1: 2024/11/03(日) 14:54:35 ID:???00
きな子「えっと……ここっすね。オニナッツファイナンス」

きな子「住所は……うん、合ってる」チラッ

パン

きな子「ふう……久しぶりの面接!気合いを入れるっす!」

きな子(北海道を出て上京して、こっちの大学を卒業したものの)

きな子(就職活動に失敗、バイトをしながら有利子奨学金返済と生活に追われる日々)

きな子(それでもスキマ時間を活用して就職活動を粘り強く続けたものの……連戦連敗)

きな子(ついに心が折れそうなとき、電柱に貼られていた求人が目に入った──)

2: 2024/11/03(日) 14:55:12 ID:???00

「アットホームな職場で働きませんか!」

「未経験者大歓迎ですの!!」

(株)オニナッツファイナンス

3: 2024/11/03(日) 14:56:00 ID:???00
きな子「この雑居ビルの2階……」

きな子(ガラスのドア越しに見えるのはよくある事務所の内装とせわしなく動く社員。みんな女性)

きな子「やっぱり緊張するっす……!」

ガチャ

きな子「すみません、お電話した──」

メイ「ん……あっ、融資か?」スクッ

きな子「ひっ!」

メイ「なんだよ?」ジッ

きな子「あの……」

メイ「まあいいや。ほらこっち、座って」ガシッ

きな子「ええっ!?はい……」ストン

4: 2024/11/03(日) 14:58:07 ID:???00
四季「はい、お茶」トン

きな子「あ、ありがとうっす……」

四季「ごゆっくり~」スタスタ

きな子(つり目で赤髪のひとも怖いけど、お茶もってきた青髪のひとも無感情な口調が怖さを引き立ててるっす!)

メイ「で、融資だっけ?」

きな子「えっ、えっと……」モジモジ

メイ「初めてだろ?大丈夫だって」

メイ「個人への融資はまず10万円、金利は3%、月々10回払いで13000円づつ返してくれたらいいよ」

メイ「良心的だろ?法律じゃ18%もとっていいのに、うちはたったの3%だぜ?マンガじゃ10日で5割なのにさ」

きな子「は、はいっす……あの………」

ポン

メイ「はい借用書。じゃあサインして」

きな子「……ちょっと待つっす」

5: 2024/11/03(日) 14:59:39 ID:???00
メイ「あ?」ギロッ

きな子「ひいっ……あ、あ、あの、本当に10万円の10回払いで金利は3%っすか?」

メイ「そうだけど、なんだ?」

きな子「なんだかおかしいっす。毎月1万円の元金返済をしていくなら……10回目の返済のとき借金は1万円で3%の金利なら最後の返済金は利息含めて10300円のはず」

きな子「でも固定で13000円の10回払いなら、利息は平均4%以上……年利なら5割以上になるっす!」

メイ「あっそ。で、借りるのか?借りないのか?」

きな子「最初はお得に借りられると思ったけど……やっぱり借りないっす」スクッ

きな子「失礼するっす」ペコッ


「ちょっと待つですの!」

6: 2024/11/03(日) 15:01:05 ID:???00
きな子「ほえ?」ピタッ

きな子(見た目はきな子と同年代。奇抜な毛先の髪で背が低いけど胸が大きな女性っす)

夏美「やっぱり桜小路さんですの!先週、採用面接の電話をしてきた子」

きな子「面接……あっ!」ハッ

きな子「そうっす!そうっすよ!きな子、お金を借りに来たわけじゃないっす!」

メイ「そうなのか?社長」

夏美「だからCEOですの!ちゃんと呼ぶ!」

きな子「社長も同じようなものだと思うっすよ……あっ!」タラー

きな子(またやっちゃった……余計な一言を……!)

夏美「だからシーイーオ……もういいですの。あなたが桜小路きな子さんですの?」

きな子「は、はいっす」ピシッ

夏美「ふーむ」ジーッ

きな子「な、なんでしょうか……?」アセアセ

7: 2024/11/03(日) 15:02:13 ID:???00
夏美「あなた……大学卒業して社会に出たてのピヨピヨひよこサンなのに、一歩立ち止まって金利のトリックを見破る目を持ってて、マニーの仕組みをよくわかってるですの」

きな子「は、はい社長……あ、履歴書です」スッ

夏美「……どれどれ」ジッ

夏美「生まれは北海道、大卒、趣味は家庭菜園にパン作り……」

メイ「すげえな、四季と同じ大卒じゃん」

四季「うん、大卒……きな子ちゃん、ブイ」ピース

きな子「えっと、ブイ、っす……」ピース

夏美「好物はじゃがいも、かぼちゃ、とうもろこし……」

四季「もう少しでイモタコナンキンだったのに……残念」シュン

メイ「いや落ち込むなよ」

夏美「……だいたいわかった。はい、返しますの」スッ

きな子「は、はい……」

きな子(履歴書、返された……やっぱりここも……)

夏美「採用ですの」

8: 2024/11/03(日) 15:03:51 ID:???00
きな子「ふぇ?」

夏美「採用しますの」

きな子「ほほほ、本当っすか!?やっぱりあとで不採用とかは嫌っすよ?」

夏美「入社試験する必要ないくらい合格ですの」

きな子「やったっす~」ウルウル

夏美「月給は手取り30万。客がとれたらインセンティブつけるですの」

きな子「ありがとうっす!」

メイ「おいおい、これくらいで泣くなよ」

四季「感動」


「姉者、ちょっと」

9: 2024/11/03(日) 15:05:02 ID:???00
夏美「冬毬、どうしましたの?」

冬毬「凛ちゃんラーメンが不渡りを出しました。今月分がペイメントされていません」

夏美「ナッツー!?」

夏美「督促の連絡は?」

冬毬「しました。身内の定期預金を解約して金策している、そうです」

夏美「時はマニーなり……売掛を全額キリトリですの!!」クワッ

メイ「じゃあ私がいくよ」スッ

夏美「あ、きな子ちゃんを連れていってあげてほしいですの」

きな子「はにゃ!?」

夏美「見て学んでこい、ですの!」

メイ「じゃ、行くぞ。きな子」グイッ

きな子「は、はいっすー!」

きな子(これがきな子とオニナッツファイナンスとの出会いっす~!)



