1: 2014/01/26(日) 21:56:28 ID:lY/X.5jk
鬱注意。53話までネタバレあり、ベルアニ要素少し

2: 2014/01/26(日) 22:04:09 ID:lY/X.5jk

ベルトルト「(明日はいよいよ配属決定の日だ…)」

ベルトルト「(3人で憲兵になるつもりだったけど…エレンの巨人化の件は気になる…)」

ベルトルト「…にしても、遅いなあ…アニ」

アニ「待たせたね」

ベルトルト「うわあ!びっくりした、いるなら声をかけてよアニ」

アニ「…今来たんだよ」

ベルトルト「あ、ああ」

アニ「ライナーは?」

ベルトルト「いつもの通りだよ。俺は調査兵団に行く!って言ってた」

ベルトルト「『君は戦士だろ?』って声をかけたけど、戻らなくて…人が集まってきたから僕一人で来た」

アニ「そうかい…」

進撃の巨人(34) (週刊少年マガジンコミックス)

3: 2014/01/26(日) 22:13:04 ID:lY/X.5jk


ベルトルト「…所属兵団のことなんだけど…」

アニ「エレンを見張る人間が必要だ。あんた達二人は調査兵団に行きな。私は予定通り憲兵団に行く」

ベルトルト「一人で大丈夫?」

アニ「単独行動なら私が一番得意だよ。それにライナーのそばにはあんたがついていないと」

ベルトルト「うん…」

アニ「…ねえ」

ベルトルト「何?」

アニ「ライナーの奴、いつからあんな感じなの?」


4: 2014/01/26(日) 22:20:33 ID:lY/X.5jk


ベルトルト「気づいたのは訓練兵になってしばらくしてからだよ。最初は何を言ってるのかと思ったけど…」

アニ「何とかする手立てはないの?」

ベルトルト「…難しいと思う」

アニ「…兵士ライナーと、戦士ライナー、か…」

ベルトルト「そもそもいつから人格が別れていたのか、人格は二人だけなのか、主人格はだれなのか」

ベルトルト「僕にはわからないんだ…」

アニ「どういうこと?」


5: 2014/01/26(日) 22:26:33 ID:lY/X.5jk


ベルトルト「多重人格っていうのはね、耐え難い苦しみを味わった時に、ダメージを抑えて生き延びる術なんだ」

ベルトルト「ひどい恐怖を味わったり、大切な人を失ったりした時に」

ベルトルト「こんな苦しみを受けているのは自分ではない、自分には何も起きていない」

ベルトルト「そうやって苦痛を回避しようとして、苦しみを別人格に任せてしまうんだよ」

アニ「ってことは…」

ベルトルト「たぶん、皆の兄貴分っていうのがライナーの本当の性格に近いんだと思う」

ベルトルト「でも、壁を壊して多くの人の命を奪った時に、あるいはその任務を負った時から」

ベルトルト「罪の意識に耐えきれなくて、人格を分裂させていった」

アニ「…」


6: 2014/01/26(日) 22:35:50 ID:lY/X.5jk

ベルトルト「ひょっとしたら本当の人格は任務を負った時から眠っていて、兵士も戦士も副人格かもしれない」

アニ「このままじゃ任務に支障がでる。それじゃ故郷にも帰れない」

アニ「兵士の方を消してしまうっていうことはできないの?…その、そっちの人格の時に刺してしまうとか」

アニ「兵士の方は自分が巨人だということも忘れてるみたいだし…」

アニ「刺されて氏んだと思いこんでいなくなるんじゃない?」


7: 2014/01/26(日) 22:47:04 ID:lY/X.5jk


ベルトルト「それをすると、戦士の方の精神にダメージがいくよ。戦士の方は兵士の方を知ってるみたいだし」

ベルトルト「自分の中のもう一人の自分が、刺されて氏んでいく姿を見てしまったら…」

ベルトルト「戦士の方も壊れてしまう…」

アニ「そうか…こっちの医者に見せることもできないしね」

ベルトルト「幸いなことに、任務以外の記憶は共有出来てるみたいだし、周りに疑われることもない」

ベルトルト「一刻も早く故郷に帰って、医者に見せるのが一番の近道だと思う」


9: 2014/01/26(日) 22:56:27 ID:lY/X.5jk


アニ「ベルトルト、あんた、何やってるの?」

ベルトルト「え?ライナーの話だけど」

アニ「そうじゃなくて…ベルトルト、しっかりしてよ。あんたまで…」

ベルトルト「何を言ってるんだアニ、僕は…」

アニ「ベルトルト…ベルトルト!!」

ベルトルト「…アニ?」


13: 2014/01/26(日) 23:10:01 ID:lY/X.5jk


ベルトルト「…あ、あれ、アニ…いつからそこに?」

アニ「今来たんだよ」

ベルトルト「あ、ああ」

アニ「ライナーは?」

ベルトルト「いつもの通りだよ。俺は調査兵団に行く!って言ってた」

ベルトルト「『君は戦士だろ?』って声をかけたけど、戻らなくて…人が集まってきたから僕一人で来た」

アニ「そうかい…」


14: 2014/01/26(日) 23:15:13 ID:lY/X.5jk

(一応、精神医学という言葉は19世紀頭にはありました。18世紀後半から徐々に興っていたようです)
(注射器の登場が1850年代なので、進撃世界は精神科もぼちぼちあるかな、と)

19: 2014/01/26(日) 23:21:13 ID:lY/X.5jk


アニ「あんたも、大丈夫じゃなさそうだね」

ベルトルト「僕…どうなってた?」

アニ「…座ったままこの木に一人でぶつぶつ話しかけてた」

ベルトルト「…そうか…また、出ちゃった」

アニ「…」

ベルトルト「アニ、その手首は…!?」

アニ「この傷かい?最近、私も幻聴がひどくてさ…」

アニ「さっきもあんまりひどかったから、つい、ね。おかげですこし落ち着いた」

ベルトルト「それで遅かったのか…」

アニ「巨人の修復力もありがたいもんだね」

ベルトルト「皮肉な話だね」


22: 2014/01/26(日) 23:29:23 ID:lY/X.5jk


アニ「…私達は、いつまで『私達』でいられるんだろうね」

ベルトルト「…僕にだってわからないよ。」

アニ「壊れる前に任務を終わらせられなければ、奇行種になって彷徨うことになる」

ベルトルト「そうなる前に、帰ろう。故郷に…」

アニ「こっちに来てから、お父さんの夢をよく見るようになった」

アニ「『俺が間違っていた。力の代償として、お前がこんなになると知っていたら…』って」

ベルトルト「お父さんは、そんなことを…」


27: 2014/01/26(日) 23:38:27 ID:lY/X.5jk


アニ「…いっそのこと、氏んだ方が楽かもね…」

ベルトルト「アニ、もう少し、もう少しだから…」

アニ「…」

ベルトルト「君は一人じゃない。壊れそうになったら、僕の事を思い出してよ」

アニ「ベルトルト…」

ベルトルト「君が壊れてしまっても、僕がきっと、助けに行くから」

アニ「…うん」


31: 2014/01/26(日) 23:49:48 ID:lY/X.5jk

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ライナー「ユミル…何で俺達の所に来た?」

ユミル「ああ…そりゃ、私が馬鹿だからだな」

ユミル「里帰りのお土産になってやってんだよ。手ぶらじゃお前ら帰ってくれねえだろ」

ライナー「このまま故郷に行けばお前はまず助からないんだぞ…?逃げるなら…今だ」

ユミル「…何言ってんだバカ野郎。私はもう疲れた」

ベルトルト「ユミル…君はいつから症状があるんだい?」


33: 2014/01/26(日) 23:54:51 ID:lY/X.5jk


ユミル「人間に戻って、しばらくしてからかな…」

ユミル「最初は、突然何かを思い出したみたいに、映像が見えたんだ」

ユミル「でも、すぐに何を見たのかも忘れてしまって…」

ユミル「それがだんだん回数が増えて、見ているものもはっきりしてきた」

ユミル「そのうちに、幻聴も聞こえるようになっていった…」

ライナー「俺とは症状が違うんだな」

ベルトルト「どっちかっていうと、ライナーの症状の方が特殊みたいだよ」

ユミル「…お前は幻覚がない代わりに分裂したのか」

ライナー「…そうらしいな」


36: 2014/01/27(月) 00:02:52 ID:PPgRFm.Q


ユミル「…幻聴にうなされて眠れずに宿舎を飛び出した私を、ヒストリアだけが追いかけてきてくれた」

ユミル「あいつは…何も言わず、何も聞かず、ただそっと、私を抱きしめてくれた」

ユミル「お前らにはわからないだろ?こんな人間だと知っても優しく笑ってくれるんだぜあいつは…」

ライナー「…」

ユミル「最初は、あいつに近づいて壁教に接触すれば、元に戻ることができないかと思った」

ユミル「そのうちに…私はあいつの首を引きちぎって食らう幻覚を見るようになったんだ」

ユミル「お前らと違って、私は無知性として過ごした60年がある」

ユミル「完全に自我を失ってしまうのも遠くない」

ユミル「だからあいつを憲兵団に送って、私はあいつの元から去ろうとしたのに…あいつ調査兵団に来ちまった」


38: 2014/01/27(月) 00:07:54 ID:PPgRFm.Q


ライナー「もう一度聞くぞ。お前はこのままこっちに来てもいいのか」

ユミル「言ったろ。私は60年、冷めない悪夢を見続けていた。今もそれが続いてる」

ユミル「今壁内に帰ったら…裏切り者として処分されるか…」

ユミル「そうでなくとも、そのうちに自我を失って…ヒストリアに襲いかかりかねない」

ユミル「私はもう疲れた。もういいんだよ…もう」

ユミル「私は…お前らに借りた物を返す。お前らの境遇を知ってるのは私だけだしな…」

ベルトルト「…ありがとう、ユミル…すまない」


39: 2014/01/27(月) 00:11:15 ID:PPgRFm.Q


ライナー「エレンの奴も、そろそろ症状が頻繁になるんじゃないのか…?」

ベルトルト「エレンは、こっちの医者にかかることができるし、僕達よりはまだマシだよ」

ユミル「…それでも、根本的な解決にはならない」

ユミル「(エレンが壊れるまでに人類が勝利しなければ…)」

ユミル「…おい、お前ら」

ライナー「何だ」

ユミル「土産になってやるかわりに、ヒストリアだけは、必ず救い出せ」

ライナー「…俺達が、壊れるまでに決着がつけばな」


41: 2014/01/27(月) 00:13:26 ID:PPgRFm.Q

~~~~~~~~~~~~~~~

エレン「(父さん…今頃どこに…どこかで生きているのか…?それとも…)」

エレン「…っ!?」

エレン「(ヒストリア?イヤ違う…これは記憶?…いつの?)」

エレン「(あ…だめだ…また…これ以上は…)」

エレン「う…」

ミカサ「まだ体が弱ってる。無理しないで」


42: 2014/01/27(月) 00:16:58 ID:PPgRFm.Q


エレン「あ…あぁ…」

エレン「(あれ…?なんだっけ?)」

ミカサ「エレン…」

エレン「どうなってるんだ…オレ…」

ミカサ「エレン、あなたは一人じゃない。壊れそうになったら、私の事を思い出して」

エレン「ミカサ…」

ミカサ「あなたが壊れてしまっても、私がきっと、助けに行くから-」




~END


43: 2014/01/27(月) 00:19:00 ID:PPgRFm.Q

鬱なだけの話な上、色々お粗末ですんませんでした


精神科疾患は差別されがちですが、苦しんでいる人がたくさんいます。
絶望して自氏を選ぶ人もいます。

メンヘライナーとかネタにされがちですが、時々でいいのでこの事を思い出してほしいな…
と思って書いてしまいました

引用: ベルトルト「力の代償」