1: 2013/10/25(金) 20:07:06.19 ID:l9MRacwa0
・クロスではありません。スレタイは某ヱヴァからの単なる引用です
・公式設定を、使ったり、知らない振りをしたり、本当に知らなかったりします。
・キャラクターの過去等の設定をでっち上げています。
・終盤は、ご都合主義の嵐になるかと思います。
・書き溜めありです



2: 2013/10/25(金) 20:08:35.36 ID:l9MRacwa0
プロローグ:君なら彼女の結末を変えることができる

3: 2013/10/25(金) 20:12:25.13 ID:l9MRacwa0
まどか「そんな…。こんなのって…」

ほむら「これでいいのよ。もう、思い残すことは無い。――さよなら、まどか」

荒廃した街にに響く銃声、ガラスが割れるような音。そして、倒れる一人の少女
もう一人の少女が、倒れた少女に駆け寄って、抱き抱える

QB「氏んだね。」

まどか「こんなのないよ…。これじゃほむらちゃんが救われない…」

QB「仕方ないよ。これが彼女に残された唯一の逃れ道だったんだ

QB[生きてこの夜を乗り越えることはできないと、暁美ほむらは知っていたんだよ」

 生き残った少女は泣きじゃくる。

QB「しかし、知っての通り、君なら彼女の結末を変えることができる」

QB「『別の君』の言葉を清算できる。彼女を救うことができるんだ」

4: 2013/10/25(金) 20:14:10.07 ID:l9MRacwa0
 ――これは罠。わかってる。乗っちゃったら、私は『また』ほむらちゃんとの約束を破ることになる
私は、やっとの思いで願いを叶えたほむらちゃんに、再び地獄のような日々を送らせることになる
それがどんなに罪深いことか知ってる。

……この時間軸の最後に何も、感謝の言葉さえ言えなかったことの清算、
別の時間軸で呪いにも似た言葉でほむらちゃんを縛った償いのために契約するなんておかしいんだ
ほむらちゃんに対する裏切りだ。
……だけど、それでも私は祈る。祈らずにはいられない。

5: 2013/10/25(金) 20:14:45.68 ID:l9MRacwa0
今一度信じたい。『間違ったっていい』っていう、お母さんの言葉を

6: 2013/10/25(金) 20:16:35.75 ID:l9MRacwa0
――ほむらちゃんは、絶対に幸せにならなくちゃいけないんだ――

まどか「キュゥべえ、お願い…。ほむらちゃんに奇跡を…もう一度だけ勇気を……!」

QB「それが君の願いだね。…しかし、」

インキュベーターが、彼女の顔を覗き込む

QB「二つの願いというのは――」

7: 2013/10/25(金) 20:18:39.08 ID:l9MRacwa0


第1話:誰にでも秘密はあるものよ


8: 2013/10/25(金) 20:21:27.07 ID:l9MRacwa0
ほむらside

???????

確かにまどかを救えたと思ったんだけど…。夢だったのか…。いい夢だったな…

夢にでもすがらないと、最早精神を維持できないらしい。惨めなものだ

22回目の目覚め。なぜこんなに繰り返してもまどかを救うことができないのか
夢のないSF映画のごとく、未来を変えることなどできない、とでも言うつもりなのだろうか
だとしたら、私は何のために祈ったのだろう…
大体この物語はファンタジーじゃないか

…少しダークな部類に入るとはいえ

9: 2013/10/25(金) 20:23:24.42 ID:l9MRacwa0
ここで後ろ向きな世界観に浸っていても仕方がない
これからの行動について考えよう

…鹿目まどかと美樹さやかの契約を防ぐ
そのためにインキュベーターを襲撃する
佐倉杏子、それと可能ならば巴マミを仲間に引き入れる
これが理想的プランだ。

だが、このプランがうまくいった試しはない


――理想は所詮理想でしかない―――


失敗を繰り返すうちに私はそのような考え方に至り、まどかを救うことのみに固執し、それ以外を切り捨てていった

10: 2013/10/25(金) 20:25:08.59 ID:l9MRacwa0
…本当はわかっている。それは最適解に見えて、解ですらない
まどかが周りを全て失った結末を見たらどうするか
…契約するに決まっている
そういう娘だからこそ、私が命を賭して救いたいと思ったんだ

理想を現実にすることでしか彼女を救うことはできない

だけど、たとえ誤った解でも、見せかけの救いでも、まどかが氏ぬよりはマシだ
あのプランは実現が極めて困難なのだから

11: 2013/10/25(金) 20:27:28.96 ID:l9MRacwa0
理想的プランを進めようとすると必ず美樹さやかが障害となる
彼女にいつも疑惑をもたれ、さらには敵対してしまう
特に最近は、盲目的なまでに私を敵視してくる。最初のほうは疑わしい、気に入らない程度だったのがどうして敵対するに至ったのか
…彼女が尊敬する巴マミと敵対するからだ

巴マミと敵対する理由は何か…。彼女が信頼するインキュベーターを襲うからだ
では襲うのをやめるか?
…しかし、まどかが奴と接触することで契約の可能性が初めて生じることを鑑みれば、彼女とインキュベーターの接触自体を防ぐのが最良だ
接触を防ぐことをできなくとも、遅らせることができれば、それだけ契約のリスクも減る

12: 2013/10/25(金) 20:29:50.25 ID:l9MRacwa0
…とは言え、このままではジリ貧なのは確かだ
奴は神出鬼没で無限残機を誇る
時間停止と言えど当然グリーフシードの制限を受ける
引き延ばすにしても1週間が限度であり、今までこの接触の遅れが今まで功を奏したことはない

…ならば、妨害をあきらめてしまうことも一つの策か?
…少なくとも美樹さやかと巴マミへ与える第一印象は変わるはずだ
あくまで第一印象であり、すべての問題が解決するわけではないが、やってみる価値はあるかもしれない

………うん。今回はこれを基本方針にしよう
そして、妨害しないとすれば、私がまずとるべき一手は――

13: 2013/10/25(金) 20:32:59.99 ID:l9MRacwa0
まどかside


――悪い夢を見た

ほむらちゃんから見れば、良い夢だったんだろうけど、私から見れば悪夢でしかなかった
…それにほむらちゃんから見ていい夢だと言えるのは、彼女が諦めているからでしかない
だから私は祈った。傲慢だとわかっていたけど、それでも祈らずにはいられなかった


――何を?誰のために?


鮮明だった記憶は、段々とおぼろげになっていって、後には何も残らなかった
いつものこと。特別なことじゃない
…なのに、どうして私は、夢の内容をこんなにも思い出したいと思っているんだろう
…わからない。思い出さないと何か大変なことが起こるような――

14: 2013/10/25(金) 20:34:12.76 ID:l9MRacwa0
…あっ、もうこんな時間!さやかちゃんとの待ち合わせに遅刻しちゃう!

私はとりあえず夢のことはおいておいて、着替えを手早く済ませリビングへと向かい、お父さんとタツヤに朝の挨拶を済ませて――

15: 2013/10/25(金) 20:38:57.87 ID:l9MRacwa0
待ち合わせ場所である公園の前で、うちの制服をきた女の子とぶつかってしまった

まどか「あわわ。ごめんなさいっ!」

ほむら「鹿目まどか」

まどか「…?」

え、知り合い?まずい。ぶつかった上に、名前も思い出せないなんて失礼すぎるよ…誰だ…誰だ…えーっと…

しかし、女の子は私のアタフタしている様を気にするでもなく、

ほむら「あなたに大切な人はいる?その人たちを守りたいと思う?」

まどか「……うん。お母さんに、お父さん、たっくん、さやかちゃんに仁美ちゃん、クラスのみんなに和子先生」

まどか「みんな大切な人だし、みんな守りたいと思っているよ」

ほむら「…ならば、自分を犠牲にして誰かを助けようなんてもって思わないことね

ほむら「…後先考えない独善は、逆に守りたいものまで失う結果をもたらす」

まどか「………うん。何となく言いたいことはわかるけど…。」

ほむら「だからこそ、自分を大切にしないといけない。今と違う自分になりたいなんて、考えないことね。」

16: 2013/10/25(金) 20:40:31.21 ID:l9MRacwa0
そう言って、私が来た方向と逆に歩いていった。そして去り際に、

ほむら「うまい話にはくれぐれもご用心を。親友の美樹さやかにも伝えておきなさい」

と言った。何がなんだか分からない
すぐに追いかけて行きたかったけど、できなかった
さやかちゃんと待ち合わせをしていたし、遠のいていく背中が私を拒絶している気がして…

17: 2013/10/25(金) 20:46:43.20 ID:l9MRacwa0
さやかside

 あたしが公園についたとき、まどかはすでにいた

さやか「ごめーん。待ったー?」

まどか「ううん。まだ三分前じゃん。」

まどかは、なにやら考え事をしているようだった

さやか「どうしたの?」

まどか「うーん、あのね。うちの制服を着た女の子がここにいてね」

さやか「ふんふん」

まどか「私は覚えていないんだけど、あっちは私を知ってる感じだったの」

さやか「へー」

18: 2013/10/25(金) 20:49:46.51 ID:l9MRacwa0
まどか「それでね、あなたに大切な人はいるか、その大切な人を守りたいかって聞いてきたの」

さやか「…へー」

まどか「それで、いるし、守りたいよって言ったら、自分を犠牲にするな、自分を大切にしろって」

さやか「…」

まどか「あとね、今と違う自分になろうなんて考えるなって」

まどか「それとうまい話には気をつけてって。あ、後、この話をさやかちゃんにも伝えてって」

さやか「…あたしのことも知ってたの?」

まどか「うん。私とさやかちゃんの名前、フルネームで知ってたよ」

さやか「…なのに、まどかは覚えてない?」

まどか「うん…どこで知り合ったのか…まったく見当もつかなくて…」

19: 2013/10/25(金) 20:52:33.92 ID:l9MRacwa0
……ありえない分けがわからない。でも、そいつの目的は何?

胡散臭いけど間違ったことは言ってない…………多分

あたしとまどかの名前を知ってる
まどかの顔を知ってる。うちの生徒…
よくわからない忠告…
特に『今と違う自分になるな』?それじゃ、まるでまどかの――

あたしは頭を掻き毟った
わかんないや

さやか「まどか、あんまり知らないやつを信用しちゃだめだよ?」

まどか「わかってるよ。あ、もう時間だね。行こう、さやかちゃん。」

さやか「…うん」

20: 2013/10/25(金) 20:55:38.70 ID:l9MRacwa0
…多分本当の意味ではわかってくれてない
嘘をつかれても、きっとこの子には嘘をつかなければならない理由があったんだ、なんて考える娘なんだ
まどかのいいところではあるんだけど、何度それで歯がゆい思いをしてきたことか…

まどか「……あ」

さやか「な、何?」

まどか「思い出した…かも?」

さやか「そいつのこと?」

まどか「うーん……なんていうか…」

さやか「何?」

まどか「…笑わない?」

さやか「…?…うん」

21: 2013/10/25(金) 20:56:36.07 ID:l9MRacwa0
まどか「あのね、夢の中で会った…ような…」

さやか「」

まどか「…」

さやか「…まどか…あたしはあんたがどんな電波ちゃんでも、あたしは絶対に見捨てたりしないからね…」

まどか「もう!馬鹿にしないって言ったのに!」

さやか「してない、してない」

もう一人の電波には会いたくないな
どうせろくなことにならないから

22: 2013/10/25(金) 20:58:57.90 ID:l9MRacwa0
行きつけの店へと移動する道すがら、バス停の前で、まどかが突然立ち止まった。目を見開いている
まどかが見ている方向に目を向けると、何かが浮いていた
動物?猫?…いや、一見すると猫みたいに見えるけど、すぐに違うとわかる。猫は浮かない

そして、その『何か』が、私たちに語りかけてきた
口は開いていない。それでも、『何か』が『喋っている』ことはわかる
そしてその内容は、あたしたちをさらに混乱させた

QB「僕はキュゥべえ。」

まどか「きゅう…べえ……?」

QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

23: 2013/10/25(金) 21:04:29.93 ID:l9MRacwa0
ほむらside

例のごとく多少無理やりだったが、夜中に窓の外から語りかけるよりはましなはずだ
ああ言っておけば、まどかは契約を即決することはない。素直な子なのだ
美樹さやかも愚かだが馬鹿ではない
これで、現段階であの二人にすべきことは、エイミーなどの直近の契約の原因を取り除くだけだ

そして次に向かう先は、巴マミの家
インキュベーダーを襲わない以上敵対する理由がない
手順さえきちんと踏めば、ある程度の協力体制は築けるはずだ

ワルプルギスまで持続するような強固な体制である必要はない
当面の敵対さえ避けられれば、今はそれでいい

29: 2013/10/26(土) 20:31:17.73 ID:11Mkj1F30
マミside

掃除機をかけているときに、インターホンが鳴った
掃除機を止めて、モニターを見ると…中学生かな?出ても問題ないか

マミ「どなたかしら?」

ほむら「暁美ほむら。あなたと同じ魔法少女」

マミ「まあ」

ほむら「今日から滝見原で活動をすることになった」

ほむら「滝見原で唯一の魔法少女であるあなたに一言いれたほうがいいかと思って」

マミ「それはわざわざご苦労様」

マミ「…」

30: 2013/10/26(土) 20:33:44.14 ID:11Mkj1F30
マミ「じゃあ、普段は単独で魔女を狩り、一方がすでに魔女と交戦しているのを見つけた際は、協力してもよし」

