514: 2014/09/21(日) 11:13:01.53 ID:eVYxXpQm0


前回はこちら

・睦月『もっと抱きしめてくれてもよいのだぞー?』

・比叡『出来ま――ヒエェー!?』

・ヲーちゃん『アノ子、怖イ』

・第七駆逐隊『第七駆逐メイド隊』

・加賀『赤城さんを追って』

以上五本でお送りします

520: 2014/09/21(日) 19:17:16.49 ID:eVYxXpQm0
 ――PUKAPUKA丸。

「今のところは問題無さそうだな」

「そろそろ何か仕掛けては来るでしょうけどね、明らかに知能を持って動いている個体が居るもの」

「きっと大丈夫です、皆さん凄い方達ばかりですから」

「正確には癖が凄い、だけどな」

「あら、それは私も含まれてるのかしら?」

「おい、笑顔で主砲をこっちに向けんな、危ないだろ」

「大丈夫よ、癖の強い初霜が守ってくれるわ」

「私は至って普通です」

「初霜も十分癖が――」

 相変わらずの緩い雰囲気で、三人は会話を続けていた。
 唐突にそれが途切れたのは、五十鈴が何かを警戒する素振りを見せた為だ。

「五十鈴、敵か?」

「そのようね」

「どこからだ?」

「真後ろ、数は少なく見積もっても百は越えてるんじゃないかしら」

「百……こっちに向かって来てるのか?」

「いいえ、段々遠ざかってるようよ」

(遠ざかる? ってことは……)

「――五十鈴、頼めるか?」

「貴方ねぇ……」

 呆れた様な声を出す五十鈴。
 いくら護衛として初霜が優秀でも、この先の読めない状況で提督をたった一隻で護衛するのは、至難の業だ。

「大丈夫だ、危なくなったらちゃんと逃げる」

(第四艦隊が撤退してくるまで逃げる気なんか無い癖に、本当に困った提督だこと……)

「――初霜、そこのバカ提督お願いするわね」

「了解です」

「おいバカって何だバカって。……頼んどいて言うのも何だが、無理はするな」

「あら、誰に向かって言ってるの?――心配しないで、ちゃんと帰るから」

「……あぁ」




 五十鈴、護衛より離脱。
 各鎮守府方面へと移動する深海棲艦の掃討任務を開始。
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録
521: 2014/09/21(日) 19:17:42.63 ID:eVYxXpQm0
 ――鎮守府。

「お留守番だからのんびり、な訳ないわよねー」

「あまり戦闘は得意じゃないんですが……」

 鎮守府で待機中の夕張と明石。彼女達は今、艤装を装備して海を眺めていた。

「色々試せるのは嬉しいけど、あの数はちょっとしんどいかなぁ……」

「私が修理しますから被弾した時はお任せ下さい」

「修理してる暇、あると思う?」

「無いですね」

「――さて、愚痴はこのぐらいにしておきましょうか」

「はい、やりましょう」

「じゃあまずは大きいの一発、いくわよ!」

「発射、いつでもオッケーです!」

「妖精さんと私の最高傑作のデータ収集に付き合いなさい! いっけぇぇぇぇぇっ!」




 その日、鎮守府に津波が押し寄せたのは深海棲艦のせいとされているが、原因はこの二人である。
 だが、断続的に襲撃を繰り返す深海棲艦を食い止められたのも、彼女達の働きあってのことだ。


――――あいたたた……ちょっとやり過ぎちゃったかも……。

 ――――まずは自分の修理をしないといけないみたいです……。

522: 2014/09/21(日) 19:18:19.34 ID:eVYxXpQm0
 ――第一艦隊。

「白雪、磯波、一度下がって! 初春と若葉お願い!」

「弾薬を補給したらすぐに戻ります」

「お願いしますね」

「任せるのじゃ」

「了解」

『エリル級二隻が接近中だクマ!』

「朝潮型を援護に向かわせます! 被弾した方は無理せず下がって下さい!」

『こちら長門、一隻は私が沈めた。今はまだ余裕がある。戦艦級は任せてくれて構わない』

「長門さんは私達の要です。くれぐれも無理はしないで下さい」

『了解だ』

「吹雪! こっち弾切れ近いぜ!」

「私も、弾、切れそう」

「分かった! 深雪と初雪後退、漣と潮行って!」

「キタコレ!」

「行きます!」

『ごめん! 六機逃がした! 対空砲火準備して!』

「了解です! 巻雲、秋雲、艦載機をお願い!」

「任せて下さーい!」

「スケッチする暇が欲しいー!」

(思ってた以上に攻撃が激しい……でも、防げない程じゃない!)

 吹雪の澱み無い采配により目立った被害や混乱もなく、今のところ大きな問題は起きていなかった。
 だが、際どいラインで綱渡りをしていることに変わりは無く、いつ何がきっかけで戦線が崩れるか分からない。

 例えばそれは――。




『こちらH地点防衛艦隊! 敵後方に鬼級六隻を確認! 警戒されたし!』

523: 2014/09/21(日) 19:19:03.65 ID:eVYxXpQm0
 ――第二艦隊。

「イムヤ! ハチ! 一度下がって!」

「了解!」

「Ja.」

(島風はまだまだ余裕あるかな、シオイと雪風も問題なし、問題は――)

「これだけ多いと面倒だな」

「日向、いける?」

「無論だ、航空戦艦の力を示すには絶好の相手じゃないか」

「伊勢さん、日向さん、援護します」

「そっちは任せるね、私はこの子達を守らないといけないから」

「えぇ、任せて瑞鶴」

「うーちゃん達もお手伝いするぴょん」

「ふふ、私の髪を焦がした報い、しっかり受けてもらわないといけないわね」

「如月姉ぇ、ちょっと落ち着きなって」

(如月が小破、他の子は無事。――うん、まだまだいける!)

「空母姫達は伊勢さん、日向さん、翔鶴姉ぇに任せて、私達はあっちのフラグシップリ級の団体さんの相手よ!」

『了解!』

(さっき吹雪から前線に鬼級が出たって通信来てたし、私達がここで踏ん張らないと!)

 派手に暴れる彼女達を迎撃しようと空母姫とフラリ級の群れが出現し、一度は劣勢に陥りかけた第二艦隊。
 しかし、冷静に対処さえ出来れば苦戦する様な相手ではなく、即座に立て直す。
 それよりも問題なのは、大型の相手をすることで弾薬と燃料の消費が増えることだ。
 かといって、ここで通してしまえば防衛ラインにかかる負担が相当大きくなってしまう。
 どのタイミングで撤退するかを常に念頭に置きながら、瑞鶴は更に神経を研ぎ澄ませるのだった。

524: 2014/09/21(日) 19:19:32.81 ID:eVYxXpQm0
 ――第三艦隊。

「沈みなさい!」

「ほいっ、後よろしくー」

「道を開けるネー!」

「お姉さんが相手してあげるわ」

「Feuer!」

「貴女達に私達の不幸を分けてあげる」

「百三十八、百三十九、百四十! 飛龍、負けた方が一ヶ月買い物係だからね!」

「百四十三っと――ん? 何か言った?」

「……何でもない!」

 大井と北上の雷撃で敵の隊列に穴を開け、戦艦組と二航戦がその穴を無理矢理広げながら、第三艦隊は最奥を目指す。
 それぞれを護衛する艦も周囲のヘ級やカ級を迅速に落としており、ごり押しも甚だしい戦法であるにも関わらず、被害は最小限に抑えられていた。

「このまますんなりと行かせてくれると有りがたいんですけど――そうもいかないみたいですね」

「皆気ぃ付けや! 前方にレ級と戦艦棲姫のお目見えや!」

『何か潜水艦もいっぱい来てるわよ!?』

『一番先に、敵艦載機発見! 左から何か見たこと無いのが来てるよ!』

『右からもリ級の上位型みたいな艦が多数接近中! 何か雰囲気がヤバいわ!』

「戦艦の皆さんは継続して前方の敵を排除して下さい。雷巡のお二人は潜水艦の相手をお願いします」

「駆逐艦と軽巡の子等は潜水艦と小型の敵頼むで、重巡連中は右から来るっちゅうのを叩いてや」

「蒼龍と飛龍は左から来る敵空母をお願いしますね。千代田と千歳は私達とレ級の艦載機を落としましょう」

「手厚い歓迎やけど長居は無用や、一気に行くで!」

『了解!』

 前方からエリレ級と戦艦棲姫が三隻ずつ、左からはフラヲ級改、右からはフラリ級改と、第三艦隊は手厚い歓迎を受ける。
 それぞれが個として出てくればそこまでの驚異では無いが、まとめて来られれば苦戦は免れない相手ばかりだ。
 しかし、これだけの戦力を深海棲艦達が投入してきたのは、彼女達が結晶に近付いている証拠でもある。
 後ろに控える第四艦隊に全てを託す為にも、一歩も退かぬ覚悟で全員がそれぞれの目標へと攻撃を開始するのだった。

528: 2014/09/22(月) 21:07:56.37 ID:KKqQQiU30
・睦月『もっと抱きしめてくれてもよいのだぞー?』 、投下します

529: 2014/09/22(月) 21:08:54.72 ID:KKqQQiU30
――――提督執務室。

「――よし、今日のところはコレで終わりだ」

「お疲れ様なのですよー」

「どうする? あまり遠くは無理だが、少し出掛けるか?」

「およ? 何で?」

「よくよく考えたら睦月と最近出掛けて無いと思ってな」

「んー、睦月的にはこのまま提督とここで二人っきりで過ごしたいかにゃ?」

「お前がそれでいいなら俺は構わんが……」

「そ・れ・よ・りー……えいっ!」

「うおっと! コラ、飛び付くのはやめろ。受け止められなかったらどうする」

「睦月は受け止められない程重くないのです」

「俺の運動神経を舐めるな、そのまま倒れるかもしれんぞ」

「あはは、それはちょっとカッコ悪いかにゃ?」

「――お前も、かなり背が伸びたな」

「去年より十センチ伸びたのね。だから――」

 ――チュッ。

「届くようになったのですよ」

「……狙ってたのか?」

「睦月型の長女として、妹達に遅れをとる訳にはいかないかにゃーって」

「そんなところで競うなよ……」

「――提督からは、してくれないの?」

(子供扱いは、そろそろ卒業か……ん?)

「――体、プルプル震えてるぞ」

「つ、つま先立ちそろそろ限界……」

「ほら、頑張れ頑張れ」

「イジワルはやめて欲しいのです!」

「そんなに焦らなくてもいいぞ、睦月」

 ――チュッ。

「――まだ暫くは俺から合わせてやるから、な?」

「……ギュッて、して欲しいのね」

「ん、分かった」

「――抱き締めてもらうなら、今の身長が一番落ち着くかにゃ?」

「何でだ?」

「提督の胸の音が聞こえるからなのですよ」

「じゃあ、それ以上伸びない方がいいのか?」

「それはダメなのね。――だから、もっと今のうちに睦月をギュッてして欲しいのです」

(――子供と大人の間ってところか)

「提督ー?」

「はいはい、分かったよ。満足するまでこうしててやるさ」

530: 2014/09/22(月) 21:09:47.32 ID:KKqQQiU30
――――……もういいか?

 ――――もうちょっと!

――――(……晩飯、いつになるかな……)

 ――――(睦月、幸せー)

536: 2014/09/23(火) 21:55:01.30 ID:NWU4jRa40
・比叡『出来ま――ヒエェー!?』、投下します

ケミ○ルXのせいであって比叡は悪くない…はず?

537: 2014/09/23(火) 21:55:38.16 ID:NWU4jRa40
――――提督執務室。

「提督、非常事態です」

「どうした加賀、何かあったのか?」

「比叡の作った料理が暴れています」

「……すまん、聞き間違いかもしれんからもう一度言ってくれ」

「比叡の作った玉子焼きが、暴れています」

「そうか、玉子焼きが暴れてるのか……お前に任せる。深海棲艦と戦う作戦は立てられても、玉子焼きと戦う作戦は俺には立てられそうにない」

「分かりました。鎮守府の内部に居ますので、軽く壁などに被害が出るかもしれませんが、構いませんか?」

「好きにしろ、とりあえずお前達に被害が無ければ後は何とでもなる」

「はい、では行ってきます」

「……今日は、良い天気だな」

――――金剛型私室前、廊下。

「一体何を混ぜたらあんな風になるデース!?」

「塩と砂糖と何だか良く分からない粉しか入れてませんってばー!」

「原因を分析する必要は無さそうね……」

「何かグチョグチョしててとっても気持ち悪いです……ひっ!? こっちに来ます!」

 ――タ、ベテ、ワタシヲ、タベテ。

「No thank youネー!」

「どうして玉子焼きが人語を……?」

「霧島、考えるのは後にしましょう!」

「ヒェー! 一時撤退ー!」

 ――タァァァァァベェェェェェェテェェェェ!

538: 2014/09/23(火) 21:56:08.39 ID:NWU4jRa40
――――工廠。

「夕張、私達の艤装をお願いします」

「一応提督から連絡は受けてますけど、何があったんですか?」

「何だか良く分からんが、玉子焼きが暴れているそうだ」

「玉子焼き……?」

「大和達にも何が何やら……」

「とりあえず、俺達の艤装を早いとこ頼むぜ」

「準備おっそーい!」

「ちょっと待ってってば、久しぶりなんだからちゃんとチェックしないと……よし、オッケーです!」

「うむ、カタパルトも問題なさそうじゃ」

「今、金剛達がこちらへ向かって誘導しているそうよ」

「深海棲艦だろうと玉子焼きだろうと、この武蔵の敵ではないぜ!」

「その二つは並べてよいものなのでしょうか……」

539: 2014/09/23(火) 21:56:37.21 ID:NWU4jRa40
――――鎮守府内、廊下。

 ――うっわキッモ! マジこっち来ないでって!

 ――さ、流石にアレには近づきたくないっぽいー!

 ――まー何て言うの、ここって何でもありだよねー。

 ――北上さん! とにかく先に逃げて!

「比叡、こうなったら責任取って食べてあげるネー!」

「気合い! 入れて! 遠慮します!」

「味見は大事だと何度も教えたはずですが?」

「あんなの味見したら絶対に氏んじゃうってばー!」

 ――タベテタベテタベテタベテ。

 ――オイシイヨタベテヨオイシイヨタベテヨ。

「――分裂、してませんか……?」

「ノーーーーーー!?」

「ヒェー! こんなはずじゃなかったのにー!」

「分裂するような謎の物質、解析すれば有効活用出来るかもしれないわね……」

「だからそういうのは後で!」

 ――タァァァァァベェェェェェテェェェェェ!

「お、追い付かれそうですよー!?」




「――全機発艦、目標を殲滅します」

540: 2014/09/23(火) 21:57:04.32 ID:NWU4jRa40
――――提督執務室。

「被害は?」

「鈴谷が軽く玉子焼きにトラウマを抱えてしまったことと、私達の艤装が数日は整備しないと使えなくなりました。後は壁が二十七箇所、床が三十八箇所補修が必要です。汚れた廊下の掃除も、一日はかかるかと」

「比叡の料理がそうなった原因は?」

「明石さんが取り寄せた研究用の薬品と、榛名が頼んでいた調味料を間違えて渡したそうです。ですが、薬品そのものは人体に無害な物で、あのような事になった原因は不明だと言っていました」

「焼く一工程でどうやったら未知の現象を生み出せるんだか……まぁいい、鈴谷のフォローだけはしとく。後は任せた」

「分かりました。では、失礼します」

(――さて、後は今日の“秘書艦”とじっくり話すとするか)

541: 2014/09/23(火) 21:57:34.11 ID:NWU4jRa40
 ――玉子焼き事件終結から一時間後。

「あの、司令……」

「比叡、とりあえずこっち来い」

「は、はい……」

「――次、頑張れ」

「……へ? あ、あの、また私が料理作っても、いいんですか……?」

「榛名と霧島、後出来れば大和か武蔵を横に付けてなら許可する」

「司令……はい! 気合い! 入れて! 作ります!」

「気合い以外に変な物は入れるなよ?」

「大丈夫です。次はしゃべらない玉子焼きを作ってみせます!」

(そもそもしゃべる玉子焼きを作れる方が凄いんだがな……)

「じゃあ早速夕飯の仕込みをしてきます!」

「待て比叡、カレーだよな?」

「カレーですよ?」

「そうか、なら安心だな。楽しみにしてる」

「はい!」

「で、今日は何カレーにする予定なんだ?」

「今日はエッグカレーです!」

「そうか――ん? 玉子……?」




――――(……普通、だよな?)

 ――――司令? どうかしたんですか?

――――いや、何でもない。いただきます。

 ――――はい、どうぞ!

――――……うん、美味い。

 ――――司令のお口に合って良かったです。お代わりもたくさんありますからどんどん食べて下さいね。

――――(……比叡にはやっぱりカレーだけ作らせるのがいいのかもしれん)

547: 2014/09/24(水) 15:51:08.14 ID:z8+ZLjnr0
・ヲーちゃん『アノ子、怖イ』、投下します

深海棲艦の飼い方その1、イ級は水がないとビチビチ跳ねてそのうちグッタリしてしまいます、ちゃんと海水を入れた水槽に入れてあげましょう

548: 2014/09/24(水) 15:54:55.24 ID:z8+ZLjnr0
――――休憩所。

「ウシオ、オハヨ」

「おはよう、ヲーちゃん」

「潮、おはよー」

「島風ちゃん、おはよう。ヲーちゃん見ててくれたの?」

「うん、さっき武蔵と交代したんだー」

「シマカゼ、イッパイオ話シテクレル。良イ人」

「ふふーん、そうでしょ? だって私速いもん!」

「速いのは関係無いんじゃないかな……」

「――ねぇ潮、この子一人ぼっちなのかな?」

「……多分、そうだと思うよ」

「ふーん、そっか。じゃあ仲間を探してあげないとね」

「え?」

「だって、一人ぼっちは寂しいもん」

「島風ちゃん……」

「ヲッ? 私、一人違ウ。ウシオモ、シマカゼモ居ル。ダカラ、一人違ウ」

「じゃあヲーちゃんと私達は友達だね」

「ヲッ!」

(良かった、これなら大丈夫そう……)

「――ヲッ!?」

「どうしたの?」

「アノ子、怖イ……」

「あの子って?――ひぅっ!?」

「早霜、そこで何してるの? かくれんぼ?」

「観察しているの。その子、深海棲艦なのよね?」

「う、うん。でも、今は安全だよ?」

「敵として戦った相手を、すぐに信用してしまうのはどうなのかしら」

「ヲ……嫌ワレル、仕方無イ。声、逆ラエナカッタ。私達、イッパイ、酷イコトシタ」

「いいんだよヲーちゃん。もう全部終わった事だから」

「……ごめんなさい、そんなつもりは無かったの。でも、彼女以外にも深海棲艦が生き残っていたとして、全員が安全とは限らないでしょう?」

「心配、してくれてるの?」

「ただ当たり前のことを私は――」

「どうした早霜、まだキャラメルは渡していないのか?」

「っ!? 那智さん、どうしてここに……?」

「たまたま通りかかっただけだ」

「キャラメル?」

「そこのヲーちゃんだったか? に、あげると言って昨日キャラメルを早霜が買っていてな」

「ヲーちゃんにあげる為にわざわざ買ったんだ、へぇー?」

「キャラメル? 甘イノ欲シイ! 食ベタイ!」

「……欲しがってるし、あげてくれる?」

「……えぇ」

549: 2014/09/24(水) 15:55:48.49 ID:z8+ZLjnr0
――――ハヤシモ、良イ人!

 ――――(部屋に持ち帰ってはダメなのかしら)

――――早霜も結局ヲーちゃんの事好きみたいだね。

 ――――甘いものあげたら誰にでも付いてっちゃいそうで、ちょっと心配かも……。

554: 2014/09/26(金) 18:02:01.32 ID:DTpPSLYw0
・第七駆逐隊『第七駆逐メイド隊』 、投下します

555: 2014/09/26(金) 18:02:34.17 ID:DTpPSLYw0
――――第七駆逐隊私室。

「皆、準備は出来ましたか?」

「出来てる、多分」

「全く、何で私まで……」

「着替えたいよぉ……」

「じゃあ行きますよ。第七駆逐メイド隊、出撃!」

 ――パン屋。

「朧、五番テーブルにコレお願いします!」

「うん、了解」

「写真撮影は禁止って言ってんでしょ、このクソ野郎共!」

「曙ちゃん、お客様だから乱暴な言葉遣いは……」

 ――ありがとうございます!

「ひっ!?」

(な、何なのよコイツ等……)

 ――間宮食堂。

「三番と八番A定食ご飯大、十番C定食です」

「はーい」

「今なら蟹チャーハンも出来る、多分」

 ――じゃあそれで。

「ちょっと朧! 何勝手にメニュー増やしてんのよ!」

「大鯨さん、盛り付けってこんな感じでいいんですか?」

「はあい、そんな感じです」

 ――イクのマッサージ屋。

「二名様ご案内でーす!」

「イク、シーツの準備出来たよ」

「ありがとなのね」

「私は絶対にやらないわよ! 男に触れるのなんかクソ提督だけで十分!」

「曙ちゃん、今日は女性限定の日らしいよ?」

「そ、それならまぁ、やってもいいかも……」

「ご主人様ご案内でーす!」

「っ!? 私がやるわ!」

「っていうのは冗談です。ご主人様は今頃綾波とお仕事――待って曙、まだ焦るような時間じゃない。落ち着いて素数を数えよ?」

「さぁぁぁざぁぁぁなぁぁぁみぃぃぃ!」

「あー満月だから交渉無理ですねー、ってふざけてる場合じゃなかった!」

「二人とも落ち着くのね! 邪魔するなら出ていくの!」

「すいませんすいません、すぐにご案内しますので……」

「今なら蟹の甲羅でツボ刺激コースもある」


556: 2014/09/26(金) 18:03:08.91 ID:DTpPSLYw0
 ――廊下。

「ねぇ漣ちゃん、何でメイド服着なくちゃいけないの……?」

「三人に着なれて貰わないとメイド喫茶が開けないじゃないですか」

「今日はどうしてもって言うから着てあげたけど、二度と手伝わないしメイド喫茶もやらないわよ?」

「この服可愛いし、私はやってもいいかも」

(朧ちゃん、気に入っちゃったんだ……)

「――ご主人様はメイド服、そこそこ好きみたいですよ?」

「そ、それがどうしたっていうのよ」

「秘書艦日はお店で二人だけにしてあげます」

「ク、ククククソ提督とこの服で二人っきりとか冗談じゃないわ!」

「可愛いって言ってくれるよ、きっと」

「何種類か用意してますから飽きられる心配もありません。今なら何とこの猫耳と犬耳もお付けしますよ」

「漣ちゃん、通販みたいになってるよ?」

(クソ提督が喜ぶかもしれない……でも、似合わないとか言われたらどうしよう……)

「漣、私もそれ貰えるの?」

「朧も欲しいんですか?」

「うん、欲しい」

「わ、私は――」

「潮にはこの垂れ耳で」

「いらないって言おうとしたのにぃ……」

「ほら、後は曙だけですよ」

「私は何にも言ってないよぉ……」

「し、仕方無いわね、そこまで言うなら一緒にやってあげてもいいわよ」

「メニューには蟹チャーハン入れたい、絶対」

「キタコレ! そうと決まれば加賀さん達にお店の営業許可申請して来ます!」

「あっ……行っちゃった……」

(……ヲーちゃんと一緒に洗濯機眺めよう)




――――開店、半年後には可能だそうです。

 ――――蟹料理なら誰にも負けない、多分。

――――そもそも、メイド喫茶って何すればいいのよ。

 ――――(コインランドリー喫茶なら良かったのになぁ……)

566: 2014/09/27(土) 21:00:58.61 ID:5axM2S5M0
・加賀『赤城さんを追って』、投下します

567: 2014/09/27(土) 21:01:35.77 ID:5axM2S5M0
――――鎮守府、入口。

「――では、後の事はよろしくお願いします」

「はい、任せて下さい!」

「領収書が五枚以上になる前にお願いしますね」

「善処はしてみます」

(今回は東北方面に向かったと報告がありましたし、まずはそちらへと向かいましょうか)

 ――宮城。

「すいません、この女性を見掛けませんでしたか?」

 ――その方なら昨日店に来て、三キロ程お肉を食べていかれましたよ。

「その後、どこへ行くかなどは話していませんでしたか?」

 ――次の仕事を終えたらキリタンポを食べるとか言ってましたし、秋田に行ったんじゃないでしょうか。

「そうですか、ありがとうございます」

(仕事……急がないといけないわね)

569: 2014/09/27(土) 21:02:36.48 ID:5axM2S5M0
――――翌日、提督執務室。

 ――提督、失礼します。

「加賀か、どうした?」

「お土産を渡しに来ました」

「おぉ、宮城に行ってきたのか。ゆっくり息抜きは出来たか?」

「はい、後こちらもお土産というわけでは無いですが、どうぞ」

「……なぁ加賀、コレ、“新艦娘着任許可申請書”って書いてあるんだが?」

「赤城さんを探していたら偶然保護することになりました。では、よろしくお願いします」

「偶然ねぇ……俺に隠れて何やってんだよ、お前等」

「……ただの、ボランティア活動です」

「……そうか、危ない事だけはするなよ?」

「それはこちらのセリフです。この前の様にまた一人で外出しようとしたら、執務椅子に縛り付けますよ?」

「近くに買い物へ行くぐらいなら一人で問題ない、少し心配し過ぎだ」

「……頭に来ました。暫くは全員に通達して“常勝不敗提督”と呼ばせることにします」

「おい待てやめろバカ、そんなふざけて付けられた二つ名でずっと呼ばれるとか、絶対に俺は嫌だぞ」

「でしたら、出掛ける際は必ず護衛を付けてください」

「あぁはいはい、分かったよ。全く、心配性だなお前も」

「提督の警戒心が足りなさ過ぎるだけです。初霜に足を撃ち抜かれて安全な場所まで引きずられても文句は言えないわ」

「いくら初霜でもそこまでは……するかもしれんな」

「それが嫌なら、以後気を付けて下さい」

「まぁ今後一人では出歩かないようにするさ」

(……貴方が氏んだら私も、などと言ったら怒るのでしょうね)

「ん? どうした?」

「いえ、それでは失礼します」

「あぁ、またな」




――――加賀、讃岐うどんを食べに行きませんか?

 ――――今は信州蕎麦の気分です。

――――私は讃岐うどんの気分です。

 ――――信州蕎麦です、これは譲れません。

584: 2014/09/27(土) 23:28:27.07 ID:5axM2S5M0
・磯波『あの、お弁当作ってみたんです』

・鎮守府七不思議その三

・飛鷹『月見酒』

・大鳳『審査員?そもそもお嬢って何を基準にすれば…』

・青葉『取材を忘れてカメラを片手に』

以上五本でお送りします

潜水艦の皆さん6-1が待ってますよ一緒に行きましょうか

七不思議が来てビックリ

587: 2014/09/28(日) 23:27:11.01 ID:m7kD6NCD0
・磯波『あの、お弁当作ってみたんです』 、投下します

素朴って何だろう…

588: 2014/09/28(日) 23:27:37.67 ID:m7kD6NCD0
――――提督執務室。

「磯波」

「はい、何でしょうか?」

「ちょっと出掛けないか?」

「あの、そこの書類は……?」

「読んでみろ、目を通すだけで疲れる」

(――“エステが鎮守府に無いのは不便ですわ、作って下さいませんこと?”、“駆逐艦が部屋に入り浸っててウザイ、何とかして”、“私の創作料理を間宮さんが認めてくれません、試食して下さい”……)

「後それが五十枚ぐらいある。少し休憩させてくれ……」

「た、大変なんですね……」

「とりあえず着替えてこい、俺も準備したら入口で待ってる」

「あの、三十分程お時間頂いても構いませんか……?」

「別に構わんぞ、俺の気晴らしに付き合って貰うんだしな」

「はい、じゃあ三十分後に入口で」

589: 2014/09/28(日) 23:28:45.45 ID:m7kD6NCD0
 ――四十分後。

「あ、あの、遅れてごめんなさい……」

「――似合ってるぞ、その服」

「えっ? あの、その……ありがとうございます」

「よし、行くか。何処かリクエストはあるか?」

「えっと、落ち着いて座れる場所が……」

(あまり遠出は出来んしな……いつもの公園にするか)

 ――公園。

「ここはいつ来ても静かですね」

「俺も不思議に思ってる。まぁ理由はどうあれ、ゆっくり息抜きするには最高だから有難い」

「はい、あまり騒がしいのは得意じゃないので、私も嬉しいです」

「――それで、時間が必要だったのはその中に入ってる物を作ってたからか?」

「っ!? えと、あの、ごめんなさい!」

「怒ってないから謝るな。昼も食べずに連れ出そうとしたのは俺だ、作ってくれたのなら文句を言う筋合いはないさ」

「はい……食べて、頂けますか?」

「あぁ、正直かなり空腹だ」

「ど、どうぞ」

「――サンドイッチか、いただきます」

「あの、どうでしょうか……?」

「……うん、美味い。具もシンプルであっさりしてて食べやすい」

「そ、そうですか。頑張ってみて良かった……」

「ほら、磯波も食べろ。お前も食べてないだろ」

「ひゃい!?」

「ん? どうした?」

「あ、あの、えと、い、いただきます」

(あーんしてもらえるなんて思ってませんでした……)

「――あっ、喉は乾いておられませんか?」

「飲み物も用意してきたのか?」

「はい、ハーブティーです」

「磯波が育ててるやつか、コレは何のハーブティーなんだ?」

「今日はカモミールにしてみました」

「――香りも良いし、落ち着くな」

「カモミールにはリラックス効果があるそうなんです」

「すまん、何から何まで気を遣わせたな」

「い、いえ、私はしたいことをしただけですので……」

「――ふぅ、ご馳走さん。じゃあもう少しゆっくりしたら、戻って仕事の続きをするとしよう」

「はい、私も頑張りますね」

590: 2014/09/28(日) 23:29:34.79 ID:m7kD6NCD0
――――すぅ……すぅ……。

 ――――あ、あの、提督……?

――――すぅ……すぅ……。

 ――――(起こした方が良いんでしょうか……それとも、このまま休んで頂いた方が……)

594: 2014/09/29(月) 21:22:19.47 ID:Asdthkfv0
・『鎮守府七不思議、その三』、投下します

見てます

595: 2014/09/29(月) 21:22:47.22 ID:Asdthkfv0
――――提督執務室。

「――七不思議?」

「えぇ、提督は知ってる?」

「散々苦労させられたのが一つあるから、それについてはよく知ってるぞ」

「それはどういうものだったの?」

「“提督を寄せ付けない艦娘”ってやつだ」

「提督を寄せ付けない……それって誰の話なの?」

「飛龍だよ、ここにアイツが来た頃は近付くだけで物が飛んできて大変だったんだ」

「ポ、ポルターガイスト……?」

「まぁそれに近いかもな、認めてもらえるまで苦労したよ」

「認めてもらうって、誰に?」

「よく飛龍が口にするから、大鳳も知ってるはずだ」

「――“多聞丸”?」

「あぁ、実際のところは俺もあまり良く分かってないんだがな、飛龍が無意識に拒絶してたのか、本当に守護的な存在が居るのか」

「今の彼女を見てると、想像も付かないわね……」

「今でもたまにアイツに悪意とかを持って近付く相手はろくな目に合わんみたいだぞ、どうも対象が提督限定じゃなくなったらしい」

(今日買い物に出掛けるって聞いたけど、彼女が出歩いて大丈夫なのかしら……)

596: 2014/09/29(月) 21:23:14.51 ID:Asdthkfv0
――――街。

(ちょっと準備に手間取っちゃったな……急がないと)

 ――ねぇ、君一人? ちょっと今から一緒に遊ばない?

「ごめんなさい、友達を待たせてるから」

 ――じゃあその子も一緒にってことで、どう?

「――私、急いでるの」

 ――っ!? 何で急にベルトが……。

(今日は蒼龍に何試着させてみよう、胸元強調する服とかにしよっかな)

 ――待ち合わせ場所。

「ごめん、お待たせ」

「遅いよ飛龍、罰としてランチは奢ってもらうからね」

「超激辛カレーでいい?」

「良い訳無いでしょ!」

「とりあえず、見て回りましょうよ」

「あっ、遅れてきて先々行かないでよ、もうっ!」

598: 2014/09/30(火) 23:34:04.05 ID:+mCClQkD0
――――屋上。

「……ちと寒いな」

「提督がたまには屋上でって言ったんじゃない、それぐらい我慢しなさいよ」

「お前は寒くないのか?」

「下に着込んできたからご心配なく」

「そうか、なら俺も上着取ってくるからちょっと待ってろ」

「必要ないからさっさとお月見始めちゃいましょ」

「お前は俺に風邪引けってのか?」

「そんな訳無いじゃない。ほら、こっち座って」

「酒で暖まるとか言うなよ?」

「違うわよ――はい、コレでどう?」

「……月じゃなくてお前の頭がよく見えるようになった」

「見上げれば済む話じゃない」

「まぁ確かに暖かいし、コレでいいか」

「――今、お腹摘ままなかった?」

「飛鷹、お前少し太っ!?」

「あら、ごめん遊ばせ」

「鳩尾に肘は、マジでやめろ……」

「デリカシーの無い事言うからそういう目に遇うのよ」

「また春に服が入らなくなっても知らんぞ」

「大丈夫よ、愛宕達のダイエットに混ぜてもらうから」

「最初から太らない努力はしないんだな……とりあえず、団子食うか」

「今年は卯月と弥生が作ったんだっけ?」

「あぁ、二人でウサギの着ぐるみ着て配ってた」

「そういえば、愛宕がバニーガールの格好で姉妹とラインダンスするって聞いたんだけど」

「摩耶と鳥海が嫌がってたが、最後は根負けしてたな。多分、どっかで今頃やってる」

「四人のバニー姿、見たい?」

「――十二単着たかぐや姫なら、見たいかもな」

「それだと月に帰っちゃうんじゃない?」

「お前なら使者張り倒して逃げるだろ」

「ちょっと、それどういう意味? っていうか私が着るの?」

「似合うと思うんだがな、俺は」

「……酔ってる?」

「流石に一杯じゃ酔わなくなった」

「ふーん……考えとく」

「――月、綺麗だな」

「私より?」

「甲乙付け難い」

「ほら、やっぱり酔ってるんじゃない」

「さて、どうだろうな」

599: 2014/09/30(火) 23:34:51.81 ID:+mCClQkD0
――――ど、どう?

 ――――……本当に着たのか?

――――っ……重いし今すぐ着替える!

 ――――(全く……似合ってるからイメージするだろうが)

600: 2014/09/30(火) 23:50:16.08 ID:RRbVrQrAO
たしかに飛鷹はかぐや姫の衣装一番似合いそう

602: 2014/10/01(水) 09:01:15.65 ID:6+ImSPm/o
乙です


引用: 【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」