12: 2009/02/03(火) 15:50:09.71 ID:u2yVKtUh0
真紅「そうよ……ジュン。優しく、ね。乙女の髪はとても大事なものなのだから」

真紅はジュンに身体を預け、下ろした髪を梳かさせている。
穏やかな表情で、ジュンのなすままに任せている。

ジュン「ああ」

ジュンもまた穏やかな声で答え、丁寧に丁寧に、愛しいものを愛でるように、真紅の髪を梳く。

真紅「…………………」

ジュン「…………………」

穏やかな時間が、流れていく。
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
9: 2009/02/03(火) 15:43:49.40 ID:u2yVKtUh0
>>8
おっしゃまかせろ

16: 2009/02/03(火) 15:55:32.12 ID:u2yVKtUh0
水銀燈を倒し、また平穏な日常に戻ってから数日。
真紅とジュンは、お茶の時間の後にこうして静かな時間を共有するのが日課になっていた。

ジュン「…………………綺麗だよな」

真紅「私の髪、かしら?当たり前でしょう、私は気高き薔薇乙女なんですもの」

ジュン「………そうだな」

ジュンは、わずかに苦笑して話題を終える。

真紅「……………」

その反応に、真紅は感付く。

20: 2009/02/03(火) 15:59:43.15 ID:u2yVKtUh0
真紅「ねえ、ジュン」

ジュン「ん? なんだ?」

真紅「本当は今、何が『綺麗だ』って思ったのかしら?」

ジュン「………………」

ジュンが、言葉につまり目を逸らす。
それを見て、真紅は悪戯っぽい笑みを浮かべる。

真紅「私の髪? 本当に? ………ねえ、ジュン?」

22: 2009/02/03(火) 16:03:13.08 ID:u2yVKtUh0
ジュン「………あー……」

ジュンはどうやって話題を逸らそうかと、真紅から目を逸らしてひたすら考える。
だが真紅は逃がさない。

真紅「ねえ、ジュン」

身体を預けたまま、穏やかに問う。

真紅「……答えて?」

24: 2009/02/03(火) 16:09:03.36 ID:u2yVKtUh0
逃げるのは無理そうだと、ジュンは顔をしかめてうめく。

ジュン「………お前、分かってるならいいだろ」

真紅「あら……私は貴方に言ってほしいのよ」

やはり楽しむように聞いてくる真紅。

ジュン「…………………」

真紅「ふふ……」

ジュン「………………………ああ、くそ」

なかばやけになりながら、


ジュン「……そうだよ。真紅が綺麗だなって思ったよくそっ」


真紅「よく言えたわ。偉いわよ、ジュン……」

楽しそうに、真紅が笑う。

32: 2009/02/03(火) 16:20:04.12 ID:u2yVKtUh0
くすくすくす………

真紅は笑い、楽しそうだ。

ジュン「くそ………」

恥ずかしさを隠そうと、ジュンは不機嫌な顔をつくる。

ジュンの顔を見て、やはり真紅は楽しげに笑う。

真紅「いいじゃないの、ジュン。美しいものを美しいと思うのは、当然のことよ」

ジュン「……自分で言うか」

真紅「あら、淑女は自らを正しく理解しているものよ」

35: 2009/02/03(火) 16:26:56.55 ID:u2yVKtUh0
ジュン「淑女、ねえ………」

気恥ずかしさから、ジュンは皮肉を込めてつぶやく。

真紅「何かしら、ジュン。不満でもあるの?」

ジュン「淑女っていうのは膝の上で男に髪を梳かせるのか?」

真紅「いいのよ。私は淑女であると同時に、人形なのだもの」

ジュン「なんか屁理屈っぽ…」

真紅「屁理屈なんかじゃないわ。淑女が気を許した男性に櫛を預けるのも、
    人形が持ち主に抱かれるのも、正しいことではなくて?」

36: 2009/02/03(火) 16:31:15.19 ID:u2yVKtUh0
ジュン「………………は?」

真紅が当然のことのように言ったことに、ジュンはとっさに言葉を失う。

ジュン(……気を許した男性、……持ち主?)

なんだか真紅らしからぬ言葉に、ジュンは動揺する。

真紅「……私は何か、変なことを言ったかしら、ジュン」

穏やかに、真紅はジュンを見つめる。

39: 2009/02/03(火) 16:35:52.37 ID:u2yVKtUh0
ジュン(待て僕。何を動揺してる。別に真紅は変なことは言っていない)

ジュンは自分が動揺していることに動揺しながら、落ち着こうとする。

ジュン(………いや、髪を梳かせるのは気を許した相手だけ、っていうのは前にも聞いた……
     真紅が僕を下僕じゃなくて持ち主って言ったのは驚いたけど、それほど動揺することじゃ……)

動揺しているせいで思考がまとまらない。

40: 2009/02/03(火) 16:38:53.66 ID:u2yVKtUh0
真紅「手が止まっているわよ、ジュン」

微笑みながらの真紅の声に、ジュンは我に返る。

ジュン「あ、ああ……」

髪を梳くのを、再開する。

真紅「まったく、世話のやける人ね……」

真紅はやはり、穏やかだ。

43: 2009/02/03(火) 16:43:42.32 ID:u2yVKtUh0
ジュン(……………で、結局僕は何に動揺したんだ?)

髪を梳いているうちに落ち着きを取り戻したジュンは、再び考える。

ジュン(真紅が言ったことは、両方とも特別すごいことを言ったわけじゃない。
     じゃあ僕はなんで………)

金の髪を梳きながら、考えて。

ジュン(………あ。)

自らが女性であるという言と。

自らが人形であるという言、いや、

自らがジュンのものであるという言。

ジュン「…………………っ!!!」

気付いた。


真紅が言ったのは。ジュンが動揺したのは。

女性である真紅が、ジュンのものであるということ。

46: 2009/02/03(火) 16:47:25.56 ID:u2yVKtUh0
ジュン(って、え、え!? ちょっと待て! 真紅は一体何を…!?)

思い至ったことに激しく動揺し、言葉には出さずに混乱の極致に至るジュン。

真紅「……どうしたの。また手が止まっているわ」

ジュン「あ、ああ、なんでもないっ」

真紅「………そう」

真紅はそれだけ言って、またジュンに身体を預ける。

48: 2009/02/03(火) 16:49:41.82 ID:u2yVKtUh0
ジュン(落ち着け、落ち着け僕………)

混乱の極みにある頭を、なんとか押さえ込もうとする。

ジュン(大した意味はない。偶然そうなっただけで、真紅はそんな意味は込めてない……)

ひたすら言い聞かせて、髪を梳く作業に専念する。

ジュン(落ち着け落ち着け落ち着け……)


真紅「…………………」

53: 2009/02/03(火) 16:54:57.45 ID:u2yVKtUh0
ジュン「………………」

真紅「………………」

真紅はジュンに身を預け。
全てをゆだねているような空気。

ジュン「………………」

真紅「………………」

気を許した男にしか触れさせることのない髪。
それを、ジュンに任せ、梳かせている。

ジュン「………………」

真紅「………………」

『淑女が気を許した男性に櫛を預けるのも、
 人形が持ち主に抱かれるのも……』



ジュン(意識するなって方が無理だああああ!!!!!)

 

57: 2009/02/03(火) 17:01:36.75 ID:u2yVKtUh0
 


少しして。


ジュン「……終わりでいいか」

真紅「ええ」



ジュン(……やっと、終わった………)

真紅の無防備な態度は、年頃の少年には対処に困るものだった。
なんというか何か衝動があるのにどうすればいいかわからない。
とにかく心の中で身悶えする以外にジュンに出来ることはなかった。

ジュン「じゃ、じゃあそろそろ降り……」

真紅「もう少し、……いいかしら」

ジュン「え?」

真紅「あと、少しだけ……」

真紅は、身を預け、目を閉じたまま。
 

58: 2009/02/03(火) 17:04:04.57 ID:u2yVKtUh0
こんなことは、これまでになかった。

ジュン「え、いや、えっと…」

いつもは、「ええ。悪くなかったわ」とか「ありがとう」とか一言言って立ち上がるのに。


真紅「ジュンは、温かいわ……」

今日は動く気はないらしい。
 

62: 2009/02/03(火) 17:08:21.00 ID:u2yVKtUh0
ジュン「し、真紅?」

真紅「何かしら……?」

ジュン「いや、えっと…」

しどろもどろになって、何を言えばいいか分からないジュンに、

真紅「……どうしたの…?」

微笑みながら、聞いてくる。
その表情や雰囲気は、とても女性的で。



ジュン(やばい。これはやばい)

63: 2009/02/03(火) 17:10:44.47 ID:u2yVKtUh0
ジュン「うう……………」

真紅「ふふ………」

真紅は、ジュンが困るのを明らかに楽しんでいる。

その表情が、やはり女性的で。


その女性に全てを預けられている少年には、たまったものではない。


66: 2009/02/03(火) 17:16:30.19 ID:u2yVKtUh0
真紅「くすくす………」

控えめな笑みが、胸の中で抱かれている。

吐息が、胸に触れる。

その身が、声が、全てがジュンに許されている。


それを意識した瞬間。


ジュン(……………やばっ……!!!!)


