291: 2014/11/17(月) 19:14:33 ID:4j2r9QD2


「釣りロマンを求めて」シリーズ

前回:男「釣りロマンを求めて」幼馴染「夏のビーチ時々釣り編です」前編

幼馴染「──やれやれ、上がりやすい岩場で助かりました」

幼馴染(砂浜の方は……あっちなのでしょうが、他の岩の陰になってちょうど見えません)ハァ…

幼馴染(ん、潮溜まりのプールが出来てます。ちょうどいいのでマゴチはここに)チャプン


幼馴染(…男、心配してるでしょうか)


『──さすが幼馴染、ほっといても安心です』


幼馴染(……してないか)ムッ

幼馴染(浮き輪もありますし、マゴチを逃がすとしたら帰れなくはありません)

幼馴染(…別に心配される必要もないし)
放課後ていぼう日誌 11 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

292: 2014/11/17(月) 19:15:16 ID:4j2r9QD2

『──困る事もあるでしょうから、一応できるだけ俺の傍で行動して下さい』


幼馴染(男が気にかけてるのは、従妹ちゃんの方です)モヤモヤ

幼馴染「私は…別に平気だし」…ギュッ


幼馴染(でも、幼友は心配してるかもしれません)

幼馴染(…岩場、簡単に登れそうです。上までいったら砂浜見えるんじゃ…?)キョロキョロ


幼馴染「ここからいけそうですね」ガシッ

幼馴染(よっ…と、テトラを渡ることを思えば余裕です)ヒョイッ…パシッ

293: 2014/11/17(月) 19:16:01 ID:4j2r9QD2

…ザザーン、ザアァーッ


幼馴染「……?」

幼馴染(なんとなく、岩の中から波音がするような…?)

幼馴染(…まさか、反射してるだけでしょう)


幼馴染(もうちょっとで一番上……おぉ、下を見るとちょっと怖い)ブルブルッ

幼馴染「あっ…」

幼馴染(幼友の姿が見えました、弟君もいます)フリフリフリ

幼馴染(…やっぱり男と従妹ちゃんの姿はないみたいです。探してもないのでしょうか)キョロキョロ


幼馴染(……ん?)

幼馴染(岩のてっぺん、穴が穿いて──?)

294: 2014/11/17(月) 19:16:39 ID:4j2r9QD2

……………
………



男「──幼友ちゃん、どれのことですか!」

幼友「そこの一番背の高い岩! 今は見えないけど、さっきてっぺんに幼馴染ちゃんの姿が見えたの!」

弟(ここで『油断しすぎは♂失格なんだって』とか言ったらブン殴られるだろーなー)


従妹「あ、今は岩のふもとに座ってはるやん」

幼友「なんだ…手を振ってるじゃない。よかった、何事もなくて」フリフリフリ

295: 2014/11/17(月) 19:17:19 ID:4j2r9QD2

弟「うわ、地続きかと思ったら離れ小島じゃん! 高っかいし!」ゾッ

幼友「あっちから降りられそう」


男「いや、ここからでも降りられます」バッ!

従妹「へ?」

男「アイキャンフラーイ…って、怖ええええぇえぇっ!!」ヒューーー


…ドッポーーーン!


弟「あー、痛いな…今の…」

幼友「とてもじゃないけど、スムーズな着水じゃなかったね」

296: 2014/11/17(月) 19:17:52 ID:4j2r9QD2

………



幼友「もうっ! 心配したじゃない!」ギュー、ムニュー

幼馴染「ご、ごめんなさい…気づいたらみんな見えなくなっていました。…っていうか、なんでしょうこの屈辱的な弾力」

弟(いいなー…)チッ


従妹「男っち、大丈夫?」

男「着水体勢を若干ミスりました…痛てて」サスサス

幼友「結局、岩場に上がるの男さんが最後だったし」

弟「ビミョーにお腹を打ったっぽいね、赤くなってる」ププッ

男「面目ない…」

297: 2014/11/17(月) 19:18:24 ID:4j2r9QD2

幼馴染「でも、私のところに早く来ようとしてくれたのは嬉しかったです」クスッ

男「…すみません、俺が目を離したから」

弟「空回る漢気を見た」

幼友「よっぽど心配だったんだよー? ねー?」


幼馴染「ちょっと拗ねてましたが──」

男「ん?」

幼馴染「──さっきのダイブで、帳消しにします」ナデナデ


従妹「………」

298: 2014/11/17(月) 19:19:23 ID:4j2r9QD2

幼友「それはそうと、幼馴染ちゃんが持ってるの何?」

幼馴染「ああ…これは、岩の中で見つけました」


男「貸してみて下さい。何かの牙…にしては長いです、30センチくらいもある。ツノ…?」

幼友「なんかツヤがあって少し青みがかってて、ちょっと綺麗かも。でも岩の中って、どういうこと?」

幼馴染「岩の一番上に穴が穿いていて、中を覗き込むと広い部屋のようになってました」

弟「へぇ…なんかすごいね」


従妹「男っち、その牙よー見して」

男「牙かどうか判りませんが」ヒョイ

従妹「おおきに──」パシッ


…キイィィィン…ドクンッ

299: 2014/11/17(月) 19:20:15 ID:4j2r9QD2

弟「兄ちゃん、なんかあれ…従妹ちゃんが持つとなんとなーく光ってない?」

男「ん、そうか?」

従妹「──兄…ちゃん…?」ピクッ


幼友「従妹ちゃん…どしたの?」

従妹「兄ちゃん…兄ぃに…」ボソッ


従妹「…なぁ、このツノ…ウチが持っとっても構へん…?」トローン…

男「ん? それは…幼馴染、構いませんか?」

幼馴染「はい」

従妹「ありがと…兄ぃに…」ニコッ


幼馴染(…兄ぃに…?)

300: 2014/11/17(月) 19:21:19 ID:4j2r9QD2

弟「でも幼馴染ちゃん、そのてっぺんで見つけた穴から降りたの? 勇気あるなー」

幼馴染「まさか…中が妙に明るかったので、よく見てみると空洞の側面にも縦長な隙間があって、そこからです」

幼友「その隙間、どこにあるの? 入ってみたいかも」

幼馴染「そこです、見えてます」ピッ


幼友「えっ」

弟「……これって、通れそうにないんだけど」

幼友「うん、無理」

幼馴染「ご冗談を、身体を横にすれば──」ハッ


男「──だ、大丈夫だいじょうぶ! 無理すれば通れます!」ハハハ…

弟「ほんとほんと! めっちゃ頑張ればいけそう!」

幼馴染「…私は余裕でした」フルフル…

316: 2014/11/25(火) 10:46:19 ID:mju1X0ng

………



男「さて、無事タープのところまで戻りまして」

幼友「まさか幼馴染ちゃんがこんな大っきいマゴチ釣ってたとはね」

弟「くっ…完全敗北…」フルフル


幼馴染「でも勝負に勝ったからどうなると決めたりはしていませんでした」

男「まあ余興です、余興。なんならあとで海の家で何か奢るくらいしましょうか」

幼友「うんうん、そのくらいの景品が後腐れなくていいよね。…ねっ、弟くん?」ニヤリ

弟「うっ」ギクッ

317: 2014/11/25(火) 10:47:28 ID:mju1X0ng

男「じゃあ、今釣った魚もコンロで一緒に焼くとしましょう。俺は魚を捌きます」

弟「僕は?」

男「じゃあ、あそこの調理場で炭を起こしてもらおうか。アツアツのコンロ運ぶのは一人じゃ辛い、幼友ちゃんも一緒に行ってやって下さい」

幼友「はーい」


幼馴染「では私はテーブルセットを引き受けます」

男「はい、頼みました。従妹ちゃんもそこでなにか手伝うことがあったらしてあげて下さい」


従妹「ウチ、兄ぃにと一緒がいい」


幼友「従妹ちゃん…?」

弟(兄ぃに…って、兄ちゃんのことだよね…)

318: 2014/11/25(火) 10:48:35 ID:mju1X0ng

男「…魚を捌くのは見ていて気持ち良くはないかもしれませんが」

従妹「大丈夫」ニコーッ


男「うーん…」チラッ

幼馴染「お気遣いなく」

幼友(…幼馴染ちゃん、平気?)ヒソヒソ

幼馴染(平気です。…中学生相手に妬いてばかりいても仕方ありません)ヒソヒソ


男「じゃあ、従妹ちゃんも行きましょう。気持ち悪かったら戻っておけばいいです」

従妹「うんっ」ニパッ

319: 2014/11/25(火) 10:49:22 ID:mju1X0ng

………



幼馴染(クーラーボックスの配置は…ここでいいですね)ドサッ

幼馴染(紙皿は…まだ重ねたままの方がいいでしょう、そんなに風はないけど飛んでしまいそうです)

幼馴染(お肉は先に脂っぽいものから出せるように)ゴソゴソ


幼馴染(…じゃあ、あとは野菜を切って準備しておきましょう)

幼馴染「ええと…キャベツ」ガサガサ

320: 2014/11/25(火) 10:50:07 ID:mju1X0ng

幼馴染(包丁、アウトドア用の小さいやつか…力が要りそうです。とりあえず二つに)グッ

幼馴染「ふんっ」グググッ…

幼馴染(くっ…固い!)

幼馴染(こ…これは切れないかも──)


『──ウチ、兄ぃにと一緒がいい』


幼馴染「おらああああぁあぁぁっ!!!」ズドーーーンッ!

幼馴染「誰を兄ぃになんて呼んでますかこのっ!」ザクッザクッザクッ!

幼馴染「……はぁ、はぁ、キャベツいっちょあがり」

321: 2014/11/25(火) 10:50:52 ID:mju1X0ng

………



幼友「はい! あおいであおいで!」

弟「おりゃああああっ!」パタパタパタ

幼友「いい感じに火がおこってるよ、今度こっち側ー」

弟「ふんっ」パタパタパタ


幼友「よーし、ちょっとひっくり返すよ」ガサッ…


…パチンッ

幼友「きゃっ…!」

322: 2014/11/25(火) 10:51:39 ID:mju1X0ng

弟「だ、大丈夫!? 火の粉が…」

幼友「あはは、平気へいき…ちょっと熱かった」


弟「火傷とかなってない?」

幼友「もうどこに当たったのかも判んないよ」クスクス

弟「そっか…」ホッ


幼友「…ありがと、心配してくれて」ニコッ

弟「ど、どーいたしまして」ドキッ


幼友「………」ガサガサ

弟「………」パタパタ

幼友&弟「「…あのね」」

323: 2014/11/25(火) 10:52:22 ID:mju1X0ng

幼友「お、お先にどうぞ」アセアセ

弟「いえいえ、幼友ちゃんお先にどうぞ」アワワワ


幼友「………」ガサガサ

弟「………」パタパタ

幼友&弟「「…あのね」」


幼友「ぷっ…また被った」クスクス

弟「あはは…じゃあ、僕が先に言うよ」

幼友「うん」

324: 2014/11/25(火) 10:53:04 ID:mju1X0ng

弟「…さっき、釣りの勝負の時は変な要求してごめん。調子に乗っちゃった」

幼友「なんだ…やっぱり同じ話題か」

弟「そうだったんだ?」


幼友「うん…水着を拾ってくれたのに、恥ずかしくて怒るみたいになっちゃってごめんね」

弟「すぐ返さなかったのは事実だしね…」

幼友「……それは弟くんの言う通り、仕方ないところもあるよね」

弟「うん?」


幼友「当たり前なんだけど、そりゃ…その…弟くんだってHぃ事はしたいでしょ…?」ドキドキ

弟「ちょ、ちょっとくらいはね!!」アセッ


幼友「ちょっとってどのくらい?」

弟「えっと…このっくらい」ガバーッ

幼友「両手広げちゃうんだ…」

333: 2014/11/29(土) 08:55:14 ID:tF7nieV.

………



男「よ……っと」ザリザリザリ

従妹「兄ぃに、手伝うことあらへん?」

男「うーん…手伝うと言っても、どれも手が魚臭くなってしまいますが」ゴリゴリ


従妹「今やってはるウロコ取りくらい、ウチでもできるで」

男「そうですね…じゃあ、包丁を一本は幼馴染のところに置いているので……ええと」キョロキョロ

従妹「?」

男「ああ、あそこに。従妹ちゃん、あそこの屑カゴに見えているペットボトルからキャップをひとつ外して持ってきて下さい」

従妹「…キャップ? うん、わかった」テクテク

334: 2014/11/29(土) 08:56:05 ID:tF7nieV.

従妹「取ってきたで」

男「では水で濯いで……はい、これでウロコ取りをお願いします」


従妹「このキャップで?」

男「はい、面白いくらい上手く取れると思います」ニコッ

従妹「ふーん……おぉ、ほんまや」ゾリゾリゾリ


男「……本当に抵抗なさそうですね」

従妹「へっちゃらやで? でも…なんやろ、なんか…」ジャーッ

男「なんか?」

335: 2014/11/29(土) 08:56:45 ID:tF7nieV.

従妹「兄ぃにが魚を捌いて、ウチが手伝って…なんとなく懐かしい気がするんや…」ポーーッ

男「懐かしいって、今日初めて会ったわけですが」

従妹「うん…そうなんやけど──」


『──兄ぃに、今日はいっぱい獲れたんだね!』

『ああ、手伝ってもらうぞ』

『わぁ…鯛もいる、鰆も! ご馳走だね!』ポヨンッ

『おぉう、文字通り胸が踊ってるな』

『また兄ぃにったら、もうっ…本当におっOいが大好きなんだから──』


男「──従妹ちゃん? どうかしましたか、ボーッとして…」

従妹「ん…なんやろ、今の…」

男「……?」

353: 2014/12/25(木) 15:11:22 ID:vGcPVkjY

幼馴染(一羽まるまるのチキンはもう火が通ってます。あとはロースターで温めなおすだけ)テキパキ

幼馴染(サラダも盛り付けて、パルメザンチーズとドレッシングをかければOK)パタパタ…トンッ

幼馴染(こないだ男が釣ってきたスズキはカルパッチョにしました)コトッ

幼馴染(餃子の皮を生地にしたミニピザもオーブンの中)

幼馴染(あとは主食……大皿にチキンライスをドーナツ状に盛り付けて、その中にレタスを敷いて…ローストチキンが真ん中)


幼馴染「ではチキンライス、私の細腕には似合わない大きなフライパンですが」カチッチッチッ・・・ボッ

幼馴染「ご飯を炒めるのは力よりコツ!」ジューー…

354: 2014/12/25(木) 15:13:25 ID:vGcPVkjY

幼馴染「We…」グッ…

幼馴染「Wish!!」ガバッ!

幼馴染「You a Merry X'mas♪ We…」ジュージュー

幼馴染「Wish!!」ガバッ!

幼馴染「You a Merry X'mas♪ We…」ジャーー

幼馴染「Wish!!」ガバッ!

幼馴染「You a Merry X'mas♪ And a Happy New Year~♪」ジュージュー


…ガチャッ


男「ご機嫌のようで」フー

幼馴染「おお、早かったです。いらっしゃいませ」ニコッ

355: 2014/12/25(木) 15:13:56 ID:vGcPVkjY

幼馴染「料理の準備も順調です。男は上着を脱いで、部屋の飾りつけやテーブルをお願いします」ジュージュー

男(ミニスカサンタで料理ですかそうですか)


幼馴染「幼友は弟君と駅前で会ったようです、17時過ぎにLINEが」ガバッ

男「せっかくだからイルミネーションの街並を流したり、少しドライブしてくると言っていました」

幼馴染「一応19時を目安に来て下さいと伝えています」

男「今度は本当に?」

幼馴染「なんのことやら」シレッ


男(……今が17時半…か──)チラッ

356: 2014/12/25(木) 15:14:42 ID:vGcPVkjY

……………
………


ガコッ、ブロロロロロロ…


弟「今日は従妹ちゃん来られなくて残念だったなぁ」

幼友「まあね、でもせっかく中学校で仲良くなってきた友達の家のパーティだもん、そっちが大事だよ」

弟「そうだね」


幼友「おー! 点いてるついてる、イルミネーション」

弟「一番背が高いのはユリノキの並木かな」

幼友「うーん、でも電飾を木に玉ねぎ状につけるのはどうだろう。なんかケチくさいなー」

弟「やっぱりちゃんと枝に添ってつけて欲しいよね」


幼友「あ、でもあっちの緑道沿いは綺麗! 通っていける?」

弟「いえっさー」カッチ、カッチ…

幼友「幼馴染ちゃんの家には19時って聞いてる。まだ17時半だし回り道しても間に合うでしょ」

357: 2014/12/25(木) 15:15:14 ID:vGcPVkjY

幼友「見てみて! 緑道のイルミネーション、川面に映ってすごくいい感じ!」

弟「ちょっと待って、けっこう車も人も多いからよそ見できないや」

幼友「このへんが一番綺麗なのにー」

弟「だいじょうぶ、すぐ信号の列に……あ、青になった」ガーン

幼友「むぅ、残念…」


弟「うーん、じゃあせっかくだし」

幼友「ん?」


弟「そこの路上パーキング停めてちょっと歩こっか」

幼友「え、いいよ…? そんなわざわざ」

弟「ううん、僕がそうしたいんだ」カッチ、カッチ…

幼友「そ…そっか…」ドキッ

358: 2014/12/25(木) 15:15:47 ID:vGcPVkjY

………



弟「パーキングチケット、窓の内側から貼って…っと」ペタリ


幼友「ごめんね、そんなに長居しないのに駐車代かかっちゃって」

弟「平気だよ、一緒にクリスマスの街を散歩できるなら」

幼友「ん…ありがと」

弟(……車の小銭ポッケに入ってた100円玉だとは言わないでおこっと)


幼友「よしっ、行こ──」

弟「──幼友ちゃん。ほら、手」スッ

幼友「あぅ」

弟「けっこう車いるし、危ないからね」ギュッ

359: 2014/12/25(木) 15:16:26 ID:vGcPVkjY

弟「おー、本当だ…すごく綺麗」

幼友「………」


弟「このイルミネーションの下でも、川の中には魚が泳いでるんだろうねー」

幼友「…うん」


弟「街中を流れる細い川だけど、近年で随分水は綺麗になったんだ…って、兄ちゃん言ってた」

幼友「………」


弟「でも、いなくなった種類の魚達はなかなか帰ってこないんだって」

幼友「そっか…」


弟「昔はこのへんでもアユが泳いだりしてたらしいよ。僕らが生まれるよりもずっと前だけど」

360: 2014/12/25(木) 15:17:52 ID:vGcPVkjY

弟「ちょっと寒いけど、歩こっか。あんまり車から離れても大変だけどね」

幼友「うん」


弟「あ、イルミネーションの色が変わったよ」

幼友(……なんだろ)

弟「図書館の前の広場もライトアップされてるんだね」

幼友(なんか…今日の弟君、オトコらしいぞ)ドキドキ

弟「あー…電飾のイルミネーションも綺麗だけど、白熱灯のレンガ道もいいな」

幼友(どうしたの、なにこの雰囲気……)


弟「こんなに寒いんだから、これでホワイトクリスマスだったら最高なのに」

幼友(もし今…弟君に『付き合って』って言われたら……)

弟「でもそれじゃ渋滞がもっと激しくなって、幼馴染ちゃん家に間に合わないか」

幼友(たぶん…私…)


弟「だけど今日の様子ならもう少しは時間、大丈夫かな──」

361: 2014/12/25(木) 15:18:35 ID:vGcPVkjY

弟「──幼友ちゃん、付き合ってくれる?」

幼友「ふぇっ!?」ビクゥッ

弟「?」


幼友「ちょ…言い方、軽くない!? その、あの…!」アタフタ

弟「軽かったかな……ごめん?」キョトン


幼友「いや…えっと……あの…うぅ……ぃ…いい…ょ……」コクン

弟「…うん」ニコッ

幼友(はー…、とうとうOKしちゃった…ぜんぜん嫌じゃないけど、いや嬉しいけど──)ドキドキドキドキ


弟「──じゃあ少し先まで歩くけど、付き合ってね」

幼友「へっ?」

弟「たしか歩いてもそんなに無かったと思うよ──」

362: 2014/12/25(木) 15:19:08 ID:vGcPVkjY

………



幼友(ちょ、ここ、だんだんホテルあったりするとこに近づいてんだけど……!)アワワワ…

弟「もう一本向こうの通りだったかな」テクテク

幼友(どこか目星つけてるホテルでもあるのかな……さすがに利用した事はないんだろうけど…)

弟「あ、ここだ」ピタッ

幼友「あの…や、やっぱり急過ぎない──?」モジモジ…


弟「──ここだよね? 幼友ちゃんが兄ちゃんに会ったとこ」

363: 2014/12/25(木) 15:19:41 ID:vGcPVkjY

幼友「……えっ」キョロキョロ

弟「前に用事で、兄ちゃんと二人で街中を通りがてら話してくれたんだ」


幼友(男さんと会った…?)

弟「幼馴染ちゃんのハタチ祝いだっけ?」


幼友(繁華街…)

弟「兄ちゃんが幼馴染ちゃん迎えにきて、でも幼馴染ちゃんは酔っ払ってタクシーで帰ってて」


幼友(緑道公園……川…)

弟「この橋の近くで、幼友ちゃんがサラリーマンに絡まれてて──」


『──幼友ちゃん、お待たせしました』

『ほら、これ俺の免許です。合ってますよね? なので諦めて下さい』

『しつけーな、お前ら』

『急に話をフッてすみません』

『じゃあ良かったら幼友ちゃんを送りましょうか──』

364: 2014/12/25(木) 15:20:27 ID:vGcPVkjY

弟「──もしかして、幼友ちゃんが兄ちゃんを好きになったのは、その時なのかな…って思ったんだ」

幼友「……弟くん」


弟「僕は兄ちゃんみたいに体育会系じゃないし、そんな奴らに絡まれてる幼友ちゃんを自分の腕っぷしで助けてあげるのは難しいかもしれない」

弟「でも、もし今度そんな事があったら、例えどんな手を使っても僕は幼友ちゃんを守るよ」

弟「格好よくはないかもしれないけど、それでも、なんとしても」

弟「…なんとなく、この場所で誓いたかったんだ。ごめんね、急に付き合ってもらって」


幼友「うん……うん…うん? 付き合ってもらって?」

弟「へ? さっき言ったでしょ?」


『──幼友ちゃん、付き合ってくれる?』

365: 2014/12/25(木) 15:21:03 ID:vGcPVkjY

……………
………



幼馴染「──モール、そっちを引っ張って…はいそのへんでピンを」

男「よっ…と」プスッ

幼馴染「じゃあ弛みはこのくらいで…こっちをとめます……くっ、力が入らない!」プルプル…


男(くっ……ミニスカ生足で椅子に立つか)

幼馴染「よい…しょっ…!」ググッ…プスッ

男(む、艶あり白)ジーーッ


幼馴染「……どこを見ていますか」クスッ

男「そんな格好で高いところに上がるのが悪い、ちょっとミニ過ぎませんか」

366: 2014/12/25(木) 15:21:33 ID:vGcPVkjY

幼馴染「ご心配なく、幼友達が来る時にはスパッツとタイツを着用します」トンッ

男「なぜ今から着ておかないのでしょう」

幼馴染「そんな事を言わせますか」ジロッ


男(……まだ18時過ぎ…か)チラッ

幼馴染「あとの料理は全て直前に火を通すだけ、ツリーも出したし飾りつけもできました」


男「……家の人は?」

幼馴染「いません」

男「自分の部屋は?」

幼馴染「片付け済みです」

男「…これはまた嵌められました」

幼馴染「サンタ服は嫌いでしょうか──?」ニヤリ

367: 2014/12/25(木) 15:22:18 ID:vGcPVkjY

………



弟「──ねえ、幼友ちゃん…さっきから怒ってる?」

幼友「別にっ」フンス


弟「もーぅ…もうちょっとゆっくりしてもよかったのに」

幼友(むうぅ…めっちゃドキドキしたんだから)

弟「まだ18時過ぎなのに幼馴染ちゃんの家に着いちゃうな、まあいっか」

幼友(…言ってくれた事はすごく嬉しかったけど、でもでもっ!)


弟「あれ? 一階の電気消えてる…? あ、でも幼馴染ちゃんの部屋は灯りが着いてるね。呼び鈴押してみよっかな──」


…ピーンポーン


【クリスマス閑話おわり】

375: 2014/12/30(火) 14:52:50 ID:cC1YDkPY

……………
………



男「テーブルセットもコンロの火もバッチリ」

幼馴染「ちょうど夕日が綺麗な時間帯、雰囲気も素晴らしいです」


弟「焼こう焼こう、お腹減ったよ」

幼友「開けよう開けよう! 喉渇いたー!」

従妹「ウチ、ファンタなー」

男「ではそれぞれ飲み物を手にもって…」


…プシッ、パキュッ


一同「「かんぱーい!!」」

376: 2014/12/30(火) 14:53:33 ID:cC1YDkPY

幼馴染「塩ダレのものから焼いていきます」ジューー…

従妹「ええ音やなー」


幼友「…ぷっはー! 堪りませんなぁ! 次もビールでっ」

弟「はやっ! ひと口じゃん!」

男「はい次つぎ、二本目」ヒョイ

幼友「どもー」パシッ

弟(そのおっOいってアルコールでできてるのかなー…)


従妹「兄ぃに、真ん中らへんもう焼けてんで、お皿貸して」

男「ありがとうございます」

従妹「はい、どーぞ」ニコッ

幼馴染(むっ…)ジトー

377: 2014/12/30(火) 14:54:05 ID:cC1YDkPY

茶髪「──ばんわーっす」

金髪「ちょっといい?」


幼馴染「ん?」

従妹(ガラ悪そうなタイプやな…)

弟「こんばんは」スッ…

男「はい、こんばんは」ススッ…

幼馴染(おお…)

幼友(ちゃんと二人とも、私達三人を庇うように体勢とるんだ)


金髪「…やだなー、そんな警戒した感じやめてくれよ」

茶髪「そーそー、せっかく隣でバーベキューやってんだし?」

378: 2014/12/30(火) 14:54:48 ID:cC1YDkPY

弟(隣か…向こうは向こうで女の子連れだな……心配はないか)チラッ

男「…で、隣の方々が何か用でも?」

茶髪「ぜんぜん警戒解いてねーし」

金髪「まーまー、仕方ねーべ。俺らが用があんのは…」


幼友&従妹「ん?」


茶髪「そこのたゆんたゆん」

金髪「じゃなくて──」


幼馴染「はい?」


茶髪「やっぱそーだな」

金髪「ああ、このつるっとした方の女の子、間違いないわ」

379: 2014/12/30(火) 14:55:35 ID:cC1YDkPY

男「…あいにく、その壁…じゃなかったその娘は俺の相方ですが」

幼馴染「実にわざとらしい言い直しです」イラッ

従妹「………」ムスッ


金髪「あー、別にナンパとかじゃねーから」

茶髪「ただ渡したいモンがな──」


──ドチャッ


幼友「これ…!」

幼馴染「おぉ、アワビやサザエ…」

弟「うわ、すごい」

男「……もしかして?」

380: 2014/12/30(火) 14:56:14 ID:cC1YDkPY

金髪「昼間はホント、悪かった」

茶髪「俺達が水上バイクで水浴びせて、その娘の浮き輪ひっくり返しちゃったんだ…」

男「なるほど、やはりあの時の」


金髪「起こしに行こうかと思ったんだけど、彼氏さんすぐに来たからさ」

茶髪「ちょっとバツが悪くて…逃げちゃって」

従妹「まあ、そっちのエリア入っとったけどな」

幼馴染「あれは私も不注意でした」


茶髪「でもここの海水浴場、ブイとロープしかないからよくあるんだ。子供とかも入ってきたり」

金髪「境の辺りでは気をつけてるつもりだったんだけどさ、お詫びにそれ食っちゃってよ」

381: 2014/12/30(火) 14:56:47 ID:cC1YDkPY

男「……しかし、これは密漁にあたるのでは?」

茶髪「いや、そこは大丈夫」

金髪「俺の親父、地元の漁師だから。それもここで採ったんじゃなくて親父に分けてもらった」


幼友「ひゃっほう、焼こう焼こう!」

幼馴染「では遠慮なく、頂きます」

男「これは高級品です」

弟「すごいなー、こんなのいるんだ…」

茶髪「アワビは滅多といないけど、このへんウニは禁漁対象になってないから潜って採るといーぜ」

金髪「そーそー、俺らもよく採るんだ。ゴロゴロいるからさ」

382: 2014/12/30(火) 14:57:27 ID:cC1YDkPY

『──兄ぃに、私アワビ食べたい!』

『わかった、探してくるよ。今のウニを割っといてくれ』

『うん、サザエは火にかけといたらいい──?』


従妹「アワビ……ウニ…」ボーーッ

幼友「…従妹ちゃん?」

茶髪「ん?」

金髪「その子がパーカーのポケットに入れてるのって…」


…キイイィィン


弟「ああ、従妹ちゃんそのキバ持ったまんまだったんだ?」

従妹「うん…」


茶髪「──それ、もしかして人魚のツノじゃね?」

383: 2014/12/30(火) 14:58:00 ID:cC1YDkPY

男「人魚?」

幼馴染「キバじゃなくツノですか」


茶髪「地元の昔話なんだわ。昔、この辺に人魚の兄妹が暮らしてたって」

金髪「でも兄が氏んで、帰りを待つ妹も後を追うように氏んじまったっていう悲しい話なんだけどさ」

従妹「……っ…」ドクンッ


幼友「人魚にツノがあるのかー」

男「本当にこれがそうなら、すごい発見です」

幼馴染「それほどでも」フフリ

弟「あの隙間を通れる人じゃなきゃ見つけられなかったね!」

幼馴染「てーい」ゴスッ

男「痛っ! なんで俺…!?」

幼馴染「弟君を殴るのも気が引けます」

391: 2015/01/01(木) 00:01:17 ID:P6zne0hU

……………
………


…数年前


男(──大晦日かぁ)

男「………」チラッ

男(今夜は幼馴染、遅いな)

男(そろそろ窓が開いて──)


カラカラカラッ……
…トンッ


幼馴染「お邪魔するよー」フゥ

男「お邪魔する前に言えないのか」クスッ

392: 2015/01/01(木) 00:01:59 ID:P6zne0hU

幼馴染「大晦日だね」

男「うん」


幼馴染「今年も一年、お世話になりました」ペコッ

男「どんな風に?」

幼馴染「意地悪だなー、うーん…」


男「俺は…オカンがいない時のメシとか、寝坊しそうな朝の叩き起こしとかな、世話になったと思ってる」

幼馴染「お、嬉しいねぇ」

男「……正直、俺がお前を世話した記憶はあんまり無いんだよな」

幼馴染「そんなことないよ」

393: 2015/01/01(木) 00:02:39 ID:P6zne0hU

男「だから、どんな風に?」

幼馴染「うっ」

男「……困らせるくらいならいいけど」

幼馴染「そ、そんなことないよ。えっとね、ほら、その…」

男「………」ニヤニヤ


幼馴染「うん…なにより、この時間だよ」

男「時間?」


幼馴染「ここ、男の部屋で過ごす時間。すごくくだらないこといっぱい話して、ゲームしたり本読んだり気ままな時間を過ごして」

男「うん」

幼馴染「眠くなったらベッド借りて寝て、その間に男が宿題写したり」

男(こっそりパンツ見たり)

幼馴染「そういう何気ない毎日で、ずっとお世話になってるよ?」ニコッ

394: 2015/01/01(木) 00:03:16 ID:P6zne0hU

男「……くっ」プイッ

幼馴染「?」

男(ズルいって、その笑顔は)ドキドキ


幼馴染「……来年もよろしくね?」

男「おぅ」


幼馴染「ただ…」

男「…ただ?」

幼馴染「やっぱり中学も三年生になると、当たり前なのかな」

男「あー…」

幼馴染「小学校の頃はそれで誰も何も言わなかったのにね」

395: 2015/01/01(木) 00:03:49 ID:P6zne0hU

男「確かに……なんか、俺ら一緒にいすぎて冷やかされまくりだなー」

幼馴染「それが嫌なら、喋り方だけでもよそよそしくしてみる? …なーんて」

男「ははっ…面白いかも」


幼馴染「ね、ちょっとウケるでしょ?」

男「解りました、それでいってみましょう」

幼馴染「なんとなく、これはこれでくすぐったいです」

男「けっこう幼馴染のキャラに合っている気がします」

幼馴染「ご冗談を」


男「あ…ちょうど、12時」

幼馴染「明けましておめでとう、男」

男「おめでとう……でも、ついさっき決めただろ?」

幼馴染「あ、そっか」

396: 2015/01/01(木) 00:04:34 ID:P6zne0hU

男「明けましておめでとうございます、今年もよろしく」

幼馴染「いえいえ、こちらこそ」


男「もうちょっとしたら、初詣でもいきますか」

幼馴染「はい、喜んで」

男「……変なの」プププッ

幼馴染「ひっど」クスクス


男「よし、これから徹底しましょう」

幼馴染「解りました、よろしくお願いします」

男「いえいえ、こちらこそ」

幼馴染「………」クスッ

男「………」ププッ

397: 2015/01/01(木) 00:05:47 ID:P6zne0hU

幼馴染(よそよそしく見せるため……かぁ)

男(逆だよな、こんな約束…こんな変な決まりごと、幼馴染とじゃなきゃできっこない)

幼馴染(……これが私達の特別)

男(いっそ、俺らの関係の形になれば──)


幼馴染「男、初詣で何か願う事は決めているのでしょうか?」

男「いいえ、これから考えます」

幼馴染「なるほど」


男(……願わくば)

幼馴染(男が、私だけを見てくれたら──)

401: 2015/01/01(木) 01:07:20 ID:P6zne0hU
………


男「──幼馴染、はぐれないように」

幼馴染「手を繋がないのが悪い、保護監督不足です」

男「はいはい、手を出して…」スッ

幼馴染「…ん」ギュッ


男「………」ペコッ…

幼馴染「………」…パンッパンッ

男(今年も、幼馴染と変わらぬ時間を過ごせますように──)

幼馴染(今年も、男と……)


男(……いや)

幼馴染(弟君も幼友も、少女ちゃんも少年君も、従妹ちゃんも──)

男&幼馴染(楽しく、釣りに興じる事ができますように)

男(──そして幼馴染が)

幼馴染(豊かな膨らみを得られますように──)

420: 2015/01/24(土) 19:16:16 ID:N5fjXybQ

本編>>383からの続きです

421: 2015/01/24(土) 19:16:49 ID:N5fjXybQ

従妹「………」ボーーッ

幼馴染「従妹ちゃん?」

従妹「…ツノ……兄ぃに……」ブツブツ

男「ん、呼ばれましたか?」


弟「すっかり兄ぃに気取りだね」

幼友「茶化さないことーう」ゴスッ

弟「うぐっ」


幼馴染「どうもツノを手にしてから従妹ちゃんの様子がおかしい気がします」

幼友「そんな感じだね…」

弟「従妹ちゃん、それ渡してくれる?」

従妹「…嫌」フルフルフル

四人「………」

422: 2015/01/24(土) 19:17:22 ID:N5fjXybQ

……………
………


…夜、テントの中


男「ZZZzzz…」グーー

幼馴染「ZZZzzz…」スヤスヤ

弟「ZZZzzz…」スー…ピー…

幼友「ZZZzzz…」ゴロン、タユーン


従妹「………」ムクッ

従妹「兄ぃに…どこ…」ゴソゴソ

従妹「いた、兄ぃに……」モゾモゾ…

従妹「ん…?」ポフッ


幼馴染「む…男ったら……そこばかり…」ムニャムニャ

従妹「………」

423: 2015/01/24(土) 19:17:59 ID:N5fjXybQ

従妹「兄ぃに…返して」ユサユサ

幼馴染「…次…は…挟んであげま…」ニヘラ

従妹「返して」ボフボフ

幼馴染「ほんと…おっOい好き…なんだ…から……」スヤァ…

従妹「……っ!」ムカッ


ドンッ──!

幼馴染「──痛っ…!?」ガバッ


従妹「兄ぃにが好きなのはそんな壁じゃないっ!」キッ…

幼馴染「従妹ちゃん…? なにを──」

従妹「──兄ぃには私の! このおっOいが好きなの! だから貴女の身体には入らなかったのにっ!」

幼馴染(身体に入る…? 似非関西弁じゃない…?)

424: 2015/01/24(土) 19:18:34 ID:N5fjXybQ

弟「ふわ…どしたの…?」ムクッ

幼友「うるさいぞー…もぅ…」

幼馴染「従妹ちゃんがおかしいです」


従妹「早く兄ぃにから離れて!」ギロッ

幼友「その喋り方…どうしちゃったの、従妹ちゃん…」

幼馴染「わかりません」

弟「何か乗り移ったみたいだなー」


男「うぅ…騒々しい…どうしましたか──」ゴソッ

従妹「──兄ぃに!」パァッ

男「はい…?」

従妹「行こう! 兄ぃに!」パシッ

425: 2015/01/24(土) 19:19:17 ID:N5fjXybQ

男「へ? どこに…」キョトン

従妹「帰ろうよ、早くっ!」グイグイ

幼友「帰る…?」

弟「地元に帰りたいのかな」

幼馴染(……身体に入る…憑依……幽霊…?)ハッ──


『──それ、もしかして人魚のツノじゃね?』

『地元の昔話なんだわ。昔、この辺に人魚の兄妹が暮らしてたって』

『でも兄が氏んで、帰りを待つ妹も後を追うように氏んじまったって──』


男「ちょ…従妹ちゃん、どこへ行こうというので──」

従妹「──海! 私達の岩場だよ!」

男「わわ、引っ張らないで…」フラフラ

426: 2015/01/24(土) 19:20:03 ID:N5fjXybQ

幼馴染「岩場…『私達』…もしかして」

幼友「どしたの?」

幼馴染「あの人魚のツノ…従妹ちゃんに人魚の妹が乗り移っているのでは」

弟「えー? そんなオカルトあるかなぁ…」


幼友「どうすんの、テント出てっちゃったよ!?」

幼馴染「とりあえず追うしかないです」ザッ…!

弟(そうだったとして、妹のおっOいが好きな人魚の兄かぁ…)

幼友「弟くん、置いてくよ!」

弟「あーい」

427: 2015/01/24(土) 19:20:43 ID:N5fjXybQ

………


ザアアァァ…サラサラサラ…


男「従妹ちゃん、目を覚ましましょう! こんな夜中にどうするんです…」ザッザッ

従妹「穏やかな海…あの日もこんなならよかったのに」


男「やれやれ…浜辺まで来て気が済みましたか」フゥ

従妹「まさか、早く行こう! ほら!」グイッ

男「うわっ!?」フラッ…ドボーン!


従妹「もう…人間の身体って泳ぎにくいな…」バシャバシャ

男「従妹ちゃん…いい加減に…っ!」ザバァッ

従妹「あ…!? 兄ぃに、なんで…早く沖にいかなきゃ追ってくるよ!」フリフリポヨンポヨン

男(くっ…! 薄パーカー濡れ透けノーブラ巨OJC…!? シチュ盛りすぎです!)

428: 2015/01/24(土) 19:21:28 ID:N5fjXybQ

幼馴染「男っ!?」ザッ

幼友「わっ、海に入ってる!」

男「みんな…!」


幼馴染「岩場が近いから心配しました、怪我はなさそうです」ホッ…

幼友「どうしちゃったの、従妹ちゃん…早く着替えようよ」


従妹「くっ…来ないでっ!」ムギュッ


男「はぅあ、若さ故の弾力」ズキューン

幼馴染「頃す」

弟「大丈夫、僕は少しだらしないくらいも好きだよ」フンス

幼友「頃す」

429: 2015/01/24(土) 19:22:10 ID:N5fjXybQ

従妹「ほら、兄ぃにっ!」グイッ!

男「わっ」ドンッ


…ポロッ…チャポンッ

従妹(しまった! ツノが…っ)フラッ…


男「どうしたんです、しっかり」

従妹「兄ぃ…に…」カクン…ザブンッ

幼友「従妹ちゃんっ!」


男「大丈夫、膝をついただけです。ふぅ…びしょびしょになりました」

幼馴染「さっき男がぶつかった時、ツノがポケットから落ちたようでした」

幼友「だから落ち着いたのかな」

男「どういう事でしょう?」

430: 2015/01/24(土) 19:22:45 ID:N5fjXybQ

幼馴染「…従妹ちゃんには、そのツノに宿る人魚の妹の魂が乗り移っていたのではないかと」

男「人魚の妹…」

弟「信じ難いけど、ツノが離れたから魂が抜けたとか?」


幼友「どうしよう、そのツノ捨てちゃう?」

男「人魚の妹だというなら、男性が持っていれば大丈夫なのではないでしょうか」ザブッ

弟「……どう? 拾い上げて平気?」

男「なんともないな」フゥ…

幼友「よかったー」

431: 2015/01/24(土) 19:23:20 ID:N5fjXybQ

男「弟、従妹ちゃんを抱えるの手伝ってくれ」

弟「僕がおんぶしようか?」ハアハア

男「動機が不純だから却下だな。とにかくこのツノ、女性陣は触らないように」


幼友「あれ? でも、最初に触ったのは幼馴染ちゃんだったのにね」

幼馴染「そういえば」ハッ──


『──兄ぃにが好きなのはそんな壁じゃないっ!』

『だから貴女の身体には入らなかったのにっ──』


幼馴染「……たぶん私は触っても平気だと思います」フルフルフル…

幼友「?」

444: 2015/01/30(金) 13:00:23 ID:kd8R.5.s

………



『──妹、もう少しこっちで…雨があたってしまう』


『兄…ぃに……ごめん…ね…』ハァ…ハァ…

『いいから、今は休んで。身体をよくする事だけ考えるんだ』ナデナデ


『寒い…よ…』ガタガタガタ

『待ってろ、焚き火を強くする』パチンッ…メラメラ

『ありがと…』ハァ…ハァ…

445: 2015/01/30(金) 13:01:18 ID:kd8R.5.s

『ほら暖まって、ぬるま湯かけるぞ』パシャッ…

『兄ぃにも…鱗…渇いちゃうよ…』ゲホッ…コンコンッ…

『俺は大丈夫だから』


ビュウウウゥウゥゥ…ザアアァァァ…


『……時化、おさまらない…ね…』ハァ…ハァ…

『くそっ…もう六日だぞ』

446: 2015/01/30(金) 13:02:09 ID:kd8R.5.s

『うっ…!!』ピキッ

『……っ…!!!』


『はぁ…はぁっ……ツノ…ヒビが入っちゃった……私、もう…』

『ちくしょう、せめて熱がひけば…っ!』ガンッ


『………』ハァ…ハァ…

『妹…待っててくれ』ザッ

『兄ぃに…?』

447: 2015/01/30(金) 13:03:43 ID:kd8R.5.s

『…薬を買ってくる』

『だめ…だよ……この姿のままじゃ、人の里には…』

『浜辺に着いたら人に化ける。遅くなるが心配はするな、秘術が切れたら戻る──』


──ドボーン


『兄ぃに…』

『……明日の晩まで…独りかな…』ハァ…ハァ…

『寂しい…な…』ゲホッゲホッ


『でも…待たなきゃ……』ハァ…

『人の姿じゃ…こんな時化た海……』

『……兄ぃ…に……無理…しない…で──』


ザアアァァァ…ザザーン…サアァァ──

449: 2015/02/09(月) 09:41:28 ID:dp1sERd2
……………
………


…翌朝


幼馴染「………」シャコシャコ


幼友「おはよー」フワワ…

幼馴染「おふぁおぅおふぁいふぁふ」シャカシャカシャカ


幼友「…昨夜はびっくりしたね」パカッ

幼馴染「ふぁい」ゴシゴシゴシ

幼友「人魚のツノってのが本当なのかは解んないけど……私、変な夢みたんだ」ニュー…

幼馴染「わふぁひもぇふ」カシュカシュカシュ

450: 2015/02/09(月) 09:42:28 ID:dp1sERd2

幼友「病気…? 弱った人魚の妹と、それを看病したり薬を買いに行こうとする兄の夢だった」カプッ

幼馴染「おぁひえふ」シャカシャカ…

幼友「やっはひほぉあんふぁ」ゴシゴシタユタユ


幼馴染「あうぇあうぃんよおふぃおふ…?」ガシガシガシ

幼友「ふぉうあもひえふぁいえ」クシュクシュプルプル

幼馴染「ふぁあひいあぁひえふ……」シャコシャコ……ベーッ


男「なぜ意思の疎通ができるのでしょう」

幼馴染「ん、ん……んぁおー」ゴロゴロゴロ…ベッ

男「うがい終わってからでいいです、おはようございます」

452: 2015/02/09(月) 09:44:35 ID:dp1sERd2

幼馴染「おはようございます、男は何か夢をみましたか?」フキフキ

男「病床に伏せた人魚の妹と、それを世話する兄の夢なら」


弟「ふぁ…おはよー、僕もみたよ」

幼馴染「やはり」

幼友「うぃんあおぁいあんぁ…」カシュカシュタユタユ


男「なんと言ってるのかは判りませんが、どうぞごゆっくり」

弟「なんならもっと大振りな動作で磨いてみよっか」ハアハア

幼友「ふぁ、まうぁうあひふぇあふぁっは!」タユーン


幼馴染「私もまだですが」

男「………」

弟「………」

幼馴染「なにが? くらい訊けよ」

456: 2015/02/09(月) 19:52:25 ID:DHg3IHro

幼馴染「みんなが同じ夢をみるとか……」

幼友「やっぱりあのツノの影響としか思えないね」

弟「本当に人魚のツノなのかぁ」


男「……おや?」

従妹「あ…あの……おはよう…」


幼友「従妹ちゃん!」

幼馴染「調子は? なんともないでしょうか」

従妹「うん、平気やで」

幼友「似非関西弁……よかった、いつもの従妹ちゃんだ」ホッ…

457: 2015/02/09(月) 19:52:56 ID:DHg3IHro

弟「昨夜のことは覚えてるの?」

従妹「うん…なんかぼんやり覚えとる。その後みんながみたんも、人魚の兄やんが薬買いにいきはる夢?」

幼馴染「そうです、時化た海に人魚の兄が飛び込むところまで」


従妹「……ウチ、たぶんみんなより鮮明にその夢みとると思う。人魚の妹ちゃんの記憶、ちょっとだけ残っとると思うん」

男「ほう?」

従妹「二人はほんまの兄妹ちゃう。子供の頃から一緒やったろうけど、ええ仲なんや」

幼馴染(実の妹の胸が大好物なわけではないと)


従妹「人魚の兄やんは結局、妹ちゃんのとこへ戻られへんかったんやと思う」

男「夢の記憶からして、恐らくは急ぐ余り人間の姿のまま……」

幼友「荒れた海を戻ろうとした…?」

弟「いたたまれない話だね」

458: 2015/02/09(月) 19:53:41 ID:DHg3IHro

従妹「妹ちゃん、兄やんを探しとんねん。ずっと…今でも」


幼馴染「……では私達も探しましょう」

幼友「え?」

男「うん、俺もそう考えていました」


弟「探す? なにを…?」

幼馴染「兄のツノです。帰る際、荒れた海で命を落としたならこの海岸にあるかも」

幼友「うーん……見つかるかなぁ」

男「難しいとは思います。でも……」チラッ

従妹「ん?」


男「従妹ちゃんに人魚の悲しい記憶が残っているというなら、なにもせずにはいられません」ニコッ

従妹「……おおきに!」パァッ

459: 2015/02/09(月) 19:54:38 ID:DHg3IHro

男「おそらく夢でみた洞穴のようなところは、幼馴染だけが入れた岩の小島の中でしょう」

幼馴染「間違いありません、ツノを見つけたところそのものでした」


幼友「人魚のお兄さん、どのへんまで戻れてたんだろう」

従妹「もしかしたら、あと一歩のところやったかもしれへんで」

男「うん、あの岩を中心に海岸側を探すべきでしょう」


弟「………」

幼友「どしたの、弟君…?」

弟「うん、ちょっと……探す範囲を狭める方法をね、考えてた」

幼馴染「ほほう」


男「俺によく似て品性はありませんが」

弟「ちぇっ」

男「でも、この中の誰より頭の出来はいいはずだ。しっかり考えて教えてくれ」トンッ

弟「……OK、期待してて。昨日分析した、幼友ちゃんのおっOい等高線データくらいオマケにつけるよ──」ニッ

464: 2015/02/10(火) 15:28:01 ID:WlqO5lnU

………



幼馴染(──とはいったものの、そう簡単に見つかるわけありません)スー…ハー…

幼馴染(浮き輪で漂い、シュノーケルを使って呼吸しているだけ、楽なものではありますが)

幼馴染(背中だけ日に焼けそうです)スー…ハー…


幼馴染「ぷはっ…」ザバッ

幼馴染(今度は水上バイクのエリアからも離れてます、迷い込む心配もないでしょう)

幼馴染(よっ…と)ザブン

幼馴染(……ツノ、砂に埋まったりしていなければいいのですが)スー…ハー…

465: 2015/02/10(火) 15:30:20 ID:WlqO5lnU

幼友(このへん深いな、底が見えないや)スー…ハー…

幼友(うぅ…深い青へのグラデーションってめっちゃ怖い)ゾクッ

幼友(こんな時、手の届くところに…って)スー…ハー…

幼友(うん……前は、その対象として男さんを思い浮かべてたりしたっけ)


幼友(いつの間にかだよ、驚きだよ)スー…ハー…

幼友(私、今すごく自然に、弟君がいたらな…って思った)

幼友(ええい、なんてこった! あのおっOい星人二号に惚れてるじゃないか!)ブフォッ

幼友「ぷっは! けほっ…けほっ」ザバァッ


幼友(自分で吹き出して水飲んじゃうとか、格好わる…)フゥ…

幼友(……よし、底が見えないとこ泳いでてもダメだよね。向こう行ってみよ)ザブンッ

466: 2015/02/10(火) 15:32:32 ID:WlqO5lnU

従妹(待っててや…人魚の妹ちゃん、兄やんのツノ見つけるさかいな)スー…ハー…

従妹(岩場で独り、身体もしんどいのに彼の帰りを待っとったんやな)

従妹(寂しかったやろ……もう大丈夫やからな、必ず見つけたる)スー…ハー…


『ウチ、兄ぃにと一緒がいい』


従妹(なんや少しだけ覚えとるけど、昨日はえらい恥ずかしい事しとったし言っとったなぁ…)スー…ハー…

従妹(せーでも…)


『従妹ちゃんに人魚の悲しい記憶が残っているというなら、なにもせずにはいられません』


従妹(兄ぃに……か──)

467: 2015/02/10(火) 15:34:28 ID:WlqO5lnU

男(──あれは…揺れてる、海藻か)スー…ハー…

男(なにもせずにはいられない……そうは言いましたが、見つかる可能性は低いな)


男(もし人魚の兄が人の姿で溺氏したなら、流されてしまっているかも)スー…ハー…

男(でも、ここら辺を探す以外にできる事もないし)

男(三人は…?)ザバッ


男「ふぅ……ちゃんと三人共いるでしょうか?」キョロキョロ

男(……あのスク水のお尻が従妹ちゃん、あっちの魅惑的なお尻が幼友ちゃん、あのちっこい尻が幼馴染…)

男(みんな真面目に探してます。あると信じて頑張るしかないか──)クスッ

468: 2015/02/10(火) 15:35:51 ID:WlqO5lnU

………



弟(さて…大見得を切ったはいいものの、全然考えは纏まってないんだよね)テクテク


弟(今向かってる岬の奥に覗いてるのが、幼馴染ちゃんがツノを見つけた岩の小島)

弟(人魚の兄が泳ぎ難い人間の姿で戻ろうとしたなら、最短距離をとるために岬から海に入った可能性はある…)

弟(その場合、探すべきは小島の周囲から岬の向こう側あたり)


弟「よっと」ヒョイ…スタッ


弟(そんな事は解りきってるんだ。ほら、今も四人はそこを探してる)ザッ…ザッ…

469: 2015/02/10(火) 15:37:23 ID:WlqO5lnU

弟(ただ、この岬……幼馴染ちゃんを探して焦る兄ちゃんはそこから飛び込んだけど、小島に近い先端は相当な高さだった)

弟(もし海が激しく荒れてたら、岩に砕ける波は東映映画のオープニングばりの迫力だろうなー)

弟(そして岬は先に行くほど高くなってて──)


ザザーン……サアアァアァァ…ザブーン…


弟(──逆に根元の方、小島のある側は急なカケ上がりのゴロタ浜になってる)

弟(波の高い日にここから入ろうとしても、押し戻されて打ち上げられるばっかだろうな)

470: 2015/02/10(火) 15:38:37 ID:WlqO5lnU

弟(じゃあ、小島があるのと反対側? つまり昨日、僕らが釣りをしながら漂ってた側は……)クルッ

弟(……岬の角度からして波の裏になる。比較的安全に海に入れて小島までの最短距離なのは、ここからのルートだ)

弟(次に兄ちゃん達が上がってきたら、こっち側を探すように言ってみよう)


弟(ただ、当然だけど確信はない……まして人魚の兄が亡くなった後、その場で沈んでるって可能性はどのくらいあるんだろう)

弟(その亡骸は海を漂って──)


弟「──亡骸…?」ハッ


弟(亡くなった後、人間の姿から人魚に戻るのかは解らないけど…人魚にしたって上半身は人間に近い姿なんだろう)

弟(つまり骨格だって、その骨の質だってそうなんじゃないか?)

弟(だとしたら小島に人魚の妹の骨が無かったのはなぜだ? 幼馴染ちゃんはなにも言ってなかった)

471: 2015/02/10(火) 15:40:46 ID:WlqO5lnU

弟(海岸のはずれにある孤島…その洞穴の中で骸骨なんか見つけたら、幼馴染ちゃんはチビるはずだよね)

弟(それをツノを持って出てきたって事は、骨は無かったんだ。どうして…?)

弟(人魚……伝説上の生き物だけど、世界各地に話は残ってる。その形態も様々だろうけど)


弟「………」スッ…

ポチッ、スススッ…スーッ

『検索:人魚_○○県_日本海_伝説』

…トントンッ、サッ…スーッ


弟(あった…!)

弟(『○○県○○地方に伝わる人魚の話』…これだ)スッ

弟(大正時代くらいからの言い伝えなのか……そこまで古くはないんだな。なになに…)

472: 2015/02/10(火) 15:42:11 ID:WlqO5lnU

弟(『病に倒れた妹を救おうとした人魚の兄は人間に化け、漁村【現在の○○町】で魚との物々交換で薬を買った』)

弟(『しかし気が急くあまり人間の姿のまま大時化の海へ入った兄は、溺れて氏んでしまう』)

弟(『この地方では人魚は氏ぬと額の角だけを遺して灰になると言われ、また人魚の角は石ほども重いという』)

弟(『故に現在でも兄妹の角は流されず、海岸のどこかにあると伝えられている──』)


弟「……これが本当なら、やっぱりツノは探せばあるんだ」


弟(もちろん幼馴染ちゃんが見つけた、あれが本物のツノだって保証はない……けど…?)

弟(……じゃあ、なんでだ? そりゃ、それっぽいと思っただけかもだけど)

弟(アワビをくれた人達は……あれを一目で『人魚のツノだ』と言い当てた──)

473: 2015/02/10(火) 15:43:53 ID:WlqO5lnU

………



幼友「ふわぁ…疲れたぁ」ザバァッ

男「いくら浮き輪で漂うだけでも体力は消耗します。少し岬に上がって休みましょう」

幼馴染「お腹が減りました。昨日の釣り大会の景品を所望します」

男「くっ……覚えてやがりましたか」チッ


従妹「あ、弟っち」

弟「お疲れ様、待ってたよ」

男「……いい顔してるな」クスッ

弟「ふふん、期待しといてって言ったよ」ニヤリ

従妹「ほな…!」パァッ


弟「ほぼ解ったよ、ツノの在処は。それを完全に絞り込むために──」チラッ

幼友「ん?」

弟「──幼友ちゃん、協力してくれる?」

474: 2015/02/10(火) 16:14:24 ID:WlqO5lnU

………



幼友「なんで私だけなの? シュノーケルも要らないとか」チャプチャプ

弟「うん、僕が幼友ちゃんの浮き輪引っ張りながらこのへん泳ぐだけでいいんだ」バシャバシャ

幼友「ふーん…?」


『──ああ、実は見た事あんだよね。あれに似たツノ』


弟「んー、もっちょいこっちだったかな…?」バシャバシャ

幼友「そんなに細かい見当がついてるの?」


『ちょうどアンタらが釣りして泳いでた辺りでさ、ウニ採ってたんだわ』


弟「昨日、プチ釣り大会をおかわりする前に釣ってた辺り」バシャバシャ

幼友「ああ…恥ずかしい思い出が…」クッ…


『そしたら見つけて、しかもすげえ事まで解ったんだよね』

475: 2015/02/10(火) 16:19:18 ID:WlqO5lnU

弟「うーん、ハッキリは覚えてないもんだなー」バシャバシャ

幼友「そりゃ、あの時は探し物する事になるとか思ってなかったもん」


『そのツノ、オトコが持つと頭がボーッとするから怖かったし、親父に怒られたから元の辺りに返したんだけどさ』


弟「ん…? ぷぇっ! ぺっ! 浮き藻が…」バシャッ

幼友「うわ、やだっ! アマモ…?浮き輪に纏わりついてるじゃない」


『すごかったんだぜ? 女の子が持ったり近くにいたりするだけでも、なんでか原因は様々でも──』


弟「藻、とるよ」グッ

幼友「うん……って、わっ!? えっ、ちょ…待ってっ! なんでこの藻──」ジタバタ


『──必ず、おっOいポ口リするんだよね』

幼友「だめっ! 水着の紐に絡まってるからぁっ!」シュルッ


プルッ、タユーン…

484: 2015/02/16(月) 19:03:48 ID:8l3nc.as

幼友「ふわ…やっ…ぁ…」フルフル

弟「くそっ! 目を逸らしたいのに言う事をきかない!」ジーーーッ

幼友「見るなぁっ! あっち向け! もうっ!」ガバッ

弟(くっ…浮き輪で隠されたか、もっと目に焼き付けたかった…)クッ


男「弟ー、なにかあったかー」

弟「兄ちゃん、この下みたいだ! たぶんツノがある!」

男「深さはー!?」

弟「ちょっと待って、一度潜ってみる!」ザブンッ

485: 2015/02/16(月) 19:05:11 ID:8l3nc.as

弟(うわー、けっこう深いなー…)ブクブク

弟(ん…? あの岩の隙間に落ちてるの、ツノっぽいぞ…!)

弟(いけるかな…いったん息継ぎに浮上するか──)クルッ


弟(──なにィッ!?)ゴハッ


弟(なんと……浮き輪に隠された果実…下からはノーガードじゃないかっ!)

弟(必氏に水着を結ぼうとしてるけど、まだまだかかりそう)

弟(あっ、あっ……手を後ろに回したらもっと強調されて……!)

弟(僕、もうこのまま溺れてもいいや──)ブクブクブク…

486: 2015/02/16(月) 19:06:19 ID:8l3nc.as

幼友「はうぅ…やっと直せた……」グスッ

幼友「…って、あれ? 弟くんまだ上がってきてないの?」キョロキョロ

幼友「嘘、まさか…溺れて…」ゾッ…

幼友(どうしよう、ゴーグルしてくれば水中を確かめられたのに…)


幼友(弟くん…大丈夫なの? ツノ見つけたのかな…)ドキドキ

幼友(でも人魚の妹のツノを女の子が持つと従妹ちゃんみたいになっちゃうんだから)

幼友(お兄さんのツノを男の人が持ったら──)


──ブクブクブク、ザバァッ


弟「ぷっは……!」ゲホッ、ゲホッ

487: 2015/02/16(月) 19:07:26 ID:8l3nc.as

幼友「弟くん!」

弟「けほっ、けほっ…!」ハァ…ハァ…

幼友(ツノ持ってる…!)

弟「はぁ…はぁ…」フゥ…


幼馴染「弟君、ツノを手に持っているようです」

従妹「すごいやん!」

男「弟…あいつ、無理しやがって」

幼馴染「昨夜の従妹ちゃんのようにならなければいいのですが…」

488: 2015/02/16(月) 19:08:50 ID:8l3nc.as

幼友(どっちなの……人魚のお兄さんに意識を乗っ取られて…?)ドキドキ

弟「ごめん、心配させたかな……大丈夫だよ」ニコッ

幼友「弟くん…! よかった……」ホッ…


弟「水着、直せた? 早く陸に上がろう」チャプチャプ

幼友「ツノを手に持ってても平気なの…?」

弟「うん、なんか力みたいなのが伝わってくる感じはするけどね」

幼友「私が持とうか?」

弟「僕なら大丈夫、意識を乗っ取られたりはしないよ」

幼友「そっか…」


弟「むしろ今は、すごく理性が働いてる──」ニコッ

幼友「な、なんかスッキリした顔してるね?」

弟(──なぜなら、賢者タイムだからね)フッ…

498: 2015/03/05(木) 19:05:13 ID:3/0hm2C2

………



男「お疲れさん、よく見つけたな」

弟「へへ…幼友ちゃんのおかげだけどね」

幼馴染「なにもしていなかったような」

幼友「訊くな」ハァ…


従妹「で、弟っちそれ持ってはるけど平気なん?」

弟「うん、今のところ」

幼友「でも早めに手放した方がいいんじゃない? 男さんは立ち直りも早いって聞いたよ……ね、幼馴染ちゃん?」

幼馴染「はい?」

499: 2015/03/05(木) 19:06:02 ID:3/0hm2C2

弟「そうだな……誰に渡すべきだろう」

男「それもだし、二本揃ったところでどうするって話だな」


従妹「二度と離れんように結んどいたらどないやろ?」

幼友「それでどうするの?」

幼馴染「……海に投げ込むくらいでしょうか」


男「あまり浅いところでは、また誰かに拾われてバラバラになる可能性も」

弟「沖の方まで浮き輪で行って沈める?」

従妹「遊泳範囲のブイから出たら怒られるで?」

男「それにあまり沖だと底引き網にかかるかもしれません」


幼馴染「私達の地元に持って帰って……」

幼友「でもやっぱりこの海で二人一緒っていうのが理想じゃない?」

500: 2015/03/05(木) 19:06:42 ID:3/0hm2C2

男「人魚の兄妹が生まれ育ったこの海岸で」

弟「浅いところじゃなく、沖の方過ぎもせず?」

従妹「誰にも見つからへんところ…」


幼友「あ、わかった」

弟「うん、僕も思いついた」

従妹「ウチもー」

男「それなら持っていける人は、ちょうどツノを二つとも持てる人しかいません」


幼馴染「はい──?」

501: 2015/03/05(木) 19:07:30 ID:3/0hm2C2

………


…岩の小島


男「──では、幼馴染…頼みました」

幼馴染「あ…あの……洞窟の中で人魚の妹が亡くなったとか知ると怖いのですが…」フルフル


幼友「心配ないよ! 私達ずっとここにいるから!」ニコッ

従妹「せやせや、なんやったら歌っといたるで?」フンスフンス

弟「なにかあったら大声出してね」ウンウン

幼馴染「入っても来られない癖に……」ハァ…


幼馴染「ではいってきます…」

男「化けて出ても『破あぁぁーーっ!!』と叫べば大丈夫です」

502: 2015/03/05(木) 19:08:04 ID:3/0hm2C2

幼馴染(よっ……と、私でも相当ギリギリなわけですが)ズリズリ

幼馴染(岩肌にフジツボとか貝が無くてよかったです)

幼馴染(でもけっこう岩はゴツゴツ)ズリズリ

幼馴染(うぅ…怖い、でももう少し……そこの出っ張ったところを抜ければ──)


──ピッ…グイッ、ハラリ

幼馴染「ひゃ…!水着が引っ掛かって──」ペターン


兄ツノ「………」シーン

幼馴染「もしかして人魚兄の仕業…!?」

兄ツノ「………」シーン

幼馴染「化けて出てでも何か言え」チッ

506: 2015/03/06(金) 17:01:15 ID:ntr8OZpQ

…ピチョーン、ピチョーン
ザアアアァァァ…


幼馴染(うう…昨日は午後の日差しが上の穴から注いでいましたが、午前中は割と暗いです)

幼馴染(でも奥の方に光が射して…なるほど、洞窟の中の入江も水中で海と繋がっていたのですね)

幼馴染(……ええと、たしかこっちの突き当たり)ヒタヒタ

幼馴染(そこの高台のようになっているところだったはず)


幼馴染(よく見ると上面はとても滑らかです、ここに人魚の妹が寝ていたのかも)


『──明日の晩まで…独りかな…』

『寂しい…な…でも…待たなきゃ──』


幼馴染(……辛かったでしょう)

幼馴染(せめてもう二度と離れずに、ずっと一緒に休めますように)

507: 2015/03/06(金) 17:01:52 ID:ntr8OZpQ

幼馴染「よっ……と」ギュッ


幼馴染(大丈夫、しっかり結べています)

幼馴染(ではそこへ置いて──)コトッ


──フワッ…キラキラ、パアアアァァァァ…

幼馴染「ふわ…!?」


人魚兄《──おはよおっOい》

人魚妹《ありがとうございます、細身の人》タユーン


幼馴染「えっ!? うわ、幽霊…! 破あああぁぁぁっ!!」ナームー

人魚妹《やめて浄化しないで!》

人魚兄《なにもしないから、お礼が言いたいだけだから!》

508: 2015/03/06(金) 17:02:30 ID:ntr8OZpQ

幼馴染(これが人魚の兄妹……確かにお兄さんの方、どことなく男に似ています)


人魚兄《俺も妹も互いの最期が気がかりで、ずっと成仏さえできなかった》

人魚妹《ほんの近くにそれぞれのツノがあるのに会う事もできず、長い時間待ち続けたんです》


幼馴染「これで成仏できるのでしょうか」

人魚兄《おそらくは、そしていつかは転生できるだろうと思います》

人魚妹《私達人魚はそもそも希少な生き物、それが数少ない仲間や伴侶を探すのです》


幼馴染「…だったらきっと生まれ変わっても二人はまた会えます」

人魚妹《ふふ…そうだといいなあ》

人魚兄《そのためにも、やはり別々の時に成仏してしまうのが怖かった。それでずっと留まっていたんです》

幼馴染「なるほど……」

509: 2015/03/06(金) 17:03:03 ID:ntr8OZpQ

人魚兄《だから胸の豊かな女性が近くに来ると、もしかしたら妹が乗り移っているかもしれない…と》

幼馴染「ポ口リさせていた…と、しかし宿主の胸を見て判るものでしょうか」

人魚妹《いえ、判らないと思います》


人魚兄《……妹と暮らしていた時の癖でしょうか、無意識に確認していたのです。ええ、完全に無意識でした》

幼馴染「違う理由に言い直しやがりました」

人魚妹《嘘臭い……》


幼馴染「それでも妹さんは私の身体には入りませんでした」

人魚妹《それは…やはり兄ぃには胸が無い人だと意識しないと思って……》テヘ


人魚兄《こ、こら、失礼だろう。無いんじゃない、限りなく薄いだけだ》

人魚妹《ごめんなさい、成長期はこれからですものね?》

幼馴染「……成人しています」フルフルフル

510: 2015/03/06(金) 17:03:44 ID:ntr8OZpQ

人魚兄《とにかく、ありがとう。貴女達のおかげだ》

人魚妹《はい、本当に》

幼馴染「よかったです、もうはぐれないように」ニコッ


人魚兄《貴女達も元気で、あの二度も拝ませて頂いた素晴らしい胸の持ち主によろしく》

幼馴染「どう言えと」

人魚妹《私からは、あの身体をお借りした若い方に──》ゴニョゴニョ

幼馴染「──えっ」


人魚兄《では、さようなら…》キラキラキラ…

人魚妹《ありがとう……細身の人…》フワアァァッ──


──キュピーン……フッ…


幼馴染「…細身の人」チッ

511: 2015/03/06(金) 17:04:35 ID:ntr8OZpQ

……………
………


…夕暮れ時、地元の街


ブロロロロロ……

男「──もう少しで幼友ちゃんのアパートに着くぞ。後ろのみんなは?」

弟「寝てるー」ヒソヒソ


男「可哀想だけど起こそう、起きろーーー」

従妹「うぅ…なんや、着いたんか…?」


幼友「んー…おはよ…」ハッ

弟「おはよおっOい」

幼友「わわ、ごめんっ、肩借りてた…!」アワワ

弟「ずっと貸してたかったけどねー」ニヘラ


幼馴染「ふぁ…私はまだ寝てても大丈…夫…」スピー

512: 2015/03/06(金) 17:05:16 ID:ntr8OZpQ

…ガチャッ、バタム


幼友「なんかいろいろあったねー」

従妹「でもむっちゃ楽しかったで! 来年も行こな!」

男「それは何よりでした」

弟「幼馴染ちゃん、ぐっすりだね」


ウィーーーン、フリフリフリ…


男「窓から手だけ振りやがった」

幼友「精神的に疲れたんじゃない? やっぱりあの洞窟に独りで入るのは怖かったでしょ」

従妹「何も言うてなかったけど、けっこう長く中にいはったで」

513: 2015/03/06(金) 17:05:57 ID:ntr8OZpQ

弟「じゃあ幼友ちゃん、また」

幼友「ん、また週末ね」

弟「うん……あ、あと木曜日…」

幼友「解ってる、早く家出るんでしょ? 六時半に電話したげる」ニコ

弟「あーい」


従妹「………」


男「それでは、お疲れ様でした」

幼友「はーい、ありがとうでしたー」フリフリ

従妹「………」

男「……?」

514: 2015/03/06(金) 17:06:38 ID:ntr8OZpQ

幼友「従妹ちゃん、どしたの?」

従妹「えと…その…」モジモジ


幼友「……弟くん、ちょっと」

弟「あい?」

幼友「いーから」グイッ


従妹「……あ、あのな」

男「何でしょう?」

従妹「海…連れてってくれておおきに」

男「お安い御用です、俺も楽しかったです」

515: 2015/03/06(金) 17:07:14 ID:ntr8OZpQ

従妹「それでな…えっと……これから──」モジモジ

男「…はい」


従妹「──兄ぃに…って呼んでも構へん…?」

男「え…」

従妹「ご、ごめん、男っちの親戚でもあらへんのに…変な事言うて!」アセアセ


男「…いいでしょう」ポンッ

従妹「ふぇ」ビクッ

男「この歳になって妹ができるとは、ちょっと緊張しますが」ナデナデ

従妹「……おおきに! また遊んでな、兄ぃに!」パァッ

516: 2015/03/06(金) 17:08:04 ID:ntr8OZpQ

………



男「──結局、幼馴染はずっと寝てるし」

弟「仕方ないよ、家に着くまで寝かしといてあげたら?」


幼馴染「………」


《──私からは、あの身体をお借りした若い方に、伝言を》

『…えっ?』

《私の影響だけでなく、あの時に兄代わりをして頂いた方を頼りにしているようでしたから》

『それは、どういう…』

《さあ…もともと兄が欲しかったのか、それとも……とにかく『がんばって』とお伝え下さい──》


幼馴染(……おのれ、中学生め)

幼馴染(がんばらなくていいです、ふーんだ──)

517: 2015/03/06(金) 17:08:38 ID:ntr8OZpQ

男「釣りロマンを求めて」幼馴染「夏のビーチ時々釣り編です」

【おわり】

518: 2015/03/06(金) 17:29:12 ID:CS26sOYA
お疲れさまです。

引用: 男「釣りロマンを求めて」幼馴染「四投目です」