286: 2014/01/19(日) 21:44:11 ID:qBIb8OP.

前回:ミカサ「あやかし奇譚、雪ノドウ─ゆきのどう─」


287: 2014/01/19(日) 22:44:35 ID:LT7CtEl2
【其の十七、ぬっぺふほふ】

歩いていると、「もしもし」と背後から話し掛けられた。

振り向いてみると。


何かが、いた。


何かとは何なのか、と思われるかもしれないが、これは“何か”としか言い様がない。

頑張ってその姿を言い表してみると、

顔のようなものから、短い手足が生えている。

目や耳といった生物とって欠かせない体の一部は無い。
皺のようなものが、表情を作っていた。
進撃の巨人(34) (週刊少年マガジンコミックス)

288: 2014/01/19(日) 22:45:39 ID:LT7CtEl2
ミカサ「……?」

何も言えずに“何か”の姿を見つめていると、それは口に当たるであろう部分の皺をもぞもぞと動かした。

すると、なんと、驚くことに声が発せられたのだ。

「あなたにお聞きしたいことが」

ミカサ「……えっと、……はい、何だろうか」

色々とお聞きしたいのはこちらの方だが、とりあえず、まずはそちらの話から聞いてみることにした。

それは、「ありがとうございます」と言い、その後に「わたくし、ぬっぺふほふと申します」と自己紹介をしてくれた。

……ぬっぺふほふ。
確か、名前が判明しているだけでその正体は全くの謎のあやかしだ。

確かに、謎である。

289: 2014/01/19(日) 22:48:28 ID:LT7CtEl2
ぬっぺふほふ「わたくしの家はどこか知りませんか」

ミカサ「……い、家?」

ぬっぺふほふ「はい、寂れた院でして。散歩をしているうちに、お恥ずかしながら迷ってしまったのです」

そう言われても、住んでいる本人が分からないというのに、私が分かるはずがない。

正直に「知らない」と頭を振ってみせると、ぬっぺふほふは「そうですか」と落ち込んだ。

しかし、帰る場所が分からないというのはとても困るはず。

と、いうことで、私は「ついてきて」と言って、とある場所へと歩を進めた。

こういう時に頼りになるのは、彼しかいない。

290: 2014/01/19(日) 22:49:20 ID:LT7CtEl2


鳴釜「家探しか」

やって来たのは調理場の、鳴釜がいる場所だ。

こういう時は蝨潰しに探すよりも鳴釜に占ってもらった方が早いし、確実だ。

鳴釜は私とぬっぺふほふを交互に見て、「どうせ暇だからやってやろう」と言ってくれた。

その言葉に安堵した私だが、それ以上に喜んだのはぬっぺふほふだ。

「ありがとうございます」と何度もお礼を言いながら、体をぐにゃりと曲げてお辞儀のような姿勢になる。

その体の作りがどうなっているか、気になるところだ。

鳴釜「……。では、始めよう」

鳴釜もぬっぺふほふのお辞儀(のような姿勢)に思うところがあったようだが、何も突っ込まずに木の板(後にそれは絵馬というものだと教わった)を取り出した。

291: 2014/01/19(日) 22:50:10 ID:LT7CtEl2
鳴釜がそれをおもむろに振り出す。
占いが始まった合図だ。

私とぬっぺふほふは何も発言せずに、その様子をじっと見つめる。

……そして、待つことに数十秒。

結果が出たのか、鳴釜が顔を上げた。

鳴釜「ここから東北東に向かって歩けば、自ずと辿り着くだろう」

ぬっぺふほふ「ありがとうございます。そういえば、そちらの方角から来たような気がしてきました」

鳴釜「……、そ、そうか」

鳴釜の思っていることが、何となくではあるが伝わってくる。ような気がする。

ぬっぺふほふ「ところでなんですが」

ミカサ「何?」

ぬっぺふほふ「東北東とは、どちらでしょうか?」

分かっている、突っ込んだら負けだ。

292: 2014/01/19(日) 22:53:38 ID:LT7CtEl2



さて、その後、ぬっぺふほふにはちゃんと方角を教えてやり、帰した。

ぬっぺふほふは何かお礼をしたいと言っていたが、あれ以上ここにいられると、疲れてしまいそうなので、帰ってもらった。

鳴釜は、ただでさえ占いで神経を使ったというのに、ぬっぺふほふの相手をして更に疲れたらしく、もう眠ってしまっている。

彼が眠りにつく直前、言った言葉が忘れられない。

鳴釜「確かに何かあったら呼ぶといいと言ったが、もうあいつの相手だけは御免だからな」


終わり
其の十八に続く?

294: 2014/01/19(日) 23:00:33 ID:qBIb8OP.
続ききた。ぬっぺふほぷ初めて知った。突っ込みしたくなるな。乙。

引用: ミカサ「あやかし奇譚」