」

穂乃果「そんな驚くこと?」

友人「この間まで暑いって言ってたのに……」

穂乃果「そうだね、あっという間だった」

友人「あぁー、なんか焦ってきた……」

穂乃果「じゃあ、寄り道しようよ」

友人「いいけど……どこに行くのさ?」

穂乃果「ここからだとちょっと距離あるけど、神社があって」

友人「神社ねぇ……。……知り合いでもいんの?」

穂乃果「そうじゃないけど。……あ、巫女さんとは顔見知り」

友人「やっぱりか。……穂乃果って顔広いよね」

穂乃果「色んなとこ行くから、たまたまだよ」

友人「あ、そこでさ、バイト募集とかしてないかな? 高校入ったらバイト始めたいから」

穂乃果「バイトしてどうするの?」

友人「カメラ買う」

穂乃果「……カメラなら、部に入ればいいんじゃないかな」

友人「あぁ、それはいい考え!」

穂乃果「それに、巫女のバイトは、高校生不可だって」

友人「なぁんだ……結局ダメなんじゃん」

穂乃果「……うん」

友人「どうかした?」

穂乃果「ううん、なんでもない」


……



625: 2014/04/14(月) 12:19:31.64 ID:svCzqJmho

―― 高校入試:当日


友人「オープンキャンパスでも来たけど……やっぱり緊張する」

穂乃果「……」

友人「集中してるね……」

穂乃果「…………」


友人「……?」


友人「穂乃果?」

穂乃果「……?」

友人「どこか痛いの?」

穂乃果「どうして?」

友人「顔色悪いっていうか……」

穂乃果「緊張してるみたい……あはは」

友人「穂乃果なら大丈夫だって、今までの時間を信じなよ」

穂乃果「……うん、ありがと」

友人「二人で合格するよ」

穂乃果「――うん」


……




―― 合格発表


穂乃果「……っ」

友人「あのさ、穂乃果……」

穂乃果「な、なに?」

友人「緊張しすぎじゃない……?」

穂乃果「緊張するよっ……だってっ、だって!」

友人「落ち着いて、深呼吸」

穂乃果「すぅぅ……はぁぁ」

友人「先に見てこようか?」

穂乃果「う、ううんっ、一緒に、一緒にっ!」

友人「……うん」

穂乃果「~~っ!」

友人「…………」


穂乃果「どうか、どうかっ!」


穂乃果「合格していますように――」


……



626: 2014/04/14(月) 12:23:24.90 ID:svCzqJmho


―― 高坂穂乃果 高校1年生 ――



絵里「それじゃ、改めて」



絵里「入学おめでとう、穂乃果」

穂乃果「――うん」


絵里「あら、意外と普通ね」

穂乃果「今を忘れないようにしようと思って」


絵里「じゃあ、忘れられない風景を見せてあげる」

穂乃果「……?」

絵里「振り返ってみて」

穂乃果「うん……」


ザァァァ


穂乃果「……うわ」

絵里「…………」


穂乃果「桜が綺麗……」

絵里「――願いが一つ、叶った」


穂乃果「……願い?」

絵里「穂乃果と一緒に、此処――音ノ木坂学院を二人で並ぶという私の願い」


穂乃果「…………」

絵里「私のおばあさまと、穂乃果のお祖母様、二人がこの学校の設立に貢献したの」


穂乃果「……」

絵里「そして、私たちが……此処へ通い、おばあさま達と同じ高校生活を送る」


穂乃果「~~っ」

絵里「時を超えて、世代を越えて、私たちがいま、此処に居る」




絵里「音ノ木坂学院へようこそ、穂乃果――」



627: 2014/04/14(月) 12:24:18.91 ID:svCzqJmho

穂乃果「絵里ちゃん!」

ガバッ

絵里「うわっ」


穂乃果「嬉しいよっ」

ギュウウ

絵里「……うん、私も」


穂乃果「……っ」

絵里「でも、ここからなのよ、穂乃果」


穂乃果「?」

絵里「穂乃果が入学して、ようやくスタートなの」

穂乃果「学校生活が?」

絵里「そう、楽しい学校生活が」


穂乃果「うん……そうだね!」

絵里「わかったら、離してくれる? 他にも入学生が居て、少し恥ずかしいのよ」

穂乃果「もうちょっと!」

ギュウウ

絵里「もぅっ、穂乃果ったら!」


友人「喜び合う先輩後輩。……よし」


パシャッ


629: 2014/04/15(火) 09:05:29.86 ID:vgeC8z48o

……




―― 1年生の教室


キーンコーン
 
 カーンコーン


穂乃果「……ここからの景色、夢で見たような?」


友人「穂乃果ぁ~」


穂乃果「?」

友人「どうして穂乃果と別のクラスなわけ~?」

穂乃果「神のみぞ知っている」

友人「あんなに勉強したんだからさ、おまけで一緒のクラスにしてもよくない?」

穂乃果「あはは、そうだねぇ」

友人「2分の1で外れるって、そりゃないよ」

穂乃果「そっちはどう?」

友人「……まぁ、ボチボチって感じ」

穂乃果「そっか……」

友人「これからどうすんの?」

穂乃果「絵里ちゃんに学校を案内してもらう!」

友人「出たな、絢瀬っ子」

穂乃果「今日を楽しみにしてたんだから~♪」

友人「まぁ、いいや。それじゃ、明日ね」

穂乃果「一緒に行かないの?」

友人「ちょっと用があるからさ。バイバイ」

穂乃果「ばいば~い」


……



630: 2014/04/15(火) 09:07:33.43 ID:vgeC8z48o

穂乃果「校庭に戻ってきたね」

絵里「こんなものね」

穂乃果「うん、ありがとう、絵里ちゃん」

絵里「これくらい、礼を言われるまでもないから、気にしないで」

穂乃果「えへへ」

絵里「どうしたの?」

穂乃果「楽しい」

絵里「……そう」

穂乃果「そういえば、絵里ちゃんは部活に入ってるの?」

絵里「入ってないわよ」

穂乃果「でも、帰ってくるの、遅いよね」

絵里「生徒会に入ってるから」

穂乃果「そっか、……生徒会に……――生徒会? 1年生の時から!?」

絵里「そうよ。書記にしてくれって頼んだの」

穂乃果「ほ、ほほぅ」

絵里「なによ、そのリアクションは……」

穂乃果「エリートですね」

絵里「あのね……。いえ……それはいいかも。……そうね、うん」

穂乃果「一人で納得してる?」

絵里「穂乃果、あなたも……――生徒会に入りましょう」

穂乃果「ゑ!?」


……



631: 2014/04/15(火) 09:14:59.20 ID:vgeC8z48o

―― 翌週:生徒会室


絵里「彼女を生徒会の書記に推薦します」

穂乃果「…………」ボケー


先生「なんだか、心ここにあらず、って顔してるけど」


絵里「彼女は成績、人柄、判断力、どれを取っても遜色ないと思います」


先生「絢瀬さんがそういうのなら、問題はないのだけれど」

絵里「……」

先生「わかったわ。理事長にも私から伝えておくから」

絵里「お願いします」



……




―― 夜:高坂邸


母「ごほっ」

穂乃果「お母さん、味噌汁吹き出すなんて……!」

母「絵里が変なこと言うから……っ……ごほごほっ」

絵里「変ですか?」

母「なんで穂乃果なんかを推薦したのよ」

穂乃果「なんか、って……ひどいっ」

絵里「素質は充分にあると思いますけど」

母「あのねぇ……いつも絵里の傍に居たがるような甘えん坊さんに務まるわけ無いでしょ?」

穂乃果「重ね重ね、ひどいっ」


……




―― 翌日:音ノ木坂学院


絵里「昨日の夜、言ったこと、ちゃんと覚えているわよね?」

穂乃果「わかってるよぉ」

絵里「本当かしら」

穂乃果「信じてよっ」

絵里「じゃあ、私のこと、呼んでみて」

穂乃果「絵里先輩」

絵里「……ちゃんと続けるのよ?」

穂乃果「わかってるよ、絵里ちゃん」

絵里「穂乃果?」

穂乃果「じょ、冗談だよっ」

632: 2014/04/15(火) 09:16:34.92 ID:vgeC8z48o

……



―― 1年生の教室


友人「生徒会!?」

穂乃果「そうだよ」

友人「絵里先輩も思い切ったことしたねぇ」

穂乃果「……それについては、同感だけど」

友人「まぁ、学校生活を楽しくしてくれそうだし、私も応援するよ」

穂乃果「うん、やるからには頑張る」

友人「……」

穂乃果「……どうしたの、人の顔ジッと見て……?」

友人「ううん、なんでもない」

穂乃果「写真部に入ったの?」

友人「うん。ほら、見て、貸してもらったカメラ」

穂乃果「……凄いね」

友人「一眼レフなんだよね~」

穂乃果「ふぅん」

友人「リアクション薄……。あのね、画像素子も今までとは全然違――」


キーンコーン

 カーンコーン


穂乃果「チャイム鳴ったよ」

友人「いいよ、そんなの。分かってないから教えるけど。
    ピント合わせをAFで行わないし、AE無しだから自分で露出調整しなきゃいけないんだよ!」

穂乃果「……」

友人「撮りたい瞬間を見逃さない技術をこのカメラに合わせなきゃいけないの!」
   
穂乃果「……うん」

友人「これからもっと勉強しないとだけど、今まで以上の写真が撮れちゃうんだから!」

穂乃果「……そうだね」

友人「ちょっと、わかろうとしてないでしょ! シャッタースピードも――」


先生「いつまで続けるつもり?」


友人「じゃあね、穂乃果」

穂乃果「……うん」

先生「変わり身早いのね」


……



633: 2014/04/15(火) 09:17:57.94 ID:vgeC8z48o

―― 放課後


絵里「穂乃果、ちょっといいかしら」


穂乃果「あ、絵里ちゃ――先輩」

絵里「理事長から話があるの」

穂乃果「……私も?」

絵里「そうよ」

穂乃果「???」

絵里「待たせているから、話は途中でね」


……




絵里「去年からこの学校の理事長に就任された方なのよ」

穂乃果「……そうなんだ」

絵里「私も、この方が居たから……色々と連携が取れてるのよね」

穂乃果「ふぅん……。連携……?」



絵里「ここが理事長室」

穂乃果「……」

絵里「緊張してる?」

穂乃果「ううん」

絵里「……」


コンコン


「どうぞ」


絵里「失礼します」

ガチャ


理事長「高坂穂乃果、だな」

穂乃果「は、はい」

理事長「急に呼び出してすまない。早めに話をしておきたくてな」

穂乃果「?」

絵里「……」


理事長「とある理由で、現在の生徒会長を絢瀬に頼んである」

絵里「……」

穂乃果「生徒会――……長!?」

理事長「話していなかったのか?」

絵里「決定だとは思いませんでしたから」

634: 2014/04/15(火) 10:27:25.56 ID:vgeC8z48o

理事長「こっちも色々と立て込んでいてな。
     連絡が遅れたが、そういうことになった」

絵里「はい、わかりました」

穂乃果「あっさり引き受けた……!?」


理事長「さっそくだが、本題に入る」


穂乃果「あ、……はい」

絵里「……」


理事長「この学校は代々、神北家の一族が支えていたのだが」


穂乃果「かみきた……」


理事長「事情があって、この学校の経営から一時離れることになり、
     家柄の都合で私が就任することになった」

穂乃果「……」

理事長「名を神凪という」

穂乃果「……かんなぎ……神繋がりですか?」

理事長「そうだ。……先にキミの疑問に答えておこう」

穂乃果「?」

理事長「私は現在二十歳で、一昨年までは学生でありながら学園の理事長をしていた」

穂乃果「え……!?」

理事長「今は相棒に任せているが、時々は様子を見に向こうへ戻るだろう」

穂乃果「通りで若いと……あれ? でも、入学式の時……」

理事長「あぁ、君たち、新入生を迎え入れたのは私の秘書にあたる人物だ」

穂乃果「……えっと、どうしてこんなことに?」

理事長「表向きは彼女が理事長だが、裏事情では私が理事長を勤めることになる」

穂乃果「理由を答えていません……」

理事長「話には順序がある、少しずつ話そう」

穂乃果「は、はい」

絵里「……」

理事長「このことを知るのはこの場にいる三人と、私の秘書、計四人になる」

穂乃果「……」

理事長「教師たちに伝えていないのは、面倒を増やさないためだ。
     二十歳の私が理事長に就くというのはやはり異例だろう。
     反発を避けるという理由もある」