みたいなね

16: 2024/11/03(日) 22:46:02 ID:???00
音ノ木坂 凛ちゃんラーメン

ポン

凛「はい、利息含めて今月分の40万。用意できたよ」

メイ「きな子、数えてくれ」

きな子「は、はいっす!」

きな子「……40万、確かにあるっす」

凛「いやー、お騒がせしたにゃ」

凛「先月は支払いが多くて大変だったから、急いでお兄ちゃんに頼み込んで定期を解約してかき集めたんだー」

きな子「そうっすか……」

凛「これくらいの金、ちょっと頑張ればすぐ集められるから安心するにゃ~」

きな子「!」

メイ「……これくらいの金、ねえ」フン

バサッ

メイ「だったら残りの手形3枚、しめて120万。いますぐ返済してもらおうじゃない」

凛「にゃっ!?」

17: 2024/11/03(日) 22:47:42 ID:???00
凛「それはおかしいにゃ!だって残りの手形は期限がまだ……」

メイ「全然おかしくはねえな。だって借用書にはこう書かれているぞ?」スッ

ピラッ

メイ「この貸付条項をよく見てみろ……そう、この4番目の注釈だ」

凛「……不渡事故が発生した場合、期限の利益を喪失したものとし、残額を全額返済するものとする~!?」

凛「噓にゃ!凛そんなの知らない!」

メイ「語尾が猫語のくせに目ン玉は鳥目かよ」ハア

メイ「知ってるか知らないか知らねーが、もう署名して印鑑まで押してるんだからよ。この条件は通ってるんだよ」ピラピラ

凛「横暴にゃ!!」

ドン

メイ「……警察も裁判所も筋が通ってるっていうだろうよ。だって契約の成立は民法で定められてるからなー」

きな子「……」

19: 2024/11/03(日) 22:48:58 ID:???00
凛「凛、120万なんて今すぐ払えないよ」

メイ「定期を解約した金、あるんだろ?」

凛「130万……あれは店の運転資金だよ!あれがないと店が潰れちゃうにゃー!」

メイ「あっそ。じゃあこの手形の……」ピラッ

メイ「裏書されてる住所に今から請求させてもらうぜ」

凛「!?」

20: 2024/11/03(日) 22:50:56 ID:???00
メイ「えっと……神田の穂むらだっけ?なかなかの老舗じゃん」

メイ「そういうとこって看板が大事だから、あんまり大事になると困るだろうなー」

メイ「土地も店舗も自前。余裕があるからすぐポンと120万、出してくれるだろうぜ」ピラピラ

メイ「きな子、車出してくれ。今から穂むらに──」

凛「穂乃果ちゃんのところへいくのはダメ!凛の大事な先輩にゃー!」

凛「フーッ、フーッ……!」

きな子「……」

メイ「……」

凛「……わかった。払えばいいんでしょ、120万」スタスタ

21: 2024/11/03(日) 22:52:45 ID:???00
凛「120万、受け取るにゃー!」ブン

ベシッ

きな子「ふぎっ!?」

ボトッ

メイ「……きな子、数えてくれ」

きな子「は、はいっす!」ゴソゴソ

きな子「120万、確かにっす」

メイ「はいこれ、完済証明書」ポン

メイ「これで弊社とあなたとは完全に関係が終了した。ま、金の切れ目が縁の切れ目……ということで」

メイ「きな子、帰るぞ」スクッ

きな子「はいっす」スクッ

メイ「それじゃ、またのご利用お待ちしております」フリフリ

ガラガラ

ピシャッ

凛「……」

25: 2024/11/04(月) 18:26:12 ID:???00
メイ「きな子、会社まで運転頼む」

メイ「あ、免許持ってるか?さっきは勢いで言ったけど」

きな子「持ってるっす。北海道じゃ電車より車のほうが便利っすから」

メイ「そっか、じゃあ頼むよ」

バタン

きな子「はいっす」カチッ

ブロロロ

メイ「……痛むか?」

きな子「えっ……?」

メイ「鼻先。120万ぶつけられただろ?」

きな子「あっ、はい……別に大丈夫っす」

メイ「そっか」

きな子「お金って意外と痛いんすね……」

メイ「……」

きな子「……」


きな子「……なんで、強引に貸しはがしをしたんすか?」

26: 2024/11/04(月) 18:28:01 ID:???00
メイ「あ?」

きな子「会社の方針ってのはわかるっす。借用書にも書いてあったことっすから──」

メイ「ちょっとかわいそうに思ったか?」

きな子「……はいっす」コクリ

メイ「甘いぜ。ああやって必氏に金策してるように見せかけて、すでに何件もツマんでたんだ」

きな子「ツマむ?」

メイ「カネを借りてるってこと。しかも銀行じゃなく、私たちみたいな街金でな」

メイ「つまり、資金繰り悪化からの倒産は近かった、ということだ」

メイ「だから不渡りを出した瞬間、一気に売掛を回収しないと倒産して夜逃げでもされたら……」

きな子「……回収はほぼ出来なくなるっす」

27: 2024/11/04(月) 18:30:48 ID:???00
メイ「その通りだ。それはすなわち、うちの損失になっちまう」

メイ「夏美……社長と冬毬、四季にも迷惑がかかる」

メイ「オニナッツファイナンスは金貸しだ。清廉潔白なボランティア団体なんかじゃない。一切の情はいらないんだぜ?」

メイ「パリパリスーツの就活生が目を輝かして応募する天下のメガバンク様だって、晴れの日に傘を貸して雨の日に傘を取り上げるのを社是にしてる」

きな子「……」

メイ「食うか食われるか……金融の世界で生きていく以上、その覚悟が必要なんだ。覚えてくれ、きな子」

きな子「はいっす!」コクリ

メイ「まあ、千の言葉よりイチの行動……実際やってみればすぐわかるさ」

きな子「はいっす……あ」

きな子「あのラーメン屋、そのまま潰れてしまうんすかね?」

メイ「だろうな」

きな子「うちから借りたお金や他の借金を全部、運転資金に使ったっすからね……」

メイ「ああ、その金。たぶんあれ全部、火災保険の掛け金に消えてるぞ」

30: 2024/11/05(火) 08:12:31 ID:???00
きな子「ふぇ!?」

きな子「なんでそう言い切れるんすか?」

メイ「厨房が汚れてなかった。昨日まで営業してて今日一日、金策に走ってたら厨房の掃除どころじゃないからな」

メイ「おおかた開店休業状態で、ド派手に店を潰すつもりだろうな」

きな子「?」

メイ「ツマんだ金で数社の保険屋に掛け金ばらまいて、ちょうどいいタイミングで火事でも起きたら……」

メイ「おりてきた保険金抱いて倒産させ、音を立てずピューっと消えるんだ」

メイ「猫みたいにな」フッ

きな子「それじゃ保険会社は……」

メイ「あのネコ女がばらまいたエサに集まって、あとで食い物にされる鯉なのさ」

きな子「知らなかったっす……つい追い込まれてかわいそうな風に錯覚してたっす」

31: 2024/11/05(火) 08:13:36 ID:???00
きな子「あっ」

きな子「でも物件が焼けたり隣に飛び火したら賠償金がかかるっすよね?保険金もそこに──」

メイ「失火責任法というのがあってな、もし出火原因がミスだと認められたら第三者への賠償責任がなくなるんだ」

メイ「ま、せいぜいかかるのは物件の原状回復費だな」

メイ「その原状回復費も保険金から出せば、残りの金は臨時収入みたいなもんさ」

きな子「へえー」

メイ「女ってのは怖いよなー?ま、私も女だけど」

32: 2024/11/05(火) 08:14:51 ID:???00
きな子「じゃあ計画倒産する気だったんすね……」

メイ「そうだ。それを見抜いた社長は回収のタイミングを見計らいつつ、あのラーメン屋の手形に裏書させて、不渡りや夜逃げしたときの保険をかけていたんだ」

メイ「だからあのネコは夜逃げする直前に金策に走ったんだろうな」

きな子「そうだったんすね……」

メイ「最低限の良心か?よっぽど裏書の相手に迷惑をかけたくなかったんだろうね」

メイ「あるいは、私らより恐ろしい存在なのか……なんてな?」フッ

きな子「……」

メイ「そこを曲がって……よし止めて」

キッ

バタン

メイ「運転ありがとな、じゃあ行こうか」

きな子「はいっす」

33: 2024/11/05(火) 08:16:13 ID:???00
ガチャ

冬毬「お帰りなさい」

きな子「ただいま戻りましたっす」

メイ「120万、きっちり回収してきた」ポン

冬毬「……確かに」

冬毬「きな子さん、机をセットアップしました。こちらです」スッ

きな子「ありがとうっす」

冬毬「メイさんの隣です。しばらくは彼女がサポートをしてくれます」

きな子「はいっす!」

冬毬「では……姉者、全額回収完了です」スタスタ

きな子「ふぅ……ふふっ」ストン

きな子(電話以外なにもない、至って普通の事務机だけど……ついに定職につけて良かった)

メイ「ふう、ようやく一息つけるな」ストン

メイ「あれ?四季は……」キョロキョロ

メイ「あ、接客中か」ジッ

きな子「?」チラッ

34: 2024/11/05(火) 08:17:53 ID:???00
四季「300、400、500万……以上」ポン

四季「署名押捺済みの借用書、融資計算書、印鑑証明に本人確認書類コピー」

四季「最後に融資証明写真」スッ

にこ「にっこにっこにー♪にこにーって覚えてラブにこ♪」ポーズ

カシャ

四季「はは、面白」

ワイワイ

メイ「……またやってんのか、あの社長」ハア

きな子「あれは……?」

メイ「地下アイドル事務所の社長。元アイドルだったクセで、いちいちポーズをとってるんだよ」

きな子「はぁ……」

メイ「ま、銀行を門前払いされるほどカツカツ経営だけど支払いは滞ったことないからなー」

メイ「──副業が儲かってるからだろうな」

きな子「副業って何すか?」

メイ「ま、それは秘密。四季はああいう安定した客を掴むのが上手いから、羨ましいぜ」

きな子「そうなんすね」

35: 2024/11/05(火) 22:56:20 ID:???00
ポン

きな子「あ、社長」クルッ

夏美「初めてのキリトリどうだった?」

きな子「えっと、あの……結構すごかったす!勉強になるっす」

夏美「そうですの~キリトリに関してはメイちゃんが一番」

夏美「きっと顔が怖いからですの」ププッ

メイ「なっ……この顔は生まれつきだっ!」プイ

夏美「オニすねてしまいましたの……あ、これ労働契約書ですの」スッ

きな子「ありがとうっす!」ペコッ

夏美「印鑑はあとででいいですの。よく読んで聞きたいことがあったら、冬毬に聞いてほしいですの」フリフリ

きな子「わかったっす」

プルルルル

メイ「きな子、電話。すぐ取るのが新人の仕事だぞ?」

きな子「は、はいっす」ガチャ

36: 2024/11/05(火) 22:58:49 ID:???00
きな子「はい桜小路……じゃなかった。お電話ありがとうございます、オニナッツファイナンスです」

「あの~即日融資をさせてもらえると聞いたのですが?」

きな子「はい。確認しますので少々お待ちください……」ピッ

きな子「あの」チョイチョイ

メイ「なんだ?」

きな子「……融資の相談だそうっす」

メイ「良かったな。きな子の最初の客だ、法人か個人か聞いてみろ」

きな子「……ご融資は法人でしょうか?個人でしょうか?」

「個人です。あの、本当に低金利でお金を借りられるんですよね?」

きな子「はいっす!あ、そうです」

きな子「お名前を伺ってもよろしいですか?」


美里「川本……川本美里です」


きな子(この客──川本美里は、きな子が一歩踏み出した金融道で最初の踏み台になった人物っす)

42: 2024/11/06(水) 23:11:24 ID:???00
数時間後 応接間

きな子(即採用された日に初めてとった客、川本美里)

美里「あの……」

きな子(電話越しの声から大人っぽいイメージかと思いきや、色白で幼さが残る顔つき。そして細い体は、いかにも労働というのを知らなさそうな感じだった)

美里「あの!」

きな子「は、はいっす!」ビクッ

メイ「なにボーッとしてんだよ」ベシッ

きな子「ふぎっ!?あ、すみません……」

美里「本当に、オニナッツファイナンスさんは低金利で融資してくれるんですよね?」ズイッ

メイ「ほら、きな子」ツン

きな子「はい!お客様は初めてなので最大10万円の利息3%。返済は13000円の月々10回払いでご融資できます……っす!」

美里「他の金融会社は金利12から18%ですけど、ウェブどおり安いんですね……!」ニコッ

メイ「そうなんです~初回のお客様限定プランなんです~その代わり上限が10万円なんですよ~」キイロイコエ

きな子(米女さん、こんな声も出せるんだ……まさに猫なで声っす)

43: 2024/11/06(水) 23:13:16 ID:???00
美里「あの、担保とか無いんですけど……10万円くらい……借りれますか?」モジモジ

メイ「大丈夫ですよ~上限の10万円なら本人確認と簡単な審査がオッケーならご融資できます~」ネコナデゴエ

きな子「お電話でお伝えした、本人確認できる書類などはありますか?」

美里「はい、保険証なら」スッ

メイ「どうも……」ウケトリ

メイ「きな子、本人確認とコピーを奥でしてこい」スッ

メイ「あと審査もな」

きな子「はいっす」スタスタ

四季「きな子ちゃん、こっち、こっち」テマネキ

きな子「はいっす」タッタッ

44: 2024/11/06(水) 23:15:18 ID:???00
四季「保険証はこの装置でスキャンして」カチッ

きな子「はいっす……」スッ

ピッ

きな子「やりましたっす」

四季「OK、スキャンデータをPCに出力して審査にかける」カタカタカタ

ピッピッ

四季「……偽造と改ざん痕跡なし。川本美里28歳、借入履歴なしでリストは白。生命保険加入歴あり……」

きな子「若菜さん、なにを調べているんすか?」

四季「信用情報。各金融機関からツマんでないか、踏み倒してないか、うちのサーバーのデータベースから調べる」カタカタカタ

きな子「はぇ~未来っすね」

四季「……問題ない」ベリッ

四季「これ、メイに渡して。あとで控えをプリントするから、もう保険証は返して大丈夫」

きな子「はいっす!ありがとうございますっす!」タッタッ

45: 2024/11/06(水) 23:17:05 ID:???00
きな子「お待たせしました、保険証はお返しします」ストン

美里「はい」

きな子「これ、若菜さんから」ピラッ

メイ「おう」ジーッ

メイ「……きな子、OKだ」

きな子「はいっす……川本さん、書類審査が終わりました。特に問題はないということです」

美里「そうですか。よかった……!」パァ

きな子「最後に、ご融資を受けたい理由をお聞きしても?」

美里「はい、あの……」チラッ

メイ「……」

きな子「……」

美里「……仮想通貨投資の頭金に、と」

2人「!」

52: 2024/11/08(金) 08:00:01 ID:???00
きな子「それってギャンブ……ムグッ!!」

メイ「……投資、だよな?」クチオサエ

きな子「ぷはっ……はいっす!」

メイ「……」ギロッ

きな子(思いっきりにらまれた……また余計な一言が出ちゃったっす)

メイ「今後のために、良かったら詳しく聞かせてください~」ネコナデゴエ

美里「はい。実は……」

53: 2024/11/08(金) 08:05:10 ID:???00
美里「ある時SNSで毎月1億円、投資で成功しているイナ川という人からグループチャットに誘われて、入ったんです」

美里「そこは投資の勉強会ということで集まった人と一緒にイナ川さんから、投資のやり方や成功法についてのやりとりがなされてて、皆でワイワイやり取りをしました」

美里「そこで先にイナ川さんから投資を教わった人とチャットでお話しして、高級ブランドのアクセとか時計を見せてもらったり……」

美里「私、いつも独りだから何だか楽しくて」ニッコリ

メイ「はぁ……」

美里「イナ川さんはいいひとで、将来は稼いだお金で東京見抜きランドを建設して子供たちを喜ばすんだって夢を持った高い志の持ち主なんです!」

きな子「見抜き、ってなんすか?」

メイ「さあな……どうぞ、続けて」

美里「数週間後、イナ川さんが──」


「──この投資は絶対に儲かります!ぜひ、一緒に高みを目指しましょう!」


美里「というお誘いを受け、詳しくお聞きしたところ……」

美里「仮想通貨の、イナコイン、というものが近いうちに高騰するから今すぐ買わないとダメだとおっしゃって……私もぜひやりたいと思ったのです!」

美里「でも最低10万円からだそうで、金融会社をネットで探してたらここに」

きな子「そうだったんすね」

56: 2024/11/08(金) 22:32:42 ID:???00
美里「イナコインの値段は1イナコイン、3000円です」

美里「現物取引なら10万円で33イナコインしか買えませんが、イナ川さんがとっておきの儲け方を教えてくれたんです!」

美里「それは、信用取引で10万円を委託保証金として取引用のスマホアプリに預けると、30倍の金額がもらえるんです」

きな子「ええと、10万円の30倍……さ、300万円っすか!?」

美里「はい!たった10万円で300万円相当のイナコイン、1000イナコインが買えるんです!」

美里「1イナコインの値段が1円上がるたびに、1000円の利益が出ます。たった10円あがるだけで1万円が手に入る……最低賃金で8時間バイトするより、コスパもタイパも良すぎだと思いませんか?」

美里「こんな裏ワザを教えてくれて本当にイナ川さんは本当にすごい人です!!」ニッコリ

メイ「……」

きな子「そうっすね!すごい裏技っす!!」キラキラ

美里「そう思いますよね!!」キラキラ

57: 2024/11/08(金) 22:33:46 ID:???00
メイ「……じゃあ、10万円融資しますね~」ネコナデゴエ

きな子「借用書とペンです。貸付条項をよくお読みになって署名お願いします」ポン

メイ「あと印鑑用の朱肉……あ、印鑑ないなら親指で押す拇印でいいですよ~」

美里「……はい」カキカキ

ポン

メイ「どれどれ……」ピラッ

メイ「よし、きな子。10万円と融資計算書」

きな子「わかったっす」スクッ

冬毬「きな子さん、こちらへ」テマネキ

きな子「はいっす」スタスタ

冬毬「10万円と融資計算書です」スッ

きな子「ありがとうっす」タッタッ

58: 2024/11/08(金) 22:35:57 ID:???00
きな子「お待たせしましたっす……10万円です」トン

美里「……はい」スッ

メイ「返済は来月末からなので、よろしくお願いいたします~」ネコナデゴエ

美里「はい、わかりました」スクッ

メイ「イナコイン……あがるといいですね~」

美里「はい!ありがとうございます」ペコッ

スタスタ

バタン


メイ「……本当にあがれば、な」ボソッ

きな子「イナ川とかいう投資の専門家がいってるっすから、大丈夫じゃないすか?」

メイ「それは最初のうちだ、私はその専門家サマより先が見えてるぜ」

きな子「え?」

メイ「ま、そんなことどうでもいい。しっかり回収できて……」


メイ「……出来なければ、徹底的にキリトリするだけさ」


きな子(そして、川本美里は最初の支払い日を迎えることになったっす)

61: 2024/11/09(土) 13:07:23 ID:???00
きな子(その間、きな子はオニナッツファイナンスの一員として励んだっす)

ガチャ

きな子「おはようございますっす~」

きな子(誰よりも早く出社して、みんなのデスクとトイレ掃除)

きな子「なんていいお天気♪さぁ朝ごはん食べて~♪」フキフキ

ガチャ

四季「おはよう」

メイ「よう、朝からゴキゲンだな」

きな子「おはようございますっす!!」

きな子(カップルのように仲の良いふたりに挨拶をかわして、後片付けのあと少し金融の勉強をしてると……)

夏美「おはようですの」

冬毬「おはようございます」

きな子「おはようございます!」ペコッ

きな子(社長と秘書の冬毬ちゃんが来て、いつもの一日が始まるっす!)

62: 2024/11/09(土) 13:08:42 ID:???00
朝礼後

夏美「……それじゃ、今日もオニ頑張ってマニーを稼ぐですの!!」クワッ

4人「はい!」バラバラ

冬毬「……きな子さん、今日は川本さんの集金日ですね」

きな子「はいっす!前日に確認の電話を入れたっす」

きな子「返済金は振込じゃなくて直接ここに持ってくる、とのことっす!」

冬毬「そうですか。少額なら手数料を惜しむのもわからなくはありませんね」スタスタ

夏美「きな子ちゃんの初めての集金……もしもの時はサポートお願いですの!」

メイ「わかった。社長、追い込みは任せてくれ」

メイ「そっか……あの川本、今日が集金かー、ふーん」

きな子「?」

メイ「気長に待っていようぜ。その間、私の仕事を手伝え」

きな子「はいっす!」

きな子(米女さんが苦手な書類仕事と審査の手伝いをしていると、あっという間にお昼が過ぎて……)

63: 2024/11/09(土) 13:09:25 ID:???00
ガチャ

美里「……あの、桜小路さんいますか?返済をしに……」

きな子「はいっす」タッタッ

四季「よかったね、メイ」

メイ「……」ジーッ

きな子「今月分の返済、13000円になりますっす」

美里「その返済なんですが……」

きな子「?」

メイ「!」

美里「一括返済って、できませんでしょうか?」ニコッ

64: 2024/11/09(土) 13:11:09 ID:???00
きな子「ふぇ!?い、一括で、っすか?」

美里「お願いします」

きな子「い、イナコイン、どれくらいあがったんですか?」

美里「はい!とってもあがってて、今の価格が……」スマホ

きな子「1イナコイン、3163円っす!ってことは、163000円の利益!」

美里「はい!もう、イナ川さんがここで買いです!といったときに買ったら、ずっとあがってて」

美里「もうテンアゲ!って感じで……あ、テンアゲというのは愛ちゃんという妹みたいな子がいつもつかう言葉で……」

ペラペラ

美里「……そこで、借りた分と利益を利確売りして、現金にしました」

きな子「よ、よかったすね……」ヒヘイ

美里「なので一括返済お願いします!!」

きな子「……」チラッ

メイ「……」コクリ

きな子「か、かしこまりました」

65: 2024/11/09(土) 13:13:05 ID:???00
きな子「では借用書通りの金額の支払いをお願いします」

美里「一括だと高くつくんですね……」ハァ

スッ

きな子「……はい、確かに」

きな子「完済証明書です」スッ

美里「確かに……今回の投資で、イナ川さんのおっしゃる通りに大きく勝負したらしっかり大きな利益が生まれるということがわかったんです」

きな子「はぁ……」

美里「それで──」チラッ


美里「──投資の資金として300万、貸ししてください!」ペコッ


きな子「はにゃ!?」

メイ「!」

68: 2024/11/10(日) 09:36:12 ID:???00
きな子「い、いきなり300万円のご融資ってぇ……」アセアセ

美里「お願いします!」

美里「300万円を委託保証金としてアプリに入金したら、信用取引で30倍のレバレッジ……9000万円分のイナコインが買えるんです!」

美里「イナ川さんの予想では5日後に価格が3000円に下落するので、そこで全額30000イナコインを買うと必ず再び上昇に転じるそうなんです!」

美里「また価格が3100円になったら、300万円の利益がでます!借りたお金はすぐにお返しできます!」

美里「乗るしかない、このビッグウェーブに!!」クワッ

美里「それは5日後ですから、早めに投資金を用意したいんです。一生のお願いです!」

美里「300万円、お貸ししてください!」ペコッ

きな子「よ、米女さぁん……」ウルウル

メイ「……」スッ

スタスタ

メイ「落ち着いて、川本さん。わかってると思うけど、300万円は大きい金額だ」

メイ「金額が金額だけに、即日融資はできない」

メイ「ま、とりあえず立ち話もなんだから、座ってゆっくり融資の話をしようじゃねえか、な?」ニコッ

ポン

美里「は、はい……」ビクッ

69: 2024/11/10(日) 09:40:30 ID:???00
応接間

メイ「きな子、座って」

きな子「はいっす!」ストン

メイ「うしっ……で、川本さん。300万を返済するアテ、あるの?」

美里「できます!イナコインの投資で……」

メイ「じゃなくて」

メイ「給与とかボーナスとか、リアルの収入があるのってこと。何の仕事してるんだ?」

美里「えっと、仕事はしてないです」

美里「定期的に病院で検査入院をしなければいけない身体なので……」

メイ「そう。じゃあ両親は公務員だったり?」

美里「いえ、普通のサラリーマンです」

きな子「自宅か実家は持ち家っすか?」

美里「賃貸アパートです」

メイ「きょうだいはいる?」

美里「一人娘です」

メイ「職ナシ、担保ナシ、財産ナシ……はナシにならねえな」ハァ

メイ「300万の融資はできませんね」キッパリ

美里「そんな……お願いします!」ペコッ

70: 2024/11/10(日) 09:43:57 ID:???00
メイ「ダメなモンはダメだ。こっちだって商売だ、返すアテのない人間に融資なんてできない」

美里「お願いします!あと少し、あと少しで大きく稼げるんです……!」

メイ「ダメだ」

美里「そんな……」ウルウル

きな子「!」ハッ

きな子(あれ?確か、一括返済のとき……妹みたいな子がいるって言ってたよね)

きな子(もしかしたら、この人に融資できるかもしれないっす)


きな子「あの……300万円を返すアテ、あるかもしれないっすよ?」


美里「えっ!?」

メイ「あ?どこにあるんだ?」ギロッ

きな子「ひっ……あの……」スゥ

きな子(ここでビビッたら、きな子は金融の世界で生きていけないっす!)

きな子「……川本さん!」

美里「は、はい!」ビクン

きな子「さっき、テンアゲという言葉をよく使う妹みたいな子がいるって話、よく聞かせてほしいっす!」

72: 2024/11/10(日) 21:38:25 ID:???00
数時間後

ブロロロ

キッ

メイ「よし、ここで停めていいぞきな子」

ガチャ

メイ「さてと……調べてみるか」

バタン

きな子「あ、あの……ここはどこっすか?」

メイ「ここか?ここは──」

メイ「──法務局の墨田出張所だよ」

きな子「はえ~」ミアゲ


きな子(今、きな子は法務局の前に立っているっす)

きな子(300万融資の件。思い切ってある提案したあと、米女さんの態度がガラッと変わり……)

きな子(審査をするということで川本美里にいったん帰ってもらうと、すぐに車を走らさせられたっす)

73: 2024/11/10(日) 21:39:53 ID:???00
きな子「法務局に来たの、初めてっす……」

メイ「ここはな、国が税金つかって私たち金貸しのために土地の登記簿を見れるようにしてくれた場所なんだぜ?」

メイ「その恩恵にあずからないのは、人生損してるってもんだ」ポン

きな子「はぁ……」

メイ「なんだ元気ねえな?きな子の提案なんだぞ」

メイ「──宮下愛を連帯保証人にするって」

きな子「はいっす。資産もなく定職についていない川本さんに融資できるなら、それしか方法がないと思ったっすから」

メイ「あの場でパッと思いつくのはすげえぞ。あのときのきな子の目、しっかり金貸しの目をしていたぜ?」

メイ「教育のしがいがあるってもんだな」ニヤッ

きな子「それで、法務局に何の用っすか?」

メイ「川本美里の言ったことが本当か調べるんだよ、宮下愛の家の土地をな」

メイ「行くぞ」スッ

きな子「はいっす!」タッタッ

74: 2024/11/10(日) 21:42:19 ID:???00
メイ「……よし、これで調べたいことは全部だな」

バタン

メイ「車、出してくれ」

きな子「はいっす」

メイ「会社戻る前に登記簿の住所、見に行ってみようぜ」

きな子「はいっす」カチャ

ブゥオン

ブロロロロ

メイ「……登記簿謄本によると、江東区の門前仲町に店舗兼住宅があるみたいだな」スマホ

メイ「住所をネット検索すると、もんじゃ屋のみやしたという店があるな……ふーん、元スクールアイドルの実家かぁ」ポチポチ

きな子「スクールアイドル?あの高校生が歌って踊る部活動のことっすね」

メイ「そうだ。ラブライブという全国大会が冬にあって……」ペラッ

メイ「あの四季の顧客、矢澤にこは音ノ木坂学院のスクールアイドルグループμ's所属で優勝も経験しているんだ」ペラペラ

メイ「他にもAqoursといった伝説的有名なグループがあって……ハッ!」

きな子「ふぇ?」キョトン

メイ「なっ、なんでもない!前見て運転してろっ!」カァッ

きな子「は、はいっす!」

77: 2024/11/11(月) 08:09:25 ID:???00
メイ「ここか。車は駐車場に停めてくれ」

きな子「はいっす」キッ

バタン

きな子「……なんだか昔の商店街みたいっすね?」キョロキョロ

メイ「高級住宅地じゃないが……まあいいや」トコトコ

きな子「あ、あそこじゃないっすか?」ユビサシ


もんじゃ みやした


メイ「ふーん、駅も近いしいい場所じゃないか」

きな子「営業中みたいっす」

メイ「……せっかくだし、夕飯がわりにもんじゃ食っていくか。おごるよ」

きな子「え!?本当っすか!」パアッ

メイ「まだ歓迎会やってないしな。社長はマニーのオニだから、新人の最初の仕事が終わるまでやらない主義なんだ」

メイ「それに、宮下愛の顔を拝んでおかないとな。キリトリのとき相手のツラ知らないなんてありえねーし」

きな子「東京の名物料理初めてっす~!」ウキウキ

93: 2024/11/12(火) 22:10:35 ID:???00
ガラガラ

「いらっしゃい!こちらへどうぞ!!」

きな子(スーツ姿のきな子と、ワインレッドの蛇柄シルクシャツの米女さんを笑顔いっぱいで迎えた店員は、金髪のスタイル抜群の若い娘だったっす)

メイ「おう」

きな子「はいっす」

「メニューはこちらですね!うちのおすすめはスペシャルと明太チーズもんじゃ」

「ご注文決まったら声かけてくださいね!」スタスタ

きな子(ずいぶん派手なバイトの子……でも、フランチャイズ居酒屋のバイト特有の張り付いた笑顔とは違う雰囲気の子っす)

メイ「無難におすすめ一択だな。スペシャルにするか……なあ、スペシャルってなんだ?」

きな子「いきなり振られても困るっす……店員さん、いいですか?」スッ

94: 2024/11/12(火) 22:12:34 ID:???00
「アイアイサー!お決まりですかー?」

きな子「あの……スペシャルってなんすか」

「うちの人気の具材……豚肉、イカとエビの海鮮もの、コーンがたっぷり入った特製もんじゃですよ」

メイ「じゃあそれで」

「かしこまりました!お飲み物は……?」

メイ「瓶ビール大で」

「グラスおふたつで?」

メイ「いや、ひとつ。相方は車だから、ウーロン茶で」

「かしこまりましたー、スペシャル1に瓶ビール大とウーロン茶!」スタスタ

「あ、愛ちゃーん!注文いい?」

愛「いいよー!何にする?」

ガヤガヤ

きな子「……飲むんすね。勤務中っすよ」ジトッ

メイ「あ?大人の麦ジュースだよ、麦ジュース」

メイ「……それより、あの明るい金髪娘が宮下愛みたいだな」ジッ

きな子「そのようっす」

95: 2024/11/12(火) 22:16:13 ID:???00
愛「お待たせしましたー!瓶ビール大にウーロン茶」

きな子「ありがとうっす」

愛「スペシャルすぐお持ちするから、ちょっと待っててくださいね!」ニコッ

スタスタ

きな子「いかにも楽しく仕事をしているって感じで、屈託のない笑みと愛想がいいっすなー」ジッ

きな子「どうみても川本さんとは別世界の人間っす……本当に連帯保証人に同意させられますっすかね?あ、ビール注ぐっす!」ヒョイ

メイ「お、ありがとな。そこは川本次第だな……まあ、300万円のためならどんな人間でも必氏になるさ」

メイ「デコを床に擦り付け巧みな嘘を並べ涙をいくらでも流す……アカデミー主演女優賞とれるくらいにな。んくっ……」

トン

メイ「やっぱりビールはたまんねぇな!」カーッ

96: 2024/11/12(火) 22:18:09 ID:???00
メイ「ま、それだけ金は人間を変える力がある。ほとんど悪い方向に、だけどな」フッ

きな子「そんなことないっす。お金はきっと人生を変える手助けになるっすよ……」ゴクッ

メイ「どーだかな」

きな子「……」


愛「はいスペシャルおまたせー!愛さんが作ってあげるね!」カチッ

メイ「おっ、きたきた」

きな子(このあと店主が作ってくれたスペシャルもんじゃは、仕事の話を忘れさせるくらい美味しかったっす。追加で明太チーズもちもんじゃと明太子ソーセージを頼んで、米女さんを面食らわせたっす!)

愛「美味しいでしょ?愛さんのもんじゃはどんなもんじゃって感じで、もんじゃ焼きだけに!アハハハ!」

きな子(ただ、見た目とは裏腹にくどい親父ギャグを連発してしてたっす……)

97: 2024/11/12(火) 22:21:21 ID:???00
翌日 オニナッツファイナンス 社長デスク

夏美「で、きな子ちゃん。300万融資の件はどうなりましたの?」

きな子「はいっす。調べによると宮下愛は江東区に店舗兼用住宅を持ってるっす……」スッ

夏美「書類、見せてみるですの」

きな子「これっす」スッ

夏美「ふむふむ……」ジッ

きな子「登記によると、この土地はだれも抵当権をつけてなかったっす」

メイ「うちが一番抵当を付けられそうなんだよな?」

きな子「はいっす!」

冬毬「姉者、あのあたりなら最低でも1600万で売却可能かと」

夏美「誰もツバつけてない一番抵当で、しかも店舗兼用住宅なら売却時に住居部分に控除がある。300万に対して十分すぎるお釣りですの……」

スクッ

夏美「300万円のマニー、貸していいですの」ピラッ

きな子「ありがとうございますっす!」ペコッ

冬毬「きな子さん、融資は宮下愛が保証人になってから行います。なので、くれぐれも……」

きな子「はいっす!さっそく川本さんに連絡するっす!」

156: 2024/11/13(水) 21:50:48 ID:???00
同時刻 病院の一般病床

美里「もしもし……あ、桜小路さん!はい、はい……」

美里「愛ちゃんを保証人にすると融資できるんですね、わかりました。失礼します」ポチ

スッ


「イナ川です。あと3日で価格が3000円に下落します。そのときに買い注文を入れれば、数日で100円以上の値上がりが予想されます」


美里「イナコイン上昇の期限はあと3日。なんとか明日までに300万を振り込まなきゃ……!」

美里(──楽しいを知らなかった私が、この歳で知った資産が増える喜び。この歳で知った、稼いだことのない大金を指一本で動かしていくスリル!!)

美里(これは何者にもなれなかった私が、金をつかんで成り上がれる最後のチャンス……絶対に逃さない)

ガラッ

美里「!」

愛「やっほー、お見舞いに来たよ!おねーちゃん!」フリフリ

美里「ただの検査入院だし、お見舞いってほどじゃ……でも、ありがとう」ニコッ

美里(ここは私の人生を賭けた大勝負!ビッグウェーブにのるための試練なの!)

158: 2024/11/13(水) 21:52:47 ID:???00
愛「リンゴもってきたよ。皮をむいてあげるね」

美里「ありがとう。えっと、キャビネットにナイフがあったわね……」スッ

愛「いいよいいよ。愛さんが取るから」

美里「うん、ありがとう……」

愛「あれ?おねーちゃん元気なくない?」ムキムキ

美里「ふふ、大丈夫よ。ちょっと考え事をしてて、ね」

愛「はい、ウサギさんのリンゴ。食べて食べて!」スッ

美里「ありがとう愛ちゃん、ふふ、可愛い……」パクッ

美里「……」モグモグ

愛「……」

愛「やっぱり何か悩み事ある?」

美里「えっ……?」

愛「愛さん、おねーちゃんのためなら何でもするよ!お願い、教えて。私にできること」

美里「……愛ちゃん」

愛「うん」キラキラ

美里「あのね……」スゥーッ



美里「私が海外で働くために必要な保証人になって欲しいの」

162: 2024/11/14(木) 19:51:57 ID:???00
愛「保証人?」

美里「うん、私の身元を保証してくれる人ってこと。愛ちゃんになってほしいんだ」

愛「うーん、よくわかんないけど……」

美里「……私ね、愛ちゃんがめいっぱい輝いていたライブを見たときからずっと、海外で働きたいって夢を持っちゃったの」

美里「今さらだけどね。もう何年も経ってるし……」アハハ

愛「今さらなんかじゃない」フルフル

愛「愛さんはいつでも夢をもって頑張っている人を尊敬するし、応援したいって思ってるよ」

愛「もちろん、おねーちゃんも」ニコッ

美里「ふふっ、ありがとう」

美里「そこでね、海外で働くために……パスポート取得手続きと英会話講習、渡航後の最初の生活をするために住居の提供とか必要な費用を支援してくれるところがあって……」

愛「つまり奨学金みたいな?」

美里「……うんうん、そんな感じかな」コクリ

美里「で、その支援のお金を受け取るために、私がちゃんと川本美里だっていうことを保証してくれる人に──愛ちゃんがなってほしいの」

愛「……」

美里(本当のことは言えないけど……間違ってはいないわ、うん。投資で稼いで借金をすぐ返せば、その費用なんてすぐ手に入るから)

163: 2024/11/14(木) 19:55:17 ID:???00
美里「保証人は私の両親以外でっていうから……私のいちばんそばにいてくれて、いつも元気と笑顔をくれる愛ちゃんにお願いしたいんだ」

美里「あ、嫌ならいいの!他の人にお願いするわ!」アセアセ

美里「いきなり無理な頼みをしたってこと、わかってるから……」

ギシッ

愛「──ううん、嫌じゃないよ」

ギュッ

美里「あ、愛ちゃん?手……」

愛「いったじゃん、おねーちゃんのためなら愛さん何でもするって。おねーちゃんがおねーちゃんだっていう保証人になればいいんでしょ?」

愛「そんなことお安い御用だよ!」ニコッ

美里「愛ちゃん……」

美里(大きくてあったかい手……あんなに小さかった子がこんなに大きくなって、頼もしくなったのね。じゃあ思いっきり頼らせてもらうわ)

美里「……愛ちゃん、ありがとう。ごめんね」ウルッ

愛「なんで謝るのさ?こういうときは助け合いだよ、アイだけに!アハハ!」

美里「ふふっ、そうね!じゃあ……明日ここでその人を呼ぶから、保証人に必要な印鑑証明書と実印を持ってきてね」ニコッ

愛「わかった!」



美里(愛ちゃんが同意してくれた。帰ったあとで桜小路さんに電話しようっと)

164: 2024/11/14(木) 20:11:35 ID:???00
プルルルル

ガチャ

きな子「お電話ありがございます、オニナッツファイナンスです……っす!」

きな子「あ、川本さん!保証人の件は……そうっすか……」

メイ「お?ダメだったか?」

四季「メイ、歪みすぎ」

きな子「……そうっすか!同意してくれたっすか。かしこまりました、すぐにご用意いたしますっす」

きな子「失礼します」ガチャ

四季「私の勝ち。1000円プリーズ」スッ

メイ「チッ、もってけ」サッ

四季「どーも……領収書、書くね」

メイ「いらねーよ」ツーン

きな子「なにやってるっすか……」ハァ

きな子「米女さん、川本さんが保証人を用意したっす。明日──病院の病室に来てほしいとのことっす!」

メイ「よっしゃ、じゃあ明日に向けて書類の準備だ」パンッ

きな子「はいっす!」シャキッ

メイ「きな子、今日は気合を入れて残業、頑張るぞ」

きな子「ふぇ!?」

167: 2024/11/15(金) 17:08:32 ID:???00
翌日の昼過ぎ 病院の病室

コンコン

愛「あ、来た」

美里「どうぞ」

ガララッ

きな子「こんにちは、オニナッツファイナンスです」スタスタ

メイ「どうも」スタスタ

美里「愛ちゃん、こちらが費用を支援してくれる方よ」

愛「こんにちは!宮下愛です、って……おととい、うちのもんじゃ食べに来てくれたお客さん!?」

きな子「そうっす、覚えてくれたっすか!?」

愛「覚えてた覚えてたよー!うちのスペシャルと明太もんじゃをとっても美味しそうに食べてたから!」

愛「それにお客さん、目立ってたからね!」チラッ

メイ「あ?」ギロッ

きな子「あはは……では早速ですが川本さん、ご融資の手続きをさせていただきます」ペコッ

168: 2024/11/15(金) 17:10:08 ID:???00
ゴソゴソ

きな子「……借用証書に署名と印鑑をお願いします」スッ

美里「はい」カキカキ

ポン

きな子「……確かに」

愛「……」ソワソワ

きな子「次に、こちらは連帯保証書です。ご両名の記入と印鑑をお願いするっす」スッ

美里「はい」カキカキ

ポン

美里「……愛ちゃん、お願いね」

愛「わかった!」

スッ

きな子「!」

きな子「あ、条項をよくお読みになって署名と印鑑をお願いします……っす!」

愛「あー、大丈夫大丈夫。おねーちゃんから聞いてるから……そろそろ仕込みの時間だし急がないと」カキカキ

ポン

169: 2024/11/15(金) 17:11:35 ID:???00
メイ「……確かに。次、きな子」

きな子「は、はいっす」

メイ「お急ぎ、みたいだからしっかりな」

きな子「……宮下さん、次は委任状に署名と印鑑をお願いします」スッ

愛「はいはい」カキカキ

ポン

きな子「……確かに。では、ご融資いたします」アタッシュケース

カチャ

きな子「100、200、合計300万円っす……ご確認ください」ポン

美里「……!」ゴクリ

札束ギュッ

美里「確かに。ありがとうございます……愛ちゃん、ありがとう」

愛「よかったね、おねーちゃん!これで海外で働くお金ができたね」ニコッ

きな子「……」

メイ「……」

170: 2024/11/15(金) 17:13:44 ID:???00
愛「じゃ、アタシは店に戻るねー!」フリフリ

ガララッ

バタン

きな子「……」

メイ「……それじゃ、私たちもこれで。きな子」スクッ

きな子「はいっす。では、今月末から毎月15万の返済をお願いします」ペコッ

ガララッ

バタン

美里「これが……300万円の重みなのね」ヒョイ

美里(300万円に利息15%で345万円の借金。24回払いで月15万の返済……手数料までとるのね……)

美里「でも、イナコインのアゲですぐ返済できるから、大丈夫大丈夫!もうサイコーにテンアゲ!!」

美里「さっそく一階のATMで入金入金っと!あと少しで精密検査が始まるわ、急がなきゃ!」ガタッ

美里「ありすぎるキボウ~♪欲張りなLOVE!」ルンルン

タッタッ



看護師「川本さん、これから検査なのにご機嫌ね……」

172: 2024/11/16(土) 07:08:40 ID:???00
ガチャ

メイ「いま戻ったぞ」

きな子「戻りましたっす」

四季「お帰り」

冬毬「お帰りなさい。応接間にて姉者が報告を待っています」

きな子「はいっす」タッタッ

メイ「おう」

夏美「……融資はどうでしたの?」

きな子「社長。川本さんへの融資、完了しましたっす」

メイ「しっかり連帯保証人のサインをもらってきた」

夏美「ご苦労様ですのー」ニコッ

きな子「またイナコインがアガれば、あっという間に一括返済しに来るっすかね……?」

メイ「無理だな。アガるアガらないの前にイナコインは──」

夏美「──詐欺ですの」キッパリ

きな子「はにゃ!?」

173: 2024/11/16(土) 07:12:54 ID:???00
きな子「さ、詐欺、っすか……?」アングリ

夏美「そうですの」

夏美「典型的なSNS投資型詐欺ですの。SNSのグループチャット機能を悪用して、不特定多数に招待を送って投資に興味がある人間を釣って、偽の仮想通貨投資に誘う」

夏美「そこでイナ川は自称投資の天才として、メッセージで言葉巧みに相手を遠隔操作して自分の口座に現金を振り込ませる手口ですの」

きな子「はぇ……」

メイ「まえに川本がいってたろ?投資の利益で買ったという高級アクセやブランド品を見せつけてきたって。本当にコイツの所有物か証拠もないのに、大量に画像を送って信じさせる……」

メイ「……そうやって、相手の射幸心を刺激するんだ。自分もキラキラ輝きたい、チヤホヤされたいって欲求は誰だって持ってるからな」

夏美「特に、夢破れた者や自分自身に劣等感を抱く人間は恰好のカモ。そういう人間に限って、汗をかかず楽して稼ごうと一番に考えているから」

夏美「ノーリスクハイリターンのウマい話に、後先考えずに飛び込むですの」

メイ「飛び込んだその先は、底なしの真っ暗闇!というわけだ」

きな子「……都会は恐ろしいとこっす……あ、でも!」

きな子「川本さんはアプリを使って、実際に取引してたっすよ?」

メイ「それも、全部偽物だ。その証拠に……四季、いいか」

四季「OK、きな子ちゃん、来て」テマネキ

174: 2024/11/16(土) 07:15:02 ID:???00
きな子「はいっす」スタスタ

四季「メイに言われて調べてみた。論より証拠、PCの画面をみて」

きな子「このデータは……なんすか?」

四季「仮想通貨取引が行われてる市場。取引所が扱う仮想通貨の銘柄一覧に、イナコインは存在しない」

きな子「ふぇ!?でも川本さんが見せたアプリは、こう……グラフと数字が動いていたっすよ?」

四季「それは遠隔操作アプリ。相手のスマホにインストールさせたあと、実際に取引しているように見せかけてイナ川が操作しただけ」

四季「こういうアプリのフォーマットはダークウェブ……闇市場で売られているから入手は簡単」

きな子「じゃあ投資自体が真っ赤な偽物……」

四季「そういうこと」

きな子「でも……最初に貸した10万円、一括返済するくらい儲かったって……ウソをつくとは思えないっす!」

メイ「あのな……最初は儲けさせて信用をさせるんだよ。実際は入金した金にプラスした額を口座に振り込んだだけだ」

夏美「魚を釣るとき、エサをちょっとまいて集める。で、最後に釣りあげる……それと同じですの」

179: 2024/11/16(土) 22:01:51 ID:???00
きな子「じゃ、じゃあ詐欺だと分かったうえで社長は300万貸すことを許可したっすか……?」

夏美「そうですの」

きな子「どうして……?」

夏美「マニーを貸せるから貸した、それ以上でもそれ以下でもないですの」

夏美「詐欺で全額失って返済できなくても、こっちは抵当をつけた保証人の土地を売れば債権回収できる……貸さない理由はどこにもないですの」

メイ「その代わり、あのもんじゃ焼き屋の娘は地獄に叩き落されるけどな」

メイ「何も知らないってのは罪なんだよ、金融の世界じゃ常識だ。いっただろ、食うか食われるかって、な?」

きな子「そんな……」

夏美「もしかしてあの娘が可哀想になった?だったら、今すぐ電話して一括返済させることですの。利息の45万が払えないなら保証人に請求すれば問題ないですのー」

きな子「それは……」

夏美「詐欺だと忠告して一括返済させても、そのまま土地から回収するにしても、こっちは利益が出るからどっちでもいいですのー」ニャハー

夏美「でも……」



夏美「……お金、貸したのは、きな子ちゃんでしょ?」ジッ



きな子「……」




きな子(金融業は、地獄に落ちかけている人を食い物にする商売という事実──きな子は社長の真剣な目を見ることができなかったっす)

180: 2024/11/16(土) 22:03:37 ID:???00
ミミズクのいる喫茶店

メイ「……」モグモグ

きな子「……」シュン

メイ「ん?なんだ、パンプキンプリン食べないのか?」

メイ「ここのスイーツは全部ウマイのにもったいないぞ」

きな子「いえ、食べるっす……」パクッ

モグモグ

きな子「……美味しいっす……」

メイ「……」カチャ

メイ「まだ気に病んでるのか?済んだことだろ」

きな子「いえ別に……でも、きな子はふたりを不幸にするお金を貸してしまったっす」

メイ「この稼業はな、人の不幸を避けることなんて出来ないんだよ」

きな子「でも不幸になるとわかっても結局、きな子は何もしなかったっす……」シュン

181: 2024/11/16(土) 22:05:03 ID:???00
メイ「あのな、私たちが不幸にさせてるんじゃねーんだよ」

メイ「──金だよ、金が人を不幸にも幸福にもするんだ。そこ間違えるな」

きな子「……」

メイ「私らはその金を客に貸してもうけて、こうして甘いもの食べてる……客が金をどう使おうと知ったことじゃないんだよ」

メイ「なあ、きな子。金融のオニになって成りあがるか、ただの金貸しOLでいるか……お前はどっちになりたいんだ?」

きな子「……!」ハッ

メイ「ま、その答えは自分で見つけろ。いつまでも私のあとをつけてるんじゃーぞ、いいな?」

きな子「……」コクリ

「なになに?またメイちゃん新人いじめてるー?」ニョキ

182: 2024/11/16(土) 22:07:54 ID:???00
メイ「わっ、なんでいんだよ!かのん先輩!」

かのん「何でってヒドくない!?普通にコーヒーのお代わりと、メイちゃんのブルーベリーパフェ持ってきたんですけど!」

メイ「あー、そこに置いてて。あとこれ下げて」

かのん「雑すぎない!?怖い怖い先輩をもった後輩ちゃん大変だねー」

メイ「うっせぇ、店員はあっちいってろ」シッシッ

かのん「店主なんだけど」ドヤッ

かのん「ねえ、コーヒーのお代わり、どう?」

きな子「は、はいっす。いただきますっす……」

コポポ

かのん「はい、どうぞ。あんな目つきで怖いけど、うちのスフレとパフェが好きな真っ直ぐで友達思いのいい子なんだ……わかってくれるまで時間かかるかもだけどね」

きな子「はいっす」

メイ「きな子、この先輩ウザいからシカトしていいぞ」

かのん「相変わらずひどいなー、ま、ごゆっくりー」スタスタ

きな子「ありがとうございますっす!」

183: 2024/11/16(土) 22:10:24 ID:???00
メイ「……とにかく、川本はこのまま地獄への片道チケットを持って深みに落ちていく」

メイ「宮下愛を巻き添えに、な」フッ

きな子「……」

メイ「月末、入金が確認できなかった瞬間、しっかり回収するつもりでいけよ?」

きな子「……はいっす」コクリ

メイ「んー、このパフェやっぱりうめえわ」モグモグ

きな子「……」パクッ



きな子「……甘くてなめらかで美味しい、っす」モグモグ



きな子(きな子はもう何というか人としての一線を踏み越えてしまったんじゃないか……そんな複雑な気持ちを抱えたまま、今月末を迎えたっす)

189: 2024/11/18(月) 21:49:11 ID:???00
ガチャ

メイ「おはよう、って誰もいないのか?」キョロキョロ

四季「いつものきな子ちゃん……いない」

ススッ

きな子「おはようございますっす……」ズーン

メイ「おわっ!?いきなり背後に立つなよ!」ビクン

四季「サプライズ」

メイ「朝から陰気くせーぞ、いったいどうしたんだよ?」

きな子「川本さん……昨日、入金なかったっす……」

メイ「やっぱりトンだか」

きな子「携帯に催促の電話を何度もしたけど繋がらなかったっす」ズーン

四季「居場所、わかった?」

きな子「まだ確認してないっす」

メイ「おいおい……まずはそこからだろ」

メイ「よっしゃ、川本を追い込むか。四季、社長に伝言と留守番頼む」

四季「了解」

きな子「あの、米女さん……」

メイ「あ?んだよ?」

きな子「追い込みは、きな子を外して欲しいっす」

190: 2024/11/18(月) 21:51:52 ID:???00
メイ「あ?なに寝ぼけたこといってんだ」ギロッ

メイ「きな子の客だろ、逃げるんじゃねえ。最後まで責任を持て、分かったな」

きな子「はいっす……」コクリ

メイ「わかったら車、用意してこい」

きな子「……はいっす!」ペコッ

タッタッ

メイ「……」

メイ「きな子のヤツ、変に甘いとこあるな。田舎者の情、ってヤツか?」ハァ

四季「これが初めて自分でやる追い込み。誰だって初心者、でしょ?」

メイ「でもな。ここが正念場だ……もしダメなら、遅かれ早かれ辞めていくだろうぜ」

メイ「今までの新入りみたいに、な」

四季「きっと大丈夫。あの目は絶対金融に向いてる、大器晩成」

メイ「だといいが……いってくる」

四季「いってらー」フリフリ

196: 2024/11/19(火) 19:20:27 ID:???00
駐車場 黒いアウディA8の前

きな子「あ!」

メイ「よし、行くぞ」スタスタ

きな子「はいっす」

バタン

メイ「よっしゃ、さっそく川本の家に──」

きな子「家にはいないっす。数日前に入院してるらしいっす」

メイ「なんでわかんだよ?」

きな子「待ってる間、実家に連絡を入れたっす……おととい、急に倒れたとか」

メイ「なら病院だな、行くぞ」

きな子「はいっす」カチッ

ブォン

メイ「あ、その前に寄るとこあった」

きな子「ふぇ?」

メイ「公証人役場。まずそこから行こう」

きな子「……はいっす」

ブロロロ

197: 2024/11/19(火) 19:45:51 ID:???00
病院 一般病棟の病室

美里「……」

美里(終わった……お金、全部)

美里(とられちゃった)

美里「うう……どうしよう、どうしよう……!」

美里「おとといイナ川と連絡つかなくて街中で気絶して、気づいたら病院で……」スマホ

ポチポチ

美里「うわ……着信履歴がオニナッツファイナンスのオニ電で埋め尽くされてる!」

美里「やばい!やばいって……!」タラー

コンコン

「川本さん、検温です」

美里「あ、はい。どうぞ」

ガラッ

「……最初の返済日すっぽかすなんてあんまりっすよ?」

美里「あ……!」

きな子「こんにちは、川本さん」ニコッ

メイ「よう、顔色よくねーな。どした?」ニコッ

199: 2024/11/19(火) 20:49:31 ID:???00
美里「あ……あ……」ガタガタ

メイ「おっと、白眼むいてぽっくりイクんじゃねーぞ?まだ回収してないからな」

きな子「イナコイン投資の利益で月々返済するっておっしゃてたのに、ひどいっすよぉ……」ウルウル

美里「ご、ごめんなさい!」バッ

美里「あの、イナコインなんですけど……私、イナ川にだまされていたんです!」

美里「それで全部……全部お金を詐取(と)られてしまって!お金、返せなくなりました!」ビエエ

美里「うぅ、ひっく……ぐすっ……」ポロポロ

美里「しかも、お借りした300万以外に、他で100万くらい借金をしちゃって……もうどうしたらいいかわからないんです!」

きな子「はにゃ!?」

メイ「はあ!?」

きな子「ど、どこで借金をしたんすか?」

美里「……えっと、親のクレジットカードが2枚あってそのキャッシングの限度額いっぱい50万ずつ、で、100万円」ユビオリ

美里「一度借りると、なんというか抵抗がなくなっちゃって……」ポツリ

メイ「おいおい、無職が400万の借金かよ……利息含めたら総額500万くらいだぞ」ヒキッ

きな子「ど、どうしてさらに借金をしたっすか……?」

美里「そ、それは話すと長くなりますが……」

きな子(SNS型投資詐欺に見事にハマってしまった彼女。涙をぬぐったあと、借金で火だるまになったいきさつを話し始めたっす)

202: 2024/11/19(火) 22:34:05 ID:???00
美里「オニナッツファイナンスさんで借りた300万を入金して一週間後のことです」

美里「スマホアプリでイナコインの値段を確認したら……1イナコイン3265円になっていたんです!そのときはテンアゲでした」

美里「それで、元本の倍の利益が出たのでそろそろ利確売りをして現金化したい、と思ってイナ川にメッセージを送ったら……」

──実は、出金には手数料が必要なんです。50万円かかります。口座に入金してください。

美里「と、返事がありました。まあ、普通の仮想通貨取引でも手数料ってかかるじゃないですか?なので、このときはまったく疑わなかったんです」

美里「50万円くらいなら、利益から引いても十分おつりがくるからって大丈夫だろうって……」

美里「それで、親のカードのキャッシングで50万円を用意して入金しました。すると」

──入金確認と出金作業に5営業日かかります。しばらくお待ちください。

美里「安心して待っていると、4日後にまたメッセージが来て」

──大変です!アプリを見てください。大幅に下落してしまいました!

──証拠金維持のため、追証として24時間以内に50万円の入金をお願い致します。

──入金がない場合、強制決済となり、損益が確定してしまいます!!

美里「と、メッセージがあって……」

美里「あわててアプリを確認すると、2963円まで暴落していたんです!」

美里「イナ川を問い詰めると」

──想定外の値下げでしたが、想定内です。追証の50万円入金後、必ず3100円台までアガります!

美里「私、もう冷静じゃなかった。あっというまにお金が溶けていたのですから。でも、イナ川のアガるということをただ信じて……急いで親のもう一枚のカードから50万円キャッシングをして入金しました」

203: 2024/11/19(火) 22:40:53 ID:???00
美里「そのあとは、1イナコイン3000円前後でなかなかアガらないまま、おとといまで時間だけが過ぎていって……」

美里「オニナッツファイナンスさんの返済日も近くなったので、日課のお台場散歩中にアプリを開いてみると金額が」



1イナコイン 1円



美里「1ですよ!いち、イチ、イー、ワン、ピンです!!300万円が3万円に!!」

美里「私ね本当にもう、パーン!となりましたね、頭が」

美里「すごかったですね。もうヴォーって涙と鼻水が出て、本当にもう……あっ他界っていうか……」

美里「びっくりとかそういうレベルじゃなくて、問い詰めようとしたイナ川は勝手にグループチャットから退会してて音信不通。アプリはそれっきり動かなくなって、残金3万円も出金できなくてどうしようもなくなって……」

美里「もう血圧だけが一気にアガがって、ぬとねの区別がつかない顔で真っ昼間のお台場海浜公園を叫びながら全速力で走りましたね、はい」

美里「そして今、私は病室にいる、というわけなのです」

メイ「……どういう訳だよ」

206: 2024/11/20(水) 08:15:39 ID:???00
美里「……」

メイ「返済できない事情はわかった。でもな」

ピラッ

メイ「サインしたこの借用証書に、一度でも期日までに返済ができなかった場合──ただちに全額一括返済をする、とある。なので」

きな子「390万の全額返済をお願いします、っす」

美里「そんな……無茶苦茶ですよ!」

メイ「無茶でもなんでもねーぞ?借りた金は返す、これは当たり前の国際常識だろうが」

きな子「国際……?」

美里「でもお金ないです!しかも私、カード会社2社から100万円も借金してて、親にバレたら放り出されます!」

メイ「そんなの自業自得だろうが」

ピラッ

メイ「借用証書に書いてある一括返済、ただちに返してもらおうか?」

207: 2024/11/20(水) 08:17:17 ID:???00
美里「うぅ……」ジッ

借用証書

美里「……こ、こんなもの……!」ガシッ

グシャグシャ

美里「むぐっ……!もぐっ……!」

美里「ガッ……モゴゴ……」モグモグ

きな子「あっー!!ヤギみたいに食ったっす!!」

きな子「やめ──」

スッ

メイ「落ち着け。こんな光景、何百回も見てる」

メイ「おー食え食え。もう一枚あるからよ」

スッ

美里「むぐっ、うっ……!?」

メイ「コピーに決まってるだろ。何枚でもあるからよ、これも食べるか?」ピラッ

美里「……」ボトッ

美里「すみませんでした……」

209: 2024/11/20(水) 22:24:59 ID:???00
メイ「ようやく自分のおかれた立場がわかってきたようだな」

きな子「なんとか全額返済できないっすか……?」

美里「そ、そんなこといわれても……無職だからできません……あ、まさか!」

メイ「あ?」

美里「返せないならバラバラにして臓器を売るとか、マグロ漁船に売り飛ばすとかするんですか!?」ブルブル

メイ「なに言ってんだ?そんなヤミ金みたいなことするわけないだろ。うちは合法の金融屋、ちゃーんと利息制限法に基づいた金利を守ってコンプライアンス重視の営業してんだよ」

美里「そうですか」ホッ

メイ「……後者と似たようなことはするかもしれないけどな」ギロッ

美里「え?」ゾクッ

メイ「冗談だよ、冗談。どうしても金返せないなら、どうする?きな子」

きな子「……連帯保証人の宮下さんに請求、するっす」

美里「え、愛ちゃんに!?それだけはダメ!!」ガタッ

美里「こんな情けない姿をさらしたくないし、愛ちゃんに心から軽蔑されて……愛ちゃんは私が苦しいときに励ましてくれた太陽──私の心の支えなんです!」

美里「愛ちゃんが離れていったら、私、生きていけない……私のせいで大事なものを失って欲しくない……」ポロポロ

きな子「そんなこと言われても……払えないなら保証人に払ってもらう、これ常識だと思うっす」

210: 2024/11/20(水) 22:26:23 ID:???00
ガラッ

美里「えっ……?」


愛「おねーちゃん大丈夫!?入院したってさっき電話があって、急いでお見舞いに来たんだ!」


美里「あ、愛ちゃん……!」ソウハク

メイ「おっ、偶然だな。手間が省けた」

きな子「ついさっき、きな子が連絡したっす!」

メイ「……きな子、おまえ意外とエグいことするな。ド級の追い込みじゃん」

きな子「ふぇ!?川本さんと一番仲いい人だから、呼んであげただけっすよ……?」

メイ「天然かよ……フッ、やっぱ金融屋に向いてるかもな」

きな子「?」

213: 2024/11/21(木) 22:16:31 ID:???00
美里「あ、あはは……大したことない、大丈夫だよ愛ちゃん」ゲッソリ

愛「でも顔色良くないよ?ゆっくり休んでね……って」ジッ

愛「ふたりは確か……おねーちゃんにお金を貸した……」

きな子「オニナッツファイナンスの者っす」

メイ「こんにちは」

愛「いったい何の用?また貸しにきたの?」ジロッ

きな子「……えっと、その、実は……」モジモジ

メイ「その逆。先月貸した金、利息あわせて390万の返済をお願いしに伺ったんだよ」

愛「はっ?何で?」

きな子「昨日の返済日に入金がなかったので、借用書どおり一括返済となったっす」

愛「え?おねーちゃんが外国で働くときに支援する貸付金なんでしょ?なんで今返済を……」

きな子「……」チラッ

美里「うぅ……」

きな子「それは、その……」モジモジ

メイ「SNSで知り合ったイナ川という詐欺師に投資で絶対儲かるって騙されて、うちで借りた金を嘘の仮想通貨投資に全額注ぎ込んでパァにしたんだよ」パァ

愛「えっ!?」ガクゼン

きな子「ちょっと米女さん!なにも正直に言うなんて……!」

メイ「どうせあとでバレるんだ、これでいいんだよ」

214: 2024/11/21(木) 22:20:11 ID:???00
愛「おねーちゃん、どういうこと……?」

愛「外国で働くために必要なお金だっていったじゃん!投資なんて聞いてないよ!」

美里「ごめんなさい、嘘ついてごめんなさい、愛ちゃん……」ポロポロ

愛「どうしてお金借りてまで投資なんかしたの、おねーちゃん……?」

美里「……愛ちゃんのライブをみたあと、一生懸命仕事を探したの。でもね、長い間入院生活していた私を正社員として雇ってくれるところなんてどこにもなかった」グスッ

美里「私の全てを否定してくるこの国が嫌になった。だから外国で働きたいと思ったの」

きな子「……」

美里「社会人というステージにすら立てない、何者にもなれない私にとって、イナ川のウマい投資話は救いの手に見えた……そのとき私は明確な夢が出来たの」

美里「……今まで私が得られなかった、キラキラした楽しい時間を外国で働きながら取り戻したい。それが私の夢なの!!」

愛「え……」

美里「こんなことになるなんて……私、本当にバカだった……」ポロポロ

215: 2024/11/21(木) 22:23:58 ID:???00
メイ「それじゃ、返済の話に戻そっか」

メイ「390万、いますぐ支払ってもらう。借用書にサインした以上、うちは全額回収する権利がある」ピラッ

愛「待ってよ!そんな無茶なこと……第一、おねーちゃんは入院してるのに借金の取り立てとかKYすぎでしょ」

メイ「あ?KYだぁ?空気読めねーのは、借りたものを返すという当たり前の空気が読めないそこの川本だろが」ギロッ

きな子「ちょっと米女さん!!」

美里「お、お金は必ず返します!バイトでもなんでもして……だから来月まで待ってください!」

メイ「なに寝ぼけたこといってんだ?仮にバイトの給与入っても、カード会社の返済で全額消えるのがオチだろーが」

愛「えっ!?カード……?」

きな子「川本さんはイナ川の言葉に騙されて、親名義のクレジットカードのキャッシングで100万円借金を追加して投資につぎ込んだっす」

愛「嘘でしょ……マジ!?」

美里「愛ちゃん、本当なの……」シュン

メイ「と、いうわけだ。借金まみれの川本美里に390万の即日返済能力がないということで、宮下愛、アンタに話があるんだけど」チラッ

美里「あっ……!」

メイ「ここじゃ何だから、病室を出た表で立ち話でもしようぜ?な?」

217: 2024/11/21(木) 22:25:43 ID:???00
ガラッ

バタン

愛「それで……アタシに何の用?何をさせたいの?」ジロッ

メイ「まあそう焦らないで。すぐ済む話だから、きな子」

きな子「はいっす」

きな子「──宮下さんは、川本美里さんの連帯保証人っすね?」

愛「え?まあね」

きな子「……川本さんにお貸しした390万、代わりに一括返済をお願いします」

愛「はっ!?」

愛「な、なにいってんのさ!アタシはおねーちゃんに頼まれて、サインしただけなんだけど!!」

きな子「それで宮下さんは保証人になった、っすよね?」

愛「う、うん。そうだけど」

きな子「宮下さんはただの保証人じゃない、連帯保証人っす」

きな子「──川本美里さんが390万を借りたということは、宮下さんが借りたのと同じことっす」

愛「!?」

219: 2024/11/22(金) 22:24:40 ID:???00
愛「けど……借りたのはおねーちゃんだよ?」

きな子「何度でもお伝えするっす。宮下さんは連帯保証人っす、連帯保証書にサインした以上、お金を借りた川本さんが返せないなら、宮下さんが返済する義務が発生するんですよ」

愛「そ、そんなの……知らないよ……」

メイ「知ってるか知らないか知らねーが、連帯保証人ってのはそういうもんだ」

メイ「これは天下の最高裁判所だって私らの主張を全面的に認めるだろうぜ。なにせ、民法で定められてことをやってるだけだからなー?」

愛「……でもそんな、いきなり390万払えって言われても、無理だよ」

きな子「もんじゃ焼きのお店から何とか用意できないっすか……?」

愛「それはダメ!材料や光熱費の支払い用の運転資金なの、ってか貯蓄も最近やった改装工事に使って半分もないし」

愛「運転資金を使ったら店潰れちゃうよ!愛さんの店、父さんと一緒に倒産……なんつって、あはは……」

愛「笑えないよ」

メイ「そっか、ならどうする?きな子」

きな子「……お店と一緒になっている自宅を差し押さえて、競売にかけるっす」

220: 2024/11/22(金) 22:26:18 ID:???00
愛「は!?うちの店と家を競売にかける……?」

きな子「はいっす」

愛「ちょっと待ってよ!なんの権利があって、おばあちゃんの代から続いてるアタシの店を差し押さえるの!?」

きな子「権利なら……ここにあるっす」スッ

公正証書

愛「……なにこれ」

きな子「これは公正証書っす。連帯保証と一緒に記入いただいた白紙委任状をもとに作成したっす」

メイ「……そういえば、川本に融資して数日後、呼び出してサインしてもらったよな?」

愛「あっ……!」

メイ「思い出したか?」

愛「それ、ただ追加の手続きがあるってソッチが言うからアタシがサインしたものじゃん!これになんの意味があるの!?」

きな子「……落ち着いてよく聞くっす。この公正証書には、宮下さんの土地建物を差し押さえすることを認可する裁判所の判決と同じ効力があるっす」

メイ「こっちは公正証書をもとに差し押さえができるんだよ。他でもないアンタがサインした事実を根拠に、な」

愛「そんな……噓、噓でしょ……」ヘタリ

きな子(オニナッツファイナンスの法律と公文書を用いたオニの理詰めの追い込み。さすがの元気が取り柄の宮下愛も、塩を振りかけた青菜のようにしおしおになってしまったっす)

愛「……おねーちゃん、どうして……もっと相談して欲しかったのに……」

きな子(そのまま病院の壁に背中をあずけ、うなだれてしまった)

221: 2024/11/22(金) 22:27:41 ID:???00
メイ「と、いうわけだ。店と家を競売にかけるから、早めに退去してくれよな?」

愛「……」

メイ「よっしゃ、用は済んだな」

メイ「それじゃきな子、さっさと手続きするから帰ろ──」クルッ

ガタン

メイ「んあ?」

バタバタ

きな子「病室のほうから音がしたっす!」

愛「……おねーちゃん!」ハッ

愛「まさか……さっきの話を全部聞いてたの……!?」タッタッ

ガラッ

きな子「……!きな子たちもいくっすよ!!」グイッ

メイ「はあ?なんで……って引っ張るな!!」

ガラッ

きな子(先に入った宮下さんにすぐ続いて、きな子たちが病室に入った先に広がっていたものは──緊迫した状況だったっす)

222: 2024/11/23(土) 22:07:32 ID:???00
愛「おねーちゃん!やめて!!」

美里「愛ちゃん……ごめんね……もう迷惑かけたくないの!!」ググッ

メイ「おい、早まるなって!ナイフを下ろせ、な?」

きな子「やめるっす!」

きな子(病室に入ると、宮下さんが喉元に果物ナイフを突きつけた興奮気味の川本さんを必氏になだめていたっす)

美里「私、さっき思い出したの……!この身体に生命保険がかかってることを!」

美里「この命と引き換えに保険金で借金を返してほしいの!そうすれば愛ちゃんはお店を手放さなくていいんでしょ!?」ガタガタ

愛「なにいってるのさ!!とにかくやめてよ!!」

きな子(追い詰められた人間は予想外の行動をとる。たとえ自らの命をかけても……ベッドのそばに立ち、震える手で喉元にナイフの先端を突きつける彼女の目は、しっかりすわっていた)

きな子(少しでも前に踏み出せば、即座に彼女はナイフを突き立てるかもしれない。その恐れからきな子は身体が硬直してしまったっす)

メイ「……まずいな。今日の晩飯、四季と焼肉なんだよ。上タンとハラミが食えなくなるじゃねーか」

きな子「こんな時になにいってるっすか……!」アキレ

メイ「焦るな、こういうのは2回くらい見てきてる……」スゥ

メイ「宮下ァ!!」

223: 2024/11/23(土) 22:09:00 ID:???00
愛「なに!?」ギロッ

メイ「私らは金貸しだ。金を取り立てることはあっても、命を取り立てる気はねーよ!いいな?」ジッ

愛「!」

愛「……わかった!」

メイ「よし……なあ、川本さんよ」

美里「な、なによ!?生命保険で借金返すからいいでしょ!」

メイ「それはいいけどよ……そこの肩に、毛虫がついてるぜ?」ユビサシ

美里「えっ、毛虫どこ!?」チラッ

メイ「今だ、行け!!」

愛「!」ダッ

美里「い、いやっ!」ググッ

愛「ダメッ……!」バッ

ガシッ

美里「うぅ……あっ……!」

美里「あ、愛ちゃん!?み、右手……どうして……!」

ポタポタ

愛「いったぁ……!結構ザックリいったかも……」

224: 2024/11/23(土) 22:10:27 ID:???00
美里「あ……あ……手当て、しなきゃ……」ポロッ

カラン

愛「あ、あとでいい、よ……」ニコッ

美里「愛ちゃん……なんで……?」

愛「おねーちゃん必氏だったから、とめるなら刃を掴むしかないと思って……あはは……」

愛「もんじゃ焼きのお店なんて、またどっかでやり直せばいいよ。どんなもんじゃってハングリー精神でさ、もんじゃ焼きだけに!アハハ……」

愛「でもさ──」スッ

美里「あっ……」

ギュッ

愛「おねーちゃんは……アタシにとって、世界にたったひとりだけの、お姉ちゃんなんだよ?」

愛「お願い……アタシをひとりにしないでよ、置いていかないでよ……!」ポロポロ

美里「うぅ、ぐすっ……愛ちゃん!!」ギュッ

美里「ごめんなさい、ごめんなさい……!」

愛「うん、うん……分かってくれればいいよ……」ナデナデ

225: 2024/11/23(土) 22:11:51 ID:???00
きな子「……」

メイ「……」

メイ「とりあえず一件落着、だな」

メイ「じゃあ帰るぞ。差し押さえの手続きしねーとな」クルッ

きな子「あの、返済を待ってあげてもいいんじゃないっすか……?」

メイ「あ?」ギロッ

きな子「金融業は、人の不幸を避けることはできない職業っす。金は人を不幸にも幸福にもするって!」

きな子「でも、きな子は可能性感じたっす……お金で何かを変えられるかもしれないってことを!」

メイ「おい、分かってないのか……」ハァ

メイ「食うか食われるかの世界で、甘さと弱みを見せたらコッチが食われるってことをよ?」ジッ

きな子「わかってるっす!!」ジッ

メイ「……ハァ、わかった。好きにしろ、知らねーからな」

きな子「ありがとうございますっす!!」

226: 2024/11/23(土) 22:13:31 ID:???00
きな子「あの、おふたりに提案があるのですが!」スッ

きな子「もんじゃ焼きのお店を競売にかけず、川本さんのカードの借金を何とかできる方法っす!」

美里「えっ?本当!?」

愛「提案はめちゃうれしいけど、ちょい待ち!!」スッ

きな子「ふぇ!?」ビクッ

愛「愛さんの右手……血がドバドバだから、ちょっと病院いっていい?」

愛「って、ここ病院だった!アハハ!」

愛「……イテテ」

きな子「あ、どうぞっす」

愛「ありがとう!ちょっと外科にいってくるね」スタスタ

きな子(ザックリ切れた右手のひらの治療を終えた宮下さんが戻ってきたあと……きな子は両方を救えるかもしれない、ある提案をして合意の念書をもらったっす!)

227: 2024/11/23(土) 22:15:14 ID:???00
オニナッツファイナンス 社長デスク

夏美「それで……回収はどうしましたの?」ジッ

メイ「……おい、きな子。説明しろ」

きな子「はいっす」

きな子「抵当物件を競売にかけず持続的に返済させる方法で回収することにしましたっす」

冬毬「それはアグリーしかねますね。競売以外での回収は非常に非効率です」

冬毬「なにか明確なエビデンスを持っているのですか?そうでなければ……」

夏美「冬毬、まずは聞いてみるですの」

冬毬「……アグリーです姉者」

きな子「ありがございますっす」ペコッ

メイ「……」

夏美「では、ぜひ聞かせてほしいですの」

きな子「はいっす!」

228: 2024/11/23(土) 22:28:50 ID:???00
きな子「まず川本さんが借りたカード会社2社の債権、利息含め合計118万をうちが買い取るっす」

夏美「ふむふむ」

きな子「そして、うちが貸した川本さんの債権390万と合わせ、計508万円の融資手数料込──520万を年利15%で複利の48回払いで宮下さんに融資するっす」

きな子「融資した宮下さんは川本さんの代理でカード会社に一括返済し、うちには390万を即日返済させるっす」

きな子「実質、うちが追加で融資するのはカード会社への返済分と手数料、130万円になるっす」

夏美「マニー520万の金利15%の複利なら、4年間の支払い総額は909万……300万の融資からだいぶ膨らませたですの」

きな子「はいっす。銀行が複数の他社の債権を自社に一本化させる借り換え……で可愛く表現している、おまとめローンを参考にしてみたっす!」

きな子「もちろん宮下さん側もカード会社の金利18%から、一本化したうちの金利15%に下がるというメリットもあるっす!それを説明して合意を得たっす」

夏美「なるほど。金融業は債権額を膨らませて利息で大きく儲けるのが鉄則ですの。390万を競売ですぐ回収するよりも、520万を貸し付けて4年で909万円回収できるなら、長い目でみればこちらの利益……」フム

夏美「しかも持続可能な成長……最近の流行、SDGsを金融に取り入れた良い融資プランですの!!」ニャハー

きな子「ありがとうございますっす!!」ペコッ

229: 2024/11/23(土) 22:32:14 ID:???00
冬毬「しかし、担保はどうするのですか?額が大きくなれば回収は困難になりますよ」

きな子「もちろん担保はもんじゃ焼き屋の一番抵当っす。競売にかけても十分に回収可能っす……そして」

夏美「そして?」

きな子「万が一として、川本さんを連帯保証人にして担保に彼女の生命保険をあてるっす」

きな子「解約しても550万が戻るので、十分に貸付金を回収できるっす」

夏美「互いが互いの借金をし合って相保証の変化形……きな子ちゃん、いいところに目をつけたですの」

夏美「それで冬毬、どう思いますの?」

冬毬「……姉者ならわかり切っていることかと」

スクッ

夏美「きな子ちゃんの提案に異論はないですの。追加で130万のマニーを融資するですの!」ニャハー

きな子「社長!ありがとうございますっす!」ペコッ

冬毬「では明日、130万をセットアップします」

きな子「はいっす!!」キラキラ

230: 2024/11/23(土) 22:35:33 ID:???00
メイ「……ふう、とりあえず良かったな」ポンッ

きな子「米女さん、さっきは生意気なこといって、本当にすみませんっす!」ペコッ

メイ「いいよ、いいよ」

メイ「普通なら、考える時間を与えずに債務者を追い込んだあと一気に回収するもんだが、あの場合は考える時間をあげてよかったのかもな」

きな子「え?」

メイ「あのまま追い込みすぎると、最悪、弁護士に泣きついて債務整理でもされたらたまんねーからな!」ニコッ

きな子「はぁ……そういうことっすか」

メイ「もし、きな子が考えなしに言ってたら、無視して競売にかけてたけど」

メイ「まさかこんなに早く金融の鉄則をうまく応用できるなんてな……四季の言う通りかもしれねーな」

きな子「えっ、若菜さんきな子のことをなんて言ったっすか!教えてほしいっす!」

メイ「内緒」フッ

きな子「ふぇえ……」シュン

278: 2024/11/24(日) 10:16:22 ID:???00
翌日 病院

カキカキ

ポン

きな子「借用書、連帯保証書、確かに……」

きな子「では、130万円を融資するっす」カチャ

札束

きな子「確認お願いしますっす」ポンッ

愛「……うん、確かに」

美里「桜小路さん、何から何までありがとうございました」ペコッ

美里「金融屋って、オニのように容赦なくお金を回収していくものだと思ってましたけど、桜小路さんみたいな寄り添っていくれる金融屋さんもいるんですね」

きな子「あ、いや、きな子にとって初めてのお客様だったので……恐縮っす」

愛「あのとき愛さんたちのために返済する方法を考えてくれて、チャンスをくれてマジサンキューだよ!!」ニコッ

きな子「やっぱり宮下さんは笑顔が似合うっすねー」

愛「え、そう?アハハ……」

きな子「……右手、痛むっすか?」

愛「え?ヘーキヘーキ!でもまだ痛むから、鉄板のヘラ使うのはちょっと厳しいけどね」

愛「毎月19万の返済はちょいキツいけど……お姉ちゃんと話し合ったんだ」チラッ

美里「!」コクリ

美里「私、退院する明日からもんじゃみやしたで働くことにしたの」

279: 2024/11/24(日) 10:18:23 ID:???00
きな子「そうっすか」

美里「こんな身体だけど……愛ちゃんとこつこつ働きながら毎月、返済していくのでよろしくお願いします」ペコッ

きな子「いつか、海外で働ける夢、叶えられるといいっすね!」

美里「はい!!」ニコッ

愛「でもお姉ちゃん、19万なら週6のフルタイムで働かないといけないけど……大丈夫かなー?」

美里「うっ、うぅ……だ、大丈夫よ!私が愛ちゃんの右手の分まで頑張るからっ!」

愛「頼もしいなー、その気持ちだけで愛さんうれしいよ!でもまずはホール、頑張ろうね!」

美里「うん!頑張ってみるわね」

きな子「……それでは、失礼するっす」ペコッ

スタスタ


きな子(金で親子やきょうだいの縁が切れることもあれば、金がより縁を取り持ったり強くする……たまにはこういうことがあってもいいと思うっす!)

280: 2024/11/24(日) 10:21:39 ID:???00
ガラッ

バタン

愛「あ、電話だ!お姉ちゃんちょっといい」タップ

愛「もしもし、りなりー?え、見つけた?」

愛「……うん、わかった!じゃあねー!」タップ

美里「愛ちゃん?」

愛「友達のりなりーだよ!ちょっと用事ができたから、もう帰るね!」

愛「じゃあ明日の午後!うちで待ってるね、バイバイーイ!」フリフリ

美里「うん、ばいばい」フリフリ


バタン


愛「……」ググッ

愛「よし、じゃあいっちょいってくるか!!」

281: 2024/11/24(日) 10:23:46 ID:???00
都内 某所


「ふひひ、情弱どもから集めた金でついに──」

「──終身、見抜きし放題の人生イージーモードです!」

「さっそく金沢の現役スクールアイドルのタペストリーを買ってきて、見抜きをしないといけませんね……」


ポン


「ん?」クルッ


「──お前か?」


「エッ……?」


ブンッ

286: 2024/11/24(日) 21:34:56 ID:???00
ミミズクのいる喫茶店

カランカラン

かのん「いらっしゃいませ!あ、きな子ちゃん」

きな子「いつもの奥のテーブル席、空いてるっすか?」

かのん「ん?……うん、空いてるよ」クイッ

きな子「ありがとうございますっす」

かのん「待ち合わせ?待ってる間、なに飲む?」

きな子「お代わり自由のアメリカンっす」

かのん「たまにはキリマンジャロとかどうかな?」

きな子「高いから遠慮するっす」

かのん「たまには注文してほしいけどなー?」ウワメヅカイ

きな子「遠慮するっす」キッパリ

かのん「もう……!」

スタスタ

きな子「……」ストン

かのん「はい、アメリカンブラック」トン

かのん「きな子ちゃんもすっかり金融屋さんっぽくなったね」

きな子「え?そうっすか?」

かのん「ブルックスブラザーズのスーツに、プラダのクラッチバッグとA4サイズの茶封筒……うん、それっぽい!」

きな子「えへへ、そうっすかー?」

かのん「うん、ごゆっくりー」スタスタ

287: 2024/11/24(日) 21:36:27 ID:???00
きな子「……」ゴクッ

きな子「ふぅ……」

きな子(今日は月末、宮下さんの集金日っす。あの騒ぎからあっというまに月日は流れ、前日に催促の電話を入れたとき……)

きな子(驚いたことに520万円を一括返済したいといってきた。まとまった金ができたという)

メイ「ふーん、まさか川本を風呂に沈めたとかじゃねーか?ああいうたれ目の幸薄系って一部のマニアックに人気だしな」

夏美「一括返済……あまり旨味がないですの……」

きな子(ひねくれた物言いの米女さんと残念がる社長を会社において、きな子は喫茶店で宮下さんと待ち合わせっす!)

カランカラン

かのん「いらっしゃいませ!」

マンマル「……」

愛「うおっ、フクロウがいる!!キミ可愛いなー」

きな子「こっちっす!」フリフリ

愛「ちっすー!久しぶり!」

きな子(いつも元気で笑顔な彼女がやってきたっす)

288: 2024/11/24(日) 21:37:58 ID:???00
愛「おしゃれなお店だねー、さすが青山」ストン

愛「あ、カフェオレお願いします!」

かのん「かしこまりましたー!」

きな子「川本さんは元気っすか?」

愛「うん!お姉ちゃんは元気だよ!いまはうちに住み込みで働いてるんだ」

愛「最初は立ち仕事が辛くてよく休憩したり、ちょいミスが多くて愛さんフォロー大変だったけど……今はお客さんにもんじゃ作りを任せてもらえるくらいヘラ使い上手くなったんだ」

きな子「すごいっすね!人間は慣れるっていうけど、本当っすねぇ」

愛「今日もシフト入ってるんだ!またいっぱい食べてお金落としてね、きな子っち!」

きな子「き、きな子っち……!?」

きな子(債務者から忌み嫌われる金貸しを愛称で呼ぶなんて、この人くらいっす)

289: 2024/11/24(日) 21:39:52 ID:???00
きな子「それで今回、一括返済ということですが……」

愛「うん、お願いね!ようやくお姉ちゃんのお金を取り戻せたんだ」

きな子「わかりましたっす……って、はにゃ!?」

愛「うぇっ、何!?」

きな子「か、川本さんのお金……ってことは騙し取られた400万円!?まさかイナ川を見つけたんすか!」

愛「あー、うん、そうだよ。友達にネットに詳しいコがいて、ダークウェブにディープダイブしてもらって、経由されたプロバイダーをひとつひとつたぐり寄せてイナ川の発信元を見つけたんだ!」

きな子「???」

きな子「はぇー、と、都会は未来すぎてすごいっすね……」

スッ

愛「はい、これ520万円と今月の利息分、あわせて526万5000円」ポンッ

愛「イナ川をちょっと……キュッ、とシメて詐取(と)られたお金と迷惑料を搾りとってきたんだ!きな子っち、確かめて」

きな子「は、はいっす……」ペラペラッ

トン

きな子「確かに確認したっす。これは完済証明書っす」スッ

愛「ありがとう!」ウケトリ

290: 2024/11/24(日) 21:43:00 ID:???00
きな子「それじゃあ、川本さんはみやしたでのお仕事は今月いっぱいっすか?完済できたわけだし」

愛「ううん」フルフル

愛「──お姉ちゃんには内緒にするつもり」

きな子「ふぇ!?どうして……」

愛「お姉ちゃんには働いて稼いでもらうことで、もっとお金の大切さをわかってほしいんだ。みんなお金を稼ぐために汗を流して、ペコペコ頭さげて、手と靴を汚している……」

愛「……きな子っちもそうでしょ?お金を貸すだけの金融屋サンも、回収するときは一生懸命だもんね」

きな子「まあ、そうっす」

愛「もちろん給料から天引きした返済分はそのまま貯金して、2年後お姉ちゃんの誕生日に渡すつもりだよ。ちゃんとアタシの想いを伝えて、このお金で夢を叶えてって言うんだ!」ニコッ

きな子「きっと、とっても喜ぶっす!」

愛「……もうひとつ、内緒にしたい理由があるんだ」

きな子「?」

愛「うちで働いている今のお姉ちゃん、とってもカッコいいんだ!前よりもよく笑うし、アタシに元気よく返事して……人見知りで泣き虫だった、小さかったころのアタシがあこがれてたお姉ちゃん姿そのものなんだ」

愛「だから、もう少しだけ輝いているお姉ちゃんが見たいってとこ……かな?」アハハ

きな子「……いいと思うっす!」ニコッ

291: 2024/11/24(日) 21:44:54 ID:???00
愛「……もう時間だ、そろそろ仕込みしなきゃ!」

愛「あ、カフェオレ残っている……んくっ、んくっ……ぷはー、美味しい!」トンッ

きな子「支払いはきな子がするっす」

愛「おっけー、きな子っちありがと」ガタッ

愛「またお店に来てね!じゃあねー!」タッタッ

カランカラン

かのん「ありがとうございましたー」

きな子「ふぅ……ひと仕事おわったっすー」

かのん「おつかれ、新作の北海道産コーンブレッドだよ」コトッ

きな子「いい香りっすね!ふるさとを思い出すっす!!」パクッ

きな子「美味しいっす……ルンルンっすー!」モグモグ

292: 2024/11/24(日) 21:48:26 ID:???00
ブーッブーッ

きな子「ふぇ!?電話っす……米女さん!?」タップ

きな子「はいっす──」

──おい、きな子!先月、きな子が250万円融資したレO喫茶リコピーがトンだぞ!!

きな子「はにゃ!?」

──さっさと連帯保証人のヨハネとかいう占い師からキッチリ金を回収してこい!

きな子「は、はいっす……あの、コーンブレッド食べてからでいいっすか?」

──あ?つべこべいわずにさっさと回収してこい!!

きな子「ひっ……は、はいっす……!」タップ

きな子「かのん先輩、お金、ここに置いておくっす!」ガタッ

かのん「オッケー、大変だねー」

コーンブレッド

きな子「あっ……!」ヒョイ

パクッ

きな子「いっふぇくるっすぅー」タッタッ

かのん「いってらー」フリフリ

カランカラン




きな子(きな子の金融道はまだまだ踏み出したばっかりっす!!)




おわり

293: 2024/11/24(日) 21:52:16 ID:???00
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
Liella!のない世界線ならオニナッツはエルチューバーの夢破れたあと、肉体労働で稼いだマニーで金融屋始めそう。

294: 2024/11/24(日) 21:56:22 ID:???Sd
乙!めちゃくちゃ面白かった!
一時はどうなることかと思ったけど、最終的に良い話だった

引用: きな子「オニナッツファイナンス?」