185: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
前回:勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」【1】
魔法使い「だって、あんまり話てくれないんだもの、父も母も」
戦士「……言ってたな、そういや」
魔法使い「好きじゃ無いんですって」
僧侶「特殊、だと聞くね。あの街の人達って」
女神官「魔法に優れた者しか、住めなかったと言っていました」
勇者「そう、なのか?」
女神官「今現在はどうか……わかりませんけれど」
女神官「今の領主に変わって、もう随分経ちますけど」
女神官「前領主の時代は酷かったそうですよ」
女神官「……中身は、どうかわかりませんけど、ね」
勇者「魔法に優れた者……て、なんだ?」
女神官「加護のお話は聞いたことありませんか?」
勇者「あ……ちらっとだけ」
魔法使い「優れた加護、って奴ね」
戦士「何だそれ」
僧侶「魔法を使えない戦士は知らないか……えっとね」
魔法使い「その辺はまた船の中ででも話してあげるわよ」
魔法使い「長くなるしね」
勇者「そうだな……船の時間もあるし」
女神官「……ありがとうございました。貴重なお時間……頂きまして」
勇者「こちらこそ、色々聞かせてくれてありがとうございました」
僧侶「お茶、ご馳走様でした」
女神官「いいえ……また、機会があれば、お立ち寄り下さい」
魔法使い「じゃあ、買い物済ませて行きましょうか」
女神官「あ……」
戦士「ん?」
女神官「もし……もし、ですが」
186: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
女神官「……鍛冶師の村に、立ち寄ることがありましたら」
勇者「鍛冶師の村?」
女神官「はい……そこにも、此処を出て行った者が居るのです」
女神官「……偶には顔を見せて欲しい、と……伝えておいて下さい」
魔法使い「ええ、解ったわ。必ず」スタスタ
女神官「貴方達の旅の無事をお祈りします……勇者様」
勇者「ありがとうございます……お元気で」スタスタ
カチャ、パタン
僧侶「鍛冶師の村ですか……聞いた事がありますね」
勇者「鍛冶師様の出身の村だな」
戦士「そうだった……な。そういう部門があったな、騎士団に」
勇者「ああ。光の剣を直してくれたのも鍛冶師様とその人達だよ」
魔法使い「遠いの?」
勇者「地図で見ると結構遠い……が、ここから北東だ」
勇者「道中、と言えない事も無いんじゃ無いかな」
魔法使い「まあ、今は未定、で良いんじゃない」
魔法使い「取りあえずは魔導の街ね」
僧侶「さっきは厭そうにしてたのに、今は嬉しそうだね」
魔法使い「厭なんじゃ無いわよ。あの時の女神官さんの複雑そうな顔見てさ」
魔法使い「その話する時の母さんの顔、思い出しただけよ」
魔法使い「詳しくは本当に何も教えてくれなかったんだけど」
魔法使い「……なんて言うかな。毛嫌いしてるのは良く解ったし」
僧侶「思い出しちゃったのね」
戦士「でも魔法を使う者としては興味もあるし、か」
魔法使い「そういう事」
勇者「でも、何だっけ……限られてるんだろ?」
魔法使い「住もうと思えば、でしょ」
戦士「ああ、そうだそうだ。加護がどうとか?何なんだ?」
魔法使い「船の上で話しましょ。乗り遅れちゃうわ」
勇者「鍛冶師の村?」
女神官「はい……そこにも、此処を出て行った者が居るのです」
女神官「……偶には顔を見せて欲しい、と……伝えておいて下さい」
魔法使い「ええ、解ったわ。必ず」スタスタ
女神官「貴方達の旅の無事をお祈りします……勇者様」
勇者「ありがとうございます……お元気で」スタスタ
カチャ、パタン
僧侶「鍛冶師の村ですか……聞いた事がありますね」
勇者「鍛冶師様の出身の村だな」
戦士「そうだった……な。そういう部門があったな、騎士団に」
勇者「ああ。光の剣を直してくれたのも鍛冶師様とその人達だよ」
魔法使い「遠いの?」
勇者「地図で見ると結構遠い……が、ここから北東だ」
勇者「道中、と言えない事も無いんじゃ無いかな」
魔法使い「まあ、今は未定、で良いんじゃない」
魔法使い「取りあえずは魔導の街ね」
僧侶「さっきは厭そうにしてたのに、今は嬉しそうだね」
魔法使い「厭なんじゃ無いわよ。あの時の女神官さんの複雑そうな顔見てさ」
魔法使い「その話する時の母さんの顔、思い出しただけよ」
魔法使い「詳しくは本当に何も教えてくれなかったんだけど」
魔法使い「……なんて言うかな。毛嫌いしてるのは良く解ったし」
僧侶「思い出しちゃったのね」
戦士「でも魔法を使う者としては興味もあるし、か」
魔法使い「そういう事」
勇者「でも、何だっけ……限られてるんだろ?」
魔法使い「住もうと思えば、でしょ」
戦士「ああ、そうだそうだ。加護がどうとか?何なんだ?」
魔法使い「船の上で話しましょ。乗り遅れちゃうわ」
187: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
僧侶「そうだね。一日に何便もある訳じゃないだろうし」
勇者「買い忘れた物とか無いか?」
戦士「大丈夫、だよな?……これと言った情報も無かったしな」
僧侶「仕方無いよ。魔王が世界を滅ぼそうとしてる」
僧侶「勇者様が魔王を倒す為に旅立たれた」
僧侶「……それ以上は、私達だって解ってないんだもの」
魔法使い「そうね……あ!港に船が来てる!」タタタ
戦士「……やっぱり嬉しそうに見えるけどな、あいつ」
僧侶「憧れと言えばそうだもの。やっぱり、あの街は、ね」
勇者「何か得るものがあれば良いな。僧侶も、やっぱり楽しみ?」
僧侶「うん!」ニコ
勇者「……そっか」ドキ
勇者(ん?ドキッて何だよ、俺……)
戦士「顔が赤いよ、勇者」ボソ。ニヤニヤ
勇者「う、煩いよ!」
僧侶「? 二人とも、行くよ?」タタタ
勇者「お、おう」
戦士「若いって良いですなー」スタスタ
勇者「……ッ 歳変わらないだろ!」タタ……
……
………
…………
姫「……ぅ、う……ん……」
姫(暑い…… 此処は、どこ……)
姫(身体が、重い。動かない……何故?)ドクン
姫(何か、動いてる……何処……あ)
勇者「買い忘れた物とか無いか?」
戦士「大丈夫、だよな?……これと言った情報も無かったしな」
僧侶「仕方無いよ。魔王が世界を滅ぼそうとしてる」
僧侶「勇者様が魔王を倒す為に旅立たれた」
僧侶「……それ以上は、私達だって解ってないんだもの」
魔法使い「そうね……あ!港に船が来てる!」タタタ
戦士「……やっぱり嬉しそうに見えるけどな、あいつ」
僧侶「憧れと言えばそうだもの。やっぱり、あの街は、ね」
勇者「何か得るものがあれば良いな。僧侶も、やっぱり楽しみ?」
僧侶「うん!」ニコ
勇者「……そっか」ドキ
勇者(ん?ドキッて何だよ、俺……)
戦士「顔が赤いよ、勇者」ボソ。ニヤニヤ
勇者「う、煩いよ!」
僧侶「? 二人とも、行くよ?」タタタ
勇者「お、おう」
戦士「若いって良いですなー」スタスタ
勇者「……ッ 歳変わらないだろ!」タタ……
……
………
…………
姫「……ぅ、う……ん……」
姫(暑い…… 此処は、どこ……)
姫(身体が、重い。動かない……何故?)ドクン
姫(何か、動いてる……何処……あ)
188: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
姫(……私の、内側)
姫(重い、暑い……う、ちがわ……)ドクン
姫「……ま、お……う……」ズキッ
姫「…… 痛……ッ」
姫「あ……、ァ」
姫「……ッ」ズキン、ズキン
姫「う、うぅ……ッ」
姫「あ、 ぁァ……ッ」
姫(そ、うだ……ここ、は……ッ 塔の、中……!)
姫(魔王と、側近と、使用人……と……ッ)
姫(……どれぐらい、眠ってた…… 私、は……ッ)ズキンッ
姫「あ、ああああァアアア……ッ」
オギャア、オギャア……ッ
姫「……ウ …… ……ァ」ハアハア
姫(産まれ……た、って……事、は……)
姫(もう、50年……? ……ああ、そん、な……じゃあ、私、は……)
姫「……まだ、動け……る……」ズル……
オギャア……ッ
姫「よし、よ……し……」ギュ
姫(エルフ、の……弓……魔石……青……ああ)
姫(……女、の……)ギュ
姫「……もう、少し……ッ と、びら……ッ ま、で……ッ」ズルズル……
姫(重い、暑い……う、ちがわ……)ドクン
姫「……ま、お……う……」ズキッ
姫「…… 痛……ッ」
姫「あ……、ァ」
姫「……ッ」ズキン、ズキン
姫「う、うぅ……ッ」
姫「あ、 ぁァ……ッ」
姫(そ、うだ……ここ、は……ッ 塔の、中……!)
姫(魔王と、側近と、使用人……と……ッ)
姫(……どれぐらい、眠ってた…… 私、は……ッ)ズキンッ
姫「あ、ああああァアアア……ッ」
オギャア、オギャア……ッ
姫「……ウ …… ……ァ」ハアハア
姫(産まれ……た、って……事、は……)
姫(もう、50年……? ……ああ、そん、な……じゃあ、私、は……)
姫「……まだ、動け……る……」ズル……
オギャア……ッ
姫「よし、よ……し……」ギュ
姫(エルフ、の……弓……魔石……青……ああ)
姫(……女、の……)ギュ
姫「……もう、少し……ッ と、びら……ッ ま、で……ッ」ズルズル……
189: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
姫(もう、少し……後……ッ ちょ……ッ)
オギャア、オギャア……ッ
姫「……ご、めん……ね、少し……ッ」ガシッ
ガチャ……キィ……ッ
サァアアア……
姫(まぶ、し……い……ッ ……外……ッ)
姫「…… ……」ハァハァ……ヨロ
姫(……森、の、中……? エルフの…… ……違、う)
姫(…… ……どこ?)
オギャア、オギャア……ッ
ガサガサ……ッ
姫「! ……あ ……ッ」ガク……ッ
姫(赤ちゃん……ッ)ギュ、パタ……ン
オギャア……フエエエ……ッ
姫(誰、か……何か、 ……居る、の)
神父「……ッ 大丈夫、ですか!?」タタタ……ッ
姫(人…… ……)ハァ
姫「……この、子、を」
神父「しっかりして下さい!しっかり……!」
姫「こ、れ……を、渡し ……」
神父「おお、ヨシヨシ……え……これ、は……」
姫「エルフ、の……弓…… ……この、子…… ……」
姫「……おね、が…… ……」
姫(……もう、声が出ない)
姫(魔王…… もう、いない、のかしら)
姫「…… う」
姫(…… ……も、う)パタ……コロン……
神父「……!娘さん!?」
オギャア、オギャア……!
オギャア、オギャア……ッ
姫「……ご、めん……ね、少し……ッ」ガシッ
ガチャ……キィ……ッ
サァアアア……
姫(まぶ、し……い……ッ ……外……ッ)
姫「…… ……」ハァハァ……ヨロ
姫(……森、の、中……? エルフの…… ……違、う)
姫(…… ……どこ?)
オギャア、オギャア……ッ
ガサガサ……ッ
姫「! ……あ ……ッ」ガク……ッ
姫(赤ちゃん……ッ)ギュ、パタ……ン
オギャア……フエエエ……ッ
姫(誰、か……何か、 ……居る、の)
神父「……ッ 大丈夫、ですか!?」タタタ……ッ
姫(人…… ……)ハァ
姫「……この、子、を」
神父「しっかりして下さい!しっかり……!」
姫「こ、れ……を、渡し ……」
神父「おお、ヨシヨシ……え……これ、は……」
姫「エルフ、の……弓…… ……この、子…… ……」
姫「……おね、が…… ……」
姫(……もう、声が出ない)
姫(魔王…… もう、いない、のかしら)
姫「…… う」
姫(…… ……も、う)パタ……コロン……
神父「……!娘さん!?」
オギャア、オギャア……!
190: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
神父(…… ……神よ。かの身に安らぎを……)
神父「……この子は……この娘さんの……」
神父(暖かい……子供は、元気そうだ)
神父(エルフの弓、と言ったな……では、この子は……エルフ!?)
神父(綺麗な水色の髪に、水色の瞳をしている)
神父(……これは?)ヒョイ
パァンッ
神父「あ……!」
神父(割れた……魔除けの石、か?)
神父(……母の愛、だろうか)
オギャア、オギャア……
神父「あ……! と、とにかく、ミルクを……!」
神父「…… ……娘さん、必ず、眠らせに戻って来ます」
神父「ですから、少しだけ……待ってて下さい」
神父(宿の女将さんに相談してみよう。預かって貰って、戻ってこなければ……!)
タタタ……
……
………
…………
神父「……この子は……この娘さんの……」
神父(暖かい……子供は、元気そうだ)
神父(エルフの弓、と言ったな……では、この子は……エルフ!?)
神父(綺麗な水色の髪に、水色の瞳をしている)
神父(……これは?)ヒョイ
パァンッ
神父「あ……!」
神父(割れた……魔除けの石、か?)
神父(……母の愛、だろうか)
オギャア、オギャア……
神父「あ……! と、とにかく、ミルクを……!」
神父「…… ……娘さん、必ず、眠らせに戻って来ます」
神父「ですから、少しだけ……待ってて下さい」
神父(宿の女将さんに相談してみよう。預かって貰って、戻ってこなければ……!)
タタタ……
……
………
…………
191: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
魔王「……ぅ、ウ」
側近「はいはい、何ですかー」
魔王「…… ア……」
側近「……?」
側近「なんて……ッ う……ッ」ドクン!
側近「……ッ 痛ェ」
側近(……魔王様から、滲み出る魔力が……増えた……?)
側近「……あんまり、乱暴しないでくれよ」
側近「勇者、流石にまだ着かないんだろうしさ」
コンコン
使用人「側近様、ここですか」
側近「あー、はいはい。使用人ちゃん入っちゃ駄目だよ」
使用人「え?」
側近「その侭扉越しにね」
使用人「…… ……何か、ありましたか」
側近「またちょっと、魔王様の力が増えたっぽいね」
使用人「え!?」
側近「心配しなくて良いよ。まだ大丈夫」
側近「それより、どうしたの?」
使用人「あ……はい。船が着いた様なので、ちょっと出ます……が」
使用人「大丈夫、ですか」
側近「ああ。行っておいで。魔除けの石、貰ってきて」
使用人「はい……すぐ、戻りますから」
側近「はいよー」
側近(…… ……)
側近(少しずつ、魔力が増えていってる、のは解ってた、んだが)
側近(今のはちょっと……急だったな)
側近「まったく……この世はどうなってるんだかな」ハァ
側近(何日経ったかな。食事は使用人ちゃんが運んでくれるから)
側近(問題無いけど……以前は)
側近(魔王様と、チェスやらなんやらやってたんだよな)
側近(喋らないお人形さんと二人じゃ……退屈、だな)
魔王「…… ……」
側近「なあ、魔王様」
魔王「…… ……」
側近「……返事されても、困るけどね」
側近「はいはい、何ですかー」
魔王「…… ア……」
側近「……?」
側近「なんて……ッ う……ッ」ドクン!
側近「……ッ 痛ェ」
側近(……魔王様から、滲み出る魔力が……増えた……?)
側近「……あんまり、乱暴しないでくれよ」
側近「勇者、流石にまだ着かないんだろうしさ」
コンコン
使用人「側近様、ここですか」
側近「あー、はいはい。使用人ちゃん入っちゃ駄目だよ」
使用人「え?」
側近「その侭扉越しにね」
使用人「…… ……何か、ありましたか」
側近「またちょっと、魔王様の力が増えたっぽいね」
使用人「え!?」
側近「心配しなくて良いよ。まだ大丈夫」
側近「それより、どうしたの?」
使用人「あ……はい。船が着いた様なので、ちょっと出ます……が」
使用人「大丈夫、ですか」
側近「ああ。行っておいで。魔除けの石、貰ってきて」
使用人「はい……すぐ、戻りますから」
側近「はいよー」
側近(…… ……)
側近(少しずつ、魔力が増えていってる、のは解ってた、んだが)
側近(今のはちょっと……急だったな)
側近「まったく……この世はどうなってるんだかな」ハァ
側近(何日経ったかな。食事は使用人ちゃんが運んでくれるから)
側近(問題無いけど……以前は)
側近(魔王様と、チェスやらなんやらやってたんだよな)
側近(喋らないお人形さんと二人じゃ……退屈、だな)
魔王「…… ……」
側近「なあ、魔王様」
魔王「…… ……」
側近「……返事されても、困るけどね」
192: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
側近(しかし……さっき、何か言った、よな?)
側近(……気のせい、かな)
……
………
…………
使用人「ありがとうございます、船長さん」
船長「急いでるんだろうと思ってな。取りあえず……集められるだけ、集めてきた」
船長「が……結構高級品かしちまってな。それほど数が無いんだ」
使用人「構いません……こちらこそ、無理言って申し訳ありませんでした」
使用人「……お体、大丈夫ですか?」
船長「俺は平気さ。最近は娘も随分立派になってきてな」
使用人「次期船長さん、ですね」
船長「まだまだ譲らネェけどな」
船長「……魔王、何かあったんだな」
使用人「ええ……しゃべり出したんです」
船長「え!?」
使用人「あ、いえ……ああ、とか、うう、とか唸るだけ何ですけど」
使用人「……自我の無い侭に暴れ出せば最後……と、思うと」
船長「それで魔除けの石、か」
使用人「どれほどの効果があるかはわかりませんけど……」
船長「大変だな、一人で」
使用人「あ……そうそう、側近様、帰っていらっしゃったのですよ」
船長「……何?」
使用人「勇者様が旅立たれて……すぐに」
船長「転移石、もう無かったんじゃネェのか」
使用人「随分……無茶をされています。魔王様の目の残照がある内に、と」
船長「自分で転移した、てのか!?」
使用人「……今は、魔王様に何かあった時の為に、と」
使用人「魔王様の傍から、動かれませんし……」
船長「…… ……魔族ってのは、とことん規格外だな」
側近(……気のせい、かな)
……
………
…………
使用人「ありがとうございます、船長さん」
船長「急いでるんだろうと思ってな。取りあえず……集められるだけ、集めてきた」
船長「が……結構高級品かしちまってな。それほど数が無いんだ」
使用人「構いません……こちらこそ、無理言って申し訳ありませんでした」
使用人「……お体、大丈夫ですか?」
船長「俺は平気さ。最近は娘も随分立派になってきてな」
使用人「次期船長さん、ですね」
船長「まだまだ譲らネェけどな」
船長「……魔王、何かあったんだな」
使用人「ええ……しゃべり出したんです」
船長「え!?」
使用人「あ、いえ……ああ、とか、うう、とか唸るだけ何ですけど」
使用人「……自我の無い侭に暴れ出せば最後……と、思うと」
船長「それで魔除けの石、か」
使用人「どれほどの効果があるかはわかりませんけど……」
船長「大変だな、一人で」
使用人「あ……そうそう、側近様、帰っていらっしゃったのですよ」
船長「……何?」
使用人「勇者様が旅立たれて……すぐに」
船長「転移石、もう無かったんじゃネェのか」
使用人「随分……無茶をされています。魔王様の目の残照がある内に、と」
船長「自分で転移した、てのか!?」
使用人「……今は、魔王様に何かあった時の為に、と」
使用人「魔王様の傍から、動かれませんし……」
船長「…… ……魔族ってのは、とことん規格外だな」
193: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
使用人「『人』を基準にすると確かにそうですね」
使用人「……まあ、魔の中にあっても、魔王様はさらに規格外でしたが」
船長「…… ……そうか」
使用人「やはり、港街も魔導の街も……『魔王と勇者』の話で持ちきり、ですか?」
船長「ああ……そうだな。それも料金の内だった」
使用人「はい。しっかり報告して下さい」
船長「俺が立ち寄った時は、とうとう旅立つんだ!ってな時だったから余計だな」
船長「港街はそうでも無かったが……魔導の街は随分な騒ぎだったらしい」
使用人「騒ぎ?」
船長「……頭が変わっただけじゃ、あの街の性質自体は何も変わらんよ」
船長「勇者が滞在中、誰が勇者を射止めるかだとかな」
使用人「頭……ああ、領主ですね」
使用人「……射止めたところでどうするのです」
使用人「勇者様は……」
船長「若い娘を前にこんな話をするのもあれだがな」
船長「子種だけでも、って奴だ」
使用人「…… ……変わりませんね」
船長「劣等種、なんて言葉は耳にはしなかったがな……」
船長「だが、あの……忌まわしい風習が消え去っちまった訳じゃネェ」
使用人「そんな!?」
船長「……表向き、あの頃みたいな事はない、んだろう」
船長「だが……な。どう見ても血が繋がってるだろうって少年二人の」
船長「親の扱いの差、周りの扱いの差……」
使用人「…… ……」ハァ
船長「何回か、目にしたよ」
使用人「……悲しい、事です」
船長「娼館がなくなっただけでも……随分な功績だと思わなくちゃやってられん」
使用人「…… ……そう、ですね」
船長「そんな程度、だ……これから、北の街と鍛冶師の街を回って」
船長「もう一度、魔導の街に戻る」
使用人「え?」
船長「今、魔除けの石の生産量は魔導の街が一番なんだ」
船長「……品質は期待できんがな」
使用人「そうですか……」
船長「今回は急いできたからな。次に来る時には、もう少し数を揃えておく」
使用人「……まあ、魔の中にあっても、魔王様はさらに規格外でしたが」
船長「…… ……そうか」
使用人「やはり、港街も魔導の街も……『魔王と勇者』の話で持ちきり、ですか?」
船長「ああ……そうだな。それも料金の内だった」
使用人「はい。しっかり報告して下さい」
船長「俺が立ち寄った時は、とうとう旅立つんだ!ってな時だったから余計だな」
船長「港街はそうでも無かったが……魔導の街は随分な騒ぎだったらしい」
使用人「騒ぎ?」
船長「……頭が変わっただけじゃ、あの街の性質自体は何も変わらんよ」
船長「勇者が滞在中、誰が勇者を射止めるかだとかな」
使用人「頭……ああ、領主ですね」
使用人「……射止めたところでどうするのです」
使用人「勇者様は……」
船長「若い娘を前にこんな話をするのもあれだがな」
船長「子種だけでも、って奴だ」
使用人「…… ……変わりませんね」
船長「劣等種、なんて言葉は耳にはしなかったがな……」
船長「だが、あの……忌まわしい風習が消え去っちまった訳じゃネェ」
使用人「そんな!?」
船長「……表向き、あの頃みたいな事はない、んだろう」
船長「だが……な。どう見ても血が繋がってるだろうって少年二人の」
船長「親の扱いの差、周りの扱いの差……」
使用人「…… ……」ハァ
船長「何回か、目にしたよ」
使用人「……悲しい、事です」
船長「娼館がなくなっただけでも……随分な功績だと思わなくちゃやってられん」
使用人「…… ……そう、ですね」
船長「そんな程度、だ……これから、北の街と鍛冶師の街を回って」
船長「もう一度、魔導の街に戻る」
使用人「え?」
船長「今、魔除けの石の生産量は魔導の街が一番なんだ」
船長「……品質は期待できんがな」
使用人「そうですか……」
船長「今回は急いできたからな。次に来る時には、もう少し数を揃えておく」
194: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
使用人「ええ……すみません、お願い致します」
船長「ああ……何かあったら、すぐ知らせろよ」
使用人「はい……何時もありがとうございます」スタスタ
カラカラカラカラ……
船長「さて、と」
娘「おい、親父!」
船長「何だ、娘……降りてきたのか」
船長「行くぞ」
娘「……毎度毎度、ご苦労なこっちゃ」ハァ
船長「俺らは海賊だ。仕事は仕事……金さえ貰えれば」
船長「何だってやるんだよ」
娘「そりゃ耳にタコができるぐらい聞いてるよ」
娘「確かにあの女は金払いも良いし、上客だってのは解ってるぜ」
娘「……でも、ありゃ人間じゃネェだろ?」
船長「…… ……」
娘「何時もの、ありゃ何だよ。解んネェとでも思ってんのかよ」
船長「……鳥か」
娘「きっれいな緑色のな。手紙受け取ったら消えちまう奴な」
船長「……魔法ってのは便利なモンだ」
娘「で、目的地が最果ての地!」
娘「……疑うなって方が無理があるだろうが」
船長「だから、何だ」
娘「……別に。教えてくれても良いんじゃネェかって」
娘「そんだけだ。アタシだってもう、チビじゃネェんだ」
娘「親父が後何十年かしてくたばっちまったら」
娘「変わりになるのはアタシなんだ!」
船長「……だったら、そん時にもう一回聞け」
船長「俺ゃまだまだ現役だ」
娘「親父のお株無理矢理奪う気なんかネェよ!」
船長「だったら話は終わり、だ。さっさと船に戻れ!」スタスタ
娘「……ッち」
娘「…… ……」スタスタ
船長「ああ……何かあったら、すぐ知らせろよ」
使用人「はい……何時もありがとうございます」スタスタ
カラカラカラカラ……
船長「さて、と」
娘「おい、親父!」
船長「何だ、娘……降りてきたのか」
船長「行くぞ」
娘「……毎度毎度、ご苦労なこっちゃ」ハァ
船長「俺らは海賊だ。仕事は仕事……金さえ貰えれば」
船長「何だってやるんだよ」
娘「そりゃ耳にタコができるぐらい聞いてるよ」
娘「確かにあの女は金払いも良いし、上客だってのは解ってるぜ」
娘「……でも、ありゃ人間じゃネェだろ?」
船長「…… ……」
娘「何時もの、ありゃ何だよ。解んネェとでも思ってんのかよ」
船長「……鳥か」
娘「きっれいな緑色のな。手紙受け取ったら消えちまう奴な」
船長「……魔法ってのは便利なモンだ」
娘「で、目的地が最果ての地!」
娘「……疑うなって方が無理があるだろうが」
船長「だから、何だ」
娘「……別に。教えてくれても良いんじゃネェかって」
娘「そんだけだ。アタシだってもう、チビじゃネェんだ」
娘「親父が後何十年かしてくたばっちまったら」
娘「変わりになるのはアタシなんだ!」
船長「……だったら、そん時にもう一回聞け」
船長「俺ゃまだまだ現役だ」
娘「親父のお株無理矢理奪う気なんかネェよ!」
船長「だったら話は終わり、だ。さっさと船に戻れ!」スタスタ
娘「……ッち」
娘「…… ……」スタスタ
195: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
海賊「娘さん、出発しますぜ、早く乗って下さいよ」
娘「解ってるよ……親父は?」
海賊「甲板の方に行きましたよ」
娘「珍しいな」
海賊「最近、魔物の数増えてますしね」
娘「……魔王のナントカがナントカ、て奴な」
海賊「勇者様も旅立たれたって言いますしね」
娘「フン……」
海賊「とりあえず、北の街に向かうそうですよ」
娘「あの何も無い街に寄って何すんだか……」
海賊「それは船長に聞いて下さいよ……あ、そうだ、娘さん」
海賊「これ、ジジィに持ってってくれませんか」
娘「あ? ……なんだこれ」
海賊「書庫から探しておいてくれって言われてた本です」
海賊「暇つぶしでしょ、何時もの」
娘「んで、ジジィどこなんだよ」
海賊「部屋でしょ、自分の」
娘「……ったく、なんでアタシが……」ブツブツ
スタスタ、カチャ……パタン
娘「……暇つぶし、ねぇ」パラパラ
娘(魔導書、か……まあ、ジジィぐらいにしか必要無いわな)
娘「……っと」コンコン
ジジィ「開いてるよ」
娘「生きてたか、糞ジジィ」カチャ
ジジィ「口の減らない小娘か……」
娘「煩ぇよこのくたばり損ないが……ほらよ」ポン
ジジィ「ああ、あったか……ありがとうよ
娘「そんな本の何が面白いのかねぇ……」
ジジィ「脳みそまで筋肉で出来てる小娘にゃ難しいわな」
娘「……口の減らネェジジィだな」
娘「解ってるよ……親父は?」
海賊「甲板の方に行きましたよ」
娘「珍しいな」
海賊「最近、魔物の数増えてますしね」
娘「……魔王のナントカがナントカ、て奴な」
海賊「勇者様も旅立たれたって言いますしね」
娘「フン……」
海賊「とりあえず、北の街に向かうそうですよ」
娘「あの何も無い街に寄って何すんだか……」
海賊「それは船長に聞いて下さいよ……あ、そうだ、娘さん」
海賊「これ、ジジィに持ってってくれませんか」
娘「あ? ……なんだこれ」
海賊「書庫から探しておいてくれって言われてた本です」
海賊「暇つぶしでしょ、何時もの」
娘「んで、ジジィどこなんだよ」
海賊「部屋でしょ、自分の」
娘「……ったく、なんでアタシが……」ブツブツ
スタスタ、カチャ……パタン
娘「……暇つぶし、ねぇ」パラパラ
娘(魔導書、か……まあ、ジジィぐらいにしか必要無いわな)
娘「……っと」コンコン
ジジィ「開いてるよ」
娘「生きてたか、糞ジジィ」カチャ
ジジィ「口の減らない小娘か……」
娘「煩ぇよこのくたばり損ないが……ほらよ」ポン
ジジィ「ああ、あったか……ありがとうよ
娘「そんな本の何が面白いのかねぇ……」
ジジィ「脳みそまで筋肉で出来てる小娘にゃ難しいわな」
娘「……口の減らネェジジィだな」
196: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
ジジィ「……船長は」
娘「甲板だとよ。最近魔物の数が増えてきたから、だってさ」
ジジィ「は! ……不機嫌そうな顔してると思えば」
ジジィ「構って貰えなくて拗ねてるのか」
娘「阿呆か!ガキじゃネェんだぞ!」
娘「……それに、真っ直ぐに娘の顔も見ネェ奴の何が親だ」
ジジィ「…… ……そっくりになってきたからな」
娘「え?」
ジジィ「お前さん、だ」
娘「……産んですぐ、氏んだって母さんに、か」
ジジィ「…… ……」
娘「ジジィは知ってるんだったな」
ジジィ「仲間だからな」
娘「…… ……」
ジジィ「前も話してやっただろうが」
娘「覚えてるよ。アンタがまだちゃんと『魔法使い』って名前で呼ばれてた」
娘「……その頃の話、だろ」
ジジィ「…… ……覚えとりゃ良い」
娘「本ばっか読んでネェで、偶には役に立てよ、糞ジジィ」
娘「……魔法仕えるの、お前だけなんだからな」
ジジィ「お前が良い腕してるから必要ないだけだろうが」
ジジィ「ジジィはジジィらしく、隠居させてくれんかのう」
娘「急に歳よりぶんな! ……ったく」
ジジィ「ほれ、出てけ……読書の邪魔、すんな」
娘「本当に隠居したいならすぐ言えよ。船から放り出してやるからな」
ジジィ「……海賊は海の上で氏ぬモンだ」
ジジィ「何時も言ってるだろうが……儂が氏んだら」
ジジィ「……ちゃんと水葬にしてくれよ、ってな」
娘「心配すんな。きっちり海に投げ込んで…… ……ッ」
ジジィ「……!?」
グラグラグラ……ッ
娘「甲板だとよ。最近魔物の数が増えてきたから、だってさ」
ジジィ「は! ……不機嫌そうな顔してると思えば」
ジジィ「構って貰えなくて拗ねてるのか」
娘「阿呆か!ガキじゃネェんだぞ!」
娘「……それに、真っ直ぐに娘の顔も見ネェ奴の何が親だ」
ジジィ「…… ……そっくりになってきたからな」
娘「え?」
ジジィ「お前さん、だ」
娘「……産んですぐ、氏んだって母さんに、か」
ジジィ「…… ……」
娘「ジジィは知ってるんだったな」
ジジィ「仲間だからな」
娘「…… ……」
ジジィ「前も話してやっただろうが」
娘「覚えてるよ。アンタがまだちゃんと『魔法使い』って名前で呼ばれてた」
娘「……その頃の話、だろ」
ジジィ「…… ……覚えとりゃ良い」
娘「本ばっか読んでネェで、偶には役に立てよ、糞ジジィ」
娘「……魔法仕えるの、お前だけなんだからな」
ジジィ「お前が良い腕してるから必要ないだけだろうが」
ジジィ「ジジィはジジィらしく、隠居させてくれんかのう」
娘「急に歳よりぶんな! ……ったく」
ジジィ「ほれ、出てけ……読書の邪魔、すんな」
娘「本当に隠居したいならすぐ言えよ。船から放り出してやるからな」
ジジィ「……海賊は海の上で氏ぬモンだ」
ジジィ「何時も言ってるだろうが……儂が氏んだら」
ジジィ「……ちゃんと水葬にしてくれよ、ってな」
娘「心配すんな。きっちり海に投げ込んで…… ……ッ」
ジジィ「……!?」
グラグラグラ……ッ
197: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
娘「な、ん……ッ だ……ッ!?」
ジジィ「……魔物、か」
娘「……ッ 糞、おい、ジジィ!動けるんならお前も来い!」
娘「甲板が騒がしい……!」タタタ
ジジィ「船長と娘が居りゃ、事足りるだろうに……やれやれ、よっこいしょ」スタスタ
娘「……おい、状況を説明しろ!」
海賊「あ、娘さん……! 人魚です!」
娘「人魚ォ!? ……糞、厄介だな……おい、ジジィ引きずって来い!」
娘「後、耳栓しとけよ!歌声は聞くな!」バタバタ
海賊「あ、ジジィ!早く!」
ジジィ「んな早く歩けんわ ……人魚だと?」
海賊「お前は耳遠いから大丈夫か」
ジジィ「……間違えて雷落としてしまうかもな」
海賊「喧しい!嫌味言ってないで早く行け!」
ジジィ「全く、人使いの荒い……」
娘「親父! ……おい!」
船長「娘か……ちゃんと耳栓したか!?」トントン
娘「あ? ……ああ、耳、な。大丈夫……ッ」
グラグラ……ッ
船長「うお……ッ」ドタ……ッ コロン
娘「わ……ッ あいつら、船に体当たりしやがったか……!」
娘(数が多い……!これも、魔王の……!!)
船長「!」
船長(耳栓が…… まずい……ッ)
♪~♪~
ジジィ「……魔物、か」
娘「……ッ 糞、おい、ジジィ!動けるんならお前も来い!」
娘「甲板が騒がしい……!」タタタ
ジジィ「船長と娘が居りゃ、事足りるだろうに……やれやれ、よっこいしょ」スタスタ
娘「……おい、状況を説明しろ!」
海賊「あ、娘さん……! 人魚です!」
娘「人魚ォ!? ……糞、厄介だな……おい、ジジィ引きずって来い!」
娘「後、耳栓しとけよ!歌声は聞くな!」バタバタ
海賊「あ、ジジィ!早く!」
ジジィ「んな早く歩けんわ ……人魚だと?」
海賊「お前は耳遠いから大丈夫か」
ジジィ「……間違えて雷落としてしまうかもな」
海賊「喧しい!嫌味言ってないで早く行け!」
ジジィ「全く、人使いの荒い……」
娘「親父! ……おい!」
船長「娘か……ちゃんと耳栓したか!?」トントン
娘「あ? ……ああ、耳、な。大丈夫……ッ」
グラグラ……ッ
船長「うお……ッ」ドタ……ッ コロン
娘「わ……ッ あいつら、船に体当たりしやがったか……!」
娘(数が多い……!これも、魔王の……!!)
船長「!」
船長(耳栓が…… まずい……ッ)
♪~♪~
198: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
『…… ……さ、ん。船長、さん……』
♪~♪~
娘「……ッ 魔詩だ!耳塞げ!」
ジジィ「…… ……おい、船長!?」
船長「く……ッ そ……ッ」
娘「親父もちゃんと耳栓してら!お前も耳塞げ、って!ジジィ!」
娘「お前の魔法が一番厄介だよ、魅了されると!」ガシッ!
ジジィ「おわ……ッ」
♪~♪~
『船長さん…… ……こっち、です』
船長「……ッ」ブンブンッ
船長「や、め……!! ……ッこ、の、声……」
『船長さん……一緒に、行きませんか』
『綺麗なお花、嬉しかったです。ねえ、船長さん……』
♪~♪~
ジジィ「おい……!おい、娘! ……船長の、様子が……!」
娘「え!?何だって!?」
船長「……しょ……」フラフラ……
『一緒に、お花摘みしましょ? ……一人じゃ、寂しいです』
『ね?船長さん……』
ジジィ「船長!」
船長「…… ……」フラフラ
『一緒に……ほら、手……繋いで?』
♪~♪~
船長「しょ……婦…… ……」フラ、フラ……
『一緒に……ねえ、早く……』
娘「……!」ハッ
娘「親父!!」ダッ
ジジィ「駄目だ、もう間に合わな……!!」ガシッ
船長「……ああ、一緒に……」フラフラ……タタタ……
♪~♪~
『私達と、海の底へね!!』
♪~♪~
娘「……ッ 魔詩だ!耳塞げ!」
ジジィ「…… ……おい、船長!?」
船長「く……ッ そ……ッ」
娘「親父もちゃんと耳栓してら!お前も耳塞げ、って!ジジィ!」
娘「お前の魔法が一番厄介だよ、魅了されると!」ガシッ!
ジジィ「おわ……ッ」
♪~♪~
『船長さん…… ……こっち、です』
船長「……ッ」ブンブンッ
船長「や、め……!! ……ッこ、の、声……」
『船長さん……一緒に、行きませんか』
『綺麗なお花、嬉しかったです。ねえ、船長さん……』
♪~♪~
ジジィ「おい……!おい、娘! ……船長の、様子が……!」
娘「え!?何だって!?」
船長「……しょ……」フラフラ……
『一緒に、お花摘みしましょ? ……一人じゃ、寂しいです』
『ね?船長さん……』
ジジィ「船長!」
船長「…… ……」フラフラ
『一緒に……ほら、手……繋いで?』
♪~♪~
船長「しょ……婦…… ……」フラ、フラ……
『一緒に……ねえ、早く……』
娘「……!」ハッ
娘「親父!!」ダッ
ジジィ「駄目だ、もう間に合わな……!!」ガシッ
船長「……ああ、一緒に……」フラフラ……タタタ……
♪~♪~
『私達と、海の底へね!!』
199: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
船長「あ……ッ !!」
ガブッ ……バッシャアアアアン!!
娘「親父!親父……ッ !!」
ジジィ「……魔詩が、止まった……ッ 雷よ!!」
ピシャアアアアアン!!
ギャアアアアアアアアア、アアアアア!!
アハハハ……アハハハハ……ッ!!
ザバ……ザ…… ……
…… ……
娘「あ…… ……ァ、あ……」ヘタヘタ……パタン
ジジィ「糞、遅かったか……!」
海賊「船長!船長ー!!」
娘「……お、やじ…… ……ッ」
ジジィ「…… ……おい」グイッ
海賊「せんちょ……ッ な……!」
ジジィ「さっさと船を出せ!この海域を離れるんだ!」
ジジィ「……あいつらが戻って来たら、今度こそやられちまうぞ!」
海賊「あ……ッ で、でも、船長、が……ッ」
ジジィ「……全滅したいのか?」
海賊「! ……ッ」タタタ……ッ
ジジィ「娘……おい、娘!」
ガブッ ……バッシャアアアアン!!
娘「親父!親父……ッ !!」
ジジィ「……魔詩が、止まった……ッ 雷よ!!」
ピシャアアアアアン!!
ギャアアアアアアアアア、アアアアア!!
アハハハ……アハハハハ……ッ!!
ザバ……ザ…… ……
…… ……
娘「あ…… ……ァ、あ……」ヘタヘタ……パタン
ジジィ「糞、遅かったか……!」
海賊「船長!船長ー!!」
娘「……お、やじ…… ……ッ」
ジジィ「…… ……おい」グイッ
海賊「せんちょ……ッ な……!」
ジジィ「さっさと船を出せ!この海域を離れるんだ!」
ジジィ「……あいつらが戻って来たら、今度こそやられちまうぞ!」
海賊「あ……ッ で、でも、船長、が……ッ」
ジジィ「……全滅したいのか?」
海賊「! ……ッ」タタタ……ッ
ジジィ「娘……おい、娘!」
200: 2013/07/12(金) NY:AN:NY.AN ID:fb7Z2iZ+P
娘「…… ……」
ジジィ「……糞ッ」パン!
娘「!」
ジジィ「しっかりせんか、小娘!」
ジジィ「……今は、仲間を守るのが先だろうが!」
娘「…… ……」フラ、フラ……
ジジィ「…… ……」フゥ
ジジィ(船長……最期に、何を見た?)
ジジィ(お前……まだ……ッ)グッ
……
………
…………
ジジィ「……糞ッ」パン!
娘「!」
ジジィ「しっかりせんか、小娘!」
ジジィ「……今は、仲間を守るのが先だろうが!」
娘「…… ……」フラ、フラ……
ジジィ「…… ……」フゥ
ジジィ(船長……最期に、何を見た?)
ジジィ(お前……まだ……ッ)グッ
……
………
…………
210: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
魔王「后、入るぞ」コンコン
カチャ
魔王「おはよう、后」スタスタ
后「……」
魔王「今日は良い天気だ。窓を開けるぞ」シャッ
后「……」
魔王「すぐに、側近が食事を運んで来る……もう少し、待ってくれよ」
后「……」
魔王「書庫でレシピを見つけてな。鴉に手伝って貰って」
魔王「フランボワーズというケーキを作ってみたのだ」
后「……」
魔王「食事が済んだら、デザートにしよう。あまり上手くは出来なかったが」
魔王「気に入ってくれると嬉しい」スタスタ……チュ
后「……」
魔王「まずかったら、笑ってくれよ」
后「……」
魔王「残しても良いからな……残したら、私がお前の分まで食べるから」
コンコン
側近「魔王様、后様、飯だぞー」
魔王「ほら、来た……」スタスタ、カチャ
側近「ここ、置いておくぞ」
魔王「ああ、ありがとう……後でケーキも頼むな」
側近「おう」
魔王「……今日は良い天気だな」
側近「何だよ急に……」
魔王「后も随分、機嫌が良さそうだ。一刻後に、頼む」
側近「…… ……解った」
魔王「さあ、后……腹が減っただろう?」
カチャ、パタン
側近「……」フゥ。スタスタ
カチャ
魔王「おはよう、后」スタスタ
后「……」
魔王「今日は良い天気だ。窓を開けるぞ」シャッ
后「……」
魔王「すぐに、側近が食事を運んで来る……もう少し、待ってくれよ」
后「……」
魔王「書庫でレシピを見つけてな。鴉に手伝って貰って」
魔王「フランボワーズというケーキを作ってみたのだ」
后「……」
魔王「食事が済んだら、デザートにしよう。あまり上手くは出来なかったが」
魔王「気に入ってくれると嬉しい」スタスタ……チュ
后「……」
魔王「まずかったら、笑ってくれよ」
后「……」
魔王「残しても良いからな……残したら、私がお前の分まで食べるから」
コンコン
側近「魔王様、后様、飯だぞー」
魔王「ほら、来た……」スタスタ、カチャ
側近「ここ、置いておくぞ」
魔王「ああ、ありがとう……後でケーキも頼むな」
側近「おう」
魔王「……今日は良い天気だな」
側近「何だよ急に……」
魔王「后も随分、機嫌が良さそうだ。一刻後に、頼む」
側近「…… ……解った」
魔王「さあ、后……腹が減っただろう?」
カチャ、パタン
側近「……」フゥ。スタスタ
211: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
側近(……魔王様の身体で見えないが)スタスタ
側近(そろそろ、一ヶ月……か、后様の身体が、崩れだしてから)
側近(もう、と言えばいいのか、まだと言えばいいのか……)
カチャ
鴉「……どうだった?」
側近「変わらネェ……よ、様子はな。あれ?」
魔導将軍「おはよう、側近」
側近「魔導将軍?珍しいな、食堂に顔出すなんて」
魔導将軍「偶には一緒に飯を食おうと思ってな」
側近「どういう風の吹き回しだか」
魔導将軍「別に、普段から厭うて居る訳では無いぞ」
側近「見回り終わったのか?」
魔導将軍「部下に任せた、んだ。今日は」
鴉「準備出来てるよ……ほら、二人とも座りなよ」
側近「部下ねぇ……何時も自分でやらなきゃ気が済まないって言ってる癖に」
側近「青天の霹靂だな。雨降らネェか」
魔導将軍「何れは任せねばいかん日も来る……不変は無いんだ」
魔導将軍「……観念しただけだ」
側近「観念、ね……」
鴉「后様……見た、のかい?」
魔導将軍「…… ……」
側近「否……魔王様のでっかい図体で見えネェよ」
側近「見せたく……無いだろ」
鴉「…… ……」
魔導将軍「良い天気だな……今日は」
側近「アンタまで……」
鴉「まで?」
側近「いや、さっき魔王様がな」
側近「同じ様な事、言ってたからな」
鴉「……紫、て言うか、灰色って言うか」
鴉「いっつもそんな顔色の悪い空ばっか見てるからだろ」
鴉「こうやって、たぁんまに晴れ間が覗くと、魔王様は昔から」
鴉「……空ばっか、見てた」
側近(そろそろ、一ヶ月……か、后様の身体が、崩れだしてから)
側近(もう、と言えばいいのか、まだと言えばいいのか……)
カチャ
鴉「……どうだった?」
側近「変わらネェ……よ、様子はな。あれ?」
魔導将軍「おはよう、側近」
側近「魔導将軍?珍しいな、食堂に顔出すなんて」
魔導将軍「偶には一緒に飯を食おうと思ってな」
側近「どういう風の吹き回しだか」
魔導将軍「別に、普段から厭うて居る訳では無いぞ」
側近「見回り終わったのか?」
魔導将軍「部下に任せた、んだ。今日は」
鴉「準備出来てるよ……ほら、二人とも座りなよ」
側近「部下ねぇ……何時も自分でやらなきゃ気が済まないって言ってる癖に」
側近「青天の霹靂だな。雨降らネェか」
魔導将軍「何れは任せねばいかん日も来る……不変は無いんだ」
魔導将軍「……観念しただけだ」
側近「観念、ね……」
鴉「后様……見た、のかい?」
魔導将軍「…… ……」
側近「否……魔王様のでっかい図体で見えネェよ」
側近「見せたく……無いだろ」
鴉「…… ……」
魔導将軍「良い天気だな……今日は」
側近「アンタまで……」
鴉「まで?」
側近「いや、さっき魔王様がな」
側近「同じ様な事、言ってたからな」
鴉「……紫、て言うか、灰色って言うか」
鴉「いっつもそんな顔色の悪い空ばっか見てるからだろ」
鴉「こうやって、たぁんまに晴れ間が覗くと、魔王様は昔から」
鴉「……空ばっか、見てた」
212: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
側近「何か……落ち着かネェな」
鴉「ん?」
側近「こんな身体になる前は、ずっと見てたはずなのにな、青い空なんて」
鴉「……慣れってのは気がつかない内に。だから……そう言うのさ」
側近「あの暗い空ばっかみてると、恋しくなってもおかしくネェのにな」
魔導将軍「人の子の生きる空の下は心地よかったか?」
側近「それこそ慣れ、って奴だ。当たり前にある事のありがたみなんて」
側近「当たり前でなくなって初めて気がつくんだろ……ご馳走さん」
魔導将軍「何だ、もう食わないのか?」
側近「……魔王様が鴉と一緒にケーキ作ったんだよ」
側近「んで、一刻後に運んでこい、とな」
魔導将軍「……ケーキ?」
鴉「書庫から何か本引っ張り出してきてね」
鴉「……手伝わされた、んだよ」フゥ
側近「何やれやれ、見たいな顔してやがる。随分楽しそうにしてたじゃないか」
鴉「楽しかったよ、確かに。でもね……」
鴉「……后様が食べてくれれば、もっと楽しかったのにな、て……ね」
側近「…… ……」
魔導将軍「…… ……それは、魔王様と后様の分しかないのか?」
鴉「余分はあるよ。食べるかい?」
魔導将軍「折角だからな」
側近「もうちょい時間あるか……俺も貰おうかな」
鴉「……アタシは遠慮しとく、と言いたいけど」
鴉「一緒に食べようかな……」
側近「お前、甘い物嫌いじゃないのか?」
鴉「嫌いだよ。でも……折角、魔王様が作ったんだ」
鴉「后様と……喜び、分かち合おうかなーって」
鴉「ちょっと待ってな。お茶入れるよ」パタパタ
魔導将軍「……本当の所、どうなんだ?」
側近「ん?ああ…… ……本当に、見てないんだよ」
側近「流石に……見せたくないだろう」
魔導将軍「…… ……そう、だが」
側近「気になる気持ちも、いたたまれないってのも……一緒だろう」
側近「若、は?」
魔導将軍「寝てるよ。たらふくミルク飲んでな」
側近「そっか」ハハ……
側近「……あの寝顔には本当に救われるな」
鴉「ん?」
側近「こんな身体になる前は、ずっと見てたはずなのにな、青い空なんて」
鴉「……慣れってのは気がつかない内に。だから……そう言うのさ」
側近「あの暗い空ばっかみてると、恋しくなってもおかしくネェのにな」
魔導将軍「人の子の生きる空の下は心地よかったか?」
側近「それこそ慣れ、って奴だ。当たり前にある事のありがたみなんて」
側近「当たり前でなくなって初めて気がつくんだろ……ご馳走さん」
魔導将軍「何だ、もう食わないのか?」
側近「……魔王様が鴉と一緒にケーキ作ったんだよ」
側近「んで、一刻後に運んでこい、とな」
魔導将軍「……ケーキ?」
鴉「書庫から何か本引っ張り出してきてね」
鴉「……手伝わされた、んだよ」フゥ
側近「何やれやれ、見たいな顔してやがる。随分楽しそうにしてたじゃないか」
鴉「楽しかったよ、確かに。でもね……」
鴉「……后様が食べてくれれば、もっと楽しかったのにな、て……ね」
側近「…… ……」
魔導将軍「…… ……それは、魔王様と后様の分しかないのか?」
鴉「余分はあるよ。食べるかい?」
魔導将軍「折角だからな」
側近「もうちょい時間あるか……俺も貰おうかな」
鴉「……アタシは遠慮しとく、と言いたいけど」
鴉「一緒に食べようかな……」
側近「お前、甘い物嫌いじゃないのか?」
鴉「嫌いだよ。でも……折角、魔王様が作ったんだ」
鴉「后様と……喜び、分かち合おうかなーって」
鴉「ちょっと待ってな。お茶入れるよ」パタパタ
魔導将軍「……本当の所、どうなんだ?」
側近「ん?ああ…… ……本当に、見てないんだよ」
側近「流石に……見せたくないだろう」
魔導将軍「…… ……そう、だが」
側近「気になる気持ちも、いたたまれないってのも……一緒だろう」
側近「若、は?」
魔導将軍「寝てるよ。たらふくミルク飲んでな」
側近「そっか」ハハ……
側近「……あの寝顔には本当に救われるな」
213: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
鴉「お待たせ……ああ、先に行っておくけど」カチャカチャ
魔導将軍「ふむ、想像以上に旨そうだ」
側近「な、意外だろ? ……なんだ?鴉」
鴉「アタシは見てただけだからね。全部自分でやる、とか言ってたからさ、魔王様」
鴉「……手、出したかったけど、そんな雰囲気じゃ無かったし」
側近「? ……おう?」
魔導将軍「それは、つまり……」
鴉「味の保証はしない、って事だ……頂きます」パク
側近「見てたんだろ?じゃあ別に……」パク
魔導将軍「心配しすぎだろう」パク
鴉「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
側近「…… ……」
……
………
…………
魔王「……后、旨いか?」
后「……」
魔王「鴉の料理の腕は流石だな。毎日これほど旨い物が食えるのは」
魔王「幸せだな……后も、前は良く鴉と一緒に何か作ってたな」
魔王「だから、な……今日のは、私からの礼だ」
魔王「そろそろ……」
コンコン
魔王「……さて、では味見して貰うとしよう」スタスタ。カチャ
側近「魔王様、お、おまた、せ……」
魔王「どうした、随分顔色が悪い」
側近「……おう。平気だ」ウプ
魔王「? ……なら良いが」
側近「食器は下げたか?」
魔王「ああ、ここに……ふむ、我ながら上出来だな」
魔王「旨そうだ……紅茶も、良い香りがする」
側近「じゃ、じゃあ……俺はこれで」
魔王「ああ……この分は私が片付けるから、もう良いぞ」
側近「わかっ ……ッ」ォエ
魔王「?? ……大丈夫か?」
側近「お、おう……じゃあ、な」
パタン
魔王「ふむ。何か悪い物でも食ったか」
魔王「后、待たせたな。ほら……どうだ、旨そうだろう?」
后「……」
魔王「はい、あーん」
后「……」ボロ……
魔王「……后?」
后「……」ボロボロボロ……
魔王「あ……」
后「……」ボロボロボロ……ボロボロ……
魔導将軍「ふむ、想像以上に旨そうだ」
側近「な、意外だろ? ……なんだ?鴉」
鴉「アタシは見てただけだからね。全部自分でやる、とか言ってたからさ、魔王様」
鴉「……手、出したかったけど、そんな雰囲気じゃ無かったし」
側近「? ……おう?」
魔導将軍「それは、つまり……」
鴉「味の保証はしない、って事だ……頂きます」パク
側近「見てたんだろ?じゃあ別に……」パク
魔導将軍「心配しすぎだろう」パク
鴉「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
側近「…… ……」
……
………
…………
魔王「……后、旨いか?」
后「……」
魔王「鴉の料理の腕は流石だな。毎日これほど旨い物が食えるのは」
魔王「幸せだな……后も、前は良く鴉と一緒に何か作ってたな」
魔王「だから、な……今日のは、私からの礼だ」
魔王「そろそろ……」
コンコン
魔王「……さて、では味見して貰うとしよう」スタスタ。カチャ
側近「魔王様、お、おまた、せ……」
魔王「どうした、随分顔色が悪い」
側近「……おう。平気だ」ウプ
魔王「? ……なら良いが」
側近「食器は下げたか?」
魔王「ああ、ここに……ふむ、我ながら上出来だな」
魔王「旨そうだ……紅茶も、良い香りがする」
側近「じゃ、じゃあ……俺はこれで」
魔王「ああ……この分は私が片付けるから、もう良いぞ」
側近「わかっ ……ッ」ォエ
魔王「?? ……大丈夫か?」
側近「お、おう……じゃあ、な」
パタン
魔王「ふむ。何か悪い物でも食ったか」
魔王「后、待たせたな。ほら……どうだ、旨そうだろう?」
后「……」
魔王「はい、あーん」
后「……」ボロ……
魔王「……后?」
后「……」ボロボロボロ……
魔王「あ……」
后「……」ボロボロボロ……ボロボロ……
214: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
魔王「…… ……そう、か。旨いか」
后「…… ……」ボロボロボロ……
魔王「今日が……良い天気で良かった」
后「…… ……」ボロ……ボロ…… ……
魔王「綺麗だ、后。光、が……反射して…… ……」
魔王「…… ……お前は、可愛くて美しくて……意地悪だったな」
魔王「側近が何時も、困ってたな」
魔王「……私にも、意地悪だったんだな、実は」
魔王「最後は……崩れるのが怖くて、抱きしめるのを躊躇させた」
魔王「……全く、仕方の無い奴だ」パク
魔王「……甘い、な」パク
魔王「否……少し、しょっぱい、かな」パク
魔王「…… ……俺を泣かす者等、お前ぐらいだ、后」ハァ
……
………
…………
側近「……悪いな、魔導将軍。洗い物なんかさせちまって」グッタリ
魔導将軍「仕方あるまい……使い魔共も居ないし」ハァ
鴉「……砂糖は分量通り、って言ったのに」ウゥ……
側近「まあ……后様の姿を見せる訳にな……城から遠ざけたのも」
側近「仕方無い、っちゃ仕方無い」
鴉「アンタ平気なのかい、魔導将軍」
魔導将軍「……我慢強いだけだ」ウップ
后「…… ……」ボロボロボロ……
魔王「今日が……良い天気で良かった」
后「…… ……」ボロ……ボロ…… ……
魔王「綺麗だ、后。光、が……反射して…… ……」
魔王「…… ……お前は、可愛くて美しくて……意地悪だったな」
魔王「側近が何時も、困ってたな」
魔王「……私にも、意地悪だったんだな、実は」
魔王「最後は……崩れるのが怖くて、抱きしめるのを躊躇させた」
魔王「……全く、仕方の無い奴だ」パク
魔王「……甘い、な」パク
魔王「否……少し、しょっぱい、かな」パク
魔王「…… ……俺を泣かす者等、お前ぐらいだ、后」ハァ
……
………
…………
側近「……悪いな、魔導将軍。洗い物なんかさせちまって」グッタリ
魔導将軍「仕方あるまい……使い魔共も居ないし」ハァ
鴉「……砂糖は分量通り、って言ったのに」ウゥ……
側近「まあ……后様の姿を見せる訳にな……城から遠ざけたのも」
側近「仕方無い、っちゃ仕方無い」
鴉「アンタ平気なのかい、魔導将軍」
魔導将軍「……我慢強いだけだ」ウップ
215: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
鴉「…… ……それ、やせ我慢って言うんだよ」
カチャ
側近「? ……ああ、魔王様」
鴉「……全部食べてる。甘かっただろう?」
魔王「否……しょっぱかったぞ?」
魔導将軍「…… ……はい?」
魔王「側近」
側近「んあ?」
魔王「片付けたら……使い魔共を城に呼び戻してくれ」
側近「……え、なん…… ……!!」
鴉「まさか……!!」
魔王「それから、私は……今日は、休む。誰も入れるな」
魔王「……明日から、食事は私の分だけ用意してくれれば良い」
魔導将軍「魔王様……!!」
魔王「色々と……我が儘に付き合わせて悪かったな」
魔王「……ありがとう。后も、喜んでいたよ」スタスタ
パタン
鴉「き……后、様……ッ」ポロポロ
魔導将軍「泣くな、鴉……!!」グッ
側近「……真っ赤な目して、説得力ネェよ、魔導将軍」
鴉「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
側近「…… ……」
オギャア、オギャア……!
側近「あ……!」タタタ。ダキ
側近「……寂しがらなくて良い。俺たちが居るから、な?」ヨシヨシ
オギャア、オギャア……フエェ……
……
………
…………
カチャ
側近「? ……ああ、魔王様」
鴉「……全部食べてる。甘かっただろう?」
魔王「否……しょっぱかったぞ?」
魔導将軍「…… ……はい?」
魔王「側近」
側近「んあ?」
魔王「片付けたら……使い魔共を城に呼び戻してくれ」
側近「……え、なん…… ……!!」
鴉「まさか……!!」
魔王「それから、私は……今日は、休む。誰も入れるな」
魔王「……明日から、食事は私の分だけ用意してくれれば良い」
魔導将軍「魔王様……!!」
魔王「色々と……我が儘に付き合わせて悪かったな」
魔王「……ありがとう。后も、喜んでいたよ」スタスタ
パタン
鴉「き……后、様……ッ」ポロポロ
魔導将軍「泣くな、鴉……!!」グッ
側近「……真っ赤な目して、説得力ネェよ、魔導将軍」
鴉「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
側近「…… ……」
オギャア、オギャア……!
側近「あ……!」タタタ。ダキ
側近「……寂しがらなくて良い。俺たちが居るから、な?」ヨシヨシ
オギャア、オギャア……フエェ……
……
………
…………
216: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
女「お待ちしておりました!勇者様!」
勇者「……はい!?」ビクッ
魔法使い「熱烈な歓迎ね……」
戦士「勇者がビビるのも無理ネェよ、これは……」
僧侶「これ……何人居るのかしら」
勇者「あ、あの……?」
女「船旅、お疲れになった事でしょう」
女「この魔導の街の領主様の命により、お迎えにまいりました」
女「お仲間の方々もどうぞ、ご一緒に」
女「……お屋敷へ、ご案内致します」
ワアアアアアアアアアア!
戦士「ざっと30人、ぐらい?」
魔法使い「領主様とやらの召使い、とか……でしょうね」
僧侶「宿代は助かりそうだけど……居心地は、悪いだろうね」
勇者「ちょっと黙れお前ら……」
戦士「こんなけ煩かったら聞こえてネェって」
魔法使い「聞こえても気にしなさそうよ、この人達」
僧侶「何で?」
魔法使い「選択肢あった?会話の中に」
僧侶「ああ……成る程」
勇者「黙れ、てば」
戦士「何だよ……」
勇者「……俺がくじける。逃げ出したい」
戦士「そうも行かないのが勇者様……俺らも強制連行だろ」
魔法使い「そうよ。まあ……まさか監禁される訳でも無し」
僧侶「行くだけ行って、厭なら帰れば良いのよ」
僧侶「宿ぐらいあるでしょ」
女「勇者様?」
勇者「…… ……では、お言葉に甘えます……」
勇者「……はい!?」ビクッ
魔法使い「熱烈な歓迎ね……」
戦士「勇者がビビるのも無理ネェよ、これは……」
僧侶「これ……何人居るのかしら」
勇者「あ、あの……?」
女「船旅、お疲れになった事でしょう」
女「この魔導の街の領主様の命により、お迎えにまいりました」
女「お仲間の方々もどうぞ、ご一緒に」
女「……お屋敷へ、ご案内致します」
ワアアアアアアアアアア!
戦士「ざっと30人、ぐらい?」
魔法使い「領主様とやらの召使い、とか……でしょうね」
僧侶「宿代は助かりそうだけど……居心地は、悪いだろうね」
勇者「ちょっと黙れお前ら……」
戦士「こんなけ煩かったら聞こえてネェって」
魔法使い「聞こえても気にしなさそうよ、この人達」
僧侶「何で?」
魔法使い「選択肢あった?会話の中に」
僧侶「ああ……成る程」
勇者「黙れ、てば」
戦士「何だよ……」
勇者「……俺がくじける。逃げ出したい」
戦士「そうも行かないのが勇者様……俺らも強制連行だろ」
魔法使い「そうよ。まあ……まさか監禁される訳でも無し」
僧侶「行くだけ行って、厭なら帰れば良いのよ」
僧侶「宿ぐらいあるでしょ」
女「勇者様?」
勇者「…… ……では、お言葉に甘えます……」
218: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
……
………
…………
領主「おお、貴方が勇者様か!ようこそ、我が町へ!」
勇者「は、はあ……」
戦士「すげぇご馳走……」
魔法使い「……蔵書の数が、凄い……!」
僧侶「このソファ、ふかふかだ……」
勇者「…… ……だから、落ち着けってお前ら……」
領主「さあ、お気になさらずお食べ下さい!お疲れでしょうし、腹も減っておるでしょう」
領主「……しかし、ふむ……素晴らしいですな」
勇者「あ、ありがとうございま……え?」
領主「始まりの街より、光の子が旅立ったと言うのは聞いておりました」
領主「しかし、噂に違わず……否!予想以上に神々しいそのお姿!」
領主「金の髪に金の瞳……紛う事無き光の子!我々の、希望の光ですな!」
勇者「…… ……はぁ」
領主「光の加護など、一般人では持ち得ない!」
領主「まさしく、選ばれた特別な者の証ですな!」
勇者「特別……ですか」
魔法使い「勇者、顔引きつってるわよ。我慢我慢」ヒソヒソ
戦士「これ、うめぇ!」モグモグ
僧侶「領主様、お尋ねしたい事があるんですけど」
領主「……ええ、何でしょう?」フゥ
勇者「?」
僧侶「この街に、大きな図書館が出来たんですよね」
領主「ええ。それが何か?」
僧侶「『優れた加護』について、調べたい事がありまして」
領主「ほう……何をお調べになるか、聞いてもよろしいかな」
僧侶「可能性を」ニコ
領主「……可能性?」
僧侶「ええ、どれほどの事ができるのか」
僧侶「この街程の規模の図書館ですから」ニコニコ
魔法使い「……笑顔が何か怖くない?」ヒソ
戦士「つか、何の話してるんだよ」ヒソ
勇者「…… ……?」
………
…………
領主「おお、貴方が勇者様か!ようこそ、我が町へ!」
勇者「は、はあ……」
戦士「すげぇご馳走……」
魔法使い「……蔵書の数が、凄い……!」
僧侶「このソファ、ふかふかだ……」
勇者「…… ……だから、落ち着けってお前ら……」
領主「さあ、お気になさらずお食べ下さい!お疲れでしょうし、腹も減っておるでしょう」
領主「……しかし、ふむ……素晴らしいですな」
勇者「あ、ありがとうございま……え?」
領主「始まりの街より、光の子が旅立ったと言うのは聞いておりました」
領主「しかし、噂に違わず……否!予想以上に神々しいそのお姿!」
領主「金の髪に金の瞳……紛う事無き光の子!我々の、希望の光ですな!」
勇者「…… ……はぁ」
領主「光の加護など、一般人では持ち得ない!」
領主「まさしく、選ばれた特別な者の証ですな!」
勇者「特別……ですか」
魔法使い「勇者、顔引きつってるわよ。我慢我慢」ヒソヒソ
戦士「これ、うめぇ!」モグモグ
僧侶「領主様、お尋ねしたい事があるんですけど」
領主「……ええ、何でしょう?」フゥ
勇者「?」
僧侶「この街に、大きな図書館が出来たんですよね」
領主「ええ。それが何か?」
僧侶「『優れた加護』について、調べたい事がありまして」
領主「ほう……何をお調べになるか、聞いてもよろしいかな」
僧侶「可能性を」ニコ
領主「……可能性?」
僧侶「ええ、どれほどの事ができるのか」
僧侶「この街程の規模の図書館ですから」ニコニコ
魔法使い「……笑顔が何か怖くない?」ヒソ
戦士「つか、何の話してるんだよ」ヒソ
勇者「…… ……?」
219: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
領主「……ふむ、では貴女は……優れた加護をお持ち、ですか!」
僧侶「……」ニコニコ
領主「そういう事でしたら、お力になれましょう……明日にでも」
領主「図書館に行ってみられると良い。伝えておきますのでな」
領主「私の紹介だと言えば、全ての本が閲覧出来ますぞ」
領主「……いや、流石勇者様のお仲間だ!素晴らしいですな!」
魔法使い「?」
戦士「??」
勇者「おい、僧侶……?」
僧侶「ありがとうございます。流石、魔導の街の領主様ですね」
領主「勇者様のお仲間に褒めて頂けるとは、ありがたい話ですな」
領主「貴方様方なら、きっと魔王を倒せましょう!期待しておりますぞ!」
コンコン
女「領主様、失礼致します」カチャ
女「そろそろ……」
領主「ああ、そうか。そうだったな……」フン
領主「では、執務がありますので私はこれで。どうぞ、ごゆっくりおくつろぎ下さい」
スタスタ、カチャ
女「失礼致します」
パタン
勇者「……何だったんだ?」
僧侶「『選ばれた』とか、『特別』とか、やけに強調してたからね」
僧侶「それに……聞いた事あったんだ。魔導の街の人ってさ」
僧侶「領主の血筋、って……皆、優れた加護持ってる、て」
魔法使い「み……んな!?」
僧侶「……」ニコニコ
領主「そういう事でしたら、お力になれましょう……明日にでも」
領主「図書館に行ってみられると良い。伝えておきますのでな」
領主「私の紹介だと言えば、全ての本が閲覧出来ますぞ」
領主「……いや、流石勇者様のお仲間だ!素晴らしいですな!」
魔法使い「?」
戦士「??」
勇者「おい、僧侶……?」
僧侶「ありがとうございます。流石、魔導の街の領主様ですね」
領主「勇者様のお仲間に褒めて頂けるとは、ありがたい話ですな」
領主「貴方様方なら、きっと魔王を倒せましょう!期待しておりますぞ!」
コンコン
女「領主様、失礼致します」カチャ
女「そろそろ……」
領主「ああ、そうか。そうだったな……」フン
領主「では、執務がありますので私はこれで。どうぞ、ごゆっくりおくつろぎ下さい」
スタスタ、カチャ
女「失礼致します」
パタン
勇者「……何だったんだ?」
僧侶「『選ばれた』とか、『特別』とか、やけに強調してたからね」
僧侶「それに……聞いた事あったんだ。魔導の街の人ってさ」
僧侶「領主の血筋、って……皆、優れた加護持ってる、て」
魔法使い「み……んな!?」
220: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
戦士「優れた加護、てあれだよな」
戦士「魔法使いが船の中で説明してくれた奴」
魔法使い「アンタ、三割も理解してないでしょ」
戦士「……なんか特別、てのは解ったってば」
僧侶「まさにそれ。『特別』」
勇者「……俺にも言ってたな。勇者は特別、選ばれた、とか」
魔法使い「いい加減慣れなさいよ」
勇者「ああ、いやそういう意味じゃ無い」
勇者「『勇者』である俺は『特別』」
勇者「『優れた加護』を持つ領主の血筋も『特別』……」
僧侶「イコール、と迄いくら何でも言い切りゃしないだろうけど」
僧侶「そういう所、ありそう」
魔法使い「……で、嘘吐いたの?」
僧侶「私、否定も肯定もしてないよ?笑ってただけだもん」
戦士「勝手に勘違いしたのは相手だ、てか……怖いなぁ」
僧侶「失礼な……収穫あったでしょ」
勇者「全ての本が閲覧出来る、とか言ってたな」
僧侶「一般人には許可してない本が読めるなら、ラッキーだよね」
魔法使い「知ってたの!?」
僧侶「まさか。でも……女神官さんと話してた時から思ってたんだよ」
僧侶「『魔法に優れた者しか住めない』って言ってたでしょ……だから」
僧侶「『優れた加護を持つ者のみ、住む事を許された街』なのかなって」
勇者「成る程……で、かまかけた、のか」
僧侶「うん。それまで、領主様の目には多分、勇者しか映ってなかったよ」
戦士「俺と魔法使いと僧侶は、勇者の仲間だから、邪険には出来ないけど、か」
魔法使い「…… ……」
勇者「魔法使い?」
戦士「魔法使いが船の中で説明してくれた奴」
魔法使い「アンタ、三割も理解してないでしょ」
戦士「……なんか特別、てのは解ったってば」
僧侶「まさにそれ。『特別』」
勇者「……俺にも言ってたな。勇者は特別、選ばれた、とか」
魔法使い「いい加減慣れなさいよ」
勇者「ああ、いやそういう意味じゃ無い」
勇者「『勇者』である俺は『特別』」
勇者「『優れた加護』を持つ領主の血筋も『特別』……」
僧侶「イコール、と迄いくら何でも言い切りゃしないだろうけど」
僧侶「そういう所、ありそう」
魔法使い「……で、嘘吐いたの?」
僧侶「私、否定も肯定もしてないよ?笑ってただけだもん」
戦士「勝手に勘違いしたのは相手だ、てか……怖いなぁ」
僧侶「失礼な……収穫あったでしょ」
勇者「全ての本が閲覧出来る、とか言ってたな」
僧侶「一般人には許可してない本が読めるなら、ラッキーだよね」
魔法使い「知ってたの!?」
僧侶「まさか。でも……女神官さんと話してた時から思ってたんだよ」
僧侶「『魔法に優れた者しか住めない』って言ってたでしょ……だから」
僧侶「『優れた加護を持つ者のみ、住む事を許された街』なのかなって」
勇者「成る程……で、かまかけた、のか」
僧侶「うん。それまで、領主様の目には多分、勇者しか映ってなかったよ」
戦士「俺と魔法使いと僧侶は、勇者の仲間だから、邪険には出来ないけど、か」
魔法使い「…… ……」
勇者「魔法使い?」
221: 2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN ID:W/JqniHiP
魔法使い「当たらずとも遠からず……いえ、多分正解ね」
戦士「ん?」
魔法使い「この街には親戚が住んでるって言ったでしょ」
魔法使い「どの程度かはわからないから、何とも言えないけど……」
僧侶「……魔法使いは、優れた加護は持ってない、んだよね?」
魔法使い「ええ。母もね……追い出された、のかな、て」
戦士「……この街を、か?」
魔法使い「話したがらないのも、複雑な顔するのも、それなら納得いくのよ」
僧侶「決めつけない方が良いよ。この街に住む人……皆、領主様と」
僧侶「似た様な性格してたとしたら、普通は厭になると思うよ」
勇者「だろうなぁ……居心地悪いったら無かったぜ」ハァ
魔法使い「…… ……そう、ね。うん。そうよね」
戦士「つーか、じゃあ俺なんか論外じゃネェか」
魔法使い「やっぱり理解してないじゃないの!」
魔法使い「加護はすなわち属性だから、魔法が使えるか否かは関係無いって」
魔法使い「ちゃんと説明したでしょうが!」
戦士「……そうだっけ」
勇者「まあまあ……しかしな、俺だって優れた加護なんて持ってないぞ、多分」
戦士「え?」
僧侶「そうなの?」
勇者「まあ……俺の加護が光だとしても」
勇者「今のところ、俺以外に光の魔法を使える奴なんて見た事ないからなぁ」
勇者「確かめようも無いけど」
魔法使い「自分で自分に光の魔法かけたら確かめられるわよ」
勇者「…… ……」
僧侶「別に良いでしょ。それ程重要じゃ無いんだし」
戦士「そりゃそうだ」
魔法使い「……そうね、御免」
勇者「いや……良いよ。そういう方法もあるんだな」ホッ
僧侶「…… ……?」
戦士「ん?」
魔法使い「この街には親戚が住んでるって言ったでしょ」
魔法使い「どの程度かはわからないから、何とも言えないけど……」
僧侶「……魔法使いは、優れた加護は持ってない、んだよね?」
魔法使い「ええ。母もね……追い出された、のかな、て」
戦士「……この街を、か?」
魔法使い「話したがらないのも、複雑な顔するのも、それなら納得いくのよ」
僧侶「決めつけない方が良いよ。この街に住む人……皆、領主様と」
僧侶「似た様な性格してたとしたら、普通は厭になると思うよ」
勇者「だろうなぁ……居心地悪いったら無かったぜ」ハァ
魔法使い「…… ……そう、ね。うん。そうよね」
戦士「つーか、じゃあ俺なんか論外じゃネェか」
魔法使い「やっぱり理解してないじゃないの!」
魔法使い「加護はすなわち属性だから、魔法が使えるか否かは関係無いって」
魔法使い「ちゃんと説明したでしょうが!」
戦士「……そうだっけ」
勇者「まあまあ……しかしな、俺だって優れた加護なんて持ってないぞ、多分」
戦士「え?」
僧侶「そうなの?」
勇者「まあ……俺の加護が光だとしても」
勇者「今のところ、俺以外に光の魔法を使える奴なんて見た事ないからなぁ」
勇者「確かめようも無いけど」
魔法使い「自分で自分に光の魔法かけたら確かめられるわよ」
勇者「…… ……」
僧侶「別に良いでしょ。それ程重要じゃ無いんだし」
戦士「そりゃそうだ」
魔法使い「……そうね、御免」
勇者「いや……良いよ。そういう方法もあるんだな」ホッ
僧侶「…… ……?」
229: 2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:ErgMrlg5P
勇者「しかし……ごゆっくり、とか言われても、な」
魔法使い「今日は泊めて貰うつもり?」
勇者「ここまでして貰って、宿取ります、ってのもな」
戦士「さっき何か言ってたじゃネェか。後でお部屋ご用意させます、的な」
僧侶「そうだよね。呼びに来てくれる、んじゃない?」
勇者「まあ、確かに助かるけどな。路銀だって有り余る程ある訳じゃ無いし」
勇者「かといって長居する訳にもな」
戦士「此処を出たらどうするんだ?」
勇者「まあ……北の方に向かう、だな」
魔法使い「色々見ては回りたい、けど……」
僧侶「2.3日お世話になる、で良いんじゃないの?」
魔法使い「そうね。取りあえず街へ行ってみない?」
魔法使い「まだそれほど遅い時間じゃ無いし……」
勇者「そうだな……」
コンコン
女「失礼します、勇者様よろしいですか?」
勇者「あ、はい!」
女「ありがとうございます……皆様、お食事はお済みでしょうか?」
魔法使い「ええ、ご馳走様でした。美味しかったわ」
女「では、お部屋へご案内致します。宜しければ湯をお使い下さい」
僧侶「お風呂! ……嬉しい、けど……」
女「如何致しました?」
戦士「いや、一回街の方に行ってみようかと思ってたんだ」
女「図書館に行かれると言っておられましたね。ですが……」
魔法使い「?」
女「ご利用時間を過ぎてしまっていますので、明日になされては?」
魔法使い「今日は泊めて貰うつもり?」
勇者「ここまでして貰って、宿取ります、ってのもな」
戦士「さっき何か言ってたじゃネェか。後でお部屋ご用意させます、的な」
僧侶「そうだよね。呼びに来てくれる、んじゃない?」
勇者「まあ、確かに助かるけどな。路銀だって有り余る程ある訳じゃ無いし」
勇者「かといって長居する訳にもな」
戦士「此処を出たらどうするんだ?」
勇者「まあ……北の方に向かう、だな」
魔法使い「色々見ては回りたい、けど……」
僧侶「2.3日お世話になる、で良いんじゃないの?」
魔法使い「そうね。取りあえず街へ行ってみない?」
魔法使い「まだそれほど遅い時間じゃ無いし……」
勇者「そうだな……」
コンコン
女「失礼します、勇者様よろしいですか?」
勇者「あ、はい!」
女「ありがとうございます……皆様、お食事はお済みでしょうか?」
魔法使い「ええ、ご馳走様でした。美味しかったわ」
女「では、お部屋へご案内致します。宜しければ湯をお使い下さい」
僧侶「お風呂! ……嬉しい、けど……」
女「如何致しました?」
戦士「いや、一回街の方に行ってみようかと思ってたんだ」
女「図書館に行かれると言っておられましたね。ですが……」
魔法使い「?」
女「ご利用時間を過ぎてしまっていますので、明日になされては?」
230: 2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:ErgMrlg5P
僧侶「そうなの? ……残念」
女「申し訳御座いません。明日の朝から開いておりますし」
女「本日はゆっくりと、疲れをお取り下さい」
魔法使い「……北の方へ行く船の時間って、解ります?」
女「お調べしておきます、申し訳ありません……勇者様」
勇者「え、いや……大丈夫です。明日、自分で見に行きますし」
魔法使い「…… ……」
戦士「どした?」
魔法使い「いえ……何でも無いわ」
女「では、此方へどうぞ。お部屋へご案内致します」
……
………
…………
ジジィ「おい、小娘」コンコン
娘「…… ……」
ジジィ「入るぞ」カチャ
娘「…… ……」
ジジィ「明かりもつけないで何やってんだ」フゥ
娘「……こっち、来んな」
ジジィ「泣いてんのか」
娘「…… ……」
ジジィ「……そりゃ、な。気持ちは解るが、な」
ジジィ「しかし、船…… ……ッ」ボスッ
娘「煩ェ!放っておけ!」
ジジィ「痛ェ……年よりに何するかなこの糞ガキが……ッ」
娘「……クッションにしてやったろ。優しいと思いやがれ」
ジジィ「……母親そっくりだな、お前は」ハァ
娘「…… ……は?」
ジジィ「お前の母親もな、何かあるとすゥぐに物投げたりして来やがった」
ジジィ「……そっくりだよ。すぐに癇癪起こしやがって」
娘「…… ……放っておいてくれよ!明日には…… ……ちゃんと、行くよ!」
ジジィ「そうしてやりたいのは山々だがな」
女「申し訳御座いません。明日の朝から開いておりますし」
女「本日はゆっくりと、疲れをお取り下さい」
魔法使い「……北の方へ行く船の時間って、解ります?」
女「お調べしておきます、申し訳ありません……勇者様」
勇者「え、いや……大丈夫です。明日、自分で見に行きますし」
魔法使い「…… ……」
戦士「どした?」
魔法使い「いえ……何でも無いわ」
女「では、此方へどうぞ。お部屋へご案内致します」
……
………
…………
ジジィ「おい、小娘」コンコン
娘「…… ……」
ジジィ「入るぞ」カチャ
娘「…… ……」
ジジィ「明かりもつけないで何やってんだ」フゥ
娘「……こっち、来んな」
ジジィ「泣いてんのか」
娘「…… ……」
ジジィ「……そりゃ、な。気持ちは解るが、な」
ジジィ「しかし、船…… ……ッ」ボスッ
娘「煩ェ!放っておけ!」
ジジィ「痛ェ……年よりに何するかなこの糞ガキが……ッ」
娘「……クッションにしてやったろ。優しいと思いやがれ」
ジジィ「……母親そっくりだな、お前は」ハァ
娘「…… ……は?」
ジジィ「お前の母親もな、何かあるとすゥぐに物投げたりして来やがった」
ジジィ「……そっくりだよ。すぐに癇癪起こしやがって」
娘「…… ……放っておいてくれよ!明日には…… ……ちゃんと、行くよ!」
ジジィ「そうしてやりたいのは山々だがな」
231: 2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:ErgMrlg5P
ジジィ「頭が居ねぇってのは結構重要なんだ、娘」
娘「頭……?」
ジジィ「船に『船長』が居ないとどうなる?」
娘「……!」
ジジィ「……あいつの娘はお前だ。酷なのは解ってるが」
ジジィ「指揮を取れる……舵を握るのはお前しかいないだろうが」
娘「お前がやれば良いだろう、ジジィ!アタシは、航海術なんか知らないよ!」
娘「親父は……何も教えてくれなかった!なんにも!」
娘「……お前が船長になる時、俺が引退する時にもう一回聞け、だとか……ッ」
娘「何時も、そんな事ばっかり……!!」
ジジィ「…… ……」
娘「そんで、あっさり人魚なんかに魅了されて、食われやがって……!」
娘「アタシが、変わりなんて出来る訳ネェだろ!」
ジジィ「……それでも、お前しか居ない。お前は船長の娘、なんだ」
娘「…… ……血、だけで……!」
ジジィ「じゃあ、船を下りるか?」
娘「え……」
ジジィ「船頭が居ない船に意味なんかネェだろう」
娘「…… ……」
ジジィ「船自体は売っちまえば良い。海賊共も別の仕事を探すだろうさ」
ジジィ「それで、良いのか」
娘「……ッ」
ジジィ「人魚の生息海域は出た。行き先が決まってないからな」
ジジィ「比較的穏やかなこの辺でウロウロしてりゃ、差し迫っての危険もないだろう」
ジジィ「それも2.3日だ。それまでに決めろ」
ジジィ「……やっと隠居出来るか。やれやれ」ハァ
娘「…… ……」
ジジィ「邪魔したな」カチャ
娘「あ……ま、待て!」
ジジィ「…… ……」
娘「…… ……」
ジジィ「船長だけじゃネェ。お前の母親も海賊だったんだ」
ジジィ「すぐに答え出せとは、言わん……ゆっくり考えるんだな」
娘「頭……?」
ジジィ「船に『船長』が居ないとどうなる?」
娘「……!」
ジジィ「……あいつの娘はお前だ。酷なのは解ってるが」
ジジィ「指揮を取れる……舵を握るのはお前しかいないだろうが」
娘「お前がやれば良いだろう、ジジィ!アタシは、航海術なんか知らないよ!」
娘「親父は……何も教えてくれなかった!なんにも!」
娘「……お前が船長になる時、俺が引退する時にもう一回聞け、だとか……ッ」
娘「何時も、そんな事ばっかり……!!」
ジジィ「…… ……」
娘「そんで、あっさり人魚なんかに魅了されて、食われやがって……!」
娘「アタシが、変わりなんて出来る訳ネェだろ!」
ジジィ「……それでも、お前しか居ない。お前は船長の娘、なんだ」
娘「…… ……血、だけで……!」
ジジィ「じゃあ、船を下りるか?」
娘「え……」
ジジィ「船頭が居ない船に意味なんかネェだろう」
娘「…… ……」
ジジィ「船自体は売っちまえば良い。海賊共も別の仕事を探すだろうさ」
ジジィ「それで、良いのか」
娘「……ッ」
ジジィ「人魚の生息海域は出た。行き先が決まってないからな」
ジジィ「比較的穏やかなこの辺でウロウロしてりゃ、差し迫っての危険もないだろう」
ジジィ「それも2.3日だ。それまでに決めろ」
ジジィ「……やっと隠居出来るか。やれやれ」ハァ
娘「…… ……」
ジジィ「邪魔したな」カチャ
娘「あ……ま、待て!」
ジジィ「…… ……」
娘「…… ……」
ジジィ「船長だけじゃネェ。お前の母親も海賊だったんだ」
ジジィ「すぐに答え出せとは、言わん……ゆっくり考えるんだな」
232: 2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:ErgMrlg5P
娘「待てって!」
ジジィ「……早う言え」
娘「……母さんの話を、聞かせてくれ」
ジジィ「何度も話してやっただろうが」
娘「アンタと一緒にこの船に、宝の地図持って海賊にしてくれ、って」
娘「来たんだ、ってだけじゃネェか!」
ジジィ「他に……何が聞きたいんだよ」
娘「…… ……何で、親父だったんだ」
ジジィ「…… ……」
娘「……あんな、あんな糞親父……!」
ジジィ「母親が好いた相手、だ」
娘「…… ……」
ジジィ「……偶には昔話も悪く無い。が、座らせてくれるとありがたいがな」
娘「適当にすりゃ良いだろ……」
ジジィ「小さい頃はあんなに可愛かったのになぁ……よっこいしょ」
娘「……煩ェよ」
ジジィ「何で、か……こっちが聞きてェよ」ハァ
娘「え……」
ジジィ「ああ、勘違いすんなよ。別に惚れてたとかじゃネェ」
娘「……お前さ、なんで何時も、あんなしゃべり方すんだよ」
ジジィ「何がじゃ」
娘「それだよ! ……確かに、頭真っ白だし、顔も老けてるけど」
ジジィ「ハッキリ言うな……お前は……」
娘「親父の方が歳、上なんだろう?ジジィなんて呼ばれる年齢じゃねぇだろうに」
ジジィ「良いんだよ……俺は早く歳を取りたかったんだ」
ジジィ「それにこの船の奴らは、船長含めて皆人使いが荒いからな」
娘「母さんと……なんか関係あるのか」
ジジィ「……どうだかな」
娘「ハッキリ言えよ!」
ジジィ「……女海賊が氏んだ時な?」
娘「あ、ああ」
ジジィ「海賊は、海の上で生きる。だから、氏んだら土じゃ無く海に帰すんだと」
ジジィ「……一杯の花と一緒にな。水葬にしたんだ」
娘「……」
ジジィ「俺も、これが良いと思った。あいつは若い……否、幼い頃からの仲間だ」
ジジィ「男だ女だ、なんて考えたことは多分、ネェ」
ジジィ「……早う言え」
娘「……母さんの話を、聞かせてくれ」
ジジィ「何度も話してやっただろうが」
娘「アンタと一緒にこの船に、宝の地図持って海賊にしてくれ、って」
娘「来たんだ、ってだけじゃネェか!」
ジジィ「他に……何が聞きたいんだよ」
娘「…… ……何で、親父だったんだ」
ジジィ「…… ……」
娘「……あんな、あんな糞親父……!」
ジジィ「母親が好いた相手、だ」
娘「…… ……」
ジジィ「……偶には昔話も悪く無い。が、座らせてくれるとありがたいがな」
娘「適当にすりゃ良いだろ……」
ジジィ「小さい頃はあんなに可愛かったのになぁ……よっこいしょ」
娘「……煩ェよ」
ジジィ「何で、か……こっちが聞きてェよ」ハァ
娘「え……」
ジジィ「ああ、勘違いすんなよ。別に惚れてたとかじゃネェ」
娘「……お前さ、なんで何時も、あんなしゃべり方すんだよ」
ジジィ「何がじゃ」
娘「それだよ! ……確かに、頭真っ白だし、顔も老けてるけど」
ジジィ「ハッキリ言うな……お前は……」
娘「親父の方が歳、上なんだろう?ジジィなんて呼ばれる年齢じゃねぇだろうに」
ジジィ「良いんだよ……俺は早く歳を取りたかったんだ」
ジジィ「それにこの船の奴らは、船長含めて皆人使いが荒いからな」
娘「母さんと……なんか関係あるのか」
ジジィ「……どうだかな」
娘「ハッキリ言えよ!」
ジジィ「……女海賊が氏んだ時な?」
娘「あ、ああ」
ジジィ「海賊は、海の上で生きる。だから、氏んだら土じゃ無く海に帰すんだと」
ジジィ「……一杯の花と一緒にな。水葬にしたんだ」
娘「……」
ジジィ「俺も、これが良いと思った。あいつは若い……否、幼い頃からの仲間だ」
ジジィ「男だ女だ、なんて考えたことは多分、ネェ」
233: 2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:ErgMrlg5P
娘「……多分?」
ジジィ「もう忘れた。血迷った事はあったかもな」
ジジィ「……綺麗な女だった。お前にそっくりだ」
ジジィ「さっきも言ったが、乱暴な所もな」クック
娘「……悪かったな!」
ジジィ「早く歳を取れば、早くあいつと同じ……水葬にして貰える」
ジジィ「早く、あいつの所へ行ける……ってな」
ジジィ「……『願えば叶う』かと思ったが、ただの人間にゃ、口調を変える位しか無理だな」
娘「氏にたいのか」
ジジィ「そりゃ違うナァ……氏にたい訳じゃネェよ」
ジジィ「自分で自分の命絶つ根性もネェしな」
ジジィ「……お前も居たからな」
娘「アタシ?」
ジジィ「女海賊の忘れ形見、さ……あいつは」
ジジィ「お前を抱く事もできず、氏んじまった」
ジジィ「覚えて無いんだろうが、可愛かったんだぜ……『まほーつかい!』って」
ジジィ「でっかい声で叫んでな。俺の後追い回して……」
娘「や、やめろよ、恥ずかしい……」
ジジィ「聞かせろっつったのはお前だろうが、小娘」
娘「アタシが言ったのは、なんで親父だったか、だ!」
娘「お前の懺悔を聞きたい訳じゃねぇよ、糞ジジィ!」
ジジィ「懺悔……か、成る程」ハハッ
ジジィ「……何で、ってな。さっき言ったろ。俺が聞きテェよ」
娘「…… ……」
ジジィ「『あのでかい腹がセクシーだ』なんて言ってたな」
ジジィ「……男の好みは女海賊に似ないでくれよ」ハァ
娘「……阿呆か」
ジジィ「でもな。いい男だったぜ?船長は」
娘「…… ……あいつは。親父は……アタシが、大きくなってから、だけど」
娘「アタシの目を見て話さなくなった。アタシの……顔も見なくなった」
ジジィ「……しゃーねぇ、とは言わネェよ。親だからなぁ」
ジジィ「だけど……お前さん、本当にそっくりなんだよ」
ジジィ「もう忘れた。血迷った事はあったかもな」
ジジィ「……綺麗な女だった。お前にそっくりだ」
ジジィ「さっきも言ったが、乱暴な所もな」クック
娘「……悪かったな!」
ジジィ「早く歳を取れば、早くあいつと同じ……水葬にして貰える」
ジジィ「早く、あいつの所へ行ける……ってな」
ジジィ「……『願えば叶う』かと思ったが、ただの人間にゃ、口調を変える位しか無理だな」
娘「氏にたいのか」
ジジィ「そりゃ違うナァ……氏にたい訳じゃネェよ」
ジジィ「自分で自分の命絶つ根性もネェしな」
ジジィ「……お前も居たからな」
娘「アタシ?」
ジジィ「女海賊の忘れ形見、さ……あいつは」
ジジィ「お前を抱く事もできず、氏んじまった」
ジジィ「覚えて無いんだろうが、可愛かったんだぜ……『まほーつかい!』って」
ジジィ「でっかい声で叫んでな。俺の後追い回して……」
娘「や、やめろよ、恥ずかしい……」
ジジィ「聞かせろっつったのはお前だろうが、小娘」
娘「アタシが言ったのは、なんで親父だったか、だ!」
娘「お前の懺悔を聞きたい訳じゃねぇよ、糞ジジィ!」
ジジィ「懺悔……か、成る程」ハハッ
ジジィ「……何で、ってな。さっき言ったろ。俺が聞きテェよ」
娘「…… ……」
ジジィ「『あのでかい腹がセクシーだ』なんて言ってたな」
ジジィ「……男の好みは女海賊に似ないでくれよ」ハァ
娘「……阿呆か」
ジジィ「でもな。いい男だったぜ?船長は」
娘「…… ……あいつは。親父は……アタシが、大きくなってから、だけど」
娘「アタシの目を見て話さなくなった。アタシの……顔も見なくなった」
ジジィ「……しゃーねぇ、とは言わネェよ。親だからなぁ」
ジジィ「だけど……お前さん、本当にそっくりなんだよ」
234: 2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:ErgMrlg5P
娘「……母さん」
ジジィ「…… ……」
娘「最後……人魚に魅了されて、さ」
ジジィ「…… ……」
娘「母さんを、見たのかな」
ジジィ「…… ……」
娘「……幻でも、逢えて嬉しかったのかな」
ジジィ「…… ……」
娘「……なぁ」
ジジィ「ん?」
娘「……お前も、幻見るなら、母さんが良いのか」
ジジィ「人魚の魅了の魔詩ってのは」
ジジィ「……自分でも気がつかない様な、心の奥底の欲望の幻だって言うからな」
娘「心の……奥底」
ジジィ「ああ。誰が出てくんだろうな。試してみるのは御免だがな」
娘「……そうか」
ジジィ(船長は…… ……誰が見えた、んだか)
ジジィ(もう誰にも、わからねぇな)
娘「おい」
ジジィ「あ?」
娘「……海賊を集めてくれ。北の街に向かおう」
ジジィ「……大丈夫なのか」
娘「アタシにしか出来ないんだろう。やるだけやってみるさ」
ジジィ「……航海術は海賊に聞け。戦闘は問題無いだろうし」
娘「お前も手伝え……手伝ってくれよ、ジジィ」
ジジィ「……親子揃ってこき使うのかよ」
娘「さっさと歳取りたいんだろうが。働き倒せよ」クックック
ジジィ「お優しいこった」ハァ
娘「お前が何時か氏んだら……きっちり、敬意払って水葬とやらにしてやる」
娘「感謝しろよな」
ジジィ「……やれやれ。ほれ、行くぞ」スタスタ
娘「ああ……」
娘(親父、母さんと……喧嘩すんなよ。仲良く……やれよな)スタスタ
ジジィ「…… ……」
娘「最後……人魚に魅了されて、さ」
ジジィ「…… ……」
娘「母さんを、見たのかな」
ジジィ「…… ……」
娘「……幻でも、逢えて嬉しかったのかな」
ジジィ「…… ……」
娘「……なぁ」
ジジィ「ん?」
娘「……お前も、幻見るなら、母さんが良いのか」
ジジィ「人魚の魅了の魔詩ってのは」
ジジィ「……自分でも気がつかない様な、心の奥底の欲望の幻だって言うからな」
娘「心の……奥底」
ジジィ「ああ。誰が出てくんだろうな。試してみるのは御免だがな」
娘「……そうか」
ジジィ(船長は…… ……誰が見えた、んだか)
ジジィ(もう誰にも、わからねぇな)
娘「おい」
ジジィ「あ?」
娘「……海賊を集めてくれ。北の街に向かおう」
ジジィ「……大丈夫なのか」
娘「アタシにしか出来ないんだろう。やるだけやってみるさ」
ジジィ「……航海術は海賊に聞け。戦闘は問題無いだろうし」
娘「お前も手伝え……手伝ってくれよ、ジジィ」
ジジィ「……親子揃ってこき使うのかよ」
娘「さっさと歳取りたいんだろうが。働き倒せよ」クックック
ジジィ「お優しいこった」ハァ
娘「お前が何時か氏んだら……きっちり、敬意払って水葬とやらにしてやる」
娘「感謝しろよな」
ジジィ「……やれやれ。ほれ、行くぞ」スタスタ
娘「ああ……」
娘(親父、母さんと……喧嘩すんなよ。仲良く……やれよな)スタスタ
235: 2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:ErgMrlg5P
海賊「あ!娘さん……ジジィ」
ジジィ「おう。皆集めろ……北の街へ行くそうじゃ」
娘「普通に喋れって」
ジジィ「……良いんじゃよ」
娘「板についてきたあたりで氏ぬんじゃネェぞ……おう、お前ら!」
娘「北の街へ行くぞ! ……燃料の補給を済ませて」
娘「えーっと……鍛冶師の街、だったか?」
海賊「目的地ですか?船長はそう言ってましたけど……」
ジジィ「目的はお前が決めるんだよ、娘」
娘「え……いや、でも……」
ジジィ「船長が何をしようとしてたのかもわからんのだろうが」
娘「……」
ジジィ「真似は必要だろうが、模倣ばかりでは意味も無い」
娘「……補給は必要か?」
海賊「そうですね、最果てまでは長かったですし」
海賊「……依頼人に挨拶がてら、でも良いんじゃないです?」
娘「挨拶……」
ジジィ「まあ、何時までも船長の代替わりを隠しておく訳にも行かんしな」
娘「…… ……ちょっと待て」ブツブツ
海賊「……船長が居なくなって、離れていく人も居るだろうしな」
ジジィ「まあ……否定は出来んな」
娘「やかましい!船長はアタシだ! ……良いか、良く聞け!」
娘「北の街で補給を済ませて、顧客に挨拶に行く」
娘「良い機会だ。世界を回る……これと言ってやる事もネェ!」
ジジィ「……フフン」ニヤニヤ
娘「親父は氏んだ……今日から、アタシが船長だ!」
娘「文句のある奴は居るか!?」
……シーン
娘「……」ホッ
ジジィ「文句は無いがな。まだまだひよっこ、小娘だ」
ジジィ「……儂も含め、皆でしごいて育ててやろう」
アイアイサー!
ジジィ「ほれ……さっさと行け、船長。操舵術は基本だろ」
ジジィ「おう。皆集めろ……北の街へ行くそうじゃ」
娘「普通に喋れって」
ジジィ「……良いんじゃよ」
娘「板についてきたあたりで氏ぬんじゃネェぞ……おう、お前ら!」
娘「北の街へ行くぞ! ……燃料の補給を済ませて」
娘「えーっと……鍛冶師の街、だったか?」
海賊「目的地ですか?船長はそう言ってましたけど……」
ジジィ「目的はお前が決めるんだよ、娘」
娘「え……いや、でも……」
ジジィ「船長が何をしようとしてたのかもわからんのだろうが」
娘「……」
ジジィ「真似は必要だろうが、模倣ばかりでは意味も無い」
娘「……補給は必要か?」
海賊「そうですね、最果てまでは長かったですし」
海賊「……依頼人に挨拶がてら、でも良いんじゃないです?」
娘「挨拶……」
ジジィ「まあ、何時までも船長の代替わりを隠しておく訳にも行かんしな」
娘「…… ……ちょっと待て」ブツブツ
海賊「……船長が居なくなって、離れていく人も居るだろうしな」
ジジィ「まあ……否定は出来んな」
娘「やかましい!船長はアタシだ! ……良いか、良く聞け!」
娘「北の街で補給を済ませて、顧客に挨拶に行く」
娘「良い機会だ。世界を回る……これと言ってやる事もネェ!」
ジジィ「……フフン」ニヤニヤ
娘「親父は氏んだ……今日から、アタシが船長だ!」
娘「文句のある奴は居るか!?」
……シーン
娘「……」ホッ
ジジィ「文句は無いがな。まだまだひよっこ、小娘だ」
ジジィ「……儂も含め、皆でしごいて育ててやろう」
アイアイサー!
ジジィ「ほれ……さっさと行け、船長。操舵術は基本だろ」
236: 2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:ErgMrlg5P
船長「あ、ああ……頼む、海賊。アタシに……色々教えてくれ」
海賊「勿論です、船長! ……ありがとうございます」
船長「……こちらこそ、な」
船長「良し!出発だ!」
アイアイサー!
……
………
…………
神父「すみません、女将さん……何から何まで」
女将「とんでもない! ……しかし綺麗な子だね、この子」
女将「その……お母さん……娘さん、は?」
神父「亡骸は、私の住むあの小屋のある丘に……埋めました」
神父「産んで……どうにか、あの場所まで来た、のでしょうね」
女将「可哀想にねぇ……どんな事情があったのかわかんないけど」
女将「こんな可愛い子、遺してねぇ……」
神父(女将さんに助けて貰って、感謝はしている。けれど……)
神父(あの娘さんが……エルフであろう事は、伏せておいた方が良いだろう)
神父(それに……もし、この子がエルフならば)
神父(……何時までも、街に連れて来て、助けて貰う訳にも……)
女将「何か困ったことがあれば、何時でも言うんだよ、神父さん」
女将「アンタが此処に来てから、もう結構経ったんだ」
女将「村の皆も、協力してくれる筈だから、ね?」
神父「ええ……ありがとうございます」
神父「あの小屋を頂けたて良かったです……教会の仕事のある時以外は」
神父「あそこで、育てていけますから」
女将「まあ、空気も良いし……子供には良いね」
神父「はい……」
神父(神父様……これも、神の意志なのでしょうか)
神父(立派に……この子を、育てろ、と……)
神父(これも神の……世界の、思し召し……なのでしょうか)
女将「これ、必要な物まとめておいたからね」
神父「ありがとうございます」
神父「では、そろそろ戻ります……また、何かありましたら……」
女将「ああ。何でも遠慮無く、頼っておくれ」
神父「はい……ありがとうございます」
海賊「勿論です、船長! ……ありがとうございます」
船長「……こちらこそ、な」
船長「良し!出発だ!」
アイアイサー!
……
………
…………
神父「すみません、女将さん……何から何まで」
女将「とんでもない! ……しかし綺麗な子だね、この子」
女将「その……お母さん……娘さん、は?」
神父「亡骸は、私の住むあの小屋のある丘に……埋めました」
神父「産んで……どうにか、あの場所まで来た、のでしょうね」
女将「可哀想にねぇ……どんな事情があったのかわかんないけど」
女将「こんな可愛い子、遺してねぇ……」
神父(女将さんに助けて貰って、感謝はしている。けれど……)
神父(あの娘さんが……エルフであろう事は、伏せておいた方が良いだろう)
神父(それに……もし、この子がエルフならば)
神父(……何時までも、街に連れて来て、助けて貰う訳にも……)
女将「何か困ったことがあれば、何時でも言うんだよ、神父さん」
女将「アンタが此処に来てから、もう結構経ったんだ」
女将「村の皆も、協力してくれる筈だから、ね?」
神父「ええ……ありがとうございます」
神父「あの小屋を頂けたて良かったです……教会の仕事のある時以外は」
神父「あそこで、育てていけますから」
女将「まあ、空気も良いし……子供には良いね」
神父「はい……」
神父(神父様……これも、神の意志なのでしょうか)
神父(立派に……この子を、育てろ、と……)
神父(これも神の……世界の、思し召し……なのでしょうか)
女将「これ、必要な物まとめておいたからね」
神父「ありがとうございます」
神父「では、そろそろ戻ります……また、何かありましたら……」
女将「ああ。何でも遠慮無く、頼っておくれ」
神父「はい……ありがとうございます」
237: 2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN ID:ErgMrlg5P
女将「よく寝てるよ……はい、あ、手は此処ね……首、支えて」
神父「は、はい……」
女将「……頑張るんだよ、神父さん」
神父「ありがとうございます……では、失礼致しますね」スタスタ
カチャ、パタン
神父(山へ入って、少し……奥に歩いた、川沿い)
神父(……この子が育ったとして、子供の足では遠すぎる)
神父(この子が、エルフであっても……やはり)
神父(あの小屋で、何でも出来る様にしておかないと……)
神父(あ、そうだ、名前……考えてやらないといけないな)
神父(……エルフであれば、回復等を教えても意味は無いんだろうな)
神父(良く、寝ている……可愛い。ゆっくり、考えよう)カチャ
神父「……エルフ、か」フゥ
神父「あ……」
神父(そういえば……)ガサガサ
神父(……! やはり……よく似ている。否、そっくりだ……!)パラ
神父(港街の教会から、持ってきてしまった、エルフのお姫様のお話)
神父(……あの、娘さんも……新緑の髪に、透き通る様な蒼の瞳をしていた)
神父(エルフは、人とは思えない程に美しいと言う)
神父「……貴女も、あの娘の様に、この……絵の様に」
神父「美しく……健やかに成長して下さい、ね」ナデ
神父(目に触れない様に……教会の方にもって行った方が、良いかもしれません、ね)
神父「は、はい……」
女将「……頑張るんだよ、神父さん」
神父「ありがとうございます……では、失礼致しますね」スタスタ
カチャ、パタン
神父(山へ入って、少し……奥に歩いた、川沿い)
神父(……この子が育ったとして、子供の足では遠すぎる)
神父(この子が、エルフであっても……やはり)
神父(あの小屋で、何でも出来る様にしておかないと……)
神父(あ、そうだ、名前……考えてやらないといけないな)
神父(……エルフであれば、回復等を教えても意味は無いんだろうな)
神父(良く、寝ている……可愛い。ゆっくり、考えよう)カチャ
神父「……エルフ、か」フゥ
神父「あ……」
神父(そういえば……)ガサガサ
神父(……! やはり……よく似ている。否、そっくりだ……!)パラ
神父(港街の教会から、持ってきてしまった、エルフのお姫様のお話)
神父(……あの、娘さんも……新緑の髪に、透き通る様な蒼の瞳をしていた)
神父(エルフは、人とは思えない程に美しいと言う)
神父「……貴女も、あの娘の様に、この……絵の様に」
神父「美しく……健やかに成長して下さい、ね」ナデ
神父(目に触れない様に……教会の方にもって行った方が、良いかもしれません、ね)
243: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
……
………
…………
側近「若ー!どこいったんだ!」タタタ
鴉「何やってんだい、側近」
側近「あ、鴉! ……いや、かくれんぼをね」
鴉「え?若なら食堂でおやつ食べてるけど」
側近「ええええええええええええ!?」
鴉「……」プ
側近「笑うなよ……ああ、もう……これだからチビちゃんは」ハァ
鴉「ちっちゃい子の集中力舐めちゃ駄目だよ。ただでさえ」
鴉「構われるのに慣れてる子は、次から次へ、何だから」ハハ
側近「俺も何か飲みに行こ……走り回って疲れた」
鴉「そろそろ魔王様と魔導将軍も戻るだろう。皆でお茶にしようか」
側近「ん?あの二人何やってんだ?」
鴉「…… ……」
側近「鴉?」
鴉「将軍職の交代をね、申し出たのさ」
側近「……え!?」
鴉「魔導将軍は、先代の時から既に将軍として頑張ってたからねぇ」
側近「……でも、あいつは……」
鴉「先代の様に好戦的では無かった?」
側近「ああ……そう聞いてる、し」
側近「生き残ってる、て事は……そういう事だろ?」
側近「魔王様は……先代の参謀、全員やっちまったって……」
鴉「……魔導将軍はそりゃあもう、強かった、んだよ」
側近「……」
鴉「よく言えば従順。悪く言えば自分が無い」
側近「おい……」
鴉「見方が変われば評価は変わるモンだろう」
鴉「先代の時に、随分人間を頃してる。それが仕事であり」
鴉「生き残る術、だったんだよ」
側近「…… ……」
鴉「聞いた話、だからね……何処まで確かかはわかんないけど」
鴉「魔王様に、本当はどうしたいんだと聞かれて」
鴉「守る為の力なら存分に奮うと答えたんだそうだよ」
側近「……奪う為の使う力は、本当は使いたく無かった、て事か」
鴉「そう。だけど魔族として産まれた以上、『魔王』に従うのは当然だ、ともね」
………
…………
側近「若ー!どこいったんだ!」タタタ
鴉「何やってんだい、側近」
側近「あ、鴉! ……いや、かくれんぼをね」
鴉「え?若なら食堂でおやつ食べてるけど」
側近「ええええええええええええ!?」
鴉「……」プ
側近「笑うなよ……ああ、もう……これだからチビちゃんは」ハァ
鴉「ちっちゃい子の集中力舐めちゃ駄目だよ。ただでさえ」
鴉「構われるのに慣れてる子は、次から次へ、何だから」ハハ
側近「俺も何か飲みに行こ……走り回って疲れた」
鴉「そろそろ魔王様と魔導将軍も戻るだろう。皆でお茶にしようか」
側近「ん?あの二人何やってんだ?」
鴉「…… ……」
側近「鴉?」
鴉「将軍職の交代をね、申し出たのさ」
側近「……え!?」
鴉「魔導将軍は、先代の時から既に将軍として頑張ってたからねぇ」
側近「……でも、あいつは……」
鴉「先代の様に好戦的では無かった?」
側近「ああ……そう聞いてる、し」
側近「生き残ってる、て事は……そういう事だろ?」
側近「魔王様は……先代の参謀、全員やっちまったって……」
鴉「……魔導将軍はそりゃあもう、強かった、んだよ」
側近「……」
鴉「よく言えば従順。悪く言えば自分が無い」
側近「おい……」
鴉「見方が変われば評価は変わるモンだろう」
鴉「先代の時に、随分人間を頃してる。それが仕事であり」
鴉「生き残る術、だったんだよ」
側近「…… ……」
鴉「聞いた話、だからね……何処まで確かかはわかんないけど」
鴉「魔王様に、本当はどうしたいんだと聞かれて」
鴉「守る為の力なら存分に奮うと答えたんだそうだよ」
側近「……奪う為の使う力は、本当は使いたく無かった、て事か」
鴉「そう。だけど魔族として産まれた以上、『魔王』に従うのは当然だ、ともね」
244: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
側近「魔導将軍の部隊は、好戦的な奴らが多いんだろう?」
鴉「ああ。今は押さえるのに大変だって、何時も言ってるだろう」
鴉「魔王様の代になってから、こちらから人間への進攻なんて一度も無い」
鴉「表だって不満が出ないのは、魔王様の殺戮ショーを知ってるからさ」
側近「……」
鴉「最も、先代を頃したのが魔王様だって話が浸透しちまえば」
鴉「不満と思ってるだけ、の連中も、そんな気無くしちまうかもしれないけどね」
側近「なのに……交代、するのか」
鴉「『魔導将軍』って名前を譲るだけに等しい状態だよ」
鴉「もし何かあっても、もう戦場に立つのが厭なんだろう」
鴉「……しんどい、ってのが正解かも知れないけどね」
側近「え?」
鴉「生きてる年数、ざっと考えてごらんよ。魔族は不氏じゃ無いんだから」
側近「…… ……そっか」
側近「お前は?」
鴉「え?」
側近「お前だって、先代の頃から生きてるんだろ」
鴉「アタシは、魔王様が前の部隊長をぶち頃しちまったから」
側近「今の地位に繰り上がっただけさ」
側近「そうなの?」
鴉「正確には部隊の偉いさん達大勢を、だね」
鴉「うちも魔導将軍とこに負けず劣らずだったからねぇ……」
鴉「残ったのは下っ端ばっか。その中から、ちょっとばかし腕の立つ奴集めて」
鴉「性格やらなにやら加味して、選ばれたのがアタシだっただけさ」
側近「まあ……姐御肌、って奴だよな、お前は……」
鴉「魔王様は人間の支配なんて望んでない。それを知ってたから」
鴉「引き受けたのさ……アタシだって、それ程戦いが好きな訳じゃ無い」
鴉「魔導将軍と一緒さ……魔王様を、若を守る為なら、この命を投げ出すのも厭わないけど」
鴉「戦いの中で氏んでこそ! ……なんて、全く思えないもんね」
鴉「ああ。今は押さえるのに大変だって、何時も言ってるだろう」
鴉「魔王様の代になってから、こちらから人間への進攻なんて一度も無い」
鴉「表だって不満が出ないのは、魔王様の殺戮ショーを知ってるからさ」
側近「……」
鴉「最も、先代を頃したのが魔王様だって話が浸透しちまえば」
鴉「不満と思ってるだけ、の連中も、そんな気無くしちまうかもしれないけどね」
側近「なのに……交代、するのか」
鴉「『魔導将軍』って名前を譲るだけに等しい状態だよ」
鴉「もし何かあっても、もう戦場に立つのが厭なんだろう」
鴉「……しんどい、ってのが正解かも知れないけどね」
側近「え?」
鴉「生きてる年数、ざっと考えてごらんよ。魔族は不氏じゃ無いんだから」
側近「…… ……そっか」
側近「お前は?」
鴉「え?」
側近「お前だって、先代の頃から生きてるんだろ」
鴉「アタシは、魔王様が前の部隊長をぶち頃しちまったから」
側近「今の地位に繰り上がっただけさ」
側近「そうなの?」
鴉「正確には部隊の偉いさん達大勢を、だね」
鴉「うちも魔導将軍とこに負けず劣らずだったからねぇ……」
鴉「残ったのは下っ端ばっか。その中から、ちょっとばかし腕の立つ奴集めて」
鴉「性格やらなにやら加味して、選ばれたのがアタシだっただけさ」
側近「まあ……姐御肌、って奴だよな、お前は……」
鴉「魔王様は人間の支配なんて望んでない。それを知ってたから」
鴉「引き受けたのさ……アタシだって、それ程戦いが好きな訳じゃ無い」
鴉「魔導将軍と一緒さ……魔王様を、若を守る為なら、この命を投げ出すのも厭わないけど」
鴉「戦いの中で氏んでこそ! ……なんて、全く思えないもんね」
245: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
側近「……」
鴉「ああ、悪い。喉渇いてたんだろう。お茶入れてやるよ」
鴉「行こうか」スタスタ
側近「あ、ああ……」
側近(守る為の力、か……俺は『側近』だ)
側近(あんなに、憎んで、恐怖した『魔王』を……守る為に)
側近(俺は、俺の力、を……使えるのか?)スタスタ
カチャ
鴉「おっと……!」
若「そっき……!あ、からす!」
鴉「おや、おやつ食べてたんじゃ無いのかい?」
若「そっきんわすれてきた!」
側近「忘れた、て……物みたいにお前は……」
若「そっきん!」タタタ……ダキ!
側近「はいはい」ナデナデ
若「そっきんみーつけた!つかまえた!」
側近「え!?お前が逃げてる方だったよね!?」
鴉「あははは! ……本当、何時も思うけど、一番なつかれてるよね」
側近「まあ……そう、だなぁ。何でかね」
魔導将軍「嬉しそうな顔して、何が『何でかね』だか」ハハ
側近「魔導将軍、戻ってたのか……魔王様は?」
魔王「此処に居るぞ」
若「ぱぱ!こんどはぱぱとあそぶ!」タタタ
側近「……何度聞いても気持ち悪い」
魔導将軍「……それは俺も否定はせん」
魔王「何だ、二人して……」
若「ぱぱ!にわでぼーるぽん、しよう!」
鴉「……」クスクス
魔王「おお、良いな。ボールぽん、な」
若「はやく!」タタタ
魔王「はいはい……お前達、ニヤニヤしすぎだ」カタン。スタスタ
側近「……ニヤニヤすんな、て方が無理があるだろうが」
鴉「妬いてんじゃ無いよ」
側近「違うわああああああああああ!」
鴉「ああ、悪い。喉渇いてたんだろう。お茶入れてやるよ」
鴉「行こうか」スタスタ
側近「あ、ああ……」
側近(守る為の力、か……俺は『側近』だ)
側近(あんなに、憎んで、恐怖した『魔王』を……守る為に)
側近(俺は、俺の力、を……使えるのか?)スタスタ
カチャ
鴉「おっと……!」
若「そっき……!あ、からす!」
鴉「おや、おやつ食べてたんじゃ無いのかい?」
若「そっきんわすれてきた!」
側近「忘れた、て……物みたいにお前は……」
若「そっきん!」タタタ……ダキ!
側近「はいはい」ナデナデ
若「そっきんみーつけた!つかまえた!」
側近「え!?お前が逃げてる方だったよね!?」
鴉「あははは! ……本当、何時も思うけど、一番なつかれてるよね」
側近「まあ……そう、だなぁ。何でかね」
魔導将軍「嬉しそうな顔して、何が『何でかね』だか」ハハ
側近「魔導将軍、戻ってたのか……魔王様は?」
魔王「此処に居るぞ」
若「ぱぱ!こんどはぱぱとあそぶ!」タタタ
側近「……何度聞いても気持ち悪い」
魔導将軍「……それは俺も否定はせん」
魔王「何だ、二人して……」
若「ぱぱ!にわでぼーるぽん、しよう!」
鴉「……」クスクス
魔王「おお、良いな。ボールぽん、な」
若「はやく!」タタタ
魔王「はいはい……お前達、ニヤニヤしすぎだ」カタン。スタスタ
側近「……ニヤニヤすんな、て方が無理があるだろうが」
鴉「妬いてんじゃ無いよ」
側近「違うわああああああああああ!」
246: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
魔導将軍「側近、煩い」
鴉「……どうだったんだい、魔導将軍。ほら、側近、コーヒー」
側近「ああ、サンキュ」
魔導将軍「結論から言うと、まだ駄目、だ」
側近「まだ?」
魔導将軍「……若と交代する頃になったら許可して頂けるそうだ」
鴉「随分先だね……」
魔導将軍「……どうだかな」
側近「え?」
魔導将軍「否、魔王様の言い分を聞いて尤もだと思ったんだ」
魔導将軍「あまり……若の姿を他に晒したく無いとな」
鴉「前から不思議に思ってたんだけど……どうして」
鴉「『魔王の世代交代』は他の魔族には内緒なんだい?」
魔導将軍「……別に、遙か昔からそうだった訳では無いだろうが」
側近「そう、なの!?」
魔導将軍「先代と先々代の交代の時は、先代が自ら吹聴したのだそうだ」
鴉「……それも初耳だよ」
魔導将軍「私は先代から直接聞いたから知っているだけだ」
魔導将軍「先代は……まあ、酷く好戦的な上に、野心も強く、冷酷な方でもあった」
魔導将軍「力を誇示する事に拘る方でも、な」
側近「まあ、そうだよな。で無いと、俺らの島を沈めようと思ったりしないだろ」
鴉「……そう、だったね」
側近「そんな顔すんなって……もう、終わったことだ」
魔導将軍「過激な魔族達を刺激する結果にもなったんだ。先代のその性格と」
魔導将軍「先々代を自ら頃したと、周知される事はな」
側近「まあ、そりゃそうだよな。好戦的な奴らは、そんな魔王様について行けば」
側近「存分に力を振るう事ができる。そうでない奴らは」
側近「従わないと、自らの王に殺される可能性だってある」
魔導将軍「そういう事だ」
鴉「……でも、世代交代自体は、ずっとそうやって……為されてきた、んだろう」
魔導将軍「だろうと思う。が、先代はそこまでは言及しなかった」
魔導将軍「故に自分は……と、言うのがあったのかもしれんがな」
鴉「……どうだったんだい、魔導将軍。ほら、側近、コーヒー」
側近「ああ、サンキュ」
魔導将軍「結論から言うと、まだ駄目、だ」
側近「まだ?」
魔導将軍「……若と交代する頃になったら許可して頂けるそうだ」
鴉「随分先だね……」
魔導将軍「……どうだかな」
側近「え?」
魔導将軍「否、魔王様の言い分を聞いて尤もだと思ったんだ」
魔導将軍「あまり……若の姿を他に晒したく無いとな」
鴉「前から不思議に思ってたんだけど……どうして」
鴉「『魔王の世代交代』は他の魔族には内緒なんだい?」
魔導将軍「……別に、遙か昔からそうだった訳では無いだろうが」
側近「そう、なの!?」
魔導将軍「先代と先々代の交代の時は、先代が自ら吹聴したのだそうだ」
鴉「……それも初耳だよ」
魔導将軍「私は先代から直接聞いたから知っているだけだ」
魔導将軍「先代は……まあ、酷く好戦的な上に、野心も強く、冷酷な方でもあった」
魔導将軍「力を誇示する事に拘る方でも、な」
側近「まあ、そうだよな。で無いと、俺らの島を沈めようと思ったりしないだろ」
鴉「……そう、だったね」
側近「そんな顔すんなって……もう、終わったことだ」
魔導将軍「過激な魔族達を刺激する結果にもなったんだ。先代のその性格と」
魔導将軍「先々代を自ら頃したと、周知される事はな」
側近「まあ、そりゃそうだよな。好戦的な奴らは、そんな魔王様について行けば」
側近「存分に力を振るう事ができる。そうでない奴らは」
側近「従わないと、自らの王に殺される可能性だってある」
魔導将軍「そういう事だ」
鴉「……でも、世代交代自体は、ずっとそうやって……為されてきた、んだろう」
魔導将軍「だろうと思う。が、先代はそこまでは言及しなかった」
魔導将軍「故に自分は……と、言うのがあったのかもしれんがな」
247: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
鴉「厄介な人だったんだねぇ……いや、知ってたけどさ」
魔導将軍「魔王様はどちらかと言えば穏やかな方だ」
鴉「……先代に比べりゃ誰だって穏やかに見えるよ」
側近「先代の参謀ほぼ全員ぶち頃したって奴が穏やかってか……」
魔導将軍「それも、先代のその話を知っているから、と言うのもあるだろう」
魔導将軍「……まあ、お前達の言う様に穏やかと言ったって」
魔導将軍「あの方も魔には違い無く、ましてや王であられる」
魔導将軍「……何れ、自らの子に命を屠られる存在でも、あるんだ」
鴉「…… ……」
側近「……極端な話、だけどさ」
魔導将軍「ん?」
側近「自ら命、絶ったら駄目なのか?」
魔導将軍「意味が無い。奪ってこそ継承される力、なのだそうだ」
鴉「そういう物、と納得せざるを得ない、なんて」
鴉「……因果な法則だ」ハァ
魔導将軍「先代は力を譲ろうとはされなかった」
魔導将軍「勿論、何れ……と、解っては居たんだろうが」
魔導将軍「私に、魔王様を監禁しておけと迄仰っていたからな」
側近「え!?」
鴉「……執着も極まると……大したモンだ」
魔導将軍「…… ……魔王様は、それで構わないと仰ってな」
魔導将軍「食事を持って行った隙に、眠らされたんだ」
鴉「魔導将軍が!?」
魔導将軍「甘んじて受けたさ。だが……流石次期魔王様。その魔力は」
魔導将軍「私ではどちらにせよ、抵抗しきれなかっただろう」
鴉「……それで?」
魔導将軍「轟音で目が覚めた。今思えば……側近の居た島へ攻撃を加えた」
魔導将軍「衝撃だったのだろう。慌て玉座の間へ駆けつけると」
魔導将軍「……魔王様が、笑っていらっしゃった」
鴉「笑って……え?」
魔導将軍「先代の首を持って、血塗れでな」
魔導将軍「『これで平和になる。もう、心配しなくて良い』と」
魔導将軍「魔王様はどちらかと言えば穏やかな方だ」
鴉「……先代に比べりゃ誰だって穏やかに見えるよ」
側近「先代の参謀ほぼ全員ぶち頃したって奴が穏やかってか……」
魔導将軍「それも、先代のその話を知っているから、と言うのもあるだろう」
魔導将軍「……まあ、お前達の言う様に穏やかと言ったって」
魔導将軍「あの方も魔には違い無く、ましてや王であられる」
魔導将軍「……何れ、自らの子に命を屠られる存在でも、あるんだ」
鴉「…… ……」
側近「……極端な話、だけどさ」
魔導将軍「ん?」
側近「自ら命、絶ったら駄目なのか?」
魔導将軍「意味が無い。奪ってこそ継承される力、なのだそうだ」
鴉「そういう物、と納得せざるを得ない、なんて」
鴉「……因果な法則だ」ハァ
魔導将軍「先代は力を譲ろうとはされなかった」
魔導将軍「勿論、何れ……と、解っては居たんだろうが」
魔導将軍「私に、魔王様を監禁しておけと迄仰っていたからな」
側近「え!?」
鴉「……執着も極まると……大したモンだ」
魔導将軍「…… ……魔王様は、それで構わないと仰ってな」
魔導将軍「食事を持って行った隙に、眠らされたんだ」
鴉「魔導将軍が!?」
魔導将軍「甘んじて受けたさ。だが……流石次期魔王様。その魔力は」
魔導将軍「私ではどちらにせよ、抵抗しきれなかっただろう」
鴉「……それで?」
魔導将軍「轟音で目が覚めた。今思えば……側近の居た島へ攻撃を加えた」
魔導将軍「衝撃だったのだろう。慌て玉座の間へ駆けつけると」
魔導将軍「……魔王様が、笑っていらっしゃった」
鴉「笑って……え?」
魔導将軍「先代の首を持って、血塗れでな」
魔導将軍「『これで平和になる。もう、心配しなくて良い』と」
248: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
側近「……軽くホラーだな」
鴉「……」
魔導将軍「それから、参謀共を片付けてくる、とな」
魔導将軍「戻られてすぐ……それからは、鴉も知っているだろう」
鴉「ああ……残党片付ける為に駆り出されたね」
魔導将軍「そんな時に、お前達が来たんだそうだ。側近」
側近「それで誰も居なかった訳ね……」
魔導将軍「先代を知る者は殆ど居なくなった。世代交代の真実を知る者は」
魔導将軍「あえてそれを口にはしないだろう者しか残って居ない」
側近「だが、訝しむ奴は居るだろう?もしくは、噂的な話を耳にした者」
魔導将軍「噂に過ぎん。魔王様の代になり、若の代に変わる迄」
魔導将軍「どれほどの時間が過ぎると思うのだ」
魔導将軍「……忘却の彼方へと過ぎるとは言わんが」
鴉「魔王様が言う様に、人との共存を実現できる可能性があるなら」
鴉「それこそ、そんな血生臭い事は、知らせちゃいけない」
側近「…… ……もし、その魔王様の理想が実現したとして」
側近「お前達は、良いのか?」
鴉「魔王様は『魔王』だ。『魔を統べる王』」
鴉「……アタシ達は、従うだけさ。魔王様、だからね」
魔導将軍「そういう事だ。お前は……違うのか、側近」
側近「え……俺、は……」
側近(……魔王様は、俺に……橋渡し役になれ、と言ってた)
側近(時期じゃ無いと断った、が……状況が整えば……)
側近「……応、と言うだろうな」
鴉「何故?」
側近「魔王様……だからなぁ」
魔導将軍「……そうか」
側近「何でそこで嬉しそうな顔するかな」
魔導将軍「……嬉しい、と思うからだろうな」
側近「気持ち悪ィ…… ……けど」
鴉「ん?」
側近「……否。悪い気はしネェな、とな」
鴉「……」
魔導将軍「それから、参謀共を片付けてくる、とな」
魔導将軍「戻られてすぐ……それからは、鴉も知っているだろう」
鴉「ああ……残党片付ける為に駆り出されたね」
魔導将軍「そんな時に、お前達が来たんだそうだ。側近」
側近「それで誰も居なかった訳ね……」
魔導将軍「先代を知る者は殆ど居なくなった。世代交代の真実を知る者は」
魔導将軍「あえてそれを口にはしないだろう者しか残って居ない」
側近「だが、訝しむ奴は居るだろう?もしくは、噂的な話を耳にした者」
魔導将軍「噂に過ぎん。魔王様の代になり、若の代に変わる迄」
魔導将軍「どれほどの時間が過ぎると思うのだ」
魔導将軍「……忘却の彼方へと過ぎるとは言わんが」
鴉「魔王様が言う様に、人との共存を実現できる可能性があるなら」
鴉「それこそ、そんな血生臭い事は、知らせちゃいけない」
側近「…… ……もし、その魔王様の理想が実現したとして」
側近「お前達は、良いのか?」
鴉「魔王様は『魔王』だ。『魔を統べる王』」
鴉「……アタシ達は、従うだけさ。魔王様、だからね」
魔導将軍「そういう事だ。お前は……違うのか、側近」
側近「え……俺、は……」
側近(……魔王様は、俺に……橋渡し役になれ、と言ってた)
側近(時期じゃ無いと断った、が……状況が整えば……)
側近「……応、と言うだろうな」
鴉「何故?」
側近「魔王様……だからなぁ」
魔導将軍「……そうか」
側近「何でそこで嬉しそうな顔するかな」
魔導将軍「……嬉しい、と思うからだろうな」
側近「気持ち悪ィ…… ……けど」
鴉「ん?」
側近「……否。悪い気はしネェな、とな」
249: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
鴉「若、幾つになったっけ?」
側近「何だ急に……4歳、か?」
魔導将軍「……早くて、500年程か」
側近「……」
鴉「その頃には、アタシも魔導将軍も、ジジィババァになってるかもねぇ」
側近「え?」
鴉「魔だって不氏じゃ無いって言ったろ?」
鴉「個体差はある。けど……若い姿の侭氏んで行く奴も居れば」
鴉「寿命が近づいたら、急激に老けていく奴もいる」
鴉「だから、ね」
側近「……そうか」
魔導将軍「若が『魔王』になる頃には……私もやっと、お役御免か」
鴉「そんなにやめたいのかい」
魔導将軍「大勢頃してきた私が言うのも何だが、な……」
魔導将軍「……もう、誰かが氏ぬのを見るのは厭だな」
側近「…… ……后様、か」
鴉「…… ……」
魔導将軍「まあ、若の成長を傍で見れるのは嬉しい」
側近「可愛いもんだよな、子供って」
鴉「アンタも相手見つけて、子供作れば良いじゃないか」
側近「は!?」
魔導将軍「ああ、そうだな。お前もまだ若いんだろう」
側近「いやいやいやいや! お、お前らこそ!」
鴉「魔王様以上にいい男が居たらねぇ」
魔導将軍「私は……もう良い。隠居を待つ身に、伴侶などいらん」
側近「か、鴉はともかく!」
鴉「ちょっと、どういう意味だい」
側近「魔王様以上って、どう考えても無理だろうが……」
魔導将軍「私とて同じだ。どれだけ生きていると思ってる」
魔導将軍「人間の時間で換算すれば、勿論まだまだ生きれる、となるだろうが」
魔導将軍「気の問題だ。さっきも言っただろう。血に染めた両手で」
魔導将軍「愛しい者を抱く資格は無い」
側近「魔導将軍……」
側近「何だ急に……4歳、か?」
魔導将軍「……早くて、500年程か」
側近「……」
鴉「その頃には、アタシも魔導将軍も、ジジィババァになってるかもねぇ」
側近「え?」
鴉「魔だって不氏じゃ無いって言ったろ?」
鴉「個体差はある。けど……若い姿の侭氏んで行く奴も居れば」
鴉「寿命が近づいたら、急激に老けていく奴もいる」
鴉「だから、ね」
側近「……そうか」
魔導将軍「若が『魔王』になる頃には……私もやっと、お役御免か」
鴉「そんなにやめたいのかい」
魔導将軍「大勢頃してきた私が言うのも何だが、な……」
魔導将軍「……もう、誰かが氏ぬのを見るのは厭だな」
側近「…… ……后様、か」
鴉「…… ……」
魔導将軍「まあ、若の成長を傍で見れるのは嬉しい」
側近「可愛いもんだよな、子供って」
鴉「アンタも相手見つけて、子供作れば良いじゃないか」
側近「は!?」
魔導将軍「ああ、そうだな。お前もまだ若いんだろう」
側近「いやいやいやいや! お、お前らこそ!」
鴉「魔王様以上にいい男が居たらねぇ」
魔導将軍「私は……もう良い。隠居を待つ身に、伴侶などいらん」
側近「か、鴉はともかく!」
鴉「ちょっと、どういう意味だい」
側近「魔王様以上って、どう考えても無理だろうが……」
魔導将軍「私とて同じだ。どれだけ生きていると思ってる」
魔導将軍「人間の時間で換算すれば、勿論まだまだ生きれる、となるだろうが」
魔導将軍「気の問題だ。さっきも言っただろう。血に染めた両手で」
魔導将軍「愛しい者を抱く資格は無い」
側近「魔導将軍……」
250: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
鴉「気にすること無いと思うけどね」
側近「…… ……」
魔導将軍「気の問題だ、と言っただろう。無い、んだよ」
魔導将軍「若を愛でている方が随分と楽しい」
側近「愛でる、て……」
鴉「ま、解らなく無いけどね。それも愛、だ」
側近「…… ……」
側近(愛、ね……)
側近(魔王様と后様……あんな『愛』を見ちまえば)
側近(……もう、お腹いっぱい、だよな)
鴉「なんなら、うちの部隊の子紹介するよ?」ニヤニヤ
魔導将軍「ふむ。うちにも良いのが居るぞ」ニヤニヤ
側近「え、えええ遠慮しとく!お前らに一生そんな顔され続けるのは御免だ!」
……
………
…………
魔法使い「広いお風呂……よね」ハァ
僧侶「気持ち良いねぇ」
魔法使い「……気持ち良いのは、良いんだけど」
僧侶「何が気になるの」
魔法使い「アンタ、気にならないの?」
僧侶「?」
魔法使い「……何で、扉が一杯あるのよ」
僧侶「物置、とか」
魔法使い「5個も6個も物置いらないでしょ!」
魔法使い「て、言うか……お風呂に物置、て何よ……何入れる、のよ」
僧侶「んー……道具?」
魔法使い「は!?な、なななな、なんの……ッ」
僧侶「子供用の、あひるさんとか……あ、玩具、か」
魔法使い「…… ……」
側近「…… ……」
魔導将軍「気の問題だ、と言っただろう。無い、んだよ」
魔導将軍「若を愛でている方が随分と楽しい」
側近「愛でる、て……」
鴉「ま、解らなく無いけどね。それも愛、だ」
側近「…… ……」
側近(愛、ね……)
側近(魔王様と后様……あんな『愛』を見ちまえば)
側近(……もう、お腹いっぱい、だよな)
鴉「なんなら、うちの部隊の子紹介するよ?」ニヤニヤ
魔導将軍「ふむ。うちにも良いのが居るぞ」ニヤニヤ
側近「え、えええ遠慮しとく!お前らに一生そんな顔され続けるのは御免だ!」
……
………
…………
魔法使い「広いお風呂……よね」ハァ
僧侶「気持ち良いねぇ」
魔法使い「……気持ち良いのは、良いんだけど」
僧侶「何が気になるの」
魔法使い「アンタ、気にならないの?」
僧侶「?」
魔法使い「……何で、扉が一杯あるのよ」
僧侶「物置、とか」
魔法使い「5個も6個も物置いらないでしょ!」
魔法使い「て、言うか……お風呂に物置、て何よ……何入れる、のよ」
僧侶「んー……道具?」
魔法使い「は!?な、なななな、なんの……ッ」
僧侶「子供用の、あひるさんとか……あ、玩具、か」
魔法使い「…… ……」
251: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
僧侶「どうしたの?」
魔法使い「……いえ、別に……」
僧侶「暖まったし、そろそろ出よっか」
僧侶「勇者と戦士も入りたいだろうし」
魔法使い「そう、ね……」
カチャ
戦士「うわ、広ッ」
勇者「まじか……おお、すげ……ん?」
魔法使い「きゃあああああああああああああああああ!?」
僧侶「え? ……きゃあ!」
バッシャアアアアアアン!
コーン……
勇者「わ、ぶ……ッ」ゲホ、ゲホ……ッ
戦士「痛ェッ ……うお……ッ」ゴホッ
魔法使い「そ、僧侶、行くわよ!!」タタタ
僧侶「え、あ ……ッ ちょ、滑る……ッ」タタタ
バタン!
勇者「……こ、混浴、だった、の!?」
戦士「せ、洗面器投げやがった……お湯まで……」ゲホ、ゲホ
勇者「……まあ、これは……俺らが悪い」
戦士「いや、知らなかったよ!?」
勇者「それでも、だよ……後で謝ろう、な?」
戦士「もう入って良いですよ、と言いやがって……あいつ……!」
勇者「諦めろ……何言ったって言い訳だって」
戦士「…… ……殴られないかな」
勇者「甘んじて受けろ」
戦士「……」ハァ
勇者「しかしまぁ、広いなぁ……」
魔法使い「……いえ、別に……」
僧侶「暖まったし、そろそろ出よっか」
僧侶「勇者と戦士も入りたいだろうし」
魔法使い「そう、ね……」
カチャ
戦士「うわ、広ッ」
勇者「まじか……おお、すげ……ん?」
魔法使い「きゃあああああああああああああああああ!?」
僧侶「え? ……きゃあ!」
バッシャアアアアアアン!
コーン……
勇者「わ、ぶ……ッ」ゲホ、ゲホ……ッ
戦士「痛ェッ ……うお……ッ」ゴホッ
魔法使い「そ、僧侶、行くわよ!!」タタタ
僧侶「え、あ ……ッ ちょ、滑る……ッ」タタタ
バタン!
勇者「……こ、混浴、だった、の!?」
戦士「せ、洗面器投げやがった……お湯まで……」ゲホ、ゲホ
勇者「……まあ、これは……俺らが悪い」
戦士「いや、知らなかったよ!?」
勇者「それでも、だよ……後で謝ろう、な?」
戦士「もう入って良いですよ、と言いやがって……あいつ……!」
勇者「諦めろ……何言ったって言い訳だって」
戦士「…… ……殴られないかな」
勇者「甘んじて受けろ」
戦士「……」ハァ
勇者「しかしまぁ、広いなぁ……」
252: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
戦士「…… ……」ブクブク
勇者「潜んなよ……」バシャ
戦士「お湯かけられるわ、洗面器なげられるわ……見えないわ……」
勇者「おい……」
戦士「いや、男の子でしょ!?勇者も!?」
勇者「だからって、お前なぁ……」
戦士「……見たくネェの、僧侶の裸」
勇者「!?」
戦士「うお、真っ赤」ケラケラ
勇者「ふ、風呂入ってんだから当たり前だろ!」
戦士「へいへい……ほら、そろそろ、出ようぜ」
勇者「…… ……先に行け」
戦士「ん? ……ああ。想像しちゃったか」ニヤ
戦士「そりゃ出られないよなぁ」ニヤニヤ
勇者「な、何考えてんだよ!違うわ!」
戦士「はいはい。可愛いねぇ勇者ちゃんは……んじゃ、お先」ザバ
勇者「……後でぶん殴ってやる……!」
カチャ、パタン
勇者「…… ……」フゥ
勇者(しかし……いくら、領主の家? ……だからって)
勇者(凄い規模だよな。俺と戦士の部屋も、二間続きで)
勇者(……この風呂も……しかも、混浴なんて……)ハァ
カチャ
勇者「戦士?何だよ、もうすぐ……」
女「失礼致します」
勇者「!? ……え、な……え!?」
女「お背中、流させて頂きます」
勇者「え、いやいやいやいや!結構です!?」
女「ご遠慮なさらず、どうか。お手伝いさせて下さいませ」
勇者「……あ、あの。すみません。そこまでして頂く訳には……!」
女「…… ……」
勇者「…… ……聞いて、ますか」
女「はい。勿論です」
勇者「潜んなよ……」バシャ
戦士「お湯かけられるわ、洗面器なげられるわ……見えないわ……」
勇者「おい……」
戦士「いや、男の子でしょ!?勇者も!?」
勇者「だからって、お前なぁ……」
戦士「……見たくネェの、僧侶の裸」
勇者「!?」
戦士「うお、真っ赤」ケラケラ
勇者「ふ、風呂入ってんだから当たり前だろ!」
戦士「へいへい……ほら、そろそろ、出ようぜ」
勇者「…… ……先に行け」
戦士「ん? ……ああ。想像しちゃったか」ニヤ
戦士「そりゃ出られないよなぁ」ニヤニヤ
勇者「な、何考えてんだよ!違うわ!」
戦士「はいはい。可愛いねぇ勇者ちゃんは……んじゃ、お先」ザバ
勇者「……後でぶん殴ってやる……!」
カチャ、パタン
勇者「…… ……」フゥ
勇者(しかし……いくら、領主の家? ……だからって)
勇者(凄い規模だよな。俺と戦士の部屋も、二間続きで)
勇者(……この風呂も……しかも、混浴なんて……)ハァ
カチャ
勇者「戦士?何だよ、もうすぐ……」
女「失礼致します」
勇者「!? ……え、な……え!?」
女「お背中、流させて頂きます」
勇者「え、いやいやいやいや!結構です!?」
女「ご遠慮なさらず、どうか。お手伝いさせて下さいませ」
勇者「……あ、あの。すみません。そこまでして頂く訳には……!」
女「…… ……」
勇者「…… ……聞いて、ますか」
女「はい。勿論です」
253: 2013/07/15(月) NY:AN:NY.AN ID:gLlupjDfP
勇者「えーっと……出て貰えると嬉しいんですけど」
女「領主様のご命令ですので」
勇者「……勘弁して下さい」
女「私が怒られてしまいますので」
勇者「……じゃあ、仕方無いからお願いします」
勇者「とは、言わないから!」
女「……駄目、ですか」
勇者「駄目です!」
女「では、お上がりになるまで、お側に居させて下さいませ、せめて」
勇者「……それも、却下」
女「私ではご不満ですか?」
勇者「な、なななな、何がですか!」
女「言葉の通りの意味ですが」
勇者「……何で、ですか。俺が勇者だから?」
女「……」
勇者(どうすりゃ良いんだこういう場合は……!)
女「心に決めた方でもいらっしゃるのですか」
勇者「……そうです、と言ったら引いてくれるんですか」
女「貴方は、魔王を倒す旅の途中です。世界を救う、勇者様です」
勇者「……」
女「ですから、その身を拘束する事は叶わないでしょう」
勇者「そう、ですね」ホッ
女「ですので、此処に滞在する間だけで充分です」
女「どうぞ、お好きになさって下さいませ」
勇者「いやいやいやいや!そんな気ありませんから!」
勇者「……矛盾、してますよ。俺に相手がいれば、って……」
女「ですから、この街に居る間だけで……」
勇者(話ても無駄……っぽい。仕方無い……)ハァ
勇者(こういう時は…… ……)ザバ
女「……勇者様」
勇者(逃げるが勝ち!)ダダダダッ
女「あ……ッ」
ガチャ、バタン!
女「…… ……駄目、か」チッ
女「領主様のご命令ですので」
勇者「……勘弁して下さい」
女「私が怒られてしまいますので」
勇者「……じゃあ、仕方無いからお願いします」
勇者「とは、言わないから!」
女「……駄目、ですか」
勇者「駄目です!」
女「では、お上がりになるまで、お側に居させて下さいませ、せめて」
勇者「……それも、却下」
女「私ではご不満ですか?」
勇者「な、なななな、何がですか!」
女「言葉の通りの意味ですが」
勇者「……何で、ですか。俺が勇者だから?」
女「……」
勇者(どうすりゃ良いんだこういう場合は……!)
女「心に決めた方でもいらっしゃるのですか」
勇者「……そうです、と言ったら引いてくれるんですか」
女「貴方は、魔王を倒す旅の途中です。世界を救う、勇者様です」
勇者「……」
女「ですから、その身を拘束する事は叶わないでしょう」
勇者「そう、ですね」ホッ
女「ですので、此処に滞在する間だけで充分です」
女「どうぞ、お好きになさって下さいませ」
勇者「いやいやいやいや!そんな気ありませんから!」
勇者「……矛盾、してますよ。俺に相手がいれば、って……」
女「ですから、この街に居る間だけで……」
勇者(話ても無駄……っぽい。仕方無い……)ハァ
勇者(こういう時は…… ……)ザバ
女「……勇者様」
勇者(逃げるが勝ち!)ダダダダッ
女「あ……ッ」
ガチャ、バタン!
女「…… ……駄目、か」チッ
258: 2013/07/16(火) NY:AN:NY.AN ID:f4UT+LJwP
……
………
…………
カチャ
戦士「おう、遅かったな」
勇者「……ああ」ハァ
戦士「……そんな興奮してたの、お前」
勇者「つっこむ気にもならん」
戦士「何だよ元気ネェなぁ」
勇者「……僧侶と魔法使いは、部屋か?」
戦士「じゃ、ネェの……何だよ、態々怒られに行くのかよ……」
勇者「無視してても明日倍になって帰って来るだけだろ……話したい事もあるんだ」
戦士「話したい事?」
勇者「ああ、さっきな……」
コンコン
勇者「!」ビク!
戦士「??」
勇者「……戦士、出て」
戦士「???……はい?」
魔法使い「私よ」
勇者「……入れよ」ホッ
戦士「何なんだよ、一体……」カチャ
僧侶「お邪魔して良い?」
勇者「ああ……さっきは、その……悪かったな」
魔法使い「……態とじゃ無いんでしょ。仕方ないわ。あんな造りのお風呂が悪い」
僧侶「……見た?」
戦士「残念ながら、全く」
勇者「こら、戦士……で、どうしたんだ?」
魔法使い「……」チラ
僧侶「……」チラ
戦士「何だよ、顔見合わせて」
………
…………
カチャ
戦士「おう、遅かったな」
勇者「……ああ」ハァ
戦士「……そんな興奮してたの、お前」
勇者「つっこむ気にもならん」
戦士「何だよ元気ネェなぁ」
勇者「……僧侶と魔法使いは、部屋か?」
戦士「じゃ、ネェの……何だよ、態々怒られに行くのかよ……」
勇者「無視してても明日倍になって帰って来るだけだろ……話したい事もあるんだ」
戦士「話したい事?」
勇者「ああ、さっきな……」
コンコン
勇者「!」ビク!
戦士「??」
勇者「……戦士、出て」
戦士「???……はい?」
魔法使い「私よ」
勇者「……入れよ」ホッ
戦士「何なんだよ、一体……」カチャ
僧侶「お邪魔して良い?」
勇者「ああ……さっきは、その……悪かったな」
魔法使い「……態とじゃ無いんでしょ。仕方ないわ。あんな造りのお風呂が悪い」
僧侶「……見た?」
戦士「残念ながら、全く」
勇者「こら、戦士……で、どうしたんだ?」
魔法使い「……」チラ
僧侶「……」チラ
戦士「何だよ、顔見合わせて」
260: 2013/07/16(火) NY:AN:NY.AN ID:f4UT+LJwP
僧侶「……さっき、領主の息子だとか言う人が部屋に来てね」
勇者「……?」
僧侶「まあ……えっと」
魔法使い「プロポーズされたのよ、僧侶」
戦士「…… ……はい?」
勇者「プロポーズ……い、いきなり!?」
魔法使い「そう。『勇者様との旅から戻れば、是非私と結婚して頂きたい』ですって」
戦士「は……はぁ」
勇者「え……で、ど、どうしたの!?」
僧侶「どうした、って……断ったに決まってるじゃない!?」
勇者「…… ……」
戦士「お、おい……勇者、どうした?」
勇者「……俺もさっきな、風呂にいる時、女さんが来たんだよ」
魔法使い「え……入って来たの!?」
勇者「ああ。お背中流させて下さい、てさ」
戦士「俺が出てから!?」
魔法使い「悔しそうな顔するんじゃないわよ、馬鹿」
戦士「……いや、だって、ナァ」
魔法使い「燃やされたい?」
戦士「ごめんなさい」
僧侶「漫才は後にして……で、勇者はどうしたの」
勇者「何言っても聞いてくれないから逃げ出したよ! ……話に行こうとしてたんだ」
勇者「ついでに謝らないとと思ってたからな」
戦士「それで真っ赤だった訳な」
勇者「……この街にいる間だけで良い、どうぞお好きに、なんて言われたんだぞ」
勇者「今日初めて会った人に……」
魔法使い「僧侶の話はもっとおかしいわよ。一目惚れしました、だもの」
僧侶「薔薇の花束準備して訪ねて来て、ね」
僧侶「……それが初対面なのに、どこで見たのかな」
戦士「なんなんだ、一体……」
勇者「……『優れた加護』か」
僧侶「だろうね」
戦士「ん、ん??」
魔法使い「だから、女さんにしても領主の息子にしても」
魔法使い「『血』が欲しいだけなのよ」
僧侶「気持ち悪かったよ……『貴女と私の子なら、きっと素晴らしい子になる』て」
僧侶「気持ち悪い顔で言うんだもん!」
戦士「……何、ブサイクなの?」
魔法使い「領主を若返らせたら息子になるわね」
戦士「あー……」ハァ
僧侶「表情の話!」
僧侶「……断られる可能性なんて、考えて無い、て顔してたの!」
勇者「……?」
僧侶「まあ……えっと」
魔法使い「プロポーズされたのよ、僧侶」
戦士「…… ……はい?」
勇者「プロポーズ……い、いきなり!?」
魔法使い「そう。『勇者様との旅から戻れば、是非私と結婚して頂きたい』ですって」
戦士「は……はぁ」
勇者「え……で、ど、どうしたの!?」
僧侶「どうした、って……断ったに決まってるじゃない!?」
勇者「…… ……」
戦士「お、おい……勇者、どうした?」
勇者「……俺もさっきな、風呂にいる時、女さんが来たんだよ」
魔法使い「え……入って来たの!?」
勇者「ああ。お背中流させて下さい、てさ」
戦士「俺が出てから!?」
魔法使い「悔しそうな顔するんじゃないわよ、馬鹿」
戦士「……いや、だって、ナァ」
魔法使い「燃やされたい?」
戦士「ごめんなさい」
僧侶「漫才は後にして……で、勇者はどうしたの」
勇者「何言っても聞いてくれないから逃げ出したよ! ……話に行こうとしてたんだ」
勇者「ついでに謝らないとと思ってたからな」
戦士「それで真っ赤だった訳な」
勇者「……この街にいる間だけで良い、どうぞお好きに、なんて言われたんだぞ」
勇者「今日初めて会った人に……」
魔法使い「僧侶の話はもっとおかしいわよ。一目惚れしました、だもの」
僧侶「薔薇の花束準備して訪ねて来て、ね」
僧侶「……それが初対面なのに、どこで見たのかな」
戦士「なんなんだ、一体……」
勇者「……『優れた加護』か」
僧侶「だろうね」
戦士「ん、ん??」
魔法使い「だから、女さんにしても領主の息子にしても」
魔法使い「『血』が欲しいだけなのよ」
僧侶「気持ち悪かったよ……『貴女と私の子なら、きっと素晴らしい子になる』て」
僧侶「気持ち悪い顔で言うんだもん!」
戦士「……何、ブサイクなの?」
魔法使い「領主を若返らせたら息子になるわね」
戦士「あー……」ハァ
僧侶「表情の話!」
僧侶「……断られる可能性なんて、考えて無い、て顔してたの!」
264: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
勇者「俺の『勇者』の血、僧侶の『優れた加護』の血、ね」
魔法使い「……でも、ありえないのよ」
勇者「え?」
魔法使い「……優れた加護を持つ人が親であったって」
魔法使い「確実に、子供に引き継がれる訳じゃ無いし」
魔法使い「逆も然り、よ。親に無くても、持って生まれてくる子は、居る」
僧侶「……そう、絶対、じゃない」
僧侶「じゃあさ、優れた加護を持たずに産まれてきた子、は?」
魔法使い「……追放される?」
僧侶「良ければ、って……つくんじゃ無いかな、それに」
勇者「!」
戦士「悪ければ……なんだ、よ」
僧侶「……わかんないよ。けど……」
勇者「考えたくないな」
魔法使い「……そんなに、良い物かしら。優れた加護、なんて」
魔法使い「戦争状態にある訳じゃ無い……勿論、魔王の支配から守る為、てのは」
魔法使い「必要だろうけど、さ……でも……」
戦士「……一応、魔王の居城まで乗り込もうって俺らでも」
戦士「誰も、持ってないモンだもんな」
勇者「『特別』でありたい、んだろう」
勇者「それこそ……そんな良い物じゃ無い」
僧侶「とにかく」
戦士「ん?」
僧侶「今日、こっちで寝ても良い?」
勇者「え!?」
魔法使い「夜中に、部屋に忍んでこられたら怖いもの!」
魔法使い「私だけで、もし、僧侶に何かあったら……!」
戦士「……や、でも……魔法ぶっぱなしゃ……」
魔法使い「赤い瞳をしていたの。もし本当に、あの人達の言う」
魔法使い「優れた者達、てのが、優れた加護……とイコールだったら」
魔法使い「私の魔法なんて、何の役にも立たないわ」
魔法使い「……でも、ありえないのよ」
勇者「え?」
魔法使い「……優れた加護を持つ人が親であったって」
魔法使い「確実に、子供に引き継がれる訳じゃ無いし」
魔法使い「逆も然り、よ。親に無くても、持って生まれてくる子は、居る」
僧侶「……そう、絶対、じゃない」
僧侶「じゃあさ、優れた加護を持たずに産まれてきた子、は?」
魔法使い「……追放される?」
僧侶「良ければ、って……つくんじゃ無いかな、それに」
勇者「!」
戦士「悪ければ……なんだ、よ」
僧侶「……わかんないよ。けど……」
勇者「考えたくないな」
魔法使い「……そんなに、良い物かしら。優れた加護、なんて」
魔法使い「戦争状態にある訳じゃ無い……勿論、魔王の支配から守る為、てのは」
魔法使い「必要だろうけど、さ……でも……」
戦士「……一応、魔王の居城まで乗り込もうって俺らでも」
戦士「誰も、持ってないモンだもんな」
勇者「『特別』でありたい、んだろう」
勇者「それこそ……そんな良い物じゃ無い」
僧侶「とにかく」
戦士「ん?」
僧侶「今日、こっちで寝ても良い?」
勇者「え!?」
魔法使い「夜中に、部屋に忍んでこられたら怖いもの!」
魔法使い「私だけで、もし、僧侶に何かあったら……!」
戦士「……や、でも……魔法ぶっぱなしゃ……」
魔法使い「赤い瞳をしていたの。もし本当に、あの人達の言う」
魔法使い「優れた者達、てのが、優れた加護……とイコールだったら」
魔法使い「私の魔法なんて、何の役にも立たないわ」
265: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
勇者「……良いよ、何も無かったとしても」
勇者「仲間に、怖い思いをさせるのは厭だ」
僧侶「……ありがとう、勇者」
戦士「まあ、しゃーねぇな……ベッドも二つあるし」
魔法使い「私は僧侶と一緒に寝るわよ」
勇者「……で、俺に戦士と二人で一緒のベッドで寝ろ、と?」
僧侶「あれ、駄目なの?」
戦士「…… ……」チラ
勇者「…… ……」チラ
戦士「さーいしょーは、ぐー!」
勇者「じゃーんけーん……!」
僧侶「え、ええ……私、床で……」
魔法使い「大丈夫よ、ソファあるんだし」
戦士「……ッ しゃああああああああ!」グッ
勇者「糞……布団だけ、僧侶達の部屋から持って来るか……」ハァ
僧侶「あ、あ……私も、行くよ!」
勇者「え、でも……」
戦士「行ってこい。魔法使いはちゃんと見てるし」
魔法使い「あ……そうだわ、風呂場からの扉、繋がってるのよねそういえば」
勇者「……え、そっちから行けって事?」
魔法使い「違う違う……一杯扉があったから」
魔法使い「どこに繋がってるかわかんないから……こっちの部屋でも」
魔法使い「来ようと思えば、誰でも来れる、よね」
勇者「ああ……そういう意味、か」
戦士「廊下に面してる扉の方は、鍵ついてるんだよな?」
勇者「こっち……は、ああ。ついてる」カチャカチャ
戦士「良し、んじゃ勇者と僧侶が布団取りに行ってる間に」
戦士「椅子か何かで、扉開かない様にしとこうぜ」
魔法使い「あ……そうね。それで安心」ホッ
勇者「良し、んじゃさっさと行こう」スタスタ
僧侶「うん」スタスタ
カチャ、パタン
勇者「仲間に、怖い思いをさせるのは厭だ」
僧侶「……ありがとう、勇者」
戦士「まあ、しゃーねぇな……ベッドも二つあるし」
魔法使い「私は僧侶と一緒に寝るわよ」
勇者「……で、俺に戦士と二人で一緒のベッドで寝ろ、と?」
僧侶「あれ、駄目なの?」
戦士「…… ……」チラ
勇者「…… ……」チラ
戦士「さーいしょーは、ぐー!」
勇者「じゃーんけーん……!」
僧侶「え、ええ……私、床で……」
魔法使い「大丈夫よ、ソファあるんだし」
戦士「……ッ しゃああああああああ!」グッ
勇者「糞……布団だけ、僧侶達の部屋から持って来るか……」ハァ
僧侶「あ、あ……私も、行くよ!」
勇者「え、でも……」
戦士「行ってこい。魔法使いはちゃんと見てるし」
魔法使い「あ……そうだわ、風呂場からの扉、繋がってるのよねそういえば」
勇者「……え、そっちから行けって事?」
魔法使い「違う違う……一杯扉があったから」
魔法使い「どこに繋がってるかわかんないから……こっちの部屋でも」
魔法使い「来ようと思えば、誰でも来れる、よね」
勇者「ああ……そういう意味、か」
戦士「廊下に面してる扉の方は、鍵ついてるんだよな?」
勇者「こっち……は、ああ。ついてる」カチャカチャ
戦士「良し、んじゃ勇者と僧侶が布団取りに行ってる間に」
戦士「椅子か何かで、扉開かない様にしとこうぜ」
魔法使い「あ……そうね。それで安心」ホッ
勇者「良し、んじゃさっさと行こう」スタスタ
僧侶「うん」スタスタ
カチャ、パタン
266: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
戦士「椅子……これで良いか」ヒョイ……スタスタ、ドン
戦士「こっちも置いとくか……」ドン
魔法使い「手伝おっか?」
戦士「そんな気も無い癖に言うなっつーの」
魔法使い「力仕事は男の役目でしょ」
戦士「解ってるって……良し。これで良いだろう」
魔法使い「ねえ、戦士」
戦士「んー?」
魔法使い「……二人が戻ったら、この街、出ようって言っても良いよね」
戦士「何だよ……お前、楽しみにしてたんじゃないのか?」
魔法使い「それはそうだけど……」
戦士「……まあ、居心地悪いよな」
魔法使い「親戚が……居ると思うと、ね」
魔法使い「それもあるけど……ちょっとね」
戦士「何だよ?」
魔法使い「勇者と僧侶の血が欲しいって考える位だもの」
魔法使い「特別、にそんなに拘るなら……」
魔法使い「私とアンタの変わりに、誰か……って」
戦士「!」
戦士「……変わりに、旅について行くって言うのか!?」
魔法使い「最初から思ってたのよ。あの人達の言葉には、基本選択肢が無い」
魔法使い「勿論、勇者は断るだろうけどさ」
戦士「……言い出さないとは限らないな」
魔法使い「それに、拘束とまでは言わないけど」
魔法使い「この街に滞在してる間は、イコールチャンスのある時間、なのよ」
魔法使い「だったらさっさと、街を出ちゃう方が良いわ」
戦士「引き留められる、だろうけどな」
魔法使い「そりゃね……だからって、応とは言わないでしょ、勇者も」
戦士「まあ……そうだな。それよりさ」
魔法使い「うん?」
戦士「こっちも置いとくか……」ドン
魔法使い「手伝おっか?」
戦士「そんな気も無い癖に言うなっつーの」
魔法使い「力仕事は男の役目でしょ」
戦士「解ってるって……良し。これで良いだろう」
魔法使い「ねえ、戦士」
戦士「んー?」
魔法使い「……二人が戻ったら、この街、出ようって言っても良いよね」
戦士「何だよ……お前、楽しみにしてたんじゃないのか?」
魔法使い「それはそうだけど……」
戦士「……まあ、居心地悪いよな」
魔法使い「親戚が……居ると思うと、ね」
魔法使い「それもあるけど……ちょっとね」
戦士「何だよ?」
魔法使い「勇者と僧侶の血が欲しいって考える位だもの」
魔法使い「特別、にそんなに拘るなら……」
魔法使い「私とアンタの変わりに、誰か……って」
戦士「!」
戦士「……変わりに、旅について行くって言うのか!?」
魔法使い「最初から思ってたのよ。あの人達の言葉には、基本選択肢が無い」
魔法使い「勿論、勇者は断るだろうけどさ」
戦士「……言い出さないとは限らないな」
魔法使い「それに、拘束とまでは言わないけど」
魔法使い「この街に滞在してる間は、イコールチャンスのある時間、なのよ」
魔法使い「だったらさっさと、街を出ちゃう方が良いわ」
戦士「引き留められる、だろうけどな」
魔法使い「そりゃね……だからって、応とは言わないでしょ、勇者も」
戦士「まあ……そうだな。それよりさ」
魔法使い「うん?」
268: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
戦士「僧侶、どうなんだろうな」
魔法使い「僧侶……ああ」
魔法使い「領主の息子が来た時も、『私には勇者様が居ますから』って」
戦士「わーぉ」
魔法使い「そういえば引いてくれるでしょ、って言ってたけどね」
戦士「……男はともかく、女はなぁ」
魔法使い「ん?」
戦士「下世話な話だが、血が欲しい、ってさ」
戦士「男は、いいじゃん。でも……女は子供を産もうと思えば、さ」
魔法使い「ああ……まあ、そうよね。だから『魔王を倒した後』だったんでしょう」
魔法使い「『優れた加護を持つ、元勇者の仲間』なんて」
魔法使い「最高に『特別』でしょうよ」
戦士「でもありゃ、嘘なんだろ?」
魔法使い「そうね……まあ、そうじゃ無くても」
魔法使い「断るには違い無いんだけど」
カチャ
勇者「ただいま」ズルズル
僧侶「お風呂場の方、オッケー?」
戦士「ああ、無理矢理開けようとしたら、音で目が覚めるだろ」
勇者「良し……一応、安心だな」カチャカチャ
僧侶「鍵も良し、と……ハァ、疲れた」
勇者「ついでに、召使いさんに明日の船の時間を聞いてきた」
僧侶「明日の朝一と、夕方の二便があるんだって」
勇者「夕方の便で、北へ向かおう……朝、早めに起きて」
勇者「図書館に寄ってみよう」
魔法使い「……丁度、その話しようとしてた所よ」
勇者「ん?」
魔法使い「賛成……ありがとう」
勇者「長居する必要も無いだろうしな」
僧侶「そうだね」
魔法使い「僧侶……ああ」
魔法使い「領主の息子が来た時も、『私には勇者様が居ますから』って」
戦士「わーぉ」
魔法使い「そういえば引いてくれるでしょ、って言ってたけどね」
戦士「……男はともかく、女はなぁ」
魔法使い「ん?」
戦士「下世話な話だが、血が欲しい、ってさ」
戦士「男は、いいじゃん。でも……女は子供を産もうと思えば、さ」
魔法使い「ああ……まあ、そうよね。だから『魔王を倒した後』だったんでしょう」
魔法使い「『優れた加護を持つ、元勇者の仲間』なんて」
魔法使い「最高に『特別』でしょうよ」
戦士「でもありゃ、嘘なんだろ?」
魔法使い「そうね……まあ、そうじゃ無くても」
魔法使い「断るには違い無いんだけど」
カチャ
勇者「ただいま」ズルズル
僧侶「お風呂場の方、オッケー?」
戦士「ああ、無理矢理開けようとしたら、音で目が覚めるだろ」
勇者「良し……一応、安心だな」カチャカチャ
僧侶「鍵も良し、と……ハァ、疲れた」
勇者「ついでに、召使いさんに明日の船の時間を聞いてきた」
僧侶「明日の朝一と、夕方の二便があるんだって」
勇者「夕方の便で、北へ向かおう……朝、早めに起きて」
勇者「図書館に寄ってみよう」
魔法使い「……丁度、その話しようとしてた所よ」
勇者「ん?」
魔法使い「賛成……ありがとう」
勇者「長居する必要も無いだろうしな」
僧侶「そうだね」
269: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
魔法使い「……会えると良いけど」
戦士「え?」
魔法使い「女神官さんが言ってたでしょ?」
僧侶「ああ……以前港街に居たって言う人、ね」
僧侶「でも……この街も広いし」
戦士「それに、その人に優れた加護が無かったら……住んでは無いんじゃないか?」
魔法使い「ああ……そうか」
勇者「どちらにしても、言う程時間は無いんだ。乗り遅れると厄介だし」
魔法使い「そうね……」
勇者「買い物もしないといけないだろう」
魔法使い「時間は掛かるけど、四人で行動した方が良いでしょうね」
戦士「どうしてもって時は、勇者は僧侶について居てやれ」
魔法使い「じゃあ、戦士は私とね」
戦士「ああ……俺達は目をつけられる事も無いだろうから」
戦士「動きやすいだろうしな」
勇者「全く……面倒な街だ」ハァ
魔法使い「決まった事だし、早く寝ましょ。明日は早く起きないと」
戦士「ああ。もし何かあったらすぐ起こせよ。大声出したら良い」
僧侶「うん。ありがとう」
勇者「このソファも充分ふかふかだなぁ」コロン
魔法使い「ごめんね、勇者」
僧侶「……ごめん」
勇者「気にすんな……お前に何かある方が、厭だよ」
戦士(絶対真っ赤だ、あいつ)クック
勇者「笑うなよ、戦士!」ブン!
戦士「いやいや、笑っ……ッ」ボスッ
戦士「クッション投げんなよ!」ガバ!ブン!
勇者「ふん……ッ」ボンッ
勇者「お前なあああ!」ガバッ
ギャアギャア、ギャアギャア
僧侶「……止めた方が良いと思う?」
魔法使い「ほっといたら良いわよ……あんまり煩かったら」
魔法使い「燃やしてやるわ」
戦士「え?」
魔法使い「女神官さんが言ってたでしょ?」
僧侶「ああ……以前港街に居たって言う人、ね」
僧侶「でも……この街も広いし」
戦士「それに、その人に優れた加護が無かったら……住んでは無いんじゃないか?」
魔法使い「ああ……そうか」
勇者「どちらにしても、言う程時間は無いんだ。乗り遅れると厄介だし」
魔法使い「そうね……」
勇者「買い物もしないといけないだろう」
魔法使い「時間は掛かるけど、四人で行動した方が良いでしょうね」
戦士「どうしてもって時は、勇者は僧侶について居てやれ」
魔法使い「じゃあ、戦士は私とね」
戦士「ああ……俺達は目をつけられる事も無いだろうから」
戦士「動きやすいだろうしな」
勇者「全く……面倒な街だ」ハァ
魔法使い「決まった事だし、早く寝ましょ。明日は早く起きないと」
戦士「ああ。もし何かあったらすぐ起こせよ。大声出したら良い」
僧侶「うん。ありがとう」
勇者「このソファも充分ふかふかだなぁ」コロン
魔法使い「ごめんね、勇者」
僧侶「……ごめん」
勇者「気にすんな……お前に何かある方が、厭だよ」
戦士(絶対真っ赤だ、あいつ)クック
勇者「笑うなよ、戦士!」ブン!
戦士「いやいや、笑っ……ッ」ボスッ
戦士「クッション投げんなよ!」ガバ!ブン!
勇者「ふん……ッ」ボンッ
勇者「お前なあああ!」ガバッ
ギャアギャア、ギャアギャア
僧侶「……止めた方が良いと思う?」
魔法使い「ほっといたら良いわよ……あんまり煩かったら」
魔法使い「燃やしてやるわ」
270: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「寝るか」
勇者「おう」
魔法使い「おやすみー」
僧侶「…… ……凄い効き目。便利」
……
………
…………
勇者「…… ……」
戦士「寝るか」
勇者「おう」
魔法使い「おやすみー」
僧侶「…… ……凄い効き目。便利」
……
………
…………
275: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
盗賊「どうしたんだ、女剣士。人払いしろなんて珍しいな」
女剣士「折り入ってお願いが……て、奴だ」
鍛冶師「何だい、改まって」
女剣士「勇者達も旅立った。次に会う時は……もう、魔王を倒した後だろう」
鍛冶師「……と、思いたい、けどね」
盗賊「まあ……知らせの無いのが良いそいつって事だと思いたいけどな」
鍛冶師「噂自体は耳に届いているんだけどね……どうしても時間差があるし」
鍛冶師「けど、それが……どうかしたのかい?」
女剣士「私も、さ。もう……言う程若く無い。勿論、まだまだ働ける」
女剣士「だからこそ、そろそろ後継者に当たりをつけて、育成に力を注ぎたいんだ」
女剣士「もし、勇者達が帰ってくれば……魔王を、倒してしまえば」
女剣士「騎士団自体、必要無くなるのかと思って、さ。相談……かな」
盗賊「ああ……成る程な。そりゃ、確かに……そうかもしれない」
盗賊「……否、そうであってくれた方が、本当は良いんだろう」
盗賊「だが……一応、ここは『王国』になっちまったからな」
鍛冶師「形だけでも、『力』を見せるのは悪く無いと思うよ、僕も」
鍛冶師「魔と人との確執が消えたとしても」
鍛冶師「……否、だからこそ……人同士の、てのが」
鍛冶師「危惧する所なんだけどね」
女剣士「……魔導の街、か」
盗賊「噂に過ぎない。まだ……な」
盗賊「魔王の……『少年』の睨みが効いている内は大丈夫だろうと思いたい」
盗賊「アタシ自身、もう……『劣等種の一人』じゃない。『一国の王』だ」
鍛冶師「弟王子に変わった時……余程の人が傍についてないと」
鍛冶師「正直、不安はあるな……あの子は、病弱と迄は行かない迄も」
鍛冶師「……強い子じゃ無い」
盗賊「頭は悪く無いと思うんだけどな」フゥ
女剣士「……少し話を戻す。その、弟王子の為にも、だ」
女剣士「……次の騎士団長に、王子を押したいんだ」
鍛冶師「……何時か、言うんじゃ無いかなと思ってたよ」
女剣士「え?」
盗賊「アタシ達が、それを言い出す訳には行かないだろ?」
盗賊「騎士としての器を確かめるのは、お前の仕事だしな」
盗賊「『王子』じゃ無く、『騎士の一人』に過ぎないとは言え」
女剣士「……実力は申し分無い。それに、やはりアンタ達二人の子だ」
女剣士「人の上に立つ……血だろうかな。そういう、人間だと思う」
盗賊「……嬉しいな。なぁ?」
鍛冶師「そりゃね」
女剣士「折り入ってお願いが……て、奴だ」
鍛冶師「何だい、改まって」
女剣士「勇者達も旅立った。次に会う時は……もう、魔王を倒した後だろう」
鍛冶師「……と、思いたい、けどね」
盗賊「まあ……知らせの無いのが良いそいつって事だと思いたいけどな」
鍛冶師「噂自体は耳に届いているんだけどね……どうしても時間差があるし」
鍛冶師「けど、それが……どうかしたのかい?」
女剣士「私も、さ。もう……言う程若く無い。勿論、まだまだ働ける」
女剣士「だからこそ、そろそろ後継者に当たりをつけて、育成に力を注ぎたいんだ」
女剣士「もし、勇者達が帰ってくれば……魔王を、倒してしまえば」
女剣士「騎士団自体、必要無くなるのかと思って、さ。相談……かな」
盗賊「ああ……成る程な。そりゃ、確かに……そうかもしれない」
盗賊「……否、そうであってくれた方が、本当は良いんだろう」
盗賊「だが……一応、ここは『王国』になっちまったからな」
鍛冶師「形だけでも、『力』を見せるのは悪く無いと思うよ、僕も」
鍛冶師「魔と人との確執が消えたとしても」
鍛冶師「……否、だからこそ……人同士の、てのが」
鍛冶師「危惧する所なんだけどね」
女剣士「……魔導の街、か」
盗賊「噂に過ぎない。まだ……な」
盗賊「魔王の……『少年』の睨みが効いている内は大丈夫だろうと思いたい」
盗賊「アタシ自身、もう……『劣等種の一人』じゃない。『一国の王』だ」
鍛冶師「弟王子に変わった時……余程の人が傍についてないと」
鍛冶師「正直、不安はあるな……あの子は、病弱と迄は行かない迄も」
鍛冶師「……強い子じゃ無い」
盗賊「頭は悪く無いと思うんだけどな」フゥ
女剣士「……少し話を戻す。その、弟王子の為にも、だ」
女剣士「……次の騎士団長に、王子を押したいんだ」
鍛冶師「……何時か、言うんじゃ無いかなと思ってたよ」
女剣士「え?」
盗賊「アタシ達が、それを言い出す訳には行かないだろ?」
盗賊「騎士としての器を確かめるのは、お前の仕事だしな」
盗賊「『王子』じゃ無く、『騎士の一人』に過ぎないとは言え」
女剣士「……実力は申し分無い。それに、やはりアンタ達二人の子だ」
女剣士「人の上に立つ……血だろうかな。そういう、人間だと思う」
盗賊「……嬉しいな。なぁ?」
鍛冶師「そりゃね」
276: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
女剣士「弟王子の事を考えても、最善だと思うんだ」
女剣士「……『騎士の一人』として扱う以上、許可を求める事は」
女剣士「必要無いのかもしれないが……一応、報告……てのが」
女剣士「『騎士団長』としての建前、さ」
盗賊「お前が選んだのなら、異存は無い」
鍛冶師「同じく」
女剣士「……ありがとう。呼んでも良いだろうか?」
盗賊「え?」
女剣士「向こうに待たせてあるんだ」
鍛冶師「……こうなる事を予測して……だよね?」
女剣士「そりゃね」クスクス
盗賊「全く、お前は……」
女剣士「ほっとしてるのは事実だよ。駄目と言われる事は無いとは思ってたけど」
女剣士「多分、扉の向こうの王子の方が、緊張で氏にそうになってると思うけど」
鍛冶師「随分長くあってないな」
盗賊「騎士団に入ってから、宿舎で生活してるしな、あいつ」
女剣士「立派だよ……良い子だ。恋人もいるみたいだしな」
盗賊「へぇ!まじで?」
鍛冶師「盗賊……それは、聞かなかった事にしといてやれよ?」
盗賊「ええ……どんな子か、知りたいじゃないか」
女剣士「あ、いや……自分で言っておいてなんだけど」
女剣士「私も他の騎士から聞いただけなんだよ」
鍛冶師「尚更駄目じゃないか!」
盗賊「……つまんねぇの」
鍛冶師「こら……」
トントントン……コンコン
盗賊「ん……弟王子か。入れ!」
カチャ
弟王子「お母様、あの……あ、女剣士」
女剣士「お久しぶりで御座います、弟王子様」
女剣士「……『騎士の一人』として扱う以上、許可を求める事は」
女剣士「必要無いのかもしれないが……一応、報告……てのが」
女剣士「『騎士団長』としての建前、さ」
盗賊「お前が選んだのなら、異存は無い」
鍛冶師「同じく」
女剣士「……ありがとう。呼んでも良いだろうか?」
盗賊「え?」
女剣士「向こうに待たせてあるんだ」
鍛冶師「……こうなる事を予測して……だよね?」
女剣士「そりゃね」クスクス
盗賊「全く、お前は……」
女剣士「ほっとしてるのは事実だよ。駄目と言われる事は無いとは思ってたけど」
女剣士「多分、扉の向こうの王子の方が、緊張で氏にそうになってると思うけど」
鍛冶師「随分長くあってないな」
盗賊「騎士団に入ってから、宿舎で生活してるしな、あいつ」
女剣士「立派だよ……良い子だ。恋人もいるみたいだしな」
盗賊「へぇ!まじで?」
鍛冶師「盗賊……それは、聞かなかった事にしといてやれよ?」
盗賊「ええ……どんな子か、知りたいじゃないか」
女剣士「あ、いや……自分で言っておいてなんだけど」
女剣士「私も他の騎士から聞いただけなんだよ」
鍛冶師「尚更駄目じゃないか!」
盗賊「……つまんねぇの」
鍛冶師「こら……」
トントントン……コンコン
盗賊「ん……弟王子か。入れ!」
カチャ
弟王子「お母様、あの……あ、女剣士」
女剣士「お久しぶりで御座います、弟王子様」
277: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
弟王子「お久しぶりです……お仕事のお話の途中、でしたか」
盗賊「人払いしてあるんだ、気にするな」
弟王子「え……」
女剣士「はは、御免御免」
弟王子「何だ……そうだったんだ。珍しいね。どうしたの?」
女剣士「丁度良い、呼んで来るよ」スタスタ
弟王子「?」
盗賊「そうだな……お前も久しぶりだろう」
弟王子「え……何の話、です?」
鍛冶師「すぐ解るよ」
カチャ
女剣士「王子!王様がお呼びだ……入れ!」
弟王子「! ……兄さん!?」
王子「はッ 失礼致します!」
鍛冶師「声裏返ってるよ……」クスクス
キィ、パタン
王子「王様、お久しぶりで……え、弟王子!?」
女剣士「流石にこれは偶然さ」ニッ
鍛冶師「久しぶりだな、王子」
盗賊「元気にしてたか? ……随分、逞しい体つきになったな」
弟王子「兄さん!」タタタ……ギュ!
王子「え、え……え!?」
女剣士「『王様に申し上げたいことがある』てのは嘘では無いよ」
女剣士「ちゃんと、許可も頂いた」
王子「え……え、あ……え!?」
盗賊「人払いはしてあるから、まあ……力、抜けよ」クスクス
王子「な……な……え!?」
女剣士「落ち着けってば……」
王子「だ、騙したのか!?」
盗賊「人払いしてあるんだ、気にするな」
弟王子「え……」
女剣士「はは、御免御免」
弟王子「何だ……そうだったんだ。珍しいね。どうしたの?」
女剣士「丁度良い、呼んで来るよ」スタスタ
弟王子「?」
盗賊「そうだな……お前も久しぶりだろう」
弟王子「え……何の話、です?」
鍛冶師「すぐ解るよ」
カチャ
女剣士「王子!王様がお呼びだ……入れ!」
弟王子「! ……兄さん!?」
王子「はッ 失礼致します!」
鍛冶師「声裏返ってるよ……」クスクス
キィ、パタン
王子「王様、お久しぶりで……え、弟王子!?」
女剣士「流石にこれは偶然さ」ニッ
鍛冶師「久しぶりだな、王子」
盗賊「元気にしてたか? ……随分、逞しい体つきになったな」
弟王子「兄さん!」タタタ……ギュ!
王子「え、え……え!?」
女剣士「『王様に申し上げたいことがある』てのは嘘では無いよ」
女剣士「ちゃんと、許可も頂いた」
王子「え……え、あ……え!?」
盗賊「人払いはしてあるから、まあ……力、抜けよ」クスクス
王子「な……な……え!?」
女剣士「落ち着けってば……」
王子「だ、騙したのか!?」
278: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
盗賊「違うってば。女剣士が『騎士団長』として」
盗賊「『王』に用事があったのは本当だ」
王子「な、何だよ、めちゃくちゃ緊張してたのに、待ってる間……!」
鍛冶師「良いことだ。僕たちは親であるには変わりないのに」
鍛冶師「『王』として扱っていてくれていると言う事だろう」
鍛冶師「……きっちり、公私を分けれているのだと思えば」
鍛冶師「父としては嬉しいよ」スタスタ……ギュ
鍛冶師「……久しぶり。王子」
王子「男二人で、抱きつかないでよ……」
王子「……うん。久しぶり、お父様」
盗賊「こら、お前らばっかりずるいぞ……おいで、王子」
王子「お母様……」ギュ
盗賊「うん ……元気そうで、何よりだ」ナデナデ
王子「いや、ちょ、それは……恥ずかしい」
盗賊「『王』に用事があったのは本当だ」
王子「な、何だよ、めちゃくちゃ緊張してたのに、待ってる間……!」
鍛冶師「良いことだ。僕たちは親であるには変わりないのに」
鍛冶師「『王』として扱っていてくれていると言う事だろう」
鍛冶師「……きっちり、公私を分けれているのだと思えば」
鍛冶師「父としては嬉しいよ」スタスタ……ギュ
鍛冶師「……久しぶり。王子」
王子「男二人で、抱きつかないでよ……」
王子「……うん。久しぶり、お父様」
盗賊「こら、お前らばっかりずるいぞ……おいで、王子」
王子「お母様……」ギュ
盗賊「うん ……元気そうで、何よりだ」ナデナデ
王子「いや、ちょ、それは……恥ずかしい」
279: 2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN ID:i7GtrIz+P
幼女寝かす!
又明日!
又明日!
281: 2013/07/18(木) NY:AN:NY.AN ID:jKAYWMHsP
女剣士「丁度良い……王子」
王子「何?」
女剣士「……まだ先の話にはなるが、私は次期騎士団長にお前を推そうと思う」
王子「…… ……え!?」
弟王子「兄さんを……?」
女剣士「ああ……やる気があるのなら、これからはそのつもりで励んで欲しい」
女剣士「授けられる物をそうするのに、私も力は惜しまない」
王子「お、俺が……次期、騎士団長……」
盗賊「すぐに決める必要は無い。まだまだ若いんだ……女剣士の足下にも及ばん」
女剣士「時が来れば、だ。だが、その気が無いなら、人選からやり直す」
女剣士「……どうだ?」
王子「……より一層の修練に励みます!」
王子「お前の事も、助けてやれるな、弟王子……」
弟王子「兄さん……うん!」ギュ
王子「苦しい、て……」トントン
女剣士「約束してやれる物じゃ無いぞ」
女剣士「……駄目だと思えば」
王子「解ってる。驕らないよ」
王子「何?」
女剣士「……まだ先の話にはなるが、私は次期騎士団長にお前を推そうと思う」
王子「…… ……え!?」
弟王子「兄さんを……?」
女剣士「ああ……やる気があるのなら、これからはそのつもりで励んで欲しい」
女剣士「授けられる物をそうするのに、私も力は惜しまない」
王子「お、俺が……次期、騎士団長……」
盗賊「すぐに決める必要は無い。まだまだ若いんだ……女剣士の足下にも及ばん」
女剣士「時が来れば、だ。だが、その気が無いなら、人選からやり直す」
女剣士「……どうだ?」
王子「……より一層の修練に励みます!」
王子「お前の事も、助けてやれるな、弟王子……」
弟王子「兄さん……うん!」ギュ
王子「苦しい、て……」トントン
女剣士「約束してやれる物じゃ無いぞ」
女剣士「……駄目だと思えば」
王子「解ってる。驕らないよ」
282: 2013/07/18(木) NY:AN:NY.AN ID:jKAYWMHsP
女剣士「ああ。お前に限っては無いと思うけど」
女剣士「王の息子と言うだけで、やっかむ奴も居ないとは限らないからな」
王子「言わせない位、強くなってやるよ」
弟王子「大丈夫ですよ、兄さんなら」
弟王子「頑張ってると聞きます。先生も褒めてましたよ」
王子「先生?」
鍛治師「ああ、騎士団の治癒班の一人にね、回復魔法の鍛錬を受けてるんだ、今」
盗賊「弟王子は身体を動かすのには向かないし、何かを傷つけるのも……て」
盗賊「言うからな……なら、回復魔法を習ってみればどうだ、と」
女剣士「現役を退いた婆さんが居ただろう?頼んでみたのさ」
王子「そうか……弟王子に向いてるかもしれないな。お前は、優しいし」
弟王子「祈り女さんと、仲良くしてね?」
女剣士「え?」
盗賊「ん?」
鍛治師「祈り女?」
王子「え、ぁ、ちょ……! な、なん、な……!?」
女剣士「王の息子と言うだけで、やっかむ奴も居ないとは限らないからな」
王子「言わせない位、強くなってやるよ」
弟王子「大丈夫ですよ、兄さんなら」
弟王子「頑張ってると聞きます。先生も褒めてましたよ」
王子「先生?」
鍛治師「ああ、騎士団の治癒班の一人にね、回復魔法の鍛錬を受けてるんだ、今」
盗賊「弟王子は身体を動かすのには向かないし、何かを傷つけるのも……て」
盗賊「言うからな……なら、回復魔法を習ってみればどうだ、と」
女剣士「現役を退いた婆さんが居ただろう?頼んでみたのさ」
王子「そうか……弟王子に向いてるかもしれないな。お前は、優しいし」
弟王子「祈り女さんと、仲良くしてね?」
女剣士「え?」
盗賊「ん?」
鍛治師「祈り女?」
王子「え、ぁ、ちょ……! な、なん、な……!?」
283: 2013/07/18(木) NY:AN:NY.AN ID:jKAYWMHsP
弟王子「先生の部隊の人なんでしょ?彼女」
弟王子「お似合いだ、微笑ましい、て言ってたよ?」
女剣士「…… ……」
女剣士(笑っては……怒られるな)コホン
盗賊「ほーぅ……何々、どんな子?」ニヤニヤ
鍛治師「ちょ、盗賊……」
王子「え!? いや、そんなんじゃ……!」
女剣士「あの婆さん、腕は良いんだけどな、無類の……まあ、噂好きでな……」
女剣士(あの婆さんが発端か……そりゃ、あっと言う間に広まる訳だ)クス
王子「わ、笑うなよ……!」
女剣士「ああ……ごめん。いや、でもな?」
女剣士「あの婆さんに知られたんなら……もう知らない奴は居ないだろうな」
王子「ま……まじで……」
弟王子「あ、あの、僕……何か……」オロオロ
鍛治師「いやいや、弟王子は気にしなくて良いよ。なぁ?王子」
王子「あ、ああ……うん、お前は悪く無いよ、うん……」
盗賊「女剣士は知ってるのか?」
女剣士「祈り女、か?ああ……顔を見れば解るだろうな」
女剣士「頻繁に顔を合わせる訳では無いからなぁ……」
弟王子「お似合いだ、微笑ましい、て言ってたよ?」
女剣士「…… ……」
女剣士(笑っては……怒られるな)コホン
盗賊「ほーぅ……何々、どんな子?」ニヤニヤ
鍛治師「ちょ、盗賊……」
王子「え!? いや、そんなんじゃ……!」
女剣士「あの婆さん、腕は良いんだけどな、無類の……まあ、噂好きでな……」
女剣士(あの婆さんが発端か……そりゃ、あっと言う間に広まる訳だ)クス
王子「わ、笑うなよ……!」
女剣士「ああ……ごめん。いや、でもな?」
女剣士「あの婆さんに知られたんなら……もう知らない奴は居ないだろうな」
王子「ま……まじで……」
弟王子「あ、あの、僕……何か……」オロオロ
鍛治師「いやいや、弟王子は気にしなくて良いよ。なぁ?王子」
王子「あ、ああ……うん、お前は悪く無いよ、うん……」
盗賊「女剣士は知ってるのか?」
女剣士「祈り女、か?ああ……顔を見れば解るだろうな」
女剣士「頻繁に顔を合わせる訳では無いからなぁ……」
285: 2013/07/18(木) NY:AN:NY.AN ID:jKAYWMHsP
王子「……良い、子だよ」
盗賊「お前が選んだなら、別にアタシは文句無いよ」
鍛治師「……お前の事、知ってるんだよな?」
王子「俺が……『王子』だって事?そりゃそうだろう」
女剣士「大人しそうな子だったよな」
弟王子「可愛い子だ、って言ってましたよ、先生」
盗賊「……その内、紹介してくれよ」
王子「お、おう……解ってるよ」
女剣士「……良し。じゃあそろそろ戻れ。休憩時間に悪かったな」
王子「いや、それは良いんだけど……何か、恥ずかしい思いしにきただけみたいだ」ハァ
弟王子「僕も部屋に戻ります。午後から、先生もいらっしゃるし」
王子「……あんまり言いふらさない様に言っといてくれよ」
女剣士「逆効果だと思うぞ、それ」
王子「え、え!? い、今の無し!」
王子「……失礼します!」バタバタ
弟王子「失礼します」クスクス
パタン。トントン……
盗賊「……」
鍛治師「……」
女剣士「……歳を取る訳だ」
盗賊「お前が選んだなら、別にアタシは文句無いよ」
鍛治師「……お前の事、知ってるんだよな?」
王子「俺が……『王子』だって事?そりゃそうだろう」
女剣士「大人しそうな子だったよな」
弟王子「可愛い子だ、って言ってましたよ、先生」
盗賊「……その内、紹介してくれよ」
王子「お、おう……解ってるよ」
女剣士「……良し。じゃあそろそろ戻れ。休憩時間に悪かったな」
王子「いや、それは良いんだけど……何か、恥ずかしい思いしにきただけみたいだ」ハァ
弟王子「僕も部屋に戻ります。午後から、先生もいらっしゃるし」
王子「……あんまり言いふらさない様に言っといてくれよ」
女剣士「逆効果だと思うぞ、それ」
王子「え、え!? い、今の無し!」
王子「……失礼します!」バタバタ
弟王子「失礼します」クスクス
パタン。トントン……
盗賊「……」
鍛治師「……」
女剣士「……歳を取る訳だ」
286: 2013/07/18(木) NY:AN:NY.AN ID:jKAYWMHsP
盗賊「……お前は?女剣士」
女剣士「ん?」
盗賊「……」
女剣士「ああ……私は、良いんだ」
鍛治師「……何人も居ただろ。中には……」
女剣士「同じ様な事、側近にも言われたよ、前に」
女剣士「……良いんだ。勇者達が無事に戻って」
女剣士「……引退して、寂しいと思えば、考える、かな」
鍛治師「女剣士……」
女剣士「その時には、もう……側近は……だから、ね」
盗賊「……そう、か」
女剣士「充実してるのさ、今が。この生活がさ」
女剣士「これ以上、考える事増やせ無いよ。元々馬鹿なんだしさ」ハハ
盗賊「そんな、事は……」
女剣士「ああ、側近で思い出したよ。あの小屋だけど」
鍛治師「うん?」
女剣士「ん?」
盗賊「……」
女剣士「ああ……私は、良いんだ」
鍛治師「……何人も居ただろ。中には……」
女剣士「同じ様な事、側近にも言われたよ、前に」
女剣士「……良いんだ。勇者達が無事に戻って」
女剣士「……引退して、寂しいと思えば、考える、かな」
鍛治師「女剣士……」
女剣士「その時には、もう……側近は……だから、ね」
盗賊「……そう、か」
女剣士「充実してるのさ、今が。この生活がさ」
女剣士「これ以上、考える事増やせ無いよ。元々馬鹿なんだしさ」ハハ
盗賊「そんな、事は……」
女剣士「ああ、側近で思い出したよ。あの小屋だけど」
鍛治師「うん?」
287: 2013/07/18(木) NY:AN:NY.AN ID:jKAYWMHsP
女剣士「盗賊に言われたとおり、何時帰って来ても良い様に」
女剣士「……何時でも、すぐに使える様に、手入れは欠かしてないけど」
鍛冶師「ああ……うん」
女剣士「……私が引退したら、あそこを使っても良いかな」
盗賊「え……あ、ああ。それは、別に構わないが……」
盗賊「城には、残ってくれない、のか」
女剣士「王子は立派に勤めるだろう。何時までも過去の人間が」
女剣士「……のさばっているのも、ね」
鍛冶師「しかし……」
女剣士「仕事がなくなったら、漸くのんびり……側近を待てるんだ」
女剣士「……ありがとう。では、私も……戻るよ」
女剣士「失礼、します!」スタスタ
カチャ、パタン
鍛冶師「……良いのか」
盗賊「引退イコール、勇者の期間後。イコール……側近、は……」
鍛冶師「……うん」
盗賊「結婚は愚か、恋愛も……する気等、無いのだろうな」
鍛冶師「…… ……うん」
盗賊「…… ……どう、言葉にすれば良いのか、解らん」
盗賊「解らない……が」
鍛冶師「……彼女の人生だ。僕たちがとやかく、言う物じゃ無いって」
鍛冶師「解ってる……つもり、なんだけどね」
盗賊「ああ…… ……勇者達は、今どの辺に居るんだろうな」
鍛冶師「そう、あっさりと進む旅じゃない、決して」
盗賊「…… ……」
鍛冶師「どうしたの?」
盗賊「いや…… ……アタシさ、実は娘が欲しかったんだよな」
鍛冶師「何、急に……」
盗賊「……王子が結婚したら、義理とは言え、念願の娘が出来るんだなぁ、と」
盗賊「思って、さ」
鍛冶師「いくら何でもまだ早いでしょ……」
女剣士「……何時でも、すぐに使える様に、手入れは欠かしてないけど」
鍛冶師「ああ……うん」
女剣士「……私が引退したら、あそこを使っても良いかな」
盗賊「え……あ、ああ。それは、別に構わないが……」
盗賊「城には、残ってくれない、のか」
女剣士「王子は立派に勤めるだろう。何時までも過去の人間が」
女剣士「……のさばっているのも、ね」
鍛冶師「しかし……」
女剣士「仕事がなくなったら、漸くのんびり……側近を待てるんだ」
女剣士「……ありがとう。では、私も……戻るよ」
女剣士「失礼、します!」スタスタ
カチャ、パタン
鍛冶師「……良いのか」
盗賊「引退イコール、勇者の期間後。イコール……側近、は……」
鍛冶師「……うん」
盗賊「結婚は愚か、恋愛も……する気等、無いのだろうな」
鍛冶師「…… ……うん」
盗賊「…… ……どう、言葉にすれば良いのか、解らん」
盗賊「解らない……が」
鍛冶師「……彼女の人生だ。僕たちがとやかく、言う物じゃ無いって」
鍛冶師「解ってる……つもり、なんだけどね」
盗賊「ああ…… ……勇者達は、今どの辺に居るんだろうな」
鍛冶師「そう、あっさりと進む旅じゃない、決して」
盗賊「…… ……」
鍛冶師「どうしたの?」
盗賊「いや…… ……アタシさ、実は娘が欲しかったんだよな」
鍛冶師「何、急に……」
盗賊「……王子が結婚したら、義理とは言え、念願の娘が出来るんだなぁ、と」
盗賊「思って、さ」
鍛冶師「いくら何でもまだ早いでしょ……」
288: 2013/07/18(木) NY:AN:NY.AN ID:jKAYWMHsP
盗賊「まあ、焦りすぎだよな」クスクス
鍛冶師「嬉しそうだねぇ……」
盗賊「嬉しいだろ?親としてさ」
鍛冶師「……否定はしないけどね」
盗賊「こういう当たり前の事で嬉しいと感じられるのは」
盗賊「……本当に、幸せな事なんだ」
鍛冶師「うん……」
盗賊「『両思い』って奇跡だよな。アタシ達もそうだ」
盗賊「そうやって、奇跡を繰り返して、人……否、生きているモノは繁殖して行く」
盗賊「……想いが叶わない、てのは……不思議な事じゃ無い」
盗賊「でも、アタシ達はその奇跡を……つい、普通の事の様に話してしまう」
鍛冶師「その状態を当たり前と思える、僕たちは本当に幸せなんだろうね」
盗賊「ああ……だからって、女剣士や側近を可哀想と思うのは」
盗賊「違う、と思うんだ」
盗賊「……各々、選んだ道……その腕で、手繰り寄せた確かな物だからな」
鍛冶師「……単純に喜んでおけば良い。それで良いんだよ、盗賊」
鍛冶師「僕たちの幸せは僕たちの物だ。……それで、良いんだよ」
鍛冶師「……それも、自分達で手繰り寄せた物に違いは無い。 ……し」
鍛冶師「歳取っても、変わらないね。考えすぎ……悪い癖、だよ」
盗賊「ああ……そう、だよな」
鍛冶師「悲しみも苦しみも、己だけの物だ。共感なんて、出来るはずが無い」
鍛冶師「……でも、そういう……人の、さ。痛みを」
鍛冶師「感じてしまう盗賊だからこそ、僕は好きになったんだけどね」ナデナデ
盗賊「……王子じゃネェけど、恥ずかしいよ」
鍛冶師「おばさんになっても、おばあさんになっても」
鍛冶師「僕の大事な人に変わりないからね」
盗賊「……流石にもう一人、産む元気はネェぞ」
鍛冶師「……また話ぶっとばす……照れ隠し、って知ってるけどね」
盗賊「…… ……じゃあ、態々口に出すなよ」ギュ
鍛冶師「ごめんね……」ギュ
盗賊「……悪いと思ってないだろ」
鍛冶師「ばれてた」フフ
鍛冶師「嬉しそうだねぇ……」
盗賊「嬉しいだろ?親としてさ」
鍛冶師「……否定はしないけどね」
盗賊「こういう当たり前の事で嬉しいと感じられるのは」
盗賊「……本当に、幸せな事なんだ」
鍛冶師「うん……」
盗賊「『両思い』って奇跡だよな。アタシ達もそうだ」
盗賊「そうやって、奇跡を繰り返して、人……否、生きているモノは繁殖して行く」
盗賊「……想いが叶わない、てのは……不思議な事じゃ無い」
盗賊「でも、アタシ達はその奇跡を……つい、普通の事の様に話してしまう」
鍛冶師「その状態を当たり前と思える、僕たちは本当に幸せなんだろうね」
盗賊「ああ……だからって、女剣士や側近を可哀想と思うのは」
盗賊「違う、と思うんだ」
盗賊「……各々、選んだ道……その腕で、手繰り寄せた確かな物だからな」
鍛冶師「……単純に喜んでおけば良い。それで良いんだよ、盗賊」
鍛冶師「僕たちの幸せは僕たちの物だ。……それで、良いんだよ」
鍛冶師「……それも、自分達で手繰り寄せた物に違いは無い。 ……し」
鍛冶師「歳取っても、変わらないね。考えすぎ……悪い癖、だよ」
盗賊「ああ……そう、だよな」
鍛冶師「悲しみも苦しみも、己だけの物だ。共感なんて、出来るはずが無い」
鍛冶師「……でも、そういう……人の、さ。痛みを」
鍛冶師「感じてしまう盗賊だからこそ、僕は好きになったんだけどね」ナデナデ
盗賊「……王子じゃネェけど、恥ずかしいよ」
鍛冶師「おばさんになっても、おばあさんになっても」
鍛冶師「僕の大事な人に変わりないからね」
盗賊「……流石にもう一人、産む元気はネェぞ」
鍛冶師「……また話ぶっとばす……照れ隠し、って知ってるけどね」
盗賊「…… ……じゃあ、態々口に出すなよ」ギュ
鍛冶師「ごめんね……」ギュ
盗賊「……悪いと思ってないだろ」
鍛冶師「ばれてた」フフ
293: 2013/07/19(金) NY:AN:NY.AN ID:VbjjfteZP
……
………
…………
使用人「側近様?」コンコン
側近「はいよー」
使用人「魔除けの石の様子を見たいので、入りますよ」カチャ
側近「魔王様、ほら……使用人ちゃんが来たぞ」
魔王「…… ……ゥ」
使用人「相変わらず、ですか……」
側近「まあ……顔は見えないからな。何とも言えないけど」
側近「今のところ、現状維持だな」
使用人「……真っ黒ですね、魔除けの石」
側近「て、事は……効果ある、て考えて良いのかな」
使用人「気休めと言ってしまえばそれまでですけど……」
使用人「また、手紙を出しておきます。側近様、何か頼む物あります?」
側近「いや、これと言って別に。まあ、状況を知らせて欲しい位かな」
使用人「……ずっと、庭の手入れをしているんですけど」
側近「うん?」
使用人「花がね……あまり、枯れなくなったんです」
使用人「やっぱり……効果ある、んでしょうね」
側近「このカーテンも効いてるんじゃない?」
使用人「……どう、なんでしょうね」
側近「色とか変わって無いか?」
使用人「特には……毒にも薬にもならないなら」
使用人「それはそれで、良し、です」
側近「考えて頑張ってくれたんだから。きっと何かしら、良い風になってんのさ」
使用人「……軽率でした」
側近「まだ言ってんの……」
使用人「まさか、引き金になるとは……思いつかなかったんです」
側近「それも可能性の一つ、てだけだ」
使用人「…… ……」
側近「あんま気にスンナ、って……今、大丈夫なんだからさ」
側近「なあ、魔王様?」
魔王「…… ……」
………
…………
使用人「側近様?」コンコン
側近「はいよー」
使用人「魔除けの石の様子を見たいので、入りますよ」カチャ
側近「魔王様、ほら……使用人ちゃんが来たぞ」
魔王「…… ……ゥ」
使用人「相変わらず、ですか……」
側近「まあ……顔は見えないからな。何とも言えないけど」
側近「今のところ、現状維持だな」
使用人「……真っ黒ですね、魔除けの石」
側近「て、事は……効果ある、て考えて良いのかな」
使用人「気休めと言ってしまえばそれまでですけど……」
使用人「また、手紙を出しておきます。側近様、何か頼む物あります?」
側近「いや、これと言って別に。まあ、状況を知らせて欲しい位かな」
使用人「……ずっと、庭の手入れをしているんですけど」
側近「うん?」
使用人「花がね……あまり、枯れなくなったんです」
使用人「やっぱり……効果ある、んでしょうね」
側近「このカーテンも効いてるんじゃない?」
使用人「……どう、なんでしょうね」
側近「色とか変わって無いか?」
使用人「特には……毒にも薬にもならないなら」
使用人「それはそれで、良し、です」
側近「考えて頑張ってくれたんだから。きっと何かしら、良い風になってんのさ」
使用人「……軽率でした」
側近「まだ言ってんの……」
使用人「まさか、引き金になるとは……思いつかなかったんです」
側近「それも可能性の一つ、てだけだ」
使用人「…… ……」
側近「あんま気にスンナ、って……今、大丈夫なんだからさ」
側近「なあ、魔王様?」
魔王「…… ……」
294: 2013/07/19(金) NY:AN:NY.AN ID:VbjjfteZP
使用人「まあ……あんまり、気にしない様にします」フゥ
側近「うん……あ、後さ、使用人ちゃん」
使用人「はい?」
側近「船長にさ、可能なら、で良いから」
側近「……盗賊達に謝っておいて、て伝えておいて」
使用人「そっちも、気にしすぎですよ」
使用人「そんなに悔やむなら一言かけてくれば良かったのに、て」
使用人「思います、けど……あれが、最善だったんでしょう?」
側近「まあね……まあ、ほら。別に後悔してる訳じゃ無くてな」
側近「……この間は、伝えそびれたから」
使用人「手紙に、記しておきますよ。また……来られた時にも」
使用人「改めて伝えますけど……」
側近「……うん。間に合うかわかんないしな」
使用人「…… ……」
側近「そんな顔すんなって」
使用人「見えてないでしょう」
側近「なんと無く解るよ。大丈夫さ」
側近「……勇者と約束、したんだろ」
使用人「……はい。そうですね」
使用人「ちゃんと……信じてますよ」
……
………
…………
コンコン
勇者「はい?」
息子「おはようございます、勇者様方。起きていらっしゃいますか?」
僧侶「この声……」
魔法使い「あいつか……」
戦士「誰だ?」
側近「うん……あ、後さ、使用人ちゃん」
使用人「はい?」
側近「船長にさ、可能なら、で良いから」
側近「……盗賊達に謝っておいて、て伝えておいて」
使用人「そっちも、気にしすぎですよ」
使用人「そんなに悔やむなら一言かけてくれば良かったのに、て」
使用人「思います、けど……あれが、最善だったんでしょう?」
側近「まあね……まあ、ほら。別に後悔してる訳じゃ無くてな」
側近「……この間は、伝えそびれたから」
使用人「手紙に、記しておきますよ。また……来られた時にも」
使用人「改めて伝えますけど……」
側近「……うん。間に合うかわかんないしな」
使用人「…… ……」
側近「そんな顔すんなって」
使用人「見えてないでしょう」
側近「なんと無く解るよ。大丈夫さ」
側近「……勇者と約束、したんだろ」
使用人「……はい。そうですね」
使用人「ちゃんと……信じてますよ」
……
………
…………
コンコン
勇者「はい?」
息子「おはようございます、勇者様方。起きていらっしゃいますか?」
僧侶「この声……」
魔法使い「あいつか……」
戦士「誰だ?」
295: 2013/07/19(金) NY:AN:NY.AN ID:VbjjfteZP
息子「ああ、失礼。私は領主の息子です」
息子「お邪魔しても宜しいかな」カチャ……ガチャ!
勇者「あ、鍵……」スタスタ、カチャ
勇者「おはようございます、息子さん」
息子「……ああ、貴方が勇者様ですね」チラ
息子「おや……」
勇者「部屋が立派すぎて眠れないって言うからね」
戦士「椅子、片付けて置いて良かったな」ヒソ
魔法使い「シ……ッ」ヒソ
息子「そうですか。失礼の無い様にと二部屋用意したんですが」
スタスタ
女「お兄様、お食事の準備が整いました」
魔法使い「お兄様?」
息子「ああ、ご苦労だった……ああ、これは私の妹です」
女「どうぞ、勇者様……覚めない内に、召し上がって下さい」
勇者「あ、いや……あの」
僧侶「ありがとうございます。行きましょう、勇者様」ギュ
勇者(う、腕組んできた!? ……む。胸があた、あた、あ……当たってる!)
魔法使い「そうね。出発の準備も済んだし、折角だから頂きましょう」
魔法使い「こんなに豪華なご飯、もう食べられないわよ、船に乗ったら」
勇者(露骨なアピールだな……まあ、良いか)ハァ
息子「……もう、発たれるおつもりで?」
戦士「魔王は待ってはくれないだろ?」
女「……先に行きます。お兄様もご一緒なさいますでしょう」
息子「あ、ああ……では、どうぞ。お話は向こうで……」
息子「お邪魔しても宜しいかな」カチャ……ガチャ!
勇者「あ、鍵……」スタスタ、カチャ
勇者「おはようございます、息子さん」
息子「……ああ、貴方が勇者様ですね」チラ
息子「おや……」
勇者「部屋が立派すぎて眠れないって言うからね」
戦士「椅子、片付けて置いて良かったな」ヒソ
魔法使い「シ……ッ」ヒソ
息子「そうですか。失礼の無い様にと二部屋用意したんですが」
スタスタ
女「お兄様、お食事の準備が整いました」
魔法使い「お兄様?」
息子「ああ、ご苦労だった……ああ、これは私の妹です」
女「どうぞ、勇者様……覚めない内に、召し上がって下さい」
勇者「あ、いや……あの」
僧侶「ありがとうございます。行きましょう、勇者様」ギュ
勇者(う、腕組んできた!? ……む。胸があた、あた、あ……当たってる!)
魔法使い「そうね。出発の準備も済んだし、折角だから頂きましょう」
魔法使い「こんなに豪華なご飯、もう食べられないわよ、船に乗ったら」
勇者(露骨なアピールだな……まあ、良いか)ハァ
息子「……もう、発たれるおつもりで?」
戦士「魔王は待ってはくれないだろ?」
女「……先に行きます。お兄様もご一緒なさいますでしょう」
息子「あ、ああ……では、どうぞ。お話は向こうで……」
296: 2013/07/19(金) NY:AN:NY.AN ID:VbjjfteZP
勇者「……行こうか、僧侶」
僧侶「うん」ギュ
魔法使い(声裏返ってるわよ、勇者……)
戦士(天然って怖いねぇ……)
息子「……しかし、急ですね。もう少し滞在して下さるとばかり」スタスタ
勇者「さっき戦士も言いましたが、魔王は待ってはくれませんから」
息子「そ、それは……まあ、そうですが」
勇者「図書館に寄って、今日の夕方の便で発ちます。お世話になりました」
息子「いいえ……父にはお話になりましたか?」
勇者「お忙しいのでしょう。昨日この街へ来た時から、お会いしていませんよ」
息子「そうですか……まあ、どうぞ」キィ
女「どうぞ、お座りになってください」
息子「……女、お父様を呼んできなさい」
女「はい」
魔法使い「伝えて貰えれば結構ですよ。ねぇ?」
戦士「ああ」
息子「まあ、お気になさらずどうぞ」
僧侶「女さんを待ってなくて良いんですか」
息子「すぐに戻るでしょう。大丈夫ですよ」
勇者「お言葉に甘えて頂こう」
僧侶「そうですか……あの、息子さん」
息子「はい、何でしょう?」ニコ
僧侶「……この建物、変わった作りをしていますよね」
息子「え、ええ……まあ。そうですね」
息子「……父の、領主の別宅ですから」
魔法使い「別宅?」
息子「……ええ。こうして、勇者様の様に」
息子「特別なお客様をお迎えするための、ね」
勇者「……で、あのでっかいお風呂に扉が幾つも?」
息子「もし何かあった時、すぐに駆けつけられないと困りますからね」
カチャ
僧侶「うん」ギュ
魔法使い(声裏返ってるわよ、勇者……)
戦士(天然って怖いねぇ……)
息子「……しかし、急ですね。もう少し滞在して下さるとばかり」スタスタ
勇者「さっき戦士も言いましたが、魔王は待ってはくれませんから」
息子「そ、それは……まあ、そうですが」
勇者「図書館に寄って、今日の夕方の便で発ちます。お世話になりました」
息子「いいえ……父にはお話になりましたか?」
勇者「お忙しいのでしょう。昨日この街へ来た時から、お会いしていませんよ」
息子「そうですか……まあ、どうぞ」キィ
女「どうぞ、お座りになってください」
息子「……女、お父様を呼んできなさい」
女「はい」
魔法使い「伝えて貰えれば結構ですよ。ねぇ?」
戦士「ああ」
息子「まあ、お気になさらずどうぞ」
僧侶「女さんを待ってなくて良いんですか」
息子「すぐに戻るでしょう。大丈夫ですよ」
勇者「お言葉に甘えて頂こう」
僧侶「そうですか……あの、息子さん」
息子「はい、何でしょう?」ニコ
僧侶「……この建物、変わった作りをしていますよね」
息子「え、ええ……まあ。そうですね」
息子「……父の、領主の別宅ですから」
魔法使い「別宅?」
息子「……ええ。こうして、勇者様の様に」
息子「特別なお客様をお迎えするための、ね」
勇者「……で、あのでっかいお風呂に扉が幾つも?」
息子「もし何かあった時、すぐに駆けつけられないと困りますからね」
カチャ
297: 2013/07/19(金) NY:AN:NY.AN ID:VbjjfteZP
領主「勇者様!」
勇者「あ……おはよう御座います」
領主「今日発たれると言うのは……!?」
勇者「はい。夕方の便で」
領主「……し、しかし急すぎませんかな。私どもとしてはもう少し……」
勇者「息子さん達にも言いましたけど、魔王は待ってくれませんから」
領主「し……しかし、ですな……」
勇者「世界が平和になれば、またゆっくりとご挨拶に参る事もできますし」
領主「……で、では、魔王を倒せばまた、この街に戻って来て下さると?」
勇者「まあ……顔を出すことはあるかもしれませんが」
領主「勇者様は、始まりの街のご出身、でしたかな」
勇者「……お世話にはなってましたけど、それが何か」
領主「でしたら、是非……この街に居をお構え下さい!」
領主「喜んでご用意致しますよ!」
勇者「い、いえ、そんな訳には!」
魔法使い「……必氏ね」ボソ
戦士「聞こえるぞ……」ボソ
領主「ご遠慮などなさらず!」
勇者「もし、永住の地を求めるなら、やはり始まりの街にすると思います」
勇者「盗賊……王様は、俺の保護者の知人でもありますから」
領主「え……!?」
勇者「お気持ちは、ありがたく頂いておきます」
領主「……そ、そうですか、お知り合い、なのですか」
勇者「ご馳走様でした。良し、みんな行こうか」
僧侶「うん。美味しかったです、ありがとうございました」
魔法使い「荷物も持ってきたから、すぐ出れるわよ」
戦士「おう……世話になったな」
勇者「あ……おはよう御座います」
領主「今日発たれると言うのは……!?」
勇者「はい。夕方の便で」
領主「……し、しかし急すぎませんかな。私どもとしてはもう少し……」
勇者「息子さん達にも言いましたけど、魔王は待ってくれませんから」
領主「し……しかし、ですな……」
勇者「世界が平和になれば、またゆっくりとご挨拶に参る事もできますし」
領主「……で、では、魔王を倒せばまた、この街に戻って来て下さると?」
勇者「まあ……顔を出すことはあるかもしれませんが」
領主「勇者様は、始まりの街のご出身、でしたかな」
勇者「……お世話にはなってましたけど、それが何か」
領主「でしたら、是非……この街に居をお構え下さい!」
領主「喜んでご用意致しますよ!」
勇者「い、いえ、そんな訳には!」
魔法使い「……必氏ね」ボソ
戦士「聞こえるぞ……」ボソ
領主「ご遠慮などなさらず!」
勇者「もし、永住の地を求めるなら、やはり始まりの街にすると思います」
勇者「盗賊……王様は、俺の保護者の知人でもありますから」
領主「え……!?」
勇者「お気持ちは、ありがたく頂いておきます」
領主「……そ、そうですか、お知り合い、なのですか」
勇者「ご馳走様でした。良し、みんな行こうか」
僧侶「うん。美味しかったです、ありがとうございました」
魔法使い「荷物も持ってきたから、すぐ出れるわよ」
戦士「おう……世話になったな」
298: 2013/07/19(金) NY:AN:NY.AN ID:VbjjfteZP
勇者「じゃあ、失礼致します」スタスタ
カチャ、パタン
僧侶「……王様、知り合いだったんだ」
勇者「だからまあ……側近もあの街を、王様を頼ったんだと思うよ」
魔法使い「…… ……」ピト
戦士「何やってんだよ、魔法使い……扉に張り付いて」
魔法使い「し……ッ」
領主「…… ッ だか…… ……不甲斐な……」
戦士「何だ?」ピト
僧侶「……んん ……聞こえにくい」ピト
勇者「お前らな……」ピト
魔法使い「勇者、言動が一致してない」
息子「……勇者を慕っているのだとすれば、無理強いはできませんよ」
領主「ええい、お前もか、女!」
女「逃げられてしまったんだもの! ……風呂からの扉は開かないし」
息子「全員同じ部屋に居るとは思いませんでしたよ!」
領主「糞……ッ しかし、あれほど言っただろう、船の時間を知らせるな、と!」
女「それも私じゃ無いわ! ……聞かれたけど、私は言ってないわよ」
領主「……召使いの誰かか……!糞、『出来損ない』の分際で……ッ」
息子「……『劣等種』に期待する方が間違いなんだよ、お父様」
領主「その言葉は口に出すな!」
女「劣等種も出来損ないも似た様なモンでしょうに」
領主「それでも、だ……勇者の耳に入ると厄介だろう」
領主「……見張りはちゃんとつけてあるんだろうな」
息子「勇者と僧侶にはね」
領主「残りの二人など、どうでも良い。例え勇者の仲間だろうが」
領主「出来損ないに用など無い」
カチャ、パタン
僧侶「……王様、知り合いだったんだ」
勇者「だからまあ……側近もあの街を、王様を頼ったんだと思うよ」
魔法使い「…… ……」ピト
戦士「何やってんだよ、魔法使い……扉に張り付いて」
魔法使い「し……ッ」
領主「…… ッ だか…… ……不甲斐な……」
戦士「何だ?」ピト
僧侶「……んん ……聞こえにくい」ピト
勇者「お前らな……」ピト
魔法使い「勇者、言動が一致してない」
息子「……勇者を慕っているのだとすれば、無理強いはできませんよ」
領主「ええい、お前もか、女!」
女「逃げられてしまったんだもの! ……風呂からの扉は開かないし」
息子「全員同じ部屋に居るとは思いませんでしたよ!」
領主「糞……ッ しかし、あれほど言っただろう、船の時間を知らせるな、と!」
女「それも私じゃ無いわ! ……聞かれたけど、私は言ってないわよ」
領主「……召使いの誰かか……!糞、『出来損ない』の分際で……ッ」
息子「……『劣等種』に期待する方が間違いなんだよ、お父様」
領主「その言葉は口に出すな!」
女「劣等種も出来損ないも似た様なモンでしょうに」
領主「それでも、だ……勇者の耳に入ると厄介だろう」
領主「……見張りはちゃんとつけてあるんだろうな」
息子「勇者と僧侶にはね」
領主「残りの二人など、どうでも良い。例え勇者の仲間だろうが」
領主「出来損ないに用など無い」
299: 2013/07/19(金) NY:AN:NY.AN ID:VbjjfteZP
息子「でも、見張らせても……もう意味無いだろう」
息子「船で出るとか言うし……」
領主「構わん。隙があればあの二人の変わりに」
領主「同行する様、言いつけてある」
領主「優秀な人間の方が勇者の助けになるはずだ。魔王を倒す一向に」
領主「我が血族が居たとなれば、それだけでも名誉になる」
女「……お父様、あっちはどうなっているのよ」
領主「調べさせては居るが、次期国王は殆ど城から出てこないらしい」
女「騎士団に入ったって言う方は?」
領主「あれは放っておけば良い。兄の方だろう」
領主「血筋であれど、王となる者で無いなら意味が無い」
女「……やはり弟の方ね」
息子「勇者の方は私がどうにかしよう。女、お前は始まりの街に行け」
息子「……なんとしても、弟の方を陥落するんだ」
女「解ったわ……勇者の方が魅力的だけどね。仕方無いわね……」
領主「良し。では私は行くぞ」
領主「北の大陸に送り込んだ奴の報告を聞かねばならん」
勇者「……」
魔法使い「……」
僧侶「弟王子様……ッ」
戦士「し……ッ 出て来るぞ、急げ!」
パタパタ……
……
………
…………
息子「船で出るとか言うし……」
領主「構わん。隙があればあの二人の変わりに」
領主「同行する様、言いつけてある」
領主「優秀な人間の方が勇者の助けになるはずだ。魔王を倒す一向に」
領主「我が血族が居たとなれば、それだけでも名誉になる」
女「……お父様、あっちはどうなっているのよ」
領主「調べさせては居るが、次期国王は殆ど城から出てこないらしい」
女「騎士団に入ったって言う方は?」
領主「あれは放っておけば良い。兄の方だろう」
領主「血筋であれど、王となる者で無いなら意味が無い」
女「……やはり弟の方ね」
息子「勇者の方は私がどうにかしよう。女、お前は始まりの街に行け」
息子「……なんとしても、弟の方を陥落するんだ」
女「解ったわ……勇者の方が魅力的だけどね。仕方無いわね……」
領主「良し。では私は行くぞ」
領主「北の大陸に送り込んだ奴の報告を聞かねばならん」
勇者「……」
魔法使い「……」
僧侶「弟王子様……ッ」
戦士「し……ッ 出て来るぞ、急げ!」
パタパタ……
……
………
…………
303: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
戦士「なんて言うか、まぁ……」
魔法使い「さっさと出て正解だったわね」
僧侶「…… ……」
勇者「僧侶、どうした?」
僧侶「大丈夫なのかな、弟王子様……」
勇者「王様達も、王子も……女剣士も居るんだ」
勇者「……後は、弟王子に見る目があると思いたい、けどね」
魔法使い「勇者、王様の事もよく知ってる、んでしょう?」
勇者「俺が、と言うより側近が……なんだが」
魔法使い「弟王子様って、病弱……なんだっけ?」
勇者「ん、まあ……確かに、小さい頃からあんまり外には出てこなかったし」
勇者「良く熱出したりはしてたけど……」
僧侶「こういう可能性も考えていらっしゃったのかしら」
戦士「ん?」
僧侶「あんまり、人目に触れさせない、理由。私、多分戦士や魔法使い程」
僧侶「あの街の事も、王様達の事も知らないけど」
僧侶「……次期国王になるなら、誘惑も多いだろうから、さ」
戦士「言ってることは解らんでも無いが、何時までも親が守ってやれる訳じゃないぞ」
僧侶「……ああ、そうか」
魔法使い「心配は心配だけど、戻る訳には……どう、なのかしら」
勇者「……大丈夫だと思いたい、けどな」
勇者「騎士団には、あの街の住人しかなれないだろ?」
勇者「それに……いや、まあ、幾らでも出身地の偽装なんかは出来るだろうけど」
戦士「そうだなぁ。きちんと身元が保証される奴しか」
戦士「入団は許されないはずだ」
勇者「……忠告しに戻りたい、のは山々だけど……」
僧侶「とりあえず、今は時間が無いよ。この街を出るのが先だよ」
僧侶「港街に出る船の時間、一応確かめておこう?」
勇者「え?」
僧侶「……あの人達の不利になる情報が載ってる本なんて無いと思うけど」
僧侶「図書館、行ってみようよ」
戦士「そうだな。考え事は移動時間でも出来る」
魔法使い「さっさと出て正解だったわね」
僧侶「…… ……」
勇者「僧侶、どうした?」
僧侶「大丈夫なのかな、弟王子様……」
勇者「王様達も、王子も……女剣士も居るんだ」
勇者「……後は、弟王子に見る目があると思いたい、けどね」
魔法使い「勇者、王様の事もよく知ってる、んでしょう?」
勇者「俺が、と言うより側近が……なんだが」
魔法使い「弟王子様って、病弱……なんだっけ?」
勇者「ん、まあ……確かに、小さい頃からあんまり外には出てこなかったし」
勇者「良く熱出したりはしてたけど……」
僧侶「こういう可能性も考えていらっしゃったのかしら」
戦士「ん?」
僧侶「あんまり、人目に触れさせない、理由。私、多分戦士や魔法使い程」
僧侶「あの街の事も、王様達の事も知らないけど」
僧侶「……次期国王になるなら、誘惑も多いだろうから、さ」
戦士「言ってることは解らんでも無いが、何時までも親が守ってやれる訳じゃないぞ」
僧侶「……ああ、そうか」
魔法使い「心配は心配だけど、戻る訳には……どう、なのかしら」
勇者「……大丈夫だと思いたい、けどな」
勇者「騎士団には、あの街の住人しかなれないだろ?」
勇者「それに……いや、まあ、幾らでも出身地の偽装なんかは出来るだろうけど」
戦士「そうだなぁ。きちんと身元が保証される奴しか」
戦士「入団は許されないはずだ」
勇者「……忠告しに戻りたい、のは山々だけど……」
僧侶「とりあえず、今は時間が無いよ。この街を出るのが先だよ」
僧侶「港街に出る船の時間、一応確かめておこう?」
勇者「え?」
僧侶「……あの人達の不利になる情報が載ってる本なんて無いと思うけど」
僧侶「図書館、行ってみようよ」
戦士「そうだな。考え事は移動時間でも出来る」
304: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
魔法使い「勇者と僧侶は先に行って?私と戦士で船の時間、確認しに行きましょ」
勇者「しかし、見張りとやらが……」
戦士「いくら何でも街の中は大丈夫だろう。俺達が『勇者様御一行』てのは」
戦士「昨日のあの歓迎のパフォーマンスで、逆に知らしめてくれてるんだ」
僧侶「そうだね」
戦士「俺一人で行ってくるから、お前も先に行けよ魔法使い」
魔法使い「私もアンタと一緒に行くわよ。大丈夫だとは思うけど」
魔法使い「……一人にはなるべきじゃ無いわよ」
勇者「うん。俺もその方が良いと思う……ごめんな、魔法使い」
勇者「図書館、行きたかったんだろうに」
魔法使い「閲覧時間が減るだけよ。大袈裟ね」
僧侶「勇者、手繋いで良い?」
勇者「え!?」
僧侶「領主さんは私達に見張りつけてるって言ってたからさ」
魔法使い「戦士と私にも、って考えておいた方が良いと思うけどね」
戦士「何、お前も俺と手、繋ぎたいの?」
魔法使い「…… ……アンタ本当に、脳みそまで筋肉で出来てるんじゃないの」
戦士「ど、どういう意味だよ、そりゃ!」
勇者「気を抜かないに越したことは無いな」
僧侶「二人とも、気をつけてね」ギュ
勇者(柔らかいなぁ、本当に……)
戦士「顔赤いぜ、勇者」ニヤニヤ
戦士「良し、さっさと行ってくるわ、行くぞ、魔法使い」ギュ。スタスタ
魔法使い「ちょ、ちょっと、人の話聞いてた!?」タタタ
勇者「あ、阿呆!煩いわ!」
僧侶「勇者?」
勇者「しかし、見張りとやらが……」
戦士「いくら何でも街の中は大丈夫だろう。俺達が『勇者様御一行』てのは」
戦士「昨日のあの歓迎のパフォーマンスで、逆に知らしめてくれてるんだ」
僧侶「そうだね」
戦士「俺一人で行ってくるから、お前も先に行けよ魔法使い」
魔法使い「私もアンタと一緒に行くわよ。大丈夫だとは思うけど」
魔法使い「……一人にはなるべきじゃ無いわよ」
勇者「うん。俺もその方が良いと思う……ごめんな、魔法使い」
勇者「図書館、行きたかったんだろうに」
魔法使い「閲覧時間が減るだけよ。大袈裟ね」
僧侶「勇者、手繋いで良い?」
勇者「え!?」
僧侶「領主さんは私達に見張りつけてるって言ってたからさ」
魔法使い「戦士と私にも、って考えておいた方が良いと思うけどね」
戦士「何、お前も俺と手、繋ぎたいの?」
魔法使い「…… ……アンタ本当に、脳みそまで筋肉で出来てるんじゃないの」
戦士「ど、どういう意味だよ、そりゃ!」
勇者「気を抜かないに越したことは無いな」
僧侶「二人とも、気をつけてね」ギュ
勇者(柔らかいなぁ、本当に……)
戦士「顔赤いぜ、勇者」ニヤニヤ
戦士「良し、さっさと行ってくるわ、行くぞ、魔法使い」ギュ。スタスタ
魔法使い「ちょ、ちょっと、人の話聞いてた!?」タタタ
勇者「あ、阿呆!煩いわ!」
僧侶「勇者?」
305: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
勇者「あ、あ……いや、うん。図書館、何処かな」
僧侶「多分、あの大きな建物でしょ……新しそうだし」スタスタ
勇者「う、うん」スタスタ
キィ……
僧侶「……わ、広い」
勇者「暗いな……」
司書「いらっしゃいませ。何の本を……あ!」
勇者「……」ハァ
勇者(又……『勇者様』か)
司書「勇者様、でいらっしゃいますか」
勇者「……はい」
僧侶「……気にしないの」ボソ
勇者「解ってるよ……」
司書「では昨日のあの港の騒ぎは、本当に勇者様の到着を祝う物だったんですね」
僧侶「あ、あの……領主様に、自由に閲覧して良いって言われたんですが」
司書「はい、聞いています……が、本当だったんですね」
勇者「え?」
司書「いえ……その、僕は……」
司書「……いえ、何でもありません」
僧侶「?」
司書「何の本をお探しですか?ここは広いですから」
司書「お探しするの、手伝わせて頂きますよ」
勇者「一般人には閲覧出来ない物もあるんですか?」
司書「ええ、まあ……奥に鍵のついた扉がある部屋があるのですが」
司書「その中の物は、古くからこの街に住んでいる人達にしか」
司書「入る事が許されていません」
僧侶「それは……私達は、見せて貰える、んですか」
司書「ええ。係の者が別に居ますので」
司書「ご利用されるなら、案内させて頂きますよ」
僧侶「多分、あの大きな建物でしょ……新しそうだし」スタスタ
勇者「う、うん」スタスタ
キィ……
僧侶「……わ、広い」
勇者「暗いな……」
司書「いらっしゃいませ。何の本を……あ!」
勇者「……」ハァ
勇者(又……『勇者様』か)
司書「勇者様、でいらっしゃいますか」
勇者「……はい」
僧侶「……気にしないの」ボソ
勇者「解ってるよ……」
司書「では昨日のあの港の騒ぎは、本当に勇者様の到着を祝う物だったんですね」
僧侶「あ、あの……領主様に、自由に閲覧して良いって言われたんですが」
司書「はい、聞いています……が、本当だったんですね」
勇者「え?」
司書「いえ……その、僕は……」
司書「……いえ、何でもありません」
僧侶「?」
司書「何の本をお探しですか?ここは広いですから」
司書「お探しするの、手伝わせて頂きますよ」
勇者「一般人には閲覧出来ない物もあるんですか?」
司書「ええ、まあ……奥に鍵のついた扉がある部屋があるのですが」
司書「その中の物は、古くからこの街に住んでいる人達にしか」
司書「入る事が許されていません」
僧侶「それは……私達は、見せて貰える、んですか」
司書「ええ。係の者が別に居ますので」
司書「ご利用されるなら、案内させて頂きますよ」
306: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
僧侶「どうする?」
勇者「戦士達が来てからにしようか。取りあえず、僧侶は何を見たかったんだ?」
僧侶「まあ、中々見る機会の無い魔導書とか見たかった、んだけど……」
僧侶「……」
勇者「僧侶?」
僧侶「あの……すみません」
司書「はい?」
僧侶「この建物、最近出来た、んですよね?」
僧侶「大きな図書館が出来た、と聞いてたんですけど……」
勇者「ん? ……ああ、そういえば中は随分古い、よな」
司書「正確には外側の改修と増築、ですね」
司書「この図書館自体は古いそうですよ」
僧侶「増築……」
司書「僕も……あまり良くは知らないんです」
司書「最近、とは言いませんが……この街に居住を許されて」
司書「長い訳では無いので」
僧侶「そうなんですか?」
司書「ええ……僕は港街の方から、引っ越して来たので」
勇者「え!? ……あ、じゃ、じゃあ……女神官さん、知ってます、か?」
司書「……寄ってこられた、んですか!?あの教会に……!」
僧侶「じゃあ、貴方が……!」
司書「そう、でしたか……」
勇者「戦士達が来てからにしようか。取りあえず、僧侶は何を見たかったんだ?」
僧侶「まあ、中々見る機会の無い魔導書とか見たかった、んだけど……」
僧侶「……」
勇者「僧侶?」
僧侶「あの……すみません」
司書「はい?」
僧侶「この建物、最近出来た、んですよね?」
僧侶「大きな図書館が出来た、と聞いてたんですけど……」
勇者「ん? ……ああ、そういえば中は随分古い、よな」
司書「正確には外側の改修と増築、ですね」
司書「この図書館自体は古いそうですよ」
僧侶「増築……」
司書「僕も……あまり良くは知らないんです」
司書「最近、とは言いませんが……この街に居住を許されて」
司書「長い訳では無いので」
僧侶「そうなんですか?」
司書「ええ……僕は港街の方から、引っ越して来たので」
勇者「え!? ……あ、じゃ、じゃあ……女神官さん、知ってます、か?」
司書「……寄ってこられた、んですか!?あの教会に……!」
僧侶「じゃあ、貴方が……!」
司書「そう、でしたか……」
307: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
勇者「では、貴方も優れた加護って奴を持っているんだな」
司書「あ……いえ……」
僧侶「え?でも……」
キィ、パタン
魔法使い「あ、居た居た、勇者と僧侶」
戦士「最終便はどっちも夕刻過ぎだな。どっちに乗るか決めておけば良いだろう」
勇者「そうか……」
司書「おいでになりましたね。奥へご案内致しましょうか?」
魔法使い「奥?」
僧侶「鍵付きの部屋があるんだって。見せてくれるって言ってたでしょう、領主さん」
戦士「しっかし広いなぁ、此処も……」
司書「どうぞ……」スタスタ
魔法使い「……随分、古くない?」
僧侶「新しく大きな図書館が出来た、って外側の改修と増築なんだって」
戦士「本が一杯ある……」
勇者「図書館なんだから当たり前だろ……何言ってんだ」
司書「失礼します、受付様」
受付「ああ……勇者様ですね。領主様から伺っております」
受付「……ただし、お入りになられるのは勇者様と、僧侶様のみでお願い致します」
魔法使い「え!?何で!?」
受付「何分、中は狭くなっておりますので」
戦士「…… ……露骨だなぁ」ボソ
司書「……では、お願い致します」
僧侶「え…… ……うぅん、仕方無い、か……」
司書「僕は丁度休憩時間です。後のお二人、宜しければ街をご案内致しましょう」
受付「ああ、それは良い事です。ではお二人様、どうぞ?」
司書「……お時間、限られて居られるのでしょう。いってらっしゃいませ」
勇者「……ああ」
戦士「マジかよ……」
司書「行きましょう、お二人様」スタスタ
魔法使い「……もう!」
カチャカチャ……キィ
魔法使い「勇者!入口で待ち合わせよ!」
司書「あ……いえ……」
僧侶「え?でも……」
キィ、パタン
魔法使い「あ、居た居た、勇者と僧侶」
戦士「最終便はどっちも夕刻過ぎだな。どっちに乗るか決めておけば良いだろう」
勇者「そうか……」
司書「おいでになりましたね。奥へご案内致しましょうか?」
魔法使い「奥?」
僧侶「鍵付きの部屋があるんだって。見せてくれるって言ってたでしょう、領主さん」
戦士「しっかし広いなぁ、此処も……」
司書「どうぞ……」スタスタ
魔法使い「……随分、古くない?」
僧侶「新しく大きな図書館が出来た、って外側の改修と増築なんだって」
戦士「本が一杯ある……」
勇者「図書館なんだから当たり前だろ……何言ってんだ」
司書「失礼します、受付様」
受付「ああ……勇者様ですね。領主様から伺っております」
受付「……ただし、お入りになられるのは勇者様と、僧侶様のみでお願い致します」
魔法使い「え!?何で!?」
受付「何分、中は狭くなっておりますので」
戦士「…… ……露骨だなぁ」ボソ
司書「……では、お願い致します」
僧侶「え…… ……うぅん、仕方無い、か……」
司書「僕は丁度休憩時間です。後のお二人、宜しければ街をご案内致しましょう」
受付「ああ、それは良い事です。ではお二人様、どうぞ?」
司書「……お時間、限られて居られるのでしょう。いってらっしゃいませ」
勇者「……ああ」
戦士「マジかよ……」
司書「行きましょう、お二人様」スタスタ
魔法使い「……もう!」
カチャカチャ……キィ
魔法使い「勇者!入口で待ち合わせよ!」
308: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
司書「休憩は一時間です。その時に、お連れ致しますよ」
勇者「わかった」
僧侶「……見れるだけ見ちゃおう、勇者様」
パタン
戦士「……おい、どうにかならないのか!?」
司書「お静かに……後でご説明致しますから」
戦士「説明?」
司書「……街の入口に、ケーキの美味しいお店があるんです」
司書「そこへ行きましょう」
魔法使い「……良いわよ、別に。適当に時間潰してるから」
司書「……女神官様、お元気でした?」
魔法使い「!」
戦士「……アンタが……!?」
司書「此処を離れる迄はお静かに」
カチャ、パタン
司書「昨夜は、宿にお泊まりだったんですか?」
魔法使い「いえ……領主様の別宅、とやらに、よ」
戦士「家二軒も持ってりゃ、掃除大変だよなぁ……」
司書「召使いが大勢、居ますから……大丈夫ですよ」
司書「そうですか……あそこに」フゥ
魔法使い「あ……あれかしら?」
戦士「随分可愛らしい店だな……」
司書「僕、甘い物好きなんですけどね……一人では中々入れなくて」
司書「……さあ、どうぞ」
勇者「わかった」
僧侶「……見れるだけ見ちゃおう、勇者様」
パタン
戦士「……おい、どうにかならないのか!?」
司書「お静かに……後でご説明致しますから」
戦士「説明?」
司書「……街の入口に、ケーキの美味しいお店があるんです」
司書「そこへ行きましょう」
魔法使い「……良いわよ、別に。適当に時間潰してるから」
司書「……女神官様、お元気でした?」
魔法使い「!」
戦士「……アンタが……!?」
司書「此処を離れる迄はお静かに」
カチャ、パタン
司書「昨夜は、宿にお泊まりだったんですか?」
魔法使い「いえ……領主様の別宅、とやらに、よ」
戦士「家二軒も持ってりゃ、掃除大変だよなぁ……」
司書「召使いが大勢、居ますから……大丈夫ですよ」
司書「そうですか……あそこに」フゥ
魔法使い「あ……あれかしら?」
戦士「随分可愛らしい店だな……」
司書「僕、甘い物好きなんですけどね……一人では中々入れなくて」
司書「……さあ、どうぞ」
309: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
イラッシャイマセー!
魔法使い「私、チョコレートパフェ!」
戦士「俺は……アイスコーヒー」
司書「僕はチーズケーキと紅茶を」
魔法使い「……で、説明、って?」
司書「あの奥の部屋は、この街に古くから住んでいる者しか」
司書「入る事を許されないんです。イコール……」
魔法使い「優れた加護を持つ者」
司書「……はい。僕は、何年か前に此処に転居して来た所ですし」
司書「そんな……加護を持っている訳では無いので、入れないんです」
戦士「ん?この街に住めるのって……魔法に優れた者、じゃ無いのか?」
司書「全員が全員、そうではありませんよ。『領主の血筋』の者は」
司書「皆……優れた加護を受けては居ます、が」
魔法使い「まずそれが信じられないわ。親から確実に受け継がれる物じゃ無いのに!」
司書「……ええ。ですから……持たない者は、間引かれます」
魔法使い「間……引く?」
司書「家を追放されるんです……否、居なかった事にされると言う方が」
司書「正しいですかね……昔はもっと酷かったらしいのです」
司書「僕も、流石に詳しくは知らないんですけど……」
戦士「ひっでぇ話だな……」
魔法使い「…… ……」
戦士「しかし……じゃあ、なんでアンタはこの街に住めてる、んだ」
司書「……ご存じだと思いますが、僕はあの港街の教会で神官として」
司書「過ごしていました。あの教会には……素晴らしい本が揃っていたんです」
魔法使い「本……?」
司書「はい。ご存じでしょうか……魔石、の話」
魔法使い「私、チョコレートパフェ!」
戦士「俺は……アイスコーヒー」
司書「僕はチーズケーキと紅茶を」
魔法使い「……で、説明、って?」
司書「あの奥の部屋は、この街に古くから住んでいる者しか」
司書「入る事を許されないんです。イコール……」
魔法使い「優れた加護を持つ者」
司書「……はい。僕は、何年か前に此処に転居して来た所ですし」
司書「そんな……加護を持っている訳では無いので、入れないんです」
戦士「ん?この街に住めるのって……魔法に優れた者、じゃ無いのか?」
司書「全員が全員、そうではありませんよ。『領主の血筋』の者は」
司書「皆……優れた加護を受けては居ます、が」
魔法使い「まずそれが信じられないわ。親から確実に受け継がれる物じゃ無いのに!」
司書「……ええ。ですから……持たない者は、間引かれます」
魔法使い「間……引く?」
司書「家を追放されるんです……否、居なかった事にされると言う方が」
司書「正しいですかね……昔はもっと酷かったらしいのです」
司書「僕も、流石に詳しくは知らないんですけど……」
戦士「ひっでぇ話だな……」
魔法使い「…… ……」
戦士「しかし……じゃあ、なんでアンタはこの街に住めてる、んだ」
司書「……ご存じだと思いますが、僕はあの港街の教会で神官として」
司書「過ごしていました。あの教会には……素晴らしい本が揃っていたんです」
魔法使い「本……?」
司書「はい。ご存じでしょうか……魔石、の話」
310: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
戦士「魔除けの石、って奴か?」
司書「それだけじゃありません。今はもう廃れてしまったらしいですが」
司書「昔は、炎や、水等……色々な物を作る技術があったそうです」
魔法使い「へぇ……え、でもそれが、何の関係が……」
司書「……その、魔石の生成方法の本が、あったのです」
司書「ですが、本は……神父様の字では無かった。誰が書いたのか不明、です」
魔法使い「魔除けの石、の制作方法の本じゃ無いなら……神父様も誰かに貰ったのかしら」
戦士「女、って人じゃネェの?神父様に生成方法教えたのってその人なんだろ?」
司書「わかりません……僕は女様にはお会いしたことが無いので」
司書「神父様がご存命の間に、方法は教えて頂きました」
魔法使い「賛否両論だって言ってたわね、女神官さん」
司書「はい……ですが、僕にはどうしても、成功させなければならなかったんです」
戦士「魔除けの石の生成を、か?」
司書「……ええ。その本と、僕にその技術があれば」
司書「この街に、それを伝える事ができる。そうすれば」
司書「……この街に、住む事ができるかも知れない、と思って」
魔法使い「確かに、この街は昔から『魔法を志す者には憧れの街』だったって聞いてるわ」
魔法使い「でも……そんなに、良い物なの?」
司書「……僕は、どうしてもこの街に住みたかった」
司書「あの頃の僕に取っては、焦がれて止まない場所でした」
戦士「何で過去形なんだよ……」
司書「それだけじゃありません。今はもう廃れてしまったらしいですが」
司書「昔は、炎や、水等……色々な物を作る技術があったそうです」
魔法使い「へぇ……え、でもそれが、何の関係が……」
司書「……その、魔石の生成方法の本が、あったのです」
司書「ですが、本は……神父様の字では無かった。誰が書いたのか不明、です」
魔法使い「魔除けの石、の制作方法の本じゃ無いなら……神父様も誰かに貰ったのかしら」
戦士「女、って人じゃネェの?神父様に生成方法教えたのってその人なんだろ?」
司書「わかりません……僕は女様にはお会いしたことが無いので」
司書「神父様がご存命の間に、方法は教えて頂きました」
魔法使い「賛否両論だって言ってたわね、女神官さん」
司書「はい……ですが、僕にはどうしても、成功させなければならなかったんです」
戦士「魔除けの石の生成を、か?」
司書「……ええ。その本と、僕にその技術があれば」
司書「この街に、それを伝える事ができる。そうすれば」
司書「……この街に、住む事ができるかも知れない、と思って」
魔法使い「確かに、この街は昔から『魔法を志す者には憧れの街』だったって聞いてるわ」
魔法使い「でも……そんなに、良い物なの?」
司書「……僕は、どうしてもこの街に住みたかった」
司書「あの頃の僕に取っては、焦がれて止まない場所でした」
戦士「何で過去形なんだよ……」
312: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
司書「……僕に優れた加護が無い事は勿論解って居ました」
司書「それに……昔、その加護を持たないから、と」
司書「領主の血族であるにも関わらず、酷い扱いを受けた人が居たと言う話も」
司書「聞いていたんです。ですが……僕は、どうしても……」
魔法使い「ちょっと、聞きたい、んだけど」
司書「はい?」
魔法使い「……この街の住人の皆が、その優れた加護を持ってる訳では無いのよね?」
司書「はい。僕の様に何らかの『利』があると思われる者は」
司書「一応、許される場合もあるんです」
司書「別宅へ行かれたのなら解ると思いますが、大きな塀の向こうへ行かれたでしょう?」
戦士「ああ、あの仕切りみたいな奴な」
司書「あの奥は……権力者達の住む区域です。要するに」
魔法使い「優れた加護を持つ、者達の家」
戦士「店もあっただろ?」
司書「彼らだけが利用を許される……まあ、高級店ですね」
司書「一般人……優れた加護を持たなくても」
司書「利……まあ、お金持ちとか、そういう、ね」
魔法使い「貴方の様な人達ね」
司書「そうです。僕たちは、あの塀からこっち迄しか」
司書「立ち入りは許されていないんです」
司書「それに……昔、その加護を持たないから、と」
司書「領主の血族であるにも関わらず、酷い扱いを受けた人が居たと言う話も」
司書「聞いていたんです。ですが……僕は、どうしても……」
魔法使い「ちょっと、聞きたい、んだけど」
司書「はい?」
魔法使い「……この街の住人の皆が、その優れた加護を持ってる訳では無いのよね?」
司書「はい。僕の様に何らかの『利』があると思われる者は」
司書「一応、許される場合もあるんです」
司書「別宅へ行かれたのなら解ると思いますが、大きな塀の向こうへ行かれたでしょう?」
戦士「ああ、あの仕切りみたいな奴な」
司書「あの奥は……権力者達の住む区域です。要するに」
魔法使い「優れた加護を持つ、者達の家」
戦士「店もあっただろ?」
司書「彼らだけが利用を許される……まあ、高級店ですね」
司書「一般人……優れた加護を持たなくても」
司書「利……まあ、お金持ちとか、そういう、ね」
魔法使い「貴方の様な人達ね」
司書「そうです。僕たちは、あの塀からこっち迄しか」
司書「立ち入りは許されていないんです」
314: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
戦士「……お前の『利』は……」
司書「はい。魔除けの石の生成方法、です」
司書「……詳しく書かれた本と、その知識と技」
司書「苦労はしましたが……何とか、許されました」
魔法使い「……持ち出した、のね」
司書「……はい」
戦士「で、今は……その仕事まで得た、のか」
司書「得た、と言うより……監視の目的もあるのでしょう」
司書「港街は、魔石発祥の地です。逃げ戻ったり」
司書「他への、知識の流出を防ぐ為に」
戦士「……それで良いのか、お前は」
司書「望んだ事です……今では、魔石はこの街が一番の生産量になりました」
魔法使い「値段も跳ね上がってる、し……ね」
司書「……おかげで、僕は生活できるのです」
戦士「もう一回聞くけど……何で、過去形なんだ?」
司書「昨夜……お泊まりになられたと言う、別宅」
戦士「へ?」
司書「あそこは、旧娼館、なのだそうです」
魔法使い「……娼館!?」
司書「今では改築されて、賓客の為に使われていますが」
司書「何をするため、と聞かれると……解ります、よね?」
魔法使い「それで……あんな作りになっていたのね」
戦士「何で、知ってる? ……いや、だから、なんで過去形……」
司書「そういう所を知ってしまったから、です」
司書「……あの別宅の召使い達の中には、領主に追放された人も居るんですよ」
魔法使い「え……」
司書「領主は、自分の血族であっても」
司書「……召使い兼、要人へのもてなしと称して……」
魔法使い「そんな……!」
司書「はい。魔除けの石の生成方法、です」
司書「……詳しく書かれた本と、その知識と技」
司書「苦労はしましたが……何とか、許されました」
魔法使い「……持ち出した、のね」
司書「……はい」
戦士「で、今は……その仕事まで得た、のか」
司書「得た、と言うより……監視の目的もあるのでしょう」
司書「港街は、魔石発祥の地です。逃げ戻ったり」
司書「他への、知識の流出を防ぐ為に」
戦士「……それで良いのか、お前は」
司書「望んだ事です……今では、魔石はこの街が一番の生産量になりました」
魔法使い「値段も跳ね上がってる、し……ね」
司書「……おかげで、僕は生活できるのです」
戦士「もう一回聞くけど……何で、過去形なんだ?」
司書「昨夜……お泊まりになられたと言う、別宅」
戦士「へ?」
司書「あそこは、旧娼館、なのだそうです」
魔法使い「……娼館!?」
司書「今では改築されて、賓客の為に使われていますが」
司書「何をするため、と聞かれると……解ります、よね?」
魔法使い「それで……あんな作りになっていたのね」
戦士「何で、知ってる? ……いや、だから、なんで過去形……」
司書「そういう所を知ってしまったから、です」
司書「……あの別宅の召使い達の中には、領主に追放された人も居るんですよ」
魔法使い「え……」
司書「領主は、自分の血族であっても」
司書「……召使い兼、要人へのもてなしと称して……」
魔法使い「そんな……!」
317: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
司書「初めのうちはね……僕の耳には入れまいとしていたんでしょうけど」
司書「今の職に就いて、時間が経てば……気にしなくなったのか慣れたのか」
司書「……色々な、噂が耳に入ってくるんですよ」
戦士「……逃げ出さないと解った、からか?」
司書「で、しょうね。望んでこの街に居を移したのです」
司書「……後悔している訳じゃありません。でも」
司書「どこかに……女神官さんや、神父さんを」
司書「裏切ってしまった、と言う……気持ちが、あるのかもしれません」
戦士「で、『だった』……過去形、かよ」ハァ
司書「お気をつけ下さい。領主様達は……執拗ですよ」
魔法使い「どうして、私達にそんな事を話す気になったの」
魔法使い「……『勇者様御一行』だから?」
司書「女神官さんに、聞いたのでしょう。僕の事」
戦士「……」
司書「あの方が……僕に、懺悔の場を下さったのか、と思ったんです」
魔法使い「随分自分勝手ね」
戦士「魔法使い」
魔法使い「素直な感想よ。司書さんは話せて、満足でしょうけど」
魔法使い「……そりゃね。聞くに値しない話だ、なんて、言いはしないけど」
戦士「その、アンタが持って来た本、てのはどうしたんだ」
司書「今は、あの……勇者様と僧侶さんが入って行かれた部屋の中、です」
戦士「……港街の教会に戻そうって気は無いんだな」
司書「戻そうと思っても戻せない、んです……」
司書「……僕は、あの奥の部屋には入れませんから」
司書「今の職に就いて、時間が経てば……気にしなくなったのか慣れたのか」
司書「……色々な、噂が耳に入ってくるんですよ」
戦士「……逃げ出さないと解った、からか?」
司書「で、しょうね。望んでこの街に居を移したのです」
司書「……後悔している訳じゃありません。でも」
司書「どこかに……女神官さんや、神父さんを」
司書「裏切ってしまった、と言う……気持ちが、あるのかもしれません」
戦士「で、『だった』……過去形、かよ」ハァ
司書「お気をつけ下さい。領主様達は……執拗ですよ」
魔法使い「どうして、私達にそんな事を話す気になったの」
魔法使い「……『勇者様御一行』だから?」
司書「女神官さんに、聞いたのでしょう。僕の事」
戦士「……」
司書「あの方が……僕に、懺悔の場を下さったのか、と思ったんです」
魔法使い「随分自分勝手ね」
戦士「魔法使い」
魔法使い「素直な感想よ。司書さんは話せて、満足でしょうけど」
魔法使い「……そりゃね。聞くに値しない話だ、なんて、言いはしないけど」
戦士「その、アンタが持って来た本、てのはどうしたんだ」
司書「今は、あの……勇者様と僧侶さんが入って行かれた部屋の中、です」
戦士「……港街の教会に戻そうって気は無いんだな」
司書「戻そうと思っても戻せない、んです……」
司書「……僕は、あの奥の部屋には入れませんから」
318: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
戦士「勇者達は見る事ができるが……」
魔法使い「そうね……私達は、知る事ができる。でも」
魔法使い「そういう物を、多くの人が知る事はできない……その、存在すら」
魔法使い「それじゃ、図書館の意味、無いわね」
司書「……返す言葉もありません」
魔法使い「……」
戦士「……」
司書「そろそろ、戻りましょう。休憩は終わりです」
司書「勇者様達を、呼んできます」カタン
……
………
…………
勇者「何かあったか?」
僧侶「……流石、って言っていいのかな」
僧侶「随分詳しい本がある」
勇者「……光の属性ってのに関しては流石に無いな」
僧侶「そうだね……勇者だけなんだろうな、多分」
勇者「まあ……俺も、俺の周りの人達も、今まで」
勇者「見た事も、聞いた事も無いと言うからな」
僧侶「……持ち出しは出来ない、んだよねぇ」
勇者「返す事もできないだろ」
僧侶「…… ……そうだね」
コンコン
受付「はい?」
司書「僕です……戻りました」
勇者「……じゃあ、行こうか」
受付「もう宜しいのですか?」
僧侶「ええ、仲間も戻りましたし」
魔法使い「そうね……私達は、知る事ができる。でも」
魔法使い「そういう物を、多くの人が知る事はできない……その、存在すら」
魔法使い「それじゃ、図書館の意味、無いわね」
司書「……返す言葉もありません」
魔法使い「……」
戦士「……」
司書「そろそろ、戻りましょう。休憩は終わりです」
司書「勇者様達を、呼んできます」カタン
……
………
…………
勇者「何かあったか?」
僧侶「……流石、って言っていいのかな」
僧侶「随分詳しい本がある」
勇者「……光の属性ってのに関しては流石に無いな」
僧侶「そうだね……勇者だけなんだろうな、多分」
勇者「まあ……俺も、俺の周りの人達も、今まで」
勇者「見た事も、聞いた事も無いと言うからな」
僧侶「……持ち出しは出来ない、んだよねぇ」
勇者「返す事もできないだろ」
僧侶「…… ……そうだね」
コンコン
受付「はい?」
司書「僕です……戻りました」
勇者「……じゃあ、行こうか」
受付「もう宜しいのですか?」
僧侶「ええ、仲間も戻りましたし」
319: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
受付「ゆっくりされても宜しいのですよ。折角ですのに」
勇者「いえ。船の時間もありますし」
受付「……そうですか」
僧侶「では、ありがとうございました。行こう、勇者」ギュ
勇者「ああ……」
勇者(やっぱり手は繋ぐんだな……嬉しいけど)
勇者(ん?嬉しい……?)ブンブン!
僧侶「どうしたの?」
勇者「い、いや……」
受付「図書館の館内はご覧になりました?宜しければご案内を……」
勇者「……すみません、急ぎますから。ありがとうございました、と」
勇者「領主さんにもお伝え下さい」
受付「…… ……はい」
カチャ
受付「司書、後は任せましたよ」
司書「ええ、入口でお二人がお待ちです。ご利用、ありがとうございました」
受付「…… ……」
司書「入口までご案内致します」スタスタ
勇者「ああ。ありがとう」
僧侶「さあ、次は北の大陸ね!」
勇者「え……」
僧侶「……シッ」
受付「…… ……」スタスタ
司書「……奥の部屋にも、外に出る扉があるのです」
勇者「……え?」
司書「北の大陸行きの船に、見張りを先に乗せてしまうつもりでしょう」
僧侶「私達は……戻ろう、勇者」
勇者「いえ。船の時間もありますし」
受付「……そうですか」
僧侶「では、ありがとうございました。行こう、勇者」ギュ
勇者「ああ……」
勇者(やっぱり手は繋ぐんだな……嬉しいけど)
勇者(ん?嬉しい……?)ブンブン!
僧侶「どうしたの?」
勇者「い、いや……」
受付「図書館の館内はご覧になりました?宜しければご案内を……」
勇者「……すみません、急ぎますから。ありがとうございました、と」
勇者「領主さんにもお伝え下さい」
受付「…… ……はい」
カチャ
受付「司書、後は任せましたよ」
司書「ええ、入口でお二人がお待ちです。ご利用、ありがとうございました」
受付「…… ……」
司書「入口までご案内致します」スタスタ
勇者「ああ。ありがとう」
僧侶「さあ、次は北の大陸ね!」
勇者「え……」
僧侶「……シッ」
受付「…… ……」スタスタ
司書「……奥の部屋にも、外に出る扉があるのです」
勇者「……え?」
司書「北の大陸行きの船に、見張りを先に乗せてしまうつもりでしょう」
僧侶「私達は……戻ろう、勇者」
320: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
勇者「態と言った、のか……」
僧侶「引き留めたそうにしてたからね」
僧侶「……始まりの街に戻らなくても、港街からなら、何処にでも行ける」
勇者「そうだな」
司書「貴方達の旅の安全を祈ります。もう……僕は、聖職者ではありませんが」
僧侶「魔法使い達と、何のお話を?」
司書「直接聞かれると良いですよ……乗り遅れたら、大変ですから」
勇者「うん……行こう、僧侶」
カチャ
司書「では……お元気で、勇者様」
魔法使い「勇者!僧侶!」
戦士「こっちだ……どっちに乗るか決めたか?」
勇者「……ああ。時間は?」
戦士「まだ余裕はある。焦らなくても……」
僧侶「ぎりぎりに乗船しましょ。多分……見張りさんが先に行ってる」
魔法使い「え?」
勇者「あの奥の部屋にも、出入り口があるそうなんだ。俺達の話聞いて」
勇者「出て行ったからな」
魔法使い「本当に必氏ね」
戦士「収穫あったか?」
僧侶「うん、まあね……あ、勇者」
勇者「ん?」
僧侶「時間があるなら、ちょっと買いたい物があるんだ」
僧侶「……良い?」
勇者「あ、ああ。別に構わないけど」
魔法使い「焦る必要は無いけど、のんびりはしてられないわよ」
僧侶「うん。行こう」スタスタ
僧侶「引き留めたそうにしてたからね」
僧侶「……始まりの街に戻らなくても、港街からなら、何処にでも行ける」
勇者「そうだな」
司書「貴方達の旅の安全を祈ります。もう……僕は、聖職者ではありませんが」
僧侶「魔法使い達と、何のお話を?」
司書「直接聞かれると良いですよ……乗り遅れたら、大変ですから」
勇者「うん……行こう、僧侶」
カチャ
司書「では……お元気で、勇者様」
魔法使い「勇者!僧侶!」
戦士「こっちだ……どっちに乗るか決めたか?」
勇者「……ああ。時間は?」
戦士「まだ余裕はある。焦らなくても……」
僧侶「ぎりぎりに乗船しましょ。多分……見張りさんが先に行ってる」
魔法使い「え?」
勇者「あの奥の部屋にも、出入り口があるそうなんだ。俺達の話聞いて」
勇者「出て行ったからな」
魔法使い「本当に必氏ね」
戦士「収穫あったか?」
僧侶「うん、まあね……あ、勇者」
勇者「ん?」
僧侶「時間があるなら、ちょっと買いたい物があるんだ」
僧侶「……良い?」
勇者「あ、ああ。別に構わないけど」
魔法使い「焦る必要は無いけど、のんびりはしてられないわよ」
僧侶「うん。行こう」スタスタ
321: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
戦士「……あれ?」
魔法使い「何よ」
戦士「船、三隻……あるぞ?」
勇者「え? ……あ、本当だ」
僧侶「あ、見つけた……」タタタ
魔法使い「あ、ちょっと!」タタタ
戦士「定期便の船じゃなさそうだな」
勇者「……? あれ、でもあの船……」
勇者(見た事ある様な気が……気のせい、か?)
僧侶「すみません、魔除けの石が欲しいのですけど」
店員「あ……ごめんなさい、先ほど、全て売り切れてしまって……」
僧侶「え!?」
魔法使い「欲しい物ってそれだったの、僧侶」
僧侶「売り切れ……ですか」
店員「え、ええ……あちらの方が……」
戦士「わぁお、ナイスバディ」
魔法使い「……」ゲシッ
戦士「い、テェ!お前、なんで蹴るんだよ…… ……」
勇者「……似てる」
僧侶「あ、あの!」
船長「ん?アタシ?」
僧侶「すみません、お金はお支払い致しますので」
僧侶「一つだけで良いんです。魔除けの石、譲って貰えませんか?」
船長「……悪いけど、これ、依頼人が居るのさ」
僧侶「依頼人……?」
船長「ああ。代理で買いに来た、って事。だから……御免だけど」
船長「譲ってあげられないのさ」
僧侶「そ……そうですか……」
船長「悪いね。アタシも仕事なのさ」スタスタ
魔法使い「何よ」
戦士「船、三隻……あるぞ?」
勇者「え? ……あ、本当だ」
僧侶「あ、見つけた……」タタタ
魔法使い「あ、ちょっと!」タタタ
戦士「定期便の船じゃなさそうだな」
勇者「……? あれ、でもあの船……」
勇者(見た事ある様な気が……気のせい、か?)
僧侶「すみません、魔除けの石が欲しいのですけど」
店員「あ……ごめんなさい、先ほど、全て売り切れてしまって……」
僧侶「え!?」
魔法使い「欲しい物ってそれだったの、僧侶」
僧侶「売り切れ……ですか」
店員「え、ええ……あちらの方が……」
戦士「わぁお、ナイスバディ」
魔法使い「……」ゲシッ
戦士「い、テェ!お前、なんで蹴るんだよ…… ……」
勇者「……似てる」
僧侶「あ、あの!」
船長「ん?アタシ?」
僧侶「すみません、お金はお支払い致しますので」
僧侶「一つだけで良いんです。魔除けの石、譲って貰えませんか?」
船長「……悪いけど、これ、依頼人が居るのさ」
僧侶「依頼人……?」
船長「ああ。代理で買いに来た、って事。だから……御免だけど」
船長「譲ってあげられないのさ」
僧侶「そ……そうですか……」
船長「悪いね。アタシも仕事なのさ」スタスタ
322: 2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:bF5xkciJP
僧侶「はあ、残念……あれ、勇者どうしたの」
勇者「……あの人、似てなかった?」
魔法使い「誰によ?」
戦士「いってぇ……なあ、魔法使いって!」
勇者「女……だっけ。あの、港街で見た、像、にさ」
僧侶「……そう?」
魔法使い「そんな風には見えなかったけど」
戦士「ねえ、聞いて?ねぇ?」
魔法使い「煩いわよ、戦士!」
戦士「……俺が何したってんだよ」ハァ
勇者「どこかで見た事ある気がしたんだよ」
勇者「だから……あの像だと思ったんだけど……」
僧侶「確かに、綺麗な人だったけどね」
勇者「…… ……あ! 船!」
戦士「うわ……急げ!」タタタ
僧侶「ど、どっち!?」
魔法使い「こっち!走って!」
海賊「どうしたんです、船長?」
船長「あれが、勇者か……」
海賊「ああ、あの疾走していく金の髪の、ですか」
船長「港街行きの船に乗るんだな」
海賊「……気になるんですか?」
船長「いや……別に」クルッスタスタ
船長「用事は済んだ。アタシらも出るぞ!」
アイアイサー!
船長(……金の、髪。金の瞳)
船長(小さい頃に、一緒に船に乗って居た子も、同じ色彩だった)
船長(否……確かじゃ無い。確かめ様にも……親父も居ない)
船長「……」
船長(……まさか、な。まさか……勇者が、海賊船に乗ってる筈も無い)
勇者「……あの人、似てなかった?」
魔法使い「誰によ?」
戦士「いってぇ……なあ、魔法使いって!」
勇者「女……だっけ。あの、港街で見た、像、にさ」
僧侶「……そう?」
魔法使い「そんな風には見えなかったけど」
戦士「ねえ、聞いて?ねぇ?」
魔法使い「煩いわよ、戦士!」
戦士「……俺が何したってんだよ」ハァ
勇者「どこかで見た事ある気がしたんだよ」
勇者「だから……あの像だと思ったんだけど……」
僧侶「確かに、綺麗な人だったけどね」
勇者「…… ……あ! 船!」
戦士「うわ……急げ!」タタタ
僧侶「ど、どっち!?」
魔法使い「こっち!走って!」
海賊「どうしたんです、船長?」
船長「あれが、勇者か……」
海賊「ああ、あの疾走していく金の髪の、ですか」
船長「港街行きの船に乗るんだな」
海賊「……気になるんですか?」
船長「いや……別に」クルッスタスタ
船長「用事は済んだ。アタシらも出るぞ!」
アイアイサー!
船長(……金の、髪。金の瞳)
船長(小さい頃に、一緒に船に乗って居た子も、同じ色彩だった)
船長(否……確かじゃ無い。確かめ様にも……親父も居ない)
船長「……」
船長(……まさか、な。まさか……勇者が、海賊船に乗ってる筈も無い)
330: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
魔法使い「どうする、勇者?」
勇者「王様も、女剣士も……しっかりしてる人だ。俺達に言われる迄も」
勇者「無いと思う……んだけど」
僧侶「じゃあ……北の方に?」
勇者「うん……政に口を出すのは、間違えてる気がする」
勇者「……『勇者』に期待されているのは魔王を倒して、世界を平和にする事、だ」
戦士「気になるんじゃないのか?」
勇者「劣等種、か……気にならないと言えば嘘になるけど」
魔法使い「まあ、魔王に関係無い、んだろうしね……」
勇者「……うん」
戦士「迷ってんだったら、やれば良いと思うぜ?」
勇者「え?」
戦士「後でやっとけば、行っとけば、て思うなら、さ」
勇者「…… ……いや、良い。北に向かう」
勇者「俺達には俺達の、やらなきゃ行けない事、をすべきだろう」
魔法使い「勇者がそうきめたなら」
僧侶「あ……着岸するみたいよ」
勇者「良し、北の方へ向かう船に乗り換えよう」
……
………
…………
勇者「王様も、女剣士も……しっかりしてる人だ。俺達に言われる迄も」
勇者「無いと思う……んだけど」
僧侶「じゃあ……北の方に?」
勇者「うん……政に口を出すのは、間違えてる気がする」
勇者「……『勇者』に期待されているのは魔王を倒して、世界を平和にする事、だ」
戦士「気になるんじゃないのか?」
勇者「劣等種、か……気にならないと言えば嘘になるけど」
魔法使い「まあ、魔王に関係無い、んだろうしね……」
勇者「……うん」
戦士「迷ってんだったら、やれば良いと思うぜ?」
勇者「え?」
戦士「後でやっとけば、行っとけば、て思うなら、さ」
勇者「…… ……いや、良い。北に向かう」
勇者「俺達には俺達の、やらなきゃ行けない事、をすべきだろう」
魔法使い「勇者がそうきめたなら」
僧侶「あ……着岸するみたいよ」
勇者「良し、北の方へ向かう船に乗り換えよう」
……
………
…………
331: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
盗賊「……報告は以上か?」
騎士「はッ」
盗賊「ご苦労だったな……下がれ」
盗賊「ああ、女剣士は此処に」
女剣士「はい」
騎士「では、失礼致します」パタン
鍛冶師「……本当に懲りない人達だなぁ、あの街の人間は」
女剣士「この街にも散々言ってきていたんだろう、直接の乗り入れの件」
盗賊「ああ……港街があるのに、必要無い」
鍛冶師「鍛冶師の村との交渉が上手くいったから、ていうのは大きいんだろうね」
盗賊「あの街はな……仕方無いとも思うよ」
鍛冶師「うん。鍛冶を志す者に取って、魔法剣は憧れの一つ」
女剣士「魔導の街は、変わらず……『魔法を使う者の憧れ』なんだな」
盗賊「『劣等種』が居なくなったとは言え、そう簡単に忌まわしい習慣は消え去らない」
盗賊「支配する側であった方から見れば特にさ」
女剣士「……この国に固執する理由は、唯一『王』が居るから、だけなんだろうか」
鍛冶師「それもあるだろうけど、南の洞窟の件もある」
鍛冶師「魔導の街の管轄に……と迄は思ってないのかも知れないけど」
盗賊「最終的には……視野に入ってると思った方が良いだろう」
盗賊「……私設軍隊を持つ程の力を持っていた奴らだ」
鍛冶師「だけど、それは……『魔導将軍』だっけ? ……の」
鍛冶師「後ろ盾あってこそだろう?」
盗賊「まあ、な。だが体質は変わってない……変わりようが無い」
女剣士「……『血』を遺す、か」
盗賊「『勇者』も……もし、共に旅立った彼らの中に」
盗賊「『優れた加護』を持つ者が居れば、彼らも……目をつけられるだろう」
女剣士「……そして、弟王子、か」
鍛冶師「あまり城から出さない理由の一つ、だね?」
盗賊「あいつは、身体が弱いってのもあるけどね」
騎士「はッ」
盗賊「ご苦労だったな……下がれ」
盗賊「ああ、女剣士は此処に」
女剣士「はい」
騎士「では、失礼致します」パタン
鍛冶師「……本当に懲りない人達だなぁ、あの街の人間は」
女剣士「この街にも散々言ってきていたんだろう、直接の乗り入れの件」
盗賊「ああ……港街があるのに、必要無い」
鍛冶師「鍛冶師の村との交渉が上手くいったから、ていうのは大きいんだろうね」
盗賊「あの街はな……仕方無いとも思うよ」
鍛冶師「うん。鍛冶を志す者に取って、魔法剣は憧れの一つ」
女剣士「魔導の街は、変わらず……『魔法を使う者の憧れ』なんだな」
盗賊「『劣等種』が居なくなったとは言え、そう簡単に忌まわしい習慣は消え去らない」
盗賊「支配する側であった方から見れば特にさ」
女剣士「……この国に固執する理由は、唯一『王』が居るから、だけなんだろうか」
鍛冶師「それもあるだろうけど、南の洞窟の件もある」
鍛冶師「魔導の街の管轄に……と迄は思ってないのかも知れないけど」
盗賊「最終的には……視野に入ってると思った方が良いだろう」
盗賊「……私設軍隊を持つ程の力を持っていた奴らだ」
鍛冶師「だけど、それは……『魔導将軍』だっけ? ……の」
鍛冶師「後ろ盾あってこそだろう?」
盗賊「まあ、な。だが体質は変わってない……変わりようが無い」
女剣士「……『血』を遺す、か」
盗賊「『勇者』も……もし、共に旅立った彼らの中に」
盗賊「『優れた加護』を持つ者が居れば、彼らも……目をつけられるだろう」
女剣士「……そして、弟王子、か」
鍛冶師「あまり城から出さない理由の一つ、だね?」
盗賊「あいつは、身体が弱いってのもあるけどね」
332: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
盗賊「……牽制の意味も込めて『王』になった、側面は否定しない、が……」
鍛冶師「逆に利用されてやる訳には行かないな」
女剣士「現在、この街への移住者希望者は後を絶たない」
女剣士「許容量の問題で断っているけれど……」
盗賊「当分はそれで良い。居住して年数が経てば、騎士団への入団も認めざるを」
盗賊「得ないからな。出身地不明瞭な者ははねるとは言え」
鍛冶師「偽る事は難く無いからね」
女剣士「……南の洞窟の周辺は、警備を強化しよう」
鍛冶師「後は、弟王子……か」フゥ
盗賊「何かを仕掛けて来ない、とは考えられないからな」
盗賊「……かといって、政略的に結婚させる訳にもな」
鍛冶師「こればっかりはねぇ……だけど」
鍛冶師「……外に出ない分、出会いとかも無いしね、弟王子は」
女剣士「まだ早い、んじゃ無いか?考えておくことは悪い事じゃ無いと思うけど……」
女剣士「兄である王子にしたって、まだ子供だぞ」
盗賊「……まあ、な」
鍛冶師「魔導の街には、引き続き警戒を怠らないでくれ」
鍛冶師「……勇者の旅立ちの騒ぎで、何があるかわからないからね」
盗賊「魔導の街には立ち寄った、かな……苦労しているだろうけど」
女剣士「『血』か……」
盗賊「『勇者』となれば必氏になるだろう」
鍛冶師「母親みたいだなぁ、盗賊」
盗賊「王子と同じ歳だぞ? ……子供みたいなもんだ」
鍛冶師「……魔王、だよ?」
盗賊「…… ……そうだけど、な」
女剣士「私は魔王を余り知らないから、良く解らないけど」
女剣士「似ていないんだろう?勇者と、魔王は」
盗賊「全然違うよ。育った環境が違えば当然なんだろうが」
盗賊「……同一人物、とは……思えないさ」
鍛冶師「逆に利用されてやる訳には行かないな」
女剣士「現在、この街への移住者希望者は後を絶たない」
女剣士「許容量の問題で断っているけれど……」
盗賊「当分はそれで良い。居住して年数が経てば、騎士団への入団も認めざるを」
盗賊「得ないからな。出身地不明瞭な者ははねるとは言え」
鍛冶師「偽る事は難く無いからね」
女剣士「……南の洞窟の周辺は、警備を強化しよう」
鍛冶師「後は、弟王子……か」フゥ
盗賊「何かを仕掛けて来ない、とは考えられないからな」
盗賊「……かといって、政略的に結婚させる訳にもな」
鍛冶師「こればっかりはねぇ……だけど」
鍛冶師「……外に出ない分、出会いとかも無いしね、弟王子は」
女剣士「まだ早い、んじゃ無いか?考えておくことは悪い事じゃ無いと思うけど……」
女剣士「兄である王子にしたって、まだ子供だぞ」
盗賊「……まあ、な」
鍛冶師「魔導の街には、引き続き警戒を怠らないでくれ」
鍛冶師「……勇者の旅立ちの騒ぎで、何があるかわからないからね」
盗賊「魔導の街には立ち寄った、かな……苦労しているだろうけど」
女剣士「『血』か……」
盗賊「『勇者』となれば必氏になるだろう」
鍛冶師「母親みたいだなぁ、盗賊」
盗賊「王子と同じ歳だぞ? ……子供みたいなもんだ」
鍛冶師「……魔王、だよ?」
盗賊「…… ……そうだけど、な」
女剣士「私は魔王を余り知らないから、良く解らないけど」
女剣士「似ていないんだろう?勇者と、魔王は」
盗賊「全然違うよ。育った環境が違えば当然なんだろうが」
盗賊「……同一人物、とは……思えないさ」
333: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
鍛冶師「今頃どの辺かなぁ……顔、見せてくれたら良いのにね」
盗賊「何かあったら戻ってくるだろ」
女剣士「……知らせが無いのは良いこと、さ」
盗賊「そうだな。無事で居てくれれば……それで、良い」
……
………
…………
使用人「…… ……」
カラカラカラカラ……カラン
使い魔「使用人様、着きましたよ。船が見えます」
使用人「ありがとう……後は、歩きます」
使い魔「お気をつけて」
使用人「ええ……よい、しょ」トン
使用人(船……ああ、あれか。私の方が早かったのね)
使用人「…… ……」スタスタ
使用人(……え!?)
船長「アンタが、あの緑の鳥の主か……」
使用人「え、ええ……貴女、は…… ……娘ちゃ……さん、ですか」
船長「……何で、アタシの名前、知ってる……てのは愚問だな」
使用人「船長、さん、は……もしかして、ご病気ですか!?」
船長「……親父は、氏んだよ」
使用人「…… ……え?」
船長「人魚の魔詩に魅了されてね……あっさり、食われちまったのさ」
使用人「そ……ん、な……!?」
盗賊「何かあったら戻ってくるだろ」
女剣士「……知らせが無いのは良いこと、さ」
盗賊「そうだな。無事で居てくれれば……それで、良い」
……
………
…………
使用人「…… ……」
カラカラカラカラ……カラン
使い魔「使用人様、着きましたよ。船が見えます」
使用人「ありがとう……後は、歩きます」
使い魔「お気をつけて」
使用人「ええ……よい、しょ」トン
使用人(船……ああ、あれか。私の方が早かったのね)
使用人「…… ……」スタスタ
使用人(……え!?)
船長「アンタが、あの緑の鳥の主か……」
使用人「え、ええ……貴女、は…… ……娘ちゃ……さん、ですか」
船長「……何で、アタシの名前、知ってる……てのは愚問だな」
使用人「船長、さん、は……もしかして、ご病気ですか!?」
船長「……親父は、氏んだよ」
使用人「…… ……え?」
船長「人魚の魔詩に魅了されてね……あっさり、食われちまったのさ」
使用人「そ……ん、な……!?」
334: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
船長「船長はアタシだ……以後の取引は、アタシとして貰うことになる」
使用人「船長、さん……が……」
船長「……不服か?」
使用人「え……あ、いえ、とんでも無い、です」
使用人「……以後も、宜しくお願い致します」
船長「少し、聞きたい事がある」
使用人「……何でしょう。お答え、できる事でしてたら」
船長「アンタ、人間じゃ無いだろう」
使用人「…… ……」
船長「答えられないか?」フゥ
船長「……まあ、良い。あんな鳥寄越して、最果ての大陸まで」
船長「金に糸目もつけず、頼む物と言えば……魔除けの石をありったけ、だったり」
船長「花の苗だったり……」
使用人「……」
船長「親父の時は上等な布、だったな」
使用人「……」
船長「……ダンマリか。まあ良い」
使用人「船長さ……お父様から、何も聞いていらっしゃらないのですか」
船長「親父の身体が動かなくなって、とうとう引退、って時に」
船長「教えてやるとか言って、な」
使用人「……そうですか」
船長「アタシも海賊だ。これも商売、金銭を受け取る以上、きっちりこなすつもりだし」
船長「余計な詮索は身を滅ぼす、って事も解ってる。だが……だが、な」
船長「……もし、こうやってアンタの手助けをする事が」
船長「世間一般で言う『悪事に手を貸す』結果になってんだったら」
船長「アタシは、今後一切アンタとは関わらない」
使用人「船長、さん……が……」
船長「……不服か?」
使用人「え……あ、いえ、とんでも無い、です」
使用人「……以後も、宜しくお願い致します」
船長「少し、聞きたい事がある」
使用人「……何でしょう。お答え、できる事でしてたら」
船長「アンタ、人間じゃ無いだろう」
使用人「…… ……」
船長「答えられないか?」フゥ
船長「……まあ、良い。あんな鳥寄越して、最果ての大陸まで」
船長「金に糸目もつけず、頼む物と言えば……魔除けの石をありったけ、だったり」
船長「花の苗だったり……」
使用人「……」
船長「親父の時は上等な布、だったな」
使用人「……」
船長「……ダンマリか。まあ良い」
使用人「船長さ……お父様から、何も聞いていらっしゃらないのですか」
船長「親父の身体が動かなくなって、とうとう引退、って時に」
船長「教えてやるとか言って、な」
使用人「……そうですか」
船長「アタシも海賊だ。これも商売、金銭を受け取る以上、きっちりこなすつもりだし」
船長「余計な詮索は身を滅ぼす、って事も解ってる。だが……だが、な」
船長「……もし、こうやってアンタの手助けをする事が」
船長「世間一般で言う『悪事に手を貸す』結果になってんだったら」
船長「アタシは、今後一切アンタとは関わらない」
335: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
使用人「……」
船長「人間じゃ無いからって、イコール悪だと決めつける気はネェ」
船長「親父が……懇意にしてた位だ。信じられない訳じゃネェ」
船長「……一応、確認しておこうと思って、な」
使用人「気持ちは、解ります」
使用人「……私達にとっても、貴女達に取っても、不利になる様な事は」
使用人「誰の望みでも、ありません」
使用人「……信じて、貰えますか」
船長「…… ……」
使用人「…… ……」
船長「オーケィ……信じるよ」
船長「これは今回の依頼の分だ。魔除けの石は魔導の街で買い占めてきた」
使用人「……随分沢山ありますね」
船長「買えるだけ、居るんだろう?」
使用人「ええ……他の街でも、売ってましたか?」
船長「親父が買ってた分も入ってる。くっついて歩いてた訳じゃネェからな」
船長「どれがどこの物か迄は……」
使用人「いえ……良いんです。ありがとうございます」
船長「後は……世界の動向を知らせろ、だったな」
使用人「あ……ええ……」
船長「……この石を買った時に、魔導の街で金の髪と瞳の男に会った」
使用人「!」
船長「……特に会話をした訳じゃない。だがアレが……」
船長「魔王を倒す、って旅立った勇者、だろう?」
使用人「……で、しょうね」
船長「積極的に船を下りようとしたのは、親父が氏んでからだ」
船長「親父は余り、アタシと話そうとはしなかったからな」
船長「アタシが、アンタに伝えてやれる事はこれぐらいしかないんだ」
使用人「……充分です。ありがとうございます」
船長「人間じゃ無いからって、イコール悪だと決めつける気はネェ」
船長「親父が……懇意にしてた位だ。信じられない訳じゃネェ」
船長「……一応、確認しておこうと思って、な」
使用人「気持ちは、解ります」
使用人「……私達にとっても、貴女達に取っても、不利になる様な事は」
使用人「誰の望みでも、ありません」
使用人「……信じて、貰えますか」
船長「…… ……」
使用人「…… ……」
船長「オーケィ……信じるよ」
船長「これは今回の依頼の分だ。魔除けの石は魔導の街で買い占めてきた」
使用人「……随分沢山ありますね」
船長「買えるだけ、居るんだろう?」
使用人「ええ……他の街でも、売ってましたか?」
船長「親父が買ってた分も入ってる。くっついて歩いてた訳じゃネェからな」
船長「どれがどこの物か迄は……」
使用人「いえ……良いんです。ありがとうございます」
船長「後は……世界の動向を知らせろ、だったな」
使用人「あ……ええ……」
船長「……この石を買った時に、魔導の街で金の髪と瞳の男に会った」
使用人「!」
船長「……特に会話をした訳じゃない。だがアレが……」
船長「魔王を倒す、って旅立った勇者、だろう?」
使用人「……で、しょうね」
船長「積極的に船を下りようとしたのは、親父が氏んでからだ」
船長「親父は余り、アタシと話そうとはしなかったからな」
船長「アタシが、アンタに伝えてやれる事はこれぐらいしかないんだ」
使用人「……充分です。ありがとうございます」
336: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
船長「アンタ……親父とは、長い付き合いなんだよな?」
使用人「え?」
船長「……もう一つだけ、聞きたいんだ」
使用人「……はい?」
船長「昔……アタシが、小さい頃。親父の船……あの船で」
船長「金の髪の男の子と、旅をした記憶がある」
使用人「…… ……」
船長「金の瞳をしていた様な気もするし、茶か何かを見間違えたのかもしれネェ」
船長「……だが、もし金の瞳だったとするのなら……」
使用人「…… ……」
船長「海賊船に勇者を乗せた、なんて考えられないんだけどな」
船長「古くから船に乗ってる奴に聞いても、覚えて無いの一点張りでな」
船長「……耄碌ジジィが」チッ
使用人(もしかして、魔法使い、さん……?)
船長「どうした?」
使用人「あ、ああ……いえ。申し訳ありません。私は……存じません」
船長「……そう、か。そうだよな」
使用人「……また、何かあれば鳥を送って良い、のですか」
船長「ん? ……ああ。勿論だ。金さえ貰えりゃ、仕事はこなすぜ」
使用人「助かります……では、これは今回の……」ジャラ
船長「……ああ」
使用人「では、失礼致します」スタスタ
カラカラカラカラ……
船長「…… ……魔族、か」フゥ
船長(ガラでもネェ……手が、震えてやがる)
船長(……仕事だ、仕事。アタシは、海賊だ。船長……だ!)スタスタ
船長「…… ……ん?」
使用人「え?」
船長「……もう一つだけ、聞きたいんだ」
使用人「……はい?」
船長「昔……アタシが、小さい頃。親父の船……あの船で」
船長「金の髪の男の子と、旅をした記憶がある」
使用人「…… ……」
船長「金の瞳をしていた様な気もするし、茶か何かを見間違えたのかもしれネェ」
船長「……だが、もし金の瞳だったとするのなら……」
使用人「…… ……」
船長「海賊船に勇者を乗せた、なんて考えられないんだけどな」
船長「古くから船に乗ってる奴に聞いても、覚えて無いの一点張りでな」
船長「……耄碌ジジィが」チッ
使用人(もしかして、魔法使い、さん……?)
船長「どうした?」
使用人「あ、ああ……いえ。申し訳ありません。私は……存じません」
船長「……そう、か。そうだよな」
使用人「……また、何かあれば鳥を送って良い、のですか」
船長「ん? ……ああ。勿論だ。金さえ貰えりゃ、仕事はこなすぜ」
使用人「助かります……では、これは今回の……」ジャラ
船長「……ああ」
使用人「では、失礼致します」スタスタ
カラカラカラカラ……
船長「…… ……魔族、か」フゥ
船長(ガラでもネェ……手が、震えてやがる)
船長(……仕事だ、仕事。アタシは、海賊だ。船長……だ!)スタスタ
船長「…… ……ん?」
337: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
船長(……ッ 人影……魔物か!? ……いや、違う)
船長(随分フラフラと……歩いてやがるな)
船長「おい、そこの兄ちゃん!」
男「…… ……?」
船長(……こいつ、人……か?馬車を見つめてた)
船長「おいおい、お前随分汚れてるな……大丈夫か?」
男「……俺、か」
船長「お前さんしか居ないだろ……船に乗るのか?」
船長(ここは最果ての地……彷徨ってる人間、てのも……考えにくい、が)
男「船……?」
船長「おう。この船が最後だぜ、こんな……廃墟の街にくる用事なんかねぇからな」
船長「逃したら二度と出れないかもしれないが……良いのか?」
船長(……理解してる、のか。頭はまとも……なんだろうな)
男「……金が、無い」
船長「はぁ!?」
男「ここは、何処だ? ……俺は……?」
船長「……おいおいおい、何だそりゃ……ちッ訳ありかよ……」
船長(記憶喪失……? しかも、こいつ……紫の瞳を、してる)
船長(あの……記憶の中の金の瞳の少年と良い、勇者と良い……こいつと良い……)ハァ
船長「仕方ないな……良いよ、乗りな」
男「良いのか」
船長「放って行って欲しいならそうしてやるよ……自分で決めな」
男「……頼む」
船長「お願いします、だろ?」ニヤニヤ
男「……お願いします」
船長(表情は変わらないな……近くで見れば、綺麗な顔をしてる)ドキ
船長「……素直だな、まァ、良いだろう……ほら、早く乗りな。話は中で聞くよ」
男「……感謝する」スタスタ
船長「大丈夫かね、ありゃ……まぁ、良いか……野郎共!船を出すよ!」
船長「出航だ!」
アイアイサー!
船長(随分フラフラと……歩いてやがるな)
船長「おい、そこの兄ちゃん!」
男「…… ……?」
船長(……こいつ、人……か?馬車を見つめてた)
船長「おいおい、お前随分汚れてるな……大丈夫か?」
男「……俺、か」
船長「お前さんしか居ないだろ……船に乗るのか?」
船長(ここは最果ての地……彷徨ってる人間、てのも……考えにくい、が)
男「船……?」
船長「おう。この船が最後だぜ、こんな……廃墟の街にくる用事なんかねぇからな」
船長「逃したら二度と出れないかもしれないが……良いのか?」
船長(……理解してる、のか。頭はまとも……なんだろうな)
男「……金が、無い」
船長「はぁ!?」
男「ここは、何処だ? ……俺は……?」
船長「……おいおいおい、何だそりゃ……ちッ訳ありかよ……」
船長(記憶喪失……? しかも、こいつ……紫の瞳を、してる)
船長(あの……記憶の中の金の瞳の少年と良い、勇者と良い……こいつと良い……)ハァ
船長「仕方ないな……良いよ、乗りな」
男「良いのか」
船長「放って行って欲しいならそうしてやるよ……自分で決めな」
男「……頼む」
船長「お願いします、だろ?」ニヤニヤ
男「……お願いします」
船長(表情は変わらないな……近くで見れば、綺麗な顔をしてる)ドキ
船長「……素直だな、まァ、良いだろう……ほら、早く乗りな。話は中で聞くよ」
男「……感謝する」スタスタ
船長「大丈夫かね、ありゃ……まぁ、良いか……野郎共!船を出すよ!」
船長「出航だ!」
アイアイサー!
338: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
男「…… ……」
船長「なァにぼさっと突っ立ってんだい!金が無いなら働いて貰うよ!」
男「……この船は、商船か?」
船長「そんなモノと一緒にして貰っちゃ困るね。この船は天下の大海賊様の立派な海賊船だよ?」
男「……海賊?」
船長「そうさ、あんな廃墟に普通の商船に何の用事があるって言うんだい」
男「……お前、は海賊なのか」
船長「お言葉だね……この船に、アタシ以上に偉そうな奴が乗っている様に見えるかい?」
男「……お前が、船長?」
船長「そうさ……これがアタシの海賊団の動く要塞。不沈の海賊船だよ」
男「……そうか」
船長「……アンタね、もうちょっと驚きなよ。これでもちょっとばかし、有名な海賊団なんだぜ?」
男「……すまん。どうやら……記憶が無い様なんだ」
船長「は?」
男「どうしてあそこに居たのか、何処から来たのかも……わからない」
男「……名も、解らん」
船長「……まじ?」
男「嘘を吐いてどうする」
船長「参ったねぇ……とんだ拾いモンだ」
海賊「船長! ……あれ。誰です、それ」
船長「あー……拾った」
海賊「拾ったぁ!? ……奴隷ですか」
船長「……」ギロ
海賊「ひッ ……じょ、冗談ですよぅ」
船長「用事が無いなら持ち場に戻りな!」
海賊「いや、呼びに来たんですよ、俺は……」
船長「ちッ ……仕方ない。おい、アンタ……取りあえずそこの小部屋に入ってな」
男「……あ、ああ」
船長「アタシの部屋なんだからね!いじくり回すんじゃないよ!」
海賊「……船長、男前に弱いからなぁ」ボソ
船長「何か行ったかァ!?」
海賊「し、失礼しまああっす!」タタタタタ
……
………
…………
船長「なァにぼさっと突っ立ってんだい!金が無いなら働いて貰うよ!」
男「……この船は、商船か?」
船長「そんなモノと一緒にして貰っちゃ困るね。この船は天下の大海賊様の立派な海賊船だよ?」
男「……海賊?」
船長「そうさ、あんな廃墟に普通の商船に何の用事があるって言うんだい」
男「……お前、は海賊なのか」
船長「お言葉だね……この船に、アタシ以上に偉そうな奴が乗っている様に見えるかい?」
男「……お前が、船長?」
船長「そうさ……これがアタシの海賊団の動く要塞。不沈の海賊船だよ」
男「……そうか」
船長「……アンタね、もうちょっと驚きなよ。これでもちょっとばかし、有名な海賊団なんだぜ?」
男「……すまん。どうやら……記憶が無い様なんだ」
船長「は?」
男「どうしてあそこに居たのか、何処から来たのかも……わからない」
男「……名も、解らん」
船長「……まじ?」
男「嘘を吐いてどうする」
船長「参ったねぇ……とんだ拾いモンだ」
海賊「船長! ……あれ。誰です、それ」
船長「あー……拾った」
海賊「拾ったぁ!? ……奴隷ですか」
船長「……」ギロ
海賊「ひッ ……じょ、冗談ですよぅ」
船長「用事が無いなら持ち場に戻りな!」
海賊「いや、呼びに来たんですよ、俺は……」
船長「ちッ ……仕方ない。おい、アンタ……取りあえずそこの小部屋に入ってな」
男「……あ、ああ」
船長「アタシの部屋なんだからね!いじくり回すんじゃないよ!」
海賊「……船長、男前に弱いからなぁ」ボソ
船長「何か行ったかァ!?」
海賊「し、失礼しまああっす!」タタタタタ
……
………
…………
342: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
使用人「…… ……」コンコン
側近「使用人ちゃんか? ……おかえり。船長元気だったか?」
使用人「…… ……」
側近「……使用人ちゃん?」
使用人「入りますね……」カチャ
側近「……どうした?」
使用人「……魔除けの石、此処に置いておきます」
側近「使用人ちゃん」
使用人「…… ……船長さん、亡くなったそうです」
側近「……え!?」
使用人「人魚、に……食べられた、のだとか……」
側近「…… ……そ、うか……」
使用人「これからは、娘ちゃんが船長として」
使用人「……仕事を、こなして下さるそうです」
側近「世界の動向を聞く事は……出来なくなる、な」
使用人「船長さん、娘さんには話していらっしゃらないみたいでしたし、ね」
側近「……仕方無い。何れ……人間は、氏ぬんだ」
使用人「駄目になった魔除けの石、処分しますね……」
側近「……大丈夫、か?」
使用人「寿命で亡くなった、のであれば……納得も出来ます」
使用人「でも…… ……ッ」
側近「…… ……」
使用人「……『魔王』が『勇者』に倒されれば、魔物は居なくなる、んでしょうか」
側近「どうだろうな……可能性は、無いとは言えない」
使用人「そうすれば、私も……」
側近「…… ……厭、か?」
使用人「いいえ。魔王様のご意志です。だから……」
側近「使用人ちゃんか? ……おかえり。船長元気だったか?」
使用人「…… ……」
側近「……使用人ちゃん?」
使用人「入りますね……」カチャ
側近「……どうした?」
使用人「……魔除けの石、此処に置いておきます」
側近「使用人ちゃん」
使用人「…… ……船長さん、亡くなったそうです」
側近「……え!?」
使用人「人魚、に……食べられた、のだとか……」
側近「…… ……そ、うか……」
使用人「これからは、娘ちゃんが船長として」
使用人「……仕事を、こなして下さるそうです」
側近「世界の動向を聞く事は……出来なくなる、な」
使用人「船長さん、娘さんには話していらっしゃらないみたいでしたし、ね」
側近「……仕方無い。何れ……人間は、氏ぬんだ」
使用人「駄目になった魔除けの石、処分しますね……」
側近「……大丈夫、か?」
使用人「寿命で亡くなった、のであれば……納得も出来ます」
使用人「でも…… ……ッ」
側近「…… ……」
使用人「……『魔王』が『勇者』に倒されれば、魔物は居なくなる、んでしょうか」
側近「どうだろうな……可能性は、無いとは言えない」
使用人「そうすれば、私も……」
側近「…… ……厭、か?」
使用人「いいえ。魔王様のご意志です。だから……」
343: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
使用人「…… ……」
側近「……」ナデナデ
使用人「それ、肩です」
側近「……だよな。手触りおかしいと思った」ナデナデ
使用人「正解です……けど、子供じゃ無いんですから」
側近「……誰かが氏ぬ、てのは悲しいもんだ」
使用人「…… ……」
側近「だから、無理は……」
魔王「……ッ ゥ。ウ……」
使用人「魔王様、変わらない、ですね」
側近「まあ、な……魔除けの石が……」
パリンッ パリン、パリン……ッ
側近「!?」
使用人「……ッ 割れた!?」
側近「魔王様……!?」
側近(魔力が、大きく膨れあがった……!)
使用人「……今、頂いてきた方は無事です、側近様……!」
側近「それ、貸して……!」ガシ、バラバラバラ……
使用人「……だ、駄目です、一斉に紫に……ッ」
側近「……使用人ちゃん、出て行け!もう入るなよ!」
側近「御免!」ドン!
使用人「きゃッ ……ッ」ドタ
バターン!
使用人「側近様!?」
側近「魔力をぶつけて何とか押さえる!」
使用人「!! 一人じゃ無理です、側近様!」
側近「どうにかする!無理なら呼ぶから!」
側近「魔除けの石は暫く良い!娘……あ、船長か」
側近「……勇者が来るまで、近づけさせるなよ!!」
側近「……」ナデナデ
使用人「それ、肩です」
側近「……だよな。手触りおかしいと思った」ナデナデ
使用人「正解です……けど、子供じゃ無いんですから」
側近「……誰かが氏ぬ、てのは悲しいもんだ」
使用人「…… ……」
側近「だから、無理は……」
魔王「……ッ ゥ。ウ……」
使用人「魔王様、変わらない、ですね」
側近「まあ、な……魔除けの石が……」
パリンッ パリン、パリン……ッ
側近「!?」
使用人「……ッ 割れた!?」
側近「魔王様……!?」
側近(魔力が、大きく膨れあがった……!)
使用人「……今、頂いてきた方は無事です、側近様……!」
側近「それ、貸して……!」ガシ、バラバラバラ……
使用人「……だ、駄目です、一斉に紫に……ッ」
側近「……使用人ちゃん、出て行け!もう入るなよ!」
側近「御免!」ドン!
使用人「きゃッ ……ッ」ドタ
バターン!
使用人「側近様!?」
側近「魔力をぶつけて何とか押さえる!」
使用人「!! 一人じゃ無理です、側近様!」
側近「どうにかする!無理なら呼ぶから!」
側近「魔除けの石は暫く良い!娘……あ、船長か」
側近「……勇者が来るまで、近づけさせるなよ!!」
344: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
使用人「側近様!」ドンドン!
側近「大丈夫だ。俺がくたばっても、終わっちまうんだよ」
側近「……使用人ちゃん、勇者と約束したんだろ?」
側近「ちゃんと……迎えてやって?」
使用人「側近様……」
……
………
…………
戦士「つ、いたー!!」
魔法使い「流石に長かったわね……」
僧侶「あ……此処に着くんだ……」
勇者「え?」
僧侶「この港から、小さな船が出るんだよ。一週間に一便ぐらいだけど」
魔法使い「少ないわね……何処に向かう船なの?」
僧侶「小さい島だよ。私の出身の村がある」
戦士「そうなの!?」
勇者「へえ……」
僧侶「花が一杯の広場と噴水が村の中心にあってね」
僧侶「少し前に、村長さんが綺麗な女の人の像を買ってきたんだ」
戦士「像?」
僧侶「うん。港街の教会で見た、あの小さい奴の……大っきい版、みたいな感じの」
魔法使い「へえ……」
勇者「似てる、のか?」
僧侶「ううん、顔は全然違うよ。何だろう……もっと、人間離れしてた」
勇者「人間離れ?」
僧侶「凄い綺麗なんだけどね。童話の挿絵のお姫様みたいだったよ」
魔法使い「村長さんの趣味なの?」
僧侶「だろうねぇ。観光名所になれば、とか言ってたけど」
僧侶「不便すぎて、旅人なんか殆ど来ないからね」
側近「大丈夫だ。俺がくたばっても、終わっちまうんだよ」
側近「……使用人ちゃん、勇者と約束したんだろ?」
側近「ちゃんと……迎えてやって?」
使用人「側近様……」
……
………
…………
戦士「つ、いたー!!」
魔法使い「流石に長かったわね……」
僧侶「あ……此処に着くんだ……」
勇者「え?」
僧侶「この港から、小さな船が出るんだよ。一週間に一便ぐらいだけど」
魔法使い「少ないわね……何処に向かう船なの?」
僧侶「小さい島だよ。私の出身の村がある」
戦士「そうなの!?」
勇者「へえ……」
僧侶「花が一杯の広場と噴水が村の中心にあってね」
僧侶「少し前に、村長さんが綺麗な女の人の像を買ってきたんだ」
戦士「像?」
僧侶「うん。港街の教会で見た、あの小さい奴の……大っきい版、みたいな感じの」
魔法使い「へえ……」
勇者「似てる、のか?」
僧侶「ううん、顔は全然違うよ。何だろう……もっと、人間離れしてた」
勇者「人間離れ?」
僧侶「凄い綺麗なんだけどね。童話の挿絵のお姫様みたいだったよ」
魔法使い「村長さんの趣味なの?」
僧侶「だろうねぇ。観光名所になれば、とか言ってたけど」
僧侶「不便すぎて、旅人なんか殆ど来ないからね」
346: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
魔法使い「ふふ……時間があれば一回行ってみたいな」
戦士「お前、花愛でる趣味なんかあんの」
魔法使い「……いちいち煩い男ねぇ、アンタは!」
勇者「まあまあ……魔王を倒したら、みんなで行こうか」
僧侶「あ、本当?勇者が来る、なんてなったら」
僧侶「村長さん、驚いて倒れちゃうかも」クスクス
戦士「一週間は流石に待てないもんな……えーっと。ここからは陸伝い、か?」
勇者「ちょっと待ってくれよ、地図地図……うん、そうだな」
勇者「北に歩けば北の街だな……近いみたいだ」
勇者「山を越えて南の方に……ああ、でも結構距離あるな……」
魔法使い「そっちに行けば、何があるの?」
勇者「鍛冶師の村、だな」
魔法使い「……港街の教会に居た人が居る、んだっけ」
戦士「だな……どうする、勇者?」
勇者「山越え、きついと思うぞ……この大陸の魔物も解らないしな」
僧侶「そうだね……道に迷うのも怖いよね」
戦士「北の街まで……は、一本道か」
勇者「時間も早い。夜に着ければ……まあ、良いかな、て所か」
魔法使い「北の街の方が良いと思うわよ。何か魔王を倒す為に」
魔法使い「必要な物がある訳でも無いんでしょう、鍛冶師の村に」
戦士「そうだな。俺も北の街に行く方に賛成だな」
勇者「……僧侶は?」
僧侶「必要が無いなら、それで良いと思うよ」
勇者「だな……良し、じゃあこの侭北に進もう」
勇者「北の街まで来れば……魔王の城は、もうすぐだ」
魔法使い「……勇者」
勇者「ん? ……魔物、か」
グルルルルル……
戦士「見た事無い狼だな……って、臭ッせぇ………!」
戦士「お前、花愛でる趣味なんかあんの」
魔法使い「……いちいち煩い男ねぇ、アンタは!」
勇者「まあまあ……魔王を倒したら、みんなで行こうか」
僧侶「あ、本当?勇者が来る、なんてなったら」
僧侶「村長さん、驚いて倒れちゃうかも」クスクス
戦士「一週間は流石に待てないもんな……えーっと。ここからは陸伝い、か?」
勇者「ちょっと待ってくれよ、地図地図……うん、そうだな」
勇者「北に歩けば北の街だな……近いみたいだ」
勇者「山を越えて南の方に……ああ、でも結構距離あるな……」
魔法使い「そっちに行けば、何があるの?」
勇者「鍛冶師の村、だな」
魔法使い「……港街の教会に居た人が居る、んだっけ」
戦士「だな……どうする、勇者?」
勇者「山越え、きついと思うぞ……この大陸の魔物も解らないしな」
僧侶「そうだね……道に迷うのも怖いよね」
戦士「北の街まで……は、一本道か」
勇者「時間も早い。夜に着ければ……まあ、良いかな、て所か」
魔法使い「北の街の方が良いと思うわよ。何か魔王を倒す為に」
魔法使い「必要な物がある訳でも無いんでしょう、鍛冶師の村に」
戦士「そうだな。俺も北の街に行く方に賛成だな」
勇者「……僧侶は?」
僧侶「必要が無いなら、それで良いと思うよ」
勇者「だな……良し、じゃあこの侭北に進もう」
勇者「北の街まで来れば……魔王の城は、もうすぐだ」
魔法使い「……勇者」
勇者「ん? ……魔物、か」
グルルルルル……
戦士「見た事無い狼だな……って、臭ッせぇ………!」
347: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
僧侶「……腐臭、だね、これ」
勇者「見た目は普通……ぽい、けどな」
魔法使い「ごちゃごちゃ言ってないで! ……炎よ!」ボウ!
戦士「そりゃ!」ブン!
勇者「それ!」ブゥン!ザシュ!
僧侶「……しぶといね、結構……」
魔法使い「……血が、臭い……! ……ッ あ……!」
ガルルルルッ!
戦士「危ない、魔法使い!」ガバッ
ガアアア!
勇者「魔法使い!戦士!」
戦士「ぐ、アああああああああああ!臭い!臭い!!」
魔法使い「きゃああああああああああ!!!」ゲホッゲホ!
勇者「……ッ」ブン、ザシュ!ザク!
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
僧侶「……血、吐き着けられただけで、良かった、じゃない……」
魔法使い「鼻つまみたいのは、私、よ ……ッ」オエッ
戦士「…… ……ッう、プ……ッ」ウエエエエエ
勇者「は、吐くなよ、戦士!!」
勇者「見た目は普通……ぽい、けどな」
魔法使い「ごちゃごちゃ言ってないで! ……炎よ!」ボウ!
戦士「そりゃ!」ブン!
勇者「それ!」ブゥン!ザシュ!
僧侶「……しぶといね、結構……」
魔法使い「……血が、臭い……! ……ッ あ……!」
ガルルルルッ!
戦士「危ない、魔法使い!」ガバッ
ガアアア!
勇者「魔法使い!戦士!」
戦士「ぐ、アああああああああああ!臭い!臭い!!」
魔法使い「きゃああああああああああ!!!」ゲホッゲホ!
勇者「……ッ」ブン、ザシュ!ザク!
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
僧侶「……血、吐き着けられただけで、良かった、じゃない……」
魔法使い「鼻つまみたいのは、私、よ ……ッ」オエッ
戦士「…… ……ッう、プ……ッ」ウエエエエエ
勇者「は、吐くなよ、戦士!!」
349: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
僧侶「か、回復、する?」
戦士「お、お……うえッ」
魔法使い「やめてよ!私まで吐きそうになるじゃない!」
勇者「……御免、本当に御免、でも……寄らないで」
戦士「勇者酷い!」
勇者「と、とりあえず、さっさと北の街を目指すぞ!」
勇者「……臭くて、かなわん」ハァ
……
………
…………
船長「……先にコッチに行ってそれから……」ブツブツ
男「………!」ガバ
船長「アァ、やっと起きたかい」
男「……俺は、どれぐらい……」
船長「あれから5時間程だな……疲れは取れたか?」
男「疲れていたのかどうかすら……」
船長「記憶喪失って奴かァ? ……名も覚えて無いって言ってたな」
男「ああ……」
船長「剣士、だ」
男「剣士?」
船長「名前が無いと不便でしょうが無いだろ。文句あるかい?」
剣士「……否」
船長「オーケィ。で、だ……本当に何も覚えちゃ居ないのか?」
剣士「ああ……気がついたらあそこに倒れていた」
船長「あそこがどこだか……知ってる訳ないな」
剣士「……空が『紫』色だった」
船長「あそこは最果ての街と呼ばれてる」
剣士「最果ての街?」
船長「そうだ。世界の果ての、果てにある朽ちた街」
剣士「……無人では無いのだろう?馬車と……すれ違った」
船長「森の方向に走っていっただろ?随分と立派な馬車が」
剣士「ああ……」
船長「あれに荷物を下ろしたのさ。アタシ達の大事な顧客様さ」
剣士「……人が、住んでいるのか?森しか見えなかったが」
船長「……知りたいか?詮索は時に身を滅ぼすよ」ニィ
剣士「…… ……」
戦士「お、お……うえッ」
魔法使い「やめてよ!私まで吐きそうになるじゃない!」
勇者「……御免、本当に御免、でも……寄らないで」
戦士「勇者酷い!」
勇者「と、とりあえず、さっさと北の街を目指すぞ!」
勇者「……臭くて、かなわん」ハァ
……
………
…………
船長「……先にコッチに行ってそれから……」ブツブツ
男「………!」ガバ
船長「アァ、やっと起きたかい」
男「……俺は、どれぐらい……」
船長「あれから5時間程だな……疲れは取れたか?」
男「疲れていたのかどうかすら……」
船長「記憶喪失って奴かァ? ……名も覚えて無いって言ってたな」
男「ああ……」
船長「剣士、だ」
男「剣士?」
船長「名前が無いと不便でしょうが無いだろ。文句あるかい?」
剣士「……否」
船長「オーケィ。で、だ……本当に何も覚えちゃ居ないのか?」
剣士「ああ……気がついたらあそこに倒れていた」
船長「あそこがどこだか……知ってる訳ないな」
剣士「……空が『紫』色だった」
船長「あそこは最果ての街と呼ばれてる」
剣士「最果ての街?」
船長「そうだ。世界の果ての、果てにある朽ちた街」
剣士「……無人では無いのだろう?馬車と……すれ違った」
船長「森の方向に走っていっただろ?随分と立派な馬車が」
剣士「ああ……」
船長「あれに荷物を下ろしたのさ。アタシ達の大事な顧客様さ」
剣士「……人が、住んでいるのか?森しか見えなかったが」
船長「……知りたいか?詮索は時に身を滅ぼすよ」ニィ
剣士「…… ……」
350: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
船長「仲間とは秘密を共有する義務がある。そうやってアタシ達は信頼し合う」
剣士「………」
船長「行く当ては?」
剣士「……俺は……」
船長「わからない、か」
剣士「……ああ」
船長「思い出すまで、置いてやっても良い。が……きちんと働いて貰うよ?」
剣士「……感謝する」
船長「あんな場所に居るからには訳ありなんだろうしな」
剣士「あんな……場所? ……廃墟か」
船長「それだけじゃない。あの森の奥には『でっかい城』があると言われているのさ」
剣士「城……」ズキン
船長「そう……場所が場所だろ? 魔王が住んでるんじゃ無いか、とかな」
船長「……魔王が人を滅ぼそうとしてる、なんて噂まで……どうした?」
剣士「……頭が……魔王……」ズキンズキン
船長「……」
剣士「俺は……魔王を、倒さなければ……」ズキンズキン
船長「……『遅かった』な」
剣士「……何?」
船長「ついこの間……『勇者様が魔王を倒す旅に出た』て話だ」
剣士「……勇、者」
船長「『金の髪に金の瞳』……まるで、正反対だな」
剣士「正反対……どういう事だ?」
船長「アンタだよ、剣士。アンタは……『黒に見まがう紫の髪に、紫の瞳』だ」
船長「……アンタみたいな奴、見た事無いよ」
剣士「……」
船長「それに、この船にはくたばり損ないのジジィだけど」
船長「一応魔法使いが居るのさ……自称物知り、のね」
剣士「……そう、なのか」
剣士「………」
船長「行く当ては?」
剣士「……俺は……」
船長「わからない、か」
剣士「……ああ」
船長「思い出すまで、置いてやっても良い。が……きちんと働いて貰うよ?」
剣士「……感謝する」
船長「あんな場所に居るからには訳ありなんだろうしな」
剣士「あんな……場所? ……廃墟か」
船長「それだけじゃない。あの森の奥には『でっかい城』があると言われているのさ」
剣士「城……」ズキン
船長「そう……場所が場所だろ? 魔王が住んでるんじゃ無いか、とかな」
船長「……魔王が人を滅ぼそうとしてる、なんて噂まで……どうした?」
剣士「……頭が……魔王……」ズキンズキン
船長「……」
剣士「俺は……魔王を、倒さなければ……」ズキンズキン
船長「……『遅かった』な」
剣士「……何?」
船長「ついこの間……『勇者様が魔王を倒す旅に出た』て話だ」
剣士「……勇、者」
船長「『金の髪に金の瞳』……まるで、正反対だな」
剣士「正反対……どういう事だ?」
船長「アンタだよ、剣士。アンタは……『黒に見まがう紫の髪に、紫の瞳』だ」
船長「……アンタみたいな奴、見た事無いよ」
剣士「……」
船長「それに、この船にはくたばり損ないのジジィだけど」
船長「一応魔法使いが居るのさ……自称物知り、のね」
剣士「……そう、なのか」
352: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
船長「そのジジィの話だと、『瞳の色はその者の加護を表している』んだそうだ」
船長「勇者様ってのは、金の瞳……光の象徴なのかもしれん、のだとさ」
剣士「……では、俺は……なんだ?」
船長「さてね……アンタに解らないのに、アタシに解る訳ないだろう」
剣士「……さっきの、馬車は?」
船長「知りたいか?」
剣士「……仲間とは秘密を共有しあうんだろう」
船長「言ったね?……まあ、良いだろう。アンタ、いい男だしね」
剣士「……関係あるのか?」
船長「目の保養って言葉は知ってるかい?」
剣士「……」
船長「『昔は城まで運んでた』んだそうだ。親父曰く、な」
船長「聳える、古い居城があるらしい……が」
船長「『ある日を境に、あの場所で待ち合わせる事にした』んだと」
剣士「……じゃあ、あの馬車は」
船長「城に住む……魔族だろうな」
剣士「……! まさか!?」
船長「さっきも言った。詮索は時に身を滅ぼす……アタシ達は、金さえ払って貰えりゃ」
船長「文句はネェ……あの馬車に乗ってた女はな」
船長「随分昔からお得意様なのさ」
剣士「………女?」
船長「ああ。顔は隠してやがるが声で解る。それに……」
船長「アンタも、暫く船に乗ってりゃ解る『緑色の小鳥』が文を運んでくるのさ」
剣士「だが……何故、魔族と解る?」
船長「『消えちまう』のさ」
剣士「!?」
船長「煙の如く……ね。人間だって魔法を使える。だがな」
船長「そんな芸当、あっさりとやってのけるのは……な?」
剣士「…… ……」
船長「しかも、常識で考えられない値段の物を」
船長「常識で考えられない数注文する」
船長「アタシ達は何とでもして、その依頼を早急にこなす」
船長「……それだけで、2,3年は何もせず遊んで暮らせる額を稼げるからね」
剣士「……」
船長「勇者様ってのは、金の瞳……光の象徴なのかもしれん、のだとさ」
剣士「……では、俺は……なんだ?」
船長「さてね……アンタに解らないのに、アタシに解る訳ないだろう」
剣士「……さっきの、馬車は?」
船長「知りたいか?」
剣士「……仲間とは秘密を共有しあうんだろう」
船長「言ったね?……まあ、良いだろう。アンタ、いい男だしね」
剣士「……関係あるのか?」
船長「目の保養って言葉は知ってるかい?」
剣士「……」
船長「『昔は城まで運んでた』んだそうだ。親父曰く、な」
船長「聳える、古い居城があるらしい……が」
船長「『ある日を境に、あの場所で待ち合わせる事にした』んだと」
剣士「……じゃあ、あの馬車は」
船長「城に住む……魔族だろうな」
剣士「……! まさか!?」
船長「さっきも言った。詮索は時に身を滅ぼす……アタシ達は、金さえ払って貰えりゃ」
船長「文句はネェ……あの馬車に乗ってた女はな」
船長「随分昔からお得意様なのさ」
剣士「………女?」
船長「ああ。顔は隠してやがるが声で解る。それに……」
船長「アンタも、暫く船に乗ってりゃ解る『緑色の小鳥』が文を運んでくるのさ」
剣士「だが……何故、魔族と解る?」
船長「『消えちまう』のさ」
剣士「!?」
船長「煙の如く……ね。人間だって魔法を使える。だがな」
船長「そんな芸当、あっさりとやってのけるのは……な?」
剣士「…… ……」
船長「しかも、常識で考えられない値段の物を」
船長「常識で考えられない数注文する」
船長「アタシ達は何とでもして、その依頼を早急にこなす」
船長「……それだけで、2,3年は何もせず遊んで暮らせる額を稼げるからね」
剣士「……」
353: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
船長「親父がまだ生きてる時に、とびきり上等な布を大量に届けたりもした」
剣士「……今回は?」
船長「とびきり笑えるよ。今回も前回も……」
船長「魔除けの石を、ありったけ……何考えてるか解りゃしネェが」
剣士「金さえ払って貰えれば……か」
船長「そう言うこった」ニィ
剣士「……お前の、親父は?」
船長「『少し前』、さ……海の魔物に食われて氏んだよ」
剣士「……すまん」
船長「気にする事じゃない」
剣士「なのに……魔物を相手に商売するのか」
船長「生きる為だ。食う為だ……金を稼ぐのに、アレは嫌コレは嫌なんて」
船長「……言える身分じゃ、海賊なんてやってネェよ」
剣士「強い、んだな」
船長「……人には、分不相応の幸せってものがあんのさ」
剣士「…… ……」
船長「さて、そろそろベッドに寝かして貰えるとありがたいんだけどね」ス…
剣士「あ、ああ……悪かった…… ……」ギシ
船長「……眉間に皺刻んでんのもイイね、アンタ」
剣士「………何故、上に乗る」
船長「男と女が一つの部屋で一人きり……他に何するんだい」
剣士「……」ハァ
船長「諦めが早いのは良いことだ。アンタ、得するよ……この世界ではね」
剣士「断れる状況でも無いだろう」
船長「おまけに、飲み込みも早い……アンタ、海賊に向いてるよ」チュ
剣士「……褒められているのか、それ…は… ……」
剣士「……今回は?」
船長「とびきり笑えるよ。今回も前回も……」
船長「魔除けの石を、ありったけ……何考えてるか解りゃしネェが」
剣士「金さえ払って貰えれば……か」
船長「そう言うこった」ニィ
剣士「……お前の、親父は?」
船長「『少し前』、さ……海の魔物に食われて氏んだよ」
剣士「……すまん」
船長「気にする事じゃない」
剣士「なのに……魔物を相手に商売するのか」
船長「生きる為だ。食う為だ……金を稼ぐのに、アレは嫌コレは嫌なんて」
船長「……言える身分じゃ、海賊なんてやってネェよ」
剣士「強い、んだな」
船長「……人には、分不相応の幸せってものがあんのさ」
剣士「…… ……」
船長「さて、そろそろベッドに寝かして貰えるとありがたいんだけどね」ス…
剣士「あ、ああ……悪かった…… ……」ギシ
船長「……眉間に皺刻んでんのもイイね、アンタ」
剣士「………何故、上に乗る」
船長「男と女が一つの部屋で一人きり……他に何するんだい」
剣士「……」ハァ
船長「諦めが早いのは良いことだ。アンタ、得するよ……この世界ではね」
剣士「断れる状況でも無いだろう」
船長「おまけに、飲み込みも早い……アンタ、海賊に向いてるよ」チュ
剣士「……褒められているのか、それ…は… ……」
354: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
……
………
…………
町長「これは、勇、者…… ……様方、で、すよ……ね?」
魔法使い「……」グッタリ
戦士「……」グッタリ
僧侶「あの、町長さん、すみません……先に、お風呂とか……」
勇者「俺からもお願いします。狼を倒した時に、血を被ってしまいまして……」
町長「あ、ああ……!失礼しました!すぐにご準備致します!」
勇者「良かったな、戦士」
戦士「……」コク
僧侶「……ちゃ、ちゃんと洗ってあげるからね」
魔法使い「……」コク
町長「お、お仲間の方は大丈夫ですかな……お話になるのも、お疲れなご様子ですが……」
僧侶「息すると臭いんですって、自分が」
勇者「……もう少し包んで言おうよ、僧侶」
魔法使い「……」
魔法使い(後で覚えておきなさいよ、僧侶……!)
戦士「……」
戦士(臭いー、自分が臭いー)
……
………
…………
戦士「ああ、生き返った!」ボスッ
魔法使い「ちょっと、邪魔よ戦士……それにアンタはあっち!」
戦士「何処でも良いだろうが、ベッドなんて」
魔法使い「そんなに僧侶の横で寝たいの?」
戦士「ん? ……ああ、その荷物僧侶のか」
戦士「別にベッドくっついてる訳じゃあるまいし、良いだろうが」
魔法使い「勇者が妬いちゃうわよ」
戦士「妬いてんのはお前じゃネェの」
魔法使い「は!? 何でアタシ……」
………
…………
町長「これは、勇、者…… ……様方、で、すよ……ね?」
魔法使い「……」グッタリ
戦士「……」グッタリ
僧侶「あの、町長さん、すみません……先に、お風呂とか……」
勇者「俺からもお願いします。狼を倒した時に、血を被ってしまいまして……」
町長「あ、ああ……!失礼しました!すぐにご準備致します!」
勇者「良かったな、戦士」
戦士「……」コク
僧侶「……ちゃ、ちゃんと洗ってあげるからね」
魔法使い「……」コク
町長「お、お仲間の方は大丈夫ですかな……お話になるのも、お疲れなご様子ですが……」
僧侶「息すると臭いんですって、自分が」
勇者「……もう少し包んで言おうよ、僧侶」
魔法使い「……」
魔法使い(後で覚えておきなさいよ、僧侶……!)
戦士「……」
戦士(臭いー、自分が臭いー)
……
………
…………
戦士「ああ、生き返った!」ボスッ
魔法使い「ちょっと、邪魔よ戦士……それにアンタはあっち!」
戦士「何処でも良いだろうが、ベッドなんて」
魔法使い「そんなに僧侶の横で寝たいの?」
戦士「ん? ……ああ、その荷物僧侶のか」
戦士「別にベッドくっついてる訳じゃあるまいし、良いだろうが」
魔法使い「勇者が妬いちゃうわよ」
戦士「妬いてんのはお前じゃネェの」
魔法使い「は!? 何でアタシ……」
356: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
戦士「何となく ……お前、俺の事好きなんじゃネェの?」
魔法使い「……どうやったらそんな思考回路になるのか聞いてみたいわね」
戦士「脳みそまで筋肉で、って奴か?」
魔法使い「下らない事言ってないで、そこ退いてよ!」
戦士「やだよ」グイ
魔法使い「きゃ……ッ!?」
戦士「お。良い匂いする」ギュ
魔法使い「な、な……ッ 何すんのよ!?」
戦士「俺はお前の事好きだぜ、魔法使い」
魔法使い「……アンタのは『女好き』でしょ」
戦士「まあ、否定はしねぇけど」
魔法使い「……離して、てば」
戦士「厭だってば」
魔法使い「……ッいい加減にしてよ!アタシはアンタのはけ口になるのは……ッ」
戦士「はいはい、煩い煩い」チュ
魔法使い「!?」
戦士「……はけ口じゃ無くて、恋人なら良い訳?」
魔法使い「……アンタの言葉はわかんないのよ。本気なのかどうなのか」
魔法使い「しかも、いきなりそんな事言われたって、そんな素振りも何も……!」
戦士「……勇者と僧侶は?」
魔法使い「え? ……二人で町長さんとこに行ったわよ」
魔法使い「……私達、あんな状態だったんだもの」
戦士「そっか」
魔法使い「そうじゃ無くて!だから、なんで、急に……!」
魔法使い「……どうやったらそんな思考回路になるのか聞いてみたいわね」
戦士「脳みそまで筋肉で、って奴か?」
魔法使い「下らない事言ってないで、そこ退いてよ!」
戦士「やだよ」グイ
魔法使い「きゃ……ッ!?」
戦士「お。良い匂いする」ギュ
魔法使い「な、な……ッ 何すんのよ!?」
戦士「俺はお前の事好きだぜ、魔法使い」
魔法使い「……アンタのは『女好き』でしょ」
戦士「まあ、否定はしねぇけど」
魔法使い「……離して、てば」
戦士「厭だってば」
魔法使い「……ッいい加減にしてよ!アタシはアンタのはけ口になるのは……ッ」
戦士「はいはい、煩い煩い」チュ
魔法使い「!?」
戦士「……はけ口じゃ無くて、恋人なら良い訳?」
魔法使い「……アンタの言葉はわかんないのよ。本気なのかどうなのか」
魔法使い「しかも、いきなりそんな事言われたって、そんな素振りも何も……!」
戦士「……勇者と僧侶は?」
魔法使い「え? ……二人で町長さんとこに行ったわよ」
魔法使い「……私達、あんな状態だったんだもの」
戦士「そっか」
魔法使い「そうじゃ無くて!だから、なんで、急に……!」
357: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
戦士「だから急じゃ無いって。結構前……最初から、かな」
戦士「気に入ってたんだぜ?」
魔法使い「……何よ、一目惚れでもした、って言いたいの」
戦士「まあ、それに近いのかなぁ」ウーン
魔法使い「何よ、それ……」
戦士「何となく ……お前じゃ無いと、駄目な気がしたんだよ」
戦士「僧侶でも他の女でも無くてさ……『お前』が良い」
魔法使い「戦士……」
戦士「……不思議な感覚だなぁ。何でかわかんないけど」
戦士「『前世でも恋人だった』んかなァ?」ハハ
魔法使い「……こっぱずかしい事あっさり言わないでよ」
戦士「お返事はー?」
魔法使い「……アタシ、も。アンタの事は好きよ」
魔法使い「不思議ね。アンタじゃ無きゃ……駄目な気がするのよ、アタシも」
戦士「ん、何。真似っこ?」
魔法使い「茶化さないで! ……何なんだろうな、この気持ち」
戦士「だから、言ってんじゃん」
戦士「……『前世でも恋人』だったんだよ、俺達。運命、って奴?」
魔法使い「『運命』 ……また、しれっと恥ずかしい事を」ハァ
戦士「本心だって……で、さ。返事は?」
魔法使い「まだ恥ずかしい事を言わせる気なの!?」
戦士「顔真っ赤」クス。ギュ……チュ
魔法使い「……帰ってくるわよ、あの二人」
戦士「鍵かけてあるしー」
魔法使い「……酷い」
戦士「厭なら退けば?」
魔法使い「厭だから、退かない」チュ
……
………
…………
戦士「気に入ってたんだぜ?」
魔法使い「……何よ、一目惚れでもした、って言いたいの」
戦士「まあ、それに近いのかなぁ」ウーン
魔法使い「何よ、それ……」
戦士「何となく ……お前じゃ無いと、駄目な気がしたんだよ」
戦士「僧侶でも他の女でも無くてさ……『お前』が良い」
魔法使い「戦士……」
戦士「……不思議な感覚だなぁ。何でかわかんないけど」
戦士「『前世でも恋人だった』んかなァ?」ハハ
魔法使い「……こっぱずかしい事あっさり言わないでよ」
戦士「お返事はー?」
魔法使い「……アタシ、も。アンタの事は好きよ」
魔法使い「不思議ね。アンタじゃ無きゃ……駄目な気がするのよ、アタシも」
戦士「ん、何。真似っこ?」
魔法使い「茶化さないで! ……何なんだろうな、この気持ち」
戦士「だから、言ってんじゃん」
戦士「……『前世でも恋人』だったんだよ、俺達。運命、って奴?」
魔法使い「『運命』 ……また、しれっと恥ずかしい事を」ハァ
戦士「本心だって……で、さ。返事は?」
魔法使い「まだ恥ずかしい事を言わせる気なの!?」
戦士「顔真っ赤」クス。ギュ……チュ
魔法使い「……帰ってくるわよ、あの二人」
戦士「鍵かけてあるしー」
魔法使い「……酷い」
戦士「厭なら退けば?」
魔法使い「厭だから、退かない」チュ
……
………
…………
359: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
町長「そうですか、最果ての街に……」
勇者「はい。先ほどちらっと見たんですが……もし良ければ」
勇者「あの船を、お貸し頂けませんか?」
町長「……それは、お持ち頂いても構いません。あの船は」
町長「そもそもは、前町長の物ですし……」
僧侶「え?では、貴方の物……でもあるんじゃないんですか」
町長「いえ……前町長はある日突然、姿を消してしまいましてね」
町長「一応、町民から選ばれて私が町長と言う事にはなったんですが」
町長「今の所、誰の物と言う訳でも無いのですよ」
勇者「そうなんですか……」
町長「ですが、勇者様のお手伝いとなれば、誰も文句はいいますまい」
町長「ただし、北の塔にだけはお近づきになりませんように!」
僧侶「北の塔?」
町長「この街を背に、海の……最果ての大陸の方を見れば」
町長「天まで届く程の高い塔が見えるんですよ」
勇者「天まで!?」
町長「ええ……昔はあの塔に行きたがる無謀な者達も居たんですがね」
町長「今では、怖がって誰も……近づこうとはしません」
僧侶「魔物が……住んでいるのですか?」
町長「あ……いえいえ。そういう訳では……ただ」
町長「不気味ですしね。この街の物は……触らぬ神にたたり無し、と」
町長「とにかく……嫌がる物で」
勇者「そう、ですか……」
町長「ええ。ですから、それさえお約束して頂ければ」
僧侶「わかりました……大丈夫だよね?勇者」
勇者「ああ。ご協力頂けるのでしたら、勿論、守りますよ」
町長「そうですか。ではどうぞ、お使い下さい」ホッ
町長「お仲間のお二人も、そろそろ戻られるでしょう。今日はゆっくりと」
町長「お休み下さい」
勇者「ありがとうございます」
僧侶「ありがとうございます!」
勇者「はい。先ほどちらっと見たんですが……もし良ければ」
勇者「あの船を、お貸し頂けませんか?」
町長「……それは、お持ち頂いても構いません。あの船は」
町長「そもそもは、前町長の物ですし……」
僧侶「え?では、貴方の物……でもあるんじゃないんですか」
町長「いえ……前町長はある日突然、姿を消してしまいましてね」
町長「一応、町民から選ばれて私が町長と言う事にはなったんですが」
町長「今の所、誰の物と言う訳でも無いのですよ」
勇者「そうなんですか……」
町長「ですが、勇者様のお手伝いとなれば、誰も文句はいいますまい」
町長「ただし、北の塔にだけはお近づきになりませんように!」
僧侶「北の塔?」
町長「この街を背に、海の……最果ての大陸の方を見れば」
町長「天まで届く程の高い塔が見えるんですよ」
勇者「天まで!?」
町長「ええ……昔はあの塔に行きたがる無謀な者達も居たんですがね」
町長「今では、怖がって誰も……近づこうとはしません」
僧侶「魔物が……住んでいるのですか?」
町長「あ……いえいえ。そういう訳では……ただ」
町長「不気味ですしね。この街の物は……触らぬ神にたたり無し、と」
町長「とにかく……嫌がる物で」
勇者「そう、ですか……」
町長「ええ。ですから、それさえお約束して頂ければ」
僧侶「わかりました……大丈夫だよね?勇者」
勇者「ああ。ご協力頂けるのでしたら、勿論、守りますよ」
町長「そうですか。ではどうぞ、お使い下さい」ホッ
町長「お仲間のお二人も、そろそろ戻られるでしょう。今日はゆっくりと」
町長「お休み下さい」
勇者「ありがとうございます」
僧侶「ありがとうございます!」
360: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
キィ、パタン
勇者「良し、足も確保できた……な」
僧侶「丸一日あれば着くって言ってたね。最果ての街まで」
勇者「そうだな……レベルも、まあ、随分上がったよな」
勇者「……強く、なってる……よな」
僧侶「……ちょっと、お散歩しない?勇者」
勇者「え? ああ……別に、構わないけど」
僧侶「街の外に出なければ大丈夫でしょう」
僧侶「……手、繋いで良い?」ギュ
勇者「……答え聞く前に繋いでるじゃないか」ギュ
僧侶「厭だったらほどいて良いよ」
勇者「厭だったらね」
僧侶「…… ……勇者、さ」
勇者「うん?」
僧侶「…… ……」
勇者「何だよ」
僧侶「傷付けたら、御免……あの」
勇者「…… ……」
僧侶「光の魔法、使えない、んだよね?」
勇者「……やっぱり、気がついてたか」
僧侶「魔導の街の図書館で、魔法の使い方とか、一生懸命読んでたし」
僧侶「優れた加護が……とか、離してた時の様子とか……」
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者「光の剣を修理する為に、南の洞窟に行った時にさ」
勇者「王子が、魔物にやられそうになって……」
僧侶「うん」
勇者「……無我夢中だった時に、一度だけ使った、らしいんだ」
僧侶「らしい?」
勇者「俺は覚えて無いんだ。その後も一週間だか10日だか、寝込んでたらしくて」
勇者「良し、足も確保できた……な」
僧侶「丸一日あれば着くって言ってたね。最果ての街まで」
勇者「そうだな……レベルも、まあ、随分上がったよな」
勇者「……強く、なってる……よな」
僧侶「……ちょっと、お散歩しない?勇者」
勇者「え? ああ……別に、構わないけど」
僧侶「街の外に出なければ大丈夫でしょう」
僧侶「……手、繋いで良い?」ギュ
勇者「……答え聞く前に繋いでるじゃないか」ギュ
僧侶「厭だったらほどいて良いよ」
勇者「厭だったらね」
僧侶「…… ……勇者、さ」
勇者「うん?」
僧侶「…… ……」
勇者「何だよ」
僧侶「傷付けたら、御免……あの」
勇者「…… ……」
僧侶「光の魔法、使えない、んだよね?」
勇者「……やっぱり、気がついてたか」
僧侶「魔導の街の図書館で、魔法の使い方とか、一生懸命読んでたし」
僧侶「優れた加護が……とか、離してた時の様子とか……」
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者「光の剣を修理する為に、南の洞窟に行った時にさ」
勇者「王子が、魔物にやられそうになって……」
僧侶「うん」
勇者「……無我夢中だった時に、一度だけ使った、らしいんだ」
僧侶「らしい?」
勇者「俺は覚えて無いんだ。その後も一週間だか10日だか、寝込んでたらしくて」
361: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
勇者「起きたら、光の剣も……今のあの状態になってた」
僧侶「……」
勇者「側近に言われて、何度か試してみたけど……それ以来、一度も使えない」
勇者「俺が使えるのは、簡単な回復魔法だけだ」
僧侶「……そ、か」
勇者「こんなので……俺、魔王……倒せるのかな」
僧侶「『勇者は必ず、魔王を倒す』んでしょ?」
勇者「…… ……」
僧侶「『願えば、叶う』だよ」
勇者「…… ……」
僧侶「自信、無いの?」
勇者「……いや、そんな事は無い。無いよ……俺には」
勇者「僧侶や、魔法使い、戦士……大事な仲間が居る」
勇者「自信が無いなんて言っちゃったら、失礼だろ、お前達に、さ」
僧侶「……うん」
勇者「あれから、試してないけど……」
僧侶「?」
勇者「魔法は、使い様……なんだろう」
勇者「……だから、さ。大丈夫。俺なら出来るって信じてるよ」
勇者「俺は『勇者』だ。『勇者は、必ず魔王を倒す!』」
僧侶「…… ……勇者、おまじないしてあげる」
勇者「おまじない?」
僧侶「うん。目、閉じて?」
勇者「ん……」
僧侶「…… ……」チュ
勇者「!?」
僧侶「…… ……」フイ
僧侶「も、戻ろ、っか!」
勇者「……ッ」グイ!
僧侶「!」
勇者「……僧侶」ギュ……チュ
僧侶「……ッ ん……ッ」
僧侶「……」ソロソロ……ギュ
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
僧侶「……」
勇者「側近に言われて、何度か試してみたけど……それ以来、一度も使えない」
勇者「俺が使えるのは、簡単な回復魔法だけだ」
僧侶「……そ、か」
勇者「こんなので……俺、魔王……倒せるのかな」
僧侶「『勇者は必ず、魔王を倒す』んでしょ?」
勇者「…… ……」
僧侶「『願えば、叶う』だよ」
勇者「…… ……」
僧侶「自信、無いの?」
勇者「……いや、そんな事は無い。無いよ……俺には」
勇者「僧侶や、魔法使い、戦士……大事な仲間が居る」
勇者「自信が無いなんて言っちゃったら、失礼だろ、お前達に、さ」
僧侶「……うん」
勇者「あれから、試してないけど……」
僧侶「?」
勇者「魔法は、使い様……なんだろう」
勇者「……だから、さ。大丈夫。俺なら出来るって信じてるよ」
勇者「俺は『勇者』だ。『勇者は、必ず魔王を倒す!』」
僧侶「…… ……勇者、おまじないしてあげる」
勇者「おまじない?」
僧侶「うん。目、閉じて?」
勇者「ん……」
僧侶「…… ……」チュ
勇者「!?」
僧侶「…… ……」フイ
僧侶「も、戻ろ、っか!」
勇者「……ッ」グイ!
僧侶「!」
勇者「……僧侶」ギュ……チュ
僧侶「……ッ ん……ッ」
僧侶「……」ソロソロ……ギュ
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
362: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
勇者「……僧侶」
僧侶「わ……私、ね?」
勇者「……?」
僧侶「……勇者が、あの……始まりの街から、旅立つって聞いて」
僧侶「いてもたっても居られなくなって……」
僧侶「『着いていかなきゃ』って思ったの」
僧侶「……『勇者』には、憧れた。誰も持たない、光の加護を持つ」
僧侶「光に選ばれた、運命の子」
勇者「…… ……」
僧侶「でも、実際に貴方を見て……思ったんだ」
僧侶「……この人だ。私、この人と運命を共にするんだって」
勇者「……『運命』」
僧侶「うん……なんか、ずっと探してた物、やっと見つけた、見たいな」
勇者「…… ……」
僧侶「上手く……言えない、けど……」
僧侶「始まりの街を出た時にはああ言ったけど」
僧侶「……本当は、私が選ばれない可能性なんて、考えなかったよ」
勇者「俺……誰を選んだら良いか、なんて解らなくて」
勇者「適当、って言ったら言葉は悪いかもしれないけどさ」
勇者「いや……『適当』であってんのか。ともかく、えっと……」
僧侶「直感?」
勇者「……よく言えば、ね」
勇者「僧侶と、魔法使いと戦士がぱっと目についたんだ。だから……」
僧侶「間違えて……無かった、よね?」
勇者「……当たり前だろ」
僧侶「うん……」フフ
勇者「魔王を倒したら……」
僧侶「ん?」
勇者「始まりの街に戻って、さ……王様達に報告して」
勇者「……港街の、あの教会、で……さ……」
僧侶「ストップ!」
僧侶「わ……私、ね?」
勇者「……?」
僧侶「……勇者が、あの……始まりの街から、旅立つって聞いて」
僧侶「いてもたっても居られなくなって……」
僧侶「『着いていかなきゃ』って思ったの」
僧侶「……『勇者』には、憧れた。誰も持たない、光の加護を持つ」
僧侶「光に選ばれた、運命の子」
勇者「…… ……」
僧侶「でも、実際に貴方を見て……思ったんだ」
僧侶「……この人だ。私、この人と運命を共にするんだって」
勇者「……『運命』」
僧侶「うん……なんか、ずっと探してた物、やっと見つけた、見たいな」
勇者「…… ……」
僧侶「上手く……言えない、けど……」
僧侶「始まりの街を出た時にはああ言ったけど」
僧侶「……本当は、私が選ばれない可能性なんて、考えなかったよ」
勇者「俺……誰を選んだら良いか、なんて解らなくて」
勇者「適当、って言ったら言葉は悪いかもしれないけどさ」
勇者「いや……『適当』であってんのか。ともかく、えっと……」
僧侶「直感?」
勇者「……よく言えば、ね」
勇者「僧侶と、魔法使いと戦士がぱっと目についたんだ。だから……」
僧侶「間違えて……無かった、よね?」
勇者「……当たり前だろ」
僧侶「うん……」フフ
勇者「魔王を倒したら……」
僧侶「ん?」
勇者「始まりの街に戻って、さ……王様達に報告して」
勇者「……港街の、あの教会、で……さ……」
僧侶「ストップ!」
363: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
勇者「……え?」
僧侶「魔王倒して、何にも心配する事、無くなってから」
僧侶「改めて…… ……ね?」
勇者「僧侶……」
僧侶「おまじない、してあげたし、大丈夫!」
僧侶「私達は……『勇者は、必ず魔王を倒す』ん、だよ」ギュ
勇者「……ああ!」ギュ
僧侶「……」チュ
勇者「……ん」
僧侶「戻ろ、っか」
勇者「ん……遅くなっちゃったな。もう寝てるかな」
僧侶「かもね。疲れただろうし、ね」
勇者「……明日、出発だ。ゆっくり休もう」
僧侶「……うん」
……
………
…………
神父「…… ……」
少女「あー、うー」
神父(……やはり、人の子と比べて、成長が……早い)
神父(まだ、半年程だろうに……やはり、この子は……純粋な、エルフ?)
少女「うー?」
神父「はい?お腹がすきましたか?」
少女「あー」キャッキャ
神父「すぐに用意しますからね」スタスタ
神父(……事情を話して……否。もう、女将さんに頼るのはやめるべきだろう)
神父(教会へと……通うのも目を離せないし)
神父(やはり、この小屋に篭もって…… !?)ドン
少女「し、ん……ぷ、さま」ニコッ
神父「!!」
神父(此処まで……歩いて……!?)キョロキョロ
少女「……」タ、タ……
神父(……私に、この子を……無事に、育てる事は……出来るのでしょうか)
神父(神父様……神、よ……!!)
僧侶「魔王倒して、何にも心配する事、無くなってから」
僧侶「改めて…… ……ね?」
勇者「僧侶……」
僧侶「おまじない、してあげたし、大丈夫!」
僧侶「私達は……『勇者は、必ず魔王を倒す』ん、だよ」ギュ
勇者「……ああ!」ギュ
僧侶「……」チュ
勇者「……ん」
僧侶「戻ろ、っか」
勇者「ん……遅くなっちゃったな。もう寝てるかな」
僧侶「かもね。疲れただろうし、ね」
勇者「……明日、出発だ。ゆっくり休もう」
僧侶「……うん」
……
………
…………
神父「…… ……」
少女「あー、うー」
神父(……やはり、人の子と比べて、成長が……早い)
神父(まだ、半年程だろうに……やはり、この子は……純粋な、エルフ?)
少女「うー?」
神父「はい?お腹がすきましたか?」
少女「あー」キャッキャ
神父「すぐに用意しますからね」スタスタ
神父(……事情を話して……否。もう、女将さんに頼るのはやめるべきだろう)
神父(教会へと……通うのも目を離せないし)
神父(やはり、この小屋に篭もって…… !?)ドン
少女「し、ん……ぷ、さま」ニコッ
神父「!!」
神父(此処まで……歩いて……!?)キョロキョロ
少女「……」タ、タ……
神父(……私に、この子を……無事に、育てる事は……出来るのでしょうか)
神父(神父様……神、よ……!!)
364: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
……
………
…………
魔法使い「あれか……北の塔、って」
戦士「確かに……天辺見えネェな」
勇者「……迂回しろ、戦士。傍に寄るな」
戦士「あいよ……なあ、勇者。いい加減、その照れた様な目で」
戦士「俺を見るのはやめてくれないかな……」
勇者「……気のせいだ」フイ
僧侶「……おめでたい事だと思うけどね」
魔法使い「な、何よ、僧侶まで……」
勇者「僧侶と部屋に戻ってみれば」
僧侶「……二人仲良く裸のまんまで一つのベッドで抱き合って、ねぇ」
勇者「すーすー寝息立ててなぁ……」
魔法使い「あ、アタシ後ろ見てくるわね!」スタスタ
僧侶「右手と右足同時に出てるよ、魔法使い……」
勇者「……魔王を倒して帰る時は、二つ部屋取ろうな」
戦士「ええ……俺、魔法使いと一緒が良い……」
僧侶「それでいいじゃん」
戦士「……え!?」
勇者「僧侶と俺、戦士と魔法使い、で良いだろう」
戦士「え、え ……えええええええええええ!?」
勇者「その反応したいのは俺の方なんだけどな?」
僧侶「ねぇ」
戦士「いやいやいやいやいや、何時の間に!?」
勇者「そっくりそのまま返してやるわ!」
タタタ
魔法使い「勇者!魔物よ!」
勇者「! ……固まれ!ばらばらになったらやられるぞ!」
………
…………
魔法使い「あれか……北の塔、って」
戦士「確かに……天辺見えネェな」
勇者「……迂回しろ、戦士。傍に寄るな」
戦士「あいよ……なあ、勇者。いい加減、その照れた様な目で」
戦士「俺を見るのはやめてくれないかな……」
勇者「……気のせいだ」フイ
僧侶「……おめでたい事だと思うけどね」
魔法使い「な、何よ、僧侶まで……」
勇者「僧侶と部屋に戻ってみれば」
僧侶「……二人仲良く裸のまんまで一つのベッドで抱き合って、ねぇ」
勇者「すーすー寝息立ててなぁ……」
魔法使い「あ、アタシ後ろ見てくるわね!」スタスタ
僧侶「右手と右足同時に出てるよ、魔法使い……」
勇者「……魔王を倒して帰る時は、二つ部屋取ろうな」
戦士「ええ……俺、魔法使いと一緒が良い……」
僧侶「それでいいじゃん」
戦士「……え!?」
勇者「僧侶と俺、戦士と魔法使い、で良いだろう」
戦士「え、え ……えええええええええええ!?」
勇者「その反応したいのは俺の方なんだけどな?」
僧侶「ねぇ」
戦士「いやいやいやいやいや、何時の間に!?」
勇者「そっくりそのまま返してやるわ!」
タタタ
魔法使い「勇者!魔物よ!」
勇者「! ……固まれ!ばらばらになったらやられるぞ!」
365: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
僧侶「……ッ 人魚!?」
魔法使い「耳塞いで!」ギュ
勇者「え!?」
魔法使い「魅了の魔詩を唄う奴なら厄介だわ……早く!」
戦士「!」ギュ!
僧侶「……戦わない方が良いわね……やり過ごそう」ギュ
勇者「まじかよ……」ギュ
~♪ ~♪
僧侶「……」
魔法使い「……」
戦士「……」
勇者「…… ……ッ」クラッ
~♪ ~♪
戦士「……ぼーくらはーゆうーしゃー♪」
魔法使い「もう少し……もう少し……」
僧侶「……勇者?」
勇者(な、んだ……意識、が……)フラッ
魔法使い「勇者!?」
僧侶「まだ駄目、魔法使い!」
戦士「つよーいぞー、つよーいんだぞー♪ ……ん?」
勇者(…… ……なん、だ…… ……こ、れ……)バタン!
勇者(あれは…… ……金、 ……と、紫…… ……)
戦士「勇者!?」
魔法使い「……ッ 戦士、船! ……全速力!」
僧侶「勇者!勇者!?」
戦士「お、おう!」ダダダ…ッ
魔法使い「耳塞いで!」ギュ
勇者「え!?」
魔法使い「魅了の魔詩を唄う奴なら厄介だわ……早く!」
戦士「!」ギュ!
僧侶「……戦わない方が良いわね……やり過ごそう」ギュ
勇者「まじかよ……」ギュ
~♪ ~♪
僧侶「……」
魔法使い「……」
戦士「……」
勇者「…… ……ッ」クラッ
~♪ ~♪
戦士「……ぼーくらはーゆうーしゃー♪」
魔法使い「もう少し……もう少し……」
僧侶「……勇者?」
勇者(な、んだ……意識、が……)フラッ
魔法使い「勇者!?」
僧侶「まだ駄目、魔法使い!」
戦士「つよーいぞー、つよーいんだぞー♪ ……ん?」
勇者(…… ……なん、だ…… ……こ、れ……)バタン!
勇者(あれは…… ……金、 ……と、紫…… ……)
戦士「勇者!?」
魔法使い「……ッ 戦士、船! ……全速力!」
僧侶「勇者!勇者!?」
戦士「お、おう!」ダダダ…ッ
366: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
……
………
…………
勇者(う、う……ん?)
勇者(あれ、俺……船の上で…… ……ん!?)
勇者(身体が……動かない。しかも……空の上!?飛んでる!?)
勇者(……あれは、何だ?)
勇者(…… ……あれは、俺……か?)
勇者(金の髪に……金の瞳……)
勇者(……顔も、俺の物だ。でも……何か、違う)
勇者(…… ……何か、言ってる?)
勇者?「…… ……」パクパク
勇者(……聞こえない。何だ?)
勇者?「…… ……」パクパク……ス
勇者(手を挙げて……なんだ?)
勇者(もう少し…… ……近く……)
勇者(何だ……手のひらに……痣……?)
勇者(どこかで……見た事が……?)
勇者(……真っ黒、だ)
勇者?「…… ……」パクパク
勇者(何? ……!声が、出ない……!?)
勇者?「…… ……を」
勇者(え、なんて?)
勇者?「選択……を……」
勇者(選択……?)
勇者?「選択を間違えるな!『俺達』は、知る権利がある!」
勇者(! ……ッ 頭に、響く……ッ)
………
…………
勇者(う、う……ん?)
勇者(あれ、俺……船の上で…… ……ん!?)
勇者(身体が……動かない。しかも……空の上!?飛んでる!?)
勇者(……あれは、何だ?)
勇者(…… ……あれは、俺……か?)
勇者(金の髪に……金の瞳……)
勇者(……顔も、俺の物だ。でも……何か、違う)
勇者(…… ……何か、言ってる?)
勇者?「…… ……」パクパク
勇者(……聞こえない。何だ?)
勇者?「…… ……」パクパク……ス
勇者(手を挙げて……なんだ?)
勇者(もう少し…… ……近く……)
勇者(何だ……手のひらに……痣……?)
勇者(どこかで……見た事が……?)
勇者(……真っ黒、だ)
勇者?「…… ……」パクパク
勇者(何? ……!声が、出ない……!?)
勇者?「…… ……を」
勇者(え、なんて?)
勇者?「選択……を……」
勇者(選択……?)
勇者?「選択を間違えるな!『俺達』は、知る権利がある!」
勇者(! ……ッ 頭に、響く……ッ)
367: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
勇者?「『知る』事を拒否するな」
勇者?「過ちを犯した『世界』は、真に美しい世界では無い」
勇者?「必ず、魔王を倒せ!『欠片』を見つけ出せ!」
勇者(何、を言ってるんだ……この人は……否)
勇者(この人は……俺、か?)
勇者?「きちんと、『知る』んだ」
勇者?「『繰り返される運命の輪』を『腐った世界の腐った不条理』を」
勇者?「今度こそ、断ち切るんだ!『勇者』!」
勇者(な……何? 何を言ってるんだ?)
勇者?「間違うな! ……今度こそ、必ず!」
勇者?「…… ……」パクパク
勇者(え、何……聞こえない……ッ)
勇者?「…… ……」パクパク…… ユラ
勇者(……ッ 歪んで……行く……!)
勇者(何だ…… ……光……ッ!?)
パアアアアアアアアア!
僧侶「勇者!勇者!」
勇者「!」ハッ
戦士「……焦らすなよ」ホゥ
魔法使い「良かった……」フゥ
僧侶「大丈夫!?」
勇者「……」バッ
魔法使い「どうしたのよ、手なんて見て……」
勇者(……何も、無い)
戦士「大丈夫か?」
勇者「あ、ああ……」
勇者(夢……か……)
魔法使い「感謝しなさいよ、僧侶、ずっと回復魔法かけてたんだから」
勇者?「過ちを犯した『世界』は、真に美しい世界では無い」
勇者?「必ず、魔王を倒せ!『欠片』を見つけ出せ!」
勇者(何、を言ってるんだ……この人は……否)
勇者(この人は……俺、か?)
勇者?「きちんと、『知る』んだ」
勇者?「『繰り返される運命の輪』を『腐った世界の腐った不条理』を」
勇者?「今度こそ、断ち切るんだ!『勇者』!」
勇者(な……何? 何を言ってるんだ?)
勇者?「間違うな! ……今度こそ、必ず!」
勇者?「…… ……」パクパク
勇者(え、何……聞こえない……ッ)
勇者?「…… ……」パクパク…… ユラ
勇者(……ッ 歪んで……行く……!)
勇者(何だ…… ……光……ッ!?)
パアアアアアアアアア!
僧侶「勇者!勇者!」
勇者「!」ハッ
戦士「……焦らすなよ」ホゥ
魔法使い「良かった……」フゥ
僧侶「大丈夫!?」
勇者「……」バッ
魔法使い「どうしたのよ、手なんて見て……」
勇者(……何も、無い)
戦士「大丈夫か?」
勇者「あ、ああ……」
勇者(夢……か……)
魔法使い「感謝しなさいよ、僧侶、ずっと回復魔法かけてたんだから」
368: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
勇者「……さっきの光は、僧侶か」
僧侶「光?」
勇者「いや……何でも無い。ありがとう、僧侶」
僧侶「……大丈夫なの?」
勇者「ああ……急に気が遠くなっただけだ」
魔法使い「だけ、って!」
戦士「魔詩とやらの効果、か?」
魔法使い「どうなのかしら……魅了されるとしか聞いた事が無いから」
勇者「……夢を見たんだ」
僧侶「夢?」
勇者「ああ……もう一人、俺が出て来て」
勇者「知る事を拒否するなとか……腐ったなんとかを断ち切れとか」
戦士「何それ」
勇者「……さっぱり解らん。あれは俺だった……と思うんだけど」
魔法使い「詩に酔って、悪夢でも見たのかしら」
僧侶「もう、平気?勇者……」
勇者「あ、ああ……詩に酔った、か。成る程な」
戦士「まあ、何も無いなら良かったぜ……最果ての大陸は、目の前だ」
勇者「……ああ」
勇者(たかが……夢、だ)
勇者(……しかし、何かが…… ……ひっかかる……?)
……
………
…………
側近「若ー!?」タタタ
使い魔「どうされたのです、側近様」
僧侶「光?」
勇者「いや……何でも無い。ありがとう、僧侶」
僧侶「……大丈夫なの?」
勇者「ああ……急に気が遠くなっただけだ」
魔法使い「だけ、って!」
戦士「魔詩とやらの効果、か?」
魔法使い「どうなのかしら……魅了されるとしか聞いた事が無いから」
勇者「……夢を見たんだ」
僧侶「夢?」
勇者「ああ……もう一人、俺が出て来て」
勇者「知る事を拒否するなとか……腐ったなんとかを断ち切れとか」
戦士「何それ」
勇者「……さっぱり解らん。あれは俺だった……と思うんだけど」
魔法使い「詩に酔って、悪夢でも見たのかしら」
僧侶「もう、平気?勇者……」
勇者「あ、ああ……詩に酔った、か。成る程な」
戦士「まあ、何も無いなら良かったぜ……最果ての大陸は、目の前だ」
勇者「……ああ」
勇者(たかが……夢、だ)
勇者(……しかし、何かが…… ……ひっかかる……?)
……
………
…………
側近「若ー!?」タタタ
使い魔「どうされたのです、側近様」
369: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
側近「おう! ……若知らネェ?」
使い魔「いえ……存じませんが」
側近「あー……じゃあ、魔導将軍か鴉!」
使い魔「鴉様は見回りに出てらっしゃいますし」
使い魔「魔導将軍は、狼将軍と会議ですよ」
側近「ええええええええええええ」
使い魔「……どうされたのですか」
側近「いや、魔王様に若呼んで来いって言われたんだけどさ」
側近「どっこにも居ないんだよ!」
使い魔「ああ……いらっしゃったら、側近様が探していらっしゃったと」
使い魔「伝えておきます」
側近「おう、頼むな!」タタタ
側近「まーったく、何処行ったのかねぇ、あの若様は」
側近(何時の間にやらでっかくなっちゃってさー)
側近(……もう、魔王様と見分けがつかないもんな、後ろから見ると)
側近(髪の長さが違うぐらいで……)タタタ
側近「……居ない」
側近「仕方ねぇ……魔王様に居ませんでしたって…… ……ん?」
側近(あれ……外、暗い?まだそんな時間じゃ……)カチャ
側近「……!!」
シュゥシュウ……
側近(庭の花が……一斉に枯れてる!?)
側近「……魔王様!」タタタ
ドォン……ドオオオオオオオン!
側近「!!」
側近「な、何だ!?」
タタタタ……
側近「! 誰……ッ 魔導将軍!」
使い魔「いえ……存じませんが」
側近「あー……じゃあ、魔導将軍か鴉!」
使い魔「鴉様は見回りに出てらっしゃいますし」
使い魔「魔導将軍は、狼将軍と会議ですよ」
側近「ええええええええええええ」
使い魔「……どうされたのですか」
側近「いや、魔王様に若呼んで来いって言われたんだけどさ」
側近「どっこにも居ないんだよ!」
使い魔「ああ……いらっしゃったら、側近様が探していらっしゃったと」
使い魔「伝えておきます」
側近「おう、頼むな!」タタタ
側近「まーったく、何処行ったのかねぇ、あの若様は」
側近(何時の間にやらでっかくなっちゃってさー)
側近(……もう、魔王様と見分けがつかないもんな、後ろから見ると)
側近(髪の長さが違うぐらいで……)タタタ
側近「……居ない」
側近「仕方ねぇ……魔王様に居ませんでしたって…… ……ん?」
側近(あれ……外、暗い?まだそんな時間じゃ……)カチャ
側近「……!!」
シュゥシュウ……
側近(庭の花が……一斉に枯れてる!?)
側近「……魔王様!」タタタ
ドォン……ドオオオオオオオン!
側近「!!」
側近「な、何だ!?」
タタタタ……
側近「! 誰……ッ 魔導将軍!」
370: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
魔導将軍「側近! ……魔王様は、若は……!」
側近「若を探す様に言われたんだが、居ないんだよ何処にも……!」
側近「それより……!」
魔導将軍「…… ……」
側近「おい、魔導将軍!?」
魔導将軍「……着いてくるが良い、側近」
側近「え!? ……てか、お前会議は!?」
魔導将軍「適当に言って切り上げてきた……覚えがあるのでな」スタスタ
側近「?」スタスタ
魔導将軍「……代替わり、だ」
側近「!! ……ッまさか! 魔王様は、まだ……!」
魔導将軍「…… ……」
側近「……ッ 花が、枯れてたぞ」
魔導将軍「お前にはわからんか? ……ピリピリと、肌に伝わる」
魔導将軍「凄まじい、『魔王』の魔の気……!」
側近「……どっち、だよ」
魔導将軍「……さて、な」
カチャ……バタン!
若「…… ……側近、と魔導将軍、か」
魔導将軍「若……」
側近「……魔王、様……ッ」タタタ
若「…… ……」
側近(穏やかな……顔、だ)
側近(……魔王、様)
魔導将軍「……若、魔王様の亡骸は……」
若「魔導将軍」
魔導将軍「はい」
若「……『魔王』は、私だ」
魔導将軍「…… ……はい」
側近(魔王の剣が……紫に染まってる!?)
側近(…… ……そうか。若……否、魔王様の属性は……)
魔王「親父の亡骸は……すぐに、空へ還る、のだろう」
魔導将軍「……ご存じでしたか」
側近「還る?」
側近「若を探す様に言われたんだが、居ないんだよ何処にも……!」
側近「それより……!」
魔導将軍「…… ……」
側近「おい、魔導将軍!?」
魔導将軍「……着いてくるが良い、側近」
側近「え!? ……てか、お前会議は!?」
魔導将軍「適当に言って切り上げてきた……覚えがあるのでな」スタスタ
側近「?」スタスタ
魔導将軍「……代替わり、だ」
側近「!! ……ッまさか! 魔王様は、まだ……!」
魔導将軍「…… ……」
側近「……ッ 花が、枯れてたぞ」
魔導将軍「お前にはわからんか? ……ピリピリと、肌に伝わる」
魔導将軍「凄まじい、『魔王』の魔の気……!」
側近「……どっち、だよ」
魔導将軍「……さて、な」
カチャ……バタン!
若「…… ……側近、と魔導将軍、か」
魔導将軍「若……」
側近「……魔王、様……ッ」タタタ
若「…… ……」
側近(穏やかな……顔、だ)
側近(……魔王、様)
魔導将軍「……若、魔王様の亡骸は……」
若「魔導将軍」
魔導将軍「はい」
若「……『魔王』は、私だ」
魔導将軍「…… ……はい」
側近(魔王の剣が……紫に染まってる!?)
側近(…… ……そうか。若……否、魔王様の属性は……)
魔王「親父の亡骸は……すぐに、空へ還る、のだろう」
魔導将軍「……ご存じでしたか」
側近「還る?」
371: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
魔王「『悠久の空の彼方へ還り、この世界へ孵る』のだと、親父自身が言っていた」
ボロボロ……サラサラ……
側近「あ……」
魔導将軍「魔王様、新たにその地位をお継ぎになった事は、おめでたい限りです」
魔導将軍「……早速ですが、一つ……許可を頂きたく」
魔王「親父に聞いた。将軍の地位を部下に譲り、隠居したいと言うんだろう」
魔導将軍「……はい」
側近「…… ……」
魔導将軍「鴉からも同様の申し出を聞いております」
魔王「それも聞いてるさ。鴉は……部隊を連れて、この城を離れると言うんだろう」
側近「え!?」
魔導将軍「……はい」
魔王「良いだろう。良い様にしろ。私には側近が居れば充分だ」
側近「…… ……え?」
魔王「何だ。お前まで暇を寄越せとか言うつもりじゃないだろうな」
側近「いやいやいやいやいや!代替わりだったら……え、でも!?」
魔王「『側近』はお前意外には務まらんよ」
側近「……それ、俺喜んで良いの?」
魔導将軍「……では、私はこれで一端失礼します。又後ほど改めて……」
パタン
魔王「……お前は、まだ居るのか」
側近「え……だって、お前今……側近はお前だけって」
魔王「……この部屋に留まるのか、と聞いてるんだ」
側近「……魔 ……前魔王様が、その……」
魔王「好きにしろ」フゥ
側近「…… ……なあ、魔王様」
魔王「ん?」
側近「お前も……人と魔の共存、望んじゃったりする訳?」
魔王「……興味無いな」
側近「……はい?」
ボロボロ……サラサラ……
側近「あ……」
魔導将軍「魔王様、新たにその地位をお継ぎになった事は、おめでたい限りです」
魔導将軍「……早速ですが、一つ……許可を頂きたく」
魔王「親父に聞いた。将軍の地位を部下に譲り、隠居したいと言うんだろう」
魔導将軍「……はい」
側近「…… ……」
魔導将軍「鴉からも同様の申し出を聞いております」
魔王「それも聞いてるさ。鴉は……部隊を連れて、この城を離れると言うんだろう」
側近「え!?」
魔導将軍「……はい」
魔王「良いだろう。良い様にしろ。私には側近が居れば充分だ」
側近「…… ……え?」
魔王「何だ。お前まで暇を寄越せとか言うつもりじゃないだろうな」
側近「いやいやいやいやいや!代替わりだったら……え、でも!?」
魔王「『側近』はお前意外には務まらんよ」
側近「……それ、俺喜んで良いの?」
魔導将軍「……では、私はこれで一端失礼します。又後ほど改めて……」
パタン
魔王「……お前は、まだ居るのか」
側近「え……だって、お前今……側近はお前だけって」
魔王「……この部屋に留まるのか、と聞いてるんだ」
側近「……魔 ……前魔王様が、その……」
魔王「好きにしろ」フゥ
側近「…… ……なあ、魔王様」
魔王「ん?」
側近「お前も……人と魔の共存、望んじゃったりする訳?」
魔王「……興味無いな」
側近「……はい?」
372: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
魔王「願うとすれば、不干渉か」
側近「……不干渉?」
魔王「ああ。魔も人も……生きやすい世界で各々、生きるのが一番だと思わんか」
側近「…… ……」
魔王「どちらもどちらにとって難があると言うのなら」
魔王「関わらずに居れば良いのだ。徹底した不干渉……」
魔王「それが、私の望みだ」
側近「……そうか」
魔王「で、どうするんだ」
側近「あ? ……ああ。だって俺は『魔王様の側近』なんだろ?」
魔王「…… ……ああ」フッ
……
………
…………
使用人「…… ……」
使用人(今になって……こんな事、思い出すなんて)ハァ
使用人(本来なら……魔王様の、子供に)
使用人(魔王様が……殺される所、を……見守る筈、だった)
使用人(それが……勇者に変わっただけだ)
使用人(…… ……側近様、大丈夫かな)カタン
パタパタパタ……
使い魔「使用人様!」バタン!
使用人「どうしたのです、慌てて……!魔王様に、何か!?」
使い魔「あ……いいえ、違うのです。あの、船が……」
使用人「……船?」
使用人「娘……否、船長さん?でも……」
使い魔「……否、その……金の髪の少年が、乗って居る様だ、と……」
使用人「……!!」
側近「……不干渉?」
魔王「ああ。魔も人も……生きやすい世界で各々、生きるのが一番だと思わんか」
側近「…… ……」
魔王「どちらもどちらにとって難があると言うのなら」
魔王「関わらずに居れば良いのだ。徹底した不干渉……」
魔王「それが、私の望みだ」
側近「……そうか」
魔王「で、どうするんだ」
側近「あ? ……ああ。だって俺は『魔王様の側近』なんだろ?」
魔王「…… ……ああ」フッ
……
………
…………
使用人「…… ……」
使用人(今になって……こんな事、思い出すなんて)ハァ
使用人(本来なら……魔王様の、子供に)
使用人(魔王様が……殺される所、を……見守る筈、だった)
使用人(それが……勇者に変わっただけだ)
使用人(…… ……側近様、大丈夫かな)カタン
パタパタパタ……
使い魔「使用人様!」バタン!
使用人「どうしたのです、慌てて……!魔王様に、何か!?」
使い魔「あ……いいえ、違うのです。あの、船が……」
使用人「……船?」
使用人「娘……否、船長さん?でも……」
使い魔「……否、その……金の髪の少年が、乗って居る様だ、と……」
使用人「……!!」
373: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
使用人(金の髪……まさか、勇者様!?)
使い魔「……あ、あの……」
使用人「その少年は……金の瞳をしていましたか」
使い魔「い、いえ……そこまでは……」
使用人「……ああ、そうですよね」
使用人(でも……多分。否、確実に……!)
使用人「使い魔」
使い魔「は、はい!」
使用人「全員、仕事の手を止めて、避難する様通達して下さい」
使用人「……ここに残っては危険です」
使い魔「で、ですが……側近様と、使用人様は……!」
使用人「私達は……見届け、受け継ぐ義務があるのです」
使用人「……さあ、早く!」
使い魔「は、はい!」タタタ
使用人(……とうとう、来ましたか)フゥ ……スタスタ
コンコン
使用人「…… ……側近様?」
側近「おう……なんだ、い」
使用人(辛そうな、声……)
使用人「船が、近づいてくるようです」
側近「船?」
使用人「……金の髪の少年が、乗って居る、と」
側近「! ……間に合った、か」
使用人「開けて下さい。私も……手伝います」
側近「それは駄目だ、使用人ちゃん」
使用人「何故です!?約束が違います!」
側近「まだ、大丈夫だ。まだ……持つ」
側近「……それに、受け継いだ『知』は……どうするんだよ」
使い魔「……あ、あの……」
使用人「その少年は……金の瞳をしていましたか」
使い魔「い、いえ……そこまでは……」
使用人「……ああ、そうですよね」
使用人(でも……多分。否、確実に……!)
使用人「使い魔」
使い魔「は、はい!」
使用人「全員、仕事の手を止めて、避難する様通達して下さい」
使用人「……ここに残っては危険です」
使い魔「で、ですが……側近様と、使用人様は……!」
使用人「私達は……見届け、受け継ぐ義務があるのです」
使用人「……さあ、早く!」
使い魔「は、はい!」タタタ
使用人(……とうとう、来ましたか)フゥ ……スタスタ
コンコン
使用人「…… ……側近様?」
側近「おう……なんだ、い」
使用人(辛そうな、声……)
使用人「船が、近づいてくるようです」
側近「船?」
使用人「……金の髪の少年が、乗って居る、と」
側近「! ……間に合った、か」
使用人「開けて下さい。私も……手伝います」
側近「それは駄目だ、使用人ちゃん」
使用人「何故です!?約束が違います!」
側近「まだ、大丈夫だ。まだ……持つ」
側近「……それに、受け継いだ『知』は……どうするんだよ」
374: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
使用人「し、しかし……!」
側近「受け継ぐって事は、誰かに授けなきゃ行けないってこった」
側近「……それに、勇者と約束してただろ?」
側近「『友達を連れて戻って来たら、フランボワーズを用意しておく』って」
使用人「側近様!」
側近「……約束は違えちゃ駄目だ。行け、使用人ちゃん!」
側近「これで、終わる。やっと終わる。解放されるんだ」
側近「……俺も。魔王様も。だから、悲しむな!」
使用人「側近様!」
側近「『俺達は喜ばなくちゃいけない』 ……早く、行け、使用人ちゃん」
使用人「そ、っきん……さ、ま……ッ」ポロポロ
側近「又後で……もうちょい、後になるだろうけどな」
側近「……ッう ……ッ」
魔王「ゥ。ウ……ッ」
使用人「側近様、魔王様!?」
バターン!
使用人(! ……扉が開く音……勇者様が……来た!?)
側近「……もう、ぎりぎりだ。早く来いよ、勇者……!」
使用人「……下がり、ます。準備を……します」ポロポロ
側近「ああ。美味しいフランボワーズ、作ってやってくれよ」
使用人「……はい」
側近「……ばいばい、使用人ちゃん」
側近「受け継ぐって事は、誰かに授けなきゃ行けないってこった」
側近「……それに、勇者と約束してただろ?」
側近「『友達を連れて戻って来たら、フランボワーズを用意しておく』って」
使用人「側近様!」
側近「……約束は違えちゃ駄目だ。行け、使用人ちゃん!」
側近「これで、終わる。やっと終わる。解放されるんだ」
側近「……俺も。魔王様も。だから、悲しむな!」
使用人「側近様!」
側近「『俺達は喜ばなくちゃいけない』 ……早く、行け、使用人ちゃん」
使用人「そ、っきん……さ、ま……ッ」ポロポロ
側近「又後で……もうちょい、後になるだろうけどな」
側近「……ッう ……ッ」
魔王「ゥ。ウ……ッ」
使用人「側近様、魔王様!?」
バターン!
使用人(! ……扉が開く音……勇者様が……来た!?)
側近「……もう、ぎりぎりだ。早く来いよ、勇者……!」
使用人「……下がり、ます。準備を……します」ポロポロ
側近「ああ。美味しいフランボワーズ、作ってやってくれよ」
使用人「……はい」
側近「……ばいばい、使用人ちゃん」
375: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
スタスタ…… ………スタスタ、パタン
側近「…… ……」
側近(行った、な)
魔王「ゥ、ウ……アアアアッ」
側近「……ッ」ビリビリ
側近「もうすぐだ、もうすぐだよ……魔王様」
側近「……もうすぐ、終わる」
側近「後で、どっかで乾杯しような?」
……
………
…………
戦士「此処が……魔王の、城」
魔法使い「静かね」
僧侶「……勇者、光の剣、使わないの?」
勇者「魔王と戦う迄はこっちで良い……壊れたら困るからな」
魔法使い「……行こう」
戦士「ああ……」
勇者「…… ……」
僧侶「勇者?どうしたの?」
勇者「……あ、いや……」
勇者(……まさか!でも……!)タタタ
魔法使い「勇者!?どこ行くの!?」
勇者「……しって、る」
僧侶「え!?」
勇者「戦士……その扉を開けてくれ。階段があるはずだ」
戦士「え!? ……お、おう」カチャ
魔法使い「……!」
僧侶「……この、階段は……どこに、続いてる、の?」
魔法使い「僧侶!?」
勇者「……突き当たりに、扉があって……玉座、だ」
勇者「玉座の後ろに、扉が……ッ」
タタタ……ッ
僧侶「あ、待って、勇者……!」
側近「…… ……」
側近(行った、な)
魔王「ゥ、ウ……アアアアッ」
側近「……ッ」ビリビリ
側近「もうすぐだ、もうすぐだよ……魔王様」
側近「……もうすぐ、終わる」
側近「後で、どっかで乾杯しような?」
……
………
…………
戦士「此処が……魔王の、城」
魔法使い「静かね」
僧侶「……勇者、光の剣、使わないの?」
勇者「魔王と戦う迄はこっちで良い……壊れたら困るからな」
魔法使い「……行こう」
戦士「ああ……」
勇者「…… ……」
僧侶「勇者?どうしたの?」
勇者「……あ、いや……」
勇者(……まさか!でも……!)タタタ
魔法使い「勇者!?どこ行くの!?」
勇者「……しって、る」
僧侶「え!?」
勇者「戦士……その扉を開けてくれ。階段があるはずだ」
戦士「え!? ……お、おう」カチャ
魔法使い「……!」
僧侶「……この、階段は……どこに、続いてる、の?」
魔法使い「僧侶!?」
勇者「……突き当たりに、扉があって……玉座、だ」
勇者「玉座の後ろに、扉が……ッ」
タタタ……ッ
僧侶「あ、待って、勇者……!」
376: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
戦士「どう……なってる、んだ!?」
魔法使い「こっちが聞きたいわよ!ほら、行くわよ!」
タタタ…… バタン!
戦士「……玉座、だな」ハァ
魔法使い「ど……どう、して……!!」
僧侶「……勇者?」
勇者「……あの、玉座の後ろ……あの、扉の向こう、に……」
勇者「魔王、が、居る……!」
僧侶「……光の、勇者。勇者は、必ず魔王を倒す……だから」
僧侶「だから、解る……の?」
勇者(知る事を……怖がるな……!?)ドクンッ
勇者「う、う……ッ」
僧侶「勇者!?」
戦士「……何か、声、しないか」
僧侶「勇者よ、戦士……手を……!!」
魔法使い「……違う、もう一つ……」
僧侶「え!?」
ウゥ……アアアア……ッ
勇者(過ちを犯した世界は…… 欠片を、探せ……ッ ウゥッ)ドクン、ドクンッ
魔法使い「こっちが聞きたいわよ!ほら、行くわよ!」
タタタ…… バタン!
戦士「……玉座、だな」ハァ
魔法使い「ど……どう、して……!!」
僧侶「……勇者?」
勇者「……あの、玉座の後ろ……あの、扉の向こう、に……」
勇者「魔王、が、居る……!」
僧侶「……光の、勇者。勇者は、必ず魔王を倒す……だから」
僧侶「だから、解る……の?」
勇者(知る事を……怖がるな……!?)ドクンッ
勇者「う、う……ッ」
僧侶「勇者!?」
戦士「……何か、声、しないか」
僧侶「勇者よ、戦士……手を……!!」
魔法使い「……違う、もう一つ……」
僧侶「え!?」
ウゥ……アアアア……ッ
勇者(過ちを犯した世界は…… 欠片を、探せ……ッ ウゥッ)ドクン、ドクンッ
377: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
…………
側近「まだだ!まだ……落ち着け、魔王様!」
魔王「ぅ、ウ……あ、ァ……ッ」
側近「もう少し、もう少しだから…… ……!?」
ウゥ……
側近(魔王様の声?違う……ッ これは……ッ)バッ
側近(扉の向こう……勇者の声か!?)
魔王「……まだ、だ……まだ、揃って……ゥウ……ッ」
側近「魔王様!?」
…………
魔法使い「あれだわ……ッあの、扉の奥……ッ」
戦士「……魔王、の声……か!?」タタタ……ッ
僧侶「戦士、一人じゃ……ッ」
勇者「アアアアアアアアアアアアアア!」
パァッ
…………
側近「魔王様! ……ッ ぐ、ゥ……ッ」
側近(俺まで!?何だよ……ッ)
魔王「アアアアアアアアアアアアアア!」
パァッ
…………
魔法使い「勇者! ……ッ な、に……ッ光 ……ッ」
戦士「うあ……ッ」
僧侶「勇者!勇…… ……眩し……ッ」
…………
側近「な、ん……ッ」
側近(眩しい……ッ ば、かな!俺の目は……ッ)
…………
勇者「アアアアアアアアア!」
魔王「アアアアアアアアア!」
パアアアアアアアアアアアアアアアアッ
側近「まだだ!まだ……落ち着け、魔王様!」
魔王「ぅ、ウ……あ、ァ……ッ」
側近「もう少し、もう少しだから…… ……!?」
ウゥ……
側近(魔王様の声?違う……ッ これは……ッ)バッ
側近(扉の向こう……勇者の声か!?)
魔王「……まだ、だ……まだ、揃って……ゥウ……ッ」
側近「魔王様!?」
…………
魔法使い「あれだわ……ッあの、扉の奥……ッ」
戦士「……魔王、の声……か!?」タタタ……ッ
僧侶「戦士、一人じゃ……ッ」
勇者「アアアアアアアアアアアアアア!」
パァッ
…………
側近「魔王様! ……ッ ぐ、ゥ……ッ」
側近(俺まで!?何だよ……ッ)
魔王「アアアアアアアアアアアアアア!」
パァッ
…………
魔法使い「勇者! ……ッ な、に……ッ光 ……ッ」
戦士「うあ……ッ」
僧侶「勇者!勇…… ……眩し……ッ」
…………
側近「な、ん……ッ」
側近(眩しい……ッ ば、かな!俺の目は……ッ)
…………
勇者「アアアアアアアアア!」
魔王「アアアアアアアアア!」
パアアアアアアアアアアアアアアアアッ
378: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
バターン!
魔法使い「きゃあああああああああッ」
戦士「うわああああああ………ッ」
僧侶「……ッ 勇者、勇者!?」
側近「う、ぅ……魔王、様……ッ」
戦士「! ……魔法使い、僧侶、下がれ……ッ」
魔法使い「え……あ ……ッ」
僧侶「敵……ッ !? 勇……ッ え……!?」
勇者「…… ……」
魔王「…… ……」
側近「う、っぅう……ッ」
戦士「あ……う、動くな!」
側近「……勇者と、魔王様は……!?」
魔法使い「な……何で……」
魔法使い「何で、魔王と勇者が同じ顔をしているのよ!?」
戦士「……そんな事、より、勇者は……」
勇者「側近」
側近「……お、生きてた、ね」
勇者「……これは、どういうことなんだ……!?」
僧侶「そ、っき ……え!?」
魔法使い「この人が……側近!?」
側近「説明してやりたいのは……山々なんだがな」
側近「……取りあえず、さくっと魔王様、倒してくれないかな」
戦士「は!?」
側近「……俺は……否、俺達は待ってた。勇者が、魔王様の元に……来る、のを」
僧侶「どう……言う、事?」
側近「俺は……『魔王様の側近』だ。だから、ここで……お前達を待ってたのさ」
勇者「お前が魔王の側近……て、どういう事だよ!」
勇者「何で、なんで……俺は、この城を知ってる!?」
勇者「何で、お前が此処に居るんだ!?」
勇者「……ッ な、んで……ッ」
魔王「……それは、お前が私だからだ。『勇者』」
側近「魔王様!?」
魔法使い「きゃあああああああああッ」
戦士「うわああああああ………ッ」
僧侶「……ッ 勇者、勇者!?」
側近「う、ぅ……魔王、様……ッ」
戦士「! ……魔法使い、僧侶、下がれ……ッ」
魔法使い「え……あ ……ッ」
僧侶「敵……ッ !? 勇……ッ え……!?」
勇者「…… ……」
魔王「…… ……」
側近「う、っぅう……ッ」
戦士「あ……う、動くな!」
側近「……勇者と、魔王様は……!?」
魔法使い「な……何で……」
魔法使い「何で、魔王と勇者が同じ顔をしているのよ!?」
戦士「……そんな事、より、勇者は……」
勇者「側近」
側近「……お、生きてた、ね」
勇者「……これは、どういうことなんだ……!?」
僧侶「そ、っき ……え!?」
魔法使い「この人が……側近!?」
側近「説明してやりたいのは……山々なんだがな」
側近「……取りあえず、さくっと魔王様、倒してくれないかな」
戦士「は!?」
側近「……俺は……否、俺達は待ってた。勇者が、魔王様の元に……来る、のを」
僧侶「どう……言う、事?」
側近「俺は……『魔王様の側近』だ。だから、ここで……お前達を待ってたのさ」
勇者「お前が魔王の側近……て、どういう事だよ!」
勇者「何で、なんで……俺は、この城を知ってる!?」
勇者「何で、お前が此処に居るんだ!?」
勇者「……ッ な、んで……ッ」
魔王「……それは、お前が私だからだ。『勇者』」
側近「魔王様!?」
379: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
勇者「お前が……俺?」
戦士「耳を貸すな、勇者!」
側近「魔王様、お前……!」
魔王「黙れ」
魔法使い「……」ビク
僧侶「……ッ」
戦士「あ……な、な……!」
側近「……魔王様」
魔王「『時間が無い』良く聞け」
魔王「……『運命の輪』は途切れる事無く、回り続けている」
魔王「『特異点』を探せ……『欠片』を集めるんだ」
勇者「!」
魔王「……手を、見るが良い、『勇者』」ス……
勇者「……!」バッ
勇者(……剣の、文様……!!)ハッ
勇者(夢の中に出て来た、あの俺そっくりの人にも……あった)
僧侶「……手のひらから……光、が……漏れて……る……」
魔法使い「あ……あんなの、勇者の手に無かったわよ!?」
魔王「『私はお前』『お前は私』『勇者と魔王』『光と闇』は『表裏一体』」
勇者「!」
勇者(魔王の手に……同じ、文様が……)
勇者(……あっちは、真っ黒だ。夢のあの人と……同じ……!!)
戦士「耳を貸すな、勇者!」
側近「魔王様、お前……!」
魔王「黙れ」
魔法使い「……」ビク
僧侶「……ッ」
戦士「あ……な、な……!」
側近「……魔王様」
魔王「『時間が無い』良く聞け」
魔王「……『運命の輪』は途切れる事無く、回り続けている」
魔王「『特異点』を探せ……『欠片』を集めるんだ」
勇者「!」
魔王「……手を、見るが良い、『勇者』」ス……
勇者「……!」バッ
勇者(……剣の、文様……!!)ハッ
勇者(夢の中に出て来た、あの俺そっくりの人にも……あった)
僧侶「……手のひらから……光、が……漏れて……る……」
魔法使い「あ……あんなの、勇者の手に無かったわよ!?」
魔王「『私はお前』『お前は私』『勇者と魔王』『光と闇』は『表裏一体』」
勇者「!」
勇者(魔王の手に……同じ、文様が……)
勇者(……あっちは、真っ黒だ。夢のあの人と……同じ……!!)
380: 2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:LlsqC6HCP
魔王「『勇者は、魔王を倒す』」
魔王「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
魔王「そして……『勇者は、魔王の闇を手に入れる』」
側近「お、おい……魔王様?」
魔王「『弱くもあり、強くもある』……『汝の名は人間』」
勇者「…… ……俺に……ッ」
勇者「『俺に、魔王になれ……と言うのか!』」グッ
パア……ッ
僧侶「……ッ光の剣が……!!」
パリン!
魔法使い「割れた!?」
側近「何!?」
戦士「……ち、がう……見ろ……ッ」
僧侶「……勇者の、光を……すい、とって……る!?」
側近(そうか……あの剣は、使用者の属性を移す、魔法剣……ッ)
側近(飾りの刀身では、光に耐えられない……ッ)
魔王「……『選択を間違うな』」
勇者「『拒否権の無い選択などあるものか!』」
魔王「『真に美しい世界を望む為だ』」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒すんだ!』」
タタタ……ッブゥン!
ザシュゥ……!!
パアアアアアアアアアアアアアアアア!!
魔王「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
魔王「そして……『勇者は、魔王の闇を手に入れる』」
側近「お、おい……魔王様?」
魔王「『弱くもあり、強くもある』……『汝の名は人間』」
勇者「…… ……俺に……ッ」
勇者「『俺に、魔王になれ……と言うのか!』」グッ
パア……ッ
僧侶「……ッ光の剣が……!!」
パリン!
魔法使い「割れた!?」
側近「何!?」
戦士「……ち、がう……見ろ……ッ」
僧侶「……勇者の、光を……すい、とって……る!?」
側近(そうか……あの剣は、使用者の属性を移す、魔法剣……ッ)
側近(飾りの刀身では、光に耐えられない……ッ)
魔王「……『選択を間違うな』」
勇者「『拒否権の無い選択などあるものか!』」
魔王「『真に美しい世界を望む為だ』」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒すんだ!』」
タタタ……ッブゥン!
ザシュゥ……!!
パアアアアアアアアアアアアアアアア!!
391: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
……
………
…………
少女「ええと……これ、と…これと」プチプチ
少女「あれ、これどっちだっけ……確か、これが……」プチプチ
少女「ふぅ、こんなモン……かな?」
少女「……よし。さあ、日が暮れる前に帰らなく……ッ !!」ドクン!
少女(なに、これ……ッ 胸、が……ッ)ドクン
少女(違う、頭……ッ 何かが……)ドクン
少女(流れ……こんでくる……!?)ドクン、ドクン
少女「ヒ、カリ、と……ヤミ…… 失われ……」
少女(な、に……!? …寂しい、辛い……イタイ、カナシイ…… )
少女「……二つの、大きな……命…… 失われた……?」
少女(まだ……どきどきしてる……)
少女(……胸が、苦しい)
少女「……早く、戻ろう……神父さま ……のところ」
タタタ……ッ
少女「神父様!」バタン!
神父「……どうしましたドアは静かにね?」
少女「す、すみません、あの、あの……ッ」
神父「落ち着いて……ね?何があったのです」
少女「……先ほど、何か……大きな…光と、闇…? あの」
神父「……?」
少女「……二つの、命が……失われました」
神父「……」
少女「その……感じ、ました」
神父「そう、ですか……」
少女「………」ジィ
神父「大丈夫です……そんな不安な顔をしないで」
神父「……貴女は、感じる事ができますから」
少女「でも、こんなの……し、知り……ません」
少女「……悲しくて、寂しかった」
少女「とても……」ポロポロポロ
神父「私には…残念ながら感じる事はできませんから、貴女の涙を共有する事はできませんが」
神父「気を強くもって下さい……引きずられてはいけませんよ」
少女「……はい」
神父「貴女がもう少し大きくなったら……お話ししますね」
少女「……?」
神父「いえ……それより、薬草は集まりましたか?」
少女「あ、はい……!睡眠草と、気つけ草……それから毒消し草です」
神父「……」フゥ
少女「あ、あの……神父様?」
神父「……気つけ草と毒草は間違いやすいから、気をつけてとあれほど」ハァ
少女「あ、ああああ!すみません!」
神父「全く……明日、やり直しです……手を洗ってらっしゃい」
少女「はぁい……」トボトボ
神父「…… ……」
………
…………
少女「ええと……これ、と…これと」プチプチ
少女「あれ、これどっちだっけ……確か、これが……」プチプチ
少女「ふぅ、こんなモン……かな?」
少女「……よし。さあ、日が暮れる前に帰らなく……ッ !!」ドクン!
少女(なに、これ……ッ 胸、が……ッ)ドクン
少女(違う、頭……ッ 何かが……)ドクン
少女(流れ……こんでくる……!?)ドクン、ドクン
少女「ヒ、カリ、と……ヤミ…… 失われ……」
少女(な、に……!? …寂しい、辛い……イタイ、カナシイ…… )
少女「……二つの、大きな……命…… 失われた……?」
少女(まだ……どきどきしてる……)
少女(……胸が、苦しい)
少女「……早く、戻ろう……神父さま ……のところ」
タタタ……ッ
少女「神父様!」バタン!
神父「……どうしましたドアは静かにね?」
少女「す、すみません、あの、あの……ッ」
神父「落ち着いて……ね?何があったのです」
少女「……先ほど、何か……大きな…光と、闇…? あの」
神父「……?」
少女「……二つの、命が……失われました」
神父「……」
少女「その……感じ、ました」
神父「そう、ですか……」
少女「………」ジィ
神父「大丈夫です……そんな不安な顔をしないで」
神父「……貴女は、感じる事ができますから」
少女「でも、こんなの……し、知り……ません」
少女「……悲しくて、寂しかった」
少女「とても……」ポロポロポロ
神父「私には…残念ながら感じる事はできませんから、貴女の涙を共有する事はできませんが」
神父「気を強くもって下さい……引きずられてはいけませんよ」
少女「……はい」
神父「貴女がもう少し大きくなったら……お話ししますね」
少女「……?」
神父「いえ……それより、薬草は集まりましたか?」
少女「あ、はい……!睡眠草と、気つけ草……それから毒消し草です」
神父「……」フゥ
少女「あ、あの……神父様?」
神父「……気つけ草と毒草は間違いやすいから、気をつけてとあれほど」ハァ
少女「あ、ああああ!すみません!」
神父「全く……明日、やり直しです……手を洗ってらっしゃい」
少女「はぁい……」トボトボ
神父「…… ……」
393: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
神父(……見れば見る程、不思議な存在です)
神父(人より遙かに早いスピードで、あの子は……大きくなった)
神父(……8~10歳程度、だろうか。身体は小さいけれど、知能は……)
神父(…… ……あの子がこけて、怪我をした時)
神父(無理だろうと思いながらも……回復魔法を教えてみると)
神父(……あの子は、あっさりと習得した)
神父(あの子は……純粋なエルフでは無い。人の血が半分……)
神父(……ハーフエルフなど、聞いた事も無い……!)
タタタ……ッ
少女「神父さま、すぐにご飯の用意をしますね」
神父「ええ、お願いします」
神父(……見かけに、人との差違は感じられない)
神父(しかし……あの、勘の鋭さの様な物は何なのだろう)
神父(エルフの、特性なのだろう、か……『感じる力』)
神父(……しかし……光と、闇?)
神父(街の人達の噂で、勇者様が旅立った、と言うのは聞いた)
神父(……では、勇者様は、無事に魔王を?否……)
神父(さっき、この子は……『大きな光と闇。二つの命が失われた』、と)
神父(……相打ち、になった……のだろうか)
少女「神父様、どうかしましたか?」
神父「あ……いえ……何でもありませんよ」
少女「もうすぐ出来ますよ」
神父「……ええ。食事が済んだら、少し、お話をしましょうか」
少女「はい!今日は何のお話をしてくださるんですか!?」
神父「嬉しそうですね……貴女は、お話が大好きですものね」
神父「……何時も、キラキラとした目で、聞いてくれる」
少女「神父様のお話は、とても面白くて……大好きです」
少女「なんて言うか……聞いている内に、目の前に、こう……」
少女「その景色が、広がって、見える様な気がして」
神父(人より遙かに早いスピードで、あの子は……大きくなった)
神父(……8~10歳程度、だろうか。身体は小さいけれど、知能は……)
神父(…… ……あの子がこけて、怪我をした時)
神父(無理だろうと思いながらも……回復魔法を教えてみると)
神父(……あの子は、あっさりと習得した)
神父(あの子は……純粋なエルフでは無い。人の血が半分……)
神父(……ハーフエルフなど、聞いた事も無い……!)
タタタ……ッ
少女「神父さま、すぐにご飯の用意をしますね」
神父「ええ、お願いします」
神父(……見かけに、人との差違は感じられない)
神父(しかし……あの、勘の鋭さの様な物は何なのだろう)
神父(エルフの、特性なのだろう、か……『感じる力』)
神父(……しかし……光と、闇?)
神父(街の人達の噂で、勇者様が旅立った、と言うのは聞いた)
神父(……では、勇者様は、無事に魔王を?否……)
神父(さっき、この子は……『大きな光と闇。二つの命が失われた』、と)
神父(……相打ち、になった……のだろうか)
少女「神父様、どうかしましたか?」
神父「あ……いえ……何でもありませんよ」
少女「もうすぐ出来ますよ」
神父「……ええ。食事が済んだら、少し、お話をしましょうか」
少女「はい!今日は何のお話をしてくださるんですか!?」
神父「嬉しそうですね……貴女は、お話が大好きですものね」
神父「……何時も、キラキラとした目で、聞いてくれる」
少女「神父様のお話は、とても面白くて……大好きです」
少女「なんて言うか……聞いている内に、目の前に、こう……」
少女「その景色が、広がって、見える様な気がして」
394: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
神父「……そう言って頂けるのは、嬉しい限りです、が」
神父「今日は、何時ものお話とは違います」
少女「え?」
神父「……貴女の、母親の話をしましょう」
……
………
…………
ジジィ「……成る程、『握った剣から雷の魔法を落とし、ぶっ倒れた』……と」
船長「テメェがくたばってるから悪い」
ジジィ「口を慎め、この小娘は全く……」
船長「口が悪いのは、こんな風に育てた糞親父に言えよ」
ジジィ「氏人に文句言っても仕方なかろうが」
船長「涅槃で待っててくれるさ。氏に損ないめ、何なら今すぐ感動の再会させてやるよ」
ジジィ「……この青年……何色の瞳をしてた?」
船長「聞けよジジィ……ったく。目の色ぉ? ……確か、紫だ。それがどうした」
ジジィ「頭の悪い小娘だな。この間教えてやったろうが……瞳は、その者の加護を写し取る」
船長「こいつは雷の魔法で魔物を沈めたぜ」
ジジィ「それだ。雷の加護ならば、黄土や茶を彩る事が多い……『俺の瞳の様に』な」
船長「……テメェ、何が言いたい?」
ジジィ「紫と聞いて連想するのはなんだ?」
船長「……」
ジジィ「難しい質問だったか ……闇、だと思わんか」
船長「こいつは……魔族だって言いたいのか?」
ジジィ「最果てで拾ったんだろ……想像には容易い」
船長「……こいつは仲間だ。誰がなんと言おうと、文句は言わせネェ」
ジジィ「ハ!小娘が……惚れやがったか」
船長「黙れ色ボケジジィが!」
ジジィ「……もしくは『頭がおかしいか』」
船長「……何?」
ジジィ「魔王を倒すと……言ってたんだろう」
ジジィ「勇者一行は無事に旅立ったんだろう……だとすれば」
ジジィ(……勇者は、俺達が始まりの街に送り届けた)
ジジィ(この小娘はうろ覚えだったみたいだが……それも無理は無い)
ジジィ「……一人で勇者を追いかけ、魔物にでもやられて混乱してるんじゃないか?」
船長「し、しかし……!」
ジジィ「剣を媒介に、魔法を行使し、弱っているとは言え」
ジジィ「魔物の大群を一人で沈めたのじゃろう……本懐は遂げられずとしても」
船長「『一人で、あそこにたどり着く』説明は……まあ、強引だが」
ジジィ「それぐらいしか考えれんだろう……他に説明はつくか?」
船長「…… ……」
ジジィ「まあ、今日はゆっくり寝かせてやるんじゃな」
船長「ああ……悪かったな、ジジィ」
ジジィ「……俺も腐っても海の男だ」
パタン
ジジィ(……もう、随分昔だ。だが……)
ジジィ(勇者を、大きくした顔に……随分似てる気がする)
ジジィ(…… ……印象は違いすぎる、が)
ジジィ(あいつ……剣士の髪と瞳を、金に変えると……)
ジジィ「…… ……」フルフル
ジジィ「余計な詮索は、身を滅ぼす……だな」ハァ
神父「今日は、何時ものお話とは違います」
少女「え?」
神父「……貴女の、母親の話をしましょう」
……
………
…………
ジジィ「……成る程、『握った剣から雷の魔法を落とし、ぶっ倒れた』……と」
船長「テメェがくたばってるから悪い」
ジジィ「口を慎め、この小娘は全く……」
船長「口が悪いのは、こんな風に育てた糞親父に言えよ」
ジジィ「氏人に文句言っても仕方なかろうが」
船長「涅槃で待っててくれるさ。氏に損ないめ、何なら今すぐ感動の再会させてやるよ」
ジジィ「……この青年……何色の瞳をしてた?」
船長「聞けよジジィ……ったく。目の色ぉ? ……確か、紫だ。それがどうした」
ジジィ「頭の悪い小娘だな。この間教えてやったろうが……瞳は、その者の加護を写し取る」
船長「こいつは雷の魔法で魔物を沈めたぜ」
ジジィ「それだ。雷の加護ならば、黄土や茶を彩る事が多い……『俺の瞳の様に』な」
船長「……テメェ、何が言いたい?」
ジジィ「紫と聞いて連想するのはなんだ?」
船長「……」
ジジィ「難しい質問だったか ……闇、だと思わんか」
船長「こいつは……魔族だって言いたいのか?」
ジジィ「最果てで拾ったんだろ……想像には容易い」
船長「……こいつは仲間だ。誰がなんと言おうと、文句は言わせネェ」
ジジィ「ハ!小娘が……惚れやがったか」
船長「黙れ色ボケジジィが!」
ジジィ「……もしくは『頭がおかしいか』」
船長「……何?」
ジジィ「魔王を倒すと……言ってたんだろう」
ジジィ「勇者一行は無事に旅立ったんだろう……だとすれば」
ジジィ(……勇者は、俺達が始まりの街に送り届けた)
ジジィ(この小娘はうろ覚えだったみたいだが……それも無理は無い)
ジジィ「……一人で勇者を追いかけ、魔物にでもやられて混乱してるんじゃないか?」
船長「し、しかし……!」
ジジィ「剣を媒介に、魔法を行使し、弱っているとは言え」
ジジィ「魔物の大群を一人で沈めたのじゃろう……本懐は遂げられずとしても」
船長「『一人で、あそこにたどり着く』説明は……まあ、強引だが」
ジジィ「それぐらいしか考えれんだろう……他に説明はつくか?」
船長「…… ……」
ジジィ「まあ、今日はゆっくり寝かせてやるんじゃな」
船長「ああ……悪かったな、ジジィ」
ジジィ「……俺も腐っても海の男だ」
パタン
ジジィ(……もう、随分昔だ。だが……)
ジジィ(勇者を、大きくした顔に……随分似てる気がする)
ジジィ(…… ……印象は違いすぎる、が)
ジジィ(あいつ……剣士の髪と瞳を、金に変えると……)
ジジィ「…… ……」フルフル
ジジィ「余計な詮索は、身を滅ぼす……だな」ハァ
395: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
ちょっとお買い物に連行されてきます
また戻ったら!
また戻ったら!
398: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
ジジィ「しかし……」
ジジィ(……頭がおかしい、混乱してる、にしたって、だ)
ジジィ(それと……瞳の色と、結びつく訳じゃネェ)
ジジィ(…… ……船長が生きてりゃ、な)ハァ
ジジィ(厄介な事に巻き込まれなきゃ良いがな)
……
………
…………
勇者(…… ……ここ、は。何処だ)
勇者(ん……身体が、動かない……)
勇者(そうだ…… ……魔王、に、光の剣……を……)
勇者(…… ……目が、見えない。俺は……)
勇者(氏んだ、のか? ……魔王は……)
勇者(誰も、居ない。俺は…… ……失敗、し、た……のか、な)
勇者(…… ……ん?)
勇者(小さな、光が……見える……あっち…… ……糞ッ)
勇者(身体……動けッ ……あ!)
勇者(動いた……? 前に…… 否、違う)
勇者(光、が…… ……近づいて、く ……る……!)
勇者(のみ、こまれ……ッ)
勇者(うわああああああああああああああああ!)
パアアアアアアアアアアアアアアア!
勇者?「…… ……」
勇者(……ッ ……ん、あれ? ……!!)
勇者(貴方、は! ……ああ、やっぱり、声が……出ない)
勇者?「…… ……」トントン
勇者(何?手 ……? ……!)
勇者(そうだ!魔王と対峙した時に、痣……剣の文様が……!)
勇者(…… ……真っ黒、だ。この人の手、も……)
勇者?「…… ……」
勇者(! この人……瞳が、紫になってる!?)
勇者(……この人は、俺じゃ無い。俺にそっくりだけど……俺、じゃない!)
勇者(俺の瞳は……どうなってるんだ!?)
ジジィ(……頭がおかしい、混乱してる、にしたって、だ)
ジジィ(それと……瞳の色と、結びつく訳じゃネェ)
ジジィ(…… ……船長が生きてりゃ、な)ハァ
ジジィ(厄介な事に巻き込まれなきゃ良いがな)
……
………
…………
勇者(…… ……ここ、は。何処だ)
勇者(ん……身体が、動かない……)
勇者(そうだ…… ……魔王、に、光の剣……を……)
勇者(…… ……目が、見えない。俺は……)
勇者(氏んだ、のか? ……魔王は……)
勇者(誰も、居ない。俺は…… ……失敗、し、た……のか、な)
勇者(…… ……ん?)
勇者(小さな、光が……見える……あっち…… ……糞ッ)
勇者(身体……動けッ ……あ!)
勇者(動いた……? 前に…… 否、違う)
勇者(光、が…… ……近づいて、く ……る……!)
勇者(のみ、こまれ……ッ)
勇者(うわああああああああああああああああ!)
パアアアアアアアアアアアアアアア!
勇者?「…… ……」
勇者(……ッ ……ん、あれ? ……!!)
勇者(貴方、は! ……ああ、やっぱり、声が……出ない)
勇者?「…… ……」トントン
勇者(何?手 ……? ……!)
勇者(そうだ!魔王と対峙した時に、痣……剣の文様が……!)
勇者(…… ……真っ黒、だ。この人の手、も……)
勇者?「…… ……」
勇者(! この人……瞳が、紫になってる!?)
勇者(……この人は、俺じゃ無い。俺にそっくりだけど……俺、じゃない!)
勇者(俺の瞳は……どうなってるんだ!?)
399: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
勇者(……誰、何だろう。この人は)
勇者(この間夢で見た時は、この人……金の髪に金の瞳で……)
勇者(……手に、黒い剣の文様が、あった)
勇者?「…… ……」トン
勇者(うん、解ってる……貴方の瞳は、紫だ…… ……!)
勇者(そうだ、魔王……!魔王の瞳も、紫……!)
勇者?「過ちを犯した『世界』は、廻り続ける」
勇者?「過去も、現在も、未来も……ずっと」
勇者(廻り……続ける?)
勇者?「『俺はお前』『お前は俺』『勇者と魔王』『光と闇』は『表裏一体』」
勇者(!)
勇者(魔王の手に……同じ、文様が……)
勇者?「『勇者は、魔王を倒す』」
勇者?「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
勇者?「『勇者は、魔王の闇を手に入れる』」
勇者(どうして……どうして、あの魔王の言葉を……知ってるんだ!?)
勇者?「俺は『知る』事を『拒否』した」
勇者(…… ……)
勇者?「『選択を誤るな』」クルッスタスタ
勇者(! ……あ、待って……!)
勇者(糞、足……動けって……! ……ッ)
勇者(……な、んだ……今度、は……ッ 紫色、の…… ……ひ、かり……ッ!)
パアアアア……ッ
……
………
…………
勇者「!」パチ!
僧侶「勇者!」
魔法使い「勇者……良かった……!」
戦士「全く……心配かけさせやがって……!」
勇者「皆……ッ ……!魔王は!?側近は!?」
魔法使い「……そ、れが……」
勇者(この間夢で見た時は、この人……金の髪に金の瞳で……)
勇者(……手に、黒い剣の文様が、あった)
勇者?「…… ……」トン
勇者(うん、解ってる……貴方の瞳は、紫だ…… ……!)
勇者(そうだ、魔王……!魔王の瞳も、紫……!)
勇者?「過ちを犯した『世界』は、廻り続ける」
勇者?「過去も、現在も、未来も……ずっと」
勇者(廻り……続ける?)
勇者?「『俺はお前』『お前は俺』『勇者と魔王』『光と闇』は『表裏一体』」
勇者(!)
勇者(魔王の手に……同じ、文様が……)
勇者?「『勇者は、魔王を倒す』」
勇者?「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
勇者?「『勇者は、魔王の闇を手に入れる』」
勇者(どうして……どうして、あの魔王の言葉を……知ってるんだ!?)
勇者?「俺は『知る』事を『拒否』した」
勇者(…… ……)
勇者?「『選択を誤るな』」クルッスタスタ
勇者(! ……あ、待って……!)
勇者(糞、足……動けって……! ……ッ)
勇者(……な、んだ……今度、は……ッ 紫色、の…… ……ひ、かり……ッ!)
パアアアア……ッ
……
………
…………
勇者「!」パチ!
僧侶「勇者!」
魔法使い「勇者……良かった……!」
戦士「全く……心配かけさせやがって……!」
勇者「皆……ッ ……!魔王は!?側近は!?」
魔法使い「……そ、れが……」
400: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
僧侶「……凄い、光、が……勇者から発せられたの」
勇者「光?」
戦士「ああ。お前が魔王を切りつけた時だ」
魔法使い「光は、剣と……魔王に、吸い取られて……」
勇者(『魔王は勇者の光を奪い去る』……!)
戦士「……光の剣は、気がついたら……ほれ」ポイ
勇者「あ……!」ガシ
勇者(刀身が、欠けてる……鍛冶師に直して貰う前に戻った……? ……いや)
勇者「…… ……」
僧侶「それで、光が私達を……部屋全体を包み込んで」
魔法使い「……気がついたら、勇者がそこに倒れてて動かなかったの」
戦士「魔王と側近は…… ……もう、居なかった」
勇者「俺は……魔王を倒した、のか?」
僧侶「……手、見て」
勇者「手? ……あ!」
勇者(……真っ黒に、なってる。剣の……文様)
勇者(あの時、俺の手から光が溢れた時…… ……魔王の手にも)
勇者(……同じ文様があった。『私はお前』『お前は私』…… ……)ハッ
勇者「『勇者は、魔王の闇を手に入れる』……!」
魔法使い「何馬鹿な事言ってんの!貴方の瞳は、ちゃんと金の侭よ!?」
勇者「でも、あの人の瞳は……!」
戦士「あの人?」
勇者「……あ、いや……」
コンコン
勇者「!?」ビクッ
魔法使い「誰!?」
僧侶「…… ……」
戦士「……俺が、開ける」スタスタ……カチャ
勇者「光?」
戦士「ああ。お前が魔王を切りつけた時だ」
魔法使い「光は、剣と……魔王に、吸い取られて……」
勇者(『魔王は勇者の光を奪い去る』……!)
戦士「……光の剣は、気がついたら……ほれ」ポイ
勇者「あ……!」ガシ
勇者(刀身が、欠けてる……鍛冶師に直して貰う前に戻った……? ……いや)
勇者「…… ……」
僧侶「それで、光が私達を……部屋全体を包み込んで」
魔法使い「……気がついたら、勇者がそこに倒れてて動かなかったの」
戦士「魔王と側近は…… ……もう、居なかった」
勇者「俺は……魔王を倒した、のか?」
僧侶「……手、見て」
勇者「手? ……あ!」
勇者(……真っ黒に、なってる。剣の……文様)
勇者(あの時、俺の手から光が溢れた時…… ……魔王の手にも)
勇者(……同じ文様があった。『私はお前』『お前は私』…… ……)ハッ
勇者「『勇者は、魔王の闇を手に入れる』……!」
魔法使い「何馬鹿な事言ってんの!貴方の瞳は、ちゃんと金の侭よ!?」
勇者「でも、あの人の瞳は……!」
戦士「あの人?」
勇者「……あ、いや……」
コンコン
勇者「!?」ビクッ
魔法使い「誰!?」
僧侶「…… ……」
戦士「……俺が、開ける」スタスタ……カチャ
401: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
使用人「……失礼致します」
勇者「アンタ……誰だ……?」
使用人「…… ……使用人と、申します」
僧侶「使用人……?」
魔法使い「な、何なのよ……何の用事、よ……」
使用人「お茶を、お持ち致しました」
戦士「…… ……お茶?」
使用人「はい。お疲れでしょうから」
使用人「……フランボワーズもご用意しております」
使用人「お口にあうと宜しいですが」
僧侶「……ここ、魔王の城、よね?」
魔法使い「どうなってる、のよ……!?」
戦士「おい、魔王は!?魔王はどうなったんだ!?」
勇者「! ……そうだ、側近も……! 否……!」
勇者「……側近が『魔王の側近』って、どういう意味なんだ!!」
使用人「お望みでしたら、全てお話致します……私が、知る『全て』」
僧侶「…… ……貴方、魔王の使用人、なのよね?」
僧侶「どうして…… ……」
使用人「まずは、お席にどうぞ。お茶が冷めてしまいます」
戦士「は!はいそうですか、って!誰が……!!」
使用人「……知りたくは無いのですか」
勇者(『知る事を、拒否するな』 ……!)
勇者「……先に、一つだけ聞かせてくれ」
使用人「……そうすれば、お席に着いて頂けますか」
勇者「…… ……ああ」
僧侶「勇者!?」
勇者「俺は……この城を知ってる。多分……お前も、知ってる、よな?」
使用人「……はい」
魔法使い「え!?」
戦士「…… ……」
勇者「……何故、は、ゆっくり聞かせてくれるんだな」
使用人「はい……では、どうぞ『魔王様』」
勇者「…… ……」
魔法使い「……なんですって?」
僧侶「……魔王が、言っていた事は、本当だったの?」
戦士「勇者が……魔王、だと!?」
使用人「はい…… ……そして、『お帰りなさい』」
勇者「アンタ……誰だ……?」
使用人「…… ……使用人と、申します」
僧侶「使用人……?」
魔法使い「な、何なのよ……何の用事、よ……」
使用人「お茶を、お持ち致しました」
戦士「…… ……お茶?」
使用人「はい。お疲れでしょうから」
使用人「……フランボワーズもご用意しております」
使用人「お口にあうと宜しいですが」
僧侶「……ここ、魔王の城、よね?」
魔法使い「どうなってる、のよ……!?」
戦士「おい、魔王は!?魔王はどうなったんだ!?」
勇者「! ……そうだ、側近も……! 否……!」
勇者「……側近が『魔王の側近』って、どういう意味なんだ!!」
使用人「お望みでしたら、全てお話致します……私が、知る『全て』」
僧侶「…… ……貴方、魔王の使用人、なのよね?」
僧侶「どうして…… ……」
使用人「まずは、お席にどうぞ。お茶が冷めてしまいます」
戦士「は!はいそうですか、って!誰が……!!」
使用人「……知りたくは無いのですか」
勇者(『知る事を、拒否するな』 ……!)
勇者「……先に、一つだけ聞かせてくれ」
使用人「……そうすれば、お席に着いて頂けますか」
勇者「…… ……ああ」
僧侶「勇者!?」
勇者「俺は……この城を知ってる。多分……お前も、知ってる、よな?」
使用人「……はい」
魔法使い「え!?」
戦士「…… ……」
勇者「……何故、は、ゆっくり聞かせてくれるんだな」
使用人「はい……では、どうぞ『魔王様』」
勇者「…… ……」
魔法使い「……なんですって?」
僧侶「……魔王が、言っていた事は、本当だったの?」
戦士「勇者が……魔王、だと!?」
使用人「はい…… ……そして、『お帰りなさい』」
404: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
勇者「……やっぱり、俺は此処に来た事が……ある、んだな」
僧侶「でも……どうして!?」
使用人「順番にお話致します、魔王様」
勇者「黙れ!俺は……『勇者』だ!人間だ!」
使用人「では……どうぞ、回復魔法をお使いになってみてください」
魔法使い「……!」
戦士「魔法使い?」
僧侶「……回復魔法は、人間だけに許された、特権」
使用人「…… ……」
戦士「え!?」
勇者「……待て」
使用人「はい?」
勇者「側近は……側近は、どうなる!?」
勇者「あいつは、回復魔法を使っていたぞ!」
勇者「……でも、あいつは……!『俺は魔王の側近だ』と言った!」
使用人「ならば、尚更です。もし貴方が回復魔法をお使いになれなければ」
使用人「……尚更、貴方が『魔王』であると言う証になるでしょう」
僧侶「側近、さんが……魔族だってのは否定しないんだね」
使用人「一つずつ、参りましょう、僧侶様」
僧侶「…… ……」
勇者「……戦士、腕出せ。血を止める」スッ
戦士「お、おお…… ……?」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者?」
使用人「……ケーキをご用意して参ります。お席にて、お待ちを」スタスタ
カチャ、パタン
僧侶「勇者……」
勇者「……駄目だ。使えない」
魔法使い「そんな……!!」
僧侶「でも……どうして!?」
使用人「順番にお話致します、魔王様」
勇者「黙れ!俺は……『勇者』だ!人間だ!」
使用人「では……どうぞ、回復魔法をお使いになってみてください」
魔法使い「……!」
戦士「魔法使い?」
僧侶「……回復魔法は、人間だけに許された、特権」
使用人「…… ……」
戦士「え!?」
勇者「……待て」
使用人「はい?」
勇者「側近は……側近は、どうなる!?」
勇者「あいつは、回復魔法を使っていたぞ!」
勇者「……でも、あいつは……!『俺は魔王の側近だ』と言った!」
使用人「ならば、尚更です。もし貴方が回復魔法をお使いになれなければ」
使用人「……尚更、貴方が『魔王』であると言う証になるでしょう」
僧侶「側近、さんが……魔族だってのは否定しないんだね」
使用人「一つずつ、参りましょう、僧侶様」
僧侶「…… ……」
勇者「……戦士、腕出せ。血を止める」スッ
戦士「お、おお…… ……?」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者?」
使用人「……ケーキをご用意して参ります。お席にて、お待ちを」スタスタ
カチャ、パタン
僧侶「勇者……」
勇者「……駄目だ。使えない」
魔法使い「そんな……!!」
405: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
戦士「……魔王を倒した勇者が、魔王になった!?」
戦士「冗談じゃねぇ!」
魔法使い「そ、そうよ、それにおかしいわよ!」
魔法使い「勇者の金の瞳は!?勇者は人間なんでしょう!?」
僧侶「……『魔王は勇者の光を奪い去り』『勇者は魔王の闇を手に入れる』?」
僧侶「永遠に終わらないよ!ずっとループし続けるって言うの!?」
勇者「……身体の中に、光を感じないんだ」
魔法使い「……え?」
勇者「戦士、俺の剣……あるか?」
戦士「光の剣ならさっき、お前に……」
勇者「違う。王国の剣の方だ」
戦士「あ……ああ、あれ、どこだっけ!?」
魔法使い「……えっと、そうだわ!魔王と対峙する前に……!」
僧侶「そうだ、勇者から光が……!」タタタ……ッ
僧侶「あった!」
戦士「……玉座の奥の扉からも光が漏れて……それで」
戦士「扉が開いた。魔王が……魔王と、側近が出て来て……」
勇者「サンキュ……そうだ。俺は、王子に貰った剣を思わず……落とした」グッ
勇者(やっぱり……手に着いた痣は……この、王国の『剣の紋章』だ)
僧侶「……見せて、勇者……」ギュ
僧侶「あの時は、確かに……これ、光ってたよね」
勇者「ああ……魔王の手にも、同じ物があった。これ……こいつみたいに」
勇者「真っ黒な……」
僧侶「……火傷、みたいだね」
勇者「俺が……光を放った、んだな?」
魔法使い「え?ええ……」
勇者「……以前、騎士団の人達と、南の島に行った時」
勇者「王子が、やられそうになって……気がついたら、俺が光の魔法を」
勇者「放った時があったんだ」
僧侶「……勇者」
勇者「俺は、それ以来光の魔法なんて、使えた事が無かった」
戦士「え……?」
戦士「冗談じゃねぇ!」
魔法使い「そ、そうよ、それにおかしいわよ!」
魔法使い「勇者の金の瞳は!?勇者は人間なんでしょう!?」
僧侶「……『魔王は勇者の光を奪い去り』『勇者は魔王の闇を手に入れる』?」
僧侶「永遠に終わらないよ!ずっとループし続けるって言うの!?」
勇者「……身体の中に、光を感じないんだ」
魔法使い「……え?」
勇者「戦士、俺の剣……あるか?」
戦士「光の剣ならさっき、お前に……」
勇者「違う。王国の剣の方だ」
戦士「あ……ああ、あれ、どこだっけ!?」
魔法使い「……えっと、そうだわ!魔王と対峙する前に……!」
僧侶「そうだ、勇者から光が……!」タタタ……ッ
僧侶「あった!」
戦士「……玉座の奥の扉からも光が漏れて……それで」
戦士「扉が開いた。魔王が……魔王と、側近が出て来て……」
勇者「サンキュ……そうだ。俺は、王子に貰った剣を思わず……落とした」グッ
勇者(やっぱり……手に着いた痣は……この、王国の『剣の紋章』だ)
僧侶「……見せて、勇者……」ギュ
僧侶「あの時は、確かに……これ、光ってたよね」
勇者「ああ……魔王の手にも、同じ物があった。これ……こいつみたいに」
勇者「真っ黒な……」
僧侶「……火傷、みたいだね」
勇者「俺が……光を放った、んだな?」
魔法使い「え?ええ……」
勇者「……以前、騎士団の人達と、南の島に行った時」
勇者「王子が、やられそうになって……気がついたら、俺が光の魔法を」
勇者「放った時があったんだ」
僧侶「……勇者」
勇者「俺は、それ以来光の魔法なんて、使えた事が無かった」
戦士「え……?」
406: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
勇者「あれだって、無我夢中で使ったに過ぎないんだが……」
魔法使い「……」
勇者「……その時の獣は、光に灼かれて、血を吐いて氏んだらしい」スッ
勇者「僧侶が今……火傷みたいだって言ったけど」
勇者「……これは、光に灼かれた跡なのかもな」
魔法使い「貴方が、魔王だからって言いたいの!?」
魔法使い「違うでしょう、勇者!貴方は確かに『勇者』なのよ!」
魔法使い「あの時、確かに、光が……!」
勇者「……俺の光は、消えてしまった魔王に奪われたんだろう」
勇者「そして、俺は魔王の『闇』を手に入れたんだ」
戦士「勇者……!」
勇者「俺は……回復魔法はもう使えない。俺はもう……人間じゃない……ッ」
コンコン、カチャ
使用人「失礼致します…… ……お座りになっていてくださいと」
使用人「申しました、でしょうに」ハァ
魔法使い「こんな時にのんびりお茶なんて飲んでられないでしょ!?」
使用人「こんな時だから、です……魔法使い様、で宜しかったでしょうか」
使用人「……他に、何をなさいます?」
魔法使い「だ、だからって……!」
僧侶「……座ろう、魔法使い」
魔法使い「僧侶!」
僧侶「話を聞かなきゃ納得できない」
僧侶「少なくとも、この……使用人さん?は……」
僧侶「私達の知らない事を、知ってるよ」
僧侶「……私達の知らない、勇者を知っている」
使用人「…… ……」
戦士「そう、だな」ハァ
魔法使い「戦士まで!」
戦士「……見ろよ。俺の腕は回復しなかった」
戦士「勇者が嘘吐く必要は、無いだろう?」
魔法使い「……!」スタスタ、ストン!
魔法使い「……」
勇者「……その時の獣は、光に灼かれて、血を吐いて氏んだらしい」スッ
勇者「僧侶が今……火傷みたいだって言ったけど」
勇者「……これは、光に灼かれた跡なのかもな」
魔法使い「貴方が、魔王だからって言いたいの!?」
魔法使い「違うでしょう、勇者!貴方は確かに『勇者』なのよ!」
魔法使い「あの時、確かに、光が……!」
勇者「……俺の光は、消えてしまった魔王に奪われたんだろう」
勇者「そして、俺は魔王の『闇』を手に入れたんだ」
戦士「勇者……!」
勇者「俺は……回復魔法はもう使えない。俺はもう……人間じゃない……ッ」
コンコン、カチャ
使用人「失礼致します…… ……お座りになっていてくださいと」
使用人「申しました、でしょうに」ハァ
魔法使い「こんな時にのんびりお茶なんて飲んでられないでしょ!?」
使用人「こんな時だから、です……魔法使い様、で宜しかったでしょうか」
使用人「……他に、何をなさいます?」
魔法使い「だ、だからって……!」
僧侶「……座ろう、魔法使い」
魔法使い「僧侶!」
僧侶「話を聞かなきゃ納得できない」
僧侶「少なくとも、この……使用人さん?は……」
僧侶「私達の知らない事を、知ってるよ」
僧侶「……私達の知らない、勇者を知っている」
使用人「…… ……」
戦士「そう、だな」ハァ
魔法使い「戦士まで!」
戦士「……見ろよ。俺の腕は回復しなかった」
戦士「勇者が嘘吐く必要は、無いだろう?」
魔法使い「……!」スタスタ、ストン!
407: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
使用人「魔王様も、どうぞ」
勇者「……悪いけど、勇者って呼んでくれないか」
勇者「完全にはまだ……納得できない」
使用人「……失礼致しました。勇者様、どうぞ」
勇者「……ありがとう」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「……何から聞いたら良いか解らない」
勇者「悪いが、そちらから話してくれないか」
使用人「……解りました。ご質問があれば、都度……答えましょう」
使用人「まず……ま ……勇者様。貴方は、この城を、私を知っているのではないか」
使用人「……と、聞かれましたね」
勇者「ああ……何となくだけど、覚えがある」
使用人「……貴方はこの城で産まれ、この城で育ちましたから」
勇者「な……に!?」
魔法使い「何言ってるのよ!勇者は、始まりの城で……!」
使用人「では、側近様は?」
勇者「……側近にこの城を連れ出された、とするなら、辻褄は合う」
勇者「だが、何故そんな事をするんだ!それに……側近は魔王の……!」
僧侶「……そうよ。貴女、さっき側近さんが魔族だって言うの否定しなかった!」
戦士「だ、騙そうったってそうは行かないぜ!?誰が、そんな事信じるかよ!」
戦士「魔王を倒す勇者を、何だってこの……ッ 魔王の城で……!!」
使用人「……勇者様。魔王様のお言葉、覚えていらっしゃいますか」
勇者「……どれだ」
使用人「『私はお前』『お前は私』」
勇者「『勇者と魔王』『光と闇』……で、『表裏一体』……とか言う奴か」
使用人「はい」
勇者「それが……それを、信じろって言うのか!?」
使用人「『真実』です」
使用人「……魔王様の魔力が暴走しかけ、ご自分でご自分を封印された時」
使用人「一筋の光が、天井を突き破り、どこかへと飛んで行きました」
使用人「……魔王様……『器』は眠りについた」
魔法使い「器……?」
使用人「はい。そうして『中身』……勇者様が、産まれたのです」
使用人「……『闇と光』に別れてしまった、んだと思います」
勇者「……悪いけど、勇者って呼んでくれないか」
勇者「完全にはまだ……納得できない」
使用人「……失礼致しました。勇者様、どうぞ」
勇者「……ありがとう」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「……何から聞いたら良いか解らない」
勇者「悪いが、そちらから話してくれないか」
使用人「……解りました。ご質問があれば、都度……答えましょう」
使用人「まず……ま ……勇者様。貴方は、この城を、私を知っているのではないか」
使用人「……と、聞かれましたね」
勇者「ああ……何となくだけど、覚えがある」
使用人「……貴方はこの城で産まれ、この城で育ちましたから」
勇者「な……に!?」
魔法使い「何言ってるのよ!勇者は、始まりの城で……!」
使用人「では、側近様は?」
勇者「……側近にこの城を連れ出された、とするなら、辻褄は合う」
勇者「だが、何故そんな事をするんだ!それに……側近は魔王の……!」
僧侶「……そうよ。貴女、さっき側近さんが魔族だって言うの否定しなかった!」
戦士「だ、騙そうったってそうは行かないぜ!?誰が、そんな事信じるかよ!」
戦士「魔王を倒す勇者を、何だってこの……ッ 魔王の城で……!!」
使用人「……勇者様。魔王様のお言葉、覚えていらっしゃいますか」
勇者「……どれだ」
使用人「『私はお前』『お前は私』」
勇者「『勇者と魔王』『光と闇』……で、『表裏一体』……とか言う奴か」
使用人「はい」
勇者「それが……それを、信じろって言うのか!?」
使用人「『真実』です」
使用人「……魔王様の魔力が暴走しかけ、ご自分でご自分を封印された時」
使用人「一筋の光が、天井を突き破り、どこかへと飛んで行きました」
使用人「……魔王様……『器』は眠りについた」
魔法使い「器……?」
使用人「はい。そうして『中身』……勇者様が、産まれたのです」
使用人「……『闇と光』に別れてしまった、んだと思います」
408: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
僧侶「中身……が、勇者だって、言うの」
使用人「はい。私と側近様は、勇者様をある程度の年齢まで此処でお育てしました」
使用人「……ですが、勇者様は『勇者』です。『勇者は魔王を倒す者』」
使用人「だから……盗賊さんと鍛冶師さんにお願いしたんです」
勇者「!?」
戦士「……知って、る、のか……!?」
使用人「……側近様が、船でこの大陸を出発され」
使用人「保護者代わりとなって、始まりの街で……時が満ちるのを待ちました」
勇者「……側近は、どうやって此処に戻って来たんだ」
勇者「俺が旅立った時、あいつは、あの街に……!」
使用人「側近様は……魔族ですよ?」
僧侶「……忘れるとこだった。どうして魔族である側近さんが、回復魔法を使えるの」
使用人「元人間だからです」
魔法使い「…… ……は!?」
勇者「元……人間……?」
使用人「はい。人は強くも弱くもある。人だけが、選び取る事ができる」
使用人「強い故に。弱い故に……魔へと、変じる事ができるのは、人間だけなのです」
戦士「ど……ッ 何処まで馬鹿にすれば気が済む!?」
戦士「そんな話……ッ」
僧侶「黙って、戦士…… ……じゃあ、どうして、勇者は使えないの」
僧侶「もし、本当に魔王に……魔になったからって」
僧侶「おかしいじゃない。側近さんと何が違うの?」
使用人「勇者様は元は魔王様です。魔が人に変じるなんて、あり得ない」
使用人「……ですが、『勇者』は人間である必要があったのでしょう」
魔法使い「……『魔に変じる事ができるのは人間だけ』だから?」
戦士「魔法使い!?」
使用人「で……しょうね」
魔法使い「『勇者』は人間でないと行けない。『魔王』になるものだから」
魔法使い「……『光の勇者』と『闇の魔王』」
僧侶「光と闇……表裏一体……」
使用人「…… ……」
勇者「……『汝の名は、人間』か」
戦士「……もうちょっとわかりやすく説明してくんない?」
使用人「はい。私と側近様は、勇者様をある程度の年齢まで此処でお育てしました」
使用人「……ですが、勇者様は『勇者』です。『勇者は魔王を倒す者』」
使用人「だから……盗賊さんと鍛冶師さんにお願いしたんです」
勇者「!?」
戦士「……知って、る、のか……!?」
使用人「……側近様が、船でこの大陸を出発され」
使用人「保護者代わりとなって、始まりの街で……時が満ちるのを待ちました」
勇者「……側近は、どうやって此処に戻って来たんだ」
勇者「俺が旅立った時、あいつは、あの街に……!」
使用人「側近様は……魔族ですよ?」
僧侶「……忘れるとこだった。どうして魔族である側近さんが、回復魔法を使えるの」
使用人「元人間だからです」
魔法使い「…… ……は!?」
勇者「元……人間……?」
使用人「はい。人は強くも弱くもある。人だけが、選び取る事ができる」
使用人「強い故に。弱い故に……魔へと、変じる事ができるのは、人間だけなのです」
戦士「ど……ッ 何処まで馬鹿にすれば気が済む!?」
戦士「そんな話……ッ」
僧侶「黙って、戦士…… ……じゃあ、どうして、勇者は使えないの」
僧侶「もし、本当に魔王に……魔になったからって」
僧侶「おかしいじゃない。側近さんと何が違うの?」
使用人「勇者様は元は魔王様です。魔が人に変じるなんて、あり得ない」
使用人「……ですが、『勇者』は人間である必要があったのでしょう」
魔法使い「……『魔に変じる事ができるのは人間だけ』だから?」
戦士「魔法使い!?」
使用人「で……しょうね」
魔法使い「『勇者』は人間でないと行けない。『魔王』になるものだから」
魔法使い「……『光の勇者』と『闇の魔王』」
僧侶「光と闇……表裏一体……」
使用人「…… ……」
勇者「……『汝の名は、人間』か」
戦士「……もうちょっとわかりやすく説明してくんない?」
409: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
勇者「だが、元人間だとは言え」
勇者「側近は……魔になったんだろう?」
勇者「魔王に仕えていたんだろう!?」
勇者「……なのに、何故俺を育てる!?」
勇者「魔王にとって、勇者等邪魔なだけだろうが!」
勇者「何で……態々、俺が魔王を倒そうと旅立てる様に」
勇者「……そんな、お膳立てみたいな事するんだよ!」
使用人「魔王様のお力が暴走しそうに……と、先ほどの話に戻します」
魔法使い「自分で自分を封印、とか言ってたわね」
使用人「はい。魔王様のお力が暴走したら……世界は、破滅してしまいます」
僧侶「!」
使用人「……魔王様の望みは、そんな物ではありません」
使用人「だから……『自分を倒してくれる勇者でも現れるまで、寝て待っている』と」
戦士「いやいやいやいや、だからって!」
使用人「……『願えば叶う』にも程がありますけれどね」
勇者「……お前も、その言葉を知っているんだな」
僧侶「それで……自分で自分を倒す為に、勇者を産んだ……産ませた、の?」
使用人「……自然の理において、生を受けた訳ではありません」
勇者「……さっき、言ってたな。光が飛び出して行った後」
使用人「はい。『分裂』した、が一番しっくりくるのかもしれませんね」
僧侶「魔王が器、勇者が中身……」
勇者「だが……俺は、生きているぞ」
使用人「……はい」
戦士「はい、って、お前……!」
使用人「私は神ではありません。全てを知っている訳ではありません」
使用人「……ですが、私は……『受け継ぐ』義務があるんです」
魔法使い「受け継ぐ義務?」
使用人「眠りにつかれる前に、魔王様が……仰いました」
勇者「側近は……魔になったんだろう?」
勇者「魔王に仕えていたんだろう!?」
勇者「……なのに、何故俺を育てる!?」
勇者「魔王にとって、勇者等邪魔なだけだろうが!」
勇者「何で……態々、俺が魔王を倒そうと旅立てる様に」
勇者「……そんな、お膳立てみたいな事するんだよ!」
使用人「魔王様のお力が暴走しそうに……と、先ほどの話に戻します」
魔法使い「自分で自分を封印、とか言ってたわね」
使用人「はい。魔王様のお力が暴走したら……世界は、破滅してしまいます」
僧侶「!」
使用人「……魔王様の望みは、そんな物ではありません」
使用人「だから……『自分を倒してくれる勇者でも現れるまで、寝て待っている』と」
戦士「いやいやいやいや、だからって!」
使用人「……『願えば叶う』にも程がありますけれどね」
勇者「……お前も、その言葉を知っているんだな」
僧侶「それで……自分で自分を倒す為に、勇者を産んだ……産ませた、の?」
使用人「……自然の理において、生を受けた訳ではありません」
勇者「……さっき、言ってたな。光が飛び出して行った後」
使用人「はい。『分裂』した、が一番しっくりくるのかもしれませんね」
僧侶「魔王が器、勇者が中身……」
勇者「だが……俺は、生きているぞ」
使用人「……はい」
戦士「はい、って、お前……!」
使用人「私は神ではありません。全てを知っている訳ではありません」
使用人「……ですが、私は……『受け継ぐ』義務があるんです」
魔法使い「受け継ぐ義務?」
使用人「眠りにつかれる前に、魔王様が……仰いました」
410: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
使用人「『生と氏』」
使用人「『特異点』『王』『拾う者』」
使用人「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』」
使用人「……『知を受け継ぐ者』」
使用人「『光と闇』『勇者と魔王』」
使用人「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
使用人「『我が名は、勇者』」
使用人「『光に導かれし運命の子』」
使用人「『闇に抱かれし運命の子』」
使用人「『汝の名は、魔王』」
使用人「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
使用人「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者!』」
戦士「……何、それ」
使用人「わかりません。ですが……『欠片』を探し出せ、と」
勇者「……ッ」
僧侶「勇者?」
勇者「…… ……俺が、ここへ来る途中の船の上で見た夢の話をしただろう」
使用人「夢?」
勇者「そうだ。俺と同じ……金の髪に金の瞳をしてた」
勇者「……そして、その時は無かった筈のこれ」スッ
魔法使い「……剣の、文様」
勇者「そう。真っ黒のこれが、彼の手のひらにあったんだ」
勇者「……『知る事を拒否するな』」
勇者「『過ちを犯した世界は、真に美しい世界では無い』」
勇者「……『必ず、魔王を倒せ!『欠片』を見つけ出せ』」
使用人「!」
僧侶「欠片……」
使用人「『特異点』『王』『拾う者』」
使用人「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』」
使用人「……『知を受け継ぐ者』」
使用人「『光と闇』『勇者と魔王』」
使用人「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
使用人「『我が名は、勇者』」
使用人「『光に導かれし運命の子』」
使用人「『闇に抱かれし運命の子』」
使用人「『汝の名は、魔王』」
使用人「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
使用人「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者!』」
戦士「……何、それ」
使用人「わかりません。ですが……『欠片』を探し出せ、と」
勇者「……ッ」
僧侶「勇者?」
勇者「…… ……俺が、ここへ来る途中の船の上で見た夢の話をしただろう」
使用人「夢?」
勇者「そうだ。俺と同じ……金の髪に金の瞳をしてた」
勇者「……そして、その時は無かった筈のこれ」スッ
魔法使い「……剣の、文様」
勇者「そう。真っ黒のこれが、彼の手のひらにあったんだ」
勇者「……『知る事を拒否するな』」
勇者「『過ちを犯した世界は、真に美しい世界では無い』」
勇者「……『必ず、魔王を倒せ!『欠片』を見つけ出せ』」
使用人「!」
僧侶「欠片……」
411: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
勇者「……それから、俺が魔王に斬りかかった後」
勇者「光に……包まれた、とか言う時だな、多分」
勇者「……また、その人が出て来た」
使用人「……金の髪と瞳を持つ男、ですか」
勇者「ああ。だけど……瞳は、紫だった」
使用人「……紫」
勇者「魔王と……同じ言葉を、言ったんだ」
戦士「同じ言葉?」
勇者「ああ。『俺はお前』『お前は俺』『勇者と魔王』『光と闇』は『表裏一体』」
勇者「『勇者は、魔王を倒す』」
勇者「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
勇者「『勇者は、魔王の闇を手に入れる』……それから」
勇者「『俺は『知る』事を『拒否』した』」
僧侶「……え?」
勇者「…… ……『選択を誤るな』」
魔法使い「確かに……同じ、ね」
使用人「…… ……」
勇者「それから……『過ちを犯した『世界』は、廻り続ける』」
勇者「『過去も、現在も、未来も……ずっと』とも」
僧侶「……似てるね」
勇者「え?」
僧侶「魔王を倒した勇者が魔王になって……て、奴に」
勇者「……知ってる、か?」
使用人「……いいえ。流石に解りません」
勇者「違う……ああ、その、言葉もそうだけど」
勇者「俺と同じ顔、同じ……金の髪に、金の瞳をした、男」
魔法使い「ついでに……」グイ
魔法使い「この、手の文様、ね」
勇者「光に……包まれた、とか言う時だな、多分」
勇者「……また、その人が出て来た」
使用人「……金の髪と瞳を持つ男、ですか」
勇者「ああ。だけど……瞳は、紫だった」
使用人「……紫」
勇者「魔王と……同じ言葉を、言ったんだ」
戦士「同じ言葉?」
勇者「ああ。『俺はお前』『お前は俺』『勇者と魔王』『光と闇』は『表裏一体』」
勇者「『勇者は、魔王を倒す』」
勇者「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
勇者「『勇者は、魔王の闇を手に入れる』……それから」
勇者「『俺は『知る』事を『拒否』した』」
僧侶「……え?」
勇者「…… ……『選択を誤るな』」
魔法使い「確かに……同じ、ね」
使用人「…… ……」
勇者「それから……『過ちを犯した『世界』は、廻り続ける』」
勇者「『過去も、現在も、未来も……ずっと』とも」
僧侶「……似てるね」
勇者「え?」
僧侶「魔王を倒した勇者が魔王になって……て、奴に」
勇者「……知ってる、か?」
使用人「……いいえ。流石に解りません」
勇者「違う……ああ、その、言葉もそうだけど」
勇者「俺と同じ顔、同じ……金の髪に、金の瞳をした、男」
魔法使い「ついでに……」グイ
魔法使い「この、手の文様、ね」
412: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
使用人「いえ……そちらも、存じ上げません」
使用人「それに……実を言うとこの結果には、少々驚いているところ、です」
戦士「え?」
使用人「……勇者様からは、懐かしい感じがします」
使用人「まだ、お元気だった頃の魔王様の……魔の気、に似ています」
勇者「……だって、俺はあいつなんだろう」
僧侶「勇者!」
勇者「回復魔法も使えない。光も……感じない」
勇者「……使用人は、感じるんだろう、その魔の気、て奴」
使用人「…… ……はい」
勇者「態々、回復魔法まで使わせなくても良かったんじゃ無いか」ハァ
使用人「ですが、信じましたか?」
勇者「…… ……」
使用人「それに……魔王様の言われるとおり、『器』が『中身』に倒されるなら」
使用人「……勇者様は人間の侭の筈でしょう?」
魔法使い「あ……!」
使用人「『魔王』は滅びなかった……私も、生きています」
戦士「? ……何でアンタが関係あるんだ」
使用人「『魔を統べる王』が消え去れば、『魔』が全て居なくなっても」
使用人「おかしくはないでしょう?」
僧侶「……そう、か」
勇者「そ、うだ! ……魔王と、側近は……どうなったんだ!?」
使用人「……お二人の気配は、もう何処にもありません」
使用人「『悠久の空の彼方へ還り、この世界へ孵る』……んだと思います」
勇者「……側近、まで?」
使用人「後ほど、お話ししようと思っていたのですが」
使用人「……側近様は、前魔王様……魔王様のお父様の代から」
使用人「お仕えされていたのです」
僧侶「……魔王に、親?」
使用人「それに……実を言うとこの結果には、少々驚いているところ、です」
戦士「え?」
使用人「……勇者様からは、懐かしい感じがします」
使用人「まだ、お元気だった頃の魔王様の……魔の気、に似ています」
勇者「……だって、俺はあいつなんだろう」
僧侶「勇者!」
勇者「回復魔法も使えない。光も……感じない」
勇者「……使用人は、感じるんだろう、その魔の気、て奴」
使用人「…… ……はい」
勇者「態々、回復魔法まで使わせなくても良かったんじゃ無いか」ハァ
使用人「ですが、信じましたか?」
勇者「…… ……」
使用人「それに……魔王様の言われるとおり、『器』が『中身』に倒されるなら」
使用人「……勇者様は人間の侭の筈でしょう?」
魔法使い「あ……!」
使用人「『魔王』は滅びなかった……私も、生きています」
戦士「? ……何でアンタが関係あるんだ」
使用人「『魔を統べる王』が消え去れば、『魔』が全て居なくなっても」
使用人「おかしくはないでしょう?」
僧侶「……そう、か」
勇者「そ、うだ! ……魔王と、側近は……どうなったんだ!?」
使用人「……お二人の気配は、もう何処にもありません」
使用人「『悠久の空の彼方へ還り、この世界へ孵る』……んだと思います」
勇者「……側近、まで?」
使用人「後ほど、お話ししようと思っていたのですが」
使用人「……側近様は、前魔王様……魔王様のお父様の代から」
使用人「お仕えされていたのです」
僧侶「……魔王に、親?」
413: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
使用人「はい……『魔王』の世代交代は、親頃しです」
勇者「!」
使用人「これも、似てますね。魔王様を倒し、貴方が新たな魔王になられた」
勇者「お、れ……は……ッ」
使用人「……貴方は、魔王です、勇者様」
使用人「まだ……終わらない、のでしょう」
魔法使い「終わらない……?」
使用人「私は……旅の途中で、貴方達が『欠片』を拾ってくるのだと思っていました」
使用人「……ですが、この結果を見ると……『まだ、揃っていない』」
勇者「繰り返せ、と……言うのか!?」
使用人「……『選択を、誤らないで下さい』」
勇者「!」
魔法使い「勝手な事言わないでよ!どうして……勇者が……ッ」
魔法使い「……それに、さっきも言ったでしょ!?」
魔法使い「勇者の瞳は金よ! ……光の加護なんて、勇者にしかないの!」
魔法使い「勇者は……ッ人間なのよ……ッ」
勇者「……否、俺は…… ……魔王、かどうかは解らんが……」
勇者「……人間、じゃないさ」
魔法使い「勇者……!」
戦士「…… ……」
僧侶「戦士?どうしたの……難しい顔して」
戦士「同じ事を繰り返す、ってんなら」
戦士「……また、『勇者』が産まれるのか」
使用人「……恐らく、は」
戦士「で、勇者は……魔王みたいに、暴走、するのか?」
使用人「解りません……ですが、同じ道を歩むというのなら」
使用人「可能性はあります」
勇者「!」
戦士「……魔王は眠りについていたんだろう?」
使用人「……余りにも力が、大きくなられたのです」
使用人「自我を失い、破壊衝動に駆られる様になる前に、と」
僧侶「破壊衝動……!」
使用人「はい。魔王様のお力を考えると……それこそ、世界が滅亡しますから」
勇者「……眠る事で押さえた、と言うのか」
使用人「あの方は規格外でしたからね」
勇者「!」
使用人「これも、似てますね。魔王様を倒し、貴方が新たな魔王になられた」
勇者「お、れ……は……ッ」
使用人「……貴方は、魔王です、勇者様」
使用人「まだ……終わらない、のでしょう」
魔法使い「終わらない……?」
使用人「私は……旅の途中で、貴方達が『欠片』を拾ってくるのだと思っていました」
使用人「……ですが、この結果を見ると……『まだ、揃っていない』」
勇者「繰り返せ、と……言うのか!?」
使用人「……『選択を、誤らないで下さい』」
勇者「!」
魔法使い「勝手な事言わないでよ!どうして……勇者が……ッ」
魔法使い「……それに、さっきも言ったでしょ!?」
魔法使い「勇者の瞳は金よ! ……光の加護なんて、勇者にしかないの!」
魔法使い「勇者は……ッ人間なのよ……ッ」
勇者「……否、俺は…… ……魔王、かどうかは解らんが……」
勇者「……人間、じゃないさ」
魔法使い「勇者……!」
戦士「…… ……」
僧侶「戦士?どうしたの……難しい顔して」
戦士「同じ事を繰り返す、ってんなら」
戦士「……また、『勇者』が産まれるのか」
使用人「……恐らく、は」
戦士「で、勇者は……魔王みたいに、暴走、するのか?」
使用人「解りません……ですが、同じ道を歩むというのなら」
使用人「可能性はあります」
勇者「!」
戦士「……魔王は眠りについていたんだろう?」
使用人「……余りにも力が、大きくなられたのです」
使用人「自我を失い、破壊衝動に駆られる様になる前に、と」
僧侶「破壊衝動……!」
使用人「はい。魔王様のお力を考えると……それこそ、世界が滅亡しますから」
勇者「……眠る事で押さえた、と言うのか」
使用人「あの方は規格外でしたからね」
414: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
魔法使い「規格外?」
使用人「ええ……側近様にご自分の目を与え、心話をしたり」
使用人「転移の魔法を使ったり、側近様の身体を乗っ取ったり……」
戦士「……それ、その側近って奴は大丈夫だったのか?」
使用人「……勇者様がお産まれになった時、天井を突き破って、と」
使用人「先ほど、お話ししたでしょう」
勇者「あ、ああ……」
使用人「あの時、飛び出した『欠片』の力に引きずられ……」
使用人「視力を、失われました」
勇者「…… ……」
使用人「それから、急激に老けて行かれた様に思います」
使用人「……勇者様が人の子の世で生きるには、丁度良かったのかもしれませんが」
勇者「俺が来たから……魔王は、目を覚ました、のか」
使用人「いいえ。徐々に……多分、貴方の成長に合わせて」
勇者「…… ……」
戦士「それで、側近って奴と……魔王が一緒の部屋から出て来た、んだな」
使用人「はい……俺が押さえる、と。部屋に篭もられていましたから」
魔法使い「どうして!?どうして、そんな……ッ他人の為に……!」
使用人「……魔王様ですから。魔王様の、望みですから」
僧侶「望み?」
使用人「はい。『勇者が魔王を倒し、美しい世界が守られる』事」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
戦士「…… ……」
使用人「側近様は、『魔王様の側近』ですから」
戦士「で……今度は、勇者がそれを繰り返す、のか」
魔法使い「戦士……!?」
戦士「考えて見ろよ、魔法使い」
戦士「……俺は何だ?お前は?僧侶は?」
魔法使い「え……?」
僧侶「……『勇者の仲間』」
勇者「…… ……」
戦士「そういう事」
使用人「ええ……側近様にご自分の目を与え、心話をしたり」
使用人「転移の魔法を使ったり、側近様の身体を乗っ取ったり……」
戦士「……それ、その側近って奴は大丈夫だったのか?」
使用人「……勇者様がお産まれになった時、天井を突き破って、と」
使用人「先ほど、お話ししたでしょう」
勇者「あ、ああ……」
使用人「あの時、飛び出した『欠片』の力に引きずられ……」
使用人「視力を、失われました」
勇者「…… ……」
使用人「それから、急激に老けて行かれた様に思います」
使用人「……勇者様が人の子の世で生きるには、丁度良かったのかもしれませんが」
勇者「俺が来たから……魔王は、目を覚ました、のか」
使用人「いいえ。徐々に……多分、貴方の成長に合わせて」
勇者「…… ……」
戦士「それで、側近って奴と……魔王が一緒の部屋から出て来た、んだな」
使用人「はい……俺が押さえる、と。部屋に篭もられていましたから」
魔法使い「どうして!?どうして、そんな……ッ他人の為に……!」
使用人「……魔王様ですから。魔王様の、望みですから」
僧侶「望み?」
使用人「はい。『勇者が魔王を倒し、美しい世界が守られる』事」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
戦士「…… ……」
使用人「側近様は、『魔王様の側近』ですから」
戦士「で……今度は、勇者がそれを繰り返す、のか」
魔法使い「戦士……!?」
戦士「考えて見ろよ、魔法使い」
戦士「……俺は何だ?お前は?僧侶は?」
魔法使い「え……?」
僧侶「……『勇者の仲間』」
勇者「…… ……」
戦士「そういう事」
415: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
魔法使い「な……ッ 何が、言いたいのよ!?」
戦士「……もし、同じ事を繰り返すなら」
戦士「止めてやる奴が必要だろう」
勇者「戦士?」
戦士「……おい、使用人って言ったか」
使用人「はい」
戦士「俺が魔になろうと思ったら、どうすれば良いんだ?」
魔法使い「戦士!?」
戦士「俺は……『勇者御一行』だが、勇者の仲間だ」
戦士「……勇者が魔王になるのなら、俺がお前の『側近』になってやる」
僧侶「戦士……」
戦士「……どうすれば、良いんだ?」
使用人「…… ……お教えするのは、簡単です。が」
使用人「全てを、聞いてからになさいませんか?」
勇者「全て?」
使用人「はい。先ほど話しました……魔王様の眠られる前のお言葉」
使用人「あの中の……『知を受け継ぐ者』と言うのは、私の事だと」
使用人「……思われます」
僧侶「それは……何故?」
使用人「魔王様は……私の目をじっとみて、仰られました」
勇者「…… ……」
使用人「何の為に受け継いだのか……それは、貴方達に」
使用人「伝える為、でしょうから」
魔法使い「……ケーキ、頂くわよ」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「長くなるんでしょ? ……甘い物が欲しいわ」
魔法使い「一気に言われたって、キャパシティーオーバーよ!」
僧侶「私も……あ、美味しい!」
使用人「良かった……」ホッ
勇者「…… ……」パク
戦士「お…… ……」パクパク
戦士「……もし、同じ事を繰り返すなら」
戦士「止めてやる奴が必要だろう」
勇者「戦士?」
戦士「……おい、使用人って言ったか」
使用人「はい」
戦士「俺が魔になろうと思ったら、どうすれば良いんだ?」
魔法使い「戦士!?」
戦士「俺は……『勇者御一行』だが、勇者の仲間だ」
戦士「……勇者が魔王になるのなら、俺がお前の『側近』になってやる」
僧侶「戦士……」
戦士「……どうすれば、良いんだ?」
使用人「…… ……お教えするのは、簡単です。が」
使用人「全てを、聞いてからになさいませんか?」
勇者「全て?」
使用人「はい。先ほど話しました……魔王様の眠られる前のお言葉」
使用人「あの中の……『知を受け継ぐ者』と言うのは、私の事だと」
使用人「……思われます」
僧侶「それは……何故?」
使用人「魔王様は……私の目をじっとみて、仰られました」
勇者「…… ……」
使用人「何の為に受け継いだのか……それは、貴方達に」
使用人「伝える為、でしょうから」
魔法使い「……ケーキ、頂くわよ」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「長くなるんでしょ? ……甘い物が欲しいわ」
魔法使い「一気に言われたって、キャパシティーオーバーよ!」
僧侶「私も……あ、美味しい!」
使用人「良かった……」ホッ
勇者「…… ……」パク
戦士「お…… ……」パクパク
416: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
勇者「これ……フランボワーズ……」
僧侶「よく知ってるね」
勇者「……あ、ああ」
勇者「…… ……」
使用人「では、お茶のおかわりをご準備致しましょう」スタスタ
勇者「待って!」
使用人「はい?」
勇者「俺……これ、食べた事、あるのか」
使用人「……ええ、まあ」
勇者「……そう、か」
使用人「忘れていらっしゃる、でしょうが」
勇者「え?」
使用人「……幼い貴方と、約束しました」
使用人「美味しいフランボワーズを用意して待っています。だから」
使用人「……お友達を連れて、帰って来て下さいね、と」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者「俺は……なんて?」
使用人「……『また、後で』と」
勇者「そう、か……」
勇者「…… ……」
勇者「だから、『おかえりなさい』だったんだな」
使用人「……はい」
勇者「…… ……ありがとう」
使用人「…… ……いいえ」
カチャ、パタン
僧侶「よく知ってるね」
勇者「……あ、ああ」
勇者「…… ……」
使用人「では、お茶のおかわりをご準備致しましょう」スタスタ
勇者「待って!」
使用人「はい?」
勇者「俺……これ、食べた事、あるのか」
使用人「……ええ、まあ」
勇者「……そう、か」
使用人「忘れていらっしゃる、でしょうが」
勇者「え?」
使用人「……幼い貴方と、約束しました」
使用人「美味しいフランボワーズを用意して待っています。だから」
使用人「……お友達を連れて、帰って来て下さいね、と」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者「俺は……なんて?」
使用人「……『また、後で』と」
勇者「そう、か……」
勇者「…… ……」
勇者「だから、『おかえりなさい』だったんだな」
使用人「……はい」
勇者「…… ……ありがとう」
使用人「…… ……いいえ」
カチャ、パタン
417: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
僧侶「……悪い人、じゃ無いのは、解る」
魔法使い「そうね」ハァ
戦士「お前は噛みついてばかりだな」
魔法使い「当たり前でしょ!?」
勇者「…… ……」
魔法使い「何でアンタは、あんなあっさり」
魔法使い「『俺も魔族になる』とか言えるのよ!?」
戦士「仕方ねぇだろ。勇者一人置いて、始まりの街へ帰るのか?」
魔法使い「そ……れ、は……ッ」
僧侶「私も……残るよ、魔法使い」
勇者「僧侶!?」
僧侶「……勿論、最終的な決断は使用人さんのお話聞いてからにするけど」
僧侶「でも……勇者と、離れたく無いし」
僧侶「『勇者』が好きな訳でも『魔王』が好きな訳でもないもん」
僧侶「勇者だから、傍に居たいんだよ」
戦士「……さらっと、マァ」
魔法使い「……天然ちゃんって本当に怖い……」
勇者「僧侶……」
僧侶「戦士が側近になるなら、私は何かな」フフ
勇者「……俺が魔王、だからな」
魔法使い「まだ、決まった訳じゃ……!」
勇者「……『魔王』だよ。見ただろう?俺と……あの、魔王の顔」
戦士「そっくり……否、同じだったな」
勇者「俺の手に、この剣の文様……光で、灼け着いたこれが」
勇者「あいつの手にもあった。絡繰りはわかんないけど」
勇者「…… ……表裏一体、なんだろう」
魔法使い「こじつけでしょ、いくら何でも!」
勇者「それに、あの夢に出て来た男も……気になる、んだ」
僧侶「使用人さんも知らないって言ってたね」
魔法使い「そうね」ハァ
戦士「お前は噛みついてばかりだな」
魔法使い「当たり前でしょ!?」
勇者「…… ……」
魔法使い「何でアンタは、あんなあっさり」
魔法使い「『俺も魔族になる』とか言えるのよ!?」
戦士「仕方ねぇだろ。勇者一人置いて、始まりの街へ帰るのか?」
魔法使い「そ……れ、は……ッ」
僧侶「私も……残るよ、魔法使い」
勇者「僧侶!?」
僧侶「……勿論、最終的な決断は使用人さんのお話聞いてからにするけど」
僧侶「でも……勇者と、離れたく無いし」
僧侶「『勇者』が好きな訳でも『魔王』が好きな訳でもないもん」
僧侶「勇者だから、傍に居たいんだよ」
戦士「……さらっと、マァ」
魔法使い「……天然ちゃんって本当に怖い……」
勇者「僧侶……」
僧侶「戦士が側近になるなら、私は何かな」フフ
勇者「……俺が魔王、だからな」
魔法使い「まだ、決まった訳じゃ……!」
勇者「……『魔王』だよ。見ただろう?俺と……あの、魔王の顔」
戦士「そっくり……否、同じだったな」
勇者「俺の手に、この剣の文様……光で、灼け着いたこれが」
勇者「あいつの手にもあった。絡繰りはわかんないけど」
勇者「…… ……表裏一体、なんだろう」
魔法使い「こじつけでしょ、いくら何でも!」
勇者「それに、あの夢に出て来た男も……気になる、んだ」
僧侶「使用人さんも知らないって言ってたね」
418: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
勇者「その辺も含めて、聞いて……考える」
勇者「だが……早まらないでくれよ?」
戦士「解ってるよ」
僧侶「大丈夫。仲間でしょ?」
魔法使い「…… ……」
勇者「……盗賊……王様や、鍛冶師様の事も知ってるって言ってたな」
勇者「光の剣の事も……知ってるんだろうか」
僧侶「そう考えるのが妥当だよね」
コンコン
使用人「失礼します」カチャ
勇者「使用人、お前も座ってくれ」
使用人「はい…… ……」
勇者「どうした?」
使用人「……いえ。魔王様に、そっくりだな、と」
魔法使い「勇者は、勇者よ!」
勇者「……話の続きを、聞かせてくれ」
使用人「……はい」
僧侶「貴方の知る全て、をね」
使用人「勿論です」
戦士「……俺、理解できるかなぁ」ハァ
使用人「では……側近様からお聞きした、昔話からお話し致しましょう」
……
………
…………
勇者「だが……早まらないでくれよ?」
戦士「解ってるよ」
僧侶「大丈夫。仲間でしょ?」
魔法使い「…… ……」
勇者「……盗賊……王様や、鍛冶師様の事も知ってるって言ってたな」
勇者「光の剣の事も……知ってるんだろうか」
僧侶「そう考えるのが妥当だよね」
コンコン
使用人「失礼します」カチャ
勇者「使用人、お前も座ってくれ」
使用人「はい…… ……」
勇者「どうした?」
使用人「……いえ。魔王様に、そっくりだな、と」
魔法使い「勇者は、勇者よ!」
勇者「……話の続きを、聞かせてくれ」
使用人「……はい」
僧侶「貴方の知る全て、をね」
使用人「勿論です」
戦士「……俺、理解できるかなぁ」ハァ
使用人「では……側近様からお聞きした、昔話からお話し致しましょう」
……
………
…………
419: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
戦士「……」グッタリ
魔法使い「……大丈夫?」
戦士「あんまり大丈夫じゃない……」
魔法使い「……」ハァ
戦士「理解出来ネェよ!?あんな複雑な話!」
魔法使い「要は、側近って人が、えーっと……」
戦士「ああ、もう良いもう良い!!」
僧侶「好戦的な魔王を倒しに旅立ったら島を沈められて」
勇者「たどり着いたらその好戦的な魔王は、赤い瞳の魔王に殺されてて、世代交代が」
勇者「終わってた」
戦士「やーめーてー……」
魔法使い「使用人さんがご飯の準備してくれてる間に、整理しとかないと!」
魔法使い「……アタシだってこんがらがりそうなのよ!」
僧侶「で、側近さんは赤い瞳の魔王の魔力で、魔族になった」
勇者「その後、后を娶って、紫の瞳の魔王が産まれた」
魔法使い「問題その一。紫の加護って何?」
僧侶「『闇』だよね。勇者が光なんだもん」
勇者「で……后、は身体が崩れて氏んでしまった」
勇者「その後、紫の瞳の魔王が、勇者になるべく側近に旅に出される」
魔法使い「そこでエルフの姫に出会った」
戦士「優れた加護とかどうとかだな……」
魔法使い「無理に参加しなくて良いわよ」
戦士「仲間はずれにされるのは厭!」
勇者「紫の瞳の魔王が姫と一緒に魔導の街に行き、盗賊に出会う」
僧侶「……『劣等種』を救うべく、大会に出て、優勝する、と」
魔法使い「劣等種を解放して、そんな言葉使われない様にって言ったのに」
魔法使い「領主の口からは出て来た、のよね」
僧侶「息子の方でしょ」
魔法使い「あ、そっか……」
勇者「言いにくいが、魔法使いのお母さんってのは……」
魔法使い「その時、魔王……『少年』に救われた劣等種の一人って可能性が高いわね」
魔法使い「……大丈夫?」
戦士「あんまり大丈夫じゃない……」
魔法使い「……」ハァ
戦士「理解出来ネェよ!?あんな複雑な話!」
魔法使い「要は、側近って人が、えーっと……」
戦士「ああ、もう良いもう良い!!」
僧侶「好戦的な魔王を倒しに旅立ったら島を沈められて」
勇者「たどり着いたらその好戦的な魔王は、赤い瞳の魔王に殺されてて、世代交代が」
勇者「終わってた」
戦士「やーめーてー……」
魔法使い「使用人さんがご飯の準備してくれてる間に、整理しとかないと!」
魔法使い「……アタシだってこんがらがりそうなのよ!」
僧侶「で、側近さんは赤い瞳の魔王の魔力で、魔族になった」
勇者「その後、后を娶って、紫の瞳の魔王が産まれた」
魔法使い「問題その一。紫の加護って何?」
僧侶「『闇』だよね。勇者が光なんだもん」
勇者「で……后、は身体が崩れて氏んでしまった」
勇者「その後、紫の瞳の魔王が、勇者になるべく側近に旅に出される」
魔法使い「そこでエルフの姫に出会った」
戦士「優れた加護とかどうとかだな……」
魔法使い「無理に参加しなくて良いわよ」
戦士「仲間はずれにされるのは厭!」
勇者「紫の瞳の魔王が姫と一緒に魔導の街に行き、盗賊に出会う」
僧侶「……『劣等種』を救うべく、大会に出て、優勝する、と」
魔法使い「劣等種を解放して、そんな言葉使われない様にって言ったのに」
魔法使い「領主の口からは出て来た、のよね」
僧侶「息子の方でしょ」
魔法使い「あ、そっか……」
勇者「言いにくいが、魔法使いのお母さんってのは……」
魔法使い「その時、魔王……『少年』に救われた劣等種の一人って可能性が高いわね」
420: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
僧侶「……で、女さんと、使用人さんが、港街を出る」
戦士「あの人も……元人間だったんだな」
勇者「魔導将軍、狼将軍、インキュバスを倒して……」
魔法使い「姫と、紫の瞳の魔王は、眠りに着いた……の、よね?」
僧侶「……ジジィさん、元魔導将軍さんと鴉さんは……狼将軍との戦いで亡くなった」
魔法使い「姫って、子供……産んだのかしら」
僧侶「ええっと……50年とか言ってなかった?」
戦士「でも半分人間なんだろ?」
勇者「未知数だよなぁ……産まれたとすれば……姫も、もう亡くなってるんだろう」
僧侶「似てるって言ってたね」
勇者「后と、姫……そうだな。『エルフの長』『魔王になる者』」
勇者「……力の強い者を育むのは、耐えられない程の負荷が掛かるって事」
魔法使い「で……何だっけ?」
僧侶「えっと……あ、姫と魔王が眠る前に、女さんが亡くなってる」
戦士「ああ、そうだそうだ……ん、で」
魔法使い「……この城で、船長の子供が産まれた、んだよな」
僧侶「キーワードその一。『生と氏』」
勇者「……赤ん坊の生、母親の氏。それから、紫の瞳の魔王……『器』の氏」
戦士「『中身』……勇者が産まれた」
勇者「……俺、産まれたって言うのかな」
僧侶「引き金になったのかもって言ってたよね」
魔法使い「魔導の街であった、あの赤い髪の人……娘さん、だっけ」
魔法使い「勇者は、あの人と一緒に……あの船で」
戦士「側近と一緒に、始まりの街へ行った」
勇者「ああ。盗賊が王様だ。事情も全部知ってる上に」
勇者「……『劣等種』が王になった街。牽制のつもりもあったんだろうな」
戦士「女剣士を騎士団長に迎えて、守りも盤石、と」
戦士「あの人も……元人間だったんだな」
勇者「魔導将軍、狼将軍、インキュバスを倒して……」
魔法使い「姫と、紫の瞳の魔王は、眠りに着いた……の、よね?」
僧侶「……ジジィさん、元魔導将軍さんと鴉さんは……狼将軍との戦いで亡くなった」
魔法使い「姫って、子供……産んだのかしら」
僧侶「ええっと……50年とか言ってなかった?」
戦士「でも半分人間なんだろ?」
勇者「未知数だよなぁ……産まれたとすれば……姫も、もう亡くなってるんだろう」
僧侶「似てるって言ってたね」
勇者「后と、姫……そうだな。『エルフの長』『魔王になる者』」
勇者「……力の強い者を育むのは、耐えられない程の負荷が掛かるって事」
魔法使い「で……何だっけ?」
僧侶「えっと……あ、姫と魔王が眠る前に、女さんが亡くなってる」
戦士「ああ、そうだそうだ……ん、で」
魔法使い「……この城で、船長の子供が産まれた、んだよな」
僧侶「キーワードその一。『生と氏』」
勇者「……赤ん坊の生、母親の氏。それから、紫の瞳の魔王……『器』の氏」
戦士「『中身』……勇者が産まれた」
勇者「……俺、産まれたって言うのかな」
僧侶「引き金になったのかもって言ってたよね」
魔法使い「魔導の街であった、あの赤い髪の人……娘さん、だっけ」
魔法使い「勇者は、あの人と一緒に……あの船で」
戦士「側近と一緒に、始まりの街へ行った」
勇者「ああ。盗賊が王様だ。事情も全部知ってる上に」
勇者「……『劣等種』が王になった街。牽制のつもりもあったんだろうな」
戦士「女剣士を騎士団長に迎えて、守りも盤石、と」
421: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
僧侶「キーワードその二。『王』」
魔法使い「で、後は……すくすく育った勇者は、私達を仲間にして」
戦士「現在に至る、と」
勇者「問題その二。金の加護って何だ」
戦士「何で態々聞くんだよ。光、だろ」
勇者「……そうなんだけど。でもな?」
勇者「俺が魔王になったなら、どうして俺の瞳は金の侭なんだ?」
魔法使い「解らない問題は後回し……問題その三。魔王の世代交代は?」
戦士「……親頃し?」
僧侶「って事は……勇者の子が、魔王となった勇者を頃す事……」
勇者「…… ……」
魔法使い「そして、その子が魔王になって、以下永遠に繰り返し」
戦士「……お前が子供を作らなければ良いんじゃネェの」
僧侶「で……自分の力を押さえきれなくなった魔王が世界を滅ぼして」
僧侶「おしまい?」
戦士「…… ……」
勇者「……拒否権、ないよなぁ」
魔法使い「美しいこの世界を守る為、か」
戦士「そりゃ、勇者は必ず魔王を倒す……ん、あれ?」
勇者「あってるよ。勇者が元魔王であればこそ、世界を守ろうとするからこそ」
勇者「……倒されないと困るんだから」
戦士「……ん、んん?」
魔法使い「もう、アンタは良いわよ、戦士……」
僧侶「結局……繰り返さないと仕方無いんだね」ハァ
勇者「しかし……な」
魔法使い「え?」
勇者「……もし、俺が……子供を作るとする、だろ?」
勇者「そうしたら……后って人や、エルフの姫の様に……相手は……」
僧侶「私なら大丈夫だよ」
戦士「私って言い切ったな、こいつ……」
魔法使い「で、後は……すくすく育った勇者は、私達を仲間にして」
戦士「現在に至る、と」
勇者「問題その二。金の加護って何だ」
戦士「何で態々聞くんだよ。光、だろ」
勇者「……そうなんだけど。でもな?」
勇者「俺が魔王になったなら、どうして俺の瞳は金の侭なんだ?」
魔法使い「解らない問題は後回し……問題その三。魔王の世代交代は?」
戦士「……親頃し?」
僧侶「って事は……勇者の子が、魔王となった勇者を頃す事……」
勇者「…… ……」
魔法使い「そして、その子が魔王になって、以下永遠に繰り返し」
戦士「……お前が子供を作らなければ良いんじゃネェの」
僧侶「で……自分の力を押さえきれなくなった魔王が世界を滅ぼして」
僧侶「おしまい?」
戦士「…… ……」
勇者「……拒否権、ないよなぁ」
魔法使い「美しいこの世界を守る為、か」
戦士「そりゃ、勇者は必ず魔王を倒す……ん、あれ?」
勇者「あってるよ。勇者が元魔王であればこそ、世界を守ろうとするからこそ」
勇者「……倒されないと困るんだから」
戦士「……ん、んん?」
魔法使い「もう、アンタは良いわよ、戦士……」
僧侶「結局……繰り返さないと仕方無いんだね」ハァ
勇者「しかし……な」
魔法使い「え?」
勇者「……もし、俺が……子供を作るとする、だろ?」
勇者「そうしたら……后って人や、エルフの姫の様に……相手は……」
僧侶「私なら大丈夫だよ」
戦士「私って言い切ったな、こいつ……」
422: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
僧侶「他に誰が居るのよ!」
僧侶「……側近さんだって、大丈夫だったじゃない。使用人さんが言ってた」
僧侶「問題その四。他の二人の差は?」
魔法使い「……元人間」
僧侶「そう」
勇者「……決心は、変わらないんだな」
僧侶「うん」
戦士「俺も」
魔法使い「……私も、よ」
勇者「え!?」
戦士「『魔王様』には『側近』が必要だろ?」
魔法使い「……戦士を放っておけないし、僧侶が魔王の奥さんになるなら」
魔法使い「は、話し相手ぐらい、必要でしょ!」
戦士「お前は俺の奥さんでしょ」
魔法使い「……ッ と、当然よ!」
戦士「子供一杯作ろうぜ!んで、魔戦士部隊結成だ!」
魔法使い「ハァ!?」
戦士「俺の戦士としての腕と、お前の魔法の腕を併せ持ったら無敵だぜー?」
魔法使い「じょ、冗談じゃないわよ!そんなに産めるか!」
ギャアギャア、ギャアギャア
勇者「……問題、山積みなのにこれで良いのか」ハァ
僧侶「良いんじゃないの。一杯時間が出来るよ。魔族になると」
勇者「子供の事だけじゃ無い……使用人に聞いただろう?」
勇者「強い意思がないと……」
僧侶「それこそ、心配する所じゃないと思うんだけどな」
勇者「……良い、んだな?」
僧侶「勇者、しつこい……大丈夫。『母は強い』って言うでしょう」
勇者「…… ……」
僧侶「あ、そうだ……これ」チャリ
勇者「ん? ……金のペンダント?」
僧侶「うん……拾った、んだ。勇者が倒れてる間に」
勇者「そうか……さっき見せそびれたし」
勇者「光の剣と一緒に、後で使用人に聞いてみよう」
僧侶「……側近さんだって、大丈夫だったじゃない。使用人さんが言ってた」
僧侶「問題その四。他の二人の差は?」
魔法使い「……元人間」
僧侶「そう」
勇者「……決心は、変わらないんだな」
僧侶「うん」
戦士「俺も」
魔法使い「……私も、よ」
勇者「え!?」
戦士「『魔王様』には『側近』が必要だろ?」
魔法使い「……戦士を放っておけないし、僧侶が魔王の奥さんになるなら」
魔法使い「は、話し相手ぐらい、必要でしょ!」
戦士「お前は俺の奥さんでしょ」
魔法使い「……ッ と、当然よ!」
戦士「子供一杯作ろうぜ!んで、魔戦士部隊結成だ!」
魔法使い「ハァ!?」
戦士「俺の戦士としての腕と、お前の魔法の腕を併せ持ったら無敵だぜー?」
魔法使い「じょ、冗談じゃないわよ!そんなに産めるか!」
ギャアギャア、ギャアギャア
勇者「……問題、山積みなのにこれで良いのか」ハァ
僧侶「良いんじゃないの。一杯時間が出来るよ。魔族になると」
勇者「子供の事だけじゃ無い……使用人に聞いただろう?」
勇者「強い意思がないと……」
僧侶「それこそ、心配する所じゃないと思うんだけどな」
勇者「……良い、んだな?」
僧侶「勇者、しつこい……大丈夫。『母は強い』って言うでしょう」
勇者「…… ……」
僧侶「あ、そうだ……これ」チャリ
勇者「ん? ……金のペンダント?」
僧侶「うん……拾った、んだ。勇者が倒れてる間に」
勇者「そうか……さっき見せそびれたし」
勇者「光の剣と一緒に、後で使用人に聞いてみよう」
423: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
コンコン
使用人「お食事の準備が出来ましたが……どうされますか?」
勇者「ああ……使用人、ありがとう」
勇者「……食事の前に、少し、良いか」
使用人「ええ……何時でも始められる様にはして参りましたので」
勇者「……結論が出た。俺は……『魔王』になろう」
使用人「…… ……はい、魔王様」
魔法使い「……」
戦士「……」
僧侶「……」
魔王「それから、これ何だけど……」チャキ
使用人「!」
魔王「……使用人?」
使用人「…… ……鍛冶師さんの鍛えた部分は吹き飛んで、魔王様の」
使用人「……いえ、『勇者の光』が……と仰っていました、ね」
魔王「あ、ああ……」
使用人「もう随分と昔の話ですので……はっきりとは覚えていませんが」
使用人「……刀身が少し、大きくなっている気がします」
魔王「……使用人も、か」
使用人「え?」
魔王「俺もそんな気がしたんだ」
使用人「…… ……それに、まだ光の色をたたえて居ます」
魔法使い「あ……そうか!これ、元は魔王の剣……!」
戦士「大昔は勇者の剣だったかもしれない、魔王の剣だった、勇者の剣、な」
僧侶「…… ……光の剣で良いじゃないの」
使用人「今はまだ……貴方の瞳は、金色です、魔王様」
使用人「……側近様に、魔王様の目の残照が残った様に」
使用人「貴方の身体にも……光の残照がある、のかもしれませんね」
魔王「……じゃあ、何れ……俺の瞳も紫に染まるのか」
魔王(夢の中の男も……紫の瞳になっていた。やはり……関係あるのか?)
使用人「どう……でしょう、ね」
魔王「……そうだよな、わかんないよな……あ、それから、これ」チャリ
使用人「お食事の準備が出来ましたが……どうされますか?」
勇者「ああ……使用人、ありがとう」
勇者「……食事の前に、少し、良いか」
使用人「ええ……何時でも始められる様にはして参りましたので」
勇者「……結論が出た。俺は……『魔王』になろう」
使用人「…… ……はい、魔王様」
魔法使い「……」
戦士「……」
僧侶「……」
魔王「それから、これ何だけど……」チャキ
使用人「!」
魔王「……使用人?」
使用人「…… ……鍛冶師さんの鍛えた部分は吹き飛んで、魔王様の」
使用人「……いえ、『勇者の光』が……と仰っていました、ね」
魔王「あ、ああ……」
使用人「もう随分と昔の話ですので……はっきりとは覚えていませんが」
使用人「……刀身が少し、大きくなっている気がします」
魔王「……使用人も、か」
使用人「え?」
魔王「俺もそんな気がしたんだ」
使用人「…… ……それに、まだ光の色をたたえて居ます」
魔法使い「あ……そうか!これ、元は魔王の剣……!」
戦士「大昔は勇者の剣だったかもしれない、魔王の剣だった、勇者の剣、な」
僧侶「…… ……光の剣で良いじゃないの」
使用人「今はまだ……貴方の瞳は、金色です、魔王様」
使用人「……側近様に、魔王様の目の残照が残った様に」
使用人「貴方の身体にも……光の残照がある、のかもしれませんね」
魔王「……じゃあ、何れ……俺の瞳も紫に染まるのか」
魔王(夢の中の男も……紫の瞳になっていた。やはり……関係あるのか?)
使用人「どう……でしょう、ね」
魔王「……そうだよな、わかんないよな……あ、それから、これ」チャリ
424: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
使用人「これは……!」
僧侶「……勇者、じゃない、魔王が倒れている時、拾ったのよ」
僧侶「紫の瞳の魔王の、かしら?」
使用人「……前魔王様……紫の瞳の魔王様が」
使用人「その昔、姫様にプレゼントした物です」
魔法使い「エルフの加護を移した、って言う……アレ!?」
使用人「そうです……そういえば、これを着けた侭お眠りになりました」
使用人「……魔王様が、お持ち下さい」ス…
魔王「え、でも……」
使用人「お話は以上でしょうか?」
魔王「あ、ああ……後は、皆……決意は変わらない、そうだ」
魔王「食事が済んだら……」
戦士「あ-、先にやっちまわねぇ?」
魔王「え!?」
戦士「すっきりして飯、食いたいじゃん?ナァ?」
魔法使い「……まあ、そうね」
僧侶「私はどっちでも」
使用人「……良い、のですか」
魔王「……お前達……」
使用人「……良いのでしたら、始めましょうか」
魔王「で……具体的にはどうすれば良い?」
使用人「先ほどご説明した通り、なのですが……」
使用人「魔王様の魔力で人としての命を奪い」
使用人「そこに、さらに魔力を注いで魔に変じさせるんです」
魔法使い「……一度氏ぬ、って事、よね」
使用人「まあ……そうです」
戦士「失敗しないでくれよ?」
魔王「……お、おう」
使用人「そうなる様に、願えば良いのです……ですが」
使用人「……多分、暴走しますから」
戦士「制御出来なければ、自我を失い……って奴な」
使用人「……はい」
僧侶「……勇者、じゃない、魔王が倒れている時、拾ったのよ」
僧侶「紫の瞳の魔王の、かしら?」
使用人「……前魔王様……紫の瞳の魔王様が」
使用人「その昔、姫様にプレゼントした物です」
魔法使い「エルフの加護を移した、って言う……アレ!?」
使用人「そうです……そういえば、これを着けた侭お眠りになりました」
使用人「……魔王様が、お持ち下さい」ス…
魔王「え、でも……」
使用人「お話は以上でしょうか?」
魔王「あ、ああ……後は、皆……決意は変わらない、そうだ」
魔王「食事が済んだら……」
戦士「あ-、先にやっちまわねぇ?」
魔王「え!?」
戦士「すっきりして飯、食いたいじゃん?ナァ?」
魔法使い「……まあ、そうね」
僧侶「私はどっちでも」
使用人「……良い、のですか」
魔王「……お前達……」
使用人「……良いのでしたら、始めましょうか」
魔王「で……具体的にはどうすれば良い?」
使用人「先ほどご説明した通り、なのですが……」
使用人「魔王様の魔力で人としての命を奪い」
使用人「そこに、さらに魔力を注いで魔に変じさせるんです」
魔法使い「……一度氏ぬ、って事、よね」
使用人「まあ……そうです」
戦士「失敗しないでくれよ?」
魔王「……お、おう」
使用人「そうなる様に、願えば良いのです……ですが」
使用人「……多分、暴走しますから」
戦士「制御出来なければ、自我を失い……って奴な」
使用人「……はい」
425: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
魔王「本当に……良いんだな」
戦士「何回聞く気だよ。良いんだってば」
魔王「良し、じゃあ……」
使用人「……僧侶様からが、良いと思います」
僧侶「え、私?」
使用人「はい。魔へと変じれば、魔力量も当然ですが……増えますから」
使用人「……回復が、必要になった場合……」
魔法使い「ああ……成る程ね」
僧侶「わかった……じゃあ、お願い、魔王」
魔王「……ああ。手を繋げば……良いのか?」
使用人「場所は何処でも構いません。身に触れてさえ、居れば」
魔王「…… ……」ギュ
僧侶「ま、魔王?」
魔王「……暴れても、抱きしめてれば……すぐ、押さえられるだろう」
戦士「マァ、恥ずかしげも無く」
魔王「お前は抱きしめないから心配するな」
戦士「……心配する所はそこじゃないだろ!暴走したらどうするんだよ!」
魔王「赤い目の魔王と、側近の場合、な感じで」
戦士「…… ……酷い」
僧侶「……魔王、恥ずかしいから……早く」
魔王「あ、ああ……ッ」
魔王(ええと……願う……ッ)グッ
僧侶「……ッ」
僧侶(急速に……ッ 何かが、奪われる……ッ 目を開けていられない……ッ)
僧侶「あ、ァ ……ッ」
魔法使い「僧侶!?」
使用人「手を出しては駄目です!」
僧侶「ああああああああああああ!」ガクガクッ
魔王「僧侶!」
僧侶「……ッ う、ゥ……ッ」ウエッ ゲホゲホゲホッ
使用人「…… ……僧侶様?」
僧侶「……だ、だい……じょ、うぶ……ッ」ゲホゲホッ
僧侶「ちょっと……気持ち、悪い、だけ……ッ」
戦士「何回聞く気だよ。良いんだってば」
魔王「良し、じゃあ……」
使用人「……僧侶様からが、良いと思います」
僧侶「え、私?」
使用人「はい。魔へと変じれば、魔力量も当然ですが……増えますから」
使用人「……回復が、必要になった場合……」
魔法使い「ああ……成る程ね」
僧侶「わかった……じゃあ、お願い、魔王」
魔王「……ああ。手を繋げば……良いのか?」
使用人「場所は何処でも構いません。身に触れてさえ、居れば」
魔王「…… ……」ギュ
僧侶「ま、魔王?」
魔王「……暴れても、抱きしめてれば……すぐ、押さえられるだろう」
戦士「マァ、恥ずかしげも無く」
魔王「お前は抱きしめないから心配するな」
戦士「……心配する所はそこじゃないだろ!暴走したらどうするんだよ!」
魔王「赤い目の魔王と、側近の場合、な感じで」
戦士「…… ……酷い」
僧侶「……魔王、恥ずかしいから……早く」
魔王「あ、ああ……ッ」
魔王(ええと……願う……ッ)グッ
僧侶「……ッ」
僧侶(急速に……ッ 何かが、奪われる……ッ 目を開けていられない……ッ)
僧侶「あ、ァ ……ッ」
魔法使い「僧侶!?」
使用人「手を出しては駄目です!」
僧侶「ああああああああああああ!」ガクガクッ
魔王「僧侶!」
僧侶「……ッ う、ゥ……ッ」ウエッ ゲホゲホゲホッ
使用人「…… ……僧侶様?」
僧侶「……だ、だい……じょ、うぶ……ッ」ゲホゲホッ
僧侶「ちょっと……気持ち、悪い、だけ……ッ」
426: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
使用人「……気持ち悪い、だけ……」
使用人(いや、しかし……このまま、収まるとは……)
僧侶「……う、ウ……ちょっと、そこ、退いて戦士……座らせて……」フラフラ
戦士「お、おう……大丈夫か?」
僧侶「……目が、回る……」フゥ
使用人「…… ……」
魔法使い「使用人?」
使用人「あ、いえ……これだけで済むのでしたら、良いのですが……」
戦士「良し……次は、俺だ」
魔王「休ませろよ、少しは……」
戦士「疲れてんのか?」
魔王「……いや」
魔王(……本当に、魔に……魔王に、俺は……本当に、なったのか)
魔王(それとも……僧侶の命を奪ったからか)
魔王(今までとは……違う種類の、力に溢れて居るのが、解る)
戦士「魔王?」
魔王「……あ、いや……良し。さっさと終わらせよう」ス…
戦士「せめて……肩とかにしてくれない。何で腹……」
魔王「お前でかいんだよ! ……行くぞ」グッ
戦士「おう……ッ」
魔王(同じだ……流れ込んで……ッ これは……『歓喜』だ……ッ)
魔王(『魔』の部分が……喜んでいる……ッ)スッ
戦士「…… ……おう、終わりか?」
魔王「え? ……あ、ああ……何とも無い、のか?」
使用人「!?」
使用人(……戦士様も!?何故……暴走しない……!?)
使用人(否……魔王様は、元勇者……何かが……違う、のだろうか)
戦士「ああ、平気平気、ほら……」ブンブン……クラッ
戦士「……あらら」ヘロヘロ
魔法使い「戦士!」
使用人(いや、しかし……このまま、収まるとは……)
僧侶「……う、ウ……ちょっと、そこ、退いて戦士……座らせて……」フラフラ
戦士「お、おう……大丈夫か?」
僧侶「……目が、回る……」フゥ
使用人「…… ……」
魔法使い「使用人?」
使用人「あ、いえ……これだけで済むのでしたら、良いのですが……」
戦士「良し……次は、俺だ」
魔王「休ませろよ、少しは……」
戦士「疲れてんのか?」
魔王「……いや」
魔王(……本当に、魔に……魔王に、俺は……本当に、なったのか)
魔王(それとも……僧侶の命を奪ったからか)
魔王(今までとは……違う種類の、力に溢れて居るのが、解る)
戦士「魔王?」
魔王「……あ、いや……良し。さっさと終わらせよう」ス…
戦士「せめて……肩とかにしてくれない。何で腹……」
魔王「お前でかいんだよ! ……行くぞ」グッ
戦士「おう……ッ」
魔王(同じだ……流れ込んで……ッ これは……『歓喜』だ……ッ)
魔王(『魔』の部分が……喜んでいる……ッ)スッ
戦士「…… ……おう、終わりか?」
魔王「え? ……あ、ああ……何とも無い、のか?」
使用人「!?」
使用人(……戦士様も!?何故……暴走しない……!?)
使用人(否……魔王様は、元勇者……何かが……違う、のだろうか)
戦士「ああ、平気平気、ほら……」ブンブン……クラッ
戦士「……あらら」ヘロヘロ
魔法使い「戦士!」
427: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
戦士「うお、やべ……ッ 腕回しただけなのに、目が回る……」
使用人「……ゆっくり、休めて下さい。急激に……細胞が変わっていくのですから」
魔法使い「魔王の力に、魔に変じた己の細胞が……歓喜する、んですっけ」
使用人「ええ……そうです」
魔法使い「……でも、大した事なさそうよね。最後は私」
魔王「抱きしめてたら戦士に殴られそうだな」
魔法使い「僧侶にも、でしょ」
魔王「じゃあ、手を」ス…
魔法使い「ええ……」ギュ
魔王「行くぞ」グッ
魔王(変じられた身の方も歓喜するように……俺の魔力も、なのか)
魔王(……慎重に……ッ)
魔法使い「……ッ ゥ、あ……ッ」
使用人「……やはり、個体差……ッ」
魔法使い(これは、何……奪われる……ッ これが、歓喜!?)
魔法使い(……違う!今度は溢れて来る……ッ ……ッ)
魔法使い「あ、ァあ……ッ ああああああああああああ!」
戦士「魔法使い……!」
魔王「……大丈夫だ。離すぞ、魔法使い」
魔法使い(……身体が、震える……ッ 何かが飛び出そうと……ッ)ガクガク
使用人「……ッ」ビリビリビリッ
魔王「! ……なんだ!?」
使用人「暴走です!魔王様……ッ」
魔王「な……ッ 魔法使い!?」
魔法使い「ああああああああああああああ!?」ブンブン、ブンブン!
使用人「魔法使い様、落ち着いて……ッ ぅ、熱……ッ」
戦士「魔法使い! ……あっちぃ!?」
使用人「魔王様、何か……バリア、の様な物を……ッ」
魔王「え、ええ!?そんな、急に……ッ」
使用人「……ッ 退いて下さい……ッ 風よ!」
ビュオオオオオオ!
戦士「!! ……す、げぇ……ッ」
僧侶(こ、れが……ッ 魔族の力……!?)
使用人「……ゆっくり、休めて下さい。急激に……細胞が変わっていくのですから」
魔法使い「魔王の力に、魔に変じた己の細胞が……歓喜する、んですっけ」
使用人「ええ……そうです」
魔法使い「……でも、大した事なさそうよね。最後は私」
魔王「抱きしめてたら戦士に殴られそうだな」
魔法使い「僧侶にも、でしょ」
魔王「じゃあ、手を」ス…
魔法使い「ええ……」ギュ
魔王「行くぞ」グッ
魔王(変じられた身の方も歓喜するように……俺の魔力も、なのか)
魔王(……慎重に……ッ)
魔法使い「……ッ ゥ、あ……ッ」
使用人「……やはり、個体差……ッ」
魔法使い(これは、何……奪われる……ッ これが、歓喜!?)
魔法使い(……違う!今度は溢れて来る……ッ ……ッ)
魔法使い「あ、ァあ……ッ ああああああああああああ!」
戦士「魔法使い……!」
魔王「……大丈夫だ。離すぞ、魔法使い」
魔法使い(……身体が、震える……ッ 何かが飛び出そうと……ッ)ガクガク
使用人「……ッ」ビリビリビリッ
魔王「! ……なんだ!?」
使用人「暴走です!魔王様……ッ」
魔王「な……ッ 魔法使い!?」
魔法使い「ああああああああああああああ!?」ブンブン、ブンブン!
使用人「魔法使い様、落ち着いて……ッ ぅ、熱……ッ」
戦士「魔法使い! ……あっちぃ!?」
使用人「魔王様、何か……バリア、の様な物を……ッ」
魔王「え、ええ!?そんな、急に……ッ」
使用人「……ッ 退いて下さい……ッ 風よ!」
ビュオオオオオオ!
戦士「!! ……す、げぇ……ッ」
僧侶(こ、れが……ッ 魔族の力……!?)
428: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
使用人「長くは、持ちません……ッ魔法使い様!」
使用人「引きずられないで!頑張って!」
魔王「……ッ魔法使い!」
魔法使い「あ、ああぁ、あア……ッ」
魔法使い(身体が熱い……ッ やめて、アタシを焼かないで!戦士を……ッ)
魔法使い(魔王も、僧侶も傷付けるのは厭……ッ 出てって……!!)
バサ………ッ
魔法使い「ィ、やああああああああああああああああああああッ」バタンッ
戦士「魔法使い!」タタッ
僧侶「飛び出しちゃ駄目!風が……ッ」
戦士「う……ッ」ザクザクッ
魔王「戦士……ッ」
使用人「あ……ッか、風よ、消え去れ……ッ」フッ
魔法使い「あ、ああ……ァ」ハァハァ
戦士「魔法使い……ッ」ギュ
僧侶「戦士、血が!」タタタッ
魔王「違う……僧侶……魔法使いの背中だ……」
僧侶「……!」
使用人(背を……破って……ッ紅い……羽、が……ッ)
魔法使い「……うぅ……」
僧侶「あ……ッ 魔法使い!」パアッ
魔王「だ……大丈夫、か……?」
魔法使い「な、んと……か……ね……」ハァ
使用人「…… ……魔力を、具現化させて……暴走を止めた、のですか……」
戦士「……良かった……」ホゥ
僧侶「ほら、戦士も回復するから……」パァッ
魔王「……やっぱり、僧侶も……魔族になっても……」
魔王「回復は使える、んだな」
僧侶「あ……そういえば、そう……か」
使用人「側近様の例がありますから、それは……」
使用人「引きずられないで!頑張って!」
魔王「……ッ魔法使い!」
魔法使い「あ、ああぁ、あア……ッ」
魔法使い(身体が熱い……ッ やめて、アタシを焼かないで!戦士を……ッ)
魔法使い(魔王も、僧侶も傷付けるのは厭……ッ 出てって……!!)
バサ………ッ
魔法使い「ィ、やああああああああああああああああああああッ」バタンッ
戦士「魔法使い!」タタッ
僧侶「飛び出しちゃ駄目!風が……ッ」
戦士「う……ッ」ザクザクッ
魔王「戦士……ッ」
使用人「あ……ッか、風よ、消え去れ……ッ」フッ
魔法使い「あ、ああ……ァ」ハァハァ
戦士「魔法使い……ッ」ギュ
僧侶「戦士、血が!」タタタッ
魔王「違う……僧侶……魔法使いの背中だ……」
僧侶「……!」
使用人(背を……破って……ッ紅い……羽、が……ッ)
魔法使い「……うぅ……」
僧侶「あ……ッ 魔法使い!」パアッ
魔王「だ……大丈夫、か……?」
魔法使い「な、んと……か……ね……」ハァ
使用人「…… ……魔力を、具現化させて……暴走を止めた、のですか……」
戦士「……良かった……」ホゥ
僧侶「ほら、戦士も回復するから……」パァッ
魔王「……やっぱり、僧侶も……魔族になっても……」
魔王「回復は使える、んだな」
僧侶「あ……そういえば、そう……か」
使用人「側近様の例がありますから、それは……」
429: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
魔王「……いや。やはり俺だけ特別なんだな……と思ってな」
使用人「…… ……魔力量の問題でしょうか」
魔王「え?」
使用人「いえ……僧侶様は、回復魔法が中心ですし」
使用人「戦士様は……そもそも、魔法は使われません、ので」
魔王「……暴走、か」
使用人「はい……ですが、無事で良かったです。魔王様は……疲れていませんか」
魔王「あ、ああ……俺は大丈夫だ」
使用人「では……最後に、名をお与え下さい」
魔王「……一度生を終え、新たな命を生きようとするけじめ、か」
使用人「…… ……」
魔王「僧侶。俺の后に……なってくれる、んだよな?」
僧侶「うん」
魔法使い「……また、さらっと……アンタ達は……」ハァ
僧侶「魔法使いだって、戦士に張り付いてるじゃない」
魔法使い「アタシはしんどいのよ!」
魔王「……では、『后』」
后「うん」
魔王「戦士は、『側近』で良いんだな?」
戦士「お前が……厭じゃなければな。あの人の……名前だからな」
魔王「寧ろありがたいさ」
側近「おう……心配すんな。お前は俺が守ってやるよ」
魔王「……魔法使い」
魔法使い「アタシも、前もって希望出しといたでしょ?」
魔王「本当に良いのか」
使用人「?」
魔法使い「ええ。戦士との子供一杯産んで、魔王を守る軍隊、作ってやるわ!」
魔王「……では『魔導将軍』」
使用人「……!」
魔導将軍「ぴったりね。背中に羽まで生やしてさ」フフ
使用人「……では……と言いたいところですが」
魔王「ん?」
使用人「お食事……如何なさいます?」
使用人「…… ……魔力量の問題でしょうか」
魔王「え?」
使用人「いえ……僧侶様は、回復魔法が中心ですし」
使用人「戦士様は……そもそも、魔法は使われません、ので」
魔王「……暴走、か」
使用人「はい……ですが、無事で良かったです。魔王様は……疲れていませんか」
魔王「あ、ああ……俺は大丈夫だ」
使用人「では……最後に、名をお与え下さい」
魔王「……一度生を終え、新たな命を生きようとするけじめ、か」
使用人「…… ……」
魔王「僧侶。俺の后に……なってくれる、んだよな?」
僧侶「うん」
魔法使い「……また、さらっと……アンタ達は……」ハァ
僧侶「魔法使いだって、戦士に張り付いてるじゃない」
魔法使い「アタシはしんどいのよ!」
魔王「……では、『后』」
后「うん」
魔王「戦士は、『側近』で良いんだな?」
戦士「お前が……厭じゃなければな。あの人の……名前だからな」
魔王「寧ろありがたいさ」
側近「おう……心配すんな。お前は俺が守ってやるよ」
魔王「……魔法使い」
魔法使い「アタシも、前もって希望出しといたでしょ?」
魔王「本当に良いのか」
使用人「?」
魔法使い「ええ。戦士との子供一杯産んで、魔王を守る軍隊、作ってやるわ!」
魔王「……では『魔導将軍』」
使用人「……!」
魔導将軍「ぴったりね。背中に羽まで生やしてさ」フフ
使用人「……では……と言いたいところですが」
魔王「ん?」
使用人「お食事……如何なさいます?」
431: 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:Ssi81wLNP
何かPCのp2繋がらない( ゚д゚)
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」【3】
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」【3】
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