298: 2018/03/21(水) 16:29:34.841 ID:0xT6o7hd0.net


女騎士「女魔法使いが結婚、ですか」【1】
女騎士「女魔法使いが結婚、ですか」【2】

女騎士「すみません」


シーン…


女騎士「どなたかいらっしゃいませんかー」


シーン…


女騎士「も、もしもーし」


シーン…


女騎士「おかしいですね……」

女騎士「少し前まで生活していた痕跡はあるのですが」

303: 2018/03/21(水) 16:59:23.876 ID:0xT6o7hd0.net
村人「なんだ騒々しい。まだ逃げてない奴がいたのか」

女騎士「ああ、よかった……人がいました」

村人「ああん? 嬢ちゃん、見かけない顔だな。旅人か?」

女騎士「そのようなものです」
葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
304: 2018/03/21(水) 16:59:54.134 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「東の霊峰に行くために川を渡りたいのですが。何か渡る手段……舟などはないのですか?」

村人「はん、そんなものはないよ」

女騎士「そんな……しかしそれでは川の向こう側との行き来が取れません。今までも何らかの方法でやりとりをしていませんでしたか?」

村人「……海魔だよ」

女騎士「海魔?」

村人「あぁ」

305: 2018/03/21(水) 17:01:55.206 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「川なのに?」

村人「うるせえ」

306: 2018/03/21(水) 17:02:24.396 ID:0xT6o7hd0.net
村人「……あいつが現れるようになって、舟はみんなぶち壊されちまった。この村も、大半が川に面している。どいつもこいつも化け物をこわがって、みんな逃げちまいやがった」

女騎士「……あなたは逃げなかったのですか?」

村人「……どのみち老い先短えんだ。どうせ氏ぬならこの村と一緒に氏んでやらぁ」

女騎士「村人さん……」

308: 2018/03/21(水) 17:07:12.353 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「わかりました。わたしがその海魔を退治してきましょう」

村人「はん、やめとけやめとけ。嬢ちゃんなんかが行ったところでニュルニュルの触手にとっ捕まって川の中に引きずり込まれて溺れ氏ぬだけだ」

女騎士「た、たこなのですか……?」

村人「……いや、見たことはねえけどよ」

310: 2018/03/21(水) 17:14:16.930 ID:0xT6o7hd0.net
村人「何せ、見たことあるやつは誰も帰って来ねえんだ」

村人「俺の息子もよ、俺ん家は代々あの川を舟で渡す仕事をしていたんだが」

村人「……息子が、最初の犠牲者だった」

村人「いつも通りに出掛けたと思ったら、それ以来とんと帰って来ねえ」

村人「捜索隊も出されたが、そいつらも帰って来ねえ」

村人「ある日村の川岸に舟の残骸が流れ着いてなあ」

村人「ありゃあ、間違いねえ。俺の家の舟のもんだ……見間違うはずもねえ……」

村人「くそ、何で息子なんだ……持ってくならこの老いぼれのタマ取っていきやがれってんだ……」

女騎士「…………」

312: 2018/03/21(水) 17:26:05.300 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「村人さん。本当に舟はないのでしょうか」

村人「……あんた、何考えてやがる」

女騎士「わたしがその海魔を退治してきます」

村人「やめとけっつってんだろ。……これ以上若いモンが氏んでくのを見るのはゴメンだよ俺ァ」

313: 2018/03/21(水) 17:27:32.670 ID:0xT6o7hd0.net
女騎士「…………」

村人「…………」

女騎士「…………」

村人「…………なぁ」

女騎士「はい」

村人「本当に、倒せるのか? あんたが?」

女騎士「はい」


村人「…………いい目をしやがる。その腰に下げた剣は本物ってわけか

女騎士「もとより」


村人「仕方ねえ、舟を出してやる。正真正銘、この村に残った最後の一隻だ。付いてきな」

女騎士「! ありがとうございます!」

366: 2018/03/22(木) 00:04:58.572 ID:+XRUC74z0.net
ザザーン…


女騎士「う…………!」


村人「女騎士……!」


女騎士「く…………!」


村人「くそっ、大丈夫か! 頑張れ!」


女騎士「うぅ…………」


村人「まさか……まさか」


女騎士「おえぇ…………」


村人「あんたがここまで舟に弱えとは」

369: 2018/03/22(木) 00:05:54.504 ID:+XRUC74z0.net
村人「おいしっかりしろ! まだ漕ぎ出してすぐじゃねえか!」

女騎士「だ、大丈夫です……すぐに慣れます」

村人「ふ、船酔いって慣れるモンなのか」

女騎士(勇者さまと旅をしているときも舟は乗ったはず……こんなとき、どうしてましたっけ……)



女騎士(……あ。……ずっと僧侶に背中をさすってもらっていました……)

372: 2018/03/22(木) 00:11:53.439 ID:+XRUC74z0.net
村人「くそっ、こんなときに海魔に遭遇でもしたら……」



ザパーン!


海魔「ニョロニョロ……久方ぶりの獲物だぁ……」

村人「来やがった!」

373: 2018/03/22(木) 00:16:39.420 ID:+XRUC74z0.net
海魔「今回はスジ張ったジジイか。こりゃあまた固そうなヤツで」

海魔「はぁ……どうして船乗りってのは野郎ばっかなんだろうねぇ」

海魔「迷信だかナンだか知らねえが、おれももうちょっとこう……華のある獲物と遊びてぇんだがなァ」

海魔「村にいた娘どもも逃げちまったようだし」

海魔「……ん?」


女騎士「きゅぅ……」


海魔「へぇ」

376: 2018/03/22(木) 00:20:45.478 ID:+XRUC74z0.net
海魔「感心じゃねえか爺さん、わざわざおれのために贄を用意してくれたってのかァ?」

村人「そんなこたぁねぇ! この御仁はおめぇを倒すために来たんだ!」

海魔「それはいいんだがよぅ」


女騎士「うぷ…………」


海魔「おれが言うのはナンだが、大丈夫かそいつ」

村人「くっ!」

380: 2018/03/22(木) 00:27:53.728 ID:+XRUC74z0.net
海魔「まあいいや、ありがたく貰っていくぜ」

シュルルルル

村人「く、くそっ、離しやがれ!」ガンガン!

海魔「そんな櫂でいくら殴ったって無駄だぜ……ニョロニョロ、安心しなぁ。すぐに頃しゃしねえ」

海魔「あんたもこいつをここに連れて来てくれた礼に、見逃してやってもいいぜ。あばよ!」


ザパーン!

381: 2018/03/22(木) 00:36:40.279 ID:+XRUC74z0.net
ゴポゴポ…


女騎士(う……ここは……)

海魔「よぅ、気がついたかよぉ」

女騎士(か、体ににゅるにゅるが絡みついて……!)

海魔「ニョロニョロ……いいなアンタ……ここ最近、獲物と言ったら船乗りの筋肉質なおっさんばっかりでおれも頭がどうなっちまうかと思ってたんだぁ」

女騎士「!」

女騎士(その中に、村人さんの息子さんも……!)

海魔「ありゃあダメだな、スジばっかで固くて。喘ぐ声も野太いモンで全然唆らねえ」

女騎士「…………!」

387: 2018/03/22(木) 00:53:32.846 ID:+XRUC74z0.net
海魔「さて、そろそろお楽しみと行こうじゃねえか。……わざわざ意識が戻るまで待ってやったんだ。この意味わかるよなぁ」

シュルルルル

女騎士「!」

女騎士(触手が動いて……!)

女騎士(わっ、わっ……)

海魔「へへ、まずはどうしてやろうか。まずはその硬そうな鎧を剥いで……いや、付けたまま中に入れてやるってのも悪くねえな……」

女騎士(うぅ……気持ちが悪いです……!)

女騎士(…………ですが……)


海魔「……ニ〝ュ ッ!?」


スパパン!


女騎士(船酔いは、もう収まりました)

388: 2018/03/22(木) 00:55:52.332 ID:+XRUC74z0.net
海魔「チッ、てめぇ……おれの触手を……!」

女騎士(しょせんはたこです。いくら水中で剣が鈍るとは言え、この程度斬れないわたしではありません)ガボガボ

海魔「くっそ、水ん中で何言ってるかわかんねえけど馬鹿にされたのはわかるぞ!」

390: 2018/03/22(木) 01:04:53.347 ID:+XRUC74z0.net
海魔「!」

海魔「そうか! 思い出したぞ!」

海魔「おまえ、昔おれが勇者たちと戦ったときにいた……」

女騎士「…………」

海魔「僧侶に背中をさすられてた女だな!」

女騎士「…………」ガボガボ

393: 2018/03/22(木) 01:11:26.597 ID:+XRUC74z0.net
女騎士(わたしはいまいち覚えていませんが)

女騎士(どうやらこの魔物も、呪術師の手で蘇った魔物のようですね)

女騎士(…………)

女騎士(……もう、大人しく……)

女騎士(冥界に帰りなさい!)

ズバン!

394: 2018/03/22(木) 01:12:19.428 ID:+XRUC74z0.net
海魔「くぁ……くそ…………」

海魔「あのときは大したことねえヤツだと思っていたが……くそ、ここまでやるとはな……!」

女騎士「…………」

海魔「へへっ……おれもなかなかしぶとい方だが、こんなに見事に斬られちゃどうにもならねえなぁ」

女騎士「…………」

海魔「お前が気絶してる間にもうちょっと……楽しんでおけばよかったぜ……」

ズズゥン…!

女騎士(村人さん……)

397: 2018/03/22(木) 01:15:25.743 ID:+XRUC74z0.net
女騎士(海魔は……倒しましたよ……)

女騎士(とにかく水上に上がって安心させてあげないと……!)

ワシャワシャ

女騎士(……あ。)



女騎士(鎧が重くて浮けません)

400: 2018/03/22(木) 01:31:06.181 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「ぷはぁっ!」

村人「じょ、嬢ちゃん!」

女騎士「む、村人さん……」

村人「ヤツは……?」

女騎士「……倒しました」

村人「…………そうか。……そうか」

村人「……………………ありがとよ……」

女騎士「…………」

402: 2018/03/22(木) 01:31:37.630 ID:+XRUC74z0.net
女騎士(氏者の命は戻ってこない……)

女騎士(わたしがもっと早ければ……)

女騎士(……いいえ。わたしにできるのは、先を急いで、このようなことを繰り返さないようにするだけです)

403: 2018/03/22(木) 01:32:07.800 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「村人さん、ありがとうございました」

村人「本当にもう行っちまうのかい」

女騎士「えぇ。わたしにはやらなければならないことがありますから」

村人「……すまねえな。あの立派な鎧も失くしちまってよ。ウチの村にはああいう装備は置いてねえんだ」

女騎士「気にしないでください。鎧はまた買えばいいのですから」

405: 2018/03/22(木) 01:33:45.151 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「それより、この子を舟に乗せていただいてありがとうございます。サイズ的に大丈夫か不安だったのですが」

村人「ああ。俺も初めての経験だったが、大人しいお馬で助かったぜ。名前はなんてぇんだ?」

女騎士「馬刺しです」

村人「ばっ……そりゃまた個性的な名前だな」

女騎士「えぇ。とってもいい子なんですよ」

馬刺し「ブルルッ」

村人「そ、そうかい」

410: 2018/03/22(木) 01:54:03.424 ID:+XRUC74z0.net
その頃

幼馴染「勇者……もう体は大丈夫なの?」

勇者「ああ。これ以上怠けていると体が鈍る」ブン!ブン!

勇者「それに…………そろそろ来るころだと思っていた」


ビュッ

ズバン!


幼馴染「なっ……」

勇者「ワーウルフ。この辺にいる魔物じゃないが。群れだな」

勇者「……魔物使いか」

勇者「聖剣が折れたからって人のこと舐めやがって」

勇者「こんなので俺が氏ぬわけがねえだろう」

411: 2018/03/22(木) 01:54:49.599 ID:+XRUC74z0.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「あれが東の霊峰……」

女騎士「近くで見るとなかなか大きいですね……」

女騎士「麓に村などはないのでしょうか」

女騎士「馬刺しを預けなければなりませんし」

女騎士「さすがに、お前を山登りに付き合わせるわけにはいきませんからね」

馬刺し「ヒヒーン」

419: 2018/03/22(木) 02:13:05.923 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「麓の村を見つけましたが……」

女騎士「どうやら戦闘中のようですね」

女騎士「こんなところにも魔王軍が……」

女騎士「急ぎます。頼みますよ馬刺し」

馬刺し「ヒヒーン!」

420: 2018/03/22(木) 02:15:53.742 ID:+XRUC74z0.net
戦士「よっ」

ズガッ

魔物「ギィィー……」

戦士「チッ、一匹一匹は大したことねえが」

ザシュッ

魔物「ギャンッ!」

戦士「数が多すぎるな」


蟲男「その辺りで大人しくしてもらおうか」

戦士「人型か」

子ども「せ、戦士の兄ちゃん!」

戦士「てめぇ……」

蟲男「なに、お前を倒すために手段なんて選んでる暇はなさそうでな」

蟲男「悪く思うなよ。イノシシ頭にはこれが一番聞くと聞いた」

421: 2018/03/22(木) 02:16:21.501 ID:+XRUC74z0.net
蟲男「そら、何をしている。武器を捨てろ」

戦士「…………」

ガラァン…


子ども「に、兄ちゃん……」

蟲男「よしよし。それでいい。わかっているじゃないか人間」

422: 2018/03/22(木) 02:16:53.358 ID:+XRUC74z0.net
戦士「子どもを離せよ」

蟲男「まぁ待て。お前には散々煮湯を飲まされ続けてきたんだ。少しくらいいいだろう?」


魔物「…………」

魔物「…………」

魔物「…………」


戦士「はぁ。好きにしやがれ」

423: 2018/03/22(木) 02:17:31.091 ID:+XRUC74z0.net
蟲男「くひひっ。そら、まずは目玉から喰って……」

女騎士「はっ!」

ズバッ


蟲男「がはっ」

戦士「!」

425: 2018/03/22(木) 02:22:48.408 ID:+XRUC74z0.net
蟲男「せ、背中から斬るとは……卑怯な……」

女騎士「人質を取っているあなたには言われたくありませんっ」キンッ

子ども「わっ……すごい……」


戦士「女騎士!」

女騎士「はい!」

ビュッ

パシィッ!

戦士「おぉ!」

ズバババッ!

魔物の群れ「ギィィィィィ!!」

426: 2018/03/22(木) 02:26:33.234 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「む。あの魔物を倒したら一気に退いていきましたね」

戦士「礼は言わねえからな。武器なんか無くたって、噛み付いてだって勝ってやるんだ俺は」キンッ

女騎士「相変わらずですね。戦士さん」

427: 2018/03/22(木) 02:30:39.544 ID:+XRUC74z0.net
蟲男の氏体「………………………………」

ガサガサッ

439: 2018/03/22(木) 03:08:54.459 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「ここが戦士さんの故郷だったのですか」

戦士「ああ。こんな辺鄙な場所にあるが……まあ悪い所じゃねえよ」

女騎士「……へぇ」

戦士「なんだよ」

女騎士「ふふっ。戦士さんのそういう顔は初めて見ました」

戦士「……やっぱりお前と話していると調子が狂うぜ」

440: 2018/03/22(木) 03:11:05.241 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「魔法使いさんはどちらに? せっかく来たのですから、一度ご挨拶したいのですが」

戦士「ああ。王都の騎士団にいるはずのお前が何だって一人でこんな所にいるのかとか、こっちも色々聞きたいしな。一度うちに寄ってけ」

戦士「最近の魔王軍のこととか、知ってんだろ?」

女騎士「えぇ。お話するつもりです」

441: 2018/03/22(木) 03:14:58.427 ID:+XRUC74z0.net
戦士「……………………あー」

戦士「だが……まぁ、なんだ、その。魔法使いなんだがよ……」

女騎士「……む。珍しく歯切れが悪いですね。まさか、なにかあったのですか」

戦士「いや……まあお前が心配するようなことは何もねえんだが」

女騎士「なんですか」

戦士「……………………」


戦士「…………その、デキちまってな」

女騎士「え?」

442: 2018/03/22(木) 03:15:44.480 ID:+XRUC74z0.net
戦士「ガキが、デキちまったんだよ」

女騎士「……………………」

女騎士「……………………」



女騎士「……………………ふぇ?」

443: 2018/03/22(木) 03:20:48.026 ID:+XRUC74z0.net
魔法使い「あっ! 女騎士!」

魔法使い「久しぶりね、元気にしていたかしら」

女騎士「魔法使いさん……あのときの王都以来ですね」

魔法使い「どうしてこんな所に? まさか一人で来たの?」

女騎士「うぅん……そこは話すと長くなってしまうのですが。どこから話しましょうか」


戦士「……ほら、茶だ。」

女騎士「……せ、戦士さん」

戦士「ンだよ」

女騎士「戦士さんが……お茶を……!?」

戦士「……………………うるせえ! いらねえなら俺が飲む!」

ゴクゴクゴクゴク


女騎士「あぁっ、そんな!」

魔法使い「うぅん、懐かしいわね」

444: 2018/03/22(木) 03:24:45.520 ID:+XRUC74z0.net
魔法使い「戦士ったら、子どもができたことがわかった途端から急にこうなのよ」

魔法使い「まだお腹も大きくなってないし、わたしは全然大丈夫なんだけど」

魔法使い「今日だって魔王軍が来たって言うからわたしも出ようとしたのに。お前はここに残ってろって」

魔法使い「そのおかげでピンチになったところをあなたに助けてもらったみたいだけど?」

戦士「……その話はもういいじゃねえか」

446: 2018/03/22(木) 03:35:24.276 ID:+XRUC74z0.net
魔法使い「ねね、わたしたちの話なんかより貴女の話よ女騎士」

魔法使い「戦士の故郷、知らなかったそうじゃない。じゃあわたし達に会ったのも偶然だし。こんな所にはるばるどうしたの? 鎧も着てないし、王都の騎士団はどうしたの?」

女騎士「う。」


女騎士「…………」チラッ


戦士「…………」ジロッ


魔法使い「?」

447: 2018/03/22(木) 03:40:32.072 ID:+XRUC74z0.net
少し前

戦士『あいつの前で、魔王軍だなんだの物騒な話はしないでやってくれねえか』

戦士『あいつのことだから、そんな話聞いて黙ってるわけがねえ』

戦士『ガキのこともある。少しはジッとしといてほしいんだよ、頼む』

戦士『代わりに俺が全部聞いてやる。あいつに会う前に全部ここで喋ってけ』

女騎士『戦士さん……』

456: 2018/03/22(木) 04:38:24.363 ID:+XRUC74z0.net
魔法使い「へぇ……あのときのお城の呼び出しからそんなことに」

魔法使い「女騎士は職柄わたしたちの中で一番安定してると思ってたんだけど、人生何があるかわからないわね」

女騎士「そ、そうですね。自分でもびっくりしてます」

魔法使い「それで、霊峰なんかに何の用事があるの?」

女騎士「はい。実は勇者さまの、」

戦士「…………」

ガシャン!

魔法使い「あっ、ちょっと戦士。またやったの!?」

戦士「……すまねえ」

魔法使い「もう、慣れないことするからそうなるのよ」



戦士「…………」ジロリ

女騎士(は、はわわ……)ブンブンブン

458: 2018/03/22(木) 04:43:03.185 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「ゆ、勇者さまの故郷に立ち寄る機会がありまして。女神の祠の書物に、霊峰の聖槍の件が書かれていまして。見聞を広めるためにもそのような所を回っているのです」

魔法使い「ふぅん。意外。貴女ってそういうの興味あったのね」

女騎士「あ、あはは。やることもないですしね」

戦士「…………」ハラハラ

459: 2018/03/22(木) 04:44:41.834 ID:+XRUC74z0.net
蟲「…………」

ガサガサ…

460: 2018/03/22(木) 04:52:51.595 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「それでは、わたしは霊峰を見てこようと思います」

魔法使い「えぇ。わたしもついて行ってあげたいけど、戦士がうるさいからやめておくわ」

戦士「ケッ」

女騎士「ふふ。お二人とも仲が良くて羨ましいです」



女騎士「では、馬刺しをお願いしますね」

馬刺し「ブルルッ」

戦士「あぁ。……お前のセンスにはもう突っ込まねえけど。もうちょっとどうにかならなかったのか」

馬刺し「ヒヒーン!」

462: 2018/03/22(木) 05:06:09.110 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「ここから先は、ひとりですね」

女騎士「久々の山登りです」

女騎士「勇者さまたちと旅をしているときは、北の山から南の山まで踏破したものですから、慣れたものですね」


女騎士「……………………」


女騎士「……………………」


女騎士「……………………」

463: 2018/03/22(木) 05:06:40.533 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「わぁ。いい眺めですね」

女騎士「戦士さんたちの村も見えます」

女騎士「ここらで少し休憩にしましょうか」

女騎士「魔法使いさんからいただいたお弁当」

女騎士「おなかも空きましたし、ちょうどいいですね」

464: 2018/03/22(木) 05:08:40.346 ID:+XRUC74z0.net
キィ、キィ……


女騎士「……おや?」


鳥「キィ、キィ…」


女騎士「きれいな白色の鳥ですね……」

女騎士「怪我をしているのでしょうか」

鳥「キィ…」

女騎士「…………」

466: 2018/03/22(木) 05:14:08.942 ID:+XRUC74z0.net
ゴソゴソ


女騎士「お食べなさい」

鳥「…………」

女騎士「……うぅ」

女騎士「サンドイッチなら、食べられると思ったのですが」

女騎士「……パンとハムなら食べられますよね」

女騎士「レタスはわたしが食べましょう」シャクシャク

女騎士「……どうですか」

鳥「…………」


パクッ


女騎士「わぁっ、食べた!」

467: 2018/03/22(木) 05:16:46.649 ID:+XRUC74z0.net
ゴソゴソ


女騎士「これでよし、ですね」

女騎士「あまり本格的な治療はできませんが、わたしは騎士」

女騎士「これでも応急的な処置ならできるのです」

鳥「キィ」

468: 2018/03/22(木) 05:21:05.054 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「それではわたしはこれで。あまり無理をしちゃだめですよ」

鳥「キィ」

469: 2018/03/22(木) 05:21:59.115 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「……………………」


ペタペタ


女騎士「……………………」


ペタペタ


女騎士「……………………」クルッ


鳥「…………」

470: 2018/03/22(木) 05:23:43.300 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「……………………」


ペタペタ


女騎士「……………………」


ペタペタ


女騎士「……………………」クルッ


鳥「…………」


女騎士「ついて来たいのですか」

鳥「キィ」 

472: 2018/03/22(木) 05:27:22.821 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「しょうがないですね」

女騎士「ここで会ったのも何かの縁です。一緒に行きましょうか」

鳥「キィ」

女騎士「となると、お前にも名前をつけてあげないといけませんね」

女騎士「うーん。……>>477なんてどうでしょう」

479: 2018/03/22(木) 05:44:38.942 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「うん、決めました! あなたの名前は焼き鳥です!」

女騎士「よろしくお願いしますね、焼き鳥!」

鳥「キィ」

481: 2018/03/22(木) 05:54:52.629 ID:+XRUC74z0.net
焼き鳥「キィ」

バサバサッ

女騎士「おや、肩に。焼き鳥、このくらいの高さなら飛べるようになったのですね」

焼き鳥「キィキィ」

女騎士「では、行きましょうか」


女騎士「……………………」


女騎士「……………………」


女騎士「ここが、霊峰の。勇者さまの故郷とは別の、もう一つの女神の祠ですね」

焼き鳥「キィ」

482: 2018/03/22(木) 06:10:03.655 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「ごくり……」

女騎士「ではさっそく、入ってみましょう」


パチッ!


女騎士「きゃっ!?」

焼き鳥「キィ、キィ!」

484: 2018/03/22(木) 06:10:50.173 ID:+XRUC74z0.net
馬刺し「!」

馬刺し「ヒヒーン!」

戦士「! お前、急にどうした!」

馬刺し「ブルルッ!」

馬刺し「ヒヒーン!」

戦士「あ、待て!」


パカラッパカラッ…


戦士「行っちまった」

戦士「今まで大人しかったくせに、急に暴れ出しやがって」

戦士「走ってったのは霊峰の方か……」

戦士「……まさか、女騎士に何かがあったのか?」

485: 2018/03/22(木) 06:13:10.538 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「うぅん……」

女騎士「はっ。ここは……」

女騎士「真っ暗ですね。何も見えません」

焼き鳥「キィキィ!」

女騎士「あっ、焼き鳥。無事だったのですねっ」

493: 2018/03/22(木) 07:08:13.030 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「さっきのは……結界、でしょうか」

女騎士「触れた途端にこんな状態になってしまいました」

女騎士「やはり、この祠には何かがあるのでしょうか」


「……女騎士どの、女騎士どの……」


女騎士「!」

494: 2018/03/22(木) 07:08:59.645 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「だ、誰ですかっ」

??「ぐふふ。気がつかれましたかな」

女騎士「あ、あなたはっ」


女騎士「あのときの領主さま!」

領主「どうされましたかな、女騎士どの」

女騎士「い、いえ。でも、どうしてこんな所に」

領主「女騎士どのはお疲れのご様子。私が見ておりますから、そこでお眠りになってはどうですかな」

女騎士「ひっ」

495: 2018/03/22(木) 07:09:24.841 ID:+XRUC74z0.net
「ウェヘヘへ……」

女騎士「!」


オーク大将「ウェヘヘへ、おれごのみのメスだ。ヨメにこい」

女騎士「オ、オークまで!?」


オーク大将「髪が金なのがいいし、ハダが白いのもいい。ほそっけぇようにミえて肉付きもわるくねぇ」

女騎士「………あわわ」ゾゾゾ

496: 2018/03/22(木) 07:09:51.675 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「あ、相変わらず気味の悪い……」


「女騎士……女騎士……」


女騎士「こ、今度は……まさか……」

吸血鬼「あぁ……君に会いたかった……君のその白い首筋にかぶりつきたい」

女騎士「吸血鬼……!」

497: 2018/03/22(木) 07:11:07.001 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「これは……」


「女騎士どの……女騎士どの……」

「ウェヘヘへ……」

「君の血が欲しい……」

「ニュルニュル……」


焼き鳥「キィ、キィ!」

女騎士「焼き鳥、安心してください。これはどうやら……」

女騎士「幻覚、みたいですね……」

499: 2018/03/22(木) 07:16:39.050 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「…………」

女騎士「どうやらひとのトラウマのようなものを映し出す類の幻覚のようですが」


「汗をかいておられるご様子。どれ、拭いて差し上げましょう」

「ウェヘヘへ、ヨロイも砕けて、イイかっこになったじゃねえか」

「全身私好みのいい匂いといい色だ」

「へへ、まずはその硬そうな鎧を剥いで……いや、付けたまま中に入れてやるってのも…」


女騎士「あの……」

女騎士「もうちょっとマシな人選はなかったのでしょうか」

503: 2018/03/22(木) 07:36:02.803 ID:+XRUC74z0.net
その頃

勇者「とりあえず幼馴染は師匠の所に預けてきた」

勇者「まぁあの爺さんなら大丈夫だろう」

勇者「少し助平な所が心配だが、ほとぼりが冷めるまでは我慢してくれよ」

勇者「さっさとこの騒動を終わらせないとな……」

勇者「む。また魔物の群れか。……魔物使いめ……しつこい奴だ」

ザンッ
ズバッ
ザシュッ
ズガッ

ピキッ

勇者「ん?」


ボキッ

勇者「あ」

504: 2018/03/22(木) 07:36:36.270 ID:+XRUC74z0.net
勇者「ちくしょう! また折れやがった!」

勇者「結構高かったくせに! あのオヤジ、掴ませやがったな!」

508: 2018/03/22(木) 07:54:18.909 ID:+XRUC74z0.net
魔物「ギィィィ!」

勇者「くそっ!」バキッ

ジワ…

勇者「ちっ」

勇者(傷が開いて来やがった)

勇者「せめて剣さえあれば……!」



??「そこの兄さん、剣が入り用かい?」

勇者「!」

509: 2018/03/22(木) 07:55:58.165 ID:+XRUC74z0.net
パシィ

勇者「こいつは……」


ガサ…


盗賊「見てたぜ。相当腕っ節がお強いようで。こいつらが町に来てまた防壁ぶっ壊す前に追っ払っちゃくれねえか」

勇者「……こいつはありがたい。誰だか知らんが助かったぜ」スラッ

盗賊「頼りにしてるぜ」

盗賊「…………」

盗賊(……なんか前にもこんなことがあったなぁ)

盗賊(まあ、あのときと違って安物だけどよ。フリーターが用意するにしちゃ上出来のモンだろ)



ボキッ

盗賊「ん?」

勇者「あ」

510: 2018/03/22(木) 07:59:45.604 ID:+XRUC74z0.net
盗賊「……うっそだろアンタ! もう折ったの!? 新品だぞそれ!?」

勇者「う、うむ。すまん。つい昔の感覚で……」

盗賊「ちっ、とりあえずこっちだ! 逃げるぞっ」

勇者「……それにしても新品でコレって、また随分な……」

盗賊「どうせ安物だよ、悪かったなちくしょう!」

517: 2018/03/22(木) 08:43:46.790 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「……………………」


「………女騎士………女騎士………」

「……残念だが、君を騎士団から除名する……」

「………足りない……まだ足りない……魔王様………」

「……結局、ひとりでは何もできぬ弱者よ……」


女騎士「さ、さすがに。いくら幻覚とわかっていても、そろそろ気分が悪くなってきました」

女騎士「これ、いつ終わるのでしょう」

焼き鳥「キィ…」

518: 2018/03/22(木) 08:44:11.641 ID:+XRUC74z0.net
「ヒヒーン!」

女騎士「!」

519: 2018/03/22(木) 08:44:40.542 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「馬刺し……いえ。あの子は戦士さんの所に置いてきたはず」

女騎士「これも幻覚……幻聴なのでしょうか」

女騎士「しかし、馬刺しの幻聴にいったい何の意味が……」


馬刺し「ヒヒーン!」


女騎士「!」

女騎士「これは……幻聴じゃない! 馬刺し!」

521: 2018/03/22(木) 08:49:33.362 ID:+XRUC74z0.net
馬刺し「ヒヒーン!」

女騎士「もうっ。大人しくしていてと言ったはずですよ」

女騎士「こんな所にまで来るだなんて」

馬刺し「ブルルッ」

女騎士「でも……ふふっ。ありがとうございます。少し心細かったところでした」

焼き鳥「キィ、キィ!」

女騎士「あっ。ごめんなさい。焼き鳥のことも忘れていないですよ」

522: 2018/03/22(木) 08:52:11.053 ID:+XRUC74z0.net
バサバサッ

焼き鳥「キィ、キィ!」

馬刺し「ブルルッ」

女騎士「ふ、ふたりとも? どこへ行くんですか」

女騎士「…………」

女騎士「……ついてこいということでしょうか」

523: 2018/03/22(木) 08:54:14.580 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「……………………」

女騎士「……………………」

女騎士「……幻覚が無くなりました」

女騎士「やはりこちらで合っているのでしょうか」

女騎士「!」

女騎士「暗闇が晴れていく……」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

524: 2018/03/22(木) 08:55:18.374 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「!!」

女騎士「あっ、あれはまさか……」



女騎士「聖槍……」

528: 2018/03/22(木) 09:04:34.117 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「こ、これが……」

女騎士「り、立派な槍ですね……すごく大きいです……」

女騎士「聖槍が刺さっている台座も、なんだかそれらしくしっかりしていますね」

女騎士「……………………」

女騎士「……………………」

女騎士「えいっ」ズボッ

女騎士「意外と簡単に抜けましたね」

529: 2018/03/22(木) 09:05:01.089 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「あっ、台座に何か書いています」

女騎士「ふむふむ。『強き者。心優しき者。清らかなる乙女。白く疾き翼を従え聖槍を振るい、魔を滅する』」

女騎士「…………」

女騎士「あっ」

530: 2018/03/22(木) 09:05:26.857 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「ま、まずいですよ馬刺し! 焼き鳥!」

女騎士「ここに乙女と書いてあります!」

女騎士「勇者さまは男の子なので、聖槍は使えないです!」

馬刺し「…………」

焼き鳥「…………」

533: 2018/03/22(木) 09:07:51.552 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「……とにかく、こうして槍が抜けたのですから一度持ち帰ってみましょう」

女騎士「勇者さまならもしかすれば、使えるかもしれません」

女騎士「何と言っても、これまで不可能を可能にし続けた勇者さまですから」

538: 2018/03/22(木) 09:15:34.008 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「…………」

女騎士「祠から出るときは何も起きないのですね」

女騎士「少しおっかなびっくりだったのですが」

女騎士「ううん、久しぶりに外の空気を吸った気がします」

女騎士「とりあえず、この聖槍を持って戦士さんたちの所に戻りましょうか」

551: 2018/03/22(木) 10:54:18.189 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「!!」

女騎士「あれは……」

女騎士「大変、村が襲われています!」

女騎士「こんな高い所からもわかるほどの数……」

女騎士「戦士さん、魔法使いさん!」

552: 2018/03/22(木) 10:55:48.983 ID:+XRUC74z0.net
蟲男「くひひっ、また会ったなぁ戦士」

戦士「てめぇ……! あのとき斬られただろうが」

蟲男「……あぁそうだ。あの女騎士め」

蟲男「ようやくしぶとい貴様を殺せるって時に限って邪魔をしやがって」

蟲男「おかげで身体を集め直すのに余計な時間がかかっちまった」

蟲男「今度あったらタダじゃおかねえ。蟲の海に沈めてじっくりと嬲ってやる」

戦士「…………」

蟲男「そんな怖え顔すんなよ。……それに、聖槍だったか」

戦士「!」

蟲男「せっかく苦労して聖剣を折ったってのに、そんなもんをまた勇者に渡されちゃたまったもんじゃねえ。どの道あいつはここで始末するつもりだよ」

553: 2018/03/22(木) 10:56:44.964 ID:+XRUC74z0.net
戦士「……だが、あいつのおかげで読めたぜ蟲野郎。その体は蟲の寄せ集めで、どっかに核になる本体の蟲がいるんだろ」

蟲男「……これはこれは。イノシシにしてはよく考えたじゃないか」

蟲男「まあ答え合わせをしてやる義理は無いがな」

戦士「ちっ」

戦士(厄介だな。俺や女騎士じゃ相性が悪りぃ)

戦士「…………」

戦士「その上、てめぇまで居やがるのか」

竜人「ふん」バサッ

554: 2018/03/22(木) 10:57:08.764 ID:+XRUC74z0.net
竜人「蟲男。俺は俺で好きにやらせてもらうぞ」

蟲男「へいへい、好きにしろ。アンタは暴れてくれるだけで十分だよ」

竜人「ふん」

戦士「…………」

555: 2018/03/22(木) 10:58:22.053 ID:+XRUC74z0.net
魔法使い「戦士!」

戦士「! お前……引っ込んでろっつっただろうが」

魔法使い「そうも言ってられないでしょう。人型が二体。それに竜人の方は幹部級じゃない。何で倒したはずのこいつが蘇ってるのかはわからないけれど!」

戦士「……ったく、仕方ねえ。怪我すんじゃねえぞ!」

556: 2018/03/22(木) 10:59:56.844 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「急いで戻らないと……馬刺し!」

馬刺し「ブルルッ」

女騎士「この斜面を走って下るのは少し怖いですが……そうも言っていられません」

女騎士「……やれますね?」

馬刺し「ヒヒーン!」

女騎士「行きましょう、最短距離で!」

561: 2018/03/22(木) 11:35:36.288 ID:+XRUC74z0.net
ちょっと1時間くらい寝るわ…

595: 2018/03/22(木) 16:58:56.443 ID:+XRUC74z0.net
その頃

呪術師「…………」

呪術師「…………」

呪術師「少々邪魔が入ったが、あと少し」

呪術師「あぁ、魔王様……」

魔物使い「呪術師」

呪術師「……何の用だ」

魔物使い「……勇者が、かつての仲間の二人と合流した」

596: 2018/03/22(木) 16:59:25.109 ID:+XRUC74z0.net
呪術師「!」

呪術師「僧侶と武闘家か」

呪術師「だが、もう聖剣は無い。魔王様さえお戻りになれば、勇者など大した問題ではない……」

魔物使い「呪術師。すでに聖剣が無いからと、あまり勇者とその仲間をあなどるべきではない」

呪術師「……。残りの連中には手を打っている」

呪術師「あぁわかっているさ。仮にも一度は魔王様を討った男だ。油断などするものか」

598: 2018/03/22(木) 17:31:25.116 ID:+XRUC74z0.net
戦士「…………ぐっ……」

魔法使い「戦士!!」


竜人「……蟲男。どういうつもりだ」

蟲男「ああ? どういうつもりも何も、ちょいと助太刀してやっただけじゃねえか」

竜人「貴様……!」

蟲男「別にいいだろうそのくらい。互いに互いを利用しあう。そこの人間どももよく使う手だ」

蟲男「まあ、今回は事前に蒔いたタネを利用させてもらったがな。前回目を付けといてよかったぜ。再利用ってヤツだ」

蟲「……………」ワシャワシャ

子ども「………………」

戦士「ちっ、ワンパターンな野郎だ……」

魔法使い「……ッ!」

蟲男「おっと。杖を下ろせ魔法使い。お前の魔法は厄介だ。動けばこいつの目玉をくり抜くぞ」

599: 2018/03/22(木) 17:32:31.610 ID:+XRUC74z0.net
蟲男「くひひっ。いいザマだ。さっきまでの威勢はどうした」

戦士「…………」


魔法使い「……このッ」

竜人「魔法使い。やめておけ」

魔法使い「!」

竜人「竜の鱗は魔力の動きに聡い。お前が今何をしようとしているかなど手に取るようにわかる」

魔法使い「…………」

竜人「あの男のやり方は気に入らんが……それでも今は、魔王様のことが優先だ。俺も仕事の選り好みはすまい」

魔法使い「なっ、魔王の……まさか……」

竜人「それより、呪術師は生贄の質が低いと嘆いていたな。お前の保有する魔力。連れて行けばまず間違いなく魔王様の復活の一助となるだろう」

魔法使い「くっ」

601: 2018/03/22(木) 17:43:15.804 ID:+XRUC74z0.net
ちょっと人にごはん誘われたので行ってくる
もうキリのいいところまで書き終わるから戻ったら投下する

617: 2018/03/22(木) 20:45:51.743 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「斜面を駆けますよ! 馬刺し!」

馬刺し「ヒヒーン!」

ドドドドドド…

女騎士「……急がなきゃ」

女騎士「もっと、もっと早く」

618: 2018/03/22(木) 20:46:17.708 ID:+XRUC74z0.net
ドドドドドド…

女騎士「……………………」


村人『…………そうか。……そうか』

村人『……………………ありがとよ……』


女騎士「もう、間に合わないのは、嫌なんです……!!」

619: 2018/03/22(木) 20:47:35.138 ID:+XRUC74z0.net
焼き鳥「キィーーーーーー!」

バサッ

女騎士「…………焼き鳥?」

バサッ、バサッ

女騎士「あなた、なにを……。」

女騎士「ッ!? 聖槍が、急に熱く……!」

620: 2018/03/22(木) 20:48:09.602 ID:+XRUC74z0.net
馬刺し「ヒヒーン!」

女騎士「きゃっ!?」

ダンッ!


女騎士「ば、馬刺しっ!? 急に飛び上がるなんてっ」




焼き鳥「キィーーーーーー!」

バサバサッ

621: 2018/03/22(木) 20:48:29.492 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「なっ……!」

女騎士「焼き鳥が……」

スゥ…


女騎士「馬刺しの中に入って行っちゃいました……」

623: 2018/03/22(木) 20:49:11.598 ID:+XRUC74z0.net
馬刺し「ヒヒーン!」

バサッ

女騎士「わっ……馬刺し……飛んでる……あなた、飛んでいます!」

女騎士「なんだか色も白くなって翼も生えていますね」

女騎士「これはまるで天馬のようです!」

女騎士「これも、聖槍の力なのでしょうか……」

625: 2018/03/22(木) 20:50:45.744 ID:+XRUC74z0.net
魔法使い「せ、戦士!」

竜人「暴れるな」

ガッ

魔法使い「うっ……」


戦士「てめぇ、魔法使いに手を出すんじゃねえ!!」

蟲男「くひひっ。呪術師は良質な生贄を求めている。数はあるだけいいが、その女もまた良い糧になるだろう」

627: 2018/03/22(木) 20:51:13.611 ID:+XRUC74z0.net
竜人「……俺はもう行くぞ。貴様の戦いは見るに堪えん」

バサッ


戦士「空に……! 待ちやがれ!!」

蟲男「余所見をしている場合か?」

戦士「くそっ邪魔すんな!」

ギン!


戦士「魔法使いーーー!!」

629: 2018/03/22(木) 20:51:46.812 ID:+XRUC74z0.net
竜人「またくだらん仕事だったな」

竜人「魔王様のためとは言え、またあいつと組むのは御免被りたいものだ」


「ヒヒーン!」


竜人「……む?」

630: 2018/03/22(木) 20:52:18.857 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「やぁーーーーーーー!!」


ドシュッ!



竜人「がっ……貴様!!」

631: 2018/03/22(木) 20:54:36.159 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「魔法使いさん、大丈夫ですかっ」

バサッ、バサッ


魔法使い「うぅ……お、女騎士……?」

女騎士「はい。もう大丈夫です」

魔法使い「戦士を……お願い……」

女騎士「…………」


竜人「貴様、女騎士か」

女騎士「竜人……久しぶりですね」

633: 2018/03/22(木) 20:55:41.669 ID:+XRUC74z0.net
竜人「貴様、女騎士か」

女騎士「竜人……久しぶりですね」

竜人「その天馬……そしてその槍。只者ではないな」

女騎士「……」

竜人「そんな得物をどこで手に入れたかは知らんが……」


竜人「この竜人の背を取った代償、高く付くぞ」

女騎士「……あなたは、そんなものよりも大事なものを取ろうとしました」

女騎士「そちらこそ、覚悟してください!」ジャキッ

635: 2018/03/22(木) 21:09:04.539 ID:+XRUC74z0.net
ギィン!

ズガッ!

ガキィン!


蟲男「な、何だ……あの天馬は……あの槍は……!」

蟲男「女騎士ぃ……!!」ギリッ


戦士「…………」

戦士「……隙ありだ」

636: 2018/03/22(木) 21:09:35.365 ID:+XRUC74z0.net
戦士(ちょっと熱ぃが、我慢しろよ。……男だろう)

戦士「…………」

ボッ

子ども「……あつっ」

ジュッ

蟲「ブゥン…」ボトボト


蟲男「な、何だっ! 火だと!? 貴様、戦士だろう!」

戦士「へっ……。俺の嫁を誰だと思ってやがる」

637: 2018/03/22(木) 21:09:54.986 ID:+XRUC74z0.net
戦士(家事用の炎魔法と水魔法を教わっといてよかったぜ……素人仕事じゃこんなもんで魔力はすっからかんになっちまうし、全然大した威力もねえが)

戦士「おい、怪我はねえか」

子ども「……うん。ちょっとあちってなっただけだよ」

戦士「そ、そうか」

641: 2018/03/22(木) 21:39:57.220 ID:+XRUC74z0.net
ギィン、ガキィン、ドカッ!

竜人「……魔法使いを抱えたままでは戦いづらそうだな、女騎士」

女騎士「…………」

竜人「……いいだろう、その女を降ろすことを許そう。もちろん蟲男の手の届かぬ所にだ」

女騎士「……罠ですか?」

竜人「俺がそんな手を使う男と思うか」

女騎士「あなたは……。いいえ、そういう人でしたね」

竜人「ついてこい」

バサッ

642: 2018/03/22(木) 21:42:05.898 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「お待たせしました」

竜人「…………行くぞ!」

643: 2018/03/22(木) 21:43:10.012 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「はっ!」

竜人「くっ……」


竜人「以前戦ったときとは別人のようだな……まさか貴様がここまでやるようになっているとは」

竜人「人間で歯応えがあるのは勇者ばかりと思っていた。嬉しいぞ、女騎士」

女騎士「はぁ、はぁ……」

女騎士(この聖槍の力、思ったよりも消耗が激しい……!)

竜人「これこそこの俺が求めた戦いだ。蟲男めの姑息な戦い方に飽いていたところ、まさに望むところ!」

竜人「もっとだ! もっと力を見せろ女騎士!!」ゴォッ

女騎士「…………ッ!」

645: 2018/03/22(木) 21:57:26.913 ID:+XRUC74z0.net
キィン! ズガッ! ガキィン!

ギィン! ガキィン! ズドッ!


竜人「ハァ……ハァ……」

女騎士「はぁ……! はぁ……!」

竜人「……もう少し愉しませてもらいたい所だが、日も暮れてきた。どうやら、互いに限界も近いようだ」

竜人「次の一撃で決着を付けようか」

女騎士「はぁ、はぁ……望むところです……!」

女騎士「馬刺し、焼き鳥……あなたたちも疲れているでしょうが、最後に力を貸してください……!」

646: 2018/03/22(木) 21:58:40.747 ID:+XRUC74z0.net
竜人「…………いざ」

女騎士「…………ッ!」


女騎士(信じていますよ、馬刺し、焼き鳥!)


竜人「おぉっ!!」

女騎士「はぁっ!」

バッ


竜人「なっ!! 飛ん……ッ!?」


女騎士「やぁーーーーーーー!!」


ドシュッ…

648: 2018/03/22(木) 22:02:04.270 ID:+XRUC74z0.net
女騎士「わぁーーっ、落ちてます! 落ちてます!」

ヒューーーー……



「ヒヒーーーーン!!」


女騎士「!」

女騎士「馬刺しっ! 焼き鳥っ!」

651: 2018/03/22(木) 22:07:59.038 ID:+XRUC74z0.net
ドサッ…

竜人「…………」


バサッ、バサッ…

女騎士「……竜人」


竜人「あぁ……俺の負けだ」

652: 2018/03/22(木) 22:11:59.677 ID:+XRUC74z0.net
竜人「久方ぶりに、血の滾る、よき戦いだった。……未練はない」

女騎士「…………」

竜人「……あぁ、だが」

竜人「貴様とは、また矛を交えたいものだな……」

653: 2018/03/22(木) 22:17:48.716 ID:+XRUC74z0.net
ガサガサガサガサッ

蟲「……………………ッ!」

蟲「くそっ、戦士のやろうに細切れにされたッ!」

蟲「なんとか本体だけは逃がせたが、ちくしょう!」

蟲「あいつら、体がまた揃ったら絶対に頃してやる!」

蟲「特に女騎士のヤツは許さねえ!」

蟲「蟲の海に沈めて、泣いて赦しを乞うても嬲り続けてやる……!」

ザッ

蟲「…………あ?」



魔法使い「……………………ふぅん」

655: 2018/03/22(木) 22:30:18.985 ID:+XRUC74z0.net
戦士「で。このビンに入ってる氷漬けのちっこいのが、あいつの本体かよ」

魔法使い「そ。あのままプチッと潰してもジュッと焼いても良かったんだけど。なんだかこのまま楽にしてやるのも癪だったしね」

女騎士「あ、あはは……相変わらずですね、魔法使いさん」

魔法使い「でもいまいち使い道がわからないわ……あなたの鳥、食べるかしらこれ」

女騎士「や、焼き鳥にそんなもの食べさせないでくださいっ」

656: 2018/03/22(木) 22:32:10.711 ID:+XRUC74z0.net
ちょっと休憩

669: 2018/03/23(金) 00:00:03.430 ID:fjda8Zj90.net
その頃

勇者「……金が無え」

盗賊「アンタが剣をポキポキ折っちまうからだろうが」

勇者「……頑丈な剣がほしい」

盗賊「そんな金無えっての」


盗賊「くそ、人が柄にもなく真面目にシコシコ貯めた金全部使ってこれだぜ」

僧侶「ま、まあまあ。私たちも出しますから。ね?」

武闘家「うむ。すぐに折ってしまうとは言え、やはり我々には勇者の剣技が必要だろう……やむを得まい」

勇者「……すまねえ」

武闘家「そう思うのならもう少し大人しい太刀筋を覚えるんだな」

674: 2018/03/23(金) 00:35:43.975 ID:fjda8Zj90.net
魔法使い「それにしても、戦いが終わったら元に戻っちゃったわね。あなたの馬と鳥」

女騎士「馬刺しと焼き鳥のことですね」

魔法使い「あなたとは長い付き合いになるけれど、そういうところは未だによくわからないわ」


馬刺し「ブルルッ」

焼き鳥「キィ」

675: 2018/03/23(金) 00:40:23.394 ID:fjda8Zj90.net
魔法使い「それにしてもよく使いこなせてたじゃない、聖槍。調べに行くだけじゃなかったんだ」

女騎士「はい。勇者さまの聖剣の代わりをと思いましてこうして持ってきて……あっ」

魔法使い「勇者? 聖剣? いったい何があったのかしら。竜人や蟲男も気になることを言っていたし」

女騎士「……あわわ」チラッチラッ

戦士「…………はぁ」

676: 2018/03/23(金) 00:43:43.769 ID:fjda8Zj90.net
魔法使い「……そんなことがあったのね」

女騎士「は、はい」

魔法使い「それにしてもわたしだけに隠し事なんて狡いじゃない。戦士も知ってるみたいだし、僧侶や武闘家も一枚噛んでいるんでしょう」

女騎士「う。」

魔法使い「……わたしだけ、除け者?」

女騎士「そ、そんなことは……」

戦士「もういいだろう魔法使い。お前も気付いてる通り、女騎士に口止めしたのは俺だ」

677: 2018/03/23(金) 00:49:23.185 ID:fjda8Zj90.net
魔法使い「やっぱりね。もともとこの子に腹芸なんて向いてないのよ。……口止めの理由は、聞かないでおいてあげるわ」

戦士「…………」

魔法使い「とにかく。聞いたからには黙っているつもりはないわよ、わたし」

戦士「!」

女騎士「で、でも魔法使いさん……」

魔法使い「いいから。とにかく、今回の件はそれなりに頭に来たわ。わたし、やられっぱなしは性に合わないの。知ってるでしょう?」

678: 2018/03/23(金) 00:57:51.678 ID:fjda8Zj90.net
戦士「だがよ、…………」

魔法使い「そんなに気にしてくれるのなら、あなたが守ってちょうだいよね。いつも、そうしてくれたじゃない。それとも、自信がない?」

戦士「……チッ、その言い方は狡ぃだろうが……」



女騎士(魔法使いさん、やけに早口ですね。戦士さんの気持ちは嬉しかったのでしょう)

女騎士(……照れ隠しですかね?)


魔法使い「…………」ジロッ

女騎士「ひっ」

馬刺し「ブルルッ」

焼き鳥「キィ」

679: 2018/03/23(金) 01:09:40.036 ID:fjda8Zj90.net
魔法使い「ひとまずその聖槍だけれど」

女騎士「はい。勇者さまにお渡ししたいと思います」

魔法使い「はぁ。……あなた、まだそんなことを言ってるの?」

女騎士「?」

魔法使い「いい? 聖槍はあなたを選んだのよ。勇者でも、他の誰でもないあなたを」

魔法使い「ここに来たとき、実はわたしも興味本位で聖槍を見に行ったことがあるの」

魔法使い「それで、最初の結界。あなたは突破したんでしょうけれど、わたしはあれを出れなかったから、魔力で無理やりこじ開けて押し通ったわ」

戦士「お前、女神の祠になんてことしやがる」

680: 2018/03/23(金) 01:17:17.931 ID:fjda8Zj90.net
魔法使い「それでなんとか聖槍の前に辿り着いたのだけれど、抜けなかったのよ。いくら魔力で小細工しようとしても全然ダメ」

魔法使い「やっぱり台座の碑文に当てはまらなかったからみたいね」

女騎士「そ、そんな。魔法使いさんは強くて優しい乙女ですよっ」

魔法使い「………………………………う、うん。そうね。まあ、最初の結界でズルをしたのもいけなかったのかもしれないわ」

魔法使い「とにかく、勇者にそれを渡してもそれは使えない。あなたが持つべき物なのよ」

701: 2018/03/23(金) 06:17:37.338 ID:fjda8Zj90.net

702: 2018/03/23(金) 06:22:02.393 ID:fjda8Zj90.net
お風呂入ってくりゅ

709: 2018/03/23(金) 07:00:34.831 ID:fjda8Zj90.net
呪術師「……………………」

呪術師「……予定よりも魂の集まりが悪い」

呪術師「勇者…………いや、認めよう。女騎士」

呪術師「ついには聖槍を手にし、単独で竜人をも下した」

呪術師「貴様が邪魔だ」

呪術師「……小物の魂を各地で搔き集めるだけでは足りぬ」

呪術師「もっと大量の……」

呪術師「……いや、それとも……」

呪術師「……………………」

710: 2018/03/23(金) 07:02:57.003 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「まずは、勇者さまたちと合流したいと思います」

魔法使い「ごめんなさいね。わたしたちも一緒に出たいのだけれど、少し準備がいるの。戦士の怪我もあるし」

戦士「……俺はこんなの平気だし、昔旅してたときだって生傷は絶えなかったじゃねえか」

魔法使い「あのときは僧侶がいたでしょう。それに、本当にわたしを守ってくれるのなら、あなたは万全な状態でいてくれないとね」

戦士「……ケッ」

女騎士「あはは…」

711: 2018/03/23(金) 07:04:16.155 ID:fjda8Zj90.net
戦士「……勇者のやろう、腕は鈍ってなかったか」

女騎士「むしろ、以前よりも冴え渡ってるように見えました」

戦士「野郎……。追い越そうとしてもまだ先にいやがるのか。……それでこそだがな」

魔法使い「あら、珍しい。本人の前ではそういうこと言わないのにね」

戦士「うるせえ」

712: 2018/03/23(金) 07:05:40.636 ID:fjda8Zj90.net
魔法使い「行く宛に心当たりはあるの?」

女騎士「勇者さまも今頃は故郷を出られて、東の方に向かっているかと思います。ひとまずは王都を目指してみるつもりです」

魔法使い「そ。……じゃあ、行ってらっしゃい。怪我しちゃだめよ。」ギュッ

女騎士「魔法使いさん……」ギュッ

魔法使い「……お財布はちゃんと持った? 肌身離さず持ち歩くのよ。あと、荷物は必ず目に届くところに……」

女騎士「そ、それはもういいですからっ」



女騎士「では、行きましょう。馬刺し、焼き鳥っ」

馬刺し「ヒヒーン!」

焼き鳥「キィ」

714: 2018/03/23(金) 07:18:39.339 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「大河川が見えてきました」

女騎士「またあの川を渡るのですね」

女騎士「また天馬の力を借りられれば良いのですが」

女騎士「あれは消耗が激しいし、お前たちも疲れてしまいますものね」

女騎士「長旅のことを思えば、あまり使えるものではありませんね」

馬刺し「ブルルッ」

焼き鳥「キィ」

717: 2018/03/23(金) 07:40:58.146 ID:fjda8Zj90.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「川沿いの村に来ました」

女騎士「前に来たときは人は誰もいませんでしたが、徐々に人が戻りつつあるみたいですね」

女騎士「やはり海魔を倒したのが良かったのでしょう」

女騎士「あの村人さんが住んでいる対岸の村も、同じように復興が進んでいると良いのですが」

女騎士「きっと、大丈夫ですよね」

女騎士「まずは舟を探しましょうか」

718: 2018/03/23(金) 07:42:08.576 ID:fjda8Zj90.net
あしゃごはん食べてくりゅ

724: 2018/03/23(金) 08:47:05.026 ID:fjda8Zj90.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「川沿いの村に来ました」

女騎士「前に来たときは人は誰もいませんでしたが、徐々に人が戻りつつあるみたいですね」

女騎士「やはり海魔を倒したのが良かったのでしょう」

女騎士「あの村人さんが住んでいる対岸の村も、同じように復興が進んでいると良いのですが」

女騎士「きっと、大丈夫ですよね」

女騎士「これだけ人が戻って来ているのなら、舟を出してくれる人もいるはずですよね……」

女騎士「あっ、そこの人。わたし、川の向こうの村に渡りたいのですが…」

725: 2018/03/23(金) 08:47:33.684 ID:fjda8Zj90.net
二時間後

女騎士「誰も乗せてくれませんね」

馬刺し「ヒヒーン」

焼き鳥「キィ」

726: 2018/03/23(金) 08:49:24.661 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「もうっ。どこに行っても『鳥はともかく馬なんて載せられない』ですって」

女騎士「馬刺しはこんなにいい子なのに」

女騎士「説明しても誰もわかってくれませんね……」

馬刺し「ブルルッ」

女騎士「おおよしよし」

727: 2018/03/23(金) 08:54:59.673 ID:fjda8Zj90.net
??「おーーーい、嬢ちゃん!」

女騎士「!」

728: 2018/03/23(金) 08:58:38.502 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「あのときの村人さん!」

村人「おう、久しぶりだな。つってもあれからそんなに経っちゃいねえが」

女騎士「こちらの村にいらしたんですね」

村人「あぁ。たまたま仕事でな」

村人「あんたのおかげで村から離れてった奴らもぼちぼち戻ってきた。感謝してるぜ」

女騎士「それは良かったです」

729: 2018/03/23(金) 08:59:49.474 ID:fjda8Zj90.net
村人「ははぁん、誰も舟を出してくれねえってのか」

女騎士「そうなんです。最初の交渉はうまくいくのですが、みなさん馬刺しのことを知ると途端に嫌そうな顔をしてしまって……」

村人「あぁ。例の海魔にぶっ壊されて、今は舟も少ねえ。そんだけデカイ馬を載せたがる奴はいねえだろうなあ。みんな余裕がねえのさ」

女騎士「大きい……思えば、初めて会ったときよりも少し大きくなりましたね。馬刺し」

馬刺し「ヒヒーン」

737: 2018/03/23(金) 09:31:24.614 ID:fjda8Zj90.net
村人「霊峰の用事とやらは上手く行ったのかい」

女騎士「おかげさまで。舟を出してくれて助かりました」

村人「おう。帰りの舟も出してやる。たまたま居合わせて良かったなあ、あんたのことなら馬も含めていつでもタダで乗せてやる」

女騎士「あ、ありがとうございます村人さん!」

村人「ついでに渡したいモンもあるしな」

女騎士「?」

村人「まあ、その話は川を渡ってからだな。付いてきな、乗せてやるよ」

738: 2018/03/23(金) 09:31:48.489 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「…………うぷ……」

村人「相変わらず舟に弱えなアンタ」


馬刺し「ブルルッ」

焼き鳥「キィキィ」

740: 2018/03/23(金) 09:48:24.747 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「こ、これは……わたしの鎧……ですが……」

村人「あぁ。あんたの鎧、あの時に沈んじまったままだったろう。村に戻って来た奴らを説得して、一緒に川底を探したんだ」

村人「なんとか見つかったんだが、そん時にゃあこの有様でな」

女騎士「さびさびですね……。ですが、探していただいてありがとうございます。お気持ちだけでも嬉しいです」

村人「いいや、渡したいモンってのはこれじゃねえ」

女騎士「?」

741: 2018/03/23(金) 09:49:49.390 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「……あっ」

村人「村の骨董屋でホコリ被ってたモンだが、主人曰くかなりの一品だそうだ」

村人「金物屋に手入れしてもらって、もう使える状態にはしてある。サイズも、その鎧を使って調整済みだ。もらってやってくれねえか」

女騎士「そんな……こんな立派なものを」

村人「いいんだ。俺たちのせめてもの気持ちだ。受け取ってくれや」

女騎士「村人さん……」

759: 2018/03/23(金) 12:32:07.223 ID:fjda8Zj90.net
ゴソゴソ


女騎士「ど、どうですか?」

村人「おう、バッチリ決まってるぜ」

女騎士「なんだか少し照れますね……でも、新しい鎧というのはいつ着てもいいものです。みなさんのお気持ちに、この鎧に応えられるよう、がんばります!」

760: 2018/03/23(金) 12:32:43.190 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「では、そろそろ行きますね」

村人「おう。達者でな。また、落ち着いたら遊びにでもこいや」

女騎士「はい。……いつかきっと、また会いましょう。さようなら!」

馬刺し「ヒヒーン!」

焼き鳥「キィキィ!」バサバサッ



村人「行っちまったか……」

村人「へへっ。なんだか新しく娘でもできたみてえな気分だ」

村人「さて、この錆びた鎧どうしようか」

村人「このまま捨てちまうってのもアレだな。何か考えとくか」

763: 2018/03/23(金) 12:42:04.098 ID:fjda8Zj90.net
パカラッパカラッヒヒーン

女騎士「あれからしばらく走りましたが、王都まであと三日と言ったところでしょうか」

女騎士「このまま何事もなく勇者さまと合流できれば良いのですが……」

女騎士「あれからの呪術師の動きも気になります」

女騎士「戦士さんと戦った蟲男の話を聞くに、呪術師は魔王復活にまだ手こずっていそうとのことですが」

女騎士「……何だか。少し、胸騒ぎがします」

女騎士「ひとまずは王都へ。急がなくては」

765: 2018/03/23(金) 13:03:45.873 ID:fjda8Zj90.net
道中、とある村のはずれ

ズバッ

魔物「ギィーーー……!」

ドサッ

村人「女騎士さま、ありがとうございます」

女騎士「いえ、たまたま通りがかったものですから」

村人「少し前から魔王軍の動きが活発になってはきましたが、ここ二、三日は特に魔物が増えてきまして」

女騎士「ここ二、三日ですか?」

村人「えぇ。……何となく、ですが、どうも少し前までの魔物たちと違って、この村を襲う目的というわけでもなさそうで。まるでどこかに向かう通りがかりに、たまたま襲ってきたような印象を受けます」

女騎士「通りがかりに……? あの、魔物が来た方角とか、向かってそうな場所とか。何か印象はありませんか?」

村人「うぅん、言われてみれば。あっちの方からこっちの方……あぁそうだ、王都の側へって感じですかね」

女騎士「!」

女騎士「情報、ありがとうございます」

766: 2018/03/23(金) 13:04:09.947 ID:fjda8Zj90.net
王都、王城

騎士団長「この前の魔王軍の襲撃はこちらの油断……不意を突かれたようなものだ。まったくいいようにやられてしまった」

騎士団長「魔王が討伐されたことで気の緩みがあったのかもしれんな」

騎士団長「あれから、王都の襲撃の傷も癒えつつある。兵達の気をさらに引き締め直さなければ……む?」


ドタドタ

バン!


騎士「団長! 大変です!」

騎士団長「どうした、落ち着いて報告しろ」

騎士「はっ! 物見からの報告で、南の方から、動く巨大な何かが王都に向かっているとのことです!」

騎士団長「巨大な……!? 私も行く。案内してくれ」

767: 2018/03/23(金) 13:22:45.467 ID:fjda8Zj90.net
呪術師「……人魂の数はまだ足りぬ」

呪術師「各地でコソコソと動き回るだけでは限界があると見ていい」

呪術師「薄く広げた手駒を、勇者とその仲間に各個撃破されるのも安い被害ではない」

呪術師「忌々しい人間の都、王都」

呪術師「人魂の数も申し分ない上、何よりあそこはこの大陸の中心にあたる」

呪術師「我ら魔族を大陸の端に追いやり、独占しているエネルギー」

呪術師「人魂の狩り場にも良いが、あそこさえ落とせば、魔王様は……」

呪術師「あの場は奴らには無用の長物だ。我ら魔族で有効利用させてもらうぞ……!」

771: 2018/03/23(金) 14:20:10.795 ID:fjda8Zj90.net
騎士団長「あれは……!」

騎士「人型をした、巨大な石の魔物……まだここからでは影しか見えませんが、宮廷魔導師に遠見をさせたところ、胴体や頭部など、体の一部が城の形に似ているとのこと。中に何者がいるかはまだ掴めていません」

騎士団長「城塞形の、ゴーレムとでも言ったところか」

騎士「奴の速度は大したものではありませんが、着実にこの王都に向けて進行しています」

騎士団長「……猶予はどのくらいある」

騎士「……おそらく、三日後にはこの王都に到着すると思われます」

騎士団長「三日か……。あの図体のおかげで早くに観測できた。不幸中の幸いといったところか」

騎士「団長……」

騎士団長「それだけの猶予があるならば、すぐに首脳陣による会議が開かれることだろう。我々の一存だけではまだ何も決定できん」

騎士団長「だが、覚悟はしておくべきだろう」

773: 2018/03/23(金) 15:00:46.603 ID:fjda8Zj90.net
ゴーレム襲来まであと三日

騎士団長「住民の様子はどうだ」

騎士「早速荷をまとめて避難を求める者もいますが、まだ現実を受け止めきれない様子の者が大半のようです」

騎士団長「ふむ。……王都を囲うように現れた魔物の群れはどうだ」

騎士「今も討伐隊が動いていますが、魔物の増加量に追いついていないのが現状です」

騎士団長「これでは住民の避難退路の確保もままならんな……」

騎士「あの、首脳陣の会議の様子はいかがですか」

騎士団長「議論は一進一退を繰り返している。まだまだ意見がまとまるのは先だろう」

騎士「……歯痒いですね」

騎士団長「そう言うな。彼らにも落ち着くだけの時間は必要なのだ。我々は今出来ることをやるだけだ」

774: 2018/03/23(金) 15:01:11.083 ID:fjda8Zj90.net
ゴーレム襲来まであと二日

騎士団長「今王都にいる魔法使い総出で、ゴーレム迎撃用の大規模術式が組まれることになった。魔法陣は南の城門に設置される」

騎士「我々はその護衛ですか」

騎士団長「あぁ。避難退路の確保に当てていた魔物討伐隊もそちらに回すことになった。どうやら首脳陣はこの魔法陣に全てを託すことに決めたらしい。ついに腹を括ったと言うわけだ」

騎士「……本当に大丈夫なのでしょうか」

騎士団長「言うな。不安なのは皆同じなのだ。騎士たるお前がそれを表に出すんじゃあない」

騎士「……はっ」

775: 2018/03/23(金) 15:01:57.442 ID:fjda8Zj90.net
ゴーレム襲来まであと一日

騎士「日に日に大きくなるゴーレムの影に、住民はパニックを起こしかけています。中には、無理やり防壁をよじ登って逃げ出そうとする者も……壁の外には魔物の群れがいると言っても中々聞いてくれません」

騎士団長「……騎士団や魔導師団の存在では住民を安心させるに足りんということが、歯痒いと同時に不甲斐ないな」

騎士「こんな時、勇者様がいてくれたら……」

騎士団長「…………」

776: 2018/03/23(金) 15:13:17.265 ID:fjda8Zj90.net
今日中に終わるか不安になってきた
16時くらいまで休憩する…

781: 2018/03/23(金) 16:34:21.275 ID:fjda8Zj90.net
ゴーレム襲来当日

騎士A「わ、わかってはいたことだが……でかいな」

騎士B「こんなの本当に倒せるのか……」

騎士C「魔法陣を組んだ魔導師団を信じる他ないだろう。今この国でできる、間違いなく最大の迎撃だ」

騎士A「これで駄目なら、いよいよこの国もおしまいってことか」

騎士B「俺たちにできることは、発射の準備ができるまでこの魔法陣を守り抜くことだけ、か」

782: 2018/03/23(金) 16:38:31.197 ID:fjda8Zj90.net
騎士団長「迎撃魔法の発動まであとどれ程だ?」

騎士「およそ、二時間ほどだそうです」

騎士団長「……長いな。ここまで近づいているのだ。敵も陣の存在には気がついていることだろう。何の妨害もないというのは少し楽観がすぎるか……」

騎士「! ゴーレムから……ゴーレムの中から多数の魔物が湧いて出て来ます!」

騎士団長「早速来たか……!」

783: 2018/03/23(金) 16:41:10.425 ID:fjda8Zj90.net
騎士団長「あの量の魔物だ! 黙って見ていたところで城門が破られるのは時間の問題! よって先に撃って出ることとする!」

騎士団長「だが、城門も一時の時間稼ぎには使えるだろう。いざという時に閉門できるよう準備しておけ!」

騎士団長「開門と同時に王都周囲の魔物も雪崩れ込んでくると思われる! 皆、気を引き締めてかかるように!」

騎士団長「最優先は魔法陣の守護だ! 何としても時を稼ぐ! 皆、配置に付け!」

784: 2018/03/23(金) 16:43:46.243 ID:fjda8Zj90.net
下級悪魔「ギィィ!」

ズバッ

騎士A「くっ、やはり数が多い! 斬っても斬ってもキリがないぞ!」

下級悪魔「ギィィ!」

ガブッ

騎士B「ぐあああ!」

騎士A「くそっ、お前、大丈夫か!」

ズバッ

騎士団長「A隊退がれ! B隊と交代だ。C隊は負傷者の救護に入れ!」

785: 2018/03/23(金) 16:47:17.087 ID:fjda8Zj90.net
騎士「ッ!? 団長! ゴーレムの中から更に増援が! しかもあれは……!」


ドラゴン「GAAAAAAAAAAAAAAA!!」

騎士C「うわあああああ!!」

騎士D「こんなの、どうやって戦えばいいんだ!」


騎士団長「飛竜……! 三体程だが、前回の襲撃の時とは比べものにならん大きさだ!」

787: 2018/03/23(金) 16:54:08.966 ID:fjda8Zj90.net
騎士団長「退け! 退け! 弓兵と魔導隊は奴を撃て!! 城門は閉じろ!!」

ビシビシッ

ドラゴン「GAAAAAAAAAAAAAAA!!」


騎士「ダメです! まるで効いていません!」

騎士団長「くそっ! どうしろと言うのだ!」

788: 2018/03/23(金) 16:56:36.912 ID:fjda8Zj90.net
ドラゴン「GAAAAAAAAAAAAAAA!!」


騎士団長「!? まずい! ブレスを撃つつもりだ!!」

騎士「閉門、間に合いません!!」

騎士団長「目標は……魔法陣か!? あんなものが直撃すれば魔法陣は……!」

騎士「くそっ……!」

790: 2018/03/23(金) 17:02:22.531 ID:fjda8Zj90.net
バサバサッ


騎士「……!!」


騎士「団長! あ、あれは……!」

騎士団長「なっ……あれは……!?」


騎士団長「…………天馬……!?」

791: 2018/03/23(金) 17:02:52.866 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「やぁーーーーー!!」


ドシュッ!

ドラゴン「GAAAAAAAA!!?」


騎士「ドラゴン! ブレスの動作を中断!」

騎士団長「あの声は、まさか女騎士か!?」

793: 2018/03/23(金) 17:04:26.996 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「聖槍よ……!!」

女騎士「力を貸してくださいっ!!」


カッ!

ドラゴン「GAAAAA!!?」


ドパァン!!

ドラゴン「……………………」


ズズゥン……!

797: 2018/03/23(金) 17:17:55.005 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「はぁ…!! はぁ…!!」

女騎士「ドラゴンはあと二体……!」

女騎士「…………スゥ……」


女騎士「騎士団のみなさん! ドラゴンはわたしが引き受けます!」

女騎士「みなさんは負傷者を救助しつつ小型魔物の迎撃! 一時退避と、立て直しを!」


バサッ!

799: 2018/03/23(金) 17:23:05.178 ID:fjda8Zj90.net
騎士団長「……………………」

騎士「……だ、団長……?」

騎士団長「……ククッ、先に言われてしまったな」


騎士団長「皆!! 呆けている場合ではないぞ!! あの天馬の騎士の声に従い行動に移せ!! 機運は我らにあるぞ!!」

800: 2018/03/23(金) 17:35:40.653 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「やぁーーーっ!!」

ドパァン!

ドラゴン2「GAAAAA!!」

ズズゥン……!


騎士A「……天馬の、騎士様……」

騎士B「め、女神だ……きっと女神様の遣いなんだ!」

騎士C「うおおおーーー!!」


ウワァァァーーーー!!

メガミサマノツカイダーーー!!


女騎士「はぁ…!! はぁ…!! はぁ…!! はぁ…!!」

801: 2018/03/23(金) 17:38:02.413 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「あと……!! 一体……!!」

女騎士「これで…………倒れてっ!!」

ドパァン!!


ドラゴン3「……………………!!」


ズズゥン……!

803: 2018/03/23(金) 17:41:03.714 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「やっ…………た…………」フラ…


カッ!


女騎士「あっ……」


ヒューーー…

ドサッ

馬刺し「ブルルッ…」

焼き鳥「キィ…」

804: 2018/03/23(金) 17:46:02.494 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「……………………」

馬刺し「ヒヒーン」

焼き鳥「キィ、キィ」


女騎士「……あ、あはは……参っちゃいました……」

女騎士「まだ……戦場の中なのに……もう一歩も動けません……」


ザッ


???「良いものを見させてもらった」

女騎士「ッ!」

805: 2018/03/23(金) 17:48:52.905 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「あなたは……」

デュラハン「……久しいな、女騎士。以前の魔王城以来か」

女騎士「……デュラハン……!」

女騎士「……くっ」

809: 2018/03/23(金) 17:55:28.281 ID:fjda8Zj90.net
デュラハン「見違えたぞ。以前の貴様も確かに強きものであったが。」

デュラハン「生きた人間の年月というのは本当に……人を変えるものだ」

女騎士「…………」

ググッ…

女騎士「……あっ」

ドサッ

デュラハン「立ち上がれぬ程に疲弊した貴様と戦えぬのは残念だが、貴様の武勇はこのデュラハンがしかと目に焼き付けた」

女騎士「くっ……」

デュラハン「……本当に、刃を交わせぬのは残念だが、ここは戦場。恨むでないぞ」

グワッ

810: 2018/03/23(金) 17:58:53.679 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「ッ!!!!」


ギィィィィン!!



デュラハン「貴様……」

女騎士「…………あはは……やっぱり来てくれましたね」


女騎士「勇者さま……」


勇者「…………」

813: 2018/03/23(金) 18:15:37.446 ID:fjda8Zj90.net
デュラハン「勇者……やはり……」

勇者「盗賊、そいつを頼む」

盗賊「あいよ。……ほら、掴まりな」

女騎士「と、盗賊さん……どうしてあなたがここに……」

盗賊「それはまあ、成り行きってやつ? とにかくそんな話は後々。こんな所じゃあ落ち着いて話もできねえ」

盗賊「ほら、ご主人サマのピンチだ。前みたいに蹴ったりしないでくれよ……そらっ」

女騎士「あっ」

馬刺し「ブルルッ」

814: 2018/03/23(金) 18:16:19.846 ID:fjda8Zj90.net
女騎士「勇者さまっ!」

勇者「……女騎士」

女騎士「は、はい……」

勇者「カッコよかったぜ。後は任せろ」

女騎士「……はいっ」


盗賊「ひとまず城門まで撤退するぜ。少々荒っぽいが、舌を噛むなよっ」

馬刺し「ヒヒーン!」

パカラッパカラッ…

851: 2018/03/23(金) 23:22:13.581 ID:fjda8Zj90.net
勇者「……よし、覚悟しろよ」ジャキッ

デュラハン「ふん……随分と物々しい装いではないか、勇者よ」

勇者「あいにく、燃費が悪いんでな」

デュラハン「その背中に提げている大量の剣……聖剣を失い、まだ戦い慣れておらぬと見える」

勇者「…………」

デュラハン「だがあのデーモンを一撃で討った技の冴え……決して侮りはすまい」チャキ

853: 2018/03/23(金) 23:39:34.088 ID:fjda8Zj90.net
ギィン! ガキィン!

ドガッ! キィン!


ピキッ…


勇者「……ちっ」

ビュッ

デュラハン「ふん」

キン!


勇者「……やっぱ一筋縄じゃあ行かないか」スラッ

デュラハン「三本目……。どうした勇者、聖剣無しではこんなものか。このままでは先に剣の方が尽きてしまうぞ」

勇者「くそ、あんまり人が気にしてることを言うんじゃねえよ」

デュラハン「かつて騎士として、剣の道を生きた私には貴様の太刀筋がはっきりと見える。そのような鈍らばかりを掻き集めたところで、デーモンの時のような力押しは通用しないと思え」

勇者「そう言うお前はなかなか良い剣をもっているじゃねえか」

デュラハン「生前から愛用の魔剣だ。もっとも、魔剣となったのは私の氏後。貴様ら人間の手により、人間だった私が処刑された後の話だがな」

855: 2018/03/23(金) 23:52:07.870 ID:fjda8Zj90.net
勇者「へぇ。そりゃさぞかし名剣なんだろうな」

勇者「…………」

勇者「決めたぜ。お前に勝ったらその剣、貰い受ける」

デュラハン「……ふん。戯言をっ!」

ギィン!

856: 2018/03/23(金) 23:59:07.985 ID:fjda8Zj90.net
トリップテスト

858: 2018/03/24(土) 00:13:59.351 ID:0eB7R4CH0.net
パカラッパカラッヒヒーン!

盗賊「そら、もうすぐ城門だ。中じゃあ僧侶の姐さんが負傷者の手当てしながら待ってるはずだ。もうちょっと気張ってくれよ!」

女騎士「…………盗賊さん……」

盗賊「ん? なんだよ、俺ァあんまり乗馬慣れてねえから、下手に喋ると舌噛むぞ」

女騎士「……勇者さま、剣が……」

盗賊「ああ。あの野郎、ハリネズミみたいになってたろ。剣がポキポキ折れるたびにいちいち調達してちゃ割に合わねえってもんで、最初から全部担いでんだ」

女騎士「剣が折れる……?」

盗賊「今までの聖剣の感覚で振り回してると、並みの剣じゃすぐに折れちまうんだとよ」

盗賊「ありゃあ逆に動きづれぇんじゃねえかと思うんだが、変Oみたいな身体能力持った超人サンの考えることはわかりませんわ」

女騎士「……………………」

861: 2018/03/24(土) 00:42:00.446 ID:0eB7R4CH0.net
城門

盗賊「僧侶の姐さん!」

僧侶「あっ、盗賊さん!」

盗賊「忙しい所悪りぃが、こいつを見てやってくれねえか」

僧侶「! 女騎士さん……!」

女騎士「僧侶さん……」

僧侶「見ていましたよ。よく頑張りましたね」

女騎士「…………」

僧侶「その槍……聖槍ですね。約束通り、手がかりどころか本物を持ってきて、その上使いこなしてしまうだなんて。あなたって子は、もう……」ギュッ

女騎士「あぅ……」

863: 2018/03/24(土) 00:43:44.478 ID:0eB7R4CH0.net
僧侶(ひどい消耗……! きっとまだ槍の力の加減ができていないんだわ……)

僧侶「あの、騎士団長さん。私は女騎士の治癒のために少しこの場を離れます」

騎士団長「ああ。助かりました、僧侶殿。あとは騎士団の救護班に何とかさせましょう。……女騎士を、頼みます」

僧侶「えぇ、任せてください」

騎士団長「女騎士」

女騎士「団長さん……」

騎士団長「すまない。君のおかげで助かった……君と共に戦えたこと、誇りに思う」

867: 2018/03/24(土) 01:12:29.485 ID:0eB7R4CH0.net
僧侶「それでは、女騎士をあちらのテントまで運びたいと思います。騎士さん、力を貸してくださいっ」

騎士A「はっ。承知しました」

騎士B「おい、急げ! 担架を用意しろ!」

盗賊「……………………」

盗賊「……………………」

盗賊(……ま、俺の役目もこの辺で終わりか)

868: 2018/03/24(土) 01:13:26.197 ID:0eB7R4CH0.net
盗賊(所詮盗賊上がりのチンピラにしちゃあよくやった方でしょ)

盗賊(女騎士に会って、勇者に会って。あとは成り行きでズルズルこんな所まで来ちまったが)

盗賊(救護もできねえし、戦闘だってあんな化け物どもに比べちゃからっきしの一般市民だ)

盗賊(本物同士のやりとりにゃやっぱり敵いませんわ)

盗賊(……女騎士を助けられただけでも俺にとっちゃ上出来ってとこですかね)

盗賊(あとは勇者やこいつらに任せて、俺ァ……)

盗賊(俺は……)


女騎士「……さん…………盗賊さん……」


盗賊「!」

870: 2018/03/24(土) 01:27:56.249 ID:0eB7R4CH0.net
盗賊「はいはい、お呼びですかい。ま、用事ならそこらの騎士サマにでも頼んだ方が……」

女騎士「盗賊さんに、お願いがあるんです……」

盗賊「……何だよ」

女騎士「……これを……」

盗賊「!」

盗賊「こいつは……」

女騎士「はい、わたしの剣です。……これを、勇者さまに届けてもらえませんか……」

盗賊「…………」

871: 2018/03/24(土) 01:28:26.998 ID:0eB7R4CH0.net
女騎士「本当は、この聖槍を持って行っていただきたいのですが……どうやらこの槍は、わたしにしか使えないようなのです……」

盗賊「…………」

女騎士「それでも、この剣はそれなりに名のある名剣……きっと、今の勇者さまのお力になってくれるはずです」

盗賊「……俺で、いいんかよ」

女騎士「盗賊さんだから、お願いできるんです……初めて会ったときのこと、覚えていますか?」

女騎士「ナイスパス、でしたよ」ニコッ

盗賊「……………………」

盗賊「……ちっ、しょうがねえな」

872: 2018/03/24(土) 01:31:16.187 ID:0eB7R4CH0.net
盗賊「本当は今からでもトンズラこいて布団にくるまってガタガタ震えていたいところなんですがねぇ。そんな男でいいなら、力になってやるよ。早く剣を貸しな」

女騎士「信じていますよ」

盗賊「あんまり過度な期待はかけないでくれよ」

女騎士「馬刺し……盗賊さんをよろしくお願いしますね……」

馬刺し「ヒヒーン!」



盗賊(上等だ……今は使いっぱしりだろうが何だろうが、やれることは何だってやってやろうじゃねえか……!)

873: 2018/03/24(土) 01:38:03.206 ID:0eB7R4CH0.net
少し休憩

879: 2018/03/24(土) 02:20:12.288 ID:0eB7R4CH0.net
ガキィン!


ピシピシ…

パキィン

勇者「……チィッ!」

デュラハン「七本目……そろそろ底が見えて来たな勇者よ」

勇者「へっ、残り三本もあればお前の首を落とすにゃ十分だ。……おっと、もう首は落ちてるんだったか」

デュラハン「……減らず口をっ!」

ギィン!

880: 2018/03/24(土) 02:21:08.040 ID:0eB7R4CH0.net
勇者(……認めるのは癪だが、奴の言う通りこのままじゃジリ貧だ)

勇者(何度か奴の身体に剣は届いちゃいるが……)


勇者「そこだっ!」

デュラハン「ッ!」

ズガッ!

デュラハン「…………」グラッ…


デュラハン「甘いわ!!」

ドガッ!

勇者「ぐっ……!」

勇者(この剣じゃ致命傷にならねえ!)

881: 2018/03/24(土) 02:22:24.345 ID:0eB7R4CH0.net
パカラッパカラッヒヒーン!

魔物「ギィィ!」

盗賊「くそっ、邪魔すんじゃねえ!」

ズバッ

盗賊「奴らは戦場のど真ん中で戦ってるはずだ」

盗賊「逃げる時はマシだったが、向かうとなると魔物の数が多すぎる……! このままじゃ勇者の所に辿り着く前にこっちが参っちまうぜ……!」

魔物「グルル……!」

盗賊「しつけえ!」

882: 2018/03/24(土) 02:23:05.833 ID:0eB7R4CH0.net
魔物2「ギィィィィィ!!」

盗賊「なっ……後ろから!?」

ドガッ!



武闘家「盗賊、無事か」

盗賊「武闘家のおっさん!」

883: 2018/03/24(土) 02:24:34.492 ID:0eB7R4CH0.net
武闘家「! その剣、女騎士の剣か」

盗賊「ああ、あのハリネズミに渡してくれとよ!」

武闘家「なるほどな。確かに彼女の剣ならば、勇者の剣技にも耐え得るだろう」


武闘家「……少し下がっていろ。道を開ける」

盗賊「あぁ? 何するつもりだよ」

武闘家「………………………………」


フゥーーーーーーーー…………

885: 2018/03/24(土) 02:25:30.083 ID:0eB7R4CH0.net
武闘家「……喝っ!!!」

ドウッ!!!

魔物の群れ「ギィィィィィィィ…………!!」

シュウウウウ……


盗賊「……つくづく思うが、勇者だけじゃなくてあんたも大概化け物だよな」

887: 2018/03/24(土) 02:27:58.987 ID:0eB7R4CH0.net
武闘家「奴らはこの先にいる。早く行け」

盗賊「武闘家のおっさんは?」

武闘家「なに。まだしぶとい奴らがいるものでな」


上級悪魔達「……………………」


盗賊「……へっ。任せたぜおっさん!」

馬刺し「ヒヒーン!」


武闘家「……………………」

武闘家「…………俺はまだ、おっさんと呼ばれるような年ではない……」

913: 2018/03/24(土) 08:36:10.282 ID:0eB7R4CH0.net

引用: 女騎士「女魔法使いが結婚、ですか」