101: 2009/07/20(月) 09:41:35.45 ID:4KUCR4cU0

ジュン「っしゃあああああ!」

翠星石「うわ!?」ビク

雛苺「びっくりしたの…」

真紅「な、なに?どうかしたのかしら?」

ジュン「ドレスが…僕の作ったドレスが売れた!」

翠星石「ほ、ホントですか!」

雛苺「いくらで?いくらで売れたの!?」

ジュン「5万円だ!」

真紅「あら、そんなもんなのね」

ジュン「いや、これはすごいことだぞ…」


ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
103: 2009/07/20(月) 09:45:04.52 ID:4KUCR4cU0
これまでみつを通し、オークションにていくつかのドレスを出品してきた。
しかしまったく売れず、これはおかしいと思ったジュン。
独自の調査を進めた。本当にただ売れていないだけだった。
やがてみつは、ジュンの力量に見切りをつけて事業から手を引いてしまった。
それでも諦めきれないジュンは、自力でオークションに出品していたのだった。

ジュン「だから、今回のが初ということになるんだけど…まさか本当に売れるとは!」

翠星石「ちなみに、どんなのが売れたんですか?」ヒョイ

雛苺「う…」

パソコンの画面には、不気味な緑の布の塊が映し出されていた。

翠星石「こ、これは…?」

106: 2009/07/20(月) 09:47:33.31 ID:4KUCR4cU0
ジュン「これはな、カエルちゃんドレスっていうんだけど…」

雛苺「うぇぇ…」

ジュン「翠星石、実はお前をイメージして作ってみたんだよ…感謝してる!」

翠星石「そうなんですか…あ、ありがとうです…」ピクピク

雛苺「(翠星石の笑顔が引きつってるの…)」

真紅「よく売れたわね…」

ジュン「ちなみに、ほかに出品してる2着は、あとのふたりがモチーフになってるんだぞ」

ジュン「それぞれ、真紅はザリガニちゃんドレス。雛苺は桃尻ちゃんドレス。ほら、これだ」

悪趣味な布ゴミが画面に映し出された。

雛苺「…」

翠星石「お、抑えるです、抑えるですよ雛苺…」

ジュン「こっちはまだ売れてないみたいだけどな」

真紅「ジュン…あなたってその程度だったっけ…?」

ドールたちとジュンの絆が揺らぐ。

107: 2009/07/20(月) 09:49:57.65 ID:4KUCR4cU0
ジュン「よし!生まれて初めての稼ぎだ!」

報酬はもちろん総取りになる。
もしみつと手を結んだままだったら、8割は持っていかれることになっただろう。

翠星石「それでこの先食べていけるとは到底思いませんが…」

真紅「でもあなた、使い道あるの?」

ジュン「う、うん。それが…」ボソボソ

なぜかまごつくジュンに、ドールたちの苛立ちはさらに募った。

雛苺「で、結局何?」

ジュン「…姉ちゃんを温泉にでもつれて行こうと思うんだ…」

一同「え…?」

予想外の返答に一瞬呆然とする3人。

ジュン「ほら、僕は姉ちゃんにいっぱい苦労ばっかかけてるだろ…」

ジュン「一時期馬鹿みたいに荒れてたし…」

ジュン「だから、この機会にでも労わってやろうかなー、なんて…」

109: 2009/07/20(月) 09:52:15.51 ID:4KUCR4cU0
翠星石「い、いいじゃないですか…美しい姉弟愛です…」ウルウル

雛苺「やっぱりジュンはジュンだったの!」

ジュン「ハハハ!」

ドールたちとジュンの絆が戻った。

真紅「じゃあ早速のりを誘いに行ってあげなさい、ジュン。きっと泣いて喜ぶわ…」

ジュン「あぁ!そうさせてもらう!」ダッ

翠星石「ふふ、ジュンったらあんなに走って……この音は階段から転げ落ちてますね…」

雛苺「でもただの無能じゃなくて、優しい無能で本当に良かったの」

ふたりがしみじみとしている間、真紅は切ない気持ちでパソコンの画面を見ていた。
将来は、決して楽観できはしない。ジュンは、たとえ優しくても職人としては三流もいいところだ。
いや、もともと才能はあったのかもしれないが、それは開花する前に腐ってしまったようだ。

真紅「(いけない、私なにを考えているのかしら…)」

しかし、どうしても真紅はやるせなさを拭うことができなかった。

真紅「(ザリガニちゃんドレスって何なのよ…)」

112: 2009/07/20(月) 09:54:35.09 ID:4KUCR4cU0
階段を転げ落ちたジュンは、のりに驚かれた。
今はリビングでのりによる治療を受けている。

のり「もう、ジュン君たらあわてんぼさんねぇ…」ポンポン

ジュン「そこいたい…それに、いまどき赤チンはどうなんだ姉ちゃん…」

のり「はい、おしまい…」

ジュン「ありがとう…」

のり「あら、いいのよ」ニコ

姉は飽くまでも優しい。

のり「それで、あんなに急いで…なにか大事な用事でもあったの?」

ジュン「そ、そうなんだよ…姉ちゃんに言いたいことがあって…」

のり「え、私に?」

ジュン「うん…」

のり「何かな何かな?」ニコニコ

いつもジュンの話を嬉しそうに聞いてくれる姉。
そんな姉を邪険に扱っていた過去の自分を、今となっては殴りつけてやりたい。
最近になって、ジュンはそう思えるようになった。

113: 2009/07/20(月) 09:57:06.04 ID:4KUCR4cU0
ジュン「あのさ…僕がドレスを作ってたのは、知ってるよね?」

のり「ええ、すごく頑張ってたわよね」

ジュン「それがさ、さっき…売れたんだよ」

のり「…ほ、本当に!?やったじゃない、ジュン君!」ガバ

ジュン「ね、姉ちゃん…」

姉が抱きついてくる。息が苦しいし恥ずかしいし柔らかい。
どうやら姉はいまだに自分のことを男とは見ていないらしい。

のり「あ、ごめんね…つい嬉しくって。おめでとう、ジュン君!」ニコ

ジュン「いや、ありがとう姉ちゃん…」

姉は本当に嬉しそうにしている。それはもう大げさすぎるほどに。
見ているこちらも幸せな気分になるような笑顔。

114: 2009/07/20(月) 09:59:27.09 ID:4KUCR4cU0
ジュン「それで、当然報酬が入るんだけど…」

ジュン「そのお金でさ…あんまり大した額じゃないんだけど…僕と温泉にでも、行かないか?」

のり「…え?」

ジュン「ふ、ふたりで温泉に行こう、姉ちゃん」

のり「…じゅ、ジュン君…本気?」

ジュン「うん…ほら、姉ちゃんとふたりだけで旅行なんてしたことないじゃないか」

ジュン「たまには姉弟水入らずも悪くないかななんて…だめかな?」

のり「そんなわけないでしょう?…あれおかしいな…すごく嬉しいのに…」

のり「ご、ごめんねジュン君、お姉ちゃん、お手洗いに行ってくるね…」ダッ

ジュン「…いってらっしゃい」

姉の声が震えていた。どうやら快諾してもらえたらしい。
思い返せば、これまで姉孝行なんてひとつもしてこなかった。
こんなに喜んでもらえるなら、勇気を出して言った甲斐もあるというものだ。

ジュン「あれ…」

115: 2009/07/20(月) 10:01:33.10 ID:4KUCR4cU0
のり「ごめんね突然…」

戻ってくると、ジュンが泣いていた。

のり「ど、どうしたの…?」

ジュン「なんでかな…僕もちょっと…」

ジュン「…トイレ行ってくる」ダッ

のり「いってらっしゃい」ニコ

少し前には考えられなかったことだ。
あのジュンが、自分を温泉に誘うだなんて。
しかも自分のお金で。

のり「ふふ、やっぱりジュン君は優しい子だったわ。お姉ちゃんは間違ってなかった」

のり「…」

のりは、声を押し頃してもう一度静かに泣いた。
その後しばらく、この姉弟はトイレとリビングを交互に往復していた。

117: 2009/07/20(月) 10:03:38.99 ID:4KUCR4cU0
そして、出発の日。
旅行とはいえ、1泊2日だったが。

ジュン「お前ら、留守番よろしくな」

のり「みんな、ご飯は用意しておいたからそれを食べるのよ?」

雛苺「はーいなの!」

翠星石「留守居役、しっかり引き受けましたです!」

ジュン「なーんか不安なんだけど…」

翠星石「失敬な!私のことが信頼できないというのですか!」

ジュン「うん」

翠星石「うん、って…そんなあっさり…」

真紅「ジュン…安心して行ってらっしゃいな。後のことは私たちに任せて」

ジュン「うーん何でだろう…真紅が言うと微妙に安心できるな…」

翠星石「ば、馬鹿にしやがるのもほどほどにしろですぅ!」キィキィ

ジュン「冗談だよ」

118: 2009/07/20(月) 10:05:42.94 ID:4KUCR4cU0
のり「じゃあジュン君、そろそろ行こっか…みんな、行ってくるわね?」ニコニコ

翠星石「いってらっしゃいです!楽しんでくるですよ!」

雛苺「お土産なかったら承知しないの!」

真紅「いってらっしゃい」

ジュン「よし、じゃあな、お前ら」

そういって家を出るふたり。

のり「ジュン君?」ニコニコ

ジュン「な、何?」

のり「今宵は一緒のお布団で寝ましょうね?」

ジュン「……いいよ」

のり「ふふ、ありがとう」ニコニコ

ジュン「(だ、大丈夫かな…今宵とか言ってるし…)」

ふたりは、箱根か熱海か下呂のどれかにいく予定だった。

120: 2009/07/20(月) 10:07:37.20 ID:4KUCR4cU0
翠星石「ふたりとも、行っちまいましたねぇ…」

3人は、すでに暇をもてあましていた。

雛苺「真紅、なにかすることなぁい?」

真紅「あるわよ、ひとつだけ」

翠星石「面白いものですか?」

真紅「…暇つぶしには十分ね」

雛苺「なんなのそれ?」

真紅「みんなを呼びましょう、話はそれからよ」

銀&金&蒼「もういるよ」

真紅「さすがね…じゃあ話をはじめようかしら」

122: 2009/07/20(月) 10:09:38.76 ID:4KUCR4cU0
真紅「コホン。真紅よ」

真紅「まず前置きから…単刀直入に言うわ、あのふたりの小旅行じゃ尺が持たないの!」

一同「…ぶっちゃけた!?」ザワザワ

真紅「内容も面白くならないわ!いえ、あの小旅行が面白くなるようなことがあっては何かダメな気がするのよ!」

真紅「なんというか…人道的に!」

蒼星石「いいぞいいぞ!」

雛苺「その通りなの!」

真紅「ありがとう…よって、今回は私たちが話を盛り上げるしかないの」

真紅「いつも通りのわけのわからない不条理な展開は、私たちで受け持つのよ」

真紅「スポットライトを無理やり私たちに向ける、と言えば分かりやすいかしら」

真紅「ともかく、あのふたりはそっとしておいてあげましょう…ここまでで何か質問は?」

123: 2009/07/20(月) 10:11:39.37 ID:4KUCR4cU0
翠星石「はい!」

真紅「はい、翠星石」

翠星石「じゃあ、今回のコンセプトは…」

翠星石「私たちが身を張って囮になって、あのふたりを守る。そういうことでいいですね?」

真紅「そう。その通りよ。…不満なの、翠星石?」

翠星石「んなワケねーです!喜んでボロボロになってやりますとも!」

翠星石「おめーらも、それで異存はないですよね!?」

一同「当たり前!」

真紅「無用な心配だったみたいね…ほかに質問は?」


125: 2009/07/20(月) 10:13:31.63 ID:4KUCR4cU0
水銀燈「はい」

真紅「はい、水銀燈」

水銀燈「もちろん、体を張るのに異議はないわぁ。どうせいつものことだしね…」

水銀燈「でも…こういう風に…何というか、私たちが…」

真紅「質問ははっきりなさい、水銀燈」

水銀燈「わかったわぁ…私たちが尺が足りないとか言っちゃって、いいのぉ?」

真紅「…」

水銀燈「翠星石も、今回のコンセプトとかなんとか言ってたし…」

翠星石「…」

一同「…」

水銀燈「…」

127: 2009/07/20(月) 10:15:41.04 ID:4KUCR4cU0
真紅の演説は続く。

真紅「そして今回、なにをするかというと…」

真紅「みんなにひとつずつ、昔語りをしてもらうことにします」

一同「んん~?」ザワザワ

真紅「私たちはもうおばさんという年齢を遥か昔に通り過ぎた」

真紅「乙女の振る舞いをしていても、実は相当の年増ぞろいなのよ」

蒼星石「そうだそうだ!」

真紅「うるっさいわね!」バン

蒼星石「…」ビクゥ

真紅「誰が年増の紅婆よ…」

蒼星石「す、すいません…」ガクガク

131: 2009/07/20(月) 10:18:10.68 ID:4KUCR4cU0
真紅「そう、だから小ネタや笑い話は相当に持っているはずなのよ」

真紅「胡散臭い話から、うっとうしい話までね」

真紅「これで尺は十分埋まるはずよ」

翠星石「(さすがは真紅…自然な流れで短編集っぽい構成に持っていった…!)」

金糸雀「(でも別に体を張るってほどでもないかしら…)」

真紅「長女から順番に語っていってもらうわ」

真紅「じゃあ水銀燈、早速あなたからどうぞ?」

水銀燈「えっ、いきなり?」

真紅「あなたは!?」バン

水銀燈「ひぃ!?」ビクット

真紅「さっさとなさい…」

水銀燈「わ、わかりました…こわい…」

蒼星石「(なんでキレ気味なんだろう…)

134: 2009/07/20(月) 10:20:29.53 ID:4KUCR4cU0
PHASE1~教会におばけが出たかもしれない~

今を遡ること3日前…。
住処の教会にて、水銀燈は眠りに就こうとしていた。

水銀燈「じゃあおやすみなさい…ヒッ!?」ビク

入り口の扉から不審な物音がしたような気がする。

水銀燈「き、気のせいよね…」

しかし、たしかに聞こえた。
それどころか気配すらする。

水銀燈「ななな、何なのぉ…!?」ガタガタ

何かがいる。恐怖が水銀燈を襲う。
しかし、確かめないことには眠れもしない。
水銀燈は意を決して、震える手で扉を開けた。

水銀燈「真紅…!」

真紅「だわ」

真紅は教会に火を放って帰っていった。

136: 2009/07/20(月) 10:22:35.76 ID:4KUCR4cU0
PHASE2~栄光のハッピーバード~

アメリカ禁酒法時代。
いらいらしていた人々は、金糸雀を幸せの鳥として追っかけまわしていた。

金糸雀「ひー!みっちゃん、助けてかしらー!」ピヨピヨ

残念なことに、みっちゃんが誕生するまでにはなお60年ほどの歳月を待つ必要があった。

ラプラス「ひよこちゃん」

金糸雀「あっ、ラプラスの魔!」

ラプラス「この時代でのアリスゲームはもう終わっちゃいましたよ」

金糸雀「えっ!?本当かしら?」

ラプラス「はい、真紅が水銀燈を燃やしちゃったのです。水銀燈にはしばしの休息が必要となりました」

金糸雀「はー、助かった…」

ラプラス「それでは行きますよ?」

金糸雀「おっけーかしら!」

138: 2009/07/20(月) 10:30:56.74 ID:4KUCR4cU0
PHASE3~白ずきん~

この時代はまずい。翠星石は焦っていた。

翠星石「な、なにか策は…?」

自分と真紅と赤ずきんで完全に頭巾キャラがかぶってしまっている。
特に赤ずきんが、この時代屈指の萌えキャラとして絶大な人気を誇っているのだ。
真紅なんて恐るるに足らないが、赤ずきんには勝てる気がしない。

翠星石「うーん…うーん…あ、そうだ!」

私が着けているのはただの頭巾じゃない。三角巾だ。
もしかすると、この時代ではとんだオーバーテクノロジーなのではあるまいか。

翠星石「ふっふっふ…赤ずきん、敗れたり!です!」

翠星石の予想は大当たりだった。
ですです印の三角巾はターゲット層のオランダ妻に大ウケし、売れに売れた。
こうして大商人ドールとして大成した翠星石。

一方、この時代で真紅がしたことといえば、とある洋館を燃やしたことだけだった。

141: 2009/07/20(月) 10:34:24.66 ID:4KUCR4cU0
PHASE4~じじいLOVE~

鋏で丁寧にじじいの整髪をしてやる。
至福のときだ。

蒼星石「(この時代のおじいさんは渋くていいなぁ…)」チョキチョキ

そんなことを考えていたら、手元が狂ってしまった。頭頂から血が吹き出る。
じじいが非難がましい目で蒼星石を見てくる。

蒼星石「おっと、ごめんねおじいさん」ニコ

いつの時代のじじいもこの笑顔でイチコロだった。
この時代も例外ではないらしい。


143: 2009/07/20(月) 10:36:58.90 ID:4KUCR4cU0
蒼星石「はい、終わったよ…ハッ!?」

ラプラス「帽子ちゃん。真紅が水銀燈を燃やしたためこの時代のアリスゲームはおしまいです」

蒼星石「またなのかい…」

ラプラス「えぇ。水銀燈は髪の毛がアフロみたいになったため休息が必要です」

蒼星石「わかったよ…次の時代ではもっとましなおじいさんに会えるかな?」

ラプラス「知りません」

じじいが血にまみれながら泣きそうな顔でこちらを見てくる。
もう終わった男だ。

ラプラス「それでは行きますよ?」

蒼星石「うん、頼むよ」

145: 2009/07/20(月) 10:40:05.74 ID:4KUCR4cU0
PHASE5~真っ赤な人形~

真紅「来たのね…」

先の戦いで、3個軍団からなる方面軍は消滅した。
今はただ、真紅ひとりが戦場に立っているのみだ。
いや、すでにほとんど戦闘は行われていない。皆、全滅してしまった。

真紅「…」

目を閉じれば浮かぶ。
ローマ軍の兵士たちは人形の私にも本当に優しくしてくれた。
指揮官でもある総督は、いつかこの地を平和にしてみせるとよく笑顔で真紅に語っていたものだ。
真紅も、そんな彼と彼らを心から応援していた。

しかし、皆氏んだ。

147: 2009/07/20(月) 10:42:46.16 ID:4KUCR4cU0
真紅「あなたたち…」

蛮族の軍勢が迫る。戦略的にはもはや無意味な戦いだ。
本来なら、命があるうちに撤退すべきなのだろう。
しかしまだ、本当にわずかではあるが生き残った兵がいる。彼らの退却を援護してやらねばなるまい。
それが何も出来なかった無力な私の、せめてもの罪滅ぼしだから。
何より、このままむざむざ帰っては私自身の気が済まない…。

真紅「絶対に…絶対に許さないから…!」ザッ

真紅は蛮族の群れに飛び込んでいった。暁の森が紅に染まる。

…その後、奇跡的に千人ほどのローマ軍兵士が本国へと帰ることができた。
真っ赤な人形のおかげだと、彼らは泣きながら口を揃えて言った。
しかし、皆に愛された真っ赤な人形は決して帰還しなかった。

そして時代は流れ、誰もが真紅のことを忘れ去った。

148: 2009/07/20(月) 10:45:35.73 ID:4KUCR4cU0
PHASE6~苺狂い~

居ても立ってもいられず、学生運動に身を投じた雛苺。
苺わだちと火炎瓶を駆使し、機動隊相手にも連戦連勝だった。
一息つき、ふと前方を見る。

雛苺「…あ、あれは真紅!?」

火のあるところに真紅あり。ついでに水銀燈もあり。
真紅が火炎瓶を水銀燈に向かって乱射している。

雛苺「ふう…ラプラスの魔、いるんでしょ?」

ラプラス「おや小桃ちゃん、よくお気づきになられましたね」ヒョイ

雛苺「結果は見なくても同じなのよ…ヒナはもう先に行きたいな」

ラプラス「そうですか」

149: 2009/07/20(月) 10:48:13.00 ID:4KUCR4cU0
いや、もう決着はついたようだ。
水銀燈の髪の毛がチリチリになっている。

雛苺「水銀燈はだんだん火の耐性がついてきたみたいね」

ラプラス「そりゃあ…毎回これのせいで尻切れTomboなんですから、そろそろ慣れてもらわないと…」

雛苺「まったくね…」

ラプラス「さて、行きますか」

雛苺「ヒナはいつでもいいの…」

152: 2009/07/20(月) 10:53:31.38 ID:4KUCR4cU0
雛苺「…はい、おしまい…」

一同「…」

水銀燈「真紅…私、話が終わったら真っ先に貴女を襲おうと思ってたんだけど…」

真紅「…」

水銀燈「お、襲えるわけないじゃない…真紅?」

真紅「…」

水銀燈「よかったら私の腕の中でお泣きなさい…」ダキッ

真紅「うぅ…」

ふたりでおいおい泣いた。
つられて皆も泣いた。

154: 2009/07/20(月) 11:00:20.53 ID:4KUCR4cU0
下呂の旅館に到着したふたり。

ジュン「な、なんかすごく早くなかったか?」

のり「つくづく、時間というものは均等に流れていないようねぇ…」

ジュン「いや、そういうことじゃなくて」

のり「早速、温泉に入りましょうか?」ニコ

ジュン「(嫌な予感しかしない…)」

のり「あらぁ…ジュン君、ここ混浴だって」

のり「…///」

ジュン「(姉ちゃんが頬を染めている…)」

ジュン「(柏葉、未来のマイハニーよ、僕に加護を…!)」

その頃、巴は家のベンチで寝ていた。

156: 2009/07/20(月) 11:03:52.96 ID:4KUCR4cU0
真紅「えー、話が途切れるとこのようにまずいことになるわ」グス

真紅「だから、変に真剣な話は今後一切禁止ね」

真紅「そしてその点については…本当にすみませんでした…」ペコリ

誰も真紅を責めない。

真紅「えっと…じゃあまた水銀燈から」

水銀燈「わかったわぁ…」

159: 2009/07/20(月) 11:07:21.95 ID:4KUCR4cU0
PHASE7~すいじょうきばくはつ~

水銀燈「くぅぅ…また負けた…」

水蒸気を急に爆発させるやつにどうすれば配管工風情が勝てるというのか。

真紅「あら、どうしたの水銀燈?」

水銀燈「真紅…ちょっと助けてちょうだい…」

真紅「なるほど、コイツは手ごわいわよね…私も苦戦した記憶があるわ」

水銀燈「あら、貴女このゲームやったことあるの?」

真紅「えぇ、もうやることがないくらいやりこんだわ。まさに傑作と呼ぶにふさわしいデキよ」

水銀燈「へぇ…な、ならこいつに勝つ方法もわかるんでしょ?」

真紅「…私に貸してごらんなさい」

互角以上の戦いを繰り広げる真紅。ついには倒してしまった。

真紅「勝因はこのマシュマロ野郎をパーティからはずしたことよ」

水銀燈「すごい…いえ、それよりもあなたがやると何でこんなに炎技の威力が高いの…?」

真紅「…」

水銀燈「(黙秘なのね…)」

161: 2009/07/20(月) 11:11:07.57 ID:4KUCR4cU0
PHASE8~浮遊~

人が空を必氏に目指した時代。
金糸雀は傘で適当にふわふわと空を飛んでいた。

金糸雀「快適かしら♪」フワフワ

しかし1852年のある日、金糸雀は目撃してしまった。
アンリ・ジファールが、葉巻形ガス気球に3馬力の蒸気機関を搭載した軟式飛行船を飛ばすのを。
ちなみに史上初の操縦可能な航空機である。

金糸雀「(カナのお空が取られちゃう…人間は地面に這いつくばっていればいいのに…)」

その出来事の後、急速に飛行船とやらが増えたような気がした。
そして、金糸雀と飛行船の衝突事故が多発するようになった。

金糸雀「(アンリ・ジファール…許さないかしら!)」

1855年、金糸雀がアンリ・ジファールの工房に潜入。
そのとき、アンリ・ジファールは別の飛行船を製作していたが試験中に爆発した。
当然金糸雀の工作のせいである。
ジファールと仲間は無事脱出した。金糸雀は脱出できなかった。
その後、アンリ・ジファールは蒸気機関用の噴射装置の開発をつづけ、いくつかの特許を得た。

163: 2009/07/20(月) 11:14:33.85 ID:4KUCR4cU0
PHASE9~ブロッコリー~

自らの商才に気づいた翠星石。
やがてその時代その時代ごとの大衆のニーズを的確に見抜くことが出来るようになっていった。

そして今回のターゲットは狂騒の大正日本。
この時代の人間も例外なく求めているものがあった。

翠星石「(ブロッコリー、ですか…)」

この時代、ブロッコリーは高値で取引され、未だ一般民衆に手が届く代物ではない。
道端でブロッコリーを食いたいと言って泣き喚く子供を何度見たことか。

翠星石「よーし…やったるでーです!」ワキワキ

翠星石は今回も、オーバーテクノロジーにもほどがある三角巾を駆使した。
結果、当初の狙い通り、ブロッコリーの普及は急速に進んだ。
ですです印のブロッコリーは、まずいけど安いということで日本妻に大ウケした。

翠星石「ふふ…」

道端の子供たちが渋い顔でブロッコリーをほおばっている。
翠星石は微笑んで、よくあんなまずいの食べていられますネ、と思った。

164: 2009/07/20(月) 11:17:47.99 ID:4KUCR4cU0
PHASE10~グラン・ペール~

この国のじじいは皆はげている。
整髪しようにも髪がない。
だからたまにふっさふさのじじいを見つけると、蒼星石はすぐさま路地裏に連れ込むようにしていた。

蒼星石「静かにして…お願い、僕に髪を切らせておじいさん…」ウルウル

涙目で上目遣い。いつの時代のじじいもこれでイチコロだった。
この時代も例外ではないらしい。

蒼星石「(あぁ…なんて手入れの届いていない髪…)」ゾクゾク

この時代では、翠星石が急速にシャンプーを普及させ始めている。
だからじじいの臭くてへなへなの髪を堪能できるのは今だけだった。

蒼星石「はい、おしまい」

腹いせにつるっぱげにしてやった。
じじいが非難がましい目で蒼星石を見てくる。
そんなことは関係ない。蒼星石はすぐに人ごみに紛れた。

蒼星石「チッ…」

本当にはげばかりだ。
この時代もそろそろ潮時かナ…蒼星石はそう思った。

165: 2009/07/20(月) 11:20:57.61 ID:4KUCR4cU0
PHASE11~剣聖~

もう全ては手遅れだった。松永弾正の手勢が御所を完全に取り囲んでいる。
援軍は間に合いはしないだろう。

真紅「くっ…」

殺到する敵兵。なんとか氏守してきた防衛線も、もう保たない。

真紅「ごめんなさい…もう、ダメみたいなの…」

御所の門はすでに突破されたようだ。
門を守備していた皆も氏んでしまったのだろうか。

真紅「私もあなたといっしょに最後まで戦うわ…それで許して頂戴…」

少し困惑気味に微笑んだその男は、泣きじゃくる真紅の頭をくしゃくしゃと撫でた。
その無骨な手は、しかしいつだって優しかった。そして、いつもの快活な笑顔でこう言った。
お前は生きなさい、いつかお父さんとめぐり合えることを草葉の陰で祈っているよ、と。

真紅「なっ…!?」

その男はおもむろに真紅を掴み、包囲の外へと思い切り放り投げた。
そしてすぐさま刀を掴み、敵軍に切りかかる。
敵軍を飛び越えて包囲を脱した真紅。しかし、すぐさま館へ向かって走る。
どうか、お願い。お願いだから勝手に氏なないで。もう私をひとりにしないで。

鬨の声があがった。剣聖の最期。
また、ひとりぼっちだ。真紅はその場で泣き崩れた。

166: 2009/07/20(月) 11:24:30.52 ID:4KUCR4cU0
PHASE12~苺狂い2nd~

街を行けども行けども、目に入るのは堕落、堕落、堕落…。こんなものは雛苺の望んだ未来ではなかった。
街はまるでごみ溜めのようだ。頭の悪そうな子供が万引きをしている。

結局、何も変えられはしなかった。雛苺は諦念とともに伏目がちにただ歩いた。

雛苺「ただいま…」

巴「おかえりなさい」

巴「どうしたの?浮かない顔して…」

雛苺「巴…ヒナ、もう何も見たくないよぉ…」ポロポロ

巴「そうなの…饐えた臭いを感じとってしまったのね…」

巴はしばし考えたのち、雛苺に言った。

巴「でもね、こんな時代でも本当には腐ってない人をひとり、知っているわ」

雛苺「…それはだぁれ」

巴「私の幼馴染の桜田ジュンという男の子よ」

巴「一見腐っているけど、芯は本当にすごいの。私だってべた惚れなんだから!」

巴ほどの女性がこういうのだ。一応はその男の元へと行ってみようか。
こんな時代に夢を見させてくれる男なんて…。
雛苺は、本当にわずかな期待とともに旅立った。

169: 2009/07/20(月) 11:28:04.89 ID:4KUCR4cU0
雛苺「…おしまい」

一同「…」

水銀燈と蒼星石が真紅に、翠星石と金糸雀が雛苺に抱きつく。

真紅「うぅ…」ポロポロ

水銀燈「貴女…なんでいつもひどい負け戦の側に居るのよぅ…」ポロポロ

蒼星石「しょ、将軍…でも真紅が放り投げられたところは少し笑っちゃったよ…」ポロポロ

雛苺「うぅ…」ポロポロ

金糸雀「あなたがそんなに苦しんでいただなんて…」ポロポロ

翠星石「世界はおめーが思ってるよりももう少しは美しいはずですよ、雛苺…」ポロポロ

思いがけず連続して重い過去が出てしまった。
こうなると皆、つい忘れていた、いや忘れようとしていたことばかりを思い出す。
あの愛した男が、あの薄幸の少女(めぐ)が、あの美しい風景が…。

その後の昔語りは、書けたものではない。
必然的に下呂の時間がやってくることとなった。

171: 2009/07/20(月) 11:31:20.77 ID:4KUCR4cU0
ジュン「姉ちゃん!さっきから浴衣がゆるゆるじゃないか!」

のり「ごめんね…ジュン君が直してくれないかな?」

ジュン「まじか…」

混浴は、頭から湯気を出し煙幕とすることでなんとかのり切ったジュン。
というかのりがその間はまともだった。恥じらいもあった。
なのに途端にこの体たらくである。風呂上り、浴衣はちゃんと自分で着ていたというのに。

ジュン「(くそ…それ!一気にやっちゃえ!)」パパッ

のり「あらぁ…さすがジュン君、器用なのねぇ…」

ジュン「そ、そう?」

のり「どうする?もう寝ちゃう?」

ジュン「うーん…」

時刻は午後10時。微妙な時間である。
テレビは見ていたら爆発した。ふたりでウノをやるのはもうイヤだ。

ジュン「(ね、寝るしかないのか…)」

180: 2009/07/20(月) 11:57:22.70 ID:4KUCR4cU0
のり「一緒に寝ましょうよぅ、ジュン君…」

ジュン「(まずいぞ…)」

姉狂いの予感がする。いや、もうあれはすでに誘惑している目だ。
ジュンはまだ純粋でいたい。14で…というか姉では駄目だ。
水入らずにも限度があると言いたい。

ジュン「(柏葉…加護を!)」

巴はその頃、家でボクササイズをしていた。
巴の助けは求められそうにない。

ジュン「(手詰まりだ…かくなる上は…)」

幼児退行か気絶の二択しかない。ジュンは後者を選んだ。
肺胞をひとつだけ破裂させることで、ジュンは自由自在に気絶することが出来た。
欠点は氏の危険が常につきまとうということだ。
しかし、迷っている暇はなかった。

ジュン「南無三!」パチン

182: 2009/07/20(月) 12:02:36.98 ID:4KUCR4cU0
ジュン「…?」

ジュン「な、なんで…?」

そう、ジュンは間違えて心臓に生えていた毛を破裂させてしまったのだ。
ここにきて痛恨の失策だった。

ジュン「ふふふ、よろしい。ならば…」

ジュン「幼児退行だ…もう知らん…」ジュワァ

のり「ジュン君?どうしたの?」

じゅん「おねーちゃん…ね、ねむい…」

のり「え?」

のり「(ジュン君の雰囲気が変わった…)」

のり「(小学校2年生ぐらいの頃の感じがする…か、かわいい…)」

見た目はそのままである。
気持ち悪いことこの上ないのだが、のりにはそうは見えなかったようだ。

184: 2009/07/20(月) 12:07:24.59 ID:4KUCR4cU0
ふたりで布団に入る。

のり「ジュン君…こっちにおいで…」ゾクゾク

じゅん「うん…」

たまらずのりはじゅんを抱きしめた。

じゅん「おねーちゃん…」スリスリ

のり「(あぁ…!)」

のりの胸に顔をうずめるじゅん。
心底安心しきっているようだ。すぐに眠ってしまった。
しかしそれより早く、のりは気絶していた。

抱き合って眠る、年頃の姉弟。危険な感じしかしない。
真紅たちはこの事態を阻止できなかった。

186: 2009/07/20(月) 12:13:19.34 ID:4KUCR4cU0
ジュン「ただいま…」ゲッソリ

翌日、バナナワニ園などに寄ってから午後6時にジュンたちは帰宅した。
朝起きたら姉の胸に挟まっていたことが、ジュンの気力を奪った。
それでもまだ少年のままではあるようだが。
のりの顔はつやつやしている。

のり「あら、みんなどうしたのかしら?」

真紅たちが出てこない。どうしたのだろうか。

ジュン「リビングにもいない…僕の部屋か…?」

階段を上り、部屋の扉を開ける…。

ジュン「な、なんだコレ…」

6人のドールたちが氏にそうな顔で倒れこんでいた。
真紅だけが反応した。


支援してくださる皆様、本当に感謝、感謝です。

188: 2009/07/20(月) 12:17:18.79 ID:4KUCR4cU0
真紅「ジュン…おかえりなさい…」

ジュン「どうした…なにがあった…」

真紅「ジュン…私たち、あなたたちを助けようとして…」

ジュン「そういうことだったのか…全然助かんなかったけど礼は言っておくよ…」

ドールたちはあの後も一晩ぶっ通しで話し続けた。
しかし、そのどれもがことごとく滅入る話ばかりだった。
ドールたちの気力はもはや尽きた。

真紅「ジュン…私たちはこれからもこの哀しい輪廻を繰り返すのかしら…」

ジュン「真紅…この世に生きとし生けるものはすべて…」

ジュン「別れと出会いを繰り返すんだよ…永遠に…」

ジュン「でも、そんな世界でお前たちとめぐり合えた今という時に、僕は…」

ジュン「感謝する…ただ、それだけだ…」ガク

真紅「そう、かもね…私も今はただ、あなたに寄り添うことにするわ…」ガク

全員寝たのではない。全員気絶していた。
ひとつの部屋で7人もの意識がハネた。異常事態だ。

189: 2009/07/20(月) 12:19:35.40 ID:4KUCR4cU0
やがて、深い心の傷を負った7人も回復し、日常が戻ってきた。
ジュンは、すべての元凶はカエルちゃんドレスが売れたことにあるとして、しばらく販売を自粛した。

ジュン「でもなぁ…あともうちょっとで他のも売れそうな気がしてたのになぁ…」

翠星石「本気ですか…」

雛苺「いや、アレが売れたんだから有り得ないとも言い切れないのよ…」

真紅「まったくね…」

それでも、のりとジュンの関係は依然として良好のようだ。
たまにジュンがのりの肩を揉んだりしている。
しかしジュンはいまだに、のり関係の夢でうなされているようだ。

真紅「(あれ、今回の話は幸せになった人が…そう、のりがいたわね…)」

真紅「うーん…」

つい考え込む真紅。そこに、ジュンが外から帰ってきた。

ジュン「みんな、牛丼買って来たぞ!」

翠星石「ほ、ほんとですか!?でかしたです!」

雛苺「いいにおいなのー!」

でもまぁ日常は楽しいし牛丼はおいしい。真紅はもうそれで良しとした。

完~おまけにつづく~

190: 2009/07/20(月) 12:20:59.94 ID:4KUCR4cU0
おまけその1~巴が好きだけど?~

巴「そんなことがあったのね…」

ジュン「うん…初めて(の胸)はお前って決めてたのに…」シクシク

巴「なっ…」

ジュン「今ならまだ間に合う気がするんだ…柏葉…」

巴「…///」

ジュン「あれ?」

巴「はやく…///」

ジュン「な、無い…胸が無い!」ポーン

ジュンは幼児退行したり気絶したり臨氏体験をしたりと、人の限界を試している感じだった。

191: 2009/07/20(月) 12:21:45.15 ID:4KUCR4cU0
おまけその2~三途~

ジュン「あれ、ここは?」

見覚えのない場所だ。隣に少女が倒れている。

ジュン「あ…だ、大丈夫ですか!?」

めぐ「うーん…あなたは…?」

ジュンジ「桜田ジュンジです」

めぐ「ジュンジ君…ここ、三途の川よ?」

ジュンジ「ほ、本当ですか?」

記憶が蘇ってくる。
巴にどつかれて肺胞が47個ぐらいポーンだ。

ジュンジ「若い身空で…」

ジュンジ「まぁ僕はなんとかなります。でも、あなたは?」

めぐ「私はちょくちょくここに遊びに来てるんです。病弱なもので、なぜか来れるんですよ」

めぐ「さっき倒れてたのは、その…転んじゃって」

ジュンジ「かわいいですね」

つづく

193: 2009/07/20(月) 12:22:46.70 ID:4KUCR4cU0
おまけその3~三途~

川岸で談笑に興じるふたり。
川の水を飲んだらとても美味しかったため、饒舌にもなるというものだ。

ジュンジ「へぇー、めぐさんは年齢不詳なんですか…」

めぐ「そうなのよ…多分私は高校1年生ぐらいだと思うんだけど…」

ジュンジ「じゃあ僕より年上ですね。お姉ちゃんって呼んでいいですか」

めぐ「そ、そんな…照れちゃうわ…」

ジュンジ「僕、めぐさんみたいな綺麗なお姉さんが欲しかったんです」

めぐ「綺麗だなんて…ふふっ、いいよ?」

ジュンジ「じゃあ…お姉ちゃん!」ニコ

めぐ「(あらやだこの子かわいい…///)」

つづく

194: 2009/07/20(月) 12:24:34.97 ID:4KUCR4cU0
おまけその4~三途~

なぜジュンジは会う女子すべてに好意を持たれるのか。

ジュンジ「あ、僕そろそろ行かないといけないみたいです」

めぐ「い、逝く?」

ジュンジ「ふふ、まだ氏にはしませんよ。僕は生きてお姉ちゃんのお見舞いに行かないといけない」

めぐ「…絶対に来てちょうだいね?」

ジュンジ「もちろん。お姉ちゃんとは血がつながってないから結婚だってできますよね」

めぐ「もう、気が早いんだから。…そういうのはもっと色々仲良くなってから、ね?」

ジュンジ「そうですよね。それじゃあまた、病院で会いましょう!」

光の膜にヌルリと包まれたジュンジ。飛ぶ。
あれこれやっぱ氏ぬんじゃねぇかなー、と思ったりしたが、無事現世へと帰り着いた。

ジュンジ「んん…」

巴が泣いて抱きついてくる。ちょっと小突いただけで昏睡するとは思わなかったようだ。

ジュンジ「(でもやっぱり胸はないなぁ…)」

肺胞はいずれまた生えてくるから大丈夫だろう。
ジュンジ、14歳の夏であった。

196: 2009/07/20(月) 12:27:06.48 ID:4KUCR4cU0
おまけその5~愛の窓辺~

なぜジュンはめぐの見舞いにのりと巴を連れて行くのか。

ジュン「コンコン…ジュンジです」コンコン

めぐ「…本当に来てくれたのね。入って」

そして扉を開けるや否や、めぐに抱きつくジュン。

巴「…」

ジュン「お姉ちゃん…!会いたかった…!」ギュッ

のり「…」

ジュンは、昔から女子に対して無神経なところがあった。
急につれてこられ、目の前で他の女と抱き合っているのを見せ付けられたらどう思うか。
知らない女が自分を差し置いて姉と呼ばれているところを見せ付けられたらどう思うか。
ふたりはしばし呆然とした後に、髪を逆立てている。

巴「あのー、ちょっと失礼しますね?」ヒョイ

のり「ジュンジ君、お姉さんたちとおんも行こうか」グッ

入院すれば、ジュンジはめぐともっと仲良くなれるだろう。氏にさえしなければだが。

ジュンジは入院したが、めぐが退院した。


198: 2009/07/20(月) 12:28:37.96 ID:NwVKiUHy0

引用: 真紅「ハッ!?」