277: 2013/05/01(水) 08:47:24.50 ID:FNRuNnzKP
おはよう!
前回:魔王「私が勇者になる……だと?」【4】
前回:魔王「私が勇者になる……だと?」【4】
278: 2013/05/01(水) 09:31:39.53 ID:FNRuNnzKP
魔王(中庭か……荒れ放題だよな、確か)
魔王(鴉が昔、手入れしていたのは知ってるが……親父が氏に)
魔王(あいつが城を出てからは……)スタスタ
姫「ねえ、魔王!」
魔王「何だ? ……余り走るな」
姫「え?」
魔王「……今更だし、私が言うのもおかしいが」
魔王「妊婦の自覚をだな」
姫「ふふ……本当におかしいわね」
魔王「解ってるって……で、どうした?」
姫「この庭、弄っても良い?」
魔王「ん?ああ……好きにすれば良い、が」
姫「解ってる。無理はしないわ」
魔王「……なら、良い」
姫「ありがとう! ……暇で仕方なかったのよ」
魔王(鴉が昔、手入れしていたのは知ってるが……親父が氏に)
魔王(あいつが城を出てからは……)スタスタ
姫「ねえ、魔王!」
魔王「何だ? ……余り走るな」
姫「え?」
魔王「……今更だし、私が言うのもおかしいが」
魔王「妊婦の自覚をだな」
姫「ふふ……本当におかしいわね」
魔王「解ってるって……で、どうした?」
姫「この庭、弄っても良い?」
魔王「ん?ああ……好きにすれば良い、が」
姫「解ってる。無理はしないわ」
魔王「……なら、良い」
姫「ありがとう! ……暇で仕方なかったのよ」
279: 2013/05/01(水) 09:40:49.99 ID:FNRuNnzKP
魔王「土いじりなぁ……楽しいか?」
姫「楽しいわよ? ……手伝う?」
魔王「……遠慮しとく、と言いたいが、私も今のところ暇だな」
魔王「力仕事もあるだろう……良し。何からやる?」
姫「やった! ……でも、そうね……荒れ放題だし……」
姫「どこから……うーん」
魔王「ふむ……形から整えるか」
姫「うん、そうね……じゃあ、割れてるレンガとか除けて……」
魔王「枯れたままの奴は抜いてしまった方が良いな……殆ど無いが」
姫「昔は綺麗だったんでしょうね。広いし……装飾とか見てると」
姫「手を掛けてたんでしょうし……」
魔王「鴉がなんかこそこそやってたな」
姫「……」
姫「楽しいわよ? ……手伝う?」
魔王「……遠慮しとく、と言いたいが、私も今のところ暇だな」
魔王「力仕事もあるだろう……良し。何からやる?」
姫「やった! ……でも、そうね……荒れ放題だし……」
姫「どこから……うーん」
魔王「ふむ……形から整えるか」
姫「うん、そうね……じゃあ、割れてるレンガとか除けて……」
魔王「枯れたままの奴は抜いてしまった方が良いな……殆ど無いが」
姫「昔は綺麗だったんでしょうね。広いし……装飾とか見てると」
姫「手を掛けてたんでしょうし……」
魔王「鴉がなんかこそこそやってたな」
姫「……」
280: 2013/05/01(水) 09:50:04.25 ID:FNRuNnzKP
魔王「……そんな顔をするな。終わった事だ」
姫「……ええ、でも……」
魔王「鴉はな、若い頃はなかなか良い女だったらしい」
姫「……?」
魔王「親父が婚姻を結ぶ前は、そりゃあもう激しくせまられたそうだ」
姫「へぇ……」
魔王「私の母を見初めた後はおとなしくなったらしいがな。ジジィが良く自棄酒に付き合わされたとぼやいてた」
姫「ふふ……」
魔王「黙ってりゃ良い女なのに、口を開いたら最後……喧しくて叶わん、ともな」
姫「お父様は……大人しい人が好みだったのかしら」
魔王「さあな。目が覚めたら裸の鴉が上に乗ってた時は」
魔王「……危なかったとか言ってたが」
姫「……男ってやあね」
魔王「耐えたんだから褒めるべきだろ、そこは」
魔王「でもまあ、婚姻の後は母と鴉はとても仲が良かったらしいぞ?」
魔王「……女の方が良くわからん、さ」
姫「……ええ、でも……」
魔王「鴉はな、若い頃はなかなか良い女だったらしい」
姫「……?」
魔王「親父が婚姻を結ぶ前は、そりゃあもう激しくせまられたそうだ」
姫「へぇ……」
魔王「私の母を見初めた後はおとなしくなったらしいがな。ジジィが良く自棄酒に付き合わされたとぼやいてた」
姫「ふふ……」
魔王「黙ってりゃ良い女なのに、口を開いたら最後……喧しくて叶わん、ともな」
姫「お父様は……大人しい人が好みだったのかしら」
魔王「さあな。目が覚めたら裸の鴉が上に乗ってた時は」
魔王「……危なかったとか言ってたが」
姫「……男ってやあね」
魔王「耐えたんだから褒めるべきだろ、そこは」
魔王「でもまあ、婚姻の後は母と鴉はとても仲が良かったらしいぞ?」
魔王「……女の方が良くわからん、さ」
290: 2013/05/02(木) 08:51:26.97 ID:KuJVE0jsP
姫「貴方はどうなの、魔王」
魔王「どう、とは?」
姫「……好み?」
魔王「……何故、そんな事を聞く?」
姫「なんとなく……話の流れ的に?」
魔王「……気になるのか?」
姫「どうかな……別に、言いたくないなら構わないわ」
魔王「……考えた事も無かったな」
姫「え?」
魔王「確かに、タイプと言うのはあるんだろうが、それが100%でもあるまい?」
姫「それは……まあ」
魔王「ああ、と気が付いた時には落ちているものさ」
姫「……」
魔王「……なんだその顔は」
姫「良く、まあ……恥ずかし気も無くそんな事言うわね……」
魔王「どう、とは?」
姫「……好み?」
魔王「……何故、そんな事を聞く?」
姫「なんとなく……話の流れ的に?」
魔王「……気になるのか?」
姫「どうかな……別に、言いたくないなら構わないわ」
魔王「……考えた事も無かったな」
姫「え?」
魔王「確かに、タイプと言うのはあるんだろうが、それが100%でもあるまい?」
姫「それは……まあ」
魔王「ああ、と気が付いた時には落ちているものさ」
姫「……」
魔王「……なんだその顔は」
姫「良く、まあ……恥ずかし気も無くそんな事言うわね……」
291: 2013/05/02(木) 09:03:17.88 ID:KuJVE0jsP
魔王「お前が聞いたんだろう」
姫「……」
魔王「……姫?」
姫「大丈夫、なの」
魔王「……何がだ?」
姫「毎日遅く迄何かやってるでしょう?あんまり……寝てない様だし」
魔王「……」
姫「ねえ、魔王……貴方……!」
魔王「大丈夫だ、姫。何も気にする事は無い」
姫「……」
魔王「過激派も居なく……否。目立った魔族も、だな。幹部に近いものは」
魔王「……ほぼ、居なくなった。そもそもが少数精鋭だ。魔王軍等と言うにも烏滸がましい」
姫「それだけ……力が強い、と言う事……」
魔王「まあ、それは確かだ。と言うか私が居ればな」
姫「貴方は規格外ですもの」
魔王「久々に聞いたな、それ……」
魔王「……とにかく、だ。そもそも私一人でも問題は無いのだ」
魔王「加えて細々とした雑務は、側近と使用人が請け負ってくれると言う」
姫(やらせてる、て言うんだと思うけど)
魔王「……たまには、好きな事したいだけだ」
魔王「寝る間も惜しんで、な」
姫「……」
魔王「……姫?」
姫「大丈夫、なの」
魔王「……何がだ?」
姫「毎日遅く迄何かやってるでしょう?あんまり……寝てない様だし」
魔王「……」
姫「ねえ、魔王……貴方……!」
魔王「大丈夫だ、姫。何も気にする事は無い」
姫「……」
魔王「過激派も居なく……否。目立った魔族も、だな。幹部に近いものは」
魔王「……ほぼ、居なくなった。そもそもが少数精鋭だ。魔王軍等と言うにも烏滸がましい」
姫「それだけ……力が強い、と言う事……」
魔王「まあ、それは確かだ。と言うか私が居ればな」
姫「貴方は規格外ですもの」
魔王「久々に聞いたな、それ……」
魔王「……とにかく、だ。そもそも私一人でも問題は無いのだ」
魔王「加えて細々とした雑務は、側近と使用人が請け負ってくれると言う」
姫(やらせてる、て言うんだと思うけど)
魔王「……たまには、好きな事したいだけだ」
魔王「寝る間も惜しんで、な」
292: 2013/05/02(木) 09:07:34.74 ID:KuJVE0jsP
姫「……子供みたい」
魔王「そうだな……その通りだ」クス
魔王「さて……土を弄るのに素手ではな。何か道具を探してこよう」
魔王「姫はここに居ろ」スタスタ
姫「ええ……」
姫「……」
姫(嘘が下手ね、魔王……)
姫(このペンダントがあるから……平気だけど)
姫(それでも……感じるのよ)
姫(魔王の力は、どんどん強くなってる。溢れそう……)
姫(……何時迄も、ここにはいられない……!)
……
………
…………
魔王「そうだな……その通りだ」クス
魔王「さて……土を弄るのに素手ではな。何か道具を探してこよう」
魔王「姫はここに居ろ」スタスタ
姫「ええ……」
姫「……」
姫(嘘が下手ね、魔王……)
姫(このペンダントがあるから……平気だけど)
姫(それでも……感じるのよ)
姫(魔王の力は、どんどん強くなってる。溢れそう……)
姫(……何時迄も、ここにはいられない……!)
……
………
…………
295: 2013/05/02(木) 16:40:56.83 ID:KuJVE0jsP
船長「本当にここで良いのか」
側近「ああ、あの光……北の街だろう」
船長「……もうすぐ陽も登るだろう。それまで船に居ても良いんだぜ?」
側近「陸が恋しいのさ」
船長「……酔うからだろ。格好つけやがって」
側近「せ、折角早く着いたんだ。早く出発出来る方が良いだろ!?」
船長「はいはい……お言葉に甘えるさ」
側近「おう……気をつけてな」
船長「お前こそ……じゃあな」
ヨシ!フネダスゾー!
アイアイサー!
側近「またなー!」
側近「……さて、と」クルッ
側近(あっちのあれが……北の塔、か)
側近(確かに……天辺、雲に隠れて見えねえな)
側近「つか、あれ……自力で登る……んだよな」
側近「ああ、あの光……北の街だろう」
船長「……もうすぐ陽も登るだろう。それまで船に居ても良いんだぜ?」
側近「陸が恋しいのさ」
船長「……酔うからだろ。格好つけやがって」
側近「せ、折角早く着いたんだ。早く出発出来る方が良いだろ!?」
船長「はいはい……お言葉に甘えるさ」
側近「おう……気をつけてな」
船長「お前こそ……じゃあな」
ヨシ!フネダスゾー!
アイアイサー!
側近「またなー!」
側近「……さて、と」クルッ
側近(あっちのあれが……北の塔、か)
側近(確かに……天辺、雲に隠れて見えねえな)
側近「つか、あれ……自力で登る……んだよな」
296: 2013/05/02(木) 16:47:15.77 ID:KuJVE0jsP
側近「まじかよおぉ……」ガク
側近(自分で言い出したとは言え……はぁ)
側近「とりあえず……行く、か」トボトボ
側近(街……と、言うより村に近いな)
側近(宿屋に……ありゃ酒場、否、飯屋か)
側近(家が……あって……ん?)スタスタ
側近(あの家……他に比べてでかいな)
側近(こんな小さな街でも、支配者的な奴が居るんかねぇ……お、誰か出てきた)
??「見ない奴だね、アンタ」
側近「あー……船に乗って来たんだ」
??「ああ……港町から来たのか?」
側近「知ってるのか?」
??「そりゃ噂ぐらいはね……旅人かい?」
側近「まあ、そんな感じかな」
??「こんな辺鄙な街に……物好きだねぇ。アンタもあれかい。北の塔に宝でも探しに来た口だろ」
側近「……あれ、まじな話なのか?」
側近(自分で言い出したとは言え……はぁ)
側近「とりあえず……行く、か」トボトボ
側近(街……と、言うより村に近いな)
側近(宿屋に……ありゃ酒場、否、飯屋か)
側近(家が……あって……ん?)スタスタ
側近(あの家……他に比べてでかいな)
側近(こんな小さな街でも、支配者的な奴が居るんかねぇ……お、誰か出てきた)
??「見ない奴だね、アンタ」
側近「あー……船に乗って来たんだ」
??「ああ……港町から来たのか?」
側近「知ってるのか?」
??「そりゃ噂ぐらいはね……旅人かい?」
側近「まあ、そんな感じかな」
??「こんな辺鄙な街に……物好きだねぇ。アンタもあれかい。北の塔に宝でも探しに来た口だろ」
側近「……あれ、まじな話なのか?」
301: 2013/05/02(木) 22:35:43.53 ID:KuJVE0jsP
??「さあね……確かめに行った奴は確かに居るが、帰ってきた奴はいないからね」
側近「ふぅん……で、君は?」
??「え?」
側近「ここらでは……一番でかい家だろ、君が今出て来た所、さ」
側近「しかも夜明け前だ……まあ、空は白んできたけどさ」
??「汽笛が聞こえたから見に来ただけさ……こんな時間に何だと思ってね」
??「偶に船は来るけど、こんな時間はまずあり得ない……しかも」
??「来たら来たで、降りたのはアンタだけだったけどね」
側近「あー……俺、怪しい?」
??「言い訳は聞くよ?」ニヤ
側近「……別に、な。知り合いについでで乗せて貰って、下ろして貰った」
側近「それだけさ……まあ、北の塔に興味があるのは否定しないけどな」
??「ありゃ、港街に行く船か?」
側近「ああ……俺も聞いて良いかな。あの家は……この街の支配者かなにかか?」
??「あ? ……ああ。ありゃ親父の家。親父はこの街の町長さ」
側近「じゃあ……君は町長の娘?」
??「ああ。ついでにこの街の用心棒でもある」
側近「用心棒……」
??「腕には多少なりとも覚えがあるんでね……アンタは」ジロジロ
??「……あんまり強そうには見えないな」
側近「悪かったな……俺は側近、てんだ」
??「私は女剣士だ……悪い事は言わない」
女剣士「やめときな……アンタみたいな奴があそこに行ったって」
女剣士「100%生き残れないよ」
側近「ふぅん……で、君は?」
??「え?」
側近「ここらでは……一番でかい家だろ、君が今出て来た所、さ」
側近「しかも夜明け前だ……まあ、空は白んできたけどさ」
??「汽笛が聞こえたから見に来ただけさ……こんな時間に何だと思ってね」
??「偶に船は来るけど、こんな時間はまずあり得ない……しかも」
??「来たら来たで、降りたのはアンタだけだったけどね」
側近「あー……俺、怪しい?」
??「言い訳は聞くよ?」ニヤ
側近「……別に、な。知り合いについでで乗せて貰って、下ろして貰った」
側近「それだけさ……まあ、北の塔に興味があるのは否定しないけどな」
??「ありゃ、港街に行く船か?」
側近「ああ……俺も聞いて良いかな。あの家は……この街の支配者かなにかか?」
??「あ? ……ああ。ありゃ親父の家。親父はこの街の町長さ」
側近「じゃあ……君は町長の娘?」
??「ああ。ついでにこの街の用心棒でもある」
側近「用心棒……」
??「腕には多少なりとも覚えがあるんでね……アンタは」ジロジロ
??「……あんまり強そうには見えないな」
側近「悪かったな……俺は側近、てんだ」
??「私は女剣士だ……悪い事は言わない」
女剣士「やめときな……アンタみたいな奴があそこに行ったって」
女剣士「100%生き残れないよ」
302: 2013/05/02(木) 22:43:11.75 ID:KuJVE0jsP
側近「それは経験則か?」
女剣士「……いや。アタシはあそこに行ったことは無い」
側近「さっき言ってたな。帰った奴は居ないと」
女剣士「ああ。だから……やめときなよ」
側近「ああ、いやいや。そうじゃなくてさ……足はあるのか?」
女剣士「足?」
側近「行って帰ってきた奴が居ないのは知ってるんだろ?」
側近「俺が聞きたいのは、あそこへ行く方法、だ」
女剣士「……だから、やめときな、って」
側近「君は行きたくないのか?」
女剣士「え?」
側近「腕に自信はあるんだろ……試してみようとは思わないのか?」
女剣士「……アタシには、この街を守る義務があるからな」
側近(否定はしない訳ね……)
女剣士「アンタ……側近、か。この街に滞在する予定は?」
側近「ん?ああ……まあ、そうだな。急ぐ旅でも無いし」
側近「船が帰っちまった以上、滞在するしかネェわな」
女剣士「……なら、すぐに解るさ」
側近「……?」
女剣士「まあ、良い……忠告はしたからね」
女剣士「アタシは朝の見回りに行くよ……宿は空いてるはずだ」
側近「あ、ああ……」
女剣士「開いてなければ、親父に言いな……ま。暫く起きてこないと思うけど」スタスタ
側近「あ、ちょ……」
側近(行っちゃった……か)
側近(ふむ……どうするかな。取りあえず……宿行ってみるか)
女剣士「……いや。アタシはあそこに行ったことは無い」
側近「さっき言ってたな。帰った奴は居ないと」
女剣士「ああ。だから……やめときなよ」
側近「ああ、いやいや。そうじゃなくてさ……足はあるのか?」
女剣士「足?」
側近「行って帰ってきた奴が居ないのは知ってるんだろ?」
側近「俺が聞きたいのは、あそこへ行く方法、だ」
女剣士「……だから、やめときな、って」
側近「君は行きたくないのか?」
女剣士「え?」
側近「腕に自信はあるんだろ……試してみようとは思わないのか?」
女剣士「……アタシには、この街を守る義務があるからな」
側近(否定はしない訳ね……)
女剣士「アンタ……側近、か。この街に滞在する予定は?」
側近「ん?ああ……まあ、そうだな。急ぐ旅でも無いし」
側近「船が帰っちまった以上、滞在するしかネェわな」
女剣士「……なら、すぐに解るさ」
側近「……?」
女剣士「まあ、良い……忠告はしたからね」
女剣士「アタシは朝の見回りに行くよ……宿は空いてるはずだ」
側近「あ、ああ……」
女剣士「開いてなければ、親父に言いな……ま。暫く起きてこないと思うけど」スタスタ
側近「あ、ちょ……」
側近(行っちゃった……か)
側近(ふむ……どうするかな。取りあえず……宿行ってみるか)
308: 2013/05/03(金) 10:47:12.29 ID:uw8+1Ce6P
おはよう!今日はちょっとゆっくり。
でもラストまで仕事!
でもラストまで仕事!
309: 2013/05/03(金) 10:54:44.96 ID:uw8+1Ce6P
側近(小さい宿だな……まあ、こんな立地じゃ)
側近(必要が無い……か)カチャ
側近「すみません、部屋空いてるかな」
宿屋「いらっしゃい。こんな街の宿屋が満室なんてまずありえないよ……一人かい」
側近「ああ……助かるわ」
宿屋「さっきの船に乗って来たんだろ、アンタ」
側近「ん?ああ……そうだけど」
宿屋「あ。すまん。詮索とかじゃ無いんだ。窓からアンタと、女剣士ちゃんが話してるのが見えたからな」
側近「知り合いの船にたまたま乗せて貰えたからな。ついでで降ろして貰ったのさ」
宿屋「……北の塔に行きたいのか」
側近「やっぱそう言う奴多いの?」
側近(必要が無い……か)カチャ
側近「すみません、部屋空いてるかな」
宿屋「いらっしゃい。こんな街の宿屋が満室なんてまずありえないよ……一人かい」
側近「ああ……助かるわ」
宿屋「さっきの船に乗って来たんだろ、アンタ」
側近「ん?ああ……そうだけど」
宿屋「あ。すまん。詮索とかじゃ無いんだ。窓からアンタと、女剣士ちゃんが話してるのが見えたからな」
側近「知り合いの船にたまたま乗せて貰えたからな。ついでで降ろして貰ったのさ」
宿屋「……北の塔に行きたいのか」
側近「やっぱそう言う奴多いの?」
310: 2013/05/03(金) 11:03:18.18 ID:uw8+1Ce6P
宿屋「それ以外にこんな街に用事のある奴なんざいないだろ?」
側近「……そうなんか。俺は初めて来たから良く知らんが」
宿屋「アンタもあれだろ?お宝だとか、そんな噂聞いて来たんだろ……悪い……」
側近「悪いこた言わん、やめとけ、か」
宿屋「……そう言う事」フゥ
宿屋「ここ何年もアンタみたいな奴はいなかったんだけどな」
側近「うん?」
宿屋「魔道の街だかなんだかで、大会とかやってたろ?魔法に自信のある奴は」
宿屋「そっちに興味移したんだか、なんだか……ま、めっきり減ったんだがな」
側近「……へぇ。成る程ねぇ」
宿屋「まあ、何も無いとこだがゆっくりして行きなよ……んで、おとなしく帰るこった」
宿屋「あ……夜半の外出は控えてくれよ?」
側近「へ?」
宿屋「……まあ、今夜わかるさ」
側近(さっき……女剣士も似たような事言ってたなぁ……)
側近(すぐに解る……か、なんか……?)
側近「……そうなんか。俺は初めて来たから良く知らんが」
宿屋「アンタもあれだろ?お宝だとか、そんな噂聞いて来たんだろ……悪い……」
側近「悪いこた言わん、やめとけ、か」
宿屋「……そう言う事」フゥ
宿屋「ここ何年もアンタみたいな奴はいなかったんだけどな」
側近「うん?」
宿屋「魔道の街だかなんだかで、大会とかやってたろ?魔法に自信のある奴は」
宿屋「そっちに興味移したんだか、なんだか……ま、めっきり減ったんだがな」
側近「……へぇ。成る程ねぇ」
宿屋「まあ、何も無いとこだがゆっくりして行きなよ……んで、おとなしく帰るこった」
宿屋「あ……夜半の外出は控えてくれよ?」
側近「へ?」
宿屋「……まあ、今夜わかるさ」
側近(さっき……女剣士も似たような事言ってたなぁ……)
側近(すぐに解る……か、なんか……?)
311: 2013/05/03(金) 11:22:44.91 ID:uw8+1Ce6P
宿屋「あの奥の部屋を使ってくれ。もうすぐ飯屋も開くさ。まあ、ゆっくりしなよ」
側近「ああ。ありがとさん」スタスタ
カチャ、パタン
側近(質素な部屋だ……が、清潔そうだな)ボフッ
側近(ベッドもふかふかだな)ゴロゴロ
側近(とりあえず……散策でもしてみるか)スタスタ……カチャ
側近「あれ、宿屋のおっさん居ねえ……?」
側近(外か……ん?騒がしいな)パタパタ
バサバサ…ッシュン!シュウン……!
ザク……ッ
側近「! ……ッ 痛ェ……ッ!」
側近「な、ん……!?」
側近(頬に何か……げ、血!?)バッ
側近(……あ、あれは……!)
側近「女剣士!?」
側近「ああ。ありがとさん」スタスタ
カチャ、パタン
側近(質素な部屋だ……が、清潔そうだな)ボフッ
側近(ベッドもふかふかだな)ゴロゴロ
側近(とりあえず……散策でもしてみるか)スタスタ……カチャ
側近「あれ、宿屋のおっさん居ねえ……?」
側近(外か……ん?騒がしいな)パタパタ
バサバサ…ッシュン!シュウン……!
ザク……ッ
側近「! ……ッ 痛ェ……ッ!」
側近「な、ん……!?」
側近(頬に何か……げ、血!?)バッ
側近(……あ、あれは……!)
側近「女剣士!?」
318: 2013/05/04(土) 09:05:30.67 ID:ZJKWqusSP
女剣士「側近!?」
側近「なん、これ……ッ蝙蝠!? うあ……ッ!?」ザクザクッ
女剣士「馬鹿野郎!中入ってろ! ……心配すんな、すぐに片付ける!」ブン!ザシュ!
側近「すぐに解るって、これかよ!糞……ッ ……風よ!」シュウゥ……ッ
ゴオォオォ……!
女剣士「!?」
キィイ……ッ
ギャアギャア……!
側近(……これも魔王様の目の効果か?)
側近(気、抜いたら俺迄振り回されそう……!)
女剣士「す……すげぇ……!」
キィ、キィ……
側近(半分……いや、それ以上片付いたな……残りは逃げてくか)
側近「なん、これ……ッ蝙蝠!? うあ……ッ!?」ザクザクッ
女剣士「馬鹿野郎!中入ってろ! ……心配すんな、すぐに片付ける!」ブン!ザシュ!
側近「すぐに解るって、これかよ!糞……ッ ……風よ!」シュウゥ……ッ
ゴオォオォ……!
女剣士「!?」
キィイ……ッ
ギャアギャア……!
側近(……これも魔王様の目の効果か?)
側近(気、抜いたら俺迄振り回されそう……!)
女剣士「す……すげぇ……!」
キィ、キィ……
側近(半分……いや、それ以上片付いたな……残りは逃げてくか)
319: 2013/05/04(土) 09:15:51.33 ID:ZJKWqusSP
側近(……北に。塔の方に逃げてく……のか?)
女剣士「側近、お前……!」
側近「何とかなった、か……はあ、痛い痛い……」パァア
女剣士「!?」
側近「ほら、お前もこっち来い。あちこち切れてる」
女剣士「あ、ああ……いや、アンタ……」
側近「ん?」パァ
女剣士「……傷が、消えた」
側近「すぐに解るってこの事かよ」
女剣士「……ああ。だが……普段奴らは夜にしか来ない」
側近「思いっきり明るいな、今。ああ、宿屋の親父が夜になればって言ったのは……」
女剣士「……あいつらは何時も、陽が落ちたら塔の辺りで群をなすんだ」
女剣士「そして……数が集まればこうして街を襲いにくる」
側近(蝙蝠……翼のある魔族の眷族か、野生のものか……)
側近(統率が取れている所を見ると前者と考えるのが妥当か?しかしな……)
側近(インキュバスの野郎は魔王様がブチ頃したし……ふむ)
側近(他に目立って過激派に組してた奴も……うーん?)
女剣士「……これも、魔王の復活が近い所為なのか……ッ!」
女剣士「側近、お前……!」
側近「何とかなった、か……はあ、痛い痛い……」パァア
女剣士「!?」
側近「ほら、お前もこっち来い。あちこち切れてる」
女剣士「あ、ああ……いや、アンタ……」
側近「ん?」パァ
女剣士「……傷が、消えた」
側近「すぐに解るってこの事かよ」
女剣士「……ああ。だが……普段奴らは夜にしか来ない」
側近「思いっきり明るいな、今。ああ、宿屋の親父が夜になればって言ったのは……」
女剣士「……あいつらは何時も、陽が落ちたら塔の辺りで群をなすんだ」
女剣士「そして……数が集まればこうして街を襲いにくる」
側近(蝙蝠……翼のある魔族の眷族か、野生のものか……)
側近(統率が取れている所を見ると前者と考えるのが妥当か?しかしな……)
側近(インキュバスの野郎は魔王様がブチ頃したし……ふむ)
側近(他に目立って過激派に組してた奴も……うーん?)
女剣士「……これも、魔王の復活が近い所為なのか……ッ!」
320: 2013/05/04(土) 09:19:21.92 ID:ZJKWqusSP
側近「それさぁ……俺他の街でも聞いたけど……確かなの?」
女剣士「え?」
側近「魔王の復活、て奴さ」
女剣士「……」
側近(大方、人間の不安煽って、取り入ろうとした過激派の流した噂の一人歩き……なんだろうが……)
女剣士「え?」
側近「魔王の復活、て奴さ」
女剣士「……」
側近(大方、人間の不安煽って、取り入ろうとした過激派の流した噂の一人歩き……なんだろうが……)
341: 2013/05/06(月) 23:35:52.88 ID:aNHw2PREP
女剣士「……確実とはアタシも言わない。言わないけど、さ」
女剣士「嘘だと一笑に付す理由は何処だ?」
側近「……そりゃ、まあ」
女剣士「ここは、北の大陸……魔族共の住処だと言われてる、あの最果ての地から」
女剣士「そう、離れちゃ居ない。何が起こっても不思議じゃ無い」
側近「……」
女剣士「そんな場所で産まれて育ったこの街の人は、自衛の手段だって身につけては居る」
女剣士「だが、そんなアタシ達が……そんな環境下で慣れてきたアタシ達が、だ」
側近「手を焼く状況に置かれれば、信じても不思議は無い、か」
女剣士「……そうだ」
側近「ふむ……」
女剣士「……」
側近(魔王様の力が強くなってる事に関係が無い、と言い切るのも)
側近(……これまた、おかしな話、になるのか?)
側近「北の塔は関係あるのか」
女剣士「……こればっかりは解らない。解らない……が」
女剣士「無いと言い切れないのは確かだろうな」
側近「ま、そうだわな……あの場所に群れをなす、て言ってたもんな」
女剣士「だけど……あんな場所、近づきたくも……」
側近「本当に?」
女剣士「……」
女剣士「嘘だと一笑に付す理由は何処だ?」
側近「……そりゃ、まあ」
女剣士「ここは、北の大陸……魔族共の住処だと言われてる、あの最果ての地から」
女剣士「そう、離れちゃ居ない。何が起こっても不思議じゃ無い」
側近「……」
女剣士「そんな場所で産まれて育ったこの街の人は、自衛の手段だって身につけては居る」
女剣士「だが、そんなアタシ達が……そんな環境下で慣れてきたアタシ達が、だ」
側近「手を焼く状況に置かれれば、信じても不思議は無い、か」
女剣士「……そうだ」
側近「ふむ……」
女剣士「……」
側近(魔王様の力が強くなってる事に関係が無い、と言い切るのも)
側近(……これまた、おかしな話、になるのか?)
側近「北の塔は関係あるのか」
女剣士「……こればっかりは解らない。解らない……が」
女剣士「無いと言い切れないのは確かだろうな」
側近「ま、そうだわな……あの場所に群れをなす、て言ってたもんな」
女剣士「だけど……あんな場所、近づきたくも……」
側近「本当に?」
女剣士「……」
342: 2013/05/06(月) 23:49:10.57 ID:aNHw2PREP
側近「噂を鵜呑みにしてるとは言わねぇよ。そりゃ不安だろうさ」
側近「だけど……まず、確かめるべきはあそこじゃねぇの?」
女剣士「……」
側近(ダンマリかよ……ま、仕方ない、かな)
側近「……俺は興味あるね」
女剣士「言っただろ?あそこに行った奴は居ても……帰ってきた奴は居ない」
側近「もう一回、聞く。足は?」
女剣士「……」
側近「……」フゥ
側近(俺が尋問する理由も無いんだけどな……仕方ない、夜になったら転移石で……)
女剣士「……親父の船がある」
側近「船?」
女剣士「ああ。何度か……アンタみたいな奴に、同じような事良く聞かれたよ」
女剣士「……あっちだ。家の裏手の入り江に、小さな船が泊めてある」
側近「手こぎのボートとか言わネェだろうな」
女剣士「流石にそんなんじゃたどり着く前に氏んじまうよ」
女剣士「この辺は、海の魔物の方が手強いんだ」
側近「……で、帰ってきてない奴らはどうやって行ったんだ」
側近「まさか盗んで言った訳じゃネェだろう?」
女剣士「かといって送っていってやる訳にもいかないさ。こっちの命が掛かってる」
側近「……まあ、至極ご尤も」
女剣士「親父は断り続けてた。勿論、船を出した事も無い」
女剣士「……どこからか調達してきた船で行ったんだろうさ」
女剣士「責任なすりつけられても困るしね」
側近「ふむ……まあ、親父さんが所持してるぐらいの船があれば」
側近「行ける、って事……になると考えてもおかしくは無いな」
側近「だけど……まず、確かめるべきはあそこじゃねぇの?」
女剣士「……」
側近(ダンマリかよ……ま、仕方ない、かな)
側近「……俺は興味あるね」
女剣士「言っただろ?あそこに行った奴は居ても……帰ってきた奴は居ない」
側近「もう一回、聞く。足は?」
女剣士「……」
側近「……」フゥ
側近(俺が尋問する理由も無いんだけどな……仕方ない、夜になったら転移石で……)
女剣士「……親父の船がある」
側近「船?」
女剣士「ああ。何度か……アンタみたいな奴に、同じような事良く聞かれたよ」
女剣士「……あっちだ。家の裏手の入り江に、小さな船が泊めてある」
側近「手こぎのボートとか言わネェだろうな」
女剣士「流石にそんなんじゃたどり着く前に氏んじまうよ」
女剣士「この辺は、海の魔物の方が手強いんだ」
側近「……で、帰ってきてない奴らはどうやって行ったんだ」
側近「まさか盗んで言った訳じゃネェだろう?」
女剣士「かといって送っていってやる訳にもいかないさ。こっちの命が掛かってる」
側近「……まあ、至極ご尤も」
女剣士「親父は断り続けてた。勿論、船を出した事も無い」
女剣士「……どこからか調達してきた船で行ったんだろうさ」
女剣士「責任なすりつけられても困るしね」
側近「ふむ……まあ、親父さんが所持してるぐらいの船があれば」
側近「行ける、って事……になると考えてもおかしくは無いな」
353: 2013/05/08(水) 09:29:56.98 ID:/JmhC5QFP
側近「……どの程度の船なんだ。まさか手こぎの、なんて言わないよな?」
女剣士「気になるなら自分で見に行けば良いさ」
側近「盗まれる、とか思わネェの?」
女剣士「そんなに阿呆じゃないよ。ちゃんと鍵はかけてある」
側近(あんまり聞き出すのも怪しまれるか……いや、今更か)
側近(塔に行こうとしてるのは……もうばれてるわな、多分……ん?)
女剣士「……」ジィ
側近「な……なんだよ」
女剣士「悪かったな。強そうに見えないなんて言って」
側近「いや、そりゃ別に構わネェけど……攻撃魔法は得意じゃ無いしな」
女剣士「……あれで?」
側近「……」
側近(魔王様の目を持ってるからとは……言えネェよ)
側近「まあ……専門にそっちをやってきた訳じゃない、てこった」
バタバタバタ……!
側近「ん?」
宿屋「女剣士ちゃん、大丈夫……ッ あ、あれ、アンタ……」
側近「何だ、宿屋の親父じゃねぇか……何処に……」
側近「……何持ってんだよ、アンタ」ガク
女剣士「大丈夫だよ、おじさん」クスクス
側近(鍬持って鍋被って、まあ……)
宿屋「そ、そうか、無事か、良かった……!」
女剣士「気になるなら自分で見に行けば良いさ」
側近「盗まれる、とか思わネェの?」
女剣士「そんなに阿呆じゃないよ。ちゃんと鍵はかけてある」
側近(あんまり聞き出すのも怪しまれるか……いや、今更か)
側近(塔に行こうとしてるのは……もうばれてるわな、多分……ん?)
女剣士「……」ジィ
側近「な……なんだよ」
女剣士「悪かったな。強そうに見えないなんて言って」
側近「いや、そりゃ別に構わネェけど……攻撃魔法は得意じゃ無いしな」
女剣士「……あれで?」
側近「……」
側近(魔王様の目を持ってるからとは……言えネェよ)
側近「まあ……専門にそっちをやってきた訳じゃない、てこった」
バタバタバタ……!
側近「ん?」
宿屋「女剣士ちゃん、大丈夫……ッ あ、あれ、アンタ……」
側近「何だ、宿屋の親父じゃねぇか……何処に……」
側近「……何持ってんだよ、アンタ」ガク
女剣士「大丈夫だよ、おじさん」クスクス
側近(鍬持って鍋被って、まあ……)
宿屋「そ、そうか、無事か、良かった……!」
354: 2013/05/08(水) 09:42:47.67 ID:/JmhC5QFP
女剣士「この人が助けてくれたから……追い払えたよ」
宿屋「……アンタが!?」
側近「はいはい、どうせ俺は強そうには見えませんからね」
宿屋「……し、しかしまあ、無事で良かった……そうか、奴ら逃げてってか……」
女剣士「アタシは親父に報告しに行くよ……おじさんもそれ、片付けなよ」クス。スタスタ
宿屋「おう。……ありがとな、お客さん」
側近「どういたしまして……しかし、アンタ夜になると解るとか言ってたよな?」
宿屋「……魔王の復活が近いんだ」
側近「何時もは夜にしかこないのに、か」
宿屋「女剣士ちゃんに聞いたのか」
側近「まあね……まあ、結構な数落としたし、暫く来ないだろう?」
宿屋「……だと良いがな」
側近「ん?」
宿屋「いや……何でもない。俺は戻るよ。これも片付けないとな」スタスタ
側近(女剣士にしても、宿屋の親父にしても……塔から来るってのは)
側近(多分解ってる、んだよなぁ……でも、塔には行こうとしない)
側近(……何がいるのか知ってる訳じゃ無いのか、否か)
側近(流石に情報少ないよな……ん?)
ゴーン、ゴーン……
側近(鐘の……音?)
宿屋「……アンタが!?」
側近「はいはい、どうせ俺は強そうには見えませんからね」
宿屋「……し、しかしまあ、無事で良かった……そうか、奴ら逃げてってか……」
女剣士「アタシは親父に報告しに行くよ……おじさんもそれ、片付けなよ」クス。スタスタ
宿屋「おう。……ありがとな、お客さん」
側近「どういたしまして……しかし、アンタ夜になると解るとか言ってたよな?」
宿屋「……魔王の復活が近いんだ」
側近「何時もは夜にしかこないのに、か」
宿屋「女剣士ちゃんに聞いたのか」
側近「まあね……まあ、結構な数落としたし、暫く来ないだろう?」
宿屋「……だと良いがな」
側近「ん?」
宿屋「いや……何でもない。俺は戻るよ。これも片付けないとな」スタスタ
側近(女剣士にしても、宿屋の親父にしても……塔から来るってのは)
側近(多分解ってる、んだよなぁ……でも、塔には行こうとしない)
側近(……何がいるのか知ってる訳じゃ無いのか、否か)
側近(流石に情報少ないよな……ん?)
ゴーン、ゴーン……
側近(鐘の……音?)
355: 2013/05/08(水) 09:53:07.70 ID:/JmhC5QFP
ザワザワ……
ガヤガヤ……
側近(街の人達が出て来た……なんかの時間か?)
側近(お……飯屋も開いたな。取りあえず……情報収集兼ねて腹満たすか)
スタスタ。カチャ
側近「良いかい?」
女将「ああ、何だお客さんかい……もうちょっと待ってくれるかい?」
側近「まだ準備中か……」
女将「すまないね。座っててくれて良いよ」
側近「ん、助かる……なあ?」ガタン
女将「んー?」
側近「さっきの鐘の音はなんだ?」
女将「……旅人かい」
側近「ああ。丁度蝙蝠の群れに遭遇してね」
女将「えぇ!?」
側近「女剣士が追い払ってたよ」
女将「……見たのか、アンタ」
側近「何……俺なんか見ちゃ行けないもの見たの?」
女将「ああ、いや……そうじゃ無いよ。災難だったね……怪我は?」
側近「それは平気……宿屋の親父には、夜になれば解るとか言われてたんだがな」
女将「夜に外にでる酔狂な人間は、あんた達旅人ぐらいのもんさ」
女将「……どうせアンタの目当ても、あの塔のお宝だろ?」
側近「そういう訳じゃないんだけどな……まあ、命が惜しけりゃやめとけって」
側近「釘は刺されたな」
女将「……さっきの鐘の音はね、化け物どもが逃げていった合図さ」
側近(ああ……それでみんな一斉に外に出て来た訳ね)
ガヤガヤ……
側近(街の人達が出て来た……なんかの時間か?)
側近(お……飯屋も開いたな。取りあえず……情報収集兼ねて腹満たすか)
スタスタ。カチャ
側近「良いかい?」
女将「ああ、何だお客さんかい……もうちょっと待ってくれるかい?」
側近「まだ準備中か……」
女将「すまないね。座っててくれて良いよ」
側近「ん、助かる……なあ?」ガタン
女将「んー?」
側近「さっきの鐘の音はなんだ?」
女将「……旅人かい」
側近「ああ。丁度蝙蝠の群れに遭遇してね」
女将「えぇ!?」
側近「女剣士が追い払ってたよ」
女将「……見たのか、アンタ」
側近「何……俺なんか見ちゃ行けないもの見たの?」
女将「ああ、いや……そうじゃ無いよ。災難だったね……怪我は?」
側近「それは平気……宿屋の親父には、夜になれば解るとか言われてたんだがな」
女将「夜に外にでる酔狂な人間は、あんた達旅人ぐらいのもんさ」
女将「……どうせアンタの目当ても、あの塔のお宝だろ?」
側近「そういう訳じゃないんだけどな……まあ、命が惜しけりゃやめとけって」
側近「釘は刺されたな」
女将「……さっきの鐘の音はね、化け物どもが逃げていった合図さ」
側近(ああ……それでみんな一斉に外に出て来た訳ね)
356: 2013/05/08(水) 10:06:10.12 ID:/JmhC5QFP
女将「少し前までは、宿屋の親父の言う通り、だったのさ……奴らは夜しか来なかった」
女将「この街に向かってくる間隔は少しずつ狭くなって来た。もう、昼夜も問わないのかもね」
側近「……で、鐘の音がならない限り、街の人達は……外には出てこない、のか」
女将「ここら辺の魔物は割とね、昔から手強いらしいのさ。私らにゃ解らないけど」
女将「だから、男共は身体を鍛えていたし、まあ……街にまで入ってくる事は滅多に無かったしね」
女将「……今は女剣士ちゃんが居てくれるけど……これ以上数が増えたら」
女将「あの子の命だって危ないんだ。まだ若い女の子の身で、しかも鋼一本でさ……」
側近「……あいつらは北の塔から来るんだろ?元凶があそこに居るとは考えないのか?」
女将「アンタ……命が惜しければ行くなと言われたんだろう?」
女将「……そういう事さ」
側近(追い払うので手一杯、か……そりゃそうだよな)
側近(それに……聞いてる限り見てる限り、じゃ……あの女剣士ぐらいしか……)
女将「さて、おまたせ!何にする?」
側近「あー……俺初めてきたから何か名物的なモン」
女将「あいよ!……おや」
ガチャ
女剣士「ああ、やっぱりここか、側近」
側近「女剣士?」
女剣士「おはよう女将さん。アタシにも何か食わせてよ」
女将「災難だったね……たんと食べてお行き」
女将「この街に向かってくる間隔は少しずつ狭くなって来た。もう、昼夜も問わないのかもね」
側近「……で、鐘の音がならない限り、街の人達は……外には出てこない、のか」
女将「ここら辺の魔物は割とね、昔から手強いらしいのさ。私らにゃ解らないけど」
女将「だから、男共は身体を鍛えていたし、まあ……街にまで入ってくる事は滅多に無かったしね」
女将「……今は女剣士ちゃんが居てくれるけど……これ以上数が増えたら」
女将「あの子の命だって危ないんだ。まだ若い女の子の身で、しかも鋼一本でさ……」
側近「……あいつらは北の塔から来るんだろ?元凶があそこに居るとは考えないのか?」
女将「アンタ……命が惜しければ行くなと言われたんだろう?」
女将「……そういう事さ」
側近(追い払うので手一杯、か……そりゃそうだよな)
側近(それに……聞いてる限り見てる限り、じゃ……あの女剣士ぐらいしか……)
女将「さて、おまたせ!何にする?」
側近「あー……俺初めてきたから何か名物的なモン」
女将「あいよ!……おや」
ガチャ
女剣士「ああ、やっぱりここか、側近」
側近「女剣士?」
女剣士「おはよう女将さん。アタシにも何か食わせてよ」
女将「災難だったね……たんと食べてお行き」
357: 2013/05/08(水) 10:15:27.67 ID:/JmhC5QFP
女剣士「隣良いよな」
側近「どーぞ」
女剣士「……さっきはありがとう」
側近「礼はもう聞いたぜ。気にすんな」
女剣士「……側近。後で家に来てくれないか」
側近「あ?」
女剣士「親父が呼んでるんだ」
側近「……何、是非娘の婿に!とかか!」
女剣士「阿呆か!」
側近「冗談だよ……で、何でさ?」
女剣士「……」
側近「え……まさか、本当に俺を婿に……!?」
女剣士「違う! ……ッ 船を出す、と言うんだ」
側近「へ?」
女剣士「……お前の魔法の腕があれば、北の塔の……」
側近「あー……」
側近(塔に出向いて、群れのボスを倒してこい、的なアレですか)
女剣士「アタシは……ッ反対したんだ!」
側近「何で?」
女剣士「何で、って……そりゃそうだろう!?蝙蝠共だけでも、あんな……!」
側近「まあ……そう、か。そうだよな」
側近「でもさ、俺がやり遂げりゃ、この街も平和になるぜ?」
女剣士「言っただろう!?帰ってきた奴は居ないんだ!」
側近「……来い、ってさっき言ったのはお前じゃないか」
女剣士「断って欲しい」
側近「……」
女剣士「これはこの街の問題だ。旅人の命を危険にさらす訳には……!」
側近「どーぞ」
女剣士「……さっきはありがとう」
側近「礼はもう聞いたぜ。気にすんな」
女剣士「……側近。後で家に来てくれないか」
側近「あ?」
女剣士「親父が呼んでるんだ」
側近「……何、是非娘の婿に!とかか!」
女剣士「阿呆か!」
側近「冗談だよ……で、何でさ?」
女剣士「……」
側近「え……まさか、本当に俺を婿に……!?」
女剣士「違う! ……ッ 船を出す、と言うんだ」
側近「へ?」
女剣士「……お前の魔法の腕があれば、北の塔の……」
側近「あー……」
側近(塔に出向いて、群れのボスを倒してこい、的なアレですか)
女剣士「アタシは……ッ反対したんだ!」
側近「何で?」
女剣士「何で、って……そりゃそうだろう!?蝙蝠共だけでも、あんな……!」
側近「まあ……そう、か。そうだよな」
側近「でもさ、俺がやり遂げりゃ、この街も平和になるぜ?」
女剣士「言っただろう!?帰ってきた奴は居ないんだ!」
側近「……来い、ってさっき言ったのはお前じゃないか」
女剣士「断って欲しい」
側近「……」
女剣士「これはこの街の問題だ。旅人の命を危険にさらす訳には……!」
358: 2013/05/08(水) 10:23:18.61 ID:/JmhC5QFP
側近「ふーむ」
女剣士「……大丈夫だ。アタシが居れば、まだ何とか……」
側近「お前が居なくなったら?」
女剣士「……え?」
側近「もし本当に魔王……が、復活して、だ」
側近「もっと大変な事態になったら、お前一人でこの街守れるのか?」
女剣士「……」
側近「北の塔に行くのを怖がる気持ちは分かるけど。どこかで元凶叩かないと」
側近「手遅れになってからじゃ遅いぜ?」
女剣士「……だけど、それをお前の……旅人の手に委ねようってのは間違いだ」
側近「まあ、確かにそりゃそうだな。けど……」
女剣士「解ってる……アタシの手には余るのさ」
女剣士「朝……行きたくないのか、と聞いたな」
側近「ん? ……ああ、北の塔に、か」
女剣士「怖いよ。腕試し、になる様な……レベルじゃないだろう」
側近「で……俺にお株が回ってきた訳ね」
女剣士「……だが、断ってくれて良いんだ。街の人達の中には、魔法を使える者も居る」
女剣士「みんなで力を合わせれば、何とか……!」
側近「……何とかならなくなるまえに、塔に行けって親父さんは言いたいんだろうよ」
女剣士「だけど……!」
女将「はい、おまちどうさま!」ドン!
側近「……ま、ほら。先に飯にしようぜ……うわ、旨そう」
女剣士「側近!」
側近「腹が減っちゃなんもできねぇよ。断る元気もなくなっちまう」
女剣士「……大丈夫だ。アタシが居れば、まだ何とか……」
側近「お前が居なくなったら?」
女剣士「……え?」
側近「もし本当に魔王……が、復活して、だ」
側近「もっと大変な事態になったら、お前一人でこの街守れるのか?」
女剣士「……」
側近「北の塔に行くのを怖がる気持ちは分かるけど。どこかで元凶叩かないと」
側近「手遅れになってからじゃ遅いぜ?」
女剣士「……だけど、それをお前の……旅人の手に委ねようってのは間違いだ」
側近「まあ、確かにそりゃそうだな。けど……」
女剣士「解ってる……アタシの手には余るのさ」
女剣士「朝……行きたくないのか、と聞いたな」
側近「ん? ……ああ、北の塔に、か」
女剣士「怖いよ。腕試し、になる様な……レベルじゃないだろう」
側近「で……俺にお株が回ってきた訳ね」
女剣士「……だが、断ってくれて良いんだ。街の人達の中には、魔法を使える者も居る」
女剣士「みんなで力を合わせれば、何とか……!」
側近「……何とかならなくなるまえに、塔に行けって親父さんは言いたいんだろうよ」
女剣士「だけど……!」
女将「はい、おまちどうさま!」ドン!
側近「……ま、ほら。先に飯にしようぜ……うわ、旨そう」
女剣士「側近!」
側近「腹が減っちゃなんもできねぇよ。断る元気もなくなっちまう」
359: 2013/05/08(水) 10:25:28.67 ID:/JmhC5QFP
お迎えとお昼ご飯ー!
午後から幼女と肉まん作って共食いさせたら又くるわ~
午後から幼女と肉まん作って共食いさせたら又くるわ~
362: 2013/05/08(水) 17:06:46.67 ID:/JmhC5QFP
女剣士「……そ、うか」ホッ
側近(断る、とは断言してないんだけどな……まあ、良いか)
側近「何でだ?」
女剣士「?」
側近「興味はあるんだろ……怖いのは解る。けどさ」
女剣士「……」
側近「何があっても塔には行かせたくない。様に……聞こえなくも無い」
側近「何か秘密でもあるのか?」
女剣士「そんな物がありゃ、親父がアンタに頼もうとする筈無いだろ」
側近「……そりゃそうか」
女剣士「本当に何も無いさ。本当に……怖いだけだ」
側近「ふぅん……?」
側近(何かある気がしないでもないんだけどなぁ……まあ)
側近(行ってみりゃ解る、か。どうせ上るつもりだったんだ)
女剣士「飯を食ったら案内する……まだかまだかと待ってるだろうからな」
……
………
…………
親父「そうか!君が側近君か! ……話は娘から聞いたと思う」
親父「頼む!船も貸す!だから……!」
女剣士「残念だったな、親父、側近は……」
側近「喜んでお引き受けしますよ」
女剣士「……お、おい!待て……!話が違うじゃないか!」ガシッ
側近「痛い痛い痛い……」
側近(断る、とは断言してないんだけどな……まあ、良いか)
側近「何でだ?」
女剣士「?」
側近「興味はあるんだろ……怖いのは解る。けどさ」
女剣士「……」
側近「何があっても塔には行かせたくない。様に……聞こえなくも無い」
側近「何か秘密でもあるのか?」
女剣士「そんな物がありゃ、親父がアンタに頼もうとする筈無いだろ」
側近「……そりゃそうか」
女剣士「本当に何も無いさ。本当に……怖いだけだ」
側近「ふぅん……?」
側近(何かある気がしないでもないんだけどなぁ……まあ)
側近(行ってみりゃ解る、か。どうせ上るつもりだったんだ)
女剣士「飯を食ったら案内する……まだかまだかと待ってるだろうからな」
……
………
…………
親父「そうか!君が側近君か! ……話は娘から聞いたと思う」
親父「頼む!船も貸す!だから……!」
女剣士「残念だったな、親父、側近は……」
側近「喜んでお引き受けしますよ」
女剣士「……お、おい!待て……!話が違うじゃないか!」ガシッ
側近「痛い痛い痛い……」
363: 2013/05/08(水) 17:28:05.08 ID:/JmhC5QFP
親父「女剣士!手を離しなさい!」
女剣士「……ッ」バッ
側近「『食わなきゃ断る元気もでない』と言っただけだ。断るとは言ってないだろ」
女剣士「お前……!」
親父「女剣士!もう諦めなさい……これは、街の人達だけじゃ解決しないんだ!」
親父「それにお前が教えてくれたんだろう、彼の魔法の事は……!」
女剣士「アタシは……!」
側近「……あのー……」
親父「あ、ああ、すまないね。今朝のあの蝙蝠達の襲撃から、随分娘が戻るのが早かったのでね」
親父「……どうしたんだと聞いたら、君が魔法で殆どやっつけてしまった、と」
側近「は、はぁ……」
女剣士「だからって、旅人なんだぞ!?彼は……!」
女剣士「街の問題は、街の人間で解決しないと……!」
親父「何度も言っただろう!それで大勢の命の危険を招いては意味は無いのだ!」
女剣士「だからって……!」
親父「今のまま、何時までも持つ訳が無いのはお前にも解るだろう、女剣士……」
女剣士「アタシは大丈夫だ!まだ……!」
親父「手遅れになれば、お前一人の手には負えないと言っているのがわからんのか!?」
側近「ま、まあ、まあ……まあ……」
側近(俺を間に挟んでやらないでくれよおおおおおお)
女剣士「……ッ」バッ
側近「『食わなきゃ断る元気もでない』と言っただけだ。断るとは言ってないだろ」
女剣士「お前……!」
親父「女剣士!もう諦めなさい……これは、街の人達だけじゃ解決しないんだ!」
親父「それにお前が教えてくれたんだろう、彼の魔法の事は……!」
女剣士「アタシは……!」
側近「……あのー……」
親父「あ、ああ、すまないね。今朝のあの蝙蝠達の襲撃から、随分娘が戻るのが早かったのでね」
親父「……どうしたんだと聞いたら、君が魔法で殆どやっつけてしまった、と」
側近「は、はぁ……」
女剣士「だからって、旅人なんだぞ!?彼は……!」
女剣士「街の問題は、街の人間で解決しないと……!」
親父「何度も言っただろう!それで大勢の命の危険を招いては意味は無いのだ!」
女剣士「だからって……!」
親父「今のまま、何時までも持つ訳が無いのはお前にも解るだろう、女剣士……」
女剣士「アタシは大丈夫だ!まだ……!」
親父「手遅れになれば、お前一人の手には負えないと言っているのがわからんのか!?」
側近「ま、まあ、まあ……まあ……」
側近(俺を間に挟んでやらないでくれよおおおおおお)
364: 2013/05/08(水) 17:56:49.02 ID:/JmhC5QFP
女剣士「それに!親父の言い分じゃ、側近の命はどうでも良いみたいじゃ無いか!」
親父「そんな事は無い!私は彼の力を見込んで頼んでいるんだ……それに」
親父「……彼には勿論、断る権利はある」
女剣士「……」ジィ
親父「……」ジィ
側近「……え」
側近(何ですか、二人揃って……ああ、もう)
側近「あー……別に二つ返事で引き受けた訳じゃないぞ?」
女剣士「でも!」
側近「そりゃな?俺だって命は惜しいよ」
側近「お前にも最初に言われた通り、興味はあるよ」
側近「足を用意して貰えるのもありがたい」
側近「……ギブアンドテイク、かな」
女剣士「命が惜しくないのか!?」
側近「何かが居ると仮定して、倒してくるって約束はできんさ」
側近「……言う通り、命は惜しいからな」
親父「ああ……それは、構わない。仕方ない」
親父「元凶が何か、それだけでも解れば良いんだ」
女剣士「……ッ」
側近「何れはそうも言ってられないんだろう?」
親父「それはそうだ。だが……娘の言う通り」
親父「君に、そこまで押しつけられん」
親父「そんな事は無い!私は彼の力を見込んで頼んでいるんだ……それに」
親父「……彼には勿論、断る権利はある」
女剣士「……」ジィ
親父「……」ジィ
側近「……え」
側近(何ですか、二人揃って……ああ、もう)
側近「あー……別に二つ返事で引き受けた訳じゃないぞ?」
女剣士「でも!」
側近「そりゃな?俺だって命は惜しいよ」
側近「お前にも最初に言われた通り、興味はあるよ」
側近「足を用意して貰えるのもありがたい」
側近「……ギブアンドテイク、かな」
女剣士「命が惜しくないのか!?」
側近「何かが居ると仮定して、倒してくるって約束はできんさ」
側近「……言う通り、命は惜しいからな」
親父「ああ……それは、構わない。仕方ない」
親父「元凶が何か、それだけでも解れば良いんだ」
女剣士「……ッ」
側近「何れはそうも言ってられないんだろう?」
親父「それはそうだ。だが……娘の言う通り」
親父「君に、そこまで押しつけられん」
365: 2013/05/08(水) 18:01:22.59 ID:/JmhC5QFP
女剣士「行くこと自体が自殺行為だと思わないのか!?」
側近「……お前はどうしても俺にあそこに行って貰いたくないみたいだなぁ」
女剣士「そ……ッ そういう訳じゃ……!」
側近「そう聞こえるぜ? ……いや、まあ言ってることは解るんだよ」
側近「命の危険がある、てのも、街のことは街の人達で解決すべき、てのもな」
側近「だけど……親父さんの言うとおり、手遅れになってからじゃ遅いってのも真理だ」
側近「理解出来ん訳じゃないんだろ?」
女剣士「……」
側近「で、俺が丁度良いところに居たんだ。まあ……魔法の腕はおいといて」
側近「北の塔に行きたくて、足を探してた。それは否定しない」
側近「……さっきも言った通りのギブアンドテイク」
親父「……うむ」
側近「どこまで力になれるかなんざ、解らんがね」
側近「……お前はどうしても俺にあそこに行って貰いたくないみたいだなぁ」
女剣士「そ……ッ そういう訳じゃ……!」
側近「そう聞こえるぜ? ……いや、まあ言ってることは解るんだよ」
側近「命の危険がある、てのも、街のことは街の人達で解決すべき、てのもな」
側近「だけど……親父さんの言うとおり、手遅れになってからじゃ遅いってのも真理だ」
側近「理解出来ん訳じゃないんだろ?」
女剣士「……」
側近「で、俺が丁度良いところに居たんだ。まあ……魔法の腕はおいといて」
側近「北の塔に行きたくて、足を探してた。それは否定しない」
側近「……さっきも言った通りのギブアンドテイク」
親父「……うむ」
側近「どこまで力になれるかなんざ、解らんがね」
370: 2013/05/09(木) 09:59:39.71 ID:TWL3k0fRP
おはよう!
結婚しねぇよ(笑)
結婚しねぇよ(笑)
372: 2013/05/09(木) 10:23:30.69 ID:TWL3k0fRP
女剣士「……解ったよ」
親父「そ、そうか! ……あとは」チラ
側近「ん……俺?俺は別に、良い……」
女剣士「ただし、アタシも行くぜ」
親父「何!?」
側近「へ?」
女剣士「街の生活が……アタシ達の命が掛かった問題だ」
女剣士「……それに、一人よりは二人の方が良いだろう」
親父「し、しかし……!」
女剣士「街の人の命は大事で、側近の命はどうでも良いなんて言う訳じゃ無いだろ?」
親父「そ、それは、まあ……しかし……ッ」
側近「街は誰が守るんだよ?お前が居なくなったら……」
女剣士「戦える奴は別にアタシだけじゃ無い。親父だって頑張ってくれる筈だ」
女剣士「『街の未来の為』だろ?」
親父「……当然だ。お前が一人で大丈夫だと聞かなかったから……」
女剣士「やるからにはやりきった方が良いんだろう……手遅れになってからじゃ」
女剣士「遅い、と言ったのは親父だろ!」
側近「……」
側近(なんだかなぁ……なぁんか、隠してる様に思えてならん……)
側近(一人でゆっくり調べたかったんだが……まあ、仕方ないかなぁ)
側近(ここまで来ちまえば、断って転移石で行く、ってのもな)
女剣士「だから……! 親父は……!」ギャアギャア
親父「お前は本当に昔から……!」ギャアギャア
側近(女剣士が居れば確かに心強い、ちゃそうだけど……)
側近(……取りあえず、親子げんかは俺が帰ってからやってほしい)ハァ
親父「そ、そうか! ……あとは」チラ
側近「ん……俺?俺は別に、良い……」
女剣士「ただし、アタシも行くぜ」
親父「何!?」
側近「へ?」
女剣士「街の生活が……アタシ達の命が掛かった問題だ」
女剣士「……それに、一人よりは二人の方が良いだろう」
親父「し、しかし……!」
女剣士「街の人の命は大事で、側近の命はどうでも良いなんて言う訳じゃ無いだろ?」
親父「そ、それは、まあ……しかし……ッ」
側近「街は誰が守るんだよ?お前が居なくなったら……」
女剣士「戦える奴は別にアタシだけじゃ無い。親父だって頑張ってくれる筈だ」
女剣士「『街の未来の為』だろ?」
親父「……当然だ。お前が一人で大丈夫だと聞かなかったから……」
女剣士「やるからにはやりきった方が良いんだろう……手遅れになってからじゃ」
女剣士「遅い、と言ったのは親父だろ!」
側近「……」
側近(なんだかなぁ……なぁんか、隠してる様に思えてならん……)
側近(一人でゆっくり調べたかったんだが……まあ、仕方ないかなぁ)
側近(ここまで来ちまえば、断って転移石で行く、ってのもな)
女剣士「だから……! 親父は……!」ギャアギャア
親父「お前は本当に昔から……!」ギャアギャア
側近(女剣士が居れば確かに心強い、ちゃそうだけど……)
側近(……取りあえず、親子げんかは俺が帰ってからやってほしい)ハァ
373: 2013/05/09(木) 10:35:56.65 ID:TWL3k0fRP
側近「あー、あのさぁ……」
女剣士「だからこっちは……!」ギャアギャア
親父「それだとアレが……!」ギャアギャア
側近(どーすんだよこれ)
魔王『……随分と面白いことに巻き込まれてるな』
側近『魔王様? ……見てたのかよ』
魔王『話しかけるタイミングを伺っていたんだ』
側近『……んで、どした?』
魔王『いや、暇でな』
側近『お前な……』
魔王『……北の塔だがな』
側近『ん?』
魔王『使用人と二人で調べてみたんだが、特にこれと言った記述が無くてな』
側近『そうか……じゃあお宝ってのも眉唾ものかね』
魔王『どうだかな……これと言って見える物も無い』
側近『見える物?』
魔王『何の反応も無い……と言う所かな』
側近『……いや、まあうん。良いや』
側近(本当に規格外だよな……何でもありか)
魔王『規格外って言うなと言ってるだろう。多少なりとも傷付くんだぞ?』
側近『……』
魔王『で、その女剣士だが……何か隠してる様な感じだな』
側近『だよな……まあ、行けば解るだろう。しかし……』
魔王『ん?』
女剣士「だからこっちは……!」ギャアギャア
親父「それだとアレが……!」ギャアギャア
側近(どーすんだよこれ)
魔王『……随分と面白いことに巻き込まれてるな』
側近『魔王様? ……見てたのかよ』
魔王『話しかけるタイミングを伺っていたんだ』
側近『……んで、どした?』
魔王『いや、暇でな』
側近『お前な……』
魔王『……北の塔だがな』
側近『ん?』
魔王『使用人と二人で調べてみたんだが、特にこれと言った記述が無くてな』
側近『そうか……じゃあお宝ってのも眉唾ものかね』
魔王『どうだかな……これと言って見える物も無い』
側近『見える物?』
魔王『何の反応も無い……と言う所かな』
側近『……いや、まあうん。良いや』
側近(本当に規格外だよな……何でもありか)
魔王『規格外って言うなと言ってるだろう。多少なりとも傷付くんだぞ?』
側近『……』
魔王『で、その女剣士だが……何か隠してる様な感じだな』
側近『だよな……まあ、行けば解るだろう。しかし……』
魔王『ん?』
374: 2013/05/09(木) 10:55:44.11 ID:TWL3k0fRP
側近『何も無い、のであれば、だ……あの蝙蝠共はどこから来る?』
魔王『ふむ……』
側近『鍛冶師の村でも思ったが。まあ……あそこは狼将軍が』
側近『インキュバスと通じてたからな……』
魔王『野生の物ではないのか?』
側近『それにしちゃ、統率取れてる気がするんだけどね』
魔王『まあ……どうせ出向くのだろう?確かめてきてくれ』
側近『雲の上まで続いてるんだぜ? ……すんげぇ時間かかるんですけど』
魔王『気合いで頑張れ……姫が呼んでる。又な』
側近(……まったく、人使い荒いんだから)フゥ
親父「あ……!す、すまん!その……醜いところを……!」
女剣士「あ……ッ わ、悪い……!」
側近「え? ……あ、ああ。いや、まあ……親子げんかは、うん」
側近「後でやってくれるとありがたい」
側近(勘違いなんだがな……まあ、良いか。丁度良かった)
側近(それより……魔王様、また力が強くなった?)
側近(心話状態だと全部筒抜けなのか……うーん……)
女剣士「……」
側近「あ、いや、怒ってる訳じゃないぞ、すまん」
側近「……で、出発は何時だ?」
魔王『ふむ……』
側近『鍛冶師の村でも思ったが。まあ……あそこは狼将軍が』
側近『インキュバスと通じてたからな……』
魔王『野生の物ではないのか?』
側近『それにしちゃ、統率取れてる気がするんだけどね』
魔王『まあ……どうせ出向くのだろう?確かめてきてくれ』
側近『雲の上まで続いてるんだぜ? ……すんげぇ時間かかるんですけど』
魔王『気合いで頑張れ……姫が呼んでる。又な』
側近(……まったく、人使い荒いんだから)フゥ
親父「あ……!す、すまん!その……醜いところを……!」
女剣士「あ……ッ わ、悪い……!」
側近「え? ……あ、ああ。いや、まあ……親子げんかは、うん」
側近「後でやってくれるとありがたい」
側近(勘違いなんだがな……まあ、良いか。丁度良かった)
側近(それより……魔王様、また力が強くなった?)
側近(心話状態だと全部筒抜けなのか……うーん……)
女剣士「……」
側近「あ、いや、怒ってる訳じゃないぞ、すまん」
側近「……で、出発は何時だ?」
375: 2013/05/09(木) 11:13:54.49 ID:TWL3k0fRP
親父「……」
側近「?」
女剣士「今から行く」
側近「ええええええええええええええ」
親父「……ほら、見ろ」
女剣士「善は急げと言うだろ?」
側近「お前は子供かよ……まあ、良いけど」
女剣士「……良いのか?」
側近「お前が言い出したんだろ……?何でそこ疑問系なの」
親父「……行くのはお前達だ。良いと言うのなら止めはしない、が……」
側近「まあ、タイミング的には良いと思うけどね。丁度さっき、蝙蝠共の」
側近「襲撃受けたところだしな」
側近「いくら間隔が狭まって頻繁に襲ってくるとは言え」
側近「2.3日は大丈夫なんじゃないか?」
親父「……それだけ、持てば良いが」
側近「そんな深刻なのかよ……まあ、なるべく俺らで引きつける、か」
女剣士「アタシは準備して、先に船に行ってるよ」スタスタ……パタン
親父「……」
側近「……なあ」
親父「……すまん。あいつは、言い出したら聞かないんだ、昔から」
側近「街の用心棒、ってのも、か……」
親父「言葉に足りる腕は確かにある。だから……任せたんだが」
側近「……ちょっと、聞きたいんだけど」
親父「何だ?」
側近「塔に何があるか……そうだな、宝、とかじゃなくて」
側近「?」
女剣士「今から行く」
側近「ええええええええええええええ」
親父「……ほら、見ろ」
女剣士「善は急げと言うだろ?」
側近「お前は子供かよ……まあ、良いけど」
女剣士「……良いのか?」
側近「お前が言い出したんだろ……?何でそこ疑問系なの」
親父「……行くのはお前達だ。良いと言うのなら止めはしない、が……」
側近「まあ、タイミング的には良いと思うけどね。丁度さっき、蝙蝠共の」
側近「襲撃受けたところだしな」
側近「いくら間隔が狭まって頻繁に襲ってくるとは言え」
側近「2.3日は大丈夫なんじゃないか?」
親父「……それだけ、持てば良いが」
側近「そんな深刻なのかよ……まあ、なるべく俺らで引きつける、か」
女剣士「アタシは準備して、先に船に行ってるよ」スタスタ……パタン
親父「……」
側近「……なあ」
親父「……すまん。あいつは、言い出したら聞かないんだ、昔から」
側近「街の用心棒、ってのも、か……」
親父「言葉に足りる腕は確かにある。だから……任せたんだが」
側近「……ちょっと、聞きたいんだけど」
親父「何だ?」
側近「塔に何があるか……そうだな、宝、とかじゃなくて」
376: 2013/05/09(木) 11:38:12.66 ID:TWL3k0fRP
側近「……女剣士があれだけ行きたくない……じゃないな」
側近「俺を行かせたくないとした理由の、何か」
親父「……宝などは本当にわからんのだ。誰も……確かめた者は居ない」
親父「聞いただろう?行った者はいるが、だ」
側近「ふむ……文献なんかも残ってないのか」
親父「あの塔はそもそも、この街の管轄なんかではないからな」
側近「……そうか。じゃあ……」
親父「娘はなんと言っていた?」
側近「ん?いや……特に何も。怖いから行きたくない、とか」
側近(しかし……やっぱ何か不自然だよなぁ)
親父「怖い……か」
側近「気持ちは分からんでもないが、な」
側近「まあ、良い……確かめて見るさ」
親父「頼んでおいて何だが……無理はするなよ」
側近「解ってるさ……大事な娘さんだろ。ちゃんと守るよ」
側近「……て言う程、俺強くないんだけどなぁ……」
親父「謙遜はよせ……凄い魔法だったと言っていたぞ」
側近「……サンキュ」
側近(さて……どうなることやら)
親父「船まで案内する。鍵も外さないといかんからな」
側近「あー……船でどれぐらいだ?」
親父「さあなぁ……数時間で着くと思うが」
側近「……おう」
側近(あああああ、また酔うのかな)
……
………
…………
側近「俺を行かせたくないとした理由の、何か」
親父「……宝などは本当にわからんのだ。誰も……確かめた者は居ない」
親父「聞いただろう?行った者はいるが、だ」
側近「ふむ……文献なんかも残ってないのか」
親父「あの塔はそもそも、この街の管轄なんかではないからな」
側近「……そうか。じゃあ……」
親父「娘はなんと言っていた?」
側近「ん?いや……特に何も。怖いから行きたくない、とか」
側近(しかし……やっぱ何か不自然だよなぁ)
親父「怖い……か」
側近「気持ちは分からんでもないが、な」
側近「まあ、良い……確かめて見るさ」
親父「頼んでおいて何だが……無理はするなよ」
側近「解ってるさ……大事な娘さんだろ。ちゃんと守るよ」
側近「……て言う程、俺強くないんだけどなぁ……」
親父「謙遜はよせ……凄い魔法だったと言っていたぞ」
側近「……サンキュ」
側近(さて……どうなることやら)
親父「船まで案内する。鍵も外さないといかんからな」
側近「あー……船でどれぐらいだ?」
親父「さあなぁ……数時間で着くと思うが」
側近「……おう」
側近(あああああ、また酔うのかな)
……
………
…………
377: 2013/05/09(木) 11:46:15.03 ID:TWL3k0fRP
盗賊「船長ー!……あ、れ……しょ、女!?何で……!」
船長「おう、出迎えご苦労さん」
女「ただいま、盗賊……」
盗賊「な、何だ……良い教会、見つからなかったのか?」
船長「後で俺から説明してやるから、とりあえず女を休ませてやれ」
船長「……神父と鍛冶師は?」
盗賊「教会の方に行ったぜ」
女「え……!もう、教会が出来ている、のですか?」
盗賊「ああ、御免、そうじゃ無い。けど、建設予定地、だな」
盗賊「そこに居るんだ」
女「……私も、見てみたいです」
盗賊「え?でも……大丈夫か?」
女「ええ。是非……神父様、にもお会いしたいですし」
盗賊「そっか、じゃあ行くか……あ、荷物持つぜ」
船長「ほら、この本も持ってけよ」
盗賊「おう……これで全部か」
女「あ、私も持ちます……!」
盗賊「気にすんなって……良し、行くぜー!」
船長「おう、後で戻って来いよ!俺も街の中で作業してっから!」
盗賊「あいよー!」スタスタ
女「……まだ、少ししか経ってないのに……随分変わりましたね」
盗賊「そう……かな、そうだな。皆頑張ってくれてるよ」
女「そう……ですね」
盗賊「女は……どうするんだ?」
女「え?」
船長「おう、出迎えご苦労さん」
女「ただいま、盗賊……」
盗賊「な、何だ……良い教会、見つからなかったのか?」
船長「後で俺から説明してやるから、とりあえず女を休ませてやれ」
船長「……神父と鍛冶師は?」
盗賊「教会の方に行ったぜ」
女「え……!もう、教会が出来ている、のですか?」
盗賊「ああ、御免、そうじゃ無い。けど、建設予定地、だな」
盗賊「そこに居るんだ」
女「……私も、見てみたいです」
盗賊「え?でも……大丈夫か?」
女「ええ。是非……神父様、にもお会いしたいですし」
盗賊「そっか、じゃあ行くか……あ、荷物持つぜ」
船長「ほら、この本も持ってけよ」
盗賊「おう……これで全部か」
女「あ、私も持ちます……!」
盗賊「気にすんなって……良し、行くぜー!」
船長「おう、後で戻って来いよ!俺も街の中で作業してっから!」
盗賊「あいよー!」スタスタ
女「……まだ、少ししか経ってないのに……随分変わりましたね」
盗賊「そう……かな、そうだな。皆頑張ってくれてるよ」
女「そう……ですね」
盗賊「女は……どうするんだ?」
女「え?」
378: 2013/05/09(木) 12:28:48.85 ID:TWL3k0fRP
盗賊「また……教会、探しに出るのか?」
女「……いいえ。もう、私は……ここに」
盗賊「そっか!良かった……!」
女「ふふ……どうして?」
盗賊「できればさ、皆の手で大きくしたいじゃん、この街」
盗賊「神父さんも、会いたいって言ってたんだ、女にさ」
女「……」
盗賊「ずっとここに居れば良いよ。まお……少年も姫も」
盗賊「何時になるかわかんないとか言ってたけど……遊びに来るって」
盗賊「言ってたし、さ」
女「……そう、ですね」
盗賊「まだまだ掛かるけどさ、出来る迄」
女「先に……街を形にしませんと、ね」
盗賊「ああ。でも……心のよりどころ、って人多いんだ」
盗賊「廃材とか、余りとかでさ。街の作業終わってから、教会作ってんだよ」
女「ステキですね……」
盗賊「うん。取りあえず小さくても良いから、さ……」
女「あ……この道をあがるのですか?」
盗賊「あ、うん……ごめん、しんどいか?」
女「いいえ……丘の上の教会、ですか……本当に、すて……あ……!」
鍛冶師「盗賊、船長無事だったか?」
盗賊「おう、何だまだやってたのか……お前早く街の方に戻れよ……ん」
女「……」ペコ
鍛冶師「……こちらは?」
盗賊「前に言ってただろ?何れこの街に……って」
鍛冶師「ああ!君が……女さん?」
女「はい……初めまして」
女「……いいえ。もう、私は……ここに」
盗賊「そっか!良かった……!」
女「ふふ……どうして?」
盗賊「できればさ、皆の手で大きくしたいじゃん、この街」
盗賊「神父さんも、会いたいって言ってたんだ、女にさ」
女「……」
盗賊「ずっとここに居れば良いよ。まお……少年も姫も」
盗賊「何時になるかわかんないとか言ってたけど……遊びに来るって」
盗賊「言ってたし、さ」
女「……そう、ですね」
盗賊「まだまだ掛かるけどさ、出来る迄」
女「先に……街を形にしませんと、ね」
盗賊「ああ。でも……心のよりどころ、って人多いんだ」
盗賊「廃材とか、余りとかでさ。街の作業終わってから、教会作ってんだよ」
女「ステキですね……」
盗賊「うん。取りあえず小さくても良いから、さ……」
女「あ……この道をあがるのですか?」
盗賊「あ、うん……ごめん、しんどいか?」
女「いいえ……丘の上の教会、ですか……本当に、すて……あ……!」
鍛冶師「盗賊、船長無事だったか?」
盗賊「おう、何だまだやってたのか……お前早く街の方に戻れよ……ん」
女「……」ペコ
鍛冶師「……こちらは?」
盗賊「前に言ってただろ?何れこの街に……って」
鍛冶師「ああ!君が……女さん?」
女「はい……初めまして」
385: 2013/05/10(金) 15:09:29.31 ID:PDICKJAwP
鍛冶師「初めまして、僕は鍛冶師って言います」
女「女です……あの?」
盗賊「ん?」
女「貴方が……教会の……?」
鍛冶師「え?ああ……僕じゃないですよ。神父様はあっち……教会の方に」
鍛冶師「丁度良かった、盗賊。ちょっと聞きたい事があったんだ」
盗賊「ん?」
鍛冶師「さっき言ってたあの入口の建物だけど……」
盗賊「ああ、あれか……あー、ちょっと待て、先に女を……」
女「私は大丈夫ですよ。この丘の上ですよね?」
盗賊「悪い!また後で迎えに行くよ!」
鍛冶師「すみません……ああ、盗賊荷物持つよ」
女「あ……それは……」
盗賊「これは女の何だよ……あー、どうしよっかな」
盗賊「ひとまず、俺の家に置いておいても良いか?」
女「ええ、それは勿論……あ、ごめんなさい、本だけ……」
盗賊「ん……持てるか?」
女「大丈夫ですよ……ありがとう」
鍛冶師「ほら、そっち貸せよ」
盗賊「サンキュ、で……なんだって? ……あ。女、後でな!」スタスタ
鍛冶師「本当にすみません。いや、あの扉なんだけどさ……」スタスタ
女「……頑張ってくださいね」
女(仲、良さそう……羨ましい)スタスタ
女「女です……あの?」
盗賊「ん?」
女「貴方が……教会の……?」
鍛冶師「え?ああ……僕じゃないですよ。神父様はあっち……教会の方に」
鍛冶師「丁度良かった、盗賊。ちょっと聞きたい事があったんだ」
盗賊「ん?」
鍛冶師「さっき言ってたあの入口の建物だけど……」
盗賊「ああ、あれか……あー、ちょっと待て、先に女を……」
女「私は大丈夫ですよ。この丘の上ですよね?」
盗賊「悪い!また後で迎えに行くよ!」
鍛冶師「すみません……ああ、盗賊荷物持つよ」
女「あ……それは……」
盗賊「これは女の何だよ……あー、どうしよっかな」
盗賊「ひとまず、俺の家に置いておいても良いか?」
女「ええ、それは勿論……あ、ごめんなさい、本だけ……」
盗賊「ん……持てるか?」
女「大丈夫ですよ……ありがとう」
鍛冶師「ほら、そっち貸せよ」
盗賊「サンキュ、で……なんだって? ……あ。女、後でな!」スタスタ
鍛冶師「本当にすみません。いや、あの扉なんだけどさ……」スタスタ
女「……頑張ってくださいね」
女(仲、良さそう……羨ましい)スタスタ
386: 2013/05/10(金) 15:39:06.93 ID:PDICKJAwP
女(わぁ……眺めの良い場所ね……向こうは……)
女(あの、島は……魔導の街)
女「……」
女(風が気持ち良い……)
神父「失礼、貴女は……?」
女「あ……神父様、ですか?」
神父「はい……ひょっとして、女さん、ですか?」
女「……はい」
神父「ああ、やはり、貴女が……!」
女「盗賊から、聞いておられましたか?」
神父「ええ。何れこの場所に教会を作りたいと、島を離れた……隻腕の女性がいる、と」
女「はい……私に違い無いですね」クス
神父「……何故、笑われる?」
女「え?」
神父「女性にとって……否、誰にとっても身体の一部を無くす事等」
神父「不幸でしかありえないでしょう……失礼。不躾な言い方ですが」
神父「何故、貴女はそう……穏やかに笑っておられるのか、と」
女「……そ、うですね。そうですよね」
女「これは……私の誇りです」
神父「無くした腕が、ですか」
女「はい……」
女「……私が、大切な方との約束を守った証」
女「私が、屈しなかった証なんです」
神父「……」
女(それなのに……私は……ッ)
女(あの、島は……魔導の街)
女「……」
女(風が気持ち良い……)
神父「失礼、貴女は……?」
女「あ……神父様、ですか?」
神父「はい……ひょっとして、女さん、ですか?」
女「……はい」
神父「ああ、やはり、貴女が……!」
女「盗賊から、聞いておられましたか?」
神父「ええ。何れこの場所に教会を作りたいと、島を離れた……隻腕の女性がいる、と」
女「はい……私に違い無いですね」クス
神父「……何故、笑われる?」
女「え?」
神父「女性にとって……否、誰にとっても身体の一部を無くす事等」
神父「不幸でしかありえないでしょう……失礼。不躾な言い方ですが」
神父「何故、貴女はそう……穏やかに笑っておられるのか、と」
女「……そ、うですね。そうですよね」
女「これは……私の誇りです」
神父「無くした腕が、ですか」
女「はい……」
女「……私が、大切な方との約束を守った証」
女「私が、屈しなかった証なんです」
神父「……」
女(それなのに……私は……ッ)
387: 2013/05/10(金) 15:59:59.07 ID:PDICKJAwP
女「……完成が待ち遠しいです」
神父「貴女は……ずっとここに?」
女「はい……命尽きるまで。ここで……私の神に祈りを捧げます」
神父「貴女の神……」
女「……」
神父「……」
女「……」スッ
神父「ど、どうしました、ご気分でも? ……立てますか?」
女「いえ、あの……懺悔、させて頂けませんか」
神父「……」
女「教会はまだありません。ですが……お願い致します、神父様」
神父「建物の有無は関係ありませんよ……貴女が仰る様に」
神父「神は……心の中に、いらっしゃいます。全て、見ておられます」
女「……私の神は、きっと……神父様の神と同じではありません」
女「ですが……!」
神父「良いのですよ、女さん。神は……見るもの、思うものによって」
神父「その姿を変える物です。神話に出てくる天使だったり……」
神父「太陽や、大地の恵みそのものであったり……」
女「……」
神父「信仰心を捨てないことが大事です。祈り手が神を忘れる事」
神父「……己が、神に不審を抱き、裏切る事……それが」
神父「それこそが罪だと、私は……思います」
女「……ありがとうございます」
神父「……」
女「私は……腕を失うこと、身体の一部を失う事になろうとも」
女「あの方を裏切らなかった、その事実を誇りに思っていました」
女「……ですが」
神父「貴女は……ずっとここに?」
女「はい……命尽きるまで。ここで……私の神に祈りを捧げます」
神父「貴女の神……」
女「……」
神父「……」
女「……」スッ
神父「ど、どうしました、ご気分でも? ……立てますか?」
女「いえ、あの……懺悔、させて頂けませんか」
神父「……」
女「教会はまだありません。ですが……お願い致します、神父様」
神父「建物の有無は関係ありませんよ……貴女が仰る様に」
神父「神は……心の中に、いらっしゃいます。全て、見ておられます」
女「……私の神は、きっと……神父様の神と同じではありません」
女「ですが……!」
神父「良いのですよ、女さん。神は……見るもの、思うものによって」
神父「その姿を変える物です。神話に出てくる天使だったり……」
神父「太陽や、大地の恵みそのものであったり……」
女「……」
神父「信仰心を捨てないことが大事です。祈り手が神を忘れる事」
神父「……己が、神に不審を抱き、裏切る事……それが」
神父「それこそが罪だと、私は……思います」
女「……ありがとうございます」
神父「……」
女「私は……腕を失うこと、身体の一部を失う事になろうとも」
女「あの方を裏切らなかった、その事実を誇りに思っていました」
女「……ですが」
388: 2013/05/10(金) 16:08:26.57 ID:PDICKJAwP
女「魅惑の術にまんまと捕らえられ、あの方だけで無く……世界を」
女「……小さいかもしてません。それでも、世界の数多に危機を及ぼすだろう」
女「行為……を手伝うに至ってしまいました」
女「……」
神父「……」
女「彼の方は仰いました。後手になろうと、挽回すれば良いのだと」
女「ですが……私は……ッ」
神父「……」
女「……何かに、甘えてばかりです。決して手に入らない彼の方を思う余り」
女「私の欲望は尽きることが無い。溺れてはいけない罠に溺れ」
女「望んでも手に入らないものを欲してばかり」
女「諦めねば、諦めたたのだと言い聞かすつもりで……まだ」
女「どこかで、甘い期待を持っている……」
神父「……」
女「期待などしないとあれほど、胸に誓ったはずなのに……!」
女「期待させないで欲しいと、告げたのにどうして、と」
女「……怨みたくないのに、怨んでしまいそうです」
女「こんな私に、彼の方は仰いました。お前ならばできると」
女「こんな私に、彼の方を神と……崇めては決してならない、彼の方を思う私に!」
女「できると仰るのです……!」
神父「……」
女「……こんな私に、祈り女となる資格など、あるのでしょうか」
女「神は……お許しになるのでしょうか……!」
神父「……」
女「……」
神父「」
女「……小さいかもしてません。それでも、世界の数多に危機を及ぼすだろう」
女「行為……を手伝うに至ってしまいました」
女「……」
神父「……」
女「彼の方は仰いました。後手になろうと、挽回すれば良いのだと」
女「ですが……私は……ッ」
神父「……」
女「……何かに、甘えてばかりです。決して手に入らない彼の方を思う余り」
女「私の欲望は尽きることが無い。溺れてはいけない罠に溺れ」
女「望んでも手に入らないものを欲してばかり」
女「諦めねば、諦めたたのだと言い聞かすつもりで……まだ」
女「どこかで、甘い期待を持っている……」
神父「……」
女「期待などしないとあれほど、胸に誓ったはずなのに……!」
女「期待させないで欲しいと、告げたのにどうして、と」
女「……怨みたくないのに、怨んでしまいそうです」
女「こんな私に、彼の方は仰いました。お前ならばできると」
女「こんな私に、彼の方を神と……崇めては決してならない、彼の方を思う私に!」
女「できると仰るのです……!」
神父「……」
女「……こんな私に、祈り女となる資格など、あるのでしょうか」
女「神は……お許しになるのでしょうか……!」
神父「……」
女「……」
神父「」
389: 2013/05/10(金) 16:23:35.27 ID:PDICKJAwP
神父「お許しになっているではありませんか?」
女「……え?」
神父「貴女の神が、仰られたのでしょう。お前ならばできる、と」
女「……」
神父「敬虔でありなさい。神は……見ていらっしゃいます」
神父「貴女が祈りを捧げ続ければ、きっと……貴女の神も、お喜びになります」
女「……」
神父「ごめんなさい。気休め……でしょうが」
女「いいえ……はき出せただけでも、楽になりました」
神父「そうですか……良かったです。さあ、お立ちなさい」
女「……はい」スッ
神父「女さんは……ご存じですか。魔除けの石、と言うものを」
女「え……」
神父「何でも、偽物……そうですね。とても禍々しい、逆効果とも思える様な」
神父「魔石がね……出回っているのだそうです」
女「……ッ」
神父「今更……どうしようもありません。お持ちになっていらっしゃる方は」
神父「魔除けの石と信じて疑っていないでしょうから」
女「……」
神父「ですがね……今、この島の方達に教えて頂いて」
神父「私……練習しているのですよ。その、魔除けの石を作ってみようとね」
女「神父様が、ですか……いえ。きっと……おできになるかと、思います」
神父「一緒に習ってみませんか」
女「……私、は」
女「……え?」
神父「貴女の神が、仰られたのでしょう。お前ならばできる、と」
女「……」
神父「敬虔でありなさい。神は……見ていらっしゃいます」
神父「貴女が祈りを捧げ続ければ、きっと……貴女の神も、お喜びになります」
女「……」
神父「ごめんなさい。気休め……でしょうが」
女「いいえ……はき出せただけでも、楽になりました」
神父「そうですか……良かったです。さあ、お立ちなさい」
女「……はい」スッ
神父「女さんは……ご存じですか。魔除けの石、と言うものを」
女「え……」
神父「何でも、偽物……そうですね。とても禍々しい、逆効果とも思える様な」
神父「魔石がね……出回っているのだそうです」
女「……ッ」
神父「今更……どうしようもありません。お持ちになっていらっしゃる方は」
神父「魔除けの石と信じて疑っていないでしょうから」
女「……」
神父「ですがね……今、この島の方達に教えて頂いて」
神父「私……練習しているのですよ。その、魔除けの石を作ってみようとね」
女「神父様が、ですか……いえ。きっと……おできになるかと、思います」
神父「一緒に習ってみませんか」
女「……私、は」
390: 2013/05/10(金) 16:30:04.68 ID:PDICKJAwP
神父「私は、まだ……具現化まで行かないんです。もう少し、と」
神父「いつも思うのですけれど、ね」
女「……」
神父「この島の方達の素性は……理解しているつもりです」
女「!」
神父「基礎をしっかり身につけていらっしゃる。一朝一夕で出来るものじゃない」
神父「ですが……努力は報われると信じています」
女「……願えば、叶う」
神父「ええ、そうですね。願えば……何時か叶う筈。そう思わないと始まりません」
神父「折角、戻って来て頂けたのです。一緒に……」
女「で、できません……!私の、神は……!」
神父「先ほど言った筈ですよ……女さん」
神父「信仰するものによって、神は形を変えるのです……貴女の神の現身が」
神父「どのようなものであれ……それは、神に違いないのでしょう?」
女「……」
女(私の、神……魔王様)
女(魔の王であられても……私には、勇者様……!)
神父「願えば、叶います……女さん」
女「……できるか、解りません、が……」
神父「はい。共に……ここを。この教会を……島の人達の心のよりどころにしましょう」
女「……はい」
神父「貴女は……きっと、良い祈り女になられる。きっと……」
……
………
…………
盗賊「よっしゃー!今日は終了!」
鍛冶師「はい、お疲れ……ああ、汗かいた」
盗賊「はいそうですか、ってできねぇのは解ってるけどさ」
神父「いつも思うのですけれど、ね」
女「……」
神父「この島の方達の素性は……理解しているつもりです」
女「!」
神父「基礎をしっかり身につけていらっしゃる。一朝一夕で出来るものじゃない」
神父「ですが……努力は報われると信じています」
女「……願えば、叶う」
神父「ええ、そうですね。願えば……何時か叶う筈。そう思わないと始まりません」
神父「折角、戻って来て頂けたのです。一緒に……」
女「で、できません……!私の、神は……!」
神父「先ほど言った筈ですよ……女さん」
神父「信仰するものによって、神は形を変えるのです……貴女の神の現身が」
神父「どのようなものであれ……それは、神に違いないのでしょう?」
女「……」
女(私の、神……魔王様)
女(魔の王であられても……私には、勇者様……!)
神父「願えば、叶います……女さん」
女「……できるか、解りません、が……」
神父「はい。共に……ここを。この教会を……島の人達の心のよりどころにしましょう」
女「……はい」
神父「貴女は……きっと、良い祈り女になられる。きっと……」
……
………
…………
盗賊「よっしゃー!今日は終了!」
鍛冶師「はい、お疲れ……ああ、汗かいた」
盗賊「はいそうですか、ってできねぇのは解ってるけどさ」
391: 2013/05/10(金) 16:40:45.13 ID:PDICKJAwP
盗賊「……待ち遠しいもんだな」
鍛冶師「そうだなぁ……まあ、働き手の数も増えてきたし」
盗賊「資材が足りなくなる方が先っぽいな……船長に調達お願いしないと」
鍛冶師「ああ……そうだな。次の船には僕も乗せて貰うつもりなんだ」
盗賊「え!?」
鍛冶師「あ、別に……村に帰る訳じゃ無いよ。いや、一度帰るんだけど」
盗賊「……戻って、くるんだよな?」
鍛冶師「うん。村に置いてきた鍛冶の道具とか、全部持ってくるつもり」
盗賊「て、事は……」
鍛冶師「決めたよ。この島に住む」
盗賊「そ、そうか……!吃驚させんなよ!もう……」ハハッ
鍛冶師「嬉しそうだね、盗賊……喜んでくれる、の?」
盗賊「当たり前じゃねぇか!寂しい思いしなくて済むぜ!」
鍛冶師「……ねぇ、盗賊」
盗賊「ん?」
鍛冶師「……いや、良いや。帰ったら言うよ」
盗賊「何だよ!言いかけてやめんな!気になるだろ!?」
鍛冶師「あー、うん、まあ……えーっと……」
盗賊「はーやーくー!」
鍛冶師「……」コホン
鍛冶師「えっと、あのね?」
盗賊「何だよ!」
鍛冶師「……僕、君の事が好きなんだけど」
盗賊「うん ……う、ん!? ……うぇ!?」
鍛冶師「ぅえ、て」
盗賊「は、え ……あ。ええ!?」
鍛冶師「そうだなぁ……まあ、働き手の数も増えてきたし」
盗賊「資材が足りなくなる方が先っぽいな……船長に調達お願いしないと」
鍛冶師「ああ……そうだな。次の船には僕も乗せて貰うつもりなんだ」
盗賊「え!?」
鍛冶師「あ、別に……村に帰る訳じゃ無いよ。いや、一度帰るんだけど」
盗賊「……戻って、くるんだよな?」
鍛冶師「うん。村に置いてきた鍛冶の道具とか、全部持ってくるつもり」
盗賊「て、事は……」
鍛冶師「決めたよ。この島に住む」
盗賊「そ、そうか……!吃驚させんなよ!もう……」ハハッ
鍛冶師「嬉しそうだね、盗賊……喜んでくれる、の?」
盗賊「当たり前じゃねぇか!寂しい思いしなくて済むぜ!」
鍛冶師「……ねぇ、盗賊」
盗賊「ん?」
鍛冶師「……いや、良いや。帰ったら言うよ」
盗賊「何だよ!言いかけてやめんな!気になるだろ!?」
鍛冶師「あー、うん、まあ……えーっと……」
盗賊「はーやーくー!」
鍛冶師「……」コホン
鍛冶師「えっと、あのね?」
盗賊「何だよ!」
鍛冶師「……僕、君の事が好きなんだけど」
盗賊「うん ……う、ん!? ……うぇ!?」
鍛冶師「ぅえ、て」
盗賊「は、え ……あ。ええ!?」
392: 2013/05/10(金) 16:52:41.47 ID:PDICKJAwP
鍛冶師「……決意のつもり。この街に住む、てのはさ」
鍛冶師「断られたら……まあ、仕方ないけど……あ!」
鍛冶師「こ、断られても、その!この街に住むの辞めた、とかは言わないよ!?」
鍛冶師「気に入ってるのは事実だし……!」
盗賊「……」マッカ
鍛冶師「……聞いてる?」
盗賊「あ、うん、ハイ。聞いてる……え、あの……!」
鍛冶師「君が言えと言ったんだから、ね」マッカ
盗賊「え、いや、あの……!」
船長「おーい!盗賊!鍛冶師…… ……なんだお前ら。二人揃って茹でたタコみたいに……」
鍛冶師「ちょ、丁度良かった。船長さん、次の船の行き先は?」
船長「は? ……ああ、まだ未定だが」
盗賊「し、資材の調達頼めるかな!?」
船長「……盗賊、声裏がえってんぞ?どうしたんだ?お前ら……」
鍛冶師「だ、大丈夫だよ!?」
船長「? ……ああ、資材ならそうだな……鍛冶師の村辺りへ行くのが良いかな」
鍛冶師「本当に?」
船長「嘘ついてどーすんだ……まじで大丈夫か?」
船長「働き手も増やしたいしな。工事も順調に進んでるし、船の調達とかも」
船長「必要だしなぁ」
盗賊「船?まだ定期便の準備は早くないか?」
船長「ああ、いや……ま……少年がな」
鍛冶師「断られたら……まあ、仕方ないけど……あ!」
鍛冶師「こ、断られても、その!この街に住むの辞めた、とかは言わないよ!?」
鍛冶師「気に入ってるのは事実だし……!」
盗賊「……」マッカ
鍛冶師「……聞いてる?」
盗賊「あ、うん、ハイ。聞いてる……え、あの……!」
鍛冶師「君が言えと言ったんだから、ね」マッカ
盗賊「え、いや、あの……!」
船長「おーい!盗賊!鍛冶師…… ……なんだお前ら。二人揃って茹でたタコみたいに……」
鍛冶師「ちょ、丁度良かった。船長さん、次の船の行き先は?」
船長「は? ……ああ、まだ未定だが」
盗賊「し、資材の調達頼めるかな!?」
船長「……盗賊、声裏がえってんぞ?どうしたんだ?お前ら……」
鍛冶師「だ、大丈夫だよ!?」
船長「? ……ああ、資材ならそうだな……鍛冶師の村辺りへ行くのが良いかな」
鍛冶師「本当に?」
船長「嘘ついてどーすんだ……まじで大丈夫か?」
船長「働き手も増やしたいしな。工事も順調に進んでるし、船の調達とかも」
船長「必要だしなぁ」
盗賊「船?まだ定期便の準備は早くないか?」
船長「ああ、いや……ま……少年がな」
403: 2013/05/12(日) 08:58:51.44 ID:DCXxd80ZP
おはよー!
微妙な天気だったけど花火も見れたし満足さー!
さて、お昼からお仕事!
お出かけるまでー
微妙な天気だったけど花火も見れたし満足さー!
さて、お昼からお仕事!
お出かけるまでー
404: 2013/05/12(日) 09:10:10.60 ID:DCXxd80ZP
盗賊「少年?何か言ってたのか?」
船長「この島だけじゃ何れ手狭になるだろうってな……」
鍛冶師「どういうこと?」
船長「……始まりの大陸の街を復活させよう、ってな」
鍛冶師「始まりの大陸……?」
盗賊「ここから遠く無い所にある小さな島だ。そこに……廃墟がある」
船長「居住区には充分だ。問題は……資金と、城だな」
鍛冶師「城……?城もあるのか」
盗賊「ああ……小さな城だけどな。ま……少年も、あっさり無理言うなぁ……」
船長「側近の奴が生え際気にするのも解る気がするぜ……」
鍛冶師「生え際?」
船長「いや、それはどうでも良い。しかし……そうだな」
船長「いつ、いつ……か。まあ、俺はこれと言って用事がある訳じゃ無いんだが……」
鍛冶師「鍛冶師の村に船を出すなら、僕も連れて行って欲しい」
船長「ん?そりゃ……構わんけど……帰るのか?」
盗賊「……」
鍛冶師「一度ね。村に置いてきた道具をとりに戻りたいんだ」
鍛冶師「……引っ越しを決めたんだよ。この街に」
船長「ほーう……そりゃ、また」
船長「……良いのか?」
鍛冶師「ああ。もう決めた」
盗賊「あ……ありがたいよな。この、島……気に入ってくれる、てのはさ」
船長「お?おう……?」
船長「どした、お前……」
盗賊「お、俺、女の様子見てくるわ!」タタタ……
鍛冶師「あ……盗賊!」
船長「……喧嘩でもしたか?」
船長「この島だけじゃ何れ手狭になるだろうってな……」
鍛冶師「どういうこと?」
船長「……始まりの大陸の街を復活させよう、ってな」
鍛冶師「始まりの大陸……?」
盗賊「ここから遠く無い所にある小さな島だ。そこに……廃墟がある」
船長「居住区には充分だ。問題は……資金と、城だな」
鍛冶師「城……?城もあるのか」
盗賊「ああ……小さな城だけどな。ま……少年も、あっさり無理言うなぁ……」
船長「側近の奴が生え際気にするのも解る気がするぜ……」
鍛冶師「生え際?」
船長「いや、それはどうでも良い。しかし……そうだな」
船長「いつ、いつ……か。まあ、俺はこれと言って用事がある訳じゃ無いんだが……」
鍛冶師「鍛冶師の村に船を出すなら、僕も連れて行って欲しい」
船長「ん?そりゃ……構わんけど……帰るのか?」
盗賊「……」
鍛冶師「一度ね。村に置いてきた道具をとりに戻りたいんだ」
鍛冶師「……引っ越しを決めたんだよ。この街に」
船長「ほーう……そりゃ、また」
船長「……良いのか?」
鍛冶師「ああ。もう決めた」
盗賊「あ……ありがたいよな。この、島……気に入ってくれる、てのはさ」
船長「お?おう……?」
船長「どした、お前……」
盗賊「お、俺、女の様子見てくるわ!」タタタ……
鍛冶師「あ……盗賊!」
船長「……喧嘩でもしたか?」
405: 2013/05/12(日) 09:27:05.86 ID:DCXxd80ZP
鍛冶師「いや、そんなんじゃ無いよ……」
船長「そうか? ……まあ、良いけどよ」
鍛冶師「目処はどれぐらいになりそう?」
船長「出港か?そうだな……諸々準備考えて、早くて2.3日後だな」
鍛冶師「解った……準備しておくよ」
船長「おう……料金はしっかり頂くぜ?」
鍛冶師「それは勿論だ。帰りもお願いするしね」
船長「……女は、教会か?」
鍛冶師「ああ、だと思うけど……行くの?」
船長「……いや。船に戻るさ。何かあれば船まで来いって」
鍛冶師「盗賊に伝えておけ、ね」
船長「おう。じゃあな」スタスタ
鍛冶師(……船長、どことなく元気ない様に見えた、けど)
鍛冶師(気のせい、かな)
鍛冶師(さて……女、や、盗賊のとこには行きにくいな)
鍛冶師(……宿に戻るか。準備しとかないとな)
……
………
…………
船長「そうか? ……まあ、良いけどよ」
鍛冶師「目処はどれぐらいになりそう?」
船長「出港か?そうだな……諸々準備考えて、早くて2.3日後だな」
鍛冶師「解った……準備しておくよ」
船長「おう……料金はしっかり頂くぜ?」
鍛冶師「それは勿論だ。帰りもお願いするしね」
船長「……女は、教会か?」
鍛冶師「ああ、だと思うけど……行くの?」
船長「……いや。船に戻るさ。何かあれば船まで来いって」
鍛冶師「盗賊に伝えておけ、ね」
船長「おう。じゃあな」スタスタ
鍛冶師(……船長、どことなく元気ない様に見えた、けど)
鍛冶師(気のせい、かな)
鍛冶師(さて……女、や、盗賊のとこには行きにくいな)
鍛冶師(……宿に戻るか。準備しとかないとな)
……
………
…………
406: 2013/05/12(日) 09:38:28.79 ID:DCXxd80ZP
側近「……」ォーェー
女剣士「大丈夫か……?」
側近「お、オーライ……気にすん……ッ」ゥエ
女剣士「ずっと甲板に居た理由はそれか」
側近「船室に居るともっと酷くなりそうだからな……」
女剣士「充分酷いと思うけどな……ちょっとそこで休んでな」
女剣士「船から食料を降ろすよ」スタスタ
側近「おう、すまん……」グタ
側近(小さい入り江だな……小さい船だとは聞いてたが)
側近(ぎりぎり……海賊共が押し寄せる、のは)
側近(まあ、可能……だろうが)スタ。キョロキョロ
側近(扉は……扉……ん?)スタスタ
側近「扉ねぇじゃん」
側近「……ええええええええええええええ!?」
女剣士「何騒いでるんだい……」
側近「入口の扉が無いんだよ!」
女剣士「……なに阿呆な事言ってんの。ほら、あれだ」
側近「……え、どこ?」
女剣士「……まだ酔ってんのか?」スタスタ。コンコン
女剣士「ここにあるだろ」
側近「……え、あの。マジで見えないんですけど」
女剣士「は!?」
側近(女剣士が拳で叩いてる所……は)
側近(壁、だろ!?壁だよなぁ!?)ゴンゴン
側近「……立派な壁ですが」
女剣士「お前……頭大丈夫?」
女剣士「大丈夫か……?」
側近「お、オーライ……気にすん……ッ」ゥエ
女剣士「ずっと甲板に居た理由はそれか」
側近「船室に居るともっと酷くなりそうだからな……」
女剣士「充分酷いと思うけどな……ちょっとそこで休んでな」
女剣士「船から食料を降ろすよ」スタスタ
側近「おう、すまん……」グタ
側近(小さい入り江だな……小さい船だとは聞いてたが)
側近(ぎりぎり……海賊共が押し寄せる、のは)
側近(まあ、可能……だろうが)スタ。キョロキョロ
側近(扉は……扉……ん?)スタスタ
側近「扉ねぇじゃん」
側近「……ええええええええええええええ!?」
女剣士「何騒いでるんだい……」
側近「入口の扉が無いんだよ!」
女剣士「……なに阿呆な事言ってんの。ほら、あれだ」
側近「……え、どこ?」
女剣士「……まだ酔ってんのか?」スタスタ。コンコン
女剣士「ここにあるだろ」
側近「……え、あの。マジで見えないんですけど」
女剣士「は!?」
側近(女剣士が拳で叩いてる所……は)
側近(壁、だろ!?壁だよなぁ!?)ゴンゴン
側近「……立派な壁ですが」
女剣士「お前……頭大丈夫?」
407: 2013/05/12(日) 09:50:06.06 ID:DCXxd80ZP
側近「待て待て待て!マジで壁だろ!?」ゴンゴン
側近「……痛ェ」
女剣士「見えて……無いのか?」
側近「な……何で!?」
側近(どういう事だ……!?)コンコン。ゴンゴン。コンコン
女剣士「……」
側近(音が違う……気が、しなくもない。が)ゴンゴン
側近「扉は、ここ、だよな?」
女剣士「……からかって、る訳じゃないよな?」
側近「その侭そっくり返してぇよ!」
女剣士「ここにあるじゃないか……」ジャラ
側近「ん、何今の音……」
女剣士「……側近には、ただの壁に見えてる、のか?」
女剣士「でも……!そんな馬鹿な事あるか!」
側近「んな事言われたって……!!」
女剣士「……鉄の扉だ。所々錆び付いてる」
女剣士「音ってのはこれだろ?」ジャラン
側近「そう!それだ! ……鎖、か?」
女剣士「ああ。鎖で封印されて、でっかい鍵がついてる」
側近「鍵……」
女剣士「……疑ってる訳じゃ無いんだが」
女剣士「本当に……見えてない、んだな?」
側近「……」
側近(女剣士に見えて、俺には見えない……違いは何だ?)
女剣士「……ここに鎖がある」ジャラ
側近「……ん?」トン
側近「ああ……」
側近(何か、ある……のは解る。て、事は……?)
側近「うーん……??」
側近「……痛ェ」
女剣士「見えて……無いのか?」
側近「な……何で!?」
側近(どういう事だ……!?)コンコン。ゴンゴン。コンコン
女剣士「……」
側近(音が違う……気が、しなくもない。が)ゴンゴン
側近「扉は、ここ、だよな?」
女剣士「……からかって、る訳じゃないよな?」
側近「その侭そっくり返してぇよ!」
女剣士「ここにあるじゃないか……」ジャラ
側近「ん、何今の音……」
女剣士「……側近には、ただの壁に見えてる、のか?」
女剣士「でも……!そんな馬鹿な事あるか!」
側近「んな事言われたって……!!」
女剣士「……鉄の扉だ。所々錆び付いてる」
女剣士「音ってのはこれだろ?」ジャラン
側近「そう!それだ! ……鎖、か?」
女剣士「ああ。鎖で封印されて、でっかい鍵がついてる」
側近「鍵……」
女剣士「……疑ってる訳じゃ無いんだが」
女剣士「本当に……見えてない、んだな?」
側近「……」
側近(女剣士に見えて、俺には見えない……違いは何だ?)
女剣士「……ここに鎖がある」ジャラ
側近「……ん?」トン
側近「ああ……」
側近(何か、ある……のは解る。て、事は……?)
側近「うーん……??」
409: 2013/05/12(日) 09:56:58.86 ID:DCXxd80ZP
女剣士「アタシには、ちゃんと側近が鎖に触ってる様に見えるんだけど」
側近「……ちょっと待ってくれよ?」
側近(男と女……人間と魔族。違い、と言えば……)
側近(どう考えても、後者だよな……差、てのは)
側近(しかし……)
女剣士「……なんだよ」
側近(魔族には見えなくて人間には……て、事は)
側近(……魔法の封印、だろうな。それも……多分、力の強い魔族)
側近(おいおいおい、俺に解ける気全くしないんですけど!?)
女剣士「側近ってば!」
側近「あ、ああ……すまん。んー……」
側近「鍵は掛かってるんだな?」
女剣士「あ、ああ……鎖も頑丈そうだが……」
側近「良し、ちょっと離れてろ……風よ……ッ」ゴオオオオッ
女剣士「……ッ」
ジャラン……ッガシャンガシャン……ッ
側近「……流石に俺にも聞こえたぞ」
女剣士「鎖が、あっさり切れた……!?」
側近「扉は開けられそうか?」
女剣士「あ、ああ……ちょっと待て ……!」グ……ッ
ギイイイィ……
女剣士「あ……い、た……」
側近「うぉ……ッ眩し……ッ」パァア
女剣士「え?」
側近「え?」
側近「……ちょっと待ってくれよ?」
側近(男と女……人間と魔族。違い、と言えば……)
側近(どう考えても、後者だよな……差、てのは)
側近(しかし……)
女剣士「……なんだよ」
側近(魔族には見えなくて人間には……て、事は)
側近(……魔法の封印、だろうな。それも……多分、力の強い魔族)
側近(おいおいおい、俺に解ける気全くしないんですけど!?)
女剣士「側近ってば!」
側近「あ、ああ……すまん。んー……」
側近「鍵は掛かってるんだな?」
女剣士「あ、ああ……鎖も頑丈そうだが……」
側近「良し、ちょっと離れてろ……風よ……ッ」ゴオオオオッ
女剣士「……ッ」
ジャラン……ッガシャンガシャン……ッ
側近「……流石に俺にも聞こえたぞ」
女剣士「鎖が、あっさり切れた……!?」
側近「扉は開けられそうか?」
女剣士「あ、ああ……ちょっと待て ……!」グ……ッ
ギイイイィ……
女剣士「あ……い、た……」
側近「うぉ……ッ眩し……ッ」パァア
女剣士「え?」
側近「え?」
410: 2013/05/12(日) 10:04:24.29 ID:DCXxd80ZP
女剣士「眩しい……て、何が?」
側近「……今の赤い光、見えなかったの?」
女剣士「え!?」
側近「……いや、良い」
側近(封印が解けた……のか。多分……魔族にだけ、有効な感じの奴)
側近(だ、よなぁ?そうとしか考えられない……よ、な!?)
女剣士「随分あっさりだな……」
側近「……そうか?」
女剣士「そりゃ、アンタが居てくれたから、だけどさ」
女剣士「あんな風の魔法、使える奴はそう居ないだろうしな」
側近「……」
側近(鎖の欠片……拾っておくか)スッ
側近(誰だか知らないが、厄介な封印かけやがって……)
側近「俺にもやっと見えたよ、扉……行くか」
女剣士「……ああ」
側近「後ろから着いて来い」スタスタ
女剣士「だ、大丈夫だ!馬鹿にするな!」
側近「してネェよ! ……と、階段しかないな」
女剣士「え……あ、本当だ」
側近「ほんのり……明るい?」
女剣士「足下しか見えないけどな……しかし、魔法使えるってのは便利だな」
側近「え?」
女剣士「……そういう魔法だろ、これ?」
側近「いや、俺何もしてないけど?」
女剣士「……え」
側近「壁がうっすら発光してるだけだ……まあ、魔法の類には違いないだろうけど」
側近「……俺じゃネェよ」
側近「……今の赤い光、見えなかったの?」
女剣士「え!?」
側近「……いや、良い」
側近(封印が解けた……のか。多分……魔族にだけ、有効な感じの奴)
側近(だ、よなぁ?そうとしか考えられない……よ、な!?)
女剣士「随分あっさりだな……」
側近「……そうか?」
女剣士「そりゃ、アンタが居てくれたから、だけどさ」
女剣士「あんな風の魔法、使える奴はそう居ないだろうしな」
側近「……」
側近(鎖の欠片……拾っておくか)スッ
側近(誰だか知らないが、厄介な封印かけやがって……)
側近「俺にもやっと見えたよ、扉……行くか」
女剣士「……ああ」
側近「後ろから着いて来い」スタスタ
女剣士「だ、大丈夫だ!馬鹿にするな!」
側近「してネェよ! ……と、階段しかないな」
女剣士「え……あ、本当だ」
側近「ほんのり……明るい?」
女剣士「足下しか見えないけどな……しかし、魔法使えるってのは便利だな」
側近「え?」
女剣士「……そういう魔法だろ、これ?」
側近「いや、俺何もしてないけど?」
女剣士「……え」
側近「壁がうっすら発光してるだけだ……まあ、魔法の類には違いないだろうけど」
側近「……俺じゃネェよ」
412: 2013/05/12(日) 10:11:52.46 ID:DCXxd80ZP
女剣士「……魔族、が住んでるのか」カツン、カツン
側近「どうだかな……」カツン、カツン
側近(微かに……魔法の残照は感じる、が)
側近(姫様や魔王様なら解るのかもしれないがなぁ……)
女剣士「……何処まで上れば良いんだ」
側近「俺に聞くなよ……」
女剣士「……」
側近「……」
側近(部屋も何も無い……ずっと階段が続くだけ……?)
側近(窓も何も無い……おかしくなりそうだな)
側近(しかし……これ、雲の上まで続いてるんだろ!?)
側近(いやいやいやいや、無理だってー!)
女剣士「……扉だ!」
側近「へ!?」
女剣士「……また見えないとか言うのか?」
側近「いや……見えてるさ」グッ
側近「開けるぞ?」
女剣士「……ああ!」チャキッ
側近「よ……っと」
ギィイ……
側近「……」キョロ
女剣士「……」キョロキョロ
側近「……何も無いな」
女剣士「誰も居ない……しな」フゥ
側近「どうだかな……」カツン、カツン
側近(微かに……魔法の残照は感じる、が)
側近(姫様や魔王様なら解るのかもしれないがなぁ……)
女剣士「……何処まで上れば良いんだ」
側近「俺に聞くなよ……」
女剣士「……」
側近「……」
側近(部屋も何も無い……ずっと階段が続くだけ……?)
側近(窓も何も無い……おかしくなりそうだな)
側近(しかし……これ、雲の上まで続いてるんだろ!?)
側近(いやいやいやいや、無理だってー!)
女剣士「……扉だ!」
側近「へ!?」
女剣士「……また見えないとか言うのか?」
側近「いや……見えてるさ」グッ
側近「開けるぞ?」
女剣士「……ああ!」チャキッ
側近「よ……っと」
ギィイ……
側近「……」キョロ
女剣士「……」キョロキョロ
側近「……何も無いな」
女剣士「誰も居ない……しな」フゥ
414: 2013/05/12(日) 10:21:58.79 ID:DCXxd80ZP
側近(小さい部屋だな……だが、随分居心地が悪い)
側近(窓も……扉も入口以外には無い……ん?)
側近「……行き止まり、か」
女剣士「え!?で、でも……!」
側近「……あれ、また俺に見えてないだけ?」
女剣士「……」ゴンゴン。コンコン
側近(そうでも無い……みたいだな)
側近(て、事は……あの高さは、入口同様……まやかしの魔法か?)
側近(しかし……そんな事出来る奴……)
側近(……魔王様ぐらいしか思いつかないぞ)
女剣士「壁……だな。側近にも見えてない、んだよな?」
側近「そうだな。さっきの反対のパターンでもなさそうだ」
女剣士「……なんだ。何も……居なかった、のか」ホッ
側近「みたいだな……戻るか」
女剣士「少しぐらい休憩しようぜ。ここ……空気も良いみたいだし」
側近「え?」
女剣士「え?」
側近「……いや、良い。しかし……これじゃ、解決にならないな」
側近(封印に寄ってきてた野生の魔物、か……やれやれ)
側近(しかし……空気が良い、だと?)
女剣士「仕方ないさ。私が頑張れば良いだけの話だ」
側近(……一転、晴れやかな顔してやがる。何でだ?)
側近(街から危険が去った訳じゃ無い、だろうに)
側近「……それも何時まで持つんだよ。20年30年と続けば」
側近「お前の身体も持たなくなるんだぜ?」
側近(窓も……扉も入口以外には無い……ん?)
側近「……行き止まり、か」
女剣士「え!?で、でも……!」
側近「……あれ、また俺に見えてないだけ?」
女剣士「……」ゴンゴン。コンコン
側近(そうでも無い……みたいだな)
側近(て、事は……あの高さは、入口同様……まやかしの魔法か?)
側近(しかし……そんな事出来る奴……)
側近(……魔王様ぐらいしか思いつかないぞ)
女剣士「壁……だな。側近にも見えてない、んだよな?」
側近「そうだな。さっきの反対のパターンでもなさそうだ」
女剣士「……なんだ。何も……居なかった、のか」ホッ
側近「みたいだな……戻るか」
女剣士「少しぐらい休憩しようぜ。ここ……空気も良いみたいだし」
側近「え?」
女剣士「え?」
側近「……いや、良い。しかし……これじゃ、解決にならないな」
側近(封印に寄ってきてた野生の魔物、か……やれやれ)
側近(しかし……空気が良い、だと?)
女剣士「仕方ないさ。私が頑張れば良いだけの話だ」
側近(……一転、晴れやかな顔してやがる。何でだ?)
側近(街から危険が去った訳じゃ無い、だろうに)
側近「……それも何時まで持つんだよ。20年30年と続けば」
側近「お前の身体も持たなくなるんだぜ?」
415: 2013/05/12(日) 10:23:19.26 ID:DCXxd80ZP
>>413
出かけるまでだけだから大丈夫さー!
ありがとうね!
出かけるまでだけだから大丈夫さー!
ありがとうね!
416: 2013/05/12(日) 10:53:54.76 ID:DCXxd80ZP
女剣士「それぐらいなら大丈夫だ」
側近「いやいやいや。じゃあその後は?」
女剣士「……その頃にはアタシの子供とか、いるだろ」
側近「……ああ、もう。お前さぁ」
女剣士「な、何だよ」
側近「村に魔物が来ないと困るの?」
女剣士「……え?」
側近「『アタシがいるから大丈夫』は良いよ、別に」
側近「ここに来るの……来させるの、か。嫌がってたり」
側近「さっきもそうだが……ボス的な何か居なくてほっとしたのは事実だろうがさ」
女剣士「……」
側近「根本的な解決、望んでない様に見えるぜ?」
女剣士「そ、そんな事は!!」
側近「……そうか?まあ、俺の考えすぎなら良いけどさ」
女剣士「……」
側近「……行こうぜ。お前は空気が良いとか言ってたが……」
側近「俺には息苦しいよ」
女剣士「……」
側近(……目に見えてへこんだな)ハァ
女剣士「……」
側近「おい、立てよ?」
女剣士「……かな」
側近「え?」
側近「いやいやいや。じゃあその後は?」
女剣士「……その頃にはアタシの子供とか、いるだろ」
側近「……ああ、もう。お前さぁ」
女剣士「な、何だよ」
側近「村に魔物が来ないと困るの?」
女剣士「……え?」
側近「『アタシがいるから大丈夫』は良いよ、別に」
側近「ここに来るの……来させるの、か。嫌がってたり」
側近「さっきもそうだが……ボス的な何か居なくてほっとしたのは事実だろうがさ」
女剣士「……」
側近「根本的な解決、望んでない様に見えるぜ?」
女剣士「そ、そんな事は!!」
側近「……そうか?まあ、俺の考えすぎなら良いけどさ」
女剣士「……」
側近「……行こうぜ。お前は空気が良いとか言ってたが……」
側近「俺には息苦しいよ」
女剣士「……」
側近(……目に見えてへこんだな)ハァ
女剣士「……」
側近「おい、立てよ?」
女剣士「……かな」
側近「え?」
417: 2013/05/12(日) 11:10:53.11 ID:DCXxd80ZP
女剣士「アタシが……居なくても困らないのかな」
側近「……はぁ?」
女剣士「何でも無い。行こう」スタスタ
側近「……」
側近(何だ?)スタスタ
側近「……はぁ?」
女剣士「何でも無い。行こう」スタスタ
側近「……」
側近(何だ?)スタスタ
423: 2013/05/13(月) 09:28:46.03 ID:3L5LWpjvP
側近「おい、女剣士……」
ギィ……
女剣士「え……!?」ピタ
側近「おわッ……」ドン!
側近「ちょ、急に止まるなよ!?」
女剣士「……な、なんで!?」
側近「は、何が……ッ」
ヒュウゥ……
側近(風……ん?)
側近「……外?」
女剣士「外……」
側近「……ええええええええええええええ!?」
女剣士「な、なん……で……!?」タタタ
側近「あ、ちょっと待てって……!」タタ
バタァン! ……シュゥン
側近(扉が……消えた?)
女剣士「あ……!」ガシ、ガチャガチャガチャ!
女剣士「開かない……?」
側近(……否、女剣士には、見えてる、のか)
女剣士「ど……どうなってんだよ!」ガチャガチャガチャ!
側近(……封印された、か……ふむ)
側近(見えネェからわからねぇけど……誰の封印だ?)
側近(魔王様じゃネェだろうが……同等の力を持ってると仮定すりゃ)
側近(……消去法で行くと……)ブツブツ
女剣士「何ぶつぶつ言ってるんだよ、側近!」
ギィ……
女剣士「え……!?」ピタ
側近「おわッ……」ドン!
側近「ちょ、急に止まるなよ!?」
女剣士「……な、なんで!?」
側近「は、何が……ッ」
ヒュウゥ……
側近(風……ん?)
側近「……外?」
女剣士「外……」
側近「……ええええええええええええええ!?」
女剣士「な、なん……で……!?」タタタ
側近「あ、ちょっと待てって……!」タタ
バタァン! ……シュゥン
側近(扉が……消えた?)
女剣士「あ……!」ガシ、ガチャガチャガチャ!
女剣士「開かない……?」
側近(……否、女剣士には、見えてる、のか)
女剣士「ど……どうなってんだよ!」ガチャガチャガチャ!
側近(……封印された、か……ふむ)
側近(見えネェからわからねぇけど……誰の封印だ?)
側近(魔王様じゃネェだろうが……同等の力を持ってると仮定すりゃ)
側近(……消去法で行くと……)ブツブツ
女剣士「何ぶつぶつ言ってるんだよ、側近!」
424: 2013/05/13(月) 09:51:19.32 ID:3L5LWpjvP
側近「ん? ……ああ、悪い。いや、まあ……何で俺には見えないのかなぁ、と」
女剣士「え……見えてないの、これ」
側近「ああ……締まった瞬間、消えた」
女剣士「……」ガチャガチャ
側近「音は聞こえてるよ」
女剣士「……」ガチャガチャ!
側近「やめとけって……もう別に用事もネェだろ」
女剣士「何で……」
側近「考えても……解らんさ」
女剣士「……」
側近(さて……これで街に戻って、どう説明したもんかねぇ)
女剣士「……側近」
側近「ん?」
女剣士「これ……どうしようも無い、んだよな?」
側近「何がだ」
女剣士「……塔には何も居なかったし、魔物達は……変わらず、街に来るんだろうか」
側近「……」
女剣士「さっきの話……だけど……」
側近「ストップ……船に戻ろうぜ。ここで蝙蝠に襲われるのは御免だ」
女剣士「……ああ」
……
………
…………
甲板
側近『……て、訳だ』
女剣士「え……見えてないの、これ」
側近「ああ……締まった瞬間、消えた」
女剣士「……」ガチャガチャ
側近「音は聞こえてるよ」
女剣士「……」ガチャガチャ!
側近「やめとけって……もう別に用事もネェだろ」
女剣士「何で……」
側近「考えても……解らんさ」
女剣士「……」
側近(さて……これで街に戻って、どう説明したもんかねぇ)
女剣士「……側近」
側近「ん?」
女剣士「これ……どうしようも無い、んだよな?」
側近「何がだ」
女剣士「……塔には何も居なかったし、魔物達は……変わらず、街に来るんだろうか」
側近「……」
女剣士「さっきの話……だけど……」
側近「ストップ……船に戻ろうぜ。ここで蝙蝠に襲われるのは御免だ」
女剣士「……ああ」
……
………
…………
甲板
側近『……て、訳だ』
425: 2013/05/13(月) 10:00:26.67 ID:3L5LWpjvP
魔王『ふむ……』
側近『お前じゃ無いよな?』
魔王『私では無い……し、意味も無いだろう、そんなの』
側近『だよなぁ……』
魔王『蝙蝠共はその封印の所為で集まってきているんだろうな』
側近『……考えれるのはそれぐらい、だな』
魔王『誰の魔法かはわからんが……強力な物に違いは無いのだろうし』
側近『まあ、変なものが無いのが解っただけでも、だな』
魔王『……息苦しい、てのが少し気になるが』
側近『そうだな。女剣士は逆に『空気が良い』とか言ってたしな』
魔王『まあ良い……取りあえず、ご苦労、側近』
側近『街に戻って町長に報告したら、始まりの街に行くわ』
魔王『ついでに癒やしの石も頼むぞ』
側近『……それは港街にも寄れって事ですか、そうですか』
魔王『うん』
側近『アッサリだな!』
魔王『私がふらふら出歩く訳にはいかないんだろう』
側近『……落ち着いちゃったらありだけどね』
魔王『姫との約束もあるからな』
側近『それは別に咎めネェけど。けど!』
側近『くれぐれも!問題は!起こさないでね!』
魔王『……解ってる』
側近『気持ち悪いぐらい素直だな』
魔王『流石に懲りたさ……ああ、姫が呼んでる』
側近『俺も戻る。女剣士と話しもあるしな』
魔王『……こっちの事は心配するな。使用人が旨くやってくれている』
側近『……帰って俺のポジション無かったらどうしよう』
魔王『阿呆……お前はお前だ、側近』
魔王『……ではな』
側近(心なしか、元気が無い様に思えるなぁ……)
側近(魔王様の問題も……何時までも先延ばしには出来ないよな)スタスタ
カチャ
側近『お前じゃ無いよな?』
魔王『私では無い……し、意味も無いだろう、そんなの』
側近『だよなぁ……』
魔王『蝙蝠共はその封印の所為で集まってきているんだろうな』
側近『……考えれるのはそれぐらい、だな』
魔王『誰の魔法かはわからんが……強力な物に違いは無いのだろうし』
側近『まあ、変なものが無いのが解っただけでも、だな』
魔王『……息苦しい、てのが少し気になるが』
側近『そうだな。女剣士は逆に『空気が良い』とか言ってたしな』
魔王『まあ良い……取りあえず、ご苦労、側近』
側近『街に戻って町長に報告したら、始まりの街に行くわ』
魔王『ついでに癒やしの石も頼むぞ』
側近『……それは港街にも寄れって事ですか、そうですか』
魔王『うん』
側近『アッサリだな!』
魔王『私がふらふら出歩く訳にはいかないんだろう』
側近『……落ち着いちゃったらありだけどね』
魔王『姫との約束もあるからな』
側近『それは別に咎めネェけど。けど!』
側近『くれぐれも!問題は!起こさないでね!』
魔王『……解ってる』
側近『気持ち悪いぐらい素直だな』
魔王『流石に懲りたさ……ああ、姫が呼んでる』
側近『俺も戻る。女剣士と話しもあるしな』
魔王『……こっちの事は心配するな。使用人が旨くやってくれている』
側近『……帰って俺のポジション無かったらどうしよう』
魔王『阿呆……お前はお前だ、側近』
魔王『……ではな』
側近(心なしか、元気が無い様に思えるなぁ……)
側近(魔王様の問題も……何時までも先延ばしには出来ないよな)スタスタ
カチャ
426: 2013/05/13(月) 10:07:00.68 ID:3L5LWpjvP
側近「悪いな。少し気分はマシになったよ」
女剣士「いや……大丈夫か?中に居るとしんどいんだろ」
側近「お前を甲板に引きずり出す訳にいかないだろ、航海士さん」
女剣士「フン……」
側近「……」
女剣士「……」
側近(言い出しにくい、か)フゥ
側近「……で、何だったっけ?」
女剣士「……アタシ、は強い」
側近「あ?」
女剣士「強いと思って……る。思ってた」
側近「それは俺も否定はしネェよ。実際に街を守ってきたのはお前だろうし」
側近「……剣さばきは見事だったと思うぜ?」
側近「俺は、まあ……そっちは専門じゃ無いけどさ」
女剣士「魔法の腕と剣の腕を比べても意味が無い事は分かってるんだ」
女剣士「だけど…… ……」
女剣士「……」
側近「俺が言ったのは、当たらずとも遠からず、か?」
女剣士「『根本的な解決を望んでない様に見える』?」
側近「……ああ」
女剣士「街は……平和になって欲しい。皆、アタシが居るから大丈夫だって」
女剣士「笑って言ってはくれるけど……アタシが居なくても大丈夫になるのが」
女剣士「本当の皆の望みだってのは解ってるさ」
側近「……心配や、申し訳ない気持ちもあると思うぜ?」
側近「勿論、他にも戦える奴はいるだろうけどさ」
側近「お前ばっかりに頼って申し訳ないってのは、あるだろう?」
女剣士「……」
女剣士「いや……大丈夫か?中に居るとしんどいんだろ」
側近「お前を甲板に引きずり出す訳にいかないだろ、航海士さん」
女剣士「フン……」
側近「……」
女剣士「……」
側近(言い出しにくい、か)フゥ
側近「……で、何だったっけ?」
女剣士「……アタシ、は強い」
側近「あ?」
女剣士「強いと思って……る。思ってた」
側近「それは俺も否定はしネェよ。実際に街を守ってきたのはお前だろうし」
側近「……剣さばきは見事だったと思うぜ?」
側近「俺は、まあ……そっちは専門じゃ無いけどさ」
女剣士「魔法の腕と剣の腕を比べても意味が無い事は分かってるんだ」
女剣士「だけど…… ……」
女剣士「……」
側近「俺が言ったのは、当たらずとも遠からず、か?」
女剣士「『根本的な解決を望んでない様に見える』?」
側近「……ああ」
女剣士「街は……平和になって欲しい。皆、アタシが居るから大丈夫だって」
女剣士「笑って言ってはくれるけど……アタシが居なくても大丈夫になるのが」
女剣士「本当の皆の望みだってのは解ってるさ」
側近「……心配や、申し訳ない気持ちもあると思うぜ?」
側近「勿論、他にも戦える奴はいるだろうけどさ」
側近「お前ばっかりに頼って申し訳ないってのは、あるだろう?」
女剣士「……」
427: 2013/05/13(月) 10:35:13.02 ID:3L5LWpjvP
側近「思ってた、て過去形にしたのは……俺の所為か」
女剣士「あんな魔法見せられちゃね」
側近(まあ……俺、魔族だしなぁ。しかも魔王様の目持ってるしなぁ)
側近(……俺も規格外、か。ハァ)
女剣士「比べるもんじゃ無いのは……さっきも言ったけど……解ってる」
女剣士「でも……」
側近「平和にはなって欲しいけど、必要とされなくなるのが厭、てか」
女剣士「……怖いんだ」
側近「……お前の存在価値はそれだけじゃないだろうに」
女剣士「解ってる、けど……ッ」
側近「まあ、はいそうですかって納得できないってのも」
側近「……理解は、できるさ」
女剣士「……」
側近「……魔王の復活が本当だったとしたら」
女剣士「え?」
側近「……流石に、それは喜べないだろう?」
女剣士「それは……」
側近「……」
側近(まあ、ありえない話だけどさ)
女剣士「解ってるさ……子供じみた……阿呆みたいな、願いだって」
側近「……勇者になりたいのか?」
女剣士「え?」
側近「あー……頼りになる勇者様!誰よりも強い勇者様!」
側近「……北の街の、さ。勇者で居たい……のかな、て、な」
女剣士「そうかもな……そうだな。ふふ……ッ」
側近「何がおかしい?」
女剣士「真の平和を望まない勇者、か……滑稽だ。否……ただの阿呆……以下だ」アハハハ!
女剣士「……悪い。アタシが……勇者になんてなれる訳が無いんだ。なれる、訳……」
側近「……」
女剣士「あんな魔法見せられちゃね」
側近(まあ……俺、魔族だしなぁ。しかも魔王様の目持ってるしなぁ)
側近(……俺も規格外、か。ハァ)
女剣士「比べるもんじゃ無いのは……さっきも言ったけど……解ってる」
女剣士「でも……」
側近「平和にはなって欲しいけど、必要とされなくなるのが厭、てか」
女剣士「……怖いんだ」
側近「……お前の存在価値はそれだけじゃないだろうに」
女剣士「解ってる、けど……ッ」
側近「まあ、はいそうですかって納得できないってのも」
側近「……理解は、できるさ」
女剣士「……」
側近「……魔王の復活が本当だったとしたら」
女剣士「え?」
側近「……流石に、それは喜べないだろう?」
女剣士「それは……」
側近「……」
側近(まあ、ありえない話だけどさ)
女剣士「解ってるさ……子供じみた……阿呆みたいな、願いだって」
側近「……勇者になりたいのか?」
女剣士「え?」
側近「あー……頼りになる勇者様!誰よりも強い勇者様!」
側近「……北の街の、さ。勇者で居たい……のかな、て、な」
女剣士「そうかもな……そうだな。ふふ……ッ」
側近「何がおかしい?」
女剣士「真の平和を望まない勇者、か……滑稽だ。否……ただの阿呆……以下だ」アハハハ!
女剣士「……悪い。アタシが……勇者になんてなれる訳が無いんだ。なれる、訳……」
側近「……」
428: 2013/05/13(月) 10:36:37.03 ID:3L5LWpjvP
お迎えー!
432: 2013/05/13(月) 14:44:03.27 ID:3L5LWpjvP
女剣士「……」
側近「勇者ってのは……」
女剣士「……?」
側近「勇者ってのは、自分で宣言してなるもんじゃ無いだろう?」
女剣士「……」
側近「何かを思って、誰かの為を思って……さ。した行動ってのがさ」
側近「多くの人に喜ばれて、そんで、さ……」
側近「後々、自然とあの人は勇者だった、とか……言われるモンなんだろう」
女剣士「……」
側近(自分で言ってて耳が痛いよ……ホント)
側近(俺も言ったもんな、魔王様に……勇者になれ、だなんて)
女剣士「ありがとう、って言ってくれる……助かるよ、って」
側近「ん?あ、ああ……街の人にか」
女剣士「……当たり前の様に、アタシに、さ」
側近「……?」
女剣士「確かに、頼られたい。でも……あれ以上に強い魔物が来たら?」
女剣士「……アタシに、倒せるのか」
側近「……」
女剣士「勇者様だったら、きっと当たり前の様に倒すんだろうさ」
女剣士「でも……その場に立ってるのがアタシだったら?」
女剣士「……そして、負けてしまったら?」
側近「……怖い、か?」
女剣士「当然だ。氏ぬのが怖いのもある。けど……向けられるだろう、侮蔑のまなざしが」
女剣士「……アタシは、何よりも怖い」
側近「……」
女剣士「今の侭の状態が延々と続いたとしても、アタシは勇者にはなれない」
女剣士「だが、もし……最悪の事態になれば」
側近「……」
女剣士「……やっぱり、勇者になんてなれないのさ」
側近「勇者ってのは……」
女剣士「……?」
側近「勇者ってのは、自分で宣言してなるもんじゃ無いだろう?」
女剣士「……」
側近「何かを思って、誰かの為を思って……さ。した行動ってのがさ」
側近「多くの人に喜ばれて、そんで、さ……」
側近「後々、自然とあの人は勇者だった、とか……言われるモンなんだろう」
女剣士「……」
側近(自分で言ってて耳が痛いよ……ホント)
側近(俺も言ったもんな、魔王様に……勇者になれ、だなんて)
女剣士「ありがとう、って言ってくれる……助かるよ、って」
側近「ん?あ、ああ……街の人にか」
女剣士「……当たり前の様に、アタシに、さ」
側近「……?」
女剣士「確かに、頼られたい。でも……あれ以上に強い魔物が来たら?」
女剣士「……アタシに、倒せるのか」
側近「……」
女剣士「勇者様だったら、きっと当たり前の様に倒すんだろうさ」
女剣士「でも……その場に立ってるのがアタシだったら?」
女剣士「……そして、負けてしまったら?」
側近「……怖い、か?」
女剣士「当然だ。氏ぬのが怖いのもある。けど……向けられるだろう、侮蔑のまなざしが」
女剣士「……アタシは、何よりも怖い」
側近「……」
女剣士「今の侭の状態が延々と続いたとしても、アタシは勇者にはなれない」
女剣士「だが、もし……最悪の事態になれば」
側近「……」
女剣士「……やっぱり、勇者になんてなれないのさ」
433: 2013/05/13(月) 14:54:43.72 ID:3L5LWpjvP
側近「……」
女剣士「当然だよな。さっきアンタが言った通り」
女剣士「『何かを思う』事も『誰かの為に』も無いんだ」
女剣士「……アタシは、アタシのプライドを保つ為だけに」
女剣士「下らないちっぽけなプライドの為だけに」
側近「もう、良い。良い、から……」
女剣士「……」
側近(複雑だな、人間ってのは……いや、俺も元人間だけど)
側近(……力を持つ、てのは怖い事だ)
側近「変な事言い出して悪かったよ……とにかく」
側近「……塔には宝物は愚か、魔物も居なかったんだ」
女剣士「……」
側近「けったいな……現象については、まあ、こればっかりはどうしようもない」
側近「……結果は、お前の望んだとおりになった訳だ」
女剣士「……ッ」
側近「ああああああああ、そんな顔すんな、嫌味で言った訳じゃネェよ!?」
側近「……同じ事が続くんだ。大変だぜ?」
女剣士「今までと何も変わらないさ」
側近「……」
女剣士「魔物が出れば剣を振り、危険が去ったら鐘を鳴らす」
女剣士「……そうだな。望むとおりだ」
側近(本気でへこんでるなぁ……しかし、まあ)
側近(こればっかりは、な……どうしようもねぇよ)
女剣士「……街が見えた。着岸するぞ」
側近(魔王様に頼んでも、な……魔物が来なくなれば)
側近(……こいつは、どうするんだろうな)
……
………
…………
女剣士「当然だよな。さっきアンタが言った通り」
女剣士「『何かを思う』事も『誰かの為に』も無いんだ」
女剣士「……アタシは、アタシのプライドを保つ為だけに」
女剣士「下らないちっぽけなプライドの為だけに」
側近「もう、良い。良い、から……」
女剣士「……」
側近(複雑だな、人間ってのは……いや、俺も元人間だけど)
側近(……力を持つ、てのは怖い事だ)
側近「変な事言い出して悪かったよ……とにかく」
側近「……塔には宝物は愚か、魔物も居なかったんだ」
女剣士「……」
側近「けったいな……現象については、まあ、こればっかりはどうしようもない」
側近「……結果は、お前の望んだとおりになった訳だ」
女剣士「……ッ」
側近「ああああああああ、そんな顔すんな、嫌味で言った訳じゃネェよ!?」
側近「……同じ事が続くんだ。大変だぜ?」
女剣士「今までと何も変わらないさ」
側近「……」
女剣士「魔物が出れば剣を振り、危険が去ったら鐘を鳴らす」
女剣士「……そうだな。望むとおりだ」
側近(本気でへこんでるなぁ……しかし、まあ)
側近(こればっかりは、な……どうしようもねぇよ)
女剣士「……街が見えた。着岸するぞ」
側近(魔王様に頼んでも、な……魔物が来なくなれば)
側近(……こいつは、どうするんだろうな)
……
………
…………
435: 2013/05/13(月) 15:08:11.26 ID:3L5LWpjvP
側近「……て、訳です」
親父「……」
女剣士「親父?」
親父「いや……すまん。にわかには信じられない話でな」
側近「何も無かった、て話が、か?」
親父「いや……そうじゃない。別にお前達を疑ってる訳じゃ無い」
親父「側近君が言う様に、まやかしの様な魔法が掛かっているとすれば」
親父「……その魔力に惹かれて、蝙蝠達が集まってくるって言うのもまあ」
親父「解らんでもない……んだが」
側近(そりゃま……その、強力な魔法を使えるって事自体が)
側近(人間には信じられない話……だよな)
親父「居心地が良かった、と言うのは……何なんだろうな」
女剣士「アタシは、な……側近は息苦しいって言ってたっけな」
側近(女剣士……やっぱり元気ない様に見えるなあ)
女剣士「……側近?」
側近「あ、ああ……すまん。そうだな……ん、何だっけ?」
親父「疲れているんだろう……すまんな、先に休ませた方が良かったか」
側近「いや、大丈夫……ちょっと考え事してただけだ」
側近「えーと……ああ、息苦しい、だな」
女剣士「大丈夫か?」
側近「……心配すんな。女剣士は……空気が良い、だっけ?言ってたよな」
親父「ふむ……扉も側近君には見えていなかったと言うしな……」
側近(多分……人間と魔族だから、だとは思うんだけど……言えないしなぁ)
女剣士「魔法が使えるか否か、とか?」
親父「ふむ……どんな者の魔法かわからないから何とも言えないが」
親父「それが案外正解かもしれんな」
親父「……」
女剣士「親父?」
親父「いや……すまん。にわかには信じられない話でな」
側近「何も無かった、て話が、か?」
親父「いや……そうじゃない。別にお前達を疑ってる訳じゃ無い」
親父「側近君が言う様に、まやかしの様な魔法が掛かっているとすれば」
親父「……その魔力に惹かれて、蝙蝠達が集まってくるって言うのもまあ」
親父「解らんでもない……んだが」
側近(そりゃま……その、強力な魔法を使えるって事自体が)
側近(人間には信じられない話……だよな)
親父「居心地が良かった、と言うのは……何なんだろうな」
女剣士「アタシは、な……側近は息苦しいって言ってたっけな」
側近(女剣士……やっぱり元気ない様に見えるなあ)
女剣士「……側近?」
側近「あ、ああ……すまん。そうだな……ん、何だっけ?」
親父「疲れているんだろう……すまんな、先に休ませた方が良かったか」
側近「いや、大丈夫……ちょっと考え事してただけだ」
側近「えーと……ああ、息苦しい、だな」
女剣士「大丈夫か?」
側近「……心配すんな。女剣士は……空気が良い、だっけ?言ってたよな」
親父「ふむ……扉も側近君には見えていなかったと言うしな……」
側近(多分……人間と魔族だから、だとは思うんだけど……言えないしなぁ)
女剣士「魔法が使えるか否か、とか?」
親父「ふむ……どんな者の魔法かわからないから何とも言えないが」
親父「それが案外正解かもしれんな」
436: 2013/05/13(月) 15:24:05.45 ID:3L5LWpjvP
側近(良い具合に勘違いしてくれてるなら……正す必要も無いよな)
親父「……考えても仕方ない。親玉が居らず、野生の魔物の集まりだと言うのなら」
親父「街での自営を強化すれば良いだけだ」
女剣士「……」
側近(ま……当然の意見だな。付き合って生きていくしか無いのだし)
側近(早々、自然に全滅……てのも考えられん)
親父「女剣士にも苦労をかけたな……これからは」
親父「街をあげて……皆を、街を。協力して守っていこう」
女剣士「……ああ」
側近(……すっげぇ不満そう。解ってても……すぐには無理、か)
親父「そこで……一つ提案があるんだが」
側近「ん……じゃあ、俺はこれで」
女剣士「あ……」
親父「ああ、待ってくれ側近君。君にも聞いて欲しい」
側近「え?俺? ……でも」
親父「この街に留まる事はできんか?」
側近「……へ?」
親父「君の力は素晴らしいと思うし、人としても……私は君の事が気に入ったんだ」
親父「……出来れば、娘の婿として、この街の人間になる気はないかね?」
側近「え……えええええええええええええええええ!?」
女剣士「お、親父、何言ってんだ!?」
親父「確かに、私は側近君の事は殆ど知らないが、悪い人間で無いと言うことは解る」
親父「そうでないと、まさか船まで貸し与えたり……あんな事を頼んだりもせんよ」
側近「いやいやいやいや、だからってアンタ、娘の婿……ええええええええええ!?」
女剣士「あ、アタシの気持ちとか無視で訳のわかんねぇ話進めるんじゃネェよ!?」
親父「……考えても仕方ない。親玉が居らず、野生の魔物の集まりだと言うのなら」
親父「街での自営を強化すれば良いだけだ」
女剣士「……」
側近(ま……当然の意見だな。付き合って生きていくしか無いのだし)
側近(早々、自然に全滅……てのも考えられん)
親父「女剣士にも苦労をかけたな……これからは」
親父「街をあげて……皆を、街を。協力して守っていこう」
女剣士「……ああ」
側近(……すっげぇ不満そう。解ってても……すぐには無理、か)
親父「そこで……一つ提案があるんだが」
側近「ん……じゃあ、俺はこれで」
女剣士「あ……」
親父「ああ、待ってくれ側近君。君にも聞いて欲しい」
側近「え?俺? ……でも」
親父「この街に留まる事はできんか?」
側近「……へ?」
親父「君の力は素晴らしいと思うし、人としても……私は君の事が気に入ったんだ」
親父「……出来れば、娘の婿として、この街の人間になる気はないかね?」
側近「え……えええええええええええええええええ!?」
女剣士「お、親父、何言ってんだ!?」
親父「確かに、私は側近君の事は殆ど知らないが、悪い人間で無いと言うことは解る」
親父「そうでないと、まさか船まで貸し与えたり……あんな事を頼んだりもせんよ」
側近「いやいやいやいや、だからってアンタ、娘の婿……ええええええええええ!?」
女剣士「あ、アタシの気持ちとか無視で訳のわかんねぇ話進めるんじゃネェよ!?」
443: 2013/05/14(火) 09:21:37.68 ID:IoteoMhbP
おはよう!
今日もとりあえずお迎えまで!
今日もとりあえずお迎えまで!
444: 2013/05/14(火) 09:45:36.83 ID:IoteoMhbP
親父「何も今すぐにとは言わんよ」
女剣士「あ、当たり前だ!」
側近「あのぉ……」
親父「お前だってまんざらじゃないだろう?何時も言ってたじゃ無いか」
親父「自分より強い男じゃ無いと厭だとか」
女剣士「だ、だからって!」
側近「……あのー」
親父「側近君なら良いだろう?魔法の腕も確かだし、頭も悪く無い」
親父「だいたいお前は何時も……!」ギャアギャア
女剣士「たまたま街に来ただけの旅人だぞ!?側近は!」
女剣士「親父が人の事言えるのかよ……!」ギャアギャア
側近「人の話を聞けって!」
シーン……
魔王『……』クックック
側近『お前も黙ってろー!そんで笑うな!』
側近「あーのな?とりあえず……ああ、もう!」
側近「結論から言うと街には残れません!」
親父「……な、何故だ!?」
側近「何故だと言われましても」
女剣士「無理強いしても仕方ないだろ!」
親父「し、しかし……!」
側近「あー……まあ、俺旅人ですけど。けど……まあ、一応仕える主が居る訳で」
親父「……」
女剣士「……主」
側近「何れは戻らないといけない訳で、ですね」
側近「……気持ちはありがたいけど、俺本当に強い訳じゃないしさ」
親父「あれだけの力を持ちながら何を……」
側近「そもそも、戦闘向けじゃ無い訳よ、マジで」
女剣士「あ、当たり前だ!」
側近「あのぉ……」
親父「お前だってまんざらじゃないだろう?何時も言ってたじゃ無いか」
親父「自分より強い男じゃ無いと厭だとか」
女剣士「だ、だからって!」
側近「……あのー」
親父「側近君なら良いだろう?魔法の腕も確かだし、頭も悪く無い」
親父「だいたいお前は何時も……!」ギャアギャア
女剣士「たまたま街に来ただけの旅人だぞ!?側近は!」
女剣士「親父が人の事言えるのかよ……!」ギャアギャア
側近「人の話を聞けって!」
シーン……
魔王『……』クックック
側近『お前も黙ってろー!そんで笑うな!』
側近「あーのな?とりあえず……ああ、もう!」
側近「結論から言うと街には残れません!」
親父「……な、何故だ!?」
側近「何故だと言われましても」
女剣士「無理強いしても仕方ないだろ!」
親父「し、しかし……!」
側近「あー……まあ、俺旅人ですけど。けど……まあ、一応仕える主が居る訳で」
親父「……」
女剣士「……主」
側近「何れは戻らないといけない訳で、ですね」
側近「……気持ちはありがたいけど、俺本当に強い訳じゃないしさ」
親父「あれだけの力を持ちながら何を……」
側近「そもそも、戦闘向けじゃ無い訳よ、マジで」
445: 2013/05/14(火) 10:08:02.57 ID:IoteoMhbP
女剣士「けど……魔法……使い?だろう、側近……」
側近「どっちかっつーと僧侶系かな。治癒とか補助が専門さ」
側近「……攻撃魔法は昔の主に習ったってか、強制的に覚えさせられたと言うか」
魔王『そうなのか?』
側近『お前は黙ってろってばあああああああああ!』
女剣士「前の主?」
側近「……俺が今仕える人の父親だ」
親父「代々……仕えているのか?」
女剣士「しかし、父親って……え!?側近、幾つなんだよ……」
親父「……初老の頃から仕え、世継ぎを守る者と考えれば」
親父「その……力も納得いくな」
側近(……そうなの?)
魔王『人間と言うのは面白い考えをするんだな』
側近『……お前の当たり前は当たり前じゃないからな』
魔王『何故だ』
側近『規格外だからだよ!てか黙ってろって!』
親父「そうか……回復が出来るのならば、是非とも……と言いたいところだが」
親父「幼い主様の為であれば、仕方ないな」
側近(……幼い。幼い……ねぇ。まあ、良いか。勘違いさせておいた方が)
側近(都合も良いか……)
女剣士「……そんなんで、傍離れて大丈夫なのか?」
側近「ん?ああ……別に、お目付役は俺だけじゃネェよ」
親父「……」
側近「どっちかっつーと僧侶系かな。治癒とか補助が専門さ」
側近「……攻撃魔法は昔の主に習ったってか、強制的に覚えさせられたと言うか」
魔王『そうなのか?』
側近『お前は黙ってろってばあああああああああ!』
女剣士「前の主?」
側近「……俺が今仕える人の父親だ」
親父「代々……仕えているのか?」
女剣士「しかし、父親って……え!?側近、幾つなんだよ……」
親父「……初老の頃から仕え、世継ぎを守る者と考えれば」
親父「その……力も納得いくな」
側近(……そうなの?)
魔王『人間と言うのは面白い考えをするんだな』
側近『……お前の当たり前は当たり前じゃないからな』
魔王『何故だ』
側近『規格外だからだよ!てか黙ってろって!』
親父「そうか……回復が出来るのならば、是非とも……と言いたいところだが」
親父「幼い主様の為であれば、仕方ないな」
側近(……幼い。幼い……ねぇ。まあ、良いか。勘違いさせておいた方が)
側近(都合も良いか……)
女剣士「……そんなんで、傍離れて大丈夫なのか?」
側近「ん?ああ……別に、お目付役は俺だけじゃネェよ」
親父「……」
446: 2013/05/14(火) 10:32:56.60 ID:IoteoMhbP
女剣士「親父……?」
親父「……お忍びの旅、だったのかね」
側近「そういう訳じゃネェけど」
女剣士「もう良いだろう、親父……」
親父「……うむ」
側近「……」
親父「いや、引き留めて済まなかった。もう……行くのか?」
側近「そうだな……まだ行かなきゃ行けない所があるしな」
女剣士「……偶には、寄れよ?」
側近「おう。何時になるか……解らんけど」
親父「そうか……君なら、この街の……勇者になってくれるかと」
親父「期待したんだがな。残念だ」
側近「阿呆な事言わないでくれよ。俺は勇者なんて器じゃネェよ」
女剣士「……」
側近「……一番、街に貢献してるのは女剣士だろ?」
女剣士「……アタシだって、勇者になんかなれる訳が無い」
親父「女剣士もすまなかった。結局……お前任せにしてしまっていたな」
女剣士「……好きでやってるんだ。良いさ」
側近「……」
側近(結局何も変わらず……か)
側近(蝙蝠共が来なくなれば……否。結局は女剣士次第、だな)
魔王『……始まりの街へ行くんだな』
側近『お前が行けって言ったんだろうが』
魔王『……塔の方は、私が何とかしよう』
側近『……どういう風の吹き回しだよ』
魔王『ちょっと……な』
側近「……」
女剣士「側近?」
親父「……お忍びの旅、だったのかね」
側近「そういう訳じゃネェけど」
女剣士「もう良いだろう、親父……」
親父「……うむ」
側近「……」
親父「いや、引き留めて済まなかった。もう……行くのか?」
側近「そうだな……まだ行かなきゃ行けない所があるしな」
女剣士「……偶には、寄れよ?」
側近「おう。何時になるか……解らんけど」
親父「そうか……君なら、この街の……勇者になってくれるかと」
親父「期待したんだがな。残念だ」
側近「阿呆な事言わないでくれよ。俺は勇者なんて器じゃネェよ」
女剣士「……」
側近「……一番、街に貢献してるのは女剣士だろ?」
女剣士「……アタシだって、勇者になんかなれる訳が無い」
親父「女剣士もすまなかった。結局……お前任せにしてしまっていたな」
女剣士「……好きでやってるんだ。良いさ」
側近「……」
側近(結局何も変わらず……か)
側近(蝙蝠共が来なくなれば……否。結局は女剣士次第、だな)
魔王『……始まりの街へ行くんだな』
側近『お前が行けって言ったんだろうが』
魔王『……塔の方は、私が何とかしよう』
側近『……どういう風の吹き回しだよ』
魔王『ちょっと……な』
側近「……」
女剣士「側近?」
447: 2013/05/14(火) 10:40:18.75 ID:IoteoMhbP
側近「ん、ああ……いや」
親父「ああ……少しだけ待っていなさい」スタスタ
側近「え?」
女剣士「礼も何も無しって訳にはいかないだろう?」
側近「別に……良いんだけどな。船も貸して貰えたし」
女剣士「……ああいうのには、関わらないに限るな」
側近「ん?」
女剣士「北の塔……さ。まさか、魔法で封印してあるとはね」
側近「ああ……あの見た目もまやかしみたいだしな」
女剣士「……もし、さ」
側近「?」
女剣士「街が……平和になって、アタシがここに居る必要が無くなったら」
側近「……」
側近(何……これ何のフラグ!?)
女剣士「……」
側近「……親父の話に感化されてんじゃネェよ」
女剣士「……悪かったな」
魔王『心臓ばくばく言わせて、冷静な事言って……』クスクス
側近『帰ったらしばく。遠慮無く殴る。決定!』
側近『てか、そんな事までわかるのかよ!俺のプライバシーは!?ねぇ!?』
魔王『どうにかしてやると言ってるのに……もったいない』
側近『もう本当に黙って!』
カチャ
親父「これを持って行きなさい」
側近「……ん?何だこれ?」
親父「ああ……少しだけ待っていなさい」スタスタ
側近「え?」
女剣士「礼も何も無しって訳にはいかないだろう?」
側近「別に……良いんだけどな。船も貸して貰えたし」
女剣士「……ああいうのには、関わらないに限るな」
側近「ん?」
女剣士「北の塔……さ。まさか、魔法で封印してあるとはね」
側近「ああ……あの見た目もまやかしみたいだしな」
女剣士「……もし、さ」
側近「?」
女剣士「街が……平和になって、アタシがここに居る必要が無くなったら」
側近「……」
側近(何……これ何のフラグ!?)
女剣士「……」
側近「……親父の話に感化されてんじゃネェよ」
女剣士「……悪かったな」
魔王『心臓ばくばく言わせて、冷静な事言って……』クスクス
側近『帰ったらしばく。遠慮無く殴る。決定!』
側近『てか、そんな事までわかるのかよ!俺のプライバシーは!?ねぇ!?』
魔王『どうにかしてやると言ってるのに……もったいない』
側近『もう本当に黙って!』
カチャ
親父「これを持って行きなさい」
側近「……ん?何だこれ?」
451: 2013/05/14(火) 16:34:17.66 ID:IoteoMhbP
親父「物置にあった……古い地図だ。役に立つかは解らないが」
側近「貰って良いのか」
親父「ああ……こんな礼しかできずにすまん」
女剣士「……」
側近「とんでもない……ありがたく頂くよ」ペラ
側近(確かに古い物……だが、城にあるのとそう変わらん……かな)
親父「……君の様な男が仕える人だ。さぞ……良い主なのだろう」
側近「買いかぶりすぎだよ、親父さん」
側近(まさか魔王です、とは言えんわ……)
女剣士「ここから……何処に行くんだ?」
側近「そうだなぁ……まあ、鍛冶師の村の方に向かうしか無いよな」
側近「船も無いし」
親父「ふむ……山を越えるのか?側近君なら大丈夫だろうが」
側近「まあ……何とかしますよ。じゃ、お世話になりました」スタスタ
女剣士「……」
カチャ、パタン
親父「……」
女剣士「……」
親父「女剣士」
女剣士「……見回り、行ってくるよ。結局……状況は変わらないからな」
親父「待ちなさい……行きたければ行けば良い」
女剣士「街はどうするんだよ!」
親父「……お前達が塔に行っている間に、宿屋の親父達と話してたんだけどな」
女剣士「……?」
側近「貰って良いのか」
親父「ああ……こんな礼しかできずにすまん」
女剣士「……」
側近「とんでもない……ありがたく頂くよ」ペラ
側近(確かに古い物……だが、城にあるのとそう変わらん……かな)
親父「……君の様な男が仕える人だ。さぞ……良い主なのだろう」
側近「買いかぶりすぎだよ、親父さん」
側近(まさか魔王です、とは言えんわ……)
女剣士「ここから……何処に行くんだ?」
側近「そうだなぁ……まあ、鍛冶師の村の方に向かうしか無いよな」
側近「船も無いし」
親父「ふむ……山を越えるのか?側近君なら大丈夫だろうが」
側近「まあ……何とかしますよ。じゃ、お世話になりました」スタスタ
女剣士「……」
カチャ、パタン
親父「……」
女剣士「……」
親父「女剣士」
女剣士「……見回り、行ってくるよ。結局……状況は変わらないからな」
親父「待ちなさい……行きたければ行けば良い」
女剣士「街はどうするんだよ!」
親父「……お前達が塔に行っている間に、宿屋の親父達と話してたんだけどな」
女剣士「……?」
452: 2013/05/14(火) 16:44:42.00 ID:IoteoMhbP
親父「さっきも言ったが……お前に頼ることばかりだったからな」
女剣士「……アタシも、言った。好きでやってるんだよ」
親父「解ってる……だがな、女剣士」
親父「良い機会だ……街の自治を考えるのも町長としての大事な仕事だ」
親父「それに……特に統率する魔物が居た訳では無い」
親父「お前がさっき言った通り、状況は何も変わらない」
親父「だが……それこそが、向き合っていかなければ行けない現実だ」
女剣士「……」
親父「お前は確かに腕は立つ。だが、まだまだ。世界に出れば……」
女剣士「……井の中の蛙だってのは、良く解ったさ!」
親父「怒るな……諭している訳じゃ無いんだ」
親父「……ついて行きたいなら、行けば良い」
親父「街は……私達で、何とかするから」
女剣士「きゅ……急に言われても……!」
親父「……母さんが氏んでから、良くやってくれてるよ。街のことも家のこともな」
親父「何れは見送らなければならないんだ。それが今でも……支障は無い」
女剣士「……」
親父「考えている暇は無いぞ、女剣士」
女剣士「……ッ」バタバタ、バタン!
親父「……」フゥ
バタン!
親父「!」
女剣士「……まだ追いつける。行くよ」
親父「惚れたか?」
女剣士「わかんねぇよ! ……でも、今行かないと後悔するから」
女剣士「絶対に!」ペコ
親父「……」
バタン……タタタ……
女剣士「……アタシも、言った。好きでやってるんだよ」
親父「解ってる……だがな、女剣士」
親父「良い機会だ……街の自治を考えるのも町長としての大事な仕事だ」
親父「それに……特に統率する魔物が居た訳では無い」
親父「お前がさっき言った通り、状況は何も変わらない」
親父「だが……それこそが、向き合っていかなければ行けない現実だ」
女剣士「……」
親父「お前は確かに腕は立つ。だが、まだまだ。世界に出れば……」
女剣士「……井の中の蛙だってのは、良く解ったさ!」
親父「怒るな……諭している訳じゃ無いんだ」
親父「……ついて行きたいなら、行けば良い」
親父「街は……私達で、何とかするから」
女剣士「きゅ……急に言われても……!」
親父「……母さんが氏んでから、良くやってくれてるよ。街のことも家のこともな」
親父「何れは見送らなければならないんだ。それが今でも……支障は無い」
女剣士「……」
親父「考えている暇は無いぞ、女剣士」
女剣士「……ッ」バタバタ、バタン!
親父「……」フゥ
バタン!
親父「!」
女剣士「……まだ追いつける。行くよ」
親父「惚れたか?」
女剣士「わかんねぇよ! ……でも、今行かないと後悔するから」
女剣士「絶対に!」ペコ
親父「……」
バタン……タタタ……
453: 2013/05/14(火) 16:54:32.40 ID:IoteoMhbP
……
………
…………
シュゥン……!ドタ!
側近「……痛い」グタ
側近(本当に、本当に……ッ ぅえ)
側近「苦手だ、嫌いだ……ッ転移なんて ………ッ」スタ、キョロ……
側近「……」
側近(城……か。うわ、壁ぼろぼろ……)
側近「これ……復旧するのか?マジで……」
側近(そりゃ、移民とか考えれば……あの島だけじゃ手狭だろうけどさ)
側近(まあ……船長がどうにかする、だろうけどな)
側近「……前程苦しいとは思わないな」
側近(やっぱり、姫様のペンダントに移したから……か)スタスタ
側近『魔王様ー?』
側近(……あれ?)
側近『まーおーうーさーまー!!』
側近「……え、ひょっとして無視されてる?」
側近(何かあった……か?否……使用人も姫様もついてるし……)
側近(……もう、何か起こりうる要素も……)
側近「……っと、もう着いちまったか」
ザァアアア……ッ
側近(こういうのを、心地良い風、って言うんだろうなぁ)
側近「……お前さん、良い場所に還して貰ったなぁ、知人さん」
側近(大地に染み出す程の、力……それが、エルフの加護)
側近(……姫様の為に使われるのなら、本望だろうが)
側近「……長居しても仕方ねぇな、やれやれ」コロン
シュゥン……オェ……ッ
………
…………
シュゥン……!ドタ!
側近「……痛い」グタ
側近(本当に、本当に……ッ ぅえ)
側近「苦手だ、嫌いだ……ッ転移なんて ………ッ」スタ、キョロ……
側近「……」
側近(城……か。うわ、壁ぼろぼろ……)
側近「これ……復旧するのか?マジで……」
側近(そりゃ、移民とか考えれば……あの島だけじゃ手狭だろうけどさ)
側近(まあ……船長がどうにかする、だろうけどな)
側近「……前程苦しいとは思わないな」
側近(やっぱり、姫様のペンダントに移したから……か)スタスタ
側近『魔王様ー?』
側近(……あれ?)
側近『まーおーうーさーまー!!』
側近「……え、ひょっとして無視されてる?」
側近(何かあった……か?否……使用人も姫様もついてるし……)
側近(……もう、何か起こりうる要素も……)
側近「……っと、もう着いちまったか」
ザァアアア……ッ
側近(こういうのを、心地良い風、って言うんだろうなぁ)
側近「……お前さん、良い場所に還して貰ったなぁ、知人さん」
側近(大地に染み出す程の、力……それが、エルフの加護)
側近(……姫様の為に使われるのなら、本望だろうが)
側近「……長居しても仕方ねぇな、やれやれ」コロン
シュゥン……オェ……ッ
454: 2013/05/14(火) 17:15:41.20 ID:IoteoMhbP
……
………
…………
シュン……
魔王「……」キョロ
魔王(成る程な……側近のビジョンで見た通り……天辺が見えん)
魔王(雲の上まで続く塔……まやかしの魔法、か)スタスタ
魔王(で……ふむ、入口も見えん、と)コンコン
魔王(ただの壁にしか思わんが……)
魔王「人には見えて魔族には見えん……のか」
魔王(随分と複雑な封印だな……しかし、この気配、は……)
魔王(……随分と力の強い者に間違いは無い。それに……古い、な)
魔王「……」ペタ
魔王(壁……手を通して……探れるか)
魔王「あそこか」スタスタ
魔王(……解けるか)シュウシュウシュウ……バタンッ
魔王「……開いた」スタスタ
魔王(内部には階段……確か、先に扉があったな)
シュゥン……スタッ
魔王「……」カチャ……スタスタ、パタン
魔王「成る程、息苦しい……な」
魔王(始まりの大陸の……知人の墓に行った時に似ている)
魔王(……ふむ。しかし)キョロ
魔王(特にこれと言って……無い、な。何も)
魔王(……原因はともかく、ここならば)
魔王「充分、だな……」
魔王(確か……扉から出れば、すぐに外に出るんだったな)
魔王「……利用させて貰うか」カチャ……スタスタ
魔王「ふむ」
魔王(……塔の入口、か……ん?)
シュン……
魔王「扉が消えた……成る程な」
………
…………
シュン……
魔王「……」キョロ
魔王(成る程な……側近のビジョンで見た通り……天辺が見えん)
魔王(雲の上まで続く塔……まやかしの魔法、か)スタスタ
魔王(で……ふむ、入口も見えん、と)コンコン
魔王(ただの壁にしか思わんが……)
魔王「人には見えて魔族には見えん……のか」
魔王(随分と複雑な封印だな……しかし、この気配、は……)
魔王(……随分と力の強い者に間違いは無い。それに……古い、な)
魔王「……」ペタ
魔王(壁……手を通して……探れるか)
魔王「あそこか」スタスタ
魔王(……解けるか)シュウシュウシュウ……バタンッ
魔王「……開いた」スタスタ
魔王(内部には階段……確か、先に扉があったな)
シュゥン……スタッ
魔王「……」カチャ……スタスタ、パタン
魔王「成る程、息苦しい……な」
魔王(始まりの大陸の……知人の墓に行った時に似ている)
魔王(……ふむ。しかし)キョロ
魔王(特にこれと言って……無い、な。何も)
魔王(……原因はともかく、ここならば)
魔王「充分、だな……」
魔王(確か……扉から出れば、すぐに外に出るんだったな)
魔王「……利用させて貰うか」カチャ……スタスタ
魔王「ふむ」
魔王(……塔の入口、か……ん?)
シュン……
魔王「扉が消えた……成る程な」
455: 2013/05/14(火) 17:23:53.07 ID:IoteoMhbP
魔王(一方通行、か……人であれば安易に近づかんと思ったか)
魔王「魔族にとって……大事な物でも隠しておいた、か」
魔王(そこは……考えても解らんな)ペタ
魔王(扉は……ここだな。良し……)ブツブツ
パアアアアアッ
魔王「……これで、良い。もう……人間共にも見えんだろう」
キィ……キィイ
バサバサバサ……
魔王(……魔力に惹かれて集まってきたか)
魔王(北の街の住人達に……思い入れは無いが)
魔王「風よ……来たりて、切り裂け……ッ」
シュン、シュゥン、シュウウン……!
ギャア!ギャアアアアアアアアア!
バサバサ……キィ……
魔王「……気休め、だがな。時間稼ぎにはなるだろう」
魔王(どうにかする、と……側近と約束してしまったしな)
魔王「魔族にとって……大事な物でも隠しておいた、か」
魔王(そこは……考えても解らんな)ペタ
魔王(扉は……ここだな。良し……)ブツブツ
パアアアアアッ
魔王「……これで、良い。もう……人間共にも見えんだろう」
キィ……キィイ
バサバサバサ……
魔王(……魔力に惹かれて集まってきたか)
魔王(北の街の住人達に……思い入れは無いが)
魔王「風よ……来たりて、切り裂け……ッ」
シュン、シュゥン、シュウウン……!
ギャア!ギャアアアアアアアアア!
バサバサ……キィ……
魔王「……気休め、だがな。時間稼ぎにはなるだろう」
魔王(どうにかする、と……側近と約束してしまったしな)
456: 2013/05/14(火) 17:38:51.08 ID:IoteoMhbP
魔王(……ん?)クラ……ッ
魔王「流石に……力を使いすぎた……か」
魔王(……姫と使用人がうるさいな。戻る……か)シュゥン
……
………
…………
姫「使用人、居る?」コンコン
使用人「姫様? ……どうぞ」カチャ
姫「毎日毎日、飽きないわね……」
使用人「そっくりそのままお返ししますよ……楽しいですか?土いじり」
姫「暇つぶしにはなるわね……読書なら解るけど、整理って面白いかしら」
使用人「……一冊、無いんですよ」
姫「え?」
使用人「これなんですが……」ポンポン
姫「ん、埃が……ええと……題名読めないわね」
使用人「そうなんですが、ほら、ここ……」
姫「『後』……後編、かしら?」
使用人「ぱらぱらと読んでみたんですが、その様です」
使用人「前編が見当たらなくて」
姫「……それで、この間から書庫に篭もりっぱなしで探してたのね」
使用人「魔王様に聞くのが早いんでしょうが……探してから、と思って」
姫「そうね……でも、魔王が把握してるとは思わないけど」
使用人「……まあ、そうなんですけれど」
使用人「魔王様……まだ戻られてないのですか?」
姫「ええ……すぐ帰る、とは言ってたんだけれど」
魔王「流石に……力を使いすぎた……か」
魔王(……姫と使用人がうるさいな。戻る……か)シュゥン
……
………
…………
姫「使用人、居る?」コンコン
使用人「姫様? ……どうぞ」カチャ
姫「毎日毎日、飽きないわね……」
使用人「そっくりそのままお返ししますよ……楽しいですか?土いじり」
姫「暇つぶしにはなるわね……読書なら解るけど、整理って面白いかしら」
使用人「……一冊、無いんですよ」
姫「え?」
使用人「これなんですが……」ポンポン
姫「ん、埃が……ええと……題名読めないわね」
使用人「そうなんですが、ほら、ここ……」
姫「『後』……後編、かしら?」
使用人「ぱらぱらと読んでみたんですが、その様です」
使用人「前編が見当たらなくて」
姫「……それで、この間から書庫に篭もりっぱなしで探してたのね」
使用人「魔王様に聞くのが早いんでしょうが……探してから、と思って」
姫「そうね……でも、魔王が把握してるとは思わないけど」
使用人「……まあ、そうなんですけれど」
使用人「魔王様……まだ戻られてないのですか?」
姫「ええ……すぐ帰る、とは言ってたんだけれど」
457: 2013/05/14(火) 17:50:08.42 ID:IoteoMhbP
使用人「……まあ、あの方に限って心配する事は無いと思いますけど」
姫「そうだけど……」
使用人「あれ、姫様……?」
姫「え?」
使用人「……お腹、少し大きくなりましたね」
姫「やっぱり……そう思う?」
使用人「毎日会ってるから……気がつかなかったんですかね」
姫「でしょうね……ふふ、側近が帰ってきたら吃驚するかしら」
使用人「そうですね……丁度良いですし、お茶にしましょうか」
使用人「もうすぐ、魔王様も……」
シュゥン……スタ
姫「噂をすれば、ね……お帰り、魔……お……」
魔王「……」フラフラ
使用人「魔王様!?」タタ……ッガシッ
魔王「……すまん、大丈夫、だ……」
姫「ど、どうしたのよ、魔王……!」
魔王「力を使いすぎた……ん、だろう……」
魔王「すまん……少し……休む……」フラ……
使用人「魔王様……使い魔!誰か……!」
姫「……」
使用人「魔王様を寝室に……!」
姫「魔王……ッ」
姫(何、これ……ッ どうして、こんなに……)
姫(……魔力が、溢れてるのを……感じる。力を使いすぎた? ……違う!)
姫(これは……何!?)
……
………
…………
姫「そうだけど……」
使用人「あれ、姫様……?」
姫「え?」
使用人「……お腹、少し大きくなりましたね」
姫「やっぱり……そう思う?」
使用人「毎日会ってるから……気がつかなかったんですかね」
姫「でしょうね……ふふ、側近が帰ってきたら吃驚するかしら」
使用人「そうですね……丁度良いですし、お茶にしましょうか」
使用人「もうすぐ、魔王様も……」
シュゥン……スタ
姫「噂をすれば、ね……お帰り、魔……お……」
魔王「……」フラフラ
使用人「魔王様!?」タタ……ッガシッ
魔王「……すまん、大丈夫、だ……」
姫「ど、どうしたのよ、魔王……!」
魔王「力を使いすぎた……ん、だろう……」
魔王「すまん……少し……休む……」フラ……
使用人「魔王様……使い魔!誰か……!」
姫「……」
使用人「魔王様を寝室に……!」
姫「魔王……ッ」
姫(何、これ……ッ どうして、こんなに……)
姫(……魔力が、溢れてるのを……感じる。力を使いすぎた? ……違う!)
姫(これは……何!?)
……
………
…………
458: 2013/05/14(火) 18:02:52.25 ID:IoteoMhbP
女「もう少しです、神父さん……そう、集中して……」
神父「う、うぅむ ……こうですか……ッ」
盗賊「女ー!」
女「あ、盗賊……」
神父「盗賊さんですか……丁度良い、休憩しましょうか」
女「はい……お疲れ様でした」
盗賊「毎日熱心だなぁ……ほい、差し入れ」
神父「お、これはこれは……美味しそうですね」
盗賊「チェリーパイ大量に焼いたって言うからさ……」
女「……元気無いわね」
盗賊「そんな事ないさ」
女「鍛冶師さんが行っちゃったから寂しい、て」
女「……素直に言えば良いのに」クスクス
盗賊「そ、そそそそ、そんなんじゃネェわ!」
神父「お若いですなぁ……」クス
盗賊「神父様まで!」
女「……すぐに戻ってくるんでしょう?」
盗賊「鍛冶師の村まで行って帰って……まあ、三ヶ月ほど、かな」
神父「忙しくしていればすぐですよ」
女「そうよ……やることは一杯あるわ。私達も……貴女も」
盗賊「そう……だけど」
女「……お返事、しない侭だったの、後悔してるの?」
盗賊「……」
神父「彼は必ず戻ると言ったのでしょう? ……大丈夫ですよ」
神父「ちゃんと、待っててくれますって」
盗賊「……そう、だけど……」
神父「彼は……良い青年です。何を迷うことがあるのですか?」
女「そうね……素敵な方だと思うわ、私も」
盗賊「別に……迷ってる訳じゃないさ」
神父「う、うぅむ ……こうですか……ッ」
盗賊「女ー!」
女「あ、盗賊……」
神父「盗賊さんですか……丁度良い、休憩しましょうか」
女「はい……お疲れ様でした」
盗賊「毎日熱心だなぁ……ほい、差し入れ」
神父「お、これはこれは……美味しそうですね」
盗賊「チェリーパイ大量に焼いたって言うからさ……」
女「……元気無いわね」
盗賊「そんな事ないさ」
女「鍛冶師さんが行っちゃったから寂しい、て」
女「……素直に言えば良いのに」クスクス
盗賊「そ、そそそそ、そんなんじゃネェわ!」
神父「お若いですなぁ……」クス
盗賊「神父様まで!」
女「……すぐに戻ってくるんでしょう?」
盗賊「鍛冶師の村まで行って帰って……まあ、三ヶ月ほど、かな」
神父「忙しくしていればすぐですよ」
女「そうよ……やることは一杯あるわ。私達も……貴女も」
盗賊「そう……だけど」
女「……お返事、しない侭だったの、後悔してるの?」
盗賊「……」
神父「彼は必ず戻ると言ったのでしょう? ……大丈夫ですよ」
神父「ちゃんと、待っててくれますって」
盗賊「……そう、だけど……」
神父「彼は……良い青年です。何を迷うことがあるのですか?」
女「そうね……素敵な方だと思うわ、私も」
盗賊「別に……迷ってる訳じゃないさ」
459: 2013/05/14(火) 18:10:49.04 ID:IoteoMhbP
盗賊「……こういうの、経験無いから……なんか、こう」
女「ふふ……まあ、良いじゃないの。たっぷり悩みなさい」
女「……羨ましいわ」
神父「何を仰います、貴女も充分若く、魅力的ですよ……女さん」
女「私は……良いのですよ」
盗賊「そうだよ、女!アンタだって……!」
女「神に仕える身ですから」クス
神父「本当に……貴女の信心には頭が下がりますよ」
盗賊「あ……そういえば、神父様、石は出来る様になったのか?」
女「あ、話反らせた」クス
盗賊「ち、違うって!」
神父「まあまあ……そうですね。コツが掴めそうな気はするのですが……」
女「随分頑張っておられますもの。もう少しだと思いますよ」
神父「だと良いんですがね……」
盗賊「まあ……癒やしの、じゃネェや。神父様の神聖な気を込めるとなりゃ」
盗賊「難しいんだろうなぁ……」
女「ああ、そうだわ盗賊、思い出した」
盗賊「ん?」
女「私、ま……少年様から頂いた本と一緒に、船長さんのも持ってきてしまったの」
女「今度、返しておいてくれないかしら?これなんだけど」
女「ふふ……まあ、良いじゃないの。たっぷり悩みなさい」
女「……羨ましいわ」
神父「何を仰います、貴女も充分若く、魅力的ですよ……女さん」
女「私は……良いのですよ」
盗賊「そうだよ、女!アンタだって……!」
女「神に仕える身ですから」クス
神父「本当に……貴女の信心には頭が下がりますよ」
盗賊「あ……そういえば、神父様、石は出来る様になったのか?」
女「あ、話反らせた」クス
盗賊「ち、違うって!」
神父「まあまあ……そうですね。コツが掴めそうな気はするのですが……」
女「随分頑張っておられますもの。もう少しだと思いますよ」
神父「だと良いんですがね……」
盗賊「まあ……癒やしの、じゃネェや。神父様の神聖な気を込めるとなりゃ」
盗賊「難しいんだろうなぁ……」
女「ああ、そうだわ盗賊、思い出した」
盗賊「ん?」
女「私、ま……少年様から頂いた本と一緒に、船長さんのも持ってきてしまったの」
女「今度、返しておいてくれないかしら?これなんだけど」
470: 2013/05/15(水) 09:44:14.50 ID:0hXk8vkZP
盗賊「別に良いけど……あ、これ……」
女「え?」
盗賊「俺が少年に返し忘れた奴だ……船に置いていっちまったんだよ」
女「まあ……そうだったの?」
盗賊「読んだか?」
女「ええ……じゃあ、続きは船長さんが持ってる訳では無いのね」
盗賊「バタバタしてて、俺も忘れてたよ」
女「残念ね……じゃあ、続きは読めないわね」
盗賊「ん?船長についでに頼んどくぜ。まあ……何時になるかわかんないけど」
盗賊「少年のし……家にあるだろ、続き」
女「……そうね」
盗賊「一応預かっとくよ」
神父「私も読ませて貰ったんですが……何時か続きが読めるのですね」
神父「それは楽しみです」
女「……そうですね。神父様の為に……も、お願いしますね、盗賊」
盗賊「? ……ああ、伝えておいて貰うよ」
盗賊「さてと、んじゃ俺も作業に戻るよ」
盗賊「神父さんも頑張ってくれよ!」タタタ……
女「……」
神父「……どうなさいました?」
女「いいえ。少し……少年様を思い出した……だけです」
神父「少年さん……この島の、勇者様、ですね」
女「……はい」
神父「一度お会いしてみたいものですな……その方に」
女「……願えば、叶いますよ」
女(私の願いは……叶う、のかしら。魔王様……)
神父「……」
神父「あの本ですが……」
女「……? はい?」
女「え?」
盗賊「俺が少年に返し忘れた奴だ……船に置いていっちまったんだよ」
女「まあ……そうだったの?」
盗賊「読んだか?」
女「ええ……じゃあ、続きは船長さんが持ってる訳では無いのね」
盗賊「バタバタしてて、俺も忘れてたよ」
女「残念ね……じゃあ、続きは読めないわね」
盗賊「ん?船長についでに頼んどくぜ。まあ……何時になるかわかんないけど」
盗賊「少年のし……家にあるだろ、続き」
女「……そうね」
盗賊「一応預かっとくよ」
神父「私も読ませて貰ったんですが……何時か続きが読めるのですね」
神父「それは楽しみです」
女「……そうですね。神父様の為に……も、お願いしますね、盗賊」
盗賊「? ……ああ、伝えておいて貰うよ」
盗賊「さてと、んじゃ俺も作業に戻るよ」
盗賊「神父さんも頑張ってくれよ!」タタタ……
女「……」
神父「……どうなさいました?」
女「いいえ。少し……少年様を思い出した……だけです」
神父「少年さん……この島の、勇者様、ですね」
女「……はい」
神父「一度お会いしてみたいものですな……その方に」
女「……願えば、叶いますよ」
女(私の願いは……叶う、のかしら。魔王様……)
神父「……」
神父「あの本ですが……」
女「……? はい?」
471: 2013/05/15(水) 09:55:38.92 ID:0hXk8vkZP
神父「光の勇者がどこからか現れ」
神父「闇の魔王を倒す、と言うお話です……確か」
神父「勇者が、魔王の城に乗り込んで、仲間を一人失った所で終わっていましたね」
女「ええ……きっと、最後に、魔王が……勇者に倒されて終わるのでしょうけど」
神父「物語は物語である故に、最後は幸せになる物が多いですからね」
神父「ですが……貴女に読ませて頂いた、あのエルフのお姫様のお話の様に」
女「……」
神父「……決して、皆幸せになりました、で終わらない物もありますから」
女「そうですね……続き、読めると良い、です」
神父「盗賊さんが何時か、借りてきて下さいますよ」
女「……はい」
神父「しかしあのエルフのお姫様の絵は美しかった」
神父「それも……作られた物であるが故なんでしょうが」
女「神父様は……エルフと言う存在はご存じなのでしょうか」
神父「存在しているのであろう、と言う事は」
女「そうですか……」
神父「お会いした事はありませんが……そうですね」
神父「会える物ならば、お会いしたいですよ」
神父「『願えば叶う』であるのなら……何時か、会えるでしょう?」
女「……そうですね」
女「……」
女「……どこから、来たのでしょうね。勇者は」
神父「え?」
女「物語の中の勇者は、光の中から生み出され」
女「闇の化身である魔王を打ち破る……と、されていましたから」
神父「……続きを読めば、その謎も紐解かれましょう」
女「はい……」
神父「闇の魔王を倒す、と言うお話です……確か」
神父「勇者が、魔王の城に乗り込んで、仲間を一人失った所で終わっていましたね」
女「ええ……きっと、最後に、魔王が……勇者に倒されて終わるのでしょうけど」
神父「物語は物語である故に、最後は幸せになる物が多いですからね」
神父「ですが……貴女に読ませて頂いた、あのエルフのお姫様のお話の様に」
女「……」
神父「……決して、皆幸せになりました、で終わらない物もありますから」
女「そうですね……続き、読めると良い、です」
神父「盗賊さんが何時か、借りてきて下さいますよ」
女「……はい」
神父「しかしあのエルフのお姫様の絵は美しかった」
神父「それも……作られた物であるが故なんでしょうが」
女「神父様は……エルフと言う存在はご存じなのでしょうか」
神父「存在しているのであろう、と言う事は」
女「そうですか……」
神父「お会いした事はありませんが……そうですね」
神父「会える物ならば、お会いしたいですよ」
神父「『願えば叶う』であるのなら……何時か、会えるでしょう?」
女「……そうですね」
女「……」
女「……どこから、来たのでしょうね。勇者は」
神父「え?」
女「物語の中の勇者は、光の中から生み出され」
女「闇の化身である魔王を打ち破る……と、されていましたから」
神父「……続きを読めば、その謎も紐解かれましょう」
女「はい……」
472: 2013/05/15(水) 10:34:25.50 ID:0hXk8vkZP
女(私に……そんな時間は、あるんでしょうか。魔王様……)
神父「不思議ですね。その少年さん……この街の勇者様も」
神父「ふらりと現れ、ふらりと去って行かれた」
女「……」
神父「『光』と言うのは希望の代名詞なのでしょうね」
女「では……『闇』は、その反対、なのでしょうか」
神父「どうでしょう。去られた場所も『闇』かもしれませんよ」
女「……え?」
神父「『誰も知らない場所』であったり『手の届かない場所』であったり……」
神父「知り得ない者から見れば、それは闇に等しいのかもしれません」
神父「例え、それが光に満ちた幸せな場所であっても……ね」
女「……」
神父「冒頭に出て来ましたよ。光と闇は表裏一体……と」
女「ええ、そうですね……」
神父「光が勇者を表し、闇が魔王を表すのだとしたら」
神父「表裏一体……とは、どういう事なのでしょう、ね」
女「……人から見た光は、魔族の居ない人間だけの世界かもしれません」
女「ですが……それは、魔族と言うだけで……闇と扱われる彼らにとっては」
女「それこそが……闇」
神父「逆も然り、ですね……揶揄とは言え」
神父「……成る程言い得て妙、ですかね」
女「……所詮御伽、されど……ですね」
女(人だけの世界……否。手を取り合って笑える、美しい世界……)
女(……でも、魔王様は……徹底した不干渉を望む、と……)
女(それも、光?)
女(……表裏一体)
神父「さて、おしゃべりはこれぐらいにして。練習を始めましょうか」
神父「もう少し、お付き合い願えますかな」
女「あ……はい!勿論です」
神父「不思議ですね。その少年さん……この街の勇者様も」
神父「ふらりと現れ、ふらりと去って行かれた」
女「……」
神父「『光』と言うのは希望の代名詞なのでしょうね」
女「では……『闇』は、その反対、なのでしょうか」
神父「どうでしょう。去られた場所も『闇』かもしれませんよ」
女「……え?」
神父「『誰も知らない場所』であったり『手の届かない場所』であったり……」
神父「知り得ない者から見れば、それは闇に等しいのかもしれません」
神父「例え、それが光に満ちた幸せな場所であっても……ね」
女「……」
神父「冒頭に出て来ましたよ。光と闇は表裏一体……と」
女「ええ、そうですね……」
神父「光が勇者を表し、闇が魔王を表すのだとしたら」
神父「表裏一体……とは、どういう事なのでしょう、ね」
女「……人から見た光は、魔族の居ない人間だけの世界かもしれません」
女「ですが……それは、魔族と言うだけで……闇と扱われる彼らにとっては」
女「それこそが……闇」
神父「逆も然り、ですね……揶揄とは言え」
神父「……成る程言い得て妙、ですかね」
女「……所詮御伽、されど……ですね」
女(人だけの世界……否。手を取り合って笑える、美しい世界……)
女(……でも、魔王様は……徹底した不干渉を望む、と……)
女(それも、光?)
女(……表裏一体)
神父「さて、おしゃべりはこれぐらいにして。練習を始めましょうか」
神父「もう少し、お付き合い願えますかな」
女「あ……はい!勿論です」
478: 2013/05/16(木) 09:40:07.80 ID:aN2IW8uKP
……
………
…………
盗賊「えーっと、あっちの資材は……」ガサゴソ
盗賊(……三ヶ月、か。帰ってきたら……)
盗賊(ちゃんと……!)
盗賊(今は、出来る事やっとかないと……)クル
側近「お……盗賊ちゃんじゃないか……」フラフラ
盗賊「おわあああああああああああ!」
側近「顔見るなり……悲鳴なんて……酷い……」ゥエ
盗賊「び、びっくりした……!」
側近「……おう」
盗賊「……大丈夫、か?」
側近「もう出るモン無いから平気……」
盗賊「ええ……アレか、転移か……?」
側近「まあ……うん、いや、大丈夫……」
盗賊「ならいいけど……どうしたんだ?」
側近「いや、用事のついでに石貰ってこい、ってね」
盗賊「船長が持って出たけど?」
側近「船だろ?まあ届くまで……どんくらいかな」
盗賊「あー……鍛冶師の村寄るって言ってたしなぁ」
側近「じゃあ結構時間掛かるな」
側近「余分があるなら買ってかえりたいんだけどな」
盗賊「そうだなぁ……あ!そうだ!」
側近「ん?」
盗賊「お前、ちょっと時間ある?」
側近「あ?ああ……まあ」
盗賊「良し!こっち来て!」グイ
側近「え?お、あ……ちょ、引っ張るなよ!」
………
…………
盗賊「えーっと、あっちの資材は……」ガサゴソ
盗賊(……三ヶ月、か。帰ってきたら……)
盗賊(ちゃんと……!)
盗賊(今は、出来る事やっとかないと……)クル
側近「お……盗賊ちゃんじゃないか……」フラフラ
盗賊「おわあああああああああああ!」
側近「顔見るなり……悲鳴なんて……酷い……」ゥエ
盗賊「び、びっくりした……!」
側近「……おう」
盗賊「……大丈夫、か?」
側近「もう出るモン無いから平気……」
盗賊「ええ……アレか、転移か……?」
側近「まあ……うん、いや、大丈夫……」
盗賊「ならいいけど……どうしたんだ?」
側近「いや、用事のついでに石貰ってこい、ってね」
盗賊「船長が持って出たけど?」
側近「船だろ?まあ届くまで……どんくらいかな」
盗賊「あー……鍛冶師の村寄るって言ってたしなぁ」
側近「じゃあ結構時間掛かるな」
側近「余分があるなら買ってかえりたいんだけどな」
盗賊「そうだなぁ……あ!そうだ!」
側近「ん?」
盗賊「お前、ちょっと時間ある?」
側近「あ?ああ……まあ」
盗賊「良し!こっち来て!」グイ
側近「え?お、あ……ちょ、引っ張るなよ!」
479: 2013/05/16(木) 09:47:21.97 ID:aN2IW8uKP
盗賊「こっちこっち!」
側近「はいはい、走るとこけるよ……ん、丘に上がるのか?」
盗賊「子供じゃネェよ! ……ああ、女が居るんだ」
側近「へ? ……家、この上なの?」
盗賊「まあまあ……見れば解るって……ほら」
女「あら、盗賊どうしたの…… ……側近さん?」
神父「おや、お客様ですか珍し……! ……盗賊さん、離れなさい!」
盗賊「へ?」
側近「え?」
女「え?」
神父「……あ、貴方は……!」
側近「……俺?」
神父「人間では……ありませんね!?」
側近「……へ?」
盗賊「あ、し、神父さん、こいつは……!」
神父「どうしてこの街に……!!盗賊さん、早く……!」
女「ち、違います、神父様、側近さんは……!」
側近「……姫様みたいな奴だなあ、アンタ……」
神父「盗賊さん、早く、こちらへ!」
盗賊「……いや、あの……!」
側近「えーと……もしかして、イチから説明しないと駄目な感じ?」
神父「何がです!」
女「神父様、この方は……私とも盗賊とも既知の方です」
神父「……え?」
側近「あー……まあ」
盗賊「側近、思いっきり顔に『面倒臭ェ』って書いてるぞ」
側近「まじで……ちょっと擦って消しといて」
神父「既知……し、しかし……!」
側近「はいはい、走るとこけるよ……ん、丘に上がるのか?」
盗賊「子供じゃネェよ! ……ああ、女が居るんだ」
側近「へ? ……家、この上なの?」
盗賊「まあまあ……見れば解るって……ほら」
女「あら、盗賊どうしたの…… ……側近さん?」
神父「おや、お客様ですか珍し……! ……盗賊さん、離れなさい!」
盗賊「へ?」
側近「え?」
女「え?」
神父「……あ、貴方は……!」
側近「……俺?」
神父「人間では……ありませんね!?」
側近「……へ?」
盗賊「あ、し、神父さん、こいつは……!」
神父「どうしてこの街に……!!盗賊さん、早く……!」
女「ち、違います、神父様、側近さんは……!」
側近「……姫様みたいな奴だなあ、アンタ……」
神父「盗賊さん、早く、こちらへ!」
盗賊「……いや、あの……!」
側近「えーと……もしかして、イチから説明しないと駄目な感じ?」
神父「何がです!」
女「神父様、この方は……私とも盗賊とも既知の方です」
神父「……え?」
側近「あー……まあ」
盗賊「側近、思いっきり顔に『面倒臭ェ』って書いてるぞ」
側近「まじで……ちょっと擦って消しといて」
神父「既知……し、しかし……!」
480: 2013/05/16(木) 10:05:39.78 ID:aN2IW8uKP
盗賊「自分でやれよ……」
女「側近さん……」
側近「あーはいはいはい。説明しますよすりゃ良いんでしょ……」
神父「……認めるのですね?」
側近「認めるもにも、俺が魔族だって事は盗賊ちゃんも女ちゃんも知ってるよ」
神父「え!?」
盗賊「おう」
女「……はい」
側近「……で、マジでどこから説明すりゃ良いの」
盗賊「……全部?」
側近「……」
盗賊「取りあえずその開いた口閉じろよ……」
女「で、ですが……」
側近「いや、まあ、うん……頑張る。つか、えーと?」
神父「……神父、と申します」
側近「ああ……アンタがアレか、インキュバスの魔石、禍々しいって言った奴……」
神父「……インキュバス?」
女「……」
盗賊「側近」チラ
女「……」フイ
側近「……ああ、すまん。取りあえず……俺は、側近だ」
神父「禍々しい……と言うのは、あの『魔除けの石』と言う物ですか」
女「側近さん……」
側近「あーはいはいはい。説明しますよすりゃ良いんでしょ……」
神父「……認めるのですね?」
側近「認めるもにも、俺が魔族だって事は盗賊ちゃんも女ちゃんも知ってるよ」
神父「え!?」
盗賊「おう」
女「……はい」
側近「……で、マジでどこから説明すりゃ良いの」
盗賊「……全部?」
側近「……」
盗賊「取りあえずその開いた口閉じろよ……」
女「で、ですが……」
側近「いや、まあ、うん……頑張る。つか、えーと?」
神父「……神父、と申します」
側近「ああ……アンタがアレか、インキュバスの魔石、禍々しいって言った奴……」
神父「……インキュバス?」
女「……」
盗賊「側近」チラ
女「……」フイ
側近「……ああ、すまん。取りあえず……俺は、側近だ」
神父「禍々しい……と言うのは、あの『魔除けの石』と言う物ですか」
481: 2013/05/16(木) 10:14:40.95 ID:aN2IW8uKP
女「良いのですか、側近さん……ま、少年様の許可は……」
側近「あー……うーん……」
神父「少年さん……勇者様のお知り合いなのですか!?魔族の貴方が……!?」
側近「勇者様!?あいつが!?」
盗賊「……この街の勇者、だろう。確かに」ハァ
盗賊「この街の住人には……さ」
側近「……」
盗賊「だから口を閉じろ、と!」
側近(『勇者になれ』と言ったのが本当になった、か……)フゥ
側近(ま……そりゃそうだよな……魔王様が、勇者……)
側近(自分で言い出したとは言え……なんつーか……)
神父「……勇者様が、どうして……」
側近「そりゃはいそうですかと信じられない気持ちはわかる。解るがな」
神父「いえ……」
側近「アンタ、人間の割には鋭いな……確かに、アンタになら」
側近「本物の魔除けの石が作れるかもしれん」
神父「……」
側近「……ちゃんと説明してやるから、睨むのやめてくれ」
女「で、でも……」
側近「許可、か? ……まあ、それは大丈夫だろう」
側近(取ろうにも心話が通じないんだよな……)
女「……」
側近「アンタまで睨まないでくれる……俺の心折れちゃう」
女「す、すみません……しかし……!」
側近「大丈夫だってば……さて、神父さんよ」
神父「……なんでしょう」
側近「アンタは、目で見た物しか信じないタイプか?」
神父「は?」
側近「あー……うーん……」
神父「少年さん……勇者様のお知り合いなのですか!?魔族の貴方が……!?」
側近「勇者様!?あいつが!?」
盗賊「……この街の勇者、だろう。確かに」ハァ
盗賊「この街の住人には……さ」
側近「……」
盗賊「だから口を閉じろ、と!」
側近(『勇者になれ』と言ったのが本当になった、か……)フゥ
側近(ま……そりゃそうだよな……魔王様が、勇者……)
側近(自分で言い出したとは言え……なんつーか……)
神父「……勇者様が、どうして……」
側近「そりゃはいそうですかと信じられない気持ちはわかる。解るがな」
神父「いえ……」
側近「アンタ、人間の割には鋭いな……確かに、アンタになら」
側近「本物の魔除けの石が作れるかもしれん」
神父「……」
側近「……ちゃんと説明してやるから、睨むのやめてくれ」
女「で、でも……」
側近「許可、か? ……まあ、それは大丈夫だろう」
側近(取ろうにも心話が通じないんだよな……)
女「……」
側近「アンタまで睨まないでくれる……俺の心折れちゃう」
女「す、すみません……しかし……!」
側近「大丈夫だってば……さて、神父さんよ」
神父「……なんでしょう」
側近「アンタは、目で見た物しか信じないタイプか?」
神父「は?」
482: 2013/05/16(木) 10:23:25.04 ID:aN2IW8uKP
側近「今から話す内容は、それこそはいそうですかなんて」
側近「信じられないだろうモンだって事さ」
神父「荒唐無稽な話、と言う訳ですか」
側近「否定はしねぇよ。だが……まあ、盗賊ちゃんと女ちゃんの証言がありゃ」
側近「信じれるか? ……それとも、俺が騙してるとでも言い張るか」
神父「そ、れは……」
側近「ぶっちゃけ、誰にでも話せる内容じゃない」
側近「……守秘は誓って貰いたいね」ハァ
神父「……」
盗賊「俺からも頼むよ、神父さん」
女「……お願いします」
神父「……わかりました。ですが……信じるに値するかどうかは……」
側近「別に信じないなら話さないとは言わネェよ」
側近「……流石に無理だろうよ。俺の正体、あっさり見抜いたしな」
神父「……」
側近「長いから……ま、簡素に話す。質問があれば聞いてくれれば良い」
側近「えーと、まずは……難しいなぁ」
側近「……少年には、姫様って言う伴侶が居る」
盗賊「え!?結婚したのか!?」
側近「いきなりかよお前は……式とかはマダだ。船長から聞いてるだろ?」
神父「……船長さんも、お知り合いなのですか」
側近「ああ……まあ、えっとそこは後で」
側近「で、なんだ……まあ、その二人が魔導の街で盗賊に出会った、んだよな?」
盗賊「ああ。俺が頼んだんだ。魔導の街の大会で、優勝してくれって」
側近「信じられないだろうモンだって事さ」
神父「荒唐無稽な話、と言う訳ですか」
側近「否定はしねぇよ。だが……まあ、盗賊ちゃんと女ちゃんの証言がありゃ」
側近「信じれるか? ……それとも、俺が騙してるとでも言い張るか」
神父「そ、れは……」
側近「ぶっちゃけ、誰にでも話せる内容じゃない」
側近「……守秘は誓って貰いたいね」ハァ
神父「……」
盗賊「俺からも頼むよ、神父さん」
女「……お願いします」
神父「……わかりました。ですが……信じるに値するかどうかは……」
側近「別に信じないなら話さないとは言わネェよ」
側近「……流石に無理だろうよ。俺の正体、あっさり見抜いたしな」
神父「……」
側近「長いから……ま、簡素に話す。質問があれば聞いてくれれば良い」
側近「えーと、まずは……難しいなぁ」
側近「……少年には、姫様って言う伴侶が居る」
盗賊「え!?結婚したのか!?」
側近「いきなりかよお前は……式とかはマダだ。船長から聞いてるだろ?」
神父「……船長さんも、お知り合いなのですか」
側近「ああ……まあ、えっとそこは後で」
側近「で、なんだ……まあ、その二人が魔導の街で盗賊に出会った、んだよな?」
盗賊「ああ。俺が頼んだんだ。魔導の街の大会で、優勝してくれって」
483: 2013/05/16(木) 10:31:13.43 ID:aN2IW8uKP
神父「それは……噂に聞きました。ふらりと現れた旅人が」
神父「魔導の街の大会で優勝し、街の全権を手に入れたと」
女「……そうです。その試合は見ていませんが……おかげで」
女「私達劣等種は、解放されました」
側近「女ちゃん……」
女「神父様はご存じです……そこは」
神父「ええ、街の人達からも聞きましたよ……そうして、港街が出来た」
側近「ああ。街の権利はもう、前領主の息子に返した」
側近「……ま、流石に当分は大人しくしてるだろう」
盗賊「この島は元々逃げ出した劣等種の隠れ家だったからな」
盗賊「俺が船長と少年達を引き合わせたんだ」
側近「で、俺もこいつらと知り合った、って訳だ」
神父「……出会った経緯は解りました……が」
神父「それだけでは、荒唐無稽な話とは言えますまい?」
神父「それに……貴方の話が出ていません、側近さん」
神父「……少年さんとお知り合いだったからついでに知り合ったとは」
神父「……流石に、納得できません」
側近「ご尤も……まあ、少年に旅に出ろと言ったのが俺、だ」
側近「姫様と少年は、魔導の街に行く前に知り合ったんだが……」
神父「ちょっと待ってください、貴方が少年さんに旅に出ろと?」
神父「どういう意味です?」
側近「説明するから待てって!」
側近「……俺は、少年に仕えている。少年は……魔王だ」
神父「……は?」
盗賊「……」
女「……」
神父「魔導の街の大会で優勝し、街の全権を手に入れたと」
女「……そうです。その試合は見ていませんが……おかげで」
女「私達劣等種は、解放されました」
側近「女ちゃん……」
女「神父様はご存じです……そこは」
神父「ええ、街の人達からも聞きましたよ……そうして、港街が出来た」
側近「ああ。街の権利はもう、前領主の息子に返した」
側近「……ま、流石に当分は大人しくしてるだろう」
盗賊「この島は元々逃げ出した劣等種の隠れ家だったからな」
盗賊「俺が船長と少年達を引き合わせたんだ」
側近「で、俺もこいつらと知り合った、って訳だ」
神父「……出会った経緯は解りました……が」
神父「それだけでは、荒唐無稽な話とは言えますまい?」
神父「それに……貴方の話が出ていません、側近さん」
神父「……少年さんとお知り合いだったからついでに知り合ったとは」
神父「……流石に、納得できません」
側近「ご尤も……まあ、少年に旅に出ろと言ったのが俺、だ」
側近「姫様と少年は、魔導の街に行く前に知り合ったんだが……」
神父「ちょっと待ってください、貴方が少年さんに旅に出ろと?」
神父「どういう意味です?」
側近「説明するから待てって!」
側近「……俺は、少年に仕えている。少年は……魔王だ」
神父「……は?」
盗賊「……」
女「……」
484: 2013/05/16(木) 10:39:52.33 ID:aN2IW8uKP
側近(結局全部話さないといけないのか……)ハァ
側近「だから荒唐無稽な話だっつったろ?」
側近「少年の正体は、魔王だ……魔導の街に不穏な動きがあったし」
側近「魔族の一人が取り入って、何かやろうとしてるのが解ったから」
側近「魔王様を偵察に出したんだよ」
神父「……そ、それを信じたとしても、どうして主を偵察に出すのです!?」
神父「そんなおかしな話……!」
盗賊「改めて聞くとそうだよなぁ……」
女「盗賊……!」
盗賊「いや、まじで……」
側近「俺もそう思う……いや、進言したの俺だけど」
神父「……」
側近「そんな顔すんなよ……まあ、色々あってだな」
側近「俺が城をあけるとまずかった訳。で、これまた色々あってだな」
側近「……魔王様は無能だと思われてたんだよ」
神父「え……?」
側近「アンタがイメージする、魔物、魔族、魔王ってのは……なんだ?」
神父「そ、れは……一言では、言えませんが……」
側近「まあ、そりゃ解る……でもまあ、やっぱ色んな所に行くとさ」
側近「大体が、怖い物、として認識してる訳じゃん?」
側近「人間を頃すとか食うとか、魔王に至れば……まあ、ほら」
側近「人間共を滅ぼすだとか、支配する、とかな」
神父「……そうですね。畏怖の対象である事は間違いないでしょう」
側近「でな?俺とか魔王様とか……まあ、そういう事に興味が無かった訳だ」
神父「え?」
側近「面倒臭ぇじゃん。正直、俺は人間を好きでも嫌いでも無い」
側近「徹底した不干渉……それが、俺と魔王様の望みだ」
女「……」
側近「だから荒唐無稽な話だっつったろ?」
側近「少年の正体は、魔王だ……魔導の街に不穏な動きがあったし」
側近「魔族の一人が取り入って、何かやろうとしてるのが解ったから」
側近「魔王様を偵察に出したんだよ」
神父「……そ、それを信じたとしても、どうして主を偵察に出すのです!?」
神父「そんなおかしな話……!」
盗賊「改めて聞くとそうだよなぁ……」
女「盗賊……!」
盗賊「いや、まじで……」
側近「俺もそう思う……いや、進言したの俺だけど」
神父「……」
側近「そんな顔すんなよ……まあ、色々あってだな」
側近「俺が城をあけるとまずかった訳。で、これまた色々あってだな」
側近「……魔王様は無能だと思われてたんだよ」
神父「え……?」
側近「アンタがイメージする、魔物、魔族、魔王ってのは……なんだ?」
神父「そ、れは……一言では、言えませんが……」
側近「まあ、そりゃ解る……でもまあ、やっぱ色んな所に行くとさ」
側近「大体が、怖い物、として認識してる訳じゃん?」
側近「人間を頃すとか食うとか、魔王に至れば……まあ、ほら」
側近「人間共を滅ぼすだとか、支配する、とかな」
神父「……そうですね。畏怖の対象である事は間違いないでしょう」
側近「でな?俺とか魔王様とか……まあ、そういう事に興味が無かった訳だ」
神父「え?」
側近「面倒臭ぇじゃん。正直、俺は人間を好きでも嫌いでも無い」
側近「徹底した不干渉……それが、俺と魔王様の望みだ」
女「……」
485: 2013/05/16(木) 10:47:53.80 ID:aN2IW8uKP
側近「が、だ……勿論、魔族の皆がそういう事思ってる訳じゃ無い」
盗賊「……魔導将軍」
側近「そうだな。魔導将軍始め……過激な思想を持つ奴も勿論居たんだ」
神父「と、言うと?」
側近「まあ、人間なんか滅ぼしちまえ、この世は魔族の物だ、ってな」
神父「で、ですが……魔王は……違う、のでしょう?」
神父「……信じるとすれば、ですが」
側近「さっきも言っただろう? ……魔王様は、過激派には無能だと思われていた」
側近「……まあ、詳しくは割愛するけど、あいつが魔王になってから」
側近「本当になーんにもしなかったからな」
側近「書庫に篭もって本読んでるか、料理してるか……」
盗賊「……想像に容易い」
側近「本当にねぇ」
神父「魔王が……料理……」
側近「不干渉で良いなら、そう宣言しろとも言ったんだがな」
側近「魔王様曰く、そういうのは強制されてする物じゃ無い、とな」
側近「皆がそう言う方向に自分の意思でなって欲しい、と」
側近「……それにしたって方法はあるだろうに、とは思ったんだが」
側近「俺も……何もしなかった。不満があっても」
側近「一応、魔王様の命令が無ければ、魔王軍は動かなかったからな」
神父「……」
側近「だが、不満のある連中が集まって、良からぬ企みを始めたのさ」
盗賊「……魔王に、反旗を翻す、か」
神父「……!」
側近「ああ。で、俺はばたばた走り回って、漸く魔導将軍の行動を突き止めたんだが」
側近「……そいつだけじゃ無い。俺が不在になれば、過激派の連中にも解るだろう?」
神父「それで……魔王を」
側近「そう。あいつは無能だ。何も出来ない屑だと思われていたからな」
盗賊「……魔導将軍」
側近「そうだな。魔導将軍始め……過激な思想を持つ奴も勿論居たんだ」
神父「と、言うと?」
側近「まあ、人間なんか滅ぼしちまえ、この世は魔族の物だ、ってな」
神父「で、ですが……魔王は……違う、のでしょう?」
神父「……信じるとすれば、ですが」
側近「さっきも言っただろう? ……魔王様は、過激派には無能だと思われていた」
側近「……まあ、詳しくは割愛するけど、あいつが魔王になってから」
側近「本当になーんにもしなかったからな」
側近「書庫に篭もって本読んでるか、料理してるか……」
盗賊「……想像に容易い」
側近「本当にねぇ」
神父「魔王が……料理……」
側近「不干渉で良いなら、そう宣言しろとも言ったんだがな」
側近「魔王様曰く、そういうのは強制されてする物じゃ無い、とな」
側近「皆がそう言う方向に自分の意思でなって欲しい、と」
側近「……それにしたって方法はあるだろうに、とは思ったんだが」
側近「俺も……何もしなかった。不満があっても」
側近「一応、魔王様の命令が無ければ、魔王軍は動かなかったからな」
神父「……」
側近「だが、不満のある連中が集まって、良からぬ企みを始めたのさ」
盗賊「……魔王に、反旗を翻す、か」
神父「……!」
側近「ああ。で、俺はばたばた走り回って、漸く魔導将軍の行動を突き止めたんだが」
側近「……そいつだけじゃ無い。俺が不在になれば、過激派の連中にも解るだろう?」
神父「それで……魔王を」
側近「そう。あいつは無能だ。何も出来ない屑だと思われていたからな」
486: 2013/05/16(木) 10:50:31.88 ID:aN2IW8uKP
お迎え!
帰ったら幼女と美容院に行くので、帰ってお風呂ご飯までかけたら!
帰ったら幼女と美容院に行くので、帰ってお風呂ご飯までかけたら!
497: 2013/05/17(金) 09:57:42.93 ID:tzEdIN0RP
神父「……何故、なのです?」
側近「あん?」
神父「仕える者であろう貴方ですら……それ程の力をお持ちだ」
神父「なのに、何故……」
側近「無能だと思われるのか、か……それ、言わしちゃう?」
神父「……」
側近「まあ、良い……魔王ってのはな、まあ……世襲制、って奴だ」
側近「ただし、前魔王……今の魔王様の親父さんだな」
側近「を……自分の手でぶち殺さなきゃならん」
神父「親を……頃す!?」
側近「そうだよ。そうして『魔王』の力を奪い取る」
側近「……この事実を知ってるのは、前魔王様の代から仕えていた古参の者の内でも」
側近「数人しか知らん……俺も含めて、な」
盗賊「……側近も古参に入るのか?」
側近「まあそうだな。魔王様には最初……産まれた時から、って言ったけど」
側近「前魔王様に拾われたからね、俺は」
女「拾われた……と言うのは……」
側近「……ここまで言っといて何だけど、その話は今は省くわ。長くなるし」
神父「では魔王と言うのは……その力は、代々受け継がれてきた物だと言う、のですか」
神父「親を……頃し続けて手に入れてきた物、だと」
側近「……人間にとって嫌悪感のあるもんだっつうのは……まあ、解る」
側近「特にアンタは聖職者だしな」
側近「血だ、なんだってのでは縛れないのさ……魔族ってのは」
側近「力が全て、とは言わんが、それに近い物はある」
側近「……ま、だからあんな事態に陥ったんだけどね」ハァ
側近「あん?」
神父「仕える者であろう貴方ですら……それ程の力をお持ちだ」
神父「なのに、何故……」
側近「無能だと思われるのか、か……それ、言わしちゃう?」
神父「……」
側近「まあ、良い……魔王ってのはな、まあ……世襲制、って奴だ」
側近「ただし、前魔王……今の魔王様の親父さんだな」
側近「を……自分の手でぶち殺さなきゃならん」
神父「親を……頃す!?」
側近「そうだよ。そうして『魔王』の力を奪い取る」
側近「……この事実を知ってるのは、前魔王様の代から仕えていた古参の者の内でも」
側近「数人しか知らん……俺も含めて、な」
盗賊「……側近も古参に入るのか?」
側近「まあそうだな。魔王様には最初……産まれた時から、って言ったけど」
側近「前魔王様に拾われたからね、俺は」
女「拾われた……と言うのは……」
側近「……ここまで言っといて何だけど、その話は今は省くわ。長くなるし」
神父「では魔王と言うのは……その力は、代々受け継がれてきた物だと言う、のですか」
神父「親を……頃し続けて手に入れてきた物、だと」
側近「……人間にとって嫌悪感のあるもんだっつうのは……まあ、解る」
側近「特にアンタは聖職者だしな」
側近「血だ、なんだってのでは縛れないのさ……魔族ってのは」
側近「力が全て、とは言わんが、それに近い物はある」
側近「……ま、だからあんな事態に陥ったんだけどね」ハァ
499: 2013/05/17(金) 10:15:05.06 ID:tzEdIN0RP
神父「継承の方法を知らない他の魔族達が、魔王の地位を狙い」
神父「反乱を起こした、という事ですか……」
側近「まあ、ぶっちゃけ魔王様一人いれば皆頃しなんて容易いよ」
盗賊「……」
側近「けどまあ、幹部クラスの魔族にゃ部下ってのが居る訳でね」
側近「数で来られると、こっちの被害も……な」
女「こっち、と言うのは……?」
側近「便宜上だけど、魔導将軍達みたいのを過激派、それ以外……まあ、そうだな」
側近「魔王様や、俺みたいな考え方の奴を穏健派、って呼んでた訳」
側近「派、つっても……こっちは本当に数人だったけどね」
盗賊「で、でも……さ、魔導将軍は……氏んだし……」
側近「残りも一掃したさ……被害ゼロでは無かったけどな」
神父「ゼロでは、無かった……?」
側近「獣の類であろうと、ものすごい数で攻め込まれてみろよ」
側近「……それに、数人だっていっただろ。それも古参の連中だ」
神父「し、しかし……魔族は不氏に近いのでは?」
側近「近い、ね……まあそりゃな。人間より遙かに寿命も長いしな」
側近「だが、老いる。確実にな……で無けりゃ、どうして世代交代が必要なんだ?」
神父「……」
側近「二人……逝った。過激派の幹部の全滅と引き替えにな」
神父「残りは……残りの魔族は、どうなのです」
側近「さてね……少なくとも、出る杭は全部打ったさ。今のところ、は」
神父「また……その様な事態に陥る可能性が残っていると?」
神父「反乱を起こした、という事ですか……」
側近「まあ、ぶっちゃけ魔王様一人いれば皆頃しなんて容易いよ」
盗賊「……」
側近「けどまあ、幹部クラスの魔族にゃ部下ってのが居る訳でね」
側近「数で来られると、こっちの被害も……な」
女「こっち、と言うのは……?」
側近「便宜上だけど、魔導将軍達みたいのを過激派、それ以外……まあ、そうだな」
側近「魔王様や、俺みたいな考え方の奴を穏健派、って呼んでた訳」
側近「派、つっても……こっちは本当に数人だったけどね」
盗賊「で、でも……さ、魔導将軍は……氏んだし……」
側近「残りも一掃したさ……被害ゼロでは無かったけどな」
神父「ゼロでは、無かった……?」
側近「獣の類であろうと、ものすごい数で攻め込まれてみろよ」
側近「……それに、数人だっていっただろ。それも古参の連中だ」
神父「し、しかし……魔族は不氏に近いのでは?」
側近「近い、ね……まあそりゃな。人間より遙かに寿命も長いしな」
側近「だが、老いる。確実にな……で無けりゃ、どうして世代交代が必要なんだ?」
神父「……」
側近「二人……逝った。過激派の幹部の全滅と引き替えにな」
神父「残りは……残りの魔族は、どうなのです」
側近「さてね……少なくとも、出る杭は全部打ったさ。今のところ、は」
神父「また……その様な事態に陥る可能性が残っていると?」
501: 2013/05/17(金) 10:30:07.89 ID:tzEdIN0RP
側近「この世に『絶対』があるって言うのか?お前さん」
神父「……」
女「人と人でさえ……争うのです。血だ、能力だ、と」
女「一度……力で押さえつけた魔導の街の人達が、二度とあのような思想を持たないと」
女「……お思いですか?神父様」
神父「女さん……」
盗賊「……」
女「劣等種は確かに、魔王様によって解放されました。しかし……何十年」
女「何百年の後、形を変え……また」
女「同じような事を、繰り返さないとは言い切れません」
盗賊「で、でも……!」
側近「だから、そうならない様に……布石を打つんだろ?お前達は、さ」
神父「……一つ、お聞きしたい事が」
側近「はいはい、何でしょ」
神父「あの……『魔除けの石』は……」
側近「あー……」
女「私がお話します」
側近「女ちゃん……でも」
女「良いんです……何時、言おうかと迷っていたのです」
盗賊「……?」
女「あの石は、インキュバスと言う……魔族が作った物です」
神父「先ほど……側近さんも言っていらっしゃいましたね」
神父「女さん……ご存じなのですか?」
神父「……」
女「人と人でさえ……争うのです。血だ、能力だ、と」
女「一度……力で押さえつけた魔導の街の人達が、二度とあのような思想を持たないと」
女「……お思いですか?神父様」
神父「女さん……」
盗賊「……」
女「劣等種は確かに、魔王様によって解放されました。しかし……何十年」
女「何百年の後、形を変え……また」
女「同じような事を、繰り返さないとは言い切れません」
盗賊「で、でも……!」
側近「だから、そうならない様に……布石を打つんだろ?お前達は、さ」
神父「……一つ、お聞きしたい事が」
側近「はいはい、何でしょ」
神父「あの……『魔除けの石』は……」
側近「あー……」
女「私がお話します」
側近「女ちゃん……でも」
女「良いんです……何時、言おうかと迷っていたのです」
盗賊「……?」
女「あの石は、インキュバスと言う……魔族が作った物です」
神父「先ほど……側近さんも言っていらっしゃいましたね」
神父「女さん……ご存じなのですか?」
502: 2013/05/17(金) 10:42:51.08 ID:tzEdIN0RP
女「……端的に言うと、彼は私の精気を吸い、魔力に変えて」
女「あの魔除けの石を作っていたのです」
盗賊「な……え……?」
神父「貴方の……精気、を……ですか?」
側近「……」
女「はい。魔導書軍は、魔導の街に居る間……魔王様と姫様を」
女「部下に見張らせていたそうです。勿論……娼館に居た劣等種達も……」
女「魔王様と何度も接触した、私も」
神父「貴方が娼館にいらっしゃった事は……存じております。お話下さいましたから」
女「はい……船でこの街を出た私は……鍛冶師の村の教会で、インキュバスに会いました」
女「そして……」
女「……」
神父「申し訳ありません、女さん、もう……!」
女「いえ……すみません。大丈夫です」
女「そこで……取り入られてしまったのです。辱めを受けたにもかかわらず」
女「……心地よい快楽に、身も心も解けました」
女「名を奪われ、新たな名で呼ばれる事を強いられても」
女「精気を奪われても……与えられる愉悦に、あらがう事はできなかった」
盗賊「……ッ」
女「あの間は……忘れていられたのです!」
女「……必要とされる事は、心地よかった。嬉しかったのです……!」
女「魔王様の、事を……ッ 思い出さずに……居られるのは……!」
側近「……」
神父「……」
盗賊「……」
女「あの魔除けの石を作っていたのです」
盗賊「な……え……?」
神父「貴方の……精気、を……ですか?」
側近「……」
女「はい。魔導書軍は、魔導の街に居る間……魔王様と姫様を」
女「部下に見張らせていたそうです。勿論……娼館に居た劣等種達も……」
女「魔王様と何度も接触した、私も」
神父「貴方が娼館にいらっしゃった事は……存じております。お話下さいましたから」
女「はい……船でこの街を出た私は……鍛冶師の村の教会で、インキュバスに会いました」
女「そして……」
女「……」
神父「申し訳ありません、女さん、もう……!」
女「いえ……すみません。大丈夫です」
女「そこで……取り入られてしまったのです。辱めを受けたにもかかわらず」
女「……心地よい快楽に、身も心も解けました」
女「名を奪われ、新たな名で呼ばれる事を強いられても」
女「精気を奪われても……与えられる愉悦に、あらがう事はできなかった」
盗賊「……ッ」
女「あの間は……忘れていられたのです!」
女「……必要とされる事は、心地よかった。嬉しかったのです……!」
女「魔王様の、事を……ッ 思い出さずに……居られるのは……!」
側近「……」
神父「……」
盗賊「……」
513: 2013/05/18(土) 07:12:27.37 ID:FDZeIn8vP
女「申し訳ありません……」
神父「……いえ、あの……その。辛いお話、を……」
側近「方法は女ちゃんが教えた、んだよな?」
女「はい……多分、ですがそれしか考えられないでしょうね」
盗賊「覚えて無い、のか?」
女「はっきりとは。後……色々聞かれた気はするんだけど……あまり」
側近「……まあ、あいつはもう氏んだから、な。そういうのは気にしなくて良いだろう」
神父「氏んだ……頃した、のは、魔王がですか?」
側近「あー……説明しにくいんだがなぁ……」
女「あれは……あの時の、あれは……側近さんでしたよね」
側近「ああ。そこは覚えてるんだっけ?」
女「……紫の、瞳……を。ですが」
盗賊「え?」
神父「紫の瞳?」
盗賊「側近のは……緑じゃネェか」
女「魔王様は紫の瞳をお持ちなのです、神父様」
神父「……いえ、あの……その。辛いお話、を……」
側近「方法は女ちゃんが教えた、んだよな?」
女「はい……多分、ですがそれしか考えられないでしょうね」
盗賊「覚えて無い、のか?」
女「はっきりとは。後……色々聞かれた気はするんだけど……あまり」
側近「……まあ、あいつはもう氏んだから、な。そういうのは気にしなくて良いだろう」
神父「氏んだ……頃した、のは、魔王がですか?」
側近「あー……説明しにくいんだがなぁ……」
女「あれは……あの時の、あれは……側近さんでしたよね」
側近「ああ。そこは覚えてるんだっけ?」
女「……紫の、瞳……を。ですが」
盗賊「え?」
神父「紫の瞳?」
盗賊「側近のは……緑じゃネェか」
女「魔王様は紫の瞳をお持ちなのです、神父様」
514: 2013/05/18(土) 07:22:47.03 ID:FDZeIn8vP
神父「……それは」
盗賊「おい、話がぐちゃぐちゃじゃネェか……わかりやすく説明してくれよ」
側近「お前……何も聞いてない、のか?」
盗賊「詳しい話はな……側近の瞳が紫ってどういう意味だ?」
女「私がインキュバスに捕らわれている時に……助けに来て下さったのは」
女「側近さん……で、良いんですよね?」
側近「ああ。そんで対峙した時に、俺の身体が魔王様の意識に乗っ取られたんだ」
神父「乗っ取られた!?」
側近「……で、その時、俺の目が紫に変わった、んだよな?」
盗賊「覚えて無いのか?」
側近「そうじゃネェよ。自分の姿は自分でみれないでしょうが」
神父「……」
側近「何か言いたそうだな、神父さん」
神父「……一言で言うのならば信じられません、ですよ」
神父「聞きたい事は山程ありますが……」
側近「まあ、あの時の女ちゃんは記憶が曖昧だろうから俺が話そう」
盗賊「おい、話がぐちゃぐちゃじゃネェか……わかりやすく説明してくれよ」
側近「お前……何も聞いてない、のか?」
盗賊「詳しい話はな……側近の瞳が紫ってどういう意味だ?」
女「私がインキュバスに捕らわれている時に……助けに来て下さったのは」
女「側近さん……で、良いんですよね?」
側近「ああ。そんで対峙した時に、俺の身体が魔王様の意識に乗っ取られたんだ」
神父「乗っ取られた!?」
側近「……で、その時、俺の目が紫に変わった、んだよな?」
盗賊「覚えて無いのか?」
側近「そうじゃネェよ。自分の姿は自分でみれないでしょうが」
神父「……」
側近「何か言いたそうだな、神父さん」
神父「……一言で言うのならば信じられません、ですよ」
神父「聞きたい事は山程ありますが……」
側近「まあ、あの時の女ちゃんは記憶が曖昧だろうから俺が話そう」
517: 2013/05/18(土) 07:43:08.17 ID:FDZeIn8vP
側近「そもそも俺は戦闘向きじゃ無い訳だ……攻撃魔法は使えるが、専門じゃ無い」
側近「けどまぁ……魔王様の目を持ってるからな。インキュバスと一対一なら何とかなるかなー、て」
側近「思ってたら『面倒だから体貸せ』……だ」
盗賊「……あいつが規格外なのは知ってる、が……そんな事までできんの!?」
側近「んで、だ……まあ、そんで、どうしてだか瞳の色迄紫に変わっちゃったらしく」
側近「女ちゃんもそれ見て混乱しだすし」
女「すみません……」
側近「あ、違う違う……責めてないって!」
側近「後はまあ、ぐちゃぐちゃなんか言ってるインキュバスぶち頃して」
側近「……俺の体の侭、女ちゃん抱えて魔王様の城迄転移しやがった」
側近「けどまぁ……魔王様の目を持ってるからな。インキュバスと一対一なら何とかなるかなー、て」
側近「思ってたら『面倒だから体貸せ』……だ」
盗賊「……あいつが規格外なのは知ってる、が……そんな事までできんの!?」
側近「んで、だ……まあ、そんで、どうしてだか瞳の色迄紫に変わっちゃったらしく」
側近「女ちゃんもそれ見て混乱しだすし」
女「すみません……」
側近「あ、違う違う……責めてないって!」
側近「後はまあ、ぐちゃぐちゃなんか言ってるインキュバスぶち頃して」
側近「……俺の体の侭、女ちゃん抱えて魔王様の城迄転移しやがった」
518: 2013/05/18(土) 07:48:16.52 ID:FDZeIn8vP
側近「……て、感じかな」
神父「一つずつ……教えて頂けますか」
側近「おう……まずは何だ?」
盗賊「ちょ、待て! ……ここでこうやってるって事は無事って事なんだろうが」
盗賊「……女は、大丈夫なんだな!?」
側近「……」
女「……話して置かなければなりませんね、側近さん?」
側近「何時話そうかって迷ってたんだろ?」
女「……はい」
盗賊「な、何だよ……まだ何かあんのか!?」
神父「一つずつ……教えて頂けますか」
側近「おう……まずは何だ?」
盗賊「ちょ、待て! ……ここでこうやってるって事は無事って事なんだろうが」
盗賊「……女は、大丈夫なんだな!?」
側近「……」
女「……話して置かなければなりませんね、側近さん?」
側近「何時話そうかって迷ってたんだろ?」
女「……はい」
盗賊「な、何だよ……まだ何かあんのか!?」
533: 2013/05/19(日) 10:33:12.52 ID:UFZsM6AXP
女「……インキュバスの洗脳の様な物は、溶けました。しかし……」
女「……私の、寿命は…… ……持って、一年……と」
盗賊「いち、ね……ん?」
女「……」
側近「姫様曰く、な。命の炎が……極端に小さいそうだ」
神父「それは、精気を吸われてしまったらか、ですか」
側近「インキュバスと言うのはそう言う種族だ。見目麗しい姿で異性を虜にし……」
側近「主に文字通り、精を糧として生きる」
女「私は、魔石を作る為に……身を捧げて居たから……」
神父「彼の者の糧となり、さらに……ですか」
盗賊「な、何納得しました、見たいな喋り方してんだよ!みんなして!」
盗賊「側近!何とか……助かる方法無いのか!?」
女「……私の、寿命は…… ……持って、一年……と」
盗賊「いち、ね……ん?」
女「……」
側近「姫様曰く、な。命の炎が……極端に小さいそうだ」
神父「それは、精気を吸われてしまったらか、ですか」
側近「インキュバスと言うのはそう言う種族だ。見目麗しい姿で異性を虜にし……」
側近「主に文字通り、精を糧として生きる」
女「私は、魔石を作る為に……身を捧げて居たから……」
神父「彼の者の糧となり、さらに……ですか」
盗賊「な、何納得しました、見たいな喋り方してんだよ!みんなして!」
盗賊「側近!何とか……助かる方法無いのか!?」
534: 2013/05/19(日) 10:48:18.34 ID:UFZsM6AXP
女「少女さんの様に魔族になれば、生き永らえるでしょうね」
神父「!?」
側近「と、言うか……生きたいのなら、それしかない」
盗賊「……!」
女「魔王様は私が望むならすぐにでも、と言って下さいました。でも……」
女「姫様には、それすら耐えられないだろう、とも」
盗賊「そんな……!?じゃ、じゃあ……諦めろってのか!?」
側近「誰もが人から魔に易く変じれる訳じゃ無いんだ、盗賊」
側近「俺や……少女は稀有な例と言っても過言じゃ無いんだよ」
神父「貴方……も?」
側近「大前提として、魔に変じたい、とかな。まだ生きたい、とか……そう言う強い意思が必要な訳だ」
側近「氏にたくは無いが、魔になるのは……とか。迷ってりゃ、まず不可能だ」
側近「俺の場合は後者だった。『こんなとこで氏にたくネェ。人で無くても良いからとにかく生きたい』だ」
神父「で、では、貴方は……」
側近「俺は元人間だよ。前魔王様に魔に変じさせて貰ったのさ」
女「ですが……人であった貴方が、何故前魔王様の前に……?」
神父「!?」
側近「と、言うか……生きたいのなら、それしかない」
盗賊「……!」
女「魔王様は私が望むならすぐにでも、と言って下さいました。でも……」
女「姫様には、それすら耐えられないだろう、とも」
盗賊「そんな……!?じゃ、じゃあ……諦めろってのか!?」
側近「誰もが人から魔に易く変じれる訳じゃ無いんだ、盗賊」
側近「俺や……少女は稀有な例と言っても過言じゃ無いんだよ」
神父「貴方……も?」
側近「大前提として、魔に変じたい、とかな。まだ生きたい、とか……そう言う強い意思が必要な訳だ」
側近「氏にたくは無いが、魔になるのは……とか。迷ってりゃ、まず不可能だ」
側近「俺の場合は後者だった。『こんなとこで氏にたくネェ。人で無くても良いからとにかく生きたい』だ」
神父「で、では、貴方は……」
側近「俺は元人間だよ。前魔王様に魔に変じさせて貰ったのさ」
女「ですが……人であった貴方が、何故前魔王様の前に……?」
535: 2013/05/19(日) 10:49:41.34 ID:UFZsM6AXP
働いてくる!
543: 2013/05/20(月) 10:07:21.07 ID:/3glbmBOP
側近「ここらへん、魔王様も知らないんだよなぁ……」
女「魔王様も……?」
側近「ちょっと前まで、元人間って事も言ってなかったからな」
神父「何故、なのです?」
側近「別に内緒にしてた訳じゃネェぞ?わざわざ……って思っただけ何だが」
女「今は知っていらっしゃる、のですよね?」
側近「ああ。アンタらにゃ当然の知識だろうけど、魔王様はそういう所疎いからな」
側近「回復や治癒魔法ってのは、人間の特権、て事を知らなかったのさ」
側近「本読むの好きな癖にねぇ……」
盗賊「姫から聞いた、のか」
側近「まあ、そう考えるのが妥当だろう。前魔王様に魔にして貰ったって話は伝えたよ」
神父「では……貴方は魔の身でありながら、回復の魔法が使える、と申すのですか」
側近「ここまで話しておいて嘘吐いても仕方ないだろ」
側近「前魔王様ってのは変わり者でな……否、魔王様も相当変わってるとは思うけど」
女「魔王様も……?」
側近「ちょっと前まで、元人間って事も言ってなかったからな」
神父「何故、なのです?」
側近「別に内緒にしてた訳じゃネェぞ?わざわざ……って思っただけ何だが」
女「今は知っていらっしゃる、のですよね?」
側近「ああ。アンタらにゃ当然の知識だろうけど、魔王様はそういう所疎いからな」
側近「回復や治癒魔法ってのは、人間の特権、て事を知らなかったのさ」
側近「本読むの好きな癖にねぇ……」
盗賊「姫から聞いた、のか」
側近「まあ、そう考えるのが妥当だろう。前魔王様に魔にして貰ったって話は伝えたよ」
神父「では……貴方は魔の身でありながら、回復の魔法が使える、と申すのですか」
側近「ここまで話しておいて嘘吐いても仕方ないだろ」
側近「前魔王様ってのは変わり者でな……否、魔王様も相当変わってるとは思うけど」
544: 2013/05/20(月) 10:23:12.35 ID:/3glbmBOP
盗賊「全く否定できない」
女「……すみません」
側近「言っておいて何だが……不憫だな、魔王様」
側近「で、だ。えっと何だっけな……ああ。そうそう」
側近「俺が前魔王様に会った理由だったな」
側近「簡単に言えば……倒しに行った、んだ」
盗賊「え!?」
神父「魔王を……ですか!?」
側近「そうだよ。俺が人として生きてた時代、世界はもっと殺伐としてた」
側近「魔王は人を、人間を支配すると宣言していたし、魔物の数ももっと多かった」
盗賊「……お前、何年生きてんだよ」
女「……すみません」
側近「言っておいて何だが……不憫だな、魔王様」
側近「で、だ。えっと何だっけな……ああ。そうそう」
側近「俺が前魔王様に会った理由だったな」
側近「簡単に言えば……倒しに行った、んだ」
盗賊「え!?」
神父「魔王を……ですか!?」
側近「そうだよ。俺が人として生きてた時代、世界はもっと殺伐としてた」
側近「魔王は人を、人間を支配すると宣言していたし、魔物の数ももっと多かった」
盗賊「……お前、何年生きてんだよ」
546: 2013/05/20(月) 10:42:11.88 ID:/3glbmBOP
側近「さぁなぁ……前魔王様は、1000年近く生きてたから」
側近「それ以上、は確定だな」
神父「千、年……」
側近「今でこそ『勇者』なんてモンは御伽噺扱いに近いけど」
側近「実際に居たんだぜ、勇者様ってのが」
女「それは……選ばれた存在、という事ですか?」
側近「んー。と、言うより『魔王を倒してくれるだろう存在』かな」
側近「……実際に倒して居れば、本物の勇者になれたんだろうがな」
神父「では……貴方達は、魔王を倒せなかった?」
神父「……ん、ですよね」
側近「そうだよ。でなきゃ、俺が魔王様に仕えてる訳がネェだろ?」
盗賊「じゃ、じゃあ……側近が勇者!?」
側近「いやいやいやいや。違うって!攻撃魔法とか無理だったし」
側近「回復やら補助専門の俺が勇者な訳ないだろ」
盗賊「あ、そ……そっか」
側近「勇者になるだろう、と思われてた剣士と、俺と……攻撃魔法専門の奴」
側近「その三人で旅に出たんだ」
女「側近さんは……何処の出身なのです?」
側近「俺の産まれた街はもうネェよ。旅立ってすぐに、魔王に跡形も無く消し飛ばされた」
盗賊「!?」
側近「そうだな。始まりの街……みたいな感じかな」
側近「あれほど大きくは無いが、小さな島に小さな城と、お飾り程度の街があった」
側近「……後から考えれば、王様が旅立ちを急かした理由はそれだったのか、とね」
側近「そう思えば……魔王に憎しみが沸いた。それを力に、俺たちは魔王城に急いだんだ」
側近「それ以上、は確定だな」
神父「千、年……」
側近「今でこそ『勇者』なんてモンは御伽噺扱いに近いけど」
側近「実際に居たんだぜ、勇者様ってのが」
女「それは……選ばれた存在、という事ですか?」
側近「んー。と、言うより『魔王を倒してくれるだろう存在』かな」
側近「……実際に倒して居れば、本物の勇者になれたんだろうがな」
神父「では……貴方達は、魔王を倒せなかった?」
神父「……ん、ですよね」
側近「そうだよ。でなきゃ、俺が魔王様に仕えてる訳がネェだろ?」
盗賊「じゃ、じゃあ……側近が勇者!?」
側近「いやいやいやいや。違うって!攻撃魔法とか無理だったし」
側近「回復やら補助専門の俺が勇者な訳ないだろ」
盗賊「あ、そ……そっか」
側近「勇者になるだろう、と思われてた剣士と、俺と……攻撃魔法専門の奴」
側近「その三人で旅に出たんだ」
女「側近さんは……何処の出身なのです?」
側近「俺の産まれた街はもうネェよ。旅立ってすぐに、魔王に跡形も無く消し飛ばされた」
盗賊「!?」
側近「そうだな。始まりの街……みたいな感じかな」
側近「あれほど大きくは無いが、小さな島に小さな城と、お飾り程度の街があった」
側近「……後から考えれば、王様が旅立ちを急かした理由はそれだったのか、とね」
側近「そう思えば……魔王に憎しみが沸いた。それを力に、俺たちは魔王城に急いだんだ」
547: 2013/05/20(月) 11:09:05.74 ID:/3glbmBOP
女「魔王城、と言うのは……あの、今魔王様が住んでいらっしゃる……?」
側近「そうだよ。どうにかこうにか……俺たちは最果ての街にたどり着いた」
側近「ああ、街はもう今みたいな感じだったな」
側近「誰かが住んでる訳でも無く、廃墟に近かった」
女「では……私達が見た感じと同じ……」
側近「だな。で、歩いて歩いて……門をくぐって、城の中に入った」
側近「そしたら、誰に会うでも無くさ。あっさり前魔王様の居る玉座の間まで」
側近「来ちまった……ご対面、さ」
神父「配下の魔族は……何故、居なかったのです?」
側近「俺も勿論、疑問に思ったさ。だがな、俺たちは極度に緊張してた」
側近「前魔王様が話しかけた瞬間、魔法使いの奴が魔法をぶっ放しやがったんだ」
盗賊「……」
側近「前魔王様はあっさり……それこそ指一本ではね除けた」
側近「そこで怖じけずきゃ良いのに、プレッシャーってのは怖いモンでね」
側近「俺たちはパニックになった。一斉に殴りかかっていったのさ」
神父「ど……どうして……」
側近「考えてもみろよ?既に亡い人達から受けた期待と、怨み。俺たちに」
側近「『魔王を倒す』以外の選択肢があったと思うか?」
女「逃げ出す訳には……行かなかったのですね」
側近「逃げ出したって帰るところは無い。俺たちを知る人も居なければ」
側近「気にする必要も無い、かもしれんがな」
側近「そんな事は許されない。『勇者達』てのはそういうモンなのかもな」
側近「……実際、そうだったよ。俺たちがやらなけりゃ、被害は増えるだけ」
側近「そうとしか思えなかったんだ……ろうな。多分、な」
側近「そうだよ。どうにかこうにか……俺たちは最果ての街にたどり着いた」
側近「ああ、街はもう今みたいな感じだったな」
側近「誰かが住んでる訳でも無く、廃墟に近かった」
女「では……私達が見た感じと同じ……」
側近「だな。で、歩いて歩いて……門をくぐって、城の中に入った」
側近「そしたら、誰に会うでも無くさ。あっさり前魔王様の居る玉座の間まで」
側近「来ちまった……ご対面、さ」
神父「配下の魔族は……何故、居なかったのです?」
側近「俺も勿論、疑問に思ったさ。だがな、俺たちは極度に緊張してた」
側近「前魔王様が話しかけた瞬間、魔法使いの奴が魔法をぶっ放しやがったんだ」
盗賊「……」
側近「前魔王様はあっさり……それこそ指一本ではね除けた」
側近「そこで怖じけずきゃ良いのに、プレッシャーってのは怖いモンでね」
側近「俺たちはパニックになった。一斉に殴りかかっていったのさ」
神父「ど……どうして……」
側近「考えてもみろよ?既に亡い人達から受けた期待と、怨み。俺たちに」
側近「『魔王を倒す』以外の選択肢があったと思うか?」
女「逃げ出す訳には……行かなかったのですね」
側近「逃げ出したって帰るところは無い。俺たちを知る人も居なければ」
側近「気にする必要も無い、かもしれんがな」
側近「そんな事は許されない。『勇者達』てのはそういうモンなのかもな」
側近「……実際、そうだったよ。俺たちがやらなけりゃ、被害は増えるだけ」
側近「そうとしか思えなかったんだ……ろうな。多分、な」
548: 2013/05/20(月) 11:38:04.21 ID:/3glbmBOP
側近「俺たちはあっさり吹っ飛ばされた。魔法使いは壁に打ち付けられて血まみれ」
側近「勇者も似た様なモンだったな」
側近「声も出せなかったよ。ありゃ文字通り化け物だ……人が太刀打ち出来る相手じゃない」
女「ど……どうなった、のです……」
側近「氏にかけの俺たちに、前魔王様は言った」
側近「『行きたいか』とな」
側近「勇者も似た様なモンだったな」
側近「声も出せなかったよ。ありゃ文字通り化け物だ……人が太刀打ち出来る相手じゃない」
女「ど……どうなった、のです……」
側近「氏にかけの俺たちに、前魔王様は言った」
側近「『行きたいか』とな」
556: 2013/05/20(月) 12:29:23.78 ID:/3glbmBOP
側近「即否定したよ……俺以外の二人はな」
神父「……」
側近「氏にかけて、口から血を噴き出しながら二人は、怨みの言葉を囁いてた……らしい」
盗賊「らしい?」
側近「俺だって氏にかけてたんだって。ハッキリ覚えてネェよ……後から聞いた話だ、それは」
神父「前魔王、に……ですか」
側近「ああ。『情けで生きてどうする』『お前を倒さなきゃ、氏んでも氏に切れん』」
側近「『化け物』『魔など生きていて良いはずがない』『親を返せ』『皆を返せ』」
女「……」
側近「『俺たちの幸せを奪う権利など、無い』……とか、な」
神父「……」
側近「で、前魔王様は答え無い俺に、もう一度聞いたそうだ」
女「……『生きたいか』?」
側近「俺は即座に答えた。氏にたくない。生きたい……氏ぬのは厭だ」
側近「『ならば生きろ。強い意思を持ち、己が手を取るが良い……人の子よ』」
側近「……そんな感じだったかなぁ」
盗賊「そ、それで?」
側近「こっから先は、魔王様にも話したかな。使用人……少女ちゃんの時に」
神父「? 少女さんと言うのは……先ほど、魔に変じられたと言う……?」
側近「ああ。まあ、後で話そうと思ったんだがな」
側近「側近てのは、俺が人から魔になった時に与えられた新たな名前だ」
側近「必要なのか、けじめなだけなのかはわからんが……」
神父「……」
側近「氏にかけて、口から血を噴き出しながら二人は、怨みの言葉を囁いてた……らしい」
盗賊「らしい?」
側近「俺だって氏にかけてたんだって。ハッキリ覚えてネェよ……後から聞いた話だ、それは」
神父「前魔王、に……ですか」
側近「ああ。『情けで生きてどうする』『お前を倒さなきゃ、氏んでも氏に切れん』」
側近「『化け物』『魔など生きていて良いはずがない』『親を返せ』『皆を返せ』」
女「……」
側近「『俺たちの幸せを奪う権利など、無い』……とか、な」
神父「……」
側近「で、前魔王様は答え無い俺に、もう一度聞いたそうだ」
女「……『生きたいか』?」
側近「俺は即座に答えた。氏にたくない。生きたい……氏ぬのは厭だ」
側近「『ならば生きろ。強い意思を持ち、己が手を取るが良い……人の子よ』」
側近「……そんな感じだったかなぁ」
盗賊「そ、それで?」
側近「こっから先は、魔王様にも話したかな。使用人……少女ちゃんの時に」
神父「? 少女さんと言うのは……先ほど、魔に変じられたと言う……?」
側近「ああ。まあ、後で話そうと思ったんだがな」
側近「側近てのは、俺が人から魔になった時に与えられた新たな名前だ」
側近「必要なのか、けじめなだけなのかはわからんが……」
558: 2013/05/20(月) 12:49:16.53 ID:/3glbmBOP
側近「手を取れと言われてもな。俺はスタボロで動けなかったから」
側近「実際は前魔王様が俺のとこまで来てくれて、手を握ってくれた」
側近「で、人としての命と引き替えに、俺は前魔王様の魔力で、魔に生まれ変わったんだが……」
側近「……与えられた魔力は、元々は前魔王様の物だ。いくら強い意思があったとしても」
側近「はいそうですかー、と受け入れる物でも、耐えれるモンでも無い」
神父「……」
側近「負った怪我は奇跡的に治ってたんだか、そんなモン気にならなかったんだか解らんが」
側近「俺は……俺の魔力は暴走して、訳も分からない侭に前魔王様に襲いかかった」
側近「これだけはハッキリ覚えてる。前魔王様は『元気があって何よりだ』とか」
側近「……そんな事言って、大笑いしながら、笑顔で俺を吹っ飛ばした」
女「だ、大丈夫だったのですか……!?」
側近「まあ、今生きてるからねぇ。その衝撃でどうにか暴走は収まったけど」
側近「大爆笑してる前魔王様の傍で、泣いたね。ガチで泣いたね」
盗賊「……笑う所じゃ無いよな」
側近「全く持って違うね!」
女「怪我は……前魔王様が治して下さったのですか?」
側近「女ちゃんともあろう人が何言ってんの。魔王だろうが何だろうが」
側近「回復魔法は使えないでしょ?」
女「あ……」
側近「鼻水垂らしながら自分で回復したよ……ああ、思い出したくない」
神父「貴方以外の……二人は、どうなったのです?」
側近「その頃には既に氏んでた……と思いたいがな」
側近「俺の暴走に巻き込まれて、てのは……なぁ?」
盗賊「わからない、のか?」
側近「気がついたら既に氏んでたからな。その後、前魔王様に色々な話を聞きながら」
側近「……片付けた。魔王城の庭で、二人の亡骸を燃やして貰ったのさ」
側近「実際は前魔王様が俺のとこまで来てくれて、手を握ってくれた」
側近「で、人としての命と引き替えに、俺は前魔王様の魔力で、魔に生まれ変わったんだが……」
側近「……与えられた魔力は、元々は前魔王様の物だ。いくら強い意思があったとしても」
側近「はいそうですかー、と受け入れる物でも、耐えれるモンでも無い」
神父「……」
側近「負った怪我は奇跡的に治ってたんだか、そんなモン気にならなかったんだか解らんが」
側近「俺は……俺の魔力は暴走して、訳も分からない侭に前魔王様に襲いかかった」
側近「これだけはハッキリ覚えてる。前魔王様は『元気があって何よりだ』とか」
側近「……そんな事言って、大笑いしながら、笑顔で俺を吹っ飛ばした」
女「だ、大丈夫だったのですか……!?」
側近「まあ、今生きてるからねぇ。その衝撃でどうにか暴走は収まったけど」
側近「大爆笑してる前魔王様の傍で、泣いたね。ガチで泣いたね」
盗賊「……笑う所じゃ無いよな」
側近「全く持って違うね!」
女「怪我は……前魔王様が治して下さったのですか?」
側近「女ちゃんともあろう人が何言ってんの。魔王だろうが何だろうが」
側近「回復魔法は使えないでしょ?」
女「あ……」
側近「鼻水垂らしながら自分で回復したよ……ああ、思い出したくない」
神父「貴方以外の……二人は、どうなったのです?」
側近「その頃には既に氏んでた……と思いたいがな」
側近「俺の暴走に巻き込まれて、てのは……なぁ?」
盗賊「わからない、のか?」
側近「気がついたら既に氏んでたからな。その後、前魔王様に色々な話を聞きながら」
側近「……片付けた。魔王城の庭で、二人の亡骸を燃やして貰ったのさ」
559: 2013/05/20(月) 13:02:53.17 ID:/3glbmBOP
神父「それは……前魔王が?」
側近「そうだよ。俺は炎なんて操れないからな」
側近「俺と前魔王様と二人で庭まで運んで、前魔王様が……炎で浄化しよう、てな」
神父「浄化……」
側近「俺は確かに生きたかった。だけどそれがまさか、魔になることだなんて思いもしなかった」
側近「話を聞いている内に、憎しみとか……不思議だけどどっかいっちまったんだよ」
側近「あんなに憎んだ存在だったのにさ」
神父「ど、どうしてです!?命の恩人には、違い無いでしょうが……!」
側近「俺たちの島を消し飛ばしたのも、人に宣戦布告したのも」
側近「前魔王様の先代だったそうだ。そりゃな、『私じゃ無い』なんて言われて」
側近「あっさり信じられる訳も無かったけど」
側近「なんて言うかなぁ……話してる内に、気がついたら信じてたんだよ」
側近「……そういう人だったんだ。まあ、魔王様の親父、って思えば」
側近「納得、て感じなんだが。さっきも言ったけど、まあ本当に変わった人でな」
盗賊「魔王の親父……そう聞くと、納得しちまいそうだ。まじで」
女「ええ……あの、私も……同感です」
神父「盗賊さん……女さん迄!?」
側近「世代交代の方法とか、先代と自分の考え方の違いとかな」
側近「その辺、全部話してくれた、てのもあるけど」
側近「……前魔王様の炎が消えて、二人の存在が完全に消えて無くなった頃に」
側近「前魔王様は俺に、これからどうするんだと聞いた」
盗賊「え?」
側近「前魔王様は先代をぶち頃して、自分が魔王になってすぐだったそうでな」
側近「先代の頃からの参謀達も、絶対に自分に賛同はしないだろうからって」
側近「ついでに、一掃しちゃったらしいんだわ」
女「……」
側近「血なまぐさい話ですまんね」
側近「そうだよ。俺は炎なんて操れないからな」
側近「俺と前魔王様と二人で庭まで運んで、前魔王様が……炎で浄化しよう、てな」
神父「浄化……」
側近「俺は確かに生きたかった。だけどそれがまさか、魔になることだなんて思いもしなかった」
側近「話を聞いている内に、憎しみとか……不思議だけどどっかいっちまったんだよ」
側近「あんなに憎んだ存在だったのにさ」
神父「ど、どうしてです!?命の恩人には、違い無いでしょうが……!」
側近「俺たちの島を消し飛ばしたのも、人に宣戦布告したのも」
側近「前魔王様の先代だったそうだ。そりゃな、『私じゃ無い』なんて言われて」
側近「あっさり信じられる訳も無かったけど」
側近「なんて言うかなぁ……話してる内に、気がついたら信じてたんだよ」
側近「……そういう人だったんだ。まあ、魔王様の親父、って思えば」
側近「納得、て感じなんだが。さっきも言ったけど、まあ本当に変わった人でな」
盗賊「魔王の親父……そう聞くと、納得しちまいそうだ。まじで」
女「ええ……あの、私も……同感です」
神父「盗賊さん……女さん迄!?」
側近「世代交代の方法とか、先代と自分の考え方の違いとかな」
側近「その辺、全部話してくれた、てのもあるけど」
側近「……前魔王様の炎が消えて、二人の存在が完全に消えて無くなった頃に」
側近「前魔王様は俺に、これからどうするんだと聞いた」
盗賊「え?」
側近「前魔王様は先代をぶち頃して、自分が魔王になってすぐだったそうでな」
側近「先代の頃からの参謀達も、絶対に自分に賛同はしないだろうからって」
側近「ついでに、一掃しちゃったらしいんだわ」
女「……」
側近「血なまぐさい話ですまんね」
560: 2013/05/20(月) 13:19:26.96 ID:/3glbmBOP
女「いえ……」
側近「で、俺に『側近』になれ、とな……ただ、厭なら拒否しても良いとも」
神父「魔王が……そういった、のですか」
側近「ああ。生きたいと言うから生かしたけれど、まさか本当に魔になれるとは」
側近「思わなくて吃驚した、とも言ってた」
盗賊「……それって実験台……」
女「盗賊!」
側近「まあ、事実その通りだ。で、前魔王様的には、それで満足したんだと」
神父「満足?」
側近「そう。自分は本当に魔王になったんだなぁ、と感慨深そうに言ってた」
盗賊「……本当に、なんて言うか……魔王のお父さんだな」
側近「だろ? 俺も気が抜けたよ。拒否したら頃すのかと聞いたが」
側近「好きにしろとか言う。でもさ、好きにしろって言われてもな?」
側近「帰る場所も無いし、魔王を倒す、って言う目標ももう無い。つか、無理だ」
側近「じゃあ、ここに居れば良い。じゃあ、お前の名前は今から側近な」
側近「……て、訳だ」
神父「その、新しい名を与えた意味は……」
側近「『意味があるかどうかは解らんが、新しい生のスタートとしてのけじめとして』」
側近「『必要な事だと思うから』……そんな感じだったかな」
女「それで……側近さんは、前魔王様に仕える事を決められた、のですね」
側近「んなハッキリ決めたとかじゃネェなぁ……なんか、気がついたら」
側近「こうなってた?」
盗賊「んな疑問系にされても」
側近「つか、まあ前魔王様の望みは『人間と魔族が共存できる世界』だったからな」
側近「初めの頃は俺に、その橋渡し役をやれって言ってたよ」
女「魔王様が……少し、仰ってましたね」
側近「ああ。だが俺はそれは拒否したんだ」
盗賊「え!?」
側近「時期じゃ無い、って意味な」
神父「そうですね……先代の魔王が、支配を望んでいたのなら……」
側近「で、俺に『側近』になれ、とな……ただ、厭なら拒否しても良いとも」
神父「魔王が……そういった、のですか」
側近「ああ。生きたいと言うから生かしたけれど、まさか本当に魔になれるとは」
側近「思わなくて吃驚した、とも言ってた」
盗賊「……それって実験台……」
女「盗賊!」
側近「まあ、事実その通りだ。で、前魔王様的には、それで満足したんだと」
神父「満足?」
側近「そう。自分は本当に魔王になったんだなぁ、と感慨深そうに言ってた」
盗賊「……本当に、なんて言うか……魔王のお父さんだな」
側近「だろ? 俺も気が抜けたよ。拒否したら頃すのかと聞いたが」
側近「好きにしろとか言う。でもさ、好きにしろって言われてもな?」
側近「帰る場所も無いし、魔王を倒す、って言う目標ももう無い。つか、無理だ」
側近「じゃあ、ここに居れば良い。じゃあ、お前の名前は今から側近な」
側近「……て、訳だ」
神父「その、新しい名を与えた意味は……」
側近「『意味があるかどうかは解らんが、新しい生のスタートとしてのけじめとして』」
側近「『必要な事だと思うから』……そんな感じだったかな」
女「それで……側近さんは、前魔王様に仕える事を決められた、のですね」
側近「んなハッキリ決めたとかじゃネェなぁ……なんか、気がついたら」
側近「こうなってた?」
盗賊「んな疑問系にされても」
側近「つか、まあ前魔王様の望みは『人間と魔族が共存できる世界』だったからな」
側近「初めの頃は俺に、その橋渡し役をやれって言ってたよ」
女「魔王様が……少し、仰ってましたね」
側近「ああ。だが俺はそれは拒否したんだ」
盗賊「え!?」
側近「時期じゃ無い、って意味な」
神父「そうですね……先代の魔王が、支配を望んでいたのなら……」
561: 2013/05/20(月) 13:32:54.47 ID:/3glbmBOP
側近「ああ。魔族の生は長い。ましてや、前魔王様は魔王になったばかりだ」
側近「焦らなくても、そういうチャンスはいくらでもあるだろう、とな」
側近「どっちにしても行く場所なんか無い。もう人で無いなら」
側近「永住も叶わんだろ?人の世界では、さ」
女「側近さんは……見かけは変わっていらっしゃらない?」
側近「同じ魔族でも個人差はあるんだけどな。俺はまだあの頃のまんまだな」
側近「だから、とりあえずは城に住んで、お前……前魔王様の傍にいてやる」
側近「生かして貰った恩もあるし、とな」
盗賊「……はぁ」
側近「実際、前魔王様は本当に、先代に仕えてた殆どをぶち頃しちまったみたいで」
側近「城には怯える使い魔とか位しか残って無くてな。マジで大変だった訳よ」
側近「世界各地に散らばった奴らの討伐だとか、何だとか……」
側近「まーじーでこき使われたからね!」
側近「んで、回復だけじゃ頼りにならんってんで」
側近「風の攻撃魔法たたき込まれたりな」
女「では……特訓のおかげで、使える様になったのですか……あの、魔法」
側近「実際、魔王に回復とか補助とかいらねぇだろ?」
側近「要は使い方なんだってさ」
神父「『願えば叶う』……ですか」
側近「お。姫様の名言、広まってるねぇ」
盗賊「あれ、てことは……側近は、魔王のお母さんとかも知ってるのか?」
側近「おう。俺は魔王様のおむつも変えたことあるぞ」
盗賊「まじで!?」
側近「まじで……引っかけられた事もある」
女「何を、です?」
側近「…… ……聞かないで?」
側近「焦らなくても、そういうチャンスはいくらでもあるだろう、とな」
側近「どっちにしても行く場所なんか無い。もう人で無いなら」
側近「永住も叶わんだろ?人の世界では、さ」
女「側近さんは……見かけは変わっていらっしゃらない?」
側近「同じ魔族でも個人差はあるんだけどな。俺はまだあの頃のまんまだな」
側近「だから、とりあえずは城に住んで、お前……前魔王様の傍にいてやる」
側近「生かして貰った恩もあるし、とな」
盗賊「……はぁ」
側近「実際、前魔王様は本当に、先代に仕えてた殆どをぶち頃しちまったみたいで」
側近「城には怯える使い魔とか位しか残って無くてな。マジで大変だった訳よ」
側近「世界各地に散らばった奴らの討伐だとか、何だとか……」
側近「まーじーでこき使われたからね!」
側近「んで、回復だけじゃ頼りにならんってんで」
側近「風の攻撃魔法たたき込まれたりな」
女「では……特訓のおかげで、使える様になったのですか……あの、魔法」
側近「実際、魔王に回復とか補助とかいらねぇだろ?」
側近「要は使い方なんだってさ」
神父「『願えば叶う』……ですか」
側近「お。姫様の名言、広まってるねぇ」
盗賊「あれ、てことは……側近は、魔王のお母さんとかも知ってるのか?」
側近「おう。俺は魔王様のおむつも変えたことあるぞ」
盗賊「まじで!?」
側近「まじで……引っかけられた事もある」
女「何を、です?」
側近「…… ……聞かないで?」
569: 2013/05/21(火) 10:44:49.27 ID:19Hq5f28P
盗賊「魔王が赤ちゃんとか……」
側近「そりゃ想像出来ないだろうがね」
女「お母様……どんな、方だったのですか」
側近「気になる?」
盗賊「ならない訳ないだろ、なあ?女」
女「え、ええ……それは、まあ」
神父「私も純粋に興味があります」
側近「アンタも??」
神父「魔王……魔を統べる者の生誕、と考えれば、ね」
側近「ふむ……まあ、どこにでもいる魔族、と言っちまえばそれまでなんだがな」
側近「そうだな。見た目は大人しそうに見えたな。黒い髪に深い深い深海色の瞳」
側近「優しそうに、柔らかく笑う顔が美しかった……が」
側近「そりゃ想像出来ないだろうがね」
女「お母様……どんな、方だったのですか」
側近「気になる?」
盗賊「ならない訳ないだろ、なあ?女」
女「え、ええ……それは、まあ」
神父「私も純粋に興味があります」
側近「アンタも??」
神父「魔王……魔を統べる者の生誕、と考えれば、ね」
側近「ふむ……まあ、どこにでもいる魔族、と言っちまえばそれまでなんだがな」
側近「そうだな。見た目は大人しそうに見えたな。黒い髪に深い深い深海色の瞳」
側近「優しそうに、柔らかく笑う顔が美しかった……が」
570: 2013/05/21(火) 10:54:08.24 ID:19Hq5f28P
盗賊「……が?」
側近「氏者を悪く言うのは気が引ける……が、ありゃとんでもない女だったよ……!」
女「亡くなった、のですか……」
側近「……まあ、魔族も不氏じゃないからね」
盗賊「と、とんでもない、てのは?」
側近「ガキなんだよ、ガキ!下らネェ悪戯ばっかしやがるのさ!」
盗賊「へ?」
側近「前魔王様は笑ってるだけだしさ……標的は何時も俺な訳!しかもさ、ほんっとどうでも良い事ばっかすんの!」
側近「……扉開けたら水入りバケツが落ちて来たりとか、な」
盗賊「……」
女「……」
神父「……」
側近「何だよみんな揃ってその顔はあああああああ!」
側近「氏者を悪く言うのは気が引ける……が、ありゃとんでもない女だったよ……!」
女「亡くなった、のですか……」
側近「……まあ、魔族も不氏じゃないからね」
盗賊「と、とんでもない、てのは?」
側近「ガキなんだよ、ガキ!下らネェ悪戯ばっかしやがるのさ!」
盗賊「へ?」
側近「前魔王様は笑ってるだけだしさ……標的は何時も俺な訳!しかもさ、ほんっとどうでも良い事ばっかすんの!」
側近「……扉開けたら水入りバケツが落ちて来たりとか、な」
盗賊「……」
女「……」
神父「……」
側近「何だよみんな揃ってその顔はあああああああ!」
571: 2013/05/21(火) 11:04:56.03 ID:19Hq5f28P
盗賊「いや……いや、いや」
女「な、何と申し上げて良いのか……」
側近「……つか話逸れまくったな」
神父「変わらない、のですね」
側近「あん?」
神父「こうして聞いていると、です。私達人間も……魔族も。魔王、ですら」
側近「……」
側近(女ちゃんもはっきり覚えてないみたいだし……魔王様の剣の事は黙っておくか)
側近(余計な知識迄与えるのは避けた方が良いな)
神父「しかし……ふむ」
側近「何だ?」
神父「1000年以上もの間に色々あったのでしょうが……今現在の魔王の望みは、徹底した不干渉なのですよね?」
側近「そうだ」
神父「ならば何故……こうも、人に、私達に肩入れするのです?」
女「な、何と申し上げて良いのか……」
側近「……つか話逸れまくったな」
神父「変わらない、のですね」
側近「あん?」
神父「こうして聞いていると、です。私達人間も……魔族も。魔王、ですら」
側近「……」
側近(女ちゃんもはっきり覚えてないみたいだし……魔王様の剣の事は黙っておくか)
側近(余計な知識迄与えるのは避けた方が良いな)
神父「しかし……ふむ」
側近「何だ?」
神父「1000年以上もの間に色々あったのでしょうが……今現在の魔王の望みは、徹底した不干渉なのですよね?」
側近「そうだ」
神父「ならば何故……こうも、人に、私達に肩入れするのです?」
572: 2013/05/21(火) 17:03:42.00 ID:19Hq5f28P
側近「だよなぁ」
神父「は?」
側近「いや……俺も何でだろうなーって、思って」
神父「はぁ……」
側近「魔導将軍やインキュバスの事は、まあこっちにも利があったからな」
側近「そっから先は、姫の為……だろうが」
神父「お話の中に何度かその名が出て来ましたね。姫、というのは」
神父「魔王様の細君、でよろしいのですかな」
側近「まあ、そうだな」
神父「ひょっとして……その姫さんと仰るのは、人、なのですか」
側近「魔族じゃ無いのは確か、だが……まあ、良いか。ここまで来れば」
側近「隠す必要もネェな……姫様はエルフのお姫様、だ」
神父「……エルフ!?」
盗賊「エルフの長の娘、だとさ」
神父「そ、存在することは存じておりました、ですが……!」
側近「エルフは嘘がつけないんだそうだ。優れた加護を得る変わりの、制約、だっけな?」
盗賊「そんな事言ってたな」
神父「魔王と、エルフの長の娘が……結婚!?」
側近「まあ、その辺は気にするな」
神父「無茶を言わないでください!」
側近「……すまん」
盗賊「あっさり信じれる方がどうかしてるだろうよ」
神父「しかも、その姫さんの為に魔王が、人間に肩入れ……!?」
側近「あー、ちょっと落ち着いてくれ、神父さんよ」
側近「混乱するのも無理は無いが、とりあえず本題に戻させてくれ」
盗賊「本題って……どれだ?」
側近「……どれだっけな」
盗賊「おいおい……」
神父「は?」
側近「いや……俺も何でだろうなーって、思って」
神父「はぁ……」
側近「魔導将軍やインキュバスの事は、まあこっちにも利があったからな」
側近「そっから先は、姫の為……だろうが」
神父「お話の中に何度かその名が出て来ましたね。姫、というのは」
神父「魔王様の細君、でよろしいのですかな」
側近「まあ、そうだな」
神父「ひょっとして……その姫さんと仰るのは、人、なのですか」
側近「魔族じゃ無いのは確か、だが……まあ、良いか。ここまで来れば」
側近「隠す必要もネェな……姫様はエルフのお姫様、だ」
神父「……エルフ!?」
盗賊「エルフの長の娘、だとさ」
神父「そ、存在することは存じておりました、ですが……!」
側近「エルフは嘘がつけないんだそうだ。優れた加護を得る変わりの、制約、だっけな?」
盗賊「そんな事言ってたな」
神父「魔王と、エルフの長の娘が……結婚!?」
側近「まあ、その辺は気にするな」
神父「無茶を言わないでください!」
側近「……すまん」
盗賊「あっさり信じれる方がどうかしてるだろうよ」
神父「しかも、その姫さんの為に魔王が、人間に肩入れ……!?」
側近「あー、ちょっと落ち着いてくれ、神父さんよ」
側近「混乱するのも無理は無いが、とりあえず本題に戻させてくれ」
盗賊「本題って……どれだ?」
側近「……どれだっけな」
盗賊「おいおい……」
574: 2013/05/21(火) 17:18:26.63 ID:19Hq5f28P
側近「まあ、なんだ。ともかく……俺はこの島、街の人達に」
側近「危害を加える気は全くねぇから、そこは安心してくれ」
神父「……まあ、それは、信じておきます。とりあえず」
側近「上等」
盗賊「て言うか、お前何しに来たんだったけ」
側近「おいおいおいおい!」
盗賊「あ、思い出した。癒やしの石買いに来たんだったな」
側近「頼むよ、もう……」
盗賊「悪い悪い……」
神父「癒やしの石、を何に使うのです?」
神父「側近さんは回復魔法を使えるのでしょう?」
側近「気休め、だな。エルフのお姫さんには、魔の気は辛いらしくてな」
神父「その姫さんは、今も魔王の城に?」
側近「まあ、奥さんだからね」
側近「ん?おい盗賊ちゃんよ。見せたかったものって……?」
盗賊「ああ、それも忘れてた……いや、ここに教会を建てるつもりなんだよ」
側近「あー……あの骨組み、そうか?」
盗賊「住居やらなんやら、街を完成させる事が先だからさ」
盗賊「余った材料で、使えそうなモンがあれば、回して貰ってるんだ」
側近「ほーお」
女「小さくても良いのですよ。心のよりどころになれば」
側近「で、神父さんと女ちゃんは何やってたんだよ」
神父「私は、女さんに魔石の具現化の方法を教えて貰って居たのですよ」
女「ええ、魔王様に頂いた本もありますし」
神父「え!?」
側近「危害を加える気は全くねぇから、そこは安心してくれ」
神父「……まあ、それは、信じておきます。とりあえず」
側近「上等」
盗賊「て言うか、お前何しに来たんだったけ」
側近「おいおいおいおい!」
盗賊「あ、思い出した。癒やしの石買いに来たんだったな」
側近「頼むよ、もう……」
盗賊「悪い悪い……」
神父「癒やしの石、を何に使うのです?」
神父「側近さんは回復魔法を使えるのでしょう?」
側近「気休め、だな。エルフのお姫さんには、魔の気は辛いらしくてな」
神父「その姫さんは、今も魔王の城に?」
側近「まあ、奥さんだからね」
側近「ん?おい盗賊ちゃんよ。見せたかったものって……?」
盗賊「ああ、それも忘れてた……いや、ここに教会を建てるつもりなんだよ」
側近「あー……あの骨組み、そうか?」
盗賊「住居やらなんやら、街を完成させる事が先だからさ」
盗賊「余った材料で、使えそうなモンがあれば、回して貰ってるんだ」
側近「ほーお」
女「小さくても良いのですよ。心のよりどころになれば」
側近「で、神父さんと女ちゃんは何やってたんだよ」
神父「私は、女さんに魔石の具現化の方法を教えて貰って居たのですよ」
女「ええ、魔王様に頂いた本もありますし」
神父「え!?」
575: 2013/05/21(火) 17:25:14.12 ID:19Hq5f28P
女「わかりやすいようにと、まとめて下さったのは魔王様です」
神父「な、んと……」
側近「教えてって……神父さん程の人が出来ネェの?」
神父「恥ずかしながら……理屈はわかるのですがね」
側近「じゃあ、後は簡単じゃネェか」
神父「え?」
側近「アンタ、さっき自分でも言ってただろ」
側近「『願えば叶う』」
神父「……」クル、スタスタスタ
盗賊「? おい、神父さ……」
女「盗賊、シィ……ッ」
神父「……ッ」ブツブツ……グッ
パァア……!
側近「お?」
コロン……
神父「で、きた……!」
女「神父様……!」
盗賊「え、え!? ……魔除けの石!?」
側近「どれどれ」スタスタ、ヒョイ
側近「……始まりの街ほどじゃネェけど。確かに……魔除けになるかもな」
盗賊「始まりの街?」
神父「始まりの、街?」
側近「声揃えなくても良いでしょうが……」
神父「な、んと……」
側近「教えてって……神父さん程の人が出来ネェの?」
神父「恥ずかしながら……理屈はわかるのですがね」
側近「じゃあ、後は簡単じゃネェか」
神父「え?」
側近「アンタ、さっき自分でも言ってただろ」
側近「『願えば叶う』」
神父「……」クル、スタスタスタ
盗賊「? おい、神父さ……」
女「盗賊、シィ……ッ」
神父「……ッ」ブツブツ……グッ
パァア……!
側近「お?」
コロン……
神父「で、きた……!」
女「神父様……!」
盗賊「え、え!? ……魔除けの石!?」
側近「どれどれ」スタスタ、ヒョイ
側近「……始まりの街ほどじゃネェけど。確かに……魔除けになるかもな」
盗賊「始まりの街?」
神父「始まりの、街?」
側近「声揃えなくても良いでしょうが……」
579: 2013/05/22(水) 09:49:49.78 ID:gCwG/Vu4P
側近「盗賊ちゃんは知ってるだろうに。知人の墓があるだろ」
側近「あの街に魔物が少ない理由……いても、それ程強く無い奴ばっかな理由、さ」
神父「え?」
側近「答えは墓の下、だろ」
盗賊「知人のエルフの加護……」
側近「そうだよ。姫様に……ってのもお前の案だろうが」
盗賊「あ!そうだよ、姫は……!」
側近「また話逸らすのはやめて!結果は無事!」
盗賊「……後でゆっくり聞かせろよ」
神父「エルフの、加護?」
女「姫様のペンダントですね」
側近「あー……先に話した方が良い感じですかそうですか」グッタリ
盗賊「もう諦めろよ」
側近「別に話すのが面倒な訳じゃ無いんだけどな」
側近「どこまで言って良いやら、判断がな……」
盗賊「今更だなぁ」
神父「別に……疑っていませんよ」
側近「今は、だろ?」
神父「正直に言うと、知りたいと言う欲求の方が強いですかね」
側近「あの街に魔物が少ない理由……いても、それ程強く無い奴ばっかな理由、さ」
神父「え?」
側近「答えは墓の下、だろ」
盗賊「知人のエルフの加護……」
側近「そうだよ。姫様に……ってのもお前の案だろうが」
盗賊「あ!そうだよ、姫は……!」
側近「また話逸らすのはやめて!結果は無事!」
盗賊「……後でゆっくり聞かせろよ」
神父「エルフの、加護?」
女「姫様のペンダントですね」
側近「あー……先に話した方が良い感じですかそうですか」グッタリ
盗賊「もう諦めろよ」
側近「別に話すのが面倒な訳じゃ無いんだけどな」
側近「どこまで言って良いやら、判断がな……」
盗賊「今更だなぁ」
神父「別に……疑っていませんよ」
側近「今は、だろ?」
神父「正直に言うと、知りたいと言う欲求の方が強いですかね」
581: 2013/05/22(水) 10:03:37.37 ID:gCwG/Vu4P
盗賊「女は知ってるよな。始まりの街には……知人、て言う」
盗賊「エルフの……墓がある」
神父「墓?」
盗賊「見晴らしの良い丘の上に……埋めただけだけどな」
側近「そのエルフの生前の力だかなんだか知らないが」
側近「俺たち魔族にゃ、少々息苦しい程に清浄なんだあの土地は」
側近「ま……推測に過ぎんけど」
神父「それが、エルフの加護?」
側近「で、さっきも言ったが姫様を城に連れて帰ったらだな」
側近「魔の気で……まあ、体調を崩しちまったんだ」
側近「そんで盗賊に頼んで、癒やしの石を作って貰って姫様の傍に置いてたんだ」
側近「……気休めだがな」
盗賊「けど、それも長くは持たないって話だった」
盗賊「だから……知人の加護、エルフの加護のあるあの場所に行けば」
盗賊「どうにかなるんじゃないか、てさ」
神父「魔族の……魔王の妻になる女性の為に、ですか?」
盗賊「姫は魔族じゃ無いぞ。エルフだ」
神父「それでも……魔王に嫁いだのでしょう?」
盗賊「……そうだけど」
側近「使用人……少女ちゃんは、まだ人間だった」
側近「それにあいつは緑の加護を受けている」
側近「だから……エルフの加護を大地から吸い上げて」
側近「用意してあったペンダントに移したんだ」
神父「異種族の力を!?そんな事をすれば……!」
側近「普通は氏ぬな」
盗賊「エルフの……墓がある」
神父「墓?」
盗賊「見晴らしの良い丘の上に……埋めただけだけどな」
側近「そのエルフの生前の力だかなんだか知らないが」
側近「俺たち魔族にゃ、少々息苦しい程に清浄なんだあの土地は」
側近「ま……推測に過ぎんけど」
神父「それが、エルフの加護?」
側近「で、さっきも言ったが姫様を城に連れて帰ったらだな」
側近「魔の気で……まあ、体調を崩しちまったんだ」
側近「そんで盗賊に頼んで、癒やしの石を作って貰って姫様の傍に置いてたんだ」
側近「……気休めだがな」
盗賊「けど、それも長くは持たないって話だった」
盗賊「だから……知人の加護、エルフの加護のあるあの場所に行けば」
盗賊「どうにかなるんじゃないか、てさ」
神父「魔族の……魔王の妻になる女性の為に、ですか?」
盗賊「姫は魔族じゃ無いぞ。エルフだ」
神父「それでも……魔王に嫁いだのでしょう?」
盗賊「……そうだけど」
側近「使用人……少女ちゃんは、まだ人間だった」
側近「それにあいつは緑の加護を受けている」
側近「だから……エルフの加護を大地から吸い上げて」
側近「用意してあったペンダントに移したんだ」
神父「異種族の力を!?そんな事をすれば……!」
側近「普通は氏ぬな」
582: 2013/05/22(水) 10:12:42.09 ID:gCwG/Vu4P
側近「だから魔王様は、少女ちゃんの人としての命が消える瞬間に」
側近「魔力を注ぎ、魔へと変えた、のさ」
女「暴走、は大丈夫だったのですか……?」
側近「魔王様が相手じゃ、殺される可能性はあっても頃す事は考えられんからな」
神父「で、では……」
側近「結果オーライ。少女は魔としての新しい生を手に入れて」
側近「エルフの加護は無事に、ペンダントに宿った」
側近「姫様は今、城で元気にしてるよ……ただ」
盗賊「ただ?」
側近「それも、永久に持つ物では無いらしい、し……」
側近「……どちらにしても、産まれる頃には城を出て行くんじゃないかな」
盗賊「な、なんで!?魔王の城にいれば、危険も無いだろう!?」
神父「産まれる……子供が?魔王の、否……次期魔王が、ですか?」
側近「プライバシーの為黙秘……と言いたいが」
側近「まあ、色々あってだな。姫様のお腹の中の子供は、魔王様の子じゃ無い」
側近「そもそも、異種族間で子供産まれるんだか……」
盗賊「……え、でも……姫の子は」
側近「盗賊!」
盗賊「……御免」
神父「?」
側近(折角濁したのにこの子はもう!)
神父「魔王の子では無い……?」
側近「悪いがそこは『魔王様の子供では無い』で納得しておいてくれ」
側近「嘘じゃないからな」
神父「……解りました。こちらこそ申し訳ありません」
側近「サンキュ」
神父「ちら、と聞きましたが」
側近「ん?」
側近「魔力を注ぎ、魔へと変えた、のさ」
女「暴走、は大丈夫だったのですか……?」
側近「魔王様が相手じゃ、殺される可能性はあっても頃す事は考えられんからな」
神父「で、では……」
側近「結果オーライ。少女は魔としての新しい生を手に入れて」
側近「エルフの加護は無事に、ペンダントに宿った」
側近「姫様は今、城で元気にしてるよ……ただ」
盗賊「ただ?」
側近「それも、永久に持つ物では無いらしい、し……」
側近「……どちらにしても、産まれる頃には城を出て行くんじゃないかな」
盗賊「な、なんで!?魔王の城にいれば、危険も無いだろう!?」
神父「産まれる……子供が?魔王の、否……次期魔王が、ですか?」
側近「プライバシーの為黙秘……と言いたいが」
側近「まあ、色々あってだな。姫様のお腹の中の子供は、魔王様の子じゃ無い」
側近「そもそも、異種族間で子供産まれるんだか……」
盗賊「……え、でも……姫の子は」
側近「盗賊!」
盗賊「……御免」
神父「?」
側近(折角濁したのにこの子はもう!)
神父「魔王の子では無い……?」
側近「悪いがそこは『魔王様の子供では無い』で納得しておいてくれ」
側近「嘘じゃないからな」
神父「……解りました。こちらこそ申し訳ありません」
側近「サンキュ」
神父「ちら、と聞きましたが」
側近「ん?」
583: 2013/05/22(水) 10:18:52.72 ID:gCwG/Vu4P
神父「その、始まりの大陸に街を作る、と言うのは……」
側近「正確には復活させる、かな」
神父「その姫様の為、ですか」
側近「……そう、考えるのが妥当だろ?」
神父「……」
盗賊「じゃあ、魔王は何れ、姫をあの街に住ませるつもり……か?」
側近「と、思うけどね」
側近「肩入れする理由……の、一端はそれだと思うぜ」
側近「後は、自分たちの生活が充実してれば」
側近「後はそれどころじゃねぇって感じじゃネェの」
側近「俺たち魔族……魔王配下の、て意味、な」
側近「……は、さ。今のところ、人間達に攻め込んで、世界滅ぼすなんて」
側近「考えても居ないし」
神父「そう、ですか」
側近「……」
神父「貴方が癒やしの石を買いにいらした理由も解りました」
神父「……その、私が作った魔除けの石ですが」
側近「ん、ああ……これ?」
神父「どうぞ、姫様の為にお持ちください」
側近「良いのか?」
神父「まぐれかもしれません、し……随分体力も使います」
神父「量産できる自信はありませんが……」
側近「……サンキュ。助かるよ」
側近「正確には復活させる、かな」
神父「その姫様の為、ですか」
側近「……そう、考えるのが妥当だろ?」
神父「……」
盗賊「じゃあ、魔王は何れ、姫をあの街に住ませるつもり……か?」
側近「と、思うけどね」
側近「肩入れする理由……の、一端はそれだと思うぜ」
側近「後は、自分たちの生活が充実してれば」
側近「後はそれどころじゃねぇって感じじゃネェの」
側近「俺たち魔族……魔王配下の、て意味、な」
側近「……は、さ。今のところ、人間達に攻め込んで、世界滅ぼすなんて」
側近「考えても居ないし」
神父「そう、ですか」
側近「……」
神父「貴方が癒やしの石を買いにいらした理由も解りました」
神父「……その、私が作った魔除けの石ですが」
側近「ん、ああ……これ?」
神父「どうぞ、姫様の為にお持ちください」
側近「良いのか?」
神父「まぐれかもしれません、し……随分体力も使います」
神父「量産できる自信はありませんが……」
側近「……サンキュ。助かるよ」
584: 2013/05/22(水) 10:26:13.72 ID:gCwG/Vu4P
神父「ですが、一つお願いがあります」
側近「な、何だよ」
神父「本を一冊、お借りできませんか?」
側近「本?」
盗賊「あ!忘れてた!」
女「盗賊、持ってる?」
盗賊「家に置いてきたよ……側近、丁度良いし後で渡す」
側近「??」
女「魔王様にお借りした本を一冊、持ってきてしまったのです」
側近「え?魔王様が渡した奴なら、女ちゃんが貰ったんじゃないの」
女「いえ、それでは無くて……」
盗賊「俺が船に置いていっちまったのさ。前後編だったみたいでな」
盗賊「続きが読みたいのさ」
側近「で、後編を探して持って来い、と?」
神父「お願いします」
側近「書庫にあるかなぁ……ただでさえ、あそこぐっちゃぐちゃだからな」
側近「まあ、見つけたら持ってきてやるよ」
盗賊「悪いけど、家寄ってくれよ。ついでに癒やしの石も用意する」
側近「オッケー…… ……」キョロ
盗賊「どうした?」
側近「否……教会、早くできたら良いな」
女「……そう、ですね」
側近「さて……もう良いか?」
神父「貴重なお話、ありがとうございました」
側近「くれぐれも……他言無用で頼むぜ?」
神父「勿論です」
盗賊「もう帰るのか?側近」
側近「流石にそろそろ戻らないとね。魔王様が何かやらかしてないか」
側近「心配で胃が痛いよ」
側近「な、何だよ」
神父「本を一冊、お借りできませんか?」
側近「本?」
盗賊「あ!忘れてた!」
女「盗賊、持ってる?」
盗賊「家に置いてきたよ……側近、丁度良いし後で渡す」
側近「??」
女「魔王様にお借りした本を一冊、持ってきてしまったのです」
側近「え?魔王様が渡した奴なら、女ちゃんが貰ったんじゃないの」
女「いえ、それでは無くて……」
盗賊「俺が船に置いていっちまったのさ。前後編だったみたいでな」
盗賊「続きが読みたいのさ」
側近「で、後編を探して持って来い、と?」
神父「お願いします」
側近「書庫にあるかなぁ……ただでさえ、あそこぐっちゃぐちゃだからな」
側近「まあ、見つけたら持ってきてやるよ」
盗賊「悪いけど、家寄ってくれよ。ついでに癒やしの石も用意する」
側近「オッケー…… ……」キョロ
盗賊「どうした?」
側近「否……教会、早くできたら良いな」
女「……そう、ですね」
側近「さて……もう良いか?」
神父「貴重なお話、ありがとうございました」
側近「くれぐれも……他言無用で頼むぜ?」
神父「勿論です」
盗賊「もう帰るのか?側近」
側近「流石にそろそろ戻らないとね。魔王様が何かやらかしてないか」
側近「心配で胃が痛いよ」
585: 2013/05/22(水) 10:35:58.69 ID:gCwG/Vu4P
女「お気をつけて、側近さん」
盗賊「悪かったな、引き留めちまって」
側近「いや、良いさ。貴重な石も手に入ったしな」
盗賊「じゃあ、また後でな!」スタスタ
側近「ああ……またおえ、ってなるのか……」スタスタ
女「……」
神父「……」
女「神父様」
神父「はい?」
女「申し訳ありません、その……黙って、いて」
神父「ああ……気にする事はありません」
神父「……残念、でなりません、が」
女「……」
神父「貴方の心の中の勇者様は、魔王なのですね」
女「……はい」
神父「それで『私に魔除けの石を作る資格は無い』と……仰ったのですね」
女「……」
神父「対象が何であれ、それが信心であるのなら……と、思う気持ちもありますよ」
神父「ですが……貴女が無理だと思うのなら、無理なのでしょう」
女「神父様……」
神父「『願えば叶う』……不思議な言葉ですね」
女「え?」
神父「いえ……」
女「お疲れでは無いですか」
神父「そうですね、まだまだ作れる、とは言いませんが」
神父「……本当に、不思議な気持ちです」
盗賊「悪かったな、引き留めちまって」
側近「いや、良いさ。貴重な石も手に入ったしな」
盗賊「じゃあ、また後でな!」スタスタ
側近「ああ……またおえ、ってなるのか……」スタスタ
女「……」
神父「……」
女「神父様」
神父「はい?」
女「申し訳ありません、その……黙って、いて」
神父「ああ……気にする事はありません」
神父「……残念、でなりません、が」
女「……」
神父「貴方の心の中の勇者様は、魔王なのですね」
女「……はい」
神父「それで『私に魔除けの石を作る資格は無い』と……仰ったのですね」
女「……」
神父「対象が何であれ、それが信心であるのなら……と、思う気持ちもありますよ」
神父「ですが……貴女が無理だと思うのなら、無理なのでしょう」
女「神父様……」
神父「『願えば叶う』……不思議な言葉ですね」
女「え?」
神父「いえ……」
女「お疲れでは無いですか」
神父「そうですね、まだまだ作れる、とは言いませんが」
神父「……本当に、不思議な気持ちです」
595: 2013/05/23(木) 09:51:36.81 ID:cs/XioQwP
女「不思議、ですか……そう、ですね」
神父「私は」
女「?」
神父「……私、は。貴女にも出来ると思いますよ。やはり」
女「……」
神父「すみません、強制等するつもりは、無いのですが……」
神父「崇める者がどうであれ、貴女のその強い思いには敬服します」
神父「ですが……」
女「認められますか?神父様」
神父「え?」
女「『私の神』……神は、本来絶対なるものであるでしょう」
神父「……そう、ですね。ですが」
神父「……」
女「……」
神父「難しいですね。確かに仰る様に、神は絶対であり、唯一」
神父「それは、当然です。私はそう思っています」
神父「ですが……」
女「……」
神父「……」フゥ
女「言葉を選べば選ぶ程、どうにも説明出来なくなってしまいます」
神父「ええ……」
女「私が……私に、魔除けの石を作れないと言うのは、それだけが理由ではありません」
神父「え?」
神父「私は」
女「?」
神父「……私、は。貴女にも出来ると思いますよ。やはり」
女「……」
神父「すみません、強制等するつもりは、無いのですが……」
神父「崇める者がどうであれ、貴女のその強い思いには敬服します」
神父「ですが……」
女「認められますか?神父様」
神父「え?」
女「『私の神』……神は、本来絶対なるものであるでしょう」
神父「……そう、ですね。ですが」
神父「……」
女「……」
神父「難しいですね。確かに仰る様に、神は絶対であり、唯一」
神父「それは、当然です。私はそう思っています」
神父「ですが……」
女「……」
神父「……」フゥ
女「言葉を選べば選ぶ程、どうにも説明出来なくなってしまいます」
神父「ええ……」
女「私が……私に、魔除けの石を作れないと言うのは、それだけが理由ではありません」
神父「え?」
596: 2013/05/23(木) 10:08:24.74 ID:cs/XioQwP
女「……私は、インキュバスと交わってしまっています」
神父「あ……で、でも!」
女「関係無いのかもしれません。ですが……」
神父「……」
女「誰が聞いたって、神聖では無いでしょう?」
女「こんな……私の作った、石では」
神父「……申し訳、ありません」
女「謝らないでください。それに……徳を積んだ神父様の様な方が」
女「増えて下されば。魔除けの石を作る文化が広がれば」
女「人の旅も安全になりましょう。そのお手伝いを出来るだけで」
女「充分、なんです。ですから……良いんです」
神父「女さん……」
女「それに、私には……時間がありません。だから」
女「頑張って、練習しましょう。神父様」ニコ
……
………
…………
側近「サンキュ、盗賊。ほら……これ、金な」
盗賊「こっちこそ。ん……確かに」
側近「で、本ってこれか?」
盗賊「おう、持って帰ってくれ。んで……」
側近「続き、な。やれやれ……あの書庫ひっくり返して探すか」
盗賊「そんなに広いのか?」
側近「狭くは無いが、ぐちゃぐちゃなんだよ、とにかく」
側近「適当に引っ張り出してそこら辺に置きやがるからな」
盗賊「ああ……」
側近「その後で探すの本当に大変なんだから!」
神父「あ……で、でも!」
女「関係無いのかもしれません。ですが……」
神父「……」
女「誰が聞いたって、神聖では無いでしょう?」
女「こんな……私の作った、石では」
神父「……申し訳、ありません」
女「謝らないでください。それに……徳を積んだ神父様の様な方が」
女「増えて下されば。魔除けの石を作る文化が広がれば」
女「人の旅も安全になりましょう。そのお手伝いを出来るだけで」
女「充分、なんです。ですから……良いんです」
神父「女さん……」
女「それに、私には……時間がありません。だから」
女「頑張って、練習しましょう。神父様」ニコ
……
………
…………
側近「サンキュ、盗賊。ほら……これ、金な」
盗賊「こっちこそ。ん……確かに」
側近「で、本ってこれか?」
盗賊「おう、持って帰ってくれ。んで……」
側近「続き、な。やれやれ……あの書庫ひっくり返して探すか」
盗賊「そんなに広いのか?」
側近「狭くは無いが、ぐちゃぐちゃなんだよ、とにかく」
側近「適当に引っ張り出してそこら辺に置きやがるからな」
盗賊「ああ……」
側近「その後で探すの本当に大変なんだから!」
597: 2013/05/23(木) 10:33:28.18 ID:cs/XioQwP
盗賊「まあ、まあ……少女も居るんだろ?」
側近「……手伝ってくれると思う?」
盗賊「え。そ、そりゃ……言えば手伝ってくれるんじゃね?」
側近「そうかなぁ……だったら良いんだけど……」
盗賊「俺も楽しみにしてるからさ。面白かったんだよ、その本」
側近「そうなのか?俺はこの類は興味ねぇからなぁ」
盗賊「勇者がどうやって魔王を倒すのか楽しみだぜ」
側近「魔王様の城にある本とは思えない」
盗賊「……よく考えればそうだな」
側近「で、ぶっちゃけ……どうよ?」
盗賊「ん?何がだ?」
側近「街の様子とか、だよ。見て回って無いからさ」
盗賊「あー。そうだなぁ……相変わらず、機能してるのは娼館ぐらいさ」
盗賊「飲食店とかもまだまだだな。やりたいって奴はいるんだが」
側近「そうか。まあ、移住者とか……本格的に増えないとどうにもならんわな」
盗賊「ある程度の住居ができればな。もう少ししたら、定期便に近い状態で」
盗賊「船を出すって船長は言ってたが」
側近「まあ、何時までも島の人達だけじゃな……しかし、船は?」
盗賊「多分今回、鍛冶師の村から一緒に戻ってくるんじゃないか?」
盗賊「一応、確保して回ってくれてるよ」
側近「そっか。船長の給料やた資材代やら、そっちの調達も大変だよな」
盗賊「ああ……町長の選出もしないといけないしな」
側近「お前で良いんじゃないの?」
盗賊「……俺!?」
側近「え?いや、まじで……」
盗賊「俺は……そういう器じゃネェよ」
側近「……手伝ってくれると思う?」
盗賊「え。そ、そりゃ……言えば手伝ってくれるんじゃね?」
側近「そうかなぁ……だったら良いんだけど……」
盗賊「俺も楽しみにしてるからさ。面白かったんだよ、その本」
側近「そうなのか?俺はこの類は興味ねぇからなぁ」
盗賊「勇者がどうやって魔王を倒すのか楽しみだぜ」
側近「魔王様の城にある本とは思えない」
盗賊「……よく考えればそうだな」
側近「で、ぶっちゃけ……どうよ?」
盗賊「ん?何がだ?」
側近「街の様子とか、だよ。見て回って無いからさ」
盗賊「あー。そうだなぁ……相変わらず、機能してるのは娼館ぐらいさ」
盗賊「飲食店とかもまだまだだな。やりたいって奴はいるんだが」
側近「そうか。まあ、移住者とか……本格的に増えないとどうにもならんわな」
盗賊「ある程度の住居ができればな。もう少ししたら、定期便に近い状態で」
盗賊「船を出すって船長は言ってたが」
側近「まあ、何時までも島の人達だけじゃな……しかし、船は?」
盗賊「多分今回、鍛冶師の村から一緒に戻ってくるんじゃないか?」
盗賊「一応、確保して回ってくれてるよ」
側近「そっか。船長の給料やた資材代やら、そっちの調達も大変だよな」
盗賊「ああ……町長の選出もしないといけないしな」
側近「お前で良いんじゃないの?」
盗賊「……俺!?」
側近「え?いや、まじで……」
盗賊「俺は……そういう器じゃネェよ」
598: 2013/05/23(木) 11:19:54.38 ID:cs/XioQwP
側近「そうかぁ?」
盗賊「身体動かしてなんだかんだしてるのは好きだけどな」
盗賊「でも……そういうのは、違うだろ」
側近「そんなモンかね」
盗賊「それに……」
側近「ん?」
盗賊「…… ……」
側近「盗賊?」
盗賊「あ、いや、何でも無い」
盗賊「もういくんだろ、悪い。結局時間食わしちまったな」
側近「ああ、それは別に……ま、でもそろそろ行くわ」
側近「帰ったらまた報告だとか色々雑務も待ってるしな……はぁ」
盗賊「頑張れよ!」
側近「おう……もう、使用人ちゃんに側近の地位譲って引退しようかな」
盗賊「おいおい……」
側近「冗談だよ……じゃあな!」
シュウン!
盗賊「……今回は、おえ、て聞こえなかったな」
盗賊「……」
盗賊(鍛冶師……元気かな)
……
………
…………
鍛冶師「……大丈夫?」
女剣士「ああ、大丈夫……ありがとう」
鍛冶師「ほら、もう一杯飲みなよ。暖まるよ」
船長「しっかし無茶するなぁ……女の身一つでよ」
女剣士「う、腕には自信があったんだ!」
盗賊「身体動かしてなんだかんだしてるのは好きだけどな」
盗賊「でも……そういうのは、違うだろ」
側近「そんなモンかね」
盗賊「それに……」
側近「ん?」
盗賊「…… ……」
側近「盗賊?」
盗賊「あ、いや、何でも無い」
盗賊「もういくんだろ、悪い。結局時間食わしちまったな」
側近「ああ、それは別に……ま、でもそろそろ行くわ」
側近「帰ったらまた報告だとか色々雑務も待ってるしな……はぁ」
盗賊「頑張れよ!」
側近「おう……もう、使用人ちゃんに側近の地位譲って引退しようかな」
盗賊「おいおい……」
側近「冗談だよ……じゃあな!」
シュウン!
盗賊「……今回は、おえ、て聞こえなかったな」
盗賊「……」
盗賊(鍛冶師……元気かな)
……
………
…………
鍛冶師「……大丈夫?」
女剣士「ああ、大丈夫……ありがとう」
鍛冶師「ほら、もう一杯飲みなよ。暖まるよ」
船長「しっかし無茶するなぁ……女の身一つでよ」
女剣士「う、腕には自信があったんだ!」
599: 2013/05/23(木) 11:42:04.85 ID:cs/XioQwP
船長「……道に迷って海に落ちてる様じゃ」
船長「折角の腕も宝の持ち腐れだと思うけどな」
女剣士「……」
鍛冶師「まあまあ……えっと、女剣士ちゃん、だっけ?」
女剣士「ああ……」
船長「おいおい、話す前にお前も拭けよ鍛冶師」
船長「……飛び込むな、って言ったのにお前も人の話聞かネェし」
鍛冶師「ロープと浮き輪があるとは思わなかったの……」
船長「天下の船長様の船だぜ?全く……」
女剣士「助けてくれて……ありがとう」
船長「お礼なら俺じゃ無くて鍛冶師に言いな」
船長「しかしなぁ……お前さん、この船が通りかからなかったら氏んでたぞ?」
船長「こんな平和な世の中で、態々あの山岳地帯抜けて、どこ行くつもりだったんだ」
女剣士「……鍛冶師の、村」
鍛冶師「え、本当に?」
女剣士「え?」
鍛冶師「僕たちも……この船も、さ。鍛冶師の村に向かう途中だったから」
船長「どこかで船を待つとか出来なかったのか?」
女剣士「急いでいたんだ」
船長「いや、なら尚更……」
女剣士「人を追っていた。北の街から、出て行ったから……」
鍛冶師「君、北の街から来たの!?」
女剣士「あ、ああ……そうだ。だから、真っ直ぐ鍛冶師の村に行けば会えるだろうと思ったんだ」
女剣士「だが、道に迷って……」
船長「北の街から山超えて、鍛冶師の村に向かうのに」
船長「何で崖っぷち歩いて、海に落ちるかね……」
女剣士「だ、だから迷ったんだって!」
船長「折角の腕も宝の持ち腐れだと思うけどな」
女剣士「……」
鍛冶師「まあまあ……えっと、女剣士ちゃん、だっけ?」
女剣士「ああ……」
船長「おいおい、話す前にお前も拭けよ鍛冶師」
船長「……飛び込むな、って言ったのにお前も人の話聞かネェし」
鍛冶師「ロープと浮き輪があるとは思わなかったの……」
船長「天下の船長様の船だぜ?全く……」
女剣士「助けてくれて……ありがとう」
船長「お礼なら俺じゃ無くて鍛冶師に言いな」
船長「しかしなぁ……お前さん、この船が通りかからなかったら氏んでたぞ?」
船長「こんな平和な世の中で、態々あの山岳地帯抜けて、どこ行くつもりだったんだ」
女剣士「……鍛冶師の、村」
鍛冶師「え、本当に?」
女剣士「え?」
鍛冶師「僕たちも……この船も、さ。鍛冶師の村に向かう途中だったから」
船長「どこかで船を待つとか出来なかったのか?」
女剣士「急いでいたんだ」
船長「いや、なら尚更……」
女剣士「人を追っていた。北の街から、出て行ったから……」
鍛冶師「君、北の街から来たの!?」
女剣士「あ、ああ……そうだ。だから、真っ直ぐ鍛冶師の村に行けば会えるだろうと思ったんだ」
女剣士「だが、道に迷って……」
船長「北の街から山超えて、鍛冶師の村に向かうのに」
船長「何で崖っぷち歩いて、海に落ちるかね……」
女剣士「だ、だから迷ったんだって!」
600: 2013/05/23(木) 12:15:50.16 ID:cs/XioQwP
船長「で、その追っかけてる奴ってのは、鍛冶師の村に向かったのか?」
女剣士「……」
船長「おい?」
女剣士「追いつけると思ったんだ!出発してすぐに、私も出たから」
女剣士「糞、道にさえ迷ってなければ……!」
鍛冶師「じゃあ、鍛冶師の村に向かっても会えるかどうか……もう、解らない、って事?」
女剣士「……」
船長「……」
鍛冶師「船長?」
船長「あ?ああ……まさかこのまま放り出して行ったりはしねぇよ」
鍛冶師「だよね、良かった。じゃあ……きっと、探し人とも会えるよ」
鍛冶師「目的地には、一応無事に着ける訳だし」
女剣士「……まだ、滞在してるかどうかは解らない」
船長「え?」
女剣士「多分、立ち寄るだろうってだけで……だ、だから!」
女剣士「本当に、すぐに追いつけると思ったんだよ……!」
鍛冶師「えぇえ……」
船長「と、ともかく、村は目の前だしな。おい、女剣士さんよ
船長「取りあえず、村で一緒に降りろな?」
女剣士「……ありがとう」
鍛冶師「居なかったらどうするのさ」
船長「……俺に聞くな」
女剣士「居なければ……どうにか、する。探すさ」
船長「どうやって、だよ……どこに行くか聞いてないのか?」
女剣士「旅人だと言っていた。だが……鍛冶師の村から、通りそうな所を」
女剣士「追っていけば……」
船長「……」ハァ
船長「まあ、とりあえず探してみるんだな」
船長「んで……まあ、そうだな」
鍛冶師「?」
女剣士「……」
船長「おい?」
女剣士「追いつけると思ったんだ!出発してすぐに、私も出たから」
女剣士「糞、道にさえ迷ってなければ……!」
鍛冶師「じゃあ、鍛冶師の村に向かっても会えるかどうか……もう、解らない、って事?」
女剣士「……」
船長「……」
鍛冶師「船長?」
船長「あ?ああ……まさかこのまま放り出して行ったりはしねぇよ」
鍛冶師「だよね、良かった。じゃあ……きっと、探し人とも会えるよ」
鍛冶師「目的地には、一応無事に着ける訳だし」
女剣士「……まだ、滞在してるかどうかは解らない」
船長「え?」
女剣士「多分、立ち寄るだろうってだけで……だ、だから!」
女剣士「本当に、すぐに追いつけると思ったんだよ……!」
鍛冶師「えぇえ……」
船長「と、ともかく、村は目の前だしな。おい、女剣士さんよ
船長「取りあえず、村で一緒に降りろな?」
女剣士「……ありがとう」
鍛冶師「居なかったらどうするのさ」
船長「……俺に聞くな」
女剣士「居なければ……どうにか、する。探すさ」
船長「どうやって、だよ……どこに行くか聞いてないのか?」
女剣士「旅人だと言っていた。だが……鍛冶師の村から、通りそうな所を」
女剣士「追っていけば……」
船長「……」ハァ
船長「まあ、とりあえず探してみるんだな」
船長「んで……まあ、そうだな」
鍛冶師「?」
601: 2013/05/23(木) 12:20:17.26 ID:cs/XioQwP
船長「俺たちも数日は村に居る。困ったら相談してこい」ハァ
鍛冶師「……船長、優しいね」
船長「こんな阿呆な女、初めて見たわ」
女剣士「わ、悪かったな!」
船長「否定はできねぇだろうが!」
鍛冶師「探してる旅人さん、ってどんな人なの?」
女剣士「え?」
鍛冶師「僕は鍛冶師の村の出身なんだ。色々聞いてみてあげるよ」
女剣士「あ……ほ、本当に!?助かる!」
鍛冶師「……船長、優しいね」
船長「こんな阿呆な女、初めて見たわ」
女剣士「わ、悪かったな!」
船長「否定はできねぇだろうが!」
鍛冶師「探してる旅人さん、ってどんな人なの?」
女剣士「え?」
鍛冶師「僕は鍛冶師の村の出身なんだ。色々聞いてみてあげるよ」
女剣士「あ……ほ、本当に!?助かる!」
606: 2013/05/23(木) 13:36:42.70 ID:cs/XioQwP
鍛冶師「どんな人なんだい?名前とかは解る?」
船長「おい、鍛冶師。俺は操舵室に行くぞ」
鍛冶師「ああ、うん。お願いします」
船長「風邪引かネェようにしろよ!」スタスタ
パタン
女剣士「どんな……強い奴だった。名前は……側近だ」
鍛冶師「側近、ね。強い、って?」
鍛冶師(ん?側近……?どこかで聞いた様な……)
鍛冶師(でもまさか知り合いって事は無いよね、いくら何でも)
女剣士「あ……これ、スープ……ご馳走さま」
鍛冶師「ああ、はいはい。もう良い?」
女剣士「充分暖まった。ありがとう」
女剣士「どう、って……そうだな。凄い魔法の使い手だった」
女剣士「風の魔法と回復魔法が使えて……ああ、そうだ」
女剣士「なんでも、幼い主に仕えてるとか?」
鍛冶師「幼い、主?」
女剣士「確か。先代から仕えてたとか言ってたかな」
鍛冶師「ふうん……結構年配の人?」
女剣士「いや、そんな事は無い。鍛冶師と……変わらないくらいかな」
鍛冶師「って事は……結構、高貴な人に仕えてる、のかな?」
鍛冶師「先代から、てのもそれっぽいし」
女剣士「ああ、私もそうじゃ無いかと思う。側近本人も……身分が高いのかも」
鍛冶師「お忍びの旅、だったとか?」
女剣士「それも否定は出来ないな。あいつは言葉を濁してたし」
鍛冶師「うーん、それじゃ側近って名前も偽名の可能性があるよね」
女剣士「ああ……」
船長「おい、鍛冶師。俺は操舵室に行くぞ」
鍛冶師「ああ、うん。お願いします」
船長「風邪引かネェようにしろよ!」スタスタ
パタン
女剣士「どんな……強い奴だった。名前は……側近だ」
鍛冶師「側近、ね。強い、って?」
鍛冶師(ん?側近……?どこかで聞いた様な……)
鍛冶師(でもまさか知り合いって事は無いよね、いくら何でも)
女剣士「あ……これ、スープ……ご馳走さま」
鍛冶師「ああ、はいはい。もう良い?」
女剣士「充分暖まった。ありがとう」
女剣士「どう、って……そうだな。凄い魔法の使い手だった」
女剣士「風の魔法と回復魔法が使えて……ああ、そうだ」
女剣士「なんでも、幼い主に仕えてるとか?」
鍛冶師「幼い、主?」
女剣士「確か。先代から仕えてたとか言ってたかな」
鍛冶師「ふうん……結構年配の人?」
女剣士「いや、そんな事は無い。鍛冶師と……変わらないくらいかな」
鍛冶師「って事は……結構、高貴な人に仕えてる、のかな?」
鍛冶師「先代から、てのもそれっぽいし」
女剣士「ああ、私もそうじゃ無いかと思う。側近本人も……身分が高いのかも」
鍛冶師「お忍びの旅、だったとか?」
女剣士「それも否定は出来ないな。あいつは言葉を濁してたし」
鍛冶師「うーん、それじゃ側近って名前も偽名の可能性があるよね」
女剣士「ああ……」
607: 2013/05/23(木) 13:40:56.99 ID:cs/XioQwP
鍛冶師「女剣士ちゃんは……何でまた、そんな相手を追いかけてるの?」
女剣士「あいつは……側近は、街を救ってくれた。私も」
女剣士「私は……子供だ。色々驕ってたし、我が儘な事ばかり考えてた」
女剣士「でも、あいつは……」
鍛冶師「……」
女剣士「怒りも、否定も、慰めも何もしなかった。でも、助けてくれたんだ」
女剣士「一歩、踏み出す勇気……みたいなの、貰った」
女剣士「私が勝手に、そんな気になっただけなのは解ってるけどさ」
鍛冶師「……好きになっちゃった、んだ?」
女剣士「な、え、ち、ちが……!」
鍛冶師「あれ、違った?」
女剣士「解らない。解らない、けど……もう一回、会いたい」
女剣士「側近の旅に、ついて行きたいんだ」
鍛冶師「成る程ねぇ」
女剣士「腕に自信はあったんだ。あったんだけど……!」
女剣士「あいつの魔法の腕には遠く及ばない。自信……挫かれた」
女剣士「足手まといになるのも解ってるんだ!でも……!」
鍛冶師「ああ、落ち着いて。落ち着いて、ね?」
鍛冶師「賛成して貰えるかどうかはわかんないけどさ」
鍛冶師「でも、とりあえず会いたい、んでしょ?」
女剣士「……うん」
女剣士「あいつは……側近は、街を救ってくれた。私も」
女剣士「私は……子供だ。色々驕ってたし、我が儘な事ばかり考えてた」
女剣士「でも、あいつは……」
鍛冶師「……」
女剣士「怒りも、否定も、慰めも何もしなかった。でも、助けてくれたんだ」
女剣士「一歩、踏み出す勇気……みたいなの、貰った」
女剣士「私が勝手に、そんな気になっただけなのは解ってるけどさ」
鍛冶師「……好きになっちゃった、んだ?」
女剣士「な、え、ち、ちが……!」
鍛冶師「あれ、違った?」
女剣士「解らない。解らない、けど……もう一回、会いたい」
女剣士「側近の旅に、ついて行きたいんだ」
鍛冶師「成る程ねぇ」
女剣士「腕に自信はあったんだ。あったんだけど……!」
女剣士「あいつの魔法の腕には遠く及ばない。自信……挫かれた」
女剣士「足手まといになるのも解ってるんだ!でも……!」
鍛冶師「ああ、落ち着いて。落ち着いて、ね?」
鍛冶師「賛成して貰えるかどうかはわかんないけどさ」
鍛冶師「でも、とりあえず会いたい、んでしょ?」
女剣士「……うん」
616: 2013/05/23(木) 23:29:55.18 ID:cs/XioQwP
鍛治師「なら、とりあえず会って、そっから考えれば良いよ。反対されたら説得するとか、諦めるとか、さ」
女剣士「私は諦めたくは……!」
鍛治師「いやいや、ほら、考え様もやり様も今考えても仕方ないでしょ、て事」
鍛治師「今はとにかく、会える方法……彼を見つける方法、考えようよ」
鍛治師「出来る事なら協力するからさ」
女剣士「……何故?」
鍛治師「え?」
女剣士「何故……そこまで言ってくれる?」
鍛治師「んー……僕も好きな人がいるから、かなあ」
女剣士「それだけ、で?」
鍛治師「まあ、そうかな」
鍛治師「だって、やらずに諦めるのは嫌でしょ?」
女剣士「私は諦めたくは……!」
鍛治師「いやいや、ほら、考え様もやり様も今考えても仕方ないでしょ、て事」
鍛治師「今はとにかく、会える方法……彼を見つける方法、考えようよ」
鍛治師「出来る事なら協力するからさ」
女剣士「……何故?」
鍛治師「え?」
女剣士「何故……そこまで言ってくれる?」
鍛治師「んー……僕も好きな人がいるから、かなあ」
女剣士「それだけ、で?」
鍛治師「まあ、そうかな」
鍛治師「だって、やらずに諦めるのは嫌でしょ?」
618: 2013/05/23(木) 23:44:32.14 ID:cs/XioQwP
女剣士「それは、まあ」
鍛治師「うん。じゃあまず君がする事は、眠る事。村が目の前とは言っても、夜明け位まではかかるし」
鍛治師「体は、もう温まった?」
女剣士「あ、ああ……それは大丈夫」
鍛治師「良し。じゃあ横になって休むと良いよ。濡れて体力も使っただろうし……怖かったろ」
鍛治師「僕も自分の部屋へ戻るから。何かあれば船長に言えば良い。あんな感じだけど、優しい人だから」
女剣士「うん……ありがとう」
鍛治師「どう致しまして。じゃあ……おやすみ」スタスタ……パタン
女剣士「……」コロン
女剣士(私……生きてる)
女剣士(まだ……諦めなくて良い。また、会えるかもって、期待して良い)
女剣士(側近……!)
鍛治師「うん。じゃあまず君がする事は、眠る事。村が目の前とは言っても、夜明け位まではかかるし」
鍛治師「体は、もう温まった?」
女剣士「あ、ああ……それは大丈夫」
鍛治師「良し。じゃあ横になって休むと良いよ。濡れて体力も使っただろうし……怖かったろ」
鍛治師「僕も自分の部屋へ戻るから。何かあれば船長に言えば良い。あんな感じだけど、優しい人だから」
女剣士「うん……ありがとう」
鍛治師「どう致しまして。じゃあ……おやすみ」スタスタ……パタン
女剣士「……」コロン
女剣士(私……生きてる)
女剣士(まだ……諦めなくて良い。また、会えるかもって、期待して良い)
女剣士(側近……!)
619: 2013/05/23(木) 23:45:25.50 ID:cs/XioQwP
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