1: 2009/04/19(日) 21:40:40.18 ID:SFsnbigu0

前回:真紅「悪い夢なんかじゃ・・・ないわ。」


私の記憶が戻った日を境に、蒼星石が私の家にくる頻度はどんどん減っていった。

「最近、蒼星石来ないわね」

「んー・・・まぁ、あいつもあいつで忙しいと思うですぅ」

「そうね・・・」

蒼星石にだって自分の都合がある。
分かっている・・・、頭の中では分かっている。

こんなことならずっと忘れたままの方が良かったかも知れない。

・・・そんなこと考えてはダメ、蒼星石が心配してしまうわ。
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2: 2009/04/19(日) 21:44:02.14 ID:SFsnbigu0
「何か蒼星石に伝えたいことでもあるですか?」

「ううん、何でもないわ」

伝えたいことならある。
でもそれを伝えると間違いなく"彼女"に嫌われてしまう。

「真紅ぅ!最近暗いですよッ!」

そういって彼女は私をくすぐり出す。

「や、やめ・・・!」

「ほれほれ、お姉様に相談してみるですぅ!」

「わ、わかった! 言う・・・! 言うからやめ――」

3: 2009/04/19(日) 21:47:38.99 ID:SFsnbigu0
「ほれ、話して見ろですぅ」

「・・・絶対に誰にも言わない?」

「もちろんですぅ、翠星石の口はとーっても硬いですぅ!」

「・・・絶対にひかない?」

「そ、それは内容によるですけど・・・」

「じゃあ言わないわ」

「嘘!今の嘘ですぅ!絶対にひかないですぅ!」

「実は・・・」

5: 2009/04/19(日) 21:51:09.66 ID:SFsnbigu0
私は、理解してくれる人が欲しかった。
だから翠星石に正直に話した。

「つ、つまり蒼星石のことが・・・」

「い、言わないでッ!」カァァ

「・・・あれ以来好きになっちまったってことですぅ?」

顔が熱くなる。
翠星石は私を軽蔑してしまっただろうか・・・。

「ええ、そういうこと・・・。」

彼女が一瞬戸惑った顔を見せた
が、すぐにニコっと笑い

「翠星石で良ければいつでも相談にのるですぅ!」



>>4
片思いだけど

9: 2009/04/19(日) 21:57:10.26 ID:SFsnbigu0
期待していたけど期待できなかった返事が返ってきて私は驚いた。
ジュンに対するライバルが減った、とでも考えたのかしら・・・。
いえ、彼女を疑うのはもうやめましょう。

「翠星石・・・、ありがとう」

「真紅は最高に運がいいですぅ!」

「どうして?」

「最初に翠星石に相談したからですぅ」

そう言って彼女は電話を掛け始めた。

「―――」

「―――」

カチャ

11: 2009/04/19(日) 22:03:52.42 ID:SFsnbigu0
「ふっふっふ・・・、明日蒼星石が来るですよ?」

なんと、翠星石が蒼星石を呼び出した。

「蒼星石も姉に呼び出されたら来ない訳には行かねえですからね、イーッヒッヒッヒ!」

善意の気持ちでやってくれたのに、翠星石が黒く見えた。

「真紅、これだけは忠告しておくですぅ」

急に翠星石が真剣な顔になり私の眼を覗き込む。

「真紅の選んだ道は茨ばっかりですぅ その茨の棘で蒼星石を傷つけちゃダメですよ?」

「・・・ええ、わかっているわ。」

13: 2009/04/19(日) 22:10:15.80 ID:SFsnbigu0
翌日、翠星石が呼び出した時間の10分前に蒼星石が現れた。

「やぁ真紅、もう調子は良さそうだね」

「ええ、お陰さまで」

「翠星石はどこにいるんだい?」

「あら、翠星石は今出かけてるわ」

「それじゃ、少しここで待っていてもいいかい?」

「ええ、構わないわ」

蒼星石が私の隣に腰をかける。

15: 2009/04/19(日) 22:15:44.92 ID:SFsnbigu0
ドキドキする。
蒼星石が私の10cm隣にいる。

「ねぇ真紅」

「な、何?」

「君は初めて僕と出会った頃を覚えているかい?」

「え・・・ええ、覚えているわ」

ちゃんと会話できているだろうか。
緊張しておかしなことを口走らないだろうか。

18: 2009/04/19(日) 22:22:30.25 ID:SFsnbigu0
「あの時はいきなり真紅に攻撃されたんだっけなぁ」

「そ、そんなこともあったわね・・・ ごめんなさい・・・」

「いや、気にしていないよ 今はこうして仲良く出来ているからね」

「な、仲良く・・・ うん、仲良く出来ているわ」

「ん、僕何か変なこと言った?」

「い、いえ!何でもないわ!」

やはり考えていることまで口に出てしまう。
それにしても、どうして蒼星石は初対面の時の話をするのだろう。

「何か考え事かい?」

20: 2009/04/19(日) 22:29:17.20 ID:SFsnbigu0
「い、いえ・・・ ちょっとボーっとしちゃって・・・」

「むぅ、僕の話はそんなにつまらないかい?」

「そ、そんなことないわッ!」

「そう、それなら良かった」

蒼星石が私に微笑む。
あまりにも、眩しい。

「今帰ったですぅ」

「あ、おかえり翠星石 用事って何なんだい?」

あぁ・・・、結局何にも話さないまま蒼星石は行ってしまった。
寧ろ、変な妹と思われたかもしれない。

23: 2009/04/19(日) 22:35:58.20 ID:SFsnbigu0
「そ、蒼星石は?」

「もう帰ったですよ」

「そう・・・。」

「真紅、何か進展はあったですか?」

「・・・特にないわ。」

翠星石が蒼星石に用事があったのは本当らしい。
てっきり、私のために呼び出したのだと思った。

「次は・・・、いつきてくれるの?」

「んー・・・、わかんねえですぅ」

25: 2009/04/19(日) 22:42:19.01 ID:SFsnbigu0
どうして蒼星石の前だとあがってしまうの?
前は普通に喋れたのに。

私は膝を抱える。

「次はいつ会えるのかしらね・・・」

「何で自分から会いに行かねえです?」

翠星石が聞く、「家を知らねえ訳でもないでしょう?」と付け加える。

「何の用事もないのに行けるわけないじゃない!」

つい、カッとなってしまう。

「真紅、妹が姉の家に行くのに用事なんて必要ですか?」

28: 2009/04/19(日) 22:47:08.97 ID:SFsnbigu0
私は何も見えていなかった。
翠星石に言われるまで悲劇のヒロインを気取っていた。

「そう・・・、そうよね」

「私から会いに行けばいいのよね」

「うんうん、自分から動くのも大切ですぅ」

「ありがとう、翠星石」

また明日、蒼星石に会える。
自然と口元が緩む。

「あら、さっきまで唇を噛んでいたと思ったら今度はにやけだしやがったですぅ」

翠星石が微笑む

31: 2009/04/19(日) 22:49:55.60 ID:SFsnbigu0


「んー・・・ むにゃむにゃ・・・」

「・・・喉が渇いたわ」

キィィイ 皆が起きないように鞄を開ける。

あれ、翠星石がいない。

あの子ったらまだ起きてるの・・・?

まぁいい、水でも飲んで寝よう

私は気にも留めなかった

32: 2009/04/19(日) 22:53:54.06 ID:SFsnbigu0
「真紅ー、起きるですぅ」

翠星石の声で目が覚める

「ふぁ・・・ おはよう、翠星石」

「どうした真紅、眠そうだな」

ジュンが少し心配そうに聞く

「少し眠れなかっただけよ、心配はいらないわ」

「顔を洗ってくるです、眠気が覚めるですよ」

「えぇ」

35: 2009/04/19(日) 22:57:23.53 ID:SFsnbigu0
一通りの用意が終わる。
今から蒼星石の家に行く。

「す、翠星石はついてこないの・・・?」

「翠星石がいたら二人きりにはなれねえですよ?」

「・・・私は構わないわ」

「ふぅん、仕方ねえですぅ。今日だけですよ?」

やはり1人で行くのはまだ緊張する。
何事も流れを作らないと・・・。

「ポーッとしてねえで行くですよ」

37: 2009/04/19(日) 23:01:39.02 ID:SFsnbigu0
「珍しいね、二人してどうしたんだい?」

「あぁ、ちょっと蒼星石と3人で茶を飲みにきたですぅ」

「そ、そういうことよ」

翠星石に話を合わせる。

「なるほどね まぁ自分の家だと思ってゆっくりしていってよ」

「言われなくてもそのつもりですぅ」

「あ、あんまり迷惑をかけたら悪いわ・・・」

私はオロオロしながら言った。

38: 2009/04/19(日) 23:05:29.70 ID:SFsnbigu0
「ハハッ、気にしなくていいよ真紅 翠星石はいつもこうだから」

「むッ、いつも迷惑かけてるみたいに言うんじゃねえですぅ!」


「・・・そう」

疎外感。

いつも翠星石はこの家に遊びにいっているんだ・・・。

「真紅は何を飲むの?」

「え、ああ・・・ 私は紅茶でお願いするわ」

「ふふっ、真紅も紅茶でいいんだね?」

40: 2009/04/19(日) 23:09:42.79 ID:SFsnbigu0
「はい、紅茶3人分持ってきたよ」

コトッ テーブルに紅茶が並ぶ。

「ありがとう」

口にティーカップをを運ぶ。

「・・・おいしいわ」

ジュンの淹れる紅茶とは別の美味しさ。
両方とも美味しいけど、美味しいの種類が全く違う。

「そう、それはよかった」

「んー、腕を上げたですねぇ」

42: 2009/04/19(日) 23:13:37.44 ID:SFsnbigu0
1時間・・・
2時間・・・
3時間・・・
蒼星石と喋ってるとあっという間に時間が過ぎていく。

「いけねっ もうこんな時間ですかぁ・・・」

「蒼星石、今日はこの辺で帰るですぅ」

「うん、わかったよ」

「真紅、帰るですぅ」

「ええ」

私が立ち上がり、翠星石の元へと向かう。

「真紅、またいつでも来てくれて構わないよ」

44: 2009/04/19(日) 23:16:46.98 ID:SFsnbigu0
それから、真紅には蒼星石の家でお茶を飲む習慣が身についた。

「はい、紅茶」

「ふふっ、いつもありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」

蒼星石とも会話が出来るようになっていった。

「蒼星石、ちょっと動かないでね」

ペロッ

「頬っぺたにクリームがついていたわ」

46: 2009/04/19(日) 23:22:54.55 ID:SFsnbigu0
毎日のように蒼星石の家に行っては紅茶を飲む。
蒼星石も、それに対して嫌な顔1つ見せない。

「そろそろ来る頃だと思っていたよ」

「あら、明日はもう少し早くこないとダメね」

いつの間にか、翠星石はついてこなくなっていた。
二人きりの方がいい、私は気にも留めていなかった。

「最近翠星石が一緒じゃないね、どうしたんだろう」

「さぁ、私には分からないわ」

「また3人で紅茶を飲みたいね」

少し寂しそうに蒼星石が言った。

48: 2009/04/19(日) 23:27:29.37 ID:SFsnbigu0
「真紅って変わったね」

蒼星石がいきなり切り出す。

「記憶を失う以前の真紅は少し絡みにくかったよ」

「まぁ、最近は少し大胆な気もするけどね」

「んー、私には良く分からないわ」

そう言って紅茶を啜る。

「ん、もうこんな時間だね」

「ええ、そろそろ帰るとするわ」

49: 2009/04/19(日) 23:29:16.35 ID:SFsnbigu0
「翠星石 最近、蒼星石の家に来ないわね」

「ええ、その方がいいと思ったですぅ」

私への気遣いから翠星石は行かなくなっていた。

「別に2人きりにしてなんて頼んだ覚えはないわ、蒼星石も寂しそうだったわよ?」

「むぅー・・・、それじゃ明日あたりちょっくら顔を出してみますかねぇ」

これでまた蒼星石の笑顔が見られる。

52: 2009/04/19(日) 23:34:39.99 ID:SFsnbigu0
「蒼星石、今日は翠星石と一緒にきたわ」

「お、それじゃ紅茶をもう一杯淹れないと」

蒼星石はそそくさとキッチンに向かっていく。
家庭的な蒼星石は正直見たくなかった。
女の子らしいから。

「またポーッとしてるですね、蒼星石に見惚れたですか?」

「もう、変なこと言わないのッ!」

「ふふ、すまんですぅ」

54: 2009/04/19(日) 23:38:43.77 ID:SFsnbigu0
「ちょっと席をはずすわ」

忘れ物でもしたのだろうか、真紅がnのフィールドに入っていった。

「・・・蒼星石、様子はどうですぅ?」

「間違いなく真紅は僕に惚れているよ・・・ まいったなぁ」

「多分まだ軽く脳にダメージが残ってるですぅ」

「多分ね、もしかしたら記憶を取り戻していないかもしれない」

「初対面の時、最初に攻撃を仕掛けたのは僕なのにね」

57: 2009/04/19(日) 23:43:32.75 ID:SFsnbigu0
「もしかしたら、皆に迷惑をかけたくないって思って勝手に記憶を作っちゃったかもしれねえです」

「細かい事を聞いたらまだまだボロが出るだろうねぇ」

真紅の記憶は未だ取り戻せていない。

蒼星石が女だと知ったのは翠星石が妹とでも言っていたのを聞いたからだろう。

「まぁしばらくはこの事は内密にしておこう、何が起こるかわからない」

「それがいいですね」

60: 2009/04/19(日) 23:48:59.81 ID:SFsnbigu0
カタン

「しっ・・・、真紅が戻ってきたよ」

「真紅、おかえりですぅ」

「あら、よく戻ってきたって分かったわね」

真紅が薔薇の花束を持って現れた。

「蒼い薔薇を探していたのだけれど見つからなくて・・・」

「はい、蒼星石 そろそろ誕生日が近いわよね」

蒼星石の誕生日は一ヶ月前に祝ったばかり。
やはり・・・

63: 2009/04/19(日) 23:53:07.39 ID:SFsnbigu0
「翠星石、帰るわよ」

「え・・・あ、わかったですぅ」

そう言って彼女達は鏡の中へ入っていった。




「誕生日・・・ね ん?」

花束の中に1枚の手紙を見つけた。

67: 2009/04/20(月) 00:00:05.36 ID:oViQ19p30
「今夜、話したいことがあるから
   ○○時にジュンの家の大鏡が置いてある部屋に来て頂戴」

やはり翠星石に連絡するべきか・・・

けど、真紅の心を傷つけるわけにはいかない。

僕は悩んだ。

記憶が偽りであろうとも僕の妹、それに相手は僕に惚れている。

僕の身には危険はないだろう・・・。

やはり、連絡はしないでおこう。

70: 2009/04/20(月) 00:05:38.74 ID:oViQ19p30
―約束の時間―

「真紅、僕に話ってなにかな?」

暗闇の中から蒼星石が姿を現す。

「・・・やっぱりきてくれたのね」

自分で呼び出しておいてそういう言葉しか見つからない。

「あの・・・、姉相手にこういう事をいうなんておかしいかもしれないけど・・・」

蒼星石が微笑みかける

「だからこそ僕に何でも相談すればいいんだよ?」

74: 2009/04/20(月) 00:09:38.39 ID:oViQ19p30
「その・・・、あの・・・ 何て言えばいいか・・・」

上手く言えない。

あんなに練習したのに。

「どうしたの?」

それでも蒼星石は私に微笑みかける。

「すぅ・・・」

「最近、貴女が凄く格好いいの・・・」

76: 2009/04/20(月) 00:13:51.58 ID:oViQ19p30
それから、真紅に告白された。

台詞は穴だらけで正に今の真紅のようだった。

けど、とても心に響いた。

「・・・やっぱり迷惑かしら?」

真紅が不安そうに僕の眼の奥を覗き込む。

「ううん、嬉しいよ」

パァッと真紅に笑顔が咲く。

80: 2009/04/20(月) 00:17:54.32 ID:oViQ19p30
翠星石と僕の間に真紅への隠し事があるように
僕と真紅の間でも隠し事ができた。

その後、僕達の間に「愛してる」だとか「好き」なんて雰囲気に任せる言葉はなかった。

ただ、真紅の涙を啜る声だけが聞こえる。

「嬉しい・・・」

こうして、僕と真紅は正式に付き合うようになった。

fin


一応第2部になるのかな
見てくれた人ありがとう

文才が欲しいです

質問あったらどうぞ

94: 2009/04/20(月) 01:09:17.03 ID:oViQ19p30
もし3部かくなら真紅と蒼星石のイチャイチャを書きたいけど
僕の文章力では空と海の青さの違いですら伝えられない
妄想でもするか

引用: 蒼星石「真紅、僕に話ってなにかな?」