1: 2013/09/14(土) 07:55:32.22 ID:rsutVxFjP
前回:勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」【2】
落ちちゃったみたいなので立て直し
落ちちゃったみたいなので立て直し
4: 2013/09/14(土) 08:04:55.53 ID:rsutVxFjP
国王「……お話しするとは言った物の、私もあまり詳しい事は知らないのですよ」
国王「お母様もお父様も……女剣士様も、あまり、お話はして下さらなかった」
国王「こうして……この本を読むと、納得は出来る……のですけど、ね」
僧侶「いえ……」
僧侶「あの……お父様の事は、何か……ありませんでしたか?」
国王「ああ……エルフの姫は、少年と出会った頃には既に」
国王「身籠もっていたようだ、とありましたね」
戦士「僧侶が回復魔法を使えると言う事は……」
国王「ええ。人であることに間違いは無いでしょうけれど」
国王「相手の事までは……」
僧侶「そうですか……」
国王「……エルフの妊娠期間は、とても長いとありました」
国王「勿論、少年の力の干渉等もあったのでしょうけど……」
僧侶「…… ……」
戦士「叔父上」
国王「はい?」
戦士「……この事は、金の髪の勇者様は……ご存じなかった、のですか?」
国王「お母様もお父様も……女剣士様も、あまり、お話はして下さらなかった」
国王「こうして……この本を読むと、納得は出来る……のですけど、ね」
僧侶「いえ……」
僧侶「あの……お父様の事は、何か……ありませんでしたか?」
国王「ああ……エルフの姫は、少年と出会った頃には既に」
国王「身籠もっていたようだ、とありましたね」
戦士「僧侶が回復魔法を使えると言う事は……」
国王「ええ。人であることに間違いは無いでしょうけれど」
国王「相手の事までは……」
僧侶「そうですか……」
国王「……エルフの妊娠期間は、とても長いとありました」
国王「勿論、少年の力の干渉等もあったのでしょうけど……」
僧侶「…… ……」
戦士「叔父上」
国王「はい?」
戦士「……この事は、金の髪の勇者様は……ご存じなかった、のですか?」
5: 2013/09/14(土) 08:24:49.97 ID:rsutVxFjP
国王「……と、思いますよ」
国王「様子を見るに……ですが、しかし」
国王「…… ……」
戦士「叔父上?」
国王「先ほど、この事実を知っていた者は意外と多い、と」
国王「言いましたね」
戦士「え、ええ」
僧侶「盗賊様、鍛冶師様、女剣士様……」
僧侶「港街の神父様、女様……あ、少女、さん」
戦士「それから……エルフの姫、か」
国王「…… ……」
僧侶「国王様?」
国王「……先ほどは言いそびれました」
国王「何時告げようかと迷っている内に……否、言い訳ですね」
戦士「叔父上?」
国王「一人は、船長と言う男の方です」
国王「まだ魔導の街の解放前に……力を貸してくれた、海賊船の船長」
僧侶「海賊……!?」
国王「海があれば船が居る。今も……どこかには……否」
国王「生きていれば、ですけど」
国王「様子を見るに……ですが、しかし」
国王「…… ……」
戦士「叔父上?」
国王「先ほど、この事実を知っていた者は意外と多い、と」
国王「言いましたね」
戦士「え、ええ」
僧侶「盗賊様、鍛冶師様、女剣士様……」
僧侶「港街の神父様、女様……あ、少女、さん」
戦士「それから……エルフの姫、か」
国王「…… ……」
僧侶「国王様?」
国王「……先ほどは言いそびれました」
国王「何時告げようかと迷っている内に……否、言い訳ですね」
戦士「叔父上?」
国王「一人は、船長と言う男の方です」
国王「まだ魔導の街の解放前に……力を貸してくれた、海賊船の船長」
僧侶「海賊……!?」
国王「海があれば船が居る。今も……どこかには……否」
国王「生きていれば、ですけど」
6: 2013/09/14(土) 08:35:00.59 ID:rsutVxFjP
戦士「お祖母様と同世代であるなら……」
国王「……そうですね。こちらもそれ程記述が無いので」
国王「海賊そのものは今も、存在していると思います」
国王「所属不明の船も、目撃されて居ますしね」
国王「……少年の話が受け継がれているか、それは定かではありませんけど」
僧侶「その方が、どうか……?」
国王「いえ…… ……もう一人、が問題なのです」
戦士「まだ居るのか……」
国王「……私も、兄さんも知っているのですよ」
僧侶「それは……会ったことがある、と言う意味、ですか?」
国王「頻繁にはお会いしていません。ですけど……」
国王「……きっと、兄さんが勇者と魔法使いさんにお話していると思います」
国王「詳しくは後で、彼らに聞いて下さい」
戦士「…… ……誰なんです、それは」
国王「戦士」
戦士「?」
国王「女剣士様に思い人が居た事はご存じでしょうか」
戦士「……親父に聞いた事はあります。生涯独身であられたのは、その人の……」
戦士「所為、と言うか……」
国王「……ええ。私も詳しくは知らないのですけどね」
国王「側近様、と言う方がいらっしゃいました」
僧侶「その方が……もう一人、少年さんの事を知っていらしたと言う……?」
国王「……ええ。お母様とお父様を頼り、金の髪の勇者様を連れて来られたのが」
国王「その、側近様です」
国王「彼は盲目であられましたが、鉱石の洞窟への作戦にも」
国王「金の髪の勇者様と、兄さん、女剣士様と共に」
国王「参加されています」
国王「……そうですね。こちらもそれ程記述が無いので」
国王「海賊そのものは今も、存在していると思います」
国王「所属不明の船も、目撃されて居ますしね」
国王「……少年の話が受け継がれているか、それは定かではありませんけど」
僧侶「その方が、どうか……?」
国王「いえ…… ……もう一人、が問題なのです」
戦士「まだ居るのか……」
国王「……私も、兄さんも知っているのですよ」
僧侶「それは……会ったことがある、と言う意味、ですか?」
国王「頻繁にはお会いしていません。ですけど……」
国王「……きっと、兄さんが勇者と魔法使いさんにお話していると思います」
国王「詳しくは後で、彼らに聞いて下さい」
戦士「…… ……誰なんです、それは」
国王「戦士」
戦士「?」
国王「女剣士様に思い人が居た事はご存じでしょうか」
戦士「……親父に聞いた事はあります。生涯独身であられたのは、その人の……」
戦士「所為、と言うか……」
国王「……ええ。私も詳しくは知らないのですけどね」
国王「側近様、と言う方がいらっしゃいました」
僧侶「その方が……もう一人、少年さんの事を知っていらしたと言う……?」
国王「……ええ。お母様とお父様を頼り、金の髪の勇者様を連れて来られたのが」
国王「その、側近様です」
国王「彼は盲目であられましたが、鉱石の洞窟への作戦にも」
国王「金の髪の勇者様と、兄さん、女剣士様と共に」
国王「参加されています」
7: 2013/09/14(土) 08:45:32.87 ID:rsutVxFjP
僧侶「危険では……!?」
国王「……彼も回復魔法の使い手でした。後方支援で参加されたのですよ」
僧侶「で、でも……」
国王「…… ……」
僧侶「……?」
戦士「叔父上」
国王「……先に、結論から言ってしまいましょう」ハァ
国王「彼の事を正確に……どう説明したら良いのか……」
僧侶「国王様?」
国王「側近様は……『魔王の側近』だったそうなのです」
僧侶「!?」
戦士「金の髪の勇者様は、少年の事は知らなかったのでは無いのですか!?」
国王「どんな事情があったのか、詳しい事を知る事はできません……もう」
国王「ですが、側近様は金の髪の勇者様を連れて、この国に来られた」
国王「そして、『魔王を倒す勇者』として、育てていらした」
僧侶「…… ……ちょ、ちょっと……待って…… ……」
戦士「……僧侶?」
国王「そして、金の髪の勇者様が旅立たれた後。忽然と姿を消してしまわれた」
戦士「!?」
国王「……勇者の母君と同じなのですよ」
僧侶「失礼を承知で、申し上げます……!」
戦士「僧侶……?」
国王「…… ……」
僧侶「側近様が、『魔王の側近』だったなら」
僧侶「……そ、側近様は、人では無いのでは!?」
戦士「!」
国王「…… ……」
僧侶「なのに……なのに、回復魔法が使えた、って……!?」
僧侶「……お、おかしい、です……何故……!?」
国王「……彼も回復魔法の使い手でした。後方支援で参加されたのですよ」
僧侶「で、でも……」
国王「…… ……」
僧侶「……?」
戦士「叔父上」
国王「……先に、結論から言ってしまいましょう」ハァ
国王「彼の事を正確に……どう説明したら良いのか……」
僧侶「国王様?」
国王「側近様は……『魔王の側近』だったそうなのです」
僧侶「!?」
戦士「金の髪の勇者様は、少年の事は知らなかったのでは無いのですか!?」
国王「どんな事情があったのか、詳しい事を知る事はできません……もう」
国王「ですが、側近様は金の髪の勇者様を連れて、この国に来られた」
国王「そして、『魔王を倒す勇者』として、育てていらした」
僧侶「…… ……ちょ、ちょっと……待って…… ……」
戦士「……僧侶?」
国王「そして、金の髪の勇者様が旅立たれた後。忽然と姿を消してしまわれた」
戦士「!?」
国王「……勇者の母君と同じなのですよ」
僧侶「失礼を承知で、申し上げます……!」
戦士「僧侶……?」
国王「…… ……」
僧侶「側近様が、『魔王の側近』だったなら」
僧侶「……そ、側近様は、人では無いのでは!?」
戦士「!」
国王「…… ……」
僧侶「なのに……なのに、回復魔法が使えた、って……!?」
僧侶「……お、おかしい、です……何故……!?」
8: 2013/09/14(土) 08:55:46.97 ID:rsutVxFjP
戦士「! ……そうか、魔であるのなら……!!」
国王「……先ほど、貴女の半身が人であろう所以」
国王「本当にエルフなのか、と……問うた所以は、そこなのですよ」
戦士「叔父上!」
国王「……落ち着いて、戦士。もう疑っては居ませんよ」
僧侶「でも……でも……ッ では、魔と人の子であれば」
僧侶「……回復魔法が、使える、と言う事……ですか? ……で、でも……!」
国王「貴女も、落ち着いて下さい僧侶さん」
国王「……側近様は、紛う事無く魔族でいらっしゃった」
国王「ただし、『元人間』の……です」
戦士「元……人間?」
国王「……人、と言うのは、唯一……」
国王「魔へと変じる事のできる、生き物なのだそうですよ」
僧侶「…… ……え?」
戦士「魔へと……変じる?」
国王「はい。側近様は、魔王の力で人から魔へと変じた元人間の魔族」
僧侶「そんな……そんな事が……可能、なのですか……!?」
国王「……その目で確かに見た物を、否定する事は難しいでしょう」
戦士「何故……魔族等に……」
国王「私も、にわかに信じられる話では無いと思いました」
国王「…… ……ですが」
戦士「『世界の裏側を少しだけ』……」
国王「……何より、お母様のお言葉です。疑おうとしても……難しいのですよ」
国王「実際に、見てこられ……残して下さった『世界の裏側』」
国王「紐解く必要がなければ決して開くなと……」
国王「……痛い程、その気持ちが……解りますよ」
国王「……先ほど、貴女の半身が人であろう所以」
国王「本当にエルフなのか、と……問うた所以は、そこなのですよ」
戦士「叔父上!」
国王「……落ち着いて、戦士。もう疑っては居ませんよ」
僧侶「でも……でも……ッ では、魔と人の子であれば」
僧侶「……回復魔法が、使える、と言う事……ですか? ……で、でも……!」
国王「貴女も、落ち着いて下さい僧侶さん」
国王「……側近様は、紛う事無く魔族でいらっしゃった」
国王「ただし、『元人間』の……です」
戦士「元……人間?」
国王「……人、と言うのは、唯一……」
国王「魔へと変じる事のできる、生き物なのだそうですよ」
僧侶「…… ……え?」
戦士「魔へと……変じる?」
国王「はい。側近様は、魔王の力で人から魔へと変じた元人間の魔族」
僧侶「そんな……そんな事が……可能、なのですか……!?」
国王「……その目で確かに見た物を、否定する事は難しいでしょう」
戦士「何故……魔族等に……」
国王「私も、にわかに信じられる話では無いと思いました」
国王「…… ……ですが」
戦士「『世界の裏側を少しだけ』……」
国王「……何より、お母様のお言葉です。疑おうとしても……難しいのですよ」
国王「実際に、見てこられ……残して下さった『世界の裏側』」
国王「紐解く必要がなければ決して開くなと……」
国王「……痛い程、その気持ちが……解りますよ」
13: 2013/09/14(土) 10:35:07.58 ID:rsutVxFjP
戦士「……女剣士様の思い人が、その……」
戦士「側近様……だと、言うのか?」
国王「……側近様と金の髪の勇者様が居なくなってから」
国王「女剣士様は、あの……勇者と母君がいらっしゃった小屋に、住んでいらした」
戦士「…… ……」
国王「……貴方の名付け親は、女剣士様です」
戦士「聞いて、ます」
国王「目先の疑問に捕らわれすぎて、真実を見失わないで下さい、戦士」
戦士「え……」
僧侶「真実……」
国王「私にも兄さんにも……勿論、貴方達にも」
国王「知らない事が、まだまだあるのでしょう」
国王「……知らなければいけない事も」
僧侶「…… ……」
戦士「やはり……俺達は、魔導国に行かなくてはいけないだろうな」
国王「…… ……」
戦士「側近様……だと、言うのか?」
国王「……側近様と金の髪の勇者様が居なくなってから」
国王「女剣士様は、あの……勇者と母君がいらっしゃった小屋に、住んでいらした」
戦士「…… ……」
国王「……貴方の名付け親は、女剣士様です」
戦士「聞いて、ます」
国王「目先の疑問に捕らわれすぎて、真実を見失わないで下さい、戦士」
戦士「え……」
僧侶「真実……」
国王「私にも兄さんにも……勿論、貴方達にも」
国王「知らない事が、まだまだあるのでしょう」
国王「……知らなければいけない事も」
僧侶「…… ……」
戦士「やはり……俺達は、魔導国に行かなくてはいけないだろうな」
国王「…… ……」
14: 2013/09/14(土) 10:51:23.92 ID:rsutVxFjP
僧侶「……はい」
国王「決して、無茶はしないと誓って下さい」
戦士「はい、叔父上」
国王「ですが……確かに、貴方達に頼らざるを得ない」
国王「……勇者に言われて、気がつきましたよ」
戦士「え?」
国王「『魔王を倒す事だけが、世界を救う事じゃ無い』と、ね」
僧侶「…… ……」
国王「兄さん達が戻れば、食事にしましょう」
国王「……ああ、そうだ。その前に……見せておきたい物があります」
国王「戦士は見た事がありますね?」
戦士「え……」
僧侶「?」
国王「お母様が作られた魔石、ですよ」
国王「……『世界』から、忘れられて行く、技術です」
……
………
…………
王子「……これだな」
魔法使い「名前、剣士…… ……え!?」
勇者「剣を通して、魔法を使う!?」
王子「属性までは書いていないな……日付は……随分古い」ペラ
魔法使い「ええと…… ……うん、やっぱり……」
魔法使い「……私が、お爺様達に試された少し後、だわ」
国王「決して、無茶はしないと誓って下さい」
戦士「はい、叔父上」
国王「ですが……確かに、貴方達に頼らざるを得ない」
国王「……勇者に言われて、気がつきましたよ」
戦士「え?」
国王「『魔王を倒す事だけが、世界を救う事じゃ無い』と、ね」
僧侶「…… ……」
国王「兄さん達が戻れば、食事にしましょう」
国王「……ああ、そうだ。その前に……見せておきたい物があります」
国王「戦士は見た事がありますね?」
戦士「え……」
僧侶「?」
国王「お母様が作られた魔石、ですよ」
国王「……『世界』から、忘れられて行く、技術です」
……
………
…………
王子「……これだな」
魔法使い「名前、剣士…… ……え!?」
勇者「剣を通して、魔法を使う!?」
王子「属性までは書いていないな……日付は……随分古い」ペラ
魔法使い「ええと…… ……うん、やっぱり……」
魔法使い「……私が、お爺様達に試された少し後、だわ」
15: 2013/09/14(土) 10:57:28.66 ID:rsutVxFjP
勇者「……俺は、選ばなかったけど……」
勇者「魔法使い達に此処で会った時、彼も……確かに居ました」
魔法使い「……廻りを見ている余裕が私には無かったけど……」
勇者「驚いたんだ。俺に……似すぎてて。でも……」
勇者「……どこか懐かしい感じがしたけど、俺は……」
王子「勇者様が選ばなかった、と言う事は」
王子「……運命に選ばれなかった、と言う事です」
王子「何かを企んでいたのか……しかし……」
魔法使い「……でも、もし本当に……剣士が少年だとするなら」
魔法使い「こんな……堂々と…… ……」
王子「しかし……居たんだろう?」
魔法使い「え?」
王子「……『魔導将軍』だ」
勇者「はい……見た目は、人間そのものでした」
勇者「……僧侶も、気がつかなかったみたいだし」
魔法使い「自分と同じに考えちゃ駄目かもしれないけど」
魔法使い「……余裕が無かった、んだと思うわよ」
魔法使い「それに、剣士が魔族なら……魔導将軍も言ってたけど」
魔法使い「魔力を封印してた、とか……」
王子「……魔法使い、そうじゃない」
魔法使い「え?」
王子「……魔王に繋がるだろう者、が……二人同時に居たんだ」
勇者「!」
王子「結託しているとみても不思議じゃ無いだろう」
魔法使い「あ……!」
勇者「魔法使い達に此処で会った時、彼も……確かに居ました」
魔法使い「……廻りを見ている余裕が私には無かったけど……」
勇者「驚いたんだ。俺に……似すぎてて。でも……」
勇者「……どこか懐かしい感じがしたけど、俺は……」
王子「勇者様が選ばなかった、と言う事は」
王子「……運命に選ばれなかった、と言う事です」
王子「何かを企んでいたのか……しかし……」
魔法使い「……でも、もし本当に……剣士が少年だとするなら」
魔法使い「こんな……堂々と…… ……」
王子「しかし……居たんだろう?」
魔法使い「え?」
王子「……『魔導将軍』だ」
勇者「はい……見た目は、人間そのものでした」
勇者「……僧侶も、気がつかなかったみたいだし」
魔法使い「自分と同じに考えちゃ駄目かもしれないけど」
魔法使い「……余裕が無かった、んだと思うわよ」
魔法使い「それに、剣士が魔族なら……魔導将軍も言ってたけど」
魔法使い「魔力を封印してた、とか……」
王子「……魔法使い、そうじゃない」
魔法使い「え?」
王子「……魔王に繋がるだろう者、が……二人同時に居たんだ」
勇者「!」
王子「結託しているとみても不思議じゃ無いだろう」
魔法使い「あ……!」
16: 2013/09/14(土) 11:06:26.48 ID:rsutVxFjP
勇者「……で、でも、剣士の登録は……俺達が随分幼い頃ですよ?」
王子「……見た目は変わっていた、のか?」
魔法使い「! ……幼い頃の記憶は確かじゃ……無いですけど」
魔法使い「……でも、あの頃は『お兄さん』だと思ってた」
勇者「確かに……今は、俺と同じぐらいか……少し上、にしか……」
王子「……それに、俺は闘技大会で『紫の瞳の男』を見ている」
王子「あれは……俺が女剣士様と戦った時だ。忘れもしない」
王子「……金の髪の勇者だと思った。そっくりだったからな」
勇者「その時の、見た目は……」
王子「今の貴方と変わりませんよ、勇者様」
王子「……それに、これだ」パサ
魔法使い「依頼書……?」ペラ
王子「剣士は……ここから依頼を受けて」
王子「鍛冶師の村の傭兵の仕事に出向いている」
勇者「!」
王子「……その、インキュバスの魔石を魔導国へ持ち帰った時期が解らない以上」
王子「決めつける訳にはいかないが……」
魔法使い「剣士が、持ち帰った可能性もある……!」
王子「僧侶の言い分を信じると……随分と力の強い魔族だった様だし」
勇者「…… ……」
王子「……すみません。疑いたい訳では無いのですけど」
魔法使い「いえ……さっきの話、ですよね」
勇者「側近……か。『魔王の側近』だった、盲目の男……」
勇者「……父さんを育てた人で、女剣士様の思い人」
王子「…… ……」
魔法使い「…… ……」
王子「……見た目は変わっていた、のか?」
魔法使い「! ……幼い頃の記憶は確かじゃ……無いですけど」
魔法使い「……でも、あの頃は『お兄さん』だと思ってた」
勇者「確かに……今は、俺と同じぐらいか……少し上、にしか……」
王子「……それに、俺は闘技大会で『紫の瞳の男』を見ている」
王子「あれは……俺が女剣士様と戦った時だ。忘れもしない」
王子「……金の髪の勇者だと思った。そっくりだったからな」
勇者「その時の、見た目は……」
王子「今の貴方と変わりませんよ、勇者様」
王子「……それに、これだ」パサ
魔法使い「依頼書……?」ペラ
王子「剣士は……ここから依頼を受けて」
王子「鍛冶師の村の傭兵の仕事に出向いている」
勇者「!」
王子「……その、インキュバスの魔石を魔導国へ持ち帰った時期が解らない以上」
王子「決めつける訳にはいかないが……」
魔法使い「剣士が、持ち帰った可能性もある……!」
王子「僧侶の言い分を信じると……随分と力の強い魔族だった様だし」
勇者「…… ……」
王子「……すみません。疑いたい訳では無いのですけど」
魔法使い「いえ……さっきの話、ですよね」
勇者「側近……か。『魔王の側近』だった、盲目の男……」
勇者「……父さんを育てた人で、女剣士様の思い人」
王子「…… ……」
魔法使い「…… ……」
17: 2013/09/14(土) 11:29:51.59 ID:rsutVxFjP
勇者「そして……元人間」
王子「……剣士が、魔王であるとするなら」
王子「様々な属性の魔法が使えるとするなら」
王子「……この記述は、誤魔化し、か……」
魔法使い「……本当に、剣士は……魔王なのかしら」
勇者「それを確かめに行くんだ、魔法使い」
王子「……お母様の残された本を読んでも、解らない事が多すぎる」
王子「それに……魔導将軍が勇者様に残した言葉も」
魔法使い「二人が結託して、此処に居たとするのなら…… ……」
魔法使い「……あれ?」
勇者「どうした?」
魔法使い「剣士が……魔王だとするのなら」
魔法使い「……最果てにある、って言う……魔王の城には……」
魔法使い「魔王は、居ない……の……!?」
王子「その可能性は否定は出来ん。だからこそ」
王子「……魔導国に向かわざるを得ない、んだろう?」
勇者「……はい」
魔法使い「でも……矛盾だらけ、よね」
魔法使い「行動が無茶苦茶すぎて、どこかで行き詰まっちゃうわ」
勇者「本当に迷路に迷い込んだみたいだよな」フゥ
王子「……勇者様の母君も、同じ事仰っていた」
勇者「『世界の裏側を少しだけ知っている』ですか……」
王子「偶然で片付けるには、余りにも……」
魔法使い「……お母様は何処に……」
王子「…… ……」
魔法使い「あ! ……ご免なさい……ッ」
勇者「気にしないで下さい。 ……大丈夫です」
王子「……すみません」
勇者「確かに……心配です。でも……」
勇者「……側近、て人も……忽然と姿を消した、んですよね」
王子「見た訳では無いので……解らないです、けれど」
王子「『居なくなった』と言う点は、同じですね」
王子「……剣士が、魔王であるとするなら」
王子「様々な属性の魔法が使えるとするなら」
王子「……この記述は、誤魔化し、か……」
魔法使い「……本当に、剣士は……魔王なのかしら」
勇者「それを確かめに行くんだ、魔法使い」
王子「……お母様の残された本を読んでも、解らない事が多すぎる」
王子「それに……魔導将軍が勇者様に残した言葉も」
魔法使い「二人が結託して、此処に居たとするのなら…… ……」
魔法使い「……あれ?」
勇者「どうした?」
魔法使い「剣士が……魔王だとするのなら」
魔法使い「……最果てにある、って言う……魔王の城には……」
魔法使い「魔王は、居ない……の……!?」
王子「その可能性は否定は出来ん。だからこそ」
王子「……魔導国に向かわざるを得ない、んだろう?」
勇者「……はい」
魔法使い「でも……矛盾だらけ、よね」
魔法使い「行動が無茶苦茶すぎて、どこかで行き詰まっちゃうわ」
勇者「本当に迷路に迷い込んだみたいだよな」フゥ
王子「……勇者様の母君も、同じ事仰っていた」
勇者「『世界の裏側を少しだけ知っている』ですか……」
王子「偶然で片付けるには、余りにも……」
魔法使い「……お母様は何処に……」
王子「…… ……」
魔法使い「あ! ……ご免なさい……ッ」
勇者「気にしないで下さい。 ……大丈夫です」
王子「……すみません」
勇者「確かに……心配です。でも……」
勇者「……側近、て人も……忽然と姿を消した、んですよね」
王子「見た訳では無いので……解らないです、けれど」
王子「『居なくなった』と言う点は、同じですね」
18: 2013/09/14(土) 11:39:46.26 ID:rsutVxFjP
勇者(母さん……何処に?)
魔法使い「勇者……」
勇者「……あ、御免」
王子「側近は……俺もよく知ってるんです」
王子「女剣士様が、独身を貫かれたのも……彼が、居たから」
王子「……女剣士様があの小屋で、少しの間住んでいらっしゃったのは」
王子「ご存じでした……か?」
勇者「え……いいえ……」
王子「……少し、血生臭い話になりますけど」
王子「あの場所にいらした時に……魔導国の手の者だと思われる輩に」
王子「襲われて……」
魔法使い「!」
勇者「……」ギュ
魔法使い「勇者……手……」
勇者「……握ってて良いよ。辛いだろ」ギュ
勇者「でも……御免。聞かない選択肢は、無い」
魔法使い「…… ……うん」ギュ
王子「……まだ、今の小屋までの道を作っている途中でした」
王子「昔は違う道があったのですが、そういう危険を回避する為の工事中」
王子「……そんな時に、タイミング良く、ね」
勇者「…… ……」
王子「そこへ……魔物が現れた様なのです」
魔法使い「え!?」
王子「結果として、女剣士様は左腕を失われたが、命は……助かりました」
王子「……同時期に貴方が、母君に連れられてやってきた、のです」
勇者「…… ……でも、俺が覚えて居るあの小屋は」
勇者「とても、綺麗でしたよ?」
魔法使い「そりゃ、掃除、ぐらいは……」
勇者「いや、そうじゃ無くて……なんて言うか」
勇者「凄く、暖かかったよ……なんだろうな」
勇者「…… ……幸せ、だった」
魔法使い「勇者……」
魔法使い「勇者……」
勇者「……あ、御免」
王子「側近は……俺もよく知ってるんです」
王子「女剣士様が、独身を貫かれたのも……彼が、居たから」
王子「……女剣士様があの小屋で、少しの間住んでいらっしゃったのは」
王子「ご存じでした……か?」
勇者「え……いいえ……」
王子「……少し、血生臭い話になりますけど」
王子「あの場所にいらした時に……魔導国の手の者だと思われる輩に」
王子「襲われて……」
魔法使い「!」
勇者「……」ギュ
魔法使い「勇者……手……」
勇者「……握ってて良いよ。辛いだろ」ギュ
勇者「でも……御免。聞かない選択肢は、無い」
魔法使い「…… ……うん」ギュ
王子「……まだ、今の小屋までの道を作っている途中でした」
王子「昔は違う道があったのですが、そういう危険を回避する為の工事中」
王子「……そんな時に、タイミング良く、ね」
勇者「…… ……」
王子「そこへ……魔物が現れた様なのです」
魔法使い「え!?」
王子「結果として、女剣士様は左腕を失われたが、命は……助かりました」
王子「……同時期に貴方が、母君に連れられてやってきた、のです」
勇者「…… ……でも、俺が覚えて居るあの小屋は」
勇者「とても、綺麗でしたよ?」
魔法使い「そりゃ、掃除、ぐらいは……」
勇者「いや、そうじゃ無くて……なんて言うか」
勇者「凄く、暖かかったよ……なんだろうな」
勇者「…… ……幸せ、だった」
魔法使い「勇者……」
19: 2013/09/14(土) 11:52:48.92 ID:rsutVxFjP
王子「…… ……母の愛、でしょうか」
勇者「そうかもしれません」
勇者「……後で、僧侶と戦士も一緒に、連れて行って下さい」
勇者「僧侶なら……何か解るかもしれない」
魔法使い「……そうね」
王子「…… ……仲間だから、ですか?」
勇者「え?」
王子「すみません。本当に……俺だって、疑いたくは無いんです、でも……!」
魔法使い「…… ……」
王子「エルフの姫、と言う人の特徴とも一致するし」
王子「……確かに、エルフの弓……お母様が差し上げただろう物と」
王子「同じなのだろうと、信じようとは……する、のです……けど」
勇者「……仲間だから、確かに信じています。でも」
勇者「騎士団長様は……側近さんの事も、信じられません……か?」
王子「…… ……信じたい、ですけど、ね」
勇者「俺は……信じます。盲目の身で、父さんを育てて下さった」
王子「…… ……」
勇者「……すみません。中々、そう……簡単には……いかないですよね」
王子「いえ……俺こそ、すみません」
王子「そんな事言い出せば……お母様も、お父様も」
王子「誰も……信じられなく、なってしまう……」
魔法使い「……『大いなる勘違い』」
勇者「魔法使い?」
魔法使い「この……『世界の裏側』を紐解けば」
魔法使い「真実にたどり着くなら……そうするしか無いわよ、勇者」
勇者「……うん」
王子「戻りましょうか。食事を済ませて、取りあえず今できる事の対策を練りましょう」
……
………
…………
勇者「そうかもしれません」
勇者「……後で、僧侶と戦士も一緒に、連れて行って下さい」
勇者「僧侶なら……何か解るかもしれない」
魔法使い「……そうね」
王子「…… ……仲間だから、ですか?」
勇者「え?」
王子「すみません。本当に……俺だって、疑いたくは無いんです、でも……!」
魔法使い「…… ……」
王子「エルフの姫、と言う人の特徴とも一致するし」
王子「……確かに、エルフの弓……お母様が差し上げただろう物と」
王子「同じなのだろうと、信じようとは……する、のです……けど」
勇者「……仲間だから、確かに信じています。でも」
勇者「騎士団長様は……側近さんの事も、信じられません……か?」
王子「…… ……信じたい、ですけど、ね」
勇者「俺は……信じます。盲目の身で、父さんを育てて下さった」
王子「…… ……」
勇者「……すみません。中々、そう……簡単には……いかないですよね」
王子「いえ……俺こそ、すみません」
王子「そんな事言い出せば……お母様も、お父様も」
王子「誰も……信じられなく、なってしまう……」
魔法使い「……『大いなる勘違い』」
勇者「魔法使い?」
魔法使い「この……『世界の裏側』を紐解けば」
魔法使い「真実にたどり着くなら……そうするしか無いわよ、勇者」
勇者「……うん」
王子「戻りましょうか。食事を済ませて、取りあえず今できる事の対策を練りましょう」
……
………
…………
20: 2013/09/14(土) 12:21:55.91 ID:rsutVxFjP
剣士「『支配する為の世界』……だと?」
母親「そうよ。この石があれば、人間を従わせる事なんて簡単よ」
剣士「…… ……」
母親「鍛冶師の村で実践済みでしょ?」
剣士「そうして……脅して回るつもりか」
母親「まさか!そんな面倒な事しないわよ」
剣士「…… ……」
母親「……もうすぐ、勇者達が此処に来るはずよ」
剣士「? そんな保証は……」
母親「あると言った、でしょう?」
剣士「……魔石の話と、何の関係がある?」
母親「何の為にあの洞窟を手に入れたと思うの」
剣士「何……?」
母親「何の為に鍛冶師の村の奴らを従わせたと思っているの?」
母親「あの鉱石は、鍛冶師が金の髪の勇者の光の剣を修理するのに使ったのよ」
剣士「…… ……」
母親「光の剣が無いと、魔王は倒せない……のかどうか、知らないけれど」
母親「材料と職人はこの国の手の内にある」
剣士「それだけで……勇者が動くとでも思う、のか?」
母親「動かすのよ」
母親「この、魔寄せの石。街の中にばらまいたらどうなると思う?」
剣士「!」
母親「……貴方は魔法使いと子供を作る」
母親「勇者は、完璧な光の剣を手に入れる」
母親「……そして、勇者に着いていけば良い。魔王を倒せば良い」
剣士「そんなに……上手く行くと思うな」
母親「そうよ。この石があれば、人間を従わせる事なんて簡単よ」
剣士「…… ……」
母親「鍛冶師の村で実践済みでしょ?」
剣士「そうして……脅して回るつもりか」
母親「まさか!そんな面倒な事しないわよ」
剣士「…… ……」
母親「……もうすぐ、勇者達が此処に来るはずよ」
剣士「? そんな保証は……」
母親「あると言った、でしょう?」
剣士「……魔石の話と、何の関係がある?」
母親「何の為にあの洞窟を手に入れたと思うの」
剣士「何……?」
母親「何の為に鍛冶師の村の奴らを従わせたと思っているの?」
母親「あの鉱石は、鍛冶師が金の髪の勇者の光の剣を修理するのに使ったのよ」
剣士「…… ……」
母親「光の剣が無いと、魔王は倒せない……のかどうか、知らないけれど」
母親「材料と職人はこの国の手の内にある」
剣士「それだけで……勇者が動くとでも思う、のか?」
母親「動かすのよ」
母親「この、魔寄せの石。街の中にばらまいたらどうなると思う?」
剣士「!」
母親「……貴方は魔法使いと子供を作る」
母親「勇者は、完璧な光の剣を手に入れる」
母親「……そして、勇者に着いていけば良い。魔王を倒せば良い」
剣士「そんなに……上手く行くと思うな」
21: 2013/09/14(土) 12:27:14.38 ID:rsutVxFjP
おひるごはーん
24: 2013/09/14(土) 13:49:03.26 ID:rsutVxFjP
母親「……どうかしら、ね」フフ
剣士「…… ……」
母親「上手く行かないと思えば……行かない物よ」
母親「さっきも言ったでしょう。そうさせれば良い、のよ」
母親「……簡単な話」
コンコン
剣士「…… ……?」
母親「届いたのね」スタスタ
剣士「! ……此処に直接?」
母親「全部じゃ無いわよ……」カチャ
母親「……そこに居て頂戴」
パタン
剣士「…… ……」
剣士(簡単に言う……いくら俺が恩があると言え)
剣士(……従う理由など、無い。何より……)
剣士(俺は、勇者に『選ばれなかった』)
剣士(……だが)
剣士(『魔王を倒す』んだ……『倒さなければならない』んだ)
剣士(……その思いは……消えん)
剣士「…… ……」
剣士(何を……企んでいる……?)
剣士(……何を、隠している)
剣士「…… ……」
母親「上手く行かないと思えば……行かない物よ」
母親「さっきも言ったでしょう。そうさせれば良い、のよ」
母親「……簡単な話」
コンコン
剣士「…… ……?」
母親「届いたのね」スタスタ
剣士「! ……此処に直接?」
母親「全部じゃ無いわよ……」カチャ
母親「……そこに居て頂戴」
パタン
剣士「…… ……」
剣士(簡単に言う……いくら俺が恩があると言え)
剣士(……従う理由など、無い。何より……)
剣士(俺は、勇者に『選ばれなかった』)
剣士(……だが)
剣士(『魔王を倒す』んだ……『倒さなければならない』んだ)
剣士(……その思いは……消えん)
剣士「…… ……」
剣士(何を……企んでいる……?)
剣士(……何を、隠している)
25: 2013/09/14(土) 14:06:08.11 ID:rsutVxFjP
スタスタ
剣士(…… ……炎、か)ヒョイ
剣士(確かに……禍々しい、と言えばそうだが)コロコロ
剣士(…… ……)コン
剣士(魔族の物……だと言ったな)
剣士(この石を量産する? ……馬鹿な!)
剣士(…… 世界を作り替える、等と言っていた、が)
剣士(何を支配する気なんだ。何を……)
カチャ
母親「……やっぱり、それに触っても平気なのね」
剣士「どう言う意味だ」
母親「さっき話したでしょ。これは……弱い魔物を寄せ付ける」
母親「惹かれて、離れられなくなるのよ」
剣士「……それが、何だ」
母親「貴方、魔族でしょ?」
剣士「俺、は…… ……」
母親「肯定できないのは解ってるわ。だけど、否定も出来ないでしょう」
母親「見た目も変わらない。あり得ない紫の瞳」
剣士「…… ……」
母親「記憶は無くしているかもしれないけれど」
母親「……貴方は、少年よ」
剣士「違う……ッ」
母親「それも、否定も肯定も出来ない筈よ」
母親「それに触れても、動じない位の力を持つ魔族」
剣士「……黙れ!」
母親「お父様は思い出して貰っては困る、なんて言ってたけど」
剣士「…… ……」
母親「思い出して貰わないと、困るのよ」
剣士「……何故だ。お前達は……何を企んでいる!」
剣士(…… ……炎、か)ヒョイ
剣士(確かに……禍々しい、と言えばそうだが)コロコロ
剣士(…… ……)コン
剣士(魔族の物……だと言ったな)
剣士(この石を量産する? ……馬鹿な!)
剣士(…… 世界を作り替える、等と言っていた、が)
剣士(何を支配する気なんだ。何を……)
カチャ
母親「……やっぱり、それに触っても平気なのね」
剣士「どう言う意味だ」
母親「さっき話したでしょ。これは……弱い魔物を寄せ付ける」
母親「惹かれて、離れられなくなるのよ」
剣士「……それが、何だ」
母親「貴方、魔族でしょ?」
剣士「俺、は…… ……」
母親「肯定できないのは解ってるわ。だけど、否定も出来ないでしょう」
母親「見た目も変わらない。あり得ない紫の瞳」
剣士「…… ……」
母親「記憶は無くしているかもしれないけれど」
母親「……貴方は、少年よ」
剣士「違う……ッ」
母親「それも、否定も肯定も出来ない筈よ」
母親「それに触れても、動じない位の力を持つ魔族」
剣士「……黙れ!」
母親「お父様は思い出して貰っては困る、なんて言ってたけど」
剣士「…… ……」
母親「思い出して貰わないと、困るのよ」
剣士「……何故だ。お前達は……何を企んでいる!」
26: 2013/09/14(土) 14:18:10.94 ID:rsutVxFjP
母親「さっきも言ったじゃ無いの。世界を……」
剣士「支配する者がいれば、支配される者も同時に存在するんだ」
剣士「……お前の言っている事は……」
母親「『私達が支配する世界』にするのよ!」
剣士「……何?」
母親「どうして、金の髪の勇者が魔王を倒したのに」
母親「『世界』から魔が失われなかったと思う?」
剣士「……?」
母親「どうして、魔王が居ない世界に、また勇者が生まれたと思う?」
剣士「……復活した、からだろう」
母親「信じてるの?」
剣士「……何?」
母親「答えは簡単じゃないの」
剣士「……知っている、と言うのか」
母親「教えて欲しい?」ニッ
剣士「…… ……」
母親「肯定は出来ないわよね……まあ、良いわ」
母親「答えは……もうすぐ、金の瞳の少年が持って来る」
剣士「!」
母親「必ず来る、と言ったでしょう」
剣士「……し、しかし」
母親「さっき知らせが届いたわ」
母親「勇者達が今朝、この国に向けて出発した、とね」
剣士「!」
母親「さあ、行くわよ?」
剣士「……何処に」
母親「決まってるでしょう……勇者様をお出迎えに、よ」
剣士「…… ……」
……
………
…………
剣士「支配する者がいれば、支配される者も同時に存在するんだ」
剣士「……お前の言っている事は……」
母親「『私達が支配する世界』にするのよ!」
剣士「……何?」
母親「どうして、金の髪の勇者が魔王を倒したのに」
母親「『世界』から魔が失われなかったと思う?」
剣士「……?」
母親「どうして、魔王が居ない世界に、また勇者が生まれたと思う?」
剣士「……復活した、からだろう」
母親「信じてるの?」
剣士「……何?」
母親「答えは簡単じゃないの」
剣士「……知っている、と言うのか」
母親「教えて欲しい?」ニッ
剣士「…… ……」
母親「肯定は出来ないわよね……まあ、良いわ」
母親「答えは……もうすぐ、金の瞳の少年が持って来る」
剣士「!」
母親「必ず来る、と言ったでしょう」
剣士「……し、しかし」
母親「さっき知らせが届いたわ」
母親「勇者達が今朝、この国に向けて出発した、とね」
剣士「!」
母親「さあ、行くわよ?」
剣士「……何処に」
母親「決まってるでしょう……勇者様をお出迎えに、よ」
剣士「…… ……」
……
………
…………
27: 2013/09/14(土) 14:33:58.61 ID:rsutVxFjP
勇者「……どう思う」
僧侶「どう考えても……繋がりません」
魔法使い「そうね、話を聞く限り……剣士が……少年が鍵を握ってる……けど」
戦士「……叔父上が見せて下さった魔石も、少年がお祖母様に作り方を」
戦士「教えたのだと……言っていた」
魔法使い「全てが少年に帰結するわ。でも……道筋は矛盾だらけ」
僧侶「……この目で確かめるのが最善には違い無いと思います」
僧侶「でも……」
戦士「とにかく、親父が戻ったら勇者の家へ行こう」
戦士「それから……」
魔法使い「……魔導国、ね」
勇者「ああ」
勇者「……どうにか、戦争にならない様にしないと」
魔法使い「でも……あの人達は、人の言う事なんて聞かないわ」
戦士「…… ……」
カチャ
王子「お待たせしました……準備は宜しいですか?」
勇者「あ……はい!」
王子「……では、行きましょう。ご案内致します」
王子「俺は……入口で待ってますから」
スタスタ
戦士「……親父」
王子「ん? ……なんだ」
戦士「昔、連れて行ってくれようとしていた勇者の家、て言うのが……」
王子「……ああ。今向かっている所、だ」
戦士「…… ……女剣士様が、襲われた場所」
王子「…… ……」
戦士「女剣士様は……お幸せで居られたのだろうか」
僧侶「どう考えても……繋がりません」
魔法使い「そうね、話を聞く限り……剣士が……少年が鍵を握ってる……けど」
戦士「……叔父上が見せて下さった魔石も、少年がお祖母様に作り方を」
戦士「教えたのだと……言っていた」
魔法使い「全てが少年に帰結するわ。でも……道筋は矛盾だらけ」
僧侶「……この目で確かめるのが最善には違い無いと思います」
僧侶「でも……」
戦士「とにかく、親父が戻ったら勇者の家へ行こう」
戦士「それから……」
魔法使い「……魔導国、ね」
勇者「ああ」
勇者「……どうにか、戦争にならない様にしないと」
魔法使い「でも……あの人達は、人の言う事なんて聞かないわ」
戦士「…… ……」
カチャ
王子「お待たせしました……準備は宜しいですか?」
勇者「あ……はい!」
王子「……では、行きましょう。ご案内致します」
王子「俺は……入口で待ってますから」
スタスタ
戦士「……親父」
王子「ん? ……なんだ」
戦士「昔、連れて行ってくれようとしていた勇者の家、て言うのが……」
王子「……ああ。今向かっている所、だ」
戦士「…… ……女剣士様が、襲われた場所」
王子「…… ……」
戦士「女剣士様は……お幸せで居られたのだろうか」
28: 2013/09/14(土) 14:42:47.74 ID:rsutVxFjP
王子「……お前の名を授けてくれたのも、女剣士様だ」
戦士「ああ」
王子「孫の様だと……可愛がって下さって居たよ」
戦士「…… ……」
王子「抱いてやる事が出来ないのが残念だと……言っていたが、な」
戦士(女剣士様の思い人は……魔王の、側近)
戦士(その事実を……勿論、知っていらっしゃった、のだろう)
戦士(……信じて、いらっしゃった、のだろう)
戦士(だが……魔王は……少年。そして、剣士……!?)
僧侶「あ、あの。戦士さん?」
戦士「……あ、ああ……どうした」
僧侶「……信じて下さって、ありがとうございました」
戦士「え?」
僧侶「知らなかったとは言え、側近様の、その……」
僧侶「……そんな、例があると……あの……」
戦士「お前は、仲間だ、僧侶」
戦士「……それに、例を言うのは俺の方だ」
僧侶「え?」
戦士「さっき、叔父上が見せてくれたお祖母様の魔石……」
僧侶「…… ……」
戦士「『とても力強く、俺に似た感じがする』と……」
僧侶「……はい。騎士団長様を見ていても思います」
僧侶「解ります……戦士さんが、とても……その」
僧侶「……良く、似ていらっしゃいます」
戦士「ありがとう……嬉しかった」
僧侶(母を知っていた、盗賊様……)
僧侶(……全てを知って、伝える事は……悩まれたのだろう)
僧侶(だけど……残して下さってありがとうございます)
僧侶(魔王……貴方は、さらに……まだ、知っているのでしょうか?)
戦士「ああ」
王子「孫の様だと……可愛がって下さって居たよ」
戦士「…… ……」
王子「抱いてやる事が出来ないのが残念だと……言っていたが、な」
戦士(女剣士様の思い人は……魔王の、側近)
戦士(その事実を……勿論、知っていらっしゃった、のだろう)
戦士(……信じて、いらっしゃった、のだろう)
戦士(だが……魔王は……少年。そして、剣士……!?)
僧侶「あ、あの。戦士さん?」
戦士「……あ、ああ……どうした」
僧侶「……信じて下さって、ありがとうございました」
戦士「え?」
僧侶「知らなかったとは言え、側近様の、その……」
僧侶「……そんな、例があると……あの……」
戦士「お前は、仲間だ、僧侶」
戦士「……それに、例を言うのは俺の方だ」
僧侶「え?」
戦士「さっき、叔父上が見せてくれたお祖母様の魔石……」
僧侶「…… ……」
戦士「『とても力強く、俺に似た感じがする』と……」
僧侶「……はい。騎士団長様を見ていても思います」
僧侶「解ります……戦士さんが、とても……その」
僧侶「……良く、似ていらっしゃいます」
戦士「ありがとう……嬉しかった」
僧侶(母を知っていた、盗賊様……)
僧侶(……全てを知って、伝える事は……悩まれたのだろう)
僧侶(だけど……残して下さってありがとうございます)
僧侶(魔王……貴方は、さらに……まだ、知っているのでしょうか?)
29: 2013/09/14(土) 14:48:29.92 ID:rsutVxFjP
魔法使い「ねえ、僧侶」
僧侶「は、はい!?」
魔法使い「ぼーっとしてると転ぶわよ……いや、あのね」
僧侶「だ、大丈夫ですよ! ……はい?」
魔法使い「……魔導国に行くと、きっと厭な思いをすると思う」
僧侶「え?」
魔法使い「絶対に戦士の傍から離れちゃ駄目よ」
魔法使い「……勇者の事だから、長居はしないと思うけど……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「絶対に一人にならないで。約束して」
僧侶「魔法使いさん……」
魔法使い「……お願いよ。大事な……仲間なんだから」
僧侶「……はい。ありがとうございます」
魔法使い(……覚悟を決めるのよ、魔法使い)
魔法使い(私には仲間が居る。勇者が居る……だから)
魔法使い(私は……一人じゃない!)
魔法使い(剣士……折角庇ってくれた、けど……貴方が、もし魔王なら……!)
勇者「魔法使い」
魔法使い「え? ……あ、何?」
勇者「……大丈夫か?」
魔法使い「……平気、って言いたい、けどね」
勇者「…… ……」
魔法使い「ねえ、勇者のお母さんって、どんな人だったの?」
勇者「え? ……なんだよ、こんな時に」
魔法使い「こんな時だから聞きたいのよ。私達だけで……これ以上」
魔法使い「考えられる事も……考えつく事も……」
勇者「……そうだな」
僧侶「は、はい!?」
魔法使い「ぼーっとしてると転ぶわよ……いや、あのね」
僧侶「だ、大丈夫ですよ! ……はい?」
魔法使い「……魔導国に行くと、きっと厭な思いをすると思う」
僧侶「え?」
魔法使い「絶対に戦士の傍から離れちゃ駄目よ」
魔法使い「……勇者の事だから、長居はしないと思うけど……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「絶対に一人にならないで。約束して」
僧侶「魔法使いさん……」
魔法使い「……お願いよ。大事な……仲間なんだから」
僧侶「……はい。ありがとうございます」
魔法使い(……覚悟を決めるのよ、魔法使い)
魔法使い(私には仲間が居る。勇者が居る……だから)
魔法使い(私は……一人じゃない!)
魔法使い(剣士……折角庇ってくれた、けど……貴方が、もし魔王なら……!)
勇者「魔法使い」
魔法使い「え? ……あ、何?」
勇者「……大丈夫か?」
魔法使い「……平気、って言いたい、けどね」
勇者「…… ……」
魔法使い「ねえ、勇者のお母さんって、どんな人だったの?」
勇者「え? ……なんだよ、こんな時に」
魔法使い「こんな時だから聞きたいのよ。私達だけで……これ以上」
魔法使い「考えられる事も……考えつく事も……」
勇者「……そうだな」
30: 2013/09/14(土) 14:55:27.07 ID:rsutVxFjP
勇者「母さんは……優しい人だ。だけど、何時も寂しそうだったな」
勇者「柔らかく笑って……暖かく包んでくれるような人だった」
勇者「でも、その笑顔が……寂しそうに見える時があった……な」
魔法使い「…… ……」
勇者(母さん……何処に行ってしまったんだ?)
勇者(無事で居るなら、良い。良いんだけど……)
勇者(側近って人も、父さんを送り出して……居なくなった)
勇者(……母さんは、何を知ってたんだ?)
王子「……『世界の裏側を少しだけ』」
勇者「え?」
王子「これだけ様々な情報がありながら、どれも……不鮮明で」
王子「魔法使いも言っていましたが、矛盾だらけです」
王子「……見失わないで下さい」
勇者「…… ……はい」
王子「あれです……俺は、この辺で待ってますから」
勇者「…… ……変わって、ない、な」
スタスタ、カチャ
戦士「……埃は積もっているが……綺麗、だな」
魔法使い「確かに……荒らされたりはしてないみたいね」
僧侶「……不穏な気配は感じられません」
僧侶「寧ろ……優しく包まれるような……大きくて、暖かい……気配がします」
魔法使い「良い家で育ったのね、勇者」
僧侶「……母の愛、ですかね」
勇者「……ありがとう」
戦士「しかし……ならばやはり、自分の意思でどこかへ……?」
勇者「柔らかく笑って……暖かく包んでくれるような人だった」
勇者「でも、その笑顔が……寂しそうに見える時があった……な」
魔法使い「…… ……」
勇者(母さん……何処に行ってしまったんだ?)
勇者(無事で居るなら、良い。良いんだけど……)
勇者(側近って人も、父さんを送り出して……居なくなった)
勇者(……母さんは、何を知ってたんだ?)
王子「……『世界の裏側を少しだけ』」
勇者「え?」
王子「これだけ様々な情報がありながら、どれも……不鮮明で」
王子「魔法使いも言っていましたが、矛盾だらけです」
王子「……見失わないで下さい」
勇者「…… ……はい」
王子「あれです……俺は、この辺で待ってますから」
勇者「…… ……変わって、ない、な」
スタスタ、カチャ
戦士「……埃は積もっているが……綺麗、だな」
魔法使い「確かに……荒らされたりはしてないみたいね」
僧侶「……不穏な気配は感じられません」
僧侶「寧ろ……優しく包まれるような……大きくて、暖かい……気配がします」
魔法使い「良い家で育ったのね、勇者」
僧侶「……母の愛、ですかね」
勇者「……ありがとう」
戦士「しかし……ならばやはり、自分の意思でどこかへ……?」
31: 2013/09/14(土) 15:08:35.84 ID:rsutVxFjP
勇者「……母さん…… ……ッ」ズキンッ
戦士「勇者?」
勇者「……ッ」
魔法使い「……勇者!?」タタタ……ッ
勇者「何だ、胸が…… ……ッ」チカッ
僧侶「!? 胸の辺りが……光って…… ……!?」
チカッ ……チカ……ッ
『……う、しゃ……ゆう……しゃ ……』
魔法使い「何か、聞こえる……」
勇者「ペンダントから!? ……この声は、母さん!?」
『ゆ……うしゃ、聞こえる?』
勇者「母さん、母さんだね!?今、どこに……ッ」
『ああ、良かった。通じた……』
『時間が、無いの……だから、良く、 ……き ……て』
魔法使い「ど……どうなってるの!?」
勇者「母さん! 母さん!?」
『……最果て…… ……魔王、 し、ろ…… ……』
スゥ……
僧侶「光が……消えた」
戦士「……どう、言う事だ……!?」
戦士「……最果て……魔王の城……?」
僧侶「……今は、もう何も感じません……」
勇者「母さん……ッ どう言う事だ!?攫われたのか!?」
魔法使い「勇者様、落ち着いて! ……今は?」
僧侶「……お母様の気配だけ、感じます」
僧侶(おかしい……この家には、お母様の守りの力……)
僧侶(暖かい、愛情しか感じないのに……?)
戦士「……最果て、と言ってた……な」
戦士「勇者?」
勇者「……ッ」
魔法使い「……勇者!?」タタタ……ッ
勇者「何だ、胸が…… ……ッ」チカッ
僧侶「!? 胸の辺りが……光って…… ……!?」
チカッ ……チカ……ッ
『……う、しゃ……ゆう……しゃ ……』
魔法使い「何か、聞こえる……」
勇者「ペンダントから!? ……この声は、母さん!?」
『ゆ……うしゃ、聞こえる?』
勇者「母さん、母さんだね!?今、どこに……ッ」
『ああ、良かった。通じた……』
『時間が、無いの……だから、良く、 ……き ……て』
魔法使い「ど……どうなってるの!?」
勇者「母さん! 母さん!?」
『……最果て…… ……魔王、 し、ろ…… ……』
スゥ……
僧侶「光が……消えた」
戦士「……どう、言う事だ……!?」
戦士「……最果て……魔王の城……?」
僧侶「……今は、もう何も感じません……」
勇者「母さん……ッ どう言う事だ!?攫われたのか!?」
魔法使い「勇者様、落ち着いて! ……今は?」
僧侶「……お母様の気配だけ、感じます」
僧侶(おかしい……この家には、お母様の守りの力……)
僧侶(暖かい、愛情しか感じないのに……?)
戦士「……最果て、と言ってた……な」
32: 2013/09/14(土) 15:22:34.60 ID:rsutVxFjP
勇者「…… ……ッ」グッ
魔法使い「勇者……?」
バタンッ
王子「勇者様!? ……戦士!」
戦士「親父!?」
王子「……今、小屋から光が……大丈夫か!?」
僧侶「あ……だ、大丈夫です。あの……」
魔法使い「光…… ……」
勇者「騎士団長様」
王子「は、はい?」
勇者「……すぐに、魔導国に向かう準備を整えて下さい」
王子「……何が、あったのです」
勇者「このペンダントから……母さんの声が聞こえたんだ」
王子「え!?」
勇者「……今どこに、って聞いたら…… ……ッ」
王子「ど、何処に居られるのです!?」
魔法使い「……最果てに。魔王の……城、に」
王子「!?」
僧侶「……でも、他の気配はしないんです!此処には……!」
僧侶「暖かい、大きな気、しか……多分、これはお母様の……」
僧侶「それと、同じ気配しかしないのに、何故……!」
戦士「お前も落ち着け、僧侶……!」
僧侶(何だろう……私、これ……ッ 知って、る!?)
僧侶(……悲しくて、苦しくて……寂しくて、嬉しい)
僧侶(どうして……こんな時に……!!)
王子「……だ、だが……それなら、尚更魔導国に行くのは……」
勇者「……あの国には、剣士が……少年かもしれない男が、いるんでしょう」
王子「…… ……」
勇者「魔王……ッ 許さない……ッ」
魔法使い「勇者……ッ」ギュッ
魔法使い「勇者……?」
バタンッ
王子「勇者様!? ……戦士!」
戦士「親父!?」
王子「……今、小屋から光が……大丈夫か!?」
僧侶「あ……だ、大丈夫です。あの……」
魔法使い「光…… ……」
勇者「騎士団長様」
王子「は、はい?」
勇者「……すぐに、魔導国に向かう準備を整えて下さい」
王子「……何が、あったのです」
勇者「このペンダントから……母さんの声が聞こえたんだ」
王子「え!?」
勇者「……今どこに、って聞いたら…… ……ッ」
王子「ど、何処に居られるのです!?」
魔法使い「……最果てに。魔王の……城、に」
王子「!?」
僧侶「……でも、他の気配はしないんです!此処には……!」
僧侶「暖かい、大きな気、しか……多分、これはお母様の……」
僧侶「それと、同じ気配しかしないのに、何故……!」
戦士「お前も落ち着け、僧侶……!」
僧侶(何だろう……私、これ……ッ 知って、る!?)
僧侶(……悲しくて、苦しくて……寂しくて、嬉しい)
僧侶(どうして……こんな時に……!!)
王子「……だ、だが……それなら、尚更魔導国に行くのは……」
勇者「……あの国には、剣士が……少年かもしれない男が、いるんでしょう」
王子「…… ……」
勇者「魔王……ッ 許さない……ッ」
魔法使い「勇者……ッ」ギュッ
33: 2013/09/14(土) 15:28:17.25 ID:rsutVxFjP
王子「……わかりました。急いで、準備させます」
勇者「…… ……すみません」
王子「ですが、早くて明日の朝になると思います」
王子「今日は城で……ゆっくり休んで下さい。良いですね?」
戦士「勇者」
勇者「……はい」
……
………
…………
后「……あら?」
コンコン
使用人「失礼します……后様?」
后「ああ、ありがとう……使用人。相変わらず良い香り」
使用人「……側近様と魔導将軍が頑張って居られるのに」
使用人「暢気にお茶を飲むと言うのも……気が引ける、んですけどね」
后「仕方無いよ、やる事ないもの」
使用人「……どうされたのです?天井……見つめて」
后「んー……私も、さ。お茶貰ったら、魔王の所に行くつもりだったの」
使用人「…… ……今は落ち着いていらっしゃるのでは?」
后「うん……でも、そろそろかなって」
后「此処にいても、肌がピリピリするしね」
使用人「……そう、ですね」
后「……で、勇者に連絡取ってみたの」
使用人「…… ……は?」
后「勇者ーって、話しかけてみたんだけど……切れちゃった」
使用人「…… ……」
后「口、開いてるよ?」
使用人「いや、あ、あの!そんな……あっさり……!」
后「あのペンダント、目印になるでしょ?」
使用人「……目印って。どうやったって見えませんけど」
勇者「…… ……すみません」
王子「ですが、早くて明日の朝になると思います」
王子「今日は城で……ゆっくり休んで下さい。良いですね?」
戦士「勇者」
勇者「……はい」
……
………
…………
后「……あら?」
コンコン
使用人「失礼します……后様?」
后「ああ、ありがとう……使用人。相変わらず良い香り」
使用人「……側近様と魔導将軍が頑張って居られるのに」
使用人「暢気にお茶を飲むと言うのも……気が引ける、んですけどね」
后「仕方無いよ、やる事ないもの」
使用人「……どうされたのです?天井……見つめて」
后「んー……私も、さ。お茶貰ったら、魔王の所に行くつもりだったの」
使用人「…… ……今は落ち着いていらっしゃるのでは?」
后「うん……でも、そろそろかなって」
后「此処にいても、肌がピリピリするしね」
使用人「……そう、ですね」
后「……で、勇者に連絡取ってみたの」
使用人「…… ……は?」
后「勇者ーって、話しかけてみたんだけど……切れちゃった」
使用人「…… ……」
后「口、開いてるよ?」
使用人「いや、あ、あの!そんな……あっさり……!」
后「あのペンダント、目印になるでしょ?」
使用人「……目印って。どうやったって見えませんけど」
34: 2013/09/14(土) 15:33:43.29 ID:rsutVxFjP
后「丁度、始まりの国の、あの小屋に居るみたいだしね」
使用人「……それも普通は解りませんけど」フゥ
后「もう……」
使用人「膨れないで下さい……で、切れた、とは?」
后「急に……魔力が届かなくなっちゃった」
后「……時間、なさそうだしさ。もう、強引に四人とも」
后「呼び寄せちゃおうかなって思ったんだけど」
使用人「……はい?」
后「『まだ駄目』って事なのかなぁ……あ、いただきます」
使用人「…… ……本当に、規格外になってきましたね、后様」
后「『揃って』ないのかなぁ……」
使用人「……聞いてます?」
后「聞いてるよ」
使用人「……なら。いえ……良いです」ハァ
使用人「『揃って無い』……んですか?」
后「解らないけど……でも」
后「……揃って無かった、私達でも……倒せた、もんね」
使用人「…… ……」
后「倒すだけなら、倒せるんだろうな、勇者だもん」
使用人「……また、繰り返します」
后「うん……」
使用人「…… ……」
后「後で……もう一回、やってみる」
使用人「……ん?」
后「え?」
使用人「……北の街に向かってる、って魔導将軍様に」
使用人「仰ってませんでしたか」
后「うん。だから、随分遅いなぁと思ったら」
后「始まりの街に戻ってたんだね」
使用人「な、何故……!?」
使用人「……それも普通は解りませんけど」フゥ
后「もう……」
使用人「膨れないで下さい……で、切れた、とは?」
后「急に……魔力が届かなくなっちゃった」
后「……時間、なさそうだしさ。もう、強引に四人とも」
后「呼び寄せちゃおうかなって思ったんだけど」
使用人「……はい?」
后「『まだ駄目』って事なのかなぁ……あ、いただきます」
使用人「…… ……本当に、規格外になってきましたね、后様」
后「『揃って』ないのかなぁ……」
使用人「……聞いてます?」
后「聞いてるよ」
使用人「……なら。いえ……良いです」ハァ
使用人「『揃って無い』……んですか?」
后「解らないけど……でも」
后「……揃って無かった、私達でも……倒せた、もんね」
使用人「…… ……」
后「倒すだけなら、倒せるんだろうな、勇者だもん」
使用人「……また、繰り返します」
后「うん……」
使用人「…… ……」
后「後で……もう一回、やってみる」
使用人「……ん?」
后「え?」
使用人「……北の街に向かってる、って魔導将軍様に」
使用人「仰ってませんでしたか」
后「うん。だから、随分遅いなぁと思ったら」
后「始まりの街に戻ってたんだね」
使用人「な、何故……!?」
35: 2013/09/14(土) 15:38:45.16 ID:rsutVxFjP
后「そこまでは私にもわかんないわよ」
使用人「……そりゃ、そうですけど」
后「……必要なんでしょ、何かが」
使用人「『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』に、ですか」
后「…… ……多分、ね」
……
………
…………
剣士「……あれか」
母親「よく見えるわね」
剣士「…… ……」
剣士(船長の船に乗って居る時に……鍛えられた、な)
母親「……とうとう、よ」
剣士「……従う気等無いと言ったらどうする」
母親「…… ……」クッ
剣士「何がおかしい?」
母親「答えは勇者が持って来る、と言った筈よ」
剣士「……随分な自信だ」
勇者「! ……あれか……!」
王子「勇者様、あまり身を乗り出されては……!」
戦士「……着いてきて良かったのか、親父」
王子「……『国王の命令』さ」
魔法使い「国王様は……大丈夫なのですか」
僧侶「そうですよ……狙われている、と……」
王子「足が無いと戻れないでしょう?」
勇者「そうですが……」
王子「大丈夫です。騎士は無能ではありません」
使用人「……そりゃ、そうですけど」
后「……必要なんでしょ、何かが」
使用人「『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』に、ですか」
后「…… ……多分、ね」
……
………
…………
剣士「……あれか」
母親「よく見えるわね」
剣士「…… ……」
剣士(船長の船に乗って居る時に……鍛えられた、な)
母親「……とうとう、よ」
剣士「……従う気等無いと言ったらどうする」
母親「…… ……」クッ
剣士「何がおかしい?」
母親「答えは勇者が持って来る、と言った筈よ」
剣士「……随分な自信だ」
勇者「! ……あれか……!」
王子「勇者様、あまり身を乗り出されては……!」
戦士「……着いてきて良かったのか、親父」
王子「……『国王の命令』さ」
魔法使い「国王様は……大丈夫なのですか」
僧侶「そうですよ……狙われている、と……」
王子「足が無いと戻れないでしょう?」
勇者「そうですが……」
王子「大丈夫です。騎士は無能ではありません」
36: 2013/09/14(土) 15:43:56.49 ID:rsutVxFjP
勇者「…… ……」
王子「信じて下さい、勇者様」
王子「俺達も、『仲間』です」
勇者「……はい」
魔法使い「! ……お母様……と、あれは……!!」
戦士「剣士……!!」
僧侶(…… ……)ドキン、ドキン
僧侶(この……胸騒ぎは……何……!?)
僧侶(…… ……今なら、ハッキリ解る……あの人は……!!)
戦士「……僧侶?」
僧侶「あの人……やっぱり、人間じゃありません」
魔法使い「……魔族、なのね」
僧侶「はい…… ……以前会った時は、魔導将軍と同じように」
僧侶「……力を、封印されていたのかもしれません、ね」
王子「……着岸します。気をつけて下さい」
ザザァ…… ……
スタスタ、トン……トン
母親「ようこそいらっしゃいました、勇者様……あら」
母親「騎士団長様まで?」
王子「……王は?」
母親「……代理を仰せつかっています」
王子「…… ……」
剣士(これが、騎士団長……か)
剣士(……勇者。随分逞しくなった)
剣士(こうして間近で……改めてみると)
剣士(本当に……そっくりだ)
王子「信じて下さい、勇者様」
王子「俺達も、『仲間』です」
勇者「……はい」
魔法使い「! ……お母様……と、あれは……!!」
戦士「剣士……!!」
僧侶(…… ……)ドキン、ドキン
僧侶(この……胸騒ぎは……何……!?)
僧侶(…… ……今なら、ハッキリ解る……あの人は……!!)
戦士「……僧侶?」
僧侶「あの人……やっぱり、人間じゃありません」
魔法使い「……魔族、なのね」
僧侶「はい…… ……以前会った時は、魔導将軍と同じように」
僧侶「……力を、封印されていたのかもしれません、ね」
王子「……着岸します。気をつけて下さい」
ザザァ…… ……
スタスタ、トン……トン
母親「ようこそいらっしゃいました、勇者様……あら」
母親「騎士団長様まで?」
王子「……王は?」
母親「……代理を仰せつかっています」
王子「…… ……」
剣士(これが、騎士団長……か)
剣士(……勇者。随分逞しくなった)
剣士(こうして間近で……改めてみると)
剣士(本当に……そっくりだ)
37: 2013/09/14(土) 15:49:55.40 ID:rsutVxFjP
勇者(……剣士。俺にそっくりな男)
勇者(父さんにそっくりな男。そして……魔族の、男)
剣士「…… ……」
勇者「…… ……」
王子「では、勇者様方が戻る迄、私は船で待たせていただきます」
母親「あら、その必要はありませんよ。勇者様達はきちんと……」
王子「『王命』ですから。待たせて頂きます」
母親「……まだ、王を名乗られるおつもりですか」
王子「当然ですよ。理不尽な要求に従う義務はありません」
王子「では勇者様。失礼致します」
スタスタ
母親「…… ……」
勇者「用件が済み次第、俺達は魔王の城に向かいます」
勇者「ですから、手短にお願い致します」
母親「…… ……ひとまず、我が家へどうぞ」
剣士(随分とあっさりだな……警戒しておくに越した事はない)
魔法使い「お母様……」
母親「久しぶりね、魔法使い……立派になったわね」
母親「闘技大会から戻らなかった時は心配したけど……」
母親「見事に勇者様のお仲間になれたのね。流石私と父親の娘ね」ニコ
魔法使い「…… ……お爺様は?」
母親「立ち話も、ね。とにかく、案内するわ」
剣士「……勇者」
勇者「な……なんですか」
母親「貴方も行くわよ、剣士」
剣士「…… ……」スタスタ
勇者「…… ……?」
……
………
…………
勇者(父さんにそっくりな男。そして……魔族の、男)
剣士「…… ……」
勇者「…… ……」
王子「では、勇者様方が戻る迄、私は船で待たせていただきます」
母親「あら、その必要はありませんよ。勇者様達はきちんと……」
王子「『王命』ですから。待たせて頂きます」
母親「……まだ、王を名乗られるおつもりですか」
王子「当然ですよ。理不尽な要求に従う義務はありません」
王子「では勇者様。失礼致します」
スタスタ
母親「…… ……」
勇者「用件が済み次第、俺達は魔王の城に向かいます」
勇者「ですから、手短にお願い致します」
母親「…… ……ひとまず、我が家へどうぞ」
剣士(随分とあっさりだな……警戒しておくに越した事はない)
魔法使い「お母様……」
母親「久しぶりね、魔法使い……立派になったわね」
母親「闘技大会から戻らなかった時は心配したけど……」
母親「見事に勇者様のお仲間になれたのね。流石私と父親の娘ね」ニコ
魔法使い「…… ……お爺様は?」
母親「立ち話も、ね。とにかく、案内するわ」
剣士「……勇者」
勇者「な……なんですか」
母親「貴方も行くわよ、剣士」
剣士「…… ……」スタスタ
勇者「…… ……?」
……
………
…………
38: 2013/09/14(土) 16:12:30.05 ID:rsutVxFjP
父親「魔法使い! ……立派になったな」
魔法使い「……お父様!お爺様は……!」
父親「……まあ、待ちなさい」
父親「貴方が勇者様ですな……確かに、金の瞳をしておられる」
勇者「……初めまして」
母親「魔法使い……本当に良くやったわ」
魔法使い「……こっちは僧侶。それから、戦士よ」
父親「うん……そうか。それで、勇者様」
僧侶(こっちを見ようともしない……)
戦士(……話には聞いていたが、露骨にも程があるな)
勇者「それで……執拗に俺達をこの国へ来させる様に」
勇者「仕向けた理由を聞かせて頂けますか?」
母親「随分な言い様ね」
戦士「……そう言われても仕方無いだろう」
僧侶「どうして、鉱石の洞窟で……始まりの国の騎士団と抗戦までされたのです?」
僧侶「何故そこまでして、あの洞窟を手に入れたかったんですか」
父親「……どうですかな、お二人。あちらの部屋で……」
勇者「父親さん。この二人も俺の仲間です」
勇者「まずはその……邪魔者扱いの様な態度を改めて頂きましょう」
母親「……私達は魔法使いの親よ?」
魔法使い「……それが何だと言うの、お母様」
母親「……魔法使い」
魔法使い「……ッ ゆ、勇者も言ったでしょう!?」
魔法使い「私達は……ッ」
勇者「魔法使い」スッ
魔法使い「勇者……?」
勇者「確かに貴方達は魔法使いのご両親に間違いありません」
勇者「だけど……それが何なのです?」
父親「…… ……」
勇者「母親さんが言った『それが何だと言うのか』と言うお言葉を返したら」
勇者「何と答えられるのですか」
魔法使い「……お父様!お爺様は……!」
父親「……まあ、待ちなさい」
父親「貴方が勇者様ですな……確かに、金の瞳をしておられる」
勇者「……初めまして」
母親「魔法使い……本当に良くやったわ」
魔法使い「……こっちは僧侶。それから、戦士よ」
父親「うん……そうか。それで、勇者様」
僧侶(こっちを見ようともしない……)
戦士(……話には聞いていたが、露骨にも程があるな)
勇者「それで……執拗に俺達をこの国へ来させる様に」
勇者「仕向けた理由を聞かせて頂けますか?」
母親「随分な言い様ね」
戦士「……そう言われても仕方無いだろう」
僧侶「どうして、鉱石の洞窟で……始まりの国の騎士団と抗戦までされたのです?」
僧侶「何故そこまでして、あの洞窟を手に入れたかったんですか」
父親「……どうですかな、お二人。あちらの部屋で……」
勇者「父親さん。この二人も俺の仲間です」
勇者「まずはその……邪魔者扱いの様な態度を改めて頂きましょう」
母親「……私達は魔法使いの親よ?」
魔法使い「……それが何だと言うの、お母様」
母親「……魔法使い」
魔法使い「……ッ ゆ、勇者も言ったでしょう!?」
魔法使い「私達は……ッ」
勇者「魔法使い」スッ
魔法使い「勇者……?」
勇者「確かに貴方達は魔法使いのご両親に間違いありません」
勇者「だけど……それが何なのです?」
父親「…… ……」
勇者「母親さんが言った『それが何だと言うのか』と言うお言葉を返したら」
勇者「何と答えられるのですか」
42: 2013/09/14(土) 16:28:26.97 ID:rsutVxFjP
母親「……わ、私達は王の血筋なのよ!?」
戦士「そんな事を言えば、俺だってそうだ」
母親「……ッ そ……ッ」
勇者「……『劣等種』の癖に、と言いたいのですか」
父親「……始まりの国の国王に、聞いたのですか」
魔法使い「お父様。何を考えていらっしゃるのかわからないけど、もうやめて!」
魔法使い「魔王を倒す為に、勇者が頑張っているのに」
魔法使い「『世界』は平和を望んでいるのに!」
魔法使い「どうして、戦争を起こそうとなんかするの!」
母親「黙りなさい!魔法使い!」
剣士「……だからうまく行く筈など無いと言っただろう」
僧侶「剣士……さん?」
剣士「……『答えは勇者が持って来る』と言っていたな、母親」
勇者「……俺?」
父親「ま、まあまあ……質問にはちゃんと答えよう」
父親「……何も、私達が争うために、勇者様達を呼んだ訳ではないのですよ」
勇者「俺が答えを……って、何です?」
父親「ある程度の情報は知っていらっしゃるとの前提でお話しましょう」
母親「父親……!」
父親「……お前は、あれほど言葉に気をつけろと言っただろう!」
父親「あれを持ってきなさい」
母親「…… ……」
父親「行くんだ、母親!」
母親「……ッ」クルッ スタスタ
戦士「解る様に話して欲しい物だな。俺達には時間が無いんだ」
剣士「…… ……」
父親「単刀直入に申しましょう……貴方達が魔王の城に向かう必要はありませんよ」
戦士「そんな事を言えば、俺だってそうだ」
母親「……ッ そ……ッ」
勇者「……『劣等種』の癖に、と言いたいのですか」
父親「……始まりの国の国王に、聞いたのですか」
魔法使い「お父様。何を考えていらっしゃるのかわからないけど、もうやめて!」
魔法使い「魔王を倒す為に、勇者が頑張っているのに」
魔法使い「『世界』は平和を望んでいるのに!」
魔法使い「どうして、戦争を起こそうとなんかするの!」
母親「黙りなさい!魔法使い!」
剣士「……だからうまく行く筈など無いと言っただろう」
僧侶「剣士……さん?」
剣士「……『答えは勇者が持って来る』と言っていたな、母親」
勇者「……俺?」
父親「ま、まあまあ……質問にはちゃんと答えよう」
父親「……何も、私達が争うために、勇者様達を呼んだ訳ではないのですよ」
勇者「俺が答えを……って、何です?」
父親「ある程度の情報は知っていらっしゃるとの前提でお話しましょう」
母親「父親……!」
父親「……お前は、あれほど言葉に気をつけろと言っただろう!」
父親「あれを持ってきなさい」
母親「…… ……」
父親「行くんだ、母親!」
母親「……ッ」クルッ スタスタ
戦士「解る様に話して欲しい物だな。俺達には時間が無いんだ」
剣士「…… ……」
父親「単刀直入に申しましょう……貴方達が魔王の城に向かう必要はありませんよ」
43: 2013/09/14(土) 16:29:23.32 ID:rsutVxFjP
>>40.41
すまんのぅ……ちょっと焦っちゃった
すまんのぅ……ちょっと焦っちゃった
44: 2013/09/14(土) 16:39:56.46 ID:rsutVxFjP
勇者「は?」
戦士「……どう言う意味だ」
父親「『少年』をご存じでしょう」
魔法使い「……港街の、勇者様」
父親「そうだ……少年は魔族だった。この街に取り入った魔導将軍を頃し」
父親「……当時の領主、お爺様を頃した人物だ」
僧侶「紫の瞳に、闇色の髪を持つ……男性」チラ
剣士「…… ……」
父親「まあ、それは良い……確かに劣等種、等と言う物を」
父親「容認してた私達にも悪い部分はある」
勇者「……その、少年がどうしました」
父親「薄々気付いていらっしゃるでしょう。魔法使いからも聞いている筈だ」チラ
剣士「…… ……」
勇者「歳を取らない、から……魔族だと言いたいのですか」
父親「立派な証拠でしょう。それに……もう一つ」
父親「……紫の瞳、ですよ。こんな瞳は、他に見た事が無い!」
父親「彼は否定しますがね。剣士は……少年に間違い無いのだと」
父親「……私達は信じていますよ」
勇者「しかし……剣士……さん、本人が否定しているんでしょう?」
カチャ
母親「彼にはね、記憶が無いのよ」
僧侶「え!?」
魔法使い「記憶が、無い……?」
戦士「……そんな都合の良い話があるか!」
剣士「その言い分も尤もだろうが……そこは、本当だ」
魔法使い「…… ……何時、から?」
剣士「最初にこの街に来た時には既に……否、もう少し前から、だな」
戦士「……どう言う意味だ」
父親「『少年』をご存じでしょう」
魔法使い「……港街の、勇者様」
父親「そうだ……少年は魔族だった。この街に取り入った魔導将軍を頃し」
父親「……当時の領主、お爺様を頃した人物だ」
僧侶「紫の瞳に、闇色の髪を持つ……男性」チラ
剣士「…… ……」
父親「まあ、それは良い……確かに劣等種、等と言う物を」
父親「容認してた私達にも悪い部分はある」
勇者「……その、少年がどうしました」
父親「薄々気付いていらっしゃるでしょう。魔法使いからも聞いている筈だ」チラ
剣士「…… ……」
勇者「歳を取らない、から……魔族だと言いたいのですか」
父親「立派な証拠でしょう。それに……もう一つ」
父親「……紫の瞳、ですよ。こんな瞳は、他に見た事が無い!」
父親「彼は否定しますがね。剣士は……少年に間違い無いのだと」
父親「……私達は信じていますよ」
勇者「しかし……剣士……さん、本人が否定しているんでしょう?」
カチャ
母親「彼にはね、記憶が無いのよ」
僧侶「え!?」
魔法使い「記憶が、無い……?」
戦士「……そんな都合の良い話があるか!」
剣士「その言い分も尤もだろうが……そこは、本当だ」
魔法使い「…… ……何時、から?」
剣士「最初にこの街に来た時には既に……否、もう少し前から、だな」
45: 2013/09/14(土) 16:55:39.99 ID:rsutVxFjP
母親「……これに見覚えはあって?」ゴトン
戦士「石……魔石!?」
僧侶「…… 違います、魔力は感じません」
母親「……? 貴女……?」
魔法使い「まさか、これ……あの洞窟の……!?」
母親「……ええ、そうよ。魔法の鉱石」
母親「騎士団長の息子なら、これを何の為に使うかは解ってるわよね?」
戦士「……光の剣の修理、か」
父親「そうだ。既に鍛冶師の村の職人も押さえてある」
父親「……私達なら、この剣を修理する事ができます。鍛冶師様の居ない今」
父親「これが無いと……お困りでしょう、勇者様?」
勇者「待って下さい。父親さんは、さっき魔王の城に行く必要は無いと言いましたよね?」
勇者「だったら……修理の必要など……」
母親「……続きを、父親」
父親「ああ、失礼。脱線しましたな」
父親「お父様から聞いた話ですが、魔導将軍と言うのはそれはそれは強い男でしてな」
父親「だが、少年は……様々な属性の魔法を用いて、その魔導将軍を」
父親「あっさりと倒してしまった」
父親「……何故そんな事ができたと思います?」
勇者「それほど……少年が強かった、と言いたいのですか」
勇者(……そりゃ、少年は魔王だったから……な)
勇者(しかし……それを、この人達が知っている筈が無い……!)
父親「まあ、そうですな。少年はとても強かった」
父親「それに、加護に捕らわれず魔法を使える等、聞いた事もありません」
戦士「……何が、言いたい?」
母親「……」フフッ
僧侶「な……何がおかしい、のですか」
魔法使い「お母様……?」
父親「……ご存じ無いのですかな?その様子では」
勇者「何が言いたいのですか!」
父親「……髪や肌の色を変える事はできても、瞳の色を変える事はできないのですよ」
戦士「石……魔石!?」
僧侶「…… 違います、魔力は感じません」
母親「……? 貴女……?」
魔法使い「まさか、これ……あの洞窟の……!?」
母親「……ええ、そうよ。魔法の鉱石」
母親「騎士団長の息子なら、これを何の為に使うかは解ってるわよね?」
戦士「……光の剣の修理、か」
父親「そうだ。既に鍛冶師の村の職人も押さえてある」
父親「……私達なら、この剣を修理する事ができます。鍛冶師様の居ない今」
父親「これが無いと……お困りでしょう、勇者様?」
勇者「待って下さい。父親さんは、さっき魔王の城に行く必要は無いと言いましたよね?」
勇者「だったら……修理の必要など……」
母親「……続きを、父親」
父親「ああ、失礼。脱線しましたな」
父親「お父様から聞いた話ですが、魔導将軍と言うのはそれはそれは強い男でしてな」
父親「だが、少年は……様々な属性の魔法を用いて、その魔導将軍を」
父親「あっさりと倒してしまった」
父親「……何故そんな事ができたと思います?」
勇者「それほど……少年が強かった、と言いたいのですか」
勇者(……そりゃ、少年は魔王だったから……な)
勇者(しかし……それを、この人達が知っている筈が無い……!)
父親「まあ、そうですな。少年はとても強かった」
父親「それに、加護に捕らわれず魔法を使える等、聞いた事もありません」
戦士「……何が、言いたい?」
母親「……」フフッ
僧侶「な……何がおかしい、のですか」
魔法使い「お母様……?」
父親「……ご存じ無いのですかな?その様子では」
勇者「何が言いたいのですか!」
父親「……髪や肌の色を変える事はできても、瞳の色を変える事はできないのですよ」
46: 2013/09/14(土) 17:04:23.96 ID:rsutVxFjP
勇者「そ……それが何だと言うのです!?」
母親「闘技大会に実際に出たのはね、『姫』と言う娘なのよ」
僧侶「!」
戦士「……何?」
母親「予選までは確かに、その娘は『蒼の瞳』をし、水を操っていたのよ」
母親「だけどね……魔導将軍と対峙した時には、紫の瞳に変わってた」
魔法使い「い、今……瞳の色は変えられないって言ったじゃ無いの!」
母親「そうよ。だから……変わったのは『外見』の方ね」
勇者「! ……姫、の姿に化けた、と言う……のか……」
父親「きちんと証人が居ますよ。紫の瞳の姫は、風の魔法で魔導将軍の手足を切り落とし」
父親「……その後、お爺様の首を切り落としている」
父親「お父様がまだ若かった頃の話だ……そして、紫の瞳の姫は」
父親「この街の全権を手に入れ、港街に支援する事と劣等種の解放を条件に」
父親「権利を、お父様へと返しているんだ」
母親「……実際に話をしたのは少年の方だったらしいけどね」
僧侶「え……」
母親「言ったそうよ? 『少年の言葉は私の言葉。私達は夫婦だから』とね」
僧侶「……夫婦!?」
父親「そう……様々な加護の魔法を操り、己の姿まで変えてしまう……」
父親「しかも、その時に観客席にはちゃんと、少年の姿をした何者か……」
父親「恐らく、少年の魔法により姿を変えられた姫だったのでしょうね」
父親「……それが、居たと言う」
母親「貴方のお祖母様ね。盗賊って人と、一緒に……ね」
戦士「!」
魔法使い「それは……お爺様が……仰っていた、の……」
母親「そうよ……剣士」
剣士「……なんだ」
母親「言ったでしょう?答えは金の瞳の少年が持って来る」
勇者「…… ……」
父親「私達は一つの結論にたどり着いた」
父親「そんな……人智を超えた存在は、一人しかあり得ない」
母親「……少年は、魔王。違うかしら?」
母親「闘技大会に実際に出たのはね、『姫』と言う娘なのよ」
僧侶「!」
戦士「……何?」
母親「予選までは確かに、その娘は『蒼の瞳』をし、水を操っていたのよ」
母親「だけどね……魔導将軍と対峙した時には、紫の瞳に変わってた」
魔法使い「い、今……瞳の色は変えられないって言ったじゃ無いの!」
母親「そうよ。だから……変わったのは『外見』の方ね」
勇者「! ……姫、の姿に化けた、と言う……のか……」
父親「きちんと証人が居ますよ。紫の瞳の姫は、風の魔法で魔導将軍の手足を切り落とし」
父親「……その後、お爺様の首を切り落としている」
父親「お父様がまだ若かった頃の話だ……そして、紫の瞳の姫は」
父親「この街の全権を手に入れ、港街に支援する事と劣等種の解放を条件に」
父親「権利を、お父様へと返しているんだ」
母親「……実際に話をしたのは少年の方だったらしいけどね」
僧侶「え……」
母親「言ったそうよ? 『少年の言葉は私の言葉。私達は夫婦だから』とね」
僧侶「……夫婦!?」
父親「そう……様々な加護の魔法を操り、己の姿まで変えてしまう……」
父親「しかも、その時に観客席にはちゃんと、少年の姿をした何者か……」
父親「恐らく、少年の魔法により姿を変えられた姫だったのでしょうね」
父親「……それが、居たと言う」
母親「貴方のお祖母様ね。盗賊って人と、一緒に……ね」
戦士「!」
魔法使い「それは……お爺様が……仰っていた、の……」
母親「そうよ……剣士」
剣士「……なんだ」
母親「言ったでしょう?答えは金の瞳の少年が持って来る」
勇者「…… ……」
父親「私達は一つの結論にたどり着いた」
父親「そんな……人智を超えた存在は、一人しかあり得ない」
母親「……少年は、魔王。違うかしら?」
47: 2013/09/14(土) 17:12:55.26 ID:rsutVxFjP
僧侶(姫……お母様!? お母様のお腹には……私が……否、でも!)
僧侶(……私には、間違い無く人間の血が……!)
勇者「……初耳ですね」
父親「嘘を吐かれるのは宜しくないですな」
勇者「では逆にお聞きします。少年が剣士であると言う証拠は?」
勇者「……記憶を無くしていらっしゃるのでしょう。確かめる術はありませんよ」
母親「証拠は揃っていると言った筈よ。それに……良いのかしら」チラ
戦士「……?」
母親「あの国の始まりの王が、魔王の力を借りた……なんて」
母親「醜聞も良いところよ?」ニッ
母親「……まあ、魔族だろう事は間違いは無い。それだけでも充分だけどね」
戦士「とんだ棚上げだな。魔導将軍の力を借り、私設軍隊まで持とうとしていた癖に……!」
父親「おや、よくご存じだ。やはりお祖母様から聞いたのですか」ニヤニヤ
戦士「!」
魔法使い「……そうやって……そうやって鍛冶師の村の人達も脅したのね!」
魔法使い「魔寄せの石まで持ち帰って……!!」
父親「何か勘違いしているね、魔法使い」
魔法使い「え……」
父親「……この鉱石を手に入れたのにも、理由がちゃんとあるんだ」
僧侶「光の剣の修理……ですか」
父親「最初の質問に答えましょう、お仲間さん」
父親「……鍛冶師の村はどうでした?平和だったでしょう?」
父親「あの石があるおかげで、魔物は村まで降りては来ない」
母親「私達はね、魔法の鉱石にあの魔力を移して量産するつもりなのよ」
剣士(手の内を明かす……のか!?)
母親「そうして、大地の要所要所に設置すれば……どう?」
母親「何処の街も、国も……魔物を恐れずに済む様になるのよ」
僧侶「……それは、違います!」
魔法使い「僧侶……?」
僧侶(……私には、間違い無く人間の血が……!)
勇者「……初耳ですね」
父親「嘘を吐かれるのは宜しくないですな」
勇者「では逆にお聞きします。少年が剣士であると言う証拠は?」
勇者「……記憶を無くしていらっしゃるのでしょう。確かめる術はありませんよ」
母親「証拠は揃っていると言った筈よ。それに……良いのかしら」チラ
戦士「……?」
母親「あの国の始まりの王が、魔王の力を借りた……なんて」
母親「醜聞も良いところよ?」ニッ
母親「……まあ、魔族だろう事は間違いは無い。それだけでも充分だけどね」
戦士「とんだ棚上げだな。魔導将軍の力を借り、私設軍隊まで持とうとしていた癖に……!」
父親「おや、よくご存じだ。やはりお祖母様から聞いたのですか」ニヤニヤ
戦士「!」
魔法使い「……そうやって……そうやって鍛冶師の村の人達も脅したのね!」
魔法使い「魔寄せの石まで持ち帰って……!!」
父親「何か勘違いしているね、魔法使い」
魔法使い「え……」
父親「……この鉱石を手に入れたのにも、理由がちゃんとあるんだ」
僧侶「光の剣の修理……ですか」
父親「最初の質問に答えましょう、お仲間さん」
父親「……鍛冶師の村はどうでした?平和だったでしょう?」
父親「あの石があるおかげで、魔物は村まで降りては来ない」
母親「私達はね、魔法の鉱石にあの魔力を移して量産するつもりなのよ」
剣士(手の内を明かす……のか!?)
母親「そうして、大地の要所要所に設置すれば……どう?」
母親「何処の街も、国も……魔物を恐れずに済む様になるのよ」
僧侶「……それは、違います!」
魔法使い「僧侶……?」
48: 2013/09/14(土) 17:24:43.12 ID:rsutVxFjP
僧侶「確かに、暫くは良いでしょう。ですが、魔気を吸い上げた世界は、何れ……!」
僧侶「大地は腐り、花は咲かなくなります!そんな事になったら、大地は……」
僧侶「この『世界』は……!!」
母親「…… ……」
勇者「僧侶……」
父親「まあ、心配はご尤もですな。しかし、大丈夫ですよ」
父親「あれは、鍛冶師の村の聖職者……魔族の作った物ですが」
父親「我らはこの魔法の鉱石に力を移すのです。だから……心配はいりません」
僧侶「そんな筈ありません!その魔力は……!」
勇者「僧侶」
僧侶「……勇者様……」
母親「でも貴方達はその目で見たんでしょう」
母親「……魔寄せの石で、困っている村人は居たの?」
魔法使い「……そ、そんな事を、して……」
母親「今よりも平和になるのよ。魔法使い」
魔法使い「…… ……」
勇者「確かに、魔王を倒すだけが世界を守る事では無いだろう」
戦士「勇者!?」
勇者「……だが、まだ……『魔王の城に行かなくて良い』理由を」
勇者「聞いていませんよ……父親さん」
剣士「……俺にもきちんと、説明して貰おう」
魔法使い「……剣士、さん?」
剣士「お前の両親は、俺に……『魔王を倒さなければならない』と言う俺に」
勇者「!?」
戦士(魔王を……倒さなければならない? ……少年かもしれない)
戦士(魔王かもしれない……剣士が?)
父親「私達も聞かせて頂きたいですね。少年が……魔王なのかどうか、を」
僧侶「大地は腐り、花は咲かなくなります!そんな事になったら、大地は……」
僧侶「この『世界』は……!!」
母親「…… ……」
勇者「僧侶……」
父親「まあ、心配はご尤もですな。しかし、大丈夫ですよ」
父親「あれは、鍛冶師の村の聖職者……魔族の作った物ですが」
父親「我らはこの魔法の鉱石に力を移すのです。だから……心配はいりません」
僧侶「そんな筈ありません!その魔力は……!」
勇者「僧侶」
僧侶「……勇者様……」
母親「でも貴方達はその目で見たんでしょう」
母親「……魔寄せの石で、困っている村人は居たの?」
魔法使い「……そ、そんな事を、して……」
母親「今よりも平和になるのよ。魔法使い」
魔法使い「…… ……」
勇者「確かに、魔王を倒すだけが世界を守る事では無いだろう」
戦士「勇者!?」
勇者「……だが、まだ……『魔王の城に行かなくて良い』理由を」
勇者「聞いていませんよ……父親さん」
剣士「……俺にもきちんと、説明して貰おう」
魔法使い「……剣士、さん?」
剣士「お前の両親は、俺に……『魔王を倒さなければならない』と言う俺に」
勇者「!?」
戦士(魔王を……倒さなければならない? ……少年かもしれない)
戦士(魔王かもしれない……剣士が?)
父親「私達も聞かせて頂きたいですね。少年が……魔王なのかどうか、を」
49: 2013/09/14(土) 17:36:51.62 ID:rsutVxFjP
剣士「父親!」
父親「……大きな声を出さないで頂きたいな」
剣士「ならば黙れ。 ……魔法使いの代わりに、勇者に着いていけば良いと」
剣士「……そう言っていたな」
母親「……後にしてちょうだ……」
剣士「答えろ! ……どう言う事だ!」
母親「……ッ」
剣士「話が違うだろう」
勇者「ま、魔法使いの代わりにって……どう言う事だ」
魔法使い「……お母様?お父様!?」
父親「……ッ」
剣士「俺と魔法使いの間に子を作れと言うんだ」
魔法使い「な…… ……ッ!?」
剣士「そうして、俺に勇者の共になれとな」
母親「…… ……」チッ
剣士「黙って居ると思っていたのか」
母親「貴方に悪い話では無かったでしょう!?」
剣士「……従うとは誰も、言っていないがな」
剣士「それに、俺を少年……魔王と言うのならば尚更だ」
剣士「そんな者との間に、我が娘に子を宿せと言うのか?」
父親「…… ……」
勇者「先に、答えて下さい。俺は言いましたよ」
勇者「『知りません』とね」
父親「……もう言っただろう。剣士が少年ならば、最果てに誰も居るはずが無い」
戦士「ならば金の髪の勇者は何を倒した?」
僧侶「そ、そうです! ……魔王は、一度確かに倒されています!」
僧侶「剣士さんが、少年さん……魔王の筈は無い!」
母親「……まるで、見てきたかの様に言うのね、貴女」
僧侶「え……」
父親「……大きな声を出さないで頂きたいな」
剣士「ならば黙れ。 ……魔法使いの代わりに、勇者に着いていけば良いと」
剣士「……そう言っていたな」
母親「……後にしてちょうだ……」
剣士「答えろ! ……どう言う事だ!」
母親「……ッ」
剣士「話が違うだろう」
勇者「ま、魔法使いの代わりにって……どう言う事だ」
魔法使い「……お母様?お父様!?」
父親「……ッ」
剣士「俺と魔法使いの間に子を作れと言うんだ」
魔法使い「な…… ……ッ!?」
剣士「そうして、俺に勇者の共になれとな」
母親「…… ……」チッ
剣士「黙って居ると思っていたのか」
母親「貴方に悪い話では無かったでしょう!?」
剣士「……従うとは誰も、言っていないがな」
剣士「それに、俺を少年……魔王と言うのならば尚更だ」
剣士「そんな者との間に、我が娘に子を宿せと言うのか?」
父親「…… ……」
勇者「先に、答えて下さい。俺は言いましたよ」
勇者「『知りません』とね」
父親「……もう言っただろう。剣士が少年ならば、最果てに誰も居るはずが無い」
戦士「ならば金の髪の勇者は何を倒した?」
僧侶「そ、そうです! ……魔王は、一度確かに倒されています!」
僧侶「剣士さんが、少年さん……魔王の筈は無い!」
母親「……まるで、見てきたかの様に言うのね、貴女」
僧侶「え……」
50: 2013/09/14(土) 17:48:51.95 ID:rsutVxFjP
勇者「……剣士さんが少年と、魔王と仮定しても、貴方達の行動には」
勇者「矛盾がありますよ」
戦士「……そうだ。光の剣を修理する目的は何だ?」
母親「……黙って!貴女……僧侶と言ったわね。どうして……」
魔法使い「黙るのは貴女よ!お母様!」
母親「……なんですって?」
魔法使い「私は物じゃ無いわ!これ以上、貴方達の言いなりになんて」
魔法使い「ならない!」
母親「……冷静になりなさい、魔法使い!」
母親「貴女には……私達一族の血が……」
魔法使い「血だの優れてるだの、どうでも良いのよ!」
魔法使い「私は私よ!」
勇者「魔法使い!」ギュ!
父親「! ……魔法使い、お前……まさか、勇者様と……?」
僧侶(…… ……ホッとしてはいけない、んでしょうけど)フゥ
僧侶(あの話が、本当ならば、嘘は……)
剣士「…… ……」
剣士(あの蒼い瞳の娘……人では無いな)
剣士(……しかし、流石にそろそろ潮時か……ッ)ズキンッ
剣士(……糞、何だ……こんな時に……ッ)
母親「……お兄様は否定したけど、私は信じてるわよ」
父親「母親!」
母親「魔法使い、良く聞きなさい。私達の祖先はね、最果ての街に住んでいたの」
魔法使い「……な、ん ……え?」
戦士「……最果ての地?」
父親「母親…… ……ッ」ハァ
母親「魔の地に住む事を許された、唯一の人間なのよ!」
母親「何故私達は必ず優れた加護を持って生まれてくると思うの!?」
母親「魔族の血が、どこかで混じっているからに決まっているわ!」
母親「……もっと自信を持ちなさいと、何時も言っていた筈よ、魔法使い!」
母親「私も、お兄様もお父様も貴女も……優れた血を持つ、選ばれし者なのよ!」
勇者「矛盾がありますよ」
戦士「……そうだ。光の剣を修理する目的は何だ?」
母親「……黙って!貴女……僧侶と言ったわね。どうして……」
魔法使い「黙るのは貴女よ!お母様!」
母親「……なんですって?」
魔法使い「私は物じゃ無いわ!これ以上、貴方達の言いなりになんて」
魔法使い「ならない!」
母親「……冷静になりなさい、魔法使い!」
母親「貴女には……私達一族の血が……」
魔法使い「血だの優れてるだの、どうでも良いのよ!」
魔法使い「私は私よ!」
勇者「魔法使い!」ギュ!
父親「! ……魔法使い、お前……まさか、勇者様と……?」
僧侶(…… ……ホッとしてはいけない、んでしょうけど)フゥ
僧侶(あの話が、本当ならば、嘘は……)
剣士「…… ……」
剣士(あの蒼い瞳の娘……人では無いな)
剣士(……しかし、流石にそろそろ潮時か……ッ)ズキンッ
剣士(……糞、何だ……こんな時に……ッ)
母親「……お兄様は否定したけど、私は信じてるわよ」
父親「母親!」
母親「魔法使い、良く聞きなさい。私達の祖先はね、最果ての街に住んでいたの」
魔法使い「……な、ん ……え?」
戦士「……最果ての地?」
父親「母親…… ……ッ」ハァ
母親「魔の地に住む事を許された、唯一の人間なのよ!」
母親「何故私達は必ず優れた加護を持って生まれてくると思うの!?」
母親「魔族の血が、どこかで混じっているからに決まっているわ!」
母親「……もっと自信を持ちなさいと、何時も言っていた筈よ、魔法使い!」
母親「私も、お兄様もお父様も貴女も……優れた血を持つ、選ばれし者なのよ!」
51: 2013/09/14(土) 18:06:37.38 ID:rsutVxFjP
戦士(……お兄様?)
魔法使い「…… ……」
僧侶「……あ、あの、魔法使い、さん?」
勇者「魔法使い…… ……」
剣士(…… ……なん、だこれは……ッ)ズキンッ
剣士(何かの、力……?)
母親「勇者とは言え、ただの人間よ!」
母親「魔法使い、貴女は此処に残って、剣士の子を産むの!」
母親「……そして、この『世界』を作り替えるのよ!」
母親「『私達が支配する世界』にね……!」
父親「……母親、落ち着きなさい」ハァ
勇者「アンタ達の目的は……それか……!」ガタンッ
父親「仕方あるまい。私達は選ばれた者には違い無い」
父親「だが……これで計画はパァだ!」
父親「母親、お前の所為で……ッ」
魔法使い「あ……は、は……アハハハハ!」
勇者「ま、魔法使い!?」
母親「何がおかしいの!?」
魔法使い「残念ね、お母様!私にはね、優れた加護なんて無いのよ!」ポロポロ
父親「!?」
母親「な……何を言っているの!貴女は、確かに……!」
魔法使い「……炎よ……ッ ぐ、ぅ……ッ」ボォ、ジュウゥ……!
僧侶「魔法使いさん!」
父親「……な……ッ」
母親「馬鹿な……ッ」
魔法使い「ほら、見てご覧なさい!」
魔法使い「しっかりと火傷の跡がつくわ!」
父親「そんな馬鹿な!あの時、確かに……!」
魔法使い「あの時、震える私に声をかけてくれて、助けてくれたのは」
魔法使い「剣士よ! ……彼が、炎の魔法で相頃してくれただけよ!」
魔法使い「…… ……」
僧侶「……あ、あの、魔法使い、さん?」
勇者「魔法使い…… ……」
剣士(…… ……なん、だこれは……ッ)ズキンッ
剣士(何かの、力……?)
母親「勇者とは言え、ただの人間よ!」
母親「魔法使い、貴女は此処に残って、剣士の子を産むの!」
母親「……そして、この『世界』を作り替えるのよ!」
母親「『私達が支配する世界』にね……!」
父親「……母親、落ち着きなさい」ハァ
勇者「アンタ達の目的は……それか……!」ガタンッ
父親「仕方あるまい。私達は選ばれた者には違い無い」
父親「だが……これで計画はパァだ!」
父親「母親、お前の所為で……ッ」
魔法使い「あ……は、は……アハハハハ!」
勇者「ま、魔法使い!?」
母親「何がおかしいの!?」
魔法使い「残念ね、お母様!私にはね、優れた加護なんて無いのよ!」ポロポロ
父親「!?」
母親「な……何を言っているの!貴女は、確かに……!」
魔法使い「……炎よ……ッ ぐ、ぅ……ッ」ボォ、ジュウゥ……!
僧侶「魔法使いさん!」
父親「……な……ッ」
母親「馬鹿な……ッ」
魔法使い「ほら、見てご覧なさい!」
魔法使い「しっかりと火傷の跡がつくわ!」
父親「そんな馬鹿な!あの時、確かに……!」
魔法使い「あの時、震える私に声をかけてくれて、助けてくれたのは」
魔法使い「剣士よ! ……彼が、炎の魔法で相頃してくれただけよ!」
52: 2013/09/14(土) 18:13:46.51 ID:rsutVxFjP
魔法使い「みんな騙されてただけよ!剣士が魔王!?あり得ないわ!」
魔法使い「……私達は選ばれた者なんかじゃ無いのよ!」
魔法使い「だとしたら、私の事はどう説明するの!?」
魔法使い「アンタ達が、『出来損ない』だの『劣等種』だのと」
魔法使い「蔑んだ人達の中に、この家の者だって居たじゃ無いの!」
勇者「魔法使い……!」ギュッ
勇者「……僧侶、回復を……」
僧侶「あ、は、はい……!」パァ
父親「な……な……ッ 剣士、知ってたのか……!?」
剣士「……答える、必要は……な、いだろう」
戦士「……どうした?」
剣士「構う……な。平気だ……ッ」ズキンッ
母親「そ……んな……ッ だ、だから、だから駄目なのよ、だから、炎なんて……!」
母親「……ッ 勇者!光の剣を寄越しなさい!さもなければ……!」
パアアアァァ!
父親「うお……ッ」
母親「きゃあ……ッ」
僧侶(な、に……ッ !? この感じ、この力……は!!)
魔法使い「光……!?」
戦士「僧侶……ッ」
勇者「な……ッ」
剣士「ぅ、う……ッ !?」
剣士(……こ、れは……ッ 魔の気……!?)
剣士(否、しかし……ッ)
シュゥウウウン…… ……
剣士(……ッ ……き、えた……?)
剣士(痛みも、収まった…… ……!?)キョロ
剣士(勇者達が、居ない!?)
魔法使い「……私達は選ばれた者なんかじゃ無いのよ!」
魔法使い「だとしたら、私の事はどう説明するの!?」
魔法使い「アンタ達が、『出来損ない』だの『劣等種』だのと」
魔法使い「蔑んだ人達の中に、この家の者だって居たじゃ無いの!」
勇者「魔法使い……!」ギュッ
勇者「……僧侶、回復を……」
僧侶「あ、は、はい……!」パァ
父親「な……な……ッ 剣士、知ってたのか……!?」
剣士「……答える、必要は……な、いだろう」
戦士「……どうした?」
剣士「構う……な。平気だ……ッ」ズキンッ
母親「そ……んな……ッ だ、だから、だから駄目なのよ、だから、炎なんて……!」
母親「……ッ 勇者!光の剣を寄越しなさい!さもなければ……!」
パアアアァァ!
父親「うお……ッ」
母親「きゃあ……ッ」
僧侶(な、に……ッ !? この感じ、この力……は!!)
魔法使い「光……!?」
戦士「僧侶……ッ」
勇者「な……ッ」
剣士「ぅ、う……ッ !?」
剣士(……こ、れは……ッ 魔の気……!?)
剣士(否、しかし……ッ)
シュゥウウウン…… ……
剣士(……ッ ……き、えた……?)
剣士(痛みも、収まった…… ……!?)キョロ
剣士(勇者達が、居ない!?)
53: 2013/09/14(土) 18:17:04.01 ID:rsutVxFjP
父親「な……んだ、今の……は!?」
母親「く……ッ 目が……ッ」
剣士「…… ……?」
ガアアアアァ……ッ
剣士(咆哮……?)
ズシン!グラグラグラ……ッ
母親「きゃ……ッ!?」
父親「な…… !!ゆ、勇者達が居ない!?」
剣士「……上だ!」
母親「え…… ……」
バキバキバキ……ッ ガアアアアアアアアアアアア!
父親「な……ッ!?」
剣士「……!」
ドオオオオオォン!
母親「ひ、ぃっ ……て、天井、から……ッ!!」
剣士「獣……!? 魔物か!?」
剣士(何故……!!)
父親「か、雷よ!」
ピシャアアアアアン!
グルル……グル……!!
剣士(効いていない……!)
母親「く……ッ 目が……ッ」
剣士「…… ……?」
ガアアアアァ……ッ
剣士(咆哮……?)
ズシン!グラグラグラ……ッ
母親「きゃ……ッ!?」
父親「な…… !!ゆ、勇者達が居ない!?」
剣士「……上だ!」
母親「え…… ……」
バキバキバキ……ッ ガアアアアアアアアアアアア!
父親「な……ッ!?」
剣士「……!」
ドオオオオオォン!
母親「ひ、ぃっ ……て、天井、から……ッ!!」
剣士「獣……!? 魔物か!?」
剣士(何故……!!)
父親「か、雷よ!」
ピシャアアアアアン!
グルル……グル……!!
剣士(効いていない……!)
54: 2013/09/14(土) 18:19:52.69 ID:rsutVxFjP
ガアアアアアアアアアアアア!!
父親「ぎ、ギヤアアアアアアアアアアアアアア!!」
バキバキ……ッグチャ……!!
母親「あ、あ……あ、ァ……!!」
剣士「逃げろ!」
母親「……こ、腰、腰が……ッ」
剣士「……!炎よ!」ボゥ……!
ギャアア、ギャア!
剣士「……!」タタ……ザシュ!
母親「……ひ、ィぃ……!!」
ギャアアアアアアアアアアアア!
ズゥ……ン…… ……
剣士「…… ……」ハァ
母親「あ…… ……ぁ……」ガタガタガタ
剣士(何処から……来た!? ……上……しかし、上には……)
剣士(! 領主……)タタタ
母親「あ、あ……お、置いて行かないで、よ……!」
剣士「動くな!」
タタタ……
父親「ぎ、ギヤアアアアアアアアアアアアアア!!」
バキバキ……ッグチャ……!!
母親「あ、あ……あ、ァ……!!」
剣士「逃げろ!」
母親「……こ、腰、腰が……ッ」
剣士「……!炎よ!」ボゥ……!
ギャアア、ギャア!
剣士「……!」タタ……ザシュ!
母親「……ひ、ィぃ……!!」
ギャアアアアアアアアアアアア!
ズゥ……ン…… ……
剣士「…… ……」ハァ
母親「あ…… ……ぁ……」ガタガタガタ
剣士(何処から……来た!? ……上……しかし、上には……)
剣士(! 領主……)タタタ
母親「あ、あ……お、置いて行かないで、よ……!」
剣士「動くな!」
タタタ……
59: 2013/09/14(土) 20:21:20.32 ID:rsutVxFjP
剣士(……領主の部屋……は、此処だったな)
バタン!
剣士「!」
剣士(……床に、穴)
剣士(……領主は……居ないな。食われたか…… ……?)
剣士(血痕が無い…… ……ッ)ハッ
タタ……バタン!
剣士「……!」
剣士(石が、無い!?)
剣士「…… ……」
剣士(さっきの頭痛の原因……そうか……)
スタスタ……
剣士(…… ……)キョロ
剣士(押しつぶされたように、壊れたベッド……)
剣士(…… ……引きちぎられた様な、布……これは)スッ
剣士(…… ……)ハァ
スタスタ、トントン……
母親「あ……ァ……キャアアアアアアア!」
剣士「……俺だ」
母親「あ…… ……」
剣士「メイド達は」
母親「……きょ、今日は……誰も……」
剣士(人払いをしていた、のか……)ハァ
バタン!
剣士「!」
剣士(……床に、穴)
剣士(……領主は……居ないな。食われたか…… ……?)
剣士(血痕が無い…… ……ッ)ハッ
タタ……バタン!
剣士「……!」
剣士(石が、無い!?)
剣士「…… ……」
剣士(さっきの頭痛の原因……そうか……)
スタスタ……
剣士(…… ……)キョロ
剣士(押しつぶされたように、壊れたベッド……)
剣士(…… ……引きちぎられた様な、布……これは)スッ
剣士(…… ……)ハァ
スタスタ、トントン……
母親「あ……ァ……キャアアアアアアア!」
剣士「……俺だ」
母親「あ…… ……」
剣士「メイド達は」
母親「……きょ、今日は……誰も……」
剣士(人払いをしていた、のか……)ハァ
61: 2013/09/14(土) 20:27:29.11 ID:rsutVxFjP
剣士「……この布に見覚えは?」スッ
母親「え……ぇ……? ……ッ お父様の、夜着…… ……?」
剣士(やはり……か)ハァ
母親「お、お父様は……化け物に!?」
剣士「…… ……」
剣士(……真実を告げるべき、だろうな)
母親「……ッお、お父様……!」
剣士「違う」
母親「え…… ……」
剣士「……それが、領主だろう」スッ
母親「! ……ば、馬鹿な事言わないで!どうして……!!」
剣士「……魔寄せの石とやらは、無くなっていた」
母親「!?」
剣士「先ほどの光……多分……否」
剣士(あれは……随分と強い魔の気だった)
剣士(……あれの正体は分からん……が、恐らく)
剣士(触発されたな。随分……悪意の篭もった代物だった)
剣士「……近くに置きすぎたのだろうな」
母親「……え」
剣士「弱った身は喰らわれ、自我を失い……魔物に成り下がった」
剣士「……推測だがな」
母親「そ……ッ そんな……ッ!?」
剣士「自分の目で確かめてくるが良い」クルッ
母親「ま……待って!何処へ……!」
剣士「……身の丈以上を望んだ罪だ」
剣士「俺が此処に……留まる理由など、無い」
スタスタ
母親「待ちなさい!ま……剣士!」
母親「待って、置いて……置いて、いかないで……!!」
母親「え……ぇ……? ……ッ お父様の、夜着…… ……?」
剣士(やはり……か)ハァ
母親「お、お父様は……化け物に!?」
剣士「…… ……」
剣士(……真実を告げるべき、だろうな)
母親「……ッお、お父様……!」
剣士「違う」
母親「え…… ……」
剣士「……それが、領主だろう」スッ
母親「! ……ば、馬鹿な事言わないで!どうして……!!」
剣士「……魔寄せの石とやらは、無くなっていた」
母親「!?」
剣士「先ほどの光……多分……否」
剣士(あれは……随分と強い魔の気だった)
剣士(……あれの正体は分からん……が、恐らく)
剣士(触発されたな。随分……悪意の篭もった代物だった)
剣士「……近くに置きすぎたのだろうな」
母親「……え」
剣士「弱った身は喰らわれ、自我を失い……魔物に成り下がった」
剣士「……推測だがな」
母親「そ……ッ そんな……ッ!?」
剣士「自分の目で確かめてくるが良い」クルッ
母親「ま……待って!何処へ……!」
剣士「……身の丈以上を望んだ罪だ」
剣士「俺が此処に……留まる理由など、無い」
スタスタ
母親「待ちなさい!ま……剣士!」
母親「待って、置いて……置いて、いかないで……!!」
62: 2013/09/14(土) 20:35:44.19 ID:rsutVxFjP
剣士(……情けをかけてはやれんな)ハァ
剣士(問題は…… ……)
スタスタ
剣士(……勇者達は、何処へ……消えた、か)
剣士(船は……居る。流石にこれだけ離れて居ると、騒ぎには気がついて居ない、か)
剣士「…… ……」ピタ
剣士(騎士団長……だったか?)
剣士「……おい」
王子「! ……あ……ッ!!お前……!」
剣士「騎士団長、だな」
王子「何故、お前が……!?勇者様達は!?」
剣士「……光に飲まれて、消えてしまった」
王子「! ……何をふざけた事を……!」
剣士(まあ……信じられないのも無理は無いか)
剣士「なら、見に来るが良い」
王子「……何?」
剣士「……魔寄せの石をこの国の者が持ち帰った、と言う話は聞いているか」
王子「…… ……」
剣士「その光が発せられて、勇者達が消えた後」
剣士「……どうやら、石の魔力に取り入られたらしい領主が魔物になった」
王子「!?」
剣士「父親……魔法使いの親父は食われ、母親は無事だが……」
剣士「……屋敷は惨状を極める」
王子「……魔物、は?」
剣士「俺が倒した」
王子「…… ……な、何故その魔物が、領主だと解る!」
王子「魔寄せの石を補完していたんだろう!だとすれば……!」
剣士「……雷の魔法が効かなかった」
剣士「後は……見れば解る、だろう」
王子「…… ……何故、それを……俺に教えるんだ」
王子「お前は……少年じゃ無い、のか!?」
剣士「……覚えて居ない」
王子「……は!?」
剣士「望むならば……全て話そう」
剣士(問題は…… ……)
スタスタ
剣士(……勇者達は、何処へ……消えた、か)
剣士(船は……居る。流石にこれだけ離れて居ると、騒ぎには気がついて居ない、か)
剣士「…… ……」ピタ
剣士(騎士団長……だったか?)
剣士「……おい」
王子「! ……あ……ッ!!お前……!」
剣士「騎士団長、だな」
王子「何故、お前が……!?勇者様達は!?」
剣士「……光に飲まれて、消えてしまった」
王子「! ……何をふざけた事を……!」
剣士(まあ……信じられないのも無理は無いか)
剣士「なら、見に来るが良い」
王子「……何?」
剣士「……魔寄せの石をこの国の者が持ち帰った、と言う話は聞いているか」
王子「…… ……」
剣士「その光が発せられて、勇者達が消えた後」
剣士「……どうやら、石の魔力に取り入られたらしい領主が魔物になった」
王子「!?」
剣士「父親……魔法使いの親父は食われ、母親は無事だが……」
剣士「……屋敷は惨状を極める」
王子「……魔物、は?」
剣士「俺が倒した」
王子「…… ……な、何故その魔物が、領主だと解る!」
王子「魔寄せの石を補完していたんだろう!だとすれば……!」
剣士「……雷の魔法が効かなかった」
剣士「後は……見れば解る、だろう」
王子「…… ……何故、それを……俺に教えるんだ」
王子「お前は……少年じゃ無い、のか!?」
剣士「……覚えて居ない」
王子「……は!?」
剣士「望むならば……全て話そう」
63: 2013/09/14(土) 20:41:49.54 ID:rsutVxFjP
王子「…… ……」
剣士「信じられないのも……無理は無い」
剣士「照明する手立ては何も無い。だが……」
剣士「信じて貰えるのならば、一つ教えて欲しい」
王子「……何を、だ」
剣士「……『世界』を」
王子「!」
剣士「魔寄せの石は無くなっていたが」
剣士「……随分と長く、この国にあったんだろう」
剣士「頭である領主と、その息子が居なくなった今……」
剣士「……この国は混乱に陥るぞ」
王子「……し、しかし……」
剣士「母親を放って置いて良いのか?」
王子「……助けてやる義理は無い」
剣士「捕らえる事はできる。あの女は……懲りん」
王子「! ……お、おい!着いて来い!」
騎士「は……如何なされました?」
王子「……領主の館へ行く…… ……」チラ
剣士「……案内は必要か?」
王子「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ
剣士「事が済み次第、俺も拘束するが良い」
王子「!?」
剣士「……構わん。どうせ……何処へも行けん身だ」
王子「お前……」
剣士「剣士、だ……知っている、な」
……
………
…………
剣士「信じられないのも……無理は無い」
剣士「照明する手立ては何も無い。だが……」
剣士「信じて貰えるのならば、一つ教えて欲しい」
王子「……何を、だ」
剣士「……『世界』を」
王子「!」
剣士「魔寄せの石は無くなっていたが」
剣士「……随分と長く、この国にあったんだろう」
剣士「頭である領主と、その息子が居なくなった今……」
剣士「……この国は混乱に陥るぞ」
王子「……し、しかし……」
剣士「母親を放って置いて良いのか?」
王子「……助けてやる義理は無い」
剣士「捕らえる事はできる。あの女は……懲りん」
王子「! ……お、おい!着いて来い!」
騎士「は……如何なされました?」
王子「……領主の館へ行く…… ……」チラ
剣士「……案内は必要か?」
王子「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ
剣士「事が済み次第、俺も拘束するが良い」
王子「!?」
剣士「……構わん。どうせ……何処へも行けん身だ」
王子「お前……」
剣士「剣士、だ……知っている、な」
……
………
…………
64: 2013/09/14(土) 20:50:16.43 ID:rsutVxFjP
勇者「……う、ぅ……」
魔法使い「勇者!」
僧侶「気付きましたか……」ホッ
戦士「……」
勇者「!! ……みんな……ここ、は……」
后「ごめんね、無茶しちゃった」
勇者「……母さん!」
魔法使い「急に、眩い光に包まれて……気がついたらここにいたの」
僧侶「……そして、この方……貴方のお母様がいらっしゃいました」
僧侶「あの光は……お母様の魔法……だったのですね」
戦士「……転移魔法、と言うそうだ」
勇者「え……でも、それじゃ……ここは……」
后「ここは、最果ての地……魔王の城、だよ」
后「間に合って良かった。まさか魔導国に居るなんて思わなかったから」
后「吃驚したよ」
勇者「どう……いう、事だよ」
勇者「ああ、いや……そんな事より、母さん、無事だったんだね!?」
后「落ち着いて、勇者」クス
魔法使い「……全部、教えて下さる、んですって」
勇者「全部……?」
后「うん、全部。貴方が望む全て……まあ、厭でも知る事になると思うけど、ね」
勇者「! ……あ、剣士は……!?」
后「あの紫の瞳の男性だね……居ないよ。呼んだのは、勇者達だけだもん」
勇者「……ッ ど、どう言う事だ!? 何で、なんで母さんが転移魔法なんて……!」
后「もう、落ち着いてって言ったでしょ」クスクス
后「……無理、な事は解ってるんだけどね……御免ね、勇者」
勇者「な……んで、謝る……んだよ……」
后「んー、勝手に居なくなっちゃって、心配かけた、から?」
后「……それだけじゃ、無いけどね」
后「…… ……取りあえず、移動しながらでも良いかな」
后「時間が、ないの」
勇者「え…… ……」
魔法使い「勇者!」
僧侶「気付きましたか……」ホッ
戦士「……」
勇者「!! ……みんな……ここ、は……」
后「ごめんね、無茶しちゃった」
勇者「……母さん!」
魔法使い「急に、眩い光に包まれて……気がついたらここにいたの」
僧侶「……そして、この方……貴方のお母様がいらっしゃいました」
僧侶「あの光は……お母様の魔法……だったのですね」
戦士「……転移魔法、と言うそうだ」
勇者「え……でも、それじゃ……ここは……」
后「ここは、最果ての地……魔王の城、だよ」
后「間に合って良かった。まさか魔導国に居るなんて思わなかったから」
后「吃驚したよ」
勇者「どう……いう、事だよ」
勇者「ああ、いや……そんな事より、母さん、無事だったんだね!?」
后「落ち着いて、勇者」クス
魔法使い「……全部、教えて下さる、んですって」
勇者「全部……?」
后「うん、全部。貴方が望む全て……まあ、厭でも知る事になると思うけど、ね」
勇者「! ……あ、剣士は……!?」
后「あの紫の瞳の男性だね……居ないよ。呼んだのは、勇者達だけだもん」
勇者「……ッ ど、どう言う事だ!? 何で、なんで母さんが転移魔法なんて……!」
后「もう、落ち着いてって言ったでしょ」クスクス
后「……無理、な事は解ってるんだけどね……御免ね、勇者」
勇者「な……んで、謝る……んだよ……」
后「んー、勝手に居なくなっちゃって、心配かけた、から?」
后「……それだけじゃ、無いけどね」
后「…… ……取りあえず、移動しながらでも良いかな」
后「時間が、ないの」
勇者「え…… ……」
65: 2013/09/14(土) 20:55:51.16 ID:rsutVxFjP
后「歩きながら話すね……着いてきて」
スタスタ
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
后「本当は……勇者には格好良く乗り込んで来て欲しかったんだけどね」
后「本当に……時間が無いんだ」
魔法使い「……時間が無いって、あの……どういう……?」
后「……魔王が、目を覚ます」
勇者「!?」
僧侶「……やはり……魔王は、此処に……居るのですか?」
后「え?」
魔法使い「……さっき、魔導国で……少年が魔王で、剣士が……少年で……」
魔法使い「ええっと…… ……ッ!?」
后「んー、剣士ってあの紫の瞳の人でしょ?」
后「で、少年ってのは……『港街の勇者様』だよね」
戦士「知っているのか……!?」
后「……勿論、知ってるよ……だって」
后「『金の髪の勇者』が倒したもん」
勇者「え!?」
后「……僧侶ちゃんは、気付いてるよね?」
僧侶「……はい」
勇者「何……?」
后「勇者、取り乱さないと約束して」
勇者「…… ……」
后「勇者?」
勇者「……ッ わ、わかった……よ」
スタスタ
勇者「…… ……」
僧侶「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
后「本当は……勇者には格好良く乗り込んで来て欲しかったんだけどね」
后「本当に……時間が無いんだ」
魔法使い「……時間が無いって、あの……どういう……?」
后「……魔王が、目を覚ます」
勇者「!?」
僧侶「……やはり……魔王は、此処に……居るのですか?」
后「え?」
魔法使い「……さっき、魔導国で……少年が魔王で、剣士が……少年で……」
魔法使い「ええっと…… ……ッ!?」
后「んー、剣士ってあの紫の瞳の人でしょ?」
后「で、少年ってのは……『港街の勇者様』だよね」
戦士「知っているのか……!?」
后「……勿論、知ってるよ……だって」
后「『金の髪の勇者』が倒したもん」
勇者「え!?」
后「……僧侶ちゃんは、気付いてるよね?」
僧侶「……はい」
勇者「何……?」
后「勇者、取り乱さないと約束して」
勇者「…… ……」
后「勇者?」
勇者「……ッ わ、わかった……よ」
66: 2013/09/14(土) 21:09:17.03 ID:rsutVxFjP
后「……少年、は港街の勇者様で、魔王だった」
后「金の髪の勇者……貴方のお父さんは、その魔王……」
后「紫の瞳の魔王を、倒した」
勇者「…… ……じゃあ、なんで俺は……勇者なんだ!?」
勇者「どうして、魔王が……まだ、居るんだ!?」
后「…… ……」
后「それからね……私は、魔族だよ」
僧侶「…… ……」
魔法使い「え!? ……ちょ、ちょっと……僧侶、どういうこと!?」
僧侶「わ、わかりません、わかりません!」
僧侶「でも……でも、確かに、お母様の、気配は……魔族なんです……!!」
戦士「……そうで無ければ、転移魔法、等……だが……!」
戦士「貴女は、勇者の『母』なのだろう!?」
戦士「魔族から、どうして……人間が……『勇者』が……!!」
勇者「な……ん、で……母さん……が……」
勇者(母さんが……魔族!?)
后「一つだけ、確かな事が言える。それは……」
后「貴方が、『勇者』だから。『勇者』は……人間だから」
后「……さ、着いた……開けるよ?」
勇者「母さん!待って、母さん……!」
キィ……
后「紹介するね……側近と、魔導将軍……魔導将軍は、会った事あるよね」
側近「間に合ったか、后…… ……大きくなったな、勇者」
魔導将軍「ハァイ……って、間に合わせた、の間違いでしょ、后」
戦士「……『側近』!?」
僧侶「え……え……!?」
后「……皆、大事な仲間だよ」
魔法使い「……な、か……ま!?」
魔導将軍「忘れちゃったの? ……仲間、って教えてあげたのにぃ」
后「金の髪の勇者……貴方のお父さんは、その魔王……」
后「紫の瞳の魔王を、倒した」
勇者「…… ……じゃあ、なんで俺は……勇者なんだ!?」
勇者「どうして、魔王が……まだ、居るんだ!?」
后「…… ……」
后「それからね……私は、魔族だよ」
僧侶「…… ……」
魔法使い「え!? ……ちょ、ちょっと……僧侶、どういうこと!?」
僧侶「わ、わかりません、わかりません!」
僧侶「でも……でも、確かに、お母様の、気配は……魔族なんです……!!」
戦士「……そうで無ければ、転移魔法、等……だが……!」
戦士「貴女は、勇者の『母』なのだろう!?」
戦士「魔族から、どうして……人間が……『勇者』が……!!」
勇者「な……ん、で……母さん……が……」
勇者(母さんが……魔族!?)
后「一つだけ、確かな事が言える。それは……」
后「貴方が、『勇者』だから。『勇者』は……人間だから」
后「……さ、着いた……開けるよ?」
勇者「母さん!待って、母さん……!」
キィ……
后「紹介するね……側近と、魔導将軍……魔導将軍は、会った事あるよね」
側近「間に合ったか、后…… ……大きくなったな、勇者」
魔導将軍「ハァイ……って、間に合わせた、の間違いでしょ、后」
戦士「……『側近』!?」
僧侶「え……え……!?」
后「……皆、大事な仲間だよ」
魔法使い「……な、か……ま!?」
魔導将軍「忘れちゃったの? ……仲間、って教えてあげたのにぃ」
67: 2013/09/14(土) 21:19:10.89 ID:rsutVxFjP
側近「しかしまぁ……まるっきり魔王にそっくりだな」
魔導将軍「仕方無いわよ、『勇者』だもん」
勇者「な……な……!?」
后「ね?剣士君は……魔王じゃ無かったでしょ」
后「……ほら、あれが……魔王。私の旦那様で……」
后「貴方の、お父さんだよ、勇者」
僧侶(これが……魔王……そして、元、ゆう…しゃ……?)
魔法使い(馬鹿な……ッなんなの、この魔力……ッこんなの、どうやったって……!)
戦士(どういう事だ……三人が……魔王を、押さえ込んでいる……!?)
勇者「う、ぅ………うわああああああああああああああああ!」
后「ああ、もう……取り乱さないでって言ったのに」
側近「いや、無茶だから!」
魔導将軍「后は昔から、さらっと酷いよね」
勇者「ど、どう言う事だよ!どうして……!?」
勇者「どうして、父さんが魔王……な、な……ッ!?」
魔王「……ゥ、ウ……アアアアアアアアアアアアア!!」
ビリビリビリ……ッ
僧侶「うぅ……ッ」
僧侶(これは……ッ 苦しみ……!?)
僧侶(魔王は……苦しんでいる……!?)
魔法使い「……ッ」
魔法使い(胸が痛い……何で……こんなに、切ないの……!)
魔法使い(……魔王、も……なの……?)
戦士「! ……ッ」
戦士(何だ……胸が、締め付けられる……ッ)
戦士(……何故、こんなにも……悲しい、んだ……?)
勇者「これ、が……魔王……この、氏体みたいなのが!?」
勇者(これが……魔王。これが……父さん……! 何で、なんで……!)
勇者(何で、俺は……喜んで、居るんだ!?)
魔導将軍「仕方無いわよ、『勇者』だもん」
勇者「な……な……!?」
后「ね?剣士君は……魔王じゃ無かったでしょ」
后「……ほら、あれが……魔王。私の旦那様で……」
后「貴方の、お父さんだよ、勇者」
僧侶(これが……魔王……そして、元、ゆう…しゃ……?)
魔法使い(馬鹿な……ッなんなの、この魔力……ッこんなの、どうやったって……!)
戦士(どういう事だ……三人が……魔王を、押さえ込んでいる……!?)
勇者「う、ぅ………うわああああああああああああああああ!」
后「ああ、もう……取り乱さないでって言ったのに」
側近「いや、無茶だから!」
魔導将軍「后は昔から、さらっと酷いよね」
勇者「ど、どう言う事だよ!どうして……!?」
勇者「どうして、父さんが魔王……な、な……ッ!?」
魔王「……ゥ、ウ……アアアアアアアアアアアアア!!」
ビリビリビリ……ッ
僧侶「うぅ……ッ」
僧侶(これは……ッ 苦しみ……!?)
僧侶(魔王は……苦しんでいる……!?)
魔法使い「……ッ」
魔法使い(胸が痛い……何で……こんなに、切ないの……!)
魔法使い(……魔王、も……なの……?)
戦士「! ……ッ」
戦士(何だ……胸が、締め付けられる……ッ)
戦士(……何故、こんなにも……悲しい、んだ……?)
勇者「これ、が……魔王……この、氏体みたいなのが!?」
勇者(これが……魔王。これが……父さん……! 何で、なんで……!)
勇者(何で、俺は……喜んで、居るんだ!?)
68: 2013/09/14(土) 21:29:19.48 ID:rsutVxFjP
后「魔王! ……もうちょっと、もうチョットだけ……待って。ね?」
魔導将軍「后、早く!」
側近「……ッ 解ってても、辛いよなぁ……」
僧侶(どう、言う事……!?三人が……全力の、魔力で……)
魔法使い(魔王を、押さえ込んでる!?でも……ッ)
戦士(魔王は、世界を滅ぼす……こんなにも力があれば、確かに……だがッ)
勇者「お……お前が、『側近』ってどう言う事だ!?」
勇者「それに……お前は、魔王の仲間なんだろう、魔導将軍!」
勇者「か…… ……母さん!何やってんだよ!何で……!!」
魔導将軍「まあ、我慢してちょうだい……魔王様、押さえとかないとさ」
側近「全部吹き飛ばしちまうからなぁ……」
后「大丈夫……少し、話すぐらいは持つから」
后「後は……ちゃんと知って、ね?」
勇者「……ちゃんと……知る……?」
側近「結局使用人ちゃんに丸投げかよ……」
魔導将軍「仕方無いじゃない、ねぇ?」
后「……本当は、ちゃんと説明してあげたい、けどね」
后「…… ……できるだけ、になっちゃうけど」
后「聞いて、勇者」
魔導将軍「后、早く!」
側近「……ッ 解ってても、辛いよなぁ……」
僧侶(どう、言う事……!?三人が……全力の、魔力で……)
魔法使い(魔王を、押さえ込んでる!?でも……ッ)
戦士(魔王は、世界を滅ぼす……こんなにも力があれば、確かに……だがッ)
勇者「お……お前が、『側近』ってどう言う事だ!?」
勇者「それに……お前は、魔王の仲間なんだろう、魔導将軍!」
勇者「か…… ……母さん!何やってんだよ!何で……!!」
魔導将軍「まあ、我慢してちょうだい……魔王様、押さえとかないとさ」
側近「全部吹き飛ばしちまうからなぁ……」
后「大丈夫……少し、話すぐらいは持つから」
后「後は……ちゃんと知って、ね?」
勇者「……ちゃんと……知る……?」
側近「結局使用人ちゃんに丸投げかよ……」
魔導将軍「仕方無いじゃない、ねぇ?」
后「……本当は、ちゃんと説明してあげたい、けどね」
后「…… ……できるだけ、になっちゃうけど」
后「聞いて、勇者」
69: 2013/09/14(土) 21:39:31.65 ID:rsutVxFjP
……
………
…………
魔王「…… ……ん」パチ
魔王(又……此処か)
魔王(……あれ?)
魔王(あれは……勇者!?)
后『勇者!滅びを選ぶなら、それも構わない!それも……ッ』
魔導将軍『それでも、変わる! ……勇者、選ぶのよ!』
側近『……ッ この腐った世界に、光……ッ を!』
魔王『………お前が、勇者か』
バチバチバチッ
勇者『あ、 ……あ……』
バチバチバチッ
魔王『さあ、我が手を取れ』
バチバチバチッ
勇者『………ッ』
バチバチバチッ
魔王『光と闇は、表裏一体。どちらを欠いても存在できぬ』
バチバチバチッ
勇者『……拒否権はないんだな』
魔王『ああ……世界は美しい』
勇者『俺は……魔王を、倒す!』
魔王(違う……! ……ん、何が……違う……!?)
魔王(……でも、駄目だ!駄目なんだ……!)
魔王「そうじゃない……!后、やめろ!」
魔王「魔導将軍!側近……! やめ……!!」
シュゥウン……
紫魔「……む」
魔王「うわぁ!」
シュゥン……
紫魔の側近「……ぅえ」
魔王「おわぁああああ!」
紫魔の側近「お前、煩い」ゴン!
魔王「……いってぇ!」
………
…………
魔王「…… ……ん」パチ
魔王(又……此処か)
魔王(……あれ?)
魔王(あれは……勇者!?)
后『勇者!滅びを選ぶなら、それも構わない!それも……ッ』
魔導将軍『それでも、変わる! ……勇者、選ぶのよ!』
側近『……ッ この腐った世界に、光……ッ を!』
魔王『………お前が、勇者か』
バチバチバチッ
勇者『あ、 ……あ……』
バチバチバチッ
魔王『さあ、我が手を取れ』
バチバチバチッ
勇者『………ッ』
バチバチバチッ
魔王『光と闇は、表裏一体。どちらを欠いても存在できぬ』
バチバチバチッ
勇者『……拒否権はないんだな』
魔王『ああ……世界は美しい』
勇者『俺は……魔王を、倒す!』
魔王(違う……! ……ん、何が……違う……!?)
魔王(……でも、駄目だ!駄目なんだ……!)
魔王「そうじゃない……!后、やめろ!」
魔王「魔導将軍!側近……! やめ……!!」
シュゥウン……
紫魔「……む」
魔王「うわぁ!」
シュゥン……
紫魔の側近「……ぅえ」
魔王「おわぁああああ!」
紫魔の側近「お前、煩い」ゴン!
魔王「……いってぇ!」
70: 2013/09/14(土) 21:49:08.55 ID:rsutVxFjP
魔王「側近!紫の瞳の……魔王……」
紫魔「……あれは『過去』だ」
紫魔の側近「しょうがねぇだろ。俺達には『過去』しか見る事はできねぇんだから」
魔王「…… ……いきなり出て来たら、吃驚するだろ」
紫魔「確かに、私達には『過去』しか見る事ができない。だが……」
紫魔の側近「んな事言われてもねぇ。こっちも予測できねぇしな」
紫魔「…… ……聞け、二人とも」
魔王「え……あ、御免」
紫魔「…… ……側近の所為だな」
紫魔の側近「俺!?何で!?」
紫魔「何でも糞も無い。お前が悪い」
紫魔の側近「…… ……理不尽」
魔王「あ、あの……で、何だって?」
紫魔「……私達には『過去』しか見る事ができん。だが……もうすぐ『現実』になる」
魔王「……『現実』……」
紫魔の側近「……宿題は終わったか?勇者」
魔王「……だから、俺は魔王だって……」
紫魔の側近「……俺にとっての魔王様は、こいつだけなんだよ」ポンポン
紫魔「……頭を撫でるな」
紫魔の側近「お前でっかいからねぇ……撫でるのも一苦労だよ」
紫魔「だからやめろと言ってるんだ。聞こえなかったか?」
紫魔の側近「はいはい。かがんでくれると嬉しいんだけどね。楽だし」
紫魔「…… ……人の話を聞け」
魔王「…… ……楽しそう、だよなぁ、何時も」
紫魔の側近「まあ、退屈はしねぇな」
紫魔「……私はお前の玩具では無いぞ」
紫魔の側近「俺は随分お前に色々されたけどね!」
紫魔「忘れたな」
紫魔の側近「しれっとにこっと言うなあああああああああああ!」
紫魔「……あれは『過去』だ」
紫魔の側近「しょうがねぇだろ。俺達には『過去』しか見る事はできねぇんだから」
魔王「…… ……いきなり出て来たら、吃驚するだろ」
紫魔「確かに、私達には『過去』しか見る事ができない。だが……」
紫魔の側近「んな事言われてもねぇ。こっちも予測できねぇしな」
紫魔「…… ……聞け、二人とも」
魔王「え……あ、御免」
紫魔「…… ……側近の所為だな」
紫魔の側近「俺!?何で!?」
紫魔「何でも糞も無い。お前が悪い」
紫魔の側近「…… ……理不尽」
魔王「あ、あの……で、何だって?」
紫魔「……私達には『過去』しか見る事ができん。だが……もうすぐ『現実』になる」
魔王「……『現実』……」
紫魔の側近「……宿題は終わったか?勇者」
魔王「……だから、俺は魔王だって……」
紫魔の側近「……俺にとっての魔王様は、こいつだけなんだよ」ポンポン
紫魔「……頭を撫でるな」
紫魔の側近「お前でっかいからねぇ……撫でるのも一苦労だよ」
紫魔「だからやめろと言ってるんだ。聞こえなかったか?」
紫魔の側近「はいはい。かがんでくれると嬉しいんだけどね。楽だし」
紫魔「…… ……人の話を聞け」
魔王「…… ……楽しそう、だよなぁ、何時も」
紫魔の側近「まあ、退屈はしねぇな」
紫魔「……私はお前の玩具では無いぞ」
紫魔の側近「俺は随分お前に色々されたけどね!」
紫魔「忘れたな」
紫魔の側近「しれっとにこっと言うなあああああああああああ!」
71: 2013/09/14(土) 22:03:33.60 ID:rsutVxFjP
魔王「…… ……」クスクス
紫魔の側近「笑い事じゃねぇよ、全く……」フゥ
紫魔「仕方無い。側近だからな」
紫魔の側近「あーほーう!七割お前です!」
紫魔「そっくりそのまま返すわ!」
魔王「……お、お楽しみの所、申し訳無いんだけどな」クック……
紫魔の側近「……笑いすぎだよ、お前」
魔王「……『現実』になる、ってどう言う事だ?」
紫魔「…… ……聞かねば、解らんか?」
魔王「……勇者が、来た……のか」
紫魔の側近「ああ、そうだそうだ!だから!」
魔王「え!?」
紫魔の側近「……『宿題』だよ、勇者」
魔王「……『特異点』って何だと思う、か」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「…… ……御免。俺には……解らない」
紫魔「…… ……」
魔王「でも……上手く言えないんだけど……」
魔王「……俺、『間違えないと思う』んだ」
紫魔の側近「…… ……」フッ
魔王「な、何だよ!?何笑ってんだよ!?」
紫魔の側近「否……お前らしい答えだなぁ、と思って」
魔王「え?」
紫魔「……『特異点』と言うのはな」
紫魔の側近「えぇえ……説明しちゃうの……」
紫魔「黙れ……『時間が無い』んだ」
魔王「……え?」
紫魔の側近「笑い事じゃねぇよ、全く……」フゥ
紫魔「仕方無い。側近だからな」
紫魔の側近「あーほーう!七割お前です!」
紫魔「そっくりそのまま返すわ!」
魔王「……お、お楽しみの所、申し訳無いんだけどな」クック……
紫魔の側近「……笑いすぎだよ、お前」
魔王「……『現実』になる、ってどう言う事だ?」
紫魔「…… ……聞かねば、解らんか?」
魔王「……勇者が、来た……のか」
紫魔の側近「ああ、そうだそうだ!だから!」
魔王「え!?」
紫魔の側近「……『宿題』だよ、勇者」
魔王「……『特異点』って何だと思う、か」
紫魔の側近「…… ……」
魔王「…… ……御免。俺には……解らない」
紫魔「…… ……」
魔王「でも……上手く言えないんだけど……」
魔王「……俺、『間違えないと思う』んだ」
紫魔の側近「…… ……」フッ
魔王「な、何だよ!?何笑ってんだよ!?」
紫魔の側近「否……お前らしい答えだなぁ、と思って」
魔王「え?」
紫魔「……『特異点』と言うのはな」
紫魔の側近「えぇえ……説明しちゃうの……」
紫魔「黙れ……『時間が無い』んだ」
魔王「……え?」
72: 2013/09/14(土) 22:07:53.73 ID:rsutVxFjP
紫魔「……特異点、と言うのは」
紫魔「何かを基準と定め、それでは推し量れない事ができて初めて」
紫魔「……その事象、の事をさせる言葉だ」
魔王「…… ……??」
紫魔の側近「お馬鹿さんには解らないってよ」
魔王「う、煩いよ!」
紫魔「……お前は、『間違えて居ない』のだろう」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「自信持ちなさい。お前は……『勇者』なんだから」
魔王「『だった』……だろ…… ……うん」
魔王「『大丈夫だ。間違えて居ない』」
紫魔の側近「……ああ。それで良い」
紫魔「…… ……」
魔王「……紫の瞳の魔王……?」
紫魔「…… ……『来た』な」
紫魔の側近「……だな」
魔王「え…… ……ッ」
パアアアア……ッ
魔王(……うぅ……ッ な、んだこれ……ッ)
魔王(光、に……吸い込まれ……ッ)
魔王「『ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』」
……
………
…………
紫魔「何かを基準と定め、それでは推し量れない事ができて初めて」
紫魔「……その事象、の事をさせる言葉だ」
魔王「…… ……??」
紫魔の側近「お馬鹿さんには解らないってよ」
魔王「う、煩いよ!」
紫魔「……お前は、『間違えて居ない』のだろう」
魔王「…… ……」
紫魔の側近「自信持ちなさい。お前は……『勇者』なんだから」
魔王「『だった』……だろ…… ……うん」
魔王「『大丈夫だ。間違えて居ない』」
紫魔の側近「……ああ。それで良い」
紫魔「…… ……」
魔王「……紫の瞳の魔王……?」
紫魔「…… ……『来た』な」
紫魔の側近「……だな」
魔王「え…… ……ッ」
パアアアア……ッ
魔王(……うぅ……ッ な、んだこれ……ッ)
魔王(光、に……吸い込まれ……ッ)
魔王「『ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』」
……
………
…………
74: 2013/09/14(土) 22:16:31.45 ID:rsutVxFjP
后「私達は……『勇者』と旅を共にする仲間だった」
魔導将軍「今でも仲間でしょ」
側近「ちゃちゃ入れんなよ、魔導将軍」
后「……ふふ、で……今の君たちみたいに、魔王の元までたどり着いた」
后「まあ、今回は……ちょーっと、強引な手段使っちゃったけど」
魔導将軍「……ちょっと?」
側近「だから、突っ込むなってば」
后「……特異点。最後まで、はっきりとは見極められなかったな」
魔導将軍「……そうなの?」
戦士「……特異点?」
側近「そうだ。『俺達』と違う所」
魔導将軍「『今まで』と違う所」
后「剣士か……貴女か。私達は、答えを出せなかったの。僧侶ちゃん」
僧侶「……私!?」
側近「そうだ。ハーフエルフの癒やしの娘」
魔導将軍「エルフの姫様の娘、でしょ」
僧侶「!」
后「……『私はお前』『お前は私』『勇者と魔王』『光と闇』は『表裏一体』」
魔法使い「……え?」
魔導将軍「『勇者は、魔王を倒す』」
戦士「!」
側近「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
后「そして……『勇者は、魔王の闇を手に入れる』」
勇者「……な……ッ 何が言いたいんだよ!母さん!」
魔導将軍「今でも仲間でしょ」
側近「ちゃちゃ入れんなよ、魔導将軍」
后「……ふふ、で……今の君たちみたいに、魔王の元までたどり着いた」
后「まあ、今回は……ちょーっと、強引な手段使っちゃったけど」
魔導将軍「……ちょっと?」
側近「だから、突っ込むなってば」
后「……特異点。最後まで、はっきりとは見極められなかったな」
魔導将軍「……そうなの?」
戦士「……特異点?」
側近「そうだ。『俺達』と違う所」
魔導将軍「『今まで』と違う所」
后「剣士か……貴女か。私達は、答えを出せなかったの。僧侶ちゃん」
僧侶「……私!?」
側近「そうだ。ハーフエルフの癒やしの娘」
魔導将軍「エルフの姫様の娘、でしょ」
僧侶「!」
后「……『私はお前』『お前は私』『勇者と魔王』『光と闇』は『表裏一体』」
魔法使い「……え?」
魔導将軍「『勇者は、魔王を倒す』」
戦士「!」
側近「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
后「そして……『勇者は、魔王の闇を手に入れる』」
勇者「……な……ッ 何が言いたいんだよ!母さん!」
75: 2013/09/14(土) 22:23:46.97 ID:rsutVxFjP
后「私達は、こうして、今の貴方達と同じように」
后「……良く解らない言葉の羅列を聞かされた」
后「私は……水の癒し手『僧侶』」
僧侶「!」
魔導将軍「炎の『魔法使い』……多分、どこかで血が繋がってるわね、魔法使いちゃん」
魔法使い「!」
側近「緑の『戦士』……次はお前だぜ、戦士」
戦士「!」
勇者「…… ……」
后「そして、魔王は……」
勇者「『勇者』…… ……俺の、父さん」
魔王「…… ……『間違えて居ない』」
勇者「……え…… ……」
ビリビリビリ……!
僧侶「!」
魔法使い「きゃ……ッ」
戦士「……ッ」
勇者「……! ……父さん!」
魔王「『ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』」
后「……良く解らない言葉の羅列を聞かされた」
后「私は……水の癒し手『僧侶』」
僧侶「!」
魔導将軍「炎の『魔法使い』……多分、どこかで血が繋がってるわね、魔法使いちゃん」
魔法使い「!」
側近「緑の『戦士』……次はお前だぜ、戦士」
戦士「!」
勇者「…… ……」
后「そして、魔王は……」
勇者「『勇者』…… ……俺の、父さん」
魔王「…… ……『間違えて居ない』」
勇者「……え…… ……」
ビリビリビリ……!
僧侶「!」
魔法使い「きゃ……ッ」
戦士「……ッ」
勇者「……! ……父さん!」
魔王「『ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』」
78: 2013/09/14(土) 22:37:37.96 ID:rsutVxFjP
ビリビリビリ……!
魔王「ウゥ……ゥ、ァ、ア……ッ」
勇者「と……父……さ、ん……?」
后「……『勇者』は、世界に一人しか存在できない」
僧侶「『魔王』を倒せるのは、『勇者』だけ……」
魔導将軍「光の加護を受けられるのは、勇者だけ……光は勇者だけの物」
魔法使い「『闇』は……『魔王』だけのもの……」
側近「そして……『勇者は必ず、魔王を倒す』」
戦士「……『光と闇』は『表裏一体』」
魔王「……『魔王は勇者の光を奪い去り』」スッ
勇者「『勇者は魔王の闇を手に入れる』……」
魔法使い「あ……あ、ま……魔王が……ッ」
戦士「立ち上がった……ッ!?」
僧侶「……! あ、手……手、に……ッ」
魔王「…… ……」スッ
勇者「……勇者の、印」
勇者(でも……俺と、違う。真っ黒だ)
勇者(……あれが、魔王の……『闇』)
后「……さて、時間が無いね」
側近「泣くな、魔導将軍。喜べ……俺たちは喜ばなくちゃいけない」
魔導将軍「わ……ッ 分かってる、わよ……!」
勇者「……ふ、ふざけるな……!」
勇者「『俺に、魔王になれ……と言うのか!』」
魔王「ウゥ……ゥ、ァ、ア……ッ」
勇者「と……父……さ、ん……?」
后「……『勇者』は、世界に一人しか存在できない」
僧侶「『魔王』を倒せるのは、『勇者』だけ……」
魔導将軍「光の加護を受けられるのは、勇者だけ……光は勇者だけの物」
魔法使い「『闇』は……『魔王』だけのもの……」
側近「そして……『勇者は必ず、魔王を倒す』」
戦士「……『光と闇』は『表裏一体』」
魔王「……『魔王は勇者の光を奪い去り』」スッ
勇者「『勇者は魔王の闇を手に入れる』……」
魔法使い「あ……あ、ま……魔王が……ッ」
戦士「立ち上がった……ッ!?」
僧侶「……! あ、手……手、に……ッ」
魔王「…… ……」スッ
勇者「……勇者の、印」
勇者(でも……俺と、違う。真っ黒だ)
勇者(……あれが、魔王の……『闇』)
后「……さて、時間が無いね」
側近「泣くな、魔導将軍。喜べ……俺たちは喜ばなくちゃいけない」
魔導将軍「わ……ッ 分かってる、わよ……!」
勇者「……ふ、ふざけるな……!」
勇者「『俺に、魔王になれ……と言うのか!』」
79: 2013/09/14(土) 22:42:18.60 ID:rsutVxFjP
魔王「……解って居るはずだ、勇者」
勇者「!」
魔王「『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
勇者「…… ……」
魔王「……『この腐った世界の腐った不条理を断ち切れ』!」
勇者「…… ……ッ!?」
パア……ッ
僧侶「……ッ光の剣が……!!」
パリン!
魔法使い「割れた!?」
戦士「……ち、がう……見ろ……ッ」
僧侶「……勇者様の、光を……すい、とって……る!?」
勇者「…… ……ッ」 グッ
魔王「……『知る事を拒否するな』!」
勇者「『拒否権の無い選択などあるものか!』」
魔王「『真に美しい世界を望む為だ』」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒すんだ!』」
……
………
…………
勇者「!」
魔王「『途切れる事無く回り続ける、運命の輪』」
勇者「…… ……」
魔王「……『この腐った世界の腐った不条理を断ち切れ』!」
勇者「…… ……ッ!?」
パア……ッ
僧侶「……ッ光の剣が……!!」
パリン!
魔法使い「割れた!?」
戦士「……ち、がう……見ろ……ッ」
僧侶「……勇者様の、光を……すい、とって……る!?」
勇者「…… ……ッ」 グッ
魔王「……『知る事を拒否するな』!」
勇者「『拒否権の無い選択などあるものか!』」
魔王「『真に美しい世界を望む為だ』」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒すんだ!』」
……
………
…………
80: 2013/09/14(土) 22:50:33.06 ID:rsutVxFjP
紫魔「……む」サラサラサラ……
紫魔の側近「魔王様?」
紫魔「…… ……」サラサラ……
紫魔の側近「……おいおいおいおい。俺は置いてけぼりですか」
紫魔「お前の事だ。どうせすぐに追いかけて来るんだろう」サラサラサラ……
紫魔の側近「え、何それ」
紫魔「……主を放っておく側近が何処に居る」サラサラサラ……
紫魔の側近「はいはいはい。お前寂しがり屋だもんね」
紫魔「お前程便利な奴は居ないからな」サラサラサラ……
紫魔の側近「……ほんっとうに『最後』まで、素直じゃネェなぁ……」ハァ
紫魔「……すぐに、連れて来い…… ……命令 ……だ」サラ……サラ……
紫魔の側近「……解ってるよ」
紫魔「…… ……」サラ…… …… ……
紫魔の側近「…… ……」
シュゥン……
金の髪の魔王「……ぅ、ウ……ッ」
紫魔の側近「何時まで寝てんの。起きなさいって」ポン
金の髪の魔王「…… ……! ……ッ側近!?」ガバッ……ゴン!
紫魔の側近「ぐえッ!」
金の髪の魔王「いってぇ……ッ」
紫魔の側近「…… ……そりゃ、俺の台詞……」
金の髪の魔王「……ッ 紫の瞳の魔王は!?」
紫魔の側近「……『終わった』よ」
金の髪の魔王「……え…… ……」
紫魔の側近「『終わった』んだ……喜べ。喜んでやってくれ……勇者」
金の髪の魔王「……だから、俺は……」
紫魔の側近「もう、『魔王』でも無いけどな」
紫魔の側近「魔王様?」
紫魔「…… ……」サラサラ……
紫魔の側近「……おいおいおいおい。俺は置いてけぼりですか」
紫魔「お前の事だ。どうせすぐに追いかけて来るんだろう」サラサラサラ……
紫魔の側近「え、何それ」
紫魔「……主を放っておく側近が何処に居る」サラサラサラ……
紫魔の側近「はいはいはい。お前寂しがり屋だもんね」
紫魔「お前程便利な奴は居ないからな」サラサラサラ……
紫魔の側近「……ほんっとうに『最後』まで、素直じゃネェなぁ……」ハァ
紫魔「……すぐに、連れて来い…… ……命令 ……だ」サラ……サラ……
紫魔の側近「……解ってるよ」
紫魔「…… ……」サラ…… …… ……
紫魔の側近「…… ……」
シュゥン……
金の髪の魔王「……ぅ、ウ……ッ」
紫魔の側近「何時まで寝てんの。起きなさいって」ポン
金の髪の魔王「…… ……! ……ッ側近!?」ガバッ……ゴン!
紫魔の側近「ぐえッ!」
金の髪の魔王「いってぇ……ッ」
紫魔の側近「…… ……そりゃ、俺の台詞……」
金の髪の魔王「……ッ 紫の瞳の魔王は!?」
紫魔の側近「……『終わった』よ」
金の髪の魔王「……え…… ……」
紫魔の側近「『終わった』んだ……喜べ。喜んでやってくれ……勇者」
金の髪の魔王「……だから、俺は……」
紫魔の側近「もう、『魔王』でも無いけどな」
81: 2013/09/14(土) 22:54:37.95 ID:rsutVxFjP
金の髪の魔王「え…… ……」
金の髪の魔王(……そうか。俺は……勇者に……あいつに……)
金の髪の魔王「……過去しか、見れない……んだよな?」
紫魔の側近「ああ……『俺達』はな」
金の髪の魔王「?」
紫魔の側近「……言っただろ。魔王様は『終わった』んだ」
紫魔の側近「……『断ち切った』んだよ。お前が。黒髪の勇者が」
金の髪の魔王「あ……で、でも……!!」
紫魔の側近「……喜んでくれよ、勇者。俺も……もう『終わる』」サラサラ……
金の髪の魔王「側近!?」
紫魔の側近「……やっと来た、か」フゥ
シュゥウン……
??「…… ……ん、ここ…… ……は……?」
金の髪の魔王「あ……!!」
紫魔の側近「待たせたなぁ、女剣士」
女剣士「……側近!?」タタタ……ッ
女剣士「お前、目は!?その姿は……!!」ペタペタ
紫魔の側近「……ちょ、セクハラ!」ハハッ
金の髪の魔王「…… ……」
紫魔の側近「ほら、勇者呆れてる」
女剣士「え……勇者!?」
金の髪の魔王(……そうか。俺は……勇者に……あいつに……)
金の髪の魔王「……過去しか、見れない……んだよな?」
紫魔の側近「ああ……『俺達』はな」
金の髪の魔王「?」
紫魔の側近「……言っただろ。魔王様は『終わった』んだ」
紫魔の側近「……『断ち切った』んだよ。お前が。黒髪の勇者が」
金の髪の魔王「あ……で、でも……!!」
紫魔の側近「……喜んでくれよ、勇者。俺も……もう『終わる』」サラサラ……
金の髪の魔王「側近!?」
紫魔の側近「……やっと来た、か」フゥ
シュゥウン……
??「…… ……ん、ここ…… ……は……?」
金の髪の魔王「あ……!!」
紫魔の側近「待たせたなぁ、女剣士」
女剣士「……側近!?」タタタ……ッ
女剣士「お前、目は!?その姿は……!!」ペタペタ
紫魔の側近「……ちょ、セクハラ!」ハハッ
金の髪の魔王「…… ……」
紫魔の側近「ほら、勇者呆れてる」
女剣士「え……勇者!?」
83: 2013/09/14(土) 23:01:08.92 ID:rsutVxFjP
紫魔の側近「お前が育てた勇者だよ」
紫魔の側近「……ちょーっと、瞳の色は紫になっちゃった、けどな」
女剣士「……勇者……か……」
金の髪の魔王「女……剣士、様……!!」
女剣士「あれ!?私、腕がある……し……!?」
紫魔の側近「俺が見えてた時より、すこーし、大人になった、かな」サラサラ……
女剣士「……な、んだ……これ……夢、か!?」
女剣士「側近……霞んでる、ぞ」
紫魔の側近「んー……まあ……『終わった』からねぇ……」
女剣士「終わった……?」
紫魔の側近「ま、良いよ。どうせ難しい事はわかんねぇだろ」
紫魔の側近「……で、どうするんだ。一緒に来るか?」
女剣士「え…… ……?」サラサラ……
金の髪の魔王「!」
金の髪の魔王(女剣士様の身体が……!)
紫魔の側近「……いや、答え無くて良いよ。ほんっとうにお前は、わかりやすいな」クス
女剣士「な、何だよ!どう言う意味だ!」
紫魔の側近「……いや、まあ、ほら。魔王様待ってるしな?」
紫魔の側近「お茶でもしようぜ、一緒に、さ……あいつに、フランボワーズ作らせよう」
女剣士「……お前は相変わらず、主人を使うんだな」クス…… ……サラサラサラ……
紫魔の側近「あいつにそれ以外に、何の特技があると!?」サラサラサラ……
金の髪の魔王「…… ……」
女剣士「私、一度……食べてみた…… ……か、った…… ……」サラ…… ……
紫魔の側近「……待ってるぜ、勇者」サラサラ…… ……
紫魔の側近「『また、後でな』」サラサラ……サラ …… ……
金の髪の魔王「……ああ」
金の髪の魔王「『また、後で』…… ……ありがとう、側近」
紫魔の側近「……ちょーっと、瞳の色は紫になっちゃった、けどな」
女剣士「……勇者……か……」
金の髪の魔王「女……剣士、様……!!」
女剣士「あれ!?私、腕がある……し……!?」
紫魔の側近「俺が見えてた時より、すこーし、大人になった、かな」サラサラ……
女剣士「……な、んだ……これ……夢、か!?」
女剣士「側近……霞んでる、ぞ」
紫魔の側近「んー……まあ……『終わった』からねぇ……」
女剣士「終わった……?」
紫魔の側近「ま、良いよ。どうせ難しい事はわかんねぇだろ」
紫魔の側近「……で、どうするんだ。一緒に来るか?」
女剣士「え…… ……?」サラサラ……
金の髪の魔王「!」
金の髪の魔王(女剣士様の身体が……!)
紫魔の側近「……いや、答え無くて良いよ。ほんっとうにお前は、わかりやすいな」クス
女剣士「な、何だよ!どう言う意味だ!」
紫魔の側近「……いや、まあ、ほら。魔王様待ってるしな?」
紫魔の側近「お茶でもしようぜ、一緒に、さ……あいつに、フランボワーズ作らせよう」
女剣士「……お前は相変わらず、主人を使うんだな」クス…… ……サラサラサラ……
紫魔の側近「あいつにそれ以外に、何の特技があると!?」サラサラサラ……
金の髪の魔王「…… ……」
女剣士「私、一度……食べてみた…… ……か、った…… ……」サラ…… ……
紫魔の側近「……待ってるぜ、勇者」サラサラ…… ……
紫魔の側近「『また、後でな』」サラサラ……サラ …… ……
金の髪の魔王「……ああ」
金の髪の魔王「『また、後で』…… ……ありがとう、側近」
115: 2013/09/16(月) 08:18:20.70 ID:DujOohn2P
……
………
…………
使用人「………さま、 ……さま」
勇者「う……うん……?」
使用人「魔王様、お目覚めですか?」
勇者(……ッ)ガバッ
僧侶「勇者様!」
魔法使い「勇者……! あ、ア……ッ 良かった!」ギュウ!
戦士「大丈夫か」
勇者「え……俺? ……っく、苦しい、魔法使い……」トントン
魔法使い「あ……ご、ご免なさい!」
勇者(ここは……ベッドの上?)
使用人「お加減如何ですか、魔王様」
勇者(……魔王)
勇者「……ちょっと、待って……ええ、と……」
勇者(夢……で、ある筈無い、よな……)
勇者「……あの。貴女、は?」
使用人「……代々の魔王様にお仕えし、城を守っております」
使用人「使用人と申します」
勇者「……使用人」
使用人「はい」
僧侶「あ、あの……お怪我、とかは……その」
僧侶「気分とかは、如何です……?」
勇者「……随分、身体が軽いよ……あ!」
勇者「魔王は!? ……母さんは…… ……ッ」
………
…………
使用人「………さま、 ……さま」
勇者「う……うん……?」
使用人「魔王様、お目覚めですか?」
勇者(……ッ)ガバッ
僧侶「勇者様!」
魔法使い「勇者……! あ、ア……ッ 良かった!」ギュウ!
戦士「大丈夫か」
勇者「え……俺? ……っく、苦しい、魔法使い……」トントン
魔法使い「あ……ご、ご免なさい!」
勇者(ここは……ベッドの上?)
使用人「お加減如何ですか、魔王様」
勇者(……魔王)
勇者「……ちょっと、待って……ええ、と……」
勇者(夢……で、ある筈無い、よな……)
勇者「……あの。貴女、は?」
使用人「……代々の魔王様にお仕えし、城を守っております」
使用人「使用人と申します」
勇者「……使用人」
使用人「はい」
僧侶「あ、あの……お怪我、とかは……その」
僧侶「気分とかは、如何です……?」
勇者「……随分、身体が軽いよ……あ!」
勇者「魔王は!? ……母さんは…… ……ッ」
116: 2013/09/16(月) 08:34:09.80 ID:DujOohn2P
勇者「魔導将軍と、側近は……!!」
使用人「貴方は、金の髪の魔王様を倒されました」
戦士「……覚えているか?」
勇者「…… ……」
勇者(そうだ……俺は、魔王を倒して……)
勇者「魔王を倒して……世界を、守った……?」
使用人「……そして、貴方は魔王になられた」
勇者「!」
使用人「お疲れでしょう。どうぞ、暫くはごゆっくりなさって下さい……魔王様」
使用人「お食事の準備をしてまいります。一度失礼致します」
勇者「……あ、あのちょっと待って!」
使用人「はい?」
勇者「……貴女、は……その……」
使用人「私は使用人です」
勇者「い、いや。それはさっき聞きました。そうじゃ無くて……」
使用人「?」
勇者「……魔族、何ですか?」
使用人「はい」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者……?」
使用人「お話しは後に致しましょう?」
使用人「……時間は、まだたっぷりとありますから」
勇者「貴女が……知っている事を教えて貰う事はできる、んですか」
使用人「私が知っている限りでしたら、勿論です」
使用人「貴方は、金の髪の魔王様を倒されました」
戦士「……覚えているか?」
勇者「…… ……」
勇者(そうだ……俺は、魔王を倒して……)
勇者「魔王を倒して……世界を、守った……?」
使用人「……そして、貴方は魔王になられた」
勇者「!」
使用人「お疲れでしょう。どうぞ、暫くはごゆっくりなさって下さい……魔王様」
使用人「お食事の準備をしてまいります。一度失礼致します」
勇者「……あ、あのちょっと待って!」
使用人「はい?」
勇者「……貴女、は……その……」
使用人「私は使用人です」
勇者「い、いや。それはさっき聞きました。そうじゃ無くて……」
使用人「?」
勇者「……魔族、何ですか?」
使用人「はい」
勇者「…… ……」
魔法使い「勇者……?」
使用人「お話しは後に致しましょう?」
使用人「……時間は、まだたっぷりとありますから」
勇者「貴女が……知っている事を教えて貰う事はできる、んですか」
使用人「私が知っている限りでしたら、勿論です」
121: 2013/09/16(月) 09:30:21.23 ID:DujOohn2P
勇者「…… ……」
使用人「では、失礼致します」
スタスタ、パタン
魔法使い「何か……拍子抜けしちゃうわよね」
勇者「え?」
魔法使い「私達も気がついて……から、ずっとあんな調子よ、あの人」
勇者「……お前達は何時気がついたんだ?」
勇者「俺は……どの位……」
戦士「はっきりした時間はわからん」
戦士「……さっきも聞いた……が、覚えてるか?」
勇者「あ、ああ……母さんが居て、魔導将軍と側近が居て……魔王……」
勇者「……父さんが、いた」
僧侶「……魔王が立ち上がった後、対峙された勇者様の光の剣が……」
勇者「そうだ!剣……!」ハッ
使用人「では、失礼致します」
スタスタ、パタン
魔法使い「何か……拍子抜けしちゃうわよね」
勇者「え?」
魔法使い「私達も気がついて……から、ずっとあんな調子よ、あの人」
勇者「……お前達は何時気がついたんだ?」
勇者「俺は……どの位……」
戦士「はっきりした時間はわからん」
戦士「……さっきも聞いた……が、覚えてるか?」
勇者「あ、ああ……母さんが居て、魔導将軍と側近が居て……魔王……」
勇者「……父さんが、いた」
僧侶「……魔王が立ち上がった後、対峙された勇者様の光の剣が……」
勇者「そうだ!剣……!」ハッ
122: 2013/09/16(月) 09:38:59.31 ID:DujOohn2P
魔法使い「大丈夫。ここにあるわ」スッ
勇者「あ、ああ……」ホッ
勇者「……あれ?」
勇者(……何か、大きくなって無いか?)
戦士「……剣が、光だしたんだ」
僧侶「最初……割れた様に見えました、よね?」
魔法使い「……そうね。亀裂から光が溢れてる様に見えたわ」
魔法使い「でも……違った」
勇者「違った?」
戦士「……お前の身体から、光を吸いとってたみたいだった、な」
僧侶「……はい」
勇者(『魔王は、勇者の光を奪い去る』……)
勇者「……真っ黒だな」スッ
魔法使い「勇者の印……ね」
戦士「金の髪の魔王の手にも……その文様があったな」
勇者「……僧侶」
僧侶「はい……」
勇者「……僧侶、君は……何か、感じた?」
僧侶「……悲しくて、苦しくて、切なくて……嬉しかった、です」
勇者「…… ……」
勇者(手の平の、剣の文様……あんなに、綺麗に光ってた、のに)
勇者(『勇者は、魔王の闇を手に入れる』……か)
勇者「あ、ああ……」ホッ
勇者「……あれ?」
勇者(……何か、大きくなって無いか?)
戦士「……剣が、光だしたんだ」
僧侶「最初……割れた様に見えました、よね?」
魔法使い「……そうね。亀裂から光が溢れてる様に見えたわ」
魔法使い「でも……違った」
勇者「違った?」
戦士「……お前の身体から、光を吸いとってたみたいだった、な」
僧侶「……はい」
勇者(『魔王は、勇者の光を奪い去る』……)
勇者「……真っ黒だな」スッ
魔法使い「勇者の印……ね」
戦士「金の髪の魔王の手にも……その文様があったな」
勇者「……僧侶」
僧侶「はい……」
勇者「……僧侶、君は……何か、感じた?」
僧侶「……悲しくて、苦しくて、切なくて……嬉しかった、です」
勇者「…… ……」
勇者(手の平の、剣の文様……あんなに、綺麗に光ってた、のに)
勇者(『勇者は、魔王の闇を手に入れる』……か)
135: 2013/09/17(火) 10:24:41.54 ID:blUxq2UmP
僧侶「あの方達は……皆、魔王のお力で魔族へと変じられたのだそうです」
勇者「……母さんが言ってたな……ッ そうだよ!母さんは……!」
魔法使い「……力の源である、魔王が……倒されたから……」
勇者「! まさか……ッ」
僧侶「……魔王を含め、あの方々は……失われました」
魔王「う……し、なわれた?」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「悠久の空の彼方へ還り、この……世界へ孵るのだと」
魔法使い「……貴方のお母様が、貴方に……伝えて、と」
戦士「……ありがとう、と」
勇者「…… ……俺が……魔王を倒した、から」
僧侶「…… ……」
勇者「父さんを……頃した、から……」
魔法使い「…… ……」
勇者「……そう、か」ポロポロポロ
魔法使い「勇者……ッ」ギュッ
勇者「…… ……」
勇者(……暖かい。俺は……生きてる……)ギュウ
僧侶「……恐らく」
僧侶「あの方達も、こうして……同じ経験をなぞってこられたのでしょう」
僧侶「……『魔王』のお力でその身を闇に染め」
僧侶「来るべき、次代の勇者様に……真実をお伝えするために」
勇者「…… ……」
戦士「……特異点とは、何なんだ?」
勇者「特異点……?」
戦士「言っていただろう……『見極められなかった』と」
勇者「……僧侶か、剣士か……?」
僧侶「…… ……」
魔法使い「私達と……『今までと違う』点……」
勇者「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れ……か」
勇者「……母さんが言ってたな……ッ そうだよ!母さんは……!」
魔法使い「……力の源である、魔王が……倒されたから……」
勇者「! まさか……ッ」
僧侶「……魔王を含め、あの方々は……失われました」
魔王「う……し、なわれた?」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「悠久の空の彼方へ還り、この……世界へ孵るのだと」
魔法使い「……貴方のお母様が、貴方に……伝えて、と」
戦士「……ありがとう、と」
勇者「…… ……俺が……魔王を倒した、から」
僧侶「…… ……」
勇者「父さんを……頃した、から……」
魔法使い「…… ……」
勇者「……そう、か」ポロポロポロ
魔法使い「勇者……ッ」ギュッ
勇者「…… ……」
勇者(……暖かい。俺は……生きてる……)ギュウ
僧侶「……恐らく」
僧侶「あの方達も、こうして……同じ経験をなぞってこられたのでしょう」
僧侶「……『魔王』のお力でその身を闇に染め」
僧侶「来るべき、次代の勇者様に……真実をお伝えするために」
勇者「…… ……」
戦士「……特異点とは、何なんだ?」
勇者「特異点……?」
戦士「言っていただろう……『見極められなかった』と」
勇者「……僧侶か、剣士か……?」
僧侶「…… ……」
魔法使い「私達と……『今までと違う』点……」
勇者「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れ……か」
136: 2013/09/17(火) 10:55:37.23 ID:blUxq2UmP
魔法使い「…… ……」ポロポロ
勇者「……何でお前まで泣くんだよ、魔法使い」ナデナデ
魔法使い「だ……ッ だって……ッ」
コンコン
魔法使い「!」ゴシゴシ
僧侶「……はい」
使用人「開けても宜しいでしょうか」
戦士「ああ……」スタスタ、カチャ
使用人「ありがとうございます……どうぞ、お席にお着き下さい」
魔法使い「……貴女は、何処まで知ってるの?」
使用人「……世界の裏側を、少しだけ」
戦士「!」
使用人「何でもお聞き下さい。知る限りの全てを話します」
僧侶「どうして……教えて下さるのですか」
僧侶「貴女は……魔族なのでしょう?」
使用人「……『魔王様』は私の主ですから」
戦士「『魔王』は氏んだだろう」
使用人「……そこに、いらっしゃるではありませんか」
魔法使い「! 勇者は……ッ」
僧侶「…… ……」
戦士「……僧侶?」
僧侶「勇者様ご本人が……一番、その…… ……」
勇者「…… ……」
僧侶「……解って、いらっしゃる、かと……思う、んですけど……」
勇者「……納得しなくちゃ行けないのかもしれない」
勇者「受け入れなきゃいけないのかもしれないけど……自覚なんて、無いよ」
魔法使い「僧侶……には、解る、の……ね……?」
僧侶「もう……魔王様、とお呼びするべきですか?」
勇者「…… ……」
使用人「お受け止めになられるまで、勇者様とお呼びした方が宜しいですか?」
勇者「……うん。貴女が、それで構わないなら」
使用人「では、勇者様……僧侶様、魔法使い様、戦士様も」
使用人「どうぞ、召し上がって下さい」
勇者「……何でお前まで泣くんだよ、魔法使い」ナデナデ
魔法使い「だ……ッ だって……ッ」
コンコン
魔法使い「!」ゴシゴシ
僧侶「……はい」
使用人「開けても宜しいでしょうか」
戦士「ああ……」スタスタ、カチャ
使用人「ありがとうございます……どうぞ、お席にお着き下さい」
魔法使い「……貴女は、何処まで知ってるの?」
使用人「……世界の裏側を、少しだけ」
戦士「!」
使用人「何でもお聞き下さい。知る限りの全てを話します」
僧侶「どうして……教えて下さるのですか」
僧侶「貴女は……魔族なのでしょう?」
使用人「……『魔王様』は私の主ですから」
戦士「『魔王』は氏んだだろう」
使用人「……そこに、いらっしゃるではありませんか」
魔法使い「! 勇者は……ッ」
僧侶「…… ……」
戦士「……僧侶?」
僧侶「勇者様ご本人が……一番、その…… ……」
勇者「…… ……」
僧侶「……解って、いらっしゃる、かと……思う、んですけど……」
勇者「……納得しなくちゃ行けないのかもしれない」
勇者「受け入れなきゃいけないのかもしれないけど……自覚なんて、無いよ」
魔法使い「僧侶……には、解る、の……ね……?」
僧侶「もう……魔王様、とお呼びするべきですか?」
勇者「…… ……」
使用人「お受け止めになられるまで、勇者様とお呼びした方が宜しいですか?」
勇者「……うん。貴女が、それで構わないなら」
使用人「では、勇者様……僧侶様、魔法使い様、戦士様も」
使用人「どうぞ、召し上がって下さい」
137: 2013/09/17(火) 11:05:03.28 ID:blUxq2UmP
戦士「……世界の裏側を少しだけ、と言ったな」
使用人「はい」
戦士「この『世界』はどうなっている?」
使用人「確かな事は解りません。ですが……繰り返されている、のです」
魔法使い「繰り返されている……?」
使用人「はい。『勇者』が『魔王』になり」
勇者「……新たな勇者を産む、のか?」
使用人「……はい」
魔法使い「…… ……『港街の勇者』は、金の髪の魔王……勇者の」
魔法使い「お父様が、倒した……のよね?」
使用人「はい……ですが、もう少し……さかのぼってお話ししましょう」
僧侶「……貴女は港街の勇者……少年を知っている、のですよね?」
使用人「勿論です……私は、少年様……紫の瞳の魔王様のお力で」
使用人「魔族へと変じましたから」
僧侶「え!?」
魔法使い「……貴女も、元人間……なの!?」
使用人「……はい。人としての私……『少女』は氏に」
勇者「!」
使用人「……『使用人』として、新たな生を授かりました」
戦士「……お前が……少女!?」
使用人「ご存じなのですか?」
戦士「お祖母様が残した……本に、名があった」
使用人「……お祖母様。ああ、盗賊様ですね……戦士様は」
使用人「盗賊様と鍛冶師様の……お孫さん、でしたね」
戦士「…… ……」
魔法使い「……あの本に名前があったんだもの。知ってて……当然よね……」
僧侶「あ、あの……!では、私の母は……!エルフの、姫の事は……ッ」
使用人「勿論、存じ上げています」
僧侶「……あ、あ……」
使用人「順番にお話致します」
勇者「さっき……僧侶も聞いていたけど、何故……?」
使用人「え?」
使用人「はい」
戦士「この『世界』はどうなっている?」
使用人「確かな事は解りません。ですが……繰り返されている、のです」
魔法使い「繰り返されている……?」
使用人「はい。『勇者』が『魔王』になり」
勇者「……新たな勇者を産む、のか?」
使用人「……はい」
魔法使い「…… ……『港街の勇者』は、金の髪の魔王……勇者の」
魔法使い「お父様が、倒した……のよね?」
使用人「はい……ですが、もう少し……さかのぼってお話ししましょう」
僧侶「……貴女は港街の勇者……少年を知っている、のですよね?」
使用人「勿論です……私は、少年様……紫の瞳の魔王様のお力で」
使用人「魔族へと変じましたから」
僧侶「え!?」
魔法使い「……貴女も、元人間……なの!?」
使用人「……はい。人としての私……『少女』は氏に」
勇者「!」
使用人「……『使用人』として、新たな生を授かりました」
戦士「……お前が……少女!?」
使用人「ご存じなのですか?」
戦士「お祖母様が残した……本に、名があった」
使用人「……お祖母様。ああ、盗賊様ですね……戦士様は」
使用人「盗賊様と鍛冶師様の……お孫さん、でしたね」
戦士「…… ……」
魔法使い「……あの本に名前があったんだもの。知ってて……当然よね……」
僧侶「あ、あの……!では、私の母は……!エルフの、姫の事は……ッ」
使用人「勿論、存じ上げています」
僧侶「……あ、あ……」
使用人「順番にお話致します」
勇者「さっき……僧侶も聞いていたけど、何故……?」
使用人「え?」
138: 2013/09/17(火) 11:16:08.80 ID:blUxq2UmP
勇者「……確かに、元人間かもしれないし、その」
勇者「少年……紫の瞳の魔王?が……主ってか、命の恩人、ってか……」
使用人「……」
勇者「……その辺の事情が分からないから、あれだけど……ッ」
勇者「……紫の瞳の魔王は氏んだのだろう?」
勇者「どうして……まだ、こんな事を……続けている、んだ?」
使用人「……私には、受け継いで行く義務があるんです」
僧侶「……?」
使用人「今は、事情も分かっていらっしゃらないでしょうし、省きますが」
使用人「私にはまだ、役目が残っているんです」
勇者「聞けば……理解すれば、解る……のか?」
使用人「そうであって頂ければ……嬉しいですね」
使用人「……お話しの前に……ま、勇者様」
勇者「え?」
使用人「光の剣を見せて頂けますか?」
勇者「あ、ああ……」スッ
使用人「……!」
使用人(やはり……少し、刀身が戻っている)
使用人(紫の瞳の魔王様に……吸収された分……?)
使用人(否、でも……金の髪の勇者様の時は……)
魔法使い「黙っちゃってどうしたのよ」
使用人「あ、ああ……すみません。ありがとうございました」スッ
勇者「……俺にはもう、使えない……のか?」
使用人「貴方はもう……『勇者』では、ありませんから」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
使用人「……では、知りうる限りの昔から、お話致します」
勇者「少年……紫の瞳の魔王?が……主ってか、命の恩人、ってか……」
使用人「……」
勇者「……その辺の事情が分からないから、あれだけど……ッ」
勇者「……紫の瞳の魔王は氏んだのだろう?」
勇者「どうして……まだ、こんな事を……続けている、んだ?」
使用人「……私には、受け継いで行く義務があるんです」
僧侶「……?」
使用人「今は、事情も分かっていらっしゃらないでしょうし、省きますが」
使用人「私にはまだ、役目が残っているんです」
勇者「聞けば……理解すれば、解る……のか?」
使用人「そうであって頂ければ……嬉しいですね」
使用人「……お話しの前に……ま、勇者様」
勇者「え?」
使用人「光の剣を見せて頂けますか?」
勇者「あ、ああ……」スッ
使用人「……!」
使用人(やはり……少し、刀身が戻っている)
使用人(紫の瞳の魔王様に……吸収された分……?)
使用人(否、でも……金の髪の勇者様の時は……)
魔法使い「黙っちゃってどうしたのよ」
使用人「あ、ああ……すみません。ありがとうございました」スッ
勇者「……俺にはもう、使えない……のか?」
使用人「貴方はもう……『勇者』では、ありませんから」
勇者「…… ……」
魔法使い「…… ……」
戦士「…… ……」
僧侶「…… ……」
使用人「……では、知りうる限りの昔から、お話致します」
139: 2013/09/17(火) 11:32:14.72 ID:blUxq2UmP
勇者「わかりやすく……頼むよ」
勇者「ただでさえややこしそうだから、さ……」ハァ
使用人「……善処します」
使用人「魔導の街……の事はご存じでしょうか」
魔法使い「……少年……紫の瞳の魔王が、領主と魔導将軍を倒して、って奴よね」
魔法使い「……あの女性は、どうして同じ名前だったの?」
使用人「金の髪の魔王様達にも全てをお話しさせて頂きました」
使用人「……その上で、魔族へと変じる時にあの名を選ばれた、と言うだけです」
使用人「他意があったかどうかまでは……」
魔法使い「……そう」
使用人「話を戻しますね……劣等種のお話は?」
魔法使い「…… ……」
戦士「そこら辺は本当にある程度だが、知っている」
使用人「助かります……劣等種は解放され、まずは港街が出来ました」
僧侶「盗賊様と鍛冶師様がお作りになられた、のですよね?」
使用人「中心となって、ですね」
使用人「……紫の瞳の魔王様は、魔石の作り方を盗賊様に教え、それを流通させる事で」
使用人「経済を回す手助けに、と……」
僧侶「……では、魔除けの石と言うのは……?」
使用人「……皮肉な、話です」
僧侶「え……」
使用人「女様は……ご存じですよね」
勇者「ああ……そうか。貴女も、女様も……」
使用人「ええ。同じ、魔導の街の娼館にいましたから」
使用人「……魔石の生成方法自体は、同じなのですよ」
使用人「生成者の魔力を込める、と言う事ですから、ね」
勇者「ただでさえややこしそうだから、さ……」ハァ
使用人「……善処します」
使用人「魔導の街……の事はご存じでしょうか」
魔法使い「……少年……紫の瞳の魔王が、領主と魔導将軍を倒して、って奴よね」
魔法使い「……あの女性は、どうして同じ名前だったの?」
使用人「金の髪の魔王様達にも全てをお話しさせて頂きました」
使用人「……その上で、魔族へと変じる時にあの名を選ばれた、と言うだけです」
使用人「他意があったかどうかまでは……」
魔法使い「……そう」
使用人「話を戻しますね……劣等種のお話は?」
魔法使い「…… ……」
戦士「そこら辺は本当にある程度だが、知っている」
使用人「助かります……劣等種は解放され、まずは港街が出来ました」
僧侶「盗賊様と鍛冶師様がお作りになられた、のですよね?」
使用人「中心となって、ですね」
使用人「……紫の瞳の魔王様は、魔石の作り方を盗賊様に教え、それを流通させる事で」
使用人「経済を回す手助けに、と……」
僧侶「……では、魔除けの石と言うのは……?」
使用人「……皮肉な、話です」
僧侶「え……」
使用人「女様は……ご存じですよね」
勇者「ああ……そうか。貴女も、女様も……」
使用人「ええ。同じ、魔導の街の娼館にいましたから」
使用人「……魔石の生成方法自体は、同じなのですよ」
使用人「生成者の魔力を込める、と言う事ですから、ね」
140: 2013/09/17(火) 12:30:24.95 ID:blUxq2UmP
使用人「元は、水や緑……回復に長けるとされる加護の方の」
使用人「魔力を込めた石、だったのです。癒やしの石と呼んでいました」
魔法使い「癒やしの石……」
使用人「ええ……この城に、姫様が来られた時」
僧侶「……母が、此処に!?」
使用人「……はい。ご免なさい。どうしても話が前後してしまいますが……」
戦士「解らなければ都度聞く。構わないから……話してくれ」
使用人「はい……魔気により体調を崩されたのです」
使用人「紫の瞳の魔王様もいらっしゃいましたし、応急処置ですが」
使用人「私も、緑の加護を受けていますから。いくつか石をお作りして」
使用人「お側に置いておきました。気休め程度でしょうが……」
使用人「無いよりも、マシだったとは思います」
僧侶「……母は、どうして……此処に?」
使用人「港街へと娼館で働かされて居た者が移った時に」
使用人「魔王様に着いていく、と仰られたので」
勇者「……そういえば、夫婦だった、と聞いた」
使用人「ええ」
僧侶「ほ……本当なのですか!?でも、私は……!!」
使用人「……後で、一冊本をお渡しします」
僧侶「本?」
使用人「それを読まれれば、何か解る事もあるでしょう」
使用人「……姫様のお腹の子、僧侶様……貴女は」
使用人「心配されずとも、人の子とのハーフです」
使用人「それだけは……間違いありません」
戦士「……確かなんだな?」
使用人「はい……貴女は回復魔法をお使いになられるでしょう?」
使用人「目を覚まさない勇者様に、ずっと魔法をかけていらっしゃった」
僧侶「……はい」
勇者「そ、そうなのか……御免」
僧侶「あ、そんな! ……謝らないで下さい!」
僧侶「無事に目が覚めて……良かったです」
使用人「魔力を込めた石、だったのです。癒やしの石と呼んでいました」
魔法使い「癒やしの石……」
使用人「ええ……この城に、姫様が来られた時」
僧侶「……母が、此処に!?」
使用人「……はい。ご免なさい。どうしても話が前後してしまいますが……」
戦士「解らなければ都度聞く。構わないから……話してくれ」
使用人「はい……魔気により体調を崩されたのです」
使用人「紫の瞳の魔王様もいらっしゃいましたし、応急処置ですが」
使用人「私も、緑の加護を受けていますから。いくつか石をお作りして」
使用人「お側に置いておきました。気休め程度でしょうが……」
使用人「無いよりも、マシだったとは思います」
僧侶「……母は、どうして……此処に?」
使用人「港街へと娼館で働かされて居た者が移った時に」
使用人「魔王様に着いていく、と仰られたので」
勇者「……そういえば、夫婦だった、と聞いた」
使用人「ええ」
僧侶「ほ……本当なのですか!?でも、私は……!!」
使用人「……後で、一冊本をお渡しします」
僧侶「本?」
使用人「それを読まれれば、何か解る事もあるでしょう」
使用人「……姫様のお腹の子、僧侶様……貴女は」
使用人「心配されずとも、人の子とのハーフです」
使用人「それだけは……間違いありません」
戦士「……確かなんだな?」
使用人「はい……貴女は回復魔法をお使いになられるでしょう?」
使用人「目を覚まさない勇者様に、ずっと魔法をかけていらっしゃった」
僧侶「……はい」
勇者「そ、そうなのか……御免」
僧侶「あ、そんな! ……謝らないで下さい!」
僧侶「無事に目が覚めて……良かったです」
141: 2013/09/17(火) 12:38:52.71 ID:blUxq2UmP
魔法使い「でも、貴女も魔族になったんでしょう?使用人さん」
使用人「さん、はいりません。 ……その時はまだ、人間でした」
使用人「……ええと。ああ、女さんですね」
使用人「女さんは、船長さんの船に乗り……あ、船長さんと言うのは……」
魔法使い「紫の瞳の魔王の真実を知っていた一人、よね」
戦士「海賊船の船長、だったか」
使用人「そうです。魔石を作るだけではお金にならない。生活が出来ない、と」
使用人「定期船の準備や、それに伴って魔石の流通などの手助けも」
使用人「してくださっていました。この城にも、何度も足を運んで下さいましたよ」
勇者「……その人は、人間……だよな?」
使用人「ええ。私が依頼して、姫様の為の癒やしの石等も運んで頂きました」
使用人「人で居る間は良かったのですが……」
魔法使い「……貴女は何時、魔族に……」
使用人「その前に、魔除けの石のお話しを済ませてしまいましょう」
使用人「船長さんの船で鍛冶師の村へたどり着いた女さんは、そこで」
使用人「……インキュバスと出会ってしまいました」
使用人「そうして、操られ……魔石の生成方法を、教えてしまったのだと」
戦士「……そんな事までできるのか、魔族ってのは……」
使用人「インキュバスは……人の精を糧として生きる魔族です」
使用人「見目麗しく、女性をその見た目と……快楽で支配するんです」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
使用人「インキュバスは紫の瞳の魔王様に殺され、女さんは救われました……が」
魔法使い「……辛かった、でしょうね。娼館でも……その」
僧侶「いえ……あの……」
使用人「…… ……」
戦士「僧侶?」
僧侶「人の、精を……命を、糧に……と、言う事は……」
勇者「…… ……」
使用人「さん、はいりません。 ……その時はまだ、人間でした」
使用人「……ええと。ああ、女さんですね」
使用人「女さんは、船長さんの船に乗り……あ、船長さんと言うのは……」
魔法使い「紫の瞳の魔王の真実を知っていた一人、よね」
戦士「海賊船の船長、だったか」
使用人「そうです。魔石を作るだけではお金にならない。生活が出来ない、と」
使用人「定期船の準備や、それに伴って魔石の流通などの手助けも」
使用人「してくださっていました。この城にも、何度も足を運んで下さいましたよ」
勇者「……その人は、人間……だよな?」
使用人「ええ。私が依頼して、姫様の為の癒やしの石等も運んで頂きました」
使用人「人で居る間は良かったのですが……」
魔法使い「……貴女は何時、魔族に……」
使用人「その前に、魔除けの石のお話しを済ませてしまいましょう」
使用人「船長さんの船で鍛冶師の村へたどり着いた女さんは、そこで」
使用人「……インキュバスと出会ってしまいました」
使用人「そうして、操られ……魔石の生成方法を、教えてしまったのだと」
戦士「……そんな事までできるのか、魔族ってのは……」
使用人「インキュバスは……人の精を糧として生きる魔族です」
使用人「見目麗しく、女性をその見た目と……快楽で支配するんです」
魔法使い「…… ……」
僧侶「…… ……」
使用人「インキュバスは紫の瞳の魔王様に殺され、女さんは救われました……が」
魔法使い「……辛かった、でしょうね。娼館でも……その」
僧侶「いえ……あの……」
使用人「…… ……」
戦士「僧侶?」
僧侶「人の、精を……命を、糧に……と、言う事は……」
勇者「…… ……」
142: 2013/09/17(火) 12:47:45.05 ID:blUxq2UmP
使用人「……ええ。姫様に看て頂いた所、長くは……と」
戦士「……酷い話だ」
使用人「紫の瞳の魔王様は魔族へ転じる事も提案されましたが」
勇者「拒否……されたのか?」
使用人「とても持ちません……人が魔へと変じる事は可能ですが」
使用人「強い気持ちが……必要となります」
魔法使い「気持ち……」
使用人「はい。魔になりたい。氏にたく無い……など、ですね」
戦士「…… ……」
使用人「勿論、気持ちがいくら強くても……器が持たなければ意味はありません」
使用人「女さんは、迷っていらっしゃった。それ以上に、身体の方が……」
魔法使い「……失敗すると、どうなるの?」
使用人「自我も無い獣へと成り果てる……でしょうね」
使用人「……他者に、氏を与えられるのを待つのみ、でしょう」
勇者「そ……ッ そんな危険な事をしたのか!?貴女も……!」
勇者「母さん達も……!」
使用人「私達に共通するのは、強い意思があった事」
使用人「……紫の魔王の側近様、はご存じでしょうか」
戦士「ああ。女剣士様の思い人、だな。その男も、元人間だと聞いた」
使用人「はい。彼は……紫の瞳の魔王様のお父様のお力に寄って」
使用人「魔族へと変じています。彼は強く、まだ氏にたく無い、と願った……のだと」
勇者「……って事は、紫の瞳の魔王の前の、勇者?」
使用人「……いいえ。紫の瞳の魔王様は、産まれた時から……魔族でした」
僧侶「え!?」
戦士「それは後回しにしてくれ。先に……何だったか」
魔法使い「女さんは助け出されて、港町に戻って」
魔法使い「港街の神父様に、魔除けの石の生成方法を教えた、で良いのかしら」
使用人「そうです」
戦士「……酷い話だ」
使用人「紫の瞳の魔王様は魔族へ転じる事も提案されましたが」
勇者「拒否……されたのか?」
使用人「とても持ちません……人が魔へと変じる事は可能ですが」
使用人「強い気持ちが……必要となります」
魔法使い「気持ち……」
使用人「はい。魔になりたい。氏にたく無い……など、ですね」
戦士「…… ……」
使用人「勿論、気持ちがいくら強くても……器が持たなければ意味はありません」
使用人「女さんは、迷っていらっしゃった。それ以上に、身体の方が……」
魔法使い「……失敗すると、どうなるの?」
使用人「自我も無い獣へと成り果てる……でしょうね」
使用人「……他者に、氏を与えられるのを待つのみ、でしょう」
勇者「そ……ッ そんな危険な事をしたのか!?貴女も……!」
勇者「母さん達も……!」
使用人「私達に共通するのは、強い意思があった事」
使用人「……紫の魔王の側近様、はご存じでしょうか」
戦士「ああ。女剣士様の思い人、だな。その男も、元人間だと聞いた」
使用人「はい。彼は……紫の瞳の魔王様のお父様のお力に寄って」
使用人「魔族へと変じています。彼は強く、まだ氏にたく無い、と願った……のだと」
勇者「……って事は、紫の瞳の魔王の前の、勇者?」
使用人「……いいえ。紫の瞳の魔王様は、産まれた時から……魔族でした」
僧侶「え!?」
