120: 2014/02/05(水) 11:40:32 ID:75SAGjeY
122: 2014/02/05(水) 12:11:33 ID:8k0kLmKw
幼友(……やっぱり、やめよう)クルッ
幼友(いやいや、でもでも)クルッ
幼友(…せっかくだし…ね…)テクテク
幼友(だけどマズイって!)クルッ
幼友(……それでも、もうここまで来ちゃったし)クルッ
子供「ママー、アノ オネエチャン クルクル シテルー」
母親「コラ ユビサスンジャ アリマセン!」
幼友(あああ…やっぱり、二人で来れば良かったなぁ…)ハァ…
幼友(…着いちゃった)
幼友(ええいっ! 別に告白する訳じゃないんだからっ!)
幼友(たまたま近くを通る用事があっただけ! そういう事にしようっ!)
123: 2014/02/05(水) 12:16:03 ID:jkrajJdA
ピーンポーン……
…ガチャッ
男「はい?」
幼友「あ、あの! ちょっと近くを通ったからっ!」アセアセッ
男「はい」
幼友「これっ……今日、バレンタインだから…」スッ
男「……僕に?」
幼友(ヤバイ、顔がまともに見れない……私こんなに純情だっけ)
男「………」
幼友(うう…なにこの沈黙、顔上げられないよ)モジモジ
男「好きです」
124: 2014/02/05(水) 12:26:21 ID:7NIpvTC6
幼友「へ?」
男「好き」
幼友「は? …何を言ってるんですか?」アセッ
男「好きになりました、貴女を」
幼友「!!」
男「正直、一目惚れです」
幼友「え…!? ちょ、ちょっと待って…!」アタフタ
男「はい、待ちます」
125: 2014/02/05(水) 12:27:22 ID:7NIpvTC6
幼友「あのねっ!? 私…私はっ…ずっと気持ちを抑えて…!」
男「でも、チョコを持ってきてくれました」
幼友「それはそうだけど! えっと、でも…作るのに何時間もかけたけど、義理だしっ!」
男「……そんな義理チョコ、聞いたことないです」ニコッ
幼友「だめっ…! 冗談ならやめて下さい! その気になっちゃうじゃ──」
男「冗談なんかじゃないです。貴女を好きになりました」
幼友「あ…あぅ……」
126: 2014/02/05(水) 12:28:13 ID:7NIpvTC6
………
…
幼馴染(完成しました!)
幼馴染(自信作! 味見に味見を重ねたチョコケーキ!)ゲフー
幼馴染(ラッピングも可愛く、ばっちり!)
幼馴染(バレンタインに手作りケーキを贈る……鏡です! 女子の鏡!)
幼馴染(ホワイトデーのお返しなんて、押印済みの婚姻届でいいのです)ホワワーン
幼馴染(よし、男の家に行きましょう)
127: 2014/02/05(水) 12:29:18 ID:7NIpvTC6
幼馴染(……あれ? 玄関、開いてます)
幼馴染(呼び鈴はいりませんね──)
男《好きになりました、貴女を》
男《正直、一目惚れです》
幼友《だめっ…! 冗談ならやめて下さい! その気になっちゃうじゃ──》
男《冗談なんかじゃないです。貴女を好きになりました》
……グシャッ
クルッ……タタッ──
幼友「……あれ? 今、表に誰かいたような」
男?「はい、一瞬ですが幼馴染ちゃんの顔が見えました」
幼友「幼馴染…『ちゃん』──?」
128: 2014/02/05(水) 12:30:17 ID:7NIpvTC6
………
…
幼馴染「はあ…はあ…」
幼馴染(疲れた…もう走れません……)フゥ…
幼馴染「……あはっ…」
幼馴染(なんですか……それ…)
幼馴染(一目惚れって…どういう事ですか)
幼馴染(男が幼友に初めて会ったのは、もう何年も前なのに)
幼馴染(その時からずっと…好きだった?)
幼馴染(じゃあ、どうして私と付き合ったのでしょう…)グスッ
129: 2014/02/05(水) 12:31:06 ID:7NIpvTC6
幼馴染(もう……こんなふざけた口調、どうでもいいや…)フルフル
『──俺は、他の女に目をくれた事はありません』
幼馴染「ふざけないでよっ…」ボソッ
幼馴染(全部……口先だけだった…)ギュッ
『昔からずっと幼馴染だけを想ってきました』
幼馴染「意味わかんないっ…!!」ボロボロッ
143: 2014/02/06(木) 19:27:21 ID:IwLlgFXI
………
…
…男宅、玄関
幼友「…男さんは幼馴染『ちゃん』なんて言わない、自分の事を『僕』とは呼ばない」
男?「はい」
幼友(しばらくまともに顔見れなかったけど、はっきり見ると違う……それに男さんより髪が少し長くて、顔も幼い)
男?「……ごめんなさい。なんとなく解ってたけど、やっぱりそのチョコは兄ちゃんのなんですよね」
幼友「そっか…あんた、男さんの弟君なんだ」
弟「はい、言うのが遅れてすみません。貴女は兄ちゃんの彼女…?」
幼友「ち、違うよ! 彼女なのは幼馴染ちゃん…!」アセッ
144: 2014/02/06(木) 19:28:30 ID:IwLlgFXI
弟「そうでしたか、それはよかった」
幼友「よかった…?」
弟「はい」
男「弟…? 誰か来てるのでしょうか?」
弟「あ、ようやく兄ちゃん登場です。……チョコ、渡してあげて下さい」
幼友「え、いや…その…」ドキッ
男「おや、幼友ちゃん。どうしましたか? 幼馴染は一緒では?」
幼友「あっ……そういえば、さっき幼馴染ちゃんが…」
弟「はい、来ていました」
幼友「なんで入って来なかったんだろう──」ハッ
男「?」
幼友「もしかして…まずいところ見られたかも……!」
145: 2014/02/06(木) 19:29:04 ID:IwLlgFXI
弟「これは…? 外にありました」
男「潰れてるけど、チョコケーキみたいです」
幼友「やっぱり…」
男「どんなシーンを見られたのでしょう?」
幼友「え! いや…それは…!」
弟「僕が彼女に告白したんです」
男「はい?」
弟「幼馴染ちゃんは、その僕の姿を兄ちゃんと勘違いしたんだと…」
男「あははは」
弟「あははは」
男「そりゃマズイ」
146: 2014/02/06(木) 19:30:11 ID:IwLlgFXI
………
…
幼馴染(周りも見ずに走ってきたけど、自分の家の近所だ……)
幼馴染(やっぱり無意識にも慣れた道を選んじゃうんだな)
幼馴染(……ケーキ、玄関前に落として来ちゃった)
幼馴染(たぶんそれを見つけたら、男は察するんだろうな……ウチに来ちゃうかな…)
幼馴染(どこか、もうちょっと遠くへ…)
幼馴染(……あ、そうだ…久しぶりに)
147: 2014/02/06(木) 19:31:37 ID:IwLlgFXI
幼馴染「よいしょ…」ガタッ
幼馴染(空気は…大丈夫っぽい)
幼馴染(エンジン、かかるかな…)
…ズキュキュキュッ
…ズキュキュキュッ
…ズキュ、キュ、キュッ
…ズキュ…キュ……キュ……
幼馴染(バッテリーが…だめかな)
148: 2014/02/06(木) 19:37:11 ID:IwLlgFXI
「ハヤク ハヤクッ」
「チョット マッテヨー」
「オサナナジミ ノ イエ、モウスグソコ デス」
幼馴染(いけない、もう来てる…!)
…ズキュ…キュ……キュ……
幼馴染(だめだ…かからない……)
幼馴染(……あっ、そうだ…キックスターター!)
…カッ
ガコンッ、ガコンッ、ガコンッ
幼馴染(今は会いたくない…!)
幼馴染「…かかってよっ!」
ガコンッ!…ブスンッ、トットットットッ…
幼馴染(かかった…!)
149: 2014/02/06(木) 19:38:18 ID:IwLlgFXI
男「幼友ちゃん! 早く…!」
幼友「わ、解ってますよ……あっ!」
男「え?」
ブイイイィィィン……
男「お…幼馴染っ! あいつ、ビーノ出しやがった!」
弟「ビーノ?」
男「ほとんど乗ってない、幼馴染のスクーターです……あーあ、逃げられた…」
幼友「幼馴染ちゃんが原付乗ってるなんて、私も知らなかったよ」
男「よくエンジンかかったもんです……やれやれ、車で追いましょう」
150: 2014/02/06(木) 19:39:38 ID:IwLlgFXI
幼友「追うって…アテはあるの?」
男「無いです」
弟「幼馴染ちゃんがよく行くところとか」
男「あいつの行動範囲は普段は自転車での距離なので…その向こうはさっぱり見当がつきません」
幼友「電話…は、原付に乗ってる間は出ないよね」
弟「家で待ってるしかないのかな」
男「……でも、俺…行くわ」
幼友(あれ、男さんが素になって…)
男「見つけられないとは思うけど…自分の嫁が勘違いでも辛い想いしてる…」
弟「…兄ちゃん」
男「じっとなんか、してらんねえ──」
187: 2014/02/22(土) 12:41:30 ID:heap42v2
………
…
男「じゃあ、幼友ちゃんは幼馴染の家にお邪魔して待ってて」
幼友「うん、定期的に電話やメッセージで連絡をとってみますね」
男「弟は? どうする?」
弟「僕は兄ちゃんと行きます。手分けして探す事もあるでしょ」
男「わかった。悪いな、今日は色々と準備があったはずなのに」
幼友「準備?」
弟「三月には高校を卒業して実家に戻るつもりなので、色々と用意をしに戻ってたんです」
幼友「そうだったんだ」
男「さあ、ゆっくりしてたらどんどん遠ざかってしまうかも……幼友ちゃん、何かあったらすぐに教えて」
188: 2014/02/22(土) 12:42:14 ID:heap42v2
………
…
ズキュキュッ
…ブイイィィーーン!
弟「話には聞いてたけど、コペンに乗るのは初めてです」
男「そうだな、親父が去年買ったばかりだから」
弟「兄ちゃんが素の喋り方になるのも、珍しい事です」
男「まあ、あれはただの変な癖だよ。幼馴染とふざけて敬語使ってたら、すっかり慣れちゃっただけだ」
弟「…知ってます」
189: 2014/02/22(土) 12:43:12 ID:heap42v2
男「……で、お前にも伝染ったんだよな」
弟「僕はそれこそ兄ちゃんよりもっと小さな頃からだから、完全にこれが地になってますが」
男「弟…」
弟「はい?」
男「あんまり…こんな馬鹿兄貴、見習うなよな」
弟「……兄ちゃん」
ブイイィィィン…
190: 2014/02/22(土) 12:43:46 ID:heap42v2
……………
………
…
幼馴染母「ゆっくりしててね、あとでお茶淹れてくるから」
幼友「お構いなく、お邪魔しまーす」
幼友「…さて、と」
幼友(とりあえずLINE入れとこ…)
幼友(『どこにいますか?』)
幼友(『幼馴染ちゃんの家で待ってます』)
幼友(『直接会ったら全部説明するけど、玄関では男さんじゃなく弟君と話してたんだよ』)
191: 2014/02/22(土) 12:44:49 ID:heap42v2
幼友(『勘違いさせちゃって、ごめんね』…っと)
…ピッ
幼友(……でも…)
幼友(全部が勘違いじゃ…ない)
幼友(幼馴染ちゃん…私が勝手に一人でチョコを渡しに行ったのは、本当の事なの)
『私…私はっ…ずっと気持ちを抑えて…!』
『冗談ならやめて下さい! その気になっちゃうじゃ──』
幼友(…期待…した)
『冗談なんかじゃないです。貴女を好きになりました』
幼友(もし、あれが本当に男さんの言葉だったら……私はどう答えてたの──?)
193: 2014/02/22(土) 19:57:46 ID:gPQktpRg
……………
………
…
…ビイイイィィィン
幼馴染(………)
幼馴染(………)
幼馴染(………)ポロッ
幼馴染(…いけない、前がぼやけちゃう)グスンッ
幼馴染(ここ…どこだろう…)
幼馴染(通った事がある気はするけど…)
194: 2014/02/22(土) 19:58:30 ID:gPQktpRg
幼馴染(あ…ミスドとモスバーガーが並んでる)
幼馴染(やっぱり、見覚えあるな…)
幼馴染(きっと…サーフや軽トラの助手席に乗って)
幼馴染(うとうと居眠りしながら、通った事があるんだ)
幼馴染(サイドシート…男の左側)
幼馴染(……男の…横顔…)
幼馴染(私のものじゃ…無くなっちゃうのかな…)
195: 2014/02/22(土) 19:59:21 ID:gPQktpRg
幼馴染(…やめよう、考えるの)
幼馴染(知らない方へ……何の記憶も無い場所へ)
幼馴染(…ええと…こっち?)
幼馴染(うわ…大きな道、原付で走るのちょっと怖い)
ビイイイィィィン…
幼馴染(…帰り道、解らなくなっちゃうかな)
幼馴染(………)
『冗談なんかじゃないです。貴女を好きになりました──』
幼馴染(どうにでも…なればいいや…)
196: 2014/02/22(土) 20:00:22 ID:gPQktpRg
……………
………
…
男「くそっ…どこだよ」
弟「兄ちゃん…幼馴染ちゃんは普段、あまり原付には乗らないのでしょう?」
男「…ん? ああ…そうだな」
弟「僕も原付の免許は取ったけど、結局買いもしなかったし乗ってないです」
男「それが…?」
弟「幼馴染ちゃんが家から出て、どっちへ行ったか…たぶん最初の内は大きな交差点で右折はしない気がします」
197: 2014/02/22(土) 20:01:12 ID:gPQktpRg
弟「僕らから逃げようとする幼馴染ちゃんは、出来るだけ停まりたくないはず。原付は大きな交差点では二段階右折が必要でしょう」
男「ああ…なるほど」
弟「それと、本当に大きな国道の交差点とかは左折してるんじゃないかと思います」
男「?」
弟「単純に、複数車線あるところを直進するのは初心者には怖い事です。だから左折に逃げてるんじゃないでしょうか」
男「家からあの方向で出て…大きい交差点は左折…基本的に右折はしなかったとしたら…ちょうど今向かってる方向か」
弟「あくまで予想ですが」
男「いや、その推察に賭けよう。たぶん同じ理屈で高架になったバイパスは避けるはず…」
弟「あのミスドとモスバーガーがある交差点、大きいです」
男「だったら、そこを西だな──」
218: 2014/03/02(日) 19:04:50 ID:SASB.dn2
……………
………
…
…幼馴染の部屋
幼友(…既読マーク、つかないなぁ)
幼友(今回の事で、二人の関係が変な風になったら…嫌だな)
幼友(…………)
幼友(違うか…そうなったら二人の関係だけじゃない)
幼友(私と幼馴染ちゃんだって、もう友達じゃいられない)
幼友(そんなの絶対、嫌だよ)
219: 2014/03/02(日) 19:05:31 ID:SASB.dn2
幼友(でも…そう思いながらも、私は段々と気持ちをエスカレートさせてた)
幼友(ブレーキの効きが悪くなって、きっと少しずつ前に進んでたよね…)
幼友(………)
幼友(それも…違う…か。効きが悪くなったんじゃない…きっと自分で緩めてたんだ)
幼友(どうやったって男さんが私に靡くわけないのに)
幼友(……最初っから、二人の関係…オサナナジミなだけじゃないって、解ってたはずだよ──)
220: 2014/03/02(日) 19:06:25 ID:SASB.dn2
……………
………
…
…約一年前
幼友『もう、帰るところだから』
リーマンA『まあまあ、肩がぶつかったのも何かの縁だしさ』
幼友『ぶつかったのはさっき謝ったじゃないですか』
221: 2014/03/02(日) 19:06:58 ID:SASB.dn2
リーマンB『別に怒ってるんじゃないよー。でも、まだ宵の口じゃない。土曜の夜に早く帰るなんて勿体無いでしょ』
リーマンA『そうそう、奢るからさ? 二軒目は僕らと一緒にどう?』
幼友『迎えが来るから、だめなんです』
リーマンB『嘘だぁ、さっきはタクシー使うって言ってたじゃん』
リーマンA『よしっ、じゃあ本当に彼氏が迎えにきたら諦めるよ。嘘だったら罰として僕らに付き合ってくれるよね? ねっ?』
幼友『なんで貴方達から罰を受けなきゃいけないんですか』
リーマンB『いいからいいから、彼氏が来るのは嘘じゃないんでしょ?』
リーマンA『だったら問題ないじゃない、ね?』
幼友『……参ったなぁ…』
222: 2014/03/02(日) 19:07:31 ID:SASB.dn2
男『幼友ちゃん、お待たせしました』
幼友『え?』
リーマンA『え? 何? 本当に彼氏登場?』
男『そういう事です。悪いけど、他を当たって下さい』
リーマンB『うっそだぁ、どうせ通りすがりで格好つけてんでしょ?』
男『幼友ちゃん、俺の名前は?』
幼友(この人…幼馴染ちゃんの……名前は確か…)
幼友『男…さん』
男『ほら、これ俺の免許です。合ってますよね? なので諦めて下さい』
223: 2014/03/02(日) 19:08:34 ID:SASB.dn2
リーマンA『…ちっ、学生ふぜいがオンナ迎えに来るなんて、生意気なんだよ』
リーマンB『そうそう、こんな街中の繁華街は子供の来るところじゃ…』
男『しつけーな、お前ら』ガシッ
リーマンA『いでっ!? いででででっ』ギュウウウウゥッ
男『子供扱いしやがって、酒の回ったお前らに負けると思ってんのか? あぁ? そこの緑道公園の小川に撒き餌させてやろうか?』脇腹ゲシゲシ
リーマンA『ちょ、解った、解りました、いだだだだだ…』
男『おら、行け』ポイッ
リーマンB『てめ…調子に…』
リーマンA『やめとけ、なんかすげえ握力だった……痛ってぇ』
男『幼友ちゃん、行こう』
幼友『う、うん…』
224: 2014/03/02(日) 19:09:30 ID:SASB.dn2
男『急に話をフッてすみません』
幼友『ううん、ありがとうございました』
男『よく本当に俺の名前、覚えてたもんです』
幼友『幼馴染ちゃんからよく聞くから、なんとなく』
男『ところで幼馴染は?』
幼友『あ、あはは……ちょっと遅いけど、今日は幼馴染ちゃんのハタチの誕生日会を兼ねてたから、お酒を…ね……?』
225: 2014/03/02(日) 19:13:04 ID:y9YDU4tU
男『あいつが? 酒を飲んだんですか?』
幼友『それでめっきり酔っちゃって…ひと足先にタクシーに乗せて帰したんです』
男『どうりで…迎えの時間になっても電話が繋がらないわけです』
幼友『家の住所は言えてたし、ドライバーさんも女性の方だったから、心配は無いと思うんですけど』
男『……ま、何事も無いならいいです。やれやれ、じゃあ良かったら幼友ちゃんを送りましょうか』
幼友『え、いいんですか?』
男『不安でないなら、どうぞ』
226: 2014/03/02(日) 19:13:34 ID:y9YDU4tU
………
…
幼友『なんか、ごめんなさい。助けてもらった上に送ってもらっちゃって』
男『せっかくコインパーキングまで利用したんだから、無駄にならなかっただけ良かった位です』
幼友『でも、なんだか幼馴染ちゃんに怒られちゃいそうだな』
男『幼馴染に? どうしてです?』
幼友『え? だって二人は付き合ってるんじゃないんですか?』
男『あはは…あいつとはオサナナジミなだけで、残念ながらそういう関係ではないです』
幼友(……残念ながら…か)
227: 2014/03/02(日) 19:14:07 ID:y9YDU4tU
幼友『じゃあ、今…男さんはフリーなんですか?』
男『…そこを左ですか?』
幼友『あ、はい。…そしたらすぐにコンビニがあるから、そこで大丈夫です』
男『わかりました』
幼友(話…逸らされちゃったのかな?)
…
………
……………
231: 2014/03/02(日) 23:48:44 ID:52BF7lNM
男「原付の姿は見えないか?」
弟「うん、今のところ見えません」
男「たぶん、あいつの性格からして30km/hの制限速度はあんまり超えようとしないだろうけどな…」
弟「この辺り、そう車通りは多くないです。初心者の原付なら、走りやすいはず」
男「これで逆方向だったら、何にもならないからな……携帯は?」
弟「今のところ、何も鳴ってないです」
232: 2014/03/02(日) 23:49:49 ID:52BF7lNM
弟「……あっ…」
男「どうした?」
弟「あの自転車の女子高生、スカート短い」
…キィッ
男「………」
弟「………」
男「……おぉ…」
弟「…イエス」
…ズキュッ、ブイイイィィン
男「急ぐぞ…! よく探せ!」
弟「はいっ」
239: 2014/03/03(月) 11:18:06 ID:2pi4wAtw
………
…
弟「……兄ちゃん」
男「うん?」
弟「兄ちゃんは、幼友さんをどう思っているのでしょうか」
男「…それを訊くか」
弟「誰も訊かなかったから、ずっと気付かないふりをしていたのですか」
240: 2014/03/03(月) 11:18:40 ID:GYfAsLdQ
男「生意気言うな」
弟「言います」
男「……気付いてない、そうじゃないと今の関係は保てない」
弟「幼馴染ちゃんと幼友ちゃんの関係にもヒビが入るから?」
男「まあ…そうかな」
241: 2014/03/03(月) 11:19:19 ID:H30Tk3Q.
弟「それでも幼友ちゃんが気持ちを抑えられなくなったら? 兄ちゃんはどうするのでしょうか」
男「…何を大事にすべきか…だな」
弟「その時の判断ですか」
男「必要なら、幼馴染と別れる決断もやむを得ないかと思ってたよ」
弟「そうすれば彼女らは仲違いしなくて済むから?」
242: 2014/03/03(月) 11:20:06 ID:5tvMUlZE
男「……なんでお前にこんな話をしなきゃいけないんだ」
弟「全員が泣く方が、誰か一人だけが傷つくよりいいと?」
男「………」
弟「兄ちゃん」
男「…本気か?」
弟「本気です」
男「お前が本気なんだったら、それは俺のしがらみとは関係ないだろ」
弟「…兄ちゃん」
243: 2014/03/03(月) 11:22:01 ID:qHnpQ6wo
…キィッ
男「………」
弟「………」
女子高生「キャッキャッ」
女子高生「アハハハ」
…ブイイイィィン
弟「幼友ちゃんは僕が貰います」
男「……生意気言うな」
245: 2014/03/03(月) 14:29:54 ID:oKLLzE6U
……………
………
…
ビイイイイィィィン…
幼馴染(…あれ?)
幼馴染(なんでだろう、この辺り…見た事ある)
幼馴染(あ……海…砂浜だ)
246: 2014/03/03(月) 14:30:57 ID:oKLLzE6U
ビイイィィィン……トコトコ…プスン
モゾモゾ……ファサッ
幼馴染(ふわ…フルフェイスだったから、きっと髪ぐちゃぐちゃだ)
幼馴染(……いっか、誰か知ってる人がいるわけじゃないし)
幼馴染(なんだろう…この海岸、来た事あるような)
幼馴染(あはっ…バカヤロー! って叫ぶなら、丁度いいかもね…)
247: 2014/03/03(月) 14:41:24 ID:UQymqPVA
…ザクッ…ザクッ
幼馴染「海沿いは寒いな…」ブルッ
幼馴染「男…」
幼馴染(…いつから? 私に隠れて付き合ってた感じじゃなかったけど)
幼馴染(いつから気持ちは、幼友に移ってたの…?)
幼馴染(なんで…正直に言ってくれなかったの)
幼馴染「…馬鹿みたい」クスッ
248: 2014/03/03(月) 14:44:43 ID:87ufl/5Y
幼馴染(……携帯…何か入ってたりするかな)
幼馴染(あ…スクーターのトランクにバッグごと入ってるや)
幼馴染(いいか……何が書かれてたって、信じられない)
幼馴染(男が幼友に気持ちを打ち明けてたのは本当だし……私に内緒で幼友が男の家に行ってたのも事実なんだし)
幼馴染(……誰もいない、砂浜)
幼馴染(本当に叫んでみようかな…)
249: 2014/03/03(月) 14:45:35 ID:87ufl/5Y
幼馴染「………」スゥ…
幼馴染「男のバカヤローッ!!」
幼馴染「………」…ハァ
幼馴染「…なんだ、これ」ポロッ
幼馴染(ちっともスッキリなんかしない…)ポロポロッ
幼馴染(惨めなだけ…だよ…)…ペタン
幼馴染「うえええぇぇぇん…」ボロボロ…
250: 2014/03/03(月) 14:58:12 ID:Cu6QfWm2
……………
………
…
…幼馴染の家
幼友「…あの」
幼馴染母「ごめんなさい、あの娘ったらなかなか帰らないわね」
幼友「えっと…よかったら、台所…借りてもいいですか」
幼馴染母「え? …いいけど、あの娘ったらケーキ焼いた道具や材料、出しっ放しなのよ」
幼友「構わないです」
251: 2014/03/03(月) 15:01:23 ID:3aIQeMHc
幼友(…幼馴染ちゃん)
幼友(私、大事なんだ…)
幼友(何を犠牲にしても、失いたくない気持ち…)
幼友(それは、ひとつだけでいいんだよ)
幼友(だから…幼馴染ちゃん、許して──)
252: 2014/03/03(月) 15:02:01 ID:3aIQeMHc
……………
………
…
弟「兄ちゃん、急ぎましょう」
男「なんでこんなに女子高生がよく通るんだ…! 進みゃしない!」ガンッ
弟「しかも例外無くスカートが短い上に風が強いなんて…神様は意地悪です」
253: 2014/03/03(月) 15:02:51 ID:3aIQeMHc
男「もうすぐ海沿いに出るな…」
弟「海沿いは寒いでしょうから、通ってないかもしれませんね」
男「…違う方面をあたるか」
弟「ん…? 兄ちゃん、待って…あれ」
男「あ……ビーノだ! 色も同じ!」
ブイイイィィン……キィッ
男「間違いない、ミラーにかけたフルフェイスの癖に花柄で気が抜けるヘルメット、幼馴染のだ」
254: 2014/03/03(月) 15:03:33 ID:3aIQeMHc
弟「じゃあ、砂浜に? それともまさか海に入って…」
男「縁起でもない事、言うな! 寒がりなあいつがそんな事…!」
ガチャッ…バタンッ、バタンッ
男「砂浜、行ってみる」
弟「じゃあ僕はスクーターのところで待ちます。違う方から歩いて来たらいけません」
男「ああ、寒かったら車に入っとけ」
弟「…幼馴染ちゃんほど冷えちゃないです。兄ちゃん…早く暖めてあげて下さい」
男「ふん…生意気言うなって」
256: 2014/03/03(月) 18:18:39 ID:.BNjjYyM
『俺は幼馴染が好きです』
『まあ素敵』
『だけど魚釣りも好きです』
『同時に並べる事ではないと思います』
『魚釣りが好きで、なかなか幼馴染と遊べません』
『比率はそちらが上ですか』
『でも幼馴染が好きで、なかなか釣りにも行けないのです』
『なるほど』
『そこで思いつきました』
『察しがつきました』
幼馴染(…思えば、変な告白だったよね)
幼馴染(…私も、ちゃんとした返事なんかしてないし)
257: 2014/03/03(月) 18:19:17 ID:.BNjjYyM
幼馴染(ああ…そっか、この砂浜は)
幼馴染(あの日、あの後…最初に投げ釣りをしたところだ)
幼馴染(季節も違うし、着いたのが薄暗い内だったから、雰囲気が違ったんだ…)
幼馴染(あの日…楽しかったな…)
幼馴染(しょうがない…のかな)
幼馴染(でも…)
幼馴染(男が…誰かのものになるなんて…嫌だ)
幼馴染(それでも…幼友に…なら…)
幼馴染(……やっぱり…やだよ…)
258: 2014/03/03(月) 18:20:05 ID:.BNjjYyM
幼馴染(…もう一回、叫んでみよう)
幼馴染(スッキリしないのは、大声が足りないからかも)ジャリッ…
幼馴染「………」スゥ…
幼馴染「男の…馬鹿ああぁぁっ!!!」
幼馴染「………」スゥッ…
幼馴染「てえええぇぇぇーーーいっ!!!」
幼馴染「はぁ…はぁ…」
259: 2014/03/03(月) 18:21:25 ID:.BNjjYyM
男「…そんな大きな声出さなくても、聞こえてるって」
幼馴染「えっ…!?」
男「よかった、見つけられて…幼馴染、玄関での事は──」
幼馴染「や…やだ、聞きたくないっ!」ダダッ
男「あ、待て…話、聞けよ!」
幼馴染「来るな! 馬鹿! 浮気者っ!」ザクッ、ザクッ
男「待てってば!」ザッ、ザッ
幼馴染「いいからっ! もう、いいから…気持ちはどうやったって変わらないでしょ!? …わっ!」ザクッ…ヨロッ
…ドサッ
260: 2014/03/03(月) 18:22:35 ID:.BNjjYyM
幼馴染「い…たたっ…」
男「…なに転んでんだ」フゥ…
…ギュッ
幼馴染「……っ…」
男「話くらい聞けよ、馬鹿」
幼馴染「…うぅ……」
261: 2014/03/03(月) 18:23:22 ID:.BNjjYyM
男「こんなに身体、冷たくしやがって…」
幼馴染「やっ…放して! 私、私…聞いたもん! 男が……」
男「あれは俺じゃねえっ!」
幼馴染「…えっ」
男「幼友ちゃんも気付かずに話してたけど…あれは弟だ」
幼馴染「弟…? 幼友も、気付いてなかった…?」
262: 2014/03/03(月) 18:24:15 ID:.BNjjYyM
男「幼友ちゃんが俺にチョコを持ってきたのは本当だ……それをたまたま弟が受け取ってたんだ」
幼馴染「……勘違い…私の…」
男「それでも…今まで幼友ちゃんの気持ちを誤魔化し続けた事は、二人ともに謝らなきゃいけないけど」
幼馴染「男…話し方が」
男「お前もだろ」
幼馴染「勘違い…男は…幼友の事が好きなんじゃ…」
男「俺が好きなのはお前だ。ずっと昔から」
幼馴染「男…」ジワッ
男「ずっと…これからも」
263: 2014/03/03(月) 18:25:09 ID:.BNjjYyM
幼馴染「男ぉっ…!」ガバッ
男「よしよし…」
幼馴染「う…えええぇぇぇぇん…」
男「全く…」
幼馴染「ごめん、男…ごめん…」
男「…世話のやける奴…………です」
幼馴染「うえええぇぇぇん…」
264: 2014/03/03(月) 20:27:08 ID:MCMiCrAE
………
…
ブイイイィィン…
男「よくうろ覚えで、あの海岸まで行ったもんです」
幼馴染「…行こうと思ったわけではないのですが」
男「じゃあ、やっぱり弟の予想が正しかったわけですか」ヤレヤレ
幼馴染「私のビーノ、弟君に乗って帰ってもらって申し訳ないです」
男「上着は俺の分まで貸しましたし、本人も久しぶりの二輪で嬉しそうでしたので」
幼馴染「ちゃんとついてきているのでしょうか」
男「制限速度が違うのでいちいち離れますが、信号の度に追いついているようです」
265: 2014/03/03(月) 20:28:01 ID:MCMiCrAE
幼馴染「……いつからだったでしょう」
男「何がでしょうか」
幼馴染「喋り方…こんな口調が癖になったのは、確か…中学生の頃──?」
『なんか、俺ら一緒にいすぎて冷やかされまくりだなー』
『それが嫌なら、喋り方だけでもよそよそしくしてみる? …なーんて』
『ははっ…面白いかも。解りました、それでいってみましょう』
『なんとなく、これはこれでくすぐったいです』
『けっこう幼馴染のキャラに合っている気がします』
『ご冗談を』
266: 2014/03/03(月) 20:28:48 ID:MCMiCrAE
幼馴染「…最初は友達も『なんだそれ』って笑ってたけど、面白半分のまま続けてました」
男「その内、完全に癖になって」
幼馴染「いつの間にか逆にこの口調こそが、私達の特別になったような気がします」
男「…その言い方は若干照れます」
幼馴染「たまに素になったりもしますが、私達はずっとこれでいい……だめでしょうか」
男「ちょっと渋滞してますね」
幼馴染「ちゃんと答えて下さい」
男「……俺は、いいと思います」
267: 2014/03/03(月) 20:29:31 ID:MCMiCrAE
幼馴染「男…」
男「……ん?」
幼馴染「………」
男「幼馴染…」スッ…
幼馴染「ん…」
弟「………」ジーーッ
幼馴染「はぅあ」
男「渋滞してるからって、横に並んで見てんじゃねえ!」
268: 2014/03/03(月) 20:30:48 ID:MCMiCrAE
コン、コン…
弟「………」パクパク
幼馴染「何か、窓を開けろって言ってるみたいです」
男「なんでしょう…?」
ウイイィィーーン…
弟「ここからは道も解るので、渋滞をすり抜けして帰ります」
男「すり抜けって…気をつけないと」
弟「はい、左側しか抜けないようにします」
幼馴染「ビーノ、よろしくお願いします」
弟「解りました。そっちこそイチャつきすぎて事故らないように気をつけて下さい」
男「生意気言うなっ!」シャーッ
269: 2014/03/03(月) 20:31:37 ID:MCMiCrAE
……………
………
…
…幼馴染の家
幼友(……!!)
幼友(既読マーク、ついた!)
幼友(あ…返信が…)
《ごめんなさい》
《全部、事情は聞きました》
《帰ってから改めて謝ります》
幼友(…よかっ…た……)
幼友(謝るのは…こっちだよ……幼馴染ちゃん…)
270: 2014/03/03(月) 20:32:21 ID:MCMiCrAE
…ガチャッ
弟「…失礼します」
幼友「弟君!」
弟「幼馴染ちゃん、見つかりました」
幼友「携帯に連絡あったよ。スクーター、弟君が乗って帰ったんだってね」
弟「はい…寒かった…」
幼友「コタツ、入って入って!」
弟「……でも、それじゃあちょっと締まりません」
271: 2014/03/03(月) 20:33:01 ID:MCMiCrAE
幼友「締まらない…?」
弟「はい。これからする話は、コタツでぬくぬくしながらする内容じゃないです」
幼友「……弟君…」
弟「ウチの玄関での話……その続きです」
幼友「弟君、私…そんな慰めは要らないよ」
弟「慰め…ですか」
幼友「もう隠しててもしょうがないよね……私、男さんが好き」
弟「はい」
272: 2014/03/03(月) 20:33:37 ID:MCMiCrAE
幼友「私は男さんの代わりなんか欲しくない、そんなの弟君にだって失礼だよ」
弟「代わりだというなら、そうかもしれません」
幼友「確かに弟君は姿も、口調もよく似てて……でも弟君は弟君でしょ?」
弟「はい」
幼友「だから……」
弟「だから、です」
幼友「え?」
弟「…僕にとって兄ちゃんは、大きな人です」
273: 2014/03/03(月) 20:34:08 ID:MCMiCrAE
弟「楽しい事をたくさん知ってて、僕の事を誰よりもよく見ててくれる……そんな人です」
幼友「………」
弟「幸せな人生を送ろうと思えば、きっと兄ちゃんの真似をしていればそれなりに満たされる…そんな気がします」
幼友「でも」
弟「それは、嫌です」
幼友「……弟君…」
弟「だから僕は勉強を頑張った。兄ちゃんの事は好きだし、ああなりたいとも思うけど……僕は僕の道を見つけたかった」
幼友「…うん」
弟「だけど、気付けば喋り方も伝染って……やっぱり兄ちゃんの真似をしてる自分がいました」
274: 2014/03/03(月) 20:35:12 ID:MCMiCrAE
弟「だけど…もう、この喋り方はやめる。この口調は兄ちゃんと幼馴染ちゃんの関係を形作るものだから、僕は…使わない」
幼友「………」
弟「そして、僕は…兄ちゃんとは違う人を好きになったんだ」
幼友「…気のせいだよ」
弟「気のせいなんかじゃない。言ったでしょ…? ひと目惚れしたって」
幼友「でも…私は」
弟「解ってる、兄ちゃんを好きな事は…今さっきも聞いたし」
幼友「………」
弟「それでも好きでいる事は、許してください」
275: 2014/03/03(月) 20:35:50 ID:MCMiCrAE
幼友(幼馴染ちゃんを裏切ろうとした…こんな私を…好き?)
弟「………」
幼友「私には…人に想われる資格なんか…無いよ」
弟「そんな事…」
ガチャッ…
幼馴染「そんな事ないです」
幼友「幼馴染ちゃん…」
幼馴染「弟君が幼友を好きになるのも、幼友が『誰か』を好きでいるのも…他の誰にも止められる事じゃないと思います」
276: 2014/03/03(月) 20:36:43 ID:MCMiCrAE
幼友「……なんで」
弟「幼友ちゃん…?」
幼友「なんで、私の事…怒らないの」
幼馴染「怒る理由なんて、無いからです」
幼友「……幼馴染ちゃん」
幼馴染「私は男が好き、でも幼友も好きです」
幼友「私…は……」
277: 2014/03/03(月) 20:37:30 ID:MCMiCrAE
幼友「…これ」スッ
幼馴染「?」
幼友「焼いて…みた」
幼馴染「チョコケーキ……幼友…これは…」
幼友「──幼馴染ちゃんに、友チョコだよ」
幼馴染「私…に?」
幼友「私、好きなヒトがいたの」
幼馴染「………」
幼友「でも、それよりも幼馴染ちゃんと友達でいる事の方が…大事だって…気付いたの…」ポロッ
幼馴染「幼…友……」グスッ
278: 2014/03/03(月) 20:38:19 ID:MCMiCrAE
幼友「幼馴染ちゃん…!」
幼馴染「幼友っ…!」
ギュッ…
幼友「ごめん…ごめんなさい…」ポロポロ
幼馴染「幼友…ありがとう…」ボロボロ
男「……よかったです」
弟「兄ちゃん…」
279: 2014/03/03(月) 20:45:08 ID:tZrMBVEc
………
…
男「うん、幼馴染の勘違いのせいで潰れたケーキ、美味しいです」
幼馴染「しゃらっぷ」
弟「僕もこのケーキ食べてよかったのかな」
幼友「いいんじゃない? 私も食べてるし」
幼馴染「幼友のチョコケーキは私の物です、男と弟君は食べないで下さい」
幼友「私の本命だからねっ!」
幼馴染「いやーん」キャッ
280: 2014/03/03(月) 20:46:00 ID:tZrMBVEc
弟「いいなー」
幼友「弟君には玄関であげたやつがあるでしょ」
弟「…あれは兄ちゃんの」
幼友「違うよ。…ただし作るのに何時間かけてたって、義理チョコだけどね」
弟「そんな義理チョコ、聞いた事ない…です」クスッ
幼馴染「ではでは、幼友の愛のチョコケーキを頂きます」パクッ
幼友「どう!? どうっ!?」
幼馴染「……にっが…」
幼友「えええぇぇぇ…」ガクッ
281: 2014/03/03(月) 20:46:30 ID:tZrMBVEc
………
…
幼友「じゃあ、私…帰るね」
弟「送っていきます!」
幼友「車も無いくせに」
弟「バスできたんでしょ? バス停まで送る…です!」
幼友「うーん…」チラッ
男「迷惑でなければ、そうさせてやって下さい」
幼友「…じゃ、お願いしよっかな」
282: 2014/03/03(月) 20:47:04 ID:tZrMBVEc
………
…
幼友「すっかり暗いねー」
弟「はい」
幼友「………」
弟「………」
幼友「…なんか喋りなよ?」
弟「付き合って下さい」
幼友「色々とばし過ぎだよ」
弟「じゃあ、いつ付き合ってくれる…ですか?」
幼友「なんで予定が確定してるの」
283: 2014/03/03(月) 20:47:41 ID:tZrMBVEc
幼友「全く…私のどこが気に入ったのよ」
弟「チョコを渡すだけで真っ赤になるくらい純情なとこ?」
幼友「うっ」
弟「めちゃくちゃ気合い入った手作りチョコを義理と言い張る、ツンデレなとこ?」
幼友「ううっ」
弟「あとは…」
幼友「……あとは?」
弟「おっOい」
幼友「とーう!」ビシィッ
284: 2014/03/03(月) 20:48:25 ID:tZrMBVEc
幼友「…バス停ついたよ」
弟「バス来るまで、一緒に待つ…です」
幼友「だと思った」
弟「………」
幼友「喋り方、急に変えて疲れない?」
弟「…正直、疲れ…ます」
幼友「だと思った」
弟「でも…兄ちゃんとは違うオトコになりたいから」
285: 2014/03/03(月) 20:48:58 ID:tZrMBVEc
幼友「憧れのお兄さんから、ライバルに…かな?」
弟「………」
幼友「…いいと思うよ」
弟「本当?」
幼友「まだまだ、オトコを磨かなきゃだけどね」
弟「負ける気は無い…です」
幼友「……だと思った」
弟「ちぇ…そればっかり」
286: 2014/03/03(月) 20:49:41 ID:tZrMBVEc
弟「…もうちょっと、傍に寄っていい…ですか」
幼友「だーめ」
弟「………」
幼友「でも…影、見てごらん?」
弟「影?」
幼友「うん、二人の影…寄り添ってるよ?」
弟「…今は、影だけ?」
幼友「そうだね、これから今の喋り方にもっと慣れて…弟君だけの魅力をたくさん見つけて…」
弟「………」
幼友「その時はもっと、自信をもって私を口説いてみたら? …簡単には落ちないけどねっ」
弟「…だと思った」
287: 2014/03/03(月) 20:50:17 ID:tZrMBVEc
弟「あ、バス…来ちゃったな」
幼友「はぁ…なんか今日は疲れちゃった」
弟「あの…来月には僕、本当にこっちに帰るから」
幼友「…うん、待っててあげる」
弟「……はい」
…プシューッ
《お待たせしました、◯△行きです…》
幼友「じゃ、ありがとうね?」
弟「幼友ちゃん…!」
幼友「……?」
288: 2014/03/03(月) 20:51:06 ID:tZrMBVEc
弟「チョコ…ありがとう」
幼友「……来年は本当に本命チョコ…作らせてみろ、少年っ」クスッ
弟「…ちぇっ」
《…発車します》
プシューッ、ブロロロッ…
弟「……見てろよー!」
弟「絶対、そのおっOいに顔埋めてやるからなー!」
289: 2014/03/03(月) 20:52:44 ID:tZrMBVEc
男「あいつ…バス停で何て事を叫んでるんでしょうか」ヒソヒソ
幼馴染「そっくりです、誰かさんにそっくり」ヒソヒソ
男「馬鹿言うなです」ヒソヒソ
幼馴染「……でも、いいオトコになりそうです」クスッ
男「そりゃ俺の自慢の弟ですから」
幼馴染「幼友、春近し…でしょうか」
男「…それは判りません、でも」
幼馴染「でも…?」
男「…そろそろ、春告魚(メバル)の食いが上向く頃です」
【春の気配編、おわり】
男「釣りロマンを求めて」幼馴染「魚釣りあるある編」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります