3: 2009/01/31(土) 19:51:45.37 ID:ukxoPStw0
亀山「ああ、はい。ただいま…って、右京さん、ですよね?」
真紅「杉山君の目は節穴?私は何処からどう見てもうky…」

右京「やぁ、亀山君。少し遅れてしまいましたか」

右京「…おやおや」
真紅「これは大変なことになりそうですねぇ~、だわ」
亀山「(右京さんが、二人!?)」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
5: 2009/01/31(土) 20:01:28.48 ID:ukxoPStw0
右京「つまり、真紅さんは『薔薇乙女』であり、私と契約を結ぶためにここまで来た。
そういう事と取って、間違いありませんか?」
真紅「ええ、多少細かい違いはあるかもしれませんが。
それよりも亀山君、紅茶を早く入れてもらえると助かるのですが…だわ」
亀山「は、はい」  タッタッタッ

亀山「何で右京さん、自分が二人居るのに平気なんだ?」

右京「…どうやら、亀山君には私たちが同一人物に見えているみたいですねぇ~」
真紅「彼の性格上、この状況では長く持たないかもしれません」
右京・真紅「さて、どうしたものでしょう」



6: 2009/01/31(土) 20:08:37.66 ID:ukxoPStw0

亀山「紅茶入れましたよ」
真紅「有難う御座います、どうですか?亀山君もご一緒に」
亀山「いや、その」
右京「コーヒーの方がよろしければ、こちらに少し残っていますよ」
亀山「は、はぁ」
亀山「(おかしい、絶対におかしい)」
右京「さて、真紅さん。一息ついたところで、少しお話を伺いたいのですが」
真紅「ご随意にどうぞ」
右京「先ほどお話いただいた『薔薇乙女』………恥ずかしながら聞いたことがありません。
こちらについて詳しくご説明いただいても構いませんか?」
真紅「えぇ、構いません。何処から話しましょうか」

9: 2009/01/31(土) 20:21:51.44 ID:ukxoPStw0
真紅「私たちは姉妹として父であり稀代の人形制作者であるローゼンの手によって作られた、所謂幻の人形です。
自立思考をし、人語を解し、喜怒哀楽を表現できる。
そういった通常の人形とは一線を隔した人形、『薔薇乙女』。
それが私たち、私と、残りの姉妹。
ここまではご理解いただけますか?」

亀山「(駄目だ、ぜんぜんわからねぇ)」
右京「ええ、それでは契約というのは?」
真紅「こちらは少し…血なまぐさい話になってしまうかも知れないのだわ」
亀山「(だわ!?あの右京さんが、だわ!?)」
右京「ご心配なさらず。我々二人は、そういった血生臭い事に日常的に関わっていますので」
亀山「(こっちの右京さんは普通なんだな)」

真紅「契約というのは、薔薇乙女の宿命…といっても、良いかも、しれません」
右京「宿命…ですか」
真紅「はいぃ。宿命。
先ほどお話したように私には…薔薇乙女には姉妹が存在します。
えぇ~、長女から末娘まで数えれば六人、もしくは七人」
亀山「もしくは、っていうのは?」
真紅「はっきりしないのです。私を含む姉妹たちは触れ合うことがほとんど無い。
つまり自分より後に生まれた姉妹のことを知る機会は…ほぼ無いといっても、いい程でしょう」
亀山「はぁ…」

10: 2009/01/31(土) 20:32:50.60 ID:ukxoPStw0
右京「解せませんねぇ」
真紅「はいぃ?」
右京「姉妹が存在するということと契約をしなければならないという事。
どのような関係があるのでしょうか」
真紅「…」

亀山「…あの、右京さん?」
真紅・右京「はいぃ?」
亀山「いや、赤いほうの右京さん」
真紅「おやおや、私のほうですか。えぇ~、どうしました?亀山君」
亀山「自分も聞きたいことがあるんですけど、良いですか?」
真紅「どうぞどうぞ。お聞きになってください」
亀山「今、赤右京さんは『姉妹を知る機会はほぼ無い』って言いましたけど…
じゃあ何で赤右京さんは妹が存在することを知ってるんですか?」

真紅「お二方の質問、順序が逆になりますがぁ、まずは亀山君の質問から答えさせていただいても、構いませんか?」
右京「ええ、お任せします」
真紅「私たち薔薇乙女が巡り合う可能性はほぼゼロに近い。
なぜかというと、私たちは姉妹が世界の何処に居るのかを知ることができないからです」

亀山「じゃあ、知ることなんてできないんじゃあ…」
真紅「ところが、もし、もしですよ、亀山君。
『お互いがお互いの事を探しあっている』としたら、出会う確立はどうなりますか?」
亀山「出会う確立は…若干ですが上がります、かね?」
真紅「ええ、ご名答です」

13: 2009/01/31(土) 20:43:52.94 ID:ukxoPStw0
右京「つまり、お互いに出会う確率を上げるために契約者を探している、ということですか?」
真紅「残念ですが、その考えは間違っています」
亀山「(右京さんに間違いを指摘する右京さん……頭痛くなってきた)」

真紅「私たちはnのフィールド、という世界を通せば世界の何処に居ようと姉妹に会うことは可能なのです」
右京「それでは、なぜ、契約者を?」
真紅「それは、姉妹に対抗するためです」
右京・亀山「?」
真紅「ピンと来ない言い方をしてしまったかも知れません。
言い換えるなら、そう、姉妹を倒すために寄り代となる人間と契約する。
そう言うことです」
右京「姉妹を倒す…ですか」
真紅「ええ、そうです。
私たちを作ったローゼンはかつて出来上がった私たちにこう言いました。
『完璧な乙女になるために、ほかの姉妹からローザミスティカを奪え』と」
亀山「ローザミスティカ?」
真紅「私たちの、心臓というべきでしょうか」
右京・亀山「!?」

真紅「黙っていたのですが、私は薔薇の花びらを操ることができます。
しかし、無条件にと言うことではありません」
右京「人間の協力が必要、といったところでしょうか」
真紅「話が早くて助かります。私たちはそのために契約者を探すのです」
亀山「で、でも、なんで赤右京さんは右京さんを選んだんですか?」
真紅「呼びかけにこたえたのが、右京さんだったからです」
右京「呼びかけ、ですか」

16: 2009/01/31(土) 20:52:04.57 ID:ukxoPStw0
亀山「呼びかけ…答えたんですか?」
右京「覚えはありません」
真紅「右京さん、あなたは先日送られてきた手紙に『巻きます』と答えましたね?」
右京「ええ、確かに」
亀山「なんでそう答えたんですか?」
右京「巻くか、巻かないか。この二択なら、巻かざるをえません」
亀山「そうですか」

真紅「そこで、契約は終了という形になりました。
契約終了の証に…左手を見てみてください」
右京「…これはこれは」
亀山「左手の薬指に…エンゲージリングですか?」
右京「朝起きたら付いていたので不思議に思っていたんですが。
なるほど、ようやく腑に落ちました」
亀山「…」
右京「それであなたは私に力を貸してもらうために会いに来た、と」
真紅「ええ、そう言うことになりますね」
右京「そうですか、では」

右京「拒否させていただきます」



19: 2009/01/31(土) 21:01:36.05 ID:ukxoPStw0
真紅「拒否…ですか?」
右京「ええ、拒否させていただけませんか?」

右京「私は警察官。どんな形であろうと人を傷つけるのに手を貸すわけには行きません」
亀山「右京さん…」
右京「というわけなので、この指輪。返還できないでしょうか?」
真紅「これは手厳しい。しかしそれはできない相談なのです」
右京「ほう」
亀山「な、何でですか、赤右京さん!」
真紅「亀山君、左手薬指にはめる指輪の意味を知っていますか?」
亀山「左手薬指…エンゲージリングですよね」
真紅「そう、『受け取ったものと生涯添い遂げる』という意味を持っています」
右京「そういうこと、ですか」

真紅「しかし」
亀山「?」
真紅「やはり右京さんは当たりだったようです」
右京「はい?」
真紅「私は…姉妹と争う気などありません」
亀山「…それじゃあ、どうして?」
真紅「『どうして契約したのか?』」
右京「まさにそれです」
真紅「それは、私の手助けをしていただきたいと思ったからです」
亀山「…どういう意味ですか」
右京「…わかりました、力を貸しましょう」
真紅「本当に話が早くて助かります」
亀山「えっ!?な、なんで?」

20: 2009/01/31(土) 21:12:42.01 ID:ukxoPStw0
真紅「おや、九時をまわってしまったようですね。
私は少し仮眠をとらせていただくとしましょう」
右京「お疲れ様です」

亀山「あのー、右京さん?」
右京「どうしました?」
亀山「手を貸す、って、どういう意味なんすか?」
右京「貴方は、まだ分からないのですか」
右京「彼女は私に『姉妹たちに争いをやめさせる為に力を貸してほしい』と言ったんです」
亀山「え、そうなんですか?」
右京「それ以外に、どういった受け取り方ができたのでしょうか?」
亀山「はぁ」
右京「争いを未然に防ぐために尽力する。警察官として当然のことでしょう」
亀山「そう、ですね」
右京「とりあえず私は彼女が起き次第、詳しい話を聞かせて貰います。
亀山君は…」
亀山「ちょっとちょっとちょっと待ってください!」
右京「?」
亀山「『彼女』なんですか?赤右京さんって」
右京「…私には赤いドレスを纏った小さな少女にしか見えませんが?」
亀山「(…俺には赤いドレスを着た右京さんにしか見えないんだがなぁ)…そうですよね」
右京「それでは、亀山君はもう帰ってくれても結構です」
亀山「は、はぁ。失礼します…」
右京「えぇ、また明日」

23: 2009/01/31(土) 21:33:32.36 ID:ukxoPStw0
時間軸がおかしいことに気が付いた。
時間軸の問題は後に合わせる形で行く。

翌朝

  タッタッタッタッタッ
亀山「右京さん!!」
右京・真紅「お早う御座います。亀山君」
亀山「あ、ああ、赤右京さんも、おはようございます」
右京・真紅「お急ぎのようでしたが、何か有ったんですか?」
亀山「ええ、昨日うちに帰ったら…うちにも」

カナ「離すのかしら、カナは自分で歩けるのかしら!!」
亀山「このとおりで」
右京・真紅「おやおや、お早う御座います。金糸雀さん」
カナ「その声は真紅かしら!!早くカメちゃんに離すように行ってほしいかしら!!」
右京・真紅「亀山君、離して差し上げなさい」
亀山「あ、ああ、はい」
   ポイッ    <イタイカシラッ!?

真紅「大丈夫ですか?金糸雀さん」
右京「お初にお目にかかります。杉下右京です」
カナ「うう~、カメちゃん酷いのかしらぁ…
頭も打っちゃったし、すごいスピードで走るから、真紅がまだ二人にぶれて見えるかしら…」
真紅・右京「おやおや、それはそれは。亀山君、少しやり過ぎですよ」
亀山「あ、はぁ、スンマセン」

24: 2009/01/31(土) 21:42:35.49 ID:ukxoPStw0
カナ「まったくぅ、カナの頭はカメちゃんと違って壊れやすいの!!
もうちょっと丁寧に扱ってほしいかしら!!」
亀山「ああ、ごめんな」
カナ「わかればいいかしら。そして真紅。久しぶり、かし、らぁ!?」
右京・真紅「どうかしましたか?金糸雀さん」
カナ「…カメちゃん。カナ、どうやら、思いっきり頭を打ったみたいかしら」
亀山「どうしたんだよ、急に」
カナ「真紅が、二人いる…かしら」
右京・真紅「おやおや、これはこれは」

カナ「つまり、スーツを着た真紅が右京さんで」
右京「はい」
カナ「普通の真紅が真紅」
真紅「ご名答です」
カナ「…うー、めんどくさいかしら」
亀山「金糸雀なんてまだ良いだろ、俺なんて両方右京さんだぞ!?」
右京・真紅「どこか問題点でも?」
亀山「いえ、なんにも」

右京「まさか、亀山君のところにも同じように届いていたとは」
真紅「いやはや、運命とは恐ろしいものです」
亀山「右京さん、動じてませんね」
右京「今朝、真紅さんが起きたときに一応、ほかの姉妹のことも聞いておいたのです」
真紅「まさか、金糸雀さんからとは思いませんでしたが…」
カナ「天才は、忘れたころにやってくるのかしら!!」

25: 2009/01/31(土) 21:52:15.11 ID:RAvesyyFO
伊丹と米沢さんのとこにも来てそう

26: 2009/01/31(土) 21:52:50.75 ID:ukxoPStw0
右京「そういえば亀山君、昨日の件ですが…」
亀山「昨日の…」
右京「大豪邸に住む老人の変氏事件」
亀山「あぁ、はい!あれですね!!」
真紅「おやおや、何か血生臭い話になってきましたね」
カナ「変氏事件…カメちゃんもしかして警察官だったのかしら?」
亀山「ああ、そうだ」
カナ「すごいのかしら!!
カメちゃんの頭で入れるなんてこの国の警察、凄過ぎかしら!!」
亀山「…」
右京「いいですか?」
亀山「はい」

右京「事件が手掛かりすら見つからない状態です。
そして、私たちも現場に向かうようにとの指示が来ました」
亀山「ここからそう遠くない…あの丘の上の『薔薇屋敷』でしたっけ?」
右京「ええ、そうです。すぐに向かうようにとの事なので、急ぎましょう」
亀山「了解です。金糸雀、おとなしくしてろよ」
カナ「任せるかしら!!」
右京「真紅さん、誰かが来た場合、応対せずに隠れておいてください」
真紅「了解しました」
右京「では、行きましょう、亀山君」
亀山「はい!!」

