219: 2013/11/02(土) 22:11:46.11 ID:bMcJLo6m0
魔法少女まどか☆マギカ コンプリート DVD-BOX (12話, 283分) まどマギ アニメ [DVD] [Import][パソコンもしくはPAL対応のプレイヤーにて再生可]
220: 2013/11/02(土) 22:12:25.21 ID:bMcJLo6m0



第7話:これを知らないと、私は前に進めない



222: 2013/11/02(土) 22:14:35.02 ID:bMcJLo6m0
私はすべてを話した

まどかと、巴さんに命を救われたこと
まどかが、私の一番の友達になったこと
舞台装置の魔女と戦って、二人が氏んだこと
まどかとの出会いをやり直したい、まどかを守れる自分になりたいと願ったこと

まどかが魔女になったこと

インキュベーターに騙されているとみんなに話しても、誰も信じてくれなかったこと
さやかが、魔女になったこと
私が頃したこと
頃し合いになったこと
まどかに、契約する前の自分を救ってくれと頼まれたこと
まどかを頃したこと

もう、誰にも頼らないと決めたこと

まどかが、救済の魔女となって、世界を滅ぼしたこと

――すべてを

223: 2013/11/02(土) 22:17:35.98 ID:bMcJLo6m0
ほむら「――信じてもらえるかしら?」

さやか「信じるよ……やっと、話してくれたね、ほむら」

まどか「……私の………私のために?」

ほむら「そうよ」

まどか「……どうして?……今の私は、ほむらちゃんに何もしてない」

まどか「どうして、そんなに頑張れるの?」

ほむら「……勝手な自己満足よ。もう、こんなことでしか、『まどか』を守ることができない」

ほむら「どの、何の、いつの『まどか』を守ろうとしているのか、もうわからない……とっくに迷子になっていたの」

ほむら「こんなことで、あのまどかを、今のまどかを救えるわけなんてない。わかってる」

ほむら「だけど……それでも私は……」

224: 2013/11/02(土) 22:20:45.75 ID:bMcJLo6m0
まどか「……ごめん。ほむらちゃん。……そうじゃなくて……」

まどか「あの、私は、今の私は、ほむらちゃんに何もしてないけど、友達だって思ってる」

ほむら「……え?」

まどか「もし、ほむらちゃんが今の私を友達だって思えないなら、思えるようにする」

まどか「私は、友達を、ほむらちゃんを守りたい。ほむらちゃんが私を守ってくれるなら、とても嬉しい」

まどか「――それじゃ、だめかな?」

ほむら「…それ以上のことなんて、望めるはずがない。…ありがとう、まどか…。」

信じてもらえた……わかってもらえた……こんなこと、初めてだ…

後は――


マミ「……証明できる手段はないかしら?」


225: 2013/11/02(土) 22:24:19.99 ID:bMcJLo6m0
顔をしかめて、腕を組んでいた巴さんが口を開いた
……大丈夫。巴さんは信じようとしてくれている。絶対に認めたくない話を

ほむら「何を証明できればいいかしら?」

マミ「……魔女になるということ。」

ほむら「残念だけど、それは無理。」

マミ「……ソウルジェムが、魂だという話は?」

ほむら「ソウルジェムが体から100m以上離れると、一時的に氏ぬ。これは証明になるかしら?」

マミ「……なるでしょうね……自分で、確かめたい」

ほむら「ええ。それが一番よ」

と言って、私がソウルジェムを差し出そうとすると

マミ「私が、確かめたいって言っているのよ」

と、自分のソウルジェムを、私たちに差し出した

226: 2013/11/02(土) 22:27:48.31 ID:bMcJLo6m0
ほむら「……インキュベーター曰く、理論上は大丈夫なはずだけど、必ず再起動するとは断言できないそうよ?」

マミ「……それでも、これを知らないと、私は前に進めない」

ほむら「……わかった」
 
と言って、私が受け取ろうとすると

マミ「できれば、美樹さんにお願いしたい」

マミ「……暁美さんなら、帰ってくるとき時間停止を使うでしょうから」

マミ「あなたに時間停止を使わせられない。不安定なんでしょう?」

ほむら「……よくわかるわね。」

マミ「あの時、あなたの魔力自体は余裕があった。それなのに二度も時間停止後に大怪我をしたとなると、ね」

227: 2013/11/02(土) 22:29:50.61 ID:bMcJLo6m0
さやか「……わかった。どこまで行けばいいかな?」

マミ「外に出て、右にしばらく進むと公民館がある。100mは超えているはずね。」

さやか「了解。超特急で帰ってくる」

と、言うとまどかが、行く手をふさぐようにさやかの前に立ち上がった」

さやか「まどか……マミさんは、ほむらの話を信じようとしてるんだよ」

さやか「これを知らないと進めないって言ってる。わかるでしょ?」

まどか「……わかんないよ」

マミ「ごめんなさい。こうでもしないと、私の気がすまないのよ」

さやかは、立ち尽くしているまどかを置いて出て行った

228: 2013/11/02(土) 22:36:07.53 ID:bMcJLo6m0
マミside

目が覚めると、暁美さん、美樹さん、鹿目さんの三人が私をのぞき込んでいた

寝て起きるという日常では経験しないような嫌悪感
……確かに、気絶・就寝とかより、氏という言葉が合うかもしれない

マミ「どうだった?」

ほむら「氏んでた」

二人も、沈黙で肯定した

マミ「そう…」

ソウルジェムが魂……命そのもの……
それが濁りきったら、氏に類することが起こるだろうという推測は成り立つ
……魔女になると言うのも……ありえる範囲……ね……

マミ「信じるわ。聞き分けが悪くてごめんなさい。ほかの時間でも、苦労したんでしょうね」

ほむら「……いえ、ここまで聞き分けがいいのは、初めてだわ」

マミ「ひどいわねぇ」


QB「ここまで知っていたとはね」


229: 2013/11/02(土) 22:39:25.72 ID:bMcJLo6m0
いつの間にかいなくなっていたキュゥべえが戻っていた

マミ「……キュゥべえ……今の話、事実なのね?」

QB「事実だよ」

マミ「何で教えてくれなかったの?」

QB「訊かれなかったからね。大体、君は教えたところで契約していたんじゃないかな?」

マミ「それはそうだろうけど……後から教えてくれてもいいじゃない」

QB「教えたら、君は魔女になる前に氏ぬだろう?」

マミ「それだと困るの?」

QB「僕たちは、魔法少女が絶望して魔女になるときに発生するエネルギーを使って、宇宙の寿命を延ばしてるんだ」

QB「思春期の少女の感情の起伏から生じるエネルギーは、実に莫大なんだよ」

マミ「宇宙ねえ。私は見滝原で精一杯よ」

230: 2013/11/02(土) 22:43:28.54 ID:bMcJLo6m0
マミ「それにしても、あなたがいなくならなかったら、あんな体験しないで済んだのに」

QB「君が証明を求めるだろうことは予測がついていたからね」

QB「どこかのタイミングでご破算になればと思っていたんだけど」

マミ「どこまで原黒なんだか」

QB「この話を知られると、大概怒られるんだけど、君はそれほどじゃないね?」

マミ「私の願いは、命をつなぎとめることだったから、ソウルジェムが濁りきったら氏ぬんじゃないか、とは思っていた」

マミ「あなたの言うように、氏が5秒程早まっただけよ」

マミ「鹿目さんや美樹さんが契約した後だったら、本気で怒っていたでしょうけど」

QB「君は、二人が契約しないと思っているんだね?」

マミ「だって、私みたいに命がかかった状況じゃあるまいし、この事実を知って尚、契約しようとなんてするわけないじゃない」

231: 2013/11/02(土) 22:48:29.87 ID:bMcJLo6m0
さやかside

ほむらとマミさんは話があるということで、あたしとまどかは、今、二人の送るという申し出を断ってタクシーで帰宅している
……収入を絶たれたあたしのお小遣いは早くも底をつきつつある

さやか「まどか、まだ契約する気がある?」

まどか「……ううん。もう絶対にできない」

さやか「だよね」

まどか「さやかちゃん…さやかちゃんも、契約なんてしないよね……?」

さやか「……うん。当たり前じゃん」

まどか「……」

232: 2013/11/02(土) 22:53:05.13 ID:bMcJLo6m0
ところでまどかはイベント事が大好きで、エイプリルフールにはいつもどでかい嘘を仕込んでくる
なのだが、いかんせんどんな仕込みをしても態度ですぐにバレてしまう
慣れないことはするもんじゃないよー、と、あたしが茶化すまでが恒例行事だ

嘘が嫌いだからこそ、嘘が苦手なんだろうと思っていた
そして、あたしたちは変なところで似ている

……それを今、強烈に実感している

233: 2013/11/02(土) 22:55:54.52 ID:bMcJLo6m0
ほむらside

ほむら「杏子を仲間に入れようと思う」

マミ「…確かに、この近辺の魔法少女では頭が一つ抜けているわね。でも、佐倉さんだけでいいの?」

ほむら「他は役に立つレベルではないわ」

ほむら「………いえ、彼女以外に心当たりがないわけじゃないけど、味方になってくれるかわかったものじゃない」

ほむら「不安要素が大きすぎる」

マミ「佐倉さんなら、確実に仲間になってくれるの?」

ほむら「ええ。相応の見返りを用意すれば問題ない」

マミ「どういう見返り?」

ほむら「私は、ワルプルギスを倒した後、つまり一月後には、見滝原を出るつもりでいるの」

ほむら「その後、私の居場所、というか立場に杏子が入ってくる、と言うのはどうかしら?」

ほむら「彼女も、見滝原で魔女を狩れることに魅力を感じるはず」

234: 2013/11/02(土) 23:02:02.34 ID:bMcJLo6m0
マミ「それは交換条件になるのかしら?」

マミ「彼女が今、見滝原で魔女を倒しても、私は咎める気はないのよ?度が過ぎたら話は別だけど」

ほむら「……向こうがどう思っているのかはわからない」

ほむら「現に、今の今まで彼女は風見野に移ってから、見滝原で魔女を狩ったことはないはずよ」

マミ「確かにそうね……」

ほむら「少なくとも、別の時間軸では、ここの縄張りを提供することで協力してくれた」

ほむら「…度が過ぎたら、の度を広くしてもらえれば受けてもらえると思う」

マミ「…あなたが言うならそうなんでしょうね……ええ、そうしましょう」

マミ「私も、できる限り彼女に歩み寄ってみる。時が心を溶かしてなんとやらに期待するわ。お互いにね」

ほむら「そういうわけで武器の調達と杏子との交渉に専念したい。どこにいるかよくわからないから」

ほむら「グリーフシードの調達、お願いできるかしら?」

マミ「ええ、蓄えもあるし、しばらくは大丈夫でしょう」

マミ「ただ、ワルプルギス戦の前にはできるだけ多くためておきたいし、あなたも早めに佐倉さんを見つけてね」

ほむら「わかったわ」

マミ「それと……ワルプルギスの夜を倒したら、本当に出て行っちゃうの?二人とも、寂しがるわ」

ほむら「……私の問題よ。誰になんと言われようと変わらない」

マミ「そう……」

235: 2013/11/02(土) 23:03:58.61 ID:bMcJLo6m0
その後、もうすっかり遅くなってしまったので、巴さんの家に泊まることになった
朝まで他愛のない話をして、そして、気づいてしまった


この人は、あの夜を越えたら……氏ぬ気だ


正義を掲げて戦ってきた彼女だ。自分が、限界を迎えたとき、人を襲う魔女になる……耐えられるはずがない
その前に氏ぬ、と言っても、実際にそれができるかなんてわからない。そんなに甘い世界じゃない
……あの時も、たぶんとっさにそう考えた

今は、打倒ワルプルギルスを最後の目標にしているんだろう。それを達成したら……。
だけど、理由は違えども、私も同じようなことを考えているんだ
……私に巴さんを止める資格なんて…あるんだろうか?

236: 2013/11/02(土) 23:06:46.51 ID:bMcJLo6m0
……今更の今更だけど、ワルプルギスを倒した後の巴さんの心配をするなんて、ね
リスク度外視にさやかの元へ駆けつけた時から、とっさに巴さんを助けた時から、すでに気づいていた

でも、信頼の代償に、ひどく弱くなった
……今の私に、まどかのための犠牲を許容できるんだろうか

……-できるできないじゃない
その時が来たら……もし来たら……
……切り捨てなきゃいけないんだ……

237: 2013/11/02(土) 23:08:47.18 ID:bMcJLo6m0
マミ「ねえ」

ほむら「何?」

マミ「私が限界になったとき、氏ぬことをためらったりしたら、あなたにお願いしてもいいかしら?」

ほむら「……構わないわ」

マミ「ありがとう。あなたはどうする?」

ほむら「私は、絶対に魔女にはならない」

マミ「強いのね」

ほむら「……あなたほどじゃない」

246: 2013/11/03(日) 23:06:11.66 ID:hMUMStjK0



第8話:彼の隣に立ちたいだけなんじゃないの?



247: 2013/11/03(日) 23:10:22.76 ID:hMUMStjK0
仁美「さやかさんは、上条君のことを、どう思っていますか?」

翌日の昼休み、仁美と二人でいるときに唐突に質問をされた

さやか「ただの幼馴染だよ。ちょっとー、まさか仁美まであんな――」

仁美「私は、上条君のことが好きです。」

さやか「!?」

あー、そっか、ほむらが言ってたアレ、仁美のことだったんだ……
全く気付かなかった。思いもしなかったよ……告白成功率100%だっけか、ハハ……

248: 2013/11/03(日) 23:12:28.97 ID:hMUMStjK0
仁美「あなたは、私に、嘘をつくんですか?」

さやか「………ごめん。あたしも、恭介のこと、好き。」

仁美「まあ、クラスメイトはみんな知っていましたけどね。」

さやか「………でも、伝える気は無い。それはあたしの自由だよね?」

仁美「ええ、さやかさんの自由です。私が気持ちを伝えるのも、私の自由です。」

さやか「……そう……だね」

仁美「いつ伝えるかも、私の自由です」

さやか「…え?」

仁美「明日、お見舞いに行ったときに伝えます」

249: 2013/11/03(日) 23:17:14.91 ID:hMUMStjK0
さやか「……優しいね。仁美は」

仁美「……やさしいとは思えませんわ」

仁美「友達から好きな人を取ろうとしているというのに、どんな結果になっても、友達であり続けたいと思っているだけなんですから」

さやか「…奪うってのはどうなんだろ。別に恭介はあたしのものじゃないし……」

仁美「あなたが一番上条君の事を見ていたじゃありませんか」

さやか「…ただ長かったってだけだよ。あたしは、恭介のこと何もわかってなかった」

仁美「ならば、私に一体何がわかっていると言うのでしょうね?」

さやか「…」

仁美「相手のことをすべて理解していないと、告白する資格すらないとおっしゃるんですか?」

さやか「…わからない」

仁美「とにかく、明日伝えます」

さやか「…そう」

仁美「いいですか?今日決心がつかなくとも――明日、学校を休んで伝えてもいいんですよ?」

仁美「学校なんかよりも、大切なものはたくさんありますから」

さやか「…仁美が言うか」

250: 2013/11/03(日) 23:19:36.70 ID:hMUMStjK0


そう。学校よりも大事なことはある

あたしは、後の授業は全部サボった


251: 2013/11/03(日) 23:21:15.97 ID:hMUMStjK0



「ほむら?今屋上。報告することがあるんだ。今から来てくれない?」



258: 2013/11/04(月) 22:52:07.98 ID:0FwiI57s0
投下します

259: 2013/11/04(月) 22:53:09.08 ID:0FwiI57s0
さやか「契約することにしたんだ」

ほむらが浮かべる表情は――失望と落胆……かな……胸が痛い

ほむら「理由を聞かせて」

さやか「恭介の腕を治したい」

ほむら「…」

260: 2013/11/04(月) 22:57:05.14 ID:0FwiI57s0
さやか「……てか、これじゃ答えになってないよね」


さやか「……恭介はね、本当の天才なんだ。その恭介が、事故にあって、手が動かなくなった」

さやか「こんなのおかしいって、ずっと思ってた。何で事故にあうのがあたしじゃなかったんだろうって」

さやか「そして、もう治らない――ホントはだいぶ前から契約したかったんだけどさ」

261: 2013/11/04(月) 22:57:33.12 ID:0FwiI57s0
さやか「恭介、追い詰められてた。バイオリンを弾けない自分は生きてても仕方ないって」

さやか「こんなんで契約したって、何の解決にもならない。同じようなことが起こったら、また恭介は絶望する」

さやか「先延ばしにしかならないんじゃないかって思ってた」

さやか」まあ、そんな風に追い詰めちゃったのはあたしなんだけどさ」
 
さやか「それにさ、なんか違うよ。それしかないからバイオリンやるしかないってのは」

さやか「あたしは、ただバイオリン楽しんで弾いてる恭介が好きなんだから」

262: 2013/11/04(月) 23:07:13.27 ID:0FwiI57s0
ほむら「……じゃあ、なぜ……?」

さやか「今は仁美がいる」

ほむら「!?」

さやか「仁美は、恭介の才能じゃなくて、恭介そのものを見てる」

さやか「きっと支えになってくれる。どんなにいい子か知ってるし、任せられるって思ったんだ」

さやか「偉そうなこといえる身分じゃないけどね」

ほむら「あなたは――」

ほむら「あなたはどこまで愚かなの……」

さやか「……愚か……だよね……そりゃあ……」

263: 2013/11/04(月) 23:12:17.06 ID:0FwiI57s0
ほむら「……上条恭介と付き合う気は本当にないの?」

さやか「……うん」

ほむら「理解できない。あなたが志筑仁美の立場に立とうとは思わないの?」

ほむら「あなただって彼の支えになれる。あなたが適任だと彼女も思った。彼女がどんな思いであなたに譲ったか…」

さやか「想像できないんだよ。私が腕治った恭介の隣にいるのが。住む世界が違う。距離があったんだよ。あたしの中ではさ」

ほむら「最近は距離が縮まったんじゃないの?」

さやか「治ったら、また開く」

ほむら「時間をかけて距離をつめていけば…」

さやか「仁美は、明日告白するんだよ?」

ほむら「付き合ってから心の距離を縮めていくという手も…」

さやか「こんなに長く一緒にいて、距離があるなんて、見込みがないと思うんだよ」

ほむら「……」

ほむら「あなた、さてはいつかみたいに上条恭介と気まずいことになったわね?」

ほむら「それで彼と向き合うことから逃げているだけなんじゃないの!?」


さやか「ねえ――ほむらとまどかはどうなの?」

ほむら「………え?」

264: 2013/11/04(月) 23:14:32.15 ID:0FwiI57s0
さやか「性別がどうのとか言わないでよ?ほむらはまどかと友達にすらなる気がないよね?」

さやか「今も、ワルプルギルスの夜を倒した後も。そして、全部が済んだらまどかのそばから離れる気でいる」

ほむら「……どうしてわかるの?」

さやか「あれだけ打ち明けたってのに、あんたは未だにまどかとどこか距離をとってる」

さやか「気の遠くなるくらい繰り返してでも、救おうとしている相手だってのに。」

ほむら「…」

さやか「ほむらがいなくなったら、まどかは間違いなく悲しむよ?だけど、私はそれをどうこう言うつもりはない」

さやか「ほむらが自分で決めたことだからね。あんたの気持ちは尊重されるべきだと思う」

さやか「――だから、私の願いも認めてほしいんだ」

265: 2013/11/04(月) 23:17:10.69 ID:0FwiI57s0
ほむら「……あなたは自分の選択が間違っていると気づいている」

ほむら「……だから、そんな脅迫まがいなことを言ってまで、私に認めさせようとしているのよ」

ほむら「……返答に窮したら持ち出してきたわね?……ええ。まさに脅迫よ」

さやか「…もう、決めたことだからさ」

ほむら「………私は、あなたに自分の持っている、あなたが知るべき全ての情報を提示した」

ほむら「それでも尚、契約するというのなら、もう知らない」

さやか「…」

ほむら「………契約前に、まどかと巴さんにも話しておきなさい」

さやか「…わかってる」

266: 2013/11/04(月) 23:19:50.16 ID:0FwiI57s0
沈黙があたしたち二人の間に横たわる。ほむらは逡巡しているようだった
そして、ためらいがちに口を開いた

ほむら「私は何度もあなたを見限ってきた。…見頃しにしてきた」

さやか「言ったはずだよ。そんなの知ったことじゃないって。あたしだってこんな人の忠告を無視して勝手に自爆するようなやつ――」

ほむら「だけど」

ほむら「あなたの周りの人が、あなたを見限ったことはなかった」

さやか「!」

ほむら「よく覚えておきなさい。それと」

ほむらがあたしの胸倉をつかんだ

ほむら「勝手に氏んだら許さない。私は、誰が氏のうが切り捨てる覚悟はあった」

ほむら「……その気にさせたのは、あなたなのよ?責任取りなさい!」

それだけ言って、ほむらは出て行った

267: 2013/11/04(月) 23:23:37.72 ID:0FwiI57s0
5分後にまどかが来た。私の話をほとんど反論せずに聞いてくれた
止めても無駄だってわかったみたい。長い付き合いだからね…

まどか「本気なんだね?」

さやか「うん」

まどか「…あのね、さやかちゃん。ひとつだけ、言いたい事があるの」

さやか「何?」

まどか「ほむらちゃんが、私を守るために今までがんばってきたって聞いたときね……嬉しいっていうより、悲しかった」

さやか「…」

まどか「苦しかった。罪悪感だって感じた」

さやか「……ほむらに言っちゃ駄目だよ?」

まどか「わかってるよ……でもね、さやかちゃん、これを上条君も背負っていくことになるんだよ?」

さやか「……墓まで持っていく。墓になんて入れるかわかんないけどさ」

まどか「さやかちゃん……」

まどかが私に抱きついてきた

まどか「お願い……お願いだから長生きして。そんなこと言わないで……」

さやか「……あたしだって、そう簡単に氏ぬ気はないよ」

268: 2013/11/04(月) 23:25:44.34 ID:0FwiI57s0
放課後、三人でマミさんの家を訪れた。マミさんは私の話を驚愕の表情で聞いていた

マミ「……正気?」

さやか「はい」

マミ「…暁美さん、鹿目さん。ミスドで新作が出たの。売り切れ必氏だって言うから、今から買ってきてくれないかしら?」

まどか「え?」

ほむら「……わかったわ」

まどか「え、ほむらちゃん?」

269: 2013/11/04(月) 23:26:54.11 ID:0FwiI57s0


ほむら『いやな役を任せてしまったわね…』

マミ『大丈夫。でも、結果は期待しないでね』


270: 2013/11/04(月) 23:28:51.45 ID:0FwiI57s0
道中にて

まどか「ほむらちゃん。あれ、どういうこと?」

ほむら「私たちに聞かれたくない話をするということよ」

まどか「それって…」

ほむら「私は、さやかがどういう性格をしているかわかっているけど、巴さんはまだよく知らない」

ほむら「多少強引にでも止めようとするでしょうね」

まどか「……ほむらちゃんは、さやかちゃんを止められないって思ってるんだね?」

ほむら「まどかもでしょう?」

まどか「……うん」

271: 2013/11/04(月) 23:32:30.98 ID:0FwiI57s0
ほむら「さやかの意志は固い。放っておいても勝手に一人前になるなら、構わないんだけど……」

まどか「……すぐに魔女になっちゃうんだよね?」

ほむら「ええ。魔法少女に向いてないのよ。致命的に」

ほむら「……すぐに、壁に当たることになるわ。時間さえあれば、乗り越えられるんでしょうけど、魔法少女にそんな時間は与えられない」

まどか「私、本当に情けない。さやかちゃんが、酷い目にあうってわかってるのに、止められない。友達なのに……」

ほむら「……まどかにしかできないことがある」

まどか「……え?」

ほむら「さやかの隣にいてあげて。あの子がどんなに拒んでも」

まどか「……『拒む』?」

ほむら「誰にだって一人になりたいときはある。だけど、一人ではどうにもならないこともある」

ほむら「さやかが一人で乗り越えられなかったら、取り返しのつかないことになるの」

まどか「…」

ほむら「さやかと一緒に悩んであげて。あなたにしかできないことよ」

272: 2013/11/04(月) 23:39:04.69 ID:0FwiI57s0
二人が出て行った後で、マミさんが切り出した

マミ「……あなたたちに、魔法少女になることを勧めたことは間違いだった。自分の無知が恥ずかしい。愚かだったわ」

マミ「……でも、あなたも大概よ」

さやか「…ほむらにもいわれたよ」

マミ「あなた、ワルプルギルスの夜と戦うのにもついてくるつもりなの?」

さやか「うん」

マミ「迷惑ね。正直言って」

さやか「……え?」

マミ「私たちが誰にも頼らないで二人で動いている理由がわかる?足手まといを排除するためなの」

さやか「足手まとい……」

マミ「魔法少女になって一ヶ月未満で、役に立つはずがない。というより、暁美さんの話を聞いていたでしょう?

マミ「実際ほとんど何もせずに氏んでいったそうじゃない?」

さやか「……戦わずして魔女になったのがほとんどだって言ってたね……」

マミ「よく覚えているわね。何で魔女になったかも聞いていたかしら?」

さやか「……魔女との戦闘よりは、精神的絶望が原因で、やけになってグリーフシードを使うことを拒絶したこともあるって……」

マミ「重症よね。どれだけ絶望したのかしら」

さやか「…」

273: 2013/11/04(月) 23:40:59.57 ID:0FwiI57s0
マミ「…何で絶望したのかしら?」

さやか「…?」

マミ「上条君がバイオリンを弾けるようになればそれでいい」

マミ「彼が友達にとられても構わない」

マミ「自分は人間をやめてもいい」

マミ「魔女になる前に自分で氏ぬ」

マミ「――そんな願いと覚悟を持つ人が、そうそう絶望なんてするものかしら?」

さやか「…」

マミ「……その願いが本当なら、ね」

274: 2013/11/04(月) 23:41:50.69 ID:0FwiI57s0


『契約をした時点では、大抵自分の本当の願い事――自分心の奥底に気づいていないの』

『それに気づいてしまったら、後に残るのは後悔と絶望だけ』


275: 2013/11/04(月) 23:46:23.42 ID:0FwiI57s0
マミ「あなたは上条君にかけた言葉を清算したいだけ――彼の隣に立ちたいだけなんじゃないの?」

さやか「……そうかもしれない」

マミ「なら、契約したって絶望するだけね。志筑さん、だっけ?彼女から告白した場合の成功率も100%だそうよ?まあ、わかってるわよね」

マミ「あなたが先に告白すれば、あるいはうまくいくかもしれないけど、成功したといい難い結果しか得られないでしょうね」

マミ「上条君と何か諍いがあるたびにあなたは思う。『あたしはこんなにあんたに尽くしたのに』って」

マミ「ええ。それを言えるだけの対価を払うことになるわ。言う資格はあるでしょう」

マミ「……言った後の結果はご想像通りだけど」

マミ「隠し通す?果たして隠し通せるものかしらね?」

マミ「少なくともあなたには無理よ。知り合ったばかりだけど断言できる」

マミ「まあ、付き合っている相手に心の奥底を隠し通せるような賢明な人は、こんな愚かな選択はしないでしょうから、前提がそもそもおかしいわね」

さやか「…」

276: 2013/11/04(月) 23:48:34.76 ID:0FwiI57s0
マミ「契約した時点であなたが彼と付き合える未来は訪れない」

マミ「今まで通りの幼馴染としての付き合いさえ難しいでしょうね」

マミ「契約さえしなければ、志筑さんが許すだろうとあなたが考えるラインで接することができたのに。残念ね」

マミ「じゃあ、あなたが二人を遠くから見守って耐えられるかといえば、暁美さんが話した過去の時間軸の通りよ」

マミ「陰から指をかんで勝手に絶望して魔女になるわ」

さやか「…」

マミ「本気で、魔法少女になるなんて言っているの?」

278: 2013/11/04(月) 23:52:19.00 ID:0FwiI57s0
さやか「確かに、私の願いには下心があるのかもしれない。……あるんだろうね。ほむらの話を聞く限りでは」

マミ「わかっているなら…」

さやか「だけどさ、恭介にバイオリンを弾いてもらいたいってのも、本当の気持ちなんだよ」

さやか「後になって後悔するのかもしれない。仁美が恭介の隣にいることに嫉妬するのかもしれない……多分する」

さやか「……それでも、今はこの気持ちを大事にしたいんだ」

マミ「…」

さやか「……それに、ほむらが言ってることは正しいと思うし、いかにもあたしがやりそうなことだと思うけど」

さやか「……ほむらにあんな思いさせて聞き出したのに、最低だと思うけど」

さやか「……それでも、あたしが知らないあたしに縛られるなんて、やっぱり嫌だよ」

マミ「……」

279: 2013/11/04(月) 23:56:57.95 ID:0FwiI57s0
さやか「……足手まといになっても、盾にだって何でもなる」

マミ「……自分の言っていること、本当にわかっているの?人間やめるって言っているのよ?」

マミ「氏ぬといっているのと同義なのよ?」

さやか「……わかってる」

マミ「…」

マミ「……」

マミ「…………まさかこんなことになるなんて……」

さやか「……ごめんなさい」

マミ「謝るくらいなら撤回してよ……」

さやか「…」

マミ「……いたずらにあなたの心をえぐるだけになってしまったわね。ごめんなさい。物分りが悪くて」

さやか「…そんなこと、ない」

マミ「……せめて、二人が帰ってきてからにして」

280: 2013/11/04(月) 23:58:00.15 ID:0FwiI57s0
二人が帰ってきてから、あたしは契約した

まどかは泣いていて、マミさんも目を潤ませてた

ほむらは顔を伏せてた。表情はわからなかったけど、多分……

281: 2013/11/04(月) 23:58:51.00 ID:0FwiI57s0
これにて投下終了です。これで第8話完です

289: 2013/11/05(火) 23:34:12.40 ID:IPOxXaIR0



第9話:そんなのさやかちゃんじゃないよ



290: 2013/11/05(火) 23:36:39.64 ID:IPOxXaIR0
ほむら「あなたは巴さんに指導してもらいながら魔女を狩りなさい。私は他にすることがあるから」

さやか「することって?」

ほむら「武器の調達と、戦ってくれる魔法少女との交渉」

さやか「あてがあるんだ?」

ほむら「ええ。風見野の実力者よ。まだ接触はできてないけど」

まどか「あの、私は……」

ほむら「……どうせ止めてもさやかに着いて行くんでしょう?」

マミ「まあ、魔法少女が二人いればそう危険はないはずよ」

ほむら「魔女の出現予測は渡してあったわよね?統計通りにならないこともよくあるからあまり当てにされると困るけれど」

マミ「ええ、とにかく数をこなしていかないとね。実践あるのみよ。ビシバシ行くからね。覚悟しなさい」

さやか「はい!」

マミ「ワルプルギスまでに間に合わなかったらソウルジェム取り上げてでもおいていくから」

さやか「……絶対間に合わせる」

291: 2013/11/05(火) 23:39:48.07 ID:IPOxXaIR0
それでもって魔女狩りに移行

マミ「暁美さんの情報では、この時期この辺りで広範囲型精神干渉系の魔女がよく出現するらしいわ」

マミ「それほど強いわけではないけど、場合によっては大規模な被害をもたらすそうだから、今日はこの辺りを中心に活動しましょう」

さやか「はい!」

まどか「……?……さやかちゃん、向こうから歩いてくる人――」

さやか「仁美?」

仁美「あら、ごきげんよう。さやかさん、まどかさん。……巴さん、でしたっけ?」

さやか「どうしたの、仁美?今日お稽古だって言ってたじゃん」

292: 2013/11/05(火) 23:40:39.12 ID:IPOxXaIR0
仁美「いいんですよ。そんなことは。これからすばらしい世界にいけるんです」

仁美「わずらわしいものをすべて捨てることができる。叶わぬ思いだって。……一緒に行きましょう?」

まどか「……仁美ちゃん?」

マミ「……『魔女のくち付け』ね」

まどか「そんな……!」

魔女のくち付け……人の悩みに付け込む魔女の手口…


――何の悩みがあるって言うの?……何よ……それ……


マミ「……大規模な被害が出るというなら、もっと大勢の人が吸い寄せられているはず。……この娘についていきましょう」

293: 2013/11/05(火) 23:44:08.35 ID:IPOxXaIR0
仁美「さやかさん。まどかさん。あの工場です。あれが、新しい世界の入り口です」

仁美「行きましょう。私はもう待ちきれません」

仁美は工場のほうへふらふらと歩いていった

マミ「……何人か集まってるみたいね。美樹さんと鹿目さんは工場の中に多分いるであろう人たちをお願い」

マミ「私は裏から直接魔女を叩くわ。中の人を何とかしてから合流して」

まどか「……中の人たちは何をしようとしてるんですか?」

マミ「集団自殺か頃し合い……いずれにせよ碌な事じゃないわ。とにかく止めて来て」

マミ「美樹さんは回復魔法を使えるから、多少手荒なことをしても問題ないと思う」

さやか「…」

マミ「美樹さん?」

さやか「……了解です」

マミ「……じゃあ、私は魔女のほうに行くわ。気をつけてね」

294: 2013/11/05(火) 23:46:35.70 ID:IPOxXaIR0
仁美が入っていった扉から中の様子を伺う
…十人。生身の人間相手なら、いくら初戦といっても問題ないはず
一気にいく?……いや、何をしているかわからないと止めようが……

奥で二人くらいが何かを運んでいる
バケツか……何が入ってるんだろ?魔力で嗅覚と視覚を強化してみる

……!…洗剤!混ぜると危険なやつ!

――――――

――あたし…なんて……こと……

……今は考えてる場合じゃない!あたしはバケツのほうに猛然と駆けていって――

295: 2013/11/05(火) 23:49:07.11 ID:IPOxXaIR0
まどかside

さやかちゃんは、突然走り出して一つのバケツを窓の外に放り投げた……混ぜると危険ってやつなのかな?

その直後、一斉に中にいた人たちがさやかちゃんに襲いかかっていった
さやかちゃんは次々と返り討ちにしていく
もともとさやかちゃんは女子にしては喧嘩が強い方だだし魔法少女になれば、なおさら。一般人に負けるはずがない。

だけど…なぜか私は、戦っているさやかちゃんを、とても危うく感じた
なんで、何のためらいもなく人に――仁美ちゃんにまで手を出せるんだろう……

いや、そりゃ緊急事態ってのはわかるし、躊躇っちゃいけないんだろうけど
……そういう風に割り切れないのがさやかちゃんでもあるっていうか……

みんなを気絶させた後、さやかちゃんは一人ひとりに回復魔法をかけていった。上の空って感じだった

さやか「これで終わりだね。マミさんのとこいかないと」

296: 2013/11/05(火) 23:49:43.42 ID:IPOxXaIR0



『さやかの隣にいてあげて。あの子がどんなに拒んでも』



297: 2013/11/05(火) 23:52:00.97 ID:IPOxXaIR0
まどか「待って」

さやか「何?」

まどか「行かないで」

さやか「……いや、マミさんのとこ行かないと」

まどか「マミさんなら大丈夫だよ。言ってたじゃん。たいした魔女じゃないって」

さやか「万が一ってことがあるでしょ?」

さやか「それに今から実践積んでいかないと間に合わないし、こんなとこでサボってるわけには…」

まどか「今のさやかちゃんが行くのが、かえって万が一だよ」

さやか「……え?」

まどか「今のさやかちゃん、ちょっと危なっかしいよ」

さやか「……なり立てだから――」

まどか「そんなんじゃない」

298: 2013/11/05(火) 23:54:41.51 ID:IPOxXaIR0
さやかちゃんはイライラしていた

さやか「わかった。マミさんのとこには行かない……少し一人にさせて」

まどか「嫌だ」

さやか「……なんで?」

まどか「さやかちゃんなら、こういうとき私を一人にしないと思うんだよね」

さやかちゃんは盛大にため息をついた

さやか「ウザい」

まどか「言うんだ?その言葉を」

さやか「言うよ?ホントにウザいもん。魔法少女じゃないまどかに何がわかるって言うの?」

まどか「ベタな逃げだね。さやかちゃんだってなってから1日も経ってないじゃない?」

まどか「まあ、1年経とうが何年経とうがわかるよ?友達だもん」

299: 2013/11/05(火) 23:57:43.27 ID:IPOxXaIR0
さやか「何それ……。だったら言ってみなよ」

まどか「私に嫌われてでも、今の気持ちを隠したいんだよね?嫌うわけなんてないけど」

さやか「…」

まどか「……『仁美ちゃん』」

さやか「――――――ッ!!」

まどか「明日、仁美ちゃん、告白するんだよね?」

さやか「…」

まどか「気づいてた?仁美ちゃんに魔女のくち付けがあるって知ったとき、さやかちゃん、すごい怒ってたよ?」

さやか「……やめて」

まどか「ずいぶん容赦なく殴ってたよね。あ、責める気なんてないよ?あれは仕方ない―――」

さやか「やめてっていってるでしょ!!!」

300: 2013/11/06(水) 00:00:22.55 ID:+Rhq99aQ0
さやか「そーだよ!あたしサイテーなんだよ!」

さやか「仁美が魔女の口付けにやられたって知ったときさあ、すっごいムカついたんだよ」

さやか「明日から恭介と付き合えるってのに、いったい何の悩みがあるだろうって」

さやか「逆恨みだよね!仁美はあたしに譲ったつもりだったのに!」

さやか「仁美にとっちゃ、今にもあたしが告白してるのかも知んないのにさあ!」

まどか「…」

さやか「それで、中の人達が洗剤混ぜようとしてるの見て、あたし…あたし……あたし……」



「………『氏んじゃえ』って!」



まどか「…」

さやか「……仁美が倒れていくのを見ながら……『このまま氏ねばいいのに』って!」

まどか「…」

301: 2013/11/06(水) 00:02:34.45 ID:+Rhq99aQ0
さやか「ほむらとマミさんが言ってたとおりだったんだよ……」

さやか「あたしみたいなのが魔法少女になっちゃいけなかったんだ……」

さやか「勝手に契約して、勝手に身を引いて、嫉妬なんかして、その挙句…仁美のことを殺そうとしたんだよ!」

まどか「…」

さやか「駄目だ…もうあたし駄目だ…馬鹿だ…最低だ…終わりだ」

さやか「……もう仁美に合わす顔ないよ……まどかもどっか行ってよ……あたしなんかほっといてよ………あ」

さやかちゃんが突然笑顔になった
目を背けたくなるような笑顔だった

……背けるわけにはいかないんだ……

302: 2013/11/06(水) 00:06:02.86 ID:+Rhq99aQ0
さやか「遠くに行っちゃえばよかったんだ……」

まどか「……え?」

さやか「遠くに行けばいいんだよ!誰もいないところに!そしたらもう恭介にも会わなくてすむじゃん!」

さやか「仁美と恭介に会わなかったら、嫉妬なんてすることない!」

さやか「恭介に合わなくて済むなら、願いがばれるなんてありえないじゃん!なんで気づかなかったんだろう!」

まどか「…」

303: 2013/11/06(水) 00:06:29.01 ID:+Rhq99aQ0
さやか「それに、それに――誰にもにこんなの見せたくない……こんなあたし……」

まどか「…」

さやか「お願いだからほっといてよ……もう二度と会わないから……あたしのことなんか忘れてよ……まどかにはわからないよ……」

まどか「わかるって言ってるじゃん!」

さやか「わからないって言ってるでしょ!」

304: 2013/11/06(水) 00:08:59.01 ID:+Rhq99aQ0
まどか「……ワルプルギスの夜はどうするの?」

さやか「……ほむらは役に立たないって言ってた。なにもできないって」

さやか「マミさんもあたしは足手まといだって……」

まどか「役に立たないからって、足手まといだからって逃げるの?」

まどか「そんなのさやかちゃんじゃないよ」

さやか「あたしってどんなのなのよ……」

305: 2013/11/06(水) 00:11:37.91 ID:+Rhq99aQ0
まどか「さやかちゃん……さやかちゃんは仁美ちゃんのこと助けたんだよ?」

さやか「でも、あたし、氏んじゃえって……」

まどか「だけど、氏ななかった」

まどか「……ねえ、私だって、さやかちゃんに嫌な感情持ったことあるんだよ?」

まどか「だめだってわかってても、思っちゃうことはある」

まどか「だけど、後で間違ってたって気づけたら、きっと、それでいいんだよ」

さやか「「違うよ……そうじゃない……私、魔法少女なんだよ?」

さやか「なったのは、恭介のためだったけど、それでも、正義の味方になりたかった……マミさんみたいな…」

さやか「なのに…あたし……あたし……仁美を……こんなの…正義の味方なんて……」

306: 2013/11/06(水) 00:14:43.92 ID:+Rhq99aQ0
まどか「さやかちゃんにとっての正義の味方って、自分の心を押し頃して、ロボットみたいに人を救う人なの?」

まどか「マミさんやほむらちゃんが、そんな風に戦ってるって思ってるの?さやかちゃんには、二人がそんな風に見えたの?」

まどか「……ほむらちゃんは、私のためにそうしていたこともあったかもしれないけど、あったって言ってたけど」

まどか「少なくとも今は違う」

さやか「…」

まどか「私、さやかちゃんにそんな風になってほしくない」

さやか「だけど…」

307: 2013/11/06(水) 00:16:27.34 ID:+Rhq99aQ0
まどか「さやかちゃんは、立派な正義の味方だよ」

まどか「上条君に告白されるってわかってても、仁美ちゃんを助けたんだよ」

まどか「迷いや誘惑、ちゃんと振り切れたんだよ。損得勘定抜きにして、友達を助けたんだよ」

まどか「それって、きっと、とてもすごいことなんだよ」

さやか「…」

まどか「私の自慢の友達なんだよ。だから……だから……」

……いつから私は泣いてたんだろう

まどか「いなくなるなんて言わないでよ……」

308: 2013/11/06(水) 00:18:31.95 ID:+Rhq99aQ0
さやか「……まどかが泣いてどうすんのよ」

さやかちゃんが、ハンカチで涙を拭いてくれた

さやか「ごめん。どうかしてた。…初日からこんなんじゃ、先が思いやられるよね」

まどか「大丈夫だよ。だって――」

四人いて、一人、魔法少女じゃない
気がついたら、みんな、遠くに行っちゃうんじゃないか、いなくなっちゃうんじゃないかって思っちゃう
……怖い。後から後悔なんてしたくない


だから、私は、さやかちゃんみたいに、厚かましく、おせっかいに、傲慢に――


まどか「――私がみんなを守るから!」

それを聞いて、さやかちゃんは微笑んだ

さやか「言うようになったねえ」

309: 2013/11/06(水) 00:19:58.06 ID:+Rhq99aQ0
さやかside

あたしが落ち着いた後、すぐにマミさんが帰ってきた。少し疲れているみたいだった

マミ「魔女は倒したわ。そっちも大丈夫そうね」

さやか「はい。あの、この人たちはどうすれば?」

マミ「匿名で警察を呼んでおけば多分大丈夫」

マミ「魔女がいなくなれば頭も冷えるはずだし、集団で幻覚でも見ていたことになるでしょうから」

318: 2013/11/07(木) 00:10:14.74 ID:u4tIRzzO0
マミ「これからが本格的な特訓ね。まずは一人で魔女の相手をしてみて。」

さやか「いきなりですか!?」

マミ「危なくなったら援護はするわよ。まずは自分の魔法と武器をよく知ることが大切だから」

マミ「時間もないし、実戦あるのみよ」


さやか「どんなもんですかね」

マミ「回復魔法に頼りすぎよ。そんなんじゃすぐ魔力がなくなるわ」

さやか「はあ」

マミ「先に痛覚遮断なんて知っちゃったからよね……。今後はデフォルト以上の痛覚遮断禁止」

マミ「剣はどんな大きさのものでも、いくらでも出していいから、攻撃を受けないことを最優先にして……いや、今は数より剣の質が重要かな」

マミ「後、スピードが秀でているみたいだけど、生かしているとは言いがたいわね

マミ「少し押さえ目にして自分が制御できる速さを見つけて、だんだんに速くしていきましょう」

さやか「はい!」


1時半になるまでに魔女を7体倒せた。

マミ「今日はここまでね。帰って暁美さんと報告会をしましょうか」


319: 2013/11/07(木) 00:14:50.57 ID:u4tIRzzO0
マミさん宅に帰還後、ほむらに今日会ったことを報告
振り返ると恥ずかしいことこの上なく、出来れば何も知られたくなかったんだけど、まあ、あたしに隠し事なんてできないわけで
まどかから工場の件を報告してもらった

ほむら「初日から大荒れとは恐れ入るわ」

さやか「面目次第もございません……」

ほむら「これからも大いにまどかや巴さんに頼ることね。あなたって本っ当に危なっかしいんだから」

さやか「うう…」

ほむら「それと……」

さやか「?」

ほむら「……私も力になれなくもないかもしれない」

…うん。これから何かあったら、あたしを大切に思ってくれる人の顔を思い浮かべることにしよう

320: 2013/11/07(木) 00:16:54.51 ID:u4tIRzzO0
マミ「そっちはどうだった?」

ほむら「武器の調達はあらかた完了した。杏子とはまだ接触できていない」

マミ「これからは、佐倉さんとの交渉に力を入れることになるのかしら?」

ほむら「そうなるわね。……こんなところかしら」

さやか「解散?」

ほむら「私は、もう少し巴さんと話がある」

さやか「じゃああたしも――」

ほむら「あなたたちはもう帰りなさい。門限がないからといって、いつまでも外にいてもいいということにはならないわ」

ほむら「特にさやかは、この前も怒られたんでしょう?」

さやか「……うん。流石にこれ以上はまずいかも」

321: 2013/11/07(木) 00:19:06.22 ID:u4tIRzzO0
マミside

マミ「それで、話って何?」

ほむら「例の魔女を倒すのに、ずいぶん時間がかかっていたそうね」

マミ「…」

ほむら「嫌な思いしなかった?」

マミ「……タイムリーパーには適わないわね」

マミ「……私たちがしていることって、何なのかなって思って」

ほむら「どういうこと?」

マミ「人を頃して人を救うって、何なんだろうって……」

ほむら「…」

マミ「情けないわよね……。美樹さんは全部わかった上で受け入れたのに、一番長く魔法少女をやっている私が、受け入れられてないなんて」

ほむら「長くやっていたからこそ、でしょう?」

マミ「……かもしれない」

322: 2013/11/07(木) 00:23:14.53 ID:u4tIRzzO0
ほむら「月並みでありふれた例え話だけど」

マミ「何?」

ほむら「巴さんが魔女になってしまったとして、それを私が倒したら、私を恨むの?」

マミ「そんなわけないじゃない」

ほむら「ほかの魔法少女だって、きっと同じよ。人って、結構優しくできているの。魔法少女だったらなおさらよ」

マミ「……本当にそうかしら」

ほむら「私は、繰り返す中でたくさんの魔法少女を見てきた」

ほむら「敵対したり、頃しあったりしてきた。今でも許せない人だっている」

ほむら「だけど、自分が魔女になって人を頃すことをよしとする人なんていなかった」

ほむら(正直その、今でも許せない二人のことは未だによくわからないけど)

マミ「…」

ほむら「あなたはどうなの?」

マミ「……そんな人はいなかった、わね」

323: 2013/11/07(木) 00:25:32.73 ID:u4tIRzzO0
ほむら「これからだって、多分そんな人は出てこない」

ほむら「希望をかなえるために魔法少女になるんだもの。絶望を振りまき続けるなんてこと、望むはずがない」

マミ「……ずいぶんロマンチストなのね」

ほむら「あなたにだけは言われたくないわ」

私は、クスクスと笑った

マミ「ええ、そうね。……少し悲観的になっていたのかもしれない」

簡単に割り切れる話じゃない
彼女たちが望んでいるから、で済ますつもりもない

だけど、私の道は、もとよりこれしか残されていない
私は生きて、頃して、懺悔し続ける……ワルプルギルスの夜を倒すまでは


そして、その後は――


324: 2013/11/07(木) 00:33:40.25 ID:u4tIRzzO0
二日後
あたしとまどかは、一緒に仁美とほむらを待っていた
ほむらも一緒に学校に通うようになったんだ。ちなみに仁美の告白は幻覚騒動で昨日に延期されていた

ほむらの後に少し送れて仁美が来た。ほむらとまどかは昨日のドラマの話
ほむらはドラマを見てないいけど話はできるらしい。そりゃ何回も繰り返してたら飽きるよね
私は仁美にひそひそと話しかける

さやか「で、どうだったの?」

仁美「告白、ですわよね……?」

さやか「それ以外に何があるのよ?」

ぶっちゃけ聞きたくなかったし、もう学校で顔合わすのも避けたいとか、学校やめようかとか枕に顔を埋めて考えたりしたけど
最終的に処刑台で過ごす時間は短い方がいいという結論に至った

仁美「えっと、その……」

仁美「上条さんの手が治ったって聞きました?」

さやか「あー、うん。電話で聞いた。一昨日からお見舞い行けなくなってたんだ」

魔女退治が忙しいのもあるし、告白に来た仁美と鉢合わせるかもって言うのもあった
まあ、手が治れば退院も時間の問題らしいし、もう行かなくても大丈夫だよね

325: 2013/11/07(木) 00:39:33.59 ID:u4tIRzzO0
仁美「私も昨日告白しにお見舞いに行ったときに聞かされまして」

さやか「すごいテンション高かったよね。あんなにうれしそうな恭介、本当に久しぶりだったよ」

仁美「それで、その……」

さやか「?」

仁美「雰囲気が、その、告白できる感じではなかったと言うか……」

さやか「あー……あるある(経験ないけど)」

仁美「恥ずかしいです。あんな啖呵をきっておいて……」

さやか「そんなの気にすることないよ」

仁美「でも、退院したら、身の回りのお世話をすることを申しでることができましたわ」

さやか「おー!」

仁美「……今度告白するときは、予告なんてしませんよ?」

さやか「ふっふーん。そんな余裕ぶっちゃってていいのかなー?」

さやか「意気地なしのさやかちゃんだって、ある日突然理屈に合わないことをすることがあるんですよー?」

さやか「勝算のない告白とか!」

仁美「……計算に基づいた行動をしたこと、あるんですか?」

さやか「何おー!?」

326: 2013/11/07(木) 00:41:27.52 ID:u4tIRzzO0
こんな感じに、話を聞いた後はうれしさのあまりテンションが上がったり
ちょっと経つと、やっぱり処刑台での時間が長くなっただけじゃないかと思って絶蔵したり

人の感情はやっぱり複雑で難しい。そりゃ宇宙のために役立ちもしますわ
なんて考えた14歳の春なのでした。15歳の春も無事で迎えたいものです

327: 2013/11/07(木) 00:44:39.39 ID:u4tIRzzO0
一時間目が終わった後、ほむらに呼び出された

さやか「何?」

ほむら「志筑仁美が告白する前に告白しなさい」

さやか「……朝の、聞こえてた?」

ほむら「途中から丸聞こえよ」

まどかにも聞かれたかな……?

ほむら「いつ氏ぬかもわからないのよ?本当に、自分の気持ちも伝えられないで氏んでいいの?」

さやか「……今は恭介のことばっか考えてられないしさ。こんな状態で仁美の邪魔するのも悪いと思うんだよね」

さやか「それに、勝手ながら任せるって決めたわけだしね。仁美を見守ることにするよ」

ほむら「…」

さやか「ワルプルギルスの夜を倒せたらさ、気持ちを伝える。その前に仁美が告白したら、そのときはそのとき」

ほむら「…そう」

328: 2013/11/07(木) 00:46:59.24 ID:u4tIRzzO0
さやか「その前に氏んじゃったら、ほむらから伝えてもらってもいいかな?」

ほむら「…」

さやか「……虫が良すぎる?」

ほむら「……そんなことになったら、洗いざらい全部上条恭介に話してしまうかもしれないわね」

さやか「……それは困る」

ほむら「なら、氏なないことよ」

329: 2013/11/07(木) 00:50:29.25 ID:u4tIRzzO0
仁美side

病院のスタッフは口々に言っていた。これは奇跡だと

奇跡ならどんなによかっただろう
やはり才を与えた者に天は微笑む。ただそれだけの話

だけど、滅多に起きないからこその奇跡
……付随だった指だけがいきなり事故前の状態に回復するなどあるものか

だからこれは必然
そして、それを起こしたのは、神ではなく人間

330: 2013/11/07(木) 00:51:21.36 ID:u4tIRzzO0



――つまり、彼に微笑んだのは、彼女以外にありえない



331: 2013/11/07(木) 00:52:05.18 ID:u4tIRzzO0



……



何でこんなことに……



332: 2013/11/07(木) 00:55:10.35 ID:u4tIRzzO0
QBside

これは計算外だ。美樹さやかの成長速度が思いのほか速い
ワルプルギルス戦で彼女が犠牲になることを厭わず、盾に徹したら、場合によっては勝ててしまうかもしれない

暁美ほむらに対する切り札も、この時間軸で目標を達成されたら、ないし、達成できると確信されたら意味をなさない

確実に彼女たちの間で犠牲はでるだろうから、鹿目まどかに対する勧誘はやりやすくなるが……
やはり不確定だ。友人や家族が氏んだ時の勧誘においても、断られたケースはかなり存在する
鹿目まどかが人一倍感受性が強い人間であるにしても、やはり不確定だ

まだそうは高くない可能性だが、彼女の目的が達成される芽が出てきたわけだ
鹿目まどかに対する勧誘に、失敗は許されない

そろそろ動くべきか――

333: 2013/11/07(木) 00:59:35.95 ID:u4tIRzzO0
杏子「グリーフシードの処理以外でこっちに来るとはね。どういう風の吹き回し?」

QB「君に情報を提供しに来たんだ」

杏子「……珍しいね。あんたからこっちに働きかけてくるなんて」

QB「近々マミが君に接触してくるよ」

杏子「……へえ?」

QB「いや、少し語弊があった。もうすでに風見野に一人出向いている。たまたま君に出会わなかっただけだ」

杏子「……はあ?」

QB「現在マミはチームで動いている。構成は、マミと、ベテラン一人と、ルーキーが一人。それに魔法少女候補生が一人」

QB「そのうちのベテランが、風見野に最近入り浸っている」

334: 2013/11/07(木) 01:00:31.22 ID:u4tIRzzO0
杏子「穏やかな話じゃないね。てか候補者がチームにいるってどういうことよ?」

QB「彼女は相当強い魔法少女になれる素質がある」

杏子「あんたもマミも、随分そいつのこと高くかってるんだねえ……」

杏子「それで、そいつらの目的は何さ?」

QB「彼女たちに聞けばいい」

杏子「……ふーん」

杏子「このまま風見野で好き勝手されても困るな……」

杏子「どういう理由にせよ、向こうさんに先手を打たせるのはバカだ」

杏子「て言っても、見滝原に出向いて下手打てば3対1、場合によっては4対1か。ままならないねえ」

QB「後ひとつ。ベテランの暁美ほむらは、イレギュラーだ」

杏子「…は?」

QB「彼女と契約した覚えがない。」

杏子「へえ…」

335: 2013/11/07(木) 01:01:41.76 ID:u4tIRzzO0



「いずれにせよ――――このまま風見野で出しゃばらせるわけにはいかないね……」



341: 2013/11/08(金) 00:08:21.53 ID:+mXCdOag0
投下します

342: 2013/11/08(金) 00:09:07.92 ID:+mXCdOag0



第10話:ソウルジェムの秘密を知りたくない?



343: 2013/11/08(金) 00:11:07.21 ID:+mXCdOag0
さやかside

仁美の『告白』の顛末を聞いた次の日、私は一人で魔女退治をやっていた
まどかとマミさんはそれぞれ委員会の仕事で遅くなり、ほむらは例の風見野の魔法少女を探すいうことだった
まどかは心配したけど、マミさんは、ほむらの統計から判断して、今の実力でもそう苦戦することはないだろうと判断した
危なくなったらすぐ逃げるように念を押されたけど

344: 2013/11/08(金) 00:12:00.99 ID:+mXCdOag0
今は、見滝原と風見野の町境の辺りで魔女を倒したところ
グリーフシードでソウルジェムを浄化したところで、風見野のほうから魔女の気配がするのに気づいた

……いや、この反応は使い魔か

345: 2013/11/08(金) 00:14:20.07 ID:+mXCdOag0
杏子side

あたしは、見滝原と風見野の町境にある廃ビルに向かっている

結局使者とやらがこっちにくるまで待つなんざ性に合わない
だから、逆にルーキーから色々聞き出そうと考え、境に拠点を移すことにしたからだ
万が一戦いになった場合も想定してのこと

ベテランを巻きつつマミに気づかれずにルーキーにちょっかいかけるっていう微妙なさじ加減が必要だが、そういう小競り合いなら慣れてる
相当な候補者ってのも気になるが、やりあうとしてもなり立てのなり立てだ

問題ないだろ

346: 2013/11/08(金) 00:16:23.92 ID:+mXCdOag0
廃ビルが視界に入ったところで、使い魔の反応に気づいた
別にここでなくてもいいか、と思い、引き返そうとしたところで

――青い何かが目の前を疾走していった

……魔法少女?使者か?……いや、使い間のほうに向かっていったとなると……

変身してあとをつけていってみると、やはり廃ビルに入っていった
青い魔法少女が使い魔に相対している

まったく……あたしは、使い魔をまさに倒そうとしていた魔法少女の足元に槍を投げて威嚇する
そいつは驚いて振り返った

347: 2013/11/08(金) 00:20:21.25 ID:+mXCdOag0
杏子「あんた、どこの街から?」

さやか「……見滝原、だけど?」

杏子「やっぱそうなるよね。マミのところにいる『素人』?」

さやか「……素人といえるのはあたしだけだろうね」

杏子「質問にはストレートに答えな」

杏子「ここは……チッ……縄張り的には微妙なラインだな」

さやか「……あれは使い魔だし、そこら辺はどうでもいいんじゃない?」

杏子「駄目だね。あんたは何もわかってない。使い魔は人を襲うことで魔女になる。これは知ってるでしょ?」

さやか「?…うん」

杏子「じゃあ、何で倒すわけ?魔女になってから倒せば、グリーフシードが手に入るじゃない?」

さやか「!…………なるほど、ね。そっか……」

さやか「ソウルジェムが、濁りきった後のことを考えれば、そういう生き方もありなのかもしれないね」

348: 2013/11/08(金) 00:22:30.26 ID:+mXCdOag0
?……何か引っかかる物言いだな
まあ、わかってもらえりゃ問題ない。意外と物分りがいいな
この分だと、労せずいろいろ聞き出せるかも――

さやか「だけどさ、それでもあたしはあんたを認められない」

杏子「…はあ?」

さやか「あんたがそういう生き方をしていく限り、人が氏に続ける」

杏子「……そう……だけど?」

さやか「その中に、あたしの大切な人も入るかもしれない」

杏子「そういうこともあるだろうね。あたしは今は天涯孤独だから関係ないけど」

杏子「……ま、運命だと思って諦めなよ」

さやか「冗談じゃないね」

349: 2013/11/08(金) 00:23:49.28 ID:+mXCdOag0
杏子「ずいぶん甘ちゃんだね。魔法ってのは自分に使うためのものなんだよ」

さやか「あんたが決めることじゃない」

杏子「……ひょっとして、あんた、他人のために願ったくち?」

さやか「あんたには関係ない」

杏子「……まあ、いいさ。…じゃあ、どうする?」

さやか「あんたを叩き潰す」

杏子「……実力差もわからないわけ?」

さやか「わかるよ。あたしじゃちょっと敵いそうにないね」

350: 2013/11/08(金) 00:29:14.03 ID:+mXCdOag0
杏子「……巴マミは随分無能になったんだね」

杏子「敵わない相手からは逃げろってことも教わらなかったのかい?」

さやか「いーや。マミさんはきちんと教えてくれたよ」

さやか「氏ぬと思ったら一目散に逃げろって。だけどあたし、馬鹿だからさ、教えられたことを素直に守ることもできない」

さやか「考えてみりゃ契約した時点で教えられたこと守れてないや」

そう言って、素人は剣を投げて使い魔を消滅させた

杏子「そうか、じゃあ、先輩として最初で最後の慰みでもかけてやるよ」

杏子「その、氏ぬと思ったら逃げろってやつ、考えてみりゃあいつが一番守れてないからさ」

杏子「氏んでも別にあの世で詫びる必要もないんだよ。よかったな。心残りが一つ減って」

杏子「お前が勝手に契約した件も含めて、他人に自分ができないこと要求してる時点で相殺ってやつさ」

さやか「……ちょっと意味が分からないな」

351: 2013/11/08(金) 00:31:54.41 ID:+mXCdOag0
さやか「……ちょっと意味が分からないな」

頭ではわかってる
こいつの背後にはマミがいる
あいつが今すぐ私に危害を加えようって原じゃないとしても、こいつと戦えばそうもいかなくなる
あたしだってあいつとやりあいたいわけじゃない。ここは引くべきなんだ

……だけど、それでも、あたしはこいつの存在を認められない。

杏子「素人、名前は?」

さやか「美樹さやか」

杏子「……そうか、美樹さやか、わかりやすく教えてやる」

杏子「あたしはあんたを認められない。あんたもあたしを認められない」

杏子「どっちも引くつもりはない」

杏子「魔法少女同士がこうなったとき、どういう結果になるかわかる?」

さやか「どうなるの?」

そう言って、素人は剣を構え、前傾姿勢をとった……わかってるじゃないか。あたしも槍を構える


杏子「どちらかが氏ぬ」


それが合図だった

360: 2013/11/09(土) 01:28:06.48 ID:qgLow3cW0
素人はあたしにめがけて一直線に飛び掛ってきた

スピードはなかなかだが、真正面からなら対応するには余裕だ
あたしは槍で剣をいなして思いっきり腹を蹴ったぐる

素人は吹っ飛び、体勢を立て直すや否やあたしに剣をに投げた

だがそれも予測済み。造作もなく避けられる

今度はあたしが素人に突っ込む。慌てた素人がでかい剣を出してあたしに振った
それを半円を書くようによけて素人の背中に回り込む

素人が反応するも、時すでに遅し
解放した多節槍でしなりを利用しての打撃。ガードは余裕で突き破れる
まずは先手、あるいは決まり手。全治3か月分だ。もう反撃はできないはず

―――だったのだが

361: 2013/11/09(土) 01:30:17.41 ID:qgLow3cW0
まさに届こうという瞬間、槍はあらぬ方向に向かっていった

…それた?無理やり方向を変えられたような……

!!……いつの間にか、あたしと素人の間に魔法少女が立っていた
『ベテラン』……か?そいつが銃をあたしに突きつけていた。あたしは飛びのいて槍を構えなおす

……落ち着け。あの銃は奴が魔法で出したわけじゃない
ただの銃の威力なんて高が知れてる

362: 2013/11/09(土) 01:36:38.06 ID:qgLow3cW0
ベテランは素人に語りかける

ほむら「これは一体どういうことかしら、さやか」

ほむら「あなた、この子が、私が接触しようとしている魔法少女だと思わなかったの?風見野にいる実力者だと教えていたはずよ?」

ほむら「気づいていたはずよね?その挙句、敵いもしない相手に戦闘を仕掛けるなんて、どういう了見をしているのかしら?」

さやか「………申し開きのしようもございません」

さやか「……いや、なんであたしが仕掛けたって決めつけるの?」

ほむら「喧嘩というものはどちらにも原因があって起こるものよ。特にあなたたち二人なら、なおさらね。どちらが先かなんて関係ないわ」

さやか「………まあ、あたしが退けば避けられたかな」

さやか「だけど、どうしても譲れなかったんだ。後で思いっきり叱ってよ」

ほむら「……叱ったところで意味があるのかしら」

ほむら「……いくら言えばわかってくれるの?もっと後先考えて行動してって。自分の命を大切にしてって」

さやか「……ホントにごめん」

363: 2013/11/09(土) 01:40:54.09 ID:qgLow3cW0
『ベテラン』が、今度は私に問いかける

ほむら「あなたもよ、杏子。三滝原との境に現れた魔法少女を見て、巴さんとのつながりをまったく想像しなかったというの?」

杏子「……いや、キュゥべえに聞いてた。巴マミがベテランと素人と候補者の三人と組んで、あたしに近づいてるって」

ほむら「……だったら、なおさら理解できない。巴さんの仲間に手を出すことが何を意味するか、わかっているわよね?」

ああ。知っているとも
ベテランの魔法は……瞬間移動か何かか……わからないうちは敵わないだろうな
おまけに二対一だ。隙を作ってこの場は逃げるしかない

後は……逃げるか、戦うか……微妙な線だな。逃げるならやつらの目の届かない所まで逃げないと意味がない
そうなると、どこかの魔法少女と縄張り争いか

馬鹿なことをやっちまったもんだ……

364: 2013/11/09(土) 01:48:23.19 ID:qgLow3cW0
ほむら「だけど、あなたは運がいい」

杏子「……は?」

ほむら「私たちは、あくまであなたに協力を頼みたいだけなのよ。この娘はよくわかっていなかったみたいだけど」

……助かった、のか?

杏子「……何を協力しろって?」

ほむら「一か月後に、見滝原にワルプルギルスの夜が来る。それを倒すのに協力してほしい」

杏子「……なんでそんなことがわかるわけ?」

ほむら「統計よ」

杏子「統計、ねえ……ま、いいや。三人魔法少女がいて、まだ戦力がほしいなんて、それ以外には思いつかないしね」

杏子「あんたには確証があるんだよね?」

ほむら「ええ。もちろん見返りもある」

杏子「見返り?」

ほむら「見滝原で魔女を好きに狩っていい。何なら今からでも」

杏子「……話にならないね」

ほむら「……え?」

365: 2013/11/09(土) 01:53:37.30 ID:qgLow3cW0
ベテランが心底意外そうな顔をする。何だってんだ?

杏子「あたしは今はグリーフシードにまったく困っていない。何であんたたちと組んでまで、見滝原で魔女狩りしないといけないのさのさ?」

杏子「……もっとぶっ飛んだ見返りかと思ったんだけどね」

ほむら「……」

杏子「しっかし、巴マミにお前に、数には入るかしらないがそこの馬鹿に、相当な候補者一人だっけ?それに加えるためにあたしの勧誘、ね」

杏子「ずいぶん慎重なんだな。まあ、出直しなよ」

杏子「……って言っても、あんたみたいなのに風見野をうろうろされちゃ困るんだよねー……」

ほむら「…」

杏子「まだその気があるなら、交渉役には美樹さやかを使いな」

杏子「ベテラン、お前のほうを今度風見野で見つけたら、問答無用で攻撃する」

ほむら「……そんな条件飲めないわ」

杏子「甘いね、あんたも。なら。この話はここまでだね」

そう言って、あたしは扉の前まで一気に飛ぶ

とにかくこの場からすぐにでも離れなきゃいけない
仮に瞬間移動なら、一手二手でソウルジェムを破壊できる。こいつは危険だ
扉は開いたまま。一気に出られる

366: 2013/11/09(土) 01:59:32.88 ID:qgLow3cW0
だが、まさにビルから出るため飛ぼうとしたとき

ほむら「ソウルジェムの秘密を知りたくない?」

と、やつが語りかけてきた。……なんだ?悪あがきか?

ほむら「ソウルジェムが濁りきった時、魔法が使えなくなるだけで済むって、本気で思ってる?」

ほむら「奇跡の対価は戦い。ならば、魔法の対価は何かしら?」

杏子「……」

ほむら「知りたかったら見滝原まで来て。詳しい話をしてあげる」

ほむら「……人生ひっくり返るわよ?『ぶっ飛んだ見返り』になるでしょうね」

杏子「……じゃあ、あんたは帰りな。美樹さやかから話を聞くからさ」

ほむら「……できない相談ね」

杏子「………あんたたちが交渉役として美樹さやかをこっちによこす。それだけだよ」

それだけ言って、あたしは出て行った

367: 2013/11/09(土) 02:03:08.13 ID:qgLow3cW0
さやかside

佐倉杏子が去ってほむらからさんざお説教をくらった後に、どうしても聞きたかったことを聞いた

さやか「それにしてもさ、ほむら、あれはないんじゃないの?あんなのを見返りだなんて」

ほむら「……そうよね。ありえない提案をしてしまったわ」

ほむら「今まで断られたことがなかったから動転してしまったみたい」

さやか「……え“?」

ほむら「なにが原因だったのかしら…?」

さやか「……はい。あたしのせいです。どう考えても。自分のこと棚に上げて本当にごめんなさい……」

ほむら「え?……ああ、いえ、違うのよ。あなたと杏子が頃し合いをするなんて日常茶飯事だもの」

ほむら「それでもいつも協力してくれるの」

……いつも何をやってるんだ!?あたしは!

ほむら「……よくわからないわ。とりあえず巴さんとまどかのところに戻って相談しましょう」

さやか「もう二人とも、マミさんの家にいるはずだね」

368: 2013/11/09(土) 02:05:27.84 ID:qgLow3cW0
マミさんにも、佐倉杏子と頃し合いをしたことを報告したら、めちゃくちゃ怒られた
ひっぱたこうとしたのを、まどか止めてくれた

……最近怒られてばっかな気がする

その後で、ほむらが交渉が失敗したことを伝えた

マミ「そんなに私と組みたくないのね、佐倉さん……」

ほむら「そうじゃないのよ。あなたと杏子が普通に組んでいた時間軸も会ったの」

マミ「あら、そうなの?……この時間軸で私とあなたがあった日から一ヶ月間を、繰り返しているんだったわよね?」

ほむら「ええ」

マミ「じゃあ、私と佐倉さんの関係も、変わらないはずね……」

ほむら「だから、わからないのよ……どうして今回断られたのか、どういう条件なら受け入れてくれるのか」

まどか「じゃあ、今までほむらちゃんが今まで会ってきた杏子ちゃんのこと、話してみてよ。何かわかるかもしれないよ?」

ほむら「……そうね。それが一番の近道かもしれないわ」

369: 2013/11/09(土) 02:07:47.60 ID:qgLow3cW0
マミ『暁美さん』

ほむら『?』

マミ『彼女の過去のことまで話すつもり、ある?』

ほむら『……話す必要が出たときは時は』

マミ『仕方ない場合もあるでしょうね。でも、ああいった話は本人の知らないところでは、あまりするものではないわよ?』

マミ『彼女を仲間に引き入れようとしているのだから、なおさら、ね』

ほむら『……わかったわ』

376: 2013/11/10(日) 01:28:44.42 ID:LCtG9PKE0



第11話:この時間軸でも、もしもの時は



377: 2013/11/10(日) 01:29:10.96 ID:LCtG9PKE0
投下します

378: 2013/11/10(日) 01:32:11.35 ID:LCtG9PKE0
ほむら「最初に杏子と出会ったのは、三番目の時間軸、二回目のやり直しのときだった」

まどか「ほむらちゃんが、魔女化について初めて知った上で臨んだ時間軸だったね」

ほむら「ええ。だけど、あなたたちが魔法少女になることを、止めることはできなかった」

ほむら「さやかが魔法少女になるのは、あの時間軸が最初だったし、まどかが契約する原因も、まだ全てはわかっていないころだったから」

さやか「あたしって、必ず魔法少女になるわけじゃないんだ」

ほむら「そうよ。繰り返したからといって、私以外のすべての人が同じ行動をとるわけじゃない」

ほむら「些細な違いがほとんどなんだけど、それの積み重ねが大きな変化をもたらすの。計算違いなんてしょっちゅうよ」

マミ「統計が確実じゃないっていうのは、そういうことね」

ほむら「ええ。それで、私とさやかとまどかの三人で、巴さんに、一緒にチームを組んでくれないかって頼んだの」

ほむら「巴さんは快く受け入れてくれて、さやかとまどかの指導も買ってくれた」

ほむら「私は、基本的なことは前の時間軸で教わっていたから、その時間を武器の製造と調達に当てていた」

379: 2013/11/10(日) 01:35:00.51 ID:LCtG9PKE0
さやか「そのころからもう強かったんだ?」

ほむら「いえ、まだ試行錯誤していたわ」

ほむら「知っていることを実践できるかって言うと話は別だし、初めは自作の爆弾しか用意できなかったしね」

ほむら「この時に、さやかと一緒に戦うと爆弾を使うのが難しかったから、銃を調達するようになったわね」

……そういえば、ほむらの武器って、どこで調達してんだろ?

ほむら「ただ、私が、みんなはインキュベーダーに騙されているってしつこく主張していたものだから、少しずつ関係がギクシャクしていった」

ほむら「何でそんなことを知っているんだって言われても、うまく説明できなかった」

さやか「……なんか私が原因なような気がするよ」

さやか「まどかとマミさんは、信じないにしても、そんなにひどいこと仲間に言うわけないし……」

380: 2013/11/10(日) 01:37:29.37 ID:LCtG9PKE0
ほむら「あなたは、お人好しの二人に変わって、私を警戒していただけよ。気にする事じゃないわ」

マミ「ちょっとー?」

まどか「ほむらちゃん?どういう意味かな?」

ほむら「そのままの意味よ。それで、そんなときに、杏子が私達の前に現れた」

ほむら「きっかけは、さやかが風見野の使い魔を倒したことで彼女と喧嘩になったことだったわ」

さやか「……あたしって、やっぱりいつもそんなことしてるの?」

ほむら「ええ」

さやか「……迷惑かけてばっかりだね」

ほむら「そこは本当に反省してほしいわ」

381: 2013/11/10(日) 01:40:34.19 ID:LCtG9PKE0
ほむら「その時、私は杏子の力を知って、是非戦力に欲しいと思った」

ほむら「だから、巴さんに杏子を仲間に入れようと提案したの。巴さんは、悩んだ末に、了承してくれた」

ほむら「一度に二人に指導することに限界が来ていたみたいだったから」

ほむら「さやかと巴さんはタイプも違かったということもあって、同じ近接タイプの杏子にさやかの指導してもらおうということになったの」

ほむら「さやかはかなり反対したけれど、巴さんに負担がかかっているって知ったら、渋々ながらわかってくれた」

マミ「佐倉さんの方は?」

ほむら「杏子には、さやかの指導をしてくれる代わりに、見滝原で好きに魔女を狩っていいって巴さんが提案した」

ほむら「それで、本当にあっさりOKしてくれたの」

382: 2013/11/10(日) 01:42:55.66 ID:LCtG9PKE0
さやか「ワルプルギスの夜のことは話さなかったの?」

ほむら「ええ。あの時間軸では本当に余裕がなかったから。そこまで話したとしても、信じてもらえなかったと思う」

ほむら「まあ、結局何もかもうまくいかなかったんだけど」

まどか「……あたしが魔女になっちゃったから…」

マミ「……私がみんなを殺そうとしたから…」

まどか「……私、ほむらちゃんにとんでもないお願いを…」

ほむら「……そこは気にしないで」

ほむら「うまくいかなかった原因は、私が一人だけ全部知っていたのに、それを生かせてこなかったことにある」

ほむら「それにね、まどか、私は、私自身の望みで繰り返しているの。あなたが気にすることではないのよ」

まどか「ほむらちゃん……」

383: 2013/11/10(日) 01:45:35.57 ID:LCtG9PKE0
ほむら「……話を戻すわね」

ほむら「次の時間軸では、自分から風見野に出向いて、彼女にワルプルギスの夜のことを話した上で協力を要請した」

ほむら「あの時間軸ではチームを組んでいなかったから、そう頼むしかなかったの」

ほむら「だけど、彼女は快諾してくれた」

さやか「うーん、そこでもやっぱりOKしたのか……」

まどか「杏子ちゃんが断ったことって、今の時間軸以外ではないの?」

ほむら「あるにはあるわ」

マミ「そのときの状況について話してくれないかしら?」

ほむら「千歳ゆま、という少女がキーなの」

さやか「千歳ゆま?」

384: 2013/11/10(日) 01:50:09.28 ID:LCtG9PKE0
ほむら「そう。杏子が魔女を倒したときに助けた女の子なの」

ほむら「その子、一緒にいた両親をその魔女に殺されてしまって、杏子が引き取ったの」

さやか「あいつ、そんなとこあるんだ」

マミ「そうね……私が知っている彼女は、そういう娘だった。変わったわけじゃないのね……」

ほむら「それで、彼女と一緒に暮らしているときは断るの。『今はこいつのほうが大事だ』って」

ほむら「その子も魔法少女になっていたから、自分が参戦したらついてきてしまう、もしものことがあっては困るって言っていた」

さやか「へえ……」

ほむら「それで、その次の時間軸から、児童相談所に通報して、その子を親から引き離して杏子と出会う接点をなくしたの」

マミ「よっぽどなのね、その親。そんなにポンと児童相談所が動くなんて」

まどか「だけど、だったら、その子は今は、児童相談所、じゃなきゃどっかの施設、親戚……」

まどか「少なくとも杏子ちゃんのところにはいないってことだよね?」

ほむら「ええ。そうなるわね」

385: 2013/11/10(日) 01:53:44.40 ID:LCtG9PKE0
さやか「じゃあ、結局、今、なんで断られたのかは、わかんないんだ」

ほむら「そうね。私が知らないことが、杏子の周りで起こったのかしら?」

マミ「でも、それについては調べようがないわ。あなたが風見野に入ることを拒まれたのだから、私が入ってもまずいでしょうし……」

さやか「あたし、交渉のついでに調べてこようか?」

ほむら「だめよ。さっきみたいなことが起こったら、殺されてもおかしくないのよ?」

ほむら「まして、こそこそ嗅ぎ回るだなんて、ありえないわ」

まどか「私が行けば…」

ほむら「だめ。杏子はまどかのことも知っていた。しかも私たちのチームの一人として認識してる。やはり危険よ」

マミ「今は、過去の時間軸について検討するしかないわね」

386: 2013/11/10(日) 02:07:29.55 ID:LCtG9PKE0
まどか「……ねえ、ほむらちゃん。杏子ちゃんが協力してくれたとき、私たちはどういう反応をしてた?」

ほむら「そうね……さやかは、喧嘩したり……結構仲良くしてたこともあったわね。仲直りしたこともあった」

ほむら「まどかは……普通に、多少互いに違和感はあっても時間がたてば、仲がよくなったわね」

ほむら「まあ、まどかが仲良くできない人にお目にかかりたいものだけれど。きっと、人間的に何か欠陥がある人よ」

まどか「私のこと買いかぶりすぎだよ……」

さやか「まあまあ。ほむらがまどかびいきなのは仕方ないじゃん」

ほむら「……何かしらその言い方は?…それで、巴さんは………あれ?」

まどか「どうしたの?」

ほむら「ちょっと待って」

ほむらが腕を組んでぶつぶつ呟き始めた

387: 2013/11/10(日) 02:12:18.68 ID:LCtG9PKE0
ほむら「あの時は……巴さんがあの魔女にやられて……あの時は、あの魔女に杏子がやられて」

ほむら「……あの時は…杏子が……あの時は……魔女になって…あの時は………殺されて…」

……ほむらはたくさんの修羅場をくぐってきたんだ
この時間軸では、そんなことを経験してほしくない
この時間軸で終わらせてあげたいと、私は思った。たぶん、まどかとマミさんもそう

そして、ほむらが愕然とした表情をして、言った

ほむら「ワルプルギルスの夜のことを杏子に伝えたとき…巴さんはいつもいなかった……?」

マミ「…『いない』っていうのは、氏んだとか、魔女になったっていうこと?」

ほむら「……ええ」

マミ「……じゃあ、やっぱり私のせいなんだわ。三番目の時間軸のときはたまたまで……」

ほむら「…違う。違うのよ…。巴さんと杏子が組んでいた時間軸はほかにもあった……」

ほむら「だけど、それがいったい何を……」

まどか「その、杏子ちゃんとマミさんが組んでいた時間軸って何?ワルプルギルスの夜のことは話さなかったんだよね?」

ほむら「それは、その……」

388: 2013/11/10(日) 02:14:01.99 ID:LCtG9PKE0
ほむらは言い淀んでいた。チラチラまどかを見ている
……席をはずしてもらう?……いや、蚊帳の外が一番よくない

さやか「ほむら、まどかは大丈夫だよ」

まどか「え?」

ほむら「………そうね」

ほむらは、深呼吸をして続けた

ほむら「魔法少女狩り、というのがあったの」

さやか「魔法少女狩り?」

まどか「何、それ?」

ほむら「………言葉の通りよ。魔法少女が連続して殺される事件が起こったの」

まどか「………何…それ……」

396: 2013/11/11(月) 00:49:49.60 ID:WZZE+O4D0
ほむら「……それで、魔法少女狩りの調査のために二人が組んでいた」

ほむら「巴さんは純粋に事件の解決のために動いていたけど、杏子は、その犯人に思うところがあったって聞いた」

まどか「……なにが原因で、そんな事件が起こったの?」

ほむら「……未来予知ができる魔法少女が起こしたの」

マミ「未来予知……」

さやか「なんでもありなんだねえ」

まどか「何でその子は、そんなことをしたの?」

ほむら「…………間違った未来を見たの」

まどか「どんな?」

ほむら「…………………世界が滅ぶ未来」

397: 2013/11/11(月) 00:53:24.31 ID:WZZE+O4D0
………あー……全部つながったわけじゃないけど、なんとなく……
……マミさんも察したみたいだった

……うん。知るべきなんだよね、あたしたちも、まどかも
この時間軸でも、その事実、世界が滅ぶ危険を避けては通れないんだから

まどか「……どうして、世界が滅ぶの?それと、魔法少女を頃すのと、どういう関係があるの?」

ほむら「……世界が滅ぶ原因は、私がしくじること」

ほむら「魔法少女を頃すのは…………インキュベーターの関心をその事件にむけさせること」

まどか「何でそんなことを?」

ほむら「………」

ほむら「………まどかが最強の魔女になった話はしたわよね?」

まどか「……うん」

ほむら「……彼女は、それを阻止しようと動いていたの」

まどか「…………え?」

ほむら「……それで、彼女は最終的に魔法少女になる前のまどかを頃した」

さやか「最低だね」

マミ「許せないわ」

398: 2013/11/11(月) 00:55:46.65 ID:WZZE+O4D0
まどか「……私のせい?私のせいでそんな事件が……」

ほむら「あなたのせいじゃない」

ほむら「『間違った未来』を見たその女の独善と、その『間違った未来』で何もできなかった私の甘さが原因なの」

ほむら「それに、手は打ってある。この時間軸でそんな事件は起きない」

まどか「でも、その子、私が世界を滅ぼすのを見たん……だよね………?」

ほむら「……違う時間軸の、間違った未来なのよ」

まどか「だけど……!」

ほむら「聞いてまどか。…大丈夫なの。その点に関しては安心して」

ほむら「まどかが世界を滅ぼしかねない魔女になったことは、一度しかない」

ほむら「まどかが魔女にならないように……してきたから。」

まどか「…え?」

399: 2013/11/11(月) 00:57:51.71 ID:WZZE+O4D0
ほむら「………ワルプルギスとの戦いで、見かねたまどかが契約して参戦すると、なぜか倒した後でソウルジェムが限界を迎えてしまう」

ほむら「まどかが、魔女になること、世界が滅ぼすことを望まないって私は知ってたから……だから、私は……」

まどか「…?」

ほむら「……頃してきた。ワルプルギスが消えた後、魔女になる前に」

まどか「!」

……放っておいてもよかったはずなんだ。ほむらはそのときは繰り返すんだから
だけどほむらは、その時間軸のまどかのために、まどかを頃してきた

まどかのためにまどかを殺せるほむらのことを、心底すごいと思った
どれだけ辛かったんだろう…

400: 2013/11/11(月) 01:00:10.70 ID:WZZE+O4D0
ほむら「………世界が滅んだときは、そういう結果になるって知らなくて、私がためらったときだけなの」

まどか「ほむらちゃん………」

ほむら「この時間軸でも、もしものときは……」

ほむらは、後に言葉を紡げず泣き出した

ほむら「……ごめんなさい……ごめんなさい……まどか……ごめんなさい…私…私…」

まどかは、ほむらを抱きしめた

まどか「ありがとう、ほむらちゃん。今まで私を守ってきてくれたんだよね」

ほむら「まどかぁ……」

まどか「もう大丈夫だよ、ほむらちゃん。わたし、もう、絶対に契約しないから」

ほむら「約束よ……約束だからね……まどかぁ……」

401: 2013/11/11(月) 01:02:54.52 ID:WZZE+O4D0
30分後

ほむら「………見苦しいところを見せてしまったわね」

さやか「いやあ、むしろほほえましかったよ」

マミ「ええ、泣きたいときは思いっきり泣けばいいのよ」

ほむら「………あなたにそうしてもらえると、私としても安心できるんだけど?」

マミ「……善処するわ」

さやか「それでさ、結局佐倉杏子はどういうときに断って、どういうときに断らないのかな?」

マミ「……一回目は私たちを、特に美樹さんの指導を手伝うことに協力した」

マミ「ほかはワルプルギスを倒すため、あるいは、魔法少女狩りを止めるため。断るときは、千歳さんを守るため」

マミ「……今回は何なのかしら?」

ほむら「うーん……」

まどか「……あの」

さやか「どうしたの?まどか」

402: 2013/11/11(月) 01:05:33.19 ID:WZZE+O4D0
さやか「どうしたの?まどか」

まどか「杏子ちゃんがさやかちゃんの先生をしたときって、マミさん、大変だったんだよね?」

ほむら「……そう、だけど?」

マミ「……私のためだって言いたいの?」

まどか「そうです」

さやか「だけど、他のときはマミさんはいなかったんだよ?」

まどか「うん。マミさんはいなかった。この町をずっと守ってきた魔法少女が、いなかったんだよ」

ほむら「……え?」

まどか「マミさんの意思をついで、この町を守りたかったんじゃないかな?」

まどか「自分の気持ちを認めたくなかったから、『条件』なんてつけてきたんだよ。きっと」

403: 2013/11/11(月) 01:11:08.96 ID:WZZE+O4D0
さやか「……それはいい風に解釈しすぎじゃない?だったら、どうして今回は助けてくれないのよ?」

さやか「この町を滅ぼそうって魔女と戦おうとしてるんだよ、私たちは」

まどか「だけどさ、杏子ちゃん知らないでしょ?ワルプルギスの夜の強さなんて」

さやか「知らない?魔法少女の中では有名な話だって言ってなかったっけ?」

ほむら「……………まさか」

さやか「ほむら?」

ほむら「………最初の時間軸でね、まどか、楽観視……とまではいかないでしょうけど、甘く見積もっていたの。ワルプルギスの夜の力を」

ほむら「マミさんと一緒なら大丈夫だよ、って。巴さんは窘めてたけど」

さやか「……え?」

ほむら「あ!もちろん覚悟はしてて、勇敢に戦ったわよ?」

さやか(そこ、本筋と関係ない)

404: 2013/11/11(月) 01:14:01.01 ID:WZZE+O4D0
ほむら「二つ目の時間軸で、巴さんの力を目の当たりにして、一度目の時間軸の結果は何かの間違いだったんじゃないか」

ほむら「少なくとも今回、三人で挑めば負けるはずはないって思った。だけど、ワルプルギスは規格外だった」

さやか「……」

ほむら「現役の魔法少女で、ワルプルギスの力を知っている人は多分いない。杏子も知らないはず」

ほむら「そして、彼女は巴さんの力を知っている」

ほむら「……あのときのまどかと同じような考えを持っていても、おかしくは…ない…?」

さやか「つまり、あいつは、マミさんが困っているときに力を貸してくれて、マミさんがいないときにはマミさんのためにこの町を守ってくれる」

さやか「でも、マミさんが何とかできるときには力を貸してくれないってこと?」

まどか「うん」

405: 2013/11/11(月) 01:16:19.55 ID:WZZE+O4D0
ほむら「じゃあ、魔法少女狩りは?最強の魔女にも勝てるって思われてるマミさんが、どうしてそこらの魔法少女に負けるって思うの?」

まどか「ほむらちゃん言ってたじゃん。犯人に『思うところ』があったって」

ほむら「……そうね……恨みに近かったでしょうね」

さやか「……つまり、そのときは、マミさんのためじゃなくて、自分のため…だった7かもしれないと……」

マミ「結構筋は通ってるかもしれないわね」

ほむら「……杏子って、案外面倒くさい娘だったのね」

まどか「ほむらちゃん!」

マミ「だめよ、そんなこと言っちゃ」

ほむら「……ごめんなさい」

406: 2013/11/11(月) 01:18:49.24 ID:WZZE+O4D0
さやか「……じゃあ、あたし、明日にでもあいつのとこ行ってみるよ」

ほむら「……言ったでしょう?あなた、さっきあんなことがあったばかりじゃない?」

さやか「大丈夫。今度はこっちから仕掛けない。あいつが仕掛けてきたらすぐ逃げる。ソウルジェムさえ守れれば、すぐ氏ぬことはないしさ」

さやか「それに、いきなり頃しにかかるやつじゃないんでしょ?今の話では」

ほむら「何より、ほむらが仲間にしようとしてるやつなんだし」

ほむら「確かに杏子が悪人だとは思っていなかったけど……」

マミ「彼女が悪い子じゃないとは思っているんだけど……」

さやか「……二人とも、何で私を見るんですかね?」

ほむら「自分の胸に手を当てて考えてみなさい」

マミ「回復魔法のせいなのかしら?どうしても無謀な戦いを挑みがちなのよねえ」

さやか「……うう」

407: 2013/11/11(月) 01:24:21.80 ID:WZZE+O4D0
ほむら「いっそのこと、三人で行く?この際多少強行的に行ってもいいんじゃないかしら」

マミ「彼女、私たち三人から振り切るくらいならできるわ。そしたら結局ご破算よ」

まどか「じゃあ、私がついていく」

ほむら「まどか!?」

まどか「さやかちゃんが無茶しそうになった時は、私が止める」

ほむら「……さやかでも危ないと言っているのよ?」

まどか「無力な一般人を頃すような子じゃないんでしょ?」

ほむら「………巻き込まれるってことがあるでしょう?」

マミ「暁美さんも私も、あなたが絶対安全だと断言できるわけじゃないのよ?」

マミ「特に私は彼女ともう長いこと会っていない……信じたいと思ってるけど」

マミ「それでも許容できる話ではないわ」

まどか「……わかってます。それでも、私はほむらちゃんを信じます」

ほむら「……まどか…」

408: 2013/11/11(月) 01:27:13.29 ID:WZZE+O4D0
……この三人がここまで深刻な顔をするのは、すべてあたしの無鉄砲さに原因があるわけで、本当に申し訳なくて情けない
だからと言って、私が冷静になるといっても、三人とも信じるわけがなくて……

現状を招いた後悔は後でいくらでもする
だけど、あいつは交渉役にあたしを指名した
だから、結局のところ、あたしが出向かないと始まらない
ストッパーは絶対に必要で、それはこの状況ではまどかしかありえない

だから、あたしがすべきことは、しなきゃいけないことは――

さやか『ほむら、何があってもまどかは必ず守る。神に誓う』

さやか『何度裏切ってきたか、あたしにはわからないけど……今の時間軸でも裏切っちゃったけど、今度ばかりは絶対に』

ほむら『…』

ほむら『……』

ほむら「わかった」

ほむら『………あなたが氏んだら誰もまどかを守れなくなる。そこは忘れないで』

409: 2013/11/11(月) 01:33:48.19 ID:WZZE+O4D0
投下終了です。これにて第11話完です

手は打ってある、の手段に関しては、今回ほむらはマミ・さやかに不信感をできるだけもたれない、をテーマに動き始めていたので
非道な手段はとっていないと考えています。時間停止を駆使して隠滅しても、QBにバレる時はバレますから
具体的な手段に関してはご想像にお任せします

410: 2013/11/11(月) 01:50:13.97 ID:p5KxXUCCo

杏子のめんどくさい子扱いに吹いた
この面子に言われたくないよなぁw
まどか「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」【3】

引用: まどか「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」