316: 2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:MGJzH5Rq0
317: 2013/09/01(日) 00:12:33.28 ID:ktOuhzjGP
村長「やめなさい!息子!」
息子「いい加減に目を覚ませ! ……勇者様は目の前にいらっしゃる」
息子「言い逃れできるとでも思うのか!」
魔法使い「……この村は、何か魔導国に弱みでも握られているの?」ハァ
僧侶「兄君を使った、と言うのは……どう言う意味です?」
息子「順番にお答えします」
村長「……やめろ、と言っているのに……ッ」
村長「ああ……もう、私は、知らん!知らんぞ!どうなっても……!」
村長「この村は……終わりだ……!」
勇者「ちょ、ちょっと……そんな、大袈裟な……ッ」
息子「……港街からの船に、勇者様が乗っているかもしれないと」
息子「船が着く度に……兄に、様子を見に行かせていたのです」
村長「…… ……」
勇者「毎度、ですか……!?」
息子「ええ。幸い、距離は離れていませんから」
息子「……それに、魔物は殆ど、襲ってこないと解って居ましたから」
魔法使い「解って居た……?それは、あの……魔除けの石、の効力、って事?」
息子「……そうですね」
村長「どうするんだ!どう責任を取る気だ、お前は!」
息子「黙れと言っているんだ! ……この村が本当にこの侭で」
息子「良いと思っているのか!お父さん!」
村長「…… ……」
息子「……失礼しました」
勇者「そりゃ、船の着く時間は大体解るでしょうけど……」
戦士「俺達が何時、ここへ来るか。本当に来るのか、なんて……」
戦士「解らなかっただろうに」
僧侶「……そうですよ。魔導国の人達は、港街からの」
僧侶「船の運航の差し止めを要求しているんでしょう?」
息子「…… ……」
勇者「……息子さん?」
息子「いい加減に目を覚ませ! ……勇者様は目の前にいらっしゃる」
息子「言い逃れできるとでも思うのか!」
魔法使い「……この村は、何か魔導国に弱みでも握られているの?」ハァ
僧侶「兄君を使った、と言うのは……どう言う意味です?」
息子「順番にお答えします」
村長「……やめろ、と言っているのに……ッ」
村長「ああ……もう、私は、知らん!知らんぞ!どうなっても……!」
村長「この村は……終わりだ……!」
勇者「ちょ、ちょっと……そんな、大袈裟な……ッ」
息子「……港街からの船に、勇者様が乗っているかもしれないと」
息子「船が着く度に……兄に、様子を見に行かせていたのです」
村長「…… ……」
勇者「毎度、ですか……!?」
息子「ええ。幸い、距離は離れていませんから」
息子「……それに、魔物は殆ど、襲ってこないと解って居ましたから」
魔法使い「解って居た……?それは、あの……魔除けの石、の効力、って事?」
息子「……そうですね」
村長「どうするんだ!どう責任を取る気だ、お前は!」
息子「黙れと言っているんだ! ……この村が本当にこの侭で」
息子「良いと思っているのか!お父さん!」
村長「…… ……」
息子「……失礼しました」
勇者「そりゃ、船の着く時間は大体解るでしょうけど……」
戦士「俺達が何時、ここへ来るか。本当に来るのか、なんて……」
戦士「解らなかっただろうに」
僧侶「……そうですよ。魔導国の人達は、港街からの」
僧侶「船の運航の差し止めを要求しているんでしょう?」
息子「…… ……」
勇者「……息子さん?」
318: 2013/09/01(日) 00:37:30.53 ID:ktOuhzjGP
村長「……勇者様達が、船に乗るまでは、差し止めはせんと言う約束だったんだ」
僧侶「村長、さん?」
息子「お父さん……」
村長「……港街から出る船は、始まりの国行き、魔導の国行き、そして」
村長「この大陸行きの三本だ」
村長「……魔王の城へ向かおうと思えば、まずはこの大陸行きの船に乗らざるを得ない」
息子「…… ……」
勇者「約束……と言うのは、どう言う意味です?」
魔法使い「まさか……おじ……領主と、って事!?」
息子「……そうです。見張られているのには……気がつかれませんでしたか?」
戦士「! ……では、あれは……やはり……!」
息子「気付いて……おられましたか」ホッ
勇者「……どうして、安心した様な顔をするんですか」
息子「……兄を使ったと言うのはどう言う意味か、と」
息子「お聞きになられましたよね、さっき」
僧侶「え、ええ……」
息子「言葉通りの意味です。子供の好奇心は抑えられないだろうと」
息子「……利用した迄です」
勇者「……さっきもちらっと言ってたな。口止め……してたのか?」
息子「いいえ。お父さんからはそう言われてましたけど」
村長「お前……!」
息子「どちらにしても、俺が話すつもりだったんです」
息子「……だけど、兄はともかく、俺は素直に言う事を聞いている振りでもしないと」
息子「こうして、貴方達とお話しする機会もなかったでしょうから」
勇者「……俺達が魔法剣の事について、訪ねるだろうってのは」
勇者「解ってた、と言いたい訳だな」
息子「ええ。そうでないと……魔導国があの鉱石の洞窟を」
息子「狙った意味もありませんから」
魔法使い「…… ……」
僧侶「村長、さん?」
息子「お父さん……」
村長「……港街から出る船は、始まりの国行き、魔導の国行き、そして」
村長「この大陸行きの三本だ」
村長「……魔王の城へ向かおうと思えば、まずはこの大陸行きの船に乗らざるを得ない」
息子「…… ……」
勇者「約束……と言うのは、どう言う意味です?」
魔法使い「まさか……おじ……領主と、って事!?」
息子「……そうです。見張られているのには……気がつかれませんでしたか?」
戦士「! ……では、あれは……やはり……!」
息子「気付いて……おられましたか」ホッ
勇者「……どうして、安心した様な顔をするんですか」
息子「……兄を使ったと言うのはどう言う意味か、と」
息子「お聞きになられましたよね、さっき」
僧侶「え、ええ……」
息子「言葉通りの意味です。子供の好奇心は抑えられないだろうと」
息子「……利用した迄です」
勇者「……さっきもちらっと言ってたな。口止め……してたのか?」
息子「いいえ。お父さんからはそう言われてましたけど」
村長「お前……!」
息子「どちらにしても、俺が話すつもりだったんです」
息子「……だけど、兄はともかく、俺は素直に言う事を聞いている振りでもしないと」
息子「こうして、貴方達とお話しする機会もなかったでしょうから」
勇者「……俺達が魔法剣の事について、訪ねるだろうってのは」
勇者「解ってた、と言いたい訳だな」
息子「ええ。そうでないと……魔導国があの鉱石の洞窟を」
息子「狙った意味もありませんから」
魔法使い「…… ……」
319: 2013/09/01(日) 00:45:35.90 ID:ktOuhzjGP
息子「俺達……鍛冶職人は、鍛冶師様を尊敬しています」
戦士「『鍛冶師の村の勇者様』か」
息子「はい。魔法に長ける者達は……魔導国と聞くだけで」
息子「憧れや、様々な思いもあるのでしょうけど」
僧侶「……ですが、それだけでは利用した事にはならないのでは?」
僧侶「口止めはされなかったのでしょうけれど……」
魔法使い「そうよね。兄君自体……言っちゃ悪いけど、話はぐちゃぐちゃだったわよ」
魔法使い「支離滅裂、とは言わないけれど……矛盾が多かった……わよね?」
戦士「……そうだな。聞かされていない、と言葉に詰まる事が多かった」
息子「あいつの両親もそうですが、この村の人間の思想は」
息子「……鍛冶師様側か、聖職者様側か、に別れています」
僧侶「……お父様は鍛冶師様側、なんですね?」
戦士「老女が言ってたな……母親は魔法に長ける者だった、と」
息子「…… ……」
勇者「しかし、村の思想を二分してどうするって言うんだ」
勇者「……その聖職者様ってのも、鍛冶師様ももう、居ないんだぞ?」
息子「だから、ですよ。まさか……魔導国の人達が」
息子「村人を争わせるだけにやったとは思わないでしょう?」
戦士「……他に目的があるのか?」
魔法使い「魔除けの石ってのが怪しい、わよね」
魔法使い「魔導国での生産量が一番多いんでしょ?」
僧侶「……そうですよね。いくら素晴らしい技術だからって」
僧侶「今更、持ち帰って研究すると言うのもおかしい話です」
戦士「それに魔法使いが言っていたとおり……もし、本当に素晴らしいもので」
戦士「あるのならば、全て我が物にしてもおかしく無い、んだろう?」
村長「…… ……あれは、魔除けの石等では無い」
勇者「…… ……え!?」
戦士「『鍛冶師の村の勇者様』か」
息子「はい。魔法に長ける者達は……魔導国と聞くだけで」
息子「憧れや、様々な思いもあるのでしょうけど」
僧侶「……ですが、それだけでは利用した事にはならないのでは?」
僧侶「口止めはされなかったのでしょうけれど……」
魔法使い「そうよね。兄君自体……言っちゃ悪いけど、話はぐちゃぐちゃだったわよ」
魔法使い「支離滅裂、とは言わないけれど……矛盾が多かった……わよね?」
戦士「……そうだな。聞かされていない、と言葉に詰まる事が多かった」
息子「あいつの両親もそうですが、この村の人間の思想は」
息子「……鍛冶師様側か、聖職者様側か、に別れています」
僧侶「……お父様は鍛冶師様側、なんですね?」
戦士「老女が言ってたな……母親は魔法に長ける者だった、と」
息子「…… ……」
勇者「しかし、村の思想を二分してどうするって言うんだ」
勇者「……その聖職者様ってのも、鍛冶師様ももう、居ないんだぞ?」
息子「だから、ですよ。まさか……魔導国の人達が」
息子「村人を争わせるだけにやったとは思わないでしょう?」
戦士「……他に目的があるのか?」
魔法使い「魔除けの石ってのが怪しい、わよね」
魔法使い「魔導国での生産量が一番多いんでしょ?」
僧侶「……そうですよね。いくら素晴らしい技術だからって」
僧侶「今更、持ち帰って研究すると言うのもおかしい話です」
戦士「それに魔法使いが言っていたとおり……もし、本当に素晴らしいもので」
戦士「あるのならば、全て我が物にしてもおかしく無い、んだろう?」
村長「…… ……あれは、魔除けの石等では無い」
勇者「…… ……え!?」
320: 2013/09/01(日) 00:57:50.60 ID:ktOuhzjGP
魔法使い「どう言う事……!?」
戦士「おかしいだろう。ならば何故、この村には魔物が寄りつかない!?」
勇者「……村の中に置けない理由、か?」
村長「……言うなればあれは、『魔寄せの石』だ」
僧侶「魔……寄せ?」
村長「そうだ! ……禍々しい、血色の石だ!」
息子「…… ……村の奥に置いているのは、そういう理由ですよ」
息子「魔物達はその石に惹かれ、此方まで……村まで、降りてこない」
勇者「ま、待て! ……じゃあ、聖職者の伝説ってのは……!?」
息子「あれは本当です……と言っても、俺達がこの目で見た訳じゃ無いけど」
息子「だけど、作り事じゃ無い」
僧侶「そ……んな……!? では……!?」
僧侶(隻腕の祈り女様……女様、は!?)
僧侶(……否。同一人物であると言う保証は無い……し、確かめようも無い……!)
魔法使い「…… ……成る程、ね」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「その事実を盾に、脅されて」
魔法使い「……石を持って帰られた、が正解なのかしら」
村長「…… ……」
息子「お父さんですら……もっと古い代の人に聞いたに過ぎないんです」
村長「……村長だけに伝えられてきた事なんだ」フゥ
村長「あの石を置いている限り、村は魔物に襲われない」
村長「その秘密を黙っておく変わりに……魔法剣の技術を確かな物にし」
村長「魔導国だけに伝えろというのが……あいつだの言い分だ」
勇者「……しかし、鍛冶師様が居ただろう!この村に魔石生成の」
勇者「技術を残したのだろう!?」
戦士「おかしいだろう。ならば何故、この村には魔物が寄りつかない!?」
勇者「……村の中に置けない理由、か?」
村長「……言うなればあれは、『魔寄せの石』だ」
僧侶「魔……寄せ?」
村長「そうだ! ……禍々しい、血色の石だ!」
息子「…… ……村の奥に置いているのは、そういう理由ですよ」
息子「魔物達はその石に惹かれ、此方まで……村まで、降りてこない」
勇者「ま、待て! ……じゃあ、聖職者の伝説ってのは……!?」
息子「あれは本当です……と言っても、俺達がこの目で見た訳じゃ無いけど」
息子「だけど、作り事じゃ無い」
僧侶「そ……んな……!? では……!?」
僧侶(隻腕の祈り女様……女様、は!?)
僧侶(……否。同一人物であると言う保証は無い……し、確かめようも無い……!)
魔法使い「…… ……成る程、ね」
戦士「魔法使い?」
魔法使い「その事実を盾に、脅されて」
魔法使い「……石を持って帰られた、が正解なのかしら」
村長「…… ……」
息子「お父さんですら……もっと古い代の人に聞いたに過ぎないんです」
村長「……村長だけに伝えられてきた事なんだ」フゥ
村長「あの石を置いている限り、村は魔物に襲われない」
村長「その秘密を黙っておく変わりに……魔法剣の技術を確かな物にし」
村長「魔導国だけに伝えろというのが……あいつだの言い分だ」
勇者「……しかし、鍛冶師様が居ただろう!この村に魔石生成の」
勇者「技術を残したのだろう!?」
321: 2013/09/01(日) 01:10:12.08 ID:ktOuhzjGP
勇者「本物の魔除けの石だって作れた筈だ!」
勇者「何故……!」
息子「魔石と言うのは、そもそもは盗賊様が作られた物だと言われています」
戦士「……流通は魔除けの石を残して、全て廃れてしまった、がな」
息子「ええ。でも……『鍛冶師様はこの村の勇者様』ですから」
息子「鍛冶職人を目指す物達は、別に金にならなくても言い、と」
息子「その手法は守ってきた、のですよ」
僧侶「……では、兄君が言っていた特殊な武器、と言うのは……」
息子「……隠れ蓑です。あれは、魔法剣と呼べる代物ではありません」
勇者「村長さんは……俺が教えて欲しいと請うた時」
勇者「……その隠れ蓑、で誤魔化すつもりだった……んだな?」
村長「……まさか、勇者様をだませるとは思っていなかった」
村長「時間稼ぎで良かったのだ」
魔法使い「……直通便を望んだ村人は……確かに、居たんでしょうけど」
魔法使い「あっさりと実現したのは……脅されていたから、なのね?」
村長「……私に拒否する権利などなかったからな」
勇者「それにしても……!」
息子「……他にも、色々と狙いはあるのだと思います」
息子「私もこれ以上ははっきりとは……知りません」
村長「…… ……」
魔法使い「司書達のあれは……」
息子「あれは……流石に偶然だと思いたい、ですが」
息子「魔導国は確かに封鎖されましたし……」
勇者「……頭がこんがらがってきた」
戦士「俺もだ」
僧侶「……魔導国と、港街、始まりの国、は……」
僧侶「色々と、確執があった、のですよね?」
勇者「何故……!」
息子「魔石と言うのは、そもそもは盗賊様が作られた物だと言われています」
戦士「……流通は魔除けの石を残して、全て廃れてしまった、がな」
息子「ええ。でも……『鍛冶師様はこの村の勇者様』ですから」
息子「鍛冶職人を目指す物達は、別に金にならなくても言い、と」
息子「その手法は守ってきた、のですよ」
僧侶「……では、兄君が言っていた特殊な武器、と言うのは……」
息子「……隠れ蓑です。あれは、魔法剣と呼べる代物ではありません」
勇者「村長さんは……俺が教えて欲しいと請うた時」
勇者「……その隠れ蓑、で誤魔化すつもりだった……んだな?」
村長「……まさか、勇者様をだませるとは思っていなかった」
村長「時間稼ぎで良かったのだ」
魔法使い「……直通便を望んだ村人は……確かに、居たんでしょうけど」
魔法使い「あっさりと実現したのは……脅されていたから、なのね?」
村長「……私に拒否する権利などなかったからな」
勇者「それにしても……!」
息子「……他にも、色々と狙いはあるのだと思います」
息子「私もこれ以上ははっきりとは……知りません」
村長「…… ……」
魔法使い「司書達のあれは……」
息子「あれは……流石に偶然だと思いたい、ですが」
息子「魔導国は確かに封鎖されましたし……」
勇者「……頭がこんがらがってきた」
戦士「俺もだ」
僧侶「……魔導国と、港街、始まりの国、は……」
僧侶「色々と、確執があった、のですよね?」
322: 2013/09/01(日) 01:16:14.14 ID:ktOuhzjGP
魔法使い「え?」
僧侶「……旅をしている間に、聞いたに過ぎません、けど」
僧侶「戦士さんは、何かご存じないのですか?」
戦士「……僧侶、その話は……」
息子「さっき、魔法使いさんは言い淀まれましたが」
息子「……知っていますよ。『国王の孫であり、騎士団長の息子』」
戦士「!」
村長「……お前さんは、『魔導国王の孫』だろう」
魔法使い「……まあ、そりゃばれてるわよね」フゥ
勇者「魔法使い……」
魔法使い「要するに、この村は魔導国……お爺様達の言いなりだったのでしょう?」
村長「もういいだろう!全部話したんだ!」
戦士「……俺達が港街を出たら、船を差し止めると言ったんだよな?」
息子「え?ええ……まあ」
戦士「……僧侶。覚えて居るか」
僧侶「! ……武力行使も辞さない……!」
勇者「あ……!」
魔法使い「……まさか!いくら何でも……!」
勇者「……『魔導国の勇者』!?」
僧侶「!!」
魔法使い「冗談じゃないわ!本当に全面戦争じゃないの!!」
村長「…… ……魔導の街に、戻るんだ」
勇者「え……?」
村長「そうすれば、止まる」
息子「お父さん!?」
村長「……お前のじいさんからの、伝言だ」
僧侶「……旅をしている間に、聞いたに過ぎません、けど」
僧侶「戦士さんは、何かご存じないのですか?」
戦士「……僧侶、その話は……」
息子「さっき、魔法使いさんは言い淀まれましたが」
息子「……知っていますよ。『国王の孫であり、騎士団長の息子』」
戦士「!」
村長「……お前さんは、『魔導国王の孫』だろう」
魔法使い「……まあ、そりゃばれてるわよね」フゥ
勇者「魔法使い……」
魔法使い「要するに、この村は魔導国……お爺様達の言いなりだったのでしょう?」
村長「もういいだろう!全部話したんだ!」
戦士「……俺達が港街を出たら、船を差し止めると言ったんだよな?」
息子「え?ええ……まあ」
戦士「……僧侶。覚えて居るか」
僧侶「! ……武力行使も辞さない……!」
勇者「あ……!」
魔法使い「……まさか!いくら何でも……!」
勇者「……『魔導国の勇者』!?」
僧侶「!!」
魔法使い「冗談じゃないわ!本当に全面戦争じゃないの!!」
村長「…… ……魔導の街に、戻るんだ」
勇者「え……?」
村長「そうすれば、止まる」
息子「お父さん!?」
村長「……お前のじいさんからの、伝言だ」
323: 2013/09/01(日) 01:29:45.46 ID:ktOuhzjGP
息子「お父さん! ……何故、何故黙っていた!」
村長「お前もいい加減に目を覚ませ! ……正義感は結構だがな!」
村長「お前も、次期村長なんだぞ!?」
村長「……ッ 村人を、危険にさらすつもりか!」
息子「! ……ッ じゃあ、何故……ッ 何故、勇者様に話したんだ!!」
息子「騙されていると、解って居るんだろうに……!」
村長「騙されているんじゃない!」
村長「……知らされている、んだ!」
勇者「……知らされている?」
村長「…… ……鉱石の洞窟を手中に収めれば」
村長「『光の剣の修理』は、この村の鍛冶職人にやらせてくれるという」
村長「……約束なんだ!」
勇者「!」
戦士「何を馬鹿な事を!光の剣は勇者の物だ!それを……何を、勝手に……!」
村長「だが、お前達は戻るのだろう?」
魔法使い「!」
村長「……盗賊様と鍛冶師様が救った、港街を」
村長「生まれ育った始まりの国を、放って置けるのか!」
僧侶「……ッ そ、れでは……ッ まるで、脅迫、です!」
村長「……なら、見捨てるのか?」
勇者「物理的に不可能だろう!いくら、魔法使いが領主の孫だからって!」
村長「……北の街に行け」
戦士「北の街……?」
村長「あの街の町長が、船を所有している」
村長「……魔寄せの石がある限り、道中はそれ程危険では無い」
魔法使い「……ッ はい、そうですかって……!」
村長「『勇者』なのだろう!?世界を……未来を救う、勇者なのだろう!!」
勇者「!」
村長「……魔王を倒すだけが勇者か!?正義なのか!?」
村長「お前もいい加減に目を覚ませ! ……正義感は結構だがな!」
村長「お前も、次期村長なんだぞ!?」
村長「……ッ 村人を、危険にさらすつもりか!」
息子「! ……ッ じゃあ、何故……ッ 何故、勇者様に話したんだ!!」
息子「騙されていると、解って居るんだろうに……!」
村長「騙されているんじゃない!」
村長「……知らされている、んだ!」
勇者「……知らされている?」
村長「…… ……鉱石の洞窟を手中に収めれば」
村長「『光の剣の修理』は、この村の鍛冶職人にやらせてくれるという」
村長「……約束なんだ!」
勇者「!」
戦士「何を馬鹿な事を!光の剣は勇者の物だ!それを……何を、勝手に……!」
村長「だが、お前達は戻るのだろう?」
魔法使い「!」
村長「……盗賊様と鍛冶師様が救った、港街を」
村長「生まれ育った始まりの国を、放って置けるのか!」
僧侶「……ッ そ、れでは……ッ まるで、脅迫、です!」
村長「……なら、見捨てるのか?」
勇者「物理的に不可能だろう!いくら、魔法使いが領主の孫だからって!」
村長「……北の街に行け」
戦士「北の街……?」
村長「あの街の町長が、船を所有している」
村長「……魔寄せの石がある限り、道中はそれ程危険では無い」
魔法使い「……ッ はい、そうですかって……!」
村長「『勇者』なのだろう!?世界を……未来を救う、勇者なのだろう!!」
勇者「!」
村長「……魔王を倒すだけが勇者か!?正義なのか!?」
324: 2013/09/01(日) 01:37:19.79 ID:ktOuhzjGP
勇者「……そ、れは……ッ」
戦士「……詭弁だ。聞くな、勇者」
戦士「犠牲はつきものだ、等とは言わん。だが……」
戦士「……自身で蒔いた種だろう、村長!」
魔法使い「そうよ! ……紛い物の平穏に屈するからよ」
魔法使い「見つかった時に……砕いていれば……!」
僧侶「今からでも遅くありません。その、魔寄せの石とやらを」
僧侶「破壊してしまえば……!」
村長「……村人が魔物に襲われるのを良しとしろというのか!」
村長「孤児院なんて物も出来てしまったんだぞ!?」
村長「……お前達ほどの腕があれば可能だろうが」
村長「何時までも、お前達が守ってくれる訳でもあるまい!」
村長「……それこそ詭弁だ。偽善だよ!」
息子「お父さん……」
村長「……お前も、あの石を砕いた方が良いと」
村長「言うのか!まだ!」
息子「…… ……ッ」
僧侶「息子さん……!」
勇者「……僧侶。もう良い」
僧侶「勇者様!?」
戦士「…… ……」
魔法使い「…… ……」
村長「もう…… ……遅いのだ……」
勇者「…… ……」
……
………
…………
戦士「……詭弁だ。聞くな、勇者」
戦士「犠牲はつきものだ、等とは言わん。だが……」
戦士「……自身で蒔いた種だろう、村長!」
魔法使い「そうよ! ……紛い物の平穏に屈するからよ」
魔法使い「見つかった時に……砕いていれば……!」
僧侶「今からでも遅くありません。その、魔寄せの石とやらを」
僧侶「破壊してしまえば……!」
村長「……村人が魔物に襲われるのを良しとしろというのか!」
村長「孤児院なんて物も出来てしまったんだぞ!?」
村長「……お前達ほどの腕があれば可能だろうが」
村長「何時までも、お前達が守ってくれる訳でもあるまい!」
村長「……それこそ詭弁だ。偽善だよ!」
息子「お父さん……」
村長「……お前も、あの石を砕いた方が良いと」
村長「言うのか!まだ!」
息子「…… ……ッ」
僧侶「息子さん……!」
勇者「……僧侶。もう良い」
僧侶「勇者様!?」
戦士「…… ……」
魔法使い「…… ……」
村長「もう…… ……遅いのだ……」
勇者「…… ……」
……
………
…………
325: 2013/09/01(日) 01:48:19.37 ID:ktOuhzjGP
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
戦士「で……どうする、んだ」
勇者「…… ……」
魔法使い「……何だか、手のひらの上で踊らされている気分だわ」
僧侶「一体……何処までが、用意されたシナリオ……なんでしょう、ね」
戦士「どう言う意味だ?」
僧侶「考えれば考える程、後手後手じゃありませんか」
僧侶「……魔導国の目から逃れてきたはずが……」
勇者「どこまで行っても手のひらの上、か」
勇者「……確かに、な」
魔法使い「一辺に情報が入ってきて、本当に混乱しそうよ」
魔法使い「部屋に案内して貰ったのは良いけど……これじゃ眠れないわよね」
勇者「北の街にも……魔導国の目があると考えて良い……んだろうな」
魔法使い「……村長さんも、被害者よね」
戦士「実際に脅されたのは……前の村長か何か……なんだろうな」
魔法使い「お爺様は一体……いつから、こんな事を企んでいたの……!?」
勇者「しかし……俺達が魔導国に戻って……どうなると言うんだ?」
僧侶「『魔導国の勇者様』ですか……」
戦士「後ろ盾、とは言え……確かに、実力があるのだろうとは言え」
戦士「……否。魔族であるのなら……」
戦士「あいつ一人で、充分……なのか?」
魔法使い「……司書はああ言ってたけれど」
魔法使い「あれも、手のひらの内、なのかしらね」
勇者「……孤児院の子供達。なんの力も持たない子供達を」
勇者「危険にさらさない為には……魔寄せの石は、砕けない……か?」
戦士「……あのシスターと言う女、領主の血筋なのだろう?」
僧侶「……ですが、スパイと言えば大袈裟ですけど……」
僧侶「その。そんな風には……見えませんでしたよ?」
魔法使い「私もよ。でも…… ……何を信じれば良いのか……」
僧侶「…… ……」
戦士「で……どうする、んだ」
勇者「…… ……」
魔法使い「……何だか、手のひらの上で踊らされている気分だわ」
僧侶「一体……何処までが、用意されたシナリオ……なんでしょう、ね」
戦士「どう言う意味だ?」
僧侶「考えれば考える程、後手後手じゃありませんか」
僧侶「……魔導国の目から逃れてきたはずが……」
勇者「どこまで行っても手のひらの上、か」
勇者「……確かに、な」
魔法使い「一辺に情報が入ってきて、本当に混乱しそうよ」
魔法使い「部屋に案内して貰ったのは良いけど……これじゃ眠れないわよね」
勇者「北の街にも……魔導国の目があると考えて良い……んだろうな」
魔法使い「……村長さんも、被害者よね」
戦士「実際に脅されたのは……前の村長か何か……なんだろうな」
魔法使い「お爺様は一体……いつから、こんな事を企んでいたの……!?」
勇者「しかし……俺達が魔導国に戻って……どうなると言うんだ?」
僧侶「『魔導国の勇者様』ですか……」
戦士「後ろ盾、とは言え……確かに、実力があるのだろうとは言え」
戦士「……否。魔族であるのなら……」
戦士「あいつ一人で、充分……なのか?」
魔法使い「……司書はああ言ってたけれど」
魔法使い「あれも、手のひらの内、なのかしらね」
勇者「……孤児院の子供達。なんの力も持たない子供達を」
勇者「危険にさらさない為には……魔寄せの石は、砕けない……か?」
戦士「……あのシスターと言う女、領主の血筋なのだろう?」
僧侶「……ですが、スパイと言えば大袈裟ですけど……」
僧侶「その。そんな風には……見えませんでしたよ?」
魔法使い「私もよ。でも…… ……何を信じれば良いのか……」
326: 2013/09/01(日) 02:01:33.38 ID:ktOuhzjGP
勇者「……『魔王を倒すだけが勇者か?』 ……か」フゥ
戦士「……港街へは、始まりの国が騎士達を派遣するだろう」
戦士「親父は強い。国王様も頭の良い方だ」
戦士「……心配しなくても良いと思う……が」
僧侶「ですが……鉱石の洞窟付近での抗戦で、疲弊していらっしゃらないでしょうか」
戦士「…… ……」
魔法使い「どうして呼び戻したいのか……その目的が解らない限り」
魔法使い「近づくのは危険……よね」
勇者「目的……か」
僧侶「さっさと魔王を倒してしまう……にしても」
僧侶「…… ……確かに、それだけでは『平和』ではありません、よね」
勇者「……まだまだ、パズルのピースは足りないんだろう、な」
僧侶「明日……北の街へ向かう、のですか?」
勇者「この街に何時までも居ても……仕方無いだろう」ハァ
勇者「……息子さんも、最後……黙っちゃった、しな」
僧侶「……あの」
魔法使い「ん?」
僧侶「……少し、道は逸れますけど……もし、良ければ」
僧侶「小屋へ……寄って貰えませんか」
魔法使い「あ……! そうだわ、あの司書に見せて貰った、あの本……!」
戦士「……あれは、真実、なのか?」
勇者「でも……御伽噺だろ?」
魔法使い「……驚く程そっくりだったわよ」
魔法使い「水色の髪に、水色の瞳……」
勇者「……あれ?緑じゃ無かったか、髪……」
魔法使い「え!?」
戦士「俺も緑だと思った。若草色、と言うのか……」
魔法使い「色あせて……そう見えた、のかしら」
魔法使い「で、でも……!本当に僧侶そっくりだったわよ!?」
戦士「……港街へは、始まりの国が騎士達を派遣するだろう」
戦士「親父は強い。国王様も頭の良い方だ」
戦士「……心配しなくても良いと思う……が」
僧侶「ですが……鉱石の洞窟付近での抗戦で、疲弊していらっしゃらないでしょうか」
戦士「…… ……」
魔法使い「どうして呼び戻したいのか……その目的が解らない限り」
魔法使い「近づくのは危険……よね」
勇者「目的……か」
僧侶「さっさと魔王を倒してしまう……にしても」
僧侶「…… ……確かに、それだけでは『平和』ではありません、よね」
勇者「……まだまだ、パズルのピースは足りないんだろう、な」
僧侶「明日……北の街へ向かう、のですか?」
勇者「この街に何時までも居ても……仕方無いだろう」ハァ
勇者「……息子さんも、最後……黙っちゃった、しな」
僧侶「……あの」
魔法使い「ん?」
僧侶「……少し、道は逸れますけど……もし、良ければ」
僧侶「小屋へ……寄って貰えませんか」
魔法使い「あ……! そうだわ、あの司書に見せて貰った、あの本……!」
戦士「……あれは、真実、なのか?」
勇者「でも……御伽噺だろ?」
魔法使い「……驚く程そっくりだったわよ」
魔法使い「水色の髪に、水色の瞳……」
勇者「……あれ?緑じゃ無かったか、髪……」
魔法使い「え!?」
戦士「俺も緑だと思った。若草色、と言うのか……」
魔法使い「色あせて……そう見えた、のかしら」
魔法使い「で、でも……!本当に僧侶そっくりだったわよ!?」
327: 2013/09/01(日) 02:09:12.16 ID:ktOuhzjGP
勇者「……あれが真実なら、僧侶は」
勇者「エルフは、嘘が吐けない、って事になる……よな」
僧侶「……はい。昔から、心のどこかで……嘘は吐いてはいけないんだと」
僧侶「その……なんと言うか。思っていた、んですけど」
僧侶「……神父様に、そう言われて育ったからかもしれませんけど」
魔法使い「……小屋に行けば、何か……解る?」
僧侶「あ……いえ。そういう訳では無いんです」
僧侶「何も……神父様のお墓以外、何も……ありませんから」
戦士「そうか……」
勇者「気分転換も必要だよ。これじゃ……本当に、何か見失ってしまいそう、だし」
勇者「……何処で誰に、何を聞かれているかも、正直解ったモンじゃ無い」ハァ
僧侶「……私も、あの小屋から旅立つ時」
僧侶「魔寄せの石……の、恩恵にあずかっていたんでしょうか」
戦士「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「……俺には、村長の言葉を否定し続ける事はできそうに無い」
僧侶「勇者様……」
魔法使い「見せて貰うのは……諦める、の?」
勇者「否…… ……それは、一応、見せて貰うつもり」
戦士「何故だ?」
勇者「……僧侶の力を頼って良いか?」
僧侶「え? ……あ、はい。それは勿論……」
勇者「持ち帰った、んだろう……」
勇者「……それが、少し気になる、んだ」
魔法使い「魔物を寄せ付ける……んですものね」
勇者「それで一体、何をしようとしているのか……」
勇者「エルフは、嘘が吐けない、って事になる……よな」
僧侶「……はい。昔から、心のどこかで……嘘は吐いてはいけないんだと」
僧侶「その……なんと言うか。思っていた、んですけど」
僧侶「……神父様に、そう言われて育ったからかもしれませんけど」
魔法使い「……小屋に行けば、何か……解る?」
僧侶「あ……いえ。そういう訳では無いんです」
僧侶「何も……神父様のお墓以外、何も……ありませんから」
戦士「そうか……」
勇者「気分転換も必要だよ。これじゃ……本当に、何か見失ってしまいそう、だし」
勇者「……何処で誰に、何を聞かれているかも、正直解ったモンじゃ無い」ハァ
僧侶「……私も、あの小屋から旅立つ時」
僧侶「魔寄せの石……の、恩恵にあずかっていたんでしょうか」
戦士「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「……俺には、村長の言葉を否定し続ける事はできそうに無い」
僧侶「勇者様……」
魔法使い「見せて貰うのは……諦める、の?」
勇者「否…… ……それは、一応、見せて貰うつもり」
戦士「何故だ?」
勇者「……僧侶の力を頼って良いか?」
僧侶「え? ……あ、はい。それは勿論……」
勇者「持ち帰った、んだろう……」
勇者「……それが、少し気になる、んだ」
魔法使い「魔物を寄せ付ける……んですものね」
勇者「それで一体、何をしようとしているのか……」
328: 2013/09/01(日) 02:13:30.94 ID:ktOuhzjGP
戦士「解らない事だらけ、だな」
魔法使い「……魔導国に戻ったら解る……のかもしれないけど」
魔法使い「危険すぎるわ。お爺様達の目的も、何も解らない」
魔法使い「……それに、剣士……が、居る」
勇者「…… ……」
僧侶「私には、それ程……悪い人にも思えない、のですけど……」
魔法使い「……私だって、そう信じたいわ。だけど……」
勇者「事実、彼はあの街に居る……ん、だろうけど」
勇者「…… ……何を信じて良いのか、解らなくなってきた、よ」ハァ
僧侶「…… ……」
戦士「どうして……どうして、人間同士で争うんだ……!」
戦士「……何処で……道を間違えたんだ……!?」
勇者(道を間違えた…… ……)
勇者(誰かが……何処かで……選択を誤った……のか!?)
魔法使い「……魔導国に戻ったら解る……のかもしれないけど」
魔法使い「危険すぎるわ。お爺様達の目的も、何も解らない」
魔法使い「……それに、剣士……が、居る」
勇者「…… ……」
僧侶「私には、それ程……悪い人にも思えない、のですけど……」
魔法使い「……私だって、そう信じたいわ。だけど……」
勇者「事実、彼はあの街に居る……ん、だろうけど」
勇者「…… ……何を信じて良いのか、解らなくなってきた、よ」ハァ
僧侶「…… ……」
戦士「どうして……どうして、人間同士で争うんだ……!」
戦士「……何処で……道を間違えたんだ……!?」
勇者(道を間違えた…… ……)
勇者(誰かが……何処かで……選択を誤った……のか!?)
333: 2013/09/01(日) 08:17:01.20 ID:ktOuhzjGP
……
………
…………
『オギャア、オギャア……!』
『産まれた……!』
『おお、ついに……!』
『娘と子供を隔離しろ……これで、漸く……』
『『我らの世界が始まる』んだ!』
魔王(……子供。あれが、『世界』)
魔王(あれ……?)キョロ
魔王(…… ……誰も、居ない。紫の瞳の魔王も……青年も)
魔王(あの……俺そっくりの女性……も……)
魔王(…… ……一人、か)
『オギャア、オギャア……!』
『うわああああああああああああああ!!』
魔王(え!?)
『オギャア、オギャア……!』
『ぎゃあああああああああああああああああ!!』
魔王(……!!)
『た、たすけ……ッ 誰か……!!』
『ぎゃあ、アアアア!?』
魔王(な……ん、だ……ッ)
魔王(赤ん坊が、泣く度に…… あれは、魔法!?)
娘『良し良し、どうしたの、『世界』』
『お、おい!泣き止ませろ!どう、に……ッ ギャアアア!』
娘『お腹がすいたの?ほら……おっOいよ』
娘『赤ちゃんは、おっOいを飲むんですって』
娘『大きくなるのよ、『世界』』
魔王(……あの娘……あの紫の瞳、は)
魔王(…… ……双子の片割れ、だよな?)
魔王(血塗れで……赤ん坊に、乳を……うぅ……)
魔王(軽くホラーだな……しかし……)
………
…………
『オギャア、オギャア……!』
『産まれた……!』
『おお、ついに……!』
『娘と子供を隔離しろ……これで、漸く……』
『『我らの世界が始まる』んだ!』
魔王(……子供。あれが、『世界』)
魔王(あれ……?)キョロ
魔王(…… ……誰も、居ない。紫の瞳の魔王も……青年も)
魔王(あの……俺そっくりの女性……も……)
魔王(…… ……一人、か)
『オギャア、オギャア……!』
『うわああああああああああああああ!!』
魔王(え!?)
『オギャア、オギャア……!』
『ぎゃあああああああああああああああああ!!』
魔王(……!!)
『た、たすけ……ッ 誰か……!!』
『ぎゃあ、アアアア!?』
魔王(な……ん、だ……ッ)
魔王(赤ん坊が、泣く度に…… あれは、魔法!?)
娘『良し良し、どうしたの、『世界』』
『お、おい!泣き止ませろ!どう、に……ッ ギャアアア!』
娘『お腹がすいたの?ほら……おっOいよ』
娘『赤ちゃんは、おっOいを飲むんですって』
娘『大きくなるのよ、『世界』』
魔王(……あの娘……あの紫の瞳、は)
魔王(…… ……双子の片割れ、だよな?)
魔王(血塗れで……赤ん坊に、乳を……うぅ……)
魔王(軽くホラーだな……しかし……)
334: 2013/09/01(日) 08:23:37.27 ID:ktOuhzjGP
『む、息子を連れて来い!どうにか……!うわぁッ』
魔王(泣く度に……魔法が放たれている)
魔王(……炎に、風に……!?)
魔王(……どう、言う……事、だ……ッ!?)
息子『離せよ!僕を何処に……! ……ッ あ!?』
娘『……ああ、息子。ほら、見て……『世界』』
息子『産まれたのか。どうして君はそんなに、怪我をしているの』
『オギャア!オギャア……ウアァ……ッ』
息子『……ッ!!』
娘『赤ちゃんがおっOいを飲まないの』
娘『……泣き止ませないと、頃してしまうのに』
息子『この氏体は…… ……『世界』が作ったの?』
娘『そう……ほら、良し良し。赤ちゃんって、おっOいが好きなんでしょう?』
『…… ……』
息子『あ……』
娘『ああ。やっと泣き止んでくれた』
魔王(…… ……)
『……王様に……ッ 報告、を……ッ』ズルズル……
魔王(娘も……赤ん坊も……血塗れじゃないか……)
息子『……おいで。回復してあげる』
娘『『世界』は怪我なんかしてないよ?』
息子『君だよ、娘……ほら…… ……あれ?』
娘『どうしたの』
息子『おかしいな……回復魔法が使えない』
娘『だって、貴方……紫の瞳をしてる』
息子『…… ……そうか。『世界』が持って行ったんだね』
娘『え?』
魔王(泣く度に……魔法が放たれている)
魔王(……炎に、風に……!?)
魔王(……どう、言う……事、だ……ッ!?)
息子『離せよ!僕を何処に……! ……ッ あ!?』
娘『……ああ、息子。ほら、見て……『世界』』
息子『産まれたのか。どうして君はそんなに、怪我をしているの』
『オギャア!オギャア……ウアァ……ッ』
息子『……ッ!!』
娘『赤ちゃんがおっOいを飲まないの』
娘『……泣き止ませないと、頃してしまうのに』
息子『この氏体は…… ……『世界』が作ったの?』
娘『そう……ほら、良し良し。赤ちゃんって、おっOいが好きなんでしょう?』
『…… ……』
息子『あ……』
娘『ああ。やっと泣き止んでくれた』
魔王(…… ……)
『……王様に……ッ 報告、を……ッ』ズルズル……
魔王(娘も……赤ん坊も……血塗れじゃないか……)
息子『……おいで。回復してあげる』
娘『『世界』は怪我なんかしてないよ?』
息子『君だよ、娘……ほら…… ……あれ?』
娘『どうしたの』
息子『おかしいな……回復魔法が使えない』
娘『だって、貴方……紫の瞳をしてる』
息子『…… ……そうか。『世界』が持って行ったんだね』
娘『え?』
335: 2013/09/01(日) 08:29:50.59 ID:ktOuhzjGP
息子『だって、ほら。『世界』の瞳は『光みたいに輝く金』だ』
娘『ああ。本当だ……『光』みたいだね』
息子『僕は『君と同じ』になったみたいだ』
娘『私の瞳は変わらない?』
息子『ああ。変わらないよ』
娘『そう…… ……よか……ッ …… ……』
ボロボロボロ……
魔王(!?)
息子『娘。君の腕が……』
娘『ああ、大変。『世界を抱けない』』
息子『落としちゃ駄目だよ、おいで『世界』』
ボロボロボロ……
娘『……足、が』ドサッ
魔王(身体が……崩れ落ちていく!?)
バタバタバタ……!
『娘!赤ん坊は……!』
息子『王様』
娘『息子、『世界』におっOいをあげれない。どうしよう』
娘『お腹いっぱいにならないと、『世界』が氏んじゃうわ』ボロボロ……
『ひ、ィ……ッ こ、これは……どう、言う……!!』
息子『僕じゃ、おっOいは出ないな……ねえ、王様。どうしよう?』
娘『『世界』…… 『世界』…… ……せ、か……』
ボロボロ……ザァア……
『…… ……こ、これ、は……ッ』
娘『ああ。本当だ……『光』みたいだね』
息子『僕は『君と同じ』になったみたいだ』
娘『私の瞳は変わらない?』
息子『ああ。変わらないよ』
娘『そう…… ……よか……ッ …… ……』
ボロボロボロ……
魔王(!?)
息子『娘。君の腕が……』
娘『ああ、大変。『世界を抱けない』』
息子『落としちゃ駄目だよ、おいで『世界』』
ボロボロボロ……
娘『……足、が』ドサッ
魔王(身体が……崩れ落ちていく!?)
バタバタバタ……!
『娘!赤ん坊は……!』
息子『王様』
娘『息子、『世界』におっOいをあげれない。どうしよう』
娘『お腹いっぱいにならないと、『世界』が氏んじゃうわ』ボロボロ……
『ひ、ィ……ッ こ、これは……どう、言う……!!』
息子『僕じゃ、おっOいは出ないな……ねえ、王様。どうしよう?』
娘『『世界』…… 『世界』…… ……せ、か……』
ボロボロ……ザァア……
『…… ……こ、これ、は……ッ』
337: 2013/09/01(日) 08:40:47.41 ID:ktOuhzjGP
息子『ああ……娘が消えちゃった』
息子『ねえ、王様。どうしたら良い?』
息子『『世界』は大切なんだろう?』
『……ひ、ひ……ィ……ッ』
息子『『支配するための世界』だっけ、『支配されるための世界』だっけ』
『だ、誰か……!誰か……ッ!!』
『ふ、ふえぇ……ッ オギャア!オギャア!』
『誰か、早く……ッ う、うわああああああああああああああ!!』
魔王(……な、んだ……これ、は……!!)
シュゥン……
女魔「……『世界』を産みだしてしまった、代償」
魔王「あ……」
女魔「娘は『全き闇』だった」
魔王「……全き、闇?」
女魔「そう。紫の瞳の魔王のお母さんはどうだった?」
女魔「エルフの姫は?」
魔王「!」
女魔「……一緒、だよ。身に抱くには強大すぎて」
魔王「で、でも!あの娘は……人間だっただろう!?」
女魔「見たでしょ。青年の瞳が……殺される前に、金から紫に変じたの」
魔王「……あいつは、世界に光を放ったんじゃ……無いのか?」
シュゥン……
青年「そうだ。『世界』に……ね」
魔王「!」
女魔「…… ……」
青年「俺は魔王を倒し……本当ならば魔王になる筈だった」
青年「……産まれてきた子供は?」
魔王「……勇者、になる……んだよな」
女魔「あの双子は、初めは……幸せな頃、は」
魔王「…… ……」
女魔「『人間』だった」
息子『ねえ、王様。どうしたら良い?』
息子『『世界』は大切なんだろう?』
『……ひ、ひ……ィ……ッ』
息子『『支配するための世界』だっけ、『支配されるための世界』だっけ』
『だ、誰か……!誰か……ッ!!』
『ふ、ふえぇ……ッ オギャア!オギャア!』
『誰か、早く……ッ う、うわああああああああああああああ!!』
魔王(……な、んだ……これ、は……!!)
シュゥン……
女魔「……『世界』を産みだしてしまった、代償」
魔王「あ……」
女魔「娘は『全き闇』だった」
魔王「……全き、闇?」
女魔「そう。紫の瞳の魔王のお母さんはどうだった?」
女魔「エルフの姫は?」
魔王「!」
女魔「……一緒、だよ。身に抱くには強大すぎて」
魔王「で、でも!あの娘は……人間だっただろう!?」
女魔「見たでしょ。青年の瞳が……殺される前に、金から紫に変じたの」
魔王「……あいつは、世界に光を放ったんじゃ……無いのか?」
シュゥン……
青年「そうだ。『世界』に……ね」
魔王「!」
女魔「…… ……」
青年「俺は魔王を倒し……本当ならば魔王になる筈だった」
青年「……産まれてきた子供は?」
魔王「……勇者、になる……んだよな」
女魔「あの双子は、初めは……幸せな頃、は」
魔王「…… ……」
女魔「『人間』だった」
338: 2013/09/01(日) 08:49:10.50 ID:ktOuhzjGP
シュゥン……
紫魔「光でも闇でも無い、普通の色の瞳を持つ、双子だったのだ」
女魔「だけど……『人は、唯一、選び取ることが出来る』」
魔王「…… ……」
青年「『光と闇』のどちらにも、変じる事ができる生き物だ」
魔王「ま、待て! ……え、ええっと!?」
女魔「瞳の色は変えられない。だけど」
魔王「この世界は『願えば叶う』」
魔王「……いや、だからって……!」
青年「あの双子は『特別』だったんだ」
青年「……俺達の元から、奪い去られ……『願わされてしまった』」
魔王「願わされた?」
青年「そうだ」
紫魔「『支配する為の世界を作れ』と」
女魔「そして『支配される世界を作れ』ともね」
魔王「……!」
紫魔「……青年は、世界に向けて光を放った。今度こそ、平和になるようにと」
女魔「選択を間違えたのかな……」ハァ
魔王「え……」
紫魔「『光と闇』が失われたとしたら、後には何が残る?」
青年「……何も、残らないんだ。光も闇も、どちらを欠いても……存在は出来ない」
魔王「ちょ、ちょっと待てよ!そんな事言ったら……!」
魔王「勇者が、魔王を倒したって! ……平和に何か、ならないじゃ無いか!」
魔王「……存在が無くなってしまうことが……平和なのか!?」
女魔「……だから言った筈だよ」
青年「『選択を誤るな』」
魔王「ど……どうしろって言うんだよ!」
魔王「勇者が魔王を倒さずに居たって、世界は滅びてしまう、んだろう!?」
青年「……そうだな。全てが『無』に帰る」
青年「存在していたことすら、無かった事になってしまう」
魔王「……何度も言うけど、俺にはもうどうすることも出来ないって!」
魔王「勇者に……倒されるのを待つだけだろう!?」
紫魔「光でも闇でも無い、普通の色の瞳を持つ、双子だったのだ」
女魔「だけど……『人は、唯一、選び取ることが出来る』」
魔王「…… ……」
青年「『光と闇』のどちらにも、変じる事ができる生き物だ」
魔王「ま、待て! ……え、ええっと!?」
女魔「瞳の色は変えられない。だけど」
魔王「この世界は『願えば叶う』」
魔王「……いや、だからって……!」
青年「あの双子は『特別』だったんだ」
青年「……俺達の元から、奪い去られ……『願わされてしまった』」
魔王「願わされた?」
青年「そうだ」
紫魔「『支配する為の世界を作れ』と」
女魔「そして『支配される世界を作れ』ともね」
魔王「……!」
紫魔「……青年は、世界に向けて光を放った。今度こそ、平和になるようにと」
女魔「選択を間違えたのかな……」ハァ
魔王「え……」
紫魔「『光と闇』が失われたとしたら、後には何が残る?」
青年「……何も、残らないんだ。光も闇も、どちらを欠いても……存在は出来ない」
魔王「ちょ、ちょっと待てよ!そんな事言ったら……!」
魔王「勇者が、魔王を倒したって! ……平和に何か、ならないじゃ無いか!」
魔王「……存在が無くなってしまうことが……平和なのか!?」
女魔「……だから言った筈だよ」
青年「『選択を誤るな』」
魔王「ど……どうしろって言うんだよ!」
魔王「勇者が魔王を倒さずに居たって、世界は滅びてしまう、んだろう!?」
青年「……そうだな。全てが『無』に帰る」
青年「存在していたことすら、無かった事になってしまう」
魔王「……何度も言うけど、俺にはもうどうすることも出来ないって!」
魔王「勇者に……倒されるのを待つだけだろう!?」
339: 2013/09/01(日) 08:56:53.52 ID:ktOuhzjGP
女魔「……さっき、娘は『全き闇』だった、と言ったね」
魔王「……あ?ああ……」
女魔「同じように……息子は、『全き光』だったんだ」
魔王「……でも、あいつの瞳は闇色に染まっていたぞ」
青年「勇者は何になるんだ?」
魔王「!」
紫魔「……赤子の瞳は、何色だった?」
魔王「そ、んな……!」
魔王「この侭、繰り返すと言うのか!?」
魔王「ずっと……永遠に……同じ事を繰り返すって……言いたいのか!」
青年「前にも言っただろう、魔王」
青年「……僕たちは、ずっと、何度も何度も」
青年「過去も未来も現在も、ずっと……!」
魔王「!」
青年「……こうして、不毛な旅を繰り返しているんだ」
紫魔「ループから逃れる事はできなかった」
紫魔「同じ事の繰り返し。永劫、逃れる事のできない……」
魔王「……『繰り返される運命の輪』か」
女魔「『光と闇は混じり合い』」
青年「『新たな世界が生まれ』」
紫魔「『破壊と再生を繰り返し、紡がれ続けて行く』」
魔王「…… ……」
紫魔「…… ……見ろ」
魔王「え……」
『オギャア、オギャア……!』
息子『あ、ああ……困ったな。お腹すいてるよね……ッ』
ボゥッ…… ……ザクザク……ッ
魔王「!」
魔王「……あ?ああ……」
女魔「同じように……息子は、『全き光』だったんだ」
魔王「……でも、あいつの瞳は闇色に染まっていたぞ」
青年「勇者は何になるんだ?」
魔王「!」
紫魔「……赤子の瞳は、何色だった?」
魔王「そ、んな……!」
魔王「この侭、繰り返すと言うのか!?」
魔王「ずっと……永遠に……同じ事を繰り返すって……言いたいのか!」
青年「前にも言っただろう、魔王」
青年「……僕たちは、ずっと、何度も何度も」
青年「過去も未来も現在も、ずっと……!」
魔王「!」
青年「……こうして、不毛な旅を繰り返しているんだ」
紫魔「ループから逃れる事はできなかった」
紫魔「同じ事の繰り返し。永劫、逃れる事のできない……」
魔王「……『繰り返される運命の輪』か」
女魔「『光と闇は混じり合い』」
青年「『新たな世界が生まれ』」
紫魔「『破壊と再生を繰り返し、紡がれ続けて行く』」
魔王「…… ……」
紫魔「…… ……見ろ」
魔王「え……」
『オギャア、オギャア……!』
息子『あ、ああ……困ったな。お腹すいてるよね……ッ』
ボゥッ…… ……ザクザク……ッ
魔王「!」
340: 2013/09/01(日) 09:03:51.52 ID:ktOuhzjGP
息子『ちょ、ちょっと、『世界』! ……ッ うわッ』
ザザァ……ピシャアアアアアン!
魔王「……何で、なんで産まれたばかりの赤ん坊が……ッ」
魔王「あんな、あんな……ッ魔法を使えるんだよ!」
青年「『世界』だからさ」
女魔「『支配し、支配される事を望まれた世界』だからよ」
紫魔「『世界』には炎しか存在しないか?水だけか?」
魔王「……無茶苦茶、だ……!」
息子『うわあああああああああああああああ!?』
ドサッ
『オギャア、ウワアアアアアッ』
魔王「あ……!」
青年「……『光は、闇を失った』」
紫魔「赤子は一人では……生きてはいけん」
女魔「だけど、あれは『世界』」
グニャ…… ……
魔王「……ッ」
魔王(視界が歪む……ッ 違う、眩暈……!?)
女魔「よく見て!魔王!」
紫魔「……破壊と再生の始まりだ」
魔王「な……に?」
ザザァ……ピシャアアアアアン!
魔王「……何で、なんで産まれたばかりの赤ん坊が……ッ」
魔王「あんな、あんな……ッ魔法を使えるんだよ!」
青年「『世界』だからさ」
女魔「『支配し、支配される事を望まれた世界』だからよ」
紫魔「『世界』には炎しか存在しないか?水だけか?」
魔王「……無茶苦茶、だ……!」
息子『うわあああああああああああああああ!?』
ドサッ
『オギャア、ウワアアアアアッ』
魔王「あ……!」
青年「……『光は、闇を失った』」
紫魔「赤子は一人では……生きてはいけん」
女魔「だけど、あれは『世界』」
グニャ…… ……
魔王「……ッ」
魔王(視界が歪む……ッ 違う、眩暈……!?)
女魔「よく見て!魔王!」
紫魔「……破壊と再生の始まりだ」
魔王「な……に?」
341: 2013/09/01(日) 09:17:30.11 ID:ktOuhzjGP
魔王(う、わ……ッ 目の前が、真っ暗……ッ!!)
バチバチバチ……ッ
魔王(眩しい……ッ閃光……!?)
『光と闇は、表裏一体。どちらを欠いても存在できぬ』
魔王(あれは……俺!? ……否)
『……拒否権は無いんだな』
『ああ……世界は美しい』
『俺は……魔王を、倒す!』
魔王(否……あれは……青年か?)
魔王(……金の髪に金の瞳……じゃ、解らない)
魔王(……魔王、は……黒、否。闇色の髪 ……って、事は……)
グニャリ……
魔王(う……ッ また、かよ……ッ)
バチバチバチ……ッ
魔王(眩しい……ッ閃光……!?)
『光と闇は、表裏一体。どちらを欠いても存在できぬ』
魔王(あれは……俺!? ……否)
『……拒否権は無いんだな』
『ああ……世界は美しい』
『俺は……魔王を、倒す!』
魔王(否……あれは……青年か?)
魔王(……金の髪に金の瞳……じゃ、解らない)
魔王(……魔王、は……黒、否。闇色の髪 ……って、事は……)
グニャリ……
魔王(う……ッ また、かよ……ッ)
342: 2013/09/01(日) 09:24:40.88 ID:ktOuhzjGP
『待ちなさいってば!若!』
タタタ……
『側近、遅いな!』
『……風邪引くって言ってんだろうがあああああ!』
『僕は魔王だ。そんな訳ないだろ!』
『魔王様はアンタのお父さんでしょうが!』
魔王(…… ……?)
魔王(! ……そうだ!紫の瞳の魔王は……!!)
『違うよ!僕が魔王だよ!』
『何でも良いから服着なさい!パンツ一丁で走り回んなあああああああああ!』
魔王(紫の瞳の魔王は、魔王の息子だ!)
魔王(……何時から、勇者の子……否)
魔王(魔王の子が勇者になって、あれ?違う……勇者の子が魔王?ん?)
魔王「何なんだよ!訳わかんねぇよ!」
シュゥン……
魔王「おい!どう言う事なんだって、これ……!」
紫魔の側近「相変わらずお馬鹿さんだねぇ、お前は」
魔王「……ッ ……え!?」
タタタ……
『側近、遅いな!』
『……風邪引くって言ってんだろうがあああああ!』
『僕は魔王だ。そんな訳ないだろ!』
『魔王様はアンタのお父さんでしょうが!』
魔王(…… ……?)
魔王(! ……そうだ!紫の瞳の魔王は……!!)
『違うよ!僕が魔王だよ!』
『何でも良いから服着なさい!パンツ一丁で走り回んなあああああああああ!』
魔王(紫の瞳の魔王は、魔王の息子だ!)
魔王(……何時から、勇者の子……否)
魔王(魔王の子が勇者になって、あれ?違う……勇者の子が魔王?ん?)
魔王「何なんだよ!訳わかんねぇよ!」
シュゥン……
魔王「おい!どう言う事なんだって、これ……!」
紫魔の側近「相変わらずお馬鹿さんだねぇ、お前は」
魔王「……ッ ……え!?」
343: 2013/09/01(日) 09:39:29.15 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「……本当、紫の瞳の魔王様そっくり」クスクス
魔王「…… ……ッ そ……ッ」
紫魔の側近「まあ、同一人物だし当たり前だわな」
魔王「側近……!?」
紫魔の側近「……おう。大きくなったな……勇者」
紫魔の側近「ああ……もう魔王、か」
魔王「…… ……ッ」
紫魔の側近「……何泣きそうな顔してんの」ポンポン
魔王「あ、阿呆!そんな訳……!」
紫魔の側近「はいはい。解った解った」
魔王「お前……ッ」
紫魔の側近「…… ……『特異点』って何だと思う?」
魔王「え?」
紫魔の側近「ほら、考えた考えた」
魔王「え、え……ちょ、ちょっと待てよ……」
紫魔の側近「……複雑だよな。神様って奴は、何考えて」
紫魔の側近「こんな世界を作ったんだか……」
魔王「……『世界』」
紫魔の側近「まあ、本当に神様なんてもんが、居るのかどうか」
紫魔の側近「俺にゃわかんねぇけど」
魔王「…… ……ッ そ……ッ」
紫魔の側近「まあ、同一人物だし当たり前だわな」
魔王「側近……!?」
紫魔の側近「……おう。大きくなったな……勇者」
紫魔の側近「ああ……もう魔王、か」
魔王「…… ……ッ」
紫魔の側近「……何泣きそうな顔してんの」ポンポン
魔王「あ、阿呆!そんな訳……!」
紫魔の側近「はいはい。解った解った」
魔王「お前……ッ」
紫魔の側近「…… ……『特異点』って何だと思う?」
魔王「え?」
紫魔の側近「ほら、考えた考えた」
魔王「え、え……ちょ、ちょっと待てよ……」
紫魔の側近「……複雑だよな。神様って奴は、何考えて」
紫魔の側近「こんな世界を作ったんだか……」
魔王「……『世界』」
紫魔の側近「まあ、本当に神様なんてもんが、居るのかどうか」
紫魔の側近「俺にゃわかんねぇけど」
345: 2013/09/01(日) 10:12:30.49 ID:ktOuhzjGP
魔王「……なあ」
紫魔の側近「お。もう解ったのか?」
魔王「何で……紫の瞳の魔王は、魔王の息子なんだ?」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「お前達の……出身の街を滅ぼしたのも、確かに魔王なんだよな?」
魔王「『勇者』になる為に……お前達は旅立った、んだよな?」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「俺達みたいな……『勇者』は何時から存在してたんだ!?」
紫魔の側近「『光と闇』だよ。勇者……あ、いや。魔王」
紫魔の側近「……呼びにくいなぁ」ハァ
魔王「側近!もうちょっとわかりやすく……」
紫魔の側近「人に頼ってばっかじゃ無くて、少しは考えなさいお馬鹿さん」
紫魔の側近「……お前が紫の瞳の魔王様を倒した時の事」
紫魔の側近「覚えてるだろ?」
魔王「俺が……倒した時……」
紫魔の側近「お前はどうやって産まれたんだ?」
魔王「!」
魔王「…… ……『俺はあいつ』」
紫魔の側近「そう。んで……『紫の瞳の魔王様はお前』だ」
魔王「…… ……『光と闇』」
紫魔の側近「双子を見ただろう」
紫魔の側近「……お前達と一緒だ。『全き光』と『全き闇』」
魔王「……だが、あいつらは『世界』を産んだぞ」
魔王「! ……そうだ!あの後どうなったんだ!?」
魔王「娘と息子が氏んで、赤ん坊は……『世界』は!?」
紫魔の側近「それは自分の目で確かめなさいよ」
紫魔の側近「……望めば、見る事ができる」
魔王「……『願えば叶う』か…… ……」
紫魔の側近「……怖いか?」
魔王「だ、誰が……!」
紫魔の側近「お。もう解ったのか?」
魔王「何で……紫の瞳の魔王は、魔王の息子なんだ?」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「お前達の……出身の街を滅ぼしたのも、確かに魔王なんだよな?」
魔王「『勇者』になる為に……お前達は旅立った、んだよな?」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「俺達みたいな……『勇者』は何時から存在してたんだ!?」
紫魔の側近「『光と闇』だよ。勇者……あ、いや。魔王」
紫魔の側近「……呼びにくいなぁ」ハァ
魔王「側近!もうちょっとわかりやすく……」
紫魔の側近「人に頼ってばっかじゃ無くて、少しは考えなさいお馬鹿さん」
紫魔の側近「……お前が紫の瞳の魔王様を倒した時の事」
紫魔の側近「覚えてるだろ?」
魔王「俺が……倒した時……」
紫魔の側近「お前はどうやって産まれたんだ?」
魔王「!」
魔王「…… ……『俺はあいつ』」
紫魔の側近「そう。んで……『紫の瞳の魔王様はお前』だ」
魔王「…… ……『光と闇』」
紫魔の側近「双子を見ただろう」
紫魔の側近「……お前達と一緒だ。『全き光』と『全き闇』」
魔王「……だが、あいつらは『世界』を産んだぞ」
魔王「! ……そうだ!あの後どうなったんだ!?」
魔王「娘と息子が氏んで、赤ん坊は……『世界』は!?」
紫魔の側近「それは自分の目で確かめなさいよ」
紫魔の側近「……望めば、見る事ができる」
魔王「……『願えば叶う』か…… ……」
紫魔の側近「……怖いか?」
魔王「だ、誰が……!」
347: 2013/09/01(日) 10:21:07.31 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「知る権利があるんだよ……義務も、な」
魔王「義務?」
紫魔の側近「そうさ……『拒否権のない選択を受け入れて』」
紫魔の側近「『美しい世界を守る為に』」
紫魔の側近「『勇者は魔王を倒す』んだろう?」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「ほら……見ろよ」
魔王「!」
『おぎゃあ……ッ オギャ……ッ あぁああん、アアァ……』
魔王「!」
魔王(赤ん坊が泣く度に……魔法が……否、あれは、魔法……か?)
魔王(……木々は風になぎ倒されて、炎は、全てを焼き尽くす)
魔王(荒れた海に雷が落ち、水は……全てを、飲み込んでいく)
魔王「…… ……」
紫魔の側近「『世界』は寂しいのさ」
魔王「寂しい?」
紫魔の側近「産まれたばかりの赤ん坊だぜ?乳をくれる母も居なければ」
紫魔の側近「優しく抱いてくれる、父も居ない」
魔王「…… ……あ!」
魔王(赤ん坊が……水……海、に……!!)
紫魔の側近「……消えちまったな」
魔王「……『世界』が消える……!!」
紫魔の側近「心配するな。全てを作り直すだけだ」
魔王「……え」
紫魔の側近「大地は生きてる。海も。空も……」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「水があれば『命』は産まれる」
魔王「!! ……あ……ッ」
紫魔の側近「ん?」
魔王「義務?」
紫魔の側近「そうさ……『拒否権のない選択を受け入れて』」
紫魔の側近「『美しい世界を守る為に』」
紫魔の側近「『勇者は魔王を倒す』んだろう?」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「ほら……見ろよ」
魔王「!」
『おぎゃあ……ッ オギャ……ッ あぁああん、アアァ……』
魔王「!」
魔王(赤ん坊が泣く度に……魔法が……否、あれは、魔法……か?)
魔王(……木々は風になぎ倒されて、炎は、全てを焼き尽くす)
魔王(荒れた海に雷が落ち、水は……全てを、飲み込んでいく)
魔王「…… ……」
紫魔の側近「『世界』は寂しいのさ」
魔王「寂しい?」
紫魔の側近「産まれたばかりの赤ん坊だぜ?乳をくれる母も居なければ」
紫魔の側近「優しく抱いてくれる、父も居ない」
魔王「…… ……あ!」
魔王(赤ん坊が……水……海、に……!!)
紫魔の側近「……消えちまったな」
魔王「……『世界』が消える……!!」
紫魔の側近「心配するな。全てを作り直すだけだ」
魔王「……え」
紫魔の側近「大地は生きてる。海も。空も……」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「水があれば『命』は産まれる」
魔王「!! ……あ……ッ」
紫魔の側近「ん?」
348: 2013/09/01(日) 10:38:57.08 ID:ktOuhzjGP
魔王「……『神話』だ……!」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「『始まりは終わりだった』……ええと……」
魔王「……『古の神との忘れられた契約』!!」
紫魔の側近「お前も読んだんだな」
シュゥン……
紫魔「『限りなく遠く、果てしなく近い最果ての地』」
魔王「!」
紫魔「『神は光と闇を生み出し、大地を作り水を育み炎を抱き過ごした』」
紫魔「……久しぶりだな、側近」
紫魔の側近「おう。又会えるとは思わなかったぜ……『魔王様』」
魔王「……紫の瞳の魔王……!」
紫魔の側近「……『一つ、命が産まれた』」
紫魔の側近「『それは紛れも無い命だった』……なあ、さっきの答え、わかったか?」
魔王「え……?」
紫魔の側近「『特異点』だよ」
紫魔「意地悪な問題だな」
紫魔の側近「仕方無いだろう。もうすぐなんだから」
魔王「もうすぐ……?」
紫魔の側近「……ヒント一杯出してあげたのに、お前って子は」ハァ
紫魔の側近「もーう……赤ん坊は何だった?」
魔王「え……せ、『世界』……だろ?」
魔王「な、何だよ!わかんねぇよ!」
紫魔の側近「……やっぱり、魔王様か」ハァ
紫魔「側近……お前、今……私も一緒くたに馬鹿にしたな」
紫魔の側近「お前もこいつも、元は同じモンでしょうが!」
魔王「『世界』は『命』……」
魔王「え、ええええ、っと……!?」
紫魔の側近「あーもー。しょうがないなぁ。宿題な?」
魔王「え!?」
紫魔「……流石にわからんだろうと思うんだが」
紫魔の側近「何でこんなにお馬鹿さんなんでしょうかね!」
紫魔「私を見て言うな!」
紫魔の側近「だから!こいつも……『勇者も魔王』様でしょうが!」
魔王「!」
魔王「……俺、か!?」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「『始まりは終わりだった』……ええと……」
魔王「……『古の神との忘れられた契約』!!」
紫魔の側近「お前も読んだんだな」
シュゥン……
紫魔「『限りなく遠く、果てしなく近い最果ての地』」
魔王「!」
紫魔「『神は光と闇を生み出し、大地を作り水を育み炎を抱き過ごした』」
紫魔「……久しぶりだな、側近」
紫魔の側近「おう。又会えるとは思わなかったぜ……『魔王様』」
魔王「……紫の瞳の魔王……!」
紫魔の側近「……『一つ、命が産まれた』」
紫魔の側近「『それは紛れも無い命だった』……なあ、さっきの答え、わかったか?」
魔王「え……?」
紫魔の側近「『特異点』だよ」
紫魔「意地悪な問題だな」
紫魔の側近「仕方無いだろう。もうすぐなんだから」
魔王「もうすぐ……?」
紫魔の側近「……ヒント一杯出してあげたのに、お前って子は」ハァ
紫魔の側近「もーう……赤ん坊は何だった?」
魔王「え……せ、『世界』……だろ?」
魔王「な、何だよ!わかんねぇよ!」
紫魔の側近「……やっぱり、魔王様か」ハァ
紫魔「側近……お前、今……私も一緒くたに馬鹿にしたな」
紫魔の側近「お前もこいつも、元は同じモンでしょうが!」
魔王「『世界』は『命』……」
魔王「え、ええええ、っと……!?」
紫魔の側近「あーもー。しょうがないなぁ。宿題な?」
魔王「え!?」
紫魔「……流石にわからんだろうと思うんだが」
紫魔の側近「何でこんなにお馬鹿さんなんでしょうかね!」
紫魔「私を見て言うな!」
紫魔の側近「だから!こいつも……『勇者も魔王』様でしょうが!」
魔王「!」
魔王「……俺、か!?」
349: 2013/09/01(日) 10:55:44.23 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「惜しい!」
紫魔「……だから、無理だって」
魔王「……なんだよ!お前らは! ……全部知ってます、見たいな顔しやがって!」
紫魔の側近「全部、なんかしらねぇよ」
紫魔の側近「俺達は……お前も含めて、だけど」
紫魔の側近「『過去』しか知らないんだよ」
魔王「過去……?」
紫魔「お前ちょっと黙ってろ。ややこしくしてるだけだ」
紫魔の側近「ちょ……ッそれ、魔王様の専売特許でしょうが!」
紫魔「黙れと言うのに……しかし、なんでお前が出て来るんだ、側近」
紫魔「……お前は『魔王』では無いだろう」
紫魔「アンタって人は……俺に何したのか忘れたのかよ!酷い!」
魔王「…… ……」
魔王(何なんだよ、こいつらは……)ハァ
紫魔の側近「ほら!勇者呆れてる!」
紫魔「お前の所為だろう、間違い無く」ハァ
紫魔の側近「ええええええええええ!?」
魔王「あのさ……わかりやすく……説明して貰えないもんですかね」
紫魔「……ふむ」
紫魔の側近「ふむ、じゃ、ねえええええ!」
紫魔の側近「お前が自分で気がつかないと意味が無いだろ!?勇者!」
魔王「そ、そうなの!?」
紫魔「お前が……今まで見てきたものは全て『過去』だ」
魔王「……何回も繰り返されてるんだろ?だったら……」
紫魔「だが『過去』なんだ」
紫魔「……『世界』を見ただろう。ああやって、何度も何度も再生されている」
紫魔の側近「…… ……」
紫魔「今……『黒い髪の勇者』は、新たな道を歩んでいる筈だ」
魔王「え……」
紫魔「……選択を誤るな、と何度も言っただろう」
紫魔「これ以上、繰り返さない為に」
魔王「…… ……だけど」
紫魔「……だから、無理だって」
魔王「……なんだよ!お前らは! ……全部知ってます、見たいな顔しやがって!」
紫魔の側近「全部、なんかしらねぇよ」
紫魔の側近「俺達は……お前も含めて、だけど」
紫魔の側近「『過去』しか知らないんだよ」
魔王「過去……?」
紫魔「お前ちょっと黙ってろ。ややこしくしてるだけだ」
紫魔の側近「ちょ……ッそれ、魔王様の専売特許でしょうが!」
紫魔「黙れと言うのに……しかし、なんでお前が出て来るんだ、側近」
紫魔「……お前は『魔王』では無いだろう」
紫魔「アンタって人は……俺に何したのか忘れたのかよ!酷い!」
魔王「…… ……」
魔王(何なんだよ、こいつらは……)ハァ
紫魔の側近「ほら!勇者呆れてる!」
紫魔「お前の所為だろう、間違い無く」ハァ
紫魔の側近「ええええええええええ!?」
魔王「あのさ……わかりやすく……説明して貰えないもんですかね」
紫魔「……ふむ」
紫魔の側近「ふむ、じゃ、ねえええええ!」
紫魔の側近「お前が自分で気がつかないと意味が無いだろ!?勇者!」
魔王「そ、そうなの!?」
紫魔「お前が……今まで見てきたものは全て『過去』だ」
魔王「……何回も繰り返されてるんだろ?だったら……」
紫魔「だが『過去』なんだ」
紫魔「……『世界』を見ただろう。ああやって、何度も何度も再生されている」
紫魔の側近「…… ……」
紫魔「今……『黒い髪の勇者』は、新たな道を歩んでいる筈だ」
魔王「え……」
紫魔「……選択を誤るな、と何度も言っただろう」
紫魔「これ以上、繰り返さない為に」
魔王「…… ……だけど」
350: 2013/09/01(日) 11:18:45.68 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「正しくは歩んでると思いたい、願ってる、だな」
紫魔「……『神話』を思い出せ」
魔王「……最初のあれしか、覚えてネェよ」
紫魔の側近「『始まりは終わりだった』んだ、勇者」
魔王「……!『世界』か!」
紫魔「『世界』は全てを破壊した。だが……『無』に帰った訳では無い」
紫魔「『紛れも無い命』はまた、産まれ……再生していくんだ」
紫魔の側近「見ただろう。金の髪の勇者が、魔王に対峙した瞬間を」
紫魔の側近「何度も何度も、繰り返されてきた不毛な会話、だ」
紫魔「勇者は魔王になり、魔王は勇者を産む」
紫魔「……本当に。何処で間違えたのだろうな」
魔王「…… ……特異点。そうか」
紫魔の側近「お?」
魔王「……紫の瞳の魔王。お前だ」
紫魔「…… ……」
魔王「器と……中身。俺とお前に別れてしまった」
魔王「……俺も、『特異点』か」
魔王「だから……『惜しい』だったんだな?」
紫魔の側近「まあ……及第点、かな」
魔王「え?」
紫魔の側近「さっき魔王様が言っただろう。どうして俺がここに居るんだ、って」
魔王「……ああ、そうか。側近は……魔王じゃない」
魔王「勇者でも……無い」
紫魔の側近「勇者になり損ねたからね。俺は……俺達は」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「俺は魔王様に『目』を食わされたからな」
紫魔「……せめて与えられたとか言えんのか」
紫魔の側近「言えるかあああああああああああ!」
魔王「!」ビクッ
紫魔の側近「あ、ああ……悪い悪い……」
紫魔の側近「……俺も『特異点』なのさ」
魔王「え?」
紫魔「……『神話』を思い出せ」
魔王「……最初のあれしか、覚えてネェよ」
紫魔の側近「『始まりは終わりだった』んだ、勇者」
魔王「……!『世界』か!」
紫魔「『世界』は全てを破壊した。だが……『無』に帰った訳では無い」
紫魔「『紛れも無い命』はまた、産まれ……再生していくんだ」
紫魔の側近「見ただろう。金の髪の勇者が、魔王に対峙した瞬間を」
紫魔の側近「何度も何度も、繰り返されてきた不毛な会話、だ」
紫魔「勇者は魔王になり、魔王は勇者を産む」
紫魔「……本当に。何処で間違えたのだろうな」
魔王「…… ……特異点。そうか」
紫魔の側近「お?」
魔王「……紫の瞳の魔王。お前だ」
紫魔「…… ……」
魔王「器と……中身。俺とお前に別れてしまった」
魔王「……俺も、『特異点』か」
魔王「だから……『惜しい』だったんだな?」
紫魔の側近「まあ……及第点、かな」
魔王「え?」
紫魔の側近「さっき魔王様が言っただろう。どうして俺がここに居るんだ、って」
魔王「……ああ、そうか。側近は……魔王じゃない」
魔王「勇者でも……無い」
紫魔の側近「勇者になり損ねたからね。俺は……俺達は」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「俺は魔王様に『目』を食わされたからな」
紫魔「……せめて与えられたとか言えんのか」
紫魔の側近「言えるかあああああああああああ!」
魔王「!」ビクッ
紫魔の側近「あ、ああ……悪い悪い……」
紫魔の側近「……俺も『特異点』なのさ」
魔王「え?」
351: 2013/09/01(日) 11:33:45.74 ID:ktOuhzjGP
紫魔の側近「魔王様の魔力を、その一部を身に内包した」
紫魔の側近「元人間の、魔族」
紫魔の側近「……瞳の色を変えた『勇者と魔王』以外の唯一の者」
魔王「!」
紫魔の側近「これ以上は、宿題!」
紫魔「……全く、意地の悪い」ハァ
紫魔の側近「いやいやいやいや!本当に!お前にだけは!」
紫魔の側近「言われたくないわああああああああ!」
紫魔「……側近、煩い」
魔王「…… ……」
魔王(さっぱり意味がわからん……)
魔王(俺が……紫の瞳の魔王が、特異点?側近も?)
魔王(じゃあ……『探し出せ』ってのは……どう言う意味だよ……!?)
魔王「……ッ」ハッ
シィン……
魔王「紫の瞳の魔王?側近!?」
魔王「…… ……」キョロ
魔王「また……一人、か」ハァ
『…… ……アァ、あ』
魔王「……ん?」
魔王(赤ん坊の泣き声……『世界』?)
『…… …… …… ……』
魔王(違う……あれは、風の音。木々のざわめきだ)
魔王(……目まぐるしい。くるくる、変わっていく)
魔王(……命、だ。)
魔王(人が出来て……あれは、魔物……か?)
紫魔の側近「元人間の、魔族」
紫魔の側近「……瞳の色を変えた『勇者と魔王』以外の唯一の者」
魔王「!」
紫魔の側近「これ以上は、宿題!」
紫魔「……全く、意地の悪い」ハァ
紫魔の側近「いやいやいやいや!本当に!お前にだけは!」
紫魔の側近「言われたくないわああああああああ!」
紫魔「……側近、煩い」
魔王「…… ……」
魔王(さっぱり意味がわからん……)
魔王(俺が……紫の瞳の魔王が、特異点?側近も?)
魔王(じゃあ……『探し出せ』ってのは……どう言う意味だよ……!?)
魔王「……ッ」ハッ
シィン……
魔王「紫の瞳の魔王?側近!?」
魔王「…… ……」キョロ
魔王「また……一人、か」ハァ
『…… ……アァ、あ』
魔王「……ん?」
魔王(赤ん坊の泣き声……『世界』?)
『…… …… …… ……』
魔王(違う……あれは、風の音。木々のざわめきだ)
魔王(……目まぐるしい。くるくる、変わっていく)
魔王(……命、だ。)
魔王(人が出来て……あれは、魔物……か?)
352: 2013/09/01(日) 11:54:24.02 ID:ktOuhzjGP
魔王(夜になって、朝になって……また、夜になって……)
魔王(……あ、街が出来てる)
魔王(……産まれて、氏んで……繰り返し……)
魔王(過去、か……よく考えたら)
魔王(何かが産まれて、氏んで……産まれて……って)
魔王(繰り返しなんだよな、本当に……)
魔王「……ん?」
魔王(……炎……戦争、か?)
魔王(……あれは……最果ての地にそっくり……だ……)
『魔を倒せ!この世界に、魔など必要無い!』
『身の程を知らぬ愚かな人間め……己の弱さを嘆くが良い!』
魔王(…… ……種族間の争い、か?)
魔王(人と……魔……)
魔王(…… ……儚いものだ。人は、弱い)
『く……ッまだ、立つか……ッ』
『個々は弱くとも、力を合わせると言う事を知らない、独りよがりな魔に』
『力を驕る魔には……ッ人の『知』は負けはせん!』
魔王(…… ……否。人は……強いのか)
魔王(后が言ってたな……回復魔法は、強くて弱い『人間の特権』)
魔王(成る程なぁ……)
『トドメだ!』
『ぐ……ッ ぅ……ッ いい気になるな、人間よ!』
『……ッこの世界に、光のある限り!』
『闇もまた、あるのだと……ッ 覚えておくが良い!』
魔王(……光と、闇……か)
魔王(……あ、街が出来てる)
魔王(……産まれて、氏んで……繰り返し……)
魔王(過去、か……よく考えたら)
魔王(何かが産まれて、氏んで……産まれて……って)
魔王(繰り返しなんだよな、本当に……)
魔王「……ん?」
魔王(……炎……戦争、か?)
魔王(……あれは……最果ての地にそっくり……だ……)
『魔を倒せ!この世界に、魔など必要無い!』
『身の程を知らぬ愚かな人間め……己の弱さを嘆くが良い!』
魔王(…… ……種族間の争い、か?)
魔王(人と……魔……)
魔王(…… ……儚いものだ。人は、弱い)
『く……ッまだ、立つか……ッ』
『個々は弱くとも、力を合わせると言う事を知らない、独りよがりな魔に』
『力を驕る魔には……ッ人の『知』は負けはせん!』
魔王(…… ……否。人は……強いのか)
魔王(后が言ってたな……回復魔法は、強くて弱い『人間の特権』)
魔王(成る程なぁ……)
『トドメだ!』
『ぐ……ッ ぅ……ッ いい気になるな、人間よ!』
『……ッこの世界に、光のある限り!』
『闇もまた、あるのだと……ッ 覚えておくが良い!』
魔王(……光と、闇……か)
353: 2013/09/01(日) 12:05:17.10 ID:ktOuhzjGP
魔王(……そんな事言い出したら、何もかも……『世界の理』全てが)
魔王(繰り返し、じゃ無いか……)
魔王(……それを断ち切れって、どう言う意味だよ!)
魔王(まるで……『世界』が出来た事が、駄目みたいじゃないか……!)
魔王(……あ…… あれ!?)
『良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ』
『は……』
『魔王が蘇って久しい。前魔王が前勇者によって倒されてからも同じく、じゃ』
『はい』
『今日そなたをここへ呼んだのは……分かるな?』
『……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます。この、勇者の印にかけて、必ず……!』
『うむ……頼んだぞ、選ばれし者よ!』
魔王(……何時の間に)
魔王(あれは……誰だ!?勇者の印!?)
魔王(あれは……あの顔は、俺だ!)
魔王(……って、事は……!?)
『拒否権は無いんだな』
『ああ……世界は美しい』
『俺bヘ……魔王を、涛|す!』
バチバチバチ……ッ
魔王(また、これか……ッ ぅ、ウ!?)ドクンッ
魔王「うぅ……ッ」
魔王(繰り返し、じゃ無いか……)
魔王(……それを断ち切れって、どう言う意味だよ!)
魔王(まるで……『世界』が出来た事が、駄目みたいじゃないか……!)
魔王(……あ…… あれ!?)
『良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ』
『は……』
『魔王が蘇って久しい。前魔王が前勇者によって倒されてからも同じく、じゃ』
『はい』
『今日そなたをここへ呼んだのは……分かるな?』
『……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます。この、勇者の印にかけて、必ず……!』
『うむ……頼んだぞ、選ばれし者よ!』
魔王(……何時の間に)
魔王(あれは……誰だ!?勇者の印!?)
魔王(あれは……あの顔は、俺だ!)
魔王(……って、事は……!?)
『拒否権は無いんだな』
『ああ……世界は美しい』
『俺bヘ……魔王を、涛|す!』
バチバチバチ……ッ
魔王(また、これか……ッ ぅ、ウ!?)ドクンッ
魔王「うぅ……ッ」
354: 2013/09/01(日) 12:15:09.97 ID:ktOuhzjGP
魔王(あ……あ……ッ!?)
『いやだああああ、はなしてえええええ! おかーさ……ッ おかーさーん!』
『そう?怖いよ……その、闇の様な紫』
『我らが……この世界の覇者となる!』
『頼んだぞ、光に選ばれし運命の子、勇者よ!』
『私は最強の盾となる』
『汝の名は、人間!』
魔王(なん、だ、これ……頭の中に、どんどん言葉が……溢れて……ッ)
『拒否権はないんだな』
魔王(駄目だ! ……それは……ッ また、繰り返す……!)
『ああ……世界は美しい』
魔王(違う! ……そうじゃない……そうじゃ無いんだ!)
『俺は……魔王を倒す!』
魔王(だ……め、だ……ッ 待て、待ってくれ……ッ)
魔王(……俺は、まだ何も知らない!俺は……ッ)
魔王「『知らなければならない……ッその義務と権利が、あるんだ……!』」
『いやだああああ、はなしてえええええ! おかーさ……ッ おかーさーん!』
『そう?怖いよ……その、闇の様な紫』
『我らが……この世界の覇者となる!』
『頼んだぞ、光に選ばれし運命の子、勇者よ!』
『私は最強の盾となる』
『汝の名は、人間!』
魔王(なん、だ、これ……頭の中に、どんどん言葉が……溢れて……ッ)
『拒否権はないんだな』
魔王(駄目だ! ……それは……ッ また、繰り返す……!)
『ああ……世界は美しい』
魔王(違う! ……そうじゃない……そうじゃ無いんだ!)
『俺は……魔王を倒す!』
魔王(だ……め、だ……ッ 待て、待ってくれ……ッ)
魔王(……俺は、まだ何も知らない!俺は……ッ)
魔王「『知らなければならない……ッその義務と権利が、あるんだ……!』」
355: 2013/09/01(日) 12:22:37.02 ID:ktOuhzjGP
……
………
…………
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者(空気、重ッ)
戦士(……一度もこっちを見ないな、村長)
魔法使い(息子さん……表で待ってるって出て行っちゃったし……)
僧侶(お腹……すいてるのに、喉を通らない……)
村長「……もう、発たれるのですか」
勇者「そう……ですね。司書さんにご挨拶して……行きます」
村長「…… ……」
村長「……息子に、伝えて置いて下さい」
村長「用が済んだらすぐに戻れ、と」
戦士「……解った」
村長「では、私も仕事がありますので。失礼致します」
スタスタ、パタン
勇者「……ふぅ」
魔法使い「司書さんは、教会ね」
僧侶「行きましょう、か……」
戦士「もう良いのか?」
僧侶「……流石に、喉を通りません」
………
…………
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
勇者(空気、重ッ)
戦士(……一度もこっちを見ないな、村長)
魔法使い(息子さん……表で待ってるって出て行っちゃったし……)
僧侶(お腹……すいてるのに、喉を通らない……)
村長「……もう、発たれるのですか」
勇者「そう……ですね。司書さんにご挨拶して……行きます」
村長「…… ……」
村長「……息子に、伝えて置いて下さい」
村長「用が済んだらすぐに戻れ、と」
戦士「……解った」
村長「では、私も仕事がありますので。失礼致します」
スタスタ、パタン
勇者「……ふぅ」
魔法使い「司書さんは、教会ね」
僧侶「行きましょう、か……」
戦士「もう良いのか?」
僧侶「……流石に、喉を通りません」
363: 2013/09/01(日) 13:25:23.24 ID:ktOuhzjGP
勇者「……行こう」カタン
戦士「『港街の勇者様』……だったか」スタスタ
僧侶「……盗賊様、の事では無いのでしょうか」
魔法使い「その……確執って何なの?」
僧侶「……私も、人伝に聞いただけなので、はっきりとは……」
勇者「戦士は、何か知らないのか?」
戦士「……解らない。聞いた事は確かに無い……が」
戦士「親父達も、知らない可能性がある」
魔法使い「……司書も、何処まで知ってる……かしら」
キィ、パタン
勇者「あ……息子さん」
息子「……行きましょうか」
僧侶「すみません、息子さん。司書さんに挨拶だけしていきたいんです」
息子「……では、村の入口で待っています」
スタスタ
魔法使い「……機嫌悪そう、ねぇ」
戦士「どんな顔して良いのか解らないのだろう」
勇者「俺達だって……同じ、だよ。多分」
僧侶「……いらっしゃる、かしら」
コンコン
戦士「『港街の勇者様』……だったか」スタスタ
僧侶「……盗賊様、の事では無いのでしょうか」
魔法使い「その……確執って何なの?」
僧侶「……私も、人伝に聞いただけなので、はっきりとは……」
勇者「戦士は、何か知らないのか?」
戦士「……解らない。聞いた事は確かに無い……が」
戦士「親父達も、知らない可能性がある」
魔法使い「……司書も、何処まで知ってる……かしら」
キィ、パタン
勇者「あ……息子さん」
息子「……行きましょうか」
僧侶「すみません、息子さん。司書さんに挨拶だけしていきたいんです」
息子「……では、村の入口で待っています」
スタスタ
魔法使い「……機嫌悪そう、ねぇ」
戦士「どんな顔して良いのか解らないのだろう」
勇者「俺達だって……同じ、だよ。多分」
僧侶「……いらっしゃる、かしら」
コンコン
364: 2013/09/01(日) 13:32:38.16 ID:ktOuhzjGP
司書「はい」カチャ
司書「……ああ。おはようございます、勇者様方」
魔法使い「……シスター、は?」
司書「子供達と食事をしに言っていますよ」
勇者「悪い、司書さん……俺達、もう行かないと行けないんだ」
司書「……そうですか。そうですね。魔王は……待ってはくれません、から」
戦士「『港街の勇者様』とやらの話だけ……聞かせて欲しい」
司書「……『少年』様、と仰る方が、居られたそうなのです」
魔法使い「少年?」
司書「ええ。私も詳しくは存じませんが……」
司書「……何度か、領主様の口から聞いた事のある名前だと」
司書「シスターが言っていた、のです」
僧侶「シスターさんが、ですか……?」
司書「……ええ。剣士さんに向かって、そう呼んでいた、と」
魔法使い「え……?」
司書「……少年様は、紫の瞳に、闇色の髪をされていたそうで」
勇者「!」
司書「…… ……昨日は言いそびれましたが、私は……前勇者様に」
司書「お会いした事があるのですよ」
戦士「……何!?」
司書「……金の髪に、金の瞳の、神々しいお姿でした」
勇者「…… ……」
司書「今の貴方達と同じように、仲間と共に魔導国の図書館へいらっしゃったのです」
僧侶「……前、勇者様、は……」
司書「……とても、よく似ていらっしゃいます。勇者様……貴方に」
勇者「……そう、か」
司書「そして、剣士様に……で、しょうか」
魔法使い「…… ……」
司書「……本当に、同一人物かと見間違う程」
勇者「どっちと……だ?」
戦士「勇者?」
司書「……ああ。おはようございます、勇者様方」
魔法使い「……シスター、は?」
司書「子供達と食事をしに言っていますよ」
勇者「悪い、司書さん……俺達、もう行かないと行けないんだ」
司書「……そうですか。そうですね。魔王は……待ってはくれません、から」
戦士「『港街の勇者様』とやらの話だけ……聞かせて欲しい」
司書「……『少年』様、と仰る方が、居られたそうなのです」
魔法使い「少年?」
司書「ええ。私も詳しくは存じませんが……」
司書「……何度か、領主様の口から聞いた事のある名前だと」
司書「シスターが言っていた、のです」
僧侶「シスターさんが、ですか……?」
司書「……ええ。剣士さんに向かって、そう呼んでいた、と」
魔法使い「え……?」
司書「……少年様は、紫の瞳に、闇色の髪をされていたそうで」
勇者「!」
司書「…… ……昨日は言いそびれましたが、私は……前勇者様に」
司書「お会いした事があるのですよ」
戦士「……何!?」
司書「……金の髪に、金の瞳の、神々しいお姿でした」
勇者「…… ……」
司書「今の貴方達と同じように、仲間と共に魔導国の図書館へいらっしゃったのです」
僧侶「……前、勇者様、は……」
司書「……とても、よく似ていらっしゃいます。勇者様……貴方に」
勇者「……そう、か」
司書「そして、剣士様に……で、しょうか」
魔法使い「…… ……」
司書「……本当に、同一人物かと見間違う程」
勇者「どっちと……だ?」
戦士「勇者?」
365: 2013/09/01(日) 13:51:14.26 ID:ktOuhzjGP
魔法使い「…… ……」
勇者「剣士が……俺と、同じような顔をしているのは解ってる」
勇者「……知っている……だけど……!」
司書「……瞳の色だけで、随分と印象は違ってくる物です」
司書「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「……勇者」
勇者「……ありがとうございました、司書さん」
司書「私は、もう……聖職者ではありませんが」
司書「貴方達の旅の無事を……祈っています。勇者様」
僧侶「……子供達の健康をお祈りします。勿論、シスターさんも、司書さん……も」
魔法使い「……」
司書「ええ……ありがとうございます」
司書「また……お時間があれば、どうぞお寄り下さいね?」
僧侶「あ、あの……ありがとうございました。この本……」
司書「ああ……忘れていました。ありがとうございます」
僧侶「!」ビクッ
魔法使い「?」
僧侶「……貴重な物、見せて頂いて嬉しかったです」
司書「妙な話をしてしまって、すみませんでした」
戦士「…… ……神父さん、だったか」
司書「? はい……ええと……どちら、の」
戦士「……この村に居たかもしれん人、の方だ」
司書「新米神官ですね……それが、何か?」
僧侶「……戦士さん?」
戦士「どんな……人だったんだ」
司書「……真面目で、真っ直ぐな男でしたよ」
司書「魔除けの石を作るには、酷く体力と精神力を消耗する」
司書「……何時も、港街の神父様を心配されていた」
僧侶「…… ……」
勇者「剣士が……俺と、同じような顔をしているのは解ってる」
勇者「……知っている……だけど……!」
司書「……瞳の色だけで、随分と印象は違ってくる物です」
司書「…… ……」
勇者「…… ……」
戦士「……勇者」
勇者「……ありがとうございました、司書さん」
司書「私は、もう……聖職者ではありませんが」
司書「貴方達の旅の無事を……祈っています。勇者様」
僧侶「……子供達の健康をお祈りします。勿論、シスターさんも、司書さん……も」
魔法使い「……」
司書「ええ……ありがとうございます」
司書「また……お時間があれば、どうぞお寄り下さいね?」
僧侶「あ、あの……ありがとうございました。この本……」
司書「ああ……忘れていました。ありがとうございます」
僧侶「!」ビクッ
魔法使い「?」
僧侶「……貴重な物、見せて頂いて嬉しかったです」
司書「妙な話をしてしまって、すみませんでした」
戦士「…… ……神父さん、だったか」
司書「? はい……ええと……どちら、の」
戦士「……この村に居たかもしれん人、の方だ」
司書「新米神官ですね……それが、何か?」
僧侶「……戦士さん?」
戦士「どんな……人だったんだ」
司書「……真面目で、真っ直ぐな男でしたよ」
司書「魔除けの石を作るには、酷く体力と精神力を消耗する」
司書「……何時も、港街の神父様を心配されていた」
僧侶「…… ……」
367: 2013/09/01(日) 14:11:25.49 ID:ktOuhzjGP
戦士「……そうか」
司書「あの……?」
僧侶「……どこかで、お会いしたら伝えておきます」
僧侶「司書さんが心配していらした、と」
司書「……ええ。もうこの世には居ないかもしれません」
司書「神の御許へと還った後……会えるのなら、もう一度……」
司書「……いえ。私はもう聖職者ではありませんからね」
司書「叶わぬ……夢かもしれません」
勇者「…… ……」
司書「でも……ありがとうございます。さあ、行って下さい」
司書「……失礼します、勇者様」
パタン
勇者「……盗賊様じゃ無かったな」
戦士「…… ……」
魔法使い「僧侶……さっき、どうしたの?」
僧侶「え?」
魔法使い「本を返した時に……貴女……」
僧侶「……あの人……多分、もう余り……長く、ありません」
勇者「え?」
僧侶「神父様や女神官様と同じです。命の……炎が…… ……」
戦士「……息子だ」
息子「ああ、勇者様……こっちです」
勇者「すみません、お待たせしました」
魔法使い「……後にしましょうか」
僧侶「…… ……はい」
司書「あの……?」
僧侶「……どこかで、お会いしたら伝えておきます」
僧侶「司書さんが心配していらした、と」
司書「……ええ。もうこの世には居ないかもしれません」
司書「神の御許へと還った後……会えるのなら、もう一度……」
司書「……いえ。私はもう聖職者ではありませんからね」
司書「叶わぬ……夢かもしれません」
勇者「…… ……」
司書「でも……ありがとうございます。さあ、行って下さい」
司書「……失礼します、勇者様」
パタン
勇者「……盗賊様じゃ無かったな」
戦士「…… ……」
魔法使い「僧侶……さっき、どうしたの?」
僧侶「え?」
魔法使い「本を返した時に……貴女……」
僧侶「……あの人……多分、もう余り……長く、ありません」
勇者「え?」
僧侶「神父様や女神官様と同じです。命の……炎が…… ……」
戦士「……息子だ」
息子「ああ、勇者様……こっちです」
勇者「すみません、お待たせしました」
魔法使い「……後にしましょうか」
僧侶「…… ……はい」
369: 2013/09/01(日) 14:19:10.55 ID:ktOuhzjGP
解ったorz
ごめんなさい……
誤字ばっか探してたorz
訂正
紫魔「アンタって人は……俺に何したのか忘れたのかよ!酷い!」
↓
紫魔の側近「アンタって人は……俺に何したのか忘れたのかよ!酷い!」
ごめんなさい……
誤字ばっか探してたorz
訂正
紫魔「アンタって人は……俺に何したのか忘れたのかよ!酷い!」
↓
紫魔の側近「アンタって人は……俺に何したのか忘れたのかよ!酷い!」
371: 2013/09/01(日) 14:31:31.91 ID:ktOuhzjGP
息子「少し歩きますが……大丈夫ですか?」
勇者「はい……あ、村長さんから伝言です」
戦士「……用が済んだらすぐに戻れ、だったか」
息子「……解りました」
魔法使い「……あの、息子さん。良いんですか?」
息子「何がです?」
魔法使い「私達に……その、石を……見せて」
息子「…… ……約束ですから」
戦士「もし……俺達が、石を壊すと言えばどうするんだ」
勇者「戦士!」
戦士「…… ……」
息子「……昨日までは、俺もそのつもりでした」
息子「あんな物があるから、魔導国なんかの良いなりになってしまうんだ」
息子「……俺一人じゃ、あの狼の群れを全滅させることは出来ないでしょう」
勇者「狼……」
息子「ええ。勇者様達が一緒なら……と、思って、居たんです」
息子「村の者達は、自衛の手段ぐらいは心得ている」
息子「……だから、最初は戸惑うだろうけど」
息子「力を合わせればいつかは……と、思って……」
魔法使い「『思っていた』…… ……過去形なのね」
息子「…… ……」
魔法使い「責めているつもりは……無い、のよ」
息子「……いえ。責められても……仕方ありませんから」
勇者「…… ……」
僧侶「……ッ」ビクッ
戦士「……僧侶?」
僧侶「な、ん……ッ で、すか……これ、は……!!」
魔法使い「な、なによ……まだ何も見えてないわよ!?」
勇者「はい……あ、村長さんから伝言です」
戦士「……用が済んだらすぐに戻れ、だったか」
息子「……解りました」
魔法使い「……あの、息子さん。良いんですか?」
息子「何がです?」
魔法使い「私達に……その、石を……見せて」
息子「…… ……約束ですから」
戦士「もし……俺達が、石を壊すと言えばどうするんだ」
勇者「戦士!」
戦士「…… ……」
息子「……昨日までは、俺もそのつもりでした」
息子「あんな物があるから、魔導国なんかの良いなりになってしまうんだ」
息子「……俺一人じゃ、あの狼の群れを全滅させることは出来ないでしょう」
勇者「狼……」
息子「ええ。勇者様達が一緒なら……と、思って、居たんです」
息子「村の者達は、自衛の手段ぐらいは心得ている」
息子「……だから、最初は戸惑うだろうけど」
息子「力を合わせればいつかは……と、思って……」
魔法使い「『思っていた』…… ……過去形なのね」
息子「…… ……」
魔法使い「責めているつもりは……無い、のよ」
息子「……いえ。責められても……仕方ありませんから」
勇者「…… ……」
僧侶「……ッ」ビクッ
戦士「……僧侶?」
僧侶「な、ん……ッ で、すか……これ、は……!!」
魔法使い「な、なによ……まだ何も見えてないわよ!?」
374: 2013/09/01(日) 14:48:28.19 ID:ktOuhzjGP
息子「……もう少し先ですが……どうしました?」
僧侶「……ッ ひ、酷く……禍々しい、気を……感じます……!」
僧侶「な……な、んなんですか……ッ これ……!?」
勇者「僧侶……」
戦士「……ッ シッ」
魔法使い「な、何よ……ッ」
戦士「静かにしろ……ッ」
グルルル……グルルル……ッ
勇者「……ッ」
息子「……動かないで下さい!」
戦士「僧侶。大丈夫か……」
僧侶「……ッ は、はい……ッ」
僧侶「……凄い、殺気を……感じます……ッ」
魔法使い「これ……やっつけちゃって……大丈夫、なの!?」
息子「わかりません……」
魔法使い「え!?」
息子「ば……場所は聞いて知っていましたが、実際に行ったことは……!」
魔法使い(……何時の話か解らないけど、お爺様達……魔導国の人達は)
魔法使い(この群れを……片付けて……進んで……行けた……!)
勇者「…… ……シッ ……こっちへ来る……」
グルルル……グルル……ッ
戦士「……目が血走ってるな。正気を失っている……のか?」
僧侶「これだけの禍々しい気を発してるんです……」
僧侶「……それに、これ…… ……魔気、ですよ」
魔法使い「そりゃ、魔物なんでしょう!?」
僧侶「…… ……違います。あ、いえあの狼は魔物に違い無いんですけど」
僧侶「石の……方です」
勇者「……え!?」
僧侶「……ッ ひ、酷く……禍々しい、気を……感じます……!」
僧侶「な……な、んなんですか……ッ これ……!?」
勇者「僧侶……」
戦士「……ッ シッ」
魔法使い「な、何よ……ッ」
戦士「静かにしろ……ッ」
グルルル……グルルル……ッ
勇者「……ッ」
息子「……動かないで下さい!」
戦士「僧侶。大丈夫か……」
僧侶「……ッ は、はい……ッ」
僧侶「……凄い、殺気を……感じます……ッ」
魔法使い「これ……やっつけちゃって……大丈夫、なの!?」
息子「わかりません……」
魔法使い「え!?」
息子「ば……場所は聞いて知っていましたが、実際に行ったことは……!」
魔法使い(……何時の話か解らないけど、お爺様達……魔導国の人達は)
魔法使い(この群れを……片付けて……進んで……行けた……!)
勇者「…… ……シッ ……こっちへ来る……」
グルルル……グルル……ッ
戦士「……目が血走ってるな。正気を失っている……のか?」
僧侶「これだけの禍々しい気を発してるんです……」
僧侶「……それに、これ…… ……魔気、ですよ」
魔法使い「そりゃ、魔物なんでしょう!?」
僧侶「…… ……違います。あ、いえあの狼は魔物に違い無いんですけど」
僧侶「石の……方です」
勇者「……え!?」
375: 2013/09/01(日) 15:03:51.56 ID:ktOuhzjGP
息子「魔 ……なんです?」
僧侶「……要するに、魔力……ですけど……多分、これ……」
僧侶「……『人間』のじゃありません……だから……」
息子「! ……では、あの聖職者様、は……!」
戦士「……そもそも、おかしいじゃないか……ッ」
戦士「何で聖職者が……ッ『魔寄せの石』等……作るんだ!」
グルルル……ッ
魔法使い「! ……気付かれた……! く……ッ 炎…… ……ッ」
ガアアアアアアアアァ!
魔法使い(! 早い!)
僧侶「……ッ」ドシュ!
勇者「僧侶!」
息子「! ……急所、に……一発……!?」
ギャアアアアアアアアアアアアア!
戦士「……ッ 戻るぞ!大群に囲まれたら……!」
息子「だ、駄目だ!村の方へは……ッ」
魔法使い「下がって……!炎よ!」ボゥ……ッ
勇者「おい!そんな広範囲に……!」
魔法使い「弱点なんでしょ!? ……ほら、今のうちに……!!」
タタタタタ……ッ
息子「……」ハァ、ハァ
戦士「……入口付近に逆戻り……か」
勇者「追いかけては……来ない、な」フゥ
魔法使い「……当分近づかない方が良い……でしょうね」
僧侶「……要するに、魔力……ですけど……多分、これ……」
僧侶「……『人間』のじゃありません……だから……」
息子「! ……では、あの聖職者様、は……!」
戦士「……そもそも、おかしいじゃないか……ッ」
戦士「何で聖職者が……ッ『魔寄せの石』等……作るんだ!」
グルルル……ッ
魔法使い「! ……気付かれた……! く……ッ 炎…… ……ッ」
ガアアアアアアアアァ!
魔法使い(! 早い!)
僧侶「……ッ」ドシュ!
勇者「僧侶!」
息子「! ……急所、に……一発……!?」
ギャアアアアアアアアアアアアア!
戦士「……ッ 戻るぞ!大群に囲まれたら……!」
息子「だ、駄目だ!村の方へは……ッ」
魔法使い「下がって……!炎よ!」ボゥ……ッ
勇者「おい!そんな広範囲に……!」
魔法使い「弱点なんでしょ!? ……ほら、今のうちに……!!」
タタタタタ……ッ
息子「……」ハァ、ハァ
戦士「……入口付近に逆戻り……か」
勇者「追いかけては……来ない、な」フゥ
魔法使い「……当分近づかない方が良い……でしょうね」
376: 2013/09/01(日) 15:21:47.04 ID:ktOuhzjGP
僧侶「……ここまで、降りて来る事は無いとは思います……けど」
僧侶「暫くは……見張りを立てておいた方が、良いでしょうね」
息子「…… ……」
勇者「息子さん?」
息子「…… ……あれは……何、なんです」
僧侶「え?」
息子「……あの、化け物……!血色の瞳の……!」
僧侶「……恐らく、ですけど」
僧侶「その……石の力に惹かれて、離れるに離れられないのでしょう」
僧侶「……『魔寄せの石』とは、言い得て妙、です」
魔法使い「……確かに、結果的に村にとっては……『魔除け』になってるけどね」ハァ
戦士「……その伝説の聖職者、と言うのは……人間では無い、のか?」
戦士「昨日までは……あまり、不思議に思わなかったが……」
魔法使い「……そうね。聖職者の魔力で『魔寄せ』だなんて」
魔法使い「よく考えたら、おかしな話だわ……」
勇者「……僧侶が居なければ、俺達にだって解らなかったさ」
僧侶「……実物を見ていないので、何とも……その、言えませんけど」
僧侶「魔物達とは別の……禍々しい気を感じました」
僧侶「それが……本当にその、聖職者様の魔気だとするのなら」
僧侶「……作られた方は……人間では無い、でしょうね……」
息子「……だとすれば、やはり……壊す訳には、行かない」
勇者「だろう……な」
戦士「勇者!?」
勇者「……戦士の言う様に、今、正気を失っていて」
勇者「石を壊すことで、元に戻ったとしても、だ」
勇者「……あの数が一斉に、村に降りてきたら……!!」
戦士「…… ……ッ」
僧侶「暫くは……見張りを立てておいた方が、良いでしょうね」
息子「…… ……」
勇者「息子さん?」
息子「…… ……あれは……何、なんです」
僧侶「え?」
息子「……あの、化け物……!血色の瞳の……!」
僧侶「……恐らく、ですけど」
僧侶「その……石の力に惹かれて、離れるに離れられないのでしょう」
僧侶「……『魔寄せの石』とは、言い得て妙、です」
魔法使い「……確かに、結果的に村にとっては……『魔除け』になってるけどね」ハァ
戦士「……その伝説の聖職者、と言うのは……人間では無い、のか?」
戦士「昨日までは……あまり、不思議に思わなかったが……」
魔法使い「……そうね。聖職者の魔力で『魔寄せ』だなんて」
魔法使い「よく考えたら、おかしな話だわ……」
勇者「……僧侶が居なければ、俺達にだって解らなかったさ」
僧侶「……実物を見ていないので、何とも……その、言えませんけど」
僧侶「魔物達とは別の……禍々しい気を感じました」
僧侶「それが……本当にその、聖職者様の魔気だとするのなら」
僧侶「……作られた方は……人間では無い、でしょうね……」
息子「……だとすれば、やはり……壊す訳には、行かない」
勇者「だろう……な」
戦士「勇者!?」
勇者「……戦士の言う様に、今、正気を失っていて」
勇者「石を壊すことで、元に戻ったとしても、だ」
勇者「……あの数が一斉に、村に降りてきたら……!!」
戦士「…… ……ッ」
377: 2013/09/01(日) 15:48:33.49 ID:ktOuhzjGP
僧侶「……正気に戻る可能性は、低いと思います」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「彼らは……もう……」
勇者「…… ……駆逐するしか無い、のか」
僧侶「ですけど……それは、厳しい、でしょうね」
僧侶「それこそ、魔王を倒し……世界中から、魔と言う物を消し去ってしまう」
僧侶「……それぐらいで、無ければ」
魔法使い「…… ……」
息子「…… ……」
息子「すみません、勇者様。ご案内する等といって置きながら」
勇者「……いいえ。俺達の……力不足、です」
勇者「結局……魔王を倒すしか方法が……」
息子「昨夜、お父さんはああ言っていましたけど……」
息子「俺は……魔王を倒す、と言う事が……直接のイコールでは無くても」
息子「……平和への、近道だと思います」
勇者「近道……」
息子「……はい。鉱石の洞窟も、魔除けの石も……必要、無くなるでしょう」
息子「そうすれば……人同士の醜い争いも……!」
魔法使い「……そう、簡単に行く……かしら」
戦士「……魔法使い?」
魔法使い「結局……この世界は『支配する側』と『される側』に別れるのよ」
魔法使い「……もし、魔導国が無くなったって」
勇者「!」
魔法使い「何れ、別の物がその地位に据え置かれる事になる」
魔法使い「……程度の差はあれ……ね」
魔法使い「僧侶?」
僧侶「彼らは……もう……」
勇者「…… ……駆逐するしか無い、のか」
僧侶「ですけど……それは、厳しい、でしょうね」
僧侶「それこそ、魔王を倒し……世界中から、魔と言う物を消し去ってしまう」
僧侶「……それぐらいで、無ければ」
魔法使い「…… ……」
息子「…… ……」
息子「すみません、勇者様。ご案内する等といって置きながら」
勇者「……いいえ。俺達の……力不足、です」
勇者「結局……魔王を倒すしか方法が……」
息子「昨夜、お父さんはああ言っていましたけど……」
息子「俺は……魔王を倒す、と言う事が……直接のイコールでは無くても」
息子「……平和への、近道だと思います」
勇者「近道……」
息子「……はい。鉱石の洞窟も、魔除けの石も……必要、無くなるでしょう」
息子「そうすれば……人同士の醜い争いも……!」
魔法使い「……そう、簡単に行く……かしら」
戦士「……魔法使い?」
魔法使い「結局……この世界は『支配する側』と『される側』に別れるのよ」
魔法使い「……もし、魔導国が無くなったって」
勇者「!」
魔法使い「何れ、別の物がその地位に据え置かれる事になる」
魔法使い「……程度の差はあれ……ね」
378: 2013/09/01(日) 16:21:30.17 ID:ktOuhzjGP
戦士「……それでも、俺達は前に進まねばならん」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
息子「……鍛冶師様の言うとおり」
戦士「……?」
息子「魔法剣の技術等……失われてしまって良い、ものなのかもしれません」
息子「こんな物があるから……ッ 『力』に。『権力』等に……ッ」
勇者「だけど、貴方達のその……技術が無ければ」
勇者「……前勇者も、俺も。此処まで来られなかった」
僧侶「『生きる』と言うのは、それだけで……欲深い物なのかもしれません」
勇者「だからといって、欲する事をやめてしまえば、それこそ……」
勇者「魔王に……世界は、滅ぼされてしまう」
息子「…… ……」
息子「……村に、戻ります」
僧侶「息子さん……」
息子「…… ……」クルッスタスタスタ
戦士「……行くぞ、勇者」
勇者「……ああ」
魔法使い「私達は、私達に出来る事をすれば良い」
魔法使い「……私達にしか出来ない事を、優先して……すれば良いのよ!」
僧侶「私達にしか出来ない事って……なんでしょう、ね」
勇者「さしあたっては……『魔王を倒す』事だ」
勇者「……息子さんも言っていたとおり、イコール平和に直結しなくても」
勇者「近道にはなる。 ……否、それ無くしては、平和など遠い筈だ!」
魔法使い「……そう、ね」
戦士「僧侶。小屋への道は……」
僧侶「先の十字路を左の方へ……川沿いを通って、北の街の方へ続くはずです」
勇者「…… ……」
魔法使い「……小屋へ着いたら、ちょっと話を整理しましょう」
戦士「今の所……着いてきている者は居ない様だ……な」
僧侶「……なるべく気配を探りながら歩きます」
勇者「無理はするなよ……魔導国の奴ら、直接手は出しては来ないだろうし」
魔法使い「…… ……」
魔法使い「…… ……」
勇者「…… ……」
息子「……鍛冶師様の言うとおり」
戦士「……?」
息子「魔法剣の技術等……失われてしまって良い、ものなのかもしれません」
息子「こんな物があるから……ッ 『力』に。『権力』等に……ッ」
勇者「だけど、貴方達のその……技術が無ければ」
勇者「……前勇者も、俺も。此処まで来られなかった」
僧侶「『生きる』と言うのは、それだけで……欲深い物なのかもしれません」
勇者「だからといって、欲する事をやめてしまえば、それこそ……」
勇者「魔王に……世界は、滅ぼされてしまう」
息子「…… ……」
息子「……村に、戻ります」
僧侶「息子さん……」
息子「…… ……」クルッスタスタスタ
戦士「……行くぞ、勇者」
勇者「……ああ」
魔法使い「私達は、私達に出来る事をすれば良い」
魔法使い「……私達にしか出来ない事を、優先して……すれば良いのよ!」
僧侶「私達にしか出来ない事って……なんでしょう、ね」
勇者「さしあたっては……『魔王を倒す』事だ」
勇者「……息子さんも言っていたとおり、イコール平和に直結しなくても」
勇者「近道にはなる。 ……否、それ無くしては、平和など遠い筈だ!」
魔法使い「……そう、ね」
戦士「僧侶。小屋への道は……」
僧侶「先の十字路を左の方へ……川沿いを通って、北の街の方へ続くはずです」
勇者「…… ……」
魔法使い「……小屋へ着いたら、ちょっと話を整理しましょう」
戦士「今の所……着いてきている者は居ない様だ……な」
僧侶「……なるべく気配を探りながら歩きます」
勇者「無理はするなよ……魔導国の奴ら、直接手は出しては来ないだろうし」
魔法使い「…… ……」
379: 2013/09/01(日) 16:57:17.89 ID:ktOuhzjGP
僧侶「近くはありませんけど……遠くもありません」
僧侶「今日は……小屋で、休みましょう。何も無いですけど」
戦士「待て、僧侶……俺の後ろに」
僧侶「あ、はい……」
勇者「先に行け、魔法使い……一番最後は、俺が歩く」
魔法使い「…… ……ええ」
スタスタ…… ……
僧侶「あの……戦士さん」
戦士「何だ?」
僧侶「……ありがとうございました」
戦士「?」
僧侶「昨日……司書さんとお話ししている時に……」
戦士「……何か、したか」
僧侶「今日、も……その。神父様の、事……聞いて下さって」
戦士「…… ……」
僧侶「……あ、あの……?」
戦士「何故だろうな。聞いておかなければ行けない気がしたんだ」
僧侶「え……」
戦士「……自分でも良く解らない。正直、情報が多すぎて」
僧侶「……そう、ですね」
僧侶「世界を知りたいと思っておきながら……振り回されています」
戦士「…… ……」
僧侶「見失ってはいけないと思えば思う程」
僧侶「……するりと、指先から逃げていってしまう様です」
戦士「『後手後手』……か」
魔法使い「……お爺様の考えは、解る様で解らない」
魔法使い「読まれている様でもあるし、これが必然である様な気にもなる」
勇者「……真実は……何処にあるんだろうな」
勇者「俺達は……本当に、ちゃんと…… ……」
勇者「正しい選択を……繰り返してきてる……んだろうか」
勇者「……世界を、救う為の道を、歩いているんだろうか」
僧侶「今日は……小屋で、休みましょう。何も無いですけど」
戦士「待て、僧侶……俺の後ろに」
僧侶「あ、はい……」
勇者「先に行け、魔法使い……一番最後は、俺が歩く」
魔法使い「…… ……ええ」
スタスタ…… ……
僧侶「あの……戦士さん」
戦士「何だ?」
僧侶「……ありがとうございました」
戦士「?」
僧侶「昨日……司書さんとお話ししている時に……」
戦士「……何か、したか」
僧侶「今日、も……その。神父様の、事……聞いて下さって」
戦士「…… ……」
僧侶「……あ、あの……?」
戦士「何故だろうな。聞いておかなければ行けない気がしたんだ」
僧侶「え……」
戦士「……自分でも良く解らない。正直、情報が多すぎて」
僧侶「……そう、ですね」
僧侶「世界を知りたいと思っておきながら……振り回されています」
戦士「…… ……」
僧侶「見失ってはいけないと思えば思う程」
僧侶「……するりと、指先から逃げていってしまう様です」
戦士「『後手後手』……か」
魔法使い「……お爺様の考えは、解る様で解らない」
魔法使い「読まれている様でもあるし、これが必然である様な気にもなる」
勇者「……真実は……何処にあるんだろうな」
勇者「俺達は……本当に、ちゃんと…… ……」
勇者「正しい選択を……繰り返してきてる……んだろうか」
勇者「……世界を、救う為の道を、歩いているんだろうか」
381: 2013/09/01(日) 17:13:06.15 ID:ktOuhzjGP
僧侶「……信じることを放棄してしまえば、それこそ……全て」
僧侶「……終わってしまいます、よ」
戦士「信じる……か」フゥ
勇者「何を信じるか解らなければ、自分を信じれば良い」
勇者「……今の俺達には……それしか無いんだろう」
魔法使い「自分を……か……」
僧侶「あ……あれです!」
魔法使い「……綺麗ね。それに……随分、風が気持ちいい」
勇者「結構歩いた……な。お言葉に甘えて、少し休もう」
戦士「…… ……」
僧侶「戦士さん?」
戦士「あ…… ……すまん」スタスタ
戦士(何だ……? 随分と……懐かしい様な)
キィ、パタン
魔法使い「日暮れまでにはもう少しあるけど……今日はもう、休みましょう」
戦士「……そう、だな」
勇者「早く出発したい気持ちは……解るよ、戦士」
戦士「否……大丈夫だ。俺は……親父も、国王も信じている」
僧侶「……港街への攻撃、ですか……」
魔法使い「北の街へ行って、すぐに船が借りられたとしても」
魔法使い「……始まりの国までは随分掛かるわ」
戦士「魔導国、の間違いじゃ無いのか」
魔法使い「まさか……本当に言いなりに、直接魔導国に行くつもり?」
勇者「え?」
魔法使い「……此処まで後手後手に回るのが必然でも偶然でも何でも良いけど」
魔法使い「始まりの国には寄るべきよ」
魔法使い「…… ……それも手のひらの上、な気がしてしゃくだけどね」
僧侶「そうですね……『港街の勇者様』が『少年』であり」
僧侶「……本当に剣士さんであるのなら、国王様に確かめてみる、べきです」
僧侶「……終わってしまいます、よ」
戦士「信じる……か」フゥ
勇者「何を信じるか解らなければ、自分を信じれば良い」
勇者「……今の俺達には……それしか無いんだろう」
魔法使い「自分を……か……」
僧侶「あ……あれです!」
魔法使い「……綺麗ね。それに……随分、風が気持ちいい」
勇者「結構歩いた……な。お言葉に甘えて、少し休もう」
戦士「…… ……」
僧侶「戦士さん?」
戦士「あ…… ……すまん」スタスタ
戦士(何だ……? 随分と……懐かしい様な)
キィ、パタン
魔法使い「日暮れまでにはもう少しあるけど……今日はもう、休みましょう」
戦士「……そう、だな」
勇者「早く出発したい気持ちは……解るよ、戦士」
戦士「否……大丈夫だ。俺は……親父も、国王も信じている」
僧侶「……港街への攻撃、ですか……」
魔法使い「北の街へ行って、すぐに船が借りられたとしても」
魔法使い「……始まりの国までは随分掛かるわ」
戦士「魔導国、の間違いじゃ無いのか」
魔法使い「まさか……本当に言いなりに、直接魔導国に行くつもり?」
勇者「え?」
魔法使い「……此処まで後手後手に回るのが必然でも偶然でも何でも良いけど」
魔法使い「始まりの国には寄るべきよ」
魔法使い「…… ……それも手のひらの上、な気がしてしゃくだけどね」
僧侶「そうですね……『港街の勇者様』が『少年』であり」
僧侶「……本当に剣士さんであるのなら、国王様に確かめてみる、べきです」
382: 2013/09/01(日) 17:14:09.20 ID:ktOuhzjGP
>>380
大丈夫だよー!ありがとうー!
スコーンはともかく、幼女はやらん!www
大丈夫だよー!ありがとうー!
スコーンはともかく、幼女はやらん!www
383: 2013/09/01(日) 17:36:36.56 ID:ktOuhzjGP
勇者「しかし……ご存じなのだろうか……」
戦士「……そればっかりは、わからんな」
僧侶「私も……昔港街と魔導国で何らかの確執があったのだとしか」
僧侶「……解らないんです」
魔法使い「それは一端置いておきましょう?解ることから整理すべきよ」
魔法使い「でないと、本当に見失うわ」
勇者「……しかし『港街』に『鍛冶師の村』に……『魔導国』の『勇者様』か」ハァ
戦士「『真の勇者』はお前しか居ない……勇者」
僧侶「そうです。 ……確かに、少年さん、と言う人も」
僧侶「鍛冶師の村の人々にとっての鍛冶師様も勇者には違い無いんでしょうけど……」
魔法使い「『英雄』には間違いないものね…… ……あら?」
勇者「どうした?」
魔法使い「……港街と、始まりの国を作ったのは盗賊様……よね?」
戦士「あ、ああ……それは間違い無い」
僧侶「作るきっかけになったのが……『確執』ですよね」
魔法使い「内容は置いておいてってば」
魔法使い「……さっき、私達は『港街の勇者様』は『盗賊様』だろうって」
魔法使い「話してたわよね……貢献者には間違い無い物」
僧侶「!」
魔法使い「……まだよ、僧侶。少しずつ…… ……!」
勇者「な、何だよ……」
魔法使い「でも、実際は……誰だったの」
戦士「……『少年』と言う……紫の瞳の男だ」
勇者「剣士と同一人物かもしれない、と言われてる……んだよな」
僧侶「そして、剣士さんの見目は変わられていない」
僧侶「もし、盗賊様達がお若い時代から生きていらっしゃるのだとすれば」
僧侶「確実に……人ではありません」
魔法使い「……それに、よ。もう気づいてるわよね、僧侶?」
僧侶「…… ……はい」
戦士「何だ。解る様に話せ……」
僧侶「……『少年』が『港街の勇者』であるなら」
僧侶「盗賊様の……お知り合いと言う事になります……よ、ね?」
勇者「! ……あ……ッ」
戦士「!」
魔法使い「しかも、味方と言う事になるわよ」
魔法使い「どんな確執だか解らないけど」
魔法使い「……言葉の意味は、良い物を表す物じゃ無い!」
戦士「……そればっかりは、わからんな」
僧侶「私も……昔港街と魔導国で何らかの確執があったのだとしか」
僧侶「……解らないんです」
魔法使い「それは一端置いておきましょう?解ることから整理すべきよ」
魔法使い「でないと、本当に見失うわ」
勇者「……しかし『港街』に『鍛冶師の村』に……『魔導国』の『勇者様』か」ハァ
戦士「『真の勇者』はお前しか居ない……勇者」
僧侶「そうです。 ……確かに、少年さん、と言う人も」
僧侶「鍛冶師の村の人々にとっての鍛冶師様も勇者には違い無いんでしょうけど……」
魔法使い「『英雄』には間違いないものね…… ……あら?」
勇者「どうした?」
魔法使い「……港街と、始まりの国を作ったのは盗賊様……よね?」
戦士「あ、ああ……それは間違い無い」
僧侶「作るきっかけになったのが……『確執』ですよね」
魔法使い「内容は置いておいてってば」
魔法使い「……さっき、私達は『港街の勇者様』は『盗賊様』だろうって」
魔法使い「話してたわよね……貢献者には間違い無い物」
僧侶「!」
魔法使い「……まだよ、僧侶。少しずつ…… ……!」
勇者「な、何だよ……」
魔法使い「でも、実際は……誰だったの」
戦士「……『少年』と言う……紫の瞳の男だ」
勇者「剣士と同一人物かもしれない、と言われてる……んだよな」
僧侶「そして、剣士さんの見目は変わられていない」
僧侶「もし、盗賊様達がお若い時代から生きていらっしゃるのだとすれば」
僧侶「確実に……人ではありません」
魔法使い「……それに、よ。もう気づいてるわよね、僧侶?」
僧侶「…… ……はい」
戦士「何だ。解る様に話せ……」
僧侶「……『少年』が『港街の勇者』であるなら」
僧侶「盗賊様の……お知り合いと言う事になります……よ、ね?」
勇者「! ……あ……ッ」
戦士「!」
魔法使い「しかも、味方と言う事になるわよ」
魔法使い「どんな確執だか解らないけど」
魔法使い「……言葉の意味は、良い物を表す物じゃ無い!」
384: 2013/09/01(日) 17:47:37.02 ID:ktOuhzjGP
戦士「待て! ……だったら、剣士が『魔導国の勇者』と言う事自体」
戦士「どう考えたって成り立たないぞ!?」
僧侶「…… ……では……どこかで……誰かが……」
僧侶「『大いなる勘違い』をしていると言う事になります」
勇者「……大いなる勘違い?」
僧侶「だって、何もイコールでは結べませんよ!?」
魔法使い「……お爺様達が、利用されているのか」
魔法使い「盗賊様達が……ずっと、利用されてきた、のか……!」
戦士「気が長いにも程がある!そんな馬鹿な……!」
僧侶「……でも……ッ」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者?」
勇者「…… ……鉱石の洞窟を、狙ってた、んだよな?」
戦士「……? ……その話は今は関係ないだろう?」
魔法使い「待って……!」
勇者「あれは……鍛冶師様が、光の剣の修理に使った」
勇者「罠か、フェイクか解らんが……意味の無い物を狙うとも思えない……」ブツブツ
戦士「おい、勇者?」
勇者「……魔導国は、鍛冶師の村に……技術を要求した」
魔法使い「魔寄せの石……聖職者様の秘密を守る変わりに」
魔法使い「それに……石も持ち帰ってる」
勇者「それはちょっと置いておいて……」
戦士「お、おい……解る様に話してくれ!」
勇者「……『失われて行く技術』だと鍛冶師様は仰っていた」
勇者「何より、この光の剣はぼろぼろだ。この侭では魔王を倒す事はできない」
勇者「……だが、魔導国がその技術を得たとすれば?」
戦士「! 無理だ!お爺様でも、無理だった物を……!」
魔法使い「……持ち帰った石、だけど」
勇者「魔法使い、だから、それは……」
魔法使い「違うわよ! ……その『技術』に生かす為だとすれば!?」
勇者「!」
戦士「どう考えたって成り立たないぞ!?」
僧侶「…… ……では……どこかで……誰かが……」
僧侶「『大いなる勘違い』をしていると言う事になります」
勇者「……大いなる勘違い?」
僧侶「だって、何もイコールでは結べませんよ!?」
魔法使い「……お爺様達が、利用されているのか」
魔法使い「盗賊様達が……ずっと、利用されてきた、のか……!」
戦士「気が長いにも程がある!そんな馬鹿な……!」
僧侶「……でも……ッ」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者?」
勇者「…… ……鉱石の洞窟を、狙ってた、んだよな?」
戦士「……? ……その話は今は関係ないだろう?」
魔法使い「待って……!」
勇者「あれは……鍛冶師様が、光の剣の修理に使った」
勇者「罠か、フェイクか解らんが……意味の無い物を狙うとも思えない……」ブツブツ
戦士「おい、勇者?」
勇者「……魔導国は、鍛冶師の村に……技術を要求した」
魔法使い「魔寄せの石……聖職者様の秘密を守る変わりに」
魔法使い「それに……石も持ち帰ってる」
勇者「それはちょっと置いておいて……」
戦士「お、おい……解る様に話してくれ!」
勇者「……『失われて行く技術』だと鍛冶師様は仰っていた」
勇者「何より、この光の剣はぼろぼろだ。この侭では魔王を倒す事はできない」
勇者「……だが、魔導国がその技術を得たとすれば?」
戦士「! 無理だ!お爺様でも、無理だった物を……!」
魔法使い「……持ち帰った石、だけど」
勇者「魔法使い、だから、それは……」
魔法使い「違うわよ! ……その『技術』に生かす為だとすれば!?」
勇者「!」
385: 2013/09/01(日) 17:56:11.44 ID:ktOuhzjGP
僧侶「……で、でも……あれは、魔の気です!」
僧侶「もし、あの力を取り出そうとしたって……!」
戦士「……剣士がいる」
魔法使い「あいつが、人間で無いとすれば……」
勇者「違う!」ハッ
僧侶「え?」
勇者「あいつは、魔族だろう!? ……いや、多分、だけど……」
勇者「……魔導国は、魔族を味方につけて、何をする気だ……!」
僧侶「!!」
戦士「まさか……!魔王に、与するつもり……か!?」
魔法使い「……勇者を、捕らえるつもりで……戻れ、と……!?」
魔法使い「そんな……!」
僧侶「……辻褄は、あいますよ……人の知……『失われていく技術』を得て」
僧侶「現存する魔法剣……光の剣を、手に……」
戦士「……『魔導国の勇者』に、魔王への貢ぎ物として持たせる……」
勇者「な……ッ」
魔法使い「じょ……ッ 冗談じゃないわ!」
魔法使い「だったら、何故私達は旅立ったの!」
魔法使い「勇者は『光に選ばれた勇者』なんでしょう!?」
僧侶「……全ての話に魔導国が出て来るんです」
僧侶「そして、その話の先は……必ず、魔導国に帰結する」
魔法使い「…… ……ッ ち、違うわ!」
魔法使い「だって、お爺様達は……私に、勇者様の目に留まる様に、って……!」
戦士「……それも、だ。封鎖した国へ入る為の手段……なら?」
魔法使い「そ…… ……ん、な……ッ」
勇者「……確かに、辻褄が合う様に思える……けど」
魔法使い「……え?」
勇者「さっきの仮説がおかしくなってくるぞ」
僧侶「……あ……そうか……少年さんと、盗賊様の関係……」
僧侶「もし、あの力を取り出そうとしたって……!」
戦士「……剣士がいる」
魔法使い「あいつが、人間で無いとすれば……」
勇者「違う!」ハッ
僧侶「え?」
勇者「あいつは、魔族だろう!? ……いや、多分、だけど……」
勇者「……魔導国は、魔族を味方につけて、何をする気だ……!」
僧侶「!!」
戦士「まさか……!魔王に、与するつもり……か!?」
魔法使い「……勇者を、捕らえるつもりで……戻れ、と……!?」
魔法使い「そんな……!」
僧侶「……辻褄は、あいますよ……人の知……『失われていく技術』を得て」
僧侶「現存する魔法剣……光の剣を、手に……」
戦士「……『魔導国の勇者』に、魔王への貢ぎ物として持たせる……」
勇者「な……ッ」
魔法使い「じょ……ッ 冗談じゃないわ!」
魔法使い「だったら、何故私達は旅立ったの!」
魔法使い「勇者は『光に選ばれた勇者』なんでしょう!?」
僧侶「……全ての話に魔導国が出て来るんです」
僧侶「そして、その話の先は……必ず、魔導国に帰結する」
魔法使い「…… ……ッ ち、違うわ!」
魔法使い「だって、お爺様達は……私に、勇者様の目に留まる様に、って……!」
戦士「……それも、だ。封鎖した国へ入る為の手段……なら?」
魔法使い「そ…… ……ん、な……ッ」
勇者「……確かに、辻褄が合う様に思える……けど」
魔法使い「……え?」
勇者「さっきの仮説がおかしくなってくるぞ」
僧侶「……あ……そうか……少年さんと、盗賊様の関係……」
386: 2013/09/01(日) 18:00:23.37 ID:ktOuhzjGP
戦士「……堂々巡りだ。全てが繋がらない以上……それは真実とは呼べん」
魔法使い「そ……そうよ……そう……よ、ね……」
勇者「『大いなる勘違い』……か」
勇者(何を勘違いしてる……?)
勇者(俺は……選択を誤る訳には……!!)
僧侶「……ッ」ハッ
戦士「どうした?」
僧侶「何か……」
魔法使い「え?」
僧侶「…… ……何かが、来ます!」
勇者「!?」
僧侶(私……この気配を知っている……!?)
僧侶(でも…… これ、は……ッ)
戦士「……ッ」ガバッ
魔法使い「待ちなさい、戦士!一人で出たら、危ない……!」タタタ
勇者「おい、お前ら……!」
僧侶「勇者様、待って…… ……!」
バタン!
戦士「……? ……何も、見えない……が」
魔法使い「いつの間にか……真っ暗、ね……外」
僧侶「こ、の……気配、は……!!」
勇者「! ……居るのか!?魔法使い、僧侶……下がって……!」
バサバサバサバサ……ッ
魔法使い「そ……そうよ……そう……よ、ね……」
勇者「『大いなる勘違い』……か」
勇者(何を勘違いしてる……?)
勇者(俺は……選択を誤る訳には……!!)
僧侶「……ッ」ハッ
戦士「どうした?」
僧侶「何か……」
魔法使い「え?」
僧侶「…… ……何かが、来ます!」
勇者「!?」
僧侶(私……この気配を知っている……!?)
僧侶(でも…… これ、は……ッ)
戦士「……ッ」ガバッ
魔法使い「待ちなさい、戦士!一人で出たら、危ない……!」タタタ
勇者「おい、お前ら……!」
僧侶「勇者様、待って…… ……!」
バタン!
戦士「……? ……何も、見えない……が」
魔法使い「いつの間にか……真っ暗、ね……外」
僧侶「こ、の……気配、は……!!」
勇者「! ……居るのか!?魔法使い、僧侶……下がって……!」
バサバサバサバサ……ッ
401: 2013/09/02(月) 10:02:04.71 ID:mHiDyfm4P
勇者「! ……何の、音……ッ」
フッ
魔法使い「……?」
魔法使い(影……月が、雲に隠れた…… の……)スッ
魔法使い「! ……ッ 翼……ッ ……!?」
戦士「上か……ッ」バッ
僧侶(……ッ 影になって、顔が見えない……、けど、この……気配、は!!)
バサバサ…… ……バサ……ッ
魔導将軍「…… ……」
勇者「魔…… 物……ッ !?」
魔導将軍「あら厭だ!あんなのと一緒にしないでくれるぅ?」
魔法使い「そ……ッ そんな真っ赤な翼で、空飛んで何言ってるのよ!?」
戦士「…… ……此処は、もう……魔除け……否」
戦士「魔寄せの石の効力から外れるのか……?」グッ シャキン!
僧侶「…… ……」
勇者「僧侶!弓を…… ……僧侶!?」
魔導将軍「ああ、インキュバスの魔石ね……残念だけど」
魔導将軍「私には効かないなぁ……」
魔法使い「……ッ 炎よ!」ボゥッ
僧侶「あ……ッ 待って、魔法使いさん……ッ」
ボボォ……ッ
魔導将軍「手荒い歓迎ねぇ……まあ、そうで無くっちゃ、ね……っと」スッ
シュゥウ……
勇者「!」
戦士「炎が……ッ!?」
魔法使い「……ッそんな!? 消え、た……ッ」
魔法使い(手をかざすだけで……あっさり……と……!?)
フッ
魔法使い「……?」
魔法使い(影……月が、雲に隠れた…… の……)スッ
魔法使い「! ……ッ 翼……ッ ……!?」
戦士「上か……ッ」バッ
僧侶(……ッ 影になって、顔が見えない……、けど、この……気配、は!!)
バサバサ…… ……バサ……ッ
魔導将軍「…… ……」
勇者「魔…… 物……ッ !?」
魔導将軍「あら厭だ!あんなのと一緒にしないでくれるぅ?」
魔法使い「そ……ッ そんな真っ赤な翼で、空飛んで何言ってるのよ!?」
戦士「…… ……此処は、もう……魔除け……否」
戦士「魔寄せの石の効力から外れるのか……?」グッ シャキン!
僧侶「…… ……」
勇者「僧侶!弓を…… ……僧侶!?」
魔導将軍「ああ、インキュバスの魔石ね……残念だけど」
魔導将軍「私には効かないなぁ……」
魔法使い「……ッ 炎よ!」ボゥッ
僧侶「あ……ッ 待って、魔法使いさん……ッ」
ボボォ……ッ
魔導将軍「手荒い歓迎ねぇ……まあ、そうで無くっちゃ、ね……っと」スッ
シュゥウ……
勇者「!」
戦士「炎が……ッ!?」
魔法使い「……ッそんな!? 消え、た……ッ」
魔法使い(手をかざすだけで……あっさり……と……!?)
402: 2013/09/02(月) 10:21:23.38 ID:mHiDyfm4P
魔導将軍「はいはい、物騒な物しまってね、別に攻撃する気ないから」
戦士「お前……何者だ?」グッ
魔法使い「そ、んな言葉……信じられると思う……の……?」
魔導将軍「あらあら……余裕ないなぁ」
僧侶「…… ……貴女、は……」
魔導将軍「うん、僧侶ちゃんには隠せないよねぇ」
勇者「……僧侶 ……?」チラ
僧侶「…… ……」
魔法使い「……何で、名前まで」
魔導将軍「戦士君に魔法使いちゃんも落ち着いて、ね?」
戦士「…… ……」
魔導将軍「さて…… ……勇者君?」
勇者「……僧侶、こいつは……誰だ?」
勇者「何故……皆の事まで……!」
戦士「僧侶!」
魔導将軍「もう……人の話を聞かない……」
僧侶「皆、始まりの国で会っています……よ」
勇者「……始まりの、国!?」
戦士「何を言ってるんだ!あの国に魔族なんて……!」
魔法使い「そうよ!僧侶、貴女……!!」
僧侶「お久しぶりです、事務員さん」
勇者「じ……」
魔法使い「事務員!?」
戦士「…… ……な、ん……ッ!?」
僧侶「…… ……」
魔導将軍「……どうして解った、て聞くのは愚問かしら?」
魔導将軍「でも……あの時私は完璧に魔族の力を封印してたはず、なんだけどな」
僧侶「……魔力、は関係ありません。事務員さんと貴女が同じ、と……」
僧侶「…… ……」
魔導将軍「『感じた』……のね。流石……エルフの娘、ね」
勇者「!」
戦士「…… ……」
魔法使い「……どうして」
僧侶「驚いているんですよ?私……まさか、って」
僧侶「……まさか、魔族だったなんて……!!」
魔導将軍「うん、そうね……心臓、ばくばく言ってるモンね」
僧侶「!!」
戦士「僧侶……俺の後ろへ」ス……
戦士「お前……何者だ?」グッ
魔法使い「そ、んな言葉……信じられると思う……の……?」
魔導将軍「あらあら……余裕ないなぁ」
僧侶「…… ……貴女、は……」
魔導将軍「うん、僧侶ちゃんには隠せないよねぇ」
勇者「……僧侶 ……?」チラ
僧侶「…… ……」
魔法使い「……何で、名前まで」
魔導将軍「戦士君に魔法使いちゃんも落ち着いて、ね?」
戦士「…… ……」
魔導将軍「さて…… ……勇者君?」
勇者「……僧侶、こいつは……誰だ?」
勇者「何故……皆の事まで……!」
戦士「僧侶!」
魔導将軍「もう……人の話を聞かない……」
僧侶「皆、始まりの国で会っています……よ」
勇者「……始まりの、国!?」
戦士「何を言ってるんだ!あの国に魔族なんて……!」
魔法使い「そうよ!僧侶、貴女……!!」
僧侶「お久しぶりです、事務員さん」
勇者「じ……」
魔法使い「事務員!?」
戦士「…… ……な、ん……ッ!?」
僧侶「…… ……」
魔導将軍「……どうして解った、て聞くのは愚問かしら?」
魔導将軍「でも……あの時私は完璧に魔族の力を封印してたはず、なんだけどな」
僧侶「……魔力、は関係ありません。事務員さんと貴女が同じ、と……」
僧侶「…… ……」
魔導将軍「『感じた』……のね。流石……エルフの娘、ね」
勇者「!」
戦士「…… ……」
魔法使い「……どうして」
僧侶「驚いているんですよ?私……まさか、って」
僧侶「……まさか、魔族だったなんて……!!」
魔導将軍「うん、そうね……心臓、ばくばく言ってるモンね」
僧侶「!!」
戦士「僧侶……俺の後ろへ」ス……
406: 2013/09/02(月) 15:04:07.55 ID:mHiDyfm4P
僧侶(……心臓が飛び出しそう。これほど……強い、力……)
魔法使い(殺気は感じない……のに、何、この……圧倒される、力は……ッ)
戦士(肌を刺すぴりぴりしたこの力……隙が、ない)
勇者(これが…事務員!? そして、魔族……)
勇者「魔王の……手下……か」
魔導将軍「せめて『仲間』って言ってくれないかなぁ……」ハァ
戦士「何が……目的で、あの国に姿を現した」
魔導将軍「んー……まあ、老婆心かなぁ」
魔法使い「な……ッ 何言ってんのよ!魔王の手下の癖に……!」
魔導将軍「だーかーらー……仲間、だってば」
僧侶「……勇者様に着いていくだろう者を、探っていたんですか?」
僧侶「そうまで……そうまでして……!」
魔導将軍「まあ、そりゃ否定しないけど……でも、そこから続くだろう言葉はね」
魔導将軍「多分……『貴方達の大いなる勘違い』」
僧侶「!」
戦士「……聞いてた、のか!?」
魔法使い「……ッ う、そ……でしょ……あの距離、で……!?」
勇者「ふ……ッ ふざけるな!何が目的だ……ッ!!」
勇者「俺達は……むざむざと、やられはしない……ッ」グッ
魔導将軍「落ち着きなさい、勇者君。貴方は『勇者』なのよ?」
魔導将軍「『光に導かれし運命の子』……その君が取り乱してどうするの」
魔導将軍「……危害を加える気は、無いって、言ったでしょ?」
魔法使い(殺気は感じない……のに、何、この……圧倒される、力は……ッ)
戦士(肌を刺すぴりぴりしたこの力……隙が、ない)
勇者(これが…事務員!? そして、魔族……)
勇者「魔王の……手下……か」
魔導将軍「せめて『仲間』って言ってくれないかなぁ……」ハァ
戦士「何が……目的で、あの国に姿を現した」
魔導将軍「んー……まあ、老婆心かなぁ」
魔法使い「な……ッ 何言ってんのよ!魔王の手下の癖に……!」
魔導将軍「だーかーらー……仲間、だってば」
僧侶「……勇者様に着いていくだろう者を、探っていたんですか?」
僧侶「そうまで……そうまでして……!」
魔導将軍「まあ、そりゃ否定しないけど……でも、そこから続くだろう言葉はね」
魔導将軍「多分……『貴方達の大いなる勘違い』」
僧侶「!」
戦士「……聞いてた、のか!?」
魔法使い「……ッ う、そ……でしょ……あの距離、で……!?」
勇者「ふ……ッ ふざけるな!何が目的だ……ッ!!」
勇者「俺達は……むざむざと、やられはしない……ッ」グッ
魔導将軍「落ち着きなさい、勇者君。貴方は『勇者』なのよ?」
魔導将軍「『光に導かれし運命の子』……その君が取り乱してどうするの」
魔導将軍「……危害を加える気は、無いって、言ったでしょ?」
407: 2013/09/02(月) 15:49:51.75 ID:mHiDyfm4P
勇者「そん……ッ そんなもの……ッ信じられる……か!」
戦士(……勇者、足が震えている)
戦士(当然……か。魔力のなんたるかも解らん俺でさえ……)
戦士(……肌に、ピリピリと何かが、突き刺さるのが、解る)
僧侶「……では、何故、貴女は此処に……こうして、居るのですか」
僧侶「確かに、殺気は感じません……ですが……!!」
魔導将軍「流石ね、僧侶ちゃん……」
魔導将軍「……さっきの言葉の続き……ね?」
魔導将軍「『そうまでして、世界を滅ぼしたいのか』」
魔導将軍「……って、言いたかった、のよね?」
僧侶「…… ……」
魔法使い(こんな、圧倒的な力の差で!? ……私も、こいつも)
魔法使い(……同じ、炎の加護。なのに……!! こんなにも……!!)
魔法使い「な……んでよ……!!何で、そこまでして……!!」
魔法使い「……世界を滅ぼして、どうしようって言うの!」
勇者「魔法使い!」
魔導将軍「だから、さぁ……それは、貴方達の……ああ、違うな」
魔導将軍「『人間の、大いなる勘違い』」
勇者「……え?」
戦士(……勇者、足が震えている)
戦士(当然……か。魔力のなんたるかも解らん俺でさえ……)
戦士(……肌に、ピリピリと何かが、突き刺さるのが、解る)
僧侶「……では、何故、貴女は此処に……こうして、居るのですか」
僧侶「確かに、殺気は感じません……ですが……!!」
魔導将軍「流石ね、僧侶ちゃん……」
魔導将軍「……さっきの言葉の続き……ね?」
魔導将軍「『そうまでして、世界を滅ぼしたいのか』」
魔導将軍「……って、言いたかった、のよね?」
僧侶「…… ……」
魔法使い(こんな、圧倒的な力の差で!? ……私も、こいつも)
魔法使い(……同じ、炎の加護。なのに……!! こんなにも……!!)
魔法使い「な……んでよ……!!何で、そこまでして……!!」
魔法使い「……世界を滅ぼして、どうしようって言うの!」
勇者「魔法使い!」
魔導将軍「だから、さぁ……それは、貴方達の……ああ、違うな」
魔導将軍「『人間の、大いなる勘違い』」
勇者「……え?」
408: 2013/09/02(月) 16:29:34.66 ID:mHiDyfm4P
魔導将軍「……魔王はね、一言も言ってないわよ、そんな事」
魔導将軍「勿論……信じられないだろうけどね」
魔導将軍「魔王は……この世界を守ろうとしてるのよ」
勇者「…… ……な、ん……だと?」
魔導将軍「……だから、君は」
魔導将軍「『勇者は、必ず魔王を倒す』」
戦士「!?」
魔法使い「……な、何……馬鹿な事言ってるのよ!?」
魔法使い「アンタ……魔王の手下……ッ」
魔導将軍「な・か・ま!」
魔法使い「…… ……」
僧侶「……貴女は、それを……伝える為に、来た、のですか」
魔導将軍「あら。僧侶ちゃんは信じてくれるの?」
僧侶「…… い……いえ……その……」
魔導将軍「そうね。嘘は吐けないわよね……だって、貴女にはエルフの血が流れてる」
僧侶「!!」
魔導将軍「今じゃ無くて良い。北の塔に行きなさい、僧侶ちゃん」バサッ
僧侶「え…… ……」
戦士「ま……待て!」
魔導将軍「御免ねぇ、戦士君。ゆっくりしたいのは山々なんだけど」
魔導将軍「……『時間が無い』の」
勇者「…… ……時間が、無い?」
魔導将軍「……よく考えなさい、『勇者』」
魔導将軍「『世界を滅ぼそうとしているのは、誰?』」
勇者「!」
魔法使い「惑わされないで!勇者! ……魔王が、世界を守るだなんて……!」
魔導将軍「勿論……信じられないだろうけどね」
魔導将軍「魔王は……この世界を守ろうとしてるのよ」
勇者「…… ……な、ん……だと?」
魔導将軍「……だから、君は」
魔導将軍「『勇者は、必ず魔王を倒す』」
戦士「!?」
魔法使い「……な、何……馬鹿な事言ってるのよ!?」
魔法使い「アンタ……魔王の手下……ッ」
魔導将軍「な・か・ま!」
魔法使い「…… ……」
僧侶「……貴女は、それを……伝える為に、来た、のですか」
魔導将軍「あら。僧侶ちゃんは信じてくれるの?」
僧侶「…… い……いえ……その……」
魔導将軍「そうね。嘘は吐けないわよね……だって、貴女にはエルフの血が流れてる」
僧侶「!!」
魔導将軍「今じゃ無くて良い。北の塔に行きなさい、僧侶ちゃん」バサッ
僧侶「え…… ……」
戦士「ま……待て!」
魔導将軍「御免ねぇ、戦士君。ゆっくりしたいのは山々なんだけど」
魔導将軍「……『時間が無い』の」
勇者「…… ……時間が、無い?」
魔導将軍「……よく考えなさい、『勇者』」
魔導将軍「『世界を滅ぼそうとしているのは、誰?』」
勇者「!」
魔法使い「惑わされないで!勇者! ……魔王が、世界を守るだなんて……!」
412: 2013/09/03(火) 10:09:39.91 ID:QAkpRo5dP
戦士「……そうだ。それに……言っている事がおかしいだろう!」
戦士「『魔王が世界を守ろうとしている』のなら」
戦士「何故、『勇者が魔王を倒す』必要があるんだ!」
勇者「……ッ」ハッ
勇者「お前……始まりの国で、俺が登録所に行った時に……」
魔導将軍「ん?」バッサバッサ
勇者「……俺に、言ったな」
勇者「『世に一人しか存在を許されぬ、選ばれし印をその拳に握る者』……」
魔法使い「……え?」
僧侶「あ……ッ」
戦士「?」
勇者「……俺は、母さんから聞いて知っていた」
勇者「だが、何故お前が……ッ 魔族のお前が!」
勇者「『勇者』は世界に一人しか存在しない事を……知っているんだ!?」
魔導将軍「……僧侶ちゃんや、戦士君。魔法使いちゃんは……」
魔導将軍「どうして、それを知ったの?」
勇者「……仲間だからだ。俺が話したからだ! ……お前、まさか、母さんを……!?」
戦士「!!」
魔導将軍「……同じよ?」
バッサバッサ……
魔法使い「ま……待ちなさい!」
戦士「やめろ……ッ 追える相手じゃない……!」
僧侶「同じ……?」
勇者「……ッ 待て、魔族……ッ」
魔導将軍「……大きくなったね、勇者君」
勇者「……!?」
魔導将軍「ここから、ずっと北。最果ての街のさらに奥、最果ての城。魔王様の居場所」
魔導将軍「……また、後でね?」
戦士「『魔王が世界を守ろうとしている』のなら」
戦士「何故、『勇者が魔王を倒す』必要があるんだ!」
勇者「……ッ」ハッ
勇者「お前……始まりの国で、俺が登録所に行った時に……」
魔導将軍「ん?」バッサバッサ
勇者「……俺に、言ったな」
勇者「『世に一人しか存在を許されぬ、選ばれし印をその拳に握る者』……」
魔法使い「……え?」
僧侶「あ……ッ」
戦士「?」
勇者「……俺は、母さんから聞いて知っていた」
勇者「だが、何故お前が……ッ 魔族のお前が!」
勇者「『勇者』は世界に一人しか存在しない事を……知っているんだ!?」
魔導将軍「……僧侶ちゃんや、戦士君。魔法使いちゃんは……」
魔導将軍「どうして、それを知ったの?」
勇者「……仲間だからだ。俺が話したからだ! ……お前、まさか、母さんを……!?」
戦士「!!」
魔導将軍「……同じよ?」
バッサバッサ……
魔法使い「ま……待ちなさい!」
戦士「やめろ……ッ 追える相手じゃない……!」
僧侶「同じ……?」
勇者「……ッ 待て、魔族……ッ」
魔導将軍「……大きくなったね、勇者君」
勇者「……!?」
魔導将軍「ここから、ずっと北。最果ての街のさらに奥、最果ての城。魔王様の居場所」
魔導将軍「……また、後でね?」
413: 2013/09/03(火) 10:42:09.43 ID:QAkpRo5dP
戦士「…… ……」
魔導将軍「ああ、そうそう。私は魔導将軍、よ?」
魔導将軍「覚えておいて……ああ、急がなくっちゃ」
バサバサバサバサ……
勇者「……魔導、将軍……」
勇者(同じ、と言った……!? それは……)
勇者(『仲間』……である、魔王から聞いた? 否……ッ)
勇者(……同じ。母さんから聞いたと言う事か!?)
勇者(母さん……!!)
戦士「…… ……」
戦士(『老婆心』だと!?)
戦士(……もし、『剣士』が『少年』だとしたら)
戦士(『魔導将軍』……と、言ったか)
戦士(あいつも……お祖母様やお爺様を……知ってる、のか!?)
魔法使い「…… ……」
魔法使い(……『魔物』と『魔族』は違う……!?)
魔法使い(何にせよ、『魔寄せの石』は……『インキュバス』と言ってた。誰……!?)
魔法使い(同じ炎の加護……だろうに、圧倒的な力の差……!!)
魔法使い(魔族って……何? お爺様達は、あんな者に……!?)
僧侶(……やはり、エルフは嘘を吐けない……?)
僧侶(どうして、知っているの……真実、なの?)
僧侶(それに……北の塔? ……何故……そんな場所に……?)
僧侶(見抜かれていた。警戒していなかったとは、言え……!!)
魔導将軍「ああ、そうそう。私は魔導将軍、よ?」
魔導将軍「覚えておいて……ああ、急がなくっちゃ」
バサバサバサバサ……
勇者「……魔導、将軍……」
勇者(同じ、と言った……!? それは……)
勇者(『仲間』……である、魔王から聞いた? 否……ッ)
勇者(……同じ。母さんから聞いたと言う事か!?)
勇者(母さん……!!)
戦士「…… ……」
戦士(『老婆心』だと!?)
戦士(……もし、『剣士』が『少年』だとしたら)
戦士(『魔導将軍』……と、言ったか)
戦士(あいつも……お祖母様やお爺様を……知ってる、のか!?)
魔法使い「…… ……」
魔法使い(……『魔物』と『魔族』は違う……!?)
魔法使い(何にせよ、『魔寄せの石』は……『インキュバス』と言ってた。誰……!?)
魔法使い(同じ炎の加護……だろうに、圧倒的な力の差……!!)
魔法使い(魔族って……何? お爺様達は、あんな者に……!?)
僧侶(……やはり、エルフは嘘を吐けない……?)
僧侶(どうして、知っているの……真実、なの?)
僧侶(それに……北の塔? ……何故……そんな場所に……?)
僧侶(見抜かれていた。警戒していなかったとは、言え……!!)
414: 2013/09/03(火) 11:10:58.27 ID:QAkpRo5dP
勇者「…… ……僧侶」
僧侶「は、はい……?」
勇者「確か、何だな?」
僧侶「え……?」
魔法使い「事務員が、魔導将軍だった……って事、よね」
戦士「……中に入ろう。いくら魔寄せの石の効果だあっても」
戦士「この暗い中、襲われたら……」
勇者「……そう、だな」
僧侶「裏に、薪が……残っていれば、ですけど……あります」
僧侶「魔法使いさん、火を」
魔法使い「……ああ、そうね。この辺の魔物は、火に弱い、んだっけ」
戦士「俺が見てくる」
僧侶「あ……私も行きます……!」
タタタ……
魔法使い「…… ……」
勇者「大丈夫か、魔法使い」
魔法使い「え?」
勇者「……否」
魔法使い(暗くて見えないのが幸いね……多分、私……酷い顔してる)
魔法使い(否……私だけじゃ無いわね。勇者も……多分、戦士も、僧侶も……)
魔法使い「……大丈夫、とは言えないわ。でも……ッ」
勇者「…… ……そうだな。落ち込んでても何も進まない」
魔法使い「どうするの」
勇者「……朝になったら北の街へ出発する」
勇者「それまでに出来るだけ、情報を整理しておこう」
魔法使い「……船を手に入れたら……始まりの国、ね」
僧侶「は、はい……?」
勇者「確か、何だな?」
僧侶「え……?」
魔法使い「事務員が、魔導将軍だった……って事、よね」
戦士「……中に入ろう。いくら魔寄せの石の効果だあっても」
戦士「この暗い中、襲われたら……」
勇者「……そう、だな」
僧侶「裏に、薪が……残っていれば、ですけど……あります」
僧侶「魔法使いさん、火を」
魔法使い「……ああ、そうね。この辺の魔物は、火に弱い、んだっけ」
戦士「俺が見てくる」
僧侶「あ……私も行きます……!」
タタタ……
魔法使い「…… ……」
勇者「大丈夫か、魔法使い」
魔法使い「え?」
勇者「……否」
魔法使い(暗くて見えないのが幸いね……多分、私……酷い顔してる)
魔法使い(否……私だけじゃ無いわね。勇者も……多分、戦士も、僧侶も……)
魔法使い「……大丈夫、とは言えないわ。でも……ッ」
勇者「…… ……そうだな。落ち込んでても何も進まない」
魔法使い「どうするの」
勇者「……朝になったら北の街へ出発する」
勇者「それまでに出来るだけ、情報を整理しておこう」
魔法使い「……船を手に入れたら……始まりの国、ね」
415: 2013/09/03(火) 11:42:01.88 ID:QAkpRo5dP
勇者「…… ……魔導国、も気になる……が……」
魔法使い「国王様も、騎士団長様もいらっしゃる」
魔法使い「……大丈夫だと思いたい、けど……」
勇者「世の中に『絶対』は無い……これも……母さんの言葉、だ」
魔法使い「…… ……」
勇者「……遅いな、二人とも」
魔法使い「僧侶が此処を離れたの、随分前なんでしょう?」
魔法使い「無理も無いわよ……でも、安全の為には火を…… ……あ!」
勇者「え?」
魔法使い(……出来る、かしら。作れはしても……)
勇者「…… ……魔法使い?」
魔法使い(使い方が解らない……!いえ、でも……!)
魔法使い「…… ……炎、よ!」グッ
勇者「お、おい!?」
ポトン……コロコロ……
魔法使い「……炎よ!」ボォ……コロン
勇者「……魔石、か……」
魔法使い「ええと…… ……」ヒョイ、グッ
魔法使い(逆に考えれば良いのよ……少しずつ……燃える、様に……!)
ポゥ…… ……
勇者「…… ……すげぇ」
魔法使い「こ……これで、少し……は……」フラッ
勇者「魔法使い!」ギュッ
魔法使い「国王様も、騎士団長様もいらっしゃる」
魔法使い「……大丈夫だと思いたい、けど……」
勇者「世の中に『絶対』は無い……これも……母さんの言葉、だ」
魔法使い「…… ……」
勇者「……遅いな、二人とも」
魔法使い「僧侶が此処を離れたの、随分前なんでしょう?」
魔法使い「無理も無いわよ……でも、安全の為には火を…… ……あ!」
勇者「え?」
魔法使い(……出来る、かしら。作れはしても……)
勇者「…… ……魔法使い?」
魔法使い(使い方が解らない……!いえ、でも……!)
魔法使い「…… ……炎、よ!」グッ
勇者「お、おい!?」
ポトン……コロコロ……
魔法使い「……炎よ!」ボォ……コロン
勇者「……魔石、か……」
魔法使い「ええと…… ……」ヒョイ、グッ
魔法使い(逆に考えれば良いのよ……少しずつ……燃える、様に……!)
ポゥ…… ……
勇者「…… ……すげぇ」
魔法使い「こ……これで、少し……は……」フラッ
勇者「魔法使い!」ギュッ
416: 2013/09/03(火) 11:48:45.90 ID:QAkpRo5dP
魔法使い「……ご、ご免なさい!」
勇者「大丈夫か!?」
魔法使い「少し、眩暈がしただけよ……平気」
勇者「掴まってろ……先に中に入ろう」
魔法使い「……すぐ傍に居るでしょう、大丈夫」
勇者「二人か? ……かといって大声で呼ぶ訳にも……」
スタスタ……
僧侶「ご免なさい、勇者様…… ……魔法使いさん!?」
戦士「薪は使い物に……どうしたッ ……?」
僧侶「炎……どうして……」
魔法使い「……兄君と魔導師君に感謝、ね」フゥ
僧侶「魔石! ……無茶を……ッ」パァッ
戦士「大丈夫か……?」
魔法使い「平気……ありがとう、僧侶」
僧侶「……真っ青です、魔法使いさん」
勇者「俺達もだが……緊張もあっただろう」
勇者「……魔法使いと同じ、炎の加護を持つ……魔族だ」
戦士「……魔導将軍」グッ
僧侶「とにかく中へ!」
魔法使い「……朝までは到底持たないわ。又、作らないと……」
僧侶「そんなの後です!」
勇者「大丈夫か!?」
魔法使い「少し、眩暈がしただけよ……平気」
勇者「掴まってろ……先に中に入ろう」
魔法使い「……すぐ傍に居るでしょう、大丈夫」
勇者「二人か? ……かといって大声で呼ぶ訳にも……」
スタスタ……
僧侶「ご免なさい、勇者様…… ……魔法使いさん!?」
戦士「薪は使い物に……どうしたッ ……?」
僧侶「炎……どうして……」
魔法使い「……兄君と魔導師君に感謝、ね」フゥ
僧侶「魔石! ……無茶を……ッ」パァッ
戦士「大丈夫か……?」
魔法使い「平気……ありがとう、僧侶」
僧侶「……真っ青です、魔法使いさん」
勇者「俺達もだが……緊張もあっただろう」
勇者「……魔法使いと同じ、炎の加護を持つ……魔族だ」
戦士「……魔導将軍」グッ
僧侶「とにかく中へ!」
魔法使い「……朝までは到底持たないわ。又、作らないと……」
僧侶「そんなの後です!」
419: 2013/09/03(火) 13:43:46.54 ID:QAkpRo5dP
キィ、パタン
僧侶「勇者様、魔法使いさんを座らせてあげて下さい!」
勇者「あ、ああ……」
魔法使い「大袈裟ね……大丈夫だってば……」フゥ
戦士「……魔石を、どうしたって?」
魔法使い「話して理解出来るの、アンタ……」
戦士「……失礼だな」ムッ
勇者「こらこら……とにかく、話を整理しようってば」
僧侶「そもそも、その予定……だったんです、しね」
魔法使い「……『大いなる勘違い』ね」
勇者「俺達の……否、人間の、とも……言ってたな」
僧侶「信じるとすれば……ですけど」
戦士「お前はどうなんだ、僧侶」
僧侶「…… ……」
戦士「さっき、裏庭でも聞いた……が」
勇者「薪を探している時、か」
僧侶「……はい。戦士さんは……」
戦士「魔導将軍は、信じてくれるのか、と問い」
戦士「僧侶は言葉を濁した」
戦士「……そして『嘘は吐けないよね』……と、言ったから」
魔法使い「……僧侶だって、わかんない、わよね」
僧侶「……はい。あの時、一瞬……心を読まれたのかと思ったのですが」
僧侶「もし、『エルフは嘘を吐けない』と言う真実を知っていたのなら」
僧侶「……否、真実かどうかも、わからないですけど……」
勇者「あんな混乱の中じゃ、言い淀んでも仕方無いよな」
僧侶「司書さんにあの本を見せて貰ってなかったら……」
僧侶「……いえ、それも関係無いですね」
僧侶「勇者様、魔法使いさんを座らせてあげて下さい!」
勇者「あ、ああ……」
魔法使い「大袈裟ね……大丈夫だってば……」フゥ
戦士「……魔石を、どうしたって?」
魔法使い「話して理解出来るの、アンタ……」
戦士「……失礼だな」ムッ
勇者「こらこら……とにかく、話を整理しようってば」
僧侶「そもそも、その予定……だったんです、しね」
魔法使い「……『大いなる勘違い』ね」
勇者「俺達の……否、人間の、とも……言ってたな」
僧侶「信じるとすれば……ですけど」
戦士「お前はどうなんだ、僧侶」
僧侶「…… ……」
戦士「さっき、裏庭でも聞いた……が」
勇者「薪を探している時、か」
僧侶「……はい。戦士さんは……」
戦士「魔導将軍は、信じてくれるのか、と問い」
戦士「僧侶は言葉を濁した」
戦士「……そして『嘘は吐けないよね』……と、言ったから」
魔法使い「……僧侶だって、わかんない、わよね」
僧侶「……はい。あの時、一瞬……心を読まれたのかと思ったのですが」
僧侶「もし、『エルフは嘘を吐けない』と言う真実を知っていたのなら」
僧侶「……否、真実かどうかも、わからないですけど……」
勇者「あんな混乱の中じゃ、言い淀んでも仕方無いよな」
僧侶「司書さんにあの本を見せて貰ってなかったら……」
僧侶「……いえ、それも関係無いですね」
421: 2013/09/03(火) 17:49:50.74 ID:QAkpRo5dP
僧侶「……信じる、とはとてもじゃ無いけど言えません。でも……」
戦士「信じられないとも言い切れない、んだったな」
僧侶「…… ……はい」
勇者「あいつは……魔導将軍は、確かに俺に言ったんだ」
魔法使い「……始まりの国の登録所でどうとか、言ってたわね」
勇者「ああ。『世に一人しか存在を許されぬ、選ばれし印をその拳に握る者』」
勇者「……何で、あいつがそれを知っている?」
魔法使い「まだあるわよ……戦士が、魔寄せの石の効力が、って言った時」
魔法使い「……『インキュバスの魔石ね』って」
戦士「それは……誰だ?」
魔法使い「……鍛冶師の村で聞いた話を考えると……伝説の聖職者様?」
僧侶「どうして……そんなにも、色々な事……私達の知らない事を」
僧侶「……彼女は。魔導将軍は……知っていた、のでしょうか」
勇者「……解らない。何も……俺達は……」
勇者「俺達には、知らない事が多すぎる……!」
魔法使い「……この『世界』は一体……どうなっているのかしら」フゥ
戦士「……『世界を滅ぼそうとしているのは誰?』か」
勇者「戦士は……信じる、のか?」
戦士「解らん。だが……魔王以外に、混乱を招こうとしている者が居るのは」
戦士「……事実、だ」
魔法使い「…… ……」
僧侶「やはり……始まりの国に向かう、のですよね?」
勇者「北の街で船を借りることが出来たら……だけどな」
魔法使い「『世界を救う勇者様』の協力を惜しむ可能性は低いと思うけど」
勇者「……『北の塔』か」
僧侶「魔導将軍は、今で無くても良いとは言っていましたが……」
戦士「信じられないとも言い切れない、んだったな」
僧侶「…… ……はい」
勇者「あいつは……魔導将軍は、確かに俺に言ったんだ」
魔法使い「……始まりの国の登録所でどうとか、言ってたわね」
勇者「ああ。『世に一人しか存在を許されぬ、選ばれし印をその拳に握る者』」
勇者「……何で、あいつがそれを知っている?」
魔法使い「まだあるわよ……戦士が、魔寄せの石の効力が、って言った時」
魔法使い「……『インキュバスの魔石ね』って」
戦士「それは……誰だ?」
魔法使い「……鍛冶師の村で聞いた話を考えると……伝説の聖職者様?」
僧侶「どうして……そんなにも、色々な事……私達の知らない事を」
僧侶「……彼女は。魔導将軍は……知っていた、のでしょうか」
勇者「……解らない。何も……俺達は……」
勇者「俺達には、知らない事が多すぎる……!」
魔法使い「……この『世界』は一体……どうなっているのかしら」フゥ
戦士「……『世界を滅ぼそうとしているのは誰?』か」
勇者「戦士は……信じる、のか?」
戦士「解らん。だが……魔王以外に、混乱を招こうとしている者が居るのは」
戦士「……事実、だ」
魔法使い「…… ……」
僧侶「やはり……始まりの国に向かう、のですよね?」
勇者「北の街で船を借りることが出来たら……だけどな」
魔法使い「『世界を救う勇者様』の協力を惜しむ可能性は低いと思うけど」
勇者「……『北の塔』か」
僧侶「魔導将軍は、今で無くても良いとは言っていましたが……」
424: 2013/09/04(水) 09:59:08.54 ID:/1lNz7AVP
戦士「……何がある、んだろうな」
僧侶「わかりません……でも」
僧侶「私が、エルフの娘であると知っていて」
僧侶「……私を、名指しして」
魔法使い「どこにあるのよ、その北の塔、とやらは……」
勇者「始まりの国と魔導国の戦争さえ、なければ……」
勇者「……船を手に入れて、行ってみよう、って言いたいところなんだけどな」
魔法使い「…… ……」ハァ
僧侶「魔法使いさん、横になって下さい……辛そうです」
魔法使い「大丈夫だって……それに、そろそろ魔石が……」
戦士「無理をするな」
魔法使い「……でも、多分もうすぐ消えちゃうわ」
僧侶「すぐ近くが森ですから……木の枝を拾ってきます」
戦士「俺が行く」
勇者「あ、じゃあ俺も……」
僧侶「勇者様は駄目ですよ……何かあったらどうするんです」
僧侶「戦士さんが一緒だったら、安心ですから」
勇者「……そうだな。解った。気をつけろよ?」
戦士「皮肉だな……その、魔寄せの石とやらに守られてる、なんてな」
魔法使い「今更ね……」
戦士「…… ……」スッ スタスタ
僧侶「じゃあ、お願いします、ね」
パタン
魔法使い「……ご免なさい」
勇者「何で謝るんだよ」
魔法使い「だって……こんな時に」
僧侶「わかりません……でも」
僧侶「私が、エルフの娘であると知っていて」
僧侶「……私を、名指しして」
魔法使い「どこにあるのよ、その北の塔、とやらは……」
勇者「始まりの国と魔導国の戦争さえ、なければ……」
勇者「……船を手に入れて、行ってみよう、って言いたいところなんだけどな」
魔法使い「…… ……」ハァ
僧侶「魔法使いさん、横になって下さい……辛そうです」
魔法使い「大丈夫だって……それに、そろそろ魔石が……」
戦士「無理をするな」
魔法使い「……でも、多分もうすぐ消えちゃうわ」
僧侶「すぐ近くが森ですから……木の枝を拾ってきます」
戦士「俺が行く」
勇者「あ、じゃあ俺も……」
僧侶「勇者様は駄目ですよ……何かあったらどうするんです」
僧侶「戦士さんが一緒だったら、安心ですから」
勇者「……そうだな。解った。気をつけろよ?」
戦士「皮肉だな……その、魔寄せの石とやらに守られてる、なんてな」
魔法使い「今更ね……」
戦士「…… ……」スッ スタスタ
僧侶「じゃあ、お願いします、ね」
パタン
魔法使い「……ご免なさい」
勇者「何で謝るんだよ」
魔法使い「だって……こんな時に」
425: 2013/09/04(水) 10:20:40.60 ID:/1lNz7AVP
勇者「……いくら魔除けの……ああ、魔寄せ、か」
勇者「その石があったからって、危険が無いとは言い切れない」
勇者「……フラフラになってまで、俺達を……仲間を守ってくれてるんだ」
勇者「……ありがとう、魔法使い」
勇者「ごめんな、頼りない勇者で」
魔法使い「勇者……」
勇者「……皆を、さ。導いて行かないと行けないのに」
勇者「俺は……もしかしたら、母さんがって……」
勇者「…… ……」
魔法使い「仲間、でしょ?」
勇者「……ああ」
魔法使い「頼って良いの……良いんでしょ?私も。そうして……」
勇者「…… ……そうだな」
魔法使い「勇者、始まりの国に帰って、話を聞いて」
魔法使い「……魔導国に行きましょう」
勇者「……しかし」
魔法使い「……魔王を倒すだけが、勇者、じゃ無いんでしょ?」
勇者「…… ……」
魔法使い「あれからずっと……考え込んでる顔、してる」
勇者「魔王だってずっと待ってはくれない」
魔法使い「……ええ」
勇者「確かに、魔王を倒すのが近道になるのかもしれないけど」
勇者「それでも……俺の産まれた国だ。俺の育った国だ」
勇者「……放って置けない」
魔法使い「…… ……」
勇者「始まりの国だけじゃ無い。鍛冶師の村だって……」
魔法使い「……うん」
勇者「これから行く北の街にも、何かがあるかもしれない」
魔法使い「……魔導国は、私の故郷」
魔法使い「私も、放っては置けない……!」
勇者「その石があったからって、危険が無いとは言い切れない」
勇者「……フラフラになってまで、俺達を……仲間を守ってくれてるんだ」
勇者「……ありがとう、魔法使い」
勇者「ごめんな、頼りない勇者で」
魔法使い「勇者……」
勇者「……皆を、さ。導いて行かないと行けないのに」
勇者「俺は……もしかしたら、母さんがって……」
勇者「…… ……」
魔法使い「仲間、でしょ?」
勇者「……ああ」
魔法使い「頼って良いの……良いんでしょ?私も。そうして……」
勇者「…… ……そうだな」
魔法使い「勇者、始まりの国に帰って、話を聞いて」
魔法使い「……魔導国に行きましょう」
勇者「……しかし」
魔法使い「……魔王を倒すだけが、勇者、じゃ無いんでしょ?」
勇者「…… ……」
魔法使い「あれからずっと……考え込んでる顔、してる」
勇者「魔王だってずっと待ってはくれない」
魔法使い「……ええ」
勇者「確かに、魔王を倒すのが近道になるのかもしれないけど」
勇者「それでも……俺の産まれた国だ。俺の育った国だ」
勇者「……放って置けない」
魔法使い「…… ……」
勇者「始まりの国だけじゃ無い。鍛冶師の村だって……」
魔法使い「……うん」
勇者「これから行く北の街にも、何かがあるかもしれない」
魔法使い「……魔導国は、私の故郷」
魔法使い「私も、放っては置けない……!」
426: 2013/09/04(水) 10:35:18.50 ID:/1lNz7AVP
魔法使い「……もし、お爺様達が、本当に……」
魔法使い「剣士を連れて、魔王に与しようって考えてるなら」
魔法使い「何としてでも止めないと……!」
勇者「……良いのか?」
魔法使い「大事だからよ。大事な……家族だから……」
勇者「…… ……辛いぞ、多分」
魔法使い「……私は、何?」
勇者「え?」
魔法使い「『勇者』の仲間よ。『勇者の直感』に、選ばれた……仲間、よ」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者の役目は何?」
勇者「……魔王を、倒す事」
魔法使い「それだけ、じゃ無いんでしょ?」
勇者「…… ……『世界』を平和にする事……ッ」
魔法使い「…… ……うん」ニコ
勇者(……ッ)ドキ
勇者(暗くて、はっきりと顔が見えないけど)
勇者(…… ……何となく、解る。魔法使い、笑ってくれてる)
勇者「……壁にもたれてたら、しんどいだろう?」
魔法使い「え……まあ、でも……」
勇者「……おいで」グイッ
魔法使い「きゃッ …… ……ちょ、ちょっと、勇者!?」
勇者「これで、頭痛くないだろ」ドキドキ
魔法使い(こ、これって……膝枕……ッ)ドキドキ
魔法使い(……な、何だろう…… ……恥ずかしい、けど)
魔法使い(…… ……落ち着く)ハァ
勇者「あ、ご、御免!」
魔法使い「……ら、楽だわ!だから……! い、良い、のよ」
魔法使い「……もう、少し……この……まま、で……」
勇者「…… ……不思議、だな」
魔法使い「剣士を連れて、魔王に与しようって考えてるなら」
魔法使い「何としてでも止めないと……!」
勇者「……良いのか?」
魔法使い「大事だからよ。大事な……家族だから……」
勇者「…… ……辛いぞ、多分」
魔法使い「……私は、何?」
勇者「え?」
魔法使い「『勇者』の仲間よ。『勇者の直感』に、選ばれた……仲間、よ」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者の役目は何?」
勇者「……魔王を、倒す事」
魔法使い「それだけ、じゃ無いんでしょ?」
勇者「…… ……『世界』を平和にする事……ッ」
魔法使い「…… ……うん」ニコ
勇者(……ッ)ドキ
勇者(暗くて、はっきりと顔が見えないけど)
勇者(…… ……何となく、解る。魔法使い、笑ってくれてる)
勇者「……壁にもたれてたら、しんどいだろう?」
魔法使い「え……まあ、でも……」
勇者「……おいで」グイッ
魔法使い「きゃッ …… ……ちょ、ちょっと、勇者!?」
勇者「これで、頭痛くないだろ」ドキドキ
魔法使い(こ、これって……膝枕……ッ)ドキドキ
魔法使い(……な、何だろう…… ……恥ずかしい、けど)
魔法使い(…… ……落ち着く)ハァ
勇者「あ、ご、御免!」
魔法使い「……ら、楽だわ!だから……! い、良い、のよ」
魔法使い「……もう、少し……この……まま、で……」
勇者「…… ……不思議、だな」
427: 2013/09/04(水) 10:43:50.37 ID:/1lNz7AVP
魔法使い「…… ……」
勇者「何か……前にも……違うな」
勇者「……初めて、の筈なのに。何回も……何て言うか……」
魔法使い「そう? ……私、逆だわ」
勇者「え?」
魔法使い「何度もやってる事なのに……まるで、はじ……め、て」
魔法使い「…… ……」スゥ
勇者「魔法使い?」
魔法使い(すぅすぅ)
勇者(寝ちゃった、か……疲れた、んだよな)
勇者(俺だけじゃ無い。魔法使いだけでもない)
勇者(……僧侶も、戦士も……)
勇者(肉体的な疲労より、精神的な方が……疲れるよな、何倍も)
勇者(…… ……魔法使い)チュッ
勇者「…… ……」
勇者(……ッ な、なななな、なにやってんだ、俺は!?)
勇者(……おでこ。おでこだ。大丈夫だ!)
魔法使い「…… ……ん」モゾ
勇者「!? …… ……」
勇者(起きて、ない…… ……大丈夫、だ)ホッ
勇者(……なんだろうな。しっくりくる)
勇者(魔法使い……)ナデ
……
………
…………
勇者「何か……前にも……違うな」
勇者「……初めて、の筈なのに。何回も……何て言うか……」
魔法使い「そう? ……私、逆だわ」
勇者「え?」
魔法使い「何度もやってる事なのに……まるで、はじ……め、て」
魔法使い「…… ……」スゥ
勇者「魔法使い?」
魔法使い(すぅすぅ)
勇者(寝ちゃった、か……疲れた、んだよな)
勇者(俺だけじゃ無い。魔法使いだけでもない)
勇者(……僧侶も、戦士も……)
勇者(肉体的な疲労より、精神的な方が……疲れるよな、何倍も)
勇者(…… ……魔法使い)チュッ
勇者「…… ……」
勇者(……ッ な、なななな、なにやってんだ、俺は!?)
勇者(……おでこ。おでこだ。大丈夫だ!)
魔法使い「…… ……ん」モゾ
勇者「!? …… ……」
勇者(起きて、ない…… ……大丈夫、だ)ホッ
勇者(……なんだろうな。しっくりくる)
勇者(魔法使い……)ナデ
……
………
…………
431: 2013/09/04(水) 13:53:16.07 ID:/1lNz7AVP
僧侶「……間に合いました、ね」フゥ
戦士「ぎりぎりな…… これで、どうにか……朝まで炎は持つだろう」
僧侶「交替で見張っていれば、炎も耐えません……大丈夫です」フゥ
戦士「俺が見てるから、お前も中で休め、僧侶」
戦士「……辛くなったら、勇者を呼びに行くから」ストン
僧侶「……もう少し、ここに居ても良いですか」
戦士「…… ……大丈夫か?」
僧侶「はい…… ……もう、朽ちて……しまいましたけど」
僧侶「ここに居れば……神父様が、見えます、から」
戦士「……あの小山、か」
僧侶「…… ……」
僧侶「きっと……もう、土に還っています。神の御許へ……」
僧侶「……何時か、戻って来るつもりでした」
戦士「此処へ、か?」
僧侶「はい。小さいし、何も無いけど……」
僧侶「私の『家』ですから」
戦士「…… ……」
僧侶「もし、勇者様の旅のお供が出来て、魔王を倒して……」
僧侶「そうしたら、最後は……この家で、と」
僧侶「……思っていたんです。不思議と……本当に、そうなる様な気がして」
戦士「『願えば叶う』と言うのは、そういう……気持ちなのかもしれないな」
僧侶「え?」
戦士「こうなって欲しいと思う事を、実現させる為に働かせる力」
戦士「……魔法、等では無く、様は……努力、とか」
僧侶「……そうですね。一生懸命実現させる為に、頑張るって……事」
僧侶「困難に立ち向かっていく力、くじけない気持ち……」
僧侶「そうすれば……叶う。自分の力で、叶えてみせる」
戦士「…… ……」
戦士「ぎりぎりな…… これで、どうにか……朝まで炎は持つだろう」
僧侶「交替で見張っていれば、炎も耐えません……大丈夫です」フゥ
戦士「俺が見てるから、お前も中で休め、僧侶」
戦士「……辛くなったら、勇者を呼びに行くから」ストン
僧侶「……もう少し、ここに居ても良いですか」
戦士「…… ……大丈夫か?」
僧侶「はい…… ……もう、朽ちて……しまいましたけど」
僧侶「ここに居れば……神父様が、見えます、から」
戦士「……あの小山、か」
僧侶「…… ……」
僧侶「きっと……もう、土に還っています。神の御許へ……」
僧侶「……何時か、戻って来るつもりでした」
戦士「此処へ、か?」
僧侶「はい。小さいし、何も無いけど……」
僧侶「私の『家』ですから」
戦士「…… ……」
僧侶「もし、勇者様の旅のお供が出来て、魔王を倒して……」
僧侶「そうしたら、最後は……この家で、と」
僧侶「……思っていたんです。不思議と……本当に、そうなる様な気がして」
戦士「『願えば叶う』と言うのは、そういう……気持ちなのかもしれないな」
僧侶「え?」
戦士「こうなって欲しいと思う事を、実現させる為に働かせる力」
戦士「……魔法、等では無く、様は……努力、とか」
僧侶「……そうですね。一生懸命実現させる為に、頑張るって……事」
僧侶「困難に立ち向かっていく力、くじけない気持ち……」
僧侶「そうすれば……叶う。自分の力で、叶えてみせる」
戦士「…… ……」
432: 2013/09/04(水) 14:57:16.96 ID:/1lNz7AVP
僧侶「……戦士さんは、どう思いますか」
戦士「俺は、そもそも魔法の事等……良く解らん」
戦士「この小屋に着いたとき、勇者も言っていただろう」
戦士「……何を信じて良いか解らないときは、自分を信じれば良い」
僧侶「……はい」
戦士「今が正にそうだ。真実の一文字も解らん」
戦士「だが、俺達は……進まなければならん」
戦士「……何を。どれを信じれば良いのか」
戦士「真実は何処にあるのか……」
僧侶「そう……ですね。願いを叶えるにしたって」
僧侶「自分を、信じないことには……」
戦士「……エルフの話、だな」
僧侶「…… ……はい」
僧侶「私に、人の子の血が入っていることは解って居ます」
僧侶「回復魔法を使えるのは……人間だけの特権」
僧侶「……世の中の摂理は、変えられません」
戦士「『エルフは嘘を吐けない』か」
僧侶「……御伽噺、ですよね?司書さんに見せて貰った、あの本……」
僧侶「なのに……魔導将軍さんは、言い切った」
戦士「それは信じるに値するのか?」
僧侶「解りません……ですけど」
僧侶「……まさか、あの本を魔導将軍さんが読んだ事があるとは……思えません」
戦士「……そう、だな」
戦士「俺は、そもそも魔法の事等……良く解らん」
戦士「この小屋に着いたとき、勇者も言っていただろう」
戦士「……何を信じて良いか解らないときは、自分を信じれば良い」
僧侶「……はい」
戦士「今が正にそうだ。真実の一文字も解らん」
戦士「だが、俺達は……進まなければならん」
戦士「……何を。どれを信じれば良いのか」
戦士「真実は何処にあるのか……」
僧侶「そう……ですね。願いを叶えるにしたって」
僧侶「自分を、信じないことには……」
戦士「……エルフの話、だな」
僧侶「…… ……はい」
僧侶「私に、人の子の血が入っていることは解って居ます」
僧侶「回復魔法を使えるのは……人間だけの特権」
僧侶「……世の中の摂理は、変えられません」
戦士「『エルフは嘘を吐けない』か」
僧侶「……御伽噺、ですよね?司書さんに見せて貰った、あの本……」
僧侶「なのに……魔導将軍さんは、言い切った」
戦士「それは信じるに値するのか?」
僧侶「解りません……ですけど」
僧侶「……まさか、あの本を魔導将軍さんが読んだ事があるとは……思えません」
戦士「……そう、だな」
433: 2013/09/04(水) 15:20:17.42 ID:/1lNz7AVP
僧侶「『世界』は……謎だらけ、ですね」
僧侶「こんなにも……何も、知らない私が」
僧侶「……『世界』を知りたい、等と思うのは」
僧侶「烏滸がましかった……のかも、知れません」
戦士「知らないから故に、欲するのだろう?」
僧侶「……戦士さん」
戦士「全てを知ってしまえば、探求心など生まれないと……俺は思う」
戦士「興味が無いとは言わんだろう?」
僧侶「え?」
戦士「……『北の塔』だ」
僧侶「そ、れは…… ……はい」
戦士「何処にあるかも解らん。何があるのかも」
戦士「……だが、お前は」
僧侶「…… ……」
戦士「何か解るかも知れないから、行ってみたいと思っている、のだろう?」
僧侶「…… ……はい」
戦士「それは少なからず、魔導将軍を信じていると言う事になる」
戦士「……だが、俺もそれで良いと思う」
戦士「良く解らない。良く解らない……が」
戦士「何だろうな。酷く懐かしい気がする」
戦士「……こういうのは、なんて言う……んだろうな」
僧侶「デジャヴュ、ですか?」
戦士「で……何?」
僧侶「……初めて見る場所や、人なのに、会ったことがある様な……」
戦士「……否。違う……」
僧侶「え?」
戦士「寧ろ、逆だ」
僧侶「??」
僧侶「こんなにも……何も、知らない私が」
僧侶「……『世界』を知りたい、等と思うのは」
僧侶「烏滸がましかった……のかも、知れません」
戦士「知らないから故に、欲するのだろう?」
僧侶「……戦士さん」
戦士「全てを知ってしまえば、探求心など生まれないと……俺は思う」
戦士「興味が無いとは言わんだろう?」
僧侶「え?」
戦士「……『北の塔』だ」
僧侶「そ、れは…… ……はい」
戦士「何処にあるかも解らん。何があるのかも」
戦士「……だが、お前は」
僧侶「…… ……」
戦士「何か解るかも知れないから、行ってみたいと思っている、のだろう?」
僧侶「…… ……はい」
戦士「それは少なからず、魔導将軍を信じていると言う事になる」
戦士「……だが、俺もそれで良いと思う」
戦士「良く解らない。良く解らない……が」
戦士「何だろうな。酷く懐かしい気がする」
戦士「……こういうのは、なんて言う……んだろうな」
僧侶「デジャヴュ、ですか?」
戦士「で……何?」
僧侶「……初めて見る場所や、人なのに、会ったことがある様な……」
戦士「……否。違う……」
僧侶「え?」
戦士「寧ろ、逆だ」
僧侶「??」
434: 2013/09/04(水) 15:30:55.72 ID:/1lNz7AVP
戦士「……何度も、会っているはずなのに……まるで初めて会う様な」
戦士「そんな……否、錯覚だろうと、解っては居るんだが」
僧侶「……錯覚……なんでしょうか」
戦士「ん?」
僧侶「私も何度も感じてます」
僧侶「……凄く……懐かしい感じがするんです」
僧侶「でも、知らない。確かに知らないのに……」
僧侶「……悲しくて、寂しくて……苦しくて」
戦士「嬉しい?」
僧侶「…… ……」
僧侶「……ジャメヴュ、って言うんだそうです」
戦士「…… ……発音も出来ん」
僧侶「……」クスクス
戦士「さっきの、デ、何とかと言い、それと良い……何なんだ」
僧侶「既視感と未視感です……私達は確かに」
僧侶「始まりの国で初めて会った筈……否」
僧侶「私と魔法使いさんは、港街で、戦士さんと彼女は始まりの国で」
僧侶「もう少し前に、会ってます、けど」
僧侶「……こうして、勇者様と一緒に」
僧侶「何度も……旅をしていた様な気も、するんです」
戦士「それがその、でじゃぶ、か」
僧侶「……はい。でも……言われる迄気がつきませんでしたけど」
僧侶「確かに、逆なんですよね」
僧侶「……知っている筈なのに、まるで……初めてみたい」
戦士「それが、じゃ……じゃめ…… ……まあ良い」
僧侶「……」クス
戦士「笑うな、と行っただろうが……」ムス
戦士「そんな……否、錯覚だろうと、解っては居るんだが」
僧侶「……錯覚……なんでしょうか」
戦士「ん?」
僧侶「私も何度も感じてます」
僧侶「……凄く……懐かしい感じがするんです」
僧侶「でも、知らない。確かに知らないのに……」
僧侶「……悲しくて、寂しくて……苦しくて」
戦士「嬉しい?」
僧侶「…… ……」
僧侶「……ジャメヴュ、って言うんだそうです」
戦士「…… ……発音も出来ん」
僧侶「……」クスクス
戦士「さっきの、デ、何とかと言い、それと良い……何なんだ」
僧侶「既視感と未視感です……私達は確かに」
僧侶「始まりの国で初めて会った筈……否」
僧侶「私と魔法使いさんは、港街で、戦士さんと彼女は始まりの国で」
僧侶「もう少し前に、会ってます、けど」
僧侶「……こうして、勇者様と一緒に」
僧侶「何度も……旅をしていた様な気も、するんです」
戦士「それがその、でじゃぶ、か」
僧侶「……はい。でも……言われる迄気がつきませんでしたけど」
僧侶「確かに、逆なんですよね」
僧侶「……知っている筈なのに、まるで……初めてみたい」
戦士「それが、じゃ……じゃめ…… ……まあ良い」
僧侶「……」クス
戦士「笑うな、と行っただろうが……」ムス
435: 2013/09/04(水) 15:44:10.74 ID:/1lNz7AVP
僧侶「ご免なさい……可愛くて、つい」クスクス
戦士「……俺の何処が可愛いんだか」フゥ
僧侶「明日……北の街に……行くんですね」
戦士「……船を手に入れれば……始まりの国へ戻るのだろう」
僧侶「……それから、魔導国、でしょうか」
戦士「勇者の事だ……そう、なるだろうな」
僧侶(魔法使いさん……)
戦士「……僧侶、信じろ」
僧侶「え?」
戦士「俺達は『仲間』だ ……大丈夫だ」
僧侶「……はい!」
戦士「何時か……」
僧侶「はい?」
戦士「……否、良い」
戦士(何時か……なんだ?僧侶と共に、北の塔に行きたい?)
戦士(……行かねば、ならん気がする。だが……何故だ?)
戦士(魔王を倒し……世界が平和になったら)
戦士(…… ……そうなったら、僧侶は此処に帰ってくるんだ)
戦士(……何だ。胸が、締め付けられる様だ)
僧侶「あの……戦士さん?」
戦士「…… ……」ジッ
僧侶「…… ……」ドキッ
戦士(懐かしい。悲しい。苦しい、切ない……嬉しい)
戦士(……初めてなのに、そうで無い様……でじゃぶ、違う)
戦士(じゃめ、ぶ?だったか……)
戦士「何度も会っているのに……」
僧侶「……戦士、さん」
戦士「……俺の何処が可愛いんだか」フゥ
僧侶「明日……北の街に……行くんですね」
戦士「……船を手に入れれば……始まりの国へ戻るのだろう」
僧侶「……それから、魔導国、でしょうか」
戦士「勇者の事だ……そう、なるだろうな」
僧侶(魔法使いさん……)
戦士「……僧侶、信じろ」
僧侶「え?」
戦士「俺達は『仲間』だ ……大丈夫だ」
僧侶「……はい!」
戦士「何時か……」
僧侶「はい?」
戦士「……否、良い」
戦士(何時か……なんだ?僧侶と共に、北の塔に行きたい?)
戦士(……行かねば、ならん気がする。だが……何故だ?)
戦士(魔王を倒し……世界が平和になったら)
戦士(…… ……そうなったら、僧侶は此処に帰ってくるんだ)
戦士(……何だ。胸が、締め付けられる様だ)
僧侶「あの……戦士さん?」
戦士「…… ……」ジッ
僧侶「…… ……」ドキッ
戦士(懐かしい。悲しい。苦しい、切ない……嬉しい)
戦士(……初めてなのに、そうで無い様……でじゃぶ、違う)
戦士(じゃめ、ぶ?だったか……)
戦士「何度も会っているのに……」
僧侶「……戦士、さん」
436: 2013/09/04(水) 16:06:37.23 ID:/1lNz7AVP
戦士「……もう、中に入れ。風邪を引く季節では無いにしても」
戦士「夜風は……身体に良くは無いだろう」
僧侶「あ……あの……?」
戦士「勇者に伝えておいてくれ……適当に変わってくれ、と」
僧侶「は……はい」スッ
スタスタ、パタン
戦士(……何を考えて居るんだ、俺は)
戦士(あいつは……エルフ後を引いてる)
戦士(ただの人間の……俺とは、違う)
カチャ
戦士「ああ、勇者、まだもう少……し……」
僧侶「…… ……」
戦士「……僧侶?」
僧侶「勇者様と……魔法使いさん……が……」
戦士「! ……どうした!?」
僧侶「…… ……あのッ 抱き合って……その……」
僧侶「ね、寝てる、んです……ッ」カァ
僧侶「ど、どうしましょう、戦士さん……!?」
戦士「ど……どうしましょう、ってお前……」
戦士「…… ……どう、しよう、か」
……
………
…………
戦士「夜風は……身体に良くは無いだろう」
僧侶「あ……あの……?」
戦士「勇者に伝えておいてくれ……適当に変わってくれ、と」
僧侶「は……はい」スッ
スタスタ、パタン
戦士(……何を考えて居るんだ、俺は)
戦士(あいつは……エルフ後を引いてる)
戦士(ただの人間の……俺とは、違う)
カチャ
戦士「ああ、勇者、まだもう少……し……」
僧侶「…… ……」
戦士「……僧侶?」
僧侶「勇者様と……魔法使いさん……が……」
戦士「! ……どうした!?」
僧侶「…… ……あのッ 抱き合って……その……」
僧侶「ね、寝てる、んです……ッ」カァ
僧侶「ど、どうしましょう、戦士さん……!?」
戦士「ど……どうしましょう、ってお前……」
戦士「…… ……どう、しよう、か」
……
………
…………
437: 2013/09/04(水) 16:31:49.36 ID:/1lNz7AVP
后「……お帰り、魔導将軍」
カチャ
魔導将軍「ノックする前に気がつくとか……」ハァ
后「だって、解っちゃったんだもん」
后「……おかえりなさい、魔導将軍」
魔導将軍「ただいま……間に合った、かな」
后「あんまり……話してる時間は、無いね」
魔導将軍「そうだね。使用人に聞いた」
魔導将軍「……側近、寂しがってるだろうし。もう行くね」
后「……元気そう、だった?」
魔導将軍「うん。随分……逞しくなってたよ」
后「……そっか」
魔導将軍「もうすぐだね」
后「うん……ありがとう、魔導将軍」
魔導将軍「……伝えといたよ」
后「え?」
魔導将軍「『北の塔』」
后「貴女も、お節介だね」
魔導将軍「見て、感じて……知るよ。あの子は」
魔導将軍「じゃあ……行くね」
后「うん……後で」
パタン
后「……もう、少し」
后「ごめんね……」
后「……すぐに、行くから」
……
………
…………
カチャ
魔導将軍「ノックする前に気がつくとか……」ハァ
后「だって、解っちゃったんだもん」
后「……おかえりなさい、魔導将軍」
魔導将軍「ただいま……間に合った、かな」
后「あんまり……話してる時間は、無いね」
魔導将軍「そうだね。使用人に聞いた」
魔導将軍「……側近、寂しがってるだろうし。もう行くね」
后「……元気そう、だった?」
魔導将軍「うん。随分……逞しくなってたよ」
后「……そっか」
魔導将軍「もうすぐだね」
后「うん……ありがとう、魔導将軍」
魔導将軍「……伝えといたよ」
后「え?」
魔導将軍「『北の塔』」
后「貴女も、お節介だね」
魔導将軍「見て、感じて……知るよ。あの子は」
魔導将軍「じゃあ……行くね」
后「うん……後で」
パタン
后「……もう、少し」
后「ごめんね……」
后「……すぐに、行くから」
……
………
…………
438: 2013/09/04(水) 17:10:43.40 ID:/1lNz7AVP
魔王「……ゥ、ウ」
側近「なあ、魔王さぁ」
魔王「…… ……」
側近「俺、前から思ってたんだけど……何で、そんな苦しんでんだ?」
魔王「…… ……ァ」
側近(表情は変わらない……だけど)
魔王「……ゥ ……」
側近(声は…… ……苦しそう、なんだよな。ずっと)
魔王「…… ……ァ」
側近(これも……絶え間なくなってきた。こうやって……)
側近(……魔力を注いで、こいつの力を押しとどめるのって)
側近(本当に……正しい、のか?)
魔王「…… ……」
側近「……使用人は、魔王の身体の中に残ってる光の所為じゃないかとか」
側近「言ってた、けども、さ」ハァ
魔王「……ア……ゥ」
側近(身が、完全に闇になっていくのに……その光の残照が)
側近(……お前を、苦しめてるのか?魔王……)
コンコン、カチャ
側近「……ん?」
魔導将軍「はぁい、ダァリン」
側近「魔導将軍か……」
魔導将軍「何よぅ。もうちょっと嬉しそうな顔、してよね」
側近「なあ、魔王さぁ」
魔王「…… ……」
側近「俺、前から思ってたんだけど……何で、そんな苦しんでんだ?」
魔王「…… ……ァ」
側近(表情は変わらない……だけど)
魔王「……ゥ ……」
側近(声は…… ……苦しそう、なんだよな。ずっと)
魔王「…… ……ァ」
側近(これも……絶え間なくなってきた。こうやって……)
側近(……魔力を注いで、こいつの力を押しとどめるのって)
側近(本当に……正しい、のか?)
魔王「…… ……」
側近「……使用人は、魔王の身体の中に残ってる光の所為じゃないかとか」
側近「言ってた、けども、さ」ハァ
魔王「……ア……ゥ」
側近(身が、完全に闇になっていくのに……その光の残照が)
側近(……お前を、苦しめてるのか?魔王……)
コンコン、カチャ
側近「……ん?」
魔導将軍「はぁい、ダァリン」
側近「魔導将軍か……」
魔導将軍「何よぅ。もうちょっと嬉しそうな顔、してよね」
439: 2013/09/04(水) 17:17:47.80 ID:/1lNz7AVP
側近「これ以上無い位、嬉しいんだぜ、俺は」
魔導将軍「……今にも泣きそうな顔して、何言ってんのよ」スタスタ、ギュ
側近「……喜ばないと行けないだろ」ギュ、チュ
魔導将軍「……ん」チュ
側近「もう……良いのか」
魔導将軍「うん。僧侶ちゃんに、北の塔の事も伝えたしね」
側近「……お節介め」
魔導将軍「それ、后にも言われたな」
側近「…… ……随分、苦しそうなんだ」
魔導将軍「大丈夫だよ、魔王。私も……もう、側近と一緒に」
魔導将軍「ここに居るからね……よ、っと」
側近「……もう一回、お前を抱きたかったなぁ」
魔導将軍「まだ……やる事、残ってるでしょ」
魔導将軍「お楽しみは一番後よ、側近」
魔導将軍「…… ……」
側近「……どうした?」
魔導将軍「今更だけど、さ」
側近「ん?」
魔導将軍「魔導部隊作る迄は行かなくても、欲しかったなぁ……赤ちゃん」
側近「……御免な」
魔導将軍「責めてないわよ。お馬鹿さん。でっかい独り言よ」
側近「全くだな……」
魔導将軍「……出来ない気は、してたんだ」
側近「奇遇だな」
魔導将軍「え?」
魔導将軍「……今にも泣きそうな顔して、何言ってんのよ」スタスタ、ギュ
側近「……喜ばないと行けないだろ」ギュ、チュ
魔導将軍「……ん」チュ
側近「もう……良いのか」
魔導将軍「うん。僧侶ちゃんに、北の塔の事も伝えたしね」
側近「……お節介め」
魔導将軍「それ、后にも言われたな」
側近「…… ……随分、苦しそうなんだ」
魔導将軍「大丈夫だよ、魔王。私も……もう、側近と一緒に」
魔導将軍「ここに居るからね……よ、っと」
側近「……もう一回、お前を抱きたかったなぁ」
魔導将軍「まだ……やる事、残ってるでしょ」
魔導将軍「お楽しみは一番後よ、側近」
魔導将軍「…… ……」
側近「……どうした?」
魔導将軍「今更だけど、さ」
側近「ん?」
魔導将軍「魔導部隊作る迄は行かなくても、欲しかったなぁ……赤ちゃん」
側近「……御免な」
魔導将軍「責めてないわよ。お馬鹿さん。でっかい独り言よ」
側近「全くだな……」
魔導将軍「……出来ない気は、してたんだ」
側近「奇遇だな」
魔導将軍「え?」
440: 2013/09/04(水) 17:22:48.96 ID:/1lNz7AVP
側近「……俺もだ。何時だったか忘れたけど」
側近「そんな事、考えた事があった」
魔導将軍「…… ……」
側近「そういう……運命なんだろうなって、な」
魔導将軍「側近って、本当にロマンチストよね」
側近「……なんだよ」
魔導将軍「まだ、さ。まだ……アタシが『魔法使い』で」
魔導将軍「アンタが、『戦士』だった頃」
魔導将軍「……にも、さ。『運命』だとか言ってなかった?」
側近「仕方ネェだろ。本当にそう思ったんだから」
魔王「……ゥ、ウ」
魔導将軍「クサイよねぇ?魔王」
側近「おい……」
魔導将軍「でもね、アタシもよ、側近」
魔導将軍「何だろうな。初めて会った気が……ううん」
魔導将軍「何回も会ってるのに、初めて会った様な変な感じだったよ」
側近「……お前も充分、ロマンチストだよ」
魔導将軍「お似合いね、アタシ達……」フフ
側近「……これ、何時まで続くんだ?」
魔導将軍「……わかんないわよ」
側近「だよな」
魔導将軍「大丈夫……『今回』は」
側近「特異点、か?」
魔導将軍「……どうなるかはわかんないけど」
側近「そうか。じゃあ、『今まで』より……」
魔導将軍「そうね……きっと、近づける」
側近「断ち切れるか?」
魔導将軍「どうかしらね。でも…… ……」
側近「そんな事、考えた事があった」
魔導将軍「…… ……」
側近「そういう……運命なんだろうなって、な」
魔導将軍「側近って、本当にロマンチストよね」
側近「……なんだよ」
魔導将軍「まだ、さ。まだ……アタシが『魔法使い』で」
魔導将軍「アンタが、『戦士』だった頃」
魔導将軍「……にも、さ。『運命』だとか言ってなかった?」
側近「仕方ネェだろ。本当にそう思ったんだから」
魔王「……ゥ、ウ」
魔導将軍「クサイよねぇ?魔王」
側近「おい……」
魔導将軍「でもね、アタシもよ、側近」
魔導将軍「何だろうな。初めて会った気が……ううん」
魔導将軍「何回も会ってるのに、初めて会った様な変な感じだったよ」
側近「……お前も充分、ロマンチストだよ」
魔導将軍「お似合いね、アタシ達……」フフ
側近「……これ、何時まで続くんだ?」
魔導将軍「……わかんないわよ」
側近「だよな」
魔導将軍「大丈夫……『今回』は」
側近「特異点、か?」
魔導将軍「……どうなるかはわかんないけど」
側近「そうか。じゃあ、『今まで』より……」
魔導将軍「そうね……きっと、近づける」
側近「断ち切れるか?」
魔導将軍「どうかしらね。でも…… ……」
441: 2013/09/04(水) 17:30:27.32 ID:/1lNz7AVP
魔導将軍「まだ『やる事が残ってる』わよ、側近」
魔導将軍「まだ……ぎりぎりまで……ッ」
魔王「……ウ」
側近「ああ……泣くなよ、魔導将軍」
魔王「……ゥウ」
魔導将軍「アンタもよ、ダーリン」
側近「阿呆……俺たちは……」
魔導将軍「そう……喜ばないといけない」
魔王「ゥウ、アアアアッ」
ビリ……ッ
側近「……魔王! ……糞、后は……ッ まだ、駄目だ……ッ」
魔導将軍「何の為に、アタシが此処に居ると思ってんのよ! ……ッ」
ビリビリ……ッ
魔王「あ。ァ……ッ 『だ……め、だ……ッ 待て、待ってくれ……ッ』」
ビリビリ……ッ
側近「!?」
魔導将軍「魔王!?」
ビリビリビリ……ッ
魔王「『……俺は、まだ何も知らない!俺は……ッ』」
ビリビリビリ……ッ
側近「な……ッ 喋った!? ……ま、魔導将軍、后か、使用人……!!」
魔導将軍「む……ッ 無茶言わないで、無理よ……!!」
ビリビリビリ……ッ
魔王「『知らなければならない……ッその義務と権利が、あるんだ……!』」
ビリ……ッ
側近「しっかり、しろ……魔王!!」
魔導将軍「……知る…… ……義務と、権利……ッ ウゥッ」
魔導将軍「まだ……ぎりぎりまで……ッ」
魔王「……ウ」
側近「ああ……泣くなよ、魔導将軍」
魔王「……ゥウ」
魔導将軍「アンタもよ、ダーリン」
側近「阿呆……俺たちは……」
魔導将軍「そう……喜ばないといけない」
魔王「ゥウ、アアアアッ」
ビリ……ッ
側近「……魔王! ……糞、后は……ッ まだ、駄目だ……ッ」
魔導将軍「何の為に、アタシが此処に居ると思ってんのよ! ……ッ」
ビリビリ……ッ
魔王「あ。ァ……ッ 『だ……め、だ……ッ 待て、待ってくれ……ッ』」
ビリビリ……ッ
側近「!?」
魔導将軍「魔王!?」
ビリビリビリ……ッ
魔王「『……俺は、まだ何も知らない!俺は……ッ』」
ビリビリビリ……ッ
側近「な……ッ 喋った!? ……ま、魔導将軍、后か、使用人……!!」
魔導将軍「む……ッ 無茶言わないで、無理よ……!!」
ビリビリビリ……ッ
魔王「『知らなければならない……ッその義務と権利が、あるんだ……!』」
ビリ……ッ
側近「しっかり、しろ……魔王!!」
魔導将軍「……知る…… ……義務と、権利……ッ ウゥッ」
442: 2013/09/04(水) 17:38:44.72 ID:/1lNz7AVP
……ビリ…… ……
側近「…… ……な、んだ……?」
魔導将軍「……止、まった…… ……?」
側近「大丈夫か、魔導将軍……」
魔導将軍「……え、ええ……魔王?」
魔王「…… ……」
バタバタバタ……ッ
后「側近!魔導将軍!」
側近「! ……大丈夫だ。大丈夫だから、入るな!」
后「……何が、あったの」
魔導将軍「ちょっと、待って…… ……ちゃんと、話す、から……」
側近「そこに居ろよ、后……糞、勇者……ッ 早く、来いよ……ッ」
側近「……間に合ってくれよ……ッ」
魔導将軍(魔王…… ……貴方は、何を……?)
……
………
…………
僧侶「朝、ですね……」
戦士「……朝だな」フワァ
勇者「えっと、その……御免」
魔法使い(すぅすぅ)
僧侶「余程……疲れたのですね、魔法使いさん」
勇者「や、その、な? ……壁は固いし、しんどいだろうと思ってな!?」
戦士「別に何も言ってないだろうが」
勇者「さ、さっき、僧侶に聞いたから!悪かった!戦士……ッ」
側近「…… ……な、んだ……?」
魔導将軍「……止、まった…… ……?」
側近「大丈夫か、魔導将軍……」
魔導将軍「……え、ええ……魔王?」
魔王「…… ……」
バタバタバタ……ッ
后「側近!魔導将軍!」
側近「! ……大丈夫だ。大丈夫だから、入るな!」
后「……何が、あったの」
魔導将軍「ちょっと、待って…… ……ちゃんと、話す、から……」
側近「そこに居ろよ、后……糞、勇者……ッ 早く、来いよ……ッ」
側近「……間に合ってくれよ……ッ」
魔導将軍(魔王…… ……貴方は、何を……?)
……
………
…………
僧侶「朝、ですね……」
戦士「……朝だな」フワァ
勇者「えっと、その……御免」
魔法使い(すぅすぅ)
僧侶「余程……疲れたのですね、魔法使いさん」
勇者「や、その、な? ……壁は固いし、しんどいだろうと思ってな!?」
戦士「別に何も言ってないだろうが」
勇者「さ、さっき、僧侶に聞いたから!悪かった!戦士……ッ」
443: 2013/09/04(水) 17:48:58.22 ID:/1lNz7AVP
戦士「まあ……仕方無いだろう。動けなかったんだろうしな」
戦士「そりゃ構わん……が」
僧侶「がっちり抱き合ってましたね……さっきまで」
勇者「あ、暖かかったから、つい……」
魔法使い(すぅすぅ)
僧侶「……見てるこっちが恥ずかしいです」ハァ
戦士「起きるまでそうしておいてやれ……起きたら、出発しよう」
勇者「…… ……ご免なさい」
僧侶「別に勇者様が謝る事じゃないでしょう」クス
僧侶「……ぐっすり眠れた様で、安心しました」
勇者「御免……僧侶は、ちゃんと……寝れた、か?」
僧侶「大丈夫です。戦士さんが膝を貸してくれましたから」
勇者「え」
戦士「…… ……」フィッ
僧侶「ちょっと、神父様の所に行ってきますね」タタタ
勇者「……お前、随分寛大だと思ったら」
戦士「の、野宿でも無いのに、放っておく訳にいかんだろうがッ」
戦士「……そ、それにお前みたいにやましいことはしてない!」
勇者「お、俺も、な、なな、何もしてネェよ!」
魔法使い「……う、ぅん……?」モゾ
勇者「わあッ」
戦士「……何動揺してるんだ」
勇者「ち、ちが……ッ」
魔法使い「……もう、朝…… …… ……きゃあ!?勇者!?」
魔法使い「あ……ッ」カァッ
勇者「お、おはよう!魔法使い!」
魔法使い「あ、私、あのまま……!? ご、ご免なさい!」
勇者「……い、いや、大丈夫。大丈夫だから!」
勇者「そ、その……身体は……大丈夫、か?」
魔法使い「あ……え、ええ……あ、あり、がとう……」
勇者「いや……大丈夫なら、良いんだ。うん」
戦士「…… ……俺も居るんだがな」
戦士「そりゃ構わん……が」
僧侶「がっちり抱き合ってましたね……さっきまで」
勇者「あ、暖かかったから、つい……」
魔法使い(すぅすぅ)
僧侶「……見てるこっちが恥ずかしいです」ハァ
戦士「起きるまでそうしておいてやれ……起きたら、出発しよう」
勇者「…… ……ご免なさい」
僧侶「別に勇者様が謝る事じゃないでしょう」クス
僧侶「……ぐっすり眠れた様で、安心しました」
勇者「御免……僧侶は、ちゃんと……寝れた、か?」
僧侶「大丈夫です。戦士さんが膝を貸してくれましたから」
勇者「え」
戦士「…… ……」フィッ
僧侶「ちょっと、神父様の所に行ってきますね」タタタ
勇者「……お前、随分寛大だと思ったら」
戦士「の、野宿でも無いのに、放っておく訳にいかんだろうがッ」
戦士「……そ、それにお前みたいにやましいことはしてない!」
勇者「お、俺も、な、なな、何もしてネェよ!」
魔法使い「……う、ぅん……?」モゾ
勇者「わあッ」
戦士「……何動揺してるんだ」
勇者「ち、ちが……ッ」
魔法使い「……もう、朝…… …… ……きゃあ!?勇者!?」
魔法使い「あ……ッ」カァッ
勇者「お、おはよう!魔法使い!」
魔法使い「あ、私、あのまま……!? ご、ご免なさい!」
勇者「……い、いや、大丈夫。大丈夫だから!」
勇者「そ、その……身体は……大丈夫、か?」
魔法使い「あ……え、ええ……あ、あり、がとう……」
勇者「いや……大丈夫なら、良いんだ。うん」
戦士「…… ……俺も居るんだがな」
451: 2013/09/05(木) 10:39:53.75 ID:3hno3GFkP
魔法使い「……あ、そ、僧侶は!?」
戦士「外だ……神父の墓の所に」ハァ
魔法使い「わ、私も挨拶してこよう!」
タタタ、バタン!
戦士「……何やってんだ、お前らは」
勇者「だから、何も無いって……」
……
………
…………
僧侶「……良し、と」
僧侶(……墓標の変わりにと……建てた木はもう朽ちてしまっていたし)
僧侶(丁度……小さな、苗を見つけたんです)
僧侶(どんな花が咲くかは、解りませんけど……)
スタスタ……
僧侶「戦士さん?」クル
魔法使い「……私よ」
僧侶「あ、ま、魔法使いさん! ……あの、大丈夫ですか?」
魔法使い「うん……なんか、ご免なさい」
戦士「外だ……神父の墓の所に」ハァ
魔法使い「わ、私も挨拶してこよう!」
タタタ、バタン!
戦士「……何やってんだ、お前らは」
勇者「だから、何も無いって……」
……
………
…………
僧侶「……良し、と」
僧侶(……墓標の変わりにと……建てた木はもう朽ちてしまっていたし)
僧侶(丁度……小さな、苗を見つけたんです)
僧侶(どんな花が咲くかは、解りませんけど……)
スタスタ……
僧侶「戦士さん?」クル
魔法使い「……私よ」
僧侶「あ、ま、魔法使いさん! ……あの、大丈夫ですか?」
魔法使い「うん……なんか、ご免なさい」
452: 2013/09/05(木) 10:54:15.15 ID:3hno3GFkP
僧侶「え?」
魔法使い「……いや、その」
僧侶「体調は、良くなったのですか?」
魔法使い「え、ええ……ぐっすり……眠れたみたい」
僧侶「なら、良かった」ニコ
魔法使い「……何、してたの?」
僧侶「随分、長い事放って置いてしまったので……」
魔法使い「……いや、その」
僧侶「体調は、良くなったのですか?」
魔法使い「え、ええ……ぐっすり……眠れたみたい」
僧侶「なら、良かった」ニコ
魔法使い「……何、してたの?」
僧侶「随分、長い事放って置いてしまったので……」
456: 2013/09/05(木) 14:30:55.38 ID:3hno3GFkP
僧侶「……せめて掃除だけでも、って思ってたんですが」
魔法使い「その割りには土だらけよ、アンタ……」
僧侶「はい。丁度、蕾の出来ている小さな苗を見つけたので」
魔法使い「……ああ」
僧侶「少しでも、咲いていれば……寂しくないかなって」
僧侶「……こういうのを、自己満足って言うんでしょうね」
魔法使い「…… ……」
僧侶「私は何れ……此処へ帰って来ます」
僧侶「魔王を倒して、平和になったら」
魔法使い「……『北の塔』は良いの?」
僧侶「『今じゃ無くて良い』って、言ってました」
魔法使い「信じるの?」
僧侶「……私に、問うと言う事は、少なからず魔法使いさんも」
僧侶「信じて、いらっしゃるんでしょう?」
魔法使い「…… ……そうか。そういう事……よね」
僧侶「戦士さんに言われました」
僧侶「何を信じて良いか解らなければ……」
魔法使い「……自分を信じれば良い?」
僧侶「…… ……はい。そうですね。そもそもは、勇者様のお言葉でした」
魔法使い「随分、複雑な迷路に迷い込んだわよね、私達」
魔法使い「その割りには土だらけよ、アンタ……」
僧侶「はい。丁度、蕾の出来ている小さな苗を見つけたので」
魔法使い「……ああ」
僧侶「少しでも、咲いていれば……寂しくないかなって」
僧侶「……こういうのを、自己満足って言うんでしょうね」
魔法使い「…… ……」
僧侶「私は何れ……此処へ帰って来ます」
僧侶「魔王を倒して、平和になったら」
魔法使い「……『北の塔』は良いの?」
僧侶「『今じゃ無くて良い』って、言ってました」
魔法使い「信じるの?」
僧侶「……私に、問うと言う事は、少なからず魔法使いさんも」
僧侶「信じて、いらっしゃるんでしょう?」
魔法使い「…… ……そうか。そういう事……よね」
僧侶「戦士さんに言われました」
僧侶「何を信じて良いか解らなければ……」
魔法使い「……自分を信じれば良い?」
僧侶「…… ……はい。そうですね。そもそもは、勇者様のお言葉でした」
魔法使い「随分、複雑な迷路に迷い込んだわよね、私達」
469: 2013/09/06(金) 05:15:20.78 ID:gMU3kZr0P
僧侶「出口は……いえ」
僧侶「……見つければ、良いんですよね」
魔法使い「…… ……そうね」
スタスタ
戦士「おい……良ければ出発…… ……」
戦士「……何でお前は泥だらけになってるんだ」
僧侶「あ、戦士さん……いえ、ちょっと片付けを」パサパサ
魔法使い「ほら、後ろ向いて……払うから」パンパン
僧侶「す、すみません」
勇者「戦士と地図を見てたんだが」
勇者「……北の街、とやらのすぐ傍に、大きな塔があるみたいだ」
魔法使い「勇者……」ドキ
僧侶「塔、ですか」
勇者「多分、これが『北の塔』だろうと思う」
戦士「北の街で聞いてみれば、確かなことはわかるだろう」
僧侶「そうですか……ありがとうございます」
魔法使い「とにかく、船……ね」
勇者「ああ。二人とも、大丈夫か?」
僧侶「はい。行きましょう」
魔法使い「今日の夜までには着く……かしらね」
僧侶「北の街へは私も行ったことが無いので……解らないですけど」
勇者「野宿は避けたいな。魔寄せの石の効力も」
勇者「まさか、北の街の方まで有効とは考えにくい」
戦士「……地図を見る限り最果ての地に随分近い様だしな」
勇者「ああ。無理はするなよ……辛くなったら、すぐに教えてくれ」
魔法使い「ええ」
僧侶「……見つければ、良いんですよね」
魔法使い「…… ……そうね」
スタスタ
戦士「おい……良ければ出発…… ……」
戦士「……何でお前は泥だらけになってるんだ」
僧侶「あ、戦士さん……いえ、ちょっと片付けを」パサパサ
魔法使い「ほら、後ろ向いて……払うから」パンパン
僧侶「す、すみません」
勇者「戦士と地図を見てたんだが」
勇者「……北の街、とやらのすぐ傍に、大きな塔があるみたいだ」
魔法使い「勇者……」ドキ
僧侶「塔、ですか」
勇者「多分、これが『北の塔』だろうと思う」
戦士「北の街で聞いてみれば、確かなことはわかるだろう」
僧侶「そうですか……ありがとうございます」
魔法使い「とにかく、船……ね」
勇者「ああ。二人とも、大丈夫か?」
僧侶「はい。行きましょう」
魔法使い「今日の夜までには着く……かしらね」
僧侶「北の街へは私も行ったことが無いので……解らないですけど」
勇者「野宿は避けたいな。魔寄せの石の効力も」
勇者「まさか、北の街の方まで有効とは考えにくい」
戦士「……地図を見る限り最果ての地に随分近い様だしな」
勇者「ああ。無理はするなよ……辛くなったら、すぐに教えてくれ」
魔法使い「ええ」
470: 2013/09/06(金) 05:48:26.90 ID:gMU3kZr0P
僧侶「……何者、なのでしょうね」
戦士「ん?」
僧侶「魔寄せ……インキュバス、でしたっけ」
魔法使い「……魔気、だって言ってたわよね」
勇者「魔族が作った石、なのに……鍛冶師の村では」
勇者「聖職者、と言われてる、んだよな」
スタスタ……スタスタ……
僧侶「物事は全て、一面通り、では無いんですね」
僧侶「……誰が何の意図で……インキュバスと言う者がどうして」
僧侶「そんな事をしたのかは……わかりません、けど」
魔法使い「……そうよね。少なくとも、鍛冶師の村の人達は」
魔法使い「こうして、守られている。皮肉にも、ね」
戦士「そこにつけいったのが……」
勇者「…… ……」チラ
魔法使い「大丈夫よ、勇者…… ……お爺様達ね」
戦士「魔導国の奴らが発見し、持ち帰った……と言う事は」
戦士「……否、自作自演、もあり得るか」
僧侶「どうでしょうね。本当に利用しただけ、とも思えますけど」
魔法使い「インキュバスだけじゃ無いわよね。魔導将軍……」
魔法使い「魔族って、何なのかしら」
勇者「僧侶」
僧侶「はい?」
勇者「……魔気、だっけ? ……俺達の持つ魔力と、どう違う?」
僧侶「説明が難しいですね……簡単に言うと」
僧侶「『質』が違います……あ、えっと。感じた侭を言うと、ですけど」
戦士「ん?」
僧侶「魔寄せ……インキュバス、でしたっけ」
魔法使い「……魔気、だって言ってたわよね」
勇者「魔族が作った石、なのに……鍛冶師の村では」
勇者「聖職者、と言われてる、んだよな」
スタスタ……スタスタ……
僧侶「物事は全て、一面通り、では無いんですね」
僧侶「……誰が何の意図で……インキュバスと言う者がどうして」
僧侶「そんな事をしたのかは……わかりません、けど」
魔法使い「……そうよね。少なくとも、鍛冶師の村の人達は」
魔法使い「こうして、守られている。皮肉にも、ね」
戦士「そこにつけいったのが……」
勇者「…… ……」チラ
魔法使い「大丈夫よ、勇者…… ……お爺様達ね」
戦士「魔導国の奴らが発見し、持ち帰った……と言う事は」
戦士「……否、自作自演、もあり得るか」
僧侶「どうでしょうね。本当に利用しただけ、とも思えますけど」
魔法使い「インキュバスだけじゃ無いわよね。魔導将軍……」
魔法使い「魔族って、何なのかしら」
勇者「僧侶」
僧侶「はい?」
勇者「……魔気、だっけ? ……俺達の持つ魔力と、どう違う?」
僧侶「説明が難しいですね……簡単に言うと」
僧侶「『質』が違います……あ、えっと。感じた侭を言うと、ですけど」
471: 2013/09/06(金) 06:12:28.70 ID:gMU3kZr0P
魔法使い「……『質』」
僧侶「はい。『魔法を使う力』と言ってしまえば、同じなんですけど」
戦士「俺は魔法が使えないから、魔力、と言う物は持っていない、んだな」
勇者「『加護』とは又別なんだな?」
僧侶「はい。話した事があるかもしれませんが」
僧侶「『加護』は命ある者が産まれて来るときに、精霊と交わす契約の様な物」
僧侶「動物にも、人にも……『命』があるものは全て、持っていますから」
魔法使い「優れた精霊と契約した者は、優れた加護を持つ……のよね」
僧侶「そうですね……まあ、便宜上そうであろうと言われているのみ……」
僧侶「……ですけど、ね」
魔法使い「『感じる力』なんて持っていない私でも……」
魔法使い「魔導将軍の、強大さは解ったわ」
魔法使い「同じ炎の加護を持っているのに……私とは」
魔法使い「……『人間』とは、随分……違った」
僧侶「『質』が違えば、確かに……強力ではあるんでしょうけど」
僧侶「なんて言えばいいのか……」
勇者「……不思議だよな。『世界』は……どうして」
勇者「種族、なんて物を作ったのか」
戦士「人間、魔族……エルフ、か」
魔法使い「不平等よね」フゥ
戦士「生きていく上では、必ず『弱肉強食』になる」
戦士「……人より顕著なのが動物達だ」
僧侶「力の差が歴然であれば、自然と……『支配する物』と『支配される物』に」
僧侶「別れてしまいますからね。でも……」
魔法使い「進化の過程、であるなら理解出来るわよ」
魔法使い「……でも、産まれ持った『質』が違うなんて言われてしまえば……」ハァ
僧侶「はい。『魔法を使う力』と言ってしまえば、同じなんですけど」
戦士「俺は魔法が使えないから、魔力、と言う物は持っていない、んだな」
勇者「『加護』とは又別なんだな?」
僧侶「はい。話した事があるかもしれませんが」
僧侶「『加護』は命ある者が産まれて来るときに、精霊と交わす契約の様な物」
僧侶「動物にも、人にも……『命』があるものは全て、持っていますから」
魔法使い「優れた精霊と契約した者は、優れた加護を持つ……のよね」
僧侶「そうですね……まあ、便宜上そうであろうと言われているのみ……」
僧侶「……ですけど、ね」
魔法使い「『感じる力』なんて持っていない私でも……」
魔法使い「魔導将軍の、強大さは解ったわ」
魔法使い「同じ炎の加護を持っているのに……私とは」
魔法使い「……『人間』とは、随分……違った」
僧侶「『質』が違えば、確かに……強力ではあるんでしょうけど」
僧侶「なんて言えばいいのか……」
勇者「……不思議だよな。『世界』は……どうして」
勇者「種族、なんて物を作ったのか」
戦士「人間、魔族……エルフ、か」
魔法使い「不平等よね」フゥ
戦士「生きていく上では、必ず『弱肉強食』になる」
戦士「……人より顕著なのが動物達だ」
僧侶「力の差が歴然であれば、自然と……『支配する物』と『支配される物』に」
僧侶「別れてしまいますからね。でも……」
魔法使い「進化の過程、であるなら理解出来るわよ」
魔法使い「……でも、産まれ持った『質』が違うなんて言われてしまえば……」ハァ
472: 2013/09/06(金) 06:18:01.54 ID:gMU3kZr0P
勇者「俺達は……それを覆さないと行けないんだな」
僧侶「……突き詰めて考えれば、どうして『魔族』なんて産まれたんだって」
僧侶「そんな話になってしまいますけど……」
僧侶「それは『私達』の主観ですよ、勇者様」
勇者「…… ……」
僧侶「『魔族』から見れば、また……違った話、なのかもしれません」
戦士「『平等』なんて絵空事だ。それこそ」
戦士「『昔々』から始まって」
戦士「『めでたしめでたし』で終わる御伽噺の世界だろう」
魔法使い「それだって悪い奴はやっつけて、そうじゃ無いのだけが」
魔法使い「幸せになりました、ってだけじゃない」
勇者「……勝った者。強かった者が……『正義』なのさ」
勇者「俺達は『人間』の為に、『魔族』……魔族の王である」
勇者「『魔王』を倒す」
僧侶「…… ……」
勇者「俺はその為に……産まれてきた『勇者』だ」
魔法使い「…… ……」
勇者「……魔族達からみれば、魔王こそが『勇者』なのかもしれないな」
戦士「…… ……」
勇者「『人間』の為に『力の差』……『命の差』を覆し」
勇者「『人間達の為』の『平和』を……勝ち取らないといけないんだ」
僧侶「……命の重さに、差違なんて……!」
戦士「それが『戦争』だ、僧侶」
僧侶「…… ……」
僧侶「……突き詰めて考えれば、どうして『魔族』なんて産まれたんだって」
僧侶「そんな話になってしまいますけど……」
僧侶「それは『私達』の主観ですよ、勇者様」
勇者「…… ……」
僧侶「『魔族』から見れば、また……違った話、なのかもしれません」
戦士「『平等』なんて絵空事だ。それこそ」
戦士「『昔々』から始まって」
戦士「『めでたしめでたし』で終わる御伽噺の世界だろう」
魔法使い「それだって悪い奴はやっつけて、そうじゃ無いのだけが」
魔法使い「幸せになりました、ってだけじゃない」
勇者「……勝った者。強かった者が……『正義』なのさ」
勇者「俺達は『人間』の為に、『魔族』……魔族の王である」
勇者「『魔王』を倒す」
僧侶「…… ……」
勇者「俺はその為に……産まれてきた『勇者』だ」
魔法使い「…… ……」
勇者「……魔族達からみれば、魔王こそが『勇者』なのかもしれないな」
戦士「…… ……」
勇者「『人間』の為に『力の差』……『命の差』を覆し」
勇者「『人間達の為』の『平和』を……勝ち取らないといけないんだ」
僧侶「……命の重さに、差違なんて……!」
戦士「それが『戦争』だ、僧侶」
僧侶「…… ……」
474: 2013/09/06(金) 07:14:55.93 ID:gMU3kZr0P
戦士「……泣きそうな顔をするな、僧侶」
戦士「俺達が『それ』を否定したら、『見失う』」
僧侶「! …… ……はい」
勇者「だから……もう、そんな顔をしなくて良い様に」
勇者「『終わらせよう』」
魔法使い「自分達を……勇者を」
魔法使い「私達の『勇者』を信じるしかないのよ」
……
………
…………
領主「ゲホッ ……ごほ……ッ」
母親「お父様、大丈夫!?」
領主「……構わん。続けろ、父親」
父親「あ、ああ……ええと」
母親「鉱石の洞窟は無事に手に入れたのね?」
父親「そうだ。始まりの国の船団は引き上げていった……まあ、賢明な判断だろう」
父親「港街の方へも警備の兵を裂かざるを得ないだろうしな」
母親「弟王子……国王の事だわ。これ以上犠牲者が出るのも」
母親「良しとしないんでしょう」
父親「こちらの被害も……まあ、無いとは言えないが」
父親「所詮兵士だ。変わりは幾らでも居る」
母親「……魔法の鉱石、ね」
母親「採取してすぐに、あの魔寄せの石の魔力を移させましょう」
領主「……剣士は、どうしている?」
母親「相変わらず図書館に篭もりっきりよ」
領主「そうか……話したのか」
父親「まだです……が、先ほど、勇者達が北の街に着いたとの連絡がありましたよ」
領主「そうか!とうとう……か」
戦士「俺達が『それ』を否定したら、『見失う』」
僧侶「! …… ……はい」
勇者「だから……もう、そんな顔をしなくて良い様に」
勇者「『終わらせよう』」
魔法使い「自分達を……勇者を」
魔法使い「私達の『勇者』を信じるしかないのよ」
……
………
…………
領主「ゲホッ ……ごほ……ッ」
母親「お父様、大丈夫!?」
領主「……構わん。続けろ、父親」
父親「あ、ああ……ええと」
母親「鉱石の洞窟は無事に手に入れたのね?」
父親「そうだ。始まりの国の船団は引き上げていった……まあ、賢明な判断だろう」
父親「港街の方へも警備の兵を裂かざるを得ないだろうしな」
母親「弟王子……国王の事だわ。これ以上犠牲者が出るのも」
母親「良しとしないんでしょう」
父親「こちらの被害も……まあ、無いとは言えないが」
父親「所詮兵士だ。変わりは幾らでも居る」
母親「……魔法の鉱石、ね」
母親「採取してすぐに、あの魔寄せの石の魔力を移させましょう」
領主「……剣士は、どうしている?」
母親「相変わらず図書館に篭もりっきりよ」
領主「そうか……話したのか」
父親「まだです……が、先ほど、勇者達が北の街に着いたとの連絡がありましたよ」
領主「そうか!とうとう……か」
475: 2013/09/06(金) 07:48:36.21 ID:gMU3kZr0P
母親「まだよ、お父様……多分、勇者達は始まりの国に行くでしょうね」
父親「だろうな。真っ直ぐ此処に来るとは考えられない」
領主「……む。何の為の魔法使……ッ げほ、ゴホッ ……」
母親「誰か!来て頂戴!」
領主「大丈夫だと……ッ」ゲホッ
カチャ
メイド「失礼致します」
母親「お父様を寝室へ。お薬を飲ませて頂戴」
領主「母親!儂は……!」
父親「大丈夫じゃないだろう、お父様」
父親「……まだ、元気で居て貰わないと困るんだからね」
メイド「さ……王様、行きましょう」
領主「糞……ッ」
母親「そうよ。魔法使い達が戻る迄に、体調を戻して貰わないと」
スタスタ、パタン
父親「…… ……」
母親「……長く無いでしょうね」
父親「だろうな」フゥ
母親「お父様も人が悪いわ。あんな……あんな代物を隠していただなんて」
父親「『時期を待っていた』て言葉を信じてやれよ」
母親「お兄様は信じられるの?」
父親「……強きに巻かれるのは、お父様の長所だろ」
母親「短所の間違いでしょ!」
父親「だろうな。真っ直ぐ此処に来るとは考えられない」
領主「……む。何の為の魔法使……ッ げほ、ゴホッ ……」
母親「誰か!来て頂戴!」
領主「大丈夫だと……ッ」ゲホッ
カチャ
メイド「失礼致します」
母親「お父様を寝室へ。お薬を飲ませて頂戴」
領主「母親!儂は……!」
父親「大丈夫じゃないだろう、お父様」
父親「……まだ、元気で居て貰わないと困るんだからね」
メイド「さ……王様、行きましょう」
領主「糞……ッ」
母親「そうよ。魔法使い達が戻る迄に、体調を戻して貰わないと」
スタスタ、パタン
父親「…… ……」
母親「……長く無いでしょうね」
父親「だろうな」フゥ
母親「お父様も人が悪いわ。あんな……あんな代物を隠していただなんて」
父親「『時期を待っていた』て言葉を信じてやれよ」
母親「お兄様は信じられるの?」
父親「……強きに巻かれるのは、お父様の長所だろ」
母親「短所の間違いでしょ!」
476: 2013/09/06(金) 08:38:27.34 ID:gMU3kZr0P
父親「……剣士が居る限り、この国の敗北は無いんだ」
母親「剣士の『協力』があれば、でしょ」
父親「俺とお父様を一緒にするな、母親」
母親「氏ねば……自分が王になるからって」
母親「頭をすげ替えた位じゃ、何も変わらないわよ」
父親「なら何故、あいつは文句もいわず此処に居る?」
母親「勇者と一緒に魔王を倒したいから、って言いたいんでしょうけど」
母親「……勇者は間違い無く、始まりの国の肩を持つわよ」
母親「どうするつもりよ……王子の息子も居るって言うのに」
父親「……お父様の功績は、あの魔石だろう?」
父親「まあ、見ておけ。俺にもちゃんと、考えがある」
母親「……信じるわよ、お兄様」
父親「勿論だ。俺は…… ……お父様とは違う」
……
………
…………
母親「剣士の『協力』があれば、でしょ」
父親「俺とお父様を一緒にするな、母親」
母親「氏ねば……自分が王になるからって」
母親「頭をすげ替えた位じゃ、何も変わらないわよ」
父親「なら何故、あいつは文句もいわず此処に居る?」
母親「勇者と一緒に魔王を倒したいから、って言いたいんでしょうけど」
母親「……勇者は間違い無く、始まりの国の肩を持つわよ」
母親「どうするつもりよ……王子の息子も居るって言うのに」
父親「……お父様の功績は、あの魔石だろう?」
父親「まあ、見ておけ。俺にもちゃんと、考えがある」
母親「……信じるわよ、お兄様」
父親「勿論だ。俺は…… ……お父様とは違う」
……
………
…………
488: 2013/09/07(土) 00:53:40.29 ID:jZjoAyyLP
町長「船はご自由にお使い頂いて構いません……ですが」
町長「一つだけ……お願いがあります」
勇者「……俺達に、出来る事でしたら」
魔法使い「何か……随分あっさりね」ヒソ
僧侶「聞こえますよ……」ヒソ
町長「北の塔には……近付かないで頂きたいのです」
勇者「……え!?」
僧侶「!」
戦士「それは……理由は聞かせて貰えるのか」
町長「…… ……はい」ハァ
魔法使い「…… ……」
町長「何がある訳でも無いんですが……禁忌、なのですよ」
勇者「禁忌?」
町長「この街から少し海の方へと進んで貰えれば」
町長「……最果ての地の方向に、天まで届く巨大な塔が見えます」
魔法使い「それが……北の塔?」
町長「ええ。まあ……その、色々言い伝えが残っていましてね」
町長「……随分昔に、この街へ来た旅人と、この村の者が」
町長「あの塔へと出向いたのですが……」
魔法使い「……戻って来なかった、とか、そういう落ち?」
町長「いえ、逆です。二人は無事に戻ってきたのですが……」
町長「……何かしら、あったのでしょうね」
町長「街は……それまで、蝙蝠の様な魔物の襲撃に度々、あっていたんです」
町長「だが、それを切欠にぴたりと止んだ」
僧侶「では、そのお二方が、塔の魔物……か何かを倒された、と?」
町長「…… ……」
勇者「?」
町長「何があったかは、はっきりわかりません」
町長「ですが……旅人が去った後、一緒に塔へと出向いた」
町長「この村の者……当時の町長の娘です」
町長「その娘も、姿を消してしまった」
町長「一つだけ……お願いがあります」
勇者「……俺達に、出来る事でしたら」
魔法使い「何か……随分あっさりね」ヒソ
僧侶「聞こえますよ……」ヒソ
町長「北の塔には……近付かないで頂きたいのです」
勇者「……え!?」
僧侶「!」
戦士「それは……理由は聞かせて貰えるのか」
町長「…… ……はい」ハァ
魔法使い「…… ……」
町長「何がある訳でも無いんですが……禁忌、なのですよ」
勇者「禁忌?」
町長「この街から少し海の方へと進んで貰えれば」
町長「……最果ての地の方向に、天まで届く巨大な塔が見えます」
魔法使い「それが……北の塔?」
町長「ええ。まあ……その、色々言い伝えが残っていましてね」
町長「……随分昔に、この街へ来た旅人と、この村の者が」
町長「あの塔へと出向いたのですが……」
魔法使い「……戻って来なかった、とか、そういう落ち?」
町長「いえ、逆です。二人は無事に戻ってきたのですが……」
町長「……何かしら、あったのでしょうね」
町長「街は……それまで、蝙蝠の様な魔物の襲撃に度々、あっていたんです」
町長「だが、それを切欠にぴたりと止んだ」
僧侶「では、そのお二方が、塔の魔物……か何かを倒された、と?」
町長「…… ……」
勇者「?」
町長「何があったかは、はっきりわかりません」
町長「ですが……旅人が去った後、一緒に塔へと出向いた」
町長「この村の者……当時の町長の娘です」
町長「その娘も、姿を消してしまった」
490: 2013/09/07(土) 01:05:21.31 ID:jZjoAyyLP
戦士「そ、れは…… しかし…… ……?」
町長「旅人に攫われた、だとか。色々、ね……人々は言うのですけど」
町長「まあ、本当に……ただの、言い伝えなのです、けど……」
魔法使い「……そんなに言いにくい事なの?」
町長「……街の人達は、その娘と旅人が共謀して」
町長「街を襲わせていたのでは無いかという……思いに囚われ」
僧侶「!?」
町長「……娘の父親、その……当時の町長を追い出してしまったのですよ」
僧侶「な、何故です!?」
僧侶「本来ならば、この街を魔物の襲撃から守った本人では無いのですか!?」
町長「……真相は分かりません。娘も、どこかで生きていたとしても」
町長「……否。それも、人の子であるのなら、あり得ない程の昔話です」
町長「ふらりとやってきた旅人は、とても強く……まるで人では無いようだった、とも」
勇者「人では……無い……!?」
町長「……本気になさらないで下さいよ。遙か昔の……この街の住人の」
町長「『過ち』なのです」
町長「……居なくなった後、随分と噂に尾ひれ背びれで足りない程の物がついて」
町長「そんな話になっただけだとは思うんですけどね」
町長「……ともかく、この街の住人にとって、あの塔は」
町長「『触らぬ神に祟りなし』……触れてはいけない、禁忌なのですよ」
勇者「……確かめに、は……誰も行かない、のか?」
町長「冗談じゃありませんよ!此処はただでさえ、最果ての地に近い!」
町長「……街の外へ出るにも、勇気がいると言うのに」
戦士「……それで、その約束さえ守るのならば、船は貸して貰えるんだな?」
町長「ええ……わ、私は伝えましたからね!?」
町長「この街を……巻き込むことは、やめて下さいよ!」
町長「……お願いしますよ、勇者様」
勇者「え……」
町長「一刻も早く魔王を倒し、こんな風に怯える毎日から」
町長「……私達を、解放して下さい」
町長「旅人に攫われた、だとか。色々、ね……人々は言うのですけど」
町長「まあ、本当に……ただの、言い伝えなのです、けど……」
魔法使い「……そんなに言いにくい事なの?」
町長「……街の人達は、その娘と旅人が共謀して」
町長「街を襲わせていたのでは無いかという……思いに囚われ」
僧侶「!?」
町長「……娘の父親、その……当時の町長を追い出してしまったのですよ」
僧侶「な、何故です!?」
僧侶「本来ならば、この街を魔物の襲撃から守った本人では無いのですか!?」
町長「……真相は分かりません。娘も、どこかで生きていたとしても」
町長「……否。それも、人の子であるのなら、あり得ない程の昔話です」
町長「ふらりとやってきた旅人は、とても強く……まるで人では無いようだった、とも」
勇者「人では……無い……!?」
町長「……本気になさらないで下さいよ。遙か昔の……この街の住人の」
町長「『過ち』なのです」
町長「……居なくなった後、随分と噂に尾ひれ背びれで足りない程の物がついて」
町長「そんな話になっただけだとは思うんですけどね」
町長「……ともかく、この街の住人にとって、あの塔は」
町長「『触らぬ神に祟りなし』……触れてはいけない、禁忌なのですよ」
勇者「……確かめに、は……誰も行かない、のか?」
町長「冗談じゃありませんよ!此処はただでさえ、最果ての地に近い!」
町長「……街の外へ出るにも、勇気がいると言うのに」
戦士「……それで、その約束さえ守るのならば、船は貸して貰えるんだな?」
町長「ええ……わ、私は伝えましたからね!?」
町長「この街を……巻き込むことは、やめて下さいよ!」
町長「……お願いしますよ、勇者様」
勇者「え……」
町長「一刻も早く魔王を倒し、こんな風に怯える毎日から」
町長「……私達を、解放して下さい」
491: 2013/09/07(土) 01:27:12.00 ID:jZjoAyyLP
勇者「……わかりました。お約束します」
魔法使い「勇者!?」
勇者「俺達には船が必要だ……それに」
勇者「……俺達の目的は『魔王を倒し、世界を平和にする事』だ」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
町長「申し訳ありません……」
勇者「いえ……」
僧侶「……その、娘さんは……戻られなかった、のですか?」
町長「ええ……英雄視する者も居ますが……」
町長「所詮、ね……ただの、こんな……辺境の街のね」
町長「……人間の一人が、『勇者』になんて……なれる訳では無いんですよ」
魔法使い「…… ……」
町長「悪いとは思いますよ。本当に……何もなかった、のなら」
町長「ですが……もう、遠い昔の話です」
町長「今更……どうすることも出来ませんから」
勇者「……魔王を倒した暁には、船は……お返し致します」
町長「……ええ、まあ……そう仰るのでしたら」
町長「お気をつけ下さいね。この辺の海域には、厄介な人魚が住んでいます」
僧侶「人魚?」
町長「はい。魔詩を紡ぎ、海を渡る人を惑わし……喰らうのですよ」
僧侶「……魔詩」
町長「人間の望む者の幻覚を見せ、海に引きずり込むのだそうです」
町長「……ですので、ね。まあ……どちらでも……」
戦士「わかった……感謝する。行こう、勇者」
勇者「あ、ああ……では、失礼します」
スタスタ、パタン
僧侶「……随分な話ですね」
魔法使い「勇者!?」
勇者「俺達には船が必要だ……それに」
勇者「……俺達の目的は『魔王を倒し、世界を平和にする事』だ」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
町長「申し訳ありません……」
勇者「いえ……」
僧侶「……その、娘さんは……戻られなかった、のですか?」
町長「ええ……英雄視する者も居ますが……」
町長「所詮、ね……ただの、こんな……辺境の街のね」
町長「……人間の一人が、『勇者』になんて……なれる訳では無いんですよ」
魔法使い「…… ……」
町長「悪いとは思いますよ。本当に……何もなかった、のなら」
町長「ですが……もう、遠い昔の話です」
町長「今更……どうすることも出来ませんから」
勇者「……魔王を倒した暁には、船は……お返し致します」
町長「……ええ、まあ……そう仰るのでしたら」
町長「お気をつけ下さいね。この辺の海域には、厄介な人魚が住んでいます」
僧侶「人魚?」
町長「はい。魔詩を紡ぎ、海を渡る人を惑わし……喰らうのですよ」
僧侶「……魔詩」
町長「人間の望む者の幻覚を見せ、海に引きずり込むのだそうです」
町長「……ですので、ね。まあ……どちらでも……」
戦士「わかった……感謝する。行こう、勇者」
勇者「あ、ああ……では、失礼します」
スタスタ、パタン
僧侶「……随分な話ですね」
492: 2013/09/07(土) 01:35:36.39 ID:jZjoAyyLP
魔法使い「真相が分からないから何とも言えないけど……」
戦士「……本当に近づかないつもりか?」
勇者「あの様子じゃ、な……一応の釘差しの様なモンだろうとは思うけど」
魔法使い「私達が約束破ったって」
魔法使い「知らぬ存ぜぬ、注意はしたぞって……感じだけどね」ハァ
僧侶「でも……初めて聞きました、けど……」
戦士「人魚、か」
勇者「……うん。流石に……ちょっと厄介だな」
魔法使い「耳を塞いでれば良いんじゃないの?」
僧侶「どんな魔法……なのか解らない以上……」
勇者「最果ての地の方向、って言ってたな。何れは避けては通れない」
戦士「……取りあえず、出航しよう。どうやら……この街は」
戦士「魔導国とのどうこうは無いようだし」
魔法使い「そうね。様子を見て……決めましょう」
僧侶「…… ……」
戦士「僧侶?」
僧侶「あ……すみません、行きましょう」
……
………
…………
魔法使い「潮風が気持ちいい! ……ッ を、通り越して寒い、わね」ブルッ
勇者「雲が……重いな」
戦士「最果ての地はすぐそこだ」
戦士「……随分と顔色の悪い空だ」
僧侶「…… ……」
戦士「……勇者、舵を」
勇者「あ、ああ……」スタスタ
魔法使い「大丈夫?」スタスタ
勇者「ま……何とかなるだろ」
戦士「……僧侶、大丈夫か?」
戦士「随分と……さっきから険しい顔をしているが」
戦士「……本当に近づかないつもりか?」
勇者「あの様子じゃ、な……一応の釘差しの様なモンだろうとは思うけど」
魔法使い「私達が約束破ったって」
魔法使い「知らぬ存ぜぬ、注意はしたぞって……感じだけどね」ハァ
僧侶「でも……初めて聞きました、けど……」
戦士「人魚、か」
勇者「……うん。流石に……ちょっと厄介だな」
魔法使い「耳を塞いでれば良いんじゃないの?」
僧侶「どんな魔法……なのか解らない以上……」
勇者「最果ての地の方向、って言ってたな。何れは避けては通れない」
戦士「……取りあえず、出航しよう。どうやら……この街は」
戦士「魔導国とのどうこうは無いようだし」
魔法使い「そうね。様子を見て……決めましょう」
僧侶「…… ……」
戦士「僧侶?」
僧侶「あ……すみません、行きましょう」
……
………
…………
魔法使い「潮風が気持ちいい! ……ッ を、通り越して寒い、わね」ブルッ
勇者「雲が……重いな」
戦士「最果ての地はすぐそこだ」
戦士「……随分と顔色の悪い空だ」
僧侶「…… ……」
戦士「……勇者、舵を」
勇者「あ、ああ……」スタスタ
魔法使い「大丈夫?」スタスタ
勇者「ま……何とかなるだろ」
戦士「……僧侶、大丈夫か?」
戦士「随分と……さっきから険しい顔をしているが」
493: 2013/09/07(土) 01:42:24.73 ID:jZjoAyyLP
僧侶「あ……ご免なさい」
戦士「謝る事じゃ無い……どうした」
僧侶「いえ……」
戦士「……塔の事か」
僧侶「…… ……」
僧侶「気にならないとは言えません。これから魔王に対峙する……と」
僧侶「考えれば、私は……私を知る必要があるんじゃないか、って」
僧侶「……でも、平和になってからでも遅くないのかもしれない」
僧侶「自分の事ばかり……欲しても…… ……」
戦士「……見ろ」スッ
僧侶「え…… ……あ……ッ」
魔法使い「あれが……北の塔!?」
勇者「……雲の上まで続いてる……のか!?」
戦士「……僧侶、こっちへ」スタスタ
僧侶「あ、は、はい……」タタタ
勇者「戦士。どう……思う?」
戦士「こいつが北の塔に間違いは無いんだろうが……」
魔法使い「あんなの、どうやって上るのよ!?」
僧侶「す、ごい…… ……天辺が見えない……」
勇者「近づいてみるか?」
魔法使い「でも……人魚、とやらが……」
戦士「……流石に水面に目をこらしても、解らんな」
勇者「どうする、僧侶」
僧侶「え……でも…… …… ……」
魔法使い「…… ……待って!」
~♪ ~♪
魔法使い「何か……聞こえない?」
戦士「謝る事じゃ無い……どうした」
僧侶「いえ……」
戦士「……塔の事か」
僧侶「…… ……」
僧侶「気にならないとは言えません。これから魔王に対峙する……と」
僧侶「考えれば、私は……私を知る必要があるんじゃないか、って」
僧侶「……でも、平和になってからでも遅くないのかもしれない」
僧侶「自分の事ばかり……欲しても…… ……」
戦士「……見ろ」スッ
僧侶「え…… ……あ……ッ」
魔法使い「あれが……北の塔!?」
勇者「……雲の上まで続いてる……のか!?」
戦士「……僧侶、こっちへ」スタスタ
僧侶「あ、は、はい……」タタタ
勇者「戦士。どう……思う?」
戦士「こいつが北の塔に間違いは無いんだろうが……」
魔法使い「あんなの、どうやって上るのよ!?」
僧侶「す、ごい…… ……天辺が見えない……」
勇者「近づいてみるか?」
魔法使い「でも……人魚、とやらが……」
戦士「……流石に水面に目をこらしても、解らんな」
勇者「どうする、僧侶」
僧侶「え……でも…… …… ……」
魔法使い「…… ……待って!」
~♪ ~♪
魔法使い「何か……聞こえない?」
495: 2013/09/07(土) 01:46:47.71 ID:jZjoAyyLP
パシャン…… ……
僧侶「! ……ッ 人魚!?」
戦士「勇者、舵を切れ!」
勇者「お、おう!?」
戦士「……海域を離れろ!」
勇者「……ッ 喋るなよ、舌噛むぞ!」
グラグラ……ッ
僧侶「キャッ……ッ」
戦士「僧侶!」ガシ!
魔法使い「きゃああああ!」
勇者「喋るなって!」
~♪ ~♪
戦士「掴まってろ」
僧侶「は、はい!」
勇者「……ッ !?」クラ……ッ
勇者(何だよ、こんな時に……ッ 眩暈……!?)
魔法使い「……勇者!?」
勇者「……大丈夫、だ!」
~♪ ~♪
戦士「う…… しつこい、な…… ……ッ」クラッ
僧侶「戦士さん!?」
魔法使い「……な、に、 ……こ……れ……ッ」フラッ
僧侶「魔法使いさん! ……ッ 勇者様!!」
僧侶「! ……ッ 人魚!?」
戦士「勇者、舵を切れ!」
勇者「お、おう!?」
戦士「……海域を離れろ!」
勇者「……ッ 喋るなよ、舌噛むぞ!」
グラグラ……ッ
僧侶「キャッ……ッ」
戦士「僧侶!」ガシ!
魔法使い「きゃああああ!」
勇者「喋るなって!」
~♪ ~♪
戦士「掴まってろ」
僧侶「は、はい!」
勇者「……ッ !?」クラ……ッ
勇者(何だよ、こんな時に……ッ 眩暈……!?)
魔法使い「……勇者!?」
勇者「……大丈夫、だ!」
~♪ ~♪
戦士「う…… しつこい、な…… ……ッ」クラッ
僧侶「戦士さん!?」
魔法使い「……な、に、 ……こ……れ……ッ」フラッ
僧侶「魔法使いさん! ……ッ 勇者様!!」
496: 2013/09/07(土) 01:53:51.28 ID:jZjoAyyLP
僧侶(これが……魔詩!? ……確かに、美しい声、だけど……!)
勇者「……ッ」フラッバタ……ッ
僧侶「……!」
僧侶(舵が……ッ)ガシッ
僧侶(方向は!?方法は…… ……ッ)
僧侶(三人とも、気を失ってる……!?)
僧侶(で、でも……ッ どうしたら……!!)
僧侶「……ッ」グッ
僧侶(とにかく、振り切らなきゃ……ッ)
……
………
…………
勇者?(どういうことだ……大きくなった?あいつと……事務員とあったのはつい数ヶ月前だ)
勇者?(いや、そもそも……事務員…なのか?いや……でも僧侶が……)
勇者?(………僧侶に)バッ
勇者(……え、これ……俺?)
勇者(随分……視界がぼやけてる)
魔法使い?(……僧侶には分かる、ていうのは理解できる。あの話を聞いたから)
魔法使い?(でもどうして……あいつがそれを知ってるの!?)
魔法使い?(……ッ力の、差…ッ私は……ッ 僧侶ッ)バッ
魔法使い(あの話……? あ……私、あれ……船に……?)
魔法使い(あれは……私? ……でも……?)
戦士?(どういうことだ……あいつは、僧侶の口から聞け、と言った)
戦士?(それよりも、あいつの言っていたことは、一体……!?)
戦士?(魔王は……滅ぼすとは…言っていない?勘違い…!? …僧侶!)バッ
戦士(僧侶の口から……? 何を……聞く、んだ)
戦士(魔王……ああ、そうだ俺達は……船で……)
パアアアアアアアアアア……ッ
勇者「……ッ」フラッバタ……ッ
僧侶「……!」
僧侶(舵が……ッ)ガシッ
僧侶(方向は!?方法は…… ……ッ)
僧侶(三人とも、気を失ってる……!?)
僧侶(で、でも……ッ どうしたら……!!)
僧侶「……ッ」グッ
僧侶(とにかく、振り切らなきゃ……ッ)
……
………
…………
勇者?(どういうことだ……大きくなった?あいつと……事務員とあったのはつい数ヶ月前だ)
勇者?(いや、そもそも……事務員…なのか?いや……でも僧侶が……)
勇者?(………僧侶に)バッ
勇者(……え、これ……俺?)
勇者(随分……視界がぼやけてる)
魔法使い?(……僧侶には分かる、ていうのは理解できる。あの話を聞いたから)
魔法使い?(でもどうして……あいつがそれを知ってるの!?)
魔法使い?(……ッ力の、差…ッ私は……ッ 僧侶ッ)バッ
魔法使い(あの話……? あ……私、あれ……船に……?)
魔法使い(あれは……私? ……でも……?)
戦士?(どういうことだ……あいつは、僧侶の口から聞け、と言った)
戦士?(それよりも、あいつの言っていたことは、一体……!?)
戦士?(魔王は……滅ぼすとは…言っていない?勘違い…!? …僧侶!)バッ
戦士(僧侶の口から……? 何を……聞く、んだ)
戦士(魔王……ああ、そうだ俺達は……船で……)
パアアアアアアアアアア……ッ
497: 2013/09/07(土) 01:58:20.00 ID:jZjoAyyLP
魔法使い(眩しい……ッ)
魔法使い?『僧侶?……』ギュ
僧侶?『……ッ』
魔法使い?『……大丈夫。大丈夫よ。ちゃんと……二人とも貴女を信じてる』
魔法使い?『私達は仲間……大事な仲間でしょ?』
僧侶?『…ッ ま、ほ……つか……さ………ッ』
魔法使い?『……』ナデナデ
僧侶?『わ、わかってます……信じて、くれるって信じて……ッ』
魔法使い(……僧侶、泣いてる……何故?)
僧侶?『でも、痛い……痛いんです。胸が……戦士さん、に、にら、にらまれ……ッ』
僧侶?『……戦士さんから、悲しみを感じ、ました……そしたら、胸……ッ いた、く……て!』
魔法使い?『……僧侶?、貴女』
僧侶?『はい……?』ヒック
魔法使い?『戦士が好きなのね?』
僧侶?『……!?』ビクッ
魔法使い?『……違う?』
魔法使い(僧侶が……戦士を好き?)
魔法使い(……こんな、場面……知らない。知らない筈……なのに)
僧侶?『……多分。良く、わかりません、けど……多分……』
魔法使い?『……貴女、こんなに聡いのに、そういうのには鈍感なのね』クス
僧侶?『……』
魔法使い?『大丈夫。戻って来てまだぐだぐだ言う様なら』
魔法使い?『私があの脳筋、丸焦げにしてやるわ』クス
僧侶?『……そ、それは、駄目です』クスクス
魔法使い(不思議……懐かしい…… ……?)
魔法使い(……私……知って、る……?)
魔法使い?『僧侶?……』ギュ
僧侶?『……ッ』
魔法使い?『……大丈夫。大丈夫よ。ちゃんと……二人とも貴女を信じてる』
魔法使い?『私達は仲間……大事な仲間でしょ?』
僧侶?『…ッ ま、ほ……つか……さ………ッ』
魔法使い?『……』ナデナデ
僧侶?『わ、わかってます……信じて、くれるって信じて……ッ』
魔法使い(……僧侶、泣いてる……何故?)
僧侶?『でも、痛い……痛いんです。胸が……戦士さん、に、にら、にらまれ……ッ』
僧侶?『……戦士さんから、悲しみを感じ、ました……そしたら、胸……ッ いた、く……て!』
魔法使い?『……僧侶?、貴女』
僧侶?『はい……?』ヒック
魔法使い?『戦士が好きなのね?』
僧侶?『……!?』ビクッ
魔法使い?『……違う?』
魔法使い(僧侶が……戦士を好き?)
魔法使い(……こんな、場面……知らない。知らない筈……なのに)
僧侶?『……多分。良く、わかりません、けど……多分……』
魔法使い?『……貴女、こんなに聡いのに、そういうのには鈍感なのね』クス
僧侶?『……』
魔法使い?『大丈夫。戻って来てまだぐだぐだ言う様なら』
魔法使い?『私があの脳筋、丸焦げにしてやるわ』クス
僧侶?『……そ、それは、駄目です』クスクス
魔法使い(不思議……懐かしい…… ……?)
魔法使い(……私……知って、る……?)
498: 2013/09/07(土) 02:04:07.09 ID:jZjoAyyLP
勇者?『おい、戦士!待て!』スタスタ
戦士?『……勇者か』
勇者?『気持ちは分かるが……あれは無いだろう、戦士』
勇者?『仲間割れ……させるのが目的だとすれば、思うつぼだぞ』
勇者(仲間割れ? ……何の事だ?)
勇者(……あれ、俺と……戦士、二人だけ?)
戦士?『! …お前』
勇者?『俺だって信じたい。僧侶は、仲間だからな』
戦士?『……仲間、か』
勇者?『魔導将軍とやらの目的や真意はわからん。が……少なくとも僧侶は……』
戦士?『ああ……あいつは、嘘は言わないだろうな』
勇者?『お前、分かって……』
戦士?『……エルフは嘘をつけないんだそうだ』
戦士(これは……なんだ?)
戦士(……エルフは嘘を吐けない……僧侶から確かに聞いた、が……)
戦士(何か……おかしい?)
勇者?『は?』
戦士?『種族の特徴だ。精霊と優れた契約を結べるという恩恵の代わりの制約』
戦士?『……思い出したんだ。いつかの街で、僧侶が教えてくれた』
勇者?『戦士……』
戦士?『さっき言っただろう。エルフは人に干渉しないと聞いたことがあると』
戦士(!?)
勇者(え……!? どうして、そんな事を戦士が知っているんだ!?)
勇者?『ああ……』
戦士?『その話を教えてくれたのも、僧侶だ』
勇者?『……』
戦士(否! ……そんな話は、聞いた事が……!)
勇者(……こんな会話……聞いた事、無いぞ!?)
戦士?『……勇者か』
勇者?『気持ちは分かるが……あれは無いだろう、戦士』
勇者?『仲間割れ……させるのが目的だとすれば、思うつぼだぞ』
勇者(仲間割れ? ……何の事だ?)
勇者(……あれ、俺と……戦士、二人だけ?)
戦士?『! …お前』
勇者?『俺だって信じたい。僧侶は、仲間だからな』
戦士?『……仲間、か』
勇者?『魔導将軍とやらの目的や真意はわからん。が……少なくとも僧侶は……』
戦士?『ああ……あいつは、嘘は言わないだろうな』
勇者?『お前、分かって……』
戦士?『……エルフは嘘をつけないんだそうだ』
戦士(これは……なんだ?)
戦士(……エルフは嘘を吐けない……僧侶から確かに聞いた、が……)
戦士(何か……おかしい?)
勇者?『は?』
戦士?『種族の特徴だ。精霊と優れた契約を結べるという恩恵の代わりの制約』
戦士?『……思い出したんだ。いつかの街で、僧侶が教えてくれた』
勇者?『戦士……』
戦士?『さっき言っただろう。エルフは人に干渉しないと聞いたことがあると』
戦士(!?)
勇者(え……!? どうして、そんな事を戦士が知っているんだ!?)
勇者?『ああ……』
戦士?『その話を教えてくれたのも、僧侶だ』
勇者?『……』
戦士(否! ……そんな話は、聞いた事が……!)
勇者(……こんな会話……聞いた事、無いぞ!?)
499: 2013/09/07(土) 02:06:48.84 ID:jZjoAyyLP
戦士?『この世界のどこかに、エルフの隠れ里があるという』
戦士?『地上であり地上で無い、祝福された楽園』
戦士?『この旅が終われば、可能ならば訪ねてみたい、と』
戦士?『……僧侶が、言ってた』
戦士(……知っている!?俺は……どうして……!?)
勇者(エルフの里……!? そんなもの…… ……否……ッ)
戦士?『僧侶は大事な仲間だ、勇者』
勇者?『…ああ』
戦士?『だが……いや、信じてる。だが…ッ』
勇者?『裏切られるのが怖いのか?』
戦士(……エルフ、そうだ。僧侶は、エルフの血を引く……)
戦士?『いや……そうじゃない。よくわからん』
勇者?『……?』
戦士?『何となく……喉が苦しい』
戦士?『胸が締め付けられるようだ』
勇者(ああ、そうだった……戦士と、僧侶は……ッ)
パァアアアア……ッ
『せ……ん、ま……つか……さ ……』
『ゆ……しゃ、さ……』
僧侶「しっかりしてください!戦士さん、魔法使いさん!」
僧侶「勇者様!!お願い……ッ」
戦士?『地上であり地上で無い、祝福された楽園』
戦士?『この旅が終われば、可能ならば訪ねてみたい、と』
戦士?『……僧侶が、言ってた』
戦士(……知っている!?俺は……どうして……!?)
勇者(エルフの里……!? そんなもの…… ……否……ッ)
戦士?『僧侶は大事な仲間だ、勇者』
勇者?『…ああ』
戦士?『だが……いや、信じてる。だが…ッ』
勇者?『裏切られるのが怖いのか?』
戦士(……エルフ、そうだ。僧侶は、エルフの血を引く……)
戦士?『いや……そうじゃない。よくわからん』
勇者?『……?』
戦士?『何となく……喉が苦しい』
戦士?『胸が締め付けられるようだ』
勇者(ああ、そうだった……戦士と、僧侶は……ッ)
パァアアアア……ッ
『せ……ん、ま……つか……さ ……』
『ゆ……しゃ、さ……』
僧侶「しっかりしてください!戦士さん、魔法使いさん!」
僧侶「勇者様!!お願い……ッ」
500: 2013/09/07(土) 02:09:46.91 ID:jZjoAyyLP
魔法使い「!」
戦士「……ッ 僧侶!!」
勇者「あ……ッ」
僧侶「あ、あ……ッ 良かった……ッ」ポロポロポロ
魔法使い「僧侶…… ……」
戦士「……俺は……否、俺達、は……」
勇者「あ……ッ 人魚、は!?」ガバッ
僧侶「す、すみません、夢中で舵を……!」
勇者「…… ……」キョロ
戦士「……逃げ切った、のか……」
魔法使い「あ、アンタ、大丈夫!?怪我とか……してないわね!?」
僧侶「あ、は、はい! ……私は、大丈夫……です」
僧侶「それより、皆様は……」
戦士「魔詩……とやらにやられた、のか……」ハァ
魔法使い「じゃあ……さっきのは……夢?」
僧侶「夢?」
勇者「……幻覚がどうの、って……言ってたな」
戦士「……ッ 僧侶!!」
勇者「あ……ッ」
僧侶「あ、あ……ッ 良かった……ッ」ポロポロポロ
魔法使い「僧侶…… ……」
戦士「……俺は……否、俺達、は……」
勇者「あ……ッ 人魚、は!?」ガバッ
僧侶「す、すみません、夢中で舵を……!」
勇者「…… ……」キョロ
戦士「……逃げ切った、のか……」
魔法使い「あ、アンタ、大丈夫!?怪我とか……してないわね!?」
僧侶「あ、は、はい! ……私は、大丈夫……です」
僧侶「それより、皆様は……」
戦士「魔詩……とやらにやられた、のか……」ハァ
魔法使い「じゃあ……さっきのは……夢?」
僧侶「夢?」
勇者「……幻覚がどうの、って……言ってたな」
513: 2013/09/08(日) 05:13:41.95 ID:eRUiuBk4P
僧侶「幻覚……?」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」
僧侶「……あ、あの?」
勇者「あ……ああ、悪かった……否。ありがとう、僧侶」
戦士「お前は……お前には、あの魔詩……と、やらは効かなかった、のか?」
僧侶「え? ……確かに……美しい詩でしたけど」
魔法使い「……僧侶は水の……優れた加護を持っている、から?」
僧侶「……ま、まあ……確かに人魚は水棲の魔物……ですけど」
勇者「あれは……魔法、なのか? ……否、そうか、まあ……」
勇者「……とにかく、変わろう。進路を戻さないと」
僧侶「あ! ご、ごめんなさい……!私、多分無茶苦茶に……!」
戦士「何故謝る……礼を言わねばならんのに」
魔法使い「そうよ……ありがとう。助かったわ、僧侶」
勇者「戦士、地図……否、航海図でなければ……一緒か」
戦士「そんな物があったとしても俺にもお前にも読めないだろう」
勇者「……そうか」
戦士「とにかく、陸地を目指そう」
魔法使い「僧侶、後ろの方を見に行きましょう、舵は二人に任せて」
僧侶「え、ええ……魔法使いさん、休まれなくて大丈夫ですか?」
魔法使い「……吃驚したけど、大丈夫よ」
魔法使い「あの二人も、ね……それに」
僧侶「?」
魔法使い「…… ……いえ。ほら、行きましょう」スタスタ
僧侶「は、はい…… ……?」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
勇者「…… ……」
僧侶「……あ、あの?」
勇者「あ……ああ、悪かった……否。ありがとう、僧侶」
戦士「お前は……お前には、あの魔詩……と、やらは効かなかった、のか?」
僧侶「え? ……確かに……美しい詩でしたけど」
魔法使い「……僧侶は水の……優れた加護を持っている、から?」
僧侶「……ま、まあ……確かに人魚は水棲の魔物……ですけど」
勇者「あれは……魔法、なのか? ……否、そうか、まあ……」
勇者「……とにかく、変わろう。進路を戻さないと」
僧侶「あ! ご、ごめんなさい……!私、多分無茶苦茶に……!」
戦士「何故謝る……礼を言わねばならんのに」
魔法使い「そうよ……ありがとう。助かったわ、僧侶」
勇者「戦士、地図……否、航海図でなければ……一緒か」
戦士「そんな物があったとしても俺にもお前にも読めないだろう」
勇者「……そうか」
戦士「とにかく、陸地を目指そう」
魔法使い「僧侶、後ろの方を見に行きましょう、舵は二人に任せて」
僧侶「え、ええ……魔法使いさん、休まれなくて大丈夫ですか?」
魔法使い「……吃驚したけど、大丈夫よ」
魔法使い「あの二人も、ね……それに」
僧侶「?」
魔法使い「…… ……いえ。ほら、行きましょう」スタスタ
僧侶「は、はい…… ……?」
514: 2013/09/08(日) 05:21:46.68 ID:eRUiuBk4P
魔法使い(……さっきのは……夢?)
魔法使い(不思議と懐かしい……何故?)
僧侶「……北の塔、見えませんね」
魔法使い「そんなに長い間、気を失ってた?」
僧侶「どうでしょう。とにかく離れないと、って夢中で……」
僧侶「……それ程長時間では無いと思いますけど」
僧侶「あの海域を離れる迄は……と思って」
魔法使い「そう……よね」
僧侶「あの……魔法使いさん?大丈夫……ですか?」
魔法使い「え?」
僧侶「いえ……詩とは言え、魔法の類には間違い無いでしょうから」
魔法使い「物理的なダメージは無いと思うんだけどね……別に何処も痛くないし」
僧侶「……夢、と仰ってました、ね」
魔法使い「町長さんも幻覚だとか言ってたわね」
僧侶「はい。勇者様も仰ってましたね」
魔法使い「あの二人がどんな……夢、幻覚?を見せられたのか解らないけど」
魔法使い「……私は、僧侶と二人で話してる夢を見たわ」
僧侶「え?」
魔法使い「貴女が泣いてて……私が…… ……」
僧侶「?」
魔法使い「私が、貴女を慰めている場面。『貴女、戦士が好きなのね』って」
僧侶「…… ……え!?」
魔法使い「『二人とも』……多分、勇者と戦士の事ね」
魔法使い「『二人とも、ちゃんと貴女を信じてる』とか」
魔法使い「『仲間だから大丈夫』だとか……そんな感じだったかしら」
僧侶「そ、それと戦士さんと、何の関係が!?」カァ
魔法使い(不思議と懐かしい……何故?)
僧侶「……北の塔、見えませんね」
魔法使い「そんなに長い間、気を失ってた?」
僧侶「どうでしょう。とにかく離れないと、って夢中で……」
僧侶「……それ程長時間では無いと思いますけど」
僧侶「あの海域を離れる迄は……と思って」
魔法使い「そう……よね」
僧侶「あの……魔法使いさん?大丈夫……ですか?」
魔法使い「え?」
僧侶「いえ……詩とは言え、魔法の類には間違い無いでしょうから」
魔法使い「物理的なダメージは無いと思うんだけどね……別に何処も痛くないし」
僧侶「……夢、と仰ってました、ね」
魔法使い「町長さんも幻覚だとか言ってたわね」
僧侶「はい。勇者様も仰ってましたね」
魔法使い「あの二人がどんな……夢、幻覚?を見せられたのか解らないけど」
魔法使い「……私は、僧侶と二人で話してる夢を見たわ」
僧侶「え?」
魔法使い「貴女が泣いてて……私が…… ……」
僧侶「?」
魔法使い「私が、貴女を慰めている場面。『貴女、戦士が好きなのね』って」
僧侶「…… ……え!?」
魔法使い「『二人とも』……多分、勇者と戦士の事ね」
魔法使い「『二人とも、ちゃんと貴女を信じてる』とか」
魔法使い「『仲間だから大丈夫』だとか……そんな感じだったかしら」
僧侶「そ、それと戦士さんと、何の関係が!?」カァ
515: 2013/09/08(日) 05:29:10.37 ID:eRUiuBk4P
魔法使い「……解らない」
魔法使い「でも、夢の中の貴女は否定してなかったわよ」クス
僧侶「な、なんで笑うんです……」
魔法使い「ご免なさい」クスクス
魔法使い「……なんて言うのかしら」
魔法使い「不思議と懐かしくて……ううん……」
魔法使い「でも、悲しくて、切なくて……苦し……くて……」ジッ
僧侶「……ッ 嬉しい……?」
魔法使い「!」ハッ
魔法使い「…… ……前に、貴女と勇者がそんな事、言ってたわね」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
僧侶「それは……あれ、は。本当に夢、なのでしょうか?」
魔法使い「……どう言う事?」
僧侶「いえ……」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(夢にしてはリアルだった。けど……)
魔法使い(夢で無ければ……なんだと言うの?)
……
………
…………
戦士「さっぱりわからんな」
勇者「……船首がこっち向き、て事はあっちから来たんだろうけど」
勇者「どの方角向いてるんだか……」
戦士「方角は解るだろう……日が沈めば……」
勇者「ああ、そうか……まあ、後退する選択肢は無いから、ええと……」
魔法使い「でも、夢の中の貴女は否定してなかったわよ」クス
僧侶「な、なんで笑うんです……」
魔法使い「ご免なさい」クスクス
魔法使い「……なんて言うのかしら」
魔法使い「不思議と懐かしくて……ううん……」
魔法使い「でも、悲しくて、切なくて……苦し……くて……」ジッ
僧侶「……ッ 嬉しい……?」
魔法使い「!」ハッ
魔法使い「…… ……前に、貴女と勇者がそんな事、言ってたわね」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
僧侶「それは……あれ、は。本当に夢、なのでしょうか?」
魔法使い「……どう言う事?」
僧侶「いえ……」
魔法使い「…… ……」
魔法使い(夢にしてはリアルだった。けど……)
魔法使い(夢で無ければ……なんだと言うの?)
……
………
…………
戦士「さっぱりわからんな」
勇者「……船首がこっち向き、て事はあっちから来たんだろうけど」
勇者「どの方角向いてるんだか……」
戦士「方角は解るだろう……日が沈めば……」
勇者「ああ、そうか……まあ、後退する選択肢は無いから、ええと……」
516: 2013/09/08(日) 05:37:44.57 ID:eRUiuBk4P
戦士「とにかく、前進するしか無いだろうが……」
勇者「……大渦とやらに巻き込まれるのは御免だな」
戦士「地図を、勇者 …… ……確かな場所は解らんが」
戦士「こう走っているとして……」ブツブツ
勇者「…… ……なあ、戦士」
戦士「何だ」
勇者「お前……どんな幻覚を見た?」
戦士「…… ……」
勇者「幻覚、て言うか」
勇者「魔法使いが言っていたとおり、夢、に近いかな」
戦士「不思議な感覚だったな」
勇者「……俺もだ」
戦士「『エルフは嘘を吐けない』」
勇者「!」
戦士「『精霊と優れた契約を結べるという恩恵の代わりの制約』だとか」
戦士「……なんだとか。僧侶が教えてくれた、んだと」
戦士「お前と、二人で話している夢だった」
勇者「…… ……」
戦士「『エルフは人に干渉する事を嫌う』だとか」
戦士「……ああ。後は、仲間割れがどうの。僧侶は仲間だからどうの」
勇者「……『俺だって信じたい』」
戦士「?」
勇者「『世界のどこかにエルフの隠れ里とやらがある』んだろう」
戦士「!」
勇者「『地上であり地上で無い、祝福された楽園』だったか?」
戦士「……『旅が終われば、何時か訪ねたいと』」
勇者「『僧侶が言ってた』んだな」
戦士「お前……!」
勇者「……大渦とやらに巻き込まれるのは御免だな」
戦士「地図を、勇者 …… ……確かな場所は解らんが」
戦士「こう走っているとして……」ブツブツ
勇者「…… ……なあ、戦士」
戦士「何だ」
勇者「お前……どんな幻覚を見た?」
戦士「…… ……」
勇者「幻覚、て言うか」
勇者「魔法使いが言っていたとおり、夢、に近いかな」
戦士「不思議な感覚だったな」
勇者「……俺もだ」
戦士「『エルフは嘘を吐けない』」
勇者「!」
戦士「『精霊と優れた契約を結べるという恩恵の代わりの制約』だとか」
戦士「……なんだとか。僧侶が教えてくれた、んだと」
戦士「お前と、二人で話している夢だった」
勇者「…… ……」
戦士「『エルフは人に干渉する事を嫌う』だとか」
戦士「……ああ。後は、仲間割れがどうの。僧侶は仲間だからどうの」
勇者「……『俺だって信じたい』」
戦士「?」
勇者「『世界のどこかにエルフの隠れ里とやらがある』んだろう」
戦士「!」
勇者「『地上であり地上で無い、祝福された楽園』だったか?」
戦士「……『旅が終われば、何時か訪ねたいと』」
勇者「『僧侶が言ってた』んだな」
戦士「お前……!」
517: 2013/09/08(日) 05:44:57.27 ID:eRUiuBk4P
勇者「……俺と……同じ夢を、見た、のか?」
戦士「……魔詩とやらは、魔法の一種なんだろう」
勇者「え? ……あ、ああ。まあそうだろうな」
勇者「僧侶にだけ効かなかったのも、魔法使いが言う通り」
戦士「優れた水の加護、か」
勇者「……しかし、ありゃ、何だ?」
勇者「俺達はあんな会話……したことないだろう」
戦士「…… ……」
勇者「あんな話は、知らない…… ……よな?」
戦士「当然だ。僧侶から……聞いた覚えも無い」
戦士「……僧侶自身、知っているのかどうかすら」
勇者「…… ……魔法使いも、同じ夢を見てた……んだろうか」
戦士「どうだかな。あの場面に、あいつは居なかった」
勇者「……後で聞いてみよう」
戦士「やはり……北の塔に寄るべきだった、んだろうか」
勇者「言っても……仕方無いさ」
勇者「あの状態じゃ無理がある」
勇者「それに…… ……ん?」
戦士「何だ」
勇者「…… ……船、だ」
戦士「え?」
勇者「前見ろ……! ……魔法使い!僧侶!」
勇者「糞、波の音で聞こえないか……!」
戦士「呼んでくる。舵は任せるぞ!」タタタ
戦士「……魔詩とやらは、魔法の一種なんだろう」
勇者「え? ……あ、ああ。まあそうだろうな」
勇者「僧侶にだけ効かなかったのも、魔法使いが言う通り」
戦士「優れた水の加護、か」
勇者「……しかし、ありゃ、何だ?」
勇者「俺達はあんな会話……したことないだろう」
戦士「…… ……」
勇者「あんな話は、知らない…… ……よな?」
戦士「当然だ。僧侶から……聞いた覚えも無い」
戦士「……僧侶自身、知っているのかどうかすら」
勇者「…… ……魔法使いも、同じ夢を見てた……んだろうか」
戦士「どうだかな。あの場面に、あいつは居なかった」
勇者「……後で聞いてみよう」
戦士「やはり……北の塔に寄るべきだった、んだろうか」
勇者「言っても……仕方無いさ」
勇者「あの状態じゃ無理がある」
勇者「それに…… ……ん?」
戦士「何だ」
勇者「…… ……船、だ」
戦士「え?」
勇者「前見ろ……! ……魔法使い!僧侶!」
勇者「糞、波の音で聞こえないか……!」
戦士「呼んでくる。舵は任せるぞ!」タタタ
519: 2013/09/08(日) 06:03:34.71 ID:eRUiuBk4P
……
………
…………
海賊「船長、船が見えますけど」
船長「何処の船だ?」
海賊「小さいっすね……なんでしょ?」
船長「魔導国の奴らだったら面倒臭ェなぁ……やり過ごすか」
海賊「無視して良いんっすか」
船長「『近づくな』っつったのは向こうだろ」
コンコン
船長「誰だ?」
海賊「チビっすよ」
カチャ
チビ「母さん、船!」
船長「おう」
チビ「甲板出て良い!?」
船長「阿呆!アブねぇだろ」
チビ「えぇ……」
船長「何処の船かもわかんねぇのに……何言ってやがる」
海賊「そこに双眼鏡がありますよ」
チビ「見て良い?」
海賊「良いっすよね?」
船長「まあ、そんぐらいはな」
チビ「わ、すぐ近くに見える……!」
海賊「……一般人の船、ぽいっすね」
………
…………
海賊「船長、船が見えますけど」
船長「何処の船だ?」
海賊「小さいっすね……なんでしょ?」
船長「魔導国の奴らだったら面倒臭ェなぁ……やり過ごすか」
海賊「無視して良いんっすか」
船長「『近づくな』っつったのは向こうだろ」
コンコン
船長「誰だ?」
海賊「チビっすよ」
カチャ
チビ「母さん、船!」
船長「おう」
チビ「甲板出て良い!?」
船長「阿呆!アブねぇだろ」
チビ「えぇ……」
船長「何処の船かもわかんねぇのに……何言ってやがる」
海賊「そこに双眼鏡がありますよ」
チビ「見て良い?」
海賊「良いっすよね?」
船長「まあ、そんぐらいはな」
チビ「わ、すぐ近くに見える……!」
海賊「……一般人の船、ぽいっすね」
520: 2013/09/08(日) 06:12:30.68 ID:eRUiuBk4P
船長「……余程の阿呆か?」
船長「こんな時にあんな小さな船でまあ……」
船長「正気の沙汰とは思えネェな」
チビ「あ、甲板に誰か居る!」
船長「……どんな様子だ?」
海賊「男が一人、女が二人……舵握ってる奴も居るだろうから」
海賊「少なくとも四人、ですかね」
チビ「あ!母さん!母さん!」
船長「何だよ、煩ェな……どした?」
チビ「舵握ってる男の人、金の瞳をしてるよ!」
船長「……は!?」
海賊「て、事……は……」
船長(勇者……か。魔法使いが……一緒に居る、んだったな)
船長「やり過ごせ。関わるのはまずいな」
海賊「……どこに向かってる、んでしょうかね」
船長「さあね……訳も分からず、進んでるんだろ」
海賊「……あの国じゃ無いんすか」
船長「領主の野郎が何企んでるかしらねぇけど」
海賊「王様でしょ、今は」
船長「うるせぇ! ……関係無いんだよ、アタシらにゃ」
チビ「母さん!無視しちゃうの!?」
船長「色々と大人の事情ってのがあんだよ」
船長「ほら、父さんとこ行っとけ」
チビ「まだ見てる!」
船長「…… ……」ハァ
海賊「まあまあ。やり過ごすなら良いでしょ」
船長「こんな時にあんな小さな船でまあ……」
船長「正気の沙汰とは思えネェな」
チビ「あ、甲板に誰か居る!」
船長「……どんな様子だ?」
海賊「男が一人、女が二人……舵握ってる奴も居るだろうから」
海賊「少なくとも四人、ですかね」
チビ「あ!母さん!母さん!」
船長「何だよ、煩ェな……どした?」
チビ「舵握ってる男の人、金の瞳をしてるよ!」
船長「……は!?」
海賊「て、事……は……」
船長(勇者……か。魔法使いが……一緒に居る、んだったな)
船長「やり過ごせ。関わるのはまずいな」
海賊「……どこに向かってる、んでしょうかね」
船長「さあね……訳も分からず、進んでるんだろ」
海賊「……あの国じゃ無いんすか」
船長「領主の野郎が何企んでるかしらねぇけど」
海賊「王様でしょ、今は」
船長「うるせぇ! ……関係無いんだよ、アタシらにゃ」
チビ「母さん!無視しちゃうの!?」
船長「色々と大人の事情ってのがあんだよ」
船長「ほら、父さんとこ行っとけ」
チビ「まだ見てる!」
船長「…… ……」ハァ
海賊「まあまあ。やり過ごすなら良いでしょ」
521: 2013/09/08(日) 06:20:19.56 ID:eRUiuBk4P
……
………
…………
僧侶「大きな船ですね」
魔法使い「何処の船かしら……見た事ある様な……」
勇者「見覚えがあるのか?」
魔法使い「……解らないわ。船なんてどれも同じに見えるけど……」
戦士「定期船……か?」
勇者「……かもな。何処へ行くんだろう」
僧侶「近づいて……は、来ません、ね」
戦士「向こうも警戒しているのかもな」
勇者「それならそれで良い。しかし定期船なら……」
勇者「航路を逆に辿っていくと、どこかへ着くかもしれん……が」
戦士「……向こうの方角から来たな…… ……南、か」
魔法使い「南?」
僧侶「始まりの国……では、ありません、よね」
勇者「と、すると……西へ進めば良い、のか?」
戦士「……南へ下っても仕方無いしな」
勇者「良し。西へ向かおう」
勇者「……結果的に助かった、か」
魔法使い「あの船、早い……もう見えなくなりそう」
戦士「僧侶、船酔いは大丈夫か?」
僧侶「あ……忘れてました……」
勇者「小さい船だ。揺れるぞ……渦に近づけば、尚更」
戦士「誰も確かな航海術等身につけてないしな」
魔法使い「小さいけど船室もあるわよ。寝てれば良いわ」
僧侶「…… ……」
僧侶(思い出したら気分悪くなってきた……)ウゥ
戦士「どうせ時間も掛かる……来い、僧侶」
僧侶「…… ……すみません」
魔法使い「私が残るわ。魔物が出たら……」
戦士「俺もすぐに戻る」
勇者「…… ……」
勇者(僧侶と……話す、んだろうな)
………
…………
僧侶「大きな船ですね」
魔法使い「何処の船かしら……見た事ある様な……」
勇者「見覚えがあるのか?」
魔法使い「……解らないわ。船なんてどれも同じに見えるけど……」
戦士「定期船……か?」
勇者「……かもな。何処へ行くんだろう」
僧侶「近づいて……は、来ません、ね」
戦士「向こうも警戒しているのかもな」
勇者「それならそれで良い。しかし定期船なら……」
勇者「航路を逆に辿っていくと、どこかへ着くかもしれん……が」
戦士「……向こうの方角から来たな…… ……南、か」
魔法使い「南?」
僧侶「始まりの国……では、ありません、よね」
勇者「と、すると……西へ進めば良い、のか?」
戦士「……南へ下っても仕方無いしな」
勇者「良し。西へ向かおう」
勇者「……結果的に助かった、か」
魔法使い「あの船、早い……もう見えなくなりそう」
戦士「僧侶、船酔いは大丈夫か?」
僧侶「あ……忘れてました……」
勇者「小さい船だ。揺れるぞ……渦に近づけば、尚更」
戦士「誰も確かな航海術等身につけてないしな」
魔法使い「小さいけど船室もあるわよ。寝てれば良いわ」
僧侶「…… ……」
僧侶(思い出したら気分悪くなってきた……)ウゥ
戦士「どうせ時間も掛かる……来い、僧侶」
僧侶「…… ……すみません」
魔法使い「私が残るわ。魔物が出たら……」
戦士「俺もすぐに戻る」
勇者「…… ……」
勇者(僧侶と……話す、んだろうな)
522: 2013/09/08(日) 06:27:25.04 ID:eRUiuBk4P
勇者(俺も、魔法使いに聞いてみよう)
魔法使い「……どれぐらいで着く、のかしら」
勇者「はっきりとした位置が解らないからな……」
魔法使い「どこに居るのか、始まりの国が何処なのか……もね」
勇者「…… ……魔法使い」
魔法使い「ん?」
勇者「さっき、戦士とも話してたんだが……」
……
………
…………
戦士「大丈夫か?」
僧侶「すみません……」
戦士「良いから、横になってろ」
僧侶「……狭いですね。私が占領しちゃったら、皆が……」コロン
戦士「構わん……少し、話せるか?」
僧侶「? ……はい?」
戦士「魔法使いから、何か聞いたか? ……幻覚……夢、か」
僧侶「……ッ」ドキ
僧侶「は、はい」
戦士「どうやら……俺と勇者は同じ夢を見ていたらしい」
僧侶「え!?」
戦士「勇者と二人で、話している夢だった」
戦士「……魔法使いは、どんな夢を見たんだ?」
僧侶「…… ……な、泣いている私を、慰めていてくれた……様、です」
戦士「え……?」
僧侶「『仲間だから、信じてるから大丈夫』だとか……」
僧侶「前後が解らないので、何がなんだか……ですけど」
戦士「信じてる……」
僧侶「は、はい……『二人とも、信じてるから』とか」
僧侶「……多分、戦士さんと勇者様の事、なんでしょうけど」
魔法使い「……どれぐらいで着く、のかしら」
勇者「はっきりとした位置が解らないからな……」
魔法使い「どこに居るのか、始まりの国が何処なのか……もね」
勇者「…… ……魔法使い」
魔法使い「ん?」
勇者「さっき、戦士とも話してたんだが……」
……
………
…………
戦士「大丈夫か?」
僧侶「すみません……」
戦士「良いから、横になってろ」
僧侶「……狭いですね。私が占領しちゃったら、皆が……」コロン
戦士「構わん……少し、話せるか?」
僧侶「? ……はい?」
戦士「魔法使いから、何か聞いたか? ……幻覚……夢、か」
僧侶「……ッ」ドキ
僧侶「は、はい」
戦士「どうやら……俺と勇者は同じ夢を見ていたらしい」
僧侶「え!?」
戦士「勇者と二人で、話している夢だった」
戦士「……魔法使いは、どんな夢を見たんだ?」
僧侶「…… ……な、泣いている私を、慰めていてくれた……様、です」
戦士「え……?」
僧侶「『仲間だから、信じてるから大丈夫』だとか……」
僧侶「前後が解らないので、何がなんだか……ですけど」
戦士「信じてる……」
僧侶「は、はい……『二人とも、信じてるから』とか」
僧侶「……多分、戦士さんと勇者様の事、なんでしょうけど」
523: 2013/09/08(日) 06:34:28.73 ID:eRUiuBk4P
戦士「似てるな」
僧侶「え?」
戦士「……夢の中の俺は」
戦士「エルフの事について、僧侶から教えて貰ったのだと」
戦士「勇者に、告げていた」
僧侶「え!?」
戦士「『エルフは嘘を吐けず、人に干渉するのも嫌う者』」
戦士「だから……僧侶を信じろだとか、何とかな」
僧侶「人に干渉するのを……嫌う?」
戦士「ああ。それに……『どこかにエルフの里がある』」
僧侶「エ……ルフの、里…… ……?」
戦士「『地上であり地上で無い、祝福された楽園』だったか」
戦士「『何れ訪ねてみたい』と」
戦士「……『僧侶が教えてくれた』と、言っていた」
僧侶「わ……私、そんな事知りません!」
戦士「……解って居る」
僧侶「……司書さんに見せて頂いた、あの御伽噺の一節の様、です」
僧侶「その……えっと、何と言うか」
僧侶「イメージ?の様な物を見た……のでは、無いですか?」
戦士「かも知れん……が」
戦士「勇者と同じ夢を見たと言う、説明が……それだけではつかん」
僧侶「あ……」
戦士「……随分と懐かしい感じだった」
戦士「お前の育った小屋で、話した様な感覚だ」
僧侶「……初めてなのに、知っている様な?」
戦士「何度も経験しているのに……の方、かな」
僧侶「…… ……」
戦士「それに……」
戦士「……喉が、苦しかった」
僧侶「え?」
戦士「胸が、締め付けられる様な……」
僧侶「え?」
戦士「……夢の中の俺は」
戦士「エルフの事について、僧侶から教えて貰ったのだと」
戦士「勇者に、告げていた」
僧侶「え!?」
戦士「『エルフは嘘を吐けず、人に干渉するのも嫌う者』」
戦士「だから……僧侶を信じろだとか、何とかな」
僧侶「人に干渉するのを……嫌う?」
戦士「ああ。それに……『どこかにエルフの里がある』」
僧侶「エ……ルフの、里…… ……?」
戦士「『地上であり地上で無い、祝福された楽園』だったか」
戦士「『何れ訪ねてみたい』と」
戦士「……『僧侶が教えてくれた』と、言っていた」
僧侶「わ……私、そんな事知りません!」
戦士「……解って居る」
僧侶「……司書さんに見せて頂いた、あの御伽噺の一節の様、です」
僧侶「その……えっと、何と言うか」
僧侶「イメージ?の様な物を見た……のでは、無いですか?」
戦士「かも知れん……が」
戦士「勇者と同じ夢を見たと言う、説明が……それだけではつかん」
僧侶「あ……」
戦士「……随分と懐かしい感じだった」
戦士「お前の育った小屋で、話した様な感覚だ」
僧侶「……初めてなのに、知っている様な?」
戦士「何度も経験しているのに……の方、かな」
僧侶「…… ……」
戦士「それに……」
戦士「……喉が、苦しかった」
僧侶「え?」
戦士「胸が、締め付けられる様な……」
524: 2013/09/08(日) 06:44:55.27 ID:eRUiuBk4P
戦士「僧侶を信じたい、裏切られた等とは思っていない」
僧侶「…… ……?」
戦士「違うな。裏切られるのが怖いんじゃない」
戦士「……この気持ちは、何だ?」ジッ
僧侶「戦、士さん……」
戦士「そう、思っていた。夢の中の……俺は」
僧侶「…… ……」
僧侶(不思議……こんな事が、前にもあった気がする)
僧侶(ずっとずっと、昔……)
僧侶(否、初めての筈なのに……? ううん、違う)
僧侶(……何度も、経験している筈、なのに…… ……?)
戦士「最初……」
僧侶「え?」
戦士「……最初。俺は……魔法使いに惹かれているのかと思っていた」
僧侶「…… ……」
戦士「あいつも、どこか不器用で」
戦士「……育った境遇も似てる。性格こそ、違うが」
僧侶「…… ……」
戦士「だが……『違う』んだ」
僧侶「……『違う』」
戦士「ああ。違う……あいつじゃ、無い」
僧侶「…… ……」
戦士「……僧侶」
僧侶「は、はい?」
戦士「もし……本当に、エルフの里とやらがあったとして」
戦士「行ってみたいと……思う、か?」
僧侶「え? ……あ、もし、あるなら……勿論、です」
僧侶「…… ……?」
戦士「違うな。裏切られるのが怖いんじゃない」
戦士「……この気持ちは、何だ?」ジッ
僧侶「戦、士さん……」
戦士「そう、思っていた。夢の中の……俺は」
僧侶「…… ……」
僧侶(不思議……こんな事が、前にもあった気がする)
僧侶(ずっとずっと、昔……)
僧侶(否、初めての筈なのに……? ううん、違う)
僧侶(……何度も、経験している筈、なのに…… ……?)
戦士「最初……」
僧侶「え?」
戦士「……最初。俺は……魔法使いに惹かれているのかと思っていた」
僧侶「…… ……」
戦士「あいつも、どこか不器用で」
戦士「……育った境遇も似てる。性格こそ、違うが」
僧侶「…… ……」
戦士「だが……『違う』んだ」
僧侶「……『違う』」
戦士「ああ。違う……あいつじゃ、無い」
僧侶「…… ……」
戦士「……僧侶」
僧侶「は、はい?」
戦士「もし……本当に、エルフの里とやらがあったとして」
戦士「行ってみたいと……思う、か?」
僧侶「え? ……あ、もし、あるなら……勿論、です」
525: 2013/09/08(日) 06:54:57.71 ID:eRUiuBk4P
僧侶「戦士さんの夢の中の私と同じです……」
僧侶「この旅が終わって、無事に……魔王を倒したら」
僧侶「いつか……訪ねて、み……た……」ポロポロ
戦士「……ッ お、おい!?」
僧侶(……胸が、苦しい……)
僧侶(何で? ……戦士さんが、魔法使いさんに、って)
僧侶(思ったら……ッ 何、これ……!?)ポロポロ
僧侶(『貴女、戦士が好きなのね』)
僧侶(……ッ 私、私……ッ)
戦士「そ、僧侶!?」
僧侶「……私、勇者様に憧れて、居ました」
僧侶「あの方に惹かれるのか、光に惹かれるのか、解らなかった」
僧侶「……でも、『違う』んです。勇者様……は、『違う』んです」
戦士「僧侶……」
僧侶「……この、気持ちは、何なんでしょうか、戦士さん」
戦士「…… ……」
僧侶「胸が、苦しい……ッ」ポロポロ
戦士「……ッ」ギュッ
僧侶「!?」
戦士「これが何なのかわからん。わからん、が……」
戦士「……北の塔、に……何時か、行きたいとお前が言った時も」
戦士「エルフの里に、行きたい、と言った時、も」ギュウ
戦士「……と、隣で、笑っていて、欲しい」
戦士「そう、思った」
戦士「……泣かないで欲しい。笑っていて欲しい……俺の」
戦士「あの。俺の……その、隣……で……」
僧侶「う、ぅ………うええええッ」ポロポロ
戦士「あ、お、おい!?」
僧侶「……う、ゥ……ッ戦士、さん……ッ」ギュウ
僧侶「この旅が終わって、無事に……魔王を倒したら」
僧侶「いつか……訪ねて、み……た……」ポロポロ
戦士「……ッ お、おい!?」
僧侶(……胸が、苦しい……)
僧侶(何で? ……戦士さんが、魔法使いさんに、って)
僧侶(思ったら……ッ 何、これ……!?)ポロポロ
僧侶(『貴女、戦士が好きなのね』)
僧侶(……ッ 私、私……ッ)
戦士「そ、僧侶!?」
僧侶「……私、勇者様に憧れて、居ました」
僧侶「あの方に惹かれるのか、光に惹かれるのか、解らなかった」
僧侶「……でも、『違う』んです。勇者様……は、『違う』んです」
戦士「僧侶……」
僧侶「……この、気持ちは、何なんでしょうか、戦士さん」
戦士「…… ……」
僧侶「胸が、苦しい……ッ」ポロポロ
戦士「……ッ」ギュッ
僧侶「!?」
戦士「これが何なのかわからん。わからん、が……」
戦士「……北の塔、に……何時か、行きたいとお前が言った時も」
戦士「エルフの里に、行きたい、と言った時、も」ギュウ
戦士「……と、隣で、笑っていて、欲しい」
戦士「そう、思った」
戦士「……泣かないで欲しい。笑っていて欲しい……俺の」
戦士「あの。俺の……その、隣……で……」
僧侶「う、ぅ………うええええッ」ポロポロ
戦士「あ、お、おい!?」
僧侶「……う、ゥ……ッ戦士、さん……ッ」ギュウ
526: 2013/09/08(日) 06:59:12.46 ID:eRUiuBk4P
戦士「……魔王を倒して、一緒に……エルフの里を探そう」
戦士「何年、かかってもいいから」
僧侶「……ッ」ヒック、ヒック
戦士「……い、嫌……か?」
僧侶「ち、違いますッ ……違う、んです」
僧侶(胸が、苦しい。切ない……だけど、悲しくない)
僧侶「嬉しいんです……氏んでも、良いぐらい……ッ」ニコ
戦士「阿呆、俺が困る」
僧侶「でも……私……」
戦士「……エルフの血を引いているから、か?」
僧侶「…… ……」
戦士「……何時までも若いお前の、可憐な顔を見れるのなら」
戦士「俺は幸せなのかもな」ニッ
僧侶「え……」カァッ
戦士「…… ……残すのは、辛いが」
僧侶「まだまだ、先の……話です」
僧侶「それまでに、一杯……一緒に、その……」
戦士「…… ……僧侶」グイッ
僧侶「あ……ッ」
戦士「………」チュ
僧侶「…ぁ ……戦士、さん……」
……
………
…………
戦士「何年、かかってもいいから」
僧侶「……ッ」ヒック、ヒック
戦士「……い、嫌……か?」
僧侶「ち、違いますッ ……違う、んです」
僧侶(胸が、苦しい。切ない……だけど、悲しくない)
僧侶「嬉しいんです……氏んでも、良いぐらい……ッ」ニコ
戦士「阿呆、俺が困る」
僧侶「でも……私……」
戦士「……エルフの血を引いているから、か?」
僧侶「…… ……」
戦士「……何時までも若いお前の、可憐な顔を見れるのなら」
戦士「俺は幸せなのかもな」ニッ
僧侶「え……」カァッ
戦士「…… ……残すのは、辛いが」
僧侶「まだまだ、先の……話です」
僧侶「それまでに、一杯……一緒に、その……」
戦士「…… ……僧侶」グイッ
僧侶「あ……ッ」
戦士「………」チュ
僧侶「…ぁ ……戦士、さん……」
……
………
…………
527: 2013/09/08(日) 07:11:51.27 ID:eRUiuBk4P
魔法使い「……エルフの、里」
勇者「ああ……本当にあるかどうかは解らないが」
魔法使い「でも……多分、同じ夢を見ていたのね」
勇者「だろう、な。俺達が話している間、魔法使いは僧侶を慰めていた」
魔法使い「信じろ、とか……魔導将軍がどうとか」
魔法使い「……共通してる、ものね」
勇者「魔導将軍に何かを言われて……僧侶が泣いてた、って事……なんだよな?」
魔法使い「多分……僧侶は……隠してる訳じゃ無いわよね?」
勇者「ん?」
魔法使い「エルフが干渉を嫌うだとか……夢の中の戦士に語った内容を、よ」
勇者「……嘘は吐けない、んだろ?」
魔法使い「…… ……」
勇者「魔法使いが見たのは、それだけか?」
魔法使い「え?」
勇者「夢の中の話だよ。僧侶を慰めてただけか、って…… ……」
勇者「……何笑ってんだよ、お前は」
魔法使い「…… ……」ジッ
勇者「な、何だよ」
魔法使い「……好き」
勇者「!?」ドキッ
魔法使い「……僧侶はね、戦士が好きなのよ」
魔法使い「夢の中の僧侶は、否定しなかったわ」
勇者「あ、ああ……」ドキドキ。フイッ
魔法使い「……現実の僧侶も、ね」フフ
勇者「……そう、か」
勇者(……吃驚、した。くそ、なんだこれ)ドキドキ
勇者(しかし……厭じゃ、無い)
勇者(俺は……僧侶に惹かれてた、と思ってた)
勇者(だけど……なんだろうな。何となく、嬉しい)
魔法使い(戦士に、何度もドキドキしたのに)
魔法使い(……厭じゃ無い。僧侶が……否定しなくて)
魔法使い(私……どこか、嬉しい……)
勇者(『違う』……そうだ。あれは……何だったんだろう)
勇者(あの時、僧侶に触れようとした時に聞こえた、声)
勇者(……魔法使いが小屋で寝た時は……聞こえなかった)
勇者(触れても……『違う』なんて思わなかった)ジッ
魔法使い「…… ……勇者?」
勇者「ああ……本当にあるかどうかは解らないが」
魔法使い「でも……多分、同じ夢を見ていたのね」
勇者「だろう、な。俺達が話している間、魔法使いは僧侶を慰めていた」
魔法使い「信じろ、とか……魔導将軍がどうとか」
魔法使い「……共通してる、ものね」
勇者「魔導将軍に何かを言われて……僧侶が泣いてた、って事……なんだよな?」
魔法使い「多分……僧侶は……隠してる訳じゃ無いわよね?」
勇者「ん?」
魔法使い「エルフが干渉を嫌うだとか……夢の中の戦士に語った内容を、よ」
勇者「……嘘は吐けない、んだろ?」
魔法使い「…… ……」
勇者「魔法使いが見たのは、それだけか?」
魔法使い「え?」
勇者「夢の中の話だよ。僧侶を慰めてただけか、って…… ……」
勇者「……何笑ってんだよ、お前は」
魔法使い「…… ……」ジッ
勇者「な、何だよ」
魔法使い「……好き」
勇者「!?」ドキッ
魔法使い「……僧侶はね、戦士が好きなのよ」
魔法使い「夢の中の僧侶は、否定しなかったわ」
勇者「あ、ああ……」ドキドキ。フイッ
魔法使い「……現実の僧侶も、ね」フフ
勇者「……そう、か」
勇者(……吃驚、した。くそ、なんだこれ)ドキドキ
勇者(しかし……厭じゃ、無い)
勇者(俺は……僧侶に惹かれてた、と思ってた)
勇者(だけど……なんだろうな。何となく、嬉しい)
魔法使い(戦士に、何度もドキドキしたのに)
魔法使い(……厭じゃ無い。僧侶が……否定しなくて)
魔法使い(私……どこか、嬉しい……)
勇者(『違う』……そうだ。あれは……何だったんだろう)
勇者(あの時、僧侶に触れようとした時に聞こえた、声)
勇者(……魔法使いが小屋で寝た時は……聞こえなかった)
勇者(触れても……『違う』なんて思わなかった)ジッ
魔法使い「…… ……勇者?」
528: 2013/09/08(日) 07:24:22.94 ID:eRUiuBk4P
勇者「……遅い、な。戦士」
魔法使い「……顔、紅いわよ。何考えてんのよ、えOち」
勇者「……ッ ち、違うわッ そんなんじゃねぇよ!」
魔法使い「あははは……ッ」
魔法使い(これで……良い、のね)
魔法使い(頑張りなさいよ、僧侶)
スタスタ
戦士「すまん、遅くな…… ……」
勇者「…… ……」ニヤニヤ
魔法使い「…… ……」ニヤニヤ
戦士「…… ……」
……
………
…………
剣士(これは……読んだ。これも)パラパラ
剣士(…… ……)フゥ
剣士(そろそろ……この図書館にも用事が無くなってきたな)
剣士(しかし……以前と違い、この街……国、か)
剣士(……自由に出る事も、な)
剣士(随分と……時間が経ったように思う、が)
剣士(……勇者は、今……どこに居る?)
カチャ……スタスタ
剣士(この気配……は……)
母親「やっぱり、ここに居たのね」
剣士「……何か用か」
母親「良い物を見せてあげる……いらっしゃい」
剣士「…… ……領主の具合はどうなんだ」
母親「良くは無いわね」
剣士「その割りには随分嬉しそうだな」
魔法使い「……顔、紅いわよ。何考えてんのよ、えOち」
勇者「……ッ ち、違うわッ そんなんじゃねぇよ!」
魔法使い「あははは……ッ」
魔法使い(これで……良い、のね)
魔法使い(頑張りなさいよ、僧侶)
スタスタ
戦士「すまん、遅くな…… ……」
勇者「…… ……」ニヤニヤ
魔法使い「…… ……」ニヤニヤ
戦士「…… ……」
……
………
…………
剣士(これは……読んだ。これも)パラパラ
剣士(…… ……)フゥ
剣士(そろそろ……この図書館にも用事が無くなってきたな)
剣士(しかし……以前と違い、この街……国、か)
剣士(……自由に出る事も、な)
剣士(随分と……時間が経ったように思う、が)
剣士(……勇者は、今……どこに居る?)
カチャ……スタスタ
剣士(この気配……は……)
母親「やっぱり、ここに居たのね」
剣士「……何か用か」
母親「良い物を見せてあげる……いらっしゃい」
剣士「…… ……領主の具合はどうなんだ」
母親「良くは無いわね」
剣士「その割りには随分嬉しそうだな」
529: 2013/09/08(日) 07:31:57.60 ID:eRUiuBk4P
母親「『良い物を見せてあげる』と言ったでしょ」
剣士「…… ……」
母親「やっと完成したのよ」スタスタ
剣士「……完成?」スタスタ
母親「後は見てのお楽しみ……こっちよ」
キィ、パタン。スタスタ……
剣士「? ……何処へ行く」
母親「お父様の部屋の、その奥へ」
剣士「具合が悪いのでは無いのか」
母親「…… ……」
コンコン
領主「…… ……」
母親「入るわよ、お父様」
カチャ
領主「…… ……」
剣士(眠っている、のか…… ……!?)
剣士(随分顔色が悪い……それに……痩せたな)
母親「こっちよ」
剣士「……随分、厳重な扉だな」
剣士「…… ……」
母親「やっと完成したのよ」スタスタ
剣士「……完成?」スタスタ
母親「後は見てのお楽しみ……こっちよ」
キィ、パタン。スタスタ……
剣士「? ……何処へ行く」
母親「お父様の部屋の、その奥へ」
剣士「具合が悪いのでは無いのか」
母親「…… ……」
コンコン
領主「…… ……」
母親「入るわよ、お父様」
カチャ
領主「…… ……」
剣士(眠っている、のか…… ……!?)
剣士(随分顔色が悪い……それに……痩せたな)
母親「こっちよ」
剣士「……随分、厳重な扉だな」
530: 2013/09/08(日) 07:52:10.43 ID:eRUiuBk4P
母親「中へ入れば、納得出来るわよ」
母親「……貴方なら、ね」ニッ
剣士「……?」
キィ……ギギ……
剣士(……ッ !?)
母親「……顔色が変わったわね」
剣士「何だ……これは」
母親「ああ、余り近付かないで」
剣士(……石? ……魔石、か)
剣士(しかし、これは……)
母親「これは、そうね……言うなれば、魔寄せの石、かしら」
剣士「…… ……」
母親「……昔、鍛冶師の村の近くで見つけたらしいわ」
母親「あの村に残る伝承を知ってる?」
剣士「伝承……?」
母親「村人達は大層に、伝説だとか言うらしいけどね」
母親「神父が作った魔除けの石。始まりは港街では無くて」
母親「その神父だ、とか言う物よ」
剣士「……興味無いな」
母親「それが、これ……聖職者が作ったにしては」
母親「随分禍々しいでしょう?」
剣士「…… ……」
母親「どうやら人間の魔力では無い様でね」
母親「……結構な力を持つ魔族の作った物だとすれば」
母親「下等な獣はその力に惹かれて、集まってくるのですって」
剣士「…… ……」
母親「結果、あの村の付近にはそれ程魔物が出なくなった」
母親「……当時の村長はその事実は知らなかった様だけど」
母親「……貴方なら、ね」ニッ
剣士「……?」
キィ……ギギ……
剣士(……ッ !?)
母親「……顔色が変わったわね」
剣士「何だ……これは」
母親「ああ、余り近付かないで」
剣士(……石? ……魔石、か)
剣士(しかし、これは……)
母親「これは、そうね……言うなれば、魔寄せの石、かしら」
剣士「…… ……」
母親「……昔、鍛冶師の村の近くで見つけたらしいわ」
母親「あの村に残る伝承を知ってる?」
剣士「伝承……?」
母親「村人達は大層に、伝説だとか言うらしいけどね」
母親「神父が作った魔除けの石。始まりは港街では無くて」
母親「その神父だ、とか言う物よ」
剣士「……興味無いな」
母親「それが、これ……聖職者が作ったにしては」
母親「随分禍々しいでしょう?」
剣士「…… ……」
母親「どうやら人間の魔力では無い様でね」
母親「……結構な力を持つ魔族の作った物だとすれば」
母親「下等な獣はその力に惹かれて、集まってくるのですって」
剣士「…… ……」
母親「結果、あの村の付近にはそれ程魔物が出なくなった」
母親「……当時の村長はその事実は知らなかった様だけど」
531: 2013/09/08(日) 08:17:06.61 ID:eRUiuBk4P
剣士「……その事実につけ込んで利用した、か」
剣士(でなければ……実物が此処にある筈もない)
母親「……人聞き悪いわね」
剣士「間違いではあるまい。口を噤む代わりにと持ち帰ったのでは無いか?」
母親「破棄なんてすれば、あの村には大挙して魔物が押し寄せるわ」
母親「……合意の上での取引よ」
剣士「…… ……」
母親「……午後には、洞窟から採取した鉱石が届くわ」
剣士「……稀少な奴だとか言う、あれか」
剣士「それが……どうした?」
剣士「良い物、とは……それか」
母親「……満足のいく研究結果が出た。次の段階へ進む準備が整った事、かしら」
剣士「……?」
母親「この魔寄せの石の力を取り出して、量産するのよ」
剣士「……何?」
母親「もう一度言いましょうか?」
剣士「そんな事をして……どうするつもりだ!!」
母親「……『世界』を作り替えるのよ」
母親「『支配される為の世界』から『支配する為の世界』へね」
……
………
…………
国王「……船?」
騎士「はい!一隻、所属不明の……小さな船が港へ向かっている様です」
騎士「騎士団長様が向かわれていますが……如何致しましょう」
国王「魔導国の船で無い限り、着岸するのに許可などいりませんが……」
騎士「では、確認でき次第……またご報告に参ります」
国王「ええ……宜しくお願い致します」
剣士(でなければ……実物が此処にある筈もない)
母親「……人聞き悪いわね」
剣士「間違いではあるまい。口を噤む代わりにと持ち帰ったのでは無いか?」
母親「破棄なんてすれば、あの村には大挙して魔物が押し寄せるわ」
母親「……合意の上での取引よ」
剣士「…… ……」
母親「……午後には、洞窟から採取した鉱石が届くわ」
剣士「……稀少な奴だとか言う、あれか」
剣士「それが……どうした?」
剣士「良い物、とは……それか」
母親「……満足のいく研究結果が出た。次の段階へ進む準備が整った事、かしら」
剣士「……?」
母親「この魔寄せの石の力を取り出して、量産するのよ」
剣士「……何?」
母親「もう一度言いましょうか?」
剣士「そんな事をして……どうするつもりだ!!」
母親「……『世界』を作り替えるのよ」
母親「『支配される為の世界』から『支配する為の世界』へね」
……
………
…………
国王「……船?」
騎士「はい!一隻、所属不明の……小さな船が港へ向かっている様です」
騎士「騎士団長様が向かわれていますが……如何致しましょう」
国王「魔導国の船で無い限り、着岸するのに許可などいりませんが……」
騎士「では、確認でき次第……またご報告に参ります」
国王「ええ……宜しくお願い致します」
532: 2013/09/08(日) 08:42:01.42 ID:eRUiuBk4P
スタスタ、パタン
国王(小さな船……そんな物まで、気にしなくてはならない世界……)ハァ
国王(……お母様。この国は、この世界は……一体、どうなってしまうのです)
国王「兄さんが向かっているのなら、心配は無用でしょうが……」
バタバタ……バタン!
騎士「し、失礼致します!国王様!」
国王「……今度は、何です……ッ!?」
騎士「勇者様が……!」
国王「!?」
……
………
…………
王子「……勇者様!」
勇者「騎士団長様!」フラフラ
王子「あ……!だ、大丈夫ですか……!?」
戦士「……親父?」フラ
王子「戦士!」
僧侶「……うぅ」フラフラ
魔法使い「…… ……」フラ
王子「……! ど、どうしたんだ、何があった!」
勇者「……た、頼む、から……」
王子「勇者様……!?」
僧侶「……ご飯……」グゥ
王子「…… ……は?」
国王(小さな船……そんな物まで、気にしなくてはならない世界……)ハァ
国王(……お母様。この国は、この世界は……一体、どうなってしまうのです)
国王「兄さんが向かっているのなら、心配は無用でしょうが……」
バタバタ……バタン!
騎士「し、失礼致します!国王様!」
国王「……今度は、何です……ッ!?」
騎士「勇者様が……!」
国王「!?」
……
………
…………
王子「……勇者様!」
勇者「騎士団長様!」フラフラ
王子「あ……!だ、大丈夫ですか……!?」
戦士「……親父?」フラ
王子「戦士!」
僧侶「……うぅ」フラフラ
魔法使い「…… ……」フラ
王子「……! ど、どうしたんだ、何があった!」
勇者「……た、頼む、から……」
王子「勇者様……!?」
僧侶「……ご飯……」グゥ
王子「…… ……は?」
533: 2013/09/08(日) 08:42:42.76 ID:eRUiuBk4P
働いてきます!
536: 2013/09/08(日) 13:14:17.67 ID:eRUiuBk4P
やっと休憩( ゚д゚)
万全じゃないけど仕事は休めんからね( ゚д゚)
ありがとねー!
万全じゃないけど仕事は休めんからね( ゚д゚)
ありがとねー!
553: 2013/09/11(水) 09:19:08.99 ID:9WaCRnaiP
戦士「船で……食糧が……尽きて……」
王子「…… ……」
勇者「すみません、騎士団長様……」
王子「と、とにかく城へ!お、おい、手を貸してやれ!」
騎士「は、はい!」
王子(何やってんだ、こいつらは……)ハァ
……
………
…………
国王「……そうですか。まあ……無事で良かった」クスクス
王子「笑い事か? ……否、笑えると言うのは、喜ばしい事、か」ハァ
国王「そうですよ、兄さん……で、勇者達は?」
王子「…… ……」
勇者「すみません、騎士団長様……」
王子「と、とにかく城へ!お、おい、手を貸してやれ!」
騎士「は、はい!」
王子(何やってんだ、こいつらは……)ハァ
……
………
…………
国王「……そうですか。まあ……無事で良かった」クスクス
王子「笑い事か? ……否、笑えると言うのは、喜ばしい事、か」ハァ
国王「そうですよ、兄さん……で、勇者達は?」
554: 2013/09/11(水) 09:54:22.03 ID:9WaCRnaiP
王子「食事と湯を使わせたら寝てしまったよ」
国王「そうですか……疲れていたんでしょうね。しかし……船は、どこから……?」
王子「明日、だな……起こしてやるのも、な」
王子「……俺達も、きっちり説明してやらんとな」
国王「……そう、ですね」ハァ
王子「魔道国も今は静かなもんだ。不気味な程に……な」
国王「嵐の前の……でしょう」
王子「全ては……明日、だ」
国王「……ええ」
王子「お前ももう休めよ、国王」
王子「ここんとこ……まともに寝てないだろう」
国王「……あの本、何度も読み返したのですが」
王子「…… ……」
国王「お母様が、お父様が……嘘をつくとは思えません。ですが……!」
王子「信じられない、か?」
国王「信じたい……ですけど、ね」
王子「…… ……」
国王「…… ……」
国王「そうですか……疲れていたんでしょうね。しかし……船は、どこから……?」
王子「明日、だな……起こしてやるのも、な」
王子「……俺達も、きっちり説明してやらんとな」
国王「……そう、ですね」ハァ
王子「魔道国も今は静かなもんだ。不気味な程に……な」
国王「嵐の前の……でしょう」
王子「全ては……明日、だ」
国王「……ええ」
王子「お前ももう休めよ、国王」
王子「ここんとこ……まともに寝てないだろう」
国王「……あの本、何度も読み返したのですが」
王子「…… ……」
国王「お母様が、お父様が……嘘をつくとは思えません。ですが……!」
王子「信じられない、か?」
国王「信じたい……ですけど、ね」
王子「…… ……」
国王「…… ……」
560: 2013/09/12(木) 09:36:37.39 ID:KTkYO8e1P
王子「……まあ、信じろと言われても」
王子「はいそうですか、とは行かない内容だ……確かに」
国王「でも……私達には、知る権利も義務もあります」
国王「あんな小さな背に、『世界』を背負っている……勇者にも、です」
王子「……ああ。だが、逞しくなったよ。勇者も……戦士も」
国王「父としては嬉しい……ですよね」
王子「そりゃそうだよ……お前も父親だもんな」
国王「ええ。気持ちは……解りますよ」
国王「息子が大きくなって、彼がこの国の王となるまでには」
国王「……どうにか、平和な世界にしてやりたいものです」
……
………
…………
国王「良く戻ってくれました、勇者達」
国王「……貴方達が旅立った日が、それ程昔では無いというのが」
国王「信じられない程……逞しくなりましたね」
勇者「お久しぶりで御座います、国王様」
勇者「……昨日は、すみませんでした」
国王「騎士団長から聞いていますよ」クス
国王「……本当に、良く戻ってくれました。無事でなにより……です」
王子「人払いも済ませてある、皆楽にしなさい」
王子「……こうして、勇者とその仲間が揃うのが初めてだな」
国王「本来なら、単純に……喜びを分かち合いたいところ、ですが」
国王「……態々、此処に戻って来ざるを得ない事情が、あったのでしょう」
勇者「国王様に、聞きたい事が……あります」
国王「……私も、話さなければならない事があります。貴方達に」
王子「はいそうですか、とは行かない内容だ……確かに」
国王「でも……私達には、知る権利も義務もあります」
国王「あんな小さな背に、『世界』を背負っている……勇者にも、です」
王子「……ああ。だが、逞しくなったよ。勇者も……戦士も」
国王「父としては嬉しい……ですよね」
王子「そりゃそうだよ……お前も父親だもんな」
国王「ええ。気持ちは……解りますよ」
国王「息子が大きくなって、彼がこの国の王となるまでには」
国王「……どうにか、平和な世界にしてやりたいものです」
……
………
…………
国王「良く戻ってくれました、勇者達」
国王「……貴方達が旅立った日が、それ程昔では無いというのが」
国王「信じられない程……逞しくなりましたね」
勇者「お久しぶりで御座います、国王様」
勇者「……昨日は、すみませんでした」
国王「騎士団長から聞いていますよ」クス
国王「……本当に、良く戻ってくれました。無事でなにより……です」
王子「人払いも済ませてある、皆楽にしなさい」
王子「……こうして、勇者とその仲間が揃うのが初めてだな」
国王「本来なら、単純に……喜びを分かち合いたいところ、ですが」
国王「……態々、此処に戻って来ざるを得ない事情が、あったのでしょう」
勇者「国王様に、聞きたい事が……あります」
国王「……私も、話さなければならない事があります。貴方達に」
561: 2013/09/12(木) 09:49:34.17 ID:KTkYO8e1P
王子「話を始める前に、一つだけ……先に良いだろうか」
勇者「? はい……」
王子「……勇者様のお母様の事だ」
勇者「!? 母さ……母が、どうか!?」
王子「……申し訳無い。どうやら……どこかへ、行かれてしまったようなんだ」
戦士「!」
魔法使い「え……!?」
僧侶「あ、あの……お母様は、この城で生活をされていたのでは……?」
勇者「否……俺と母さんは……この街の外れの小屋で……」
国王「城の方へと伝えはしてあったんですが、あの人は気が向いたらと」
国王「言うばかりで……」
王子「……勇者が旅立ってから、一度見に行ったんだ」
王子「そうしたら……小屋はもうもぬけの殻だった」
王子「……争った形跡も無し、部屋の中も綺麗に整理された侭だった」
勇者「…… ……母さん」
王子「あの小屋へは、この城の中庭を通り、裏にある小さな門をくぐらなければ」
王子「……たどり着くことは出来ない。知ってますね、勇者様」
勇者「はい……俺も、通りましたから」
王子「本来ならば、解る筈だ……門の所には見張りも増やした」
王子「……なのに、母君は……ッ」
王子「本当に……申し訳無い……!」
国王「……私からも、お詫びします……勇者」
国王「探させています。だから……ッ」
勇者「……いえ、あの……誤らないで下さい」
勇者「いつかの闘技大会の時、こっそりと母と……街へ行ったことがあります」
勇者「確かにあの時は、人も多かったし、見つからなかったんだろうけど」
勇者「……なんて言うか。どこか飄々としてますけど、しっかりした人ですから」
勇者「何か……理由が……あるんだと、思いますし」
魔法使い「勇者……」
勇者「……大丈夫、です。ただでさえ……今は実質の戦争状態で」
勇者「国王様も、騎士団長様もお忙しいでしょう」
勇者「……母は、どこかで……無事で居ると信じています」
勇者「だから……もう、謝らないで下さい」
勇者「? はい……」
王子「……勇者様のお母様の事だ」
勇者「!? 母さ……母が、どうか!?」
王子「……申し訳無い。どうやら……どこかへ、行かれてしまったようなんだ」
戦士「!」
魔法使い「え……!?」
僧侶「あ、あの……お母様は、この城で生活をされていたのでは……?」
勇者「否……俺と母さんは……この街の外れの小屋で……」
国王「城の方へと伝えはしてあったんですが、あの人は気が向いたらと」
国王「言うばかりで……」
王子「……勇者が旅立ってから、一度見に行ったんだ」
王子「そうしたら……小屋はもうもぬけの殻だった」
王子「……争った形跡も無し、部屋の中も綺麗に整理された侭だった」
勇者「…… ……母さん」
王子「あの小屋へは、この城の中庭を通り、裏にある小さな門をくぐらなければ」
王子「……たどり着くことは出来ない。知ってますね、勇者様」
勇者「はい……俺も、通りましたから」
王子「本来ならば、解る筈だ……門の所には見張りも増やした」
王子「……なのに、母君は……ッ」
王子「本当に……申し訳無い……!」
国王「……私からも、お詫びします……勇者」
国王「探させています。だから……ッ」
勇者「……いえ、あの……誤らないで下さい」
勇者「いつかの闘技大会の時、こっそりと母と……街へ行ったことがあります」
勇者「確かにあの時は、人も多かったし、見つからなかったんだろうけど」
勇者「……なんて言うか。どこか飄々としてますけど、しっかりした人ですから」
勇者「何か……理由が……あるんだと、思いますし」
魔法使い「勇者……」
勇者「……大丈夫、です。ただでさえ……今は実質の戦争状態で」
勇者「国王様も、騎士団長様もお忙しいでしょう」
勇者「……母は、どこかで……無事で居ると信じています」
勇者「だから……もう、謝らないで下さい」
562: 2013/09/12(木) 10:04:13.02 ID:KTkYO8e1P
王子「勇者様……」
戦士「…… ……」
勇者「早速ですが、魔導国の事をお聞かせ下さい」
国王「…… ……ありがとうございます」
勇者「いえ……」
魔法使い「あ、あの、国王様、私……!」
王子「知っている……魔導国の領主……否、王の孫娘、だろう」
魔法使い「……はい。魔法使いと申します」
僧侶「あ……ッ 遅くなって申し訳ありません、僧侶です!」
国王「どうか、楽にして下さい。それ程緊張されなくて良いですよ」
戦士「……叔父上、今……この世界は、どうなっているのです?」
国王「……どこから話した物か、と思いますけど……」
王子「順を追って話そう。補足があれば都度伝えてくれ」
勇者「解りました」
王子「……まずは、お前達が旅立ってすぐ、だったな」
国王「はい。魔導の街が、封鎖を宣言し、魔導国と名を改め……」
国王「領主は、王となりました」
魔法使い「お爺様達は、私に『何としても勇者様の仲間になれ』と言っていました」
王子「達、と言うのは?」
魔法使い「両親です……私は、直近の闘技大会にも参加しました」
王子「ああ……結果は、残念だったな。あれも……出ろと言われたのか?」
魔法使い「はい。やはり……優勝し、我が血筋の名を認知させろと」
魔法使い「……そして、勇者様の目に止まるように、と……」
国王「…… ……そう、ですか」
戦士「鉱石の洞窟の方はどうなったんだ」
王子「結果から言うと我らの負けだ。港街等に騎士を派遣する為には」
王子「後らにばかり余り、数を裂くことは出来ん」
国王「それに、命を無駄にはできませんから……それでも、犠牲者は……」
国王「……ゼロではありませんでした、けど」
戦士「…… ……」
勇者「早速ですが、魔導国の事をお聞かせ下さい」
国王「…… ……ありがとうございます」
勇者「いえ……」
魔法使い「あ、あの、国王様、私……!」
王子「知っている……魔導国の領主……否、王の孫娘、だろう」
魔法使い「……はい。魔法使いと申します」
僧侶「あ……ッ 遅くなって申し訳ありません、僧侶です!」
国王「どうか、楽にして下さい。それ程緊張されなくて良いですよ」
戦士「……叔父上、今……この世界は、どうなっているのです?」
国王「……どこから話した物か、と思いますけど……」
王子「順を追って話そう。補足があれば都度伝えてくれ」
勇者「解りました」
王子「……まずは、お前達が旅立ってすぐ、だったな」
国王「はい。魔導の街が、封鎖を宣言し、魔導国と名を改め……」
国王「領主は、王となりました」
魔法使い「お爺様達は、私に『何としても勇者様の仲間になれ』と言っていました」
王子「達、と言うのは?」
魔法使い「両親です……私は、直近の闘技大会にも参加しました」
王子「ああ……結果は、残念だったな。あれも……出ろと言われたのか?」
魔法使い「はい。やはり……優勝し、我が血筋の名を認知させろと」
魔法使い「……そして、勇者様の目に止まるように、と……」
国王「…… ……そう、ですか」
戦士「鉱石の洞窟の方はどうなったんだ」
王子「結果から言うと我らの負けだ。港街等に騎士を派遣する為には」
王子「後らにばかり余り、数を裂くことは出来ん」
国王「それに、命を無駄にはできませんから……それでも、犠牲者は……」
国王「……ゼロではありませんでした、けど」
563: 2013/09/12(木) 10:12:51.56 ID:KTkYO8e1P
王子「実際、あんな鉱石等……正直使い道があるとは思えない」
王子「……かといって、野放しにも出来んのだがな」ハァ
勇者「俺達を揺動させる為の罠かとも思ったんです」
勇者「港街に着いた時、定期便の運行停止を魔導国から求められてるとの」
勇者「話も聞きましたし……」
国王「そうです……港街には、今も騎士団が常駐しています」
国王「まだ……有事には至っていませんが、やはり船員達も怖がっていますから」
国王「渡航を希望する者の数も減りました、しね……」
勇者「……鉱石については、鍛冶師の村で不穏な噂を耳にしたんです」
王子「不穏な噂?」
勇者「……あの、街の聖職者……の話はご存じ、でしょうか?」
国王「!」
王子「…… ……」
戦士「親父?」
王子「国王、詳しい話は後にして……」
国王「……ええ。知っています。魔除けの石を作った、と言う……聖職者ですね」
国王「彼は、インキュバスと言う、名前です」
僧侶「え!?」
魔法使い「……インキュバス!?」
王子「知っているのか!?」
勇者「……では、魔石の……効果、は……」
王子「国王、話を続けて置いてくれ。あれを持って来る」
王子「……勇者様、少し失礼致します」
スタスタ、パタン
戦士「叔父上?」
国王「……貴方達も魔石の効果を知っていると言う前提で話します」
国王「インキュバスは……自分を聖職者だと偽り」
国王「魔除けの石と偽り……禍々しい魔石を残しています」
勇者「……魔寄せの石、ですよね」
国王「言い得て妙、ですね」クス
王子「……かといって、野放しにも出来んのだがな」ハァ
勇者「俺達を揺動させる為の罠かとも思ったんです」
勇者「港街に着いた時、定期便の運行停止を魔導国から求められてるとの」
勇者「話も聞きましたし……」
国王「そうです……港街には、今も騎士団が常駐しています」
国王「まだ……有事には至っていませんが、やはり船員達も怖がっていますから」
国王「渡航を希望する者の数も減りました、しね……」
勇者「……鉱石については、鍛冶師の村で不穏な噂を耳にしたんです」
王子「不穏な噂?」
勇者「……あの、街の聖職者……の話はご存じ、でしょうか?」
国王「!」
王子「…… ……」
戦士「親父?」
王子「国王、詳しい話は後にして……」
国王「……ええ。知っています。魔除けの石を作った、と言う……聖職者ですね」
国王「彼は、インキュバスと言う、名前です」
僧侶「え!?」
魔法使い「……インキュバス!?」
王子「知っているのか!?」
勇者「……では、魔石の……効果、は……」
王子「国王、話を続けて置いてくれ。あれを持って来る」
王子「……勇者様、少し失礼致します」
スタスタ、パタン
戦士「叔父上?」
国王「……貴方達も魔石の効果を知っていると言う前提で話します」
国王「インキュバスは……自分を聖職者だと偽り」
国王「魔除けの石と偽り……禍々しい魔石を残しています」
勇者「……魔寄せの石、ですよね」
国王「言い得て妙、ですね」クス
564: 2013/09/12(木) 10:29:22.95 ID:KTkYO8e1P
僧侶「国王様、話は脱線してしまいます、が……」
僧侶「……『少年』と言う名の、『港街の勇者』に聞き覚えは、御座いますか?」
勇者「僧侶……」
国王「……兄さんが戻ってきたら、話しましょう」
国王「勿論、知っています……と言っても」
国王「会ったことはありません。ですが……母とは既知だった様ですよ」
戦士「…… ……」
国王「余り、驚いては居ないのですね、戦士」
戦士「噂は……厭でも耳に入ってくるんですよ」
カチャ
王子「これは……お祖母様の日記の様な物だ」
戦士「日記?」
国王「……『世界の裏側』を少しだけ記してあるのだそうです」
魔法使い「世界の……裏側?」
国王「ええ」
国王「『世界の謎を紐解く必要が出来た時に読んでみれば良い』」
国王「だが、必要で無いのなら決して目を通すな、とも」
国王「……言われ、預かった物です」
僧侶「お読みに……なった、のです……よね?」
王子「ああ……この国をお母様が作ったのは知っている、な?」
魔法使い「……港街も、ですよね。魔導の街との確執が……とか」
国王「……魔法使いさん」
魔法使い「は、はい!」
国王「……貴女にとっては、多分衝撃的な内容です」
魔法使い「!」
国王「聞く勇気は……おありですか?」
僧侶「……『少年』と言う名の、『港街の勇者』に聞き覚えは、御座いますか?」
勇者「僧侶……」
国王「……兄さんが戻ってきたら、話しましょう」
国王「勿論、知っています……と言っても」
国王「会ったことはありません。ですが……母とは既知だった様ですよ」
戦士「…… ……」
国王「余り、驚いては居ないのですね、戦士」
戦士「噂は……厭でも耳に入ってくるんですよ」
カチャ
王子「これは……お祖母様の日記の様な物だ」
戦士「日記?」
国王「……『世界の裏側』を少しだけ記してあるのだそうです」
魔法使い「世界の……裏側?」
国王「ええ」
国王「『世界の謎を紐解く必要が出来た時に読んでみれば良い』」
国王「だが、必要で無いのなら決して目を通すな、とも」
国王「……言われ、預かった物です」
僧侶「お読みに……なった、のです……よね?」
王子「ああ……この国をお母様が作ったのは知っている、な?」
魔法使い「……港街も、ですよね。魔導の街との確執が……とか」
国王「……魔法使いさん」
魔法使い「は、はい!」
国王「……貴女にとっては、多分衝撃的な内容です」
魔法使い「!」
国王「聞く勇気は……おありですか?」
565: 2013/09/12(木) 10:37:04.07 ID:KTkYO8e1P
魔法使い「……ッ 大丈夫、です」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「大丈夫。私は……私達は、仲間でしょう?」
戦士「…… ……」
魔法使い「……大丈夫です。国王様」
王子「何処まで話したんだ、国王」
国王「インキュバスと言う男が作った事と」
国王「『少年』の話です……どちらも……名は、知っていた様ですね」
王子「!?……そうか。では、話を進める前に……伝えておく」
王子「それから……改めて紐解いていく事にしよう」
国王「断片的な知識しか無いでしょうから……これで、補完できると良いのですけど」
戦士「『世界の裏側』か……」
王子「……港街がある島は、魔導の街から逃げ出した……奴隷達がひっそりと」
王子「暮らす、島だったそうだ」
魔法使い「……ど、れい?」
王子「……ああ。『劣等種』と言う言葉を聞いた事は?」
勇者「……あり、ません」
王子「魔導の街の人達は、優れた加護を持たない者達を」
王子「『劣等種』と読んで蔑んで、奴隷のような扱いをしていたらしい」
魔法使い「……!」
王子「……お母様もその一人だったそうだ」
戦士「!?」
王子「港街へ人を逃がしたのもお母様と、そのお仲間……」
王子「だが、その仲間……エルフの青年は……」
僧侶「エルフ!?」
戦士「……僧侶」
僧侶「あ……も、申し訳ありません……ッ」
王子「否……続けて良いか?」
僧侶「は、はい……」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「大丈夫。私は……私達は、仲間でしょう?」
戦士「…… ……」
魔法使い「……大丈夫です。国王様」
王子「何処まで話したんだ、国王」
国王「インキュバスと言う男が作った事と」
国王「『少年』の話です……どちらも……名は、知っていた様ですね」
王子「!?……そうか。では、話を進める前に……伝えておく」
王子「それから……改めて紐解いていく事にしよう」
国王「断片的な知識しか無いでしょうから……これで、補完できると良いのですけど」
戦士「『世界の裏側』か……」
王子「……港街がある島は、魔導の街から逃げ出した……奴隷達がひっそりと」
王子「暮らす、島だったそうだ」
魔法使い「……ど、れい?」
王子「……ああ。『劣等種』と言う言葉を聞いた事は?」
勇者「……あり、ません」
王子「魔導の街の人達は、優れた加護を持たない者達を」
王子「『劣等種』と読んで蔑んで、奴隷のような扱いをしていたらしい」
魔法使い「……!」
王子「……お母様もその一人だったそうだ」
戦士「!?」
王子「港街へ人を逃がしたのもお母様と、そのお仲間……」
王子「だが、その仲間……エルフの青年は……」
僧侶「エルフ!?」
戦士「……僧侶」
僧侶「あ……も、申し訳ありません……ッ」
王子「否……続けて良いか?」
僧侶「は、はい……」
566: 2013/09/12(木) 10:46:30.68 ID:KTkYO8e1P
お買い物ー
571: 2013/09/12(木) 14:53:00.34 ID:KTkYO8e1P
王子「……そのエルフは魔導の街の者に殺された、と言う」
勇者「…… ……」
王子「手を下したのは、魔導将軍と言う魔族だったそうだ」
魔法使い「え!?」
戦士「魔導……将軍!?」
国王「……知って、居るのですか!?」
王子「何故……」
国王「……あ、ああ……すみません、続けて下さい」
王子「あ、ああ……それで、お母様は魔導の街で知り合った『少年』に」
王子「助けを求め、魔導の街で行われていた闘技大会で彼は優勝する」
魔法使い「魔導の街は……魔導将軍が魔族、と言う事を……」
国王「詳しく言及した等と言う記述はありませんが、少年は……」
国王「……魔導将軍も、当時の領主である者も……」
戦士「……頃したのか」
僧侶「……ッ」
王子「そうだ。そして、魔導の街に居た奴隷……娼館で働かされて居たと言う」
王子「者達を解放した。それが……港街の始まり、だ」
勇者「……この国は、どうして出来たのです?」
国王「港街には物資と共に移住希望者も押し寄せたのです」
国王「……住む場所も手狭になってきた、と言うのも一つの理由でしょうね」
王子「ここは……大昔、魔物に一度滅ぼされているらしい」
王子「お母様は、廃墟だったこの島に……この始まりの国を再建したんだ」
戦士「何も、国……などにしなくても良かったんじゃ無いのか?」
国王「それは……流石に、そこまでは解りません。ですが」
国王「……魔導の街への牽制と考えると、不思議では無いかも知れませんよ」
魔法使い「……では、私の……ひいお爺様、は……」
王子「…… ……」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「……ッ し、仕方無い、わ……ッ」
魔法使い「魔物に与し、そんな、罪も無い人々を、まるで物の様に……ッ」
勇者「…… ……」
王子「手を下したのは、魔導将軍と言う魔族だったそうだ」
魔法使い「え!?」
戦士「魔導……将軍!?」
国王「……知って、居るのですか!?」
王子「何故……」
国王「……あ、ああ……すみません、続けて下さい」
王子「あ、ああ……それで、お母様は魔導の街で知り合った『少年』に」
王子「助けを求め、魔導の街で行われていた闘技大会で彼は優勝する」
魔法使い「魔導の街は……魔導将軍が魔族、と言う事を……」
国王「詳しく言及した等と言う記述はありませんが、少年は……」
国王「……魔導将軍も、当時の領主である者も……」
戦士「……頃したのか」
僧侶「……ッ」
王子「そうだ。そして、魔導の街に居た奴隷……娼館で働かされて居たと言う」
王子「者達を解放した。それが……港街の始まり、だ」
勇者「……この国は、どうして出来たのです?」
国王「港街には物資と共に移住希望者も押し寄せたのです」
国王「……住む場所も手狭になってきた、と言うのも一つの理由でしょうね」
王子「ここは……大昔、魔物に一度滅ぼされているらしい」
王子「お母様は、廃墟だったこの島に……この始まりの国を再建したんだ」
戦士「何も、国……などにしなくても良かったんじゃ無いのか?」
国王「それは……流石に、そこまでは解りません。ですが」
国王「……魔導の街への牽制と考えると、不思議では無いかも知れませんよ」
魔法使い「……では、私の……ひいお爺様、は……」
王子「…… ……」
勇者「魔法使い……」
魔法使い「……ッ し、仕方無い、わ……ッ」
魔法使い「魔物に与し、そんな、罪も無い人々を、まるで物の様に……ッ」
572: 2013/09/12(木) 15:27:31.21 ID:KTkYO8e1P
僧侶「…… ……」
戦士「しかし……」
王子「何だ、戦士?」
戦士「……魔導将軍、とやらは魔族だったのだろう」
戦士「そんな、アッサリと……」
国王「……先ほど、『港街の勇者を知っているか』と聞きましたね?」
国王「少年の為人については……何も、知りませんか?」
僧侶「…… ……紫の瞳を持ち、闇色の髪をしている……男、ですね」
王子「知っているなら話は早い……彼は……否。彼も又、魔族だった様だ」
勇者「! ……しかし、同じ魔族同士であっても……否!」
勇者「……あ、いや……人同士ですら、こうして争うんだ」
勇者「魔族間での争いだって、あっておかしくは無いけど……」
国王「…… ……」
王子「…… ……」
僧侶「……あ、の……?」
王子「この本に寄ると、少年、は…… ……」
戦士「…… ……なんだと、言うんだ」
国王「……魔王だ、と記されて居る、のですよ」
魔法使い「え!?」
戦士「何だと!?」
僧侶「! ……ッそ、んな……!?」
勇者「『港街の勇者様』が…… ……魔王!?」
戦士「しかし……」
王子「何だ、戦士?」
戦士「……魔導将軍、とやらは魔族だったのだろう」
戦士「そんな、アッサリと……」
国王「……先ほど、『港街の勇者を知っているか』と聞きましたね?」
国王「少年の為人については……何も、知りませんか?」
僧侶「…… ……紫の瞳を持ち、闇色の髪をしている……男、ですね」
王子「知っているなら話は早い……彼は……否。彼も又、魔族だった様だ」
勇者「! ……しかし、同じ魔族同士であっても……否!」
勇者「……あ、いや……人同士ですら、こうして争うんだ」
勇者「魔族間での争いだって、あっておかしくは無いけど……」
国王「…… ……」
王子「…… ……」
僧侶「……あ、の……?」
王子「この本に寄ると、少年、は…… ……」
戦士「…… ……なんだと、言うんだ」
国王「……魔王だ、と記されて居る、のですよ」
魔法使い「え!?」
戦士「何だと!?」
僧侶「! ……ッそ、んな……!?」
勇者「『港街の勇者様』が…… ……魔王!?」
573: 2013/09/12(木) 15:57:49.47 ID:KTkYO8e1P
王子「……そうだ」
魔法使い「そんな……馬鹿な!」
国王「この事を知っている人は……意外と多かったようです」
国王「……名が記してあります」
国王「お祖母様、お爺様……それから、女剣士様」
戦士「! ……女剣士様、も……!?」
国王「…… ……それから、エルフの姫と言う女性」
僧侶「え!?」
王子「後は……港街に教会を作ったとされる神父様」
勇者「…… ……あの、教会の!? じゃ、じゃあ……女って人も……!?」
国王「本当に良くご存じで。この辺りの人々の事は何も書かれていませんが」
国王「……女さんと、少女さんと言う方は、港街に残らなかった……」
国王「……『劣等種』として、魔導国の娼館で働かされて居たと言う、女性だそうです」
魔法使い「あの……教会にあった……隻腕の祈り女、さん……」
王子「……お前達の方が詳しそう、だな」フゥ
戦士「地域地域で、様々な噂……伝承を耳にしたんだ」
戦士「聞きかじった程度、だが……」
王子「女と言う女性を知っているのは解るが……何故、インキュバスを知っている?」
勇者「……え、ええっと……」
戦士「勇者」
勇者「……俺達は、鍛冶師の村の近くで……『魔導将軍』と名乗る魔族にあったんです」
国王「え!?」
王子「馬鹿な。魔導将軍は氏んだはず……!」
魔法使い「彼女は、背に真っ赤な翼を生やしていました」
国王「……彼女、と言いましたか?」
魔法使い「え、ええ…… ……?」
王子「……」チラ
国王「……」チラ
戦士「何だ、顔を見合わせて……」
国王「……魔導将軍は確かに、少年が頃したんだと思います」
国王「それに……魔導将軍は、男であった、と……」
僧侶「え……?」
魔法使い「そんな……馬鹿な!」
国王「この事を知っている人は……意外と多かったようです」
国王「……名が記してあります」
国王「お祖母様、お爺様……それから、女剣士様」
戦士「! ……女剣士様、も……!?」
国王「…… ……それから、エルフの姫と言う女性」
僧侶「え!?」
王子「後は……港街に教会を作ったとされる神父様」
勇者「…… ……あの、教会の!? じゃ、じゃあ……女って人も……!?」
国王「本当に良くご存じで。この辺りの人々の事は何も書かれていませんが」
国王「……女さんと、少女さんと言う方は、港街に残らなかった……」
国王「……『劣等種』として、魔導国の娼館で働かされて居たと言う、女性だそうです」
魔法使い「あの……教会にあった……隻腕の祈り女、さん……」
王子「……お前達の方が詳しそう、だな」フゥ
戦士「地域地域で、様々な噂……伝承を耳にしたんだ」
戦士「聞きかじった程度、だが……」
王子「女と言う女性を知っているのは解るが……何故、インキュバスを知っている?」
勇者「……え、ええっと……」
戦士「勇者」
勇者「……俺達は、鍛冶師の村の近くで……『魔導将軍』と名乗る魔族にあったんです」
国王「え!?」
王子「馬鹿な。魔導将軍は氏んだはず……!」
魔法使い「彼女は、背に真っ赤な翼を生やしていました」
国王「……彼女、と言いましたか?」
魔法使い「え、ええ…… ……?」
王子「……」チラ
国王「……」チラ
戦士「何だ、顔を見合わせて……」
国王「……魔導将軍は確かに、少年が頃したんだと思います」
国王「それに……魔導将軍は、男であった、と……」
僧侶「え……?」
574: 2013/09/12(木) 16:05:58.36 ID:KTkYO8e1P
王子「……まあ、良い。続きを話してくれ」
勇者「あ、ああ……はい」
勇者「……魔導将軍は、はっきりと……自分は魔王の『仲間』だと言いました」
国王「では……やはり、魔王は……生きている、んですね」
魔法使い「それに…… ……」
王子「何だ?」
魔法使い「…… ……『魔王は、世界を滅ぼそうと等していない』」
魔法使い「『魔王は、世界を守ろうとしている』」
魔法使い「だから……『人間達の、大いなる勘違い』だと」
国王「私達の……大いなる勘違い……?」
勇者「……それから」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒す』」
王子「…… ……」
戦士「俺達は、旅立つ前に一度、魔導将軍に会っているんだ」
国王「え!?」
戦士「……登録所の事務員として、潜り込んでいたらしい」
王子「何だと!?」
僧侶「……事務員さんと、魔導将軍の気配は、確かに同じでした」
僧侶「彼女は、魔力は封印していた、と……」
王子「い、いや……それが本当だとして、どうして……君に解るんだ?」
僧侶「魔力が、とか……種族だ、とかは……確かに、解りませんでした」
僧侶「ですが、『感じた』んです。同一人物である、と……」
国王「どう言う……事、です?」
勇者「……僧侶は、エルフの血を引いているんです」
王子「エルフ……の、血!?」
僧侶「…… ……はい。私を育ててくれた神父様曰く」
僧侶「私は人寄り早いスピードでこの姿まで成長し、それから……歳を取っていません」
国王「…… ……それで、『エルフ』の言葉に反応を示した、のですね」
勇者「あ、ああ……はい」
勇者「……魔導将軍は、はっきりと……自分は魔王の『仲間』だと言いました」
国王「では……やはり、魔王は……生きている、んですね」
魔法使い「それに…… ……」
王子「何だ?」
魔法使い「…… ……『魔王は、世界を滅ぼそうと等していない』」
魔法使い「『魔王は、世界を守ろうとしている』」
魔法使い「だから……『人間達の、大いなる勘違い』だと」
国王「私達の……大いなる勘違い……?」
勇者「……それから」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒す』」
王子「…… ……」
戦士「俺達は、旅立つ前に一度、魔導将軍に会っているんだ」
国王「え!?」
戦士「……登録所の事務員として、潜り込んでいたらしい」
王子「何だと!?」
僧侶「……事務員さんと、魔導将軍の気配は、確かに同じでした」
僧侶「彼女は、魔力は封印していた、と……」
王子「い、いや……それが本当だとして、どうして……君に解るんだ?」
僧侶「魔力が、とか……種族だ、とかは……確かに、解りませんでした」
僧侶「ですが、『感じた』んです。同一人物である、と……」
国王「どう言う……事、です?」
勇者「……僧侶は、エルフの血を引いているんです」
王子「エルフ……の、血!?」
僧侶「…… ……はい。私を育ててくれた神父様曰く」
僧侶「私は人寄り早いスピードでこの姿まで成長し、それから……歳を取っていません」
国王「…… ……それで、『エルフ』の言葉に反応を示した、のですね」
575: 2013/09/12(木) 16:12:37.64 ID:KTkYO8e1P
王子「ま、待て!それは……信じられるのか!?」
戦士「親父!」
王子「……疑っている訳では無い。だが……!」
僧侶「私は、回復魔法を使えます」
国王「……え?」
魔法使い「回復魔法を使えるのは人だけの特権なんです」
王子「人の血が混じっている、と言いたいのか?」
王子「しかし……!」
国王「それは存じ上げています。私も回復魔法を使えますからね」
国王「……しかし、兄さんの言う通り、その半分がエルフという証拠、が……」
戦士「叔父上まで! ……僧侶は……ッ」
僧侶「……母が私を産んで、息絶えた時に、これを持っていたそうです」スッ
王子「弓? ……随分細いが……」
国王「!」
僧侶「神父様はエルフの弓では無いかと言っていました」
王子「!!」
僧侶「……力の弱いエルフでも、易く使える様にと鍛えられた」
僧侶「特殊な弓……だと、思います」
僧侶「私にも扱えます……し…… ……あ、あの」
僧侶「……証拠、には……ならないかもしれません、けど……」
戦士「僧侶は、魔族の血が入った者なんかじゃ無い!」
戦士「だから、親父……!」
国王「……戦士、落ち着いて。僧侶さん、その……母親の女性は」
国王「どんな姿をしていたか、聞いていますか?」
僧侶「え? ……あ、はい」
僧侶「新緑の髪に、済んだ湖の様な瞳をしていた、と……」
王子「…… ……」
国王「…… ……」
戦士「親父!」
王子「……疑っている訳では無い。だが……!」
僧侶「私は、回復魔法を使えます」
国王「……え?」
魔法使い「回復魔法を使えるのは人だけの特権なんです」
王子「人の血が混じっている、と言いたいのか?」
王子「しかし……!」
国王「それは存じ上げています。私も回復魔法を使えますからね」
国王「……しかし、兄さんの言う通り、その半分がエルフという証拠、が……」
戦士「叔父上まで! ……僧侶は……ッ」
僧侶「……母が私を産んで、息絶えた時に、これを持っていたそうです」スッ
王子「弓? ……随分細いが……」
国王「!」
僧侶「神父様はエルフの弓では無いかと言っていました」
王子「!!」
僧侶「……力の弱いエルフでも、易く使える様にと鍛えられた」
僧侶「特殊な弓……だと、思います」
僧侶「私にも扱えます……し…… ……あ、あの」
僧侶「……証拠、には……ならないかもしれません、けど……」
戦士「僧侶は、魔族の血が入った者なんかじゃ無い!」
戦士「だから、親父……!」
国王「……戦士、落ち着いて。僧侶さん、その……母親の女性は」
国王「どんな姿をしていたか、聞いていますか?」
僧侶「え? ……あ、はい」
僧侶「新緑の髪に、済んだ湖の様な瞳をしていた、と……」
王子「…… ……」
国王「…… ……」
576: 2013/09/12(木) 16:21:48.34 ID:KTkYO8e1P
僧侶「あ、あの……自分で言うのは、その、凄く烏滸がましいのですけど……ッ」
僧侶「……とても、美しい女性だったと、言っていました。その……」
僧侶「私に、良く……似ている、と……」カァッ
王子「…… ……」
国王「…… ……」
戦士「おい……親父!叔父上!」
王子「……エルフの姫、と言うのは」
勇者「え?」
王子「お祖母様が……少年と姫が協力してくれるならば……と」
魔法使い「?」
王子「……エルフの弓を、差し上げたのだと書いてある」
僧侶「え…… ……」
勇者「!?」
国王「……魔王、少年は、姫に『美しい世界を見せてやりたい』と」
国王「『北の塔』姫の身を封印したそうなのです」
魔法使い「!! 北の塔……!」
王子「……知ってる、のか。今更もう驚かないが、な」ハァ
国王「その姫の姿は大変美しく……新緑の髪に湖の様に透き通る蒼の瞳をしていたと」
国王「……ありました」
王子「エルフの姫の……娘、か……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「お母様……ッ」ポロポロポロ……ッ
魔法使い「……僧侶」ナデ
勇者「俺達が……魔導将軍に会った時に、言われたんです」
勇者「あ……僧侶が、ですけど……」
国王「何をです?」
僧侶「……今で無くて良いから、北の塔を訪ねなさい、と……」
王子「……魔導将軍が!?」
僧侶「……とても、美しい女性だったと、言っていました。その……」
僧侶「私に、良く……似ている、と……」カァッ
王子「…… ……」
国王「…… ……」
戦士「おい……親父!叔父上!」
王子「……エルフの姫、と言うのは」
勇者「え?」
王子「お祖母様が……少年と姫が協力してくれるならば……と」
魔法使い「?」
王子「……エルフの弓を、差し上げたのだと書いてある」
僧侶「え…… ……」
勇者「!?」
国王「……魔王、少年は、姫に『美しい世界を見せてやりたい』と」
国王「『北の塔』姫の身を封印したそうなのです」
魔法使い「!! 北の塔……!」
王子「……知ってる、のか。今更もう驚かないが、な」ハァ
国王「その姫の姿は大変美しく……新緑の髪に湖の様に透き通る蒼の瞳をしていたと」
国王「……ありました」
王子「エルフの姫の……娘、か……」
勇者「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「お母様……ッ」ポロポロポロ……ッ
魔法使い「……僧侶」ナデ
勇者「俺達が……魔導将軍に会った時に、言われたんです」
勇者「あ……僧侶が、ですけど……」
国王「何をです?」
僧侶「……今で無くて良いから、北の塔を訪ねなさい、と……」
王子「……魔導将軍が!?」
577: 2013/09/12(木) 16:49:28.59 ID:KTkYO8e1P
国王「……インキュバスの名前を知っていた」
国王「恐らく……エルフの姫の事も、知っている、んでしょうね」
勇者「何故……!?」
国王「……『勇者は必ず魔王を倒す』と言ったのでしょう」
国王「『魔王の仲間』である筈の彼女、が」
王子「……だからといって、アッサリと信用出来る訳でも無いだろう!」
戦士「親父…… ……」
王子「魔王が、世界を滅ぼそう等としていないなら」
王子「……何故、金の髪の勇者は……戻らなかった……!!」
魔法使い「…… ……あ、あの」
国王「兄さん! ……はい、何です?」
魔法使い「私……小さい頃に」
魔法使い「……剣士、と言う男に……家で会っているのです」
魔法使い「その男は……紫の瞳と、髪をして……居ました」
国王「……ええ、情報は入ってきています」
王子「…… ……ッ」
国王「兄さん、落ち着いて下さい……今剣士は、魔導国に居る、のですよね?」
勇者「あ、はい……」
王子「確か、なのか?」
勇者「……鍛冶師の村であった、司書さんと言う人に聞きました」
魔法使い「国の封鎖に伴い追い出された時に」
魔法使い「……剣士に助けられた、とか……」
国王「……やはり、彼が……少年?」
国王「だけど……そうだとすると、どうして魔導国へ……」
王子「……見かけは、やはり変わらない、のか」
魔法使い「そう、だと思います。まだ小さい頃だったので何とも言えないけど」
魔法使い「……でも……」
国王「何です?」
魔法使い「……私、彼には……助けられた、んです」
国王「恐らく……エルフの姫の事も、知っている、んでしょうね」
勇者「何故……!?」
国王「……『勇者は必ず魔王を倒す』と言ったのでしょう」
国王「『魔王の仲間』である筈の彼女、が」
王子「……だからといって、アッサリと信用出来る訳でも無いだろう!」
戦士「親父…… ……」
王子「魔王が、世界を滅ぼそう等としていないなら」
王子「……何故、金の髪の勇者は……戻らなかった……!!」
魔法使い「…… ……あ、あの」
国王「兄さん! ……はい、何です?」
魔法使い「私……小さい頃に」
魔法使い「……剣士、と言う男に……家で会っているのです」
魔法使い「その男は……紫の瞳と、髪をして……居ました」
国王「……ええ、情報は入ってきています」
王子「…… ……ッ」
国王「兄さん、落ち着いて下さい……今剣士は、魔導国に居る、のですよね?」
勇者「あ、はい……」
王子「確か、なのか?」
勇者「……鍛冶師の村であった、司書さんと言う人に聞きました」
魔法使い「国の封鎖に伴い追い出された時に」
魔法使い「……剣士に助けられた、とか……」
国王「……やはり、彼が……少年?」
国王「だけど……そうだとすると、どうして魔導国へ……」
王子「……見かけは、やはり変わらない、のか」
魔法使い「そう、だと思います。まだ小さい頃だったので何とも言えないけど」
魔法使い「……でも……」
国王「何です?」
魔法使い「……私、彼には……助けられた、んです」
578: 2013/09/12(木) 16:55:44.81 ID:KTkYO8e1P
王子「助けられた?」
魔法使い「…… ……はい。あの……」
勇者「魔法使い…… ……」
魔法使い「……大丈夫」グッ
魔法使い「私には、優れた加護がありません」
国王「…… ……」
王子「!」
魔法使い「それを試そうと言い出した両親とお爺様にバレるのが怖くて」
魔法使い「……震えてた私を、炎の魔法で、その……相頃したんだと思います」
国王「それで……ばれずに、済んだ?」
魔法使い「はい」
勇者「魔法使いだけじゃ無い。俺達も一度助けられている」
王子「勇者様……達、も?」
戦士「この国を旅立ってすぐだ。川辺で魔物に引きずり込まれそうになった時に」
戦士「……あいつは、強大な雷の魔法を魔物に打ち込んだ」
王子「……後だしにするつもりはなかった、んだが」
勇者「え?」
王子「少年も加護に捕らわれず、様々な属性の魔法を使いこなしていたらしい」
国王「……ますます、同一人物だという可能性が高まってきます、ね」フゥ
僧侶「あの……一つ、忘れています」
勇者「え?」
僧侶「……剣士さん、勇者様と……そっくり、でした」
国王「あ…… ……そう、です。そうでしたね」
王子「……昔、初めてその剣士と言う男……だろう奴を見かけた時」
王子「俺も……金の髪の勇者かと思った」
国王「……そうですね。勇者、貴方も……金の髪の勇者と、同じ顔をしている」
国王「親子ならば……不自然で無いのかもしれません、けど」
魔法使い「…… ……はい。あの……」
勇者「魔法使い…… ……」
魔法使い「……大丈夫」グッ
魔法使い「私には、優れた加護がありません」
国王「…… ……」
王子「!」
魔法使い「それを試そうと言い出した両親とお爺様にバレるのが怖くて」
魔法使い「……震えてた私を、炎の魔法で、その……相頃したんだと思います」
国王「それで……ばれずに、済んだ?」
魔法使い「はい」
勇者「魔法使いだけじゃ無い。俺達も一度助けられている」
王子「勇者様……達、も?」
戦士「この国を旅立ってすぐだ。川辺で魔物に引きずり込まれそうになった時に」
戦士「……あいつは、強大な雷の魔法を魔物に打ち込んだ」
王子「……後だしにするつもりはなかった、んだが」
勇者「え?」
王子「少年も加護に捕らわれず、様々な属性の魔法を使いこなしていたらしい」
国王「……ますます、同一人物だという可能性が高まってきます、ね」フゥ
僧侶「あの……一つ、忘れています」
勇者「え?」
僧侶「……剣士さん、勇者様と……そっくり、でした」
国王「あ…… ……そう、です。そうでしたね」
王子「……昔、初めてその剣士と言う男……だろう奴を見かけた時」
王子「俺も……金の髪の勇者かと思った」
国王「……そうですね。勇者、貴方も……金の髪の勇者と、同じ顔をしている」
国王「親子ならば……不自然で無いのかもしれません、けど」
579: 2013/09/12(木) 17:06:00.85 ID:KTkYO8e1P
僧侶「でも……剣士さんが少年さんであるのなら」
僧侶「……勇者様は、その……魔王、とも、そっくり、と言う……事、ですか?」
勇者「!」
国王「……そう、なります……ね」
王子「……ッ」
戦士「叔父上、魔導国は今、どうなっているんですか?」
戦士「……鍛冶師の村で、俺達は村長に」
戦士「魔導国に行けと言われたんです」
国王「今朝、この国にも通達が届きましたよ」
王子「……勇者様達が戻れば、速やかに魔導国に引き渡せ、とな」
勇者「!」
戦士「さもなくば港街への攻撃を開始する、と?」
国王「…… ……ええ」
魔法使い「鉱石を……奪った、んですね」
王子「そうだ。だが、あの石は……」
僧侶「……光の剣の修理を、鍛冶師の村の職人さん達にやらせてくれる、と言う」
僧侶「お約束だったそうです。守られるかどうかは……わかりませんけど」
国王「え……!?」
魔法使い「それに……鍛冶師の村から、昔、魔寄せの石を持ち帰ったと」
魔法使い「言っていました」
王子「!? ……インキュバスの魔石か!?」
勇者「あの魔石のおかげで、村には魔物が降りてこない」
勇者「伝説の聖職者が作るにしては……って、脅されたみたいです」
勇者「……伝承に残る聖職者様は、そのインキュバス、に間違いないのですよね?」
国王「……はい。インキュバスも、少年の手によって……殺されています」
僧侶「あれほどの……禍々しい気を放つ……魔族を、ですか……」
王子「見たのか?」
僧侶「いえ、近くまで言っただけです、でも……」
王子「……ああ。感じる、んだったな」
僧侶「……はい」
僧侶「……勇者様は、その……魔王、とも、そっくり、と言う……事、ですか?」
勇者「!」
国王「……そう、なります……ね」
王子「……ッ」
戦士「叔父上、魔導国は今、どうなっているんですか?」
戦士「……鍛冶師の村で、俺達は村長に」
戦士「魔導国に行けと言われたんです」
国王「今朝、この国にも通達が届きましたよ」
王子「……勇者様達が戻れば、速やかに魔導国に引き渡せ、とな」
勇者「!」
戦士「さもなくば港街への攻撃を開始する、と?」
国王「…… ……ええ」
魔法使い「鉱石を……奪った、んですね」
王子「そうだ。だが、あの石は……」
僧侶「……光の剣の修理を、鍛冶師の村の職人さん達にやらせてくれる、と言う」
僧侶「お約束だったそうです。守られるかどうかは……わかりませんけど」
国王「え……!?」
魔法使い「それに……鍛冶師の村から、昔、魔寄せの石を持ち帰ったと」
魔法使い「言っていました」
王子「!? ……インキュバスの魔石か!?」
勇者「あの魔石のおかげで、村には魔物が降りてこない」
勇者「伝説の聖職者が作るにしては……って、脅されたみたいです」
勇者「……伝承に残る聖職者様は、そのインキュバス、に間違いないのですよね?」
国王「……はい。インキュバスも、少年の手によって……殺されています」
僧侶「あれほどの……禍々しい気を放つ……魔族を、ですか……」
王子「見たのか?」
僧侶「いえ、近くまで言っただけです、でも……」
王子「……ああ。感じる、んだったな」
僧侶「……はい」
580: 2013/09/12(木) 17:52:52.94 ID:KTkYO8e1P
国王「……魔導国は何を……企んでいるのでしょう、か」
王子「勇者様を向かわせろ、と言う事は……」
王子「……否、しかし……」
魔法使い「魔石の力を引き出す……気では、無いでしょうか」
国王「そんな……ッ そんな事を、したら……!!」
勇者「……ちょっと待って下さい」
王子「え?」
勇者「もし、少年が剣士なら……彼が、魔王と言う事になるんでしょう?」
国王「……ッ」
勇者「で、でも……ええと、そうだ!魔法使い!ほら!」
魔法使い「え、え!?」
勇者「……鉱石を手に入れて、光の剣を修理して、剣士に持たせて、って奴だ!」
王子「何……?」
魔法使い「あ……! 魔王への捧げ物として……!」
戦士「魔族に、魔王に与する可能性……だな。しかし……」
僧侶「そ、そうですよ、仮説では無いですか!」
国王「……いえ、案外当たっているかもしれません」
国王「それが真実なら尚の事……勇者は、自分達の手の内に入れておく方が」
国王「……都合が良い」
王子「……ッ」
魔法使い「……剣士が魔族っていう可能性を、信じているとは思う」
魔法使い「だけど、少年が……剣士が、魔王である可能性については」
魔法使い「まだ、理解して居ない筈だわ!」
戦士「何故そう言い切れる?」
魔法使い「簡単よ。あの人達は『強きに弱く、弱きに強い』」
魔法使い「……世界を滅ぼすなんて噂の張本人って知ってたら」
魔法使い「こんな面倒な事、しないでさっさと全面戦争始めちゃうわ!」
僧侶「……だったら、今のうち、です」
勇者「僧侶?」
僧侶「……勇者様、魔導国へ行きましょう」
王子「勇者様を向かわせろ、と言う事は……」
王子「……否、しかし……」
魔法使い「魔石の力を引き出す……気では、無いでしょうか」
国王「そんな……ッ そんな事を、したら……!!」
勇者「……ちょっと待って下さい」
王子「え?」
勇者「もし、少年が剣士なら……彼が、魔王と言う事になるんでしょう?」
国王「……ッ」
勇者「で、でも……ええと、そうだ!魔法使い!ほら!」
魔法使い「え、え!?」
勇者「……鉱石を手に入れて、光の剣を修理して、剣士に持たせて、って奴だ!」
王子「何……?」
魔法使い「あ……! 魔王への捧げ物として……!」
戦士「魔族に、魔王に与する可能性……だな。しかし……」
僧侶「そ、そうですよ、仮説では無いですか!」
国王「……いえ、案外当たっているかもしれません」
国王「それが真実なら尚の事……勇者は、自分達の手の内に入れておく方が」
国王「……都合が良い」
王子「……ッ」
魔法使い「……剣士が魔族っていう可能性を、信じているとは思う」
魔法使い「だけど、少年が……剣士が、魔王である可能性については」
魔法使い「まだ、理解して居ない筈だわ!」
戦士「何故そう言い切れる?」
魔法使い「簡単よ。あの人達は『強きに弱く、弱きに強い』」
魔法使い「……世界を滅ぼすなんて噂の張本人って知ってたら」
魔法使い「こんな面倒な事、しないでさっさと全面戦争始めちゃうわ!」
僧侶「……だったら、今のうち、です」
勇者「僧侶?」
僧侶「……勇者様、魔導国へ行きましょう」
581: 2013/09/12(木) 17:58:46.38 ID:KTkYO8e1P
僧侶「利用するようで申し訳無いですが……」
僧侶「……魔法使いさんは、孫娘です。だから……」
魔法使い「そうね。私が居る限り、取りあえずは危害は加えない筈よ」
国王「ま、待ちなさい!そんな、貴方達に……!」
勇者「国王様」
国王「…… ……」
勇者「俺は、勇者です」
勇者「……魔王を倒すだけが、世界を救うことじゃありません」
王子「勇者様……」
戦士「どちらにせよ、魔導国に剣士……魔王かもしれない奴が居る以上」
僧侶「はい。私達が行くべき、です」
魔法使い「……決定ね」
国王「貴方達…… ……」
王子「……仕方無い」ハァ
国王「兄さん!?」
王子「ただし、もう少し準備を整えてから、だ」
王子「……魔導国も、明日にも攻撃を仕掛けてくる事は無いだろう」
王子「此処には、勇者様達がいるんだ」
戦士「しかし、港街は……」
国王「……あちらも大丈夫でしょう」
国王「此処に、確かに勇者達が戻ったと言うのは解っているんです」
国王「本気で急かしている訳でも無いはずですよ」
王子「……一度食事を挟んで、休憩しよう」
王子「用意をさせるから、部屋で待っていて下さい、勇者様」
勇者「あ……あの!」
王子「はい?」
僧侶「……魔法使いさんは、孫娘です。だから……」
魔法使い「そうね。私が居る限り、取りあえずは危害は加えない筈よ」
国王「ま、待ちなさい!そんな、貴方達に……!」
勇者「国王様」
国王「…… ……」
勇者「俺は、勇者です」
勇者「……魔王を倒すだけが、世界を救うことじゃありません」
王子「勇者様……」
戦士「どちらにせよ、魔導国に剣士……魔王かもしれない奴が居る以上」
僧侶「はい。私達が行くべき、です」
魔法使い「……決定ね」
国王「貴方達…… ……」
王子「……仕方無い」ハァ
国王「兄さん!?」
王子「ただし、もう少し準備を整えてから、だ」
王子「……魔導国も、明日にも攻撃を仕掛けてくる事は無いだろう」
王子「此処には、勇者様達がいるんだ」
戦士「しかし、港街は……」
国王「……あちらも大丈夫でしょう」
国王「此処に、確かに勇者達が戻ったと言うのは解っているんです」
国王「本気で急かしている訳でも無いはずですよ」
王子「……一度食事を挟んで、休憩しよう」
王子「用意をさせるから、部屋で待っていて下さい、勇者様」
勇者「あ……あの!」
王子「はい?」
582: 2013/09/12(木) 18:14:25.92 ID:KTkYO8e1P
勇者「……家に、戻ってみても良いでしょうか」
王子「それは……構いません、けど」
国王「……何も、手は着けていません」
国王「あの時の侭にしてあります……食事が済めば、皆で行かれては?」
魔法使い「そう……ね。勇者が良いなら」
勇者「うん。それは……勿論だ」
僧侶「あ、あの……国王様」
国王「何でしょう?」
僧侶「もし、宜しければ……もう少し、あの」
僧侶「……母の話を、聞かせて頂けませんでしょうか」
国王「ええ……それは構いませんけど」
僧侶「ありがとうございます!」
戦士「俺も同席して良いか?僧侶」
戦士「俺も……聞きたい事があります、叔父上」
僧侶「勿論です! ……一緒に、居て下さい。戦士さん」
王子「……俺は少し調べ物をしてこよう」
勇者「何処に……行かれるんですか?」
王子「登録所です……剣士の資料があった筈なので」
魔法使い「!」
王子「……随分古い登録だった様で、中々見つからなかったのですよ」
王子「それは……構いません、けど」
国王「……何も、手は着けていません」
国王「あの時の侭にしてあります……食事が済めば、皆で行かれては?」
魔法使い「そう……ね。勇者が良いなら」
勇者「うん。それは……勿論だ」
僧侶「あ、あの……国王様」
国王「何でしょう?」
僧侶「もし、宜しければ……もう少し、あの」
僧侶「……母の話を、聞かせて頂けませんでしょうか」
国王「ええ……それは構いませんけど」
僧侶「ありがとうございます!」
戦士「俺も同席して良いか?僧侶」
戦士「俺も……聞きたい事があります、叔父上」
僧侶「勿論です! ……一緒に、居て下さい。戦士さん」
王子「……俺は少し調べ物をしてこよう」
勇者「何処に……行かれるんですか?」
王子「登録所です……剣士の資料があった筈なので」
魔法使い「!」
王子「……随分古い登録だった様で、中々見つからなかったのですよ」
583: 2013/09/12(木) 18:17:59.74 ID:KTkYO8e1P
お風呂とご飯!
592: 2013/09/13(金) 11:01:36.10 ID:aks3QNZ0P
魔法使い「そうね。私達が勇者に選ばれた時……剣士は、登録所に……」
王子「……一緒に行かれますか?」
勇者「良いんですか?」
王子「勇者様が宜しければ」
勇者「……はい。お願いします!」
魔法使い「あ、あの……私も、良いでしょうか」
王子「勿論だ……君には辛いかも知れないが、もう少し」
王子「詳しく聞かせて貰えると嬉しい」
魔法使い「……大丈夫です!」
国王「では、僧侶さんと戦士は、どうぞ此処に残って下さい」
王子「その前に……戦士、ちょっとこっちへ……」
王子「少しだけお待ち下さい、勇者様」スタスタ
戦士「?」スタスタ
僧侶「あ、あの……」
国王「はい?」
僧侶「盗賊様の知人のエルフの方、と言うのは……」
僧侶「この国の、あの丘の上の……?」
国王「ええ、そうです……行かれました、か?」
僧侶「いえ……エルフの加護、とあの近くの小さな街で聞いては居たのですが」
僧侶「……それほど、感じなかったので……」
国王「そうですか……私も詳しくは知らないのですが……」
魔法使い「そう言えば……剣士が、お爺様に何か頼んでいたのを覚えて居るわ」
勇者「頼んでた?」
魔法使い「ええ。内容までは分からなかったけど、その後に彼は」
魔法使い「街を出て行ったんだったと思う」
勇者「……うん。その辺も会わせて、騎士団長様にも話してみよう」
スタスタ
王子「……一緒に行かれますか?」
勇者「良いんですか?」
王子「勇者様が宜しければ」
勇者「……はい。お願いします!」
魔法使い「あ、あの……私も、良いでしょうか」
王子「勿論だ……君には辛いかも知れないが、もう少し」
王子「詳しく聞かせて貰えると嬉しい」
魔法使い「……大丈夫です!」
国王「では、僧侶さんと戦士は、どうぞ此処に残って下さい」
王子「その前に……戦士、ちょっとこっちへ……」
王子「少しだけお待ち下さい、勇者様」スタスタ
戦士「?」スタスタ
僧侶「あ、あの……」
国王「はい?」
僧侶「盗賊様の知人のエルフの方、と言うのは……」
僧侶「この国の、あの丘の上の……?」
国王「ええ、そうです……行かれました、か?」
僧侶「いえ……エルフの加護、とあの近くの小さな街で聞いては居たのですが」
僧侶「……それほど、感じなかったので……」
国王「そうですか……私も詳しくは知らないのですが……」
魔法使い「そう言えば……剣士が、お爺様に何か頼んでいたのを覚えて居るわ」
勇者「頼んでた?」
魔法使い「ええ。内容までは分からなかったけど、その後に彼は」
魔法使い「街を出て行ったんだったと思う」
勇者「……うん。その辺も会わせて、騎士団長様にも話してみよう」
スタスタ
593: 2013/09/13(金) 11:10:05.89 ID:aks3QNZ0P
王子「お待たせしました……じゃあ、頼んだぞ、戦士」
戦士「ああ……すまん、僧侶」
僧侶「いいえ……」
国王「では、そちらはお任せしますよ、兄さん」
王子「ああ。では、行きましょうか」
勇者「はい」
魔法使い「はい!」
スタスタ、カチャ……パタン
国王「……兄さんは、なんて?」
戦士「叔父上は狙われているかもしれないから、と」
国王「……心配性だな」フゥ
僧侶「あの……狙われてる、と言うのは……」
国王「……この国を出てから、戻る迄……」
国王「そこら中に、魔導国の目があったのはご存じなのでは無いですか?」
僧侶「!」
国王「そういう事です。魔導国からの最初の要望は」
国王「……『王』は世界に一人で良い、との事でしたのでね」
戦士「さっき親父に……言われました」
僧侶「何故…… ……」
国王「王政を解いたところで、何が変わるとも思えませんけどね」
国王「……否、思いたい、ですね。驕ってはいけない……」
戦士「…… ……」
国王「戦士の聞きたい事は、女剣士様の事でしょう?」
戦士「……はい」
国王「順番に……ね。すみません、話の腰を折ってしまって」
僧侶「いいえ……」
国王「殺されてしまった、エルフの話……でしたね」
戦士「ああ……すまん、僧侶」
僧侶「いいえ……」
国王「では、そちらはお任せしますよ、兄さん」
王子「ああ。では、行きましょうか」
勇者「はい」
魔法使い「はい!」
スタスタ、カチャ……パタン
国王「……兄さんは、なんて?」
戦士「叔父上は狙われているかもしれないから、と」
国王「……心配性だな」フゥ
僧侶「あの……狙われてる、と言うのは……」
国王「……この国を出てから、戻る迄……」
国王「そこら中に、魔導国の目があったのはご存じなのでは無いですか?」
僧侶「!」
国王「そういう事です。魔導国からの最初の要望は」
国王「……『王』は世界に一人で良い、との事でしたのでね」
戦士「さっき親父に……言われました」
僧侶「何故…… ……」
国王「王政を解いたところで、何が変わるとも思えませんけどね」
国王「……否、思いたい、ですね。驕ってはいけない……」
戦士「…… ……」
国王「戦士の聞きたい事は、女剣士様の事でしょう?」
戦士「……はい」
国王「順番に……ね。すみません、話の腰を折ってしまって」
僧侶「いいえ……」
国王「殺されてしまった、エルフの話……でしたね」
594: 2013/09/13(金) 11:45:59.32 ID:aks3QNZ0P
戦士「丘の上の墓……か」
国王「……エルフの青年であった、としか書いてはありませんでした」
国王「まだ廃墟だったこの大陸の、あの丘の上に埋葬したところ」
国王「どうやら、その加護のおかげで、この土地には」
国王「それ程、強い魔物も出ないのでは、と……」
僧侶「確かに……微かに、エルフの力を感じはします」
僧侶「ですが……随分古い様だし……」
国王「あまり力を感じなかった、と言っていましたね」
僧侶「はい。 ……関係無い事かも知れません、が」
国王「いえ……気になるのは当然だと思います」
僧侶「……はい」
戦士「俺は……行ったことがある、んですか?」
国王「ええ。小さい頃にね……兄さんが一緒だったかどうか迄」
国王「覚えては居ませんけど……女剣士様とね」
戦士「……そう、ですか」
僧侶「あのお墓には……エルフの青年さんと」
僧侶「女様が眠っていらっしゃるんですね?」
国王「そうです」
戦士「女、と言う人は……魔導の街から、お祖母様と少年に」
戦士「助け出された一人、なのですよね」
戦士「……もう一人、は?」
国王「少女さん、ですね」
国王「……残念ながら、名しか記されていないのですが……」
僧侶「あ、あの……」ゴソゴソ
戦士「……! 僧侶、それは……」
僧侶「ちゃ、ちゃんと戻すつもりなのですよ!?」
僧侶「……何となく、あの場所に置いておいては……行けない気がして」
国王「港街の教会の……ですか?」
僧侶「あ……そ、その……すみません!」
僧侶「今度、ちゃんと……!」
国王「……エルフの青年であった、としか書いてはありませんでした」
国王「まだ廃墟だったこの大陸の、あの丘の上に埋葬したところ」
国王「どうやら、その加護のおかげで、この土地には」
国王「それ程、強い魔物も出ないのでは、と……」
僧侶「確かに……微かに、エルフの力を感じはします」
僧侶「ですが……随分古い様だし……」
国王「あまり力を感じなかった、と言っていましたね」
僧侶「はい。 ……関係無い事かも知れません、が」
国王「いえ……気になるのは当然だと思います」
僧侶「……はい」
戦士「俺は……行ったことがある、んですか?」
国王「ええ。小さい頃にね……兄さんが一緒だったかどうか迄」
国王「覚えては居ませんけど……女剣士様とね」
戦士「……そう、ですか」
僧侶「あのお墓には……エルフの青年さんと」
僧侶「女様が眠っていらっしゃるんですね?」
国王「そうです」
戦士「女、と言う人は……魔導の街から、お祖母様と少年に」
戦士「助け出された一人、なのですよね」
戦士「……もう一人、は?」
国王「少女さん、ですね」
国王「……残念ながら、名しか記されていないのですが……」
僧侶「あ、あの……」ゴソゴソ
戦士「……! 僧侶、それは……」
僧侶「ちゃ、ちゃんと戻すつもりなのですよ!?」
僧侶「……何となく、あの場所に置いておいては……行けない気がして」
国王「港街の教会の……ですか?」
僧侶「あ……そ、その……すみません!」
僧侶「今度、ちゃんと……!」
595: 2013/09/13(金) 12:15:45.51 ID:aks3QNZ0P
国王「…… ……」スッ、ギュ
戦士「……叔父上?」
国王「あ……ご免なさい、取り上げる様な真似をして」
僧侶「い、いいえ……」
国王「……見るのは初めてなのです」
戦士「?」
国王「これはね……お父様が作られたそうなのですよ」
僧侶「え?でも……鍛冶師様は……」
国王「仰りたいことは解ります。ですけど、元々手先の器用な方でしたからね」
国王「……港街の教会の神父様にお願いして、作らせてもらったのだと」
戦士「お爺様が……」
国王「僧侶さん」
僧侶「は、はい!」
国王「お父様がお作りになった物は、これと……もう一つあるのだと仰っていました」
僧侶「え?でもあの教会には……」
国王「ああ、いえ……もう一つは、随分と大きな物だそうで」
国王「どこかの愛好家に売り渡したのだと仰っていましたが……」
国王「それは、貴女のお母様……エルフの姫の姿を」
国王「模した物だと……思います」
僧侶「え!?」
戦士「確か……なのですか?」
国王「……絶対とは言い切れません、けど」
国王「昔の知人に、とても美しい人が居て」
国王「……この、ね。女様の物を作る前に、一つ大きな物を作ったことがあるのだと」
戦士「しかし、それだけでは……」
国王「……ええ。ですが、この……お母様の残した本を読んで思ったのです」
国王「多分……間違い無いと思います」
僧侶「お母様の……」
戦士「……叔父上?」
国王「あ……ご免なさい、取り上げる様な真似をして」
僧侶「い、いいえ……」
国王「……見るのは初めてなのです」
戦士「?」
国王「これはね……お父様が作られたそうなのですよ」
僧侶「え?でも……鍛冶師様は……」
国王「仰りたいことは解ります。ですけど、元々手先の器用な方でしたからね」
国王「……港街の教会の神父様にお願いして、作らせてもらったのだと」
戦士「お爺様が……」
国王「僧侶さん」
僧侶「は、はい!」
国王「お父様がお作りになった物は、これと……もう一つあるのだと仰っていました」
僧侶「え?でもあの教会には……」
国王「ああ、いえ……もう一つは、随分と大きな物だそうで」
国王「どこかの愛好家に売り渡したのだと仰っていましたが……」
国王「それは、貴女のお母様……エルフの姫の姿を」
国王「模した物だと……思います」
僧侶「え!?」
戦士「確か……なのですか?」
国王「……絶対とは言い切れません、けど」
国王「昔の知人に、とても美しい人が居て」
国王「……この、ね。女様の物を作る前に、一つ大きな物を作ったことがあるのだと」
戦士「しかし、それだけでは……」
国王「……ええ。ですが、この……お母様の残した本を読んで思ったのです」
国王「多分……間違い無いと思います」
僧侶「お母様の……」
596: 2013/09/13(金) 12:20:16.02 ID:aks3QNZ0P
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