805: 2014/07/15(火) 12:24:53.61 ID:mKlivWrN0



前回はこちら

・一航戦『流しそうめんとは流さなければいけないのですね』

・提督『鎮守府が全壊の危機』

・瑞鶴『提督さんとまったり』

・電『猫ちゃんを飼うのです』

・提督『研修って……何の研修だよ』

以上、5本でお送りします

816: 2014/07/15(火) 22:18:12.96 ID:9/tiIpi2O
・一航戦『流しそうめんとは流さなければいけないのですね』、投下します

メカ夕張のは乙女回路と乙女プラグイン両方頭に思い浮かべてました

817: 2014/07/15(火) 22:19:52.03 ID:9/tiIpi2O
――――鎮守府、食堂裏手。

「流しそうめんは位置取りが重要と聞きました」

「では、私は提督の隣に」

「よし、他の奴等はあっちの自動流しそうめん装置で食え。ここはもうダメだ」

 上流に陣取った赤城を見て、提督は早々に他の集まっているメンバーを別の所に避難させた。
 それを見て彼女はすぐに場所を移動し、加賀と彼を挟むように陣取る。

「お前なぁ……」

「何か問題がありますか?」

「俺にも食えるようにしろ」

「失礼ですね、私だってちゃんとマナーは守ります」

「マナーもですが、飲食の上限料金も守って下さい」

「次七桁食ったらグラビア写真な」

「グラビア……? キャビアとは違うのですか?」

 食の為なら本気で脱ぐかもしれないと思い、提督はそれ以上口にするのを止める。
 ふと視線を移せば、間宮がそうめんを大鯨とポリバケツで運んで来るのが見え、改めて一食の量の多さを彼は痛感した。

「あのまま食べたいですね」

「ポリバケツからは流石にやめてください、せめてタライで」

「タライなら守れるのか、お前等の誇りは……」

「流しますよー!」

「一航戦赤城、食べ尽くします!」

「一航戦加賀、食べさせます」

「どっちも待て、二重の意味でゆっくり食わせろ」

 開始の合図と共に聞こえた、不吉な二つの言葉。
 提督の心からの願いは無視される定めらしく、二人の視線は既に流れてくるそうめんにロックオンされている。

(彩雲で上空から偵察し、最適な箸の角度を計算――ここだわ!)

「水飛沫を上げながらすくうなアホ! お前は鮭捕るクマか!」

「提督、口を開けて下さい」

「加賀は俺の箸を妨害してすくうのをやめろ」

「間宮さん、早く次をお願いします」

「口を開けないと無理矢理ねじ込みますよ? あーんして下さい」

「コレ、流しそうめんの意味あんのか?」

「楽しいですよ。はい、私も提督に食べさせてあげますね」

「お前は頼むから自分で食べてくれ。何か毛糸の玉みたいになってるけど、それどうやってすくったんだよ……」

「――頭にきました」

「痛っ!? 足を踏むな、足を!」

「食べてくれないと足を踏むクセがあるの、ごめんなさいね」

「もぐもぐ、次をすくったのでこちらをどうぞ」

「俺にも流しそうめん気分を体感させろー!」
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録
818: 2014/07/15(火) 22:21:14.11 ID:9/tiIpi2O
――――教訓、そうめんで人は殺せる……。

 ――――喉に詰まらせるなんて、咀嚼力の鍛え方が足りませんよ提督。

  ――――(たくさんあーん出来たので満足です)

831: 2014/07/18(金) 01:19:54.49 ID:rieXlzg7O
提督『鎮守府が全壊の危機』、投下します

もっと泥酔成分多くした方が良かったかも…

832: 2014/07/18(金) 01:20:25.90 ID:rieXlzg7O
――――提督執務室。

(あのメンバーで宴会をさせたの、やっぱり失敗だったかもしれんな……)

 珍しく執務室に一人の提督。秘書艦である電が今、その宴会の様子を見に行っている為だ。

「待機組と戦艦と大鳳……そもそも大鳳が居る時点で不安だ……」

 ノンアルコール以外は飲むなと厳命した為、彼女が自分から飲むことはまず無いが、飲まされる可能性はある。
 女同士で積もる話もあるからと押し切られ許可したものの、今になって提督の胸に不安が込み上げて来ていた。

「――提督!」

「どうした大鯨、宴会の給仕やってたんじゃないのか?」

 慌てた様子で執務室に飛び込んできた大鯨。今日の宴会で食事や酒を用意しているのは彼女だ。

「そ、それが――」




「“艦娘頃し”を皆さんが飲んじゃったんです!」




 “艦娘頃し”、明石と間宮が共同で醸造した酒。それを飲んだ艦娘は必ず、気分が高揚しながら酔っ払ってしまう。

833: 2014/07/18(金) 01:20:54.38 ID:rieXlzg7O
――――宴会場、跡地。

「何だ、こりゃ……」

 百人は優に入る宴会場があった場所。今は、爆弾で木っ端微塵に吹き飛ばされたかの如く、跡形も残っていない。

「あの、すいませんすいません! わたしが間違えてお酒出しちゃっせいでこんなことに……」

「いや、お前のせいじゃないから気にするな。許可した俺の責任だ……」

「皆さん、何処に行ってしまったんでしょうか?」

「さぁな――大鯨、もしもの場合を考えて、お前に頼みたいことがある」

「は、はい。何でしょうかあ?」

834: 2014/07/18(金) 01:21:29.13 ID:rieXlzg7O
――――半壊した駆逐艦寮。

「全員無事か!?」

「あぁ提督さんか。姉さんがまた暴走しとったけど、ほれ、この通りじゃ」

「ふへへー……うりゃかじぇー……」

「……まぁ、何も言うまい」

 浦風の膝に頭を乗せ、幸せそうに眠る大鳳。
 流石に起こす気にはなれず、提督は踵を返し、違う場所へと向かおうとする。
 その背を追い、一人の駆逐艦娘が走りよった。

「司令官」

「ヴェールヌイか、どうした?」

「さっき電らしき人影が工厰に向かうのを見かけたよ。司令官と一緒に居ないということは、見間違いじゃなさそうだ」

「工厰……? 分かった、すぐに行ってみる」

「私も協力するよ。大鳳以外は一筋縄じゃいかないメンバーみたいだしね」

「頼む」

「了解」

835: 2014/07/18(金) 01:22:00.08 ID:rieXlzg7O
――――工厰。

「夕張、メカ夕張! どこだ!」

「――司令官、あそこだ」

 工厰の隅の方で、メカ夕張にもたれて目を閉じている夕張。二人がやってきたのに気付き、メカ夕張が軽く頭を下げる。

「夕張は大丈夫なのか? 一体何があった」

「マスターは気絶しているだけです。それよりも、早く皆さんを止めて下さい」

「どういうことだい?」

「全員艤装を持ち出して、鎮守府最強決定バトルロワイアルをしようと仰っていました」

「模擬弾でか?」

「いえ、皆さん出撃用の実弾フル装備です」

(明日この鎮守府、更地になってたりしないだろうな……)

「メカ夕張は夕張を頼む。ヴェールヌイは鎮圧出来そうな素面のを探して来てくれ」

「分かった、なるべく早く集めて合流する」

836: 2014/07/18(金) 01:22:59.96 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府、某所。

「Burning love!」

「司令も、金剛お姉様も、わらしのなんらからー!」

「駆逐艦娘こそ世界の宝だ!」

「あら、あらあら、今日は何だかまた爆発しちゃいそうだわ」

「お前等ー! 止まれー!」

 最初に見付けたのは四人。全員顔が赤く、誰の目にも酔っている事は明白だ。
 既に戦闘は始まっていた事を示すように、周囲の施設の壁は抉れ、地面も陥没しているところが多々見受けられる。

「テートクゥ、ワタシのloveを受け止めてplease!」

「気合い! 入れれ!……うっ、気持ち悪い……」

「駆逐艦娘だけでなく提督も私の胸に飛び込んで来るのか……胸が熱いな!」

「一緒に私と爆発しましょ?」

(……酔っても変わらん奴等は裏表が無いと喜べばいいのか?)

「とにかく正気に戻れ!」

 効果があるかは分からないが、提督は明石のところから持ってきた高速修復材を、近寄ってきた四人にぶちまける。
 ダメで元々というヤツだ。

「――こういうplayをテートクは望んでるネー?」

「ひぇーベタベタで気持ち悪い……脱ぎます!」

「万全のコンディションで抱擁をしてくれという事だな、このビッグセブン長門に任せろ!」

「こんなんじゃ私の第三砲塔の疼きは止められないわよ?」

(やっぱりダメか……)

 全く効果無し。それどころか、さっき戦闘で負ったダメージを回復して更に元気になり、提督へと千鳥足で迫る。

「バトルロワイアルしてんなら俺を狙うな!」




「その通りにゃのれす」

837: 2014/07/18(金) 01:23:35.37 ID:rieXlzg7O
「Shit!」

「ひぇー!」

「くっ……」

「きゃっ!」

 四人は続けざまに膝に被弾してフラつく足元が余計にフラつき、膝をついて足を止めた。
 そして、その弾を撃った艦娘が物陰から現れる。

「――電?」

「司令官しゃん、電は電なのれす」

(やっぱり電も飲まされるか何かしたみたいだな……)

「司令官しゃんはいにゃずまがまもりゅのれす」

「大丈夫か? 目が据わってるし呂律が回ってないぞ?」

「らいじょーぶ……なの……れす」

「電!?」

 糸が切れたように崩れ落ち、地面に座り込んだ電。
 慌てて駆け寄った提督に聞こえてきたのは、規則正しい寝息だった。

(他の奴等も電みたいにすぐ寝てくれるといいんだが……)

 ゾンビのように匍匐(ほふく)前進してくる四人に若干恐怖を覚えながら、彼は電を背負ってその場から離脱した。

 金剛・比叡・長門・陸奥、途中で力尽きて地面で朝を迎える。
 電、提督に送り届けられ、自室で翌朝目覚める。
 この場での被害、施設が二つ中破、地面に陥没が十数箇所。

838: 2014/07/18(金) 01:24:33.60 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府外、公道。

「あははははは! 私はっやーい!」

「しぃぃぃぃまぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぜぇぇぇぇっ!」

「っ!? 天津風!?」

「今すぐ止まって戻らないと一週間かけっこ禁止!」

「それだけはやだよぉ……戻るからかけっこ許してよぉ……」

「ほら、明日朝辛くなるから帰るわよ」

「……急に止まったら気持ち悪くなってきた……」

「もう、しょうがない子ねぇ……」

 島風、天津風により保護される。
 被害、特に無し。

――――鎮守府内、某所。

「ビスマルク、寝てるね」

「何で裸なのかしら……まぁ、いいけど」

「まだ……まだやれるわ……」

(……胸、大きいなぁ)

(顔に当たって邪魔ね)

 ビスマルク、レーベとマックスにより保護される。
 被害、特に無し。

839: 2014/07/18(金) 01:25:24.67 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府内、広場。

「ふふふ……うふふふふ……」

「扶桑姉様が二人見える……あぁ、三人に増えたわ」

「日向ー私達って八十八機も積めたっけ?」

「何を言っている、時代は航空戦艦なのだから当たり前だ」

「そっか、そうだよね」

 試製晴嵐が無秩序に空を舞い、クレーターを広場に大量に作成していく。
 酔っ払って目視が定まっておらず、四人に被弾が無いことを幸いと言ってよいのかは、難しいところだ。

「時雨、広場が穴ぼこだらけっぽい」

「四人とも既に制御出来てないみたいだし、寝かせて連れて帰ろう」

「一番先に、誰から運ぶ?」

「艤装があって四人とも運びにくいわね」

「てやんでぃ! このぐらい一人で――ぐえっ!?」

「涼風! 今助け――きゃあっ!?」

 航空戦艦四名、白露型により保護される。
 被害状況、広場に無数のクレーター、五月雨と涼風が扶桑と山城の下敷きになり大破。

840: 2014/07/18(金) 01:25:59.36 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府、裏山。

「二人とも、そのぐらいにしなよ」

「提督も心配なさっています」

「那珂ちゃん抜きで目立つなんて、皆ズルいなぁ」

「榛名には負けたくないわ!」

「榛名も霧島には負けません!」

 互いに拳を振り抜いた方向にある木々を叩き折りながら、霧島と榛名は姉妹喧嘩のような戦いを繰り広げる。
 砲を使わない辺りまだマシなのだが、戦艦の本気の殴り合いに割って入るのが難しいことに変わりはない。

「コレで、終わりよ!」

「勝つのは、榛名です!」




「見事なクロスカウンターだったね」

「明日、木を植えないと……」

(ライブでバトル要素取り入れたら盛り上がるかな……)

 榛名・霧島、川内型により保護。
 被害状況、裏山が一部滅茶苦茶。

841: 2014/07/18(金) 01:28:22.23 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府内、演習場だった場所。

「……やっぱりコイツ等が最後か」

「どうするんだい、司令官」

「とりあえず、気絶させるしか無いんじゃない?」

「利根姉さんが本気なら、私にはちょっと手に負えません……」

「加賀さん居る時点で厳しいって、私達空母の中で唯一張り合えそうな赤城さんはまた居ないし……」

「木曾も珍しくはしゃいでるねぇ」

「ふふ、明日はお仕置きね」

 跡形もない演習場。まだこの場で戦おうとしているだけ救いはあるのかもしれないが、流れ弾で施設が既に三つ全壊している時点で、あまり意味がない。

「全員腕を上げましたね」

「加賀、少し足元がフラついているのではないか?」

「それは武蔵もです。何だか小刻みに揺れていますし」

「大和よ、お主も酔っれおるからそう見えるのじゃ。吾輩はじぇーんじぇん酔っ払ってなどおらぬじょ!」

「あはははは! 大井姉の気持ちが今は分かる! 魚雷はいいな!」

 五人が酔っているのは紛れもなく確かだ。
 それにもかかわらず、砲撃や雷撃、艦載機の制御、回避といった行動は全員まともだから質が悪い。

「とりあえず、やれるだけやってみてくれ。アイツ等もそんなに無茶はしないはずだ」

『了解!』

 ――五分後。

(本当にコイツ等酔ってんのか……?)

 集まったメンバーは全員大破し、明石のところに一時撤退。更に施設が二つ半壊、一つ全壊という大惨事を目の当たりにして、提督は頭を抱える。
 酔い潰れるのが先か、鎮守府が全壊するのが先か、そんな考えも頭を過り始めた時、自分の後ろから歩み寄る者が居ることに彼は気付いた。




「――提督、お呼びになられましたか?」

842: 2014/07/18(金) 01:28:50.95 ID:rieXlzg7O
「すまん、店を優先させてやりたかったんだが、ご覧の有り様でな……」

「いえ、頼って頂けるのでしたら嬉しいです」

「とりあえず、加賀だけでも止めてくれ」

「了解しました」

 いつもの和服姿のまま艤装も付けず、鳳翔はゆっくりと地雷源のような戦場へと、足を踏み入れる。

「こんなに壊してしまって、明日から明石さんが大変そうね……」

 特に避ける素振りも見せず、一直線に加賀の元へと彼女は向かう。そして、声が届く範囲へと到達した。

「――加賀」

「っ!? 鳳翔、さん……?」

「何を、しているのかしら?」

「いえ、これは、その……」

 一気に酔いも覚め、加賀は赤かった顔を青くする。以前に暴走した時、こってり絞られたのを思い出したのだ。
 他の四人も攻撃の手を止め、二人のやり取りをぼんやりと眺めていた。

「別に戦うのは止めません。でもね、鎮守府を壊すのはダメ。そこの四人も、ね?」

「むっ……すまん」

「申し訳ありません……」

「すまぬ……」

「悪かった……」

 加賀の姿を見て冷静さを取り戻し、四人も素直に謝罪する。

「じゃあ今日は解散にしましょう。提督、それでいいですか?」

「あぁ、修理は朝からやらせる方向でいいだろ。どうせこの状況じゃ明日は一般解放は無理だ」

「明日は二日酔いの人も多そうですし、間宮さんと大鯨とあっさりした朝食を作りますね」

「何から何まで悪いな」

「いえ、それでは私はコレで――加賀、貴女は後始末だけはしておくのよ?」

「……はい」

843: 2014/07/18(金) 01:29:18.91 ID:rieXlzg7O
 ――最終報告。
 “艦娘頃し”を飲んだ者は全員、翌日割れるような頭痛に見舞われながら、電以外は破壊した施設等の復旧や再建に従事。
 涼風、五月雨、ヴェールヌイ、五十鈴、瑞鶴、筑摩、北上、大井は高速修復材で即全快しており、翌日には加害者へと嫌みを言ってからかっている姿が見受けられた。
 最終被害は、施設六ヶ所全壊、八ヶ所半壊、壁などにヒビが二十七箇所、地面の陥没三十八箇所。
 明石の試算によると、“三日徹夜でどうにかなる”被害である。




――――鳳翔が居てくれて助かったよ。

 ――――私は少しお説教をしただけですから。

853: 2014/07/18(金) 22:58:59.92 ID:TTMw/vTXO
・瑞鶴『提督さんとまったり』、投下します

854: 2014/07/18(金) 23:00:39.42 ID:TTMw/vTXO
――――提督執務室。

「提督さん、お茶、好き?」

「何が特別好きとかはないが、瑞鶴の入れた茶は好きだな」

「動物とかだと何が好き?」

「猫と犬と熊とハムスターと兎」
「……動物?」

「深く詮索するな」

「じゃあ、加賀さんは好き?」

「お前と同程度以上には」

「ふーん、一日一回以上会わないと気が済まないんだ」

「加賀は薬物か何かか?」

「だって最近お茶淹れたら必ず笑うから、毎日楽しみなんだもん」

(加賀と翔鶴で取り合いが発生してなくて助かったな……)

「最近は金剛ともよく一緒にお茶するんだー」

「アイツ、紅茶から鞍替えしたのか? この間は普通にティータイムはやっぱり大事ネーって言いながら紅茶飲みまくってたが」

「私がお茶淹れる時は、抹茶ロール頬張りながら緑茶をティーカップで飲んでたよ?」

「何ともアンバランスだな、そりゃ」

「“ティーには変わり無いデース”だって」

「まぁ、本人がそれでいいならいいんだろうな……」

「そういえば提督さん、さっきの続きなんだけど――ツインテール、好きなの?」

「何でそんなこと聞くんだ?」

「さっきからずっと私の髪で遊んでるから、好きなんじゃないかなーって思って」

「……引っ張っていいか?」

「流石に提督さんでも引っ張ったら爆撃するから」

「冗談だ」

「それで、ツインテールは?」

「ツインテールに限らず、髪は見るのも触るのも基本的に好きだ」

「……変Oさん?」

「変Oはやめろ、別に変な趣味はない。たまに洗いたくなるが」

「――それぐらいなら、いいよ?」




――――提督さん、満足してくれた?

 ――――目隠しがなけりゃ最高だったんだがな……。

862: 2014/07/19(土) 23:28:16.47 ID:4FpW0qugO
・電『猫ちゃんを飼うのです』、投下します

イアイアハスター、黄金の蜂蜜酒を飲む球磨

863: 2014/07/19(土) 23:29:00.57 ID:4FpW0qugO
――――提督執務室。

 ――にゃー。

(……何で猫が執務机に座ってるんだ?)

「お前、どっから入って来たんだ?……って聞いても分かるわけないよな」

「司令官さん、大変なのです!」

「どうした電、そんなに慌てて。何かあったのか?」

「“提督”が居ないのです!」

「お前、熱でもあるのか? 俺ならちゃんと――ん? 今、提督って言わなかったか……?」

 ――にゃーお。

「あっ提督、ここに居たのですね。コラ提督、部屋から勝手に出てっちゃめっなのです!」

「あー、念のために確認しておくが、コイツの名前は?」

「提督ですよ?」

「何で、提督なんだ?」

「“司令官”って名前にしたら、ややこしくなってしまうのです」

(いや、そういう意味で聞いたんじゃないんだが……)

 ――んにゃー。

「っとと、書きかけの書類で遊ぶのは止めろ、こっちの書き損じやるから。世話はどうしてるんだ?」

「部屋で皆で世話してるのです。たまに文月や三日月なんかも遊びに来て、面倒を見てくれてます」

「まぁ、ちゃんと世話出来てるならいい」

「提督、今日は電は司令官さんとお仕事なのです。部屋で暁に遊んでもらうのです」

 ――ふしゃー!

「痛っ!? 何で引っ掻かれたんだよ、今……」

「多分、司令官さんに電が取られると思っているのです……」

(猫のヤキモチか、可愛いもんだが痛いもんは痛いな……)

 ――ふー!

「とりあえず、先に部屋に連れていってくれ。このままだと生傷が絶えそうにない」

「はいなのです。提督、部屋に一緒に戻るのです」

 ――にゃーん。

「――ふぅ、猫は一匹居れば十分だ」

 ――猫じゃないにゃ。

「っ!?」




――――はわわ、司令官さん傷だらけなのです!

 ――――心配するな、飼い猫にやられただけだ……。

866: 2014/07/21(月) 01:29:25.57 ID:bo6kX3vsO
・提督『研修って……何の研修だよ』、投下します

867: 2014/07/21(月) 01:29:54.30 ID:bo6kX3vsO
――――提督執務室。

「今日はあの子達をよろしくお願いします」

「それぞれの要望に合わせて研修させてるから、俺は特に何もしないし、君もゆっくりしてってくれ」

「あの、良ければ色々と話を聞かせてもらえませんか? 特に艦娘の子達と円滑にやっていく為の秘訣とか、上手な逃げ方とか……」

「逃げ方?……苦労してるようだな、そっちも」

「好かれているのはとても嬉しいんですけど、女性とお付き合いした経験が一度も無い僕には、ちょっと刺激が強過ぎる事がチラホラと……」

「慣れろ、そのうち着替えを見ながら仕事が出来るようになる」

「えぇー……」

(試してみようかしら)

(司令官の前で着替えて気付かれなかったら悲しくなるし、私はやめとこ。司令官にまで影が薄いって言われたら立ち直れないし……)

868: 2014/07/21(月) 01:30:28.35 ID:bo6kX3vsO
――――畑。

「――そうね、連作障害なんかもあるにはあるけど、聞いた感じだと大丈夫そうよ?」

「アイツもそう言ってたにゃ。他に何か気を付けることってあるにゃ?」

「気を付けること……潮風は害になりやすいから、ちょっとその辺は気を付けた方がいいかもしれないわね」

「位置によっては確かに潮風が直接吹き抜けてるかもしれないにゃ。帰ったら対策考えてみるにゃ」

「お役に立てた様で良かったわ。あっそうだ、みかん食べる?」

「大好物にゃ、頂くにゃ。ありがとうにゃ」

(うちの多摩は柑橘類ダメだったけど、この子は好きなのね……)

「コレ、すっごく美味しいにゃ」

「良かったら苗とかと一緒に箱で送りましょうか?」

「是非お願いするにゃ!」

(ふふ、畑仲間が出来てちょっと私も嬉しいかも)

――――食堂。

「――茄子ならごま油でさっと炒めるだけでも美味しいですし、肉のはさみ揚げにウスターソースをかけるのもいいですね」

「変わったメニューやレシピは考えねぇんですか?」

「どちらかというと馴染みの味を求められる事が多いので、今作れるものをより美味しくする方向で考えてます」

(飽きられないように変えるんじゃなく、とことん改良……私もちょっとその方向で暫くやってみるとしましょうかねー)

「まぁ例え変わったメニューを作っても、必ず感想と改良点を聞かせてくれる方が居るので、問題は無いんですけど」

「……なんとなく誰だか見当がついちまいますね」

「食べる量に目が行きがちですが、舌も確かなんですよ?」

「うちの三人は美味しいって言うだけで、特に感想はくれないんで結構悩んじまいます」

「美味しいも立派な感想ですし、愛情込めて作ればきっと大丈夫です」

「……そうですね、このまま胃袋ガッチリ掴んどきます」

「頑張ってね、応援してるわ」

869: 2014/07/21(月) 01:30:58.12 ID:bo6kX3vsO
――――休憩スペース。

「リリアン編みも結構楽しいクマ」

「うん、編んでると落ち着くし」

「球磨、ゲームしよ」

「さ、最新ゲーム機だクマ! やるクマやるクマー。名取、今度来たらまた一緒に編物するクマ」

「いいよ、じゃあまた遊びに来た時に一緒にね」

「分かったクマー」

「球磨、何したい? 色んなのあるよ?」

「初雪のオススメは何だクマ?」

「P4U」

「じゃあそれやるクマ。……コントローラーのボタン配置が良く分からないクマ」

「やってれば、慣れる」

「分かったクマ、じゃあこのクマ使うクマ」

870: 2014/07/21(月) 01:31:31.12 ID:bo6kX3vsO
――――鎮守府、入口。

「今日はありがとうございました」

「またいつでも来てくれ」

「鳳翔さん、また来るにゃ」

「えぇ、またね」

「次はお互いに一品作って披露しませんか?」

「いいわね、新料理を何か考えておくわ」

「名取も初雪もまた来るクマー」

「次は一緒に帽子作ろうね」

「良い勝負だった、またやりたい」

「……球磨君のは、研修なの?」

「細かいことはいいんだクマ」

「いいからさっさと帰るにゃ」

「晩御飯は間宮さん直伝の料理にしますねー」




――――アイツ等変わってるけど、仲良くていい関係築けてるな。

 ――――……私達も大概だと思いますよ?

877: 2014/07/21(月) 01:59:33.97 ID:bo6kX3vsO
・蒼龍『飛龍には負けてられない』

・天津風『旦那様へ愛を込めて』

・鳥海『図書館ではお静かに』

・日向『君、まだ居たんだ』

・島風&天津風『連装砲くんと連装砲ちゃん』

以上五本でお送りします

879: 2014/07/21(月) 21:57:16.87 ID:rEEmLWGMO
・蒼龍『飛龍には負けてられない』、投下します

880: 2014/07/21(月) 21:57:42.05 ID:rEEmLWGMO
――――提督執務室。

「改二になっちゃいました」

「なっちゃいました、じゃないだろ。飛龍は聞いてたが蒼龍の改造は聞いてないぞ?」

「だって、飛龍だけ改二ってズルいじゃない!」

「ズルいってなぁ……」

「何か鉢巻きしてカッコ良くなってるし、艦載機は強化されてるし、運も良いし、真面目に料理したら私より上手いし、まともに選べば服のセンスもいいし……」

「ストップ、後半はもう色々関係無いぞ」

「とにかく、二航戦は一緒じゃないとダメなんです!」

「分かったからちょっと落ち着け。――飛龍、そろそろ出てきたらどうだ?」

「そうですね」

「飛龍!? 何でここに!?」

「改二のお披露目は蒼龍と一緒にしますって、前もって提督に言ってあったからだけど?」

「“蒼龍なら勝手に改二になって提督に会いに来るから、その時に一緒に”って言われてな。本当に勝手に改二になるとは思ってなかったが……」

「何もわざわざ待たなくても良かったじゃない」

「“二航戦は一緒じゃないとダメ”だから、ね」

「うっ……そ、それは優劣が付くのが嫌って意味だってば!」

「じゃあ何で蒼龍も鉢巻きしてるの?」

「うぐっ……これは、その、私も頭部を守る為に……」

「ふーん……なら、私は外そうかな」

「何で外しちゃうのよ!?」

「私は蒼龍より運が良いもの」

「運が良くても当たる時は当たるじゃない」

「いい加減、正直にお揃いが良いって言えば?」

「べ、別にそんなこと思ってないわよ」

「私はお揃いにしたいけど」

「ひ、飛龍がそう言うなら――きゃっ!?」

「この胸の大きさとか」

「ちょっと飛龍、揉まないでよ!」

「どうせ提督が夜に揉むなら、今私が揉んでもいいじゃない」

「あー、そういうのは自室でやれ。後、絶対に夜戦するって決めつけるのはやめろ」

「ヤダ、ヤダヤダ! 私そういう趣味はないってば!」

「私もそんな趣味無いわよ」

「飛龍、あんまりからかいすぎるな。後でお前に対する愚痴だか自慢だかを聞く時間が増える」

「自慢なんてしてたの?」

「してない! 絶っっっ対にしてない!」

「何時も背中預けると安心――」

「アレは酒の勢いだから忘れてって言ったじゃないの!」

「無理だな」

(そろそろお暇しようかな、これ以上邪魔したら悪いし)

881: 2014/07/21(月) 21:58:11.37 ID:rEEmLWGMO
――――蒼龍、何で袖掴んでるの?

 ――――今日は三人で飲むから。

  ――――頼むからおとなしく飲んでくれ、お前等若干酒癖悪いから。

882: 2014/07/23(水) 00:22:03.83 ID:VHlVrA35O
・天津風『旦那様へ愛を込めて』、投下します

883: 2014/07/23(水) 00:22:32.00 ID:VHlVrA35O
――――提督執務室。

「今日は――天津風が秘書艦か、アイツならゆっくり出来そうだな」

 天津風は駆逐艦娘の中では比較的大人しめで、尽くすタイプに分類される。
 仕事を手伝い、休憩すればお茶を淹れ、会話も疲れない程度のペースを保つ。
 島風の保護者的存在だけあって、提督にもその母性的な面を見せており、優しく支えてくれる存在だ。




 ――だが、提督は肝心な事を忘れていた。

「あなた、島風を泣かせてたみたいだけど、覚悟はいい?」

(ヤバい、島風の一件忘れてた……)

884: 2014/07/23(水) 00:23:05.11 ID:VHlVrA35O
 ――二時間後。

「じゃあ、もう島風を泣かせないでね?」

「分かった、二度と泣かせないと約束する……」

 二時間に及ぶ説教を乗り越え、提督は机に突っ伏す。
 島風の事となると例え彼相手でも、彼女は容赦がない。

「あら、もうこんな時間。あなた、お昼ご飯にしましょうか」

「あぁ、頼む……」

「少し待っていて」

 ――十分後。

「ちょっとさっきはキツく言い過ぎたから、その……張り切ってみたわ」

「なぁ天津風、十分でどうやってこれだけの量作ったんだ?」

「島風程じゃないけど、私も速いもの」

「いや、速力は調理には関係無いと思うんだが……」

 間宮も常軌を逸した調理の速さだが、天津風もまた速かった。
 天津飯、麻婆茄子、青椒肉絲、小籠包、生春巻き、ゴマ団子、杏仁豆腐。
 先に下準備を済ませていたとしても、この量を短時間で作るのは至難の技だ。

「愛情を込めれば、料理も早く仕上がるのよ。ほら、冷める前に食べて」

「そうだな、冷めちゃ勿体無い。いただきます」

「じゃあ私も、いただきます」

「――うん、今日のもやっぱり美味いな」

「当たり前じゃない、あなたに不味い物を食べさせられないわ」

「毎日こう美味いものばかり食ってると、食い過ぎて太りそうだ」

「その時は島風とかけっこでもして痩せてね」

「全身筋肉痛で仕事にならなくなるから、それは勘弁しろ」

「マッサージしてあげるから大丈夫よ」

「そもそも太らなければいい話だがな」

「――お代わり、よそいましょうか?」

「……太らせたいのか?」

「食後に私達と少し運動すれば問題ないわ」

「運動って何を――今、私“達”って言わなかったか?」

「執務室に籠りっぱなしだと身体に悪いし、食べたら私と島風を含む駆逐艦娘達と、鬼ごっこしてもらうから」

「いや、朝出来なかった書類仕事があってだな」

「夕方から着手しても問題ない書類でしょ?」

「どうしてもやらなきゃいかんか?」

「島風が、鬼ごっこ楽しみにしてるわ」

「……はぁ、了解だ。お代わり」

 “抵抗は無意味だ、諦めろ”、という意味の言葉を聞き、提督は観念して目の前の食事を平らげていく。
 島風という理由を付けてはいるものの、単純にデスクワークが続いていることを考慮しての申し出なのは、彼にも分かっていた。

(――ありがとな、天津風)

 心の中で感謝しながら、提督は完食するのだった。

885: 2014/07/23(水) 00:23:31.50 ID:VHlVrA35O
――――じゃあ早速家族サービスしてね?

 ――――島風は俺とお前の子供になるのか?

――――近いものじゃないかしら。

 ――――……否定しないと俺が危ない人間になるから、否定しとく。

891: 2014/07/23(水) 21:02:37.61 ID:M+56R+e0O
・鳥海『図書館ではお静かに』、投下します

892: 2014/07/23(水) 21:03:06.01 ID:M+56R+e0O
――――図書館。

 秘書艦日でもなく、姉のダイエットに付き合う予定もなく、一日オフな鳥海は図書館へと来ていた。

(今日は何を読みましょう)

 恋愛小説や戦術書、テーブルゲームの必勝法、ダイエット本、栄養学の本に、男性を落とす百の方法。
 実に様々な本を手に取り、読んでいる彼女。今日も何か良い本はないものかと本棚を眺める。

(コレは前に読みましたし、こっちのシリーズはあまり趣味じゃありませんでしたし――あっ、今日はこれにしましょう)

 手にしたのは、とある鎮守府の提督が書いた『彼女達との七日間』という本だ。
 艦娘に人気の小説で、新米提督と艦娘が打ち解けるまでの七日間の騒動が描かれている。

(席は、あそこがいいですね)

 席へと座り、早速読み始める鳥海。平日の昼間ということもあって、館内は人気も疎らで静寂に包まれていた。

(――私も着任したての頃は、司令官さんと少し言い争ったこともありましたね)

 鳥海は、問題を起こして他の鎮守府から送られてきた訳ではなく、提督に建造された艦娘だ。
 その着任は、高雄型の中では一番早かった。

(この提督みたいに無愛想では無かったけれど、いまいち信用出来なかったんですよね……)

 本の中では常にしかめっ面の提督が、駆逐艦娘から怯えられていた。
 一方、鳥海の記憶の中にある着任当初の提督の印象は、“頼り無さそう”だった。

(作戦は定石から外れてましたし、勘で回避行動をとりますし、ずっと寝てましたし……)

 型破りと言えば聞こえはいいが、艦娘からしてみれば命を預けるのに信用できない言動や行動は、不安の種でしかない。

(――でも、誰よりも艦娘を大事に考えていてくれたんですよね)

 本の中の艦娘は六日目にして気付く。生活環境や食事、疲労のチェックに余念が無く、しかめっ面なのは常に考え事をしていたからなのだと。
 七日目には細やかなパーティーをして、初めて提督が笑みを見せて艦娘達と打ち解け合い、話は終わりを迎える。

「一気に読んでしまいましたね。まだ時間はありますし、次は何を――?」

 ――たまには本を読め、読書の秋だ。

 ――アタシは本なんか読まないっつってんだろ!

(はぁ……摩耶姉さんってば)

 聞こえてきた姉の怒声に大きく溜め息を吐き、鳥海はそちらへと歩み寄っていくのだった。

893: 2014/07/23(水) 21:03:35.78 ID:M+56R+e0O
――――摩耶姉さん、図書館では静かにして下さい。司令官さんも、デートなら姉さんが好きそうな場所を選んで下さいね。

 ――――はっ!? で、デートじゃねぇし!

  ――――図書館でぐらい静かなコイツを見れると思ったんだがなぁ……。

895: 2014/07/24(木) 04:22:19.92 ID:G5434DwBO
・日向『キミ、まだ居たんだ』、投下します

896: 2014/07/24(木) 04:22:59.62 ID:G5434DwBO
――――明け方、提督執務室。

「あっ……キミ、まだ居たんだ」

「お前こそ、こんな時間に何のようだ。まだマルゴーサンマルだぞ」

「私の事は気にしなくていい。それより、何でこんな時間に執務室で仕事をしているんだ?」

「重要書類を一つ書くの忘れてたのに寝る直前に気付いて、戻って来て今まで書いてたんだよ」

「昨日の秘書艦はどうした」

「今頃俺の部屋で爆睡してるよ、昨日大はしゃぎで遊びまくってたからな」

 そう答えると、提督は大きく欠伸をしかけ、日向の目を気にして噛み頃す。

「一睡もしていないのか?」

「まぁな」

(だから、コレ書いたら寝るつもりだったんだが……)

 既に執務室に来ている今日の秘書艦を前に、寝たいとは言い出せるはずもない。

「悪いが日向、コーヒー淹れてくれ」

「断る」

「――何?」

「断る、と言った」

「そうか、お茶汲みなんぞ頼んですまなかった。自分で淹れ――うおっ!?」

 断られたことに若干驚きつつも、自分で淹れようと提督は立ち上がろうとした。
 だが、立ち上がるより前に身体が浮き上がり、彼は狼狽(うろた)える。

「……何してんだよ、日向」

「ふーん、軽いな」

 戦艦である日向が提督を抱き上げるのは、至極簡単だ。
 だからといって、この状況が恥ずかしいことに変わりはない。

「降ろせ、流石に怒るぞ」

「分かった」

「――いや、コレはコレで何でだよ」

「膝枕を知らないのか?」

 降ろされたのは日向の膝の上。提督を見下ろす顔は、加賀よりも無表情だ。

「今この体勢はヤバイから起き――ぐおっ!?」

「まぁ、起きようとしたらそうなるな」

「なるんじゃなくて、してんだろうが……」

 起きようとした提督の額を、肘が捉える。手加減はしていても、その一撃はかなり痛い。

「で、本当に何やってんだよ」

「寝不足は良くないぞ」

「一日ぐらい寝なくても大丈――ぐえっ!?」

「寝不足は、良くないぞ」

「物理的に寝かせるのは、やめろ……」

「なら、このまま大人しく寝るといい」

「……分かったよ、二時間ぐらいしたら起こしてくれ」

 抵抗を諦め、提督は目を瞑る。
 予想以上に疲れが溜まっていたのか、彼が寝息を立て始めるのに、そう時間はかからなかった。

897: 2014/07/24(木) 04:23:34.50 ID:G5434DwBO
(――良く寝ているな。全く、先に仕事を片付けて、二人でゆっくり過ごそうと思っていたのに、キミという男はいつもいつも……)

 朝から日向が来ていたのは、二人の時間を多めに作ろうという意図があってのことだった。
 徹夜で寝不足状態の提督と一日過ごすなど、彼女にとっては不本意極まりない。

(まぁ、こうして膝枕も出来たし、よしとしようか)

 少しだけ笑みを浮かべ、日向は書類を書きながら提督の頭を撫でるのだった。




――――おい日向! もう昼じゃねぇか!

 ――――良い天気だし、外に行かないか?

――――あのなぁ、書類が……終わってる?

 ――――ロクマルを積む事は出来ないが、ラジコンで飛ばして見せてやるぞ。

898: 2014/07/24(木) 09:03:41.49 ID:HbPwQ1SC0
乙乙


引用: 【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」