105: 2014/08/09(土) 13:52:08.76 ID:5svCBqND0
前回はこちら
――――街。
「あっ、ちょうちょです」
「綾波、そっちじゃなくてこっちです」
「うわっ!? 三隈、また今ぶつかりそうだったよ」
「あらやだ、ごめんねもがみん」
「ふふ、珍しい組み合わせになったわね」
「くじ引きが多いのって、そういうのを狙ってるのかな?」
「あたしは酒がありゃ良かったんだけどねぇ」
「隼鷹もたまには酒以外飲んだら?」
街を歩く艦娘一行。組み合わせは、綾波、三隈、最上、翔鶴、時雨、隼鷹、伊勢の七名。
鎮守府で軽い夏祭りを開催する為、彼女達はその買い出しへと向かっている途中だ。
――……けて。
「? 今、何か声がしませんでしたー?」
「声? もがみんは聞こえた?」
「ううん、ぼくには聞こえなかったけど……」
「こっちの方からでしたねー」
「あっ、だから勝手に行っちゃダメだってば!」
フラフラと路地裏へと入っていく綾波。最上と三隈も、その後を追う。
「どうしたんだろう、何かあったのかな?」
「とりあえず、放っておくわけにはいかないわ」
「全く、手間のかかる子達だねぇ」
「ほら、ぼさっとしてないで私達も後を追うわよ」
「へいへい」
少し後ろを歩いていた四人も、三人が消えていった路地へと入っていく。
何か危険があっても、この面子ならば特に問題はない。
「――あっ、誰か倒れてますよ」
「行き倒れ? こんな街中で?」
「とにかく助けましょう」
先行していた三人の前に現れたのは、地面に倒れている少女だった。
そして、助け起こそうと近づいた三人は、即座に気付く。
――――この子は、艦娘だ。
106: 2014/08/09(土) 14:11:44.57 ID:5svCBqND0
――――提督執務室。
「――で、買い出しに行ったら艦娘を拾ったってのか?」
「うん、大鯨みたいに気付いたら海に居たらしいよ。それで陸に上がってさ迷ってて、町までたどり着いたところで力尽きたみたい」
「時雨が報告に来たってことは、お前の姉妹艦か」
「そうだよ。――ほら、挨拶して」
「は、初めまして、春雨です」
「あぁ、よろしくな。まぁ一人や二人増えてもうちは問題ないし、気兼ねなくゆっくりしてくれ」
「はい、あの、よろしくお願いします」
「……一つだけ聞いていいか?」
「何でしょうか?」
「うまいか、それ」
「はい、とっても美味しいです」
「そうか、食堂に行けばもっと食べられるから時雨に案内してもらうといい」
「ホントに?」
「うん、基本的に凄い量を備蓄してるからそれもいっぱいあるはずだよ」
「じゃあ行きたい」
「いいよ、こっちだからついてきて。じゃあ提督、またね」
「失礼します」
「あぁ、またな」
――――春雨大好き春雨が着任しました。
「――で、買い出しに行ったら艦娘を拾ったってのか?」
「うん、大鯨みたいに気付いたら海に居たらしいよ。それで陸に上がってさ迷ってて、町までたどり着いたところで力尽きたみたい」
「時雨が報告に来たってことは、お前の姉妹艦か」
「そうだよ。――ほら、挨拶して」
「は、初めまして、春雨です」
「あぁ、よろしくな。まぁ一人や二人増えてもうちは問題ないし、気兼ねなくゆっくりしてくれ」
「はい、あの、よろしくお願いします」
「……一つだけ聞いていいか?」
「何でしょうか?」
「うまいか、それ」
「はい、とっても美味しいです」
「そうか、食堂に行けばもっと食べられるから時雨に案内してもらうといい」
「ホントに?」
「うん、基本的に凄い量を備蓄してるからそれもいっぱいあるはずだよ」
「じゃあ行きたい」
「いいよ、こっちだからついてきて。じゃあ提督、またね」
「失礼します」
「あぁ、またな」
――――春雨大好き春雨が着任しました。
127: 2014/08/12(火) 11:54:30.80 ID:QGZHV5QH0
――――提督執務室。
「提督、今日からこちらでお世話になります」
「……は?」
執務室に入るや否やそう言い放った、眼鏡をかけた黒髪長髪の艦娘。
その顔に見覚えがあるだけに、余計に提督の反応は間抜けなものとなっていた。
「ですから、今日からこちらでお世話になります」
「大淀って軍司令部所属じゃなかったか? 何でうちに来るんだよ」
「お前が居ると仕事が早すぎて他の者が暇になるから、忙しそうにしている鎮守府へでも行って来いと言われました」
「何て理由だよ……」
事実、深海棲艦も姿を消した今となっては、軍司令部の仕事は格段に減っている。
もしもに備えての準備を欠かすことは出来ないにしても、出来ることは限られているのだ。
「早速仕事に取り掛かりたいのですが、何をすればよろしいでしょうか?」
「今は俺の方は手が足りてるし、加賀と吹雪を手伝ってくれ。あの二人に大抵の事は任せてるからな」
「了解しました。ではお二人の補佐ということで」
「あぁ、よろしく頼む」
「――あの、仕事に取り掛かる前に一つよろしいでしょうか?」
「何だ?」
踵を返そうとした大淀は、執務机の下から一瞬姿を現したモノを見て動きを止めた。
そして、そちらをジッと見つめながら提督へと質問を投げかける。
「そこに誰か隠れていますね?」
「隠れてるぞ」
「っ!?」
ガタッと音を立てて執務机が揺れる。そして、下から一人の艦娘が姿を現した。
「ひどいであります! そこはいないと嘘を吐くべきところであります!」
「何で隠れる必要があるんだよ」
「あきつ丸、お久しぶりですね」
「ひ、ひひ久しぶりでありますな!」
「素敵な報告書、いつも拝見しています。――ちょっとこちらでお話をしましょう」
「ひ、引っ張らないで欲しいであります! 自分には秘書艦の仕事が……」
「ついでだから手伝ってこい」
「提督殿の薄情者ー!」
「――あいつの報告書、いつも大淀が修正してたのか……」
――――書類仕事のスペシャリスト、大淀が着任しました。
「提督、今日からこちらでお世話になります」
「……は?」
執務室に入るや否やそう言い放った、眼鏡をかけた黒髪長髪の艦娘。
その顔に見覚えがあるだけに、余計に提督の反応は間抜けなものとなっていた。
「ですから、今日からこちらでお世話になります」
「大淀って軍司令部所属じゃなかったか? 何でうちに来るんだよ」
「お前が居ると仕事が早すぎて他の者が暇になるから、忙しそうにしている鎮守府へでも行って来いと言われました」
「何て理由だよ……」
事実、深海棲艦も姿を消した今となっては、軍司令部の仕事は格段に減っている。
もしもに備えての準備を欠かすことは出来ないにしても、出来ることは限られているのだ。
「早速仕事に取り掛かりたいのですが、何をすればよろしいでしょうか?」
「今は俺の方は手が足りてるし、加賀と吹雪を手伝ってくれ。あの二人に大抵の事は任せてるからな」
「了解しました。ではお二人の補佐ということで」
「あぁ、よろしく頼む」
「――あの、仕事に取り掛かる前に一つよろしいでしょうか?」
「何だ?」
踵を返そうとした大淀は、執務机の下から一瞬姿を現したモノを見て動きを止めた。
そして、そちらをジッと見つめながら提督へと質問を投げかける。
「そこに誰か隠れていますね?」
「隠れてるぞ」
「っ!?」
ガタッと音を立てて執務机が揺れる。そして、下から一人の艦娘が姿を現した。
「ひどいであります! そこはいないと嘘を吐くべきところであります!」
「何で隠れる必要があるんだよ」
「あきつ丸、お久しぶりですね」
「ひ、ひひ久しぶりでありますな!」
「素敵な報告書、いつも拝見しています。――ちょっとこちらでお話をしましょう」
「ひ、引っ張らないで欲しいであります! 自分には秘書艦の仕事が……」
「ついでだから手伝ってこい」
「提督殿の薄情者ー!」
「――あいつの報告書、いつも大淀が修正してたのか……」
――――書類仕事のスペシャリスト、大淀が着任しました。
130: 2014/08/12(火) 15:33:01.33 ID:DsnoKglEO
・幼女那智『羽黒の目が輝いている気がする』 、投下します
131: 2014/08/12(火) 15:33:27.26 ID:DsnoKglEO
――――廊下。
(そういった行為に及んだというのが周知の事実になるのは、どうにかならないものだろうか……)
身体が縮んだことで床につきそうな髪を揺らしながら、那智は自室へと戻る為に廊下を歩いていた。
その途中、誰かとすれ違う度に冷やかされたり、頭を撫でられ、まだ朝だというのに彼女の顔には疲れが浮かび始めている。
(一週間は外出も控えるとしよう……)
自室の扉を開け、那智は中へと入る。
(やはり自分の部屋というのは落ち着くな)
「あっ、那智姉さんお帰りなさい」
妙高は朝から出掛けており居らず、足柄はまだ夢の中、起きて洗濯物を畳んでいた羽黒だけが彼女に気付き出迎えた。
「足柄はまだ寝ているのか」
「昨日夜遅くまで鳳翔さんのところで飲んでたみたいです」
「酒か……この姿でも飲んで差し支えは無いのか、一度確認しなければ――」
「ダメですよ、那智姉さん」
一杯だけ飲もうと一升瓶に伸ばした那智の手は、洗濯物を畳み終えた羽黒によって阻まれる。
元より力は妹の方が強いため、掴まれてしまっては振りほどきようがない。
「羽黒、一杯だけだ。何も一日飲もうというわけではない」
「身体が小さい間は、お酒じゃなくてこっちにして下さい」
「――オレンジジュース?」
一升瓶の代わりにと手渡されたのは、紙パックに入ったオレンジジュース。
那智は羽黒とそれを交互に見ながら、何故これなんだと抗議を示す。
「その、せっかく小さくなったんですから、子供気分を味わってみませんか?」
「私は別に……」
「じゃあせめて今日の間だけでも!」
珍しく強気な羽黒に、那智も少したじろぐ。
そして、気付けば彼女は縦に首を振っていたのだった。
(そういった行為に及んだというのが周知の事実になるのは、どうにかならないものだろうか……)
身体が縮んだことで床につきそうな髪を揺らしながら、那智は自室へと戻る為に廊下を歩いていた。
その途中、誰かとすれ違う度に冷やかされたり、頭を撫でられ、まだ朝だというのに彼女の顔には疲れが浮かび始めている。
(一週間は外出も控えるとしよう……)
自室の扉を開け、那智は中へと入る。
(やはり自分の部屋というのは落ち着くな)
「あっ、那智姉さんお帰りなさい」
妙高は朝から出掛けており居らず、足柄はまだ夢の中、起きて洗濯物を畳んでいた羽黒だけが彼女に気付き出迎えた。
「足柄はまだ寝ているのか」
「昨日夜遅くまで鳳翔さんのところで飲んでたみたいです」
「酒か……この姿でも飲んで差し支えは無いのか、一度確認しなければ――」
「ダメですよ、那智姉さん」
一杯だけ飲もうと一升瓶に伸ばした那智の手は、洗濯物を畳み終えた羽黒によって阻まれる。
元より力は妹の方が強いため、掴まれてしまっては振りほどきようがない。
「羽黒、一杯だけだ。何も一日飲もうというわけではない」
「身体が小さい間は、お酒じゃなくてこっちにして下さい」
「――オレンジジュース?」
一升瓶の代わりにと手渡されたのは、紙パックに入ったオレンジジュース。
那智は羽黒とそれを交互に見ながら、何故これなんだと抗議を示す。
「その、せっかく小さくなったんですから、子供気分を味わってみませんか?」
「私は別に……」
「じゃあせめて今日の間だけでも!」
珍しく強気な羽黒に、那智も少したじろぐ。
そして、気付けば彼女は縦に首を振っていたのだった。
132: 2014/08/12(火) 15:33:53.58 ID:DsnoKglEO
――五分後。
「那智姉さん、座り心地はどうですか?」
「こういうのは今までされたことが無かったが、案外落ち着くものなのだな」
那智を膝に乗せ、羽黒はそれを後ろから抱き締めていた。
何だかんだ末妹を可愛がっている那智からすれば、嬉しそうな彼女と過ごすことに不満などあるはずもない。
「いつも妙高姉さんが初風ちゃんを膝に乗せてるの、少し羨ましかったんです。私は末っ娘で妹が居ませんでしたから」
「……そうか」
初めて聞いた妹の思いに、那智は小さくなるのも悪くはないものだと感じていた。
恐る恐る頭に置かれた手も心地好く、背中の暖かい温もりに身体を預けて彼女は目を閉じる。
「――姉さん?……寝ちゃったんですね……」
「……すぅ……すぅ」
いつもは凛とした姿勢と態度を崩さない姉の無防備な寝顔を眺めながら、羽黒は幸せな時間を過ごすのだった。
――――寝顔、待ち受けにしちゃいました。
――――っ!? 羽黒、私は許可していないぞ。
――――……ダメ、ですか?
――――……人には見せないように頼む。
「那智姉さん、座り心地はどうですか?」
「こういうのは今までされたことが無かったが、案外落ち着くものなのだな」
那智を膝に乗せ、羽黒はそれを後ろから抱き締めていた。
何だかんだ末妹を可愛がっている那智からすれば、嬉しそうな彼女と過ごすことに不満などあるはずもない。
「いつも妙高姉さんが初風ちゃんを膝に乗せてるの、少し羨ましかったんです。私は末っ娘で妹が居ませんでしたから」
「……そうか」
初めて聞いた妹の思いに、那智は小さくなるのも悪くはないものだと感じていた。
恐る恐る頭に置かれた手も心地好く、背中の暖かい温もりに身体を預けて彼女は目を閉じる。
「――姉さん?……寝ちゃったんですね……」
「……すぅ……すぅ」
いつもは凛とした姿勢と態度を崩さない姉の無防備な寝顔を眺めながら、羽黒は幸せな時間を過ごすのだった。
――――寝顔、待ち受けにしちゃいました。
――――っ!? 羽黒、私は許可していないぞ。
――――……ダメ、ですか?
――――……人には見せないように頼む。
136: 2014/08/14(木) 15:34:24.92 ID:FSPWl56jO
・大和『手を繋いで寄り添って』、投下します
137: 2014/08/14(木) 15:34:50.86 ID:FSPWl56jO
――――鎮守府、告白の防波堤。
「風が気持ちいいですね」
「少し肌寒いがな」
季節は秋。上着を着てこなかったことを、提督は後悔する。
一方、大和はこの程度の寒さならばどうということはなく、平然としていた。
「お風邪を召されては大変ですし、大和の近くに来てください」
誘われるがまま、彼女の方に提督は歩み寄る。そして、差し出された手を握った。
「――こうしていれば、直に温かくなります」
「……あぁ、そうだな」
手を握ったまま腕に抱き着き、大和は自分の身体の温もりを提督に分け与える。
鉄と油で生まれた命とは思えないほど、その身体は優しい暖かさを持っていた。
「静か、ですね」
「ここは鎮守府の中でもかなり奥まった場所だ。好き好んで来る奴はあまり居ないさ」
「でも、この鎮守府の艦娘にとっては特別で、大切な場所ですよ?」
「……特別、か」
百数十人にここで書類と指輪を渡した時の事が脳裏を過り、提督は気恥ずかしくなって大和から視線を逸らす。
「もうっ、二人で居る時は大和から目を離さないで下さい」
「頬を膨らませて子供かお前は」
子供らしからぬ身体を押し付けながら抗議してくる彼女に向き直し、自由な方の手で頬をつつく。
予想以上にそれは柔らかく、提督は二度三度とつつき続けた。
「――提督、大和の頬は玩具じゃありません」
「すまん、つい」
「お返しです、えいっ」
「おほほのほほをひっはっへはほひいは?」
「意外に伸びますね」
「ほれひひょうはのひなひほ」
提督の頬は大和の手により縦や横に引っ張られ、その都度情けなく顔は変化する。
それから一分程して、大和はようやく飽きたのか頬から手を離した。
「満足か?」
「えぇ、面白かったです」
「お前なぁ……」
「――こんな風に下らない事が出来るのって、いいものですね」
「下らない事ばっかりな気がするがな、最近は」
「平穏な日常を生きているという気がしますから、下らない事ばかりの方が、大和は幸せです」
「……そうか」
そこで会話は一度途切れ、再び大和は提督へと寄り添い、手を握る。
そのまま日が暮れるまで、二人は穏やかな海を眺めるのだった。
――――提督、今日は一緒にお風呂に入りませんか?
――――入りませんかって風呂の方向に引っ張りながら言うなよ。
「風が気持ちいいですね」
「少し肌寒いがな」
季節は秋。上着を着てこなかったことを、提督は後悔する。
一方、大和はこの程度の寒さならばどうということはなく、平然としていた。
「お風邪を召されては大変ですし、大和の近くに来てください」
誘われるがまま、彼女の方に提督は歩み寄る。そして、差し出された手を握った。
「――こうしていれば、直に温かくなります」
「……あぁ、そうだな」
手を握ったまま腕に抱き着き、大和は自分の身体の温もりを提督に分け与える。
鉄と油で生まれた命とは思えないほど、その身体は優しい暖かさを持っていた。
「静か、ですね」
「ここは鎮守府の中でもかなり奥まった場所だ。好き好んで来る奴はあまり居ないさ」
「でも、この鎮守府の艦娘にとっては特別で、大切な場所ですよ?」
「……特別、か」
百数十人にここで書類と指輪を渡した時の事が脳裏を過り、提督は気恥ずかしくなって大和から視線を逸らす。
「もうっ、二人で居る時は大和から目を離さないで下さい」
「頬を膨らませて子供かお前は」
子供らしからぬ身体を押し付けながら抗議してくる彼女に向き直し、自由な方の手で頬をつつく。
予想以上にそれは柔らかく、提督は二度三度とつつき続けた。
「――提督、大和の頬は玩具じゃありません」
「すまん、つい」
「お返しです、えいっ」
「おほほのほほをひっはっへはほひいは?」
「意外に伸びますね」
「ほれひひょうはのひなひほ」
提督の頬は大和の手により縦や横に引っ張られ、その都度情けなく顔は変化する。
それから一分程して、大和はようやく飽きたのか頬から手を離した。
「満足か?」
「えぇ、面白かったです」
「お前なぁ……」
「――こんな風に下らない事が出来るのって、いいものですね」
「下らない事ばっかりな気がするがな、最近は」
「平穏な日常を生きているという気がしますから、下らない事ばかりの方が、大和は幸せです」
「……そうか」
そこで会話は一度途切れ、再び大和は提督へと寄り添い、手を握る。
そのまま日が暮れるまで、二人は穏やかな海を眺めるのだった。
――――提督、今日は一緒にお風呂に入りませんか?
――――入りませんかって風呂の方向に引っ張りながら言うなよ。
143: 2014/08/15(金) 15:07:40.13 ID:LGO9sdop0
――――提督執務室。
「……どうなってんだ、こりゃ」
目の前で起きている事態が上手く呑み込めず、提督は暫しその様子を眺めていた。
現在この執務室には、艦娘が七人居る。しかも、その内の三人は彼の知らない艦娘だ。
「二人とも、強くなりたいのなら精進あるのみだ」
「あぁ、分かっている。この長月、何れは駆逐艦を超越してみせよう」
「武蔵さんみたいな立派な戦艦になれるように、清霜頑張ります!」
武蔵に教えを請うている長月と、武蔵が居る気配がしたからと突然鎮守府に入ってきた清霜。
「早霜、私は今は水偵を装備していないぞ?」
「なら、早霜に下さらない?」
「そもそもお前には積めないと思うのだが……」
一週間ほど前から那智を物陰に隠れて眺めていた早霜。
「時津風、ようやく会えました!」
「雪風、元気そうだね、うんうん」
ずっと海に向かって毎日願掛けをしていた雪風の前に現れた時津風。
(どこから話を聞けばいいんだよ、これ……)
とりあえず、新規着任の書類を三枚作成するところから始めようと、提督は目の前のやり取りには無視を決め込むのだった。
――――清霜、早霜、時津風が着任しました。
「……どうなってんだ、こりゃ」
目の前で起きている事態が上手く呑み込めず、提督は暫しその様子を眺めていた。
現在この執務室には、艦娘が七人居る。しかも、その内の三人は彼の知らない艦娘だ。
「二人とも、強くなりたいのなら精進あるのみだ」
「あぁ、分かっている。この長月、何れは駆逐艦を超越してみせよう」
「武蔵さんみたいな立派な戦艦になれるように、清霜頑張ります!」
武蔵に教えを請うている長月と、武蔵が居る気配がしたからと突然鎮守府に入ってきた清霜。
「早霜、私は今は水偵を装備していないぞ?」
「なら、早霜に下さらない?」
「そもそもお前には積めないと思うのだが……」
一週間ほど前から那智を物陰に隠れて眺めていた早霜。
「時津風、ようやく会えました!」
「雪風、元気そうだね、うんうん」
ずっと海に向かって毎日願掛けをしていた雪風の前に現れた時津風。
(どこから話を聞けばいいんだよ、これ……)
とりあえず、新規着任の書類を三枚作成するところから始めようと、提督は目の前のやり取りには無視を決め込むのだった。
――――清霜、早霜、時津風が着任しました。
151: 2014/08/16(土) 20:41:46.22 ID:rhOWve2g0
・??『(小さくなりすぎです)』 、投下します
152: 2014/08/16(土) 20:42:17.57 ID:sTGZrtsbO
――――陽炎型、私室。
「俺だ、入ってもいいか?」
「司令はん? えぇでー」
「何勝手に入れようとしてんの黒潮! 私まだ着替えてるって!」
「んにゅ……しれぇ……?」
「雪風、早く起きないとパンツ見られちゃうよ?」
「こんな時間に何の用があるってんだい?」
「提督が来るなんて珍しいね、舞風と踊りたくなったとか?」
「それは無いと思います」
まだ時間が早いということもあり、大半の陽炎型が部屋には残っていた。
入って問題がありそうなのは陽炎だけのようなので、提督は中へと入る。
「邪魔するぞ」
「ちょっと司令! まだ着替えてるって言って――そのちっちゃい子、まさか不知火……?」
「ちらぬいです」
「見ての通りだ、すまんが頼む――黒潮?」
「司令はん、ちょっとこっちで話聞かせてぇな」
「コラ待て引っ張るな、断じて俺が誘った訳じゃないし俺は止めたんだぞって何だその鉄製のハリセ――」
鈍い音が部屋から出ていった二人の方から聞こえ、すぐに黒潮だけは部屋へと戻ってくる。
その事には誰も触れず、小さくなった不知火をつついたり持ち上げたりすることに全員が夢中になっていた。
「可愛くなっちゃってまぁ……」
「雪風よりちっちゃいです」
「おーすっごい軽いね」
「目付きだけはちっこくなってもまんまだねぇ」
「こどもあつかいちないでください」
「私は朝御飯作ろっかな」
「手伝います。食べやすい物にした方が良さそうですね」
「あの、ちらぬいはひとりでもだいじょうぶ……」
本人が不服そうにしているのは無視され、完全に幼児として不知火は扱われる。
黒潮にはペロペロキャンディーを貰い、雪風や時津風には頬擦りをされ、陽炎や谷風には写真を撮られ、されるがままだ。
「お子様ランチ作ってきたよー」
「食べさせた方がよいのでしょうか?」
「……ひとりでたべられます」
目の前に置かれたお子様ランチを暫し見つめてから、不知火はハンバーグを口に運ぶ。
美味しかっただけでなく、自分の為にわざわざ朝から手の込んだものを作ってくれたのが嬉しかったこともあり、彼女は微かに微笑んだ後、黙々と食べ始めるのだった。
――――その時の写真がこれや。
――――言い値で買おう。
「俺だ、入ってもいいか?」
「司令はん? えぇでー」
「何勝手に入れようとしてんの黒潮! 私まだ着替えてるって!」
「んにゅ……しれぇ……?」
「雪風、早く起きないとパンツ見られちゃうよ?」
「こんな時間に何の用があるってんだい?」
「提督が来るなんて珍しいね、舞風と踊りたくなったとか?」
「それは無いと思います」
まだ時間が早いということもあり、大半の陽炎型が部屋には残っていた。
入って問題がありそうなのは陽炎だけのようなので、提督は中へと入る。
「邪魔するぞ」
「ちょっと司令! まだ着替えてるって言って――そのちっちゃい子、まさか不知火……?」
「ちらぬいです」
「見ての通りだ、すまんが頼む――黒潮?」
「司令はん、ちょっとこっちで話聞かせてぇな」
「コラ待て引っ張るな、断じて俺が誘った訳じゃないし俺は止めたんだぞって何だその鉄製のハリセ――」
鈍い音が部屋から出ていった二人の方から聞こえ、すぐに黒潮だけは部屋へと戻ってくる。
その事には誰も触れず、小さくなった不知火をつついたり持ち上げたりすることに全員が夢中になっていた。
「可愛くなっちゃってまぁ……」
「雪風よりちっちゃいです」
「おーすっごい軽いね」
「目付きだけはちっこくなってもまんまだねぇ」
「こどもあつかいちないでください」
「私は朝御飯作ろっかな」
「手伝います。食べやすい物にした方が良さそうですね」
「あの、ちらぬいはひとりでもだいじょうぶ……」
本人が不服そうにしているのは無視され、完全に幼児として不知火は扱われる。
黒潮にはペロペロキャンディーを貰い、雪風や時津風には頬擦りをされ、陽炎や谷風には写真を撮られ、されるがままだ。
「お子様ランチ作ってきたよー」
「食べさせた方がよいのでしょうか?」
「……ひとりでたべられます」
目の前に置かれたお子様ランチを暫し見つめてから、不知火はハンバーグを口に運ぶ。
美味しかっただけでなく、自分の為にわざわざ朝から手の込んだものを作ってくれたのが嬉しかったこともあり、彼女は微かに微笑んだ後、黙々と食べ始めるのだった。
――――その時の写真がこれや。
――――言い値で買おう。
153: 2014/08/16(土) 20:48:32.89 ID:rhOWve2g0
それでは再び四つまでリクエスト受け付けます
E2とE4で苦労して更新がだいぶ遅れてましたが、E6はゆっくりやるつもりなので少しずつ速度は回復すると思います
結晶破壊作戦も遅れに遅れてますが、必ず投下するのでご容赦ください…
E2とE4で苦労して更新がだいぶ遅れてましたが、E6はゆっくりやるつもりなので少しずつ速度は回復すると思います
結晶破壊作戦も遅れに遅れてますが、必ず投下するのでご容赦ください…
160: 2014/08/16(土) 21:11:29.00 ID:sTGZrtsbO
・衣笠『記事書くの手伝って』
・夕立『風邪引いたっぽい……?』
・足柄『ダラダラする』
・睦月『長女っぽく』
以上四本でお送りします
・夕立『風邪引いたっぽい……?』
・足柄『ダラダラする』
・睦月『長女っぽく』
以上四本でお送りします
164: 2014/08/17(日) 19:12:52.66 ID:5bTQxYzxO
・衣笠『記事書くの手伝って』、投下します
165: 2014/08/17(日) 19:13:55.28 ID:5bTQxYzxO
――――提督執務室。
「提督、記事書くの手伝って!」
「自分で書け」
「明日までに書けって青葉に言われたんだけど、全然書けてないの……」
「はぁ……何の記事だよ」
「納涼怪奇特集」
「ネタは?」
「夜な夜な裏山の木々を飛び回る妖怪」
「川内だな」
「夜な夜な鎮守府の廊下に現れる長い髪の少女」
「夜中に目が覚めたら早霜が目の前に居たって那智が言ってたから、多分移動中の早霜だ」
「夜な夜なカタカタと音を立てる伊勢さんの刀」
「アレは無視しろ、完全に謎だ」
「ねぇ、どうやって書いたらいいと思う?」
「ネタからしてイマイチだ、コレ使え」
「写真?」
「青葉が撮ってお蔵入りさせたお前の写真だ」
「私の?――ひっ!?」
「良かったな、良いネタだぞ」
「この肩の手何なの!? この時は私の後ろ、誰も居なかったはずだよ!?」
「さぁな、俺もこういうのは詳しくないからよく分からん」
「て、ててて提督、今日は絶対に一緒に寝てよね」
「記事書くなら部屋戻った方がいいんじゃないか?」
「青葉は今日用事あるとかで部屋に居ないの!」
「それとこれとは関係無いだろ」
「こんなの見せられたら一人で寝るの怖いに決まってるじゃない!」
「ガキじゃあるまいし、この程度の写真でビビり過ぎだ」
「そんなこと言わずに、ね? 提督の食べたいもの何でも作ってあげるよ?」
「鯛飯と松茸の土瓶蒸しと神戸牛のサーロインステーキ」
「……そんなに私と寝たくない?」
「冗談だ。しかし、幽霊が怖いとは意外だな」
「青葉に付き合わされて廃墟に行ったり、心霊スポットに行ったりしてるうちに、段々嫌いになってきちゃったの」
「アイツは平気そうだからなぁ……」
「私が嫌いなの分かってて怪奇特集書けとか酷くない?」
「嫌いだからこそじゃないか? 書いてる人間が怖がってたら、文章にも怖さがしっかり表れると思ったんだろ」
「それはそうかもしれないけど……」
「とにかく手伝ってやるから、さっさと終わらせるぞ」
「うん、ありがとね」
「夕飯はチキンカレーな」
「了解!」
「提督、記事書くの手伝って!」
「自分で書け」
「明日までに書けって青葉に言われたんだけど、全然書けてないの……」
「はぁ……何の記事だよ」
「納涼怪奇特集」
「ネタは?」
「夜な夜な裏山の木々を飛び回る妖怪」
「川内だな」
「夜な夜な鎮守府の廊下に現れる長い髪の少女」
「夜中に目が覚めたら早霜が目の前に居たって那智が言ってたから、多分移動中の早霜だ」
「夜な夜なカタカタと音を立てる伊勢さんの刀」
「アレは無視しろ、完全に謎だ」
「ねぇ、どうやって書いたらいいと思う?」
「ネタからしてイマイチだ、コレ使え」
「写真?」
「青葉が撮ってお蔵入りさせたお前の写真だ」
「私の?――ひっ!?」
「良かったな、良いネタだぞ」
「この肩の手何なの!? この時は私の後ろ、誰も居なかったはずだよ!?」
「さぁな、俺もこういうのは詳しくないからよく分からん」
「て、ててて提督、今日は絶対に一緒に寝てよね」
「記事書くなら部屋戻った方がいいんじゃないか?」
「青葉は今日用事あるとかで部屋に居ないの!」
「それとこれとは関係無いだろ」
「こんなの見せられたら一人で寝るの怖いに決まってるじゃない!」
「ガキじゃあるまいし、この程度の写真でビビり過ぎだ」
「そんなこと言わずに、ね? 提督の食べたいもの何でも作ってあげるよ?」
「鯛飯と松茸の土瓶蒸しと神戸牛のサーロインステーキ」
「……そんなに私と寝たくない?」
「冗談だ。しかし、幽霊が怖いとは意外だな」
「青葉に付き合わされて廃墟に行ったり、心霊スポットに行ったりしてるうちに、段々嫌いになってきちゃったの」
「アイツは平気そうだからなぁ……」
「私が嫌いなの分かってて怪奇特集書けとか酷くない?」
「嫌いだからこそじゃないか? 書いてる人間が怖がってたら、文章にも怖さがしっかり表れると思ったんだろ」
「それはそうかもしれないけど……」
「とにかく手伝ってやるから、さっさと終わらせるぞ」
「うん、ありがとね」
「夕飯はチキンカレーな」
「了解!」
166: 2014/08/17(日) 19:14:48.68 ID:5bTQxYzxO
――――(絞まる……首が……氏ぬ……)
――――(提督に抱き着いてると安心安心)
――――(提督に抱き着いてると安心安心)
167: 2014/08/17(日) 19:15:22.02 ID:5bTQxYzxO
――――後日。
「アレ、合成だろ」
「あらら、バレちゃってました?」
「捏造は程々にしろよ」
「いやー本当に写ってるのはマズイかなと思いまして」
「……衣笠にコレ見せたら、卒倒するんじゃないか?」
写真はお祓いしておきました。
「アレ、合成だろ」
「あらら、バレちゃってました?」
「捏造は程々にしろよ」
「いやー本当に写ってるのはマズイかなと思いまして」
「……衣笠にコレ見せたら、卒倒するんじゃないか?」
写真はお祓いしておきました。
172: 2014/08/18(月) 14:01:31.96 ID:6C8QonZw0
――――鎮守府、廊下。
「加賀、ちょっと話があるんだけどいいか?」
「構いませんが、何でしょう」
「赤城が今朝帰ってきたんだが、土産にとんでもないものを持って帰ってきてな……」
「とんでもないもの、ですか?」
「あぁ――艦娘だ」
――――食堂。
「まずは食事でもしながら、ゆっくり話でもしましょう」
「……」
「ここの食事は美味しいですよ、貴女も好きなものを食べてください」
「……また私は、空母として戦いに参加出来なかったのね」
「戦いたかったですか?」
「その為に生まれたのよ。二度も生を受けて、二度とも戦闘に参加出来なかった私に、一体何の価値があるというの?」
「――無価値であることに、価値があるということもあるんです」
「無価値が、価値……?」
「確かに私達は今、空母としての役目を偵察程度にしか求められていません。ですが、艦娘として出来ることはいくらでもあります。兵器としては無価値であったとしても、です」
「“兵器”ではなく、“艦娘”として……」
「おまちどおさまあ」
「ありがとうございます、大鯨。やはり帰ってきたら間宮さんの和食を食べなくては」
「お代わりはまた言って下さいね」
「貴女も考え込むのは、食べた後にしてはどうですか?」
「……いただきます」
「大鯨、お代わりをお願いします」
「はい、今行きまあす」
(――親子丼、美味しい)
――――雲龍が保護されました。
「加賀、ちょっと話があるんだけどいいか?」
「構いませんが、何でしょう」
「赤城が今朝帰ってきたんだが、土産にとんでもないものを持って帰ってきてな……」
「とんでもないもの、ですか?」
「あぁ――艦娘だ」
――――食堂。
「まずは食事でもしながら、ゆっくり話でもしましょう」
「……」
「ここの食事は美味しいですよ、貴女も好きなものを食べてください」
「……また私は、空母として戦いに参加出来なかったのね」
「戦いたかったですか?」
「その為に生まれたのよ。二度も生を受けて、二度とも戦闘に参加出来なかった私に、一体何の価値があるというの?」
「――無価値であることに、価値があるということもあるんです」
「無価値が、価値……?」
「確かに私達は今、空母としての役目を偵察程度にしか求められていません。ですが、艦娘として出来ることはいくらでもあります。兵器としては無価値であったとしても、です」
「“兵器”ではなく、“艦娘”として……」
「おまちどおさまあ」
「ありがとうございます、大鯨。やはり帰ってきたら間宮さんの和食を食べなくては」
「お代わりはまた言って下さいね」
「貴女も考え込むのは、食べた後にしてはどうですか?」
「……いただきます」
「大鯨、お代わりをお願いします」
「はい、今行きまあす」
(――親子丼、美味しい)
――――雲龍が保護されました。
176: 2014/08/18(月) 19:11:45.78 ID:psw8kLxAO
・夕立『風邪引いたっぽい……?』、投下します
177: 2014/08/18(月) 19:12:18.97 ID:psw8kLxAO
――――提督執務室。
「提督さん、今日は夕立がお世話するっぽい」
「……夕立、ちょっとこっち来い」
執務室に入ってきた夕立を見るなり、提督は近くへ来るように促した。
それに素直に従い、彼女は小走りで歩み寄る。
「夕立、何かしちゃったっぽい?」
「いいからもっと近くに寄れ」
「て、提督さん? 顔ちょっと怖い……」
「――お前、熱あるだろ」
「っ……ね、熱なんて無いっぽい」
露骨に目線を逸らし後退りしようとする夕立の手を掴み、提督は強引に引き寄せる。
額と額を合わせると、かなりの高熱であることが容易に分かるほどの熱が彼へと伝わった。
「時雨達は気付かなかったのか?」
「バレる前に逃げてきちゃった」
「後でしっかり怒られろ。とりあえず、明石に薬持ってきて貰う」
「苦いのと注射は嫌っぽい」
「注射はしないが薬は飲め、苦くないやつにしてやるから」
「うー……これじゃ提督さんと遊べないっぽい……」
提督にもたれかかり頭をぐりぐりと押し付けながら、夕立は残念そうな声を出す。
その頭に手を置き、彼は優しく撫でる。
「今日は俺がずっと傍に居て看病してやるから、大人しく寝ろ」
「提督さん、お仕事は……?」
「事情を説明して加賀と吹雪に代行してもらうさ。大淀も今は居るから、一日程度なら問題ない」
「今度お礼言いに行かなきゃいけないっぽい」
「その為にも、しっかり寝て早く治せ」
「うん、じゃあベッドまで抱っこして欲しいっぽい」
実際のところ、立って歩くのも辛かったこともあり、夕立は完全に提督に身体を預けて脱力する。
少し汗ばんでいる彼女を抱き抱え、彼は自室へと移動を開始した。
「夕立、一度部屋に戻って着替えた方がいいんじゃないか?」
「今はベッドに早く寝たいっぽい……」
「そうか。なら後で誰かに寝間着出してもらうことにする」
「そうして欲しいっぽい」
――――夕立の寝間着と下着出してくれ。
――――……そういう趣味があったとは知らなかったよ。
――――違う、断じて違う!
「提督さん、今日は夕立がお世話するっぽい」
「……夕立、ちょっとこっち来い」
執務室に入ってきた夕立を見るなり、提督は近くへ来るように促した。
それに素直に従い、彼女は小走りで歩み寄る。
「夕立、何かしちゃったっぽい?」
「いいからもっと近くに寄れ」
「て、提督さん? 顔ちょっと怖い……」
「――お前、熱あるだろ」
「っ……ね、熱なんて無いっぽい」
露骨に目線を逸らし後退りしようとする夕立の手を掴み、提督は強引に引き寄せる。
額と額を合わせると、かなりの高熱であることが容易に分かるほどの熱が彼へと伝わった。
「時雨達は気付かなかったのか?」
「バレる前に逃げてきちゃった」
「後でしっかり怒られろ。とりあえず、明石に薬持ってきて貰う」
「苦いのと注射は嫌っぽい」
「注射はしないが薬は飲め、苦くないやつにしてやるから」
「うー……これじゃ提督さんと遊べないっぽい……」
提督にもたれかかり頭をぐりぐりと押し付けながら、夕立は残念そうな声を出す。
その頭に手を置き、彼は優しく撫でる。
「今日は俺がずっと傍に居て看病してやるから、大人しく寝ろ」
「提督さん、お仕事は……?」
「事情を説明して加賀と吹雪に代行してもらうさ。大淀も今は居るから、一日程度なら問題ない」
「今度お礼言いに行かなきゃいけないっぽい」
「その為にも、しっかり寝て早く治せ」
「うん、じゃあベッドまで抱っこして欲しいっぽい」
実際のところ、立って歩くのも辛かったこともあり、夕立は完全に提督に身体を預けて脱力する。
少し汗ばんでいる彼女を抱き抱え、彼は自室へと移動を開始した。
「夕立、一度部屋に戻って着替えた方がいいんじゃないか?」
「今はベッドに早く寝たいっぽい……」
「そうか。なら後で誰かに寝間着出してもらうことにする」
「そうして欲しいっぽい」
――――夕立の寝間着と下着出してくれ。
――――……そういう趣味があったとは知らなかったよ。
――――違う、断じて違う!
178: 2014/08/18(月) 19:12:46.20 ID:psw8kLxAO
――――後日。
「提督さん、夕立の服と下着欲しいっぽい?」
「欲しいなんて一言も言ってないぞ、俺は」
「着れなくなった小さいのならいいよ?」
「頼む、貰ったら本当に誤解を生みかねんからやめてくれ……」
「提督さん、夕立の服と下着欲しいっぽい?」
「欲しいなんて一言も言ってないぞ、俺は」
「着れなくなった小さいのならいいよ?」
「頼む、貰ったら本当に誤解を生みかねんからやめてくれ……」
186: 2014/08/18(月) 22:42:30.78 ID:Fwz+UE4lO
――――提督執務室。
「どないしたんよ、急に呼び出したりなんかして」
「自分が一番良く分かってるんじゃないのか?」
「な、何の事かさっぱり分からんで?」
「無断で彩雲、持ち出しただろ」
「あちゃー……やっぱバレてたんか」
「夕張からしっかり報告があったよ、艦載機が足りないってな」
「バレてたらしゃーないなぁ。で、うちはどんな罰受けたらえぇの?」
「そうだな……無断で持ち出した理由を青葉に記事にしてもらうってのはどうだ?」
「っ!? ちょ、ちょっと待ってぇな! キミ、理由知ってんの!?」
「加賀も知ってるぞ。良かったな、理由が理由だから今回はお咎め無しだそうだ」
「あかん、あかんって! そんなん記事にされたら恥ずかしくて鎮守府の中歩かれへんやんか!」
「無断で鎮守府外に持ち出したのをその程度で許してやろうってんだ、有り難く聞き入れたらどうだ?」
「……キミは怒ってへんの?」
「怒ってるぞ、何でその時にちゃんと言わなかった。わざわざこそこそ持ち出さなくても協力してやるに決まってんだろ」
「……次からはそうするわ」
「じゃあ話は以上だ。明日の記事楽しみにしとけ」
「明日から暫く部屋から出んようにするわ」
「――明日、秘書艦日だぞ?」
「あっ……あぁぁぁぁぁぁっ!?」
――“龍驤、母親の形見を無くしたと泣く子供の為に無断で艦載機を持ち出し捜索!”
――“少年からは感謝の手紙が鎮守府に寄せられ、司令官と加賀さんもこの一件による彼女への処分は見送った模様”
――――何で今日に限って鎮守府の見回りなんかするんよ!
――――会う奴全員から優しくされて嬉しくないのか?
――――恥ずかしくって氏にそうやっちゅうねん!
「どないしたんよ、急に呼び出したりなんかして」
「自分が一番良く分かってるんじゃないのか?」
「な、何の事かさっぱり分からんで?」
「無断で彩雲、持ち出しただろ」
「あちゃー……やっぱバレてたんか」
「夕張からしっかり報告があったよ、艦載機が足りないってな」
「バレてたらしゃーないなぁ。で、うちはどんな罰受けたらえぇの?」
「そうだな……無断で持ち出した理由を青葉に記事にしてもらうってのはどうだ?」
「っ!? ちょ、ちょっと待ってぇな! キミ、理由知ってんの!?」
「加賀も知ってるぞ。良かったな、理由が理由だから今回はお咎め無しだそうだ」
「あかん、あかんって! そんなん記事にされたら恥ずかしくて鎮守府の中歩かれへんやんか!」
「無断で鎮守府外に持ち出したのをその程度で許してやろうってんだ、有り難く聞き入れたらどうだ?」
「……キミは怒ってへんの?」
「怒ってるぞ、何でその時にちゃんと言わなかった。わざわざこそこそ持ち出さなくても協力してやるに決まってんだろ」
「……次からはそうするわ」
「じゃあ話は以上だ。明日の記事楽しみにしとけ」
「明日から暫く部屋から出んようにするわ」
「――明日、秘書艦日だぞ?」
「あっ……あぁぁぁぁぁぁっ!?」
――“龍驤、母親の形見を無くしたと泣く子供の為に無断で艦載機を持ち出し捜索!”
――“少年からは感謝の手紙が鎮守府に寄せられ、司令官と加賀さんもこの一件による彼女への処分は見送った模様”
――――何で今日に限って鎮守府の見回りなんかするんよ!
――――会う奴全員から優しくされて嬉しくないのか?
――――恥ずかしくって氏にそうやっちゅうねん!
189: 2014/08/20(水) 00:10:08.71 ID:LelD/lJT0
・足柄『ダラダラする』、投下します
190: 2014/08/20(水) 00:11:09.29 ID:LelD/lJT0
――――休憩スペース。
「――足柄、何してるの?」
「昼寝してたら、最近ちょっとだらけ過ぎだって妙高姉さんに部屋を追い出されちゃった」
「それでここでトランプして遊んでるのね……」
戦時中とは雰囲気がガラリと変わった足柄。
牙の抜け落ちた獣のように、日がな一日ダラダラと過ごすことがほとんどだ。
「大鳳さんもやる?」
「いいの?」
「あの、お忙しくなければ一緒にしたいです」
「そう、じゃあ私も混ぜて貰うわね」
深雪と磯波に誘われ、大鳳も腰を下ろして参加する。
それに合わせて、カードをシャッフルしていた足柄が口を開いた。
「四人になったし、次はどうしましょうか?」
「ポーカー、とか?」
「深雪はルール知ってるからそれでいいぜ」
「私も大丈夫よ」
「じゃあポーカーね。賭ける物もないし、チェンジは一回までで勝負しましょ」
ルールも決まり、足柄はカードを五枚ずつ配っていく。
以前ならばここで絶対に揃わなかったであろう艦娘が居るが、その心配は既に無い。
――――勝負!
「――足柄、何してるの?」
「昼寝してたら、最近ちょっとだらけ過ぎだって妙高姉さんに部屋を追い出されちゃった」
「それでここでトランプして遊んでるのね……」
戦時中とは雰囲気がガラリと変わった足柄。
牙の抜け落ちた獣のように、日がな一日ダラダラと過ごすことがほとんどだ。
「大鳳さんもやる?」
「いいの?」
「あの、お忙しくなければ一緒にしたいです」
「そう、じゃあ私も混ぜて貰うわね」
深雪と磯波に誘われ、大鳳も腰を下ろして参加する。
それに合わせて、カードをシャッフルしていた足柄が口を開いた。
「四人になったし、次はどうしましょうか?」
「ポーカー、とか?」
「深雪はルール知ってるからそれでいいぜ」
「私も大丈夫よ」
「じゃあポーカーね。賭ける物もないし、チェンジは一回までで勝負しましょ」
ルールも決まり、足柄はカードを五枚ずつ配っていく。
以前ならばここで絶対に揃わなかったであろう艦娘が居るが、その心配は既に無い。
――――勝負!
191: 2014/08/20(水) 00:11:44.76 ID:LelD/lJT0
――三十分後。
「フルハウス、また私の勝ちね」
「ちくしょー! また負けた!」
「足柄さん、カードゲーム強いんですね」
「勝負ならやっぱり勝ちたいじゃない?」
「……」
十戦やって、足柄が七勝、磯波が二勝、深雪が一勝、大鳳は全敗という結果だ。
エースのワンペアを彼女が揃えられただけで大きな進歩だが、勝つにはまだまだ運が足りなかった
「さて、もう一戦――」
「足柄さん、雪風もやりたいです!」
「僕も混ざろうかな」
「楽しそうですね、榛名もご一緒させて頂いてもいいでしょうか?」
「えっ」
「足柄、頑張ってね。私はそろそろ部屋に戻るわ」
「深雪もそろそろ白雪と町内清掃に行ってくるよ」
「ハーブの様子見に戻らないと……」
「いいわ、やってやるわよ。三人ともかかって来なさい!」
――――フォーカードだよ。
――――榛名もフォーカードです。
――――雪風も同じ数字が四つです!
――――に゛ゃー! また負けたー!
「フルハウス、また私の勝ちね」
「ちくしょー! また負けた!」
「足柄さん、カードゲーム強いんですね」
「勝負ならやっぱり勝ちたいじゃない?」
「……」
十戦やって、足柄が七勝、磯波が二勝、深雪が一勝、大鳳は全敗という結果だ。
エースのワンペアを彼女が揃えられただけで大きな進歩だが、勝つにはまだまだ運が足りなかった
「さて、もう一戦――」
「足柄さん、雪風もやりたいです!」
「僕も混ざろうかな」
「楽しそうですね、榛名もご一緒させて頂いてもいいでしょうか?」
「えっ」
「足柄、頑張ってね。私はそろそろ部屋に戻るわ」
「深雪もそろそろ白雪と町内清掃に行ってくるよ」
「ハーブの様子見に戻らないと……」
「いいわ、やってやるわよ。三人ともかかって来なさい!」
――――フォーカードだよ。
――――榛名もフォーカードです。
――――雪風も同じ数字が四つです!
――――に゛ゃー! また負けたー!
197: 2014/08/20(水) 20:45:08.75 ID:LelD/lJT0
・睦月『長女っぽく』、投下します
198: 2014/08/20(水) 20:45:58.74 ID:LelD/lJT0
――――提督執務室。
「――睦月、ここ字が間違ってるぞ」
「おりょ? あっ、ホントだ」
「侍機って、侍のロボットでも夕張に作ってもらうつもりか?……アイツなら嬉々として作り始めそうだな」
「他は間違ってないかにゃ?」
「あぁ、他は大丈夫だ。それじゃあキリもいいし、ちょっと休憩にするか」
「了解でーす」
椅子から立ち上がって敬礼し、お茶を淹れに行く睦月。
口調は相変わらずだが、執務を積極的に手伝い、秘書艦としてしっかりと務めを果たしていた。
「はい、どうぞなのね」
「茶淹れるのも上手くなったもんだ。最初の茶葉だらけの茶が懐かしいな」
「アレはちょっと手が滑っちゃったの!」
「そういうことにしといてやるよ」
隣に座って片手で叩いて抗議してくる睦月の頭を撫でながら、提督は茶に口を付ける。
暫く撫でている間に抗議も止み、代わりに彼女の頭が彼の肩へと預けられた。
「――なぁ睦月、無理して執務手伝わなくていいんだぞ?」
「どういうことかにゃ?」
「如月や三日月、菊月だって毎回執務を手伝ってる訳じゃない。他の睦月型に関して言えば、基本的に昼寝か遊びに付き合わされるのがほとんどだ。お前も別にしたいことややりたいことを、言っていいんだぞ?」
どちらかと言えば、睦月は遊ぼうと誘うことの多かった艦娘だ。
それが終戦して以降、秘書艦日には必ず真面目に執務を手伝っているのが、提督には少し気がかりとなっていた。
「睦月はやりたいことやってるよ? 提督のお手伝いは大事なことだし、何てったって睦月は長女なのね!」
「……無理はしてない、そう思ってていいのか?」
「お手伝いの合間に頭撫でてくれたり、ギュッてしてくれたら、睦月はそれだけで頑張れちゃうよ」
「偉いな、睦月は」
「もっと誉めても良いのだぞー?」
「調子に乗るのは誤字脱字を無くしてからにしろ」
「わわわっ! 睦月の髪グシャグシャにしちゃダーメー!」
――――(疲れて寝る姿は、まだまだ子供なんだがな)
――――「ふみゅ……睦月をもっともっと誉めてー……」
「――睦月、ここ字が間違ってるぞ」
「おりょ? あっ、ホントだ」
「侍機って、侍のロボットでも夕張に作ってもらうつもりか?……アイツなら嬉々として作り始めそうだな」
「他は間違ってないかにゃ?」
「あぁ、他は大丈夫だ。それじゃあキリもいいし、ちょっと休憩にするか」
「了解でーす」
椅子から立ち上がって敬礼し、お茶を淹れに行く睦月。
口調は相変わらずだが、執務を積極的に手伝い、秘書艦としてしっかりと務めを果たしていた。
「はい、どうぞなのね」
「茶淹れるのも上手くなったもんだ。最初の茶葉だらけの茶が懐かしいな」
「アレはちょっと手が滑っちゃったの!」
「そういうことにしといてやるよ」
隣に座って片手で叩いて抗議してくる睦月の頭を撫でながら、提督は茶に口を付ける。
暫く撫でている間に抗議も止み、代わりに彼女の頭が彼の肩へと預けられた。
「――なぁ睦月、無理して執務手伝わなくていいんだぞ?」
「どういうことかにゃ?」
「如月や三日月、菊月だって毎回執務を手伝ってる訳じゃない。他の睦月型に関して言えば、基本的に昼寝か遊びに付き合わされるのがほとんどだ。お前も別にしたいことややりたいことを、言っていいんだぞ?」
どちらかと言えば、睦月は遊ぼうと誘うことの多かった艦娘だ。
それが終戦して以降、秘書艦日には必ず真面目に執務を手伝っているのが、提督には少し気がかりとなっていた。
「睦月はやりたいことやってるよ? 提督のお手伝いは大事なことだし、何てったって睦月は長女なのね!」
「……無理はしてない、そう思ってていいのか?」
「お手伝いの合間に頭撫でてくれたり、ギュッてしてくれたら、睦月はそれだけで頑張れちゃうよ」
「偉いな、睦月は」
「もっと誉めても良いのだぞー?」
「調子に乗るのは誤字脱字を無くしてからにしろ」
「わわわっ! 睦月の髪グシャグシャにしちゃダーメー!」
――――(疲れて寝る姿は、まだまだ子供なんだがな)
――――「ふみゅ……睦月をもっともっと誉めてー……」
199: 2014/08/20(水) 20:53:25.36 ID:LelD/lJT0
次のリクエストは明日21日0時、3時、6時、9時、12時に一番早く書き込まれたものを受け付けます
フライングは今回は無効にします
フライングは今回は無効にします
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります