1: 2013/08/16(金) NY:AN:NY.AN ID:+2nQ9S01P
3: 2013/08/16(金) NY:AN:NY.AN ID:+2nQ9S01P
『冗談じゃない!どうして、我らが……!』
『私達は優れた一族なのですよ!?それが、何故……!!』
『……愚かな人間共に解らせてやる必要があるな』
『では……とうとう……?』
『ああ、決起するぞ! ……王国に、反旗を翻す!』
『見せしめだ……勇者を擁護したあの国に!』
『この際、出来損ないでも構わん。数を集めろ……奴隷としては役に立つだろう』
『力の強い者同士、交配を繰り返すのだ』
『街を封鎖しろ……我が一族以外を放り出し、全国に散った仲間を呼び戻せ!』
『壁を築き、要塞となせ……許可無く、立ち入れぬ様に』
『時は満ちた……今こそ!』
『まずは、あの王だ……たかが人間』
『そうだ。魔物の居なくなった今、誰もが平和ボケしている』
『王を殺せ』
『我らが……この世界の覇者となる!』
紫の瞳の魔王「……どこで間違えたんだろうな」
魔王「あれは…… ……実際の歴史、なの……か?」
紫魔「青年から聞いたのだろう」
紫魔「……『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
『私達は優れた一族なのですよ!?それが、何故……!!』
『……愚かな人間共に解らせてやる必要があるな』
『では……とうとう……?』
『ああ、決起するぞ! ……王国に、反旗を翻す!』
『見せしめだ……勇者を擁護したあの国に!』
『この際、出来損ないでも構わん。数を集めろ……奴隷としては役に立つだろう』
『力の強い者同士、交配を繰り返すのだ』
『街を封鎖しろ……我が一族以外を放り出し、全国に散った仲間を呼び戻せ!』
『壁を築き、要塞となせ……許可無く、立ち入れぬ様に』
『時は満ちた……今こそ!』
『まずは、あの王だ……たかが人間』
『そうだ。魔物の居なくなった今、誰もが平和ボケしている』
『王を殺せ』
『我らが……この世界の覇者となる!』
紫の瞳の魔王「……どこで間違えたんだろうな」
魔王「あれは…… ……実際の歴史、なの……か?」
紫魔「青年から聞いたのだろう」
紫魔「……『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
4: 2013/08/16(金) NY:AN:NY.AN ID:+2nQ9S01P
魔王(この光景は……夢でも見てるみたいだ。不鮮明)
魔王(……そりゃそう、だよな。『俺はこいつ』で『こいつは俺』)
魔王(しかも、『現実』では……)
魔王(黒い髪の勇者……俺の息子が、魔王を倒さんと……旅立った頃、の筈だ)
紫魔「……こうしてみると、お前はあの『青年』そっくりだな」
魔王「同じ顔して何言ってやがるんだよ」
紫魔「……そう、か。そうだな」
魔王「…… ……この後、どうなるんだ?」
紫魔「もう一度聞きたいのか?」
魔王「…… ……国王は暗殺されて、娘と息子は……連れて行かれた、んだよな」
紫魔「…… ……」
魔王「それで……近親姦、で……子供を、産む……」
紫魔「そうだ」
魔王「……でもさ、それって……あいつら、双子だろ?」
魔王「それに……何だっけな……あ、そうだ!」
魔王「『光と闇』だと言ってた!」
紫魔「……『光と闇の獣。汝の名は?』」
魔王「え?」
紫魔「……全てを見たいか」
魔王「…… ……?」
紫魔「ならば望むが良い『願えば叶う』」
魔王「あ……おい!」
魔王(何だ、眩暈……ッ)
紫魔「『選択を誤るな』」
魔王(おい、紫の瞳の魔王……! ……ッ)
魔王(また、だ。また……声が、出ない……!)
……
………
…………
魔王(……そりゃそう、だよな。『俺はこいつ』で『こいつは俺』)
魔王(しかも、『現実』では……)
魔王(黒い髪の勇者……俺の息子が、魔王を倒さんと……旅立った頃、の筈だ)
紫魔「……こうしてみると、お前はあの『青年』そっくりだな」
魔王「同じ顔して何言ってやがるんだよ」
紫魔「……そう、か。そうだな」
魔王「…… ……この後、どうなるんだ?」
紫魔「もう一度聞きたいのか?」
魔王「…… ……国王は暗殺されて、娘と息子は……連れて行かれた、んだよな」
紫魔「…… ……」
魔王「それで……近親姦、で……子供を、産む……」
紫魔「そうだ」
魔王「……でもさ、それって……あいつら、双子だろ?」
魔王「それに……何だっけな……あ、そうだ!」
魔王「『光と闇』だと言ってた!」
紫魔「……『光と闇の獣。汝の名は?』」
魔王「え?」
紫魔「……全てを見たいか」
魔王「…… ……?」
紫魔「ならば望むが良い『願えば叶う』」
魔王「あ……おい!」
魔王(何だ、眩暈……ッ)
紫魔「『選択を誤るな』」
魔王(おい、紫の瞳の魔王……! ……ッ)
魔王(また、だ。また……声が、出ない……!)
……
………
…………
5: 2013/08/16(金) NY:AN:NY.AN ID:+2nQ9S01P
勇者「じゃあ改めて……自己紹介と行こうか。お腹もふくれたしね」
魔法使い「ああ、お腹いっぱい……コーヒーもらって良い?」
勇者「あ、じゃあ俺も。僧侶は……プリン?」
僧侶「は、はい!それとチーズケーキとバナナジュースも良いですか?」
戦士「腹壊すぞ……俺はイチゴのパフェ」
勇者「えっ」
僧侶「えっ」
魔法使い「……」クスクス
戦士「……」ムス
勇者「え、ええっと……取りあえず、俺から……で良いかな?」
勇者「その……勇者ってのは、世界に一人、しか居ないらしいんだ」
戦士「そうなのか?」
僧侶「……それは、『光』と言う珍しい属性だから……そう、言われていると」
僧侶「そういう事……ですか?」
魔法使い「確かに珍しいけれど……」
勇者「俺も母さんに聞いただけだから解らない、けど」
勇者「……嘘を吐く様な人では、無いよ」
僧侶「あ……気を悪くなさったならご免なさい!そういう意味では……!」
戦士「嘘を吐く理由も無いだろう、そんな物。誰も疑っては居ない」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(『珍しい属性』か)
魔法使い(遠い昔……家に居たあの紫の瞳の人……)
魔法使い(良く考えて見れば、誰だったんだろう)
勇者「あ……!俺こそ御免……別にむっとした訳じゃ無いよ」
勇者「母さんははっきりと言い切っていた、からさ」
勇者「確かに、俺も聞いた事が無い……けど」
勇者「……俺は、母さん以外の人とは、会う機会が殆ど無かったから」
戦士「…… ……」
戦士(親父は……勇者様と母君様に何度か会いに行っている)
戦士(……勇者様とは、直接会っていない、のだろうか?)
戦士(しっかりと聞いておけば良かったな。否……これで良かった、のか)
魔法使い「ああ、お腹いっぱい……コーヒーもらって良い?」
勇者「あ、じゃあ俺も。僧侶は……プリン?」
僧侶「は、はい!それとチーズケーキとバナナジュースも良いですか?」
戦士「腹壊すぞ……俺はイチゴのパフェ」
勇者「えっ」
僧侶「えっ」
魔法使い「……」クスクス
戦士「……」ムス
勇者「え、ええっと……取りあえず、俺から……で良いかな?」
勇者「その……勇者ってのは、世界に一人、しか居ないらしいんだ」
戦士「そうなのか?」
僧侶「……それは、『光』と言う珍しい属性だから……そう、言われていると」
僧侶「そういう事……ですか?」
魔法使い「確かに珍しいけれど……」
勇者「俺も母さんに聞いただけだから解らない、けど」
勇者「……嘘を吐く様な人では、無いよ」
僧侶「あ……気を悪くなさったならご免なさい!そういう意味では……!」
戦士「嘘を吐く理由も無いだろう、そんな物。誰も疑っては居ない」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(『珍しい属性』か)
魔法使い(遠い昔……家に居たあの紫の瞳の人……)
魔法使い(良く考えて見れば、誰だったんだろう)
勇者「あ……!俺こそ御免……別にむっとした訳じゃ無いよ」
勇者「母さんははっきりと言い切っていた、からさ」
勇者「確かに、俺も聞いた事が無い……けど」
勇者「……俺は、母さん以外の人とは、会う機会が殆ど無かったから」
戦士「…… ……」
戦士(親父は……勇者様と母君様に何度か会いに行っている)
戦士(……勇者様とは、直接会っていない、のだろうか?)
戦士(しっかりと聞いておけば良かったな。否……これで良かった、のか)
6: 2013/08/16(金) NY:AN:NY.AN ID:+2nQ9S01P
僧侶(私が……昔感じた、輝かしい『光の誕生』は確かに……この方)
僧侶(……勇者様の物。だけど……いいえ、確かに)
僧侶(『他』に『特別』等感じたことは無い……!)
僧侶(……で、あれば確かに一人、なのだろう。嘘が無いと証明できる)
僧侶(でも……そんな事、口には出せない……!)
勇者「……えっと、母が言う、には」
勇者「俺の父も……勇者だった、と言うんだ」
戦士「何……!?」
魔法使い「貴方……が、前勇者様の……子供!?」
勇者「……旅立つ前に、これを母に渡された」カチャ
僧侶「……!こ、れ……は!」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「勇者様……あの。見せて頂いても?」
勇者「あ、ああ……どうぞ」
僧侶(……ッ 微かに、微かに、だけど……!)
僧侶(光を感じる。刀身に光が宿ってる……!)
戦士「……どうした?」
僧侶「あ……ええと……」
僧侶(どうしよう……何処まで、話して……良い、んだろう……)
魔法使い「思う事があるなら言っちゃいなさいよ」
魔法使い「私達、仲間なんでしょう?」
僧侶(……勇者様の物。だけど……いいえ、確かに)
僧侶(『他』に『特別』等感じたことは無い……!)
僧侶(……で、あれば確かに一人、なのだろう。嘘が無いと証明できる)
僧侶(でも……そんな事、口には出せない……!)
勇者「……えっと、母が言う、には」
勇者「俺の父も……勇者だった、と言うんだ」
戦士「何……!?」
魔法使い「貴方……が、前勇者様の……子供!?」
勇者「……旅立つ前に、これを母に渡された」カチャ
僧侶「……!こ、れ……は!」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「勇者様……あの。見せて頂いても?」
勇者「あ、ああ……どうぞ」
僧侶(……ッ 微かに、微かに、だけど……!)
僧侶(光を感じる。刀身に光が宿ってる……!)
戦士「……どうした?」
僧侶「あ……ええと……」
僧侶(どうしよう……何処まで、話して……良い、んだろう……)
魔法使い「思う事があるなら言っちゃいなさいよ」
魔法使い「私達、仲間なんでしょう?」
7: 2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:+2nQ9S01P
僧侶(仲間……ッ)グッ
僧侶「……この剣からは、光を……感じます」
僧侶「勇者様から感じるのと同じ……光」
勇者「俺と……同じ?」
僧侶「はい。刀身は……随分、ぼろぼろですが……確かに」
魔法使い「私は剣とかには詳しくないけど……これ、新しい傷じゃ無い……わよね?」
戦士「俺にも見せて貰えるか…… ……そう、だな」
戦士「……傷付いて、随分経っている様に見える……が」
勇者「『貴方のお父様は、これで魔王を倒したの』……と」
勇者「母さんは言ってた。だから……その時に折れてしまったのだろうと」
勇者「思ってたんだが……」
魔法使い「……でも、勇者様。まさか……この剣一本で魔王城まで行くつもりなの?」
勇者「あ、いや……騎士団長様から貰った剣があるんだ」
戦士「!」
勇者「……これ、何だけど。当分はこれで良いかなと思っている」シャキン
戦士(……王国の剣の印が無い、が、これも古い物だ)
戦士(親父が昔……使っていた物、か?)
勇者「俺は……ここ一年ぐらいだけど、騎士団長様に剣を習った」
勇者「だから……手にもなじんでる、しね」
勇者「……それより、僧侶」
僧侶「は、はい!」
勇者「……その、さっきから言ってる『感じる』とか、さ」
勇者「そういうの……解る、の?」
僧侶「……この剣からは、光を……感じます」
僧侶「勇者様から感じるのと同じ……光」
勇者「俺と……同じ?」
僧侶「はい。刀身は……随分、ぼろぼろですが……確かに」
魔法使い「私は剣とかには詳しくないけど……これ、新しい傷じゃ無い……わよね?」
戦士「俺にも見せて貰えるか…… ……そう、だな」
戦士「……傷付いて、随分経っている様に見える……が」
勇者「『貴方のお父様は、これで魔王を倒したの』……と」
勇者「母さんは言ってた。だから……その時に折れてしまったのだろうと」
勇者「思ってたんだが……」
魔法使い「……でも、勇者様。まさか……この剣一本で魔王城まで行くつもりなの?」
勇者「あ、いや……騎士団長様から貰った剣があるんだ」
戦士「!」
勇者「……これ、何だけど。当分はこれで良いかなと思っている」シャキン
戦士(……王国の剣の印が無い、が、これも古い物だ)
戦士(親父が昔……使っていた物、か?)
勇者「俺は……ここ一年ぐらいだけど、騎士団長様に剣を習った」
勇者「だから……手にもなじんでる、しね」
勇者「……それより、僧侶」
僧侶「は、はい!」
勇者「……その、さっきから言ってる『感じる』とか、さ」
勇者「そういうの……解る、の?」
8: 2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:6WORrKgWP
僧侶「……え、ええ……まあ」
僧侶「でも、解る……と言うより、本当に『感じる』だけなんです」
僧侶「何となく……です。本当に」
勇者「ふうん……?聖職者、って凄いんだね」
魔法使い「ねぇ、勇者様と戦士は……魔法について詳しいの?」
勇者「ん? ……恥ずかしながら、それほど」
戦士「俺にはさっぱりだ」
勇者「俺は……初期の回復魔法ぐらいしか使えないし」
勇者「丁度話そうと思ってたけど……『光の加護』って言う割にさ」
勇者「『光の魔法』ってのは……使えないんだ」
僧侶「そう……なのですか!?」
勇者「あー……がっかりした、よね?」
僧侶「え、いえそんな!?」
魔法使い「意地の悪い言い方しないの、勇者様」
魔法使い(……とは言え。私……どこかでほっとしてる)
魔法使い(否……それより……この子)
魔法使い(この子の……『感じる力』……って、何!?)
魔法使い(……それこそ、聞いた事なんか無い……!)
勇者「……御免」
僧侶「…… ……その、すみません」
僧侶「そんなにも……身の内から光を溢れさせていらっしゃるのに」
僧侶「ちょっと……意外、だっただけ、です」
勇者「……母さんも、何れ使える様になるって言ってたんだけどね」
魔法使い「……身の内から、って?」
戦士「その話は後にしよう。さきに自己紹介を済ませてしまわないか」
戦士「……話があちこち行くと、混乱する」
僧侶「でも、解る……と言うより、本当に『感じる』だけなんです」
僧侶「何となく……です。本当に」
勇者「ふうん……?聖職者、って凄いんだね」
魔法使い「ねぇ、勇者様と戦士は……魔法について詳しいの?」
勇者「ん? ……恥ずかしながら、それほど」
戦士「俺にはさっぱりだ」
勇者「俺は……初期の回復魔法ぐらいしか使えないし」
勇者「丁度話そうと思ってたけど……『光の加護』って言う割にさ」
勇者「『光の魔法』ってのは……使えないんだ」
僧侶「そう……なのですか!?」
勇者「あー……がっかりした、よね?」
僧侶「え、いえそんな!?」
魔法使い「意地の悪い言い方しないの、勇者様」
魔法使い(……とは言え。私……どこかでほっとしてる)
魔法使い(否……それより……この子)
魔法使い(この子の……『感じる力』……って、何!?)
魔法使い(……それこそ、聞いた事なんか無い……!)
勇者「……御免」
僧侶「…… ……その、すみません」
僧侶「そんなにも……身の内から光を溢れさせていらっしゃるのに」
僧侶「ちょっと……意外、だっただけ、です」
勇者「……母さんも、何れ使える様になるって言ってたんだけどね」
魔法使い「……身の内から、って?」
戦士「その話は後にしよう。さきに自己紹介を済ませてしまわないか」
戦士「……話があちこち行くと、混乱する」
9: 2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:6WORrKgWP
勇者「ああ……まあ、とにかく形見でもある」
戦士「……形見?」
勇者「『世界に一人しか存在できない』んだったら、そういう事だろう?」
戦士「……すまん」
勇者「それこそ気にするな」
勇者「……俺達が、倒せば良いんだ。今度こそ」
勇者「……俺は『勇者』ってだけで、まだまだ弱い」
勇者「七光りに頼ってばかり……じゃな。だから……頼りにしてるよ?皆」
戦士(どちらにせよ、この『光輝く剣』がこのままでは……この街近くの)
戦士(魔物すら倒せまい……)
戦士(やはり……守ってやらねば、なるまい)
戦士(俺も……強くならねば……!)
勇者「で、さっきも言ったけど、魔法については初期の回復魔法が使えるぐらい」
勇者「多少の魔力があるのはわかってるが、当然ながら本職さんの足下にも及ばない」
勇者「これぐらい、かな」
戦士「……では、次は俺だな」
戦士「戦士だ。実戦経験は……無いに等しい」
戦士「まさか、自分が選ばれるとは正直思っていなかった」
魔法使い「……そうなの?」
戦士「俺程度の奴など五万と居るのはわかりきっているだろう」
戦士「……闘技大会を見て、思った。正直、絶望にも近かった」
魔法使い「…… ……」ビクッ
僧侶「…… ……?」
戦士「……形見?」
勇者「『世界に一人しか存在できない』んだったら、そういう事だろう?」
戦士「……すまん」
勇者「それこそ気にするな」
勇者「……俺達が、倒せば良いんだ。今度こそ」
勇者「……俺は『勇者』ってだけで、まだまだ弱い」
勇者「七光りに頼ってばかり……じゃな。だから……頼りにしてるよ?皆」
戦士(どちらにせよ、この『光輝く剣』がこのままでは……この街近くの)
戦士(魔物すら倒せまい……)
戦士(やはり……守ってやらねば、なるまい)
戦士(俺も……強くならねば……!)
勇者「で、さっきも言ったけど、魔法については初期の回復魔法が使えるぐらい」
勇者「多少の魔力があるのはわかってるが、当然ながら本職さんの足下にも及ばない」
勇者「これぐらい、かな」
戦士「……では、次は俺だな」
戦士「戦士だ。実戦経験は……無いに等しい」
戦士「まさか、自分が選ばれるとは正直思っていなかった」
魔法使い「……そうなの?」
戦士「俺程度の奴など五万と居るのはわかりきっているだろう」
戦士「……闘技大会を見て、思った。正直、絶望にも近かった」
魔法使い「…… ……」ビクッ
僧侶「…… ……?」
10: 2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:6WORrKgWP
戦士「だが……それなりに鍛錬は積んできたつもりだ」
戦士「…… ……父から譲り受けた鋼の剣だ」シャキン
戦士「……俺も、当分、新調しなくても大丈夫だろうと思う」
勇者「……王国の剣の紋章!」
戦士「……父が……」
僧侶「この国の騎士様でいらっしゃるのですか?でも……」
僧侶「譲り受けた、と言う事は……貴方も、騎士様……?」
戦士「……否。俺は……勇者様に着いていきたいと」
戦士「何となく、だ。本当に何となくだが、幼い頃から思っていた」
戦士「……それを知って知らず、か。父は、俺の入団を認めなかったんだ」
勇者「え?騎士だと……駄目、なのか?」
戦士「否……そうじゃない。『俺の轍を踏む可能性が高い』と」
僧侶「お父様の……?」
戦士「…… ……俺の父は、騎士団長だ」
魔法使い「!」
魔法使い(思い出した……! 私が、闘技大会に出場した時)
魔法使い(……手当を受けろと、話しかけてきた男)
魔法使い(確かに、『父が騎士団長だ』と言っていた……!)
勇者「騎士団長様の、息子!?戦士が!?」
戦士「……ああ」チラ
魔法使い「……!」
戦士「お前は忘れたかもしれないが……俺は、覚えている」
戦士「……試合も見ていた。結果は、残念だったが……」
魔法使い「…… ……恥ずかしい所、見せちゃった、わね」
僧侶「え!?」
戦士「…… ……父から譲り受けた鋼の剣だ」シャキン
戦士「……俺も、当分、新調しなくても大丈夫だろうと思う」
勇者「……王国の剣の紋章!」
戦士「……父が……」
僧侶「この国の騎士様でいらっしゃるのですか?でも……」
僧侶「譲り受けた、と言う事は……貴方も、騎士様……?」
戦士「……否。俺は……勇者様に着いていきたいと」
戦士「何となく、だ。本当に何となくだが、幼い頃から思っていた」
戦士「……それを知って知らず、か。父は、俺の入団を認めなかったんだ」
勇者「え?騎士だと……駄目、なのか?」
戦士「否……そうじゃない。『俺の轍を踏む可能性が高い』と」
僧侶「お父様の……?」
戦士「…… ……俺の父は、騎士団長だ」
魔法使い「!」
魔法使い(思い出した……! 私が、闘技大会に出場した時)
魔法使い(……手当を受けろと、話しかけてきた男)
魔法使い(確かに、『父が騎士団長だ』と言っていた……!)
勇者「騎士団長様の、息子!?戦士が!?」
戦士「……ああ」チラ
魔法使い「……!」
戦士「お前は忘れたかもしれないが……俺は、覚えている」
戦士「……試合も見ていた。結果は、残念だったが……」
魔法使い「…… ……恥ずかしい所、見せちゃった、わね」
僧侶「え!?」
11: 2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:6WORrKgWP
魔法使い「……自己紹介ついでにその辺も話すわ」ハァ
魔法使い(……覚えて、等。居て欲しくなかった)
魔法使い(否。駄目よ、魔法使い!自信……持たなくちゃ……!)
魔法使い「……私の両親は…… ……」
魔法使い「魔導の街の、領主の血筋よ」
僧侶「!?」
僧侶(魔導の街……あの、街の人達は……)
僧侶(……しかも。領主の血筋……でも、この人……魔法使いさん、は……)
魔法使い「…… ……父と母と加護は違うけれどね」
勇者「ん?加護って……遺伝、とかじゃ無いのか?」
魔法使い「その辺は後にしましょう。長くなるわ」
魔法使い(……悪意なんて無いのは解ってる……けれど)
魔法使い(…… ……)ハァ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「あ、ああ……ご免なさい。ええと。加護は違うけれど」
魔法使い「……私の師でもあるわ」
魔法使い「家には膨大な量の魔法関係の本があったから、知識はかなりの物だと自負してる」
魔法使い(……覚えて、等。居て欲しくなかった)
魔法使い(否。駄目よ、魔法使い!自信……持たなくちゃ……!)
魔法使い「……私の両親は…… ……」
魔法使い「魔導の街の、領主の血筋よ」
僧侶「!?」
僧侶(魔導の街……あの、街の人達は……)
僧侶(……しかも。領主の血筋……でも、この人……魔法使いさん、は……)
魔法使い「…… ……父と母と加護は違うけれどね」
勇者「ん?加護って……遺伝、とかじゃ無いのか?」
魔法使い「その辺は後にしましょう。長くなるわ」
魔法使い(……悪意なんて無いのは解ってる……けれど)
魔法使い(…… ……)ハァ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「あ、ああ……ご免なさい。ええと。加護は違うけれど」
魔法使い「……私の師でもあるわ」
魔法使い「家には膨大な量の魔法関係の本があったから、知識はかなりの物だと自負してる」
12: 2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:6WORrKgWP
魔法使い「加護とかの話は後にして……さ、次どうぞ?」
僧侶「あ、私は僧侶……癒やしの魔法を専門にしています」
僧侶「この町に来るまでは……様々な教会に遣えていました」
僧侶「一応回復専門ですが……弓は得意です」
魔法使い「……弓!?」
僧侶「え、あ、はい……」
戦士「その細腕で……?」
僧侶「あ、その……これ、です」ス……
勇者「随分と細いな……ちょっと失礼……うわ、軽ッ」
僧侶「これは『エルフの弓』です」
魔法使い「エルフ……の、弓?」
僧侶「はい……あの、私……孤児、なんです」
僧侶「……拾って、育てて下さった神父様のお話によると」
僧侶「…… ……」
僧侶(どこまで……いいえ、流石に……言えない……!)
僧侶(でも……!)
僧侶「……母、であろう方が残してくれたもの、と」
魔法使い「貴女も……形見、だと言う、のね」グッ
僧侶「……そう、ですね。あの……?」
魔法使い「いえ……その、何だか」
魔法使い「話しにくいこと、話させた様で……ご免なさい」
魔法使い(……ッ 嫉妬、じゃない!これは嫉妬なんかじゃ無い!)
魔法使い(私、この子に、妬いてなんか……ッ)グッ
勇者「…… ……」
僧侶「だから……大事にしたくて……練習したんです」
勇者「……なんか、暴露させちゃってごめん」
僧侶「いいえ。お気になさらず……これから一緒に旅をする仲間ですから」ニコ
僧侶「あ、私は僧侶……癒やしの魔法を専門にしています」
僧侶「この町に来るまでは……様々な教会に遣えていました」
僧侶「一応回復専門ですが……弓は得意です」
魔法使い「……弓!?」
僧侶「え、あ、はい……」
戦士「その細腕で……?」
僧侶「あ、その……これ、です」ス……
勇者「随分と細いな……ちょっと失礼……うわ、軽ッ」
僧侶「これは『エルフの弓』です」
魔法使い「エルフ……の、弓?」
僧侶「はい……あの、私……孤児、なんです」
僧侶「……拾って、育てて下さった神父様のお話によると」
僧侶「…… ……」
僧侶(どこまで……いいえ、流石に……言えない……!)
僧侶(でも……!)
僧侶「……母、であろう方が残してくれたもの、と」
魔法使い「貴女も……形見、だと言う、のね」グッ
僧侶「……そう、ですね。あの……?」
魔法使い「いえ……その、何だか」
魔法使い「話しにくいこと、話させた様で……ご免なさい」
魔法使い(……ッ 嫉妬、じゃない!これは嫉妬なんかじゃ無い!)
魔法使い(私、この子に、妬いてなんか……ッ)グッ
勇者「…… ……」
僧侶「だから……大事にしたくて……練習したんです」
勇者「……なんか、暴露させちゃってごめん」
僧侶「いいえ。お気になさらず……これから一緒に旅をする仲間ですから」ニコ
13: 2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:6WORrKgWP
僧侶「あの。それより……一つ、お聞きしても宜しいでしょうか」
勇者「え……俺に?」
僧侶「あ……はい。その……勇者様の、その……『光の剣』」
僧侶「で、宜しいでしょうか……それ」
僧侶「……修理、されない、のですか」
戦士「俺から……話そう。知っていると思うが……」
魔法使い「……鍛冶師様、よね」
戦士「……ああ」
勇者「騎士団長のお父さん……だよな」
戦士「そうだ。お爺様が亡くなって……この国の騎士達は」
戦士「……その、光の剣の修理に使ったという鉱石の取れる洞窟から」
戦士「軍を引き上げた。鍛冶を研究していた部隊も……解散はしていないが……」
魔法使い「実質それに等しい?」
戦士「……俺も、聞いただけだけどな」
戦士「親父は……あまり詳しくは教えてくれなかったし」
僧侶「鍛冶師様は……確か、鍛冶師の村の出身、でしたよね」
魔法使い「詳しいわね」
僧侶「私を育てて下さった神父様の家が、鍛冶師の村のすぐ近くだったのです」
僧侶「……お若い頃は、よく鍛冶師の村の教会まで行ってらしたのですが」
僧侶「足を悪くされてからは……」
戦士「…… ……」
僧侶「ですが、色々、お話し下さいました。ですから……」
僧侶「盗賊様……この国の初代国王様と、その旦那様である鍛冶師様のお話は」
僧侶「……少しだけ、ですが知っています」
魔法使い「そうなんだ……」
僧侶「ええ。それに…… ……ッ」ハッ
魔法使い「ん?」
僧侶(……港街の教会に居たことは、言わない方が良い)
僧侶(時間の説明は……出来ない……!)
勇者「え……俺に?」
僧侶「あ……はい。その……勇者様の、その……『光の剣』」
僧侶「で、宜しいでしょうか……それ」
僧侶「……修理、されない、のですか」
戦士「俺から……話そう。知っていると思うが……」
魔法使い「……鍛冶師様、よね」
戦士「……ああ」
勇者「騎士団長のお父さん……だよな」
戦士「そうだ。お爺様が亡くなって……この国の騎士達は」
戦士「……その、光の剣の修理に使ったという鉱石の取れる洞窟から」
戦士「軍を引き上げた。鍛冶を研究していた部隊も……解散はしていないが……」
魔法使い「実質それに等しい?」
戦士「……俺も、聞いただけだけどな」
戦士「親父は……あまり詳しくは教えてくれなかったし」
僧侶「鍛冶師様は……確か、鍛冶師の村の出身、でしたよね」
魔法使い「詳しいわね」
僧侶「私を育てて下さった神父様の家が、鍛冶師の村のすぐ近くだったのです」
僧侶「……お若い頃は、よく鍛冶師の村の教会まで行ってらしたのですが」
僧侶「足を悪くされてからは……」
戦士「…… ……」
僧侶「ですが、色々、お話し下さいました。ですから……」
僧侶「盗賊様……この国の初代国王様と、その旦那様である鍛冶師様のお話は」
僧侶「……少しだけ、ですが知っています」
魔法使い「そうなんだ……」
僧侶「ええ。それに…… ……ッ」ハッ
魔法使い「ん?」
僧侶(……港街の教会に居たことは、言わない方が良い)
僧侶(時間の説明は……出来ない……!)
14: 2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:6WORrKgWP
僧侶「……いえ。此処まで旅する間に、色々聞きましたし」
戦士「鉱石やら洞窟やら、詳しいことは解らん……が」
戦士「魔法剣、とやらの扱いは酷く難しいのだと聞いた事がある」
戦士「……失われて行く技術なのだと、お爺様は寂しそうに話していらっしゃった……と」
魔法使い「そう……魔法剣の扱いはとてもデリケートで難しいのよ」
魔法使い「知識として存在は知ってても、どうにも出来ない場合が多いらしいわ」
魔法使い「鍛冶の知識と、魔法の知識、確かな技術……」
魔法使い「それ以上の何かを知り、持っている者にしか……できない、と」
魔法使い「……昔、魔導の街の図書館で読んだわ」
魔法使い(懐かしいわね。メイドの目を盗んで……)
魔法使い(……加護の勉強をする振りをして、読んだ本に書いてあった)
魔法使い(私に……優れた加護があると錯覚してから)
魔法使い(……手のひらを返した様に、信用を置いてくれたあの、女)
魔法使い(…… ……そうだわ。私、あの紫の瞳の男性に助けて貰ったんだ)
魔法使い(…… ……何となく、勇者様に似てた気が……する)ジィ
勇者「…… ……魔法使い?」
魔法使い「!」ハッ
魔法使い「あ、ご免なさい……!」
勇者「何だよ、人の顔じっと見て……」
魔法使い「いえ……は、話を戻しましょ!」
勇者「?」
魔法使い「ええと、そうね……魔法剣ね!」
勇者「そもそも魔法剣って……何なんだ?」
僧侶「一般的には……剣に魔法を宿らせた物、ですよね?」
戦士「……だと思う、が」
戦士「鉱石やら洞窟やら、詳しいことは解らん……が」
戦士「魔法剣、とやらの扱いは酷く難しいのだと聞いた事がある」
戦士「……失われて行く技術なのだと、お爺様は寂しそうに話していらっしゃった……と」
魔法使い「そう……魔法剣の扱いはとてもデリケートで難しいのよ」
魔法使い「知識として存在は知ってても、どうにも出来ない場合が多いらしいわ」
魔法使い「鍛冶の知識と、魔法の知識、確かな技術……」
魔法使い「それ以上の何かを知り、持っている者にしか……できない、と」
魔法使い「……昔、魔導の街の図書館で読んだわ」
魔法使い(懐かしいわね。メイドの目を盗んで……)
魔法使い(……加護の勉強をする振りをして、読んだ本に書いてあった)
魔法使い(私に……優れた加護があると錯覚してから)
魔法使い(……手のひらを返した様に、信用を置いてくれたあの、女)
魔法使い(…… ……そうだわ。私、あの紫の瞳の男性に助けて貰ったんだ)
魔法使い(…… ……何となく、勇者様に似てた気が……する)ジィ
勇者「…… ……魔法使い?」
魔法使い「!」ハッ
魔法使い「あ、ご免なさい……!」
勇者「何だよ、人の顔じっと見て……」
魔法使い「いえ……は、話を戻しましょ!」
勇者「?」
魔法使い「ええと、そうね……魔法剣ね!」
勇者「そもそも魔法剣って……何なんだ?」
僧侶「一般的には……剣に魔法を宿らせた物、ですよね?」
戦士「……だと思う、が」
15: 2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN ID:6WORrKgWP
魔法使い「人……否、生きとし生けるもの全ては加護を持つ、って言うのは」
魔法使い「知っている……わよね?」
戦士「…… ……」
勇者「戦士?」
魔法使い「まだ何も難しい話してないわよ。眉間に皺寄せないでよね」クスクス
戦士「……チョコパフェ。糖分が不足すると頭が回らん」ムス
勇者「まだ食うの!?」
僧侶「あ、私ジャンボパフェ!」
勇者「……その細身の身体の何処に入るんだ」
魔法使い「私の紅い瞳で連想する物は何? ……僧侶の蒼、戦士の緑……そして、勇者様の金」
勇者「……炎。水? ……ええと、緑。それから……光、か」
僧侶「そうです。100%見た目通りでは無いとも言われていますが……」
戦士「そうなのか?」
魔法使い「稀に居るそうよ。私は会ったこと無いけれど……」
勇者「『絶対』は無い、って奴か」
勇者「……母さんが良く、言ってたな」
魔法使い「そう……100%瞳の色で判断できるわけじゃ無い」
魔法使い「でも……貴女には分かるのね、僧侶」
僧侶「……はい。『感じ』ます」
魔法使い(て、事は……彼女には、ばれている、のね……)
魔法使い「……瞳の色だけは、変えられないとも言うのよ」
勇者「主に加護を表すから、か」
魔法使い「でしょうね……髪や肌の色は変えられても、ね」
魔法使い「……偽れないのね。人間は」ハァ
勇者(さっきから……時々、表情が曇る)
勇者(…… ……誰でも、秘密にしたいことの一つや二つ、あるよな)
勇者(いくら『仲間』だとは、言え……しかも、俺達は出会ったばかり)
勇者(知り合ったばかり、だ)
勇者(しかし…… ……このままで……良い、んだろうか)
勇者(だからって……食い下がって聞き出すのも……違う、よな)フゥ
魔法使い「知っている……わよね?」
戦士「…… ……」
勇者「戦士?」
魔法使い「まだ何も難しい話してないわよ。眉間に皺寄せないでよね」クスクス
戦士「……チョコパフェ。糖分が不足すると頭が回らん」ムス
勇者「まだ食うの!?」
僧侶「あ、私ジャンボパフェ!」
勇者「……その細身の身体の何処に入るんだ」
魔法使い「私の紅い瞳で連想する物は何? ……僧侶の蒼、戦士の緑……そして、勇者様の金」
勇者「……炎。水? ……ええと、緑。それから……光、か」
僧侶「そうです。100%見た目通りでは無いとも言われていますが……」
戦士「そうなのか?」
魔法使い「稀に居るそうよ。私は会ったこと無いけれど……」
勇者「『絶対』は無い、って奴か」
勇者「……母さんが良く、言ってたな」
魔法使い「そう……100%瞳の色で判断できるわけじゃ無い」
魔法使い「でも……貴女には分かるのね、僧侶」
僧侶「……はい。『感じ』ます」
魔法使い(て、事は……彼女には、ばれている、のね……)
魔法使い「……瞳の色だけは、変えられないとも言うのよ」
勇者「主に加護を表すから、か」
魔法使い「でしょうね……髪や肌の色は変えられても、ね」
魔法使い「……偽れないのね。人間は」ハァ
勇者(さっきから……時々、表情が曇る)
勇者(…… ……誰でも、秘密にしたいことの一つや二つ、あるよな)
勇者(いくら『仲間』だとは、言え……しかも、俺達は出会ったばかり)
勇者(知り合ったばかり、だ)
勇者(しかし…… ……このままで……良い、んだろうか)
勇者(だからって……食い下がって聞き出すのも……違う、よな)フゥ
18: 2013/08/18(日) NY:AN:NY.AN ID:8SEL+NTvP
おはよう!
また電車でかなー
また電車でかなー
19: 2013/08/18(日) NY:AN:NY.AN ID:8SEL+NTvP
僧侶「魔法剣が、刀身に魔法の力を宿したものであるのなら」
僧侶「……その、勇者様の光の剣は……」
僧侶「…… ……」
戦士「……どうした?」
僧侶「いえ……先程見せて頂いた時に、確かに剣からも光の力を感じました」
僧侶「……それも、勇者様から感じるものと、全く同じ力、を」
戦士「? ……勇者様の剣なのだから、別におかしく無いだろう?」
魔法使い「……形見、何でしょう?」
勇者「え?あ、ああ……」
魔法使い「それに……実際に修理されたのは鍛治師様……なのよね?」
戦士「??」
僧侶「勇者様のお父様も『勇者』でいらっしゃったのですから」
僧侶「光を感じるのは……おかしく無いんです。鍛治師様の技術で」
僧侶「『勇者の光』を剣に注いだとすれば」
戦士「だから……」
魔法使い「確かに、同じなの?」
僧侶「……その、勇者様の光の剣は……」
僧侶「…… ……」
戦士「……どうした?」
僧侶「いえ……先程見せて頂いた時に、確かに剣からも光の力を感じました」
僧侶「……それも、勇者様から感じるものと、全く同じ力、を」
戦士「? ……勇者様の剣なのだから、別におかしく無いだろう?」
魔法使い「……形見、何でしょう?」
勇者「え?あ、ああ……」
魔法使い「それに……実際に修理されたのは鍛治師様……なのよね?」
戦士「??」
僧侶「勇者様のお父様も『勇者』でいらっしゃったのですから」
僧侶「光を感じるのは……おかしく無いんです。鍛治師様の技術で」
僧侶「『勇者の光』を剣に注いだとすれば」
戦士「だから……」
魔法使い「確かに、同じなの?」
20: 2013/08/18(日) NY:AN:NY.AN ID:8SEL+NTvP
勇者「……父さんの力を感じないとおかしい、て事?」
僧侶「はい。親子で、同じ『勇者』と言えど……別の人間でしょう?」
僧侶「全く……同じ、と言う事は……」
戦士「…… ……」
魔法使い「……理解してる?」
戦士「……プリン・ア・ラモード」
勇者「もう糖分消費したのかよ……」
魔法使い「コーヒーお変わりね」
勇者「……疑う訳では無いけど」
僧侶「いえ。言いたい事はわかります。勘違いじゃ無い……と、確かな事は言えません」
魔法使い「そもそも、どうして金の髪の勇者様の時に修理が必要だったのかしら」
勇者「あ……そう、だよな……」
戦士「元々が古い物なのかもしれん。修理したが魔王との激戦には耐えられず……」
僧侶「でも……困りましたね」
僧侶「もし、魔王を倒すのに、光の剣が必要だとするのなら」
勇者「そう……だな」
勇者「……これじゃ、な」ハァ
僧侶「はい。親子で、同じ『勇者』と言えど……別の人間でしょう?」
僧侶「全く……同じ、と言う事は……」
戦士「…… ……」
魔法使い「……理解してる?」
戦士「……プリン・ア・ラモード」
勇者「もう糖分消費したのかよ……」
魔法使い「コーヒーお変わりね」
勇者「……疑う訳では無いけど」
僧侶「いえ。言いたい事はわかります。勘違いじゃ無い……と、確かな事は言えません」
魔法使い「そもそも、どうして金の髪の勇者様の時に修理が必要だったのかしら」
勇者「あ……そう、だよな……」
戦士「元々が古い物なのかもしれん。修理したが魔王との激戦には耐えられず……」
僧侶「でも……困りましたね」
僧侶「もし、魔王を倒すのに、光の剣が必要だとするのなら」
勇者「そう……だな」
勇者「……これじゃ、な」ハァ
22: 2013/08/18(日) NY:AN:NY.AN ID:8SEL+NTvP
魔法使い「この王国の軍、って……確か、引き上げた、のよね?その洞窟から」
戦士「……と、聞いている」
僧侶「遠い、のですか?」
戦士「船があれば行けるだろうが……」
勇者「……この剣でしか、魔王が倒せないなら」
勇者「行く必要はあるだろう。だけど……」
魔法使い「『誰が直すのか』よね?」
勇者「うん。 ……鍛冶師様はもう……」
戦士「……お爺様の研究チームも、だな」
僧侶「取りあえず、この大陸を出ましょう?」
僧侶「……頼れば、勿論……船ぐらい、貸して頂けるでしょう。でも」
僧侶「もし、本当に必要なのなら」
僧侶「……自力で、得る方が」
魔法使い「そう、よね……」
勇者「……うん」
戦士「鍛冶師の村へ行けば……有力な手がかりがあるかもしれん」
戦士「お爺様の出身の地だ」
魔法使い「そうね。なら……魔導の街へも寄って見ましょう?」
魔法使い「……きっと、力を貸してくれるわ」
勇者「ああ、そうか。そうだよな、魔法使いは……」
魔法使い「……ええ」
僧侶「では、まずは船着き場へ行かないと行けませんね」
僧侶「この街へ来る途中、小さな街……村?がありました」
戦士「新しく出来たという街だな」
僧侶「はい。まずはそこを目指しましょう」
魔法使い「そうね……ゆっくり、進みましょう」
魔法使い「時間、掛かっても……じっくり経験を積んだ方が良いわよね」
戦士「……決まったな」
勇者「良し。じゃあ、まずはこの大陸の新しい街とやらを目指そう」
戦士「……と、聞いている」
僧侶「遠い、のですか?」
戦士「船があれば行けるだろうが……」
勇者「……この剣でしか、魔王が倒せないなら」
勇者「行く必要はあるだろう。だけど……」
魔法使い「『誰が直すのか』よね?」
勇者「うん。 ……鍛冶師様はもう……」
戦士「……お爺様の研究チームも、だな」
僧侶「取りあえず、この大陸を出ましょう?」
僧侶「……頼れば、勿論……船ぐらい、貸して頂けるでしょう。でも」
僧侶「もし、本当に必要なのなら」
僧侶「……自力で、得る方が」
魔法使い「そう、よね……」
勇者「……うん」
戦士「鍛冶師の村へ行けば……有力な手がかりがあるかもしれん」
戦士「お爺様の出身の地だ」
魔法使い「そうね。なら……魔導の街へも寄って見ましょう?」
魔法使い「……きっと、力を貸してくれるわ」
勇者「ああ、そうか。そうだよな、魔法使いは……」
魔法使い「……ええ」
僧侶「では、まずは船着き場へ行かないと行けませんね」
僧侶「この街へ来る途中、小さな街……村?がありました」
戦士「新しく出来たという街だな」
僧侶「はい。まずはそこを目指しましょう」
魔法使い「そうね……ゆっくり、進みましょう」
魔法使い「時間、掛かっても……じっくり経験を積んだ方が良いわよね」
戦士「……決まったな」
勇者「良し。じゃあ、まずはこの大陸の新しい街とやらを目指そう」
28: 2013/08/20(火) NY:AN:NY.AN ID:XMvQehRJP
……
………
…………
剣士(……勇者達は街を出たか)
剣士(俺が選ばれ無かった以上……もうこの街に用事は無いが……)
グイッ
剣士(!?)
剣士「……ッ 誰だ……ッ」
母親「シッ……私よ」
剣士「……お前……ッ」
………
…………
剣士(……勇者達は街を出たか)
剣士(俺が選ばれ無かった以上……もうこの街に用事は無いが……)
グイッ
剣士(!?)
剣士「……ッ 誰だ……ッ」
母親「シッ……私よ」
剣士「……お前……ッ」
29: 2013/08/20(火) NY:AN:NY.AN ID:XMvQehRJP
母親「……残念だったわね」
剣士「そう思ってる様には見えんがな」
母親「二人してフードすっぽり被ってれば表情なんかわからないでしょ」
剣士「……声だ」
母親「フン……」
剣士「…… ……何の用だ」
母親「行く当ては?」
剣士「お前に……何の関係がある」
母親「忘れたとは言わせないわよ?」
母親「……お父様の書類が無ければ、勇者との対面も果たせなかったでしょ」
母親「結果、連れて行って貰えなかったとしてもね」
剣士「そう思ってる様には見えんがな」
母親「二人してフードすっぽり被ってれば表情なんかわからないでしょ」
剣士「……声だ」
母親「フン……」
剣士「…… ……何の用だ」
母親「行く当ては?」
剣士「お前に……何の関係がある」
母親「忘れたとは言わせないわよ?」
母親「……お父様の書類が無ければ、勇者との対面も果たせなかったでしょ」
母親「結果、連れて行って貰えなかったとしてもね」
31: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:XMvQehRJP
剣士「…… ……」
母親「……本当に歳を取らないのね」
剣士「……それこそ、フードを被っていて何が解る」
母親「知らないの?手や首にこそ……『人』って言うのは年齢が出るのよ」
剣士「…… ……」
母親「それじゃあ、困るでしょう?」
母親「……それに、勇者は必ず…… 『うちの街』に来るわ」
剣士「…… ……」
母親「貴方は否応にも目立つ。登録所では勇者が居たから霞んだだけだって」
母親「……解って居るんでしょう」
剣士「まるで見ていた様な口ぶりだな」
母親「『見ていた』……のよ。私では無いけれどね」
剣士(偵察……か)ハァ
母親「あの子は試合が終わっても帰って来なかった」
母親「……負けたから帰りにくかったんでしょうね」
母親「でも、きっちりと勇者の仲間になった。選ばれた」
剣士「だからと言って、何故『帰ってくる』等と断言できる」
母親「……此処では話せないわ」
剣士「…… ……そんな無茶な話があるか」
母親「でもこれは『事実』」
剣士「…… ……」
母親「誰も監禁しようなんて気は無いわ」
母親「……万が一、違えば出て行けば良いだけでしょう?」
母親「……本当に歳を取らないのね」
剣士「……それこそ、フードを被っていて何が解る」
母親「知らないの?手や首にこそ……『人』って言うのは年齢が出るのよ」
剣士「…… ……」
母親「それじゃあ、困るでしょう?」
母親「……それに、勇者は必ず…… 『うちの街』に来るわ」
剣士「…… ……」
母親「貴方は否応にも目立つ。登録所では勇者が居たから霞んだだけだって」
母親「……解って居るんでしょう」
剣士「まるで見ていた様な口ぶりだな」
母親「『見ていた』……のよ。私では無いけれどね」
剣士(偵察……か)ハァ
母親「あの子は試合が終わっても帰って来なかった」
母親「……負けたから帰りにくかったんでしょうね」
母親「でも、きっちりと勇者の仲間になった。選ばれた」
剣士「だからと言って、何故『帰ってくる』等と断言できる」
母親「……此処では話せないわ」
剣士「…… ……そんな無茶な話があるか」
母親「でもこれは『事実』」
剣士「…… ……」
母親「誰も監禁しようなんて気は無いわ」
母親「……万が一、違えば出て行けば良いだけでしょう?」
32: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
剣士「……『恩もある』と続けたいのか」
母親「そうね。貴方は借りは返すと約束した」
母親「……誰も、取って食いやしないから安心しなさいよ」
剣士「…… ……」
母親「続きは船でね。残念ながら、特別便は用意できなかったけれど」
剣士「……不要だ、そんな物」
母親「返事と受け取るわよ……半刻後。待ち合わせは甲板の上」スタスタ
剣士「…… ……」
剣士(……手や、首、な。成る程)
剣士(老けたのはあの女と……恐らく、伴侶の男や、メイドも)
剣士(そして領主も)
剣士(…… ……変わらないのは、俺だけか)ハァ
剣士(半刻後…… ……魔導の街、か)
スタスタ
魔導将軍「…… ……」
魔導将軍(何を話してた、か迄は聞き取れなかったな)
魔導将軍(そんな事したら多分、向こうにも……ばれちゃう)
魔導将軍(……何処に行くのか、もう少し……追ってみる、かな)
魔導将軍(…… ……魔王に。勇者に、そっくりな紫の瞳の男)
魔導将軍(…… ……彼が、特異点?)
魔導将軍(でも、エルフの血を引く娘……あっちも気になるんだけど……)
魔導将軍(あっちは、そのうち会える……わね)
魔導将軍(……全く。后みたいに器用な真似、出来ないっての!)ハァ
母親「そうね。貴方は借りは返すと約束した」
母親「……誰も、取って食いやしないから安心しなさいよ」
剣士「…… ……」
母親「続きは船でね。残念ながら、特別便は用意できなかったけれど」
剣士「……不要だ、そんな物」
母親「返事と受け取るわよ……半刻後。待ち合わせは甲板の上」スタスタ
剣士「…… ……」
剣士(……手や、首、な。成る程)
剣士(老けたのはあの女と……恐らく、伴侶の男や、メイドも)
剣士(そして領主も)
剣士(…… ……変わらないのは、俺だけか)ハァ
剣士(半刻後…… ……魔導の街、か)
スタスタ
魔導将軍「…… ……」
魔導将軍(何を話してた、か迄は聞き取れなかったな)
魔導将軍(そんな事したら多分、向こうにも……ばれちゃう)
魔導将軍(……何処に行くのか、もう少し……追ってみる、かな)
魔導将軍(…… ……魔王に。勇者に、そっくりな紫の瞳の男)
魔導将軍(…… ……彼が、特異点?)
魔導将軍(でも、エルフの血を引く娘……あっちも気になるんだけど……)
魔導将軍(あっちは、そのうち会える……わね)
魔導将軍(……全く。后みたいに器用な真似、出来ないっての!)ハァ
33: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
……
………
…………
勇者「とりあえず、この川沿いを進もう。森に突き当たる……んだよな?」
戦士「ああ。森の途中に小高い丘がある。その付近に街が出来ている……筈だ」
僧侶「そうです……戦士さん、行かれた事は……無い、のですか?」
戦士「俺は街から出ることは無かったからな」
戦士「幼い頃に連れて行かれた事があるかどうか……までは、覚えて居ない」
魔法使い「不思議な場所、よね」
僧侶「え?」
魔法使い「始まりの街に来る時にも通ったけど……」
魔法使い「……随分、空気が澄んでいて、心地良かったわ」
僧侶「……お墓、があるんですよね、確か」
勇者「墓?」
僧侶「ええ……その。聞いた話、ですけど」
僧侶「……『エルフの加護』が、どう、とか」
魔法使い「…… ……エルフ?」
僧侶「はい……あの。詳しい事は……解りません、けど」
戦士「お祖母様の知人、とか言う……エルフが眠っているらしい」
勇者「そうなのか?」
戦士「酔っ払って帰って来た親父が言ってたに過ぎん、がな」
戦士「……『エルフの加護』とやらで浄化された美しい場所だと」
僧侶「…… ……」
戦士「素面の時に訪ねた事もあったんだが、詳しい話は知らない、んだそうだ」
戦士「…… ……ただ、二つ。墓があるのだ、と」
僧侶「二つ…… ……」
僧侶(多分……『女様』)
僧侶(私も、詳しくは聞いていないけれど……)
僧侶(あの教会にあった美しい女性の小さな、モニュメント)
僧侶(……隻腕の祈り女の)
魔法使い「僧侶?」
僧侶「あ、いえ……」ハッ
僧侶「……エルフ、と言うのは、それ程……特別な物、なのでしょうか、ね」
………
…………
勇者「とりあえず、この川沿いを進もう。森に突き当たる……んだよな?」
戦士「ああ。森の途中に小高い丘がある。その付近に街が出来ている……筈だ」
僧侶「そうです……戦士さん、行かれた事は……無い、のですか?」
戦士「俺は街から出ることは無かったからな」
戦士「幼い頃に連れて行かれた事があるかどうか……までは、覚えて居ない」
魔法使い「不思議な場所、よね」
僧侶「え?」
魔法使い「始まりの街に来る時にも通ったけど……」
魔法使い「……随分、空気が澄んでいて、心地良かったわ」
僧侶「……お墓、があるんですよね、確か」
勇者「墓?」
僧侶「ええ……その。聞いた話、ですけど」
僧侶「……『エルフの加護』が、どう、とか」
魔法使い「…… ……エルフ?」
僧侶「はい……あの。詳しい事は……解りません、けど」
戦士「お祖母様の知人、とか言う……エルフが眠っているらしい」
勇者「そうなのか?」
戦士「酔っ払って帰って来た親父が言ってたに過ぎん、がな」
戦士「……『エルフの加護』とやらで浄化された美しい場所だと」
僧侶「…… ……」
戦士「素面の時に訪ねた事もあったんだが、詳しい話は知らない、んだそうだ」
戦士「…… ……ただ、二つ。墓があるのだ、と」
僧侶「二つ…… ……」
僧侶(多分……『女様』)
僧侶(私も、詳しくは聞いていないけれど……)
僧侶(あの教会にあった美しい女性の小さな、モニュメント)
僧侶(……隻腕の祈り女の)
魔法使い「僧侶?」
僧侶「あ、いえ……」ハッ
僧侶「……エルフ、と言うのは、それ程……特別な物、なのでしょうか、ね」
37: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
勇者「俺は……名前、てか」
勇者「存在してる、て位しか知らないけど……」
戦士「俺も似た様なもんだ」
僧侶「……」
勇者「僧侶と魔法使いは、街には行った事がある、んだよな?」
魔法使い「通過した、に等しいけどね」
僧侶「私も少し滞在しただけです」
戦士「そこで一度宿を取る予定で良いだろう。港まで辿り着けるだろうとは」
戦士「思う、が……」
勇者「無理する必要は無いし、出来もしないだろう」
勇者「存在してる、て位しか知らないけど……」
戦士「俺も似た様なもんだ」
僧侶「……」
勇者「僧侶と魔法使いは、街には行った事がある、んだよな?」
魔法使い「通過した、に等しいけどね」
僧侶「私も少し滞在しただけです」
戦士「そこで一度宿を取る予定で良いだろう。港まで辿り着けるだろうとは」
戦士「思う、が……」
勇者「無理する必要は無いし、出来もしないだろう」
40: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
戦士「……だな。こうして立ち止まって居ても仕方あるまい。行こうか」
僧侶「あ、はい……!」
僧侶「それにしても……いつ見ても。美しい流れですね」
魔法使い「こうやってると……一見平和に見える、けどね」
戦士「……油断するなよ」
魔法使い「大丈夫……ああ、僧侶! そんなにのぞき込むと危な……ッ」
僧侶「大丈夫ですよ……キャッ」
バッシャーン!
勇者「僧侶!」
僧侶「あ、ああ……吃驚した……」
勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………」
僧侶「あれ、どうしたんですか」
勇者「おい、なんで濡れてないんだ」
僧侶「え?あれ……ほんとだ冷たくな……ッ ……!?」
ズズズ……
ズルズルズル……
魔法使い「!! 僧侶、後ろ!!」
ギャアアアアアアア!
僧侶「……ッ」バッ
僧侶(しまった、近い……これじゃ、弓が……ッ)
魔法使い「頭下げて! ……ッ 炎の手よ、その拳で焼き尽くせ!」
戦士「僧侶、動くな……ッ」
僧侶「あ、はい……!」
僧侶「それにしても……いつ見ても。美しい流れですね」
魔法使い「こうやってると……一見平和に見える、けどね」
戦士「……油断するなよ」
魔法使い「大丈夫……ああ、僧侶! そんなにのぞき込むと危な……ッ」
僧侶「大丈夫ですよ……キャッ」
バッシャーン!
勇者「僧侶!」
僧侶「あ、ああ……吃驚した……」
勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………」
僧侶「あれ、どうしたんですか」
勇者「おい、なんで濡れてないんだ」
僧侶「え?あれ……ほんとだ冷たくな……ッ ……!?」
ズズズ……
ズルズルズル……
魔法使い「!! 僧侶、後ろ!!」
ギャアアアアアアア!
僧侶「……ッ」バッ
僧侶(しまった、近い……これじゃ、弓が……ッ)
魔法使い「頭下げて! ……ッ 炎の手よ、その拳で焼き尽くせ!」
戦士「僧侶、動くな……ッ」
41: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
僧侶「!」ギュッ
勇者「馬鹿、目を閉じるな……!」
ギャア……ッ ギャウゥ……ッ
魔法使い「……大して、効いてない……ッ !?」
戦士「糞……ッ 勇者、僧侶を引っ張り上げろ!」タタタ……ッ
勇者「あ、ああ……ッ 僧侶!」
剣士「動くな! ……ッ 雷よ!」
ピシャアァン!
ギャアアアアアアアアアアアアア!
……バシャアアアアアン!
僧侶「きゃッ ……冷たいッ」
戦士「誰だ!?」
魔法使い(雷の魔法!?)
勇者「と、とにかく掴まれ!」グッ
僧侶「あ、あぁ……すみません……」クシュンッ
魔法使い(…… ……否。それより、今の……雷は……!?)
剣士「…… ……」スタッ
戦士(木の上から……!?)
勇者「あ!」
剣士「…… ……」
勇者(……登録所に居た、男……!?)
勇者「馬鹿、目を閉じるな……!」
ギャア……ッ ギャウゥ……ッ
魔法使い「……大して、効いてない……ッ !?」
戦士「糞……ッ 勇者、僧侶を引っ張り上げろ!」タタタ……ッ
勇者「あ、ああ……ッ 僧侶!」
剣士「動くな! ……ッ 雷よ!」
ピシャアァン!
ギャアアアアアアアアアアアアア!
……バシャアアアアアン!
僧侶「きゃッ ……冷たいッ」
戦士「誰だ!?」
魔法使い(雷の魔法!?)
勇者「と、とにかく掴まれ!」グッ
僧侶「あ、あぁ……すみません……」クシュンッ
魔法使い(…… ……否。それより、今の……雷は……!?)
剣士「…… ……」スタッ
戦士(木の上から……!?)
勇者「あ!」
剣士「…… ……」
勇者(……登録所に居た、男……!?)
42: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
勇者(間違い無い……!闇色の髪に、紫の瞳!)
勇者(……俺に、そっくりな……男……)
魔法使い(いくら……水棲の魔物、炎が聞きにくいのだろうとは言え)
魔法使い(……地面を伝って、痺れが伝わる。それに、紫の瞳……!)
魔法使い(まさか……彼!? 否……ッ まさか!)
僧侶(……紫、の……瞳……ッ 見た事無い!)
僧侶(それに……この、妙に……苦しい様な、悲しい様な、切ない様な)
僧侶(……否。歓喜にも似てる……何、これ……!これ、まるで……!)
戦士(勇者様にそっくりじゃ無いか……!)
戦士(……一撃、だった。一撃で……それに……)
戦士(何故、木の上……など、に。まさか……つけていた!?何者だ!?)
剣士「…… ……無事、か」
勇者「あ……ありがとう……御座いました」
剣士(何をしていたんだか……まだこんな所に居るとは)
剣士(……長居はできんと咄嗟に身を隠し、別の道を行こうと思ったが)
剣士(……まさか、捨て置いていく訳にも……否、しかし……)
剣士「悪いが急ぐ。ここら辺は水棲の魔物が多い」
剣士「……港を目指すなら、森を行け」クルッ
魔法使い「ま、待って!同じ方向に行くのなら……!」
勇者「魔法使い!」
魔法使い「!」ビクッ
勇者「……貴方、登録所に居た人ですよね?」
剣士「……俺は『共に行く者』では無い」
剣士「選んだのはお前だ、勇者様……自信を持て」
スタスタ
剣士(……余りにも未熟だ。だが……)
剣士(彼らは勇者に、運命に選ばれた者)
剣士(…… ……助けの手を差し伸べるべきでは、無いのだろう)
……
………
…………
勇者(……俺に、そっくりな……男……)
魔法使い(いくら……水棲の魔物、炎が聞きにくいのだろうとは言え)
魔法使い(……地面を伝って、痺れが伝わる。それに、紫の瞳……!)
魔法使い(まさか……彼!? 否……ッ まさか!)
僧侶(……紫、の……瞳……ッ 見た事無い!)
僧侶(それに……この、妙に……苦しい様な、悲しい様な、切ない様な)
僧侶(……否。歓喜にも似てる……何、これ……!これ、まるで……!)
戦士(勇者様にそっくりじゃ無いか……!)
戦士(……一撃、だった。一撃で……それに……)
戦士(何故、木の上……など、に。まさか……つけていた!?何者だ!?)
剣士「…… ……無事、か」
勇者「あ……ありがとう……御座いました」
剣士(何をしていたんだか……まだこんな所に居るとは)
剣士(……長居はできんと咄嗟に身を隠し、別の道を行こうと思ったが)
剣士(……まさか、捨て置いていく訳にも……否、しかし……)
剣士「悪いが急ぐ。ここら辺は水棲の魔物が多い」
剣士「……港を目指すなら、森を行け」クルッ
魔法使い「ま、待って!同じ方向に行くのなら……!」
勇者「魔法使い!」
魔法使い「!」ビクッ
勇者「……貴方、登録所に居た人ですよね?」
剣士「……俺は『共に行く者』では無い」
剣士「選んだのはお前だ、勇者様……自信を持て」
スタスタ
剣士(……余りにも未熟だ。だが……)
剣士(彼らは勇者に、運命に選ばれた者)
剣士(…… ……助けの手を差し伸べるべきでは、無いのだろう)
……
………
…………
44: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
母親「随分遅かったわね。来ないのかと思ったわ」
剣士「……半刻、と言うのが短すぎやしないか」
母親「私はたどり着いているわ」
剣士「…… ……」
母親「部屋は二部屋。同じが良かった?」
剣士「……話の続きを」
母親「……フン」
剣士(まさか勇者達に会ったとは言えまい)
剣士(しかし……大丈夫なのか?俺の心配する事では無い……のだろうが)
母親「そんなに勇者が気になるの?」
剣士「何?」
母親「心ここにあらず、ね」
剣士「……話の続きを、と言った筈だ」
母親「……ッ まあ、良いわ」フゥ
母親「『何故魔導の街に来ると言い切れるか』ね」
剣士「…… ……」
母親「魔法使いが居るから、よ」
剣士「あの娘か……逆とは考えんのか」
母親「逆?寄りつかない、と言いたいの?」
母親「あはは! ……あり得ないわね。あの子はずっと、私達の顔色を伺って育ってきた」
母親「『今度こそ褒めて貰えるはず、喜んでくれるはず』って」
母親「思っているに決まっているわ」
剣士「…… ……」ハァ
母親「言った筈よ。違えば貴方は何処へでも出て行けば良い」
母親「『絶対は無い』のよ」
剣士「……矛盾を話していると気がつかんものか」
母親「『信じている』のよ。自分の娘をね」
剣士(……突っ込む気にもなれん)
母親「貴方に損は無いでしょうが。可能性を真っ向から否定するのも」
母親「馬鹿らしいでしょう? ……それに。そんな呆れた様な顔をするなら」
母親「それこそ『どうして着いた来たの?』と……聞きたいわね」
剣士「…… ……」
母親「反論できないでしょう」クスクス
剣士「……半刻、と言うのが短すぎやしないか」
母親「私はたどり着いているわ」
剣士「…… ……」
母親「部屋は二部屋。同じが良かった?」
剣士「……話の続きを」
母親「……フン」
剣士(まさか勇者達に会ったとは言えまい)
剣士(しかし……大丈夫なのか?俺の心配する事では無い……のだろうが)
母親「そんなに勇者が気になるの?」
剣士「何?」
母親「心ここにあらず、ね」
剣士「……話の続きを、と言った筈だ」
母親「……ッ まあ、良いわ」フゥ
母親「『何故魔導の街に来ると言い切れるか』ね」
剣士「…… ……」
母親「魔法使いが居るから、よ」
剣士「あの娘か……逆とは考えんのか」
母親「逆?寄りつかない、と言いたいの?」
母親「あはは! ……あり得ないわね。あの子はずっと、私達の顔色を伺って育ってきた」
母親「『今度こそ褒めて貰えるはず、喜んでくれるはず』って」
母親「思っているに決まっているわ」
剣士「…… ……」ハァ
母親「言った筈よ。違えば貴方は何処へでも出て行けば良い」
母親「『絶対は無い』のよ」
剣士「……矛盾を話していると気がつかんものか」
母親「『信じている』のよ。自分の娘をね」
剣士(……突っ込む気にもなれん)
母親「貴方に損は無いでしょうが。可能性を真っ向から否定するのも」
母親「馬鹿らしいでしょう? ……それに。そんな呆れた様な顔をするなら」
母親「それこそ『どうして着いた来たの?』と……聞きたいわね」
剣士「…… ……」
母親「反論できないでしょう」クスクス
46: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
剣士「……魔法使いが望んだところで」
剣士「勇者が必要無しと判断すればどうするつもりだ」
母親「街に寄る必要?」
剣士「ああ」
母親「……まあ、それは着いたらゆっくり、ね」
母親「此処では言えない。それは解って頂戴」
母親「……今度こそ、歓待、受けてくれるわね?」
剣士「拒否権はあるのか」
母親「お客様をもてなしたいだけよ。物々しいわね」
剣士「…… ……」
剣士(何を企んでいるのか知らんが……)
剣士(……身を隠すには打って付け、か)
剣士(…… ……しかし、な。これで……良かったのか?)
剣士(選択を誤っていなければ……良いが)
……
………
…………
僧侶「あ、あの……すみません、私の……所為で……」
戦士「……そんなんじゃ無い。お前の所為では……」
勇者「そうだ。とにかく……無事で、良かったと……」
勇者(喜ぶべき……なんだよな?)
勇者(……空気が、重い)ハァ
魔法使い「……ご免なさい」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「……先を急ぎましょう。まだ、始まりの街から出て少しよ」
魔法使い「とにかく、次の街にたどり着かないと……!」スタスタ
僧侶「あ……魔法使いさん!」タタタ
勇者「なるべく隊列を崩さず、水辺から遠いところを歩こう……」
勇者「行こう、戦士。離れる訳には行かない」タタタ
戦士「あ、ああ……先頭は任せるぞ。殿に着く」
スタスタ……スタスタ……
剣士「勇者が必要無しと判断すればどうするつもりだ」
母親「街に寄る必要?」
剣士「ああ」
母親「……まあ、それは着いたらゆっくり、ね」
母親「此処では言えない。それは解って頂戴」
母親「……今度こそ、歓待、受けてくれるわね?」
剣士「拒否権はあるのか」
母親「お客様をもてなしたいだけよ。物々しいわね」
剣士「…… ……」
剣士(何を企んでいるのか知らんが……)
剣士(……身を隠すには打って付け、か)
剣士(…… ……しかし、な。これで……良かったのか?)
剣士(選択を誤っていなければ……良いが)
……
………
…………
僧侶「あ、あの……すみません、私の……所為で……」
戦士「……そんなんじゃ無い。お前の所為では……」
勇者「そうだ。とにかく……無事で、良かったと……」
勇者(喜ぶべき……なんだよな?)
勇者(……空気が、重い)ハァ
魔法使い「……ご免なさい」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「……先を急ぎましょう。まだ、始まりの街から出て少しよ」
魔法使い「とにかく、次の街にたどり着かないと……!」スタスタ
僧侶「あ……魔法使いさん!」タタタ
勇者「なるべく隊列を崩さず、水辺から遠いところを歩こう……」
勇者「行こう、戦士。離れる訳には行かない」タタタ
戦士「あ、ああ……先頭は任せるぞ。殿に着く」
スタスタ……スタスタ……
47: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
勇者(……俺にそっくりな、紫の瞳の男)
勇者(何者だ!?)
勇者(……随分と威力の強い……雷の魔法を使っていた)
勇者(俺は……選択を間違えた……否、違う!)ギュッ
勇者(……戦士も、僧侶も、魔法使いも)
勇者(『直感』で選んだ。目を引いたんだ。彼らしか居ないと……!)
勇者(俺は、勇者だ! ……間違えて無い。間違えてなんか、無い!)
勇者(『あの紫の瞳の男を選んでおけば』なんて……)
勇者(思っちゃ、いけないんだ……!)
クシュン!
勇者(……あ ……ッ)チラ
勇者(怪我は無かったみたいだが……僧侶、ずぶ濡れだった……)
勇者(……街まで、どれぐらいだ?)
勇者(日が……西の空が、紅い。もうすぐ日暮れ……)
勇者(……先に、身体を温めてやらないと、風邪を……否、でも……!)
勇者(しっかりしろ、俺!お前は、『勇者』なんだ!)
勇者(……でも、こんな所で野営なんて……!)
勇者(……あれ、でもなんで……僧侶、最初は……濡れて無かった、んだ?)
勇者(何者だ!?)
勇者(……随分と威力の強い……雷の魔法を使っていた)
勇者(俺は……選択を間違えた……否、違う!)ギュッ
勇者(……戦士も、僧侶も、魔法使いも)
勇者(『直感』で選んだ。目を引いたんだ。彼らしか居ないと……!)
勇者(俺は、勇者だ! ……間違えて無い。間違えてなんか、無い!)
勇者(『あの紫の瞳の男を選んでおけば』なんて……)
勇者(思っちゃ、いけないんだ……!)
クシュン!
勇者(……あ ……ッ)チラ
勇者(怪我は無かったみたいだが……僧侶、ずぶ濡れだった……)
勇者(……街まで、どれぐらいだ?)
勇者(日が……西の空が、紅い。もうすぐ日暮れ……)
勇者(……先に、身体を温めてやらないと、風邪を……否、でも……!)
勇者(しっかりしろ、俺!お前は、『勇者』なんだ!)
勇者(……でも、こんな所で野営なんて……!)
勇者(……あれ、でもなんで……僧侶、最初は……濡れて無かった、んだ?)
48: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
僧侶(寒い……ッ)ブルッ
僧侶(……でも、我が儘なんて言えない……ッ)
僧侶(言える雰囲気じゃ無い……誰も、一言も喋らない)
僧侶(すぐ近くを歩いているのに、空気が……冷えてるのが解る)
僧侶(特に…… ……)チラ
魔法使い「…… ……」
僧侶(魔法使いさん……)フゥ
僧侶(……『同じ方向に行くのなら』)
僧侶(勇者様の一声で黙られた、けれど……)
僧侶(……気がついてない振りなど、出来ない)
僧侶(信用……されて、無いのかな)
僧侶(仕方無いですよね。出会ったばかり……でも)
僧侶(……あの人、誰? 何者……)
僧侶(あの『苦しくて悲しくて切なくて、それでいて喜ばしい』感じは)
僧侶(……覚えがある!)
僧侶(でも、そんな筈は無い!)
僧侶(命の喪失と誕生は、魔王と勇者様のもの……!)
僧侶(……ッ)クシュンッ
僧侶(ばれちゃった……よね……)
僧侶(勇者様と、戦士さんは…… ……魔法使いさん、は……)
僧侶(……ちゃんと、話さないと……私達は、仲間なのに……!)
僧侶(……でも、我が儘なんて言えない……ッ)
僧侶(言える雰囲気じゃ無い……誰も、一言も喋らない)
僧侶(すぐ近くを歩いているのに、空気が……冷えてるのが解る)
僧侶(特に…… ……)チラ
魔法使い「…… ……」
僧侶(魔法使いさん……)フゥ
僧侶(……『同じ方向に行くのなら』)
僧侶(勇者様の一声で黙られた、けれど……)
僧侶(……気がついてない振りなど、出来ない)
僧侶(信用……されて、無いのかな)
僧侶(仕方無いですよね。出会ったばかり……でも)
僧侶(……あの人、誰? 何者……)
僧侶(あの『苦しくて悲しくて切なくて、それでいて喜ばしい』感じは)
僧侶(……覚えがある!)
僧侶(でも、そんな筈は無い!)
僧侶(命の喪失と誕生は、魔王と勇者様のもの……!)
僧侶(……ッ)クシュンッ
僧侶(ばれちゃった……よね……)
僧侶(勇者様と、戦士さんは…… ……魔法使いさん、は……)
僧侶(……ちゃんと、話さないと……私達は、仲間なのに……!)
49: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
魔法使い「…… ……」
魔法使い(あの男の人は……私の知る紫の瞳の人とは別人、なの?)
魔法使い(……否。それは……良い。今は……)
魔法使い(勇者様……気分、害したわよね。私…… ……)
魔法使い(勇者様より、仲間より……あの人を頼ろうとした)
魔法使い(……知り合いかもしれないから、なんて……!)
魔法使い(…… ……言い訳にも、ならないわよね)
魔法使い(あの男の事は、街に帰れば解る)
魔法使い(……お父様もお母様も、お爺様も、許してくれるわ)
魔法使い(勇者様の仲間になったんだもの……!)
魔法使い(そうすれば、私に、優れた加護が無い事も…… ……!)
魔法使い(駄目! ……僧侶は多分…… ……ッ)
魔法使い(……負けたくない……ッ 僧侶には……ッ)
魔法使い(謝らなきゃ、勇者様に!許して貰わないと……ッ)
魔法使い(それに…… ……)チラ
戦士「…… ……」
魔法使い(彼は、戦士は覚えて居た)
魔法使い(……あの時は、光の剣とかの話で、うやむやになったけど)
魔法使い(闘技大会の事…… ……火傷の跡、覚えてるはず)
魔法使い(……もう、いや!幻滅されるのは……いや……ッ)ギュッ
魔法使い(あの男の人は……私の知る紫の瞳の人とは別人、なの?)
魔法使い(……否。それは……良い。今は……)
魔法使い(勇者様……気分、害したわよね。私…… ……)
魔法使い(勇者様より、仲間より……あの人を頼ろうとした)
魔法使い(……知り合いかもしれないから、なんて……!)
魔法使い(…… ……言い訳にも、ならないわよね)
魔法使い(あの男の事は、街に帰れば解る)
魔法使い(……お父様もお母様も、お爺様も、許してくれるわ)
魔法使い(勇者様の仲間になったんだもの……!)
魔法使い(そうすれば、私に、優れた加護が無い事も…… ……!)
魔法使い(駄目! ……僧侶は多分…… ……ッ)
魔法使い(……負けたくない……ッ 僧侶には……ッ)
魔法使い(謝らなきゃ、勇者様に!許して貰わないと……ッ)
魔法使い(それに…… ……)チラ
戦士「…… ……」
魔法使い(彼は、戦士は覚えて居た)
魔法使い(……あの時は、光の剣とかの話で、うやむやになったけど)
魔法使い(闘技大会の事…… ……火傷の跡、覚えてるはず)
魔法使い(……もう、いや!幻滅されるのは……いや……ッ)ギュッ
50: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
戦士「…… ……」
戦士(何者なんだ?あの男…… ……)
戦士(勇者様と同じ顔をしてた。色というのは……凄いな)ハァ
戦士(印象があんなにも違う。まるで『光と闇』だ)
戦士(…… ……しかし、この雰囲気は……まずい)
戦士(出会ったばかり、とは言え……)
戦士(……あの男の言葉通り、森の中を進んで居るが)
戦士(皆……気持ちが此処に無い。否、俺も……か)ハァ
戦士(勇者様……多分前が見えていない。闇雲に進んでも……)
勇者「…… ……」
戦士(……背に覇気が無い。それに……僧侶のくしゃみも何度目か)
戦士(魔法使いの……あの言葉も気になる)
戦士(…… ……仕方無い。未熟を未熟と認めることも)
戦士(大切な筈だ)
戦士(『決して驕るな』…… ……ですよね、女剣士様)ギュッ
戦士(……ここは、随分心地が良い。良い場所だ……此処、しかないだろう)ピタ
戦士「勇者様!」
勇者「え?」ピタ
魔法使い「……?」
僧侶「戦士さん……?」
戦士(何者なんだ?あの男…… ……)
戦士(勇者様と同じ顔をしてた。色というのは……凄いな)ハァ
戦士(印象があんなにも違う。まるで『光と闇』だ)
戦士(…… ……しかし、この雰囲気は……まずい)
戦士(出会ったばかり、とは言え……)
戦士(……あの男の言葉通り、森の中を進んで居るが)
戦士(皆……気持ちが此処に無い。否、俺も……か)ハァ
戦士(勇者様……多分前が見えていない。闇雲に進んでも……)
勇者「…… ……」
戦士(……背に覇気が無い。それに……僧侶のくしゃみも何度目か)
戦士(魔法使いの……あの言葉も気になる)
戦士(…… ……仕方無い。未熟を未熟と認めることも)
戦士(大切な筈だ)
戦士(『決して驕るな』…… ……ですよね、女剣士様)ギュッ
戦士(……ここは、随分心地が良い。良い場所だ……此処、しかないだろう)ピタ
戦士「勇者様!」
勇者「え?」ピタ
魔法使い「……?」
僧侶「戦士さん……?」
51: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
戦士「……休もう」
勇者「え!?」
戦士「始まりの街から大して離れていないのは解って居る」
戦士「だが、僧侶を火に当たらせた方が良いだろうし……」
僧侶「あ、いえ、私は……ッ」
戦士「……魔法使いも、顔が蒼い」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「……戦士、野営の準備をしよう」
戦士「ああ。魔法使いと僧侶は休んでろ」
魔法使い「……ありがとう」
僧侶「す、すみません……」
……
………
…………
パチパチパチ……
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「え!?」
戦士「始まりの街から大して離れていないのは解って居る」
戦士「だが、僧侶を火に当たらせた方が良いだろうし……」
僧侶「あ、いえ、私は……ッ」
戦士「……魔法使いも、顔が蒼い」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「……戦士、野営の準備をしよう」
戦士「ああ。魔法使いと僧侶は休んでろ」
魔法使い「……ありがとう」
僧侶「す、すみません……」
……
………
…………
パチパチパチ……
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
52: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
勇者「……僧侶と魔法使いは、休んでくれ」
勇者「見張りは俺と戦士でやるから……良いよな?」
戦士「当然だ」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「何してる?二人とも」
僧侶「……いえ。すみません、お言葉に甘えます」
魔法使い「僧侶!?」
僧侶「私がこの侭体調を崩したりしたら、それこそ足を引っ張ってしまいます」
僧侶「……だから」
魔法使い「…… ……」
戦士「お前もだ、魔法使い」
魔法使い「でも……ッ」
戦士「魔力、て言うのは無限では無いのだろう?」
戦士「……良いから、休め。明日、又……戦闘があれば」
戦士「頼ってしまうのだから」
魔法使い「…… ……ありがとう」
勇者「…… ……」
僧侶「では、おやすみなさい」
魔法使い「……おやすみ」
戦士「先に俺が見ていよう。勇者様も休ん……」
勇者「……戦士は、凄いな」
戦士「え?」
勇者「流石、騎士団長様の息子、だ」ハァ
戦士「…… ……勇者様?」
勇者「俺は……勇者なのに。僧侶の……仲間の体調とか」
勇者「…… ……その」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」ハァ
勇者「見張りは俺と戦士でやるから……良いよな?」
戦士「当然だ」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「何してる?二人とも」
僧侶「……いえ。すみません、お言葉に甘えます」
魔法使い「僧侶!?」
僧侶「私がこの侭体調を崩したりしたら、それこそ足を引っ張ってしまいます」
僧侶「……だから」
魔法使い「…… ……」
戦士「お前もだ、魔法使い」
魔法使い「でも……ッ」
戦士「魔力、て言うのは無限では無いのだろう?」
戦士「……良いから、休め。明日、又……戦闘があれば」
戦士「頼ってしまうのだから」
魔法使い「…… ……ありがとう」
勇者「…… ……」
僧侶「では、おやすみなさい」
魔法使い「……おやすみ」
戦士「先に俺が見ていよう。勇者様も休ん……」
勇者「……戦士は、凄いな」
戦士「え?」
勇者「流石、騎士団長様の息子、だ」ハァ
戦士「…… ……勇者様?」
勇者「俺は……勇者なのに。僧侶の……仲間の体調とか」
勇者「…… ……その」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」ハァ
53: 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:WJHyl8KsP
勇者「俺達は仲間だ。だけど……俺は……」
勇者「『導いて』いける自信なんか…… ……ッ」
戦士「…… ……まだ、出会ったばかりなんだ」
戦士「俺は……多分、僧侶も魔法使いも」
戦士「まだ見ぬ『勇者』に幻想を抱いていた。それは……認める」
勇者「!」
戦士「だが、それは幻滅した、とかじゃ無い」
戦士「……上手く言えん。言えん……が……」
勇者「…… ……御免な、頼りない勇者で」
戦士「違う」
戦士「……『決して驕るな』なんだ」
勇者「驕るな?」
戦士「ああ。女剣士様が、ずっと言ってた言葉だ」
戦士「……親父にも言われ続けてきた」
戦士「絶対は無い」
勇者「……それは、母さんにも言われたな」
勇者「世の中に絶対は無い」
戦士「出来ない事は頼ってくれ。俺が頼りなければ」
戦士「僧侶でも魔法使いでも良いんだ」
戦士「……皆で、考えて一つずつ解決していけば良いんだ」
戦士「俺達は、未熟だ…… ……あの、紫の瞳の男」
勇者「……ッ」
戦士「あいつを選んでいれば、旅は楽だったかもしれん」
勇者「……違う!俺は、俺が選んだのは……ッ」
戦士「そう、思ってくれるなら」
戦士「……酷い言葉でも良いさ。思っている事を話して欲しい」
戦士「まずはそこから、だろう?」
勇者「『導いて』いける自信なんか…… ……ッ」
戦士「…… ……まだ、出会ったばかりなんだ」
戦士「俺は……多分、僧侶も魔法使いも」
戦士「まだ見ぬ『勇者』に幻想を抱いていた。それは……認める」
勇者「!」
戦士「だが、それは幻滅した、とかじゃ無い」
戦士「……上手く言えん。言えん……が……」
勇者「…… ……御免な、頼りない勇者で」
戦士「違う」
戦士「……『決して驕るな』なんだ」
勇者「驕るな?」
戦士「ああ。女剣士様が、ずっと言ってた言葉だ」
戦士「……親父にも言われ続けてきた」
戦士「絶対は無い」
勇者「……それは、母さんにも言われたな」
勇者「世の中に絶対は無い」
戦士「出来ない事は頼ってくれ。俺が頼りなければ」
戦士「僧侶でも魔法使いでも良いんだ」
戦士「……皆で、考えて一つずつ解決していけば良いんだ」
戦士「俺達は、未熟だ…… ……あの、紫の瞳の男」
勇者「……ッ」
戦士「あいつを選んでいれば、旅は楽だったかもしれん」
勇者「……違う!俺は、俺が選んだのは……ッ」
戦士「そう、思ってくれるなら」
戦士「……酷い言葉でも良いさ。思っている事を話して欲しい」
戦士「まずはそこから、だろう?」
54: 2013/08/22(木) NY:AN:NY.AN ID:ILonk6kOP
勇者「戦士…… ……」
戦士「偉そうに言ってしまって済まない。だが……勇者様が悩んでいたら」
戦士「やはり……『仲間』として心配になる」
勇者「…… ……」
戦士「俺も……否、俺自身にも、もう一度」
戦士「『驕るな』と言い聞かせねばならん」
勇者「え?」
戦士「俺は……その、勇者様の小さな背を守ってやらねば、と」
戦士「そう、思っていた。だが……それは『驕り』だろう」
勇者「……共に、高め合って行けば良いんだよな」
戦士「ああ。それは……あの紫の瞳の男を選んでいれば出来にくかったかもしれん」
勇者「あの人……強そうだったもんな」クス
戦士「悔しいけれどな」
勇者「……なあ」
戦士「ん?」
勇者「『様』はやめてくれ。明日、僧侶と魔法使いにも言う」
戦士「……勇者がそういうなら」
勇者「ああ…… ……あの人、何者なんだろうな」
戦士「……解らん、が…… ……そっくり、だな」
勇者「妙な既視感は……顔の所為なんだろうけどさ」
戦士「既視感?」
勇者「ああ……どこかで、会ったことある様な……」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「似ているのは作りだけだ。印象も表情も違うぞ」
勇者「そうか?」
戦士「……まるで『光と闇』だ」
勇者「光、と…… 闇」
戦士「…… ……」
戦士「偉そうに言ってしまって済まない。だが……勇者様が悩んでいたら」
戦士「やはり……『仲間』として心配になる」
勇者「…… ……」
戦士「俺も……否、俺自身にも、もう一度」
戦士「『驕るな』と言い聞かせねばならん」
勇者「え?」
戦士「俺は……その、勇者様の小さな背を守ってやらねば、と」
戦士「そう、思っていた。だが……それは『驕り』だろう」
勇者「……共に、高め合って行けば良いんだよな」
戦士「ああ。それは……あの紫の瞳の男を選んでいれば出来にくかったかもしれん」
勇者「あの人……強そうだったもんな」クス
戦士「悔しいけれどな」
勇者「……なあ」
戦士「ん?」
勇者「『様』はやめてくれ。明日、僧侶と魔法使いにも言う」
戦士「……勇者がそういうなら」
勇者「ああ…… ……あの人、何者なんだろうな」
戦士「……解らん、が…… ……そっくり、だな」
勇者「妙な既視感は……顔の所為なんだろうけどさ」
戦士「既視感?」
勇者「ああ……どこかで、会ったことある様な……」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「似ているのは作りだけだ。印象も表情も違うぞ」
勇者「そうか?」
戦士「……まるで『光と闇』だ」
勇者「光、と…… 闇」
戦士「…… ……」
55: 2013/08/22(木) NY:AN:NY.AN ID:ILonk6kOP
勇者「……謎だらけだよな」
戦士「考え出したらきりが無い」
勇者「そう、何だけど……」
戦士「とにかく、先に休め。明日は朝から……狩りでもしよう」
勇者「狩り!?」
戦士「非常食など準備していないだろう?」
勇者「……そうだな」
戦士「何度か経験がある。起きれば、僧侶を連れて行く」
勇者「え?」
戦士「弓を使えるのなら、頼れるだろう」
戦士「……お前は魔法使いを見ておいてやれ」
戦士「少し……様子がおかしかった」
勇者「……本当に、よく見てるな」
戦士「気のせいであれば良いんだがな」
勇者「……否、解った。だけど、だったら戦士が先に休んでくれ」
勇者「朝早いだろうし……俺は、少し元気が出たよ」
戦士「……そうか。ならば甘えよう」
勇者「ああ。三刻で起こす。頼りにしてるぜ」
戦士「了解……おやすみ、勇者」
勇者「……ああ」
……
………
…………
勇者(三人は……休んだか。寝息が聞こえる……それだけ、森が静かだって事か)
勇者(それほど街から離れていないのに……光が遠い。寂しい物だ)
勇者(解ってる…… ……無理ができる程俺たちは強くない)
勇者(焦るな。俺は……勇者だ)
勇者(『決して驕るな』 ……大丈夫だ)フゥ
勇者(魔法使い……僧侶が川に落ちてからどうにも様子がおかしかった)
勇者(僧侶が……水に濡れていないのを見て……顔が青くなってた)
勇者(随分苛々してた様だった……それに、あの、俺にそっくりな男)
勇者(街に着いたら、ゆっくり話そう)
勇者(仲間だ。信じるんだ。俺は……『勇者』だ!)
戦士「考え出したらきりが無い」
勇者「そう、何だけど……」
戦士「とにかく、先に休め。明日は朝から……狩りでもしよう」
勇者「狩り!?」
戦士「非常食など準備していないだろう?」
勇者「……そうだな」
戦士「何度か経験がある。起きれば、僧侶を連れて行く」
勇者「え?」
戦士「弓を使えるのなら、頼れるだろう」
戦士「……お前は魔法使いを見ておいてやれ」
戦士「少し……様子がおかしかった」
勇者「……本当に、よく見てるな」
戦士「気のせいであれば良いんだがな」
勇者「……否、解った。だけど、だったら戦士が先に休んでくれ」
勇者「朝早いだろうし……俺は、少し元気が出たよ」
戦士「……そうか。ならば甘えよう」
勇者「ああ。三刻で起こす。頼りにしてるぜ」
戦士「了解……おやすみ、勇者」
勇者「……ああ」
……
………
…………
勇者(三人は……休んだか。寝息が聞こえる……それだけ、森が静かだって事か)
勇者(それほど街から離れていないのに……光が遠い。寂しい物だ)
勇者(解ってる…… ……無理ができる程俺たちは強くない)
勇者(焦るな。俺は……勇者だ)
勇者(『決して驕るな』 ……大丈夫だ)フゥ
勇者(魔法使い……僧侶が川に落ちてからどうにも様子がおかしかった)
勇者(僧侶が……水に濡れていないのを見て……顔が青くなってた)
勇者(随分苛々してた様だった……それに、あの、俺にそっくりな男)
勇者(街に着いたら、ゆっくり話そう)
勇者(仲間だ。信じるんだ。俺は……『勇者』だ!)
56: 2013/08/22(木) NY:AN:NY.AN ID:ILonk6kOP
魔法使い(……眠れない)
魔法使い(戦士と勇者様は、何を話してたの!?)
魔法使い(私の……火傷の事……ッ)
魔法使い(気にしても仕方無い……何れ、バレる……ッ でも……ッ)
魔法使い(……ッ 嫉妬じゃ無い! この私が…!?)
魔法使い(落ち着くのよ、魔法使い。私は……父と母の娘!)
魔法使い(……特別じゃ無い。『雷』は特別なんかじゃない!)
魔法使い(私は勇者様に選ばれた!あの紫の瞳の男は、選ばれなかった!)
魔法使い(僧侶は……ッ ……ッ ああ……ッ)
僧侶(ん……物音……?)
僧侶(あの……影は、勇者様)
僧侶(では……休まれたのは、戦士さん…… ……)
僧侶(…… ……静か。風が気持ちいい)
僧侶(戦士さんが選ばれた場所。ならば安心できる。だけど……)
僧侶(…… ……これは、何なのだろう?)
僧侶(どうして私は、こうして……『感じる』の)
僧侶(『勇者』……は、特別)
僧侶(では……あの紫の瞳、の…… ……彼、は ……)
僧侶(エルフ、って…… な…… に……)スゥ
戦士(随分、偉そうな事を言ってしまったな)
戦士(……出しゃばりすぎて無ければ良いが)
戦士(あの紫の瞳の男……もし、あいつが居れば)
戦士(……否。勇者に気にするなと言っておきながら)
戦士(気にしているのは俺自身だ)
戦士(あれほどの力があれば……ん?)
戦士(あいつは確か、剣を握っていたな)
戦士(……しかし、魔法を使ったのもあいつだろう)
戦士(…… ……)ハァ
戦士(嫉妬だ。これは……俺は、剣もろくに……)
戦士(否! ……出来る事をすれば良いんだ)
戦士(……眠るんだ、戦士。勇者と変わってやらねば……)
魔法使い(戦士と勇者様は、何を話してたの!?)
魔法使い(私の……火傷の事……ッ)
魔法使い(気にしても仕方無い……何れ、バレる……ッ でも……ッ)
魔法使い(……ッ 嫉妬じゃ無い! この私が…!?)
魔法使い(落ち着くのよ、魔法使い。私は……父と母の娘!)
魔法使い(……特別じゃ無い。『雷』は特別なんかじゃない!)
魔法使い(私は勇者様に選ばれた!あの紫の瞳の男は、選ばれなかった!)
魔法使い(僧侶は……ッ ……ッ ああ……ッ)
僧侶(ん……物音……?)
僧侶(あの……影は、勇者様)
僧侶(では……休まれたのは、戦士さん…… ……)
僧侶(…… ……静か。風が気持ちいい)
僧侶(戦士さんが選ばれた場所。ならば安心できる。だけど……)
僧侶(…… ……これは、何なのだろう?)
僧侶(どうして私は、こうして……『感じる』の)
僧侶(『勇者』……は、特別)
僧侶(では……あの紫の瞳、の…… ……彼、は ……)
僧侶(エルフ、って…… な…… に……)スゥ
戦士(随分、偉そうな事を言ってしまったな)
戦士(……出しゃばりすぎて無ければ良いが)
戦士(あの紫の瞳の男……もし、あいつが居れば)
戦士(……否。勇者に気にするなと言っておきながら)
戦士(気にしているのは俺自身だ)
戦士(あれほどの力があれば……ん?)
戦士(あいつは確か、剣を握っていたな)
戦士(……しかし、魔法を使ったのもあいつだろう)
戦士(…… ……)ハァ
戦士(嫉妬だ。これは……俺は、剣もろくに……)
戦士(否! ……出来る事をすれば良いんだ)
戦士(……眠るんだ、戦士。勇者と変わってやらねば……)
57: 2013/08/22(木) NY:AN:NY.AN ID:ILonk6kOP
……
………
…………
魔導将軍「悩みなさい、思いなさい」
魔導将軍「それが生きると言う事」
魔導将軍「……なんてね」
魔導将軍「ああ、時間食っちゃった。あの事務員……無事だったかな?」
魔導将軍「久しぶりに元の姿に戻ったら……なんか変な感じ」
魔導将軍「さて……どうするかな」
魔導将軍(あの紫の瞳の男は……船で行っちゃったし)
魔導将軍(港街から何処に行くのか…… ……もう少しだけ、見ておくか)
魔導将軍「勇者、頑張るのよ? ……貴方なら。貴方達なら、きっと……」
魔導将軍「ちょっと……楽しかったな、人間ごっこ」
魔導将軍「人間ごっこ、か……」ハァ
魔導将軍(……不思議よね。私も……確かに人間だったのにな)
魔導将軍「さて……船は、と」
バッサバッサバッサ………
………
…………
魔導将軍「悩みなさい、思いなさい」
魔導将軍「それが生きると言う事」
魔導将軍「……なんてね」
魔導将軍「ああ、時間食っちゃった。あの事務員……無事だったかな?」
魔導将軍「久しぶりに元の姿に戻ったら……なんか変な感じ」
魔導将軍「さて……どうするかな」
魔導将軍(あの紫の瞳の男は……船で行っちゃったし)
魔導将軍(港街から何処に行くのか…… ……もう少しだけ、見ておくか)
魔導将軍「勇者、頑張るのよ? ……貴方なら。貴方達なら、きっと……」
魔導将軍「ちょっと……楽しかったな、人間ごっこ」
魔導将軍「人間ごっこ、か……」ハァ
魔導将軍(……不思議よね。私も……確かに人間だったのにな)
魔導将軍「さて……船は、と」
バッサバッサバッサ………
69: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
剣士「! ……あれは……」
母親「どうしたの。港街に……この街に用事なんか無いわよ」
剣士「……何でも無い。船は、あれか?」
母親「ええ。それがどうしたの」
剣士「…… ……否」
剣士(『特別便の用意など』か)
剣士(……相変わらず信用の置けん女だ)
母親「安心しなさいよ。こっちもちゃんと二部屋取ってあるわ」スタスタ
剣士(…… ……魔導の街に着くのは明日、か)スタスタ
海賊「どうぞ、お乗り下さい……すぐに出港致します」
剣士(……見た事の無い顔。当然だな)
剣士(もう……随分と昔だ)
母親「船室に案内して頂戴」
海賊「はい。此方へどうぞ」
剣士「…… ……俺はもう休む。話も無いだろう」
母親「あら。一杯ぐらい如何?」
剣士「結構」
海賊「此方と此方のお部屋にどうぞ」
剣士「…… ……」スタスタ。パタン
母親「……本当につれない男ね」フゥ
母親「私も休むわ。船長は?」
海賊「舵を握ってますから」
母親「そう……着いたら起こして」パタン
海賊「…… ……」ハァ
スタスタ
剣士(……母親は隣室、か)
剣士(しかし…… ……懐かしいな)
剣士(変わらない。相変わらず趣味の良い調度品)キョロ
剣士(また……この船に乗ることになるとはな)
母親「どうしたの。港街に……この街に用事なんか無いわよ」
剣士「……何でも無い。船は、あれか?」
母親「ええ。それがどうしたの」
剣士「…… ……否」
剣士(『特別便の用意など』か)
剣士(……相変わらず信用の置けん女だ)
母親「安心しなさいよ。こっちもちゃんと二部屋取ってあるわ」スタスタ
剣士(…… ……魔導の街に着くのは明日、か)スタスタ
海賊「どうぞ、お乗り下さい……すぐに出港致します」
剣士(……見た事の無い顔。当然だな)
剣士(もう……随分と昔だ)
母親「船室に案内して頂戴」
海賊「はい。此方へどうぞ」
剣士「…… ……俺はもう休む。話も無いだろう」
母親「あら。一杯ぐらい如何?」
剣士「結構」
海賊「此方と此方のお部屋にどうぞ」
剣士「…… ……」スタスタ。パタン
母親「……本当につれない男ね」フゥ
母親「私も休むわ。船長は?」
海賊「舵を握ってますから」
母親「そう……着いたら起こして」パタン
海賊「…… ……」ハァ
スタスタ
剣士(……母親は隣室、か)
剣士(しかし…… ……懐かしいな)
剣士(変わらない。相変わらず趣味の良い調度品)キョロ
剣士(また……この船に乗ることになるとはな)
70: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
剣士(足音……聞こえなくなったな)
剣士(タキシードなど着ていたが……この船に乗って居る、と言う事は)
剣士(……海賊の一人なのだろうな)
剣士(…… ……船長は操舵室か)
剣士(会うべきでは……無いのだろう、が……)
カチャ、パタン
剣士「……」
剣士(扉の音……母親が外に出たのか?)
剣士(……違うな。話し声までは聞こえないが)
カチャ……パタン
剣士(母親が船長に依頼したのだろうな。何処でつながりがあったのか)
剣士(そこまでは……解らん、が)
剣士(…… ……船長の事だ。手広くやっているのだろう)
コンコン
剣士「! ……誰だ?」
船長「ルームサービスです」
剣士(この声…… ……船長、か!?)
剣士「頼んでいないが」
船長「……母親様からです」
剣士「…… ……入ってくれ」
カチャ
船長「失礼します」
剣士(タキシードなど着ていたが……この船に乗って居る、と言う事は)
剣士(……海賊の一人なのだろうな)
剣士(…… ……船長は操舵室か)
剣士(会うべきでは……無いのだろう、が……)
カチャ、パタン
剣士「……」
剣士(扉の音……母親が外に出たのか?)
剣士(……違うな。話し声までは聞こえないが)
カチャ……パタン
剣士(母親が船長に依頼したのだろうな。何処でつながりがあったのか)
剣士(そこまでは……解らん、が)
剣士(…… ……船長の事だ。手広くやっているのだろう)
コンコン
剣士「! ……誰だ?」
船長「ルームサービスです」
剣士(この声…… ……船長、か!?)
剣士「頼んでいないが」
船長「……母親様からです」
剣士「…… ……入ってくれ」
カチャ
船長「失礼します」
71: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
パタン
剣士「……適当に」
船長「はい」カチャカチャ
剣士(…… ……随分、老けた。当然……か)
船長(部屋の中でもフードも取らず……怪しい男だな)
船長(酒を持っていってやってくれと言われたのはいいが)
船長(……仕事とは言え、相変わらず良く解らない女だよ)フゥ
剣士(気がついていない、か……当然だ)
船長「……ではどうぞ、ごゆっくり」
船長「到着は明日の朝で御座います」
剣士「ああ。ありがとう……ああ、すまんが」スッ
船長「はい?」
船長(…… ……?何だ?唇に手を当てて)
剣士「……声を、出すなよ」ボソ
船長「?」
船長(おいおいおい、何だよこい……つ……ッ)
剣士「……」パサ
船長「……ッ!! ……け……ッ!」
剣士「シッ」
船長(まさか…… ……ッ 剣士!?)
剣士「…… ……」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「…… ……」フラフラ……ギュッ
剣士「…… ……」ギュ、ゥ
船長「剣士……、か……!?本当に……ッ」
剣士「……シィ」
剣士「母親は?」
船長「……三刻後、甲板に」ボソ
剣士「?」
船長「あの女にも酒を振る舞った。少ししたら眠るだろう」
剣士「…… ……解った」
船長「お前は口をつけるな。随分きついモンだ」
剣士「……」スッ
船長(頬を撫でる指も、変わらない。あの時の侭だ……)
剣士「……適当に」
船長「はい」カチャカチャ
剣士(…… ……随分、老けた。当然……か)
船長(部屋の中でもフードも取らず……怪しい男だな)
船長(酒を持っていってやってくれと言われたのはいいが)
船長(……仕事とは言え、相変わらず良く解らない女だよ)フゥ
剣士(気がついていない、か……当然だ)
船長「……ではどうぞ、ごゆっくり」
船長「到着は明日の朝で御座います」
剣士「ああ。ありがとう……ああ、すまんが」スッ
船長「はい?」
船長(…… ……?何だ?唇に手を当てて)
剣士「……声を、出すなよ」ボソ
船長「?」
船長(おいおいおい、何だよこい……つ……ッ)
剣士「……」パサ
船長「……ッ!! ……け……ッ!」
剣士「シッ」
船長(まさか…… ……ッ 剣士!?)
剣士「…… ……」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「…… ……」フラフラ……ギュッ
剣士「…… ……」ギュ、ゥ
船長「剣士……、か……!?本当に……ッ」
剣士「……シィ」
剣士「母親は?」
船長「……三刻後、甲板に」ボソ
剣士「?」
船長「あの女にも酒を振る舞った。少ししたら眠るだろう」
剣士「…… ……解った」
船長「お前は口をつけるな。随分きついモンだ」
剣士「……」スッ
船長(頬を撫でる指も、変わらない。あの時の侭だ……)
72: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
船長(歳を取ったのは、アタシだけ……か)
船長(……本当に、人間じゃ無いんだな)
船長(触れたい。触れて欲しい。だけど……)スッ
剣士「……船長?」
船長「……では、失礼致します」
パタン
船長(剣士…… ……ッ)ポロポロポロ
船長「……ッ」グイッ
船長(…… ……アタシ、は)
船長(……ああ……ッ)
タタタ
船長「!」ゴシゴシ
海賊「あ、船長」
船長「……どうした?」
海賊「メイドが呼んでましたけど」
船長「酒は持っていったぞ」
海賊「……報告を、だそうです」
船長「相変わらず面倒臭ぇな……まあ良い」
船長「行くよ……悪いが三刻後、舵を変わってくれ」
海賊「え?ああ……そりゃ構いませんけど」
船長「あいつは?」
海賊「魔導の街の人間は苦手だって、もうぼっちゃんと寝てますよ」
船長「…… ……そうか」ホッ
海賊「??」
スタスタ
船長(……本当に、人間じゃ無いんだな)
船長(触れたい。触れて欲しい。だけど……)スッ
剣士「……船長?」
船長「……では、失礼致します」
パタン
船長(剣士…… ……ッ)ポロポロポロ
船長「……ッ」グイッ
船長(…… ……アタシ、は)
船長(……ああ……ッ)
タタタ
船長「!」ゴシゴシ
海賊「あ、船長」
船長「……どうした?」
海賊「メイドが呼んでましたけど」
船長「酒は持っていったぞ」
海賊「……報告を、だそうです」
船長「相変わらず面倒臭ぇな……まあ良い」
船長「行くよ……悪いが三刻後、舵を変わってくれ」
海賊「え?ああ……そりゃ構いませんけど」
船長「あいつは?」
海賊「魔導の街の人間は苦手だって、もうぼっちゃんと寝てますよ」
船長「…… ……そうか」ホッ
海賊「??」
スタスタ
74: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
船長(…… ……今日だけだ。今日……だけ……)
カチャ、パタン
メイド「お疲れ様です船長様。ご報告を」
船長「母親と連れの男に酒は振る舞ったぜ」
メイド「母親様は何と?」
船長「なるべく早くに魔導の街に着く様に、だとよ」
船長「……金も受け取った」
メイド「そうですか」
船長「お前達は着いたらすぐに降りろと伝えておけと」
メイド「はい。承知しています。後は……」
船長「……また、当分街に近づくな、って言いたいんだろう」
メイド「はい。何かありましたら、使者が向かいます」
船長「…… ……」
船長(本当に不思議な奴らだ。世界中に密偵とやらを送り込んでるとか言うが)
船長(……嘘じゃネェんだろうな。じゃなきゃ、都合良く行く先々で)
船長(アタシらに接触できる筈もネェ)
メイド「では、魔導の街に着くまで、私も休みます」
船長「ああ。何時も悪いね、物置部屋で」
メイド「お気になさらず。では」スタスタ
パタン
船長「…… ……」
船長(様子見て戻るか……)スタスタ
船長(……今日だけ、だ。本当に……今日、だけ……ッ)
カチャ……
船長(…… ……真っ暗だな。寝てる、のか?)
男「……ん?」
船長「悪い。起こしたか」
男「ああ、船長か……良いよ。大丈夫」
男「あ、電気はつけるなよ」
カチャ、パタン
メイド「お疲れ様です船長様。ご報告を」
船長「母親と連れの男に酒は振る舞ったぜ」
メイド「母親様は何と?」
船長「なるべく早くに魔導の街に着く様に、だとよ」
船長「……金も受け取った」
メイド「そうですか」
船長「お前達は着いたらすぐに降りろと伝えておけと」
メイド「はい。承知しています。後は……」
船長「……また、当分街に近づくな、って言いたいんだろう」
メイド「はい。何かありましたら、使者が向かいます」
船長「…… ……」
船長(本当に不思議な奴らだ。世界中に密偵とやらを送り込んでるとか言うが)
船長(……嘘じゃネェんだろうな。じゃなきゃ、都合良く行く先々で)
船長(アタシらに接触できる筈もネェ)
メイド「では、魔導の街に着くまで、私も休みます」
船長「ああ。何時も悪いね、物置部屋で」
メイド「お気になさらず。では」スタスタ
パタン
船長「…… ……」
船長(様子見て戻るか……)スタスタ
船長(……今日だけ、だ。本当に……今日、だけ……ッ)
カチャ……
船長(…… ……真っ暗だな。寝てる、のか?)
男「……ん?」
船長「悪い。起こしたか」
男「ああ、船長か……良いよ。大丈夫」
男「あ、電気はつけるなよ」
75: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
船長「解ってる……チビは?」
男「寝てるよ」
チビ(スゥスゥ)
船長「……そうか」ホッ
男「もう海の上か?」
船長「ああ。着くのは明日の朝だ。お前も寝てろ」
船長「……苦手なんだろう、あいつら」
男「あの手の人間共はねぇ……」
船長「……ま、アタシも、だ。すぐに寝たのか?あれから」
男「こいつも苦手なんだろ。本読みながら寝ちまったよ」
船長「……誰に似たんだかな」クス
男「俺に似ても船長に似ても、頭は良くならネェだろうになぁ」クスクス
船長「否定できねぇな……残念ながら」
男「……魔導の街に着いたらどうするんだ?」
船長「前回もそうだったが、当分近づくな、だろうさ」
船長「じーさんとこでも行くか」
男「里帰りか」
船長「お前のな。いやか?」
男「……あのジジィ、また妙な彫刻とか増やしてなきゃ良いけどな」
船長「良い趣味してんじゃネェか……いつも親父を思い出すよ」
男「俺には審美眼なんてネェからなぁ」
船長「……準備しとけよ。暫くはバカンスだ」
船長「…… ……現実忘れるぐらい、楽しい事しようぜ」
男「……どうした?」
船長「え?」
男「暗くて表情まで見えネェが……」
男「……なんかあったか?辛そうな声だな」
船長「……こんな恰好させられて、慣れない敬語なんか使わされてみろよ」
船長「疲れもするぜ」
男「違いネェ」クスクス
船長「……行くよ。海賊に任せっぱなしにはできねぇしな」
男「無理すんなよ」
船長「ああ……ゆっくり寝とけ」
男「おやすみ、船長」ス……ギュ
船長「! ……ああ」チュ
男「ほっぺにちゅーとか可愛いことするなぁ」クスクス
男「寝てるよ」
チビ(スゥスゥ)
船長「……そうか」ホッ
男「もう海の上か?」
船長「ああ。着くのは明日の朝だ。お前も寝てろ」
船長「……苦手なんだろう、あいつら」
男「あの手の人間共はねぇ……」
船長「……ま、アタシも、だ。すぐに寝たのか?あれから」
男「こいつも苦手なんだろ。本読みながら寝ちまったよ」
船長「……誰に似たんだかな」クス
男「俺に似ても船長に似ても、頭は良くならネェだろうになぁ」クスクス
船長「否定できねぇな……残念ながら」
男「……魔導の街に着いたらどうするんだ?」
船長「前回もそうだったが、当分近づくな、だろうさ」
船長「じーさんとこでも行くか」
男「里帰りか」
船長「お前のな。いやか?」
男「……あのジジィ、また妙な彫刻とか増やしてなきゃ良いけどな」
船長「良い趣味してんじゃネェか……いつも親父を思い出すよ」
男「俺には審美眼なんてネェからなぁ」
船長「……準備しとけよ。暫くはバカンスだ」
船長「…… ……現実忘れるぐらい、楽しい事しようぜ」
男「……どうした?」
船長「え?」
男「暗くて表情まで見えネェが……」
男「……なんかあったか?辛そうな声だな」
船長「……こんな恰好させられて、慣れない敬語なんか使わされてみろよ」
船長「疲れもするぜ」
男「違いネェ」クスクス
船長「……行くよ。海賊に任せっぱなしにはできねぇしな」
男「無理すんなよ」
船長「ああ……ゆっくり寝とけ」
男「おやすみ、船長」ス……ギュ
船長「! ……ああ」チュ
男「ほっぺにちゅーとか可愛いことするなぁ」クスクス
76: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
船長「……じゃあな。お休み」
男「おう」
パタン
船長(…… ……今日だけ、だ……ッ)
……
………
…………
剣士(……船長は……ああ、あれか)スタスタ
船長「……良いのか。マント無しで」
剣士「『行き過ぎた詮索は身を滅ぼす』ってのが教育方針なんだろう」
船長「…… ……お前は、本当に変わらないんだな」
剣士「……みたいだな」
船長「勇者に……会えなかったのか?」
剣士「否……選ばれなかったに過ぎん」
船長「お前が!?」
剣士「……以前の闘技大会の時」
船長「?」
剣士「始まりの街に居ただろう」
船長「……え」
剣士「……見かけたんだ。声をかける事は不可能だったが」
船長「……そう、か」フィ
剣士「…… ……」
剣士「悪かった。今日も……黙っておけば、解らなかっただろうに」
船長「……そんなに、見ないでくれ」
剣士「船長?」
船長「アタシはもう若くない」
剣士「……美しさは変わらん」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「あの時、は」
剣士「?」
男「おう」
パタン
船長(…… ……今日だけ、だ……ッ)
……
………
…………
剣士(……船長は……ああ、あれか)スタスタ
船長「……良いのか。マント無しで」
剣士「『行き過ぎた詮索は身を滅ぼす』ってのが教育方針なんだろう」
船長「…… ……お前は、本当に変わらないんだな」
剣士「……みたいだな」
船長「勇者に……会えなかったのか?」
剣士「否……選ばれなかったに過ぎん」
船長「お前が!?」
剣士「……以前の闘技大会の時」
船長「?」
剣士「始まりの街に居ただろう」
船長「……え」
剣士「……見かけたんだ。声をかける事は不可能だったが」
船長「……そう、か」フィ
剣士「…… ……」
剣士「悪かった。今日も……黙っておけば、解らなかっただろうに」
船長「……そんなに、見ないでくれ」
剣士「船長?」
船長「アタシはもう若くない」
剣士「……美しさは変わらん」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「あの時、は」
剣士「?」
77: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
船長「あの女の娘……領主の孫娘、か」
船長「そいつを港街まで運んだんだ」
船長「……国王達も警戒してたのかもな。始まりの街へは」
船長「王国の船でしか入港できない事になってたからな」
剣士「……良いのか。俺にそんな事話して」
船長「……仲間、だからな」
剣士「…… ……」
船長「何故、魔導の街に?」
船長「何故あの女を知ってる……の方が良いか」
船長「……否。答え無くても良いんだが」
剣士「……魔導の街に行く、とこの船を下りただろう」
剣士「そういう事だ……この瞳に興味を持つのは」
剣士「想像に易いだろう」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「……剣士」
剣士「何だ」
船長「…… ……否」
船長(チビや男の事を、剣士に話しても仕方無い)
船長(……仕方無いんだ……ッ)
剣士「……忘れない、と言っただろう」
船長「…… ……忘れてくれても構わん、ともな」
剣士「過去に拘る生き方は出来ない、だったか」
船長「…… ……」
剣士「……元気でいるのなら、それで良い」
剣士「声をかけるべきで無いと思った。だが……」
船長「…… ……」
剣士「嬉しかった。それだけだ」
船長(……今日、だけ。今日だけだ!)ギュウ……!
剣士「船長……?」
船長「……忘れる日など無かった」
剣士「…… ……」ギュ
船長「そいつを港街まで運んだんだ」
船長「……国王達も警戒してたのかもな。始まりの街へは」
船長「王国の船でしか入港できない事になってたからな」
剣士「……良いのか。俺にそんな事話して」
船長「……仲間、だからな」
剣士「…… ……」
船長「何故、魔導の街に?」
船長「何故あの女を知ってる……の方が良いか」
船長「……否。答え無くても良いんだが」
剣士「……魔導の街に行く、とこの船を下りただろう」
剣士「そういう事だ……この瞳に興味を持つのは」
剣士「想像に易いだろう」
船長「…… ……」
剣士「…… ……」
船長「……剣士」
剣士「何だ」
船長「…… ……否」
船長(チビや男の事を、剣士に話しても仕方無い)
船長(……仕方無いんだ……ッ)
剣士「……忘れない、と言っただろう」
船長「…… ……忘れてくれても構わん、ともな」
剣士「過去に拘る生き方は出来ない、だったか」
船長「…… ……」
剣士「……元気でいるのなら、それで良い」
剣士「声をかけるべきで無いと思った。だが……」
船長「…… ……」
剣士「嬉しかった。それだけだ」
船長(……今日、だけ。今日だけだ!)ギュウ……!
剣士「船長……?」
船長「……忘れる日など無かった」
剣士「…… ……」ギュ
78: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
船長「会えるなんて思っては無かったさ。けど……ッ」
剣士「…… ……」
船長「…… ……」
剣士「……船長」グイッチュ
船長「ア……ッ ……ン、ぅ」
剣士「…… ……」ギュ
船長「…… ……」ギュウ…… ス
剣士「…… ……」
船長「お前達を下ろしたら、アタシ達は南へ行く」
剣士「南?」
船長「ああ……当分街に近づくな、ってのも」
船長「……金の内なのさ」
剣士「……そうか」
船長「気をつけろよ、剣士」
剣士「?」
船長「良からぬ噂の絶えない街だ」
剣士「……ああ」
船長「お前なら大丈夫だろうが……その瞳に、あの……加護に捕らわれない力」
船長「知られて居るのなら……尚更」
剣士「…… ……ああ」
船長「……もう、会うことは……流石に無いだろうな」
剣士「……南に、何がある?」
船長「……チ ……否」
剣士「?」
船長「バカンス、て言えば南だろ」
剣士「そういう物か」
船長「……こんな時間に呼び出して悪かった」
船長「もう、ゆっくり休んでくれ」
剣士「……船長」
船長「何だ?」
剣士「…… ……」
船長「…… ……」
剣士「……船長」グイッチュ
船長「ア……ッ ……ン、ぅ」
剣士「…… ……」ギュ
船長「…… ……」ギュウ…… ス
剣士「…… ……」
船長「お前達を下ろしたら、アタシ達は南へ行く」
剣士「南?」
船長「ああ……当分街に近づくな、ってのも」
船長「……金の内なのさ」
剣士「……そうか」
船長「気をつけろよ、剣士」
剣士「?」
船長「良からぬ噂の絶えない街だ」
剣士「……ああ」
船長「お前なら大丈夫だろうが……その瞳に、あの……加護に捕らわれない力」
船長「知られて居るのなら……尚更」
剣士「…… ……ああ」
船長「……もう、会うことは……流石に無いだろうな」
剣士「……南に、何がある?」
船長「……チ ……否」
剣士「?」
船長「バカンス、て言えば南だろ」
剣士「そういう物か」
船長「……こんな時間に呼び出して悪かった」
船長「もう、ゆっくり休んでくれ」
剣士「……船長」
船長「何だ?」
79: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
剣士「……忘れはせん」
船長「…… ……アタシ、もだ」
剣士「……おやすみ」スタスタ
船長「…… ……」
パタン
船長(……潮風が、目にしみるんだ)ポロ
船長(今日、だけ……)ポロポロポロ
船長(…… ……)ポロポロポロポロ
……
………
…………
チチ……ピピピ……
僧侶「ん……」ムク
戦士「起きたか」
僧侶「あ、戦士さん……おはようございます」
戦士「体調は?」
僧侶「……ぐっすり、眠らせて貰いましたから」
戦士「そうか……ならば、着いてきてくれ」
僧侶「? 何処へ……です?」
戦士「……生きるための殺生の権利は誰にでも等しい」
僧侶「……!」
戦士「得意なのだろう、弓」
僧侶「はい……仰りたいことは、わかります」
船長「…… ……アタシ、もだ」
剣士「……おやすみ」スタスタ
船長「…… ……」
パタン
船長(……潮風が、目にしみるんだ)ポロ
船長(今日、だけ……)ポロポロポロ
船長(…… ……)ポロポロポロポロ
……
………
…………
チチ……ピピピ……
僧侶「ん……」ムク
戦士「起きたか」
僧侶「あ、戦士さん……おはようございます」
戦士「体調は?」
僧侶「……ぐっすり、眠らせて貰いましたから」
戦士「そうか……ならば、着いてきてくれ」
僧侶「? 何処へ……です?」
戦士「……生きるための殺生の権利は誰にでも等しい」
僧侶「……!」
戦士「得意なのだろう、弓」
僧侶「はい……仰りたいことは、わかります」
80: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
僧侶「あの……」
戦士「何だ?」
僧侶「勇者様と、魔法使いさんは……」チラ
戦士「寝かしておいてやれ。勇者には伝えてある」
僧侶「そう、ですか……」
戦士「戻れば起きているだろう……行くぞ」スタスタ
僧侶(弱肉強食……は、わかってる)
僧侶(生きるためには、食べなくてはいけない)スタスタ
僧侶(……神よ、お許し下さい)
僧侶(私だけじゃ無い。勇者様、魔法使いさん、戦士さん……)
僧侶(皆の、為に……!)
ピピピ……チチチ……
戦士「……ん」
僧侶(鳥が……戦士さんの肩に)
戦士「食うには小さいな」
僧侶「……」ビクッ
戦士「僧侶」
僧侶「は……ハイ」
戦士「生きるためだ。無駄な殺生はしない」
僧侶「はい……」
戦士「必要な分を、必要なだけ。屠った命は、無駄にしない」
僧侶「……」
戦士「感謝を込めて、全部食う。それが……礼儀だ」
僧侶「……!」
戦士「……そう言いながら、俺たちは無益にモンスターの命を奪う」
僧侶「……そ、れは」
戦士「『守る』ためだ」
僧侶「……」
戦士「そして……『生きる』為だ」
僧侶「……はい」
戦士「何だ?」
僧侶「勇者様と、魔法使いさんは……」チラ
戦士「寝かしておいてやれ。勇者には伝えてある」
僧侶「そう、ですか……」
戦士「戻れば起きているだろう……行くぞ」スタスタ
僧侶(弱肉強食……は、わかってる)
僧侶(生きるためには、食べなくてはいけない)スタスタ
僧侶(……神よ、お許し下さい)
僧侶(私だけじゃ無い。勇者様、魔法使いさん、戦士さん……)
僧侶(皆の、為に……!)
ピピピ……チチチ……
戦士「……ん」
僧侶(鳥が……戦士さんの肩に)
戦士「食うには小さいな」
僧侶「……」ビクッ
戦士「僧侶」
僧侶「は……ハイ」
戦士「生きるためだ。無駄な殺生はしない」
僧侶「はい……」
戦士「必要な分を、必要なだけ。屠った命は、無駄にしない」
僧侶「……」
戦士「感謝を込めて、全部食う。それが……礼儀だ」
僧侶「……!」
戦士「……そう言いながら、俺たちは無益にモンスターの命を奪う」
僧侶「……そ、れは」
戦士「『守る』ためだ」
僧侶「……」
戦士「そして……『生きる』為だ」
僧侶「……はい」
81: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
戦士「……命の重さに差違は無い」
戦士「確かに、矛盾してる……だが」
戦士「それこそが『生きる』と言う事なのだと思う」
僧侶「……はい」
戦士「……言い訳だ。自分を正当化する為の。だが……」
僧侶「いいえ……貴方が、惨い方で無いのは、わかります」
僧侶「それは……動物たちが教えてくれます」
僧侶「その手に剣を持ち、命を屠ろうとも」
僧侶「心優しく、強くいらっしゃる……」
僧侶「誠に、大地の加護を受けるに相応しい……素敵な方だと思います」
戦士「……」
僧侶「行きましょう、戦士さん。私達が生きるために」
戦士「……ありがとう」ニッ
僧侶「あ、いえ、あの……ッ」ドキッ
僧侶(笑顔……優しいんですね)
僧侶(戦士さん……)
……
………
…………
勇者「おはよう、魔法使い」
魔法使い「……おはよう」
勇者「よく眠れ……なかったみたいだね」
魔法使い「……ごめんなさい」
勇者「なんで謝るの……ああ、火起こすの手伝ってくれる?」
魔法使い「ええ……」ボッ
勇者「ありがとう……よいしょ」
魔法使い「僧侶と戦士は?」
勇者「狩りに行ったよ」
魔法使い「狩り?」
勇者「食わないと元気も出ないさ」
魔法使い「…… ……御免、なさい」
勇者「昨日からそればっかりだな」
魔法使い「…… ……」
勇者「……僧侶が川に落ちて濡れなかった事」
魔法使い「!」
勇者「それから……あの紫の瞳の男」
魔法使い「勇者様!」
勇者「ん?」
魔法使い「あ、あの……ッ ……そ、の。あれは、あの……ッ」
魔法使い「……御免、なさい」
勇者「また謝る……」フゥ
勇者「……確かにさ、俺は頼りないと思う」
魔法使い「!」
勇者「彼みたいな人が居てくれたらって思うのは……」
魔法使い「そ、それは違う!そんな風に思った訳じゃ……!」
勇者「……違うよ。そう思ったのは俺自身だ」
魔法使い「え?」
勇者「…… ……勇者失格だよ。折角……さ。こうして」
勇者「君達を選んだのに……俺は……ッ」
魔法使い「勇者様……」
戦士「確かに、矛盾してる……だが」
戦士「それこそが『生きる』と言う事なのだと思う」
僧侶「……はい」
戦士「……言い訳だ。自分を正当化する為の。だが……」
僧侶「いいえ……貴方が、惨い方で無いのは、わかります」
僧侶「それは……動物たちが教えてくれます」
僧侶「その手に剣を持ち、命を屠ろうとも」
僧侶「心優しく、強くいらっしゃる……」
僧侶「誠に、大地の加護を受けるに相応しい……素敵な方だと思います」
戦士「……」
僧侶「行きましょう、戦士さん。私達が生きるために」
戦士「……ありがとう」ニッ
僧侶「あ、いえ、あの……ッ」ドキッ
僧侶(笑顔……優しいんですね)
僧侶(戦士さん……)
……
………
…………
勇者「おはよう、魔法使い」
魔法使い「……おはよう」
勇者「よく眠れ……なかったみたいだね」
魔法使い「……ごめんなさい」
勇者「なんで謝るの……ああ、火起こすの手伝ってくれる?」
魔法使い「ええ……」ボッ
勇者「ありがとう……よいしょ」
魔法使い「僧侶と戦士は?」
勇者「狩りに行ったよ」
魔法使い「狩り?」
勇者「食わないと元気も出ないさ」
魔法使い「…… ……御免、なさい」
勇者「昨日からそればっかりだな」
魔法使い「…… ……」
勇者「……僧侶が川に落ちて濡れなかった事」
魔法使い「!」
勇者「それから……あの紫の瞳の男」
魔法使い「勇者様!」
勇者「ん?」
魔法使い「あ、あの……ッ ……そ、の。あれは、あの……ッ」
魔法使い「……御免、なさい」
勇者「また謝る……」フゥ
勇者「……確かにさ、俺は頼りないと思う」
魔法使い「!」
勇者「彼みたいな人が居てくれたらって思うのは……」
魔法使い「そ、それは違う!そんな風に思った訳じゃ……!」
勇者「……違うよ。そう思ったのは俺自身だ」
魔法使い「え?」
勇者「…… ……勇者失格だよ。折角……さ。こうして」
勇者「君達を選んだのに……俺は……ッ」
魔法使い「勇者様……」
82: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
勇者「……だから、君達がそう思っても当然だ」
魔法使い「…… ……ッ」
勇者「だけど、ね。何も知らないし、力も無いし」
勇者「まだまだ未熟だからこそ、みんなで力を合わせて、さ」
勇者「……一緒に、強くなって行きたいよ」
魔法使い「…… ……」
勇者「言いにくい事とか、不安とか不満とか……」
勇者「あるのは、魔法使いだけじゃ無い」
魔法使い「…… ……」
勇者「多分、戦士も、僧侶も…… ……俺も、だ」
勇者「……話して欲しい。一気に、とも全部、とも。勿論そんな事は言わない」
勇者「言えない……だけど、さ」
魔法使い「…… ……」
勇者「ごめん。俺も余裕無くて」
勇者「僧侶が濡れてそのままの事とか」
勇者「……魔法使いの様子とか。気遣って……あげれなくて」
魔法使い「…… ……」
魔法使い「……優れた加護を受ける者はね、干渉を受けないの」
勇者「え?」
魔法使い「私が炎の優れた加護を持っているとすれば」
魔法使い「…… ……私の身体は如何なる炎にも焼かれることは無い」
勇者「あ……じゃあ、僧侶は……あれ、でも……」
魔法使い「自然の物は別。ああ……言い方が悪かったわね」
魔法使い「自然の力で産まれた炎……たとえば、こうして道具で起こした火」
魔法使い「暖かさを感じるわ。身を暖めてくれる。指に触れれば火傷する」
魔法使い「優れた炎の加護を受けた魔物に炎の魔法が効かなくても、その屍肉を火であぶれば食べられるようになる」
勇者「……たとえがちょっとえぐいな。わかりやすいけど」
勇者「魔法の炎で焼かれることは無い、って事だな」
魔法使い「……そうね」
魔法使い「…… ……ッ」
勇者「だけど、ね。何も知らないし、力も無いし」
勇者「まだまだ未熟だからこそ、みんなで力を合わせて、さ」
勇者「……一緒に、強くなって行きたいよ」
魔法使い「…… ……」
勇者「言いにくい事とか、不安とか不満とか……」
勇者「あるのは、魔法使いだけじゃ無い」
魔法使い「…… ……」
勇者「多分、戦士も、僧侶も…… ……俺も、だ」
勇者「……話して欲しい。一気に、とも全部、とも。勿論そんな事は言わない」
勇者「言えない……だけど、さ」
魔法使い「…… ……」
勇者「ごめん。俺も余裕無くて」
勇者「僧侶が濡れてそのままの事とか」
勇者「……魔法使いの様子とか。気遣って……あげれなくて」
魔法使い「…… ……」
魔法使い「……優れた加護を受ける者はね、干渉を受けないの」
勇者「え?」
魔法使い「私が炎の優れた加護を持っているとすれば」
魔法使い「…… ……私の身体は如何なる炎にも焼かれることは無い」
勇者「あ……じゃあ、僧侶は……あれ、でも……」
魔法使い「自然の物は別。ああ……言い方が悪かったわね」
魔法使い「自然の力で産まれた炎……たとえば、こうして道具で起こした火」
魔法使い「暖かさを感じるわ。身を暖めてくれる。指に触れれば火傷する」
魔法使い「優れた炎の加護を受けた魔物に炎の魔法が効かなくても、その屍肉を火であぶれば食べられるようになる」
勇者「……たとえがちょっとえぐいな。わかりやすいけど」
勇者「魔法の炎で焼かれることは無い、って事だな」
魔法使い「……そうね」
83: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
勇者「僧侶の水の加護、が……そういうことか」
勇者(最初、落ちたとき……濡れていなかったのは水の魔物の干渉の範囲。曰く、優れた加護を持つ僧侶は……)
勇者(その水の干渉を受けず、濡れなかった)
勇者(その後、自然の水に戻ったときには……冷たさも感じてた。ずぶ濡れになってた)
勇者「……成る程」
魔法使い「…… ……」
勇者「理屈は分かった。まあ……目の前で見たしな」
魔法使い「あの子の身体は、水の干渉を受けない……優れた癒し手になるわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「……炎よ」ボッ
勇者「!?」
魔法使い「よく見て……ッ ぐ…ッ」ジュウ…ッ
勇者「おい、やめろ……ッ」
魔法使い「……言葉にさせないで頂戴ッ」
勇者(威力は押さえたんだろうが……魔法使いの腕に火傷の跡が)
勇者(……)
勇者「気持ちは分かるが……」パァッ
魔法使い「…… ……戦士には、見られたの」
勇者「え?」
魔法使い「闘技大会に出場した時よ」
魔法使い「受付にならんでいる時に、声をかけられた」
魔法使い「『火傷の治療を受けてこい』ってね」
勇者「……騎士とか、その身内は出られないんじゃ?」
魔法使い「見に来ていたんでしょう……ああ、貴方も居たのよね」
勇者「試合は見てたよ…… ……御免、誰が出てたとかは覚えて居ないけど」
魔法使い「……逃げ出したかったわ」
魔法使い「優れた加護が無い事を知られるのも怖かった」
魔法使い「……勝てる訳無いとも、思った」
魔法使い「折角、家から親から離れられたのに……」
魔法使い「私は、『失敗』する事が怖かった……!」ポロポロ
勇者「魔法使い……」
勇者(最初、落ちたとき……濡れていなかったのは水の魔物の干渉の範囲。曰く、優れた加護を持つ僧侶は……)
勇者(その水の干渉を受けず、濡れなかった)
勇者(その後、自然の水に戻ったときには……冷たさも感じてた。ずぶ濡れになってた)
勇者「……成る程」
魔法使い「…… ……」
勇者「理屈は分かった。まあ……目の前で見たしな」
魔法使い「あの子の身体は、水の干渉を受けない……優れた癒し手になるわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「……炎よ」ボッ
勇者「!?」
魔法使い「よく見て……ッ ぐ…ッ」ジュウ…ッ
勇者「おい、やめろ……ッ」
魔法使い「……言葉にさせないで頂戴ッ」
勇者(威力は押さえたんだろうが……魔法使いの腕に火傷の跡が)
勇者(……)
勇者「気持ちは分かるが……」パァッ
魔法使い「…… ……戦士には、見られたの」
勇者「え?」
魔法使い「闘技大会に出場した時よ」
魔法使い「受付にならんでいる時に、声をかけられた」
魔法使い「『火傷の治療を受けてこい』ってね」
勇者「……騎士とか、その身内は出られないんじゃ?」
魔法使い「見に来ていたんでしょう……ああ、貴方も居たのよね」
勇者「試合は見てたよ…… ……御免、誰が出てたとかは覚えて居ないけど」
魔法使い「……逃げ出したかったわ」
魔法使い「優れた加護が無い事を知られるのも怖かった」
魔法使い「……勝てる訳無いとも、思った」
魔法使い「折角、家から親から離れられたのに……」
魔法使い「私は、『失敗』する事が怖かった……!」ポロポロ
勇者「魔法使い……」
84: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
魔法使い「……こんな私じゃ、このままじゃ帰れない、と思ったの」
魔法使い「だから、絶対に勇者様の仲間になろうと思った」
勇者「…… ……」
魔法使い「おかしいわよね。離れられてほっとしたのに」
魔法使い「……私、まだあの人達の顔色を伺っている」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「簡単に出来る事じゃ……無い、と思うけど、さ」
魔法使い「え?」
勇者「……認める、って事も強さの内だと思うよ?」
魔法使い「認める……?」
勇者「うん。自分の弱さ……とかさ。そう言うの」
魔法使い「…… ……」
勇者「……嫉妬、しちゃうのは仕方無いよ」
魔法使い「!」
勇者「俺だって…… ……だけど」
勇者「嫉妬って醜い感情だけど」
勇者「そう言うのを持たない人は居ないと思うし」
魔法使い「…… ……」
勇者「だから……自分がそういう醜い気持ち、持ってるんだって」
勇者「認めるだけでも…… ……否、それこそ大変な事なんだけどね」
魔法使い「……私、自分に言い聞かせた。これは嫉妬じゃ無い、って」
勇者「……僧侶、に?」
魔法使い「ええ。どうしてこの子だけ。どうして……私には、って」
勇者「…… ……」
魔法使い「……でもどうしようも無いのよね。加護は生を受ける時の」
魔法使い「契約みたいな物…… ……違える事はできないのに」
勇者「…… ……」
魔法使い「だから、絶対に勇者様の仲間になろうと思った」
勇者「…… ……」
魔法使い「おかしいわよね。離れられてほっとしたのに」
魔法使い「……私、まだあの人達の顔色を伺っている」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「簡単に出来る事じゃ……無い、と思うけど、さ」
魔法使い「え?」
勇者「……認める、って事も強さの内だと思うよ?」
魔法使い「認める……?」
勇者「うん。自分の弱さ……とかさ。そう言うの」
魔法使い「…… ……」
勇者「……嫉妬、しちゃうのは仕方無いよ」
魔法使い「!」
勇者「俺だって…… ……だけど」
勇者「嫉妬って醜い感情だけど」
勇者「そう言うのを持たない人は居ないと思うし」
魔法使い「…… ……」
勇者「だから……自分がそういう醜い気持ち、持ってるんだって」
勇者「認めるだけでも…… ……否、それこそ大変な事なんだけどね」
魔法使い「……私、自分に言い聞かせた。これは嫉妬じゃ無い、って」
勇者「……僧侶、に?」
魔法使い「ええ。どうしてこの子だけ。どうして……私には、って」
勇者「…… ……」
魔法使い「……でもどうしようも無いのよね。加護は生を受ける時の」
魔法使い「契約みたいな物…… ……違える事はできないのに」
勇者「…… ……」
85: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
勇者「……大丈夫だよ。魔法使いなら、きっと」
勇者「『認める強さ』を持ってると思う」
魔法使い「認める強さ……」
勇者「……うん。信じてるから、さ。力を合わせて」
勇者「俺達で、魔王を倒す。倒せるって」
勇者「……『仲間』だろ?」
魔法使い「…… ……ええ」
勇者「取りあえず、『様』やめない?」
魔法使い「え?」
勇者「確かに、『勇者』は特別な存在だと思う。けど」
勇者「俺は俺だし……俺一人、仲間はずれはヤダし」
魔法使い「仲間はずれ、って」プッ
勇者「……言い方おかしいかもしれないけど!」
魔法使い「……解ったわ、勇者」ニッ
勇者「おう…… ……笑ってる方が可愛いよ、魔法使い」
魔法使い「え……」ドキッ
勇者「……あ、帰って来た!」
魔法使い(……ドキ、て何よ、ドキ、って……!)ドキドキ
勇者「…… ……え」
魔法使い「え、な …… ……に… ……!?」
ドサッ
戦士「悪かったな……遅くなった」
僧侶「ただいまです」
魔法使い「…… ……」
勇者「いや、お前、そ…… そ、れ……」
僧侶「熊さん、仕留めちゃいました」
戦士「勇者、解体するの手伝え」
魔法使い「……こ、これを、二人、で……!?」
僧侶「え?魔法使いさん、食べないんですか?」
魔法使い「違う!そうじゃ無くて!」
僧侶「これだけあれば、お腹いっぱいになりますね」クス
勇者「…… ……うわぁ、矢だらけ」
戦士「勇者、早く」
勇者「お、お…… ……う…… ……」
魔法使い「…… ……僧侶」
僧侶「はい?」
魔法使い「アンタ、怖い子ね……」
僧侶「?」
勇者「『認める強さ』を持ってると思う」
魔法使い「認める強さ……」
勇者「……うん。信じてるから、さ。力を合わせて」
勇者「俺達で、魔王を倒す。倒せるって」
勇者「……『仲間』だろ?」
魔法使い「…… ……ええ」
勇者「取りあえず、『様』やめない?」
魔法使い「え?」
勇者「確かに、『勇者』は特別な存在だと思う。けど」
勇者「俺は俺だし……俺一人、仲間はずれはヤダし」
魔法使い「仲間はずれ、って」プッ
勇者「……言い方おかしいかもしれないけど!」
魔法使い「……解ったわ、勇者」ニッ
勇者「おう…… ……笑ってる方が可愛いよ、魔法使い」
魔法使い「え……」ドキッ
勇者「……あ、帰って来た!」
魔法使い(……ドキ、て何よ、ドキ、って……!)ドキドキ
勇者「…… ……え」
魔法使い「え、な …… ……に… ……!?」
ドサッ
戦士「悪かったな……遅くなった」
僧侶「ただいまです」
魔法使い「…… ……」
勇者「いや、お前、そ…… そ、れ……」
僧侶「熊さん、仕留めちゃいました」
戦士「勇者、解体するの手伝え」
魔法使い「……こ、これを、二人、で……!?」
僧侶「え?魔法使いさん、食べないんですか?」
魔法使い「違う!そうじゃ無くて!」
僧侶「これだけあれば、お腹いっぱいになりますね」クス
勇者「…… ……うわぁ、矢だらけ」
戦士「勇者、早く」
勇者「お、お…… ……う…… ……」
魔法使い「…… ……僧侶」
僧侶「はい?」
魔法使い「アンタ、怖い子ね……」
僧侶「?」
86: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
……
………
…………
国王「それで……戦況は?」
騎士「件の洞窟にて、魔導の街の私設軍隊と思わしき船団との交戦は」
騎士「正直……五分五分、と言ったところです」
国王「……魔法兵団との抗戦でそれだとすると、良くやっていると言わざるを」
国王「得ないのでしょうね……出来るだけ被害を最小に留める様に」
国王「……敵わなければ、撤退を指示する様に騎士団長に伝えて下さい」
騎士「しかし……ッ」
国王「人の命は……尊い物です」
国王「何の狙いがあってあの洞窟に目をつけたのかは……気になりますけど」
騎士「しかし、何時の間に私設軍隊など……!」
バタバタバタ……ッ バタン!
国王「…… ……」
騎士「おい!ここは国王様の……!」
王子「……ッ」ハァハァ
騎士「騎士団長様!」
国王「どうしました?」
王子「……ッ 魔導の街が、街の閉鎖を宣言した」
国王「閉鎖?」
王子「宣戦布告だ。洞窟への襲撃と騎士団との抗戦は目を反らす為の罠かもしれん」
王子「……洞窟から兵を引き上げる様にと、書簡を届けさせた文官が持ち帰った書状だ」ポイ
騎士「……わ、私は下がりましょうか」
国王「構いません……」ペラ
国王「……しかし、宣言、とは?」
王子「『街は今日をもって閉鎖するから、次からは来ても無駄だ』と言われたそうだ」
王子「……詳しくは王宛ての書簡に書いた、と」
騎士「ふざけた事を……!」
王子「…… ……所属不明の船が一隻、あの街に着いている」
国王「所属不明?」
王子「ああ。魔導の街を出てからはそのまま南へ向かっているらしい」
王子「……海賊の類かもしれないが」
国王「追跡は?」
王子「適当に引き上げろと伝えてある」
………
…………
国王「それで……戦況は?」
騎士「件の洞窟にて、魔導の街の私設軍隊と思わしき船団との交戦は」
騎士「正直……五分五分、と言ったところです」
国王「……魔法兵団との抗戦でそれだとすると、良くやっていると言わざるを」
国王「得ないのでしょうね……出来るだけ被害を最小に留める様に」
国王「……敵わなければ、撤退を指示する様に騎士団長に伝えて下さい」
騎士「しかし……ッ」
国王「人の命は……尊い物です」
国王「何の狙いがあってあの洞窟に目をつけたのかは……気になりますけど」
騎士「しかし、何時の間に私設軍隊など……!」
バタバタバタ……ッ バタン!
国王「…… ……」
騎士「おい!ここは国王様の……!」
王子「……ッ」ハァハァ
騎士「騎士団長様!」
国王「どうしました?」
王子「……ッ 魔導の街が、街の閉鎖を宣言した」
国王「閉鎖?」
王子「宣戦布告だ。洞窟への襲撃と騎士団との抗戦は目を反らす為の罠かもしれん」
王子「……洞窟から兵を引き上げる様にと、書簡を届けさせた文官が持ち帰った書状だ」ポイ
騎士「……わ、私は下がりましょうか」
国王「構いません……」ペラ
国王「……しかし、宣言、とは?」
王子「『街は今日をもって閉鎖するから、次からは来ても無駄だ』と言われたそうだ」
王子「……詳しくは王宛ての書簡に書いた、と」
騎士「ふざけた事を……!」
王子「…… ……所属不明の船が一隻、あの街に着いている」
国王「所属不明?」
王子「ああ。魔導の街を出てからはそのまま南へ向かっているらしい」
王子「……海賊の類かもしれないが」
国王「追跡は?」
王子「適当に引き上げろと伝えてある」
87: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
国王「…… ……『本日をもって魔導の街を閉鎖する』」
国王「『これに伴い同街を『魔導国』と改め、王政とする』」
国王「『現領主を王とし…… ……』 ……確かに、宣戦布告でしょうね、これは」
王子「続きは?」
国王「…… ……」
騎士「国王様?」
国王「……『王はそれ以外を認めない物とする。始まりの国の国王はすぐに王政を解かれたし』」
国王「『従えずば武力行使も辞さない』」
王子「……!」
騎士「な……ッ」
王子「……そんな事を決める権限が何処にある!?」
国王「あの洞窟への攻撃は、力を見せつける為でもあるのかもしれませんね」
王子「国王、俺もあの洞窟へ行く」
国王「……それは、駄目です」
王子「しかし!このままでは……!」
国王「『騎士団長』の貴方が出て行くと、宣戦布告を受諾した事になります」
国王「……それこそ、戦争です」
王子「……ッ このまま、見ていろと言うのか!」
国王「折角……勇者が、魔王を倒しに旅立ったと言うのに」ハァ
国王「『人間同士』で争って何になるのですか……!」
王子「…… ……ッ」
騎士「国王様…… ……」
国王「『王』と言うのは……それ程特別な物ですか?」
国王「……指導者であるのなら、名など……こだわりはありません」
王子「思うつぼだろう、それこそ向こうの……」
国王「……しかし……」
王子「城への一般人の立ち入りを禁止しろ。それから、国王の警備を増やすんだ」
騎士「は、は……ッ」
国王「兄さん!?」
王子「……認めてくれ、国王」
王子「表向き、でも良い。お前を……守る為だ」
国王「『これに伴い同街を『魔導国』と改め、王政とする』」
国王「『現領主を王とし…… ……』 ……確かに、宣戦布告でしょうね、これは」
王子「続きは?」
国王「…… ……」
騎士「国王様?」
国王「……『王はそれ以外を認めない物とする。始まりの国の国王はすぐに王政を解かれたし』」
国王「『従えずば武力行使も辞さない』」
王子「……!」
騎士「な……ッ」
王子「……そんな事を決める権限が何処にある!?」
国王「あの洞窟への攻撃は、力を見せつける為でもあるのかもしれませんね」
王子「国王、俺もあの洞窟へ行く」
国王「……それは、駄目です」
王子「しかし!このままでは……!」
国王「『騎士団長』の貴方が出て行くと、宣戦布告を受諾した事になります」
国王「……それこそ、戦争です」
王子「……ッ このまま、見ていろと言うのか!」
国王「折角……勇者が、魔王を倒しに旅立ったと言うのに」ハァ
国王「『人間同士』で争って何になるのですか……!」
王子「…… ……ッ」
騎士「国王様…… ……」
国王「『王』と言うのは……それ程特別な物ですか?」
国王「……指導者であるのなら、名など……こだわりはありません」
王子「思うつぼだろう、それこそ向こうの……」
国王「……しかし……」
王子「城への一般人の立ち入りを禁止しろ。それから、国王の警備を増やすんだ」
騎士「は、は……ッ」
国王「兄さん!?」
王子「……認めてくれ、国王」
王子「表向き、でも良い。お前を……守る為だ」
88: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
王子「……俺は、騎士団長、だ」
王子「民を、国を……お前を、守る義務と権利があるんだ!」
国王「…… ……」
……
………
…………
魔導将軍「ただいま。 ……やっぱり、帰ってたね」
后「魔導将軍……おかえりなさい。ご苦労様」
魔導将軍「……側近は?」
后「魔王の部屋よ……行く?」
魔導将軍「当然よ」
魔導将軍「……旅立ちは見送ったわ。だけど……」
后「ん?」
魔導将軍「…… ……気になる男が居た。紫の瞳の」
后「……紫の瞳?」
魔導将軍「ええ。勇者に……いいえ。魔王にそっくり、だった」
后「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
后「一緒に……旅立ったの?」
魔導将軍「……いいえ。彼は選ばれなかった」
后「……選ばれなかった……」
魔導将軍「詳しくは向こうで話すわ。使用人は?」
后「呼んでくるわ。先に行ってて」
スタスタ
魔導将軍「…… ……」
王子「民を、国を……お前を、守る義務と権利があるんだ!」
国王「…… ……」
……
………
…………
魔導将軍「ただいま。 ……やっぱり、帰ってたね」
后「魔導将軍……おかえりなさい。ご苦労様」
魔導将軍「……側近は?」
后「魔王の部屋よ……行く?」
魔導将軍「当然よ」
魔導将軍「……旅立ちは見送ったわ。だけど……」
后「ん?」
魔導将軍「…… ……気になる男が居た。紫の瞳の」
后「……紫の瞳?」
魔導将軍「ええ。勇者に……いいえ。魔王にそっくり、だった」
后「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
后「一緒に……旅立ったの?」
魔導将軍「……いいえ。彼は選ばれなかった」
后「……選ばれなかった……」
魔導将軍「詳しくは向こうで話すわ。使用人は?」
后「呼んでくるわ。先に行ってて」
スタスタ
魔導将軍「…… ……」
89: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
スタスタ、コンコン
側近「あーいー?」
魔導将軍「ハローダーリン?」
側近「魔導将軍!」
魔導将軍「入るわよー?」
カチャ
魔王「…… ……」
魔導将軍「……久しぶりね、魔王」
側近「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
魔導将軍(やっぱり……似てる、なんてモンじゃ無い)
側近「……どうした?」
魔導将軍「ちょっと待って、すぐに后と使用人が……」
カチャ
使用人「魔導将軍様!」
魔導将軍「久しぶりね、使用人」
后「早速で悪いけど……」
魔導将軍「ええ。長居も出来ないでしょ」
側近「……魔王はあれからは大人しいもんだ」
魔導将軍「側近は大丈夫なの?」
側近「魔族ってな凄いよな。魔力の量が尋常じゃネェよ」
側近「……俺、魔法なんて使えないのにねぇ」
使用人「本の知識は……役に立ちました、か?」
魔導将軍「ばれてないと思いたい、けどね」
魔導将軍「……取りあえず、報告しちゃうわ。結構大変な事になってるわよ」
后「大変な事?」
魔導将軍「……まず、魔導の街が立ち入り禁止になってる」
側近「……何?」
側近「あーいー?」
魔導将軍「ハローダーリン?」
側近「魔導将軍!」
魔導将軍「入るわよー?」
カチャ
魔王「…… ……」
魔導将軍「……久しぶりね、魔王」
側近「…… ……」
魔導将軍「…… ……」
魔導将軍(やっぱり……似てる、なんてモンじゃ無い)
側近「……どうした?」
魔導将軍「ちょっと待って、すぐに后と使用人が……」
カチャ
使用人「魔導将軍様!」
魔導将軍「久しぶりね、使用人」
后「早速で悪いけど……」
魔導将軍「ええ。長居も出来ないでしょ」
側近「……魔王はあれからは大人しいもんだ」
魔導将軍「側近は大丈夫なの?」
側近「魔族ってな凄いよな。魔力の量が尋常じゃネェよ」
側近「……俺、魔法なんて使えないのにねぇ」
使用人「本の知識は……役に立ちました、か?」
魔導将軍「ばれてないと思いたい、けどね」
魔導将軍「……取りあえず、報告しちゃうわ。結構大変な事になってるわよ」
后「大変な事?」
魔導将軍「……まず、魔導の街が立ち入り禁止になってる」
側近「……何?」
90: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
魔導将軍「詳しくは解らない。状況だけね」
魔導将軍「それに……多分あれは使用人の言ってた鉱石の洞窟ね」
魔導将軍「始まりの街の騎士団と、魔導の街の船団で交戦中」
魔導将軍「……実質戦争状態よ」
使用人「そ……んな!こんな時に!?」
后「…… ……盗賊さん、亡くなって長い……から?」
魔導将軍「勇者達は旅立ったのにね……ああ、そうそう。さっき后には言ったけど」
后「……魔王にそっくりの紫の瞳の男、だね」
使用人「!?」
側近「何!?」
魔導将軍「勇者達は何れ此処にたどり着く……だから」
魔導将軍「その紫の瞳の彼の気配を追ったんだけど」
魔導将軍「……船はウロウロしてるし、まさか姿は消せないし」
后「で……見失った訳ね」
魔導将軍「間違い無く気配を追ったはず……なんだけどね」
側近「まさか……此処にたどり着いた?」
魔導将軍「……いいえ。魔導の街に続いてたから、諦めて帰って来たのよ」
使用人「……側近様は、何故此処に……と」
側近「……お前さん、気がつかないとは言わないだろう?」
使用人「…… ……」
后「『特異点』?」
魔導将軍「もしくは、『欠片』」
后「魔導の街……立ち入りが禁止されてる、んだっけ?」
魔導将軍「……流石に近づけないわよ」
側近「何でこのタイミングで戦争なんて……」
使用人「……『少年』」
后「紫の瞳の魔王?」
使用人「そっくり、何でしょう」
魔導将軍「そうか……!あいつら、あの男の事を『少年』と思ってる!?」
魔導将軍「……て、事は魔族と解ってて……!」
側近「きな臭ェなぁ……」
使用人「推測の域を出ませんが……」
后「当たらずとも遠からず、でしょ……ていうか」
后「それしか考えられない」
魔導将軍「それに……多分あれは使用人の言ってた鉱石の洞窟ね」
魔導将軍「始まりの街の騎士団と、魔導の街の船団で交戦中」
魔導将軍「……実質戦争状態よ」
使用人「そ……んな!こんな時に!?」
后「…… ……盗賊さん、亡くなって長い……から?」
魔導将軍「勇者達は旅立ったのにね……ああ、そうそう。さっき后には言ったけど」
后「……魔王にそっくりの紫の瞳の男、だね」
使用人「!?」
側近「何!?」
魔導将軍「勇者達は何れ此処にたどり着く……だから」
魔導将軍「その紫の瞳の彼の気配を追ったんだけど」
魔導将軍「……船はウロウロしてるし、まさか姿は消せないし」
后「で……見失った訳ね」
魔導将軍「間違い無く気配を追ったはず……なんだけどね」
側近「まさか……此処にたどり着いた?」
魔導将軍「……いいえ。魔導の街に続いてたから、諦めて帰って来たのよ」
使用人「……側近様は、何故此処に……と」
側近「……お前さん、気がつかないとは言わないだろう?」
使用人「…… ……」
后「『特異点』?」
魔導将軍「もしくは、『欠片』」
后「魔導の街……立ち入りが禁止されてる、んだっけ?」
魔導将軍「……流石に近づけないわよ」
側近「何でこのタイミングで戦争なんて……」
使用人「……『少年』」
后「紫の瞳の魔王?」
使用人「そっくり、何でしょう」
魔導将軍「そうか……!あいつら、あの男の事を『少年』と思ってる!?」
魔導将軍「……て、事は魔族と解ってて……!」
側近「きな臭ェなぁ……」
使用人「推測の域を出ませんが……」
后「当たらずとも遠からず、でしょ……ていうか」
后「それしか考えられない」
91: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
魔導将軍「……後、仲間の方だけど」
魔導将軍「『騎士団長の息子』と『魔導の街の領主の孫娘』それから」
魔導将軍「『エルフの血を引く娘』」
使用人「エルフ!?」
側近「……いやいや、すげぇメンバーだな、おい」
使用人「エルフ、の、娘って……まさか!?」
魔導将軍「姫様の、って言いたいんでしょうけど」
魔導将軍「……私はその姫様を知らないから、何ともね……でも」
魔導将軍「弓を持っていたわ。だから……」
使用人「……弓……ッ」
后「エルフの弓だとすると……間違い無いんだろうね」
側近「……『特異点』か」フゥ
魔導将軍「候補が二人、もね」
后「……エルフの血を引くだろう娘、と……紫の瞳の男」
側近「……魔王に、勇者にそっくりな男、か」ハァ
使用人「揃った……の、でしょうか……」
魔導将軍「『欠片』? ……解らないわね」
魔導将軍「見守りたいけど……でも、もう……私も、此処を離れられないわ」
后「仕方無いわ。勇者は……もう、すぐそこにいる」
魔王「…… ……」
使用人「……魔王様?」ピリッ
側近「どうし…… ……ッ」ピリピリ
魔導将軍「!」ピリピリ
后「魔王!」ピリピリッ
側近「使用人!后と魔導将軍を連れて部屋を出ろ!」
魔王「……ゥ、ウ ……ッ アアアアアアアアアッ」
魔導将軍「駄目よ、私も……ッ」
使用人「后様、早く!」グイッ
后「あ……ッ 魔王!」
魔導将軍「『騎士団長の息子』と『魔導の街の領主の孫娘』それから」
魔導将軍「『エルフの血を引く娘』」
使用人「エルフ!?」
側近「……いやいや、すげぇメンバーだな、おい」
使用人「エルフ、の、娘って……まさか!?」
魔導将軍「姫様の、って言いたいんでしょうけど」
魔導将軍「……私はその姫様を知らないから、何ともね……でも」
魔導将軍「弓を持っていたわ。だから……」
使用人「……弓……ッ」
后「エルフの弓だとすると……間違い無いんだろうね」
側近「……『特異点』か」フゥ
魔導将軍「候補が二人、もね」
后「……エルフの血を引くだろう娘、と……紫の瞳の男」
側近「……魔王に、勇者にそっくりな男、か」ハァ
使用人「揃った……の、でしょうか……」
魔導将軍「『欠片』? ……解らないわね」
魔導将軍「見守りたいけど……でも、もう……私も、此処を離れられないわ」
后「仕方無いわ。勇者は……もう、すぐそこにいる」
魔王「…… ……」
使用人「……魔王様?」ピリッ
側近「どうし…… ……ッ」ピリピリ
魔導将軍「!」ピリピリ
后「魔王!」ピリピリッ
側近「使用人!后と魔導将軍を連れて部屋を出ろ!」
魔王「……ゥ、ウ ……ッ アアアアアアアアアッ」
魔導将軍「駄目よ、私も……ッ」
使用人「后様、早く!」グイッ
后「あ……ッ 魔王!」
92: 2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:jBmJHkjkP
バタバタ、バタン!
后「魔王!」
使用人(……また、魔力が大きくなってる)
使用人(勇者様……間に合うの……!?)
……
………
…………
魔王「…… ……」パチ
魔王(また……夢)
魔王「……あー… ……うん」
魔王(声は、出る)
魔王(あれは……魔導の街……)
魔王(……又、あの双子を見せられるのか?)ハァ
后「魔王!」
使用人(……また、魔力が大きくなってる)
使用人(勇者様……間に合うの……!?)
……
………
…………
魔王「…… ……」パチ
魔王(また……夢)
魔王「……あー… ……うん」
魔王(声は、出る)
魔王(あれは……魔導の街……)
魔王(……又、あの双子を見せられるのか?)ハァ
96: 2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:S1IGpuQHP
『娘の様子は?』
『もう少し掛かるかと』
『産まれたらすぐに隔離を……』
『これで我が国も……』
『赤子を連れて…… ……へ…… ……』
『王自ら…… ……』
魔王(……良く聞こえない)
魔王(しかし……あの二人は『光と闇』なのだろう)
魔王(……『何』が産まれるんだ)
シュゥン
魔王「……?」
紫魔「答えは、もう知っているだろう」
魔王「…… ……『世界』?」
紫魔「そうだ。『世界』」
魔王「……正解なのかよ。意味がわからねぇよ」
紫魔「『終わるだろう筈だった世界』だ」
魔王「……『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
紫魔「…… ……」
魔王「何故産まれた?」
紫魔「?」
魔王「『双子』だ」
魔王「金の髪の……ああ、っと。青年、か」
魔王「あいつは『魔王』を倒し、光を解放し世界を救った」
魔王「なのに何故……『光と闇』が産まれたんだ」
紫魔「人の世の理だろう。命の理」
魔王「……いや、そうじゃ無くて」
紫魔「『光と闇の獣。汝の名は』?」
魔王「…… ……また、それか」ハァ
『もう少し掛かるかと』
『産まれたらすぐに隔離を……』
『これで我が国も……』
『赤子を連れて…… ……へ…… ……』
『王自ら…… ……』
魔王(……良く聞こえない)
魔王(しかし……あの二人は『光と闇』なのだろう)
魔王(……『何』が産まれるんだ)
シュゥン
魔王「……?」
紫魔「答えは、もう知っているだろう」
魔王「…… ……『世界』?」
紫魔「そうだ。『世界』」
魔王「……正解なのかよ。意味がわからねぇよ」
紫魔「『終わるだろう筈だった世界』だ」
魔王「……『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
紫魔「…… ……」
魔王「何故産まれた?」
紫魔「?」
魔王「『双子』だ」
魔王「金の髪の……ああ、っと。青年、か」
魔王「あいつは『魔王』を倒し、光を解放し世界を救った」
魔王「なのに何故……『光と闇』が産まれたんだ」
紫魔「人の世の理だろう。命の理」
魔王「……いや、そうじゃ無くて」
紫魔「『光と闇の獣。汝の名は』?」
魔王「…… ……また、それか」ハァ
97: 2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:S1IGpuQHP
魔王(待てよ……なんか、聞いた事がある)
魔王(……何だっけ、な…… ……ッ)ドクンッ
魔王「……ッ ぅう……ッ」
紫魔「……もう少しだ」
魔王「…… ……え?」
紫魔「『揃った』」
魔王「な、に……?」
紫魔「『生と氏』『特異点』『王』『拾う者』」
紫魔「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』『知を受け継ぐ者』」
紫魔「『光と闇』『勇者と魔王』」
紫魔「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
魔王「…… ……」
シュゥン……ッ
魔王「!」
魔王(また、光……!)
青年「『我が名は、勇者』」
青年「『光に導かれし運命の子』」
シュウゥン……!
魔王(…… ……)
??「『闇に抱かれし運命の子』」
魔王(!? 誰だ……!?)
魔王(赤茶の髪の……女!? ……しかも、また……同じ顔……!?)
女魔「『汝の名は、魔王』」
紫魔「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
紫魔「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者』」
魔王(……何だっけ、な…… ……ッ)ドクンッ
魔王「……ッ ぅう……ッ」
紫魔「……もう少しだ」
魔王「…… ……え?」
紫魔「『揃った』」
魔王「な、に……?」
紫魔「『生と氏』『特異点』『王』『拾う者』」
紫魔「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』『知を受け継ぐ者』」
紫魔「『光と闇』『勇者と魔王』」
紫魔「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
魔王「…… ……」
シュゥン……ッ
魔王「!」
魔王(また、光……!)
青年「『我が名は、勇者』」
青年「『光に導かれし運命の子』」
シュウゥン……!
魔王(…… ……)
??「『闇に抱かれし運命の子』」
魔王(!? 誰だ……!?)
魔王(赤茶の髪の……女!? ……しかも、また……同じ顔……!?)
女魔「『汝の名は、魔王』」
紫魔「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
紫魔「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者』」
98: 2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:S1IGpuQHP
女魔「『私は貴方』『貴方は私』」
魔王「……お前も『勇者』で『魔王』なのか」
女魔「そして『特異点』」
魔王「……特異点?お前が……?」
青年「代々……魔王は男しか居なかった」
青年「唯一の女勇者だ」
魔王「……別に、性別なんて……」
紫魔「……私の母も。姫も」
紫魔「『生の理』に耐えれなかった」
魔王「!」
紫魔「身に余る強大な力を生み出す代償」
魔王「……女勇者は魔王になり、その身体で自ら……」
女魔「そう。私は勇者を『育んだ』」
青年「……お前も『何れ知る』……魔王」
魔王「俺が? ……何、をだ」
女魔「『母の強さ』」
魔王「……ッ 后!」
紫魔「『全てを見、知り、感じる』んだ」
パアアアアアアアアアアアアッ
魔王「……ゥ、ウ ……ッ アアアアアアアアアッ」
……
………
…………
魔王「……お前も『勇者』で『魔王』なのか」
女魔「そして『特異点』」
魔王「……特異点?お前が……?」
青年「代々……魔王は男しか居なかった」
青年「唯一の女勇者だ」
魔王「……別に、性別なんて……」
紫魔「……私の母も。姫も」
紫魔「『生の理』に耐えれなかった」
魔王「!」
紫魔「身に余る強大な力を生み出す代償」
魔王「……女勇者は魔王になり、その身体で自ら……」
女魔「そう。私は勇者を『育んだ』」
青年「……お前も『何れ知る』……魔王」
魔王「俺が? ……何、をだ」
女魔「『母の強さ』」
魔王「……ッ 后!」
紫魔「『全てを見、知り、感じる』んだ」
パアアアアアアアアアアアアッ
魔王「……ゥ、ウ ……ッ アアアアアアアアアッ」
……
………
…………
103: 2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:S1IGpuQHP
勇者「……僧侶?」
僧侶「あ……ごめんなさい」
魔法使い「この丘の上が……お墓、なの?」
戦士「…… ……どうする?」
勇者「ん……行ってみたい?」
戦士「ああ、いや……それもあるが。新しい街というのはあれだろう」ス……
魔法使い「向こうに小さく、だけど港も見えるわね」
戦士「宿を取る必要は無いだろう」
勇者「船の時間に寄る……けど、あの場所からはそれ程時間も掛からなかった、しな」
魔法使い「さっきからじっと見てるけど……そんなに気になるの?」
僧侶「あ……いえ」
僧侶(気にならないと言えば嘘になる……)
僧侶(……エルフの眠る、丘。だけど……)
僧侶(確かに、この場所……いえ、この大陸自体が)
僧侶(何らかの力に守られている気は、してた)
僧侶(……だけど、弱い。そんな特別な物だとは思えない程……)
勇者「船を逃すのは避けたいけれど……」
戦士「まあ、まだ陽が落ちるまでには相当時間もあるだろうが」
僧侶「……いえ、港へ向かいましょう」
勇者「良いのか?」
僧侶「はい」
魔法使い「……港街、か」
戦士「どうした?」
魔法使い「いえ……懐かしいな、って思って」
勇者「闘技大会に来る時によったんじゃ無いのか?」
僧侶「あ……ごめんなさい」
魔法使い「この丘の上が……お墓、なの?」
戦士「…… ……どうする?」
勇者「ん……行ってみたい?」
戦士「ああ、いや……それもあるが。新しい街というのはあれだろう」ス……
魔法使い「向こうに小さく、だけど港も見えるわね」
戦士「宿を取る必要は無いだろう」
勇者「船の時間に寄る……けど、あの場所からはそれ程時間も掛からなかった、しな」
魔法使い「さっきからじっと見てるけど……そんなに気になるの?」
僧侶「あ……いえ」
僧侶(気にならないと言えば嘘になる……)
僧侶(……エルフの眠る、丘。だけど……)
僧侶(確かに、この場所……いえ、この大陸自体が)
僧侶(何らかの力に守られている気は、してた)
僧侶(……だけど、弱い。そんな特別な物だとは思えない程……)
勇者「船を逃すのは避けたいけれど……」
戦士「まあ、まだ陽が落ちるまでには相当時間もあるだろうが」
僧侶「……いえ、港へ向かいましょう」
勇者「良いのか?」
僧侶「はい」
魔法使い「……港街、か」
戦士「どうした?」
魔法使い「いえ……懐かしいな、って思って」
勇者「闘技大会に来る時によったんじゃ無いのか?」
104: 2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:S1IGpuQHP
魔法使い「本当に通過しただけなの。時間が無くてね」
戦士「宿を取るのか?」
勇者「行き先が決まっていない以上、な」
僧侶「…… ……」
魔法使い「取りあえず船に乗りましょ。話は戦場で良いでしょう」
スタスタ
勇者「そうだな……こんな時じゃ無ければ、満喫したいんだけど」
戦士「勇者は初めて……だよな」
勇者「戦士は?」
戦士「俺もだ」
魔法使い「僧侶はどうなの?」
僧侶「え……あ、私、は……」
僧侶(どうしよう。嘘を吐く訳には……)
戦士「! 船だ!」
勇者「汽笛が鳴ってるな……走れるか?」
魔法使い「あ、ほら……僧侶、早く!」
僧侶「あ、は、はい……!」
タタタ……
……
………
…………
戦士「宿を取るのか?」
勇者「行き先が決まっていない以上、な」
僧侶「…… ……」
魔法使い「取りあえず船に乗りましょ。話は戦場で良いでしょう」
スタスタ
勇者「そうだな……こんな時じゃ無ければ、満喫したいんだけど」
戦士「勇者は初めて……だよな」
勇者「戦士は?」
戦士「俺もだ」
魔法使い「僧侶はどうなの?」
僧侶「え……あ、私、は……」
僧侶(どうしよう。嘘を吐く訳には……)
戦士「! 船だ!」
勇者「汽笛が鳴ってるな……走れるか?」
魔法使い「あ、ほら……僧侶、早く!」
僧侶「あ、は、はい……!」
タタタ……
……
………
…………
105: 2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:S1IGpuQHP
僧侶「……良い、風です」フゥ
勇者「顔真っ青だけどな」
僧侶「ここから、港街まではそう遠くはありませんから……」ゥウ
勇者「……大丈夫、か?」
僧侶「どうぞ、勇者様もお部屋に戻って下さい」
僧侶「……私は、風に当たっていますから」
勇者「ああ……いや。俺は……まあ、僧侶が心配ってのもあるけど」
勇者「景色を見たくて、さ」
僧侶「…… ……」
勇者(それに……魔法使いは戦士と話をしたいと言っていた、しな)
僧侶「……勇者様」
勇者「ああ、そうだ。それ!」
僧侶「え?」
勇者「……『様』てのやめてくれないかな」
勇者「その、なんて言うか……」
僧侶「戦士さんから……聞きました」
僧侶「……ですけど」
勇者「仲間、なんだしさ」
僧侶「……努力、します」
勇者「……うん。ごめんな。でも……ありがとう」
勇者「ごめん。何か言いかけてたよね。何?」
僧侶「あ……あの、一つお願いがあるのですが……よろしいでしょうか?」
勇者「うん……? 何かな」
僧侶「勇者の印を……お見せ戴けないかと」
勇者「? 別に良いけど……」スッ
僧侶(右手の手のひらに……光る、剣の文様)
僧侶「とても……強い光を感じます。混じり気なしの光、そのもの」
勇者「顔真っ青だけどな」
僧侶「ここから、港街まではそう遠くはありませんから……」ゥウ
勇者「……大丈夫、か?」
僧侶「どうぞ、勇者様もお部屋に戻って下さい」
僧侶「……私は、風に当たっていますから」
勇者「ああ……いや。俺は……まあ、僧侶が心配ってのもあるけど」
勇者「景色を見たくて、さ」
僧侶「…… ……」
勇者(それに……魔法使いは戦士と話をしたいと言っていた、しな)
僧侶「……勇者様」
勇者「ああ、そうだ。それ!」
僧侶「え?」
勇者「……『様』てのやめてくれないかな」
勇者「その、なんて言うか……」
僧侶「戦士さんから……聞きました」
僧侶「……ですけど」
勇者「仲間、なんだしさ」
僧侶「……努力、します」
勇者「……うん。ごめんな。でも……ありがとう」
勇者「ごめん。何か言いかけてたよね。何?」
僧侶「あ……あの、一つお願いがあるのですが……よろしいでしょうか?」
勇者「うん……? 何かな」
僧侶「勇者の印を……お見せ戴けないかと」
勇者「? 別に良いけど……」スッ
僧侶(右手の手のひらに……光る、剣の文様)
僧侶「とても……強い光を感じます。混じり気なしの光、そのもの」
106: 2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:S1IGpuQHP
勇者「光……そのもの」
僧侶「はい……勇者は、世界に一人しか存在できない、のですよね」
僧侶「それは……やはり『特別』だから、なのでしょうか」
勇者「『特別』……か。そうだな。光の加護なんて、俺以外に見た事無いし」
僧侶「勇者様は、勇者が世界に一人しか存在しないこと。そして、その選ばれし勇者だけが光を使役できることは……」
勇者「俺は…恥ずかしながら、属性だとか、加護だとかそういうのは」
勇者「あんまり……詳しくは知らなかったけど……」
僧侶(光と闇の……喪失……)
僧侶(幼くて、ハッキリとは覚えて居ない。だけど)
僧侶(……その後、確かに輝かしい命の誕生を感じた)
僧侶(……あれ?)
僧侶(否、勘違い…… 幼くて、覚えて居ない。だから……!)
僧侶「…… ……」
勇者「……僧侶?」
僧侶(けれど、この手の文様から感じる光も)
僧侶(……あの時失われた光も)
僧侶(光の剣から感じた物も……)
勇者「僧侶!」
僧侶「あ、はい!」ビクッ
勇者「……大丈夫?」
僧侶「はい……勇者は、世界に一人しか存在できない、のですよね」
僧侶「それは……やはり『特別』だから、なのでしょうか」
勇者「『特別』……か。そうだな。光の加護なんて、俺以外に見た事無いし」
僧侶「勇者様は、勇者が世界に一人しか存在しないこと。そして、その選ばれし勇者だけが光を使役できることは……」
勇者「俺は…恥ずかしながら、属性だとか、加護だとかそういうのは」
勇者「あんまり……詳しくは知らなかったけど……」
僧侶(光と闇の……喪失……)
僧侶(幼くて、ハッキリとは覚えて居ない。だけど)
僧侶(……その後、確かに輝かしい命の誕生を感じた)
僧侶(……あれ?)
僧侶(否、勘違い…… 幼くて、覚えて居ない。だから……!)
僧侶「…… ……」
勇者「……僧侶?」
僧侶(けれど、この手の文様から感じる光も)
僧侶(……あの時失われた光も)
僧侶(光の剣から感じた物も……)
勇者「僧侶!」
僧侶「あ、はい!」ビクッ
勇者「……大丈夫?」
110: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:ylzV1/l3P
僧侶「あ……すみません」
勇者「気分悪いなら、やっぱり横になった方が……」
僧侶「……いえ。すみません、もう一度見せて下さい」ギュ
勇者(……ッ)ドキッ
僧侶(…… ……同じ。あの失われた光も)
僧侶(この勇者様から感じる光も……)
僧侶(では、光の剣から感じたあれも……勘違いじゃ無い……?)
僧侶(……でも、それでは……)
僧侶(勇者様のお父様と、この勇者様が……全く同じ、と言う事になる……!)
勇者「僧侶、やっぱり……顔色が悪いよ?」
僧侶(『勇者』だから?でも、そんな事って……!)
僧侶「いえ……ごめんなさい。ありがとうございました」
僧侶「大丈夫です……勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「……」ジッ
勇者「…… ……」ドキッ
勇者(……何で、こんなにドキドキするんだろう)
勇者(確かに綺麗な子、だけど……どこか、何となく……)
勇者(……懐かしい、様な。悲しい様な、寂しい様な……)
勇者(嬉しい、様な……?)
勇者「気分悪いなら、やっぱり横になった方が……」
僧侶「……いえ。すみません、もう一度見せて下さい」ギュ
勇者(……ッ)ドキッ
僧侶(…… ……同じ。あの失われた光も)
僧侶(この勇者様から感じる光も……)
僧侶(では、光の剣から感じたあれも……勘違いじゃ無い……?)
僧侶(……でも、それでは……)
僧侶(勇者様のお父様と、この勇者様が……全く同じ、と言う事になる……!)
勇者「僧侶、やっぱり……顔色が悪いよ?」
僧侶(『勇者』だから?でも、そんな事って……!)
僧侶「いえ……ごめんなさい。ありがとうございました」
僧侶「大丈夫です……勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「……」ジッ
勇者「…… ……」ドキッ
勇者(……何で、こんなにドキドキするんだろう)
勇者(確かに綺麗な子、だけど……どこか、何となく……)
勇者(……懐かしい、様な。悲しい様な、寂しい様な……)
勇者(嬉しい、様な……?)
111: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:ylzV1/l3P
僧侶「……港街から、何処へ行くか……まだ決まっていないのですよね?」
勇者「え!? ……あ、ああ。うん」
勇者(何だろう……妙な気持ちだ)
僧侶「では……お願い、と言うか。提案が……」
……
………
…………
戦士「話、とは何だ?」
魔法使い「……闘技大会の時の事、なんだけど」
戦士「……?」
勇者「え!? ……あ、ああ。うん」
勇者(何だろう……妙な気持ちだ)
僧侶「では……お願い、と言うか。提案が……」
……
………
…………
戦士「話、とは何だ?」
魔法使い「……闘技大会の時の事、なんだけど」
戦士「……?」
112: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:ylzV1/l3P
働いてきますー
電車でかけたらー
電車でかけたらー
117: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:LTKEC8BaP
魔法使い「アンタ……見たでしょ、私の火傷」
戦士「? ……ああ。手当を受けろ、と言った……な」
魔法使い「…… ……」
戦士「それが……どうした?」
魔法使い「……僧侶に、話した?」
戦士「?? ……否?」
魔法使い「そう…… ……」ホッ
戦士「……言われたくない事情でもあるのか」
魔法使い「……いえ、そういう訳じゃ……ああ、でも」
戦士「…… ……」
魔法使い「ちゃんと、自分の口から言いたかっただけよ」
戦士「?」
魔法使い「……良いの。確認したかっただけ」
戦士「……そうか。少し……すっきりしたのか」
魔法使い「え?」
戦士「そんな顔をしている……気が、する」
魔法使い「…… ……」
戦士「旅籠で、自己紹介した時や……森の中でもそうだが」
戦士「随分と思い詰めていた様に見えたからな」
魔法使い「……そうね。負けたくないって思ってた」
戦士「……誰に、だ」
魔法使い「解らないわ……誰にも、かしら。いえ……特に……僧侶には」
戦士「僧侶に?」
魔法使い「ええ……彼女は優れた加護を持ってる」
戦士「優れた加護……」
魔法使い「……私は魔導の街の領主の血筋……正確には、孫なの」
魔法使い「あの人達は……皆、優れた加護を持っているのよ」
戦士「それは……どう言う物なんだ?」
魔法使い「文字通りよ。持たない人とは違う、特別な力」
戦士「……特別」
戦士「? ……ああ。手当を受けろ、と言った……な」
魔法使い「…… ……」
戦士「それが……どうした?」
魔法使い「……僧侶に、話した?」
戦士「?? ……否?」
魔法使い「そう…… ……」ホッ
戦士「……言われたくない事情でもあるのか」
魔法使い「……いえ、そういう訳じゃ……ああ、でも」
戦士「…… ……」
魔法使い「ちゃんと、自分の口から言いたかっただけよ」
戦士「?」
魔法使い「……良いの。確認したかっただけ」
戦士「……そうか。少し……すっきりしたのか」
魔法使い「え?」
戦士「そんな顔をしている……気が、する」
魔法使い「…… ……」
戦士「旅籠で、自己紹介した時や……森の中でもそうだが」
戦士「随分と思い詰めていた様に見えたからな」
魔法使い「……そうね。負けたくないって思ってた」
戦士「……誰に、だ」
魔法使い「解らないわ……誰にも、かしら。いえ……特に……僧侶には」
戦士「僧侶に?」
魔法使い「ええ……彼女は優れた加護を持ってる」
戦士「優れた加護……」
魔法使い「……私は魔導の街の領主の血筋……正確には、孫なの」
魔法使い「あの人達は……皆、優れた加護を持っているのよ」
戦士「それは……どう言う物なんだ?」
魔法使い「文字通りよ。持たない人とは違う、特別な力」
戦士「……特別」
118: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:LTKEC8BaP
魔法使い「……僧侶が川に落ちた時、濡れなかったでしょ?」
戦士「しかし、あの紫の男が来てからは……」
魔法使い「その違いは『魔法の水か否か』」
戦士「……僧侶の加護は、水、か」
魔法使い「そう。彼女は水の魔法でダメージを受けることは無いのよ」
戦士「…… ……」
魔法使い「私のあの腕の火傷は、自分の魔法で負った物よ」
戦士「……お前は、持っていないんだな」
魔法使い「…… ……」
戦士(成る程。それで『負けたくない』か)
戦士(……しかし)
魔法使い「どうして家が関係あるのか、と聞きたい、のよね」
戦士「……まあ、そうだな」
魔法使い「……問題は『私だけがあの家で、優れた加護を持つ者では無い』って事」
魔法使い「『出来損ない』なのよ。私は」
戦士「…… ……」
魔法使い「そうであった血筋の者がどうなったかは知らないわ」
魔法使い「だけど、落胆され、絶望されて……見捨てられると思うと怖かった」
戦士「僧侶も勇者も、だからと……お前をどうこう思うとは思えないが」
魔法使い「……解ってるわ。拘っていたのは、私自身」
魔法使い「それに……僧侶は、気がついていると思う」
戦士「……感じる力、か」
魔法使い「…… ……」
魔法使い「とにかく、自分の口から話したかったの。それだけ」
戦士「……解った。しかし……」
魔法使い「?」
戦士「それは……『特別』なのか?」
魔法使い「……え?」
戦士「まあ……戦闘に置いては確かに、便利だろう、が」
戦士「……だからといって、それ程特筆すべき物、なのか?」
魔法使い「…… ……」
戦士「しかし、あの紫の男が来てからは……」
魔法使い「その違いは『魔法の水か否か』」
戦士「……僧侶の加護は、水、か」
魔法使い「そう。彼女は水の魔法でダメージを受けることは無いのよ」
戦士「…… ……」
魔法使い「私のあの腕の火傷は、自分の魔法で負った物よ」
戦士「……お前は、持っていないんだな」
魔法使い「…… ……」
戦士(成る程。それで『負けたくない』か)
戦士(……しかし)
魔法使い「どうして家が関係あるのか、と聞きたい、のよね」
戦士「……まあ、そうだな」
魔法使い「……問題は『私だけがあの家で、優れた加護を持つ者では無い』って事」
魔法使い「『出来損ない』なのよ。私は」
戦士「…… ……」
魔法使い「そうであった血筋の者がどうなったかは知らないわ」
魔法使い「だけど、落胆され、絶望されて……見捨てられると思うと怖かった」
戦士「僧侶も勇者も、だからと……お前をどうこう思うとは思えないが」
魔法使い「……解ってるわ。拘っていたのは、私自身」
魔法使い「それに……僧侶は、気がついていると思う」
戦士「……感じる力、か」
魔法使い「…… ……」
魔法使い「とにかく、自分の口から話したかったの。それだけ」
戦士「……解った。しかし……」
魔法使い「?」
戦士「それは……『特別』なのか?」
魔法使い「……え?」
戦士「まあ……戦闘に置いては確かに、便利だろう、が」
戦士「……だからといって、それ程特筆すべき物、なのか?」
魔法使い「…… ……」
119: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:LTKEC8BaP
戦士「あ……す、すまん!卑下するつもりなど無いぞ!?」
戦士「確かに、素晴らしい力なのかもしれん。だが……」
戦士「……お前はお前だろう?勇者が勇者であるように」
魔法使い「…… ……」
戦士「確かに僧侶の感じる力と言うのは……凄いとは思うが」
戦士「それも……だからといって人と比べ、一方的に何かより『優れている』と」
戦士「決めつけられる物でもあるまい」
魔法使い「…… ……」
戦士(……地雷を踏んだ……か?)
戦士(俯いた侭では……表情も見えん)
戦士「…… ……魔法使い」ス……グイ
魔法使い「!」ビクッ
戦士「…… ……」
魔法使い「…… ……」ドキッ
戦士(…… ……顎を掴んで思わず上を向かせたが)
戦士(見つめられても……どうすれば良いんだ)ドキドキ
魔法使い「な、なな、何よ!?」
戦士「あ、いや、その…… ……」
戦士「…… ……大事な仲間だ。出来れば、その」
戦士「笑っていて、欲しいな……と」
戦士(な、何を言ってるんだ、俺は!)ドキドキ
魔法使い(…… ……笑って、って)ドキドキ
魔法使い「え、あ ……あ、りがと……いや、あの……」フィッ
魔法使い(なん、何なのよこれ!もう!)ドキドキ
魔法使い「…… ……そ、そうよね。仲間……だから」
魔法使い「私も……その、出来れば、何でも話したい、のよ」
戦士「あ、ああ…… ……そ、うだよな」
カチャ
戦士「!」
魔法使い「!」
戦士「確かに、素晴らしい力なのかもしれん。だが……」
戦士「……お前はお前だろう?勇者が勇者であるように」
魔法使い「…… ……」
戦士「確かに僧侶の感じる力と言うのは……凄いとは思うが」
戦士「それも……だからといって人と比べ、一方的に何かより『優れている』と」
戦士「決めつけられる物でもあるまい」
魔法使い「…… ……」
戦士(……地雷を踏んだ……か?)