絵里「……」

理事長「実際、去年でも面倒があったからな」

絵里「……はい」

穂乃果「……」

理事長「そして、この事実を公にしたくない理由がもう一つ」

穂乃果「……?」

理事長「余計な話題を集めたくない」

635: 2014/04/15(火) 10:29:18.09 ID:vgeC8z48o

穂乃果「話題を……? 注目を集めることに問題があるんですか?」

理事長「……そうだ。予定では来年で此処を去り自分の学園へ戻るつもりだからな」

穂乃果「……」

理事長「話題性が無くなったその時、この学校の入学希――」

絵里「理事長」

理事長「……?」

絵里「その話は今、必要ありません」

理事長「……ふむ」

穂乃果「?」

理事長「生徒の自主性に任せる意味も込めて、私は君たちにこの学校を支えて欲しいと思っている」

穂乃果「……」

理事長「高坂穂乃果、キミにこの話をしたのは信用に足る人物だと絢瀬に聞いたからだ」

穂乃果「……」

理事長「他に、質問があれば聞くとしよう」

穂乃果「この事実を私に話す理由が信用だと言いましたけど、それだけでは納得できません」

理事長「……なぜそう思う?」

穂乃果「他の生徒と同じように、私にも秘密にしておけばよかったのではないかと思って」

理事長「なるほど、そういう考えにたどり着くか……」チラ

絵里「……」コクリ

理事長「その質問には時期が来たら答えよう。今は絢瀬に従っていてくれ」

穂乃果「……」


コンコン


理事長「……」


ガチャ


「失礼します」

理事長「今はおまえが理事長なのだから、この部屋にノックするのはおかしいだろ」

「あ……、はい。すいません」

理事長「生徒に見られていないだろうな」

「はい。それは平気かと」

636: 2014/04/15(火) 10:30:39.80 ID:vgeC8z48o

穂乃果「あ……入学式の……」

理事長「そうだ、彼女が表向きの理事長ということになる」

「秘書の夕月と申します」ペコリ

穂乃果「は、はい……」

理事長「おい、理事長が丁寧に挨拶をしてどうする」

夕月「しかし、莉都様の前ではこうなってしまいます」

理事長「それなら、せめてこの部屋だけにしてくれ」

夕月「はい、かしこまりました」


穂乃果「なんだか面白い人達だね」ヒソヒソ

絵里「……そんなこと言っては失礼よ」


……




穂乃果「それでは失礼します」

絵里「それでは」


理事長「絢瀬は少し残っていてくれ、話がある」

絵里「はい」


穂乃果「そ、それでは」


バタン


夕月「やはり、スーツは着なれません」

理事長「1年もこの状況なのにまだ慣れないのか、……困ったものだな」

夕月「そうみたいです……困りました」

絵里「……」

理事長「なぜ高坂に伝えていない?」

絵里「彼女には彼女の高校生活があります。この問題に触れてほしくはありません」

理事長「このままだと来年には全校生徒に伝えなくてはならない」

絵里「……」


理事長「はっきり言っておくが、私はこの学校への愛着を微塵も感じていない」

絵里「――!」


理事長「所詮、私たち二人は外部の者」

絵里「……ッ」


理事長「守りたかったら自分たちで守れ。話は以上だ」

絵里「……失礼します」

637: 2014/04/15(火) 10:32:32.16 ID:vgeC8z48o

バタン


夕月「そうお思いになられるのなら、就任を拒否すればよかったのでは」

理事長「私が居て邪魔にならないようにはする」

夕月「……1年居たのに、沸きませんか?」

理事長「さぁな。……この件に関して、私たちが手を貸すと碌な事にならないだろう」

夕月「傍観なさるおつもりですか」

理事長「……なにかと突いてくるな」

夕月「あの方――絢瀬さんは莉都様のこと、少しは信用なさっていたようです」

理事長「この学校の運命はもう決まりつつある。
     それを生徒たち自身で変えなくては意味が無い」

夕月「なるほど」

理事長「なにを理解した」

夕月「縁とは不思議なものですね」

理事長「まぁいい。私は明日からの2週間、留守にする」

夕月「来週の歓迎会は欠席ということですね」

理事長「あぁ、あとは任せる」

夕月「歓迎会にて、高坂さんの実力を知ることができそうですが」

理事長「……どういうことだ」

夕月「先日、絢瀬さんから生徒会を通して企画書を提出していただきました」

理事長「なぜそれを早く言わない」

夕月「私が理事長ですから。それとも……愛着が?」

理事長「……うるさい」



……




―― 廊下


絵里「心強い人だと思っていたけれど……」


638: 2014/04/15(火) 10:34:33.18 ID:vgeC8z48o

―― 生徒会室


穂乃果「理事長の話しってなんだったの?」

絵里「生徒会長として正式な話をしただけよ」

穂乃果「そうなんだ」

絵里「……」

穂乃果「どうしたの?」

絵里「ちょと考え事をね」

穂乃果「何を考えているの?」

絵里「これからのこと」

穂乃果「一緒に考えようよ」

絵里「……」

穂乃果「絵里ちゃんがなにを考えているのか、聞かせて」

絵里「わかったわ。それと先輩を忘れずに」

穂乃果「わ、わかった」


……




―― 廊下


絵里「――学校を知ること、ね」

穂乃果「うん、学校のみんなが楽しんでもらえるよう企画するのは、それが最初だよ」

絵里「穂乃果らしい発想ね」

穂乃果「そうかな?」

絵里「えぇ、私には思いつかないわ」

穂乃果「そんなことないと思うけど」


絵里「今からだと、部活の勧誘してるから、そこへ行ってみましょうか」

穂乃果「うん!」


……



639: 2014/04/15(火) 10:38:58.37 ID:vgeC8z48o

―― 玄関先


「吹奏楽部でーす!」

「サッカー部に入りませんかー!」


穂乃果「賑わってるね」

絵里「どこも部員を増やそうと一生懸命ね」


「手芸部でーす」


穂乃果「……」

絵里「手芸部に興味あるの?」

穂乃果「ちょっとだけ」

絵里「……」


「あ、入部してくれるの?」

穂乃果「あ……えっと」

絵里「残念だけど、この子は生徒会役員なのよ」

「掛け持ちすれば大丈夫」

穂乃果「……掛け持ちかぁ、それはいいかも」


「手芸部ってこういう時、アピール出来るものがなくて地味なんですよねー」

穂乃果「そ、そうなんですかぁ」

絵里「掛け持ち……ね」

穂乃果「どうしようかな……」

絵里「とりあえず、他の部も見てみましょ」

穂乃果「そうだね」

「興味があったらいつでも来てね~」


……




絵里「大体こんなものね」

穂乃果「……」

絵里「気になる部でもあった?」

穂乃果「演劇部、合唱部、茶道部、料理部……?」

絵里「多いわね。意外と文化系……?」

穂乃果「陸上部と弓道部が……気になる。……あと、剣道部」

絵里「剣道部?」

穂乃果「ねぇ、絵里ちゃ――先輩……剣道部ってどこかな?」

絵里「それはやっぱり……道場でしょうね」

穂乃果「見学していい?」

絵里「それは構わないけど……」

640: 2014/04/15(火) 10:40:26.22 ID:vgeC8z48o

―― 道場


穂乃果「あれ、人が居ない」

絵里「この時間だからね」


上級生「あら、絢瀬さん……何か用?」


絵里「用というほどじゃないけど、見学をさせてもらおうと思って」

上級生「残念だけど、今日は部活ないのよ」

絵里「また機会を改めることにするわ」

上級生「えぇ、そうしてちょうだい」


穂乃果「…………」


上級生「そっちは、入部希望者?」

穂乃果「あ、えっと……少し……興味があって」

上級生「それなら、参考になるかわからないけど、
     今から試合をするから、よかったら見ていって」

絵里「試合?」

上級生「そう。……不満があるらしくてね」


「始めるぞ」


上級生「そういうことだから」

絵里「こっちのことは気にしないでね」

穂乃果「……」


……




バシィィンン


上級生「……っ」

「もういい、お疲れ。付き合ってもらって悪かったな」

上級生「まだよ……今度は私の気が収まらない」

「手は抜かないからな」

上級生「そんなことしたら、辞めてやるわ」

「……」


絵里「力の差は歴然ね」

穂乃果「…………」


……



641: 2014/04/15(火) 10:42:03.30 ID:vgeC8z48o

上級生「……はぁっ、はぁっ」

「そう熱くなるな。冷静に相手を見ろ」

上級生「……ッ」

「それがおまえの持ち――」

上級生「ふぅ――……」

「お……?」

上級生「……」

「……」


穂乃果「今度は動かないね……」

絵里「考えがあるのかしら」


「小手――」スッ

上級生「……っ!」バッ

「遅い――!」

バシィィン

上級生「……くっ」

「小手抜き面か……応じ技が出来るほどの技術はまだまだ備わってないな」


穂乃果「……」


「今日はもうお終いだ」


絵里「厳しいのね、主将さんは」

主将「嫌味かよ。……というか、どうしてそれを」