29: 2009/01/31(土) 22:09:45.74 ID:ukxoPStw0
亀山「ここですか」
右京「ええ、ここでしょう。しかし…」
   フラワァッ
右京「噂では耳にしていましたが、すごい量の薔薇ですね」
亀山「ああ、なんていうか、ここまで多いと目が回りそうっていうか」
右京「多いだけではありません。どの花も、すべて管理が行き届いている。
およそ老人一人で行える範囲ではありません」
亀山「害者、老年で一人暮らし、でしたっけ?」
右京「はい、そうです。そして、これも推測の域を出ませんが」
亀山「はい?」
右京「おそらくこの事件。薔薇乙女が関わっています」
亀山「はい!?」
右京「詳しいことは中で話します、行きましょう」

亀山「で、どうして薔薇乙女が?」
右京「まずは被害現場に着くことが先決。見れば亀山君でも気づくかもしれませんし」

亀山「ここ、ですか」
右京「はい」
亀山「酷い有様ですね。鏡が割られてるし、ボロボロの木片がたくさん散らばってる」
右京「さて、亀山君。これで分かったでしょう?」
亀山「…?」
右京「この事件に薔薇乙女が関わっている、ということがです」
亀山「…」

30: 2009/01/31(土) 22:24:16.87 ID:ukxoPStw0
(カメちゃんと右京さん以外話し方が微妙なんで今回はパスです)

右京「鏡ですよ」
亀山「鏡?鏡が割られている、っていうのが薔薇乙女と?」
右京「関係しているのですよ」
亀山「…すみません、まったく話が読めないんですが」

右京「昨日、真紅さんがnのフィールドという話をしていたのを覚えていますか?」
亀山「ああ、っと、姉妹の下に行ける…『どこでもドア』みたいな奴でしたっけ?」
右京「その通りです。では、亀山君。nのフィールドは何処にあるか、ご存知ですか?」
亀山「えぇ!?…うーん、あ!人間の力を使って普通のドアをそれに変えるとか?」
右京「違います、nのフィールドは生命の欠片を持つものから入れるんです。
ここまで話せば分かりましたか?」
亀山「…つまり、この鏡がnのフィールドの入り口に成り得るものだった」
右京「その通りです」

右京「ここまで聞けばお気づきでしょう、あの木の欠片が何なのか」
亀山「…まさか、薔薇乙女、なんすか?」
右京「少なくとも私は、そうではないのかと睨んでいます」

亀山「右京さん、俺、帰ります!!」
右京「いきなりどうしたんですか?」
亀山「悪い予感がする…もしこの考えが当たってたら、二人が危ないんです!!」
右京「ほう」
亀山「…あの」
右京「止めません、ほかの刑事には忘れ物を取りに行った、と言っておきます」
亀山「はい!!」

31: 2009/01/31(土) 22:38:57.14 ID:ukxoPStw0
――その頃 ドールズ

カナ「つまり、真紅は今回アリスゲームには乗らない、と」
真紅「そう言うことになるのだわ」
カナ「そう、それはいいことかしら」  ソーッ
真紅「…」  パチン
カナ「うー…酷いかしら…」
真紅「これは私のクッキーよ、欲しければ一言言うべきじゃないの?」
カナ「…お姉ちゃんにも一つ分けて欲しいかしら」
真紅「ひとつでいいの?」
カナ「じゃあ、じゃあ、一緒に食べても良いかしら?」
真紅「どうぞ」

コンコン

真紅「!?」
カナ「それじゃあ、いただきますかしらー」
真紅「隠れるのだわ!!」カナ「うへぇ!?」  ガチャ
    ドスン  <ウゥ…
米沢「…」キョロキョロ
        <イタイカシラ!! アウッ!!
米沢「…女の子の声?」  シーン
米沢「…居るわけないか」  バタン
真紅「…どうやら行ったみたいね」  ピョコ
カナ「うぅ…いきなり叩かないで欲しいかしら!!」
真紅「ごめんなさい、右京さんとの約束があったからすこし過剰になってしまったかもしれないわ」
カナ「また頭打っちゃったかしら…」
  カタカタカタカタ
真紅「(コーヒーメーカーが揺れてる?)…!!」
真紅「金糸雀、隠れて!!」カナ「ひぎゃぁ!?」

32: 2009/01/31(土) 22:51:12.37 ID:ukxoPStw0
??「よいしょっと」

 トタン コツッコツッ

真紅・カナ「」
??「…間違った?」
カナ「(真紅、誰かしら?)」
真紅「(ちょうど陰になっていて見えないのだわ)」
カナ「(声は?)」
真紅「(もう何年もあってないのよ、覚えてないわ)」
??「……仕方ない、次を当たろう」
カナ「(行っちゃうのかしら!!このままでいいの、真紅!?)」
真紅「(ここには私の契約者もあなたの契約者も居ない。圧倒的に不利だわ!)」
カナ「(それは向こうだって一緒かしら!!)」
真紅「(お馬鹿ナリア!!nのフィールドに居ないっていう保証はないでしょう!?)」
??「…?」
カナ「(こっちに来てるのかしら!!)」
真紅「(くっ…)」
??「今確かにこっちから声が…」
   タッタッタッタッタッ
亀山「大丈夫か!?」  ガチャン
??「!?」
亀山「おい、お前誰だ!!」
??「…くっ!!」  ヒュン
亀山「おい!!クソ、消えた…」

33: 2009/01/31(土) 23:01:40.02 ID:ukxoPStw0
真紅「お帰りなさい、亀山君。早かったですね」
亀山「右京さん…じゃなくて、真紅さん。無事でしたか?」
真紅「ええ、なんとか」
亀山「そ、そうだ!!金糸雀は!?」
カナ「カメちゃん!!怖かったかしら~~!!」
亀山「…間一髪か?」
真紅「ええ、まさにその通りです」

亀山「ただいま帰りました」
右京「お帰りなさい、亀山君。早かったですね」
亀山「(…デジャヴ?)」
右京「ところで、どうでしたか?」
亀山「あ、ああ。間一髪間に合いました」
右京「それはよかった。もしかしたら、鞄が空っぽなんじゃあないかとも思いましてね」
亀山「…」

***
亀山「ほ、本当に真紅さん、この鞄の中には入れるんですか?」
真紅「ええ、いつもこの中で寝ていますし」
  ゴキッボキッメキメキミシミシ
亀山「(折れる、あれは絶対折れる!!)」
***

亀山「空っぽのほうがよかったかもしれません」
右京「はい?」
亀山「…いや、何にも」

35: 2009/01/31(土) 23:16:33.84 ID:ukxoPStw0
カナ「ここが、現場かしら?」
真紅「とても荒れていますねぇ」
右京「どうですか?真紅さん」
真紅「ええ、仰った通り。十中八九この鏡はnのフィールドの入り口でしょう」
亀山「…」
カナ「カメちゃん、どうかしたのかしら?」
亀山「犯人が居たのに、目の前で…」
右京「…仕方ありません。追いつけただけでも良しとしましょう」
真紅「右京さんの言うとおりです。あのままならばきっと私たちは氏んでいました」
カナ「そ、そうかしら!!カメちゃんはカナたちの命の恩人かしら!!」
亀山「…」

右京「ところで亀山君」
亀山「はい?」
右京「見たんですよね、犯人を。…どんな感じの人形でしたか?」
亀山「えっと、顔はよく見えなかったんですけど…
黒い服、袖が白くて…ひらひらが付いた服でした」
真紅「頭には何かつけていませんでしたか?」
亀山「ああ、ああ。なんていうんですかね。真紅さんがつけてたのに似てました」
真紅「なるほど。と言うことは」
カナ「水銀燈、かしら!」

37: 2009/01/31(土) 23:24:49.59 ID:ukxoPStw0
(見てる人居たのかよ)

右京「犯人が分かりましたか?」
真紅「ええ、きっと」
右京「ならば、帰りましょうか」
亀山「え、何でですか!?」
右京「向こうが襲ってきた、ということは我々の部屋にnのフィールドがあると言うことでしょう。
そして、犯人が薔薇乙女であるのなら、nのフィールドから追跡が可能なはずです」
真紅「なるほど、一理ありますね」
カナ「う、右京さん凄いのかしら…」
右京「善は急げ、次の被害者が出る前に犯人を止めて見せますよ!」
亀山・真紅・カナ「はい!!」

亀山「このコーヒーメーカーです」
右京「これ、ですか」
真紅「ええ、確かにこれから出てきました」
右京「どうですか、真紅さん。何とかなりそうですか?」
真紅「…大丈夫です。このまま」
   コンコン!!
カナ「誰か来たかしら!!」
右京・真紅「これはまずいですね」
   コンコン、コンコン!! ガチャガチャ
亀山「右京さん、先に行っててください!!」
右京「…分かりました。真紅さん、行きましょう」
真紅「了解です。行きましょう金糸雀さん」
カナ「カメちゃん!!」

38: 2009/01/31(土) 23:33:57.93 ID:ukxoPStw0
右京「ここですか」
真紅「…久しぶりに入ったけれど、やはり、居心地のいい場所ではありませんね」
右京「さて、これからどうすれば」
カナ「このお馬鹿!!」  ペシッ
真紅「…いきなり何をなさるのかと思ったら」
カナ「カメちゃんが居なかったらカナただの足手まといかしら!!」
真紅「…」
右京「…」
カナ「な、何でそこで黙るのかしら?」
右京「確かに、残るのならば私のほうが良かったかもしれませんね」
真紅「何故、そのようなことを?」
右京「亀山君は犯人を見ています。彼が居れば、無駄な争いもなかったでしょう」
カナ「カメちゃん…カナ、がんばるかしら」

――一方 亀山

  ガチャ
米沢「…なんだ、居るんじゃないですか」
亀山「あ、ああ。どうした?」
米沢「今度の事件で、面白いものが見つかったんで、役に立つかなと思って」
亀山「どれどれ?」

亀山「服の切れ端?」
米沢「ええ。しかもこれ調査の結果、百年以上着られている物じゃないかって」
亀山「…にしては色が鮮やかだな」
米沢「そこなんですよ。百年経ってるのに、こんなに綺麗な緑のまま。どうですか?」
亀山「…」

39: 2009/01/31(土) 23:46:11.07 ID:ukxoPStw0
真紅・カナ「!!」
右京「どうかしましたか?」
真紅「ええ、どうやら…」
カナ「向こうで誰かが戦ってるのかしら」
右京「…場所は分かりますか?」
真紅「大丈夫。案内できるのだわ」
右京「それは頼もしい。さぁ、行きましょう」

??「ハッ!!」  シュバン!!
??「ふふふ………あら」
カナ「ここかしら!」
右京「あの二人が…」
真紅「水銀燈、蒼星石!!」
銀様「あら、久しぶりねぇ、真紅に金糸雀」  フワーー
蒼星「はあっ!!!」  シャビン!!
銀様「まさか、こんなに早くアリスになれるなんて思わなかったわぁ!!」
   バシィ
蒼星「うあっ!!」  ドスン
カナ「蒼星石!今行くかしら!!」
   トストストスッ
カナ「うひゃあ!!あ、足元に羽が…」
銀様「あら惜しい、外しちゃったわぁ。雛苺はこれだけでよかったんだけどねぇ」
真紅「貴方…雛苺まで…」  ギリ
銀様「貴方たちは下がってなさい。蒼星石を倒した後、遊んであげるわぁ」

40: 2009/01/31(土) 23:56:27.02 ID:ukxoPStw0
右京「そこまで!!」
銀様・蒼星「?」
右京「お楽しみのところ大変申し訳ありませんが、こちらの話を聞いていただきたい」
銀様「…何者なの、貴方」
右京「これはこれは、自己紹介が遅れました。
私の名前は杉下右京。警視庁特命係の杉下です」
蒼星「!!」
右京「先日、とある場所で老人が殺されました。
老人は独り身で、加害者になりうる人物は彼の周りには居ませんでした」
銀様「…だからぁ?」
蒼星「それが僕たちに何の関係があるのかな?」
右京「私は貴方たちのうちの片方が、その犯人であると睨んでいます」

右京「蒼星石さん、貴方ですよね。薔薇屋敷のご老公を頃したのは」

真紅・カナ「!?」
カナ「ど、どういうことかしら!?」
真紅「右京さん、間違えてるのだわ!犯人は…」
右京「いえ、間違いではありません。犯人は彼女です」

41: 2009/02/01(日) 00:08:56.23 ID:NIiERh7g0
蒼星「…下手な冗談はやめて欲しいね。何の証拠があって…」
銀様「面白いじゃない。まさか貴方、ドールじゃなくて人間を頃してきたの?」
カナ「右京さん、忘れたのかしら!?カメちゃんは確かに水銀燈を見たって…」
右京「彼は、名前を言ってはいません。服装、そして装飾について話しただけです」
真紅「でも、よく思い出して欲しいのだわ。亀山君は確かにヘッドドレスのようなものを被ってたって…」
右京「確かに、彼は真紅さんのような物を頭につけていた、と言いました。
しかしそれだけ。彼がもし水銀燈さんを見ていたのならこう言う筈です。
『服と同じ、真っ黒なひらひらしたものだった』と」
カナ「で、でも、だったら蒼星はもっと違うかしら!!
あれは帽子。いくらカメちゃんがお馬鹿だからって、間違う訳ないかしら!!」
右京「ええ、確かに。いくら亀山君だって見間違えないでしょう。
そのときに本当に帽子を被っていたのなら」
真紅・カナ・蒼星「!!?」

右京「話を薔薇屋敷に戻しましょう。
薔薇屋敷の薔薇は、とても手入れが行き届いていた。それはもう、惚れ惚れするほど。
老人にはあそこまでの手入れは無理でしょう。」
蒼星「…だから?」
右京「はい?」
蒼星「だから僕だ、なんて的外れすぎませんか?」
カナ「た、確かにそうかしら!!」
右京「ええ、もちろんそれだけな筈がありません」

42: 2009/02/01(日) 00:17:03.70 ID:NIiERh7g0
トリック思考中です。
しばしお待ちを

46: 2009/02/01(日) 00:34:10.64 ID:NIiERh7g0
右京「薔薇屋敷に手入れをする人物が居た。これは容易に分かります。
が、それが貴方と言うのは突飛過ぎる」
ドールズ「…」
右京「ただ、こういうことならどうでしょう」
右京「貴方があの家に居たという証拠があった」
蒼星「…」
右京「亀山君を待っているときに、家の中で見つけたものですが」
右京「これに、見覚えは?」
蒼星「…!!」
カナ「右京さん、それ…」
銀様「髪の毛ぇ?それがなんなの?」
蒼星「…ちゃんと片付けた筈なのに…な!!」  ダッ!!
右京「!!」
蒼星「たぁああッ!!!」  シュバン
   フラワァッ!!!!
蒼星「くっ!?」
真紅「やれやれだわ。人間を攻撃しようなんてアリス候補のすることじゃないわ、金糸雀!!」
カナ「任せるかしら!!」  ~~~♪
右京「さて、蒼星石さんの足が止まったところで、話を続けさせていただきましょう。
貴方はきちんと掃除をしたと言いましたねぇ。なにを?きっと姉である翠星石さんの遺骸をです。
そして、ご老公をきっとこんな感じで鏡の前まで呼んだ。
『翠星石が何処かに行ったまま帰ってこない』
不審に思ったご老公はきっとnのフィールドを開くように言うでしょう。
そこからはきっとこんな流れです。
ご老公の気を自分から逸らす為に前もって頃しておいた翠星石さんの氏骸を…
きっとnのフィールドからでしょうねぇ、ご老公の目の前に出した。
もちろんご老公は不意を突かれ、立ち尽くす。その瞬間を貴方は見逃すはずがない。
後ろからご老公の急所を一突きし、そのまま姉の遺骸を抱えて鏡の中に入った」

47: 2009/02/01(日) 00:47:32.53 ID:NIiERh7g0
右京「しかしここで貴方は二つの過ちを犯しました。
ひとつは翠星石さんの氏骸を『頃したままの状態で』取り出したこと。
この髪がなければ私は貴方を疑おうなんて思いもしませんでした。
もうひとつは、ご老公に止めを刺さなかったこと。
貴方がフィールドに消えた後、ご老公は最後の力を振り絞りある行動に出たのです。
真紅「鏡の、破壊…」
右京「そうです。ご老公は最後の力を振り絞って鏡を破壊した。
なぜか?これは今となっては分かりません。
ご老公は翠星石さんの氏骸から落ちた彼女の破片に気づいていたのかもしれません。
貴方をこれ以上家に侵入させたくなかっただけかも知れない。
ただ、結果として、このように重要な結果を残すことになった」

右京「そして、亀山君の言っていた人物像。これも彼女が犯人ならしっくり来る」
カナ「どういうこと、かしらぁ!?」~~~♪
右京「もし、帽子や黒いヘッドドレスならば亀山君は証言できた。
しかし彼は言葉を濁しました。何故でしょう?
きっと、『自分の知らない、形容のし難い物』だったからです。
さて、水銀燈さん」
銀様「…なによぉ」
右京「すみません、手が空いているのが貴方だけのようなので。
貴方は翠星石さんの頭の飾りを見たことがありますか?」
銀様「えぇ」
右京「だんな感じの物だったか、教えていただけませんか?」
銀様「そうねぇ、なんていったら良いのかしら……あれ?」
右京「つまりこういうことです」

右京「今朝、真紅さんに聞いたところ同じ反応が返ってきました。
なんと言っていいのか分からない、と」

48: 2009/02/01(日) 00:59:40.98 ID:NIiERh7g0
蒼星「…」
右京「これは推測の域を超えませんが、貴方はきっと姉を頃した後、彼女の頭飾りをつけていた。
その状態で我々の部屋に来た。
何故か?もちろん『他のドールを頃すため』です。
姉の頭飾りを何故つけていたのか?きっと注意を頭に引くためでしょう。
一体ならその場で頃してしまえばいい。二体以上なら頭飾りを使って話をでっち上げ、一人ずつ殺せばいい。
そんな所じゃないですか?」
蒼星「…」
右京「しかし解せません」
右京「真紅さんから、貴方と翠星石さんはとても仲のいい双子だと聞きました。
何故、翠星石さんを…?」
ドールズ「…」
蒼星「…くだらない、そう思ったから。とでも言っておけばいいかい?」
カナ「なっ!?」
真紅「くだらない、ですって?」
右京「…」
蒼星「僕たちは、何年頃し合いを続けてきた?百年、いやもっとかもしれない。
うんざりだったんだよ。起きて、戦って、逃げて、眠って、そんな繰り返される僕らの日常が」
右京「…だから、貴方が壊したと?」
蒼星「だいたいそういう所かな。もう無駄になっちゃったけどね」
真紅・カナ・銀様「…」

49: 2009/02/01(日) 01:11:43.50 ID:NIiERh7g0
右京「さて」
蒼星「…」
右京「私には、貴方を警察に突き出すことはできません。
貴方が、人知を超えた存在だからです」
右京「ですから、判断を仰ぎたいと思います」
蒼星「…どういうこと?」

右京「ここにはちょうど奇数のドールが居ます。彼女たちに決めてもらえばいいでしょう」
ドールズ「…」
右京「どうでしょう?」

……

真紅「私は…」

真紅「私は蒼星石を許すべきではないと思うわ」
カナ「真紅…」
真紅「だから」

真紅「彼女を生かしたい」

蒼星「…へ?」
真紅「翠星石については貴方はルールに則った事をやったまで。咎められる筈がない。
氏んでしまった人間については…貴方が責任を取らなければならない」
蒼星「じゃあ…」
真紅「責任を取るといっても、右京さんの言ったとおり、私たちは人のほうでは裁けない。
ならどうすれば責任が取れるか?決まってるわ。氏んだ人の分まで生きて、氏んだ人の分まで働き続ける。
だから、私は貴方を生かす。貴方は罪を背負い、生きていく」
蒼星「…真紅」

50: 2009/02/01(日) 01:20:56.90 ID:NIiERh7g0
カナ「カナも…カナもそれで良い、かしら!!」
蒼星「金糸雀…」

右京「さて、水銀燈さん。貴方は…」
銀様「…多数決なんでしょう?じゃあもう決まってるじゃなぁい」
右京「…そうですか」
銀様「つまらないからもう帰るわぁ。それじゃあね」  バサッ
   バサッバサッ
蒼星「…」   ポロポロ
右京「さて、事件も解決しましたし、そろそろ帰りましょうか」
真紅「そうね、そろそろ紅茶が恋しいわ」
カナ「カメちゃんもきっと首を長くして待ってるかしら!」
蒼星「そうかい、じゃあ僕は…」
真紅「あら、何処に行こうとしてるの?」
蒼星「へ?」
カナ「蒼星石も一緒に来るかしら!!」
蒼星「…なんで?」
真紅「変な事を聞くのね、姉妹だからに決まってるじゃない」
蒼星「でも、僕は翠星石を…」
カナ「それはさっきもう聞いたかしら」
蒼星「じゃあ何で」
真紅「見張りよ」
蒼星「…?」
真紅「勝手に氏なれたら、償いにならないのだわ」
カナ「べ、別に寂しいわけじゃないかしらぁ~」
蒼星「…」
蒼星「…」  ゴシゴシ
蒼星「うん!!」

53: 2009/02/01(日) 01:35:26.46 ID:NIiERh7g0
真紅「外には…亀山君しか居ないのだわ」
右京「丁度よかったようですね」  ズイィ
亀山「あぁ、右京さん!!」
カナ「カメちゃあ~~~ん!!」  ギュッ
真紅「只今帰ってきました」
亀山「ああ、真紅さんもお帰りなさい。カナは急に飛びつくな!!」
蒼星「……」
亀山「あぁ!!犯人の坊主!!右京さん、何でコイツ…」
真紅「いけませんねぇ、女の子を坊主呼ばわりなんて」  ガスッガスッ
カナ「いくらカメちゃんでも、妹を坊主なんて呼ぶのは許さないかしら」 ゴスッゴスッ
蒼星「真紅、金糸雀…」
右京「亀山君」
亀山「は、はい」
右京「彼女が、老人頃しの犯人です」
亀山「…じゃあ」
右京「しかし、人形が自立意思を持って殺人を犯したといって、人々は信じるでしょうか?」
亀山「…そういうことですか」
右京「ええ、そういうことです。こういう時に、貴方が相棒でよかったと思いますよ」
亀山「恐縮です」

真紅「さて、久々にnのフィールドに入ると流石に疲れますねぇ」
カナ「カナもいっぱいバイオリン弾いて疲れたかしら…」
蒼星「……」
右京「私と蒼星石さんも、もうへとへとです」
亀山「よく分からないけど、お疲れ様です」
   ジーッ
亀山「…へ?」
右京・真紅「疲れていないのなら亀山君。紅茶を入れて来て下さい」

        ~fin~

56: 2009/02/01(日) 01:53:59.42 ID:DF5NkAnyO

引用: 杉下真紅「亀山君。紅茶を入れてちょうだい」