1: 2012/04/21(土) 10:51:37.20 ID:UJ/N6D8h0
「ファーストキスは、レモン味」
「初恋の色は、レモン色」
「甘酸っぱいあの味は、いつまでもこの中に残りつづけて」
「レモンを見るたび味わうたびに、いつまでも鮮明によみがえる」
「消えない、魔法」
「それって素敵なことじゃない?」
「初恋の色は、レモン色」
「甘酸っぱいあの味は、いつまでもこの中に残りつづけて」
「レモンを見るたび味わうたびに、いつまでも鮮明によみがえる」
「消えない、魔法」
「それって素敵なことじゃない?」
2: 2012/04/21(土) 10:55:13.67 ID:UJ/N6D8h0
――――――
私たちの歩みは遅い。
でも、やっと。
やっとここまでたどりついたんだ。
この関係がこわれないように。
やさしく、ゆっくり。
「……どうか、私と」
「これからも一緒にいてください」
「…………ええ」
「もちろんですわ」
私たちの歩みは遅い。
でも、やっと。
やっとここまでたどりついたんだ。
この関係がこわれないように。
やさしく、ゆっくり。
「……どうか、私と」
「これからも一緒にいてください」
「…………ええ」
「もちろんですわ」
3: 2012/04/21(土) 10:58:37.65 ID:UJ/N6D8h0
最初は彼女は泣き虫で、
私がいないとだめだったのに。
いつしか彼女はおおきくなって、
私は彼女がいないとだめになった。
彼女は何でも上手にこなし、
私は彼女に頼りっきり。
そんなの恥ずかしい。
ちょっとぐらい、かっこつけたっていいじゃない。
―――とある雨の日。
私は柄にもなく図書室なんか入ってみて。
柄にもなく、手にとった一冊。
「これだ!」
私がいないとだめだったのに。
いつしか彼女はおおきくなって、
私は彼女がいないとだめになった。
彼女は何でも上手にこなし、
私は彼女に頼りっきり。
そんなの恥ずかしい。
ちょっとぐらい、かっこつけたっていいじゃない。
―――とある雨の日。
私は柄にもなく図書室なんか入ってみて。
柄にもなく、手にとった一冊。
「これだ!」
4: 2012/04/21(土) 11:02:30.53 ID:UJ/N6D8h0
――――――
櫻子「…………」とぼとぼ
レモン、レモン。
頭の中にはそれしかなかった。
最後にレモンを食べたのはいつだっけ。
そもそも、レモンなんてうちは全然食べない。
たぶんアイスティーのグラスについてるあれが最後なんじゃないかな。
そんな有様ではあるのだが、頭の中はレモン一色なのだった。
「ファーストキスは、レモンの味。」
想像しかできないけど、きっと素晴らしいものに違いない。
もっとも、最後に食べたのもいつかわからない有様であるから、味もよく思い出せないのだけれど、とても魅力的に感じている。
櫻子「…………」とぼとぼ
レモン、レモン。
頭の中にはそれしかなかった。
最後にレモンを食べたのはいつだっけ。
そもそも、レモンなんてうちは全然食べない。
たぶんアイスティーのグラスについてるあれが最後なんじゃないかな。
そんな有様ではあるのだが、頭の中はレモン一色なのだった。
「ファーストキスは、レモンの味。」
想像しかできないけど、きっと素晴らしいものに違いない。
もっとも、最後に食べたのもいつかわからない有様であるから、味もよく思い出せないのだけれど、とても魅力的に感じている。
7: 2012/04/21(土) 11:05:46.30 ID:UJ/N6D8h0
櫻子(やっぱり、こういうときのは飴なんだよね)
櫻子(レモンの飴、レモンの飴……)
櫻子「…………」
櫻子(良いのがない……)
櫻子(流石にVC3000のど飴なんか使ったら嫌な思い出が残っちゃうし……)
櫻子(フルーツアソートからレモンだけ抜こうか? いやいやそれも子供っぽい……)
櫻子(ピンとくるものがないなぁ……)
櫻子(レモンの飴、レモンの飴……)
櫻子「…………」
櫻子(良いのがない……)
櫻子(流石にVC3000のど飴なんか使ったら嫌な思い出が残っちゃうし……)
櫻子(フルーツアソートからレモンだけ抜こうか? いやいやそれも子供っぽい……)
櫻子(ピンとくるものがないなぁ……)
9: 2012/04/21(土) 11:09:08.65 ID:UJ/N6D8h0
~
櫻子「はぁ……」
櫻子(やっぱり、綺麗事でしかないのかな)
櫻子(所詮は本の中のお話ってわけ?)
櫻子(……いや、あきらめない!)
櫻子「……よし、次はどこに行ってみようかなー」
「もしもし、そこの人」
櫻子「……? え、私……?」
櫻子(なんだろ……この小さい子。迷子かな?)
「キス用の飴を探しているのね?」
櫻子「はっ……はぁぁっ!?///」
櫻子「はぁ……」
櫻子(やっぱり、綺麗事でしかないのかな)
櫻子(所詮は本の中のお話ってわけ?)
櫻子(……いや、あきらめない!)
櫻子「……よし、次はどこに行ってみようかなー」
「もしもし、そこの人」
櫻子「……? え、私……?」
櫻子(なんだろ……この小さい子。迷子かな?)
「キス用の飴を探しているのね?」
櫻子「はっ……はぁぁっ!?///」
11: 2012/04/21(土) 11:13:19.53 ID:UJ/N6D8h0
突然現れた少女。
長い綺麗な髪の女の子だ。……ちょっと花子に似ている。
日本人……なのかな?
薄紫が基調の、フリルのついた服を着ている。少し派手なんじゃないだろうかと思うくらいだが、小柄な身体には何故か合っているような気もした。
なんだか、見ればみるほど花子に似ている。背丈はほとんど同じだから、花子を垂れ目にして、髪をゆるく巻くようにしたら……たぶんこの子が出来上がるのかもしれない。
この辺りじゃ見かけない子だ。というか……
櫻子「き、キスって……なんで……?///」
「うふふふ……私こういうものです」サッ
櫻子(名刺!?)
櫻子「あ、飴宮……??」
あめ「はい……飴職人をやらせてもらっております。あめちゃんとでもお呼びくださいね?」クスクス
櫻子「あめしょくにん……!?」
長い綺麗な髪の女の子だ。……ちょっと花子に似ている。
日本人……なのかな?
薄紫が基調の、フリルのついた服を着ている。少し派手なんじゃないだろうかと思うくらいだが、小柄な身体には何故か合っているような気もした。
なんだか、見ればみるほど花子に似ている。背丈はほとんど同じだから、花子を垂れ目にして、髪をゆるく巻くようにしたら……たぶんこの子が出来上がるのかもしれない。
この辺りじゃ見かけない子だ。というか……
櫻子「き、キスって……なんで……?///」
「うふふふ……私こういうものです」サッ
櫻子(名刺!?)
櫻子「あ、飴宮……??」
あめ「はい……飴職人をやらせてもらっております。あめちゃんとでもお呼びくださいね?」クスクス
櫻子「あめしょくにん……!?」
13: 2012/04/21(土) 11:16:44.95 ID:UJ/N6D8h0
あめ「飴職人です。あなたのお望みの飴を作って差し上げましょう」
櫻子「……え? 待って待って……えーっと……」
櫻子(ま、まずこの子はなんなんだ……)
櫻子「あ、あのー君迷子かなっ? お母さんとはぐれちゃったの?」
あめ「あらあら……この期に及んで子供扱いとは。 これでも数百年の時を……」
櫻子「え?」
あめ「あっ……ああいえ、なんでもありません」
あめ「それより話を戻しますけど、キス用の飴が欲しいのでしょう?」
櫻子「あゎっ……/// な、なぜそれを……?」
あめ「……ふふ、恋する乙女は皆同じ顔をして、皆同じ道を歩んでいくものだから」
櫻子(そんな理由で……?)
櫻子「……え? 待って待って……えーっと……」
櫻子(ま、まずこの子はなんなんだ……)
櫻子「あ、あのー君迷子かなっ? お母さんとはぐれちゃったの?」
あめ「あらあら……この期に及んで子供扱いとは。 これでも数百年の時を……」
櫻子「え?」
あめ「あっ……ああいえ、なんでもありません」
あめ「それより話を戻しますけど、キス用の飴が欲しいのでしょう?」
櫻子「あゎっ……/// な、なぜそれを……?」
あめ「……ふふ、恋する乙女は皆同じ顔をして、皆同じ道を歩んでいくものだから」
櫻子(そんな理由で……?)
14: 2012/04/21(土) 11:20:09.55 ID:UJ/N6D8h0
あめ「作って差し上げようと言っているのです。どうですか?」
櫻子「つ、作るって……飴を?」
あめ「どうせレモンの飴が欲しいとかおもってるんでしょう? でもなかなか見つからないから途方に暮れていた……違うかしら?」
櫻子(なんなんだこの子は……普通の子供じゃない……)
櫻子「…………」
櫻子「えーっと、あめちゃん?」
あめ「はい?」
櫻子「どんな飴でもつくれるの?」
あめ「……まだ疑っていますか。では……これをどうぞ」さっ
櫻子「これ……」
あめ「私の自信作です。さあ、おひとつ」
櫻子「えっ、これ飴なの!? 宝石みたい……///」
あめ「飴職人の、飴ですから」
櫻子「つ、作るって……飴を?」
あめ「どうせレモンの飴が欲しいとかおもってるんでしょう? でもなかなか見つからないから途方に暮れていた……違うかしら?」
櫻子(なんなんだこの子は……普通の子供じゃない……)
櫻子「…………」
櫻子「えーっと、あめちゃん?」
あめ「はい?」
櫻子「どんな飴でもつくれるの?」
あめ「……まだ疑っていますか。では……これをどうぞ」さっ
櫻子「これ……」
あめ「私の自信作です。さあ、おひとつ」
櫻子「えっ、これ飴なの!? 宝石みたい……///」
あめ「飴職人の、飴ですから」
15: 2012/04/21(土) 11:23:24.20 ID:UJ/N6D8h0
ぱくっ
櫻子「………………!!!」
あめ「ふふふ……」
見た目もそうだが、これは果たして飴なのか。
何味とか、そういうことではない。おいしいかまずいか、そういう次元の問題ではなかった。
櫻子「なに……これ……」
心に何か入ってくる。口の中で溶けてゆくそれから出る何かが。
少しの熱を散らしながらなくなっていく宝石。
立ち尽くすことしかできない。身体に意識が届かない。
頭がすぐにいっぱいになり、しかしそれは頭の中でまた消えてゆく。
いつのまにか宝石は溶け切っていた。それすらに気づかなかったのだ。
櫻子「………………!!!」
あめ「ふふふ……」
見た目もそうだが、これは果たして飴なのか。
何味とか、そういうことではない。おいしいかまずいか、そういう次元の問題ではなかった。
櫻子「なに……これ……」
心に何か入ってくる。口の中で溶けてゆくそれから出る何かが。
少しの熱を散らしながらなくなっていく宝石。
立ち尽くすことしかできない。身体に意識が届かない。
頭がすぐにいっぱいになり、しかしそれは頭の中でまた消えてゆく。
いつのまにか宝石は溶け切っていた。それすらに気づかなかったのだ。
18: 2012/04/21(土) 11:28:01.72 ID:UJ/N6D8h0
あめ「どうかしら?」
櫻子「す……すごい……」
これが、飴職人の飴。
この子が何者かはわからないけど、今の自分に溢れる "これ" は本物だ。
櫻子「お、おねがい! 作って欲しい飴があるの!」
あめ「ええ、いいでしょう。……そうね、ここではなんだから、私の家にこない?」
櫻子「家?」
あめ「そう……そこで作ってあげるわ」
やけに話がうますぎやしないか?
そんな疑問は、恋する乙女には届かない。
櫻子「す……すごい……」
これが、飴職人の飴。
この子が何者かはわからないけど、今の自分に溢れる "これ" は本物だ。
櫻子「お、おねがい! 作って欲しい飴があるの!」
あめ「ええ、いいでしょう。……そうね、ここではなんだから、私の家にこない?」
櫻子「家?」
あめ「そう……そこで作ってあげるわ」
やけに話がうますぎやしないか?
そんな疑問は、恋する乙女には届かない。
19: 2012/04/21(土) 11:31:45.56 ID:UJ/N6D8h0
――――――
櫻子「……あのー」
あめ「はい?」
櫻子「こっちの方角って、結構深い森しかないんですけど……」
あめ「ええ。森の中にあるの」
櫻子「…………」
この子は人間なのか?
ずっと後をついていて、そんなことを考えていた。
物珍しい服装、大人びた口調、よく通る声。
この子の声を、私はちゃんと耳で受け取っているかと言われたら、ちょっと悩む。
まるで……そう、ヘッドホンを使っている時の感覚。
頭の中に直接届いてるような声なのだ。
櫻子「……あのー」
あめ「はい?」
櫻子「こっちの方角って、結構深い森しかないんですけど……」
あめ「ええ。森の中にあるの」
櫻子「…………」
この子は人間なのか?
ずっと後をついていて、そんなことを考えていた。
物珍しい服装、大人びた口調、よく通る声。
この子の声を、私はちゃんと耳で受け取っているかと言われたら、ちょっと悩む。
まるで……そう、ヘッドホンを使っている時の感覚。
頭の中に直接届いてるような声なのだ。
20: 2012/04/21(土) 11:37:02.40 ID:UJ/N6D8h0
そして、この暗い森をずんずんと進んでいく姿。
この森は隣の県との県境にあり、本当に山道しかない、いわば「歩いて来る場所」ではないのだ。それを道沿いはおろか森の奥深くへ向かっているのだから……
櫻子(ちゃ、ちゃんと帰れるかな……)
櫻子(クマとか出るかもしれない……)
あめ「心配しないで。帰りも私がなんとかするわ」
櫻子「…………」
あと、これだ。
喋ってもいないことにこの子は応えてくるのだ。
心が読めるとか?
…………まさかね。
この森は隣の県との県境にあり、本当に山道しかない、いわば「歩いて来る場所」ではないのだ。それを道沿いはおろか森の奥深くへ向かっているのだから……
櫻子(ちゃ、ちゃんと帰れるかな……)
櫻子(クマとか出るかもしれない……)
あめ「心配しないで。帰りも私がなんとかするわ」
櫻子「…………」
あと、これだ。
喋ってもいないことにこの子は応えてくるのだ。
心が読めるとか?
…………まさかね。
21: 2012/04/21(土) 11:43:50.05 ID:UJ/N6D8h0
本当なら、怖がったりするところなのかもしれない。
しかし、この子の後ろ姿を見ていると、どうもそんな気さえ出てこないのだった。
あめ「着いたわ」
櫻子「え……ここ!?」
あめ「ここよ。扉があるでしょ?」
櫻子「いや、あるにはあるけどさ……」
この扉、木にくっついてるだけじゃないの?
てっきり、小屋みたいなものぐらいあるのかと思っていた。
なんだろう……木の中をくり抜いて部屋にしたみたいな、いわゆるおとぎ話の中の世界観ならまだしもというか……
あめ「入って?」ガチャ
櫻子「…………」
しかし、この子の後ろ姿を見ていると、どうもそんな気さえ出てこないのだった。
あめ「着いたわ」
櫻子「え……ここ!?」
あめ「ここよ。扉があるでしょ?」
櫻子「いや、あるにはあるけどさ……」
この扉、木にくっついてるだけじゃないの?
てっきり、小屋みたいなものぐらいあるのかと思っていた。
なんだろう……木の中をくり抜いて部屋にしたみたいな、いわゆるおとぎ話の中の世界観ならまだしもというか……
あめ「入って?」ガチャ
櫻子「…………」
23: 2012/04/21(土) 11:49:36.57 ID:UJ/N6D8h0
本当に中に入れるらしい。この薄暗い森の中で、この木の中は明るい光を漏らしている。誰かが住んでいる証だ。
櫻子(これって……もしかして夢なのかな)
だとしたらいつからが夢なのだろう。
あめ「こっちよ、サクラコ」
櫻子「うん……」(あれ、私いつ名乗ったんだっけ……)
夢かどうかなんて、どっちでもいいのかな。
私はこの子のペースに流されているだけでいいのかもしれない。
ちょうどいい飴が手に入るというのなら、この夢を見つづけていよう。
そんな、軽い気持ちでいる自分が、なんだか楽しかった。
櫻子(これって……もしかして夢なのかな)
だとしたらいつからが夢なのだろう。
あめ「こっちよ、サクラコ」
櫻子「うん……」(あれ、私いつ名乗ったんだっけ……)
夢かどうかなんて、どっちでもいいのかな。
私はこの子のペースに流されているだけでいいのかもしれない。
ちょうどいい飴が手に入るというのなら、この夢を見つづけていよう。
そんな、軽い気持ちでいる自分が、なんだか楽しかった。
24: 012/04/21(土) 11:53:08.65 ID:UJ/N6D8h0
櫻子「わっ、わぁ……!」
中はごちゃごちゃしているようで、物全体が光を放つ幻想的な部屋だった。
櫻子「な、なんなのこれは……」
あめ「あまり物に触らないでね? 大切なものなの。」
櫻子「あ、これ……さっきみたいな飴?」
あめ「……そうね。でも食べちゃだめよ?」
四方から鳴る時計の音、オルゴールの音、
垂れ下がるガラス類は光を放ち、
あたりの小瓶からは良い香りが漂う。
中はごちゃごちゃしているようで、物全体が光を放つ幻想的な部屋だった。
櫻子「な、なんなのこれは……」
あめ「あまり物に触らないでね? 大切なものなの。」
櫻子「あ、これ……さっきみたいな飴?」
あめ「……そうね。でも食べちゃだめよ?」
四方から鳴る時計の音、オルゴールの音、
垂れ下がるガラス類は光を放ち、
あたりの小瓶からは良い香りが漂う。
25: 2012/04/21(土) 11:56:47.68 ID:UJ/N6D8h0
あめ「よいしょ……」
部屋の中央の小高いイスに、あめちゃんは座った。
彼女はここの主だ。
ここは彼女の秘密基地で、飴細工はランジェリーだ。
櫻子「というか……ここ地中なのかな。結構部屋が広いんだけど……」
あめ「細かいことは気にしなくていいわ。それより、飴でしょう?」
櫻子「あ、うんっ」
あめ「キス用で、レモンの飴ね……」サラサラ
櫻子「…………///」
キス用ってそもそも言わなくても良いような気がするけど……ここは黙っているしかない。
何かメモをとっているあめちゃん。今更だけど飴職人ってこういうのじゃないんじゃないか。
部屋の中央の小高いイスに、あめちゃんは座った。