絵里「部長会で報告を受けているわ」

主将「あぁ、そうか……絢瀬は生徒会だったな」

絵里「主将という役に不満があるの?」

主将「当たり前だ。中学の肩書だけで主将にされたんだぞ。
    この学校に入ってなんの成績も残してないのに」

絵里「それじゃ、全国を目指してみない?」

主将「……無理だな、戦力が足りない」

絵里「そう……」


穂乃果「団体戦じゃないとダメなんですか……?」


主将「剣道に興味あるのか?」

穂乃果「えっと……どうでしょ」

主将「はっきりしないな……。個人戦は限界が見えてる」

絵里「見かけによらず、自分を過小評価するのね」

主将「気持ちが盛り上がらなかったのは事実だからな」

絵里「確か、全国2位だったわね」

主将「よく知ってるな……」

絵里「一応、生徒会長だから」

642: 2014/04/15(火) 10:43:17.56 ID:vgeC8z48o

穂乃果「ここが……道場……」


絵里「あ、穂乃果! 勝手に上がってはダメよ!」

主将「いや、いいって。今日はもう使わないから」


上級生「ふぅ……」

穂乃果「お疲れ様です」

上級生「え、えぇ……」

穂乃果「お面をかぶると、視界が狭くなりそう……」

上級生「相手だけを見て集中できるから、それがメリットね」

穂乃果「ふむふむ」

上級生「被ってみる?」

穂乃果「いいんですか?」

上級生「実際見てみたほうが早いからね。ちょっと待ってて、手ぬぐい持ってくるから」

スタスタ


……




上級生「どう?」

穂乃果「わぁ……凄い……景色が変わった」


主将「景色……か」

絵里「穂乃果ったら……結局全部着ちゃって……」


穂乃果「見て絵里ちゃん! 私の剣道着姿!」


絵里「またそんな呼び方して……」

上級生「二人は……どういう関係?」

絵里「幼馴染というか、親友というか……家族というか」

上級生「絢瀬さんと高坂さん……ね。思い出した」

絵里「?」

上級生「二人の噂話を聞いてるから」

絵里「噂って……穂乃果が悪いこと言われてたり……?」

上級生「ううん、逆よ。とても仲の良い二人ってね」

絵里「……そう、良かった」

上級生「……噂通りね」


主将「高坂、ちょっと構えてみろ」

穂乃果「……こう、ですか?」

主将「おまえ、剣道の経験があるのか?」

穂乃果「まったくありません」

主将「結構、様になってるな……」

643: 2014/04/15(火) 10:45:17.96 ID:vgeC8z48o

上級生「そうね……素人には見えないわ」

絵里「あの子、運動神経がいいから」


主将「よし、稽古をつけてやる」

穂乃果「え……?」


絵里「あ、ちょっと!」


主将「勝負は、高坂から五本を取るまでに、あたしから一本でも取れば勝ちだ」

穂乃果「よぉっし!」


絵里「素人が試合なんてしてはいけないわ!」


穂乃果「楽しそうだから、やる!」


絵里「穂乃果!」

上級生「怪我をさせることはないから」

絵里「……本当でしょうね?」

上級生「えぇ、あの人はそれくらい弁えているわ」

絵里「……」



主将「絢瀬に守られてるんだな」

穂乃果「そうだよ」

主将「闘争心を煽ったんだが……無駄なのか?」

穂乃果「よろしくお願いします」

主将「いつでも来い」


穂乃果「……――」

スッ


主将「――!」


穂乃果「やぁぁあああ!!!」

バシッ

主将「なっ……!?」


穂乃果「一本?」


上級生「いえ、素人相手に厳しいようだけど……有効打突ではないから」


穂乃果「そっか……」


絵里「気をつけてよ……」ハラハラ

644: 2014/04/15(火) 10:48:02.71 ID:vgeC8z48o

主将「……」

穂乃果「――えいっ!」バッ

主将「――!」スッ

バシィン

穂乃果「あうっ」


上級生「一本」


穂乃果「まだまだぁ……」


バシイッ

穂乃果「くぅ……」


バシィィンン

穂乃果「……っ」


バシィィッ

穂乃果「……ッ」



穂乃果「はぁ……はぁっ」

主将「あと一本だぞ……」

穂乃果「むぅ……!」


上級生「……」

絵里「……」ハラハラ



友人「絵里先輩がいるってことは……あれは……穂乃果?」



穂乃果「すぅ……はぁ……」

主将「……」

穂乃果「すぅぅ……」

主将「……」

穂乃果「……」スッ

主将「――ッ!?」


絵里「あれは……?」

上級生「上段の構え……!?」


穂乃果「面――ッ!」バッ

主将「――!」

ガッ

主将「胴――!」バッ

バシィィンン

645: 2014/04/15(火) 10:49:46.44 ID:vgeC8z48o

穂乃果「……っ」

ガクッ


絵里「穂乃果!」

タッタッタ


穂乃果「うぅ……」

絵里「大丈夫!?」

穂乃果「だ、大丈夫……びっくりしただけだから」

絵里「痛みは?」

穂乃果「そんなにないよ……」


上級生「あなたねぇ……」

主将「……あり得ない。まるで経験者のような……気迫だった」


絵里「……無茶しすぎよ?」

穂乃果「ちょっと、楽しくなってきて」

絵里「まったく……」


主将「おい、高坂」

穂乃果「?」

主将「本当に未経験なのか?」

穂乃果「は、はい……そうです」


絵里「痛むの……?」


穂乃果「うん?」


絵里「右手首……抑えているけど……」


穂乃果「え――……?」


絵里「ちょっとあなた、なんてことを!」

主将「いや、マジか!? すまん!」

上級生「胴だけだと思ってたけど……」


穂乃果「い、痛くないよ、絵里ちゃん!」

絵里「でも……」

穂乃果「顔……洗ってくるね……」

絵里「穂乃果……?」

穂乃果「あはは……負けちゃったぁ……っ」

タッタッタ


絵里「…………」

646: 2014/04/15(火) 10:50:34.10 ID:vgeC8z48o

―― 水洗い場


穂乃果「主将だもんね……強いの……当たり前……だよね」


穂乃果「悔しいのかな……」


穂乃果「……はは」ホロリ


穂乃果「あれ、なんで……っ」ボロボロ


穂乃果「なんで……っ……涙が……?」ボロボロ


穂乃果「うぅっ……ぅぅっ」ボロボロ


穂乃果「どうして……右手が……いたいの……?」ボロボロ


……



647: 2014/04/15(火) 10:52:21.97 ID:vgeC8z48o

―― 道場


絵里「遅いわね……」


上級生「あなた……」

主将「わかった。怪我が残るようなら責任を取るよ」


友人「絵里先輩……」

絵里「あら、どうしたの?」

友人「その……えっと……」

絵里「?」

友人「穂乃果の変化に気付いて――」


穂乃果「お待たせ~って、どうしてカメラ持って此処に!?」


友人「……」

穂乃果「ん?」

絵里「穂乃果、手は大丈夫?」

穂乃果「うん、大丈夫だよ。ほら、自由自在」

上級生「はぁ……よかった」

主将「悪かったな、高坂」

穂乃果「いえいえ、本当に怪我なんてないですから~」

絵里「いつまでお面を被っているつもり?」

穂乃果「あはは……そうだねぇ」


穂乃果「ふぅ……」


絵里「……」


穂乃果「ねぇ、写真撮ったの?」

友人「……あ、うん。主将と対決してる写真を」

穂乃果「良く撮れた?」

友人「現像してみないことには……」

穂乃果「そっか……」

友人「目、赤いよ」

穂乃果「う……」


絵里「…………」


……



648: 2014/04/15(火) 10:53:23.51 ID:vgeC8z48o

―― 下校中


絵里「悔しかったの?」

穂乃果「な、何の話?」

絵里「初心者なんだから、気にすることないのに」

穂乃果「……うん。なんだかね、気持ちが……昂ぶっちゃって」

絵里「……そう」

穂乃果「……変だよね」

絵里「穂乃果のその負けず嫌いは……私のせいかもしれないわね」

穂乃果「どうして……?」

絵里「手を抜くことをしなかったからよ」

穂乃果「……違うよ」

絵里「?」

穂乃果「絵里ちゃんが手を抜いて、私が勝っても……絶対につまらないよ」

絵里「……」

穂乃果「勝負ってそういうことだよね」

絵里「そうね……、穂乃果が正しい」

穂乃果「だから、これからも遠慮しないでね」

絵里「えぇ、そうさせてもらう」

穂乃果「じゃあ、今度の休み、一局勝負しようよ」

絵里「いいわよ」


穂乃果「よぉし、今度こそ~!」

絵里「もぅ、心配したんだから」

穂乃果「あ……うん、ごめんね、無謀なことして」

絵里「ううん……、私に心配をかけても、大きな怪我が無ければそれでいいのよ」

穂乃果「えぇー……それって、なんかやだよ」

絵里「あら、嫌なの?」

穂乃果「いつまでも絵里ちゃんに守られてるのは嫌だ」

絵里「じゃあ、私を守れるくらいになってくれないと」

穂乃果「もちろん!」

絵里「ふふ」

穂乃果「えへへ」


……



649: 2014/04/15(火) 11:10:47.73 ID:vgeC8z48o

―― 新入生歓迎球技大会:体育館


『高坂選手のシュート!』


パサッ

 オォーー!


『歓声が沸きます! 絶好調の高坂選手、すでに13点目!』



絵里「さすがね……、頑張って、穂乃果」



―― コート



穂乃果「へへーっ!」ブイッ



―― ギャラリー


絵里「あ……私に気付いていたのね」


友人「目立ってますね、穂乃果」

絵里「あなたは試合に出ないの?」

友人「私はコレの仕事がありますんで」

絵里「写真? 1年生のする仕事じゃないでしょ」

友人「前に撮った、主将との試合画像が新聞部に評価されちゃって」

絵里「写真部に依頼されたのね」

友人「そういうことです。……私も写真好きだから、役に立てて嬉しいですよ」

絵里「ダメよ、今日は新入生のための球技大会なんだから」

友人「う……」

絵里「カメラは私が預かるから」ヒョイ

友人「あぁ……っ」

絵里「ほら、あなたも参加する」

友人「……でも」

絵里「新聞部には言っておくわね」

友人「……はぁい」

スタスタ


絵里「困ったものね、新聞部の部長は……」


『おっとぉ! パスカット! そしてそのまま駆け出したー!』


絵里「……」

650: 2014/04/15(火) 11:13:15.54 ID:vgeC8z48o

夕月「スリーポイントも決めましたね」

絵里「え、……あ……夕月さん」

夕月「この運動能力の高さ……生徒会だけではもったいない気がします」

絵里「……そうですね。……もう一度、本人に意志を聞かないと」


理事長「高坂を生徒会に入れた理由を聞いてもいいか?」


絵里「……私たちの祖母二人がこの学校の創立に携わっています」


理事長「――守るのはその孫の二人、という思想か」


絵里「そうです」


理事長「二人で守れるほど容易ではない」


絵里「…………」


理事長「彼女の――……高坂の特質をちゃんと見ていろ」


絵里「穂乃果の特質……?」


『ナイスアシストです、高坂選手ー!』


絵里「……」


理事長「まさかとは思うが、傍においておきたいからではあるまいな」


絵里「……!」


夕月「莉都様」

理事長「……」


絵里「失礼します」

スタスタ


夕月「相手は16歳の女の子です。もう少し発言には気をつけてください」

理事長「……わかっている」

夕月「わかっていません。先日から、絢瀬さんに対する言葉の数々、少しは――」

理事長「私はこれから学園に戻る。後は任せたぞ」

スタスタ

夕月「まだ話は終わっていません……!」


「生徒たちがいる場所で私に敬語を使うな」


夕月「もぅ……」

651: 2014/04/15(火) 11:13:54.97 ID:vgeC8z48o

―― コート


仲間「ナイス、穂乃果!」スッ

穂乃果「いえーい!」スッ

パァン

「はやく守備に戻ってー!」

仲間「行くよ!」

タッタッタ

穂乃果「あれ、絵里ちゃんがいない……?」


……



652: 2014/04/15(火) 11:15:06.79 ID:vgeC8z48o

―― 翌週:写真部


絵里「へぇ、綺麗に撮れてるじゃない」

友人「ふふん」

穂乃果「ふぅん……」

友人「あのさ、穂乃果……私はこの一眼レフで、この一眼レフで撮ったんだよ!」

穂乃果「うん、凄いね」

友人「私の腕はともかく、このカメラの性能を知らないだろうから教えてあげるけど――」

穂乃果「えぇ……またぁ?」

友人「反射鏡が跳ね上がってしまって、ファインダーから像が消えてしまうから――」


絵里「これが、新聞部に評価されたという……?」

写真部長「そうよ。少しピントがブレてるけど。
       でも、この一枚で彼女はより一層、写真に対する情熱は上がったのよね」

絵里「変わったわね……」

写真部長「え?」

絵里「なんでもないわ」

写真部長「最初は苦戦していたけど、ここへ来ては教えてくれって聞かなくて」

絵里「好きこそものの上手なれ、ね」

写真部長「えぇ。今では自分のカメラを持ちたいって毎日言ってる」


……



653: 2014/04/15(火) 11:18:03.66 ID:vgeC8z48o

―― 演劇部


「ああ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」


穂乃果「……」

絵里「練習、頑張っているみたいね」

演劇部長「はい。全国コンクールに向けて、鍛錬の日々です」


穂乃果「……なんだか、あのジュリエット……気持ちが入ってないみたい」

絵里「え?」

演劇部長「そうなのよね。他の演目をやりたいって……。よくわかったわね」

穂乃果「……なんとなく」

演劇部長「素質あるかもね、どう?」

絵里「ダメよ、穂乃果は生徒会役員なんだから」

演劇部長「興味あったらいつでも歓迎するわ」

絵里「穂乃果の気持ち次第だけど」

穂乃果「……」


演劇部長「はい、ストップ! ジュリエット!
       気持ちを切り替えないと役を変えるわよ!?」

ジュリエット「は、はい……すいません」


穂乃果「…………」

絵里「行きましょ、穂乃果」

穂乃果「……うん」


……



654: 2014/04/15(火) 11:19:29.52 ID:vgeC8z48o

―― 生徒会室


穂乃果「あのポニーテールの人、もっと大袈裟に動いてもいいよねぇ……」

絵里「何の話?」

穂乃果「さっきの演技の練習だよ」

絵里「あの静かな演技もいいと思うけど」

穂乃果「……そうだね」

絵里「ねぇ、穂乃果」

穂乃果「なに?」

絵里「他にもやってみたいことがあったら、遠慮しないでいいのよ?」

穂乃果「うん?」

絵里「生徒会だけじゃなくて、他の部に入ってもいいってこと」

穂乃果「絵里ちゃんは?」

絵里「私は生徒会長だから、難しいわね」

穂乃果「じゃあ、私も生徒会で頑張る」

絵里「あのね、穂乃果……」

穂乃果「?」

絵里「今の話の流れだと、私が居るから生徒会以外に入らないって意味になるわよ?」

穂乃果「そうだよ?」

絵里「だから……その……ね?」

穂乃果「ん?」

絵里「うーん……」

穂乃果「そんなに悩むこと?」

絵里「穂乃果の能力をもっと活かせる気がするのよ」

穂乃果「そんなことないよ。私はそんなに能力ないよ」

絵里「過小評価しすぎ。もっと自信を持って」

穂乃果「絵里ちゃんも入るなら入るよ」

絵里「私に左右されてちゃ意味無いでしょ?」

穂乃果「どこでもやっていく自信あるよ。絵里ちゃんと一緒なら」

絵里「うぅん……」

穂乃果「また何か企画しようよ~。文化祭とか、レクリエーションとか」

絵里「それは会議で決めることよ。案があれば聞くけど」

穂乃果「よぉし」


絵里「私が穂乃果に甘えているのかしら……?」


……



655: 2014/04/15(火) 11:22:18.18 ID:vgeC8z48o

―― 梅雨:絵里の部屋


絵里「ん……うん……」


カチ カチ

 カチ カチ


絵里「2時……変な時間に目が覚めたわ……」



―― 居間


絵里「……あら?」


『さぁ、今日紹介するのはこれ! 人生ふんだり蹴ったりボクササイズ!』

『人生ふんだり蹴ったり? そんなので痩せるわけないじゃないのトニー』

『いいかい、エリザベス。人生は山あり谷ありっていうんだ。
 それが人の精神を強くも弱くもする。それがどういうことか分かるはずだね?』

『ボクササイズもふんだり蹴ったりしていけば……?』

『そうさ! 僕のようにスリムになること間違いなし!』

『まぁトニー! なんて魅力的な商品なのかしら!』


穂乃果「すごい……まるで嘘のようだ……」

絵里「過剰に言ってるだけよ。言ってることも無茶苦茶」

穂乃果「うわっ!?」

絵里「驚くほど集中してたのね……。
   通販番組なんて、穂乃果らしくないじゃない」

穂乃果「あはは……眠れなくて……。絵里ちゃんは?」

絵里「喉が渇いたから、台所へ。……穂乃果もなにか飲む?」

穂乃果「あ、じゃあ……ココアを。ホットで」

絵里「わかったわ。温めるから時間かかるけど」

穂乃果「いいよー、まだ眠くないから」

絵里「明日もちゃんと走るわよ?」

穂乃果「雨降ってるよ」

絵里「……あ、そうだった」

穂乃果「明日休みだし、映画見ようか?」

絵里「それもいいわね。ちょっと待ってて」

穂乃果「はぁ~い」

656: 2014/04/15(火) 11:24:46.74 ID:vgeC8z48o

『そして、なんと! 今日は特別に、DVDセットのおまけとして、更に!』

『ワクワクしちゃう!』

『人生ふんだり蹴ったりゲームもつけよう!』

『まぁ! ゲームをしながらボクササイズができちゃうの!? なんてお得!』


穂乃果「誰が買うんだろ……」


『さぁ、今すぐお電話を!』

『深夜だから、番号のおかけ間違いに気をつけて。エリザベスからのお願いよ』


穂乃果「通販……かぁ……」


穂乃果「……なんだろ……胸が……痛い」


……




『それでは今日のお天気です。えー、今日は、珍しいところから中継です』

『おはようございまーす! 私は今、海の上にいます! ごらんください太平洋~!』


絵里「すぅ……すぅ……」

穂乃果「すぅ……う……み……」


母「……どうしてこんなところで寝てるの?」


絵里「……ん……んん?」

母「おはよう」

絵里「ハッ……!」

母「たまにはいいわよね」

スタスタ


絵里「そのまま寝てしまったのね……」

穂乃果「ん……ぅん……」

絵里「穂乃果、ほら起きて」

穂乃果「……ん」

絵里「映画も途中から覚えてない……」

穂乃果「見なおせばいいよ……ね」

ギュウ

絵里「あ、ちょっと?」

穂乃果「なんか、いい夢みてたよ。……あと5分…」

絵里「……それより穂乃果、離して?」

穂乃果「……すぅ」

絵里「あ、こら……!」


657: 2014/04/15(火) 11:26:04.20 ID:vgeC8z48o

……




―― 翌週:生徒会室


穂乃果「ボランティア部?」

絵里「そうよ。一昨年で廃部になってしまったけどね」

穂乃果「ふぅん……」

絵里「部が設立されたのは、なんでも部、という名称だったみたい」

穂乃果「……なんでも部」

絵里「おばあさま達、二人が設立したのよ」

穂乃果「私たちもやろうよ!」

絵里「ふふ、そう言うと思ったわ」


……




―― 放課後:1年生の教室


穂乃果「ね、いいでしょ?」

友人「悪いけど、写真部があるから……他の人誘ってよ」

穂乃果「誰も入ってくれないんだよね」

友人「何をする部なの?」

穂乃果「学校で困った人や部を助けるという部」

友人「ふぅん……じゃあね」

穂乃果「あ、ちょっと待って! 話を聞いたら興味沸くから!」

友人「急がないと天気が崩れる……」

穂乃果「いつもカメラの話し聞いてるから、私の話も聞いてよ!」

友人「聞き流してるでしょ?」

穂乃果「そ、ソンナコトナイヨ!?」

友人「うわ……声が上ずった……。ちょっとショック」

穂乃果「えっと……スピードシャッターが3秒で降りるんだっけ?」

友人「シャッタースピードね。それが3秒もかかるってどんな機材よ!」

穂乃果「うわ、怒った!」


……



658: 2014/04/15(火) 11:28:11.22 ID:vgeC8z48o

―― ボランティア部


穂乃果「みんな興味ないって……」

絵里「張り紙をしてきたから、それで集まるのを待ちましょう」

穂乃果「さすが絵里ちゃん!」

絵里「先輩、でしょ?」

穂乃果「他に人が居ないからいいよー」

絵里「そういう問題じゃ――」


コンコン


穂乃果「来た!」ガタッ

絵里「どうぞ」


ガラガラ


主将「張り紙を見たんだが」

穂乃果「なぁんだ、主将かぁ……」ガッカリ

主将「なんだ、そのガッカリは」

絵里「もしかして、依頼?」

主将「そうだ。剣道部に入れ、高坂」

穂乃果「それ依頼じゃないよね!?」

絵里「勧誘ね」


……




―― 道場


穂乃果「やぁぁああ!!」

バシッ

部員「くっ……!」


絵里「あなたが副主将になっているなんて」

副主将「あの人に指名されてね」

絵里「穂乃果は週に3回だけの参加よ?」

副主将「えぇ、それで充分――」


穂乃果「えぇっ、3日も!?」


絵里「相手に集中しなさい」


穂乃果「は、はい!」

659: 2014/04/15(火) 11:29:02.88 ID:vgeC8z48o

副主将「厳しいわね」

絵里「相手に失礼でしょ。やるからには真剣にやらないと」

主将「体力あるよな」

絵里「朝のランニングは欠かさないようにしてるから」

主将「どうしてだ?」

絵里「……こういう時の為、ね」


……




―― 帰宅時間:ボランティア部


絵里「わかりました。それでは、明日」

「お願いします」


ガラガラ


穂乃果「おっと」

「失礼」

スタスタ


穂乃果「……今の人は?」

絵里「将棋部の部長よ。相談されてたの」

穂乃果「ふぅん……って、絵里ちゃん!」

絵里「先輩」

穂乃果「先に戻るなんてひどいよー!」

絵里「仕方がないでしょ、私が道場にいてもすることがないんだから」

穂乃果「それならそれでなにか言ってよ!」

絵里「副主将に伝えてあったでしょ」

穂乃果「それはそうだけど……」

絵里「生徒会にも用があったから。……私たちも帰りましょ」

穂乃果「……うん」


……



660: 2014/04/15(火) 11:31:42.08 ID:vgeC8z48o

―― 翌日・放課後:将棋部


将棋部長「天狗……というのかな」

絵里「強さゆえ、周りを見ない。と言うことですか?」

将棋部長「そうなのよ。部長である私より強いから、何も言えなくてね」

穂乃果「どれくらいの強さなんだろ?」


ガラガラ


「こんにちはー……、ん?」


将棋部長「彼女がそうよ」

穂乃果「おぉ、ツインテール」

「なんですか、この人」

将棋部長「同じ1年生よ」

絵里「あなたが瑞芽さん?」

瑞芽「そうですけど」

穂乃果「私と勝負しようよ」

瑞芽「部長……?」

将棋部長「私ではあなたの相手にならないでしょ。
       二人は強いって聞いてるから」

瑞芽「そうですか……」

穂乃果「私なんて強いとは言えないけどね」

瑞芽「……」


穂乃果「はい、座って座って」

瑞芽「……棋譜を並べていた方が有意義かも」


絵里「穂乃果」

穂乃果「?」

絵里「一昨年の夏、私が言ったこと思い出して」

穂乃果「うん、わかった」

瑞芽「……?」

穂乃果「それじゃ、よろしくお願いします」

瑞芽「……よろしく」


……



661: 2014/04/15(火) 11:32:34.67 ID:vgeC8z48o

絵里「勝負あったみたいね」


穂乃果「……お疲れ様でした」

瑞芽「……っ」

穂乃果「いやぁ、強いね~。
     他の人と指したことあまりないから新鮮だったよ」

瑞芽「負けたのに、悔しくないの?」

穂乃果「悔しいよ」

瑞芽「それなのにどうして、笑って……」

穂乃果「楽しかったから」

瑞芽「……!」

穂乃果「楽しかったけど悔しいって、変だね」

瑞芽「何度も勝てるチャンスはあったのに……どうして?」

穂乃果「……それは気づかなかった。それが私の実力なんだよ」

瑞芽「…………」

穂乃果「絵里ちゃんは私より強いよ?」

瑞芽「……」


……




―― ボランティア部


将棋部長「いい刺激になったみたいで」

絵里「そうですか。……それはよかった、と言ってもいいのかどうか」

将棋部長「あとは私の役目ね。……いつか、絢瀬さんとも指したいと言っているわ」

絵里「時間が合えば、いつでも――」


……



662: 2014/04/15(火) 11:33:29.71 ID:vgeC8z48o

―― 初夏:廊下


瑞芽「絵里先輩っ、いつ私と指してくれるんですか!」

絵里「悪いんだけど、最近忙しくてね」

瑞芽「時間を作って欲しいです!」

穂乃果「瑞芽ちゃん……昨日、私に負けたよね」

瑞芽「……だから、なに?」

穂乃果「私といい勝負なのに絵里ちゃんと一局なんてダメだよ!」

瑞芽「勝てないからって勝負を避けることはしたくない」

穂乃果「格好良いこと言ってるけど、ダメなものはダメだよ!」

瑞芽「幼馴染だからって、絵里先輩の行動を縛らないでくれる?」

穂乃果「縛ってないでしょ! 幼馴染じゃないよ! 家族!」

瑞芽「フッ」

穂乃果「鼻で笑った!?」


絵里「二人でケンカしていなさい……」

スタスタ


瑞芽「一緒に住んでるだけで家族なんて……呼べる……!」

穂乃果「ふふん」

瑞芽「いつでも指せるの?」

穂乃果「もちのロン」

瑞芽「……いいな」

穂乃果「絵里ちゃんに勝てたことないけどね~」

瑞芽「じゃあ、私が指してもいい?」

穂乃果「しょうがないなぁ。一局だ――……なんでそうなるの!?」

瑞芽「一局勝負して、勝ったほうが絵里先輩と勝負できるってことで」

穂乃果「いいよ。今日は他の部に行ってくるから明日になるけど」

瑞芽「それまで絵里先輩と一局でも指したらズルだから」

穂乃果「わかった。それでいいよね、絵里ちゃん――って」

瑞芽「いない!?」


……



663: 2014/04/15(火) 11:35:33.24 ID:vgeC8z48o

―― 休日:居間


絵里「そういえば、勝負はどうなったの?」

パチ

穂乃果「私の勝ち~」

パチ

絵里「それ以外にも幾つか指してるでしょ?」

パチ

穂乃果「あぅ……痛いとこ攻められた。そうだよ」

パチ

絵里「仲いいわね」

パチ

穂乃果「あぁっ」

絵里「……」

穂乃果「ちょいとお待ちを」

絵里「えぇ。じっくり考えて」

穂乃果「むむ……」

絵里「結局、誰も部に入って来なかったわね」

穂乃果「そだね……。お祖母ちゃん達も二人だったのかな?」

絵里「そう聞いているわ」

穂乃果「……どうして、なんでも部を作ったんだろ?」

絵里「部を設立した当時は、戦後ということもあって、自由のきかない時代だったの」

穂乃果「それでも、規律が厳しいってことはない……よね?」

絵里「そんなことないわよ。
    今の私たちからじゃ想像もつかないようなことがたくさんあったに違いないわ」

穂乃果「……ピンとこないよ」

絵里「そうね、例えば……穂乃果が毎朝言う、あと5分、だって怒られるようなことだったのよ」

穂乃果「う……それは嫌だなぁ……」

絵里「今のはちょっと極端だけど。
    この将棋だって、危険思想があるという理由で禁止行為にされるところだったんだから」

穂乃果「もしかしたら、お祖母ちゃんたちはこうやって遊ぶことが出来なかったかもしれないんだね」

絵里「そう。だからこそ、自由な部を作って学生生活を楽しもうとしていたんだと思う」

穂乃果「そっか……。お祖母ちゃん達の気持ち、分かる気がする」

絵里「……私も。学校という場所をとても大切に想っていたからこその、なんでも部なのよね」

穂乃果「……うん、ありません」

絵里「はい、お疲れ様でした」

穂乃果「絵里ちゃんが入学式の時に言った言葉の意味がわかったよ」

絵里「ふふ、それなら嬉しいわ」

664: 2014/04/15(火) 11:37:42.00 ID:vgeC8z48o

穂乃果「紅茶淹れるね」

絵里「イチゴジャムも忘れないでね」

穂乃果「はーい」

スタスタ


絵里「……今のうちに……」ガサゴソ


絵里「……」

ピ口リン♪


穂乃果「絵里ちゃん、イチゴの――……なにしてるの?」


絵里「えっ!?」

穂乃果「……どうして、ケータイで写真を?」

絵里「な、なんでもないのよ?」サッ

穂乃果「なんで隠すの?」

絵里「それより、なぁに?」

穂乃果「イチゴのジャムが切れてて……」

絵里「ハチミツがあったでしょ? それでお願い」

穂乃果「……」

絵里「ちょっと穂乃果……台所は向こうよ?」

穂乃果「うん……」

絵里「ど、どうしてこっちに来るのよ?」

穂乃果「動揺してるねぇ」

絵里「してない」

穂乃果「どっちでもいいんだけど」ズイッ

絵里「ち、近いわよ、穂乃果」

穂乃果「後ろに隠したケータイ……見せて!」スッ

絵里「だ、ダメでしょ人のモノを……!」サッ

穂乃果「将棋盤を写して……どうするの!」スッ

絵里「どうもしないわよ!」サッ

穂乃果「いつも片付けてくれるから……変だとは思ってたけどっ!」スッ

絵里「……」サッ

穂乃果「他にも撮ってたんだ……?」スッ

絵里「いい加減にしないと……ね?」サッ

穂乃果「一人で検討してたんだね」

絵里「……」シラー

穂乃果「目を逸らした! そういうことだったんだ!?」

絵里「ふぅ……、別に悪いことじゃないでしょ?」

穂乃果「悪いよ! 研究されていたなんて!」

絵里「勝つためなら手段を選ばないわ」

穂乃果「なに悪役みたいなこと言ってるの! ずるいよ!」

665: 2014/04/15(火) 11:38:45.29 ID:vgeC8z48o

……




―― 夏:ボランティア部


絵里「ありません」

瑞芽「……あれっ!?」

絵里「私は……穂乃果にだけ強いみたいね」

瑞芽「あ、……そうなんですか」

将棋部長「力関係がおかしいわね……」


ガラガラ


穂乃果「ふぅ、今日も暑い~……あ、将棋部の……」


瑞芽「……」ササッ

絵里「?」


穂乃果「ふぅん、一局指してたんだ?」


瑞芽「うん、今終わったところ」

穂乃果「瑞芽ちゃん、負けたんだね」

瑞芽「まぁね……。ありがとうございました」

絵里「こちらこそ」


将棋部長「向きを変えて、絢瀬さんの面子を保ったのね」


穂乃果「絵里ちゃん、私と勝負しようよ」

絵里「合唱部の手伝いはいいの?」

穂乃果「終わったよ。剣道部の練習まで時間あるから」

絵里「それじゃ、急ぎましょうか」

穂乃果「うん!」


将棋部長「私は戻るけど」

瑞芽「少し見ていきます」


……



666: 2014/04/15(火) 11:39:21.92 ID:vgeC8z48o

穂乃果「参りました」

絵里「はい、お疲れ様でした」


瑞芽「私の時より駒の動きがぜんぜん違う……どうして?」

絵里「負ける訳にはいかないから、意地なのよ」

瑞芽「……」

穂乃果「イジ?」

絵里「こっちの話」


瑞芽「……失礼します」

スタスタ


穂乃果「……なんか、怒ってない?」

絵里「手を抜いたつもりはないんだけどね」

穂乃果「?」

絵里「さっきの勝負ね、負けたの私なのよ」

穂乃果「え!?」

絵里「あの子が気を利かせてくれたの」

穂乃果「……そうなんだ」


……



667: 2014/04/15(火) 11:41:30.70 ID:vgeC8z48o

―― 理事長室


理事長「将棋部、演劇部、合唱部、陸上部……そして剣道部が全国出場か」

夕月「吹奏楽部は惜しかったと聞いています」

理事長「何が足りなかった?」

夕月「部長は団結力だと」

理事長「全国出場を果たした部はなにが後押しとなったのか、分かるか」

夕月「そこまでは。……部員の士気が高かったのでは?」

理事長「腑に落ちん」

夕月「そうですね、一昨年まではそれほど活発化していませんでしたら」

理事長「ふむ……、学園に戻っている場合じゃなかったな」

夕月「これはただの推測ですが」

理事長「?」

夕月「去年、絢瀬さんが生徒会へ書記として入りました」

理事長「……」

夕月「そして、今年……高坂さんが入学し、二人はボランティア部を設立しています」

理事長「そのボランティア部の活動内容は?」

夕月「他の部へ助っ人として参加されているようです。主に、今挙げた部を中心に」


理事長「絢瀬が蒔いた種を、高坂が芽を出させた。……と言いたいのか」

夕月「そうです」

理事長「絢瀬と話がしたい」

夕月「少々お待ちを」


コンコン


夕月「どうぞ」


絵里「失礼します」


理事長「……」

夕月「先にお呼びしていました」

理事長「……優秀だな」

夕月「長年、秘書をしていますから」

絵里「?」

夕月「理事長から訊きたいことがあるそうです」

絵里「はい、なんでしょう」

理事長「全国出場を果たした、5つの部に共通する点はなんだ?」

絵里「穂乃果が出入りしている部です」

理事長「文化部はある程度理解できる。だが、陸上部で何をしている?」

絵里「特に何もしていません」

理事長「?」

668: 2014/04/15(火) 11:42:57.81 ID:vgeC8z48o

夕月「足を運ぶ理由はなんですか?」

絵里「練習風景を眺めているだけです。あと、部員たちとの会話を少し」

理事長「部員の菊地との仲は?」

絵里「話をする程度で、それ以上でもそれ以下でもありません」

理事長「ふむ……」

夕月「では、私からも質問を」

絵里「……はい」

夕月「剣道部の布陣に高坂さんが入っていないようですが」

絵里「正式な部員ではありませんから」

夕月「私も練習風景を見ていますが、
    高坂さんが入れば全国制覇に近付けるのではないでしょうか?」

絵里「あの、この質問はなんでしょうか?」

理事長「理由は後で話す。答えてくれ」

絵里「……確かに、全国制覇の可能性は高くなるかもしれません。
    贔屓目なしに見ても、穂乃果の能力は必要だと思います」

夕月「ではなぜ?」

絵里「穂乃果はあくまで、刺激を与える存在です」


理事長「…………」


絵里「本人も、自ら出場したいとは考えていないようですから」

夕月「わかりました」

絵里「……」


理事長「絢瀬、どこまで見ている?」

絵里「え……?」

理事長「私は去年就任してから、
     大体半年くらいでこの学校の存在が危ぶまれていることに気付いたわけだが」

絵里「……」

理事長「おまえは入学してすぐ、生徒会に入ったな」

絵里「はい」

理事長「知っていたのか」

絵里「……はい。祖母から連絡を受けていましたから」

理事長「なるほど。……それでは、高坂を生徒会に入れた理由を聞こう」

絵里「質問の意図がわかりません」

理事長「高坂の立ち位置はまるで――」


理事長「――この学校を救うかのような存在になっている。僅か4ヶ月で」


理事長「そこが私には腑に落ちない」


絵里「……」

669: 2014/04/15(火) 11:45:16.25 ID:vgeC8z48o

夕月「今年の春までは、生徒会との――……いえ、絢瀬さんとの連携がありました」


夕月「絢瀬さんが積極的だった理由が今なら理解出来ます」


夕月「ですが、高坂さんを生徒会に入るよう提案したと聞きます」


絵里「はい」


夕月「去年まで成績が今一つな学校が、
    今年に入って全国へ出場する部が5つも出てきました」


夕月「その理由を莉都様は知りたいのです」

理事長「……」


絵里「私は、10の頃から穂乃果と一緒です」


絵里「その一番近い場所で、穂乃果を見ていて気付いたこと」


絵里「運動能力の高さ、素直で明るい性格から繋がる友人関係、
    努力して学ぼうとする勤勉さと簡単に諦めない精神」


絵里「これは恐らく――……人を惹きつける力、憧れだと思います」

理事長「……」

夕月「……」

絵里「一つの部に入り、そこで活躍できると確信していましたが、
   他の部にも影響を与えるとは思ってもみませんでした」

理事長「……」

絵里「ですから、お二人の期待に添える答えは持っていません」

理事長「そうか、わかった」

夕月「……」

理事長「私の悪い癖で、物事の本質が見えないと気が済まなくてな」

絵里「……」

理事長「自己満足のために付き合わせて悪かった」

絵里「……いえ」


夕月「莉都様」

理事長「あぁ、そうだな」

絵里「?」


理事長「絢瀬の祖母は、いつからこの学校のことに気がついていた?」

絵里「私が中学3年生の梅雨時になります」

夕月「生徒数の著しい変化が表れたのが、ちょうどその年ですね」

理事長「いや、違う。もう少し前からだ」

絵里「おばあさまもそう言っています。このままでは――」


絵里「――廃校の危険性が出てくると」


670: 2014/04/15(火) 11:47:00.91 ID:vgeC8z48o

夕月「この僅かな変化で、ですか? 時代の流れと判断されてもおかしくないのに」

理事長「いや、もう追求するのはよそう。今考えるのは学校の存続のみだ」

夕月「……はい」

絵里「……」

理事長「来年の春にはこの学校の運命が決まる」

絵里「――!」

理事長「その運命を変えられるのは、秋までだと思ってくれ」

絵里「……はい」

理事長「最低限の協力はしよう。だが、表立って動くことはしない」

絵里「分かっています。外から来た人にこの学校を救ってもらっても、意味がありませんから」

理事長「……」

絵里「生徒である私たちが変えなければ、また同じ問題が起こります」

夕月「……」

絵里「話が終わりなら失礼してもよろしいでしょうか」

理事長「最後に一つ」

絵里「……」

理事長「絢瀬、おまえの学校生活を捨ててまでするべきことなのか?」

絵里「……!」

理事長「臨時とはいえ、理事長である私が協力的じゃないんだ」


理事長「高校生活という、大切な時間を学校存続のために費やしてもいいのか?」


絵里「――はい」


理事長「全てがうまくいくとも限らない」


絵里「……――それが私の役割だから、です」


理事長「学校の運命に翻弄されてはいないか」

絵里「いえ、これは私の意志です」

理事長「……そうか」

絵里「それに――」

理事長「……それに?」


絵里「学校生活を捨てたつもりはありません」


夕月「……」


絵里「それでは、失礼します」

スタスタ

 バタン


理事長「……捨てたつもりはない、か」

夕月「それが彼女なりの青春、なのかもしれませんね」

671: 2014/04/15(火) 11:49:18.15 ID:vgeC8z48o

―― 廊下


絵里「…………」


穂乃果「あ、絵里ちゃん」


絵里「穂乃果……、こんなところで待っていたの?」

穂乃果「うん。話ってなんだったの?」

絵里「退屈な話よ」

穂乃果「理事長との話を退屈だなんて……!」


絵里「ねぇ、穂乃果――」


穂乃果「うん?」


絵里「学校、楽しい?」


穂乃果「もちろん」


絵里「……そう」


穂乃果「こうやって、夏休みに登校するくらい、楽しいよ」


絵里「その楽しいが……みんなに伝わっているのかもしれないわね」


穂乃果「?」

絵里「なんでもないわ」


穂乃果「まだお昼だけど、どうしよっか」

絵里「穂乃果はどうしたい?」


穂乃果「そうだな~……、えっと……」

絵里「ふふ、そんなに悩むこと?」


穂乃果「やりたいこと、いっぱいあるから」

絵里「そうね、沢山……ある」


穂乃果「とりあえず、部室に行こうよ」

絵里「えぇ……そうしましょ」


穂乃果「いつも、誰かがいる場所だけど、今は誰も居ないね」

絵里「生徒は私たち二人だけよ」

穂乃果「なんだか、不思議な気分だね」

絵里「……そうね。ノスタルジアを感じる」


穂乃果「あ、そうだ……今からでも剣道部の応援に行けるよね」

絵里「名古屋まで行くの?」

穂乃果「やっぱり、遠いよね」

672: 2014/04/15(火) 11:52:14.96 ID:vgeC8z48o

絵里「ねぇ、穂乃果」

穂乃果「今度はなに?」


絵里「手を、繋ぎましょうか」


穂乃果「えぇ~? 汗ばんじゃうよ」

絵里「いいから」

ギュ


穂乃果「……どうしたの?」

絵里「変?」

穂乃果「……いつもと違う」

絵里「たまにはいいでしょ?」

穂乃果「……うん」

絵里「どうして警戒してるのよ」

穂乃果「なにもない?」

絵里「ないから、安心して」

穂乃果「えへへ、そっか」

絵里「こうやって歩くの、久しぶりよね」

穂乃果「小学校以来だよね」

絵里「そんなに前だった?」

穂乃果「そうだよ~」

絵里「穂乃果と出会って、結構経つのね」

穂乃果「……」


絵里「なんだか、遠い昔のような気がする」


穂乃果「絵里ちゃん……?」

絵里「なに?」

穂乃果「どこか、遠くに行っちゃう……とかじゃないよね」

絵里「ふふ、なによそれ」

穂乃果「……じゃないよね?」

絵里「そんなわけないでしょ。学校はどうするの?」

穂乃果「……」

絵里「……?」

穂乃果「…………」

ギュッ

絵里「少なくとも、あと半分。……高校生活の半分は、穂乃果と一緒よ」

穂乃果「……うん、そうだね」

絵里「時間はたくさんあるから――」


……


675: 2014/04/15(火) 18:35:36.93 ID:vgeC8z48o

―― 立秋:写真部


友人「あれ、無くなってる」


友人「部長、こっちにあった写真って……」


写真部長「理事長が見せてくれっていうから、貸したよ」

友人「理事長が? ……もしかして、全部ですか?」

写真部長「うん、そうだけど……まずかった?」

友人「見られてまずいものは無いんですけど……」

写真部長「急がないと、ホームルーム始まるよ」

友人「はい……」


友人「あの入学式の写真……使わないよね、まさか」



―― 理事長室


理事長「ふむ……」


夕月「どうでしょう」

理事長「いい写真が撮れてる。厳選のしがいがあるな」

夕月「やはり、入学案内のパンフレットですから……」

理事長「校外の画像は使えないな」


夕月「……これは」


理事長「?」

夕月「莉都様、これはいかがでしょう」

理事長「あぁ、それは私も気に入っている」


夕月「桜と、喜びあう、先輩と、後輩」


理事長「いい一枚だ」


夕月「はい。……二人、互いに想いが通じるように――」



……



676: 2014/04/15(火) 18:37:30.77 ID:vgeC8z48o

―― 1年生の教室


友人「見て穂乃果! 学校新聞!」

穂乃果「主将だ!」

友人「……じゃなくて、この写真ね、私が撮ったんだよ」

穂乃果「え、名古屋まで行ったの?」

友人「うん、新聞部のお供として~」

穂乃果「いいなぁ……」

友人「……じゃなくて、この写真の出来をみてよ」

穂乃果「出来って言われても……私、素人ダヨ」

友人「なんで外国人風に喋るのさ」


……




―― 放課後:グラウンド


菊地「なぁ、走ろうよ、穂乃果」

穂乃果「これから演劇部に行かないといけないんだよ」

菊地「……穂乃果が演技を?」

穂乃果「そうじゃないよ。見学させてもらってるだけ」

菊地「面白いの?」

穂乃果「観客が居たほうが真剣になれるって、言ってた。
     見てるのも楽しいよ」

菊地「そっか。……それでさ、走ろうよ」


「穂乃果ー」


穂乃果「全国4位に勝てるわけないよ。絵里ちゃんが呼んでるから、じゃあね~」

菊地「あ、ちょっと! 授業で負けた借りをまだ返してないんだけど!」


……



677: 2014/04/15(火) 18:38:42.74 ID:vgeC8z48o

―― 白露:生徒会室


穂乃果「絵里ちゃーん」

絵里「先輩、でしょ」

穂乃果「絵里ちゃん先輩」

絵里「あのねぇ」

穂乃果「理事長が渡してくれって」

絵里「なにかしら?」

穂乃果「大きな包だね」


副会長「会長、よろしいでしょうか」


絵里「はい、なんでしょう」

副会長「先日行われたオープンキャンパスの内容です」

絵里「ありがとう」


穂乃果「開けちゃおうかな」

絵里「ダメよ、穂乃果。そこに置いておいてね」


副会長「二人はホント、仲がいいよね」


……



678: 2014/04/15(火) 18:40:22.91 ID:vgeC8z48o

―― 秋分:生徒会室


絵里「私たちの記事を?」

新聞部長「そうだよ。穂乃果ちゃんと絢瀬ちゃんって、
       この学校の有名人だから」

絵里「穂乃果一人でも充分な内容になりそうだけど」

新聞部長「メインは絢瀬ちゃんね」

絵里「メインって……言われてもね」

新聞部長「入学案内の二人だから、これからも有名になるよ」

絵里「……何の話?」

新聞部長「あれ、知らないの?」

絵里「入学案内……もしかして、前に届いた包かしら」


絵里「……えっと、確かここに」ガサゴソ


絵里「あった……」

新聞部長「会長は意外とうっかり屋さんである、と」メモメモ

絵里「言葉が出ないわね……」


絵里「これは――……」

新聞部長「いい写真だよね」

絵里「いつの間にこんな写真を……――あぁ、あの子ね」


ガチャ

穂乃果「過ごしやすい時期だねぇ……あれ?」

新聞部長「お邪魔してま~す」

絵里「見て、穂乃果」

穂乃果「パンフレット?」

絵里「そうよ」


穂乃果「あ――……」

絵里「入学式の時、撮られていたみたい」


穂乃果「絵里ちゃんと私……」

絵里「ちょっと照れるわね」


新聞部長「桜を背景に抱きしめあって喜び合う二人……うんうん、いい記事が書けそうだよ」

絵里「もう過ぎた話でしょ」

新聞部長「入学時を想い返すって内容でいいよね」


穂乃果「…………」


新聞部長「穂乃果ちゃんは感動してるね」

679: 2014/04/15(火) 18:43:06.49 ID:vgeC8z48o

絵里「さて……仕事をするから、遠慮して欲しいんだけど」

穂乃果「あ、……どうして新聞部の部長が?」

新聞部長「取材だよ、取材~」

絵里「困った人ね……」

新聞部長「ほら~、あの有名な進学校の生徒会長知ってるでしょ?」

絵里「えぇ、京都の方ね。会って話をしたことあるけど」

穂乃果「……」

新聞部長「彼女といい勝負が出来るのは絢瀬ちゃんだけなのだ」

絵里「知らないわよ、そんなこと……」

穂乃果「その学校の副会長って、どんな人?」

新聞部長「え?」

絵里「?」

穂乃果「気になっちゃって」

新聞部長「えっとねぇ、……地元、東京の人だって」

穂乃果「関西弁……じゃないの?」

新聞部長「そんな話聞いたことないけど、どこからの情報?」

穂乃果「なんとな~く、どこかで聞いたことがあったような」

新聞部長「ふぅん……。でも、あたしの情報だと、副会長で、
       そんな独特なしゃべり方の人はこの近辺の学校には居ないよ」

穂乃果「じゃあ、気のせいだね」

絵里「ほら、仕事の邪魔しないで?」

新聞部長「しょうがない。今日のところは身を引くけど、明日はちゃんと取材を受けてもらうからね」

絵里「あのねぇ……」

新聞部長「あははっ、そいじゃあね~」

テッテッテ

ガチャ

 バタン

絵里「もぅ、勝手なんだから。……でも、なぜか憎めないのよね」

穂乃果「ここの書類、まとめちゃうね」

絵里「あ、5つに分けて――」

穂乃果「ホッチキスでとめるんだね」

絵里「そうよ。お願いね」

穂乃果「任せて」

絵里「……さっきの」

穂乃果「?」

絵里「副会長がどうとかって」

穂乃果「よく分かんないんだけど……引っかかっちゃって」

絵里「そう……。話に出た京都の方ね、のんびりしてて、和むような雰囲気だったわ」

穂乃果「……そうですか、それは良かったですね」

絵里「……なんで敬語になるのよ」

680: 2014/04/15(火) 18:45:24.40 ID:vgeC8z48o

……



―― 寒露:ボランティア部


瑞芽「絵里先輩っ、一局お願いします!」

絵里「私じゃ相手にならないでしょ?」

瑞芽「真剣勝負じゃなくて、勉強したいんです!」

絵里「それなら穂乃果と指したほうがいいわよ」

瑞芽「……穂乃果は」


ガラガラ

穂乃果「だんだん寒くなって――って! また来てる!」


瑞芽「いいでしょ、ここはボランティア部なんだから」

絵里「そうね、出入りは誰でも自由よ」

穂乃果「じゃあ、来週の定例清掃、参加してよ?」

瑞芽「さ、絵里先輩、準備できましたよ」

穂乃果「無視しないでよ、瑞芽ちゃん」ムニー

瑞芽「ふぁにふるの!」ムニー

穂乃果「むひふるふぁられふぉ!」


絵里「仲が良いんだか悪いんだか……」


ガラガラ

友人「失礼しまーす」

絵里「あら、いらっしゃい」

友人「この間、取材受けましたよね。その新聞が出来たので持ってきました」

絵里「新聞部でも無いのに……悪いわね」


瑞芽「ふぁなひて」ムニー

穂乃果「ふぉっちふぉそ」ムニー


友人「なにしてんの、この二人……」

絵里「冬休みの予定を考えないといけないんだけど」

友人「なにかあるんですか?」

絵里「自治会の清掃と、クリスマス会ね。他にも小さい件がいくつか」

友人「予定がぎっしりですねぇ」

絵里「あなたも参加する?」

友人「面白そうだから乗ります。日にち次第ですけど」

絵里「予定はね――」


コンコン


絵里「どうぞ」

681: 2014/04/15(火) 18:47:27.78 ID:vgeC8z48o

ガラガラ


主将「高坂もここにいたのか。……なにしてんだ」


穂乃果「ほぉぇ?」

瑞芽「ほ?」


絵里「どうしたの?」

主将「ちょっと相談事があってな」

絵里「珍しいわね。なにかしら」

主将「高坂を正式な部員にしたくてな」


穂乃果「本人、こっち!」

友人「なんで瑞芽がここにいんの?」

瑞芽「絵里先輩に一局受けてもらおうと思ってたんだけど……」


主将「全国に行ったはいいけど、初戦敗退だろ。
    高坂が入ればもっと上を目指せそうなんだよ」

絵里「こればっかりは本人の意志だから。……どうなの、穂乃果?」

穂乃果「…………」

絵里「……?」

主将「部員達も、初心者だった高坂に影響されてるんだよ。
    だけど、今年の全国進出は運の要素が大きくてな」


友人「……」

瑞芽「どうしたの?」

友人「穂乃果の表情、なんか変」

瑞芽「……?」


主将「高坂、本気でやってみないか?」

穂乃果「……」

主将「素質は充分にある」

穂乃果「でも……」

主将「?」

穂乃果「そう言ってくれるのは嬉しいですけど――……」

絵里「……」


穂乃果「物足りなくて」


主将「……」

絵里「どういうこと……?」


穂乃果「主将に稽古をつけてもらって、みんなで、練習してるのは楽しいです。
     だけど、……それだけじゃ……満足できないっていうか」

682: 2014/04/15(火) 18:50:18.09 ID:vgeC8z48o

主将「大会に出て、試合に勝てば変わる」

穂乃果「多分、そうじゃなくて……」

主将「……」

絵里「穂乃果自身も、その足りないものに気付いてないの?」

穂乃果「……うん」


友人「……」

瑞芽「……どうしたの、さっきまでの雰囲気……穂乃果の雰囲気じゃないよ」

友人「だよね……」


主将「競い合う仲間が居ない、ってことか」

穂乃果「……はい」

主将「……そうか」

絵里「……」

友人「横から口出して悪いんですけど。
    穂乃果と同じレベルか、それ以上の1年生って居ないんですか?」

主将「居ないな。経験者はいるが、高坂を引き上げるような存在にはなってないのか」

絵里「……」

主将「うん、わかった。……まぁ、一緒に全国を目指そうとは言わないが、
    今までの部活動が楽しいと思ったのなら、これからも参加してくれると助かる」

穂乃果「それは、もちろん」

瑞芽「え、そんな……諦めていいんですか? 全国制覇がかかっているんですよ?」

主将「高坂の目的がそれじゃないんだから、しょうがない。……邪魔したな」

絵里「……えぇ」

瑞芽「主将さんが穂乃果を引き上げることはできないんですか?」

主将「その役はあたしじゃないっていう話だな」

スタスタ


ガラガラ

 ピシャ


穂乃果「……主将に悪いことしたかな?」

絵里「穂乃果が本気になれないって、ちゃんと理解していたわ」

穂乃果「……」

絵里「残念に思っているだろうけど、しょうがないわよ」

穂乃果「でも……こんな中途半端な気持ちで剣道部に参加しても……迷惑だよね」

絵里「楽しいと思えるのなら、大丈夫よ。これから、試合に出たいって思えるかもしれないでしょ」

穂乃果「……うん、そうだね」


友人「…………」


……



683: 2014/04/15(火) 18:52:37.48 ID:vgeC8z48o

―― 霜降:ボランティア部


友人「……失礼します」


絵里「いらっしゃい。……穂乃果は剣道部にいるわよ?」

友人「はい、知ってます。今日は絵里先輩に相談を」

絵里「えぇ、いいわよ。お茶、ロシアンティー、紅茶、色々あるけど」

友人「お構いなく。話が済んだら部に戻らないといけないんで」

絵里「あら、そう」


友人「……」

絵里「穂乃果に聞かせたくない話し?」

友人「はい……。というか、穂乃果のことで」

絵里「?」

友人「えっと……なにから話せばいいのか」

絵里「時間の許すかぎりじっくり聞くから」

友人「ありがとうございます。……じゃあ、写真のことから」

絵里「……」


友人「あの……入学案内のパンフレットの件ですけど」

絵里「撮られていたのはびっくりだけど、気にしていないから」

友人「勝手に撮ってすいません……。いつか渡そうと思っていたんですけど」

絵里「あなたも気にしないの。いい一枚だと思う」

友人「そう、思いますか?」

絵里「えぇ、――最高の一枚ね」

友人「最高の……。それって、穂乃果もいい写真だと思っていますかね……?」

絵里「それはどうかしら。……それについてコメントしてなかったのよね」

友人「……やっぱり」

絵里「?」


友人「穂乃果って、私の写真……褒めてくれないんですよ」

絵里「…………」

友人「その一枚だって、結構自信があったから……
    私の写真を認めてくれるようになった、その時に見てもらおうと思ってて」

絵里「……」

友人「部長や、絵里先輩が褒めてくれた画でも、穂乃果はあまりリアクションしてくれなくて」

絵里「……」

友人「ひょっとして……嫌われてるんじゃないか――」

絵里「それは無いわ」

友人「……」

絵里「家でも、あなたのこと話すし、一緒にいて楽しそうなのも知ってる」

友人「……」

684: 2014/04/15(火) 18:54:16.94 ID:vgeC8z48o

絵里「あなたが写真を撮りだしたきっかけってなにかしら」

友人「……えっと、……写真を褒めてもらって……色んな場所へ行くようになって」

絵里「それは穂乃果と出会った中学の頃の話よね。その前は?」

友人「……まえ?」

絵里「その褒めてもらえた写真――……私と穂乃果の写真を撮った時、カメラを持っていたわけでしょ?」

友人「……はい」

絵里「どうしてその時も、カメラを持っていたのか、気になっていたのよ」

友人「……」

絵里「中学生の女子がカメラを持って歩くなんて、少し違和感があったのね」

友人「……」

絵里「その理由があるんじゃない?」

友人「それと、穂乃果が褒めてくれないことと、関係があるんですか?」

絵里「あるかもしれないし、ないかもしれない。
    少なくとも、私は穂乃果ほどにあなたを知らない」

友人「……そうですね」

絵里「……」


友人「父の趣味が……写真を撮ることだったんです」

絵里「……」


友人「お世辞にも、いい写真とは言えないほどの腕前なんですけど」

絵里「……」


友人「それで、私が小さい頃に……一枚だけ撮らされたことがあって」


友人「父と私の二人が撮った写真……、それを母がえらく褒めてくれたんですよね」
   被写体がなんだったのか、忘れてしまったけど……」


友人「うまく撮れてる。って、笑ってくれて」

絵里「……」

友人「……小学校高学年までは、普通の家族だったんです」

絵里「……」

友人「だけど、ある日……両親がケンカを始めてしまって
   次の日も、その次の日も、ケンカをするようになってて」


友人「それで、……父のカメラが床に叩きつけられたんです」

絵里「……どうして?」

友人「わかりません。その場に居なかったからどっちがやったのかも知らない」

絵里「……」

友人「言えるのは、二人の仲が冷え切ったこと。
    父は趣味を捨てて、家では喋ることがなくなりました。
    母も同じ雰囲気で……、同じ家に他人が住んでるって感じになって」


絵里「……」

686: 2014/04/15(火) 18:56:11.18 ID:vgeC8z48o

友人「それが嫌で、外に出て、色んなところを歩いてて……」

絵里「カメラを持った理由は……」

友人「……家族で話す、きっかけになればいいなって」

絵里「……」
  
友人「ただ、それだけです」

絵里「そう……」

友人「私のためかどうかは知らないけど、……戸籍の上ではまだ家族です」

絵里「…………」

友人「って、余計なことまで……」

絵里「あなたは、ご両親のことどう思っているの?」

友人「どうなんでしょう、……よくわかりません」

絵里「ちゃんと考えてみて」

友人「あの、私のことじゃなくて、穂乃果のことを……」

絵里「穂乃果はあなたの家族のこと、どれだけ知ってるの?」

友人「関係が良くないってくらいです。詳しくは話してないので」

絵里「……少し、私の話になるけど、いいかしら」

友人「はい。……?」

絵里「今、私は穂乃果の家にお世話になっているんだけど」

友人「……」


絵里「私が10歳の頃から……だから、もう7年になるわ」

友人「7年……」

絵里「結構な年月よね」

友人「……」

絵里「穂乃果とおばさま、おじさまの3人家族。
    他人の私が高坂家に転がり込んでいるのね」

友人「……」

絵里「繋がりといえば、私たちの祖母が友人だったというだけ」

友人「……」

絵里「私と穂乃果が最初に出会ったのが、その2年前。その間は交流がなかったのよ」

友人「ということは……、8歳の時と、10歳の……2回で……?」

絵里「そうよ。たった2回の対面なのに、私と一緒に暮らしていこうって決めてくれたの」

友人「その2回目……10歳の頃に、……なにがあったんですか?」

絵里「気になる?」

友人「もちろんです。数奇な運命じゃないですか」

絵里「そうね、滅多にあることじゃない。特別な人生なのかもね」

友人「ご両親はロシアで暮らしているんですよね」

絵里「えぇ、おばあさまと一緒に。本当は私もロシアへ移住することになってたのよ」

友人「……!」

687: 2014/04/15(火) 18:58:24.55 ID:vgeC8z48o

絵里「最初は私、その引越に納得がいかなくて、ずっと機嫌が悪かったのよ。
    久しぶりに逢う穂乃果にも、態度を悪くしてた」

友人「……」

絵里「穂乃果はそんな私の機嫌を直そうと、あの手この手を使ってね」


絵里「お気に入りのオルゴールや、大好きな饅頭、
    手作りのトロフィー、ネコのぬいぐるみ、カラオケマイク」


絵里「一つ一つ持ってきたけど、笑うことすらしない私に肩を落としては、次の手を考えてた」

友人「……」

絵里「可笑しな話しでね、自分のご飯茶碗を持ってきたりして……」

友人「はは」

絵里「物が無くなったら、今度は歌をうたって。
    それでも無愛想な私を見て、おばあさまが言ったの」


絵里「――そんなに嫌なの? って」


絵里「当たり前よね。友達と離れなきゃいけなくて。海外なんて不安も大きいんだから」

友人「……」

絵里「そう、言ったの。ありのままの気持ちをおばあさまにぶつけた」


絵里「おばあさまと両親は黙って聞いてたけど……」


絵里「穂乃果が泣いちゃって」


友人「びっくりした……んですか?」


絵里「私も最初はそう思った」


絵里「大声で怒りをぶつけたんだから、怖がらせてしまったって」


絵里「だけどね、私の手を取って言ったの」


絵里「離れちゃいやだって」


絵里「泣きじゃくる一つ年下の子に……私はどうすることもできなかった」


友人「……」


絵里「そして、おばあさまがもう一度訊いたの」


絵里「――そんなに嫌?」


絵里「私が応えるより先に穂乃果が答えたわ」


絵里「――いやだ、って」


絵里「まるで、大切なモノを守るかのように」


絵里「私の手を、ぎゅっと握りしめてくれたの」

688: 2014/04/15(火) 19:00:44.67 ID:vgeC8z48o

絵里「その様子を、穂乃果のお祖母様と私のおばあさまが微笑んで見守ってくれていた」

友人「……」

絵里「それが分岐点となって、私は一人、日本に残ることになったのよ」

友人「……」

絵里「血の繋がっていない私でも家族として迎え入れてくれた」

友人「…………」


絵里「家族をとても大切にする子なの」

友人「…………」

絵里「これは、ただの予想なんだけどね」 

友人「……はい」

絵里「見たい一枚があるんじゃないかしら」 

友人「もしかして……家族の?」

絵里「えぇ、そうよ。あなたの事情を知ってるから、
    はっきりとは言えないんでしょうね」

友人「無理……ですよ」

絵里「無理と思うなら無理よ。だけど、認められたいなら努力しないと」

友人「……」

絵里「あなたが両親をどう思っているかが重要なのよ」

友人「私が……」

絵里「勝手な言い方をしたけど、これは、あなたの分岐点なんだと思う」

友人「……」

絵里「穂乃果と出会って、この学校に入学して、認めてほしいと思った今が選択の時」

友人「……選択の」

絵里「私は、日本に居たい……私のために泣いている穂乃果と一緒に居たいって思ったから、此処にいるの」

友人「……!」

絵里「ゆっくりでいいから考えてみて。自分がどうしたいのか――」


……




―― 中庭


友人「……」


友人「…………」


友人「あ、私のことばっかりで、穂乃果のこと言いそびれた……」


……



689: 2014/04/15(火) 19:02:29.30 ID:vgeC8z48o

― 歳末:高坂邸


穂乃果「うわ、すごい雪だよ、絵里ちゃん」

絵里「本当……。こんな日に限って登校しなくちゃいけないのよね」

穂乃果「でも、いつもと違った風景だよ」

絵里「穂乃果も付き合うことないのに」

穂乃果「ううん、行きたいから行くよ」

絵里「それじゃ、風邪をひかないように暖かくして行きましょ」



― 登校途中


ザクザク

穂乃果「よっ、はっ」 

ピョンピョン

絵里「そんなに跳ねたりしたら危ないわよ」

穂乃果「だいじょーぶ~!」

絵里「ほら、ちゃんと傘をさして」

穂乃果「はぁい~」 

絵里「楽しいのはわかるけど、危ないから少し落ち着きなさい」

穂乃果「でも嬉しくて~」 

絵里「ふふ、しょうがないわね」

穂乃果「見て、絵里ちゃん、私たちの足跡しかないよ」 

絵里「二人だけの軌跡ね」

穂乃果「綺麗なこと言った!」

絵里「私たち二人は、どこまでいけるのかしらね」

穂乃果「もちろん、ずっとだよ」 

絵里「ずっと、ね」


ブオオン


穂乃果「どのくらい積もるかなぁ」

絵里「のんびりしてないで、はやく用事を済ませて帰るわよ」

穂乃果「雪合戦しようよ」

絵里「話聞いてる?」

690: 2014/04/15(火) 19:03:31.11 ID:vgeC8z48o

ブオオオオン


穂乃果「あ、絵里ちゃん危ない!」

バシャァッ 

絵里「――っ!?」

穂乃果「ふぅ、危ない。でも傘があってよかった」

絵里「水たまりが出来てたのね……穂乃果がいなかったらずぶ濡れになってたわ

穂乃果「こういう事故もあるんだね」

絵里「ありがとう、穂乃果。助かったわ」

穂乃果「どういたしまして~」



―― 学校・生徒会室


絵里「穂乃果、そっちにマジックペンがあるでしょ?」


絵里「あら、穂乃果……?」


絵里「どこに行ったのかしら」




―― ボランティア部


絵里「ここにもいない……」




―― 1年生の教室


絵里「……ここでもない」




―― 廊下


絵里「誰も居ない学校に独りで居るのって、ちょっと……」


「――里ちゃ~ん」


絵里「あ、どこに行ってたの?」

穂乃果「屋上だよ。面白いから来てよ!」

絵里「探したのよ?」

穂乃果「ごめ~ん」


691: 2014/04/15(火) 19:05:17.61 ID:vgeC8z48o

―― 屋上


「一面真っ白――……」


「すごいよね~」

 ザクザクザクッ

「穂乃果! 転ぶわよ!」

「転んでも平気~! だって雪だもん!」

「それでも危ないんだから、気をつけて……」

「雪だ、雪だ~!」


「でも、本当に素敵……」

「絵里ちゃん」

「?」

「隙あり!」

 ガバッ

「きゃぁっ!?」

「おっとっとぉ!?」

 バフッ

「もぅ、穂乃果……はしゃぎすぎよ」

「だって、楽しいんだもん」

「まったくもう……ほら、降りて?」

「もうちょっと――」

ぎゅう

「――こうしてていい?」

「……」

「背中、冷たい?」

「はしゃいだり、甘えたり……、一体どうしたの?」

「どうもしない――」

ぎゅうう

「――――あったかい」

「……」

「白い世界に、たった二人きりだよ」

「……」

「絵里ちゃんは? 暖かいでしょ?」

「……背中が冷たくなってきたわ」

「じゃあ、交代しよっか」

「起き上がるという発想はないのね……」

「こうしていたい」

「……なにか良いことでもあった?」

「うん」

692: 2014/04/15(火) 19:07:38.75 ID:vgeC8z48o

「なにがあったの?」

「クリスマス会が楽しかった」

「自治会の催し物なのに、みんな来てくれたわね」

「主将たちも、瑞芽ちゃんも、部長さんたちも」

「……」

「楽しかった、って……言ってくれた」

「他の人たちもそう言ってくれてたわよ」

「ほんと?」

「自治会長さんたちも、保育園の園長さんも、子供たちもね」

「そっか……」

「……」

「写真をね、見せてくれたよ。家族の写真」

「……そう」

「バツの悪い顔してた」

「……それはそうでしょうね」

「あ、背中冷たいよね」

「さ、起こして?」

「よいしょっ」

「早く中に入りましょ。もう少しで終わるから」

「……」

「止みそうにないわね、この雪――」

「……絵里ちゃん」

ぎゅっ

「……今日の穂乃果は、甘えん坊さんね」

「……えへへ」

「離れてくれる?」

「あ、……うん。ちょっと鬱陶しかったよね」

「そうじゃなくて、私が穂乃果を抱きしめられないでしょ?」

ぎゅうう

「あ……」

「まだなにかあるのね」

「背中を温めようと思っただけだよ」

「あら、それじゃ……穂乃果の心遣いを無にしちゃったわね」

「じゃあ、背中向けてよ」

「このままがいいわ」

「……」

「私に話したいことがあるんでしょ?」

「うん」

693: 2014/04/15(火) 19:08:59.97 ID:vgeC8z48o

「言ってみて」

「あのね――……絵里ちゃん」

「なぁに?」


「ありがとう」


「?」


「いつもいつも、ありがとう」

ぎゅううう


「……」


「絵里ちゃんが居てくれてよかったよ」


「穂乃果……」


「……よか…った」


「泣いてるの?」


「どうして?」


「声が震えてる」


「泣いてないよ――……」


「……」


「ごめんね、もう少しだけ――……」


「ねぇ、穂乃果」


「ん……?」


「初めて会った日のこと、覚えてる?」


「……うん」


「あの頃の私は、いつも母から言われてたの。愛想のない子ねって」


「……」


「単に人見知りしていただけなんだけど」


「絵里ちゃんは一度気を許すと、誰にでも優しくなるのにね」


「余計なこと言わないの」


「えへへ」

694: 2014/04/15(火) 19:10:41.36 ID:vgeC8z48o

「それで、私が8歳、穂乃果が7歳の時。おばあさまに連れられて、遊びに行った日のこと」


「……」


「おばさまが言ってたわ。穂乃果は恥ずかしがっていたって」


「……」


「今までずっと怖がらせていたと思っていたんだけど、
 どうして恥ずかしかったの?」


「……忘れちゃった」


「それは、嘘ね」


「……」


「穂乃果」


「……ん?」


「この話になると、いつも誤魔化すのはどうして?」


「……」


「そして、黙ってしまうのよね」

ぎゅうう


「……うぅ、苦しい」


「理由を聞くまで離さないわよ?」


「いいよ、それで」


「……」


「日が暮れるまで、時間があるから」


「……」


「太陽出ていないのに、日が暮れるって変だよね」


「……じゃあ、これでお終い」

スッ


「あ――……」


「警備員の人にも迷惑かけるから、早く仕事を終わらせ――」


「……っ」

ガバッ

695: 2014/04/15(火) 19:11:52.64 ID:vgeC8z48o

「…………」


「今日だけ、この時だけでいいから――……」


「……」


「お願い、絵里ちゃん……、もう少しだけ――……」

ぎゅうう


「……」


「私……、小さい頃から本当の友達って出来なかった」


「……おばさまから聞いてる」


「なんかね、知らないうちに距離を取ってしまうの」


「……」


「近付いて来られると、怖くなる。だから、深く付き合えない」


「……」


「誕生日会に誘われても断って、遊びに行くのも……断って……っ」


「穂乃果……」


「いつか……離れていくんだ……と思ったら……――とても怖くなるんだよ」


「……」


「どうしてか……分からないけど……っ……怖くて……仕方がなかったっ」グスッ


「……ほのか」

ぎゅうう


「でもっ……あの時……っ……絵里ちゃんと出会ったあの時っ」グスッ


「……」


「とっても嬉しかったから……っ」


「……だから、恥ずかしかった?」


「う…うん……っ」


「私は離れてなんかいかない」


「……うんっ」


696: 2014/04/15(火) 19:12:46.14 ID:vgeC8z48o

「私は一緒に居たいわ。――穂乃果が許す、その時まで」

ぎゅううう


「じゃあ……じゃあ、ずっとだよ?」


「えぇ。私たちのおばあさまのように、ずっとね」


「……うん、ずっとだよ」


「ほら、泣かないで」


「ぐすっ」


「穂乃果には笑っていて欲しいから」


「……うんっ」


「拭いてあげるから、じっとしててね」


「本当に、甘えてばっかりだね」


「いいわよ、もっと甘えても」


「ううん、もっと……強くならなきゃ」


「……」


「……すぅぅ、はぁ」


「そろそろ戻りましょうか」


「……」


「それとも、もう少しこのままでいる?」


「もう少し!」

ガバッ


「泣いてた子がもう笑ってる」


「それを言わないでよ~」


「ふふ」


697: 2014/04/15(火) 19:13:22.29 ID:vgeC8z48o


「……――怯えるのはこれでおしまいだから」



「自分にも、これからのことにも負けないから――」



……


【ラブライブ】穂乃果「時の旅人」【5】

引用: 穂乃果「時の旅人」