628: 2013/05/25(土) 08:46:41.70 ID:4sKd9DBOP
おはよう!
前回:魔王「私が勇者になる……だと?」【5】
前回:魔王「私が勇者になる……だと?」【5】
629: 2013/05/25(土) 09:38:23.37 ID:4sKd9DBOP
……
………
…………
コンコン
鍛冶師「船長?」カチャ
船長「おう、なんだよお前も休めよ、鍛冶師」
鍛冶師「うん……あのさ」
船長「ん?」
鍛冶師「村にはどれぐらい滞在するんだ?」
船長「? 予定通りのつもりだが」
鍛冶師「そうか……」
船長「……なぁに吹き込まれた?」
鍛冶師「え?」
船長「女剣士に、だよ」
鍛冶師「そんなんじゃないよ。人捜しする時間あるかな、って」
船長「そいつは本当に鍛冶師の村に居るのか?」
鍛冶師「可能性はゼロじゃないでしょ」
船長「そりゃそうだが。お前が入れ込む理由は?」
鍛冶師「別に入れ込んでなんか居ないよ?」
船長「海で拾った阿呆にそこまでしてやる義理もネェだろ?」
船長「村に連れて行ってやるだけでも充分だろうよ」
鍛冶師「僕は荷物さえ積み込んだら後はすること無いからさ」
………
…………
コンコン
鍛冶師「船長?」カチャ
船長「おう、なんだよお前も休めよ、鍛冶師」
鍛冶師「うん……あのさ」
船長「ん?」
鍛冶師「村にはどれぐらい滞在するんだ?」
船長「? 予定通りのつもりだが」
鍛冶師「そうか……」
船長「……なぁに吹き込まれた?」
鍛冶師「え?」
船長「女剣士に、だよ」
鍛冶師「そんなんじゃないよ。人捜しする時間あるかな、って」
船長「そいつは本当に鍛冶師の村に居るのか?」
鍛冶師「可能性はゼロじゃないでしょ」
船長「そりゃそうだが。お前が入れ込む理由は?」
鍛冶師「別に入れ込んでなんか居ないよ?」
船長「海で拾った阿呆にそこまでしてやる義理もネェだろ?」
船長「村に連れて行ってやるだけでも充分だろうよ」
鍛冶師「僕は荷物さえ積み込んだら後はすること無いからさ」
630: 2013/05/25(土) 09:51:19.42 ID:4sKd9DBOP
船長「……乗り遅れたら置いてくぜ?」
鍛冶師「解ってるよ」
船長「興味があるのか?」
鍛冶師「え?」
船長「あの女にだよ」
鍛冶師「違うよ……そんなんじゃない」
船長「ま、何でも良いけどよ……面倒事起こさないでくれよ」
鍛冶師「大丈夫だってば。船長だって困れば相談しろって言ってたじゃないか」
船長「金さえ払って貰えるのなら、そりゃお客様だからな」
鍛冶師「……持ってると思うの?」
船長「無いだろうな」
鍛冶師「船長!」
船長「あのなぁ、さっきも言っただろ?何の義理があるんだよ」
鍛冶師「そりゃ、そうだけど……」
船長「惚れたのか?」
鍛冶師「は!?」
船長「じゃ無きゃ何でそこまで、って思って不思議じゃないだろ、て」
鍛冶師「……」
船長「おいおいおい、まじか!?」
鍛冶師「違う違う!僕は、と……!」
船長「と?」
鍛冶師「……!」
船長「まあ、何でも良いよ。本当に面倒事さえ起こさネェなら」ハァ
鍛冶師「……きょ、興味があるとすれば、彼女の探し人の方だ」
船長「あン?」
鍛冶師「解ってるよ」
船長「興味があるのか?」
鍛冶師「え?」
船長「あの女にだよ」
鍛冶師「違うよ……そんなんじゃない」
船長「ま、何でも良いけどよ……面倒事起こさないでくれよ」
鍛冶師「大丈夫だってば。船長だって困れば相談しろって言ってたじゃないか」
船長「金さえ払って貰えるのなら、そりゃお客様だからな」
鍛冶師「……持ってると思うの?」
船長「無いだろうな」
鍛冶師「船長!」
船長「あのなぁ、さっきも言っただろ?何の義理があるんだよ」
鍛冶師「そりゃ、そうだけど……」
船長「惚れたのか?」
鍛冶師「は!?」
船長「じゃ無きゃ何でそこまで、って思って不思議じゃないだろ、て」
鍛冶師「……」
船長「おいおいおい、まじか!?」
鍛冶師「違う違う!僕は、と……!」
船長「と?」
鍛冶師「……!」
船長「まあ、何でも良いよ。本当に面倒事さえ起こさネェなら」ハァ
鍛冶師「……きょ、興味があるとすれば、彼女の探し人の方だ」
船長「あン?」
631: 2013/05/25(土) 10:06:06.49 ID:4sKd9DBOP
鍛冶師「幼い主に仕えている人だと、彼女が言ってた」
船長「その探し人が、か?」
鍛冶師「うん。先代の頃から何だって。その探し人自身も、高貴な身分なのかもって」
船長「はあ……」
鍛冶師「はあ、て」
船長「いや、だって、それが何だ、ってんだ?」
鍛冶師「もしその幼い主とやらが、代々続く家とかの人だったら……」
鍛冶師「何か、面白い話が聞けるかも知れないじゃないか」
船長「魔法剣、の話か」
鍛冶師「うん」
船長「……知ってるかどうかも解らんだろ。しかもそうであったって」
鍛冶師「教えてくれるかもわからない、て言いたいんだろ?」
鍛冶師「解ってる、けど」
船長「お前さんは、本当に……」
鍛冶師「何だよ」
船長「いや、顔に似合わず行動的だなと思ってな」
鍛冶師「か、顔に似合わずってのはどういう意味だ!」
船長「虫も殺せません、ってな優男風」
鍛冶師「……あのね」
船長「しかし、鍛冶師の村に居なかったらお手上げだろうよ?」
鍛冶師「以前に出た船の行き先とか解らないかな?」
船長「どうだかな。まさかお前、ついて行く気か!?」
鍛冶師「まさか!そんな事はしないよ!」
鍛冶師「会える可能性が見つかれば彼女も喜ぶだろ?」
船長「まあ、そりゃそうだろうけど……」
鍛冶師「彼女、その探し人の事が好きみたいだから、さ」
鍛冶師「応援してあげたいじゃない?」
船長「そういうモンかぁ?俺ぁ人の色恋にゃ興味無いけどなぁ……」
船長「その探し人が、か?」
鍛冶師「うん。先代の頃から何だって。その探し人自身も、高貴な身分なのかもって」
船長「はあ……」
鍛冶師「はあ、て」
船長「いや、だって、それが何だ、ってんだ?」
鍛冶師「もしその幼い主とやらが、代々続く家とかの人だったら……」
鍛冶師「何か、面白い話が聞けるかも知れないじゃないか」
船長「魔法剣、の話か」
鍛冶師「うん」
船長「……知ってるかどうかも解らんだろ。しかもそうであったって」
鍛冶師「教えてくれるかもわからない、て言いたいんだろ?」
鍛冶師「解ってる、けど」
船長「お前さんは、本当に……」
鍛冶師「何だよ」
船長「いや、顔に似合わず行動的だなと思ってな」
鍛冶師「か、顔に似合わずってのはどういう意味だ!」
船長「虫も殺せません、ってな優男風」
鍛冶師「……あのね」
船長「しかし、鍛冶師の村に居なかったらお手上げだろうよ?」
鍛冶師「以前に出た船の行き先とか解らないかな?」
船長「どうだかな。まさかお前、ついて行く気か!?」
鍛冶師「まさか!そんな事はしないよ!」
鍛冶師「会える可能性が見つかれば彼女も喜ぶだろ?」
船長「まあ、そりゃそうだろうけど……」
鍛冶師「彼女、その探し人の事が好きみたいだから、さ」
鍛冶師「応援してあげたいじゃない?」
船長「そういうモンかぁ?俺ぁ人の色恋にゃ興味無いけどなぁ……」
640: 2013/05/26(日) 08:29:02.10 ID:4nd0HmOqP
鍛冶師「船長は、好きな人居ないの?」
船長「……こんなおっさんに何言ってんだよ、お前は」
鍛冶師「歳は関係無いでしょ」
船長「俺より自分の心配してろ。お年頃ってのはお前ぐらいの年齢の事いうんじゃネェのか?」
鍛冶師「僕? ……僕は良いよ」
船長「何だ、お前恋人居るのか?」
鍛冶師「……居ないよ」
船長「? じゃあ……」
鍛冶師「僕は……」
ピィイ……コツン、コツン
船長「ん?」
鍛冶師「え、何?何の音……窓に何かぶつかってるのか?」
船長(小さい影……?鳥?魔王か?)スタスタ。カチャ
ピィイ……パタパタ
鍛冶師「綺麗な鳥だね。羽が緑だ……あ。足に何か……?」
船長(手紙? ……魔王じゃ無い、のか?)
船長(魔王の鳥は真っ黒だったよな)
船長「よ、っと。ちょっと我慢しろよ」
船長「鍛冶師、悪いが……グラスに水汲んでこいつに飲ましてやってくれないか」
鍛冶師「ん?ああ、良いけど……おいで?」
ピピピ……
船長「……こんなおっさんに何言ってんだよ、お前は」
鍛冶師「歳は関係無いでしょ」
船長「俺より自分の心配してろ。お年頃ってのはお前ぐらいの年齢の事いうんじゃネェのか?」
鍛冶師「僕? ……僕は良いよ」
船長「何だ、お前恋人居るのか?」
鍛冶師「……居ないよ」
船長「? じゃあ……」
鍛冶師「僕は……」
ピィイ……コツン、コツン
船長「ん?」
鍛冶師「え、何?何の音……窓に何かぶつかってるのか?」
船長(小さい影……?鳥?魔王か?)スタスタ。カチャ
ピィイ……パタパタ
鍛冶師「綺麗な鳥だね。羽が緑だ……あ。足に何か……?」
船長(手紙? ……魔王じゃ無い、のか?)
船長(魔王の鳥は真っ黒だったよな)
船長「よ、っと。ちょっと我慢しろよ」
船長「鍛冶師、悪いが……グラスに水汲んでこいつに飲ましてやってくれないか」
鍛冶師「ん?ああ、良いけど……おいで?」
ピピピ……
641: 2013/05/26(日) 08:41:38.05 ID:4nd0HmOqP
船長(違うな……魔王じゃ無い)
船長(魔王だったら、手紙なんて面倒な事……否、周囲に配慮して、か?)
船長(しかし、緑の羽、でのは……)カサ
『魔王様が目を覚ましません。もし側近様と一緒にいらっしゃるのなら』
『すぐに戻る様に伝えてください。他言無用で。 使用人』
船長「!?」
鍛冶師「どうしたの?せんちょ……うわ、つつかないでよくすぐったい」フフ
船長「……知り合いからのちょっとした連絡だ。気にするな」
鍛冶師「え?へえ……伝書鳩みたいな物?」
鍛冶師「でも凄い優秀だね。船なのに……」
船長「そうだな」スタスタ
船長(俺が魔王の城に向かっても仕方ない……しかし)カキカキ
船長(何があった?魔王……)スタスタ
鍛冶師「ん、手紙、送るの?」
船長「ああ、ちょっと押さえててくれ……良し」
船長「返事、ちゃんと届けてくれよ?」
ピィ……パタパタ……
鍛冶師「良く慣れてるなあ」
船長(魔王だったら、手紙なんて面倒な事……否、周囲に配慮して、か?)
船長(しかし、緑の羽、でのは……)カサ
『魔王様が目を覚ましません。もし側近様と一緒にいらっしゃるのなら』
『すぐに戻る様に伝えてください。他言無用で。 使用人』
船長「!?」
鍛冶師「どうしたの?せんちょ……うわ、つつかないでよくすぐったい」フフ
船長「……知り合いからのちょっとした連絡だ。気にするな」
鍛冶師「え?へえ……伝書鳩みたいな物?」
鍛冶師「でも凄い優秀だね。船なのに……」
船長「そうだな」スタスタ
船長(俺が魔王の城に向かっても仕方ない……しかし)カキカキ
船長(何があった?魔王……)スタスタ
鍛冶師「ん、手紙、送るの?」
船長「ああ、ちょっと押さえててくれ……良し」
船長「返事、ちゃんと届けてくれよ?」
ピィ……パタパタ……
鍛冶師「良く慣れてるなあ」
642: 2013/05/26(日) 09:13:19.95 ID:4nd0HmOqP
船長(側近が言ってたな。髪がどうとか……)
鍛冶師「船長?」
船長「ん?ああ……お前も休んでおけよ?濡れてんだし」
鍛冶師「ああ、うん」
船長「眠れないのか?」
鍛冶師「いや、そう言う訳じゃないけど」
鍛冶師「……ま、休むよ。着いたら着いたで、やる事もあるし」
船長「おう。朝には着くだろ」
鍛冶師「少しは休めるね……船長は大丈夫?」
船長「海の男は強ェんだよ。心配すんな」
鍛冶師「ん。お邪魔しました。じゃあ、おやすみ」スタスタ……パタン
船長「おう」
船長(……)
鍛冶師「船長?」
船長「ん?ああ……お前も休んでおけよ?濡れてんだし」
鍛冶師「ああ、うん」
船長「眠れないのか?」
鍛冶師「いや、そう言う訳じゃないけど」
鍛冶師「……ま、休むよ。着いたら着いたで、やる事もあるし」
船長「おう。朝には着くだろ」
鍛冶師「少しは休めるね……船長は大丈夫?」
船長「海の男は強ェんだよ。心配すんな」
鍛冶師「ん。お邪魔しました。じゃあ、おやすみ」スタスタ……パタン
船長「おう」
船長(……)
657: 2013/05/27(月) 09:48:20.15 ID:avaBwAYiP
船長(魔王が、目を覚まさない?)
船長(……何が、あった)
バタバタバタ、バタン!
海賊「船長!魔物が!」
船長「……! 良し、手の空いてる奴、甲板に集めろ!」
……
………
…………
シュウン、スタッ
……オエ
側近「立てたのは良いけど、うぅ……ん?」キョロキョロ
側近「……」
側近「ちょっと見ない内に、庭が立派になってる!?」
側近(姫様、かな。つか、それしかないわな)スタスタ……キィ
パタパタパタ……
使い魔「あ、側近様!」
側近「おう、帰ったぜ……て、どうしたんだよ、走ってどこ行くんだ?」
使い魔「丁度良かった!お早く……!」グイ
側近「え、あ?な、何!?」
使い魔「早く、魔王様のお部屋へ!」
側近「! ……何があった!?」
使い魔「魔王様が……目を覚まさないのです!」
船長(……何が、あった)
バタバタバタ、バタン!
海賊「船長!魔物が!」
船長「……! 良し、手の空いてる奴、甲板に集めろ!」
……
………
…………
シュウン、スタッ
……オエ
側近「立てたのは良いけど、うぅ……ん?」キョロキョロ
側近「……」
側近「ちょっと見ない内に、庭が立派になってる!?」
側近(姫様、かな。つか、それしかないわな)スタスタ……キィ
パタパタパタ……
使い魔「あ、側近様!」
側近「おう、帰ったぜ……て、どうしたんだよ、走ってどこ行くんだ?」
使い魔「丁度良かった!お早く……!」グイ
側近「え、あ?な、何!?」
使い魔「早く、魔王様のお部屋へ!」
側近「! ……何があった!?」
使い魔「魔王様が……目を覚まさないのです!」
658: 2013/05/27(月) 10:08:32.89 ID:avaBwAYiP
側近「魔王様が……え、何!?」
使い魔「とにかく、お早く!」バタバタ
バタン!
姫「側近!戻ったのね!」
使用人「側近様!」
側近「お、おいおい……どういう事だ!?」
姫「……どこかへ行って、帰ってきた途端、倒れたのよ」
姫「それから、目を覚まさない」
側近「魔王様は……自分の部屋か?」
使用人「はい。姫様を近づける訳には……」
側近「え?」
姫「見てくれば解るわ……」フゥ
側近「……」キョロ
側近「うわ!」
使用人「……そうして置かないと、姫様のご気分が」
側近「何だよこれ、癒やしの石?」
側近「こ、こんな扉の所にばらまいてんの!?」
使用人「城中の物を集めたのです。それでも……いくつか、もろい物は壊れました」
側近「……」ヒョイ
側近(透明……に近い筈だったのに……いくつか、紫に染まってる)
側近(扉の向こうから……魔王様の魔の気が流れ出してる、て事、か?)
使い魔「とにかく、お早く!」バタバタ
バタン!
姫「側近!戻ったのね!」
使用人「側近様!」
側近「お、おいおい……どういう事だ!?」
姫「……どこかへ行って、帰ってきた途端、倒れたのよ」
姫「それから、目を覚まさない」
側近「魔王様は……自分の部屋か?」
使用人「はい。姫様を近づける訳には……」
側近「え?」
姫「見てくれば解るわ……」フゥ
側近「……」キョロ
側近「うわ!」
使用人「……そうして置かないと、姫様のご気分が」
側近「何だよこれ、癒やしの石?」
側近「こ、こんな扉の所にばらまいてんの!?」
使用人「城中の物を集めたのです。それでも……いくつか、もろい物は壊れました」
側近「……」ヒョイ
側近(透明……に近い筈だったのに……いくつか、紫に染まってる)
側近(扉の向こうから……魔王様の魔の気が流れ出してる、て事、か?)
659: 2013/05/27(月) 10:16:40.96 ID:avaBwAYiP
側近「しかし、この部屋は……」
使用人「……魔王様の自室から一番遠いこの部屋でも、これなのです」
側近「じゃあ……今は姫様はここから動いて無いんだな?」
姫「ええ……」
側近「……あ!」
姫「え?」
側近「姫様、取りあえずこれ持っとけ」ポイ
姫「え、きゃ!」ガシ
姫「……! これ……」
側近「説明は後だ。取りあえず俺は魔王様を見てくる」
側近「使用人ちゃん、姫様の傍を離れるな。使い魔、着いて来い」
使い魔「い、いえ、あの……!」
側近「?」
使用人「……他の使い魔の何人かは、飲み込まれました」
側近「飲み込まれた?」
使用人「魔王様の魔の気に、です。当てられて暴走する者も……」
側近「な……!?」
使用人「暴走まで行かなかった者は……力を吸い取られミイラの様に」
側近「……後何人、残ってる。お前だけか?」
使い魔「い、いえ……食堂等に何人かは」
側近「……暴走した奴はどうした」
使用人「私が……片付けました」
側近「…… ……そう、か」
姫「……」
側近「解った。俺が行ってくる」
使用人「はい。私は……近づけません」
側近「使用人ちゃんも!?」
使用人「……魔王様の自室から一番遠いこの部屋でも、これなのです」
側近「じゃあ……今は姫様はここから動いて無いんだな?」
姫「ええ……」
側近「……あ!」
姫「え?」
側近「姫様、取りあえずこれ持っとけ」ポイ
姫「え、きゃ!」ガシ
姫「……! これ……」
側近「説明は後だ。取りあえず俺は魔王様を見てくる」
側近「使用人ちゃん、姫様の傍を離れるな。使い魔、着いて来い」
使い魔「い、いえ、あの……!」
側近「?」
使用人「……他の使い魔の何人かは、飲み込まれました」
側近「飲み込まれた?」
使用人「魔王様の魔の気に、です。当てられて暴走する者も……」
側近「な……!?」
使用人「暴走まで行かなかった者は……力を吸い取られミイラの様に」
側近「……後何人、残ってる。お前だけか?」
使い魔「い、いえ……食堂等に何人かは」
側近「……暴走した奴はどうした」
使用人「私が……片付けました」
側近「…… ……そう、か」
姫「……」
側近「解った。俺が行ってくる」
使用人「はい。私は……近づけません」
側近「使用人ちゃんも!?」
660: 2013/05/27(月) 10:25:37.61 ID:avaBwAYiP
姫「……気を、つけて」
側近「心配すんな。大丈夫だ」スタスタ
パタン
姫「……」
使用人「使い魔」
使い魔「は、はい!」
使用人「残りの者と手分けして癒やしの石の残りが無いか探してきてください」
使用人「もし……紫に染まっている物があれば場所を後で教えてください」
使用人「……くれぐれも手は出さない様に。私か側近様が、後で……どうにかします」
使い魔「わ、わかりました」パタパタ……パタン
使用人「姫様……大丈夫ですか」
姫「ええ……これ、見て」コロン
使用人「先ほど側近様が置いて行かれた石ですか……癒やしの石?にしては……」
使用人「随分、大きいですね」
姫「癒やしの力は感じないわ」
使用人「え?」
姫「……随分、清浄な気。癒やしの石に似ているけれど……」
使用人「魔除けの、石?」
姫「え? ……あ!女、の?でも……」
姫「この石は……水の力よ」
使用人「……彼女の加護は水では無かった筈、ですよね」
姫「ええ。この石の作り主は女じゃない」
姫「誰か……別の人が?」
使用人「……」
姫「このペンダント程では無いけれど……持っていると、随分心地が良いわ」
使用人「女さんで無いなら、誰が……」
姫「後で側近に聞けば解るわ」
姫「……無事に、戻れば」
使用人「姫様!」
姫「……」
側近「心配すんな。大丈夫だ」スタスタ
パタン
姫「……」
使用人「使い魔」
使い魔「は、はい!」
使用人「残りの者と手分けして癒やしの石の残りが無いか探してきてください」
使用人「もし……紫に染まっている物があれば場所を後で教えてください」
使用人「……くれぐれも手は出さない様に。私か側近様が、後で……どうにかします」
使い魔「わ、わかりました」パタパタ……パタン
使用人「姫様……大丈夫ですか」
姫「ええ……これ、見て」コロン
使用人「先ほど側近様が置いて行かれた石ですか……癒やしの石?にしては……」
使用人「随分、大きいですね」
姫「癒やしの力は感じないわ」
使用人「え?」
姫「……随分、清浄な気。癒やしの石に似ているけれど……」
使用人「魔除けの、石?」
姫「え? ……あ!女、の?でも……」
姫「この石は……水の力よ」
使用人「……彼女の加護は水では無かった筈、ですよね」
姫「ええ。この石の作り主は女じゃない」
姫「誰か……別の人が?」
使用人「……」
姫「このペンダント程では無いけれど……持っていると、随分心地が良いわ」
使用人「女さんで無いなら、誰が……」
姫「後で側近に聞けば解るわ」
姫「……無事に、戻れば」
使用人「姫様!」
姫「……」
661: 2013/05/27(月) 10:52:19.37 ID:avaBwAYiP
使用人「大丈夫です……側近様、ですから」
姫「でも……貴女でも無理なんでしょう」
使用人「お忘れですか?側近様は……魔王様の目をお持ちです」
姫「だから、よ」
使用人「え?」
姫「側近まで、あの魔力に引きずられたら……!」
使用人「……だからこそ、大丈夫かもしれません」
姫「…… ……そう、ね。そうも考えられる、わね」
使用人「もしもの時は、ちゃんと……お守りします」
使用人「転移石も準備してあります。だから……大丈夫です」
姫「……」
使用人「貴女は魔王様の奥様です。守れと、言われています」
使用人「ご心配なさらず。命に代えても、お守りします」
姫「使用人……」
使用人「魔王様の命令は絶対なのです。姫様」
使用人「だから……大丈夫です」
……
………
…………
側近(近づけば近づく程……魔の気が濃くなっていく)
側近(魔王様が目を覚まさない?)
側近(倒れた、侭)
側近(……心話が通じなかったのは、そういう事か?)
側近(しかし、こんな事今まで……!)スタスタ……ピタ
コンコン
側近(……)
姫「でも……貴女でも無理なんでしょう」
使用人「お忘れですか?側近様は……魔王様の目をお持ちです」
姫「だから、よ」
使用人「え?」
姫「側近まで、あの魔力に引きずられたら……!」
使用人「……だからこそ、大丈夫かもしれません」
姫「…… ……そう、ね。そうも考えられる、わね」
使用人「もしもの時は、ちゃんと……お守りします」
使用人「転移石も準備してあります。だから……大丈夫です」
姫「……」
使用人「貴女は魔王様の奥様です。守れと、言われています」
使用人「ご心配なさらず。命に代えても、お守りします」
姫「使用人……」
使用人「魔王様の命令は絶対なのです。姫様」
使用人「だから……大丈夫です」
……
………
…………
側近(近づけば近づく程……魔の気が濃くなっていく)
側近(魔王様が目を覚まさない?)
側近(倒れた、侭)
側近(……心話が通じなかったのは、そういう事か?)
側近(しかし、こんな事今まで……!)スタスタ……ピタ
コンコン
側近(……)
662: 2013/05/27(月) 11:12:27.53 ID:avaBwAYiP
カチャ
側近「魔王様……うぅッ」バタン!
魔王「……」
側近(魔の気が充満してる……のか……ッ)スタスタ
側近「魔王様?」
魔王「……」
側近(……確かに、凄い魔力が溢れてる……が)
側近(特に……)
魔王「う、ぅ……」
側近「魔王様?」
魔王「……」スゥ
側近(何に反応した……?)キョロキョロ
側近「!? ……なん、で……!」タタ……ッ
側近(魔王の剣……なんで、こんなぼろぼろなんだ!?)
側近(亀裂だらけ、じゃないか……何故……!?)
魔王「う、ゥ……ぅ」
側近「魔王さ……おっと!」
側近(危ない危ない、剣を倒す訳には……!)ガシ
側近「……!?」ドクン
側近「ぅ、うわあああああああッ!?」
魔王「う、ア……ッ」
側近(なん、だこれ……!魔力、が持ってかれ……)パッ ……ガシャン!
側近「魔王様……うぅッ」バタン!
魔王「……」
側近(魔の気が充満してる……のか……ッ)スタスタ
側近「魔王様?」
魔王「……」
側近(……確かに、凄い魔力が溢れてる……が)
側近(特に……)
魔王「う、ぅ……」
側近「魔王様?」
魔王「……」スゥ
側近(何に反応した……?)キョロキョロ
側近「!? ……なん、で……!」タタ……ッ
側近(魔王の剣……なんで、こんなぼろぼろなんだ!?)
側近(亀裂だらけ、じゃないか……何故……!?)
魔王「う、ゥ……ぅ」
側近「魔王さ……おっと!」
側近(危ない危ない、剣を倒す訳には……!)ガシ
側近「……!?」ドクン
側近「ぅ、うわあああああああッ!?」
魔王「う、ア……ッ」
側近(なん、だこれ……!魔力、が持ってかれ……)パッ ……ガシャン!
663: 2013/05/27(月) 11:39:13.12 ID:avaBwAYiP
魔王「……側近?」パチ
側近「あ、 ……ァ、 ……ま、魔王、様……?」
魔王「人の部屋で何……暴れてるんだ、お前……」
側近「……あ、あ……わ、るい……ッ」
側近「大丈夫、なのか、お前……ッ ウゥ……ッ」クラクラ
魔王「……大丈夫かと聞かれるべきはお前だと思うが」
側近「気にするな。平気、だ……」
魔王「私は……どれぐらい眠っていた?」
側近「さあな。俺はさっき戻ったばかりだ」
魔王「……そうか」ムク
側近「起きるな」
魔王「そうも言ってられんだろう……見たんだろう」ス……
側近「魔王の剣か……どういうことだ、これ」
魔王「私が聞きたい」
側近「……」
魔王「……楽になった」
側近「え?」
魔王「急に、気分が……な。お前が戻ったから、か」
側近「え?え?」
魔王「……否、良い。姫は?」
側近「ここから一番遠い部屋に居る。使用人ちゃんも一緒だ」
魔王「……」
側近「話すの、辛いんだろう。もう少しゆっくり……」
魔王「否、大丈夫だ……姫と使用人を呼んでくれ。話したい事がある」
側近「あ、 ……ァ、 ……ま、魔王、様……?」
魔王「人の部屋で何……暴れてるんだ、お前……」
側近「……あ、あ……わ、るい……ッ」
側近「大丈夫、なのか、お前……ッ ウゥ……ッ」クラクラ
魔王「……大丈夫かと聞かれるべきはお前だと思うが」
側近「気にするな。平気、だ……」
魔王「私は……どれぐらい眠っていた?」
側近「さあな。俺はさっき戻ったばかりだ」
魔王「……そうか」ムク
側近「起きるな」
魔王「そうも言ってられんだろう……見たんだろう」ス……
側近「魔王の剣か……どういうことだ、これ」
魔王「私が聞きたい」
側近「……」
魔王「……楽になった」
側近「え?」
魔王「急に、気分が……な。お前が戻ったから、か」
側近「え?え?」
魔王「……否、良い。姫は?」
側近「ここから一番遠い部屋に居る。使用人ちゃんも一緒だ」
魔王「……」
側近「話すの、辛いんだろう。もう少しゆっくり……」
魔王「否、大丈夫だ……姫と使用人を呼んでくれ。話したい事がある」
665: 2013/05/27(月) 11:57:02.08 ID:avaBwAYiP
側近「阿呆、明日にしろ、明日に!」
魔王「何故だ」
側近「お前ね、この部屋に姫様呼ぶ気か?」
魔王「む……」
側近「自覚しろ。今のお前は……魔力がダダ漏れだ。しかも……」
魔王「力が強くなってる、か」
側近「……知ってたんだな?」
魔王「……ああ」
側近「なら聞き分けろ。城中の癒やしの石も、半分近く使い物にならなくなってる」
魔王「否。余計に急がねばならん。私には……時間が無い様だ」
側近「時間が無い?」
魔王「お前は私の傍を離れるな」
側近「は?」
魔王「……お前が戻ったからか、と。さっき言っただろう?」
魔王「お前は、私の何を持っている」
側近「魔王様の、目……」
魔王「『私が揃って』いれば……まだ、大丈夫だ」
側近「何……?」
魔王「半刻後、玉座の間へ集まって欲しい。お前は私を呼びに来い」
魔王「……頼む」
側近「…… ……解った」
魔王「それから、私の剣をここへ」
側近「? ……ちょっと待て」スタスタ、ヒョイ
側近「ほらよ」
魔王「ああ…… ……ッ」パキン!
側近「!?」
魔王「……時間が無い。本当に……な」
魔王「何故だ」
側近「お前ね、この部屋に姫様呼ぶ気か?」
魔王「む……」
側近「自覚しろ。今のお前は……魔力がダダ漏れだ。しかも……」
魔王「力が強くなってる、か」
側近「……知ってたんだな?」
魔王「……ああ」
側近「なら聞き分けろ。城中の癒やしの石も、半分近く使い物にならなくなってる」
魔王「否。余計に急がねばならん。私には……時間が無い様だ」
側近「時間が無い?」
魔王「お前は私の傍を離れるな」
側近「は?」
魔王「……お前が戻ったからか、と。さっき言っただろう?」
魔王「お前は、私の何を持っている」
側近「魔王様の、目……」
魔王「『私が揃って』いれば……まだ、大丈夫だ」
側近「何……?」
魔王「半刻後、玉座の間へ集まって欲しい。お前は私を呼びに来い」
魔王「……頼む」
側近「…… ……解った」
魔王「それから、私の剣をここへ」
側近「? ……ちょっと待て」スタスタ、ヒョイ
側近「ほらよ」
魔王「ああ…… ……ッ」パキン!
側近「!?」
魔王「……時間が無い。本当に……な」
666: 2013/05/27(月) 12:09:58.99 ID:avaBwAYiP
……
………
…………
姫「……」ウロウロ
使用人「姫様、少し落ち着かれては?」
使用人「……お腹に障りますよ」
姫「……!」ストン
カチャ
使用人「!」
姫「!」
側近「ただーいま……」
使用人「側近様、魔王様はどうだったのですか!?」
姫「側近、魔王の様子は!?」
側近「……同時に叫ばないでくれる」
使用人「……無事、なのですね」
側近「俺か?ま……見ての通り、な」
姫「魔王は……?」
側近「……目を覚ました」
使用人「本当ですか!?」
姫「良かった……」ホゥ
側近「……」
使用人「側近様?」
側近「半刻後、玉座の間に集まれってさ」
姫「魔王が……そう言ったの?」
側近「ああ。俺は……魔王様の傍を離れられない」
使用人「え?」
側近「魔王様曰く。『私が揃っていれば大丈夫』だそうだ」
姫「揃っていれば?」
側近「……目だ」
使用人「それで、離れられない、と?」
………
…………
姫「……」ウロウロ
使用人「姫様、少し落ち着かれては?」
使用人「……お腹に障りますよ」
姫「……!」ストン
カチャ
使用人「!」
姫「!」
側近「ただーいま……」
使用人「側近様、魔王様はどうだったのですか!?」
姫「側近、魔王の様子は!?」
側近「……同時に叫ばないでくれる」
使用人「……無事、なのですね」
側近「俺か?ま……見ての通り、な」
姫「魔王は……?」
側近「……目を覚ました」
使用人「本当ですか!?」
姫「良かった……」ホゥ
側近「……」
使用人「側近様?」
側近「半刻後、玉座の間に集まれってさ」
姫「魔王が……そう言ったの?」
側近「ああ。俺は……魔王様の傍を離れられない」
使用人「え?」
側近「魔王様曰く。『私が揃っていれば大丈夫』だそうだ」
姫「揃っていれば?」
側近「……目だ」
使用人「それで、離れられない、と?」
668: 2013/05/27(月) 13:23:30.57 ID:avaBwAYiP
側近「言葉の通りに信じるのなら、な」
使用人「……まだ、何かあると?」
側近「…… 魔王の剣を見たか?」
姫「え?」
使用人「魔王様の剣、ですか? いえ……それが何か?」
側近「……ぼろぼろだった。罅……亀裂が」
使用人「え!?」
側近「それに……あいつの力が信じられないぐらい膨れあがってるのは」
側近「どうやら自覚があった様だな」
姫「……」
側近「使用人、姫様にできる限りの癒やしの石を持たせろ」
使用人「……はい」
側近「姫様も、その魔除けの石、離さないで」
姫「これ、やっぱり魔除けの石なのね」
側近「ああ。その話も後でする」
姫「……解ったわ」
使用人「綺麗な物だけ集めて持って行きましょう」
側近「頼む……もし」
使用人「はい?」
側近「……もし、何かあったら全力で魔王様を止める」
姫「側近!」
側近「……お前は、姫様を守れ」
使用人「解っています」
姫「……ッ」
側近「先に行く……半刻後、な」スタスタ
パタン
姫「……」
使用人「姫様?」
姫「……時間、無いのね」
使用人「そうですね、半刻後ですから」
姫「そうじゃ無いわ。そうじゃ無くて……!」
使用人「……」
使用人「……まだ、何かあると?」
側近「…… 魔王の剣を見たか?」
姫「え?」
使用人「魔王様の剣、ですか? いえ……それが何か?」
側近「……ぼろぼろだった。罅……亀裂が」
使用人「え!?」
側近「それに……あいつの力が信じられないぐらい膨れあがってるのは」
側近「どうやら自覚があった様だな」
姫「……」
側近「使用人、姫様にできる限りの癒やしの石を持たせろ」
使用人「……はい」
側近「姫様も、その魔除けの石、離さないで」
姫「これ、やっぱり魔除けの石なのね」
側近「ああ。その話も後でする」
姫「……解ったわ」
使用人「綺麗な物だけ集めて持って行きましょう」
側近「頼む……もし」
使用人「はい?」
側近「……もし、何かあったら全力で魔王様を止める」
姫「側近!」
側近「……お前は、姫様を守れ」
使用人「解っています」
姫「……ッ」
側近「先に行く……半刻後、な」スタスタ
パタン
姫「……」
使用人「姫様?」
姫「……時間、無いのね」
使用人「そうですね、半刻後ですから」
姫「そうじゃ無いわ。そうじゃ無くて……!」
使用人「……」
669: 2013/05/27(月) 13:47:55.10 ID:avaBwAYiP
姫「……」
使用人「ここに、居られる時間、ですか」
姫「……そうね。『私達の時間』」
使用人「……」
姫「……」
使用人「お腹の、子供の為です」
使用人「……母は強い、のです。姫様」
姫「……」
使用人「行きましょう。私から離れない様にしてください」
姫「ええ……」
……
………
…………
側近「魔王様、時間だ」カチャ
魔王「……ああ」
側近「起きれるか?」
魔王「大丈夫だ……側近、私の剣を持ってくれ」
側近「持って行くのか!?」
魔王「言っただろう……『私の全てが揃っていれば』」
側近「……解った」
魔王「姫と使用人は?」
側近「伝えてある。時間になったら来るだろう」
魔王「……そうか。側近、すまん……手を」
側近「ああ……」ギュ
使用人「ここに、居られる時間、ですか」
姫「……そうね。『私達の時間』」
使用人「……」
姫「……」
使用人「お腹の、子供の為です」
使用人「……母は強い、のです。姫様」
姫「……」
使用人「行きましょう。私から離れない様にしてください」
姫「ええ……」
……
………
…………
側近「魔王様、時間だ」カチャ
魔王「……ああ」
側近「起きれるか?」
魔王「大丈夫だ……側近、私の剣を持ってくれ」
側近「持って行くのか!?」
魔王「言っただろう……『私の全てが揃っていれば』」
側近「……解った」
魔王「姫と使用人は?」
側近「伝えてある。時間になったら来るだろう」
魔王「……そうか。側近、すまん……手を」
側近「ああ……」ギュ
672: 2013/05/27(月) 16:10:41.83 ID:avaBwAYiP
……
………
…………
玉座の間
魔王「……どこから、話そうか」
側近「……」
使用人「……」
姫「身体は、大丈夫なの?」
魔王「ああ。心配をかけた……すまん」
側近「なあ、俺ずっとお前と手を繋いでないといけないの!?」
魔王「危険を回避するためだ」
側近「まあ……姫様の為なら我慢するけど……」
魔王「姫だけじゃない……世界の、だな」
使用人「世界?」
魔王「…… ……一番最初に異変に気がついたのは、森を焼いた時だ」
姫「え……?」
魔王「狼将軍を頃し、ジジィと鴉の弔いに森に火をつけた時」
魔王「……じわじわと怒りや憎しみが、魔力となって身体からにじみ出るのが解った」
側近「……」
魔王「城に戻れば姫が居る……心を落ち着けねば、と」
魔王「……思えば思う程、感情が消えていった」
使用人「……」
魔王「一緒、だったんだ」
側近「何が、だ?」
魔王「魔導将軍や、狼将軍と対峙した時とだ。同じだった」
魔王「……あの時の私も、感情に欠けていた気がする。後から考えれば、だがな」
………
…………
玉座の間
魔王「……どこから、話そうか」
側近「……」
使用人「……」
姫「身体は、大丈夫なの?」
魔王「ああ。心配をかけた……すまん」
側近「なあ、俺ずっとお前と手を繋いでないといけないの!?」
魔王「危険を回避するためだ」
側近「まあ……姫様の為なら我慢するけど……」
魔王「姫だけじゃない……世界の、だな」
使用人「世界?」
魔王「…… ……一番最初に異変に気がついたのは、森を焼いた時だ」
姫「え……?」
魔王「狼将軍を頃し、ジジィと鴉の弔いに森に火をつけた時」
魔王「……じわじわと怒りや憎しみが、魔力となって身体からにじみ出るのが解った」
側近「……」
魔王「城に戻れば姫が居る……心を落ち着けねば、と」
魔王「……思えば思う程、感情が消えていった」
使用人「……」
魔王「一緒、だったんだ」
側近「何が、だ?」
魔王「魔導将軍や、狼将軍と対峙した時とだ。同じだった」
魔王「……あの時の私も、感情に欠けていた気がする。後から考えれば、だがな」
673: 2013/05/27(月) 16:27:05.13 ID:avaBwAYiP
姫「でも、それは……貴方は、魔族ですもの」
姫「確かに、魔導将軍を頃した時、私も盗賊も……言葉を失ったわ」
姫「様々な属性の……凄く強力な威力を持った魔法を軽々と使いこなす」
姫「……しかも、躊躇も無く手をもぎ、足をもぎ……」
使用人「……」
側近「残酷な面は持っていて当然だ。魔族だからな」
側近「ましてや、姫様は……魔王様で無くても、そんな所見た事無いだろう」
姫「ええ……そうね。だから……その」
魔王「気にする必要は無いと?」
姫「いえ……ご免なさい。解らないわ」
魔王「ふむ。そうだな……私も知らなかった、と言うのが正しいのかもしれん」
姫「え?」
魔王「私にもそんな一面があるという事を、だな」
側近「無理も無いな。実質、前魔王様を頃してから、目立った争いなど無かった」
魔王「そうだな。三十年以上前のアレ、一度きり、だ」
側近「その時も魔王様は実際に手を下しては無い。魔導将軍にやらせただけだ」
魔王「親父を頃した時には無かった感情だ」
姫「……」
魔王「その後は少し落ち着いた。魔法に関する知識を纏めたり」
魔王「色々しているとな……」
魔王「だが……」
使用人「……インキュバス、ですね」
魔王「…… ……ああ」
姫「確かに、魔導将軍を頃した時、私も盗賊も……言葉を失ったわ」
姫「様々な属性の……凄く強力な威力を持った魔法を軽々と使いこなす」
姫「……しかも、躊躇も無く手をもぎ、足をもぎ……」
使用人「……」
側近「残酷な面は持っていて当然だ。魔族だからな」
側近「ましてや、姫様は……魔王様で無くても、そんな所見た事無いだろう」
姫「ええ……そうね。だから……その」
魔王「気にする必要は無いと?」
姫「いえ……ご免なさい。解らないわ」
魔王「ふむ。そうだな……私も知らなかった、と言うのが正しいのかもしれん」
姫「え?」
魔王「私にもそんな一面があるという事を、だな」
側近「無理も無いな。実質、前魔王様を頃してから、目立った争いなど無かった」
魔王「そうだな。三十年以上前のアレ、一度きり、だ」
側近「その時も魔王様は実際に手を下しては無い。魔導将軍にやらせただけだ」
魔王「親父を頃した時には無かった感情だ」
姫「……」
魔王「その後は少し落ち着いた。魔法に関する知識を纏めたり」
魔王「色々しているとな……」
魔王「だが……」
使用人「……インキュバス、ですね」
魔王「…… ……ああ」
675: 2013/05/27(月) 16:44:43.13 ID:avaBwAYiP
側近「俺の身体を乗っ取った時、だな」
魔王「あいつは、女を傷付けた」
姫「……」
魔王「魔導将軍に危険な目に遭わされ、片腕を奪われ……」
魔王「そして、インキュバスにも又、だ」
魔王「側近は私の目を持っている。お前に任せておいても、片は付いた……だろうが」
側近「……自分の手でやりたかったのか」
魔王「それもあるな。が、まあ……早く救ってやりたかったと言うのが大きい」
魔王「仕留め損ね、逃げられ……力を蓄えられてはかなわん」
魔王「そこで女は救えても、また他に犠牲者を出すのも避けねばならん」
側近「で……あれか」
魔王「心話が出来るのならば、意識だけを側近の身体に飛ばす事も可能だろうと思ったんだ」
魔王「……力が溢れて来ているのは解っていたしな」
使用人「実際、魔王様の魔力は……大きくなってきている、のですか?」
魔王「だろうな。本当に……」クック
側近「魔王様……?」
魔王「『願えば叶う』……便利な言葉だ」
姫「魔王……」
魔王「私に取って、魔王の剣を取り寄せる事等容易い筈だ。だが、流石に」
魔王「そこまで……側近の身で出来るかどうかは解らない」
使用人「だから……手に握っていらした、のですね」
魔王「ああ。側近は私の目を持っていて、私と繋がっていると考えれば」
側近「……変な言い方しないでくれよ」
魔王「呼び寄せる事も可能だろうと思ったんだ」
側近「無視か!」
使用人「側近様、黙ってください」
側近「……酷い」
魔王「うん、お前うるさい。私の話を遮るな」
側近「…… ……もう何も言わない」
魔王「拗ねるなよ……子供か、お前は」
魔王「あいつは、女を傷付けた」
姫「……」
魔王「魔導将軍に危険な目に遭わされ、片腕を奪われ……」
魔王「そして、インキュバスにも又、だ」
魔王「側近は私の目を持っている。お前に任せておいても、片は付いた……だろうが」
側近「……自分の手でやりたかったのか」
魔王「それもあるな。が、まあ……早く救ってやりたかったと言うのが大きい」
魔王「仕留め損ね、逃げられ……力を蓄えられてはかなわん」
魔王「そこで女は救えても、また他に犠牲者を出すのも避けねばならん」
側近「で……あれか」
魔王「心話が出来るのならば、意識だけを側近の身体に飛ばす事も可能だろうと思ったんだ」
魔王「……力が溢れて来ているのは解っていたしな」
使用人「実際、魔王様の魔力は……大きくなってきている、のですか?」
魔王「だろうな。本当に……」クック
側近「魔王様……?」
魔王「『願えば叶う』……便利な言葉だ」
姫「魔王……」
魔王「私に取って、魔王の剣を取り寄せる事等容易い筈だ。だが、流石に」
魔王「そこまで……側近の身で出来るかどうかは解らない」
使用人「だから……手に握っていらした、のですね」
魔王「ああ。側近は私の目を持っていて、私と繋がっていると考えれば」
側近「……変な言い方しないでくれよ」
魔王「呼び寄せる事も可能だろうと思ったんだ」
側近「無視か!」
使用人「側近様、黙ってください」
側近「……酷い」
魔王「うん、お前うるさい。私の話を遮るな」
側近「…… ……もう何も言わない」
魔王「拗ねるなよ……子供か、お前は」
677: 2013/05/27(月) 16:54:33.91 ID:avaBwAYiP
側近「拗ねてネェ!」
姫「女が言っていたわね。側近の瞳が、緑から紫に変わった、って……」
魔王「私は……側近もだろうが。自分の瞳は見えないから解らんが」
側近「……あれは、なんでだ?」
魔王「全ては推測だ。だが……お前が、目を持っていたから」
魔王「それは間違い無いだろう」
使用人「そうですね。側近様が魔王様の目を持っていないと」
使用人「いくら魔王様でも、身体を乗っ取る事事態無理でしょうし」
側近「……瞳の色だけは変えられない、んじゃ無かったのか」
姫「副作用的な物でしょう……それに」
姫「結果的に、紫の瞳を見たからこそ、女の洗脳を解く切欠が出来たでしょうし」
魔王「……力添えでも良かった、んだがな。だが……」
側近「さっきも聞いたぞ。自分の手で……」
魔王「解ってる。そういう気持ちも勿論あった。だが……」
側近「だが?」
魔王「いくら目を持たせたと言え、あのままその私の魔力をお前の体内から引き出し」
魔王「外部から……力を加え続ければ」
魔王「……」
側近「俺の身体が持たない、か」
姫「乗っ取るのも一緒だと思うんだけど」
魔王「身を借りれば体感できるだろう、私が」
魔王「これ以上は無理だと思えば押さえられる」
側近「……いや、俺もどっちもどっちだと思うけど」
使用人「いえ……だからこそ、魔王様は剣を召還されたのでは?」
側近「え?」
使用人「一時の負荷は掛かるでしょうが、あのまま側近様の身体で」
使用人「魔法を使い続けるよりかは……マシでしょう」
姫「女が言っていたわね。側近の瞳が、緑から紫に変わった、って……」
魔王「私は……側近もだろうが。自分の瞳は見えないから解らんが」
側近「……あれは、なんでだ?」
魔王「全ては推測だ。だが……お前が、目を持っていたから」
魔王「それは間違い無いだろう」
使用人「そうですね。側近様が魔王様の目を持っていないと」
使用人「いくら魔王様でも、身体を乗っ取る事事態無理でしょうし」
側近「……瞳の色だけは変えられない、んじゃ無かったのか」
姫「副作用的な物でしょう……それに」
姫「結果的に、紫の瞳を見たからこそ、女の洗脳を解く切欠が出来たでしょうし」
魔王「……力添えでも良かった、んだがな。だが……」
側近「さっきも聞いたぞ。自分の手で……」
魔王「解ってる。そういう気持ちも勿論あった。だが……」
側近「だが?」
魔王「いくら目を持たせたと言え、あのままその私の魔力をお前の体内から引き出し」
魔王「外部から……力を加え続ければ」
魔王「……」
側近「俺の身体が持たない、か」
姫「乗っ取るのも一緒だと思うんだけど」
魔王「身を借りれば体感できるだろう、私が」
魔王「これ以上は無理だと思えば押さえられる」
側近「……いや、俺もどっちもどっちだと思うけど」
使用人「いえ……だからこそ、魔王様は剣を召還されたのでは?」
側近「え?」
使用人「一時の負荷は掛かるでしょうが、あのまま側近様の身体で」
使用人「魔法を使い続けるよりかは……マシでしょう」
678: 2013/05/27(月) 17:05:34.93 ID:avaBwAYiP
使用人「確かに、どちらも側近様にはリスクが高い。でも」
使用人「……ベストな判断であったと思います」
側近「俺は俺の身体の侭、転移魔法使われたのが一番吃驚したけどね」
魔王「あれだって、要は使い様、だ」
魔王「お前、そもそも昔は回復魔法しか使えなかったんだろう」
側近「え?」
魔王「言ってたじゃ無いか。風の攻撃魔法は、親父に鍛えられたのだろう」
側近「ああ、まあ……」
魔王「私の目を持っている事で、お前の魔力自体は高められている」
魔王「魔力量は充分に足りている。だから……」
姫「使い様、ね」
魔王「……そうだ」
側近「転移で城に戻った俺は、あれだけの力を消費しながら……特に疲労は感じなかった」
側近「それも……お前の魔力が膨張しているから、か?」
魔王「解らん……が、その可能性も否定はできんな」
姫「前例なんて無いんでしょう?だったら……全て推測の域を出ないわ」
側近「まあ、そりゃそうなんだけどよ」
魔王「一番不思議なのは……側近。アレを」
側近「……ああ」シャキン
姫「……!」
使用人「側近様に前もって聞いては居ました、が……これ、は……」
魔王「ぼろぼろだろう。私は……もう、触れん」
姫「どうして?」
魔王「剣に宿る魔力を……吸い上げている様だ」
魔王「触れば……歓喜する」
姫「歓喜……?」
魔王「そうだ。私の細胞が、血が……全てが」
使用人「……」
側近「人が、魔に変じる時の暴走に似ている、な」
使用人「側近様……!」
側近「同じ事考えてたんじゃないのか?使用人ちゃん」
使用人「……ベストな判断であったと思います」
側近「俺は俺の身体の侭、転移魔法使われたのが一番吃驚したけどね」
魔王「あれだって、要は使い様、だ」
魔王「お前、そもそも昔は回復魔法しか使えなかったんだろう」
側近「え?」
魔王「言ってたじゃ無いか。風の攻撃魔法は、親父に鍛えられたのだろう」
側近「ああ、まあ……」
魔王「私の目を持っている事で、お前の魔力自体は高められている」
魔王「魔力量は充分に足りている。だから……」
姫「使い様、ね」
魔王「……そうだ」
側近「転移で城に戻った俺は、あれだけの力を消費しながら……特に疲労は感じなかった」
側近「それも……お前の魔力が膨張しているから、か?」
魔王「解らん……が、その可能性も否定はできんな」
姫「前例なんて無いんでしょう?だったら……全て推測の域を出ないわ」
側近「まあ、そりゃそうなんだけどよ」
魔王「一番不思議なのは……側近。アレを」
側近「……ああ」シャキン
姫「……!」
使用人「側近様に前もって聞いては居ました、が……これ、は……」
魔王「ぼろぼろだろう。私は……もう、触れん」
姫「どうして?」
魔王「剣に宿る魔力を……吸い上げている様だ」
魔王「触れば……歓喜する」
姫「歓喜……?」
魔王「そうだ。私の細胞が、血が……全てが」
使用人「……」
側近「人が、魔に変じる時の暴走に似ている、な」
使用人「側近様……!」
側近「同じ事考えてたんじゃないのか?使用人ちゃん」
680: 2013/05/27(月) 17:24:46.94 ID:avaBwAYiP
姫「暴走?」
側近「人が魔に変じる時、人としての命を捨て魔として産まれなおすんだ」
側近「細胞の一つ、血の一滴……己の全てが変化する」
使用人「魔王様から与えられた魔力に、新しい力溢れる生命に」
使用人「……全ては、歓喜するのです」
姫「それが……暴走?」
魔王「そうだ。制御出来ねば……理性も持たない獣に成り下がるだろう」
魔王「……例え、魔王である私でも」
姫「そんな……!?」
魔王「可能性はゼロとは言えない。だから……側近に持たせたんだ」
側近「こんだけぼろぼろになりゃ……もう余り残って居ないだろうな」
姫「…… ……殆ど、魔の気なんて感じないわ、その剣から」
側近「……そうか」
魔王「砕け散れば終わりだ。制御する自身は……正直、無い」
使用人「で、でも……!」
姫「魔力が膨張してるなら……押さえ込むことは出来ないの?」
魔王「膨張しているからこそ、危険なんだ、姫」
魔王「歓喜の力が大きければ……それだけ、意識を、理性を持って行かれる可能性が高い」
側近「……さっき、お前に近づけただけで亀裂が入ったな」
魔王「ああ……」
姫「どこか……どこか、遠くに封印する訳にはいかないの!?」
使用人「『私の全てが揃っていれば』……」
姫「え?」
側近「……世代交代する時に、な」
魔王「……」
使用人「?」
側近「人が魔に変じる時、人としての命を捨て魔として産まれなおすんだ」
側近「細胞の一つ、血の一滴……己の全てが変化する」
使用人「魔王様から与えられた魔力に、新しい力溢れる生命に」
使用人「……全ては、歓喜するのです」
姫「それが……暴走?」
魔王「そうだ。制御出来ねば……理性も持たない獣に成り下がるだろう」
魔王「……例え、魔王である私でも」
姫「そんな……!?」
魔王「可能性はゼロとは言えない。だから……側近に持たせたんだ」
側近「こんだけぼろぼろになりゃ……もう余り残って居ないだろうな」
姫「…… ……殆ど、魔の気なんて感じないわ、その剣から」
側近「……そうか」
魔王「砕け散れば終わりだ。制御する自身は……正直、無い」
使用人「で、でも……!」
姫「魔力が膨張してるなら……押さえ込むことは出来ないの?」
魔王「膨張しているからこそ、危険なんだ、姫」
魔王「歓喜の力が大きければ……それだけ、意識を、理性を持って行かれる可能性が高い」
側近「……さっき、お前に近づけただけで亀裂が入ったな」
魔王「ああ……」
姫「どこか……どこか、遠くに封印する訳にはいかないの!?」
使用人「『私の全てが揃っていれば』……」
姫「え?」
側近「……世代交代する時に、な」
魔王「……」
使用人「?」
681: 2013/05/27(月) 17:37:06.96 ID:avaBwAYiP
側近「魔王の剣ってのは、『魔王』の地位と同じで、代々受け継がれて行く」
魔王「私が……『魔王』が使ってこその代物。使用することで、代々の力が」
魔王「剣自体に宿っていくんだ」
側近「魔王様の魔力も、前魔王様の力も、その先代のも……って」
側近「少しずつ蓄積されて行くんだ……だから」
魔王「魔王の剣を扱えてこその魔王。魔力を宿し、それを使役してこその者」
魔王「……これも、私の一部に違いない」
使用人「では、離してしまえば……」
魔王「実際はどうなのだろうな。やってみた訳では無いから解らんが」
魔王「均衡を欠けば……」
姫「ど、う……なるの」
魔王「良くて、今朝までの状態に逆戻り。悪ければ……」
使用人「魔力は暴走し、理性を無くす、ですか」
側近「……俺が戻ったから、均衡が保たれた、と言う訳か」
魔王「あくまで憶測だ。だが……」
魔王「……ここでお前の手を離すと、どうなるか解らない」
魔王「もし、何かがおこったら? ……そんな危険を冒す訳にはいかん」
側近「……『世界の危機』か。確かに、魔王様が理性なんて失えば」
側近「世界は滅ぼされかねん」
魔王「私が……『魔王』が使ってこその代物。使用することで、代々の力が」
魔王「剣自体に宿っていくんだ」
側近「魔王様の魔力も、前魔王様の力も、その先代のも……って」
側近「少しずつ蓄積されて行くんだ……だから」
魔王「魔王の剣を扱えてこその魔王。魔力を宿し、それを使役してこその者」
魔王「……これも、私の一部に違いない」
使用人「では、離してしまえば……」
魔王「実際はどうなのだろうな。やってみた訳では無いから解らんが」
魔王「均衡を欠けば……」
姫「ど、う……なるの」
魔王「良くて、今朝までの状態に逆戻り。悪ければ……」
使用人「魔力は暴走し、理性を無くす、ですか」
側近「……俺が戻ったから、均衡が保たれた、と言う訳か」
魔王「あくまで憶測だ。だが……」
魔王「……ここでお前の手を離すと、どうなるか解らない」
魔王「もし、何かがおこったら? ……そんな危険を冒す訳にはいかん」
側近「……『世界の危機』か。確かに、魔王様が理性なんて失えば」
側近「世界は滅ぼされかねん」
682: 2013/05/27(月) 17:45:46.05 ID:avaBwAYiP
姫「そんな……!」
魔王「姫」
姫「……何」
魔王「魔除けの石を持っているのだそうだな」
姫「あ……!そうだわ、これ、どうしたの、側近」
側近「魔王様にはちらっと話したが、港街に居る神父が作った物だ」
側近「人間なんだが……姫様と同じような力を持っている」
姫「え?」
使用人「感じる力、をですか?」
側近「能力、と言うより……努力の賜だろうな」
側近「随分と徳の高い神父なんだろう」
姫「そう……そうね。これと、ペンダントが無ければ……私は……」
魔王「こんなに傍には居られないだろうな。否、本当は」
魔王「今すぐにでも城を離れた方が良いだろう」
姫「魔王!」
魔王「妻になれと言った。お前は、了承してくれた。姫……だが」
魔王「……ドレスを着せてやる事は、できなかったな」
姫「魔王!!」
側近「まだ策はあるだろう、魔王様」
魔王「何?」
側近「俺がお前に、目を返せば良いんだろう?」
側近「過激派なんてモンももう居ない。心話する必要も無いだろう」
側近「転移の石もあるんだ。お前が動けないなら、変わりに俺が動き回れば良いだけだし」
側近「……支障は無いんだ。だから、返す」
使用人「側近様……」
側近「何時までも、ずっと、お前と手を繋いだ侭とか、厭だ!」
側近「絶対厭だ!断固拒否!」
魔王「側近……」
側近「……俺は、強い力なんていらないんだよ、魔王様」
側近「回復と補助も魔王様には必要無い。雑用で、バタバタ動き回ってる」
側近「お前の雑用係が一番心地良いんだよ!」
側近「……どうせ、こき使うんだろ?これからもさ!」
魔王「姫」
姫「……何」
魔王「魔除けの石を持っているのだそうだな」
姫「あ……!そうだわ、これ、どうしたの、側近」
側近「魔王様にはちらっと話したが、港街に居る神父が作った物だ」
側近「人間なんだが……姫様と同じような力を持っている」
姫「え?」
使用人「感じる力、をですか?」
側近「能力、と言うより……努力の賜だろうな」
側近「随分と徳の高い神父なんだろう」
姫「そう……そうね。これと、ペンダントが無ければ……私は……」
魔王「こんなに傍には居られないだろうな。否、本当は」
魔王「今すぐにでも城を離れた方が良いだろう」
姫「魔王!」
魔王「妻になれと言った。お前は、了承してくれた。姫……だが」
魔王「……ドレスを着せてやる事は、できなかったな」
姫「魔王!!」
側近「まだ策はあるだろう、魔王様」
魔王「何?」
側近「俺がお前に、目を返せば良いんだろう?」
側近「過激派なんてモンももう居ない。心話する必要も無いだろう」
側近「転移の石もあるんだ。お前が動けないなら、変わりに俺が動き回れば良いだけだし」
側近「……支障は無いんだ。だから、返す」
使用人「側近様……」
側近「何時までも、ずっと、お前と手を繋いだ侭とか、厭だ!」
側近「絶対厭だ!断固拒否!」
魔王「側近……」
側近「……俺は、強い力なんていらないんだよ、魔王様」
側近「回復と補助も魔王様には必要無い。雑用で、バタバタ動き回ってる」
側近「お前の雑用係が一番心地良いんだよ!」
側近「……どうせ、こき使うんだろ?これからもさ!」
683: 2013/05/27(月) 17:52:49.42 ID:avaBwAYiP
側近「だから……返すから!」
側近「……せめて、式だけでも挙げてやれ」
姫「側近……」
使用人「……」
側近「始まりの街を復活させるのも、あそこに姫様を住ませる為だろう!?」
姫「え?」
側近「いくらでも走り回ってやるから!大工仕事でも何でもやってやるから!」グスッ
魔王「側近……」
側近「ち、違うぞ!?これは涙とかじゃ無いからな!?」
側近「ちょ、ちょっと瞬き忘れただけなんだから!」
使用人「……何も言ってないのに、誰も。墓穴彫ってます、側近様」
側近「嘘ん!?」
魔王「……側近」
側近「な、なんだよ……」
魔王「ありがとう……だが、無理だ」
側近「何?」
魔王「……初めから戻すつもり等無かったんだ」
側近「へ?」
魔王「否、取り出す事は可能だ。私の身に戻す事もな」
魔王「だが……お前が無事では居られまい」
側近「……」
魔王「私と手を繋いで居るのはそりゃ、厭だろうがな。私だって厭だ」
側近「おい!」
魔王「だが……私は、お前を失う方がもっと厭だ」
姫「……」
使用人「……」
側近「……せめて、式だけでも挙げてやれ」
姫「側近……」
使用人「……」
側近「始まりの街を復活させるのも、あそこに姫様を住ませる為だろう!?」
姫「え?」
側近「いくらでも走り回ってやるから!大工仕事でも何でもやってやるから!」グスッ
魔王「側近……」
側近「ち、違うぞ!?これは涙とかじゃ無いからな!?」
側近「ちょ、ちょっと瞬き忘れただけなんだから!」
使用人「……何も言ってないのに、誰も。墓穴彫ってます、側近様」
側近「嘘ん!?」
魔王「……側近」
側近「な、なんだよ……」
魔王「ありがとう……だが、無理だ」
側近「何?」
魔王「……初めから戻すつもり等無かったんだ」
側近「へ?」
魔王「否、取り出す事は可能だ。私の身に戻す事もな」
魔王「だが……お前が無事では居られまい」
側近「……」
魔王「私と手を繋いで居るのはそりゃ、厭だろうがな。私だって厭だ」
側近「おい!」
魔王「だが……私は、お前を失う方がもっと厭だ」
姫「……」
使用人「……」
687: 2013/05/28(火) 10:06:17.43 ID:GnhfJZIIP
側近「魔王様……」ス……
魔王「……?」
ゴンッ!
姫「!」
使用人「そ、側近様!?」
側近「全く、お前はああああああああああ!」
魔王「……痛い」
側近「何でそう、あれなの!考え無しなの!」
姫「そ、側近……」
側近「返して貰うつもり無かったとか、俺が無事じゃすまないとかあああ!」
魔王「……結果オーライだろう?」
側近「何処がだ!今すっげぇ困ってるでしょうが!」
魔王「あー。じゃああれだ。無かったら困ってた、だろ?」
側近「言い訳か!言い訳ですか!」
魔王「……そんなに怒るな。ハゲるぞ」
側近「……」ピタ
使用人「魔導将軍や、インキュバスの件で役に立ったのは事実でしょう、側近様」
姫「そうよ。それに……今更どうしようも無いじゃ無い」
側近「……ねえ、俺の味方って居ないの?ねぇ?」
魔王「……?」
ゴンッ!
姫「!」
使用人「そ、側近様!?」
側近「全く、お前はああああああああああ!」
魔王「……痛い」
側近「何でそう、あれなの!考え無しなの!」
姫「そ、側近……」
側近「返して貰うつもり無かったとか、俺が無事じゃすまないとかあああ!」
魔王「……結果オーライだろう?」
側近「何処がだ!今すっげぇ困ってるでしょうが!」
魔王「あー。じゃああれだ。無かったら困ってた、だろ?」
側近「言い訳か!言い訳ですか!」
魔王「……そんなに怒るな。ハゲるぞ」
側近「……」ピタ
使用人「魔導将軍や、インキュバスの件で役に立ったのは事実でしょう、側近様」
姫「そうよ。それに……今更どうしようも無いじゃ無い」
側近「……ねえ、俺の味方って居ないの?ねぇ?」
688: 2013/05/28(火) 10:29:32.93 ID:GnhfJZIIP
魔王「ドレス……着たいか?姫」
姫「別に人前で着るだけが正しい訳じゃないでしょう?」
側近「……もう、無視されるのにもなれました」グタ
使用人「そうですよ。今、ここで着る事だってできます」
側近「姫様と腕組んでる魔王様と、俺……手繋いでおくの?ねえ、マジで?」
姫「ねえ……これ、駄目かしら?」
側近「え?」
姫「この魔除けの石……魔王の気を落ち着けるのに効果無いかしら」
魔王「どれ……」ス……パリン!
側近「あ」
使用人「え」
姫「あぁ……」
魔王「……割れた、な」
側近「あーあぁ……」
姫「駄目か……」
使用人「姫様……」
姫「ん、大丈夫よ……」
側近「だが、離れた方が良い。使用人、姫様と部屋に戻れ」
魔王「まだ話したい事が……とは、言ってられんか」
側近「俺が聞く。後で使用人に伝えて貰えば良い」
使用人「はい。後ほど伺いに参ります」
姫「……そうね。この子の為には」ナデ
側近「あれ……姫様、お腹大きくなった?」
姫「気がつくの遅いわねぇ、側近……モテないわよ」
側近「そもそもこの状態じゃ無理だから」ギュ
魔王「手を振るな、気持ち悪い」
側近「そろそろ俺泣いて良い?」
姫「別に人前で着るだけが正しい訳じゃないでしょう?」
側近「……もう、無視されるのにもなれました」グタ
使用人「そうですよ。今、ここで着る事だってできます」
側近「姫様と腕組んでる魔王様と、俺……手繋いでおくの?ねえ、マジで?」
姫「ねえ……これ、駄目かしら?」
側近「え?」
姫「この魔除けの石……魔王の気を落ち着けるのに効果無いかしら」
魔王「どれ……」ス……パリン!
側近「あ」
使用人「え」
姫「あぁ……」
魔王「……割れた、な」
側近「あーあぁ……」
姫「駄目か……」
使用人「姫様……」
姫「ん、大丈夫よ……」
側近「だが、離れた方が良い。使用人、姫様と部屋に戻れ」
魔王「まだ話したい事が……とは、言ってられんか」
側近「俺が聞く。後で使用人に伝えて貰えば良い」
使用人「はい。後ほど伺いに参ります」
姫「……そうね。この子の為には」ナデ
側近「あれ……姫様、お腹大きくなった?」
姫「気がつくの遅いわねぇ、側近……モテないわよ」
側近「そもそもこの状態じゃ無理だから」ギュ
魔王「手を振るな、気持ち悪い」
側近「そろそろ俺泣いて良い?」
689: 2013/05/28(火) 10:42:42.16 ID:GnhfJZIIP
姫「じゃあ……戻るわ」
使用人「行きましょう、姫様」スタスタ
パタン
側近「……やっぱ手、その侭?」
魔王「いや、大丈夫だろう」
側近「……信じて良いのか?」
魔王「姫の手前、な」
側近「?」
魔王「離せ…… ……ほらな」
側近「何ともないじゃネェか」
魔王「だが……お前はもう何処にも行くな」
魔王「眠るだけで済めば良いが……保証は無い」
側近「……で、どこ行ってたんだ」
魔王「北の塔だ」
側近「え?」
魔王「あれからすぐに向かった」
側近「……そもそもはお前じゃないよな?」
魔王「違う。確かに……強い力を感じた。古い物だったがな」
側近「ふむ」
魔王「人間にも魔族にも……要するに、誰にも見えん様に封印をやり直した」
側近「……意味は?」
魔王「内部にも入ったが……確かに、始まりの大陸ほどでは無いが」
魔王「私にも息苦しく感じた。と、いう事は」
側近「……?」
魔王「姫には、心地よいのかもしれん」
側近「!」
使用人「行きましょう、姫様」スタスタ
パタン
側近「……やっぱ手、その侭?」
魔王「いや、大丈夫だろう」
側近「……信じて良いのか?」
魔王「姫の手前、な」
側近「?」
魔王「離せ…… ……ほらな」
側近「何ともないじゃネェか」
魔王「だが……お前はもう何処にも行くな」
魔王「眠るだけで済めば良いが……保証は無い」
側近「……で、どこ行ってたんだ」
魔王「北の塔だ」
側近「え?」
魔王「あれからすぐに向かった」
側近「……そもそもはお前じゃないよな?」
魔王「違う。確かに……強い力を感じた。古い物だったがな」
側近「ふむ」
魔王「人間にも魔族にも……要するに、誰にも見えん様に封印をやり直した」
側近「……意味は?」
魔王「内部にも入ったが……確かに、始まりの大陸ほどでは無いが」
魔王「私にも息苦しく感じた。と、いう事は」
側近「……?」
魔王「姫には、心地よいのかもしれん」
側近「!」
690: 2013/05/28(火) 10:55:24.14 ID:GnhfJZIIP
魔王「なんと言ったか、あの人間の娘も言っていただろう」
側近「女剣士か」
魔王「……私が動けなくなる前に、あの塔に姫を行かせようと思う」
側近「は!?」
魔王「何だ?」
側近「何だ、じゃネェだろう!?あんな場所に!?一人で!?」
魔王「……」
側近「確かに、あの空気が姫様にあうのならば、大丈夫かもしれんが……!」
側近「生活とかどうするんだよ!姫様一人で……!」
魔王「大丈夫だ。ちゃんと考えている」
側近「まさか……使用人ちゃんを行かせるんじゃないだろうな」
魔王「それは不可能だ。お前が私の傍を離れられない以上……」
側近「……」
魔王「今までのお前の役目は、使用人に任せるしかあるまい?」
側近「じゃあ、どうするって言うんだ」
側近「それに……始まりの大陸を復活させるのは、そもそも姫様の為じゃないのか!?」
魔王「最終的にはな。姫には……あの塔の部屋で、眠って貰おうと思う」
側近「……は?」
魔王「港街の全てがうまくいき、始まりの街や城が大きくなれば」
魔王「……その頃には、私を倒す勇者も育つかもしれないだろう」
側近「…… ……お、お前何、言って……んの」
側近「女剣士か」
魔王「……私が動けなくなる前に、あの塔に姫を行かせようと思う」
側近「は!?」
魔王「何だ?」
側近「何だ、じゃネェだろう!?あんな場所に!?一人で!?」
魔王「……」
側近「確かに、あの空気が姫様にあうのならば、大丈夫かもしれんが……!」
側近「生活とかどうするんだよ!姫様一人で……!」
魔王「大丈夫だ。ちゃんと考えている」
側近「まさか……使用人ちゃんを行かせるんじゃないだろうな」
魔王「それは不可能だ。お前が私の傍を離れられない以上……」
側近「……」
魔王「今までのお前の役目は、使用人に任せるしかあるまい?」
側近「じゃあ、どうするって言うんだ」
側近「それに……始まりの大陸を復活させるのは、そもそも姫様の為じゃないのか!?」
魔王「最終的にはな。姫には……あの塔の部屋で、眠って貰おうと思う」
側近「……は?」
魔王「港街の全てがうまくいき、始まりの街や城が大きくなれば」
魔王「……その頃には、私を倒す勇者も育つかもしれないだろう」
側近「…… ……お、お前何、言って……んの」
691: 2013/05/28(火) 11:05:14.12 ID:GnhfJZIIP
魔王「……解っているだろう。私の力は……信じられない程、大きくなっている」
魔王「私には世継ぎも居ない。この力を譲る者は……居ないんだ」
側近「だから……だからって、そう都合良く勇者等出てくる訳ねぇだろう!?」
魔王「そうだな。どうなるかは……私にも解らん。だが」
魔王「……私が、この世界を滅ぼす訳にはいかないのだ。側近」
側近「姫様の為か。産まれて来る……姫様と、人間の子供のためか!?」
魔王「違う……私は、お前に言われて人の子の世界を見、思ったんだ」
魔王「この世界は美しい、とな」
側近「魔王様……」
魔王「親父の先代の魔王の様に、世界を手に入れたいとは思わない」
魔王「親父の様に、人間と手を取り合って生きていく気にもなれん」
魔王「だが……この世界は好きだ。美しいこの世界を守りたいとは思うんだ」
側近「……」
魔王「私が守りたいのは、世界その物だ。確かに姫は大事だ」
魔王「私が……守もりたいと思う、その美しい世界を見せてやりたいとは思う程、に」
側近「……姫様を眠らせておけば、目が覚めた時、その世界を見せてやれる」
側近「そう、言いたいのか?」
魔王「……ああ」
側近「だが、お前は……」
魔王「世継ぎは居ない。力を継承する事もできない。勿論……私を頃す者も、居ない」
魔王「だから、私も……眠りにつこうと思う」
側近「え?」
魔王「私を倒せる者……勇者が産まれる迄、だ」
側近「……可能なのか?」
魔王「私には世継ぎも居ない。この力を譲る者は……居ないんだ」
側近「だから……だからって、そう都合良く勇者等出てくる訳ねぇだろう!?」
魔王「そうだな。どうなるかは……私にも解らん。だが」
魔王「……私が、この世界を滅ぼす訳にはいかないのだ。側近」
側近「姫様の為か。産まれて来る……姫様と、人間の子供のためか!?」
魔王「違う……私は、お前に言われて人の子の世界を見、思ったんだ」
魔王「この世界は美しい、とな」
側近「魔王様……」
魔王「親父の先代の魔王の様に、世界を手に入れたいとは思わない」
魔王「親父の様に、人間と手を取り合って生きていく気にもなれん」
魔王「だが……この世界は好きだ。美しいこの世界を守りたいとは思うんだ」
側近「……」
魔王「私が守りたいのは、世界その物だ。確かに姫は大事だ」
魔王「私が……守もりたいと思う、その美しい世界を見せてやりたいとは思う程、に」
側近「……姫様を眠らせておけば、目が覚めた時、その世界を見せてやれる」
側近「そう、言いたいのか?」
魔王「……ああ」
側近「だが、お前は……」
魔王「世継ぎは居ない。力を継承する事もできない。勿論……私を頃す者も、居ない」
魔王「だから、私も……眠りにつこうと思う」
側近「え?」
魔王「私を倒せる者……勇者が産まれる迄、だ」
側近「……可能なのか?」
692: 2013/05/28(火) 11:16:11.62 ID:GnhfJZIIP
魔王「『願えば叶う』」
側近「……言うと思ったよ」
魔王「姫を眠らせる為に、私はまた膨大な魔力を消費せねばならんだろう」
魔王「……理性がある内に、玉座の間の奥の部屋へ私を連れて行ってくれ」
側近「そこで……自らを封印すると言うのか」
魔王「ああ」
側近「一つだけ、聞いて良いか」
魔王「何だ?」
側近「俺は……どうなる?」
魔王「…… ……正直、解らん」
側近「あ、待て。厭だとか責めてる訳じゃない」
魔王「……」
側近「俺の主はお前だ、魔王様。お前が決めた事ならば、従うのは当然だ」
魔王「側近……」
側近「一緒に眠れと言うのならばそうしよう。だが……」
魔王「……」
側近「その前に、俺に『側近』の地位を降りることを許して欲しい」
魔王「どういう意味だ」
側近「……使用人ちゃんに全てを譲る」
魔王「そうか……」
側近「まだ、もう少し時間はあるんだろう」
魔王「? どういう意味だ?」
側近「ドレスぐらい、着せてやれ、って事だ」
魔王「……ああ」
側近「使用人ちゃんが戻れば……」
コンコン
使用人「失礼致します」カチャ
側近「丁度良いタイミング」フゥ
使用人「?」
側近「……言うと思ったよ」
魔王「姫を眠らせる為に、私はまた膨大な魔力を消費せねばならんだろう」
魔王「……理性がある内に、玉座の間の奥の部屋へ私を連れて行ってくれ」
側近「そこで……自らを封印すると言うのか」
魔王「ああ」
側近「一つだけ、聞いて良いか」
魔王「何だ?」
側近「俺は……どうなる?」
魔王「…… ……正直、解らん」
側近「あ、待て。厭だとか責めてる訳じゃない」
魔王「……」
側近「俺の主はお前だ、魔王様。お前が決めた事ならば、従うのは当然だ」
魔王「側近……」
側近「一緒に眠れと言うのならばそうしよう。だが……」
魔王「……」
側近「その前に、俺に『側近』の地位を降りることを許して欲しい」
魔王「どういう意味だ」
側近「……使用人ちゃんに全てを譲る」
魔王「そうか……」
側近「まだ、もう少し時間はあるんだろう」
魔王「? どういう意味だ?」
側近「ドレスぐらい、着せてやれ、って事だ」
魔王「……ああ」
側近「使用人ちゃんが戻れば……」
コンコン
使用人「失礼致します」カチャ
側近「丁度良いタイミング」フゥ
使用人「?」
693: 2013/05/28(火) 11:46:46.63 ID:GnhfJZIIP
魔王「姫は?」
使用人「特にお変わりはなさそうですが……」
魔王「そうか」フゥ
使用人「魔王様の方が、お顔の色が悪いです」
側近「……手短に、話す、使用人ちゃん」
使用人「……はい」
側近「俺は、君に『魔王様の側近』の座を譲ろうと思う」
使用人「厭です」
側近「……はい?」
使用人「厭、です」
魔王「使用人……」
使用人「はい」
魔王「私からも、頼む」
使用人「……」
側近「な、なんで厭か……聞いて良い?」
使用人「魔王様の為でしたら何でもします。ですが……」
使用人「『側近』は、貴方です。貴方しか……居ません」
使用人「私は、今の侭で良いのです」
側近「使用人ちゃん……」
使用人「側近様のお仕事も、何でも引き受けます。ですが……」
使用人「『側近』には、なれません」
魔王「……もう良いだろう、側近」
側近「……ああ」
使用人「特にお変わりはなさそうですが……」
魔王「そうか」フゥ
使用人「魔王様の方が、お顔の色が悪いです」
側近「……手短に、話す、使用人ちゃん」
使用人「……はい」
側近「俺は、君に『魔王様の側近』の座を譲ろうと思う」
使用人「厭です」
側近「……はい?」
使用人「厭、です」
魔王「使用人……」
使用人「はい」
魔王「私からも、頼む」
使用人「……」
側近「な、なんで厭か……聞いて良い?」
使用人「魔王様の為でしたら何でもします。ですが……」
使用人「『側近』は、貴方です。貴方しか……居ません」
使用人「私は、今の侭で良いのです」
側近「使用人ちゃん……」
使用人「側近様のお仕事も、何でも引き受けます。ですが……」
使用人「『側近』には、なれません」
魔王「……もう良いだろう、側近」
側近「……ああ」
694: 2013/05/28(火) 11:57:37.61 ID:GnhfJZIIP
使用人「お話は、以上ですか?」
側近「んな訳ないだろ」
使用人「……ですよね」
魔王「良く聞いてくれ。そして……どうか、姫を説得して欲しい」
使用人「説得?」
側近「頼む。俺は……離れられん」
使用人「……解りました。話してください」
……
………
…………
鍛冶師「良し、これで全部……かな。すみません手伝って貰っちゃって」
海賊「船長の指示だし気にしなくて良いさ。忘れ物ないか?」
鍛冶師「はい!」
海賊「じゃあ先に行くぜ。おら!運ぶぞー!」
アイアイサー!
鍛冶師「元気だなぁ、海賊さん達……」
鍛冶師「さて、と……」
鍛冶師(女剣士は何処に行ったのかな)スタスタ
側近「んな訳ないだろ」
使用人「……ですよね」
魔王「良く聞いてくれ。そして……どうか、姫を説得して欲しい」
使用人「説得?」
側近「頼む。俺は……離れられん」
使用人「……解りました。話してください」
……
………
…………
鍛冶師「良し、これで全部……かな。すみません手伝って貰っちゃって」
海賊「船長の指示だし気にしなくて良いさ。忘れ物ないか?」
鍛冶師「はい!」
海賊「じゃあ先に行くぜ。おら!運ぶぞー!」
アイアイサー!
鍛冶師「元気だなぁ、海賊さん達……」
鍛冶師「さて、と……」
鍛冶師(女剣士は何処に行ったのかな)スタスタ
695: 2013/05/28(火) 12:12:25.34 ID:GnhfJZIIP
鍛冶師(あ、居た)スタスタ
女剣士「あ……」
鍛冶師「どうだった?」
女剣士「……」フルフル
鍛冶師「手がかり無し、か……」
女剣士「それらしい奴の姿は誰も見てないって言うんだ」
鍛冶師「うーん……じゃあ、この村には寄ってない、のかな?」
女剣士「で、でも……!」
鍛冶師「北の街からじゃ、ここに寄るほか無いよね、多分」
女剣士「ああ……」
鍛冶師「まあ、ご飯でも食べない?お腹すいたでしょ」
女剣士「いや、アタシは……」グルグル、ギュー
鍛冶師「……」プッ
女剣士「か、金が無いんだ。全部落としちまって」
鍛冶師「解ってるよ、あんな状態だったんだから。奢るからご遠慮なく」
女剣士「でも!」
鍛冶師「ほら、またお腹が返事しちゃうよ?」
女剣士「……ありがとう」
船長「おう、お前らここに居たのか」
鍛冶師「ああ、船長。さっきはありがとう。助かったよ」
船長「ん?ああ、海賊共か。まあ力有り余ってるからな、あいつら」
鍛冶師「これからご飯行くんだけど。船長は?」
船長「何だ、こんなおっさん邪魔だろ」ニヤ
鍛冶師「違うって言ってんのに……一緒に行こうよ」
船長「へいへい。んじゃま、飯だけな」
女剣士「?」
女剣士「あ……」
鍛冶師「どうだった?」
女剣士「……」フルフル
鍛冶師「手がかり無し、か……」
女剣士「それらしい奴の姿は誰も見てないって言うんだ」
鍛冶師「うーん……じゃあ、この村には寄ってない、のかな?」
女剣士「で、でも……!」
鍛冶師「北の街からじゃ、ここに寄るほか無いよね、多分」
女剣士「ああ……」
鍛冶師「まあ、ご飯でも食べない?お腹すいたでしょ」
女剣士「いや、アタシは……」グルグル、ギュー
鍛冶師「……」プッ
女剣士「か、金が無いんだ。全部落としちまって」
鍛冶師「解ってるよ、あんな状態だったんだから。奢るからご遠慮なく」
女剣士「でも!」
鍛冶師「ほら、またお腹が返事しちゃうよ?」
女剣士「……ありがとう」
船長「おう、お前らここに居たのか」
鍛冶師「ああ、船長。さっきはありがとう。助かったよ」
船長「ん?ああ、海賊共か。まあ力有り余ってるからな、あいつら」
鍛冶師「これからご飯行くんだけど。船長は?」
船長「何だ、こんなおっさん邪魔だろ」ニヤ
鍛冶師「違うって言ってんのに……一緒に行こうよ」
船長「へいへい。んじゃま、飯だけな」
女剣士「?」
697: 2013/05/28(火) 13:32:29.42 ID:GnhfJZIIP
……
………
…………
女剣士「美味しかった……! ご馳走様でした」
鍛冶師「どういたしまして……よく食べたね」
船長「そりゃ、仕方ネェだろうさ。さて……俺も仕事に戻るかな」
鍛冶師「僕も手伝うよ。海賊さんにも世話になったしね」
船長「そいつの人捜し手伝ってやれよ。こっちの手は足りてるさ」
鍛冶師「って言っても、ネェ……」
船長「お前さんの村なんだ、鍛冶師。旅人の女一人で聞き回るよりゃ」
船長「可能性高いだろ?」
女剣士「側近……何処に……」
船長「……ん、お前さん、今なんつった?」
女剣士「え?」
鍛冶師「側近って言う名前らしいんだ、その探し人」
船長「……で、幼い主に、先代から仕えてる?」
鍛冶師「……だよね?女剣士」
女剣士「あ、ああ……」
船長「で?」
女剣士「??」
船長「他には?」
女剣士「回復の他に、風の魔法……強力な魔法を使うんだ」
女剣士「茶の短髪に、緑の瞳の……」
船長「……」
船長(先代……前魔王、か。幼い、てのは魔王の事か?)
船長(人間のこの女にぼかして話したとすれば、辻褄は合う)
船長(それに何より……北の街で側近を下ろしたのは、俺自身だ)
船長「間違いネェ……」
鍛冶師「え?え?」
女剣士「知ってるのか!?」
カチャ
使用人「ああ、良かった。ここにいらっしゃったのですね」
………
…………
女剣士「美味しかった……! ご馳走様でした」
鍛冶師「どういたしまして……よく食べたね」
船長「そりゃ、仕方ネェだろうさ。さて……俺も仕事に戻るかな」
鍛冶師「僕も手伝うよ。海賊さんにも世話になったしね」
船長「そいつの人捜し手伝ってやれよ。こっちの手は足りてるさ」
鍛冶師「って言っても、ネェ……」
船長「お前さんの村なんだ、鍛冶師。旅人の女一人で聞き回るよりゃ」
船長「可能性高いだろ?」
女剣士「側近……何処に……」
船長「……ん、お前さん、今なんつった?」
女剣士「え?」
鍛冶師「側近って言う名前らしいんだ、その探し人」
船長「……で、幼い主に、先代から仕えてる?」
鍛冶師「……だよね?女剣士」
女剣士「あ、ああ……」
船長「で?」
女剣士「??」
船長「他には?」
女剣士「回復の他に、風の魔法……強力な魔法を使うんだ」
女剣士「茶の短髪に、緑の瞳の……」
船長「……」
船長(先代……前魔王、か。幼い、てのは魔王の事か?)
船長(人間のこの女にぼかして話したとすれば、辻褄は合う)
船長(それに何より……北の街で側近を下ろしたのは、俺自身だ)
船長「間違いネェ……」
鍛冶師「え?え?」
女剣士「知ってるのか!?」
カチャ
使用人「ああ、良かった。ここにいらっしゃったのですね」
698: 2013/05/28(火) 13:42:12.20 ID:GnhfJZIIP
船長「しょう……使用人!?」
使用人「船にはいらっしゃらなかったので海賊さんに聞いたのです」
鍛冶師「え……船長の知り合い?」
船長「あ、ああ……どうした?手紙は届いたが……」
使用人「その件は解決済みです。あの後、すぐに側近さんは戻られましたので」
女剣士「側近!?」ガタッ
使用人「……そちらの方々は?」
女剣士「お、おいアンタ!側近を知ってるのか!?」
鍛冶師「お……女剣士、落ち着いて!」
使用人「……」
船長「この二人は船の客だ……戻ったなら良かった」
船長「少年の具合は?」
使用人「はい、その事でお話が……」
女剣士「側近は!?側近はどこに居るんだ!」ガシ!
使用人「……手を離して頂けませんか」
女剣士「……ッ」パッ
使用人「貴女と側近さんの関係は存じ上げませんが……後にして頂けますか」
使用人「船長さん、お時間頂けます?」
船長「あ、ああ……そりゃ構わネェが」
使用人「一刻を……争います」
船長「!?」
鍛冶師「あー、えっと、あのさ。取りあえず場所移さない?」
鍛冶師「ここで騒ぐと、ご飯屋さんにも迷惑だし、ね?」
女剣士「……」
使用人「賛成です……船長さん」
船長「……船に来い。そこで聞く」ガタ
船長「しかし、良くここが解ったな?」
使用人「側近さんが、盗賊さんから聞いたそうです。行き先はここだと」
鍛冶師「!?」
使用人「間に合って、良かったです」
使用人「船にはいらっしゃらなかったので海賊さんに聞いたのです」
鍛冶師「え……船長の知り合い?」
船長「あ、ああ……どうした?手紙は届いたが……」
使用人「その件は解決済みです。あの後、すぐに側近さんは戻られましたので」
女剣士「側近!?」ガタッ
使用人「……そちらの方々は?」
女剣士「お、おいアンタ!側近を知ってるのか!?」
鍛冶師「お……女剣士、落ち着いて!」
使用人「……」
船長「この二人は船の客だ……戻ったなら良かった」
船長「少年の具合は?」
使用人「はい、その事でお話が……」
女剣士「側近は!?側近はどこに居るんだ!」ガシ!
使用人「……手を離して頂けませんか」
女剣士「……ッ」パッ
使用人「貴女と側近さんの関係は存じ上げませんが……後にして頂けますか」
使用人「船長さん、お時間頂けます?」
船長「あ、ああ……そりゃ構わネェが」
使用人「一刻を……争います」
船長「!?」
鍛冶師「あー、えっと、あのさ。取りあえず場所移さない?」
鍛冶師「ここで騒ぐと、ご飯屋さんにも迷惑だし、ね?」
女剣士「……」
使用人「賛成です……船長さん」
船長「……船に来い。そこで聞く」ガタ
船長「しかし、良くここが解ったな?」
使用人「側近さんが、盗賊さんから聞いたそうです。行き先はここだと」
鍛冶師「!?」
使用人「間に合って、良かったです」
699: 2013/05/28(火) 13:48:17.51 ID:GnhfJZIIP
……
………
…………
甲板
女剣士「…… ……」ウロウロ
鍛冶師「落ち着きなって」
女剣士「落ち着いていられるかよ!」
鍛冶師「手がかり、見つかったんだからさ」
鍛冶師「……良い風に考えなよ」
女剣士「……」
鍛冶師(あの子……側近、て人だけじゃ無くて)
鍛冶師(盗賊の事、知ってた。僕たちが……船長がこの街に向かっている事を)
鍛冶師(知ってる、聞いたって事は……)
鍛冶師(女剣士の言う、北の街を出た後に、盗賊と会ってるって事になる)
鍛冶師(馬鹿な!どうやったら……北の街から、港街に行けるんだ!?)
鍛冶師(それに……あの子はどこから来た!?)
鍛冶師(こんな時間に港に着く船は無い。船着き場にも、この船しか無い)
鍛冶師(……どういう事だ)
女剣士「……」
鍛冶師「……」
………
…………
甲板
女剣士「…… ……」ウロウロ
鍛冶師「落ち着きなって」
女剣士「落ち着いていられるかよ!」
鍛冶師「手がかり、見つかったんだからさ」
鍛冶師「……良い風に考えなよ」
女剣士「……」
鍛冶師(あの子……側近、て人だけじゃ無くて)
鍛冶師(盗賊の事、知ってた。僕たちが……船長がこの街に向かっている事を)
鍛冶師(知ってる、聞いたって事は……)
鍛冶師(女剣士の言う、北の街を出た後に、盗賊と会ってるって事になる)
鍛冶師(馬鹿な!どうやったら……北の街から、港街に行けるんだ!?)
鍛冶師(それに……あの子はどこから来た!?)
鍛冶師(こんな時間に港に着く船は無い。船着き場にも、この船しか無い)
鍛冶師(……どういう事だ)
女剣士「……」
鍛冶師「……」
700: 2013/05/28(火) 13:49:04.57 ID:GnhfJZIIP
おむーかーえー
705: 2013/05/28(火) 15:39:20.63 ID:GnhfJZIIP
女剣士「……なあ」
鍛冶師「ん?」
女剣士「何の話、してるんだろう」
鍛冶師「……気になる?」
女剣士「ならないのか?」
鍛冶師「ならない」
女剣士「……」
鍛冶師「と、言えば嘘になるな。気になるに決まってる」
女剣士「……ッ だ、だよな!」
鍛冶師「だけど、さ」
女剣士「……」
鍛冶師「……側近、て人は多分、この村には来てない」
女剣士「……うん」
鍛冶師「あれ、意外」
女剣士「え?」
鍛冶師「じゃあ、何処に行くんだよ! ……て、言われると思った」
女剣士「村を避けて行く事は……不可能では無いだろ?」
鍛冶師「そりゃ、まあ。だけど、食料は?体力は?」
女剣士「野営に長けていれば無理では無いぜ」
鍛冶師「ふむ……」
女剣士「食料だって、狩りをすれば」
鍛冶師「……さっき、あの……使用人?て子が言ってただろう」
女剣士「?」
鍛冶師「『盗賊さんが鍛冶師の村に向かったと言っていたと、側近さんに聞いた』」
女剣士「あ、ああ……」
鍛冶師「ん?」
女剣士「何の話、してるんだろう」
鍛冶師「……気になる?」
女剣士「ならないのか?」
鍛冶師「ならない」
女剣士「……」
鍛冶師「と、言えば嘘になるな。気になるに決まってる」
女剣士「……ッ だ、だよな!」
鍛冶師「だけど、さ」
女剣士「……」
鍛冶師「……側近、て人は多分、この村には来てない」
女剣士「……うん」
鍛冶師「あれ、意外」
女剣士「え?」
鍛冶師「じゃあ、何処に行くんだよ! ……て、言われると思った」
女剣士「村を避けて行く事は……不可能では無いだろ?」
鍛冶師「そりゃ、まあ。だけど、食料は?体力は?」
女剣士「野営に長けていれば無理では無いぜ」
鍛冶師「ふむ……」
女剣士「食料だって、狩りをすれば」
鍛冶師「……さっき、あの……使用人?て子が言ってただろう」
女剣士「?」
鍛冶師「『盗賊さんが鍛冶師の村に向かったと言っていたと、側近さんに聞いた』」
女剣士「あ、ああ……」
707: 2013/05/28(火) 15:49:41.69 ID:GnhfJZIIP
鍛冶師「それがおかしいんだよ。女剣士に聞いた出発の日とさ」
鍛冶師「僕が船長に船に乗せて貰った時と、時間が合わないのさ」
鍛冶師「……そんなに早く、どうやって北の街から、港街まで行ける?」
鍛冶師「船も定期的に走ってる訳じゃ無い……徒歩でなんて、さ」
女剣士「で、でも!それこそ……不可能じゃ無いか!?」
鍛冶師「一番納得できるのは、君の探している側近と」
鍛冶師「あの子の言う側近が、同一人物で無い……事、かな」
女剣士「そんな……」
鍛冶師「でも、そうじゃ無いと説明が付かないんだよ」
女剣士「港街ってのは、そんなに遠いのか?」
鍛冶師「魔導の街は知っているかい?」
女剣士「……海を渡って、遠い場所にある、てのは」
鍛冶師「その魔導の街のすぐ傍だ」
女剣士「……!」
女剣士「あ、で、でも……船長は知ってるっぽかった!」
鍛冶師「そりゃ、使用人さんと船長の言う『側近』が同一人物だからだろう」
女剣士「……そう、か」
鍛冶師「勿論、さ……わかんないんだけどね」
鍛冶師「でも……そうじゃないと」
女剣士「物理的に説明がつかない、か」
鍛冶師「……」
女剣士「……」スタスタ
鍛冶師「どこ、行くの」
女剣士「あの二人は操舵室に居るんだろう?」
鍛冶師「……え、ちょ、ちょっと!?」スタスタ
……
………
…………
鍛冶師「僕が船長に船に乗せて貰った時と、時間が合わないのさ」
鍛冶師「……そんなに早く、どうやって北の街から、港街まで行ける?」
鍛冶師「船も定期的に走ってる訳じゃ無い……徒歩でなんて、さ」
女剣士「で、でも!それこそ……不可能じゃ無いか!?」
鍛冶師「一番納得できるのは、君の探している側近と」
鍛冶師「あの子の言う側近が、同一人物で無い……事、かな」
女剣士「そんな……」
鍛冶師「でも、そうじゃ無いと説明が付かないんだよ」
女剣士「港街ってのは、そんなに遠いのか?」
鍛冶師「魔導の街は知っているかい?」
女剣士「……海を渡って、遠い場所にある、てのは」
鍛冶師「その魔導の街のすぐ傍だ」
女剣士「……!」
女剣士「あ、で、でも……船長は知ってるっぽかった!」
鍛冶師「そりゃ、使用人さんと船長の言う『側近』が同一人物だからだろう」
女剣士「……そう、か」
鍛冶師「勿論、さ……わかんないんだけどね」
鍛冶師「でも……そうじゃないと」
女剣士「物理的に説明がつかない、か」
鍛冶師「……」
女剣士「……」スタスタ
鍛冶師「どこ、行くの」
女剣士「あの二人は操舵室に居るんだろう?」
鍛冶師「……え、ちょ、ちょっと!?」スタスタ
……
………
…………
708: 2013/05/28(火) 16:24:14.64 ID:GnhfJZIIP
船長「……ここで良いか」
使用人「はい」
船長「そういえば、俺の手紙は届いたのか?」
使用人「え?」
船長「お前さんからの鳥に同じ様に手紙を足に結んで飛ばしたんだがな」
使用人「そうでしたか。見よう見まねでやってはみたのですが」
使用人「……どこかで、具現化の術が解けたのでしょうね」
船長「届いてない、んだな」
使用人「はい。魔王様の様に……声を乗せる事もできませんでしたし」
使用人「申し訳ありません……手紙には、なんと?」
船長「謝る事じゃネェ。何、癒やしの石を届けるのはもう少し先になるって事と」
船長「側近とは一緒に居ないってだけだ」
使用人「そうですか……やはり、そう簡単には行きませんね」フゥ
船長「魔王は……大丈夫なのか?」
使用人「側近さんが戻られてすぐに、目を覚まされました」
船長「そうか……しかし……」
使用人「……『私の全てが揃っていれば、今はまだ大丈夫』だそうです」
船長「全て?」
使用人「はい。魔王様ご本人、側近さんが持っていらっしゃる魔王様の目」
使用人「それから……『魔王の剣』」
船長「魔王の、剣?」
使用人「はい……魔王様のお力は、信じられない程強くなっています」
使用人「このまま魔力が膨張を続けると……暴走する恐れがあると」
船長「暴走……魔王の魔力が?」
使用人「……理性を保てる間に、姫様を眠らせ、自らの身を封印するおつもりです」
船長「な、に……?」
使用人「はい」
船長「そういえば、俺の手紙は届いたのか?」
使用人「え?」
船長「お前さんからの鳥に同じ様に手紙を足に結んで飛ばしたんだがな」
使用人「そうでしたか。見よう見まねでやってはみたのですが」
使用人「……どこかで、具現化の術が解けたのでしょうね」
船長「届いてない、んだな」
使用人「はい。魔王様の様に……声を乗せる事もできませんでしたし」
使用人「申し訳ありません……手紙には、なんと?」
船長「謝る事じゃネェ。何、癒やしの石を届けるのはもう少し先になるって事と」
船長「側近とは一緒に居ないってだけだ」
使用人「そうですか……やはり、そう簡単には行きませんね」フゥ
船長「魔王は……大丈夫なのか?」
使用人「側近さんが戻られてすぐに、目を覚まされました」
船長「そうか……しかし……」
使用人「……『私の全てが揃っていれば、今はまだ大丈夫』だそうです」
船長「全て?」
使用人「はい。魔王様ご本人、側近さんが持っていらっしゃる魔王様の目」
使用人「それから……『魔王の剣』」
船長「魔王の、剣?」
使用人「はい……魔王様のお力は、信じられない程強くなっています」
使用人「このまま魔力が膨張を続けると……暴走する恐れがあると」
船長「暴走……魔王の魔力が?」
使用人「……理性を保てる間に、姫様を眠らせ、自らの身を封印するおつもりです」
船長「な、に……?」
709: 2013/05/28(火) 16:32:50.57 ID:GnhfJZIIP
使用人「その為の準備の手助けの要請を……お願いに参りました」
船長「俺に、か?待て待て、話が見えん!魔王の封印はともかく、姫を眠らせるってのは……!?」
使用人「……魔王様の望みは、人間との徹底した不干渉」
使用人「ご存じ、ですよね」
船長「あ、ああ」
使用人「……魔王様は、この世界が好きなのだそうです」
船長「……」
使用人「この、美しい世界を守りたい。この美しい世界の続きを」
使用人「姫様に……何れ産まれるであろうお子様に、見せたいのだそうです」
船長「しかし……姫の腹の中の子は……」
使用人「……魔王様の子供では、ありません。ですが」
使用人「私は……私の主は、魔王様です。願われるなら、叶えるのみ」
使用人「魔王様のお言葉は、絶対ですから」
船長「……お前、随分変わったな」
使用人「?」
船長「人から魔族になっても見た目は変わらネェのにな」
使用人「……」
船長「いや、話の腰を折って悪かった」
使用人「魔王様に、世継ぎはいらっしゃいません」
使用人「力を受け渡すべき存在は、居ないんです」
船長「……」
船長「俺に、か?待て待て、話が見えん!魔王の封印はともかく、姫を眠らせるってのは……!?」
使用人「……魔王様の望みは、人間との徹底した不干渉」
使用人「ご存じ、ですよね」
船長「あ、ああ」
使用人「……魔王様は、この世界が好きなのだそうです」
船長「……」
使用人「この、美しい世界を守りたい。この美しい世界の続きを」
使用人「姫様に……何れ産まれるであろうお子様に、見せたいのだそうです」
船長「しかし……姫の腹の中の子は……」
使用人「……魔王様の子供では、ありません。ですが」
使用人「私は……私の主は、魔王様です。願われるなら、叶えるのみ」
使用人「魔王様のお言葉は、絶対ですから」
船長「……お前、随分変わったな」
使用人「?」
船長「人から魔族になっても見た目は変わらネェのにな」
使用人「……」
船長「いや、話の腰を折って悪かった」
使用人「魔王様に、世継ぎはいらっしゃいません」
使用人「力を受け渡すべき存在は、居ないんです」
船長「……」
710: 2013/05/28(火) 16:44:30.11 ID:GnhfJZIIP
使用人「港街がうまく街として機能し」
使用人「始まりの街や、城の再建を叶えようと言うのも」
使用人「姫様の為だと……仰っておりました」
船長「それはそうだろうな……だが、時間が掛かる」
船長「確かに、子供を産む頃までに……50年弱、か」
船長「その頃にはどうにかなる、だろうが……」
使用人「いえ……魔王様は、時満ちる迄。ご自分の魔力が尽きるまで」
使用人「……姫様を、眠らせるおつもりなのです」
船長「……どういう、事だ?」
使用人「先ほども言いましたが、魔王様には世継ぎがいらっしゃいません」
使用人「……『魔王』の世代交代は、次期魔王が先代魔王を自らの手で屠り」
使用人「その力を奪い取る事でなされます」
使用人「……では、魔王様の場合は?」
船長「魔族ってのも、力は衰えて行くんだろう?」
船長「不氏では無いって言ってたじゃネェか」
使用人「はい。ですが……魔王様の魔力は、この侭では」
使用人「暴走し……恐らく、世界その物を飲み込むでしょう」
船長「な……!?」
使用人「そうなってしまっては、姫様に……美しい世界を、見せて差し上げられない」
船長「ちょ、ちょっと待てよ!その話は……本当なのか!?」
使用人「……絶対にそうなる、と断言は出来ませんが」
使用人「ただでさえ規格外な魔王様のお力が、膨張したお力が」
使用人「……あの方の理性を失った状態で、暴走したら?」
船長「……ッ」
使用人「始まりの街や、城の再建を叶えようと言うのも」
使用人「姫様の為だと……仰っておりました」
船長「それはそうだろうな……だが、時間が掛かる」
船長「確かに、子供を産む頃までに……50年弱、か」
船長「その頃にはどうにかなる、だろうが……」
使用人「いえ……魔王様は、時満ちる迄。ご自分の魔力が尽きるまで」
使用人「……姫様を、眠らせるおつもりなのです」
船長「……どういう、事だ?」
使用人「先ほども言いましたが、魔王様には世継ぎがいらっしゃいません」
使用人「……『魔王』の世代交代は、次期魔王が先代魔王を自らの手で屠り」
使用人「その力を奪い取る事でなされます」
使用人「……では、魔王様の場合は?」
船長「魔族ってのも、力は衰えて行くんだろう?」
船長「不氏では無いって言ってたじゃネェか」
使用人「はい。ですが……魔王様の魔力は、この侭では」
使用人「暴走し……恐らく、世界その物を飲み込むでしょう」
船長「な……!?」
使用人「そうなってしまっては、姫様に……美しい世界を、見せて差し上げられない」
船長「ちょ、ちょっと待てよ!その話は……本当なのか!?」
使用人「……絶対にそうなる、と断言は出来ませんが」
使用人「ただでさえ規格外な魔王様のお力が、膨張したお力が」
使用人「……あの方の理性を失った状態で、暴走したら?」
船長「……ッ」
711: 2013/05/28(火) 16:51:25.70 ID:GnhfJZIIP
使用人「……ご自分が封印されている間に、『魔王を倒す勇者が現れるかもしれない』」
使用人「だから…… ……ッ」
船長「……しかし、俺に何を協力しろと言うんだ」
使用人「姫様に、ドレスを着せて差し上げたいのだそうです」
使用人「……魔王様が、動ける内に」
船長「そ、そりゃ……いや、うん。それで、何をしろと?」
使用人「前に話したでは無いですか。港街の新しい教会で……」
船長「……」
使用人「魔族の王たる魔王様と、エルフの姫様が結婚式を挙げる」
使用人「……魔王様なら飛びつきそうな話でしょう?」
船長「そう、だな。しかし……」
使用人「姫様にご説明差し上げた時に、姫様が申された」
使用人「願い、です」
……
………
…………
姫「なん、ですって……!?」
使用人「……魔王様は、姫様を北の塔に眠らせるおつもりです、と」
使用人「申し上げました」
姫「ど、どうして!?私は大丈夫よ!?確かに、そんなに時間が無いのは解ってるわ!」
姫「でも、なんで……そんな所で!?」
使用人「魔王様は、美しい世界を姫様に見せたい、と」
姫「……魔王が居て、魔族が居て……人が居て!」
姫「勿論、争いは一杯あるけれど、世界は充分に美しいじゃ無いの!」
姫「ここに居られなくなるのは……解る!解るけれど……!」
使用人「姫様以上に……魔王様に、お時間が無いのです」
姫「魔王に……な、なんでよ!」
使用人「だから…… ……ッ」
船長「……しかし、俺に何を協力しろと言うんだ」
使用人「姫様に、ドレスを着せて差し上げたいのだそうです」
使用人「……魔王様が、動ける内に」
船長「そ、そりゃ……いや、うん。それで、何をしろと?」
使用人「前に話したでは無いですか。港街の新しい教会で……」
船長「……」
使用人「魔族の王たる魔王様と、エルフの姫様が結婚式を挙げる」
使用人「……魔王様なら飛びつきそうな話でしょう?」
船長「そう、だな。しかし……」
使用人「姫様にご説明差し上げた時に、姫様が申された」
使用人「願い、です」
……
………
…………
姫「なん、ですって……!?」
使用人「……魔王様は、姫様を北の塔に眠らせるおつもりです、と」
使用人「申し上げました」
姫「ど、どうして!?私は大丈夫よ!?確かに、そんなに時間が無いのは解ってるわ!」
姫「でも、なんで……そんな所で!?」
使用人「魔王様は、美しい世界を姫様に見せたい、と」
姫「……魔王が居て、魔族が居て……人が居て!」
姫「勿論、争いは一杯あるけれど、世界は充分に美しいじゃ無いの!」
姫「ここに居られなくなるのは……解る!解るけれど……!」
使用人「姫様以上に……魔王様に、お時間が無いのです」
姫「魔王に……な、なんでよ!」
712: 2013/05/28(火) 17:04:41.61 ID:GnhfJZIIP
使用人「先ほどのお話です、姫様」
使用人「魔王様に、お世継ぎは……もし、魔王様の力が暴走したら……」
姫「そんなの、寝てても起きてても一緒じゃ無いの!」
使用人「……50年」
姫「え……?」
使用人「姫様が、お子様を産むまで、50年程でしょう」
使用人「……姫様は、出産の後」
姫「そうよ。私はどうせ、この子を産んだ後生きられない!」
使用人「産まれたばかりで、放り出されたお子様の生きる世界が」
使用人「混沌に包まれた争いばかりの世界ならどうされるのです?」
姫「!」
使用人「……正直、私に魔王様の本心は分かりません」
使用人「姫様の心に届くお言葉を、告げられる自信もありません」
使用人「ですが……魔王様の、願いなのです」
使用人「『この美しい世界を、姫に見せてやりたい』」
使用人「……『何れ、私を倒す勇者が現れるかもしれない』とも」
姫「……勇者?」
使用人「…… ……はい」
姫「……」
使用人「『魔王』と言うのは、倒される存在……なのかもしれませんね」
姫「それも、魔王が?」
使用人「いえ。私の……勝手な考えです」
姫「魔王は、倒される者……そう」
使用人「……倒す者が姫様のお子様であれば、本望かもしれませんね」
姫「そんなに都合良く行かないわよ」
使用人「……はい」
使用人「魔王様に、お世継ぎは……もし、魔王様の力が暴走したら……」
姫「そんなの、寝てても起きてても一緒じゃ無いの!」
使用人「……50年」
姫「え……?」
使用人「姫様が、お子様を産むまで、50年程でしょう」
使用人「……姫様は、出産の後」
姫「そうよ。私はどうせ、この子を産んだ後生きられない!」
使用人「産まれたばかりで、放り出されたお子様の生きる世界が」
使用人「混沌に包まれた争いばかりの世界ならどうされるのです?」
姫「!」
使用人「……正直、私に魔王様の本心は分かりません」
使用人「姫様の心に届くお言葉を、告げられる自信もありません」
使用人「ですが……魔王様の、願いなのです」
使用人「『この美しい世界を、姫に見せてやりたい』」
使用人「……『何れ、私を倒す勇者が現れるかもしれない』とも」
姫「……勇者?」
使用人「…… ……はい」
姫「……」
使用人「『魔王』と言うのは、倒される存在……なのかもしれませんね」
姫「それも、魔王が?」
使用人「いえ。私の……勝手な考えです」
姫「魔王は、倒される者……そう」
使用人「……倒す者が姫様のお子様であれば、本望かもしれませんね」
姫「そんなに都合良く行かないわよ」
使用人「……はい」
713: 2013/05/28(火) 17:12:37.40 ID:GnhfJZIIP
姫「私が、その北の塔とやらで眠りについて」
姫「魔王は……どうなるの。魔王の魔力で、なんでしょう?」
使用人「ご自身もその侭……眠りにつかれる、と」
姫「自分で自分を封印するの?」
使用人「はい。魔王様を倒す……勇者が、現れるまで」
姫「そんな!だから、そんな都合良く……!」
使用人「『願えば叶う』……貴女の言葉です。姫様」
姫「…… ……」
使用人「……」
姫「わかったわ」
使用人「姫様……」
姫「一つだけ、条件があるわ」
使用人「……なんでしょう」
姫「港街の教会で、式を挙げたいわ」
使用人「姫様……」
姫「魔王は、きっと飛びつくわ!」
姫「……夫婦になるのよ。私達は……!」
……
………
…………
使用人「……」
船長「……」
姫「魔王は……どうなるの。魔王の魔力で、なんでしょう?」
使用人「ご自身もその侭……眠りにつかれる、と」
姫「自分で自分を封印するの?」
使用人「はい。魔王様を倒す……勇者が、現れるまで」
姫「そんな!だから、そんな都合良く……!」
使用人「『願えば叶う』……貴女の言葉です。姫様」
姫「…… ……」
使用人「……」
姫「わかったわ」
使用人「姫様……」
姫「一つだけ、条件があるわ」
使用人「……なんでしょう」
姫「港街の教会で、式を挙げたいわ」
使用人「姫様……」
姫「魔王は、きっと飛びつくわ!」
姫「……夫婦になるのよ。私達は……!」
……
………
…………
使用人「……」
船長「……」
714: 2013/05/28(火) 17:18:06.74 ID:GnhfJZIIP
使用人「教会、まだ完成していないのですよね」
船長「……ああ。資材はこれから運んで帰る所だ」
使用人「魔王様から、お金を預かって参りました」
船長「……助かる。助かるが、な」
使用人「はい」
船長「大丈夫、なんだな?姫も、魔王も……」
使用人「私と、側近さんが着いて参ります」
使用人「……側近さんはどちらにしても、魔王様の傍を離れられません」
船長「『全てが揃っていれば』か……成る程な。お前が来た理由もそれか」
使用人「はい」
船長「解った……早いほうが良いんだろう?」
使用人「できる限り」
船長「良いだろう……女も、魔王に会えるなら喜ぶだろう」
使用人「……」
船長「あいつも、時間がネェからな」
使用人「知って……いらしたのですね」
船長「ああ」
使用人「……そろそろ、よろしいでしょう?」
船長「ん?」
使用人「……」スタスタスタ
ガチャ!
鍛冶師「うわ!」
女剣士「わあ……ッ」
バタ、バタン!
船長「あ!お前ら……!」
船長「……ああ。資材はこれから運んで帰る所だ」
使用人「魔王様から、お金を預かって参りました」
船長「……助かる。助かるが、な」
使用人「はい」
船長「大丈夫、なんだな?姫も、魔王も……」
使用人「私と、側近さんが着いて参ります」
使用人「……側近さんはどちらにしても、魔王様の傍を離れられません」
船長「『全てが揃っていれば』か……成る程な。お前が来た理由もそれか」
使用人「はい」
船長「解った……早いほうが良いんだろう?」
使用人「できる限り」
船長「良いだろう……女も、魔王に会えるなら喜ぶだろう」
使用人「……」
船長「あいつも、時間がネェからな」
使用人「知って……いらしたのですね」
船長「ああ」
使用人「……そろそろ、よろしいでしょう?」
船長「ん?」
使用人「……」スタスタスタ
ガチャ!
鍛冶師「うわ!」
女剣士「わあ……ッ」
バタ、バタン!
船長「あ!お前ら……!」
715: 2013/05/28(火) 17:24:37.38 ID:GnhfJZIIP
使用人「……どこから、聞いていました?」
鍛冶師「……」
女剣士「……」
船長「呆れた奴らだ……」
使用人「答えて頂けます?」
鍛冶師「……う、美しい世界を、魔王が守りたい、とか」
鍛冶師「か、なぁ?」
女剣士「側近が仕えている幼い主って……魔王なのか!?」
使用人「……船長さん。説明お任せしてもよろしいですか」
船長「……全力で断りたいが、時間が無い、んだよな」
使用人「申し訳ありません」
船長「まあ、仕方ない。これも……料金の内って事にしておいてやる」
使用人「……では、私は他にやる事もありますので、これで」
船長「どうやって帰るんだ?」
使用人「転移石を持ってきています。港街にお戻りになるのは」
使用人「いつ頃でしょうか」
船長「早くて……三週間、かな」
使用人「ではその頃に港街へ出向きます」
使用人「……失礼致します」シュゥン
鍛冶師「うわああああああああ!?」
女剣士「き、消えた!?な、なんで……!?」
船長「……」
船長(説明……俺が、やるしかネェのか……)
船長(側近の事もあるしな……ハァ)
鍛冶師「……」
女剣士「……」
船長「呆れた奴らだ……」
使用人「答えて頂けます?」
鍛冶師「……う、美しい世界を、魔王が守りたい、とか」
鍛冶師「か、なぁ?」
女剣士「側近が仕えている幼い主って……魔王なのか!?」
使用人「……船長さん。説明お任せしてもよろしいですか」
船長「……全力で断りたいが、時間が無い、んだよな」
使用人「申し訳ありません」
船長「まあ、仕方ない。これも……料金の内って事にしておいてやる」
使用人「……では、私は他にやる事もありますので、これで」
船長「どうやって帰るんだ?」
使用人「転移石を持ってきています。港街にお戻りになるのは」
使用人「いつ頃でしょうか」
船長「早くて……三週間、かな」
使用人「ではその頃に港街へ出向きます」
使用人「……失礼致します」シュゥン
鍛冶師「うわああああああああ!?」
女剣士「き、消えた!?な、なんで……!?」
船長「……」
船長(説明……俺が、やるしかネェのか……)
船長(側近の事もあるしな……ハァ)
723: 2013/05/29(水) 09:34:56.55 ID:rm/OF9w8P
船長「あー……」
鍛冶師「船長!」
女剣士「ど、どういう事なんだ!?」
船長「長々と説明するのは面倒臭ェ」
鍛冶師「船長!!」
船長「……し、あれだ。何処まで話して良いか解らんから、まあ」
船長「掻い摘んで話すとだな」
鍛冶師「彼女は……『説明を任せて良いか』と言ってたじゃないか」
船長「……俺に詳しく話せって?」
女剣士「どうして……今の奴は急に消えたんだ!?」
女剣士「あんな魔法は見た事が無い!」
船長「ちょ、黙れお前ら!解った、解ったから!」
鍛冶師「……」
女剣士「……」
船長「ってもナァ、どこから話して良い物やら……」
鍛冶師「彼女は……『魔王』がどうとか言っていたな」
鍛冶師「……魔王の手先、なのか」
船長「せめて仲間と言ってやれ」
鍛冶師「船長!魔王……魔王だぞ!?」
船長「鍛冶師、お前は……少年を知ってるだろう?」
鍛冶師「……? ……魔導の街から劣等種達を救った、港街の『勇者様』か」
鍛冶師「それが何だと……」
船長「その少年が、魔王だ」
鍛冶師「……は!?」
船長「信じられないと言うのなら、この話は終わりだ」
鍛冶師「船長!」
女剣士「ど、どういう事なんだ!?」
船長「長々と説明するのは面倒臭ェ」
鍛冶師「船長!!」
船長「……し、あれだ。何処まで話して良いか解らんから、まあ」
船長「掻い摘んで話すとだな」
鍛冶師「彼女は……『説明を任せて良いか』と言ってたじゃないか」
船長「……俺に詳しく話せって?」
女剣士「どうして……今の奴は急に消えたんだ!?」
女剣士「あんな魔法は見た事が無い!」
船長「ちょ、黙れお前ら!解った、解ったから!」
鍛冶師「……」
女剣士「……」
船長「ってもナァ、どこから話して良い物やら……」
鍛冶師「彼女は……『魔王』がどうとか言っていたな」
鍛冶師「……魔王の手先、なのか」
船長「せめて仲間と言ってやれ」
鍛冶師「船長!魔王……魔王だぞ!?」
船長「鍛冶師、お前は……少年を知ってるだろう?」
鍛冶師「……? ……魔導の街から劣等種達を救った、港街の『勇者様』か」
鍛冶師「それが何だと……」
船長「その少年が、魔王だ」
鍛冶師「……は!?」
船長「信じられないと言うのなら、この話は終わりだ」
724: 2013/05/29(水) 09:45:07.70 ID:rm/OF9w8P
鍛冶師「……ッ」
女剣士「……船長、アタシはどうせ、難しい話は理解できない」
船長「あン?」
女剣士「できないし……港街とか、魔導の街とか、そもそもが良く解らない」
女剣士「一つだけ、聞かせて。側近は……今消えた、あいつの言ってた側近は……」
女剣士「アタシが、探してる側近なのか!?」
船長「……絶対とは言わんが、そうだろうな」
女剣士「……!」
船長「北の街に船が着いて、そこから降りてきた男、だろ」
女剣士「! 何で知って……」
船長「ありゃ俺の船だ。ついでがあったから乗せてやったのさ」
船長「で、その幼い主、ってのが……魔王の事だろう」
鍛冶師「魔王は……まだ子供なの?でも、少年って言うのは……」
船長「いや、そうじゃネェよ。女剣士に説明しようとして……そうなったんじゃネェの?」
女剣士「……先代から今の主まで、仕えていると聞いただけだ」
女剣士「アタシ達が勝手に……勘違いした、んだ」
船長「ま……そうだろうな」
鍛冶師「じゃあ、側近って言うのは……今の、彼女は……」
船長「人間じゃネェよ。魔族だ……二人とも、な」
女剣士「ま、ぞく……」
鍛冶師「……じゃあ、あの街は……港街は……いや……ッ」
鍛冶師「あの街の勇者が、魔王だって言うのか!?」
船長「さっきそう言っただろうが。落ち着け、鍛冶師」
女剣士「……船長、アタシはどうせ、難しい話は理解できない」
船長「あン?」
女剣士「できないし……港街とか、魔導の街とか、そもそもが良く解らない」
女剣士「一つだけ、聞かせて。側近は……今消えた、あいつの言ってた側近は……」
女剣士「アタシが、探してる側近なのか!?」
船長「……絶対とは言わんが、そうだろうな」
女剣士「……!」
船長「北の街に船が着いて、そこから降りてきた男、だろ」
女剣士「! 何で知って……」
船長「ありゃ俺の船だ。ついでがあったから乗せてやったのさ」
船長「で、その幼い主、ってのが……魔王の事だろう」
鍛冶師「魔王は……まだ子供なの?でも、少年って言うのは……」
船長「いや、そうじゃネェよ。女剣士に説明しようとして……そうなったんじゃネェの?」
女剣士「……先代から今の主まで、仕えていると聞いただけだ」
女剣士「アタシ達が勝手に……勘違いした、んだ」
船長「ま……そうだろうな」
鍛冶師「じゃあ、側近って言うのは……今の、彼女は……」
船長「人間じゃネェよ。魔族だ……二人とも、な」
女剣士「ま、ぞく……」
鍛冶師「……じゃあ、あの街は……港街は……いや……ッ」
鍛冶師「あの街の勇者が、魔王だって言うのか!?」
船長「さっきそう言っただろうが。落ち着け、鍛冶師」
725: 2013/05/29(水) 09:54:23.17 ID:rm/OF9w8P
女剣士「船長は魔王を知ってるのか」
船長「ん?まあ、そりゃ……」
女剣士「側近は今……魔王と一緒に居るんだな」
船長「ああ……そうだろうな」
女剣士「……」
船長「?」
鍛冶師「……」
船長「……なんだよ、二人揃って黙って。もう良いのか?」
女剣士「側近には何処に行けば会える?」
船長「……やめとけ」
女剣士「何で!」
船長「どうやって魔王の城に行くんだ?場所は知ってるのか?足はどうする」
女剣士「そ、それは、船で……!」
船長「俺は連れてはいかねぇぞ。そもそもお前、渡航代も無いだろうが」
女剣士「……ッ」
船長「俺にはやらなきゃならネェ仕事もある。お前さんをここまで連れてきたのは」
船長「ついで、だ。あんな場所で放って行く程薄情じゃネェからな」
船長「だがな、俺たちも商売でやってるんだ。聞いてたんだろうから、解るだろうが」
船長「使用人からもしっかり代金を頂戴した……俺たちも、食ってかなきゃならねぇ」
女剣士「……か、金があれば連れて行ってくれるのか」
船長「言っただろう。仕事がある。それが先だ」
女剣士「…… ……」
船長「この村から資材を運び、街を作らなきゃならネェ」
船長「使用人からの依頼もある……その後で、きっちり金を払うってんなら」
船長「そりゃお前さんの『依頼』だ」
女剣士「じゃあ……!」
船長「だが、その依頼を受けるかどうかは、わからんぞ」
女剣士「な、なんでだよ!」
船長「ん?まあ、そりゃ……」
女剣士「側近は今……魔王と一緒に居るんだな」
船長「ああ……そうだろうな」
女剣士「……」
船長「?」
鍛冶師「……」
船長「……なんだよ、二人揃って黙って。もう良いのか?」
女剣士「側近には何処に行けば会える?」
船長「……やめとけ」
女剣士「何で!」
船長「どうやって魔王の城に行くんだ?場所は知ってるのか?足はどうする」
女剣士「そ、それは、船で……!」
船長「俺は連れてはいかねぇぞ。そもそもお前、渡航代も無いだろうが」
女剣士「……ッ」
船長「俺にはやらなきゃならネェ仕事もある。お前さんをここまで連れてきたのは」
船長「ついで、だ。あんな場所で放って行く程薄情じゃネェからな」
船長「だがな、俺たちも商売でやってるんだ。聞いてたんだろうから、解るだろうが」
船長「使用人からもしっかり代金を頂戴した……俺たちも、食ってかなきゃならねぇ」
女剣士「……か、金があれば連れて行ってくれるのか」
船長「言っただろう。仕事がある。それが先だ」
女剣士「…… ……」
船長「この村から資材を運び、街を作らなきゃならネェ」
船長「使用人からの依頼もある……その後で、きっちり金を払うってんなら」
船長「そりゃお前さんの『依頼』だ」
女剣士「じゃあ……!」
船長「だが、その依頼を受けるかどうかは、わからんぞ」
女剣士「な、なんでだよ!」
726: 2013/05/29(水) 10:03:17.93 ID:rm/OF9w8P
船長「やめとけ、と言っただろうが……聞いてたんだろ?」
鍛冶師「魔王の世継ぎがどうとか、か」
船長「……」
鍛冶師「そんなにハッキリ聞こえた訳じゃないからあれだけど……」
鍛冶師「魔王は、氏にかけてる、のか?」
船長「そうじゃ……いや、解らネェな。だが」
船長「人間が近づいて良い領域じゃネェってのは解るだろう」
鍛冶師「……うん」
女剣士「そんな!」
鍛冶師「でも、港街まで来るんだろう。今の……使用人?は」
女剣士「……!」
鍛冶師「三週間後、だったか」
女剣士「じゃ、じゃあその時に側近を連れてきて貰えば……!」
船長「いい加減にしろよ、お前はガキか!」
女剣士「!」ビクッ
船長「どうやって頼む?それも俺に『頼んでくれ』だろう!」
船長「会いたいのは解った。だがな」
船長「何でもかんでも、思った通りに行くと思うな!」
船長「世界はそんな、都合良く動いてくれネェんだよ!」
鍛冶師「せ、船長……!」
女剣士「……ッ」バタバタバタ……ッバタン!
鍛冶師「あ、女剣士……」
船長「放っておけ……甘いんだよ」
鍛冶師「……」
鍛冶師「魔王の世継ぎがどうとか、か」
船長「……」
鍛冶師「そんなにハッキリ聞こえた訳じゃないからあれだけど……」
鍛冶師「魔王は、氏にかけてる、のか?」
船長「そうじゃ……いや、解らネェな。だが」
船長「人間が近づいて良い領域じゃネェってのは解るだろう」
鍛冶師「……うん」
女剣士「そんな!」
鍛冶師「でも、港街まで来るんだろう。今の……使用人?は」
女剣士「……!」
鍛冶師「三週間後、だったか」
女剣士「じゃ、じゃあその時に側近を連れてきて貰えば……!」
船長「いい加減にしろよ、お前はガキか!」
女剣士「!」ビクッ
船長「どうやって頼む?それも俺に『頼んでくれ』だろう!」
船長「会いたいのは解った。だがな」
船長「何でもかんでも、思った通りに行くと思うな!」
船長「世界はそんな、都合良く動いてくれネェんだよ!」
鍛冶師「せ、船長……!」
女剣士「……ッ」バタバタバタ……ッバタン!
鍛冶師「あ、女剣士……」
船長「放っておけ……甘いんだよ」
鍛冶師「……」
727: 2013/05/29(水) 10:16:51.18 ID:rm/OF9w8P
船長「ったく、俺は便利屋じゃネェよ……」
鍛冶師「……あの街の勇者てのは、少年……魔王、なんだな」
船長「あ?ああ……」
鍛冶師「姫、と言うのは?」
船長「魔王の嫁だよ」
鍛冶師「……でも世継ぎじゃ無い」
船長「そこら辺は盗賊にでも聞け」
鍛冶師「え!?盗賊も知って……ああ、そうか」
鍛冶師「……彼女も、勇者……魔王に救われた劣等種の一人、か」
船長「……」
鍛冶師「美しい世界を守りたい、か」
船長「結構しっかり聞いてるじゃネェか」
鍛冶師「必氏に思い出してるんだよ」
鍛冶師「……教会を作るんだね?」
船長「あ?ああ……使用人からの依頼だからな」
鍛冶師「……」
船長「なんだよ」
鍛冶師「海賊さん達を手伝ってくる」
船長「は?」
鍛冶師「一人でも多い方が早く済むだろう?」
船長「そりゃそうだが……」
鍛冶師「……あの街の勇者てのは、少年……魔王、なんだな」
船長「あ?ああ……」
鍛冶師「姫、と言うのは?」
船長「魔王の嫁だよ」
鍛冶師「……でも世継ぎじゃ無い」
船長「そこら辺は盗賊にでも聞け」
鍛冶師「え!?盗賊も知って……ああ、そうか」
鍛冶師「……彼女も、勇者……魔王に救われた劣等種の一人、か」
船長「……」
鍛冶師「美しい世界を守りたい、か」
船長「結構しっかり聞いてるじゃネェか」
鍛冶師「必氏に思い出してるんだよ」
鍛冶師「……教会を作るんだね?」
船長「あ?ああ……使用人からの依頼だからな」
鍛冶師「……」
船長「なんだよ」
鍛冶師「海賊さん達を手伝ってくる」
船長「は?」
鍛冶師「一人でも多い方が早く済むだろう?」
船長「そりゃそうだが……」
728: 2013/05/29(水) 10:22:43.61 ID:rm/OF9w8P
鍛冶師「女剣士の様子も見てくるよ」
船長「放っておけよ……ちょっと頭冷やさせろ」
鍛冶師「大丈夫」
船長「?」
鍛冶師「だから、さ。一人でも多い方が良いだろ?」スタスタ
パタン
船長「……なんか考えてやがる、な。あいつ……」
船長「ま、良い……」
船長(勇者、か)
船長(あの魔王を倒す、勇者?)
船長(できる訳が無い。そんな奴……現れるはずが……ない)スタスタ、パタン
船長「……おい、野郎共!」
海賊「あいよ、船長」
船長「こっちは俺がやる。資材の積み込み手伝ってこい」
船長「終わり次第出発だ!全速力で港街に戻るぞ!」
アイアイサー!
……
………
…………
女剣士(……側近が、魔族)
女剣士(あんだけ、強いんだ。魔王に仕える奴……)
女剣士(もう、会えないのか……!?)
カチャ
船長「放っておけよ……ちょっと頭冷やさせろ」
鍛冶師「大丈夫」
船長「?」
鍛冶師「だから、さ。一人でも多い方が良いだろ?」スタスタ
パタン
船長「……なんか考えてやがる、な。あいつ……」
船長「ま、良い……」
船長(勇者、か)
船長(あの魔王を倒す、勇者?)
船長(できる訳が無い。そんな奴……現れるはずが……ない)スタスタ、パタン
船長「……おい、野郎共!」
海賊「あいよ、船長」
船長「こっちは俺がやる。資材の積み込み手伝ってこい」
船長「終わり次第出発だ!全速力で港街に戻るぞ!」
アイアイサー!
……
………
…………
女剣士(……側近が、魔族)
女剣士(あんだけ、強いんだ。魔王に仕える奴……)
女剣士(もう、会えないのか……!?)
カチャ
729: 2013/05/29(水) 10:28:47.46 ID:rm/OF9w8P
女剣士「!」
鍛冶師「あ、いたいた……何膝抱えてちっさくなってんの」
女剣士「鍛冶師か……放っておいてくれないか」
鍛冶師「会いたくないの?」
女剣士「……ッ 会いたいさ!だけど……!」
鍛冶師「方法が無い?」
女剣士「…… ……」
鍛冶師「そりゃね、そこでそうやってるだけじゃ、何時までたっても会えないよ」
女剣士「じゃ、じゃあどうしたら良いんだよ!アタシは、金も無いし……ッ」
鍛冶師「じゃあ、稼げば良いじゃん」
女剣士「どうやって……!」
鍛冶師「あのさ、自分で考えないと」
鍛冶師「そうやって誰かがやってくれるの待ってても、どうにもならないよ?」
女剣士「…… ……」
鍛冶師「お金が無かったら、稼げば良い。会いたければ会える方法を考えれば良い」
女剣士「……で、でも、どうやって……」
鍛冶師「僕は、応援するっていっただろ?」
鍛冶師「とりあえず……僕の手伝いをしてくれない?」
女剣士「え……?」
鍛冶師「船に港街の資材を積み込むんだ。行くよ」グイッ
女剣士「え、ちょっと!?」
鍛冶師「ほら、さっさとやればさっさと終わる!」
鍛冶師「そうすれば、早く出発できるよ」
女剣士「……」
鍛冶師「身体動かすのは得意だろう?」
鍛冶師「あ、いたいた……何膝抱えてちっさくなってんの」
女剣士「鍛冶師か……放っておいてくれないか」
鍛冶師「会いたくないの?」
女剣士「……ッ 会いたいさ!だけど……!」
鍛冶師「方法が無い?」
女剣士「…… ……」
鍛冶師「そりゃね、そこでそうやってるだけじゃ、何時までたっても会えないよ」
女剣士「じゃ、じゃあどうしたら良いんだよ!アタシは、金も無いし……ッ」
鍛冶師「じゃあ、稼げば良いじゃん」
女剣士「どうやって……!」
鍛冶師「あのさ、自分で考えないと」
鍛冶師「そうやって誰かがやってくれるの待ってても、どうにもならないよ?」
女剣士「…… ……」
鍛冶師「お金が無かったら、稼げば良い。会いたければ会える方法を考えれば良い」
女剣士「……で、でも、どうやって……」
鍛冶師「僕は、応援するっていっただろ?」
鍛冶師「とりあえず……僕の手伝いをしてくれない?」
女剣士「え……?」
鍛冶師「船に港街の資材を積み込むんだ。行くよ」グイッ
女剣士「え、ちょっと!?」
鍛冶師「ほら、さっさとやればさっさと終わる!」
鍛冶師「そうすれば、早く出発できるよ」
女剣士「……」
鍛冶師「身体動かすのは得意だろう?」
730: 2013/05/29(水) 10:34:46.98 ID:rm/OF9w8P
女剣士「そ、そりゃそうだけど……」
鍛冶師「海の魔物にも襲われるんだ。君、腕に自信はあるんだろう」
女剣士「あ、ああ……だけど、アタシは……金が……」
鍛冶師「だから稼げば良いんだって。港街には三週間後、だっけ」
鍛冶師「……さっきの、使用人って子が来るんだ」
鍛冶師「そこで、側近に会える様に頼んでみれば良い」
女剣士「あ……!」
鍛冶師「時間は結構ある。港街の復興の手伝いと、船で戦闘の手助け」
鍛冶師「……ま、魔物退治は給料でるかわかんないけど」
鍛冶師「それから、僕の手伝い」
鍛冶師「……港街までの渡航代は、一端僕が立て替えておく」
女剣士「え?」
鍛冶師「早く終われば早く出発できるし」
鍛冶師「そうすれば、早く港街に着くだろ?」
鍛冶師「で……稼いだ分でさ、返してくれたら良い」
女剣士「……い、良いのか?」
鍛冶師「ああ。足りなければ、それは……僕の依頼分って事で良い」
女剣士「お前の……依頼、と言うのはなんだ?」
鍛冶師「僕も側近に会ってみたいんだ。話を聞きたい」
女剣士「え……?」
鍛冶師「まあ、使用人でも良いんだけどね」
女剣士「??」
鍛冶師「その話はおいおいするよ。とりあえず、さっさとやっちゃおう!」
女剣士「……あ、ああ!」
……
………
…………
鍛冶師「海の魔物にも襲われるんだ。君、腕に自信はあるんだろう」
女剣士「あ、ああ……だけど、アタシは……金が……」
鍛冶師「だから稼げば良いんだって。港街には三週間後、だっけ」
鍛冶師「……さっきの、使用人って子が来るんだ」
鍛冶師「そこで、側近に会える様に頼んでみれば良い」
女剣士「あ……!」
鍛冶師「時間は結構ある。港街の復興の手伝いと、船で戦闘の手助け」
鍛冶師「……ま、魔物退治は給料でるかわかんないけど」
鍛冶師「それから、僕の手伝い」
鍛冶師「……港街までの渡航代は、一端僕が立て替えておく」
女剣士「え?」
鍛冶師「早く終われば早く出発できるし」
鍛冶師「そうすれば、早く港街に着くだろ?」
鍛冶師「で……稼いだ分でさ、返してくれたら良い」
女剣士「……い、良いのか?」
鍛冶師「ああ。足りなければ、それは……僕の依頼分って事で良い」
女剣士「お前の……依頼、と言うのはなんだ?」
鍛冶師「僕も側近に会ってみたいんだ。話を聞きたい」
女剣士「え……?」
鍛冶師「まあ、使用人でも良いんだけどね」
女剣士「??」
鍛冶師「その話はおいおいするよ。とりあえず、さっさとやっちゃおう!」
女剣士「……あ、ああ!」
……
………
…………
731: 2013/05/29(水) 10:43:53.36 ID:rm/OF9w8P
使用人「……」シュゥン、スタ
姫「おかえりなさい、使用人」
使用人「姫様……ただいま、戻りました。が……あの、何を?」
姫「見ての通りよ。庭のお手入れ」
使用人「お体は……?」
姫「土いじりは、前に魔王がやってくれたわ。簡単な植え替えや選定ぐらいなら」
姫「大丈夫……疲れたら、休んでるし」
使用人「そう、ですか」
姫「……不思議ね」
使用人「え?」
姫「側近が持って帰ってくれた魔除けの石は割れてしまったのに」
姫「……魔王の魔力は、落ち着いている」
使用人「それでも……」
姫「ええ、解ってるわ。傍には寄らない、し……離れた部屋で大人しくしてる」
使用人「……はい」
姫「ごめんなさいね、無茶言って」
使用人「はい?」
姫「教会の事」
使用人「大丈夫ですよ。船長さんにしっかり頼んで来ましたから」
姫「そう……ありがとう」
使用人「陽が落ちれば冷えます。お部屋に戻られた方が……」
姫「そうね……今日はこれぐらいにしておくわ」
使用人「では、あの本お持ちしますね」
姫「……見つかった前編、ね」
使用人「ええ。まさか側近様が持って帰ってくるとは思いませんでしたね」
姫「盗賊が持ってたんですっけ……魔王が、持ち出してたのね」
姫「おかえりなさい、使用人」
使用人「姫様……ただいま、戻りました。が……あの、何を?」
姫「見ての通りよ。庭のお手入れ」
使用人「お体は……?」
姫「土いじりは、前に魔王がやってくれたわ。簡単な植え替えや選定ぐらいなら」
姫「大丈夫……疲れたら、休んでるし」
使用人「そう、ですか」
姫「……不思議ね」
使用人「え?」
姫「側近が持って帰ってくれた魔除けの石は割れてしまったのに」
姫「……魔王の魔力は、落ち着いている」
使用人「それでも……」
姫「ええ、解ってるわ。傍には寄らない、し……離れた部屋で大人しくしてる」
使用人「……はい」
姫「ごめんなさいね、無茶言って」
使用人「はい?」
姫「教会の事」
使用人「大丈夫ですよ。船長さんにしっかり頼んで来ましたから」
姫「そう……ありがとう」
使用人「陽が落ちれば冷えます。お部屋に戻られた方が……」
姫「そうね……今日はこれぐらいにしておくわ」
使用人「では、あの本お持ちしますね」
姫「……見つかった前編、ね」
使用人「ええ。まさか側近様が持って帰ってくるとは思いませんでしたね」
姫「盗賊が持ってたんですっけ……魔王が、持ち出してたのね」
732: 2013/05/29(水) 10:47:12.99 ID:rm/OF9w8P
使用人「明日、港街へ行ってきます」
姫「え?」
使用人「教会の完成まではもう少し掛かるでしょうが……」
使用人「魔除けの石を、作って頂いてきます」
姫「……貴女も、疲れているでしょうに」
使用人「名こそ頂きませんでしたが……側近様の変わりですから」
姫「……」
使用人「式を挙げるには、必要でしょう?」
姫「……そう、ね」
使用人「本を取りに行って参ります。姫様はお部屋でお待ちを」
姫「魔王に近づいて、大丈夫?」
使用人「側近様が戻られましたから大丈夫ですよ」
使用人「……本をお持ちしたら、食事の準備をしますね」
姫「ええ……解ったわ」
姫「え?」
使用人「教会の完成まではもう少し掛かるでしょうが……」
使用人「魔除けの石を、作って頂いてきます」
姫「……貴女も、疲れているでしょうに」
使用人「名こそ頂きませんでしたが……側近様の変わりですから」
姫「……」
使用人「式を挙げるには、必要でしょう?」
姫「……そう、ね」
使用人「本を取りに行って参ります。姫様はお部屋でお待ちを」
姫「魔王に近づいて、大丈夫?」
使用人「側近様が戻られましたから大丈夫ですよ」
使用人「……本をお持ちしたら、食事の準備をしますね」
姫「ええ……解ったわ」
737: 2013/05/29(水) 13:11:43.69 ID:rm/OF9w8P
……
………
…………
側近「チェックメイト」
魔王「ま、待て!」
側近「待たネェよ……お前、本当に弱いな」
魔王「糞……もう一回だ!」
側近「またぁ?」
コンコン、カチャ
使用人「失礼致します……何やってるんです?」
側近「おう、使用人ちゃんか」
魔王「ほら、側近早く!」
使用人「……お食事、お持ちしましたけれど」
使用人「飯だってよ、魔王様」
魔王「……食ったらもう一度だ」
使用人「チェス、ですか……」
側近「いやぁ、魔王様……びっくりするぐらい弱くてな」
魔王「うるさい!」
使用人「暢気ですね……ああ、そうだ側近様」
側近「いや、だってやる事無いんだもん。ん?」
使用人「持ち帰られた本、お借りしてよろしいですか?」
側近「ああ、良いだろう……なあ?」
魔王「ん?ああ……好きにしろ。使用人が読むのか」
使用人「私も拝見しますが……姫様が」
側近「そりゃ、暇つぶしも必要だわな」
使用人「それから、私は明日港街に向かいます」
魔王「さっき帰ったばかりだろう?」
………
…………
側近「チェックメイト」
魔王「ま、待て!」
側近「待たネェよ……お前、本当に弱いな」
魔王「糞……もう一回だ!」
側近「またぁ?」
コンコン、カチャ
使用人「失礼致します……何やってるんです?」
側近「おう、使用人ちゃんか」
魔王「ほら、側近早く!」
使用人「……お食事、お持ちしましたけれど」
使用人「飯だってよ、魔王様」
魔王「……食ったらもう一度だ」
使用人「チェス、ですか……」
側近「いやぁ、魔王様……びっくりするぐらい弱くてな」
魔王「うるさい!」
使用人「暢気ですね……ああ、そうだ側近様」
側近「いや、だってやる事無いんだもん。ん?」
使用人「持ち帰られた本、お借りしてよろしいですか?」
側近「ああ、良いだろう……なあ?」
魔王「ん?ああ……好きにしろ。使用人が読むのか」
使用人「私も拝見しますが……姫様が」
側近「そりゃ、暇つぶしも必要だわな」
使用人「それから、私は明日港街に向かいます」
魔王「さっき帰ったばかりだろう?」
738: 2013/05/29(水) 13:16:53.66 ID:rm/OF9w8P
使用人「ご存じでしたか」
魔王「気配を感じたからな」
側近「船長には無事に会えたんだろ?」
使用人「はい。三週間位で、港街に戻ると言うお話でした」
魔王「明日、は何故だ?」
使用人「魔除けの石を準備して頂こうかと」
使用人「後……諸々」
魔王「そうか」
側近「玉座の間の奥の部屋の様子も見ておいてくれるか?」
使用人「はい……準備は整えておきます」
魔王「……姫の様子はどうだ」
使用人「庭いじりをされて居ましたよ」
魔王「そうか……何か必要なものがあれば、揃えてやってくれ」
使用人「はい。では失礼致します」
使用人「お食事が済んだ頃に、また参ります」
使用人「……本、お借りします」
スタスタ。パタン
側近「……甘やかし過ぎじゃネェの。今に始まった事じゃ無いけど」
魔王「姫か」
側近「他に誰が居るの」
魔王「仕方あるまい。あの……エルフの森の傍で、会ってしまったからな」
側近「惚れるなよ、て何度も言っただろ?」
魔王「気配を感じたからな」
側近「船長には無事に会えたんだろ?」
使用人「はい。三週間位で、港街に戻ると言うお話でした」
魔王「明日、は何故だ?」
使用人「魔除けの石を準備して頂こうかと」
使用人「後……諸々」
魔王「そうか」
側近「玉座の間の奥の部屋の様子も見ておいてくれるか?」
使用人「はい……準備は整えておきます」
魔王「……姫の様子はどうだ」
使用人「庭いじりをされて居ましたよ」
魔王「そうか……何か必要なものがあれば、揃えてやってくれ」
使用人「はい。では失礼致します」
使用人「お食事が済んだ頃に、また参ります」
使用人「……本、お借りします」
スタスタ。パタン
側近「……甘やかし過ぎじゃネェの。今に始まった事じゃ無いけど」
魔王「姫か」
側近「他に誰が居るの」
魔王「仕方あるまい。あの……エルフの森の傍で、会ってしまったからな」
側近「惚れるなよ、て何度も言っただろ?」
739: 2013/05/29(水) 13:28:43.24 ID:rm/OF9w8P
魔王「阿呆。そんなんじゃ無いって言ってるだろう」
側近「じゃあ、何なんだよ」
魔王「……なんだろうな」
側近「好きなんじゃ無いのか?そりゃ、最初は利用するつもりだったのかもしれんが」
側近「……妻の座に、今……態々、つける理由は何なんだよ」
魔王「姫は、私の為に嘘を吐いた」
側近「ん?」
魔王「エルフは嘘を吐けない。本当になってしまうから」
側近「……」
魔王「魔導の街で、盗賊に問われた時に」
魔王「あいつは、怪しまれない為に……私達は夫婦だと。そう言ったんだ」
側近「だから、叶えてやらなけりゃならん、てか?」
魔王「姫は大事な存在だ。だが……それが愛かと問われると肯定はできん」
側近「否定もできない、てか」
魔王「できるだけの事はしてやりたい。巻き込んでしまった責任はあるだろう」
側近「向こうも好きでついてきたんだろ。責任は半々じゃね」
魔王「……反対なのか?」
側近「そうじゃネェよ。言っても聞かない、てのも解ってるけどな」
側近「お前の命令は絶対だ、魔王様」
側近「それが、俺の意思だ。使用人ちゃんも同じだと思うぜ?」
魔王「……おかしな話だ」
側近「ん?」
魔王「元人間のお前達が……私の一番傍に居る、とはな」
側近「じゃあ、何なんだよ」
魔王「……なんだろうな」
側近「好きなんじゃ無いのか?そりゃ、最初は利用するつもりだったのかもしれんが」
側近「……妻の座に、今……態々、つける理由は何なんだよ」
魔王「姫は、私の為に嘘を吐いた」
側近「ん?」
魔王「エルフは嘘を吐けない。本当になってしまうから」
側近「……」
魔王「魔導の街で、盗賊に問われた時に」
魔王「あいつは、怪しまれない為に……私達は夫婦だと。そう言ったんだ」
側近「だから、叶えてやらなけりゃならん、てか?」
魔王「姫は大事な存在だ。だが……それが愛かと問われると肯定はできん」
側近「否定もできない、てか」
魔王「できるだけの事はしてやりたい。巻き込んでしまった責任はあるだろう」
側近「向こうも好きでついてきたんだろ。責任は半々じゃね」
魔王「……反対なのか?」
側近「そうじゃネェよ。言っても聞かない、てのも解ってるけどな」
側近「お前の命令は絶対だ、魔王様」
側近「それが、俺の意思だ。使用人ちゃんも同じだと思うぜ?」
魔王「……おかしな話だ」
側近「ん?」
魔王「元人間のお前達が……私の一番傍に居る、とはな」
740: 2013/05/29(水) 13:39:21.65 ID:rm/OF9w8P
側近「……」
魔王「物心つく頃には、お前が居たからな」
魔王「まさか元人間だとは思わなかったが」
側近「お前は本を読むのも好きだったしな。何時か聞いてくるだろうと思ってたんだよ」
側近「それが、俺に回復されても『ありがとう』だけだしなぁ」
魔王「側近は側近だからな。元が人間であろうが、何だろうが別に気にならん」
側近「……そうか」
魔王「一ヶ月、程か」
側近「ん?」
魔王「……姫と、港街に出向くまで、だ」
側近「それまで、無茶はすんなよ。折角なんだから」
魔王「解ってる」
側近「……こんなのんびり出来る様になる時が来る、方が」
側近「俺にはびっくりだよ」
魔王「何時も忙しそうだもんな、お前」
側近「誰の所為だと思ってんだよ!」
魔王「親父も、一緒だったか?」
側近「……俺に勝ったら教えてやるよ。ほれ」
側近「もう一回勝負するんだろ?」
魔王「良し……次は負けんぞ!」
……
………
…………
姫(光に選ばれた運命の子、勇者……が、魔王を倒すお話、ね)ペラ
姫(結構なボリュームがあるのね……全部読むのは、時間が掛かりそう)ペラ
魔王「物心つく頃には、お前が居たからな」
魔王「まさか元人間だとは思わなかったが」
側近「お前は本を読むのも好きだったしな。何時か聞いてくるだろうと思ってたんだよ」
側近「それが、俺に回復されても『ありがとう』だけだしなぁ」
魔王「側近は側近だからな。元が人間であろうが、何だろうが別に気にならん」
側近「……そうか」
魔王「一ヶ月、程か」
側近「ん?」
魔王「……姫と、港街に出向くまで、だ」
側近「それまで、無茶はすんなよ。折角なんだから」
魔王「解ってる」
側近「……こんなのんびり出来る様になる時が来る、方が」
側近「俺にはびっくりだよ」
魔王「何時も忙しそうだもんな、お前」
側近「誰の所為だと思ってんだよ!」
魔王「親父も、一緒だったか?」
側近「……俺に勝ったら教えてやるよ。ほれ」
側近「もう一回勝負するんだろ?」
魔王「良し……次は負けんぞ!」
……
………
…………
姫(光に選ばれた運命の子、勇者……が、魔王を倒すお話、ね)ペラ
姫(結構なボリュームがあるのね……全部読むのは、時間が掛かりそう)ペラ
741: 2013/05/29(水) 13:53:20.54 ID:rm/OF9w8P
姫(……『少年は、王の部屋と言うには粗末な装飾で飾られた部屋へと通された』)
姫(『道中、ちらと見た外観も、お世辞にも立派とは言えず、内部の廊下も』)
姫(『豪華と言うには物足りない物だった。塵一つ落ちていないのは流石、掃除が行き届き』)
姫(『清潔に保たれている様子は見て取れたが、これが所謂王城かと思うと』)
姫(『少年の心に、小さな不安が浮かぶのも無理はなかった』……)
コンコン
姫「はい?」
使用人「失礼致します、姫様」カチャ
姫「ああ……もう、行くの?」
使用人「ええ、何かご用はありますか?」
姫「いいえ……大丈夫よ。ある程度の事は自分でするわ」
使用人「食事の支度などは、使い魔に言いつけてあります」
使用人「数日で戻るつもりですが……」
姫「解ったわ……私は、この本読んで暇つぶしてる」
使用人「……雨、早くあがると良いですね」
姫「そうね。そしたら、庭に出れるんだけど」
使用人「なるべく早く、戻ります。くれぐれも無理はなさいません様に」
姫「ええ……気をつけて行ってらっしゃい」
使用人「はい。それでは失礼致します」
カチャ……パタン
姫「……」
姫(どこまで読んだかしら……ええと)
姫(『少年は先日、15歳の誕生日を迎えたばかりだった』)
姫(『母親手作りのケーキと、普段より贅沢な食事。そして』)
姫(『笑顔で告げられる、お誕生日おめでとうの言葉が少年の心を満たした』)
姫(『母親から常に言い聞かされてきた、勇者の二文字も』)
姫(『この時の少年には、誇らしく感じられるばかりだった』)
姫(『道中、ちらと見た外観も、お世辞にも立派とは言えず、内部の廊下も』)
姫(『豪華と言うには物足りない物だった。塵一つ落ちていないのは流石、掃除が行き届き』)
姫(『清潔に保たれている様子は見て取れたが、これが所謂王城かと思うと』)
姫(『少年の心に、小さな不安が浮かぶのも無理はなかった』……)
コンコン
姫「はい?」
使用人「失礼致します、姫様」カチャ
姫「ああ……もう、行くの?」
使用人「ええ、何かご用はありますか?」
姫「いいえ……大丈夫よ。ある程度の事は自分でするわ」
使用人「食事の支度などは、使い魔に言いつけてあります」
使用人「数日で戻るつもりですが……」
姫「解ったわ……私は、この本読んで暇つぶしてる」
使用人「……雨、早くあがると良いですね」
姫「そうね。そしたら、庭に出れるんだけど」
使用人「なるべく早く、戻ります。くれぐれも無理はなさいません様に」
姫「ええ……気をつけて行ってらっしゃい」
使用人「はい。それでは失礼致します」
カチャ……パタン
姫「……」
姫(どこまで読んだかしら……ええと)
姫(『少年は先日、15歳の誕生日を迎えたばかりだった』)
姫(『母親手作りのケーキと、普段より贅沢な食事。そして』)
姫(『笑顔で告げられる、お誕生日おめでとうの言葉が少年の心を満たした』)
姫(『母親から常に言い聞かされてきた、勇者の二文字も』)
姫(『この時の少年には、誇らしく感じられるばかりだった』)
742: 2013/05/29(水) 14:19:46.40 ID:rm/OF9w8P
……
………
…………
シュウン……スタ!
使用人「ここは……」キョロ
使用人(ああ、港の外れ……ですか)
使用人(丘の上……と、側近様言ってましたね)スタスタ
女「こちらでよろしいですか、神父様」
神父「ええと……はい、そうですね。後……む?」チラ
神父「……!」
使用人「……」ペコ。スタスタ
女「まあ、少女……いえ、使用人さん、でしたね、今」
使用人「お久しぶりです。女さん」
神父「使用人……さん、貴女が、ですか……」
使用人「貴方が、魔除けの石を作られたのですね?」
神父「側近さんから、お聞きになった、のですね」
使用人「はい……使用人と申します」
神父「元人間で……今は魔族になられたと言う」
神父「……魔導の街の出身の方」
使用人「……そうです」
神父「…… ……神父、と申します」
女「どうしたのですか、使用人さん……今日は、側近さんは?」
使用人「側近様は……魔王様の傍から離れられません」
女「え?」
使用人「……盗賊さんは、どこにいらっしゃいますか?」
女「街の方に居ると思います。毎日……忙しく走り回っていらっしゃいます」
女「それより、あの……魔王様は、どう……?」
使用人「……ご説明の前に、盗賊さんを呼んできて頂けませんか?」
………
…………
シュウン……スタ!
使用人「ここは……」キョロ
使用人(ああ、港の外れ……ですか)
使用人(丘の上……と、側近様言ってましたね)スタスタ
女「こちらでよろしいですか、神父様」
神父「ええと……はい、そうですね。後……む?」チラ
神父「……!」
使用人「……」ペコ。スタスタ
女「まあ、少女……いえ、使用人さん、でしたね、今」
使用人「お久しぶりです。女さん」
神父「使用人……さん、貴女が、ですか……」
使用人「貴方が、魔除けの石を作られたのですね?」
神父「側近さんから、お聞きになった、のですね」
使用人「はい……使用人と申します」
神父「元人間で……今は魔族になられたと言う」
神父「……魔導の街の出身の方」
使用人「……そうです」
神父「…… ……神父、と申します」
女「どうしたのですか、使用人さん……今日は、側近さんは?」
使用人「側近様は……魔王様の傍から離れられません」
女「え?」
使用人「……盗賊さんは、どこにいらっしゃいますか?」
女「街の方に居ると思います。毎日……忙しく走り回っていらっしゃいます」
女「それより、あの……魔王様は、どう……?」
使用人「……ご説明の前に、盗賊さんを呼んできて頂けませんか?」
743: 2013/05/29(水) 14:26:24.67 ID:rm/OF9w8P
使用人「お使いだてして申し訳ありませんが、余り……私の様な者が」
使用人「街へ行かない方が良いでしょう」
神父「私が、呼んで参りましょう」
女「あ、いえ、私が……」
神父「……お知り合い、でしょう?」
神父「どうぞ、お話していてください。すぐに戻りますよ」スタスタ
使用人「ありがとうございます……すみません」
女「あ、あの……」
使用人「今日は、お願いがあって参りました。神父さんと……女さんに」
女「私にも、ですか?」
使用人「詳しくは、二人が戻られ次第お話します」
使用人「……お加減は、如何です?」
女「……特に、変わりはありませんよ。皆様、良くして頂いて居ます」
使用人「そうですか……良かった」
女「……」
使用人「そんなに、不安そうな顔をしないで下さい。今現在、魔王様は元気ですよ」
女「あ……す、すみません」
使用人「……」
女「姫様は……?」
使用人「少し、お腹が目立って来ましたね」
女「もうすぐ……いえ、随分、時間が掛かるのでしたね」
使用人「そう……ですね」
女「……」
使用人「……」
使用人「……魔除けの石、は」
女「え?」
使用人「神父さん、が作られたのですね?」
使用人「街へ行かない方が良いでしょう」
神父「私が、呼んで参りましょう」
女「あ、いえ、私が……」
神父「……お知り合い、でしょう?」
神父「どうぞ、お話していてください。すぐに戻りますよ」スタスタ
使用人「ありがとうございます……すみません」
女「あ、あの……」
使用人「今日は、お願いがあって参りました。神父さんと……女さんに」
女「私にも、ですか?」
使用人「詳しくは、二人が戻られ次第お話します」
使用人「……お加減は、如何です?」
女「……特に、変わりはありませんよ。皆様、良くして頂いて居ます」
使用人「そうですか……良かった」
女「……」
使用人「そんなに、不安そうな顔をしないで下さい。今現在、魔王様は元気ですよ」
女「あ……す、すみません」
使用人「……」
女「姫様は……?」
使用人「少し、お腹が目立って来ましたね」
女「もうすぐ……いえ、随分、時間が掛かるのでしたね」
使用人「そう……ですね」
女「……」
使用人「……」
使用人「……魔除けの石、は」
女「え?」
使用人「神父さん、が作られたのですね?」
744: 2013/05/29(水) 14:40:01.51 ID:rm/OF9w8P
女「え、ええ。そうです。私では……あんなに、清浄な物は……」
使用人「すぐに、作れるのですか?」
女「随分、体力を使われますから……どうでしょう」
女「こんな言い方をしては随分偉そうですが、凄く上手になられました」
女「コツも掴まれたようですし……」
使用人「そうですか……」
女「この分では、数ヶ月すれば出荷できるかも知れませんね」
女「神父様は、商売にするのは嫌がっておいでですが……あ」
盗賊「ほら、神父さん、早く!」パタパタ
神父「さ、先に行ってください、盗賊さん……」ハァハァ
使用人「相変わらずですね」クス
女「……貴女は、変わりましたね」
使用人「え?」
女「見た目こそ……変わらないけれど」
女「……」
使用人「船長さんにも言われました」
女「今の環境が、あっているのでしょうね」
使用人「そうかも知れませんね」
盗賊「少女ー!ひさしぶりだな!」ダキッ
使用人「……ッ お久しぶりです、盗賊さん。私は……今は、使用人と言う名です」
神父「はあ……お待たせしました」
女「だ、大丈夫ですか、神父様……盗賊、もう……!」
神父「いえいえ、平気ですよ……喜ぶ気持ちも分かります」
盗賊「珍しいなぁ、しょ……えっと、使用人か」
盗賊「側近はどうしたんだ?」
使用人「すぐに、作れるのですか?」
女「随分、体力を使われますから……どうでしょう」
女「こんな言い方をしては随分偉そうですが、凄く上手になられました」
女「コツも掴まれたようですし……」
使用人「そうですか……」
女「この分では、数ヶ月すれば出荷できるかも知れませんね」
女「神父様は、商売にするのは嫌がっておいでですが……あ」
盗賊「ほら、神父さん、早く!」パタパタ
神父「さ、先に行ってください、盗賊さん……」ハァハァ
使用人「相変わらずですね」クス
女「……貴女は、変わりましたね」
使用人「え?」
女「見た目こそ……変わらないけれど」
女「……」
使用人「船長さんにも言われました」
女「今の環境が、あっているのでしょうね」
使用人「そうかも知れませんね」
盗賊「少女ー!ひさしぶりだな!」ダキッ
使用人「……ッ お久しぶりです、盗賊さん。私は……今は、使用人と言う名です」
神父「はあ……お待たせしました」
女「だ、大丈夫ですか、神父様……盗賊、もう……!」
神父「いえいえ、平気ですよ……喜ぶ気持ちも分かります」
盗賊「珍しいなぁ、しょ……えっと、使用人か」
盗賊「側近はどうしたんだ?」
745: 2013/05/29(水) 14:55:05.18 ID:rm/OF9w8P
使用人「……」
盗賊「使用人?」
使用人「側近様は、今……魔王様の傍を離れられません」
盗賊「え?」
神父「先ほども仰ってましたが……どういう意味です?」
神父「それに……その話は、私達が聞いて良い物なのですか」
女「使用人さんは、私と神父様にお願いがあって来たと……仰いましたね」
使用人「はい。側近様から、貴方達にある程度の話はしたと聞いています」
使用人「知識があるとの前提でお話しします」
使用人「……魔王様の力は、あり得ない程強くなっています」
盗賊「それが……側近とどう……?」
使用人「側近様は魔王様の目をお持ちです。魔王様曰く……」
使用人「『私の全てが揃えば、大丈夫』なのだとか」
盗賊「それで……城から出れないのか。姫は大丈夫なのか?」
使用人「今はまだ、ペンダントがあります。ただ……魔王様の様子を考えると」
使用人「備えがあれば安心かと思いまして」
神父「魔除けの石をご所望、ですか」
使用人「はい……以前頂いた物は、魔王様が触れた途端に……」
神父「まさか……壊れた?」
使用人「はい。 ……申し訳ありません」
女「……」
神父「いえ……謝る必要はありません。そう、ですか……」
盗賊「この間、側近が癒やしの石持って帰ったろ?」
使用人「……癒やしの石では、もう役に立たないのですよ」
盗賊「え!?」
使用人「城にある半分以上が、紫に染まってしまい」
使用人「もう……役に立たないのです」
盗賊「使用人?」
使用人「側近様は、今……魔王様の傍を離れられません」
盗賊「え?」
神父「先ほども仰ってましたが……どういう意味です?」
神父「それに……その話は、私達が聞いて良い物なのですか」
女「使用人さんは、私と神父様にお願いがあって来たと……仰いましたね」
使用人「はい。側近様から、貴方達にある程度の話はしたと聞いています」
使用人「知識があるとの前提でお話しします」
使用人「……魔王様の力は、あり得ない程強くなっています」
盗賊「それが……側近とどう……?」
使用人「側近様は魔王様の目をお持ちです。魔王様曰く……」
使用人「『私の全てが揃えば、大丈夫』なのだとか」
盗賊「それで……城から出れないのか。姫は大丈夫なのか?」
使用人「今はまだ、ペンダントがあります。ただ……魔王様の様子を考えると」
使用人「備えがあれば安心かと思いまして」
神父「魔除けの石をご所望、ですか」
使用人「はい……以前頂いた物は、魔王様が触れた途端に……」
神父「まさか……壊れた?」
使用人「はい。 ……申し訳ありません」
女「……」
神父「いえ……謝る必要はありません。そう、ですか……」
盗賊「この間、側近が癒やしの石持って帰ったろ?」
使用人「……癒やしの石では、もう役に立たないのですよ」
盗賊「え!?」
使用人「城にある半分以上が、紫に染まってしまい」
使用人「もう……役に立たないのです」
746: 2013/05/29(水) 16:01:20.50 ID:rm/OF9w8P
神父「なんと……」
使用人「……このまま、魔力が膨張し、もし……暴走でもすれば」
盗賊「そ、そんな事になったら、姫は……!」
使用人「姫様だけではありません……世界が、終わります」
女「……」
神父「……世界が、終わる」
盗賊「な、なんでだよ!?そんな……!」
使用人「そういう可能性もある、ですが」
女「それで……姫様を守る為に、魔除けの石を?」
使用人「それだけではありません。もしかしたら、魔王様のお力を」
使用人「押さえる事もできるか……と」
神父「ふむ……」
盗賊「で、でも……壊れた、んだろう」
使用人「数の勝負、になりますが……」
神父「世界の破滅、等と聞かされてしまうと拒否する事もできませんね」
使用人「……解っていて申し上げている事は否定致しません」
盗賊「そんなに、悪い、のか。いや、悪いとかじゃネェじゃ」
盗賊「ええと……」
使用人「勿論、癒やしの石もお願いしたいんです。本当に……」
使用人「気休めにしかならないんですが……」
神父「しかし、私も歳です。それ程量産できる訳ではありませんよ」
神父「時間も、掛かります」
使用人「数日はお世話になります。宿はある……のですよね?」
盗賊「うちに泊まれば良いさ。女も……良いよな?」
女「え、ええ……それは、勿論」
使用人「……このまま、魔力が膨張し、もし……暴走でもすれば」
盗賊「そ、そんな事になったら、姫は……!」
使用人「姫様だけではありません……世界が、終わります」
女「……」
神父「……世界が、終わる」
盗賊「な、なんでだよ!?そんな……!」
使用人「そういう可能性もある、ですが」
女「それで……姫様を守る為に、魔除けの石を?」
使用人「それだけではありません。もしかしたら、魔王様のお力を」
使用人「押さえる事もできるか……と」
神父「ふむ……」
盗賊「で、でも……壊れた、んだろう」
使用人「数の勝負、になりますが……」
神父「世界の破滅、等と聞かされてしまうと拒否する事もできませんね」
使用人「……解っていて申し上げている事は否定致しません」
盗賊「そんなに、悪い、のか。いや、悪いとかじゃネェじゃ」
盗賊「ええと……」
使用人「勿論、癒やしの石もお願いしたいんです。本当に……」
使用人「気休めにしかならないんですが……」
神父「しかし、私も歳です。それ程量産できる訳ではありませんよ」
神父「時間も、掛かります」
使用人「数日はお世話になります。宿はある……のですよね?」
盗賊「うちに泊まれば良いさ。女も……良いよな?」
女「え、ええ……それは、勿論」
747: 2013/05/29(水) 16:22:29.80 ID:rm/OF9w8P
使用人「ありがとうございます」
使用人「それから……船長さんにはもう伝えたのですが」
盗賊「え……船長に会ったのか?」
使用人「ええ、こちらに来る前に、鍛冶師の村に寄って参りました」
盗賊「! そ、そうか……」
使用人「ここの教会の完成を急いで貰う為です」
神父「この? ……何故です」
使用人「魔王様と、姫様が……ここで、式を挙げられるのだと」
女「結婚式、ですか……」
使用人「はい……姫様のご希望で」
神父「……成る程。それも、貴女がここに来られた理由、ですか」
使用人「はい」
神父「失礼ながら。魔王にしてもそうですが……貴女も、側近さんも」
神父「どうして、その姫さんに……そこまで」
使用人「……私と、側近様は『魔王様が望まれるから』でしょうね」
神父「主だから、ですか」
使用人「はい」
神父「……主は絶対、ですか」
使用人「はい」
神父「……」
使用人「魔王様は……式の後、とある場所に姫様を眠らせると仰られています」
女「え……?」
使用人「その後、ご自分も封印の為、眠りに着くおつもりです」
神父「何故……ですか。何故そのような……」
使用人「長い月日が流れれば、ご自分を倒してくれる勇者が現れるかもしれないと」
女「!」
使用人「そうすれば、その後、姫様に……産まれて来るお子様に」
使用人「魔王様が好きだと言う……美しい世界を見せてやれるから、と」
盗賊「……」
神父「その子供、と言うのは……魔王の子では無いと側近さんから聞いていますが」
使用人「ええ……魔王様の世代交代の事は?」
神父「聞きましたよ。力を継承していく、のですよね?」
使用人「それから……船長さんにはもう伝えたのですが」
盗賊「え……船長に会ったのか?」
使用人「ええ、こちらに来る前に、鍛冶師の村に寄って参りました」
盗賊「! そ、そうか……」
使用人「ここの教会の完成を急いで貰う為です」
神父「この? ……何故です」
使用人「魔王様と、姫様が……ここで、式を挙げられるのだと」
女「結婚式、ですか……」
使用人「はい……姫様のご希望で」
神父「……成る程。それも、貴女がここに来られた理由、ですか」
使用人「はい」
神父「失礼ながら。魔王にしてもそうですが……貴女も、側近さんも」
神父「どうして、その姫さんに……そこまで」
使用人「……私と、側近様は『魔王様が望まれるから』でしょうね」
神父「主だから、ですか」
使用人「はい」
神父「……主は絶対、ですか」
使用人「はい」
神父「……」
使用人「魔王様は……式の後、とある場所に姫様を眠らせると仰られています」
女「え……?」
使用人「その後、ご自分も封印の為、眠りに着くおつもりです」
神父「何故……ですか。何故そのような……」
使用人「長い月日が流れれば、ご自分を倒してくれる勇者が現れるかもしれないと」
女「!」
使用人「そうすれば、その後、姫様に……産まれて来るお子様に」
使用人「魔王様が好きだと言う……美しい世界を見せてやれるから、と」
盗賊「……」
神父「その子供、と言うのは……魔王の子では無いと側近さんから聞いていますが」
使用人「ええ……魔王様の世代交代の事は?」
神父「聞きましたよ。力を継承していく、のですよね?」
748: 2013/05/29(水) 16:43:59.75 ID:rm/OF9w8P
使用人「はい……世継ぎが居ない以上、魔王様を倒せるであろう者は」
使用人「今の段階では居ないのです。それこそ……勇者様でもお生まれにならないかぎり」
神父「……」
盗賊「……」
女「……」
使用人「……」
神父「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか。少し……話は逸れますが」
使用人「え?ええ……なんでしょう」
神父「魔王の属性というのは……何なのです?」
神父「紫の瞳を持ち、様々な属性の魔法を使えると聞いております」
盗賊「それは確かだ。魔王は……魔導将軍を頃す時、姫の姿で……」
盗賊「……俺は間近で見てた。ありゃ……なんて言うか……」
使用人「規格外、ですか」
女「……」
使用人「側近様にも、聞かれたのかもしれませんが」
使用人「解りかねます、としか……」
使用人「しかし、優れた加護はお持ちにならないそうですよ?」
神父「え!?魔王……なのに、ですか」
使用人「姫様から聞いただけ、ですが……嘘では無いでしょう」
盗賊「そうだな。エルフは嘘は吐かない」
使用人「今の段階では居ないのです。それこそ……勇者様でもお生まれにならないかぎり」
神父「……」
盗賊「……」
女「……」
使用人「……」
神父「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか。少し……話は逸れますが」
使用人「え?ええ……なんでしょう」
神父「魔王の属性というのは……何なのです?」
神父「紫の瞳を持ち、様々な属性の魔法を使えると聞いております」
盗賊「それは確かだ。魔王は……魔導将軍を頃す時、姫の姿で……」
盗賊「……俺は間近で見てた。ありゃ……なんて言うか……」
使用人「規格外、ですか」
女「……」
使用人「側近様にも、聞かれたのかもしれませんが」
使用人「解りかねます、としか……」
使用人「しかし、優れた加護はお持ちにならないそうですよ?」
神父「え!?魔王……なのに、ですか」
使用人「姫様から聞いただけ、ですが……嘘では無いでしょう」
盗賊「そうだな。エルフは嘘は吐かない」
749: 2013/05/29(水) 16:53:08.81 ID:rm/OF9w8P
神父「そうですか……そういえば、以前聞きそびれましたね」
神父「魔王、と言うのは……代々、紫の瞳をし」
神父「属性に縛られない存在、なのでしょうか」
使用人「……私には、わかりません。側近様ならご存じかも知れませんが」
女「あの方は、先代様にも仕えていらっしゃったのですよね」
使用人「はい」
盗賊「……わかった、て」
使用人「はい?」
盗賊「解った、て納得しなきゃ行けないのか!?」
女「盗賊……」
盗賊「折角……折角、軌道に乗ってくるって時に!」
盗賊「遊びに来るって、約束したのに……!」
女「……では、その約束を守って頂くためにも」
女「協力、すれば良いでしょう」
神父「女さん……」
女「私からもお願い致します、神父様」
女「……結婚式を、挙げさせて差し上げてください」
神父「……」
使用人「お願い致します」
盗賊「……俺、手開いてる奴探してくる!」タタタッ
神父「あ、盗賊さ……!」
使用人「……」
女「……」
神父「…… ……別に、反対する気はありませんよ」
女「神父様……」
神父「女さんは、よろしいのですか。貴女は……」
女「良いのです」
使用人「……」
神父「魔王、と言うのは……代々、紫の瞳をし」
神父「属性に縛られない存在、なのでしょうか」
使用人「……私には、わかりません。側近様ならご存じかも知れませんが」
女「あの方は、先代様にも仕えていらっしゃったのですよね」
使用人「はい」
盗賊「……わかった、て」
使用人「はい?」
盗賊「解った、て納得しなきゃ行けないのか!?」
女「盗賊……」
盗賊「折角……折角、軌道に乗ってくるって時に!」
盗賊「遊びに来るって、約束したのに……!」
女「……では、その約束を守って頂くためにも」
女「協力、すれば良いでしょう」
神父「女さん……」
女「私からもお願い致します、神父様」
女「……結婚式を、挙げさせて差し上げてください」
神父「……」
使用人「お願い致します」
盗賊「……俺、手開いてる奴探してくる!」タタタッ
神父「あ、盗賊さ……!」
使用人「……」
女「……」
神父「…… ……別に、反対する気はありませんよ」
女「神父様……」
神父「女さんは、よろしいのですか。貴女は……」
女「良いのです」
使用人「……」
750: 2013/05/29(水) 16:59:13.18 ID:rm/OF9w8P
女「魔王様の望みだと言うのであれば、私は……」
女「……良い、のです」
神父「やれやれ……」スタスタ
使用人「神父さん……何処へ?」
神父「私からもお願いして参りましょう。一人より二人、です」スタスタ
女「……」
使用人「……ありがとうございます」
女「……使用人、さん」
使用人「はい?」
女「私に……魔除けの石……と、呼べるかどうか解りませんが」
女「作らせていただけませんか」
使用人「え?」
女「神父様は、私にも魔除けの石を作る様仰っておられました……最初は」
使用人「最初、ですか?」
女「はい……私は、神に仕えると言いながら」
女「心に崇めるのは……ずっと、魔王様でした」
使用人「……」
女「私の、神。 ……それに、私はインキュバスと交わって居ます」
女「寿命も、残り少ない。そんな事を理由に……断っていたのです」
使用人「神父さんはご存じなのですね」
女「ええ。こんな私の作った石では、神聖である筈がありませんから」
女「神父様は……否定はされませんでしたよ」
女「そんな事無いと、言ってはあげたい……とは、言って下さいましたけれど」
使用人「……」
女「でも、だからこそ」
女「……魔王様を想う、私だからこそ」
女「魔王様のお力を押さえるのに、お役に立ちませんか?」
女「……良い、のです」
神父「やれやれ……」スタスタ
使用人「神父さん……何処へ?」
神父「私からもお願いして参りましょう。一人より二人、です」スタスタ
女「……」
使用人「……ありがとうございます」
女「……使用人、さん」
使用人「はい?」
女「私に……魔除けの石……と、呼べるかどうか解りませんが」
女「作らせていただけませんか」
使用人「え?」
女「神父様は、私にも魔除けの石を作る様仰っておられました……最初は」
使用人「最初、ですか?」
女「はい……私は、神に仕えると言いながら」
女「心に崇めるのは……ずっと、魔王様でした」
使用人「……」
女「私の、神。 ……それに、私はインキュバスと交わって居ます」
女「寿命も、残り少ない。そんな事を理由に……断っていたのです」
使用人「神父さんはご存じなのですね」
女「ええ。こんな私の作った石では、神聖である筈がありませんから」
女「神父様は……否定はされませんでしたよ」
女「そんな事無いと、言ってはあげたい……とは、言って下さいましたけれど」
使用人「……」
女「でも、だからこそ」
女「……魔王様を想う、私だからこそ」
女「魔王様のお力を押さえるのに、お役に立ちませんか?」
751: 2013/05/29(水) 17:07:35.64 ID:rm/OF9w8P
使用人「……何時言おうか、と考えて居ました」フゥ
女「え?」
使用人「同じ事を、こちらからお願いするつもりだったのです」
使用人「貴女は、魔王様の為にとお願いすると断らない事は……明白ですから」
女「……城の書庫で、貴女には見られていましたね」
使用人「それだけじゃありませんよ。女さんを見ていれば……魔王様を」
使用人「慕っている事は解ります……娼館に居る時から、でしょう」
女「ああ……そう、ですね。魔導将軍に傷付けられた時」
女「看てくれて居たの……貴女、だった」
使用人「魔王様は……貴女の勇者様でしょう」
女「……はい」
使用人「私が言うのはおかしいのだという事を承知で、聞きます」
使用人「良いんですか?」
女「お役に立てるのでしたら、喜んで」
使用人「寿命を削りますよ」
女「元より……それほどの時間もありません」
使用人「インキュバスの元から帰ってきた時点で、一年です」
使用人「……もし、石を作れば……貴女は……」
女「すぐに、とは思いません。ですが……」
使用人「……」
女「良いんです。魔王様は、私の主。私の……勇者様」
女「同じですよ、使用人さん」
女「魔王様の為ならば……喜んで、差し出しましょう」
使用人「……」
女「使ってください。魔王様の為に」
女「……美しい、世界の為に」グッ
使用人「! 女さ……!」
女「う、ぅ……ッ」コロン……フラ
使用人「……!」ガシ!
女「……魔王様。願えば、叶う……ん、です……よ、ね……」
使用人「女さん!」
女「え?」
使用人「同じ事を、こちらからお願いするつもりだったのです」
使用人「貴女は、魔王様の為にとお願いすると断らない事は……明白ですから」
女「……城の書庫で、貴女には見られていましたね」
使用人「それだけじゃありませんよ。女さんを見ていれば……魔王様を」
使用人「慕っている事は解ります……娼館に居る時から、でしょう」
女「ああ……そう、ですね。魔導将軍に傷付けられた時」
女「看てくれて居たの……貴女、だった」
使用人「魔王様は……貴女の勇者様でしょう」
女「……はい」
使用人「私が言うのはおかしいのだという事を承知で、聞きます」
使用人「良いんですか?」
女「お役に立てるのでしたら、喜んで」
使用人「寿命を削りますよ」
女「元より……それほどの時間もありません」
使用人「インキュバスの元から帰ってきた時点で、一年です」
使用人「……もし、石を作れば……貴女は……」
女「すぐに、とは思いません。ですが……」
使用人「……」
女「良いんです。魔王様は、私の主。私の……勇者様」
女「同じですよ、使用人さん」
女「魔王様の為ならば……喜んで、差し出しましょう」
使用人「……」
女「使ってください。魔王様の為に」
女「……美しい、世界の為に」グッ
使用人「! 女さ……!」
女「う、ぅ……ッ」コロン……フラ
使用人「……!」ガシ!
女「……魔王様。願えば、叶う……ん、です……よ、ね……」
使用人「女さん!」
752: 2013/05/29(水) 17:19:23.97 ID:rm/OF9w8P
使用人(……気を失っている、だけか。良かった)
使用人「盗賊さんの家に……ッ」
使用人「……ありがとうございます。女さん」スタスタ
……
………
…………
船長「……はあ」
女剣士「お願いします!」
鍛冶師「僕からもお願いします」
船長「資材の運び込みと、魔物退治の報酬は微々たるモンだ」
女剣士「船長……」
船長「港街に着いたら、こき使うぜ。女であろうとも、だ」
女剣士「も、勿論だ!体力だけには自信ある!」
船長「心配しなくても頭が切れるタイプには全く見えネェよ」
鍛冶師「船長!」
船長「事実だろ……向こうでの労働の報酬は、後日盗賊から受け取れ」
船長「鍛冶師、渡航代は二人分で……」カキカキ
船長「こんだけ、だ」
鍛冶師「立て替えるだけだ。後できっちり、返して貰うからね?」
女剣士「勿論だ……ありがとう……!」
鍛冶師「良し……じゃ、これで」
船長「ん……きっちり頂いたぜ。良し、すぐ出発だ」
船長「船室には海賊に案内させる」
女剣士「アタシは甲板にいる!魔物に備えるぜ!」タタタ
船長「……落ち着きの無い女だな」フゥ
鍛冶師「ありがとう、船長」
船長「人手はあって困るもんじゃ無い……しかし、お前も本当に物好きだな」
使用人「盗賊さんの家に……ッ」
使用人「……ありがとうございます。女さん」スタスタ
……
………
…………
船長「……はあ」
女剣士「お願いします!」
鍛冶師「僕からもお願いします」
船長「資材の運び込みと、魔物退治の報酬は微々たるモンだ」
女剣士「船長……」
船長「港街に着いたら、こき使うぜ。女であろうとも、だ」
女剣士「も、勿論だ!体力だけには自信ある!」
船長「心配しなくても頭が切れるタイプには全く見えネェよ」
鍛冶師「船長!」
船長「事実だろ……向こうでの労働の報酬は、後日盗賊から受け取れ」
船長「鍛冶師、渡航代は二人分で……」カキカキ
船長「こんだけ、だ」
鍛冶師「立て替えるだけだ。後できっちり、返して貰うからね?」
女剣士「勿論だ……ありがとう……!」
鍛冶師「良し……じゃ、これで」
船長「ん……きっちり頂いたぜ。良し、すぐ出発だ」
船長「船室には海賊に案内させる」
女剣士「アタシは甲板にいる!魔物に備えるぜ!」タタタ
船長「……落ち着きの無い女だな」フゥ
鍛冶師「ありがとう、船長」
船長「人手はあって困るもんじゃ無い……しかし、お前も本当に物好きだな」
753: 2013/05/29(水) 17:26:44.91 ID:rm/OF9w8P
鍛冶師「魔王の仲間、なんだろう。側近ってのは」
船長「……お前、まさか」
鍛冶師「……」ニッ
船長「魔法剣か! ……なんか企んでやがるとは思ったが」
鍛冶師「利があるならこれぐらいの出費、痛くはないさ」
鍛冶師「まあ……約束は守ってくれるだろうしね、女剣士も」
船長「応援したいとか言ってたくせに、お前は……」
鍛冶師「別に嘘じゃないよ。気持ちは分かるもの」
船長「恋する女の気持ちが、か?」
鍛冶師「……村に来る前に、さ」
船長「?」
鍛冶師「盗賊に……告白したんだ」
船長「は?」
鍛冶師「は、て……」
船長「盗賊に……何をだよ」
鍛冶師「こ、告白って言えば一つしかないだろ!?」
船長「…… ……あ! ……そういえば、お前ら二人揃って顔マッカにしてたな」
鍛冶師「船長……意外と鈍いんだな」
船長「だから、人の色恋なんざ興味ネェって!」
船長「しかし、まあ……お前が盗賊を、ネェ……」
鍛冶師「……別に、良いだろう。良い子だよ、盗賊は」
船長「悪いとは言ってないだろ、良いよ何でも……そんなもん」
船長「なんだ、じゃあ……付き合ってんのか?」
鍛冶師「返事は……まだ貰ってない」
船長「へ!?」
鍛冶師「引っ越しの準備をしたら、港街に戻るから」
鍛冶師「そしたら、聞かせて貰う」
船長「……お前、まさか」
鍛冶師「……」ニッ
船長「魔法剣か! ……なんか企んでやがるとは思ったが」
鍛冶師「利があるならこれぐらいの出費、痛くはないさ」
鍛冶師「まあ……約束は守ってくれるだろうしね、女剣士も」
船長「応援したいとか言ってたくせに、お前は……」
鍛冶師「別に嘘じゃないよ。気持ちは分かるもの」
船長「恋する女の気持ちが、か?」
鍛冶師「……村に来る前に、さ」
船長「?」
鍛冶師「盗賊に……告白したんだ」
船長「は?」
鍛冶師「は、て……」
船長「盗賊に……何をだよ」
鍛冶師「こ、告白って言えば一つしかないだろ!?」
船長「…… ……あ! ……そういえば、お前ら二人揃って顔マッカにしてたな」
鍛冶師「船長……意外と鈍いんだな」
船長「だから、人の色恋なんざ興味ネェって!」
船長「しかし、まあ……お前が盗賊を、ネェ……」
鍛冶師「……別に、良いだろう。良い子だよ、盗賊は」
船長「悪いとは言ってないだろ、良いよ何でも……そんなもん」
船長「なんだ、じゃあ……付き合ってんのか?」
鍛冶師「返事は……まだ貰ってない」
船長「へ!?」
鍛冶師「引っ越しの準備をしたら、港街に戻るから」
鍛冶師「そしたら、聞かせて貰う」
754: 2013/05/29(水) 17:42:03.91 ID:rm/OF9w8P
船長「な、お前……返事もわかんねぇのに、引っ越すのか!?」
鍛冶師「な、何か厭じゃないか!成功したら引っ越しますとか!」
鍛冶師「振られたからって、引っ越しやめる気は別に本当に……無かったし」
船長「はぁ……」
鍛冶師「港街は港街で、気に入ってるんだよ!そ、それに……」
鍛冶師「それだけ……本気なんだよ!僕は!」
船長「お、おう」
鍛冶師「……」
船長「いや、うん……頑張れ……」
鍛冶師「も、もう頑張った後なの!」
船長「いや、まあ……そうか」
鍛冶師「ぼ、僕も部屋に戻るよ!」スタスタ
船長「あ……待て、鍛冶師!」
鍛冶師「な、何?」
船長「……ちょっと相談があるんだが」
鍛冶師「相談?」
船長「今の話で、ちょっとな……思いついたんだが」
鍛冶師「?」
船長「お前さ……始まりの街に住む気はネェか」
鍛冶師「え!?」
船長「港街が気に入ってる、てのは解ってる」
船長「……まあ、そろそろ町長の選出とかもあってだな」
鍛冶師「町長……」
船長「そうだ。俺も含め、住人の殆ども盗賊を押してるんだが」
船長「あいつは断固拒否、なんだ。『俺の器じゃネェ』ってな」
鍛冶師「……盗賊らしいね」
鍛冶師「な、何か厭じゃないか!成功したら引っ越しますとか!」
鍛冶師「振られたからって、引っ越しやめる気は別に本当に……無かったし」
船長「はぁ……」
鍛冶師「港街は港街で、気に入ってるんだよ!そ、それに……」
鍛冶師「それだけ……本気なんだよ!僕は!」
船長「お、おう」
鍛冶師「……」
船長「いや、うん……頑張れ……」
鍛冶師「も、もう頑張った後なの!」
船長「いや、まあ……そうか」
鍛冶師「ぼ、僕も部屋に戻るよ!」スタスタ
船長「あ……待て、鍛冶師!」
鍛冶師「な、何?」
船長「……ちょっと相談があるんだが」
鍛冶師「相談?」
船長「今の話で、ちょっとな……思いついたんだが」
鍛冶師「?」
船長「お前さ……始まりの街に住む気はネェか」
鍛冶師「え!?」
船長「港街が気に入ってる、てのは解ってる」
船長「……まあ、そろそろ町長の選出とかもあってだな」
鍛冶師「町長……」
船長「そうだ。俺も含め、住人の殆ども盗賊を押してるんだが」
船長「あいつは断固拒否、なんだ。『俺の器じゃネェ』ってな」
鍛冶師「……盗賊らしいね」
755: 2013/05/29(水) 17:52:55.72 ID:rm/OF9w8P
船長「実際、あいつは腰軽いからな。魔導の街との交渉役なんかも」
船長「やってくれてるしよ」
鍛冶師「……始まりの街、てのは魔王に言われたからか?」
船長「それもネェとは言わんが……船での流通の範囲を拡大したいってのもある」
船長「定期便も増やしたい。俺や、船の仲間の為にも、な」
鍛冶師「ふむ……けど、それと僕が始まりの街に住むのと」
鍛冶師「何の関係があるんだ?」
船長「始まりの街を本当に再興しようと思えば」
船長「指導者が必要だ。港街を別の人間に任せられるなら」
船長「盗賊の身も、あくだろう?」
鍛冶師「……いや、だから」
船長「だからお前と、盗賊で……だ」
鍛冶師「は!?」
船長「ま……お前らがうまくいったら、て前提だがな」
鍛冶師「……」
船長「別にすぐ答えを出せとは言わネェよ……考えといてくれ」
船長「やってくれてるしよ」
鍛冶師「……始まりの街、てのは魔王に言われたからか?」
船長「それもネェとは言わんが……船での流通の範囲を拡大したいってのもある」
船長「定期便も増やしたい。俺や、船の仲間の為にも、な」
鍛冶師「ふむ……けど、それと僕が始まりの街に住むのと」
鍛冶師「何の関係があるんだ?」
船長「始まりの街を本当に再興しようと思えば」
船長「指導者が必要だ。港街を別の人間に任せられるなら」
船長「盗賊の身も、あくだろう?」
鍛冶師「……いや、だから」
船長「だからお前と、盗賊で……だ」
鍛冶師「は!?」
船長「ま……お前らがうまくいったら、て前提だがな」
鍛冶師「……」
船長「別にすぐ答えを出せとは言わネェよ……考えといてくれ」
764: 2013/05/30(木) 09:22:48.25 ID:nJZbnH5sP
おはようー!
今日もお迎えまで!
今日もお迎えまで!
765: 2013/05/30(木) 09:33:33.96 ID:nJZbnH5sP
鍛冶師「でも、僕は……」
船長「港街が気に入ってる、だろ? ……解ってるよ」
鍛冶師「いや、そうじゃない。それもあるけど」
鍛冶師「盗賊はともかく、だ。僕にこそ、そんな人を纏める、だなんて……」
船長「それは盗賊の仕事だ。お前には……ま、そうだな」
船長「縁の下の力持ち、て奴?」
鍛冶師「……要するに、盗賊を説得しろと言いたいのか」
船長「頭の良い奴は話してて助かるね」ニヤ
鍛冶師「……船長こそ、そういうのに向いてるじゃないか」
船長「俺?」
鍛冶師「そうだよ。なんだかんだ言って、率先して動いてるのも指示出してるのも」
鍛冶師「船長だろう……勿論、盗賊の力もあるんだろうけどさ」
船長「俺は海賊だ。海賊は陸に上がらネェ」
船長「氏ぬ時も海の上が良い……それに」
船長「俺がまとめるのは海賊共だ。率いて行くのも、だ」
鍛冶師「……」
船長「それも陸の上の事を任せる奴が居ないと、立ち行かネェだろ?」
鍛冶師「……考えておく」
船長「おう。だが、忘れるなよ?」
鍛冶師「?」
船長「お前さんには断る権利もある。盗賊にもな」
船長「この話は……俺の理想、だ」
鍛冶師「……やっぱ優しいね、船長は」
船長「買いかぶるな。俺たち海賊共の未来の利を考えてるだけさ」
船長「港街が気に入ってる、だろ? ……解ってるよ」
鍛冶師「いや、そうじゃない。それもあるけど」
鍛冶師「盗賊はともかく、だ。僕にこそ、そんな人を纏める、だなんて……」
船長「それは盗賊の仕事だ。お前には……ま、そうだな」
船長「縁の下の力持ち、て奴?」
鍛冶師「……要するに、盗賊を説得しろと言いたいのか」
船長「頭の良い奴は話してて助かるね」ニヤ
鍛冶師「……船長こそ、そういうのに向いてるじゃないか」
船長「俺?」
鍛冶師「そうだよ。なんだかんだ言って、率先して動いてるのも指示出してるのも」
鍛冶師「船長だろう……勿論、盗賊の力もあるんだろうけどさ」
船長「俺は海賊だ。海賊は陸に上がらネェ」
船長「氏ぬ時も海の上が良い……それに」
船長「俺がまとめるのは海賊共だ。率いて行くのも、だ」
鍛冶師「……」
船長「それも陸の上の事を任せる奴が居ないと、立ち行かネェだろ?」
鍛冶師「……考えておく」
船長「おう。だが、忘れるなよ?」
鍛冶師「?」
船長「お前さんには断る権利もある。盗賊にもな」
船長「この話は……俺の理想、だ」
鍛冶師「……やっぱ優しいね、船長は」
船長「買いかぶるな。俺たち海賊共の未来の利を考えてるだけさ」
766: 2013/05/30(木) 09:46:22.63 ID:nJZbnH5sP
……
………
…………
姫(『おめでとう。どこか複雑な笑顔で少年に祝いの言葉を告げる、母親の顔を思い出す』)
姫(『この日をどんなに夢見たか。お前が立派な男になって、旅立つ日が待ち遠しかった』)
姫(『笑顔で行ってらっしゃいを言わなきゃいけないのに、おかしいな。母さん……』)
姫(『何だか、目の前が曇ってる』)
姫(『……そう言って、母親の頬に涙が伝ったのを思い出す』)
姫(『少年は一つ、震えるため息を落とした。母親は寂しいとも告げた』)
姫(『立派な勇者になって欲しい。だけど、とても寂しい……と』)フゥ
姫「……雨、強くなって来たわね」
コンコン
使い魔「姫様、失礼致します」
姫「ええ……何?」
使い魔「そろそろ休まれた方がよろしいかと」
姫「え、そんな時間……? 解ったわ、ありがとう」パタン
使い魔「いえ。何かありましたら、お声をおかけください」
姫「……魔王と、側近は?」
使い魔「扉の前までお食事を運びには行くのですが……中までは……」
姫「今は大丈夫……て、言っても怖いわよね」
使い魔「……申し訳ありません」
姫「あ、ごめんなさい、責めてる訳じゃないのよ」
使い魔「はい……では、失礼致します」カチャ……パタン
姫「使用人、濡れて無いと良いけど……」
姫(続きは明日……ね)
………
…………
姫(『おめでとう。どこか複雑な笑顔で少年に祝いの言葉を告げる、母親の顔を思い出す』)
姫(『この日をどんなに夢見たか。お前が立派な男になって、旅立つ日が待ち遠しかった』)
姫(『笑顔で行ってらっしゃいを言わなきゃいけないのに、おかしいな。母さん……』)
姫(『何だか、目の前が曇ってる』)
姫(『……そう言って、母親の頬に涙が伝ったのを思い出す』)
姫(『少年は一つ、震えるため息を落とした。母親は寂しいとも告げた』)
姫(『立派な勇者になって欲しい。だけど、とても寂しい……と』)フゥ
姫「……雨、強くなって来たわね」
コンコン
使い魔「姫様、失礼致します」
姫「ええ……何?」
使い魔「そろそろ休まれた方がよろしいかと」
姫「え、そんな時間……? 解ったわ、ありがとう」パタン
使い魔「いえ。何かありましたら、お声をおかけください」
姫「……魔王と、側近は?」
使い魔「扉の前までお食事を運びには行くのですが……中までは……」
姫「今は大丈夫……て、言っても怖いわよね」
使い魔「……申し訳ありません」
姫「あ、ごめんなさい、責めてる訳じゃないのよ」
使い魔「はい……では、失礼致します」カチャ……パタン
姫「使用人、濡れて無いと良いけど……」
姫(続きは明日……ね)
767: 2013/05/30(木) 09:56:35.85 ID:nJZbnH5sP
……
………
…………
神父「全く、無茶をする……」フゥ
使用人「申し訳ありません」
盗賊「女……大丈夫なのか?」
使用人「……」
神父「力の使いすぎ、と言う奴でしょうね……貴女が謝る事ではありません」
神父「ありません……が、使用人さん」
使用人「……はい」
神父「ある程度、事情は理解しています。が……私には意見する権利もあると思っています」
使用人「……」
盗賊「神父さん!」
神父「別にね、怒ったり反対したり……では無いのです、盗賊さん」
神父「事情を理解しているつもり……そう、言いましたが」
神父「だからといって、納得はできないのですよ」
使用人「ご尤もです」
盗賊「……」
神父「勿論、女さんの望みではあったでしょう。それをどうこう言う権利は私には無い」
神父「ですが……気にしなくて良いですよ、とか」
神父「私には、言って差し上げられないと言うのは、理解してください」
使用人「解っています」
神父「お会いして……そう長い時間ではありません」
神父「ですが、ね。娘の様に思っているのです」
神父「ましてや……今まで、苦労されてきたのです。辛い目にも……遭われてきた」
盗賊「……」
神父「勿論、女さんだけ特別だなんて言う訳ではありません」
神父「劣等種などと呼ばれ、不必要に迫害されてきた方々、皆様もです」
………
…………
神父「全く、無茶をする……」フゥ
使用人「申し訳ありません」
盗賊「女……大丈夫なのか?」
使用人「……」
神父「力の使いすぎ、と言う奴でしょうね……貴女が謝る事ではありません」
神父「ありません……が、使用人さん」
使用人「……はい」
神父「ある程度、事情は理解しています。が……私には意見する権利もあると思っています」
使用人「……」
盗賊「神父さん!」
神父「別にね、怒ったり反対したり……では無いのです、盗賊さん」
神父「事情を理解しているつもり……そう、言いましたが」
神父「だからといって、納得はできないのですよ」
使用人「ご尤もです」
盗賊「……」
神父「勿論、女さんの望みではあったでしょう。それをどうこう言う権利は私には無い」
神父「ですが……気にしなくて良いですよ、とか」
神父「私には、言って差し上げられないと言うのは、理解してください」
使用人「解っています」
神父「お会いして……そう長い時間ではありません」
神父「ですが、ね。娘の様に思っているのです」
神父「ましてや……今まで、苦労されてきたのです。辛い目にも……遭われてきた」
盗賊「……」
神父「勿論、女さんだけ特別だなんて言う訳ではありません」
神父「劣等種などと呼ばれ、不必要に迫害されてきた方々、皆様もです」
768: 2013/05/30(木) 10:19:51.47 ID:nJZbnH5sP
盗賊「……」
神父「片腕を奪われ、精を吸われ……残る命も多くない」
神父「なのに女さんは、まだ……進んで身を捧げようとする」
神父「誠に……立派な祈り女でいらっしゃる」
神父「ただ、何故その対象が我らが神では無く、あろう事か魔王であるとは」
使用人「……」
神父「私は、聖職者として長い時を生きてきました」
神父「それは貴女方魔族に比べればちっぽけなものであろうとも」
神父「人としての私には、充分に長い時間です」
神父「その、積み重ねを思うと……納得など、出来ないのですよ」
神父「何故、この方ばかりが……と、思わずには……!」
女「……神父、様。もう……良いのです」
盗賊「女!気がついたのか!」
使用人「女さん……」
女「それ以上は、もう……」
神父「……」
女「神父様は、以前言われました……信仰する者により、神の形は変わるのだと」
女「ですがそれが魔王様であれば、神に仕える者である以上、認められないのも」
女「解って、います……だから」
女「その先は、考えないでください」
女「……神父様の、信仰の為に」
使用人「……」
神父「……」
神父「片腕を奪われ、精を吸われ……残る命も多くない」
神父「なのに女さんは、まだ……進んで身を捧げようとする」
神父「誠に……立派な祈り女でいらっしゃる」
神父「ただ、何故その対象が我らが神では無く、あろう事か魔王であるとは」
使用人「……」
神父「私は、聖職者として長い時を生きてきました」
神父「それは貴女方魔族に比べればちっぽけなものであろうとも」
神父「人としての私には、充分に長い時間です」
神父「その、積み重ねを思うと……納得など、出来ないのですよ」
神父「何故、この方ばかりが……と、思わずには……!」
女「……神父、様。もう……良いのです」
盗賊「女!気がついたのか!」
使用人「女さん……」
女「それ以上は、もう……」
神父「……」
女「神父様は、以前言われました……信仰する者により、神の形は変わるのだと」
女「ですがそれが魔王様であれば、神に仕える者である以上、認められないのも」
女「解って、います……だから」
女「その先は、考えないでください」
女「……神父様の、信仰の為に」
使用人「……」
神父「……」
769: 2013/05/30(木) 10:27:33.82 ID:nJZbnH5sP
盗賊「女……無理に喋らなくて良い」
女「……大丈夫、ですよ」
女「使用人さん、私の魔石……受け取ってくださいましたか?」
使用人「はい。ここに……」コロン
神父「……美しい、海の様に深い、青ですね」
神父「しかし……これは……」
女「はい。魔除けの石とは呼べないでしょう……やはり」
神父「……」
使用人「必ず、魔王様に届けます」
女「貴女が私にお願いしたい事、叶えられました。良かった……」スゥ
盗賊「女!?」
神父「お静かに……眠られただけ、です。余程疲れたのでしょう」
盗賊「そ、そうか……」
神父「使用人さん」
使用人「はい」
神父「お話は伝えておきました。この街での初めての結婚式です」
神父「明日から……早速建築に掛かって下さるそうです」
使用人「……ありがとうございます」
盗賊「ただし、街の仕事が終わってからの残業だ。手当は貰うぜ?」
使用人「勿論です。資材は……足りますか?」
盗賊「かき集めてはみるが、本格的には船長達が戻ってからだ」
神父「貴女が魔王の元へ戻るまで、新婦の為に……私は魔除けの石を作りましょう」
使用人「……お願い致します」
神父「では、私も宿へ戻ります」
盗賊「あ、送っていくよ、神父さん!」
盗賊「使用人はゆっくりしていてくれ。すぐ戻る!」
女「……大丈夫、ですよ」
女「使用人さん、私の魔石……受け取ってくださいましたか?」
使用人「はい。ここに……」コロン
神父「……美しい、海の様に深い、青ですね」
神父「しかし……これは……」
女「はい。魔除けの石とは呼べないでしょう……やはり」
神父「……」
使用人「必ず、魔王様に届けます」
女「貴女が私にお願いしたい事、叶えられました。良かった……」スゥ
盗賊「女!?」
神父「お静かに……眠られただけ、です。余程疲れたのでしょう」
盗賊「そ、そうか……」
神父「使用人さん」
使用人「はい」
神父「お話は伝えておきました。この街での初めての結婚式です」
神父「明日から……早速建築に掛かって下さるそうです」
使用人「……ありがとうございます」
盗賊「ただし、街の仕事が終わってからの残業だ。手当は貰うぜ?」
使用人「勿論です。資材は……足りますか?」
盗賊「かき集めてはみるが、本格的には船長達が戻ってからだ」
神父「貴女が魔王の元へ戻るまで、新婦の為に……私は魔除けの石を作りましょう」
使用人「……お願い致します」
神父「では、私も宿へ戻ります」
盗賊「あ、送っていくよ、神父さん!」
盗賊「使用人はゆっくりしていてくれ。すぐ戻る!」
770: 2013/05/30(木) 11:07:05.81 ID:nJZbnH5sP
使用人「え、ええ、わかりました」
神父「別に大丈夫ですよ、盗賊さん」
盗賊「遠慮すんな、行こうぜ」スタスタ
パタン
神父「何です?」
盗賊「……本当は、どうなんだ?」
神父「女さん、ですか……」
盗賊「他に何があるんだよ」
神父「私にはそのエルフの姫の様に感じる力はありませんからね」
盗賊「……」
神父「命の炎、とやらは……解りません、が」
神父「今日明日、どうこうという事は無いでしょう。お疲れではあるでしょうが」
盗賊「でも……やっぱり、寿命削ってる事に違いはないんだろう?」
神父「……」
盗賊「……」
神父「はっきりとは解りませんよ。そりゃ……誰でも、ね」
神父「例えば、老いれば。病床にいれば。無茶をするなと諭すでしょう」
盗賊「ま、あ……そりゃ」
神父「同じと……思って良いと思います」
神父「女さんは、無理して魔力を使うと……やはり」
盗賊「……そう、か」
神父「それが聞きたかったのですか?」
神父「別に大丈夫ですよ、盗賊さん」
盗賊「遠慮すんな、行こうぜ」スタスタ
パタン
神父「何です?」
盗賊「……本当は、どうなんだ?」
神父「女さん、ですか……」
盗賊「他に何があるんだよ」
神父「私にはそのエルフの姫の様に感じる力はありませんからね」
盗賊「……」
神父「命の炎、とやらは……解りません、が」
神父「今日明日、どうこうという事は無いでしょう。お疲れではあるでしょうが」
盗賊「でも……やっぱり、寿命削ってる事に違いはないんだろう?」
神父「……」
盗賊「……」
神父「はっきりとは解りませんよ。そりゃ……誰でも、ね」
神父「例えば、老いれば。病床にいれば。無茶をするなと諭すでしょう」
盗賊「ま、あ……そりゃ」
神父「同じと……思って良いと思います」
神父「女さんは、無理して魔力を使うと……やはり」
盗賊「……そう、か」
神父「それが聞きたかったのですか?」
771: 2013/05/30(木) 11:15:08.22 ID:nJZbnH5sP
盗賊「うん……後、さ」
神父「はい」
盗賊「さっきの、使用人にしてた話……まあ、女が止めた話、かな」
盗賊「俺には良く……わかんかったから」
神父「信仰のお話ですか……こればかりは、難しいですね」
神父「長くなりますし……まあ、簡単に言うと」
神父「理解は出来るが賛同は出来ない、という事です」
盗賊「ん……ん?」
神父「ええと、ね。そうですね……」
神父「私は、神に仕えています。女さんもそう仰ってますよね」
盗賊「うん」
神父「私の言う神、は一つです。天に召します我らが神……です」
神父「女さんの神も……一つです。彼女は魔王を『私の神』だと言う」
盗賊「うん」
神父「けれど……それを私は、神とは認められません。神は絶対であり唯一ですから」
神父「それが私の『信仰』です」
盗賊「……うん」
神父「私は女さんに、神は崇める物により、形を変える物だと言いました」
神父「お話に出てくる天使の様な絵であったり、太陽その物であったり……」
神父「描く姿が違うだけで、それは確かに神なのです」
神父「ですが……それを魔王と言う物に置き換える事はできない」
神父「魔王は、魔の王として存在してしまっている物で有り、ましてや魔であるのです」
盗賊「……」
神父「女さんの、神として崇めて良いと思える程相手を想い、崇める気持ちを」
神父「頭で、理解は出来ても。認める訳には、行かないのですよ」
盗賊「うん……ごめん、解らん」
神父「……良いんですよ」
神父「はい」
盗賊「さっきの、使用人にしてた話……まあ、女が止めた話、かな」
盗賊「俺には良く……わかんかったから」
神父「信仰のお話ですか……こればかりは、難しいですね」
神父「長くなりますし……まあ、簡単に言うと」
神父「理解は出来るが賛同は出来ない、という事です」
盗賊「ん……ん?」
神父「ええと、ね。そうですね……」
神父「私は、神に仕えています。女さんもそう仰ってますよね」
盗賊「うん」
神父「私の言う神、は一つです。天に召します我らが神……です」
神父「女さんの神も……一つです。彼女は魔王を『私の神』だと言う」
盗賊「うん」
神父「けれど……それを私は、神とは認められません。神は絶対であり唯一ですから」
神父「それが私の『信仰』です」
盗賊「……うん」
神父「私は女さんに、神は崇める物により、形を変える物だと言いました」
神父「お話に出てくる天使の様な絵であったり、太陽その物であったり……」
神父「描く姿が違うだけで、それは確かに神なのです」
神父「ですが……それを魔王と言う物に置き換える事はできない」
神父「魔王は、魔の王として存在してしまっている物で有り、ましてや魔であるのです」
盗賊「……」
神父「女さんの、神として崇めて良いと思える程相手を想い、崇める気持ちを」
神父「頭で、理解は出来ても。認める訳には、行かないのですよ」
盗賊「うん……ごめん、解らん」
神父「……良いんですよ」
772: 2013/05/30(木) 11:29:25.23 ID:nJZbnH5sP
神父「彼女は確かに立派な祈り女です。ですが……神に仕える聖職者では無いのです」
盗賊「で、でも……」
神父「表だって否定はしません。ですが……認められません、私には」
神父「認めてしまうと……私は、聖職者では無くなってしまいますからね」
盗賊「……さっきの話、か」
神父「……」
盗賊「考えなくて良いって言ってたけど……」
神父「言ったでしょう。娘の様に思うのですよ」
神父「どうして女さんだけ、と考えて行くと……ね」
神父「『不公平』にたどり着くのです」
盗賊「不公平……?」
神父「はい。どうして、女さんだけ……」
神父「……この先は、私には言えません」
盗賊「そう、か……悪い」
神父「いいえ……さ、ここで結構ですよ。宿は目と鼻の先です」
神父「もう暗いですから……お気をつけて」
盗賊「ああ。おやすみ、神父さん」タタタ
神父「おやすみなさい……」
神父(……神様。この世は……一体、どうなって行くのです?)
神父(人の身で……知る事は罪なのでしょうか)
……
………
…………
カチャ、パタン
盗賊「あれ、まだ起きてたのか」
使用人「はい……」
盗賊「女は、どうだ?」
使用人「呼吸は落ち着いています」
盗賊「で、でも……」
神父「表だって否定はしません。ですが……認められません、私には」
神父「認めてしまうと……私は、聖職者では無くなってしまいますからね」
盗賊「……さっきの話、か」
神父「……」
盗賊「考えなくて良いって言ってたけど……」
神父「言ったでしょう。娘の様に思うのですよ」
神父「どうして女さんだけ、と考えて行くと……ね」
神父「『不公平』にたどり着くのです」
盗賊「不公平……?」
神父「はい。どうして、女さんだけ……」
神父「……この先は、私には言えません」
盗賊「そう、か……悪い」
神父「いいえ……さ、ここで結構ですよ。宿は目と鼻の先です」
神父「もう暗いですから……お気をつけて」
盗賊「ああ。おやすみ、神父さん」タタタ
神父「おやすみなさい……」
神父(……神様。この世は……一体、どうなって行くのです?)
神父(人の身で……知る事は罪なのでしょうか)
……
………
…………
カチャ、パタン
盗賊「あれ、まだ起きてたのか」
使用人「はい……」
盗賊「女は、どうだ?」
使用人「呼吸は落ち着いています」
773: 2013/05/30(木) 11:35:46.18 ID:nJZbnH5sP
盗賊「そうか……なあ、もう一回、見せて貰っていいか?」
使用人「?」
盗賊「さっきの……女の作った石、さ」
使用人「ああ……どうぞ」コロン
盗賊「これ……さ」
盗賊「俺は良くわかんないけど……魔王、壊さないかな」
使用人「私には……解りません。ですが」
使用人「女さんの思いがこもっていますから」
盗賊「……綺麗な青だな」
使用人「はい」
盗賊「あの、さ」
使用人「はい」
盗賊「厭な事、聞いても良いか?」
使用人「……なんでしょう」
盗賊「俺が……俺たちだけが、知人の助けで魔導の街から逃げ出した時」
盗賊「やっぱり……怨んだか?」
使用人「他の人は解りません、が……私は、別に」
盗賊「……そう、か」
使用人「女さんも、同じだと思いますよ」
盗賊「お前達って、俺たちも知人も氏んだって聞かされてたんだよな?」
使用人「そうですね。婿入りを断られた知人さんが……と言う内容でしたが」
盗賊「……」
使用人「私は、酔った魔導将軍から色々聞かされていました」
使用人「どうやって知人を頃したか、事細かく……まで」
盗賊「……ッ」
使用人「?」
盗賊「さっきの……女の作った石、さ」
使用人「ああ……どうぞ」コロン
盗賊「これ……さ」
盗賊「俺は良くわかんないけど……魔王、壊さないかな」
使用人「私には……解りません。ですが」
使用人「女さんの思いがこもっていますから」
盗賊「……綺麗な青だな」
使用人「はい」
盗賊「あの、さ」
使用人「はい」
盗賊「厭な事、聞いても良いか?」
使用人「……なんでしょう」
盗賊「俺が……俺たちだけが、知人の助けで魔導の街から逃げ出した時」
盗賊「やっぱり……怨んだか?」
使用人「他の人は解りません、が……私は、別に」
盗賊「……そう、か」
使用人「女さんも、同じだと思いますよ」
盗賊「お前達って、俺たちも知人も氏んだって聞かされてたんだよな?」
使用人「そうですね。婿入りを断られた知人さんが……と言う内容でしたが」
盗賊「……」
使用人「私は、酔った魔導将軍から色々聞かされていました」
使用人「どうやって知人を頃したか、事細かく……まで」
盗賊「……ッ」
774: 2013/05/30(木) 11:48:21.78 ID:nJZbnH5sP
使用人「魔王様の手であの街が、劣等種が救い出され」
使用人「こうして……自由になれた。魔王様が救って下さった」
使用人「私は、魔導将軍の手が着く迄、他の方達の様に客を取らずに済みました」
使用人「でも……それも、運が良かっただけです」
盗賊「……」
使用人「もし、なんて考えても……意味ありませんよ、盗賊さん」
盗賊「い、いや……俺は、別に……」
使用人「……誰も、怨んで等、いませんよ」
盗賊「……そう、かなぁ」
使用人「この街にも娼館があります。私は覗いては居ませんが」
使用人「厭なら、辞められるんです。すぐに」
盗賊「……俺、さ。女が……ッ」グスッ
盗賊「良くて、やってる事、って解ってる、けど…… けど……ッ」
使用人「……申し訳、ありません」
盗賊「違うよ!使用人が謝る事じゃない!でも……!」
使用人「もしあの時、こうだったら……ですか?」
盗賊「……意味が無い、って言うんだろ」
使用人「はい。ですが……」
使用人「選ぶのは自分自身です。何時だって……」
盗賊「うん……」
使用人「ごめんなさい。なんと……その。言って良いか」
使用人「こういうのは、苦手です」
盗賊「……悪い。大丈夫だ」ゴシゴシ
使用人「……」
使用人「こうして……自由になれた。魔王様が救って下さった」
使用人「私は、魔導将軍の手が着く迄、他の方達の様に客を取らずに済みました」
使用人「でも……それも、運が良かっただけです」
盗賊「……」
使用人「もし、なんて考えても……意味ありませんよ、盗賊さん」
盗賊「い、いや……俺は、別に……」
使用人「……誰も、怨んで等、いませんよ」
盗賊「……そう、かなぁ」
使用人「この街にも娼館があります。私は覗いては居ませんが」
使用人「厭なら、辞められるんです。すぐに」
盗賊「……俺、さ。女が……ッ」グスッ
盗賊「良くて、やってる事、って解ってる、けど…… けど……ッ」
使用人「……申し訳、ありません」
盗賊「違うよ!使用人が謝る事じゃない!でも……!」
使用人「もしあの時、こうだったら……ですか?」
盗賊「……意味が無い、って言うんだろ」
使用人「はい。ですが……」
使用人「選ぶのは自分自身です。何時だって……」
盗賊「うん……」
使用人「ごめんなさい。なんと……その。言って良いか」
使用人「こういうのは、苦手です」
盗賊「……悪い。大丈夫だ」ゴシゴシ
使用人「……」
775: 2013/05/30(木) 11:55:33.40 ID:nJZbnH5sP
盗賊「折角自由になれたのにさ。女も、娼館でまだ働いてる奴らも……」
盗賊「好きな事できるんだ。いや、皆好きな様にやってるんだって事は解ってる」
盗賊「でも、さ……」
使用人「『自由』の定義は人それぞれですから」
使用人「私の様な道を選ぶのも、見る人から見れば愚かと言われるでしょう」
盗賊「……でも、望んだ結果だろ?」
使用人「そうですよ。だけど……この街を救った勇者が、魔王様だったばかりに」
使用人「熱に浮かされているだけだと言われても仕方ありません」
盗賊「……気持ち、てのは難しいな」
盗賊「魔王も、姫も何も悪く無いと解ってはいるのに」
盗賊「どうして……女ばっかり、って……思っちまうよ」
使用人「……女さんが選んだ道を、邪魔する権利はありません」
盗賊「でも、お前は……気持ちをしって利用しようとした、だろ?」
使用人「否定はしません。本人にも言いましたが、拒否される事は無いと解っていました」
使用人「……責めても良いのですよ。責められて当然です」
使用人「私は、私の主の為に、女さんに命を投げ出せと言ったのです」
盗賊「……責めねぇよ。責められネェだろ」
盗賊「女が……望んだ事だ」
使用人「……」
盗賊「お前は……使用人は、さ」
使用人「はい?」
盗賊「魔王が好きなのか?」
使用人「……我が主、ですから」
盗賊「……」
使用人「それに、姫様がいらっしゃいます」
盗賊「愛し合ってるのか?あの二人は」
使用人「愛、では無いと。姫様は仰っていらっしゃいました」
使用人「好きだけれど。大事だけれど……と」
盗賊「好きな事できるんだ。いや、皆好きな様にやってるんだって事は解ってる」
盗賊「でも、さ……」
使用人「『自由』の定義は人それぞれですから」
使用人「私の様な道を選ぶのも、見る人から見れば愚かと言われるでしょう」
盗賊「……でも、望んだ結果だろ?」
使用人「そうですよ。だけど……この街を救った勇者が、魔王様だったばかりに」
使用人「熱に浮かされているだけだと言われても仕方ありません」
盗賊「……気持ち、てのは難しいな」
盗賊「魔王も、姫も何も悪く無いと解ってはいるのに」
盗賊「どうして……女ばっかり、って……思っちまうよ」
使用人「……女さんが選んだ道を、邪魔する権利はありません」
盗賊「でも、お前は……気持ちをしって利用しようとした、だろ?」
使用人「否定はしません。本人にも言いましたが、拒否される事は無いと解っていました」
使用人「……責めても良いのですよ。責められて当然です」
使用人「私は、私の主の為に、女さんに命を投げ出せと言ったのです」
盗賊「……責めねぇよ。責められネェだろ」
盗賊「女が……望んだ事だ」
使用人「……」
盗賊「お前は……使用人は、さ」
使用人「はい?」
盗賊「魔王が好きなのか?」
使用人「……我が主、ですから」
盗賊「……」
使用人「それに、姫様がいらっしゃいます」
盗賊「愛し合ってるのか?あの二人は」
使用人「愛、では無いと。姫様は仰っていらっしゃいました」
使用人「好きだけれど。大事だけれど……と」
776: 2013/05/30(木) 12:01:05.17 ID:nJZbnH5sP
盗賊「……良くわかんネェや」ゴロン
使用人「私にも、わかりません」
盗賊「お前も、愛じゃないって言うのか?」
盗賊「じゃあ……愛って、何だよ」
使用人「女さんに聞いてみれば良いのではないですか?」
盗賊「……確かに、ありゃ愛、だな」
使用人「深い深い海の色……」
盗賊「え?」
使用人「女さんの魔石、です」
盗賊「女の瞳の色だろ」
使用人「……海の様に深い、愛の色」
盗賊「……似合わネェ」
使用人「悪かったですね」
盗賊「……」
使用人「……雨」
盗賊「え?」
使用人「城を出る時、雨が降って居たんです」
盗賊「こっちはずっと晴れてるぜ」
使用人「そうですか……」
盗賊「それがどうした?」
使用人「いえ。別世界の様だな、と思っただけです」
盗賊「……やっぱり何か、似合わネェ」
使用人「……放っておいてください」
盗賊「お前まで……感傷的にならないでくれよ」
使用人「……え?」
盗賊「せめて……最後まで、普通で居てくれ」
使用人「私にも、わかりません」
盗賊「お前も、愛じゃないって言うのか?」
盗賊「じゃあ……愛って、何だよ」
使用人「女さんに聞いてみれば良いのではないですか?」
盗賊「……確かに、ありゃ愛、だな」
使用人「深い深い海の色……」
盗賊「え?」
使用人「女さんの魔石、です」
盗賊「女の瞳の色だろ」
使用人「……海の様に深い、愛の色」
盗賊「……似合わネェ」
使用人「悪かったですね」
盗賊「……」
使用人「……雨」
盗賊「え?」
使用人「城を出る時、雨が降って居たんです」
盗賊「こっちはずっと晴れてるぜ」
使用人「そうですか……」
盗賊「それがどうした?」
使用人「いえ。別世界の様だな、と思っただけです」
盗賊「……やっぱり何か、似合わネェ」
使用人「……放っておいてください」
盗賊「お前まで……感傷的にならないでくれよ」
使用人「……え?」
盗賊「せめて……最後まで、普通で居てくれ」
777: 2013/05/30(木) 12:06:52.97 ID:nJZbnH5sP
使用人「……」
盗賊「何でもない。お前も寝ろよ、明日早いぞ」
……
………
…………
側近「チェックメイトおおおおおおおおおお!」
魔王「あ! ……ああ、もうッ」ポイッ
側近「あ、こら投げんな。お前は子供か!」
魔王「何で勝てないんだ!」
側近「弱いからだろ」
魔王「く……ッ もう一回だ、もう一回!」
側近「えー。もう飽きたー」
魔王「私が勝てるまでやる!」
側近「……お前なぁ」
魔王「悔しいじゃ無いか……ッ」
側近「はいはいはい、親父さんのお話だろ?もうしてやるって」
魔王「勝って聞かねば意味が無い!」
側近「えええええええ……面倒臭い奴……」
魔王「良いから、勝負だ!」
側近「あーじゃあチェスやめよ、な!?」
側近「こっちやろうぜこっち。オセロ」
魔王「……ルールは?」
側近「え、そっから説明すんの!?」
魔王「早く教えろ」
側近「まじかよ……」
魔王「……雨の音が強くなったな」
側近「いきなり脱線か!」
魔王「庭が気になるな」
側近「姫様がなんかやってたな、そういえば」
盗賊「何でもない。お前も寝ろよ、明日早いぞ」
……
………
…………
側近「チェックメイトおおおおおおおおおお!」
魔王「あ! ……ああ、もうッ」ポイッ
側近「あ、こら投げんな。お前は子供か!」
魔王「何で勝てないんだ!」
側近「弱いからだろ」
魔王「く……ッ もう一回だ、もう一回!」
側近「えー。もう飽きたー」
魔王「私が勝てるまでやる!」
側近「……お前なぁ」
魔王「悔しいじゃ無いか……ッ」
側近「はいはいはい、親父さんのお話だろ?もうしてやるって」
魔王「勝って聞かねば意味が無い!」
側近「えええええええ……面倒臭い奴……」
魔王「良いから、勝負だ!」
側近「あーじゃあチェスやめよ、な!?」
側近「こっちやろうぜこっち。オセロ」
魔王「……ルールは?」
側近「え、そっから説明すんの!?」
魔王「早く教えろ」
側近「まじかよ……」
魔王「……雨の音が強くなったな」
側近「いきなり脱線か!」
魔王「庭が気になるな」
側近「姫様がなんかやってたな、そういえば」
778: 2013/05/30(木) 12:22:50.21 ID:nJZbnH5sP
魔王「昔カラスが手入れしてたな」
側近「また懐かしい話だね」
魔王「その話を姫にしてやったらな……自分もやると言い出したから」
側近「成る程」
魔王「……」
側近「どうした……大丈夫か?」
魔王「ああ。何でも無い」
側近「お前……后様の事は覚えて無いよな?」
魔王「后? ……ああ、母の事か」
魔王「私を産んですぐに氏んだと聞いたぞ。覚えてる訳が無い」
側近「……そうか」
魔王「何だ」
側近「話して良いの?」
魔王「……勝つまで駄目。早く教えろ」
……
………
…………
女剣士「あと、いっ ……ぴき!」ザシュ!
ギャアアアアアアアアアアア!
女剣士「良し!」
海賊「……つえぇ」
女剣士「船長ー!片づいたぞー!」
船長「しかしまあ、元気だな」
鍛冶師「ふさぎ込まれてるよりは良いでしょ」
側近「また懐かしい話だね」
魔王「その話を姫にしてやったらな……自分もやると言い出したから」
側近「成る程」
魔王「……」
側近「どうした……大丈夫か?」
魔王「ああ。何でも無い」
側近「お前……后様の事は覚えて無いよな?」
魔王「后? ……ああ、母の事か」
魔王「私を産んですぐに氏んだと聞いたぞ。覚えてる訳が無い」
側近「……そうか」
魔王「何だ」
側近「話して良いの?」
魔王「……勝つまで駄目。早く教えろ」
……
………
…………
女剣士「あと、いっ ……ぴき!」ザシュ!
ギャアアアアアアアアアアア!
女剣士「良し!」
海賊「……つえぇ」
女剣士「船長ー!片づいたぞー!」
船長「しかしまあ、元気だな」
鍛冶師「ふさぎ込まれてるよりは良いでしょ」
779: 2013/05/30(木) 12:24:13.87 ID:nJZbnH5sP
おひるごはーん!
780: 2013/05/30(木) 13:22:47.42 ID:nJZbnH5sP
船長「まあ……役に立ってるしな」
鍛冶師「船長!一応お客さんでしょ」
船長「しかしまぁ、腕に自信があるってのは伊達じゃ無かった、てこった」
鍛冶師「……でも、側近はもっと強い、んだろう」
船長「本人曰く、戦闘向きじゃ無い、らしいがな」
鍛冶師「……魔王は、さらに、か」
船長「ありゃ規格外」
鍛冶師「……」
船長「どうした?難しい顔して」
鍛冶師「僕は……全くもって専門外だからね」
船長「俺だってそうさ。想像つかネェだろ? ……もっと強い、てのは」
鍛冶師「うん。女剣士だって、充分に強いだろうに」
船長「世界は広いって事さ……さて。お前さん、今暇か?」
鍛冶師「え?ああ……まあ」
船長「そうか。ちょっと仕事しネェか?」
鍛冶師「え?」
船長「剣の手入れやら魔法剣がどーたら、言う位なんだしさ」
船長「お前、手先は器用なんだろう?」
鍛冶師「ま、まあ……多分ね」
船長「これは俺個人の依頼、なんだが……受けるか?」
鍛冶師「内容次第……何させる気だよ」
船長「こいつなんだがな」ドン!
鍛冶師「……石?」
船長「ま、何の変哲も無い、その辺の河原に転がってそうな石だ。見ての通りな」
鍛冶師「真っ白だな……石膏みたいだ」
船長「何か作ってくんねぇか?」
鍛冶師「またいい加減な……」
船長「良い色だろ?鍛冶師の村で安く買ってきたんだ」
鍛冶師「僕に彫刻家の真似事をしろって言うの?」
船長「簡単に言やぁそうなるな」
鍛冶師「そんなのやった事無いよ!」
船長「別に失敗しても構わネェよ。旨く出来りゃ買ってやる」
船長「小遣い稼ぎだ。暇つぶしにゃ丁度良いだろ」
鍛冶師「船長!一応お客さんでしょ」
船長「しかしまぁ、腕に自信があるってのは伊達じゃ無かった、てこった」
鍛冶師「……でも、側近はもっと強い、んだろう」
船長「本人曰く、戦闘向きじゃ無い、らしいがな」
鍛冶師「……魔王は、さらに、か」
船長「ありゃ規格外」
鍛冶師「……」
船長「どうした?難しい顔して」
鍛冶師「僕は……全くもって専門外だからね」
船長「俺だってそうさ。想像つかネェだろ? ……もっと強い、てのは」
鍛冶師「うん。女剣士だって、充分に強いだろうに」
船長「世界は広いって事さ……さて。お前さん、今暇か?」
鍛冶師「え?ああ……まあ」
船長「そうか。ちょっと仕事しネェか?」
鍛冶師「え?」
船長「剣の手入れやら魔法剣がどーたら、言う位なんだしさ」
船長「お前、手先は器用なんだろう?」
鍛冶師「ま、まあ……多分ね」
船長「これは俺個人の依頼、なんだが……受けるか?」
鍛冶師「内容次第……何させる気だよ」
船長「こいつなんだがな」ドン!
鍛冶師「……石?」
船長「ま、何の変哲も無い、その辺の河原に転がってそうな石だ。見ての通りな」
鍛冶師「真っ白だな……石膏みたいだ」
船長「何か作ってくんねぇか?」
鍛冶師「またいい加減な……」
船長「良い色だろ?鍛冶師の村で安く買ってきたんだ」
鍛冶師「僕に彫刻家の真似事をしろって言うの?」
船長「簡単に言やぁそうなるな」
鍛冶師「そんなのやった事無いよ!」
船長「別に失敗しても構わネェよ。旨く出来りゃ買ってやる」
船長「小遣い稼ぎだ。暇つぶしにゃ丁度良いだろ」
781: 2013/05/30(木) 13:28:07.10 ID:nJZbnH5sP
鍛冶師「何作れって言うんだよ……」
船長「何でも良いって。それ程大きな石でも無いしな」
船長「センス良い置物が一つ、欲しかったんだ」
鍛冶師「……えええええ」
船長「漸く半分、ってとこだ。どれだけ急いだってまだ一週間はかかる」
船長「どうだ? ……ま、無理にとは言わないけどよ」
鍛冶師「本当に失敗しても良いの?」
船長「ああ。石代返せとも言わネェよ」
鍛冶師「……まあ、腕が鈍らないで良いかもしれないけど」
船長「魔法剣の装飾の練習とでも思えよ」
鍛冶師「魔法剣に装飾するのと、彫刻の真似事するのと一緒にしないでよ!」
船長「はっは!まあ、暇つぶしだって、だから」
鍛冶師「もう……」コンコン
鍛冶師「結構堅いなぁ……彫刻刀の変わりになるようなモン、あったかな……」ブツブツ
鍛冶師「これ、部屋に持ってくよ?」
船長「ああ。あんまり汚すなよー?」
鍛冶師「無茶言うな!」スタスタ
カチャ
女剣士「おっと……鍛冶師か、御免!」
鍛冶師「ああ、船長に用事?」
女剣士「居る、よな?」
鍛冶師「うん。じゃあね」スタスタ
パタン
船長「おう。どうした」
女剣士「もうすぐ着くのか?」
船長「何でも良いって。それ程大きな石でも無いしな」
船長「センス良い置物が一つ、欲しかったんだ」
鍛冶師「……えええええ」
船長「漸く半分、ってとこだ。どれだけ急いだってまだ一週間はかかる」
船長「どうだ? ……ま、無理にとは言わないけどよ」
鍛冶師「本当に失敗しても良いの?」
船長「ああ。石代返せとも言わネェよ」
鍛冶師「……まあ、腕が鈍らないで良いかもしれないけど」
船長「魔法剣の装飾の練習とでも思えよ」
鍛冶師「魔法剣に装飾するのと、彫刻の真似事するのと一緒にしないでよ!」
船長「はっは!まあ、暇つぶしだって、だから」
鍛冶師「もう……」コンコン
鍛冶師「結構堅いなぁ……彫刻刀の変わりになるようなモン、あったかな……」ブツブツ
鍛冶師「これ、部屋に持ってくよ?」
船長「ああ。あんまり汚すなよー?」
鍛冶師「無茶言うな!」スタスタ
カチャ
女剣士「おっと……鍛冶師か、御免!」
鍛冶師「ああ、船長に用事?」
女剣士「居る、よな?」
鍛冶師「うん。じゃあね」スタスタ
パタン
船長「おう。どうした」
女剣士「もうすぐ着くのか?」
782: 2013/05/30(木) 13:37:34.97 ID:nJZbnH5sP
船長「随分せっかちだなお前さん……まだだ。漸く半分、だな」
女剣士「別に急かしてる訳じゃ無い。随分魔物が弱くなったからさ」
船長「そういう事か……そりゃ、南に行けば行く程、強い魔物は減っていくさ」
女剣士「……そうなのか?」
船長「最果ての街……魔王の居城から距離的に離れていくからな」
女剣士「最果ての街?」
船長「北の大地にある街の事だ。北の大地は……最果ての地とも呼ばれてる」
船長「……あの空は暗いだろう。紫の雲に覆われて」
女剣士「そうだな。この辺は随分……空が青くて、気持ちが良い」
船長「あれは魔の気が渦巻いているから、だそうだ」
船長「そんな場所に近づけば近づく程、魔物共も強くなる」
女剣士「半分か。この辺りであの程度なら……港街の辺りは、もっと……」
船長「お前さんが居た北の街の魔物の、足下にも及ばネェだろうよ」
女剣士「そうか……」
船長「どうした?」
女剣士「あ、いや……何でも無いよ」
女剣士「そんな魔物ばっかりだったら、北の街の人達も怯えずに」
女剣士「過ごせたのか、ってな……」
船長「そうとも限らんさ」
女剣士「え?」
船長「育った環境、だろうさ。魔物が弱い地域に住んでいたとしても」
船長「人で無い、と言うだけで充分畏怖の対象になるだろう?」
船長「成人した男共にゃ大した事無くても」
船長「女子供は怯えるだろうさ」
女剣士「……」
船長「身を守るのに見合った武器や、防具は開発されるだろうが」
船長「その強弱の差があるだけで、畏怖は無くならねぇ」
女剣士「別に急かしてる訳じゃ無い。随分魔物が弱くなったからさ」
船長「そういう事か……そりゃ、南に行けば行く程、強い魔物は減っていくさ」
女剣士「……そうなのか?」
船長「最果ての街……魔王の居城から距離的に離れていくからな」
女剣士「最果ての街?」
船長「北の大地にある街の事だ。北の大地は……最果ての地とも呼ばれてる」
船長「……あの空は暗いだろう。紫の雲に覆われて」
女剣士「そうだな。この辺は随分……空が青くて、気持ちが良い」
船長「あれは魔の気が渦巻いているから、だそうだ」
船長「そんな場所に近づけば近づく程、魔物共も強くなる」
女剣士「半分か。この辺りであの程度なら……港街の辺りは、もっと……」
船長「お前さんが居た北の街の魔物の、足下にも及ばネェだろうよ」
女剣士「そうか……」
船長「どうした?」
女剣士「あ、いや……何でも無いよ」
女剣士「そんな魔物ばっかりだったら、北の街の人達も怯えずに」
女剣士「過ごせたのか、ってな……」
船長「そうとも限らんさ」
女剣士「え?」
船長「育った環境、だろうさ。魔物が弱い地域に住んでいたとしても」
船長「人で無い、と言うだけで充分畏怖の対象になるだろう?」
船長「成人した男共にゃ大した事無くても」
船長「女子供は怯えるだろうさ」
女剣士「……」
船長「身を守るのに見合った武器や、防具は開発されるだろうが」
船長「その強弱の差があるだけで、畏怖は無くならねぇ」
783: 2013/05/30(木) 13:44:26.01 ID:nJZbnH5sP
船長「魔物の住まない土地、なんてのは……聞いた事が無いさ」
女剣士「……そうか ……ッ と!」
グラグラ……
船長「相変わらずこの辺は揺れるな」フゥ
女剣士「……?」
船長「この辺は潮の流れが悪いんだ。大きな渦が二つ、ぶつかってる」
女剣士「へぇ……」
船長「お前も船室に戻ってろ。甲板に出るなよ」
船長「今度海に落ちたらしらねぇぞ」
女剣士「そ、そんな事しない!」
船長「頼むぜ、本当に。何かあったら呼ぶさ」
船長「……この海域だけは魔物は出ネェからな」
女剣士「え……何で?」
船長「さてね。昔、島が沈んだなんて伝説もあるらしいくてな」
船長「呪いだなんだ……そんな話もあるが。ま、実際は」
船長「海の魔物すら住めない様な海流なんだろ」
女剣士「島……」
船長「ただの御伽噺だ。どの地図にも、そんな島乗ってネェよ」
女剣士「アタシは……知らない事だらけだな」
船長「海は偉大で広大だ……いくら海賊だと言っても」
船長「俺たちにだって知らない事の方が多いんだ」
女剣士「鍛冶師は、部屋?」
船長「おう。仕事頼んだからな……邪魔すんなよ?」
女剣士「しないよ!」
船長「お前も疲れたろ。食堂行って飯食ってこいよ」
船長「もう暫く、この海域を越える迄は時間が掛かる」
船長「ゆっくり休んでな」
女剣士「……そうか ……ッ と!」
グラグラ……
船長「相変わらずこの辺は揺れるな」フゥ
女剣士「……?」
船長「この辺は潮の流れが悪いんだ。大きな渦が二つ、ぶつかってる」
女剣士「へぇ……」
船長「お前も船室に戻ってろ。甲板に出るなよ」
船長「今度海に落ちたらしらねぇぞ」
女剣士「そ、そんな事しない!」
船長「頼むぜ、本当に。何かあったら呼ぶさ」
船長「……この海域だけは魔物は出ネェからな」
女剣士「え……何で?」
船長「さてね。昔、島が沈んだなんて伝説もあるらしいくてな」
船長「呪いだなんだ……そんな話もあるが。ま、実際は」
船長「海の魔物すら住めない様な海流なんだろ」
女剣士「島……」
船長「ただの御伽噺だ。どの地図にも、そんな島乗ってネェよ」
女剣士「アタシは……知らない事だらけだな」
船長「海は偉大で広大だ……いくら海賊だと言っても」
船長「俺たちにだって知らない事の方が多いんだ」
女剣士「鍛冶師は、部屋?」
船長「おう。仕事頼んだからな……邪魔すんなよ?」
女剣士「しないよ!」
船長「お前も疲れたろ。食堂行って飯食ってこいよ」
船長「もう暫く、この海域を越える迄は時間が掛かる」
船長「ゆっくり休んでな」
788: 2013/05/30(木) 15:41:41.96 ID:nJZbnH5sP
女剣士「うん……何かあったら呼んでくれよ」
女剣士「船に乗せてくれた恩は、ちゃんと返すからな!」
船長「へいへい……金もらってんだから、あんまり気にすんなよ」
女剣士「だけど……」
船長「心配しなくても、こき使うのに変わりはネェから」
女剣士「……サンキュ」スタスタ
パタン
船長「さて、と……」スタスタ
船長(港街に着いたら、まずは盗賊と打ち合わせだな)
船長「おい、誰か!」
海賊「船長、何です?舵は心配いりませんぜ?」
船長「ああ、そりゃ解ってる。あいつの船は着いてきてるか?」
海賊「船長の仲間の船ですか、大丈夫ですよ」
海賊「あれ、定期船に使うんでしょ?」
船長「そういう方向で話はついてる」
海賊「何か……俺ら、海賊じゃネェっすよね」
海賊「こんな事やってると……」
船長「不服か?」
海賊「そういう意味じゃネェっすよ。寧ろ充実してますって」
船長「色々落ち着けば、また元に戻るさ」
海賊「ああ、そういえば船長」
船長「ん?」
海賊「向こうの船に乗ってる奴なんですが、二人程」
海賊「こっちの船に乗せて欲しいって言ってましたぜ」
海賊「出発早まったんで、バタバタしてて忘れてた」
女剣士「船に乗せてくれた恩は、ちゃんと返すからな!」
船長「へいへい……金もらってんだから、あんまり気にすんなよ」
女剣士「だけど……」
船長「心配しなくても、こき使うのに変わりはネェから」
女剣士「……サンキュ」スタスタ
パタン
船長「さて、と……」スタスタ
船長(港街に着いたら、まずは盗賊と打ち合わせだな)
船長「おい、誰か!」
海賊「船長、何です?舵は心配いりませんぜ?」
船長「ああ、そりゃ解ってる。あいつの船は着いてきてるか?」
海賊「船長の仲間の船ですか、大丈夫ですよ」
海賊「あれ、定期船に使うんでしょ?」
船長「そういう方向で話はついてる」
海賊「何か……俺ら、海賊じゃネェっすよね」
海賊「こんな事やってると……」
船長「不服か?」
海賊「そういう意味じゃネェっすよ。寧ろ充実してますって」
船長「色々落ち着けば、また元に戻るさ」
海賊「ああ、そういえば船長」
船長「ん?」
海賊「向こうの船に乗ってる奴なんですが、二人程」
海賊「こっちの船に乗せて欲しいって言ってましたぜ」
海賊「出発早まったんで、バタバタしてて忘れてた」
789: 2013/05/30(木) 15:42:25.76 ID:nJZbnH5sP
>>787
予定は未定!
……て言うか、計画無しだからなぁ……ごめん
予定は未定!
……て言うか、計画無しだからなぁ……ごめん
790: 2013/05/30(木) 15:58:18.32 ID:nJZbnH5sP
船長「こっちは元々客船じゃネェぞ。今は特別だ」
海賊「そうじゃ無くって、ですって」
船長「ん?どういうことだ?」
海賊「海賊になりたいそうです」
船長「はぁ!?」
海賊「ま……港街着いたら、宜しくお願いしますよ」
海賊「伝えましたからねー!飯行ってきます!」
船長「あ、おい……! まじかよ……」
……
………
…………
女「……神父様、そろそろお昼にしませんか」
神父「ああ、もうそんな時間ですか……」
女「盗賊が待ってますよ。使用人さんも」
神父「ええ、あ、すみません女さん。その袋、とって頂けますか?」
女「あ、はい……どうぞ」
神父「ありがとうございます……よいしょ」コロン、コロンコロン
女「足りる、でしょうか」
神父「解りません……し、これ以上は出来ません」
神父「無理をする道理も無いんです、女さん」
女「……そう、ですね」
神父「何も……意地悪で言っている訳ではありませんよ」
女「あ……ご、ごめんなさい、勿論……承知しています!」
神父「……いえ、私こそ言葉が悪かったです」
女「仕方の無い、事です……」
神父「……今日、戻られるのですよね」
女「使用人さんですか?ええ」
神父「……」
女「神父様?」
海賊「そうじゃ無くって、ですって」
船長「ん?どういうことだ?」
海賊「海賊になりたいそうです」
船長「はぁ!?」
海賊「ま……港街着いたら、宜しくお願いしますよ」
海賊「伝えましたからねー!飯行ってきます!」
船長「あ、おい……! まじかよ……」
……
………
…………
女「……神父様、そろそろお昼にしませんか」
神父「ああ、もうそんな時間ですか……」
女「盗賊が待ってますよ。使用人さんも」
神父「ええ、あ、すみません女さん。その袋、とって頂けますか?」
女「あ、はい……どうぞ」
神父「ありがとうございます……よいしょ」コロン、コロンコロン
女「足りる、でしょうか」
神父「解りません……し、これ以上は出来ません」
神父「無理をする道理も無いんです、女さん」
女「……そう、ですね」
神父「何も……意地悪で言っている訳ではありませんよ」
女「あ……ご、ごめんなさい、勿論……承知しています!」
神父「……いえ、私こそ言葉が悪かったです」
女「仕方の無い、事です……」
神父「……今日、戻られるのですよね」
女「使用人さんですか?ええ」
神父「……」
女「神父様?」
791: 2013/05/30(木) 16:07:41.53 ID:nJZbnH5sP
神父「いえ……行きましょうか」
女「え、ええ……」
神父「体調はもう、よろしいのですね?」
女「はい。神父様の回復魔法のおかげです」
神父「気休めにしかならないのが悔しいですよ」
女「……大丈夫です。もう、無茶はしません」
神父「出来ません、の間違いでしょう、女さん……」
女「……」
神父「次に、同じ事をされると……もう、保証は出来ませんよ」
女「解って……居ます」
神父「それでも貴女は……もし、請われるのなら」
神父「喜んで、その命を差し出すのでしょうね」
女「……魔王様が望まれるなら。魔王様の為、ならば」
神父「……」
女「……」
神父「世界の為、等と言われては……私も断れません」
神父「ですが……」
女「神に命を差し出せと言われたら、神父様はどうされます?」
神父「!?」
女「神はそんな事、仰らないかもしれません」
女「……魔王様も、仰らないと思います」
神父「では……でも、貴女は!使用人さんは……!」
女「彼女の独断でしょう。主を思う余りの」
女「私が断らないと知って、の」
神父「……」
女「でも、良いのです。もし彼女が提案しなくても」
女「私は、望んで自らを差し出します」
女「……使用人さんは、帰ったら魔王様に怒られるかもしれませんね」
女「え、ええ……」
神父「体調はもう、よろしいのですね?」
女「はい。神父様の回復魔法のおかげです」
神父「気休めにしかならないのが悔しいですよ」
女「……大丈夫です。もう、無茶はしません」
神父「出来ません、の間違いでしょう、女さん……」
女「……」
神父「次に、同じ事をされると……もう、保証は出来ませんよ」
女「解って……居ます」
神父「それでも貴女は……もし、請われるのなら」
神父「喜んで、その命を差し出すのでしょうね」
女「……魔王様が望まれるなら。魔王様の為、ならば」
神父「……」
女「……」
神父「世界の為、等と言われては……私も断れません」
神父「ですが……」
女「神に命を差し出せと言われたら、神父様はどうされます?」
神父「!?」
女「神はそんな事、仰らないかもしれません」
女「……魔王様も、仰らないと思います」
神父「では……でも、貴女は!使用人さんは……!」
女「彼女の独断でしょう。主を思う余りの」
女「私が断らないと知って、の」
神父「……」
女「でも、良いのです。もし彼女が提案しなくても」
女「私は、望んで自らを差し出します」
女「……使用人さんは、帰ったら魔王様に怒られるかもしれませんね」
792: 2013/05/30(木) 16:14:04.07 ID:nJZbnH5sP
神父「貴女の寿命を縮めてまで……ですか」
女「はい。そういうお方です」
神父「私は、魔王と言う方を知りません。魔の王だと言う、存在そのものしか」
神父「……それも、想像に過ぎませんがね」
神父「貴女方の話を聞いていると、聖人君子の様に聞こえない時があるような気がして」
神父「……酷く複雑な気分ですよ」
女「勇者様、ですからね。この……港街の人達にとって」
女「私や、使用人さんにとっても、そうなんです」
女「魔の王であっても、残忍であっても……魔王様は、私の勇者様なのです」
神父「……はぁ。もう、考えるのは辞めておきます」
神父「私は信仰に、神に……自分に、絶対の自信と確固たる物を持って生きてきたつもりです」
神父「これ以上は、踏み込んでは行けない領域……ですね」
女「……神父様」
神父「自分が揺らぐ様なところに、身を置く事はできません」
神父「人と言うのは……弱い生き物です」
女「そう……で、しょうか……」
タタタ……
盗賊「女!神父さん!おっそいよ!」
女「盗賊……迎えに来てくれたの?」
神父「こんにちは、盗賊さん」
盗賊「試食会始まるぜ」
女「え?試食会?」
神父「皆でお昼を食べよう……と言うのでは無かったのですか?」
盗賊「ついで、だよ。もう少しで店、できあがるからさ」
盗賊「メニューの試食して欲しいんだって」
女「まあ……」
盗賊「……で、ついでにお願いがあるんだけど、神父さん」
神父「はい?」
女「はい。そういうお方です」
神父「私は、魔王と言う方を知りません。魔の王だと言う、存在そのものしか」
神父「……それも、想像に過ぎませんがね」
神父「貴女方の話を聞いていると、聖人君子の様に聞こえない時があるような気がして」
神父「……酷く複雑な気分ですよ」
女「勇者様、ですからね。この……港街の人達にとって」
女「私や、使用人さんにとっても、そうなんです」
女「魔の王であっても、残忍であっても……魔王様は、私の勇者様なのです」
神父「……はぁ。もう、考えるのは辞めておきます」
神父「私は信仰に、神に……自分に、絶対の自信と確固たる物を持って生きてきたつもりです」
神父「これ以上は、踏み込んでは行けない領域……ですね」
女「……神父様」
神父「自分が揺らぐ様なところに、身を置く事はできません」
神父「人と言うのは……弱い生き物です」
女「そう……で、しょうか……」
タタタ……
盗賊「女!神父さん!おっそいよ!」
女「盗賊……迎えに来てくれたの?」
神父「こんにちは、盗賊さん」
盗賊「試食会始まるぜ」
女「え?試食会?」
神父「皆でお昼を食べよう……と言うのでは無かったのですか?」
盗賊「ついで、だよ。もう少しで店、できあがるからさ」
盗賊「メニューの試食して欲しいんだって」
女「まあ……」
盗賊「……で、ついでにお願いがあるんだけど、神父さん」
神父「はい?」
793: 2013/05/30(木) 16:22:06.60 ID:nJZbnH5sP
盗賊「やめとけって言うのに、聞かなくってさ……使用人」
女「?」
盗賊「手伝います、って意気込んで……」
神父「おやおや……可愛らしい所もありますね」
女「包丁で怪我でも?」
盗賊「ああ、違う違う。城で飯の支度してんだろ?」
盗賊「そっちじゃ無くて、資材運ぶ、てさ」
女「え……」
盗賊「重さに負けてひっくり返ってだな……」
神父「……」
盗賊「あ、ほらあそこ……」
神父「ああ、腕から血が……」タタタ
盗賊「無茶するぜ、全く」
女「……止めれば良かったのに」スタスタ
盗賊「止めたよそりゃ……ちょっと遅かったけど」スタスタ
使用人「も……申し訳ございません」ボロ
神父「全く、何をやっているんですか貴女は……」
使用人「……」
女「だ、大丈夫ですか?」
使用人「今、回復して貰いました……ありがとうございます」
神父「いくら何でも、貴女の細腕じゃ無理だって解るでしょうに」
盗賊「まあまあ……気持ちはありがたく受け取っておくよ、使用人」
使用人「……はい」
神父「ついでですから、お渡ししておきます」ハァ
使用人「これは?」
神父「魔除けの石です。それほどの数はありませんが……」
使用人「あ……!ありがとうございます!」
女「?」
盗賊「手伝います、って意気込んで……」
神父「おやおや……可愛らしい所もありますね」
女「包丁で怪我でも?」
盗賊「ああ、違う違う。城で飯の支度してんだろ?」
盗賊「そっちじゃ無くて、資材運ぶ、てさ」
女「え……」
盗賊「重さに負けてひっくり返ってだな……」
神父「……」
盗賊「あ、ほらあそこ……」
神父「ああ、腕から血が……」タタタ
盗賊「無茶するぜ、全く」
女「……止めれば良かったのに」スタスタ
盗賊「止めたよそりゃ……ちょっと遅かったけど」スタスタ
使用人「も……申し訳ございません」ボロ
神父「全く、何をやっているんですか貴女は……」
使用人「……」
女「だ、大丈夫ですか?」
使用人「今、回復して貰いました……ありがとうございます」
神父「いくら何でも、貴女の細腕じゃ無理だって解るでしょうに」
盗賊「まあまあ……気持ちはありがたく受け取っておくよ、使用人」
使用人「……はい」
神父「ついでですから、お渡ししておきます」ハァ
使用人「これは?」
神父「魔除けの石です。それほどの数はありませんが……」
使用人「あ……!ありがとうございます!」
794: 2013/05/30(木) 16:34:33.27 ID:nJZbnH5sP
盗賊「ほら、持ってきて貰うから適当に座れよ」
女「え……ここに?」
盗賊「まだ店出来てないからな……ピクニック気分で良いだろ」
盗賊「運んでくるよ。待ってて!」
女「あ、手伝うわよ」
盗賊「良いよ、大丈夫!」タタタ
神父「神聖な水で清めた、布で出来た袋です」
神父「……ついでに、お持ちなさい」
使用人「はい……ありがたく、頂戴致します」
女「お二人とも、コチラに……とにかく、お食事にしましょう」
盗賊「おっまったせー!」タタタ
神父「ああ、良い匂いですね」
使用人「ええ……本当に」
盗賊「適当に摘んでくれよ。後でちゃんと感想聞かせてやってくれな」
神父「頂きましょう……うん、美味しい」
使用人「……お肉、柔らかい……どうやっていいるんでしょうか」
女「まあ、本当に……」
盗賊「食欲はあるんだな、良かった」ホッ
女「……私?」
盗賊「他に誰が居るんだ……あ、マジだ旨い」
使用人「大丈夫……なのですね?」
女「ええ……ご心配なさらず」
使用人「そうですか……」
盗賊「使用人は結局何時までいるんだ?」
使用人「そう長居はできません。魔王様達の様子も気になりますし」
使用人「……食事が済めば、戻ろうと思います」
女「そうですか……次は、当日ですかね」
使用人「船長さん達が戻られるであろう頃に、もう一度来ます」
神父「一つ、お願いしても?」
使用人「……私に、ですか?」
神父「以前、側近さんに頼んだのですがね」
神父「本を、お貸し頂きたいのです」
女「え……ここに?」
盗賊「まだ店出来てないからな……ピクニック気分で良いだろ」
盗賊「運んでくるよ。待ってて!」
女「あ、手伝うわよ」
盗賊「良いよ、大丈夫!」タタタ
神父「神聖な水で清めた、布で出来た袋です」
神父「……ついでに、お持ちなさい」
使用人「はい……ありがたく、頂戴致します」
女「お二人とも、コチラに……とにかく、お食事にしましょう」
盗賊「おっまったせー!」タタタ
神父「ああ、良い匂いですね」
使用人「ええ……本当に」
盗賊「適当に摘んでくれよ。後でちゃんと感想聞かせてやってくれな」
神父「頂きましょう……うん、美味しい」
使用人「……お肉、柔らかい……どうやっていいるんでしょうか」
女「まあ、本当に……」
盗賊「食欲はあるんだな、良かった」ホッ
女「……私?」
盗賊「他に誰が居るんだ……あ、マジだ旨い」
使用人「大丈夫……なのですね?」
女「ええ……ご心配なさらず」
使用人「そうですか……」
盗賊「使用人は結局何時までいるんだ?」
使用人「そう長居はできません。魔王様達の様子も気になりますし」
使用人「……食事が済めば、戻ろうと思います」
女「そうですか……次は、当日ですかね」
使用人「船長さん達が戻られるであろう頃に、もう一度来ます」
神父「一つ、お願いしても?」
使用人「……私に、ですか?」
神父「以前、側近さんに頼んだのですがね」
神父「本を、お貸し頂きたいのです」
795: 2013/05/30(木) 17:02:03.54 ID:nJZbnH5sP
使用人「ああ……前後編の、後編、ですね」
神父「ご存じでしたか」
使用人「次に来る頃には、姫様も読み終わられているでしょう」
使用人「……お約束、します」
神父「ありがとう」
盗賊「……魔王と姫に、ちゃんと伝えて……渡しておいてくれよ」
使用人「勿論です」
女「お会いできるのを……楽しみにしています、と」
女「……可能ならば、お伝えください」
使用人「必ず、伝えます」
……
………
…………
姫(『ここで待つ様にと告げた、城の兵士の姿は無かった』)
姫(『少年は一人だった。母親の言葉を思い出している内には、王が来るだろう』)
姫(『少年はもう一度小さくため息を吐き、家を出る前に持たされた、剣を指でなぞる』)
姫(『形見だと母親から聞いていた、父の剣。光輝く勇者の剣』)
姫(『この剣に選ばれた事こそ、少年が勇者である揺るぎない証なのだと』)
姫(『何度も何度も、聞かされてきた。自分は勇者なのだと信じて生きてきた』)
姫(『勿論、疑っている訳では無い。少年は、王への謁見を許された』)
姫(『勇者として、旅立つ年齢に達した事で、一人前なのだと認められたのだ』)
姫(『ただ、いざこの場へと居る事実に、不安を隠せずにいるだけなのだ』)
姫(『三度目のため息を落とそうと、少年の肺が大きく膨らんだ所で』)
姫(『ギィ、と重い音を立て、背後の大きな扉が開いた』)
コンコン
姫「……」
使用人「姫様、失礼致します」カチャ
姫「あ……」ハッ
使用人「……どうされました?」
神父「ご存じでしたか」
使用人「次に来る頃には、姫様も読み終わられているでしょう」
使用人「……お約束、します」
神父「ありがとう」
盗賊「……魔王と姫に、ちゃんと伝えて……渡しておいてくれよ」
使用人「勿論です」
女「お会いできるのを……楽しみにしています、と」
女「……可能ならば、お伝えください」
使用人「必ず、伝えます」
……
………
…………
姫(『ここで待つ様にと告げた、城の兵士の姿は無かった』)
姫(『少年は一人だった。母親の言葉を思い出している内には、王が来るだろう』)
姫(『少年はもう一度小さくため息を吐き、家を出る前に持たされた、剣を指でなぞる』)
姫(『形見だと母親から聞いていた、父の剣。光輝く勇者の剣』)
姫(『この剣に選ばれた事こそ、少年が勇者である揺るぎない証なのだと』)
姫(『何度も何度も、聞かされてきた。自分は勇者なのだと信じて生きてきた』)
姫(『勿論、疑っている訳では無い。少年は、王への謁見を許された』)
姫(『勇者として、旅立つ年齢に達した事で、一人前なのだと認められたのだ』)
姫(『ただ、いざこの場へと居る事実に、不安を隠せずにいるだけなのだ』)
姫(『三度目のため息を落とそうと、少年の肺が大きく膨らんだ所で』)
姫(『ギィ、と重い音を立て、背後の大きな扉が開いた』)
コンコン
姫「……」
使用人「姫様、失礼致します」カチャ
姫「あ……」ハッ
使用人「……どうされました?」
796: 2013/05/30(木) 17:11:11.36 ID:nJZbnH5sP
姫「あ、ああ……お帰りなさい」
使用人「ただいま、戻りました」
姫「ごめんなさい、ちょっと……没頭してたわ」
使用人「ずっと呼んでらしたのですか?」
姫「他にする事ないもの」
使用人「……こちらは、ずっと雨なのですね」
姫「港街は晴れてた?」
使用人「ええ。綺麗な青空でした」ジャラ
姫「そう……それは?」
使用人「魔除けの石です。何個かあるので……これで、持つと良いですが」
姫「ありがとう……あ」コロン
使用人「清浄な水で清めた袋、だそうですよ、これ……!?」
姫「……」
使用人「……」
シュゥウ……
姫「……あっと言う間に、黒くなった、わね」
使用人「石は、無事……ですね」ホッ
姫「離れて居るのに……関係無いのね」
使用人「部屋の四隅に置いておきます。丁度5つ、ありますし」
使用人「1つは、身につけておいてください、姫様」
姫「ええ……あら、これは……?」
使用人「あ、それは……」
姫「綺麗な青……これは…… ……女、の力?」
使用人「姫様、それはコチラへ……!」ギュッ
姫「……凄いわね」
使用人「え?」
姫「大丈夫、気分が悪くなるような物じゃ無いわ」
使用人「ただいま、戻りました」
姫「ごめんなさい、ちょっと……没頭してたわ」
使用人「ずっと呼んでらしたのですか?」
姫「他にする事ないもの」
使用人「……こちらは、ずっと雨なのですね」
姫「港街は晴れてた?」
使用人「ええ。綺麗な青空でした」ジャラ
姫「そう……それは?」
使用人「魔除けの石です。何個かあるので……これで、持つと良いですが」
姫「ありがとう……あ」コロン
使用人「清浄な水で清めた袋、だそうですよ、これ……!?」
姫「……」
使用人「……」
シュゥウ……
姫「……あっと言う間に、黒くなった、わね」
使用人「石は、無事……ですね」ホッ
姫「離れて居るのに……関係無いのね」
使用人「部屋の四隅に置いておきます。丁度5つ、ありますし」
使用人「1つは、身につけておいてください、姫様」
姫「ええ……あら、これは……?」
使用人「あ、それは……」
姫「綺麗な青……これは…… ……女、の力?」
使用人「姫様、それはコチラへ……!」ギュッ
姫「……凄いわね」
使用人「え?」
姫「大丈夫、気分が悪くなるような物じゃ無いわ」
797: 2013/05/30(木) 17:16:58.60 ID:nJZbnH5sP
姫「……魔王への想いで溢れてる。女が……魔王の為に作ったのね」
使用人「……はい」
姫「魔王の、魔力を少しでも押さえるために?」
使用人「どこまでの効果があるかはわかりません。女さんは……人間ですから」
姫「力の強弱は……関係無いわよ」
姫「……これだけの思いが、あれば」
使用人「願えば、叶う?」
姫「そうであれば……良いわね」
使用人「……届けて、参ります」
姫「それは……魔王の願い?」
使用人「いえ……私の独断です」
姫「そう……」
使用人「怒られるのは承知の上です」
姫「……」
使用人「失礼致します。すぐに……食事に致しますね」
パタン
姫「……愛の力、か」
姫「私には……出来ない事ね」フゥ
……
………
…………
側近「……お前、さぁ」
魔王「な、何故だ……!」
側近「何でそんな器用な負け方出来る訳?」
魔王「わ、私が聞きたいわ!」
側近「……まだやんの?」
魔王「当然だ!」
側近「あのさぁ、そりゃ四隅取る様にって言ったけど」
側近「四隅だけ残して後全部俺とか……」
魔王「うるさい!」
側近「普通、できねぇよ……」
魔王「うるさいと言っている!つ、次は私が黒だ!」
側近「どっちでも良いよ……ほれ、早く取れ自分の分」
使用人「……はい」
姫「魔王の、魔力を少しでも押さえるために?」
使用人「どこまでの効果があるかはわかりません。女さんは……人間ですから」
姫「力の強弱は……関係無いわよ」
姫「……これだけの思いが、あれば」
使用人「願えば、叶う?」
姫「そうであれば……良いわね」
使用人「……届けて、参ります」
姫「それは……魔王の願い?」
使用人「いえ……私の独断です」
姫「そう……」
使用人「怒られるのは承知の上です」
姫「……」
使用人「失礼致します。すぐに……食事に致しますね」
パタン
姫「……愛の力、か」
姫「私には……出来ない事ね」フゥ
……
………
…………
側近「……お前、さぁ」
魔王「な、何故だ……!」
側近「何でそんな器用な負け方出来る訳?」
魔王「わ、私が聞きたいわ!」
側近「……まだやんの?」
魔王「当然だ!」
側近「あのさぁ、そりゃ四隅取る様にって言ったけど」
側近「四隅だけ残して後全部俺とか……」
魔王「うるさい!」
側近「普通、できねぇよ……」
魔王「うるさいと言っている!つ、次は私が黒だ!」
側近「どっちでも良いよ……ほれ、早く取れ自分の分」
798: 2013/05/30(木) 17:24:02.74 ID:nJZbnH5sP
コンコン
側近「はーいー?」
魔王「早くしろ、側近!お前の番だ」
側近「はいはい……」パチ。クルクル
魔王「フン、それだけしかひっくり返さんのか」パチ
カチャ
使用人「失礼しま…… ……」
側近「お。おかえりー、使用人ちゃん」
使用人「チェスの次はオセロですか……」
魔王「お前の番だぞ」
側近「魔王様がどうしても俺に勝ちたいって言うからさー」パチ
使用人「……はあ」
魔王「良し、次は……」
使用人「あ、そこは駄目です魔王様……こっち」パチ
魔王「ん?しかし……」
側近「助っ人?ズルイ……ま、負けないけど」パチ
使用人「大丈夫です」パチ
魔王「……」
側近「……」パチ
使用人「……」パチ
魔王「お……」
側近「ん、んん……ッ」パチ
使用人「ここですね」パチ
側近「ま、まじかよ……」パチ
使用人「どうぞ、魔王様……ここに」
魔王「ふむ」パチ
側近「……げ、パス!?」
側近「はーいー?」
魔王「早くしろ、側近!お前の番だ」
側近「はいはい……」パチ。クルクル
魔王「フン、それだけしかひっくり返さんのか」パチ
カチャ
使用人「失礼しま…… ……」
側近「お。おかえりー、使用人ちゃん」
使用人「チェスの次はオセロですか……」
魔王「お前の番だぞ」
側近「魔王様がどうしても俺に勝ちたいって言うからさー」パチ
使用人「……はあ」
魔王「良し、次は……」
使用人「あ、そこは駄目です魔王様……こっち」パチ
魔王「ん?しかし……」
側近「助っ人?ズルイ……ま、負けないけど」パチ
使用人「大丈夫です」パチ
魔王「……」
側近「……」パチ
使用人「……」パチ
魔王「お……」
側近「ん、んん……ッ」パチ
使用人「ここですね」パチ
側近「ま、まじかよ……」パチ
使用人「どうぞ、魔王様……ここに」
魔王「ふむ」パチ
側近「……げ、パス!?」
799: 2013/05/30(木) 17:32:02.73 ID:nJZbnH5sP
魔王「私か? ……ふふ」パチ
側近「んげ!?」
使用人「……魔王様の勝ち、ですね」
魔王「勝った……初めて勝った!」
側近「いやいやいやいや!お前の勝ちじゃネェだろ、使用人ちゃんだろ!」
側近「この勝負無効!」
魔王「勝ちは勝ちだ!さて、話して貰おうか、側近!」
側近「ええええええええええええ」
使用人「……あの、先に良いでしょうか」
魔王「ん……どうした?」
使用人「……これを」ス
側近「? ……なんだこれ、綺麗だな。真っ青だ」
魔王「……女?」
使用人「はい」
側近「え……これ、女ちゃんが作ったの?」
魔王「…… ……どうして、だ」
使用人「……事情を話すと、少しでも魔王様の魔力を押さえられる様に作らせて欲しいと」
使用人「そう、仰いました」
魔王「止めなかった……のか」
使用人「……女さんが言い出さなければ、私からお願いするつもりでした」
魔王「!」
側近「……!? 魔王様、落ち着け……!」ビリッ
使用人「……ッ」ビリビリ……ッ
魔王「……解ってる。解ってる……!怒ってる訳じゃ無い」
魔王「そんなつもりでは、無いんだ……!」
使用人「……ッ そ、れは!女さんの愛です、魔王様!」
魔王「あ……い?」
側近「んげ!?」
使用人「……魔王様の勝ち、ですね」
魔王「勝った……初めて勝った!」
側近「いやいやいやいや!お前の勝ちじゃネェだろ、使用人ちゃんだろ!」
側近「この勝負無効!」
魔王「勝ちは勝ちだ!さて、話して貰おうか、側近!」
側近「ええええええええええええ」
使用人「……あの、先に良いでしょうか」
魔王「ん……どうした?」
使用人「……これを」ス
側近「? ……なんだこれ、綺麗だな。真っ青だ」
魔王「……女?」
使用人「はい」
側近「え……これ、女ちゃんが作ったの?」
魔王「…… ……どうして、だ」
使用人「……事情を話すと、少しでも魔王様の魔力を押さえられる様に作らせて欲しいと」
使用人「そう、仰いました」
魔王「止めなかった……のか」
使用人「……女さんが言い出さなければ、私からお願いするつもりでした」
魔王「!」
側近「……!? 魔王様、落ち着け……!」ビリッ
使用人「……ッ」ビリビリ……ッ
魔王「……解ってる。解ってる……!怒ってる訳じゃ無い」
魔王「そんなつもりでは、無いんだ……!」
使用人「……ッ そ、れは!女さんの愛です、魔王様!」
魔王「あ……い?」
800: 2013/05/30(木) 17:39:15.12 ID:nJZbnH5sP
使用人「少しでも、魔王様の為になる様に、と……の」
使用人「女さんの気持ちです、想いです……!」
側近「……ッ 落ち着け、魔王様!今、魔力を膨張させたら」
側近「お前自身が、女の気持ちを踏みにじる事になるぞ!?」
魔王「…… ……」ギュッ
使用人「……」
側近「……」
魔王「…… ……愛、か」
使用人「……はい。同じ物を作る事はもう……二度と叶いません」
側近「……」
使用人「お会いできるのを楽しみにしています、と……女さんから伝言です」
側近「……元気そうだったか?」
使用人「はい」
魔王「解った……ご苦労だった」
魔王「次は何時、行くんだ?」
使用人「船長さんが港街に戻られる頃に……です」
魔王「……ではそれまで、姫の事を頼む」
使用人「はい。では……失礼します」スタスタ……パタン
側近「……大丈夫か?」
魔王「ああ……悪かった」
側近「俺は別に構わんがな……使用人ちゃんを責めてやるなよ」
魔王「解ってる。解って……る」
側近「うん。そうだな」
魔王「愛、か。愛ってのは……何なんだ、側近」
側近「急になんだよ」
魔王「私にはわからんから、だ」
魔王「ついこの間話しただろう。私の姫への気持ちは……愛では無いだろうからな」
使用人「女さんの気持ちです、想いです……!」
側近「……ッ 落ち着け、魔王様!今、魔力を膨張させたら」
側近「お前自身が、女の気持ちを踏みにじる事になるぞ!?」
魔王「…… ……」ギュッ
使用人「……」
側近「……」
魔王「…… ……愛、か」
使用人「……はい。同じ物を作る事はもう……二度と叶いません」
側近「……」
使用人「お会いできるのを楽しみにしています、と……女さんから伝言です」
側近「……元気そうだったか?」
使用人「はい」
魔王「解った……ご苦労だった」
魔王「次は何時、行くんだ?」
使用人「船長さんが港街に戻られる頃に……です」
魔王「……ではそれまで、姫の事を頼む」
使用人「はい。では……失礼します」スタスタ……パタン
側近「……大丈夫か?」
魔王「ああ……悪かった」
側近「俺は別に構わんがな……使用人ちゃんを責めてやるなよ」
魔王「解ってる。解って……る」
側近「うん。そうだな」
魔王「愛、か。愛ってのは……何なんだ、側近」
側近「急になんだよ」
魔王「私にはわからんから、だ」
魔王「ついこの間話しただろう。私の姫への気持ちは……愛では無いだろうからな」
801: 2013/05/30(木) 17:48:00.74 ID:nJZbnH5sP
側近「……」
側近「仕方ない。負けた事だし、話してやるよ」
魔王「……?」
側近「前魔王様の話。前魔王様と……后様の話」
魔王「……母、か」
側近「すっげぇ変わり者だったけどな。でも……あの二人は確かに愛し合ってたぜ」
魔王「私を産んで……すぐに氏んだ、んだよな?」
側近「そうだ。だが産後の肥立ちがーとかじゃ無い」
魔王「?」
側近「奇病、って言って良いんだろうかな」
魔王「奇病……」
側近「氏因は病氏、だ。后様はお前を産んだ後、身体がぼろぼろになって朽ちていったんだ」
魔王「……」
側近「文字通り、ぼろぼろ、だ。崩れていくんだよ」
側近「指の先から、足の先から……最後には顔も崩れ、喋れなくなった」
魔王「な、ぜだ」
側近「原因がわかんないから奇病、なんでしょ」
側近「……だが、前魔王様は解ってたみたいだな」
魔王「何?」
側近「先代……前魔王様の前の魔王様、な」
側近「俺は会った事は無いが……先代から聞いていたらしい」
側近「魔王を産んだ者は、そうして朽ちるのだそうだ」
魔王「……!」
側近「何かに似てネェ?」
魔王「……エルフの、長……か」
側近「その話を聞いた時に思ったんだよ。ああ、一緒なんだなって」
側近「……腐った世の中の摂理だよな」
側近「力のある者を産み落とす、ってのは……それだけ負担になるのかもしれんが、さ」
魔王「……」
側近「仕方ない。負けた事だし、話してやるよ」
魔王「……?」
側近「前魔王様の話。前魔王様と……后様の話」
魔王「……母、か」
側近「すっげぇ変わり者だったけどな。でも……あの二人は確かに愛し合ってたぜ」
魔王「私を産んで……すぐに氏んだ、んだよな?」
側近「そうだ。だが産後の肥立ちがーとかじゃ無い」
魔王「?」
側近「奇病、って言って良いんだろうかな」
魔王「奇病……」
側近「氏因は病氏、だ。后様はお前を産んだ後、身体がぼろぼろになって朽ちていったんだ」
魔王「……」
側近「文字通り、ぼろぼろ、だ。崩れていくんだよ」
側近「指の先から、足の先から……最後には顔も崩れ、喋れなくなった」
魔王「な、ぜだ」
側近「原因がわかんないから奇病、なんでしょ」
側近「……だが、前魔王様は解ってたみたいだな」
魔王「何?」
側近「先代……前魔王様の前の魔王様、な」
側近「俺は会った事は無いが……先代から聞いていたらしい」
側近「魔王を産んだ者は、そうして朽ちるのだそうだ」
魔王「……!」
側近「何かに似てネェ?」
魔王「……エルフの、長……か」
側近「その話を聞いた時に思ったんだよ。ああ、一緒なんだなって」
側近「……腐った世の中の摂理だよな」
側近「力のある者を産み落とす、ってのは……それだけ負担になるのかもしれんが、さ」
魔王「……」
802: 2013/05/30(木) 17:54:41.70 ID:nJZbnH5sP
側近「毎日崩れていく身を見ても、前魔王様はキスを欠かさなかった」
側近「后様もさ。厭じゃ無いのかなって思ったんだ。女だぜ?」
側近「不思議そうな顔してる俺に、言うんだよ」
側近「『だって魔王が望むんだもの』って」
魔王「……」
側近「で、前魔王様にも聞いた。酷じゃないのかって言ったんだ」
魔王「親父は、なんていった?」
側近「『愛しい妻にキスをしたいからするだけだ』」
魔王「……」
側近「顎から顔が崩れてさ。唇が無くなって喋れなくなっても」
側近「前魔王様は毎日、欠かさずキスしてた。鼻が崩れて、息が出来なくなって」
側近「……后様の最後の一欠片が風に流されてしまう迄ずーっと、だ」
魔王「……」
側近「愛だろ?」
魔王「……だな」
側近「女ちゃんも……お前の事、愛してるんだろうな」
魔王「ああ……」
側近「気付いてたの!?」
魔王「……そこまで鈍く無い」
側近「じゃ……女ちゃんの為にも。力、おさえてやれよ」
側近「自分でどうにか出来るのか、知らんけどな」
魔王「……願えば叶う。私は……魔王だ」
側近「そっか」
魔王「……この世界は、どうなっているんだろうな」
側近「へ?」
魔王「誰が……こんなシステムを作ったんだ」
側近「神様、じゃネェの」
魔王「……ずっと、繰り返してきたのか」
側近「后様もさ。厭じゃ無いのかなって思ったんだ。女だぜ?」
側近「不思議そうな顔してる俺に、言うんだよ」
側近「『だって魔王が望むんだもの』って」
魔王「……」
側近「で、前魔王様にも聞いた。酷じゃないのかって言ったんだ」
魔王「親父は、なんていった?」
側近「『愛しい妻にキスをしたいからするだけだ』」
魔王「……」
側近「顎から顔が崩れてさ。唇が無くなって喋れなくなっても」
側近「前魔王様は毎日、欠かさずキスしてた。鼻が崩れて、息が出来なくなって」
側近「……后様の最後の一欠片が風に流されてしまう迄ずーっと、だ」
魔王「……」
側近「愛だろ?」
魔王「……だな」
側近「女ちゃんも……お前の事、愛してるんだろうな」
魔王「ああ……」
側近「気付いてたの!?」
魔王「……そこまで鈍く無い」
側近「じゃ……女ちゃんの為にも。力、おさえてやれよ」
側近「自分でどうにか出来るのか、知らんけどな」
魔王「……願えば叶う。私は……魔王だ」
側近「そっか」
魔王「……この世界は、どうなっているんだろうな」
側近「へ?」
魔王「誰が……こんなシステムを作ったんだ」
側近「神様、じゃネェの」
魔王「……ずっと、繰り返してきたのか」
803: 2013/05/30(木) 18:04:24.49 ID:nJZbnH5sP
魔王「代々の魔王も、エルフの長も、それを産む者も……」
魔王「こんな、腐った不条理の元……歴史を紡いできたのか」
側近「……断ち切れるじゃネェか」
魔王「ん……?」
側近「姫様の代で、エルフの森は閉ざされた」
側近「お前の代で……魔王の血は消えるんだ」
魔王「……腐った世界の腐った不条理が断ち切れる……か」
側近「……」
魔王「例外が無い、んだろう事だ」
魔王「先は……どうなるか解らん、がな」
側近「そうだな」
魔王「……勇者とやらが現れるまで、のんびり眠っている事にするさ」
側近「……」
魔王「本来、それが正しい姿なのかもしれん」
側近「ん?」
魔王「『魔王』と言うのは……勇者に倒される為の物かもしれん、という事だ」
側近「……随分勇者側に、都合の良いモンだな」
魔王「御伽噺では、必ず勇者は魔王を倒すんだ。必ず」
側近「……所詮御伽噺だろ」
魔王「良い物だぞ? ……中々、面白い」
魔王「こんな、腐った不条理の元……歴史を紡いできたのか」
側近「……断ち切れるじゃネェか」
魔王「ん……?」
側近「姫様の代で、エルフの森は閉ざされた」
側近「お前の代で……魔王の血は消えるんだ」
魔王「……腐った世界の腐った不条理が断ち切れる……か」
側近「……」
魔王「例外が無い、んだろう事だ」
魔王「先は……どうなるか解らん、がな」
側近「そうだな」
魔王「……勇者とやらが現れるまで、のんびり眠っている事にするさ」
側近「……」
魔王「本来、それが正しい姿なのかもしれん」
側近「ん?」
魔王「『魔王』と言うのは……勇者に倒される為の物かもしれん、という事だ」
側近「……随分勇者側に、都合の良いモンだな」
魔王「御伽噺では、必ず勇者は魔王を倒すんだ。必ず」
側近「……所詮御伽噺だろ」
魔王「良い物だぞ? ……中々、面白い」
811: 2013/05/31(金) 07:48:14.43 ID:bLQ+AmIRP
おはよー!
弁当作り終えたー。
幼女起こして遠足行ってくる!
>>806
お久しぶり!
相変わらず可愛い!
ありがとー!
ハチノコ吹いた(笑)
弁当作り終えたー。
幼女起こして遠足行ってくる!
>>806
お久しぶり!
相変わらず可愛い!
ありがとー!
ハチノコ吹いた(笑)
814: 2013/05/31(金) 14:19:52.99 ID:bLQ+AmIRP
ただいま。疲れた(・△・)魂抜けそう……
お疲れなのでまったりお風呂まで、できるだけー
お疲れなのでまったりお風呂まで、できるだけー
815: 2013/05/31(金) 14:53:32.69 ID:bLQ+AmIRP
側近「『魔王』の言葉とは思えネェな」
側近「……つか、そもそも魔王の城に、そんな本がある事自体どうかと思うが」
魔王「お前は……親父の代から魔王の側近としてここに居るんだったよな」
側近「ああ。前も言っただろ。お前の親父……前魔王様に、魔族としての生を貰ったんだ」
魔王「何故、なんだ?」
側近「……何がだよ」
魔王「お前元人間なんだろう?何故そんな事になったんだ?」
側近「聞きたい?」
魔王「そりゃ、まあ」
側近「良し!じゃあ……もう一勝負だな」
魔王「……何?」
側近「さっきは使用人ちゃんのおかげで勝てただけだろう」
側近「今度はしっかり自分の力で勝つんだな!」
魔王「根に持ってるのか……」
側近「大体!勝って聞き出さなきゃ意味が無い的な事言い出したのは」
側近「お前の方だろうが!」
魔王「良いだろう、次も勝ってやる」
側近「次、は!でしょ!」
……
………
…………
側近「……つか、そもそも魔王の城に、そんな本がある事自体どうかと思うが」
魔王「お前は……親父の代から魔王の側近としてここに居るんだったよな」
側近「ああ。前も言っただろ。お前の親父……前魔王様に、魔族としての生を貰ったんだ」
魔王「何故、なんだ?」
側近「……何がだよ」
魔王「お前元人間なんだろう?何故そんな事になったんだ?」
側近「聞きたい?」
魔王「そりゃ、まあ」
側近「良し!じゃあ……もう一勝負だな」
魔王「……何?」
側近「さっきは使用人ちゃんのおかげで勝てただけだろう」
側近「今度はしっかり自分の力で勝つんだな!」
魔王「根に持ってるのか……」
側近「大体!勝って聞き出さなきゃ意味が無い的な事言い出したのは」
側近「お前の方だろうが!」
魔王「良いだろう、次も勝ってやる」
側近「次、は!でしょ!」
……
………
…………
816: 2013/05/31(金) 16:08:36.60 ID:bLQ+AmIRP
女剣士「鍛冶師、居る?」コンコン
鍛冶師「入って良いよ」
女剣士「……何やってるの」カチャ、パタン
鍛冶師「んー……彫刻家ごっこ?」コンコン
女剣士「……凄い」
鍛冶師「とんでもない。子供のお遊びみたいなもんさ」フー
鍛冶師「もう良い、かな」
女剣士「これ……どうしたの?」
鍛冶師「船長が村で、石買ってきたから何か作れ、てさ……」
女剣士「……鳥?」
鍛冶師「そ。あんまり複雑なモンは出来ないよ、流石に」
女剣士「でも可愛いな」
鍛冶師「しかしま、こんなの作らせて何するんだかな」
女剣士「この船……結構拘ってるよな。よく見ると……」
鍛冶師「船長の趣味だろうね……とろこで、何か用事あったんじゃないの?」
女剣士「あ、ああ。あのさ……窓、見せて貰おうと思って」
鍛冶師「窓?」
女剣士「窓の、外」
鍛冶師「ああ……別に良いけど……?女剣士の部屋にも、窓ぐらい着いてるでしょ」
女剣士「方向がな。こっちの方がよく見えるかと思ってさ」
鍛冶師「入って良いよ」
女剣士「……何やってるの」カチャ、パタン
鍛冶師「んー……彫刻家ごっこ?」コンコン
女剣士「……凄い」
鍛冶師「とんでもない。子供のお遊びみたいなもんさ」フー
鍛冶師「もう良い、かな」
女剣士「これ……どうしたの?」
鍛冶師「船長が村で、石買ってきたから何か作れ、てさ……」
女剣士「……鳥?」
鍛冶師「そ。あんまり複雑なモンは出来ないよ、流石に」
女剣士「でも可愛いな」
鍛冶師「しかしま、こんなの作らせて何するんだかな」
女剣士「この船……結構拘ってるよな。よく見ると……」
鍛冶師「船長の趣味だろうね……とろこで、何か用事あったんじゃないの?」
女剣士「あ、ああ。あのさ……窓、見せて貰おうと思って」
鍛冶師「窓?」
女剣士「窓の、外」
鍛冶師「ああ……別に良いけど……?女剣士の部屋にも、窓ぐらい着いてるでしょ」
女剣士「方向がな。こっちの方がよく見えるかと思ってさ」
817: 2013/05/31(金) 16:54:59.86 ID:bLQ+AmIRP
鍛冶師「何が見たいの?」
女剣士「2つの渦、とやら」スタスタ
鍛冶師「ああ……中々進まないからイライラしてるのか」
女剣士「焦ったって仕方ないのは解ってるけどさ……うわ、凄い波だな」
鍛冶師「見てて酔わない?」
女剣士「それは平気……だろう、多分」
鍛冶師「僕も熱中して忘れてた……ああ、そうか」
女剣士「ん?」
鍛冶師「前にこの海域を通った時酷い船酔いでさ」
女剣士「え……大丈夫なのか?」
鍛冶師「……船長の優しさ、かなぁ」
女剣士「??」
鍛冶師「何でも無い……で、見たら納得した?」
女剣士「ん……これ、真っ直ぐ港街に向かっては無いよな?」
鍛冶師「突っ込んでいっても流されるだけさ。旨く巻き込まれない様に」
鍛冶師「ゆっくり迂回してるはずだよ」
女剣士「それで……あんなに時間が掛かるのか」
鍛冶師「僕も知り合って長い訳じゃ無いけどさ」
鍛冶師「海賊、って名乗るだけあって、腕は確かなんじゃ無い?」
女剣士「……海賊?」
鍛冶師「知らなかったの!?」
女剣士「い、いや……そ、そうか。そうなんだ……」
鍛冶師「なんて言うか……まあ、良いや」
鍛冶師「現実には、はいそうですかーって信じられない事ばかりなんだよね」
女剣士「……魔王と知り合いの海賊、とかか」
鍛冶師「北の村を救った側近てのが魔族だったりね」
女剣士「2つの渦、とやら」スタスタ
鍛冶師「ああ……中々進まないからイライラしてるのか」
女剣士「焦ったって仕方ないのは解ってるけどさ……うわ、凄い波だな」
鍛冶師「見てて酔わない?」
女剣士「それは平気……だろう、多分」
鍛冶師「僕も熱中して忘れてた……ああ、そうか」
女剣士「ん?」
鍛冶師「前にこの海域を通った時酷い船酔いでさ」
女剣士「え……大丈夫なのか?」
鍛冶師「……船長の優しさ、かなぁ」
女剣士「??」
鍛冶師「何でも無い……で、見たら納得した?」
女剣士「ん……これ、真っ直ぐ港街に向かっては無いよな?」
鍛冶師「突っ込んでいっても流されるだけさ。旨く巻き込まれない様に」
鍛冶師「ゆっくり迂回してるはずだよ」
女剣士「それで……あんなに時間が掛かるのか」
鍛冶師「僕も知り合って長い訳じゃ無いけどさ」
鍛冶師「海賊、って名乗るだけあって、腕は確かなんじゃ無い?」
女剣士「……海賊?」
鍛冶師「知らなかったの!?」
女剣士「い、いや……そ、そうか。そうなんだ……」
鍛冶師「なんて言うか……まあ、良いや」
鍛冶師「現実には、はいそうですかーって信じられない事ばかりなんだよね」
女剣士「……魔王と知り合いの海賊、とかか」
鍛冶師「北の村を救った側近てのが魔族だったりね」
818: 2013/05/31(金) 17:55:16.19 ID:bLQ+AmIRP
女剣士「……会えるのかな」
鍛冶師「願えば叶う」
女剣士「え?」
鍛冶師「……都合の良い言葉だよな。本当にそうなるんだったら」
鍛冶師「誰も、何も……苦労なんてしない」
女剣士「……」
鍛冶師「そろそろ三日ぐらい?」
女剣士「……何が?」
鍛冶師「渦の傍に来て、さ。僕がこの鳥を完成させたぐらいだし」
鍛冶師「そんなモンかなーって」
女剣士「わかんなくなってくるな。ずっと船に居ると」
鍛冶師「船長は海の上で氏にたいとか言ってたかな」
鍛冶師「僕は……やっぱり、陸の上が良いや」
女剣士「…… ……ありがとう。邪魔したな」
鍛冶師「大丈夫。もうそろそろ切り上げないと」
鍛冶師「納得いく迄直し続けてたら、そのうち石がなくなっちゃうよ」
女剣士「船長に渡しに行くのか?」
鍛冶師「そうだね……本当なら色でも着けたいとこだけど」
鍛冶師「……盗賊にも作ってあげたいなぁ」
女剣士「盗賊……?」
鍛冶師「港街にね、居る……なんだろうな」
女剣士「恋人?」
鍛冶師「告白はしたんだけどね……返事待ち」
女剣士「ああ、好きな人が居る、って……その人の事なのか」
鍛冶師「願えば叶う」
女剣士「え?」
鍛冶師「……都合の良い言葉だよな。本当にそうなるんだったら」
鍛冶師「誰も、何も……苦労なんてしない」
女剣士「……」
鍛冶師「そろそろ三日ぐらい?」
女剣士「……何が?」
鍛冶師「渦の傍に来て、さ。僕がこの鳥を完成させたぐらいだし」
鍛冶師「そんなモンかなーって」
女剣士「わかんなくなってくるな。ずっと船に居ると」
鍛冶師「船長は海の上で氏にたいとか言ってたかな」
鍛冶師「僕は……やっぱり、陸の上が良いや」
女剣士「…… ……ありがとう。邪魔したな」
鍛冶師「大丈夫。もうそろそろ切り上げないと」
鍛冶師「納得いく迄直し続けてたら、そのうち石がなくなっちゃうよ」
女剣士「船長に渡しに行くのか?」
鍛冶師「そうだね……本当なら色でも着けたいとこだけど」
鍛冶師「……盗賊にも作ってあげたいなぁ」
女剣士「盗賊……?」
鍛冶師「港街にね、居る……なんだろうな」
女剣士「恋人?」
鍛冶師「告白はしたんだけどね……返事待ち」
女剣士「ああ、好きな人が居る、って……その人の事なのか」
828: 2013/06/01(土) 14:21:11.35 ID:TKAvbH+GP
鍛冶師「そうなれば良いけどね……どうする、一緒に行く?」
女剣士「いや、部屋に戻る。こんな状態じゃ魔物もでないだろうし」
鍛冶師「そっか。んじゃまた食事の時に」
女剣士「ああ」
……
………
…………
姫(『「良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ」』)
姫(『少年の俯く姿を見た王は、ゆっくりとそう告げた』)
姫(『そういう訳では無いんだけどな、と心の中で呟き、少年はそろりと顔を上げた』)
姫(『「は……」はい、とハッキリとした声を出そうとした意思とは反対に』)
姫(『喉は緊張に渇き掠れた。誤魔化す様にこほん、と一つ咳き、そろそろと王の方へと視線を投げる』)
姫(『貫禄のある姿、つやつやと油の乗った王の顔を、歩くスピードに合わせて視線で追う』)
姫(『王座へと腰を下ろし、少年の金の瞳を見据える王の視線を捕らえた王は』)
姫(『どこか満足気に頷き、恭しく口を開いた』)
コンコン
姫「はい?」
使用人「失礼致します、姫様……ッ 起き上がって大丈夫なのですか!?」
姫「だって、続きが気になるのだもの……」
使用人「ですが……」
姫「もう大丈夫よ。熱も下がったわ」
女剣士「いや、部屋に戻る。こんな状態じゃ魔物もでないだろうし」
鍛冶師「そっか。んじゃまた食事の時に」
女剣士「ああ」
……
………
…………
姫(『「良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ」』)
姫(『少年の俯く姿を見た王は、ゆっくりとそう告げた』)
姫(『そういう訳では無いんだけどな、と心の中で呟き、少年はそろりと顔を上げた』)
姫(『「は……」はい、とハッキリとした声を出そうとした意思とは反対に』)
姫(『喉は緊張に渇き掠れた。誤魔化す様にこほん、と一つ咳き、そろそろと王の方へと視線を投げる』)
姫(『貫禄のある姿、つやつやと油の乗った王の顔を、歩くスピードに合わせて視線で追う』)
姫(『王座へと腰を下ろし、少年の金の瞳を見据える王の視線を捕らえた王は』)
姫(『どこか満足気に頷き、恭しく口を開いた』)
コンコン
姫「はい?」
使用人「失礼致します、姫様……ッ 起き上がって大丈夫なのですか!?」
姫「だって、続きが気になるのだもの……」
使用人「ですが……」
姫「もう大丈夫よ。熱も下がったわ」
829: 2013/06/01(土) 14:44:05.13 ID:TKAvbH+GP
使用人「一週間以上寝込まれていたんですよ?」
姫「大丈夫よ。布団の上で読んでるし」
使用人「魔王様も側近様も、随分心配してらしたのですから」
姫「解ってる……ここで、本を読んでる位なら平気よ」
使用人「私は今から出かけますが……余りご無理なさらぬ様に」
姫「え……どこに?」
使用人「もう一度、港街へです。もうそろそろ船長さん達も戻られる頃です」
姫「……そう。これ、最後まで読みたかったわ」
使用人「そんなすぐに、とは行きませんよ。いくら盗賊さん達が頑張ってくれているとは言え」
使用人「もう少し、時間は掛かる筈です」
姫「そう……」
使用人「それに、姫様の体調が悪ければ式も挙げられませんよ」
姫「……そう、よね」
使用人「すぐに戻ります。ですから……ゆっくりとお休みになっててください」
姫「解ったわ。もう……寝る」
使用人「はい。何かありましたら、使い魔に」スタスタ
パタン
姫「……」
姫「随分、大きくなったわね。急に……」ナデ
姫(私が、子供を産む……)
姫(……実感が無いわ。私に、この子を育てる事はできない)
姫(産まれたらどうなるの?誰がこの子を助けてくれるの?)
姫(……森に居れば、エルフも皆が見てくれた)
姫(私は、そうやって育まれて来た)
姫(でも、この子は……)
姫「……」
……
………
…………
姫「大丈夫よ。布団の上で読んでるし」
使用人「魔王様も側近様も、随分心配してらしたのですから」
姫「解ってる……ここで、本を読んでる位なら平気よ」
使用人「私は今から出かけますが……余りご無理なさらぬ様に」
姫「え……どこに?」
使用人「もう一度、港街へです。もうそろそろ船長さん達も戻られる頃です」
姫「……そう。これ、最後まで読みたかったわ」
使用人「そんなすぐに、とは行きませんよ。いくら盗賊さん達が頑張ってくれているとは言え」
使用人「もう少し、時間は掛かる筈です」
姫「そう……」
使用人「それに、姫様の体調が悪ければ式も挙げられませんよ」
姫「……そう、よね」
使用人「すぐに戻ります。ですから……ゆっくりとお休みになっててください」
姫「解ったわ。もう……寝る」
使用人「はい。何かありましたら、使い魔に」スタスタ
パタン
姫「……」
姫「随分、大きくなったわね。急に……」ナデ
姫(私が、子供を産む……)
姫(……実感が無いわ。私に、この子を育てる事はできない)
姫(産まれたらどうなるの?誰がこの子を助けてくれるの?)
姫(……森に居れば、エルフも皆が見てくれた)
姫(私は、そうやって育まれて来た)
姫(でも、この子は……)
姫「……」
……
………
…………
830: 2013/06/01(土) 15:02:25.80 ID:TKAvbH+GP
シュゥン……スタ!
使用人「……」キョロキョロ
使用人「! ……港に、船。あれは船長さんの……」
使用人「もう、戻って来られてたのですね」スタスタ
盗賊「良し、そっち持って……オーケィ」
鍛冶師「盗賊、それで最後だ!」
盗賊「りょうかーい!」
船長「だーかーらー!間に合ってるって言ってるだろ!?」
??「そんな事言うなって!頼むよ!」
船長「しかも二人ってどういうことだ!」
??「もう一人もすぐ来る!絶対に役に立つから!」
女剣士「鍛冶師!どれ教会まで運ぶんだ!?」
盗賊「え?誰?」
鍛冶師「あー、ちょっと待って!女剣士は街の方手伝って来て!」
ワイワイ、ガヤガヤ、ギャアギャア
使用人「……なんです、これ」
船長「お……使用人!こっちだ!」
使用人「戻られてたのですね」
船長「夜明け前になんとかな。お前も早かったな」
使用人「……時間が迫っている様ですので」
船長「何……?」
使用人「姫様が熱を出されてて……」
船長「もう大丈夫なのか?」
使用人「下がりはしたのですが。余り、長くあの城には……」
船長「ああ……そうだな」
使用人「……」キョロキョロ
使用人「! ……港に、船。あれは船長さんの……」
使用人「もう、戻って来られてたのですね」スタスタ
盗賊「良し、そっち持って……オーケィ」
鍛冶師「盗賊、それで最後だ!」
盗賊「りょうかーい!」
船長「だーかーらー!間に合ってるって言ってるだろ!?」
??「そんな事言うなって!頼むよ!」
船長「しかも二人ってどういうことだ!」
??「もう一人もすぐ来る!絶対に役に立つから!」
女剣士「鍛冶師!どれ教会まで運ぶんだ!?」
盗賊「え?誰?」
鍛冶師「あー、ちょっと待って!女剣士は街の方手伝って来て!」
ワイワイ、ガヤガヤ、ギャアギャア
使用人「……なんです、これ」
船長「お……使用人!こっちだ!」
使用人「戻られてたのですね」
船長「夜明け前になんとかな。お前も早かったな」
使用人「……時間が迫っている様ですので」
船長「何……?」
使用人「姫様が熱を出されてて……」
船長「もう大丈夫なのか?」
使用人「下がりはしたのですが。余り、長くあの城には……」
船長「ああ……そうだな」
831: 2013/06/01(土) 15:15:42.42 ID:TKAvbH+GP
??「おい、船長さん!聞いてくれよ!」
船長「だから、うちは間に合ってるって!」
使用人「そちらの方は?」
??「お姉ちゃん!アンタからも頼んでくれよ!」
使用人「何をです……」
??「俺たちは海賊になりたいんだ!だから船長の船に乗せてくれって言ってるんだが」
使用人「……俺たち?」
船長「二人、候補者がいるんだとよ……」
使用人「はあ……」
??「俺は魔法使いだ!魔法を使える奴が居れば、海の旅も安心だろ!?」
使用人「もうお一人、は?」
魔法使い「すぐに来る!だから、なあ、頼むよ!」
??「悪い、待たせたな魔法使い!」タタタ
魔法使い「おっせーよ!お前もさっさと船長に頼み込め、女海賊!」
女海賊「あン?何だよ、駄目だって言われたのか、なっさけネェなお前……」
船長「あいにくだが人は……!」クルッ
船長「………!?」
女海賊「……何だい、鳩が豆食ってパーみたいな顔して」
使用人「……豆鉄砲、ですね。しかし……これは……」
船長「アンタが……女海賊?」
女海賊「ああ、そうだよ。何だ、アタシの美貌に釘付け、ってかァ?」ニヤニヤ
船長「あ、阿呆か!!」
使用人「……船長、とにかく一端お待ち頂いては?」
使用人「勝手で申し訳ありませんが、こちらの依頼の件を急いで頂かないと困ります」
女海賊「何だい、アンタ、急に出て来て……!」
魔法使い「ま、待て待て、依頼人だ、お客さんだろ!!」
魔法使い「船長、後で話聞いてくれよ!?俺たち、一端宿に行くからさ!」
女海賊「おい、魔法使い……!」
魔法使い「遅れてきた俺らが悪い!つかお前が悪い!行くぞ!」スタスタ
女海賊「チッ……まあ、良い。船長、後でゆっくり話そうぜ!」スタスタ
使用人「……」
船長「……」
船長「だから、うちは間に合ってるって!」
使用人「そちらの方は?」
??「お姉ちゃん!アンタからも頼んでくれよ!」
使用人「何をです……」
??「俺たちは海賊になりたいんだ!だから船長の船に乗せてくれって言ってるんだが」
使用人「……俺たち?」
船長「二人、候補者がいるんだとよ……」
使用人「はあ……」
??「俺は魔法使いだ!魔法を使える奴が居れば、海の旅も安心だろ!?」
使用人「もうお一人、は?」
魔法使い「すぐに来る!だから、なあ、頼むよ!」
??「悪い、待たせたな魔法使い!」タタタ
魔法使い「おっせーよ!お前もさっさと船長に頼み込め、女海賊!」
女海賊「あン?何だよ、駄目だって言われたのか、なっさけネェなお前……」
船長「あいにくだが人は……!」クルッ
船長「………!?」
女海賊「……何だい、鳩が豆食ってパーみたいな顔して」
使用人「……豆鉄砲、ですね。しかし……これは……」
船長「アンタが……女海賊?」
女海賊「ああ、そうだよ。何だ、アタシの美貌に釘付け、ってかァ?」ニヤニヤ
船長「あ、阿呆か!!」
使用人「……船長、とにかく一端お待ち頂いては?」
使用人「勝手で申し訳ありませんが、こちらの依頼の件を急いで頂かないと困ります」
女海賊「何だい、アンタ、急に出て来て……!」
魔法使い「ま、待て待て、依頼人だ、お客さんだろ!!」
魔法使い「船長、後で話聞いてくれよ!?俺たち、一端宿に行くからさ!」
女海賊「おい、魔法使い……!」
魔法使い「遅れてきた俺らが悪い!つかお前が悪い!行くぞ!」スタスタ
女海賊「チッ……まあ、良い。船長、後でゆっくり話そうぜ!」スタスタ
使用人「……」
船長「……」
832: 2013/06/01(土) 15:29:15.75 ID:TKAvbH+GP
使用人「そっくりですね」
船長「……何がだ」
使用人「言わなきゃいけませんか?」
船長「…… ……助かった。悪いな」
使用人「いいえ……大変ですね」
船長「稼げるとでも思ってるんだろ……全く」
使用人「……で、あっちは何なんです?」
船長「え?」
使用人「あのお二人は以前、覗いてたお二人でしょう」
ギャアギャア
鍛冶師「ち、違うんだって、盗賊!」
盗賊「随分仲よさそうじゃネェか。良かったなー。可愛い子と仲良くなれて」
女剣士「?? なあ、鍛冶師、この子か!盗賊って!初めまして!女剣士だ!」
盗賊「……へぇ、もう俺の話までしてんだ。へぇ」
鍛冶師「あの、盗賊!お願いだから聞いて!」
女剣士「ああ、色々聞いたぞ!船でずっと一緒だったからな」
盗賊「へー、へー、へぇ。ずっと、ネェ」
女剣士「これからも宜しくな!」
盗賊「……ッ」
鍛冶師「お、お願い女剣士、今はちょっと黙って!?」
女剣士「?? ……何で?」
ギャアギャア
船長「……放置じゃ駄目かね」
使用人「私は盗賊の味方ですかね。付き合いの長さ的に」
船長「じゃあ、諫めてやってくれよ……俺は何か、厭だ」
船長「……何がだ」
使用人「言わなきゃいけませんか?」
船長「…… ……助かった。悪いな」
使用人「いいえ……大変ですね」
船長「稼げるとでも思ってるんだろ……全く」
使用人「……で、あっちは何なんです?」
船長「え?」
使用人「あのお二人は以前、覗いてたお二人でしょう」
ギャアギャア
鍛冶師「ち、違うんだって、盗賊!」
盗賊「随分仲よさそうじゃネェか。良かったなー。可愛い子と仲良くなれて」
女剣士「?? なあ、鍛冶師、この子か!盗賊って!初めまして!女剣士だ!」
盗賊「……へぇ、もう俺の話までしてんだ。へぇ」
鍛冶師「あの、盗賊!お願いだから聞いて!」
女剣士「ああ、色々聞いたぞ!船でずっと一緒だったからな」
盗賊「へー、へー、へぇ。ずっと、ネェ」
女剣士「これからも宜しくな!」
盗賊「……ッ」
鍛冶師「お、お願い女剣士、今はちょっと黙って!?」
女剣士「?? ……何で?」
ギャアギャア
船長「……放置じゃ駄目かね」
使用人「私は盗賊の味方ですかね。付き合いの長さ的に」
船長「じゃあ、諫めてやってくれよ……俺は何か、厭だ」
833: 2013/06/01(土) 15:39:14.21 ID:TKAvbH+GP
使用人「……そうですね。話が進みませんし」ハァ
使用人「でも、何故揉めてるんです?」
船長「……良いわ、一緒に来い」ハァ。スタスタ
船長「おい、お前ら!」
盗賊「あ、船長……話は済んだのか……って、使用人?」
鍛冶師「あ、君は……」
盗賊「え?」
女剣士「あ……!良かった!アタシ、アンタに用が……!」
盗賊「え?え?」
使用人「……」
船長「落ち着けって!」
船長「盗賊、とりあえずだな……」
盗賊「教会ならもう殆ど出来てるぜ」
船長「……何?」
使用人「鍛冶師の村に行った後、すぐにここに来たのです」
使用人「ですので……お願いしておきました」
盗賊「金も貰ってる。今日人も増えただろ。すぐにでも結婚式の準備は整えられる」
使用人「もう、そんなに?」
盗賊「拘りだしたらキリは無いだろうがな。建物だけなら……2.3日も掛からんさ」
使用人「そう、ですか……」ホッ
船長「……根回しの良い事で」
使用人「さっき言った通りです。時間が……無いんです」
女剣士「そんな!?」
盗賊「え?」
女剣士「……アタシ、やる事ないのか?」
使用人「?」
使用人「でも、何故揉めてるんです?」
船長「……良いわ、一緒に来い」ハァ。スタスタ
船長「おい、お前ら!」
盗賊「あ、船長……話は済んだのか……って、使用人?」
鍛冶師「あ、君は……」
盗賊「え?」
女剣士「あ……!良かった!アタシ、アンタに用が……!」
盗賊「え?え?」
使用人「……」
船長「落ち着けって!」
船長「盗賊、とりあえずだな……」
盗賊「教会ならもう殆ど出来てるぜ」
船長「……何?」
使用人「鍛冶師の村に行った後、すぐにここに来たのです」
使用人「ですので……お願いしておきました」
盗賊「金も貰ってる。今日人も増えただろ。すぐにでも結婚式の準備は整えられる」
使用人「もう、そんなに?」
盗賊「拘りだしたらキリは無いだろうがな。建物だけなら……2.3日も掛からんさ」
使用人「そう、ですか……」ホッ
船長「……根回しの良い事で」
使用人「さっき言った通りです。時間が……無いんです」
女剣士「そんな!?」
盗賊「え?」
女剣士「……アタシ、やる事ないのか?」
使用人「?」
834: 2013/06/01(土) 15:46:47.58 ID:TKAvbH+GP
船長「あー……まあ、そこら辺は後は鍛冶師と相談しろよ」
鍛冶師「ああ、うん……と」チラ
盗賊「……ッ」フイッ
鍛冶師「……船長、助けて」
船長「知るか、阿呆」
使用人「?」
盗賊「じゃあ、アタシは教会んとこ行くぜ。使用人、後で来いよ」
使用人「え、ええ……一緒に行っても?」
盗賊「ああ、勿論……」
船長「俺も行くわ。見てみたいしな」
鍛冶師「待って盗賊、僕も!」
女剣士「アタシも!」
盗賊「は!?」
船長「……さっさとしろよ、鍛冶師」
女剣士「あ、アタシを置いていくなよ!地理もわかんないのに!」
使用人「……何なんですか、一体」
鍛冶師「ああ、もう!盗賊!」ガシ!
盗賊「え、な、なんだよ!離せよ!」バタバタ
鍛冶師「厭だ!先に行くよ!」グイ!タタタ……
盗賊「え、ちょっと!?」タタタ……
船長「……面倒臭ェなあ、もう」
使用人「あの……?」
女剣士「置いていかなくても良いのになぁ」
船長「お前はちょっと黙れ、女剣士」
鍛冶師「ああ、うん……と」チラ
盗賊「……ッ」フイッ
鍛冶師「……船長、助けて」
船長「知るか、阿呆」
使用人「?」
盗賊「じゃあ、アタシは教会んとこ行くぜ。使用人、後で来いよ」
使用人「え、ええ……一緒に行っても?」
盗賊「ああ、勿論……」
船長「俺も行くわ。見てみたいしな」
鍛冶師「待って盗賊、僕も!」
女剣士「アタシも!」
盗賊「は!?」
船長「……さっさとしろよ、鍛冶師」
女剣士「あ、アタシを置いていくなよ!地理もわかんないのに!」
使用人「……何なんですか、一体」
鍛冶師「ああ、もう!盗賊!」ガシ!
盗賊「え、な、なんだよ!離せよ!」バタバタ
鍛冶師「厭だ!先に行くよ!」グイ!タタタ……
盗賊「え、ちょっと!?」タタタ……
船長「……面倒臭ェなあ、もう」
使用人「あの……?」
女剣士「置いていかなくても良いのになぁ」
船長「お前はちょっと黙れ、女剣士」
835: 2013/06/01(土) 16:02:52.22 ID:TKAvbH+GP
使用人「……どうして、貴女まで一緒にここまで来たのです、女剣士さん」
女剣士「き、決まってるだろ、側近に……!!」
使用人「貴女に側近様を会わす理由がありますか?」
女剣士「た、頼むよ!どうしても、どうしても……もう一回逢いたいんだ!」
女剣士「その為に船長や、鍛冶師に無理言って連れてきて貰ったんだ!」
女剣士「頼む!……側近に逢わせてくれ!魔王城とやらに連れて行ってくれ!」
使用人「城に貴女をお連れする事はできません」
女剣士「……ッ じゃ、じゃあ側近を……!」
使用人「呼ぶ事もできません……側近様は、魔王様の傍を離れられませんから」
船長「……」
女剣士「そんな……!」
使用人「お話は……以上ですね」
使用人「では、船長さん行きましょう」スタスタ
女剣士「あ、アタシも行くよ!」
使用人「……」
女剣士「アンタに教会見に行くの、止める権利は無いだろ!?」
使用人「……お好きに」
船長「そこまでして、逢いたいのか?」スタスタ
女剣士「……勿論だ!」スタスタ
船長「で、どうするんだ。告白でもすんのか」
女剣士「……どうするんだろう」
船長「は!?」
女剣士「わかんネェよ。でも……どうしても、逢いたいんだ!」
船長「……若いってのは凄いね。恥も外聞もネェ」
女剣士「悪かったな!」
船長「……いや。悪かネェよ…… ……羨ましいぐらいさ」
女剣士「え?」
船長「何でもネェ。ま、がんばんな」
……
………
…………
盗賊「何なんだよ、お前は……ッ おい、離せって!」タタタ……
鍛冶師「……」ピタ
盗賊「おい、鍛冶師!どこまで……ッ わぶっ」ドン!
鍛冶師「……ちょっと、黙って」ガシ。ギュウ
盗賊「痛ェ……おい、鍛冶師……おま……ッ ……ッ」
女剣士「き、決まってるだろ、側近に……!!」
使用人「貴女に側近様を会わす理由がありますか?」
女剣士「た、頼むよ!どうしても、どうしても……もう一回逢いたいんだ!」
女剣士「その為に船長や、鍛冶師に無理言って連れてきて貰ったんだ!」
女剣士「頼む!……側近に逢わせてくれ!魔王城とやらに連れて行ってくれ!」
使用人「城に貴女をお連れする事はできません」
女剣士「……ッ じゃ、じゃあ側近を……!」
使用人「呼ぶ事もできません……側近様は、魔王様の傍を離れられませんから」
船長「……」
女剣士「そんな……!」
使用人「お話は……以上ですね」
使用人「では、船長さん行きましょう」スタスタ
女剣士「あ、アタシも行くよ!」
使用人「……」
女剣士「アンタに教会見に行くの、止める権利は無いだろ!?」
使用人「……お好きに」
船長「そこまでして、逢いたいのか?」スタスタ
女剣士「……勿論だ!」スタスタ
船長「で、どうするんだ。告白でもすんのか」
女剣士「……どうするんだろう」
船長「は!?」
女剣士「わかんネェよ。でも……どうしても、逢いたいんだ!」
船長「……若いってのは凄いね。恥も外聞もネェ」
女剣士「悪かったな!」
船長「……いや。悪かネェよ…… ……羨ましいぐらいさ」
女剣士「え?」
船長「何でもネェ。ま、がんばんな」
……
………
…………
盗賊「何なんだよ、お前は……ッ おい、離せって!」タタタ……
鍛冶師「……」ピタ
盗賊「おい、鍛冶師!どこまで……ッ わぶっ」ドン!
鍛冶師「……ちょっと、黙って」ガシ。ギュウ
盗賊「痛ェ……おい、鍛冶師……おま……ッ ……ッ」
836: 2013/06/01(土) 16:16:11.56 ID:TKAvbH+GP
鍛冶師「女剣士はそんなんじゃ無いから」
盗賊「…… ……一緒だったんだろ。船で。ずーっと」モゾモゾ
鍛冶師「側近が好きなんだって」ギュ
盗賊「……は?」
鍛冶師「良く解らないけど、側近に会いたいらしい」
盗賊「何でお前が側近の事しってんだよ……」
鍛冶師「さらっとだけど、船長に聞いた。使用人ちゃんにも鍛冶師の村で会ったしね」
盗賊「……だからって、なんで此処まで……」
鍛冶師「使用人ちゃんに会えたら、側近にだって会えるかもしれないだろ?」
盗賊「……フン」
鍛冶師「なあ、盗賊。そんなしょうも無い嘘吐かないよ」
盗賊「わか、 ……た、よ。解ったから……離せよ」
鍛冶師「厭だ」ギュ
盗賊「お前……ッ」
鍛冶師「ヤキモチ焼いてくれたんだよね?怒ってくれたんだよね?」
盗賊「……ッ」
鍛冶師「返事、聞かせてよ。僕、全部持って帰ってきたよ」
鍛冶師「港街に引っ越してきた。君と一緒に居るためだ」
鍛冶師「……好きだよ、盗賊。大好きだ」
盗賊「…… ……」
鍛冶師「僕の、お嫁さんになって?」
盗賊「……え!?」
鍛冶師「え?だ、駄目なの!?」
盗賊「い、いきなり、よ、…… ……え、えええ!?」
鍛冶師「そ、そりゃすぐには無理なの解ってるよ!で、でも!」
鍛冶師「……何れ、さ。何時か、そのうち……ね?」
盗賊「…… ……一緒だったんだろ。船で。ずーっと」モゾモゾ
鍛冶師「側近が好きなんだって」ギュ
盗賊「……は?」
鍛冶師「良く解らないけど、側近に会いたいらしい」
盗賊「何でお前が側近の事しってんだよ……」
鍛冶師「さらっとだけど、船長に聞いた。使用人ちゃんにも鍛冶師の村で会ったしね」
盗賊「……だからって、なんで此処まで……」
鍛冶師「使用人ちゃんに会えたら、側近にだって会えるかもしれないだろ?」
盗賊「……フン」
鍛冶師「なあ、盗賊。そんなしょうも無い嘘吐かないよ」
盗賊「わか、 ……た、よ。解ったから……離せよ」
鍛冶師「厭だ」ギュ
盗賊「お前……ッ」
鍛冶師「ヤキモチ焼いてくれたんだよね?怒ってくれたんだよね?」
盗賊「……ッ」
鍛冶師「返事、聞かせてよ。僕、全部持って帰ってきたよ」
鍛冶師「港街に引っ越してきた。君と一緒に居るためだ」
鍛冶師「……好きだよ、盗賊。大好きだ」
盗賊「…… ……」
鍛冶師「僕の、お嫁さんになって?」
盗賊「……え!?」
鍛冶師「え?だ、駄目なの!?」
盗賊「い、いきなり、よ、…… ……え、えええ!?」
鍛冶師「そ、そりゃすぐには無理なの解ってるよ!で、でも!」
鍛冶師「……何れ、さ。何時か、そのうち……ね?」
837: 2013/06/01(土) 16:31:48.24 ID:TKAvbH+GP
盗賊「……」
鍛冶師「……」
盗賊「……俺で、良いのか?」
鍛冶師「盗賊じゃ無きゃ、駄目」
盗賊「がさつだぜ?」
鍛冶師「気にしてるの?」クス
盗賊「…… ……それに」
鍛冶師「うん」
盗賊「お、女らしく無いし……ッ」
鍛冶師「気にするなら、変えていけば良いよ」
鍛冶師「僕は別に気にしないけどね」
盗賊「……」
鍛冶師「盗賊だから。君が君だから好きだよ」
盗賊「……うん」
鍛冶師「ん?」
盗賊「だ、だから、うん、って!」
鍛冶師「わかんない。ちゃんと言って」ギュウ
盗賊「……お。 ……あ、アタシ、も。好き、だよ」ギュウ
鍛冶師「アタシって言った……」
盗賊「お、あ、……ッだ、 だって、……ッ」
鍛冶師「うん。でもその方が可愛いかな」ギュウ
盗賊「……か、ッ …… あ、あり、がと……」カァッ
鍛冶師「……ッ やったー!」ギュウ、ブンッ
盗賊「わ、わあ!振り回すな!」
鍛冶師「僕のだ。やっと……僕のだッ」
盗賊「……ッ も、モノじゃネェよ!」
鍛冶師「ん。御免。でも、僕の」
盗賊「……ん」
鍛冶師「……」
盗賊「……俺で、良いのか?」
鍛冶師「盗賊じゃ無きゃ、駄目」
盗賊「がさつだぜ?」
鍛冶師「気にしてるの?」クス
盗賊「…… ……それに」
鍛冶師「うん」
盗賊「お、女らしく無いし……ッ」
鍛冶師「気にするなら、変えていけば良いよ」
鍛冶師「僕は別に気にしないけどね」
盗賊「……」
鍛冶師「盗賊だから。君が君だから好きだよ」
盗賊「……うん」
鍛冶師「ん?」
盗賊「だ、だから、うん、って!」
鍛冶師「わかんない。ちゃんと言って」ギュウ
盗賊「……お。 ……あ、アタシ、も。好き、だよ」ギュウ
鍛冶師「アタシって言った……」
盗賊「お、あ、……ッだ、 だって、……ッ」
鍛冶師「うん。でもその方が可愛いかな」ギュウ
盗賊「……か、ッ …… あ、あり、がと……」カァッ
鍛冶師「……ッ やったー!」ギュウ、ブンッ
盗賊「わ、わあ!振り回すな!」
鍛冶師「僕のだ。やっと……僕のだッ」
盗賊「……ッ も、モノじゃネェよ!」
鍛冶師「ん。御免。でも、僕の」
盗賊「……ん」
838: 2013/06/01(土) 16:45:47.57 ID:TKAvbH+GP
鍛冶師「……教会で、結婚式、挙げるんだよね?」
盗賊「魔王と姫が、な」
鍛冶師「もうすぐ出来るの?」
盗賊「建物だけは、な。教会らしくしようと思えばまだまだだけど……」
鍛冶師「……時間が無いんだっけ。急いでる、んだよね」
盗賊「そうだな」
鍛冶師「……なあ、盗賊」
盗賊「何だ? ……とにかく、戻ろうぜ。使用人も待ってるだろう」スタスタ
鍛冶師「あ、待って待って……ほら、手」
盗賊「手?」
鍛冶師「手、繋ご?」
盗賊「……う、うん」ギュ
鍛冶師「ふふ……」ブンブン
盗賊「子供か……」
鍛冶師「嬉しいくせに」ブンブン
盗賊「な……ッ」
鍛冶師「あれ……嬉しくない?」
盗賊「……そ、そんな事、ない……」
鍛冶師「うんうん」
盗賊「お前……浮かれてるだろ」
鍛冶師「当然でしょ」
盗賊「……」ハァ
鍛冶師「何だよー」
盗賊「何でも無いよ……もう」
鍛冶師「……あッ」
盗賊「今度は何だよ……」
鍛冶師「教会って……アレ!?」
……
………
…………
盗賊「魔王と姫が、な」
鍛冶師「もうすぐ出来るの?」
盗賊「建物だけは、な。教会らしくしようと思えばまだまだだけど……」
鍛冶師「……時間が無いんだっけ。急いでる、んだよね」
盗賊「そうだな」
鍛冶師「……なあ、盗賊」
盗賊「何だ? ……とにかく、戻ろうぜ。使用人も待ってるだろう」スタスタ
鍛冶師「あ、待って待って……ほら、手」
盗賊「手?」
鍛冶師「手、繋ご?」
盗賊「……う、うん」ギュ
鍛冶師「ふふ……」ブンブン
盗賊「子供か……」
鍛冶師「嬉しいくせに」ブンブン
盗賊「な……ッ」
鍛冶師「あれ……嬉しくない?」
盗賊「……そ、そんな事、ない……」
鍛冶師「うんうん」
盗賊「お前……浮かれてるだろ」
鍛冶師「当然でしょ」
盗賊「……」ハァ
鍛冶師「何だよー」
盗賊「何でも無いよ……もう」
鍛冶師「……あッ」
盗賊「今度は何だよ……」
鍛冶師「教会って……アレ!?」
……
………
…………
839: 2013/06/01(土) 16:57:09.09 ID:TKAvbH+GP
神父「お帰りなさい、船長さん……そちらの方は?」
船長「こいつは女剣士だ……使用人は知ってる、んだよな」
使用人「お久しぶりです、神父さん」
女剣士「……初めまして」
神父「初めまして。神父と申します」
神父「……盗賊さんはどうしました?船が着いた時」
神父「迎えに行くと飛んで行ったのですが……」
船長「鍛冶師とどっか行っちまったよ。ま、その内戻ってくるさ」
船長「……女は?」
神父「今日は……ちょっと熱を出されていまして」
船長「そうか……大丈夫なのか?」
神父「ええ、解熱効果のある薬酒を飲ませて、寝かしています」
使用人「……」
神父「……如何でしたか、使用人さん。お役に立ちそうですか?」
船長「ん?」
使用人「……魔除けの石を作って頂いたのです。魔王様と姫様の為に」
船長「魔除けの石!? ……出来たのか」
神父「……『願えば叶う』」
船長「……」
使用人「本日も……頂けるのでしょうか」
神父「それについては少しご相談が」
使用人「え?ええ……」
船長「神父さんよ、女の見舞いには行けるのか?」
神父「暫く起きないとは思いますが……後でよろしければ、ご一緒しますよ」
船長「ああ。構わんさ」
女剣士「……教会って、あれ、か?」ス……
神父「ええ。小さいですが……街の皆様、随分頑張って下さったのですよ」
神父「使用人さんが残業代として、代金もだして下さいましたしね」
船長「こいつは女剣士だ……使用人は知ってる、んだよな」
使用人「お久しぶりです、神父さん」
女剣士「……初めまして」
神父「初めまして。神父と申します」
神父「……盗賊さんはどうしました?船が着いた時」
神父「迎えに行くと飛んで行ったのですが……」
船長「鍛冶師とどっか行っちまったよ。ま、その内戻ってくるさ」
船長「……女は?」
神父「今日は……ちょっと熱を出されていまして」
船長「そうか……大丈夫なのか?」
神父「ええ、解熱効果のある薬酒を飲ませて、寝かしています」
使用人「……」
神父「……如何でしたか、使用人さん。お役に立ちそうですか?」
船長「ん?」
使用人「……魔除けの石を作って頂いたのです。魔王様と姫様の為に」
船長「魔除けの石!? ……出来たのか」
神父「……『願えば叶う』」
船長「……」
使用人「本日も……頂けるのでしょうか」
神父「それについては少しご相談が」
使用人「え?ええ……」
船長「神父さんよ、女の見舞いには行けるのか?」
神父「暫く起きないとは思いますが……後でよろしければ、ご一緒しますよ」
船長「ああ。構わんさ」
女剣士「……教会って、あれ、か?」ス……
神父「ええ。小さいですが……街の皆様、随分頑張って下さったのですよ」
神父「使用人さんが残業代として、代金もだして下さいましたしね」
841: 2013/06/01(土) 17:10:04.09 ID:TKAvbH+GP
使用人「もう完成している……様に見えますが」
神父「本当に、もう少し、です」
神父「盗賊さんから何か……おや」
女剣士「え?」
神父「いえ……戻って来ましたね」
船長「…… ……なんだよあいつら、手なんか繋いで……」
女剣士「うまくいったんだな」ホッ
鍛冶師「神父さん!お久しぶりです! ……吃驚した、殆ど出来てるじゃないか!」
盗賊「完成はしてないって!だから……」
女剣士「良かったな、鍛冶師……」
鍛冶師「……ん。サンキュ」
盗賊「あ、女剣士……さっき、御免」
女剣士「え、何が??」
使用人「盗賊さん」
盗賊「何だ?」
使用人「……何時、魔王様と姫様をお連れすれば良いですか」
盗賊「……急いでる、んだよな?」
使用人「ゆっくりしている時間は……ありませんね」
盗賊「三日……否、二日、だな」
使用人「具体的に、後何が出来ていないのです?」
盗賊「内装だ。まあ……結婚式なんかしないならこのままでも良いんだがな」
神父「本当に、もう少し、です」
神父「盗賊さんから何か……おや」
女剣士「え?」
神父「いえ……戻って来ましたね」
船長「…… ……なんだよあいつら、手なんか繋いで……」
女剣士「うまくいったんだな」ホッ
鍛冶師「神父さん!お久しぶりです! ……吃驚した、殆ど出来てるじゃないか!」
盗賊「完成はしてないって!だから……」
女剣士「良かったな、鍛冶師……」
鍛冶師「……ん。サンキュ」
盗賊「あ、女剣士……さっき、御免」
女剣士「え、何が??」
使用人「盗賊さん」
盗賊「何だ?」
使用人「……何時、魔王様と姫様をお連れすれば良いですか」
盗賊「……急いでる、んだよな?」
使用人「ゆっくりしている時間は……ありませんね」
盗賊「三日……否、二日、だな」
使用人「具体的に、後何が出来ていないのです?」
盗賊「内装だ。まあ……結婚式なんかしないならこのままでも良いんだがな」
842: 2013/06/01(土) 17:39:29.49 ID:TKAvbH+GP
使用人「内装、ですか……見せて頂いても?」
神父「ええ、それは勿論」スタスタ……カチャ
女剣士「う、わぁ……!」
使用人「……綺麗、ですね」
盗賊「けど、何も無い。ステンドグラスも、装飾もな」
使用人「……十字架のみ、ですか」
神父「必要です……ここは教会ですから」
鍛冶師「あの十字架……木?」
神父「ええ、余った木材で組んだだけです」
使用人「……充分、なのでは?」
盗賊「そうか?」
鍛冶師「折角の結婚式だし、少しぐらい装飾は欲しいけどなぁ」
船長「形だけ、ってんなら別に良いんじゃネェの?」
盗賊「……そんなに、時間ねぇのか」
使用人「そうですね……」チラ
神父「……」フイ
女剣士「?」
船長「で、どうすんだ?」
使用人「……明後日。でよろしいですか」
船長「熱出してんじゃネェの。大丈夫なのか?姫は」
使用人「今日は元気そうにしていらっしゃいました」
使用人「……早いほうが良いでしょう。帰ったら、魔王様に伝えます」
女剣士「あ……ッ あの、さ!結婚式って事は」
女剣士「側近も来るのか!?」
使用人「え?ええ……それは、まあ」
女剣士「じゃ、じゃあ……会えるんだな!?」
神父「ええ、それは勿論」スタスタ……カチャ
女剣士「う、わぁ……!」
使用人「……綺麗、ですね」
盗賊「けど、何も無い。ステンドグラスも、装飾もな」
使用人「……十字架のみ、ですか」
神父「必要です……ここは教会ですから」
鍛冶師「あの十字架……木?」
神父「ええ、余った木材で組んだだけです」
使用人「……充分、なのでは?」
盗賊「そうか?」
鍛冶師「折角の結婚式だし、少しぐらい装飾は欲しいけどなぁ」
船長「形だけ、ってんなら別に良いんじゃネェの?」
盗賊「……そんなに、時間ねぇのか」
使用人「そうですね……」チラ
神父「……」フイ
女剣士「?」
船長「で、どうすんだ?」
使用人「……明後日。でよろしいですか」
船長「熱出してんじゃネェの。大丈夫なのか?姫は」
使用人「今日は元気そうにしていらっしゃいました」
使用人「……早いほうが良いでしょう。帰ったら、魔王様に伝えます」
女剣士「あ……ッ あの、さ!結婚式って事は」
女剣士「側近も来るのか!?」
使用人「え?ええ……それは、まあ」
女剣士「じゃ、じゃあ……会えるんだな!?」
843: 2013/06/01(土) 17:50:32.19 ID:TKAvbH+GP
使用人「……ゆっくりと話す時間があるかどうか、保証はしませんよ」
女剣士「ああ、構わない!会えるだけで……!」
鍛冶師「出来れば僕も会ってみたいなぁ、側近って人」
盗賊「お前も!?」
鍛冶師「僕は魔法剣の話を聞きたいだけだけどね」
使用人「……魔法剣?」
鍛冶師「そう。その名の通り魔法の力の宿った剣さ」
鍛冶師「僕は何れ、そんな不思議な剣を作ってみたいんだ」
使用人「……成る程」
使用人(魔法剣……魔王様の剣も、その類……なんでしょうけど)
盗賊「全く……本当に、そういう所はしつこいよな、お前……」
鍛冶師「探求心と言って!」
船長「やれやれ……お前達は全く」
使用人「……では、明後日。宜しくお願い致します」
神父「そんな簡単に決めてしまって良いのですか?」
使用人「……良いんですよ。姫様にドレスを着せて差し上げて」
使用人「貴方達は夫婦です、と。宣言すれば」
女剣士「いい加減だな……」
使用人「……」
船長「神父さんよ、話も終わった様だし……良いか?」
神父「ああ……女さんを見舞うのですね」
盗賊「アタシの家か?」
神父「え」
使用人「え」
船長「え」
鍛冶師「……」ニコニコ
盗賊「な、なんだよ……!」
神父「え、ええ……盗賊さんの家、ですけど……」
盗賊「……ッ あ、案内するから来いよ!」スタスタ
船長「あ、ちょ……ッ 待て、って!」スタスタ
女剣士「ああ、構わない!会えるだけで……!」
鍛冶師「出来れば僕も会ってみたいなぁ、側近って人」
盗賊「お前も!?」
鍛冶師「僕は魔法剣の話を聞きたいだけだけどね」
使用人「……魔法剣?」
鍛冶師「そう。その名の通り魔法の力の宿った剣さ」
鍛冶師「僕は何れ、そんな不思議な剣を作ってみたいんだ」
使用人「……成る程」
使用人(魔法剣……魔王様の剣も、その類……なんでしょうけど)
盗賊「全く……本当に、そういう所はしつこいよな、お前……」
鍛冶師「探求心と言って!」
船長「やれやれ……お前達は全く」
使用人「……では、明後日。宜しくお願い致します」
神父「そんな簡単に決めてしまって良いのですか?」
使用人「……良いんですよ。姫様にドレスを着せて差し上げて」
使用人「貴方達は夫婦です、と。宣言すれば」
女剣士「いい加減だな……」
使用人「……」
船長「神父さんよ、話も終わった様だし……良いか?」
神父「ああ……女さんを見舞うのですね」
盗賊「アタシの家か?」
神父「え」
使用人「え」
船長「え」
鍛冶師「……」ニコニコ
盗賊「な、なんだよ……!」
神父「え、ええ……盗賊さんの家、ですけど……」
盗賊「……ッ あ、案内するから来いよ!」スタスタ
船長「あ、ちょ……ッ 待て、って!」スタスタ
844: 2013/06/01(土) 17:55:13.30 ID:TKAvbH+GP
鍛冶師「ふふ……」
女剣士「嬉しそうだな、鍛冶師……」
鍛冶師「そりゃ、ね」
神父「やれやれ……まあ、おめでとうございます、ですね」
神父「……女さんも喜びますよ」
鍛冶師「あんまり大勢で押しかけてもアレだよね。僕は街の方を手伝ってくるよ」
女剣士「アタシも行くよ。女って人とは面識ないし……お金、稼がないと」
神父「ええ、では気をつけて……使用人さんは、どうします?」
使用人「……少しお話よろしいでしょうか?」
神父「……ええ」
鍛冶師「じゃあ、神父さん、後で!」スタスタ
女剣士「あ、宿とかある?鍛冶師……」スタスタ
鍛冶師「……お金は?」
女剣士「……あ」
使用人「……」
神父「……なんでしょう、か」
使用人「魔除けの石の事で、と仰ったのは神父さんですよ」
神父「……そうでしたね」
使用人「渡す事はできない、ですか?」
神父「結論から言うと、そうです。女さんは……魔王に会いたがるでしょうから」
使用人「……でしょうね」
神父「解っていらっしゃいましたか」
使用人「推測に過ぎません。しかし…… ……」
神父「……」
使用人「具合は、如何なのです?」
女剣士「嬉しそうだな、鍛冶師……」
鍛冶師「そりゃ、ね」
神父「やれやれ……まあ、おめでとうございます、ですね」
神父「……女さんも喜びますよ」
鍛冶師「あんまり大勢で押しかけてもアレだよね。僕は街の方を手伝ってくるよ」
女剣士「アタシも行くよ。女って人とは面識ないし……お金、稼がないと」
神父「ええ、では気をつけて……使用人さんは、どうします?」
使用人「……少しお話よろしいでしょうか?」
神父「……ええ」
鍛冶師「じゃあ、神父さん、後で!」スタスタ
女剣士「あ、宿とかある?鍛冶師……」スタスタ
鍛冶師「……お金は?」
女剣士「……あ」
使用人「……」
神父「……なんでしょう、か」
使用人「魔除けの石の事で、と仰ったのは神父さんですよ」
神父「……そうでしたね」
使用人「渡す事はできない、ですか?」
神父「結論から言うと、そうです。女さんは……魔王に会いたがるでしょうから」
使用人「……でしょうね」
神父「解っていらっしゃいましたか」
使用人「推測に過ぎません。しかし…… ……」
神父「……」
使用人「具合は、如何なのです?」
852: 2013/06/01(土) 23:28:26.44 ID:TKAvbH+GP
神父「お元気そうですよ、と……そんな答えが返ってくると思っています?」
使用人「……」
神父「以前にも言いましたよね。私には、感じる力……エルフの姫、でしたか」
神父「その方の様に、命の炎を視る事はできません。ですが……」
使用人「……もう、持たない、のですね」
神父「このままという事は無いでしょう……いえ、そう思いたい、ですが」
神父「……私達人間、に。どれほどの影響を与えるか解らないでしょう。今の魔王は」
使用人「……」
神父「その魔の気、とやらがどれほどの物なのか想像も付かないですが」
使用人「備えあれば憂い無し?」
神父「それもあります。ですが……何より……」
神父「……本当は言いたく無い。考えたくも無い。ですが」
使用人「……」
神父「出来れば、一目魔王に……いえ」
神父「女さんの愛する人に、会わせてあげたい、のです」
神父「ですから。魔除けの石を……差し上げる事はできません」
使用人「そう、ですか……わかりました。ありがとうございます」
神父「貴女は、女さんにお会いになりますか?」
使用人「……どう、しましょうか。これと言って用事がある訳では無いのですが」
使用人「私の魔力程度で、女さんがどうにかなる、とは……思いません」
使用人「……でも、それも推測に過ぎませんから」
神父「……明後日、で良いのですね?」
使用人「はい」
神父「では、私の口から伝えましょう。会えると思えば……」
使用人「元気も出る?」
使用人「……出て、欲しいです」
使用人「……」
神父「以前にも言いましたよね。私には、感じる力……エルフの姫、でしたか」
神父「その方の様に、命の炎を視る事はできません。ですが……」
使用人「……もう、持たない、のですね」
神父「このままという事は無いでしょう……いえ、そう思いたい、ですが」
神父「……私達人間、に。どれほどの影響を与えるか解らないでしょう。今の魔王は」
使用人「……」
神父「その魔の気、とやらがどれほどの物なのか想像も付かないですが」
使用人「備えあれば憂い無し?」
神父「それもあります。ですが……何より……」
神父「……本当は言いたく無い。考えたくも無い。ですが」
使用人「……」
神父「出来れば、一目魔王に……いえ」
神父「女さんの愛する人に、会わせてあげたい、のです」
神父「ですから。魔除けの石を……差し上げる事はできません」
使用人「そう、ですか……わかりました。ありがとうございます」
神父「貴女は、女さんにお会いになりますか?」
使用人「……どう、しましょうか。これと言って用事がある訳では無いのですが」
使用人「私の魔力程度で、女さんがどうにかなる、とは……思いません」
使用人「……でも、それも推測に過ぎませんから」
神父「……明後日、で良いのですね?」
使用人「はい」
神父「では、私の口から伝えましょう。会えると思えば……」
使用人「元気も出る?」
使用人「……出て、欲しいです」
854: 2013/06/01(土) 23:50:30.19 ID:TKAvbH+GP
使用人「……解りました。では、このまま城に戻ります」
使用人「準備も、ありますので……」
神父「はい……進行は私でよろしいのですか?」
使用人「引き受けて下さるのですか」
神父「勘違いなさらぬ様……女さんの為です」
使用人「……はい」
神父「では……私も失礼致します」スタスタ
使用人「神父さん」
神父「はい?」
使用人「……ありがとうございます」ペコ
神父「…… ……」スタスタ
使用人「……」シュゥン……
……
………
…………
コンコン
盗賊「女?」
船長「眠ってるんじゃネェのか」
盗賊「……か、な」キィ……
盗賊「……女?」
女「……」
船長「相変わらず、細い……な」
盗賊「……」ナデ
盗賊(随分、体温が低いな……胸は、上下してる)
盗賊(生きてる……)ホッ
船長「そんな方法で確かめなきゃわかんねぇのかよ」
盗賊「船長……」
使用人「準備も、ありますので……」
神父「はい……進行は私でよろしいのですか?」
使用人「引き受けて下さるのですか」
神父「勘違いなさらぬ様……女さんの為です」
使用人「……はい」
神父「では……私も失礼致します」スタスタ
使用人「神父さん」
神父「はい?」
使用人「……ありがとうございます」ペコ
神父「…… ……」スタスタ
使用人「……」シュゥン……
……
………
…………
コンコン
盗賊「女?」
船長「眠ってるんじゃネェのか」
盗賊「……か、な」キィ……
盗賊「……女?」
女「……」
船長「相変わらず、細い……な」
盗賊「……」ナデ
盗賊(随分、体温が低いな……胸は、上下してる)
盗賊(生きてる……)ホッ
船長「そんな方法で確かめなきゃわかんねぇのかよ」
盗賊「船長……」
855: 2013/06/01(土) 23:56:21.18 ID:TKAvbH+GP
船長「……悪い。責めてる訳じゃない。誰も、別に……」
船長「……」
盗賊「目、覚める迄いるか?」
船長「俺か? ……否、良いよ。俺たちが居ると知れば、起き出そうとするだろ」
盗賊「……」
船長「おい?」
盗賊「いや、何でも無いよ。確かにそうだな、と思っただけだ」
船長「……随分悪いのか?」
盗賊「俺には解んネェよ。ただ……痩せたな、とか。顔色悪いな、とかさ」
盗賊「……そんな事しか」
船長「一年、って言ってたか」
盗賊「……まだ、半年以上あるさ」
船長「……」
コンコン
盗賊「はい?」
神父「私です」
船長「神父さんか……俺は、行くよ」
盗賊「良いのか?」
船長「良いって……言ったろ、さっきも」カチャ
神父「ああ、船長さん……女さん、起きられましたか?」
船長「いや。まあでも良いさ。まだやる事もあるしな」
盗賊「俺も行くよ。準備もあるしさ」
船長「おう、盗賊。お前……」
盗賊「ん?」
船長「いや、いいや……」
盗賊「何だよ!」
船長「……」
盗賊「目、覚める迄いるか?」
船長「俺か? ……否、良いよ。俺たちが居ると知れば、起き出そうとするだろ」
盗賊「……」
船長「おい?」
盗賊「いや、何でも無いよ。確かにそうだな、と思っただけだ」
船長「……随分悪いのか?」
盗賊「俺には解んネェよ。ただ……痩せたな、とか。顔色悪いな、とかさ」
盗賊「……そんな事しか」
船長「一年、って言ってたか」
盗賊「……まだ、半年以上あるさ」
船長「……」
コンコン
盗賊「はい?」
神父「私です」
船長「神父さんか……俺は、行くよ」
盗賊「良いのか?」
船長「良いって……言ったろ、さっきも」カチャ
神父「ああ、船長さん……女さん、起きられましたか?」
船長「いや。まあでも良いさ。まだやる事もあるしな」
盗賊「俺も行くよ。準備もあるしさ」
船長「おう、盗賊。お前……」
盗賊「ん?」
船長「いや、いいや……」
盗賊「何だよ!」
856: 2013/06/02(日) 00:01:22.70 ID:mP2SImALP
船長「デケェ声だすな! ……飯でも食うかと思っただけだ」
盗賊「あー……そうだな。またゆっくりしようや、今度」
盗賊「……久しぶりに会うんだ。魔王と姫に、さ」
船長「あいつらにそんな時間あんのか?」
盗賊「違う違う。準備の話……その後でもさ。飯ぐらい食えるだろ?」
船長「ああ……そう、だな」
盗賊「バタバタ片づいたら、女も神父さんも誘って、さ」
神父「私もですか?」
盗賊「ああ。この間試食して貰ったろ?もうちょっとであそこも」
盗賊「きっちりオープンするだろうしさ」
船長「ああ、そうか……まだまともに飯屋もネェのか」
盗賊「宿屋に行けば一応の飯は出してくれてるぜ」
船長「そっか。んじゃま、行ってみるわ」
神父「お二人とも、あまり無理をなさらぬ様に」
盗賊「うん。神父さんもゆっくり休めよ」
船長「じゃあな」
パタン
女「……帰られ、ましたか」
神父「起きていたのですか?」
女「今、です……」
神父「ああ、どうぞ、その侭……」
女「すみません」フゥ
神父「お加減、如何です」
盗賊「あー……そうだな。またゆっくりしようや、今度」
盗賊「……久しぶりに会うんだ。魔王と姫に、さ」
船長「あいつらにそんな時間あんのか?」
盗賊「違う違う。準備の話……その後でもさ。飯ぐらい食えるだろ?」
船長「ああ……そう、だな」
盗賊「バタバタ片づいたら、女も神父さんも誘って、さ」
神父「私もですか?」
盗賊「ああ。この間試食して貰ったろ?もうちょっとであそこも」
盗賊「きっちりオープンするだろうしさ」
船長「ああ、そうか……まだまともに飯屋もネェのか」
盗賊「宿屋に行けば一応の飯は出してくれてるぜ」
船長「そっか。んじゃま、行ってみるわ」
神父「お二人とも、あまり無理をなさらぬ様に」
盗賊「うん。神父さんもゆっくり休めよ」
船長「じゃあな」
パタン
女「……帰られ、ましたか」
神父「起きていたのですか?」
女「今、です……」
神父「ああ、どうぞ、その侭……」
女「すみません」フゥ
神父「お加減、如何です」
857: 2013/06/02(日) 00:06:34.73 ID:mP2SImALP
女「薬酒と、神父様の回復魔法のおかげで……随分良いです、よ」
神父「そうですか……」
神父(しかし……顔色は悪いまま、か)
神父「ちょっと失礼……うん、熱は下がりましたね」
神父(下がりすぎ……と言っても過言では無い。やはり、この侭では……ッ)
女「神父様……?」
神父「……先ほど、使用人さんがいらっしゃいましたよ」
女「使用人さんが? ……ああ、そういえば、船長さんのお声も聞こえていましたね」
女「もう……そんなに時間が経った、のですね……」
神父「……明後日」
女「はい……?」
神父「明後日、式を挙げられるそうです」
女「……ッ 魔王様が、この街に……?」
神父「はい。お会いするためにも、今はしっかりお休みになってください」
女「そうですか……会える、のですね……」
神父「……」
女「嬉しい……」
神父「ええ……ですから、お休みなさい。盗賊さんが戻られる迄」
神父「私も、ここに居ますから」
女「ありがとうございます……申し訳、あり……ま……」スゥ
神父「女さん……?」
神父(眠った、のか……先ほどより、少し頬に赤みが差している)
神父(……魔王に会えるのが、余程嬉しいのですね)
神父(早く……早く、明後日になれば良い)
神父(神よ……少しでもこの者の苦痛を、どうか……和らげてください……!)
神父「そうですか……」
神父(しかし……顔色は悪いまま、か)
神父「ちょっと失礼……うん、熱は下がりましたね」
神父(下がりすぎ……と言っても過言では無い。やはり、この侭では……ッ)
女「神父様……?」
神父「……先ほど、使用人さんがいらっしゃいましたよ」
女「使用人さんが? ……ああ、そういえば、船長さんのお声も聞こえていましたね」
女「もう……そんなに時間が経った、のですね……」
神父「……明後日」
女「はい……?」
神父「明後日、式を挙げられるそうです」
女「……ッ 魔王様が、この街に……?」
神父「はい。お会いするためにも、今はしっかりお休みになってください」
女「そうですか……会える、のですね……」
神父「……」
女「嬉しい……」
神父「ええ……ですから、お休みなさい。盗賊さんが戻られる迄」
神父「私も、ここに居ますから」
女「ありがとうございます……申し訳、あり……ま……」スゥ
神父「女さん……?」
神父(眠った、のか……先ほどより、少し頬に赤みが差している)
神父(……魔王に会えるのが、余程嬉しいのですね)
神父(早く……早く、明後日になれば良い)
神父(神よ……少しでもこの者の苦痛を、どうか……和らげてください……!)
858: 2013/06/02(日) 00:11:27.95 ID:mP2SImALP
……
………
…………
宿屋
キィ、パタン……
船長「スマン、此処で飯が食えるって……」
魔法使い「あ!船長!」
女海賊「遅かったじゃネェか!待ちくたびれたぞ!」
船長「…… ……」
船長(こいつらの事、すっかり忘れてた)
カチャ、パタン
鍛冶師「あー疲れた!」
女剣士「……悪いな、宿代まで……あれ?」
船長「鍛冶師!女剣士も……」
鍛冶師「……え、女ちゃん!?」
船長「……ッ」
女海賊「あ?アタシ?」
魔法使い「女?」
船長「……最悪のタイミングだな、お前ら」
鍛冶師「女ちゃん、じゃ無いのか……びっくりした」
女剣士「?」
船長「お前ら、ややこしいから散れッ」
鍛冶師「何だよ、飯食いに来たんだよ」
女剣士「アタシ、先に部屋取ってくるよ」
鍛冶師「ああ。いっといで」
魔法使い「えーと、知り合い、っすか」
女海賊「女って誰だい?」
船長「ちょっと黙ってくれ……」
………
…………
宿屋
キィ、パタン……
船長「スマン、此処で飯が食えるって……」
魔法使い「あ!船長!」
女海賊「遅かったじゃネェか!待ちくたびれたぞ!」
船長「…… ……」
船長(こいつらの事、すっかり忘れてた)
カチャ、パタン
鍛冶師「あー疲れた!」
女剣士「……悪いな、宿代まで……あれ?」
船長「鍛冶師!女剣士も……」
鍛冶師「……え、女ちゃん!?」
船長「……ッ」
女海賊「あ?アタシ?」
魔法使い「女?」
船長「……最悪のタイミングだな、お前ら」
鍛冶師「女ちゃん、じゃ無いのか……びっくりした」
女剣士「?」
船長「お前ら、ややこしいから散れッ」
鍛冶師「何だよ、飯食いに来たんだよ」
女剣士「アタシ、先に部屋取ってくるよ」
鍛冶師「ああ。いっといで」
魔法使い「えーと、知り合い、っすか」
女海賊「女って誰だい?」
船長「ちょっと黙ってくれ……」
859: 2013/06/02(日) 00:17:18.95 ID:mP2SImALP
魔法使い「まあまあ、船長。あ、始めまして、俺は魔法使いです」
魔法使い「で、こっちは……」
女海賊「女海賊だよ……なんだ、その女、て奴に似てるのか?アタシ」
鍛冶師「いや……うん、何だろう。雰囲気は全然違うけど、顔は、ねぇ?」
船長「阿呆。似てネェよ……悪い、女将さん。何か食わしてくれ」
鍛冶師「あ、僕も」
船長「おい!」
女剣士「良かった、宿あいてた! ……アタシも!」タタタ
魔法使い「俺らどうする?」
女海賊「折角なんだ。話もしたいし同席させて貰うよ」
船長「……俺は飯食ったらすぐ行くぞ」
鍛冶師「え?どこか行くの?」
船長「ちょっとな……荷物も下ろし終わったし、すぐに戻る」
女剣士「船で出るのか?」
船長「ああ……」
魔法使い「あ!じゃあ是非お供を……!」
船長「阿呆!着いてくんな!」
女海賊「良いじゃないか!全然話も出来ないだろう!」
鍛冶師「……えっと、あの。お二人は……?」
女海賊「アタシ達は海賊になりたくてね。是非船長の船に乗せて貰いたくて、さ」
船長「断る、と言っただろう?」
女海賊「……アタシ達がお宝の地図を持ってても、かい?」
船長「……何?」
魔法使い「まあまあ、此処では、ね。あ!でもさ。宝を手に入れたからって」
魔法使い「はいさようなら、なんてやらねぇよ!?」
魔法使い「で、こっちは……」
女海賊「女海賊だよ……なんだ、その女、て奴に似てるのか?アタシ」
鍛冶師「いや……うん、何だろう。雰囲気は全然違うけど、顔は、ねぇ?」
船長「阿呆。似てネェよ……悪い、女将さん。何か食わしてくれ」
鍛冶師「あ、僕も」
船長「おい!」
女剣士「良かった、宿あいてた! ……アタシも!」タタタ
魔法使い「俺らどうする?」
女海賊「折角なんだ。話もしたいし同席させて貰うよ」
船長「……俺は飯食ったらすぐ行くぞ」
鍛冶師「え?どこか行くの?」
船長「ちょっとな……荷物も下ろし終わったし、すぐに戻る」
女剣士「船で出るのか?」
船長「ああ……」
魔法使い「あ!じゃあ是非お供を……!」
船長「阿呆!着いてくんな!」
女海賊「良いじゃないか!全然話も出来ないだろう!」
鍛冶師「……えっと、あの。お二人は……?」
女海賊「アタシ達は海賊になりたくてね。是非船長の船に乗せて貰いたくて、さ」
船長「断る、と言っただろう?」
女海賊「……アタシ達がお宝の地図を持ってても、かい?」
船長「……何?」
魔法使い「まあまあ、此処では、ね。あ!でもさ。宝を手に入れたからって」
魔法使い「はいさようなら、なんてやらねぇよ!?」
860: 2013/06/02(日) 00:22:57.13 ID:mP2SImALP
女剣士「あ!そうだ! ……船長って、海賊だったんだってな!」
船長「は!?」
女剣士「船の中で鍛冶師に聞いて、初めて知ったよ!」
鍛冶師「……あ、そういえばそんな事言ってたね。船長、話してなかったの?」
船長「お前の脳みそはあれか。筋肉でできてんのか、女剣士……」
船長「俺は何回もお前の前で、海賊って単語を出してると思うがな」
女剣士「……あれ?」
鍛冶師「……おかしいと思った。そうだよな」
女海賊「脳みそ筋肉……」
魔法使い「略して脳筋」
鍛冶師「まんまだね」
船長「頼むから黙ってくれ。黙って食え!」
魔法使い「解った、黙る。黙るからさ」
魔法使い「その、ちょっとのお出かけ、着いていっていいかい?」
女海賊「そうだな。船の中で話そうよ?」
船長「…… ……」
鍛冶師「なぁんか、虫の良い話だなぁ」
女剣士「え、虫!?どこ!?」
鍛冶師「うん、君は黙ろうか、女剣士」
船長「……良いだろう。先に船の所に行っとけ。乗らずに待てよ」
魔法使い「やった!話解ってるね!」
女海賊「オーライ。お互いに特のある話なんだ。良い関係になれる事受けあいさ」
船長「聞くだけ聞いてやる、が。変な真似しやがったら遠慮無く海に突き落とすぞ」
魔法使い「解った解った、んじゃ先に行こうぜ女海賊」
女海賊「ああ。待ってるからね、船長!」
スタスタ。パタン
鍛冶師「……良いの」
船長「黙って食え、って言っただろう」
船長「は!?」
女剣士「船の中で鍛冶師に聞いて、初めて知ったよ!」
鍛冶師「……あ、そういえばそんな事言ってたね。船長、話してなかったの?」
船長「お前の脳みそはあれか。筋肉でできてんのか、女剣士……」
船長「俺は何回もお前の前で、海賊って単語を出してると思うがな」
女剣士「……あれ?」
鍛冶師「……おかしいと思った。そうだよな」
女海賊「脳みそ筋肉……」
魔法使い「略して脳筋」
鍛冶師「まんまだね」
船長「頼むから黙ってくれ。黙って食え!」
魔法使い「解った、黙る。黙るからさ」
魔法使い「その、ちょっとのお出かけ、着いていっていいかい?」
女海賊「そうだな。船の中で話そうよ?」
船長「…… ……」
鍛冶師「なぁんか、虫の良い話だなぁ」
女剣士「え、虫!?どこ!?」
鍛冶師「うん、君は黙ろうか、女剣士」
船長「……良いだろう。先に船の所に行っとけ。乗らずに待てよ」
魔法使い「やった!話解ってるね!」
女海賊「オーライ。お互いに特のある話なんだ。良い関係になれる事受けあいさ」
船長「聞くだけ聞いてやる、が。変な真似しやがったら遠慮無く海に突き落とすぞ」
魔法使い「解った解った、んじゃ先に行こうぜ女海賊」
女海賊「ああ。待ってるからね、船長!」
スタスタ。パタン
鍛冶師「……良いの」
船長「黙って食え、って言っただろう」
861: 2013/06/02(日) 00:45:56.59 ID:mP2SImALP
船長「……そんなに、似てるか」
鍛冶師「え?」
船長「……」
鍛冶師「女ちゃんに?まあ……黙ってたら、かなぁ」
鍛冶師「……さっきは似てないって言い切ったじゃ無いか」
船長「ご馳走さん」スタスタ……カチャ、パタン
鍛冶師「……なんだ?」
女剣士「随分機嫌悪かったな」
鍛冶師「君はものすごく機嫌良いよね」
女剣士「そりゃそうだ!明後日には側近に会えるんだ!」
鍛冶師「……そ、そうだね」
鍛冶師(女ちゃんに似てる、って言うと……顔色変わったな)
鍛冶師(何かまずい事言ったのかな)
女剣士「ああ、美味しかった!ご馳走様!」
鍛冶師「早ッ」
女剣士「随分身体動かしたからな」
鍛冶師「あー……今日はもう終わりだろうし、部屋でゆっくり休んだら?」
女剣士「ん?そう、だな……鍛冶師」
鍛冶師「ん?」
女剣士「……本当に、ありがとう。なんとお礼を言って良いか」
鍛冶師「ご飯ぐらいで大袈裟な」
女剣士「違う……まさか、本当に、こんなに早く」
女剣士「側近に会える事になると思わなかったんだ」
女剣士「ありがとう。金はきっと返す」
鍛冶師「……うん。解った」
女剣士「じゃあ、先に休む。盗賊に宜しく」スタスタ
鍛冶師「……」
鍛冶師(盗賊はまだ街の中かな……探してみるか)
……
………
…………
鍛冶師「え?」
船長「……」
鍛冶師「女ちゃんに?まあ……黙ってたら、かなぁ」
鍛冶師「……さっきは似てないって言い切ったじゃ無いか」
船長「ご馳走さん」スタスタ……カチャ、パタン
鍛冶師「……なんだ?」
女剣士「随分機嫌悪かったな」
鍛冶師「君はものすごく機嫌良いよね」
女剣士「そりゃそうだ!明後日には側近に会えるんだ!」
鍛冶師「……そ、そうだね」
鍛冶師(女ちゃんに似てる、って言うと……顔色変わったな)
鍛冶師(何かまずい事言ったのかな)
女剣士「ああ、美味しかった!ご馳走様!」
鍛冶師「早ッ」
女剣士「随分身体動かしたからな」
鍛冶師「あー……今日はもう終わりだろうし、部屋でゆっくり休んだら?」
女剣士「ん?そう、だな……鍛冶師」
鍛冶師「ん?」
女剣士「……本当に、ありがとう。なんとお礼を言って良いか」
鍛冶師「ご飯ぐらいで大袈裟な」
女剣士「違う……まさか、本当に、こんなに早く」
女剣士「側近に会える事になると思わなかったんだ」
女剣士「ありがとう。金はきっと返す」
鍛冶師「……うん。解った」
女剣士「じゃあ、先に休む。盗賊に宜しく」スタスタ
鍛冶師「……」
鍛冶師(盗賊はまだ街の中かな……探してみるか)
……
………
…………
862: 2013/06/02(日) 00:52:03.26 ID:mP2SImALP
船長「……本当に待っていやがった」
女海賊「待ってろ、て言ったのはアンタだろう?」
魔法使い「で、船に乗って良いんだろ」
船長「……良いだろう。すぐに出すぞ」
魔法使い「あいよ!」
女海賊「何処に行くんだい?」
船長「……すぐ近くの小さい島だ」
女海賊「お。お宝探しか?」
船長「違うわ阿呆……墓参りだ」
魔法使い「……墓参り?」
船長「ついでに花を摘みに、な」
女海賊「花!その顔で!?」
船長「顔は関係ネェだろ!」
魔法使い「こらこら……」
女海賊「花なんか何に使うんだよ」
船長「お前達に話す義理はネェ……さっさと本題に入れ」
船長「っと、野郎共!船出せ! ……廃港に行くぞ!」
アイアイサー!
女海賊「廃港?」
船長「本題に入れと言ったんだ。話さないなら出てけ」
魔法使い「……機嫌悪いね。まあ、良い……これ、見たら驚くぜ」バサ
船長「地図広げても…… ……ん?」
魔法使い「フフン」ニヤニヤ
船長「……随分古い地図だな」
女海賊「とある貴族の屋敷にな。あったんだよ、この地図が」
女海賊「待ってろ、て言ったのはアンタだろう?」
魔法使い「で、船に乗って良いんだろ」
船長「……良いだろう。すぐに出すぞ」
魔法使い「あいよ!」
女海賊「何処に行くんだい?」
船長「……すぐ近くの小さい島だ」
女海賊「お。お宝探しか?」
船長「違うわ阿呆……墓参りだ」
魔法使い「……墓参り?」
船長「ついでに花を摘みに、な」
女海賊「花!その顔で!?」
船長「顔は関係ネェだろ!」
魔法使い「こらこら……」
女海賊「花なんか何に使うんだよ」
船長「お前達に話す義理はネェ……さっさと本題に入れ」
船長「っと、野郎共!船出せ! ……廃港に行くぞ!」
アイアイサー!
女海賊「廃港?」
船長「本題に入れと言ったんだ。話さないなら出てけ」
魔法使い「……機嫌悪いね。まあ、良い……これ、見たら驚くぜ」バサ
船長「地図広げても…… ……ん?」
魔法使い「フフン」ニヤニヤ
船長「……随分古い地図だな」
女海賊「とある貴族の屋敷にな。あったんだよ、この地図が」
863: 2013/06/02(日) 00:59:13.09 ID:mP2SImALP
女海賊「……此処だ」トン
船長「これは……島、か」
女海賊「そうだ。南の端の端……小さな島がある」
船長(エルフの森のある……いや、違う。あの島は地図には……しかし)
女海賊「今出回ってる地図の中に、この島の乗ってる物は無い」
魔法使い「勿論、お宝が眠ってる保証は無い。が……何も無い、って保証も無い」
船長「…… ……」
魔法使い「魔物の荒れ狂う地獄みたいな島かも知れない。が!」
女海賊「行ってみる価値が無いとは言い切れない!」
船長「……で、船が欲しかった訳か」フゥ
女海賊「だがな、アタシ達は別に、本当にお宝を手に入れたからって」
女海賊「バイバイするつもりなんてねぇんだ」
女海賊「……海賊になりたい、てのは本当なのさ」
船長「何故だ?」
女海賊「……アンタにも探求心ってモンはあるだろう?」
女海賊「好奇心でも良い。この海を流れに流れて、世界の果てまで」
女海賊「……知識欲を満たしたいとは思わないか?」
魔法使い「俺は、魔法にゃ自信があるぜ。海の魔物に手こずる事もあるだろう」
魔法使い「こいつも男勝りで腕も立つ」
魔法使い「雇えとは言わない。報酬もいらねぇさ」
魔法使い「俺たちを仲間にして欲しい。海賊の間では、アンタは有名だ」
女海賊「あっさりはいそうですか、って信用して貰えるとは思ってネェ」
女海賊「だからこうして、地図も持参した」
女海賊「頼む……アタシ達を、この船に乗せてくれ!」
船長「…… ……」
船長「すぐに返事は出来ん……それに、海賊稼業は実質休業状態だ」
船長「これは……島、か」
女海賊「そうだ。南の端の端……小さな島がある」
船長(エルフの森のある……いや、違う。あの島は地図には……しかし)
女海賊「今出回ってる地図の中に、この島の乗ってる物は無い」
魔法使い「勿論、お宝が眠ってる保証は無い。が……何も無い、って保証も無い」
船長「…… ……」
魔法使い「魔物の荒れ狂う地獄みたいな島かも知れない。が!」
女海賊「行ってみる価値が無いとは言い切れない!」
船長「……で、船が欲しかった訳か」フゥ
女海賊「だがな、アタシ達は別に、本当にお宝を手に入れたからって」
女海賊「バイバイするつもりなんてねぇんだ」
女海賊「……海賊になりたい、てのは本当なのさ」
船長「何故だ?」
女海賊「……アンタにも探求心ってモンはあるだろう?」
女海賊「好奇心でも良い。この海を流れに流れて、世界の果てまで」
女海賊「……知識欲を満たしたいとは思わないか?」
魔法使い「俺は、魔法にゃ自信があるぜ。海の魔物に手こずる事もあるだろう」
魔法使い「こいつも男勝りで腕も立つ」
魔法使い「雇えとは言わない。報酬もいらねぇさ」
魔法使い「俺たちを仲間にして欲しい。海賊の間では、アンタは有名だ」
女海賊「あっさりはいそうですか、って信用して貰えるとは思ってネェ」
女海賊「だからこうして、地図も持参した」
女海賊「頼む……アタシ達を、この船に乗せてくれ!」
船長「…… ……」
船長「すぐに返事は出来ん……それに、海賊稼業は実質休業状態だ」
864: 2013/06/02(日) 01:06:02.29 ID:mP2SImALP
魔法使い「知ってるよ。港街を活性化させるんだろう」
女海賊「魔導の街に勇者が現れて、劣等種、だっけ……救った、んだろう?」
船長「……」
魔法使い「俺たちを船に乗せてくれるなら何だってする。だから……頼む!」
女海賊「アタシ達を、海賊にしてくれ!」
船長「……まずは下働きを手伝え」
魔法使い「!」
女海賊「!」
船長「だが、それも仲間にする、って訳じゃネェぞ」
船長「海賊稼業を再開するまで、どれだけかかるかわからねぇ」
船長「お宝探しもその後だ。それまで意思が変わらなければ、だ」
魔法使い「いやっほーぅ!」
船長「うるせぇ!騒ぐな! ……地図は預かるぜ」
船長「それから、妙な真似はすんなよ。部屋は与えるが、見張りはつける」
船長「その条件を飲めるか?」
女海賊「勿論だ!」
船長「良し……おい、誰か!」
海賊「呼びましたかい」
船長「こいつらに『特別室』を与えた。案内した後、まずは甲板掃除だ」
魔法使い「特別室?」
女海賊「……なんか厭な予感がするんだけど」
船長「閉じ込めやしねぇよ。船の一番底の、物置代わりの部屋の事だ」
海賊「良し、こっち来い!」
魔法使い「ま、まじっすか……」
女海賊「た、耐えてやるよ!絶対に……!」
パタン
船長「やれやれ……」フゥ
海賊「ああ、船長。もうすぐ着きますぜ」
船長「おう……半日で戻る。それまで、あいつらこきつかっとけ」
海賊「アイアイサー!」
女海賊「魔導の街に勇者が現れて、劣等種、だっけ……救った、んだろう?」
船長「……」
魔法使い「俺たちを船に乗せてくれるなら何だってする。だから……頼む!」
女海賊「アタシ達を、海賊にしてくれ!」
船長「……まずは下働きを手伝え」
魔法使い「!」
女海賊「!」
船長「だが、それも仲間にする、って訳じゃネェぞ」
船長「海賊稼業を再開するまで、どれだけかかるかわからねぇ」
船長「お宝探しもその後だ。それまで意思が変わらなければ、だ」
魔法使い「いやっほーぅ!」
船長「うるせぇ!騒ぐな! ……地図は預かるぜ」
船長「それから、妙な真似はすんなよ。部屋は与えるが、見張りはつける」
船長「その条件を飲めるか?」
女海賊「勿論だ!」
船長「良し……おい、誰か!」
海賊「呼びましたかい」
船長「こいつらに『特別室』を与えた。案内した後、まずは甲板掃除だ」
魔法使い「特別室?」
女海賊「……なんか厭な予感がするんだけど」
船長「閉じ込めやしねぇよ。船の一番底の、物置代わりの部屋の事だ」
海賊「良し、こっち来い!」
魔法使い「ま、まじっすか……」
女海賊「た、耐えてやるよ!絶対に……!」
パタン
船長「やれやれ……」フゥ
海賊「ああ、船長。もうすぐ着きますぜ」
船長「おう……半日で戻る。それまで、あいつらこきつかっとけ」
海賊「アイアイサー!」
865: 2013/06/02(日) 01:09:55.61 ID:mP2SImALP
……
………
…………
シュゥン……
使用人「……ん」スタ
使用人「!? 花が……!」
使用人(庭の花が、枯れてる……どうして……ッ)タタタ
使用人「……ッ これは……ッ」
使用人(魔王様の魔力、また……強くなってる!?)
バタン!
使用人「魔王様!側近様!?」
側近「王手!」
魔王「……ッ く、糞、又か……!!」
使用人「…… …… ……」
側近「あれ、使用人ちゃん?どしたの?」
魔王「使用人、丁度良いところに来た!すまんが……」
ボカッ
ゴスッ
側近「……痛ェ」
魔王「何するんだ……」
使用人「申し訳ありません、我慢できませんでした」
側近「何その棒読み……」
魔王「……ますます側近に似てきたな、使用人」
使用人「花が……」
側近「え?」
使用人「……庭の花が、全て枯れていたんです」
………
…………
シュゥン……
使用人「……ん」スタ
使用人「!? 花が……!」
使用人(庭の花が、枯れてる……どうして……ッ)タタタ
使用人「……ッ これは……ッ」
使用人(魔王様の魔力、また……強くなってる!?)
バタン!
使用人「魔王様!側近様!?」
側近「王手!」
魔王「……ッ く、糞、又か……!!」
使用人「…… …… ……」
側近「あれ、使用人ちゃん?どしたの?」
魔王「使用人、丁度良いところに来た!すまんが……」
ボカッ
ゴスッ
側近「……痛ェ」
魔王「何するんだ……」
使用人「申し訳ありません、我慢できませんでした」
側近「何その棒読み……」
魔王「……ますます側近に似てきたな、使用人」
使用人「花が……」
側近「え?」
使用人「……庭の花が、全て枯れていたんです」
866: 2013/06/02(日) 01:17:30.51 ID:mP2SImALP
魔王「……私の所為、か?」
側近「篭もってるとわかんくなるな」
使用人「お元気そうで何よりです」
側近「……その目怖いからやめて」
使用人「側近様、魔王様の剣は?」
側近「ん? ……あらま、折れてら」
使用人「あらま、じゃ無いでしょう!」
魔王「……そろそろ、限界か」
使用人「明後日、です」
魔王「何がだ?」
使用人「もう一度殴りましょうか?」
魔王「いや、流石に解らん。解らんから……腕を下ろしてくれ」
使用人「……式、挙げられるのでしょう」
側近「もう出来たの!?」
使用人「はい。魔王様と側近様が、チェスとオセロと将棋をなさってる間に」
側近「……トゲがあるなぁ。仕方無いだろ?」
魔王「そうか……とうとう、か」
使用人「どうぞ、ご準備を」
魔王「準備、と言われてもな」
使用人「……お召し替えとか、無いのですか?」
側近「ああ。お前あれ着れば?最初に旅立とうとした時にさ、言ってた奴」
魔王「白金の鎧に赤いマントか!」
使用人「……」
魔王「良し、探してくる」スタスタ
使用人「あ、魔王様、どこに……!」
魔王「隣の部屋だ。女の魔石を持っているから心配するな」
魔王「何かあったら側近が体当たりでどうにかしてくれる」
側近「えええええええええええ」
使用人「……ちょっと、悪ふざけが過ぎませんか」
側近「ん?服装の話?」
使用人「全部ひっくるめて、です!」
使用人「こんな、こんな時に……!」
側近「……こんな時、だから。だろ」
魔王「私が勇者になる……だと?」【7】
側近「篭もってるとわかんくなるな」
使用人「お元気そうで何よりです」
側近「……その目怖いからやめて」
使用人「側近様、魔王様の剣は?」
側近「ん? ……あらま、折れてら」
使用人「あらま、じゃ無いでしょう!」
魔王「……そろそろ、限界か」
使用人「明後日、です」
魔王「何がだ?」
使用人「もう一度殴りましょうか?」
魔王「いや、流石に解らん。解らんから……腕を下ろしてくれ」
使用人「……式、挙げられるのでしょう」
側近「もう出来たの!?」
使用人「はい。魔王様と側近様が、チェスとオセロと将棋をなさってる間に」
側近「……トゲがあるなぁ。仕方無いだろ?」
魔王「そうか……とうとう、か」
使用人「どうぞ、ご準備を」
魔王「準備、と言われてもな」
使用人「……お召し替えとか、無いのですか?」
側近「ああ。お前あれ着れば?最初に旅立とうとした時にさ、言ってた奴」
魔王「白金の鎧に赤いマントか!」
使用人「……」
魔王「良し、探してくる」スタスタ
使用人「あ、魔王様、どこに……!」
魔王「隣の部屋だ。女の魔石を持っているから心配するな」
魔王「何かあったら側近が体当たりでどうにかしてくれる」
側近「えええええええええええ」
使用人「……ちょっと、悪ふざけが過ぎませんか」
側近「ん?服装の話?」
使用人「全部ひっくるめて、です!」
使用人「こんな、こんな時に……!」
側近「……こんな時、だから。だろ」
魔王「私が勇者になる……だと?」【7】
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