戦士「それは後回しにしてくれ。先に……何だったか」
魔法使い「女さんは助け出されて、港町に戻って」
魔法使い「港街の神父様に、魔除けの石の生成方法を教えた、で良いのかしら」
使用人「そうです」
157: 2013/09/18(水) 09:32:07.82 ID:yDjwowaWP
僧侶「女様は亡くなられるまで、あの教会にいらっしゃった、のですよね」
使用人「そうです…… ……」
魔法使い「……どうしたの?」
使用人「……紫の瞳の魔王様と、姫様があの教会で式を挙げられた時、です」
僧侶「……式?」
使用人「エルフは……嘘を吐く事ができません」
戦士「!」
使用人「魔導の街に居る時に、姫様は魔導将軍に」
使用人「妻かと問われ、そうだと…… ……言ってしまった、と」
魔法使い「嘘を吐いたら……どうなるの?」
使用人「その嘘が本当になってしまう、と仰っていました」
僧侶「本当に……なる……?」
使用人「ご本人の事に限るのでしょうけれど……私も、それ程詳しく存じ上げては居ません」
使用人「ただ……エルフは、人寄りも易く優れた加護を得る事が出来る」
使用人「その代償として、嘘が吐けないのだ、と」
僧侶「…… ……あ、あの!」
使用人「はい?」
僧侶「鍛冶師の村で……魔導の街から来たという方に、エルフのお姫様の」
僧侶「御伽噺を見せて頂きました」
僧侶「それが……その、似た様な内容で……」
使用人「…… ……」
戦士「それに、魔導将軍が言っていた。僧侶が育った小屋で会った時……」
戦士「エルフは嘘は吐けない、と……」
使用人「……その本は、新緑の髪に、透き通る湖の様な蒼の瞳の」
勇者「!」
使用人「美しい女性の絵がありましたか?」
僧侶「そ……そうです……!」
使用人「……先ほど、お渡ししようとした本がそれです」
魔法使い「あの本が、ここに!?」
使用人「そうです…… ……」
魔法使い「……どうしたの?」
使用人「……紫の瞳の魔王様と、姫様があの教会で式を挙げられた時、です」
僧侶「……式?」
使用人「エルフは……嘘を吐く事ができません」
戦士「!」
使用人「魔導の街に居る時に、姫様は魔導将軍に」
使用人「妻かと問われ、そうだと…… ……言ってしまった、と」
魔法使い「嘘を吐いたら……どうなるの?」
使用人「その嘘が本当になってしまう、と仰っていました」
僧侶「本当に……なる……?」
使用人「ご本人の事に限るのでしょうけれど……私も、それ程詳しく存じ上げては居ません」
使用人「ただ……エルフは、人寄りも易く優れた加護を得る事が出来る」
使用人「その代償として、嘘が吐けないのだ、と」
僧侶「…… ……あ、あの!」
使用人「はい?」
僧侶「鍛冶師の村で……魔導の街から来たという方に、エルフのお姫様の」
僧侶「御伽噺を見せて頂きました」
僧侶「それが……その、似た様な内容で……」
使用人「…… ……」
戦士「それに、魔導将軍が言っていた。僧侶が育った小屋で会った時……」
戦士「エルフは嘘は吐けない、と……」
使用人「……その本は、新緑の髪に、透き通る湖の様な蒼の瞳の」
勇者「!」
使用人「美しい女性の絵がありましたか?」
僧侶「そ……そうです……!」
使用人「……先ほど、お渡ししようとした本がそれです」
魔法使い「あの本が、ここに!?」
158: 2013/09/18(水) 09:39:55.05 ID:yDjwowaWP
使用人「……姫様のお話を元に、紫の瞳の魔王様が書かれたのです」
使用人「絵を描かれたのは、紫の魔王の側近様」
使用人「一つをこの城へ。一つを女さんへ……と」
使用人「……貴方方が目にしたのは、女さんが教会へ持って行かれたものでしょうね」
戦士「……その男は、港街の教会から持ち出した、と……言っていた、な」
僧侶「では……あの御伽噺は……真実、なのですね!?」
僧侶「あれは……母の事……なのです……ね……」ポロポロ
使用人「……後で、お持ちします。貴女に差し上げます、僧侶様」
僧侶「え?」
使用人「姫様の娘である貴女にでしたら……紫の瞳の魔王様も喜ぶでしょう」
勇者「……いくら嘘を吐いてしまったからと言って」
勇者「それでも、夫婦だったのだろう?」
魔法使い「……愛し合って居られた、のかしら」
使用人「……どうでしょうね。あれは……愛では無い、等と……仰っていました、が」
勇者「本人達が……か?」
使用人「含めて、です。大事には違い無いけれど、と」
戦士「…… ……」
使用人「……失礼。また脱線してしまいましたね」
勇者「あ、ちょっと待って……インキュバスのその、魔寄せの石、なんだが」
使用人「はい?」
勇者「……鍛冶師の村に、まだ残っているんだ」
使用人「え……」
勇者「それによって、村には魔物が降りては来ない。だが、その事実を……」
勇者「黙って居る代わり、と……魔導国の奴らが、一つ持ち帰ったらしい」
使用人「…… ……」
勇者「魔導国と始まりの国で、戦争状態になっていたのは知ってる?」
使用人「船団が……洞窟の近くで抗戦している様だと言うのは」
使用人「魔導将軍に聞いています」
勇者「ああ……魔導国はあの洞窟を占拠して」
勇者「鉱石を採掘して、持ち帰った」
魔法使い「……あいつら、驚いてるでしょうね」フゥ
魔法使い「私達……急に消えちゃった、んだもの」
使用人「絵を描かれたのは、紫の魔王の側近様」
使用人「一つをこの城へ。一つを女さんへ……と」
使用人「……貴方方が目にしたのは、女さんが教会へ持って行かれたものでしょうね」
戦士「……その男は、港街の教会から持ち出した、と……言っていた、な」
僧侶「では……あの御伽噺は……真実、なのですね!?」
僧侶「あれは……母の事……なのです……ね……」ポロポロ
使用人「……後で、お持ちします。貴女に差し上げます、僧侶様」
僧侶「え?」
使用人「姫様の娘である貴女にでしたら……紫の瞳の魔王様も喜ぶでしょう」
勇者「……いくら嘘を吐いてしまったからと言って」
勇者「それでも、夫婦だったのだろう?」
魔法使い「……愛し合って居られた、のかしら」
使用人「……どうでしょうね。あれは……愛では無い、等と……仰っていました、が」
勇者「本人達が……か?」
使用人「含めて、です。大事には違い無いけれど、と」
戦士「…… ……」
使用人「……失礼。また脱線してしまいましたね」
勇者「あ、ちょっと待って……インキュバスのその、魔寄せの石、なんだが」
使用人「はい?」
勇者「……鍛冶師の村に、まだ残っているんだ」
使用人「え……」
勇者「それによって、村には魔物が降りては来ない。だが、その事実を……」
勇者「黙って居る代わり、と……魔導国の奴らが、一つ持ち帰ったらしい」
使用人「…… ……」
勇者「魔導国と始まりの国で、戦争状態になっていたのは知ってる?」
使用人「船団が……洞窟の近くで抗戦している様だと言うのは」
使用人「魔導将軍に聞いています」
勇者「ああ……魔導国はあの洞窟を占拠して」
勇者「鉱石を採掘して、持ち帰った」
魔法使い「……あいつら、驚いてるでしょうね」フゥ
魔法使い「私達……急に消えちゃった、んだもの」
159: 2013/09/18(水) 09:47:52.95 ID:yDjwowaWP
使用人「后様に転移させられた時、ですね」
僧侶「……あれは、魔族ならば……誰でも出来る、のですか?」
使用人「后様曰く、『魔法なんて使い様』だと仰ってましたが」
使用人「……少なくとも、私には出来ません」
勇者「…… ……」
魔法使い「どうしたの?」
勇者「剣士は……魔族だった、んだよな?」
僧侶「え? ……はい。彼の気配は、確かに……魔族でした」
使用人「紫の瞳の……男、ですね」
戦士「あの街に居たんだ。あの時……俺達の傍に」
使用人「…… ……」
魔法使い「金の髪の魔王と対峙した時、お母様が言ってたわよね」
魔法使い「『見極められなかった』って」
使用人「……特異点、ですね」
戦士「そもそも、特異点とは何だ?」
戦士「金の髪の勇者の時と、俺達の時と……そりゃ、違いはあるだろうが……」
戦士「そんな事を言ってしまえば、人等、個々違って当然だ」
使用人「『生と氏』」
魔法使い「え?」
使用人「『特異点』『王』『拾う者』」
使用人「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』」
使用人「……『知を受け継ぐ者』」
勇者「……?」
使用人「『光と闇』『勇者と魔王』」
使用人「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
僧侶「!」
使用人「『我が名は、勇者』」
使用人「『光に導かれし運命の子』」
使用人「『闇に抱かれし運命の子』」
使用人「『汝の名は、魔王』」
使用人「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
使用人「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者』」
戦士「……なんだ、それは」
僧侶「……あれは、魔族ならば……誰でも出来る、のですか?」
使用人「后様曰く、『魔法なんて使い様』だと仰ってましたが」
使用人「……少なくとも、私には出来ません」
勇者「…… ……」
魔法使い「どうしたの?」
勇者「剣士は……魔族だった、んだよな?」
僧侶「え? ……はい。彼の気配は、確かに……魔族でした」
使用人「紫の瞳の……男、ですね」
戦士「あの街に居たんだ。あの時……俺達の傍に」
使用人「…… ……」
魔法使い「金の髪の魔王と対峙した時、お母様が言ってたわよね」
魔法使い「『見極められなかった』って」
使用人「……特異点、ですね」
戦士「そもそも、特異点とは何だ?」
戦士「金の髪の勇者の時と、俺達の時と……そりゃ、違いはあるだろうが……」
戦士「そんな事を言ってしまえば、人等、個々違って当然だ」
使用人「『生と氏』」
魔法使い「え?」
使用人「『特異点』『王』『拾う者』」
使用人「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』」
使用人「……『知を受け継ぐ者』」
勇者「……?」
使用人「『光と闇』『勇者と魔王』」
使用人「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
僧侶「!」
使用人「『我が名は、勇者』」
使用人「『光に導かれし運命の子』」
使用人「『闇に抱かれし運命の子』」
使用人「『汝の名は、魔王』」
使用人「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
使用人「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者』」
戦士「……なんだ、それは」
160: 2013/09/18(水) 09:57:56.76 ID:yDjwowaWP
使用人「紫の瞳の魔王様が、器となる前に」
使用人「残された言葉です」
使用人「そして……『欠片』を探し出せ、と」
勇者「『欠片』……」
魔法使い「……それは、キーワードとしての『欠片』なの?」
使用人「わかりません。全てを指しているのかもしれません」
使用人「それに……金の髪の魔王様が、まだ勇者だった時、に」
使用人「船の上で、人魚の魔詩によって見せられた夢で……」
僧侶「人魚……!」
使用人「え?」
勇者「……俺達もその、人魚の魔詩とやらを聞いた」
勇者「僧侶以外は、皆……共通する不思議な光景を見たんだ」
魔法使い「……夢、みたいだったわね」
使用人「……金の髪の魔王様は」
使用人「彼にそっくりな、金の髪に金の瞳の男が出て来た、と」
戦士「……」
使用人「その男の手には、真っ黒の勇者の印があったのだそうです」
勇者「…… ……」スッ
魔法使い「勇者のも……真っ黒になっちゃった、わよね」
勇者「……うん」
使用人「『知る事を拒否するな』」
勇者「! 俺が父さんに言われた言葉だ……!」
使用人「『過ちを犯した世界は、真に美しい世界では無い』」
使用人「『必ず、魔王を倒せ!『欠片』を見つけ出せ』」
使用人「『勇者は、魔王を倒す』」
魔法使い「過ちを犯した世界……?」
使用人「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
使用人「『勇者は、魔王の闇を手に入れる』」
使用人「『俺は『知る』事を『拒否』した』」
僧侶「……え?」
使用人「『選択を誤るな』」
魔法使い「……お母様も、魔導将軍も、側近も……同じ事、言ってたわよね」
戦士「どう言う……事だ」
使用人「それから……『過ちを犯した『世界』は、廻り続ける』」
使用人「『過去も、現在も、未来も……ずっと』と」
使用人「残された言葉です」
使用人「そして……『欠片』を探し出せ、と」
勇者「『欠片』……」
魔法使い「……それは、キーワードとしての『欠片』なの?」
使用人「わかりません。全てを指しているのかもしれません」
使用人「それに……金の髪の魔王様が、まだ勇者だった時、に」
使用人「船の上で、人魚の魔詩によって見せられた夢で……」
僧侶「人魚……!」
使用人「え?」
勇者「……俺達もその、人魚の魔詩とやらを聞いた」
勇者「僧侶以外は、皆……共通する不思議な光景を見たんだ」
魔法使い「……夢、みたいだったわね」
使用人「……金の髪の魔王様は」
使用人「彼にそっくりな、金の髪に金の瞳の男が出て来た、と」
戦士「……」
使用人「その男の手には、真っ黒の勇者の印があったのだそうです」
勇者「…… ……」スッ
魔法使い「勇者のも……真っ黒になっちゃった、わよね」
勇者「……うん」
使用人「『知る事を拒否するな』」
勇者「! 俺が父さんに言われた言葉だ……!」
使用人「『過ちを犯した世界は、真に美しい世界では無い』」
使用人「『必ず、魔王を倒せ!『欠片』を見つけ出せ』」
使用人「『勇者は、魔王を倒す』」
魔法使い「過ちを犯した世界……?」
使用人「『魔王は勇者の光を奪いさる』」
使用人「『勇者は、魔王の闇を手に入れる』」
使用人「『俺は『知る』事を『拒否』した』」
僧侶「……え?」
使用人「『選択を誤るな』」
魔法使い「……お母様も、魔導将軍も、側近も……同じ事、言ってたわよね」
戦士「どう言う……事だ」
使用人「それから……『過ちを犯した『世界』は、廻り続ける』」
使用人「『過去も、現在も、未来も……ずっと』と」
161: 2013/09/18(水) 10:07:00.63 ID:yDjwowaWP
使用人「……紫の瞳の魔王様は、『器』でした」
魔法使い「器?」
使用人「先ほど、紫の瞳の魔王様は魔族として産まれたと言いましたね」
僧侶「え、ええ……」
魔法使い「器?」
使用人「先ほど、紫の瞳の魔王様は魔族として産まれたと言いましたね」
僧侶「え、ええ……」
171: 2013/09/19(木) 09:28:33.08 ID:NrBYz95dP
使用人「紫の瞳の魔王様の、お父様もお母様も、勿論……魔族でした」
使用人「お父様は、紅い瞳の魔王様……紫の瞳の魔王様の」
使用人「前の代の魔王様です」
戦士「……魔王の子、が、魔王……?」
魔法使い「……いつから?」
使用人「はい?」
魔法使い「何時から、魔王の子が……勇者、になったの」
使用人「……今から、お話し致します」
使用人「いくら『魔王』であっても、紫の瞳の魔王様のあの瞳のお色は」
使用人「見た事が無かった、と聞いていました」
使用人「紅い瞳の魔王様は……紫の瞳の魔王様を余り、他の魔族の前に」
使用人「出そうとはされなかったそうです」
僧侶「どうしてです?次代の魔王になる方なのに……」
使用人「故に、利用されるのを恐れたのでしょう」
使用人「……今よりも、もっと血生臭い時代であったとも聞いています」
勇者「……戦争、とかあったのか」
使用人「ええ……紅い瞳の魔王様のお父様。その方は……」
使用人「島を一つ、強大な力を持って、火の玉一つで滅ぼしてしまったと」
魔法使い「え……!?」
使用人「それが……紫の魔王の側近様の、故郷だったそうです」
戦士「…… ……」
使用人「側近様がお仲間の方達と旅立たれた後、島は沈み」
使用人「……あの、大海の大渦になったのです」
僧侶「……酷い……ッ」
使用人「側近様達は、失われた国の『勇者になる筈の者達』だったそうです」
魔法使い「勇者!?」
使用人「『魔王』を倒した若者達は、何れ……世界の英雄となり」
使用人「『勇者』と呼ばれる様になるだろう、と……」
使用人「言われていた、そうですよ」
使用人「お父様は、紅い瞳の魔王様……紫の瞳の魔王様の」
使用人「前の代の魔王様です」
戦士「……魔王の子、が、魔王……?」
魔法使い「……いつから?」
使用人「はい?」
魔法使い「何時から、魔王の子が……勇者、になったの」
使用人「……今から、お話し致します」
使用人「いくら『魔王』であっても、紫の瞳の魔王様のあの瞳のお色は」
使用人「見た事が無かった、と聞いていました」
使用人「紅い瞳の魔王様は……紫の瞳の魔王様を余り、他の魔族の前に」
使用人「出そうとはされなかったそうです」
僧侶「どうしてです?次代の魔王になる方なのに……」
使用人「故に、利用されるのを恐れたのでしょう」
使用人「……今よりも、もっと血生臭い時代であったとも聞いています」
勇者「……戦争、とかあったのか」
使用人「ええ……紅い瞳の魔王様のお父様。その方は……」
使用人「島を一つ、強大な力を持って、火の玉一つで滅ぼしてしまったと」
魔法使い「え……!?」
使用人「それが……紫の魔王の側近様の、故郷だったそうです」
戦士「…… ……」
使用人「側近様がお仲間の方達と旅立たれた後、島は沈み」
使用人「……あの、大海の大渦になったのです」
僧侶「……酷い……ッ」
使用人「側近様達は、失われた国の『勇者になる筈の者達』だったそうです」
魔法使い「勇者!?」
使用人「『魔王』を倒した若者達は、何れ……世界の英雄となり」
使用人「『勇者』と呼ばれる様になるだろう、と……」
使用人「言われていた、そうですよ」
174: 2013/09/19(木) 10:24:20.13 ID:NrBYz95dP
魔法使い「『勇者』になる……」
戦士「『港町の』、『鍛治師の村の』……と、同じ様な物か」
使用人「……恨みや怒りを胸に、ここまでたどり着いた側近様達は、あっさりと……『魔王』に殺されかけた」
使用人「そんな彼らに、『魔王』は、生きたいか、と問うたそうです」
使用人「……氏にたくない、と答えたのは、側近様だけだった」
戦士「『港町の』、『鍛治師の村の』……と、同じ様な物か」
使用人「……恨みや怒りを胸に、ここまでたどり着いた側近様達は、あっさりと……『魔王』に殺されかけた」
使用人「そんな彼らに、『魔王』は、生きたいか、と問うたそうです」
使用人「……氏にたくない、と答えたのは、側近様だけだった」
180: 2013/09/19(木) 22:55:28.14 ID:NrBYz95dP
使用人「そして、紫の魔王の側近様は紅い瞳の魔王様の魔力で」
使用人「魔族となり、『魔王の側近』となりました」
使用人「永い年月が流れ、紅い瞳の魔王様と、紫の瞳の魔王様が世代交代されて……」
魔法使い「世代交代、って……?」
使用人「……『勇者と魔王』と同じです」
戦士「!」
使用人「子が、親を頃し……その力を受け継ぐのです」
僧侶「え……!?」
勇者「…… ……」
使用人「勇者様の光の剣。それは……元々、『魔王の剣』だったのですよ」
魔法使い「な……ッ馬鹿な!魔王の剣を、どうして勇者が……!」
使用人「先ほど申し上げたとおり。紫の瞳の魔王様は『器』だったのです」
使用人「『中身』は……金の髪の勇者様、です」
戦士「……ちょっと待て。流石に混乱してきた」
使用人「先ほど、紫の瞳の魔王様が残された言葉……と、言ったのを覚えて居ますか?」
勇者「……『生と氏』とか言う奴か」
使用人「はい……この城に、同時に……起こりました」
魔法使い「え……?」
使用人「……船長さんのお子様を、女海賊さんと言う方が、このお城で」
使用人「産み落とされました……そして、彼女は亡くなられた」
戦士「…… ……」
使用人「推測です……全て、推測です」
使用人「『特異点』……貴女か……」
僧侶「私……」
使用人「もしくは、剣士さん」
魔法使い「……でも、どうして剣士が……」
使用人「……女海賊さんが、赤ちゃんを産まれた後、紫の瞳の魔王様の傍に」
使用人「もう一人、赤ちゃんが…… ……現れた、のです」
勇者「現れた?」
使用人「はい。気がついたら……そこに」
使用人「それが……『金の瞳の勇者様』だったのです」
勇者「え!?」
使用人「魔族となり、『魔王の側近』となりました」
使用人「永い年月が流れ、紅い瞳の魔王様と、紫の瞳の魔王様が世代交代されて……」
魔法使い「世代交代、って……?」
使用人「……『勇者と魔王』と同じです」
戦士「!」
使用人「子が、親を頃し……その力を受け継ぐのです」
僧侶「え……!?」
勇者「…… ……」
使用人「勇者様の光の剣。それは……元々、『魔王の剣』だったのですよ」
魔法使い「な……ッ馬鹿な!魔王の剣を、どうして勇者が……!」
使用人「先ほど申し上げたとおり。紫の瞳の魔王様は『器』だったのです」
使用人「『中身』は……金の髪の勇者様、です」
戦士「……ちょっと待て。流石に混乱してきた」
使用人「先ほど、紫の瞳の魔王様が残された言葉……と、言ったのを覚えて居ますか?」
勇者「……『生と氏』とか言う奴か」
使用人「はい……この城に、同時に……起こりました」
魔法使い「え……?」
使用人「……船長さんのお子様を、女海賊さんと言う方が、このお城で」
使用人「産み落とされました……そして、彼女は亡くなられた」
戦士「…… ……」
使用人「推測です……全て、推測です」
使用人「『特異点』……貴女か……」
僧侶「私……」
使用人「もしくは、剣士さん」
魔法使い「……でも、どうして剣士が……」
使用人「……女海賊さんが、赤ちゃんを産まれた後、紫の瞳の魔王様の傍に」
使用人「もう一人、赤ちゃんが…… ……現れた、のです」
勇者「現れた?」
使用人「はい。気がついたら……そこに」
使用人「それが……『金の瞳の勇者様』だったのです」
勇者「え!?」
181: 2013/09/19(木) 23:02:25.17 ID:NrBYz95dP
使用人「これもまた……『生と氏』」
使用人「紫の瞳の魔王様は『氏』んで『器』になり」
使用人「……金の髪の勇者様が『生』まれ、『中身』となりました」
魔法使い「そんな馬鹿な!」
使用人「……そしてその時、この城の天井を突き破り、大きな光が」
使用人「どこかへと飛び去っていきました。それが、『欠片』……」
使用人「……話を聞く限り、それが……剣士様では無いかと、思います」
戦士「あいつは……記憶が無い、と言っていたな」
魔法使い「戦士!?信じるの!?」
戦士「…… ……」
使用人「そして……『王』」
僧侶「……それは、もしかして……盗賊様の事、ですか?」
使用人「こじつけに過ぎないのかもしれません。ですが……」
使用人「……私も、盗賊様にお願い致しました。始まりの大陸に街を」
使用人「廃墟の城を復活させるのならば、どうか……『王』になって欲しいと」
魔法使い「…… ……」
戦士「では、魔導国の奴らが、そこに拘ったのも……?」
使用人「拘った?」
僧侶「……始まりの国の国王様に、王政を取りやめる様に、と」
僧侶「要求したのだそうです。知ってか知らずか、は……」
使用人「この話は、知っている筈はありません。偶然だとは思いますが……」
勇者「…… ……だが、奴らは……」
魔法使い「あの人達は本当に『特別』に拘るの。だから……」
使用人「やはり……偶然でしょうね」
戦士「……それで?」
使用人「結局は人々に望まれた……のだと思います」
使用人「あの時、王の座に着くのは、盗賊様か鍛冶師様。どちらかしか」
使用人「……居られなかった筈、ですから」
使用人「紫の瞳の魔王様は『氏』んで『器』になり」
使用人「……金の髪の勇者様が『生』まれ、『中身』となりました」
魔法使い「そんな馬鹿な!」
使用人「……そしてその時、この城の天井を突き破り、大きな光が」
使用人「どこかへと飛び去っていきました。それが、『欠片』……」
使用人「……話を聞く限り、それが……剣士様では無いかと、思います」
戦士「あいつは……記憶が無い、と言っていたな」
魔法使い「戦士!?信じるの!?」
戦士「…… ……」
使用人「そして……『王』」
僧侶「……それは、もしかして……盗賊様の事、ですか?」
使用人「こじつけに過ぎないのかもしれません。ですが……」
使用人「……私も、盗賊様にお願い致しました。始まりの大陸に街を」
使用人「廃墟の城を復活させるのならば、どうか……『王』になって欲しいと」
魔法使い「…… ……」
戦士「では、魔導国の奴らが、そこに拘ったのも……?」
使用人「拘った?」
僧侶「……始まりの国の国王様に、王政を取りやめる様に、と」
僧侶「要求したのだそうです。知ってか知らずか、は……」
使用人「この話は、知っている筈はありません。偶然だとは思いますが……」
勇者「…… ……だが、奴らは……」
魔法使い「あの人達は本当に『特別』に拘るの。だから……」
使用人「やはり……偶然でしょうね」
戦士「……それで?」
使用人「結局は人々に望まれた……のだと思います」
使用人「あの時、王の座に着くのは、盗賊様か鍛冶師様。どちらかしか」
使用人「……居られなかった筈、ですから」
182: 2013/09/19(木) 23:10:01.14 ID:NrBYz95dP
魔法使い「……『拾う者』ってのは、何なのよ、じゃあ」
僧侶「……神父様」
魔法使い「え?」
僧侶「私が、『特異点』だとするならば」
僧侶「……拾い、育てて下さった、神父様……」
魔法使い「そ……ッ れ、こそ!こじつけも良い所よ、僧侶!」
戦士「だが……その神父、と言う人も……『繋がっている』んだろう?」
勇者「港街の神父様を敬愛してた人……だったか」
魔法使い「じゃ、じゃあ……ッ 『受け入れる者』は!?」
使用人「……それは、解りません」
魔法使い「……やっぱり、こじつけじゃ無いの!」
勇者「まあ、待って……俺達では……『終わらなかった』んだ」
魔法使い「勇者!?」
勇者「俺は確かに、魔王を倒した。だけど……俺が」
勇者「……俺が、魔王になった、て言う事は……」
魔法使い「やめて頂戴!貴方は……!」
僧侶「……もう、魔王様とお呼びした方が、良いのかも知れませんね」
魔法使い「僧侶まで……!」
使用人「……『表裏一体』は、『勇者と魔王』を指すのだと思われます」
使用人「『欠片』は……全てを指すのか。飛び出して行ったあの光……」
使用人「……剣士様だけを指すのか」
戦士「剣士だと決まった訳では無いのだろう?」
戦士「確かに……あいつは魔族の様だし」
戦士「……勇者にそっくり、だが」
使用人「……そうですね」
魔法使い「ちょっと!」
使用人「…… ……『知を受け継ぐ者』は、恐らく、私なのだと思われます」
魔法使い「…… ……何で、言い切れるのよ」
使用人「あの時、紫の魔王の側近様の身を借りた魔王様が」
使用人「私を見つめて言われた、ので」
僧侶「……身を、借りた?」
僧侶「……神父様」
魔法使い「え?」
僧侶「私が、『特異点』だとするならば」
僧侶「……拾い、育てて下さった、神父様……」
魔法使い「そ……ッ れ、こそ!こじつけも良い所よ、僧侶!」
戦士「だが……その神父、と言う人も……『繋がっている』んだろう?」
勇者「港街の神父様を敬愛してた人……だったか」
魔法使い「じゃ、じゃあ……ッ 『受け入れる者』は!?」
使用人「……それは、解りません」
魔法使い「……やっぱり、こじつけじゃ無いの!」
勇者「まあ、待って……俺達では……『終わらなかった』んだ」
魔法使い「勇者!?」
勇者「俺は確かに、魔王を倒した。だけど……俺が」
勇者「……俺が、魔王になった、て言う事は……」
魔法使い「やめて頂戴!貴方は……!」
僧侶「……もう、魔王様とお呼びした方が、良いのかも知れませんね」
魔法使い「僧侶まで……!」
使用人「……『表裏一体』は、『勇者と魔王』を指すのだと思われます」
使用人「『欠片』は……全てを指すのか。飛び出して行ったあの光……」
使用人「……剣士様だけを指すのか」
戦士「剣士だと決まった訳では無いのだろう?」
戦士「確かに……あいつは魔族の様だし」
戦士「……勇者にそっくり、だが」
使用人「……そうですね」
魔法使い「ちょっと!」
使用人「…… ……『知を受け継ぐ者』は、恐らく、私なのだと思われます」
魔法使い「…… ……何で、言い切れるのよ」
使用人「あの時、紫の魔王の側近様の身を借りた魔王様が」
使用人「私を見つめて言われた、ので」
僧侶「……身を、借りた?」
183: 2013/09/19(木) 23:17:56.49 ID:NrBYz95dP
使用人「ああ……すみません。言い忘れていました」
使用人「紫の魔王の側近様は、紫の瞳の魔王様の目を与えられ」
勇者「え!?」
魔法使い「……目!?どう言う事!?」
使用人「……『目玉を食わされた』と、仰っていましたけれど」
僧侶「…… ……」
戦士「それは……文字通りに受け取って良い、んだな?」
使用人「はい」
魔法使い「……それは、どうなの」
使用人「『魔王』のお力を内包される事で、力は強くなられた様です」
使用人「お二人の間では『心話』で会話出来ていた様ですし」
使用人「……インキュバスを倒された時も、紫の魔王の側近様の身体を」
使用人「紫の瞳の魔王様が乗っ取られまして……」
勇者「…… ……何でもありだな」
使用人「……『欠片』が。金の髪の勇者様がお生まれになった後の」
使用人「あの光の飛来も、紫の魔王の側近様の身体から……抜け出していった様に」
使用人「見えました。そうして……その直後、視力を失われた様でしたし……」
僧侶「……道連れにされた、と言う事ですか」
使用人「恐らく、ですけど」
使用人「……後は、解りますよね」
使用人「『光と闇』は『勇者と魔王』でしょうし」
勇者「……『知る事を拒否するな』って言葉とさ」
勇者「父さんが夢で見たって言う……父さんそっくりの人が」
僧侶「……『自分は、知る事を拒否してしまった』と言う物ですか」
勇者「うん……似てるけど、違う。違う、けど……」
戦士「……最初に、魔王が叫んだ言葉を覚えているか?」
勇者「え?」
戦士「『間違えて居ない』だ」
使用人「紫の魔王の側近様は、紫の瞳の魔王様の目を与えられ」
勇者「え!?」
魔法使い「……目!?どう言う事!?」
使用人「……『目玉を食わされた』と、仰っていましたけれど」
僧侶「…… ……」
戦士「それは……文字通りに受け取って良い、んだな?」
使用人「はい」
魔法使い「……それは、どうなの」
使用人「『魔王』のお力を内包される事で、力は強くなられた様です」
使用人「お二人の間では『心話』で会話出来ていた様ですし」
使用人「……インキュバスを倒された時も、紫の魔王の側近様の身体を」
使用人「紫の瞳の魔王様が乗っ取られまして……」
勇者「…… ……何でもありだな」
使用人「……『欠片』が。金の髪の勇者様がお生まれになった後の」
使用人「あの光の飛来も、紫の魔王の側近様の身体から……抜け出していった様に」
使用人「見えました。そうして……その直後、視力を失われた様でしたし……」
僧侶「……道連れにされた、と言う事ですか」
使用人「恐らく、ですけど」
使用人「……後は、解りますよね」
使用人「『光と闇』は『勇者と魔王』でしょうし」
勇者「……『知る事を拒否するな』って言葉とさ」
勇者「父さんが夢で見たって言う……父さんそっくりの人が」
僧侶「……『自分は、知る事を拒否してしまった』と言う物ですか」
勇者「うん……似てるけど、違う。違う、けど……」
戦士「……最初に、魔王が叫んだ言葉を覚えているか?」
勇者「え?」
戦士「『間違えて居ない』だ」
184: 2013/09/19(木) 23:26:48.33 ID:NrBYz95dP
魔法使い「……結局、何も変わって無いのね」
使用人「え?」
魔法使い「親を頃して『次』になって……光の剣だってそうよ」
魔法使い「『魔王の剣』が『光の剣』になったって、どう考えたっておかしいけど」
魔法使い「『勇者は魔王』なんでしょ?」
魔法使い「……同じじゃないの」
戦士「『表裏一体』か」
使用人「あの剣は、持つ者によって……変わります」
僧侶「変わる?」
使用人「はい。紅い瞳の魔王様のお父様……までは流石に存じ上げませんが」
使用人「側近様が紅い瞳の魔王様と対峙された時、その手……」
使用人「『魔王』の手には、炎の如く燃える様な紅い剣が握られた居たそうですから」
戦士「……紫の瞳の魔王が持っていた時は……」
使用人「刀身は闇色に染まっていました。そして、金の髪の勇者様が触れられた時」
使用人「……光輝く、その……『光の剣』へと変じた……のでしょう」
僧侶「加護を……写し取る、剣!?」
使用人「……金の髪の勇者様が、后様達とこの城へ……魔王様を倒しにいらっしゃった時」
使用人「鍛冶師様が、あの鉱石を用いて修理された部分は、亀裂が入り砕け散り」
使用人「……紫の瞳の魔王様から、金の髪の勇者様に渡された時の姿へと」
使用人「戻ってしまった、そうです」
戦士「…… ……」
使用人「ですが、金の髪の勇者様が魔王様を倒された後」
使用人「見せて頂いた時には、少しだけ……刀身が大きくなっている様に見えました」
勇者「……俺も、これ」スッ
勇者「母さんに預かった時より、大きくなってる気がするんだが……」
使用人「はい……私も、そう思います」
魔法使い「……勇者の光を、吸い取った……から?」
魔法使い「で……でも!こんな事を繰り返して!」
魔法使い「剣が、徐々に元の姿に戻っていくまでに!」
魔法使い「……ど、どれだけ、かかるって言うのよ!」
使用人「え?」
魔法使い「親を頃して『次』になって……光の剣だってそうよ」
魔法使い「『魔王の剣』が『光の剣』になったって、どう考えたっておかしいけど」
魔法使い「『勇者は魔王』なんでしょ?」
魔法使い「……同じじゃないの」
戦士「『表裏一体』か」
使用人「あの剣は、持つ者によって……変わります」
僧侶「変わる?」
使用人「はい。紅い瞳の魔王様のお父様……までは流石に存じ上げませんが」
使用人「側近様が紅い瞳の魔王様と対峙された時、その手……」
使用人「『魔王』の手には、炎の如く燃える様な紅い剣が握られた居たそうですから」
戦士「……紫の瞳の魔王が持っていた時は……」
使用人「刀身は闇色に染まっていました。そして、金の髪の勇者様が触れられた時」
使用人「……光輝く、その……『光の剣』へと変じた……のでしょう」
僧侶「加護を……写し取る、剣!?」
使用人「……金の髪の勇者様が、后様達とこの城へ……魔王様を倒しにいらっしゃった時」
使用人「鍛冶師様が、あの鉱石を用いて修理された部分は、亀裂が入り砕け散り」
使用人「……紫の瞳の魔王様から、金の髪の勇者様に渡された時の姿へと」
使用人「戻ってしまった、そうです」
戦士「…… ……」
使用人「ですが、金の髪の勇者様が魔王様を倒された後」
使用人「見せて頂いた時には、少しだけ……刀身が大きくなっている様に見えました」
勇者「……俺も、これ」スッ
勇者「母さんに預かった時より、大きくなってる気がするんだが……」
使用人「はい……私も、そう思います」
魔法使い「……勇者の光を、吸い取った……から?」
魔法使い「で……でも!こんな事を繰り返して!」
魔法使い「剣が、徐々に元の姿に戻っていくまでに!」
魔法使い「……ど、どれだけ、かかるって言うのよ!」
185: 2013/09/19(木) 23:36:17.41 ID:NrBYz95dP
僧侶「…… ……それを、埋めるのが……『欠片』なのでしょうか」
勇者「僧侶……」
僧侶「……文字通りの、剣の『欠片』だとするのならば」
僧侶「そうしないと、『魔王』を倒せないのだとするのなら……!」
戦士「……『欠片』を探し出せ、か」フゥ
使用人「…… ……」
僧侶「……后様、達は」
使用人「…… ……」
僧侶「その為に、魔族へと変じられた、のですね?」
使用人「…… ……はい」
勇者「『繰り返し回り続ける運命の輪』か……」
魔法使い「な……ッ 何納得してるのよ!あんた達!」
魔法使い「そんな事……!!」
使用人「……勇者様は、『魔王』です」
使用人「この侭……時を過ごされれば、何時か」
使用人「……目を開けなくなり、動かなくなり……」
勇者「……父さんと同じ道を辿る、んだな」
使用人「…… ……」
勇者「……父さん。随分と苦しそうだった。あれは……何故?」
使用人「解りません……ですが、『勇者は人間』です」
使用人「それも……唯一、光の加護を持つ者です」
使用人「……『魔王は勇者の光を奪い去る』。それが、真実だとしても」
使用人「否、するのならば……身の内に残った光の残照が」
使用人「……その身を、苦しめるのかも、しれません」
魔法使い「…… ……魔王、の子は必ず……勇者になる、のよね?」
使用人「そう……なのでしょうね」
魔法使い「だったら、勇者が……!貴方が!」
勇者「え!?」
魔法使い「子孫を残さなければ……子供なんか、作らなければ……!」
使用人「……紫の瞳の魔王様と、同じ事を繰り返す、のかもしれません」
僧侶「…… ……」
勇者「僧侶……」
僧侶「……文字通りの、剣の『欠片』だとするのならば」
僧侶「そうしないと、『魔王』を倒せないのだとするのなら……!」
戦士「……『欠片』を探し出せ、か」フゥ
使用人「…… ……」
僧侶「……后様、達は」
使用人「…… ……」
僧侶「その為に、魔族へと変じられた、のですね?」
使用人「…… ……はい」
勇者「『繰り返し回り続ける運命の輪』か……」
魔法使い「な……ッ 何納得してるのよ!あんた達!」
魔法使い「そんな事……!!」
使用人「……勇者様は、『魔王』です」
使用人「この侭……時を過ごされれば、何時か」
使用人「……目を開けなくなり、動かなくなり……」
勇者「……父さんと同じ道を辿る、んだな」
使用人「…… ……」
勇者「……父さん。随分と苦しそうだった。あれは……何故?」
使用人「解りません……ですが、『勇者は人間』です」
使用人「それも……唯一、光の加護を持つ者です」
使用人「……『魔王は勇者の光を奪い去る』。それが、真実だとしても」
使用人「否、するのならば……身の内に残った光の残照が」
使用人「……その身を、苦しめるのかも、しれません」
魔法使い「…… ……魔王、の子は必ず……勇者になる、のよね?」
使用人「そう……なのでしょうね」
魔法使い「だったら、勇者が……!貴方が!」
勇者「え!?」
魔法使い「子孫を残さなければ……子供なんか、作らなければ……!」
使用人「……紫の瞳の魔王様と、同じ事を繰り返す、のかもしれません」
僧侶「…… ……」
186: 2013/09/19(木) 23:43:50.11 ID:NrBYz95dP
使用人「自我を失い、力は暴走し……」
魔法使い「そんな……!」
勇者「……『拒否権はないんだな』、俺に」
魔法使い「勇者……!」
勇者「もう……俺は、『魔王』だ。魔法使い」
戦士「……確かなんだな?僧侶」
僧侶「…… ……はい。勇者様は…… ……否」
僧侶「魔王様、は…… ……」
魔法使い「そ、んな……!!」
戦士「……エルフは嘘を吐けないんだろう、使用人」
使用人「…… ……はい」
魔王「『ああ……世界は美しい』侭で……」
魔王「……残して行かないと、いけないんだ」
魔王「俺が、魔王となって……新たな勇者を……生み出さなければ……!」
魔法使い「勇者……!」
魔王「……もう、魔王で良い、魔法使い」
魔王「勇者は……『俺は……魔王を倒す』んだ」
使用人「…… ……」
魔王「正直、まだまだ話して貰う事はあるだろう?」
使用人「そうですね。順序立てて話すつもりで居ましたが……」
使用人「やはり……色々と無理もある様です」
魔王「……俺には、随分と時間もあるんだろう。もう……」
魔王「人間じゃ……無いんだ」
使用人「…… ……はい」
僧侶「…… ……」
戦士「……ゆ、否。 ……魔王」
魔王「ん?」
戦士「……俺を、魔族にしてくれ」
魔法使い「戦士!?」
魔法使い「そんな……!」
勇者「……『拒否権はないんだな』、俺に」
魔法使い「勇者……!」
勇者「もう……俺は、『魔王』だ。魔法使い」
戦士「……確かなんだな?僧侶」
僧侶「…… ……はい。勇者様は…… ……否」
僧侶「魔王様、は…… ……」
魔法使い「そ、んな……!!」
戦士「……エルフは嘘を吐けないんだろう、使用人」
使用人「…… ……はい」
魔王「『ああ……世界は美しい』侭で……」
魔王「……残して行かないと、いけないんだ」
魔王「俺が、魔王となって……新たな勇者を……生み出さなければ……!」
魔法使い「勇者……!」
魔王「……もう、魔王で良い、魔法使い」
魔王「勇者は……『俺は……魔王を倒す』んだ」
使用人「…… ……」
魔王「正直、まだまだ話して貰う事はあるだろう?」
使用人「そうですね。順序立てて話すつもりで居ましたが……」
使用人「やはり……色々と無理もある様です」
魔王「……俺には、随分と時間もあるんだろう。もう……」
魔王「人間じゃ……無いんだ」
使用人「…… ……はい」
僧侶「…… ……」
戦士「……ゆ、否。 ……魔王」
魔王「ん?」
戦士「……俺を、魔族にしてくれ」
魔法使い「戦士!?」
187: 2013/09/19(木) 23:53:53.76 ID:NrBYz95dP
僧侶「戦士さん……」
戦士「僧侶」
僧侶「は、はい!」
戦士「……永く、居られる。共に」
僧侶「…… ……確かに、私はエルフの血を……引いています」
僧侶「人寄り遙かに永い生を持つのでしょうが……でも」
僧侶「……魔族の様に、永劫に近い生は持ち得ないと、思います」
魔法使い「僧侶……?」
僧侶「残すのは、辛いと……仰いました、ね?」
戦士「…… ……」
僧侶「逆に……なっちゃいます」ポロポロ
僧侶「……寂しく、無いですか?大丈夫ですか……?」ポロポロ
戦士「……今更、何を言う」
魔王「あの……う?」
魔法使い「……シッ」
戦士「……一緒に、旅に出よう、僧侶」
僧侶「え……?」
戦士「魔王達に子供が出来る迄。北の塔を訪ね……エルフの里を、探そう」ギュッ
戦士「……駄目か?魔王」
魔王「い、いや……俺に、聞かれても!?」チラ
使用人「…… ……え?」
魔王「……なんか、不自由ある?なければ……許してやって欲しい、んだけど」
使用人「そ……それは、私が許可を出す問題ではありませんよ!?」
魔王「いや、だって……俺、解らないし」
使用人「……お、お子様が……『勇者様』が出来るまで、であれば」
使用人「『世代交代』も行われないとは思います、けれど……」
魔王「……ああ、そうか。これも世代交代になるのか」
魔法使い「ちょ、ちょっと!?何勝手に話進めてるのよ!?」
戦士「お前はどうせ、勇者……じゃ無い。魔王の傍に居るんだろう?」
魔法使い「……はい!?」
戦士「僧侶」
僧侶「は、はい!」
戦士「……永く、居られる。共に」
僧侶「…… ……確かに、私はエルフの血を……引いています」
僧侶「人寄り遙かに永い生を持つのでしょうが……でも」
僧侶「……魔族の様に、永劫に近い生は持ち得ないと、思います」
魔法使い「僧侶……?」
僧侶「残すのは、辛いと……仰いました、ね?」
戦士「…… ……」
僧侶「逆に……なっちゃいます」ポロポロ
僧侶「……寂しく、無いですか?大丈夫ですか……?」ポロポロ
戦士「……今更、何を言う」
魔王「あの……う?」
魔法使い「……シッ」
戦士「……一緒に、旅に出よう、僧侶」
僧侶「え……?」
戦士「魔王達に子供が出来る迄。北の塔を訪ね……エルフの里を、探そう」ギュッ
戦士「……駄目か?魔王」
魔王「い、いや……俺に、聞かれても!?」チラ
使用人「…… ……え?」
魔王「……なんか、不自由ある?なければ……許してやって欲しい、んだけど」
使用人「そ……それは、私が許可を出す問題ではありませんよ!?」
魔王「いや、だって……俺、解らないし」
使用人「……お、お子様が……『勇者様』が出来るまで、であれば」
使用人「『世代交代』も行われないとは思います、けれど……」
魔王「……ああ、そうか。これも世代交代になるのか」
魔法使い「ちょ、ちょっと!?何勝手に話進めてるのよ!?」
戦士「お前はどうせ、勇者……じゃ無い。魔王の傍に居るんだろう?」
魔法使い「……はい!?」
188: 2013/09/20(金) 00:00:07.71 ID:NrBYz95dP
戦士「……誰が次代の『勇者』を産むんだ」
魔王「…… ……え、え!?」
魔法使い「ちょ、ちょっと戦士!?」
僧侶「……まだくっついてなかったんですか?」
魔法使い「僧侶!!」
魔法使い「あ、アンタねぇ!ちょっと自分が戦士とさっさとくっついたからって……!」
使用人「…… ……」
魔王「ちょ、ちょっと待て!何で魔法使いが……!!」
僧侶「……宜しい、のですか?」
魔法使い「え……?」
僧侶「例えば……使用人さん、とか……魔王様の奥様、になって」
使用人「え!?」
魔法使い「な、何言ってるのよ!!」
魔王「あ、阿呆!何で使用人が……!」
使用人「……ちょっと、傷付きます」
魔王「あ……ご、御免!」
魔法使い「……ッ な、ちょ!!」
戦士「魔王。お前を守ってやる。俺が……お前の『側近』なってやる」
戦士「来るべき時には、必ず戻る。だから……頼む」
戦士「お前と、魔法使いの間に子が出来る迄……」
魔法使い「な、ななななな、なに、なにいってんのよ、戦士!?」
戦士「じゃあお前は……魔導国へ帰るのか?」
魔法使い「……じょ、うだんでしょ……私は……ゆ……魔王の力で魔族に、なるのよ!」
魔王「お、おい……魔法使い……ッ 落ち着け、って……!」
魔法使い「……選び取るのは、私よ!」
魔法使い「私……『自分自身』よ……この、手でちゃんと……選ぶのよ!」
魔法使い「それとも、な、何よ!私と、その……ッ こ、子供……ッ作るのは……!!」
魔王「あああああ、分かった!分かったから黙れ! 嫌じゃ無い!嫌じゃ無いから!」
魔王「…… ……え、え!?」
魔法使い「ちょ、ちょっと戦士!?」
僧侶「……まだくっついてなかったんですか?」
魔法使い「僧侶!!」
魔法使い「あ、アンタねぇ!ちょっと自分が戦士とさっさとくっついたからって……!」
使用人「…… ……」
魔王「ちょ、ちょっと待て!何で魔法使いが……!!」
僧侶「……宜しい、のですか?」
魔法使い「え……?」
僧侶「例えば……使用人さん、とか……魔王様の奥様、になって」
使用人「え!?」
魔法使い「な、何言ってるのよ!!」
魔王「あ、阿呆!何で使用人が……!」
使用人「……ちょっと、傷付きます」
魔王「あ……ご、御免!」
魔法使い「……ッ な、ちょ!!」
戦士「魔王。お前を守ってやる。俺が……お前の『側近』なってやる」
戦士「来るべき時には、必ず戻る。だから……頼む」
戦士「お前と、魔法使いの間に子が出来る迄……」
魔法使い「な、ななななな、なに、なにいってんのよ、戦士!?」
戦士「じゃあお前は……魔導国へ帰るのか?」
魔法使い「……じょ、うだんでしょ……私は……ゆ……魔王の力で魔族に、なるのよ!」
魔王「お、おい……魔法使い……ッ 落ち着け、って……!」
魔法使い「……選び取るのは、私よ!」
魔法使い「私……『自分自身』よ……この、手でちゃんと……選ぶのよ!」
魔法使い「それとも、な、何よ!私と、その……ッ こ、子供……ッ作るのは……!!」
魔王「あああああ、分かった!分かったから黙れ! 嫌じゃ無い!嫌じゃ無いから!」
189: 2013/09/20(金) 00:06:40.32 ID:NrBYz95dP
魔法使い「魔王の子が、次の勇者になるなら……」
魔法使い「……わ、私、しか……いないでしょ!?」
魔法使い「折角魔王が……アンタが守った、この『世界』を」
魔法使い「こんな所で、終わらせる訳に……いかないじゃない!」
魔王「うん……いや、だから」
魔王「わかったから……ちょっと……黙って……」カァ
使用人「…… ……お話しは、お済みでしょうか」
魔王「!」
魔法使い「あ、いや、あの!!」
僧侶「あ……す、すみません……ッ」
戦士(……忘れてた、とは言えん)
使用人「まあ……別に、宜しいのですけれど」ハァ
魔王「……すみません」
使用人「先ほども申しました様に、まだまだ話すべき事はある……のでしょうが」
使用人「……お食事も済みましたし、続きは又の機会に致しましょうか」
魔王「……ああ、そう……だな」
魔王「あ……あの、さ」
使用人「はい?」
魔王「こいつらを……魔族にしようと思えば、どうすれば良いんだ?」
使用人「……簡単、と言えば簡単です」
使用人「『願えば叶う』のです」
魔王「…… ……」
使用人「身体のどこかに魔王様…… ……もう、こうお呼びして宜しいのですね?」
魔王「……ああ」
使用人「はい……魔王様が、相手のどこかに触れ、願えば良いのです」
魔王「……あっさり言ってくれる……なぁ」
使用人「その前に、『魔王様の后様』のお話しを……否」
使用人「一度、休憩致しましょう。本を取って参ります」
僧侶「あ……」
魔法使い「……わ、私、しか……いないでしょ!?」
魔法使い「折角魔王が……アンタが守った、この『世界』を」
魔法使い「こんな所で、終わらせる訳に……いかないじゃない!」
魔王「うん……いや、だから」
魔王「わかったから……ちょっと……黙って……」カァ
使用人「…… ……お話しは、お済みでしょうか」
魔王「!」
魔法使い「あ、いや、あの!!」
僧侶「あ……す、すみません……ッ」
戦士(……忘れてた、とは言えん)
使用人「まあ……別に、宜しいのですけれど」ハァ
魔王「……すみません」
使用人「先ほども申しました様に、まだまだ話すべき事はある……のでしょうが」
使用人「……お食事も済みましたし、続きは又の機会に致しましょうか」
魔王「……ああ、そう……だな」
魔王「あ……あの、さ」
使用人「はい?」
魔王「こいつらを……魔族にしようと思えば、どうすれば良いんだ?」
使用人「……簡単、と言えば簡単です」
使用人「『願えば叶う』のです」
魔王「…… ……」
使用人「身体のどこかに魔王様…… ……もう、こうお呼びして宜しいのですね?」
魔王「……ああ」
使用人「はい……魔王様が、相手のどこかに触れ、願えば良いのです」
魔王「……あっさり言ってくれる……なぁ」
使用人「その前に、『魔王様の后様』のお話しを……否」
使用人「一度、休憩致しましょう。本を取って参ります」
僧侶「あ……」
190: 2013/09/20(金) 00:12:25.91 ID:yvaHYh3QP
魔法使い「『魔王の后』の話…… ……?」
使用人「『強大な力を持つ者を産みだす者』のお話……ですね」
使用人「……紫の瞳の魔王様のお母様。それから、姫様」
僧侶「!」
使用人「後……代々『魔王』を産んでこられた方が辿られたであろう末路……」
使用人「……姫様と、似ていらっしゃいますから」
僧侶「母が……私を産んで亡くなった、事と……関係があるのですね」
使用人「と、思います……ともかく、書庫から本を取って参ります」
使用人「……少し、お待ち下さい」
スタスタ、パタン
魔王「…… ……」
魔法使い「…… ……」チラ
魔王「……なんだよ」
僧侶「……戦士さん、少し離れませんか」ボソ
戦士「……ん」ボソ
ススス……
魔王「本当に……や、あの。本気ですか?」
魔法使い「何で敬語喋ってんのよ……」
魔王「……いや、何か、あのさ。流れに流されてない?」
魔法使い「ほ……ッ 放って、私だけ帰れない、でしょうが!?」
魔王「いや、あの……厭なら、無理しなくて……も……」
魔法使い「あ、アンタだって!さっき、その……ッ」カァッ
魔王「……あー。いや、俺は、別に……」
魔法使い「『別に』!? ……べ、別に!私だって、アンタが厭なら……!」
使用人「『強大な力を持つ者を産みだす者』のお話……ですね」
使用人「……紫の瞳の魔王様のお母様。それから、姫様」
僧侶「!」
使用人「後……代々『魔王』を産んでこられた方が辿られたであろう末路……」
使用人「……姫様と、似ていらっしゃいますから」
僧侶「母が……私を産んで亡くなった、事と……関係があるのですね」
使用人「と、思います……ともかく、書庫から本を取って参ります」
使用人「……少し、お待ち下さい」
スタスタ、パタン
魔王「…… ……」
魔法使い「…… ……」チラ
魔王「……なんだよ」
僧侶「……戦士さん、少し離れませんか」ボソ
戦士「……ん」ボソ
ススス……
魔王「本当に……や、あの。本気ですか?」
魔法使い「何で敬語喋ってんのよ……」
魔王「……いや、何か、あのさ。流れに流されてない?」
魔法使い「ほ……ッ 放って、私だけ帰れない、でしょうが!?」
魔王「いや、あの……厭なら、無理しなくて……も……」
魔法使い「あ、アンタだって!さっき、その……ッ」カァッ
魔王「……あー。いや、俺は、別に……」
魔法使い「『別に』!? ……べ、別に!私だって、アンタが厭なら……!」
195: 2013/09/20(金) 10:03:07.36 ID:yvaHYh3QP
僧侶「素直じゃ無いですよね、二人共」ボソ
戦士「……なあ」ボソ
魔法使い「聞こえてんのよ、アンタ達!」
魔王「……ちょ、ちょっと来い、魔法使い!」ガシ
魔法使い「え、ちょ……ッ!?」ズルズル
パタン
僧侶「……逃げましたね」
戦士「いや、まあ……」
戦士(良く考えれば、嫌だな……流石に)
僧侶「好きなものを好きと言うのは、恥ずかしい事では無いですのにね」
戦士「……自分で言っておいて何だか」
僧侶「はい?」
戦士「いや……あの二人、本当に……そう、なんだよな?」
戦士「……なあ」ボソ
魔法使い「聞こえてんのよ、アンタ達!」
魔王「……ちょ、ちょっと来い、魔法使い!」ガシ
魔法使い「え、ちょ……ッ!?」ズルズル
パタン
僧侶「……逃げましたね」
戦士「いや、まあ……」
戦士(良く考えれば、嫌だな……流石に)
僧侶「好きなものを好きと言うのは、恥ずかしい事では無いですのにね」
戦士「……自分で言っておいて何だか」
僧侶「はい?」
戦士「いや……あの二人、本当に……そう、なんだよな?」
211: 2013/09/21(土) 08:10:25.15 ID:7qRLpWwwP
僧侶「そう、と言うのは?」
戦士「……まあ、たきつけてしまったのは俺なんだが、その……なあ」
僧侶「ああ……大丈夫だと、思います」
戦士「なら……良いんだが」
僧侶「魔法使いさんの様子、見てたら……そうかなって思いませんでした?」
僧侶「それに……なんでしょうね。懐かしい感じ」クス
僧侶「なんて説明したら良いのか、わかりませんけど……」
カチャ
使用人「お待たせ致しました…… ……?」
戦士「魔王と魔法使いは取り込み中だ」
使用人「? ……はあ」
僧侶「あ……!! その本……!」
使用人「……どうぞ。僧侶様に差し上げます」
僧侶「……本当に、良いのですか?」
使用人「はい」
戦士「……この前の物より、状態は綺麗だな」
戦士「確かに……僧侶によく似てる」
僧侶「ありがとうございます、使用人さん……!」
使用人「……如何致しましょう。魔王様達が戻られる迄……」
戦士「差し支えなければ、聞かせてくれ」
戦士「後で、俺達から伝える事もできる」
使用人「解りました。それで宜しければ……」
戦士「……まあ、たきつけてしまったのは俺なんだが、その……なあ」
僧侶「ああ……大丈夫だと、思います」
戦士「なら……良いんだが」
僧侶「魔法使いさんの様子、見てたら……そうかなって思いませんでした?」
僧侶「それに……なんでしょうね。懐かしい感じ」クス
僧侶「なんて説明したら良いのか、わかりませんけど……」
カチャ
使用人「お待たせ致しました…… ……?」
戦士「魔王と魔法使いは取り込み中だ」
使用人「? ……はあ」
僧侶「あ……!! その本……!」
使用人「……どうぞ。僧侶様に差し上げます」
僧侶「……本当に、良いのですか?」
使用人「はい」
戦士「……この前の物より、状態は綺麗だな」
戦士「確かに……僧侶によく似てる」
僧侶「ありがとうございます、使用人さん……!」
使用人「……如何致しましょう。魔王様達が戻られる迄……」
戦士「差し支えなければ、聞かせてくれ」
戦士「後で、俺達から伝える事もできる」
使用人「解りました。それで宜しければ……」
217: 2013/09/21(土) 23:20:44.02 ID:7qRLpWwwP
僧侶「……母が、何故私を産んで……亡くなったのか」
僧侶「使用人さんはご存じなのですか?」
使用人「……はい。姫様本人から、お聞きしていましたから」
戦士「本人から?」
使用人「ええ……その本は、読まれた、のですね?」
僧侶「はい」
使用人「あれは……先ほども言いましたが、紫の瞳の魔王様が」
使用人「姫様のお話を聞いて、それを元に書かれたものです」
使用人「……姫様は、本当に『エルフのお姫様』です」
僧侶「……?」
使用人「エルフの長の娘、だったそうですよ」
戦士「他の……普通のエルフと何が違う?」
使用人「長になるべき者は、他よりも少し強い力を持っているのだそうです」
使用人「『長』は世襲制……次代の長を……産む者は」
使用人「その強い力を世へと生み出す代償として、必ず命を落とすのだ、と」
僧侶「!」
戦士「……僧侶の母君……姫様は、それを知っていた、のか?」
使用人「……はい」
戦士「…… ……」
僧侶「そんな……!」
使用人「……気分の良い話ではありませんが、お聞きになりますか」
僧侶「…… ……はい」
戦士「僧侶……」
僧侶「構いません。私は……母の事を知りたい。どんな小さな事でも」
使用人「……大筋は、あのお話しの通りです。迷い込み、姫様と」
使用人「恋仲になられた青年はエルフの仲間に殺され」
使用人「姫様は、現長であるお父様に堕胎を勧められたのだと」
僧侶「……ッ」
使用人「否、強行されそうになった、ですね……そして、逃げ出した」
使用人「……エルフの森は、長を失い」
使用人「森もまた、失われたそうです」
戦士「……え?」
僧侶「使用人さんはご存じなのですか?」
使用人「……はい。姫様本人から、お聞きしていましたから」
戦士「本人から?」
使用人「ええ……その本は、読まれた、のですね?」
僧侶「はい」
使用人「あれは……先ほども言いましたが、紫の瞳の魔王様が」
使用人「姫様のお話を聞いて、それを元に書かれたものです」
使用人「……姫様は、本当に『エルフのお姫様』です」
僧侶「……?」
使用人「エルフの長の娘、だったそうですよ」
戦士「他の……普通のエルフと何が違う?」
使用人「長になるべき者は、他よりも少し強い力を持っているのだそうです」
使用人「『長』は世襲制……次代の長を……産む者は」
使用人「その強い力を世へと生み出す代償として、必ず命を落とすのだ、と」
僧侶「!」
戦士「……僧侶の母君……姫様は、それを知っていた、のか?」
使用人「……はい」
戦士「…… ……」
僧侶「そんな……!」
使用人「……気分の良い話ではありませんが、お聞きになりますか」
僧侶「…… ……はい」
戦士「僧侶……」
僧侶「構いません。私は……母の事を知りたい。どんな小さな事でも」
使用人「……大筋は、あのお話しの通りです。迷い込み、姫様と」
使用人「恋仲になられた青年はエルフの仲間に殺され」
使用人「姫様は、現長であるお父様に堕胎を勧められたのだと」
僧侶「……ッ」
使用人「否、強行されそうになった、ですね……そして、逃げ出した」
使用人「……エルフの森は、長を失い」
使用人「森もまた、失われたそうです」
戦士「……え?」
218: 2013/09/21(土) 23:28:58.30 ID:7qRLpWwwP
使用人「道は閉ざされた、と仰っていました……確か」
使用人「滅びの道を歩んで行くのだと。それが森の意思なのだと」
僧侶「森の……意思」
使用人「はい……」
僧侶「では……もう、たどり着く事はできない、と?」
使用人「姫様のお話では。 ……エルフ達は森の中で永い一生を」
使用人「ひっそりと……終えていく、のでしょう……か」
僧侶「…… ……」
戦士「それと……『力ある者を産み出す者の末路』とは、何の関係が……?」
使用人「紫の瞳の魔王様のお母様も、魔王様を産み落とされて」
使用人「……奇病、と言いましょうか。身体が、砂の様に崩れていく」
使用人「病に、犯されたのだ、と……紫の魔王の側近様が仰っていました」
戦士「…… ……」
僧侶「……身が、持たないと言う事……ですか」
使用人「はい。ですが……后様。魔王様のお母様は……」
戦士「! そうだ。あの人は……!」
使用人「ええ。無事でした。どころか……」
僧侶「?」
使用人「……あの方も僧侶様と同じ。回復魔法の使い手でした」
使用人「ですが、魔王様を産まれた後……回復魔法は使えなくなった、と」
使用人「仰っていたのです。そして、魔としての強い力を手に入れた」
戦士「…… ……どう言う事だ」
使用人「『人』としての完全なる『氏』を迎えられたのかもしれません」
使用人「……魔王様が『勇者』だった時は、回復魔法が使えたでしょう?」
戦士「今は……使えない、と言うのか?」
使用人「恐らく。魔王様は……『魔王』ですので」
僧侶「……しかし、后様が魔族になられた直後は使えた、と言う事……ですよね?」
僧侶「使用人さんの、言い方……だと」
使用人「ええ。紫の魔王の側近様も、魔族であっても……回復魔法は」
使用人「使えましたから……おかしな事では、ありません」
使用人「滅びの道を歩んで行くのだと。それが森の意思なのだと」
僧侶「森の……意思」
使用人「はい……」
僧侶「では……もう、たどり着く事はできない、と?」
使用人「姫様のお話では。 ……エルフ達は森の中で永い一生を」
使用人「ひっそりと……終えていく、のでしょう……か」
僧侶「…… ……」
戦士「それと……『力ある者を産み出す者の末路』とは、何の関係が……?」
使用人「紫の瞳の魔王様のお母様も、魔王様を産み落とされて」
使用人「……奇病、と言いましょうか。身体が、砂の様に崩れていく」
使用人「病に、犯されたのだ、と……紫の魔王の側近様が仰っていました」
戦士「…… ……」
僧侶「……身が、持たないと言う事……ですか」
使用人「はい。ですが……后様。魔王様のお母様は……」
戦士「! そうだ。あの人は……!」
使用人「ええ。無事でした。どころか……」
僧侶「?」
使用人「……あの方も僧侶様と同じ。回復魔法の使い手でした」
使用人「ですが、魔王様を産まれた後……回復魔法は使えなくなった、と」
使用人「仰っていたのです。そして、魔としての強い力を手に入れた」
戦士「…… ……どう言う事だ」
使用人「『人』としての完全なる『氏』を迎えられたのかもしれません」
使用人「……魔王様が『勇者』だった時は、回復魔法が使えたでしょう?」
戦士「今は……使えない、と言うのか?」
使用人「恐らく。魔王様は……『魔王』ですので」
僧侶「……しかし、后様が魔族になられた直後は使えた、と言う事……ですよね?」
僧侶「使用人さんの、言い方……だと」
使用人「ええ。紫の魔王の側近様も、魔族であっても……回復魔法は」
使用人「使えましたから……おかしな事では、ありません」
219: 2013/09/21(土) 23:38:28.29 ID:7qRLpWwwP
戦士「……訳が分からん」
使用人「勿論……私も全て知っている訳ではありません」
使用人「……随分と、ややこしい話です。それに、どれもが真実、と」
使用人「言う保証もありません……から」
僧侶「……魔法使いさんが、もし……次の勇者様を産まれたとしても」
僧侶「彼女が……氏んでしまう事は、無い……のですよね?」
使用人「それも、恐らくそうであろう、と言うだけです」
使用人「……后様が助かられて、姫様と紫の瞳の魔王様のお母様が」
使用人「出産の後に亡くなられた、と言う事実の差違がそれしか」
使用人「当てはまらない、と言う……消去法に過ぎません、から」
戦士「……『人間』であったか否か、か」
使用人「……『人間は、強く弱い生き物』です」
使用人「その人間だけに許された特権が、回復魔法」
使用人「……そこら辺も、関係あるのかもしれませんね」
使用人「それに…… ……」
戦士「……なんだ?」
使用人「……私がまだ、生きている事も、おかしいんです」
僧侶「それは……貴女が『知を受け継ぐ者』であるから、では無いのですか?」
使用人「確かに、関係はあるのかもしれませんが……」
戦士「他におかしいと思うところは?」
使用人「……后様。魔導将軍様、金の髪の魔王の側近様」
使用人「彼らは……金の髪の魔王様の消滅と共に、失われました」
僧侶「…… ……」
使用人「魔へと変じさせた本人が消滅したから、と考えると」
使用人「不思議では無いのです。命を与えて下さった源が、消失しているのですから」
使用人「なのに……紫の瞳の魔王様が失われても、私は……生きている」
戦士「そうか……紫の瞳の側近、は…… ……」
僧侶「いえ……紫の瞳の側近様は、確か……」
使用人「ええ。紅い瞳の魔王様に寄って、魔族へと変じています」
使用人「……どうして私と紫の魔王の側近様だけ、と考えると」
僧侶「『元人間』……ああ、違う」
僧侶「……で、あれば……魔導将軍さんと、金の髪の魔王様の側近さんも……」
僧侶「で、ないとおかしいですね」
使用人「勿論……私も全て知っている訳ではありません」
使用人「……随分と、ややこしい話です。それに、どれもが真実、と」
使用人「言う保証もありません……から」
僧侶「……魔法使いさんが、もし……次の勇者様を産まれたとしても」
僧侶「彼女が……氏んでしまう事は、無い……のですよね?」
使用人「それも、恐らくそうであろう、と言うだけです」
使用人「……后様が助かられて、姫様と紫の瞳の魔王様のお母様が」
使用人「出産の後に亡くなられた、と言う事実の差違がそれしか」
使用人「当てはまらない、と言う……消去法に過ぎません、から」
戦士「……『人間』であったか否か、か」
使用人「……『人間は、強く弱い生き物』です」
使用人「その人間だけに許された特権が、回復魔法」
使用人「……そこら辺も、関係あるのかもしれませんね」
使用人「それに…… ……」
戦士「……なんだ?」
使用人「……私がまだ、生きている事も、おかしいんです」
僧侶「それは……貴女が『知を受け継ぐ者』であるから、では無いのですか?」
使用人「確かに、関係はあるのかもしれませんが……」
戦士「他におかしいと思うところは?」
使用人「……后様。魔導将軍様、金の髪の魔王の側近様」
使用人「彼らは……金の髪の魔王様の消滅と共に、失われました」
僧侶「…… ……」
使用人「魔へと変じさせた本人が消滅したから、と考えると」
使用人「不思議では無いのです。命を与えて下さった源が、消失しているのですから」
使用人「なのに……紫の瞳の魔王様が失われても、私は……生きている」
戦士「そうか……紫の瞳の側近、は…… ……」
僧侶「いえ……紫の瞳の側近様は、確か……」
使用人「ええ。紅い瞳の魔王様に寄って、魔族へと変じています」
使用人「……どうして私と紫の魔王の側近様だけ、と考えると」
僧侶「『元人間』……ああ、違う」
僧侶「……で、あれば……魔導将軍さんと、金の髪の魔王様の側近さんも……」
僧侶「で、ないとおかしいですね」
220: 2013/09/21(土) 23:45:46.98 ID:7qRLpWwwP
使用人「強引かもしれませんが、后様が」
使用人「『完全な魔』になられたからとこじつけたとしても」
使用人「……ならば尚更、魔導将軍様と、金の髪の魔王の側近様も……」
使用人「まだ、残っていらっしゃらないと、おかしい、のですよ」
戦士「…… ……」
僧侶「戦士さん?」
戦士「……理解しようと試みるのを、放棄する」
戦士「…… ……吐きそうになってきた」
僧侶「え、ええ!?」
使用人「…… ……『世界』を全て知ろうとする事そのもの、が」
使用人「烏滸がましいのかも、しれませんけどね」
僧侶「……でも、私は……それでも……!」
使用人「知る事を望まれますか?」
僧侶「……はい」
使用人「……止めは致しません。無駄でしょうしね」
僧侶「そう……ですね」クス
戦士「遅いな、あいつら」
使用人「魔法使い様と魔王様ですか? ……何処に行かれた、のです?」
戦士「さあ?」
使用人「…… ……まあ、この城の中に危険は無いと思います、けど」
戦士「散歩がてら探しに行くか、僧侶」
僧侶「え、ええ……そう、ですね」
僧侶「流石に少し休憩しないと……私も、疲れました」フゥ
僧侶「……整理しようにも、こう……ややこしくては」
使用人「すみません……説明下手で」
僧侶「そ、そんな! ……使用人さんの所為じゃありませんよ!?」
使用人「……ご免なさい。皮肉のつもりでは無いんです」
使用人「どうぞ、お城の中はご自由になさってください……あ」
僧侶「?」
使用人「『完全な魔』になられたからとこじつけたとしても」
使用人「……ならば尚更、魔導将軍様と、金の髪の魔王の側近様も……」
使用人「まだ、残っていらっしゃらないと、おかしい、のですよ」
戦士「…… ……」
僧侶「戦士さん?」
戦士「……理解しようと試みるのを、放棄する」
戦士「…… ……吐きそうになってきた」
僧侶「え、ええ!?」
使用人「…… ……『世界』を全て知ろうとする事そのもの、が」
使用人「烏滸がましいのかも、しれませんけどね」
僧侶「……でも、私は……それでも……!」
使用人「知る事を望まれますか?」
僧侶「……はい」
使用人「……止めは致しません。無駄でしょうしね」
僧侶「そう……ですね」クス
戦士「遅いな、あいつら」
使用人「魔法使い様と魔王様ですか? ……何処に行かれた、のです?」
戦士「さあ?」
使用人「…… ……まあ、この城の中に危険は無いと思います、けど」
戦士「散歩がてら探しに行くか、僧侶」
僧侶「え、ええ……そう、ですね」
僧侶「流石に少し休憩しないと……私も、疲れました」フゥ
僧侶「……整理しようにも、こう……ややこしくては」
使用人「すみません……説明下手で」
僧侶「そ、そんな! ……使用人さんの所為じゃありませんよ!?」
使用人「……ご免なさい。皮肉のつもりでは無いんです」
使用人「どうぞ、お城の中はご自由になさってください……あ」
僧侶「?」
221: 2013/09/21(土) 23:52:09.35 ID:7qRLpWwwP
使用人「……普通にされているので、すっかり忘れていました、が」
使用人「平気……なのですか?」
僧侶「? ……私、ですか?」
使用人「ええ……貴女は、姫様の娘さん……エルフの血を引いていらっしゃるのでしょう」
僧侶「…… ……ああ。母は体調を崩した……のでしたね」
僧侶「……そう言われてみれば。確かに、凄まじい魔気が渦巻いている……のは」
僧侶「感じます。でも…… ……緑の、心地よい、気も感じます、し」
使用人「!」
僧侶「……何より、半分……人間ですから。父のその血が、守って下さって」
僧侶「……いるのかも、しれません」
使用人「…… ……」
僧侶「あ、私も一つだけ……取りあえず最後に、お聞きしても?」
使用人「? はい」
僧侶「母は……どうやって、苦しみから逃れたのですか」
使用人「……始まりの国の、エルフの加護はご存じでしょう」
僧侶「ええ……でも、話には聞きましたが」
僧侶「……正直、それ程の力は感じなかったんです。あの場所……」
僧侶「古い、力であったようですから、徐々に失われたのかもしれません、けど」
使用人「……私が、紫の瞳の魔王様の持っていらっしゃったペンダントに」
使用人「あの土地のエルフの加護の力を、移しました」
僧侶「! ……ッ む、無茶な!」
戦士「……? ……何故だ?」
戦士「使用人の加護も……緑、なのだろう」
戦士「……ならば……」
僧侶「……多種族の力を身に取り込んだりしたら……!」
使用人「……ええ。その侭であれば、氏んでいたでしょうね」
戦士「!」
使用人「私はその時に、紫の瞳の魔王様のお力で、魔族としての新たな生を」
使用人「与えて頂いたのです」
使用人「平気……なのですか?」
僧侶「? ……私、ですか?」
使用人「ええ……貴女は、姫様の娘さん……エルフの血を引いていらっしゃるのでしょう」
僧侶「…… ……ああ。母は体調を崩した……のでしたね」
僧侶「……そう言われてみれば。確かに、凄まじい魔気が渦巻いている……のは」
僧侶「感じます。でも…… ……緑の、心地よい、気も感じます、し」
使用人「!」
僧侶「……何より、半分……人間ですから。父のその血が、守って下さって」
僧侶「……いるのかも、しれません」
使用人「…… ……」
僧侶「あ、私も一つだけ……取りあえず最後に、お聞きしても?」
使用人「? はい」
僧侶「母は……どうやって、苦しみから逃れたのですか」
使用人「……始まりの国の、エルフの加護はご存じでしょう」
僧侶「ええ……でも、話には聞きましたが」
僧侶「……正直、それ程の力は感じなかったんです。あの場所……」
僧侶「古い、力であったようですから、徐々に失われたのかもしれません、けど」
使用人「……私が、紫の瞳の魔王様の持っていらっしゃったペンダントに」
使用人「あの土地のエルフの加護の力を、移しました」
僧侶「! ……ッ む、無茶な!」
戦士「……? ……何故だ?」
戦士「使用人の加護も……緑、なのだろう」
戦士「……ならば……」
僧侶「……多種族の力を身に取り込んだりしたら……!」
使用人「……ええ。その侭であれば、氏んでいたでしょうね」
戦士「!」
使用人「私はその時に、紫の瞳の魔王様のお力で、魔族としての新たな生を」
使用人「与えて頂いたのです」
222: 2013/09/21(土) 23:58:08.66 ID:7qRLpWwwP
使用人「元々……魔族へと変じ、紫の瞳の魔王様のお側に居たいと」
使用人「強く、願っていました。姫様をお助けせねば、とも」
使用人「ですから……私が提案したのです。是非やらせて欲しい、と」
戦士「……良く、わからんが。相当危険なのでは無いか?」
使用人「……そうですね。無茶をしたな、とは思いますが」
使用人「結果オーライ、ですね」
僧侶「そ、そんな…… ……でも……」
僧侶「……ありがとう、ございます」
使用人「……いえ」
戦士「変な事を聞くようだが」
使用人「はい?」
戦士「……お前は、紫の瞳の魔王が……好きだったのか?」
僧侶「せ、戦士さん!?」
戦士「否、何もかもを恋だの愛だのに当てはめる気など無いが」
戦士「……だとすれば、言い方は悪いが……」
戦士「形式だけであれ、妻である、女性の為に……と言うのは……」
使用人「そうですね。恋だの愛だの……私には……正直解りません」
使用人「ですが、お慕いはしております。今でも」
使用人「私は、この命は……紫の瞳の魔王様のものであれば良いと思ってます」
使用人「……私の、主はあの方だけですから」
僧侶「使用人さん……」
使用人「ですから、あの方が望まれるのならば」
使用人「あの方が大切になさっていた、姫様の為ならば」
使用人「喜んで……差しだそうと思いました」
僧侶「…… ……」
戦士「…… ……」
使用人「……勘違い、しないで下さいね」
僧侶「え?」
使用人「……姫様の事も、大好きですよ。今も」
僧侶「…… ……ありがとう、ございます」
使用人「強く、願っていました。姫様をお助けせねば、とも」
使用人「ですから……私が提案したのです。是非やらせて欲しい、と」
戦士「……良く、わからんが。相当危険なのでは無いか?」
使用人「……そうですね。無茶をしたな、とは思いますが」
使用人「結果オーライ、ですね」
僧侶「そ、そんな…… ……でも……」
僧侶「……ありがとう、ございます」
使用人「……いえ」
戦士「変な事を聞くようだが」
使用人「はい?」
戦士「……お前は、紫の瞳の魔王が……好きだったのか?」
僧侶「せ、戦士さん!?」
戦士「否、何もかもを恋だの愛だのに当てはめる気など無いが」
戦士「……だとすれば、言い方は悪いが……」
戦士「形式だけであれ、妻である、女性の為に……と言うのは……」
使用人「そうですね。恋だの愛だの……私には……正直解りません」
使用人「ですが、お慕いはしております。今でも」
使用人「私は、この命は……紫の瞳の魔王様のものであれば良いと思ってます」
使用人「……私の、主はあの方だけですから」
僧侶「使用人さん……」
使用人「ですから、あの方が望まれるのならば」
使用人「あの方が大切になさっていた、姫様の為ならば」
使用人「喜んで……差しだそうと思いました」
僧侶「…… ……」
戦士「…… ……」
使用人「……勘違い、しないで下さいね」
僧侶「え?」
使用人「……姫様の事も、大好きですよ。今も」
僧侶「…… ……ありがとう、ございます」
223: 2013/09/22(日) 00:03:40.60 ID:7qRLpWwwP
使用人「……また、何かご用がありましたらお呼び下さい」
使用人「先ほども言いましたが、この城の中はどうぞご自由に」
使用人「何人か使い魔もおりますし……私は」
使用人「書庫か、中庭に……います。大体は、ですけど」
僧侶「書庫……あ、あの、見ても……良いんですか?」
使用人「勿論です……あ」
戦士「?」
使用人「……フランボワーズ、お好きですか?」
僧侶「え? あ、はい!甘い物は……大好きです!」
僧侶「ねえ、戦士さん?」
戦士「ああ……」
使用人「それは良かった。魔王様達が戻られたら、お茶にでも致しましょう」
戦士「……使用人」
使用人「はい?」
戦士「…… ……否」
使用人「? ……では、一端失礼致します」
スタスタ、パタン
戦士「魔王と魔法使いを探しに行くか」
僧侶「……何を言いかけたのです?」
戦士「…… ……なんだろうな。俺も、礼を言いたくなった」
僧侶「フランボワーズですか?」
戦士「違う! ……お前を、母君を……好きで居てくれて、かな」
戦士「……俺が口に出す事じゃないのは、解ってるんだがな」
僧侶「戦士さん……」
戦士「僧侶」
僧侶「……はい?」
戦士「俺は……さっき、魔王にも言ったが」
僧侶「…… ……魔族に、なられる、のですね」
戦士「……ああ。そのつもりだ」
使用人「先ほども言いましたが、この城の中はどうぞご自由に」
使用人「何人か使い魔もおりますし……私は」
使用人「書庫か、中庭に……います。大体は、ですけど」
僧侶「書庫……あ、あの、見ても……良いんですか?」
使用人「勿論です……あ」
戦士「?」
使用人「……フランボワーズ、お好きですか?」
僧侶「え? あ、はい!甘い物は……大好きです!」
僧侶「ねえ、戦士さん?」
戦士「ああ……」
使用人「それは良かった。魔王様達が戻られたら、お茶にでも致しましょう」
戦士「……使用人」
使用人「はい?」
戦士「…… ……否」
使用人「? ……では、一端失礼致します」
スタスタ、パタン
戦士「魔王と魔法使いを探しに行くか」
僧侶「……何を言いかけたのです?」
戦士「…… ……なんだろうな。俺も、礼を言いたくなった」
僧侶「フランボワーズですか?」
戦士「違う! ……お前を、母君を……好きで居てくれて、かな」
戦士「……俺が口に出す事じゃないのは、解ってるんだがな」
僧侶「戦士さん……」
戦士「僧侶」
僧侶「……はい?」
戦士「俺は……さっき、魔王にも言ったが」
僧侶「…… ……魔族に、なられる、のですね」
戦士「……ああ。そのつもりだ」
224: 2013/09/22(日) 00:10:35.67 ID:JVzByITRP
僧侶「……反対なんか、しません」
僧侶「戦士さんが決められた事です。それに……」
僧侶「……残して逝くのは、辛い……です、けど……」
戦士「…… ……」ギュ
僧侶「…… ……」ギュ……
戦士「…… ……」ナデ
僧侶「でも、嬉しいんです……永く、限りはあると言え」
僧侶「……今の侭よりも、永く……一緒に居られる事」
僧侶「不謹慎……かもしれません、けど」
戦士「……そんな事は、考える必要は無い」
戦士「守ってやりたい。お前も……魔王も」
戦士「……勿論、魔法使いもな」
僧侶「魔法使いさん、聞いたら怒りますね」クス
戦士「『忘れてたでしょ!』……って、言われそうだな」クス
僧侶「…… ……」
戦士「……まずは、北の塔、だな」
僧侶「…… ……はい」
戦士「…… ……」ギュ
僧侶「せん、し……ッ さ、ん……?」
戦士「……悪い。痛かったか」
僧侶「あ、いえ…… ……でも、どうしたんです」
戦士「……何時か、話す」
僧侶「…… ……?」
戦士(次代の長を産む者……姫様の娘であるのなら)
戦士(…… ……僧侶は、僧侶も……!?)
戦士「……ッ …… ……」スッ
僧侶「……戦士さん?」
戦士「魔王と魔法使いを、探しに行こう」
僧侶「戦士さんが決められた事です。それに……」
僧侶「……残して逝くのは、辛い……です、けど……」
戦士「…… ……」ギュ
僧侶「…… ……」ギュ……
戦士「…… ……」ナデ
僧侶「でも、嬉しいんです……永く、限りはあると言え」
僧侶「……今の侭よりも、永く……一緒に居られる事」
僧侶「不謹慎……かもしれません、けど」
戦士「……そんな事は、考える必要は無い」
戦士「守ってやりたい。お前も……魔王も」
戦士「……勿論、魔法使いもな」
僧侶「魔法使いさん、聞いたら怒りますね」クス
戦士「『忘れてたでしょ!』……って、言われそうだな」クス
僧侶「…… ……」
戦士「……まずは、北の塔、だな」
僧侶「…… ……はい」
戦士「…… ……」ギュ
僧侶「せん、し……ッ さ、ん……?」
戦士「……悪い。痛かったか」
僧侶「あ、いえ…… ……でも、どうしたんです」
戦士「……何時か、話す」
僧侶「…… ……?」
戦士(次代の長を産む者……姫様の娘であるのなら)
戦士(…… ……僧侶は、僧侶も……!?)
戦士「……ッ …… ……」スッ
僧侶「……戦士さん?」
戦士「魔王と魔法使いを、探しに行こう」
230: 2013/09/22(日) 10:53:00.16 ID:JVzByITRP
僧侶「どこに……行かれた、んでしょうね」
戦士「城の中には居るだろう」
僧侶「まあ……それは」
戦士「……不思議だな」
僧侶「?」
戦士「中途半端にしか知らない。勿論……少しでも知ってしまっていれば」
戦士「……全てを、馬鹿な話だと、言い捨てるのは無理に等しいと、解ってはいるんだ」
戦士「だが……なるべくしてこうなったんだと、不思議だが……」
僧侶「…… ……」
戦士「納得してしまっている、自分がいる様だ」
僧侶「おかしいですよね。こんな経験、始めてなのに」
戦士「ああ。だが……」
僧侶「……何度も経験していて。本当は」
戦士「そうだな。毎度、初めてだと……錯覚してる、みたい、だ」
僧侶「何にも当てはまらなくても、良いです……戦士さん」
戦士「……ん?」
僧侶「貴方が、側に居てくださる、なら」
……
………
…………
戦士「城の中には居るだろう」
僧侶「まあ……それは」
戦士「……不思議だな」
僧侶「?」
戦士「中途半端にしか知らない。勿論……少しでも知ってしまっていれば」
戦士「……全てを、馬鹿な話だと、言い捨てるのは無理に等しいと、解ってはいるんだ」
戦士「だが……なるべくしてこうなったんだと、不思議だが……」
僧侶「…… ……」
戦士「納得してしまっている、自分がいる様だ」
僧侶「おかしいですよね。こんな経験、始めてなのに」
戦士「ああ。だが……」
僧侶「……何度も経験していて。本当は」
戦士「そうだな。毎度、初めてだと……錯覚してる、みたい、だ」
僧侶「何にも当てはまらなくても、良いです……戦士さん」
戦士「……ん?」
僧侶「貴方が、側に居てくださる、なら」
……
………
…………
231: 2013/09/22(日) 10:59:19.30 ID:JVzByITRP
スタスタ…
魔法使い「ちょ、ちょっと!」
魔法使い「何処行くのよ!魔王!」
魔王「…… ……」ピタ。クルッ
魔法使い「な、何よ……?」
魔王「…… ……」ジィ
魔法使い「……い、痛い、わ。離し……て」フイッ
魔王「……お前、なんだな?」
魔法使い「え?」
魔王(『違う』……あの声は、聞こえない)
魔王(……魔法使い)グイ
魔法使い「な、なんなのよ!アンタ……は……ッ きゃ!?」
魔王「…… ……俺、もう勇者じゃないぞ?」ギュ
魔法使い「わ、解ってるわよ!」
魔法使い「僧侶の……言葉は、疑い様が……無いもの」ギュ……
魔王「本気、なんだな?」
魔法使い「……さっきも言ったじゃないの」
魔法使い「折角アンタが守った……繋いだ、世界を」
魔法使い「……ここで、終わらせる訳には……」
魔王「そんな言葉、いらないよ」
魔法使い「…… ……」
魔王「……す、好きだよ?」
魔法使い「……声裏返ってるわよ」
魔王「き、緊張してるんだよ!」
魔法使い「ちょ、ちょっと!」
魔法使い「何処行くのよ!魔王!」
魔王「…… ……」ピタ。クルッ
魔法使い「な、何よ……?」
魔王「…… ……」ジィ
魔法使い「……い、痛い、わ。離し……て」フイッ
魔王「……お前、なんだな?」
魔法使い「え?」
魔王(『違う』……あの声は、聞こえない)
魔王(……魔法使い)グイ
魔法使い「な、なんなのよ!アンタ……は……ッ きゃ!?」
魔王「…… ……俺、もう勇者じゃないぞ?」ギュ
魔法使い「わ、解ってるわよ!」
魔法使い「僧侶の……言葉は、疑い様が……無いもの」ギュ……
魔王「本気、なんだな?」
魔法使い「……さっきも言ったじゃないの」
魔法使い「折角アンタが守った……繋いだ、世界を」
魔法使い「……ここで、終わらせる訳には……」
魔王「そんな言葉、いらないよ」
魔法使い「…… ……」
魔王「……す、好きだよ?」
魔法使い「……声裏返ってるわよ」
魔王「き、緊張してるんだよ!」
232: 2013/09/22(日) 11:09:24.85 ID:JVzByITRP
魔法使い「わ、私だって心臓バクバク言ってんのよ!」
魔王「知ってるよ。伝わって来る」
魔王「……俺のか、お前のか……わかんない、けど」
魔法使い「…… ……」
魔王「魔法使い」
魔法使い「……は、い?」
魔王「……俺たちで、最後にしようぜ」
魔法使い「……ええ」
魔王「俺には……魔法使い。お前しか居ない。だから……」
魔王「……奥さんに、なって?」
魔法使い「随分……可愛い告白ね」クス
魔王「な、ななな、なんだよ!わ、悪かったな! ……で! へ、返事は!?」
魔法使い「私しか居ないんでしょ?」
魔法使い「……私だって、アンタじゃなきゃ駄目みたい」
魔王「知ってるよ。伝わって来る」
魔王「……俺のか、お前のか……わかんない、けど」
魔法使い「…… ……」
魔王「魔法使い」
魔法使い「……は、い?」
魔王「……俺たちで、最後にしようぜ」
魔法使い「……ええ」
魔王「俺には……魔法使い。お前しか居ない。だから……」
魔王「……奥さんに、なって?」
魔法使い「随分……可愛い告白ね」クス
魔王「な、ななな、なんだよ!わ、悪かったな! ……で! へ、返事は!?」
魔法使い「私しか居ないんでしょ?」
魔法使い「……私だって、アンタじゃなきゃ駄目みたい」
233: 2013/09/22(日) 11:18:37.68 ID:JVzByITRP
魔王「みたい、て……」
魔法使い「……不思議なのよ。良く解らないんだけど……」
魔法使い「そう……思う、の」
魔法使い「……好きよ、魔王」チュ
魔王「!」
魔法使い「……ッ」フイ
魔法使い「ほ、ほら!戻りま…… ッ」グイ!
魔王「……無理。今無理。もうちょっと」チュ。チュ……
魔法使い「あ…… ン…… ……ッ」
魔王「……魔法使い……ッ」ギュウ……
魔法使い「! ちょ、何処触って……!?」
魔王「……御免。男の子だから」チュ
魔法使い「こ、こんなとこ、で……!」
魔法使い「……不思議なのよ。良く解らないんだけど……」
魔法使い「そう……思う、の」
魔法使い「……好きよ、魔王」チュ
魔王「!」
魔法使い「……ッ」フイ
魔法使い「ほ、ほら!戻りま…… ッ」グイ!
魔王「……無理。今無理。もうちょっと」チュ。チュ……
魔法使い「あ…… ン…… ……ッ」
魔王「……魔法使い……ッ」ギュウ……
魔法使い「! ちょ、何処触って……!?」
魔王「……御免。男の子だから」チュ
魔法使い「こ、こんなとこ、で……!」
234: 2013/09/22(日) 11:19:58.87 ID:JVzByITRP
魔王「……誰も来ない、って」
カチャ、パタン
使用人「……後は……」ブツブツ、スッ
魔王「!?」
魔法使い「きゃ!?」
使用人「…… ……」
魔王「…… ……」
魔法使い「…… ……」
使用人「…… ……」クル、スタスタ
パタン
魔法使い「あ、ま……待って!?」
魔法使い「さっさとしなさい!魔王!」
魔王「は、はい!?」
バタバタ……バタン!
マッテー!シヨウニンー!
魔王(…… ……あの使用人が、ノックしなかった、て事は……)
魔王(使用人の部屋、か!?)キョロ
魔王「…… ……」
魔王(後で……土下座しよう)
スタスタ、パタン
カチャ、パタン
使用人「……後は……」ブツブツ、スッ
魔王「!?」
魔法使い「きゃ!?」
使用人「…… ……」
魔王「…… ……」
魔法使い「…… ……」
使用人「…… ……」クル、スタスタ
パタン
魔法使い「あ、ま……待って!?」
魔法使い「さっさとしなさい!魔王!」
魔王「は、はい!?」
バタバタ……バタン!
マッテー!シヨウニンー!
魔王(…… ……あの使用人が、ノックしなかった、て事は……)
魔王(使用人の部屋、か!?)キョロ
魔王「…… ……」
魔王(後で……土下座しよう)
スタスタ、パタン
243: 2013/09/22(日) 23:23:37.57 ID:JVzByITRP
……
………
…………
剣士「…… ……これは、どう言う事だ」
王子「『拘束』を望んだのはお前だろう」
剣士「…… ……」
王子「……俺は、牢屋にしろと言ったんだがな」
剣士「国王、か」ハァ
王子「命令には逆らえん」
剣士「お前は兄では無いのか?」
王子「それが何だ。『血』や『産まれた順番』に」
王子「何の意味がある?」
剣士「…… ……」
王子「国王は名の通り……『この国の王』だ」
王子「俺はそれを守るの盾に過ぎん」
剣士「しかし……」
王子「……反対はした。聞き入れられなかっただけの話だ」
王子「お前ならば、何かあっても自分でどうにかするだろう?」
剣士「…… ……」
王子「……時間が出来たら話がしたいそうだ」
剣士「……解った」
王子「俺は当分忙しい。魔導国に逆戻りだ」
剣士「……母親は?」
王子「あっちは正真正銘『牢』の中だ」
王子「……戦犯だからな」
剣士「…… ……」
王子「知りたければ、王に聞け」
剣士「……出向けば良いのか」
王子「『拘束』だ、あくまでも。 ……騎士が来るだろう」
剣士「そうか」
王子「……時間が無い。もう行く」クルッ
剣士「…… ……ありがとう」
………
…………
剣士「…… ……これは、どう言う事だ」
王子「『拘束』を望んだのはお前だろう」
剣士「…… ……」
王子「……俺は、牢屋にしろと言ったんだがな」
剣士「国王、か」ハァ
王子「命令には逆らえん」
剣士「お前は兄では無いのか?」
王子「それが何だ。『血』や『産まれた順番』に」
王子「何の意味がある?」
剣士「…… ……」
王子「国王は名の通り……『この国の王』だ」
王子「俺はそれを守るの盾に過ぎん」
剣士「しかし……」
王子「……反対はした。聞き入れられなかっただけの話だ」
王子「お前ならば、何かあっても自分でどうにかするだろう?」
剣士「…… ……」
王子「……時間が出来たら話がしたいそうだ」
剣士「……解った」
王子「俺は当分忙しい。魔導国に逆戻りだ」
剣士「……母親は?」
王子「あっちは正真正銘『牢』の中だ」
王子「……戦犯だからな」
剣士「…… ……」
王子「知りたければ、王に聞け」
剣士「……出向けば良いのか」
王子「『拘束』だ、あくまでも。 ……騎士が来るだろう」
剣士「そうか」
王子「……時間が無い。もう行く」クルッ
剣士「…… ……ありがとう」
245: 2013/09/22(日) 23:30:34.32 ID:JVzByITRP
王子「……礼など言われる事をした覚えなど無い」
バタン!
剣士「…… ……」
剣士(ここ迄来るのに、城の中を通った)
剣士(……小さいが、住むのに不自由は無い)
剣士(それに、此処は……この、魔力は……)
剣士(魔導国で、あの時……勇者達が消えた時に)
剣士(……感じた魔力と、同じ)
剣士(…… ……どう言う事だ?)
剣士(しかし……)キョロ
剣士(……何を考えて居るんだ、国王、とやらは)ハァ
剣士(バタバタとしていたな……まあ、無理も無い、が)
コンコン
剣士「!」
コンコン
剣士「…… ……」
騎士「国王様の命で来た!扉を開けられよ!」
剣士「……鍵は開いているが」
騎士「お前が開けるんだ!」
剣士「…… ……」スタスタ
カチャ
国王「初めまして。貴方が剣士さん、ですか」
剣士「……そ、うだが」
国王「……成る程。確かに瞳の色彩さえ違えば、勇者にそっくりですね」
剣士「……お前……否。貴方、は」
国王「国王と申します」
剣士「!?」
剣士(国王……自ら!?)
剣士(……言われてみれば、騎士団長……に、面差しが似ている)
バタン!
剣士「…… ……」
剣士(ここ迄来るのに、城の中を通った)
剣士(……小さいが、住むのに不自由は無い)
剣士(それに、此処は……この、魔力は……)
剣士(魔導国で、あの時……勇者達が消えた時に)
剣士(……感じた魔力と、同じ)
剣士(…… ……どう言う事だ?)
剣士(しかし……)キョロ
剣士(……何を考えて居るんだ、国王、とやらは)ハァ
剣士(バタバタとしていたな……まあ、無理も無い、が)
コンコン
剣士「!」
コンコン
剣士「…… ……」
騎士「国王様の命で来た!扉を開けられよ!」
剣士「……鍵は開いているが」
騎士「お前が開けるんだ!」
剣士「…… ……」スタスタ
カチャ
国王「初めまして。貴方が剣士さん、ですか」
剣士「……そ、うだが」
国王「……成る程。確かに瞳の色彩さえ違えば、勇者にそっくりですね」
剣士「……お前……否。貴方、は」
国王「国王と申します」
剣士「!?」
剣士(国王……自ら!?)
剣士(……言われてみれば、騎士団長……に、面差しが似ている)
246: 2013/09/22(日) 23:37:55.13 ID:JVzByITRP
国王「ばたばたとしてしまって、申し訳ありませんでした」
国王「……ああ、ご苦労様です。貴方達はもう……」
騎士「此処で待機しております!」
国王「大丈夫、と申しましたのに」
剣士「…… ……否、その……騎士、か?」
剣士「の、心配も尤もだと思う、が」
国王「そうですか? ……もう、魔導国もありませんから」
剣士「……もう、無い?」
国王「ええ。貴方はその目で見られたのでしょう?」
国王「……事実上の崩壊でしょう。領主……ああ、王でしたか」
国王「王は氏に、その息子である父親も自らの父のなれの果てに殺された」
国王「母親と名乗る女も、今はもう牢屋の中です」
国王「……それに、騎士団長が自ら騎士を率いて、混乱の鎮圧に向かいました」
国王「……それでもまだ、あの国は存在すると仰いますか?」ニコ
剣士「……しかし、それと危険が無いとはイコールでは結ばれないだろう」
国王「まあ、そうかもしれません。世の中に絶対、はあり得ないでしょうしね」
剣士「…… ……」
国王「入れて頂いても宜しいでしょうか」
剣士「……俺の家では無い」
国王「そう思って頂いても大丈夫ですよ」
剣士「…… ……ここは。この小屋は何なんだ?」
国王「座らせて頂いて宜しいでしょうか?」
剣士「…… ……どうぞ」
国王「ありがとうございます。では、騎士達はそこで待機していて下さい」
騎士「ハッ!」
国王「……長くならないように、気をつけますね」
パタン
剣士「…… ……何を、考えているんだ」
国王「どう言う意味でしょうか? ……では」
国王「お言葉に甘えて、失礼致しますね」
国王「……ああ、ご苦労様です。貴方達はもう……」
騎士「此処で待機しております!」
国王「大丈夫、と申しましたのに」
剣士「…… ……否、その……騎士、か?」
剣士「の、心配も尤もだと思う、が」
国王「そうですか? ……もう、魔導国もありませんから」
剣士「……もう、無い?」
国王「ええ。貴方はその目で見られたのでしょう?」
国王「……事実上の崩壊でしょう。領主……ああ、王でしたか」
国王「王は氏に、その息子である父親も自らの父のなれの果てに殺された」
国王「母親と名乗る女も、今はもう牢屋の中です」
国王「……それに、騎士団長が自ら騎士を率いて、混乱の鎮圧に向かいました」
国王「……それでもまだ、あの国は存在すると仰いますか?」ニコ
剣士「……しかし、それと危険が無いとはイコールでは結ばれないだろう」
国王「まあ、そうかもしれません。世の中に絶対、はあり得ないでしょうしね」
剣士「…… ……」
国王「入れて頂いても宜しいでしょうか」
剣士「……俺の家では無い」
国王「そう思って頂いても大丈夫ですよ」
剣士「…… ……ここは。この小屋は何なんだ?」
国王「座らせて頂いて宜しいでしょうか?」
剣士「…… ……どうぞ」
国王「ありがとうございます。では、騎士達はそこで待機していて下さい」
騎士「ハッ!」
国王「……長くならないように、気をつけますね」
パタン
剣士「…… ……何を、考えているんだ」
国王「どう言う意味でしょうか? ……では」
国王「お言葉に甘えて、失礼致しますね」
247: 2013/09/22(日) 23:47:24.40 ID:JVzByITRP
国王「『世界』を教えて欲しいと望まれたのは貴方でしょう、剣士さん」
剣士「…… ……」
国王「勿論、私の知る限り、になりますけどね」
剣士「……あっさりと話して良いのか?」
剣士「素性が解らない所か……」
国王「魔族であろう……否。『人間』では無いだろう貴方に、ですか」
剣士「…… ……」
国王「勿論、お話しする上で条件はつけさせて頂きますよ」
国王「私の質問に答えて頂く事。私の知らない『世界』を」
国王「教えて下さる事、と言う……条件です」
剣士「聞いているか否かは解らんが、俺には記憶が無い」
剣士「……最果ての街で目が覚めた後、船長と名乗る海賊の女に拾われた」
剣士「剣士、と言う名も、その女がつけてくれただけに過ぎん」
国王「何故魔導国に?」
剣士「……あいつらは俺を最初『少年』と呼んだ」
剣士「『港街の勇者様』だとか、言うのだろう」
国王「ええ。貴方と同じ、紫の瞳に闇色の髪を持つ男性だったと聞いています」
剣士「……俺は、少年では無い」
国王「『少年では無いと思う』でしょう?」
国王「記憶が無い、のであれば」
剣士「……そうだな」
国王「失礼。それで?」
剣士「あいつらの……領主達の真の考えとやらは、船の上で」
剣士「騎士団長に問われ、話したとおり、だ」
国王「自分達は最果ての街に住む事を許された唯一の特別な人間であり」
国王「魔族の血を引いている……から」
国王「魔法使いさんと、貴方の間に子を設け……」
剣士「魔族の血が混じっている、と言うのは」
剣士「母親の妄想に過ぎんだろう。父親と領主は、否定していた様だ」
剣士「…… ……」
国王「勿論、私の知る限り、になりますけどね」
剣士「……あっさりと話して良いのか?」
剣士「素性が解らない所か……」
国王「魔族であろう……否。『人間』では無いだろう貴方に、ですか」
剣士「…… ……」
国王「勿論、お話しする上で条件はつけさせて頂きますよ」
国王「私の質問に答えて頂く事。私の知らない『世界』を」
国王「教えて下さる事、と言う……条件です」
剣士「聞いているか否かは解らんが、俺には記憶が無い」
剣士「……最果ての街で目が覚めた後、船長と名乗る海賊の女に拾われた」
剣士「剣士、と言う名も、その女がつけてくれただけに過ぎん」
国王「何故魔導国に?」
剣士「……あいつらは俺を最初『少年』と呼んだ」
剣士「『港街の勇者様』だとか、言うのだろう」
国王「ええ。貴方と同じ、紫の瞳に闇色の髪を持つ男性だったと聞いています」
剣士「……俺は、少年では無い」
国王「『少年では無いと思う』でしょう?」
国王「記憶が無い、のであれば」
剣士「……そうだな」
国王「失礼。それで?」
剣士「あいつらの……領主達の真の考えとやらは、船の上で」
剣士「騎士団長に問われ、話したとおり、だ」
国王「自分達は最果ての街に住む事を許された唯一の特別な人間であり」
国王「魔族の血を引いている……から」
国王「魔法使いさんと、貴方の間に子を設け……」
剣士「魔族の血が混じっている、と言うのは」
剣士「母親の妄想に過ぎんだろう。父親と領主は、否定していた様だ」
248: 2013/09/22(日) 23:58:19.50 ID:JVzByITRP
剣士「……俺と魔法使いで子を設け、世界を作り替えるのだと言っていた」
国王「…… ……」
剣士「母親の言葉を借りるのならば、『私達が支配する世界』に、な」
国王「……何故、あの洞窟を占拠しようと考えた、のでしょうね」
剣士「魔寄せの石とやらの話は?」
国王「一応、ざっとですが兄さんに聞きましたよ」
国王「……まあ、それも……割れてしまって、もうありませんけど」
剣士「量産し要所へと配置すれば、魔物を恐れる必要が無くなる等と言っていたが」
剣士「……真の目的はそんな事では無いだろうな」
国王「でしょうね。街へばらまき混乱や恐怖を招き入れる為……と」
国王「考える方が自然でしょう。彼らは、私に……この国にも」
国王「『王』をやめろと言ってきましたしね」
剣士「……光の剣、だったか。それを修理するのにどうとやら、と言うのは?」
国王「金の髪の勇者様……貴方がお会いした、黒い髪の勇者のお父様、ですね」
国王「彼のために、と……お父様……鍛冶師と言う者が」
国王「あの魔法の鉱石を使い、光の剣を修理した実績があります」
国王「……真似をしようとしたんでしょうね」
剣士「誰にでも出来る事なのか」
国王「残念ながら、鍛冶について、私は明るくありませんから」
国王「そこは何とも言いようがありません。ですが」
国王「……修理したところで、どうしようとしたのか……」
国王「話を聞く限り、彼らが……黒い髪の勇者が」
国王「魔王を倒せるはずが無いと確信していたのだろう、としか解りません」
剣士「……あいつらは俺が魔王であるのだろうと思っていた様だからな」
剣士「そんなはずが無い。『魔王を倒さねばならない』と」
剣士「……その思いにどうしても捕らわれるんだ、俺は」
剣士「そんな俺がどうして『魔王』であるんだか」
国王「記憶を失って居られるから、でしょうけど……」
剣士「だからといって、俺が魔王であったとしても」
剣士「どうして『自分が自分を倒す』事に……思いに」
剣士「……固執すると思うんだ」ハァ
国王「…… ……」
剣士「母親の言葉を借りるのならば、『私達が支配する世界』に、な」
国王「……何故、あの洞窟を占拠しようと考えた、のでしょうね」
剣士「魔寄せの石とやらの話は?」
国王「一応、ざっとですが兄さんに聞きましたよ」
国王「……まあ、それも……割れてしまって、もうありませんけど」
剣士「量産し要所へと配置すれば、魔物を恐れる必要が無くなる等と言っていたが」
剣士「……真の目的はそんな事では無いだろうな」
国王「でしょうね。街へばらまき混乱や恐怖を招き入れる為……と」
国王「考える方が自然でしょう。彼らは、私に……この国にも」
国王「『王』をやめろと言ってきましたしね」
剣士「……光の剣、だったか。それを修理するのにどうとやら、と言うのは?」
国王「金の髪の勇者様……貴方がお会いした、黒い髪の勇者のお父様、ですね」
国王「彼のために、と……お父様……鍛冶師と言う者が」
国王「あの魔法の鉱石を使い、光の剣を修理した実績があります」
国王「……真似をしようとしたんでしょうね」
剣士「誰にでも出来る事なのか」
国王「残念ながら、鍛冶について、私は明るくありませんから」
国王「そこは何とも言いようがありません。ですが」
国王「……修理したところで、どうしようとしたのか……」
国王「話を聞く限り、彼らが……黒い髪の勇者が」
国王「魔王を倒せるはずが無いと確信していたのだろう、としか解りません」
剣士「……あいつらは俺が魔王であるのだろうと思っていた様だからな」
剣士「そんなはずが無い。『魔王を倒さねばならない』と」
剣士「……その思いにどうしても捕らわれるんだ、俺は」
剣士「そんな俺がどうして『魔王』であるんだか」
国王「記憶を失って居られるから、でしょうけど……」
剣士「だからといって、俺が魔王であったとしても」
剣士「どうして『自分が自分を倒す』事に……思いに」
剣士「……固執すると思うんだ」ハァ
249: 2013/09/23(月) 00:05:19.52 ID:JVzByITRP
国王「光の剣を……彼ら、魔導国の者達が手に入れたとして」
国王「何をしようとしていたのか。それは……今となってはわかりません」
剣士「母親は?」
国王「牢の隅に蹲って、殆ど喋ろうとはしませんよ」
剣士「……殆ど」
国王「ええ。『剣士に会わせろ』と、それ以外はね」
剣士「……俺は、会う気等無いぞ」
国王「そうですね。そんな気を持たれても困ります」
国王「叶えてあげられませんから」ニコ
剣士「それで……俺は、この小屋に軟禁、か」
国王「接触を避けたい、と言うのもありますけど」
国王「……いえ。軟禁、と言う言葉も否定は致しません」
剣士「……もう一度聞いても良いだろうか」
国王「はい?」
剣士「この小屋は?」
国王「……城の中庭から続く、丘の上の小さな小屋です」
国王「それ以外に何があると言うのでしょうか」
剣士「…… ……魔力を感じる」
国王「え?」
剣士「聞いているとの前提で話す。勇者達が魔導国の」
剣士「あの部屋から消えた時、何者かの強い魔力を感じた」
剣士「光が発せられた後、彼らは忽然と消えてしまった……」
剣士「騎士団長には、そう話した」
国王「……ええ」
剣士「その時、割れるように頭が痛んだ。そして、その魔力の干渉を感じた」
剣士「……それと同じ物を、この小屋全体から感じる」
国王「痛む、のですか」
剣士「え?」
国王「勇者達が消えた時、頭痛がしたと仰ったでは無いですか」
国王「何をしようとしていたのか。それは……今となってはわかりません」
剣士「母親は?」
国王「牢の隅に蹲って、殆ど喋ろうとはしませんよ」
剣士「……殆ど」
国王「ええ。『剣士に会わせろ』と、それ以外はね」
剣士「……俺は、会う気等無いぞ」
国王「そうですね。そんな気を持たれても困ります」
国王「叶えてあげられませんから」ニコ
剣士「それで……俺は、この小屋に軟禁、か」
国王「接触を避けたい、と言うのもありますけど」
国王「……いえ。軟禁、と言う言葉も否定は致しません」
剣士「……もう一度聞いても良いだろうか」
国王「はい?」
剣士「この小屋は?」
国王「……城の中庭から続く、丘の上の小さな小屋です」
国王「それ以外に何があると言うのでしょうか」
剣士「…… ……魔力を感じる」
国王「え?」
剣士「聞いているとの前提で話す。勇者達が魔導国の」
剣士「あの部屋から消えた時、何者かの強い魔力を感じた」
剣士「光が発せられた後、彼らは忽然と消えてしまった……」
剣士「騎士団長には、そう話した」
国王「……ええ」
剣士「その時、割れるように頭が痛んだ。そして、その魔力の干渉を感じた」
剣士「……それと同じ物を、この小屋全体から感じる」
国王「痛む、のですか」
剣士「え?」
国王「勇者達が消えた時、頭痛がしたと仰ったでは無いですか」
250: 2013/09/23(月) 00:10:44.95 ID:3PohvlSyP
剣士「……ああ、否。それは……痛みは、無い」
剣士「だが……魔力の質は同じ物だ」
剣士「……随分と力の強い、魔族の物に感じる」
剣士「だが……不思議と、厭な感じはしないな」
国王「貴方が魔族であるのなら……逆に心地よいと感じるのでは?」
剣士「……確かに、ある種の心地よさは感じる。だが……」
剣士「…… ……違う」
国王「違う?」
剣士「そうだな……言う、なれば……」
剣士(これは、何だ? ……船長と一緒に居た時の、気持ちと似ている)
剣士(……慈しみ…… ……否。苦しい。切ない、悲しい……だが、嬉しい、と)
剣士(語りかけてくる、様な)
剣士「…… ……」
国王「剣士さん?」
剣士「あ……ああ。悪い。否……どう説明したら良い物か」
剣士「……何かを、守ろうとしている感じ?」
剣士「愛…… ……」
国王「……愛?」
剣士「…… ……すまん。今の言葉は忘れてくれ」
国王「随分と、ロマンチストなのですね」クス
剣士「……忘れてくれと言っただろう」
国王「すみません」クスクス
国王「……否、ですが。そうですか……」
国王(愛。 ……母の愛? ……勇者を守ろうとする、愛)
国王(……しかし、母君様は……)
剣士「だが……魔力の質は同じ物だ」
剣士「……随分と力の強い、魔族の物に感じる」
剣士「だが……不思議と、厭な感じはしないな」
国王「貴方が魔族であるのなら……逆に心地よいと感じるのでは?」
剣士「……確かに、ある種の心地よさは感じる。だが……」
剣士「…… ……違う」
国王「違う?」
剣士「そうだな……言う、なれば……」
剣士(これは、何だ? ……船長と一緒に居た時の、気持ちと似ている)
剣士(……慈しみ…… ……否。苦しい。切ない、悲しい……だが、嬉しい、と)
剣士(語りかけてくる、様な)
剣士「…… ……」
国王「剣士さん?」
剣士「あ……ああ。悪い。否……どう説明したら良い物か」
剣士「……何かを、守ろうとしている感じ?」
剣士「愛…… ……」
国王「……愛?」
剣士「…… ……すまん。今の言葉は忘れてくれ」
国王「随分と、ロマンチストなのですね」クス
剣士「……忘れてくれと言っただろう」
国王「すみません」クスクス
国王「……否、ですが。そうですか……」
国王(愛。 ……母の愛? ……勇者を守ろうとする、愛)
国王(……しかし、母君様は……)
252: 2013/09/23(月) 00:13:01.24 ID:3PohvlSyP
12時過ぎちゃったので寝ます!
勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」【4】
勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」【4】
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります