450: 2009/03/23(月) 21:27:51 ID:io6ULlvA
とある昼下り。ゲルトルートは人気のない廊下で、銀色のズボンを拾った。
ズボンには一枚の紙切れが添えられていて
そこには角の丸い女の子らしい字面で、次のように綴られていた。
『このズボンは魔法のズボンです。
履いた者の望みをたちまち叶えてくれます。
ただし、効果はズボンを着用している間だけです。
それでは良い一時を』
ゲルトルートは肩を落として本の少しばかり溜め息を吐いた。
誰がやったか知らないが、もし見つけたら徹底的に絞ってやる
と心に誓いながら、ゲルトルートはズボンをコートのポケットに押し込むと、午後の軍務に勤しんだ。
ゲルトルートがもう一度ズボンを手にとったのは
その日の仕事が終わり、夕食を食べ終えて、自分の部屋でくつろいでいた時だった。
ベッドに仰向けて寝そべると、銀色のズボンを両手で掲げる。
ズボンはよくよく見てみると、極めて丁寧な造りをしている事に気がつく。
まず何と言ってもその手触りである。おそらくシルクが使われているのではないだろうか。
なんにしても、その極上の触感から、相当な代物が用いられているのは、間違い無いだろう。
次にその刺繍である。よく観察すると、下地の銀よりもう一段明るい銀色で
幾何学的な紋様が描かれているのがわかる。魔方陣を連想させる模様だ。
ゲルトルートは腕をそのままに上体を起こすと、ズボンに鋭い眼差しをおくった。
無論、糸のほつれなどは一切なく、真に丁重な仕上がりだ。
これなら、そこらの貴族はもちろんの事、皇帝家にすら、出したとしても恥ずかしくはないだろう。
ゲルトルートはもしや、と思った。もしかしたら、紙に書いてあることは本当かもしれない。
そう思わせるぐらい、そのズボンは完璧だった。天下無二の宝物として崇め奉られても不思議とは感じないほどに。
それには気品があった。神々しさがあった。眩い後光すら感じられた。
ズボンには一枚の紙切れが添えられていて
そこには角の丸い女の子らしい字面で、次のように綴られていた。
『このズボンは魔法のズボンです。
履いた者の望みをたちまち叶えてくれます。
ただし、効果はズボンを着用している間だけです。
それでは良い一時を』
ゲルトルートは肩を落として本の少しばかり溜め息を吐いた。
誰がやったか知らないが、もし見つけたら徹底的に絞ってやる
と心に誓いながら、ゲルトルートはズボンをコートのポケットに押し込むと、午後の軍務に勤しんだ。
ゲルトルートがもう一度ズボンを手にとったのは
その日の仕事が終わり、夕食を食べ終えて、自分の部屋でくつろいでいた時だった。
ベッドに仰向けて寝そべると、銀色のズボンを両手で掲げる。
ズボンはよくよく見てみると、極めて丁寧な造りをしている事に気がつく。
まず何と言ってもその手触りである。おそらくシルクが使われているのではないだろうか。
なんにしても、その極上の触感から、相当な代物が用いられているのは、間違い無いだろう。
次にその刺繍である。よく観察すると、下地の銀よりもう一段明るい銀色で
幾何学的な紋様が描かれているのがわかる。魔方陣を連想させる模様だ。
ゲルトルートは腕をそのままに上体を起こすと、ズボンに鋭い眼差しをおくった。
無論、糸のほつれなどは一切なく、真に丁重な仕上がりだ。
これなら、そこらの貴族はもちろんの事、皇帝家にすら、出したとしても恥ずかしくはないだろう。
ゲルトルートはもしや、と思った。もしかしたら、紙に書いてあることは本当かもしれない。
そう思わせるぐらい、そのズボンは完璧だった。天下無二の宝物として崇め奉られても不思議とは感じないほどに。
それには気品があった。神々しさがあった。眩い後光すら感じられた。
451: 2009/03/23(月) 21:29:22 ID:io6ULlvA
ゲルトルートはベッドから音も立てず、静かに立ちあがる。
ゆっくりとした動作で、ズボンを腰の上にあてがうと、果たしてそれは、ぴたりと合った。
運命かも知れない。はたまた神様からの贈物か。
ゲルトルートはおそるおそる、銀色のズボンを履きにかかる。
額に一筋の汗がながれる。喉を鳴らし、ズボンを掴む手は、微かに震えていた。
何度も足に引っ掛けながら、漸くゲルトルートは自身のズボンの上に、銀色のズボンを身に着けた。
ゲルトルートはこの素晴らしい状況に夢見心地だった。
間断なく耳に入る“妹達”の甘える声に、頬が緩むのを抑えられないでいる。
ミーティングルームにゲルトルートの理想郷が築かれていた。
部屋の中央のゲルトルートを中心に、楽しい喧騒が広がっている。
俄に魔法の体現。猫の耳と猫の尻尾。頭部のアンテナ。
騒ぎのはしにいたサーニャの様相に、皆の視線が集まる。
サーニャは目を瞑り
「何か…近付いてくる」
どよめきの中でゲルトルートが
「ネウロイか?」
と口を開く。
「わからないわ」
目を開けて
「けど、北…ロンドンからたがら…」
「奴か」
坂本がミーナに視線を向ける。
「ええ。多分そうね…」
頷いて、ミーナはゲルトルートへ顔を向ける。他の者も不安気な面持で頭を向けた。
ゲルトルートは困惑気味に周囲に視線を巡らす。
そんな時に、誰かが弱々しく、震える声で囁いた。“お姉ちゃん”。
ゲルトルートは瞬間、身体を強張らせる。誰か、後に続いて“お姉ちゃん”。
次第に多くなっていくその声に、一々身体をびくびくさせて、ついに
「“お姉ちゃん”に任せろ!」
握り拳を胸の前にして、高らかに宣言。
部屋はどこか、和やかな空気に包まれた。ゲルトルートは“妹”に囲まれる。
前に後ろに抱き着かれ、ゲルトルートは“妹達”の頭を聖母のように撫でてやる。
そんな中で、サーニャが独り呟いた。
「来た」
ゆっくりとした動作で、ズボンを腰の上にあてがうと、果たしてそれは、ぴたりと合った。
運命かも知れない。はたまた神様からの贈物か。
ゲルトルートはおそるおそる、銀色のズボンを履きにかかる。
額に一筋の汗がながれる。喉を鳴らし、ズボンを掴む手は、微かに震えていた。
何度も足に引っ掛けながら、漸くゲルトルートは自身のズボンの上に、銀色のズボンを身に着けた。
ゲルトルートはこの素晴らしい状況に夢見心地だった。
間断なく耳に入る“妹達”の甘える声に、頬が緩むのを抑えられないでいる。
ミーティングルームにゲルトルートの理想郷が築かれていた。
部屋の中央のゲルトルートを中心に、楽しい喧騒が広がっている。
俄に魔法の体現。猫の耳と猫の尻尾。頭部のアンテナ。
騒ぎのはしにいたサーニャの様相に、皆の視線が集まる。
サーニャは目を瞑り
「何か…近付いてくる」
どよめきの中でゲルトルートが
「ネウロイか?」
と口を開く。
「わからないわ」
目を開けて
「けど、北…ロンドンからたがら…」
「奴か」
坂本がミーナに視線を向ける。
「ええ。多分そうね…」
頷いて、ミーナはゲルトルートへ顔を向ける。他の者も不安気な面持で頭を向けた。
ゲルトルートは困惑気味に周囲に視線を巡らす。
そんな時に、誰かが弱々しく、震える声で囁いた。“お姉ちゃん”。
ゲルトルートは瞬間、身体を強張らせる。誰か、後に続いて“お姉ちゃん”。
次第に多くなっていくその声に、一々身体をびくびくさせて、ついに
「“お姉ちゃん”に任せろ!」
握り拳を胸の前にして、高らかに宣言。
部屋はどこか、和やかな空気に包まれた。ゲルトルートは“妹”に囲まれる。
前に後ろに抱き着かれ、ゲルトルートは“妹達”の頭を聖母のように撫でてやる。
そんな中で、サーニャが独り呟いた。
「来た」
452: 2009/03/23(月) 21:30:39 ID:io6ULlvA
ドアを蹴破る音がけたたましく鳴り響いた。同時に、ブリタニア陸軍の服を着た男が二人、部屋の中に駆け入る。
兵士はウィッチを囲むように両面に分かれ、短機関銃を腰に構える。
ゲルトルートは“妹”を守るように両腕を広げ、左右の兵士をきりっと睨み付けた。
後ろには肩を寄せ合う“妹達”の怯え、ざわめく声。
汗が、ゲルトルートの顔を輪郭沿いに伝う。汗は、そのまま下顎に達し、床に小さな染みを造り出す。
そして、廊下を歩く音…。
単調な足音。それは、万力の歯車のように刻々と、迫り、音量を上げて、近付いてくる。
ゲルトルートは兵士を視界に認めながら、ドアの方を警戒する。
淡々と、冷酷に歩みは進む。ざわめきは、いつの間にか
消え失せていて、部屋に響くのはただ、規則的な、足の音。
ゲルトルートの心臓は、早鐘のように動作を速くする。
生唾を飲み込んで、腰を掴まれる。振り返ると、心配そうな“妹達”。
ゲルトルートは一瞬目を丸くして、直ぐさま細め、微笑んだ。“妹達“も微笑んで
そして、歯車は止まった。
ゲルトルートが振り向くと、そこには一人、マロニーが居た。
ゲルトルートは顔を改め、毅然たる態度でマロニーに歩み寄る。
見上げて、階級の差異を無視するかのように、きつく、その冷淡な瞳を睨め付ける。
左右の兵士は無礼な態度をとるゲルトルートに対し、銃を構えた。
が、マロニーはそれを手振りで制す。そして、ゲルトルートを俯瞰し
不意に、笑顔になって、口を開いた。
「“お姉ちゃん”」
ゲルトルートはズボンを脱ぎ捨てた。
兵士はウィッチを囲むように両面に分かれ、短機関銃を腰に構える。
ゲルトルートは“妹”を守るように両腕を広げ、左右の兵士をきりっと睨み付けた。
後ろには肩を寄せ合う“妹達”の怯え、ざわめく声。
汗が、ゲルトルートの顔を輪郭沿いに伝う。汗は、そのまま下顎に達し、床に小さな染みを造り出す。
そして、廊下を歩く音…。
単調な足音。それは、万力の歯車のように刻々と、迫り、音量を上げて、近付いてくる。
ゲルトルートは兵士を視界に認めながら、ドアの方を警戒する。
淡々と、冷酷に歩みは進む。ざわめきは、いつの間にか
消え失せていて、部屋に響くのはただ、規則的な、足の音。
ゲルトルートの心臓は、早鐘のように動作を速くする。
生唾を飲み込んで、腰を掴まれる。振り返ると、心配そうな“妹達”。
ゲルトルートは一瞬目を丸くして、直ぐさま細め、微笑んだ。“妹達“も微笑んで
そして、歯車は止まった。
ゲルトルートが振り向くと、そこには一人、マロニーが居た。
ゲルトルートは顔を改め、毅然たる態度でマロニーに歩み寄る。
見上げて、階級の差異を無視するかのように、きつく、その冷淡な瞳を睨め付ける。
左右の兵士は無礼な態度をとるゲルトルートに対し、銃を構えた。
が、マロニーはそれを手振りで制す。そして、ゲルトルートを俯瞰し
不意に、笑顔になって、口を開いた。
「“お姉ちゃん”」
ゲルトルートはズボンを脱ぎ捨てた。
453: 2009/03/23(月) 21:34:20 ID:io6ULlvA
多すぎるんで皆まとめてGJ!!
さて、遅れ馳せながらゲルト誕生日SSです。
全然百合百合してなくてごめんなさい。
けど、こんなノリが許されるなら、シリーズ化も考えていたりw
例によって携帯からの、QB1eHhb+でした。
拙作ですが大目に見てやって下さい。
さて、遅れ馳せながらゲルト誕生日SSです。
全然百合百合してなくてごめんなさい。
けど、こんなノリが許されるなら、シリーズ化も考えていたりw
例によって携帯からの、QB1eHhb+でした。
拙作ですが大目に見てやって下さい。
引用: ストライクウィッチーズで避難所1
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