戦士(俯いた侭では……表情も見えん)
戦士「…… ……魔法使い」ス……グイ
魔法使い「!」ビクッ
戦士「…… ……」
魔法使い「…… ……」ドキッ
戦士(…… ……顎を掴んで思わず上を向かせたが)
戦士(見つめられても……どうすれば良いんだ)ドキドキ
魔法使い「な、なな、何よ!?」
戦士「あ、いや、その…… ……」
戦士「…… ……大事な仲間だ。出来れば、その」
戦士「笑っていて、欲しいな……と」
戦士(な、何を言ってるんだ、俺は!)ドキドキ
魔法使い(…… ……笑って、って)ドキドキ
魔法使い「え、あ ……あ、りがと……いや、あの……」フィッ
魔法使い(なん、何なのよこれ!もう!)ドキドキ
魔法使い「…… ……そ、そうよね。仲間……だから」
魔法使い「私も……その、出来れば、何でも話したい、のよ」
戦士「あ、ああ…… ……そ、うだよな」
カチャ
戦士「!」
魔法使い「!」
120: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:LTKEC8BaP
勇者「……なんだ?二人して……こっち凝視して……」
僧侶「どうかされましたか……?」
魔法使い「な、何でも無いわ!僧侶!気分は!?」
僧侶「え!?あ、はい、その……大丈夫です、よ?」
戦士「…… ……」フィッ
勇者「?? ……そろそろ港街に着く」
魔法使い「あ……もう?」
勇者「ああ。取りあえず行き先の相談をしたいんだが……」
戦士「宿を取る、のか?」
魔法使い「港街から行ける場所って……何処があるんだろう」
勇者「まあ、宿は時間次第、かな」
勇者「のんびり観光は出来ないけど……」
僧侶「少し、街を見て回りましょう。道具の補充や、船の行き先なども」
僧侶「調べないと行けませんしね」
僧侶「……少し、話したい事もあるんです」
魔法使い「……奇遇ね」
僧侶「え?」
魔法使い「私も、話したい……聞きたい事があるの」
僧侶「…… ……では、どこかで腰を落ち着けましょうか、勇者様?」
勇者「様、やめてって……まあ、良いや。それには賛成」
僧侶「あ、すみません……」
戦士「無理はさせなくても良いだろう……取りあえず、行こう」
……
………
…………
僧侶「どうかされましたか……?」
魔法使い「な、何でも無いわ!僧侶!気分は!?」
僧侶「え!?あ、はい、その……大丈夫です、よ?」
戦士「…… ……」フィッ
勇者「?? ……そろそろ港街に着く」
魔法使い「あ……もう?」
勇者「ああ。取りあえず行き先の相談をしたいんだが……」
戦士「宿を取る、のか?」
魔法使い「港街から行ける場所って……何処があるんだろう」
勇者「まあ、宿は時間次第、かな」
勇者「のんびり観光は出来ないけど……」
僧侶「少し、街を見て回りましょう。道具の補充や、船の行き先なども」
僧侶「調べないと行けませんしね」
僧侶「……少し、話したい事もあるんです」
魔法使い「……奇遇ね」
僧侶「え?」
魔法使い「私も、話したい……聞きたい事があるの」
僧侶「…… ……では、どこかで腰を落ち着けましょうか、勇者様?」
勇者「様、やめてって……まあ、良いや。それには賛成」
僧侶「あ、すみません……」
戦士「無理はさせなくても良いだろう……取りあえず、行こう」
……
………
…………
121: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:LTKEC8BaP
剣士「…… ……」
母親「何をブスッとしているのよ」クスクス
剣士「……元々こんな顔だ」
母親「そうね。初めて会った時から。この『国』を出て行った時から」
母親「……貴方は、何も変わっていない」
剣士「…… ……お前が言っていたのは、これか」
母親「…… ……」
剣士(船長の船でここへ来たのは……あの船しかこの街に入れないからか)
剣士(……もう、南へ向かったのだろう)フゥ
母親「何のため息よ?」
剣士「……事実上軟禁と変わらんな」
母親「意味が分からないわね」
剣士「…… ……」
剣士(厳重な警備……否、あれではまるで軍隊だ)
剣士(……しかも、『魔導国』だと……)
母親「そんなに睨まなくても、ちゃんと説明してあげるわ」
母親「……約束だった物ね」
剣士「そう良いながら、もうこの街について一刻程経つ」
母親「『国』、ね」
母親「……もうすぐ『王』が戻るわ」
剣士「……領主、か」
母親「王だと言ったでしょう」
剣士(街並みも、建物の内部も……変わらん)
剣士(……変わったのは人だけ……否)
剣士(それも、変わらんのだろうな)
コンコン
母親「何をブスッとしているのよ」クスクス
剣士「……元々こんな顔だ」
母親「そうね。初めて会った時から。この『国』を出て行った時から」
母親「……貴方は、何も変わっていない」
剣士「…… ……お前が言っていたのは、これか」
母親「…… ……」
剣士(船長の船でここへ来たのは……あの船しかこの街に入れないからか)
剣士(……もう、南へ向かったのだろう)フゥ
母親「何のため息よ?」
剣士「……事実上軟禁と変わらんな」
母親「意味が分からないわね」
剣士「…… ……」
剣士(厳重な警備……否、あれではまるで軍隊だ)
剣士(……しかも、『魔導国』だと……)
母親「そんなに睨まなくても、ちゃんと説明してあげるわ」
母親「……約束だった物ね」
剣士「そう良いながら、もうこの街について一刻程経つ」
母親「『国』、ね」
母親「……もうすぐ『王』が戻るわ」
剣士「……領主、か」
母親「王だと言ったでしょう」
剣士(街並みも、建物の内部も……変わらん)
剣士(……変わったのは人だけ……否)
剣士(それも、変わらんのだろうな)
コンコン
122: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:LTKEC8BaP
母親「はい」
カチャ
領主「戻って居たか……おお!お久しぶりですな、剣士様!」
剣士「……領主、か。随分老けたな」
領主「王と呼んで頂けますかな……貴方は、やはり『変わられない』」ニヤ
領主「……否。少年様とお呼びするべきかな?『魔族の御仁』」ニヤニヤ
剣士「…… ……俺は少年では無いと言ったはずだが」
領主「記憶は戻っておられない様だ……まあ、良いでしょう」
領主「『貴方がこの街に戻った』事にこそ、意味がある」
母親「父親は?」
領主「すぐに来る……さて、色々とお話をお聞かせ願いましょうかな」
剣士「そんな義務は無い」
領主「……孫娘の動向を気にしない爺はおりますまい?」
剣士「…… ……」
領主「すぐに食事の支度をさせましょう」
母親「歓待、受けてくれる約束よね?」
剣士「…… ……」
母親「説明はその時に……ね」
コンコン、カチャ
父親「失礼します……ああ、お久しぶりで御座います、少年様」
剣士「俺の名は剣士だ」
父親「……剣士様。お食事の準備が整いましたよ」
父親「王様もご一緒されますよね?」
領主「当然だ」
父親「……さて、では……何処から話しましょうか?」
母親「気がついていると思うけど……」
剣士「……街を封鎖したのか」
母親「国だ、と言っているでしょう」
カチャ
領主「戻って居たか……おお!お久しぶりですな、剣士様!」
剣士「……領主、か。随分老けたな」
領主「王と呼んで頂けますかな……貴方は、やはり『変わられない』」ニヤ
領主「……否。少年様とお呼びするべきかな?『魔族の御仁』」ニヤニヤ
剣士「…… ……俺は少年では無いと言ったはずだが」
領主「記憶は戻っておられない様だ……まあ、良いでしょう」
領主「『貴方がこの街に戻った』事にこそ、意味がある」
母親「父親は?」
領主「すぐに来る……さて、色々とお話をお聞かせ願いましょうかな」
剣士「そんな義務は無い」
領主「……孫娘の動向を気にしない爺はおりますまい?」
剣士「…… ……」
領主「すぐに食事の支度をさせましょう」
母親「歓待、受けてくれる約束よね?」
剣士「…… ……」
母親「説明はその時に……ね」
コンコン、カチャ
父親「失礼します……ああ、お久しぶりで御座います、少年様」
剣士「俺の名は剣士だ」
父親「……剣士様。お食事の準備が整いましたよ」
父親「王様もご一緒されますよね?」
領主「当然だ」
父親「……さて、では……何処から話しましょうか?」
母親「気がついていると思うけど……」
剣士「……街を封鎖したのか」
母親「国だ、と言っているでしょう」
123: 2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN ID:LTKEC8BaP
領主「この国は、『魔導の街』から『魔導国』へと生まれ変わったのですよ」
領主「国と名乗るからには、王が必要でしょう?」
領主「僭越ながら……私が、ね」
剣士(思っても居ないことを……)
剣士「……では、あの港に居たのは兵士なのか」
領主「ええ。我が軍直属の魔法兵団の兵士ですよ」
剣士「……此処まで、街を歩いてきたが、随分人が少なかったが?」
父親「当然ですよ。我が国は今までと違って、封鎖国家となったのですから」
父親「……優れた加護を持つ人間以外は、追放しましたからね」
剣士「……何?」
母親「当然でしょ。今までも本来なら居住を許されるのはそういう者ばかりだったのよ」
母親「特別措置はもう終わり。『出来損ない』はいらないの」
剣士「…… ……」
父親「ただし、この街の出身者は別だ」
父親「世界各国へ散り散りになった者達へは、この国へ戻るようにと」
父親「使者を送り込んでいる」
剣士「……その、出来損ないとは何だ」
領主「お恥ずかしい話ですがね。我が血筋にも稀に」
領主「……優れた加護を持たない者が産まれて来るのです」
剣士「…… ……」
領主「ですが、血筋は血筋」
領主「……彼らには彼らの、役割があるのですよ」
剣士「……戻ると思っているのか?」
母親「世の中にはね、支配される者とする者が居る……否」
母親「結局はそれが全てなのよ」
父親「そこには、それが世界であるか、国であるかの差しかない」
剣士「……本気で言っているのか?」
領主「国と名乗るからには、王が必要でしょう?」
領主「僭越ながら……私が、ね」
剣士(思っても居ないことを……)
剣士「……では、あの港に居たのは兵士なのか」
領主「ええ。我が軍直属の魔法兵団の兵士ですよ」
剣士「……此処まで、街を歩いてきたが、随分人が少なかったが?」
父親「当然ですよ。我が国は今までと違って、封鎖国家となったのですから」
父親「……優れた加護を持つ人間以外は、追放しましたからね」
剣士「……何?」
母親「当然でしょ。今までも本来なら居住を許されるのはそういう者ばかりだったのよ」
母親「特別措置はもう終わり。『出来損ない』はいらないの」
剣士「…… ……」
父親「ただし、この街の出身者は別だ」
父親「世界各国へ散り散りになった者達へは、この国へ戻るようにと」
父親「使者を送り込んでいる」
剣士「……その、出来損ないとは何だ」
領主「お恥ずかしい話ですがね。我が血筋にも稀に」
領主「……優れた加護を持たない者が産まれて来るのです」
剣士「…… ……」
領主「ですが、血筋は血筋」
領主「……彼らには彼らの、役割があるのですよ」
剣士「……戻ると思っているのか?」
母親「世の中にはね、支配される者とする者が居る……否」
母親「結局はそれが全てなのよ」
父親「そこには、それが世界であるか、国であるかの差しかない」
剣士「……本気で言っているのか?」
124: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
領主「勿論ですよ」
領主「……我らは、特別ですから」
剣士「…… ……?」
領主「我らは元々、最果ての地に住んでいたのです」
剣士「!」
領主「魔族同士の争いの戦火から逃れ、優れた血だけで栄えてきた一族なのですよ」
父親「北の街の近くに集落を作り、数が増えれば土地を変え……そして、此処にたどり着いた」
母親「魔族に唯一、許された『種』なの。人間の中で唯一、ね」
母親「それが、私達『魔導国』の人間よ」
剣士「近親婚を繰り返した、のか?」
領主「優れた血を残す為です」
領主「……以前、貴方は鍛冶師の村の付近で、傭兵をされていましたな」
剣士「!?」
領主「この国を出て行かれてから、ですよ」
剣士(つけられていた……のか?)
領主「……その鋼から、華麗に雷を操られていたと聞いています」
剣士「…… ……」
領主「私も、この母親も父親も」
領主「……共に、雷の加護を受けています。勿論」
領主「最初に集落を作った、二人……祖先の姉と弟も」
領主「同じ加護を持っていたと……書に残って居ます」
剣士「…… ……それが、何だと言うのだ」
父親「知っていますか。瞳の色が、加護を表すのだと言う事」
剣士「……ああ」
母親「それが100%で無いと言うことも?」
剣士「…… ……」
母親「知ってるわよね。この国の図書館の本、あれほど熱心に読んでいたんだもの」
領主「……我らは、特別ですから」
剣士「…… ……?」
領主「我らは元々、最果ての地に住んでいたのです」
剣士「!」
領主「魔族同士の争いの戦火から逃れ、優れた血だけで栄えてきた一族なのですよ」
父親「北の街の近くに集落を作り、数が増えれば土地を変え……そして、此処にたどり着いた」
母親「魔族に唯一、許された『種』なの。人間の中で唯一、ね」
母親「それが、私達『魔導国』の人間よ」
剣士「近親婚を繰り返した、のか?」
領主「優れた血を残す為です」
領主「……以前、貴方は鍛冶師の村の付近で、傭兵をされていましたな」
剣士「!?」
領主「この国を出て行かれてから、ですよ」
剣士(つけられていた……のか?)
領主「……その鋼から、華麗に雷を操られていたと聞いています」
剣士「…… ……」
領主「私も、この母親も父親も」
領主「……共に、雷の加護を受けています。勿論」
領主「最初に集落を作った、二人……祖先の姉と弟も」
領主「同じ加護を持っていたと……書に残って居ます」
剣士「…… ……それが、何だと言うのだ」
父親「知っていますか。瞳の色が、加護を表すのだと言う事」
剣士「……ああ」
母親「それが100%で無いと言うことも?」
剣士「…… ……」
母親「知ってるわよね。この国の図書館の本、あれほど熱心に読んでいたんだもの」
125: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
母親「魔法使いにも期待はしたけど……あの子は、違った」
母親「色通りの炎……でも、優れた加護は当然ながら、持っている」
父親「始まりの街で会ったのでしょう?そして、見事勇者の仲間となった」
領主「闘技大会で負けたのは残念だったが、しかしそこは流石……です」
領主「……そして、貴方はこの国にお戻りになった」
領主「加護と異なる属性を持ち、人と違う生を持つ……剣士様」
剣士「…… ……」
領主「貴方様が闇色の瞳を持つ事こそ」
領主「……魔族の証でしょう」
剣士「この瞳の色が魔族の証だと?」
母親「確証は無い。だけど……歳を取らないと言うだけで、充分でしょう」
父親「貴方の全てが『特別』なのですよ!」
父親「……少年様の瞳も紫だった」
父親「記憶を無くされているのは残念ですが……」
剣士「嘘を吐け。その方がお前達にとって都合が良いのだろう」
剣士「……それに、俺は少年じゃ無いと何度言えば……」
母親「それこそ確証の無い話でしょう?だって」
母親「貴方は何も覚えて居ない」
剣士「…… ……」
剣士(こいつらにとっては『雷の加護』も『特別』なんだな)
剣士(色彩と異なる加護……そして、『人で無いだろう』俺の身)
剣士「…… ……何をするつもりだ?」
父親「簡単なことです」
父親「……貴方は、魔法使いと貴方の間に子供を作って下されば良い」
剣士「…… ……何!?」
父親「勇者一行は必ず、この国へ帰ってきます」
剣士「……その自信はどこから来る?お前も、母親も……」
父親「封鎖されていては、入る方法はありません」
領主「だが、此処にはあらゆる知識が集結する」
領主「それは、貴方自身もよくご存じな筈だ」
剣士「!」
母親「色通りの炎……でも、優れた加護は当然ながら、持っている」
父親「始まりの街で会ったのでしょう?そして、見事勇者の仲間となった」
領主「闘技大会で負けたのは残念だったが、しかしそこは流石……です」
領主「……そして、貴方はこの国にお戻りになった」
領主「加護と異なる属性を持ち、人と違う生を持つ……剣士様」
剣士「…… ……」
領主「貴方様が闇色の瞳を持つ事こそ」
領主「……魔族の証でしょう」
剣士「この瞳の色が魔族の証だと?」
母親「確証は無い。だけど……歳を取らないと言うだけで、充分でしょう」
父親「貴方の全てが『特別』なのですよ!」
父親「……少年様の瞳も紫だった」
父親「記憶を無くされているのは残念ですが……」
剣士「嘘を吐け。その方がお前達にとって都合が良いのだろう」
剣士「……それに、俺は少年じゃ無いと何度言えば……」
母親「それこそ確証の無い話でしょう?だって」
母親「貴方は何も覚えて居ない」
剣士「…… ……」
剣士(こいつらにとっては『雷の加護』も『特別』なんだな)
剣士(色彩と異なる加護……そして、『人で無いだろう』俺の身)
剣士「…… ……何をするつもりだ?」
父親「簡単なことです」
父親「……貴方は、魔法使いと貴方の間に子供を作って下されば良い」
剣士「…… ……何!?」
父親「勇者一行は必ず、この国へ帰ってきます」
剣士「……その自信はどこから来る?お前も、母親も……」
父親「封鎖されていては、入る方法はありません」
領主「だが、此処にはあらゆる知識が集結する」
領主「それは、貴方自身もよくご存じな筈だ」
剣士「!」
126: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
領主「……子が出来れば、貴方は魔法使いの変わりに、勇者に着いていけば良い」
剣士「……勇者に選ばれたのはあの三人だ。俺は……」
父親「『魔王を倒す』んだろう?」
剣士「…… ……」
剣士(狂ってる、としか言いようが無い)
剣士(……人、とは……こんな生き物なのか!?)
母親「心配しなくて良いわ。言ったでしょ?あの子は必ず帰ってくる」
剣士「……何処にそんな保証がある」
父親「現在、我が軍と始まりの街の軍は交戦中だ」
剣士「!?」
父親「……勇者は、どんな反応をするかな?」
剣士「彼らがあの街へ戻れば済む話では無いのか?」
父親「『魔導国の国王の孫娘』が居れば、利用しようとするだろう」
領主「王とは……国を導いて行く、と言うのは。政治とは」
領主「そういうもの、ですよ。剣士様」クック
剣士(……そう、上手くいく、かな)ハァ
剣士(あの国王……頭は切れそうに見えた、がな)
母親「……違えば出て行けば良いのよ」
剣士「この状態でか。船も近づかない、この……ッ」
母親「『魔族』って不氏に近いんでしょ?」クスクス
父親「魔法使いの妊娠が解れば、ちゃんとお送りしますよ」
剣士「……見張りをつけて、か」
父親「…… ……」ニコ
剣士(…… ……厄介な連中だ)
剣士(まるっきり信用する気にはなれんが……)
剣士(……まだ、何か企んでいる、だろうな)ハァ
剣士「……勇者に選ばれたのはあの三人だ。俺は……」
父親「『魔王を倒す』んだろう?」
剣士「…… ……」
剣士(狂ってる、としか言いようが無い)
剣士(……人、とは……こんな生き物なのか!?)
母親「心配しなくて良いわ。言ったでしょ?あの子は必ず帰ってくる」
剣士「……何処にそんな保証がある」
父親「現在、我が軍と始まりの街の軍は交戦中だ」
剣士「!?」
父親「……勇者は、どんな反応をするかな?」
剣士「彼らがあの街へ戻れば済む話では無いのか?」
父親「『魔導国の国王の孫娘』が居れば、利用しようとするだろう」
領主「王とは……国を導いて行く、と言うのは。政治とは」
領主「そういうもの、ですよ。剣士様」クック
剣士(……そう、上手くいく、かな)ハァ
剣士(あの国王……頭は切れそうに見えた、がな)
母親「……違えば出て行けば良いのよ」
剣士「この状態でか。船も近づかない、この……ッ」
母親「『魔族』って不氏に近いんでしょ?」クスクス
父親「魔法使いの妊娠が解れば、ちゃんとお送りしますよ」
剣士「……見張りをつけて、か」
父親「…… ……」ニコ
剣士(…… ……厄介な連中だ)
剣士(まるっきり信用する気にはなれんが……)
剣士(……まだ、何か企んでいる、だろうな)ハァ
127: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
明日も仕事!今日はこの辺でー
130: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
え、なにそれ( ゚д゚)
私p2だよ?●は買ってないよー
モリタポ?は買ったけど…
つかトイレに起きたら何事だ?
((((;゚Д゚)))))))
私p2だよ?●は買ってないよー
モリタポ?は買ったけど…
つかトイレに起きたら何事だ?
((((;゚Д゚)))))))
132: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
おはよう!
なんか大変な事になってるみたいだな……
とりあえず出勤まで少しだけ
なんか大変な事になってるみたいだな……
とりあえず出勤まで少しだけ
133: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
と思ったけど時間ねぇ((((;゚Д゚)))))))
134: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
領主「さて、では私は失礼いたします」
領主「仕事が残っていますからね……行くぞ、父親」
父親「ああ……勇者達が来るまで、まだまだ時間はあるでしょう」
父親「どうぞ、ご自由にこの国でお過ごし下さい、剣士様」
父親「貴方の部屋は以前の侭、残してありますから」
剣士「…… ……」
パタン
母親「浮かない顔ね」
剣士「当然だろう……お前達、何を企んでいる」
母親「……随分よね。同じ血を持っているかもしれないのに」
剣士「……何?」
領主「仕事が残っていますからね……行くぞ、父親」
父親「ああ……勇者達が来るまで、まだまだ時間はあるでしょう」
父親「どうぞ、ご自由にこの国でお過ごし下さい、剣士様」
父親「貴方の部屋は以前の侭、残してありますから」
剣士「…… ……」
パタン
母親「浮かない顔ね」
剣士「当然だろう……お前達、何を企んでいる」
母親「……随分よね。同じ血を持っているかもしれないのに」
剣士「……何?」
135: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
母親「お父様とお兄様は否定するけど」
母親「……私は、祖には魔族があるんじゃ無いかと思ってるわ」
剣士「……兄?」
母親「気付いて無かったの? ……まあ、良いわ」
母親「優れた人間であった、て拘りたい気持ちはわかるわ。だけど」
母親「……魔族の血が入っていると考える方が自然でしょ」
剣士「優れた加護、とやらか」
母親「ええ」
剣士「……だがあれは、『精霊との契約の様な物』なのだろう」
母親「後付の講釈なんてどうでも良いのよ」
剣士「…… ……」
母親「これで魔法使いが雷の加護を受けていたら、申し分無かったんだけどね」ハァ
剣士(『拘っている』のは誰よりも母親じゃないか……)
剣士(しかし……本当に無茶苦茶だな、こいつら……)
母親「……私は、祖には魔族があるんじゃ無いかと思ってるわ」
剣士「……兄?」
母親「気付いて無かったの? ……まあ、良いわ」
母親「優れた人間であった、て拘りたい気持ちはわかるわ。だけど」
母親「……魔族の血が入っていると考える方が自然でしょ」
剣士「優れた加護、とやらか」
母親「ええ」
剣士「……だがあれは、『精霊との契約の様な物』なのだろう」
母親「後付の講釈なんてどうでも良いのよ」
剣士「…… ……」
母親「これで魔法使いが雷の加護を受けていたら、申し分無かったんだけどね」ハァ
剣士(『拘っている』のは誰よりも母親じゃないか……)
剣士(しかし……本当に無茶苦茶だな、こいつら……)
136: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
剣士「……この街の血筋の者を呼び戻す、と行ったな」
母親「それが何?」
剣士「……彼らの役割とは、何だ」
母親「…… ……『出来損ない』に出来る事なんてしれてるわ」
剣士「…… ……」
母親「言ったでしょ『世の中には支配する側とされる側しかない』のよ」
剣士(……ッ 奴隷化するつもりか……!)
剣士(あの時、助けて正解だった……のだろうな)
剣士(魔法使い……あの娘)
母親「それが何?」
剣士「……彼らの役割とは、何だ」
母親「…… ……『出来損ない』に出来る事なんてしれてるわ」
剣士「…… ……」
母親「言ったでしょ『世の中には支配する側とされる側しかない』のよ」
剣士(……ッ 奴隷化するつもりか……!)
剣士(あの時、助けて正解だった……のだろうな)
剣士(魔法使い……あの娘)
137: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
剣士(もし、あの娘の事がばれたなら)
剣士(……あっさりと、奴隷にでも何でもするんだろう)
剣士(そして……子ならまた作れば良いと言ってのけそうだ)
剣士(……俺が、優れた加護等持たないと知れば、さて)
剣士(…… ……どんな顔をするやら)
剣士(……あっさりと、奴隷にでも何でもするんだろう)
剣士(そして……子ならまた作れば良いと言ってのけそうだ)
剣士(……俺が、優れた加護等持たないと知れば、さて)
剣士(…… ……どんな顔をするやら)
142: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
母親「どうして喜ばないのか不思議でならないわ」
剣士「……何?」
母親「念願だったんでしょ。勇者と旅に出るの」
剣士「……本気で言っているのか」
母親「勿論よ」
剣士「…… ……哀れだな」ハァ
母親「…… ……なんですって?」
剣士「『哀れ』だと言ったんだ」カタン、スタスタ
母親「ま、待ちなさい!」
剣士「……… ………」
パタン
母親「……ッ」ガンッ
ガシャン、ガシャン!
タタタ……カチャ
メイド「失礼致します…… 母親様!? ……あ、お怪我、は」
母親「……さっさと片付けて頂戴!」
メイド「は、はい……!」
母親(魔法使いさえ、戻ったら……!)
剣士「……何?」
母親「念願だったんでしょ。勇者と旅に出るの」
剣士「……本気で言っているのか」
母親「勿論よ」
剣士「…… ……哀れだな」ハァ
母親「…… ……なんですって?」
剣士「『哀れ』だと言ったんだ」カタン、スタスタ
母親「ま、待ちなさい!」
剣士「……… ………」
パタン
母親「……ッ」ガンッ
ガシャン、ガシャン!
タタタ……カチャ
メイド「失礼致します…… 母親様!? ……あ、お怪我、は」
母親「……さっさと片付けて頂戴!」
メイド「は、はい……!」
母親(魔法使いさえ、戻ったら……!)
143: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
……
………
…………
魔法使い「……ッ くしゅん!」
僧侶「だ、大丈夫ですか、魔法使いさん」
魔法使い「ええ……」
勇者「しかし……想像してたより活気のある街だな」
戦士「船の行き先を聞いてこよう。此処で待っていてくれ」スタスタ
勇者「ああ。ありがとうな」
魔法使い「…… ……」
僧侶「どうしました?やはり……どこかお加減でも……」
魔法使い「あ、いえ……違うの」
魔法使い「あの……丘の上に、ね」スッ
僧侶「…… ……」
魔法使い「教会があったはず、なのよ」
勇者「教会?」
魔法使い「ええ。行った事は無いんだけど、あったのは覚えてる」
魔法使い「小さい頃、両親につれられてこの街に来た時に」
魔法使い「お姉さんに教会の場所を聞かれたのを覚えて居るのよ」
僧侶「!」
勇者「へぇ……」
僧侶(まさか……あの、小さかった女の子は……魔法使いさん!?)
魔法使い「でも、もう随分経つものね……無くなっちゃったのかな」
戦士「おい!」タタタ
勇者「ああ、戦士ありがとう…… ……どうした、険しい顔して」
戦士「……大変な事になっている様だぞ」
僧侶「大変な事?」
戦士「…… ……始まりの国と、魔導の街の兵士が交戦中、だそうだ」
魔法使い「何ですって!?」
ザワザワ……
勇者「大きな声を出すな! ……どう言う事だ!?」
………
…………
魔法使い「……ッ くしゅん!」
僧侶「だ、大丈夫ですか、魔法使いさん」
魔法使い「ええ……」
勇者「しかし……想像してたより活気のある街だな」
戦士「船の行き先を聞いてこよう。此処で待っていてくれ」スタスタ
勇者「ああ。ありがとうな」
魔法使い「…… ……」
僧侶「どうしました?やはり……どこかお加減でも……」
魔法使い「あ、いえ……違うの」
魔法使い「あの……丘の上に、ね」スッ
僧侶「…… ……」
魔法使い「教会があったはず、なのよ」
勇者「教会?」
魔法使い「ええ。行った事は無いんだけど、あったのは覚えてる」
魔法使い「小さい頃、両親につれられてこの街に来た時に」
魔法使い「お姉さんに教会の場所を聞かれたのを覚えて居るのよ」
僧侶「!」
勇者「へぇ……」
僧侶(まさか……あの、小さかった女の子は……魔法使いさん!?)
魔法使い「でも、もう随分経つものね……無くなっちゃったのかな」
戦士「おい!」タタタ
勇者「ああ、戦士ありがとう…… ……どうした、険しい顔して」
戦士「……大変な事になっている様だぞ」
僧侶「大変な事?」
戦士「…… ……始まりの国と、魔導の街の兵士が交戦中、だそうだ」
魔法使い「何ですって!?」
ザワザワ……
勇者「大きな声を出すな! ……どう言う事だ!?」
144: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
戦士「お前もだ、勇者…… ……否、その前に」
戦士「場所を移そう。此処では……」
僧侶「……聞かれるとまずい、のですか?」
戦士「違う。勇者の双眸は目立つ……落ち着いて話が出来ん」
戦士「俺もちらりと聞いたに過ぎない」
魔法使い「ど、どう言う事よ!?」
戦士「……今後の事も話し合わねばならんだろう。魔導の街……否」
戦士「『魔導国』と名を改めたあの国に、行く船は無いのだと言われたんだ」
魔法使い「! ……そんな!?」
僧侶「魔導国……?」
勇者「…… ……宿を取ろう。飯屋で話す話でも無い」
僧侶「…… ……」
戦士「そうだな。だが、情報収集は必要だろう?」
魔法使い「…… ……」
勇者「ああ……でも……」
僧侶「勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「…… ひとまず、此方へ」スタスタ
僧侶(建物は残って居るはず…… ……それに、随分と険しい視線を感じる)
僧侶(否、場所を移しても同じかもしれないけど……)
魔法使い「僧侶?」
僧侶「シッ…… 着いてきて下さい」
勇者「…… ……後で説明してくれよ」
僧侶(教会へ上がる道は一本道)
僧侶(……諦めてくれるとは、思わないけれど……!)
スタスタ、スタスタ
魔法使い「あ……!」
戦士「教会?」
勇者「なんだ、まだあるんじゃ無いか」
戦士「場所を移そう。此処では……」
僧侶「……聞かれるとまずい、のですか?」
戦士「違う。勇者の双眸は目立つ……落ち着いて話が出来ん」
戦士「俺もちらりと聞いたに過ぎない」
魔法使い「ど、どう言う事よ!?」
戦士「……今後の事も話し合わねばならんだろう。魔導の街……否」
戦士「『魔導国』と名を改めたあの国に、行く船は無いのだと言われたんだ」
魔法使い「! ……そんな!?」
僧侶「魔導国……?」
勇者「…… ……宿を取ろう。飯屋で話す話でも無い」
僧侶「…… ……」
戦士「そうだな。だが、情報収集は必要だろう?」
魔法使い「…… ……」
勇者「ああ……でも……」
僧侶「勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「…… ひとまず、此方へ」スタスタ
僧侶(建物は残って居るはず…… ……それに、随分と険しい視線を感じる)
僧侶(否、場所を移しても同じかもしれないけど……)
魔法使い「僧侶?」
僧侶「シッ…… 着いてきて下さい」
勇者「…… ……後で説明してくれよ」
僧侶(教会へ上がる道は一本道)
僧侶(……諦めてくれるとは、思わないけれど……!)
スタスタ、スタスタ
魔法使い「あ……!」
戦士「教会?」
勇者「なんだ、まだあるんじゃ無いか」
145: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
僧侶「多分……私達、見張られています」
勇者「え!?」
僧侶「一本道なので、間を開けて着いてくるでしょう」
僧侶「……聞かれてまずい事は無いと思いますけど」
僧侶「相手が解らない以上……」
戦士(背後……)チラ
戦士(……誰も居ない、が。僧侶の言う通りなら)
戦士(後で……来る、か)
魔法使い「ちょ、ちょっと!私達別に何も悪い事なんて……!」
勇者「大きい声出すな、って!」
僧侶「……どうぞ、中に」キィ
僧侶「荒れ果ててると思いますけど、ね」
戦士「……来た事、あるのか?」
僧侶「…… ……」
勇者「とにかく入ろう。ほら、魔法使い」
魔法使い「え、ええ……」
パタン
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
カサ…… ガサガサ……
僧侶「…… ……」フゥ
戦士「何者だろう、かな」
魔法使い「な、なんで私達を……!」
勇者「……実質、戦争って考えて良い、んだろう」
魔法使い「!」
僧侶「可能性が高いのは二つ、ですね」
勇者「どっちの国か……か」
勇者「え!?」
僧侶「一本道なので、間を開けて着いてくるでしょう」
僧侶「……聞かれてまずい事は無いと思いますけど」
僧侶「相手が解らない以上……」
戦士(背後……)チラ
戦士(……誰も居ない、が。僧侶の言う通りなら)
戦士(後で……来る、か)
魔法使い「ちょ、ちょっと!私達別に何も悪い事なんて……!」
勇者「大きい声出すな、って!」
僧侶「……どうぞ、中に」キィ
僧侶「荒れ果ててると思いますけど、ね」
戦士「……来た事、あるのか?」
僧侶「…… ……」
勇者「とにかく入ろう。ほら、魔法使い」
魔法使い「え、ええ……」
パタン
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
カサ…… ガサガサ……
僧侶「…… ……」フゥ
戦士「何者だろう、かな」
魔法使い「な、なんで私達を……!」
勇者「……実質、戦争って考えて良い、んだろう」
魔法使い「!」
僧侶「可能性が高いのは二つ、ですね」
勇者「どっちの国か……か」
146: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
魔法使い「そんな!?」
戦士「……俺だって考えたくは無い」
勇者「可能性が高いのは、魔導の街の方、かなぁ……」
魔法使い「勇者!?」
勇者「…… ……」
戦士「何故、抗戦等……」
僧侶「他には……何か、ありませんか?」
戦士「…… ……何処へ行く船があるのか聞いただけだからな」
戦士「鍛冶師の村、北の街方面へ行く船と、魔導の街へと行く船がある、が」
戦士「……魔導国は封鎖されたらしく、船は現在出ていないとの事だ」
魔法使い「……封鎖!?」
僧侶「魔法使いさん、あの街の出身なのですよね?」
僧侶「何か……知りませんか?」
魔法使い「し……ッ 知らないわよ!そんなの、何も聞いてない!」
魔法使い「それに……わ、私……ッ」
勇者「落ち着け。誰も責めちゃいない」
魔法使い「…… ……ッ」
戦士「後、北の街や鍛冶師の村の方への船も何時まで運航できるかわからんのだそうだ」
勇者「え?」
戦士「…… ……言いにくい、んだがな」ジッ
魔法使い「…… ……良いわよ。言いなさいよ」
戦士「……『魔導国』からの船の運航を中止しろとの要請がある、のだとか」
魔法使い「!」
戦士「詳しい事実関係も何も、解らないんだ」
戦士「…… ……」
勇者「……どう、なっている、んだ」
勇者「船が無いと……魔王の所へたどり着けないだろうに……!」
僧侶「…… ……」
魔法使い「……魔導の街へ行きましょう」
勇者「魔法使い?」
魔法使い「私が……頼んでみるわ」
勇者「しかし……」
戦士「…… ……それが良いだろうな」
僧侶「戦士さん……?」
戦士「…… ……」ジッ
魔法使い「解ってるわよ。自分で話すわ……」
戦士「……俺だって考えたくは無い」
勇者「可能性が高いのは、魔導の街の方、かなぁ……」
魔法使い「勇者!?」
勇者「…… ……」
戦士「何故、抗戦等……」
僧侶「他には……何か、ありませんか?」
戦士「…… ……何処へ行く船があるのか聞いただけだからな」
戦士「鍛冶師の村、北の街方面へ行く船と、魔導の街へと行く船がある、が」
戦士「……魔導国は封鎖されたらしく、船は現在出ていないとの事だ」
魔法使い「……封鎖!?」
僧侶「魔法使いさん、あの街の出身なのですよね?」
僧侶「何か……知りませんか?」
魔法使い「し……ッ 知らないわよ!そんなの、何も聞いてない!」
魔法使い「それに……わ、私……ッ」
勇者「落ち着け。誰も責めちゃいない」
魔法使い「…… ……ッ」
戦士「後、北の街や鍛冶師の村の方への船も何時まで運航できるかわからんのだそうだ」
勇者「え?」
戦士「…… ……言いにくい、んだがな」ジッ
魔法使い「…… ……良いわよ。言いなさいよ」
戦士「……『魔導国』からの船の運航を中止しろとの要請がある、のだとか」
魔法使い「!」
戦士「詳しい事実関係も何も、解らないんだ」
戦士「…… ……」
勇者「……どう、なっている、んだ」
勇者「船が無いと……魔王の所へたどり着けないだろうに……!」
僧侶「…… ……」
魔法使い「……魔導の街へ行きましょう」
勇者「魔法使い?」
魔法使い「私が……頼んでみるわ」
勇者「しかし……」
戦士「…… ……それが良いだろうな」
僧侶「戦士さん……?」
戦士「…… ……」ジッ
魔法使い「解ってるわよ。自分で話すわ……」
147: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
魔法使い「…… ……私は、魔導の街の領主の孫よ」
僧侶「!」
勇者「え!?」
魔法使い「だから……頼んでみる」
僧侶「……勇者様」
勇者「うん……」
戦士「?」
勇者「いや、甲板で僧侶と話をしていて、さ」
勇者「行き先が決まっていないなら、魔導の街に行かないか、てさ」
僧侶「あの街には、大きな図書館がある……ん、ですよね?」
魔法使い「え、ええ……そうよ」
僧侶「……話そう、と思っていた事があるのですが、此処ではちょっと……なので」
僧侶「詳細は省きますが、調べたい事がありまして」
戦士「……それは、重要な事なんだな」
僧侶「…… ……はい」
僧侶(私の秘密……否、何れは話さないといけない事)
魔法使い「……それにしても、船が居るのね」
戦士「まあ……そう、だな」
勇者「始まりの街に戻るか? ……国王なら、船を貸してはくれる……だろうが」
僧侶「……そうしない為の抗戦の様な気もします」
魔法使い「僧侶!?」
僧侶「ごめんなさい、一方的に魔導の街を悪者にする気は無いんですが……」
戦士「……状況を見ればそう思うのは仕方無い」
魔法使い「戦士まで!」
勇者「……落ち着け、って」
勇者「育ってきた国だ……国王が、このタイミングで戦争を仕掛けるとは」
勇者「思えない……俺達が旅立ってすぐ、だ」
魔法使い「そ、れ……は……」
勇者「それに……閉鎖した、って話や、船の運航中止の要請や……」
勇者「そりゃ、何処までが本当なのかわかんないけどさ」
僧侶「噂は大袈裟になる物ですしね」
僧侶「!」
勇者「え!?」
魔法使い「だから……頼んでみる」
僧侶「……勇者様」
勇者「うん……」
戦士「?」
勇者「いや、甲板で僧侶と話をしていて、さ」
勇者「行き先が決まっていないなら、魔導の街に行かないか、てさ」
僧侶「あの街には、大きな図書館がある……ん、ですよね?」
魔法使い「え、ええ……そうよ」
僧侶「……話そう、と思っていた事があるのですが、此処ではちょっと……なので」
僧侶「詳細は省きますが、調べたい事がありまして」
戦士「……それは、重要な事なんだな」
僧侶「…… ……はい」
僧侶(私の秘密……否、何れは話さないといけない事)
魔法使い「……それにしても、船が居るのね」
戦士「まあ……そう、だな」
勇者「始まりの街に戻るか? ……国王なら、船を貸してはくれる……だろうが」
僧侶「……そうしない為の抗戦の様な気もします」
魔法使い「僧侶!?」
僧侶「ごめんなさい、一方的に魔導の街を悪者にする気は無いんですが……」
戦士「……状況を見ればそう思うのは仕方無い」
魔法使い「戦士まで!」
勇者「……落ち着け、って」
勇者「育ってきた国だ……国王が、このタイミングで戦争を仕掛けるとは」
勇者「思えない……俺達が旅立ってすぐ、だ」
魔法使い「そ、れ……は……」
勇者「それに……閉鎖した、って話や、船の運航中止の要請や……」
勇者「そりゃ、何処までが本当なのかわかんないけどさ」
僧侶「噂は大袈裟になる物ですしね」
148: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
勇者「のんびりしてる時間は無い……否、無くなった、だな」
戦士「人間同士で抗戦等……こんな時に……!」
僧侶「……圧倒的に情報が足りませんね」
魔法使い「そ、そうよ!推測で疑いあったって……!」
戦士「少し街の人の話を聞いてこよう」
勇者「……僧侶、一緒に行ってやってくれ」
僧侶「あ、はい」
魔法使い「わ、私が……!」
勇者「君は駄目だ、魔法使い」
魔法使い「何で!?」
勇者「……つけてきているのが、魔導の街の人間だとしたらまずい」
勇者「頼むよ、戦士。僧侶」
僧侶「はい。此処で……待っています、か?」
勇者「ああ。戦士から離れるなよ」
パタン
魔法使い「…… ……」
勇者「君の素性を知れば、気持ちは解るよ……けど」
勇者「……あんまり、睨まないでくれよ」
魔法使い「…… ……」
勇者「『魔導国』って事は……領主が王になった、のかな」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」ハァ
魔法使い「僧侶は、どうしてあの街に行こうって言いだしたの?」
勇者「まだ聞いていない。後で……全部説明する、と言うから」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……魔法使い」
魔法使い「……何?」
戦士「人間同士で抗戦等……こんな時に……!」
僧侶「……圧倒的に情報が足りませんね」
魔法使い「そ、そうよ!推測で疑いあったって……!」
戦士「少し街の人の話を聞いてこよう」
勇者「……僧侶、一緒に行ってやってくれ」
僧侶「あ、はい」
魔法使い「わ、私が……!」
勇者「君は駄目だ、魔法使い」
魔法使い「何で!?」
勇者「……つけてきているのが、魔導の街の人間だとしたらまずい」
勇者「頼むよ、戦士。僧侶」
僧侶「はい。此処で……待っています、か?」
勇者「ああ。戦士から離れるなよ」
パタン
魔法使い「…… ……」
勇者「君の素性を知れば、気持ちは解るよ……けど」
勇者「……あんまり、睨まないでくれよ」
魔法使い「…… ……」
勇者「『魔導国』って事は……領主が王になった、のかな」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」ハァ
魔法使い「僧侶は、どうしてあの街に行こうって言いだしたの?」
勇者「まだ聞いていない。後で……全部説明する、と言うから」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……魔法使い」
魔法使い「……何?」
149: 2013/08/26(月) NY:AN:NY.AN ID:V3ytwQB1P
勇者「忘れてるかもしれないけど、さ」
魔法使い「?」
勇者「……戦士は、始まりの国の王の……血縁なんだよ?」
魔法使い「だからよ!」
勇者「!」
魔法使い「そりゃ、勇者はあの街で、あの王達と過ごしたかもしれないけど……!」
勇者「…… ……御免」
魔法使い「じょ、状況を見れば、お爺様達がおかしいって思う事ぐらいは……!」
魔法使い「私にだって、解るわよ!だけど……ッ」
勇者「…… ……」ハァ
勇者「状況を整理しよう。戦士達が帰って来たら」
勇者「……僧侶の言う、見張りってのも何処の誰かわかんないけど」
勇者「小さな声で喋れば、街中や宿で話すより、聞かれる可能性も低いだろう」
魔法使い「…… ……僧侶は、どうして此処に教会がある事、知ってたのかしら」
勇者「それも含めて順番に、だ」
魔法使い「…… ……?」スタスタ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「……何、これ……彫刻?」
勇者「え? ……随分ボロボロだな」
魔法使い「腕が取れちゃってるわね」
勇者「あ、本当だ」
魔法使い「……この教会のシンボル、かしら」
勇者「それにしては小さくないか」
魔法使い「…… ……」ス……
勇者「?」
勇者(窓の外……? ああ、庭、か…… ……墓、かな。あれ)
魔法使い「朽ちちゃってるわね」
勇者「ああ…… ……亡くなった、んだろうな」
勇者「この教会の神父さんとかかな」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(存在を忘れられるのは……寂しい物よね)
魔法使い(あの街に戻って、もし、私の加護の事がばれたら……!)
魔法使い(私も、あんな風に……!!)
魔法使い「?」
勇者「……戦士は、始まりの国の王の……血縁なんだよ?」
魔法使い「だからよ!」
勇者「!」
魔法使い「そりゃ、勇者はあの街で、あの王達と過ごしたかもしれないけど……!」
勇者「…… ……御免」
魔法使い「じょ、状況を見れば、お爺様達がおかしいって思う事ぐらいは……!」
魔法使い「私にだって、解るわよ!だけど……ッ」
勇者「…… ……」ハァ
勇者「状況を整理しよう。戦士達が帰って来たら」
勇者「……僧侶の言う、見張りってのも何処の誰かわかんないけど」
勇者「小さな声で喋れば、街中や宿で話すより、聞かれる可能性も低いだろう」
魔法使い「…… ……僧侶は、どうして此処に教会がある事、知ってたのかしら」
勇者「それも含めて順番に、だ」
魔法使い「…… ……?」スタスタ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「……何、これ……彫刻?」
勇者「え? ……随分ボロボロだな」
魔法使い「腕が取れちゃってるわね」
勇者「あ、本当だ」
魔法使い「……この教会のシンボル、かしら」
勇者「それにしては小さくないか」
魔法使い「…… ……」ス……
勇者「?」
勇者(窓の外……? ああ、庭、か…… ……墓、かな。あれ)
魔法使い「朽ちちゃってるわね」
勇者「ああ…… ……亡くなった、んだろうな」
勇者「この教会の神父さんとかかな」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(存在を忘れられるのは……寂しい物よね)
魔法使い(あの街に戻って、もし、私の加護の事がばれたら……!)
魔法使い(私も、あんな風に……!!)
150: 2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ZSP+HJnIP
勇者「……魔法使い?」
魔法使い「大丈夫……お爺様も、お母様も……きっと……ッ」ブツブツ
勇者(……魔法使いも、色々ある……んだろう、な)
勇者(しかし……魔法使いをアテにして、あの街へ行って……大丈夫、なのか?)
勇者(かといって始まりの街に戻っても、そんな状態じゃ船なんか……)
勇者(それに、もし……その間に、この街からの船の運航がストップしてしまえば)
勇者(八方ふさがりだ……!)
キィ
戦士「……戻った」
僧侶「お待たせしました」
魔法使い「! ……どうだった!?」
勇者「悪いな……大丈夫だったか?」
戦士「ああ。まあ、噂、に過ぎないが」
僧侶「……私達が旅立った後、二つの船団が交戦状態に入ったそうなのです」
戦士「場所は、南の小さな洞窟の傍、らしい」
戦士「……多分、鉱石が取れるとか言う島だろうと思う」
魔法使い「鉱石……戦士が言ってた場所、ね」
戦士「ああ。そして……魔導の街は国の設立と封鎖を宣言した」
戦士「……同時に、この街にも船の運航中止の要請を出したそうだ」
僧侶「詳しい話は町長さんに聞きに行けと言われましたが」
僧侶「……どうやら、聞かない場合武力行使も辞さないと……」
魔法使い「そんな……!?」
魔法使い「大丈夫……お爺様も、お母様も……きっと……ッ」ブツブツ
勇者(……魔法使いも、色々ある……んだろう、な)
勇者(しかし……魔法使いをアテにして、あの街へ行って……大丈夫、なのか?)
勇者(かといって始まりの街に戻っても、そんな状態じゃ船なんか……)
勇者(それに、もし……その間に、この街からの船の運航がストップしてしまえば)
勇者(八方ふさがりだ……!)
キィ
戦士「……戻った」
僧侶「お待たせしました」
魔法使い「! ……どうだった!?」
勇者「悪いな……大丈夫だったか?」
戦士「ああ。まあ、噂、に過ぎないが」
僧侶「……私達が旅立った後、二つの船団が交戦状態に入ったそうなのです」
戦士「場所は、南の小さな洞窟の傍、らしい」
戦士「……多分、鉱石が取れるとか言う島だろうと思う」
魔法使い「鉱石……戦士が言ってた場所、ね」
戦士「ああ。そして……魔導の街は国の設立と封鎖を宣言した」
戦士「……同時に、この街にも船の運航中止の要請を出したそうだ」
僧侶「詳しい話は町長さんに聞きに行けと言われましたが」
僧侶「……どうやら、聞かない場合武力行使も辞さないと……」
魔法使い「そんな……!?」
151: 2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ZSP+HJnIP
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……勇者様」
勇者「あ……何?」
僧侶「これからの道行きを考えても、先ほど申し上げたとおり」
僧侶「……魔導の街……魔導国、には一度、足を運んだ方が良いと思います」
戦士「何故なんだ?確かに、足止めは困るが……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「……僧侶がそう思う理由は何なの?」
魔法使い「私が言うのは、おかしいかもしれないけど」
魔法使い「その……あんた達が聞いて来た話が本当なら」
魔法使い「…… ……お爺様達が、何を考えて居るのか、解らない」
魔法使い「けど……貴女、どうしてこの教会を知ってるの?」
魔法使い「見た感じ、無人になって何年も経ってる」
魔法使い「……私は、知っていたわ。小さい頃はまだ、看板も出てたし」
魔法使い「上がってくる道も、こんなに草が生い茂ってなくて」
魔法使い「もう少し……ちゃんと、通れるって、解る位だった」
戦士「魔法使い?」
僧侶「…… ……」
魔法使い「孫の私でさえ、どこかおかしいって。思うのに」
魔法使い「……どうして、そんなに魔導の街に行きたがるの?」
魔法使い「つけられてるみたいだ、とか……ッ」
勇者「お、おい、魔法使い!落ち着け、って……!」
魔法使い「何企んでるのよ!うちの街の見張りって、あんた自身じゃ無いの!?」
魔法使い「優れた加護だって持ってるんでしょう!?」
僧侶「そ、それは違います!」
魔法使い「じゃあ、何でそんな事、解るのよ!」
魔法使い「……その、アンタの『感じる力』って何なの!?」
魔法使い「そんなの、普通の人間には無いわよ!」
戦士「魔法使い!」
魔法使い「……ッ アンタ、人間じゃ無いんじゃないの!?」
僧侶「…… ……はい。私は、人間ではありません」
魔法使い「…… ……え?」
戦士「!?」
勇者「…… ……な、に?」
僧侶「…… ……勇者様」
勇者「あ……何?」
僧侶「これからの道行きを考えても、先ほど申し上げたとおり」
僧侶「……魔導の街……魔導国、には一度、足を運んだ方が良いと思います」
戦士「何故なんだ?確かに、足止めは困るが……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「……僧侶がそう思う理由は何なの?」
魔法使い「私が言うのは、おかしいかもしれないけど」
魔法使い「その……あんた達が聞いて来た話が本当なら」
魔法使い「…… ……お爺様達が、何を考えて居るのか、解らない」
魔法使い「けど……貴女、どうしてこの教会を知ってるの?」
魔法使い「見た感じ、無人になって何年も経ってる」
魔法使い「……私は、知っていたわ。小さい頃はまだ、看板も出てたし」
魔法使い「上がってくる道も、こんなに草が生い茂ってなくて」
魔法使い「もう少し……ちゃんと、通れるって、解る位だった」
戦士「魔法使い?」
僧侶「…… ……」
魔法使い「孫の私でさえ、どこかおかしいって。思うのに」
魔法使い「……どうして、そんなに魔導の街に行きたがるの?」
魔法使い「つけられてるみたいだ、とか……ッ」
勇者「お、おい、魔法使い!落ち着け、って……!」
魔法使い「何企んでるのよ!うちの街の見張りって、あんた自身じゃ無いの!?」
魔法使い「優れた加護だって持ってるんでしょう!?」
僧侶「そ、それは違います!」
魔法使い「じゃあ、何でそんな事、解るのよ!」
魔法使い「……その、アンタの『感じる力』って何なの!?」
魔法使い「そんなの、普通の人間には無いわよ!」
戦士「魔法使い!」
魔法使い「……ッ アンタ、人間じゃ無いんじゃないの!?」
僧侶「…… ……はい。私は、人間ではありません」
魔法使い「…… ……え?」
戦士「!?」
勇者「…… ……な、に?」
152: 2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ZSP+HJnIP
僧侶「……私は、人間ではありません」
戦士「…… ……どう、言う事、だ」
勇者「ま……さか!?」
僧侶「あ……!で、でも魔族でもありませんよ!?」
魔法使い「アンタ、そんな都合の良い……!」
僧侶「……それは、魔法使いさんが照明してくれるのでは無いのでしょうか」
魔法使い「え?」
僧侶「……回復魔法を、使えます、から」
魔法使い「あ……!」
戦士「…… ……なんだ?」
魔法使い「……回復魔法はね。人間にだけ許された特権なの」
勇者「え?」
魔法使い「魔法を使う者なら誰でも知ってる」
魔法使い「……弱くて、強い人間だけの特権」
戦士「ちょ、ちょっと待て!僧侶は今、自分は人間では無いと……!」
僧侶「正確には半分だけ、なんです」
僧侶「……私は、孤児です」
僧侶「鍛冶師の村近くの小屋の傍で、神父様という方に拾われました」
勇者「……それは前も聞いた……よな」
僧侶「はい。私を産んで、託し、息絶えた母は……エルフだった様です」
魔法使い「エルフ……!?」
戦士「……弓を持っている、と言うだけでは無く……確かなのか?」
僧侶「神父様も、母が亡くなる前にそう聞いた訳では無いと仰っていました」
僧侶「……ですが、私は……」
魔法使い「他に……確証は、あるの?」
僧侶「……はっきりと何年、とは……覚えて居ないので、解りませんが」
僧侶「…… ……私は、何歳に見えますか?」
戦士「!?」
勇者「俺より……少し、下ぐらい、かな」
僧侶「……そうですね。ですが……私は、もう少し、長い間生きています」
魔法使い「え!?」
戦士「…… ……どう、言う事、だ」
勇者「ま……さか!?」
僧侶「あ……!で、でも魔族でもありませんよ!?」
魔法使い「アンタ、そんな都合の良い……!」
僧侶「……それは、魔法使いさんが照明してくれるのでは無いのでしょうか」
魔法使い「え?」
僧侶「……回復魔法を、使えます、から」
魔法使い「あ……!」
戦士「…… ……なんだ?」
魔法使い「……回復魔法はね。人間にだけ許された特権なの」
勇者「え?」
魔法使い「魔法を使う者なら誰でも知ってる」
魔法使い「……弱くて、強い人間だけの特権」
戦士「ちょ、ちょっと待て!僧侶は今、自分は人間では無いと……!」
僧侶「正確には半分だけ、なんです」
僧侶「……私は、孤児です」
僧侶「鍛冶師の村近くの小屋の傍で、神父様という方に拾われました」
勇者「……それは前も聞いた……よな」
僧侶「はい。私を産んで、託し、息絶えた母は……エルフだった様です」
魔法使い「エルフ……!?」
戦士「……弓を持っている、と言うだけでは無く……確かなのか?」
僧侶「神父様も、母が亡くなる前にそう聞いた訳では無いと仰っていました」
僧侶「……ですが、私は……」
魔法使い「他に……確証は、あるの?」
僧侶「……はっきりと何年、とは……覚えて居ないので、解りませんが」
僧侶「…… ……私は、何歳に見えますか?」
戦士「!?」
勇者「俺より……少し、下ぐらい、かな」
僧侶「……そうですね。ですが……私は、もう少し、長い間生きています」
魔法使い「え!?」
153: 2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ZSP+HJnIP
僧侶「魔法使いさん。先ほど仰っていた事、はっきりは……覚えて居ないと」
僧侶「思いますけど……」
魔法使い「…… ……?」
僧侶「……昔、この街に来た時、私は小さな女の子に」
僧侶「『教会はどこか』と訪ねた事があります」
魔法使い「!」
戦士「ま、さか……!?」
僧侶「……その子は言いました」
僧侶「……『パパとママはとても強い魔法が使える。私も何時かそんな風になりたい』と」
魔法使い「……あ、の時の……あの人が、アンタ、だと言うの!?」
僧侶「覚えて居ますか……?」
魔法使い(容姿までは覚えて居ない。だけど…… ……そういえば)
魔法使い(優しい……どこか、悲しそうな笑顔は……)
僧侶「船で、魔導の街へ帰るのだと言っていました」
僧侶「……紅い髪に紅い瞳。キラキラと目を輝かせて」
僧侶「パパとママに、手を引かれて……楽しそうに」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「そして私は、しばらくの間、この教会に従事していました」
僧侶「……女神官様は目を患われて。私には……幸いしたのです」
僧侶「何時までも変わらないだろうこの身を、隠すにはもってこいでしたから」
戦士「……待て。おかしいだろう。お前はエルフの娘なのだろう?」
戦士「回復魔法は、人だけの特権、では無いのか」
僧侶「神父様も不思議に思っていられましたが……多分」
僧侶「私の父は、人であった、のでしょう」
魔法使い「……な、によ……じゃあ、アンタは……!」
僧侶「……ハーフエルフ、と言う言葉が存在するのかどうかは、解りませんけど」
僧侶「そういう、特異な存在なのでしょうね」
勇者「…… ……確か、なのか?」
僧侶「生きた証ですよ」
戦士「…… ……」
魔法使い「……ハーフ、エルフ……」
僧侶「思いますけど……」
魔法使い「…… ……?」
僧侶「……昔、この街に来た時、私は小さな女の子に」
僧侶「『教会はどこか』と訪ねた事があります」
魔法使い「!」
戦士「ま、さか……!?」
僧侶「……その子は言いました」
僧侶「……『パパとママはとても強い魔法が使える。私も何時かそんな風になりたい』と」
魔法使い「……あ、の時の……あの人が、アンタ、だと言うの!?」
僧侶「覚えて居ますか……?」
魔法使い(容姿までは覚えて居ない。だけど…… ……そういえば)
魔法使い(優しい……どこか、悲しそうな笑顔は……)
僧侶「船で、魔導の街へ帰るのだと言っていました」
僧侶「……紅い髪に紅い瞳。キラキラと目を輝かせて」
僧侶「パパとママに、手を引かれて……楽しそうに」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「そして私は、しばらくの間、この教会に従事していました」
僧侶「……女神官様は目を患われて。私には……幸いしたのです」
僧侶「何時までも変わらないだろうこの身を、隠すにはもってこいでしたから」
戦士「……待て。おかしいだろう。お前はエルフの娘なのだろう?」
戦士「回復魔法は、人だけの特権、では無いのか」
僧侶「神父様も不思議に思っていられましたが……多分」
僧侶「私の父は、人であった、のでしょう」
魔法使い「……な、によ……じゃあ、アンタは……!」
僧侶「……ハーフエルフ、と言う言葉が存在するのかどうかは、解りませんけど」
僧侶「そういう、特異な存在なのでしょうね」
勇者「…… ……確か、なのか?」
僧侶「生きた証ですよ」
戦士「…… ……」
魔法使い「……ハーフ、エルフ……」
154: 2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ZSP+HJnIP
僧侶「……私がもっと幼い頃」
僧侶「神父様のお話では、成長のスピードが人とは違ったらしく」
僧侶「産まれて数ヶ月で歩き、しゃべり……知恵をつけたと仰っていました」
僧侶「……そして、感じたのです」
勇者「感じた?」
僧侶「はい。『光と闇の喪失』を」
戦士「…… ……?」
僧侶「今から考えると……多分、前勇者様と魔王の命の喪失だったのでしょうね」
魔法使い「ちょ……ッ 待ってよ、おかしいじゃ無いの!」
魔法使い「勇者のお父様は前勇者様なんでしょう!?」
魔法使い「だったら……!」
僧侶「私が、魔導の街へ行って……世界一を誇る図書館で調べたいと思ったのは」
僧侶「それ、なのです」
勇者「え……?」
僧侶「16年前。私は確かに、光の誕生を感じ取りました」
僧侶「……その光は、まさしく貴方の物なのです。勇者様」ジッ
勇者(……ッ)ドキッ
僧侶「……光と闇の喪失を感じたのは、本当に幼い頃」
僧侶「だから勘違いと言われればそれまでなのですが…… ……」
僧侶「失われた光と、産まれた光…… ……同じ、なのです」
戦士「同じ?」
僧侶「はい」
勇者「……それは、俺と親父が『勇者』だからじゃないのか」
僧侶「それも勿論、考えました。思いました。しかし…… ……覚えて居ますか?」
僧侶「始まりの街で、貴方の光の剣を見せて頂いた時の事」
勇者「……! 全く同じ光を感じる!」
魔法使い「!」
僧侶「……はい。あれがお父様の形見であり、お父様の光の残照だとするなら」
僧侶「やはり……おかしいのですよ」
魔法使い「ちょ、ちょっと……待って、よ……!?」
戦士「…… ……」
僧侶「神父様のお話では、成長のスピードが人とは違ったらしく」
僧侶「産まれて数ヶ月で歩き、しゃべり……知恵をつけたと仰っていました」
僧侶「……そして、感じたのです」
勇者「感じた?」
僧侶「はい。『光と闇の喪失』を」
戦士「…… ……?」
僧侶「今から考えると……多分、前勇者様と魔王の命の喪失だったのでしょうね」
魔法使い「ちょ……ッ 待ってよ、おかしいじゃ無いの!」
魔法使い「勇者のお父様は前勇者様なんでしょう!?」
魔法使い「だったら……!」
僧侶「私が、魔導の街へ行って……世界一を誇る図書館で調べたいと思ったのは」
僧侶「それ、なのです」
勇者「え……?」
僧侶「16年前。私は確かに、光の誕生を感じ取りました」
僧侶「……その光は、まさしく貴方の物なのです。勇者様」ジッ
勇者(……ッ)ドキッ
僧侶「……光と闇の喪失を感じたのは、本当に幼い頃」
僧侶「だから勘違いと言われればそれまでなのですが…… ……」
僧侶「失われた光と、産まれた光…… ……同じ、なのです」
戦士「同じ?」
僧侶「はい」
勇者「……それは、俺と親父が『勇者』だからじゃないのか」
僧侶「それも勿論、考えました。思いました。しかし…… ……覚えて居ますか?」
僧侶「始まりの街で、貴方の光の剣を見せて頂いた時の事」
勇者「……! 全く同じ光を感じる!」
魔法使い「!」
僧侶「……はい。あれがお父様の形見であり、お父様の光の残照だとするなら」
僧侶「やはり……おかしいのですよ」
魔法使い「ちょ、ちょっと……待って、よ……!?」
戦士「…… ……」
155: 2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ZSP+HJnIP
魔法使い「……それが正しいなら、勇者と前勇者様は」
魔法使い「『同一人物』って事になるじゃないの!」
僧侶「……そう、なんです」
勇者「そうなんです、って…… ……」
僧侶「でも『時間が合わない』んです」
僧侶「もし、生まれ変わりであられるのなら」
僧侶「…… ……否。あり得ません、よね」
戦士「生まれ変わりであるのなら、喪失と誕生を一緒に感じていないとおかしい、か」
僧侶「……不思議な感情でした」
僧侶「光と闇の喪失を感じ取った時」
僧侶「とても……その、なんて言うか……」
僧侶「『悲しさと寂しさと切なさと……嬉しさ』を感じたんです」
勇者「!」
勇者(同じだ……!)
勇者(甲板の上で、僧侶と話した時)
勇者(僧侶に見つめられて、どきっとした時)
勇者(……そして、今。だ)
勇者(……同じ気持ちを、抱いた)
僧侶「…… ……それから。私が川に落ちた時」
魔法使い「え……?」
僧侶「あの、紫の瞳の方と出会った時です」
僧侶「……あの時も、同じ事を思ったんです」
僧侶「ですが、あの時は…… ……その、漠然とですが……」
勇者「『貴方じゃ無い』」
僧侶「『貴方じゃ無い』」
魔法使い「!?」
戦士「……勇者?」
勇者「……戦士には話したな」
魔法使い「『同一人物』って事になるじゃないの!」
僧侶「……そう、なんです」
勇者「そうなんです、って…… ……」
僧侶「でも『時間が合わない』んです」
僧侶「もし、生まれ変わりであられるのなら」
僧侶「…… ……否。あり得ません、よね」
戦士「生まれ変わりであるのなら、喪失と誕生を一緒に感じていないとおかしい、か」
僧侶「……不思議な感情でした」
僧侶「光と闇の喪失を感じ取った時」
僧侶「とても……その、なんて言うか……」
僧侶「『悲しさと寂しさと切なさと……嬉しさ』を感じたんです」
勇者「!」
勇者(同じだ……!)
勇者(甲板の上で、僧侶と話した時)
勇者(僧侶に見つめられて、どきっとした時)
勇者(……そして、今。だ)
勇者(……同じ気持ちを、抱いた)
僧侶「…… ……それから。私が川に落ちた時」
魔法使い「え……?」
僧侶「あの、紫の瞳の方と出会った時です」
僧侶「……あの時も、同じ事を思ったんです」
僧侶「ですが、あの時は…… ……その、漠然とですが……」
勇者「『貴方じゃ無い』」
僧侶「『貴方じゃ無い』」
魔法使い「!?」
戦士「……勇者?」
勇者「……戦士には話したな」
156: 2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ZSP+HJnIP
勇者「もし彼を選んでいたら、と」
僧侶「…… ……」
魔法使い「勇者……」
勇者「……違うんだ。自分の直感を信じたい気持ちと」
勇者「……もし、と思う気持ちと」
勇者「だが、違うんだ!」
僧侶「…… ……」
魔法使い「……私、多分あの人を知ってる」
戦士「え!?」
魔法使い「…… ……私には、優れた加護が無い」
魔法使い「……アンタは気がついてたわよね?」
僧侶「……はい」
魔法使い「勇者には話したし、戦士にも闘技大会の時にばれてた」
戦士「…… ……」
魔法使い「お爺様達は……私は、自分の孫だから。子供だから」
魔法使い「優れた加護があって当たり前だと、テストをすると言ったの」
魔法使い「私がまだ幼い時にね」
勇者「…… ……」
魔法使い「同じ属性を持ったメイドが、私に向かって炎の魔法を放つだけ」
魔法使い「……簡単な事だから、怖がる必要なんか無いって言って、ね」
僧侶「そんな……!?」
魔法使い「……助けてくれたのは、紫の瞳の男だった」
戦士「な、に……?」
魔法使い「少し前から滞在してるのは知ってたのよ」
魔法使い「丁度、加護の勉強をしている時だったし」
魔法使い「……珍しい色の瞳には興味があったの」
魔法使い「そして、あの男は……助けてくれたのよ」
魔法使い「メイドの魔法が私に届く前に……恐らく、だけど」
魔法使い「……魔法で、相頃して誤魔化してくれた」
僧侶「…… ……」
魔法使い「勇者……」
勇者「……違うんだ。自分の直感を信じたい気持ちと」
勇者「……もし、と思う気持ちと」
勇者「だが、違うんだ!」
僧侶「…… ……」
魔法使い「……私、多分あの人を知ってる」
戦士「え!?」
魔法使い「…… ……私には、優れた加護が無い」
魔法使い「……アンタは気がついてたわよね?」
僧侶「……はい」
魔法使い「勇者には話したし、戦士にも闘技大会の時にばれてた」
戦士「…… ……」
魔法使い「お爺様達は……私は、自分の孫だから。子供だから」
魔法使い「優れた加護があって当たり前だと、テストをすると言ったの」
魔法使い「私がまだ幼い時にね」
勇者「…… ……」
魔法使い「同じ属性を持ったメイドが、私に向かって炎の魔法を放つだけ」
魔法使い「……簡単な事だから、怖がる必要なんか無いって言って、ね」
僧侶「そんな……!?」
魔法使い「……助けてくれたのは、紫の瞳の男だった」
戦士「な、に……?」
魔法使い「少し前から滞在してるのは知ってたのよ」
魔法使い「丁度、加護の勉強をしている時だったし」
魔法使い「……珍しい色の瞳には興味があったの」
魔法使い「そして、あの男は……助けてくれたのよ」
魔法使い「メイドの魔法が私に届く前に……恐らく、だけど」
魔法使い「……魔法で、相頃して誤魔化してくれた」
157: 2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ZSP+HJnIP
勇者「……ん?」
僧侶「べ……別人では!?だって……!」
魔法使い「……そうよね。川辺であの人は、雷の魔法を使ってた」
戦士「…… ……?」
魔法使い「二つの加護を持つ人なんて、聞いた事が無い!」
魔法使い「……それに、もしあの男が彼ならば」
魔法使い「僧侶と同じよ。彼は……歳を取っていない事になる」
勇者「…… ……まさか都合良く、エルフがもう一人、なんて言わない、よな」
僧侶「あの人はエルフではありません!あの人は……!」
戦士「……魔族、か?」
僧侶「…… ……わかりません」
魔法使い「解らない?」
僧侶「じっくりと観察した訳では無いですし、あんな時だったし……」
僧侶「だけど…… ……」
勇者「『悲しくて寂しくて切なくて嬉しい』?」
僧侶「……はい。だけど『彼じゃ無い』」
魔法使い「…… ……」
戦士「……紫の瞳をした、勇者にそっくりな男、か」
戦士「俺は何故魔導の街に居たのか、の方が気になるが」
勇者「あ…… ……そ、うだよな」
戦士「あの男が本当に歳を取らない……『人』で無い者だとしても、だ」
戦士「……注意するに越した事は無い、だろう」
魔法使い「…… ……あの男、何処へ行ったのかしら」
僧侶「…… ……もし、魔導の街へ戻ったのだとしたら」
勇者「!」
魔法使い「……確か、『剣士』と呼ばれて居たわ」
勇者「……その、剣士と言う男の力……後ろ盾を得て」
勇者「強硬手段に踏み出した!?」
戦士「待て! ……あいつは登録所に居ただろう!」
僧侶「…… ……選ばなくて正解だったのかもしれません」
僧侶「勇者様の直感は、やはり正しかった……のかも」
僧侶「べ……別人では!?だって……!」
魔法使い「……そうよね。川辺であの人は、雷の魔法を使ってた」
戦士「…… ……?」
魔法使い「二つの加護を持つ人なんて、聞いた事が無い!」
魔法使い「……それに、もしあの男が彼ならば」
魔法使い「僧侶と同じよ。彼は……歳を取っていない事になる」
勇者「…… ……まさか都合良く、エルフがもう一人、なんて言わない、よな」
僧侶「あの人はエルフではありません!あの人は……!」
戦士「……魔族、か?」
僧侶「…… ……わかりません」
魔法使い「解らない?」
僧侶「じっくりと観察した訳では無いですし、あんな時だったし……」
僧侶「だけど…… ……」
勇者「『悲しくて寂しくて切なくて嬉しい』?」
僧侶「……はい。だけど『彼じゃ無い』」
魔法使い「…… ……」
戦士「……紫の瞳をした、勇者にそっくりな男、か」
戦士「俺は何故魔導の街に居たのか、の方が気になるが」
勇者「あ…… ……そ、うだよな」
戦士「あの男が本当に歳を取らない……『人』で無い者だとしても、だ」
戦士「……注意するに越した事は無い、だろう」
魔法使い「…… ……あの男、何処へ行ったのかしら」
僧侶「…… ……もし、魔導の街へ戻ったのだとしたら」
勇者「!」
魔法使い「……確か、『剣士』と呼ばれて居たわ」
勇者「……その、剣士と言う男の力……後ろ盾を得て」
勇者「強硬手段に踏み出した!?」
戦士「待て! ……あいつは登録所に居ただろう!」
僧侶「…… ……選ばなくて正解だったのかもしれません」
僧侶「勇者様の直感は、やはり正しかった……のかも」
158: 2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ZSP+HJnIP
魔法使い「……こういう状況に追い込んで、私達が魔導の街へ」
魔法使い「行く様に仕向けられたのだとしたら!」
勇者「…… ……罠、か」
僧侶「…… ……急いで船に乗りましょう」
勇者「え!?」
僧侶「離れた方が良いです。もし彼らの狙いが私達が魔導の街へ行く事なら」
僧侶「船の運航停止を求める理由に繋がります!」
戦士「!」
魔法使い「…… ……私なら、魔導の街へ行ける。何時でも」
勇者「……魔法使い」
魔法使い「大丈夫。 ……大丈夫よ。私は冷静だわ」
勇者(顔が真っ青だぞ……)
戦士「…… ……図書館は良いのか」
僧侶「まさか、私の思考まで読まれていたとは……とても思えませんが」
僧侶「……目的が解らない以上、接触は避けるべきでしょう?」
戦士「あ、ああ……だが……」
魔法使い「僧侶に賛成。必要があれば、逆に何時でも行けるわ」
魔法使い「……見張りがもし本当にあの街の人間なのなら」
魔法使い「何処でも接触できる筈!」
戦士「……何処に行くんだ」
勇者「鍛冶師の村へ行こう」
魔法使い「え?」
勇者「頭も冷やす必要があるし……罠を仕掛けるってだけで」
勇者「鉱石の洞窟近くを戦場に選んだ訳でも無いだろう」
勇者「…… ……俺達の目的は、魔王を倒す事だ」
勇者「忘れちゃ、行けない」
魔法使い「!」
戦士「……急ごう。今日の便はまだ出てる筈だ」
僧侶「時間が間に合えば、ですけど……!」
勇者「走れ!」タタタ
僧侶「あ……!」
魔法使い「僧侶!早く!」
僧侶「は、はい……!」
僧侶(ごめんなさい、女神官様……!)
僧侶(平和になれば、必ず……必ず!戻って参ります!)ガシッ
僧侶(それまで……預からせて下さい!)タタタ
……
………
…………
魔法使い「行く様に仕向けられたのだとしたら!」
勇者「…… ……罠、か」
僧侶「…… ……急いで船に乗りましょう」
勇者「え!?」
僧侶「離れた方が良いです。もし彼らの狙いが私達が魔導の街へ行く事なら」
僧侶「船の運航停止を求める理由に繋がります!」
戦士「!」
魔法使い「…… ……私なら、魔導の街へ行ける。何時でも」
勇者「……魔法使い」
魔法使い「大丈夫。 ……大丈夫よ。私は冷静だわ」
勇者(顔が真っ青だぞ……)
戦士「…… ……図書館は良いのか」
僧侶「まさか、私の思考まで読まれていたとは……とても思えませんが」
僧侶「……目的が解らない以上、接触は避けるべきでしょう?」
戦士「あ、ああ……だが……」
魔法使い「僧侶に賛成。必要があれば、逆に何時でも行けるわ」
魔法使い「……見張りがもし本当にあの街の人間なのなら」
魔法使い「何処でも接触できる筈!」
戦士「……何処に行くんだ」
勇者「鍛冶師の村へ行こう」
魔法使い「え?」
勇者「頭も冷やす必要があるし……罠を仕掛けるってだけで」
勇者「鉱石の洞窟近くを戦場に選んだ訳でも無いだろう」
勇者「…… ……俺達の目的は、魔王を倒す事だ」
勇者「忘れちゃ、行けない」
魔法使い「!」
戦士「……急ごう。今日の便はまだ出てる筈だ」
僧侶「時間が間に合えば、ですけど……!」
勇者「走れ!」タタタ
僧侶「あ……!」
魔法使い「僧侶!早く!」
僧侶「は、はい……!」
僧侶(ごめんなさい、女神官様……!)
僧侶(平和になれば、必ず……必ず!戻って参ります!)ガシッ
僧侶(それまで……預からせて下さい!)タタタ
……
………
…………
172: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
使用人「…… ……」
后「使用人、お茶……覚めちゃうわよ」
使用人「あ……ええ……」カチャ
后「随分思い詰めた顔、してる」
使用人「……間に合うのかな、と」
后「…… ……」
使用人「紫の瞳の魔王様の時よりも……随分、早いのです」
使用人「……それに、随分不安定な様だし」
后「魔導将軍も戻った。私も居るよ」
后「……大丈夫。『願えば叶う』んでしょ?」
使用人「そう、思いたいですが……」
カチャ
后「……?」
使用人「魔導将軍様!?」
魔導将軍「少し落ち着いたよ」
后「私が言うの、あれだけど…… ……離れて、大丈夫なの?」
魔導将軍「うーん……最後、かなぁ」
使用人「最後?」
魔導将軍「側近と話してたんだけどね……」
魔導将軍「……もうちょっとだけ、どうにかなりそうだし」
后「城を離れるの?」
魔導将軍「どうしても気になるのよ」
使用人「……どうぞ、お座り下さい。お茶の準備をして参ります」
パタパタ……パタン
后「……魔王にそっくりな男?」
魔導将軍「後、魔導の街……あ、国か。の事もね」
后「…… ……」
魔導将軍「知れたとしても、何か出来る訳じゃないんだけどね」
后「使用人、お茶……覚めちゃうわよ」
使用人「あ……ええ……」カチャ
后「随分思い詰めた顔、してる」
使用人「……間に合うのかな、と」
后「…… ……」
使用人「紫の瞳の魔王様の時よりも……随分、早いのです」
使用人「……それに、随分不安定な様だし」
后「魔導将軍も戻った。私も居るよ」
后「……大丈夫。『願えば叶う』んでしょ?」
使用人「そう、思いたいですが……」
カチャ
后「……?」
使用人「魔導将軍様!?」
魔導将軍「少し落ち着いたよ」
后「私が言うの、あれだけど…… ……離れて、大丈夫なの?」
魔導将軍「うーん……最後、かなぁ」
使用人「最後?」
魔導将軍「側近と話してたんだけどね……」
魔導将軍「……もうちょっとだけ、どうにかなりそうだし」
后「城を離れるの?」
魔導将軍「どうしても気になるのよ」
使用人「……どうぞ、お座り下さい。お茶の準備をして参ります」
パタパタ……パタン
后「……魔王にそっくりな男?」
魔導将軍「後、魔導の街……あ、国か。の事もね」
后「…… ……」
魔導将軍「知れたとしても、何か出来る訳じゃないんだけどね」
173: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
后「でも、近づけないでしょ?」
魔導将軍「そう、なんだけどね……」ハァ
后「…… ……ちょっと待って」
魔導将軍「?」
魔導将軍(目閉じて……何してんのかしら)
カチャ
使用人「お待たせしま…… ……后様?」
魔導将軍「シ……ッ」
后「……見えた」パチ
魔導将軍「見えた?」
后「勇者達の気配を探ってみたら……ん、ちょっと待って」
使用人「…… ……」ハァ
魔導将軍「何ため息ついてんの……」
使用人「いえ……何だか、随分紫の瞳の魔王様に似てきたな、と」
魔導将軍「……后が?」
使用人「何でもあり、なところがですよ」
魔導将軍「……『魔族って本来こういう物』なんじゃ無いの」
使用人「以前仰ってましたね」
魔導将軍「それも后の受け売り、だけどね」
使用人「…… ……かもしれません、でも」
使用人「だからといって、はいそうですかって簡単にできる物でも」
使用人「無いと思うのですけどね」
魔導将軍「……愛って奴よ」
使用人「愛?」
魔導将軍「魔王への愛。勇者への愛」
魔導将軍「……一つじゃ無いでしょ、そういうの」
魔導将軍「そう、なんだけどね……」ハァ
后「…… ……ちょっと待って」
魔導将軍「?」
魔導将軍(目閉じて……何してんのかしら)
カチャ
使用人「お待たせしま…… ……后様?」
魔導将軍「シ……ッ」
后「……見えた」パチ
魔導将軍「見えた?」
后「勇者達の気配を探ってみたら……ん、ちょっと待って」
使用人「…… ……」ハァ
魔導将軍「何ため息ついてんの……」
使用人「いえ……何だか、随分紫の瞳の魔王様に似てきたな、と」
魔導将軍「……后が?」
使用人「何でもあり、なところがですよ」
魔導将軍「……『魔族って本来こういう物』なんじゃ無いの」
使用人「以前仰ってましたね」
魔導将軍「それも后の受け売り、だけどね」
使用人「…… ……かもしれません、でも」
使用人「だからといって、はいそうですかって簡単にできる物でも」
使用人「無いと思うのですけどね」
魔導将軍「……愛って奴よ」
使用人「愛?」
魔導将軍「魔王への愛。勇者への愛」
魔導将軍「……一つじゃ無いでしょ、そういうの」
174: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
后「この場合は原動力、かな」
魔導将軍「どうにかしてやりたい、何でもしてやりたい、って奴よね」
使用人「…… ……」
后「そういう事。 ……北の街へ向かってるみたい」
魔導将軍「北の街?」
后「うん……鍛冶師の村付近だね」
使用人「遠見……ですか」
后「そうなのかな?気配を追えば見えたよ」
魔導将軍「……その為に仲間の詳細、探らせた訳?」
后「純粋な興味もあったけど……まあ、それもあるかな」
魔導将軍「北の街、か……なら、近いね」
后「もう少し掛かりそうだけどね」
魔導将軍「OK。お茶ご馳走様、使用人」
魔導将軍「近づいたら教えてよ、后」
后「……解った」
魔導将軍「それまでは……側近の所に居るよ」
魔導将軍「……アンタは、まだ駄目よ」
后「解ってるよ」
魔導将軍「……羨ましい?」
后「少しね……でも、解ってる」
使用人「…… ……」
魔導将軍「じゃあね」
スタスタ、パタン
后「…… ……」
使用人「后様」
后「ん?」
使用人「……身体、と言うか……その。大丈夫なのですか」
后「私? ……大丈夫だよ」
使用人「…… ……」
魔導将軍「どうにかしてやりたい、何でもしてやりたい、って奴よね」
使用人「…… ……」
后「そういう事。 ……北の街へ向かってるみたい」
魔導将軍「北の街?」
后「うん……鍛冶師の村付近だね」
使用人「遠見……ですか」
后「そうなのかな?気配を追えば見えたよ」
魔導将軍「……その為に仲間の詳細、探らせた訳?」
后「純粋な興味もあったけど……まあ、それもあるかな」
魔導将軍「北の街、か……なら、近いね」
后「もう少し掛かりそうだけどね」
魔導将軍「OK。お茶ご馳走様、使用人」
魔導将軍「近づいたら教えてよ、后」
后「……解った」
魔導将軍「それまでは……側近の所に居るよ」
魔導将軍「……アンタは、まだ駄目よ」
后「解ってるよ」
魔導将軍「……羨ましい?」
后「少しね……でも、解ってる」
使用人「…… ……」
魔導将軍「じゃあね」
スタスタ、パタン
后「…… ……」
使用人「后様」
后「ん?」
使用人「……身体、と言うか……その。大丈夫なのですか」
后「私? ……大丈夫だよ」
使用人「…… ……」
175: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
后「さて、私も書庫に行くよ」
使用人「調べ物ですか?」
后「遠見って何処まで出来るのかわかんないし」
后「……魔導の街とかまで、見えちゃったりはしないだろうけど」
使用人「紫の瞳の男の気配を追えれば……」
后「私自身は接触してないから難しいだろうね……」
使用人「しかし、勇者様のお仲間の方は……」
后「勇者の気配は一番よく知ってるからね」
后「……それをより確かな物にする為、ぐらいにしか、ね」
使用人「……そう、ですよね」
后「でも……随分進んできた、んだね」
后「…… ……もうすぐ、だよ」
使用人「……はい」
……
………
…………
勇者「船酔いは大丈夫か?」
僧侶「……はい、何とか」
魔法使い「整理しましょう。頭が混乱しそうよ」
戦士「先に少し休んだ方が良くないか?船には間に合ったんだ」
勇者「鍛冶師の村まで時間はあるけど……」
魔法使い「……休めるの?」
戦士「…… ……」
僧侶「無理の無い範囲で、やりましょう」
僧侶「……すっきりしないと、休めないのも……解りますし」
勇者「…… ……」
戦士「……現状がどんな状態なのかはっきりわからんのが、な」
使用人「調べ物ですか?」
后「遠見って何処まで出来るのかわかんないし」
后「……魔導の街とかまで、見えちゃったりはしないだろうけど」
使用人「紫の瞳の男の気配を追えれば……」
后「私自身は接触してないから難しいだろうね……」
使用人「しかし、勇者様のお仲間の方は……」
后「勇者の気配は一番よく知ってるからね」
后「……それをより確かな物にする為、ぐらいにしか、ね」
使用人「……そう、ですよね」
后「でも……随分進んできた、んだね」
后「…… ……もうすぐ、だよ」
使用人「……はい」
……
………
…………
勇者「船酔いは大丈夫か?」
僧侶「……はい、何とか」
魔法使い「整理しましょう。頭が混乱しそうよ」
戦士「先に少し休んだ方が良くないか?船には間に合ったんだ」
勇者「鍛冶師の村まで時間はあるけど……」
魔法使い「……休めるの?」
戦士「…… ……」
僧侶「無理の無い範囲で、やりましょう」
僧侶「……すっきりしないと、休めないのも……解りますし」
勇者「…… ……」
戦士「……現状がどんな状態なのかはっきりわからんのが、な」
176: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
僧侶「やっぱり、町長さんに話を聞いてくれば良かった……ですね」
勇者「仕方無いさ。丁度出航時間だったんだ」
魔法使い「これを逃したら……それこそ、魔導国に行くしかなくなってたかもね」
勇者「……大丈夫か、魔法使い」
魔法使い「え?」
勇者「……否。あんなに、その……」
魔法使い「……仲間、でしょ」
魔法使い「私達の目的は『魔王を倒す』事」
僧侶「でも……」
魔法使い「気にならない筈は無いわ。でも……」
魔法使い「こんな時に、戦争を始めるなんて……」
戦士「……時系列に沿って話を進めよう」
戦士「こんがらがるばかり…… ……ッ」
グラグラグラッ
勇者「な、んだ……ッ」
僧侶「……ッ」グッ
戦士「大丈夫か!?」
魔法使い「随分揺れるわね……」
僧侶「だ、大丈夫です……多分、あれです……」
僧侶「……大渦の傍……」
勇者「大渦?」
僧侶「……はい。大海の大渦……海が、荒れる地域を通るのは」
僧侶「解ってました、から……」
戦士「横になれ。話していては……」
魔法使い「舌噛みそう……大丈夫?」
僧侶「…… ……すみません」ハァ
勇者「仕方無いさ。丁度出航時間だったんだ」
魔法使い「これを逃したら……それこそ、魔導国に行くしかなくなってたかもね」
勇者「……大丈夫か、魔法使い」
魔法使い「え?」
勇者「……否。あんなに、その……」
魔法使い「……仲間、でしょ」
魔法使い「私達の目的は『魔王を倒す』事」
僧侶「でも……」
魔法使い「気にならない筈は無いわ。でも……」
魔法使い「こんな時に、戦争を始めるなんて……」
戦士「……時系列に沿って話を進めよう」
戦士「こんがらがるばかり…… ……ッ」
グラグラグラッ
勇者「な、んだ……ッ」
僧侶「……ッ」グッ
戦士「大丈夫か!?」
魔法使い「随分揺れるわね……」
僧侶「だ、大丈夫です……多分、あれです……」
僧侶「……大渦の傍……」
勇者「大渦?」
僧侶「……はい。大海の大渦……海が、荒れる地域を通るのは」
僧侶「解ってました、から……」
戦士「横になれ。話していては……」
魔法使い「舌噛みそう……大丈夫?」
僧侶「…… ……すみません」ハァ
177: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
勇者「長いな……」
僧侶「当分、揺れます……」ウゥ
魔法使い「……これじゃ話所じゃ無いわね」ハァ
戦士「仕方無い。やはり少し休むべきだ」
勇者「うん、僧侶……眠れるのなら眠った方が良い」
僧侶「はい……」
魔法使い「…… ……」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「お爺様達……何を考えて居るのかしら」
勇者「どんな人達だったんだ?」
魔法使い「……言葉にするのは難しいわね」
魔法使い「なんて言うか……そうね。プライドは間違い無く高い、わね」
魔法使い「……自分達……の血は特別で……」
勇者「血?」
魔法使い「領主の血筋、って言うのもあるけど」
魔法使い「あの街は、『優れた加護を持つ者しか住む事を許されなかった』のよ」
戦士「しかし、それでは……」
魔法使い「人口的に、でしょ?」
魔法使い「……富があったり、色々『利』のある人とかは住んでたわ」
勇者「領主にとって……その血筋の人にとって、か」
魔法使い「そう。居住区は別だったけどね」
戦士「……そもそも、どれぐらいの割合なんだ?」
魔法使い「え?」
戦士「その、『優れた加護を持つ者』だ」
魔法使い「…… ……はっきりとは解らない、けれど」
魔法使い「お母様は『我が血筋には優れた加護を持つ者しか居ない』って」
魔法使い「言ってたわ」
勇者「それは……遺伝する、のか?」
魔法使い「だったら、私にだって無いとおかしいわよ」
勇者「…… ……悪い」
僧侶「当分、揺れます……」ウゥ
魔法使い「……これじゃ話所じゃ無いわね」ハァ
戦士「仕方無い。やはり少し休むべきだ」
勇者「うん、僧侶……眠れるのなら眠った方が良い」
僧侶「はい……」
魔法使い「…… ……」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「お爺様達……何を考えて居るのかしら」
勇者「どんな人達だったんだ?」
魔法使い「……言葉にするのは難しいわね」
魔法使い「なんて言うか……そうね。プライドは間違い無く高い、わね」
魔法使い「……自分達……の血は特別で……」
勇者「血?」
魔法使い「領主の血筋、って言うのもあるけど」
魔法使い「あの街は、『優れた加護を持つ者しか住む事を許されなかった』のよ」
戦士「しかし、それでは……」
魔法使い「人口的に、でしょ?」
魔法使い「……富があったり、色々『利』のある人とかは住んでたわ」
勇者「領主にとって……その血筋の人にとって、か」
魔法使い「そう。居住区は別だったけどね」
戦士「……そもそも、どれぐらいの割合なんだ?」
魔法使い「え?」
戦士「その、『優れた加護を持つ者』だ」
魔法使い「…… ……はっきりとは解らない、けれど」
魔法使い「お母様は『我が血筋には優れた加護を持つ者しか居ない』って」
魔法使い「言ってたわ」
勇者「それは……遺伝する、のか?」
魔法使い「だったら、私にだって無いとおかしいわよ」
勇者「…… ……悪い」
179: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
戦士「しかし、遺伝しないのであれば……」
魔法使い「……私、自分に優れた加護が無い事を隠す事ばかり考えてたけど」
魔法使い「私みたいな人が、他に居ない方がおかしいのよ」
勇者「街を出て行った、のか?そういう人達は……」
戦士「…… ……」
魔法使い「出て行かざるを得なかった、の方が正しいんじゃないかしら」
魔法使い「……でも」
勇者「でも?」
魔法使い「私が試されたのは、随分と幼い頃よ」
魔法使い「…… ……私は、剣士と言う男に助けられた、けれど」
戦士「それは、お前が領主の直系だから……では無くてか?」
魔法使い「確かな事は言えないけれど……」
魔法使い「魔力の発現や……優れた加護もそうね」
魔法使い「個人差はあるけど、多分……遅くても、10歳まで、には」
戦士「…… ……」
勇者「もし、優れた加護を持たない子供が産まれたら……」
戦士「……想像したくない、が」
勇者「そんな幼い子供まで、放り出すのか!?」
魔法使い「家には、メイドも居たわ。直系では無いにしろ」
魔法使い「血のつながりはあったんでしょうね。皆……」
魔法使い「…… ……優れた加護を持つ者だったんだと、思う」
勇者「メイド、まで?」
魔法使い「……『出来損ない』って言葉を何度も耳にした」
魔法使い「多分……優れた加護を持たない人達の事だと思うの」
戦士「随分な話だ」ハァ
魔法使い「……私、自分に優れた加護が無い事を隠す事ばかり考えてたけど」
魔法使い「私みたいな人が、他に居ない方がおかしいのよ」
勇者「街を出て行った、のか?そういう人達は……」
戦士「…… ……」
魔法使い「出て行かざるを得なかった、の方が正しいんじゃないかしら」
魔法使い「……でも」
勇者「でも?」
魔法使い「私が試されたのは、随分と幼い頃よ」
魔法使い「…… ……私は、剣士と言う男に助けられた、けれど」
戦士「それは、お前が領主の直系だから……では無くてか?」
魔法使い「確かな事は言えないけれど……」
魔法使い「魔力の発現や……優れた加護もそうね」
魔法使い「個人差はあるけど、多分……遅くても、10歳まで、には」
戦士「…… ……」
勇者「もし、優れた加護を持たない子供が産まれたら……」
戦士「……想像したくない、が」
勇者「そんな幼い子供まで、放り出すのか!?」
魔法使い「家には、メイドも居たわ。直系では無いにしろ」
魔法使い「血のつながりはあったんでしょうね。皆……」
魔法使い「…… ……優れた加護を持つ者だったんだと、思う」
勇者「メイド、まで?」
魔法使い「……『出来損ない』って言葉を何度も耳にした」
魔法使い「多分……優れた加護を持たない人達の事だと思うの」
戦士「随分な話だ」ハァ
180: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
魔法使い「試された時……凄く怖かった」
魔法使い「……私に優れた加護なんて無い事はもう、知っていたし」
魔法使い「もしばれたらどうなるんだろうって」
勇者「……知らない、のか?」
魔法使い「あの時、お爺様だったかお父様だったか……忘れたけど」
魔法使い「『それなりの役割がある』とか言ってたけど……」
魔法使い「……よく考えれば、碌な物じゃ無い事ぐらいは解る」
戦士「…… ……」
魔法使い「無かった事にされるんじゃ無いかって思ったわ」
勇者「無かった事? ……まさか、殺される訳じゃ……!」
魔法使い「その方がましだったかも知れないわ」
勇者「そんな!」
魔法使い「……どう考えたっておかしいじゃない」
魔法使い「閉鎖的とは言えなくも無い場所だった。だけど」
魔法使い「まさか、罪の無い人を頃して良いなんて訳じゃ無かったでしょう」
魔法使い「だったら……『役割がある』って、何よ?」
戦士「…… ……」
勇者「……しかし、無かった事って……」
魔法使い「『領主の血筋の者』では無かった、て事にはなったんでしょう」
魔法使い「……生きるより氏んだ方がマシだと思わされる目に遭うぐらいなら」
魔法使い「……そんな人生、厭よ!」
戦士「生きているだけで素晴らしい物だ」
戦士「……そんな風に言うな」
勇者「戦士の言うとおりだ、魔法使い」
勇者「だけど……天と地程の差のある態度を取られれば」
勇者「ましてや、幼い子供なら……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
魔法使い「なのに……私」
魔法使い「それでも、勇者の仲間に選ばれた時、まっさきに思ったのが」
魔法使い「……『これであの街に帰る事ができる』だったわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「あの人達に褒めて貰える。認めて貰える」
魔法使い「……許される、ってね」ハァ
魔法使い「……私に優れた加護なんて無い事はもう、知っていたし」
魔法使い「もしばれたらどうなるんだろうって」
勇者「……知らない、のか?」
魔法使い「あの時、お爺様だったかお父様だったか……忘れたけど」
魔法使い「『それなりの役割がある』とか言ってたけど……」
魔法使い「……よく考えれば、碌な物じゃ無い事ぐらいは解る」
戦士「…… ……」
魔法使い「無かった事にされるんじゃ無いかって思ったわ」
勇者「無かった事? ……まさか、殺される訳じゃ……!」
魔法使い「その方がましだったかも知れないわ」
勇者「そんな!」
魔法使い「……どう考えたっておかしいじゃない」
魔法使い「閉鎖的とは言えなくも無い場所だった。だけど」
魔法使い「まさか、罪の無い人を頃して良いなんて訳じゃ無かったでしょう」
魔法使い「だったら……『役割がある』って、何よ?」
戦士「…… ……」
勇者「……しかし、無かった事って……」
魔法使い「『領主の血筋の者』では無かった、て事にはなったんでしょう」
魔法使い「……生きるより氏んだ方がマシだと思わされる目に遭うぐらいなら」
魔法使い「……そんな人生、厭よ!」
戦士「生きているだけで素晴らしい物だ」
戦士「……そんな風に言うな」
勇者「戦士の言うとおりだ、魔法使い」
勇者「だけど……天と地程の差のある態度を取られれば」
勇者「ましてや、幼い子供なら……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
魔法使い「なのに……私」
魔法使い「それでも、勇者の仲間に選ばれた時、まっさきに思ったのが」
魔法使い「……『これであの街に帰る事ができる』だったわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「あの人達に褒めて貰える。認めて貰える」
魔法使い「……許される、ってね」ハァ
181: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
戦士「根深い問題だな……」ハァ
勇者「それにしたって、凄い確率だよな」
勇者「『優れた』と言う位なのだから……そうそう発現する物でも無い様な」
勇者「気はするんだけどな……」
魔法使い「だから……『私達は特別だ』って事になるんでしょう」
戦士「お前もそうなのか」
勇者「……戦士?」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
魔法使い「そうね……もし、私に優れた加護があれば」
魔法使い「此処には居なかった、でしょうね」
勇者「人生にもし、なんて無い。お前はお前だよ、魔法使い」
勇者「俺達の仲間、だろう? ……戦士」
戦士「……解っている」
魔法使い「……良かったと思ってるわ。こうして、一緒に居られて」ジッ
戦士「…… ……」
魔法使い(戦士も……彼も、王の血筋。なのに、どうしてこんなにも違うのだろう)
勇者「……? ……?」キョロ、キョロ
戦士「俺も……そう思っている」ジッ
戦士(親や環境がどうであれ……勇者の言うとおり。魔法使いは魔法使いだ)
勇者(……なんだよ、見つめ合って……)
戦士「……俺は『決して驕るな』と言われて、育ってきた」
魔法使い「……それは、お父様?」
戦士「親父もそうだが……元は女剣士様の言葉だ」
勇者「……初代騎士団長、だっけ?」
戦士「そうだ。己の力に驕る事の無い様に、と」
戦士「……訳も分からず、強くなりたいとだけ……思っていた時に」
戦士「そう、言われたんだ」
勇者「それにしたって、凄い確率だよな」
勇者「『優れた』と言う位なのだから……そうそう発現する物でも無い様な」
勇者「気はするんだけどな……」
魔法使い「だから……『私達は特別だ』って事になるんでしょう」
戦士「お前もそうなのか」
勇者「……戦士?」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
魔法使い「そうね……もし、私に優れた加護があれば」
魔法使い「此処には居なかった、でしょうね」
勇者「人生にもし、なんて無い。お前はお前だよ、魔法使い」
勇者「俺達の仲間、だろう? ……戦士」
戦士「……解っている」
魔法使い「……良かったと思ってるわ。こうして、一緒に居られて」ジッ
戦士「…… ……」
魔法使い(戦士も……彼も、王の血筋。なのに、どうしてこんなにも違うのだろう)
勇者「……? ……?」キョロ、キョロ
戦士「俺も……そう思っている」ジッ
戦士(親や環境がどうであれ……勇者の言うとおり。魔法使いは魔法使いだ)
勇者(……なんだよ、見つめ合って……)
戦士「……俺は『決して驕るな』と言われて、育ってきた」
魔法使い「……それは、お父様?」
戦士「親父もそうだが……元は女剣士様の言葉だ」
勇者「……初代騎士団長、だっけ?」
戦士「そうだ。己の力に驕る事の無い様に、と」
戦士「……訳も分からず、強くなりたいとだけ……思っていた時に」
戦士「そう、言われたんだ」
182: 2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:W/pTVQ9VP
戦士「『強さは力だけでは無い』と」
魔法使い「……女剣士様、って生涯独身だった、のよね?」
戦士「ああ。だが……血の繋がりこそ無いが」
戦士「……祖母を知らない俺にとっては、その様なものだった」
勇者「…… ……」
魔法使い「……女剣士様、って生涯独身だった、のよね?」
戦士「ああ。だが……血の繋がりこそ無いが」
戦士「……祖母を知らない俺にとっては、その様なものだった」
勇者「…… ……」
208: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
おはよーう!
じゃあSS速報に立てるよー
でも、とりあえずで立てて良い物なのかな?
てかこのスレタイで良いのかしらん
もし落ちちゃってもそっちに行くね
じゃあSS速報に立てるよー
でも、とりあえずで立てて良い物なのかな?
てかこのスレタイで良いのかしらん
もし落ちちゃってもそっちに行くね
209: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
魔法使い「もし私に、本当に優れた加護があれば……」
魔法使い「……私、勇者に選ばれなかった様な気がするの」
勇者「……魔法使い?」
魔法使い「だって、それは確かに『私』だけど」
魔法使い「……『今の私』と全く同じじゃ無い筈だもの」
戦士「育った環境や、廻りの大人によって……変わるだろうからな」
魔法使い「ええ。だったら……これで良かったんだわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「ありがとう、勇者。選んでくれて」
勇者「……なんか照れるよ」
魔法使い「出会えて良かったわ。戦士……勿論、僧侶にもね」ニコ
戦士「……あ、あ」ドキ
僧侶「ん……」モゾ
勇者「僧侶?」
僧侶「私……眠ってました……か」
戦士「気分はどうだ?」
僧侶「……少し、ましになりました……」ムク
魔法使い「ああ、まだ横になってなさい。揺れもマシになったけど」
僧侶「ええ……すみません……あ」ゴロン、ゴトッ
戦士「ん、何か…… ……これは?」ヒョイ
僧侶「あ……」
魔法使い「持って来たの?」
勇者「これ……あの教会にあった……?」
戦士「……腕が折れてるな」
僧侶「…… ……隻腕の祈り女様の像、なのだそうです」
勇者「え? ……知ってるの?」
魔法使い「……私、勇者に選ばれなかった様な気がするの」
勇者「……魔法使い?」
魔法使い「だって、それは確かに『私』だけど」
魔法使い「……『今の私』と全く同じじゃ無い筈だもの」
戦士「育った環境や、廻りの大人によって……変わるだろうからな」
魔法使い「ええ。だったら……これで良かったんだわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「ありがとう、勇者。選んでくれて」
勇者「……なんか照れるよ」
魔法使い「出会えて良かったわ。戦士……勿論、僧侶にもね」ニコ
戦士「……あ、あ」ドキ
僧侶「ん……」モゾ
勇者「僧侶?」
僧侶「私……眠ってました……か」
戦士「気分はどうだ?」
僧侶「……少し、ましになりました……」ムク
魔法使い「ああ、まだ横になってなさい。揺れもマシになったけど」
僧侶「ええ……すみません……あ」ゴロン、ゴトッ
戦士「ん、何か…… ……これは?」ヒョイ
僧侶「あ……」
魔法使い「持って来たの?」
勇者「これ……あの教会にあった……?」
戦士「……腕が折れてるな」
僧侶「…… ……隻腕の祈り女様の像、なのだそうです」
勇者「え? ……知ってるの?」
211: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
僧侶「港街の教会に居る時に、女神官様からお話だけ聞きました」
僧侶「……始まりの大陸の、美しい丘の上」
僧侶「そこに、エルフとこの……女様、と仰ったそうですが」
僧侶「お二方が眠っていらっしゃるのだ、と」
魔法使い「エルフ!?」
勇者「…… ……エルフ」
僧侶「それも聞いたに過ぎません、から。ハッキリとは……」
魔法使い「でも、貴女……その、感じる、のでしょう?」
魔法使い「何か、解らない……の」
僧侶「確かに、なんて言うのか……清浄な力を感じました」
僧侶「でも……それはあの丘付近になると大きくはなっていますけど」
僧侶「それ程……特別な物では無いと思うんです」
勇者「そうなの?」
僧侶「あの大陸全体が、とても気持ちの良い場所です」
僧侶「魔王城から遠いので、魔物も言う程強く無い、と言うのもあるんでしょうけど」
僧侶「……初めてあの大陸に行った時、とても……そうですね。本当に」
僧侶「『気持ちの良い場所だな』と、思ったんです」
魔法使い「……だから、勇者は代々、あの土地から……旅立つのかしら」
勇者「代々って……言ったって。俺と親父だけだろ?」
魔法使い「……あ、そうか」
戦士「清浄な土地……か……」
僧侶「……そこで育まれ、産まれた戦士さんが、大地に愛されているのも」
僧侶「とても、良く解ります」
魔法使い「…… ……」
僧侶「……始まりの大陸の、美しい丘の上」
僧侶「そこに、エルフとこの……女様、と仰ったそうですが」
僧侶「お二方が眠っていらっしゃるのだ、と」
魔法使い「エルフ!?」
勇者「…… ……エルフ」
僧侶「それも聞いたに過ぎません、から。ハッキリとは……」
魔法使い「でも、貴女……その、感じる、のでしょう?」
魔法使い「何か、解らない……の」
僧侶「確かに、なんて言うのか……清浄な力を感じました」
僧侶「でも……それはあの丘付近になると大きくはなっていますけど」
僧侶「それ程……特別な物では無いと思うんです」
勇者「そうなの?」
僧侶「あの大陸全体が、とても気持ちの良い場所です」
僧侶「魔王城から遠いので、魔物も言う程強く無い、と言うのもあるんでしょうけど」
僧侶「……初めてあの大陸に行った時、とても……そうですね。本当に」
僧侶「『気持ちの良い場所だな』と、思ったんです」
魔法使い「……だから、勇者は代々、あの土地から……旅立つのかしら」
勇者「代々って……言ったって。俺と親父だけだろ?」
魔法使い「……あ、そうか」
戦士「清浄な土地……か……」
僧侶「……そこで育まれ、産まれた戦士さんが、大地に愛されているのも」
僧侶「とても、良く解ります」
魔法使い「…… ……」
213: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
戦士「……待て。気分も良いのなら、時系列に沿って話そう」
勇者「そうだな。知りたい事は山程あるけど」
勇者「……とりあえず、整理しないと」
戦士「……女剣士様や、親父に、もっと話を聞いておけば……良かったな」
僧侶「前勇者様の事、ですか?」
戦士「それもある。ある……が……」
戦士「……どうにも、変な気持ちだ」
魔法使い「変?」
戦士「時系列に、と言い出しておいて……脱線してしまうが」
戦士「……ああ。あれに似ている。教会でお前達が言ってた様な、あれだ」
勇者「『寂しくて苦しくて悲しくて……嬉しい』?」
魔法使い「解る……気がするわ」
戦士「念願だった勇者との旅路……なのに『何かが違う』」
僧侶「……無理もありませんよ」
僧侶「私達の目標は魔王を倒す事なのに」
魔法使い「……実質の戦争状態。振り回されてる気はするわね」フゥ
勇者「関係無いとは言えないよな」
勇者「……魔王の事だけ、とは言えないよ」
勇者「俺の育った国だ。仲間の……育った国の事でもある」
僧侶「世界を平和に、と言うのは、皆の願いであろう筈ですのに、ね」
魔法使い「……『特別』、か。それ程良い物なのかしら」
僧侶「それは私も……思った事があります」ジッ
勇者「ん? ……お、俺?」
僧侶「自分で言うのも……あれですけど」
僧侶「どうして私にはこんな力があるのだろう、と」
魔法使い「…… ……」
僧侶「同じにしてはいけません、けど……『勇者』も」
僧侶「『特別』ですから」
勇者「…… ……」
勇者「そうだな。知りたい事は山程あるけど」
勇者「……とりあえず、整理しないと」
戦士「……女剣士様や、親父に、もっと話を聞いておけば……良かったな」
僧侶「前勇者様の事、ですか?」
戦士「それもある。ある……が……」
戦士「……どうにも、変な気持ちだ」
魔法使い「変?」
戦士「時系列に、と言い出しておいて……脱線してしまうが」
戦士「……ああ。あれに似ている。教会でお前達が言ってた様な、あれだ」
勇者「『寂しくて苦しくて悲しくて……嬉しい』?」
魔法使い「解る……気がするわ」
戦士「念願だった勇者との旅路……なのに『何かが違う』」
僧侶「……無理もありませんよ」
僧侶「私達の目標は魔王を倒す事なのに」
魔法使い「……実質の戦争状態。振り回されてる気はするわね」フゥ
勇者「関係無いとは言えないよな」
勇者「……魔王の事だけ、とは言えないよ」
勇者「俺の育った国だ。仲間の……育った国の事でもある」
僧侶「世界を平和に、と言うのは、皆の願いであろう筈ですのに、ね」
魔法使い「……『特別』、か。それ程良い物なのかしら」
僧侶「それは私も……思った事があります」ジッ
勇者「ん? ……お、俺?」
僧侶「自分で言うのも……あれですけど」
僧侶「どうして私にはこんな力があるのだろう、と」
魔法使い「…… ……」
僧侶「同じにしてはいけません、けど……『勇者』も」
僧侶「『特別』ですから」
勇者「…… ……」
214: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
僧侶「どんな気分で過ごされているのだろう」
僧侶「どんな…… ……その」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「……楽しい事ばかりで無いのは、私だけでは無いのですが」
僧侶「上手く言えません。でも……」
戦士「良くも悪くも、『他』と違う時点で見る物から見れば」
戦士「それは『特別』なんだ」
勇者「俺に取っては普通でも、人に取ればそれは……な」
魔法使い「…… ……」
戦士「『言葉』に振り回されてはいけない」
僧侶「……そう、ですね。そうで無いと……見失う」
魔法使い「見失う?」
僧侶「はい。感情を。目的を……自分を、見失います」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「今迷路に迷い込む訳には行かないな」
勇者「……そうだな」
魔法使い「……少し、怖いわ」
勇者「怖い?」
魔法使い「真実を知る事。お爺様達が何を考えて居るのか」
魔法使い「……あの、剣士と言う男は何者なのか」
戦士「そうだ。あいつの事もあったな」
魔法使い「僧侶が言ってた、勇者の光の力の事も」
勇者「……親父と同じ光を感じる、と言ってたな」
僧侶「……はい」
魔法使い「これから、どうなるのか。魔王を倒して……」
魔法使い「……本当に、終わるのか」
僧侶「…… ……」
勇者「確かに……怖くないと言えば嘘になる」
勇者「だけど……俺は、知りたい」
僧侶「どんな…… ……その」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「……楽しい事ばかりで無いのは、私だけでは無いのですが」
僧侶「上手く言えません。でも……」
戦士「良くも悪くも、『他』と違う時点で見る物から見れば」
戦士「それは『特別』なんだ」
勇者「俺に取っては普通でも、人に取ればそれは……な」
魔法使い「…… ……」
戦士「『言葉』に振り回されてはいけない」
僧侶「……そう、ですね。そうで無いと……見失う」
魔法使い「見失う?」
僧侶「はい。感情を。目的を……自分を、見失います」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「今迷路に迷い込む訳には行かないな」
勇者「……そうだな」
魔法使い「……少し、怖いわ」
勇者「怖い?」
魔法使い「真実を知る事。お爺様達が何を考えて居るのか」
魔法使い「……あの、剣士と言う男は何者なのか」
戦士「そうだ。あいつの事もあったな」
魔法使い「僧侶が言ってた、勇者の光の力の事も」
勇者「……親父と同じ光を感じる、と言ってたな」
僧侶「……はい」
魔法使い「これから、どうなるのか。魔王を倒して……」
魔法使い「……本当に、終わるのか」
僧侶「…… ……」
勇者「確かに……怖くないと言えば嘘になる」
勇者「だけど……俺は、知りたい」
215: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
勇者「知る権利はあるはずだし……知らなくちゃならない」
勇者「……俺は、『勇者』だ」
戦士「そして俺達は仲間だ」
僧侶「……私も、知りたいです。世界の謎。エルフとは何者なのか」
僧侶「そして……貴方の事も、勇者様」
勇者「……ッ」ドキッ
魔法使い(……戦士の事、知りたい)
魔法使い(否、自分の気持ち……かしら……知るのは、やっぱり少し……怖いけど)
僧侶(光だから惹かれるのか、彼だからなのか……)
僧侶(見失いたくない。すべてを、知りたい……!)
戦士(魔法使いへの……この、妙な感覚は何だろう。似ているからなのか?)
戦士(……知りたい。俺の知らない、何かを。全てを)
勇者(親父と同じ光……どうして俺は、『勇者』は光を持つのか)
勇者(今度こそ……確実に魔王を倒す為に、知りたい! ……僧侶の、事も)
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者「……良し。今度こそ話を戻そう」
魔法使い「どこから話す?」
戦士「時系列……ああ、そうだ。僧侶は……実質どの程度生きている?」
僧侶「……小さい頃の事は正直、曖昧なのですが……」
魔法使い「私と港街で会った時は、もう今ぐらいの見た目だった筈よね?」
勇者「期間はまあ……良いだろう?」
僧侶「ええと……そうですね」
僧侶「……『光と闇の喪失』を感じていますから」
僧侶「その頃当たりから……お話しします」
勇者「……俺は、『勇者』だ」
戦士「そして俺達は仲間だ」
僧侶「……私も、知りたいです。世界の謎。エルフとは何者なのか」
僧侶「そして……貴方の事も、勇者様」
勇者「……ッ」ドキッ
魔法使い(……戦士の事、知りたい)
魔法使い(否、自分の気持ち……かしら……知るのは、やっぱり少し……怖いけど)
僧侶(光だから惹かれるのか、彼だからなのか……)
僧侶(見失いたくない。すべてを、知りたい……!)
戦士(魔法使いへの……この、妙な感覚は何だろう。似ているからなのか?)
戦士(……知りたい。俺の知らない、何かを。全てを)
勇者(親父と同じ光……どうして俺は、『勇者』は光を持つのか)
勇者(今度こそ……確実に魔王を倒す為に、知りたい! ……僧侶の、事も)
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者「……良し。今度こそ話を戻そう」
魔法使い「どこから話す?」
戦士「時系列……ああ、そうだ。僧侶は……実質どの程度生きている?」
僧侶「……小さい頃の事は正直、曖昧なのですが……」
魔法使い「私と港街で会った時は、もう今ぐらいの見た目だった筈よね?」
勇者「期間はまあ……良いだろう?」
僧侶「ええと……そうですね」
僧侶「……『光と闇の喪失』を感じていますから」
僧侶「その頃当たりから……お話しします」
216: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
僧侶「『光と闇の喪失』は、前勇者様と魔王であったと思います」
魔法使い「でもそれだとおかしいのよね」
僧侶「はい」
戦士「まあ、先を聞こう」
僧侶「そして、数年……後、だと思います」
勇者「光の誕生を感じた、んだよな」
僧侶「……はい。これはハッキリ解ります。勇者様がお生まれになった」
僧侶「16年前、です」
戦士「俺は既に産まれてたな」
魔法使い「私もよ」
勇者「……実質俺が一番年下なんだな」
僧侶「その後……私は、育てて下さった神父様を看取り、あの小屋を出ました」
魔法使い「鍛冶師の村の近くなのよね」
僧侶「歩くと少し距離がありますが……」
勇者「……連れて行って貰う事は、可能?」
僧侶「良い、んですか?」
魔法使い「貴女が良いなら、勿論……よね?」
戦士「ああ」
僧侶「……はい。ありがとうございます」
僧侶「私は姿が変わりません……歳を取りませんから」
僧侶「最初は、魔導の街を目指そうと思っていたのですが……」
魔法使い「図書館?」
僧侶「はい。ですが……路銀もそれ程ありませんでしたし」
僧侶「仕事を見つける必要がありました」
魔法使い「それで……あそこで私と出会った、のね」
僧侶「……女神官様はとても良くして下さいました」
僧侶「ですが、私は……エルフの血が入っているので」
僧侶「何時までも……居られない」
勇者「実際は何時まで居たんだ?」
僧侶「……出会った頃にはもう、初老の女性だったので」
僧侶「すぐに目を患われて……」
僧侶「……私には、都合が良かったんです。見られなくて済む」
戦士「…… ……」
魔法使い「でもそれだとおかしいのよね」
僧侶「はい」
戦士「まあ、先を聞こう」
僧侶「そして、数年……後、だと思います」
勇者「光の誕生を感じた、んだよな」
僧侶「……はい。これはハッキリ解ります。勇者様がお生まれになった」
僧侶「16年前、です」
戦士「俺は既に産まれてたな」
魔法使い「私もよ」
勇者「……実質俺が一番年下なんだな」
僧侶「その後……私は、育てて下さった神父様を看取り、あの小屋を出ました」
魔法使い「鍛冶師の村の近くなのよね」
僧侶「歩くと少し距離がありますが……」
勇者「……連れて行って貰う事は、可能?」
僧侶「良い、んですか?」
魔法使い「貴女が良いなら、勿論……よね?」
戦士「ああ」
僧侶「……はい。ありがとうございます」
僧侶「私は姿が変わりません……歳を取りませんから」
僧侶「最初は、魔導の街を目指そうと思っていたのですが……」
魔法使い「図書館?」
僧侶「はい。ですが……路銀もそれ程ありませんでしたし」
僧侶「仕事を見つける必要がありました」
魔法使い「それで……あそこで私と出会った、のね」
僧侶「……女神官様はとても良くして下さいました」
僧侶「ですが、私は……エルフの血が入っているので」
僧侶「何時までも……居られない」
勇者「実際は何時まで居たんだ?」
僧侶「……出会った頃にはもう、初老の女性だったので」
僧侶「すぐに目を患われて……」
僧侶「……私には、都合が良かったんです。見られなくて済む」
戦士「…… ……」
217: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
僧侶「女神官様は、私は鳥籠の中の鳥では無いのだから」
僧侶「好きに生きなさいと仰られましたが、放ってはおけませんでした」
僧侶「……神父様の時にも、感じましたが」
僧侶「命の炎が、どんどんと小さくなっていくのも、感じていたのです」
魔法使い「…… ……」
僧侶「不思議ですよね。あれほど……神父様の時に、あれほど」
僧侶「……人の氏など、みたく無いと思っていたのに」
戦士「……看取った、んだな」
僧侶「…… ……はい」
魔法使い「じゃあ、あの庭のお墓は……」
僧侶「一つはあの教会を作られた神父様の物だそうです」
僧侶「……女神官様の亡骸は、その隣に」
勇者「あれ……?その、女、って人じゃ無いのか?」
魔法使い「……あ、ああ。そうよね。実在してた人の像まであるのに」
僧侶「あの教会に実際にいらっしゃった、と言うのは聞きましたけど」
僧侶「何故か、と言うまでは……」
戦士「……僧侶は、女神官様の氏も知っている、のだな」
僧侶「え? ……あ、はい」
僧侶「そちらは……お話に聞いた程度、ですけれど」
魔法使い「どうしたのよ、戦士」
戦士「……否」
僧侶「後は、始まりの街に向かい……闘技大会を見たり……」
魔法使い「……そうか。貴女もあの場に居たのね」
僧侶「はい。どうしても勇者様にお会いしたかったのです」
戦士「…… ……」
勇者「戦士?」
戦士「あ、いや…… ……その、女と言う人とエルフの墓、だとかは」
戦士「……前にも言っただろうが、幼い頃に連れて行かれているのだと思う」
戦士「覚えては居ない、んだがな」
魔法使い「……寄ってくれば、良かったわね」
戦士「……女剣士様か、親父に連れて行かれたんだろう」
僧侶「好きに生きなさいと仰られましたが、放ってはおけませんでした」
僧侶「……神父様の時にも、感じましたが」
僧侶「命の炎が、どんどんと小さくなっていくのも、感じていたのです」
魔法使い「…… ……」
僧侶「不思議ですよね。あれほど……神父様の時に、あれほど」
僧侶「……人の氏など、みたく無いと思っていたのに」
戦士「……看取った、んだな」
僧侶「…… ……はい」
魔法使い「じゃあ、あの庭のお墓は……」
僧侶「一つはあの教会を作られた神父様の物だそうです」
僧侶「……女神官様の亡骸は、その隣に」
勇者「あれ……?その、女、って人じゃ無いのか?」
魔法使い「……あ、ああ。そうよね。実在してた人の像まであるのに」
僧侶「あの教会に実際にいらっしゃった、と言うのは聞きましたけど」
僧侶「何故か、と言うまでは……」
戦士「……僧侶は、女神官様の氏も知っている、のだな」
僧侶「え? ……あ、はい」
僧侶「そちらは……お話に聞いた程度、ですけれど」
魔法使い「どうしたのよ、戦士」
戦士「……否」
僧侶「後は、始まりの街に向かい……闘技大会を見たり……」
魔法使い「……そうか。貴女もあの場に居たのね」
僧侶「はい。どうしても勇者様にお会いしたかったのです」
戦士「…… ……」
勇者「戦士?」
戦士「あ、いや…… ……その、女と言う人とエルフの墓、だとかは」
戦士「……前にも言っただろうが、幼い頃に連れて行かれているのだと思う」
戦士「覚えては居ない、んだがな」
魔法使い「……寄ってくれば、良かったわね」
戦士「……女剣士様か、親父に連れて行かれたんだろう」
218: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
戦士「……お祖母様が亡くなった時」
勇者「ええと……盗賊様、だな」
戦士「ああ。本当はここ……その丘の墓に入れて欲しかったのだろうと」
戦士「聞いた事がある」
魔法使い「え?」
戦士「詳しくは知らんが、知人であったらしい。多分……二人とも」
僧侶「そうなのですか!?」
戦士「……親父か国王様も余り話したがらなかったが」
戦士「昔、港街を作ったのも、始まりの国を再興させたのも」
戦士「お祖母様とお爺様だと習った」
魔法使い「習った?」
戦士「王国史、の様な物だ」
勇者「……港街、まで!?」
戦士「…… ……何時言おうかと思っていたんだが」
戦士「魔導国とは、その頃からいざこざがあったらしくてな」
魔法使い「!?」
戦士「お前は知らないのか、魔法使い」
魔法使い「……私は、魔力の発現を認められたのが早かった、らしいの」
魔法使い「それからは……魔導書ばかり与えられて……」
僧侶「隠蔽……では無いのかも知れません、けど」
僧侶「魔導国は昔から……その……」
魔法使い「良いわよ。遠慮せずに話して」
僧侶「……優れた加護を持つ者しか住む事が許されない、とか……」
勇者「ああ、それはさっき魔法使いが話してくれた」
僧侶「……ご存じでしたら、そこは省きます」
僧侶「神父様が話して下さった事、ですが」
僧侶「以前お仕えしていらっしゃった教会で、神父様と同じように」
僧侶「そこから独立し、魔導の街に行きたいと仰る神官様がいらっしゃったらしく」
僧侶「あの街は……と、誰もあまりいい顔をしなかった、と」
魔法使い「……港街とのいざこざ、の所為……なんでしょうね」
勇者「ええと……盗賊様、だな」
戦士「ああ。本当はここ……その丘の墓に入れて欲しかったのだろうと」
戦士「聞いた事がある」
魔法使い「え?」
戦士「詳しくは知らんが、知人であったらしい。多分……二人とも」
僧侶「そうなのですか!?」
戦士「……親父か国王様も余り話したがらなかったが」
戦士「昔、港街を作ったのも、始まりの国を再興させたのも」
戦士「お祖母様とお爺様だと習った」
魔法使い「習った?」
戦士「王国史、の様な物だ」
勇者「……港街、まで!?」
戦士「…… ……何時言おうかと思っていたんだが」
戦士「魔導国とは、その頃からいざこざがあったらしくてな」
魔法使い「!?」
戦士「お前は知らないのか、魔法使い」
魔法使い「……私は、魔力の発現を認められたのが早かった、らしいの」
魔法使い「それからは……魔導書ばかり与えられて……」
僧侶「隠蔽……では無いのかも知れません、けど」
僧侶「魔導国は昔から……その……」
魔法使い「良いわよ。遠慮せずに話して」
僧侶「……優れた加護を持つ者しか住む事が許されない、とか……」
勇者「ああ、それはさっき魔法使いが話してくれた」
僧侶「……ご存じでしたら、そこは省きます」
僧侶「神父様が話して下さった事、ですが」
僧侶「以前お仕えしていらっしゃった教会で、神父様と同じように」
僧侶「そこから独立し、魔導の街に行きたいと仰る神官様がいらっしゃったらしく」
僧侶「あの街は……と、誰もあまりいい顔をしなかった、と」
魔法使い「……港街とのいざこざ、の所為……なんでしょうね」
219: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
僧侶「で、しょうね」
戦士「結局どうなったんだ?」
僧侶「先に教会を出てしまったのが神父様なので、後の事は解らないと仰ってましたが」
僧侶「でも……魔法を志す者ならば、誰もが憧れた街だから」
僧侶「仕方無いのだろうけど、と」
戦士「今は当たり前の様に取引されているが、魔石……」
魔法使い「魔除けの石の事?」
戦士「そうだ。昔は……様々な魔石があったらしい」
勇者「炎とか、水とか……って事か?」
戦士「ああ。俺は見た事がある」
魔法使い「え!?」
戦士「城に補完されていた。あれは魔法を使える者で無くても」
戦士「作れるのだとか……」
僧侶「え!?」
戦士「……いや、本当にそれしか知らないんだがな」
魔法使い「私の家やお爺様の家にもあったわ。魔除けの石、だけだけど」
魔法使い「徳を積んだ聖職者の作った物だとかで……随分高価な物だって」
魔法使い「触らせてくれなかった、けどね」
勇者「……僧侶は?」
僧侶「神父様は……その話は、何も……」
勇者「おいくつぐらいで無くなられたか解らないけど……」
勇者「知っててもおかしく無い、よなぁ……」
戦士「……『鉱石の洞窟』」
魔法使い「戦士?」
戦士「資金源、か?」
勇者「魔導国が狙う理由? ……しかし」
僧侶「色々と思惑はあるんでしょうけど、それも一つかもしれませんね」
僧侶「始まりの国の国王様は、一度船を引き上げられたのでしょう?」
戦士「結局どうなったんだ?」
僧侶「先に教会を出てしまったのが神父様なので、後の事は解らないと仰ってましたが」
僧侶「でも……魔法を志す者ならば、誰もが憧れた街だから」
僧侶「仕方無いのだろうけど、と」
戦士「今は当たり前の様に取引されているが、魔石……」
魔法使い「魔除けの石の事?」
戦士「そうだ。昔は……様々な魔石があったらしい」
勇者「炎とか、水とか……って事か?」
戦士「ああ。俺は見た事がある」
魔法使い「え!?」
戦士「城に補完されていた。あれは魔法を使える者で無くても」
戦士「作れるのだとか……」
僧侶「え!?」
戦士「……いや、本当にそれしか知らないんだがな」
魔法使い「私の家やお爺様の家にもあったわ。魔除けの石、だけだけど」
魔法使い「徳を積んだ聖職者の作った物だとかで……随分高価な物だって」
魔法使い「触らせてくれなかった、けどね」
勇者「……僧侶は?」
僧侶「神父様は……その話は、何も……」
勇者「おいくつぐらいで無くなられたか解らないけど……」
勇者「知っててもおかしく無い、よなぁ……」
戦士「……『鉱石の洞窟』」
魔法使い「戦士?」
戦士「資金源、か?」
勇者「魔導国が狙う理由? ……しかし」
僧侶「色々と思惑はあるんでしょうけど、それも一つかもしれませんね」
僧侶「始まりの国の国王様は、一度船を引き上げられたのでしょう?」
220: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
戦士「まあ、そうだが……だが、あれは魔石に関係する物なのか?」
勇者「光の剣の修理に使った、んだよな?」
戦士「そう聞いている」
魔法使い「私達鍛冶師の村に向かうんでしょう?」
魔法使い「……話を聞けば良いじゃないの」
戦士「しかし……お爺様の時代で既に『失われていく技術』だと言っていたぞ」
僧侶「聞いてみる価値はあると思いますよ」
戦士「……まあ、それはそうだが」
魔法使い「港街と始まりの国……」
勇者「魔法使い?」
魔法使い「……お爺様達が何を考えて居るのか、本当の事は解らないけど」
魔法使い「昔、何かしらの確執があったのなら、プライドの高い人達の事だもの」
魔法使い「……これ幸い、って……それだけでも、あり得る気がするわ」
僧侶「でも、魔石って……ああ、そうか」
戦士「何だ?」
僧侶「いえ。魔法を使わない物でも作れて」
僧侶「魔法剣の修理まで出来てしまう物ですから。当たらずとも遠からずなのかと」
勇者「ん?」
僧侶「あ……えっと」
僧侶「……もし、魔法使いさんと一緒に、勇者様を魔導の国に、と考えて居るなら」
僧侶「その鉱石の洞窟を欲するのも解る気がします」
僧侶「確執、プライド……えっと、その」
魔法使い「! ……そうか」
勇者「な、何だよ」
魔法使い「……もし、私達が倒しきれなければ」
魔法使い「時代の勇者様は、魔導国から旅立つ可能性が0じゃ無い」
勇者「!?」
魔法使い「……急に、国、になんて考えたのも……それかもしれないわよ」
戦士「手柄は全て、自分達の物……プライドな。成る程」
勇者「そ……そんな事だけで!?」
勇者「光の剣の修理に使った、んだよな?」
戦士「そう聞いている」
魔法使い「私達鍛冶師の村に向かうんでしょう?」
魔法使い「……話を聞けば良いじゃないの」
戦士「しかし……お爺様の時代で既に『失われていく技術』だと言っていたぞ」
僧侶「聞いてみる価値はあると思いますよ」
戦士「……まあ、それはそうだが」
魔法使い「港街と始まりの国……」
勇者「魔法使い?」
魔法使い「……お爺様達が何を考えて居るのか、本当の事は解らないけど」
魔法使い「昔、何かしらの確執があったのなら、プライドの高い人達の事だもの」
魔法使い「……これ幸い、って……それだけでも、あり得る気がするわ」
僧侶「でも、魔石って……ああ、そうか」
戦士「何だ?」
僧侶「いえ。魔法を使わない物でも作れて」
僧侶「魔法剣の修理まで出来てしまう物ですから。当たらずとも遠からずなのかと」
勇者「ん?」
僧侶「あ……えっと」
僧侶「……もし、魔法使いさんと一緒に、勇者様を魔導の国に、と考えて居るなら」
僧侶「その鉱石の洞窟を欲するのも解る気がします」
僧侶「確執、プライド……えっと、その」
魔法使い「! ……そうか」
勇者「な、何だよ」
魔法使い「……もし、私達が倒しきれなければ」
魔法使い「時代の勇者様は、魔導国から旅立つ可能性が0じゃ無い」
勇者「!?」
魔法使い「……急に、国、になんて考えたのも……それかもしれないわよ」
戦士「手柄は全て、自分達の物……プライドな。成る程」
勇者「そ……そんな事だけで!?」
221: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
魔法使い「……間違えてる。勿論間違えてるわ。だけど!」
僧侶「可能性はある……でしょうね。ご自分達を……」
魔法使い「確実に『特別』と思って疑わないわ。あの人達は」
戦士「だからと戦争を起こす等……間違えている」
勇者「…… ……」
僧侶「決めつけは禁物ですけど……確かな事は何も解っていないので」
僧侶「ですけど……」チラ
魔法使い「気を遣わなくて良いって言ったでしょう、僧侶」
魔法使い「……でもね。魔法剣の修理は本当に、技術がいるのよ」
魔法使い「鍛冶師様って凄い人だったらしいけれど、それでも…… ……」
戦士「俺にも気を遣うな、魔法使い」
戦士「折れてしまったんだ。光の剣……は」
勇者「…… ……魔王の力が半端ない、って可能性もあるけどな」
僧侶「! ……勿論、私達の足止めの可能性も否定できませんけど」
僧侶「武力行使の文言までちらつかせて、船を止めようとした理由……!」
魔法使い「……! 鍛冶師の村へも手を伸ばすつもりで……!」
勇者「そんなの、本当に全面戦争じゃ無いか!」
戦士「……実質の武力を持つのは、始まりの国しか無い筈だ」
僧侶「…… ……もう一つ、忘れています」
魔法使い「え?」
僧侶「剣士さん」
勇者「!」
僧侶「あれほどの力の持ち主です……あの方、確かに剣を握っていらっしゃった」
僧侶「そして……魔法まで行使される」
魔法使い「……ッ お爺様達は、雷の加護よ」
戦士「? ……それは、何か関係が……」
魔法使い「私の瞳は何色?」
魔法使い「……落胆されてきた理由の一つよ。私の加護は雷じゃ無い」
僧侶「え?でも……」
僧侶「可能性はある……でしょうね。ご自分達を……」
魔法使い「確実に『特別』と思って疑わないわ。あの人達は」
戦士「だからと戦争を起こす等……間違えている」
勇者「…… ……」
僧侶「決めつけは禁物ですけど……確かな事は何も解っていないので」
僧侶「ですけど……」チラ
魔法使い「気を遣わなくて良いって言ったでしょう、僧侶」
魔法使い「……でもね。魔法剣の修理は本当に、技術がいるのよ」
魔法使い「鍛冶師様って凄い人だったらしいけれど、それでも…… ……」
戦士「俺にも気を遣うな、魔法使い」
戦士「折れてしまったんだ。光の剣……は」
勇者「…… ……魔王の力が半端ない、って可能性もあるけどな」
僧侶「! ……勿論、私達の足止めの可能性も否定できませんけど」
僧侶「武力行使の文言までちらつかせて、船を止めようとした理由……!」
魔法使い「……! 鍛冶師の村へも手を伸ばすつもりで……!」
勇者「そんなの、本当に全面戦争じゃ無いか!」
戦士「……実質の武力を持つのは、始まりの国しか無い筈だ」
僧侶「…… ……もう一つ、忘れています」
魔法使い「え?」
僧侶「剣士さん」
勇者「!」
僧侶「あれほどの力の持ち主です……あの方、確かに剣を握っていらっしゃった」
僧侶「そして……魔法まで行使される」
魔法使い「……ッ お爺様達は、雷の加護よ」
戦士「? ……それは、何か関係が……」
魔法使い「私の瞳は何色?」
魔法使い「……落胆されてきた理由の一つよ。私の加護は雷じゃ無い」
僧侶「え?でも……」
222: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
魔法使い「あの家の血筋には、雷の加護を持つ者が多いの」
魔法使い「……だから、それも特別だと思っているのよ!」
魔法使い「紅い瞳でも、雷を使うかもしれない」
魔法使い「ああ、やっぱり炎だった」
魔法使い「……でも、優れた加護は持っていた、と一応の安心をしていたわ」
勇者「…… ……」
戦士「だが、あの剣士と言う男は……炎の魔法でお前を助けたんだろう」
僧侶「!?」
魔法使い「だからよ!二つの加護を持つ者なんて聞いた事も無い!」
勇者「……『特別』!」
僧侶「ちょ、ちょっと待って下さい!あの方は……!?」
魔法使い「そう。複数の加護を持つ……ん、でしょうね」
戦士「……そして闇色の瞳。これも……『特別』だな」
僧侶「そ……ん、なの……聞いた事、ない……」
勇者「……もし本当に剣士が魔導国に居て」
勇者「それを後ろ盾とすると……まずいぞ」
戦士「まだ忘れてる事があるぞ」
僧侶「え……?」
戦士「あの剣士と言う男……お前にそっくりだっただろう、勇者」
勇者「!」
勇者「…… ……」
魔法使い「……やっぱり、何れあの街に戻る……必要がある、かしら」
僧侶「のんびり図書館に、とは言っていられないかもしれませんけど、ね」
勇者「……どこかで、船を手に入れて」
戦士「?」
勇者「始まりの国へ戻ろう」
勇者「……騎士団長や国王に話を聞こう。勿論、魔王を倒す事が目的だが」
勇者「だからこそ、人同士で争っていて良いはずがない!」
勇者「…… ……それに、母さんが居る」
僧侶「! 前勇者様の奥様……!」
魔法使い「……だから、それも特別だと思っているのよ!」
魔法使い「紅い瞳でも、雷を使うかもしれない」
魔法使い「ああ、やっぱり炎だった」
魔法使い「……でも、優れた加護は持っていた、と一応の安心をしていたわ」
勇者「…… ……」
戦士「だが、あの剣士と言う男は……炎の魔法でお前を助けたんだろう」
僧侶「!?」
魔法使い「だからよ!二つの加護を持つ者なんて聞いた事も無い!」
勇者「……『特別』!」
僧侶「ちょ、ちょっと待って下さい!あの方は……!?」
魔法使い「そう。複数の加護を持つ……ん、でしょうね」
戦士「……そして闇色の瞳。これも……『特別』だな」
僧侶「そ……ん、なの……聞いた事、ない……」
勇者「……もし本当に剣士が魔導国に居て」
勇者「それを後ろ盾とすると……まずいぞ」
戦士「まだ忘れてる事があるぞ」
僧侶「え……?」
戦士「あの剣士と言う男……お前にそっくりだっただろう、勇者」
勇者「!」
勇者「…… ……」
魔法使い「……やっぱり、何れあの街に戻る……必要がある、かしら」
僧侶「のんびり図書館に、とは言っていられないかもしれませんけど、ね」
勇者「……どこかで、船を手に入れて」
戦士「?」
勇者「始まりの国へ戻ろう」
勇者「……騎士団長や国王に話を聞こう。勿論、魔王を倒す事が目的だが」
勇者「だからこそ、人同士で争っていて良いはずがない!」
勇者「…… ……それに、母さんが居る」
僧侶「! 前勇者様の奥様……!」
224: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
魔法使い「貴女が言ってた、あの矛盾も……とけるかも知れないわね」
僧侶「『光と闇の喪失』と『光の誕生』ですね」
戦士「……鍛冶師の村まではまだかかるな」
戦士「少し休んでおこう……船の上では鍛錬も出来ん」スッ
魔法使い「どこ行くのよ」
戦士「食事の用意を頼んでくる」
僧侶「…… ……」グゥ
勇者(腹、鳴ったな)
僧侶「あ……ッ」カァッ
戦士「……すぐ伝えてくる」クス
魔法使い「一緒に行くわ。ワインが飲みたい」
勇者「おい……」
魔法使い「ぐっすり眠りたいのよ。勇者もいる?」
勇者「……ま、良いか。うん。俺にも貰ってきて」
パタン
僧侶「……勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「私……ずっと、貴方の事を考えて居ました」
勇者「え!?」
僧侶「光だから惹かれるのか。貴方だから……なのか」ジッ
勇者「……ッ」ドキッ
僧侶「……世界の謎を知りたい。エルフと言う物を。母を、私を……知りたい」
勇者「…… ……」
僧侶「不純な動機……です。だから、とそれが全てでは無いけれど」
僧侶「貴方と共に行かなければ、と思いました」
勇者「僧侶…… ……」
僧侶「『光と闇の喪失』と『光の誕生』ですね」
戦士「……鍛冶師の村まではまだかかるな」
戦士「少し休んでおこう……船の上では鍛錬も出来ん」スッ
魔法使い「どこ行くのよ」
戦士「食事の用意を頼んでくる」
僧侶「…… ……」グゥ
勇者(腹、鳴ったな)
僧侶「あ……ッ」カァッ
戦士「……すぐ伝えてくる」クス
魔法使い「一緒に行くわ。ワインが飲みたい」
勇者「おい……」
魔法使い「ぐっすり眠りたいのよ。勇者もいる?」
勇者「……ま、良いか。うん。俺にも貰ってきて」
パタン
僧侶「……勇者様」
勇者「ん?」
僧侶「私……ずっと、貴方の事を考えて居ました」
勇者「え!?」
僧侶「光だから惹かれるのか。貴方だから……なのか」ジッ
勇者「……ッ」ドキッ
僧侶「……世界の謎を知りたい。エルフと言う物を。母を、私を……知りたい」
勇者「…… ……」
僧侶「不純な動機……です。だから、とそれが全てでは無いけれど」
僧侶「貴方と共に行かなければ、と思いました」
勇者「僧侶…… ……」
225: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
僧侶「この気持ちが……何なのか、良く解らないのです」
勇者「…… ……」ドキドキ
僧侶「だけど…… ……」
勇者「そ、うりょ……」スッ
僧侶「!」ドキッ
僧侶(ゆ、勇者様の手が、頬に……ッ)
僧侶(……ドキドキする。手のひら、暖かい……)
勇者(柔らかい、頬だ。暖かい……)
勇者(……緊張、する)
勇者「…… ……目、閉じて」
僧侶「は、い…… ……」ソッ
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
『違う!』
勇者「!」
僧侶「!?」
勇者「…… ……え?」
僧侶「あ、あの……?」
勇者(……い、今の声、何だ!?)
僧侶(確かに、聞こえた……!?)
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者(『違う』と…… ……あれは、俺の声!?)
僧侶(『違う』と…… ……今、のは……私の声!?)
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者(何だろう……この……感じ)
僧侶(『苦しくて、切なくて、悲しくて…… ……嬉しい』)
勇者「…… ……」ドキドキ
僧侶「だけど…… ……」
勇者「そ、うりょ……」スッ
僧侶「!」ドキッ
僧侶(ゆ、勇者様の手が、頬に……ッ)
僧侶(……ドキドキする。手のひら、暖かい……)
勇者(柔らかい、頬だ。暖かい……)
勇者(……緊張、する)
勇者「…… ……目、閉じて」
僧侶「は、い…… ……」ソッ
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
『違う!』
勇者「!」
僧侶「!?」
勇者「…… ……え?」
僧侶「あ、あの……?」
勇者(……い、今の声、何だ!?)
僧侶(確かに、聞こえた……!?)
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者(『違う』と…… ……あれは、俺の声!?)
僧侶(『違う』と…… ……今、のは……私の声!?)
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者(何だろう……この……感じ)
僧侶(『苦しくて、切なくて、悲しくて…… ……嬉しい』)
226: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
カチャ
魔法使い「お待たせ…… ……何やってんの、アンタ達」
戦士「何でそんな所突っ立ってんだ?」
勇者「あ!いや、その!?」
勇者「……あ、ありがとう!魔法使い!」グイッ
魔法使い「あ、ちょっと!?」
勇者「ゲホッゴホッ」
魔法使い「ば、馬鹿ね!ワイン一気飲みしてなにやってんの!?」
戦士「…… ……どうしたんだ、勇者は?」
僧侶「あ、いえ……考えすぎて、あの……」
勇者「……ッ お前、こそ、な……ん、だよ、その……ッ」
勇者「ケーキの山、は……ッ」
僧侶「……美味しそうです」
魔法使い「食事は運んでくれるそうよ……ちょっと、大丈夫?」
勇者「……お、おう……ッ」
勇者「お、お水……貰って来る……」フラフラ
カチャ、パタン
勇者(……ッ)ゲホッ
勇者(うわ、クラクラする……よく考えたら、俺、酒なんて……ッ)
勇者(…… ……)フゥ
勇者(さっきのは、何だったんだ……確かに、俺の声だった)
勇者(『違う』 ……何が、違う?)
勇者(……何なんだよ、この気持ち……胸が、熱い)
勇者(あ……酒の所為か。否…… ……それだけじゃ無い)
勇者(…… ……な、ん……だよ)フラフラ
……
………
…………
魔法使い「お待たせ…… ……何やってんの、アンタ達」
戦士「何でそんな所突っ立ってんだ?」
勇者「あ!いや、その!?」
勇者「……あ、ありがとう!魔法使い!」グイッ
魔法使い「あ、ちょっと!?」
勇者「ゲホッゴホッ」
魔法使い「ば、馬鹿ね!ワイン一気飲みしてなにやってんの!?」
戦士「…… ……どうしたんだ、勇者は?」
僧侶「あ、いえ……考えすぎて、あの……」
勇者「……ッ お前、こそ、な……ん、だよ、その……ッ」
勇者「ケーキの山、は……ッ」
僧侶「……美味しそうです」
魔法使い「食事は運んでくれるそうよ……ちょっと、大丈夫?」
勇者「……お、おう……ッ」
勇者「お、お水……貰って来る……」フラフラ
カチャ、パタン
勇者(……ッ)ゲホッ
勇者(うわ、クラクラする……よく考えたら、俺、酒なんて……ッ)
勇者(…… ……)フゥ
勇者(さっきのは、何だったんだ……確かに、俺の声だった)
勇者(『違う』 ……何が、違う?)
勇者(……何なんだよ、この気持ち……胸が、熱い)
勇者(あ……酒の所為か。否…… ……それだけじゃ無い)
勇者(…… ……な、ん……だよ)フラフラ
……
………
…………
228: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
僧侶(『違う』 ……確かに、確かにあれは私の声だった)
僧侶(……何が、違う……の?)
僧侶(…… ……何なの、この……気持ち……)
魔法使い「僧侶?どうしたのよ」ゴク
戦士「気にしなくても大丈夫だ……すぐ戻って来るだろう」
僧侶「あ、は……はい」
魔法使い「……ッ」ゲホ、ゴホッ
戦士「何なんだ、お前まで…… ……」
魔法使い「……勇者、私のワイン飲んじゃったのよね……そういえば」
僧侶「それは何ですか?」
戦士「あいつが飲めると思わないからって、貰ったのはお前だろう」
魔法使い「ジュースみたいなもんよ、これ……甘ッ」
戦士「我慢しろ」
魔法使い「……もう」ハァ
コンコン
僧侶「開いてますよ?」
船員「失礼します。お食事をお持ちしました」カチャ
戦士「……あいつは?」
カチャカチャ
僧侶「…… ……どこ行かれたんでしょう、ね」
船員「では、ごゆっくりどうぞ」
パタン
戦士「大丈夫か……」
魔法使い「良いわ、見てくる。ついでにワイン貰ってこよう」
僧侶「飲み過ぎないで下さいよ?」
カチャ、パタン
僧侶(……何が、違う……の?)
僧侶(…… ……何なの、この……気持ち……)
魔法使い「僧侶?どうしたのよ」ゴク
戦士「気にしなくても大丈夫だ……すぐ戻って来るだろう」
僧侶「あ、は……はい」
魔法使い「……ッ」ゲホ、ゴホッ
戦士「何なんだ、お前まで…… ……」
魔法使い「……勇者、私のワイン飲んじゃったのよね……そういえば」
僧侶「それは何ですか?」
戦士「あいつが飲めると思わないからって、貰ったのはお前だろう」
魔法使い「ジュースみたいなもんよ、これ……甘ッ」
戦士「我慢しろ」
魔法使い「……もう」ハァ
コンコン
僧侶「開いてますよ?」
船員「失礼します。お食事をお持ちしました」カチャ
戦士「……あいつは?」
カチャカチャ
僧侶「…… ……どこ行かれたんでしょう、ね」
船員「では、ごゆっくりどうぞ」
パタン
戦士「大丈夫か……」
魔法使い「良いわ、見てくる。ついでにワイン貰ってこよう」
僧侶「飲み過ぎないで下さいよ?」
カチャ、パタン
229: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
戦士「……で、何があった?」
僧侶「え!?」
戦士「気付いてないと思うのか」ハァ
僧侶「……あ、いえ……」カァッ
戦士「……全く」ハァ
僧侶「べ、別に何もありません!本当に……!」
戦士「そんな紅い顔して何を言う……」
僧侶「……本当にそんなんじゃ無いんですよ」
戦士「……まあ、それならそれで良い、が」
僧侶「驚き、ます」
戦士「ん?」
僧侶「……あの方は、本当に……全き光、です」
戦士「……『勇者』だからな」
僧侶「確かに、惹かれます……ですけど」
戦士「けど?」
僧侶「……人間は『光と闇の獣』だと、神父様が仰っていました」
戦士「何だ、それは」
僧侶「神父様が昔読まれた……神話?に、あった一節だと言うのです」
戦士「神話……」
僧侶「創世記の物語、と言うのでしょうか」
僧侶「それらしき本が、港街の教会にもありました」
僧侶「……御伽噺、ですけどね」
戦士「御伽噺、と言うと……『昔々ある所に』って奴か」
僧侶「まあ、そうです」クス
僧侶「勇者が、魔王を倒すお話でしたよ」
戦士「……教会に似つかわしいのかそうで無いのかわからんな」
僧侶「え!?」
戦士「気付いてないと思うのか」ハァ
僧侶「……あ、いえ……」カァッ
戦士「……全く」ハァ
僧侶「べ、別に何もありません!本当に……!」
戦士「そんな紅い顔して何を言う……」
僧侶「……本当にそんなんじゃ無いんですよ」
戦士「……まあ、それならそれで良い、が」
僧侶「驚き、ます」
戦士「ん?」
僧侶「……あの方は、本当に……全き光、です」
戦士「……『勇者』だからな」
僧侶「確かに、惹かれます……ですけど」
戦士「けど?」
僧侶「……人間は『光と闇の獣』だと、神父様が仰っていました」
戦士「何だ、それは」
僧侶「神父様が昔読まれた……神話?に、あった一節だと言うのです」
戦士「神話……」
僧侶「創世記の物語、と言うのでしょうか」
僧侶「それらしき本が、港街の教会にもありました」
僧侶「……御伽噺、ですけどね」
戦士「御伽噺、と言うと……『昔々ある所に』って奴か」
僧侶「まあ、そうです」クス
僧侶「勇者が、魔王を倒すお話でしたよ」
戦士「……教会に似つかわしいのかそうで無いのかわからんな」
230: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
僧侶「前後編だったんです。前編の頭に、そういう……古詩の様な物が」
僧侶「ありました……後編の最後にも」
戦士「……どういう物だったんだ?」
僧侶「魔王が産まれ、勇者も産まれた」
僧侶「勇者は仲間と旅立ち、仲間を失い、魔王を倒す」
僧侶「……そして、自分も居なくなる、と言うだけの物です」
戦士「…… ……全員氏ぬ、話なのか」
僧侶「その古詩がね、最初と最後で……反対に繋がっていくんですよ」
戦士「……ん、ん?」
僧侶「あ、えーっと……要するに、『表裏一体』であると」
戦士「表裏一体」
僧侶「はい。勇者と魔王を失い、残された者は血を交えながら」
僧侶「最後は『命』になるんです」
僧侶「だから……『人』イコール『命』は『光と闇の獣』なんです」
戦士「……さっぱりわからん」
僧侶「…… ……」クスクス
僧侶「人……命、と言うのは」
僧侶「器が闇、中身が光で構成されている、と書かれてありました」
僧侶「それが混じり合って、成り立つもの。だから、光と闇の獣」
戦士「獣か……確かにな」
戦士「……こんな時だと言うのに、人間同士で……」
僧侶「…… ……」
戦士「知能を持たない獣は確かに欲望に忠実だ」
戦士「だが、故に純粋なんだろう。なのに、人間は……」
僧侶「……エルフは、どんな生き物なんでしょうね」
戦士「お前は生きた証、なのだろう?」
僧侶「でもエルフそのものを知りません。見た目は変わらないのかも知れませんが」
僧侶「…… ……」
戦士「美しい顔をしている」
僧侶「え……」ドキッ
戦士「器が闇と聞かされても、説得力が無いな」クス
僧侶(……私、節操ないなぁ……)
僧侶「ありました……後編の最後にも」
戦士「……どういう物だったんだ?」
僧侶「魔王が産まれ、勇者も産まれた」
僧侶「勇者は仲間と旅立ち、仲間を失い、魔王を倒す」
僧侶「……そして、自分も居なくなる、と言うだけの物です」
戦士「…… ……全員氏ぬ、話なのか」
僧侶「その古詩がね、最初と最後で……反対に繋がっていくんですよ」
戦士「……ん、ん?」
僧侶「あ、えーっと……要するに、『表裏一体』であると」
戦士「表裏一体」
僧侶「はい。勇者と魔王を失い、残された者は血を交えながら」
僧侶「最後は『命』になるんです」
僧侶「だから……『人』イコール『命』は『光と闇の獣』なんです」
戦士「……さっぱりわからん」
僧侶「…… ……」クスクス
僧侶「人……命、と言うのは」
僧侶「器が闇、中身が光で構成されている、と書かれてありました」
僧侶「それが混じり合って、成り立つもの。だから、光と闇の獣」
戦士「獣か……確かにな」
戦士「……こんな時だと言うのに、人間同士で……」
僧侶「…… ……」
戦士「知能を持たない獣は確かに欲望に忠実だ」
戦士「だが、故に純粋なんだろう。なのに、人間は……」
僧侶「……エルフは、どんな生き物なんでしょうね」
戦士「お前は生きた証、なのだろう?」
僧侶「でもエルフそのものを知りません。見た目は変わらないのかも知れませんが」
僧侶「…… ……」
戦士「美しい顔をしている」
僧侶「え……」ドキッ
戦士「器が闇と聞かされても、説得力が無いな」クス
僧侶(……私、節操ないなぁ……)
231: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
僧侶(こんなにも勇者様に……光に、惹かれると言うのに)
僧侶(……そういえば、森の中で見た戦士さんの笑顔)
僧侶(柔らかく笑うあの表情は、とても素敵だった)
僧侶(どこか……暖かくて、懐かしい様な)トクン
僧侶(あれ……? ……喉が、苦しい)
戦士「どうした?」
僧侶「あ、いえ……その、恥ずかしいです」
戦士「嘘じゃ無い」
僧侶「あ、あ、あんまり、見ないで下さい……ッ」フイッ
僧侶(ドキドキする……の、に。厭じゃない)
僧侶(勇者様の傍に居る時は……否。今も、苦しい)
僧侶(……だけど…… ……悲しく、ない)
戦士「…… ……僧侶、こっちを見ろ」
僧侶「む、無理です……ッ」
戦士「……」スッグイッ
僧侶「きゃッ!?」
戦士(…… ……魔法使いに触れた時と、違う)
戦士「……僧侶」
僧侶「は、ははははは、はい!?」
戦士(確かに、あの時は胸が苦しかった。否、しかし……)
戦士(何だろう。どこか……懐かしい様な……この、感じ)
戦士「どこかで……逢った事がある……のか?」
僧侶「え……?」
戦士「あ……いや……ッ ……すまん」スッ
僧侶「……び、吃驚しました」
戦士「わ……悪かった」フイッ
戦士「……エルフと言うのは、皆……お前の様に美しいのかもしれないな」
僧侶「え、あ、あの……ッ そんな……ッ」
戦士(何を言ってるんだ、俺は……エルフ、等。僧侶以外に……知らんぞ)
戦士(……何なんだ、これは)
僧侶「ゆ、勇者様、と……魔法使いさん、遅いですよね」
戦士「そうだな……先に…… ……」
僧侶「え?」
僧侶(……そういえば、森の中で見た戦士さんの笑顔)
僧侶(柔らかく笑うあの表情は、とても素敵だった)
僧侶(どこか……暖かくて、懐かしい様な)トクン
僧侶(あれ……? ……喉が、苦しい)
戦士「どうした?」
僧侶「あ、いえ……その、恥ずかしいです」
戦士「嘘じゃ無い」
僧侶「あ、あ、あんまり、見ないで下さい……ッ」フイッ
僧侶(ドキドキする……の、に。厭じゃない)
僧侶(勇者様の傍に居る時は……否。今も、苦しい)
僧侶(……だけど…… ……悲しく、ない)
戦士「…… ……僧侶、こっちを見ろ」
僧侶「む、無理です……ッ」
戦士「……」スッグイッ
僧侶「きゃッ!?」
戦士(…… ……魔法使いに触れた時と、違う)
戦士「……僧侶」
僧侶「は、ははははは、はい!?」
戦士(確かに、あの時は胸が苦しかった。否、しかし……)
戦士(何だろう。どこか……懐かしい様な……この、感じ)
戦士「どこかで……逢った事がある……のか?」
僧侶「え……?」
戦士「あ……いや……ッ ……すまん」スッ
僧侶「……び、吃驚しました」
戦士「わ……悪かった」フイッ
戦士「……エルフと言うのは、皆……お前の様に美しいのかもしれないな」
僧侶「え、あ、あの……ッ そんな……ッ」
戦士(何を言ってるんだ、俺は……エルフ、等。僧侶以外に……知らんぞ)
戦士(……何なんだ、これは)
僧侶「ゆ、勇者様、と……魔法使いさん、遅いですよね」
戦士「そうだな……先に…… ……」
僧侶「え?」
232: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
戦士(休もうか、って……一部屋しか取れなかった、んだ)
戦士(…… ……僧侶と、二人で寝る、と言うのは……ッ)カァッ
僧侶「戦士、さん?」
戦士(しかし……部屋に一人にするのは、避けた方が……ッ)
僧侶「……あの、戦士さん、どうしました?」
戦士「さ……ッ」
僧侶「?」
戦士「さっきの、話の続きを……聞かせてくれ」
僧侶「え? ……あ、えっと……『光と闇の獣』?」
戦士「ああ」
戦士(理解出来るとは思えん、が……どうしようも無いだろう、こんなもの……!)
……
………
…………
魔法使い「……何やってるのよ、アンタは」
勇者「あ……魔法使い」
魔法使い「戻って来ないから、心配するでしょ」
勇者「……あんまり一人でフラフラしない方が良いぞ。女の子なんだから」
魔法使い「だから此処に居るんじゃないの」
勇者「嘘吐け。酒飲みに来たんだろ」
魔法使い「…… ……それもあるけど。隣良いわよね」
勇者「ああ…… ……」
戦士(…… ……僧侶と、二人で寝る、と言うのは……ッ)カァッ
僧侶「戦士、さん?」
戦士(しかし……部屋に一人にするのは、避けた方が……ッ)
僧侶「……あの、戦士さん、どうしました?」
戦士「さ……ッ」
僧侶「?」
戦士「さっきの、話の続きを……聞かせてくれ」
僧侶「え? ……あ、えっと……『光と闇の獣』?」
戦士「ああ」
戦士(理解出来るとは思えん、が……どうしようも無いだろう、こんなもの……!)
……
………
…………
魔法使い「……何やってるのよ、アンタは」
勇者「あ……魔法使い」
魔法使い「戻って来ないから、心配するでしょ」
勇者「……あんまり一人でフラフラしない方が良いぞ。女の子なんだから」
魔法使い「だから此処に居るんじゃないの」
勇者「嘘吐け。酒飲みに来たんだろ」
魔法使い「…… ……それもあるけど。隣良いわよね」
勇者「ああ…… ……」
233: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
魔法使い「……なんて顔、してるのよ」
勇者「え?」
魔法使い「……思い詰めた顔、してる」
勇者「……御免」
魔法使い「別に謝る必要は無いでしょ」
勇者「違う。その……魔導国の事とかで、さ」
勇者「……魔法使いも、複雑だろうに」
魔法使い「それこそ……謝る必要なんて無いわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「大丈夫よ。そりゃ……勿論、複雑だけど」
魔法使い「勇者達が……居るもの」
勇者「俺達?」
魔法使い「そうよ。仲間……でしょ?」
勇者「……ああ」
魔法使い「ずっと……お父様もお母様も居たけど」
魔法使い「お爺様もそうね。メイドも。だけど……」
魔法使い「私……寂しかったわ。褒めて欲しい、とか」
魔法使い「抱きしめて欲しい、とか……」
勇者「…… ……」
魔法使い「剣士に助けられて、私に優れた加護が無い事をごまかせた時」
魔法使い「お父様は、抱きしめてくれた。でもね……」
魔法使い「……少しも嬉しくなかったの。寧ろ悲しかった」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「今なら解るわ」
魔法使い「あの人達の目に映ってたのは『優れた加護を持つあの人達の娘』で」
魔法使い「……『私』じゃないのよ」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「え?」
魔法使い「……思い詰めた顔、してる」
勇者「……御免」
魔法使い「別に謝る必要は無いでしょ」
勇者「違う。その……魔導国の事とかで、さ」
勇者「……魔法使いも、複雑だろうに」
魔法使い「それこそ……謝る必要なんて無いわ」
勇者「…… ……」
魔法使い「大丈夫よ。そりゃ……勿論、複雑だけど」
魔法使い「勇者達が……居るもの」
勇者「俺達?」
魔法使い「そうよ。仲間……でしょ?」
勇者「……ああ」
魔法使い「ずっと……お父様もお母様も居たけど」
魔法使い「お爺様もそうね。メイドも。だけど……」
魔法使い「私……寂しかったわ。褒めて欲しい、とか」
魔法使い「抱きしめて欲しい、とか……」
勇者「…… ……」
魔法使い「剣士に助けられて、私に優れた加護が無い事をごまかせた時」
魔法使い「お父様は、抱きしめてくれた。でもね……」
魔法使い「……少しも嬉しくなかったの。寧ろ悲しかった」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「今なら解るわ」
魔法使い「あの人達の目に映ってたのは『優れた加護を持つあの人達の娘』で」
魔法使い「……『私』じゃないのよ」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
234: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
魔法使い「アンタ、言ってたでしょ」
魔法使い「『俺は確かに『勇者』だけど、俺は俺だ』って」
勇者「あ?ああ」
魔法使い「……私は私。それで良いんだなって」
魔法使い「優れた加護とか……そんなのに捕らわれずに、さ」
魔法使い「仲間って言ってくれて、嬉しかったのよ」ニコ
勇者「……ッ」ドキッ
勇者(酔ってるからか? ……俺、節操なさ過ぎだろ……!)
魔法使い「ありがとう……選んでくれて」
勇者「……直感、だ」
魔法使い「え?」
勇者「あの……登録所の事務員にも言われたんだ。直感で良いって」
勇者「それは……一番真実に近いかもしれない、みたいな事をさ」
魔法使い「……真実?」
勇者「うん」
魔法使い「…… ……」
勇者「さっき言ってただろう?もしお前にさ、優れた加護があったら」
魔法使い「……ええ。私、きっとここに居なかった」
勇者「戦士だって、騎士団長様の息子じゃ無かったら」
勇者「勿論、居たかも知れない。居なかったかも知れない」
魔法使い「……『もしも』なんて……あり得ないわよね」
勇者「うん。あったとしても……やっぱりそれは」
勇者「『俺達』じゃ無いよな」
魔法使い「そう、ね……」フフ
勇者「何だよ」
魔法使い「『俺は確かに『勇者』だけど、俺は俺だ』って」
勇者「あ?ああ」
魔法使い「……私は私。それで良いんだなって」
魔法使い「優れた加護とか……そんなのに捕らわれずに、さ」
魔法使い「仲間って言ってくれて、嬉しかったのよ」ニコ
勇者「……ッ」ドキッ
勇者(酔ってるからか? ……俺、節操なさ過ぎだろ……!)
魔法使い「ありがとう……選んでくれて」
勇者「……直感、だ」
魔法使い「え?」
勇者「あの……登録所の事務員にも言われたんだ。直感で良いって」
勇者「それは……一番真実に近いかもしれない、みたいな事をさ」
魔法使い「……真実?」
勇者「うん」
魔法使い「…… ……」
勇者「さっき言ってただろう?もしお前にさ、優れた加護があったら」
魔法使い「……ええ。私、きっとここに居なかった」
勇者「戦士だって、騎士団長様の息子じゃ無かったら」
勇者「勿論、居たかも知れない。居なかったかも知れない」
魔法使い「……『もしも』なんて……あり得ないわよね」
勇者「うん。あったとしても……やっぱりそれは」
勇者「『俺達』じゃ無いよな」
魔法使い「そう、ね……」フフ
勇者「何だよ」
235: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
魔法使い「……いえ。あんなに、僧侶に嫉妬してたのが馬鹿みたいだなって」
勇者「……そう、か」
魔法使い「さっき……僧侶が、言ってたこと」
勇者「え?」
魔法使い「私は……いえ、私も。あれが真実に近いんだろうなと思うわ」
勇者「私……も?」
魔法使い「多分、戦士も……貴方も」
魔法使い「そんなに長い時間じゃ無いけど、僧侶と一緒に居て……」
魔法使い「僧侶の、感じる力って……推測だけど」
魔法使い「それをそれ、これをこれ、って……そのまま、文字通り、形通りに」
魔法使い「すとん、って受け止める力、だと思うの」
勇者「……うん」
魔法使い「わかりにくい、かな」
勇者「いや……寧ろ、それ以外の表現が思いつかないな」
魔法使い「うん……だから……」
勇者「真実に近い、か」
魔法使い「そう……でも、所詮近い、だけ。言葉は悪いのだけど」
勇者「ああ……真実そのものは、俺たちの目で確かめるべきだ、だろ?」
魔法使い「……確かめたい、かしらね」
勇者「確かめなくちゃいけない。そうでないと……『見失う』」
魔法使い「見失う……」
勇者「そうだ。俺は……自分を、勇者である意味を見失う」
魔法使い「……『強さ』ね」
勇者「え?」
魔法使い「森の中で、アンタが私に言ったじゃないの」
勇者「……そう、か」
魔法使い「さっき……僧侶が、言ってたこと」
勇者「え?」
魔法使い「私は……いえ、私も。あれが真実に近いんだろうなと思うわ」
勇者「私……も?」
魔法使い「多分、戦士も……貴方も」
魔法使い「そんなに長い時間じゃ無いけど、僧侶と一緒に居て……」
魔法使い「僧侶の、感じる力って……推測だけど」
魔法使い「それをそれ、これをこれ、って……そのまま、文字通り、形通りに」
魔法使い「すとん、って受け止める力、だと思うの」
勇者「……うん」
魔法使い「わかりにくい、かな」
勇者「いや……寧ろ、それ以外の表現が思いつかないな」
魔法使い「うん……だから……」
勇者「真実に近い、か」
魔法使い「そう……でも、所詮近い、だけ。言葉は悪いのだけど」
勇者「ああ……真実そのものは、俺たちの目で確かめるべきだ、だろ?」
魔法使い「……確かめたい、かしらね」
勇者「確かめなくちゃいけない。そうでないと……『見失う』」
魔法使い「見失う……」
勇者「そうだ。俺は……自分を、勇者である意味を見失う」
魔法使い「……『強さ』ね」
勇者「え?」
魔法使い「森の中で、アンタが私に言ったじゃないの」
236: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
魔法使い「『認める強さ』」
勇者「……御免、なんか……あの時、偉そうに」
魔法使い「何で謝るの、馬鹿ね」
勇者「俺も……認められなかった。否、今もかな」
勇者「……どうしても気になるんだ」
魔法使い「『剣士』ね」
勇者「ああ……まるで『表と裏』だ」
勇者「『光と闇』」
魔法使い「…… ……」
勇者「……船を手に入れて、魔導国へ行こう」
魔法使い「罠かもしれないわよ」
勇者「尚更だ…… ……俺は『勇者』だ」
勇者「魔王を倒すだけが終わりじゃ無い」
勇者「『世界を平和にする』事は……それだけじゃないだろう?」
魔法使い「……ええ。そうね」
勇者「良し……部屋に戻ろう。寝て起きたら……鍛冶師の村だ」
勇者「……心配、してくれてたんだろ。ごめんな、魔法使い」
魔法使い「当たり前、でしょ……仲間なんだから」
勇者「見失うわけにはいかないな。俺自身の事も……お前の事も」
魔法使い「え……」ドキ
勇者「大事な仲間だからな」
魔法使い「あ、ええ……そうね」
魔法使い(……厭ね、自分でも言った事、じゃないの……)ドキドキ
魔法使い(何だろう……私……喜んでる、のかしら)
魔法使い(単純ね……)ハァ
勇者「なあ、魔法使い」
魔法使い「……何よ」
勇者「……」ジッ
魔法使い「な、によ……?」
魔法使い(……真っ直ぐな金の瞳。厭だわ、この間より緊張する)
魔法使い(色の所為? ……戦士とは、もっと……近かったのに)
魔法使い(……胸が、苦しい。だけど…… ……不思議な感覚)
魔法使い(どこか、懐かしい様な……)
勇者「……手、繋いでも良い?」
魔法使い「え!? ……い、良いけど……どうしたのよ」ドキドキ
勇者「……立てない」ハァ
魔法使い「……はぁ!?」
……
………
…………
勇者「……御免、なんか……あの時、偉そうに」
魔法使い「何で謝るの、馬鹿ね」
勇者「俺も……認められなかった。否、今もかな」
勇者「……どうしても気になるんだ」
魔法使い「『剣士』ね」
勇者「ああ……まるで『表と裏』だ」
勇者「『光と闇』」
魔法使い「…… ……」
勇者「……船を手に入れて、魔導国へ行こう」
魔法使い「罠かもしれないわよ」
勇者「尚更だ…… ……俺は『勇者』だ」
勇者「魔王を倒すだけが終わりじゃ無い」
勇者「『世界を平和にする』事は……それだけじゃないだろう?」
魔法使い「……ええ。そうね」
勇者「良し……部屋に戻ろう。寝て起きたら……鍛冶師の村だ」
勇者「……心配、してくれてたんだろ。ごめんな、魔法使い」
魔法使い「当たり前、でしょ……仲間なんだから」
勇者「見失うわけにはいかないな。俺自身の事も……お前の事も」
魔法使い「え……」ドキ
勇者「大事な仲間だからな」
魔法使い「あ、ええ……そうね」
魔法使い(……厭ね、自分でも言った事、じゃないの……)ドキドキ
魔法使い(何だろう……私……喜んでる、のかしら)
魔法使い(単純ね……)ハァ
勇者「なあ、魔法使い」
魔法使い「……何よ」
勇者「……」ジッ
魔法使い「な、によ……?」
魔法使い(……真っ直ぐな金の瞳。厭だわ、この間より緊張する)
魔法使い(色の所為? ……戦士とは、もっと……近かったのに)
魔法使い(……胸が、苦しい。だけど…… ……不思議な感覚)
魔法使い(どこか、懐かしい様な……)
勇者「……手、繋いでも良い?」
魔法使い「え!? ……い、良いけど……どうしたのよ」ドキドキ
勇者「……立てない」ハァ
魔法使い「……はぁ!?」
……
………
…………
237: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
爺「おお、おお!良く来たな!チビ!」ガシッ
チビ「じいちゃん!久しぶりだなぁ!」ギュッ
船長「そんな長い事離れてないと思うんだけどなぁ」
男「……おい親父。またガラクタ増えてネェか」
爺「ガラクタじゃ無い!お前は本当に、審美眼の無い奴だな!」
爺「……俺の息子とは思えん」ハァ
チビ「相変わらず綺麗だね、この女の人の像」
爺「そうだろう、そうだろう!手入れも欠かさんからな!」
船長「……義父さんが掃除してんの!?」
爺「……街の人は誰も、やってくれんからな」
男「わかりやすく項垂れるな、いい歳こいて……」
チビ「俺も花に水やるの手伝うよ!」
チビ「また、このエルフの話聞かせて!」
爺「おう!良いぞ!ちょっと待ってろよ、準備してくるからな」スタスタ
船長「……えらいご機嫌だな」
男「まあ、そりゃ……孫だしな」
船長「しっかしお前も好きだねぇ……この糞暑い空の下で……」
男「あー……船長、酒飲むか?」
船長「おう」
男「露店で買ってくる。チビと此処に居ろよ?」スタスタ
チビ「母さん、また酒飲むのかよ」
船長「当分船も出さネェし、良いだろ別に」
船長「お前もお茶か何かこまめに飲めよ。ぶっ倒れるぞ」
チビ「大丈夫だよ……暑いならじいちゃんちの中入ってりゃ良いのに」
船長「見張っとかないと何するかわかんねぇだろあの爺は」
船長「……すぐに船から何か持ちだそうとしやがるからな」
チビ「じいちゃん!久しぶりだなぁ!」ギュッ
船長「そんな長い事離れてないと思うんだけどなぁ」
男「……おい親父。またガラクタ増えてネェか」
爺「ガラクタじゃ無い!お前は本当に、審美眼の無い奴だな!」
爺「……俺の息子とは思えん」ハァ
チビ「相変わらず綺麗だね、この女の人の像」
爺「そうだろう、そうだろう!手入れも欠かさんからな!」
船長「……義父さんが掃除してんの!?」
爺「……街の人は誰も、やってくれんからな」
男「わかりやすく項垂れるな、いい歳こいて……」
チビ「俺も花に水やるの手伝うよ!」
チビ「また、このエルフの話聞かせて!」
爺「おう!良いぞ!ちょっと待ってろよ、準備してくるからな」スタスタ
船長「……えらいご機嫌だな」
男「まあ、そりゃ……孫だしな」
船長「しっかしお前も好きだねぇ……この糞暑い空の下で……」
男「あー……船長、酒飲むか?」
船長「おう」
男「露店で買ってくる。チビと此処に居ろよ?」スタスタ
チビ「母さん、また酒飲むのかよ」
船長「当分船も出さネェし、良いだろ別に」
船長「お前もお茶か何かこまめに飲めよ。ぶっ倒れるぞ」
チビ「大丈夫だよ……暑いならじいちゃんちの中入ってりゃ良いのに」
船長「見張っとかないと何するかわかんねぇだろあの爺は」
船長「……すぐに船から何か持ちだそうとしやがるからな」
238: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
チビ「……船の奴って、海のおじいちゃんが揃えたんだよな?」
船長「あ?ああ……あの親父もああいうの好きだったからなぁ」
船長「生きてりゃ、義父さんと気が合ったかもしれねぇが……」
チビ「でも、じいちゃんより多分、センス良かったよね」
船長「……お前、んなさらっと……」
チビ「このエルフの像は凄いと思うけど」
チビ「じいちゃん、他はなぁ…… ……」
船長「不憫だなぁ……」
スタスタ
男「ほらよ」
船長「お、サンキュ」
男「親父はまだか?」
船長「張り切って家の中物色してんじゃネェの」
チビ「父さんはこう言うの興味ないの?」
男「ガキの頃からガラクタに囲まれて生活してみろよ、お前……」
船長「男もこういうセンスねぇよな」クス
男「いやぁ……初めて船長の船に乗った時はびびったな」
男「海賊船の筈が、中はお城みたいだったもんな……」
船長「……古参の海賊に聞いたら、アタシが産まれた少し後ぐらいから」
船長「取り憑かれたみたいに色々改装したらしいからな」
男「……まあ、だから魔導の街の奴らも目をつけたんだろうけどな」
船長「まさか海賊船とは思わないだろうしな」
チビ「この花壇もじいちゃんが作ったんだろ?」
男「花は氏んだお袋が好きだったからな」
船長「……ま。何か生き甲斐やり甲斐、あるのは良いこった」
チビ「あ、じいちゃん、早く早く!」
タタタ
男「……どうすんだかな」
船長「何がだ?」
男「チビだよ……このまま行けば、次の船長はあいつだろ」
船長「……アタシはまだまだ現役だぜ」
男「そりゃ解ってる。解ってるが……」
船長「あいつが選ぶことさ」
船長「……義父さん、反対なのか?」
船長「あ?ああ……あの親父もああいうの好きだったからなぁ」
船長「生きてりゃ、義父さんと気が合ったかもしれねぇが……」
チビ「でも、じいちゃんより多分、センス良かったよね」
船長「……お前、んなさらっと……」
チビ「このエルフの像は凄いと思うけど」
チビ「じいちゃん、他はなぁ…… ……」
船長「不憫だなぁ……」
スタスタ
男「ほらよ」
船長「お、サンキュ」
男「親父はまだか?」
船長「張り切って家の中物色してんじゃネェの」
チビ「父さんはこう言うの興味ないの?」
男「ガキの頃からガラクタに囲まれて生活してみろよ、お前……」
船長「男もこういうセンスねぇよな」クス
男「いやぁ……初めて船長の船に乗った時はびびったな」
男「海賊船の筈が、中はお城みたいだったもんな……」
船長「……古参の海賊に聞いたら、アタシが産まれた少し後ぐらいから」
船長「取り憑かれたみたいに色々改装したらしいからな」
男「……まあ、だから魔導の街の奴らも目をつけたんだろうけどな」
船長「まさか海賊船とは思わないだろうしな」
チビ「この花壇もじいちゃんが作ったんだろ?」
男「花は氏んだお袋が好きだったからな」
船長「……ま。何か生き甲斐やり甲斐、あるのは良いこった」
チビ「あ、じいちゃん、早く早く!」
タタタ
男「……どうすんだかな」
船長「何がだ?」
男「チビだよ……このまま行けば、次の船長はあいつだろ」
船長「……アタシはまだまだ現役だぜ」
男「そりゃ解ってる。解ってるが……」
船長「あいつが選ぶことさ」
船長「……義父さん、反対なのか?」
239: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
男「そうだとすりゃ、お前と結婚するってなった時に」
男「ぶち切れてるだろうよ」
船長「……お前が海賊になるって行った時の間違いだろ」
男「ああ……そうか。そうだな」ハハッ
船長「アタシにも、調度品買ってこい、だもんなぁ」
男「毎度チビが選んでる奴喜んでるんだし」
男「良いんじゃねぇの?お前さんよりセンス良いしな、あいつ」
船長「アタシは母親似なんだろ」
男「チビも……お前に似れば良かったのになぁ」
船長「こればっかりはなぁ」
男「俺ともちょっと違うもんな……氏んだ親父さんに似てる、んだろ?」
船長「外見も中身もな」
男「……お前のお袋さん、美人で良かったなぁ」
船長「お前ね、自分の息子だろうが……」
男「男は顔じゃネェよ」
男「じゃ無きゃ、俺だってお前に惚れられたりしねぇだろ」ハッハッハ
船長「…… ……笑い事かよ」
爺「このエルフの娘の像はな、どこかの国の王様だかなんだかが」
爺「その娘に惚れて作ったって言われてるんだ」
チビ「『叶わぬ恋』って奴なんだよね!」
爺「なんせ人間とエルフだからな!」
船長「……まぁたホラ話が始まった」ハァ
男「案外真実かもしれねぇぞ?」
船長「エルフなんて居るのかね」
男「居たんだろ?紫の瞳の男とやらが」
船長「……ありゃ、エルフじゃねぇだろ」
男「ぶち切れてるだろうよ」
船長「……お前が海賊になるって行った時の間違いだろ」
男「ああ……そうか。そうだな」ハハッ
船長「アタシにも、調度品買ってこい、だもんなぁ」
男「毎度チビが選んでる奴喜んでるんだし」
男「良いんじゃねぇの?お前さんよりセンス良いしな、あいつ」
船長「アタシは母親似なんだろ」
男「チビも……お前に似れば良かったのになぁ」
船長「こればっかりはなぁ」
男「俺ともちょっと違うもんな……氏んだ親父さんに似てる、んだろ?」
船長「外見も中身もな」
男「……お前のお袋さん、美人で良かったなぁ」
船長「お前ね、自分の息子だろうが……」
男「男は顔じゃネェよ」
男「じゃ無きゃ、俺だってお前に惚れられたりしねぇだろ」ハッハッハ
船長「…… ……笑い事かよ」
爺「このエルフの娘の像はな、どこかの国の王様だかなんだかが」
爺「その娘に惚れて作ったって言われてるんだ」
チビ「『叶わぬ恋』って奴なんだよね!」
爺「なんせ人間とエルフだからな!」
船長「……まぁたホラ話が始まった」ハァ
男「案外真実かもしれねぇぞ?」
船長「エルフなんて居るのかね」
男「居たんだろ?紫の瞳の男とやらが」
船長「……ありゃ、エルフじゃねぇだろ」
240: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
男「魔族なんてモンも生きてるんだ」
男「エルフだって、想像上の生き物じゃ無いかもしれネェだろ」
船長「男ってのはロマンチストなんだろ?」
男「さぁな」
船長「……魔族、だったんだろうかな、あいつ」ボソ
男「見た目……変わらなかった、んだろ」
船長「……さあな。随分昔の話だ」
船長「今逢ったって、わかりゃしねぇさ」
男「船長の事が、か」
船長「そりゃそうだろ…… ……アタシは人間だ」
船長「老いない理由が無い」
船長(老いないあいつと……生きる世界が、違う)
船長(あの日だけ、と誓ったんだ)
船長(…… ……忘れはしない。だが……思い出すのも、やめないとな)
船長(だが……あいつは覚えて居てくれた)
船長(……アタシを、忘れていなかった)
男「あっつい、ナァ……」
船長「……ああ」
船長(それで……充分だ)
チビ「母さん!俺も何時か、エルフに会えるかなぁ!?」
船長「しらねぇよ…… ……まあ、海を渡ってりゃ会えるかもなぁ」
船長(平和な海を渡りたかった…… ……約束、守ってくれるかな、剣士)
船長(アタシは無理でも……チビ。お前が、叶えてくれる……かな)
男「審美眼だけは爺を真似すんなよ!」
爺「親になんちゅー口聞くんだ、お前は!」
ハハハ……アハハハ……
男「エルフだって、想像上の生き物じゃ無いかもしれネェだろ」
船長「男ってのはロマンチストなんだろ?」
男「さぁな」
船長「……魔族、だったんだろうかな、あいつ」ボソ
男「見た目……変わらなかった、んだろ」
船長「……さあな。随分昔の話だ」
船長「今逢ったって、わかりゃしねぇさ」
男「船長の事が、か」
船長「そりゃそうだろ…… ……アタシは人間だ」
船長「老いない理由が無い」
船長(老いないあいつと……生きる世界が、違う)
船長(あの日だけ、と誓ったんだ)
船長(…… ……忘れはしない。だが……思い出すのも、やめないとな)
船長(だが……あいつは覚えて居てくれた)
船長(……アタシを、忘れていなかった)
男「あっつい、ナァ……」
船長「……ああ」
船長(それで……充分だ)
チビ「母さん!俺も何時か、エルフに会えるかなぁ!?」
船長「しらねぇよ…… ……まあ、海を渡ってりゃ会えるかもなぁ」
船長(平和な海を渡りたかった…… ……約束、守ってくれるかな、剣士)
船長(アタシは無理でも……チビ。お前が、叶えてくれる……かな)
男「審美眼だけは爺を真似すんなよ!」
爺「親になんちゅー口聞くんだ、お前は!」
ハハハ……アハハハ……
241: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
船長(いつか……この平和が、常の物になれば良い……けどな)
チビ「俺も何時かエルフに逢う!んで、一緒に海を渡るんだ!」
男「おーおー……でっかい事いってら」
船長「……『願えば叶う』さ」
男「親父さんの口癖か?」
船長「ああ」
船長(もう一度剣士に会いたい……そう思ってた)
船長(アタシは、『叶った』 ……だから)
船長(チビも……きっと、叶う)
……
………
…………
国王「戦況はどうです」
騎士「……我が騎士団の方が、若干不利になってきてます」
騎士「魔法部隊は向こうの方が、力も、数も……」
国王「…… ……騎士団長は?」
騎士「勇者様のお母様を保護しに行くと……」
国王「……そうですね」
国王(兄さんは、女剣士様の……あれを心配しているのだろう)
国王(道は閉ざされたとは言え……)
騎士「国王様?」
国王「……あ。……しかし、もう限界でしょう」
国王「兄さんが戻るのを待っていると、間に合わないかもしれません」
騎士「し、しかし……此処で引いたら……」
国王「命には代えられません……撤退を命じます」
騎士「……ッ ハッ」
バタバタ……バタン!
チビ「俺も何時かエルフに逢う!んで、一緒に海を渡るんだ!」
男「おーおー……でっかい事いってら」
船長「……『願えば叶う』さ」
男「親父さんの口癖か?」
船長「ああ」
船長(もう一度剣士に会いたい……そう思ってた)
船長(アタシは、『叶った』 ……だから)
船長(チビも……きっと、叶う)
……
………
…………
国王「戦況はどうです」
騎士「……我が騎士団の方が、若干不利になってきてます」
騎士「魔法部隊は向こうの方が、力も、数も……」
国王「…… ……騎士団長は?」
騎士「勇者様のお母様を保護しに行くと……」
国王「……そうですね」
国王(兄さんは、女剣士様の……あれを心配しているのだろう)
国王(道は閉ざされたとは言え……)
騎士「国王様?」
国王「……あ。……しかし、もう限界でしょう」
国王「兄さんが戻るのを待っていると、間に合わないかもしれません」
騎士「し、しかし……此処で引いたら……」
国王「命には代えられません……撤退を命じます」
騎士「……ッ ハッ」
バタバタ……バタン!
242: 2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:r8kB/gSuP
王子「国王!」
騎士「騎士団長様! ……あれ、母君様は……?」
王子「……居ないんだ」
国王「え?」
王子「小屋の中に、誰も居ない」
国王「…… ……まさか、連れ去られた……!?」
王子「否。争った様な痕跡は無かった」
王子「……それに、この城を通らないと、何処にも行けない筈だろう!?」
騎士「で、ですが……!」
国王「……今は城にも、一般人の立ち入りを禁じています」
国王「申請して許可を得たものだけ、ですが…… ……」
騎士「! ……急ぎ、調べて参ります!」
バタバタバタ
王子「この抗戦のどさくさで、誰か……!?」
国王「確かに、貴方が不在の事は多かったけれど、まさか……!」
王子「…… ……焦れても仕方が無い。船団の方はどうなった」
国王「……撤退命令を出しました」
王子「!」
国王「……騎士は駒ではありません。解って下さい」
王子「……否。解ってる。解って居る……が……!」
国王「使い道の無い鉱石の洞窟です。勿論……」
国王「物理的にあれを欲しているだけとは思いません、けど」
国王「……裏に何かあるとするなら、尚更」
国王「……力は、温存しておかないと……」
王子「…… ……ッ 糞!」
騎士「騎士団長様! ……あれ、母君様は……?」
王子「……居ないんだ」
国王「え?」
王子「小屋の中に、誰も居ない」
国王「…… ……まさか、連れ去られた……!?」
王子「否。争った様な痕跡は無かった」
王子「……それに、この城を通らないと、何処にも行けない筈だろう!?」
騎士「で、ですが……!」
国王「……今は城にも、一般人の立ち入りを禁じています」
国王「申請して許可を得たものだけ、ですが…… ……」
騎士「! ……急ぎ、調べて参ります!」
バタバタバタ
王子「この抗戦のどさくさで、誰か……!?」
国王「確かに、貴方が不在の事は多かったけれど、まさか……!」
王子「…… ……焦れても仕方が無い。船団の方はどうなった」
国王「……撤退命令を出しました」
王子「!」
国王「……騎士は駒ではありません。解って下さい」
王子「……否。解ってる。解って居る……が……!」
国王「使い道の無い鉱石の洞窟です。勿論……」
国王「物理的にあれを欲しているだけとは思いません、けど」
国王「……裏に何かあるとするなら、尚更」
国王「……力は、温存しておかないと……」
王子「…… ……ッ 糞!」
249: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
国王「こんな時に……」ハァ
王子「港街の方へも船の運航停止を求めていると言ってたな」
国王「はい。町長へは無視して構わないと言ってありますが」
王子「騎士を向かわせてはいる。まだ間に合うと思うが……」
国王「……騎士団はそもそも、国の警備と住民の職の一つとして」
国王「お母様が作った物です」
国王「人口の増加と共に、数は増えたとは言え……」
王子「……そもそも、有事に備えて作った物では無いからな」
国王「…… ……」
王子「士気も実力も……魔導国の魔導兵団には叶わないだろう」
王子「一対一ならともかく……」
国王「……船団の抗戦ともなれば尚更です」
王子「…… ……何故『王』を認めない等と言うんだ」
王子「国が複数あれば、王の存在もあって当然だろう」
国王「…… ……」
国王(恐らく……次代の勇者を庇護する為……も一つなのだろうけれど)
国王(狙いは、それだけだろうか……)
王子「国王?」
国王「あ……すみません」
国王「……目的がどうであれ、こんな……戦争の様な事を続ける訳には……」
カチャ、バタン!
騎士「国王様!騎士団長様!」
王子「何か解ったか?」
騎士「…… ……魔導国に、紫の瞳の男が居るとの情報があります」
国王「…… ……」
王子「……! まさか……俺が見かけた、あいつか!?」
騎士「騎士団長様……?」
王子「港街の方へも船の運航停止を求めていると言ってたな」
国王「はい。町長へは無視して構わないと言ってありますが」
王子「騎士を向かわせてはいる。まだ間に合うと思うが……」
国王「……騎士団はそもそも、国の警備と住民の職の一つとして」
国王「お母様が作った物です」
国王「人口の増加と共に、数は増えたとは言え……」
王子「……そもそも、有事に備えて作った物では無いからな」
国王「…… ……」
王子「士気も実力も……魔導国の魔導兵団には叶わないだろう」
王子「一対一ならともかく……」
国王「……船団の抗戦ともなれば尚更です」
王子「…… ……何故『王』を認めない等と言うんだ」
王子「国が複数あれば、王の存在もあって当然だろう」
国王「…… ……」
国王(恐らく……次代の勇者を庇護する為……も一つなのだろうけれど)
国王(狙いは、それだけだろうか……)
王子「国王?」
国王「あ……すみません」
国王「……目的がどうであれ、こんな……戦争の様な事を続ける訳には……」
カチャ、バタン!
騎士「国王様!騎士団長様!」
王子「何か解ったか?」
騎士「…… ……魔導国に、紫の瞳の男が居るとの情報があります」
国王「…… ……」
王子「……! まさか……俺が見かけた、あいつか!?」
騎士「騎士団長様……?」
250: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
国王「…… ……」スッ
王子「国王?」
国王「……着いてきて下さい、兄さん」
王子「え?」
国王「宝物庫へ行きます」
王子「……な、何だよこんな時に」
国王「以前、一度だけ戦士を案内したことがあるんですが……」
王子「王国史を学ばせた時か……魔石を見たいとか言って聞かなかった時だな」
国王「はい。鍵は……貴方が持っているでしょう?」
王子「ああ……騎士団長の地位と一緒に、女剣士様から譲り受けた」
国王「あの時は女剣士様も一緒でしたね」
王子「……戦士には甘かったからな。女剣士様」
王子「見せてやれと言ったのもあの人だったか」
国王「……お母様が生きている時……本を一冊、預かったのです」
王子「本?」
国王「『世界の裏側』を記した物だとか」
王子「…… ……」
国王「『世界の謎を紐解く必要が出来た時に』」
国王「『読んでみれば良い』と」
王子「……世界の、謎」
国王「はい…… ……『世界の裏側を少しだけ』記してあるから、と」
王子「!」
王子(……母君様も同じ事を言っていた)
国王「……けれど、必要に感じなければ決して、開いてはいけない、とも」
王子「…… ……騎士!何としても母君様を探せ!」
騎士「は……はッ!」
国王「あの方も……母君様も同じ事を仰っておられたのでしたね」
王子「ああ。世界の裏側を、ほんの少しだけ知っている、と」
国王「…… ……行きましょう」
王子(あの時……聞いておけば良かったのか!?)
王子(選択を……俺は、誤った……のか……!?)
王子「国王?」
国王「……着いてきて下さい、兄さん」
王子「え?」
国王「宝物庫へ行きます」
王子「……な、何だよこんな時に」
国王「以前、一度だけ戦士を案内したことがあるんですが……」
王子「王国史を学ばせた時か……魔石を見たいとか言って聞かなかった時だな」
国王「はい。鍵は……貴方が持っているでしょう?」
王子「ああ……騎士団長の地位と一緒に、女剣士様から譲り受けた」
国王「あの時は女剣士様も一緒でしたね」
王子「……戦士には甘かったからな。女剣士様」
王子「見せてやれと言ったのもあの人だったか」
国王「……お母様が生きている時……本を一冊、預かったのです」
王子「本?」
国王「『世界の裏側』を記した物だとか」
王子「…… ……」
国王「『世界の謎を紐解く必要が出来た時に』」
国王「『読んでみれば良い』と」
王子「……世界の、謎」
国王「はい…… ……『世界の裏側を少しだけ』記してあるから、と」
王子「!」
王子(……母君様も同じ事を言っていた)
国王「……けれど、必要に感じなければ決して、開いてはいけない、とも」
王子「…… ……騎士!何としても母君様を探せ!」
騎士「は……はッ!」
国王「あの方も……母君様も同じ事を仰っておられたのでしたね」
王子「ああ。世界の裏側を、ほんの少しだけ知っている、と」
国王「…… ……行きましょう」
王子(あの時……聞いておけば良かったのか!?)
王子(選択を……俺は、誤った……のか……!?)
251: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
……
………
…………
僧侶「……地面に足が着いてる」
魔法使い「大袈裟ね、アンタ……」
戦士「…… ……」フラフラ
勇者「大丈夫か?」
戦士「すまん……寝不足なだけだ」
勇者「……吃驚したけどな。魔法使いと部屋に戻ったら」
勇者「僧侶がお前の膝枕で寝てるし」
僧侶「す、すみません!お話ししている間に、気がついたら……!」
戦士「……話してくれと言ったのは俺だ。気にすることは無い」
魔法使い「笑えたわね。戻ったら戦士が固まってて」
魔法使い「『助けてくれ』ですもの」クスクス
僧侶「ま、魔法使いさん!」
戦士「……魔法使いに手を引かれて戻って来たのも滑稽だろうに」
勇者「ちょ、ちょっと飲みすぎただけだろ!」
僧侶「この港から、鍛冶師も村まではすぐですよ」
僧侶「……今日は宿を取ります……か?」
戦士「お前の言っていた小屋までは遠いのか?」
僧侶「それ程ではありませんが……でも、それ程広い場所では無いので」
勇者「宿を取って行って帰って、できるならそれで良いだろう」
魔法使い「あ……あの村、かしら?」
僧侶「そうです……あら?」
勇者「ん……誰か来る、な」
タタタ……タタタ……
………
…………
僧侶「……地面に足が着いてる」
魔法使い「大袈裟ね、アンタ……」
戦士「…… ……」フラフラ
勇者「大丈夫か?」
戦士「すまん……寝不足なだけだ」
勇者「……吃驚したけどな。魔法使いと部屋に戻ったら」
勇者「僧侶がお前の膝枕で寝てるし」
僧侶「す、すみません!お話ししている間に、気がついたら……!」
戦士「……話してくれと言ったのは俺だ。気にすることは無い」
魔法使い「笑えたわね。戻ったら戦士が固まってて」
魔法使い「『助けてくれ』ですもの」クスクス
僧侶「ま、魔法使いさん!」
戦士「……魔法使いに手を引かれて戻って来たのも滑稽だろうに」
勇者「ちょ、ちょっと飲みすぎただけだろ!」
僧侶「この港から、鍛冶師も村まではすぐですよ」
僧侶「……今日は宿を取ります……か?」
戦士「お前の言っていた小屋までは遠いのか?」
僧侶「それ程ではありませんが……でも、それ程広い場所では無いので」
勇者「宿を取って行って帰って、できるならそれで良いだろう」
魔法使い「あ……あの村、かしら?」
僧侶「そうです……あら?」
勇者「ん……誰か来る、な」
タタタ……タタタ……
252: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
戦士「子供だな…… ……二人?」
兄「……あ、あの!船が見えたので、鍛冶師の村からお迎えにあがりました!」
勇者「え?」
兄「村長が、もしかしたら勇者様かも知れないから、って……!」
弟「……きんいろ!」ジィ
勇者「うん。そうだよ」ナデナデ
弟「……」ニコ
僧侶「可愛い」フフ
魔法使い「貴方達は……兄弟?」
兄「あ、はい……僕は兄と申します」
兄「こっちは、弟の魔導師です」
魔導師「きれいだね。おめめ」
勇者「ありがとう……よっと」ダッコ
魔導師「きゃあ!」キャッキャ
兄「あ……!す、すみません、勇者様!」
勇者「すぐ近くとはいえ、子供の足で……大丈夫だった? ……いてて」ムニ
魔導師「ゆうしゃさまだー」ムニムニ
兄「こ、こら、魔導師! ……あ、はい!」
兄「村長が、待ってます……どうぞ。ご案内します」
戦士「……剣?」
僧侶「え?」
兄「あ…… ……この辺は、随分魔物が強くなっているんです」
兄「大人達がちゃんと、見張りや見回りはしてくれてるのですけど」
兄「僕も、役に立ちたくて……」
戦士「見せてみろ……ほう。ちゃんと手入れしてあるな」
僧侶「……あら、手にまめが。ちょっと待ってね」パァ
兄「わ、あ……!」
魔法使い「ほら、村に行ってからにしましょ」
兄「……あ、あの!船が見えたので、鍛冶師の村からお迎えにあがりました!」
勇者「え?」
兄「村長が、もしかしたら勇者様かも知れないから、って……!」
弟「……きんいろ!」ジィ
勇者「うん。そうだよ」ナデナデ
弟「……」ニコ
僧侶「可愛い」フフ
魔法使い「貴方達は……兄弟?」
兄「あ、はい……僕は兄と申します」
兄「こっちは、弟の魔導師です」
魔導師「きれいだね。おめめ」
勇者「ありがとう……よっと」ダッコ
魔導師「きゃあ!」キャッキャ
兄「あ……!す、すみません、勇者様!」
勇者「すぐ近くとはいえ、子供の足で……大丈夫だった? ……いてて」ムニ
魔導師「ゆうしゃさまだー」ムニムニ
兄「こ、こら、魔導師! ……あ、はい!」
兄「村長が、待ってます……どうぞ。ご案内します」
戦士「……剣?」
僧侶「え?」
兄「あ…… ……この辺は、随分魔物が強くなっているんです」
兄「大人達がちゃんと、見張りや見回りはしてくれてるのですけど」
兄「僕も、役に立ちたくて……」
戦士「見せてみろ……ほう。ちゃんと手入れしてあるな」
僧侶「……あら、手にまめが。ちょっと待ってね」パァ
兄「わ、あ……!」
魔法使い「ほら、村に行ってからにしましょ」
255: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
勇者「魔物が……強くなってる、って言うのは?」
兄「あ、はい……その」
兄「……北の方から、紫色をした雲が流れてくるんです」
兄「大人達は、その影響だろう、って……」
魔法使い「……魔王の復活が近づいてる、のね」
戦士「…… ……」
兄「村の中まで入ってくる事は無いんですけどね」
僧侶「……自警団、の様な物がある、って事、なんでしょうか」
タタタ……
村長「ああ、やはり勇者様方でしたか!」
勇者「ええ、と……あなはがそんひょうはん?」ムニー
魔導師「ゆうしゃさまー」ムニムニー
魔法使い「……」プッ
兄「こら!魔導師おりなさい!」
勇者「……痛い痛い。失礼。貴方が村長さんですか」
村長「す、すみません!」
魔導師「あははー!」タタタ
兄「こ、こら!」タタタ
勇者「いえいえ……」
村長「失礼致しました……兄に着いていくと聞かないもので」
僧侶「悪戯盛りでしょうしね」クスクス
村長「遠いところをはるばる、お疲れ様でした」
勇者「……いえ。ですが、何故俺達だと思ったんです?」
勇者「兄から、魔物も強くなってると聞きましたし」
戦士「……そうだな。不用意に村から出ない方が良いのではないか」
戦士「……ましてや、あんな幼子を連れて」
兄「あ、はい……その」
兄「……北の方から、紫色をした雲が流れてくるんです」
兄「大人達は、その影響だろう、って……」
魔法使い「……魔王の復活が近づいてる、のね」
戦士「…… ……」
兄「村の中まで入ってくる事は無いんですけどね」
僧侶「……自警団、の様な物がある、って事、なんでしょうか」
タタタ……
村長「ああ、やはり勇者様方でしたか!」
勇者「ええ、と……あなはがそんひょうはん?」ムニー
魔導師「ゆうしゃさまー」ムニムニー
魔法使い「……」プッ
兄「こら!魔導師おりなさい!」
勇者「……痛い痛い。失礼。貴方が村長さんですか」
村長「す、すみません!」
魔導師「あははー!」タタタ
兄「こ、こら!」タタタ
勇者「いえいえ……」
村長「失礼致しました……兄に着いていくと聞かないもので」
僧侶「悪戯盛りでしょうしね」クスクス
村長「遠いところをはるばる、お疲れ様でした」
勇者「……いえ。ですが、何故俺達だと思ったんです?」
勇者「兄から、魔物も強くなってると聞きましたし」
戦士「……そうだな。不用意に村から出ない方が良いのではないか」
戦士「……ましてや、あんな幼子を連れて」
256: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
村長「魔導師はともかく、兄の方は……大丈夫です」
魔法使い「?」
村長「いえ。まあ、あれも言い出したら聞かなくて」
村長「……一人でも戦力になるのなら、と。お恥ずかしい話ですが」
僧侶「自警団の様な物があるのですか?警備をしていると……」
村長「そんな立派な物ではありませんがね」
村長「ここらは山岳地帯なので、元々魔物の数も多かったんですが」
村長「……山から、降りて来る事は滅多に無かったのですけどね」
村長「あいつらは、炎に弱いのですよ」
魔法使い「……ああ、それで入口に松明があったのね」
村長「ええ。昔は夜だけ見張りを立て、火を灯して居たのですが」
村長「今は昼夜問わず、です……」
勇者「やはり……魔王の影響、ですか?」
村長「それしか考えられない、でしょうな」
村長「……幸い、と言うかなんと言うか」
村長「昔から、鍛冶を生業にしてきましたのでね」
村長「まあ……腕が無いとそれもどうにもならんのですが」
戦士「……勇者」
勇者「うん……村長さん」
村長「はい?」
勇者「……魔法剣について、聞きたい事があるのですが」
村長「! ……魔法剣、ですか……しかし……」
戦士「『失われていく技術』だと……聞いています」
勇者「どんな些細なことでも構いません。何か……教えて頂けませんか?」
村長「お力になれるかどうかは解りませんが……」
魔法使い「?」
村長「いえ。まあ、あれも言い出したら聞かなくて」
村長「……一人でも戦力になるのなら、と。お恥ずかしい話ですが」
僧侶「自警団の様な物があるのですか?警備をしていると……」
村長「そんな立派な物ではありませんがね」
村長「ここらは山岳地帯なので、元々魔物の数も多かったんですが」
村長「……山から、降りて来る事は滅多に無かったのですけどね」
村長「あいつらは、炎に弱いのですよ」
魔法使い「……ああ、それで入口に松明があったのね」
村長「ええ。昔は夜だけ見張りを立て、火を灯して居たのですが」
村長「今は昼夜問わず、です……」
勇者「やはり……魔王の影響、ですか?」
村長「それしか考えられない、でしょうな」
村長「……幸い、と言うかなんと言うか」
村長「昔から、鍛冶を生業にしてきましたのでね」
村長「まあ……腕が無いとそれもどうにもならんのですが」
戦士「……勇者」
勇者「うん……村長さん」
村長「はい?」
勇者「……魔法剣について、聞きたい事があるのですが」
村長「! ……魔法剣、ですか……しかし……」
戦士「『失われていく技術』だと……聞いています」
勇者「どんな些細なことでも構いません。何か……教えて頂けませんか?」
村長「お力になれるかどうかは解りませんが……」
257: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
船長「後で、詳しい者を呼んで参りましょう」
村長「まずは、どうぞごゆっくりなさって下さい」
勇者「ありがとうございます!」
村長「何も無い村ですが……すぐに発たれるご予定ですか?」
勇者「あ、いえ……まあ、船も長かったので……」
村長「では、本日は我が家にお泊まりになられますか」
村長「これと言ったもてなしも出来ませんが……」
魔法使い「良いんですか?」
村長「勿論です。魔法剣に詳しい者も、夕刻には戻ります」
勇者「では、お言葉に甘えます」
村長「はい。では……準備しておきますね」
スタスタ
戦士「夕刻……か。それまでに行って、戻れるか?」
僧侶「そうですね……」
タタタ……
戦士「ん?」
兄「あ、あの!」
勇者「君はさっきの……」
兄「お、お願いがあります!」
勇者「え?」
兄「村長から、今夜はこの村に泊まるとお聞きしました」
兄「だから、あの……!」
タタタ、ドン!
魔法使い「きゃッ ……!?」
魔導師「おねーちゃーん!」ダキッ
村長「まずは、どうぞごゆっくりなさって下さい」
勇者「ありがとうございます!」
村長「何も無い村ですが……すぐに発たれるご予定ですか?」
勇者「あ、いえ……まあ、船も長かったので……」
村長「では、本日は我が家にお泊まりになられますか」
村長「これと言ったもてなしも出来ませんが……」
魔法使い「良いんですか?」
村長「勿論です。魔法剣に詳しい者も、夕刻には戻ります」
勇者「では、お言葉に甘えます」
村長「はい。では……準備しておきますね」
スタスタ
戦士「夕刻……か。それまでに行って、戻れるか?」
僧侶「そうですね……」
タタタ……
戦士「ん?」
兄「あ、あの!」
勇者「君はさっきの……」
兄「お、お願いがあります!」
勇者「え?」
兄「村長から、今夜はこの村に泊まるとお聞きしました」
兄「だから、あの……!」
タタタ、ドン!
魔法使い「きゃッ ……!?」
魔導師「おねーちゃーん!」ダキッ
258: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
兄「魔導師!家に居なさいって言っただろう!?」
魔導師「おねーちゃんは、ほのおのひと?」
魔法使い「え?私? ……うん、そうね」
魔導師「あのねー、ぼくねー、こーりー!」
僧侶「こーりー? ……あ、氷、ですかね」
魔導師「みてて! こーりよ!」パキパキパキ……ッ
戦士「……冷た……ッ」
兄「ま、魔導師!」
戦士「……大丈夫だ。痛くは無い」
魔法使い「まあ、凄い……でもね、魔導師君」
魔導師「?」
魔法使い「人に向けて魔法を使っちゃ駄目よ」
魔導師「…… ……なんで?」
魔法使い「んーっとね」
魔法使い「……魔導師君、こんなにちっちゃいのにね」
魔法使い「もう、魔法が使えるのは、凄い事だと思うの。でもね」
魔法使い「……そうだね。お兄ちゃんとか。村長さんとか、好き?」
魔導師「うん!」
魔法使い「そういう人が、痛い痛いって泣いたら、どう思う?」
魔導師「……え ……いや、だ」
魔法使い「うん。そうだよね」
魔法使い「人に向かって魔法をかけるとね、そうなっちゃうかもしれないのよ」
魔導師「……でも」
魔法使い「上手に使えるから、見て欲しいのは解るし」
魔法使い「やってみたいのも、良く解る」
兄「…… ……」
魔導師「おねーちゃんは、ほのおのひと?」
魔法使い「え?私? ……うん、そうね」
魔導師「あのねー、ぼくねー、こーりー!」
僧侶「こーりー? ……あ、氷、ですかね」
魔導師「みてて! こーりよ!」パキパキパキ……ッ
戦士「……冷た……ッ」
兄「ま、魔導師!」
戦士「……大丈夫だ。痛くは無い」
魔法使い「まあ、凄い……でもね、魔導師君」
魔導師「?」
魔法使い「人に向けて魔法を使っちゃ駄目よ」
魔導師「…… ……なんで?」
魔法使い「んーっとね」
魔法使い「……魔導師君、こんなにちっちゃいのにね」
魔法使い「もう、魔法が使えるのは、凄い事だと思うの。でもね」
魔法使い「……そうだね。お兄ちゃんとか。村長さんとか、好き?」
魔導師「うん!」
魔法使い「そういう人が、痛い痛いって泣いたら、どう思う?」
魔導師「……え ……いや、だ」
魔法使い「うん。そうだよね」
魔法使い「人に向かって魔法をかけるとね、そうなっちゃうかもしれないのよ」
魔導師「……でも」
魔法使い「上手に使えるから、見て欲しいのは解るし」
魔法使い「やってみたいのも、良く解る」
兄「…… ……」
259: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
魔導師「…… ……ぼくは、おにいちゃんとか、そんちょーさんとか」
魔導師「あのね。つよくなってね。まもってあげるんだよ?」
魔法使い「うん。そうだね」
魔法使い「練習することは悪い事じゃ無い。だけど……」
魔法使い「強くなって守ってあげるんだったら」
魔法使い「何に向かって魔法を使えば良いと思う?」
魔導師「……わるいやつ?」
魔法使い「このお兄ちゃんは怖い顔してるけど、悪い奴かな?」
戦士「……おい」
魔導師「うーん。ちがうとおもう。ゆうしゃさまのおともだちだし」
魔法使い「うん。じゃあ、駄目だったんじゃない?」
魔法使い「お兄ちゃん、痛い痛い、って泣いたらどうする?」チラ
戦士「……え?」
僧侶「戦士さん」
戦士「…… ……い、痛い痛い」
勇者「棒読み……」プッ
魔導師「…… ……ごめんなさい」
魔法使い「うん。偉い偉い」ナデナデ
戦士(ものすごく恥ずかしい)
魔法使い「魔導師君」
魔導師「…… ……」ションボリ
魔法使い「何で、人に向かって魔法、使っちゃ駄目なんだろうね?」
魔導師「……いたい、から」
魔法使い「うん。後は?」
魔導師「うーんと……」
魔法使い「痛い、って言われたら……どう思った?」
魔導師「……かなしい。ぼくも、いやだ」
魔法使い「うん……魔法、守る為に強くなって、使いたいんだよね?」
魔導師「うん!」
魔導師「あのね。つよくなってね。まもってあげるんだよ?」
魔法使い「うん。そうだね」
魔法使い「練習することは悪い事じゃ無い。だけど……」
魔法使い「強くなって守ってあげるんだったら」
魔法使い「何に向かって魔法を使えば良いと思う?」
魔導師「……わるいやつ?」
魔法使い「このお兄ちゃんは怖い顔してるけど、悪い奴かな?」
戦士「……おい」
魔導師「うーん。ちがうとおもう。ゆうしゃさまのおともだちだし」
魔法使い「うん。じゃあ、駄目だったんじゃない?」
魔法使い「お兄ちゃん、痛い痛い、って泣いたらどうする?」チラ
戦士「……え?」
僧侶「戦士さん」
戦士「…… ……い、痛い痛い」
勇者「棒読み……」プッ
魔導師「…… ……ごめんなさい」
魔法使い「うん。偉い偉い」ナデナデ
戦士(ものすごく恥ずかしい)
魔法使い「魔導師君」
魔導師「…… ……」ションボリ
魔法使い「何で、人に向かって魔法、使っちゃ駄目なんだろうね?」
魔導師「……いたい、から」
魔法使い「うん。後は?」
魔導師「うーんと……」
魔法使い「痛い、って言われたら……どう思った?」
魔導師「……かなしい。ぼくも、いやだ」
魔法使い「うん……魔法、守る為に強くなって、使いたいんだよね?」
魔導師「うん!」
260: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
魔法使い「……お姉ちゃんもね。難しい事は解らないけど」
魔法使い「みんなが痛い、とか、悲しいとか、厭だよね」
魔導師「うん……」
魔法使い「だから、そうならない様に……使える様に」
魔法使い「守れる様に…… ……」
魔法使い(『悪い奴』だったら……遠慮無く使って良いのかってなると)
魔法使い(また……ちょっと違うんだろうけど……)
魔法使い(……どう、説明したら良いのか、解らない)
魔法使い「…… ……」
魔導師「おねえちゃんは、どうやってれんしゅうしたの?」
魔法使い「え?」
魔導師「ゆうしゃさまといっしょに、わるいやつやっつけにいくんでしょう?」
魔導師「ぼくも、れんしゅうしたい!」
魔導師「ひとには、まほうつかわないから!」
魔法使い「……う、ん…… ……そう、だね」
兄「……あの」
勇者「うん?」
兄「この村の者は、魔石を作って……その、練習してるんです」
僧侶「……魔石!?」
兄「はい。昔……この村に居た聖職者様が、魔除けの石を作っていらして」
僧侶(え!?)
兄「その聖職者様はシスターと駆け落ちしたとかで居なくなってしまったんですが」
兄「この村から旅立って言った若者が、生成方法を知っていた、とかで」
戦士「…… ……鍛冶師、か?」
兄「ああ!そうです!ご存じなのですか!?」
戦士「…… ……」
魔法使い「それで……作って、いるの?」
兄「本当に作るだけ、なのですけど」
兄「……鍛冶を生業にしている村ですから、それで特殊な武器を作ったり、ですね」
勇者「まさか……魔法剣!?」
兄「僕は詳しくはわかりませんけど…… ……」
魔法使い「みんなが痛い、とか、悲しいとか、厭だよね」
魔導師「うん……」
魔法使い「だから、そうならない様に……使える様に」
魔法使い「守れる様に…… ……」
魔法使い(『悪い奴』だったら……遠慮無く使って良いのかってなると)
魔法使い(また……ちょっと違うんだろうけど……)
魔法使い(……どう、説明したら良いのか、解らない)
魔法使い「…… ……」
魔導師「おねえちゃんは、どうやってれんしゅうしたの?」
魔法使い「え?」
魔導師「ゆうしゃさまといっしょに、わるいやつやっつけにいくんでしょう?」
魔導師「ぼくも、れんしゅうしたい!」
魔導師「ひとには、まほうつかわないから!」
魔法使い「……う、ん…… ……そう、だね」
兄「……あの」
勇者「うん?」
兄「この村の者は、魔石を作って……その、練習してるんです」
僧侶「……魔石!?」
兄「はい。昔……この村に居た聖職者様が、魔除けの石を作っていらして」
僧侶(え!?)
兄「その聖職者様はシスターと駆け落ちしたとかで居なくなってしまったんですが」
兄「この村から旅立って言った若者が、生成方法を知っていた、とかで」
戦士「…… ……鍛冶師、か?」
兄「ああ!そうです!ご存じなのですか!?」
戦士「…… ……」
魔法使い「それで……作って、いるの?」
兄「本当に作るだけ、なのですけど」
兄「……鍛冶を生業にしている村ですから、それで特殊な武器を作ったり、ですね」
勇者「まさか……魔法剣!?」
兄「僕は詳しくはわかりませんけど…… ……」
261: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
兄「……魔導師は、まだ幼いですから。力が不安定なので」
兄「やらせていなかったんです」
僧侶「貴方も……出来る、のですか」
兄「あ……はい。魔法そのものは使えませんけど……」
魔法使い「…… ……」
魔導師「おねーちゃん、おねーちゃんってば!」
魔導師「ねえ、どうやってれんしゅうしたの!」
魔法使い「あ……えっと……」
兄「…… ……水、よッ」シュゥ
勇者「!」
ポトン……ザァ
魔法使い「……!」
兄「僕は、保てなくてすぐに戻ってしまう、んです……」カァッ
勇者「凄い……」
魔法使い「……魔導師君、ちょっと離れてね」
魔導師「……?」
魔法使い「炎よ!」ボゥッ ……ポトン
僧侶「!」
戦士「……ッ 出来た……!?」
魔導師「わあ!うわぁ! ……さわってもいい!?」
魔法使い「……え」チラ
兄「大丈夫だと……思います、けど」
魔導師「きれい!」ギュッ
魔導師「おねえちゃん!ちょーだい!?」
魔法使い「え、ええ……良いわよ」
魔導師「すごいね!こうやってれんしゅうするんだね!」
魔導師「おしえて!ぼくもやりたい!」
兄「やらせていなかったんです」
僧侶「貴方も……出来る、のですか」
兄「あ……はい。魔法そのものは使えませんけど……」
魔法使い「…… ……」
魔導師「おねーちゃん、おねーちゃんってば!」
魔導師「ねえ、どうやってれんしゅうしたの!」
魔法使い「あ……えっと……」
兄「…… ……水、よッ」シュゥ
勇者「!」
ポトン……ザァ
魔法使い「……!」
兄「僕は、保てなくてすぐに戻ってしまう、んです……」カァッ
勇者「凄い……」
魔法使い「……魔導師君、ちょっと離れてね」
魔導師「……?」
魔法使い「炎よ!」ボゥッ ……ポトン
僧侶「!」
戦士「……ッ 出来た……!?」
魔導師「わあ!うわぁ! ……さわってもいい!?」
魔法使い「……え」チラ
兄「大丈夫だと……思います、けど」
魔導師「きれい!」ギュッ
魔導師「おねえちゃん!ちょーだい!?」
魔法使い「え、ええ……良いわよ」
魔導師「すごいね!こうやってれんしゅうするんだね!」
魔導師「おしえて!ぼくもやりたい!」
263: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
戦士「さっき、何か言いかけてたな」
兄「あ……あの」
戦士「何だ?」
兄「……その。もし宜しかったら、勇者様に剣を教えて頂けないか、と」
勇者「俺?」
魔導師「ねえ、おねえちゃん!いっしょにやろ!」
魔法使い「……良いわよ。一緒に練習しましょうか」
魔法使い「勇者、良いわよね?もう少し時間もあるし」
勇者「あ、ああ……それは良いけど」
魔導師「わーい!」
魔法使い「じゃあ、あっちの広いところに行きましょう」
勇者「村からは出るなよ!」
兄「あの……駄目でしょうか」
勇者「そうだな……だったら、俺より戦士の方が良い」
戦士「俺が?」
勇者「きっちり訓練受けてるのは俺よりお前だろ」
戦士「……まあ、良いだろう」
勇者「俺より絶対厳しいけど」クス
兄「あ……!宜しくお願い致します!」
僧侶「…… ……」
勇者「僧侶?」
戦士「では……俺達もあちらに行こう。魔導師も見ていられるしな」
兄「はい!」
僧侶「……勇者様。私は……あの、教会の方へ行ってきても良いでしょうか?」
勇者「ん? ……ああ。うん。そうだね、神父様の……」
僧侶「はい…… 先ほどの兄君の話は……」
勇者「神父様のこと、だよね?」
僧侶「……いえ。神父様は魔石の事は、全く……」
勇者「あ……そう、か」
僧侶「でも……気になるのです」
僧侶「私を育てる為に、もしかしたら……嘘を吐かれたのかもしれません」
勇者「…… ……うん」
兄「あ……あの」
戦士「何だ?」
兄「……その。もし宜しかったら、勇者様に剣を教えて頂けないか、と」
勇者「俺?」
魔導師「ねえ、おねえちゃん!いっしょにやろ!」
魔法使い「……良いわよ。一緒に練習しましょうか」
魔法使い「勇者、良いわよね?もう少し時間もあるし」
勇者「あ、ああ……それは良いけど」
魔導師「わーい!」
魔法使い「じゃあ、あっちの広いところに行きましょう」
勇者「村からは出るなよ!」
兄「あの……駄目でしょうか」
勇者「そうだな……だったら、俺より戦士の方が良い」
戦士「俺が?」
勇者「きっちり訓練受けてるのは俺よりお前だろ」
戦士「……まあ、良いだろう」
勇者「俺より絶対厳しいけど」クス
兄「あ……!宜しくお願い致します!」
僧侶「…… ……」
勇者「僧侶?」
戦士「では……俺達もあちらに行こう。魔導師も見ていられるしな」
兄「はい!」
僧侶「……勇者様。私は……あの、教会の方へ行ってきても良いでしょうか?」
勇者「ん? ……ああ。うん。そうだね、神父様の……」
僧侶「はい…… 先ほどの兄君の話は……」
勇者「神父様のこと、だよね?」
僧侶「……いえ。神父様は魔石の事は、全く……」
勇者「あ……そう、か」
僧侶「でも……気になるのです」
僧侶「私を育てる為に、もしかしたら……嘘を吐かれたのかもしれません」
勇者「…… ……うん」
264: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
僧侶「ご一緒……されますか?」
勇者「ああ……えっと……」
勇者「……御免。俺、村長さんの所に行ってくるよ」
僧侶「え?」
勇者「魔法剣の事以外でも、聞きたい事もあるしさ」
僧侶「……わかりました。では、後ほど」
勇者「ああ」
スタスタ
勇者(一人……か)
勇者(何か、不思議な感じだな。皆、すぐ傍に居るのに)
勇者(ええと、村長さんの家は……あれだっけな?)
コンコン
勇者「……あれ?」
勇者(留守……か?)
勇者「ああ……えっと……」
勇者「……御免。俺、村長さんの所に行ってくるよ」
僧侶「え?」
勇者「魔法剣の事以外でも、聞きたい事もあるしさ」
僧侶「……わかりました。では、後ほど」
勇者「ああ」
スタスタ
勇者(一人……か)
勇者(何か、不思議な感じだな。皆、すぐ傍に居るのに)
勇者(ええと、村長さんの家は……あれだっけな?)
コンコン
勇者「……あれ?」
勇者(留守……か?)
265: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
お昼ご飯ー!
268: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
老女「村長さんにご用事?」
勇者「わッ ……あ、ああ、そうです」
老女「ああ、ごめんなさいね。驚かせて」
勇者「い、いえいえ……大丈夫です」
老女「貴方が勇者様、ね……まあ、本当に」
老女「綺麗な、金の瞳をしているのね……」
勇者「えっと……あの」
老女「ああ、ご免なさい……すぐ戻られると思うけれど」
勇者「やっぱり、お留守ですか」
老女「この時間なら鍛冶場でしょうね」
老女「あの人も腕の良い方なのでね」
勇者「……そうなん、ですか」
勇者「ええと……失礼ですが、貴方は……奥様、ですか?」
老女「え?いいえ……私はあの」スッ
勇者(入口の方?)
老女「……飯屋の元女将ですよ」
老女「今は娘がやってるのでね。私はお手伝い……よいしょ」
勇者「あ……持ちましょうか?」
老女「ああ、大丈夫よ」
勇者「……これ、は?」
老女「お店で使うハーブよ。育てるのに村長さんのお庭を借りてるの」
勇者「…… ……」グゥ
老女「あら、ま」クス
勇者「……やっぱり、持ちます」
老女「え?」
勇者「……お腹すいたんで、何か食べたいんです」
老女「まあ」クスクス
勇者「一緒に行っても良いですか?」
老女「勿論よ……いらっしゃいませ。娘も喜ぶわ」
勇者「わッ ……あ、ああ、そうです」
老女「ああ、ごめんなさいね。驚かせて」
勇者「い、いえいえ……大丈夫です」
老女「貴方が勇者様、ね……まあ、本当に」
老女「綺麗な、金の瞳をしているのね……」
勇者「えっと……あの」
老女「ああ、ご免なさい……すぐ戻られると思うけれど」
勇者「やっぱり、お留守ですか」
老女「この時間なら鍛冶場でしょうね」
老女「あの人も腕の良い方なのでね」
勇者「……そうなん、ですか」
勇者「ええと……失礼ですが、貴方は……奥様、ですか?」
老女「え?いいえ……私はあの」スッ
勇者(入口の方?)
老女「……飯屋の元女将ですよ」
老女「今は娘がやってるのでね。私はお手伝い……よいしょ」
勇者「あ……持ちましょうか?」
老女「ああ、大丈夫よ」
勇者「……これ、は?」
老女「お店で使うハーブよ。育てるのに村長さんのお庭を借りてるの」
勇者「…… ……」グゥ
老女「あら、ま」クス
勇者「……やっぱり、持ちます」
老女「え?」
勇者「……お腹すいたんで、何か食べたいんです」
老女「まあ」クスクス
勇者「一緒に行っても良いですか?」
老女「勿論よ……いらっしゃいませ。娘も喜ぶわ」
269: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
……
………
…………
僧侶「……静か、ですね」
僧侶(誰も居ない……のかな)
キィ
僧侶「……ッ」ケホッ
僧侶(埃が…… ……無人になって、長い……のだろうか)スタスタ
僧侶(港街の教会よりも……古い)
僧侶「……あ」
僧侶(本…… ……一杯ある、けど)
僧侶(ぐちゃぐちゃ……破れたり……)
カタン……
僧侶(……!)ビクッ
シスター「…… ……どなたか、いらっしゃいます?」
僧侶「あ……!す、すみません!あの……!」
シスター「…… ……」
僧侶「ご、ご免なさい!開いていたので……!」
シスター「貴女は……?」ジロジロ
僧侶「……あ、あの……ご免なさい。先ほど、船で着いたばかりで」
シスター「……船?」
司書「どうしたんです、シスター」
シスター「司書さん、この人が……」
司書「……!!」
………
…………
僧侶「……静か、ですね」
僧侶(誰も居ない……のかな)
キィ
僧侶「……ッ」ケホッ
僧侶(埃が…… ……無人になって、長い……のだろうか)スタスタ
僧侶(港街の教会よりも……古い)
僧侶「……あ」
僧侶(本…… ……一杯ある、けど)
僧侶(ぐちゃぐちゃ……破れたり……)
カタン……
僧侶(……!)ビクッ
シスター「…… ……どなたか、いらっしゃいます?」
僧侶「あ……!す、すみません!あの……!」
シスター「…… ……」
僧侶「ご、ご免なさい!開いていたので……!」
シスター「貴女は……?」ジロジロ
僧侶「……あ、あの……ご免なさい。先ほど、船で着いたばかりで」
シスター「……船?」
司書「どうしたんです、シスター」
シスター「司書さん、この人が……」
司書「……!!」
270: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
僧侶「…… ……?」
僧侶(な、何だろう……私、変な顔してるのかしら)
司書「……ああ、ご免なさい。貴女は……どなたです?」
僧侶「あ、僧侶と申します」
僧侶「先ほど……勇者様と共にこの村に着きまして」
シスター「勇者様と!?」
僧侶「はい。今は村長さんの所へ行かれている様ですので」
僧侶「……ごめんなさい。教会があったので、気になって」
司書「そうでしたか……」
司書「ここは、もう教会では無いのですよ」
僧侶「……え?」
司書「聖職者もいらっしゃらないと言う事で、私達が買い取らせて頂いたのです」
僧侶「買い取った……?」
シスター「……失礼ですが、その勇者様と言うのは……」
司書「シスター!」
シスター「本物ですの?」
僧侶「ど……どう言う意味ですか?」
司書「やめなさい、シスター」
司書「……連れが申し訳無い」
シスター「司書さん、でも!」
司書「教会に興味があると言う事は、貴女は……」
僧侶「あ……はい。勇者様と旅に出るまでは、教会に仕えていました」
司書「そうですか……でも、残念ですが」
僧侶「……いえ、勝手に入ってしまった非礼はお詫び致します」
僧侶「申し訳ありませんでした」ペコ
司書「いえ……鍵もかけずに離れたのは私達の方ですので」
シスター「…… ……」
司書「…… ……」
僧侶(な……なんか……妙な雰囲気……)
僧侶(……戦士さん達の所に、戻ろう)ハァ
僧侶(な、何だろう……私、変な顔してるのかしら)
司書「……ああ、ご免なさい。貴女は……どなたです?」
僧侶「あ、僧侶と申します」
僧侶「先ほど……勇者様と共にこの村に着きまして」
シスター「勇者様と!?」
僧侶「はい。今は村長さんの所へ行かれている様ですので」
僧侶「……ごめんなさい。教会があったので、気になって」
司書「そうでしたか……」
司書「ここは、もう教会では無いのですよ」
僧侶「……え?」
司書「聖職者もいらっしゃらないと言う事で、私達が買い取らせて頂いたのです」
僧侶「買い取った……?」
シスター「……失礼ですが、その勇者様と言うのは……」
司書「シスター!」
シスター「本物ですの?」
僧侶「ど……どう言う意味ですか?」
司書「やめなさい、シスター」
司書「……連れが申し訳無い」
シスター「司書さん、でも!」
司書「教会に興味があると言う事は、貴女は……」
僧侶「あ……はい。勇者様と旅に出るまでは、教会に仕えていました」
司書「そうですか……でも、残念ですが」
僧侶「……いえ、勝手に入ってしまった非礼はお詫び致します」
僧侶「申し訳ありませんでした」ペコ
司書「いえ……鍵もかけずに離れたのは私達の方ですので」
シスター「…… ……」
司書「…… ……」
僧侶(な……なんか……妙な雰囲気……)
僧侶(……戦士さん達の所に、戻ろう)ハァ
271: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
僧侶「失礼、します……」スタスタ
僧侶(でも……教会を買い取って……どう、するのだろう?)
司書「……僧侶、さん」
僧侶「は、はい?」
司書「…… ……後で、勇者様にお会いする事はできますか?」
僧侶「え? ……あ、はい。大丈夫だと思いますよ?」
僧侶「今日は村長さんのお家に泊めて頂けるとの話でしたし」
司書「……そうですか。ありがとうございます」
僧侶「……?」
パタン
シスター「司書さん!危険ですよ、もし……!」
司書「大丈夫です……もう、『あの国の人達』は我々に用事等無いでしょうから」
シスター「でも…… ……」
司書「貴女は……嫌っていらっしゃるけれど」
司書「……剣士さんも、悪い人では無いと思います」
シスター「……ッ 信じられません!あんな……ッ」
司書「頑固ですね、貴女も」フゥ
シスター「私は、関わりたくないだけです!」
司書「……鍵をかけ忘れたのは私達が悪いんですよ?」
シスター「……そうですけど」
司書「とにかく、片付けてしまいましょう。奥の部屋は書庫にするんでしたね」
シスター「……はい。ざっと見た感じでは、随分童話の類も多くあった様ですし」
司書「…… ……」
シスター「司書さん?」
司書(……昔、港街で見せて頂いた、あのエルフの姫のお話)
司書(そして、此処にあった……あの、本)
司書(手書きであった事を考えれば、同じ物である可能性は高い)
司書(やはり…… ……貴方ですか?新米神官……)
シスター「……司書さん」
司書(それに……今の、僧侶と言う人)
司書(あのエルフの姫の挿絵にそっくりだった……!)
シスター「司書さん!」
司書「あ……は、はい!」
シスター「どうしたんですか! ……そりゃ、綺麗な人でしたけど」」
僧侶(でも……教会を買い取って……どう、するのだろう?)
司書「……僧侶、さん」
僧侶「は、はい?」
司書「…… ……後で、勇者様にお会いする事はできますか?」
僧侶「え? ……あ、はい。大丈夫だと思いますよ?」
僧侶「今日は村長さんのお家に泊めて頂けるとの話でしたし」
司書「……そうですか。ありがとうございます」
僧侶「……?」
パタン
シスター「司書さん!危険ですよ、もし……!」
司書「大丈夫です……もう、『あの国の人達』は我々に用事等無いでしょうから」
シスター「でも…… ……」
司書「貴女は……嫌っていらっしゃるけれど」
司書「……剣士さんも、悪い人では無いと思います」
シスター「……ッ 信じられません!あんな……ッ」
司書「頑固ですね、貴女も」フゥ
シスター「私は、関わりたくないだけです!」
司書「……鍵をかけ忘れたのは私達が悪いんですよ?」
シスター「……そうですけど」
司書「とにかく、片付けてしまいましょう。奥の部屋は書庫にするんでしたね」
シスター「……はい。ざっと見た感じでは、随分童話の類も多くあった様ですし」
司書「…… ……」
シスター「司書さん?」
司書(……昔、港街で見せて頂いた、あのエルフの姫のお話)
司書(そして、此処にあった……あの、本)
司書(手書きであった事を考えれば、同じ物である可能性は高い)
司書(やはり…… ……貴方ですか?新米神官……)
シスター「……司書さん」
司書(それに……今の、僧侶と言う人)
司書(あのエルフの姫の挿絵にそっくりだった……!)
シスター「司書さん!」
司書「あ……は、はい!」
シスター「どうしたんですか! ……そりゃ、綺麗な人でしたけど」」
272: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
司書「貴女も、読んだでしょう、あの……エルフの……」
シスター「……それが、何か?」
司書「……そっくりだったじゃ無いですか」
シスター「……あんな古そうな本、はっきり解らないじゃ無いですか」
シスター「挿絵って言ったって、色もあせてたし……」
シスター「まあ…… ……言われてみれば、そんな気もします、けど」
司書「…… ……」
シスター「それであんなに驚いた顔してたんですか?」
司書「……まあ」
司書(それだけじゃありません、けど……)
シスター「あれも置いておくのですか?」
司書「え?」
シスター「だって、あれ……途中のページがありませんでしたよ?」
シスター「表紙も、表側の絵の所しか残ってないし……」
司書「……まあ、一応」
シスター「……司書さんがそう言われるのなら、残しておきますけど」
司書「後で……子供達を迎えに行くついでに、勇者様を探してみましょう」
シスター「……本当に本物だと思うんですか?」
司書「さっきの僧侶と言う方が、嘘を吐いている様には見えませんでしたけど、ね」
シスター「…… ……」
司書「狭い村ですし……すぐに解りますよ」
シスター「……絶対、偽物です!」
シスター「そんな……そんなほいほいと、そっくりな人間が何人も居る訳ありません!」
スタスタ……バタン!
司書「……ッ ……やれやれ」ハァ
司書(彼女の気持ちも、解らなくは無い、ですけどね)
司書(……剣士さんは、確かに勇者様にそっくりだった……だけど)
司書(…… ……いくら魔導国の人達であっても、瞳の色までは変えられない、んだ)
シスター「……それが、何か?」
司書「……そっくりだったじゃ無いですか」
シスター「……あんな古そうな本、はっきり解らないじゃ無いですか」
シスター「挿絵って言ったって、色もあせてたし……」
シスター「まあ…… ……言われてみれば、そんな気もします、けど」
司書「…… ……」
シスター「それであんなに驚いた顔してたんですか?」
司書「……まあ」
司書(それだけじゃありません、けど……)
シスター「あれも置いておくのですか?」
司書「え?」
シスター「だって、あれ……途中のページがありませんでしたよ?」
シスター「表紙も、表側の絵の所しか残ってないし……」
司書「……まあ、一応」
シスター「……司書さんがそう言われるのなら、残しておきますけど」
司書「後で……子供達を迎えに行くついでに、勇者様を探してみましょう」
シスター「……本当に本物だと思うんですか?」
司書「さっきの僧侶と言う方が、嘘を吐いている様には見えませんでしたけど、ね」
シスター「…… ……」
司書「狭い村ですし……すぐに解りますよ」
シスター「……絶対、偽物です!」
シスター「そんな……そんなほいほいと、そっくりな人間が何人も居る訳ありません!」
スタスタ……バタン!
司書「……ッ ……やれやれ」ハァ
司書(彼女の気持ちも、解らなくは無い、ですけどね)
司書(……剣士さんは、確かに勇者様にそっくりだった……だけど)
司書(…… ……いくら魔導国の人達であっても、瞳の色までは変えられない、んだ)
273: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
……
………
…………
兄「あ……ッ あり、が……ッ 」ゼェゼェ
魔法使い「……アンタね。もうちょっと加減ってモンを知りなさいよ」
戦士「継続して指南できる訳では無いからな」
魔法使い(毎日こんなメニューこなしてる訳? ……そりゃ)
魔法使い(凄い筋肉にもなるわね……)
兄「だ、だい、じょ…… ……ぶ、で……す……」フラフラ
魔法使い「ほら、座りなさい……よ、いしょ」
魔導師(すぅすぅ)
兄「すみません……」
戦士「しかし、お前も普段からきっちり鍛えているんだろう」
戦士「……着いて来られるとは、正直思わなかった」
魔法使い「だからって、ねぇ……」
戦士「お前だって、疲れて寝るまでやらすこと無いだろうに」
魔法使い「……まさか、急にこてん、て行くとは思わなかったんだもん」
兄「……」クスクス
戦士「……なんだ」
兄「いえ……魔導師のあんな必氏な顔、初めて見たので」
魔法使い「子供なのに……凄い集中力だったわね」
兄「遊びの範疇、の練習しか……やらせてないんです」
兄「僕は魔法の事は良く解らないんですけど」
兄「……大人は皆、魔導師は凄い、って言うので」
兄「勿論、子供なので……喜んでるだけなのは解ってるんですが」
兄「……やはり、我が儘なので」
魔法使い「余程、楽しかったのね。でも……羨ましいわよ」
戦士「…… ……」
兄「え?」
魔法使い「大人だって褒められたら嬉しい物よ」
魔法使い「褒められたい、上手くやりたいって言うのが、嬉しい、に」
魔法使い「……望み通りに繋がれば、伸びて当然よ。まだ子供ですもの」
魔法使い「……純粋、なのね」
戦士「……しかし、どうなんだ?魔導師は」
魔法使い「素質は充分だと思うわ。一応、だけど……出来たじゃ無い、魔石」
………
…………
兄「あ……ッ あり、が……ッ 」ゼェゼェ
魔法使い「……アンタね。もうちょっと加減ってモンを知りなさいよ」
戦士「継続して指南できる訳では無いからな」
魔法使い(毎日こんなメニューこなしてる訳? ……そりゃ)
魔法使い(凄い筋肉にもなるわね……)
兄「だ、だい、じょ…… ……ぶ、で……す……」フラフラ
魔法使い「ほら、座りなさい……よ、いしょ」
魔導師(すぅすぅ)
兄「すみません……」
戦士「しかし、お前も普段からきっちり鍛えているんだろう」
戦士「……着いて来られるとは、正直思わなかった」
魔法使い「だからって、ねぇ……」
戦士「お前だって、疲れて寝るまでやらすこと無いだろうに」
魔法使い「……まさか、急にこてん、て行くとは思わなかったんだもん」
兄「……」クスクス
戦士「……なんだ」
兄「いえ……魔導師のあんな必氏な顔、初めて見たので」
魔法使い「子供なのに……凄い集中力だったわね」
兄「遊びの範疇、の練習しか……やらせてないんです」
兄「僕は魔法の事は良く解らないんですけど」
兄「……大人は皆、魔導師は凄い、って言うので」
兄「勿論、子供なので……喜んでるだけなのは解ってるんですが」
兄「……やはり、我が儘なので」
魔法使い「余程、楽しかったのね。でも……羨ましいわよ」
戦士「…… ……」
兄「え?」
魔法使い「大人だって褒められたら嬉しい物よ」
魔法使い「褒められたい、上手くやりたいって言うのが、嬉しい、に」
魔法使い「……望み通りに繋がれば、伸びて当然よ。まだ子供ですもの」
魔法使い「……純粋、なのね」
戦士「……しかし、どうなんだ?魔導師は」
魔法使い「素質は充分だと思うわ。一応、だけど……出来たじゃ無い、魔石」
274: 2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:ug9b6d/UP
魔法使い「コントロールできる、ってのは凄い事よ」
魔法使い「……良い氷の使い手になるでしょう」
兄「……ありがとう、ございました」
戦士「さっき、飯屋があったな。腹も減っただろう」
魔法使い「そうね……魔導師は起きそうに無いけど、皆で行きましょうか」
タタタ
僧侶「戦士さん、魔法使いさん!」
魔法使い「あら、僧侶…… ……勇者は?」
僧侶「話を聞く、って村長さんの所に」
戦士「一緒に行ってたのか?」
僧侶「あ、いいえ……私は。あら、魔導師君、寝ちゃったんですね」
兄「え?村長さんは……この時間だったら、お仕事してらっしゃると思います」
戦士「仕事?」
兄「はい」
魔法使い「僧侶は何処に行ってたの?」
僧侶「私は……あちらの教会に行った、んですけど……」
兄「……あ、ごめんなさい。言っておけば良かったですね」
魔法使い「え?」
兄「あそこは、もう教会では無いんです」
僧侶「ええ……聞きました」
兄「え?」
僧侶「鍵、開いてたので中に入ったんですが……戻って来た、その」
僧侶「買い取った、と言う方に……」
戦士「買い取った?」
兄「……孤児院にするのだそうです」
魔法使い「…… ……孤児院?」
戦士「こんな……あ、いや、言い方は悪いが……」
兄「いえ……この村の人達の、では無くて」
兄「魔導国から来られた方達の…… ……」
僧侶「え!?」
魔法使い「…… ……魔導国!?」
戦士「…… ……あの街から、どうして、此処へ?」
魔法使い「……良い氷の使い手になるでしょう」
兄「……ありがとう、ございました」
戦士「さっき、飯屋があったな。腹も減っただろう」
魔法使い「そうね……魔導師は起きそうに無いけど、皆で行きましょうか」
タタタ
僧侶「戦士さん、魔法使いさん!」
魔法使い「あら、僧侶…… ……勇者は?」
僧侶「話を聞く、って村長さんの所に」
戦士「一緒に行ってたのか?」
僧侶「あ、いいえ……私は。あら、魔導師君、寝ちゃったんですね」
兄「え?村長さんは……この時間だったら、お仕事してらっしゃると思います」
戦士「仕事?」
兄「はい」
魔法使い「僧侶は何処に行ってたの?」
僧侶「私は……あちらの教会に行った、んですけど……」
兄「……あ、ごめんなさい。言っておけば良かったですね」
魔法使い「え?」
兄「あそこは、もう教会では無いんです」
僧侶「ええ……聞きました」
兄「え?」
僧侶「鍵、開いてたので中に入ったんですが……戻って来た、その」
僧侶「買い取った、と言う方に……」
戦士「買い取った?」
兄「……孤児院にするのだそうです」
魔法使い「…… ……孤児院?」
戦士「こんな……あ、いや、言い方は悪いが……」
兄「いえ……この村の人達の、では無くて」
兄「魔導国から来られた方達の…… ……」
僧侶「え!?」
魔法使い「…… ……魔導国!?」
戦士「…… ……あの街から、どうして、此処へ?」
283: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
兄「……司書さん達……あ、その買い取った人達です、けど」
兄「あの人達が乗って来た船が、魔導国からの直通便の最終便だったと」
兄「……お聞きしてます、けど」
戦士「……ちょっと待て、直通便!?」
兄「え? は、はい」
戦士「……魔法使い」
魔法使い「わ、私は……解らないわよ。あんまり自由に出歩くことは無かったから」
戦士「船は……全て港街を経由していたのでは無かったのか?」
兄「僕は……その、余り詳しくは……」
僧侶「その辺は村長さんに聞きましょう?」
魔法使い「……魔導国の封鎖に伴って逃げてきた、のかしら」
戦士「…… ……」
僧侶「……勇者様、何処に行かれたんでしょうか」
戦士「夕刻には村長さんも戻るのだろう」
戦士「こうして話していても解らん……取りあえず、行くか」
魔法使い「そうね。大食漢も戻ってきたし」
僧侶「……え!? そ、それ私の事ですか!?」
戦士「もう少し時間もあるし、軽く食事でも、と話していたんだ」
戦士「お前も行くだろう、僧侶」
僧侶「あ、はい……」グゥ
魔法使い「……お腹も素直ね」クス
戦士「魔導師は俺が抱こう……寝てしまうと重いだろう」
魔法使い「ええ、お願い」
魔導師(すぅすぅ)
兄「あ、僕が……!」
僧侶「大丈夫ですよ。貴方も疲れているでしょう?」
魔法使い「……良いお兄ちゃんね。任せておきなさい」
兄「……はい。ありがとうございます」
兄「あの人達が乗って来た船が、魔導国からの直通便の最終便だったと」
兄「……お聞きしてます、けど」
戦士「……ちょっと待て、直通便!?」
兄「え? は、はい」
戦士「……魔法使い」
魔法使い「わ、私は……解らないわよ。あんまり自由に出歩くことは無かったから」
戦士「船は……全て港街を経由していたのでは無かったのか?」
兄「僕は……その、余り詳しくは……」
僧侶「その辺は村長さんに聞きましょう?」
魔法使い「……魔導国の封鎖に伴って逃げてきた、のかしら」
戦士「…… ……」
僧侶「……勇者様、何処に行かれたんでしょうか」
戦士「夕刻には村長さんも戻るのだろう」
戦士「こうして話していても解らん……取りあえず、行くか」
魔法使い「そうね。大食漢も戻ってきたし」
僧侶「……え!? そ、それ私の事ですか!?」
戦士「もう少し時間もあるし、軽く食事でも、と話していたんだ」
戦士「お前も行くだろう、僧侶」
僧侶「あ、はい……」グゥ
魔法使い「……お腹も素直ね」クス
戦士「魔導師は俺が抱こう……寝てしまうと重いだろう」
魔法使い「ええ、お願い」
魔導師(すぅすぅ)
兄「あ、僕が……!」
僧侶「大丈夫ですよ。貴方も疲れているでしょう?」
魔法使い「……良いお兄ちゃんね。任せておきなさい」
兄「……はい。ありがとうございます」
284: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
僧侶「あ、あれですね…… ……良い匂いがする……」
魔法使い「またお腹なるわよ」
僧侶「だ、大丈夫です!」
……
………
…………
ザワザワ……キャア、アハハ……
勇者「美味い!」
老女「お口に合って良かったわ」
老女「はい、これはサービスよ」コトン
勇者「……ん、ミントが入ってる……これ……ジュース、ですか?」
老女「お酒よ……あ、苦手だったかしら?」
勇者「あ、いえ……大丈夫です」
老女「ゆっくり召し上がれ。飲み口は爽やかだけど、少しきついから」
勇者(あ、美味しい……けど、ゴクゴク行くと……また立てなくなりそうだな)
勇者(……魔法使いが喜びそうだなぁ。連れてきてやれば良かったかな)
老女「騒がしくてご免なさいね」
勇者「繁盛してて良いじゃ無いですか。子供は……大人しくなんかしていないでしょうし」
勇者「大丈夫です」
勇者(……しかし、子供だけ?親は……皆、鍛冶場とやらで働いているのか)
オカワリー!
ボクモー!ワタシモー!
老女「はいはい、すぐ行きますよ……じゃあ、勇者様、ごゆっくり」
勇者「あ、はい……」
キィ、コロンコロン……
勇者(また来客か……凄いな)
勇者(小さな村とは言え、ここ一軒だけでも無いだろうに)
勇者(……まあ、確かに美味しいよな)
勇者(僧侶も喜んだだろうな。それこそよだれ垂らして)クス
魔法使い「またお腹なるわよ」
僧侶「だ、大丈夫です!」
……
………
…………
ザワザワ……キャア、アハハ……
勇者「美味い!」
老女「お口に合って良かったわ」
老女「はい、これはサービスよ」コトン
勇者「……ん、ミントが入ってる……これ……ジュース、ですか?」
老女「お酒よ……あ、苦手だったかしら?」
勇者「あ、いえ……大丈夫です」
老女「ゆっくり召し上がれ。飲み口は爽やかだけど、少しきついから」
勇者(あ、美味しい……けど、ゴクゴク行くと……また立てなくなりそうだな)
勇者(……魔法使いが喜びそうだなぁ。連れてきてやれば良かったかな)
老女「騒がしくてご免なさいね」
勇者「繁盛してて良いじゃ無いですか。子供は……大人しくなんかしていないでしょうし」
勇者「大丈夫です」
勇者(……しかし、子供だけ?親は……皆、鍛冶場とやらで働いているのか)
オカワリー!
ボクモー!ワタシモー!
老女「はいはい、すぐ行きますよ……じゃあ、勇者様、ごゆっくり」
勇者「あ、はい……」
キィ、コロンコロン……
勇者(また来客か……凄いな)
勇者(小さな村とは言え、ここ一軒だけでも無いだろうに)
勇者(……まあ、確かに美味しいよな)
勇者(僧侶も喜んだだろうな。それこそよだれ垂らして)クス
285: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
司書「こら、静かにしなさい……女将さん、何時もすみません」
シスター「まあ、老女さんまで……ご免なさい、ご迷惑おかけして」
老女「いいえ、育ち盛りの子のお腹を育てられるなんて」
老女「光栄な事よ」
司書「一杯食べて下さいね。食事が済んだら、又…… ……」チラ
シスター「……司書さん?」
司書「…… ……! ……勇者、様!?」
勇者「え!?」
シスター「! ……ッ あ……ッ」
老女「まあ、お知り合い?」
勇者「え、いえ……あの……」
司書(……髪の色こそ違う。だけど……金の瞳……!)
司書(やはり、そっくりだ……!)
シスター「……貴方、が……勇者様…… ……!?」
勇者「あ……は、はい。あの……?」
司書「……先ほど、貴方のお仲間だと言う方にお会いしまして」
勇者「仲間……あ、僧侶、かな?教会の方ですか?」
シスター「……本物、だった……の!?」
勇者「え?」
司書「……ご同席宜しいでしょうか」
勇者「あ、ああ……どうぞ」
シスター「…… ……」
司書「貴女もお座りなさい、シスター」
司書「私は司書と申します……こちらは、シスター」
勇者「あ、勇者です……えっと、聖職者様、ですよね?」
司書「いえ、私達は……」
キィ、コロンコロン
戦士「何人だ……えっと、4人、5人、か」
魔法使い「混んでるわねぇ」
僧侶「美味しそうな匂いがしますもの、仕方ありませ……あら?」
シスター「まあ、老女さんまで……ご免なさい、ご迷惑おかけして」
老女「いいえ、育ち盛りの子のお腹を育てられるなんて」
老女「光栄な事よ」
司書「一杯食べて下さいね。食事が済んだら、又…… ……」チラ
シスター「……司書さん?」
司書「…… ……! ……勇者、様!?」
勇者「え!?」
シスター「! ……ッ あ……ッ」
老女「まあ、お知り合い?」
勇者「え、いえ……あの……」
司書(……髪の色こそ違う。だけど……金の瞳……!)
司書(やはり、そっくりだ……!)
シスター「……貴方、が……勇者様…… ……!?」
勇者「あ……は、はい。あの……?」
司書「……先ほど、貴方のお仲間だと言う方にお会いしまして」
勇者「仲間……あ、僧侶、かな?教会の方ですか?」
シスター「……本物、だった……の!?」
勇者「え?」
司書「……ご同席宜しいでしょうか」
勇者「あ、ああ……どうぞ」
シスター「…… ……」
司書「貴女もお座りなさい、シスター」
司書「私は司書と申します……こちらは、シスター」
勇者「あ、勇者です……えっと、聖職者様、ですよね?」
司書「いえ、私達は……」
キィ、コロンコロン
戦士「何人だ……えっと、4人、5人、か」
魔法使い「混んでるわねぇ」
僧侶「美味しそうな匂いがしますもの、仕方ありませ……あら?」
286: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
兄「勇者様!」
魔導師(すぅすぅ)
勇者「戦士、魔法使い……僧侶も!?」
司書「兄君じゃないですか……あ……」
僧侶「あ……先ほどは失礼致しました」
魔法使い「……あの人達?」
兄「え、ええ……司書さんと、シスターさんです」
老女「まあ……!大変、皆座れるかしら……」
勇者「……魔導師、寝ちゃったのか」
シスター「……司書様、食事は後にして、先に子供達を連れて帰りましょう」
司書「シスター?」
シスター「僧侶さん、でしたね。貴女達もお食事、今からなのでしょう?」
僧侶「あ、は……はい」
シスター「……その頃に戻って来れば良いでしょう。子供達は」
シスター「私が見ていますから。ごゆっくり」
司書「……ありがとうございます」ジッ
シスター「…… ……何ですか、その目は」
司書「いえ……あれほど嫌がっていたのに素直だな、と」
シスター「……あんな色の瞳を見れば、疑いようもありません!」
シスター「それだけです!」
戦士「……悪いが、魔導師を寝かせて貰えないか。流石に重い」
司書「あ、すみません此方にどうぞ……ほら、貴方達!」
司書「食事が済んだら戻りますよ」
勇者「あ、あの……」
司書「……後ほど、お話頂けます、か?」
勇者「あ、はい……それは構わないですけど……」
僧侶「…… ……あ、戦士さん……魔導師君、ここに……よいしょ、と」
兄「あ、ご、ごめんなさい……!」タタタ
魔法使い「そろっとね……起きないと思うけど」
司書「では、失礼致します」
シスター「ほら、行きますよ?」
ゾロゾロ……キィ、コロンコロン……
パタン……
戦士「子供の多い村……と言う訳では無いな」
魔法使い「あの子達が……孤児、なのでしょうね」
勇者「孤児?」
僧侶「……急に静かになりましたね」
魔導師(すぅすぅ)
勇者「戦士、魔法使い……僧侶も!?」
司書「兄君じゃないですか……あ……」
僧侶「あ……先ほどは失礼致しました」
魔法使い「……あの人達?」
兄「え、ええ……司書さんと、シスターさんです」
老女「まあ……!大変、皆座れるかしら……」
勇者「……魔導師、寝ちゃったのか」
シスター「……司書様、食事は後にして、先に子供達を連れて帰りましょう」
司書「シスター?」
シスター「僧侶さん、でしたね。貴女達もお食事、今からなのでしょう?」
僧侶「あ、は……はい」
シスター「……その頃に戻って来れば良いでしょう。子供達は」
シスター「私が見ていますから。ごゆっくり」
司書「……ありがとうございます」ジッ
シスター「…… ……何ですか、その目は」
司書「いえ……あれほど嫌がっていたのに素直だな、と」
シスター「……あんな色の瞳を見れば、疑いようもありません!」
シスター「それだけです!」
戦士「……悪いが、魔導師を寝かせて貰えないか。流石に重い」
司書「あ、すみません此方にどうぞ……ほら、貴方達!」
司書「食事が済んだら戻りますよ」
勇者「あ、あの……」
司書「……後ほど、お話頂けます、か?」
勇者「あ、はい……それは構わないですけど……」
僧侶「…… ……あ、戦士さん……魔導師君、ここに……よいしょ、と」
兄「あ、ご、ごめんなさい……!」タタタ
魔法使い「そろっとね……起きないと思うけど」
司書「では、失礼致します」
シスター「ほら、行きますよ?」
ゾロゾロ……キィ、コロンコロン……
パタン……
戦士「子供の多い村……と言う訳では無いな」
魔法使い「あの子達が……孤児、なのでしょうね」
勇者「孤児?」
僧侶「……急に静かになりましたね」
287: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
勇者「て、言うか…… ……何?」
僧侶「チキンのバターソテーと、トマトクリームパスタと……」
戦士「チキンか……美味そうだな。俺も」
魔法使い「あ!勇者、それモヒートじゃないの!ズルイ!私も!」
勇者「聞けよ!」
僧侶「後、オニオングラタンスープと……ハーブパンのガーリックトースト」
魔法使い「私はミネストローネ……兄君は?」
兄「ぼ、僕はミートソースのパスタで……」
戦士「俺も聞きたい。お前……村長さんの所に行ったんじゃ無いのか」
勇者「あ? ……ああ。丁度老女さんに会ったからな」
僧侶「食いしん坊さんですね」
勇者「僧侶だけには言われたくないな、それ……」
兄「すみません、言うの忘れてしまって……」
勇者「ああ、ううん。良いんだよ……お仕事されてるんだよな」
兄「はい。村長さんと息子さんは……とても腕の良い鍛冶職人さんなので」
勇者「うん。老女さんに聞いたよ。で…… ……どう言う事?」
勇者「さっきの……司書って人とシスターって人は……聖職者なんだろ?」
僧侶「あ……いいえ。あの教会は……もう、教会では無いのだそうで」
勇者「え?」
魔法使い「魔導国から来たんですって、あの2人」
勇者「……!」
戦士「あの教会を買い取って、孤児院にするって話だったな」
兄「はい」
勇者「孤児院……じゃあ、さっきの子供達は……」
僧侶「戻って来られる、と言っていましたし……」
勇者「そうだな。憶測だけで物を言っても……」
僧侶「お腹も、すきましたし」
勇者「…… ……うん、そうだよね」ハァ
戦士「……」プッ
僧侶「チキンのバターソテーと、トマトクリームパスタと……」
戦士「チキンか……美味そうだな。俺も」
魔法使い「あ!勇者、それモヒートじゃないの!ズルイ!私も!」
勇者「聞けよ!」
僧侶「後、オニオングラタンスープと……ハーブパンのガーリックトースト」
魔法使い「私はミネストローネ……兄君は?」
兄「ぼ、僕はミートソースのパスタで……」
戦士「俺も聞きたい。お前……村長さんの所に行ったんじゃ無いのか」
勇者「あ? ……ああ。丁度老女さんに会ったからな」
僧侶「食いしん坊さんですね」
勇者「僧侶だけには言われたくないな、それ……」
兄「すみません、言うの忘れてしまって……」
勇者「ああ、ううん。良いんだよ……お仕事されてるんだよな」
兄「はい。村長さんと息子さんは……とても腕の良い鍛冶職人さんなので」
勇者「うん。老女さんに聞いたよ。で…… ……どう言う事?」
勇者「さっきの……司書って人とシスターって人は……聖職者なんだろ?」
僧侶「あ……いいえ。あの教会は……もう、教会では無いのだそうで」
勇者「え?」
魔法使い「魔導国から来たんですって、あの2人」
勇者「……!」
戦士「あの教会を買い取って、孤児院にするって話だったな」
兄「はい」
勇者「孤児院……じゃあ、さっきの子供達は……」
僧侶「戻って来られる、と言っていましたし……」
勇者「そうだな。憶測だけで物を言っても……」
僧侶「お腹も、すきましたし」
勇者「…… ……うん、そうだよね」ハァ
戦士「……」プッ
289: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
と、思ったら繋がりましたorz
290: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
兄「あ、あの……」
勇者「ん?」
兄「さっき、戦士様が言ってらした、その……」
戦士「俺?」
兄「……はい。良ければ、鍛冶師様のお話を聞きたい、のですが」
勇者「ああ……始まりの国の王様と……って言うのは?」
兄「それは聞いています。あの人は……鍛冶師様は」
兄「『鍛冶師の村の勇者様』ですから」
戦士「……『勇者』」
兄「はい。鍛冶師様のおかげで、この村にはまだ、魔石の生成方法が」
兄「伝えられていますし、その前にも、聖職者様が魔除けの石を作られたと言う」
兄「伝説が残されています」
僧侶「!」
魔法使い「さっき言ってた、シスターと駆け落ちしたって話、よね」
兄「はい。とても綺麗な方だったそうです。お二人とも」
兄「聖職者様のお話は……随分昔の話なので、本当に……『伝説』なのですが」
勇者「ん?」
兄「さっき、戦士様が言ってらした、その……」
戦士「俺?」
兄「……はい。良ければ、鍛冶師様のお話を聞きたい、のですが」
勇者「ああ……始まりの国の王様と……って言うのは?」
兄「それは聞いています。あの人は……鍛冶師様は」
兄「『鍛冶師の村の勇者様』ですから」
戦士「……『勇者』」
兄「はい。鍛冶師様のおかげで、この村にはまだ、魔石の生成方法が」
兄「伝えられていますし、その前にも、聖職者様が魔除けの石を作られたと言う」
兄「伝説が残されています」
僧侶「!」
魔法使い「さっき言ってた、シスターと駆け落ちしたって話、よね」
兄「はい。とても綺麗な方だったそうです。お二人とも」
兄「聖職者様のお話は……随分昔の話なので、本当に……『伝説』なのですが」
293: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
>>292
つ スコーン
つ スコーン
294: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
僧侶「昔…… ……では……」
勇者「……その、聖職者様、が居なくなってからずっと」
勇者「この村の教会は無人だったの?」
兄「あ、いえ……どうなんでしょう」
兄「僕が物心ついた頃にはもう……誰もいらっしゃらなかったので」
戦士「……魔除けの石を作っていた、んだよな?」
兄「はい。あの……今は、魔導国からの出荷分しか」
兄「無い、んですよね?」
魔法使い「……魔除けの石? ……まあ、封鎖されたと言うのなら」
魔法使い「それも……もう、出回らないのかもしれないけど」
兄「港街……に、昔教会があって」
僧侶「!」
兄「……そこに居た神父、と言う聖職者様が」
兄「魔除けの石を初めて作られた人だと言う話があるそうなんですが」
勇者「…… ……」
兄「発祥は、この村のあの聖職者様なんです」
兄「……この村の人達はそう、信じています。僕も……」
魔法使い「…… ……」
兄「……魔導国の人達が、この村に来た時に」
兄「村に、魔物が入ってこないのは、そのおかげだと言っていたそうなんです」
戦士「……その、聖職者の作った石があるのか?」
兄「村の奥の……北の山脈に続く道の途中に、小さな小屋があるんです」
僧侶「え…… ……」
兄「小屋、と言うより倉庫……ですかね」
兄「そこに、いくつか残って居るそうですよ」
僧侶「……川の傍の、ですか?」
魔法使い「僧侶?」
兄「え?いいえ……森の中だそうですけど、詳しい場所は、僕は……」
僧侶(じゃあ、あの小屋……じゃ、無い)
僧侶(それに、そんな魔石等…… ……見た事、無い)
勇者「……その、聖職者様、が居なくなってからずっと」
勇者「この村の教会は無人だったの?」
兄「あ、いえ……どうなんでしょう」
兄「僕が物心ついた頃にはもう……誰もいらっしゃらなかったので」
戦士「……魔除けの石を作っていた、んだよな?」
兄「はい。あの……今は、魔導国からの出荷分しか」
兄「無い、んですよね?」
魔法使い「……魔除けの石? ……まあ、封鎖されたと言うのなら」
魔法使い「それも……もう、出回らないのかもしれないけど」
兄「港街……に、昔教会があって」
僧侶「!」
兄「……そこに居た神父、と言う聖職者様が」
兄「魔除けの石を初めて作られた人だと言う話があるそうなんですが」
勇者「…… ……」
兄「発祥は、この村のあの聖職者様なんです」
兄「……この村の人達はそう、信じています。僕も……」
魔法使い「…… ……」
兄「……魔導国の人達が、この村に来た時に」
兄「村に、魔物が入ってこないのは、そのおかげだと言っていたそうなんです」
戦士「……その、聖職者の作った石があるのか?」
兄「村の奥の……北の山脈に続く道の途中に、小さな小屋があるんです」
僧侶「え…… ……」
兄「小屋、と言うより倉庫……ですかね」
兄「そこに、いくつか残って居るそうですよ」
僧侶「……川の傍の、ですか?」
魔法使い「僧侶?」
兄「え?いいえ……森の中だそうですけど、詳しい場所は、僕は……」
僧侶(じゃあ、あの小屋……じゃ、無い)
僧侶(それに、そんな魔石等…… ……見た事、無い)
295: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
勇者「それは……見せて貰う事ができるのかな」
戦士「勇者?」
兄「それは……わかりません。誰も近づきませんし」
魔法使い「そうなの?」
兄「はい。僕たちも近づいては駄目だと言われています」
僧侶「……盗まれるのを恐れて、とかでしょうか」
戦士「だが……魔除けの石だと言うのなら、村の中に置くべきじゃ無いのか?」
魔法使い「そうよね。そんな森の奥においておいても、ねぇ?」
兄「……それで、その」
兄「…… ……」
勇者「どうした?」
兄「……魔導国の人達は、とても残念だと……言っていらしたと」
戦士「残念?」
兄「はい。港街を作ったのは、始まりの国の前国王様と鍛冶師様、でしょう?」
兄「鍛冶師様の出身の村であるこの村の……その、伝説を知っているだろうに」
兄「港街の……その、神父と言う人を…… ……」
魔法使い「要するに、この村の聖職者様の話を信じていないから残念、って事?」
兄「はい。確かに、大昔の伝説なのですけど……」
兄「それを広めれば、この村も豊かになる筈なのに、と」
戦士「…… ……」
勇者「それで……話を聞きたかった、の?」
兄「それもあります。僕は……この村の勇者である鍛冶師様も」
兄「聖職者様も信じています。だから……」
戦士「……それが、魔導国との直通便を結んだ理由、か?」
兄「父から聞いた話では、魔除けの石の知識を伝えて欲しいと言われて」
兄「一つ、持ち帰られたのだと聞いています」
僧侶「魔導国の人達が、ですか?」
兄「はい……だから、あの街での生産量も質も上がった……」
兄「……ん、じゃ無いんですか?」
戦士「勇者?」
兄「それは……わかりません。誰も近づきませんし」
魔法使い「そうなの?」
兄「はい。僕たちも近づいては駄目だと言われています」
僧侶「……盗まれるのを恐れて、とかでしょうか」
戦士「だが……魔除けの石だと言うのなら、村の中に置くべきじゃ無いのか?」
魔法使い「そうよね。そんな森の奥においておいても、ねぇ?」
兄「……それで、その」
兄「…… ……」
勇者「どうした?」
兄「……魔導国の人達は、とても残念だと……言っていらしたと」
戦士「残念?」
兄「はい。港街を作ったのは、始まりの国の前国王様と鍛冶師様、でしょう?」
兄「鍛冶師様の出身の村であるこの村の……その、伝説を知っているだろうに」
兄「港街の……その、神父と言う人を…… ……」
魔法使い「要するに、この村の聖職者様の話を信じていないから残念、って事?」
兄「はい。確かに、大昔の伝説なのですけど……」
兄「それを広めれば、この村も豊かになる筈なのに、と」
戦士「…… ……」
勇者「それで……話を聞きたかった、の?」
兄「それもあります。僕は……この村の勇者である鍛冶師様も」
兄「聖職者様も信じています。だから……」
戦士「……それが、魔導国との直通便を結んだ理由、か?」
兄「父から聞いた話では、魔除けの石の知識を伝えて欲しいと言われて」
兄「一つ、持ち帰られたのだと聞いています」
僧侶「魔導国の人達が、ですか?」
兄「はい……だから、あの街での生産量も質も上がった……」
兄「……ん、じゃ無いんですか?」
296: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
勇者「……まあ、俺達もそこまで知ってる訳じゃ……無い、けど」
戦士「……兄」
兄「は、はい」
戦士「俺達が……勇者、が、始まりの国から旅立った、と言うのは」
戦士「知っている、のか?」
兄「あ、それは勿論……」
兄「でも、鍛冶師様はもう随分前に……亡くなられたんですよね?」
兄「だから……あの。勇者様はお名前ぐらいはご存じかと思っていたのですけど」
兄「……戦士様まで知っていらっしゃるって事は、その」
兄「この村以外でも、有名……なんですよね」
戦士「……お前は、幾つだ?」
兄「もうすぐ12歳になります」
戦士「……そうか。そうだな、確かに……随分昔、だ」
魔法使い「貴方、さっき……この村の聖職者様の伝説が」
魔法使い「有名になれば、この村も豊かになるのに……と、言ったわよね」
兄「え?……はい」
魔法使い「それは……魔導国の人達が……そう言ったのよね?」
僧侶「魔法使いさん?」
魔法使い「……いえ。だからって直通便を結んだって……どう言う事なのかと」
魔法使い「思って、ね……」
戦士「…… ……」
勇者「この話は、村長さんも勿論、知ってるんだよね?」
兄「はい、勿論です」
僧侶「でも……『この村の勇者様』なんですよね?」
兄「鍛冶師様ですか? ……はい」
勇者(何か矛盾してるなぁ……子供に順序立てて喋れって言っても)
勇者(無茶な話かもしれないけど……)
戦士「……兄」
兄「は、はい」
戦士「俺達が……勇者、が、始まりの国から旅立った、と言うのは」
戦士「知っている、のか?」
兄「あ、それは勿論……」
兄「でも、鍛冶師様はもう随分前に……亡くなられたんですよね?」
兄「だから……あの。勇者様はお名前ぐらいはご存じかと思っていたのですけど」
兄「……戦士様まで知っていらっしゃるって事は、その」
兄「この村以外でも、有名……なんですよね」
戦士「……お前は、幾つだ?」
兄「もうすぐ12歳になります」
戦士「……そうか。そうだな、確かに……随分昔、だ」
魔法使い「貴方、さっき……この村の聖職者様の伝説が」
魔法使い「有名になれば、この村も豊かになるのに……と、言ったわよね」
兄「え?……はい」
魔法使い「それは……魔導国の人達が……そう言ったのよね?」
僧侶「魔法使いさん?」
魔法使い「……いえ。だからって直通便を結んだって……どう言う事なのかと」
魔法使い「思って、ね……」
戦士「…… ……」
勇者「この話は、村長さんも勿論、知ってるんだよね?」
兄「はい、勿論です」
僧侶「でも……『この村の勇者様』なんですよね?」
兄「鍛冶師様ですか? ……はい」
勇者(何か矛盾してるなぁ……子供に順序立てて喋れって言っても)
勇者(無茶な話かもしれないけど……)
297: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
魔導師「……ぅ、うん」
魔法使い「あ……起きた?」
兄「あ……じゃあ、そろそろ……」
魔導師「うーん……あと、ごふん……」スゥ
兄「お、おい……起きろよ!」
戦士「……送っていこうか?」
兄「いえ……大丈夫です。抱いて帰ります。家、すぐそこですし……」
魔導師(スゥスゥ)
兄「……ご馳走様でした。ありがとうございました」
戦士「大丈夫か?」
兄「はい。あの……お話も、ありがとうございました」
魔法使い「……気をつけてね?」
兄「はい。では……失礼します」ペコ
キィ。コロンコロン……
僧侶「…… ……なんか、良く解らない話、でしたね」
戦士「お爺様の話……結局出来なかったな」
魔法使い「いえ……正解だと思うわよ」
戦士「え?」
勇者「そうだな……良く理解していないだけかもしれないが」
勇者「随分矛盾……否、無茶苦茶、が正解だな」
魔法使い「親や、他の大人から色々聞かされたんでしょう」
魔法使い「……司書って人、戻って来ないし少し整理しましょうか」
僧侶「そうですね。すみません、デザートって何かありますか?」
戦士「俺も欲しい」
勇者「……まだ食うのか」
老女「はいはい……ケーキで良いかしら」
僧侶「あ、はい!」
魔法使い「急に大きな声出さないでよ……」
老女「何か……ごめんなさいね?」
勇者「え?」
魔法使い「あ……起きた?」
兄「あ……じゃあ、そろそろ……」
魔導師「うーん……あと、ごふん……」スゥ
兄「お、おい……起きろよ!」
戦士「……送っていこうか?」
兄「いえ……大丈夫です。抱いて帰ります。家、すぐそこですし……」
魔導師(スゥスゥ)
兄「……ご馳走様でした。ありがとうございました」
戦士「大丈夫か?」
兄「はい。あの……お話も、ありがとうございました」
魔法使い「……気をつけてね?」
兄「はい。では……失礼します」ペコ
キィ。コロンコロン……
僧侶「…… ……なんか、良く解らない話、でしたね」
戦士「お爺様の話……結局出来なかったな」
魔法使い「いえ……正解だと思うわよ」
戦士「え?」
勇者「そうだな……良く理解していないだけかもしれないが」
勇者「随分矛盾……否、無茶苦茶、が正解だな」
魔法使い「親や、他の大人から色々聞かされたんでしょう」
魔法使い「……司書って人、戻って来ないし少し整理しましょうか」
僧侶「そうですね。すみません、デザートって何かありますか?」
戦士「俺も欲しい」
勇者「……まだ食うのか」
老女「はいはい……ケーキで良いかしら」
僧侶「あ、はい!」
魔法使い「急に大きな声出さないでよ……」
老女「何か……ごめんなさいね?」
勇者「え?」
298: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
老女「いえ……口を挟むべきじゃ無いかと思ってたんだけど……」
戦士「聞いてたのか」
魔法使い「そんな言い方しないの」
老女「あの子の父親が、鍛冶職人でね。母親は魔法に長けた女だったのよ」
老女「……この村の鍛冶職人は、どうしても鍛冶師様を英雄視するのよ」
僧侶「『この村の勇者様』です……よね」
老女「そう。始まりの国の王様が鉱石の洞窟を発見して、勇者様の光の剣を」
老女「修理したんだ、って話も知ってるわ」
勇者「…… ……」
老女「何年も昔の話では無いから……」
老女「……一転、魔法を使う者ってのは、ね」フゥ
魔法使い「魔導国は……憧れの街、なのね」
老女「そう。だから……魔導国との直通便、ってなると」
老女「話に飛びつくのも無理は無い、って事よ」
勇者「そこで出て来たのが、聖職者様とシスターの話か」
老女「伝説って言うと大袈裟だけど、確かにそういう話は残ってるのよ」
老女「……時代的にそっちの方が先なんだけどね」
僧侶「それは……鍛冶師様達が始まりの国を作られるより前、なのですよね?」
老女「遙か昔、ね。もう、実際に見た者だって、皆氏んでしまってるよ」
戦士「魔除けの石が残されている、と言うのは確か……なのか?」
老女「ああ……そうらしいんだけど」
老女「そこは村長さんに聞くと良いわ。私達は殆ど知らないから」
勇者「……わかりました」
老女「えっと……何だったかしらね、ああ、そうそう」
老女「聖職者様と、隻腕の祈り女様の話ね」
僧侶「え!?」
魔法使い「!」
勇者「……隻腕の、祈り……女?」
戦士「聞いてたのか」
魔法使い「そんな言い方しないの」
老女「あの子の父親が、鍛冶職人でね。母親は魔法に長けた女だったのよ」
老女「……この村の鍛冶職人は、どうしても鍛冶師様を英雄視するのよ」
僧侶「『この村の勇者様』です……よね」
老女「そう。始まりの国の王様が鉱石の洞窟を発見して、勇者様の光の剣を」
老女「修理したんだ、って話も知ってるわ」
勇者「…… ……」
老女「何年も昔の話では無いから……」
老女「……一転、魔法を使う者ってのは、ね」フゥ
魔法使い「魔導国は……憧れの街、なのね」
老女「そう。だから……魔導国との直通便、ってなると」
老女「話に飛びつくのも無理は無い、って事よ」
勇者「そこで出て来たのが、聖職者様とシスターの話か」
老女「伝説って言うと大袈裟だけど、確かにそういう話は残ってるのよ」
老女「……時代的にそっちの方が先なんだけどね」
僧侶「それは……鍛冶師様達が始まりの国を作られるより前、なのですよね?」
老女「遙か昔、ね。もう、実際に見た者だって、皆氏んでしまってるよ」
戦士「魔除けの石が残されている、と言うのは確か……なのか?」
老女「ああ……そうらしいんだけど」
老女「そこは村長さんに聞くと良いわ。私達は殆ど知らないから」
勇者「……わかりました」
老女「えっと……何だったかしらね、ああ、そうそう」
老女「聖職者様と、隻腕の祈り女様の話ね」
僧侶「え!?」
魔法使い「!」
勇者「……隻腕の、祈り……女?」
299: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
老女「ええ。何があったのか、までは知らないけれど」
老女「聖職者様がこの村に来られた後に、追いかけてこられたとか」
老女「二人とも、それはそれは美しい方だったらしいわ」
老女「神に仕える者だから……ね。どう言う仲だったのかは解らないけど」
僧侶(まさか……女、様!?)
老女「だけど、ある日突然、二人とも居なくなってしまわれた……と」
魔法使い「駆け落ち?」
老女「こんな田舎の村ですもの。誰も気にしなかっただろうに、ねぇ……」
戦士「それで……魔除けの石だけが残された、のか」
老女「その後、港街の教会で魔除けの石を売る様になった、って噂があってね」
老女「まだ、定期便なんか無かった時代だったそうだから、はっきりとは」
老女「解らないんだけど……」
勇者「それで……それからは、教会は無人、なのですか?」
老女「まだ、私がこの店の女将として働いている時にね、いらっしゃったわ」
老女「神父さん、って言う方が」
僧侶「!!」
老女「……ある日、赤ん坊を連れていらしてね」
魔法使い「…… ……」
老女「ああ、そうそう。そっちのお嬢さんの様にね」
老女「水色の髪に、水色の瞳をした、可愛い赤ちゃんでね」
僧侶「…… ……」
老女「神父さんも、最初の頃はこの街の教会に通っていらしたんだけど」
老女「何時からか、赤ちゃんも神父さんも見かけなくなったわ」
勇者「…… ……」
老女「もう、随分大きくなったでしょうね」
老女「そのお嬢さんより、もう少し年上だろうと思うけどね」
戦士「…… ……」
老女「聖職者様がこの村に来られた後に、追いかけてこられたとか」
老女「二人とも、それはそれは美しい方だったらしいわ」
老女「神に仕える者だから……ね。どう言う仲だったのかは解らないけど」
僧侶(まさか……女、様!?)
老女「だけど、ある日突然、二人とも居なくなってしまわれた……と」
魔法使い「駆け落ち?」
老女「こんな田舎の村ですもの。誰も気にしなかっただろうに、ねぇ……」
戦士「それで……魔除けの石だけが残された、のか」
老女「その後、港街の教会で魔除けの石を売る様になった、って噂があってね」
老女「まだ、定期便なんか無かった時代だったそうだから、はっきりとは」
老女「解らないんだけど……」
勇者「それで……それからは、教会は無人、なのですか?」
老女「まだ、私がこの店の女将として働いている時にね、いらっしゃったわ」
老女「神父さん、って言う方が」
僧侶「!!」
老女「……ある日、赤ん坊を連れていらしてね」
魔法使い「…… ……」
老女「ああ、そうそう。そっちのお嬢さんの様にね」
老女「水色の髪に、水色の瞳をした、可愛い赤ちゃんでね」
僧侶「…… ……」
老女「神父さんも、最初の頃はこの街の教会に通っていらしたんだけど」
老女「何時からか、赤ちゃんも神父さんも見かけなくなったわ」
勇者「…… ……」
老女「もう、随分大きくなったでしょうね」
老女「そのお嬢さんより、もう少し年上だろうと思うけどね」
戦士「…… ……」
300: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
キィ。コロンコロン……
司書「……ああ、良かった。まだいらっしゃいましたか」ホッ
シスター「だから先に行って下さい、って言ったのに……」
勇者「あ……」
司書「遅くなってすみません。勇者様のお姿を見たからなのか」
司書「中々、寝付かなくて……」
シスター「…… ……」
老女「あらあら、二人とも来られたのね」
シスター「一時間程お昼寝するでしょうから……私は、すぐに戻ります」
老女「あ……ごめんなさい、ケーキだったわね」
司書「私達も、何か食事をお願いします」
老女「ええ、わかりました……少し待っててね」
勇者「……貴方達は、魔導国から来られた……んですよね」
司書「兄君に聞きましたか……彼は?」
魔法使い「魔導師君を連れて、家に戻ったわ」
シスター「…… ……」ジィ
勇者「あ、あの……何か……」
司書「……シスター」ハァ
シスター「信じられないわ……こんなにそっくりだなんて」
魔法使い「そっくり?」
司書「さっき、信じざるを得ないと……」
シスター「そういう事を言っているんじゃ無いですって!」
勇者「……俺が、誰かに似ているんですか?」
司書「先に、これを見て頂けませんか?」スッ
僧侶「!!」
魔法使い「……この絵、僧侶に似てる」
戦士「随分古い……物だな」
司書「……ああ、良かった。まだいらっしゃいましたか」ホッ
シスター「だから先に行って下さい、って言ったのに……」
勇者「あ……」
司書「遅くなってすみません。勇者様のお姿を見たからなのか」
司書「中々、寝付かなくて……」
シスター「…… ……」
老女「あらあら、二人とも来られたのね」
シスター「一時間程お昼寝するでしょうから……私は、すぐに戻ります」
老女「あ……ごめんなさい、ケーキだったわね」
司書「私達も、何か食事をお願いします」
老女「ええ、わかりました……少し待っててね」
勇者「……貴方達は、魔導国から来られた……んですよね」
司書「兄君に聞きましたか……彼は?」
魔法使い「魔導師君を連れて、家に戻ったわ」
シスター「…… ……」ジィ
勇者「あ、あの……何か……」
司書「……シスター」ハァ
シスター「信じられないわ……こんなにそっくりだなんて」
魔法使い「そっくり?」
司書「さっき、信じざるを得ないと……」
シスター「そういう事を言っているんじゃ無いですって!」
勇者「……俺が、誰かに似ているんですか?」
司書「先に、これを見て頂けませんか?」スッ
僧侶「!!」
魔法使い「……この絵、僧侶に似てる」
戦士「随分古い……物だな」
301: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
司書「先ほど……教会で僧侶さんに会った時、驚きました」
司書「……この本に、見覚えとかは……ありませんか?」
僧侶「…… ……あ、あの!中を見せて頂いても!?」
司書「勿論です……が、多分落丁していると思いますので」
司書「意味が分かるかどうか……」
僧侶「か、構いません!」ペラ
魔法使い「……この本が、何なの?」
司書「中身は、御伽噺です。エルフのお姫様のお話……です」
戦士「エルフ……!」
司書「……どこから、お話して良い物か……迷う、のですが」
魔法使い「見覚えって……どう言う事よ?」
司書「……昔、私がまだ若い頃……私は、港街の教会に仕えていました」
魔法使い「え!? ……だって、貴方達魔導国から来たんじゃないの?」
司書「はい。 ……私は、港街の教会から、魔導国へ移り住んだんです」
戦士「移住を許された……のか? と言う事は……」
司書「……優れた加護は持っていません、よ」
魔法使い「…… ……待って、貴方……」
司書「思い出して頂けましたか?」
勇者「え?」
司書「……お久しぶりです、魔法使いお嬢様」
魔法使い「!!」
シスター「…… ……」
勇者「知り合い……か? いや、でも……」
魔法使い「図書館の……人、よね……?」
司書「……はい。お話した事は殆どありませんでした、けどね」
魔法使い「…… ……」ギュッ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「あ、ああ……いえ。ちょっと……吃驚、して……」
魔法使い(こんな所で……私を知ってる人に、会うなんて……!!)
魔法使い(……手が、震える。大丈夫……大丈夫よ、落ち着きなさい、私!)
司書「……この本に、見覚えとかは……ありませんか?」
僧侶「…… ……あ、あの!中を見せて頂いても!?」
司書「勿論です……が、多分落丁していると思いますので」
司書「意味が分かるかどうか……」
僧侶「か、構いません!」ペラ
魔法使い「……この本が、何なの?」
司書「中身は、御伽噺です。エルフのお姫様のお話……です」
戦士「エルフ……!」
司書「……どこから、お話して良い物か……迷う、のですが」
魔法使い「見覚えって……どう言う事よ?」
司書「……昔、私がまだ若い頃……私は、港街の教会に仕えていました」
魔法使い「え!? ……だって、貴方達魔導国から来たんじゃないの?」
司書「はい。 ……私は、港街の教会から、魔導国へ移り住んだんです」
戦士「移住を許された……のか? と言う事は……」
司書「……優れた加護は持っていません、よ」
魔法使い「…… ……待って、貴方……」
司書「思い出して頂けましたか?」
勇者「え?」
司書「……お久しぶりです、魔法使いお嬢様」
魔法使い「!!」
シスター「…… ……」
勇者「知り合い……か? いや、でも……」
魔法使い「図書館の……人、よね……?」
司書「……はい。お話した事は殆どありませんでした、けどね」
魔法使い「…… ……」ギュッ
勇者「魔法使い?」
魔法使い「あ、ああ……いえ。ちょっと……吃驚、して……」
魔法使い(こんな所で……私を知ってる人に、会うなんて……!!)
魔法使い(……手が、震える。大丈夫……大丈夫よ、落ち着きなさい、私!)
302: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
司書「……港街を出て、私は……魔導国の司書として働き出したのです」
勇者「ちょ、ちょっと待て。いや、確かに魔法使いから」
勇者「優れた加護が無くても、何か『利』があればあの街に」
勇者「住む事はできる、と聞いた、けど……」
司書「この街に来て、漸く合点がいきました」
司書「確かに、『利』があったのですよ」
勇者「え?」
司書「私は……港街の教会から本を数冊持ち出したのです」
司書「魔石の生成方法や、具現化の方法……等の本、です」
魔法使い「え!?」
司書「お嬢様は……多分、お読みになられていないと思いますけど」
魔法使い「……そうね。メイドの目を盗んで他の本を読んだ事もあったけど」
魔法使い「そんな物は……見つけられなかったわ」
司書「……最初は、厳重に別室に補完されていましたから」
戦士「最初……は?」
司書「ええ。始まりの国の国王様が……いらっしゃった時に」
司書「全て誰でも閲覧出来る様にしろ、と指示されるまで、ですけど」
戦士「……!」
勇者「それが……『利』? 確かに、稀少な本なんだろうけど……」
勇者「合点がいった、と言うのは……?」
司書「兄君から聞いていませんか?」
魔法使い「……この村では、魔石を作る方法が伝わっている……て、奴?」
勇者「否……魔除けの石の話の方だろう?」
司書「そうです、勇者様……では、『聖職者様の伝説』のお話も」
司書「……聞きました、よね」
戦士「それとこの本と何の関係があるんだ?」
司書「……港街を出たのは、私だけでは無いんです」
司書「新米神官、と言う者も、あの教会から他の土地へと旅立ちました」
司書「……その男が、この……エルフの本を持ち出した、のです」
勇者「ん……うん?」
司書「そして……あの、買い取った教会で見つけたのです」
魔法使い「……同じ本だ、と言いたいの?でも……」
勇者「ちょ、ちょっと待て。いや、確かに魔法使いから」
勇者「優れた加護が無くても、何か『利』があればあの街に」
勇者「住む事はできる、と聞いた、けど……」
司書「この街に来て、漸く合点がいきました」
司書「確かに、『利』があったのですよ」
勇者「え?」
司書「私は……港街の教会から本を数冊持ち出したのです」
司書「魔石の生成方法や、具現化の方法……等の本、です」
魔法使い「え!?」
司書「お嬢様は……多分、お読みになられていないと思いますけど」
魔法使い「……そうね。メイドの目を盗んで他の本を読んだ事もあったけど」
魔法使い「そんな物は……見つけられなかったわ」
司書「……最初は、厳重に別室に補完されていましたから」
戦士「最初……は?」
司書「ええ。始まりの国の国王様が……いらっしゃった時に」
司書「全て誰でも閲覧出来る様にしろ、と指示されるまで、ですけど」
戦士「……!」
勇者「それが……『利』? 確かに、稀少な本なんだろうけど……」
勇者「合点がいった、と言うのは……?」
司書「兄君から聞いていませんか?」
魔法使い「……この村では、魔石を作る方法が伝わっている……て、奴?」
勇者「否……魔除けの石の話の方だろう?」
司書「そうです、勇者様……では、『聖職者様の伝説』のお話も」
司書「……聞きました、よね」
戦士「それとこの本と何の関係があるんだ?」
司書「……港街を出たのは、私だけでは無いんです」
司書「新米神官、と言う者も、あの教会から他の土地へと旅立ちました」
司書「……その男が、この……エルフの本を持ち出した、のです」
勇者「ん……うん?」
司書「そして……あの、買い取った教会で見つけたのです」
魔法使い「……同じ本だ、と言いたいの?でも……」
303: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
司書「勿論、唯一品と言う絶対の証拠もありませんけど……」
司書「……他で、見た事が無い物ですし。内容が内容ですから」
戦士「……話の内容、か? ……僧侶?」
僧侶「……こ、れ……は……本当に、御伽噺、なのですか……?」
魔法使い「え?」
僧侶「……落丁、してるのかもしれない、のですよね?」
司書「ええ……多分、ですけど」
僧侶(確かに、この絵は私にそっくり……! だけど……!)
魔法使い「……私にも見せて頂戴」ペラ
僧侶(しかし、これが真実だなんて言う証拠も、何処にも……!)
司書「老女さんに聞いたんです。あの教会に……神父、と言う聖職者が居たと」
僧侶「!」
勇者「ああ……それは、さっき俺達も聞いたよ」
司書「…… ……港街の教会を作られた偉大な聖職者様の名前も……」
僧侶「……ッ 神父様!」
司書「え……あ、ご存じ、なのですか!?」
僧侶「あ…… いえ、あの……ッ」
僧侶(どうしよう……!もし、この話が本当なら……!)
僧侶(私は……エルフは、嘘が吐けない、と言う事になる……!)
僧侶(でも……では。嘘を吐いたら、どうなるの!?)
戦士「……鍛冶師は、俺のお爺様だ」
司書「え!?」
戦士「盗賊がお祖母様……父は現騎士団長」
司書「…… ……」
戦士「……幼い頃には、女剣士様にもお会いした事がある」
戦士「少しだけだが……話は聞いている」
僧侶(戦士さん……)
勇者「…… ……」
司書「……他で、見た事が無い物ですし。内容が内容ですから」
戦士「……話の内容、か? ……僧侶?」
僧侶「……こ、れ……は……本当に、御伽噺、なのですか……?」
魔法使い「え?」
僧侶「……落丁、してるのかもしれない、のですよね?」
司書「ええ……多分、ですけど」
僧侶(確かに、この絵は私にそっくり……! だけど……!)
魔法使い「……私にも見せて頂戴」ペラ
僧侶(しかし、これが真実だなんて言う証拠も、何処にも……!)
司書「老女さんに聞いたんです。あの教会に……神父、と言う聖職者が居たと」
僧侶「!」
勇者「ああ……それは、さっき俺達も聞いたよ」
司書「…… ……港街の教会を作られた偉大な聖職者様の名前も……」
僧侶「……ッ 神父様!」
司書「え……あ、ご存じ、なのですか!?」
僧侶「あ…… いえ、あの……ッ」
僧侶(どうしよう……!もし、この話が本当なら……!)
僧侶(私は……エルフは、嘘が吐けない、と言う事になる……!)
僧侶(でも……では。嘘を吐いたら、どうなるの!?)
戦士「……鍛冶師は、俺のお爺様だ」
司書「え!?」
戦士「盗賊がお祖母様……父は現騎士団長」
司書「…… ……」
戦士「……幼い頃には、女剣士様にもお会いした事がある」
戦士「少しだけだが……話は聞いている」
僧侶(戦士さん……)
勇者「…… ……」
304: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
司書「そ、う……なのですか……」
シスター「貴方が、騎士団長の息子……!?」
戦士「……なんだ、急に」
シスター「……勇者様のお供が、魔導国のお嬢様に騎士団長の息子」
司書「シスター!」
シスター「…… ……ッ 私、先に失礼します」スッ
スタスタスタ、バタン!
コロン、コロン……
勇者「な……なんだ?」
司書「……すみません。彼女は……その。そういうあの……家柄、とかに」
司書「ちょっと……コンプレックスが……」
魔法使い「…… ……」
司書「何処まで話しましたか……ええと」
僧侶「……神父様、と仰るのですよね。港街の……」
司書「……ああ、そうです。新米神官は……神父様をとても敬愛していました」
司書「それで……教会を出る時に、当時あの教会を管理していらっしゃった」
司書「女神官と言う方に、神父様の名を名乗る事を許してくれ、と……」
勇者「……それで、ここでこのエルフの本を見つけたから」
勇者「同じ人物だと思った、て事か」
司書「はい……ただ、彼はとても……魔除けの石を作る事を」
司書「嫌っていたと聞いていたので……」
僧侶「え……?」
司書「……選んだ先がこの村であったならば、随分な皮肉だと思いまして」
魔法使い「…… ……聖職者様の伝説、ね」フゥ
戦士「もう読んだのか」
魔法使い「次、どうぞ?」
勇者「嫌ってた、てのは……どう言う事なんだ?」
司書「女神官様に聞いたに過ぎないのですが……」
司書「……私と新米神官は、少し歳が離れて居たので」
司書「あまり、話し込んだこと等は無いんですけれど」
司書「……女様、と言う、隻腕の祈り女様が昔、港街にいらっしゃったそうで」
勇者「!」
僧侶「…… ……」
シスター「貴方が、騎士団長の息子……!?」
戦士「……なんだ、急に」
シスター「……勇者様のお供が、魔導国のお嬢様に騎士団長の息子」
司書「シスター!」
シスター「…… ……ッ 私、先に失礼します」スッ
スタスタスタ、バタン!
コロン、コロン……
勇者「な……なんだ?」
司書「……すみません。彼女は……その。そういうあの……家柄、とかに」
司書「ちょっと……コンプレックスが……」
魔法使い「…… ……」
司書「何処まで話しましたか……ええと」
僧侶「……神父様、と仰るのですよね。港街の……」
司書「……ああ、そうです。新米神官は……神父様をとても敬愛していました」
司書「それで……教会を出る時に、当時あの教会を管理していらっしゃった」
司書「女神官と言う方に、神父様の名を名乗る事を許してくれ、と……」
勇者「……それで、ここでこのエルフの本を見つけたから」
勇者「同じ人物だと思った、て事か」
司書「はい……ただ、彼はとても……魔除けの石を作る事を」
司書「嫌っていたと聞いていたので……」
僧侶「え……?」
司書「……選んだ先がこの村であったならば、随分な皮肉だと思いまして」
魔法使い「…… ……聖職者様の伝説、ね」フゥ
戦士「もう読んだのか」
魔法使い「次、どうぞ?」
勇者「嫌ってた、てのは……どう言う事なんだ?」
司書「女神官様に聞いたに過ぎないのですが……」
司書「……私と新米神官は、少し歳が離れて居たので」
司書「あまり、話し込んだこと等は無いんですけれど」
司書「……女様、と言う、隻腕の祈り女様が昔、港街にいらっしゃったそうで」
勇者「!」
僧侶「…… ……」
305: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
司書「港街の神父様に、魔除けの石の生成方法をお教えしたのが」
司書「その、女様だったらしいのです」
司書「……そして、神父様は彼女を敬愛していらした、と」
僧侶「…… ……隻腕の、祈り女、様」
司書「お聞きになった、のですよね。この村の『伝説』」
魔法使い「ええ。聖職者様と駆け落ちしたシスターも……」
司書「はい。同一人物かどうかの保証などありませんが……」
司書「……はっきりした時代も、解りませんしね」
勇者「…… ……成る程。確かに皮肉だな」
司書「老女さんにお聞きした話では、いつの間にか姿を見せなくなったと」
司書「言いますし……ただ」
司書「余りにも……余りにも、僧侶さんが、この本の絵に……似て、いらしたので」
勇者「話したい事、と言うのは……それか?」
司書「……あ、いえ。すみません、こんな話は……私の、自己満足に過ぎません」
司書「私ですら……もう、老人です」
司書「彼は、もう……生きては居ないのかもしれません」
司書「ただ……健やかであってくれたのなら、と……」
僧侶「…… ……」
戦士「……勇者」スッ
勇者「ん? ……ああ」パラ
魔法使い「でも……その、合点がいった、てのは何、なの?」
魔法使い「この本は関係無いんでしょ?」
司書「……魔石は、魔除けの石を残して、もう生産されていません」
司書「発祥は港街……盗賊様だと知っておられます、か?」
戦士「ああ……聞いている」
司書「そして……この村には、鍛冶師様がお伝えになっている」
魔法使い「……魔導国の者が、この村に来ている、のよね?」
司書「ええ。直通便を繋ぐと言う契約を結んでいますから」
僧侶「兄君のお話では……少し、わかりにくかったのですが……」
司書「その、女様だったらしいのです」
司書「……そして、神父様は彼女を敬愛していらした、と」
僧侶「…… ……隻腕の、祈り女、様」
司書「お聞きになった、のですよね。この村の『伝説』」
魔法使い「ええ。聖職者様と駆け落ちしたシスターも……」
司書「はい。同一人物かどうかの保証などありませんが……」
司書「……はっきりした時代も、解りませんしね」
勇者「…… ……成る程。確かに皮肉だな」
司書「老女さんにお聞きした話では、いつの間にか姿を見せなくなったと」
司書「言いますし……ただ」
司書「余りにも……余りにも、僧侶さんが、この本の絵に……似て、いらしたので」
勇者「話したい事、と言うのは……それか?」
司書「……あ、いえ。すみません、こんな話は……私の、自己満足に過ぎません」
司書「私ですら……もう、老人です」
司書「彼は、もう……生きては居ないのかもしれません」
司書「ただ……健やかであってくれたのなら、と……」
僧侶「…… ……」
戦士「……勇者」スッ
勇者「ん? ……ああ」パラ
魔法使い「でも……その、合点がいった、てのは何、なの?」
魔法使い「この本は関係無いんでしょ?」
司書「……魔石は、魔除けの石を残して、もう生産されていません」
司書「発祥は港街……盗賊様だと知っておられます、か?」
戦士「ああ……聞いている」
司書「そして……この村には、鍛冶師様がお伝えになっている」
魔法使い「……魔導国の者が、この村に来ている、のよね?」
司書「ええ。直通便を繋ぐと言う契約を結んでいますから」
僧侶「兄君のお話では……少し、わかりにくかったのですが……」
306: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
司書「……魔導国は、この村に残された魔除けの石を持ち帰り」
司書「その石の生成方法を、私の持ち込んだ本を使って研究していました」
魔法使い「それが……『利』?」
司書「……あの国が封鎖されたのは勿論、ご存じですよね?」
戦士「ああ。お前達は……それがあって逃げ出した、のでは無いのか?」
司書「私達は……優れた加護を持つ者ではありませんから」
司書「『追放された』の間違いです」
魔法使い「!」
勇者「追放……?」
司書「はい……この村へ来たのは、確かに船があったから、ですが」
司書「……他に居るより、安全だと思ったから、です」
僧侶「どう言う事……ですか?」
司書「この村が……魔石を作り、特殊な武器等を作っている事は?」
勇者「ああ。兄君に聞いた」
司書「……表だっての直通便等は無いでしょうが、あの国と取引をしている」
司書「船があるのです……何度か、見かけています」
勇者「定期便以外……と言う事か?」
司書「はい。海賊船との噂もありますけど……」
魔法使い「海賊船!?」
司書「……噂に過ぎませんが、ね。何処にも所属して居ない船が一隻、あると」
魔法使い「……そ、んな……!」
司書「その船を使えば、ここから魔導国への行き来は出来ますから」
司書「……それに、この村に居れば……シスターを守る事もできますから」
戦士「守る?」
司書「彼女は……領主の一族の一人です」
魔法使い「え!? ……嘘でしょ? ……見た事、無いわよ」
司書「…… ……優れた加護を、持っていませんから」
魔法使い「!!」
司書「……奴隷の様な扱いをされていたらしいです」
司書「それに、私達は追放されましたが、一族の中の……そう、言う」
司書「加護を持たない者は、『出来損ない』と呼ばれ……」
司書「その石の生成方法を、私の持ち込んだ本を使って研究していました」
魔法使い「それが……『利』?」
司書「……あの国が封鎖されたのは勿論、ご存じですよね?」
戦士「ああ。お前達は……それがあって逃げ出した、のでは無いのか?」
司書「私達は……優れた加護を持つ者ではありませんから」
司書「『追放された』の間違いです」
魔法使い「!」
勇者「追放……?」
司書「はい……この村へ来たのは、確かに船があったから、ですが」
司書「……他に居るより、安全だと思ったから、です」
僧侶「どう言う事……ですか?」
司書「この村が……魔石を作り、特殊な武器等を作っている事は?」
勇者「ああ。兄君に聞いた」
司書「……表だっての直通便等は無いでしょうが、あの国と取引をしている」
司書「船があるのです……何度か、見かけています」
勇者「定期便以外……と言う事か?」
司書「はい。海賊船との噂もありますけど……」
魔法使い「海賊船!?」
司書「……噂に過ぎませんが、ね。何処にも所属して居ない船が一隻、あると」
魔法使い「……そ、んな……!」
司書「その船を使えば、ここから魔導国への行き来は出来ますから」
司書「……それに、この村に居れば……シスターを守る事もできますから」
戦士「守る?」
司書「彼女は……領主の一族の一人です」
魔法使い「え!? ……嘘でしょ? ……見た事、無いわよ」
司書「…… ……優れた加護を、持っていませんから」
魔法使い「!!」
司書「……奴隷の様な扱いをされていたらしいです」
司書「それに、私達は追放されましたが、一族の中の……そう、言う」
司書「加護を持たない者は、『出来損ない』と呼ばれ……」
307: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
魔法使い「……ッ」
司書「……改めて、奴隷や……人体実験に使う為に、呼び戻されていると」
司書「言うのです」
僧侶「そんな……!」
司書「…… ……彼女以外は全て、あの国の血筋の者ではありませんから」
司書「良いのですが……シスターは……」
戦士「それで……あえてこの村に、来た、のか」
僧侶「き、危険では無いのですか!?」
司書「様々な場所に、使者を送り込んでいると聞きますから」
司書「……表だっては居なくても、交流がある分、マシかと思ったのですが」
司書「わかりません……選択を誤っていなければ良い、と」
司書「願うばかり……です」
勇者「……しかし、おかしく無いか?」
僧侶「え?」
勇者「持ち帰って、研究って……魔導国の聖職者だって、作れるんだろう?」
勇者「魔除けの石……それに」
戦士「……そうだな。村の外れに残ってる、と言う」
戦士「兄の説明も腑に落ちん」
魔法使い「本来なら村の中に置くわよね。魔物が来ない様、に」
僧侶「……村の外れにおいても、効果がある程凄い石……?」
魔法使い「それもおかしいわよ。それに……もし、それがそんなに効果のあるものなら」
魔法使い「それ程『特別』な物なら、お爺様達なら、全部奪っていきそうなのに」
戦士「……全部は奪わない変わりに、武器の輸出を約束させた……とか?」
勇者「……最初から戦争を起こすつもりだったのなら、それも考えられる……けど」
魔法使い「独占するために? でも……」
僧侶「……だから、鍛冶師様の不評を流したのでしょうか」
魔法使い「え?」
僧侶「始まりの国に不信感を持つ様になれば、自ずと独占に傾きますよ?」
戦士「……だが、鍛冶職人達は変わらず、お爺様を『勇者』だと……言うのだろう」
僧侶「……あ、そうか。そうですね……」
司書「……改めて、奴隷や……人体実験に使う為に、呼び戻されていると」
司書「言うのです」
僧侶「そんな……!」
司書「…… ……彼女以外は全て、あの国の血筋の者ではありませんから」
司書「良いのですが……シスターは……」
戦士「それで……あえてこの村に、来た、のか」
僧侶「き、危険では無いのですか!?」
司書「様々な場所に、使者を送り込んでいると聞きますから」
司書「……表だっては居なくても、交流がある分、マシかと思ったのですが」
司書「わかりません……選択を誤っていなければ良い、と」
司書「願うばかり……です」
勇者「……しかし、おかしく無いか?」
僧侶「え?」
勇者「持ち帰って、研究って……魔導国の聖職者だって、作れるんだろう?」
勇者「魔除けの石……それに」
戦士「……そうだな。村の外れに残ってる、と言う」
戦士「兄の説明も腑に落ちん」
魔法使い「本来なら村の中に置くわよね。魔物が来ない様、に」
僧侶「……村の外れにおいても、効果がある程凄い石……?」
魔法使い「それもおかしいわよ。それに……もし、それがそんなに効果のあるものなら」
魔法使い「それ程『特別』な物なら、お爺様達なら、全部奪っていきそうなのに」
戦士「……全部は奪わない変わりに、武器の輸出を約束させた……とか?」
勇者「……最初から戦争を起こすつもりだったのなら、それも考えられる……けど」
魔法使い「独占するために? でも……」
僧侶「……だから、鍛冶師様の不評を流したのでしょうか」
魔法使い「え?」
僧侶「始まりの国に不信感を持つ様になれば、自ずと独占に傾きますよ?」
戦士「……だが、鍛冶職人達は変わらず、お爺様を『勇者』だと……言うのだろう」
僧侶「……あ、そうか。そうですね……」
308: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
司書「……内部分裂とまではいかないも知れませんが」
司書「混乱のある場の方が、支配しやすいのかもしれません」
魔法使い「……これだけこんがらがってると、目的以外の相乗効果はあるものよ」
魔法使い「良くも悪くも、ね」
勇者「…… ……」
僧侶「とにかく……確かめないといけませんね」
魔法使い「村長さんに……ね」
勇者「魔王の復活も止めないと行けないのにな……糞ッ」
勇者「人間同士で、争っている場合じゃ無いのに……!」
司書「……本当に、よく似ていらっしゃる」
勇者「そうだ。さっき言っていたな。シスターが……」
勇者「信じられない程、そっくりだ……だったか」
司書「…… ……」
僧侶「司書さん?」
司書「……お嬢様は、覚えていらっしゃいますか、剣士さんと言う……」
魔法使い「!」
戦士「……ッ 紫の瞳の男、か!」
司書「…… ……ご存じでしたか」フゥ
勇者「闇色の髪に、紫の瞳の男、だな」
勇者「……俺と同じ顔をした、男」
司書「今……また、魔導国にいらっしゃいます」
司書「お嬢様は覚えていらっしゃるかどうか解りませんが……」
魔法使い「……幼い頃、お爺様の家に居たのよね?」
司書「……はい。毎日、図書館においでになっていました」
司書「今でも覚えて居ます……『此処の本を全て読むのにはどれぐらい掛かる』と」
司書「訪ねられた……事を」
魔法使い「でも……何時からかみかけなくなったわ」
司書「ええ……どうしたと領主様達に訪ねる事はできませんでしたが」
司書「……シスターを迎えに行った時に、会いました」
勇者「奴隷の様な扱いをされていた、んだよな」
司書「……はい。いい歳をして、恥ずかしいのですが……」
僧侶「恋人……ですか?」
司書「いえいえ!まさか……! ……娘の様な物ですよ」
司書「混乱のある場の方が、支配しやすいのかもしれません」
魔法使い「……これだけこんがらがってると、目的以外の相乗効果はあるものよ」
魔法使い「良くも悪くも、ね」
勇者「…… ……」
僧侶「とにかく……確かめないといけませんね」
魔法使い「村長さんに……ね」
勇者「魔王の復活も止めないと行けないのにな……糞ッ」
勇者「人間同士で、争っている場合じゃ無いのに……!」
司書「……本当に、よく似ていらっしゃる」
勇者「そうだ。さっき言っていたな。シスターが……」
勇者「信じられない程、そっくりだ……だったか」
司書「…… ……」
僧侶「司書さん?」
司書「……お嬢様は、覚えていらっしゃいますか、剣士さんと言う……」
魔法使い「!」
戦士「……ッ 紫の瞳の男、か!」
司書「…… ……ご存じでしたか」フゥ
勇者「闇色の髪に、紫の瞳の男、だな」
勇者「……俺と同じ顔をした、男」
司書「今……また、魔導国にいらっしゃいます」
司書「お嬢様は覚えていらっしゃるかどうか解りませんが……」
魔法使い「……幼い頃、お爺様の家に居たのよね?」
司書「……はい。毎日、図書館においでになっていました」
司書「今でも覚えて居ます……『此処の本を全て読むのにはどれぐらい掛かる』と」
司書「訪ねられた……事を」
魔法使い「でも……何時からかみかけなくなったわ」
司書「ええ……どうしたと領主様達に訪ねる事はできませんでしたが」
司書「……シスターを迎えに行った時に、会いました」
勇者「奴隷の様な扱いをされていた、んだよな」
司書「……はい。いい歳をして、恥ずかしいのですが……」
僧侶「恋人……ですか?」
司書「いえいえ!まさか……! ……娘の様な物ですよ」
309: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
司書「……何時からか、図書館に来なくなりましてね」
司書「どうしたのかと訝しんでいると……優れた加護が無い事が」
司書「はっきりと解ったから、下働きの様な事をさせられているらしいと」
司書「噂を聞きまして……」
僧侶「……連れ出した、のですか?」
司書「私達の追放は決まっていましたから。出立の朝早くに、迎えに行ったんです」
司書「良ければ一緒に行こう、と」
戦士「……そんな都合良く……」
司書「……ええ。ですが、彼女は剣士さんに連れられて、外に居ました」
魔法使い「助けてくれた……って、事?」
僧侶「…… ……」
司書「昔と、寸分違わぬ姿で……驚きましたよ」
司書「……ただ、彼女を危険な目に遭わす訳にも行かないので」
司書「特に会話もせず、すぐにその場を離れましたけど……」
僧侶「教会でお会いした時、私に本物なのかと聞いたのは……?」
司書「……領主様が、仰っていたそうです」
司書「『剣士様は、魔導国の勇者様』だ、と」
戦士「!?」
司書「……港街の勇者様のお話はご存じ、でしょうか?」
キィ、コロン、コロン……
村長「すみません、勇者様……!仕事が長引いてしまって……」
村長「おや、司書さん……」
司書「……本日は、村長さんのお家にお泊まりになるのでしたね」スッ
勇者「あ……」
司書「また明日、時間があればお寄り下さい……本は、その時で結構ですよ」
司書「それでは、村長さん。私はこれで……」
村長「あ、ああ……」
キィ。コロンコロン
司書「どうしたのかと訝しんでいると……優れた加護が無い事が」
司書「はっきりと解ったから、下働きの様な事をさせられているらしいと」
司書「噂を聞きまして……」
僧侶「……連れ出した、のですか?」
司書「私達の追放は決まっていましたから。出立の朝早くに、迎えに行ったんです」
司書「良ければ一緒に行こう、と」
戦士「……そんな都合良く……」
司書「……ええ。ですが、彼女は剣士さんに連れられて、外に居ました」
魔法使い「助けてくれた……って、事?」
僧侶「…… ……」
司書「昔と、寸分違わぬ姿で……驚きましたよ」
司書「……ただ、彼女を危険な目に遭わす訳にも行かないので」
司書「特に会話もせず、すぐにその場を離れましたけど……」
僧侶「教会でお会いした時、私に本物なのかと聞いたのは……?」
司書「……領主様が、仰っていたそうです」
司書「『剣士様は、魔導国の勇者様』だ、と」
戦士「!?」
司書「……港街の勇者様のお話はご存じ、でしょうか?」
キィ、コロン、コロン……
村長「すみません、勇者様……!仕事が長引いてしまって……」
村長「おや、司書さん……」
司書「……本日は、村長さんのお家にお泊まりになるのでしたね」スッ
勇者「あ……」
司書「また明日、時間があればお寄り下さい……本は、その時で結構ですよ」
司書「それでは、村長さん。私はこれで……」
村長「あ、ああ……」
キィ。コロンコロン
310: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
勇者「あ…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「もうそんな時間なのね……」
村長「すみませんでした、遅くなりまして」
勇者「……いえ。此方こそ。訪ねて行く約束だったのに、すみません」
村長「ここに居ると言うことは、お食事はお済みですかな」
僧侶「あ……はい」
村長「いや、良いのですよ。此処は美味い飯を出しますしね」
村長「この、コロンコロンというドアベルの音を聞くだけで」
村長「腹が減ってしまう位です……いや、お待たせしました」
村長「家には息子も待たせてありますので、どうぞ。ご案内致します」
勇者(……しかし、今日一日でどれだけの話を聞いたんだか)
勇者(流石に疲れてきた……しかし、港街の勇者?)
勇者(……聞いた事が無い)
僧侶(この……本。もし、本当に神父様の持ち物だとするのなら)
僧侶(私の母……エルフの事を、知ってた?)
僧侶(否……そうとは限らない。でも……!)
魔法使い(剣士が、魔導国に居る……!)
魔法使い(……何の為に。何が目的で!?)
魔法使い(お爺様達は……本当に、何を考えて居るの!?)
戦士(魔除けの石だの、直通便だの……)
戦士(この村は……どこか怪しい、な)
戦士(兄の話もそうだが……どうにも、当を得ない)
勇者(真実は……余りにも遠い)
僧侶(……知りたい!だけど……)
魔法使い(私達の目的は、魔王を倒す事、なのに……!)
戦士(……見失う訳には、いかない!)
僧侶「…… ……」
魔法使い「もうそんな時間なのね……」
村長「すみませんでした、遅くなりまして」
勇者「……いえ。此方こそ。訪ねて行く約束だったのに、すみません」
村長「ここに居ると言うことは、お食事はお済みですかな」
僧侶「あ……はい」
村長「いや、良いのですよ。此処は美味い飯を出しますしね」
村長「この、コロンコロンというドアベルの音を聞くだけで」
村長「腹が減ってしまう位です……いや、お待たせしました」
村長「家には息子も待たせてありますので、どうぞ。ご案内致します」
勇者(……しかし、今日一日でどれだけの話を聞いたんだか)
勇者(流石に疲れてきた……しかし、港街の勇者?)
勇者(……聞いた事が無い)
僧侶(この……本。もし、本当に神父様の持ち物だとするのなら)
僧侶(私の母……エルフの事を、知ってた?)
僧侶(否……そうとは限らない。でも……!)
魔法使い(剣士が、魔導国に居る……!)
魔法使い(……何の為に。何が目的で!?)
魔法使い(お爺様達は……本当に、何を考えて居るの!?)
戦士(魔除けの石だの、直通便だの……)
戦士(この村は……どこか怪しい、な)
戦士(兄の話もそうだが……どうにも、当を得ない)
勇者(真実は……余りにも遠い)
僧侶(……知りたい!だけど……)
魔法使い(私達の目的は、魔王を倒す事、なのに……!)
戦士(……見失う訳には、いかない!)
311: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
……
………
…………
息子「ああ、お父さんお帰りなさい」
息子「初めまして……息子と言います」
勇者「初めまして。勇者です。こっちは仲間の……戦士、魔法使い、僧侶です」
村長「ええと……さっそくですけど……魔法剣の話、でしたな」
勇者「はい。その前に……お聞きしたいのですけど」
村長「? はい、何でしょうか」
勇者「村の奥にあると言う……昔、聖職者様が作られたと言う、魔除けの石」
村長「!」
勇者「……見せて貰う事は、できるんでしょうか」
村長「いや、あの……それは……」
息子「構いません」
村長「息子!?」
勇者「…… ……」
息子「……ですが、今日はもう日も暮れています」
息子「勇者様と言えど危険ですので……明日、ご案内すると言う事で」
息子「宜しいでしょうか?」
勇者「ええ、結構です……ありがとうございます」
村長「待ちなさい!そんな……そんな勝手はゆるさんぞ!」
戦士「…… ……」
僧侶「あ、あの……!」
魔法使い「……僧侶」
僧侶「でも……」
息子「何が勝手だ!勇者様だろう!?」
村長「しかし、それでは……!」
息子「魔導国が何だ!戦争なんかおっぱじめやがって!」
息子「しかも、直通便だってもう止まったんだろう!?」
息子「顔色を伺う必要が、何処にある!?」
勇者「あ、あのう……?」
………
…………
息子「ああ、お父さんお帰りなさい」
息子「初めまして……息子と言います」
勇者「初めまして。勇者です。こっちは仲間の……戦士、魔法使い、僧侶です」
村長「ええと……さっそくですけど……魔法剣の話、でしたな」
勇者「はい。その前に……お聞きしたいのですけど」
村長「? はい、何でしょうか」
勇者「村の奥にあると言う……昔、聖職者様が作られたと言う、魔除けの石」
村長「!」
勇者「……見せて貰う事は、できるんでしょうか」
村長「いや、あの……それは……」
息子「構いません」
村長「息子!?」
勇者「…… ……」
息子「……ですが、今日はもう日も暮れています」
息子「勇者様と言えど危険ですので……明日、ご案内すると言う事で」
息子「宜しいでしょうか?」
勇者「ええ、結構です……ありがとうございます」
村長「待ちなさい!そんな……そんな勝手はゆるさんぞ!」
戦士「…… ……」
僧侶「あ、あの……!」
魔法使い「……僧侶」
僧侶「でも……」
息子「何が勝手だ!勇者様だろう!?」
村長「しかし、それでは……!」
息子「魔導国が何だ!戦争なんかおっぱじめやがって!」
息子「しかも、直通便だってもう止まったんだろう!?」
息子「顔色を伺う必要が、何処にある!?」
勇者「あ、あのう……?」
312: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:eMFqkBx1P
村長「約束が違う!」
息子「ああ言わないと、親父は俺に勇者様を会わせてくれなかっただろう!」
ギャアギャア、ギャアギャア
戦士「……親子げんかを見せて貰いに来た訳じゃ無いんだがな」ハァ
魔法使い「探りを入れる手間が省けた、んじゃないの」
僧侶「あ、あの、村長さん、息子さん……!」
村長「お前、まさか、態と……!」
息子「子供の口に戸を立てられる訳が無い!」
ギャアギャア、ギャアギャア
勇者「…… ……」ハァ
勇者「あの、悪いけど、ちょっと……」
息子「いい加減にしろ!騙されてるのが解らないのか!」
シィン……
魔法使い「……騙されてる?」
村長「…… ……ッ」
息子「……兄を使ったことは、直接謝っておく」
息子「だが、いい加減目を覚ませ!お父さん!」
勇者「…… ……説明、して頂いても良いですか、ね」
息子「……兄から、何処まで聞きました?」
勇者「魔石や、特殊な武器の話と、聖職者様とやらの伝説……とか」
戦士「司書からも聞いたぞ。魔除けの石を持ち帰り研究してるとか、どうとか」
息子「ああ言わないと、親父は俺に勇者様を会わせてくれなかっただろう!」
ギャアギャア、ギャアギャア
戦士「……親子げんかを見せて貰いに来た訳じゃ無いんだがな」ハァ
魔法使い「探りを入れる手間が省けた、んじゃないの」
僧侶「あ、あの、村長さん、息子さん……!」
村長「お前、まさか、態と……!」
息子「子供の口に戸を立てられる訳が無い!」
ギャアギャア、ギャアギャア
勇者「…… ……」ハァ
勇者「あの、悪いけど、ちょっと……」
息子「いい加減にしろ!騙されてるのが解らないのか!」
シィン……
魔法使い「……騙されてる?」
村長「…… ……ッ」
息子「……兄を使ったことは、直接謝っておく」
息子「だが、いい加減目を覚ませ!お父さん!」
勇者「…… ……説明、して頂いても良いですか、ね」
息子「……兄から、何処まで聞きました?」
勇者「魔石や、特殊な武器の話と、聖職者様とやらの伝説……とか」
戦士「司書からも聞いたぞ。魔除けの石を持ち帰り研究してるとか、どうとか」
316: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:MGJzH5Rq0
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