1: 2009/04/18(土) 23:58:45.35 ID:nNFKAUZZ0
「どうしてお米に紅茶をかける素晴らしさが分からないの?」

「そんな気持ち悪い食べ方を理解できるわけないじゃないかッ!」

「気持ち悪いですって・・・?」

どれくらい振りだろうか
真紅と喧嘩をするのは

真紅は今日、蒼星石に花見を誘われた
「たまには私と貴女だけで昼食っていうのも良いわね」と、真紅はOKした。

そして、現在に至る。

3: 2009/04/19(日) 00:03:22.17 ID:SFsnbigu0
「これだから男みたいな姉は嫌なのよ、話が分からなくて」

この一言が決定的だった。
次の瞬間には、僕が真紅を突き飛ばしていた。

「僕だって・・・女の子のつもりだよッ!」

真紅が吹き飛び、桜の木にぶつかる。

ズゥン・・・と鈍い音が辺りに響き、桜の花弁が舞う。

僕はようやく我を取り戻す

「だ、大丈夫かい!真紅!」

6: 2009/04/19(日) 00:06:44.70 ID:SFsnbigu0
僕が慌てて駆け寄ると、真紅は完全にのびていた。

「よかった・・・ 気絶しているだけか・・・」

ぴくり、と真紅の指先に力が伝わる。

「んん・・・」

「真紅!大丈夫かい!?」

真紅が目を覚ました。

8: 2009/04/19(日) 00:11:09.33 ID:SFsnbigu0
「私は・・・誰?」

「何を言っているんだい・・・? 君は真紅じゃないか!」

「真紅・・・私が? じゃあ貴女は誰なの?」

「僕は蒼星石だよ・・・ 真紅、まさか―――」

打ち所が悪かった。
真紅は記憶を失っていた、もう自分が誰かさえも分からない。

「蒼星石・・・ そう、蒼星石というのね」

9: 2009/04/19(日) 00:15:23.26 ID:SFsnbigu0
何も思い出せない。
どうして自分がここにいるのか、それさえ

「ごめんね・・・ 真紅、本当にごめんね・・・」

「蒼星石・・・どうして謝るの?」

ただひたすら、彼は泣いて謝る。

「私は貴女に謝られるようなことはされていないわ」

寧ろ、初対面の私を誰か教えてくれたお礼を言いたいくらい と付け足す

13: 2009/04/19(日) 00:20:24.21 ID:SFsnbigu0
「真紅・・・、君は自分の家を思い出せる?」

必氏に頭を動かす。
しかし、目を開けたら桜の木の下にいた所からの記憶しかない。

「ごめんなさい・・・、わからないわ」

「そう・・・、そうだよね 僕が送っていくよ」

なんて優しい人なんだろう。
顔も美形だし・・・。

「じゃあ、行こうか」

15: 2009/04/19(日) 00:24:58.09 ID:SFsnbigu0
「ここが私の家・・・?」

意外と小さい。

「僕も少し上がっていくよ 君のマスターにも話をしたいし」

「ええ、歓迎するわ」

そういってドアを・・・

開かない

「真紅、そのドアは引っ張ると開くんだよ」

17: 2009/04/19(日) 00:30:38.80 ID:SFsnbigu0
「それじゃ、僕はジュン君に話があるから」

蒼星石が2階に行く。
住人の私より家の構造を知っているなんて不思議な感じがする。

「お、真紅 おかえりですぅ」

蒼星石を女にした感じの人が私に話しかける。

「綺麗・・・ 貴女は誰? どうして私を知っているの?」

嫉妬してしまうほどに綺麗。

「何言ってるですぅ?」

19: 2009/04/19(日) 00:36:14.37 ID:SFsnbigu0
「ごめんなさい 私には貴女が誰かわからないの」

彼女が目を丸くする。
そして一瞬の間を置いて

「冗談ですよね・・・?」

「冗談じゃないわ、本当に思い出せないの」

彼女が深呼吸する。

「・・・翠星石のことも忘れちゃったですか?」

「翠星石って・・・どなたかしら?」

彼女が自分を指差す


23: 2009/04/19(日) 00:39:22.76 ID:SFsnbigu0
「ってことはジュンのことも覚えてねえですか!?」

彼女が少しにやけながら聞いてくる

「そういえば蒼星石もジュンがどうとか言っていたわね」

「ジュンって一体誰なの?」

「まぁお前には分からんですよ あいつは翠星石が1番似つかわしいです」

急に彼女の態度が変わった。

25: 2009/04/19(日) 00:44:45.07 ID:SFsnbigu0
誰かを連れて蒼星石が戻ってきた。

「真紅、この人がジュン君だよ」

「あなたがジュンっていうのね」

「真紅、本当に記憶喪失なのか?」

「わからないけど・・・、何も思い出せないわ」

ジュンが首をひねり「よわったなぁ」と呟く。
しかし、翠星石が惚れている割にジュンは格好よくない。
蒼星石の方が好みだわ。

26: 2009/04/19(日) 00:50:16.73 ID:SFsnbigu0
「それじゃ、また明日も来るよ」

蒼星石が帰宅する。
少し寂しくなる。

「ふんふーん チビ人間、今日の夕食は大盛りにしてやるですぅ!」

「やけに上機嫌だな 何かいいことでもあったのか?」

「別に何でもねぇですぅ」

二人の話に入れない。
記憶を失う以前は入れたかもしれないけど、今は赤の他人な気がしてならない。

蒼星石とは普通に会話できたのに・・・。

28: 2009/04/19(日) 00:55:21.88 ID:SFsnbigu0
「真紅、やっぱり何も思い出せないか?」

「ええ、何もわからないわ」

ジュンがため息をつく。

「ジュン、ため息をつきたいのは真紅の方ですよ!」

「ああ、悪い・・・」

別に何とも思わない。
他人からどう思われようとも、所詮は他人の意見。

「気にしていないわ」

32: 2009/04/19(日) 01:01:10.47 ID:SFsnbigu0
「やぁ真紅、調子はどう?」

「相変わらずね、何も思い出せない」

「そう・・・、まぁ焦らないでゆっくり思い出そう」

「ええ、そうしましょ」

蒼星石が私を元気付けるためにやってきた。
優しい人。

「それじゃ、ちょっとジュン君と話をしてくるよ」

33: 2009/04/19(日) 01:04:44.57 ID:SFsnbigu0
「真紅、そろそろくんくんが始まるですよー」

「くんくん・・・それは一体何なの?」

「くんくんまで忘れるなんて・・・ 真紅はあんなにくんくんに惚れていたですのに・・・」

「おぉ・・・可哀想なくんくんですぅ!」

どうやら私はその"くんくん"に惚れていたらしい。
記憶がなくなる以前の私が惚れていた・・・、すごく興味がある。

「私もそのくんくんが見てみたいわ」

35: 2009/04/19(日) 01:09:01.30 ID:SFsnbigu0
「やあ良い子のみんな!テレビは離れてみるんだよ!」

「真紅、彼が名探偵くんくんですぅ」

私は言葉を失った。
犬に・・・、しかも人形に惚れていたの・・・?

「あまりの感動に声もでねえですか?」

「う・・・、うそよッ! ・・・私は犬なんかに惚れていないわ」

ズキッ

頭が痛む

「うぁ・・・あ、頭が割れる・・・!」

36: 2009/04/19(日) 01:14:06.51 ID:SFsnbigu0
「蒼星石、JUM!こっちです!」

「真紅ッ!大丈夫かッ?!」

「真紅、しっかりして!」

蒼星石とジュンが私を抱きかかえベッドの上へ運ぶ。




「ありがとう、もう落ち着いたわ」

さっきまでの痛みが嘘のようにひいていった。
本当にさっきまで痛かったのか疑うほど。

38: 2009/04/19(日) 01:16:27.90 ID:SFsnbigu0
「突然痛み出したのか?」

「"くんくん"というものを見ていたの そしたら突然・・・」

「なるほど、思い出そうとすると頭が痛くなるのか」

「そうかもしれないわ くんくんを見ているとき少しだけ懐かしい気持ちになったもの」

懐かしい気持ち2割、信じられない気持ち8割 といった感じだが。

「ジュン君、真紅の記憶を取り戻すのは後回しにしたほうがいいかも」

蒼星石がジュンに囁く

「そうだな、くんくんを見ただけでこの様子だからな」

39: 2009/04/19(日) 01:20:50.34 ID:SFsnbigu0
「真紅、紅茶でも飲むか?」

「ええ、飲みたいわ」

「ちょっと待ってろ」

彼が席をはずす

「真紅、まだ無理に思い出さなくていいんだよ」

「ええ、ありがとう」

「これで真紅もしばらくはくんくんお預けですねぇ」

41: 2009/04/19(日) 01:24:00.38 ID:SFsnbigu0
「真紅、紅茶淹れたぞ」

コト

「ありがとう、ジュン」

出された紅茶は私の要求する水準を完全に満たしていた。
やはり、私は彼を暮らしていたのかもしれない。

「ジュン、とってもおいしいわ」

「そ、そうか 喜んでくれて嬉しいよ」

「んー、この空気は・・・ 邪魔者は帰るとするよ」

そう残して蒼星石は帰ってしまった

43: 2009/04/19(日) 01:28:43.40 ID:SFsnbigu0
「変な勘違いしやがったですね、蒼星石の奴」

「だな・・・」

「真紅、ちょっと早いが今日はもう体を休めろ」

「ええ、そうさせて貰うわ」

「それじゃおやすみ」

パチン

電気が消えて周りが黒く染まる。

「おやすみ、蒼星石」

48: 2009/04/19(日) 01:39:45.30 ID:SFsnbigu0
最近暇ができる度に蒼星石の事を考えている。
どうしてだろう・・・。

「どうしたです、真紅?」

「え・・・あぁ、なんでもないわ」

「ふぅーん・・・ 最近ボーっとしてばっかりですねぇ」

「そうかしら?」

「もしかしてもしかすると恋しちゃってるんじゃねえですか?」

翠星石が笑いながら言う。

恋・・・、そうかもしれない。

私は蒼星石が好きなのかもしれない。

いえ、好きなの。

50: 2009/04/19(日) 01:45:33.84 ID:SFsnbigu0
悟られてはいけない。
もしも彼が他に好きな人がいたら・・・。

この微妙な距離感でいたい。
例え、実らなくても構わない。

好かれなくてもいい。
嫌われたくない。

「やぁ、調子はどうだい?」

今日も彼はきてくれた。

51: 2009/04/19(日) 01:48:49.18 ID:SFsnbigu0
「ふふ、相変わらずよ」

「そう・・・」

彼の笑顔が曇る。

「気にしなくていいわ 今の生活もとても気に入ってるもの」

前のことがわからない以上、今を楽しむしかない。
それに、蒼星石は私を心配して気にかけてくれる。

「ならいいんだけど・・・」

54: 2009/04/19(日) 01:50:57.27 ID:SFsnbigu0
この後、しばらく蒼星石との談笑が続いた。
時間を忘れて、本当に楽しめた。

「そういえば蒼星石、ジュンの部屋に私と翠星石の鞄の他にもう1つあるんだけどあれって誰のなの?」

この台詞を言った瞬間、場が凍った。

「私何か変なこといった?」

「いいかい真紅、あの鞄を開けちゃいけないよ」

「どうして?」

「言えない、言ったら君が苦しんでしまう」

その場は蒼星石を信じることにした。
彼は私に嘘をついたことがなかったから。

55: 2009/04/19(日) 01:54:13.66 ID:SFsnbigu0
「それじゃ真紅の元気な顔を見れたし今日は帰るよ」

「そう・・・ 明日も来るわよね?」

「ああ、もちろん!」

そういって彼は帰っていった。

「元気・・・ね 確かに元気になったかもしれないわ」

「ふぅ、蒼星石と真紅の話に入ろうと思ったけど入り込む余地がなかったですぅ」

そう言って翠星石が現れた

58: 2009/04/19(日) 01:57:07.87 ID:SFsnbigu0
「ふふ、悪かったわ」

「いーえ、別に気にしてませんですぅ」

本当は話に入りたかったのだろう、彼女は嘘をつけない。

はじめは赤の他人と思っていたけど、この家の住人はみんな良い人。
私によくしてくれる。

「翠星石は夕飯でもつくるとするですかねぇ」

「私も手伝うわよ?」

「真紅の料理なんて食えたもんじゃねえですよ」

どうやら、私は料理が下手らしい

59: 2009/04/19(日) 02:00:16.46 ID:SFsnbigu0
「おー、今日もおいしそうだなぁ」

「へへん、翠星石が作ったから当たり前ですぅ!」

「うん、本当においしいわ」

「あ、まだ頂きますしてねえですよ!」

頂きます、と言うのは当然のことらしい。
おなかが減っているから待てるわけがないのに。

「じゃあ手を合わせるですぅ」

「いただきます!」

61: 2009/04/19(日) 02:03:51.16 ID:SFsnbigu0
「私は先に寝させてもらうわ」

寝ぼけ眼で彼に会うのは失礼だわ。
そう思って1人でジュンの部屋に行った。

「ふふ、明日も楽しみだわ」

ふと、3つ目の鞄が目に入る。
蒼星石と約束した とはいえやはり気になる。

頭の中で選択肢が流れてくる。

あけますか

あけませんか

63: 2009/04/19(日) 02:06:58.60 ID:SFsnbigu0
ちょっとだけなら問題ない・・・

ちらっと見てまた閉めればばれない

カタ・・・ガチャ

私の手は勝手に動いていた。

キィィ・・・

眠っている桃色の人形、言い方がおかしいかもしれない。
人形なんて普通は動かない。

頭の中でこの人形が無邪気に走る姿を思い浮かべる

プツン

66: 2009/04/19(日) 02:10:14.76 ID:SFsnbigu0
目が覚めると、またジュンのベッドにいた。

「大丈夫か!?」

第一声はジュン。

「ええ、もう何ともないわ・・・」

「もう、本当に心配したですよ!?」

「二人とも、少しの間迷惑をかけて悪かったわ」

「もう大丈夫・・・、全部思い出したわ」

68: 2009/04/19(日) 02:13:43.23 ID:SFsnbigu0
遅れて蒼星石が入ってくる

「真紅っ!大丈夫かい!?」

「蒼星石、もう真紅は全て思い出したらしい」

「ほ、本当なの?!」

私は大きく頷く

「私の記憶がない間のことは悪い夢みたいなものかもしれない・・・」

ここで蒼星石と目が合う

「ふふ、悪い夢なんかじゃないわ。」

fin

オチの弱さに定評のある>>1でした
見てくれてありがとう

質問あるなら答えるけど

69: 2009/04/19(日) 02:15:38.22 ID:keExCoDv0

続きはないのですか

70: 2009/04/19(日) 02:15:53.32 ID:jph556MO0


雛苺は結局どうなちゃったの?

引用: 真紅「悪い夢なんかじゃ・・・ないわ。」