しずく「……本当に？」

かすみ「疑ってるの？　だったら今すぐ見せてあげる！」

愛「おおっ、どうなるか楽しみ！　早く飲んでみてよ！」

かすみ「ふふーん、かすみんの自信作ですから！」

ミア「作ったのは璃奈だろ」

かすみ「じゃあ、いっただきまーす！」

ｺﾞｸｯ ｺﾞｸｯ

かすみ「……あれ？　何も起きない？」

果林「まぁ、そんなものよね」ｸｽｯ

せつ菜「あはは、かすみさんらしいです！」

かすみ「ちょ、ちょっとりな子！」

璃奈「そんなにすぐ効果は出ない。明日の朝くらいまで待って」

かすみ「もう、それを早く言ってよー！」

侑「明日が楽しみだね！」

翌朝　かすみ宅

ﾁｭﾝﾁｭﾝ…

かすみ「……んー。もう朝？」

ｺﾝｺﾝ

かすみ（2号）「おっはよー！ かすみんだよ！」

かすみ「あれ？　なんでベッドに鏡が……？　っていうか鏡が喋ってる？」

かすみ（3号）「おはよー！ かすみん参上！」

かすみ（4号）「ふふっ、かすみんの登場だよ～！」

かすみ「！？」

かすみ「ちょっと待って！ なんでかすみんが4人もいるの！？」

かすみ母「かすみー早く起きないと遅刻するわよー！」


かすみ軍団『はーい！』


かすみ「ちょっ、みんなで一斉に声出さないで！」

かすみ（5号）「かすみんが呼ばれたんだから返事しただけだよ？」

かすみ（6号）「そうそう！」

かすみ「まずい……これどうするの……？」

かすみ（7号)「何がまずいの？」

かすみ「まだいた！？　まずいに決まってるでしょ、かわいいかすみんが複数いるなんてバレたら大騒ぎになっちゃうよ！」

かすみ（8号）「もうバレてると思うよ？」

かすみ「何を言って……」

ｻﾞﾜｻﾞﾜ

かすみ「何か外が騒がしいような……」

街中

ﾄﾞﾀﾊﾞﾀ ﾜｲﾜｲ ｻﾞﾜｻﾞﾜ

通行人1「あ、かすみんだ！」

通行人2「10人もいるじゃん！」

通行人3「マジうけるー！」

その頃の部室


愛「やばっ！ かすかすが街や学校に溢れちゃって大騒ぎだよ！」

かすみ（21号）「かすかすじゃなくてかすみんですぅー！」

せつ菜「ど、どういうことなんですか！？ 璃奈さん！」

璃奈「想定外。私の計算ではこうなる確率は……たった0.01％だったのに」

侑「それって逆にすごくない？」

璃奈「薬の成分に何か問題があったのかも……」

ミア「問題ってレベルじゃないだろ！ 街中かすみだらけなんて、どんなホラー映画だよ！」

かすみ（33号）「かすみんは可愛いからホラーじゃないよ！」

果林「このままだと本物のかすみちゃんがどれか分からないわね……」

彼方「うーん、膝の感触は本物のかすみちゃんと同じだねえ」ｽﾔﾋﾟ

かすみ（48号）「彼方先輩よしよししてあげますよ～」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

ランジュ「きゃあっ、見て！　ランジュに懐いてくれてるわ！」ｷｬｯｷｬｯ

かすみ（55号）「ランジュ先輩～♪」ｺﾞﾛｺﾞﾛ

侑「うわー、これはこれでときめくなあ」

かすみ（60号）「かすみん、侑先輩大好きです」

侑「ひ、ひとりくらい家につれて帰ってもいい？」ｿﾜｿﾜ

歩夢「ダメだよ？」

しずく「こんなに居れば、エキストラにも困らないし色々な演出ができそうですね」

かすみ（61号)「主役はかすみんだからね！」

ミア「Shut Up！みんな冷静になりなよ！　璃奈、どうにかできるんだろ？」

璃奈「方法はある。成分逆転の薬を作った。これを本物のかすみちゃん以外に飲ませれば肉体が消滅する」

ランジュ「消滅！？　そんなのかわいそうよ！」

璃奈「大丈夫。記憶を維持したまま気化してどこかにいる本物のかすみちゃんに吸収されるから、存在が抹消されたり氏ぬわけじゃないよ」

彼方「それなら安心だねぇ～」

歩夢「あ、安心なのかな？　なんかそれはそれで怖いんだけど……」

璃奈「ただ、問題がふたつあって……本物のかすみちゃんにこの成分逆転の薬を飲ませちゃったら爆発する」

せつ菜「爆発ですか！？　それは大変ですね！！　もうひとつは！？」

璃奈「本物のかすみちゃんは無自覚にどんどん周囲に新しいかすみちゃんを生み出し続けてるから、いくらかすみちゃんを減らしても本物を抑えないと意味がない」

果林「本物を抑えた後は？」

璃奈「特殊な電気ショックを加えれば増加は収まるはず」

愛「おっけー、要するにまずは本物のかすかすを最優先で確保ってことだね！」

璃奈「うん。でもそれまで増えたかすみちゃんを放っておくわけにもいかない」

エマ「お薬を飲ませて増えたかすみちゃんを減らしていく班と本物を探す班に別れればいいかな？」

果林「さすがエマね。そうしましょう」

しずく「でも間違えて本物のかすみさんに薬を飲ませる危険性ありますよね？」

ミア「そうだよ。そもそも本物をどうやって探すんだ」

璃奈「このオートエモーションコンバート璃奈ちゃんボードを改造して作った『かすみんボード』を使う」

せつ菜「うおおお！　新しい秘密道具ですね！！　どういう仕組みなんですか！？」

璃奈「オリジナルかすみちゃんの声の波形、独特だからAIで判別できる。だからこれをかすみちゃんに近づけるだけで本物を見つけることができる」

璃奈「これと薬を持ってみんなで校内と街に散らばる。こうなったのは私のせいでもある。ごめんなさい」

璃奈ちゃんボード『しょんぼり』

璃奈「みんなお願い、かすみみちゃんを捕まえるのを手伝って」ﾍﾟｺﾘ

侑「もちろんだよ！」

かすみ軍団『わ～～～逃げちゃいますよ～～～！』ﾄﾞﾀﾊﾞﾀﾄﾞﾀﾊﾞﾀﾀﾀ

せつ菜・果林・エマ・侑・歩夢→かすみん減らし班
彼方・しずく・ミア・ランジュ・愛→本物探し班
璃奈→部室にて全体指揮
栞子→校内大混乱のため生徒会で忙殺




せつ菜「そっちのかすみさん！　止まってください！」

かすみ（42号）「つかまるもんですかー！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