彼女はここの主だ。
ここは彼女の秘密基地で、飴細工はランジェリーだ。
櫻子「というか……ここ地中なのかな。結構部屋が広いんだけど……」
あめ「細かいことは気にしなくていいわ。それより、飴でしょう?」
櫻子「あ、うんっ」
あめ「キス用で、レモンの飴ね……」サラサラ
櫻子「…………///」
キス用ってそもそも言わなくても良いような気がするけど……ここは黙っているしかない。
何かメモをとっているあめちゃん。今更だけど飴職人ってこういうのじゃないんじゃないか。
27: 2012/04/21(土) 12:01:01.22 ID:UJ/N6D8h0
あめ「だいたいの構想はできたわ。ちょっと待ってね……」ゴソゴソ
櫻子「早いな……」
あめ「これを使います」ゴトッ
櫻子「これは……?」
あめ「私なりのやり方です。ここに、あなたは相手への想いをたくさん言ってほしいのです」
櫻子「この中に?」
あめ「私は想いを込めることを大切にします。これもその一貫。声は漏れないようになってるから、好きなだけ言ってね。普段から伝えたいこと、普段なかなか伝えられないようなこと、自分の気持ち、なんでもいいわ。その人に関することなら」
櫻子「へぇ………」
櫻子「早いな……」
あめ「これを使います」ゴトッ
櫻子「これは……?」
あめ「私なりのやり方です。ここに、あなたは相手への想いをたくさん言ってほしいのです」
櫻子「この中に?」
あめ「私は想いを込めることを大切にします。これもその一貫。声は漏れないようになってるから、好きなだけ言ってね。普段から伝えたいこと、普段なかなか伝えられないようなこと、自分の気持ち、なんでもいいわ。その人に関することなら」
櫻子「へぇ………」
28: 2012/04/21(土) 12:09:47.90 ID:UJ/N6D8h0
あめ「あ、忘れてた。 あなたの相手のお名前は?」
櫻子「……向日葵」
あめ「あら……女性かしら」
櫻子「やっぱり、変……かな」
あめ「そんなことはないわ。性別なんて関係ない。そんなものに想いは左右されない」
あめ「ヒマワリ……ね。太陽の花だわ」
あめ「ヒマワリとサクラコ……いいじゃない」
櫻子「あ、ありがと……///」
あめ「ああ、私のことは気にしなくていいわ。それじゃ、好きなだけやって頂戴」
櫻子「……向日葵」
あめ「あら……女性かしら」
櫻子「やっぱり、変……かな」
あめ「そんなことはないわ。性別なんて関係ない。そんなものに想いは左右されない」
あめ「ヒマワリ……ね。太陽の花だわ」
あめ「ヒマワリとサクラコ……いいじゃない」
櫻子「あ、ありがと……///」
あめ「ああ、私のことは気にしなくていいわ。それじゃ、好きなだけやって頂戴」
29: 2012/04/21(土) 12:12:56.00 ID:UJ/N6D8h0
櫻子(これに吹き込む?)
なにやらよくわからない、くねくね曲がったビンのようなものを渡された。グラスの美術館とかに置いてありそうな工芸品に似ている。いや、実際見たことはないが、なんかそんか感じがする。
櫻子(……やってみるしかないか)
櫻子(言いたいことなら、いっぱいあるもんね)スゥ
「向日葵、あのね――――」
なにやらよくわからない、くねくね曲がったビンのようなものを渡された。グラスの美術館とかに置いてありそうな工芸品に似ている。いや、実際見たことはないが、なんかそんか感じがする。
櫻子(……やってみるしかないか)
櫻子(言いたいことなら、いっぱいあるもんね)スゥ
「向日葵、あのね――――」
30: 2012/04/21(土) 12:16:13.93 ID:UJ/N6D8h0
―
――
―――
――――――
「なにやってんのさ、起きなよ」
櫻子「ぅ……ん……??」
撫子「アンタこんなとこで寝てるってマジでやばいよ? せめて家に入りなよ」
櫻子「あ、あれっ!? ここどこ!?」
撫子「……ほんとに頭おかしくなった? 家の前だよ」
櫻子「う、うそ……だって私……!」
櫻子(あ)
櫻子「やっぱり……夢だったんだ……」
――
―――
――――――
「なにやってんのさ、起きなよ」
櫻子「ぅ……ん……??」
撫子「アンタこんなとこで寝てるってマジでやばいよ? せめて家に入りなよ」
櫻子「あ、あれっ!? ここどこ!?」
撫子「……ほんとに頭おかしくなった? 家の前だよ」
櫻子「う、うそ……だって私……!」
櫻子(あ)
櫻子「やっぱり……夢だったんだ……」
31: 2012/04/21(土) 12:20:43.56 ID:UJ/N6D8h0
撫子「なに、なんでここで寝てたか覚えてないの?」
櫻子「うん……ぜんっぜん覚えてない……」
撫子「バカ。道端で寝る中学生なんていないよ普通……いくら田舎だからってね、危ないことに変わりはないんだから。誘拐とかされたらどうすんの?」
櫻子「わ、わかってるよそんなのっ」
撫子「わかってないから言ってんでしょ」
櫻子「うるさいなぁ!」
撫子「ちょっと!」
バタン!
撫子(何かあってからじゃ遅いんだよ……!)
撫子「……はぁ」
櫻子「うん……ぜんっぜん覚えてない……」
撫子「バカ。道端で寝る中学生なんていないよ普通……いくら田舎だからってね、危ないことに変わりはないんだから。誘拐とかされたらどうすんの?」
櫻子「わ、わかってるよそんなのっ」
撫子「わかってないから言ってんでしょ」
櫻子「うるさいなぁ!」
撫子「ちょっと!」
バタン!
撫子(何かあってからじゃ遅いんだよ……!)
撫子「……はぁ」
32: 2012/04/21(土) 12:29:04.70 ID:UJ/N6D8h0
~
もやもやしている。
まだ頭がいっぱいだ。
あれは果たして夢だったのか?
どこまで……そう、あのビンにいろいろ吹き込むところまでは覚えている。
鮮明に。
櫻子「まだ思い出せるよ……あの部屋のにおいも、音も……」
櫻子「夢なわけないじゃん……」
すんすん
櫻子(ん……?)
がばっ
櫻子「!」
もやもやしている。
まだ頭がいっぱいだ。
あれは果たして夢だったのか?
どこまで……そう、あのビンにいろいろ吹き込むところまでは覚えている。
鮮明に。
櫻子「まだ思い出せるよ……あの部屋のにおいも、音も……」
櫻子「夢なわけないじゃん……」
すんすん
櫻子(ん……?)
がばっ
櫻子「!」
33: 2012/04/21(土) 12:37:33.35 ID:UJ/N6D8h0
なにか "違う匂い" がすると思った……ポーチの中のそれが、夢ではないことを教えてくれた。
銀色のケースに入った、宝石。
櫻子「レモンの飴……!」
櫻子「す、すっごい綺麗! やば!」
櫻子(夢じゃなかったんだ……作ってくれてたんだ!)
櫻子「あめちゃん……」
ぽろっ
櫻子「あっ……」
銀色のケースに入った、宝石。
櫻子「レモンの飴……!」
櫻子「す、すっごい綺麗! やば!」
櫻子(夢じゃなかったんだ……作ってくれてたんだ!)
櫻子「あめちゃん……」
ぽろっ
櫻子「あっ……」
34: 2012/04/21(土) 12:42:26.30 ID:UJ/N6D8h0
一緒にカードが入っていた。大人みたいな字で、
注文通りのものが作れたわ。
あなたの想いが強いから、その分これも輝きを増しているみたいね。
私は、別の国へ行くわ。
ただもう少しだけ、日本にいてみようとは思うけど、私を追いかけてはダメよ。
あの森にも近づかないこと。家は壊したわ。帰れなくなっても知らないから。
うまくいくことを願っています。ヒマワリにもよろしくね。
櫻子「そ、そんな……つーか家壊したっておかしいだろ……」
櫻子(……もしかしたら、最初から家なんてなかったのかもしれない)
注文通りのものが作れたわ。
あなたの想いが強いから、その分これも輝きを増しているみたいね。
私は、別の国へ行くわ。
ただもう少しだけ、日本にいてみようとは思うけど、私を追いかけてはダメよ。
あの森にも近づかないこと。家は壊したわ。帰れなくなっても知らないから。
うまくいくことを願っています。ヒマワリにもよろしくね。
櫻子「そ、そんな……つーか家壊したっておかしいだろ……」
櫻子(……もしかしたら、最初から家なんてなかったのかもしれない)
35: 2012/04/21(土) 12:46:12.20 ID:UJ/N6D8h0
櫻子「すごいなー、この飴。ほんとにレモンの香りが強い。この下に敷いてある草も……なんていうんだっけ」
そう、レモングラス。
櫻子「作り物……合成のレモンじゃないんだろうな。あめちゃんのことだから」
櫻子(これで……)
櫻子(いけるかな)
櫻子(カッコ良く、できるかな)
櫻子「向日葵……///」ぎゅっ
――――
―――
――
―
そう、レモングラス。
櫻子「作り物……合成のレモンじゃないんだろうな。あめちゃんのことだから」
櫻子(これで……)
櫻子(いけるかな)
櫻子(カッコ良く、できるかな)
櫻子「向日葵……///」ぎゅっ
――――
―――
――
―
36: 2012/04/21(土) 12:51:19.81 ID:UJ/N6D8h0
――――この国では、どんな想いが見られるのかしら。
ジャパン。
期待していたわ。最初は。
でも、トーキョーに降りてきたときはびっくり。
花の都と聞いていたのだけれど、どこが?
どこもかしこも、急いで歩き回る人ばかり。
くだらない欲望とどうでもいい不安とが渦巻いていて。
ロクな想いが感じられなかった。
ジャパン。
期待していたわ。最初は。
でも、トーキョーに降りてきたときはびっくり。
花の都と聞いていたのだけれど、どこが?
どこもかしこも、急いで歩き回る人ばかり。
くだらない欲望とどうでもいい不安とが渦巻いていて。
ロクな想いが感じられなかった。
37: 2012/04/21(土) 12:56:40.53 ID:UJ/N6D8h0
それでも、諦め半分でこんなところに来てみたのだけれど。
上物の当たりがいるじゃない。
屈託のない純粋な想い。
完全な恋心じゃないところが、またいいわね。
ふむふむ……あら、そんなことがしたいの? なかなか大胆なのね……でも楽しそう。
飴……飴……レモンの飴。
いけるわ。この子に決めた。
「もしもし、そこの人」
上物の当たりがいるじゃない。
屈託のない純粋な想い。
完全な恋心じゃないところが、またいいわね。
ふむふむ……あら、そんなことがしたいの? なかなか大胆なのね……でも楽しそう。
飴……飴……レモンの飴。
いけるわ。この子に決めた。
「もしもし、そこの人」
38: 2012/04/21(土) 13:00:22.14 ID:UJ/N6D8h0
――――――
私は魔法使い。
生き物の想いを具現化するために、あちこちを飛び回っているの。
特技は瞬間生成。あと心も読めるわ。
物事は全て属性で成り立つものなのだけど……この具現化した感情だけはなにものでもない。面白いでしょう?
中でも、恋心は特に輝いていて。
その輝きは人それぞれなのだけれど、
想いは留まることを知らずに膨らむの。
私はそれを追い求めてる。
私は魔法使い。
生き物の想いを具現化するために、あちこちを飛び回っているの。
特技は瞬間生成。あと心も読めるわ。
物事は全て属性で成り立つものなのだけど……この具現化した感情だけはなにものでもない。面白いでしょう?
中でも、恋心は特に輝いていて。
その輝きは人それぞれなのだけれど、
想いは留まることを知らずに膨らむの。
私はそれを追い求めてる。
39: 2012/04/21(土) 13:04:49.33 ID:UJ/N6D8h0
今回は、とてもうまく事が進んだわ。
サクラコには、期待できるものがある。
ヒマワリはどんな娘なのかしら。
この国では同性間の恋愛は育みにくいと聞いたのだけれど。
だからこそ、あんな想いを持った子がいるのかもね。
飴なんて作ったのは初めてだったけれど。
原理は想いの具現化と同じよ。
レモンなんて本当にオマケでしかないわ。
あなたの想いは全てそこに込めたから。
全て、あなた次第なのよ。サクラコ。
サクラコには、期待できるものがある。
ヒマワリはどんな娘なのかしら。
この国では同性間の恋愛は育みにくいと聞いたのだけれど。
だからこそ、あんな想いを持った子がいるのかもね。
飴なんて作ったのは初めてだったけれど。
原理は想いの具現化と同じよ。
レモンなんて本当にオマケでしかないわ。
あなたの想いは全てそこに込めたから。
全て、あなた次第なのよ。サクラコ。
40: 2012/04/21(土) 13:11:41.89 ID:UJ/N6D8h0
――――――
あめ(ここね、サクラコのスクールは)
目的の二人は、中庭にいた。
どうやら間に合ったみたいだ。
あめ(ちゃんと持ってるわね……飴)
あめ(なるほど、あれがヒマワリ……いい娘じゃない)
あめ(しっかり見ていてあげるわ)
二人の想いは、互いの足りないところを埋め合うようにできているような。
とても強くて……優しいもの。
あめ(あの飴と、サクラコの想いと、ヒマワリの想い)
あめ(3つが重なるその部分に意識を集中させる……)
あめ(最高の想いが結晶化できるわ!)
あめ(ここね、サクラコのスクールは)
目的の二人は、中庭にいた。
どうやら間に合ったみたいだ。
あめ(ちゃんと持ってるわね……飴)
あめ(なるほど、あれがヒマワリ……いい娘じゃない)
あめ(しっかり見ていてあげるわ)
二人の想いは、互いの足りないところを埋め合うようにできているような。
とても強くて……優しいもの。
あめ(あの飴と、サクラコの想いと、ヒマワリの想い)
あめ(3つが重なるその部分に意識を集中させる……)
あめ(最高の想いが結晶化できるわ!)
41: 2012/04/21(土) 13:16:48.76 ID:UJ/N6D8h0
~
櫻子(いくよ……)
向日葵「櫻子………///」
あめ(…………)
二人は、手を取り合い、
唇を重ね――――
向日葵「!?」ばっ
櫻子「んむっ!?」
あめ(えっ!?)
――――二人は離れた。
櫻子(いくよ……)
向日葵「櫻子………///」
あめ(…………)
二人は、手を取り合い、
唇を重ね――――
向日葵「!?」ばっ
櫻子「んむっ!?」
あめ(えっ!?)
――――二人は離れた。
42: 2012/04/21(土) 13:22:09.38 ID:UJ/N6D8h0
――――――
なんでこんな簡単なことに気付けなかったのだろう。
目の前の綺麗事に目を取られて、
大事なことを忘れていた。
―――初めてなのに。
大切なことだったのに。
飾る必要なんて、なかったのに……!
向日葵「…………」
櫻子(やめて……見ないで……)
なんでこんな簡単なことに気付けなかったのだろう。
目の前の綺麗事に目を取られて、
大事なことを忘れていた。
―――初めてなのに。
大切なことだったのに。
飾る必要なんて、なかったのに……!
向日葵「…………」
櫻子(やめて……見ないで……)
43: 2012/04/21(土) 13:28:36.56 ID:UJ/N6D8h0
嫌だったんだ。
飾ってほしくなかったんだ。
やっちゃった。
もう、戻れない。
櫻子「っ……!!」ダッ!
向日葵「あっ、櫻子……!」
飾ってほしくなかったんだ。
やっちゃった。
もう、戻れない。
櫻子「っ……!!」ダッ!
向日葵「あっ、櫻子……!」
44: 2012/04/21(土) 13:33:35.88 ID:UJ/N6D8h0
――――――
びっくりしただけだった。
そんなことするなんて、思ってなかった。
―――あの味は、レモン。
それも、とても優しい味。
向日葵(……まだ、ちょっと残ってる)
急に手紙なんかで呼びだすから、何かと思ったけど。
これがやりたかったのか。
向日葵「ふふふふ……」
本当に、 "大人ぶりたい子供" のままの彼女。
嫌われたとか、思ってるんじゃないだろうか。
だとしたら、それは違ってるということを教えてあげなくちゃ。
こういうことをするところも含めて、彼女が好きなのだから。
追いかけよう。
びっくりしただけだった。
そんなことするなんて、思ってなかった。
―――あの味は、レモン。
それも、とても優しい味。
向日葵(……まだ、ちょっと残ってる)
急に手紙なんかで呼びだすから、何かと思ったけど。
これがやりたかったのか。
向日葵「ふふふふ……」
本当に、 "大人ぶりたい子供" のままの彼女。
嫌われたとか、思ってるんじゃないだろうか。
だとしたら、それは違ってるということを教えてあげなくちゃ。
こういうことをするところも含めて、彼女が好きなのだから。
追いかけよう。
45: 2012/04/21(土) 13:37:50.34 ID:UJ/N6D8h0
――――――
あめ(どういうこと……?)
なんで二人は、あのとき反発するように引き離れたのか。
突き放したのは、ヒマワリの方に見えた。
でも、先に思いが変わったのは、間違いなくサクラコの方だった。
あめ(まったくわからないわ……)
あめ(ヒマワリの持つ優しさはさっきより強くなった。でもサクラコは、恐れを抱いて逃げたした……)
あめ(どういう変化なの……?)
あめ(……そっか)
あめ(人間やめた私には、わからないのかもね)
あめ(どういうこと……?)
なんで二人は、あのとき反発するように引き離れたのか。
突き放したのは、ヒマワリの方に見えた。
でも、先に思いが変わったのは、間違いなくサクラコの方だった。
あめ(まったくわからないわ……)
あめ(ヒマワリの持つ優しさはさっきより強くなった。でもサクラコは、恐れを抱いて逃げたした……)
あめ(どういう変化なの……?)
あめ(……そっか)
あめ(人間やめた私には、わからないのかもね)
46: 2012/04/21(土) 13:43:07.78 ID:UJ/N6D8h0
すたっ
あめ「…………」
櫻子「あ……あめちゃん……」ぐすっ
あめ「サクラコ……」
櫻子「……見てたの?」
あめ「ええ。何故こうなってしまったの? ことは全てうまく行っていたはずなのに」
櫻子「…………」
櫻子「私が……バカだから……」
櫻子「まだまだ子供のままで……変われていないから……」ポロポロ
あめ「…………」
櫻子「あ……あめちゃん……」ぐすっ
あめ「サクラコ……」
櫻子「……見てたの?」
あめ「ええ。何故こうなってしまったの? ことは全てうまく行っていたはずなのに」
櫻子「…………」
櫻子「私が……バカだから……」
櫻子「まだまだ子供のままで……変われていないから……」ポロポロ
47: 2012/04/21(土) 13:47:15.79 ID:UJ/N6D8h0
櫻子「ほんとは、飴なんていらなかったんだよ」
あめ「何故? あなたは飴を探していたじゃない」
櫻子「だから、気づけなかったのっ!」
あめ「…………」
櫻子「初めて、だったんだよ……?」
櫻子「ゆっくりゆっくり、やっとここまで来たのに……」
櫻子「大切な初めてだったのに……」
櫻子「台無しにしちゃったんだぁ……!」
あめ(……そういう、ことか)
あめ(今のあなたがこんなにも優しい理由)
あめ「何故? あなたは飴を探していたじゃない」
櫻子「だから、気づけなかったのっ!」
あめ「…………」
櫻子「初めて、だったんだよ……?」
櫻子「ゆっくりゆっくり、やっとここまで来たのに……」
櫻子「大切な初めてだったのに……」
櫻子「台無しにしちゃったんだぁ……!」
あめ(……そういう、ことか)
あめ(今のあなたがこんなにも優しい理由)
50: 2012/04/21(土) 13:53:17.58 ID:UJ/N6D8h0
あめ「でもそれなら、早く戻ってあげて。ヒマワリはあなたに会いたがっているわ」
櫻子「無理だよ……そんなの」
あめ(……怖くて会えないのね)
あめ(この二人は……そんなにお互いを大切に思っているのに)
あめ(それがうまく伝わらないから、こうして恐れながら少しずつ歩みを進めている)
あめ(こういうこと、初めてじゃないんだ)
あめ「…………」
あめ(私じゃサクラコを動かせない)
櫻子「無理だよ……そんなの」
あめ(……怖くて会えないのね)
あめ(この二人は……そんなにお互いを大切に思っているのに)
あめ(それがうまく伝わらないから、こうして恐れながら少しずつ歩みを進めている)
あめ(こういうこと、初めてじゃないんだ)
あめ「…………」
あめ(私じゃサクラコを動かせない)
51: 2012/04/21(土) 13:56:50.78 ID:UJ/N6D8h0
~
あめ「ヒマワリ」
向日葵「えっ? ……誰?」
あめ「私のことはどうでもいいわ。サクラコの元に向かってあげて」
向日葵「なっ! なぜそれを……」
あめ「お願い、早く……サクラコは泣いているわ」
向日葵「…………」
あめ「私の……私のせいでもあるかもしれないし」
あめ「私は今あの子に何かしてやりたいと思っている……こんなの初めてだわ」
あめ「ヒマワリ」
向日葵「えっ? ……誰?」
あめ「私のことはどうでもいいわ。サクラコの元に向かってあげて」
向日葵「なっ! なぜそれを……」
あめ「お願い、早く……サクラコは泣いているわ」
向日葵「…………」
あめ「私の……私のせいでもあるかもしれないし」
あめ「私は今あの子に何かしてやりたいと思っている……こんなの初めてだわ」
52: 2012/04/21(土) 14:00:23.06 ID:UJ/N6D8h0
向日葵「……ええ、大丈夫。すぐに見つけ出しますわ」
あめ「…………!」
あめ「……不思議ね。あなた普通の人間なのにサクラコの心がわかるのね」
向日葵「えっ?」
あめ(流石だわ……ヒマワリ)
あめ「こっちよ、着いてきて」
あめ「…………!」
あめ「……不思議ね。あなた普通の人間なのにサクラコの心がわかるのね」
向日葵「えっ?」
あめ(流石だわ……ヒマワリ)
あめ「こっちよ、着いてきて」
53: 2012/04/21(土) 14:04:29.45 ID:UJ/N6D8h0
――――――
私の心配なんていらなかったよう。
最初から、この子達は無問題だった。
片方が崩れ落ちそうになったときは、
もう片方がしっかりと支えててあげられるのだ。
今までも、そうやってきたのだろう。
今回は、たまたまその一部に関わっただけ。
あめ(とても良いものを見せてもらえたわ)
しぼみゆく桜は、太陽に当てられ、またその身を咲かせる。
私の心配なんていらなかったよう。
最初から、この子達は無問題だった。
片方が崩れ落ちそうになったときは、
もう片方がしっかりと支えててあげられるのだ。
今までも、そうやってきたのだろう。
今回は、たまたまその一部に関わっただけ。
あめ(とても良いものを見せてもらえたわ)
しぼみゆく桜は、太陽に当てられ、またその身を咲かせる。
54: 2012/04/21(土) 14:09:10.52 ID:UJ/N6D8h0
櫻子「ごめんね……向日葵」
向日葵「謝ることなんて……何もありませんわ」
支え合うようなキスをした。
いびつな想いに、ぴったりと合う想い。
あめ「…………」(綺麗ね、とても……)
シャッターを押すように、
想いを、形に。
向日葵「謝ることなんて……何もありませんわ」
支え合うようなキスをした。
いびつな想いに、ぴったりと合う想い。
あめ「…………」(綺麗ね、とても……)
シャッターを押すように、
想いを、形に。
55: 2012/04/21(土) 14:13:44.86 ID:UJ/N6D8h0
――――――
向日葵「あれ、本当になんだったんですの? レモン?」
櫻子「ただの飴だよ……というか恥ずかしいからあんまりその話しないで……///」
「ただの飴とは失礼ね」
櫻子「あっ……!」
向日葵「あなたはさっきの……」
あめ「サクラコ、ヒマワリ。突然だけど、私はもうここを出るわ」
櫻子「出るって……外国にいくの?」
あめ「そうね。そんなところかしら」
向日葵(だ、誰なんですのこの子……知り合い?)ヒソヒソ
櫻子(や、それは……あの……///)
向日葵(ちょっと花子ちゃんに似てますわね……)
向日葵「あれ、本当になんだったんですの? レモン?」
櫻子「ただの飴だよ……というか恥ずかしいからあんまりその話しないで……///」
「ただの飴とは失礼ね」
櫻子「あっ……!」
向日葵「あなたはさっきの……」
あめ「サクラコ、ヒマワリ。突然だけど、私はもうここを出るわ」
櫻子「出るって……外国にいくの?」
あめ「そうね。そんなところかしら」
向日葵(だ、誰なんですのこの子……知り合い?)ヒソヒソ
櫻子(や、それは……あの……///)
向日葵(ちょっと花子ちゃんに似てますわね……)
56: 2012/04/21(土) 14:16:53.88 ID:UJ/N6D8h0
あめ「とりあえず今は、飴職人でいいわ。本当は違うけど」
櫻子「さっきの……飴を作ってくれた人なんだ」
向日葵(こんな子が……?)
あめ「では、最後も飴職人らしく……」スッ
ポウッ……
櫻子「これ……!」
あめ「見てたわよ、さっきのキス。それを形にしたの」
櫻子「うそ、見られてたの!?」
向日葵(え……///)
あめ「恥ずかしいなんて思わないで。とても美しかったわ……あなたたちらしくて」
あめ「この飴は、その証拠」
向日葵「これが飴……!?」
櫻子「さっきの……飴を作ってくれた人なんだ」
向日葵(こんな子が……?)
あめ「では、最後も飴職人らしく……」スッ
ポウッ……
櫻子「これ……!」
あめ「見てたわよ、さっきのキス。それを形にしたの」
櫻子「うそ、見られてたの!?」
向日葵(え……///)
あめ「恥ずかしいなんて思わないで。とても美しかったわ……あなたたちらしくて」
あめ「この飴は、その証拠」
向日葵「これが飴……!?」
57: 2012/04/21(土) 14:20:50.64 ID:UJ/N6D8h0
あめ「さあ、おひとつ」
この味を、忘れないでね。
いつまでも、二人一緒で。
あなたたちの中に、残り続ける、
レモンの味の、消えない魔法。
~fin~
この味を、忘れないでね。
いつまでも、二人一緒で。
あなたたちの中に、残り続ける、
レモンの味の、消えない魔法。
~fin~
58: 2012/04/21(土) 14:25:55.17 ID:UJ/N6D8h0
<後付け設定>
「あめちゃん」
属性魔法を専門とする魔法使い。母親から受け継いだ能力を使い、物事の想いを具現化、結晶化するために世界中を飛び回っている。
ただ集めることが目的ではないので、結晶化してその場で人に渡したり、自分に取り込んだりすることもある。
想いの具現化の延長線の技術として、瞬間生成や心を読むことができる。
魔女狩りの際の生き残りの娘。名前もなく育てられたが、特に関わりを持つ関係の者もいないために不自由していない。自分が元人間の子であることも理解している。
目的のために名前を作り、設定をつくってターゲットに近づくのはいつものこと。
自分に人間らしい感情が生まれないことに気づいているが、様々な人との関わりの中ですこしずつ身につけている。
今回は櫻子を見つけて、飴職人という設定で近づいた。
「あめちゃん」
属性魔法を専門とする魔法使い。母親から受け継いだ能力を使い、物事の想いを具現化、結晶化するために世界中を飛び回っている。
ただ集めることが目的ではないので、結晶化してその場で人に渡したり、自分に取り込んだりすることもある。
想いの具現化の延長線の技術として、瞬間生成や心を読むことができる。
魔女狩りの際の生き残りの娘。名前もなく育てられたが、特に関わりを持つ関係の者もいないために不自由していない。自分が元人間の子であることも理解している。
目的のために名前を作り、設定をつくってターゲットに近づくのはいつものこと。
自分に人間らしい感情が生まれないことに気づいているが、様々な人との関わりの中ですこしずつ身につけている。
今回は櫻子を見つけて、飴職人という設定で近づいた。
59: 2012/04/21(土) 14:29:30.92 ID:2bsdMIc70
乙!
61: 2012/04/21(土) 14:33:48.47 ID:UJ/N6D8h0
一日目
櫻子「向日葵だいすき!!」
二日目
花子「ねむしーなでしー?」【ゆるゆり】
三日目
櫻子&向日葵「大人エレベーター?」
四日目
櫻子「楓、こっちおいで。」
五日目
櫻子「ヒマニー事件……」
六日目
櫻子「あ、今日は妹感謝デーか」向日葵「……は?」
七日目
櫻子「私と向日葵の子どもかぁ……」
八日目
櫻子「私の家でお泊り会?」
九日目
花子「猫を拾ったし!」
十日目
櫻子「孤独のグルメ」
櫻子「向日葵だいすき!!」
二日目
花子「ねむしーなでしー?」【ゆるゆり】
三日目
櫻子&向日葵「大人エレベーター?」
四日目
櫻子「楓、こっちおいで。」
五日目
櫻子「ヒマニー事件……」
六日目
櫻子「あ、今日は妹感謝デーか」向日葵「……は?」
七日目
櫻子「私と向日葵の子どもかぁ……」
八日目
櫻子「私の家でお泊り会?」
九日目
花子「猫を拾ったし!」
十日目
櫻子「孤独のグルメ」
65: 2012/04/21(土) 14:51:41.13 ID:UJ/N6D8h0
11日目:櫻子「続・孤独のグルメ」
12日目:櫻子「花子のズボラ飯?」
13日目:向日葵「私のおねえちゃん」
14日目:櫻子&向日葵「大人エレベーター!」
15日目:櫻子「短編が溜まったらしいよ!」
16日目:向日葵「私にとっての花子ちゃん」
17日目:向日葵「コミック百合姫……?」
18日目:櫻子「異心出ん心!」
19日目:櫻子「氏んだフリ!」
20日目:櫻子「101匹ひまちゃん!?」
21日目:櫻子「レモン味のキッス」
今までありがとうございました。
次からまた不定期に戻ります
12日目:櫻子「花子のズボラ飯?」
13日目:向日葵「私のおねえちゃん」
14日目:櫻子&向日葵「大人エレベーター!」
15日目:櫻子「短編が溜まったらしいよ!」
16日目:向日葵「私にとっての花子ちゃん」
17日目:向日葵「コミック百合姫……?」
18日目:櫻子「異心出ん心!」
19日目:櫻子「氏んだフリ!」
20日目:櫻子「101匹ひまちゃん!?」
21日目:櫻子「レモン味のキッス」
今までありがとうございました。
次からまた不定期に戻ります
引用: 櫻子「レモン味のキッス」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります