220: 2014/08/21(木) 12:21:25.23 ID:Bkt6dddI0


前回はこちら

・第六駆逐隊『司令官とキャンプ』

・名取『夏は大変……』

・雲龍『私も艦載機が欲しい』

・武蔵『暑い』

・瑞鶴『不貞腐れるぞー』

以上五本でお送りします

227: 2014/08/21(木) 22:03:27.76 ID:Bkt6dddI0
・第六駆逐隊『司令官とキャンプ』、投下します

228: 2014/08/21(木) 22:03:58.29 ID:Bkt6dddI0
――――キャンプ場。

「司令官、ここにテントを張ればいいですか?」

「そうだな、いいんじゃないか?」

「暁がしっかり指示を出すからちゃんと動くのよ?」

「暁、そこに居られるとテントを張れないんだが」

「あっごめん……」

「司令官、ここはこんな感じでいいの?」

「あぁ、それで合ってる」

「暁、ちょっとこっち手伝って欲しいのです」

「分かったわ、そこを支えればいいのね」

「指切らないように気を付け――」

「司令官! 暁が指を切ったのです!」

「はぁ……ヴェールヌイ、消毒して絆創膏貼ってやれ」

「了解」

 ――二十分後。

「完成したのです!」

「雷様の手にかかればこんなの簡単よ」

「きょ、今日は妹達にやらせてあげただけなんだから!」

「絆創膏を徳用箱で持ってきて正解だったよ」

「夕飯はどうするつもりなんだ?」

「カレーにしようと思ってるわ」

「カレーで大丈夫なのか?」

「暁も食べられる様に工夫して作るのです」

「牛乳も明石さん特製保冷ボックスに入れてきたから、多少辛くても問題ないはずだよ」

「辛いのはもう克服したから、そんなに心配しなくても大丈夫だし」
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録
229: 2014/08/21(木) 22:04:31.20 ID:Bkt6dddI0
――――カレー、調理中。

「具はシンプルが一番なのです」

「野菜は大きめに切るわね」

「司令官、らっきょうか福神漬け、どっちがいい?」

「福神漬けで頼む」

「ご飯はちゃんと暁が見張ってるから大丈夫よ」

「ルーだけで食う様な事態は勘弁だぞ」

 ――1時間後。

「美味しく出来たのです」

「雷が作ったんだから当然よ、司令官に不味いカレー作るわけないじゃない」

「良い香りだ、食欲を掻き立てられる」

「ご飯もしっかり炊けたわ」

「じゃあ早速食うか」

「「「「「いただきます」」」」」

「――うん、こういう場所で食うカレーはまた格別に美味いな」

「じゃがいも美味しいのです」

「司令官、お代わりが欲しくなったら私に言ってね?」

「ハラショー、コレなら何杯でも食べられそうだ」

「ひびき、ぎゅーにゅーどこ?」

230: 2014/08/21(木) 22:05:03.94 ID:Bkt6dddI0
――――就寝。

「……コレは無理が無いか?」

「司令官、為せばなるなのです」

「もーっと私にくっついてもいいのよ?」

「諦めが肝心だよ、司令官」

「むにゃ……暁は一人前……なんだから……」

「俺の腕枕で全員寝るって、絶対暑いだろ」

「ちょっと暑いですけど、一番寝心地が良いのです」

「司令官も私達と一緒だと寝やすいわよね?」

「司令官の腕枕は、とてもいいものだ」

「お姉ちゃんを……もっと、頼り……すぅ……」

「俺が寝返り打って頭打っても知らんからな……お休み」

「お休みなさいなのです」

「お休みなさい、司令官」

「お休み」

「カレー……辛いよぉ……」




――――はわわっ!? 電は桃じゃないのです!

 ――――司令官、食べたいなら雷も食べていいのよ?

――――雷、流石にそれはどうかと思う……。

 ――――んぅ……もも……? あかつきもたべる……。

――――暁まで電をかじっちゃダメなのですー!?

236: 2014/08/22(金) 20:56:36.71 ID:ip8r6svj0
――――提督執務室。

「――工廠へ来い? 何かあったのか?」

『あの、実は建造担当の妖精さんが仕事があまりに無さ過ぎて、半ば自棄で残ってた資材を相当使って建造しちゃったみたいなの……』

「また艦娘が増えたってことか……まぁいい、とりあえず行くから待ってろ」

『なるべく早くお願いしますね』

――――工廠。

「それで、その艦娘はどこだ?」

「あそこの人だかりの中」

「……何か中から手が助けを求めてるぞ」

「あの面子から救出はちょっと私には荷が重いです」

「はぁ……止めてくる。――おいお前等、ちょっと離れろ」

「む? 提督か、建造妖精も良い仕事をしてくれたものだな」

「テートクゥ、感動の再会に水を差すのはnonsenseネー」

「雪風、嬉しそうね」

「再会を心待ちにしていましたから」

「感動の再会はいいんだが、そろそろ解放してやらんと泡吹くんじゃないか?」

「ゆき、かぜ……くるし……」

「いぞがぜぇ、あいだがっだでずぅ……」

「私は、大丈夫だ……だから……離せ……」

(こりゃ話を聞くどころじゃなさそうだな……)

「いぞがぜぇ……」

「いい加減に、しろ! 私をもう一度処分するつもりか!……ここにちゃんと私は居るぞ、だから泣き止め」

「……はい!」




――――磯風が着任しました。

242: 2014/08/23(土) 15:38:35.99 ID:gCOYIIMW0
――――長良型、私室。

「五十鈴姉さん、ベビーパウダーある?」

「あるわよ、はい」

「ありがと姉さん」

「夏は嫌になるわね、蒸れて仕方がないわ」

「去年は汗疹になっちゃった……」

「しっかり対策しておかないとダメよ、明日秘書艦日でしょ?」

「ふぇっ!? そ、それとコレとは関係無いよ?」

「あら、私に隠し事出来ると思ってるの?」

「うぅ……恥ずかしいからそういうのやめてよぉ……」

「提督と良い関係を築けてるならいいじゃない。何も恥ずかしがる必要は無いわ」

「い、五十鈴姉さんみたいに堂々とするのは私には無理だもん」

「よくそれで夜戦に自分から誘えたものね」

「そ、それは、その……提督さんなら優しくしてくれると思ったから……」

「あら、本当に名取から誘ってたの?」

「あっ――五十鈴姉さんの意地悪!」

「ごめんなさい、少しからかい過ぎたわね。ほら、ベビーパウダー塗ってあげるからこっち向きなさい」

「……うん」

「明日は他の事は気にせず、しっかり甘えてくるといいわ」

「うん、ありがとう、五十鈴姉さん」

243: 2014/08/23(土) 15:39:15.01 ID:gCOYIIMW0
――――翌日、提督執務室。

「て、提督さん」

「何だ?」

「クーラーの温度、下げてもいいですか……?」

「悪い、冷えないようにと思ってたんだが上げすぎてたか。好きに下げていいぞ」

「じゃあ、下げますね」

(――かなり下げたな、冷えすぎないといいんだが……)

「あ、あの……」

「今度はどうした?」

「少しだけ休憩、しませんか?」

「そうだな……この調子なら多少休んでも夕方までには終わるし、そうするか」

「あっ、あの!」

「何だ?」

「……隣座っても、いいですか?」

(なるほど、それで下げたかった訳か……)

「別に許可取らなくてもいいから、好きにしろ」

「じゃ、じゃあ座ります」

「――かなり遠慮はしなくなったな」

「やっぱり、迷惑ですか……?」

「いや、前にも言ったが俺としては嬉しいぞ」

「……だったら、もう少しお願いしても、いいですか?」




――――名取が帰って来てから凄く幸せそうだったけど、何かあったの?

 ――――俺に一日抱き着いてた。

245: 2014/08/23(土) 21:46:54.25 ID:gCOYIIMW0
――――長良型、私室。

「長良姉さん、洗濯物コレで全部?」

「うん、それだけだよ」

「五十鈴姉さんは?」

「じゃあ一緒にコレとコレもお願いするわ」

「うん、分かった」

「名取、私のブラ、どこ?」

「由良のならそこの引き出しに入ってるよ」

「名取姉さん私のジャージはー?」

「脱ぎっぱなしだったから洗って外に干してる」

「阿武隈の名入りTシャツ知らない?」

「そこの三段目」

(夏は洗濯物多くなるから大変だなぁ……)

251: 2014/08/24(日) 11:45:14.63 ID:AIKNAFii0
・雲龍『私も艦載機が欲しい』、投下します

252: 2014/08/24(日) 11:45:44.04 ID:AIKNAFii0
――――工廠。

「雲龍、何してるんだ?」

「艦載機を見ているの」

「演習用の奴なら許可出してやるから、演習場で飛ばしていいぞ」

「……他の空母達は、自分の艦載機を持っているのね」

「お前も欲しいのか?」

「くれるというの?」

「一機や二機程度開発するなら問題ない、文句を言われることもないだろうからな」

「そう、ではお願いするわ」

「何か希望はあ――」

「九九艦爆が可愛いからオススメよ」

「烈風と流星なんてどうかしら?」

「天山も良いと思うんです」

「お前等、どっから湧いた……」

「瑞鳳、九九艦爆はどこがいいの?」

「何より脚が可愛いのよ!」

「大鳳、烈風と流星は?」

「とても優秀な子達ね」

「龍鳳……ではないわね。大鯨、天山はどこがいいの?」

「天山も可愛いですよ」

「そう……提督、烈風と流星をお願いするわ」

「分かった、一緒についてこい。夕張が仲介やってるから、まずはアイツに話しに行くぞ」

「九九艦爆の脚、可愛いのに……」

「天山も可愛いんです……」

(烈風と流星はカッコいいって言わなくて良かったわ……)

253: 2014/08/24(日) 11:46:13.70 ID:AIKNAFii0
――――二時間後。

「コレが烈風と、流星?」

「片方は間違いなく烈風は烈風だけど、ちょっと妖精さんが特殊かも。こっちは流星じゃなくて天山で、同じく妖精さんが少し特殊ね」

「失敗……って訳でも無さそうだな」

「むしろ大成功なんじゃないかしら。妖精さんが親指立てて良い仕事したーって感じだったし」

「私の、私だけの艦載機……」

「良かったな、雲龍」

「演習場、使わせてもらっていい?」

「大鳳辺り捕まえて一緒に使え、良い演習になるだろ」

「そうするわ」

254: 2014/08/24(日) 11:46:45.06 ID:AIKNAFii0
――――翌日。

「今日も演習場を使いたいのだけど」

「昨日大鳳がクタクタになるまで付き合わせたんだろ? 今日は休め」

「使いたいのだけど」

「いや、だから休めと――」

「使いたいのだけど」

「人の話を――」

「使いたいのだけど」

「お前は壊れたテープレコーダーか何かか? あぁもう分かった分かった、瑞鳳か瑞鶴辺りに頼んでやるから」

「そう、お願いするわ」

「まぁ気持ちは分からんでもないが、程々にな」

「大丈夫、明日からは違うこともしてみようと思うから」

「そうか、何かしたいことがあれば遠慮なく言え。出来る範囲で協力する」

「……なら、今度少し話をしましょう。色々と聞きたいこともあるの」

「あぁ、いいぞ」




――――ケッコンカッコカリって、何?

 ――――書類と指輪で提督と艦娘の絆を強める儀式、らしい。

――――ふーん……。

258: 2014/08/25(月) 19:32:36.02 ID:+3nciwOE0
・武蔵『暑い』、投下します

259: 2014/08/25(月) 19:33:43.61 ID:+3nciwOE0
――――提督執務室。

「提督よ、クーラーをもう少し強くしてくれ」

「上サラシ一枚で何言ってやがる、風邪引くぞ」

「大和型二番艦を舐めてもらっては困るな、この程度で風邪を引くような軟弱な鍛え方はしていない」

「鍛えてんなら暑さも我慢しろ」

「暑いものは暑い、我慢は身体に毒だぞ」

「お前なぁ……」

「ふむ、下げないというなら仕方無い」

「おい、何下まで脱いでんだ」

「暑いと言っているだろう。それに、下は水着だ」

「そういう問題じゃねぇよ」

「潜水艦達は水着が制服だ、私が水着でどこに問題がある」

「武蔵、お前終戦してから性格変わってないか?」

「元々私はこういう性格だ、単に提督が見抜けていなかっただけに過ぎん」

「……よくよく考えたら、大和と二人で前から色々暇潰しと称してやらかしてくれたし、今更だったな」

「提督よ、今私の事を馬鹿にしなかったか?」

「下水着、上サラシで凄まれてもなぁ……」

「ほぅ、良い度胸だな。少し大和型の凄さというものを改めてその身に刻んでやる」

「――この間宮特製のカステラは、いらないってことだな?」

「物でこの武蔵が釣れると思うと思うなよ」

「そうか、なら一人で食――っ!?」

「どうだ? 凄いだろう?」

(息が……息が出来ん……)

「趣味趣向は人それぞれだが、コレが嫌いというわけでもあるまい?」

(嫌いじゃない。嫌いじゃないが、氏ぬ!)

「人を馬鹿にした報いだ、限界まで埋もれていろ」

(離れろコラ! 暑いんじゃなかったのかよ!?)

「――そろそろ限界か」

「ぶはっ!? 頃す気かお前は!」

「安心しろ、これでも提督のことは慕っている」

「お前の愛情表現はイチイチ心臓に悪いんだよ」

「慕う女の気持ちぐらい、ドンと構えて受け止めんか」

「お前にドンと来られたら吹き飛ばされる」

「――コレなら、文句はないな?」

「……身長差が恨めしくなるな、本当に」

「その台詞は私が言いたいさ」



――――……提督よ。

 ――――何だ?

――――抱き合っていると、暑いな。

 ――――氷でも抱いてろ!

261: 2014/08/26(火) 21:58:06.62 ID:CeNTQHUJ0
・瑞鶴『不貞腐れるぞー』、投下します

262: 2014/08/26(火) 22:02:07.43 ID:CeNTQHUJ0
――――提督執務室。

「――提督さん」

「何だ?」

「もう夕方なんだけど」

「そうだな」

「まだ書類終わらない?」

「ちょっと今日は俺が処理しないといけないのが多いんだ」

「そっか……」

「すまん。退屈なら少し暇を潰してきてもいいぞ?」

「嫌、ここに居る」

「そうか、だったら熱い茶くれないか?」

「むぅ……今は淹れてあげない」

(かなりご機嫌斜めだな、後で埋め合わせしないといかんか……)

「じゃあ終わったら頼む」

「早く終わらせないと淹れたげなーい」

「分かった、なるべく早く終わらせる」

 ――三十分後。

「まだー?」

「――よし、終了だ」

「うん、じゃあお茶淹れたげるね」

「あぁ、頼む」

(久しぶりに書類と丸半日付き合ってたのか、流石に疲れたな……いかん、少し眠気が……)

「提督さん。はい、お茶――提督さん?」

「……」

「おーい、提督さーん」

「――ん?」

「寝てた?」

「いや……すまん、寝かけてた」

「へー、眠いの?」

「少しな」

「そっか、じゃあ私がスッキリさせたげるね」

「おい、何を――あっつぅぅぅぅっ!?」

「どう? 目、覚めた?」

「しっかり目は覚めたぞ、着替えなきゃいけなくなったがな……」

「早く着替えて構ってね?」

「瑞鶴、もう少しやり方無かったのか?」

「何、文句あるの? 提督さんが悪いんじゃん」

「はぁ……着替えたら何でも聞いてやるから、ちょっとあっち向いて待ってろ」

「言ったね? ちゃんと約束守ってよ?」

「いいからあっち向け!」

「はーい」

263: 2014/08/26(火) 22:03:18.49 ID:CeNTQHUJ0
――――お前は俺がどうなってもいいんだな?

 ――――大袈裟だって、これぐらいちょっとした罰ゲームじゃない。

――――加賀に“五航戦の方が優秀”って言うのが罰ゲームって、どんだけ重い罰ゲームだよ……。

264: 2014/08/26(火) 22:08:02.79 ID:CeNTQHUJ0
次のリクエストは先着で4つ受け付けます


270: 2014/08/26(火) 22:29:14.37 ID:CeNTQHUJ0
・時津風『叩くよ!』

・赤城『クラゲ料理というものがあるそうですね』

・春雨『ボケかツッコミか?』

・摩耶『粗暴な言葉を禁止された』

以上四本でお送りします

277: 2014/08/27(水) 21:12:52.39 ID:CpkI7t4n0
・時津風『叩くよ!』、投下します

278: 2014/08/27(水) 21:13:24.80 ID:CpkI7t4n0
――――提督執務室。

「すまん、この書類を――」

「待って、それ以上近付いたら叩くよ!」

「……俺、お前に何かしたか?」

「黒潮が司令に近付いたら食べられるって言ってたから」

(犯人は黒潮か……)

「安心しろ、何もしない」

「でも、電が二回司令にかじられたって言ってたよ?」

「あー……いや、アレは寝ぼけてただけでだな」

「ほら、やっぱり食べようとしたんでしょ! これからは雪風にも近付いちゃダメだかんね!」

「無茶言うな。どうしてもってんなら雪風に話聞いてみろ、すぐに誤解だって分かるはずだ」

「むむむ、じゃあ聞いてくる」

 ――三十分後。

「しれぇは優しい良い人だってものすっごく笑顔で言われた」

「誤解は解けたようだな」

「うん、じゃあさじゃあさ、お昼御飯作って」

「どうしてそうなる」

「作れるって聞いたし」

「間宮のところに一緒に行けばいいだろ」

「えー作ってよーしれー」

「コラ、腕を叩くな、書類が書けん。叩くなら肩にしろ」

「肩叩きしたら作ってくれんの?」

「……和食限定な」

「カレー!」

「和食……? まぁ、カレーなら作れるからいいぞ」

「玉葱いっぱい入れてね、辛さはちょっと控え目がいいかなー」

「了解、じゃあキリも良いし今から作る」

「はーい」

「――雪風、最近いつも嬉しそうだな」

「そだね、磯風も来たし」

「寝る時、部屋狭いだろ」

「んーでも皆一緒だと雪風が喜ぶから、たまに天津風と浦風も部屋に来てすっごいギュウギュウ詰めになっちゃうけど……」

「全員揃ったら誰かの上に誰かが乗らんと寝れんな」

「それはやだ」




――――ごちそうさまー!

 ――――口の周りに付いてんぞ。

――――ん? どこどこ?

 ――――コラ、袖が汚れる。拭いてやるから待て。

281: 2014/08/27(水) 23:20:30.17 ID:CpkI7t4n0
 ――PUKAPUKA丸。

「五十鈴、初霜、お前達も前線に出て良かったんだぞ?」

「バカね、貴方は私達の指揮官なのよ? 誰かが護衛しなきゃいけないに決まってるじゃない」

「砲撃からは私が守ります」

「潜水艦と艦載機は任せなさい。提督を指揮だけに専念させてあげるわ」

 PUKAPUKA丸の護衛として、五十鈴と初霜の二人は提督と話をしつつ、周囲を常に警戒しながら待機する。
 初霜だけでなく五十鈴も、潜水艦と艦載機に対する対処の素早さと的確さという点において、実に頼もしい。

『なぁ大将、護衛は二隻だけで大丈夫なのかい?』

「俺は大佐だって言ってるだろ。それと、二隻だけじゃない、二隻もだ」

『ははは、冗談だって大将。その子達の強さは、俺もうちのも重々承知してるって』

 とても気軽な口調での通信。以前から交流があり、資源や装備の援助を行った事もある後輩提督からのものだ。
 彼が提督を“大将”と呼んでいるのは、先輩への敬意を表しているのであって、階級についてではない。

「それで、そっちはどうなんだ?」

『主力しか連れてきてないし、全員何かあったら即離脱しろって命令してある。ついでに、なるべく大将の艦隊にくっついてろってね』

「……流石に今回はこっちも助ける余裕があるか分からんぞ?」

『迷惑をかけるつもりは無いさ。うちの奴等も今じゃ一人前だし、足手まといには絶対にならない』

 後輩提督の主力は潜水艦娘であり、今この場にいる五十鈴がよく演習の相手をして鍛えていた者達だ。
 提督も念の為に確認しただけで、その実力を疑っていた訳ではない。

「無理だけは、させるな」

『沈めたら腹かっ捌いて自害する覚悟でいつも居ますから、大丈夫です』

「それだけはやめろ、残った奴等が泣くぞ」

『嫌なら生きて帰って来ますって』

「はぁ……お前のところの艦娘は苦労させられてそうだな」

「提督にだけは言って欲しくないわ」

「同感です」

 横からの突っ込みを咳払いで誤魔化し、提督は通信を強制的に切る。
 話を無理矢理終わらせる為、そして、開戦が近い事を察知したからだ。




 ――“作戦行動、開始せよ!”

282: 2014/08/27(水) 23:21:05.52 ID:CpkI7t4n0
 ――第一艦隊。

「長門さんが前方で盾になってくれてます! 重巡と航巡の皆さんは長門さんの護衛をお願いします!」

『了解!』

「軽空母の皆さんとあきつ丸さんは砲火が薄くなったところを援護して下さい!」

『任せといて!』

「天龍さん達と名取さん達は右を、球磨さん達と阿賀野さん達は左をお願いします!」

『俺様に任せときな!』

『狩りの時間だクマ!』

「私達は弾幕張って敵を近付けさせないようにするよ、撤退とか補給は合図出したらすぐにお願い! 雷撃のタイミングと後方にも注意して!」

『弾幕なら任せておいて』

『司令官の為、全力を尽くします』

『ここは通行止めですよー』

『妾の力、とくと見るがよい』

『秋雲、深海棲艦の絵は帰ってから描いてくれないかしら?』

 第一艦隊旗艦、吹雪。
 全員への指示を終え、彼女もまた眼前の敵へと砲撃を開始する。
 その指揮は、ずっと彼女が見てきた想い人そのものだった。

(司令官が任せてくれたこの大仕事、必ずやり遂げてみせます!)

283: 2014/08/27(水) 23:21:35.42 ID:CpkI7t4n0
 ――第二艦隊。

「あの調子だと当たりそうも無いね」

「油断は禁物よ瑞鶴、あの子達もそれは分かってるはずだわ」

「大丈夫だよ翔鶴姉ぇ、ヘマなんてしたら後で加賀さんにまた馬鹿にされちゃうもん」

「――釣れたぞ」

「じゃあ、行きましょうか」

「伊勢さんと日向さんは戦艦よろしくです。私と翔鶴姉ぇは重巡沈めるよ」

「了解、行くよ日向」

「艦載機と主砲の同時攻撃、披露する時が来たか」

「姉妹の連携なら二航戦や一航戦のお二人にも負けはしません!」

「運だけじゃないってところ、加賀さんに証明して見せるんだから!」

 第二艦隊旗艦、瑞鶴。
 加賀へ毎日の様に挑戦し、日々練度を上げ続けた彼女の実力を疑う者などいない。
 敵陣を駆け巡る味方には一発も当てずに、四人は次々と隊列を離れた艦を沈めていくのだった。

(提督さんだけじゃない、加賀さんにも任せるって言われたんだ……絶対にやってやる!)

284: 2014/08/27(水) 23:22:08.68 ID:CpkI7t4n0
 ――第三艦隊。

「大井さん、北上さん、先制雷撃はお願いしますね」

『魚雷を撃って撃って撃ちまくるわ』

『はいはーい』

「駆逐艦の子達は戦艦の護衛頼むでー」

『陸奥さんは暁達が守るわ』

『ビスマルクはボク達に任せてよ』

『扶桑と山城は白露達に任せぶふっ!?』

『きゃー!? ごめんなさーい!』

『金剛達は私達がきっちり守るわ』

「何やちょっち心配もあるけど、しっかりやりや!」

「重巡と戦艦の皆さんは真っ直ぐ敵陣中央を突破して下さい」

『一歩たりとも退きはしません』

『この高雄が道を切り開きます!』

『前進あるのみデース』

『第三砲塔が爆発しないよう祈りながら進むわね』

『ドイツ艦の力、見せてあげるわ!』

「蒼龍と飛龍、千歳と千代田は空の掃除頼むで」

『二航戦、全力で行きます!』

『空母としての私達もやれるってところ、見せましょうか』

「川内型の三人は私達とバックアップをお願いします」

『夜戦じゃないのは残念だけど、やっちゃうよ!』

「――では、行きます」

「とっとと道開けや、ボサっと突っ立とったら全員ぶちのめすで!」

 第三艦隊旗艦、鳳翔。補佐艦、龍驤。
 この二人が第三艦隊を任されたのは、その安定感にある。
 二人には爆発的な火力があるわけでもなければ、特殊な能力があるわけでもない。
 しかし、その場で取れる最善の選択を見付け出す術には長けていた。
 敵の反撃を許す暇を与えず、立ち塞がるもの全てを薙ぎ払いながら、第三艦隊は後ろの第四艦隊の通る道を切り開くのだった。

(帰ったら糠床をかき混ぜないと……)

(勝って全部終いにするんや!)

285: 2014/08/27(水) 23:22:35.07 ID:CpkI7t4n0
 ――第四艦隊。

「猫」

「金剛」

「う……卯月じゃな」

「俺」

「蒼龍さん」

「浦風」

「零戦52型」

「大鳳」

「さっきからうが多いですね……雲龍」

「そういう加賀もじゃないですか、潮」

 第三艦隊の後ろを進む八人。
 最奥まで力を温存する為に戦闘を回避していることもあり、手持ちぶさたになった彼女達の取った行動は、しりとりだった。
 旗艦の加賀も参加しており、ある種異様な光景だ。
 しかし、意外にもリラックスには効果があるのか、八人は無駄に神経を尖らせることもなく、ひたすら前へと進み続ける。

(早く帰って提督に会いたいわね……)

 最強の第四艦隊。その出番は、もう少し先となる。

295: 2014/08/29(金) 15:30:58.38 ID:UOivj4z/0
――――食堂、勝手口。

「間宮さん、一航戦赤城、ただいま戻りました」

「あら赤城さん、また何か持って帰って来られたんですか?」

「食べられると聞いたので、今日はコレを」

「コレは――クラゲ?」

「早速調理をお願いしてもいいでしょうか」

「えっと、本当に申し訳無いんですけど……コレ、食べれないクラゲです」

「……え?」

 ――翌日。

「赤城さん、元気出して下さい」

「皆で食べようと思ったんです……こんなことなら素直に鮪にしておくべきでした……」

(無断外出を咎めたいのだけど、これ程落ち込まれると何も言えないわね)

「赤城さーん、どこですかあ?」

「大鯨? 私に何か用でしょうか?」

「あっ、こちらでしたか。間宮さんが呼んでますよ」

「間宮さんが? 何かしら……」

「とにかく行ってみましょう」

 ――食堂。

「あっ、赤城さん。ちょうど今出来たところですよ」

「? ひょっとしてコレは……」

「クラゲ料理です、ちょっと仕入れて作ってみました。皆も呼んでますから」

「間宮さん……」

「コリコリ、してる」

「ふーん、クラゲもなかなか美味しいじゃない」

「結構いけるクマ」

「弾力あるにゃ」

「さぁ、赤城さんと加賀さんも召し上がって下さい」

「では、いただきます」

「クラゲ料理は初めてね」

「――食感が面白いですね、イカなどとも少し違います」

「コレはコレでいいものだわ」

「うふふ、喜んで食べてもらえると作った甲斐があります」

「次は食べられるクラゲを持って帰って来ますね」

「赤城、いい加減貴女も少し鎮守府で大人しくしたらどうなの?」

「霞、赤城と買い物行きたいらしいよ?」

「ちょっと霰! 余計な事は言わなくていいってば!」

「球磨も一緒に行くクマ」

「冬服買いたいにゃ」

「……えぇ、皆で行きましょうか」

(赤城さんもコレで少しは“休んで”くれるといいのだけど……)

296: 2014/08/29(金) 15:32:25.64 ID:UOivj4z/0
――――赤城さんはどこですか?

 ――――霞と一緒に出てった。

――――(無断外出者がまた一人……事態が悪化するのは想定外ね……)

297: 2014/08/29(金) 16:29:41.70 ID:V0wF/n/Jo
買い物ついでに全国グルメツアーですね

299: 2014/08/29(金) 17:06:10.37 ID:XFELI5O1o
乙です


引用: 【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」