9: 2014/04/24(木) 19:54:32 ID:e/sxRFZA
「釣りロマンを求めて」シリーズ
前回:男「釣りロマンを求めて」幼馴染「大会後日デート閑話」
男「大学、どうだ?」
弟「まだまだ、講義も味利きくらいのもんだし穏やかだよ」
男「そうか」
弟「…兄ちゃん、家で僕と二人の時は割と素で喋るよね」
男「まあ…別に敬語遣いするのも慣れてはいるけど、わざわざお前相手になあ」
弟「いいけどね」
男「じゃあ、楽な内にまた釣りに行くか?」
弟「たぶんいつになっても、息抜きにかこつけて行くだろうけどね」
10: 2014/04/24(木) 19:55:08 ID:e/sxRFZA
男「…幼友ちゃんが来るなら、なおさら?」ニヤッ
弟「理由の半分以上はね」
男「正直だな」
弟「だってこないだみたいな特別でもない限り、デートなんてなかなかできないし。そうじゃなきゃ接点薄いよ?」
男「そりゃそうだ。…よし、誘ってみるか」
弟「ひゃっほーう」
男「海と淡水なら、どっちがいい?」
弟「こだわりは無いけど、こないだから海釣りは何度かやったからなぁ」
11: 2014/04/24(木) 19:56:02 ID:e/sxRFZA
男「じゃあ今回は淡水で。…といっても釣りだけにこだわらず、小旅行的にいくか」
弟「なんですと」
男「また夜はキャンプ場でバンガロー借りるのもいいかな」
弟「泊りがけ? しかもバンガローって事は…」
男「もちろん、男女同室」
弟「一生ついていきます、お兄様」キラキラ
男「ばかやろ、ついてくんな。…じゃあ、幼友ちゃんはお前がしっかり誘えよ?」
弟「いえっさー!」ビシッ!
12: 2014/04/24(木) 19:56:58 ID:e/sxRFZA
弟「釣りロマンを求めて」幼友「春の淡水釣り編だよー」
.
13: 2014/04/24(木) 19:57:49 ID:e/sxRFZA
……………
………
…
男「おはようございます」
幼馴染「お待ちしておりました」
男「……なぜ寝ていないのでしょう」
幼馴染「事前にガッツリ打ち合わせ済みで寝ているわけがありません」
男「いいですか、貴女はオサナナジミです」
幼馴染「何を改まって」
男「オサナナジミというのは寝ているところを起こしに来るものです」
幼馴染「通常、男女が逆ですが」
14: 2014/04/24(木) 19:58:30 ID:e/sxRFZA
男「しゃらっぷ、貴女にとっては俺がオサナナジミなのだから、そこはいいのです」
幼馴染「ちなみにどのようなタイプのオサナナジミなのでしょう」
男「こっそり布団に潜り込むもよし」
幼馴染「男女逆だとなぜかイメージ最悪です」
男「布団を引っぺがす男勝りタイプ」
幼馴染「そもそも貴方は男性です」
男「……暴力系?」
幼馴染「もしもし、DV相談室でしょうか」
15: 2014/04/24(木) 19:59:17 ID:e/sxRFZA
男「では、俺はどうすれば」
幼馴染「優しくキスとかの選択肢は無いのでしょうか」
男「それはこっ恥ずかしい」
幼馴染「何をいまさら」
男「じゃあ…もう起きてるけど」
幼馴染「はい」スッ…
弟「──ねえ、まだ?」ガチャッ
男&幼馴染「はぅあっ!?」ビクゥッ
19: 2014/04/25(金) 19:08:42 ID:VMUX3Mdc
……………
………
…
…幼友のアパート前
男「まだ出て来てないようです」
弟「おおぉ…ここが幼友ちゃんの生息地…」
幼馴染「あ、降りてきました」
…ガチャッ
幼友「おはよーございまーす」
男&弟「おはよおっOい」
幼馴染「打ち合わせがあったかのようなハモり具合」
20: 2014/04/25(金) 19:10:10 ID:VMUX3Mdc
幼馴染「ん? その手荷物はなんでしょうか」
幼友「えへへー、みんな朝ごはん食べてる?」
弟「僕と兄ちゃんは食べずに出たよ」
幼馴染「私は軽く、ハムエッグと味噌汁とご飯を」
男「軽くねえ」
幼友「おにぎりいっぱい作ってきたんだ、良かったら食べて?」
弟「兄ちゃん…生きてると良い事ってあるんだね」
男「すみません、ご馳走になります」
21: 2014/04/25(金) 19:11:19 ID:VMUX3Mdc
幼友「よかったー。なんか特に料理とかの面では、女子力で幼馴染ちゃんに大きく負けてるように思われてそうだから、ちょっとね」
幼馴染「事実です」
幼友「とーう」シュッ
幼馴染「てーい」パシィッ
幼友「…なかなかやるな」グググ…
幼馴染「フッ…お前もな」ニヤリ
弟「そんな小芝居いいから、早く食べたい」
幼友「おっ、そうやって急かしてくれると嬉しいね。どうぞどうぞ、具は色々だよ」
22: 2014/04/25(金) 19:12:42 ID:VMUX3Mdc
男「幼馴染、どれでもいいから取って下さい」
幼馴染「では、これを」
弟「じゃあ、僕はこれ」
幼友「そんな変なものは入ってないから、心配なくね」
幼馴染「安心しました。では、私はこれを」
男「幼馴染、まだ食べる気とは」
弟「太るよ?」
幼友「幼馴染ちゃんって、食べても太らないんだよね」
男「そうそう、あらゆるところに脂肪がつきにく──」
幼馴染「──そこまでだ」チャキッ
男「ややややめて、運転手のこめかみに家のカギ刺さないで」ガクブル
31: 2014/04/28(月) 19:20:51 ID:1SLsFweU
幼友「ちなみに一個だけ当たりがあるよ」
幼馴染「当たり?」
幼友「うん。それ以外は鮭も高菜も海苔の佃煮も、出来合いの瓶詰めやスーパーの漬物なんだ」
男「ほほう、では当たりは?」
幼友「へへーん、私手作りの卵焼きが入ってるんですよ」
幼馴染「おお…幼友の手料理はなかなか貴重かもしれません」
幼友「ま、昨日の晩の残りなんだけどね」テヘッ
弟「絶対当てる、なんとしても僕が食べる」
32: 2014/04/28(月) 19:21:30 ID:1SLsFweU
男「そうは言っても、もう各自選んでいます」
幼友「さあ、誰が当たったかなー? それともまだタッパーの中…?」
幼馴染「じゃあ、私から食べてみます」
幼友「召し上がれー」
…パクッ
男「何だったでしょう」
幼馴染「…卵焼き」モグモグ…
幼友「あ、いきなり当たったんだ」
弟「ちきしょおおおぉおぉぉぉ!!!」
幼馴染「何この気まずさ」
33: 2014/04/28(月) 19:22:46 ID:1SLsFweU
弟「…鮭フレークがしょっぱいぜ…」グスッ、モグモグ…
幼馴染「ごめんなさい」
男「謝る事ないない。運です、運」
幼友「しょうがないなぁ、今度朝ご飯に作ってあげるから」
弟「そそそれはお泊りのお誘いと捉えていいのかな」ププッ
幼馴染「あ、そんな事言ったら」
幼友「やっぱ無し、絶対やーめた」
弟「えっ!?」
男(…我が弟ながら、勉強できてもアホだなー)
34: 2014/04/28(月) 19:35:17 ID:sc6QK8SU
幼友「………」ゴキュゴキュ…
弟(はっ…幼友ちゃんがペットボトルのお茶を!)キュピーン
幼友「…ぷはっ」クルクル…キュッ
弟「んっ…うぅ…喉に詰まっ…た…」プルプル
幼友「もう、焦って食べないでよ。しょうがないなぁ…」
弟(くっくっくっ…さあ、その綾鷹『幼友フレーバー』を渡すがいいっ──!)
男「幼友ちゃん、クーラーボックスに凍らせた麦茶あるので、とってやって下さい。少しは溶けてるでしょう」
幼友「あ、はーい」ゴソゴソ
弟(──この糞兄貴があああぁぁあぁ!)
50: 2014/05/01(木) 14:40:14 ID:ONpfN0wI
………
…
幼馴染「それで淡水とは聞きましたが、まずは何を釣るのでしょう」
弟「幼友ちゃんをマイ竿で」
幼友「黙れ坊主」
男「最初は前も行った渓流の少し手前、川幅がまだ広いところでアマゴを狙いたいと思います」
幼馴染「どうりで、なんとなく通った事がある道だと思いました」
男「ほほう、ほとんど寝ていた気がしますが覚えていたとは」
幼馴染「貴様らがイチャついて睡眠を妨げたくせに何を」
51: 2014/05/01(木) 14:41:06 ID:ONpfN0wI
弟「ちょっと待って、イチャついてたってどういう事」
幼友「ちょっと幼馴染ちゃんをからかっただけだよ」
男「他意はないです」シレッ
弟「本当かなぁ…」
幼友「今回はからかう相手も多くて楽しそう、またイチャついてみます? 男さん」クスッ
男「やめときな、お嬢ちゃん。引き返せなくなるぜ…」
幼馴染「Wall1からBro2。ロックオン完了、いつでもてーい可能です」
弟「フォックス2!」
幼馴染「てーい!」ゲシッ
男「痛てっ! 運転中、運転中!」
幼友「Mount1よりWall1。Bro1の撃墜を確認した!」
52: 2014/05/01(木) 14:41:57 ID:ONpfN0wI
幼友「前とポイントが違うのは何か理由があるんですか?」
男「ちょっと広いところで試したい釣りがありまして」
幼馴染「そんなところでもアマゴが?」
男「広いといっても川の中流域というわけではなく、ダム湖のすぐ上あたり。渓流の入り口というべきエリアです」
弟「ふーん、どんな釣りなんだろ」
男「実は俺もやった事がありません」
幼友「えっ」
幼馴染「男にした事が無い釣りがあったとは」
男「俺を何だと思っていますか、未経験の釣りなら山ほどあります」
幼友「楽しみー」
男「悪いですが、そのタックルは2セットしかありません。普通の渓流竿を使ったミャク釣りと交代でいきましょう」
67: 2014/05/05(月) 00:53:11 ID:hwaV.1y.
……………
………
…
男「おっけー、ポイントに到着です」
幼馴染「相変わらず、水が綺麗です」
幼友「日本の名水百選に認定されてるくらいだからね」
弟「どれどれ」ゴクゴク
幼友「嘘だけどね。ごめんね、飲む上流で足浸してて」
弟「なおさら美味しいれす」プハー
男「俺も浸してますが」
弟「兄ちゃん、さっきからなんか僕に恨みでもある?」
68: 2014/05/05(月) 00:53:44 ID:hwaV.1y.
男「さて、まずは女性二人には経験のあるミャク釣りをしてもらいましょう。二人とも、延べ竿をどうぞ」
幼友「先が細くて扱いに緊張するんだよねー」
幼馴染「また15尺の竿でしょうか」
男「今回は前より広々としたポイントなので、18尺を使ってもらいます」
幼友「エサは?」
幼馴染「もうバッタは嫌です」
男「ご安心を。この時期は頻繁に放流が繰り返されているので、養殖時に与えられていたエサが最も無難です」
69: 2014/05/05(月) 00:55:19 ID:hwaV.1y.
弟「どんなものを食べさせられてるものなの?」
男「これです」パカッ
幼友「これは…寿司ネタじゃないですか」
幼馴染「イクラとはイクラなんでもご冗談を。養殖のエサには贅沢過ぎます」
男「冗談じゃないです」
弟「じゃあ、これ本当のイクラなの?」
男「はい、まさに鮭の卵…普通のイクラです──」
幼馴染「どれどれ」ヒョイ、パクッ
男「──ただし、人間が食べるには鮮度が落ち過ぎててお腹を壊しかねませんが」
幼馴染「………」エレエレエレ…
80: 2014/05/07(水) 11:20:34 ID:kxZhDezI
幼友「また岸から釣ればいいんですか?」
男「それで構いません、18尺あればかなり広範囲を探れるはずです」
幼馴染「ちなみに私は車にスポーツサンダルを置いています」
男「知っています。というより、去年から常に載っています」
幼馴染「男がやっていたように、流れの中に立ち込んでみても良いでしょうか」
男「それならウェーダーの予備がありますが」
幼馴染「魚河岸は嫌です」
男「…しかし上流部の水温は低いです、かなり冷えると思います」
幼馴染「冷えたら車で冬眠します」
男「もう一度言いますがウェーダーの予備が」
幼馴染「魚河岸は嫌です」
81: 2014/05/07(水) 11:21:28 ID:kxZhDezI
幼馴染「おおおお…確かに冷たい、でも楽しいです」ザブザブ
幼友「いいなー、あとでサンダル貸して」
幼馴染「わかりました」
男「転んでも知りません。…まあ、流されたら一応助けます」ヤレヤレ
幼馴染「そういえば今日は白系のシャツなので、びしょ濡れになるとかなりセクシーです」
弟「ははっ、ご冗談を」
幼馴染「むっ」
男「ちなみに俺は濡れ透けフェチです」
幼友「そんな告白いらない」
82: 2014/05/07(水) 11:21:59 ID:kxZhDezI
幼馴染「では気をつけつつ、一投目をいきます」
幼友「エサがイクラだから針付けも気が楽だねー」
男「せっかくだから、幼馴染は瀬落ちになっているところを。幼友ちゃんは岸から流れが巻いている淵を攻めて下さい」
幼馴染「てーい」ヒュッ
幼友「とーう」フワッ
弟「…意外とサマになってる」
男「あの二人はスジがいいです、お前も頑張れ」
弟「いえっさー」
83: 2014/05/07(水) 11:22:31 ID:kxZhDezI
男「では、俺たちはこれに挑戦します」
弟「なんか変なところにリールが着いてる。もしかしてこれ、フライ…?」
男「ご名答、以前から興味をもちつつ、なかなかチャレンジできなかった釣りです」
弟「難しそうだなぁ」
男「簡単な釣りでは無いでしょう、それにフライは『ビギナーズラックが無い』とも言われます」
弟「まず投げられるようにならなきゃ、釣れるもなにも無いもんね」
男「今日の内にマスターするなど不可能かもしれませんが、ぎこちなくでもキャストできるようになって…」
弟「うん?」
男「…幼友ちゃんに、手取り足取り教えてやれ」ヒソヒソ
弟「よっしゃ、任せろ」グッ
86: 2014/05/07(水) 19:29:35 ID:AIRVVkoU
幼友「とーうっ!」ピシッ
幼馴染「何ィッ!?」
幼友「あちゃー、カワムツかぁ」
男「…さすが、もうほっといても釣りができています」
弟「僕のヨメだからね」フフン
男「付き合ってもないのにそう言える事に感心するわ」
弟「それで、このロッドをどうすればいいの?」
男「まあ、最初は見てろ」フワッ…
87: 2014/05/07(水) 19:30:28 ID:AIRVVkoU
男「まず数メートル引き出したラインを前に垂らし、ロッドを後方に加速度をつけてラインをピックアップ…!」スイッ…
弟「ふむふむ」
男「時計の文字盤に見たてて、後方およそ1時位置で節度をもってロッドを停止! ラインは後ろに伸びる…!」ビタッ、ヒュルッ…
弟「おお…」
男「ラインが伸びきったところで今度は前方に、弧を描くのではなく竿先を水平移動するイメージで…!」シュッ…!
弟「なんかそれっぽい!」
88: 2014/05/07(水) 19:31:14 ID:AIRVVkoU
男「10時位置でストップ、ラインが前方に伸びきるリズムに従って、また後方に…」シュッ、フワッ…
弟「ちょっと格好いいかも…!」
男「少しずつラインを伸ばしながら、これを繰り返しうわあああ!?」カシャーン、クルクルクル…
弟「…ロッドに絡まったね」
男「久しぶりだぜ…このキャストにすら手間取る感覚…」フルフルフル…
89: 2014/05/07(水) 19:45:22 ID:fqH2Rass
弟「えーと、とりあえず離れたところでやってみていい?」
男「いいけど、頼むから木の枝とかにラインを絡ませないで下さい。フライラインはクソ高いです」
弟「あーい」
男(部屋や庭先で毛糸を使ったトレーニングをしてみた俺ですらこの有様……実際、弟には難しいでしょう)
弟「兄ちゃーん! なんか結構ラインが出たー!」ヒュンッ、フワッ…
男「なんでお前、最初から5~6mもライン伸ばせてんだ」イラッ
弟「な、なんかジタバタしてたら…! あわわわわ…」
90: 2014/05/07(水) 19:46:15 ID:fqH2Rass
男(…不格好だけど、弟は全身を使って動作してる)
男(そうだ、フライ入門のサイトで何度も見た……俺は癖でキャストに手首を使い過ぎなんだ)
男(思い出せ、毛糸での練習でラインを真っ直ぐに伸ばすには、竿先の直線運動のために腕や上半身の動きを大きくとったはず)フワッ…
男(…あの動きを、ロッドで増幅させるんだ──!)シュルッ…ヒュンッ…シュッ
──カシャーン、クルクルクル…
男「…俺、才能ないのかな」グスッ
114: 2014/05/12(月) 12:51:40 ID:AzjfAhlY
幼馴染「てーいっ!」ピシィッ
幼友「やりますな」
幼馴染「…よっ…と、これは…確かアブラハヤ。美味しかったはずです」
幼友「そこの砂利浜の水際に生簀の網浸してるよ」
幼馴染「第一号、イン!」ゴソゴソ、ポイッ
幼友「餌がイクラだからやりやすいねー」
幼馴染「針付けする時にすぐ潰れてしまいますが」
幼友「でも少なくとも気持ち悪くはないし」
115: 2014/05/12(月) 12:52:12 ID:AzjfAhlY
幼友「でも狙いのアマゴはなかなか釣れないね」
幼馴染「真昼間ですので」
幼友「確か薄暗いような時間帯や、雨の日によく釣れるんだっけ」
幼馴染「ところでそろそろ足が冷たくなりました。よかったらサンダルを貸します」
幼友「おっ、待ってました」
幼馴染「あの岩の向こうから急に深くなっているようです」
幼友「いえっさー」ザブザブ
幼馴染「気をつけて。転んでズブ濡れになったら、あの二人に視姦されます」
幼友「はっはっ、この私がそんなドジを──」
116: 2014/05/12(月) 12:54:00 ID:AzjfAhlY
──ツルッ
幼友「はっ…!?」フラッ…
幼馴染「幼友っ!」
幼友「わあああぁぁあぁぁっ!?」タユーン
ドボーンッ!
…バシャバシャッ
幼友「しまっ…げほっ!」ジタバタ
幼馴染「言わんこっちゃない、早く立って下さい」
幼友「…くっ……深…ぃっ…!」
幼馴染「……幼友…?」
幼友(服が…突っ張って泳げない! 流れが速い…!)バシャバシャッ
幼馴染「まさか…溺れて…!? お、男っ! 幼友がっ…!」
119: 2014/05/12(月) 15:06:03 ID:g/CZPAbs
男「てりゃーっ! うおおぉおぉぉ!?」カシャーン、クルクル…
弟「あははは…兄ちゃん、それ好きだね」シュッ…ヒュンッ…
男「てめえ」
オトコー!タイヘンデスー!
弟「ん…なんか喚いてない?」
男「変なものでも釣ったでしょうか」
弟「……いや、なんか雰囲気が──」
男「やれやれ、行ってみますか…」
弟(──幼友ちゃんの姿が見えない…?)ピーン
121: 2014/05/12(月) 15:11:59 ID:g/CZPAbs
弟「兄ちゃん、竿頼む!」バッ
男「お…おい!? 水の中で走るな! 転ぶぞ…!」
弟(まさか…!)バシャバシャバシャッ!
幼馴染「弟君っ!」
弟「幼馴染ちゃん! 幼友ちゃんはっ!?」
幼馴染「流れの中で転んで…!」
弟「…流された!?」
…バッ!ポイ、ポイッ!
弟「幼馴染ちゃん、脱いだウェーダーを岸に上げといて!」
幼馴染「弟君…!?」
122: 2014/05/12(月) 15:19:28 ID:g/CZPAbs
弟(…この辺から流されたのかな)
弟(同じ流れに入れば…!)
バシャッ!ザバァッ……!
弟(…くそっ、水はクリアだけど…流れで泡がたっててよく見えない…!)ブクブク
弟(流されるとしたら…こっちか…!?)
弟(けっこう深いな…どこだ、幼友ちゃん…!)
弟(さっきは水面に姿は見えなかった…まさか、まさか深みに沈んだり──)
──キラッ
弟(…あれ…は…!)
123: 2014/05/12(月) 15:30:02 ID:g/CZPAbs
男「幼馴染!」
幼馴染「男…! 幼友が…弟君がっ!」ハアハア…
男「弟が飛び込むのを見たから、およそ事態は解ってる」
幼馴染「二人とも水面に出てこない…どうしよう…!」
男「くそっ…そのまま流されてりゃ、この辺りに来てるだろうけどな…」
…フワッ
幼馴染「…男、あれは…!?」
男「ボールが二個…流されて…?」
プカー、フヨフヨ…
…ザバーッ
幼友「ぷっはー! げほげほっ…びっくりした…やっと足が着いたよ」ゼエゼエ
男「おはよおっOい!」
幼馴染「おはよおっOい!」
126: 2014/05/12(月) 16:05:50 ID:g/CZPAbs
幼友「いやー、ごめんね…心配かけちゃって」テヘッ
幼馴染「私こそごめんなさい、サンダルで立ち込むのは危険でした…」
男「やはり滑りにくいフェルト底になったウェーダーを着るべきです」
幼友「本当、すみません…」
幼馴染「でも良かったです。幼友の釣竿は…どこか沈んだのでしょうか」
男「人が無事なら道具なんかどうでもいいです」
幼友「あっ、でもあそこの岩に引っ掛かってる」
男「やれやれ、じゃあウェーダー履いてる俺が行きましょう」
幼馴染「あっ…そうそう、それと弟君のウェーダーはあそこの岸に置きましたので──」ハッ…
幼友「…あれ、そういえば?」
男「………」ダラダラ
幼馴染「………」ダラダラ
127: 2014/05/12(月) 16:16:22 ID:g/CZPAbs
幼馴染「…あっ、あそこ…!」
幼友「弟君っ!」
…プカーッ、フヨフヨ
幼馴染「仰向けに浮いてます…大丈夫でしょうか」
フヨフヨ…チラッ…
男「今、こっちをチラ見したな」
幼友「大丈夫っぽいね」
幼馴染「弟君ー、幼友は無事だったので戻って下さいー!」
フヨフヨ…
幼友「…聞こえてない?」
男「いや、あれは自分が飛び込んだのが無駄足だった事に不貞腐れてるな」
幼馴染「あるいは気恥ずかしいのかもしれません」
128: 2014/05/12(月) 16:27:21 ID:g/CZPAbs
男「弟ー、大丈夫だってー! お前、がんばったよー」
幼友「あー、えーと…ありがとう…ね…?」
幼馴染「幼友、もう少し心をこめて」
…プカーッ、フヨフヨ
幼馴染「弟君、格好良かったです!」パチパチ
幼友「そうそう格好良かったよー! 見てないけど!」
男「おーい、いつまでも流れてたら釣るぞー?」
…プカーッ、フヨフヨ
男「…強情だな」
幼友「仕方ないね」ハァ…
幼馴染「幼友…?」
129: 2014/05/12(月) 16:39:40 ID:g/CZPAbs
幼友「男さん、服がずぶ濡れだから車で乾かしてもいいですかー?」
男「うわー、当たり前だけどズブ濡れだわー、透っけ透けだわー」
ピクッ…フヨフヨ…
幼馴染「幼友、着替えはあるのでしょうか」
幼友「一応あるんだけど、下はこのキュロットしか無いんだー」
男「じゃあ、下は荷物のバスタオルでも巻いて車内で温まって下さいー」
幼友「やーん、恥ずかしいー」
男「弟ー、お前もそんな幼友ちゃんと二人で車に行ったらどうだー?」
ザバァッ…!
弟「はい、喜んでー!」ピョーン
幼友「…アホだ、あいつアホだ」
136: 2014/05/13(火) 12:52:21 ID:nscgh39M
………
…
男「さて…幼友ちゃんと弟は車に行ったので、せっかくだからフライやってみますか?」
幼馴染「是非」
男「では、このタックルを。この辺りなら掛かる木の枝も無いので、思い切って練習しましょう」
… … …
男「──さっき説明した要領で、後ろ1時の角度でピタッ」
幼馴染「てーい」ピタッ、ヒュルッ…
男「伸びきったタイミングで、前10時位置…」
幼馴染「てーい」シュッ…ピタッ、フワッ…
男「もう一度、1時!」
幼馴染「てーい」ヒュッ…
137: 2014/05/13(火) 12:53:41 ID:nscgh39M
男「…10時!」
幼馴染「てーい」シュルッ
男「いい感じです、繰り返して──」
幼馴染「てーい……てーい……」シュルッ…ヒュッ…
男(上手い…というより、たぶん俺の指示が上手い)
男(…少し離れてロッドとラインの動きを全体的に見てるから、タイミングが掴みやすい)
男「ラインを送り出して…!」
幼馴染「てーい………てーい………」シュルルッ…ヒュンッ
男(そして俺より釣り歴の浅い幼馴染は、手首を使ったルアーキャストの癖がついていないから)
男(…これは案外、この方法が二人共に上達しやすいかもしれない)
138: 2014/05/13(火) 12:54:32 ID:nscgh39M
幼馴染「てーい……あっ…!?」カシャーン、クルクル…
男「惜しい、随分ラインを伸ばせましたが」
幼馴染「これは難しいです」シュン…
男「上出来過ぎるくらいです。解いて再開しましょう──」
… … …
幼馴染「てーい…てーい……てーい………てーい…」シュルルッ…ヒュルッ…
男「………」
幼馴染「てーい………てーい………てーい…あっ、また…」カシャーン
139: 2014/05/13(火) 12:55:07 ID:nscgh39M
男「手が疲れたでしょう、少し休みますか」
幼馴染「はい」
男「…まさか、フライフィッシングに挑む幼馴染の姿を見る事になるとは」
幼馴染「連れてきた癖に何を言いますか」
男「1年前までは思いもしなかった…という事です」
幼馴染「似合いませんか」
男「見とれて惚れなおします」
幼馴染「てっ…てーいっ!」ビシビシッ
男「痛てて、やめて下さい。…でも本当の事です」
幼馴染「氏ぬほど照れます」プスプス…
143: 2014/05/14(水) 10:50:58 ID:kpLsrZEc
………
…
弟(──今、僕は試練に立ち向かっている)
弟(そう…これは過酷な試練、己を制する意志の強さを問われてるんだ)
弟(僕は心の弱い人間だ)
弟(だけど自らに誓え、決して屈さない…衝動に流されたりしないと!)
弟(あの車の向こうで着替えてるのは、ただの縫いぐるみだ!)
弟(見たくなんかない! 例えすべすべ肌のゆるふわ内巻き髪のお姉さん的な姿をしていようと!)
弟(そう…例え、どんなにナイスバディでも!)
弟(ただの縫いぐるみだ!)
弟「………」
弟(……縫いぐるみなら、見てもいっか)ププッ
144: 2014/05/14(水) 10:59:52 ID:P0D74IqI
弟(まず、さりげなく立ち位置を変える!)スサササッ
弟(車の中央、前から後ろにかけての中心線を基準に縫いぐるみの位置と線対称になるように──!)
弟(くっくっ…知ってるぜ。縫いぐるみは今、助手席とその後部席のドアを開けて、できた隠れスペースで着替えてる…!)
弟(つまり助手席のドアが解放されている以上、ルームミラーにはその桃源郷が映し出されているはずなんだっ!)ニヤリッ
弟(今の僕の立ち位置からなら、小さくともそれを垣間見られるはず…)
弟(だが…本当にいいのか? 『絶対に覗かないでよ』と言った彼女を裏切る事になるんだぞ…!)
弟(……いい!)キラーン
弟(だってどうせその内、僕のモノにするつもりだもんなっ!)
弟(これは下見だっ! ご拝見…っ!)
幼友「もういいよー」バタンッ
弟「はぅあぁっ!? 出たな縫いぐるみ…!」ビクゥッ!
幼友「誰が縫いぐるみだって…? とーうっ!」ドゴォッ!
145: 2014/05/14(水) 11:02:24 ID:P0D74IqI
………
…
…車内
幼友「──で、何をしようとしてた?」
弟「ル…ルームミラーで覗こうとしまひた…」ピク…ピク…
幼友「油断も隙も無いってやつだね、まったく」ヤレヤレ
弟(…でも着替えてても、この見た目はヤバイよ)チラッ
弟(濡れた髪、Tシャツに薄手のパーカー、たぶんその下はノーブラ…)
弟(そして下半身は白いバスタオル巻きで、うっすらパンツの線が透けてるし)
幼友「…目のやり場に困るかな?」クスッ
弟「全然、穴があくほどガン見固定だからね」ニコッ
幼友「トランク室、行きたいのかな?」
146: 2014/05/15(木) 10:31:19 ID:0JEqXl3Q
幼友「はあ…最悪、携帯も川の中に落としちゃうし。エOチな目で見られるし」
弟「携帯…」
幼友「うん、流された時にね」
弟「………」
幼友「大事にしてたんだけどなぁ」
弟「…怪我が無かっただけ良かったじゃない」
幼友「まあね、でもショック………は……くしゅんっ!」ポヨーン
弟「ナイスくしゃみ。…でも風邪ひいたらいけないし、車の鍵借りてるからエンジンかけるね」
幼友「もう、またヤラシイ目で見たでしょ」
147: 2014/05/15(木) 10:31:57 ID:0JEqXl3Q
弟「そうは言うけど、幼友ちゃん。見るなってのは無理だよ?」
幼友「開き直りやがった」
弟「…僕、幼友ちゃんの全てが好きだから」
幼友「うっ」
弟「まだそんなに知り合って長く無くとも、幼友ちゃんは良い人だってのは解る」
幼友「弟君…」
弟「サバサバしたその性格も、それでいて意外と乙女なところも、小悪魔的な意地悪さも」
弟「もちろん可愛いし、髪型もよく似合ってる。全部好き」
幼友「さ…さすがに照れる…」ポリポリ…
弟「そんな風に異性として魅力を感じて、惹かれてるんだ。…どうしたって目がいくよ」
148: 2014/05/15(木) 10:32:43 ID:0JEqXl3Q
弟「それでも当たり前だけど、知らない部分はまだまだ残されてるんだ」
幼友「…そりゃそうだよ」
弟「知りたいんだ」
幼友(ストレートだなぁ…)
幼友(ふざけて軽くエOチな事をはばからずに口にしたり、わざと工口視線を送ってみたり)
幼友(普段はとても真面目とは思えない態度を、きっと…わざと見せてるくせに)
幼友「…ずるいよ」ボソッ
幼友(こういう時だけ、ちゃんと真剣になるんだから)
幼友(…そっくりだよ)ズキン
149: 2014/05/15(木) 10:33:33 ID:0JEqXl3Q
弟「幼友ちゃん」
幼友「…なーに?」
弟「付き合って下さい」
幼友「会う度に聞いてるよ」
弟「下手な鉄砲ってやつだよ、なりふりなんか構わない」
幼友「恋は押して、でも時には引かなきゃ」
弟「引かない。押して押して、押しまくるつもりだよ」
幼友「…肉食系だね」
弟「美味しそうだしね、幼友ちゃん」
幼友「どのへんが?」
弟「そりゃもう…………全部だよ」
幼友「何、今の間?」
弟「そこは察してよ」
150: 2014/05/15(木) 10:34:34 ID:0JEqXl3Q
幼友「…まだまだ、ボンネットに干してるキュロットも乾かないしね」
弟「うん?」
幼友「質問、受け付けるよ」クスッ
弟「……質問…」
幼友「知りたいんでしょ? 私の事…そう言ってたし。教えられる事なら、答えてあげよう」
弟「…じゃあ、僕の事好き?」
幼友「あははっ、本当…ストレートな質問だね」
弟「なりふり構わないんだってば」
幼友「好きだよ」
弟「それ、幼馴染ちゃんに言うのと同じ『好き』だよね──?」
幼友「──違うよ」
151: 2014/05/15(木) 10:35:13 ID:0JEqXl3Q
弟「えっ」
幼友「そんな仲良しこよしな、お友達の『好き』じゃないよ」
幼友「ちゃんと…」
幼友「一人の異性として」
幼友「……私、弟君の事…好きだよ」
弟「……からかってる?」
幼友「もう、失礼だなぁ。余裕ぶってるけど、そんなでもないんだよ?」
弟「じゃあ」
幼友「でも、もう少し待って」
弟「………」
幼友「ごめん…もしかしたら、少しじゃないかもしれないけど」
弟「…うん」
152: 2014/05/15(木) 10:35:45 ID:0JEqXl3Q
幼友「前に話したよね。私…高校の時と大学に入ってから、あわせて二人のヒトと健全にお付き合いをしたの」
幼友「そのどっちのヒトもね、ちゃんと好きだった……最初はね」
幼友「その時と同じくらいには間違いなく弟君の事、好き」
幼友「でも…なんでかな、その時みたいに『好きなんだから付き合ってみればいいや』とは思えないの」
弟「恋に恋する歳じゃなくなったから?」
幼友「酷いなぁ、まだ若いぞ? 君よりはトシだけどね」ムスッ
弟「…ごめん」
幼友「たぶんだけどね…その時の相手よりも、もうちょっと強く…好きなんだよ」
弟「僕を?」
幼友「当たり前でしょ。だから、試しに付き合ってみよう…とは思えないんだ」
弟「……それでフラれてばっかりなんだね、僕」
幼友「そ、好きだからフッてるの。あははっ…変な話だね」
153: 2014/05/15(木) 10:36:33 ID:0JEqXl3Q
幼友「だからね、弟君。もし私が『付き合ってもいいよ』って言った時は、きっともうベタ惚れだよ」
弟「想像できない」
幼友「そりゃもう、すぐにでも結婚迫るくらいだったりして。もし弟君が浮気なんかしたら病んじゃうかもね?」クスクス…
弟「…解った、待つよ」
幼友「ん、待ってて」
弟「でも待つだけじゃない」
幼友「…肉食系だもんね」
弟「うん、一刻も早くベタ惚れさせるように、がんばる。そんで会う度に告白する」
幼友「……うん」
154: 2014/05/15(木) 10:37:05 ID:0JEqXl3Q
弟「まだ質問、いい?」
幼友「いいよ」
弟「じゃあ、好きな食べ物は?」
幼友「グラタンとかドリアかな」
弟「いいね、作って欲しい」
幼友「作って欲しいねー」
弟「好きなアーティスト」
幼友「スピッツとSuperfly、最近はback numberとか」
弟「back numberは僕も好きだな。…行ってみたい国は?」
幼友「スペイン、料理も美味しそうだしね」
弟「新婚旅行先、決まりだね」
幼友「すっ飛ばすねぇ」ケラケラ
155: 2014/05/15(木) 10:37:46 ID:0JEqXl3Q
弟「好きな映画」
幼友「オーロラの彼方に」
弟「彼氏に乗って欲しい車は?」
幼友「………」
弟「…サーフだね」
幼友「まだ答えてないよ」
弟「最初はジムニーくらいで勘弁してね」
幼友「ん、楽しみにしてる」
弟「好きな花は?」
幼友「ガーベラと桜」
弟「桜の方は…」
幼友「ごめん、好きなのは花見です」テヘッ
156: 2014/05/15(木) 10:38:28 ID:0JEqXl3Q
弟「スリーサイズは?」
幼友「B88W58H89」
弟「カップは?」
幼友「Fだね」
弟「…答えるんだ」ドキドキ
幼友「大サービスだぞ」
弟「ありがたや」
幼友「オカズになりそう?」
弟「僕が干物になりそう」
205: 2014/05/19(月) 23:01:50 ID:U.Os7pnQ
幼友「ふわ…車内が暖かくなって眠くなっちゃった」
弟「けっこう朝早かったもんね」
幼友「…寝ちゃったら、ヘンな事する?」
弟「誓ってしない」
幼友「さっき着替え覗こうとしたの、だーれだ?」
弟「そんな奴がいたの!? 許せない!」
幼友「いい性格してるね。…ま、信用したげよう」
弟「ところで幼友ちゃんって、寝たら何かあっても起きないタイプ?」
幼友「それ、なんで訊いた?」ニッコリ
206: 2014/05/19(月) 23:03:18 ID:U.Os7pnQ
………
…
幼友「………」スゥ…
弟(…寝ちゃったのかな)
弟(なんか普通に肩に寄りかかられてるし)
『ちゃんと一人の異性として…私、弟君の事…好きだよ』
弟(…耳から離れないよ)
弟(例えまだ、幼友ちゃんの気持ちに踏ん切りがつくほどじゃなくても)
弟(少なくとも今、幼友ちゃんの心を一番大きく占めてるのが自分ならいいな)
207: 2014/05/19(月) 23:11:50 ID:U.Os7pnQ
弟(…寝顔も可愛い)
弟(写メ撮ったら、起きちゃうかな──)
──ハッ
弟(そういえば…川底で拾った携帯、渡してない)
『大事にしてたんだけどなぁ』
弟(女々しいよな…幼友ちゃんがストラップの事について触れてくれなかったから、言い出せなかった)
弟(…いや、言い出さなかったんだ)
弟(残念だけど、壊れてるのは間違いない)
弟(つまり僕は、自分が買ったお揃いのストラップを拾っただけ)
弟(今更、どう言って渡すんだ? 『新しく買う携帯にも着けてね』って、携帯が壊れてショック受けてる幼友ちゃんに?)
弟(せめて川から上がってすぐに渡すべきだった……完全に機を逃したなぁ)ハァ…
210: 2014/05/20(火) 08:37:55 ID:d1F1JYhs
……………
………
…
男「ご馳走さまでした」ツヤツヤ
幼馴染「お粗末さまでした」ツヤツヤ
男「さて、気をとりなおしてフライの特訓を続けたいと思います」
幼馴染「切り替えが早いです。…あっちと一緒」ププッ
男「まじで凹むからやめて」
212: 2014/05/20(火) 08:49:34 ID:d1F1JYhs
男「…幼馴染、悪いですがある程度距離をとって横並びになってもらっていいでしょうか」
幼馴染「了解です」
男「では、同時にピックアップしましょう」スッ…
幼馴染「よっ…と」フワッ、ピタッ
男(…1時)ピタッ
幼馴染「てーい」シュルルッ
男(上半身全体を使うつもりでラインを伸ばす…10時)ヒュルッ…ピタッ
幼馴染「……てーいっ」シュルッ…
男(ここだ…! そうか、俺は前方にラインが伸びきるのを待てていなかったんだ)ヒュルルッ…!
214: 2014/05/20(火) 08:56:56 ID:d1F1JYhs
幼馴染「てーい……あっ!?」カシャーン
男「………」シュッ…ヒュルルッ
幼馴染「…よかったです、そんなに絡まりませんでした」
男「………」ヒュルルッ…ヒュンッ
幼馴染「男…」
男「………」シュルルルッ…スゥッ…
幼馴染(目つき…変わりました)クスッ
男(いいぞ…だいぶ伸びた! 次の一振りであの岩の脇に届かせる…!)フワッ…
幼馴染「男、声が足りません」
男(…よし、渾身の…でもリラックスした動作で…!)シュルッ…!
幼馴染「せーの…」
男「てーいっ!」ヒュンッ
215: 2014/05/20(火) 09:03:12 ID:d1F1JYhs
…フワッ
ピチャッ……スゥゥッ──
男(フケたラインを回収しながら…どうだ…?)
──バシャッ!
男「…!!」ピシィッ!
幼馴染「出た…!」
男「おっけー! ノッた!」グググッ…
バシャッ…パシャパシャ…
男「…っと、もうちょい…よし……キャッチ!」ピチピチッ
幼馴染「やりました、おめでとうございます」パチパチ
男「ふう…たかがウグイを釣ってこんなに嬉しいのは子供の頃以来です…」
216: 2014/05/20(火) 09:31:58 ID:d1F1JYhs
幼馴染「やはり水面でヒットする釣りは見てても楽しいです」
男「しかしフライにも水中に沈めるタイプのものはあります」
幼馴染「…この軽そうなフライ針が沈むものでしょうか」
男「もちろん毛バリの種類が違います。今使っている浮くタイプの針を使う釣りはドライと呼ばれます」
幼馴染「…ああ、そう」フッ
男「ドライな態度と言いたいのでしょうか」イラッ
幼馴染「では沈むタイプは?」
男「カゲロウの幼虫などを模した重めの毛針を使い、ニンフと呼ばれます」
幼馴染「私、産むわ」
男「妊婦じゃないです」
幼馴染「あっ…動いた」キャッ
男「やめい。だいたい妊婦ならもうちょっと発達──」
幼馴染「なんでもかんでも結びつけるな」
226: 2014/05/21(水) 12:50:36 ID:kS.JJbjg
男「せっかくコツを掴み始めているので、どんどんいきます」
幼馴染「私も早く釣りたいです」
男「これは最初はあまり長く伸ばそうとしない方がいいです。近場でも雑魚は釣れるようなので」
幼馴染「先ほどのウグイも雑魚の内ですか」
男「雑魚と呼ぶには大ぶりですが、リリース対象の外道です」
幼馴染「ではがんばります」
男「幼馴染」
幼馴染「…なんでしょう?」
男「俺より上流に入って下さい」
227: 2014/05/21(水) 12:51:22 ID:kS.JJbjg
幼馴染「でもそれじゃ男の動作を見られません」
男「お前はスジがいい、あとは今のやり方のまま慣れるだけです。…頼むから俺の視界に入っていて下さい」
幼馴染「男の視界に…?」
男「正直、さっきの幼友ちゃんの一件…怖かったです」
幼馴染「…男」
男「幼友ちゃんに…弟に万一の事があったら、そう思うとゾッとしました」
幼馴染「でも私は今、魚河岸は履いていません。流れに立ち込んでもないです」
男「それでもです。…二人に怒られてしまいそうですが、俺は何よりも幼馴染を失うのが一番怖いです」
幼馴染「まあ素敵」
228: 2014/05/21(水) 12:52:31 ID:kS.JJbjg
男「茶化さないで下さい」
幼馴染「…照れ隠しの内です」
男「この場より上流にダムはありませんし、ここのところ大雨も降っていません。だから川が増水する事は無い…それでも心配です」
幼馴染「………」
男「…ここのところ休みの度に釣りに出ていますし、平日も2日に一度はどちらかの家に行っています」
幼馴染「確かに」
男「なんとなく自分でも意外です」
幼馴染「…意外? 何がでしょう」
男「俺は自分が思っていた以上に、相手を束縛する性質だったらしい」
229: 2014/05/21(水) 12:53:19 ID:kS.JJbjg
幼馴染「……男」
男「窮屈じゃありませんか」
幼馴染「………」スッ…
…ギュッ
男「幼馴染…?」
幼馴染「潰れるくらい抱き締め返して、束縛して下さい。…私は平気です」
男「…良かった」ギュ…
弟「兄ちゃーん、僕も釣り復帰するよー」
男&幼馴染「はぅあぁあぁっ!?」ビクゥッ!…バッ!
230: 2014/05/21(水) 12:54:02 ID:kS.JJbjg
弟「どうかした?」
男「な、何でもねえ! 幼友ちゃんは…!?」アハハハ
弟「車で寝てる。最初は肩を貸してたけど、かなり寝入っちゃったみたいだからそーっと横にしてきた」
幼馴染「………」チッ
男「そうか…溺れたら必氏になるだろうから、疲れたんでしょう」
弟「フライでもミャク釣りでもいいから、魚釣りたいんだ」
男「…ずいぶんやる気だな」
弟「ん…ちょっと、気晴らしにね」
男「気晴らし…? 何のだ?」
弟「……ごめん、なんでもない。竿ある?」
男「ああ、悪いけど幼馴染もフライのコツを掴んできたところだから、とりあえずミャクで探って下さい」
弟「うん」
236: 2014/05/21(水) 21:13:16 ID:BrFaE4TA
………
…
弟「えっと…流れの上手に向かって……フワッと」フワリ
弟(目印のトンボ糸を見ながら、流れに乗せて──)
スーーーッ……ピタッ…
…ツンッ!
弟「…っと!」ピシィッ
パシャパシャ…パチャッ
弟(…すごい、言う通りにしてたら釣れちゃった)
弟(なんて魚だろ、綺麗だな)
弟(どう見ても食べられそうだし、キープしとこ)ゴソゴソ…
237: 2014/05/21(水) 21:22:11 ID:BrFaE4TA
弟(よし…次だ、せーの…)
弟「とーう」ボソッ
スゥッ…ポチャッ…
弟(…何が『気晴らし』だよ)
弟(気の曇りの原因は、自分が蒔いた種だってのにさ)
弟(本当…女々しいなぁ、僕)
『押して押して、押しまくるつもりだよ──』
弟(──威勢がいいのはクチばっかじゃん)
…ツンッ!
ピシィッ!…パシャパシャッ!
弟(また同じ魚だな…スカリに入れとこ)ゴソゴソ…
241: 2014/05/22(木) 11:30:43 ID:BoF4rSQA
弟「…よっ」スゥッ
弟(ポケットの携帯、いっそまた川に投げ込んじゃおうかな)
弟(…ってバカな事考えちゃだめだ、僕)
弟(なんとかタイミングをみて返してあげないと)
弟(代わりの携帯を買うにしても、前の本体があった方が安く買えるんじゃなかったかな…水濡れ交換とかで)スゥゥ…
弟(そう…だからこの携帯を渡すのは、なにもストラップだけを押しつけようってんじゃない!)
弟(…あとは、なんですぐに渡さなかったのかってだけだな…)ピチョン
弟(今度は釣れなかったな…もうちょい上流に進んでみよっか)ザッ…ザッ…
弟(あの辺、どうかな──)
242: 2014/05/22(木) 11:35:16 ID:Re629Ac6
………
…
幼馴染「てーい、てーい、てーーーいっ」シュルルルッ、ピチョン…
男「お見事、距離は短くともそれなら何か釣れるかもしれません」
スゥゥ…
幼馴染「……ああ、残念。今回はだめでした」ピチョッ
男「ドンマイ、もうすぐです」
幼馴染「しかしさっきから弟君が好調に釣っているようです」
男「なんか無心で釣りしてるな…背景に溶け込みすぎです、どこの達人だ」
幼馴染「あ、また釣りました」
男「…でもだんだん上流に向かってます。やれやれ…あまり離れて欲しくないのですが──」
243: 2014/05/22(木) 11:43:14 ID:BoF4rSQA
………
…
幼友「…ん……」パチッ
幼友「あ…ごめん…弟君、横になってシートとっちゃってたね──」ムクッ
幼友「──あれ?」キョロキョロ…
幼友(なんだ、いないんだ。また釣りに行ったのかな)
幼友「…ちぇっ」
幼友(……あれ…?)
幼友(私、今…たぶん…)
幼友(寂しい…って、思った…)
245: 2014/05/22(木) 18:16:56 ID:wfjLURn6
幼友「…はぁ」
幼友(ストラップ無くした事、弟君なにも言わないなぁ)
幼友(いい気はしないよね…)
幼友「…大事にしてたんだけどな」ボソッ
幼友(本体なんか、水没したらそれまでだもん)
幼友(そんなの…どうでもいい)
幼友「気に入ってたんだよ…お揃いのストラップ」
幼友「ごめんね…弟君」
幼友(諦めるしかないかなぁ)
幼友(…でも、きっと目の前に…すぐそこの川底にあるんだよ──)
246: 2014/05/22(木) 18:17:33 ID:wfjLURn6
………
…
弟「…よいしょっ」ピシィッ!
パシャッ…バシャバシャ…
男「いい調子だな」
弟「兄ちゃん」
男「でもお前、あんまり離れたところへ行くなよ。何かあっても助けられない」
弟「あ…僕、こんなとこまで進んでたんだ…」
男「夢中で釣ってたって? そんなに熱心だったか…?」
弟「……」
247: 2014/05/22(木) 18:18:07 ID:wfjLURn6
男「それとも、何か考え事でもしてたか」
弟「…なんでもない、ほっといて」
男「お前な──」
弟「──あ、幼友ちゃん…起きたんだ」
男「ん…?」
弟「幼馴染ちゃんと話してる」
男「はぁ…向こうへ戻ろう。またフライを交代するから」
弟「…うん」
248: 2014/05/22(木) 18:19:01 ID:wfjLURn6
………
…
幼馴染「幼友、どうしてその格好で…着替えたのでは?」
幼友「着替えたんだけどね、また濡れた服に戻したの」
幼馴染「えっ」
幼友「…ん、どうせまた濡れるから」
幼馴染「ちょ…どういう…」
幼友「川、入る」
幼馴染「ば…馬鹿な事言わないで下さい」
幼友「入るの、探さなきゃいけないものがあるから」ザッザッ…
249: 2014/05/22(木) 18:20:12 ID:wfjLURn6
幼馴染「行かせません。男はさっきの一件、とても心配していました」
幼友「悪かったと思うけど、どうしても探したいの。どいて、幼馴染ちゃん」
幼馴染「嫌です」
幼友「それでも通るって言ったら?」
幼馴染「止めます、何としても」
幼友「あははっ…漫画みたいだね」
幼馴染「……」
幼友「…ごめん、幼馴染ちゃん──」ザッ…!
250: 2014/05/22(木) 18:21:28 ID:wfjLURn6
幼友「──隙ありっ!」ザザッ!
幼馴染「通さないと言ったでしょう!」ガシッ
幼友「ちっ…放してっ!」
幼馴染「絶対、放しません!」
幼友「もうっ…しつこいなぁっ」
幼馴染(仕方ありません──)ザッ…!
幼友(──しょうがない…か)グッ!
幼馴染「てええぇぇぇいっ!」
幼友「とおおぉぉぉうっ!」
254: 2014/05/22(木) 19:40:01 ID:ZE/9ZxGI
幼馴染「くっ…!!」フラッ
幼友「うぅっ…」ヨロッ
幼馴染「…殴られるなんて、久しぶりです」
幼友「いてて…顔は殴らないけどね」
幼馴染「でも、この程度じゃ…怯みません!」ドンッ
幼友「くっそ…! 細いクセに力あるんだからっ!」ググッ…
幼馴染「てーいっ!」ギュッ…グイッ!
幼友「とーうっ!」ガシッ!
255: 2014/05/22(木) 19:48:19 ID:HHLYqVo6
男「ちょ…あいつら、なにやってんだ!?」
弟「えっ、喧嘩してる…!」
男「急げ! 止めるぞ!」ダッ…
チョッ…ミズヲ カケナイデ クダサイ!
フク ガ スケスケ ニ ナリマス!
コラーッ!シャツ ヒッパルナー!
イマ ブラジャー シテナインダカラッ!
男「………」ピタッ
弟「………」ピタッ
アッ…ダメ!ヤブレチャイマス!
ワワッ!ハナセッ!ポロリ シチャウ ジャナイッ!
男「…もう少し様子をみるか──」
弟「──賢明だね」
259: 2014/05/22(木) 20:44:16 ID:kT4zJUFA
幼馴染「何を探す気か知りませんが、諦めて下さい!」ギュッ、ビヨーン
幼友「うわ!? 引っ張らないでってば! 携帯…川に落としちゃったんだよっ!」アワワ…
男「くっ…! あと少しなのにっ!」チキショー
弟(…探す? 何を……)
幼馴染「貴女の携帯は防水タイプじゃなかったはずです! 危険をおかしてまで探さなくても──」
幼友「違うっ! 大事なのは携帯じゃないの!」バシャッ!
幼馴染「ひゃっ…!? 冷た…!」グッショリ
幼友「弟君とお揃いのストラップ…! 無くしたくないんだ…解ってよ!」ドンッ
幼馴染「うっ…!?」フラッ…
弟「幼友ちゃん…」
260: 2014/05/22(木) 20:53:07 ID:kT4zJUFA
幼友「弟君は私の気を惹こうと頑張ってくれてるの! 私は…すぐに応える事はできなくても、その気持ちは大事にしたい!」
幼馴染「…幼友…」
幼友「だからあのストラップは私の小さな宝物なんだよ……携帯はどうでもいいけど、あれは絶対に無くしたくない! だから──」バッ
男「…いかん! 弟、さすがに止めるぞ!」
弟「宝物…ストラップが…?」
幼友「──邪魔…しないでっ! とーーーうっ!!!」ドォッ!
幼馴染「うっ…!?」ヨロヨロッ…!
…フラッ
ドッボォーン!!
男「ふ…二人とも…っ!?」
262: 2014/05/22(木) 21:15:20 ID:kT4zJUFA
幼馴染「ぷはっ…!」バシャッ
幼友「けほっ…けほっ…」ザァッ…
男「よかった…浅瀬か…」ホッ
弟(幼友ちゃん…)
弟(『大事にしてた』って言ってくれたのは、ストラップの事だったんだね)
弟(今、ごめんなさいって…『実は持ってました』って出すのが一番だけど──)
弟「幼友ちゃんっ…!」
幼友「えっ…! 弟君…き、聞いてた…!?」ドキッ
弟「ストラップ、僕が探すからっ!」
男「おい…まさかっ!?」ガシッ
弟「行ってきます! とーうっ!」ピョーン
男「うわっ!? ばかやろ…!」フラッ──
──ドッボォーン!!
263: 2014/05/22(木) 21:35:25 ID:kT4zJUFA
幼友「二人も落ちちゃった…!?」
幼馴染「大丈夫だとは思いますが…」
ブクブクブク…
……ザバアァッ!
男「…ぷっは! くっそ…引っ張り込みやがって…」ケホケホ
幼馴染「男っ…!」ホッ…
幼友「弟君は…」ハラハラ
ブクブク……ザバッ!
弟「ふぁ…! 携帯、あったよ…!」
幼友「えっ!?」
弟「ストラップもついてるからね!」
幼馴染「はぁ…良かったです」
男「………」
264: 2014/05/22(木) 21:41:04 ID:kT4zJUFA
弟「はい…幼友ちゃん」
幼友「良かった…弟君、ありがと…」
男「ストラップ、渡したか」
弟「え? うん、渡したよ…?」
男「そうか」ブンッ…!
バキィッ──!!
弟「ぐっ…!?」ヨロッ…
──ドッバーン!
幼友「お、男さん…!?」
幼馴染「男…どうして…!?」
男「ざけんなっ! ここは幼友ちゃんが溺れたところより上流だぞ!」
265: 2014/05/22(木) 21:51:42 ID:kT4zJUFA
弟「う…痛ってぇ…」ザァッ…
男「お前、最初から携帯持ってやがったな…幼友ちゃんを助けに飛び込んだ時、もう拾ってたんだろ」
幼友「男さんっ…! そうなのかもしれないけど、弟君が見つけてくれたのは本当なんだから…!」アセアセ
男「すぐに渡さなかった理由が何なのかは知りません…まあ大方タイミングを逸したくらいの事なんでしょうが」
弟「…お見通しだね」
男「そこはどうでもいいんだよ。でもお前が携帯を返さなかった、持ってる事を言わなかったから…幼友ちゃんはまた危ない目にあうところだったんだ!」
幼馴染「男…」
男「しかもお前まで…! ふざけんなってんだよ! 幼友ちゃんは大事な友達だ、お前は俺のたった一人の弟だぞ!」
弟「……兄ちゃん」
男「もしもの事があったら…どうするんだよ……馬鹿野郎」
266: 2014/05/22(木) 21:57:43 ID:kT4zJUFA
弟「兄ちゃん、ごめん。僕…本当に馬鹿だったよ」シュン…
男「もういいです、怪我も無いんだし…それに──」
幼友「ん?」
幼馴染「…はい?」
男「──濡れ透けフェチとしては、堪らない光景にもありつけました」ププッ
幼馴染「幼友…ノーブラで透けてます!」アワワ…
幼友「幼馴染ちゃんだって、シャツが白いから…!」ギャー!
男「…よきかな」
弟「…イエス」
270: 2014/05/22(木) 22:46:27 ID:kT4zJUFA
男「でも、あとでしっかり幼友ちゃんには謝っとけよな」
弟「あい…」ショボーン
男「…殴って悪かったよ」
弟「ううん、仕方ないんだ。…口の中、切れたけど」
男「加減する気はなかったからな」
弟「何年ぶりだろうね、兄ちゃんにブン殴られるなんて」
男「…10年近いか」
弟「なんとなく、懐かしかったよ」
幼馴染(…兄弟モノでBLちっくです)フンス
幼友(趣味は無いけど、悪くもないな…)フンス
271: 2014/05/22(木) 22:53:12 ID:kT4zJUFA
男「それから、幼友ちゃん」
幼友「はい?」ギクッ
男「…貴女にも話す事があります」
弟「兄ちゃん、幼友ちゃんが川に入ろうとしたのは…」
男「ああ、ひいてはお前のせいだ。でも幼友ちゃんは自発的に身を危険に晒そうとしたからな」
幼友「…ごめんなさい」
男「さっき言った通り、幼友ちゃんは俺にとっても大事な友達です」
男「それに幼馴染にとって、かけがえのない親友であり…」
男「…しかも、大事な弟が惚れた相手です」
272: 2014/05/22(木) 22:59:50 ID:kT4zJUFA
男「釣りはただでさえ一歩間違えれば危険な遊び、せめて自ら危険を招くような事はしないで下さい」
幼馴染「初釣行の私にテトラの穴釣りをさせようとした人の台詞とは思えません」ボソッ
男「しゃらっぷ」
幼友「…気をつけます」
男「じゃあ、弟はブン殴ったから…幼友ちゃんにはデコピンです」
幼友「えっ」
男「うりゃ」ビシィッ
幼友「いてっ…」
273: 2014/05/22(木) 23:03:54 ID:kT4zJUFA
男「それから…幼馴染」ニコッ
幼馴染(幼友を止めようとした私は、きっと褒められるはずです──)ププッ
男「──うりゃっ」ビシィッ!
幼馴染「痛っ!? なぜでしょう…」ウルウル…
男「あれ…? なんで幼馴染までデコピンしたんだろう…褒めようと思ったのですが」
幼友「ソフトな壁ドンだね」
幼馴染「ひどい…」
278: 2014/05/23(金) 19:07:02 ID:/9jPBXSU
幼馴染「ふぇ…っくし!」
男「あかん。濡れ透けはいつまででも眺めてたいけど、このままじゃ風邪をひきます」
弟「じゃあ記念に集合写真だけ撮ろう!」
男「よし! みんな胸を張って!」
幼馴染「てーい」ゲシッ
幼友「とーう」ゴスッ
男「ふふふ…ツッコミを入れるために片腕を上げたな」ゴフッ
弟「今の透け透けのたゆんたゆん、目に焼きつけたぞ…」ガクッ
幼友「めげない奴らめ…」
279: 2014/05/23(金) 19:07:57 ID:/9jPBXSU
男「冗談はさておき。午後三時半…ちょっと早いけど、バンガローのあるキャンプ場に向かいますか」
幼馴染「賛成です、露天風呂もあったはず」
弟「混浴!?」
幼友「違いまーす」
男「とりあえず、男女交代で車に行って着替えましょう」
幼友「うぅ…結局、下半身はバスタオル巻きでキャンプ場に入るのかぁ…」
弟「僕のハーフパンツで良かったら、替えあるから使う?」
幼友「あ、そうだね。洗濯して返すから」
弟「お気になさらず、是非そのままで」
280: 2014/05/23(金) 19:09:05 ID:/9jPBXSU
……………
………
…
…午後四時、キャンプ場の露天風呂
男「くあぁあぁ…あったまる…」フゥ…
弟「ホッとするねー」
男「たまには明るい内から温泉に浸かるってのもいいもんだな」
弟「ごめん、兄ちゃん…本当は夕まずめを釣りたかったよね」
男「…いいよ、別に。最初から今回は『釣りだけにこだわらず、小旅行的にいく』って話したろ」
弟「うん」
男「キャンプ場だから朝メシはついてないし、明日は早起きしてマズメ時から朝の内だけ釣りをして…その後はどこか観光しに行くか」
281: 2014/05/23(金) 19:09:45 ID:/9jPBXSU
弟「痛てて…」サスサス
男「殴ったところ、痛むか」
弟「…あれは効いたね」
男「全く…最初から携帯を返しておけば良かったのに」
弟「自分でも情けないよ。…幼友ちゃんが『携帯を無くしてショック』としか言わなかったから、拗ねちゃったんだ」
男「…うーん」
弟「どうせ携帯は壊れてたから、なんとなくストラップを押しつけるだけのような気がして」
男「押しつけりゃいいじゃねえか、『大事に持っとけ、もう落とすな』って」
弟「そんなの言えたら苦労しないよ」
282: 2014/05/23(金) 19:10:25 ID:/9jPBXSU
男「まだまだ餓鬼だな」
弟「…今日は言い返せないね」
男「ま…恋は盲目。周りが見えなくなるだけじゃなく、自分も見失うもんだ」
弟「兄ちゃんはどうだった?」
男「…俺の事はいいだろ」
弟「ずるいよ、経験談でも聞きたいね」
男「そんな事言ってもな…何しろ相手が幼馴染だから、昔から変わらないよ」
弟「本当に?」
283: 2014/05/23(金) 19:12:06 ID:/9jPBXSU
男「ああ、ずっと昔から好きだったからな。それこそ物心ついた頃から、絶対に他の奴に渡す気なんか無かったよ──」
──ブフォッ!
ウワッ!?オ…オサナナジミチャン、シッカリ!
ヤバイ…ニヤニヤ ガ トマリマセン…
ウヘヘヘ…
男「…やっぱり聞いてやがったな! 後で覚えてろ!」
弟「うわ、じゃあさっきの僕の情けない台詞も…」
キイテナイ、キイテナイ
スネテタ ナンテ シラナイヨー!
弟「ひっでえ、穴があったら入りたい」
男「入った事ないだろうからな」
293: 2014/05/24(土) 12:57:06 ID:f6MX6s1g
一応スタート時点で三人ともB3、男と幼友は21才で幼馴染はハタチ
弟はもちろん高3の18才
就活は
男→おじの釣具店に雇われる見込み、数年内に既に存在する二号店を任される可能性が高いので、経理・簿記等の資格取得を(のんびり)目指している
幼友・幼馴染→かなり呑気に構えている
男と幼馴染は相互に好意をもちつつ、よくある幼馴染モノ的流れでなあなあに過ごしていた
ただ男の中で「釣りがしたい」でも「幼馴染とも遊びたい」という想いが競り合い、ある日1スレ目の>>1の考えに達し犯行に及ぶ
男と幼馴染は高校は別々
幼友は幼馴染の高校時代からの友人で、その頃も数度は男と会っている
1スレ目の>>1より半年ほど前(二月くらい、三人はB2)幼馴染のハタチ祝いを兼ねた女子会が催され、男が街まで迎えに行く
しかし幼馴染は泥酔して友人の呼んだタクシーで帰宅していた
そこで久しぶりに会った幼友を送る事に(春の気配編の回想シーン参照)
幼友が男にほのかな好意を抱くようになったのはそのあたりから
…そもそも最初の海釣り編しか考えてなかったし、その後もバス釣り編で終わるくらいのつもりだったから全て後づけ
矛盾は多々あるかもしれない
男と幼馴染の中学や高校の時のエピソードとかも妄想中です
弟「釣りロマンを求めて」幼友「春の淡水釣り編だよー」後編
弟はもちろん高3の18才
就活は
男→おじの釣具店に雇われる見込み、数年内に既に存在する二号店を任される可能性が高いので、経理・簿記等の資格取得を(のんびり)目指している
幼友・幼馴染→かなり呑気に構えている
男と幼馴染は相互に好意をもちつつ、よくある幼馴染モノ的流れでなあなあに過ごしていた
ただ男の中で「釣りがしたい」でも「幼馴染とも遊びたい」という想いが競り合い、ある日1スレ目の>>1の考えに達し犯行に及ぶ
男と幼馴染は高校は別々
幼友は幼馴染の高校時代からの友人で、その頃も数度は男と会っている
1スレ目の>>1より半年ほど前(二月くらい、三人はB2)幼馴染のハタチ祝いを兼ねた女子会が催され、男が街まで迎えに行く
しかし幼馴染は泥酔して友人の呼んだタクシーで帰宅していた
そこで久しぶりに会った幼友を送る事に(春の気配編の回想シーン参照)
幼友が男にほのかな好意を抱くようになったのはそのあたりから
…そもそも最初の海釣り編しか考えてなかったし、その後もバス釣り編で終わるくらいのつもりだったから全て後づけ
矛盾は多々あるかもしれない
男と幼馴染の中学や高校の時のエピソードとかも妄想中です
弟「釣りロマンを求めて」幼友「春の淡水釣り編だよー」後編
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