マミ「そのときは手に入れたグリーフシードは半分ずつ使って分ける、というのはどうかしら?」

ほむら「…こちらとしては断る理由はないわね。……今日のところは失礼するわ。また、どこかで」

そういって、彼女は去っていった

…対応でよかったのかな
不躾だった気がする。あれじゃあ、あなたのことは信用しない、と言っているようなものじゃない…
佐倉さんとの一件以来ずいぶん臆病になっちゃったなあ…

31: 2013/10/26(土) 20:37:02.91 ID:11Mkj1F30
QB「僕は妥当な対応だったと思うよ」

振り返ると、家の中にキュゥべえがいた。もう帰っていたんだ

マミ「どこに行っていたの?」

QB「勧誘以外にあるのかい?」

そういえばそうだ。久しく彼が勧誘していなかったので、頭に無かった

マミ「誰か面白い人でもいたの?」

QB「まあね。即答はしてもらえなかっけど」

マミ「へえ」

QB「それはそうと、さっきの子だけどね」

QB「彼女は得体がしれない」

マミ「…どういうこと?」

QB「僕は、彼女と契約した覚えが無いんだ。」

マミ「……あなたという固体が?それとも、あなたたち全体として、という意味?」

QB「両方だね」

32: 2013/10/26(土) 20:40:54.81 ID:11Mkj1F30
マミ「あなたと契約する以外に、魔法少女になることはできる?」

QB「見たことは無いし、聞いたことも無い。考えたことも無かった」

しかし、彼女は間違いなく魔法少女だった
心臓付近から魔力がにじみ出ていたから
多分、心臓に疾患か何かがあり、魔力で強化しているのだろう

QB「僕は警戒しておいたほうがいいと思う。備えあれば憂いなしだよ」

マミ「でも、誰にでも秘密はあるものよ」

QB「こんな重大なことでもかい?」

マミ「私はそんなに重大だとは思わないわ。あなたにとっては重大でしょうけど」

QB「僕のアイデンティティが侵されるからね」

33: 2013/10/26(土) 20:43:59.71 ID:11Mkj1F30
マミ「それに、彼女にそれほど近づくことにはならないわ」

マミ「さっきの提案は、ほとんど、不干渉主義をとろうと言ったようなものよ」

QB「だから、彼女が秘密を抱えていても問題ないって言うのかい?

QB「たまたまかち合ったときは協力するんだろう?」

マミ「だって彼女、結構な魔力を心臓の強化に使っているのよ?戦闘中に使える魔力はおのずと限られてくるはず」

マミ「正直、彼女が一人で魔女と戦うなんて、とても心配よ。できることならお手伝いしたい

マミ「何でもっと積極的に協力しようって言えなかったのか、後悔しているくらい」

QB「そんなこと言ったって、魔女と戦っているときに不意打ちを食らったら、ひとたまりも無いよ?」

QB「彼女は敵じゃないと断言できるのかい?」

マミ「そう言われたら困るけど、私は誰かに恨まれる覚えは無い……いえ、佐倉さんからは恨まれているでしょうね」

マミ「でも、彼女は人を差し向けるようなことはしないわ。」

34: 2013/10/26(土) 20:46:58.46 ID:11Mkj1F30
……キュゥべえが警戒している
まったく不安が無いといえば嘘になる

魔法少女の多くが縄張りを作る目的は、グリーフシードの確保だけじゃない
命がけの戦いをするにおいて、異物は排除したいと思うのは自然なこと

一理あることは確かだけど、頭ごなしに決め付けてかかるわけにはいかない
怪しいそぶりを見せたら、そのときに考えればいい

QB「それに、見滝原のグリーフシードを狙っている可能性もある」

QB「マミを倒せば見滝原が手に入ると考えているかもしれない」

マミ「敵対する意思がないと言葉や態度で示している娘に、そこまで警戒心を持つのもかわいそうだと思うのよ」

マミ「私ってその気がなくても結構態度に出ちゃうじゃない?」

35: 2013/10/26(土) 20:48:22.25 ID:11Mkj1F30
キュゥべえはなおも考えるそぶりを見せていたが、最終的には、

QB「まあ、確かにこちらから敵対を煽るようなことは避けたほうがいいかもしれないね」

と、折れてくれた。

マミ「ありがとう。心配してくれて」

QB「見滝原から君が消えることは、大きな損失だからね」

QB「ふふ。おだてたって、何もでないわよ」

36: 2013/10/26(土) 20:52:08.09 ID:11Mkj1F30
ほむらside

自宅にて今日の行動について振り返る。おおむね予定通りだ

巴マミが自分からああ言ってくれたのは助かった
いきなりワルプルギスの夜が来ると伝えようかと考えていたが、よそ者の私がそれについての共闘を呼び掛けるのも変な話で
一体どう転ぶかわからなかったから

想定していたよりもドライな関係に落ち着いた気もするが、うまくいった部類だろう
インキュベーターと敵対しなければ、それほど私に対して不信感を持たないはず

しかし、いずれはやつらと敵対する
それまでに、彼女との信頼関係を築きておければベストだが…まぁこれは必須ではない

佐倉杏子と接触するのはその後。今回は慎重にいきたい
巴マミに不信感をもたれかねない行動は、極力さけよう

後は転入前にするべきことを済ませておけば――

37: 2013/10/26(土) 20:54:24.69 ID:11Mkj1F30
QBside

エネルギー回収ノルマを一気に満たせるレベルの逸材を見つけたることができた
イレギュラーの介入はできるだけ排除したい。巴マミをぶつければ牽制になると思ったのだが…

巴マミとイレギュラーの関係は彼女が言うように不干渉協定の延長に過ぎず、流動的だ
この状態で佐倉杏子を送り込んでも、素直に敵対してくれるとは限らない
しばらくは様子を見て、勧誘のみに徹するべきか

44: 2013/10/27(日) 22:24:47.56 ID:ORjbZAlz0
アニメ本編は通してみてます。ただ、SSから入ったクチなのでどうしてもそっちの影響を受けてるかもしれません
誤字脱字は…今回は多分大丈夫。…多分

45: 2013/10/27(日) 22:26:56.24 ID:ORjbZAlz0

第2話:何その秘密主義?

46: 2013/10/27(日) 22:29:53.70 ID:ORjbZAlz0
さやかside

まどかと世にも不思議な体験をした後、流れで解散になってしまい、あたしは一人で家に帰った
今、その体験について考えてる

まどかと私に謎の忠告をした電波女
その直後に現れた、魔法少女になれば願い事が叶うと語るキュゥべえ…

まどかはずいぶん心を動かされたみたいだったけど、即決はしなかった
直近で叶えたい願い事なんてないし、何より電波女の忠告が気になったからだと思う
それは私も同じ

47: 2013/10/27(日) 22:33:17.69 ID:ORjbZAlz0
『自分を犠牲にするな』『今と違う自分になりたいと考えるな』『うまい話にご用心』
――この忠告が『契約』を念頭においていることは明らか
だとすれば、電波女はあたしたちに魔法少女になって欲しくないと考えていることになる

…いや、あたしたちに、だけとも限らない
勧誘を受けることになる人みんなにこの話をしているのかもしれない

48: 2013/10/27(日) 22:36:42.10 ID:ORjbZAlz0
じゃあ、なぜ契約してほしくないのか
電波女にとって、魔法少女が増えて困ることでもあるの?

そうではなく、私たちのために言っているとすれば、それほどまでに、魔女との戦いは過酷ってこと?
あるいは、『契約』に裏があるのか。キュゥべえは嘘はつかないと本人(?)言ってたけど…

…今はまだわからない。大体あたしたちのことを知ってるってのも怪しい
はっきり言って信用できない

だけど…見せかけかもしれないけど、『忠告』って形をとっているのは…気になる
魔法少女、なんて聞いた後だと、あたしたちのことを知ってる不可思議な事情もあるんじゃないかとも、思えなくもない…んだよね

49: 2013/10/27(日) 22:42:27.98 ID:ORjbZAlz0
…どっちにしろ、もし本気であたしたちの契約を止めたいと電波女が考えているなら、もう一度現れるはず
あの忠告だけで契約を防げるとは思っていない…よね…?
…その女が再び現れたときにもう一度考えよう


――その時は、意外とすぐにやってきた


もう一度考える、くらいで済む話ならどんなによかったか…


50: 2013/10/27(日) 22:46:49.90 ID:ORjbZAlz0
三日後の朝のホームルームで、暁美ほむらって名前の転校生が紹介された
先生の隣に立っている転校生は、まどかと見つめ合っている
転校生は何かを決意しているかの表情で、まどかは驚きの表情で
これは…

休み時間になると、彼女の席の周りにクラスメイトが大挙して、彼女を質問攻めにした
女子は興味深深だし、男子も女子が来たとなったら放ってはおかない
…容姿も並以上ではあるし
彼女の隣の席のまどかは、人に押されるようにあたしの席まで逃れてきた

さやか「まどか、あれが昨日言ってた娘?」

まどか「うん。まさか転校生なんてね。びっくりしちゃった」

…話すなら、早いほうがいいんだろうな

51: 2013/10/27(日) 22:48:45.47 ID:ORjbZAlz0
昼休み

さやか「ごめんね。転校生と話があるんだ」

そう言って、クラスメイトから転校生を無理やり引きはがして屋上まで連れて行った
後ろから聞こえるブーイングは気にしない
まどかは置いてきた

52: 2013/10/27(日) 22:55:32.96 ID:ORjbZAlz0
仁美side

さやかさんがいきなり暁美さんを連れ出したことで、教室は騒然としていた
確かに周りをあまり顧みないところはあるけれど…
思えば自己紹介の時からさやかさんは暁美さんを睨んでいたような…知り合いなのかな

仁美「さやかさん、暁美さんと何かあったのでしょうか?古くからの知り合い…とか?」

まどか「うーん」

…そうか。まどかさんも何か知っているのか
そして、多分それは私に言うべきことではないと

…あるいはいつもの悪い癖なのかもしれない
すぐに思い込んで突っ走ってしまう…

追おうにももう二人がどこに向かったか見当もつかない
何かしでかした時にフォローできる心の準備くらいかな。今できることは

53: 2013/10/27(日) 22:59:17.72 ID:ORjbZAlz0
さやかside

ほむら「もう少し後先を考えて行動しなさい、美樹さやか」

ほむら「あなたの愚かで軽率な行動で、どれだけ周りが迷惑することになるか、少しは想像しなさい」

屋上に着くとすぐ転校生は言った。今の時間は屋上に誰もいない

さやか「あんた、あたしたちのことどこまで知ってんの?」

ほむら「一般論を述べたまでよ。今日が初対面でしょう?」

さやか「何で三日前の時点で、あたしたちの名前を知ってたわけ?」

ほむら「今は、ネットで何でもわかる時代よ?」

…ネットって、そこまで万能なの?

54: 2013/10/27(日) 23:01:27.14 ID:ORjbZAlz0
さやか「あの忠告は、魔法少女になるなってことでいいんだよね?」

ほむら「そうよ。まさか、契約なんてして無いでしょうね?」

さやか「してないよ。どっちも。…みんなにああいう話してるの?」

ほむら「いいえ、あなたたちだけよ」

まあ、うちのクラスに来たってことは、そう考えるのが普通なのかな
…特定の中学校の特定のクラスに狙って転校なんてできるものかわからないけど

55: 2013/10/27(日) 23:03:51.02 ID:ORjbZAlz0
さやか「何であたしたちに契約してほしくないの?」

ほむら「あなたたちが不幸になるから」

さやか「何であたしたちが不幸になるなんてわかるの?」

ほむら「大抵の魔法少女は、不幸になっている」

さやか「あんたは魔法少女?」

ほむら「そうよ」

さやか「何を隠しているの?」

ほむら「質問の意味がわからないわ」

56: 2013/10/27(日) 23:09:45.16 ID:ORjbZAlz0
さやか「『今の自分を変えようと思うな』」

さやか「まるで、まどかの悩みを見透かしてるみたいだね?」

ほむら「一般論よ。鹿目まどかはそんな悩みを持っているの?友人のプライバシーを安易に他人に話すことは、やめておいたほうがいいわ」

さやか「…『自分を犠牲にするな』」

さやか「魔法少女になるってことは、犠牲って言うほど酷いことなの?願い事、何でも叶えてくれるんでしょ?」

ほむら「限界はある。それに、契約をした時点では大抵自分の本当の願い事、自分の心の奥底に気づいていないものなのよ

ほむら「それに気づいてしまったら、後に残るのは後悔と絶望だけ」

さやか「あたしたちにそれが当てはまるって、どうして言えるの?あたしたちの悩みも、願いも、あんたは知らないでしょ?

さやか「理解できるはずがない。――理解できる人には、一体どんな事情があるんだろうね?」

ほむら「…さあ?私が何人かの魔法少女を見てきた感想を話しただけよ。一般論でもある」

さやか「…『うまい話しにはご用心』――あの契約のどこに用心をしろって言いたいの?何か裏があるの?」

ほむら「一般論を述べただけよ」

さやか「……一般論!一般論!一般論!何も教える気は無いってわけ!?信用できるわけないじゃない!」

57: 2013/10/27(日) 23:18:23.00 ID:ORjbZAlz0
ほむら「それでも、あなたは私の言葉を切り捨てられない。熱くなっているのがその証拠」

ほむら「何かを知っているような女が意味深な忠告を施した後に、未確認生物に、なんでも願い事を叶えるなんて突拍子もない提案をされる」

ほむら「その女が自分のクラスに転向してきたと考えれば、私から何かを聞き出さない限り、親友を契約させるわけにはいかない」

さやか「…親友、ね……どこまでわかってるんだか………」

さやか「……確かにそう。あたし一人だったら、もしかしたら契約に傾いてたかもしれない」

さやか「でも、まどかを巻き込めない。『自分を変える』なんてことのために、危ない目にあってほしくない」

さやか「そりゃ、まどかにとっては深刻な悩みなのかもしれないけど、それでも、ね」

さやか「あたしが契約したら、まどかを説得できなくなる」

さやか「特に、裏がありそうだから、なおさら」

転校生はそれを聞いて、ほっとしたような表情を浮かべた

58: 2013/10/27(日) 23:21:16.02 ID:ORjbZAlz0
……こいつは、あたしたちに何も教えずに、あたしたちの契約を止めることができたわけだ
でも、あたしだって何か聞きだしたい

さやか「…でもさあ、あんた何サマなの?何でも知ってますって態度、ムカつくんだよね。何その秘密主義?」

あたしは、転校生の胸倉をつかんで、体を壁に押し付けた
ポケットに入れといたボールペンを、ちょこっとだけ芯をだして首筋に押し付ける
そして、ニヤニヤしながら声を低くして、人を傷つけるのが趣味ですという感じを精いっぱい演出する

さやか「なんでわざわざ屋上に連れて来たかわかる?この時間だれもいないんだ」

さやか「もってこいなんだよ。こういう強迫めいたことするのに」

転校生の目を見る。冷めた目、どうでもいいという感じ
全部お見通しなのかな

59: 2013/10/27(日) 23:24:43.57 ID:ORjbZAlz0
さやか「…悪かったよ。あたしたちのために言ってるんだよね?ホントに腹立つけどさ」

転校生を放して、あたしは言葉だけの謝罪をした

ほむら「なれないことはするものじゃないわ。脅迫めいたこと、なんて本当にやったことあるのかしらね?」

さやか「…まどかには、『うまい話は気をつけろ』の方向で念を押しておく。あたしもそう簡単には契約しない」

ほむら「…そう」

さやか「だけど、まどかが本当に契約したいって思ったら止められない。それはあたしも同じ」

さやか「…あんたが知ってること話してくれるまではね」

ほむら「………それで問題ないわ」

さやか「あんたが話すときが、早く来ることを祈るよ」

60: 2013/10/27(日) 23:28:19.68 ID:ORjbZAlz0
そう言って私が教室に戻ろうとしたとき

ほむら「一つ聞きたい。…鹿目まどかは、私にどういう印象を持っていた?」

――からかってやろうとも思ったんだけど

ほむら「…」

答えを待つ表情はあまりに切実で

さやか「あたしは電波だし気味が悪いと思ったけど、まどかはそうは思わなかった」

さやか「親切に忠告をくれた女の子としか考えてないんじゃないかな」

嘘はつけなかった

ほむら「そう」

転校生は微笑んだ。始めてみる顔だ。…今なら…

61: 2013/10/27(日) 23:32:20.63 ID:ORjbZAlz0
さやか「まどかと長く接してれば、わかりそうなもんだけどね」

さやか「そんなこと考えるなんて、失礼ってもんでしょ」

ほむら「それもそうね。あの子は優しすぎるから。まぁそれが困ったところでも…………!!!!!!」

転校生が怒りの形相で睨み付けてきた。蒸気までだしてる
さっき軽く脅したときには少しの怒りも見せなかったっていうのに。よっぽど悔しいらしい
こんなもんわかってたけどね。まどかのことを話す表情を見てればわかる
バレてないとでも思ってたのかな…

『あたしたち』じゃなく、『まどか』か…。やっぱりまどかと接点があった。それも結構深いみたい
でも、まどかは知らないと言っていた。うーん…。忘れた、なんて考えにくいし…

…そういえば、寝言としか思えないようなことを言ってたっけ

62: 2013/10/27(日) 23:34:20.23 ID:ORjbZAlz0
さやか「まどかはあんたに夢で会ったって言ってた。心当たりある?」

ほむら「………あるといえばある。同じ夢を見ていたのかもしれない」

さやか「と、言うと?」

ほむら「…」

さやか「…それも話せないってこと?」

ほむら「…こればかりは、私にもよくわからない」

さやか「…そっか」

あたしは背伸びをした

さやか「ま、今はそれで良いや」

63: 2013/10/27(日) 23:40:48.50 ID:ORjbZAlz0
まどか「どうだった?」

五時間目の前の休み時間の前にまどかが聞いてきた。あいつは、いまだ質問攻め
成績優秀、運動神経抜群、そして美人。天はあいつに三つも与えた。えこひいきだ…

さやか「あたしたちのことを守りたいって感じだった。何にも教えてくれなかったけどね。あと、魔法少女だった」

さやか「たださ、何も教えずにただ守りますって言われてもねえ」

まどか「そっか」

さやか「まあ、契約ってやつはもうちょっと考えてもよさそうだね。願い事と、魔女と戦うことは、釣り合わない気がしないでもない」

さやか「何でも叶えてあげるって言われたらね。話がうますぎる」

まどか「どういうこと?」

さやか「裏があるのかもしれない」

64: 2013/10/27(日) 23:51:12.13 ID:ORjbZAlz0
まどか「キュゥべえは、嘘はつかないって言ってたけど」

さやか「それが本当かなんて確かめようがないじゃん

さやか「それに、もし全部正真正銘本当だとしたら、どうしてあの転校生は私たちの契約に口を挟んでくるの?」

さやか「願い事、何でも叶えてくれるって言うんだよ?」

まどか「でも、魔女と戦わなきゃいけなくなるんでしょ?」

さやか「そうだとしても、願い事によっちゃ安いこともあるんじゃない?」

さやか「それで戦うのがいやになって後悔するなんて、自業自得としか思えない」

さやか「楽じゃないことはわかってたはずだよ」

さやか「いや、魔女がどんなのか知らないけどさ」

さやか「少なくとも、そんなことを言う、あるいは言う可能性がある赤の他人を助けようなんて、あたしは考えない」

さやか「何かあるんだよ。きっと。あたしたちが知らない何かが」

明らかにまどかと接点がありそうだ、多分助けたいのはまどかの方、なんて言う気はない。あいつはそんなこと望んでない

65: 2013/10/27(日) 23:52:45.63 ID:ORjbZAlz0
まどか「うーん。そう言われてみると、そんな気もするかも…」

さやか「転校生の言ってることも一理あるよ。『うまい話には裏がある』もんだって」

まどか「だよねえ。ママもよく言ってるし」

さやか「まあ、あいつは、あたしたちに親切にも忠告してくれたみたいだし、今はあいつの忠告をおとなしく聞いておこうよ」

まどか「…そうだね。惹かれる話ではあるんだけど、焦るのもね」

66: 2013/10/27(日) 23:56:56.94 ID:ORjbZAlz0


…あたしは、後ろに何かを隠したまま近づいてくる奴を信用できない
隠しているのはナイフか爆弾もしれない

だからといって、あのキュゥべえも信用できない
裏があるんじゃないかと意識すれば、確かにに胡散臭い感じがするんだよね
転校生は、まどかを守りたいと考えているだろうことだけはわかるんだけど、キュゥべえの方は、考えてみれば目的すらよくわからない

――どちらも信用できないのだから、あたしがするべきことは現状維持

67: 2013/10/27(日) 23:59:34.39 ID:ORjbZAlz0
仁美side

昼休みが終わる10分前にさやかさんと暁美さんが教室に帰ってきた
様子を見るに大きなトラブルはなかったようだ。私は胸を撫で下ろす

その後、この休み時間暁美さんはまた質問攻め
さやかさんとまどかさんは教室の隅でひそひそ話
どうやら誰にも話を聞かれたくないようで、私もその中に含まれてるみたい

…暁美さんと二人の間に何かがあることは確定かな。三人が周りに知らせる気がない以上、静観する他ない

まぁ、事が済むか、深刻になれば話してくれるかもしれない
それまで待つことなんて何でもない
私たち中学生の抱えるトラブルが致命的になるなんて普通はない、というより、ありえないのだから

68: 2013/10/28(月) 00:03:37.53 ID:BoGfvetf0
QBside

危惧していた通り、イレギュラーはターゲット及び美樹さやかとすでに接触していた
しかも契約の阻止に動いている
これより、イレギュラ――暁美ほむらは敵であると認識する

美樹さやかは、向こうを完全に信用したわけではないようだが、こちらのほうもかなり警戒している
ターゲット――鹿目まどかは契約への対応に関して、基本的には美樹さやかに従うようだ

ただの交渉では契約を結ぶことは難しくなったと判断していいだろう
これ以上静観していても、状況が好転する見込みは薄い


ともすれば、行動に移すべきか――


69: 2013/10/28(月) 00:06:09.82 ID:BoGfvetf0
今回はこれで終了です。これにて第2話完です
これから色々立て込むので、投下が遅れるがちになるかもしれません

75: 2013/10/28(月) 22:00:12.62 ID:BoGfvetf0


第3話:こんな奴の思い通りになってたまるか


76: 2013/10/28(月) 22:02:02.94 ID:BoGfvetf0
級友A「暁美さん。帰りながら一緒に買い物に行こ。この街のこと案内するよ」

ほむら「ごめんなさい。越してきたばかりで、いろいろやることがあるのよ」

級友B「そっかー。残念。また今度ね!」


仁美「私、今日はお稽古がありますので、これで失礼しますわ」

まどか「わかった。じゃあ、行こっか。さやかちゃん」

さやか「うん。帰ろっか」

77: 2013/10/28(月) 22:07:59.52 ID:BoGfvetf0
まどかside

私たちは、帰り道の途中にあるCDショップに二人で入った
さやかちゃんのボーイフレンド(本人だけは否定するけど)の上条君にあげるクラシックのCDを選ぶため
バイオリニストである上条君の影響で、さやかちゃんはかなりクラシックにうるさい

とはいえ、私は興味がないので、いつものように演歌のコーナーで時間を潰す
新人さんは、勢いがあるけど安定感がないがない。ベテランさんは安定感はあるけど勢いが足りない
どっちもどっちかな、二人でデュエットでも出せばいいのに、なんて考えながら試聴していると

「助けて…」

って声が頭に響いてきた

78: 2013/10/28(月) 22:14:24.39 ID:BoGfvetf0
まどか「キュゥべえ!?」

QB「助けて…」

何度問いかけても、助けて、としか言わない。大急ぎでさやかちゃんを呼びに行く

まどか「さやかちゃん!」

さやか「何!まどか、あんたもう少し静かに――」

まどか「キュゥべえが呼んでる!助けてって!」

さやか「へ?」

私とさやかちゃんは大慌てでCDショップから出る
もちろん、助けたいって気持ちはあるけど

………私は、変わりたい。いつも願ってた
それをかなえてくれるっていう存在が、目の前に現れた
それを失うわけにはいかない。たとえ今契約するつもりがないにしても

さやかちゃんも思うところがあるらしく、キュゥべえの危機を伝えるとついてきてくれた

声の方向に行くと、そこは使われてるのか定かではない倉庫みたいな場所
キュゥべえは、そこに血まみれで倒れていた

79: 2013/10/28(月) 22:18:28.58 ID:BoGfvetf0
まどか「キュゥべえ!大丈夫!?」

と、あたしは駆け寄った
そして私がキュゥべえを抱えた瞬間、悪寒が走るとともに辺りの風景が一変して――
――なぜかさやかちゃんは、キュゥべえを睨み付けていた

まどか「これ…何?」

あたり一面に前衛的な空間が広がる。なんて言えばいいんだろう、これは

さやか「…結界ってやつじゃないかな」

まどか「え!?じゃあ、近くに魔女がいるの!?」

さやか「…多分。こいつの話が正しければ…」

まどか「そんな!」

80: 2013/10/28(月) 22:19:01.05 ID:BoGfvetf0
このままじゃ、みんな氏んじゃう!

まどか「起きてキュゥべえ!お願い!今すぐ私とけいや――」

さやか「まどか!」

まどか「何!?」

さやか「今はだめ!」

まどか「何で!?このままじゃ――」

さやか「まだ使い魔ってやつすら出てない!お願いだからあたしの言うこと聞いて!一生のお願いだから!」

まどか「今その一生が終わりつつあるんだけど!?」

81: 2013/10/28(月) 22:25:29.34 ID:BoGfvetf0
さやかside

――あたしはまどかの腕に抱えられたキュゥべえをにらみつける

転校生が現れた直後にこいつが出てくる――ギリギリありえる。どっちも怪しいけど
こいつに呼び出されたら結界に巻き込まれる――ありえない

――この状況はこいつのせいだ!

迂闊だった
まどかを何としても止めなきゃいけなかった
あたしはまどかよりこいつのこと疑ってたってのに…

82: 2013/10/28(月) 22:27:37.99 ID:BoGfvetf0
…時間さえ稼げば助けが来るかもしれない
もし間に合わなければ――

この命を使ってでも、まどかを守る
あたしがやられた後に、まだ助けが来ないなら、そのときまどかが契約すればいい
何もできないまま、まどかを契約させる訳には行かない
あたしも契約してやらない
こんな奴の思い通りになってたまるか!

………転校生の顔が頭に浮かんだ
まどかは別にひいてないって私が伝えたときの、あの安堵した表情
あいつがまどかを、何かから守ろうとしているってことだけはわかる
このまま為す術なくまどかを契約させては、あいつに会わす顔がない――

83: 2013/10/28(月) 22:29:42.78 ID:BoGfvetf0
まどかside

さやかちゃんと言い争っているうちに、髭を生やしたおぞましい何かが現れた
使い魔か魔女かはわからない
わかるのは、私たちの命がいよいよ危ないってことだけ

さやかちゃんはなぜか止めるけど、もう契約するしか助かる道はないと思う

――大丈夫だよ、さやかちゃん。契約するのは私だから
さやかちゃんは、契約には裏があるかもって気にしてたよね
大丈夫。奇跡の報いを受けるのは私だから
どんな不幸が舞い降りても、私は全部受け止めるから

本当にごめんね…

心の中でそうお詫びをして、私は口を開いた

84: 2013/10/28(月) 22:31:46.94 ID:BoGfvetf0
まどか「――あ――――え―――!?」

………恐怖で声が出なかった。情けない…

髭を生やした何かはもうすぐそばまで来ている
気がついたら私はへたり込んでいた
…腰が抜けた。立つことすらできない。もうだめだ…

さやかちゃんは、私が立てないと見て取ると、私をかばうように髭の何かの前に立ちはだかった
戦う手段なんて持ってないはずなのに…

私は本当にだめだ。いつもさやかちゃんに守られてばかり…何のとりえもない…
そもそもこんなことになったのも、私のせいみたいなものじゃない…
このままじゃ、私のせいで…

85: 2013/10/28(月) 22:34:31.03 ID:BoGfvetf0
そして、いよいよさやかちゃんがやられてしまうと思った瞬間、髭の何かの後ろに誰かが現れた気がした
その直後、いきなりさやかちゃんが、私を下にして覆いかぶさるように倒れこんだ

そして――銃の乱射音が聞こえた

気がつくと、あの得体の知れない何かはすでに消えていた
銃声がしたほうに目を向けると、銃を構えた、魔法少女風のコスプレをしているほむらちゃんが立っていた
凄まじい怒りの形相で

…そうか。さやかちゃんは、ほむらちゃんの銃から私を守ろうとしてくれたんだ
実際のところ、さやかちゃんがそのままでも当たらなかっただろうと、今は知ってるんだけど、あの時わかるはずもない

86: 2013/10/28(月) 22:35:42.11 ID:BoGfvetf0
さやかちゃんが、青ざめた顔でニヤリと笑って言った

さやか「越してきたばかりだからすることって、魔法少女の仕事だったの?」

ほむら「そうよ。引越しすると、魔法少女って本当に忙しくなるの。」

ああ、そうだ。ほむらちゃんは魔法少女だった
魔法少女って本当に大変そうだ
引越しすると、こんなことが多くなるんだ…

87: 2013/10/28(月) 22:37:14.65 ID:BoGfvetf0
QBside

美樹さやか、君は実に興味深い
これほどの状況下で契約を拒んだケースは、かなり珍しい
どうやら君のことも、鹿目まどかとの契約の障害の一つにカウントした方がよさそうだ
君もなかなかの素質があるのというのに、実にもったいない

88: 2013/10/28(月) 22:40:28.40 ID:BoGfvetf0


第4話:私は今、さやかちゃんと一緒にいて、それを感じる。苛まれる


89: 2013/10/28(月) 22:43:16.56 ID:BoGfvetf0
ほむらside

すこしたって、結界が消えた。魔女の居たほうから、巴マミが私たちのもとへと駆けて来る

マミ「一体どうしたの?」

さやか「…結界内に入ったら、すでにあなたは交戦中で、この子達が使い魔に襲われていた」

マミ「…それは助かったわ。私はとても手が回らなかったから。どうもありがとう」

ほむら「あなただって、私が戦ってる時に加勢してくれたこともあるじゃない?お互いさまよ」

マミ「そうね…ちょっとごめんなさい。貸してもらえるかしら?」

マミ「あ、はい。」

インキュベーターを受け取った巴マミは回復魔法を施した
本当に見事なものだ。こいつにはもったいない

90: 2013/10/28(月) 22:45:17.00 ID:BoGfvetf0
マミ「…ねえ、キュゥべえ。何があったの?」

QB「怪我をしたから助けを求めたんだ」

QB「魔法少女用の回線でテレパシーを送ったんだけど、資質を持つ彼女――まどかにまで届いてしまった」

QB「彼女が慌てて来たところで、結界に巻き込まれてしまったんだ」

…迂闊だった。インキュベーダーを襲いさえしなければ、まどかたちがここの結界に巻き込まれることはないと思っていた
まさか、ここまで強引な手を使ってくるとは…
思い直して来てみて正解だった

91: 2013/10/28(月) 22:46:43.26 ID:BoGfvetf0
………白々しいこいつの言い訳を看破してやりたい

何で怪我をしたのか
何で無限のストックがあるというのに、仕事中であろう魔法少女に助けを求めるなんてことをしたのか
余裕がなかったとして、回線から一般人をシャットアウトするくらいもできなかったのか
結界の反応は感知できていたはずだ。近づいてくる一般人に離れろくらいも言えなかったのか

だが、いくらこいつを追求しても、嘘とはいえないごまかしではぐらかして来るだけだ
そうして、巴マミと美樹さやかに不信感をもたれるだけで終わってしまう
いつもそうだ。今は何もいえない

巴マミからそれ以上の質問はなかった。彼女はインキュベーダーに疑念を持っていない。当然だ

93: 2013/10/28(月) 22:54:12.36 ID:BoGfvetf0
まどか「あの、あなたも、魔法少女なんですか?」

マミ「ええ、そうよ。自己紹介がまだだったわね」

マミ「私は巴マミ。あなたたちと同じ見滝原中の3年生よ」

まどか「ありがとうございます、マミさん、ほむらちゃん…あと、ごめんね、さやかちゃん。ありがとう」

さやか「え?いやそんな。まどかが悪いわけじゃないよ」

ほむら「ええ、助かったんだからいいじゃない。誰が悪いって話ではないわ」

そう、悪いのは、「誰」で指される「人」ではない

マミ「…キュゥべえこの娘が、前に話していた、『面白い子』ね?」

QB「そうだよ。かなりの資質なんだ」

マミ「そうなんだ。…キュゥべえに選ばれた以上、説明が必要ね。今から私の家に来れる?」

まどか「あ…そうですね。私は大丈夫です」

さやか「こっちも、取り立てて予定はないかな」

マミ「よかった」

マミ「あなたも来てくれるかしら?」

94: 2013/10/28(月) 22:57:00.80 ID:BoGfvetf0
巴マミが私に問う
正直驚いたが、敵対していないとなれば共に説明するよう求めるのは道理か

…巴マミは慎重に考えろとは言うが、二人が契約することに関してはむしろ積極的だ
否定的な意見を交えられると言うのなら、断る理由はない

ほむら「むしろ、私の方からお願いするわ」

95: 2013/10/28(月) 23:10:12.44 ID:BoGfvetf0
さやかside

マミさんの自宅へ向かう途中、マミさんとまどかとキュゥべえは、私と恭介の話で盛り上がっていた

年頃の女の子二人(と一匹)がガールズ(?)トークで盛り上がっては、いくら私が否定したところで、無視されるだけというもの

今やプロポーズはどんな言葉にするかだの
それなら契約で世界史史上最もかっこいいものを言わせられるだの
そんなの意味ないでしょというマミさんの真っ当な突っ込みだの
僕にはわからないという、やはり人外という返しだの

まったく…恭介と私が釣り合う訳ないじゃない
怪我さえ治れば高校入学前に世界デビューしたっておかしくない奴なんだ。成績だってかなり良い

住む世界が違う。仁美あたりの才色兼備のお嬢様がお似合いだよ――

96: 2013/10/28(月) 23:12:19.33 ID:BoGfvetf0
ほむら「さっきのことなんだけど」

まどかとマミさんとキュゥべえのガールズ(?)トークを、なぜか後ろから切なそうな顔で聞いてた転校生が話しかけてきた
私もまどかたちの話に参加する気はさらさらなかったので、私は転校生の隣を歩いていた

ほむら「何であそこまでしたの?」

さやか「何が?」

ほむら「私が言える筋合いではないけれど、あの状況で契約もしないで使い魔の前に立ちはだかるなんて思いもしなかった」

ほむら「あなたにとってあいつと契約することは、氏よりも恐ろしいことなの?何の情報も持っていないのに」

97: 2013/10/28(月) 23:16:18.52 ID:BoGfvetf0
さやか「あたしが全部知ってたら、どうしてたかな?」

ほむら「…すべての情報を知っていたとしても、あの状況ならほとんどの人が契約するでしょうね」

ほむら「私だって、多分契約していたわ。」

さやか「…頭に血が上っちゃってさ。まともな判断ができなかったのかな」

さやか「あいつの思い通りになってたまるかってので、頭がいっぱいだったんだ」

ほむら「…まどかを守ってくれたことには礼を言うわ

ほむら「だけど、自分の命を粗末にすることはやめて欲しい。もっと後先を考えて行動しろとい言ったはずよ」

さやか「そうだね。転校生が助けに来なければ、あたしは氏んでた」

さやか「まどかにもとんでもないものを見せるところだったね。本末転倒だよ」

さやか「………ありがと」

98: 2013/10/28(月) 23:18:03.71 ID:BoGfvetf0
ほむら「……………」

さやか「ねえ?」

ほむら「…何?」

さやか「今度は自分の命を大切にするために、あんたが知っていることを全部教えて欲しいんだけど」

ほむら「ダメ」

さやか「ケチ」

105: 2013/10/29(火) 20:18:36.58 ID:Ehjw1bIC0
マミさんの家で、お手製のお菓子と紅茶を食べながら、マミさんによる魔法少女講座が聞かれた
契約の概要はキュゥべえの言っていたのとそっくり同じものだった

何かを隠している様子はない。というか、そんな人に見えない
…となると、マミさんもキュゥべえから聞かされていないのか、転校生の思わせぶりな態度はすべてフェイクなのか…

…いや、転校生が何から何まで嘘をついているとは思えない
あいつは何か契約、あるいは魔法少女について重大な何かを知っている。多分、間違いない

…マミさんは、何回か転校生と一緒に魔女を倒したことがあるって言ってた
何でマミさんにも教えていないんだろう?
…同業者にも教えられない秘密って、一体…

106: 2013/10/29(火) 20:21:20.00 ID:Ehjw1bIC0
じゃあ、キュゥべえが語るのの焼き直しで退屈かと言えばそんなことはない
未知の世界のことを実体験を伴って語られると、とても魅力的に移る
魔法少女の話を聞いてからあれやこれや想像してた光景が目の前に広がっているように感じられるってわけ

…想像せずにはいられない
腕が私の願いによって治った恭介が世界に羽ばたく
あいつはバイオリンで世界中の人々を癒し、励まし、勇気を与える
あたしは人知れず、魔女に狙われた人々を救う正義の味方になる、なんて甘美で素敵でありふれたストーリーを

いや、もちろん自分のために使わずに後悔しないか、とかも考えるけど、あくまで思い浮かべるのは理想だからね
やっぱり綺麗なビジョンを思い浮かべちゃう

107: 2013/10/29(火) 20:23:30.90 ID:Ehjw1bIC0
もちろんキュゥべえは胡散臭く、あたしが見るところ極悪野郎なんだけど
マミさんも転校生も魔法少女としてやっていけてるじゃないかと都合のいい言い訳さえ思いつく

つまるところ転校生の、キュゥべえの話のリメイクであるマミさんの話の焼き直し(なんかデメリットを強調してた気がする)なんて頭に入ってこない
そういうわけで、マミさんが魔法少女体験ツアーをやらないかと提案してきたときの答えが

まどか「はい!」
さやか「喜んで!」

となるのも仕方ないことだと思うんだ

転校生は呆れをはらんだ目つきであたしを睨む
構うか。あんたが何も教えないのが悪い。てか、その眼をまどかにも向けろ

108: 2013/10/29(火) 20:24:31.43 ID:Ehjw1bIC0
転校生としては許容できる話ではないらしく

ほむら「巴マミ、ちょっと来て」

とマミさんを伴って別室へと移動した。

109: 2013/10/29(火) 20:27:01.26 ID:Ehjw1bIC0
ほむらside

ほむら「私は反対よ」

マミ「そこまで問題あることかしら?」

マミ「…仮に私が力を過信していたとしても、あなたがいれば万が一も起こらないと思うんだけど」

ほむら「…その体験ツアーは、魔法少女になることを念頭に置いているんでしょう?」

ほむら「魔法少女なんて、それしか他に方法がない人だけがなるべきものよ」

マミ「概ね同意するけど、あの二人が魔法少女になるべきかどうかは、あの二人が決めることよ?」

マミ「まぁあの二人にはよくよく考えるように言うつもりだし、あなたも思うところを言えばいいんじゃないかしら?」

ほむら「…それでも、あの二人を結界に連れ込むなんて、許せることではないわ」

110: 2013/10/29(火) 20:30:52.92 ID:Ehjw1bIC0
マミ(…ああ、そっか。二人はこの娘とクラスメイトだっけ)

マミ(転校して初めてできた友達なんだ。…うん。その気持ちよくわかる)

マミ「…クラスメイトだったわね

マミ「…ごめんなさい。やっぱり心配よね。…もう一度あの二人と話してみましょうか」

………考えろ……ここで二人にやめると言って納得するか?
そうは思えないし、何より巴マミもあちら側だ
私一人強行に危険だといっても、私一人除外されるだけだ。いつもそう
ならば――

ほむら「…私たちのうち常に一人はあの二人について防御に専念

ほむら「もう一人は魔女に当たる。もしものときは、二人についた方が、もう一人を切り捨てて結界から出る…というのは?」

…妥協案を提示するしかない
…あの二人がツアーを機に魔法少女への憧れを強くするのも問題なのだが、その問題は先送りせざるを得ない
三人との関係が切れさえしなければ、解決できる可能性も残る

マミ「…ええ。それくらい徹底するべきね。それでいきましょう

マミ「これからよろしくね」

111: 2013/10/29(火) 20:36:23.24 ID:Ehjw1bIC0
さやかside

まどかとマミさんの家を出る。明日から魔女退治見学ツアーが始まることになった
まあそれは心躍る話ではあるんだけど、それはともかく、マミさんの家に向かう途中から、違和感があった

さやか「まどか、なんか今日変だよ?今日って言うか、結界から出たときから」

さやか「空元気っていうか、無理してるっていうか…」

さやか「あんなに人の恋バナで盛り上がったりするとこ初めて見たよ」

まどか「…私ってホントだめだなって。私、自分を変えたい」

さやか「…知ってた?あたしはまどかが大好きなんだ。まどかに変わってほしくない」

まどか「…私にそんな価値ないよ」

112: 2013/10/29(火) 20:36:58.50 ID:Ehjw1bIC0
さやか「…まあ、わかんないでもないよ。そういうの」

さやか「あたしも恭介と一緒にいると、そんな気持ちになることがある」

さやか「最近特に思うんだ。こいつと対等に話せる時間も、後ほんの少ししか残ってないんだって」

さやか「こいつとは住む世界が違う。もうすぐ、手の届かないところに行っちゃうんだって」

さやか「だけどさ、あいつみたいに選ばれた人間なんてそういないんだよ」

さやか「多分みんな思ってることなんだって。あたしたちまだ中学生なんだからさ、先のことなんて考えないでもっと――」

113: 2013/10/29(火) 20:41:04.61 ID:Ehjw1bIC0
まどか「さやかちゃんの惚気話を聞きたいんじゃない」

まどか「そんなの、どうにでもなることじゃない。明日にでも告白すれば?」

さやか「…いや、まどかたちの中では、あたしたちはそういう風になってんのかもしれないけど」

さやか「あたしと恭介の間には、まどかが想像できないような高い壁が――」

まどか「言ったよね?今はそんな話がしたいんじゃない」

…まどか、ちょっと怖い
そういえば、まどかが本気で怒ってるとこ、見たことない
溜め込んでるのかな…。無神経だったかな…

さやか「…ごめん…あたし、まどかの気持ちぜんぜん考えてなかったね」

さやか「そりゃそうだよね。まどかとあたしがそっくり同じ悩みを抱えてる訳ないもんね」

さやか「自分と同じ悩みだって、勝手に決め付けてた。本当にごめん…」

114: 2013/10/29(火) 20:43:01.23 ID:Ehjw1bIC0
まどか「…私もなんか意地になってた。ごめん。そういうんじゃなくて」

まどか「………えっと、なんていうか――さやかちゃんは、上条君といると、無力感を感じることがあるってことで、いいんだよね?」

さやか「…無力感?無力感…。無力感かあ。…ああ、そうか。これは無力感って言うのか…」

あたしがぶつぶつと呟いていたら、まどかは、深呼吸をして、言った


「私は 今 さやかちゃんと 一緒にいて それを 感じる 苛まれる」


さやか「…『無力感』を?」

まどか「うん」

115: 2013/10/29(火) 20:45:32.04 ID:Ehjw1bIC0
今、あたしは、確実に『キョトン』としている
…さっきは、わからないのにわかった振りをして、まどかを怒らせてしまった
今は話を聞くべきなんだろう

まどか「私は、さやかちゃんがいないと、何もできない」

…もう限界かもしれない

まどか「さやかちゃんはいつも私を助けてくれるよね」

さやか「お互い様だよ」

まどか「私が、さやかちゃんを助けてあげたことなんてあったっけ?」

さやか「三日前にノート貸してくれたし、一昨日課題手伝ってくれたし、夏休みの宿題だって――」

まどか「そんなことしかないよね?」

116: 2013/10/29(火) 20:48:46.40 ID:Ehjw1bIC0
さやか「…あたしは、まどかが大それたことあたしにしなくたって、友達だと思ってる」

さやか「いつも助けられてる」

まどか「…」

さやか「こっちだって、似たようなもんじゃん。あたしがまどかを『助けた』って、どんなこと?」

まどか「私もついさっきまでは、私がされていることは、私がしていることと似たようなものだと思ってた」

まどか「ううん、気づいていない振りをしてたんだ」

さやか「結界に入るまではってこと?」

まどか「うん…さやかちゃん、私のこと使い魔から守ってくれたよね?」

さやか「いや、それは転校生だよ」

まどか「でも、私が動けないのを見て、使い魔の前に立ちはだかってくれた」

まどか「ほむらちゃんが銃を撃つときも、私をかばってくれた」

さやか「あんなの何の役にも――」

117: 2013/10/29(火) 20:51:38.62 ID:Ehjw1bIC0
まどか「そのとき気づいたんだ」

まどか「私が数学の宿題に頭を悩ませてるとき、さやかちゃん一緒に徹夜で一緒考えてくれたよね」

まどか「結局1ページも進まなかったけど」

まどか「私がいじめられたとき、クラスのみんなに喧嘩を売って、大騒ぎになって、先生に一緒に目をつけられたこともあったよね」

まどか「私が犬に追いかけられたとき犬と戦って、犬にボロボロにされたこともあった」

まどか「――さやかちゃん、私のため、ううん、私だけじゃなくて、みんなのために、できもしないことを、いつもしようとしてくれるよね」

さやか「…この流れで貶されるとは思わなかったよ」

まどか「違う」

まどかは決然とした表情をして言った

118: 2013/10/29(火) 20:53:15.66 ID:Ehjw1bIC0
まどか「私はいつも躊躇ってばかりいる。何も決められない」

まどか「私は、さやかちゃんの勇敢さに憧れてた。いつも、さやかちゃんみたいになりたいって思ってた」

まどか「あの時気づいたんだ」

まどか「『自分を変えたい』って、さやかちゃんみたいになりたいってことだったんだって」

………まどかは真剣だ。あたしも真剣に答えなくちゃいけない

さやか「あたしは、今まどかが言ったようなことをしたとき、大体、後から後悔してる」

まどか「…え?」

119: 2013/10/29(火) 20:57:16.25 ID:Ehjw1bIC0
さやか「あたしはいつもみんなに迷惑をかけてる。特にまどかに」

さやか「意地になって徹夜で宿題するのにつき合わせたとき、あたしたちは二人して授業ほとんど効かずに暴睡してた」

さやか「テスト前の大事な授業だったってのに」

さやか「まどかがクラスのみんなと微妙だった時期に、あたしが勝手に大暴れして、まどかまで先生に怒られた」

さやか「あげく仁美を巻き込んで長い間クラスで孤立した」

さやか「犬にやられた時だって、まどか、お見舞いに来てくれたけど、お父さんにひどいこといわれたんだよね」

さやか「後から聞いた。ごめんね。お父さん、あの時本当に疲れてたから」

さやか「狂犬病発症するかの瀬戸際だったらしくてさ」

さやか「今日だって、あたしが勝手起こして2人で氏にかけた。転校生が来なかったら共倒れだったかもしれない」

さやか「転校生にも言われたよ。もっと考えて行動しろって」

120: 2013/10/29(火) 21:07:27.22 ID:Ehjw1bIC0
まどか「違うよ!そんなんじゃない!」

さやか「違わないよ。あたしは後先考えないで行動して、いろんな人に迷惑をかけてきた」

さやか「まどかみたいに慎重に、仁美みたいに思慮深くなりたいって、いつも思ってた」

まどか「…私は臆病なだけだよ」

さやか「あたしは無鉄砲なだけ」

さやまど「…」

さやか「…まどか」

まどか「何?」

さやか「あたしたち、変なとこで似てて、へんなとこで正反対だね」

まどか「…うん」

さやか「足りないところを、3人で補っていけたらいいね。仁美も一緒にさ」

まどか「…できるかな?」

さやか「うーん。まどかがその気になってくれないとできないかな」

まどか「…」

まどか「そうだね……うん。私、頑張る」

まどか「あたしが頑張らないと、さやかちゃん、勝手に契約してボロボロになっちゃいそうだもんね!」

さやか「…おいこら。なんて縁起でもないことを」

121: 2013/10/29(火) 21:09:54.13 ID:Ehjw1bIC0
ほむらside

翌日から魔女退治の見学がスタートした
門限がないとはいえそう遅くまで平日に連れ出すことはできないので、特に休日に集中的に戦闘を行った

…失敗だったかもしれない
戦闘を重ねる度に二人の魔法少女への憧れは深まっていった
巴マミの、優雅で圧倒的な戦闘はやはり刺激的過ぎた

役割分担では、必ず私が二人につき、彼女が魔女に当たるという方式で戦ってきた
合理的ではある。彼女は何年もの間、この魔境見滝原を一人で守ってきた、多分現役では最強の魔法少女なのだ
後方支援も期待できるとあっては、そう苦戦することもない

122: 2013/10/29(火) 21:12:38.52 ID:Ehjw1bIC0
もちろん、それは想定内であり、誰でもこんな風にはできないのだと
私が無様に敗北するところでも見せ付けてやろうと、たびたび役割の交換を申し出たのだが
そのたび、先輩に譲って、の一点張りで聞いてくれなかった

余談だが、面倒くさいから私はそれなりのベテランということにしてある
すなわち、この先輩は学年的な先輩という意味だ
…魔法少女の戦闘において、1年先輩だから何だというんだ

…どうやら、私の心臓のことをとっくに見抜いていたらしい
心配で気が気でなかった、今回、こんな形ではあるが協力体制を取れてほっとしている、とまで言われた
大体、彼女が私を切り捨てて逃げるなんて役割につくはずがなかった
どうしてそのことに思い至らなかったのか…

123: 2013/10/29(火) 21:14:58.36 ID:Ehjw1bIC0
それに、もし私が苦戦しているところを見せても、インキュベーターが

『君たちの素質は彼女をはるかに凌駕する』

『まどかは歴代でも最強の魔法少女になれるし、さやかだって努力を重ねればマミに肩を並べられるかもしれない』

なんていうに決まっている
事実なのだから反論のしようがない。巴マミだって肯定する

幾分私が傷つかないようにオブラートに包んでくれるだろうが、それはより一層惨めかもしれない

124: 2013/10/29(火) 21:18:15.24 ID:Ehjw1bIC0
だが、今回の時間軸において、美樹さやかは明らかにインキュベーターに不信感を持っている
具体的な願いを持っていない、ただ魔法少女に憧れているだけのまどかが契約を交わすことを、現段階では止めるはずだ
まして、憧れる理由が、『何もできない自分を変えたい』ならなおさら
まどかも、友人の忠告を無視できるような子ではない

しかし、今はまだインキュベーターへの不信感が勝っているが、いつ逆転するかわかったものではない
巴マミが体験ツアーを提案した時は驚くほど目を輝かせていた
かなり危ういように思える

まどかは、私が見る限り精神的に安定しており、当面は契約しないように思える
やはり、問題は美樹さやか本人
上条恭介への医者からの宣告がターニングポイントとなるだろう
そろそろ、その宣告がきてもおかしくない

125: 2013/10/29(火) 21:23:51.43 ID:Ehjw1bIC0
美樹さやかは、過去の時間軸では、ソウルジェムが魂そのものであるという事実にショックを受けていた
…知っていれば、契約しないのだろうか?
…わからない。今まで彼女と向き合ってこなかった

さすがに、魔女化の事実を知れば契約しないだろう
…しかし…魔女化を話したとして信じてくれるだろうか?
こればかりは証明のしようがない。インキュベーターを使うしかないが、あれははぐらかそうと決めたらとことんはぐらかす

それに、彼女の口から巴マミに伝わる可能性もある
巴マミの耳には、適切なタイミングで入れなくてはならない
というか、適切なタイミングがくるのか。できれば永遠に来てほしくない

――ならば、魂の話だけ、美樹さやかにする。それしかない
彼女の口から巴マミに伝わる可能性もあるが…それだけなら彼女も耐えられる…と思う

魂ならば濁り切ったらどうなるのか、となるかもしれないが、その時は魔法少女として氏を迎える、とでも言えば大丈夫ではないだろうか
別段不自然な話ではない

…インキュベーターみたいな手だ、と思うと自己嫌悪したくなるが

126: 2013/10/29(火) 21:25:35.99 ID:Ehjw1bIC0
QBside

鹿目まどかの悩みが解消されつつあるのは気がかりだが、それでも、二人の魔法少女への憧れが強くなっていることは実に好ましい
彼女たちとの交渉において、今、悩みがないということはたいした問題ではない

暁美ほむらにはわかっていない
資質を持つ者は、自分の人生を選ぶことはできないということを
逃れられないレールに拘束される対価として、才能を受け取っているのだから
それが、因果というものだ

127: 2013/10/29(火) 21:26:46.38 ID:Ehjw1bIC0



第5話:契約すれば問題ないよね?



128: 2013/10/29(火) 21:33:16.38 ID:Ehjw1bIC0
ほむら「――だから、ソウルジェムは私たちの魂そのものなの」

ほむら「これが壊れれば、私たちは氏ぬというわけ」

ほむら「ソウルジェムがソフトウェア、抜け殻の体がハードウェアと言ったところかしら」

さやか「」

…いきなり朝の6時に校舎裏に呼びだされて、転校生が、いきなり今まで隠していたことをあっけらかんと打ち明けた
…何が起こってんだろ?頭が追いつかない…これは絶対眠気のせいじゃない

ほむら「ゾンビみたいでしょ」

さやか「いや、そんな…」

思っちゃってたよ…。あたし、最低だ…

ほむら「いいのよ。私にとっては、もはやどうでもいいことだから」

さやか「そんな…」

ほむら「今から試すわよ」

さやか「……は?」

129: 2013/10/29(火) 21:39:53.23 ID:Ehjw1bIC0
ほむら「これが体から100m以上離れると、一時的に氏ぬの」

ほむら「でも大丈夫、体にくっ付ければちゃんと再起動するから」

ほむら「これを魔力も使って遠くに投げるから、氏んだことを確認してからとってきて」

さやか「いや、あたしが持って歩くとか、もっと安全な方法があるじゃない!何でそんな無茶するのよ!」

ほむら「あなた、言うこと聞く?」

…聞かないだろうなあ。氏ぬとなっては

さやか「いや、あの………ちゃんと生き返る保障って、あるの?」

ほむら「そういえばよくわからないわ。インキュベーター!」

QB「呼んだかい?」

さやか「え、こいつ、いんきゅべーたーって言うの?」

ほむら(あれ…これ教えたらバレる可能性も…いや、美樹さやかだから一回くらいは大丈夫ね)

ほむら「忘れなさい。とにかく!聞いていたでしょう?100%生き返る保障はあるのかしら?」

QB「すぐに戻せば、理論上は大丈夫なはずだけど、実際に魔法少女とソウルジェムが100m離れたことはほとんどない。ちょっと自信がないな」

ほむら「使えないわね。まあいいわ。行くわよ!」

130: 2013/10/29(火) 21:44:31.28 ID:Ehjw1bIC0
さやか「ちょっと待って…。今分かった」

さやか「あんた、あの体育の好成績、魔力を使っているな!?」

さやか「こんなちっこいの、あの運動神経なら、魔力を込めるまでもなく100m投げられるもん!」

ほむら「ええ。そうよ。なにか問題ある?」

さやか「大有りだよ!ずるじゃん!」

ほむら「心臓病で病み上がりの女の子に、健康な人と同じカリキュラムを課す腐った教育制度が悪いのよ!」

ほむら「体育の度に準備運動で貧血なんてやってられないわ!」

ほむら「そしてそんなことは今どうでもいい!とにかくやるわよ!」

さやか「いや、もうわかったから!いいよ、もう!キュゥべえだって認めてるし!」

ほむら「実際に見せておかないと、私の気がすまないの」

ほむら「あなたにショッキングな光景を見せて、契約への恐怖心を与えておかないと」

さやか「それをあたしに話したら、意味なくない!?絶対テンションおかしいよ!怖いんでしょ!?やめときなって――」

ほむら「うるさい!」

131: 2013/10/29(火) 21:46:46.01 ID:Ehjw1bIC0
叫ぶと同時に、転校生が『魂』を投げた
一瞬間をおいて体が崩れ落ちる
急いで駆け寄って脈と呼吸を調べると…本当にない
しかも、みるみる体が冷たくなっていく

QB「これは氏んでいるね。急いだほうがいいよ」

さやか「わかってる!」

あたしは大急ぎでソウルジェムをとってきて、転校生に駆け寄った
とりあえず胸においてみる。ピクリ、と動いたかと思うと、ガバッて起きた
ソウルジェムを胸に当ててブルブル震えてる。本当に怖かったんだ…

ほむら「…これでわかったでしょう。私たちはゾンビなの。ゾンビになりたくなかったら、契約なんてしないことね」

…何でこんなにゾンビを強調するんだろう…
ゾンビって転校生…が言うたびに、胸がズキズキする…

132: 2013/10/29(火) 21:51:11.90 ID:Ehjw1bIC0
さやか「やめてよ…そんなこと言わないで…」

さやか「あたし、転校生のこと――ほむらのこと、そんな風に思いたくない…」

ほむら「言ったでしょう?私は本当に気にしていないの」

ほむら「まどかさえ守れれば、ゾンビになろうが氏人になろうが、たいした問題じゃないわ」

…一体、まどかとほむらの間に、何があったって言うんだろう…」

さやか「この話、マミさんやまどかには…」

ほむら「していない。特に巴マミの耳には私の口からタイミングを選んで入れたい。どうか黙っていて」

さやか「…わかった。正直口は軽いほうだけどさ。これは流石に黙りとおして見せる」

さやか「任せるからね」

マミさん、知らないで契約したんだとしたら、相当ショック受けるだろうなぁ…
あたしにどうこうできる話じゃない。やはり魔法少女にお任せするしかないか

まどかじゃなくて、あたしにこの話をしたってことは、あたしのほうが契約する可能性があるって思ったのかな?
まどかは最近落ち着いてる感じだし

133: 2013/10/29(火) 21:53:34.61 ID:Ehjw1bIC0
…あれ?…ソウルジェムが魂――命だって言うのなら
――濁りきったらたら魔法を使えなくなるってキュゥべえは言っていたけど
それだけじゃすまないんじゃ…

――いや、ほむらがここまで体を張ってくれたんだ
今は、これ以上の追及はよそう
それに、この事実だけでも契約を拒む理由には充分だ

恭介の力になれないのは残念だけど、時間がかかっても治りさえすれば、あいつはすぐにでも世界に行ける
本当の天才なんだ。契約の力になんか、頼らないほうがいいのかもしれない


―――と、思えたのは、本当にまだ何も知らなかったからでしかなく…

134: 2013/10/29(火) 21:55:17.70 ID:Ehjw1bIC0
これにて投下終了です。まだ第5話途中です

139: 2013/10/30(水) 21:48:51.56 ID:4RkSgZio0
投下します

140: 2013/10/30(水) 21:50:21.75 ID:4RkSgZio0
その放課後、いつものように恭介のお見舞いに行ったんだけど…

恭介「もうほっといてくれないかな…。もうだめなんだ…」

さやか「どうしたのよー。そんな落ち込んじゃって!」

さやか「あー、いくらVIP待遇とは言え、病室で一人閉じこもってたらねー」

さやか「今度外出許可とろうよ!公園前にクレープ屋ができてさ、これがおいしいんだよね!なんと言ってもチョコクレープが――」

恭介「ほっといてくれないかな!!」

さやか「!……恭介…?」

恭介「指、もうだめなんだって…。先生が…」

さやか「そんな…。だって、まだリハビリ初めてちょっとじゃん!まだ諦めるには全然だよ!絶対ヤブだって!他の医者に――」

141: 2013/10/30(水) 21:57:40.86 ID:4RkSgZio0
恭介「もう充分だよ!!!それで感覚ひとつ戻らない。とっくに気付いてたさ…。みんなだって気付いてた」

恭介「君ぐらいだよ。来る日も来る日も無意味な励ましばかり。弾けもしない曲を聞かされる身になってくれ」

恭介「君が来るたびに、もうバイオリンを弾けないんだろうっていう現実を直視させられる。…憂鬱になる!」

恭介「…ひょっとして、君は僕をいじめてるのかい?」

さやか「…!」

恭介「…何て無意味な時間を毎日毎日過ごしてきたんだろうねえ、君は」

恭介「みんなみたいに見放してくれればいいんだよ」

恭介「バイオリンを弾けない僕に何の価値もない。生きてたって仕方が無い。違うかい?」

恭介「だからみんな見舞いに来なくなったんだよ。そっちのほうが、僕だってよっぽど楽さ…」

恭介「君も、もう来ないでもらえるかな!?」

142: 2013/10/30(水) 22:02:35.59 ID:4RkSgZio0
さやか「…」

恭介「…」

さやか「ごめん…」

恭介「…!…何で君が謝るんだ…」

さやか「あたしが追い詰めちゃったんだよね…?」

恭介「…え?」

さやか「あたし、ほんとに治るもんだと信じてたからさ。ごめんね、バカで」

さやか「医者でもなければ恭介でもないんだから、指のことなんて、わかるはず無かったのにね…」

恭介「…」

さやか「毎日毎日もバイオリンの話ばっかしてさ。恭介の気持ち全然考えてなかったよ」

さやか「恭介のことを追い詰めてるだなんて、考えもしなかった」

さやか「…小さいころからいつも一緒にいて、毎日お見舞いに来て、一緒に音楽を聞いて

さやか「…恭介のこと全部知ってる気になってた。何もわかって無かったのにね…。無神経にもほどがあるよね…」

143: 2013/10/30(水) 22:06:33.76 ID:4RkSgZio0
恭介「…」

さやか「…これだけは言わせてもらえないかな?」

恭介「…何だい?」

さやか「バイオリンなんか弾けなくたって、恭介は恭介だよ」

恭介「…そんな気休め聞きたくない」

さやか「あたしが言ったって仕方ないよね。バイオリンのことばっかり言ってたのは、私だもん」

恭介「…」

さやか「ほかの人っていっても、恭介のお見舞いにどんな人が来てたか、なんて知らないしねぇ…」

さやか「…だけどさ、恭介のお父さんとお母さんは違うよ」

恭介「君に何がわかるっていうんだよ。とっくに見放されてる」

さやか「ありえない」

恭介「だから、君に何が…」

144: 2013/10/30(水) 22:13:07.90 ID:4RkSgZio0
さやか「恭介が事故にあったって聞いて、病院にすっ飛んできた時さ、もうお父さんとお母さんいたんだよ」

さやか「気が気じゃないって感じだった。先生が出てきて、命に別状は無いって言われたとき、すごくホッとしてた」

恭介「…」

さやか「まあ、あれだよ、見放されたって感じたのは、たぶん、焦ってたんじゃないかな」

さやか「それを恭介に悟らせないように、そっけなくなっちゃったとか」

さやか「いや、実際のところはわからないけどね。それでも、恭介がバイオリンを弾けなくなったからって、見放すなんてありえない」

恭介「…」

さやか「…あたしが言ったって仕方ないよね。今度親子三人で話してみなよ。絶対大丈夫だから。」

恭介「…うん」

さやか「…もう帰るね」

恭介「――あ―」

145: 2013/10/30(水) 22:15:02.53 ID:4RkSgZio0
何もわかっていなかった
私が恭介を追い詰めてた。私のせいだ

恭介の才能がここで終わるなんて、いやだ

契約…契約すれば
ほむらには悪いけど。本当に申し訳ないけど
体が抜け殻になるだけじゃすまない、とてもひどい代償があるのかもしれないけど
それでも…

あれ?
でもそれって
…恭介にバイオリンしかないって言ってることに?
そんなの嫌…


………わからない。どうすれば…


146: 2013/10/30(水) 22:23:54.16 ID:4RkSgZio0
まどか「今日は早いね?」

さやか「……こんな日もあるよ」

まどか「ははーん。『二人の間には言葉は不要』ってやつだね!」

さやか「…それぐらい分かりあえていれば、良かったのにね」

まどか「…さやかちゃん?」

あたしはまどかの言葉を上の空で聞きながらぼんやりと視線を前に向けた。…え、あれって…

さやか「ねえ、まどか、あれ…」

QB「グリーフシードだね。しかも、孵化しかかっている状態だ」

まどか「キュゥべえ!」

さやか「何とかならない?」

QB「魔法少女じゃないと無理だね。僕と契約して――」

147: 2013/10/30(水) 22:29:31.84 ID:4RkSgZio0
さやか「ケータイは?」

QB「マミは、仕事には持っていかない主義なんだ。ほむらの方は知らない」

さやか「まどか!呼んできて!」

まどか「さやかちゃんは!?」

さやか「私はほむらにかける。ケータイ持ってるかもしれない」

まどか「わかった!すぐ逃げてね」

そう言うと、まどかは走っていった

148: 2013/10/30(水) 22:32:56.62 ID:4RkSgZio0
ほむらside

…美樹さやからの着信…――ッ!
 
ほむら「何!」

さやか「病院にグリーフシード。孵化しかかってるって、キュゥべえが」

やっぱり…統計より早いじゃない…

ほむら「すぐに行く!あなたは離れなさい!」

さやか「やだよ。恭介や病院の人はどうなるのさ?」

ほむら「私が間に合わせるわ!」

さやか「間に合うならいても問題ないね」

ほむら「…あなたに何ができると言うの!?向こう見ずになるなと何度言えば――」

さやか「契約すれば問題ないよね?」

ほむら「――!あなた、あれを知ってまだそんなことを…!?」

さやか「私だって、今、契約したくない。できれば急いでほしい。」

そう言って、電話が切られた。やはり魔女化まで伝えたほうが
――今はそんなこと考えている場合じゃない!

149: 2013/10/30(水) 22:35:52.34 ID:4RkSgZio0
さやかside

さやか「あんたの仕業じゃないでしょうね?」

QB「何が原因かが、そんなに重要かい?」

さやか「…あんたへの信用が、ますます無くなるだけだね」

QB「たいした問題じゃないね。もともとそんなものがあったのかさえ疑問だ」

QB「それに、君が契約するのは、もはや時間の問題さ」

さやか「…見てたの?」

QB「僕はいつも資質ある少女のそばにいる」

QB「まどかに行かせたのは、きっかけがほしかったからだろう?」

QB「君がマミの方へ向かうことが最善だったはずだ。身体能力では明らかに君に分がある」

さやか「…そうかもしれないね」

さやか「だけど、今、契約したくないとも思ってる」

さやか「こんな、何も心の整理ついていない状態で契約するなんて、ほむらを裏切る行為だから」

150: 2013/10/30(水) 22:37:56.11 ID:4RkSgZio0
QB「ずいぶん彼女に肩入れするんだね。彼女は何か隠しているよ?」

さやか「あんたも同じでしょ?」

QB「僕は有史より前から存在している。そのときから見聞きしてきたことを、全部話して欲しいのかい?」

さやか「……いいよ。もうあんたには何も聞かない」

QB「彼女も何も話さないと思うよ。肝心なことはね」

…確かにそうだ
そして、それを聞かないと、あたしは力になれない
…つまり、ほむらには、私の力なんて必要ないってこと
だからずっと秘密にしているんだ…

156: 2013/10/31(木) 21:31:53.59 ID:AkdF1m+10
ソウルジェムの強度なんて知らなかったし考えてなかった…
……や、柔らかい芝生にでも投げたってことで…
あの学校ならそれくらいありそうですし…

それでは投下します

157: 2013/10/31(木) 21:33:32.53 ID:AkdF1m+10
ほむらside

病院に着いたときには、すでに結界が形成されていて、巴マミが入っていこうとしているところだった
まどかもそこにいた

ほむら「私も……連れて行って…」

二人は私を見て驚いたようだった。ずいぶんひどい様相をしているんだろう。

QB「よく間に合ったね。まだ少し余裕がある。さやかも無事だよ」

インキュベーダーがテレパシーで語りかけてきた

まどか「さやかちゃんもいるの!?」

さやか「ごめんねー。ほっとけないしさー」

美樹さやかがインキュベーダーを媒介としたテレパシーで語りかける。まったく…

158: 2013/10/31(木) 21:35:19.93 ID:AkdF1m+10
マミ「まあ、間に合いそうだし結果オーライでいいじゃない。急ぎましょう」

そして、巴マミは、息絶え絶えの私に向かって問う

マミ「グリーフシードは無いの?」

ほむら「…全部……使い切った…」

マミ「これを使って」

巴マミがグリーフシードを私に差し出した

ほむら「いや…あなたが矢面に立つのだから…」

マミ「その状態じゃ、使い魔の相手もできないでしょう?私は魔力満タンだから。ストックもある」

と言って、ソウルジェムを見せた。確かにそうだった

「…ありがとう」

「お互い様よ」

159: 2013/10/31(木) 21:38:52.44 ID:AkdF1m+10
そして、浄化を終えて、まどかに切り出した

ほむら「今回は急ぐ必要がある。あなたは連れて行けない」

まどかはかぶりを振って答える

まどか「連れて行って」

…そういえば、大抵この結界内にまどかもいたな…

ほむら「だめよ。あなたに何ができると言うの?」

まどか「力になれなくてもいい!さやかちゃんをほっとくなんてできない!」

ほむら「何を馬鹿なことを……!言ったはずよ!自分を大切にしろと!」

ほむら「あなたがいなくなることで傷つく人がどれだけいるか少しは――」

マミ「暁美さん。今は時間が惜しい。その問答こそ時間の浪費よ」

マミ「……いつもの見学の要領でいきましょう。今までそれで問題もなかったじゃない?」

ほむら「…そうね。仕方ないわ。…まどか、あなた変わったわね」

契約なんて必要なかった。喜ばしいことかもしれないけど…

160: 2013/10/31(木) 21:41:13.86 ID:AkdF1m+10
……ここの使い魔が相手なら、まどかを連れて行っても何とかなるか…
問題はやはり魔女。過去の統計から言えば、私が相手をしたい
しかし、やはり譲ってはくれないだろう。無駄なことに時間をとられるわけにはいかない

それに、時間停止が不安定になっていることも気にかかる
ここに着く少し前から、予期せぬ停止の解除や、不発が起こっている
時間停止の過度な連続使用・連発の危険性はわかっていたので、これまではそれを避けるような戦術を組み立てていた
ゆえにここまで連続的に、長時間使ったのは初めてだった
統計上一番早い時間にグリーフシードが見つかったがために、いつ孵化するか分かったものではないと考えたからのことだが……

魔力が回復すれば元に戻るよう類のものではないらしい
この状態では魔女は相手にできない。やはり任せるしかない。

161: 2013/10/31(木) 21:42:52.57 ID:AkdF1m+10
しかし、大体の時間軸においては、まどかの話では
どうやら巴マミが浮かれていたと言うか、高揚しすぎていたことが敗因になっていた
……らしい。何故か自分を責めていたまどかがあまりにも痛ましかったので、詳細は聞いていないが…

今の巴マミにそのような様子は無い
巴マミが、通常の状態でワルブルギルス以外の魔女に負けるというのも考えがたい
そこまで心配する必要は無いんだろうか?

……いや、魔女自体は倒したことはあるが、私が巴マミと今回の魔女との戦闘を、この目で見たことは無い
決め付けるわけにはいかない。いつでも助けに入れる準備はしておかないと

162: 2013/10/31(木) 21:46:07.89 ID:AkdF1m+10
結界最深部までは苦も無くたどり着けた

さやか「ありがとう。間に合ってくれたね」

ほむら「契約していたら、どうしてくれようかと思っていたわ」

マミ「でも、間に合ったと言えるのかしら。これは。…いえ、間に合ったと言えるようにしないとね」

魔女の孵化と同時に、新たに出現した使い魔が襲い掛かってくる
確かに、二人を逃がす暇はなさそうだ。しかし、これは…

マミ「いくわよ!」

私は使い魔の相手をして、巴マミは魔女に向かっていく
あの魔女は過去の時間軸において、何回か巴マミに勝利した恐るべき魔女のはず――なのだが

巴マミが、マスカット銃を何丁も出し、連射する。全弾が当たり、魔女が吹っ飛んだ。
…何だ、これは。ここまで無抵抗な魔女は見たことが無い
仮に絶不調だったとしても、巴マミがこれに負けるものなのだろうか?

…そもそも、結界の構成こそ同じだが、私が見た魔女は、これよりかなり大きかった
形から何から何まで違う出現時間も統計と違う。別の魔女なんだろうか?
…そうとしか思えない。出現時間ならともかく、結界の構成が同じで魔女が違うなんて初めてだ

163: 2013/10/31(木) 21:48:25.50 ID:AkdF1m+10
巴マミは、華麗に舞いながら、盛大に銃を乱射している
油断は見えない。どうやらいらぬ心配だったらしい

マミ「ティロ・フィナーレ!」

巴マミが魔女に止めを刺そうとしたき、私は使い魔の相手をしながら、美樹さやかに魔女化の事実を伝えるべきか否かについて考えていた

しかし…


――統計は、そこまで狂わない


ほむら「――ッ!」

魔女が倒されたかと思いきや、それが見覚えのある、大きい魔女に変化した
あいつだ…!巴マミの頭に噛み付いてくる…!

164: 2013/10/31(木) 21:50:55.60 ID:AkdF1m+10
ほむら「間に合え…!」

私は時間停止をかけて駆け出す。うまく作動してくれた

こういうことか…!
経験は事象の予測に役立つが、同時に、突然現れたイレギュラーに対する思考停止、判断の遅れを引き起こす
現に彼女は全く動けないでいた

どうしてあの程度の大きいだけ魔女に、あの巴マミが何回も負けているのか疑問に思っていたが、こういうカラクリが…!

驚愕と恐怖に染まった表情の巴マミをどけると同時に時が動き出した
やはり調子がおかしい
私は完全に避けきれず、右手の手首が裂けた
鮮血が飛び散る。ぞっとするような噴出しようだった

165: 2013/10/31(木) 21:54:18.79 ID:AkdF1m+10
われに帰った巴マミが止血をしてくれた。…何とか戦える。私は魔女へと歩を進める

マミ「だめよ!止血だけじゃ…どれだけ血が出たと…!」

ほむら「自分のソウルジェムを見てみなさい」

マミ「…!」

ほむら「氏の恐怖が原因でしょう。その状態では浄化しても濁る。それでも、使い魔程度なら、問題ないわよね?」

マミ「でも…!」

ほむら「大丈夫。私にはあれを瞬頃する手段がある」

ほむら「あなたのおかげで魔力の残量も十分。この体調でも問題ない。二人をお願い」

マミ「グリーフシードはどのくらい――」

ほむら「今最悪なのは、あなたが戦闘不能になることよ」

マミ「――わかった…!」

巴マミが二人の方へ駆け出した
…そう、魔力の残量、体調ともに問題では無い。時間停止を使って爆弾を体内に送り込む。それさえ決めてやればいい
…問題は、やはり時間停止。発動しなかったら…途中で切れたら…

だが、巴マミなら、あの状態でも二人を逃がせるはずだ
この場において魔女を倒すことは必須ではない。時間稼ぎで十分だ

166: 2013/10/31(木) 21:56:52.69 ID:AkdF1m+10
…そもそも、巴マミを切り捨てて退避するはずではなかったのか
取り決めでもそうだったし、私自身そのつもりだったはずだ

…3週目からずっと敵対していた彼女に少し受け入れてもらうとこれだ
…こんな体たらくで、まどか以外切り捨てるだなんて失笑だ
これじゃ、ただみんなから逃げていただけじゃないか…
 

…今は感傷に浸っているときではない。集中しよう。
魔女は、自分が自由であると主張するように、フラフラと飛んでいる
右に左に上に下に。今は、あちらから仕掛けてくることはなさそう

167: 2013/10/31(木) 22:01:42.13 ID:AkdF1m+10
一歩一歩近づきながら魔女に発砲する
4発目までは気にも留めていなかったようだが、五発目が鼻と思しき部分に当たったとたん、こちらに口をあけて猛然と襲い掛かってきた
急所か何かだったのだろう。…落ち着け

まさに食われるという瞬間に、時間停止
…作動してくれた。後は爆弾起動、口に投げ込んで退避

…これだけだ――だったのだが、やはりうまくいかず――
――投げ込んで魔女の体内に送り込んで、三歩はなれないうちに、時間停止が勝手に解除され、爆発
私は吹っ飛び、結界内のなにかに頭をぶつけて――

168: 2013/10/31(木) 22:03:10.90 ID:AkdF1m+10
さやかside

現在時刻は午前1時
マミさんがほむらに応急処置を施し後、まどかは病院に運びこもうと主張した
だけど、マミさんが自分でもリスクなく治療できる、彼女も大事にすることを避けたいはずだととりなして自宅に運び込んだ

そして今、マミさん宅で続きの治療を行っている
まどかも、立ち会っている
あたしはあまりに遅くなってしまったことの謝罪をお母さんに電話でしているところ

169: 2013/10/31(木) 22:06:13.32 ID:AkdF1m+10
さや母「…門限を決めていなかったことは、さやかへの信頼からだったことはわかるわよね?」

さやか「わかってる。ごめんなさい。本当に悪いと思ってる。裏切ることになって、本当にごめんなさい」

さやか「…だけど、今は、何を言われ.たって帰れない。」

さや母「…理由もいえないの?」

さやか「…うん」

さや母「それは謝っているとは言わない。説明にもなっていない。」

さやか「…うん」

さや母「どう思われても、仕方ないということなのよ?」

さやか「…わかってる」

さや母「………お小遣い半年無し、ゲームと漫画は、全部捨てる」

さやか「あの、門限は…」

さや母「…今は変えない。今度同じことをしたら、本当に許さない」

さやか「…ありがと」

170: 2013/10/31(木) 22:07:18.46 ID:AkdF1m+10
そう言ったら、電話を切られた
まどかの方は、大変な事情があると察してもらえたらしく、不問になったらしい
日頃の行いが違うからね…。

電話を切ると、別室からマミさんが出てきた。

マミ「もう終わったわ。大丈夫。まだ起きないけど。鹿目さんは、もう少し看ているそうよ」

…良かった

171: 2013/10/31(木) 22:10:59.73 ID:AkdF1m+10
マミさんは、私の向かいに座った
意気消沈している感じ…何を言うべきかわからない。本当は黙っているべきなんだろう

…だけど、あたしはあいつのことを知りたい。あいつがその気なら、こっちから近づいてやる

さやか「あの…ほむらは、何をやったの?」

マミ「…時間を停めていたわ」

さやか「時間を停めた?」

マミ「自分と、自分に触れたものの時間を停められるみたい」

さやか「そんなこと、できるんだ……」

マミ「そういう魔法があること自体知らなかった。彼女も意図して習得したわけではないはずだけど……」

さやか「どういうこと?」

マミ「自分が最初に覚えた魔法以外の系統は中々覚えられないのよ」

マミ「まして、時間干渉みたいな強力なものとなるとね。元々使えたんでしょう」

さやか「その元々使える魔法って、最初に選ぶの?」

マミ「願いによって、最初から決まっているの。選択するものではないわ」

さやか「それって、つまり…」

マミ「暁美さんは。時間に関するお願いをしたってこと」

時間か、よくわからないな。それに関係する願い事って言っても……

172: 2013/10/31(木) 22:16:45.95 ID:AkdF1m+10
マミ「……あの、質問してもいいかしら?」

さやか「?」

マミ「暁美さんのこと、やけに勘がいいな、とか思ったことない?」

さやか「…あの、どういう…?」

マミ「あなたたちが始めて結界に入ったとき、暁美さんが助けてくれたでしょう?」

さやか「?…うん」

マミ「私が、暁美さんのお手伝いをすることはたまにあるんだけど、暁美さんが私を手伝うために結界に入ったことは、あの一回しかないの」

さやか「――ということは…」

マミ「その一回で、たまたまあなたたちが救われた」

さやか「…」

マミ「それと、魔法少女見学の件。普段は私と暁美さんで適当に魔女が出やすそうなところを練り歩くだけなんだけど」

マミ「彼女、たまに確信をもって結界のところまで誘導するの」

マミ「まるで、絶対に倒しておかないといけない魔女をわかってる、って感じに」

173: 2013/10/31(木) 22:21:11.69 ID:AkdF1m+10
…そういうこと……か

さやか「……転校前に、まどかがほむらに出会って、忠告をされたんだ

さやか「その少し後にキュゥべえが現れたんだけど…忠告の内容は、契約するな、ってことだった」

さやか「あたしたちがキュゥべえと会ったのはそれが初めてで、その前に魔法少女になるなって、いきなりまどかの前に現れて忠告」

さやか「タイミングができすぎてるから、忠告なんて言っておいてキュゥべえとグルなんじゃないかとも思ったこともあったけど」

さやか「キュゥべえが出るタイミングを知っていたのかもしれない」

さやか「後、会う前から、あたしとまどかのことを良く知っていたみたい。特に、まどかを守ろうとしてる」

マミ「それが、目的なんでしょうね」

マミ「…キュゥべえが、暁美さんとは契約した覚えがないとも言っていたわ」

174: 2013/10/31(木) 22:23:27.01 ID:AkdF1m+10
…できれば、ほむらの口から聞きたかった
でも、まだ聞きたいことが五万とある

マミ「暁美さんは、明らかに未来を先読みしている」

マミ「あなたたちのことも、出会う前から知っていた」

マミ「そして、時間に関する願い」

マミ「キュゥべえが契約した覚えもない……つまりこれは――」

マミさんが、確信した表情で言う

175: 2013/10/31(木) 22:23:55.93 ID:AkdF1m+10




「――タイムリープ」




176: 2013/10/31(木) 22:28:34.12 ID:AkdF1m+10
QBside

成程、可能性のひとつとして考慮はしていたが、そんな願いをね
これで暁美ほむらの行動と目的の意味がすべてわかった

もはや君はイレギュラーなどではない
少し特殊な魔法を使えるだけの、ただの魔法少女だ
我々の障害にはなりえない

もう、この時間軸での脅威は去ったと見ていいだろう
いや、永遠に取り除かれたと言える

君はこの時間軸で失敗したら、また時を元に戻すつもりなんだろう?
そうすれば、また、目的が達成される可能性が生まれる、と、君は思っているんだろうから

しかしだ
鹿目まどかの過ぎた才能から生まれる、彼女の破滅の未来
それが君が彼女を何度も救おうとしたことによってもたらされたものだと知ったら
君は――君のソウルジェムは、どれだけ絶望に染まるんだろね?

177: 2013/10/31(木) 22:32:50.72 ID:AkdF1m+10
これにて投下終了です。これにて第5話完です

なお、話数は示していますが、別に12話だの24話だの収まりのいい話数に収めようと考えているわけではありません
だからキリがよくない数字で終わることもあるかもしれません

178: 2013/10/31(木) 22:36:59.49 ID:k+7/kiwP0

再編ものだけど結構予想を裏切られて面白いな。ペースも良いし期待。

186: 2013/11/01(金) 20:45:31.41 ID:gBx1NpMx0
マミ「……完全に私のせいね」

さやか「何が?」

マミ「…見学のとき、必ず私が魔女に当たっていたでしょう?」

さやか「?…うん」

マミ「…何度か彼女は変わって欲しいって言ってきたんだけど、私はそのたび断っていたの」

マミ「心臓のことが心配だって言って」

さやか「ほむら、心臓が悪いの?…ってそういやそうだった」

さやか「そっか。魔力で強化してるんだね。そんな感じのこと言ってた」


187: 2013/11/01(金) 20:48:10.50 ID:gBx1NpMx0
マミ「心臓を強化すればそれだけ戦闘に使える魔力が減る。だから私が押し切っていつも魔女と戦っていた」

マミ「それで、今回も、阿吽の呼吸と言った感じで、私が魔女にかかっていったの」

さやか「そうなんだ」

マミ「未来がわかっていたと言うのなら…」

さやか「!」

マミ「あの時、本当は変わりたかったんでしょうね…。でも時間に余裕が無かった」

マミ「馬鹿な私が拒否することが、わかっていたんでしょうね…」

さやか「…」

マミ「私の思い上がりのせいで、暁美さんがあんな目に――」

さやか「違うよ」

マミ「違わないわ」

さやか「違うんだよ。…教えてくれなきゃ、わかるわけ無いじゃないじゃん」

マミ「それは…」

さやか「……何もわからなきゃ、力になんてなれるわけが無いんだよ」

188: 2013/11/01(金) 20:49:22.88 ID:gBx1NpMx0



第6話:あなたたちがいつ私の力になったことがあると言うの?



189: 2013/11/01(金) 20:54:34.39 ID:gBx1NpMx0
ほむらside

目を覚ますと、3人とも、私が寝ているベッドのそばにいた

……私、生きてたんだ

…よかった。いつ以来だろう、巴マミを助けることができたのは
まどかと美樹さやかも、1周目・2周目以来と思えるほどに友好的だ

もしかしたら……

ほむら「あなたたちが助けてくれたのね。迷惑かけたわ」

マミ「迷惑だなんて…あなたがいなかったら、どうなっていたか…」

マミ「本当に、ごめんなさい。…ありがとう」

ほむら「あら、お互い様って言ったのは、あなたじゃない?」

そして、なんともなしに窓を見た。…暗い

ほむら「今、何時?」

まどか「2時だよ」

ほむら「…ごめんなさい。私を待っててくれたのね。今すぐ帰りましょう。一緒に言い訳――」

さやか「ほむら」

ほむら「何?」

さやか「ほむらは、未来から来たんだよね?」

!!!

190: 2013/11/01(金) 20:58:37.71 ID:gBx1NpMx0
ほむら「……時間停止を時間跳躍に結びつけたっていうの?飛躍しすぎじゃないかしら」

マミ「キュゥべえ、飛躍してる?」

QB「していないね。あり得る範囲だよ」

ほむら「…」

さやか「もう、全部話して欲しい」

…だめだ。成り行きで話していいことではない
適切なタイミングで伝えなければ……また……
……そもそもいつが適切かさえ、私にはわからない……

ほむら「話せない」

美樹さやかは悲しげにため息をついて、言った

さやか「じゃあ、あたしは、あんたのことを、敵として見なきゃいけなくなる」

ほむら「……………え?」

…………嘘だ……

まどか「さやかちゃん!?」

……そんな……ここまできて……敵対?
………嫌!……もう嫌!嫌!……嫌…嫌……
いやだ…だけど…だけど…

191: 2013/11/01(金) 21:02:51.84 ID:gBx1NpMx0
マミ「暁美さん」

巴マミが伏目がちに言う

マミ「美樹さんだって、こんなこと言いたくないのよ?あなたは、私たちの命の恩人だもの」

マミ「あなたが悪い娘じゃないってことは、みんな知ってる」

マミ「いえ、消極的すぎる表現ね。あなたがいい娘だって信じたい。鹿目さんは確信しているわ」

マミ「…だけどね、わからないのよ。あなたがここまで秘密主義を取る理由が」

マミ「タイムリープのことを話せなかったことはわかるわ。言われたって、なかなか信じられる話じゃないもの」

マミ「だけど、それが知られて尚、何を、何故隠そうとしているのか、わからないの」

マミ「……だから、私は最低なことを考えてしまう」

マミ「暁美さんが守りたいのは鹿目さんだけで、あなたが望む未来に私と美樹さんはいないんじゃないか…って」

まどか「マミさん!いくらなんでもそれはないよ!」

ほむら「そんな…」

192: 2013/11/01(金) 21:07:38.16 ID:gBx1NpMx0
マミ「あなたは私の命を助けてくれた。こんなこと言っちゃいけないってわかってる」

マミ「だけどね……ふつう、隠し事って、後ろめたいからすることでしょう?」

ほむら「…」

マミ「だけど、みんなの命はあなたに救われた

マミ「だから、あなたが非道な目的を持っていないことを信じて聞く」

マミ「何も、教えてはくれないの?私たちが手伝えることは、本当に何もないの?」

気づいてしまった……
……もう、みんなと敵対するのは嫌だ
……あんな思いをしたくない

…だけど……だけど――

193: 2013/11/01(金) 21:16:19.45 ID:gBx1NpMx0
『あのさあ、キュゥべえがそんな嘘ついて、一体何の得があるってわけ?』


『私たちに妙なこと吹き込んで、仲間割れでもさせたいの?』


『どうしてかな。ただ何となくわかっちゃうんだよね。あんたが嘘つきだってこと』


『にわかに信じがたい話ね』


『ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな氏ぬしかないじゃない!』


『ほむらちゃん……どうしていつも冷たいの…?』


『ごめん、ほむらちゃん。私、契約する』

194: 2013/11/01(金) 21:19:49.80 ID:gBx1NpMx0



ほむら「………私は もう 誰にも 頼らない」


マミ「……どうして?」


ほむら「あなたたちが いつ 私の力に なったとことが あるというの?」


マミ「……確かに、私はあなたの足手まといでしかなかった」

マミ「だけど、知っていたら、力になれることがあるかもしれない。美樹さんや、鹿目さんだって――」


ほむら「あなたたちが いつ 私の 言うことを 信じてくれたと いうの?」


マミ「…え?」


ほむら「…誰も 何を言っても 信じてくれなかったじゃない!」


マミ「……そう、『私たち』のせいなのね…」

まどか「そんな…そんなのって…」

195: 2013/11/01(金) 21:23:27.50 ID:gBx1NpMx0
さやか「ほむら」

美樹さやかが両手で私の手を包んで、まっすぐ目を見て、言う

さやか「『違うあたし』が、あんたにどれだけ迷惑をかけてきたかなんて、知らない。知ったこっちゃない」

さやか「今、あんたの目の前にいるあたしは、あんたの力になりたいと思ってる」

さやか「どれだけ力になれるかなんてわからない」

さやか「『また』、迷惑かけちゃうかもしれない。それでも」

さやか「あたしは、あんたのことを知りたい。助けたい」



「――あたしは、あんたのことを信じたい」



196: 2013/11/01(金) 21:27:16.04 ID:gBx1NpMx0
………そうだ、この子は――さやかは――

転校してから、クラスで浮いていた私の心に土足で上がりこんで、傷つけて、へこませて、泣かせて、怒らせて――
――私のことを笑顔にしようとした。放っておいてくれなかった

…泣いたことのほうが多かったけど、それでも、いくらやめてといっても、私を見捨てなかった
体の弱い私のことを、いつも助けてくれた

魔法少女のまどかとの距離感に悩んでいたとき、事情を何も知らないくせに、相談しろと強要してきた

契約して、体を強くしたいといったら、自分が支えになるから、必要ないと言ってくれた


…だからこそ、私は、まどかのために願うことができた


何度も繰り返すうちに、彼女を切り捨てるために、1周目のことを忘れなくてはいけなかった



今にして思う


…どうして忘れることができたんだろう



197: 2013/11/01(金) 21:29:19.19 ID:gBx1NpMx0
……信じよう、さやかを
生まれて始めてけんかをした相手、確かに友達だった彼女を

私が契約してからは、正直迷惑だったけど、いつもまどかを守ろうとしてくれた
優しい、それゆえに、魔法少女に向いていない彼女を

さやかは、私が隠し事をしていると悟り、いつも警戒していた
そう、隠し事は後ろめたいからこそするものだから

仲間を疑わない巴さんや、誰も疑おうとしないまどかを守ろうとしてくれていたんだ

私が隠さなければ、きっと、受け入れてくれるはずだ

198: 2013/11/01(金) 21:31:34.06 ID:gBx1NpMx0
信じよう、巴さんを。素人同然の弟子を二人も三人も抱え込むことになっても、嫌な顔せずに受け入れてくれたお人よしを
みんなが私を拒絶する中で、自分も私の言うことを信じていなかったくせに、私自身を信じてを守ろうとした、正義の魔法少女を

あの時、巴さんは、みんなと私との間で疲弊していた
さやかが魔女になって、ポッキリ折れてしまった

……あの時は、何もかもタイミングが悪かったんだ
……まともな状態で、心中を図るような人じゃない
私は、知っているはずだ。わかっていたはずなのに…

彼女は、自分の運命を受け入れてくれるはずだ
彼女は、弱くなんて無い。何年もこの見滝原を守ってきた人なんだから…

199: 2013/11/01(金) 21:34:43.41 ID:gBx1NpMx0
信じよう、まどかを
どうしてまどかを信じず、まどかを救えるというのだろう
この子は、私の、一番の友達なんだ。私に、初めて希望を与えてくれた人なんだ

まどかはいつも私のことを信じてくれる……ただ、私がまどかのことを信じられなくなっただけだ


何度も繰り返して、みんなの嫌なところを見て、怖くなって
私は逃げていた。結局、私一人では何もできなかった

みんなが、私を見てくれた。私も、向き合おう


――もう、逃げない


「わかった」
深呼吸をして、もう一度言う
「全部話す」

200: 2013/11/01(金) 21:35:34.32 ID:gBx1NpMx0
これで投下終了です。これで第6話完です

まどか「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」【2】

引用: まどか「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」