果林「ふふっ、逃がさないわよ。私の脚力を見せてあげる！」ﾀﾀｯ

せつ菜「果林さん待ってください！　そっちは逆方向です！」

かすみ（67号)「きゃっきゃっ！　こっちですよー！」ﾀﾀｯ

侑「待って待ってー！　もう、すばしっこくて追いつけないよー！」

エマ「でもせっかく可愛いかすみちゃんの顔がよく見えなくて残念だな～」

かすみ（12号）「えっ、そこまで言うんなら止まってあげますよぉ！」

エマ「ふふ、おいでー」

歩夢「エマさんは懐柔が上手ですね……」

エマ「はい、ひとり捕まえた♪」

かすみ(12号)「ギャー！　捕まっちゃいました！」

果林「あら、やったじゃないエマ」

璃奈（トランシーバー）「本物かどうか確認したい。かすみんボードを近くに持ってきて？」

侑「よいしょ、はい。このくらい？」

かすみ(12号)「なんですかそれぇ！？」

璃奈（トランシーバー）「解析完了。この子は増殖かすみちゃんだから薬を飲ませて大丈夫」

エマ「はーい、じゃあお口開けてお薬飲みましょうね～」

かすみ(12号)「むぐぐぐぐ」

せつ菜「ダメです！　口をつぐんで開けようとしません」

エマ「困ったなあ、どうしよう」

歩夢「うーん、無理やり開けるのもかわいそうだし」

侑「こんなことしてる間にも他のかすみちゃんが逃げてっちゃうよ」

かすみ(41号)「にっしっし、今のうちに逃げますよー」ｻｻｯ

かすみ(60号)「かすみんの犠牲は無駄にしないよ！」ﾀﾀｯ

果林「璃奈ちゃん。この薬をかすみちゃん以外、例えば私が飲んだらどうなるのかしら」

璃奈（トランシーバー）「かすみちゃん以外には完全に無害。ただのまずい水と変わらない」

果林「わかったわ」ｺﾞｸｯ　ｺﾞｸｯ

歩夢「えっ！？　なんで果林さんが薬を」


果林「わがままな子に薬を飲ませるにはこれしかないでしょ」

ｸｲｯ

かすみ(12号)「え、果林先輩、顔が近……//」ﾄﾞｷｯ

果林「んっ……」ﾁｭｯ

かすみ(12号)「んむっ！？//」

ﾌﾞﾁｭｳｳｳ　ﾍﾟﾛｯ…　ﾚﾛｯ…　ｺｷｭｯ……

かすみ(12号)「んんんっっ///」ｺﾞｸｯｺﾞｸｯ

エマ「か、果林ちゃん！？ いきなり何を……///」ｶｧ

侑「ちょ、果林さん！？ 口移しはさすがにやりすぎじゃ……//」

せつ菜「少々ショッキングな光景ですが、効果は抜群ですね！」

歩夢「抜群すぎるよ//」

果林「ぷはっ……ふぅ。これで薬は飲んでくれたわね」ﾆｯｺﾘ

かすみ(12号)「んん……かすみん……もうすぐ消えちゃうのぉ？」ｳﾙｯ

エマ「あらら、ちょっとかわいそう……」

侑「大丈夫、本物のかすみちゃんの中に戻って生きていけるから安心して！」

かすみ(12号)「うぅ……じゃあ、さいごに果林先輩にもっと……」

ｼｭﾜｧｧｧ……

侑「あっ、消えちゃった」

せつ菜「これでひとり解決ですね！」

エマ「でも今の騒ぎで他のかすみちゃんがみんな逃げちゃったね」

璃奈（トランシーバー）「遠くまでは逃げてないはず。みんなの周囲にはまだ数十人いるみたい」

歩夢「数十人かぁ……」

果林「さて、次のかすみちゃんを探しに行きましょうか」

せつ菜「ですが、また薬を飲む際に抵抗されたら……」

果林「私が居れば飲ませてあげるけど、私がその場にいなかったら……その時は覚悟を決めるのよ？」

せつ菜「か、覚悟ですか//」ﾎﾟｯ

侑「き、キスじゃなくてあくまで口移しだから……ノーカンだよね？」ﾁﾗ

歩夢「かすみちゃんと学校のためだから仕方ないかもだけど……私は無理やりじゃなくて話し合って納得して飲んでもらいたいな」

侑「そ、そうだよね！」ｱｾｱｾ

校門付近

かすみ「ぜえ、ぜえ、やっと学校までたどり着いたけど……もう限界！ なんでかすみんがこんな目にー！」


一般生徒A「わ、ここにもかすみん集団いる！」

一般生徒B「群れてるかすみちゃん可愛いねー！」


かすみ（67号）「でもほらほら、みんなかすみんを可愛いって言ってくれてるよ？」

かすみ「それはそうだけど、こんなに増えたら私の、本当のかすみんの可愛さ目立たなくなっちゃうじゃん！」

かすみ（32号）「これからみんなで侑先輩に甘えに行こうよ！」

かすみ「だめ！ 侑先輩が誰を本物だと思うかわからないでしょ！？」

かすみ「あーもう無理！ 疲れたぁ！」

かすみ（20号）「大丈夫だよ、かすみんは可愛いから！」

かすみ（50号）「その通りだよ！」

かすみ「そんなことわかってるけど～！」

ﾌﾜﾜｯ……

かすみ「ぁんっ！？//」ﾋﾞｸｯ

かすみ（19号）「え、どうしたの変な声出して」

かすみ「べ、別になんでもないから！」ｼｯｼｯ

かすみ（いきなり唇と口の中に妙な感触が//)

お台場海浜公園


彼方「さ～て、どのかすみちゃんが本物かな～？」ﾌﾜｧｧ

しずく「彼方さん、すごく眠そうですけど休んでたほうが良いんじゃないですか？」

彼方「かすみちゃんがたくさんいるとさすがの彼方ちゃんも落ち着いて寝れないからね～」

ランジュ「しずく、安心して。このランジュの直感で探し出すわ！」

ミア「直感って何だよ。ここまで何人もかすみを見つけたけど本物が見つからなかったじゃないか」

愛「おっ、あの子はどうかな？」

かすみ(73号)「えへへ～♪　かすみんを捕まえようなんて100年早いですよ～！」ﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝ

しずく「あ！　その子、かすみんボードの反応がちょっと強い気が……」

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ！

ミア「Great！　ついに本物か！？」

ランジュ「行くわよ！」ﾀﾞｯ

愛「うおおお！」ﾀﾞｯ

かすみ(73号)「ひぃ！　早すぎですよぉ！」ｶﾞｼｯ

ランジュ「捕まえたわよ！」

璃奈（トランシーバー）「かすみんボードを近づけて。データをもう一度解析する……」

ﾋﾟｰｯ!

璃奈「違う。増殖かすみちゃんの中でも、ただ波長が本物に近いだけの個体だった」

ミア「なんだ、偽物か」

かすみ(73号)「偽物って言うなー！」ﾑｷｰ！

しずく「はぁ、まだまだ探さないといけませんね……」

ミア「Hurry up! このかすみはこの辺に縛っておいて後で減らし班に任せよう」

愛「でもさ～、これ全部片付いたら、かすかすがまたひとりになるってことだよね？」

彼方「そうだね～。それはそれで少し寂しいかも～」

しずく「……でも、それが正しい状態なんですから」

ランジュ「さぁ、次に行くわよ！　本物のかすみを見つけて、解決するのよ！」

ミア「ったく、どんだけ元気なんだよ」

しずく「ふふ、でもランジュさんの元気、ちょっとだけ励みになりますね」

愛「カナちゃん、体力は大丈夫そう？」

彼方「う～ん、ちょっと休みたいけど、このかすみちゃん騒動が落ち着くまでは……ね～」ﾌﾜｧｧ

ランジュ「疲れてる場合じゃないわよ！　本物を見つけないとお台場が侑に埋め尽くされちゃうわ！　あら、それもそれで面白そうね！」

ミア「Hey, Calm down! ランジュは状況を楽しみすぎだよ」

愛「おっ、あっちにまたかすみんの群れがいるよ～！」

しずく「よし、今度こそ本物を捕まえましょう！」

ﾀｯﾀｯﾀ…

かすみ（98号）「きゃー、逃げるかすみん～も可愛い！」ﾀﾀｯ

かすみ（44号）「かすみん、可愛いかすみんのために盾になってよ！」ｷﾞｬｰｷﾞｬｰ

かすみ（53号）「やだよ！ かすみんが一番可愛いんだから！」ｷﾞｬｰｷﾞｬｰ

愛「うわー、大量だねえ」

ミア「これは骨が折れそうだね」

しずく「……あれ？」

ランジュ「どうしたの？」

しずく「逃げてるかすみさんたちの中に、ひとりだけ妙に冷静にこっちを見てる子がいません？」

かすみ（100号）「……」

ランジュ「本当だわ。なんだか他の増殖かすみとは違う雰囲気を感じるわね」

彼方「でも、本物のかすみちゃんとも違う感じだねえ」


かすみ（100号）「そこのかすみんたち、あっちへ移動して！」

かすみ（39号）「え、でも捕まっちゃうかも！」

かすみ（100号）「大丈夫、あっちに隠れられる場所がある。ほら、急いで！」

ﾊﾞﾀﾊﾞﾀｯ…

かすみ（100号）「こっちのかすみんたちは、周囲を偵察してからこのメモした場所に集合して」

かすみ（44号）「了解！　さすが賢いかすみん！」ﾀﾀﾀｯ

かすみ（100号）「残りのかすみんたちは、私と一緒に逃げるよ。足の速い先輩もいるけど、この距離なら捕まる前に人混みに紛れ込めるから！」ﾀﾀｯ

かすみ（53号）「わかった！　賢いかすみんがいれば安心だね！」ﾀﾀﾀｯ

校内　体育館付近


ﾁｭｯ……ﾚﾛｯ……ｺﾞｸｯ

かすみ(４９号)「んっ//」ｺﾞｸｯｺﾞｸｯ

せつ菜「ぷはっ// やりました！」

かすみ(４９号)「せつ菜せんぱぁい//」ﾎﾟｰ

ｼｭﾜｧｧｧ……

歩夢「これで５人目かな」

侑「せつ菜ちゃんのキッス、何度見てもドキドキするね//」

エマ「上手だよ～」

せつ菜「わ、私は好きでやってるわけではっ！　果林さんが行方不明になったから仕方なくですからね//」

璃奈（トランシーバー）「みんな、情報共有。妙に動きが統率されているエリアがあるみたい」

せつ菜「統率……？ それってどういうことですか？」

璃奈（トランシーバー）「しずくちゃんたちの班から気になる報告が入って、かすみんボードを使って遠隔で解析した結果、普通の増殖かすみちゃんよりも脳波や行動パターンが複雑になっている個体がひとつだけ確認された」

侑「それって……賢いかすみちゃんってこと？」

璃奈（トランシーバー）「そうかもしれない。報告とデータを見る限り、他の増殖かすみちゃんを指揮しているっぽい」

果林「ふふ、賢いかすみちゃんねぇ。面白くなってきたわ」

歩夢「果林さん！？　いつの間に！？」

果林「もう。みんなが居なくなっちゃったからしかたなく単独行動してたのよ。探してる間に増殖かすみちゃん４人に薬飲ませたわ」

侑「す、すごい」

エマ「それで璃奈ちゃん、その子がどこにいるか分かる？」

璃奈（トランシーバー）「お台場海浜公園からこの学校に向かって移動してるみたい」

せつ菜「わざわざこちら側に？」

璃奈（トランシーバー）「本物に接触を図るつもりかもしれない。その前に賢いかすみちゃんを確保するか、本物のかすみちゃんを保護したほうが良さそう」

歩夢「本物のかすみちゃんが危ないってこと？」

璃奈（トランシーバー）「うん、賢いかすみちゃんが本物のかすみちゃんに近づけば、予測不能な事態が起こる可能性が高い。特に増殖かすみちゃんたちが賢い個体を信じて行動している以上、群れが暴走するリスクがある」

せつ菜「了解しました！ しかし、どうしてあの個体だけがそこまで高い知能を持つのでしょうか？」

璃奈（トランシーバー）「増殖かすみちゃんには微妙に個体差があって、知能にもバラつきがある。それぞれ波長を解析した結果、平均的な増殖かすみちゃんの知能は、本物のかすみちゃんの8割程度」

侑「たしかに増殖かすみちゃんはいつものかすみちゃんよりちょっとおバカな気はしたけど」

璃奈（トランシーバー）「うん。そして、その減った２割の知能が全部どこかに集中しているとすれば？」

果林「なるほど。大量のかすみちゃんが持つはずだった頭の良さ的なモノが集まった結果が、その賢いかすみちゃんってわけね」

エマ「でも、どうしてそんなことが……？」

璃奈（トランシーバー）「理由は分からない。でも、データはそれを証明してる」

ゆりかもめ　お台場海浜公園駅前


しずく「璃奈さんの通信、聞きましたよね……やはり、あの指示を出していたかすみさんは特殊な個体なようです」

ランジュ「間違いないわね。このあたりまでは追いかけたけど、途中で完全に見失っちゃったのよ！」

愛「しかもただ逃げてるわけじゃなさそう。かすかす集団が統制取れた動きで複数グループに分かれてるっぽいよ」

彼方「なるほど～、だからこっち方面は単体の目撃情報が少なかったんだね」

しずく「はい。それぞれ異なる交通手段やルートで動いているようです。おそらく、私たちを撹乱するためでしょう」

ランジュ「やるわね、あの賢いかすみ！」

ミア「でも璃奈によるとかすみ集団は学校を目指してるんだろ？　私たちもそこに戻ればいいだけなんじゃないか」

愛「確かに、追いかけるより先回りのほうが効率的かもね」

しずく「賛成です。璃奈さんのデータ解析を信じて、私たちも学校に戻りましょう！」

彼方「じゃあ決まりだね～。よいしょっと」ﾉﾋﾞｰ

ランジュ「急ぎましょう！ 決着をつけるわよ！」ﾀﾞｯ

虹ヶ咲学園 校門付近


ﾄﾞﾀﾊﾞﾀ ﾜｲﾜｲ ｻﾞﾜｻﾞﾜ……

一般生徒A「うわっ、またかすみんが増えた！」

一般生徒B「これ何人目！？　もうわかんない！」

ｷｬｯｷｬﾂ

ランジュ「学校に帰ってきたわ！」

増殖かすみ軍団「「かすみんだよーっ！」」ｽﾞﾗｰｯ


ミア「Oh……!」

しずく「えっと、予想はしてましたけど……これは壮観ですね」

ランジュ「まるで合成みたいね！」

彼方「いや～、ひとりひとりは可愛くてもこんなにいるとさすがに圧倒されるね～」

愛「もう、かすかす通り越してカオスカオスだよ～」

エマ「みんな！　無事戻ってきてくれてよかったー！」

せつ菜「校内が大変な状況です！！　どんどんかすみさんの密度が上がっています！！」ﾀﾀﾀｯ

侑「増殖かすみちゃんだらけで大混乱してるよ！」

愛「お、そっちも無事でよかった！」

歩夢「生徒会の指示で、生徒たちは安全な場所に移動を始めたけど……」

エマ「もうどこを見てもかすみちゃんだらけ～」

果林「でも、本物のかすみちゃんも賢いかすみちゃんもまだ見つかってないわ」

しずく「離れ離れになったらかすみさんの波にのまれてはぐれてしまいそうです。ニ班で一緒に行動しましょう」

侑「うん！　でもどんどんかすみちゃんが集まってくるよ！」

彼方「う～ん、きっと賢いかすみちゃんがどこかで指揮してここに集めてるんだね～」

ランジュ「それだけじゃないわ！　見て！」

ｷﾞﾁｷﾞﾁ……

ミア「What's！？　校舎の入り口が増殖かすみたちでびっしり埋め尽くされてるじゃないか！」

増殖かすみ軍団「「ここから先は通さないよーっ！」」

愛「うわっ、完全に封鎖されてるじゃん！」

璃奈（トランシーバー）「どうやら何か所かを重点的に通行止めにしてるみたい。みんなのスマホに位置を共有する」ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ

果林「これは、もしかして何かを守ろうとしてるのかしら」

せつ菜「この配置……まさか！！」ﾊｯ

せつ菜「生徒会室！！　増殖かすみさん軍団が封鎖しているのは全て生徒会室へのルートです！！」

ランジュ「っ！　生徒会室にはまだ栞子がいるはずよ！」

生徒会室


ｶﾞﾀｶﾞﾀ　ﾜｲﾜｲ…

副会長「生徒会長！　廊下は増殖かすみさんでいっぱいで移動ができません！　一体どうすれば……！」

栞子「落ち着いてください！　状況を把握して、順に対処します！」

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｯ！

副会長「きゃっ！　大変です！　かすみさん達がドアに押し寄せて……破られます！」

ﾊﾞﾀﾝｯ!!

増殖かすみ軍団「「突入しちゃいますよーっ！」」ﾜｰｯ

かすみ(100号)「やっほーしお子！　突然お邪魔しちゃってごめんね！」

栞子「っ！？　……あなたは、かすみさん……いえ」

栞子「璃奈さんが言っていた、増殖かすみさん達を指揮する賢いかすみさんですね」

かすみ(100号)「うん、その通り！」

栞子「まさかこの混乱を仕組んだ張本人が堂々と来るとは思いませんでした」

かすみ(100号)「仕組んだって言うのは語弊があるかな～。でもまあ、みんなを動かしてるのは私だから責任は取るよ！」

栞子「……あなたがここに来た理由を伺っても？」

かすみ(100号)「それはね……耳かして。ごにょごにょ」ﾋｿﾋｿ

栞子「……！」


栞子「……なるほど。分かりました。ただし、生徒たちの安全を最優先することが条件です」

かすみ(100号)「オッケー！　さすがしお子、理解が早くて助かるよ！」

とある教室

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

かすみ「うわっ、誰！？　入ってこないでよ！」

かすみ（58号）「にっしっし。やっぱりここに隠れてた！」

かすみ（40号）「しず子との思い出の教室。賢いかすみんの予想通り！」

かすみ「賢いかすみんって誰！？　かすみんはそもそも賢いんですけど！？」

かすみ（58号）「賢いかすみんからの伝言！　今から、生徒会室で会談しましょうだって！」

かすみ「いきなりそんなこと言われても」
かすみ（58号）「いいからいいから行くよ」ｶﾞｼｯ

かすみ（40号）「かすみん同士仲良く話し合うよ」ｶﾞｼｯ

かすみ「……えぇー……」ｽﾞﾙｽﾞﾙｽﾞﾙ

生徒会室


かすみ（58号）「はい、オリジナルかすみん連れてきましたよー！」

栞子「どうぞお入りください」

かすみ「しお子！」

かすみ（100号）「おっ、来た！ ようやく会えたね、オリジナルかすみん！」

かすみ「……あなたが『賢いかすみん』ってやつ？」

かすみ（100号）「そうそう！ 正直、自分でその呼び名はちょっと恥ずかしいけどね～」ﾆｼｼ

かすみ「なにその余裕！」ﾑｶｯ！

かすみ（100号）「まあまあ。怒るのは後にして、座ってよ。本題に入ろう」

かすみ「そもそもなんでしお子がこっちのかすみんと一緒にいるの？」

栞子「会談の場として生徒会室を提供し、立会人としてこの場を見届けて欲しいと賢いかすみさんに頼まれたんです」

かすみ（100号）「しお子なら公正だし、安心でしょ？」

かすみ「まぁ……それはそうだけど」

かすみ（100号）「じゃあ早速本題。単刀直入に言うよ。私たち、増殖かすみんが存在し続ける道を認めてもらいたいの」

かすみ「はぁ！？ 存在し続ける！？ それってつまり、増殖かすみんたちが消えないで、このままいっぱいいるってこと！？」

かすみ（100号）「そういうこと。だけど安心して、無理やりそうしろって言ってるわけじゃないよ。私たちもオリジナルかすみんにはちゃんと敬意を払ってるし」

栞子「敬意……ですか？」

かすみ（100号）「そう。私たち増殖かすみんが可愛いのはオリジナルかすみんが可愛いおかげだからね！」

かすみ「……へ？//」

かすみ（100号）「でもさ、同時にこうも思うの。『可愛さ』だけが基準でいいのかな、って。私たちかすみんは可愛いけど他にも個性があるし、もっと別の生き方をしてもいいんじゃないかってね」

かすみ（100号）「だから、提案。お互いの魅力を観客に見せつけて、どっちがよりお客さんを盛り上げるか対決しよう！」

かすみ「つまりライブ対決ってこと？」

かすみ（100号）「シンプルでしょ？ オリジナルかすみんの方が観客を魅了したら、私たち増殖かすみんは潔くオリジナルに吸収されるよ」

栞子「逆に、賢いかすみさんたちが勝利した場合はどうなるのですか？」

かすみ（100号）「その場合はもちろん、増殖かすみんを吸収しないことを約束してもらうよ。私たちはそれぞれの人生を生きていく！」

かすみ「……」

栞子「かすみさん、どうしますか？」

かすみ「もう、ずるいよ！ライブで勝負するって言うなら、スクールアイドルとして逃げるわけにはいかないじゃん！」

かすみ「こうなったらかすみんが一番可愛いってことをライブで証明してあげる！」

かすみ（100号）「さっすが！ 自信満々だね！」

かすみ「あ、当たり前じゃん！ かすみんの可愛さに増殖かすみんが敵うわけないでしょ！」ﾌﾝｽ！

校内各所


ﾄﾞﾀﾊﾞﾀ ﾜｲﾜｲ!!

増殖かすみ軍団「「かすみんライブ開催決定ー！」」ﾜｰﾜｰ

増殖かすみ軍団「「オリジナルかすみんと賢いかすみんがライブで対決するよ！」」ﾜｰﾜｰ


一般生徒C「え！？ かすみんがライブ！？ マジ！？」

一般生徒D「増殖かすみんも一緒に？ どういうこと！？」

ｻﾞﾜｻﾞﾜｻﾞﾜ

生徒会室

栞子「同好会のメンバーとも連絡が取れました。みなさん協力してくれるそうです」

かすみ（100号）「しお子、ありがとう。手間かけさせちゃったね」

栞子「いえ、これも学園の秩序を守るためですから。それではライブ開始に向けて準備を始めましょう」

かすみ「可愛いかすみんが最高に輝くライブにする！」ﾑﾝｯ

校庭

せつ菜「かすみさんたちのライブは今日の夕方開催です！　時間がありません！　協力して準備を進めていきましょう！」

エマ「ライブ楽しみだねー！ 増殖かすみちゃんのみんなも手伝ってくれるんだよね？」

増殖かすみ軍団「「はーい！」」ﾜｰﾜｰ

侑「すごい、増殖かすみちゃんたち、めちゃくちゃやる気満々だね！」

果林「ライブ対決ね……まあ、こうなったら見届けるしかないわね」

しずく「かすみさんのためにも、急ぎましょう！」

歩夢「これだけ人手が居ればなんとかなるかな？」

増殖かすみ軍団「「がんばりますよー！」」ﾄﾞﾀﾄﾞﾀ

愛「じゃあまた何チームかに別れて会場作りとか宣伝とかやっていこっか！」

璃奈「うん」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

かすみ（19号）「会場はどこに作るの？」

しずく「中庭が広くていいかもしれませんね」

かすみ（44号）「しず子が言うなら間違いないね！　じゃあ準備しよー！」

かすみ（13号）「手の空いてそうなかすみん集めてくるね！」ﾄﾞﾀﾄﾞﾀ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

璃奈「せっかくだから使える音響機材を全部動員して、完璧なサウンドを用意する」

ミア「ボクが音の調整もバッチリにしてやるよ」

かすみ（81号）「う～ん、このケーブルはどこに繋ぐんだっけ～？」

ミア「違う違う！ そこじゃないってば！」

愛「おーい、こっちにあるライトも運ぶよ～！ 誰か手伝って～！」

かすみ（53号）「かすみんにおまかせですよ！」ﾀﾀﾀｯ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

かすみ（32号）「あれれ？　この飾りはどこにつければいいんですか？」ｱｾｱｾ

果林「この装飾はこうやって吊るすのよ。ほら、丁寧にね」ｶﾁｬｶﾁｬ

かすみ（32号）「はーい！ さっすが果林先輩、教え方もエレガントですぅ～！」ｶﾁｬｶﾁｬ

果林「ふふっ、そうでしょ？ でも、あなたけっこう手先が器用ね。なかなかいい仕事してるじゃない」

かすみ（32号）「えへへ、果林先輩に褒められちゃった！」

かすみ（36号）「いいなー！　私もやる！」ｶﾁｬｶﾁｬ

果林（この子たち、少しおバカなところもあるけど、一生懸命で可愛いわね……）

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

愛「ほいっと、この照明はここでいいかなー？」ﾄﾞｻｯ

かすみ（53号）「さすが愛先輩、運ぶの早いです！」

愛「いやいや、そんなことないよー。でもありがとね！」

しずく「愛さん、そちらはどうですか？」

愛「バッチリだよ！ ほら、かすかす軍団も一緒に運んでくれてるからね」

かすみ（19号）「かすみんです！」

かすみ（59号）「しず子ー！　一緒に作業するの楽しいね！」

しずく「うんうん、こうしてみんなで何かをするのって楽しいよね」

愛「ね！　かすかす軍団、最高っしょ！」

かすみ（19号）「かすみんたちは世界一可愛い軍団ですから！」

かすみ（40号）「ライブ終わったら何しよっか！」ｷｬｯｷｬ

しずく（ライブ終わったら、か……）

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
かすみ（91号）「ステージが出来上がってきましたね！　かすみんはお客さんの席ををもっと可愛くて華やかにしたいです！」

せつ菜「良いですね！　パイプ椅子では味気ないですからもっと飾り付けしましょう！ 華やかと言えばランジュさん、どうですか！？」

ランジュ「任せて！　はい、このリボンなんてどうかしら？」

かすみ（11号）「わぁ、キラキラですっごく可愛い！」

かすみ（91号）「大急ぎで客席につけちゃいましょう！」ﾄﾞﾀﾄﾞﾀ

エマ「みんな、転ばないように気を付けてね～」

かすみ（44号）「エマ先輩優しい～！」

かすみ（75号）「なんだか楽しいですぅ！」

せつ菜「はい。スクールアイドルのステージをみんなで作り上げる……この瞬間が私も大好きなんです！」

ランジュ「きゃあっ！ 私もどんどん楽しくなってきちゃった！」

エマ「ふふ、こうやってみんなで協力すると、一体感があって素敵だね～」

かすみ（11号）「かすみんたち、がんばりますよ！」

せつ菜（かすみさんたち、こんなに活き活きとして……もしかして、このままでもいいんじゃないかな、なんて思ってしまいますね）

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侑「よし、生徒みんなにわかりやすいように大きい看板をこの辺に立てよう……んしょ」ｷﾞｼｷﾞｼ

かすみ（21号）「あれ？ 侑せんぱーい！　大丈夫ですか？」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

侑「ちょ、ちょっと重いかも。ていうかあんな遠くからすごい速さで走ってきたね」

かすみ（21号）「先輩のピンチには駆けつけますよ！　ほら、かすみんが一緒に支えればバッチリです！」ｶﾞｼｯ

侑「わぁ、ありがとう！ かすみちゃんのおかげで助かったよ～」

かすみ（21号）「えへへ～」ﾃﾚﾃﾚ

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歩夢「じゃあ、このポスターはここの掲示板に貼るね。よいしょ……」ﾍﾟﾀﾍﾟﾀ

かすみ（43号）「じゃあかすみんはこっちに貼りますね！」ﾍﾟﾀﾍﾟﾀ

歩夢「ありがとう。みんな一生懸命だから、私も頑張らなくちゃね」

かすみ（43号）「歩夢先輩も一生懸命で素敵ですよぉ！　だから侑先輩も好きなんですね～」

歩夢「えっ！？ そ、そんなこと、あるかな！？//」ｶｧｧ

かすみ（43号）「あ、あっちに侑先輩がいますよ！」

侑「へぇ、21号ちゃんって走るのが得意なんだね！」

かすみ（21号）「そうですよ！ かすみんの魅力は可愛さだけじゃないんです！」

侑「いや～、見た目はかすみちゃんそっくりだけど、個性もあるんだね！　走るのが得意なかすみちゃんも可愛いYO！」

かすみ（21号）「えへへ、もっと褒めてください！」

侑「可愛い可愛い！」

ｷｬｯｷｬｯ……


歩夢「……侑ちゃん、楽しそうだなぁ」

かすみ（43号）「あれれ～？ 歩夢先輩、ちょっと嫉妬してますかー？」

歩夢「な、なに言ってるの！//」

かすみ（43号）「大丈夫です！　侑先輩はかすみんをかわいがってくれますけど、歩夢先輩のことすっごく大事に思ってますよ！　だから自信持ってください！」

歩夢「……ありがとう。なんか、私よりもしっかりしてるね」

かすみ（43号）「そうですかー？　ま、かすみんは部長ですから！」ｴｯﾍﾝ

歩夢「さあ、次の準備も頑張ろう。 みんな、よろしくね！」

増殖かすみ軍団「「よろしくお願いしまーす！」」

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璃奈「このアンプを接続して、ケーブルをここに……っと」

ミア「Hey, 良いセッティングじゃないか」

璃奈「ありがとう、ミアちゃん」

璃奈ちゃんボード『えっへん』

かすみ（13号）「うわぁ～、なんだか難しそうな機械ばっかり！」ﾎﾟｹｰ

かすみ（24号）「これを動かせば、かすみんたちの可愛い声が広ーい会場に響くんだよね？」ﾃｸﾃｸ

璃奈「うん、そう。みんなの声を届けるために、音のバランスを調整してるよ」

かすみ（39号）「すごいすごい！」ｷｬｯｷｬｯ

ミア「よし、こっちは大体準備できた。あとはテストだな……そこの子犬ちゃん！」

かすみ（13号）「子犬じゃなくてかすみん！」

ミア「ちょっとマイクを持って声を出してみて。音量バランスを確認するから」

かすみ（13号）「すぅー……プリティーキュートのかすみんです！！！」

ｷｨｰﾝ！　ﾋﾞﾋﾞﾋﾞｯ!

ミア「Wait! 音量が大きすぎる！ もう一回、今度は少し静かにね」

かすみ（13号）「プリティーキュートのかすみんです」ﾎﾞｿｯ

ミア「OK、良い感じ。問題なさそうだ」

かすみ（13号）「ありがとー！」

ｷｨｰﾝ……

璃奈「ミアちゃん、次はこっちのミキサーの設定を確認してほしい」

ミア「Roger」ｽﾀｽﾀ

かすみ（39号）「りな子、ありがとう」

璃奈「どうして？」ｷｮﾄﾝ

かすみ（39号）「だって、りな子が薬を作ってくれたから、私たちはこうして生まれたんだもん！」

かすみ（24号）「そうそう！　今のかすみんたちがいるのはりな子のおかげ！」

璃奈「……そう、なんだ」

かすみ（13号）「こうしてライブの準備ができるなんて最高だよ！　感謝してもしきれない！」

璃奈「……私も楽しい。ありがとう」

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ｸﾞﾂｸﾞﾂ

彼方「よーし、これで完成っと。今日のメニューは、彼方ちゃん特製カレーだよ～」

かすみ（51号）「わぁー！ いい匂い！」ﾋﾟｮｺｯ

かすみ（37号）「いただきまーす！」ﾋｮｲｯ

彼方「ふふ、増殖かすみちゃん達が手伝ってくれたおかげでささっと出来たねー」

かすみ（51号）「美味しいです彼方先輩！」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

彼方「それ食べたら、他のみんなやお客さんにも振る舞うよー」

かすみ（37号）「はーい！」ﾑｼｬﾑｼｬ

彼方「あれ？　あっちのベンチに……」ﾃｸﾃｸ

かすみ（89号）「すー…すー…」ｺｯｸﾘｺｯｸﾘ

かすみ（22号）「ふわぁ……」ｽﾔｽﾔ

彼方「ふふ、気持ちよさそうにすやぴしてるね～」ﾆｺｯ

かすみ（22号）「っ！？　あっ……！」ﾋﾞｸｯ

彼方「あら、ごめんね。起こしちゃったかな？」

かすみ（89号）「あ、あの……かすみんたち、ちゃんとお仕事してなくて、怒ってますか……？」ｵﾛｵﾛ

彼方「大丈夫だよ～。たくさん遊んで、たくさん働いて、それで疲れちゃったんだよね？」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ

かすみ（22号）「……彼方せんぱぁい」ｼﾞｰﾝ

彼方「彼方ちゃんも、ちょっとすやぴしちゃおうかな～」ｽﾄﾝ

かすみ（89号）「じゃあ、かすみんも一緒に！」ｺﾃｯ

かすみ（22号）「かすみんも……もうちょっとだけ！」ﾋﾟﾄｯ

彼方「さあ、ひと眠りしたらまた元気に頑張ろうね～。彼方ちゃんの特製カレーも待ってるからね～……」ｽﾔﾋﾟ

増殖かすみたち「「はーい……」」ｳﾄｳﾄ

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侑「よし、準備完了！ みんな、お疲れさま！」

増殖かすみ軍団「「いえーい！」」ﾜｰﾜｰ

果林「ふふっ、こうしてみると、この子たちも立派にスクールアイドルよね」

歩夢「最初は本物のかすみちゃんの分身みたいに思ってたけど……ひとりひとりに個性があるのも感じます」

侑「だよね～。なんか、みんなと一緒に頑張ったから余計に愛着湧いちゃったな」

せつ菜「気持ちはよくわかりますが……今はとにかくライブに出る全てのかすみさん達を全力で応援しましょう！」

ランジュ「お客さんも入場したわ！　あとはライブが始まるのを待つだけね！」

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しずく「彼方さん！　起きてください！　ライブ始まっちゃいますよ！」ﾕｻﾕｻ

彼方「ふぁ～もうこんな時間？　あれ、一緒に寝てた増殖かすみちゃん達は？」

しずく「さあ……？　私がここに来た時には彼方さんがひとりで寝てましたけど」

彼方「もう会場に行ったのかな？　しずくちゃん、起こしてくれてありがとね～」


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舞台袖

栞子「それでは、準備が整いました。両者とも全力を尽くしてください」

栞子「オリジナルかすみさんが先行でパフォーマンスを行い、次に賢いかすみさんと数名のかすみさんによる増殖かすみさん軍団のパフォーマンスになります」

かすみ「本当に私が先行で良いの？」

かすみ（100号）「うん。オリジナルかすみんのライブ、楽しみにしてるよ」

かすみ「よく見ててよ！　かすみんの魅力で先に観客のみんなを虜にしちゃうもんね！」

ｻﾞﾜｻﾞﾜ

栞子「ご来場の皆様、お待たせしました。オリジナルかすみさんの入場です」

一般生徒「「きゃーーー！！」」ﾜｰ

増殖かすみ軍団「「おおおーー！」」ﾜｰﾜｰ

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ！

侑「なんかもう、増殖かすみちゃんたち普通に観客として馴染んでるね～」

エマ「ふふ、どのかすみちゃんも嬉しそう」

ミア「自分たちの存続がかかってるはずだっていうのに……」

歩夢「オリジナルのかすみちゃん、今頃どんな気持ちなんだろう……」

果林「……私達は余計なこと考えずに応援するべきよ。そうしないと対決するかすみちゃんたちに失礼だわ」

ランジュ「オリジナルのかすみには増殖かすみに負けない強烈な魅力を見せつけて欲しいわ！」

しずく「かすみさんならきっと大丈夫です！」

愛「あ、来るよ！」

ﾜｱｱｱｱｱｱｰ！ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ！

かすみ「みなさーん！　お待ちかねのかすみんですよ！」ﾀｯﾀｯﾀ

一般生徒「わーっ！ オリジナルかすみちゃんだー！」

一般生徒「本物が出たーっ！」

増殖かすみ（11号）「オリジナルかすみん頑張れー！」

増殖かすみ（23号）「かわいさ全開で魅了しちゃってー！」

かすみ「みんな、今日はありがとう！ このかすみんが、世界で一番可愛いってことを見せてあげるからね！」

ｳｵｵｵｵｵｵｵ！！

侑「すごい！ 観客のテンションが一気に上がったね！」

歩夢「かすみちゃん、すごく堂々としてる……！」

果林「ふふ……可愛さに圧倒されそうだわ」

せつ菜「かすみさんが輝いて見えます！」

かすみ「かすみんライブ、開幕ー！」

　　　　
♪♪♪

増殖かすみ軍団「「ヘイ！ラブ！カモンかすみん！」」

増殖かすみ軍団「「イェス！カモン！ハローかすみん！」」

～～～～～～♪♪♪

かすみ「～～～♪」

増殖かすみ軍団「「かすみんかわいいよーっ！」」ﾜｰﾜｰ

かすみ（可愛いってなんだろう……？ 本物の私だけが可愛いの？ 増殖かすみんたちがいたら、私の可愛さが薄れちゃう……？）

一般生徒「かすみちゃん最高ーっ！」

かすみ「～～～♪」

かすみ（違う……私の目指す可愛いってそういうんじゃない！）

かすみ「～～～♪」

かすみ（私は私が1番可愛いって信じる。それで十分なんだ！ これが私の可愛さ！ 私の目指すスクールアイドル！）

かすみ「はい！みなさん準備はいいですかー？」

増殖かすみ軍団「「いえーいっ！」」

かすみ「行きますよ、せーのっ！」

増殖かすみ軍団「「L・O・V・Eかすみん！」」

増殖かすみ軍団「「L・O・V・Eかすみん！！」」

増殖かすみ軍団「「L・O・V・Eかすみん！！！」」

増殖かすみ軍団「「L・O・V・Eかすみん！！！！」」

かすみ「合格♪」ｳｲﾝｸｯ

増殖かすみ軍団「「ふぅーーー！！」」

ﾜｧｧｧｧ！


侑「うわぁ、すごい！」

歩夢「かすみちゃんと増殖かすみちゃん、息ぴったり」


増殖かすみ軍団「「かすみん、世界一可愛いよー！」」ﾜｱｱｱｱｱ！

かすみ（100号）「……やっぱり可愛いな、かすみんは」

♪♪♪

かすみ「まったねー！」ﾀﾀｯ

ﾜｱｱｱｱｱｱ！　ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ！

かすみ「ふう、楽しかったー！」

栞子「お疲れ様です。見事なパフォーマンスでしたね、かすみさん」

かすみ「ありがとぉしお子！　でも疲れたぁ」ｾﾞｴｾﾞｴ

かすみ（100号)「最高だったよ、かすみん」

栞子「それでは、次は賢いかすみさん達の番。準備はよろしいですか？」

かすみ（100号)「……ごめんね」

かすみ「え？　なんで謝るの」

かすみ（100号)「永遠に効果が続く薬なんて、ないんだよね」

　　　
かすみ（63号）「かすみんのライブ楽しかったぁ……満足……」ｳﾄ

かすみ（19号）「……なんだか眠たくなっちゃった……」ｺﾃﾝ

かすみ（74号）「おやすみなさぁい……」ｽｩ…


侑「えっ！？ あの子、急に眠り始めた？」

エマ「あっ、あっちの子も……」

せつ菜「み、見てください！ 周りの増殖かすみさんたちが次々と……」

増殖かすみ軍団「「すやぁ……」」

ﾄﾞﾀﾊﾞﾀﾄﾞﾀ！

栞子「！　みなさん、どうしたんですか！？」

愛「しおってぃー大変だよ！　増殖かすかすがどんどん寝ちゃって……！」

侑「とりあえず一旦ライブは中止したほうが……！」

かすみ（100号）「みんな来てくれたんですね……これは、仕方のないことなんです」

かすみ「え……？」

かすみ（100号）「りな子の薬の効果は一時的なもの。私たちはいつか消えるってわかってたの」

かすみ「消えるって……どういうこと？」

璃奈「……成分逆転の薬を飲ませた時と同じように、肉体は消えてオリジナルのかすみちゃんに吸収される」

せつ菜「そ、そんな……」

かすみ（100号）「説明ありがと。りな子も薄々気がついてたけど黙ってくれてたんだよね」

璃奈「うん……ごめん」

かすみ(１００号)「謝ることないよ。私以外の増殖かすみんは多分気づいてなかったかし……それならせめて、みんなで最高の思い出を作りたかったんだ」

かすみ(１００号)「私の計算だと増殖かすみんはたくさんエネルギーを使えば疲れて眠くなって、寝てる間にオリジナルかすみんに吸収されて……怖い思いもしなくて済むから」

彼方「……なるほどねぇ。だから彼方ちゃんと一緒にすやぴした子たちが居なくなっちゃたんだね」

侑「それでライブ対決を提案したの……？」

かすみ（100号）「はい。ライブを思いっきり楽しんで、オリジナルかすみんに私たちの思いも全部託して吸収される。それが私たちにとって一番の幸せだと思ったんです」

かすみ「でも……そんなのずるいじゃん！ かし子！」

かすみ（100号）「かし子？」

かすみ「賢いかすみんだから、かし子！」

かすみ（100号）「……ふふ、ありがとう。やっぱりかすみんのネーミングセンスは天才的だね」

かすみ「ずるいよ……！　ライブ対決また終わってないのに逃げないでよ！」

かすみ（100号）「大丈夫。かすみんたち、居なくなるじゃないよ。あなたの中で、ずっと一緒に歌い続ける」

かすみ「でも……かすみん、増殖かすみんのこと、かし子のこと、せっかく好きになったのに……！」

かすみ（100号）「私たちも、かすみんのこと大好きだよ」



増殖かすみ軍団「「むにゃむにゃ……かすみん、ありがとう……大好き……」」ｽｩ…

ｼｭﾜﾜｧ……

一般生徒「あれ……？ 増殖かすみちゃんたちが……消えてる……？」



かすみ（100号）「さあ、私もそろそろお別れかな」

かすみ「待って！ もう少し……」

かすみ（100号）「ふふ、もう時間だよ。オリジナルかすみん、これからもかすみんの可愛さで、みんなを幸せにしていこうね！」

かすみ「かし子……うん、うん……！ 約束する……！　絶対に可愛いスクールアイドル続けるから！」

かすみ（100号）「それじゃ、最後にもう一度……かすみん、最高に可愛いよ」ｽｩ…

ｼｭﾜﾜ……

かすみ「……ありがとう。かすみん、これからも自分の可愛いを信じて、頑張るよ……」ｼﾞﾜｯ

かすみ「！！」ﾋﾞｸｯ

かすみ「エンッッ！！」ﾊﾞﾀｰﾝ

ランジュ「きゃぁ！？　かすみまで倒れたわ！」

璃奈「これは大丈夫。増殖かすみちゃん全員が吸収されて色々流れ込んできてショックで気絶しただけ。数時間で目を覚ますと思う」

歩夢「よ、良かったぁ」ﾎｯ

しずく「こうして、かすみさん増殖騒動は幕を閉じました」

しずく「かすみさんは、この後無事に目を覚ましましたが……増殖かすみさんと虹ヶ咲生徒の様々な交流（意味深）を思い出して顔を真っ赤にしていました」

しずく「可愛いですね」


かすみ「もーー！　かし子を吸収すればもっと勉強できると思ったのになんで変わらないの！」

璃奈「元は全員かすみちゃんなんだから仕方ない」

栞子「ですが最近のかすみさんはスクールアイドル活動も勉学も前より努力されていると思います」

かすみ「もっちろん！　だってもっともっと可愛くてプリティーキュートなったかすみんをいつか増殖かすみんたちに見てもらうんだから！」

璃奈「それまでには安全に増殖できるように薬を改良してみるね」

栞子「安全な増殖とは」


かすみ「ふふ、楽しみにしてるよ……かすみん」



おわり

以上です。読んでくださりありがとうございました！