1: 2014/01/13(月) 15:55:29 ID:.9wEsY6g
>>12巻以降の本誌ネタバレ有り

2: 2014/01/13(月) 15:56:50 ID:.9wEsY6g
ミカサ(9)「お母さん見て見て」

お母さん「ん?どうしたの?」

ミカサ(9)「泥団子。作ったの!」

お母さん「まあ、上手にできたわねー」ニコニコ

ミカサ(9)「お母さん、あげる!」ズイッ

お母さん「ありがとう、ミカサ。今日のごはんは、このお団子のスープにしましょう」ニコニコ

ミカサ(9)「……え?」
進撃の巨人マガジン15周年号 (週刊少年マガジンコミックス)
3: 2014/01/13(月) 15:57:54 ID:.9wEsY6g
お母さん「お父さん、ミカサ、ごはんですよー」

お父さん「お、良い匂いだなー。今日のごはんは何かな?」

お母さん「ミカサが作ったお団子のスープですよ」

お父さん「おお、ミカサが作ったのか!嬉しいな」ニコニコ

お母さん「そう。美味しく出来てますよ。いま注ぎますからね」ニコニコ

ミカサ(9)「………」

4: 2014/01/13(月) 15:58:45 ID:.9wEsY6g
お母さん「お父さん、どうぞ」コトッ

お父さん「わあ、美味しそうだな」ニコニコ

ミカサ(9)(泥団子なのに…?)

お母さん「ミカサにもすぐに装いますからね」

ミカサ(9)「!」ビクッ

お母さん「どうしたの?ミカサ」

ミカサ(9)「お母さん、私も……あの…みんな…お父さんも」

お母さん「ん?」

ミカサ(9)「ど、泥団子…なんて、食べられないよ」

5: 2014/01/13(月) 16:00:16 ID:.9wEsY6g
お父さん「どうしたんだミカサ、泥団子なんて言い出して…?」

ミカサ(9)「だって、スープに…」

お母さん「ミカサが作ってくれた泥団子は、立派なお団子になりましたよ」ニコニコ

ミカサ(9)「え?…え?」

お母さん「だから、ね。お団子をくれたミカサにはお返しにこれ。どうぞ召し上がれ」コトッ

ミカサ(9)「ん?……お母さん、これ」

お母さん「これはあなたの忘れ物。あなたが食べ忘れたニンジンですよ」

6: 2014/01/13(月) 16:01:56 ID:.9wEsY6g
ミカサ(9)「えー。お母さん。私、ニンジン食べ忘れたんじゃなくて残したんだよー」

お母さん「好き嫌い言わないで食べなさい」メッ

ミカサ(9)「えー…。ねぇお父さーん」クルッ

お父さん「ダメだぞミカサ。きちんと食べないと大きくなれないぞ」メッ

ミカサ(9)「えーー。お母さん、私、ニンジンは甘ーく煮たのが良い」

お母さん「はいはい。また今度ね。今日はとりあえずそれ食べなさい」

ミカサ(9)「はーい…」

アッカーマン×3「いただきます」

モグモグ

モグモグ

モグモグ

7: 2014/01/13(月) 16:02:41 ID:.9wEsY6g
お父さん「今日は二人で出掛けるんだったね」

お母さん「ええ。ミカサ早く準備しなさい」

ミカサ(9)「え?どこに行くの?」

お母さん「あなたのお友達に会いに行くの」

ミカサ(9)「へー…?」

お父さん「はい、お母さんこれ」ドサッ

お母さん「はい、たしかに」

ミカサ(9)「何?それ」ノゾキッ

お父さん「これはね、ミカサがここに来るまでに落としてきた忘れ物だよ」

ミカサ(9)「忘れ物?またニンジン?」

お母さん「ふふ、もうニンジンは入ってませんよ」

ミカサ(9)「そっか、良かった」

8: 2014/01/13(月) 16:03:58 ID:.9wEsY6g
お父さん「じゃあ、二人とも。そろそろ」

お母さん「ええ、そうね。ミカサ、行きますよ」

ミカサ(9)「お父さんは?」

お父さん「お父さんはお留守番なんだ」

ミカサ(9)「なんで?」

お父さん「二人がきちんと帰られるように、暖炉の火を見ていなくちゃいけないからね」

ミカサ(9)「ふーん…?」

お母さん「わかったなら、さあ行きますよ」

ミカサ(9)「はーい」

お母さん・ミカサ「いってきまーす」

ガチャッ

9: 2014/01/13(月) 16:04:38 ID:.9wEsY6g
ミカサ(10)「ねえ、お母さん」

お母さん「どうしたの?ミカサ」

ミカサ(10)「お友達って、誰?」

お母さん「さあ?お母さんは会ったことないから」

ミカサ(10)「そうなの?私もわからないよ?その人って本当にお友達?」

お母さん「ええ、もちろん。会えばわかるわ」

ミカサ(10)「んーー…そうかなぁ?」

お母さん「そうですよ」ニコニコ

ミカサ(10)「そっかぁ…」

10: 2014/01/13(月) 16:05:14 ID:.9wEsY6g
ミカサ(10)「あっ」

お母さん「どうしたの?」

ミカサ(10)「薪拾わなきゃ」

お母さん「まあ、そうなの?」

ミカサ(10)「うん、そうなの!」タタッ

お母さん「あらあら、もう行っちゃった」

11: 2014/01/13(月) 16:05:49 ID:.9wEsY6g
ミカサ(10)「………」セッセセッセ

ミカサ(10)(薪をたくさん拾って帰らないと)セッセセッセ

ミカサ(10)(このくらいで良いかな)セッセ…

ミカサ(10)(はやく持って戻らなきゃ…)スック

ミカサ(10)(……あれ?)

12: 2014/01/13(月) 16:06:35 ID:.9wEsY6g
ミカサ(10)「お母さーん」タタタッ

お母さん「あらミカサ、早かったのね」

ミカサ(10)「うん、お母さんあのね」

お母さん「どうしたの?」

ミカサ(10)「私、いつも一人で薪拾ってた?」

13: 2014/01/13(月) 16:07:26 ID:.9wEsY6g
お母さん「さあ?どうだったかしらね?」

ミカサ(10)「………」

お母さん「あなたはどう思うの?ミカサ」

ミカサ(10)「…わからない」

お母さん「そう」

ミカサ(10)「………」

お母さん「大丈夫よ。じきに何もかもわかるようになりますよ」

ミカサ(10)「本当?」

お母さん「もちろん。…薪拾いご苦労様」

ミカサ(10)「あ、うん」

お母さん「薪拾いのお返しに忘れ物をひとつ返しましょうね」ゴソゴソ…

ミカサ(10)「………」

14: 2014/01/13(月) 16:08:25 ID:.9wEsY6g
お母さん「ああ、これ……」

ミカサ(10)「なになに?見せて。私の忘れ物」ズイッ

お母さん「…はい」スッ

ミカサ(10)「ひっ…!」

お母さん「ミカサ、取りなさい。あなたのものですよ」

15: 2014/01/13(月) 16:09:18 ID:.9wEsY6g
ミカサ(10)「し、知らない。お母さん、私こんなもの知らない。このナイフ、血がついてる…っ」イヤイヤ

お母さん「でも、たしかにあなたのものなのミカサ。…受け取って?」

ミカサ(10)「でも…」

お母さん「………」

16: 2014/01/13(月) 16:10:11 ID:.9wEsY6g
ミカサ(10)「………わかった」スッ

お母さん「……よく出来ました。強い子ね、ミカサ」

ミカサ(10)「うう…。でもこれ怖いよ、お母さん」

お母さん「服のポケットにしまっときなさい。見えないように」

ミカサ(10)「うん…」ゴソゴソ…

17: 2014/01/13(月) 16:11:16 ID:.9wEsY6g
お母さん「でもね、ミカサ。ポケットにナイフが入ってるって忘れてはダメよ?」

ミカサ(10)「うん」

お母さん「転んだりしたら危ないからね」

ミカサ(10)「うん」

お母さん「でも……怖いなら思い出さないようにしなさい…」

ミカサ(10)「うん」

お母さん「…いい子ねミカサ」ギュッ

ミカサ(10)「ん」

お母さん「さあ、行きましょう」

ミカサ(10)「うん」

20: 2014/01/13(月) 23:48:28 ID:.9wEsY6g
お母さん「ねえ、ミカサ」

ミカサ(11)「何?お母さん」

お母さん「少し歩くの早くないかしら?疲れない?」

ミカサ(11)「え、そうかな?もっとゆっくり歩いた方が良い?」

お母さん「……ううん。ごめんなさい。ミカサがきつくないなら良いわ」

ミカサ(11)「お母さん疲れたの?それならゆっくりでも…」

お母さん「良いの。全然疲れてなんかいませんよ。ちょっと聞いてみただけ」

ミカサ(11)「そう…」

お母さん「そうよ」

21: 2014/01/13(月) 23:49:26 ID:.9wEsY6g
ミカサ(11)「あっ」

お母さん「どうしたの?」

ミカサ(11)「あの荒野、冬が来る前に開墾してしまわないと」

お母さん「あら、そうなの?」

ミカサ(11)「うん、そうなの。だからお母さんちょっと待ってて」

お母さん「お母さんも手伝いましょうか?」

ミカサ(11)「ううん、大丈夫。お母さんは待ってて」タタタッ

お母さん「あら、そう…」

22: 2014/01/13(月) 23:50:25 ID:.9wEsY6g
ミカサ(11)「………」ザッシュザッシュザッシュ…

ミカサ(11)(はやくはやく冬が来る前に)ザッシュザッシュザッシュ…

ミカサ(11)(耕してしまわなければ)ザッシュザッシュザッシュ

ミカサ(11)(私たち三人とも雪の中働くことに…)ザッシュザッシュザッシュ

ミカサ(11)(………あれ?)ザッシュザッシュザッシュ

23: 2014/01/13(月) 23:53:06 ID:.9wEsY6g
ミカサ(11)「お母さーん」タタタッ

お母さん「あら、ミカサもう終わったの?」

ミカサ(11)「うん。見てお母さん。黒くて立派な畑になったでしょう?」

お母さん「まあ、本当。よく働いたわね、ミカサ。良い畑だわ」

ミカサ(11)「ん…」

お母さん「素敵な畑のお返しに、またひとつ忘れ物を返しましょうね」ゴソゴソ

24: 2014/01/13(月) 23:54:04 ID:.9wEsY6g
ミカサ(11)「ねえ、お母さん」

お母さん「ん?どうしたのミカサ」

ミカサ(11)「私、どうして荒野を耕してたのかな」

お母さん「さあ、どうしてかしら」

ミカサ(11)「………あとね」

お母さん「うん、どうしたの?」

ミカサ(11)「荒野を耕してたのって、私とお母さんとお父さんの三人?」

お母さん「いいえ、お母さんたちは耕していませんよ」

ミカサ(11)「そうだよね………?」

25: 2014/01/13(月) 23:55:38 ID:.9wEsY6g
お母さん「あ、これね、ミカサの次の忘れ物」ゴソ

ミカサ(11)「なに?」

お母さん「本の切れ端みたいね」スッ

ミカサ(11)「ん?」

お母さん「………」

ミカサ(11)「お母さん、これ…」

お母さん「何?」

ミカサ(11)「壁の外のことについて書いてある本だよ」キョロキョロ…

お母さん「あら、そうなの?」

ミカサ(11)「うん。見つかったら捕まっちゃうよ」オドオド

お母さん「まあ、大変。そこの畑に埋めてしまいましょうか」

ミカサ(11)「そんな…っ。ダメだよ…!」

お母さん「ダメなの?」

ミカサ(11)「うん。ダメなの」

26: 2014/01/13(月) 23:56:24 ID:.9wEsY6g
お母さん「ミカサは壁の外に出てみたいの?」

ミカサ(11)「そんな、ものすごく外に出たいわけではない…けれど…」

お母さん「けれど?」

ミカサ(11)「でも、埋めたりしちゃダメだよ…」

お母さん「そうなの」

ミカサ(11)「うん」

お母さん「だったらポケットの中にしまいなさい。誰にもばれないように」

ミカサ(11)「うん」ゴソゴソ

お母さん「きちんとしまえた?」

ミカサ(11)「うん。大丈夫」

お母さん「そう。じゃあ行きましょうか」

ミカサ(11)「うん」

27: 2014/01/13(月) 23:57:31 ID:.9wEsY6g
ミカサ(12)「ねえ、お母さん」

お母さん「ん?」

ミカサ(12)「今から会う私のお友達って何人いるの?」

お母さん「さあ、何人かしらね」

ミカサ(12)「お母さんはわからない?」

お母さん「お母さんは会ったことがないから」

ミカサ(12)「そうなの…」

お母さん「ええ」

ミカサ(12)「あ…」

お母さん「どうしたのミカサ?」

28: 2014/01/13(月) 23:58:43 ID:.9wEsY6g
ミカサ(12)「お母さん、あそこに井戸がある。私、水汲みしないと」

お母さん「あら、そうなの?」

ミカサ(12)「うん。だからちょっと行ってくるね」タタッ

お母さん「………」

31: 2014/01/14(火) 00:00:19 ID:5gHmYRyY
ミカサ(12)「………」カラカラカラ…

ミカサ(12)(水はどのくらい汲めば良かったっけ…?)バシャー…

ミカサ(12)(水瓶がいっぱいになるまで……つまりは何人分?)カラカラカラ…

ミカサ(12)(私たち三人家族の分ではとうていありえない…)バシャー…

ミカサ(12)(私はどうして水を汲んでいるの…?)

32: 2014/01/14(火) 00:02:57 ID:5gHmYRyY
ミカサ(12)「………」チャプンチャプン

お母さん「あらあらミカサ、大きな桶に汲んできたのね」

ミカサ(12)「うん」チャプン

お母さん「さあ、この水瓶に入れなさい」

ミカサ(12)「うん」

お母さん「これで当分の間お水に困らないわ。ありがとう」

ミカサ(12)「うん………」ザバー…

お母さん「水汲みのお返しに忘れ物を返しましょうね」ゴソゴソ

33: 2014/01/14(火) 00:04:05 ID:5gHmYRyY
ミカサ(12)「………」

お母さん「あら、次はこれなのね」ゴソ

ミカサ(12)「何?お母さん」チラッ

お母さん「ハサミですよ」

ミカサ(12)「そんなハサミ、私、知らないよ?」

お母さん「ええ、そうね。今度はこのハサミそのものではないの」

ミカサ(12)「何なの?」

お母さん「ミカサ、髪を切りましょう」

ミカサ(12)「え?」

34: 2014/01/14(火) 00:04:58 ID:5gHmYRyY
お母さん「さあ、そこの椅子に腰掛けなさい」

ミカサ(12)「え…うん」ストッ

お母さん「お母さんが切ってあげますからね」

ミカサ(12)「私の髪、切っちゃうの?」

お母さん「ええ、そうよ。嫌ならやめましょうか?」

ミカサ(12)「え…」

お母さん「どうする?」

ミカサ(12)「でも、なんだか…」

お母さん「うん?」

ミカサ(12)「切らないと…長すぎる、ような気がする」

お母さん「そう。じゃあ切りましょうね」シャキン

ミカサ(12)「うん」

チョキン、チョキン…

35: 2014/01/14(火) 00:05:49 ID:5gHmYRyY
お母さん「出来ましたよ」

ミカサ(12)「ありがとう、お母さん」

お母さん「うん、よく似合ってるわ」ニコニコ

ミカサ(12)「そうかな」

お母さん「ええ、とても。ミカサ、素敵よ」ニコニコ

ミカサ(12)「お母さん、ありがとう」

お母さん「どういたしまして。さあ、行きましょう」

ミカサ(12)「うん」

36: 2014/01/14(火) 00:07:40 ID:5gHmYRyY
お母さん「少し暗くなってきたわね」

ミカサ(13)「日が暮れてきたのかな」

お母さん「いいえ、これはね、家から遠ざかっているからですよ」

ミカサ(13)「家から?」

お母さん「そう、家に近いほど明るいの。お父さんが暖炉の火を絶やさないでいてくれるから」

ミカサ(13)「へえ、そうなんだ」

お母さん「ええ、そうですよ」

ミカサ(13)「………」クルリ

お母さん「どうしたのミカサ?」

ミカサ(13)「わあ、家の明かりがここからも見えるよお母さん」

お母さん「まあ、本当ね」

ミカサ(13)「金色に輝いて、すごく綺麗」

お母さん「ええ…」

37: 2014/01/14(火) 00:08:37 ID:5gHmYRyY
ミカサ(13)「あ、お母さん。あそこにジャガ芋が」

お母さん「あら本当」

ミカサ(13)「皮を剥かなきゃ」

お母さん「全部?」

ミカサ(13)「そう、全部」

お母さん「手伝いましょうか?」

ミカサ(13)「ううん、大丈夫。私が全部剥くので、お母さんは見てて」

お母さん「そう。だったら見てるわね」

ミカサ(13)「うん」

38: 2014/01/14(火) 00:09:28 ID:5gHmYRyY
ミカサ(13)「………」ショリショリ

お母さん「………」ジィー

ミカサ(13)「ねえ、お母さん」ショリショリ

お母さん「ん?」

ミカサ(13)「誰かものすごく芋が好きな女の子いなかった?」ショリショリ

お母さん「さあ、そんな娘いたかしら?」

ミカサ(13)「んー…誰かいたと思う…」ショリショリ

お母さん「よく考えてみなさい。きっと思い出しますよ」

ミカサ(13)「…うん。なんだか…」ショリショリ

お母さん「どうしたの?」

ミカサ(13)「他にもたくさん思い出さなきゃいけないことがあると思う」ショリショリ

お母さん「そうね。…少しずつ思い出しなさい」

ミカサ(13)「うん」ショリショリ

39: 2014/01/14(火) 00:12:18 ID:5gHmYRyY
お母さん「包丁の使い方が随分上手になったわね、ミカサ」

ミカサ(13)「そうかな?」ショリショリ

お母さん「ええ、そうですよ。ミカサはきっと良いお嫁さんになれますよ」

ミカサ(13)「お嫁さん…。でも…」ショリショリ

お母さん「でも?」

ミカサ(13)「お嫁さんになる前に私、強くならなきゃ」ショリショリ

お母さん「まあ、どうして?」

ミカサ(13)「どうしてって……それは…」ショリショリ

お母さん「それは?」

ミカサ(13)「………お母さん、金色の瞳の男の子知らない?」ショリショリ

お母さん「さあ、わからないわね」

ミカサ(13)「さっき見た家の明かりみたいにキラキラした瞳の男の子」ショリショリ

お母さん「誰かしら?」

ミカサ(13)「………」ショリショリ…

40: 2014/01/14(火) 00:13:59 ID:5gHmYRyY
お母さん「あら、全部剥き終わっちゃったわね」

ミカサ(13)「あ、本当」

お母さん「ジャガ芋のお返しに、またひとつ忘れ物を返さないとね」ゴソゴソ

ミカサ(13)「うん………」

お母さん「はい、どうぞ」スッ

ミカサ(13)「これは、服?」

お母さん「ええ、そうね。ジャケットみたい」

42: 2014/01/14(火) 07:13:43 ID:5gHmYRyY
ミカサ(13)「………」バッ

お母さん「まあ、良い生地だわ」

ミカサ(13)「これ、調査兵団の制服じゃない」

お母さん「まあ、そうなの?」

ミカサ(13)「そうだよ。この自由の翼。調査兵団のシンボルだもの」

お母さん「そうなのね。少し大きいけれど着てみたら?」

ミカサ(13)「うん」ゴソゴソ

43: 2014/01/14(火) 07:14:24 ID:5gHmYRyY
お母さん「…よく………似合ってますよ」

ミカサ(13)「…少し大きい」

お母さん「そうみたいね」

ミカサ(13)「………」

お母さん「行きましょうか」

ミカサ(13)「うん」

44: 2014/01/14(火) 07:15:06 ID:5gHmYRyY
お母さん「だいぶ暗くなってきたわね」

ミカサ(14)「うん」

お母さん「ミカサ、もう少しゆっくり行かない?」

ミカサ(14)「お母さん、疲れた?」

お母さん「いえ、そうではなくて。………足元が暗くて危ないから」

ミカサ(14)「そっか。そうだよね」

お母さん「ええ」

ミカサ(14)「あ、お母さん、あそこ」

お母さん「え?」

45: 2014/01/14(火) 07:15:54 ID:5gHmYRyY
ミカサ(14)「シーツが干してある、取り込まないと」

お母さん「まあ、本当」

ミカサ(14)「ちょっと行ってくるね」

お母さん「ええ」

46: 2014/01/14(火) 07:17:23 ID:5gHmYRyY
ミカサ(14)「………」バサッ

ミカサ(14)(…大きなシーツ)サッサッ

ミカサ(14)(私の家では見かけない。真っ白で…)サッ

ミカサ(14)(私の家では洗濯物は庭に干してる…)

ミカサ(14)(ならば…家の屋上?に洗濯物を干していたのは…誰?)

ミカサ(14)(いや、あれは屋上ではなくて、ベランダ…?)

ミカサ(14)(お母さん…ではなかった)

ミカサ(14)(だれ…?)

ミカサ(14)(このシーツも…)

ミカサ(14)(寮にいた頃は皆これを使ってて…)

ミカサ(14)(………寮?)

47: 2014/01/14(火) 07:18:07 ID:5gHmYRyY
お母さん「ミカサ、どうしたの。突っ立ったまま」

ミカサ(14)「お母さん…私…」

お母さん「……シーツを取り込んでくれてありがとう、ミカサ」

ミカサ(14)「あ………うん」

お母さん「お返しに忘れ物をひとつ返しましょうね」ゴソゴソ

ミカサ(14)「お母さん」

お母さん「何?」

ミカサ(14)「私…私、家とは違う場所で暮らしてた……ことがある?」

お母さん「さあ、あったかもしれないわね」ゴソゴソ

ミカサ(14)「………」

48: 2014/01/14(火) 07:18:56 ID:5gHmYRyY
お母さん「あったわ。これね。ミカサの忘れ物」バサッ

ミカサ(14)「これは、マント?」

お母さん「そうみたいね。ジャケットとお揃い」

ミカサ(14)「うん」

お母さん「………似合ってますよ」

ミカサ(14)「……うん。…本当?」

お母さん「…もちろん」

ミカサ(14)「そう…」

お母さん「行きましょう」

ミカサ(14)「うん」

お母さん「足元に気をつけてね」

ミカサ(14)「うん」

49: 2014/01/14(火) 07:19:46 ID:5gHmYRyY
ミカサ(15)「………」

ミカサ(15)(さっきは確かに何かを思い出しそうだった)

ミカサ(15)(ベランダで?シーツを取り込んでいたのは誰?)

ミカサ(15)(男の子が叱られていたはず)

ミカサ(15)(誰?)

ミカサ(15)(金色の瞳がまぶしくて…まぶしくて)

ミカサ(15)(何かを思い出しそう。大切なこと)

ミカサ(15)(あの子は…私の…)

ミカサ(15)「っ…!?」

お母さん「ミカサ!?どうかしたの?」

50: 2014/01/14(火) 07:20:39 ID:5gHmYRyY
ミカサ(15)「お、お母さん。なんだかほっぺが痛い」ソッ…

お母さん「ちょっと見せなさい…!」

ミカサ(15)「…手に血が…。切れてる」

お母さん「本当ね、切れてるわ。どこで切ったの!?」

ミカサ(15)「っっ!!??」

お母さん「どうしたの?ミカサ!?」

51: 2014/01/14(火) 07:21:27 ID:5gHmYRyY
ミカサ(15)「脇腹が?…肋、が痛い」

お母さん「どうして?ミカサ…どこかにぶつけたの?」

ミカサ(15)「いや、これは…」

お母さん「これは?」

ミカサ(15)「ぶつけてない…」

お母さん「じゃあどうしたの…!?」

ミカサ(15)「………」

お母さん「大丈夫?しゃべることは出来る?」

ミカサ(15)「………」

お母さん「ミカサ!?」

ミカサ(15)「………」

お母さん「………」

ミカサ(15)「……………エレン」

お母さん「………!!」

52: 2014/01/14(火) 07:22:33 ID:5gHmYRyY
ミカサ(15)「ほっぺも…エレンが…」

お母さん「エレンが?」

ミカサ(15)「エレンを…助けようとして…」

お母さん「………」

ミカサ(15)「ほっぺも、肋も、私がエレンを助けたくて……」

お母さん「………」

ミカサ(15)「エレンだけじゃない、アルミンも、サシャも、クリスタも、ジャンもコニーも……他にも…たくさん思い出した」

お母さん「………」

53: 2014/01/14(火) 07:23:21 ID:5gHmYRyY
ミカサ(15)「…ハンネスさん、も」

お母さん「………」

ミカサ(15)「でも、ハンネスさんは……」

お母さん「…ミカサ」

ミカサ(15)「…お母さん……」

お母さん「…ミカサ」

ミカサ(15)「………」

お母さん「…今まで、よく頑張ってきたわね」

54: 2014/01/14(火) 07:26:06 ID:5gHmYRyY
ミカサ(15)「お母さん、私は……氏んだ…の?」

お母さん「いいえ、あなたは生きていますよ」

ミカサ(15)「本当に?」

お母さん「ええ、もちろん。ただ、少しの間迷子だったのよ」

ミカサ(15)「ほ、本当?」

お母さん「ええ、本当」

ミカサ(15)「どうすれば…私は」

お母さん「お父さんが家で暖炉の火を見ていてくれているでしょう?」

ミカサ(15)「うん」

55: 2014/01/14(火) 07:27:00 ID:5gHmYRyY
お母さん「だから家から遠ざかるほど暗くなる」

ミカサ(15)「うん」

お母さん「だからね、暖炉の火の影が濃くなる方へ濃くなる方へ進みなさい」

ミカサ(15)「暗い方へ?」

お母さん「ええ、そうよ。そうすれば元の場所に戻ることができます」

ミカサ(15)「そうなの?」

お母さん「ええ」

ミカサ(15)「はやく、はやく戻らなくちゃ。…エレンとアルミンが待ってる」

お母さん「…そうね」

ミカサ(15)「うん」スック

お母さん「あ…」

ミカサ(15)「痛っ…!」ドッ

お母さん「ミカサ!?」

56: 2014/01/14(火) 07:28:06 ID:5gHmYRyY
ミカサ(15)(肋が、痛くて…)

お母さん「ちょっと待ちなさい、ミカサ」

ミカサ(15)「でも」

お母さん「まだ、あなたの忘れ物が残っています」ゴソゴソ

ミカサ(15)「え?」

お母さん「最後は、これ。マフラーね」

ミカサ(15)「ああ、マフラー…!」

お母さん「大事なものなのね」

ミカサ(15)「うん。エレンから貰った…から」

お母さん「そう。大切なお友達なのね」

ミカサ(15)「エレンは……大切な人なので…だから…」

57: 2014/01/14(火) 07:28:46 ID:5gHmYRyY
お母さん「そう。ほら、マフラー。はやく取りなさい」

ミカサ(15)「でも、お母さん」

お母さん「何?」

ミカサ(15)「私、今何も持ってない。マフラーと…交換できるようなことしてない」

お母さん「ああ、ミカサ。確かにそうね…」

ミカサ(15)「………」

お母さん「でもね、大丈夫よ」

ミカサ(15)「どうして?」

58: 2014/01/14(火) 07:29:35 ID:5gHmYRyY
お母さん「お母さん、あなたの肋の怪我を代わりにもらうから」

ミカサ(15)「お母さん、そんな。ダメだよ」

お母さん「どうして?」

ミカサ(15)「痛いよ」

お母さん「大丈夫ですよ。帰ったらお父さんと分けますから。ちっとも痛くありませんよ」

ミカサ(15)「でも」

お母さん「お父さんもお母さんも、もう、何年もミカサに甘えてもらってないもの。たまには甘えなさい」

ミカサ(15)「お母さん…」

お母さん「わかった?」

ミカサ(15)「………うん」

お母さん「いい子ねミカサ。こっちにいらっしゃい」

ミカサ(15)「うん」

59: 2014/01/14(火) 07:30:26 ID:5gHmYRyY
お母さん「マフラーを受け取りなさい」

ミカサ(15)「うん」スッ

お母さん「少しだけ、抱きしめさせて」

ミカサ(15)「うん…」

お母さん「…大きくなったわね」

ミカサ(15)「うん」ジワァ…

お母さん「肋の怪我をもらいますよ」

ミカサ(15)「うん」グスッ

お母さん「もう、次は迷子になるんじゃありませんよ」

ミカサ(15)「ぅん」グス…

60: 2014/01/14(火) 07:31:36 ID:5gHmYRyY
お母さん「今度家に来るのは、あなたがおばあさんになってからですよ。ニンジンを甘ーく煮ながら気長に待ってますからね」

ミカサ(15)「うん、でも」ポロ…

お母さん「でも?」

ミカサ(15)「お、おばあさんになってしまったら…私ってわからないよ」ポロポロ…

お母さん「わかりますよ。お母さんだもの」ギュウッ

ミカサ(15)「ほ、本当?」ポロポロ…

お母さん「もちろん。さあ、もう泣くのはやめなさい」

ミカサ(15)「ぅん…」グスッ

お母さん「もう肋は痛くないわね?」

ミカサ(15)「ん、治ってる」グス…

お母さん「そう、なら早く行きなさい。一人で行けるでしょう?」

ミカサ(15)「うん」

お母さん「行きなさい、ミカサ」

ミカサ(15)「うん、行ってきます。お母さん」

お母さん「行ってらっしゃい、ミカサ」

61: 2014/01/14(火) 07:33:18 ID:5gHmYRyY
――――――――
――――――
――――

ミカサ「………」パチッ

エレン・アルミン「ミカサ!」

エレン「ミカサ、大丈夫か!?意識は?」

アルミン「僕、医者を呼んで来る」タタッ

ミカサ「エレ…ン、アルミン…」

エレン「おい、無理してしゃべるなよ」

ミカサ「ここ、どこ?」

エレン「兵団の医療施設だよ」

ミカサ「………」

62: 2014/01/14(火) 07:34:21 ID:5gHmYRyY
エレン「お前、壁の上に引き上げた後、意識がなくなってたんだ。丸一日寝てたぞ」

ミカサ「そう…だったの…」

エレン「今アルミンが医者を呼びに行ったからな。すぐ来る」

ミカサ「怪我は、もう治った」

エレン「いや、お前、こんな時にやせ我慢しなくても」

ミカサ「本当。治ってる。どこも痛くない」

エレン「じゃあお前、なんで泣いてんだよ」

ミカサ「………」

63: 2014/01/14(火) 07:35:09 ID:5gHmYRyY
エレン「まあ良い。じきに医者がくるから」

ミカサ「…痛くない、本当に」

エレン「あーもう、わかったよ。でも医者には診てもらうからな」

ミカサ「治ってる」

エレン「わかったって。もうしゃべるなよ」

ミカサ「痛くない」

エレン「もうしゃべんなって」

ミカサ「うん…」

ミカサ(治ってる)

ミカサ(痛くない)

ミカサ(でも…)

ミカサ(涙が止まらない)



―おわり―

64: 2014/01/14(火) 07:36:34 ID:5gHmYRyY
ごめん、昨日は寝落ちした
最後まで読んでくれてありがとうございました

66: 2014/01/14(火) 09:22:11 ID:rzif5Zxg
良かった

引用: ミカサ「忘れ物」