298: 2013/09/26(木) 09:24:09.13 ID:irrGelmEP
300: 2013/09/26(木) 09:50:52.14 ID:irrGelmEP
剣士「……誰かが、住んでいたんだろう?」
国王「え? ……ああ、ここですか?」
剣士「綺麗に整ってはいるが……生活感がある」
国王「……ここには……旅立つまでの間、黒い髪の勇者と」
国王「その母君が住んでいらっしゃいました」
剣士「…… ……」
国王「その前には、女剣士様……初代の騎士団長が」
国王「……さらに前には、金の髪の勇者様と、その……世話役、と言うのか」
国王「盲目の男性が、一人」
剣士「『勇者』の世話役が、盲目?」
国王「……古い話ですから、詳しくは」
国王(流石にそこまでは……話せない)
剣士「母君……は、何処に居る?」
国王「……解りません」
剣士「…… ……」
国王「どうやって出て行った、のかも」
国王「……忽然とね。消えてしまったのです」
剣士「馬鹿な。たかだか女一人……」
剣士「…… ……」
国王「剣士さん?」
剣士「……否」
剣士(『勇者』は確かに人間だった)
剣士(……で、あるならば……母である女も人間なのは間違い無いだろう)
剣士(だが……では、この魔の気配は何だ)
剣士(……俺が魔族であろうなら、心地良いのも理解出来る、が)
剣士(…… ……愛。母の……愛か)
国王「え? ……ああ、ここですか?」
剣士「綺麗に整ってはいるが……生活感がある」
国王「……ここには……旅立つまでの間、黒い髪の勇者と」
国王「その母君が住んでいらっしゃいました」
剣士「…… ……」
国王「その前には、女剣士様……初代の騎士団長が」
国王「……さらに前には、金の髪の勇者様と、その……世話役、と言うのか」
国王「盲目の男性が、一人」
剣士「『勇者』の世話役が、盲目?」
国王「……古い話ですから、詳しくは」
国王(流石にそこまでは……話せない)
剣士「母君……は、何処に居る?」
国王「……解りません」
剣士「…… ……」
国王「どうやって出て行った、のかも」
国王「……忽然とね。消えてしまったのです」
剣士「馬鹿な。たかだか女一人……」
剣士「…… ……」
国王「剣士さん?」
剣士「……否」
剣士(『勇者』は確かに人間だった)
剣士(……で、あるならば……母である女も人間なのは間違い無いだろう)
剣士(だが……では、この魔の気配は何だ)
剣士(……俺が魔族であろうなら、心地良いのも理解出来る、が)
剣士(…… ……愛。母の……愛か)
301: 2013/09/26(木) 09:57:14.73 ID:irrGelmEP
剣士(俺には解らん。理解は出来ん……しかし、それにしても)
剣士「……おかしい」
国王「え?」
剣士「たかだか女一人、だ。か弱い身で万一城を……この小屋を抜け出せたとて」
剣士「何処へ行く?」
国王「…… ……探させては居たのです」
国王「ですが……」
剣士「警備は厳重だった、のだろう?」
国王「……ええ。私の命の危険もあるからと、兄さ……騎士団長が」
国王「随分と、警戒していましたから」
剣士「…… ……」
国王「だからこそ……『忽然と消えてしまった』と、言ったのですよ」
剣士「……失態だな」
国王「……仰るとおり、です」
剣士「黒い髪の勇者には?」
国王「勿論、お話し致しましたよ。申し訳ありませんでした、と……」
剣士「……無関係では無いのだろうな」
国王「え?」
剣士「勇者達が、忽然と消えてしまった事と、だ」
剣士「……事実、同じ魔の気がするんだ」
国王「勇者達が消えた時と、ですね」
剣士「もし、攫われたとするのなら納得がいく」
国王「…… ……そう、ですね」
剣士「だが、疑問も残る」
剣士「……心地よい、何かを守る様な……これは」
国王「…… ……」
剣士「……おかしい」
国王「え?」
剣士「たかだか女一人、だ。か弱い身で万一城を……この小屋を抜け出せたとて」
剣士「何処へ行く?」
国王「…… ……探させては居たのです」
国王「ですが……」
剣士「警備は厳重だった、のだろう?」
国王「……ええ。私の命の危険もあるからと、兄さ……騎士団長が」
国王「随分と、警戒していましたから」
剣士「…… ……」
国王「だからこそ……『忽然と消えてしまった』と、言ったのですよ」
剣士「……失態だな」
国王「……仰るとおり、です」
剣士「黒い髪の勇者には?」
国王「勿論、お話し致しましたよ。申し訳ありませんでした、と……」
剣士「……無関係では無いのだろうな」
国王「え?」
剣士「勇者達が、忽然と消えてしまった事と、だ」
剣士「……事実、同じ魔の気がするんだ」
国王「勇者達が消えた時と、ですね」
剣士「もし、攫われたとするのなら納得がいく」
国王「…… ……そう、ですね」
剣士「だが、疑問も残る」
剣士「……心地よい、何かを守る様な……これは」
国王「…… ……」
302: 2013/09/26(木) 10:24:25.81 ID:irrGelmEP
国王「勇者達の向かう先は……魔王の城、だったのでしょうか」
剣士「あれほどの強い……魔力の干渉だ」
剣士「そうだろう、とは思うが……」
剣士「……考えれば考える程、説明がつかないな」
剣士「勇者の母を攫って……何になる。勇者は何れ、あの城に」
剣士「……魔王の傍に、たどり着く、んだろうに」
国王「……剣士さん」
剣士「?」
国王「私は、兄程……貴方を疑っていないと思います」
剣士「…… ……」
国王「兄さんの……考えて居る事を全て理解してるとは勿論言いません」
国王「ですが、勇者や、魔法使いさん達から聞いた話を考えると……」
国王「悪い人とは思えない」
剣士「……一国の主である者の発言としては、甘いと思うが」
国王「私も、貴方が『少年』なのでは無いかと思っています」
剣士「…… ……あり得ない。さっきも言っただろう」
剣士「俺には記憶が無い。だが、俺は『魔王を倒さなければならない』んだ」
国王「…… ……」
国王「私の知っている『世界』をお教えする前に、もう一つだけ」
剣士「?」
国王「もし、『魔王』が、勇者達の手に寄って倒された、なら」
国王「……貴方には、わかりますか?」
剣士「……それ、は」
国王「…… ……」
剣士「どうだろうな。わかるかもしれんし、わからんかもしれん」
剣士「……滑稽だな。何としても魔王を倒さねばならんと」
剣士「こんなに……強く思うのに」
剣士「自分の手の届かない場所で……終わってしまうと思えば」
国王「…… ……」
剣士「あれほどの強い……魔力の干渉だ」
剣士「そうだろう、とは思うが……」
剣士「……考えれば考える程、説明がつかないな」
剣士「勇者の母を攫って……何になる。勇者は何れ、あの城に」
剣士「……魔王の傍に、たどり着く、んだろうに」
国王「……剣士さん」
剣士「?」
国王「私は、兄程……貴方を疑っていないと思います」
剣士「…… ……」
国王「兄さんの……考えて居る事を全て理解してるとは勿論言いません」
国王「ですが、勇者や、魔法使いさん達から聞いた話を考えると……」
国王「悪い人とは思えない」
剣士「……一国の主である者の発言としては、甘いと思うが」
国王「私も、貴方が『少年』なのでは無いかと思っています」
剣士「…… ……あり得ない。さっきも言っただろう」
剣士「俺には記憶が無い。だが、俺は『魔王を倒さなければならない』んだ」
国王「…… ……」
国王「私の知っている『世界』をお教えする前に、もう一つだけ」
剣士「?」
国王「もし、『魔王』が、勇者達の手に寄って倒された、なら」
国王「……貴方には、わかりますか?」
剣士「……それ、は」
国王「…… ……」
剣士「どうだろうな。わかるかもしれんし、わからんかもしれん」
剣士「……滑稽だな。何としても魔王を倒さねばならんと」
剣士「こんなに……強く思うのに」
剣士「自分の手の届かない場所で……終わってしまうと思えば」
国王「…… ……」
303: 2013/09/26(木) 10:33:06.51 ID:irrGelmEP
剣士「……お前は俺が『少年』だと思っている、と言ったな」
国王「ええ……」
剣士「領主達は、『少年』が『魔王』だろうと言っていた」
剣士「……まさか、それまで信じている訳では無いだろうな」
国王「…… ……」
剣士「……おい?」
国王「私達は……『勇者』の帰還を待つしかないんです」
剣士「……答えてはくれん、のか」
国王「『魔王』は確かに、魔王の城に居るのですか?」
剣士「…… ……?」
国王「……私は……ああ、会った事は無いのですが」
国王「『少年』を知っています」
剣士「!?」
国王「……その上で、貴方が『少年』なのでは無いかと疑っています」
国王「金の髪の勇者は、確かに『魔王』を倒したのでしょう」
国王「魔物の力は弱まり、数も減った。だが……帰っては来なかった」
国王「……そして又、徐々に力をつけ始め……今に至る、のです」
国王「勇者は再び産まれ、魔王を倒す為に旅立った……」
剣士「……何が言いたい」
国王「『金の髪の勇者』が倒したのは、確かに……『魔王』だったのか、と」
剣士「…… ……解る様に話してくれ」
国王「…… ……」
剣士「…… ……」
国王「貴方は」
剣士「?」
国王「……確かに『魔王を倒したい』のですよね?」
剣士「……ああ。それだけは、確かだ」
国王「それは……『世界を平和にする事』に置き換えられますか」
剣士「……『魔王を倒す事』が『平和』だと言うのならば」
剣士「そうだ、と断言しよう」
国王「…… ……解りました」
国王「ええ……」
剣士「領主達は、『少年』が『魔王』だろうと言っていた」
剣士「……まさか、それまで信じている訳では無いだろうな」
国王「…… ……」
剣士「……おい?」
国王「私達は……『勇者』の帰還を待つしかないんです」
剣士「……答えてはくれん、のか」
国王「『魔王』は確かに、魔王の城に居るのですか?」
剣士「…… ……?」
国王「……私は……ああ、会った事は無いのですが」
国王「『少年』を知っています」
剣士「!?」
国王「……その上で、貴方が『少年』なのでは無いかと疑っています」
国王「金の髪の勇者は、確かに『魔王』を倒したのでしょう」
国王「魔物の力は弱まり、数も減った。だが……帰っては来なかった」
国王「……そして又、徐々に力をつけ始め……今に至る、のです」
国王「勇者は再び産まれ、魔王を倒す為に旅立った……」
剣士「……何が言いたい」
国王「『金の髪の勇者』が倒したのは、確かに……『魔王』だったのか、と」
剣士「…… ……解る様に話してくれ」
国王「…… ……」
剣士「…… ……」
国王「貴方は」
剣士「?」
国王「……確かに『魔王を倒したい』のですよね?」
剣士「……ああ。それだけは、確かだ」
国王「それは……『世界を平和にする事』に置き換えられますか」
剣士「……『魔王を倒す事』が『平和』だと言うのならば」
剣士「そうだ、と断言しよう」
国王「…… ……解りました」
304: 2013/09/26(木) 10:35:53.17 ID:irrGelmEP
国王「では、一つお願いがあります。それを叶えて下さるのなら」
国王「『私の知る世界』の全てをお話ししましょう」
剣士「……拒否する権利は無いのだろう?」
国王「……知りたいと仰るのならば、と。条件はお話ししましたからね」
剣士「良いだろう……願い、とは、何だ?」
国王「この国の騎士と共に、鍛冶師の村に向かって下さい」
剣士「?」
国王「貴方の腕を見込んでのお願いです。あの村に残る魔寄せの石を」
国王「全て、破壊して頂きたいのです」
国王「『私の知る世界』の全てをお話ししましょう」
剣士「……拒否する権利は無いのだろう?」
国王「……知りたいと仰るのならば、と。条件はお話ししましたからね」
剣士「良いだろう……願い、とは、何だ?」
国王「この国の騎士と共に、鍛冶師の村に向かって下さい」
剣士「?」
国王「貴方の腕を見込んでのお願いです。あの村に残る魔寄せの石を」
国王「全て、破壊して頂きたいのです」
307: 2013/09/26(木) 12:24:47.55 ID:irrGelmEP
剣士「…… ……」
国王「大丈夫です。村を放ってはおきません」
国王「……魔物討伐の為の、騎士は残しますし」
国王「貴方の事を見捨てる事も決して致しません」
剣士「…… ……」
国王「確かに……騎士達の中で、貴方に偏見の目を持たない者は少ないでしょう」
国王「ですが変な真似はしないように、と……」
国王「騎士団長直々に、命令を下して貰ってますから」
剣士「……用意周到だな」
国王「人選も怠ってません……信用して下さい」
剣士「俺が、拒否する……とは思わなかった、のか」
国王「拒否されたなら、それまでです……貴方は『世界』を知り得ない」
国王「少なくとも、私からは」
剣士「…… ……良いだろう。出発は?」
国王「三日後です。兄さんは暫く戻らないでしょうから」
国王「……実質、貴方に指揮を任せる事になりますけど」
剣士「……何?」
国王「お願い致しますね?剣士さん」ニコ
剣士(……食えない男だ)
国王「続きのお話しは、貴方が戻られてからにしましょう」
国王「……それまでに、勇者が戻る事も……地理的に考えられませんし」
国王「大丈夫です。村を放ってはおきません」
国王「……魔物討伐の為の、騎士は残しますし」
国王「貴方の事を見捨てる事も決して致しません」
剣士「…… ……」
国王「確かに……騎士達の中で、貴方に偏見の目を持たない者は少ないでしょう」
国王「ですが変な真似はしないように、と……」
国王「騎士団長直々に、命令を下して貰ってますから」
剣士「……用意周到だな」
国王「人選も怠ってません……信用して下さい」
剣士「俺が、拒否する……とは思わなかった、のか」
国王「拒否されたなら、それまでです……貴方は『世界』を知り得ない」
国王「少なくとも、私からは」
剣士「…… ……良いだろう。出発は?」
国王「三日後です。兄さんは暫く戻らないでしょうから」
国王「……実質、貴方に指揮を任せる事になりますけど」
剣士「……何?」
国王「お願い致しますね?剣士さん」ニコ
剣士(……食えない男だ)
国王「続きのお話しは、貴方が戻られてからにしましょう」
国王「……それまでに、勇者が戻る事も……地理的に考えられませんし」
309: 2013/09/26(木) 13:38:20.77 ID:irrGelmEP
剣士「……一度飲むと言った事だ。それで結構……だが」
剣士「良いんだな?」
国王「……ええ。私も、信用していますから」
剣士「…… ……解った」
国王「小屋までの道を城の方へと戻って貰えれば、見張りの騎士が」
国王「常駐していますから」
国王「何かありましたら、仰って下さい」
国王「……貴方の家だと思って、寛いで下さって結構です」
剣士「……故に何処へも行くなと言う事だな」
剣士「否……行かさない、か」
国王「否定はしません」
剣士「…… ……感謝する。国王陛下」
国王「では、三日後。騎士に迎えに来させます」
スタスタ、パタン
剣士(…… ……)
剣士「三日、か……鍛冶師の村」
剣士(確かに……妙な気配はあった)
剣士(……魔寄せの石。傭兵を雇うにしては、安全な旅)
剣士(楽な仕事だったな)フゥ
剣士(……勇者達は、今……どこで、何をしている……んだろうな)
……
………
…………
魔王「本当にご免なさい!」
使用人「わ、わかりましたから、顔を上げて下さい!魔王様!」
魔王「……いや、マジで使用人の部屋だとか思わなくて!」
使用人「もう良いですってば!」
魔王「何にもしてないから!本当に、あの時は……!」
使用人「その先は言わなくて良いです!」
剣士「良いんだな?」
国王「……ええ。私も、信用していますから」
剣士「…… ……解った」
国王「小屋までの道を城の方へと戻って貰えれば、見張りの騎士が」
国王「常駐していますから」
国王「何かありましたら、仰って下さい」
国王「……貴方の家だと思って、寛いで下さって結構です」
剣士「……故に何処へも行くなと言う事だな」
剣士「否……行かさない、か」
国王「否定はしません」
剣士「…… ……感謝する。国王陛下」
国王「では、三日後。騎士に迎えに来させます」
スタスタ、パタン
剣士(…… ……)
剣士「三日、か……鍛冶師の村」
剣士(確かに……妙な気配はあった)
剣士(……魔寄せの石。傭兵を雇うにしては、安全な旅)
剣士(楽な仕事だったな)フゥ
剣士(……勇者達は、今……どこで、何をしている……んだろうな)
……
………
…………
魔王「本当にご免なさい!」
使用人「わ、わかりましたから、顔を上げて下さい!魔王様!」
魔王「……いや、マジで使用人の部屋だとか思わなくて!」
使用人「もう良いですってば!」
魔王「何にもしてないから!本当に、あの時は……!」
使用人「その先は言わなくて良いです!」
310: 2013/09/26(木) 13:43:53.50 ID:irrGelmEP
魔王「……御免」スッ
使用人「土下座とか……やめて下さい」ハァ
魔王「いや……まあ、うん……」
使用人「…… ……」
魔王「で、あの……魔法使いは?」
使用人「……面倒なのでまきました」
魔王「…… ……あ、ああ、そう」
使用人「きちんとお部屋の説明……と言うか」
使用人「ご案内しなかった私も悪いんです」
使用人「もう気にしないで下さい」
魔王「……わかった」
使用人「僧侶様と戦士様……は?」
魔王「さあ……さっきの部屋まだ居るんじゃ無いのか?」
使用人「何処へ行かれるも自由です……が」
使用人「……魔へと、変じられるおつもりなのならば」
使用人「お早い方が、宜しいかと」
魔王「……そうか。魔法使いもまだウロウロしてる、のかな」
使用人「かもしれません。結構複雑に動き回ったので」
魔王「…… ……」
使用人「……すみません」
魔王「いや……使用人は何も悪く無いから」
魔王「もし、誰か見かけたら……さっきの部屋に行くように言っておいてくれ」
魔王「俺も……ちょっと探してみるよ」
使用人「ご案内しましょうか?」
魔王「あー……うん、いや、後で良いよ」
魔王「……まだちょっと、混乱してるしさ」
使用人「旨く説明出来なくて……すみません」
魔王「仕方無い……はいそうですかって」
魔王「理解出来る振り、で済む問題じゃ無い……しな」
使用人「土下座とか……やめて下さい」ハァ
魔王「いや……まあ、うん……」
使用人「…… ……」
魔王「で、あの……魔法使いは?」
使用人「……面倒なのでまきました」
魔王「…… ……あ、ああ、そう」
使用人「きちんとお部屋の説明……と言うか」
使用人「ご案内しなかった私も悪いんです」
使用人「もう気にしないで下さい」
魔王「……わかった」
使用人「僧侶様と戦士様……は?」
魔王「さあ……さっきの部屋まだ居るんじゃ無いのか?」
使用人「何処へ行かれるも自由です……が」
使用人「……魔へと、変じられるおつもりなのならば」
使用人「お早い方が、宜しいかと」
魔王「……そうか。魔法使いもまだウロウロしてる、のかな」
使用人「かもしれません。結構複雑に動き回ったので」
魔王「…… ……」
使用人「……すみません」
魔王「いや……使用人は何も悪く無いから」
魔王「もし、誰か見かけたら……さっきの部屋に行くように言っておいてくれ」
魔王「俺も……ちょっと探してみるよ」
使用人「ご案内しましょうか?」
魔王「あー……うん、いや、後で良いよ」
魔王「……まだちょっと、混乱してるしさ」
使用人「旨く説明出来なくて……すみません」
魔王「仕方無い……はいそうですかって」
魔王「理解出来る振り、で済む問題じゃ無い……しな」
323: 2013/09/27(金) 17:28:25.48 ID:+Bg1BhSQP
使用人「では、後ほど……あの部屋で」
スタスタ
魔王「……」フゥ
魔王(改めて一人……になってみると)キョロ
魔王(……変な感じ、だよな)
魔王(あんまりうろうろしない方が良いのかな)
魔王(でも、なぁ…… ……)
魔王(俺は、此処で何をすれば良いんだ?)
魔王(……父さんの様に……子供……『勇者』を作って)
魔王(そいつを、母親……魔法使いに任せて)
魔王(……俺は、此処で……『勇者』に倒されるのを待つだけ?)
魔王(他に……出来る事は無いのか?)
魔王(俺は……『魔王』は。それしか……出来ないのか?)
魔王「…… ……」
魔王(考えても仕方無い……の、か?)フゥ
魔王(……さっきの部屋に戻るか)スタスタ
魔王(…… ……)
魔王「……あれ、俺どっちから来たんだっけ?」
……
………
…………
スタスタ
魔王「……」フゥ
魔王(改めて一人……になってみると)キョロ
魔王(……変な感じ、だよな)
魔王(あんまりうろうろしない方が良いのかな)
魔王(でも、なぁ…… ……)
魔王(俺は、此処で何をすれば良いんだ?)
魔王(……父さんの様に……子供……『勇者』を作って)
魔王(そいつを、母親……魔法使いに任せて)
魔王(……俺は、此処で……『勇者』に倒されるのを待つだけ?)
魔王(他に……出来る事は無いのか?)
魔王(俺は……『魔王』は。それしか……出来ないのか?)
魔王「…… ……」
魔王(考えても仕方無い……の、か?)フゥ
魔王(……さっきの部屋に戻るか)スタスタ
魔王(…… ……)
魔王「……あれ、俺どっちから来たんだっけ?」
……
………
…………
324: 2013/09/27(金) 17:46:05.94 ID:+Bg1BhSQP
魔法使い「…… ……」
カチャ
僧侶「魔法使いさん!」
戦士「……どこ行ってたんだ」ハァ
魔法使い「あ……!良かった、二人とも……戻ってたのね」
使用人「……魔法使い様、先ほどはすみませんでした」
魔法使い「使用人も……」ホッ
魔法使い「……あ、あの、さっきは……」
使用人「魔王様に土下座されたので、もう……謝罪はいりません」
戦士「……土下座?」
僧侶「……何、やったんですか」
魔法使い「あ、いや……あの……ッ」
使用人「とにかく。 ……後は魔王様だけですね」
魔法使い「え……魔王、戻ってないの?」
僧侶「探されている、のでは?」
使用人「いくら広いとは言え、元の部屋に戻れない程では無いと」
使用人「思うのですけど……」
戦士「……そんなにややこしいか?この城」
僧侶「いえ……まあ、広いですけど、確かに」
カチャ
魔王「あ……居た……あってた……」フラ
使用人「……迷っていらした、んですか?」
魔王「……廊下が全部同じにみえるんだよ、この城……」
僧侶(方向音痴……なのでしょうか)クス
魔王「僧侶、酷い」
僧侶「ご、ごめんなさい!」
戦士「解りもしないのに勝手にウロウロする魔王が悪い」
カチャ
僧侶「魔法使いさん!」
戦士「……どこ行ってたんだ」ハァ
魔法使い「あ……!良かった、二人とも……戻ってたのね」
使用人「……魔法使い様、先ほどはすみませんでした」
魔法使い「使用人も……」ホッ
魔法使い「……あ、あの、さっきは……」
使用人「魔王様に土下座されたので、もう……謝罪はいりません」
戦士「……土下座?」
僧侶「……何、やったんですか」
魔法使い「あ、いや……あの……ッ」
使用人「とにかく。 ……後は魔王様だけですね」
魔法使い「え……魔王、戻ってないの?」
僧侶「探されている、のでは?」
使用人「いくら広いとは言え、元の部屋に戻れない程では無いと」
使用人「思うのですけど……」
戦士「……そんなにややこしいか?この城」
僧侶「いえ……まあ、広いですけど、確かに」
カチャ
魔王「あ……居た……あってた……」フラ
使用人「……迷っていらした、んですか?」
魔王「……廊下が全部同じにみえるんだよ、この城……」
僧侶(方向音痴……なのでしょうか)クス
魔王「僧侶、酷い」
僧侶「ご、ごめんなさい!」
戦士「解りもしないのに勝手にウロウロする魔王が悪い」
325: 2013/09/27(金) 17:56:08.26 ID:+Bg1BhSQP
魔王「……戦士も酷い」
魔王「お前、俺の側近になってくれるんじゃ無いのかよ!?」
戦士「自分の城で迷子になる阿呆の面倒まで見れるか」
魔王「迷子じゃねぇし…… ……多分」ハァ
使用人「何れ慣れますから」ハァ
使用人「明日にでも、改めてご案内いたしますし」
魔王「……お願いします」
魔法使い「……魔王」
魔王「ん?」
戦士「待て……まずは、俺からだ」
僧侶「…… ……」
戦士「少し、使用人に話を聞いた。前例から言って、多分……」
戦士「俺が一番、暴走する可能性が少なそうだ」
魔王「暴走?」
魔法使い「…… ……暴走って……何?」
使用人「人である身が魔へと変じる時」
使用人「その急激な変化について行けず……魔力が暴走するんです」
魔法使い「……暴走したら、どうなるの」
使用人「押さえきれなければ、自我を失い……理性を失い」
使用人「滅されるのを待つだけの魔物へと成り果てる……でしょうね」
魔法使い「!」
使用人「……紫の魔王の側近様も。私も……暴走状態を経験しました」
魔王「使用人も……?」
使用人「はい。幸いな事に私達は……それぞれ、当時の魔王様に」
使用人「暴走を止めて貰っています」
戦士「そして、前の時……金の髪の魔王の時は」
戦士「魔導将軍以外は、暴走していない、と言うのだ」
僧侶「……魔導将軍は律しきれず……その力を外へと放ち」
僧侶「……あの翼を、産みだしたのだそうです」
使用人「あれはあれで、正解だった……まあ、結果オーライ、に過ぎませんが」
魔法使い(似てる……さっき、使用人から聞いた話と)
魔王「お前、俺の側近になってくれるんじゃ無いのかよ!?」
戦士「自分の城で迷子になる阿呆の面倒まで見れるか」
魔王「迷子じゃねぇし…… ……多分」ハァ
使用人「何れ慣れますから」ハァ
使用人「明日にでも、改めてご案内いたしますし」
魔王「……お願いします」
魔法使い「……魔王」
魔王「ん?」
戦士「待て……まずは、俺からだ」
僧侶「…… ……」
戦士「少し、使用人に話を聞いた。前例から言って、多分……」
戦士「俺が一番、暴走する可能性が少なそうだ」
魔王「暴走?」
魔法使い「…… ……暴走って……何?」
使用人「人である身が魔へと変じる時」
使用人「その急激な変化について行けず……魔力が暴走するんです」
魔法使い「……暴走したら、どうなるの」
使用人「押さえきれなければ、自我を失い……理性を失い」
使用人「滅されるのを待つだけの魔物へと成り果てる……でしょうね」
魔法使い「!」
使用人「……紫の魔王の側近様も。私も……暴走状態を経験しました」
魔王「使用人も……?」
使用人「はい。幸いな事に私達は……それぞれ、当時の魔王様に」
使用人「暴走を止めて貰っています」
戦士「そして、前の時……金の髪の魔王の時は」
戦士「魔導将軍以外は、暴走していない、と言うのだ」
僧侶「……魔導将軍は律しきれず……その力を外へと放ち」
僧侶「……あの翼を、産みだしたのだそうです」
使用人「あれはあれで、正解だった……まあ、結果オーライ、に過ぎませんが」
魔法使い(似てる……さっき、使用人から聞いた話と)
338: 2013/09/29(日) 08:26:59.31 ID:EY/dHeK4P
魔法使い(魔王も……勇者を生み出さなければ……)
魔法使い(『自我を失い、力は……暴走する』…… ……?)
使用人「『魔の王』に新たな力と命を与えられ、人の物から魔の物へと」
使用人「……全てが変化するんです。細胞の一つ一つ。血の一滴までも」
使用人「そうして、全ては歓喜する……それが、暴走です」
魔王「歓喜……」
使用人「ええ。それを押さえきれなければ……」
戦士「……暴走状態にならなかった者の共通点ってのが」
戦士「魔法を行使できない事、だそうだ」
僧侶「攻撃、が抜けてますよ戦士さん」
戦士「ああ……そうか」
魔法使い「攻撃魔法……ああ、成る程。金の髪の側近さんは『戦士』だったのよね」
僧侶「はい。それに、魔王様のお母様も『僧侶』だったと仰ってました」
魔王「……あれ?紫の魔王の側近は? あいつも回復魔法が使えた、んだろ?」
使用人「『魔法なんて使い様』……后様は良く、そう仰っていました」
使用人「……側近様は、紅い瞳の魔王様に鍛えられて」
使用人「風の魔法が使える様になっています」
魔法使い「え……!?」
使用人「……魔法と言うのは、本来はそういう物なんじゃないか、って」
使用人「ただ……必ず誰もが出来る訳では無いでしょうけど」
魔法使い「ストップ。でも、それは魔へと変じた後でしょう?」
魔法使い「だったら……」
使用人「紫の瞳の側近様は……『魔王』を倒す為に旅立たれた時に」
使用人「それらしい事をされているんです……勿論、素質はあったんでしょうけど」
魔王「それらしい事、って?」
使用人「船で向かっていらした時に、風を操ってスピードを早くしたとか」
使用人「どうとか……」
魔法使い「……まあ、『攻撃魔法』に分類されるかどうかわかんないけど」
僧侶「……『使い様』、ですか」
魔法使い(『自我を失い、力は……暴走する』…… ……?)
使用人「『魔の王』に新たな力と命を与えられ、人の物から魔の物へと」
使用人「……全てが変化するんです。細胞の一つ一つ。血の一滴までも」
使用人「そうして、全ては歓喜する……それが、暴走です」
魔王「歓喜……」
使用人「ええ。それを押さえきれなければ……」
戦士「……暴走状態にならなかった者の共通点ってのが」
戦士「魔法を行使できない事、だそうだ」
僧侶「攻撃、が抜けてますよ戦士さん」
戦士「ああ……そうか」
魔法使い「攻撃魔法……ああ、成る程。金の髪の側近さんは『戦士』だったのよね」
僧侶「はい。それに、魔王様のお母様も『僧侶』だったと仰ってました」
魔王「……あれ?紫の魔王の側近は? あいつも回復魔法が使えた、んだろ?」
使用人「『魔法なんて使い様』……后様は良く、そう仰っていました」
使用人「……側近様は、紅い瞳の魔王様に鍛えられて」
使用人「風の魔法が使える様になっています」
魔法使い「え……!?」
使用人「……魔法と言うのは、本来はそういう物なんじゃないか、って」
使用人「ただ……必ず誰もが出来る訳では無いでしょうけど」
魔法使い「ストップ。でも、それは魔へと変じた後でしょう?」
魔法使い「だったら……」
使用人「紫の瞳の側近様は……『魔王』を倒す為に旅立たれた時に」
使用人「それらしい事をされているんです……勿論、素質はあったんでしょうけど」
魔王「それらしい事、って?」
使用人「船で向かっていらした時に、風を操ってスピードを早くしたとか」
使用人「どうとか……」
魔法使い「……まあ、『攻撃魔法』に分類されるかどうかわかんないけど」
僧侶「……『使い様』、ですか」
339: 2013/09/29(日) 08:30:22.62 ID:EY/dHeK4P
使用人「前例の共通点を探るとすれば、その辺かな、と思います」
使用人「……それに、后様は貴方達の気配を探ったり」
使用人「転移の魔法……本来、紫の瞳の魔王様にしかできないだろうと」
使用人「思われた事まで、やってしまわれました」
魔法使い「…… ……」
使用人「魔王様のペンダント。それから……声が聞こえた、のでしょう」
魔王「……『願えば叶う』って言葉は、そういう所から来た、のか?」
使用人「……最初に言い出されたのは、姫様でしたけどね」
僧侶「…… ……」
使用人「ですので。戦士様は……多分、暴走される可能性は少ないと思います」
使用人「……それに、后様は貴方達の気配を探ったり」
使用人「転移の魔法……本来、紫の瞳の魔王様にしかできないだろうと」
使用人「思われた事まで、やってしまわれました」
魔法使い「…… ……」
使用人「魔王様のペンダント。それから……声が聞こえた、のでしょう」
魔王「……『願えば叶う』って言葉は、そういう所から来た、のか?」
使用人「……最初に言い出されたのは、姫様でしたけどね」
僧侶「…… ……」
使用人「ですので。戦士様は……多分、暴走される可能性は少ないと思います」
355: 2013/09/30(月) 09:54:46.17 ID:odwUG5QeP
戦士「だから……俺からだ」
魔王「……本当に良いんだな」
戦士「構わん……魔法使い、すまんが、僧侶をどこか……別の部屋へ」
僧侶「戦士さん……」
魔法使い「…… ……」
戦士「……辛いだろうと、思う。だから、頼む」
魔法使い「……僧侶。良いの?」
僧侶「…… ……」
戦士「僧侶?」
僧侶「……やっぱり、此処に居ます」
僧侶「この目で……見ておきたいのです」
戦士「…… ……」ハァ
僧侶「『知る事を拒否してはいけない』んです、よね? 魔王様」
魔王「あ、ああ……でも……」チラ
戦士「…… ……好きにしろ」
魔法使い「……僧侶」ギュ
僧侶「…… ……」
魔王「良いんだな、戦士」
戦士「ああ……何度も聞くな」
魔王「すまん……使用人。具体的には……どうするんだっったっけな」
使用人「戦士様の身体のどこかに触れて下さい」
使用人「それで……」
魔王「『願えば叶う』か」
使用人「……はい」
魔王「……簡単に言ってくれるよな」ハァ
使用人「申し訳ありません。ですが……事実ですので」
戦士「……それが心理なのかもしれん」
魔王「……『世界の真理』か」
魔王(知るには未だ……ほど遠い)
魔王(俺達は…… ……知れる、のか?)スッ
魔王「……本当に良いんだな」
戦士「構わん……魔法使い、すまんが、僧侶をどこか……別の部屋へ」
僧侶「戦士さん……」
魔法使い「…… ……」
戦士「……辛いだろうと、思う。だから、頼む」
魔法使い「……僧侶。良いの?」
僧侶「…… ……」
戦士「僧侶?」
僧侶「……やっぱり、此処に居ます」
僧侶「この目で……見ておきたいのです」
戦士「…… ……」ハァ
僧侶「『知る事を拒否してはいけない』んです、よね? 魔王様」
魔王「あ、ああ……でも……」チラ
戦士「…… ……好きにしろ」
魔法使い「……僧侶」ギュ
僧侶「…… ……」
魔王「良いんだな、戦士」
戦士「ああ……何度も聞くな」
魔王「すまん……使用人。具体的には……どうするんだっったっけな」
使用人「戦士様の身体のどこかに触れて下さい」
使用人「それで……」
魔王「『願えば叶う』か」
使用人「……はい」
魔王「……簡単に言ってくれるよな」ハァ
使用人「申し訳ありません。ですが……事実ですので」
戦士「……それが心理なのかもしれん」
魔王「……『世界の真理』か」
魔王(知るには未だ……ほど遠い)
魔王(俺達は…… ……知れる、のか?)スッ
356: 2013/09/30(月) 10:03:47.01 ID:odwUG5QeP
戦士「……」スッ
魔王(戦士の手を握って……願う、か……)
魔王(こんな事で……)
ジュウゥ…
戦士「!? ……ッ ぅ、あ……ッ」
魔法使い(魔王が触れられた所から……煙が!?)
僧侶「せ、戦士さん……ッ」
戦士「寄るな!……う、ぅああああああッ!!」
魔王(何か……流れ込んでくる……『命』か……これ……!?)
魔王(魔力が……俺の中の……黒い何か……が、逆流する……!!)
僧侶「ひ……ッ ィ……ッ」ガタガタ
魔法使い「僧侶!?」ギュッ
シュゥウゥ……
戦士「……ッ ……? 終わった、のか……」
魔王「…… ……」
魔法使い「……変わった様に、は……見えない……けど」
僧侶「…… ……」ポロポロ
僧侶(こんなに、こんなに……容易く、人と言うのは……)
僧侶(魔へと……転じる事ができるのですか……)
魔法使い「……僧侶?」ギュ
僧侶「大丈夫です……魔法使いさん」
戦士「……どう、なった。確かに変わった様には、見えん……思えん、が」
使用人「内なる声に耳を傾けて下さい」
使用人「……貴方の気配は、最早……魔そのものです、戦士様」
戦士「……そう、か」ハァ
戦士「すまん……座らせてくれ」フラフラ
使用人「……どうぞ、こちらへ」
魔王(戦士の手を握って……願う、か……)
魔王(こんな事で……)
ジュウゥ…
戦士「!? ……ッ ぅ、あ……ッ」
魔法使い(魔王が触れられた所から……煙が!?)
僧侶「せ、戦士さん……ッ」
戦士「寄るな!……う、ぅああああああッ!!」
魔王(何か……流れ込んでくる……『命』か……これ……!?)
魔王(魔力が……俺の中の……黒い何か……が、逆流する……!!)
僧侶「ひ……ッ ィ……ッ」ガタガタ
魔法使い「僧侶!?」ギュッ
シュゥウゥ……
戦士「……ッ ……? 終わった、のか……」
魔王「…… ……」
魔法使い「……変わった様に、は……見えない……けど」
僧侶「…… ……」ポロポロ
僧侶(こんなに、こんなに……容易く、人と言うのは……)
僧侶(魔へと……転じる事ができるのですか……)
魔法使い「……僧侶?」ギュ
僧侶「大丈夫です……魔法使いさん」
戦士「……どう、なった。確かに変わった様には、見えん……思えん、が」
使用人「内なる声に耳を傾けて下さい」
使用人「……貴方の気配は、最早……魔そのものです、戦士様」
戦士「……そう、か」ハァ
戦士「すまん……座らせてくれ」フラフラ
使用人「……どうぞ、こちらへ」
357: 2013/09/30(月) 10:35:15.92 ID:odwUG5QeP
僧侶「戦士さん……!」タタタ……!
魔法使い「……次は私……ね」
戦士「僧侶……」ギュ
戦士「……待て、魔法使い」
魔法使い「? 何よ」
戦士「僧侶」
僧侶「は、はい」
戦士「…… ……どう、だった」
僧侶「え?」
戦士「何を感じたのか……教えてくれ」
僧侶「…… ……戦士さんの、人としての、命……」
僧侶「……命、の炎が。魔王様に……魔王様の黒い、魔力に包まれて」
僧侶「消え……ました」
使用人「…… ……」
魔法使い「…… ……」
魔王(……確かに、俺は戦士の命を飲み込んだ)
僧侶「……同時に、その黒い魔力……が、戦士さんの器に」
僧侶「新たな命、を与えた……んだと、思います」
魔法使い「魔、としての命、ね」
僧侶「……はい」
魔王(魔力を放ち、力を与えた……確かに、そうだ。だが)
魔王(……どうして、こう…身体に力が、漲るんだ)
魔王(『人間』の命を……喰らったから、か……!?)ゾクッ
戦士「……そうか」
魔王「魔法使い……」
魔法使い「ストップ。もう決めた事よ」
魔王「…… ……ああ」
魔法使い「……次は私……ね」
戦士「僧侶……」ギュ
戦士「……待て、魔法使い」
魔法使い「? 何よ」
戦士「僧侶」
僧侶「は、はい」
戦士「…… ……どう、だった」
僧侶「え?」
戦士「何を感じたのか……教えてくれ」
僧侶「…… ……戦士さんの、人としての、命……」
僧侶「……命、の炎が。魔王様に……魔王様の黒い、魔力に包まれて」
僧侶「消え……ました」
使用人「…… ……」
魔法使い「…… ……」
魔王(……確かに、俺は戦士の命を飲み込んだ)
僧侶「……同時に、その黒い魔力……が、戦士さんの器に」
僧侶「新たな命、を与えた……んだと、思います」
魔法使い「魔、としての命、ね」
僧侶「……はい」
魔王(魔力を放ち、力を与えた……確かに、そうだ。だが)
魔王(……どうして、こう…身体に力が、漲るんだ)
魔王(『人間』の命を……喰らったから、か……!?)ゾクッ
戦士「……そうか」
魔王「魔法使い……」
魔法使い「ストップ。もう決めた事よ」
魔王「…… ……ああ」
358: 2013/09/30(月) 10:58:00.48 ID:odwUG5QeP
魔王「…… ……」スッギュ
使用人「…… ……」
魔法使い「え、ちょ!?」
魔王「……大丈夫だ。俺が……止めてやるから」
使用人「……」ハァ
僧侶「使用人さん?」
使用人「……いえ」
使用人(親子で似た様な事を……)
魔王「……耐えろよ、魔法使い」グッ
魔法使い「……ッ」
魔法使い(魔王から……凄い力を感じる)
魔法使い(触れた場所が……熱い……ッ)
ジュウ……
魔法使い「あ……ッ ァ ……!」ガクッ
魔王「魔法使い……!」グッ
魔法使い「だ、い ……じょ……ッ 平……気、よ……ッ」ハァハァ
魔法使い(何、これ……ッ)
魔法使い(身体の中が、熱い……ッ 炎が、渦巻いているのが分かる……)
魔法使い(押さえなきゃ……ッ うぅ……ッ)
魔法使い「あ、ぁ………ッ」
魔法使い「アアアアアアアアアアアアあああああああああああ!」
僧侶「魔法使いさん!」
使用人「……出ては駄目です!下がって!」
使用人「…… ……」
魔法使い「え、ちょ!?」
魔王「……大丈夫だ。俺が……止めてやるから」
使用人「……」ハァ
僧侶「使用人さん?」
使用人「……いえ」
使用人(親子で似た様な事を……)
魔王「……耐えろよ、魔法使い」グッ
魔法使い「……ッ」
魔法使い(魔王から……凄い力を感じる)
魔法使い(触れた場所が……熱い……ッ)
ジュウ……
魔法使い「あ……ッ ァ ……!」ガクッ
魔王「魔法使い……!」グッ
魔法使い「だ、い ……じょ……ッ 平……気、よ……ッ」ハァハァ
魔法使い(何、これ……ッ)
魔法使い(身体の中が、熱い……ッ 炎が、渦巻いているのが分かる……)
魔法使い(押さえなきゃ……ッ うぅ……ッ)
魔法使い「あ、ぁ………ッ」
魔法使い「アアアアアアアアアアアアあああああああああああ!」
僧侶「魔法使いさん!」
使用人「……出ては駄目です!下がって!」
359: 2013/09/30(月) 11:04:34.75 ID:odwUG5QeP
魔法使い「……ッ う、ゥ……ッ」
魔王「魔法使い!」
魔法使い「…… ……ッ」
僧侶「魔法使いさん!」
戦士「……僧侶!駄目だ!」ギュッ
使用人「意識を貴女様の内側の、渦巻く炎に集中してください!」
使用人「一カ所にまとめて放出させ、それに、形を与える事をイメージして下さい!」
魔法使い「簡単、に……ッ 言ってくれる……わ、ね……!」
使用人「魔王様、念の為……部屋に結界を!」
魔王「……え!?俺!? ……結界、って……ど、どうやんの!?」
戦士「おい……ッ」
使用人「願うのです!イメージして……ッ こう、です!」
ビュウウウウウウウ!
戦士「!」
僧侶「風の……防壁!?」
魔王「お前本当に簡単に言うな……ッ こう、か……ッ」パシンッ
僧侶「!」
僧侶(……黒い、結界が広がって行く……ッ く、るし……ッ)グゥッ
僧侶(……戦士さん達は、平気なの!?)
使用人「僧侶様は私の傍へ……エルフには、苦痛でしょう」
使用人「私ではそちらまで守りきれません!魔王様、魔法使い様はお願いします!」
魔法使い「……ッ 冗談、じゃ無いわ、同じ……ッ に、しないで、よね!」
ゴォォッ
僧侶「う、ぁ……熱ッ」
魔王「魔法使い!」
戦士「……ッ」
魔法使い「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
フラ……バタンッ
魔王「魔法使い!」タタ……ギュ!
魔王「魔法使い!おい!しっかりしろ!」ユサユサ
魔法使い「…… ……」
魔王「魔法使い!」
魔法使い「…… ……ッ」
僧侶「魔法使いさん!」
戦士「……僧侶!駄目だ!」ギュッ
使用人「意識を貴女様の内側の、渦巻く炎に集中してください!」
使用人「一カ所にまとめて放出させ、それに、形を与える事をイメージして下さい!」
魔法使い「簡単、に……ッ 言ってくれる……わ、ね……!」
使用人「魔王様、念の為……部屋に結界を!」
魔王「……え!?俺!? ……結界、って……ど、どうやんの!?」
戦士「おい……ッ」
使用人「願うのです!イメージして……ッ こう、です!」
ビュウウウウウウウ!
戦士「!」
僧侶「風の……防壁!?」
魔王「お前本当に簡単に言うな……ッ こう、か……ッ」パシンッ
僧侶「!」
僧侶(……黒い、結界が広がって行く……ッ く、るし……ッ)グゥッ
僧侶(……戦士さん達は、平気なの!?)
使用人「僧侶様は私の傍へ……エルフには、苦痛でしょう」
使用人「私ではそちらまで守りきれません!魔王様、魔法使い様はお願いします!」
魔法使い「……ッ 冗談、じゃ無いわ、同じ……ッ に、しないで、よね!」
ゴォォッ
僧侶「う、ぁ……熱ッ」
魔王「魔法使い!」
戦士「……ッ」
魔法使い「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
フラ……バタンッ
魔王「魔法使い!」タタ……ギュ!
魔王「魔法使い!おい!しっかりしろ!」ユサユサ
魔法使い「…… ……」
360: 2013/09/30(月) 11:23:17.24 ID:odwUG5QeP
使用人「…… ……」フッ
僧侶(使用人さんの風も……魔王様の黒い気配も……消えた……)ホッ
戦士「お、おい……ッ」
僧侶「……大丈夫、です。気を失って……居られる様ですけど」
使用人「……身の内に押しとどめたんですね。無茶を……」
魔王「大丈夫……なんだな?」
使用人「僧侶様のお言葉です。何より信じられるでしょう」
魔王「……ああ」ホッ
僧侶「…… ……」
魔王「僧侶?」
戦士「……自分達で決めた事だ」
僧侶「…… ……すみません」
戦士「人では無いと言え……俺も、魔法使いも生きている」
戦士「……余り、嘆かないでくれ、僧侶」
僧侶「……はい」
魔王「……お前は大丈夫なのか、僧侶」
僧侶「使用人さんの……風の防壁の中に、いましたから」
使用人「……ご気分は?」
僧侶「貴女の、だったのですね」
使用人「え?」
僧侶「……何となく、心地よい風に吹かれている様な、この心地」
使用人「…… ……」
魔王「何だ?」
使用人「……そもそもは、紫の瞳の魔王様の暴走を少しでも和らげられたらと」
使用人「施した……気休めの魔法です」
使用人「……極上の布に緑の加護を、と」
戦士「布?」
使用人「カーテンです。 ……良かった。少しでもお役に立てたなら」
僧侶(使用人さんの風も……魔王様の黒い気配も……消えた……)ホッ
戦士「お、おい……ッ」
僧侶「……大丈夫、です。気を失って……居られる様ですけど」
使用人「……身の内に押しとどめたんですね。無茶を……」
魔王「大丈夫……なんだな?」
使用人「僧侶様のお言葉です。何より信じられるでしょう」
魔王「……ああ」ホッ
僧侶「…… ……」
魔王「僧侶?」
戦士「……自分達で決めた事だ」
僧侶「…… ……すみません」
戦士「人では無いと言え……俺も、魔法使いも生きている」
戦士「……余り、嘆かないでくれ、僧侶」
僧侶「……はい」
魔王「……お前は大丈夫なのか、僧侶」
僧侶「使用人さんの……風の防壁の中に、いましたから」
使用人「……ご気分は?」
僧侶「貴女の、だったのですね」
使用人「え?」
僧侶「……何となく、心地よい風に吹かれている様な、この心地」
使用人「…… ……」
魔王「何だ?」
使用人「……そもそもは、紫の瞳の魔王様の暴走を少しでも和らげられたらと」
使用人「施した……気休めの魔法です」
使用人「……極上の布に緑の加護を、と」
戦士「布?」
使用人「カーテンです。 ……良かった。少しでもお役に立てたなら」
361: 2013/09/30(月) 11:38:51.82 ID:odwUG5QeP
使用人「……ですが」
僧侶「そうですね。やはり……私は長く、この場所に居るべきでは無いでしょうね」
戦士「…… ……」
僧侶「……人間としての、戦士さんと魔法使いさんの命は」
僧侶「……魔王様に吸い取られ」
僧侶「お二人は、一度……確かに人としての生を終えられたのだと思います」
僧侶「ですが、魔力の……魔王様の、とても強い魔力に与えられた模擬的な氏ですから」
僧侶「命の炎を抜き取られたとは言え、まだ……器は、残ります」
魔法使い「器……身体の事ね、この……肉体」
魔王「気がついたか……大丈夫か?」
僧侶「魔法使いさん……」
魔法使い「大丈夫……続きを、僧侶」
僧侶「……はい。そこに魔王様の魔力を注ぐことで……」
僧侶「器に残る、加護の力と相まって」
僧侶「新たに、魔族としての生を得られた……と、解釈して良いと思います」
戦士「さっきよりは随分落ち着いた故に感じるのかもしれないが」
戦士「確かに……身体の中に、不思議な……強い力があるのが分かる」
使用人「魔法使い様」
魔法使い「もう……大丈夫よ」
魔法使い「内側か外側か……やり方は一緒でしょ」
魔法使い「使用人の話の通りやっただけよ……ただし、自分の身体の中に、ね」
使用人「……『同じにしないで』ですか」
魔法使い「…… ……私は私よ」
魔王「……平気なら、良い。良かった」ホッ
僧侶「…… ……」
戦士「僧侶?」
僧侶「あ……いえ。ほっとして、ちょっと……力が抜けました」
使用人「……お二人はゆっくりと休まれた方が良いでしょう、が」
使用人「その前に、魔王様」
魔王「……名前を授けろ、だったか」
使用人「はい。新たな生の証として。けじめとして」
僧侶「そうですね。やはり……私は長く、この場所に居るべきでは無いでしょうね」
戦士「…… ……」
僧侶「……人間としての、戦士さんと魔法使いさんの命は」
僧侶「……魔王様に吸い取られ」
僧侶「お二人は、一度……確かに人としての生を終えられたのだと思います」
僧侶「ですが、魔力の……魔王様の、とても強い魔力に与えられた模擬的な氏ですから」
僧侶「命の炎を抜き取られたとは言え、まだ……器は、残ります」
魔法使い「器……身体の事ね、この……肉体」
魔王「気がついたか……大丈夫か?」
僧侶「魔法使いさん……」
魔法使い「大丈夫……続きを、僧侶」
僧侶「……はい。そこに魔王様の魔力を注ぐことで……」
僧侶「器に残る、加護の力と相まって」
僧侶「新たに、魔族としての生を得られた……と、解釈して良いと思います」
戦士「さっきよりは随分落ち着いた故に感じるのかもしれないが」
戦士「確かに……身体の中に、不思議な……強い力があるのが分かる」
使用人「魔法使い様」
魔法使い「もう……大丈夫よ」
魔法使い「内側か外側か……やり方は一緒でしょ」
魔法使い「使用人の話の通りやっただけよ……ただし、自分の身体の中に、ね」
使用人「……『同じにしないで』ですか」
魔法使い「…… ……私は私よ」
魔王「……平気なら、良い。良かった」ホッ
僧侶「…… ……」
戦士「僧侶?」
僧侶「あ……いえ。ほっとして、ちょっと……力が抜けました」
使用人「……お二人はゆっくりと休まれた方が良いでしょう、が」
使用人「その前に、魔王様」
魔王「……名前を授けろ、だったか」
使用人「はい。新たな生の証として。けじめとして」
362: 2013/09/30(月) 11:49:41.68 ID:odwUG5QeP
魔王「……戦士は、側近で良いんだな?」
側近「俺は異存は無い……が……さっきも言ったが……」
魔王「僧侶とエルフの里を訪ねる為に旅に出るんだろ?」
魔王「……后?」チラ
后「え? ……ああ。そうね……私は、后……ね。ふふ」
后「反対なんかする訳ないでしょう?」
魔王「ありがとう」
后「……貴方は、もう……おいそれと出られない、でしょう」
后「一人は寂しいでしょう? ……私が、傍に居てあげる、わよ」
魔王「……はいはい」プッ
后「な、何よ! ……だ、だから、私達の代わりに、せ……側近と僧侶には」
后「『世界』を見てきてもらわないと」
僧侶「…… ……あ、あの!魔王様!」
魔王「ん?」
僧侶「……私にも…何か、名を……戴けませんでしょうか?」
魔王「そりゃ構わないが……良いのか?」
魔王「……神父様から貰った名だろう」
后「良いじゃないの、魔王。僧侶だって大切な私達の仲間よ」
魔王「……呼び名が変わろうがどうだろうが、大事には違い無いぞ?」
側近「僧侶の気の済む様にしてやってくれないか、魔王」
魔王「……ああ、まぁ……僧侶がその方が良いって言うなら」
魔王「なら……癒し手」
癒し手「はい……ありがとうございます」
側近「俺は異存は無い……が……さっきも言ったが……」
魔王「僧侶とエルフの里を訪ねる為に旅に出るんだろ?」
魔王「……后?」チラ
后「え? ……ああ。そうね……私は、后……ね。ふふ」
后「反対なんかする訳ないでしょう?」
魔王「ありがとう」
后「……貴方は、もう……おいそれと出られない、でしょう」
后「一人は寂しいでしょう? ……私が、傍に居てあげる、わよ」
魔王「……はいはい」プッ
后「な、何よ! ……だ、だから、私達の代わりに、せ……側近と僧侶には」
后「『世界』を見てきてもらわないと」
僧侶「…… ……あ、あの!魔王様!」
魔王「ん?」
僧侶「……私にも…何か、名を……戴けませんでしょうか?」
魔王「そりゃ構わないが……良いのか?」
魔王「……神父様から貰った名だろう」
后「良いじゃないの、魔王。僧侶だって大切な私達の仲間よ」
魔王「……呼び名が変わろうがどうだろうが、大事には違い無いぞ?」
側近「僧侶の気の済む様にしてやってくれないか、魔王」
魔王「……ああ、まぁ……僧侶がその方が良いって言うなら」
魔王「なら……癒し手」
癒し手「はい……ありがとうございます」
363: 2013/09/30(月) 11:58:08.75 ID:odwUG5QeP
使用人「お部屋にご案内致します」
魔王「……そうだな。ゆっくりしよう、魔法使い……じゃ、無かった」
魔王「……后」
后「……ええ」
使用人「申し訳ありません、側近様と癒し手様も後ほどご案内致しますので」
使用人「此処でお待ち頂いて良いでしょうか」
側近「ああ……俺は平気だ」
癒し手「大丈夫です」
使用人「では、魔王様。こちらへ」
魔王「ああ。よい、しょっと」ヒョイ
后「キャッ!? ちょ、ちょっと、歩けるわよ!?」
魔王「煩い。今日ぐらい言う事聞け」
魔王「……自分でやっておいてなんだけど、心配で氏にそうだったんだから」
スタスタ……パタン
側近「…… ……」
癒し手「あの……側近様。ご気分は……?」
側近「ん? ……ああ。俺は大丈夫だ」
側近「……正直、まだ信じられない位だ。俺が……魔、になったなんて」
癒し手「…… ……」
側近「不思議だ。嫌悪感……などは無いんだ」
側近「寧ろ、これで良かった……否。こうなるべきだったんだと」
側近「知っていた……様だ」
癒し手「……あの、側近様」
側近「何時、経つ?」
癒し手「え?」
魔王「……そうだな。ゆっくりしよう、魔法使い……じゃ、無かった」
魔王「……后」
后「……ええ」
使用人「申し訳ありません、側近様と癒し手様も後ほどご案内致しますので」
使用人「此処でお待ち頂いて良いでしょうか」
側近「ああ……俺は平気だ」
癒し手「大丈夫です」
使用人「では、魔王様。こちらへ」
魔王「ああ。よい、しょっと」ヒョイ
后「キャッ!? ちょ、ちょっと、歩けるわよ!?」
魔王「煩い。今日ぐらい言う事聞け」
魔王「……自分でやっておいてなんだけど、心配で氏にそうだったんだから」
スタスタ……パタン
側近「…… ……」
癒し手「あの……側近様。ご気分は……?」
側近「ん? ……ああ。俺は大丈夫だ」
側近「……正直、まだ信じられない位だ。俺が……魔、になったなんて」
癒し手「…… ……」
側近「不思議だ。嫌悪感……などは無いんだ」
側近「寧ろ、これで良かった……否。こうなるべきだったんだと」
側近「知っていた……様だ」
癒し手「……あの、側近様」
側近「何時、経つ?」
癒し手「え?」
364: 2013/09/30(月) 12:07:11.21 ID:odwUG5QeP
側近「……辛いのだろう」
癒し手「…… ……」
側近「姫様の様に純粋なエルフでは無い、と言え」
側近「……これから、魔王は……徐々に力をつけていくのだろう」
癒し手「勇者様が誕生される迄は、大丈夫だと……思います、けど」
側近「……だが、その後になると、今度は……『世界』を見失う」
癒し手「…… ……はい」
側近「もう少し、使用人に話を聞いて、発とう」
側近「まずは……北の街、だな」
癒し手「塔……ですね」
側近「ああ」
癒し手「でも……どうやって……?」
側近「船の一隻ぐらい、あるんじゃないか?聞いてみれば良いだろう」
癒し手「そう、ですね……使用人さんが戻れば……」
カチャ
使用人「お待たせ致しました。魔王様と后様の部屋からは」
使用人「少し遠いところに……お部屋をご準備してありますので」
側近「待ってくれ。旅立ちの事なのだが」
使用人「……お早い方が良いと思いますが、今日は流石に……おやすみに」
使用人「なられた方が……」
癒し手「あ、それは勿論です……あの。非常に我が儘で申し訳無いのですが」
癒し手「船とか、お借りする事はできますか?」
使用人「……そんな物は、この城にありませんが」
側近「え!?」
癒し手「…… ……え?」
癒し手「…… ……」
側近「姫様の様に純粋なエルフでは無い、と言え」
側近「……これから、魔王は……徐々に力をつけていくのだろう」
癒し手「勇者様が誕生される迄は、大丈夫だと……思います、けど」
側近「……だが、その後になると、今度は……『世界』を見失う」
癒し手「…… ……はい」
側近「もう少し、使用人に話を聞いて、発とう」
側近「まずは……北の街、だな」
癒し手「塔……ですね」
側近「ああ」
癒し手「でも……どうやって……?」
側近「船の一隻ぐらい、あるんじゃないか?聞いてみれば良いだろう」
癒し手「そう、ですね……使用人さんが戻れば……」
カチャ
使用人「お待たせ致しました。魔王様と后様の部屋からは」
使用人「少し遠いところに……お部屋をご準備してありますので」
側近「待ってくれ。旅立ちの事なのだが」
使用人「……お早い方が良いと思いますが、今日は流石に……おやすみに」
使用人「なられた方が……」
癒し手「あ、それは勿論です……あの。非常に我が儘で申し訳無いのですが」
癒し手「船とか、お借りする事はできますか?」
使用人「……そんな物は、この城にありませんが」
側近「え!?」
癒し手「…… ……え?」
365: 2013/09/30(月) 12:20:38.25 ID:odwUG5QeP
使用人「私も、お聞きしようと思っていたんです」
使用人「どうするおつもりなのか……と」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
使用人「……考えてませんでしたね」
側近「あ……歩いて、は無理がある、な」
癒し手「……北の街でお借りした船は、魔導国……ですしね」
側近「! そうだ、あの国は……!」
癒し手「それを確かめる為にも……私達は、此処を発たなければなりません」
使用人「……少し、時間は掛かりますが」
癒し手「え?」
使用人「船長さんにお願い致しましょう……」ハァ
スタスタ、カチャカチャ
側近「船長……海賊の、か?」
使用人「文を……お待ち下さい」カリカリ
癒し手「文?」スタスタ
使用人「『仕事の依頼です。客人を二人……』……何処まで行くのです?」
側近「取りあえずは北の塔……と思った、のだが」
使用人「……定期便がどうなっているか解らないですからね」
癒し手「魔導国と始まりの国の戦況次第では……」
使用人「……では、北の塔を経由して北の街付近まで、で宜しいでしょうか」
使用人「変更があれば、追加金を払えばどうにかしてくれるでしょうし」
使用人「…… ……」プチ。グッ……
癒し手「髪の毛……?」
側近「何を…… ……!?」
使用人「……良し、と」
パタパタパタ……ピィ
使用人「どうするおつもりなのか……と」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
使用人「……考えてませんでしたね」
側近「あ……歩いて、は無理がある、な」
癒し手「……北の街でお借りした船は、魔導国……ですしね」
側近「! そうだ、あの国は……!」
癒し手「それを確かめる為にも……私達は、此処を発たなければなりません」
使用人「……少し、時間は掛かりますが」
癒し手「え?」
使用人「船長さんにお願い致しましょう……」ハァ
スタスタ、カチャカチャ
側近「船長……海賊の、か?」
使用人「文を……お待ち下さい」カリカリ
癒し手「文?」スタスタ
使用人「『仕事の依頼です。客人を二人……』……何処まで行くのです?」
側近「取りあえずは北の塔……と思った、のだが」
使用人「……定期便がどうなっているか解らないですからね」
癒し手「魔導国と始まりの国の戦況次第では……」
使用人「……では、北の塔を経由して北の街付近まで、で宜しいでしょうか」
使用人「変更があれば、追加金を払えばどうにかしてくれるでしょうし」
使用人「…… ……」プチ。グッ……
癒し手「髪の毛……?」
側近「何を…… ……!?」
使用人「……良し、と」
パタパタパタ……ピィ
366: 2013/09/30(月) 12:28:49.39 ID:odwUG5QeP
癒し手「小鳥になった……!?」
側近「お、おい……飛んで行くぞ!?」
使用人「……文を飛ばしたのです。船長さんに無事に届くと……良いのですけれど」
癒し手「……具現化、ですか」
使用人「はい……書庫は覗かれましたか」
癒し手「え、ええ」
使用人「紫の瞳の魔王様が色々と……残してますから」
使用人「……文が船長さんに無事に届き、この最果ての大陸まで来てくれる間に」
使用人「貴女なら、これぐらいすぐに出来る様になると思いますよ」
側近「……成る程。そうすれば、魔王達と何時でも連絡がつくな」
癒し手「……そう、ですね……」
使用人「さあ、ご案内致します。本当に、今日はもうお休みになられて下さい」
使用人「まだ大丈夫だとは思いますが、癒し手様は余り……魔王様には」
使用人「お近づきになられません様」
癒し手「……はい」
側近「行こう、癒し手」
使用人「……では、どうぞ」
……
………
…………
剣士「…… ……」
村長「そ、そんな話は聞いていない!どう言う事だ!」
村長「お前達は……!!」
息子「……お父さん」
騎士「ご心配されなくても大丈夫です。国王は、魔寄せの石破壊後も」
騎士「我々に此処に残る様にと命じられています」
村長「し、しかし!」
側近「お、おい……飛んで行くぞ!?」
使用人「……文を飛ばしたのです。船長さんに無事に届くと……良いのですけれど」
癒し手「……具現化、ですか」
使用人「はい……書庫は覗かれましたか」
癒し手「え、ええ」
使用人「紫の瞳の魔王様が色々と……残してますから」
使用人「……文が船長さんに無事に届き、この最果ての大陸まで来てくれる間に」
使用人「貴女なら、これぐらいすぐに出来る様になると思いますよ」
側近「……成る程。そうすれば、魔王達と何時でも連絡がつくな」
癒し手「……そう、ですね……」
使用人「さあ、ご案内致します。本当に、今日はもうお休みになられて下さい」
使用人「まだ大丈夫だとは思いますが、癒し手様は余り……魔王様には」
使用人「お近づきになられません様」
癒し手「……はい」
側近「行こう、癒し手」
使用人「……では、どうぞ」
……
………
…………
剣士「…… ……」
村長「そ、そんな話は聞いていない!どう言う事だ!」
村長「お前達は……!!」
息子「……お父さん」
騎士「ご心配されなくても大丈夫です。国王は、魔寄せの石破壊後も」
騎士「我々に此処に残る様にと命じられています」
村長「し、しかし!」
369: 2013/09/30(月) 13:03:44.92 ID:odwUG5QeP
息子「……お話しは、確かなんですね?」
騎士「はい。魔導国は……指導者の氏により実質、解体されたも同じです」
騎士「騎士団長自らが騎士達を率いて、制圧に向かいましたし」
騎士「……領主の血筋の者も、捕らえて監視下に居ます。ですから」
村長「ま、魔法の鉱石は!?あの洞窟はどうなる!」
村長「私達は、あの石で……!!」
剣士「……勇者達は、既に魔王の城へ向かった後だ」
剣士「もし、魔王の討伐が叶わなければ、お前達のその鍛冶師としての腕の」
剣士「出番もあろう、が……故にその時には」
剣士「あんなもの、それこそ破棄しておく必要があるだろう」
騎士「……この者の言う通りです」
息子「…… ……貴方も、騎士なのですか」
剣士「…… ……」
息子「失礼ですが、その瞳の色は……」
騎士「この者は、王からの直々の命令で魔物討伐に参加しています」
騎士「……腕は確かな様ですから、ご安心を」
息子「…… ……似ている」
剣士「黒い髪の勇者にか」
息子「……ええ」
騎士「お前は黙って居ろ、剣士」
剣士「…… ……」
息子(兄弟、と言ってもおかしく無い程に……似ている。だが……)
息子(……紫の、瞳。これでは、まるで……!)
村長「……本当に、始まりの国の者達なんだろうな」
村長「魔導国が、そんな……簡単に……!」
騎士「はい。魔導国は……指導者の氏により実質、解体されたも同じです」
騎士「騎士団長自らが騎士達を率いて、制圧に向かいましたし」
騎士「……領主の血筋の者も、捕らえて監視下に居ます。ですから」
村長「ま、魔法の鉱石は!?あの洞窟はどうなる!」
村長「私達は、あの石で……!!」
剣士「……勇者達は、既に魔王の城へ向かった後だ」
剣士「もし、魔王の討伐が叶わなければ、お前達のその鍛冶師としての腕の」
剣士「出番もあろう、が……故にその時には」
剣士「あんなもの、それこそ破棄しておく必要があるだろう」
騎士「……この者の言う通りです」
息子「…… ……貴方も、騎士なのですか」
剣士「…… ……」
息子「失礼ですが、その瞳の色は……」
騎士「この者は、王からの直々の命令で魔物討伐に参加しています」
騎士「……腕は確かな様ですから、ご安心を」
息子「…… ……似ている」
剣士「黒い髪の勇者にか」
息子「……ええ」
騎士「お前は黙って居ろ、剣士」
剣士「…… ……」
息子(兄弟、と言ってもおかしく無い程に……似ている。だが……)
息子(……紫の、瞳。これでは、まるで……!)
村長「……本当に、始まりの国の者達なんだろうな」
村長「魔導国が、そんな……簡単に……!」
370: 2013/09/30(月) 13:11:50.84 ID:odwUG5QeP
息子「お父さん、何度同じ質問をするのです」
息子「……書状も見せて貰ったし、彼らは嘘は吐いていない」
息子「国家丸ごとの嘘を吐くメリットも無いだろう」
騎士「……村長、許可を頂けますね?」
村長「…… ……」
騎士「我らの半分は、警護の為に暫く滞在致しますから、安心して下さい!」
息子「……わかりました。ご案内します」
村長「息子!」
息子「勇者様も旅立たれた後だ!もう、あんな物必要無くなるんだ!」
村長「倒せなかったらどうするんだ!また、魔王が復活したら!?」
息子「その時はその時で、俺達が自分達で何とかするんだ!」
息子「あれさえ無くなれば、最初は大変であっても」
息子「何れ、平和になる!魔導国ももう無い!」
息子「……他力本願はやめるんだ!真実から目を背けるな!」
剣士(……真実、か)フゥ
息子「……討伐のお役には立てないでしょうが、近くまでは俺がご案内します」
息子「……宜しくお願い致します」
騎士「ありがとうございます」
村長「……ッ くそ!」ガンッ
騎士「!」ビクッ
スタスタ、バタン!
息子「……すみません」
騎士「いえ……」
剣士「無理も無い。ぬるま湯から急に出ろと言われれば」
剣士「誰でも戸惑う物だろう」
騎士「喋るなと言っただろう!」
息子「……書状も見せて貰ったし、彼らは嘘は吐いていない」
息子「国家丸ごとの嘘を吐くメリットも無いだろう」
騎士「……村長、許可を頂けますね?」
村長「…… ……」
騎士「我らの半分は、警護の為に暫く滞在致しますから、安心して下さい!」
息子「……わかりました。ご案内します」
村長「息子!」
息子「勇者様も旅立たれた後だ!もう、あんな物必要無くなるんだ!」
村長「倒せなかったらどうするんだ!また、魔王が復活したら!?」
息子「その時はその時で、俺達が自分達で何とかするんだ!」
息子「あれさえ無くなれば、最初は大変であっても」
息子「何れ、平和になる!魔導国ももう無い!」
息子「……他力本願はやめるんだ!真実から目を背けるな!」
剣士(……真実、か)フゥ
息子「……討伐のお役には立てないでしょうが、近くまでは俺がご案内します」
息子「……宜しくお願い致します」
騎士「ありがとうございます」
村長「……ッ くそ!」ガンッ
騎士「!」ビクッ
スタスタ、バタン!
息子「……すみません」
騎士「いえ……」
剣士「無理も無い。ぬるま湯から急に出ろと言われれば」
剣士「誰でも戸惑う物だろう」
騎士「喋るなと言っただろう!」
371: 2013/09/30(月) 13:18:52.76 ID:odwUG5QeP
剣士「…… ……」
息子「……鍛冶師様の技術を受け継ぐのに、必ずしも」
息子「あの……石も、魔導国の力も、知恵も」
息子「必要な訳では、無いんです」
騎士「この村には、まだ魔石生成の技術も残っていると聞いていますが」
息子「ええ……鍛冶に携わる事を望む者も多いですから」
騎士「そうですか……」
息子「不都合でも?」
騎士「ああ、いいえ。そうして、受け継がれて行くのでしたら」
騎士「……何の心配も無いだろうと、思いまして」
息子「ああ……ええ。そうです。俺もそう思います」
騎士「では、早速ですがご案内頂けますか」
息子「解りました……ええと、騎士の方々全員ですか?」
騎士「既に半分は北の街の方向へと向かわせてあります」
騎士「北の街の町長にも話を伝える様に言ってありますし」
騎士「こちら側からは、残りの半分が対応致します」
騎士「……行けるか、剣士」
剣士「ああ」スッ
息子「ええと……剣士さん、は……何処へ」
騎士「直接、その場所に向かうのは私と数名、とこの男です」
騎士「案内、お願い致します、息子さん」
剣士「…… ……」
スタスタ、パタン
息子「…… ……」
騎士「……非礼は、お詫び致します」
息子「あ、いえ!そういう訳じゃありません」
息子「……彼は、一体……?」
騎士「……解りません。皆、黒い髪の勇者様にそっくりだと言いますが」
騎士「胡散臭い……男、です」
息子「…… ……」
息子「……鍛冶師様の技術を受け継ぐのに、必ずしも」
息子「あの……石も、魔導国の力も、知恵も」
息子「必要な訳では、無いんです」
騎士「この村には、まだ魔石生成の技術も残っていると聞いていますが」
息子「ええ……鍛冶に携わる事を望む者も多いですから」
騎士「そうですか……」
息子「不都合でも?」
騎士「ああ、いいえ。そうして、受け継がれて行くのでしたら」
騎士「……何の心配も無いだろうと、思いまして」
息子「ああ……ええ。そうです。俺もそう思います」
騎士「では、早速ですがご案内頂けますか」
息子「解りました……ええと、騎士の方々全員ですか?」
騎士「既に半分は北の街の方向へと向かわせてあります」
騎士「北の街の町長にも話を伝える様に言ってありますし」
騎士「こちら側からは、残りの半分が対応致します」
騎士「……行けるか、剣士」
剣士「ああ」スッ
息子「ええと……剣士さん、は……何処へ」
騎士「直接、その場所に向かうのは私と数名、とこの男です」
騎士「案内、お願い致します、息子さん」
剣士「…… ……」
スタスタ、パタン
息子「…… ……」
騎士「……非礼は、お詫び致します」
息子「あ、いえ!そういう訳じゃありません」
息子「……彼は、一体……?」
騎士「……解りません。皆、黒い髪の勇者様にそっくりだと言いますが」
騎士「胡散臭い……男、です」
息子「…… ……」
372: 2013/09/30(月) 13:26:12.63 ID:odwUG5QeP
騎士「……王直々の命令ですので、連れてきましたが」
騎士「否……彼が居なければ、この作戦は成功しないと、確かに思います」
息子「そんなに……お強い、のですか」
騎士「……ええ。こんなに早くこの村に着けたのも」
騎士「確かに……彼のおかげですから」
息子「…… ……」
騎士「大丈夫です。彼はこの村には……残りません」
騎士「責任もって、始まりの国につれて戻ります、から」
息子「……え、ええ……解りました」
騎士「では、行きましょうか」
……
………
…………
船長「おい!さっさと着岸しろ! ……しかし、やけに静かだったな」
海賊「ですねぇ……魔物の数も随分少なかったし」
チビ「俺も降りて良い!?」
船長「駄目!」
チビ「……ちぇ」
男「残念だな。お前は父さんと一緒に待ってるんだってよ」
チビ「父さん、気にならないの!?最果てだよ!?」
男「気にならネェとは言わねぇけど、船長の命令は絶対だろ?」
男「お前も立派な海賊になりたいなら、覚えとかないとな?」
チビ「……はぁい」
船長「ほら、部屋戻れ、お前ら……母さん、行ってくるから」
チビ「お客さん、乗ってくるんでしょ!?」
船長「だからだよ!」
船長(……しっかし、随分長い間連絡無かったのにな)
船長(懐が潤うのは良いが……気が乗らネェ)
船長(厄介な事に巻き込まれなきゃ良い、がな)
騎士「否……彼が居なければ、この作戦は成功しないと、確かに思います」
息子「そんなに……お強い、のですか」
騎士「……ええ。こんなに早くこの村に着けたのも」
騎士「確かに……彼のおかげですから」
息子「…… ……」
騎士「大丈夫です。彼はこの村には……残りません」
騎士「責任もって、始まりの国につれて戻ります、から」
息子「……え、ええ……解りました」
騎士「では、行きましょうか」
……
………
…………
船長「おい!さっさと着岸しろ! ……しかし、やけに静かだったな」
海賊「ですねぇ……魔物の数も随分少なかったし」
チビ「俺も降りて良い!?」
船長「駄目!」
チビ「……ちぇ」
男「残念だな。お前は父さんと一緒に待ってるんだってよ」
チビ「父さん、気にならないの!?最果てだよ!?」
男「気にならネェとは言わねぇけど、船長の命令は絶対だろ?」
男「お前も立派な海賊になりたいなら、覚えとかないとな?」
チビ「……はぁい」
船長「ほら、部屋戻れ、お前ら……母さん、行ってくるから」
チビ「お客さん、乗ってくるんでしょ!?」
船長「だからだよ!」
船長(……しっかし、随分長い間連絡無かったのにな)
船長(懐が潤うのは良いが……気が乗らネェ)
船長(厄介な事に巻き込まれなきゃ良い、がな)
373: 2013/09/30(月) 13:33:37.33 ID:odwUG5QeP
船長「おい、チビ達部屋から出ない様にもう一回念押しとけよ」
海賊「アイアイサー」
スタスタ
船長(客……ね。北の塔までだと?)
船長(その後、北の街に送り届けて、後は希望を聞いてやれ、とは)
船長(……また妙な依頼だよな。あんな場所に何の用事があるってんだ)
使用人「……あれですね。あれが……船長さんです」
癒し手「は、はい」
側近「……俺達は、『戦士』と『僧侶』だ」
癒し手「はい……嘘には、なりません、しね」
側近「ああ。『エルフの里を探す旅人』だ。それも嘘じゃ無い」
癒し手「……はい」
使用人(船長さん……老けた。当然か……産まれた時から、知っていると言うのに)
スタスタ
船長「……久しぶりだな」
使用人「お久しぶりです、船長さん」
船長「いい加減、その顔の布取ったらどうだ」
使用人「…… ……お金は、此処にあります。どうぞ、お確かめ下さい」
船長「……まあ、良いけどね」ハァ
船長「客、てのはその二人か」
使用人「ええ。僧侶さんと戦士さん、です」
使用人「……北の塔まで、宜しくお願い致します」
船長「随分多いが……良いのか?」
使用人「迷惑料込み、です」
癒し手(この人……年齢は随分違うけれど)
癒し手(……女様に、似てる。あの像に……似ている)
側近「……宜しく頼む」
海賊「アイアイサー」
スタスタ
船長(客……ね。北の塔までだと?)
船長(その後、北の街に送り届けて、後は希望を聞いてやれ、とは)
船長(……また妙な依頼だよな。あんな場所に何の用事があるってんだ)
使用人「……あれですね。あれが……船長さんです」
癒し手「は、はい」
側近「……俺達は、『戦士』と『僧侶』だ」
癒し手「はい……嘘には、なりません、しね」
側近「ああ。『エルフの里を探す旅人』だ。それも嘘じゃ無い」
癒し手「……はい」
使用人(船長さん……老けた。当然か……産まれた時から、知っていると言うのに)
スタスタ
船長「……久しぶりだな」
使用人「お久しぶりです、船長さん」
船長「いい加減、その顔の布取ったらどうだ」
使用人「…… ……お金は、此処にあります。どうぞ、お確かめ下さい」
船長「……まあ、良いけどね」ハァ
船長「客、てのはその二人か」
使用人「ええ。僧侶さんと戦士さん、です」
使用人「……北の塔まで、宜しくお願い致します」
船長「随分多いが……良いのか?」
使用人「迷惑料込み、です」
癒し手(この人……年齢は随分違うけれど)
癒し手(……女様に、似てる。あの像に……似ている)
側近「……宜しく頼む」
374: 2013/09/30(月) 13:41:54.26 ID:odwUG5QeP
使用人「……今、『世界』はどうなっているんです?」
船長「知る限り教えてやりたいとは思うが……『仕事の一環』でね」
船長「アタシ達も世界の海をフラフラとはしてたんだが」
船長「大海の大渦より西にゃ行ってないのさ」
使用人「…… ……」
船長「これと言って、めぼしい事は知らない。戦争状態に近いって」
船長「そんぐらいかね」
使用人「……そうですか」
船長「花の苗は良かったのか?」
使用人「……必要になれば、またご連絡いたします」
船長「了解……んじゃまあ、行こうか。アタシの事は船長って呼んでくれ」
癒し手「はい。お願い致します、船長さん」
側近「どれぐらいで着く?」
船長「すぐそこだよ。今日中には着く……が、先に北の街に寄るのは勧めないよ」
船長「あの街は、塔には近づくなと煩いからね」
癒し手「……では、塔で下ろして下さい」
船長「解った……だが、放って行く訳には行かないだろう?」
船長「どうすれば良いんだ」
側近「塔を出た後、北の街へ行く事は可能か?」
船長「……あの塔の傍に、アンタらが帰ってくる迄停泊してる事は不可能だ」
船長「……この女じゃあるまいし、連絡手段も無いだろうから」
船長「適当に迎えに行ってやる事はできるが……そうなると、その後」
船長「すぐに北の街に行くのは避けた方が良いな」
船長「危害を加えられる事は無いとは思う……がね。あそこは、閉鎖的な街だ」
癒し手「では、出たらご連絡いたしますから」
船長「え?」
癒し手「迎えに来て頂けます?」
船長「アンタ、人の話聞いてたか?」
船長「この女じゃあるまいし……って」
癒し手「大丈夫です。私も、小鳥を飛ばします」
側近「これは優秀な聖職者だ……魔法は使い様だそうだ」
船長「…… ……ハァ?」
船長「知る限り教えてやりたいとは思うが……『仕事の一環』でね」
船長「アタシ達も世界の海をフラフラとはしてたんだが」
船長「大海の大渦より西にゃ行ってないのさ」
使用人「…… ……」
船長「これと言って、めぼしい事は知らない。戦争状態に近いって」
船長「そんぐらいかね」
使用人「……そうですか」
船長「花の苗は良かったのか?」
使用人「……必要になれば、またご連絡いたします」
船長「了解……んじゃまあ、行こうか。アタシの事は船長って呼んでくれ」
癒し手「はい。お願い致します、船長さん」
側近「どれぐらいで着く?」
船長「すぐそこだよ。今日中には着く……が、先に北の街に寄るのは勧めないよ」
船長「あの街は、塔には近づくなと煩いからね」
癒し手「……では、塔で下ろして下さい」
船長「解った……だが、放って行く訳には行かないだろう?」
船長「どうすれば良いんだ」
側近「塔を出た後、北の街へ行く事は可能か?」
船長「……あの塔の傍に、アンタらが帰ってくる迄停泊してる事は不可能だ」
船長「……この女じゃあるまいし、連絡手段も無いだろうから」
船長「適当に迎えに行ってやる事はできるが……そうなると、その後」
船長「すぐに北の街に行くのは避けた方が良いな」
船長「危害を加えられる事は無いとは思う……がね。あそこは、閉鎖的な街だ」
癒し手「では、出たらご連絡いたしますから」
船長「え?」
癒し手「迎えに来て頂けます?」
船長「アンタ、人の話聞いてたか?」
船長「この女じゃあるまいし……って」
癒し手「大丈夫です。私も、小鳥を飛ばします」
側近「これは優秀な聖職者だ……魔法は使い様だそうだ」
船長「…… ……ハァ?」
375: 2013/09/30(月) 13:49:26.90 ID:odwUG5QeP
癒し手「…… ……よ、いしょ」プチ ……パタパタ
船長「え…… ……」
ピピピ……
癒し手「おいで」ピィ……
側近「……な?」
船長「…… ……」
使用人「では、私は失礼致します」
スタスタ
船長(最果ての客人だ。常識の通用しない類の相手……か)ハァ
船長「参ったな……お嬢ちゃん、魔族か?」
癒し手「いえ……私は魔族ではありませんよ」
船長「え!?でも……」
船長「え…… ……」
ピピピ……
癒し手「おいで」ピィ……
側近「……な?」
船長「…… ……」
使用人「では、私は失礼致します」
スタスタ
船長(最果ての客人だ。常識の通用しない類の相手……か)ハァ
船長「参ったな……お嬢ちゃん、魔族か?」
癒し手「いえ……私は魔族ではありませんよ」
船長「え!?でも……」
383: 2013/10/01(火) 06:35:24.14 ID:1Z9c0dnPP
側近「……『悪事に手を貸す』結果にしたい訳では決して無い」
船長「! ……聞いたのか」
癒し手「信じて下さい、と言う事しかできませんが……」
癒し手「……どうぞ、宜しくお願い致します」
ピピピ……ピピ……パタパタ
船長「……加護の色、か……お、おい!突っつくな!」
癒し手「ふふ……すみません」
船長「こいつも……あの緑の小鳥みたいにすぐに消える、のか」
癒し手「どうでしょうね。戻そうと思えばすぐに、私の髪に戻りますけど」
船長「……いや、良いよ、別に……邪魔しないんならな」
船長「可愛らしいもんだ……準備は出来てるんだろう」
側近「ああ……おいで?」
ピィッ
船長「……似合わネェな、アンタ。戦士、だったか」
側近「悪かったな」
癒し手「この方は優しい方ですよ?動物にも植物にも愛される」
船長「……案内するよ。着いて来な」
船長「すぐに向かって良いんだな?」
スタスタ
癒し手「はい。北の塔の散策が終われば、ご連絡致します」
船長「……天まで届く不気味な塔だ。まあ、のんびり待ってるさ」
側近「無いとは思う……が、余程連絡が無ければ」
側近「後は、そっちの判断に任せて良いか」
船長「……無事に戻れよ」
癒し手「心配して下さるんですか」
船長「寝覚め悪ィだろうが!」
船長「! ……聞いたのか」
癒し手「信じて下さい、と言う事しかできませんが……」
癒し手「……どうぞ、宜しくお願い致します」
ピピピ……ピピ……パタパタ
船長「……加護の色、か……お、おい!突っつくな!」
癒し手「ふふ……すみません」
船長「こいつも……あの緑の小鳥みたいにすぐに消える、のか」
癒し手「どうでしょうね。戻そうと思えばすぐに、私の髪に戻りますけど」
船長「……いや、良いよ、別に……邪魔しないんならな」
船長「可愛らしいもんだ……準備は出来てるんだろう」
側近「ああ……おいで?」
ピィッ
船長「……似合わネェな、アンタ。戦士、だったか」
側近「悪かったな」
癒し手「この方は優しい方ですよ?動物にも植物にも愛される」
船長「……案内するよ。着いて来な」
船長「すぐに向かって良いんだな?」
スタスタ
癒し手「はい。北の塔の散策が終われば、ご連絡致します」
船長「……天まで届く不気味な塔だ。まあ、のんびり待ってるさ」
側近「無いとは思う……が、余程連絡が無ければ」
側近「後は、そっちの判断に任せて良いか」
船長「……無事に戻れよ」
癒し手「心配して下さるんですか」
船長「寝覚め悪ィだろうが!」
384: 2013/10/01(火) 06:42:43.76 ID:1Z9c0dnPP
側近(俺が着いている限り……何かがあるはずも無い、とは思うが)
側近(……俺はもう、人間じゃ無い。しかし……)
側近(『決して驕るな』……忘れては、駄目だ)
側近(……癒し手は、命に代えても守ってやらなければ……!)
癒し手(お母様の眠っていらした、不思議な塔)
癒し手(……魔導将軍さんが言っていた事……)
癒し手(解る、のでしょうか。何か。お母様の事。『世界』……!)
癒し手(……足を引っ張らない様に、しないと)
船長「……一ヶ月、だ。それ以上連絡が無ければ、離れる」
側近「随分長いな」
船長「代金分だ……それ以上は、状況的に考えて待っても無駄な時間と」
船長「判断させて貰う」
癒し手「それで結構です……ありがとうございます」
船長「……良し、乗りな」
船長「海賊共に、船室に案内させる」
癒し手「甲板に居ても宜しいですか?」
船長「そりゃ構わないが……良いのか?」
癒し手「少し……苦手なので」
側近「……船に酔うんだ」
船長「ああ……そうか。良いよ、別に。本当にすぐだ」
癒し手「ありがとうございます」ホッ
海賊「出しますか、船長?」
船長「ああ!野郎共、出港だ!」
アイアイサー!
……
………
…………
側近(……俺はもう、人間じゃ無い。しかし……)
側近(『決して驕るな』……忘れては、駄目だ)
側近(……癒し手は、命に代えても守ってやらなければ……!)
癒し手(お母様の眠っていらした、不思議な塔)
癒し手(……魔導将軍さんが言っていた事……)
癒し手(解る、のでしょうか。何か。お母様の事。『世界』……!)
癒し手(……足を引っ張らない様に、しないと)
船長「……一ヶ月、だ。それ以上連絡が無ければ、離れる」
側近「随分長いな」
船長「代金分だ……それ以上は、状況的に考えて待っても無駄な時間と」
船長「判断させて貰う」
癒し手「それで結構です……ありがとうございます」
船長「……良し、乗りな」
船長「海賊共に、船室に案内させる」
癒し手「甲板に居ても宜しいですか?」
船長「そりゃ構わないが……良いのか?」
癒し手「少し……苦手なので」
側近「……船に酔うんだ」
船長「ああ……そうか。良いよ、別に。本当にすぐだ」
癒し手「ありがとうございます」ホッ
海賊「出しますか、船長?」
船長「ああ!野郎共、出港だ!」
アイアイサー!
……
………
…………
385: 2013/10/01(火) 06:50:04.45 ID:1Z9c0dnPP
王子「状況は?」
騎士「街は確かに混乱状態……なんでしょうが」
騎士「慌てふためくってよりは、どうしたら良いか解らないんでしょうね」
騎士「皆、魂が抜けたみたい、ですよ」
王子「……そうか。屋敷の方は?」
騎士「粗方片付きましたけど……この辺一帯取り壊した方が良いでしょうね」
騎士「……随分な惨状ですし」
王子「そうだな。俺も見た……けど」
王子「……魔寄せの石とやらの効果もあるのか知らんが」
王子「周辺の魔物も、寄ってきてるしな」
騎士「ええ……でも、不思議なんですが」
王子「ん?」
騎士「……ここら辺の魔物、あんなに……弱かった、ですっけ?」
王子「…… ……」
騎士「毒気でも抜かれたんですかね。石が破壊されて」
王子「……どうだかな」
王子「『領主だった物』は?」
騎士「指示通り、避難を促して」
騎士「屋敷には火をつけたので、マシになると思います、腐臭も」
王子「……しかし随分と大人しく従ってくれたモンだ」
騎士「王達の元で働かされてた……下働きの人達が」
騎士「……随分協力的だったんですよ」
王子(『劣等種』……否、『出来損ない』か)
王子(そうして……呼び戻されて、蔑まれて来た……人達か)
騎士「……後は、代表者……なんですけど」
王子「ん? ……ああ、呼び出しに応じない、か?」
騎士「街は確かに混乱状態……なんでしょうが」
騎士「慌てふためくってよりは、どうしたら良いか解らないんでしょうね」
騎士「皆、魂が抜けたみたい、ですよ」
王子「……そうか。屋敷の方は?」
騎士「粗方片付きましたけど……この辺一帯取り壊した方が良いでしょうね」
騎士「……随分な惨状ですし」
王子「そうだな。俺も見た……けど」
王子「……魔寄せの石とやらの効果もあるのか知らんが」
王子「周辺の魔物も、寄ってきてるしな」
騎士「ええ……でも、不思議なんですが」
王子「ん?」
騎士「……ここら辺の魔物、あんなに……弱かった、ですっけ?」
王子「…… ……」
騎士「毒気でも抜かれたんですかね。石が破壊されて」
王子「……どうだかな」
王子「『領主だった物』は?」
騎士「指示通り、避難を促して」
騎士「屋敷には火をつけたので、マシになると思います、腐臭も」
王子「……しかし随分と大人しく従ってくれたモンだ」
騎士「王達の元で働かされてた……下働きの人達が」
騎士「……随分協力的だったんですよ」
王子(『劣等種』……否、『出来損ない』か)
王子(そうして……呼び戻されて、蔑まれて来た……人達か)
騎士「……後は、代表者……なんですけど」
王子「ん? ……ああ、呼び出しに応じない、か?」
386: 2013/10/01(火) 06:58:58.79 ID:1Z9c0dnPP
騎士「……まあ、何人かは混乱に乗じて逃げ出してる様ですし」
騎士「我らの到着までの時間差を考えれば、仕方無いのかもしれません、けど」
王子「……そうか」
タタタ……
王子「ん? ……あ、おい! 此処は立ち入り禁止だぞ!」
少女「始まりの国の、騎士団長様でいらっしゃいますね!?」
王子「……あ、ああ……そうだ、が」
少女「……代表者を呼ばれていたと聞きましたので、参りました」カタカタ
王子(……足が震えている。まだ……若いだろうに、この子が代表者?)
王子「君が……代表者?」
少女「…… ……は、はい」
王子「……失礼だが、随分若く見える。もっと……その」
王子「大人の人は、居なかったのか」
少女「……私ではご不満ですか」キッ
王子(押しつけられた、のか……)ハァ
王子「騎士団長の王子です、代表者殿。お名前をお聞きしても?」
少女「……少女と申します。こ、この、国を!どうする、おつもりですか!」
王子「……悪い様にはしない、と先に申して置きましょう」
王子「だが、実質……『魔導国』は解体となる」
王子「暫くは我が管理下で、保護、と言う形を取らせて貰うつもりだが」
少女「…… ……どうして、王様の城に火をつけたのです」
王子(城、ねぇ……)ハァ
王子「……惨状を聞いて耐えられるか?」
少女「!?」
王子「君が代表者であるのなら、私には話す義務があるし」
王子「君には聞く権利と責任がある」
騎士「き、騎士団長様……」
少女「…… ……」
王子「あの屋敷にはあの騒ぎ以後、誰も近づいていなかったと聞いているが」
王子「間違い無いんだな?」
騎士「我らの到着までの時間差を考えれば、仕方無いのかもしれません、けど」
王子「……そうか」
タタタ……
王子「ん? ……あ、おい! 此処は立ち入り禁止だぞ!」
少女「始まりの国の、騎士団長様でいらっしゃいますね!?」
王子「……あ、ああ……そうだ、が」
少女「……代表者を呼ばれていたと聞きましたので、参りました」カタカタ
王子(……足が震えている。まだ……若いだろうに、この子が代表者?)
王子「君が……代表者?」
少女「…… ……は、はい」
王子「……失礼だが、随分若く見える。もっと……その」
王子「大人の人は、居なかったのか」
少女「……私ではご不満ですか」キッ
王子(押しつけられた、のか……)ハァ
王子「騎士団長の王子です、代表者殿。お名前をお聞きしても?」
少女「……少女と申します。こ、この、国を!どうする、おつもりですか!」
王子「……悪い様にはしない、と先に申して置きましょう」
王子「だが、実質……『魔導国』は解体となる」
王子「暫くは我が管理下で、保護、と言う形を取らせて貰うつもりだが」
少女「…… ……どうして、王様の城に火をつけたのです」
王子(城、ねぇ……)ハァ
王子「……惨状を聞いて耐えられるか?」
少女「!?」
王子「君が代表者であるのなら、私には話す義務があるし」
王子「君には聞く権利と責任がある」
騎士「き、騎士団長様……」
少女「…… ……」
王子「あの屋敷にはあの騒ぎ以後、誰も近づいていなかったと聞いているが」
王子「間違い無いんだな?」
387: 2013/10/01(火) 07:07:31.03 ID:1Z9c0dnPP
少女「…… ……」
王子(怖がって近付けない……だろうけどな)
王子(一応……騎士の何人かは見張りに残して置いた、し)
王子「答えて貰えないのなら、やはり誰か大人の人を……」
少女「お、大人は……居ません」
騎士「……居ない?」
少女「……この居住区は、選ばれた者だけが住む事を許される」
少女「と、特別な場所だったのです!その、ね、年長者が私です!」
少女「だから……!」
王子「……大人は逃げ出した、か」ハァ
少女「…… ……」
王子「質問に答えよう。君達が『王』と呼んでいた男……領主は」
王子「魔に魅入られ、身を獣へと堕とした」
騎士「…… ……」
王子「父親と言う王の息子を喰らい、その場に居た者に寄って倒されている」
少女「……!」
王子「母親と言う女は、捕らえ始まりの国の牢へと繋がれた」
少女「何故……!」
王子「戦犯だ。当然だろう?」
少女「…… ……」
王子「……何処まで、何を、どんな風に聞かされていたかは知らないが」
王子「立場が逆であれば、我が国の王は良くて囚われの身」
王子「俺を含む騎士達もやはり戦犯として」
王子「君達の王に捕らわれるか……やはり良くて処罰。もしくは……」
王子「処刑されていただろう」
少女「…… ……」
王子「戦争状態にあったのは知っていると信じて話す」
王子「『勝者が正義』とは言わんが、俺には、それを否定する事もできん」
王子「元々の戦火を灯したのも、そちらだ」
少女「…… ……」
王子(怖がって近付けない……だろうけどな)
王子(一応……騎士の何人かは見張りに残して置いた、し)
王子「答えて貰えないのなら、やはり誰か大人の人を……」
少女「お、大人は……居ません」
騎士「……居ない?」
少女「……この居住区は、選ばれた者だけが住む事を許される」
少女「と、特別な場所だったのです!その、ね、年長者が私です!」
少女「だから……!」
王子「……大人は逃げ出した、か」ハァ
少女「…… ……」
王子「質問に答えよう。君達が『王』と呼んでいた男……領主は」
王子「魔に魅入られ、身を獣へと堕とした」
騎士「…… ……」
王子「父親と言う王の息子を喰らい、その場に居た者に寄って倒されている」
少女「……!」
王子「母親と言う女は、捕らえ始まりの国の牢へと繋がれた」
少女「何故……!」
王子「戦犯だ。当然だろう?」
少女「…… ……」
王子「……何処まで、何を、どんな風に聞かされていたかは知らないが」
王子「立場が逆であれば、我が国の王は良くて囚われの身」
王子「俺を含む騎士達もやはり戦犯として」
王子「君達の王に捕らわれるか……やはり良くて処罰。もしくは……」
王子「処刑されていただろう」
少女「…… ……」
王子「戦争状態にあったのは知っていると信じて話す」
王子「『勝者が正義』とは言わんが、俺には、それを否定する事もできん」
王子「元々の戦火を灯したのも、そちらだ」
少女「…… ……」
388: 2013/10/01(火) 07:14:27.64 ID:1Z9c0dnPP
王子「……戦争とは、こういう物だ。この国は」
王子「『敗戦国』であり、君達は『敗戦者』だ」
少女「…… ……」
王子「だからといって、『悪い様にはしない』……それは約束する」
騎士「……話し合いに応じて貰える、と思って良いのか?」
少女「……はい」
王子「……ありがとう」
少女「…… ……」ジッ
王子「?」
少女「母親様に……会う事は、可能でしょうか」
王子「……残念だがそれは叶えてやれん」
王子「先にも言ったが、あれは『戦犯』だ」
少女「…… ……」
王子「君と、母親の関係は?」
少女「……親戚、です」
騎士「……君も領主の血筋、って奴か」
王子「『選ばれた者』だと言われてきた人達だな」
王子(……だが、彼らは『雷』を至高としてきたと聞いている)
王子(この子は……『炎』の加護の瞳の色をしてる)
少女「……これから、どうすれば良いのですか」
王子「取りあえず、この一帯……住宅街、か?」
王子「此処は一端閉鎖する。領土の広い街だ」
王子「簡易で、住む場所は騎士達にも手伝わせて早急に手立てを整えるから」
王子「暫くはそこで我慢して欲しい」
少女「…… ……」
王子「俺は一端帰国し、国王様の指示を仰ぐ」
王子「それまでは騎士の指示に従って貰う」
少女「…… ……」
王子「……返事は?」
少女「……伝えて、置きます」クルッ
タタタ……
王子「『敗戦国』であり、君達は『敗戦者』だ」
少女「…… ……」
王子「だからといって、『悪い様にはしない』……それは約束する」
騎士「……話し合いに応じて貰える、と思って良いのか?」
少女「……はい」
王子「……ありがとう」
少女「…… ……」ジッ
王子「?」
少女「母親様に……会う事は、可能でしょうか」
王子「……残念だがそれは叶えてやれん」
王子「先にも言ったが、あれは『戦犯』だ」
少女「…… ……」
王子「君と、母親の関係は?」
少女「……親戚、です」
騎士「……君も領主の血筋、って奴か」
王子「『選ばれた者』だと言われてきた人達だな」
王子(……だが、彼らは『雷』を至高としてきたと聞いている)
王子(この子は……『炎』の加護の瞳の色をしてる)
少女「……これから、どうすれば良いのですか」
王子「取りあえず、この一帯……住宅街、か?」
王子「此処は一端閉鎖する。領土の広い街だ」
王子「簡易で、住む場所は騎士達にも手伝わせて早急に手立てを整えるから」
王子「暫くはそこで我慢して欲しい」
少女「…… ……」
王子「俺は一端帰国し、国王様の指示を仰ぐ」
王子「それまでは騎士の指示に従って貰う」
少女「…… ……」
王子「……返事は?」
少女「……伝えて、置きます」クルッ
タタタ……
389: 2013/10/01(火) 07:16:39.39 ID:1Z9c0dnPP
騎士「……素直に言う事聞きます、かね」
王子「どうだかな」
王子「…… ……」
騎士「……騎士団長様?」
王子「国王宛に書簡を届ける様に騎士に伝達してくれ」
騎士「え?」
王子「……俺が離れるのは、まずい気がするな」
騎士「……解りました。準備させて参ります」
王子「うん」
スタスタ
王子(一朝一夕で事がならんのは解っては居る……が)
王子(……前途多難、だな)ハァ
王子「どうだかな」
王子「…… ……」
騎士「……騎士団長様?」
王子「国王宛に書簡を届ける様に騎士に伝達してくれ」
騎士「え?」
王子「……俺が離れるのは、まずい気がするな」
騎士「……解りました。準備させて参ります」
王子「うん」
スタスタ
王子(一朝一夕で事がならんのは解っては居る……が)
王子(……前途多難、だな)ハァ
393: 2013/10/01(火) 09:47:21.06 ID:1Z9c0dnPP
王子(取りあえず……この一角は取り壊し、だろうな)
王子(国王次第だが……どうするか)
タタタ……
王子「ん?」
少女「…… ……」ハァ、ハァ
王子「……まだ、何か用だろうか」
少女「あ、あの!」
王子「…… ……」
少女「……この国の王には、誰がなられるのですか」
王子「『魔導国』は解体だと言った筈だ」
王子「もう、此処は国では無い。事が事、だ。流石に認められないだろう」
少女「…… ……」
王子「決定は国王様が下される。だが……以前に戻るだけだと思う、が」
少女「……魔導の街、にですか」
王子「名は変わるだろうけれどな」
少女「どうして……」
王子「何事にもけじめってのは必要だろう?」
少女「…… ……」
王子「……辛いだろうとは思うが」
少女「…… ……」
王子「自業自得だ」
少女「!」
王子「……俺には。俺達には、君達を甘やかす義理も無い」
少女「…… ……」
王子「…… ……」
少女「何時、国に戻られるのですか」
王子「……何故?」
少女「…… ……」
王子「……あんまり、妙な事は企まない方が良いよ」
王子「『大人』も居ないのだろう」
少女「……失礼します!」
パタパタパタ……
王子「…… ……」ハァ
王子(国王次第だが……どうするか)
タタタ……
王子「ん?」
少女「…… ……」ハァ、ハァ
王子「……まだ、何か用だろうか」
少女「あ、あの!」
王子「…… ……」
少女「……この国の王には、誰がなられるのですか」
王子「『魔導国』は解体だと言った筈だ」
王子「もう、此処は国では無い。事が事、だ。流石に認められないだろう」
少女「…… ……」
王子「決定は国王様が下される。だが……以前に戻るだけだと思う、が」
少女「……魔導の街、にですか」
王子「名は変わるだろうけれどな」
少女「どうして……」
王子「何事にもけじめってのは必要だろう?」
少女「…… ……」
王子「……辛いだろうとは思うが」
少女「…… ……」
王子「自業自得だ」
少女「!」
王子「……俺には。俺達には、君達を甘やかす義理も無い」
少女「…… ……」
王子「…… ……」
少女「何時、国に戻られるのですか」
王子「……何故?」
少女「…… ……」
王子「……あんまり、妙な事は企まない方が良いよ」
王子「『大人』も居ないのだろう」
少女「……失礼します!」
パタパタパタ……
王子「…… ……」ハァ
394: 2013/10/01(火) 10:09:02.43 ID:1Z9c0dnPP
……
………
…………
息子「この道を山岳の方に上がって行くと、中程にあります」
剣士「……待て」
騎士「剣士?」
剣士「…… ……随分な数だ。騎士の配置は済んでいるな?」
騎士「北の街側も、此方も大丈夫だ」
剣士「お前は下がれ、息子……戦闘は専門じゃ無いだろう」
息子「あ、ああ……はい。しかし……」
剣士「……気配を辿るから心配はいらん」
息子「…… ……」
騎士「おい、剣士?」
剣士「息子達は……村から出すな。多分……破壊すれば半数は北の街の方に」
剣士「残りはこっちに流れてくるだろう」
剣士「……すぐに、どちらかに加勢する」
騎士「……解った」
剣士「素直だな」
騎士「……腕は疑うべくも無いと身にしみている」
騎士「国王様の……お前に従えとの命令もある」
剣士(人選、か……流石と言うべきか)
剣士「……炎に弱いんだったな」
息子「……は、はい」
剣士「村の入口の炎も、絶やさない様に言え…… ……行ってくる」
タタタ……
騎士「お、おい!」
剣士「着いてくるな!」
タタタ……
息子「……もう、見えなくなった」
騎士「貴方は、村の中に早く!」
息子「で、でも……!」
騎士「俺達も下がろう。警戒を怠るな!」
………
…………
息子「この道を山岳の方に上がって行くと、中程にあります」
剣士「……待て」
騎士「剣士?」
剣士「…… ……随分な数だ。騎士の配置は済んでいるな?」
騎士「北の街側も、此方も大丈夫だ」
剣士「お前は下がれ、息子……戦闘は専門じゃ無いだろう」
息子「あ、ああ……はい。しかし……」
剣士「……気配を辿るから心配はいらん」
息子「…… ……」
騎士「おい、剣士?」
剣士「息子達は……村から出すな。多分……破壊すれば半数は北の街の方に」
剣士「残りはこっちに流れてくるだろう」
剣士「……すぐに、どちらかに加勢する」
騎士「……解った」
剣士「素直だな」
騎士「……腕は疑うべくも無いと身にしみている」
騎士「国王様の……お前に従えとの命令もある」
剣士(人選、か……流石と言うべきか)
剣士「……炎に弱いんだったな」
息子「……は、はい」
剣士「村の入口の炎も、絶やさない様に言え…… ……行ってくる」
タタタ……
騎士「お、おい!」
剣士「着いてくるな!」
タタタ……
息子「……もう、見えなくなった」
騎士「貴方は、村の中に早く!」
息子「で、でも……!」
騎士「俺達も下がろう。警戒を怠るな!」
395: 2013/10/01(火) 10:17:18.39 ID:1Z9c0dnPP
息子「……お願い、します」
スタスタ……タタタ……
兄「あ!息子さん!」
息子「兄君!?駄目だよ、家の中に居なさいって言っただろう!?」
魔導師「おにいちゃん……!」
兄「で、でも……!」
魔導師「こわい、よぉ……!」
息子「……ほら、一緒に居てやるから」
息子「俺達に……出来る事は、無いんだ。何も……」
ドオオオオオオオオオオオオン!
息子「!」
兄「わ……ッ」
魔導師「うわああああああん!」
兄「あ……ッ 魔導師、大丈夫!大丈夫だから!」
兄「おにいちゃんが、ついてるから……!」ギュ!
魔導師「……ッ」
息子(炎が……上がってる……ッ 石を、壊した、のか!?)
息子(こんなに……早く……!)
ギャアァアウ……ッ アアア……ッ オオオオオオオオオン!
息子「……咆哮が、聞こえる」
兄「む、息子、さん……!」
息子「……大丈夫だ。お前達は、俺が守ってやる、から……!」ギュッ
息子「……ほら、家の中に入ろう」
兄「み、皆……村長さんの家に……」
息子「そうか……良し、魔導師は抱いていくから。走れ!」ヒョイ
魔導師(ひっくひっく)ギュッ
兄「は、はい!」
タタタ……
スタスタ……タタタ……
兄「あ!息子さん!」
息子「兄君!?駄目だよ、家の中に居なさいって言っただろう!?」
魔導師「おにいちゃん……!」
兄「で、でも……!」
魔導師「こわい、よぉ……!」
息子「……ほら、一緒に居てやるから」
息子「俺達に……出来る事は、無いんだ。何も……」
ドオオオオオオオオオオオオン!
息子「!」
兄「わ……ッ」
魔導師「うわああああああん!」
兄「あ……ッ 魔導師、大丈夫!大丈夫だから!」
兄「おにいちゃんが、ついてるから……!」ギュ!
魔導師「……ッ」
息子(炎が……上がってる……ッ 石を、壊した、のか!?)
息子(こんなに……早く……!)
ギャアァアウ……ッ アアア……ッ オオオオオオオオオン!
息子「……咆哮が、聞こえる」
兄「む、息子、さん……!」
息子「……大丈夫だ。お前達は、俺が守ってやる、から……!」ギュッ
息子「……ほら、家の中に入ろう」
兄「み、皆……村長さんの家に……」
息子「そうか……良し、魔導師は抱いていくから。走れ!」ヒョイ
魔導師(ひっくひっく)ギュッ
兄「は、はい!」
タタタ……
396: 2013/10/01(火) 10:24:02.86 ID:1Z9c0dnPP
バタン!
村長「息子!」
兄「村長さん……!」
村長「……無事だったか」ホッ
魔導師「うわあああん、うわあああんッ」
兄「あ、あの……お父さん達は……」
村長「お前は魔導師を連れて、奥の部屋に居なさい!」
村長「……大人達は万一に備えて、武装の準備中だ」
村長「女子供は奥に避難させた」
息子「そうか……お父さんも、一緒に行って下さい」
息子「……俺は……一応、加勢する準備をしておきます」
村長「……わかった。ほら、行こう兄」
兄「は、はい……」
魔導師「おにぃちゃあああん……ッ」ギュッ
兄「……大丈夫。行こう」
スタスタ、パタン
息子「……!」グッ
息子(騎士さん達が……止めてくれるとは、思うが……!)
タタタ……
……
………
…………
船長「……忘れるなよ。一ヶ月だ」
側近「ああ」
癒し手「船長さん達は、何処へ……」
船長「取りあえずは、この辺りをぐるりと回って」
船長「……北の街へ行く」
癒し手「解りました」
船長「……無事に帰って来いよ」
側近「ああ……い……僧侶、手を」
癒し手「はい……よいしょ、と」
スタスタ
船長「…… ……」
村長「息子!」
兄「村長さん……!」
村長「……無事だったか」ホッ
魔導師「うわあああん、うわあああんッ」
兄「あ、あの……お父さん達は……」
村長「お前は魔導師を連れて、奥の部屋に居なさい!」
村長「……大人達は万一に備えて、武装の準備中だ」
村長「女子供は奥に避難させた」
息子「そうか……お父さんも、一緒に行って下さい」
息子「……俺は……一応、加勢する準備をしておきます」
村長「……わかった。ほら、行こう兄」
兄「は、はい……」
魔導師「おにぃちゃあああん……ッ」ギュッ
兄「……大丈夫。行こう」
スタスタ、パタン
息子「……!」グッ
息子(騎士さん達が……止めてくれるとは、思うが……!)
タタタ……
……
………
…………
船長「……忘れるなよ。一ヶ月だ」
側近「ああ」
癒し手「船長さん達は、何処へ……」
船長「取りあえずは、この辺りをぐるりと回って」
船長「……北の街へ行く」
癒し手「解りました」
船長「……無事に帰って来いよ」
側近「ああ……い……僧侶、手を」
癒し手「はい……よいしょ、と」
スタスタ
船長「…… ……」
397: 2013/10/01(火) 10:29:36.61 ID:1Z9c0dnPP
タタタ……
チビ「母さん……」
船長「あ、こら。出て来んなっつったろ」
チビ「海賊が呼んでるんだよ」
船長「?」
チビ「……北の街の様子がどうもおかしいみたい、だって」
船長「どう言う事だ?」
チビ「とにかく、早く! ……お客さん、行っちゃったんでしょ」グイ
船長「あ、ああ…… ちょ、引っ張んなって……」
スタスタ
船長「おい。北の街がどうしたって?」
海賊「……いや、なんかね。向こうの方で煙上がってますし……」
船長「煙ぃ!? ……なんだよ、火事かなんかか?」
海賊「いえ……それが、ねぇ……」
船長「双眼鏡寄越せ…… ……ん?」
船長(街の中に人が……居ない?)
船長「……なんだ?」
海賊「どうします?直接行っても支障なさそうですけど」
チビ「何、何!?」
海賊「こら!チビは男さんと部屋に居なさいって」
海賊「何かあったら危ないだろ」
チビ「ええぇ……」
船長「…… ……獣、だな」
チビ「え?」
船長「襲われてる……のか」
海賊「…… ……船長?」
チビ「た、助けに行かないの!?」
チビ「母さん……」
船長「あ、こら。出て来んなっつったろ」
チビ「海賊が呼んでるんだよ」
船長「?」
チビ「……北の街の様子がどうもおかしいみたい、だって」
船長「どう言う事だ?」
チビ「とにかく、早く! ……お客さん、行っちゃったんでしょ」グイ
船長「あ、ああ…… ちょ、引っ張んなって……」
スタスタ
船長「おい。北の街がどうしたって?」
海賊「……いや、なんかね。向こうの方で煙上がってますし……」
船長「煙ぃ!? ……なんだよ、火事かなんかか?」
海賊「いえ……それが、ねぇ……」
船長「双眼鏡寄越せ…… ……ん?」
船長(街の中に人が……居ない?)
船長「……なんだ?」
海賊「どうします?直接行っても支障なさそうですけど」
チビ「何、何!?」
海賊「こら!チビは男さんと部屋に居なさいって」
海賊「何かあったら危ないだろ」
チビ「ええぇ……」
船長「…… ……獣、だな」
チビ「え?」
船長「襲われてる……のか」
海賊「…… ……船長?」
チビ「た、助けに行かないの!?」
398: 2013/10/01(火) 10:39:10.80 ID:1Z9c0dnPP
船長「……アタシ達が行ったところで、どうなるって言うんだよ」
チビ「でも!」
船長「それに……依頼が優先だ。金を貰ってる以上、反故には出来ネェ」
チビ「母さん!」
船長「おい!チビ部屋につれてけ! ……離れるぞ」
海賊「あ、アイアイサー!」
チビ「母さん!見捨てるのか!?」
船長「黙れ! ……手を出しちゃいけねぇ領分ってのがあんだよ!」
船長「後退する!海域を離れるぞ!」
チビ「母さん!母さん!!」
海賊「……ほら、チビ!こっちに来い!」
船長「…… ……」
船長(……お前が居て、飛び込んでいけるかよ!チビ……)
……
………
…………
癒し手「……塔の天辺、見えませんね」
側近「……見えないな」
癒し手「…… ……」
側近「背負って上がる、か……」
癒し手「あ、歩けます……そうじゃ無くて」
側近「どうした?」
癒し手「……凄く……強い、魔の気がします」
側近「……大丈夫か?」
癒し手「古い……物、です……でも、その割には」
癒し手「……気分が、悪く無い」
チビ「でも!」
船長「それに……依頼が優先だ。金を貰ってる以上、反故には出来ネェ」
チビ「母さん!」
船長「おい!チビ部屋につれてけ! ……離れるぞ」
海賊「あ、アイアイサー!」
チビ「母さん!見捨てるのか!?」
船長「黙れ! ……手を出しちゃいけねぇ領分ってのがあんだよ!」
船長「後退する!海域を離れるぞ!」
チビ「母さん!母さん!!」
海賊「……ほら、チビ!こっちに来い!」
船長「…… ……」
船長(……お前が居て、飛び込んでいけるかよ!チビ……)
……
………
…………
癒し手「……塔の天辺、見えませんね」
側近「……見えないな」
癒し手「…… ……」
側近「背負って上がる、か……」
癒し手「あ、歩けます……そうじゃ無くて」
側近「どうした?」
癒し手「……凄く……強い、魔の気がします」
側近「……大丈夫か?」
癒し手「古い……物、です……でも、その割には」
癒し手「……気分が、悪く無い」
399: 2013/10/01(火) 10:42:36.27 ID:1Z9c0dnPP
スタスタ
側近「……無理はするなよ」
癒し手「はい……なんだろう……」
側近「?」
癒し手「……強い、本当に強い魔の気を感じるのに」
癒し手「凄く……心地良い、物も感じる、んです」
側近「……姫様、か?」
癒し手「そう……なんでしょうか……」
側近「……突っ立っていても仕方が無い。とにかく、中に……」
癒し手「ええ……でも……」
側近「大丈夫だ。疲れたら背負ってやるから……」
癒し手「あ、いえ……そうでは無くて」
側近「? 遠慮は……」
癒し手「……入口、ありました?」
側近「え?」
癒し手「一週……しました、よね?」
側近「…… ……え?」
癒し手「……どうやって、入りましょう……か」
側近「…… ……」
側近「……無理はするなよ」
癒し手「はい……なんだろう……」
側近「?」
癒し手「……強い、本当に強い魔の気を感じるのに」
癒し手「凄く……心地良い、物も感じる、んです」
側近「……姫様、か?」
癒し手「そう……なんでしょうか……」
側近「……突っ立っていても仕方が無い。とにかく、中に……」
癒し手「ええ……でも……」
側近「大丈夫だ。疲れたら背負ってやるから……」
癒し手「あ、いえ……そうでは無くて」
側近「? 遠慮は……」
癒し手「……入口、ありました?」
側近「え?」
癒し手「一週……しました、よね?」
側近「…… ……え?」
癒し手「……どうやって、入りましょう……か」
側近「…… ……」
411: 2013/10/02(水) 10:13:15.04 ID:V8ivpIzkP
側近「使用人の話、では……魔族には見えない、んだった……よな?」
癒し手「……そう、でしたね」
側近「しかし……癒し手になら解ると思った、んだが……」
癒し手「……もう一週、してみましょうか。見落としたかな……」
側近「……気分は大丈夫か」
癒し手「ええ、それは……不思議な事に」スタスタ。ピト
側近「触れれば、何か感じるか?」
癒し手「……見えないのであれば探ってみるしかありません」
側近「無理はするなよ」コンコン。コンコン。ゴンゴン
癒し手「……音が違いますね、そこ」
側近「何か見えるか?」
癒し手「…… ……いえ。壁に見えます」
側近「……ふむ」
癒し手「あ、ちょっと待って……何か……」
癒し手(……どこか懐かしい。この魔力……私、知ってる……?)
側近「癒し手?」
癒し手「……魔王様、の気に……似てます」
側近「……どの?」
癒し手「元が紫の瞳の魔王様であるなら、一緒ですよ」
側近「ああ……そうか」
癒し手(今なら解る……黒い髪の勇者様……今の魔王様と)
癒し手(金の髪の勇者様……現魔王様の、お父様)
癒し手(同じ『光』を、感じた理由……)
癒し手「……多分、封印したのは紫の瞳の魔王様、でしょうね」
側近「……しかし、中には姫様が居たのでは?」
癒し手「ハッキリと時期まで特定する事はできませんから……解りませんけど」
癒し手「故に、だったのか。それ以前に何らかの理由があったのか……」
側近「まあ……金の髪の魔王に、そんな時間は無かっただろうしな」
側近「……黒い髪の魔王にしても、だ」
癒し手「ええ……でも」
側近「?」
癒し手「封印の主が解っても…… ……これ、どうやって解きましょう?」
癒し手「……そう、でしたね」
側近「しかし……癒し手になら解ると思った、んだが……」
癒し手「……もう一週、してみましょうか。見落としたかな……」
側近「……気分は大丈夫か」
癒し手「ええ、それは……不思議な事に」スタスタ。ピト
側近「触れれば、何か感じるか?」
癒し手「……見えないのであれば探ってみるしかありません」
側近「無理はするなよ」コンコン。コンコン。ゴンゴン
癒し手「……音が違いますね、そこ」
側近「何か見えるか?」
癒し手「…… ……いえ。壁に見えます」
側近「……ふむ」
癒し手「あ、ちょっと待って……何か……」
癒し手(……どこか懐かしい。この魔力……私、知ってる……?)
側近「癒し手?」
癒し手「……魔王様、の気に……似てます」
側近「……どの?」
癒し手「元が紫の瞳の魔王様であるなら、一緒ですよ」
側近「ああ……そうか」
癒し手(今なら解る……黒い髪の勇者様……今の魔王様と)
癒し手(金の髪の勇者様……現魔王様の、お父様)
癒し手(同じ『光』を、感じた理由……)
癒し手「……多分、封印したのは紫の瞳の魔王様、でしょうね」
側近「……しかし、中には姫様が居たのでは?」
癒し手「ハッキリと時期まで特定する事はできませんから……解りませんけど」
癒し手「故に、だったのか。それ以前に何らかの理由があったのか……」
側近「まあ……金の髪の魔王に、そんな時間は無かっただろうしな」
側近「……黒い髪の魔王にしても、だ」
癒し手「ええ……でも」
側近「?」
癒し手「封印の主が解っても…… ……これ、どうやって解きましょう?」
412: 2013/10/02(水) 10:22:15.76 ID:V8ivpIzkP
側近「……使用人に聞いた話では、紫の魔王の側近が」
側近「彼には見えなかった扉の、鎖を風の魔法で切り裂いて開けた、んだったか」
癒し手「……これ、ですね」コロン
側近「……鎖の欠片?」
癒し手「ええ。紫の魔王の側近様が、持ち帰ってらしたそうです」
癒し手「旅立つ前に、使用人さんが渡して下さいました」
癒し手「何か役に立つかも、って……」
側近「預かってたのか、使用人が」
癒し手「そうなんでしょうね。この欠片からも、微かに魔力は感じるんです」
癒し手「……でも、この塔から感じる物とは、違う」
側近「一番最初に、まやかしの魔法をかけた者の魔力……か」
癒し手「かなり……さらに、古い物です。紅い瞳の魔王か、さらに前か……」
癒し手「そこまでは、解りませんけど」
側近「……見せてくれ」スッ
癒し手「…… ……」コンコン。ゴンゴン。コンコン
癒し手「やっぱり此処……かな」
癒し手(でも……本当に何も見えない。扉を隠してある、とも思えない)
癒し手(消してしまった?魔族以外にも……見えない様に?)
癒し手(……でも、多分……此処に、ある。決して見えないだけで……)
側近「……まさか、紫の魔王の側近と同じ事は出来んしな」
癒し手「そうですね……」
側近「やはり、魔王にあのペンダントを借りてくるべきだったか」
癒し手「……あれから、エルフの……お母様の気は……もう感じませんでした」
癒し手「それに……あれは魔王様の『お守り』です」
癒し手「……離すべきでは無いと、思います」
側近「うん……まあ、あの時もお前がそう言うから、やめたんだが……」
側近「彼には見えなかった扉の、鎖を風の魔法で切り裂いて開けた、んだったか」
癒し手「……これ、ですね」コロン
側近「……鎖の欠片?」
癒し手「ええ。紫の魔王の側近様が、持ち帰ってらしたそうです」
癒し手「旅立つ前に、使用人さんが渡して下さいました」
癒し手「何か役に立つかも、って……」
側近「預かってたのか、使用人が」
癒し手「そうなんでしょうね。この欠片からも、微かに魔力は感じるんです」
癒し手「……でも、この塔から感じる物とは、違う」
側近「一番最初に、まやかしの魔法をかけた者の魔力……か」
癒し手「かなり……さらに、古い物です。紅い瞳の魔王か、さらに前か……」
癒し手「そこまでは、解りませんけど」
側近「……見せてくれ」スッ
癒し手「…… ……」コンコン。ゴンゴン。コンコン
癒し手「やっぱり此処……かな」
癒し手(でも……本当に何も見えない。扉を隠してある、とも思えない)
癒し手(消してしまった?魔族以外にも……見えない様に?)
癒し手(……でも、多分……此処に、ある。決して見えないだけで……)
側近「……まさか、紫の魔王の側近と同じ事は出来んしな」
癒し手「そうですね……」
側近「やはり、魔王にあのペンダントを借りてくるべきだったか」
癒し手「……あれから、エルフの……お母様の気は……もう感じませんでした」
癒し手「それに……あれは魔王様の『お守り』です」
癒し手「……離すべきでは無いと、思います」
側近「うん……まあ、あの時もお前がそう言うから、やめたんだが……」
413: 2013/10/02(水) 10:29:14.71 ID:V8ivpIzkP
癒し手「何か方法を探しましょう。大丈夫です、『願えば……」
側近「叶う』 ……さて」
癒し手「……ふふ」
側近「? どうした」
癒し手「いえ。困ってる、んですけどね。側近さんと二人だと」
癒し手「楽しいな、と思って」
側近「……阿呆」フフ
癒し手「多分、扉は……此処」ゴンゴン
癒し手「魔族にも、人間にも……多分、誰にも見えないだけで、あるとは思います」
側近「この鎖の欠片は……役に立ちそうに無い、かな」
癒し手「……欠片に篭もる魔法、解放出来ませんか?」
側近「……俺が、俺って解ってるか、癒し手」
癒し手「今の貴方は魔族です。異種族の力を、私が操る事はできませんから」
側近「魔石の要領か……しかし…… ……否」
側近「やり方を教えてくれ。『出来ない』と言うだけならば簡単、だ」
側近「……泣き言はやってからにしよう」
癒し手「その欠片に篭もる魔力に集中して、中から引き出す事をイメージして下さい」
側近「……離れて居なくて大丈夫か」
癒し手「我慢します……もし、扉が開くのが一瞬なら」
癒し手「離れて居ては間に合わないかもしれません」
側近「……解った。傍に、癒し手」
癒し手「はい……」ギュ
癒し手(扉は、此処……)スッピタ
側近「叶う』 ……さて」
癒し手「……ふふ」
側近「? どうした」
癒し手「いえ。困ってる、んですけどね。側近さんと二人だと」
癒し手「楽しいな、と思って」
側近「……阿呆」フフ
癒し手「多分、扉は……此処」ゴンゴン
癒し手「魔族にも、人間にも……多分、誰にも見えないだけで、あるとは思います」
側近「この鎖の欠片は……役に立ちそうに無い、かな」
癒し手「……欠片に篭もる魔法、解放出来ませんか?」
側近「……俺が、俺って解ってるか、癒し手」
癒し手「今の貴方は魔族です。異種族の力を、私が操る事はできませんから」
側近「魔石の要領か……しかし…… ……否」
側近「やり方を教えてくれ。『出来ない』と言うだけならば簡単、だ」
側近「……泣き言はやってからにしよう」
癒し手「その欠片に篭もる魔力に集中して、中から引き出す事をイメージして下さい」
側近「……離れて居なくて大丈夫か」
癒し手「我慢します……もし、扉が開くのが一瞬なら」
癒し手「離れて居ては間に合わないかもしれません」
側近「……解った。傍に、癒し手」
癒し手「はい……」ギュ
癒し手(扉は、此処……)スッピタ
414: 2013/10/02(水) 10:36:07.34 ID:V8ivpIzkP
癒し手「……お願いします」
側近「…… ……」グッ
側近(簡単に言ってくれる……が! ……願えば、叶う……!)
側近(癒し手の為だ。頼む……ッ)
パァアアアア……ッ
側近「!?」
癒し手「! ……見えた!扉……!」グイッ
側近「うわ!?」
癒し手「側近さん、早く!」
バタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
……
………
…………
剣士「……ッ」
キィン! ……スタッ
ギャアアアアアアアアアアアア!
剣士「…… ……」
剣士(切っても切っても、だな)フゥ
剣士(しかし……弱い。以前この土地を訪れた時、同種の魔物と戦ったが)
剣士(……これほど……何故?)
ガアアアアアアアアアアアアア!
剣士「! 炎よ!」ボォゥ!
側近「…… ……」グッ
側近(簡単に言ってくれる……が! ……願えば、叶う……!)
側近(癒し手の為だ。頼む……ッ)
パァアアアア……ッ
側近「!?」
癒し手「! ……見えた!扉……!」グイッ
側近「うわ!?」
癒し手「側近さん、早く!」
バタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
……
………
…………
剣士「……ッ」
キィン! ……スタッ
ギャアアアアアアアアアアアア!
剣士「…… ……」
剣士(切っても切っても、だな)フゥ
剣士(しかし……弱い。以前この土地を訪れた時、同種の魔物と戦ったが)
剣士(……これほど……何故?)
ガアアアアアアアアアアアアア!
剣士「! 炎よ!」ボォゥ!
415: 2013/10/02(水) 10:40:28.78 ID:V8ivpIzkP
ギャアアアアアアアアアアアアアア!
剣士(……石の場所は……あそこか)
剣士「退け……ッ 炎よ!」ボオォォ!
ギャア、ギャアアア!
キャウン、キャウン……ッ
タタタタ……
剣士「!」
剣士(あれか…… ……紅い、魔石。魔寄せの石……)
剣士「……水よ」
ザァア……ザ……ッ
剣士「…… ……」
剣士(行ける、か?)
パリン、パリンパリン……ッ
ギャウ……ギャ……ガアア……グルル……ッ
剣士「…… ……」
剣士(……気配が、消えた。狼たちは……)
グルルル……
剣士(血走った目はその侭か。この侭……人の地へ。街へ……)
剣士(流れて行くだろう……数が多いのは……)
剣士(……あっち、だな)タタ……ッ
剣士(……石の場所は……あそこか)
剣士「退け……ッ 炎よ!」ボオォォ!
ギャア、ギャアアア!
キャウン、キャウン……ッ
タタタタ……
剣士「!」
剣士(あれか…… ……紅い、魔石。魔寄せの石……)
剣士「……水よ」
ザァア……ザ……ッ
剣士「…… ……」
剣士(行ける、か?)
パリン、パリンパリン……ッ
ギャウ……ギャ……ガアア……グルル……ッ
剣士「…… ……」
剣士(……気配が、消えた。狼たちは……)
グルルル……
剣士(血走った目はその侭か。この侭……人の地へ。街へ……)
剣士(流れて行くだろう……数が多いのは……)
剣士(……あっち、だな)タタ……ッ
416: 2013/10/02(水) 10:44:16.80 ID:V8ivpIzkP
剣士(……しかし、本当に手応えが、無い)ザシュ!
ギャアア!
剣士(何が……否。何か、あった……?)ブゥン!
ギャアアアアアアア!
剣士(! ……まさか、勇者が……!!)ゴオオオオ!
ガアア、ギャアアアアアアア!
パアアアアアアアアア……ッ
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
剣士「な……ッ!?」
剣士(なん、だ……ッ 光……ッ !?)
剣士「…… ……」
剣士(…… ……)
剣士(……? ……真っ暗……闇?)
剣士(今の光は何だった…… ……!?)
剣士(声、が……出ない!?)
ボゥ…… ……
剣士(……なんだ。何か、見える……)
ギャアア!
剣士(何が……否。何か、あった……?)ブゥン!
ギャアアアアアアア!
剣士(! ……まさか、勇者が……!!)ゴオオオオ!
ガアア、ギャアアアアアアア!
パアアアアアアアアア……ッ
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
剣士「な……ッ!?」
剣士(なん、だ……ッ 光……ッ !?)
剣士「…… ……」
剣士(…… ……)
剣士(……? ……真っ暗……闇?)
剣士(今の光は何だった…… ……!?)
剣士(声、が……出ない!?)
ボゥ…… ……
剣士(……なんだ。何か、見える……)
417: 2013/10/02(水) 10:47:35.54 ID:V8ivpIzkP
癒し手『……上、見えませんね』
側近『足下はぼんやり明るい……が、階段以外は見当たらんな』
剣士(あれは……僧侶、と戦士?)
剣士(……此処は、どこだ。俺の姿は……見えてない、のか?)
癒し手『……まあ、どうにか塔の内部には入れたみたいで、良かったです』
側近『ああ……取りあえず上がるしか無いか』
癒し手『そうですね……あ、側近さん、鎖の欠片は?』
側近『……砕けてる』
癒し手『そう……ですか……』
側近『魔力を解放してしまったんだ……当然と言えば当然だな』
側近『癒し手、気分は?』
剣士(側近?癒し手……?)
剣士(あいつら……では、無いのか?否……)
剣士(……気配は、解らない。探れない……なんだ、これは)
剣士(夢……?)
側近『足下はぼんやり明るい……が、階段以外は見当たらんな』
剣士(あれは……僧侶、と戦士?)
剣士(……此処は、どこだ。俺の姿は……見えてない、のか?)
癒し手『……まあ、どうにか塔の内部には入れたみたいで、良かったです』
側近『ああ……取りあえず上がるしか無いか』
癒し手『そうですね……あ、側近さん、鎖の欠片は?』
側近『……砕けてる』
癒し手『そう……ですか……』
側近『魔力を解放してしまったんだ……当然と言えば当然だな』
側近『癒し手、気分は?』
剣士(側近?癒し手……?)
剣士(あいつら……では、無いのか?否……)
剣士(……気配は、解らない。探れない……なんだ、これは)
剣士(夢……?)
423: 2013/10/02(水) 21:55:26.05 ID:V8ivpIzkP
コツン、コツン……
癒し手『……側近さん、息苦しくありませんか?』
側近『え?』
癒し手『そう……思うぐらい、私には……居心地が、良い』
側近『……特に、何も感じない』
癒し手『そうですか』ホッ
癒し手『……なら、良いんです。凄く……暖かくて、懐かしくて……』
癒し手『涙が、出そうです……』
側近『癒し手……』
コツン、コツン……
癒し手『……お母様が、眠っていらっしゃった場所、って』
癒し手『解って居るから……っていう、思い込みは確かにあるかもしれません』
癒し手『でも…… ……ええと』
癒し手『……始まりの国の、あの丘の傍で』
癒し手『感じた……のに、似てます』
側近『エルフの加護、か。お祖母様の知人のエルフの……』
癒し手『使用人さんがペンダントに移し、それを……お母様が』
癒し手『ペンダントから、この塔へと解放された』
癒し手『……その話を使用人さんから聞いた時に』
癒し手『魔導将軍の優しさが……沁みました』
側近『……しかし、姫様はどうして……』
癒し手『?』
側近『どうやって、あの場所……鍛冶師の村に近い、お前が住んでいたあの』
側近『小屋の傍に……居た、んだろう。行った……のだろう』
癒し手『解りません……だから、此処に、来たんです』
癒し手『母を知る為に。『世界』を……知る、為に』
剣士(……『魔導将軍』『エルフ』?)
剣士(『世界』を……知る、だと?)
癒し手『……側近さん、息苦しくありませんか?』
側近『え?』
癒し手『そう……思うぐらい、私には……居心地が、良い』
側近『……特に、何も感じない』
癒し手『そうですか』ホッ
癒し手『……なら、良いんです。凄く……暖かくて、懐かしくて……』
癒し手『涙が、出そうです……』
側近『癒し手……』
コツン、コツン……
癒し手『……お母様が、眠っていらっしゃった場所、って』
癒し手『解って居るから……っていう、思い込みは確かにあるかもしれません』
癒し手『でも…… ……ええと』
癒し手『……始まりの国の、あの丘の傍で』
癒し手『感じた……のに、似てます』
側近『エルフの加護、か。お祖母様の知人のエルフの……』
癒し手『使用人さんがペンダントに移し、それを……お母様が』
癒し手『ペンダントから、この塔へと解放された』
癒し手『……その話を使用人さんから聞いた時に』
癒し手『魔導将軍の優しさが……沁みました』
側近『……しかし、姫様はどうして……』
癒し手『?』
側近『どうやって、あの場所……鍛冶師の村に近い、お前が住んでいたあの』
側近『小屋の傍に……居た、んだろう。行った……のだろう』
癒し手『解りません……だから、此処に、来たんです』
癒し手『母を知る為に。『世界』を……知る、為に』
剣士(……『魔導将軍』『エルフ』?)
剣士(『世界』を……知る、だと?)
424: 2013/10/02(水) 22:01:54.94 ID:V8ivpIzkP
剣士(……それに『魔力を解放した』と、言ったか?)
剣士(確かに、あの娘……僧侶は)
剣士(……癒し手、と呼ばれて居たか。別人か? ……しかし……)
剣士(否。同一人物だと仮定して……だな)
剣士(魔導国で会った時……人では無い、と思った……が)
剣士(魔族の気配とも、違う様な気がするんだが……)
コツン、コツン……
側近『……『世界』を知る、か』
癒し手『はい。魔王様を……『勇者』を。『世界』を救う為には』
癒し手『知識は……多い方が良いですから』
側近『……しかし、長いな。先が見えん』
癒し手『足下が見えるだけでも、安心します』
癒し手『それに、側近さんも居ますから』クス
側近『……そうだな。魔に変じた今では……以前にも。人の身の時より増して』
側近『自信を持って、俺に任せておけと言える』クス
剣士(…… ……な、に!?)
癒し手『貴方は、人であった時から、しなやかで強く……暖かい人でしたよ』
癒し手『『決して驕るな』と言う言葉を胸に、でも真っ直ぐに前を見据える』
癒し手『側近さんの姿は……とても、眩しかったです』
側近『……やめてくれ、照れる』フイ
癒し手『真実です』クスクス
剣士(確かに、あの娘……僧侶は)
剣士(……癒し手、と呼ばれて居たか。別人か? ……しかし……)
剣士(否。同一人物だと仮定して……だな)
剣士(魔導国で会った時……人では無い、と思った……が)
剣士(魔族の気配とも、違う様な気がするんだが……)
コツン、コツン……
側近『……『世界』を知る、か』
癒し手『はい。魔王様を……『勇者』を。『世界』を救う為には』
癒し手『知識は……多い方が良いですから』
側近『……しかし、長いな。先が見えん』
癒し手『足下が見えるだけでも、安心します』
癒し手『それに、側近さんも居ますから』クス
側近『……そうだな。魔に変じた今では……以前にも。人の身の時より増して』
側近『自信を持って、俺に任せておけと言える』クス
剣士(…… ……な、に!?)
癒し手『貴方は、人であった時から、しなやかで強く……暖かい人でしたよ』
癒し手『『決して驕るな』と言う言葉を胸に、でも真っ直ぐに前を見据える』
癒し手『側近さんの姿は……とても、眩しかったです』
側近『……やめてくれ、照れる』フイ
癒し手『真実です』クスクス
425: 2013/10/02(水) 22:12:47.89 ID:V8ivpIzkP
癒し手『それは……魔となった今も変わりません』
癒し手『貴方は、貴方です……だから……』
癒し手『……『力』じゃ無いんですよ、側近さん』
癒し手『私を、守ろうとしてくれるその、気持ちが……嬉しいんです』
側近『癒し手……』
癒し手『魔へと変じ、『戦士』さんから『側近』さんへ変わった貴方だから』
癒し手『強い、んじゃ……無いんですよ』
側近『……悲しくて、苦しくて切なくて。だけど、嬉しい』
側近『愛……なのか、もな』
癒し手『え?』
側近『そういう、言葉では言い表せない不思議な気持ち、だ』
側近『お前が泣いていれば悲しい。苦しい……お前を思うと』
側近『好きだと言う気持ちが、身を……器を飛び越えて』
側近『……なんだろうな。抱きしめてしまいたくなる』ギュッ
癒し手『きゃ……ッ』
側近『……こんな、風に』
癒し手『そ、側近さん……』
側近『触れて離したくなくなる。全て……俺の物に、したくなる』
癒し手『…… ……』ギュ
側近『……で、そうやって、応えて貰えると、嬉しい』チュッ
癒し手『……ん』
側近『嬉しい、んだ。癒し手。俺は……言葉や態度で何かを』
側近『表現……する事は、苦手だ。だけど』
側近『……笑うお前を見るのが、何より……嬉しいんだ』
癒し手『貴方は、貴方です……だから……』
癒し手『……『力』じゃ無いんですよ、側近さん』
癒し手『私を、守ろうとしてくれるその、気持ちが……嬉しいんです』
側近『癒し手……』
癒し手『魔へと変じ、『戦士』さんから『側近』さんへ変わった貴方だから』
癒し手『強い、んじゃ……無いんですよ』
側近『……悲しくて、苦しくて切なくて。だけど、嬉しい』
側近『愛……なのか、もな』
癒し手『え?』
側近『そういう、言葉では言い表せない不思議な気持ち、だ』
側近『お前が泣いていれば悲しい。苦しい……お前を思うと』
側近『好きだと言う気持ちが、身を……器を飛び越えて』
側近『……なんだろうな。抱きしめてしまいたくなる』ギュッ
癒し手『きゃ……ッ』
側近『……こんな、風に』
癒し手『そ、側近さん……』
側近『触れて離したくなくなる。全て……俺の物に、したくなる』
癒し手『…… ……』ギュ
側近『……で、そうやって、応えて貰えると、嬉しい』チュッ
癒し手『……ん』
側近『嬉しい、んだ。癒し手。俺は……言葉や態度で何かを』
側近『表現……する事は、苦手だ。だけど』
側近『……笑うお前を見るのが、何より……嬉しいんだ』
427: 2013/10/02(水) 22:17:47.00 ID:V8ivpIzkP
癒し手『……はい。私もです』
癒し手『だから……私に、何があっても、泣かないで下さいね?』
側近『癒し手……?』
癒し手『…… ……急ぎましょう。時間の経過が、解らない』
側近『あ……ああ……』
剣士(……ラブシーンののぞき見など、趣味じゃないんだがな)ハァ
剣士(しかし……どう言う事だ……?)
剣士(『魔へと変じた』……?)
剣士(……あの男が『戦士』だと言うのならば)
剣士(確か、に……同一人物なのだろう。であれば、あの女も……)
剣士(……騎士団長の息子。確かに……人だった)
剣士(…… ……)
コツン、コツン……
側近『!?』ピタ
癒し手『キャ……ッ』ドン!
癒し手『……そ、側近さん?』
側近『…… ……扉、だ』
癒し手『……開けたら、また階段、なのでしょうか』
側近『使用人の話、では……』
癒し手『……あの見目はまやかし。紫の魔王の側近様と』
癒し手『女剣士様が上られた時も、途中に扉があったと、言っていましたね』
剣士(……!?)
剣士(紫の瞳の魔王……に、その、側近!?)
剣士(何故……こいつらが……!?)
側近『……開ける、ぞ』
癒し手『は……はい!』
癒し手『だから……私に、何があっても、泣かないで下さいね?』
側近『癒し手……?』
癒し手『…… ……急ぎましょう。時間の経過が、解らない』
側近『あ……ああ……』
剣士(……ラブシーンののぞき見など、趣味じゃないんだがな)ハァ
剣士(しかし……どう言う事だ……?)
剣士(『魔へと変じた』……?)
剣士(……あの男が『戦士』だと言うのならば)
剣士(確か、に……同一人物なのだろう。であれば、あの女も……)
剣士(……騎士団長の息子。確かに……人だった)
剣士(…… ……)
コツン、コツン……
側近『!?』ピタ
癒し手『キャ……ッ』ドン!
癒し手『……そ、側近さん?』
側近『…… ……扉、だ』
癒し手『……開けたら、また階段、なのでしょうか』
側近『使用人の話、では……』
癒し手『……あの見目はまやかし。紫の魔王の側近様と』
癒し手『女剣士様が上られた時も、途中に扉があったと、言っていましたね』
剣士(……!?)
剣士(紫の瞳の魔王……に、その、側近!?)
剣士(何故……こいつらが……!?)
側近『……開ける、ぞ』
癒し手『は……はい!』
428: 2013/10/02(水) 22:24:42.80 ID:V8ivpIzkP
カチャ、キィ……
剣士(…… ……)
癒し手『あ……ほんのり、明かりが…… ……!!』タタタ……
側近『……これも、聞いたとおり……か? ……癒し手!?』
癒し手『……気配が、濃い……!!』
側近『え?』
癒し手『……これは、エルフの……! 加護? ……お母様……!?』
側近『癒し手……!』タタ……
癒し手『…… ……ここに……お母様が、いらっしゃった……?』カタカタ
側近『…… ……』ギュ
癒し手『ここに……私を、産むまで……眠って…… ……ッ』
癒し手『お母様……ッ』ポロポロ……
剣士(…… ……話が見えん。見えん……が)キョロ
剣士(否。そもそもこれは、何だ?)
剣士(夢では無いのか……? 妙に……リアルだ)
剣士(姫、だとか、エルフだとか……総合するなら)
剣士(あの娘……僧侶……否、癒し手、か)
剣士(あの娘は……エルフ、なのか?)
癒し手『……『愛』に満ちあふれて、居ます』
癒し手『『母の愛』……だと、良いな……』ポロポロ
癒し手『あの、魔王様が育った……小屋で、感じた様な』
癒し手『后様が……魔王様を……『勇者様』を思い、愛す様な』
癒し手『暖かい、想い……ッ お母様…… ……ッ』
剣士(…… ……)
癒し手『あ……ほんのり、明かりが…… ……!!』タタタ……
側近『……これも、聞いたとおり……か? ……癒し手!?』
癒し手『……気配が、濃い……!!』
側近『え?』
癒し手『……これは、エルフの……! 加護? ……お母様……!?』
側近『癒し手……!』タタ……
癒し手『…… ……ここに……お母様が、いらっしゃった……?』カタカタ
側近『…… ……』ギュ
癒し手『ここに……私を、産むまで……眠って…… ……ッ』
癒し手『お母様……ッ』ポロポロ……
剣士(…… ……話が見えん。見えん……が)キョロ
剣士(否。そもそもこれは、何だ?)
剣士(夢では無いのか……? 妙に……リアルだ)
剣士(姫、だとか、エルフだとか……総合するなら)
剣士(あの娘……僧侶……否、癒し手、か)
剣士(あの娘は……エルフ、なのか?)
癒し手『……『愛』に満ちあふれて、居ます』
癒し手『『母の愛』……だと、良いな……』ポロポロ
癒し手『あの、魔王様が育った……小屋で、感じた様な』
癒し手『后様が……魔王様を……『勇者様』を思い、愛す様な』
癒し手『暖かい、想い……ッ お母様…… ……ッ』
430: 2013/10/02(水) 22:34:00.42 ID:V8ivpIzkP
側近『……姫様は、お前に『美しい世界』を見せる為に』
側近『眠られた、んだろう。紫の瞳の魔王が望んだ想いに』
側近『……応える為に』
癒し手『…… ……』ポロポロ
側近『あの二人は『愛』では無かった、と……紫の魔王の側近は言っていたと』
側近『使用人からは聞いた。だが…… ……』
側近『何かを思う、そうして何かを行動に移すと言うのは』
側近『……やはり、愛なのだと、俺は思う』
癒し手『…… ……はい』
側近『お前は、愛されている。姫様にも、俺にも……魔王や、后にも』
側近『……『世界』にも』
癒し手『……尚更、魔王様をお守りせねばなりません』
癒し手『紫の瞳の魔王様も、お母様も……『世界』も』
癒し手『今なお、望んで居るだろう、平和を……美しい世界を……!』
側近『……ああ』
癒し手『…… ……』ゴシゴシ
癒し手『……戻りましょう。確か、もう一度扉を開けると……』
癒し手『外、に出るはずです』
側近『……もう、良いのか?』
癒し手『……幸せ、だったんだと思います。お母様……』
癒し手『……こんなに、『愛』を残して下さったんですもの』
側近『…… ……そう、か』
剣士(…… ……)
剣士(魔王!? ……平和、世界……!?)
剣士(こいつらは、何を知っている……!?)
癒し手『……外に出たら、すぐに船長さんに連絡しましょう』
側近『そうだな……次は……』
キィ……
側近『眠られた、んだろう。紫の瞳の魔王が望んだ想いに』
側近『……応える為に』
癒し手『…… ……』ポロポロ
側近『あの二人は『愛』では無かった、と……紫の魔王の側近は言っていたと』
側近『使用人からは聞いた。だが…… ……』
側近『何かを思う、そうして何かを行動に移すと言うのは』
側近『……やはり、愛なのだと、俺は思う』
癒し手『…… ……はい』
側近『お前は、愛されている。姫様にも、俺にも……魔王や、后にも』
側近『……『世界』にも』
癒し手『……尚更、魔王様をお守りせねばなりません』
癒し手『紫の瞳の魔王様も、お母様も……『世界』も』
癒し手『今なお、望んで居るだろう、平和を……美しい世界を……!』
側近『……ああ』
癒し手『…… ……』ゴシゴシ
癒し手『……戻りましょう。確か、もう一度扉を開けると……』
癒し手『外、に出るはずです』
側近『……もう、良いのか?』
癒し手『……幸せ、だったんだと思います。お母様……』
癒し手『……こんなに、『愛』を残して下さったんですもの』
側近『…… ……そう、か』
剣士(…… ……)
剣士(魔王!? ……平和、世界……!?)
剣士(こいつらは、何を知っている……!?)
癒し手『……外に出たら、すぐに船長さんに連絡しましょう』
側近『そうだな……次は……』
キィ……
431: 2013/10/02(水) 22:37:39.29 ID:V8ivpIzkP
剣士(!? 船長と言ったか!?)
剣士(まさか……!!)
ギギギ……ッ
側近『……!』
癒し手『きゃ……ッ』
剣士(待て……行くな……ッ !?)
パアアアアア!
剣士(……ひ、かり……ッ ……う、あ…… ……ッ)
……
………
…………
側近(前が、見えん……ッ)
側近「癒し手……!?」
癒し手(眩しい……ッ)
癒し手「こ、こに……ッ ……あ!!」
癒し手「側近さん、あっち……!」ギュッ
側近「……!?」
癒し手(……眩しい……ッ でも、感じる……ッ)
癒し手(出口は……あっち……!)タタタ……ッ
側近「お、おい……ッ !?」グイッ
側近(な、んだ……ッ 紫の、光!?)
タタタ……ッ
癒し手「……!」
側近「癒し手…… ……!?」
シュゥウウ……
剣士(まさか……!!)
ギギギ……ッ
側近『……!』
癒し手『きゃ……ッ』
剣士(待て……行くな……ッ !?)
パアアアアア!
剣士(……ひ、かり……ッ ……う、あ…… ……ッ)
……
………
…………
側近(前が、見えん……ッ)
側近「癒し手……!?」
癒し手(眩しい……ッ)
癒し手「こ、こに……ッ ……あ!!」
癒し手「側近さん、あっち……!」ギュッ
側近「……!?」
癒し手(……眩しい……ッ でも、感じる……ッ)
癒し手(出口は……あっち……!)タタタ……ッ
側近「お、おい……ッ !?」グイッ
側近(な、んだ……ッ 紫の、光!?)
タタタ……ッ
癒し手「……!」
側近「癒し手…… ……!?」
シュゥウウ……
432: 2013/10/02(水) 22:44:07.41 ID:V8ivpIzkP
側近「光が、消えた…… ……!?」
癒し手「!?」キョロキョロ
側近「森の、中…… ……!?」
癒し手「側近さん!」ホッ
剣士「……ッ ぅ、ウ……ッ」パチッ
剣士「今のは……」ブンブン
剣士(なん、だった…… ……ん…… ……!?)
剣士「…… ……お前、達……!?」
側近「…… ……ッ !? 紫の、瞳……!!お前……!?」
癒し手「……剣士、さん!?」
剣士「……な……ッ」
癒し手「…… ……ど、うして……此処に」
剣士「…… ……俺が、聞きたい」
剣士(何故……!?)キョロ
剣士(……気を失っていた、のか?)
剣士(此処は…… ……否。鍛冶師の村近くの、森の中)
剣士(……道に、血の跡。これは……俺が倒した、獣の物)
剣士「…… ……お前達、何かの塔の中に居たんじゃ無い、のか」
癒し手「え!?」
側近「……下がれ、い…… ……僧侶」
剣士「……成る程。『魔に変じた』と言うのは嘘では無いらしいな」
側近「!?」
癒し手「……!」
剣士「……『側近』に『癒し手』 ……元『戦士』と、『僧侶』だな」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
剣士「信じる信じない、は任せる……が」
剣士「……『見ていた』」
側近「……何を、だ」
剣士「…… ……塔。まやかしがどうの、お母様、がどうの」
癒し手「!!」
剣士「エルフの加護だの、お前……戦士が、魔に変じた、だの」
剣士「……紫の瞳の魔王、と言うのは、少年の事か」ハァ
癒し手「!?」キョロキョロ
側近「森の、中…… ……!?」
癒し手「側近さん!」ホッ
剣士「……ッ ぅ、ウ……ッ」パチッ
剣士「今のは……」ブンブン
剣士(なん、だった…… ……ん…… ……!?)
剣士「…… ……お前、達……!?」
側近「…… ……ッ !? 紫の、瞳……!!お前……!?」
癒し手「……剣士、さん!?」
剣士「……な……ッ」
癒し手「…… ……ど、うして……此処に」
剣士「…… ……俺が、聞きたい」
剣士(何故……!?)キョロ
剣士(……気を失っていた、のか?)
剣士(此処は…… ……否。鍛冶師の村近くの、森の中)
剣士(……道に、血の跡。これは……俺が倒した、獣の物)
剣士「…… ……お前達、何かの塔の中に居たんじゃ無い、のか」
癒し手「え!?」
側近「……下がれ、い…… ……僧侶」
剣士「……成る程。『魔に変じた』と言うのは嘘では無いらしいな」
側近「!?」
癒し手「……!」
剣士「……『側近』に『癒し手』 ……元『戦士』と、『僧侶』だな」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
剣士「信じる信じない、は任せる……が」
剣士「……『見ていた』」
側近「……何を、だ」
剣士「…… ……塔。まやかしがどうの、お母様、がどうの」
癒し手「!!」
剣士「エルフの加護だの、お前……戦士が、魔に変じた、だの」
剣士「……紫の瞳の魔王、と言うのは、少年の事か」ハァ
433: 2013/10/02(水) 22:50:30.34 ID:V8ivpIzkP
側近「…… ……」
側近(見ていた、だと!?そんな……馬鹿な……!)
剣士「……見たくも無いラブシーンもな」
癒し手「!?」カァッ
側近「お、お前……!!」
剣士「故意にじゃない」
側近「…… ……何を、しているんだ」
剣士「此処で、か…… ……その前に」
剣士「船長に、連絡しなくて良いのか」
癒し手「……ッ」
側近「…… ……」
剣士「そう警戒するな、と言っても……無駄なのは解って居る、が」ハァ
剣士「……時間が惜しい。着いてきて貰えると助かるんだが」
側近「……従う、とでも?」
剣士「俺は……始まりの国の国王の命で」
側近「!」
剣士「魔寄せの石とやらを破壊しに来た」
癒し手「え!?」
剣士「……石は壊した後だ。騎士達は鍛冶師の村と、北の街の警備に着いている」
剣士「俺は……鍛冶師の村に戻る途中で、お前達の『夢』を見た」
剣士「暗い、塔の中を上っていくお前達の夢だ」
剣士「…… ……お前は、エルフの娘なんだな、癒し手……否、僧侶」
癒し手「…… ……」
剣士「真実かどうかは着いてくれば解る……」
剣士「拒否しても、別にばらしはしないがな」
側近「…… ……」
癒し手「……側近、さん?」
側近「…… ……」
側近(それこそ、見ていなければ知らないだろう話……しかし……!)
側近(見ていた、だと!?そんな……馬鹿な……!)
剣士「……見たくも無いラブシーンもな」
癒し手「!?」カァッ
側近「お、お前……!!」
剣士「故意にじゃない」
側近「…… ……何を、しているんだ」
剣士「此処で、か…… ……その前に」
剣士「船長に、連絡しなくて良いのか」
癒し手「……ッ」
側近「…… ……」
剣士「そう警戒するな、と言っても……無駄なのは解って居る、が」ハァ
剣士「……時間が惜しい。着いてきて貰えると助かるんだが」
側近「……従う、とでも?」
剣士「俺は……始まりの国の国王の命で」
側近「!」
剣士「魔寄せの石とやらを破壊しに来た」
癒し手「え!?」
剣士「……石は壊した後だ。騎士達は鍛冶師の村と、北の街の警備に着いている」
剣士「俺は……鍛冶師の村に戻る途中で、お前達の『夢』を見た」
剣士「暗い、塔の中を上っていくお前達の夢だ」
剣士「…… ……お前は、エルフの娘なんだな、癒し手……否、僧侶」
癒し手「…… ……」
剣士「真実かどうかは着いてくれば解る……」
剣士「拒否しても、別にばらしはしないがな」
側近「…… ……」
癒し手「……側近、さん?」
側近「…… ……」
側近(それこそ、見ていなければ知らないだろう話……しかし……!)
434: 2013/10/02(水) 22:55:12.32 ID:V8ivpIzkP
癒し手「どうして……貴方は、国王様の命に従っている、のです」
剣士「彼の知る限りの『世界』を教えて貰う為の対価……だな」
側近「……あの後、始まりの国に行った、のか」
剣士「お前達が消えてから、か?」
剣士「そうだな……知りたければ、着いて来い」
側近「お前……!」
剣士「勘違いするな。本当に時間が無い、んだ」
剣士「……魔寄せの石から解放された魔物達は……村へ、人に惹かれ」
剣士「そちらへ向かう」
側近「!」
剣士「……排除の必要があるだろう。もっとも……」
癒し手「もっとも……?」
剣士(……もし、こいつらが。勇者が、魔王を倒したのであれば)
剣士(狼たちの弱体化の説明は着く……が)
剣士(……戦士が魔へと変じたと言う説明には、ならん)
剣士(そんな事が可能なのかどうか……もだ)
剣士「……否。着いて来ないのならば、良い」タタ……
側近「ま、待て!」
剣士「……任務を遂行する義務がある」
タタタ……
癒し手「…… ……」キョロ
側近「……癒し手?」
癒し手「……少し、あちらへ行くと……あの、小屋ですね」
側近「え!?」
剣士「彼の知る限りの『世界』を教えて貰う為の対価……だな」
側近「……あの後、始まりの国に行った、のか」
剣士「お前達が消えてから、か?」
剣士「そうだな……知りたければ、着いて来い」
側近「お前……!」
剣士「勘違いするな。本当に時間が無い、んだ」
剣士「……魔寄せの石から解放された魔物達は……村へ、人に惹かれ」
剣士「そちらへ向かう」
側近「!」
剣士「……排除の必要があるだろう。もっとも……」
癒し手「もっとも……?」
剣士(……もし、こいつらが。勇者が、魔王を倒したのであれば)
剣士(狼たちの弱体化の説明は着く……が)
剣士(……戦士が魔へと変じたと言う説明には、ならん)
剣士(そんな事が可能なのかどうか……もだ)
剣士「……否。着いて来ないのならば、良い」タタ……
側近「ま、待て!」
剣士「……任務を遂行する義務がある」
タタタ……
癒し手「…… ……」キョロ
側近「……癒し手?」
癒し手「……少し、あちらへ行くと……あの、小屋ですね」
側近「え!?」
435: 2013/10/02(水) 22:57:30.84 ID:V8ivpIzkP
癒し手「剣士さんを追うと……鍛冶師の村に、着くのだろうと思います」
癒し手「……血の匂いは、します……けど……」
癒し手「あの……魔寄せの石の、禍々しい気は……確かに」
癒し手「もう、感じません」
側近「…… ……」
癒し手「どう、しましょう……か……」
側近「…… ……鍛冶師の村に向かえば、剣士の言葉が真実か否か」
側近「はっきりする、んだろう」
癒し手「……疑っていらっしゃらない、でしょう?もう……」
側近「…… ……」
癒し手「行きましょう。私達にも、『世界』を知る義務があります。側近さん」
……
………
…………
癒し手「……血の匂いは、します……けど……」
癒し手「あの……魔寄せの石の、禍々しい気は……確かに」
癒し手「もう、感じません」
側近「…… ……」
癒し手「どう、しましょう……か……」
側近「…… ……鍛冶師の村に向かえば、剣士の言葉が真実か否か」
側近「はっきりする、んだろう」
癒し手「……疑っていらっしゃらない、でしょう?もう……」
側近「…… ……」
癒し手「行きましょう。私達にも、『世界』を知る義務があります。側近さん」
……
………
…………
481: 2013/10/06(日) 11:37:23.53 ID:+a4LG5paP
騎士「手筈通り、書簡を持たせた騎士を合わせて数名は」
騎士「勇者様達が乗って来た船で、始まりの国に戻りました」
王子「後は……国王様の采配待ちだな。俺には何の決定権も無いし」
王子「政も解らん」
騎士「……あの少女との話し合いは?」
王子「国王様からの連絡の後……だな」
王子「交代で見張りを。俺も合流する」
騎士「はい……しかし」
王子「ん?」
騎士「……身から出た錆、とは言え。あっけない物です」
王子「…… ……そうだな。だが、これで良かった筈……だ」
騎士「そう……ですね」
王子(これで……世界は平和に向かう。勇者が、魔王を倒せば……)
王子(今度こそ……!)
騎士「騎士団長様、魔物の件ですが」
王子「ん? ……ああ、被害報告か」
騎士「ええ、まあ……あの」
騎士「……今の所、被害らしい被害はありません」
騎士「魔物の数も……随分減っている様です」
騎士「……その力も、随分……」
王子「…… ……」
騎士「やりやすくて良い、んですけどね。何でしょうね、これ……」
王子(……喜ばなくてはいけない、んだろうか)
王子(しかし……もし。もし、勇者が魔王を倒した、のなら)
王子(何故……魔物は、消えない!?)
王子(これでは、まるで……!!)
騎士「勇者様達が乗って来た船で、始まりの国に戻りました」
王子「後は……国王様の采配待ちだな。俺には何の決定権も無いし」
王子「政も解らん」
騎士「……あの少女との話し合いは?」
王子「国王様からの連絡の後……だな」
王子「交代で見張りを。俺も合流する」
騎士「はい……しかし」
王子「ん?」
騎士「……身から出た錆、とは言え。あっけない物です」
王子「…… ……そうだな。だが、これで良かった筈……だ」
騎士「そう……ですね」
王子(これで……世界は平和に向かう。勇者が、魔王を倒せば……)
王子(今度こそ……!)
騎士「騎士団長様、魔物の件ですが」
王子「ん? ……ああ、被害報告か」
騎士「ええ、まあ……あの」
騎士「……今の所、被害らしい被害はありません」
騎士「魔物の数も……随分減っている様です」
騎士「……その力も、随分……」
王子「…… ……」
騎士「やりやすくて良い、んですけどね。何でしょうね、これ……」
王子(……喜ばなくてはいけない、んだろうか)
王子(しかし……もし。もし、勇者が魔王を倒した、のなら)
王子(何故……魔物は、消えない!?)
王子(これでは、まるで……!!)
490: 2013/10/07(月) 07:25:42.20 ID:2ILztS4dP
王子(まるで、金の髪の勇者の時と……同じじゃないか!)
王子(……黒い髪の勇者まで、戻らないと言うのか)
王子(また……繰り返す、のか? まさか!)
騎士「……騎士団長様?」
王子「あ……ああ。聞いているよ」
王子「これが……何なのかは、俺にも……わからん」
王子「だが……」
騎士「この侭、平和に向かって行ってくれれば良いんですけど」
王子「……そう、だな」
王子「否。平和に……していくんだ。魔導国はもう、無い」
王子「……戦争は終わった。俺達……人間同士で、争う等」
王子「そんな、不毛な事は……もう、終わったんだ」
騎士「……はい」
騎士「後は……勇者様の帰還を待つのみだ、と」
騎士「思いたい、です」
王子(皮肉な物だ。戦争の終結を助けたのが)
王子(……インキュバス。魔族の作った魔石だとか言う、物だなんて)
王子(……魔族に、助けられたのだ、なんて……な)ハァ
騎士「では、見回りに行きます」
王子「ああ、頼む……俺もすぐに向かう」
騎士「はい!失礼致します!」
スタスタ
王子「…… ……」
王子(以前。金の髪の勇者の時は……時も)
王子(魔物の数が減り、力が弱くなり……)
王子(……そして、『勇者』の復活と共に)
王子(……黒い髪の勇者まで、戻らないと言うのか)
王子(また……繰り返す、のか? まさか!)
騎士「……騎士団長様?」
王子「あ……ああ。聞いているよ」
王子「これが……何なのかは、俺にも……わからん」
王子「だが……」
騎士「この侭、平和に向かって行ってくれれば良いんですけど」
王子「……そう、だな」
王子「否。平和に……していくんだ。魔導国はもう、無い」
王子「……戦争は終わった。俺達……人間同士で、争う等」
王子「そんな、不毛な事は……もう、終わったんだ」
騎士「……はい」
騎士「後は……勇者様の帰還を待つのみだ、と」
騎士「思いたい、です」
王子(皮肉な物だ。戦争の終結を助けたのが)
王子(……インキュバス。魔族の作った魔石だとか言う、物だなんて)
王子(……魔族に、助けられたのだ、なんて……な)ハァ
騎士「では、見回りに行きます」
王子「ああ、頼む……俺もすぐに向かう」
騎士「はい!失礼致します!」
スタスタ
王子「…… ……」
王子(以前。金の髪の勇者の時は……時も)
王子(魔物の数が減り、力が弱くなり……)
王子(……そして、『勇者』の復活と共に)
491: 2013/10/07(月) 07:30:39.89 ID:2ILztS4dP
王子(また……世界は混沌へと傾いていった)
王子(『希望と絶望』……『平和』を願うのは)
王子(『世界』が、『殺伐』としているから?)
王子「…… ……」ハァ
王子「……上手くは、行かないものだな」
スタスタ
王子「ん?」
少女「…… ……」
王子「どうした」
少女「……お待ちしておりました」
王子「……避難していなさい、と言った筈、だけど」
王子「国王様からの命が届かない限り……」
少女「戻られなかったのですね」
王子「……俺が離れる訳には行かないと判断したからね」
少女「そうやって……『決定権』を持っているのに」
少女「『何も出来ない』と言うのですか」
王子「……騎士達を纏め、君達を守る中で、のみ、だ」
王子「俺は『王』じゃない」
少女「…… ……『王』とは何なのですか」
王子「え?」
少女「我が国の王様は、この国の支配者でした」
王子(『希望と絶望』……『平和』を願うのは)
王子(『世界』が、『殺伐』としているから?)
王子「…… ……」ハァ
王子「……上手くは、行かないものだな」
スタスタ
王子「ん?」
少女「…… ……」
王子「どうした」
少女「……お待ちしておりました」
王子「……避難していなさい、と言った筈、だけど」
王子「国王様からの命が届かない限り……」
少女「戻られなかったのですね」
王子「……俺が離れる訳には行かないと判断したからね」
少女「そうやって……『決定権』を持っているのに」
少女「『何も出来ない』と言うのですか」
王子「……騎士達を纏め、君達を守る中で、のみ、だ」
王子「俺は『王』じゃない」
少女「…… ……『王』とは何なのですか」
王子「え?」
少女「我が国の王様は、この国の支配者でした」
500: 2013/10/08(火) 07:27:48.28 ID:zpTK6cQBP
王子「『自分達が支配する世界』を作ろうとしていた、だろう」
少女「……始まりの国の国王は、違うと言うのですか」
王子「確かに、始まりの国、と言う国家のトップ……『王』であるのだから」
王子「一番偉い人、にはなるだろうけど」
王子「だからこそ、守る義務があるんだ」
少女「……守る?」
王子「そうだよ。国を。人達を……守り、導いて行く義務」
少女「何が違うのです!人々を……騎士、と言う者を使い、命令を下す!」
少女「……何が違う、と……!」
王子「導いて行くんだよ」
少女「え……」
王子「『王』は『支配者』じゃない。『指導者』だ」
王子「……自分達を、国を……『導いて行く』者だ」
王子「……俺はそう思う、し」
王子「だからこそ、騎士達も……王を、国を守ろうと尽力を尽くすんだ」
少女「…… ……」
王子「強制されてやるもんでも、出来るもんでも無いと思うよ」
王子「……でないと、平和になんかならない。出来ない」
王子「誰だって、眉間に皺を刻んで、ため息をつく為に暮らすんじゃない」
王子「厭な思いをして、生きていきたいんじゃ無い」
王子「……笑顔で、何気ない毎日の中で小さな幸せを積み重ねて」
王子「笑って、生きていく方が……良いだろう?」
少女「……始まりの国の国王は、違うと言うのですか」
王子「確かに、始まりの国、と言う国家のトップ……『王』であるのだから」
王子「一番偉い人、にはなるだろうけど」
王子「だからこそ、守る義務があるんだ」
少女「……守る?」
王子「そうだよ。国を。人達を……守り、導いて行く義務」
少女「何が違うのです!人々を……騎士、と言う者を使い、命令を下す!」
少女「……何が違う、と……!」
王子「導いて行くんだよ」
少女「え……」
王子「『王』は『支配者』じゃない。『指導者』だ」
王子「……自分達を、国を……『導いて行く』者だ」
王子「……俺はそう思う、し」
王子「だからこそ、騎士達も……王を、国を守ろうと尽力を尽くすんだ」
少女「…… ……」
王子「強制されてやるもんでも、出来るもんでも無いと思うよ」
王子「……でないと、平和になんかならない。出来ない」
王子「誰だって、眉間に皺を刻んで、ため息をつく為に暮らすんじゃない」
王子「厭な思いをして、生きていきたいんじゃ無い」
王子「……笑顔で、何気ない毎日の中で小さな幸せを積み重ねて」
王子「笑って、生きていく方が……良いだろう?」
506: 2013/10/08(火) 16:57:53.51 ID:zpTK6cQBP
少女「……だからって、私達迄、貴方達の国の『王』に」
少女「従う理由は、無い筈です」
王子「……答えは、イエスだ」
少女「!?」
王子「……何で驚いた顔をするんだ?」
少女「え、だ、だって…… ……」
王子「違う答えが帰ってくると思った?」
少女「…… ……」
王子「確かに、君のその問いに対する俺の答えは『イエス』で間違い無いよ」
王子「だけど……さっきも言った様に」
王子「今のこの状態は、君達の国の王が仕掛けた戦争の結果であり」
王子「君達の住む場所は敗戦国であり、君達は敗戦者だ」
少女「…… ……」
王子「国王様は、指導者だ。君達が笑って過ごせる様に、導くだけだ」
王子「俺達騎士は、それを手助けする。確かに、『従って貰う』事は」
王子「多くなる……否、殆ど、だろうね。だけど」
王子「……長くは続かない。この国が……新しい形に生まれ変わって」
王子「君達だけで、上手くやっていける様になるまで」
少女「……『助ける』ですか」
王子「うん。 ……俺の気持ちと、国王様の考えはそんなに変わらないと思うよ」
少女「……私達は、貴方達に支配される……のでは無いのですね」
王子「そんな事をしたら、俺達は……領主達と同じになってしまうだろう?」
少女「従う理由は、無い筈です」
王子「……答えは、イエスだ」
少女「!?」
王子「……何で驚いた顔をするんだ?」
少女「え、だ、だって…… ……」
王子「違う答えが帰ってくると思った?」
少女「…… ……」
王子「確かに、君のその問いに対する俺の答えは『イエス』で間違い無いよ」
王子「だけど……さっきも言った様に」
王子「今のこの状態は、君達の国の王が仕掛けた戦争の結果であり」
王子「君達の住む場所は敗戦国であり、君達は敗戦者だ」
少女「…… ……」
王子「国王様は、指導者だ。君達が笑って過ごせる様に、導くだけだ」
王子「俺達騎士は、それを手助けする。確かに、『従って貰う』事は」
王子「多くなる……否、殆ど、だろうね。だけど」
王子「……長くは続かない。この国が……新しい形に生まれ変わって」
王子「君達だけで、上手くやっていける様になるまで」
少女「……『助ける』ですか」
王子「うん。 ……俺の気持ちと、国王様の考えはそんなに変わらないと思うよ」
少女「……私達は、貴方達に支配される……のでは無いのですね」
王子「そんな事をしたら、俺達は……領主達と同じになってしまうだろう?」
507: 2013/10/08(火) 17:03:24.86 ID:zpTK6cQBP
王子「……君達は、不思議な環境で生きてきたんだと思う」
王子「これは俺個人の感想だけどね。生きてきた環境も」
王子「施されて来た教育も違いすぎるから、どっちが普通だとも」
王子「どれが常識だとも、俺には……言えない」
少女「…… ……」
王子「この国で言う『選ばれた者』達にしてみれば、生きにくくなるかも」
王子「……しれないけど、ね」
少女「彼らは……どうなるのですか」
王子「え?」
少女「……『出来損ない』達です」
王子「……そんな言葉は存在しない」
少女「!」
王子「皆、この国……の、人達だろう?」
少女「…… ……」
王子「無理に納得しろとは言わないけど」
王子「……変わっていかなくてはならない。その覚悟は必要だよ」
王子「君達だけじゃない。双方に、ね」
少女「…… ……」
王子「はいそうですか、って簡単に行かないのは解ってるよ」
王子「でも、そんな言葉で……人を差別するのは」
王子「決して良い事では無い、と言う事だけ」
王子「覚えて置いて欲しい」
少女「……では」
王子「ん?」
王子「これは俺個人の感想だけどね。生きてきた環境も」
王子「施されて来た教育も違いすぎるから、どっちが普通だとも」
王子「どれが常識だとも、俺には……言えない」
少女「…… ……」
王子「この国で言う『選ばれた者』達にしてみれば、生きにくくなるかも」
王子「……しれないけど、ね」
少女「彼らは……どうなるのですか」
王子「え?」
少女「……『出来損ない』達です」
王子「……そんな言葉は存在しない」
少女「!」
王子「皆、この国……の、人達だろう?」
少女「…… ……」
王子「無理に納得しろとは言わないけど」
王子「……変わっていかなくてはならない。その覚悟は必要だよ」
王子「君達だけじゃない。双方に、ね」
少女「…… ……」
王子「はいそうですか、って簡単に行かないのは解ってるよ」
王子「でも、そんな言葉で……人を差別するのは」
王子「決して良い事では無い、と言う事だけ」
王子「覚えて置いて欲しい」
少女「……では」
王子「ん?」
508: 2013/10/08(火) 17:08:03.12 ID:zpTK6cQBP
少女「……私達は、あ、あな……貴方達に」プルプル
王子「……?」
少女「で、『出来損ない』達と同じ、あ……ッ 扱い、を……ッ」
少女「される、訳では……な、いんです、ね……ッ!?」
王子「…… ……ッ」
少女「…… ……」ポロポロ
王子(……ほっとした故の涙、何だろうが)
王子(同情的な気分にはなれないな……)ハァ
王子(……根深い、よな。そりゃ……そうか)
王子(俺達の常識の全てがまかり通る訳も無いと)
王子(口に……自分で出しておきながら)
少女「…… ……失礼、します」
タタタ……
王子「…… ……」
王子(……驚かされる。『世界』は広いよ、国王)ハァ
王子(『誰かに支配される為の世界』なんて、認めちゃ行けない)
王子(だけど…… ……簡単に、は……いかない、な)
……
………
…………
息子「……あ……ッ」
タタタ……
騎士「どうしました……ッ あ、剣士!」
剣士「……粗方片付いた後、か」フゥ
騎士「……遅かったな。何かあった、のか?」
王子「……?」
少女「で、『出来損ない』達と同じ、あ……ッ 扱い、を……ッ」
少女「される、訳では……な、いんです、ね……ッ!?」
王子「…… ……ッ」
少女「…… ……」ポロポロ
王子(……ほっとした故の涙、何だろうが)
王子(同情的な気分にはなれないな……)ハァ
王子(……根深い、よな。そりゃ……そうか)
王子(俺達の常識の全てがまかり通る訳も無いと)
王子(口に……自分で出しておきながら)
少女「…… ……失礼、します」
タタタ……
王子「…… ……」
王子(……驚かされる。『世界』は広いよ、国王)ハァ
王子(『誰かに支配される為の世界』なんて、認めちゃ行けない)
王子(だけど…… ……簡単に、は……いかない、な)
……
………
…………
息子「……あ……ッ」
タタタ……
騎士「どうしました……ッ あ、剣士!」
剣士「……粗方片付いた後、か」フゥ
騎士「……遅かったな。何かあった、のか?」
529: 2013/10/10(木) 07:01:42.68 ID:3N7uLRiVP
剣士「……後から答えがやってくる」
剣士「多分……だが」
騎士「は!? ……わ、解る様に話せ!何があった!」
騎士「魔寄せの石は……!?」
剣士「……来なかった、のか?狼共」チラ
息子「それは答える必要も無いのでは?」
剣士(……これだけ氏骸が散乱していれば、な)フゥ
騎士「破壊した……んだな」
剣士「ああ。一斉に四方八方に散らばっていったとんだろう、が」
剣士「……数が数だ。苦戦していると思ったが……」
騎士「……俺達も意外だった。あの大きな魔物達が、一太刀でとは言わんが」
騎士「こうもあっさりと、な……」
息子「しかし、これだけ血生臭い……否、見た目にも凄惨だと」
息子「まだ、村人達を外に出す訳には行きませんね」
剣士「炎の魔法を使える者は?」
騎士「数名居るが、殆どが北の街の方へと言ったな。それが何か……?」
息子「村には何名かおりますが……」
剣士「放置して置く訳にはいかんだろう?」
騎士「……焼いてしまうのか」
剣士「それが手っ取り早い。手が足りなければ俺も……」
騎士「! ……待て、誰か……来る!」グッ
息子「!?」
剣士「……警戒しなくて良い。言っただろう?」
剣士「『答えは後からやってくる』」
騎士「…… ……あ!?」
スタスタ……
息子「!! あれは……!」
剣士「多分……だが」
騎士「は!? ……わ、解る様に話せ!何があった!」
騎士「魔寄せの石は……!?」
剣士「……来なかった、のか?狼共」チラ
息子「それは答える必要も無いのでは?」
剣士(……これだけ氏骸が散乱していれば、な)フゥ
騎士「破壊した……んだな」
剣士「ああ。一斉に四方八方に散らばっていったとんだろう、が」
剣士「……数が数だ。苦戦していると思ったが……」
騎士「……俺達も意外だった。あの大きな魔物達が、一太刀でとは言わんが」
騎士「こうもあっさりと、な……」
息子「しかし、これだけ血生臭い……否、見た目にも凄惨だと」
息子「まだ、村人達を外に出す訳には行きませんね」
剣士「炎の魔法を使える者は?」
騎士「数名居るが、殆どが北の街の方へと言ったな。それが何か……?」
息子「村には何名かおりますが……」
剣士「放置して置く訳にはいかんだろう?」
騎士「……焼いてしまうのか」
剣士「それが手っ取り早い。手が足りなければ俺も……」
騎士「! ……待て、誰か……来る!」グッ
息子「!?」
剣士「……警戒しなくて良い。言っただろう?」
剣士「『答えは後からやってくる』」
騎士「…… ……あ!?」
スタスタ……
息子「!! あれは……!」
530: 2013/10/10(木) 07:13:37.38 ID:3N7uLRiVP
側近「…… ……」
癒し手「……騎士さんも居ますね」
息子「戦士さん……に、僧侶さん!?」
騎士「何!? ……ッ ま、まさか……!?」
剣士「…… ……」
側近「終わった後……の様だな」
癒し手「息子さんが居ますよ……そっ …… ……戦士さん」
側近「……打ち合わせ通りに、僧侶」
癒し手「はい」
スタスタ
剣士「……こっちを選んだ、のか」
癒し手「『世界』を知る義務があります。私達には……」
癒し手「いえ。私達に『も』」
剣士「…… ……」
騎士「せ、戦士様! ……と、僧侶様……でした、か……?」
息子「お……お二人、ですか!?」
息子「勇者様と、魔法使いさんは……!」
側近「…… ……こちらも、状況を知りたい」
側近「説明して貰えるか?」
騎士「も、勿論です!」
剣士「その前にやる事をやってしまうぞ」
剣士「魔物達をこの侭にして置けんだろう」
癒し手「騎士さん、炎の魔法を使える方はいらっしゃいますか?」
騎士「貴女も……魔物の氏骸を焼いてしまえと仰る、のですね」
癒し手「私……も?」
息子「剣士さんも、ついさっき同じ事を……」
癒し手「……騎士さんも居ますね」
息子「戦士さん……に、僧侶さん!?」
騎士「何!? ……ッ ま、まさか……!?」
剣士「…… ……」
側近「終わった後……の様だな」
癒し手「息子さんが居ますよ……そっ …… ……戦士さん」
側近「……打ち合わせ通りに、僧侶」
癒し手「はい」
スタスタ
剣士「……こっちを選んだ、のか」
癒し手「『世界』を知る義務があります。私達には……」
癒し手「いえ。私達に『も』」
剣士「…… ……」
騎士「せ、戦士様! ……と、僧侶様……でした、か……?」
息子「お……お二人、ですか!?」
息子「勇者様と、魔法使いさんは……!」
側近「…… ……こちらも、状況を知りたい」
側近「説明して貰えるか?」
騎士「も、勿論です!」
剣士「その前にやる事をやってしまうぞ」
剣士「魔物達をこの侭にして置けんだろう」
癒し手「騎士さん、炎の魔法を使える方はいらっしゃいますか?」
騎士「貴女も……魔物の氏骸を焼いてしまえと仰る、のですね」
癒し手「私……も?」
息子「剣士さんも、ついさっき同じ事を……」
531: 2013/10/10(木) 07:23:50.02 ID:3N7uLRiVP
剣士「…… ……」
癒し手「そうですか……いえ、それもあるのですけど」
癒し手「……魔除けの石は、剣士さんが破壊されたと聞いています」
癒し手「石はもうありません。ですが……」
側近「長年、あの場所に放置されて来たのだろう」
側近「魔の気は、土に……あの場所に染み込んでしまっているのだそうだ」
騎士「え!?」
癒し手「絶対に、とは言いませんが、可能性は高いと思うのです」
癒し手「ですから……清めた方が良いと思います」
息子「清める……?」
癒し手「はい……炎で、一帯を一度……焼いてしまわれた方が良いでしょう」
騎士「!」
息子「そ……そんな!?」
癒し手「……浄化された土は何れ蘇ります」
癒し手「そうすればまた、美しい花は咲きます」
騎士「…… ……成る程」
息子「騎士様!?」
側近「魔物も焼いて……空へと還してやるのだろう?」
側近「……同じだ。浄化してやれば良い」
息子「し、しかし……!」
剣士「村長達と相談すれば良い。先に氏骸をどうにかしよう」
剣士「……女子供達に、こんな状態を見せる訳には行かないんだろう?」
息子「……は、はい。では……取りあえず、炎の魔法を使える者を……」
タタタ……
騎士「……あ、の。戦士様」
側近「『勇者』はどうなった、のか……か」
癒し手「そうですか……いえ、それもあるのですけど」
癒し手「……魔除けの石は、剣士さんが破壊されたと聞いています」
癒し手「石はもうありません。ですが……」
側近「長年、あの場所に放置されて来たのだろう」
側近「魔の気は、土に……あの場所に染み込んでしまっているのだそうだ」
騎士「え!?」
癒し手「絶対に、とは言いませんが、可能性は高いと思うのです」
癒し手「ですから……清めた方が良いと思います」
息子「清める……?」
癒し手「はい……炎で、一帯を一度……焼いてしまわれた方が良いでしょう」
騎士「!」
息子「そ……そんな!?」
癒し手「……浄化された土は何れ蘇ります」
癒し手「そうすればまた、美しい花は咲きます」
騎士「…… ……成る程」
息子「騎士様!?」
側近「魔物も焼いて……空へと還してやるのだろう?」
側近「……同じだ。浄化してやれば良い」
息子「し、しかし……!」
剣士「村長達と相談すれば良い。先に氏骸をどうにかしよう」
剣士「……女子供達に、こんな状態を見せる訳には行かないんだろう?」
息子「……は、はい。では……取りあえず、炎の魔法を使える者を……」
タタタ……
騎士「……あ、の。戦士様」
側近「『勇者』はどうなった、のか……か」
532: 2013/10/10(木) 07:43:12.86 ID:3N7uLRiVP
騎士「……は、はい」
剣士「…… ……」
側近「お前達、始まりの国には戻らない……のか?」
騎士「え? あ、ああ……此処が片付けば、ある程度の騎士を残して」
騎士「戻ります。剣士も……連れて帰ってやらねばなりませんし」
癒し手「剣士さん……も?」
剣士「話した筈だ。国王の命で来ている、とな」
騎士「……その通りです。残りの魔物から村を守る様にも仰せつかっていますが」
騎士「この男を……残してはいけませんから」
騎士「私と、剣士と……後の数名は、任務が終わり次第、帰還します」
癒し手「では……同船させて頂く事はできますか?」
騎士「え!?」
側近「……叔父上には、話さねばならんだろう」
側近「『勇者』の事を」
騎士「は……はい!」
側近「……『国王様への報告』が済むまで、詳しい事は……」
側近「すまんが、話せない」
騎士「い、いえ!ご尤もです!」
騎士「……喜ばれますよ、きっと」
側近「……そう、だな」
剣士「…… ……」
タタタ……
癒し手「あ……戻って来られました、ね」
剣士「……俺も、手伝おう」フゥ
癒し手「怪我人がいれば、回復致します」
側近「俺は……処理の方だな、手伝うとすれば」
騎士「戦士様、こちらの指揮をお任せしても?」
側近「あ、ああ……そりゃ構わないが」
剣士「…… ……」
側近「お前達、始まりの国には戻らない……のか?」
騎士「え? あ、ああ……此処が片付けば、ある程度の騎士を残して」
騎士「戻ります。剣士も……連れて帰ってやらねばなりませんし」
癒し手「剣士さん……も?」
剣士「話した筈だ。国王の命で来ている、とな」
騎士「……その通りです。残りの魔物から村を守る様にも仰せつかっていますが」
騎士「この男を……残してはいけませんから」
騎士「私と、剣士と……後の数名は、任務が終わり次第、帰還します」
癒し手「では……同船させて頂く事はできますか?」
騎士「え!?」
側近「……叔父上には、話さねばならんだろう」
側近「『勇者』の事を」
騎士「は……はい!」
側近「……『国王様への報告』が済むまで、詳しい事は……」
側近「すまんが、話せない」
騎士「い、いえ!ご尤もです!」
騎士「……喜ばれますよ、きっと」
側近「……そう、だな」
剣士「…… ……」
タタタ……
癒し手「あ……戻って来られました、ね」
剣士「……俺も、手伝おう」フゥ
癒し手「怪我人がいれば、回復致します」
側近「俺は……処理の方だな、手伝うとすれば」
騎士「戦士様、こちらの指揮をお任せしても?」
側近「あ、ああ……そりゃ構わないが」
533: 2013/10/10(木) 07:47:33.82 ID:3N7uLRiVP
側近「俺は魔法は使えないぞ」
騎士「指揮をして頂くだけで充分です」
騎士「……この村の人達も、貴方の顔はご存じなのでしょう」
騎士「勇気、に繋がります。ご帰還された、とあれば……」
側近「…… ……」
騎士「……魔王の事や勇者様の事が気にならないと言えば、嘘になりますが」
騎士「貴方達は……帰って来られた。ひとまずはそれで、充分です」
側近「……悪い、な」
騎士「いえ……私は息子さんと、村長の所へ行って」
騎士「土地の浄化の件を含め……報告と相談に行って参ります」ペコ
タタタ……
剣士「……おい」
癒し手「え? 私? ……はい?」
剣士「無理はするな。顔色が優れない」
癒し手「あ……これは……その……」
剣士「……気付いている、んだな?」
癒し手「…… ……大丈夫、です」
剣士「戦士には?」
癒し手「自分で。後ほど……」
剣士「……そうか。ならば余り、俺の傍には寄るな」
癒し手「……え?」
騎士「指揮をして頂くだけで充分です」
騎士「……この村の人達も、貴方の顔はご存じなのでしょう」
騎士「勇気、に繋がります。ご帰還された、とあれば……」
側近「…… ……」
騎士「……魔王の事や勇者様の事が気にならないと言えば、嘘になりますが」
騎士「貴方達は……帰って来られた。ひとまずはそれで、充分です」
側近「……悪い、な」
騎士「いえ……私は息子さんと、村長の所へ行って」
騎士「土地の浄化の件を含め……報告と相談に行って参ります」ペコ
タタタ……
剣士「……おい」
癒し手「え? 私? ……はい?」
剣士「無理はするな。顔色が優れない」
癒し手「あ……これは……その……」
剣士「……気付いている、んだな?」
癒し手「…… ……大丈夫、です」
剣士「戦士には?」
癒し手「自分で。後ほど……」
剣士「……そうか。ならば余り、俺の傍には寄るな」
癒し手「……え?」
547: 2013/10/11(金) 07:32:30.57 ID:T37kwDv6P
剣士「俺は…… ……多分、人、では」
癒し手「…… ……」
剣士「…… ……」
スタスタ
側近「僧侶」
癒し手「あ……は、はい!」
側近「……大丈夫か?」
癒し手「な、何がです」
側近「……何の話、を?」
癒し手「ああ……いえ。顔色が悪いと、指摘されてしまいました」
側近「……大丈夫か?」
癒し手「平気ですよ。疲れたら休みます」
癒し手「回復を……と、申し出ては見た物の……」
癒し手「それ程、必要ありそうにも見えませんしね」
側近「……魔物の力は、弱まっているのだろうな」
癒し手「ええ……曲がりなりにも、魔王は……勇者様に……」
側近「……シッ」
癒し手「…… ……」
側近「取りあえず、此処を片付けてしまおう」
側近「騎士や村長達に、聞かねばならん話もあるし」
癒し手「ええ……浄化の件もありますしね」
側近「良し。無理はするなよ……まだ残りが居るかもしれん」
側近「体調の事もある。余り、俺から離れるな」
癒し手「はい」
癒し手(剣士さんが魔族であるかもしれない、のなら)
癒し手(彼の言い分も納得は出来る、んだけど……)
癒し手(……側近さんも、今は……魔族、なのに)
癒し手(何故……平気なのだろう)
癒し手(否。どころか、私は……彼の…… ……ッ)
癒し手「…… ……」
剣士「…… ……」
スタスタ
側近「僧侶」
癒し手「あ……は、はい!」
側近「……大丈夫か?」
癒し手「な、何がです」
側近「……何の話、を?」
癒し手「ああ……いえ。顔色が悪いと、指摘されてしまいました」
側近「……大丈夫か?」
癒し手「平気ですよ。疲れたら休みます」
癒し手「回復を……と、申し出ては見た物の……」
癒し手「それ程、必要ありそうにも見えませんしね」
側近「……魔物の力は、弱まっているのだろうな」
癒し手「ええ……曲がりなりにも、魔王は……勇者様に……」
側近「……シッ」
癒し手「…… ……」
側近「取りあえず、此処を片付けてしまおう」
側近「騎士や村長達に、聞かねばならん話もあるし」
癒し手「ええ……浄化の件もありますしね」
側近「良し。無理はするなよ……まだ残りが居るかもしれん」
側近「体調の事もある。余り、俺から離れるな」
癒し手「はい」
癒し手(剣士さんが魔族であるかもしれない、のなら)
癒し手(彼の言い分も納得は出来る、んだけど……)
癒し手(……側近さんも、今は……魔族、なのに)
癒し手(何故……平気なのだろう)
癒し手(否。どころか、私は……彼の…… ……ッ)
548: 2013/10/11(金) 07:37:45.86 ID:T37kwDv6P
癒し手(…… ……)フルフル
癒し手(後にしよう。今は……目の前の事を、片付けないと)
癒し手(……やはり、『魔王』と言うのは特別、なんでしょうね)
癒し手(最果ての地に蓄積された、途轍もない力の、魔気の渦)
癒し手(そして、魔王様の魔力…… ……)
癒し手(……人の地の上にあると言うだけで、こんなにも気分が違う)
癒し手(私……あの城に、戻れるの……?)
……
………
…………
カチャ
后「あ、居た居た……使用人、魔王知らない?」
使用人「食事の後、書庫に行くと仰ってましたけど?」
后「また篭もる気か、あいつは……」ハァ
使用人「ご一緒すれば宜しいじゃありませんか」
后「邪魔するのもね、って……思うんだけどね」
使用人「退屈なんですね」クス
后「……否定はしないわよ」ハァ
使用人「では、久々に一緒にお菓子でも作りますか?」
后「あら、良いの?」
使用人「勿論ですよ。今日は……あいにく、天気も悪いですし」
使用人「庭に出れそうもありませんからね」
癒し手(後にしよう。今は……目の前の事を、片付けないと)
癒し手(……やはり、『魔王』と言うのは特別、なんでしょうね)
癒し手(最果ての地に蓄積された、途轍もない力の、魔気の渦)
癒し手(そして、魔王様の魔力…… ……)
癒し手(……人の地の上にあると言うだけで、こんなにも気分が違う)
癒し手(私……あの城に、戻れるの……?)
……
………
…………
カチャ
后「あ、居た居た……使用人、魔王知らない?」
使用人「食事の後、書庫に行くと仰ってましたけど?」
后「また篭もる気か、あいつは……」ハァ
使用人「ご一緒すれば宜しいじゃありませんか」
后「邪魔するのもね、って……思うんだけどね」
使用人「退屈なんですね」クス
后「……否定はしないわよ」ハァ
使用人「では、久々に一緒にお菓子でも作りますか?」
后「あら、良いの?」
使用人「勿論ですよ。今日は……あいにく、天気も悪いですし」
使用人「庭に出れそうもありませんからね」
558: 2013/10/11(金) 21:57:19.77 ID:T37kwDv6P
后「……良く振る、わね」
使用人「珍しい、です」
后「そうなの?」
使用人「理由までは解らないですけどね。あんまり……天気が変わる事は」
使用人「無いんですよ。勿論、偶に……こんな日もありますけど」
后「空を見上げたって、真っ暗に近いもんね」
使用人「強大な魔気が渦巻いて……紫の雲を作ってます、から」
后「…… ……」
使用人「何時か……晴れる日が来るんでしょうか」
后「……そうね。この目で見る事は、叶わないでしょうけど」
使用人「…… ……」
后「良いのよ。『勇者』が、見られるのなら。それで」
使用人「……え、后様、まさか……!?」
后「え!? ……ち、違うわよ!まだよ!」
使用人「あ……そ、そうですか……」
后「……複雑ね。早く欲しいとは思うわ。でも……」
后「……『世界』の為に産まれて来る光の子。この腕に抱きたいと思う」
后「早く。抱きたい……とは、本当に思うの」
后「何時か必ず……その夢は叶う。と……も、思うのよ」
使用人「…… ……」
后「だけど……」
使用人「複雑、ですか」
后「そうね……だって、その子は必ず……『勇者』なんですもの」
使用人「…… ……」
后「でも、憂いても仕方無い、のよね」
后「……『運命』なんだもの」
使用人「…… ……」
后「それが『世界』の意思……なんだもの」
使用人「珍しい、です」
后「そうなの?」
使用人「理由までは解らないですけどね。あんまり……天気が変わる事は」
使用人「無いんですよ。勿論、偶に……こんな日もありますけど」
后「空を見上げたって、真っ暗に近いもんね」
使用人「強大な魔気が渦巻いて……紫の雲を作ってます、から」
后「…… ……」
使用人「何時か……晴れる日が来るんでしょうか」
后「……そうね。この目で見る事は、叶わないでしょうけど」
使用人「…… ……」
后「良いのよ。『勇者』が、見られるのなら。それで」
使用人「……え、后様、まさか……!?」
后「え!? ……ち、違うわよ!まだよ!」
使用人「あ……そ、そうですか……」
后「……複雑ね。早く欲しいとは思うわ。でも……」
后「……『世界』の為に産まれて来る光の子。この腕に抱きたいと思う」
后「早く。抱きたい……とは、本当に思うの」
后「何時か必ず……その夢は叶う。と……も、思うのよ」
使用人「…… ……」
后「だけど……」
使用人「複雑、ですか」
后「そうね……だって、その子は必ず……『勇者』なんですもの」
使用人「…… ……」
后「でも、憂いても仕方無い、のよね」
后「……『運命』なんだもの」
使用人「…… ……」
后「それが『世界』の意思……なんだもの」
559: 2013/10/11(金) 22:02:21.48 ID:T37kwDv6P
使用人「世界の意思……」
后「何でかしらね。そんな風に思っちゃうなんて」クス
后「常識的に考えたら、こんな風に達観できる私達、全員」
后「どこかおかしいんじゃ無いの!? ……って、思うのに、ね」
使用人「本当に、揃った、んでしょうか」
后「解らない。でも……答えの、欠片はきっと」
后「側近と癒し手が、持ち帰ってくると信じてるわ」
后「『願えば叶う』んでしょう?」
使用人「……本当に便利な言葉です」ハァ
后「そうね……じゃあ、それを信じて」
后「美味しいケーキを作りましょうか」
使用人「……そうですね。できあがる時間に合わせて、魔王様を呼びに行きましょう」
后「放っておくとずっと本読んでそうだしね、あいつ」
使用人「何に夢中になってらっしゃるんです?」
后「何でも、古い……古詩?だったかしら?」
使用人「古詩…… ……『始まりは終わりだった』で」
使用人「始まる奴、ですか?」
后「ああ、そうそう。それよ」
后「……ああいうのに、興味あるとは思わなかったわ」
使用人「物語……と、言うより、神話の類ですね」
后「貴女も読んだのね」
使用人「癒し手様も熱心に読んでいらっしゃいましたよ」
后「読み終わったら私も、って思ってたんだけどね」
后「毎日毎日、あの本と魔王がにらめっこしてるから」ハァ
后「何でかしらね。そんな風に思っちゃうなんて」クス
后「常識的に考えたら、こんな風に達観できる私達、全員」
后「どこかおかしいんじゃ無いの!? ……って、思うのに、ね」
使用人「本当に、揃った、んでしょうか」
后「解らない。でも……答えの、欠片はきっと」
后「側近と癒し手が、持ち帰ってくると信じてるわ」
后「『願えば叶う』んでしょう?」
使用人「……本当に便利な言葉です」ハァ
后「そうね……じゃあ、それを信じて」
后「美味しいケーキを作りましょうか」
使用人「……そうですね。できあがる時間に合わせて、魔王様を呼びに行きましょう」
后「放っておくとずっと本読んでそうだしね、あいつ」
使用人「何に夢中になってらっしゃるんです?」
后「何でも、古い……古詩?だったかしら?」
使用人「古詩…… ……『始まりは終わりだった』で」
使用人「始まる奴、ですか?」
后「ああ、そうそう。それよ」
后「……ああいうのに、興味あるとは思わなかったわ」
使用人「物語……と、言うより、神話の類ですね」
后「貴女も読んだのね」
使用人「癒し手様も熱心に読んでいらっしゃいましたよ」
后「読み終わったら私も、って思ってたんだけどね」
后「毎日毎日、あの本と魔王がにらめっこしてるから」ハァ
560: 2013/10/11(金) 22:07:40.65 ID:T37kwDv6P
使用人「じゃあ、美味しそうな匂いでおびき出しましょうか」クス
后「賛成」クス
使用人「何にします?」
后「そうねぇ……あ! この間食べた、あのカボチャの奴が良いわ」
使用人「ああ、あれでしたら……」
……
………
…………
村長「……他に手は無いのか?」
騎士「理に適ってるかと思います。私は魔法には詳しくはありませんが……」
村長「それは……解る。しかし……」
騎士「ですが、先の事を考えると…… ……」
魔導師「ねえ、おにいちゃん。まだおそと、でちゃだめなの?」
兄「しっ……今、お話し中だから……」
魔導師「ぼく、じっとしてるのあきちゃったよ」
兄「……もう少し。もう少しだから、我慢して、魔導師」
魔導師「えー…… ……」
村長「仕方あるまい……」ハァ
騎士「許可して頂けるのですか」
村長「やるからには、綺麗にしてしまう方が良い、んだろう」
息子「お父さん……」
村長「何だ、その驚いた顔は」
息子「いえ……その、良く……」
息子「……決心、して下さった、と思って」
村長「阿呆。私は……村長だ。村の長だ……村を、人を」
村長「……今度こそ、守っていかねばならんだろう」
息子「はい……!」
后「賛成」クス
使用人「何にします?」
后「そうねぇ……あ! この間食べた、あのカボチャの奴が良いわ」
使用人「ああ、あれでしたら……」
……
………
…………
村長「……他に手は無いのか?」
騎士「理に適ってるかと思います。私は魔法には詳しくはありませんが……」
村長「それは……解る。しかし……」
騎士「ですが、先の事を考えると…… ……」
魔導師「ねえ、おにいちゃん。まだおそと、でちゃだめなの?」
兄「しっ……今、お話し中だから……」
魔導師「ぼく、じっとしてるのあきちゃったよ」
兄「……もう少し。もう少しだから、我慢して、魔導師」
魔導師「えー…… ……」
村長「仕方あるまい……」ハァ
騎士「許可して頂けるのですか」
村長「やるからには、綺麗にしてしまう方が良い、んだろう」
息子「お父さん……」
村長「何だ、その驚いた顔は」
息子「いえ……その、良く……」
息子「……決心、して下さった、と思って」
村長「阿呆。私は……村長だ。村の長だ……村を、人を」
村長「……今度こそ、守っていかねばならんだろう」
息子「はい……!」
561: 2013/10/11(金) 22:12:34.85 ID:T37kwDv6P
騎士「では、剣士にも手伝わせます。そちらからも炎の魔法を使う方を」
騎士「何人か…… ……」
ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!
ガッシャーン!!
村長「!?」
息子「な……ッ !?」
兄「あ、あ……ッ」
魔導師「うわあああああああああああああん!!」
騎士「狼!? ……何処から……!!」
息子「奥の扉から……!?」ハッ
息子「裏手の窓か!」
村長「さ、下がりなさい!兄!魔導師……!」
騎士「下手に動くと危ない!」
魔導師「うわああああああああああああああああああああ!!」
パキイィン!!
魔導師「くるなー!くるなああああああああああ!!」
キィン……ッ パリパリパリ……ッ!!
兄「……ッ !! 魔導師!魔導師!」
魔導師「うわああああああああああああん!!」
パキィン……パキパキパキ……ッ
騎士「何人か…… ……」
ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!
ガッシャーン!!
村長「!?」
息子「な……ッ !?」
兄「あ、あ……ッ」
魔導師「うわあああああああああああああん!!」
騎士「狼!? ……何処から……!!」
息子「奥の扉から……!?」ハッ
息子「裏手の窓か!」
村長「さ、下がりなさい!兄!魔導師……!」
騎士「下手に動くと危ない!」
魔導師「うわああああああああああああああああああああ!!」
パキイィン!!
魔導師「くるなー!くるなああああああああああ!!」
キィン……ッ パリパリパリ……ッ!!
兄「……ッ !! 魔導師!魔導師!」
魔導師「うわああああああああああああん!!」
パキィン……パキパキパキ……ッ
562: 2013/10/11(金) 22:16:52.82 ID:T37kwDv6P
兄「!」ハッ
兄「も……ッ もう良い!もう良いよ!魔導師!」
魔導師「こないで!くるなああああ!うわあああああ!!」
パキ……パキパキパキ……
騎士「氷、が……!!」
息子「! 魔導師の足下まで……! と、止めないと!」タタタ……
兄「魔導師!!」ギュウ!
魔導師「う……ァ……ああああああああん!!」
兄「……ッ」ビクッ
兄(冷たい……ッ い、た……い!)
村長「兄!」
バタン!
剣士「何の音…… ……!!」
タタタ……パン!
魔導師「!」
魔導師「…… ……い、た……なんで、なん……ッ」ウワアアアン!
息子(……止まった、か)ホゥ
息子「! 兄!大丈夫か!?」
兄「……うぅ……ッ」
バタバタバタ……バタン!
側近「おい、剣士……! ……な……ん、だ……これは」
癒し手「戦士さん、どうし……! ……ま、ぁ……」
兄「も……ッ もう良い!もう良いよ!魔導師!」
魔導師「こないで!くるなああああ!うわあああああ!!」
パキ……パキパキパキ……
騎士「氷、が……!!」
息子「! 魔導師の足下まで……! と、止めないと!」タタタ……
兄「魔導師!!」ギュウ!
魔導師「う……ァ……ああああああああん!!」
兄「……ッ」ビクッ
兄(冷たい……ッ い、た……い!)
村長「兄!」
バタン!
剣士「何の音…… ……!!」
タタタ……パン!
魔導師「!」
魔導師「…… ……い、た……なんで、なん……ッ」ウワアアアン!
息子(……止まった、か)ホゥ
息子「! 兄!大丈夫か!?」
兄「……うぅ……ッ」
バタバタバタ……バタン!
側近「おい、剣士……! ……な……ん、だ……これは」
癒し手「戦士さん、どうし……! ……ま、ぁ……」
563: 2013/10/11(金) 22:22:59.14 ID:T37kwDv6P
騎士「! 僧侶様、回復を!」
癒し手「あ、は……はい!」タタ……パァア……
兄「…… ……ッ」フラッ
癒し手「あ……!」ギュ!
側近「……気を失った、か?」
癒し手「……ですね。傷は癒しました、けど……」
村長「兄!」
魔導師「うわあああああああん!おにいちゃん!おにいちゃん!」
剣士「…… ……」
側近「……氷漬けの狼、か。魔導師がやった、んだな」
騎士「見張りを強化します!裏手ですね!?」
息子「あ……は、はい!」
村長「…… ……落ち着きなさい魔導師。もう……大丈夫、だ」ギュ
村長「ありがとう、な。お前がやっつけてくれたから。もう、大丈夫だから」
魔導師「ぼ、ぼく……ッ ま、まほうつかいのおねえちゃんに……ッ」
魔導師「ひ、ひとに、むけちゃ、だめ、て……!!」
魔導師「いわれた、の、に……ッ おにいちゃああああん!」
癒し手「……大丈夫ですよ、魔導師君。お兄ちゃんは、ちょっと吃驚して」
癒し手「ええ、と……疲れて、ね? ねんね、しちゃっただけ、ですから」
癒し手「だから、泣いて煩くすると、起きちゃいます。どうします?」
魔導師「……ねんね、して、おきたら……げ、げんき、に、なる?」
癒し手「うん。なります。大丈夫です」ナデナデ
魔導師「…… ……いたかった」
癒し手「あ……」
癒し手(剣士さんに叩かれた、のか……)
癒し手(傷、じゃないけど……)パァ
癒し手「回復魔法、かけました。もう痛くないでしょう?」
魔導師「…… ……うん。あたたかかった。ありがとう、そうりょのおねえちゃん……」
癒し手「……覚えててくれた、んですね」ニコ
癒し手「あ、は……はい!」タタ……パァア……
兄「…… ……ッ」フラッ
癒し手「あ……!」ギュ!
側近「……気を失った、か?」
癒し手「……ですね。傷は癒しました、けど……」
村長「兄!」
魔導師「うわあああああああん!おにいちゃん!おにいちゃん!」
剣士「…… ……」
側近「……氷漬けの狼、か。魔導師がやった、んだな」
騎士「見張りを強化します!裏手ですね!?」
息子「あ……は、はい!」
村長「…… ……落ち着きなさい魔導師。もう……大丈夫、だ」ギュ
村長「ありがとう、な。お前がやっつけてくれたから。もう、大丈夫だから」
魔導師「ぼ、ぼく……ッ ま、まほうつかいのおねえちゃんに……ッ」
魔導師「ひ、ひとに、むけちゃ、だめ、て……!!」
魔導師「いわれた、の、に……ッ おにいちゃああああん!」
癒し手「……大丈夫ですよ、魔導師君。お兄ちゃんは、ちょっと吃驚して」
癒し手「ええ、と……疲れて、ね? ねんね、しちゃっただけ、ですから」
癒し手「だから、泣いて煩くすると、起きちゃいます。どうします?」
魔導師「……ねんね、して、おきたら……げ、げんき、に、なる?」
癒し手「うん。なります。大丈夫です」ナデナデ
魔導師「…… ……いたかった」
癒し手「あ……」
癒し手(剣士さんに叩かれた、のか……)
癒し手(傷、じゃないけど……)パァ
癒し手「回復魔法、かけました。もう痛くないでしょう?」
魔導師「…… ……うん。あたたかかった。ありがとう、そうりょのおねえちゃん……」
癒し手「……覚えててくれた、んですね」ニコ
564: 2013/10/11(金) 22:27:39.72 ID:T37kwDv6P
癒し手「じゃあ、泣き止んで……仲直り、しましょう?」
魔導師「なかなおり?」ヒック
癒し手「はい。剣士さんが『ご免なさい』したら」
癒し手「『良いよ』って笑って、握手、です」
剣士「…… ……え?」
癒し手「止めるつもりだったんでしょうけど、暴力は駄目ですよ」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」ジッ
癒し手「有効なのは解りますけど。魔導師君はまだ、幼い子供ですから」
剣士「……悪かった」
癒し手「『ご免なさい』です」
剣士「…… ……ごめんなさい」
魔導師「……いい、よ」スッ
剣士「…… ……」
癒し手「…… ……」ジィ
剣士「…… ……」ギュ
魔導師「…… ……」ギュ。ブンブン。ニコ
側近「…… ……」クックック
剣士「…… ……笑うな」
息子「良し。兄をベッドに寝かせよう。俺も行くから」
息子「魔導師も、お兄ちゃん見ててあげてくれるか?」ヒョイ
魔導師「うん!」
タタタ……パタン
剣士「…… ……」
村長「……ありがとうございました」
剣士「否……俺も、すまなかった」
側近「とにかく、騎士を集めて警護に当たらせよう」
騎士「は、はい!」
魔導師「なかなおり?」ヒック
癒し手「はい。剣士さんが『ご免なさい』したら」
癒し手「『良いよ』って笑って、握手、です」
剣士「…… ……え?」
癒し手「止めるつもりだったんでしょうけど、暴力は駄目ですよ」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」ジッ
癒し手「有効なのは解りますけど。魔導師君はまだ、幼い子供ですから」
剣士「……悪かった」
癒し手「『ご免なさい』です」
剣士「…… ……ごめんなさい」
魔導師「……いい、よ」スッ
剣士「…… ……」
癒し手「…… ……」ジィ
剣士「…… ……」ギュ
魔導師「…… ……」ギュ。ブンブン。ニコ
側近「…… ……」クックック
剣士「…… ……笑うな」
息子「良し。兄をベッドに寝かせよう。俺も行くから」
息子「魔導師も、お兄ちゃん見ててあげてくれるか?」ヒョイ
魔導師「うん!」
タタタ……パタン
剣士「…… ……」
村長「……ありがとうございました」
剣士「否……俺も、すまなかった」
側近「とにかく、騎士を集めて警護に当たらせよう」
騎士「は、はい!」
565: 2013/10/11(金) 22:34:23.95 ID:T37kwDv6P
側近「俺も手伝う。その間に炎の魔法を使える人を率いて……」
側近「……そっちは、剣士に任せるか」
剣士「…… ……まあ、良いだろう」
癒し手「あ、でも……」
剣士「解って居る。俺は……警護について行くだけだ」
騎士「え? ……でも、お前手伝う、って……」
剣士「…… ……村人達の手でやった方が、良いだろう」
剣士「けじめ、だ。向かってくるだろう狼共は、俺が引き受ける」
剣士「数が減ったとは言え、な」
癒し手「…… ……」
癒し手(浄化の炎……魔族である、と仮定したとしても)
癒し手(剣士さんが……臨んだところで、不都合は無い筈だけど)
癒し手(多分……同じ事を、考えて居る、んでしょうね)
癒し手(……魔、かもしれない……人、よ……り…… ……あれ?)
癒し手(目……が、まわ…… ……)フラ……ッ
側近「……い ……僧侶!?」タタ……ッ ガシ!
癒し手「…… ……」
側近「おい!どうした!?」
剣士「…… ……」
村長「お嬢さん!?」
騎士「僧侶様!?」
側近「僧侶……!!」ギュウ
剣士「……息子の所に連れて行って、一緒に寝かせてやれ」クルッ
側近「おい……!」
剣士「睨むな。顔色が悪かった……大方、旅の疲れでも出たんだろう?」
スタスタ……パタン
側近(……剣士……?)
側近(顔が真っ青だ……しかし……ッ)
側近「……そっちは、剣士に任せるか」
剣士「…… ……まあ、良いだろう」
癒し手「あ、でも……」
剣士「解って居る。俺は……警護について行くだけだ」
騎士「え? ……でも、お前手伝う、って……」
剣士「…… ……村人達の手でやった方が、良いだろう」
剣士「けじめ、だ。向かってくるだろう狼共は、俺が引き受ける」
剣士「数が減ったとは言え、な」
癒し手「…… ……」
癒し手(浄化の炎……魔族である、と仮定したとしても)
癒し手(剣士さんが……臨んだところで、不都合は無い筈だけど)
癒し手(多分……同じ事を、考えて居る、んでしょうね)
癒し手(……魔、かもしれない……人、よ……り…… ……あれ?)
癒し手(目……が、まわ…… ……)フラ……ッ
側近「……い ……僧侶!?」タタ……ッ ガシ!
癒し手「…… ……」
側近「おい!どうした!?」
剣士「…… ……」
村長「お嬢さん!?」
騎士「僧侶様!?」
側近「僧侶……!!」ギュウ
剣士「……息子の所に連れて行って、一緒に寝かせてやれ」クルッ
側近「おい……!」
剣士「睨むな。顔色が悪かった……大方、旅の疲れでも出たんだろう?」
スタスタ……パタン
側近(……剣士……?)
側近(顔が真っ青だ……しかし……ッ)
566: 2013/10/11(金) 22:43:01.19 ID:T37kwDv6P
側近「……村長、すまないが頼めるだろうか」
村長「あ……ああ……それは、勿論……」
側近「案内してくれ。寝かしたら……俺は警護に回る」
騎士「戦士様……」
側近「……大丈夫だろう。少し待っててくれ」
村長「こ、こっちに!村の女達に様子を見させましょう」
側近「ああ……すまん」
……
………
…………
船長「……で、部屋から出てこない、って?」
男「ああ……なんか、拗ねてるみてぇだな」
船長「…… ……」ハァ
男「『母さんは冷たい』だとよ」
船長「……見頃しにした、とでも言いたい訳か」
男「……素直に言ってやったらそうだ」
男「『チビがいるのに危険なところに行けない』てさ」
船長「……それも嘘じゃネェがな」
男「金の為、か?」
船長「『信用』だ……アタシ達に、この船に何かあったら」
船長「確かに金……になる、全てを失う。だが、そうなったとしたら」
船長「それこそチビはどうするんだ?」
男「……だから、それ説明してやれって」
船長「…… ……」
男「……お前の気持ちも、解るけどね」
船長「『船長の命令は絶対』だ ……それが『海賊』だ」
村長「あ……ああ……それは、勿論……」
側近「案内してくれ。寝かしたら……俺は警護に回る」
騎士「戦士様……」
側近「……大丈夫だろう。少し待っててくれ」
村長「こ、こっちに!村の女達に様子を見させましょう」
側近「ああ……すまん」
……
………
…………
船長「……で、部屋から出てこない、って?」
男「ああ……なんか、拗ねてるみてぇだな」
船長「…… ……」ハァ
男「『母さんは冷たい』だとよ」
船長「……見頃しにした、とでも言いたい訳か」
男「……素直に言ってやったらそうだ」
男「『チビがいるのに危険なところに行けない』てさ」
船長「……それも嘘じゃネェがな」
男「金の為、か?」
船長「『信用』だ……アタシ達に、この船に何かあったら」
船長「確かに金……になる、全てを失う。だが、そうなったとしたら」
船長「それこそチビはどうするんだ?」
男「……だから、それ説明してやれって」
船長「…… ……」
男「……お前の気持ちも、解るけどね」
船長「『船長の命令は絶対』だ ……それが『海賊』だ」
567: 2013/10/11(金) 22:50:51.93 ID:T37kwDv6P
男「……だけど、お前は『母』だぜ?」
船長「…… ……」
男「どっちが先かは俺にはわかんねぇし、どっちが大事だ、なんて」
男「そもそも比べるもんじゃねぇんだろうけどな」
船長「……『母』だから、こうしたんだろうが!」
男「俺とお前が喧嘩してもしゃーないだろ」ハァ
船長「……とにかく、この侭南下する」
男「どこに向かうんだよ。良いのか?」
男「例の、客人共は」
船長「……すぐに戻れるだろう辺りで停泊するさ」
船長「暫く、不自由するだろうがな」
男「……それも『仕事』の為……金の為、か」ハァ
船長「随分トゲがあるな。アタシの言う事が聞けないのか!?」
男「聞くよ。お前は……『船長』だからな」
スタスタ
船長「…… ……」ハァ
船長(……糞ッ)ガンッ
船長(親父…… ……アンタなら、こんな時……どうした?)
……
………
…………
癒し手「…… ……ん」パチ
癒し手(…… ……ッ)ガバッ!
魔導師「そうりょのおねえちゃん!」ギュッ
癒し手「え? ……あ……わた……し……?」
船長「…… ……」
男「どっちが先かは俺にはわかんねぇし、どっちが大事だ、なんて」
男「そもそも比べるもんじゃねぇんだろうけどな」
船長「……『母』だから、こうしたんだろうが!」
男「俺とお前が喧嘩してもしゃーないだろ」ハァ
船長「……とにかく、この侭南下する」
男「どこに向かうんだよ。良いのか?」
男「例の、客人共は」
船長「……すぐに戻れるだろう辺りで停泊するさ」
船長「暫く、不自由するだろうがな」
男「……それも『仕事』の為……金の為、か」ハァ
船長「随分トゲがあるな。アタシの言う事が聞けないのか!?」
男「聞くよ。お前は……『船長』だからな」
スタスタ
船長「…… ……」ハァ
船長(……糞ッ)ガンッ
船長(親父…… ……アンタなら、こんな時……どうした?)
……
………
…………
癒し手「…… ……ん」パチ
癒し手(…… ……ッ)ガバッ!
魔導師「そうりょのおねえちゃん!」ギュッ
癒し手「え? ……あ……わた……し……?」
568: 2013/10/11(金) 23:03:42.83 ID:T37kwDv6P
兄「良かった……!」ホッ
癒し手「兄、君……魔導師君……」
兄「……あ、あの、ご免なさい!」
兄「僕と、魔導師を回復した後に、僧侶さんが倒れたって聞いて……」
癒し手「…… ……」
癒し手「そう、ですか……ああ、泣かないで?」
癒し手「貴方達のせいじゃ、無いですから……大丈夫、ですから」キョロ
癒し手(小さな、部屋……此処は、村長さんのお家? ……側近さんは……)
コンコン、カチャ
シスター「……あら、目が覚めた、んですね」
癒し手「あ!」
シスター「…… ……覚えて、いらっしゃいました、か」
癒し手「勿論です……あ、あの……ありがとうございました……」
シスター「……いいえ。汗、びっしょりでいらっしゃる様なので」
シスター「着替えをお持ちしました……ほら、兄、魔導師」
シスター「お姉さんのお着替えを手伝うから。君達はお外!」
魔導師「ええー!ぼく、ここにいる!」
シスター「我が儘言わないの。お姉さん、脱ぐのよ?」
癒し手「え!?」
シスター「……恥ずかしいでしょう。目が覚めて、元気ですって」
シスター「戦士さんと、村長さん達に伝えてきて頂戴?」
魔導師「えー……」
シスター「えー、じゃないの。お願い」
兄「わかりました、ほら、行こう魔導師」
魔導師「おねえちゃん!あとで、あそんでくれる!?」
癒し手「ええ、良いですよ……ありがとう」
癒し手「兄、君……魔導師君……」
兄「……あ、あの、ご免なさい!」
兄「僕と、魔導師を回復した後に、僧侶さんが倒れたって聞いて……」
癒し手「…… ……」
癒し手「そう、ですか……ああ、泣かないで?」
癒し手「貴方達のせいじゃ、無いですから……大丈夫、ですから」キョロ
癒し手(小さな、部屋……此処は、村長さんのお家? ……側近さんは……)
コンコン、カチャ
シスター「……あら、目が覚めた、んですね」
癒し手「あ!」
シスター「…… ……覚えて、いらっしゃいました、か」
癒し手「勿論です……あ、あの……ありがとうございました……」
シスター「……いいえ。汗、びっしょりでいらっしゃる様なので」
シスター「着替えをお持ちしました……ほら、兄、魔導師」
シスター「お姉さんのお着替えを手伝うから。君達はお外!」
魔導師「ええー!ぼく、ここにいる!」
シスター「我が儘言わないの。お姉さん、脱ぐのよ?」
癒し手「え!?」
シスター「……恥ずかしいでしょう。目が覚めて、元気ですって」
シスター「戦士さんと、村長さん達に伝えてきて頂戴?」
魔導師「えー……」
シスター「えー、じゃないの。お願い」
兄「わかりました、ほら、行こう魔導師」
魔導師「おねえちゃん!あとで、あそんでくれる!?」
癒し手「ええ、良いですよ……ありがとう」
569: 2013/10/11(金) 23:12:27.65 ID:T37kwDv6P
癒し手「お願いします……ね?」
魔導師「うん!」
カチャ、パタン
シスター「…… ……」
癒し手「…… ……」
シスター「……身体を拭くわ。脱いで頂戴」
癒し手「あ、は……はい。すみません」スル……
癒し手(わ……本当に、汗びっちょり……)
シスター「……領主の娘と勇者様の事は、聞くなと念を押されたわ」
癒し手「…… ……誰に、です」
シスター「戦士と、剣士さんに……よ」フキフキ
癒し手「…… ……」
シスター「父親は、戦士ね?」
癒し手「…… ……はい」
シスター「……言ってないの?」
癒し手「…… ……まだ、です」
シスター「そう……」フキフキ
癒し手「あ、あの……」
シスター「そんな大事な事、私の口から言えないわよ。安心して」
癒し手「…… ……ありがとうございます」
シスター「剣士さんは気がついてたわよ」
癒し手「……みたいですね」
シスター「……知ってるなら、良いわ」
シスター「はい、これ着替え。私のだけど……良いわよね」
癒し手「あ……すみません。ありがとうございます」
シスター「…… ……ねえ」
癒し手「は、はい?」
シスター「魔導国が無くなった、って……本当なのね?」
癒し手「……ご免なさい。私は、詳しい話は知りません」
魔導師「うん!」
カチャ、パタン
シスター「…… ……」
癒し手「…… ……」
シスター「……身体を拭くわ。脱いで頂戴」
癒し手「あ、は……はい。すみません」スル……
癒し手(わ……本当に、汗びっちょり……)
シスター「……領主の娘と勇者様の事は、聞くなと念を押されたわ」
癒し手「…… ……誰に、です」
シスター「戦士と、剣士さんに……よ」フキフキ
癒し手「…… ……」
シスター「父親は、戦士ね?」
癒し手「…… ……はい」
シスター「……言ってないの?」
癒し手「…… ……まだ、です」
シスター「そう……」フキフキ
癒し手「あ、あの……」
シスター「そんな大事な事、私の口から言えないわよ。安心して」
癒し手「…… ……ありがとうございます」
シスター「剣士さんは気がついてたわよ」
癒し手「……みたいですね」
シスター「……知ってるなら、良いわ」
シスター「はい、これ着替え。私のだけど……良いわよね」
癒し手「あ……すみません。ありがとうございます」
シスター「…… ……ねえ」
癒し手「は、はい?」
シスター「魔導国が無くなった、って……本当なのね?」
癒し手「……ご免なさい。私は、詳しい話は知りません」
570: 2013/10/11(金) 23:19:51.57 ID:T37kwDv6P
癒し手「でも……始まりの国の騎士さんが言うのなら」
癒し手「疑う必要は……無いのでは?」
シスター「疑ってる訳じゃ無いわ…… ……そう。いえ、良いわ」
シスター「ご免なさい」
癒し手「……あ、の。司書、さんは……」
シスター「……亡くなったわ」
癒し手「……そう、ですか」
シスター「驚かないのね」
癒し手「……そう、言う訳では」
シスター「貴女達がこの村を出て、すぐね」
シスター「……ご病気でいらっしゃるのは解ってた。この……村の」
シスター「孤児院を頼みます、って言い残して、ね」
癒し手「……そう、ですか」
シスター「貴女……エルフなの?」
癒し手「え!?」
シスター「……言いたく無ければ言わなくて良いわ。でも、あの……本」
癒し手「…… ……」
シスター「貴女にそっくりな女性が描かれていた、本……」
癒し手「…… ……」
シスター「……返事は無用よ。独り言だと思って聞いて頂戴」
シスター「あの話が事実なら、貴女は嘘は吐けないんでしょう」
シスター「色々、聞いたわ。港街の神父様の話。その名を無理に貰って」
癒し手「!」
シスター「……港街を出た、新米神官って人の話」
シスター「魔導国のあれやこれや……あの街……あの、国が」
シスター「無くなった、だなんて、はいそうですかって。信じられないわ」
癒し手「…… ……」
シスター「優れた加護が無いってだけで、私達は『出来損ない』だって言われて」
シスター「迫害されてきた。助けてくれたのは、剣士さん。それに、司書様」
癒し手「疑う必要は……無いのでは?」
シスター「疑ってる訳じゃ無いわ…… ……そう。いえ、良いわ」
シスター「ご免なさい」
癒し手「……あ、の。司書、さんは……」
シスター「……亡くなったわ」
癒し手「……そう、ですか」
シスター「驚かないのね」
癒し手「……そう、言う訳では」
シスター「貴女達がこの村を出て、すぐね」
シスター「……ご病気でいらっしゃるのは解ってた。この……村の」
シスター「孤児院を頼みます、って言い残して、ね」
癒し手「……そう、ですか」
シスター「貴女……エルフなの?」
癒し手「え!?」
シスター「……言いたく無ければ言わなくて良いわ。でも、あの……本」
癒し手「…… ……」
シスター「貴女にそっくりな女性が描かれていた、本……」
癒し手「…… ……」
シスター「……返事は無用よ。独り言だと思って聞いて頂戴」
シスター「あの話が事実なら、貴女は嘘は吐けないんでしょう」
シスター「色々、聞いたわ。港街の神父様の話。その名を無理に貰って」
癒し手「!」
シスター「……港街を出た、新米神官って人の話」
シスター「魔導国のあれやこれや……あの街……あの、国が」
シスター「無くなった、だなんて、はいそうですかって。信じられないわ」
癒し手「…… ……」
シスター「優れた加護が無いってだけで、私達は『出来損ない』だって言われて」
シスター「迫害されてきた。助けてくれたのは、剣士さん。それに、司書様」
571: 2013/10/11(金) 23:26:28.41 ID:T37kwDv6P
シスター「もう怯えなくて良い、って言われたって…… ……」
癒し手「…… ……」
シスター「聞くな、と言われたけれど。独り言なら構わないわよね?」
シスター「あの領主の娘はどうなったの?勇者は?」
シスター「魔物は……狼は随分弱かったって聞いた」
シスター「……勇者は魔王を倒したの?世界は平和になったの?」
シスター「なら、何故魔物は居なくならないの?」
シスター「……また、繰り返すの?」
癒し手「…… ……」
シスター「…… ……」
癒し手「…… ……」
シスター「……」ハァ
シスター「妊婦にストレス与えちゃ駄目ね」
癒し手「あ、あの……」
シスター「答え無くて良い、って言ったわ…… ……ご免なさい。でも」
シスター「一つだけ」
癒し手「……はい」
シスター「貴女、産まれて来る子供に、混沌とした世界を見せたくは無いわよね?」
癒し手「……ッ 勿論、です……!」
シスター「貴女の……子供には、母親。貴女がいる」
シスター「……父親もね。戦士……随分心配してたみたいよ」
癒し手「……はい」
シスター「私は、此処で司書様のお言葉通り」
シスター「……遺言通り。孤児達を守っていかないと……いけない」
癒し手「…… ……」
シスター「……村は、もう……安全なのよね?」
癒し手「……騎士さんは、暫しの間、常駐し……守ると、言っていました」
シスター「…… ……」
シスター「『騎士団長の息子』の名に誓える、のよね?」
癒し手「勿論です。 ……私、も。戦士さんも」
癒し手「……『世界』自身が、『真の平和』を望んで居るのだと」
癒し手「信じています」
癒し手「…… ……」
シスター「聞くな、と言われたけれど。独り言なら構わないわよね?」
シスター「あの領主の娘はどうなったの?勇者は?」
シスター「魔物は……狼は随分弱かったって聞いた」
シスター「……勇者は魔王を倒したの?世界は平和になったの?」
シスター「なら、何故魔物は居なくならないの?」
シスター「……また、繰り返すの?」
癒し手「…… ……」
シスター「…… ……」
癒し手「…… ……」
シスター「……」ハァ
シスター「妊婦にストレス与えちゃ駄目ね」
癒し手「あ、あの……」
シスター「答え無くて良い、って言ったわ…… ……ご免なさい。でも」
シスター「一つだけ」
癒し手「……はい」
シスター「貴女、産まれて来る子供に、混沌とした世界を見せたくは無いわよね?」
癒し手「……ッ 勿論、です……!」
シスター「貴女の……子供には、母親。貴女がいる」
シスター「……父親もね。戦士……随分心配してたみたいよ」
癒し手「……はい」
シスター「私は、此処で司書様のお言葉通り」
シスター「……遺言通り。孤児達を守っていかないと……いけない」
癒し手「…… ……」
シスター「……村は、もう……安全なのよね?」
癒し手「……騎士さんは、暫しの間、常駐し……守ると、言っていました」
シスター「…… ……」
シスター「『騎士団長の息子』の名に誓える、のよね?」
癒し手「勿論です。 ……私、も。戦士さんも」
癒し手「……『世界』自身が、『真の平和』を望んで居るのだと」
癒し手「信じています」
572: 2013/10/11(金) 23:34:11.41 ID:T37kwDv6P
シスター「……その言葉は、重いわよ」
癒し手「利用して頂いて結構ですよ?」
シスター「……!」
癒し手「戦士さんは、こんな事では怒ったり……しませんから」
癒し手「このタイミングで、此処に居合わせる事に……」
癒し手「きっと、意味はあるんでしょう。だから……」
シスター「…… ……」
癒し手「国王様も、心優しい……素晴らしい方です」
シスター「……勇者は?」
癒し手「……勇者様は、誰よりも。何よりも」
癒し手「『世界』が『平和』になる事を望んでいらっしゃいます」
シスター「…… ……」
癒し手「……貴女が、言ったのですよ?」
シスター「え?」
癒し手「『エルフは嘘は吐けない』んです、よね?」
シスター「…… ……」
癒し手「……戦士さんは、どこに?」
シスター「……村長さんと息子さん。それから剣士さんと」
シスター「会議の真似事、してたみたいだけど?」
癒し手「そうですか……私も、行きます」
シスター「……寝て無くて大丈夫なの」
癒し手「父親……に、真実を告げないと、ね」
シスター「……貴女を送って、私も帰るわ」
シスター「子供達を放って……置けないし」
癒し手「……明日、訪ねても宜しいですか?」
シスター「どうぞ。許可がいる様な場所じゃ無いわ」
シスター「……見張りも強化されるみたいだし、私達ももう」
シスター「避難する必要も無いみたいだしね」
癒し手「そうですか……良かったです」
癒し手「……我が儘ついでに、もう一つ」
シスター「何?」
癒し手「利用して頂いて結構ですよ?」
シスター「……!」
癒し手「戦士さんは、こんな事では怒ったり……しませんから」
癒し手「このタイミングで、此処に居合わせる事に……」
癒し手「きっと、意味はあるんでしょう。だから……」
シスター「…… ……」
癒し手「国王様も、心優しい……素晴らしい方です」
シスター「……勇者は?」
癒し手「……勇者様は、誰よりも。何よりも」
癒し手「『世界』が『平和』になる事を望んでいらっしゃいます」
シスター「…… ……」
癒し手「……貴女が、言ったのですよ?」
シスター「え?」
癒し手「『エルフは嘘は吐けない』んです、よね?」
シスター「…… ……」
癒し手「……戦士さんは、どこに?」
シスター「……村長さんと息子さん。それから剣士さんと」
シスター「会議の真似事、してたみたいだけど?」
癒し手「そうですか……私も、行きます」
シスター「……寝て無くて大丈夫なの」
癒し手「父親……に、真実を告げないと、ね」
シスター「……貴女を送って、私も帰るわ」
シスター「子供達を放って……置けないし」
癒し手「……明日、訪ねても宜しいですか?」
シスター「どうぞ。許可がいる様な場所じゃ無いわ」
シスター「……見張りも強化されるみたいだし、私達ももう」
シスター「避難する必要も無いみたいだしね」
癒し手「そうですか……良かったです」
癒し手「……我が儘ついでに、もう一つ」
シスター「何?」
573: 2013/10/11(金) 23:39:38.38 ID:T37kwDv6P
癒し手「……お参り、させて頂く事は可能でしょうか」
シスター「…… ……喜ぶわ。きっと」
癒し手「ありがとうございます」
シスター「……差し支えの無い程度で良いわ」
癒し手「?」
シスター「領主の……孫娘の話。少し……聞かせて欲しい」
癒し手「私の知る事で……お話出来る事、でしたら」
シスター「……多分、血が繋がってる、のよ」
癒し手「そう……で、しょうね」
シスター「…… ……生きている、のよね?」
癒し手「…… ……はい」
シスター「そう……」ホッ
癒し手(……この人、ぶっきらぼうだけど)
癒し手(悪い人では……無い、んだろう……な)
シスター「……立てる?」スッ
癒し手「あ……ありがとうございます」ギュ
シスター「ゆっくりで良いわ。無理はしないで」
癒し手「はい……ありがとうございます」
シスター「……ねえ、本当に知らないのよね?」
癒し手「え……戦士さんですか? ……はい。多分」
癒し手「何も言っていない、ので……気がつく程、敏感な方では無いですし」
シスター「……さらっと言ったわね」
癒し手「鈍いところも、好きなんです」クス
シスター「そういう所は、言わなくて良いのよ!」
スタスタ、パタン
シスター「…… ……喜ぶわ。きっと」
癒し手「ありがとうございます」
シスター「……差し支えの無い程度で良いわ」
癒し手「?」
シスター「領主の……孫娘の話。少し……聞かせて欲しい」
癒し手「私の知る事で……お話出来る事、でしたら」
シスター「……多分、血が繋がってる、のよ」
癒し手「そう……で、しょうね」
シスター「…… ……生きている、のよね?」
癒し手「…… ……はい」
シスター「そう……」ホッ
癒し手(……この人、ぶっきらぼうだけど)
癒し手(悪い人では……無い、んだろう……な)
シスター「……立てる?」スッ
癒し手「あ……ありがとうございます」ギュ
シスター「ゆっくりで良いわ。無理はしないで」
癒し手「はい……ありがとうございます」
シスター「……ねえ、本当に知らないのよね?」
癒し手「え……戦士さんですか? ……はい。多分」
癒し手「何も言っていない、ので……気がつく程、敏感な方では無いですし」
シスター「……さらっと言ったわね」
癒し手「鈍いところも、好きなんです」クス
シスター「そういう所は、言わなくて良いのよ!」
スタスタ、パタン
607: 2013/10/14(月) 05:26:29.03 ID:MR1ZdRRRP
癒し手「驚く……でしょう、ね」
シスター「喜ぶでしょうよ」
癒し手「だと、良いんですけど」
シスター「……望んで居なかった、の?」
癒し手「あ、いえ。そういう訳じゃ無いですよ」
癒し手「……こんな状況ですから」
シスター「そんなの気にする事無いわよ」
シスター「子供は未来の希望よ。混沌とした世界を見せたくない……って」
シスター「言ってたじゃ無いの」
癒し手「それは……勿論」
癒し手(側近さんは……多分、喜んでくれる。それは解ってる)
癒し手(だけど……きっと、憂いてしまう。お母様の事や……)
癒し手(紫の魔王の、お母様の事……の様に)
癒し手(エルフの長を産む者は……それに……!)
癒し手(……元人間であるとは言え、側近さんは、今は……魔……!)
癒し手(……どんな、子が産まれてくるのだろう)
癒し手(私は……この子を、抱く事ができるの……?)
シスター「誰だって、最初は不安な物よ。それは良く解る」
シスター「でも、大丈夫よ。親は子と一緒に、成長していけば良いの」
シスター「……勿論、簡単な事じゃ無いけど」
癒し手「そう……ですね」
シスター「……此処よ」
ダカラ……ソレハ……
イマハ……
癒し手(……話し声が聞こえる。真剣な声)
コンコン
シスター「村長さん、シスターです」
シスター「喜ぶでしょうよ」
癒し手「だと、良いんですけど」
シスター「……望んで居なかった、の?」
癒し手「あ、いえ。そういう訳じゃ無いですよ」
癒し手「……こんな状況ですから」
シスター「そんなの気にする事無いわよ」
シスター「子供は未来の希望よ。混沌とした世界を見せたくない……って」
シスター「言ってたじゃ無いの」
癒し手「それは……勿論」
癒し手(側近さんは……多分、喜んでくれる。それは解ってる)
癒し手(だけど……きっと、憂いてしまう。お母様の事や……)
癒し手(紫の魔王の、お母様の事……の様に)
癒し手(エルフの長を産む者は……それに……!)
癒し手(……元人間であるとは言え、側近さんは、今は……魔……!)
癒し手(……どんな、子が産まれてくるのだろう)
癒し手(私は……この子を、抱く事ができるの……?)
シスター「誰だって、最初は不安な物よ。それは良く解る」
シスター「でも、大丈夫よ。親は子と一緒に、成長していけば良いの」
シスター「……勿論、簡単な事じゃ無いけど」
癒し手「そう……ですね」
シスター「……此処よ」
ダカラ……ソレハ……
イマハ……
癒し手(……話し声が聞こえる。真剣な声)
コンコン
シスター「村長さん、シスターです」
608: 2013/10/14(月) 05:31:55.93 ID:MR1ZdRRRP
村長「……ああ、ご苦労様だった。入って下さい」
癒し手(側近さんの声音は……どう、変わるんだろう)
カチャ
シスター「失礼します」
癒し手「あの……ありがとうございました。すみません」
癒し手「ご迷惑おかけして……」
側近「僧侶! ……起きて大丈夫なのか!?」
癒し手「あ、はい。気分も良くなりましたし……」
シスター「息子さんと……兄と魔導師は?」
剣士「もう夜だ。改めて寝かせにいった」
騎士「僧侶様!良かった……顔色も随分良くなりましたね」
騎士「しかし……貴女も朝まで、ゆっくり休まれては?」
癒し手「いえ……大丈夫です。差し支えなければ、私もここに居させて下さい」
剣士「…… ……」
村長「それは勿論、構わないが……本当に大丈夫なのか?」
癒し手「はい。無理はしません……これ以上ご迷惑をかける訳には」
側近「そんな事はどうでも良い。本当に…… ……」
シスター「では、私は失礼致します。子供達を放って置けませんから」
村長「あ、ああ……助かったよ。ありがとう」
シスター「いいえ……頑張ってね、僧侶さん」
癒し手「ありがとうございました、シスターさん。また、明日……」
シスター「ええ……待ってるわ。それでは、おやすみなさい」
スタスタ、パタン
癒し手(側近さんの声音は……どう、変わるんだろう)
カチャ
シスター「失礼します」
癒し手「あの……ありがとうございました。すみません」
癒し手「ご迷惑おかけして……」
側近「僧侶! ……起きて大丈夫なのか!?」
癒し手「あ、はい。気分も良くなりましたし……」
シスター「息子さんと……兄と魔導師は?」
剣士「もう夜だ。改めて寝かせにいった」
騎士「僧侶様!良かった……顔色も随分良くなりましたね」
騎士「しかし……貴女も朝まで、ゆっくり休まれては?」
癒し手「いえ……大丈夫です。差し支えなければ、私もここに居させて下さい」
剣士「…… ……」
村長「それは勿論、構わないが……本当に大丈夫なのか?」
癒し手「はい。無理はしません……これ以上ご迷惑をかける訳には」
側近「そんな事はどうでも良い。本当に…… ……」
シスター「では、私は失礼致します。子供達を放って置けませんから」
村長「あ、ああ……助かったよ。ありがとう」
シスター「いいえ……頑張ってね、僧侶さん」
癒し手「ありがとうございました、シスターさん。また、明日……」
シスター「ええ……待ってるわ。それでは、おやすみなさい」
スタスタ、パタン
609: 2013/10/14(月) 05:40:12.25 ID:MR1ZdRRRP
癒し手「失礼します」ストン
側近「……熱は無いのか?」
癒し手「そんな心配そうな顔しなくても、大丈夫ですよ」
癒し手「……別に、病気じゃありませんし」
側近「無理をさせて悪かった。しんどくなったらすぐに言えよ?」
癒し手「……はい」
剣士「では、続きを」
村長「あ、ああ……」
カチャ
息子「お待たせしました……あ、僧侶さん!?大丈夫なんですか?」
癒し手「はい。ご迷惑おかけしました」
村長「二人は?」
息子「すぐに寝てしまいましたよ。時間も時間ですし……」
息子「流石に、疲れたでしょう」
村長「……では、話を戻そう。僧侶さんも来られた事だし」
騎士「先ほども申しましたとおり、騎士の配置も終わっています」
騎士「北の街に向かわせた仲間からは、明日にでも連絡が来るでしょう」
村長「此方の状況を見る限り、大した被害は出ていないと思うが」
剣士「炎を使える者達も、朝には終わるだろうと言っていたな」
癒し手「……剣士さんは、此方にいつ戻られたのですか?」
剣士「ついさっきだ。警護の必要がなさそうだったからな」
剣士「何人かの騎士と合流したので、戻った……彼らの手だけで」
剣士「為す方が良いだろうしな」
騎士「狼たちも随分と減りましたし、炎を怖がってか」
騎士「それ程近づいては行かない様でしたしね」
側近「三日、だ僧侶」
癒し手「え?」
側近「……熱は無いのか?」
癒し手「そんな心配そうな顔しなくても、大丈夫ですよ」
癒し手「……別に、病気じゃありませんし」
側近「無理をさせて悪かった。しんどくなったらすぐに言えよ?」
癒し手「……はい」
剣士「では、続きを」
村長「あ、ああ……」
カチャ
息子「お待たせしました……あ、僧侶さん!?大丈夫なんですか?」
癒し手「はい。ご迷惑おかけしました」
村長「二人は?」
息子「すぐに寝てしまいましたよ。時間も時間ですし……」
息子「流石に、疲れたでしょう」
村長「……では、話を戻そう。僧侶さんも来られた事だし」
騎士「先ほども申しましたとおり、騎士の配置も終わっています」
騎士「北の街に向かわせた仲間からは、明日にでも連絡が来るでしょう」
村長「此方の状況を見る限り、大した被害は出ていないと思うが」
剣士「炎を使える者達も、朝には終わるだろうと言っていたな」
癒し手「……剣士さんは、此方にいつ戻られたのですか?」
剣士「ついさっきだ。警護の必要がなさそうだったからな」
剣士「何人かの騎士と合流したので、戻った……彼らの手だけで」
剣士「為す方が良いだろうしな」
騎士「狼たちも随分と減りましたし、炎を怖がってか」
騎士「それ程近づいては行かない様でしたしね」
側近「三日、だ僧侶」
癒し手「え?」
610: 2013/10/14(月) 05:49:58.03 ID:MR1ZdRRRP
騎士「はい。三日後には私と剣士は、この村を出発し」
騎士「始まりの国へ戻る予定です。問題も無いかと……思います」
騎士「もし、体調が悪そうでしたら延期してもそれも問題はありませんが……」
癒し手「……いえ、大丈夫です」
癒し手「本当に、病気ではありませんから」
側近「…… ……」
村長「何かあればすぐに言って下さい。先ほどのシスターもおりますし」
村長「……では、話を進めよう。状況を教えて欲しい、戦士さん」
側近「ああ……だが」
息子「大丈夫です。王様に報告するまでは……詳しく話せないと」
息子「聞いていますから」
側近「……すまない」
村長「…… ……」
息子「お父さん、そんな顔をしないで下さい」
息子「……もう、光の剣の事は諦めるんでしょう?」
村長「……わ、わかっとる!」
癒し手(そうか。この村は鍛冶師様の……)
癒し手(……あっさりと……気持ちを割り切る事など……普通は、できませんよね)
側近「俺達二人がここに居る、と言う状況を……察して欲しい、と」
側近「俺からは、それぐらいしか言える事は無い、んだがな」
村長「だが、魔物達の力の弱り具合を見るに」
村長「……魔王を倒したと言う事なのだろう?」
村長「あの魔寄せの石に狂わされた狼たちがあんなにもあっさりと……」
剣士「だが、魔物達は居なくならなかった。確かに弱体化したが」
騎士「剣士!」
側近「…… ……」
剣士「つかの間の平和、だ……そうとしか思えない」
癒し手「…… ……」
側近「否定はしない」
騎士「戦士様!?」
騎士「始まりの国へ戻る予定です。問題も無いかと……思います」
騎士「もし、体調が悪そうでしたら延期してもそれも問題はありませんが……」
癒し手「……いえ、大丈夫です」
癒し手「本当に、病気ではありませんから」
側近「…… ……」
村長「何かあればすぐに言って下さい。先ほどのシスターもおりますし」
村長「……では、話を進めよう。状況を教えて欲しい、戦士さん」
側近「ああ……だが」
息子「大丈夫です。王様に報告するまでは……詳しく話せないと」
息子「聞いていますから」
側近「……すまない」
村長「…… ……」
息子「お父さん、そんな顔をしないで下さい」
息子「……もう、光の剣の事は諦めるんでしょう?」
村長「……わ、わかっとる!」
癒し手(そうか。この村は鍛冶師様の……)
癒し手(……あっさりと……気持ちを割り切る事など……普通は、できませんよね)
側近「俺達二人がここに居る、と言う状況を……察して欲しい、と」
側近「俺からは、それぐらいしか言える事は無い、んだがな」
村長「だが、魔物達の力の弱り具合を見るに」
村長「……魔王を倒したと言う事なのだろう?」
村長「あの魔寄せの石に狂わされた狼たちがあんなにもあっさりと……」
剣士「だが、魔物達は居なくならなかった。確かに弱体化したが」
騎士「剣士!」
側近「…… ……」
剣士「つかの間の平和、だ……そうとしか思えない」
癒し手「…… ……」
側近「否定はしない」
騎士「戦士様!?」
611: 2013/10/14(月) 06:02:18.86 ID:MR1ZdRRRP
側近「『金の髪の勇者』は戻らなかった。その仲間達も」
側近「……だが、俺達はここに居る」
側近「先ほども話したとおり、俺達は……『勇者』の仲間として」
側近「始まりの国の国王……叔父上に、伝える事がある」
癒し手「…… ……」
剣士「その旅の途中、『偶然』居合わせた、と言いたいんだな」
側近「そうだ。まさかお前に会うとは思わなかった、がな」
癒し手「私達も知りたいと思っていました。あの後……魔導国がどうなったのか」
癒し手「『世界』がどうなった、のか」
騎士「魔導国の方は、騎士団長様が対処しています」
騎士「……制圧、と言えば聞こえは悪いかも知れませんが」
剣士「間違いではあるまい? ……戦争の結果だ」
剣士「言葉を選ぶ必要は無いと思うが」
側近「そう、だな。で、無ければ……今、この村はこの状況に無い」
癒し手「……魔導国、は無くなるのですか」
騎士「国王様の判断次第ですが……名は、残さないのでは無いでしょうか」
村長「……あの洞窟はどうするんだ」
騎士「まだ何も決まっていないと思います……ですが」
剣士「始まりの国の管轄下に置かれる事は間違いないだろう?」
騎士「……まあ、そうなるだろうな」
側近(光の剣が……その魔法の鉱石とやらで、修理できるとは思えない)
側近(……お爺様でも、『剣としての体裁を取る程度』だったと聞いた)
側近(詳しい話を聞いてしまった今では尚更だ……あの石で、修理など……!)
村長「…… ……」
息子「お父さん!」
村長「……わかっとる!」
村長「偽りでも仮初めでも、構わん。武器を手にせざるを得ない世界など」
村長「……無いに、越した事は無いんだろう、と……は、な」ハァ
騎士「……実際の所、魔法剣とは何なのです?」
息子「作り手の魔力を込めて打つ武具……で良いかと思います」
側近「……だが、俺達はここに居る」
側近「先ほども話したとおり、俺達は……『勇者』の仲間として」
側近「始まりの国の国王……叔父上に、伝える事がある」
癒し手「…… ……」
剣士「その旅の途中、『偶然』居合わせた、と言いたいんだな」
側近「そうだ。まさかお前に会うとは思わなかった、がな」
癒し手「私達も知りたいと思っていました。あの後……魔導国がどうなったのか」
癒し手「『世界』がどうなった、のか」
騎士「魔導国の方は、騎士団長様が対処しています」
騎士「……制圧、と言えば聞こえは悪いかも知れませんが」
剣士「間違いではあるまい? ……戦争の結果だ」
剣士「言葉を選ぶ必要は無いと思うが」
側近「そう、だな。で、無ければ……今、この村はこの状況に無い」
癒し手「……魔導国、は無くなるのですか」
騎士「国王様の判断次第ですが……名は、残さないのでは無いでしょうか」
村長「……あの洞窟はどうするんだ」
騎士「まだ何も決まっていないと思います……ですが」
剣士「始まりの国の管轄下に置かれる事は間違いないだろう?」
騎士「……まあ、そうなるだろうな」
側近(光の剣が……その魔法の鉱石とやらで、修理できるとは思えない)
側近(……お爺様でも、『剣としての体裁を取る程度』だったと聞いた)
側近(詳しい話を聞いてしまった今では尚更だ……あの石で、修理など……!)
村長「…… ……」
息子「お父さん!」
村長「……わかっとる!」
村長「偽りでも仮初めでも、構わん。武器を手にせざるを得ない世界など」
村長「……無いに、越した事は無いんだろう、と……は、な」ハァ
騎士「……実際の所、魔法剣とは何なのです?」
息子「作り手の魔力を込めて打つ武具……で良いかと思います」
612: 2013/10/14(月) 06:14:10.83 ID:MR1ZdRRRP
息子「打った者の魔力……加護の力の宿る、魔法の剣」
村長「鉄や鋼では話にならん……大昔、にはそんな技術もあったのかもしれんがな」
村長「……その、洞窟の鉱石をこの目で見た訳ではないから何とも言えん、が」
村長「話だけは伝わっておる。氷の剣が深々と、炎を操る魔の心臓を」
村長「貫き、滅したのだと……」
癒し手「氷の、剣……」
息子「別に伝説等では無いのですが、鍛冶を志す者達なら、知っている話です」
息子「大方、御伽噺の一節なのでしょうけど」
癒し手「それは、鍛冶師様……『鍛冶師の村の勇者様』や」
癒し手「『聖職者様』のお話しよりも古い、伝承なのですか?」
村長「伝承とも言えん。誰かが作った話かもしれんし、息子の言う通り」
村長「御伽噺なのかもしれん。子供が寝入る時に、母親から聞く」
村長「子守歌と大差ない」
剣士「信憑性は無い、と言う事か?」
村長「態々『こんな伝説がある』と、誰かに聞かせる必要も無い程度の物、と」
村長「……言う事だ」
側近「俺達が以前、この村を訪れた時に、村長が話してくれようとしていた」
側近「……剣の話、があっただろう」
村長「…… ……」
癒し手「魔法剣の様な物、ですね」
息子「あれは、魔石を柄にはめ込んだだけの……大凡、魔法剣などとは」
息子「呼べない代物です。炎や水……魔石の魔力を解放する事で」
息子「魔法剣の様に見せるだけ……一回きりの玩具ですよ」
癒し手「……成る程」
村長「騙せる物でも無い……今、思えばな」
息子「魔石の技術は……やはり……?」ジッ
騎士「え? …… ……あ、ああ。それは……」
騎士「すみません。国王様が、何と仰るか……」
剣士「『魔石』自体は廃れてしまった、と聞いているが」
騎士「……そうだな。この村にその技術が残っている事自体、驚いた」
村長「鉄や鋼では話にならん……大昔、にはそんな技術もあったのかもしれんがな」
村長「……その、洞窟の鉱石をこの目で見た訳ではないから何とも言えん、が」
村長「話だけは伝わっておる。氷の剣が深々と、炎を操る魔の心臓を」
村長「貫き、滅したのだと……」
癒し手「氷の、剣……」
息子「別に伝説等では無いのですが、鍛冶を志す者達なら、知っている話です」
息子「大方、御伽噺の一節なのでしょうけど」
癒し手「それは、鍛冶師様……『鍛冶師の村の勇者様』や」
癒し手「『聖職者様』のお話しよりも古い、伝承なのですか?」
村長「伝承とも言えん。誰かが作った話かもしれんし、息子の言う通り」
村長「御伽噺なのかもしれん。子供が寝入る時に、母親から聞く」
村長「子守歌と大差ない」
剣士「信憑性は無い、と言う事か?」
村長「態々『こんな伝説がある』と、誰かに聞かせる必要も無い程度の物、と」
村長「……言う事だ」
側近「俺達が以前、この村を訪れた時に、村長が話してくれようとしていた」
側近「……剣の話、があっただろう」
村長「…… ……」
癒し手「魔法剣の様な物、ですね」
息子「あれは、魔石を柄にはめ込んだだけの……大凡、魔法剣などとは」
息子「呼べない代物です。炎や水……魔石の魔力を解放する事で」
息子「魔法剣の様に見せるだけ……一回きりの玩具ですよ」
癒し手「……成る程」
村長「騙せる物でも無い……今、思えばな」
息子「魔石の技術は……やはり……?」ジッ
騎士「え? …… ……あ、ああ。それは……」
騎士「すみません。国王様が、何と仰るか……」
剣士「『魔石』自体は廃れてしまった、と聞いているが」
騎士「……そうだな。この村にその技術が残っている事自体、驚いた」
613: 2013/10/14(月) 06:36:54.89 ID:MR1ZdRRRP
村長「驚いたのは此方も同じだ。魔導国の連中に聞くまでも無く」
村長「光の剣の噂は、この村にも届いて居たが……」
息子「お話ししたとおり、魔法剣はその打ち手の魔力を込めて作る物です」
息子「……と、言う事は、光の剣を作った者は……光の加護を持っていた、と」
息子「言う、事ですから」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
騎士「あ……そうか。そうなります、よね」
剣士「……何か、知っているのか?」
側近「俺には解らん。お爺様なら知っていたのかもしれないが」
側近「……俺は、剣を振るう事しかできんからな」
癒し手(持つ者の、その加護を写し取る不思議な剣……)
癒し手(……しかも、長年……想像を絶する程、永い間……)
癒し手(『魔王の剣』として、その力と地位と共に、受け継がれてきた、剣)
剣士(俺が持つこれは……ただの、鋼の剣だ)
剣士(古い、物。特別な力など感じない物……で、無ければ)
剣士(この村の者達は、真っ先に食いついてきた、だろうからな)
剣士(……俺はこれが無ければ魔法等使えない)
剣士(この剣を通して初めて、魔法と言う力を行使できるだけ)
剣士(船長は魔法剣だと呼んでいた、が……似て非なる物……否)
剣士(似て、すら居ない……な。話を聞く限り)
村長「光の剣の噂は、この村にも届いて居たが……」
息子「お話ししたとおり、魔法剣はその打ち手の魔力を込めて作る物です」
息子「……と、言う事は、光の剣を作った者は……光の加護を持っていた、と」
息子「言う、事ですから」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
騎士「あ……そうか。そうなります、よね」
剣士「……何か、知っているのか?」
側近「俺には解らん。お爺様なら知っていたのかもしれないが」
側近「……俺は、剣を振るう事しかできんからな」
癒し手(持つ者の、その加護を写し取る不思議な剣……)
癒し手(……しかも、長年……想像を絶する程、永い間……)
癒し手(『魔王の剣』として、その力と地位と共に、受け継がれてきた、剣)
剣士(俺が持つこれは……ただの、鋼の剣だ)
剣士(古い、物。特別な力など感じない物……で、無ければ)
剣士(この村の者達は、真っ先に食いついてきた、だろうからな)
剣士(……俺はこれが無ければ魔法等使えない)
剣士(この剣を通して初めて、魔法と言う力を行使できるだけ)
剣士(船長は魔法剣だと呼んでいた、が……似て非なる物……否)
剣士(似て、すら居ない……な。話を聞く限り)
614: 2013/10/14(月) 07:01:23.66 ID:MR1ZdRRRP
息子「戦士さん」
側近「?」
息子「勇者様は……何時か、あの国へ戻られるのですか?」
騎士「……息子さん」
側近「構わん。 ……が、何故だ?」
息子「え?」
側近「やはり、諦めきれないか?」
息子「……私も鍛冶を生業にしていますから。確かに、これではお父さんの事は」
息子「言えませんが……」
村長「…… ……」
息子「無くなってしまった方が……良い技術なのかもしれません」
息子「あ……必要が無くなる、ですね」
息子「でも」
癒し手「…… ……」
息子「もし、勇者様が戻られたら、伝えて下さい」
息子「……破棄、してくださいと」
村長「息子!?」
息子「勇者様が無事に戻られる、と言う事は」
息子「魔王が倒されると言う事だろう?お父さん」
息子「『世界』が平和になれば、光の剣なんていらなくなる」
息子「だから……」
癒し手「……何時か、そうなれば」
癒し手「必ず、伝えます。ね? 戦士さん」
側近「……ああ」
剣士「…… ……」スッ
騎士「な、何だ? 急に立ち上がって」
剣士「表が騒がしい」
騎士「え!?」
癒し手「……魔物の気配はしませんよ?」
剣士「戻った、んだろう」
側近「?」
息子「勇者様は……何時か、あの国へ戻られるのですか?」
騎士「……息子さん」
側近「構わん。 ……が、何故だ?」
息子「え?」
側近「やはり、諦めきれないか?」
息子「……私も鍛冶を生業にしていますから。確かに、これではお父さんの事は」
息子「言えませんが……」
村長「…… ……」
息子「無くなってしまった方が……良い技術なのかもしれません」
息子「あ……必要が無くなる、ですね」
息子「でも」
癒し手「…… ……」
息子「もし、勇者様が戻られたら、伝えて下さい」
息子「……破棄、してくださいと」
村長「息子!?」
息子「勇者様が無事に戻られる、と言う事は」
息子「魔王が倒されると言う事だろう?お父さん」
息子「『世界』が平和になれば、光の剣なんていらなくなる」
息子「だから……」
癒し手「……何時か、そうなれば」
癒し手「必ず、伝えます。ね? 戦士さん」
側近「……ああ」
剣士「…… ……」スッ
騎士「な、何だ? 急に立ち上がって」
剣士「表が騒がしい」
騎士「え!?」
癒し手「……魔物の気配はしませんよ?」
剣士「戻った、んだろう」
615: 2013/10/14(月) 07:06:55.59 ID:MR1ZdRRRP
村長「あ、ああ……」
癒し手「村の方達、ですか……」
剣士「お前達はもう休め、僧侶」
側近「ああ。その方が良い……行くぞ、僧侶」
癒し手「あ……は、はい」スッ
騎士「助かりました、戦士様、僧侶様」
騎士「先ほどのお部屋を使って頂いて良いそうです……えっと、戦士様は」
癒し手「一緒で良いですよね?」
側近「勿論だ」
騎士「……え?」
側近「……気がついてなかったのか?」
癒し手(側近さんに言われるのも、不憫な……)
剣士「俺は様子を見に行こう」スタスタ
息子「あ、私も行きます」スタスタ
村長「私は……すまんが、休ませて貰おう。息子、明日報告してくれ」
息子「解りました」
カチャ、パタン
騎士「気が、て…… ……え?」
村長「夫婦なのならば同じ部屋で良いだろう?」
村長「……狭くて、申し訳無いが」
癒し手「い、いえ、そんな! 充分です」
騎士「……ご、夫婦……!? し、失礼致しました!」
側近「何故謝る……」
騎士「そ、そうですか……! それは……おめでたい!」
村長「では、お先に失礼する」スタスタ
カチャ、パタン
癒し手「村の方達、ですか……」
剣士「お前達はもう休め、僧侶」
側近「ああ。その方が良い……行くぞ、僧侶」
癒し手「あ……は、はい」スッ
騎士「助かりました、戦士様、僧侶様」
騎士「先ほどのお部屋を使って頂いて良いそうです……えっと、戦士様は」
癒し手「一緒で良いですよね?」
側近「勿論だ」
騎士「……え?」
側近「……気がついてなかったのか?」
癒し手(側近さんに言われるのも、不憫な……)
剣士「俺は様子を見に行こう」スタスタ
息子「あ、私も行きます」スタスタ
村長「私は……すまんが、休ませて貰おう。息子、明日報告してくれ」
息子「解りました」
カチャ、パタン
騎士「気が、て…… ……え?」
村長「夫婦なのならば同じ部屋で良いだろう?」
村長「……狭くて、申し訳無いが」
癒し手「い、いえ、そんな! 充分です」
騎士「……ご、夫婦……!? し、失礼致しました!」
側近「何故謝る……」
騎士「そ、そうですか……! それは……おめでたい!」
村長「では、お先に失礼する」スタスタ
カチャ、パタン
616: 2013/10/14(月) 07:11:52.06 ID:MR1ZdRRRP
騎士「喜ばれますよ!騎士団長様も、国王様も……!」
癒し手「……あ、あの」
側近「自分達の口から……伝えたいんだ。内緒にしておいて貰えると」
側近「ありがたい、んだが」
騎士「あ! そ、そうですね!わかりました! ……そうか、そうですか……」フフ
側近「……お前は、行かなくて良いのか」
騎士「! い、行きます! すみません、失礼致します!」
騎士「ゆっくりお休みになって下さいね!」
パタパタ……カチャ、バタン!
側近「……凄い笑顔だったな」
癒し手「祝福して貰えるのは、嬉しい事じゃ無いですか」
側近「そうだが…… ……しかし、気がつかないもんか?」
癒し手「……どう、何でしょうね」
癒し手(鈍いのは貴方も同じ、ですのにね)クス
側近「……なんだ」
癒し手「いえ。戻って休みましょう、側近さん」
癒し手「あ……そうだ。私、明日シスターさんの所へ行きたいんですけど……」
側近「ん? ……ああ、別に構わないだろう」
側近「俺はバタバタしているかもしれんが……」
癒し手「まあ、同じ村の中ですしね」
側近「……本当に、体調は大丈夫なのか?」
側近「まあ、シスターと一緒にいるのなら安心、だろうが」
側近「子供達も居るのだろう? 無茶はしないと思うが」
側近「あんまり、走り回ったりするなよ」
癒し手「……あ、あの」
側近「自分達の口から……伝えたいんだ。内緒にしておいて貰えると」
側近「ありがたい、んだが」
騎士「あ! そ、そうですね!わかりました! ……そうか、そうですか……」フフ
側近「……お前は、行かなくて良いのか」
騎士「! い、行きます! すみません、失礼致します!」
騎士「ゆっくりお休みになって下さいね!」
パタパタ……カチャ、バタン!
側近「……凄い笑顔だったな」
癒し手「祝福して貰えるのは、嬉しい事じゃ無いですか」
側近「そうだが…… ……しかし、気がつかないもんか?」
癒し手「……どう、何でしょうね」
癒し手(鈍いのは貴方も同じ、ですのにね)クス
側近「……なんだ」
癒し手「いえ。戻って休みましょう、側近さん」
癒し手「あ……そうだ。私、明日シスターさんの所へ行きたいんですけど……」
側近「ん? ……ああ、別に構わないだろう」
側近「俺はバタバタしているかもしれんが……」
癒し手「まあ、同じ村の中ですしね」
側近「……本当に、体調は大丈夫なのか?」
側近「まあ、シスターと一緒にいるのなら安心、だろうが」
側近「子供達も居るのだろう? 無茶はしないと思うが」
側近「あんまり、走り回ったりするなよ」
617: 2013/10/14(月) 07:18:00.70 ID:MR1ZdRRRP
癒し手「しませんよ、大丈夫です」スタスタ
側近「……なら、良いが」スタスタ
癒し手「えっと、此処だったかな……」
カチャ
側近「……二人で寝るには、狭いか」
癒し手「くっついて眠れば平気ですよ」
パタン
側近「ああ……ほら、横になれ」
癒し手「はい……側近さん、も」コロン
側近「解ってる……おいで」ギュ
癒し手「…… ……」ギュ
側近「癒し手……」チュ
癒し手「……あ、 ……ッ 駄目です、側近さ……ッ ん……ッ」チュ
側近「……阿呆。これ以上するか」
癒し手「や、そうじゃ無くて……! ァ ……」
側近「……? そんなに、辛いのか? ……悪い……大丈夫か」
癒し手「ち、違います! あの……!」
側近「…… ……?」
癒し手「私、あの…… ……赤ちゃん出来た、みたいです」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……そ、側近、さん?」
側近「…… ……な……ッ」
癒し手「?」
側近「な、名前……何に、しよう……」
癒し手「え!?」
側近「……なら、良いが」スタスタ
癒し手「えっと、此処だったかな……」
カチャ
側近「……二人で寝るには、狭いか」
癒し手「くっついて眠れば平気ですよ」
パタン
側近「ああ……ほら、横になれ」
癒し手「はい……側近さん、も」コロン
側近「解ってる……おいで」ギュ
癒し手「…… ……」ギュ
側近「癒し手……」チュ
癒し手「……あ、 ……ッ 駄目です、側近さ……ッ ん……ッ」チュ
側近「……阿呆。これ以上するか」
癒し手「や、そうじゃ無くて……! ァ ……」
側近「……? そんなに、辛いのか? ……悪い……大丈夫か」
癒し手「ち、違います! あの……!」
側近「…… ……?」
癒し手「私、あの…… ……赤ちゃん出来た、みたいです」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……そ、側近、さん?」
側近「…… ……な……ッ」
癒し手「?」
側近「な、名前……何に、しよう……」
癒し手「え!?」
618: 2013/10/14(月) 07:25:21.20 ID:MR1ZdRRRP
側近「い、否! 違う、そうじゃ無くて!」ガバッ
癒し手「きゃ……ッ」
側近「あ、す、すまん!大丈夫か!?」
側近「だ、だから顔色が悪かったのか!?何時解った!?確かなんだな!?」
癒し手「え!? あ、は、はい!? ……あ、あんまり後ろに行くと……!」
側近「そ、そうか……ッ こど…… ……!?」
ドタ!
癒し手「側近さん!」バッ
側近「……だ、大丈夫、だ」ムク
側近「布団から出るな!腹が冷えたらどうする!?」
癒し手「……そ、んな……」クス
癒し手「ふふ……ご免なさい」クスクス
側近「…… ……すまん。落ち着く」
癒し手「黙ってた訳じゃ無いんですよ。何時言おうかな、って……言うのと」
癒し手「その……少し、不安で。怖がらせるんじゃ無いか、って……」
側近「……不安が無いとは言わん。だが…… ……喜びが一番大きい」
側近「……癒し手」
癒し手「はい?」
側近「抱きしめても、大丈夫、か……?」
癒し手「勿論です……ちゃんと、朝まで抱いてて下さい」
側近「狭いぞ?」
癒し手「平気ですよ。くっついてれば」
側近「……ん」ギュ
癒し手「…… ……」ギュ
側近「そうか……子供、か……」フフ
側近「何故、怖がる等…… ……」
側近(あ…… ……ッ)
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
癒し手「きゃ……ッ」
側近「あ、す、すまん!大丈夫か!?」
側近「だ、だから顔色が悪かったのか!?何時解った!?確かなんだな!?」
癒し手「え!? あ、は、はい!? ……あ、あんまり後ろに行くと……!」
側近「そ、そうか……ッ こど…… ……!?」
ドタ!
癒し手「側近さん!」バッ
側近「……だ、大丈夫、だ」ムク
側近「布団から出るな!腹が冷えたらどうする!?」
癒し手「……そ、んな……」クス
癒し手「ふふ……ご免なさい」クスクス
側近「…… ……すまん。落ち着く」
癒し手「黙ってた訳じゃ無いんですよ。何時言おうかな、って……言うのと」
癒し手「その……少し、不安で。怖がらせるんじゃ無いか、って……」
側近「……不安が無いとは言わん。だが…… ……喜びが一番大きい」
側近「……癒し手」
癒し手「はい?」
側近「抱きしめても、大丈夫、か……?」
癒し手「勿論です……ちゃんと、朝まで抱いてて下さい」
側近「狭いぞ?」
癒し手「平気ですよ。くっついてれば」
側近「……ん」ギュ
癒し手「…… ……」ギュ
側近「そうか……子供、か……」フフ
側近「何故、怖がる等…… ……」
側近(あ…… ……ッ)
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
619: 2013/10/14(月) 07:33:37.10 ID:MR1ZdRRRP
癒し手「……お母様は長を産む者。疑う訳じゃ無いですが」
癒し手「それ……エルフの、長は。話の通りならば、私です」
癒し手「エルフの長は代々、受け継がれて行くのだとしたら……私、です」
側近「…… ……ッ」ギュッ
癒し手「……ッ」
側近「あ……すまん……ッ」
癒し手「大丈夫ですよ……あの、だから」
癒し手「……私も、お母様の様になるんじゃ無いかと……側近さんが」
側近「怖がる、のでは無いかと……その。少し、だけ」
側近「……だから、塔で……あんな事を言ったんだな」
癒し手「…… ……」
側近「『私に何があっても泣かないで』……か」
癒し手「……はい」
側近「……約束は、できん」
癒し手「側近さん……」
側近「もし、お前が……姫様と同じ道を辿るのならば」
側近「……止められないだろう。泣かずには居られないだろう」
癒し手「…… ……」
側近「だが……お前には、人の血が半分入っている」
癒し手「……はい。それに、貴方は……もう……」
側近「……ああ。俺は……人間じゃ無い。魔族だ」
癒し手「…… ……」
側近「今は、健やかな成長と、無事に産まれてきてくれる事だけを」
側近「……祈るよ。それから後の事は、その時考える」
癒し手「……側近さん」ギュ
側近「癒し手。俺達は喜ばなくてはいけない」
癒し手「……はい」
側近「俺達の子だ。お前と、俺の……大切な新しい命だ」
側近「嬉しさは無くならない。癒し手……複雑だ。だけど」
側近「……無くならないんだ」
癒し手「それ……エルフの、長は。話の通りならば、私です」
癒し手「エルフの長は代々、受け継がれて行くのだとしたら……私、です」
側近「…… ……ッ」ギュッ
癒し手「……ッ」
側近「あ……すまん……ッ」
癒し手「大丈夫ですよ……あの、だから」
癒し手「……私も、お母様の様になるんじゃ無いかと……側近さんが」
側近「怖がる、のでは無いかと……その。少し、だけ」
側近「……だから、塔で……あんな事を言ったんだな」
癒し手「…… ……」
側近「『私に何があっても泣かないで』……か」
癒し手「……はい」
側近「……約束は、できん」
癒し手「側近さん……」
側近「もし、お前が……姫様と同じ道を辿るのならば」
側近「……止められないだろう。泣かずには居られないだろう」
癒し手「…… ……」
側近「だが……お前には、人の血が半分入っている」
癒し手「……はい。それに、貴方は……もう……」
側近「……ああ。俺は……人間じゃ無い。魔族だ」
癒し手「…… ……」
側近「今は、健やかな成長と、無事に産まれてきてくれる事だけを」
側近「……祈るよ。それから後の事は、その時考える」
癒し手「……側近さん」ギュ
側近「癒し手。俺達は喜ばなくてはいけない」
癒し手「……はい」
側近「俺達の子だ。お前と、俺の……大切な新しい命だ」
側近「嬉しさは無くならない。癒し手……複雑だ。だけど」
側近「……無くならないんだ」
620: 2013/10/14(月) 07:41:15.26 ID:MR1ZdRRRP
癒し手「私もです。自覚してから、色々……複雑でした。だけど」
癒し手「やっぱり、嬉しいんです」
側近「…… ……」ギュ
癒し手「ありがとう。喜んでくれて」
側近「……当然だろう」
癒し手「……はい」チュ
側近「…… ……」チュ
癒し手「剣士さんに、あんまり傍によるなと言われました」
側近「え?」
癒し手「……自分は、魔だろうから、と思っていらっしゃる、のかと」
側近「……あいつは、俺が魔に変じた事も知っているだろうに」
癒し手「まあ……貴方はお父さん、ですからね」
側近「お父さ…… ……まあ、そうなんだが」
癒し手「悪い人では……無いのだと思います」
側近「……ああ」
癒し手「でも……不思議、何です」
側近「ん?」
癒し手「確かに、彼は人間では無い。だけど……はっきりと魔なのかと」
癒し手「問われると……私には断言する事ができません」
側近「お前……でも?」
癒し手「はい。悪い人では……本当に、無いんだろうなと思います」
癒し手「ですけど…… ……彼は、何者なんでしょう、ね」
側近「……俺達の事も、言わなかった様だし、な」
癒し手「ええ……」
側近「考えても解らん事は……仕方無い。それよりも、癒し手」
癒し手「はい?」
側近「今日は……もう、眠ってくれ」
側近「朝まで、こうしているから」ギュ
癒し手「……はい。側近さんもちゃんと寝て下さいね?」
側近「……誰かさんの所為で、興奮して眠れそうにない」
癒し手「…… ……えOち」
側近「ち、違うだろう!」
癒し手「ふふ……冗談です。解ってます……けど、ちゃんと寝て下さい」
癒し手「やっぱり、嬉しいんです」
側近「…… ……」ギュ
癒し手「ありがとう。喜んでくれて」
側近「……当然だろう」
癒し手「……はい」チュ
側近「…… ……」チュ
癒し手「剣士さんに、あんまり傍によるなと言われました」
側近「え?」
癒し手「……自分は、魔だろうから、と思っていらっしゃる、のかと」
側近「……あいつは、俺が魔に変じた事も知っているだろうに」
癒し手「まあ……貴方はお父さん、ですからね」
側近「お父さ…… ……まあ、そうなんだが」
癒し手「悪い人では……無いのだと思います」
側近「……ああ」
癒し手「でも……不思議、何です」
側近「ん?」
癒し手「確かに、彼は人間では無い。だけど……はっきりと魔なのかと」
癒し手「問われると……私には断言する事ができません」
側近「お前……でも?」
癒し手「はい。悪い人では……本当に、無いんだろうなと思います」
癒し手「ですけど…… ……彼は、何者なんでしょう、ね」
側近「……俺達の事も、言わなかった様だし、な」
癒し手「ええ……」
側近「考えても解らん事は……仕方無い。それよりも、癒し手」
癒し手「はい?」
側近「今日は……もう、眠ってくれ」
側近「朝まで、こうしているから」ギュ
癒し手「……はい。側近さんもちゃんと寝て下さいね?」
側近「……誰かさんの所為で、興奮して眠れそうにない」
癒し手「…… ……えOち」
側近「ち、違うだろう!」
癒し手「ふふ……冗談です。解ってます……けど、ちゃんと寝て下さい」
621: 2013/10/14(月) 07:49:38.90 ID:MR1ZdRRRP
癒し手「明日もまだ、バタバタするんでしょう?」
癒し手「疲れちゃいますよ……だから」
側近「努力は……する」
癒し手「はい」クスクス
癒し手「おやすみなさい、側近さん」
側近「ああ……おやすみ」チュ
癒し手「はい……ふふ」チュ……スゥ
側近「…… ……」
側近(子供……か、俺達の)フゥ
側近(エルフで、人で……魔…… ……?)
側近(……否。そんな事はどうでも良い。無事に、産まれてくれるなら)
側近(そして、癒し手……お前が、無事ならば……!)ギュ…ッ
側近(嬉しくて。悲しくて……苦しくて、切ない)
側近(……俺は。俺達は……喜ばなくては、いけない……!)
……
………
…………
国王「……では、この書簡を騎士団長に届けて下さい」
騎士「はッ!」
国王「後、所属不明の船の件ですが……」
騎士「ええ……北の街付近の海域から、少し離れた所に停泊していた様ですが」
騎士「どうします?」
国王「……以前から目撃されている船だとするならば」
国王「魔導国……と、関係があるのかも知れませんね」
騎士「海賊船の可能性もあるのでは?」
国王「だとすれば尚更繋がりがある……否、あった、とみるべきでしょうね」
国王「金次第でどんな仕事でも……と、聞いていますけれど……」
国王「それだけであれば、良いんですが」フゥ
騎士「……どうしましょう?」
国王「最果ての地の方から来た、と言っていました、ね」
騎士「はい」
国王「……当面、監視は怠らない様に」
癒し手「疲れちゃいますよ……だから」
側近「努力は……する」
癒し手「はい」クスクス
癒し手「おやすみなさい、側近さん」
側近「ああ……おやすみ」チュ
癒し手「はい……ふふ」チュ……スゥ
側近「…… ……」
側近(子供……か、俺達の)フゥ
側近(エルフで、人で……魔…… ……?)
側近(……否。そんな事はどうでも良い。無事に、産まれてくれるなら)
側近(そして、癒し手……お前が、無事ならば……!)ギュ…ッ
側近(嬉しくて。悲しくて……苦しくて、切ない)
側近(……俺は。俺達は……喜ばなくては、いけない……!)
……
………
…………
国王「……では、この書簡を騎士団長に届けて下さい」
騎士「はッ!」
国王「後、所属不明の船の件ですが……」
騎士「ええ……北の街付近の海域から、少し離れた所に停泊していた様ですが」
騎士「どうします?」
国王「……以前から目撃されている船だとするならば」
国王「魔導国……と、関係があるのかも知れませんね」
騎士「海賊船の可能性もあるのでは?」
国王「だとすれば尚更繋がりがある……否、あった、とみるべきでしょうね」
国王「金次第でどんな仕事でも……と、聞いていますけれど……」
国王「それだけであれば、良いんですが」フゥ
騎士「……どうしましょう?」
国王「最果ての地の方から来た、と言っていました、ね」
騎士「はい」
国王「……当面、監視は怠らない様に」
622: 2013/10/14(月) 07:56:55.02 ID:MR1ZdRRRP
騎士「はッ」
国王(杞憂であれば良いけれど……)
国王「……無関係と決めつけるには早い、ですしね」
騎士「では、出立致します」
国王「うん。お願いします……ああ、後」
騎士「はい?」
国王「鍛冶師の村から、剣士さん達が戻るのはもうすぐですか?」
騎士「だと思います。出航の知らせは受け取って居ますので」
国王「そうですか。解りました」
国王「早くても数週間後、ですね」
騎士「それぐらいは掛かるでしょうね」
国王「……では、宜しくお願い致します」
騎士「はッ! 失礼致します」
スタスタ、カチャ ……パタン
国王「……」フゥ
国王「焦っても仕方が無い……一つずつ片付けていかねば……」
トントントン……カチャ
国王の息子「お父様」
国王「ああ……どうしました?」
国王の息子「お貸し頂いた本、読み終わりましたよ」
国王「早いね……では、そこに置いておいて下さい」
国王の息子「はい。他の本を借りても良いですか?」
国王「勿論です……好きなのを持って行きなさい」
国王の息子「はい!」
タタタ……パタン
国王(杞憂であれば良いけれど……)
国王「……無関係と決めつけるには早い、ですしね」
騎士「では、出立致します」
国王「うん。お願いします……ああ、後」
騎士「はい?」
国王「鍛冶師の村から、剣士さん達が戻るのはもうすぐですか?」
騎士「だと思います。出航の知らせは受け取って居ますので」
国王「そうですか。解りました」
国王「早くても数週間後、ですね」
騎士「それぐらいは掛かるでしょうね」
国王「……では、宜しくお願い致します」
騎士「はッ! 失礼致します」
スタスタ、カチャ ……パタン
国王「……」フゥ
国王「焦っても仕方が無い……一つずつ片付けていかねば……」
トントントン……カチャ
国王の息子「お父様」
国王「ああ……どうしました?」
国王の息子「お貸し頂いた本、読み終わりましたよ」
国王「早いね……では、そこに置いておいて下さい」
国王の息子「はい。他の本を借りても良いですか?」
国王「勿論です……好きなのを持って行きなさい」
国王の息子「はい!」
タタタ……パタン
623: 2013/10/14(月) 08:02:03.49 ID:MR1ZdRRRP
国王「…… ……」スッ ペラ
国王(お母様の手記……これは、彼ら……未来を担っていく者に)
国王(読ませるべきでは、無いだろうな)
国王(魔物の力が、随分弱っていると聞く。数も……減っていると)
国王(……どう言う事だ。勇者は……また……?)
国王(また……繰り返す、のか。また……戻らないのか)
国王(金の髪の勇者と同じように。黒い髪の勇者も、また…… ……ッ)グッ
国王「……ッ」ゴホゴホゴホッ ……ボタボタ……ッ
国王「!」
国王(…… ……血)
国王「…… ……ッ」
国王(……悟られる訳には、いかない。着替え……ねば)スッ ……ゴホッ
国王(私の子……次期国王には……まだ、教えたい事も)
国王(伝えねばならない事も、ある……ッ)
国王(私は、まだ……氏ぬ訳には……ッ)ゴホッ
国王(勇者……戦士……!)
国王(やはり、お前達は……戻らない、のですか……!?)
……
………
…………
アハハハハハ!
国王(お母様の手記……これは、彼ら……未来を担っていく者に)
国王(読ませるべきでは、無いだろうな)
国王(魔物の力が、随分弱っていると聞く。数も……減っていると)
国王(……どう言う事だ。勇者は……また……?)
国王(また……繰り返す、のか。また……戻らないのか)
国王(金の髪の勇者と同じように。黒い髪の勇者も、また…… ……ッ)グッ
国王「……ッ」ゴホゴホゴホッ ……ボタボタ……ッ
国王「!」
国王(…… ……血)
国王「…… ……ッ」
国王(……悟られる訳には、いかない。着替え……ねば)スッ ……ゴホッ
国王(私の子……次期国王には……まだ、教えたい事も)
国王(伝えねばならない事も、ある……ッ)
国王(私は、まだ……氏ぬ訳には……ッ)ゴホッ
国王(勇者……戦士……!)
国王(やはり、お前達は……戻らない、のですか……!?)
……
………
…………
アハハハハハ!
624: 2013/10/14(月) 08:10:09.12 ID:MR1ZdRRRP
シスター「は、 ……ッ あはは……ッ」
癒し手「……笑いすぎです」ムゥ
シスター「だ、だって!第一声が……『名前何にしよう』だなんて……ッ」
癒し手「良いんです!戦士さんらしくて!」
シスター「……ふ、ふふ。ご免なさい……まあ、でも良かったじゃ無いの」
シスター「不安になる事なんて……無かったでしょ?」
癒し手「……そう、ですけど」
シスター「貴女を此処に預けて、騎士様達の所に行く時に」
シスター「『心配で氏にそう』って顔に書いてあったものね」クスクス
癒し手「…… ……」
シスター「ふふ……ほほえましいわね」ハァ
癒し手「……泣く程笑う事、無いと思いますけど」
シスター「ああ、久しぶりにこんなに笑ったわ……」
癒し手「……」ハァ
シスター「ご免なさい……そんな顔しないで」
癒し手「無理です!」
シスター「……悪かったわよ」
癒し手「……まあ、良いです、けど」
シスター「三日後に……帰る、んですっけ」
癒し手「……はい。騎士団の皆様の船に乗せて貰う事になりました」
シスター「そう……そうよね。彼は、騎士団長の息子だものね」
癒し手「…… ……」
シスター「……あの時は、ご免なさい」
癒し手「いえ……」
シスター「私は……直系では無いけれど、魔導国の領主の血筋なの」
癒し手「優れた加護を持っていないと言うだけで……」
癒し手「……笑いすぎです」ムゥ
シスター「だ、だって!第一声が……『名前何にしよう』だなんて……ッ」
癒し手「良いんです!戦士さんらしくて!」
シスター「……ふ、ふふ。ご免なさい……まあ、でも良かったじゃ無いの」
シスター「不安になる事なんて……無かったでしょ?」
癒し手「……そう、ですけど」
シスター「貴女を此処に預けて、騎士様達の所に行く時に」
シスター「『心配で氏にそう』って顔に書いてあったものね」クスクス
癒し手「…… ……」
シスター「ふふ……ほほえましいわね」ハァ
癒し手「……泣く程笑う事、無いと思いますけど」
シスター「ああ、久しぶりにこんなに笑ったわ……」
癒し手「……」ハァ
シスター「ご免なさい……そんな顔しないで」
癒し手「無理です!」
シスター「……悪かったわよ」
癒し手「……まあ、良いです、けど」
シスター「三日後に……帰る、んですっけ」
癒し手「……はい。騎士団の皆様の船に乗せて貰う事になりました」
シスター「そう……そうよね。彼は、騎士団長の息子だものね」
癒し手「…… ……」
シスター「……あの時は、ご免なさい」
癒し手「いえ……」
シスター「私は……直系では無いけれど、魔導国の領主の血筋なの」
癒し手「優れた加護を持っていないと言うだけで……」
625: 2013/10/14(月) 08:10:51.29 ID:MR1ZdRRRP
あかん、ちょっと二度寝(・△・)
631: 2013/10/14(月) 20:23:17.58 ID:MR1ZdRRRP
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