真紅「ふふ………、……? ……あら」

真紅が、気付く。


真紅「…………ジュン。これは少しばかり、下劣と言いたくなるのだわ?」

やはり少し微笑みながら、真紅は言う。

73: 2009/02/03(火) 17:27:24.90 ID:u2yVKtUh0
ジュン「しかっ、仕方ないだろっ!? っていうかお前知ってるのかよ!」

真紅「あら、人間についての知識は一通りあるもの。その中にそういうものもあるのだわ。
    ……それよりジュン。仕方がないって、どう仕方がないのかしら」

ジュン「え……」

真紅「どうして、ジュンはこうなったのかしら」

ジュン「いや、お前、」

真紅「人間の男性が特定の気分になったときに、こうなるのは知っているわ」

ジュン「ぐっ………分かってるなら、聞くなって……」

真紅「私は、貴方の言葉を聞きたいわ」

ジュン「お、おい」

真紅「ねえ、どうして、こうなっているの?」

ジュン「う、………」

真紅「ふふっ………」


真紅「ねえ、ジュン……どうしてこんなに硬くしてるのか………教えて頂戴?」

 

75: 2009/02/03(火) 17:31:22.49 ID:u2yVKtUh0
・・・・ふぅ

85: 2009/02/03(火) 17:47:03.43 ID:u2yVKtUh0

真紅「きゃっ……」

真紅が、ベッドに押し倒される。

梳かしたばかりの髪が、ベッドに広がる。

ジュン「真紅………!!」

真紅を押し倒したジュンは、その体勢のまま真紅を見つめる。

その鬼気迫る追い詰められたような少年の瞳に、
真紅は笑いかける。

真紅「もう……言葉がほしいって言ったでしょう………行動で示すのも、悪くはないけれど」

少年の頬に優しく触れて。

真紅「落ち着きなさい、ジュン。
    私は逃げないわ。何も、急ぐことなんて、ない」

穏やかに、微笑む。

 

89: 2009/02/03(火) 17:53:16.18 ID:u2yVKtUh0
ジュン「真、紅…………」

真紅「ほら……聞かせて頂戴?
    なぜ、貴方は、そうなっているの……?」

ジュン「…………………」

真紅「言葉が、ほしいわ」

ジュン「………………………ああ」

真紅の頬に手を添えて。



ジュン「お前が、ほしいからだ。真紅」



唇を、重ねる。



真紅「………………偉いわ。よく言えたわね、ジュン」

真紅は、微笑む。

 

92: 2009/02/03(火) 17:58:50.02 ID:u2yVKtUh0
ジュン「……なんか偉いとか言われると、馬鹿にされたような気がするな」

真紅「あら、素直に受け取りなさい。
    でも、ジュンが困った子なのは確かね。
    女の子にここまでさせるなんて、どうかと思うもの」

ジュン「ここまでって……まさか」

真紅「あまり女性を待たせるものではないわよ、ジュン。
    ……待たされすぎて、耐えられなくなってしまうでしょう」

ジュン「…………ごめん」

真紅「………ふふ」

93: 2009/02/03(火) 18:03:31.23 ID:u2yVKtUh0
ジュン「……………」

気付けば、ジュンは落ち着いていた。
そして、気付く。

小さな人形を、押し倒している状態。
人間ではなく、人形。

ジュン「………なあ、真紅」

真紅「なにかしら」

ジュン「あのさ………真紅って、ええっと、この先って、できるのか……?」

真紅「……………」

ジュン「へぶっ!?」

無言ではたかれた。

真紅「……デリカシーというものがないわ」

ジュン「わ、悪かった………」

94: 2009/02/03(火) 18:10:56.55 ID:u2yVKtUh0
怒られた。
では、

ジュン「えーと………どうすれば………」

次の行動に迷うジュンに、真紅はため息をつく。

真紅「……貴方は本当に甲斐性がないわ」

ジュン「う………」

反論できない。

95: 2009/02/03(火) 18:12:10.55 ID:u2yVKtUh0

ジュン「だ、だけどさ……」

だが、どうすればいいのか分からないのだから、どうしようもない。
そう言おうとして。

真紅が、少し不機嫌そうに、言う。



真紅「……貴方が、確かめたらいいでしょう」



こんなことまで言わせるな、と真紅は怒ったようにそっぽを向く。

さすがに、ジュンも自分の情けなさに何も言えなくなる。
だから、何も言わずに。

真紅に軽く口付けをして。
真紅のドレスに、手をかける。

 

96: 2009/02/03(火) 18:13:43.93 ID:u2yVKtUh0




 

翠星石「………っ!? 、っ! …………、」




そうして、二人の時間は過ぎてゆく。


 

101: 2009/02/03(火) 18:31:18.42 ID:u2yVKtUh0
 

のり「あら、翠星石ちゃん。ジュンくんと真紅ちゃん呼んできてくれた?」

翠星石「…………………」

のり「……翠星石ちゃん?」

翠星石「のり」

のり「な、なぁに?」

翠星石「翠星石は……負けません。
     本物の女になってやるです……!」

のり「す、翠星石ちゃん……?」

雛苺「翠星石燃えてるのー!」

翠星石「見てやがれです、ジュン、真紅……!!
     翠星石の方が、真紅なんかよりずっと……!!!」




                       ~ to be continued....? ~


 

引用: 真紅「ふふっジュン…どうしてこんなに硬くしてるのか教えて頂戴?」