1: 2018/03/21(水) 01:18:04.101 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「相手は戦士ですね」

女騎士「勇者さまは故郷の幼馴染と結婚されたし」

女騎士「僧侶は武闘家と結婚」

女騎士「わたしはお城の騎士団に戻っただけ」

女騎士「かつて魔王を倒し世界を救ったパーティももはやわたし一人を残し皆所帯持ちですか」

女騎士「……」


女騎士「はぁ」
葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
2: 2018/03/21(水) 01:19:42.443 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「盗賊団の討伐ですか」

騎士隊長「うむ。王都から少し外れたところにある村でな。警備隊もいるのだが、どうも彼らの手には余るらしい」

女騎士「はぁ」

騎士隊長「我らも魔王軍を撃退したばかりで浮き足立った城下を警備しなければならず、あまり兵を派遣できんのだ」

騎士隊長「そこで、かつて魔王を倒したパーティの一員である君なら単独でもこの任務をこなせると判断した」

女騎士「それはよいのですが」

女騎士「戦士や魔法使いたちも連れて行ってもよいですか? 彼らは騎士団ではありませんし警備の仕事もないでしょう」

騎士隊長「彼らは新婚旅行だ」

女騎士「あ、はい」

3: 2018/03/21(水) 01:22:03.692 ID:0xT6o7hd0.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「結局ひとりで討伐に行くことになりました」

女騎士「はぁ」

女騎士「ひとりは寂しいですね。あの頃が懐かしいです」

女騎士「戦士がふざけて魔法使いをからかって」

女騎士「僧侶が慌てて宥めようとして、武闘家は我関せず。勇者さまは困った顔でそれを見てる」

女騎士「ふふっ」



女騎士「……最近ひとりごとや思い出し笑いが増えてきました」

4: 2018/03/21(水) 01:24:10.577 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「ここが件の村ですか」

警備隊「あっ、もしかしてあなたが女騎士さんですか」

女騎士「はい。警備隊の方ですね。責任者の方にお会いしたいのですが」

警備隊「こちらへどうぞ」


警備長「ようこそおいでくださいました。私がここの責任者です」

女騎士「女騎士です」

8: 2018/03/21(水) 01:26:10.052 ID:0xT6o7hd0.net
警備長「この度は我々の力至らず、こうして援軍に来ていただくことになり申し訳ありません」

女騎士「いえ。わたしもこの辺りの事情はわかっているつもりですから」

領主「おぉ、あなたがかの有名な女騎士どのか」

女騎士「わっ」

領主「私がここら一帯の領主ですぞ。お一人での長旅、お疲れでしょう。討伐は明日にして今日は私ども総出でおもてなししましょう」ギュッ

女騎士「そ、そんなにかしこまらないでください。それと手を……」

領主「おっとこれは失礼」

10: 2018/03/21(水) 01:28:26.132 ID:0xT6o7hd0.net
ワイワイガヤガヤ

オッ、アレガウワサノオンナキシサマカ

ヘーアレガ

エレェベッピンサンダナァ



女騎士「な、なんだかすごく視線を感じるのですが」

警備長「女騎士さまはあの魔王を倒したパーティの一員なのですから当然です」

女騎士「はぁ、そういうものですか」

11: 2018/03/21(水) 01:30:05.059 ID:0xT6o7hd0.net
領主「それにしてもよく来てくださりましたな、わはは」

女騎士「お仕事ですから。それに、賊に脅かされる方々を見捨てることなんてできません」

領主「それは素晴らしい! あぁどうです、女騎士どの。件の賊を討伐した後も、ここに残っていただくというのは」

女騎士「え」

13: 2018/03/21(水) 01:31:22.213 ID:0xT6o7hd0.net
領主「もちろん相応の報酬も出しましょう。なに、私も王都の方には顔が効く。上の方はどうとでもなるでしょう

女騎士「い、いえ……あの」

領主「貴女のような方がいればこの辺も安心なのですがなぁ」

女騎士「お、お気持ちはありがたいのですが私も王都には家族も居ますし、急にそのようなお話をされても…」

領主「……冗談ですよ、わはは」

女騎士「あはは…」

14: 2018/03/21(水) 01:34:35.886 ID:0xT6o7hd0.net
領主「それよりどうです、この領主自慢の一品です」

女騎士「う。ワインですか。お酒はあまり得意ではないのですが」

領主「そんなこと仰らずに、一杯だけでも。ささ、どうぞどうぞ」トクトク

女騎士「うぅ。一杯だけなら」

女騎士(仕方ありませんね…これもおつき合いです)

16: 2018/03/21(水) 01:36:35.132 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「明日は盗賊の件もありますし。少しだけいただきます」

コクコク…

領主「お味はどうです、美味いでしょう」

女騎士「…………」

領主「……騎士どの?」

女騎士「……きゅー」ばたん

村人「た、大変だ! 女騎士さまが顔を真っ赤にして倒れたぞ!」

領主「……ふむ。私が付き添おう。屋敷の来客部屋にお連れしなさい。丁重にな」

村人「は、はいっ」

17: 2018/03/21(水) 01:38:19.106 ID:0xT6o7hd0.net
村人「よいしょ」

女騎士「……うぅん」ふにふに

村人「…………おぉ…」

18: 2018/03/21(水) 01:40:51.694 ID:0xT6o7hd0.net
領主「うむ。ここまでで良い。下がって良いぞ」

村人「はっ、失礼します」

領主「さて……」


領主「女騎士どの、大丈夫ですかな」

女騎士「…………」

領主「女騎士どの」ユサユサ

女騎士「うぅん」

領主「…………」



領主「…………」

21: 2018/03/21(水) 01:43:50.776 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「うぅん……」


女騎士(頭がぼうっとします…)


女騎士(ここはどこでしたっけ)


女騎士(あぁ、盗賊を退治に城を出て…)


女騎士(村でお酒を…)


女騎士(……あれ?)


女騎士(わたし、服を……?)




女騎士「りょ、領主さま!?」

領主「……」

23: 2018/03/21(水) 01:46:59.867 ID:0xT6o7hd0.net
領主「おや、気がつかれましたか」

女騎士「な、何をしてるんですかっ」

領主「ふふふ、何をと申されるか」

領主「私はただ、酔って倒れてしまった女騎士どのを介抱しているだけですよ」

女騎士「こ、こんなっ、服までっ」

領主「汗をかいておられたので」

女騎士「いや、でもっ」

領主「女騎士どのはお疲れのようで。そのまま眠っていると良いでしょう。ぐふふ」

24: 2018/03/21(水) 01:50:35.146 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「や、やめてくださいっ、こんなの介抱じゃないです……」

女騎士(うぅ、お酒のせいで力が出ません…)

領主「えぇい、まどろっこしい、大人しくせんかっ!」

女騎士「いやぁぁぁー!」


パチーン!


領主「」


女騎士「…………あれ?」←Level 97

27: 2018/03/21(水) 01:54:33.233 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「ということがあったんです」

女魔法使い「うわ……なにそれ、最悪ねその領主」

女騎士「あんなこと、わたし初めてで……」

女魔法「それで? その後はどうなったのよ」

女騎士「えぇと、慌てて服を着て、そのまま領主さまに黙って屋敷を出て、宿に。朝になって盗賊団の討伐に向かいました」

女魔法「結果は……まぁ聞くまでもないわね」

女騎士「あはは…」

28: 2018/03/21(水) 01:58:52.261 ID:0xT6o7hd0.net
騎士A「女騎士、城からの呼び出しだ」

女騎士「あれ、なんでしょう。今日は非番なのですが」

女魔法「城からの呼び出しなら仕方ないわね。じゃあわたし、もう行くね」

女騎士「あっ、はい。戦士さんの田舎に引っ越すんでしたっけ」

女魔法「うん、式もそこで上げるから。必ず呼ぶわね」


騎士A「おい、そろそろ行くぞ」

女騎士「わかりました」

女魔法「それじゃ元気でね」

女騎士「お達者で」

29: 2018/03/21(水) 02:00:05.111 ID:0xT6o7hd0.net
~王城~


女騎士「え、クビですか」


騎士隊長「うむ」

31: 2018/03/21(水) 02:01:32.600 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「………………………………」


女騎士「………………………………」


女騎士「………………………………」


騎士隊長「……女騎士、女騎士! 聞いているのか」

女騎士「あっはい」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

32: 2018/03/21(水) 02:04:03.531 ID:0xT6o7hd0.net
騎士隊長「はぁ、その様子じゃなにも頭に入ってなかったようだな」

女騎士「うぅ……すいません……」

騎士隊長「きみはその、あー、なんだ。先日盗賊を討伐しに行ったな」

女騎士「はい」

騎士隊長「そこでその、あー、なんというか。領主どのに粗相をしたそうじゃないか」

女騎士「う。」

34: 2018/03/21(水) 02:09:19.794 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「で、でもっ。あれはっ」

騎士隊長「うむ。みなまで言わなくても良い。あの領主の噂は私も知っている。なにがあったかは、あー、想像はつく。うん、君は悪くないだろう」

女騎士「…………」

騎士隊長「それでもだな、あの領主とつながりのある高官は城にもいる。あの手の輩は厄介でな。君を氏刑にするなんて話も上がっていたんだよ」

女騎士「…………」

騎士隊長「それだけは私たちの力で何とか食い止めたが、それでもどうにもならんことはあってなあ」

女騎士「…………」

騎士隊長「私だって君のような優秀な部下を失うのはつらい。だが、わかってくれ」

女騎士「うぅ……隊長さん……」

36: 2018/03/21(水) 02:13:24.299 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「騎士をクビになりました」

女騎士「わたし、もう騎士じゃないのですが女騎士表記のままで良いのでしょうか……」

女騎士「ふふ……どうでもいいですね……」

38: 2018/03/21(水) 02:15:47.537 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「とにかく、氏罪をまぬがれたと言ってもこのまま王都に残るのはまずいとのことです」

女騎士「騎士隊長さんから気持ち上乗せしてもらった退職金もいただきました」

女騎士「引っ越し費用ですかね」

女騎士「騎士隊長さんには感謝しなければですね…」

女騎士「はぁ…」

41: 2018/03/21(水) 02:20:48.973 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「行くあてなんてないのです。王国の外でも目指しましょうか…」

女騎士「あ、馬をください」

商人「あいよ」

女騎士「ふふふ、今日からあなたがわたしの家族です」

馬「ヒヒーン?」

女騎士「名前は何にしましょう……よくいる普通の栗毛の馬……そうだ、>>45なんてどうでしょうか」

48: 2018/03/21(水) 02:24:43.606 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「馬刺し……うん、決めました! 今日からあなたは馬刺しです!」

馬刺し「ヒヒーン」

女騎士「よろしくお願いしますね、馬刺し! ともに旅に出ましょう!」

馬刺し「ヒヒーン!」

50: 2018/03/21(水) 02:29:18.654 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「行き先はどうしましょうか」

女騎士「馬刺し、おまえはどこに行きたいですか?」

馬刺し「ヒヒーン」

女騎士「東ですか。確かこちらには勇者さまと冒険をしている時に立ち寄った村がありましたね」

女騎士「先ずは東の村を目指しましょう」

馬刺し「ヒヒーン!」

51: 2018/03/21(水) 02:34:51.886 ID:0xT6o7hd0.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「魔王が討伐されて、この辺りも平和になりましたね。まだ魔物もそれなりにはいると思うのですが」

女騎士「……うぅん、そろそろ日が暮れてきましたね。今日はこの辺りで野宿にしましょう」

ゴソゴソ

女騎士「うん、われながら立派な野営です。勇者さまたちと旅をしてきた経験が活きましたね」

女騎士「彼らは元気でしょうか」

女騎士「……元気でしょうね。だってみんな一人じゃないですもん」

女騎士「ぐすっ」


馬刺し「ヒヒーン」


女騎士「馬刺し? ふふっ、ありがとうございます。そういえばわたしにはお前がいましたね」

女騎士「少し早いですがそろそろ寝ましょうか。おやすみなさい…」

54: 2018/03/21(水) 02:40:25.331 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「東の村に着きました」

女騎士「まだ昼間ですが、まずは宿を探しましょうか」

村人「おや、あなたは女騎士さまではありませんか?」

女騎士「は、はい」

村人「あぁやっぱりそうだ! おーい、女騎士さまが来てくれたぞー!」

ザワザワ
ザワザワ


女騎士「え? え?」

56: 2018/03/21(水) 02:44:45.076 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「あの、わたしのことを知っているのですか?」

村人「知っているも何も、あの勇者さまのパーティメンバーでしょう。知らない人なんていないですよ」

村人「王都に応援を出して数日、まさかあの女騎士さまに来ていただけるだなんて」

女騎士「王都に……応援……?」

村人「はい、あの魔王軍の残党が現れたのです……と、もしかして女騎士さま。このお話を知らない……?」

女騎士「う。」ギクッ

村人「じゃあ、ここに立ち寄ったのも、ただの偶然……?」

村人「そんな……」

村人「じゃあいったいどうすれば……」

ザワザワ
ザワザワ

女騎士「うぅ……」

女騎士「あ、あのっ! わたしで良ければお話だけでも聞かせてくださいっ」

57: 2018/03/21(水) 02:50:13.584 ID:0xT6o7hd0.net
今2分くらい寝てた

59: 2018/03/21(水) 03:01:23.205 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「夜が来るごとに人が氏ぬ、ですか」

村人「はい。いま村では夜眠るまで元気だったのに朝になるとまるで魂を抜かれたように氏んでいる、という事件が多発していまして」

村人「次は自分か、自分の家族の番なのか。皆心配で気が気じゃないのです」

女騎士「それはおそらく呪術師のしわざでしょう。文字通り、魂を抜かれているのでしょう。…あの、その人たちは今どこに」

村人「皆、教会に集められています」

女騎士「埋めたり、氏体に傷はついていないんですね。よかった。まだ何とかなります」

60: 2018/03/21(水) 03:04:18.241 ID:0xT6o7hd0.net
~夜~

警備兵「女騎士さま、おやすみにならないのですか」

女騎士「お気遣いありがとうございます。ですが今眠るわけにはいかないのです」

警備兵「それは……?」

女騎士「……! あそこです!」

警備兵「あ、あそこは私の家です!」

女騎士「あなたは家族のもとへ向かってください! わたしはこのまま魔力をたどって術者を追います!」

警備兵「わかりました…申し訳ありません…お気をつけて!」

61: 2018/03/21(水) 03:12:34.339 ID:0xT6o7hd0.net
呪術師「ひぃ、ふぅ、みぃ……足りない……まだ足りない……」

女騎士「何が足りないのですか?」

呪術師「!! お前は女騎士……!」

女騎士「お久しぶりです。あなたと会うのは魔王城以来でしょうか」

呪術師「勇者はいないのか…」

女騎士「えぇ。わたし一人です」

呪術師「勇者に復讐してやりたい気はあるが……残念ながら時期尚早だ……いまはお前一人であったことを喜ぼう」

62: 2018/03/21(水) 03:14:01.022 ID:0xT6o7hd0.net
呪術師「それにしてもまた邪魔をするのか…また…なぜいつも邪魔をするのだ」

女騎士「わたしはあなたの邪魔をするのではありません。ただ、民を守るだけのこと」

呪術師「…………くっ」

女騎士「……先ほどからまじないを掛けているようですが無駄なことです。この聖なる剣の前に、呪いなど効きません」

63: 2018/03/21(水) 03:15:44.556 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「…………」チラッ

女騎士「……その壺ですね」

呪術師「!! やめろっ…!」


パリーン


女騎士「これで魂は村人のもとへ還るでしょう」

呪術師「あぁ……抜けていく……魂が……」

呪術師「足りない……まだ足りないというのに……また集めなおさなければ……あぁ、魔王様……」

女騎士「!」


女騎士「待ちなさい!」

女騎士「くっ、転移ですか」

66: 2018/03/21(水) 03:19:06.536 ID:0xT6o7hd0.net
村人「ありがとうございます、ありがとうございます」

村人「氏んだと思われていた村人も無事目を覚まし始めました」

村人「お礼と言ってはなんですが、今日は盛大におもてなしを…」

女騎士「う。いえ、宴は結構です」

村人「そんな!」

女騎士「うぅ……お酒はあまりいい思い出がないのです……」

67: 2018/03/21(水) 03:21:16.118 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「それにしても大変なことが起こりました」

女騎士「呪術師……まさか魔王を……」

女騎士「こうしてはいられません! 早くお城に……!」

女騎士「お城に……」

女騎士「帰れないんでしたっけね」

馬刺し「ヒヒーン」

68: 2018/03/21(水) 03:25:50.642 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「女魔法使いと戦士は戦士の故郷に」

女騎士「でもわたし、戦士の故郷を知りません……」


女騎士「僧侶と武闘家は結婚してそのまま旅に」

女騎士「いったいどこにいるんでしょうね」


女騎士「勇者は故郷の幼馴染と結婚して……」

女騎士「遠い西の村でしたっけ」


女騎士「ううぅ…」

馬刺し「ヒヒーン?」

69: 2018/03/21(水) 03:30:06.559 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「わたし一人でどうこうできるレベルを超えている気がします」

女騎士「ここはやはり勇者さまを頼るべきでしょう」

女騎士「幼馴染さんには悪いのですが……」

女騎士「なんだか行きづらいですね」

女騎士「ですが仕方ありません。王都側に引き返すことになってしまいましたが、勇者さまの所へ行きますよ、馬刺し」

馬刺し「ヒヒーン」

70: 2018/03/21(水) 03:34:01.428 ID:0xT6o7hd0.net
5日後

女騎士「お金がなくなりました」

馬刺し「ヒヒーン」

72: 2018/03/21(水) 03:40:46.408 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「うぅ……まさか少し目を離して川で水浴びをしているうちに荷物がごっそり盗られているなんて」

女騎士「幸い、馬刺しは盗まれずに済みましたが。抵抗してくれたのでしょうか」

女騎士「えらいですよ、馬刺し」

馬刺し「ヒヒーン」

女騎士「勇者さまの故郷までは馬の足であと1週間ほど」

女騎士「これは困りました。わたしはともかく、馬刺しのごはんも無くては走れません」

女騎士「……一度、近くの村に寄りますか」

73: 2018/03/21(水) 03:45:39.403 ID:0xT6o7hd0.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「うぅん、せめて聖なる剣くらいは取り戻しておかないと……」

女騎士「あれはそうそう値段の付くものではありませんから、売られるにしてもそれなりに目立つはず」

女騎士「まさか今から行く村で叩き売りされてるなんてことはないでしょうけど…一応確認しますか……」


村人「聖なる剣? こんな形の? あぁ見た見た。ここで売りに出されてたよ」

女騎士「えぇ…」

77: 2018/03/21(水) 03:55:27.986 ID:0xT6o7hd0.net
村人「あっちの商店街の方で地面に見せ広げてたヤツがいてね。まだいるんじゃないかな」

女騎士「む。情報、ありがとうございます。行ってみます」


女騎士「床に店を広げていると言っていましたが、あの辺りでしょうか」


商人?「よっ、どうだいそこの人。今日はいいもの仕入れてるよ。今日の目玉は売れちまったが、何と言っても騎士の鎧! 見てよし着てよし何でもいい! こんな田舎じゃ本物なんてそうそうお目にかからないだろう!」

村人「うーん、でもなあ」

商人?「着る機会がない? そんなら飾ってインテリアにしたっていい。カッコいいぞ! 何なら淑女のパンツもオマケ付きだ!」

女騎士「ぶっ」

79: 2018/03/21(水) 03:59:31.258 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「あの」

商人?「さぁ買った買った! パンツでダメならブラもあるぞ!」

村人「し、下着かぁ」チラチラッ

商人?「持ち主の見た目は保証するぜ! 若い金髪のねーちゃんだ! サイズを見ればわかると思うが出るとこ出てていい女だぜ!」

村人「……ゴクリ」

女騎士「あの!」

商人?「ん? ……げっ、あんたは」

80: 2018/03/21(水) 04:05:21.295 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「……それ、すごーく見覚えがあるのですが」

商人?「……な、なんのことかな」ササッ

女騎士「……いまは急ぎですので、返していただけるなら何もいいません」

商人?「…………」


商人「くらえっ、目潰し!」

女騎士「きゃっ!?」


女騎士「けほっ、けほっ」

女騎士「くっ、あの男はどこに!?」

村人「あ、あぁ。すごい勢いで商品まとめて走っていったよ」

女騎士「こ、このぉっ!」

81: 2018/03/21(水) 04:08:50.384 ID:0xT6o7hd0.net
商人?「ハァハァ、ここまで来ればもう……」

女騎士「あいにく、足の速さには自信があるのです」

商人?「げっ」

女騎士「さぁ観念して返してください。それがないとわたしはとても困るのです」

商人?「ぐ……」

83: 2018/03/21(水) 04:15:43.288 ID:0xT6o7hd0.net
商人?「……へへっ、丸腰の女が何を強気に言ってやがる」

女騎士「っ! ナイフですか」

盗賊「あぁ、どちらかと言うと俺の本業はこちらの方でね。今はコソ泥なんかやっちゃいるが昔は50人を超える盗賊団の……」

盗賊「……あれ?」

女騎士「……?」

盗賊「……いやいやまさか」

女騎士「なんですか、人の顔をジロジロと」

盗賊「……いいや何でもねえ、他人の空似だろう。いいから大人しくしなっ!」

女騎士「どうしてもと言うのですね」

盗賊「あぁ? こいつが見えねえのか。俺は女だからって容赦は」


女騎士「えいっ」←Level 97

盗賊「ぶべらっ」

85: 2018/03/21(水) 04:20:39.040 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「はい。すいません。全部俺が盗みました」

女騎士「屯所には何も言わないでおきますから、全部返してくださいね」


盗賊「……あの」

女騎士「お金と……鎧と……」ゴソゴソ


盗賊「……その」

女騎士「服と……あれ?」ゴソゴソ


女騎士「剣がありません」

盗賊「剣は売れちまいました」

86: 2018/03/21(水) 04:23:31.129 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「……………………は?」

盗賊「ヒィッ!」

女騎士「あれが一番大切なものなのですが」

盗賊「ぱ、ぱんつは?」ピラッ

女騎士「ぱんつは別です! 何握ってるんですか!」

88: 2018/03/21(水) 04:30:05.634 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「剣はここらの領主サンが買い取ってったよ。いやぁ、あれ相当な値打ちモンだろ? 目が肥えてるだけあって目についた瞬間言い値で即買いだったぜ」

女騎士「りょ、領主……」

女騎士「うん……まぁ、別人ですよね……あの地からはそれなりに離れてますし」

盗賊「? 何をごちゃごちゃ言ってるんだか知らないが、いいのか? ありゃ相当気に入った様子だったからそう簡単に手放さないと思うぜ」

女騎士「いいのか? じゃありません」グリグリ

盗賊「あぁやめて!! ギブギブ!!」

92: 2018/03/21(水) 05:01:44.164 ID:0xT6o7hd0.net
村人「た、大変だー! 魔物が、魔物が出たぞー! 人型だー!」

女騎士「くっ、こんな時に……!」

盗賊「珍しいな、魔王が氏んでからは村を攻めて来るような魔物なんて滅多に出なかったのに」

女騎士「……仕方ありませんね」

盗賊「ど、どうしたんだよ。まさか行くつもりか? 警備隊に任せとけばいいじゃんか」

女騎士「そうも言っていられません。人型の魔物は知性が高い……ここの警備隊がどれほどかは知りませんが、苦戦は間違いないでしょう」

盗賊「あの高そうな剣もないのに?」

女騎士「当然です。そもそもあの剣は、人を守るためのもの。剣が無いからといってこの場を見逃すようであれば、あの剣に顔向けもできません」

盗賊「……へーへー、そりゃ格好の良いことで」

女騎士「このナイフは借りて行きますよ」

93: 2018/03/21(水) 05:03:18.677 ID:0xT6o7hd0.net
オーク大将「ウェヘヘへ、久しぶりのニンゲンだぁ」

村人「う、うわぁ、オークの群れだぁ!」

魔物使い「あまり頃すんじゃないぞ。呪術師どのは生きた人間をご所望だ」

オーク大将「おう? ナンで?」

魔物使い「はぁ……まぁ多少は氏んでもいい。手足が無くとも生きてさえいればそれでいいのだしな。回収はある程度やってやる。好きなようにやれ」

オーク大将「おうおう、サイショっからそういえよ。おまえらも行け行け、じゃんじゃんやっちまえ」

オーク「「「おほぉ」」」

94: 2018/03/21(水) 05:04:32.968 ID:0xT6o7hd0.net
村娘「きゃあああ!!」

オーク「おー、オンナ。おとなしくしろい」

村娘「いやあ!!」

オーク「……ウェヘヘ……まあちょっとくらい、いいか。なぁにコロしゃしねえよ」

村娘「むぐぅ!」


女騎士「待ちなさい」

オーク「あ?」

95: 2018/03/21(水) 05:06:50.863 ID:0xT6o7hd0.net
魔物使い「む? ……オークの血の匂い……それも、ひとつではないな。ここまで戦える人間がこの地にいるとは……」

オーク大将「どうした」

魔物使い「なに、ちょうどあの辺りに少しヤレる人間がいるみたいでな。お前の部下も相当苦戦しているらしい」

オーク大将「なニィ?」

魔物使い「このまま放っておくとまずいことになるな」

オーク大将「おれのなかまを……ゆるさねえ!!」

96: 2018/03/21(水) 05:10:51.392 ID:0xT6o7hd0.net
オーク「ぎゃあああああああ!!」

女騎士「ふぅ……12体目。まだまだ居そうですね」

女騎士「このナイフも、もう少し持ってくれればいいのですが…!」

オーク大将「おう、お前がおれのなかまをコロし回ってるニンゲンかぁ!!」

女騎士「!」

オーク大将「お前が……おまえが……」

97: 2018/03/21(水) 05:11:26.246 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士(この格好と冠、これがオークの大将でしょうか。あれをやれれば…!)

オーク大将「おまえぇ…!!」

女騎士「…………」

オーク大将「気に入った、おれのヨメにこい」

女騎士「ふぇっ!?」

99: 2018/03/21(水) 05:13:39.491 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「なにを急に!」

オーク大将「いや、いい。おれごのみのメスだ。腕っプシもいい。すげぇいい」

オーク大将「髪が金なのがいいし、ハダが白いのもいい。ほそっけぇようにミえて肉付きもわるくねぇ」

女騎士「………うぅ」ゾゾゾ


「安心しな。おめぇはおれがかわいがってやるから、魔物使いのヤロウにはわたさねえからよ、ウェヘヘへ」


女騎士「! 魔物使いといいましたか!?」

女騎士(ここにも魔王軍の残党が…!)

103: 2018/03/21(水) 05:21:25.369 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「残念ですが、ここであなたのお嫁さんになるつもりはありません」

オーク大将「だ、だめかぁ!?」

女騎士「だめです!」


女騎士「……ッ!」

オーク大将「は、はえぇ!」

ザン

女騎士「……なっ」

オーク大将「ん? なんだおめぇ、そんなちっちぇえ剣でこんなにあばれてたのか」

女騎士「皮が厚すぎてナイフじゃ届かない……!」

オーク大将「安心しなあ、ヨメにきたらそんなちっちぇえ剣より立派なもんをやるよぉ!」

女騎士「うぅ……!」

105: 2018/03/21(水) 05:37:47.097 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「……やっぱダメじゃねえか」

盗賊「まああんな安物でバッタバッタとよくやりましたわ」

盗賊「さすが、ほとんど一人で俺の盗賊団を壊滅させるだけのことはある」

盗賊「しっかし相手が悪りぃよ相手が……」

盗賊「さっさと逃げちまえばいいのに」

盗賊「…………」


盗賊「…………」

106: 2018/03/21(水) 05:39:49.791 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「…………」ボロボロ

オーク大将「ウェヘヘへ、ヨロイも砕けて、イイかっこになったじゃねえか」

女騎士「くっ」

オーク大将「…………ほんとイイ」

女騎士(き、気持ち悪いです……)

オーク大将「ニンゲンのやわ肌ぁ、いまいちテカゲンはわからねえんだ。さっさと降参してくれねえか」

女騎士「誰が……!」

107: 2018/03/21(水) 05:40:17.770 ID:0xT6o7hd0.net
オーク大将「わかんねえヤツだなあ!」

女騎士「きゃあ!」

ギィン!

女騎士「ナ、ナイフが……」

オーク大将「おれちまったなぁ。どうだ、ヨメにくるか」

女騎士「行きません!」

108: 2018/03/21(水) 05:42:16.072 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「おい、アンタ!」

女騎士「! 盗賊さん!?」

盗賊「お探し物はこれかい?」

女騎士「あっ、わたしの剣!」

オーク大将「なんだぁテメェ、邪魔すんじゃねえ!」ブン!

盗賊「当たらねえよ!」

女騎士「盗賊さん!」


盗賊「そら!」

パシィ

女騎士「ありがとうございます!」

109: 2018/03/21(水) 05:43:15.057 ID:0xT6o7hd0.net
オーク大将「へん、そんなの、すっげぇちっちぇえ剣がちょっとちっちぇえ剣になっただけじゃねえか!」

女騎士「……そう思いますか?」

オーク大将「ウェヘヘへ! また折ってやるよぉ!」ブン!

女騎士「…………」


スパン


オーク大将「…………」


オーク大将「…………お?」

ゴロン


盗賊「……お見事」

111: 2018/03/21(水) 05:52:30.662 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「オーク大将を倒したらみんな逃げて行きましたね」

盗賊「情けねえ連中だぜ」

女騎士「あなたが言いますか」

盗賊「いやまぁ。いいでしょ、最後は俺のおかげでしょう。助けてやったんだし……」

女騎士「ふふ、そうですね。ありがとうございます」

盗賊「お、おう」

112: 2018/03/21(水) 05:54:13.517 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「しかしこの剣はどこから……? 売られたはずでは」

盗賊「あぁ、それなら……」

村長「いやぁ、よくやってくださいました旅の方!」

村娘「あの人です! わたしあの人に助けてもらったんです!」

村人「見てたぞ! あの剣でスパーンとオークを叩き斬ったんだ!」

ウオースゲー
アノヒト、ユーメーナオンナキシサマジャナイ⁉︎


女騎士「こ、こういうのは苦手です……」

盗賊「へぇ」


???「あ、あの剣は!!」

女騎士「ふぇ?」

盗賊「あっ」

113: 2018/03/21(水) 06:01:15.755 ID:0xT6o7hd0.net
領主「あの剣はワシの剣だ! ワシが買った剣だぞ! 盗まれた剣だ!」


ザワザワ


女騎士「…………まさか」

盗賊「いやまあ、仕方ないだろ? 盗むのが商売だぜ俺たちは」

女騎士「そ、それにしたってもっと穏便にできないのですかっ!」

領主「む? ……それにしても、ほほぉ。あなたが魔物を退治した騎士どのですか」

女騎士「あ、はい」

領主「ふむふむ。なるほどなるほど」

女騎士「?」


女騎士(あの、どうしたんでしょう。こちらをじろじろと見ていますが)

盗賊(あんた、自分の今の格好わかってないの?)

女騎士「? …………!!」

114: 2018/03/21(水) 06:06:36.783 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「そ、そういう目で見ないでくださいっ!」

領主「ほっほっ、これは失礼。まぁ剣を盗んだことには目を瞑りましょう。代わりにどうです、私に雇われてみませんかな? 報酬は可能な限り出しましょう」

女騎士(こ、このパターンは……!)

女騎士「あの、お気持ちは嬉しいのですが先を急いでいますので」

領主「ふむそうですか。ならばおもてなしだけでも、是非に」

女騎士「いえ、それもいいです……あの、そろそろ失礼しますね……」

領主「なんと……このワシにここまで誘われておいて断るとは無礼な」

女騎士「すいません……それと、この剣もわたしの物なので返してもらいますね」

領主「なんだと!」

115: 2018/03/21(水) 06:09:05.596 ID:0xT6o7hd0.net
領主「盗っ人だ、捕らえよ!」

警備兵「しかし、この方にはご恩が……」

領主「恩も糞もあるか! 相手は罪人だぞ!」

警備兵「す、すいません!」

女騎士「わっ、わっ、わっ!」

116: 2018/03/21(水) 06:11:02.854 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「どうするんですか!」

盗賊「どうするも何も、俺には関係ないでしょう」

女騎士「もとはといえばあなたのせいじゃないですか!」

盗賊「あーあー聞こえない」

女騎士「怒りますよ!」

盗賊「あ、それはやめて」

118: 2018/03/21(水) 06:19:32.387 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「どうにか盗賊さんの手引きで脱出できました」

女騎士「よくあんな道を知っていますね」

盗賊「地元民ですから」

女騎士「それにしたってあんな、人を撒くためだけにあるようなルートまで」

盗賊「盗賊ですから」

女騎士「もうっ」

119: 2018/03/21(水) 06:20:04.951 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「ここまで来れば大丈夫でしょ」

女騎士「それではここでお別れですね」

盗賊「あぁ、先を急いでるんだっけ?」

女騎士「はい。急を要することです」

盗賊「はーん。…………悪かったな」

女騎士「はい?」

盗賊「邪魔して悪かったなって言ってんだ。……俺も、少しは反省してる」

女騎士「……ふふ、そうですか。ならもう盗みはしないと誓えますか?」

盗賊「それは……まあ、人は選ぶよ」

女騎士「そういうことではありません!」

120: 2018/03/21(水) 06:23:28.431 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「行っちまったな」

盗賊「面白い女だったぜ」

盗賊「……盗みをやめる、か」

盗賊「今さら真っ当に生きてけってのも難しい話だが」

盗賊「まあ、考えてみるか」

盗賊「…………」

盗賊「…………」


盗賊「ん? ……戻ってくるぞ」

盗賊「なんか、すごい形相だぞ……」

盗賊「こっちに来る……!」



女騎士「馬刺しを取り返してください!」

盗賊「は?」

121: 2018/03/21(水) 06:24:03.428 ID:0xT6o7hd0.net
7時まで寝るわ

132: 2018/03/21(水) 07:13:01.259 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「馬刺し?」

女騎士「わたしの馬です」

盗賊「あんた、自分の馬に馬刺しって名前付けてんの? ……マジ?」

女騎士「ともに故郷から出てきた、わたしの家族のようなものなんです……お願いです、盗賊さん」

盗賊「家族に付ける名前かよ……!」

134: 2018/03/21(水) 07:15:30.339 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「なんとか戻ってきてくれましたね」

馬刺し「ヒヒーン!」

女騎士「おおよしよし。寂しい思いをさせましたね」

女騎士「ありがとうございます。盗賊さん。……何でそんなにボロボロなんですか?」

盗賊「……あんたの馬に蹴られたんだよ、よっぽど忠誠心が強いようで。あんた以外にゃ懐かねえんだろうな」

女騎士「まぁ」

盗賊「ちょっと嬉しそうにしてんじゃねえよ」

135: 2018/03/21(水) 07:19:33.741 ID:0xT6o7hd0.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「勇者さまの故郷までもう少しですね」

女騎士「なんだか懐かしいです。むかし、魔王軍との戦いでこの辺りに来たときに勇者さまに出会ったのでした」

女騎士「軍とはぐれて偶然村に迷い込んだわたしが、あの村で勇者さまに会い、魔物を一緒に討伐したのが始まりでした」

女騎士「それから勇者さまが故郷を旅立たれて。魔法使いや戦士、僧侶と武闘家と出会い、魔王討伐までの道のりをともに乗り越えたのでした」

女騎士「…………」

136: 2018/03/21(水) 07:23:56.828 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「着きました」

馬刺し「ヒヒーン!」

女騎士「お疲れさまです馬刺し。よくここまで連れてきてくれました」

女騎士「あとでおいしい干し草いっぱい食べさせてあげますからね」


女騎士「……うわぁ、前に来たときよりもなんだかすごく栄えてるように見えます」

女騎士「なになに……『勇者生誕の地、はじまりの村へようこそ!』」


女騎士「観光名所になってますね……」

137: 2018/03/21(水) 07:27:58.467 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「勇者さまの家は……あそこですね」

女騎士「幼馴染さんと結婚されたのですよね」

女騎士「ご両親は他界されてるはずだから、いまは二人暮らしでしょうか」


チリンチリーン

女騎士「…………」

女騎士「…………」

女騎士「…………あれ、留守でしょうか」

女騎士「もう一度」


チリンチリーン

女騎士「…………」

ガチャ

幼馴染「あんたはどこの女よ!」

女騎士「ひゃっ!?」

138: 2018/03/21(水) 07:29:51.775 ID:0xT6o7hd0.net
幼馴染「……あれ? 女騎士さん?」

女騎士「お、お久しぶりです」

幼馴染「や、やだわたしったら。ごめんなさい。つい……」

女騎士「あはは……」

140: 2018/03/21(水) 07:33:43.797 ID:0xT6o7hd0.net
幼馴染「今日はどうされたの? 王都からは遠いでしょう」

女騎士「それは……いろいろありまして。とにかく、勇者さまにお会いしたいのですが」

幼馴染「……勇者ァ?」

女騎士「ひっ……!」

幼馴染「あ……こほん。彼なら今はここにいません」

女騎士「そんな。何かあったのですか?」

幼馴染「追い出しました」

女騎士「へ?」

幼馴染「追い出しました」

女騎士「それはまた……」

141: 2018/03/21(水) 07:39:04.142 ID:0xT6o7hd0.net
幼馴染「ちょっと聞いてもらえますか!?」

女騎士「あ……えぇ」

幼馴染「上がってください!」



幼馴染「それでね、4番目に来た女。いきなり何て言ったと思います?」

女騎士「な、なんでしょうね」

幼馴染「『勇者さま、あのときはありがとうございました。あの時あなたに助けられてから、ずっとお慕いしておりました』……ですって」

女騎士「それはまた……」

女騎士(もう1時間くらいになるでしょうか)

142: 2018/03/21(水) 07:42:40.181 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「勇者さまはお優しいひとでしたから。旅の道中、いろいろな方と関わり合いになり事件を解決してきましたので……」

幼馴染「それは……わかっているけれど。でも少し女の子が多すぎませんか」

女騎士「言われてみれば」

幼馴染(そう言えばこのひとはそういうの鈍感そうね)

143: 2018/03/21(水) 07:46:29.466 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「でも、勇者さまのお気持ちもわかってあげてくださいね。彼が一番に想い続けていたのはずっとあなたなんですから」

幼馴染「女騎士さん……」

女騎士「勇者さまたちと魔王城に突入する前夜、パーティのメンバーで改めてお話をしたんです」

女騎士「そのとき、勇者さまは仰りました。『俺、魔王を倒したら故郷に帰って幼馴染と結婚するんだ』って。目をキラキラと輝かせて言っていました。とても素敵でしたよ」

幼馴染「勇者……」

144: 2018/03/21(水) 07:50:44.499 ID:0xT6o7hd0.net
幼馴染「とてもお見苦しいところをお見せしました」

女騎士「彼をゆるしてあげられそうですか?」

幼馴染「はい。ありがとうございます。女騎士さんのおかげで胸のつかえが取れました」

女騎士「ふふっ、それは良かったです」

女騎士「ところで勇者さまは……」



カンカンカンカンカンカン!!!!


女騎士「!」

幼馴染「この鐘は……!」

146: 2018/03/21(水) 08:05:48.948 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「魔物の侵入の合図ですね」

幼馴染「えぇ、どうしましょう……勇者はいないし」

女騎士「わたしが行きます。あなたはここに残っていてください。決して外に出ないでくださいね」


女騎士「! あれは……!」

デーモン「勇者はどこだ……」

女騎士「魔王軍幹部、デーモン……!」

デーモン「貴様は女騎士か……」

女騎士「あなたは、わたしたちが倒したはずです! なぜこんなところに!」

147: 2018/03/21(水) 08:07:36.618 ID:0xT6o7hd0.net
デーモン「……それを話す義理はない。貴様に用はない。邪魔をするなら話は別だが、勇者はともかく、貴様ひとりで敵う相手か?」

女騎士「…………」


女騎士「……敵う敵わないの話ではありません。勇者さまに何か用があったのでしょうが、あなたたちに好きにさせるつもりはありません」

デーモン「ふん……」

中級悪魔「デーモンさま、勝てる相手とは言えここでこいつに抵抗されるのは少々面倒です。ここは私たちに」

デーモン「指図をするな」

ボッ

中級悪魔「あ……が……」

女騎士「自分の仲間を……! 相変わらずですね、あなたは。その癖は氏んでも治らないようです」

149: 2018/03/21(水) 08:13:08.244 ID:0xT6o7hd0.net
デーモン「勇者はどこだ」

デーモン「私に臆して逃げ隠れたか……」

女騎士「それを知ってどうするつもりですか!」

デーモン「ふん。小癪な呪術師の策とやらに乗るのは気に食わなんだが、居らんのであれば仕方あるまい」


下級悪魔「キィキィ」バサバサッ


幼馴染「うぅ……」

女騎士「幼馴染さん!?」

150: 2018/03/21(水) 08:16:00.268 ID:0xT6o7hd0.net
デーモン「こんなことをせずとも、直接勇者を捻り潰せば済む話というのに」

女騎士「彼女をどうするつもりですかっ!」

デーモン「人質とやらだそうだ。私も気に食わんが、これも魔王様復活のために確実な方法ならば仕方あるまい」

女騎士「魔王復活……! やはり!」

デーモン「クッ、呪術師め。勇者がいるならば頃しても良いといいながら、わざわざこのタイミングを狙いおったな。食えん奴よ」

152: 2018/03/21(水) 08:23:14.777 ID:0xT6o7hd0.net
デーモン「勇者に伝えろ。手を出すなと。この女の命と引き換えだ」

女騎士「ッ!」


ギィン!


デーモン「貴様もなかなかやる……。だが勇者ほどではないな」

女騎士「…………ッ」

デーモン「結局、ひとりでは何もできぬ弱者よ」

女騎士「くっ!」

153: 2018/03/21(水) 08:25:15.174 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「はぁ、はぁ……」

デーモン「勇者には手を出すなと言ったが、貴様には言っていない。だから私を倒せるものなら倒しにこいと言いたいところだったが」

デーモン「この程度ならばいらぬな。氏ね」

女騎士「!」

女騎士(だめ……ごめんなさい、勇者さま……!)

154: 2018/03/21(水) 08:26:55.311 ID:0xT6o7hd0.net
ギィン!

女騎士「あなたは……!」

デーモン「ほう……これは。」


勇者「すまん、待たせた」


女騎士「勇者さま……!」

デーモン「待った甲斐があったというものだ」

159: 2018/03/21(水) 08:31:42.371 ID:0xT6o7hd0.net
勇者「…………」

幼馴染「…………」


勇者「…………」

女騎士「…………」


勇者「随分好きに暴れてくれたな」

デーモン「それもこれも貴様のためだ」

勇者「らしくないんじゃないか?」

デーモン「自覚はある。だが必要なことだ」

勇者「お前が自分を曲げてまでってなると、魔王絡みか」

デーモン「好きに想像しろ。もっともそんなこと、貴様が現れた今となってはどうでもいいがな」

161: 2018/03/21(水) 08:41:44.364 ID:0xT6o7hd0.net
勇者「ここでやる気か」

デーモン「おうとも」

勇者「女騎士、下がってろ」

女騎士「勇者さま……すみません。幼馴染さんを……」

勇者「気にすんなよ。悪いのは全部あいつらだ」

デーモン「ククク、ひとりでやる気か? 何ならそこの女と、かつての仲間を集めても構わんのだぞ」

勇者「俺だけで十分だ」

デーモン「かつての仲間と束になってようやく私の不意を突けた貴様が、自惚れるなよ」

勇者「いいから、構えろ」

デーモン「……小僧がっ!」



ザンッ


デーモン「……あ?」

勇者「俺だって、あれから何もしてなかったわけじゃねえんだ」

勇者「あの時のままのお前に、負けるわけがないだろう」

デーモン「が…………は…………」

162: 2018/03/21(水) 08:43:22.490 ID:0xT6o7hd0.net
呪術師「クッ、デーモンめ。わざわざ魔王様の分を使って蘇らせてやったものを、勇者に乗せられおって」

呪術師「だがしかし、十分な役割は果たしたようだな」

166: 2018/03/21(水) 08:47:44.298 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「勇者さまっ!」ひしっ

勇者「お、女騎士っ、あいつの前でそういうのはっ!」

呪術師『勇者』

勇者「ッ! その声は呪術師か。生きてやがったのか。もっかい叩き斬ってやるから姿を現せ」

呪術師『クク、そう急くな。貴様の女の命はこちらにあるのだぞ?』

幼馴染「…………」

勇者「何が目的だ」

呪術師『聖剣だ』

勇者「なに?」

呪術師『貴様の聖剣を折れと言っているのだ。今、この場で』

167: 2018/03/21(水) 08:55:42.923 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「勇者さま、だめです! 女神の加護を受けたその聖剣を折ってしまえばあなたは……!」

呪術師『ああ、本当に忌々しい剣よ。その剣があるから貴様は頃しても氏なない。そして貴様が氏ななければその剣は折れない。その上、我ら魔族には折れぬと来た。厄介なことこの上ない』

呪術師『だが勇者、貴様自身の手ならば折れるだろう』

勇者「それで幼馴染を返す保証はどこにある。お前の性格はわかってんだよ」

呪術師『良かろう。我らの魔王様と魔神様に誓う。貴様がその剣を折ればその娘には手出しはすまい』

勇者「魔王と魔神、か」

女騎士「勇者さま!」

勇者「……女騎士」

168: 2018/03/21(水) 08:57:01.027 ID:0xT6o7hd0.net
勇者「悪りぃ、女騎士。俺、あいつを見捨てるなんてできないわ」


ビキッ


バキバキバキバキバキバキ


ブワッ

170: 2018/03/21(水) 09:03:28.583 ID:0xT6o7hd0.net
呪術師『ククク、フハハハハハ! まさか本当に折るとはな。これだから貴様ら人間は脆いのだ!』

勇者「いいから、幼馴染を返せよ。約束だろう」

呪術師『いいだろう、魔王様と魔神様に誓ったのだ。その名前は重い』


下級悪魔「キィキィ」バサバサッ


勇者「ふんっ」ズバッ

下級悪魔「キィーー……」

呪術師『柄に残った破片だけで下級悪魔を斬ったか。だが所詮そんなものよ。女神の加護は失われた。我らの邪魔をするものはいなくなった!』


勇者「幼馴染」

幼馴染「……うぅん、勇者? あ、良かった……無事で」

勇者「俺も、良かった」

171: 2018/03/21(水) 09:08:41.620 ID:0xT6o7hd0.net
呪術師『だがそれでも、私は念には念を入れる男でね』

中級悪魔「…………」

女騎士「! 中級悪魔の骸が勝手に……! 勇者さま危ないっ」



ザンッ

172: 2018/03/21(水) 09:09:17.252 ID:0xT6o7hd0.net
……………………


……………………


……………………

175: 2018/03/21(水) 09:17:07.929 ID:0xT6o7hd0.net
医者「まあ、峠は越えたね」

女騎士「よかった……」

医者「だけどしばらくは目を覚まさないだろう。幼馴染も、しばらく安静にさせてやった方がいい」

女騎士「はい」



女騎士「勇者さまはお医者さまの懸命な治療で一命を取り留められました」

女騎士「けれど、聖剣は折れてしまいもう二度とその輝きを宿すことはありません」

女騎士「わたしたちは呪術師の策に見事に嵌ってしまいました」

女騎士「わたしは……どうすれば……」

馬刺し「ブルルッ」

176: 2018/03/21(水) 09:17:58.141 ID:0xT6o7hd0.net
10時くらいまで寝るわ…

189: 2018/03/21(水) 10:14:30.889 ID:0xT6o7hd0.net
馬刺し「ヒヒーン」

クシクシ

女騎士「馬刺し……。ううん、こんな時に弱気になっていてはだめですね」

女騎士「気分転換に、少し遠乗りをしましょうか」

191: 2018/03/21(水) 10:18:34.432 ID:0xT6o7hd0.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「呪術師の企みは成功し、勇者さまという邪魔者がいなくなった今、おそらく魔王復活の準備をすすめています」

女騎士「わたしひとりの力では、魔王軍の武闘派幹部には……悔しいけれど敵いません」

女騎士「頼みの勇者さまの聖剣は折れてしまった」

女騎士「そして魔王が復活してしまえば、聖剣なしに倒すことはできない……」

女騎士「あれはもともと魔王を倒すため、女神の伝承に導かれて勇者さまが手にしたもの」

女騎士「あの伝承はたしか勇者さまの故郷の、女神の祠にあった書物によるものでしたね」

女騎士「聖剣を直す方法とか、ないでしょうか」

女騎士「……一度、立ち寄ってみましょうか」

195: 2018/03/21(水) 10:24:15.153 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「ここが女神の祠……」

女騎士「実はわたし、入るの初めてなんです」

女騎士「緊張しますね……」ドキドキ

女騎士「! これが、女神の伝承……」

196: 2018/03/21(水) 10:25:20.249 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「勇者と聖剣について書かれていますね」

女騎士「聖剣に選ばれし勇者。聖剣が折れぬ限り勇者は氏なず、勇者が氏なぬ限り聖剣は折れず。聖剣は決して魔には負けず」

女騎士「ここまではわたしたちも知っていますね」

女騎士「初めて勇者さまが幹部級に殺されてしまった時はびっくりしたものです」

女騎士「思わず泣いてしまいましたが……」

女騎士「ただまさか、聖剣が勇者さま自身の手によって折れるだなんて裏技があったなんて……」

198: 2018/03/21(水) 10:27:26.517 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「…………」

女騎士「……おや? まだつづきがあるようですね」

女騎士「…………」

女騎士「…………」

女騎士「! これは……」

200: 2018/03/21(水) 10:30:40.170 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「西の聖剣。東の聖槍」

女騎士「聖剣の対となる聖槍、ですか」

女騎士「ここは西の祠だからあまり聖槍については書かれていませんね」

女騎士「これを勇者さまに渡せばあるいは、魔王が復活しても立ち向かえるかもしれません!」

女騎士「やりましたよ馬刺し! わたしにもまだできることはあるみたいです!」

馬刺し「ヒヒーン?」

201: 2018/03/21(水) 10:31:52.273 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「記述によれば、東の霊峰……例によって遠いですね……」

女騎士「西へ東へと大忙しですね。あなたの足が頼りです。お願いしますよ馬刺し」

馬刺し「ヒヒーン」

203: 2018/03/21(水) 10:33:30.371 ID:0xT6o7hd0.net
勇者「女騎士」

女騎士「あ、勇者さま。もう起きても大丈夫なんですか」

勇者「あぁ……。すまないな」

女騎士「……聖剣のことは、仕方ありません。だって、勇者さまですから」

勇者「なんだよそれは」

女騎士「ふふっ」

205: 2018/03/21(水) 10:35:36.125 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「女神の祠に行ってきました」

勇者「あぁ、あそこ行ったのか。小難しいことばっか書かれててよくわかんねえだろう」

女騎士「そこで聖剣に関する手がかりを探していました。なんとか直せないものかと」

勇者「……直るの?」

女騎士「残念ながら、それについてはわかりませんでした」

勇者「そっか。こいつにも悪いことしちまったな」

206: 2018/03/21(水) 10:39:15.356 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「勇者さま……ですが、聖剣の対となる聖槍についての伝承を見つけました。わたしは、その手がかりを追ってみようと思います」

勇者「聖槍、か。俺も一緒について行きたいけど。この調子じゃな」ヒラヒラ

女騎士「えぇ。勇者さまはここで休んで……って、ちぎれかけた腕を振り回さないでください!」

勇者「大げさだなぁ」

女騎士「もうっ」

207: 2018/03/21(水) 10:42:37.753 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「それじゃあ、行ってきます」

勇者「おう。俺も動けるようになったら出来ることはする。お前も、氏ぬなよな」

女騎士「そちらこそ。聖剣はもう無いんですから、これまでみたいな無茶はだめですよ」

勇者「む。……善処する」

女騎士「お願いしますよ。あなたが氏んで、悲しむひとはいっぱいいるんですから」

勇者「わかった。俺も氏なないよ。幼馴染もいるしな」

209: 2018/03/21(水) 10:46:03.499 ID:0xT6o7hd0.net
勇者「……ただやっぱりお前も心配なんだよな……ひとり旅で大丈夫か? お前なら強盗とかは平気だろうけど……その、スリとか置き引きとかに合わないか?」

女騎士「う。」

勇者「お前は戦闘では頼れるけど、普段はどこか抜けてるからな。頼むぜ」

女騎士「ま、まかせてくださいっ」


女騎士「さぁ行きましょう馬刺し、東へ!」

馬刺し「ヒヒーン!」

210: 2018/03/21(水) 10:46:52.338 ID:0xT6o7hd0.net
4日後

女騎士「お財布をスられました」

馬刺し「ヒヒーン!」

212: 2018/03/21(水) 10:51:55.315 ID:0xT6o7hd0.net
親方「テメェこら何やってんだボケこらぁ!」

盗賊「へいへい、すんませんすんません」


盗賊「あのクソ親方……人が下手に出てれば調子に乗りやがって……」

同僚「おっ、今日もお疲れさん。どうよ一杯」

盗賊「はいはいお疲れさん。今日はやめとくわ。筋肉痛でガタガタだっての……」

盗賊「あーあ、真っ当に生きるってきっついな。これならまだそこらの通行人からスった方が断然楽だぜ……ん?」

213: 2018/03/21(水) 10:52:48.885 ID:0xT6o7hd0.net
ドン!

通行人「あ、すんません」

同僚「ったく、気ぃ付けろよ」

盗賊「…………」



盗賊「おい」

通行人「!」

215: 2018/03/21(水) 10:55:35.053 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「見てたぜ。なかなか上手いじゃねえか」

スリ「へ、へへっ。なんだ同業者か。脅かすんじゃねえよ……」

盗賊「……いいや」

スリ「……あ?」

盗賊「元、同業者だ。……チッ、胸くそ悪いなおい」

216: 2018/03/21(水) 10:59:11.930 ID:0xT6o7hd0.net
同僚「いやぁ、助かったぜ後輩! おかげで今月スカンピンになるところだったぜ」

盗賊「まあ気にすんなよって」

盗賊「よかったなお前、ウチの同僚は財布返してくれたら何ともしねえってよ」

スリ「…………」

盗賊「それより、ほれ。もっとあるんだろう? 全部出しやがれ。そっちの分はウチの同僚も管轄外だ。まとめてお巡りに持ってくぞ」

スリ「てめぇ……!」

盗賊「ひぃ、ふぅ、みぃ……おうおう多いな。でも今日は欲張りすぎたみたいだな」

盗賊「……ん?」

盗賊(この財布、どこかで見たような……)

225: 2018/03/21(水) 11:57:39.500 ID:Plzaq70Aa.net
女騎士「とりあえず馬刺しは宿舎に預けてきましたがこれはまずいです……」

女騎士「お財布をスられた……のかもしれないですし、さっきのお茶屋さんに忘れてきたのかもしれません」

女騎士「むぅ……。困りました……」

女騎士「せめてお金を借りられればいいのですが」

女騎士「知り合いなんていませんし……」

盗賊「おいアンタ」

女騎士「あっ、盗賊さん」

227: 2018/03/21(水) 12:01:03.228 ID:0xT6o7hd0.net
同僚「おいなんだよ後輩、こんな綺麗なねーちゃんと知り合いなのかよ」

盗賊「あー、同僚さんは黙っててくださいね」

女騎士「盗賊さん、この町に移ってきたんですか?」

盗賊「まあ、向こうの村じゃちょいと居づらくなっちまいましてね。これまでは上手くやってきたんだが、どこぞの騎士サマの逃走幇助に馬ドロボウ。これだけ目立っちゃどうにもこうにも行かねえですわ」

女騎士「うぅ……その節は、どうもでした……」

229: 2018/03/21(水) 12:07:10.777 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「で。こんなところでキョロキョロとどうしたんです? まるでスリにでもあったような顔してるぜ」

女騎士「うっ……」

盗賊「へへっ」

同僚「あー、おい後輩。あんまりいじわるしてやるもんじゃないぜ。見ちゃいられねえ」

盗賊「はいはい、ってまだ居たのかよ」

同僚「お邪魔みてぇだし俺は帰るよ。財布サンキューな。こいつは俺がしっかり届けておくぜ」

スリ「…………」

盗賊「ほいほいどうも、また明日」

230: 2018/03/21(水) 12:10:51.766 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「あの、お財布……? もしかして」

盗賊「ほらよ」

女騎士「わぁ、わたしのお財布!」

盗賊「たまたま見っけたスリがたまたま見覚えのある財布を持ってたもんでな。まさかと思って探してみたら案の定よ」

女騎士「ありがとうございます……本当に助かりました」

盗賊「う……。まぁ気にするな」

女騎士「盗賊さん?」

盗賊「何でもねえよ。礼とか、そういうの言われ慣れちゃいないもんでな」

232: 2018/03/21(水) 12:14:06.679 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「それより、そっちの用はどうなんだよ。随分急いでたみたいだが」

女騎士「それが……」

女騎士「まぁ、あまり上手く行かなかったといいますか……」

盗賊「ふぅん。まあ、俺には関係ねえけどな」

女騎士「そう、ですね……」

盗賊「…………」

盗賊(チッ、調子狂うな)

233: 2018/03/21(水) 12:16:38.668 ID:0xT6o7hd0.net
町人「大変だ! 旗印を持った魔物の群れ……魔王軍が来たぞ!」

女騎士「な、この町にも!?」

盗賊「あぁ、最近多いんだよ。ちょうどここ三、四日辺りか。一日一回は攻めてくる。それもこの前のオークの群れとは違う、魔王の旗印を持った奴らがな」

女騎士「魔王軍……やはり……」

236: 2018/03/21(水) 12:25:35.697 ID:0xT6o7hd0.net
盗賊「魔王なんてのが例の勇者サマに退治された話は有名だってのに、これじゃあまるで復活でもしたみたいだな、ハハ」

女騎士「…………」

盗賊「……ま、今は町の防壁と騎士団でなんとか抑えられちゃいますがね。おかげで毎日防壁はボロボロ。俺のバイト先もてんてこ舞いで新人だってのにやたらとこき使われる有様ですわ」

女騎士「バイト……? 盗賊さん、アルバイトを始めたんですか」

盗賊「どこかの誰かさんと約束しちまったからな。そんなことは今はどうだっていいだろう。行くんだろ?」

女騎士「はい。行って来ます」

盗賊「あの時と違って剣は持ってるし、アンタなら大丈夫だろう」

女騎士「えぇ」

盗賊「俺もこれでまた城壁の直しに駆り出されるだろうし、あーあ。真っ当に生きるってつらいねえ」

女騎士「……ふふっ。盗賊さんもお仕事がんばってくださいねっ」

タタター


盗賊「…………」

盗賊「…………俺も鍛えるかなぁ」

241: 2018/03/21(水) 12:50:57.457 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「どうにか撃退できましたね」

騎士長「女騎士様、ご助力感謝します!」

女騎士「いえ、とんでもないです。皆さんの力のおかげです。この町の騎士たちはよく訓練が行き届いていますね。防壁もしっかりしているし、そのおかげです」

騎士長「あの女騎士様にそう言っていただけるとは……光栄です」

女騎士「そ、そんなにかしこまらないでください。……わたし、クビになった身ですし……」

騎士長「え?」

女騎士「な、なんでもないです」

242: 2018/03/21(水) 12:55:04.327 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「魔王軍の活動が活発になってきたのはここ最近のこととか?」

騎士長「えぇ。勇者様たちが魔王を討伐してから鳴りを潜めていたはずなのですが。ここ三、四日は特に」

女騎士「やはり……あのことが関係しているのですね……」

騎士長「あの、こんなこと女騎士様に聞くことではないかもしれないのですが……奴らが口にしていた『勇者は氏んだ』『魔王の復活』というのは本当なのでしょうか」

女騎士「……勇者さまは、生きています。ただ魔王復活については。……まだわかりませんが、彼らが魔王討伐からの今までを、影で動いていたのは本当のようです」

騎士長「おぉ……なんと。ただ勇者様の件については確かなのですね」

女騎士「はい。わたしが保証します」

騎士長「それは良かった……。魔王復活はともかく、勇者様の氏についてはこれで狼狽える兵も多く、恥ずかしながら私めも。ですが、これで自信を持って戦えます! いつかこの魔王軍の騒動も、勇者様が解決してくれると信じて!」

女騎士「……はい。信じて、ください」

女騎士「必ず、この戦いを終わらせて見せましょう」

243: 2018/03/21(水) 12:59:14.064 ID:0xT6o7hd0.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「東へ、東へ。……馬刺し、もう少しがんばれますか?」

馬刺し「ヒヒーン!」

女騎士「あれからいくつか村々を経由してきましたが、どこも魔王軍に荒らされ、民は眠れぬ夜を過ごしているようです」

女騎士「なんとしても、終わらせなければ」

245: 2018/03/21(水) 13:02:00.562 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「もうすぐ王都です。居づらいと言ってもこんな事態ですのでそうこう言っていられません。王都に着いたら少し休憩と、補給をしましょう」

馬刺し「ヒヒーン」

パカラッパカラッ

女騎士「!」

女騎士「あれは……!」


女騎士「王都が……燃えている! 馬刺し、急いで!」

258: 2018/03/21(水) 13:54:53.597 ID:0xT6o7hd0.net
騎士団長「ドラゴン相手には必ず5人以上で当たれ! とにかく足を止めろ! B隊は負傷者の救護を! 手が空いている者は消火を!」

騎士団長「くっ、魔王は氏んだのではなかったのか。まさかここまで攻め入ってくるとは」

259: 2018/03/21(水) 13:55:52.139 ID:0xT6o7hd0.net
吸血鬼「暑い暑い……。はぁ、これだから野蛮なドラゴンなんかと一緒の仕事はしたくないのだよ」

吸血鬼「もう少し優雅に……そう、美しい女性の血なんかを吸っていたい」

吸血鬼「彼奴らめ、何もかも壊してしまって品のカケラもない」

吸血鬼「それにしても、あの時の勇者のパーティは良い顔ぶれだった」

吸血鬼「魔法使いに女騎士、僧侶。男どもはともかく、実に良い味をしそうな連中だった」

吸血鬼「惜しむらくは、彼女らの血の一滴も飲めずに殺されてしまったことか。忌々しい勇者め」

吸血鬼「普段は気に食わぬ呪術師ではあるが……私を蘇らせたことだけは感謝をしよう」

吸血鬼「全く、そんな借りもなければこんな仕事はやってられんがな」

260: 2018/03/21(水) 13:57:14.144 ID:0xT6o7hd0.net
吸血鬼「あぁ、彼女らの姿を思い出しただけで唆る……」

騎士「いたぞ、魔王軍だ!」

騎士「人型だ……油断するな!」

吸血鬼「全く……男どもに興味はないというのに」

262: 2018/03/21(水) 13:59:33.330 ID:0xT6o7hd0.net
騎士団長「A隊は下がれ! 控えていたC隊は前へ……」

吸血鬼「お前が指揮を執っている人間だな?」

騎士団長「なっ」

ザクッ

吸血鬼「王都にはあの女騎士がいると聞いていたが、どこにもいないじゃないか」

吸血鬼「下等吸血鬼ならともかく、私はこんな野蛮そうな男の血はいらないのだがね」

騎士団長「が……貴様……!」

吸血鬼「さようなら」

ズバッ

263: 2018/03/21(水) 14:01:23.841 ID:0xT6o7hd0.net
吸血鬼「…………」

ポタポタ…


騎士団長「かはっ、ハァハァ……」

女騎士「ご無事ですか、騎士団長」



吸血鬼「女騎士……」

266: 2018/03/21(水) 14:04:13.849 ID:0xT6o7hd0.net
吸血鬼「おぉ、君を探していた。君に会いたかったんだよ、女騎士」

女騎士「吸血鬼……! あなたも蘇っていたんですね」

吸血鬼「そんな顔をしないでおくれ。む? この腕のことを気にしているのか。気にするな、また生える」ズリュ

女騎士「化物……!」

267: 2018/03/21(水) 14:09:40.213 ID:0xT6o7hd0.net
吸血鬼「今日は勇者や取り巻きの顔はないんだね。僧侶や魔法使いの顔も見えないのは残念だが、なに。君さえいれば十分だ」

女騎士「なぜあなたがここに、とは聞きません。呪術師のしわざでしょうから。ですが、まさか王都に攻め入るほどに力を付けていただなんて……」

吸血鬼「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか。それよりも今夜は空いているかな。君のためにとっておきを用意しているんだが」

女騎士「ッ!」

ズバッ

吸血鬼「おぉ怖い。だがそれが良い」ズリュズリュ

女騎士「くっ」


女騎士(吸血鬼にはわたしの剣では通用しない……せめて、勇者さまの剣か僧侶がいれば……!)

269: 2018/03/21(水) 14:18:31.055 ID:0xT6o7hd0.net
ビッ

女騎士「きゃっ!」

女騎士(ほ、頰を浅く斬られましたが、まだ対応できる速さです!)

吸血鬼「どれ、少し味見を……」

吸血鬼「…………おぉ……やはり極上の味……!」

女騎士「ッ!」ゾゾゾ

吸血鬼「もっと、もっと。君が力尽きて倒れてから。その首筋から直接いただくとしよう」

女騎士「うぅ……」

女騎士(このひと、相変わらず気持ちわるいから苦手です……!!)

270: 2018/03/21(水) 14:22:30.084 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「はぁ、はぁ……」

吸血鬼「あれから随分頑張ったが、そろそろかね」

女騎士「うぅ……」

吸血鬼「全身私好みの匂いと色だ。もう立っているのも覚束ないのでは?」

女騎士(悔しいけれど、その通りです……。もう、目の前も……)

女騎士(! あれは……!)

273: 2018/03/21(水) 14:32:14.787 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「……あなたの言う通り、わたしももう限界です。あと三……いえ、二振り。あなたと刃を交えるのが精いっぱいでしょう」

吸血鬼「ふむ。敵に限界を伝えるなど、気高き君らしくもない」

吸血鬼「が、ようやく負けを認めるということかな?」

女騎士「…………」チャキ

吸血鬼「……結構。それでは君の残りの全力を受け切ってみせよう。そしてその後……その白い首筋に……ウェヒヒヒ」

女騎士「そ、そういう想像はやめてください!」

274: 2018/03/21(水) 14:34:36.968 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「はっ!」

ズバッ

吸血鬼「まずは一振り。腕を落としてきたか。だが無駄だと…………ぬ」

吸血鬼「…………さ、再生できない! まさか……!」



吸血鬼「僧侶!!」


僧侶「女騎士さん!」

女騎士「えぇ、行きますよ!」


ザンッ


吸血鬼「が…………」

276: 2018/03/21(水) 14:39:44.011 ID:0xT6o7hd0.net
吸血鬼「……再生できん。僧侶の聖言か。どうやらここまでのようだ」

女騎士「わたしひとりではあなたに勝てなかったでしょうが、油断しましたね」

女騎士「……いえ、僧侶がいたことを知られていれば、二人がかりでも厳しかったでしょう」

吸血鬼「ふ……自らの実力を認めるとは実に潔い……勇者のような野郎ではなく、君にとどめを刺されてよかった」

女騎士「…………」

吸血鬼「……だから最後に首筋を…」

女騎士「いやです」

278: 2018/03/21(水) 14:46:21.655 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「うぅ……血を流しすぎました……」

僧侶「大丈夫ですか女騎士さん、今治癒をかけます」

女騎士「ありがとうございます……よく、来てくれましたね」

僧侶「はい。武闘家さんとたまたまこの近くに来ていて、王都に火の手が見えたので急いで駆け付けたのです」

僧侶「今ごろ、外の魔物は武闘家さんが蹴散らしてくれているところでしょう。幹部級は今の吸血鬼だけみたいですので心配はいりません」

女騎士「それは……よかっ……」

女騎士「…………すぅ」

僧侶「……今は、ゆっくり休んでくださいね」

280: 2018/03/21(水) 15:04:35.079 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「うぅん……」

武闘家「む。目を覚ましたか」

女騎士「武闘家さん」

武闘家「いま僧侶を呼んでくる。少し待っていろ」



僧侶「ご無事で何よりです。もう少し私たちが駆けつけるのが早ければ……と思うのですが」

武闘家「すまん」

女騎士「いえ。ふたりともよく来てくれました。本当にお久しぶりで、会えて嬉しいです」

281: 2018/03/21(水) 15:08:23.176 ID:0xT6o7hd0.net
僧侶「私たちは各地を旅して回っていたのですが……」

武闘家「急に魔王軍の残党が活発し始めたのが気になってな。王都近辺に来れば何かがわかると思い、こうして近くに来たのだが」

女騎士「王都の火の手を見て、駆けつけてくださったんですね」

僧侶「何か知っているのですか」

女騎士「えぇと。何から話しましょう……では、わたしが騎士団をクビになった話から……」

僧侶「えぇっ!?」

武闘家「僧侶」

282: 2018/03/21(水) 15:12:26.199 ID:0xT6o7hd0.net
僧侶「そうですか。勇者様が……」

武闘家「聖剣が折れたか。だが流石にしぶとい。生きているのなら、奴は黙って見ているだけの男ではないだろう」

女騎士「そうですね……。でも今は怪我が治るまでは安静にしていてほしいのですが」

武闘家「それが無理なことはお前もよくわかっているだろう」

僧侶「氏なないからって昔から無茶をする人でしたけど、氏ぬと分かって止まるような人でもないですしね」

283: 2018/03/21(水) 15:23:45.043 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「わたしはこのまま東へ、聖槍の手がかりを追おうと思います」

僧侶「なら、私たちも一緒に……」

女騎士「いえ、お二人は勇者さまのもとへ向かってください」

武闘家「何?」

女騎士「無茶はしないと約束をしてきましたけど……やはり心配です。怪我も完治していないでしょうし」

女騎士「僧侶さんがいれば怪我の治りも早くなります。どうせ無茶をするのなら、健康になってから無茶をしてほしいですから」ニコッ

僧侶「でも……」

武闘家「僧侶。今は女騎士の言うことが理にかなっている。聖剣が折れたとは言え奴はあの勇者だ。魔王軍の追っ手も用意されていることだろう。ここは勇者との合流を急ぐべきだ」

285: 2018/03/21(水) 15:28:24.177 ID:0xT6o7hd0.net
僧侶「でも私、心配なんです。女騎士さん、ひとりで旅をして大丈夫ですか? スリに合ったりしてないですか? 置き引きされたりしてないですか? わたし、女騎士さんがひとりで旅をするというだけで心配で……」

武闘家「僧侶。女騎士も子どもではないのだ。今更そんな心配は……」


女騎士「………………」

僧侶「女騎士さん、すごい汗ですよ? やはりお身体が……」

女騎士「あ、いえっ、これはそういうのではなくてですね」

288: 2018/03/21(水) 15:56:11.451 ID:0xT6o7hd0.net
馬刺し「ブルルッ」

女騎士「…………」

騎士団長「女騎士、もう行くのか」

女騎士「あっ、団長さん。お怪我はもう大丈夫なのですか?」

騎士団長「ああ。僧侶殿の治癒が効いた。もう剣を振るうのも問題ない」

女騎士「よかった……」

騎士団長「女騎士……やはり君が抜けてしまった穴は大きい。今回も、君が居なければどうなっていたことか。何なら、今すぐにでも戻ってきてほしいくらいだ」

女騎士「……団長さん……」

騎士団長「いや、わかっている。今のは私の弱音だ。そんな虫のいい話もないし、君には今、やるべきことがあるのだろう」

女騎士「はい」

騎士団長「ならば引きとめまい。だが見送りくらいはさせてほしい」

女騎士「……ありがとうございます」

291: 2018/03/21(水) 16:00:33.361 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「では行ってきます」

僧侶「女騎士さん……無理はしないようにね。あとお財布は必ず肌身離さず持っておくこと。あと荷物を置くときはちゃんと目の届くところに」

武闘家「僧侶」

僧侶「うぅ……」

女騎士「うぅ……」


女騎士「行きますよ、馬刺し!」

馬刺し「ヒヒーン!」


僧侶「…………」

武闘家「…………」

騎士団長「…………」



三人「…………馬刺し?」

295: 2018/03/21(水) 16:19:00.777 ID:0xT6o7hd0.net
その頃

勇者「むむむ。」

幼馴染「勇者?」

勇者「箸が持てない」

幼馴染「……仕方ないわね」

幼馴染「ほら」

勇者「ぬ」

幼馴染「あーん」

勇者「…………」

幼馴染「は、早くしてよ。わたしだって恥ずかしいんだから」

勇者「わ、悪い」


幼馴染「どう?」

勇者「うまい」

幼馴染「……早く治ってよね」

297: 2018/03/21(水) 16:28:20.702 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「東の霊峰へ向かうにはこの大河川を渡らなければならないのですが」

女騎士「まさか泳いで渡るわけにはいきませんよね」

馬刺し「ブルルッ」

女騎士「向こう岸が遠いです。まるで海みたいですね……」

女騎士「舟か……それか橋はないのでしょうか」

女騎士「もう少し川沿いを行けば村があると思うのですが」



女騎士「……あっ、ありました。小さいですけど集落です」



女騎士「女魔法使いが結婚、ですか」【2】