484: 2014/07/25(金) 21:37:58.12 ID:bJM6S6QYo

   【君と僕の青春アイデンティティー】


鎮守府内 食堂

ガヤガヤガヤ



時雨「いただきます」

夕立「ごっはんー♪ ごっはぁんー♪」

時雨「……夕立?」ニガワライ

夕立「は~い。いただきま~っす」

時雨「はい。よく出来ました」




夕立「いつもの事ながら、今日の晩ご飯は一段と美味しいっぽい!」パクパクムシャムシャ

時雨「あんまり急いで食べると喉につまらすよ。でも、それは僕も同感だね」

夕立「今日は一日中、他所の人達との合同演習だったんだもん。お腹と背中がくっつくかと思ったっぽい」

時雨「実を言うと僕もさ。最後の方は、何時お腹が鳴り出すんじゃないかって気が気じゃなかったなあ」

夕立「でもね! でもね! 聞いて時雨! 今日も夕立、けっこう頑張ったっぽい!」

時雨「人づてに聞いたよ。なんでも駆逐艦の子や軽巡の人だけじゃなく、重巡の人を相手に大破判定を獲得したらしいじゃないか」

時雨「夕立、君は本当にすごいなあ。僕にはとても出来ないよ」

485: 2014/07/25(金) 21:39:01.52 ID:bJM6S6QYo

夕立「んふふ~♪ 時雨が褒めてくれたら、夕立もっと頑張れるっぽい」ムフー

時雨「僕の賞賛くらいで夕立が活躍出来るなら、いくらでもしてあげる」

夕立「本当! ……でも夕立ばっかりが褒められててもつまんないかもだから、今度は夕立が時雨のこと褒めてあげるっぽい!」

時雨「無理に褒めてくれなくても、僕は大丈夫だよ?」

夕立「夕立、無理なんかしてないっぽい! あのね、さっきね、提督さんが時雨の事を褒めてた!」

時雨「僕のことを?」






 時雨たちから少し離れた席



モブA「……何あれ……女……僕とか…………なんで……の……」チラチラ ヒソヒソ

モブB「……ぶって……思って……痛い…………」クスクス チラチラ

486: 2014/07/25(金) 21:39:54.85 ID:bJM6S6QYo

時雨「…………」チラッ

夕立「でね! でね! 提督さんは……。 時雨、どうかしたっぽい?」キョトン

時雨「ううん、なんでもないよ。続けて?」

夕立「時雨の危険を察知する力はすごいって言ってたっぽい! 敵の砲弾が何処に着弾するか分かってるみたいだって」

時雨「そんなことはないんだけど。でも嬉しいな、提督がそう言ってくれたのなら」

夕立「今日の演習だって、一度も大破判定にならなかったんでしょ? それってすごいっぽい!」

時雨「ありがとう。こうやって言うのもなんだけど、僕もその点については上手くいったと思ってたんだ」

時雨「何しろ実戦だと隊の中の誰か一人でも大破してしまえば、たちまち撤退命令が飛んで来るからね。少なくとも僕達の鎮守府だと」


夕立「夕立たちの提督さんは石橋を叩いて渡るのが好きっぽい!」

時雨「たまに、いくらなんでも叩きすぎじゃないかな? って思うこともあるけどね」

夕立「そういう融通が効かないところが、いかにもあの提督さんっぽい!」

夕立「でもそんなところも引っくるめて夕立は、あの人は素敵な提督さんだと思うっぽい!」

時雨「もちろん僕だって知ってるよ。きっとこの鎮守府の艦娘なら、みんな知ってるはずさ」

夕立「だよね!」ムフー

時雨「うん」

夕立「♪~」




 時雨たちから少し離れた席


モブA「……何…………提督……媚……」チラチラ ヒソヒソ

モブB「……僕……きっと……なんでしょ…………」クスクス チラチラ

487: 2014/07/25(金) 21:40:42.48 ID:bJM6S6QYo

時雨「…………はあ」

夕立「? 時雨、どうかしたっぽい? ため息なんかついてらしくない」

時雨「大丈夫だよ、なんでもないから。それより夕立、ちょっとあそこ見てくれるかな」クイッ

夕立「なにー? ……席が空くのを待ってる人が、結構いるっぽい?」

時雨「うん。今日は他所から来た人たちも、ここを使ってるからね。仕方ないんじゃないかな」

時雨「でもあんまり待たせるのもあの人たちに悪いから、お喋りはこのくらいにして食べるのに集中しようか」

夕立「は~い。 お喋りは寮に帰ってからっぽい」パクパクムシャムシャ





 時雨たちから少し離れた席


モブA「……が…………なんで……ぽいとか……」チラチラ ヒソヒソ

モブB「……似たもの……だって……おかしい……ぽい!……」クスクス チラチラ




時雨「ッ! …………」ギリッ

夕立(やっぱり時雨、さっきからちょっとおかしいっぽい。何かあったのかな?)

488: 2014/07/25(金) 21:41:32.79 ID:bJM6S6QYo

駆逐艦寮  時雨・夕立の部屋

二段ベッド下段  カーテン内



時雨(なんで僕はあんなことで、こうも苛ついているんだ。ああいう手合には慣れてるはずなのに)

時雨(でも……、艦娘になってこの鎮守府に来てからは、こういう事はあまりになかったな)

時雨(ここは、ひどく居心地がいい……)

時雨(今日はこのまま寝ちゃおうかな? あんなこと、明日になればきっと忘れられる……)

夕立「しーぐーれっ!」ニョキ

時雨「うわあっ! ……夕立、カーテンの隙間から首だけ出してこないでよ。びっくりしたじゃないか」

夕立「食べてすぐ横になってると、牛になるっぽい?」

時雨「……その理屈通りなら、僕より普段の夕立の方が先に牛になるんじゃないかな?」

夕立「モーモーっぽい!」

時雨(可愛い)

489: 2014/07/25(金) 21:42:26.44 ID:bJM6S6QYo

夕立「……ねえ時雨、出てきて少しお話しよ?」シャー

時雨「確認も取らずにベッドのカーテンを勝手に開けてしまうのは、あまり感心しないよ、夕立。僕は構わないけど、他の人にはしないようにね」

夕立「大丈夫。こういうことは、時雨にしかやらないっぽい!」

時雨「……それは光栄に思うべきか、むしろ蔑ろにされてると嘆くべきか、ちょっと判断に迷うな」

夕立「もし本気で言われてるなら夕立、ちょっとへこむっぽい……」

時雨「もちろん冗談だよ。君がそんな子じゃないことくらい、僕はちゃんと知っているから」

時雨「……でもごめん、夕立。僕は思いの外、疲れてるみたいなんだ。出来ればお喋りの続きは明日にしてくれると嬉しいな」

夕立「でも明日じゃ、きっと遅いっぽい……」ショボーン

時雨「? 何か急ぎの用事でもあるの?」ムクリ

夕立「そうじゃなくって、ううん、そうなんだけど……。明日になってからだと、きっと時雨は、はぐらかして教えてくれないっぽい」

時雨「……夕立。君が何を言ってるか、僕にはよく分からないよ」

夕立「嘘。晩ご飯の時、時雨、ちょっとおかしかったっぽい。 何でそうだったのか、夕立にはよく分からなかったけど……」

時雨「…………」

490: 2014/07/25(金) 21:43:18.67 ID:bJM6S6QYo

夕立「時雨って、夕立よりずっと大人っぽいし真面目だから、いつも一人で何でも抱え込んじゃってる」

時雨「……うん」

夕立「それがいけないって言いたいわけじゃないの。時雨がそのほうが楽なら、そのままでもいいっぽい。でもね――」



時雨(夕立、君は……)

夕立「――悲しんでたり悩んでる時雨を見てるだけなのは、夕立、嫌っぽい」



時雨「本当に、優しい子だね……」ボソッ


夕立「だからね、あのね。お節介さんかもだけど、たまには夕立に相談してみたらどうかな~って思ったっぽい……」

時雨「…………」

夕立「…………」ドキドキ

時雨「……そうだね。たまには、いいかもしれない」ニコッ

夕立「!! うん! たまにはいいっぽい!」パァー

時雨「でも、聞いてもあまり面白くない話だよ?」

夕立「大丈夫! 夕立におまかせっぽい!」キラキラ

491: 2014/07/25(金) 21:44:52.14 ID:bJM6S6QYo

時雨「……ということがあったんだ、晩ご飯の時に」

夕立「そっか……。でも、ちょっと意外っぽい」

時雨「意外? 何がだい?」

夕立「時雨が、そういう人たちの言うこと気にしてることがっぽい。時雨、結構マイペースなところがあるから」

時雨「ひどいな夕立。僕だって傷つきやくて繊細な十代の女の子だよ? 高価な髪飾りみたく優しく扱ってほしいな」

夕立「時雨は鋼鉄製の髪飾りっぽい!」

                                 ダイヤモンド
時雨「……硬い材料で作られてるにしても、出来れば 金剛石 とかにして欲しかったよ」

夕立「それは金剛さんの石だから取っちゃダメっぽい? きっと比叡さんが怒るっぽい?」

時雨「なるほど、一理あるね。確かに金剛のお茶会にお呼ばれするたびに、彼女に睨まれるのは嫌だな」

夕立「時雨のお菓子だけ、カレー味っぽい?」

時雨「夕立、比叡の名誉の為に言っておくけど、彼女はカレーを嫌がらせの為に作ってる訳じゃないよ」

時雨「提督やみんなに喜んで貰いたくて、愛情を込めて作ってるんだ」

夕立「……愛情は最高の調味料じゃないっぽい?」

時雨「何事も物には限度があると言うことさ、夕立。またひとつ、大人の階段を登ったね」

夕立「夕立がその階段を登り切るのは、まだずっと先っぽい……」

時雨「いいんじゃないかな? 自分で言うのもなんだけど、実際僕たちはまだ花も恥じらう乙女な年頃さ。大人になるにはまだ少し早いよ」

時雨「――たとえ深海悽艦との戦いに、短い青春を捧げているとしてもね」

492: 2014/07/25(金) 21:46:14.56 ID:bJM6S6QYo
立「……戦いは大変だけど、夕立、ここでの暮らしけっこう気に入ってるっぽい!」

時雨「それは奇遇だね、夕立。僕もだよ」ニコッ



夕立「……ふふっ」ニコッ

時雨「どうかした?」

夕立「時雨、元気になったっぽい」

時雨「……うん、そうだね。もう、いつもの僕だ」

夕立「やっぱり時雨は、僕って言ってるのが似合ってるっぽい!」

時雨「ありがとう。僕も君のその語尾、嫌いじゃないよ。時々、本来の意味で言ってるのか、ただ癖で言ってるのか一瞬迷う時があるけどね」

夕立「……文章問題っぽい?」

時雨「君のルームメイトの僕としては、そのテストじゃ満点を取らないといけないな」

夕立「そしたら夕立、時雨に花丸あげるっぽい!」

時雨「素敵なご褒美をもらえるよう、頑張るよ。……お喋りをしていたら消灯時間が近づいてきた。さあ、パジャマに着替えておいでよ、夕立」

夕立「は~いっぽい!」トコトコトコ

時雨「……」

493: 2014/07/25(金) 21:47:32.71 ID:bJM6S6QYo

時雨(……さっきまでの憂鬱は、どこに行ってしまったんだろう?)

時雨(君に話を聞いてもらっただけなのに……。僕はずいぶん単純な女の子かもしれないなあ)

時雨(でもいいんだ、そんなことは。重要じゃない)チラッ

夕立「♪~」

時雨(僕って言ってるのが似合ってるっぽい、か……)

時雨(明日はきっと、僕は『僕』のまま。君も、変わらないままだと思う)

時雨(でも……三年先、五年先にはたぶん、いやきっとかな? 今の僕たちから卒業する日が来る)

時雨(正直なところ、そんな先のこと想像もつかない。明日にも深海悽艦との戦いで、この部屋に帰ってこられないかもしれないのに)

時雨(でもね、これだけは確かに思うんだ)

時雨(僕が『僕』でなくなる時、君が君の口癖を言わなくなる時)

時雨(そのきっかけは、今日起こったような取るに足らないような、つまらない出来事じゃなくって)

時雨(もっと素敵で、幸せなことであったらいいなって……)

時雨(人に面と向かって話したら笑われてしまうかもしれないけど、構うもんか)

時雨(花も恥じらう乙女な年頃の女の子には、ひどく素敵で身勝手な夢を見る権利ぐらいあるはずさ……)


夕立「ねー、時雨はまだパジャマに着替えないでいいっぽいー?」

時雨「……そうだね。今いくよ、夕立」



   




                                           ~おしまい~

494: 2014/07/25(金) 21:49:13.65 ID:bJM6S6QYo
以上で終了します。

コミカルなシーンとシリアスなシーンを両方楽しんでいただけるように意識して書きました。
コピペを一部失敗してしまったのが、ちょっと悔しかったですw

引用: 艦これSS投稿スレ2隻目