1: 2013/11/01(金) 16:31:35.56 ID:1cMqDkzrP
2: 2013/11/01(金) 16:39:06.59 ID:1cMqDkzrP
王子「ありがとう……戦士。もう良い」
側近「手伝うのは……当然だ、と言っただろう」
王子「……そういう意味じゃ無いさ」
側近「?」
王子「勇者様と魔法使いにも……一緒ならば良かった、と言うのは」
王子「本音だけどな。確かに」
王子「お前達だけでも、戻ってくれて……本当に、嬉しいんだよ」
側近「…… ……」
王子「……弟王子も、最後にお前に会えて」
王子「嬉しかっただろうと思う……お前と僧侶の子供を見せてやりたかったけどな」
王子「…… ……」
王子「こればっかり……は、な」
側近「親父……」
王子「…… ……」
王子「僧侶の所へ戻ってやれ……俺の自分の家とは言え」
王子「身体も、心配だろう」
側近「手伝うのは……当然だ、と言っただろう」
王子「……そういう意味じゃ無いさ」
側近「?」
王子「勇者様と魔法使いにも……一緒ならば良かった、と言うのは」
王子「本音だけどな。確かに」
王子「お前達だけでも、戻ってくれて……本当に、嬉しいんだよ」
側近「…… ……」
王子「……弟王子も、最後にお前に会えて」
王子「嬉しかっただろうと思う……お前と僧侶の子供を見せてやりたかったけどな」
王子「…… ……」
王子「こればっかり……は、な」
側近「親父……」
王子「…… ……」
王子「僧侶の所へ戻ってやれ……俺の自分の家とは言え」
王子「身体も、心配だろう」
34: 2013/11/05(火) 10:05:26.54 ID:YpHVn3Dri
すこし整理
内容のチェックお願いします
このストーリーは今の所大きく分けて二部に分かれてる
まず
■第一部
勇者「拒否権はないんだな」
魔王「ああ……世界は美しい」
勇者「俺は……魔王を倒す!」
そして
■第二部
魔王「私が勇者になる……だと?」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」
第一部、第二部は、ある輪廻に従って、三世代の魔王を中心に話が進んでいる
紫魔王の親、炎魔王を第ゼロ世代とすると、三世代の魔王とそれに対峙する勇者パーティは以下の通り
括弧内は魔王を倒した後の名前
第ゼロ世代
【炎魔王の時代】
勇者パーティ
戦士、魔法使い、僧侶(側近)
第一世代
【紫魔王の時代】
勇者パーティ
勇者(魔王)、僧侶(妃)、魔法使い(魔導将軍)、戦士(側近)
第二世代
【金髪金目魔王の時代】
勇者パーティ
勇者(魔王)、魔法使い(后)、僧侶(癒し手)、戦士(側近)
第三世代
【黒髪金目魔王の時代】
勇者パーティ
勇者(女魔王)、青年、魔道士(闇の手)
内容のチェックお願いします
このストーリーは今の所大きく分けて二部に分かれてる
まず
■第一部
勇者「拒否権はないんだな」
魔王「ああ……世界は美しい」
勇者「俺は……魔王を倒す!」
そして
■第二部
魔王「私が勇者になる……だと?」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」
第一部、第二部は、ある輪廻に従って、三世代の魔王を中心に話が進んでいる
紫魔王の親、炎魔王を第ゼロ世代とすると、三世代の魔王とそれに対峙する勇者パーティは以下の通り
括弧内は魔王を倒した後の名前
第ゼロ世代
【炎魔王の時代】
勇者パーティ
戦士、魔法使い、僧侶(側近)
第一世代
【紫魔王の時代】
勇者パーティ
勇者(魔王)、僧侶(妃)、魔法使い(魔導将軍)、戦士(側近)
第二世代
【金髪金目魔王の時代】
勇者パーティ
勇者(魔王)、魔法使い(后)、僧侶(癒し手)、戦士(側近)
第三世代
【黒髪金目魔王の時代】
勇者パーティ
勇者(女魔王)、青年、魔道士(闇の手)
4: 2013/11/01(金) 16:48:39.92 ID:1cMqDkzrP
側近「…… ……」
王子「戦士?」
側近「……叔父上、安らかな顔をしてる」
王子「……肩の荷が下りた、んだろうな」
王子「お母様も同じような事を言っていたよ」
王子「すっきりした、だったか」
側近「……そう、か」フゥ
王子「……悪かったな。血塗れだな」
側近「親父もだ……構わん。こんなもの、洗ってしまえば……綺麗になる」
側近(…… ……胸が、痛む。しかし……親父に、何処まで話すべきなのか)
王子「……大変な戦いだったのだろう。そんな時に……こんな……」
側近「阿呆……何言ってるんだ」
王子「……勇者様のお怪我は、酷いのか?」
側近「え?」
王子「此処へ……戻って来れない位、だ」
王子「生きていると言っていただろう。魔法使いも……」
王子「二人は、傷を癒す為に……戻れなかったのでは無いのか?」
側近「…… ……」
王子「僧侶は、魔王は何れ復活すると言っていた」
王子「……また、勇者が産まれるのだ、とも」
側近「ああ……嘘じゃ無い。あいつは……嘘は吐けない」
王子「……エルフ、だからな」
側近「正確には半分だけどな」
王子「嘘が本当になる、と言うのは……良く解らんが」
側近「自分に関する事だけだ、と聞いた……がな」
王子「……すまん、引き留めるつもりは無かった」
側近「…… ……否、良いんだ」
王子「話して……くれるんだろう、戦士」
側近「…… ……ああ」
王子「悪い。今日は……戻ってくれ」
王子「お前から……話してくれるのを待っている」
王子「戦士?」
側近「……叔父上、安らかな顔をしてる」
王子「……肩の荷が下りた、んだろうな」
王子「お母様も同じような事を言っていたよ」
王子「すっきりした、だったか」
側近「……そう、か」フゥ
王子「……悪かったな。血塗れだな」
側近「親父もだ……構わん。こんなもの、洗ってしまえば……綺麗になる」
側近(…… ……胸が、痛む。しかし……親父に、何処まで話すべきなのか)
王子「……大変な戦いだったのだろう。そんな時に……こんな……」
側近「阿呆……何言ってるんだ」
王子「……勇者様のお怪我は、酷いのか?」
側近「え?」
王子「此処へ……戻って来れない位、だ」
王子「生きていると言っていただろう。魔法使いも……」
王子「二人は、傷を癒す為に……戻れなかったのでは無いのか?」
側近「…… ……」
王子「僧侶は、魔王は何れ復活すると言っていた」
王子「……また、勇者が産まれるのだ、とも」
側近「ああ……嘘じゃ無い。あいつは……嘘は吐けない」
王子「……エルフ、だからな」
側近「正確には半分だけどな」
王子「嘘が本当になる、と言うのは……良く解らんが」
側近「自分に関する事だけだ、と聞いた……がな」
王子「……すまん、引き留めるつもりは無かった」
側近「…… ……否、良いんだ」
王子「話して……くれるんだろう、戦士」
側近「…… ……ああ」
王子「悪い。今日は……戻ってくれ」
王子「お前から……話してくれるのを待っている」
6: 2013/11/01(金) 16:54:09.45 ID:1cMqDkzrP
王子「剣士にも話してやらんといかん……遺言、とあっちゃな」
側近「…… ……」
王子「弟王子と……約束、しちまったし」
王子「……落ち着いたら、また話す席を改めて設けよう」
王子「新王に……報告にいかねばならん」
側近「わかった……無理はするな。何かあれば……すぐに来るから」
王子「ああ」
側近「…… ……」スタスタ、ピタ
側近「親父」クル
王子「何だ?」
側近「……すまん」
カチャ、パタン
王子「…… ……?」
王子「……さしあたって……やらねばいかん事をかたづけるか」ハァ
スタスタ……コンコン
王「はい?」
王子「俺だ……大事な話がある」
王「……なんでしょうか」
カチャ
王子「……気をしっかりと持って、聞いて欲しい」
王「…… ……?」
王子「弟王子が…… ……氏んだ」
王「な!? ……伯父上、何を仰るのです!?」
王「お父様は……!!」
王子「……戦士達と話している最中の事だ。大量の……血を吐いて」
王「! ……ッ どいてください!」ドンッ
王子「!」ヨロ
側近「…… ……」
王子「弟王子と……約束、しちまったし」
王子「……落ち着いたら、また話す席を改めて設けよう」
王子「新王に……報告にいかねばならん」
側近「わかった……無理はするな。何かあれば……すぐに来るから」
王子「ああ」
側近「…… ……」スタスタ、ピタ
側近「親父」クル
王子「何だ?」
側近「……すまん」
カチャ、パタン
王子「…… ……?」
王子「……さしあたって……やらねばいかん事をかたづけるか」ハァ
スタスタ……コンコン
王「はい?」
王子「俺だ……大事な話がある」
王「……なんでしょうか」
カチャ
王子「……気をしっかりと持って、聞いて欲しい」
王「…… ……?」
王子「弟王子が…… ……氏んだ」
王「な!? ……伯父上、何を仰るのです!?」
王「お父様は……!!」
王子「……戦士達と話している最中の事だ。大量の……血を吐いて」
王「! ……ッ どいてください!」ドンッ
王子「!」ヨロ
7: 2013/11/01(金) 17:04:06.99 ID:1cMqDkzrP
バタバタバタ……
王子「…… ……」ハァ
……
………
…………
キィ、パタン
癒し手「あ……側近さん。おかえりなさい」
癒し手「……随分、早かったですね」
側近「部外者に出来る事等……物理的な手伝いぐらいだ」ハァ
癒し手「……お父様に、叔父様でしょう」
側近「卑屈な言い方になったか……すまん」
癒し手「……いえ」
側近「……剣士には、口止めをした、が」
側近「やはり……伝えるべき、なのだろうか」
癒し手「貴方が……魔に変じられた事、ですか」
側近「……ああ」
癒し手「ど……う、なんでしょう、ね……」
側近「後ろめたい気持ちが無いと言えば、嘘になる」
側近「話してしまえば、俺の気分は……楽になるだろう。だが」
側近「……親父、は……」
癒し手「…… ……」
側近「落ち着いたら、改めて話す席を設けると言っていた」
側近「……それまでに考えておくことにする」
側近「身体は、大丈夫か?」
癒し手「あ、ええ……それは、大丈夫です」
癒し手「……魔王様の事、話されるのでしょう」
側近「……ああ」
癒し手「そうなれば……言わざるを得ない、でしょうね」
癒し手「そうで無ければ……色々と辻褄が合いませんし……」
側近「そう……だな」
癒し手「…… ……その時に、考えましょう」ギュ
側近「……ああ」ギュ
王子「…… ……」ハァ
……
………
…………
キィ、パタン
癒し手「あ……側近さん。おかえりなさい」
癒し手「……随分、早かったですね」
側近「部外者に出来る事等……物理的な手伝いぐらいだ」ハァ
癒し手「……お父様に、叔父様でしょう」
側近「卑屈な言い方になったか……すまん」
癒し手「……いえ」
側近「……剣士には、口止めをした、が」
側近「やはり……伝えるべき、なのだろうか」
癒し手「貴方が……魔に変じられた事、ですか」
側近「……ああ」
癒し手「ど……う、なんでしょう、ね……」
側近「後ろめたい気持ちが無いと言えば、嘘になる」
側近「話してしまえば、俺の気分は……楽になるだろう。だが」
側近「……親父、は……」
癒し手「…… ……」
側近「落ち着いたら、改めて話す席を設けると言っていた」
側近「……それまでに考えておくことにする」
側近「身体は、大丈夫か?」
癒し手「あ、ええ……それは、大丈夫です」
癒し手「……魔王様の事、話されるのでしょう」
側近「……ああ」
癒し手「そうなれば……言わざるを得ない、でしょうね」
癒し手「そうで無ければ……色々と辻褄が合いませんし……」
側近「そう……だな」
癒し手「…… ……その時に、考えましょう」ギュ
側近「……ああ」ギュ
40: 2013/11/06(水) 04:05:28.56 ID:w8zJKGMFP
癒し手「騎士団長様は……?」
側近「まだ戻らん……戻れんだろう」
側近「新王にも告げねばならんだろうし……仕事は山積みだ」
癒し手「そう……ですよね」フゥ
側近「お前はもう休め。俺も……もう少ししたら眠るから」
癒し手「大丈夫なのですか……?」
側近「……体力にだけは自信があるさ、昔からな」
側近「皮肉な物だ。こんな事になって……初めて、この身を便利だと思ったかもしれん」
側近「人間であった時の様に、早々疲労を感じる訳でも無い」
癒し手「…… ……」
側近「少々食わずとも、眠らずとも……」
癒し手「……でも。ご無理だけは……」
側近「解ってる。此処には……居るから」
側近「余りにも親父が戻らない様ならば、ちゃんと眠る」
側近「お前は……とにかく」
癒し手「はい……身体を第一に。解ってます」
側近「……ああ」
……
………
…………
タタタ……
王「お……とう、さま」ハァハァ
王(顔色が宜しくないのも、体調が優れないだろう事も解ってた)
王(だけど……!)
タタタ……
騎士「! 国王の息子様!」
王「……ッ …… ……伯父上に聞きました」ハァハァ
王「そこを、通して下さい。お父様は……」
騎士「……安らかなお顔を、されております」
王「……ッ」
側近「まだ戻らん……戻れんだろう」
側近「新王にも告げねばならんだろうし……仕事は山積みだ」
癒し手「そう……ですよね」フゥ
側近「お前はもう休め。俺も……もう少ししたら眠るから」
癒し手「大丈夫なのですか……?」
側近「……体力にだけは自信があるさ、昔からな」
側近「皮肉な物だ。こんな事になって……初めて、この身を便利だと思ったかもしれん」
側近「人間であった時の様に、早々疲労を感じる訳でも無い」
癒し手「…… ……」
側近「少々食わずとも、眠らずとも……」
癒し手「……でも。ご無理だけは……」
側近「解ってる。此処には……居るから」
側近「余りにも親父が戻らない様ならば、ちゃんと眠る」
側近「お前は……とにかく」
癒し手「はい……身体を第一に。解ってます」
側近「……ああ」
……
………
…………
タタタ……
王「お……とう、さま」ハァハァ
王(顔色が宜しくないのも、体調が優れないだろう事も解ってた)
王(だけど……!)
タタタ……
騎士「! 国王の息子様!」
王「……ッ …… ……伯父上に聞きました」ハァハァ
王「そこを、通して下さい。お父様は……」
騎士「……安らかなお顔を、されております」
王「……ッ」
41: 2013/11/06(水) 04:10:44.71 ID:w8zJKGMFP
キィ……
騎士「……あ、あの。騎士団長様は……」
王「…… ……」スタスタ
王(! ……血の、匂い)
王「お父様…… ……」
王(綺麗な……お顔をされている。伯父上が……清めて下さったのか)
王(否。戦士兄様か……)
王「……すみません。二人にして頂けますか」
騎士「あ……ッ し、失礼致しました!」
パタン
王(お父様は、『王』を絶やしてはならないと言って居られた)
王(魔導国……否。書の街の事があるから……あったから?)
王(……しかし、あれはもう『終わったこと』だ)
王(次が無いとも限らないからか。『世界』への便宜上……?)
王(……僕には。何も教えて下さらなかった)
王(何時も、お父様は……伯父上と、二人で)
王(……否。兄様が戻られてからは、戦士兄様も……)
王(僕には『王』になれと。それだけで……)
王(肝心の事は、何も教えて下さらなかった)
王「……な、ぜ。ですか。お父様」
王「…… ……」ナデ
王(頬……冷たい)
騎士「……あ、あの。騎士団長様は……」
王「…… ……」スタスタ
王(! ……血の、匂い)
王「お父様…… ……」
王(綺麗な……お顔をされている。伯父上が……清めて下さったのか)
王(否。戦士兄様か……)
王「……すみません。二人にして頂けますか」
騎士「あ……ッ し、失礼致しました!」
パタン
王(お父様は、『王』を絶やしてはならないと言って居られた)
王(魔導国……否。書の街の事があるから……あったから?)
王(……しかし、あれはもう『終わったこと』だ)
王(次が無いとも限らないからか。『世界』への便宜上……?)
王(……僕には。何も教えて下さらなかった)
王(何時も、お父様は……伯父上と、二人で)
王(……否。兄様が戻られてからは、戦士兄様も……)
王(僕には『王』になれと。それだけで……)
王(肝心の事は、何も教えて下さらなかった)
王「……な、ぜ。ですか。お父様」
王「…… ……」ナデ
王(頬……冷たい)
42: 2013/11/06(水) 04:17:37.08 ID:w8zJKGMFP
王「…… ……」
王(確かに、戦士兄様は……『勇者の共』だ)
王(……戻られたと言う事は、魔王を倒したと言う事なんだろうか)
王(それに、あの得体の知れない男。お父様は随分と信用なさって居た様だけど)
王(……ちらとしか見ていない。話した事も無い)
王(『勇者』にそっくりな、紫色の瞳の男……何者?)
王(…… ……伯父上は、何を考えていらっしゃるのだろう)
王(戦士兄様は…… ……どうして、一人で……否)
王(僧侶と言う女性と共に戻った、んだったか)
王(……彼女も、勇者の仲間)
王(…… ……僕が産まれる迄。お父様は戦士兄様を我が子の様にも)
王(可愛がって居たと聞いている)
王(……違う。そうじゃなくて)
王(…… ……駄目だ。頭が働かない。考えがまとまらない)
王(僕は……本当に『王』なのか?)
王(僕に譲るのだと仰った時、お父様は……まだ)
王(あの鍛冶師の村からの船に、戦士兄様が乗っているとは知らなかったのだろう)
王(……もし、知っていたら、僕は…… ……僕には……!)
王(…… ……なんだろう。酷く、寂しい)
騎士「あ……騎士団長様……!」
王子「新お……国王の息子は?」
王(……伯父上か。追いかけてきたんだな)
騎士「中に……」
王子「そうか」
騎士「あ、待って下さい。二人にして欲しい、と……」
王子「…… ……」
王(…… ……)クル、スタスタ
カチャ
王(確かに、戦士兄様は……『勇者の共』だ)
王(……戻られたと言う事は、魔王を倒したと言う事なんだろうか)
王(それに、あの得体の知れない男。お父様は随分と信用なさって居た様だけど)
王(……ちらとしか見ていない。話した事も無い)
王(『勇者』にそっくりな、紫色の瞳の男……何者?)
王(…… ……伯父上は、何を考えていらっしゃるのだろう)
王(戦士兄様は…… ……どうして、一人で……否)
王(僧侶と言う女性と共に戻った、んだったか)
王(……彼女も、勇者の仲間)
王(…… ……僕が産まれる迄。お父様は戦士兄様を我が子の様にも)
王(可愛がって居たと聞いている)
王(……違う。そうじゃなくて)
王(…… ……駄目だ。頭が働かない。考えがまとまらない)
王(僕は……本当に『王』なのか?)
王(僕に譲るのだと仰った時、お父様は……まだ)
王(あの鍛冶師の村からの船に、戦士兄様が乗っているとは知らなかったのだろう)
王(……もし、知っていたら、僕は…… ……僕には……!)
王(…… ……なんだろう。酷く、寂しい)
騎士「あ……騎士団長様……!」
王子「新お……国王の息子は?」
王(……伯父上か。追いかけてきたんだな)
騎士「中に……」
王子「そうか」
騎士「あ、待って下さい。二人にして欲しい、と……」
王子「…… ……」
王(…… ……)クル、スタスタ
カチャ
44: 2013/11/06(水) 04:24:04.25 ID:w8zJKGMFP
王「……伯父上」
王子「……気にするな。待っているから」
王「いえ、どうぞ……入って下さい」
王子「…… ……」
王「お聞きしたい事も、あります」
王子「落ち着いてからでも良……」
王「聞く権利があるでしょう?」
王子「…… ……」
王「…… ……」ジッ
王子「騎士、皆に知らせるのは少し待て」
騎士「……は、はい。まだ、一部の者しか」
王子「城の中に居る者には構わん。が、それ以上はまだ……」
王「……明日にでも、街の人達にはすぐに、お知らせします」
王「今日は、そっとしておいてください」
王子「…… ……」
王「……戦士兄様は、呼ばなくて良いのですか、伯父上」
王子「あいつはもう休ませた」
王子「……お前は、気にしなくて良い」
王「……そう、ですか」
騎士「あ、あの……」
王「人払いを。それから、貴方ももう……休んで下さい」
王子「……ああ、悪いな、こんな時間に」
騎士「い、いえ……それは」
王子「通常通りの夜間勤務の者以外は、休む様に言ってくれ」
王子「それから明日の朝一、騎士は一端庁舎に集合後、待つ様に」
騎士「了解しました。通達しておきます」
王子「頼む」
王「……ありがとうございました」
パタン
王子「……気にするな。待っているから」
王「いえ、どうぞ……入って下さい」
王子「…… ……」
王「お聞きしたい事も、あります」
王子「落ち着いてからでも良……」
王「聞く権利があるでしょう?」
王子「…… ……」
王「…… ……」ジッ
王子「騎士、皆に知らせるのは少し待て」
騎士「……は、はい。まだ、一部の者しか」
王子「城の中に居る者には構わん。が、それ以上はまだ……」
王「……明日にでも、街の人達にはすぐに、お知らせします」
王「今日は、そっとしておいてください」
王子「…… ……」
王「……戦士兄様は、呼ばなくて良いのですか、伯父上」
王子「あいつはもう休ませた」
王子「……お前は、気にしなくて良い」
王「……そう、ですか」
騎士「あ、あの……」
王「人払いを。それから、貴方ももう……休んで下さい」
王子「……ああ、悪いな、こんな時間に」
騎士「い、いえ……それは」
王子「通常通りの夜間勤務の者以外は、休む様に言ってくれ」
王子「それから明日の朝一、騎士は一端庁舎に集合後、待つ様に」
騎士「了解しました。通達しておきます」
王子「頼む」
王「……ありがとうございました」
パタン
45: 2013/11/06(水) 04:26:49.26 ID:w8zJKGMFP
>>43
おはよう!
おはよう!
46: 2013/11/06(水) 04:41:03.02 ID:w8zJKGMFP
王子「…… ……」
王「伯父上」
王子「な、んだ」
王「……僕は、本当に『王』なのですか」
王子「…… ……」
王「あの時、確かにお父様は、僕に…… ……」
王子「疑う必要など何も無いだろう。お前は……お前が、王だ」
王子「……あの後、あいつは」
王「…… ……」
王子「『何かあれば、権限を一時的に兄さんに預ける』……覚えてるか」
王「……魔導国に行ったとき、のですか」
王子「まだ有効だとか抜かしてたが……」
王「!」
王子「……正式に表明していないとはいえ『王』はお前だ」
王子「勿論、後ろ盾にでも何でもなってやる」
王子「伯父として、騎士団長として、全力でお前を、この国を守る」
王「……伯父上」
王子「心配はしなくて良い」ナデ
王「…… ……」
王(違う……!)
王(僕は……否。勿論、僕で務まるのか)
王(お父様の様に、立派に……顔も、知らないけれど。お祖母様の様に)
王(国を、民を率いていけるのか……勿論、そんな不安もあるけど)
王(そうじゃ無い……!)
王「戦士兄様は」
王子「?」
王「……騎士団長を継がれる、のですか」
王子「……そんな話は何もしてないさ」
王(ならばあの時、何の話をしていたのです?)
王「しかし……勇者と一緒では無いとは言え、この国に戻ってきたと言う事は……」
王子「俺もまだ、詳しい話は聞いては居ないんだ」
王子「……勇者様も。もう一人……此処に居ない仲間も」
王子「生きている、とは言っていたが」
王「伯父上」
王子「な、んだ」
王「……僕は、本当に『王』なのですか」
王子「…… ……」
王「あの時、確かにお父様は、僕に…… ……」
王子「疑う必要など何も無いだろう。お前は……お前が、王だ」
王子「……あの後、あいつは」
王「…… ……」
王子「『何かあれば、権限を一時的に兄さんに預ける』……覚えてるか」
王「……魔導国に行ったとき、のですか」
王子「まだ有効だとか抜かしてたが……」
王「!」
王子「……正式に表明していないとはいえ『王』はお前だ」
王子「勿論、後ろ盾にでも何でもなってやる」
王子「伯父として、騎士団長として、全力でお前を、この国を守る」
王「……伯父上」
王子「心配はしなくて良い」ナデ
王「…… ……」
王(違う……!)
王(僕は……否。勿論、僕で務まるのか)
王(お父様の様に、立派に……顔も、知らないけれど。お祖母様の様に)
王(国を、民を率いていけるのか……勿論、そんな不安もあるけど)
王(そうじゃ無い……!)
王「戦士兄様は」
王子「?」
王「……騎士団長を継がれる、のですか」
王子「……そんな話は何もしてないさ」
王(ならばあの時、何の話をしていたのです?)
王「しかし……勇者と一緒では無いとは言え、この国に戻ってきたと言う事は……」
王子「俺もまだ、詳しい話は聞いては居ないんだ」
王子「……勇者様も。もう一人……此処に居ない仲間も」
王子「生きている、とは言っていたが」
47: 2013/11/06(水) 04:48:41.96 ID:w8zJKGMFP
王「……では、魔王は倒した……のです、ね?」
王(世界中の魔物の力が、弱くなっていると耳にした。であれば……)
王子「…… ……」
王「……伯父上?」
王子「以前もそうだった。金の髪の勇者が…… ……」
王「あ……」
王(……そう、だ。お父様から聞いた)
王(弱体化していった魔物が、何時か又……力をつけ始め……)
王(そうして次の『勇者』が……)
王子「繰り返さねば良いと……思う、が」
王子「…… ……」
王「可能性はゼロとまだ、判断出来ない、と言う事ですか?」
王子「……そ、うだ……な」
王子(僧侶からの話を……どう、伝えたもんか。否)
王子(……伝えるべきか否か、も……)
王子「…… ……」
王「…… ……」
王「……明日、戦士兄様に会うことは出来ますか」
王子「? 勿論だ」
王「では、襲名披露の前にお会いしたいとお伝え下さい」
王子「……解った」
王「明日、お父様の訃報と、僕の……」
王子「正式な戴冠式はもう少し後だ」
王「……何故、です?」
王子「……よく考えなさい」
王「え?」
王子「あいつの様に、とか。早く、とか。焦る気持ちは解るけどな」
王「ぼ、僕は焦ってなんか……!」
王子「……悲しんでばかりは居られない。それは解ってるよ」
王子「でも、悲しむ自由もあるんだ。それには、時間だって要る」
王「……!」
王(世界中の魔物の力が、弱くなっていると耳にした。であれば……)
王子「…… ……」
王「……伯父上?」
王子「以前もそうだった。金の髪の勇者が…… ……」
王「あ……」
王(……そう、だ。お父様から聞いた)
王(弱体化していった魔物が、何時か又……力をつけ始め……)
王(そうして次の『勇者』が……)
王子「繰り返さねば良いと……思う、が」
王子「…… ……」
王「可能性はゼロとまだ、判断出来ない、と言う事ですか?」
王子「……そ、うだ……な」
王子(僧侶からの話を……どう、伝えたもんか。否)
王子(……伝えるべきか否か、も……)
王子「…… ……」
王「…… ……」
王「……明日、戦士兄様に会うことは出来ますか」
王子「? 勿論だ」
王「では、襲名披露の前にお会いしたいとお伝え下さい」
王子「……解った」
王「明日、お父様の訃報と、僕の……」
王子「正式な戴冠式はもう少し後だ」
王「……何故、です?」
王子「……よく考えなさい」
王「え?」
王子「あいつの様に、とか。早く、とか。焦る気持ちは解るけどな」
王「ぼ、僕は焦ってなんか……!」
王子「……悲しんでばかりは居られない。それは解ってるよ」
王子「でも、悲しむ自由もあるんだ。それには、時間だって要る」
王「……!」
48: 2013/11/06(水) 04:56:53.47 ID:w8zJKGMFP
王子「『形式』は後で良い。お前が王であることに代わりはないからな」
王子「……明日から、葬儀が終わるまで、どれだけかかったって数日だ」
王「…… ……」
王子「その後、正式に『形』を見せてあげれば良い」
王「は……はい」
王子「そんな顔するな。怒っている訳じゃ無い」
王「…… ……」
王子「それにな、王」
王「?」
王子「『お披露目』が済んでしまうと、何より悲しむ時間が無くなるのは」
王子「お前自身だよ。弟王子がやっていた様に」
王子「仕事に忙殺される様になるんだ。ただでさえ」
王子「魔導……じゃない。書の街の事とか」
王子「勇者様の事もある。これからの『未来』の為には」
王子「足踏みしていられないんだ」
王「…… ……は、い」
王子「……ん」
王「すみません、伯父上……」
王子「謝る事は無い……混乱して当然だ」
王子「……見張りを立てておく。お前ももう休みなさい」
王子「俺も家に戻るよ」
王「はい…… ……あの、一つだけ宜しいですか」
王子「ん? ……ああ、聞きたい事があるって言ってたな」
王「あ、いえ……あの」
王子「?」
王「それは……また、明日にでも。そうでは無くて」
王(……何だか、言い出せなくなった。何を話していたのか、等……)
王「……僧侶と言う女性なんですが」
王子「…… ……ああ」
王子「……明日から、葬儀が終わるまで、どれだけかかったって数日だ」
王「…… ……」
王子「その後、正式に『形』を見せてあげれば良い」
王「は……はい」
王子「そんな顔するな。怒っている訳じゃ無い」
王「…… ……」
王子「それにな、王」
王「?」
王子「『お披露目』が済んでしまうと、何より悲しむ時間が無くなるのは」
王子「お前自身だよ。弟王子がやっていた様に」
王子「仕事に忙殺される様になるんだ。ただでさえ」
王子「魔導……じゃない。書の街の事とか」
王子「勇者様の事もある。これからの『未来』の為には」
王子「足踏みしていられないんだ」
王「…… ……は、い」
王子「……ん」
王「すみません、伯父上……」
王子「謝る事は無い……混乱して当然だ」
王子「……見張りを立てておく。お前ももう休みなさい」
王子「俺も家に戻るよ」
王「はい…… ……あの、一つだけ宜しいですか」
王子「ん? ……ああ、聞きたい事があるって言ってたな」
王「あ、いえ……あの」
王子「?」
王「それは……また、明日にでも。そうでは無くて」
王(……何だか、言い出せなくなった。何を話していたのか、等……)
王「……僧侶と言う女性なんですが」
王子「…… ……ああ」
49: 2013/11/06(水) 05:02:27.05 ID:w8zJKGMFP
王「あの方も……勇者の仲間、だったんですよね?」
王子「ああ…… ……戦士の子供を身籠もっているそうだよ」
王「……え!?」
王子「……見せてやりたかった、けどな」フゥ
王「…… ……」
王子「それがどうかしたか?」
王「……い、いえ。勇者の仲間、と言っても」
王「彼本人と、戦士兄様しか……知らない、ので」
王子「ああ……そういう事か」
王子「明日、会えるさ」
王「……はい」
王(勇者の共であり、戦士兄様の伴侶)
王(……子供、まで)
王子「……じゃあ、俺も戻る。お前も部屋に戻りなさい」
王「……はい。おやすみなさい、伯父上」
スタスタ、パタン
王(騎士団長の息子。そもそも……長子は伯父上だ)
王(…… ……)
王(もし、僕に……王を譲る前に、戦士兄様が戻っていたら)
王(お父様、貴方は…… ……!!)グッ
王子「ああ…… ……戦士の子供を身籠もっているそうだよ」
王「……え!?」
王子「……見せてやりたかった、けどな」フゥ
王「…… ……」
王子「それがどうかしたか?」
王「……い、いえ。勇者の仲間、と言っても」
王「彼本人と、戦士兄様しか……知らない、ので」
王子「ああ……そういう事か」
王子「明日、会えるさ」
王「……はい」
王(勇者の共であり、戦士兄様の伴侶)
王(……子供、まで)
王子「……じゃあ、俺も戻る。お前も部屋に戻りなさい」
王「……はい。おやすみなさい、伯父上」
スタスタ、パタン
王(騎士団長の息子。そもそも……長子は伯父上だ)
王(…… ……)
王(もし、僕に……王を譲る前に、戦士兄様が戻っていたら)
王(お父様、貴方は…… ……!!)グッ
53: 2013/11/06(水) 10:25:12.61 ID:w8zJKGMFP
……
………
…………
キィ、パタン
王子「…… ……」フゥ
側近「……早かったな」
王子「! ……起きてた、のか」
側近「…… ……」
王子「僧侶は?」
側近「眠っている……と思う、が」
王子「そうか……」
側近「母さんのベッド、使わせて貰ってる」
王子「……構わん」
側近「その侭に……してあったんだな」
王子「……中々家には帰れなかったからな」
王子「それに、ここに居る間、掃除やら片付けやら……やってくれてたのは」
王子「お前だろ、戦士」
側近「……随分昔の事みたいだ」
王子「そうだな。過酷……だっただろう、しな」
側近「…… ……」
側近「国……否。新王は」
王子「……ショックだろう、よ」
側近「…… ……」
王子「戦士、お前は眠らないで良いのか」
側近「……もう少し親父が遅いなら、と思っていたが」
王子「…… ……お前、さ」
側近「?」
王子「酒、飲めたか?」
側近「……付き合う程度、で良いなら」
側近「酔っ払うなよ」
王子「……迷惑、かけたな、あの頃は」
………
…………
キィ、パタン
王子「…… ……」フゥ
側近「……早かったな」
王子「! ……起きてた、のか」
側近「…… ……」
王子「僧侶は?」
側近「眠っている……と思う、が」
王子「そうか……」
側近「母さんのベッド、使わせて貰ってる」
王子「……構わん」
側近「その侭に……してあったんだな」
王子「……中々家には帰れなかったからな」
王子「それに、ここに居る間、掃除やら片付けやら……やってくれてたのは」
王子「お前だろ、戦士」
側近「……随分昔の事みたいだ」
王子「そうだな。過酷……だっただろう、しな」
側近「…… ……」
側近「国……否。新王は」
王子「……ショックだろう、よ」
側近「…… ……」
王子「戦士、お前は眠らないで良いのか」
側近「……もう少し親父が遅いなら、と思っていたが」
王子「…… ……お前、さ」
側近「?」
王子「酒、飲めたか?」
側近「……付き合う程度、で良いなら」
側近「酔っ払うなよ」
王子「……迷惑、かけたな、あの頃は」
54: 2013/11/06(水) 10:34:14.15 ID:w8zJKGMFP
側近「全くだ。弱い癖に」
王子「……お前と飲める機会が来るとはな」
側近「嬉しそうだな」
王子「突っ立ってないで座れ……子供が、大役を果たして」
王子「無事に……しかも、伴侶と孫まで……」
側近「…… ……」
王子「嬉しくない訳が無い……ほら」コトン
側近「ああ……」
王子「……お帰り、息子」
側近「……ただいま」
チィン……
王子「…… ……聞いても、良いだろうか」
側近「剣士は、良いのか」
王子「ちゃんと話すさ」
側近「……長く、なるぞ」
王子「どうせ、眠れないさ」
側近「…… ……」ハァ
王子「……やはり、お怪我は重い、のか?」
側近「…… ……」
王子「…… ……」
側近(……黙って、居る訳にはいかん、か)
側近「……驚くな、と言う方が無理だろう」
王子「ん?」
側近「信じては……貰えんだろうと、思って話す」
王子「……戦士?」
側近「疑うのならば、僧侶……否、癒し手に問いただせば良い」
側近「あいつは、エルフの血を引いている」
側近「……嘘は、つけん」
王子「……癒し、手? おい、お前何を……」
王子「……お前と飲める機会が来るとはな」
側近「嬉しそうだな」
王子「突っ立ってないで座れ……子供が、大役を果たして」
王子「無事に……しかも、伴侶と孫まで……」
側近「…… ……」
王子「嬉しくない訳が無い……ほら」コトン
側近「ああ……」
王子「……お帰り、息子」
側近「……ただいま」
チィン……
王子「…… ……聞いても、良いだろうか」
側近「剣士は、良いのか」
王子「ちゃんと話すさ」
側近「……長く、なるぞ」
王子「どうせ、眠れないさ」
側近「…… ……」ハァ
王子「……やはり、お怪我は重い、のか?」
側近「…… ……」
王子「…… ……」
側近(……黙って、居る訳にはいかん、か)
側近「……驚くな、と言う方が無理だろう」
王子「ん?」
側近「信じては……貰えんだろうと、思って話す」
王子「……戦士?」
側近「疑うのならば、僧侶……否、癒し手に問いただせば良い」
側近「あいつは、エルフの血を引いている」
側近「……嘘は、つけん」
王子「……癒し、手? おい、お前何を……」
55: 2013/11/06(水) 10:43:06.28 ID:w8zJKGMFP
側近「……少年は、港街の勇者様だった」
側近「そして、あいつは……魔王だった」
王子「…… ……」
側近「金の髪の勇者……黒い髪の勇者の父親は」
側近「確かに、魔王を倒した。そして……」
王子「…… ……」
側近「…… ……」
王子「…… ……」
側近「…… ……魔王に、なった」
王子「……な、に…… ……」
側近「…… ……」
王子「は……は、お前……もう、酔ってる、のか」
王子「お……親を、からかうもんじゃ……」
側近「……魔物が弱くなり、数も減っただろう」
側近「今、はどうだ?」
王子「!」
側近「……黒い髪の勇者の母君は、魔王となった金の髪の勇者との間に」
側近「息子を設けた。黒い髪の、勇者だ」
王子「な、何故だ! ……魔王と、人間の子が……!」
側近「……すまん。前後するが……」
側近「母君は、新たな魔王……金の髪の魔王の力で、その身を魔へと変じさせた」
王子「…… ……は?」
側近「共に旅立った仲間……もだ。『戦士』と言う男は『側近』となり」
側近「『魔法使い』と言う女は、『魔導将軍』となった」
王子「! な、ぜ…… ……人が、魔王に与する、ん…… ……だ、よ」
側近「……魔王は、新たな勇者が産まれれば」
側近「身に残るのであろう、光の残照に苦しめられ、意識を失う」
王子「…… ……」
側近「歩けない、話せない……目を開かない」
側近「……再び目を開いたときには、その光は闇に飲み込まれ」
側近「全き闇として、勇者に倒される運命にある」
王子「…… ……」
側近「勇者が、魔王の前に立つその時まで」
側近「苦しみにもがく、魔王の身を。守る為に……」
側近「そして、あいつは……魔王だった」
王子「…… ……」
側近「金の髪の勇者……黒い髪の勇者の父親は」
側近「確かに、魔王を倒した。そして……」
王子「…… ……」
側近「…… ……」
王子「…… ……」
側近「…… ……魔王に、なった」
王子「……な、に…… ……」
側近「…… ……」
王子「は……は、お前……もう、酔ってる、のか」
王子「お……親を、からかうもんじゃ……」
側近「……魔物が弱くなり、数も減っただろう」
側近「今、はどうだ?」
王子「!」
側近「……黒い髪の勇者の母君は、魔王となった金の髪の勇者との間に」
側近「息子を設けた。黒い髪の、勇者だ」
王子「な、何故だ! ……魔王と、人間の子が……!」
側近「……すまん。前後するが……」
側近「母君は、新たな魔王……金の髪の魔王の力で、その身を魔へと変じさせた」
王子「…… ……は?」
側近「共に旅立った仲間……もだ。『戦士』と言う男は『側近』となり」
側近「『魔法使い』と言う女は、『魔導将軍』となった」
王子「! な、ぜ…… ……人が、魔王に与する、ん…… ……だ、よ」
側近「……魔王は、新たな勇者が産まれれば」
側近「身に残るのであろう、光の残照に苦しめられ、意識を失う」
王子「…… ……」
側近「歩けない、話せない……目を開かない」
側近「……再び目を開いたときには、その光は闇に飲み込まれ」
側近「全き闇として、勇者に倒される運命にある」
王子「…… ……」
側近「勇者が、魔王の前に立つその時まで」
側近「苦しみにもがく、魔王の身を。守る為に……」
56: 2013/11/06(水) 10:47:52.58 ID:w8zJKGMFP
側近「漏れ出す……強大な魔力から世界を守る為に」
側近「『仲間』は魔力を魔王にぶつけ、押しとどめなければならない」
王子「!」
側近「……『魔王は、世界を滅ぼそうと等していない』」
側近「『人間達の大いなる勘違い』…… ……だ」
王子「…… ……ちょ、っと待て。じゃあ……!」
側近「……黒い髪の勇者は、金の髪の魔王を倒した」
側近「そうして……彼も、また…… ……」
王子「……待て、って! 戦士……!」
側近「俺は……『勇者』の仲間だ。勇者を……守らなければ行けない、んだ」
王子「戦士……!」
側近「だから……俺は……」
王子「戦士!!」
側近「あいつを……黒い髪の魔王を守る為、この身を、魔へと変じさせた」
王子「…… ……」
側近「……魔法使いも、だ。魔法使いは……『后』となり」
側近「次の、勇者を産むんだ」
王子「……せ、ん…… ……し……」
側近「……俺は、もう戦士じゃ無い」
側近「俺は…… ……『側近』だ」
側近「『仲間』は魔力を魔王にぶつけ、押しとどめなければならない」
王子「!」
側近「……『魔王は、世界を滅ぼそうと等していない』」
側近「『人間達の大いなる勘違い』…… ……だ」
王子「…… ……ちょ、っと待て。じゃあ……!」
側近「……黒い髪の勇者は、金の髪の魔王を倒した」
側近「そうして……彼も、また…… ……」
王子「……待て、って! 戦士……!」
側近「俺は……『勇者』の仲間だ。勇者を……守らなければ行けない、んだ」
王子「戦士……!」
側近「だから……俺は……」
王子「戦士!!」
側近「あいつを……黒い髪の魔王を守る為、この身を、魔へと変じさせた」
王子「…… ……」
側近「……魔法使いも、だ。魔法使いは……『后』となり」
側近「次の、勇者を産むんだ」
王子「……せ、ん…… ……し……」
側近「……俺は、もう戦士じゃ無い」
側近「俺は…… ……『側近』だ」
57: 2013/11/06(水) 10:49:07.20 ID:w8zJKGMFP
おむかえー
65: 2013/11/07(木) 10:03:58.16 ID:NG3f1T78P
おはよう!
>>64
私も言いたい……(・△・)
でも選んでられんからね!働くよ!
>>64
私も言いたい……(・△・)
でも選んでられんからね!働くよ!
66: 2013/11/07(木) 10:10:45.33 ID:NG3f1T78P
王子「…… ……」
側近「…… ……」
王子「……お前、は …… ……」
側近「…… ……」
王子「…… ……」フイ
側近(……当然、だ)ハァ
側近(はいそうですかと信じられる訳がない)
側近(……認められる訳も、無い)
側近(すまない……親父)
王子「…… ……だ」
側近「え?」
王子「な、何が、あろうと…… ……お前は」
王子「俺の息子、だ。俺と祈り女、の……!」
側近「親父…… ……」
王子「……俺達の、子供、だ」ボロボロボロ
側近「…… ……ッ」ポロ
王子「…… ……ッ」ボロボロボロ
側近「!」フイッ ゴシゴシ
王子「……癒し手、と言うのは、僧侶か」
側近「…… ……ああ」
王子「では、彼女も……」
側近「あ……否。違う。癒し手は……違う、んだ」
王子「? しかし……」
側近「そもそもの寿命が違う……否、何もかも、違う」
王子「…… ……」
側近「……魔へと変じられるのは、人間だけの特権だそうだ」
王子「え……」
側近「どちらをも選び取れる……強くて弱く、弱くて強い、人間だけの特権」
王子「……回復魔法も、そうだと言っていた、な」
側近「あ、 ……あ。そうだな。そういえば」
側近「…… ……」
王子「……お前、は …… ……」
側近「…… ……」
王子「…… ……」フイ
側近(……当然、だ)ハァ
側近(はいそうですかと信じられる訳がない)
側近(……認められる訳も、無い)
側近(すまない……親父)
王子「…… ……だ」
側近「え?」
王子「な、何が、あろうと…… ……お前は」
王子「俺の息子、だ。俺と祈り女、の……!」
側近「親父…… ……」
王子「……俺達の、子供、だ」ボロボロボロ
側近「…… ……ッ」ポロ
王子「…… ……ッ」ボロボロボロ
側近「!」フイッ ゴシゴシ
王子「……癒し手、と言うのは、僧侶か」
側近「…… ……ああ」
王子「では、彼女も……」
側近「あ……否。違う。癒し手は……違う、んだ」
王子「? しかし……」
側近「そもそもの寿命が違う……否、何もかも、違う」
王子「…… ……」
側近「……魔へと変じられるのは、人間だけの特権だそうだ」
王子「え……」
側近「どちらをも選び取れる……強くて弱く、弱くて強い、人間だけの特権」
王子「……回復魔法も、そうだと言っていた、な」
側近「あ、 ……あ。そうだな。そういえば」
67: 2013/11/07(木) 10:24:11.76 ID:NG3f1T78P
王子「……では、僧侶は……?」
側近「あいつは、あの侭だ。さっきも言ったが、寿命が……そもそも、違う」
側近「エルフは300年ほど生きる、らしい。癒し手は半分人の血が入っている」
側近「……丁度半分、と考えても」
王子「……次の勇者が産まれて、黒い髪のゆう……魔王が、倒される迄」
王子「旅立ちが16と考えても……生きている、か」
側近「……間に合う、んだ」
王子「……しかし、何故?」
側近「…… ……そ、れは」
王子「あ、ああ……違う。何故お前が魔……に、じゃ無くて」
王子「……悪い、混乱してて考えがまとまらん。だが、ああ……」
側近「…… ……?」
王子「……何故、繰り返すんだ?」
側近「そ、れは」
王子「『少年』も……元、勇者だった、と言うのか?」
側近「否。それは……違うと言っていた」
王子「……誰が」
側近「使用人、と言う……魔王の城に住んでいる女」
側近「……お祖母様の手記に出て来た筈、だ」
側近「少年……紫の魔王に、娼館から。あの街から救い出された一人」
側近「……『少女』と言う女だ」
王子「その……使用人、も」
王子「人から、魔……へ?」
側近「ああ。金の髪の勇者を連れて来た、盲目の……紫の魔王の側近」
王子「!」
側近「……彼も、だそうだ」
王子「…… ……ま、待て!待て!」
側近「な、なんだ」
王子「……すまん、理解が出来ん」
側近「無理もない……俺だって最初は、そうだった」ハァ
側近「あいつは、あの侭だ。さっきも言ったが、寿命が……そもそも、違う」
側近「エルフは300年ほど生きる、らしい。癒し手は半分人の血が入っている」
側近「……丁度半分、と考えても」
王子「……次の勇者が産まれて、黒い髪のゆう……魔王が、倒される迄」
王子「旅立ちが16と考えても……生きている、か」
側近「……間に合う、んだ」
王子「……しかし、何故?」
側近「…… ……そ、れは」
王子「あ、ああ……違う。何故お前が魔……に、じゃ無くて」
王子「……悪い、混乱してて考えがまとまらん。だが、ああ……」
側近「…… ……?」
王子「……何故、繰り返すんだ?」
側近「そ、れは」
王子「『少年』も……元、勇者だった、と言うのか?」
側近「否。それは……違うと言っていた」
王子「……誰が」
側近「使用人、と言う……魔王の城に住んでいる女」
側近「……お祖母様の手記に出て来た筈、だ」
側近「少年……紫の魔王に、娼館から。あの街から救い出された一人」
側近「……『少女』と言う女だ」
王子「その……使用人、も」
王子「人から、魔……へ?」
側近「ああ。金の髪の勇者を連れて来た、盲目の……紫の魔王の側近」
王子「!」
側近「……彼も、だそうだ」
王子「…… ……ま、待て!待て!」
側近「な、なんだ」
王子「……すまん、理解が出来ん」
側近「無理もない……俺だって最初は、そうだった」ハァ
94: 2013/11/10(日) 10:44:06.85 ID:X7n6q+PqP
王子「……何時、知った、んだ?」
側近「魔導国……を出てから、だな」
側近「剣士から聞いているんだろう?」
王子「光に包まれて……お前達四人が消えてしまった、と……」
側近「……ああ。あれは……黒い髪の勇者の母君の魔法だったそうだ」
王子「!?」
側近「転移魔法……母君は俺達の気配を探り当て、呼び寄せた」
王子「…… ……ど、こに」
側近「……最果ての地。魔王の城」
王子「…… ……」
側近「母君はあの……この国の、あの小屋から転移し」
側近「金の髪の魔王の傍へ戻った。俺達を……『勇者』が『魔王』を倒すのを」
側近「見届ける為。それまで……魔王を守る為」
王子「……で、でもお前達、は……」
側近「……『時間がない』んだと言っていた」
王子「え?」
側近「さっきも言っただろう。魔王が目を覚ましてしまえば……」
王子「……全き、闇?」
側近「そうだ。自我を失った……魔王、が理性の歯止めも無く」
王子「!」
側近「力を、奮えば、どうなる?」
王子「に、人間の大いなる勘違い、じゃ無いのか!?」
王子「魔王は、世界を滅ぼそう等とはしていない、と……!」
側近「自我があれば、だ!」
側近「……魔導国での領主の話を覚えて居るだろう?」
王子「…… ……」
側近「魔導国……を出てから、だな」
側近「剣士から聞いているんだろう?」
王子「光に包まれて……お前達四人が消えてしまった、と……」
側近「……ああ。あれは……黒い髪の勇者の母君の魔法だったそうだ」
王子「!?」
側近「転移魔法……母君は俺達の気配を探り当て、呼び寄せた」
王子「…… ……ど、こに」
側近「……最果ての地。魔王の城」
王子「…… ……」
側近「母君はあの……この国の、あの小屋から転移し」
側近「金の髪の魔王の傍へ戻った。俺達を……『勇者』が『魔王』を倒すのを」
側近「見届ける為。それまで……魔王を守る為」
王子「……で、でもお前達、は……」
側近「……『時間がない』んだと言っていた」
王子「え?」
側近「さっきも言っただろう。魔王が目を覚ましてしまえば……」
王子「……全き、闇?」
側近「そうだ。自我を失った……魔王、が理性の歯止めも無く」
王子「!」
側近「力を、奮えば、どうなる?」
王子「に、人間の大いなる勘違い、じゃ無いのか!?」
王子「魔王は、世界を滅ぼそう等とはしていない、と……!」
側近「自我があれば、だ!」
側近「……魔導国での領主の話を覚えて居るだろう?」
王子「…… ……」
95: 2013/11/10(日) 10:51:15.85 ID:X7n6q+PqP
側近「息子であろうが。何であろうが」
側近「…… ……」
王子「魔王が『復活』すれば……『世界』は、終わる……」
側近「だから……『仲間』は『魔王』を守る」
側近「美しい世界を……守るんだ」
王子「…… ……」
側近「……すまん。上手く……説明出来ん」
王子「…… ……」
側近「これ以上は、癒し手が居る時に話す」
側近「……親父も、もう……休め」
王子「……阿呆。眠れるか」
側近「伯父上の事を蔑ろにできんだろうが」
王子「…… ……」
側近「剣士にも……話さねばならん、のだろう」
王子「……俺や、弟王子が知っていた話など」
王子「一部、にも及ばなかった……んだな」
側近「……俺だって……否。俺達だって」
側近「何も、知らないんだ、まだ。本当に……」
王子「『世界の裏側を少しだけ』?」
側近「……ああ」
王子「…… ……」
側近「親不孝な、息子で……すまん」
王子「……お前は、俺の息子だって言っただろう」
王子「たった一人の……祈り女との……」
側近「…… ……」
王子「謝ってくれるな。その方が……親不孝だ」
側近「親父……」
側近「…… ……」
王子「魔王が『復活』すれば……『世界』は、終わる……」
側近「だから……『仲間』は『魔王』を守る」
側近「美しい世界を……守るんだ」
王子「…… ……」
側近「……すまん。上手く……説明出来ん」
王子「…… ……」
側近「これ以上は、癒し手が居る時に話す」
側近「……親父も、もう……休め」
王子「……阿呆。眠れるか」
側近「伯父上の事を蔑ろにできんだろうが」
王子「…… ……」
側近「剣士にも……話さねばならん、のだろう」
王子「……俺や、弟王子が知っていた話など」
王子「一部、にも及ばなかった……んだな」
側近「……俺だって……否。俺達だって」
側近「何も、知らないんだ、まだ。本当に……」
王子「『世界の裏側を少しだけ』?」
側近「……ああ」
王子「…… ……」
側近「親不孝な、息子で……すまん」
王子「……お前は、俺の息子だって言っただろう」
王子「たった一人の……祈り女との……」
側近「…… ……」
王子「謝ってくれるな。その方が……親不孝だ」
側近「親父……」
96: 2013/11/10(日) 11:03:07.07 ID:X7n6q+PqP
王子「……今日は、寝る、よ」
側近「……ああ」
王子「明日……夜」
側近「ん?」
王子「……僧侶……癒し手の事もある。王を休ませたら」
王子「剣士を此処へ連れて戻る」
側近「……解った」
王子「無理だけはさせるなよ」
側近「当然だ」
王子「……家の中の物は自由に使えよ?」
側近「……ありがとう」
王子「礼を……言うところじゃ無い。お前の家でもあるんだから」
側近「…… ……」
王子「…… ……」
側近「……癒し手の、様子を見て……眠る」
王子「ああ……お休み、戦士」
側近「……ああ」
スタスタ、パタン
王子「……側近、か」
王子(……呼べるかよ!馬鹿野郎……!)
側近「……ああ」
王子「明日……夜」
側近「ん?」
王子「……僧侶……癒し手の事もある。王を休ませたら」
王子「剣士を此処へ連れて戻る」
側近「……解った」
王子「無理だけはさせるなよ」
側近「当然だ」
王子「……家の中の物は自由に使えよ?」
側近「……ありがとう」
王子「礼を……言うところじゃ無い。お前の家でもあるんだから」
側近「…… ……」
王子「…… ……」
側近「……癒し手の、様子を見て……眠る」
王子「ああ……お休み、戦士」
側近「……ああ」
スタスタ、パタン
王子「……側近、か」
王子(……呼べるかよ!馬鹿野郎……!)
97: 2013/11/10(日) 14:00:46.43 ID:X7n6q+PqP
……
………
…………
癒し手「ん…… 側近、さん?」モゾ
側近「ああ……すまん、起こしたか」
癒し手「大丈夫……です」
癒し手「……騎士団長様は、まだ……?」
側近「否……話してた」
癒し手「……伝えた、んですね」ギュ
側近「……俺は、端で良いから。身体を伸ばして……」
癒し手「くっついて寝る方が落ち着きます。この子も……嬉しいです」
側近「…… ……」
癒し手「泣きそうな顔、してる」
側近「暗くて見えないだろ」
癒し手「解りますよ」
側近「…… ……」
癒し手「大丈夫……なんて、軽々しく言えません。でも」
癒し手「……話して、貰えない方が、悲しいです」
癒し手「多分……」
側近「……ああ」ギュ
癒し手「……騎士団長様は、何と?」
側近「明日、全て……詳しく話そう、と」
側近「王を眠らせた後、剣士と戻るそうだ」
癒し手「……王様には、お話しされない、のですね」
側近「今の所は、だろう」
癒し手「…… ……」
………
…………
癒し手「ん…… 側近、さん?」モゾ
側近「ああ……すまん、起こしたか」
癒し手「大丈夫……です」
癒し手「……騎士団長様は、まだ……?」
側近「否……話してた」
癒し手「……伝えた、んですね」ギュ
側近「……俺は、端で良いから。身体を伸ばして……」
癒し手「くっついて寝る方が落ち着きます。この子も……嬉しいです」
側近「…… ……」
癒し手「泣きそうな顔、してる」
側近「暗くて見えないだろ」
癒し手「解りますよ」
側近「…… ……」
癒し手「大丈夫……なんて、軽々しく言えません。でも」
癒し手「……話して、貰えない方が、悲しいです」
癒し手「多分……」
側近「……ああ」ギュ
癒し手「……騎士団長様は、何と?」
側近「明日、全て……詳しく話そう、と」
側近「王を眠らせた後、剣士と戻るそうだ」
癒し手「……王様には、お話しされない、のですね」
側近「今の所は、だろう」
癒し手「…… ……」
102: 2013/11/11(月) 10:09:30.08 ID:rDChF+gMP
側近「どう思う?」
癒し手「……?」
側近「王に、だ。話すべきか、否か……」
癒し手「私は……新しい王様の為人を知りませんから」
癒し手「何とも、言えませんが……」
側近「…… ……」
癒し手「『揃った』のであって、『次』で終わるのならば」
癒し手「……知らなくて、良いとも……思います」
側近「保証は、無い。どこにも」
癒し手「…… ……」
側近「終わって欲しい。終わらせてやる、と……思っては居る」
癒し手「……はい」
側近「だが…… ……」
癒し手「……世の中に。『世界』に絶対は……ありません、からね」
側近「…… ……」
側近「悪かった。眠ってくれ」
癒し手「……はい。明日は、どうしますか?」
側近「俺は……王の様子を見に行くつもり、だ」
側近「人でも居るだろうしな」
癒し手「私も、行っても?」
側近「……大丈夫なのか?」
癒し手「無理はしません。王様の……お話し相手ぐらいになら、なれるかな、と」
側近「そんな暇があれば……良いが」
癒し手「あ、そうか……お忙しいでしょうか」
側近「まあ……お前が行きたいというのなら止めはしない」
側近「……会わせて置くべきだとも思うしな。だが……」
癒し手「?」
側近「……否」
癒し手「……?」
側近「王に、だ。話すべきか、否か……」
癒し手「私は……新しい王様の為人を知りませんから」
癒し手「何とも、言えませんが……」
側近「…… ……」
癒し手「『揃った』のであって、『次』で終わるのならば」
癒し手「……知らなくて、良いとも……思います」
側近「保証は、無い。どこにも」
癒し手「…… ……」
側近「終わって欲しい。終わらせてやる、と……思っては居る」
癒し手「……はい」
側近「だが…… ……」
癒し手「……世の中に。『世界』に絶対は……ありません、からね」
側近「…… ……」
側近「悪かった。眠ってくれ」
癒し手「……はい。明日は、どうしますか?」
側近「俺は……王の様子を見に行くつもり、だ」
側近「人でも居るだろうしな」
癒し手「私も、行っても?」
側近「……大丈夫なのか?」
癒し手「無理はしません。王様の……お話し相手ぐらいになら、なれるかな、と」
側近「そんな暇があれば……良いが」
癒し手「あ、そうか……お忙しいでしょうか」
側近「まあ……お前が行きたいというのなら止めはしない」
側近「……会わせて置くべきだとも思うしな。だが……」
癒し手「?」
側近「……否」
103: 2013/11/11(月) 10:14:57.38 ID:rDChF+gMP
側近(癒し手は嘘は……つけない)
側近(大丈夫……だとは思う、が)
癒し手「……滅多な事は、言いませんよ」
側近「……ああ」
……
………
…………
王「では……お願い致します」
騎士「は!」
バタバタ……
ガヤガヤ、ガヤガヤ……
王「…… ……」フゥ
王(誰も、何も言わない……僕が、この)
王(『王』の椅子に座っていても)
キィ
王「……? ……あ!」
剣士「騎士団長に呼ばれたんだ……彼は?」
王「伯父上はまだ……」
剣士「そうか」
王「伯父上は……何と?」
剣士「俺は何も聞いていない。ただ、此処に来い、と」
王「…… ……」
側近(大丈夫……だとは思う、が)
癒し手「……滅多な事は、言いませんよ」
側近「……ああ」
……
………
…………
王「では……お願い致します」
騎士「は!」
バタバタ……
ガヤガヤ、ガヤガヤ……
王「…… ……」フゥ
王(誰も、何も言わない……僕が、この)
王(『王』の椅子に座っていても)
キィ
王「……? ……あ!」
剣士「騎士団長に呼ばれたんだ……彼は?」
王「伯父上はまだ……」
剣士「そうか」
王「伯父上は……何と?」
剣士「俺は何も聞いていない。ただ、此処に来い、と」
王「…… ……」
104: 2013/11/11(月) 10:20:51.91 ID:rDChF+gMP
剣士「……堂々としていろ」
王「え?」
剣士「お前は……お前、が『王』なのだろう?」
王「聞いて、いるのですか」
剣士「国王からな」
王「…… ……そう、ですか」
王(お父様も、伯父上も……部外者であろう、この人に)
王(僕の知らない事を……話して、いた、のか)
王(……否。この人は、鍛冶師の村へ……)
王(しかし…… ……)ハァ
キィ、パタン
王子「剣士、もう来ていたのか」
剣士「……部屋はこの中だからな」
側近「おはよう……眠れたか、王」
王「戦士兄様……!」
側近「……大きくなったな」
王「……そ、の女性は」
癒し手「お初にお目に掛かります、王様」
側近「僧侶、だ……俺の、妻だ」
癒し手「…… ……」
剣士「…… ……」
剣士(騎士団長、目が赤い)
剣士(……眠れて、は居ないんだろうな。当然か)
剣士(人と言うのは……感受性が豊かな生き物……なんだろうな)
剣士(……船長の表情も、コロコロと変わっていた)
剣士(泣いて、笑って……怒って)フゥ
王子「何だ、ため息なんかついて」
剣士「……疑問に思わん方がおかしいだろう」
剣士「何故俺がここに居る?」
王「え?」
剣士「お前は……お前、が『王』なのだろう?」
王「聞いて、いるのですか」
剣士「国王からな」
王「…… ……そう、ですか」
王(お父様も、伯父上も……部外者であろう、この人に)
王(僕の知らない事を……話して、いた、のか)
王(……否。この人は、鍛冶師の村へ……)
王(しかし…… ……)ハァ
キィ、パタン
王子「剣士、もう来ていたのか」
剣士「……部屋はこの中だからな」
側近「おはよう……眠れたか、王」
王「戦士兄様……!」
側近「……大きくなったな」
王「……そ、の女性は」
癒し手「お初にお目に掛かります、王様」
側近「僧侶、だ……俺の、妻だ」
癒し手「…… ……」
剣士「…… ……」
剣士(騎士団長、目が赤い)
剣士(……眠れて、は居ないんだろうな。当然か)
剣士(人と言うのは……感受性が豊かな生き物……なんだろうな)
剣士(……船長の表情も、コロコロと変わっていた)
剣士(泣いて、笑って……怒って)フゥ
王子「何だ、ため息なんかついて」
剣士「……疑問に思わん方がおかしいだろう」
剣士「何故俺がここに居る?」
105: 2013/11/11(月) 10:22:05.69 ID:rDChF+gMP
しゅっきーん!(・ω・)
109: 2013/11/11(月) 23:26:02.86 ID:rDChF+gMP
王子「……聞く権利がある、と。俺が判断したからだ」
王「…… ……」
王子「だが。新王として……弟王子……『国王』から」
王子「『王』を託された、今」
王「!」
王子「貴方が決めるべきでしょう、王様」スッ
王「……か、顔を!上げて下さい!伯父上!」
王子「俺は、貴方に忠誠を誓います。俺として……『騎士団長』として」
癒し手「…… ……」
側近「俺も、誓おう」スッ
王「戦士兄様!?」
側近「……不安も、あるだろう。大きいだろう。だが」
側近「お祖母様、叔父上と受け継がれてきたこの国を」
側近「……再度、『勇者』が戻るだろうこの国の長としての新たなる王に」
癒し手「……王様」
王「は、はい!?」
癒し手「……魔王は、確かに倒されました」
王「!」
癒し手「ですが、魔王は又……復活するでしょう」
王「……どう、してそう言い切れる、のですか」
癒し手「『勇者』の共として、『戻って来てしまった』身として、申し上げます」
剣士「…… ……」
癒し手「魔王は、復活します。そうして新たな勇者が……現れます」
王「……新たな、勇者」
癒し手「はい。私は決して嘘は申しません。申し上げられません」
王「…… ……」
癒し手「この『血』に誓います」
王「……『血』?」
癒し手「此処に居る、私。傍に居て下さる……戦士さん」
癒し手「彼が、この国の『王』と血の繋がっている事実に誓って」
王「……!」
王「…… ……」
王子「だが。新王として……弟王子……『国王』から」
王子「『王』を託された、今」
王「!」
王子「貴方が決めるべきでしょう、王様」スッ
王「……か、顔を!上げて下さい!伯父上!」
王子「俺は、貴方に忠誠を誓います。俺として……『騎士団長』として」
癒し手「…… ……」
側近「俺も、誓おう」スッ
王「戦士兄様!?」
側近「……不安も、あるだろう。大きいだろう。だが」
側近「お祖母様、叔父上と受け継がれてきたこの国を」
側近「……再度、『勇者』が戻るだろうこの国の長としての新たなる王に」
癒し手「……王様」
王「は、はい!?」
癒し手「……魔王は、確かに倒されました」
王「!」
癒し手「ですが、魔王は又……復活するでしょう」
王「……どう、してそう言い切れる、のですか」
癒し手「『勇者』の共として、『戻って来てしまった』身として、申し上げます」
剣士「…… ……」
癒し手「魔王は、復活します。そうして新たな勇者が……現れます」
王「……新たな、勇者」
癒し手「はい。私は決して嘘は申しません。申し上げられません」
王「…… ……」
癒し手「この『血』に誓います」
王「……『血』?」
癒し手「此処に居る、私。傍に居て下さる……戦士さん」
癒し手「彼が、この国の『王』と血の繋がっている事実に誓って」
王「……!」
110: 2013/11/11(月) 23:35:50.99 ID:rDChF+gMP
癒し手「その伴侶となる身として。血を受け継ぐ者を産む者として」
王「…… ……」
癒し手「信じて、下さいますでしょうか」
王「…… ……」
側近「聞いている、と思う。金の髪の勇者……先代の勇者が」
側近「魔王を倒し、この世にはつかの間の平和が訪れた」
側近「魔物は弱った……剣で首を切り落とそうと、即座に絶命しなかった」
側近「あの、強靱な命が」
王「…… ……」
側近「剣士の一太刀……否。戦闘経験の無い、村民の子供の詠唱一つで」
側近「身動きが取れなくなったのを、俺はこの目で見た」
側近「……だが、この仮初めの平和は決して長く続かない」
剣士「…… ……」
側近「『同じ』なんだ。あの時……と」
王子「魔物は弱り、この侭……平和になっていくかと思われたとき」
王子「黒い髪の勇者は、『勇者』として生を受け、俺達の前に現れた」
王子「……弟王子から、この辺の話は聞いているだろう?」
王「……は、い。それは…… ……はい」
剣士「……余りにも、手応えがなさ過ぎた」
王「剣士さん……?」
剣士「数は多いと言え、俺一人の手でも……殲滅できただろう、程に」
剣士「……故に、復活を遂げたとするならば」
剣士「確かに『勇者』は必要だろう。希望として」
剣士「……願えば、叶う」
王「!」
癒し手「お願い致します、王様」
癒し手「産まれて来るこの子の為にも」
側近「……俺も、親父も。叶う限りの手助けをしよう」
王「…… ……」
癒し手「信じて、下さいますでしょうか」
王「…… ……」
側近「聞いている、と思う。金の髪の勇者……先代の勇者が」
側近「魔王を倒し、この世にはつかの間の平和が訪れた」
側近「魔物は弱った……剣で首を切り落とそうと、即座に絶命しなかった」
側近「あの、強靱な命が」
王「…… ……」
側近「剣士の一太刀……否。戦闘経験の無い、村民の子供の詠唱一つで」
側近「身動きが取れなくなったのを、俺はこの目で見た」
側近「……だが、この仮初めの平和は決して長く続かない」
剣士「…… ……」
側近「『同じ』なんだ。あの時……と」
王子「魔物は弱り、この侭……平和になっていくかと思われたとき」
王子「黒い髪の勇者は、『勇者』として生を受け、俺達の前に現れた」
王子「……弟王子から、この辺の話は聞いているだろう?」
王「……は、い。それは…… ……はい」
剣士「……余りにも、手応えがなさ過ぎた」
王「剣士さん……?」
剣士「数は多いと言え、俺一人の手でも……殲滅できただろう、程に」
剣士「……故に、復活を遂げたとするならば」
剣士「確かに『勇者』は必要だろう。希望として」
剣士「……願えば、叶う」
王「!」
癒し手「お願い致します、王様」
癒し手「産まれて来るこの子の為にも」
側近「……俺も、親父も。叶う限りの手助けをしよう」
111: 2013/11/11(月) 23:42:18.50 ID:rDChF+gMP
王子「剣士には申し訳無いが」
王子「……『王』。貴方が、決めるのだ」
王子「『始まりの国』の『王』として」
王「……必要だと言うのであれば、従いましょう。ですが!」
王「これでは、まるで……脅迫です!伯父上!」
王子「…… ……」
王「ぼ、僕は……! お飾りに過ぎない!」
王「貴方達は、僕を見ている様で、見ていない!」
王「僕を梳かして、お父様を……ッ お祖母様を、見ているだけだ!」
王子「……ッ」
王「僕は傀儡じゃない! 都合良く操れる人形じゃ無い!」
側近「……王!」
王「名だけじゃ無いか! ……ッ 誰も、『僕』等見ていない!」
王「襲名したから、何だと言うんです! 都合良く……ッ」
王「本心など、誰からも見えない!」キッ
癒し手「!」
王「『血』に誓って!? 馬鹿馬鹿しい!」
王「貴女が言っていることは、あの……ッ 母親と同じだ!」
王「魔導国と、何が違う!? 都合の良い様に……ッ」
王「何が、『導いて行く者』だ!『指導者』だ!」
王「僕一人、思う様に『支配』出来ず……!」
王子「王!」
王「僕は、父上の頭上の冠じゃ無い!」
王「『僕』は、『僕』だ!」
癒し手「王様!」
王「う、煩い!煩い……!」
王「都合の良い傀儡に等、ならないぞ!」
王「僕は……ッ」
剣士「…… ……」
王「…… ……ッ」
ダダダッ バタン!
王子「……『王』。貴方が、決めるのだ」
王子「『始まりの国』の『王』として」
王「……必要だと言うのであれば、従いましょう。ですが!」
王「これでは、まるで……脅迫です!伯父上!」
王子「…… ……」
王「ぼ、僕は……! お飾りに過ぎない!」
王「貴方達は、僕を見ている様で、見ていない!」
王「僕を梳かして、お父様を……ッ お祖母様を、見ているだけだ!」
王子「……ッ」
王「僕は傀儡じゃない! 都合良く操れる人形じゃ無い!」
側近「……王!」
王「名だけじゃ無いか! ……ッ 誰も、『僕』等見ていない!」
王「襲名したから、何だと言うんです! 都合良く……ッ」
王「本心など、誰からも見えない!」キッ
癒し手「!」
王「『血』に誓って!? 馬鹿馬鹿しい!」
王「貴女が言っていることは、あの……ッ 母親と同じだ!」
王「魔導国と、何が違う!? 都合の良い様に……ッ」
王「何が、『導いて行く者』だ!『指導者』だ!」
王「僕一人、思う様に『支配』出来ず……!」
王子「王!」
王「僕は、父上の頭上の冠じゃ無い!」
王「『僕』は、『僕』だ!」
癒し手「王様!」
王「う、煩い!煩い……!」
王「都合の良い傀儡に等、ならないぞ!」
王「僕は……ッ」
剣士「…… ……」
王「…… ……ッ」
ダダダッ バタン!
116: 2013/11/12(火) 11:09:32.45 ID:SNzP+alOP
剣士「……一体、何の真似だ」ハァ
王子「…… ……」
剣士「こんな馬鹿げた三文芝居を見せる為に、俺を呼んだのか?」
王子「……人生なんて、茶番の連続だ」
剣士「…… ……」
癒し手「あの……本当に、これで良かったのですか?」
王子「良いんだ。これで……良い、んだ」
側近「…… ……」
剣士「?」
王子「……三文芝居か。その通りだな」
剣士「何……?」
癒し手「……王様は、知らない方が良いだろう、と」
癒し手「騎士団長様が……」
王子「……俺は、弟王子ほど頭が良い訳じゃ無いからな」
王子「こんな方法しか、思いつかなかったんだ」
剣士「……戦士や僧侶の言葉は、態とか」ハァ
王子「『側近』に『癒し手』だ」
剣士「! ……話した、のか」
側近「……ああ」
王子「お前は知ってたんだろう、剣士」
剣士「……聞くまでも無い。無かった」
剣士「見れば……解る」
王子「そう、か」
剣士「否、そんな話は……」
王子「王に隠れコソコソとやれば、不信感が増すばかりだろう」
剣士「だからといって、お前……」
王子「…… ……」
剣士「こんな馬鹿げた三文芝居を見せる為に、俺を呼んだのか?」
王子「……人生なんて、茶番の連続だ」
剣士「…… ……」
癒し手「あの……本当に、これで良かったのですか?」
王子「良いんだ。これで……良い、んだ」
側近「…… ……」
剣士「?」
王子「……三文芝居か。その通りだな」
剣士「何……?」
癒し手「……王様は、知らない方が良いだろう、と」
癒し手「騎士団長様が……」
王子「……俺は、弟王子ほど頭が良い訳じゃ無いからな」
王子「こんな方法しか、思いつかなかったんだ」
剣士「……戦士や僧侶の言葉は、態とか」ハァ
王子「『側近』に『癒し手』だ」
剣士「! ……話した、のか」
側近「……ああ」
王子「お前は知ってたんだろう、剣士」
剣士「……聞くまでも無い。無かった」
剣士「見れば……解る」
王子「そう、か」
剣士「否、そんな話は……」
王子「王に隠れコソコソとやれば、不信感が増すばかりだろう」
剣士「だからといって、お前……」
117: 2013/11/12(火) 11:17:16.99 ID:SNzP+alOP
側近「態とであろうが、嘘じゃ無い」
側近「俺は俺として、この国に居る限り……」
癒し手「私も、です。エルフの血に誓い……この子を産む……」
癒し手「この国の血を引く者を産む身として」
癒し手「決して、申しわげたことは嘘じゃありません」
剣士「……『母親』と同じだと、歪曲して受け取って居たぞ」
王子「あれはちょっと吃驚したけどな……言われてみれば」
王子「そう思われたって、不思議じゃ無い」
王子「……王だけをお飾りにして、俺達があいつを『支配』する」
王子「……だが、それで良いんだ。それで、反発してくれれば……」
剣士「……無茶苦茶だな。確かに……頭の悪い考えだ」
側近「剣士」
剣士「事実だ」
王子「戦士、寄せ……良いんだよ」
癒し手「ですが……これでは……」
王子「俺だって嘘じゃ無い。この命ある限り、俺として騎士団長として」
王子「あいつを、何としてでも守っていく」
王子「……だが、『王』はあいつだ」
王子「自分で考え、自分でやっていかなければならないんだ」
癒し手「…… ……」
側近「で、どうするんだ」
王子「……まあ、まさか逃げ出されるとは思わなかった、んだが」
剣士「…… ……」ハァ
癒し手「後で……様子を見に行きます」
側近「お前が?」
癒し手「消去法です……他に、誰が居ます?」
王子「俺じゃ会ってもくれなさそうだしな」
側近「……俺じゃ駄目か?」
剣士「部外者の方が無難だろう。俺か癒し手と考えれば……」
癒し手「……ね?」
側近「俺は俺として、この国に居る限り……」
癒し手「私も、です。エルフの血に誓い……この子を産む……」
癒し手「この国の血を引く者を産む身として」
癒し手「決して、申しわげたことは嘘じゃありません」
剣士「……『母親』と同じだと、歪曲して受け取って居たぞ」
王子「あれはちょっと吃驚したけどな……言われてみれば」
王子「そう思われたって、不思議じゃ無い」
王子「……王だけをお飾りにして、俺達があいつを『支配』する」
王子「……だが、それで良いんだ。それで、反発してくれれば……」
剣士「……無茶苦茶だな。確かに……頭の悪い考えだ」
側近「剣士」
剣士「事実だ」
王子「戦士、寄せ……良いんだよ」
癒し手「ですが……これでは……」
王子「俺だって嘘じゃ無い。この命ある限り、俺として騎士団長として」
王子「あいつを、何としてでも守っていく」
王子「……だが、『王』はあいつだ」
王子「自分で考え、自分でやっていかなければならないんだ」
癒し手「…… ……」
側近「で、どうするんだ」
王子「……まあ、まさか逃げ出されるとは思わなかった、んだが」
剣士「…… ……」ハァ
癒し手「後で……様子を見に行きます」
側近「お前が?」
癒し手「消去法です……他に、誰が居ます?」
王子「俺じゃ会ってもくれなさそうだしな」
側近「……俺じゃ駄目か?」
剣士「部外者の方が無難だろう。俺か癒し手と考えれば……」
癒し手「……ね?」
118: 2013/11/12(火) 11:22:46.72 ID:SNzP+alOP
王子「まあ、適任だろうな」ハァ
王子「事務的なことだけ、済ませてくる」
王子「今日の夜……と思っていたが」
剣士「……『世界の裏側』か」
王子「俺や弟王子より、戦士と癒し手に聞いた方が良いだろう」
王子「……俺も、聞く」
剣士「…… ……」
癒し手「あの、騎士団長様、今朝の……」
王子「ああ……本当に、良いのか?」
側近「癒し手が望むなら」
剣士「?」
王子「ならば先に向かってくれ。そこで……話そう」
王子「裏門の鍵は、これだ。スペアは無い」チャリ
側近「ああ」
王子「無くすなよ……剣士も一緒に行け」
剣士「……あの、小屋か」
王子「ああ。お前は便宜上『城内に軟禁』だからな」
剣士「…… ……」
王子「この国で、子供を産みたい、のだそうだ」
癒し手「黒い髪の勇者様の……母君の愛に守られた部屋ならば」
癒し手「安心、出来そうな気がするんです」
剣士「俺に確認する必要のある話でも無いだろう」
王子「……騎士に伝達したら、すぐに行く」
スタスタ、パタン
側近「……王に任せれば良いと思う、んだがな」
癒し手「……そう、ですね」
剣士「……過保護だな、騎士団長は」
王子「事務的なことだけ、済ませてくる」
王子「今日の夜……と思っていたが」
剣士「……『世界の裏側』か」
王子「俺や弟王子より、戦士と癒し手に聞いた方が良いだろう」
王子「……俺も、聞く」
剣士「…… ……」
癒し手「あの、騎士団長様、今朝の……」
王子「ああ……本当に、良いのか?」
側近「癒し手が望むなら」
剣士「?」
王子「ならば先に向かってくれ。そこで……話そう」
王子「裏門の鍵は、これだ。スペアは無い」チャリ
側近「ああ」
王子「無くすなよ……剣士も一緒に行け」
剣士「……あの、小屋か」
王子「ああ。お前は便宜上『城内に軟禁』だからな」
剣士「…… ……」
王子「この国で、子供を産みたい、のだそうだ」
癒し手「黒い髪の勇者様の……母君の愛に守られた部屋ならば」
癒し手「安心、出来そうな気がするんです」
剣士「俺に確認する必要のある話でも無いだろう」
王子「……騎士に伝達したら、すぐに行く」
スタスタ、パタン
側近「……王に任せれば良いと思う、んだがな」
癒し手「……そう、ですね」
剣士「……過保護だな、騎士団長は」
119: 2013/11/12(火) 11:37:19.86 ID:SNzP+alOP
側近「行こう。此処で話す訳には……な」
癒し手「はい」
剣士「結局……自分で話したのか」
スタスタ……
癒し手「避けては通れません。勇者様と魔王様の……お話しをする上で」
剣士「…… ……ああ」
側近「癒し手、手を。山道は……滑ると危ない」
癒し手「平坦な道ですから大丈夫ですよ……」フフ。ギュ
剣士「何処まで、話した?」
癒し手「この国に向かう船の中で、剣士さんに話したのと同じぐらい……」
癒し手「ですよね?」
側近「ああ……だと、思う」
剣士「?」
癒し手「親子の会話、邪魔できません……寝てました、し」
剣士「……そうか。俺も騎士団長も、予備知識がある、位に」
剣士「思っておいて良い、んだな」
癒し手「はい……騎士団長様が戻られたら」
癒し手「……全て、お話しします」
癒し手「使用人さんから聞いた、全て」
側近「……あれだな。とにかく、中に入って休もう」
剣士「…… ……不思議な心地だ」
癒し手「『母の愛』ですね。紛れも無く、強大な魔力、なのに」
側近「苦しくないのか?本当に……大丈夫なのか」
癒し手「私の……魔石もちゃんと持ってます。でも」
癒し手「……心地、良いですよ」
剣士「『世界の裏側を少しだけ』か」
側近「……? 何だ」
剣士「……何れ、『全て』を知れる、のか?」
癒し手「私達が無理でも……次、が。未来があります」
癒し手「担うのは、貴方達です」
剣士「……俺?」
癒し手「ついて行くのでしょう。『貴方の勇者様』に」
剣士「…… ……ああ」
癒し手「はい」
剣士「結局……自分で話したのか」
スタスタ……
癒し手「避けては通れません。勇者様と魔王様の……お話しをする上で」
剣士「…… ……ああ」
側近「癒し手、手を。山道は……滑ると危ない」
癒し手「平坦な道ですから大丈夫ですよ……」フフ。ギュ
剣士「何処まで、話した?」
癒し手「この国に向かう船の中で、剣士さんに話したのと同じぐらい……」
癒し手「ですよね?」
側近「ああ……だと、思う」
剣士「?」
癒し手「親子の会話、邪魔できません……寝てました、し」
剣士「……そうか。俺も騎士団長も、予備知識がある、位に」
剣士「思っておいて良い、んだな」
癒し手「はい……騎士団長様が戻られたら」
癒し手「……全て、お話しします」
癒し手「使用人さんから聞いた、全て」
側近「……あれだな。とにかく、中に入って休もう」
剣士「…… ……不思議な心地だ」
癒し手「『母の愛』ですね。紛れも無く、強大な魔力、なのに」
側近「苦しくないのか?本当に……大丈夫なのか」
癒し手「私の……魔石もちゃんと持ってます。でも」
癒し手「……心地、良いですよ」
剣士「『世界の裏側を少しだけ』か」
側近「……? 何だ」
剣士「……何れ、『全て』を知れる、のか?」
癒し手「私達が無理でも……次、が。未来があります」
癒し手「担うのは、貴方達です」
剣士「……俺?」
癒し手「ついて行くのでしょう。『貴方の勇者様』に」
剣士「…… ……ああ」
120: 2013/11/12(火) 11:42:26.30 ID:SNzP+alOP
剣士「今度こそ……魔王を、倒す」
……
………
…………
チビ「…… ……」
コンコン
チビ「…… ……」
コンコン!
男「おい、寝てんのか?」
チビ「……父さんだけ?」
男「……起きてんじゃネェか。返事ぐらいしろよ」
カチャ
チビ「…… ……」
男「何だ、泣いてんのか」ハァ
チビ「な、泣いてなんか無い!」
男「……ほら、ホットミルク。取りあえず落ち着け」
チビ「…… ……ありがと」
男「……嫌いになった、か?」
チビ「そう、じゃ無い……けど……」
チビ「でも……!」
……
………
…………
チビ「…… ……」
コンコン
チビ「…… ……」
コンコン!
男「おい、寝てんのか?」
チビ「……父さんだけ?」
男「……起きてんじゃネェか。返事ぐらいしろよ」
カチャ
チビ「…… ……」
男「何だ、泣いてんのか」ハァ
チビ「な、泣いてなんか無い!」
男「……ほら、ホットミルク。取りあえず落ち着け」
チビ「…… ……ありがと」
男「……嫌いになった、か?」
チビ「そう、じゃ無い……けど……」
チビ「でも……!」
121: 2013/11/12(火) 12:09:06.58 ID:SNzP+alOP
男「言いたいことは解るけどな」
チビ「……冷たい、よ。母さんは……」
チビ「困ってる人が……絶対に、居るのに……!」
男「そんな事言っちまえば、世の中に『困ってない』人なんて」
男「ほっとんど居ネェぞ? ましてやこんな状況だ」
チビ「……わ、わかってるよ!」
男「それにな。あそこで、状況もわかんネェ場所に、たかだか……」
男「子供まで乗せた海賊船で突っ込んでって、何が出来る」
チビ「…… ……」
男「戦闘要員っつったって、ド素人だぞ?」
男「……俺も、母さんも。お前に何かあったら、って考えたら」
男「『突撃』と『避難』のどちらを選ぶかは……解る、よな?」
チビ「…… ……」
チビ「でも……あの街の人達、は……」
男「…… ……」ポンポン
チビ「……何で、戦争なんか起こるんだろう」
チビ「何で、魔物なんて居るの!?」
男「チビ……」
チビ「迷惑ばっかりじゃ無いか! 罪も無い、人……!」
男「……俺達だって、見る人から見れば『迷惑』なんだぜ?」
チビ「え……?」
男「そりゃ、虐殺だの強奪だの。そんなこたしねぇけどよ」
男「『海賊』ってだけで、100人居れば100人が」
男「『あの海賊さん達は、酷いことしないから』って」
男「言ってくれる訳、ネェだろ?」
チビ「!」
男「……片方だけから物事見たって、『世界』なんてモンは」
男「なりたたねぇんだよ、チビ」
チビ「…… ……」
男「でもな。困ってる人見たら、助けてやらなきゃってのは」
男「考え方としては、父さん立派だと思うぜ」
チビ「…… ……」
チビ「……冷たい、よ。母さんは……」
チビ「困ってる人が……絶対に、居るのに……!」
男「そんな事言っちまえば、世の中に『困ってない』人なんて」
男「ほっとんど居ネェぞ? ましてやこんな状況だ」
チビ「……わ、わかってるよ!」
男「それにな。あそこで、状況もわかんネェ場所に、たかだか……」
男「子供まで乗せた海賊船で突っ込んでって、何が出来る」
チビ「…… ……」
男「戦闘要員っつったって、ド素人だぞ?」
男「……俺も、母さんも。お前に何かあったら、って考えたら」
男「『突撃』と『避難』のどちらを選ぶかは……解る、よな?」
チビ「…… ……」
チビ「でも……あの街の人達、は……」
男「…… ……」ポンポン
チビ「……何で、戦争なんか起こるんだろう」
チビ「何で、魔物なんて居るの!?」
男「チビ……」
チビ「迷惑ばっかりじゃ無いか! 罪も無い、人……!」
男「……俺達だって、見る人から見れば『迷惑』なんだぜ?」
チビ「え……?」
男「そりゃ、虐殺だの強奪だの。そんなこたしねぇけどよ」
男「『海賊』ってだけで、100人居れば100人が」
男「『あの海賊さん達は、酷いことしないから』って」
男「言ってくれる訳、ネェだろ?」
チビ「!」
男「……片方だけから物事見たって、『世界』なんてモンは」
男「なりたたねぇんだよ、チビ」
チビ「…… ……」
男「でもな。困ってる人見たら、助けてやらなきゃってのは」
男「考え方としては、父さん立派だと思うぜ」
チビ「…… ……」
122: 2013/11/12(火) 12:14:57.54 ID:SNzP+alOP
男「母さんだって……お前が、ここに居るから」
男「『避難』を選んだのさ」
チビ「居なかったら……?」
男「……仲間が、居るだろ? この船には」
チビ「…… ……」
男「『仲間』を危険にさらせるか?」
男「……この船の掟。海賊の掟……『船長の命令は絶対』だ」
男「だが、慕われる要員が無いと、そもそも『仲間』なんてモンは」
男「だぁれも、着いちゃこネェ」
チビ「…… ……」
男「母さんは、冷たいか?」
チビ「…… ……」
男「……ま、良いさ」フゥ
男「母さんが助けに行く、と言えば、海賊共は」
男「威勢良く『アイアイサー!』って、飛び出してっただろうさ」
男「それで誰かが……例え氏んでも。船長の為ならって」
男「言う、かもしれん。だが…… ……」
チビ「もう、良いよ」
男「…… ……」
チビ「……寝るね」
男「…… ……おう」
チビ「おやすみ……」コロン
男「…… ……」フゥ
スタスタ、パタン
チビ(解るよ!解る、けど……!)
チビ(依頼だ、仕事だ、金だ……!!)
チビ(信頼が無いと、仕事は貰えない)
チビ(金は、貰えない!)
チビ(だけど……! 解ってる、けど……!)
男「『避難』を選んだのさ」
チビ「居なかったら……?」
男「……仲間が、居るだろ? この船には」
チビ「…… ……」
男「『仲間』を危険にさらせるか?」
男「……この船の掟。海賊の掟……『船長の命令は絶対』だ」
男「だが、慕われる要員が無いと、そもそも『仲間』なんてモンは」
男「だぁれも、着いちゃこネェ」
チビ「…… ……」
男「母さんは、冷たいか?」
チビ「…… ……」
男「……ま、良いさ」フゥ
男「母さんが助けに行く、と言えば、海賊共は」
男「威勢良く『アイアイサー!』って、飛び出してっただろうさ」
男「それで誰かが……例え氏んでも。船長の為ならって」
男「言う、かもしれん。だが…… ……」
チビ「もう、良いよ」
男「…… ……」
チビ「……寝るね」
男「…… ……おう」
チビ「おやすみ……」コロン
男「…… ……」フゥ
スタスタ、パタン
チビ(解るよ!解る、けど……!)
チビ(依頼だ、仕事だ、金だ……!!)
チビ(信頼が無いと、仕事は貰えない)
チビ(金は、貰えない!)
チビ(だけど……! 解ってる、けど……!)
128: 2013/11/13(水) 09:21:12.89 ID:rLf9sUb4P
……
………
…………
ピーィ……コツン、コン
船長「……?」
船長(鳥……あの女か?)
スタスタ、キィ
パタパタ……
船長「あ、おい、コラ!」
ピィ!
船長「……蒼? ……ああ」
船長(客人の、か……しかし、随分早かったな)
船長(あの塔……先か見えなかったぞ。もう上って……降りてきた、のか?)
ピィ……
船長「どうしたんだよ。部屋の中飛び回って……ああ、水か?」
船長「ちょっと待ってろよ…… と、ほら。その前にお前、手紙を……」
ピィ……
船長「よ、っと……ん?」
………
…………
ピーィ……コツン、コン
船長「……?」
船長(鳥……あの女か?)
スタスタ、キィ
パタパタ……
船長「あ、おい、コラ!」
ピィ!
船長「……蒼? ……ああ」
船長(客人の、か……しかし、随分早かったな)
船長(あの塔……先か見えなかったぞ。もう上って……降りてきた、のか?)
ピィ……
船長「どうしたんだよ。部屋の中飛び回って……ああ、水か?」
船長「ちょっと待ってろよ…… と、ほら。その前にお前、手紙を……」
ピィ……
船長「よ、っと……ん?」
129: 2013/11/13(水) 09:27:28.39 ID:rLf9sUb4P
船長「『待つ必要はありません。依頼は完了として下さい』……え!?」
船長「…… ……」
船長(何か……あった、のか?)ギュ
ピィ!
船長「あ、ああ……はいはい。おい!誰か!」
カチャ
海賊「船長、呼びました?」
海賊「……あれ、蒼い」
船長「客人からの頼りだ。悪いがこいつに、水を……」
ピーィ!
海賊「ああ、はいは……いててて!」
海賊「……お迎え、っすか? ちょ、待てって!」
パタパタパタ……
船長「……出てっちまったか。まあ良い」
船長「あいつも何れ、消えるんだろ」
海賊「……はぁ」
船長「で、何だって?」
海賊「ああ、いえ。迎えに行くんでしょ?手紙届いたって事は」
船長「否……依頼は完了だ」
海賊「え!? で、でも……」
船長「……過ぎる詮索は身を滅ぼすぜ」
海賊「は、はあ……じゃあ、どうします?」
船長「進路は、南の侭か」
海賊「はい」
船長「…… ……」
船長「…… ……」
船長(何か……あった、のか?)ギュ
ピィ!
船長「あ、ああ……はいはい。おい!誰か!」
カチャ
海賊「船長、呼びました?」
海賊「……あれ、蒼い」
船長「客人からの頼りだ。悪いがこいつに、水を……」
ピーィ!
海賊「ああ、はいは……いててて!」
海賊「……お迎え、っすか? ちょ、待てって!」
パタパタパタ……
船長「……出てっちまったか。まあ良い」
船長「あいつも何れ、消えるんだろ」
海賊「……はぁ」
船長「で、何だって?」
海賊「ああ、いえ。迎えに行くんでしょ?手紙届いたって事は」
船長「否……依頼は完了だ」
海賊「え!? で、でも……」
船長「……過ぎる詮索は身を滅ぼすぜ」
海賊「は、はあ……じゃあ、どうします?」
船長「進路は、南の侭か」
海賊「はい」
船長「…… ……」
130: 2013/11/13(水) 09:36:41.93 ID:rLf9sUb4P
船長「……暫く速度を緩めて、そのままだ」
海賊「アイアイサー!」
船長「ついでに、小鳥を探してきてくれ」
海賊「わかりました……船長も、そろそろ休んで下さいよ」
海賊「……もう歳なんですから。目の下、クマすごいっすよ」
船長「……アタシはまだ若いよ!」ドン!
海賊「し、失礼しました!」
タタタ……バタン!
船長「…… ……」ハァ
船長(魔導国や始まりの国の動向が分からない以上)
船長(近づくべきじゃネェな……鍛冶師の村、も)
船長(避けた方が、無難……しかし、な)
船長(補給は必要……港街も無理、とくれば)
船長「……あそこしか、ネェか」ハァ
……
………
…………
キィ、パタン
王子「すまん。待たせたな」
側近「否……」
癒し手「あの、王様は……」
王子「報告だけは済ませたよ。わかりました、とは言ってたが……」
剣士「…… ……」
側近「どうなった、んだ」
王子「正午には逝去の知らせを出す。他の街にもな」
王子「同時に、新王の就任も……葬儀は、明日」
側近「……俺達も、出席して良いのか」
王子「当たり前だろ……何言ってんだ、お前は」
剣士「…… ……」
海賊「アイアイサー!」
船長「ついでに、小鳥を探してきてくれ」
海賊「わかりました……船長も、そろそろ休んで下さいよ」
海賊「……もう歳なんですから。目の下、クマすごいっすよ」
船長「……アタシはまだ若いよ!」ドン!
海賊「し、失礼しました!」
タタタ……バタン!
船長「…… ……」ハァ
船長(魔導国や始まりの国の動向が分からない以上)
船長(近づくべきじゃネェな……鍛冶師の村、も)
船長(避けた方が、無難……しかし、な)
船長(補給は必要……港街も無理、とくれば)
船長「……あそこしか、ネェか」ハァ
……
………
…………
キィ、パタン
王子「すまん。待たせたな」
側近「否……」
癒し手「あの、王様は……」
王子「報告だけは済ませたよ。わかりました、とは言ってたが……」
剣士「…… ……」
側近「どうなった、んだ」
王子「正午には逝去の知らせを出す。他の街にもな」
王子「同時に、新王の就任も……葬儀は、明日」
側近「……俺達も、出席して良いのか」
王子「当たり前だろ……何言ってんだ、お前は」
剣士「…… ……」
131: 2013/11/13(水) 09:44:52.52 ID:rLf9sUb4P
癒し手「……就任式、は?」
王子「一週間後だ……あまり日を開ける訳にはいかん」
癒し手「そう、ですね」
王子「明日が過ぎれば俺も忙しくなる」
王子「……俺も今日はもう、休ませて貰う事にした」
側近「放って置いて良いのか?」
王子「言っただろう? ……明日から、だ」
王子「今日は……今は、そっとしておいた方が、良い」
剣士「……では、話して貰おうか」
王子「どこまで、知っている」
剣士「お互い予備知識があると思って良い、との事だ」
癒し手「私達が知り得るのは、使用人さんから聞いた過去と」
側近「俺達が、見、知り……感じた事。それが全てだ」
王子「……先に、言っておく。俺は……王に何も伝えるつもりは無い」
癒し手「……本当に、良いんですね」
王子「ああ……彼は……彼らは、未来を生きる者達だ」
剣士「成り行きに任す?」
王子「……言葉は悪いが、そうだな」
王子「どちらにしても……『勇者』は戻るのだろう?」
癒し手「……はい」
王子「何も、は言い過ぎか……差し障りの無い所だけ」
側近「そうだな。それは……王に伝えねばならん」
剣士「国王から……聞いていないのか?」
王子「ある程度は聞いていると思う……が」
王子「何もかも『模倣』を押しつける必要は無いだろう?」
癒し手「……そうですね。そこら辺は、後で……」
癒し手「騎士団長様に、判断して貰えれば良いかと思います」
側近「……癒し手」
癒し手「はい……では、ええと……どこ、から」
剣士「知りうる限りの『始まり』から『終わり』まで、だ」
王子「一週間後だ……あまり日を開ける訳にはいかん」
癒し手「そう、ですね」
王子「明日が過ぎれば俺も忙しくなる」
王子「……俺も今日はもう、休ませて貰う事にした」
側近「放って置いて良いのか?」
王子「言っただろう? ……明日から、だ」
王子「今日は……今は、そっとしておいた方が、良い」
剣士「……では、話して貰おうか」
王子「どこまで、知っている」
剣士「お互い予備知識があると思って良い、との事だ」
癒し手「私達が知り得るのは、使用人さんから聞いた過去と」
側近「俺達が、見、知り……感じた事。それが全てだ」
王子「……先に、言っておく。俺は……王に何も伝えるつもりは無い」
癒し手「……本当に、良いんですね」
王子「ああ……彼は……彼らは、未来を生きる者達だ」
剣士「成り行きに任す?」
王子「……言葉は悪いが、そうだな」
王子「どちらにしても……『勇者』は戻るのだろう?」
癒し手「……はい」
王子「何も、は言い過ぎか……差し障りの無い所だけ」
側近「そうだな。それは……王に伝えねばならん」
剣士「国王から……聞いていないのか?」
王子「ある程度は聞いていると思う……が」
王子「何もかも『模倣』を押しつける必要は無いだろう?」
癒し手「……そうですね。そこら辺は、後で……」
癒し手「騎士団長様に、判断して貰えれば良いかと思います」
側近「……癒し手」
癒し手「はい……では、ええと……どこ、から」
剣士「知りうる限りの『始まり』から『終わり』まで、だ」
132: 2013/11/13(水) 10:02:26.48 ID:rLf9sUb4P
癒し手「……はい。前後したり、詳しくない場所は曖昧になりますけど」
王子「構わない。分からない事は聞く」
癒し手「……知りうる限りの『始まり』……時系列で行くと」
癒し手「紫の魔王の側近様が……まだ、人間だった頃の話です」
王子「……あの盲目の、男。あいつも……人間だった、んだったな」
癒し手「騎士団長様はご存じですね……彼は」
癒し手「今は大海の大渦と化した、小さな島の出身だったそうです」
癒し手「仲間と三人で……魔王を倒そうと旅立った」
癒し手「『勇者になる筈だった者達』」
剣士「…… ……」
癒し手「船で出立したすぐ後に、当時の魔王……紫の魔王のお爺様の」
癒し手「強大な火の玉で、島は、海に沈められてしまった」
側近「ここから遙か北。最果ての地に近い場所にある、小さな集落」
側近「そこに難破した彼らを救ってくれたのは、小さな男の子だったそうだ」
側近「……連れて行かれた先には、男の子の姉と名乗る女が居た」
剣士「それは……どこかの街か?場所的に……」
癒し手「北の街ではなかったと思います」
癒し手「その近くに……彼ら、その姉弟達の仲間達で集い」
癒し手「生活をしていた、と聞きました」
側近「……女は、三人に問うたそうだ」
側近「『優れた加護を持つ者はいるか』、と」
剣士「! まさか……」
王子「……え?」
癒し手「私の推測に過ぎません、けど……」
癒し手「それが……母親さん達の言ってらっしゃった」
剣士「『始まりの姉弟』」
王子「ある程度、国王に聞いて知っている……が」
王子「……ただの、伝承では無かった、のか!?」
王子「構わない。分からない事は聞く」
癒し手「……知りうる限りの『始まり』……時系列で行くと」
癒し手「紫の魔王の側近様が……まだ、人間だった頃の話です」
王子「……あの盲目の、男。あいつも……人間だった、んだったな」
癒し手「騎士団長様はご存じですね……彼は」
癒し手「今は大海の大渦と化した、小さな島の出身だったそうです」
癒し手「仲間と三人で……魔王を倒そうと旅立った」
癒し手「『勇者になる筈だった者達』」
剣士「…… ……」
癒し手「船で出立したすぐ後に、当時の魔王……紫の魔王のお爺様の」
癒し手「強大な火の玉で、島は、海に沈められてしまった」
側近「ここから遙か北。最果ての地に近い場所にある、小さな集落」
側近「そこに難破した彼らを救ってくれたのは、小さな男の子だったそうだ」
側近「……連れて行かれた先には、男の子の姉と名乗る女が居た」
剣士「それは……どこかの街か?場所的に……」
癒し手「北の街ではなかったと思います」
癒し手「その近くに……彼ら、その姉弟達の仲間達で集い」
癒し手「生活をしていた、と聞きました」
側近「……女は、三人に問うたそうだ」
側近「『優れた加護を持つ者はいるか』、と」
剣士「! まさか……」
王子「……え?」
癒し手「私の推測に過ぎません、けど……」
癒し手「それが……母親さん達の言ってらっしゃった」
剣士「『始まりの姉弟』」
王子「ある程度、国王に聞いて知っている……が」
王子「……ただの、伝承では無かった、のか!?」
133: 2013/11/13(水) 10:31:02.81 ID:rLf9sUb4P
癒し手「先ほども言った様に、私の……推測に過ぎません。ですが」
剣士「『劣等種』……だった、か」
癒し手「優れた加護を持たない者の蔑称……で良いんですよね?」
王子「だと思う……が」
側近「その……『劣等種』をどんな風に扱っていたかまでは解らんが」
側近「三人が優れた加護を持たないと知ると、手のひらを返した様に」
側近「冷たい態度になった……んだったな?」
癒し手「はい。次の日、北の街へと送っていって貰ったのだと」
癒し手「……その姉弟は、共に茶の瞳を持っていたそうです」
剣士「……雷、か」
癒し手「近親婚を繰り返していては、血が濃くなりすぎて」
癒し手「産まれても、すぐに氏んでしまう……人口が、増えない」
癒し手「故に、優れた加護を持つ他の血を入れて……栄える必要があるのだと」
癒し手「言っていた、そうです」
側近「どうにかして人を徐々に人を増やし……居を転々として……」
側近「……多分、それが『魔導の街』の始まりだ」
剣士「街、と言うか……『領主の血筋』のルーツ、か」
癒し手「北の街で船を手に入れ、魔王の城へと……三人は乗り込みました」
癒し手「……対峙した魔王は『黒い髪に紅い瞳』をしていた」
王子「え!? 少年は……!」
癒し手「紅い瞳の魔王は、少年のお父様です」
剣士「……何気なく聞いていたが、島を沈めたという魔王は……」
側近「少年の祖父、だ」
王子「……ちょっと待て、魔王は……!」
癒し手「……確かに、今の『魔王』は『黒い髪の勇者』です」
癒し手「その黒い髪の勇者様が倒した『魔王』は……」
王子「『金の髪の勇者』…… し、しかし!」
剣士「『劣等種』……だった、か」
癒し手「優れた加護を持たない者の蔑称……で良いんですよね?」
王子「だと思う……が」
側近「その……『劣等種』をどんな風に扱っていたかまでは解らんが」
側近「三人が優れた加護を持たないと知ると、手のひらを返した様に」
側近「冷たい態度になった……んだったな?」
癒し手「はい。次の日、北の街へと送っていって貰ったのだと」
癒し手「……その姉弟は、共に茶の瞳を持っていたそうです」
剣士「……雷、か」
癒し手「近親婚を繰り返していては、血が濃くなりすぎて」
癒し手「産まれても、すぐに氏んでしまう……人口が、増えない」
癒し手「故に、優れた加護を持つ他の血を入れて……栄える必要があるのだと」
癒し手「言っていた、そうです」
側近「どうにかして人を徐々に人を増やし……居を転々として……」
側近「……多分、それが『魔導の街』の始まりだ」
剣士「街、と言うか……『領主の血筋』のルーツ、か」
癒し手「北の街で船を手に入れ、魔王の城へと……三人は乗り込みました」
癒し手「……対峙した魔王は『黒い髪に紅い瞳』をしていた」
王子「え!? 少年は……!」
癒し手「紅い瞳の魔王は、少年のお父様です」
剣士「……何気なく聞いていたが、島を沈めたという魔王は……」
側近「少年の祖父、だ」
王子「……ちょっと待て、魔王は……!」
癒し手「……確かに、今の『魔王』は『黒い髪の勇者』です」
癒し手「その黒い髪の勇者様が倒した『魔王』は……」
王子「『金の髪の勇者』…… し、しかし!」
134: 2013/11/13(水) 10:42:52.32 ID:rLf9sUb4P
おむかえー
149: 2013/11/15(金) 15:35:10.29 ID:UounOCTPP
剣士「勇者は魔王を倒し、魔王となる……」
剣士「絡繰りはともかく……どこで、違えた?」
癒し手「……金の髪の勇者様、黒い髪の勇者様のお父様は、人間でした」
癒し手「人間として……否」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
王子「何だ」
癒し手「どう、説明して良い物か……」
剣士「思考は後だ。説明を先に」
癒し手「……ですね。聞いたままを一端、伝えます」
側近「使用人の話では、紫の魔王の側近が……苦しみだし」
王子「…… ……」
側近「不思議な言葉を話し出した、そうだ」
癒し手「『生と氏』『特異点』『王』『拾う者』」
癒し手「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』」
癒し手「『知を受け継ぐ者』『光と闇』『勇者と魔王』」
剣士「…… ……」
癒し手「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
癒し手「『我が名は、勇者』」
癒し手「『光に導かれし運命の子』」
癒し手「『闇に抱かれし運命の子』」
癒し手「『汝の名は、魔王』」
癒し手「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
癒し手「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者!』」 」
王子「な……ん、だ、それは……」
側近「紫の魔王の側近は、紫の魔王に『瞳』を与えられて居たらしい」
王子「……瞳?」
側近「ああ。彼の『紫の瞳』の片方を」
剣士「与えられた、と……は?」
側近「文字通りだ。食わされたらしい」
王子「!」
剣士「絡繰りはともかく……どこで、違えた?」
癒し手「……金の髪の勇者様、黒い髪の勇者様のお父様は、人間でした」
癒し手「人間として……否」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
王子「何だ」
癒し手「どう、説明して良い物か……」
剣士「思考は後だ。説明を先に」
癒し手「……ですね。聞いたままを一端、伝えます」
側近「使用人の話では、紫の魔王の側近が……苦しみだし」
王子「…… ……」
側近「不思議な言葉を話し出した、そうだ」
癒し手「『生と氏』『特異点』『王』『拾う者』」
癒し手「『受け入れる者』『表裏一体』『欠片』」
癒し手「『知を受け継ぐ者』『光と闇』『勇者と魔王』」
剣士「…… ……」
癒し手「『拒否権のない選択を受け入れ、美しい世界を守り、魔王を倒す者』」
癒し手「『我が名は、勇者』」
癒し手「『光に導かれし運命の子』」
癒し手「『闇に抱かれし運命の子』」
癒し手「『汝の名は、魔王』」
癒し手「『途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪』」
癒し手「『腐った世界の腐った不条理を断ち切らんとする者!』」 」
王子「な……ん、だ、それは……」
側近「紫の魔王の側近は、紫の魔王に『瞳』を与えられて居たらしい」
王子「……瞳?」
側近「ああ。彼の『紫の瞳』の片方を」
剣士「与えられた、と……は?」
側近「文字通りだ。食わされたらしい」
王子「!」
150: 2013/11/15(金) 15:55:30.81 ID:UounOCTPP
癒し手「少し、脱線しましたけど……」
剣士「構わん……終わりでは無いだろう?」
王子「食わされ……ッ」
側近「……心話、とか言う物も可能だったらしい。繋がっている、と」
側近「言う……事、かな」
癒し手「その、言葉を発せられた時……紫の魔王の側近さんの瞳は」
癒し手「紫に変じ……」
剣士「何……?」
癒し手「……その後、彼らは紫の光に襲われ、気がついた時には」
癒し手「紫の魔王の側近さんの光は奪われていた」
側近「使用人が、紫の魔王の傍へ行った時に……金の髪の赤ん坊を見つけたそうだ」
癒し手「紫の魔王様は『器』」
王子「器……?」
癒し手「はい。そして『中身』は……金の髪の勇者様」
王子「!?」
癒し手「紫の魔王様は再び、紫の魔王の側近様の身を通じて、そう言ったそうです」
癒し手「……唐突に『言葉』が流れ込んできた」
剣士「……さっきの奴か」
癒し手「はい……『全てを飲み込めば、全てが消える』」
癒し手「『世界は繰り返されている』……と。だから」
癒し手「ただ、願ったのだと……」
王子「何を、だ」
癒し手「……『否』と」
剣士「…… ……」
剣士「構わん……終わりでは無いだろう?」
王子「食わされ……ッ」
側近「……心話、とか言う物も可能だったらしい。繋がっている、と」
側近「言う……事、かな」
癒し手「その、言葉を発せられた時……紫の魔王の側近さんの瞳は」
癒し手「紫に変じ……」
剣士「何……?」
癒し手「……その後、彼らは紫の光に襲われ、気がついた時には」
癒し手「紫の魔王の側近さんの光は奪われていた」
側近「使用人が、紫の魔王の傍へ行った時に……金の髪の赤ん坊を見つけたそうだ」
癒し手「紫の魔王様は『器』」
王子「器……?」
癒し手「はい。そして『中身』は……金の髪の勇者様」
王子「!?」
癒し手「紫の魔王様は再び、紫の魔王の側近様の身を通じて、そう言ったそうです」
癒し手「……唐突に『言葉』が流れ込んできた」
剣士「……さっきの奴か」
癒し手「はい……『全てを飲み込めば、全てが消える』」
癒し手「『世界は繰り返されている』……と。だから」
癒し手「ただ、願ったのだと……」
王子「何を、だ」
癒し手「……『否』と」
剣士「…… ……」
151: 2013/11/15(金) 16:06:14.31 ID:UounOCTPP
側近「氏んだ器は何れ、内包する魔力に耐えられなくなり」
側近「『暴走』する」
癒し手「だから……生きた中身がその前に……」
剣士「『勇者』が『魔王』を倒す必要が、ある」
王子「…… ……」
癒し手「……はい」
側近「癒し手、『欠片』を忘れている」
癒し手「…… ……」
王子「欠片……」
癒し手「紫の光が発せられたのは、紫の魔王様では無く、紫の魔王の側近様の」
癒し手「身からだった、そうです」
癒し手「紫の魔王様曰く……あの光は『魔王の剣』の……歴代の」
剣士「魔王の剣……?」
癒し手「『魔王達』の欠片……城の天井を突き破り」
癒し手「どこかへと消えていった、『欠片』です」
王子「! ……お母様とお父様に聞いた事がある」
王子「空を……駆け抜けていった光……!」
剣士「おい、魔王の剣って……」
癒し手「……光の剣です」
剣士「!?」
癒し手「紫の魔王様の力が、高まってく最中、彼は……徐々に剣の魔力を」
癒し手「……吸収、していっていたのだと聞いています」
癒し手「紫の魔王の側近さんが与えられた、『瞳』」
癒し手「そして、吸収してしまった剣の魔力」
癒し手「……紫の魔王の側近さんから放たれた光、城を飛び出した『あれ』は」
癒し手「まさしく『魔王』の『欠片』」
剣士「……それを、探し出せ、か」
側近「『暴走』する」
癒し手「だから……生きた中身がその前に……」
剣士「『勇者』が『魔王』を倒す必要が、ある」
王子「…… ……」
癒し手「……はい」
側近「癒し手、『欠片』を忘れている」
癒し手「…… ……」
王子「欠片……」
癒し手「紫の光が発せられたのは、紫の魔王様では無く、紫の魔王の側近様の」
癒し手「身からだった、そうです」
癒し手「紫の魔王様曰く……あの光は『魔王の剣』の……歴代の」
剣士「魔王の剣……?」
癒し手「『魔王達』の欠片……城の天井を突き破り」
癒し手「どこかへと消えていった、『欠片』です」
王子「! ……お母様とお父様に聞いた事がある」
王子「空を……駆け抜けていった光……!」
剣士「おい、魔王の剣って……」
癒し手「……光の剣です」
剣士「!?」
癒し手「紫の魔王様の力が、高まってく最中、彼は……徐々に剣の魔力を」
癒し手「……吸収、していっていたのだと聞いています」
癒し手「紫の魔王の側近さんが与えられた、『瞳』」
癒し手「そして、吸収してしまった剣の魔力」
癒し手「……紫の魔王の側近さんから放たれた光、城を飛び出した『あれ』は」
癒し手「まさしく『魔王』の『欠片』」
剣士「……それを、探し出せ、か」
152: 2013/11/15(金) 16:15:39.10 ID:UounOCTPP
側近「……恐らく、それは」
癒し手「…… ……」
王子「……?」
剣士「…… ……俺、と言いたいのか」
癒し手「はい」
王子「!?」
側近「癒し手が立てた仮説、だ……あくまでも」
癒し手「紫の魔王様に、子供は……居ません」
癒し手「生殖以外での『世継ぎ』……金の髪の勇者様を生み出された」
癒し手「その絡繰りは知るよしもありません。ですが」
癒し手「あの小さな手が紫の刀身の魔王の剣、に触れた途端」
癒し手「……それは、光の剣に生まれ変わった、のです」
側近「『表裏一体』だ、そうだ……『魔王は勇者』『勇者は魔王』」
王子「……無茶苦茶だ!」
癒し手「……少し話を戻します」
癒し手「三人の『勇者になるはずだった者達』が対峙した魔王は」
癒し手「紅い瞳をしていた、と言いましたね」
剣士「……紫の魔王の父、だな」
癒し手「はい。紅い魔王の魔王の剣の刀身は、燃える様な赤だったと聞いています」
王子「な、に!?」
癒し手「……口々に怨みを吐きながら」
癒し手「魔王へと襲いかかった彼らを、魔王は……いとも容易く撥ね除け」
癒し手「満身創痍の三人へ……『生きたいか』と問うた」
剣士「…… ……」
癒し手「『応』としたのは紫の魔王の側近様だけでした」
癒し手「瀕氏の彼に新たなる生を与え、彼の身は……」
剣士「魔と化した、か」ハァ
側近「後はざっとで良いだろう。紫の魔王の側近はそのまま、赤の魔王に仕え」
側近「赤の魔王と、后の間に、紫の魔王が産まれる」
王子「おいおいおい、ちょっと待て!」
癒し手「…… ……」
王子「……?」
剣士「…… ……俺、と言いたいのか」
癒し手「はい」
王子「!?」
側近「癒し手が立てた仮説、だ……あくまでも」
癒し手「紫の魔王様に、子供は……居ません」
癒し手「生殖以外での『世継ぎ』……金の髪の勇者様を生み出された」
癒し手「その絡繰りは知るよしもありません。ですが」
癒し手「あの小さな手が紫の刀身の魔王の剣、に触れた途端」
癒し手「……それは、光の剣に生まれ変わった、のです」
側近「『表裏一体』だ、そうだ……『魔王は勇者』『勇者は魔王』」
王子「……無茶苦茶だ!」
癒し手「……少し話を戻します」
癒し手「三人の『勇者になるはずだった者達』が対峙した魔王は」
癒し手「紅い瞳をしていた、と言いましたね」
剣士「……紫の魔王の父、だな」
癒し手「はい。紅い魔王の魔王の剣の刀身は、燃える様な赤だったと聞いています」
王子「な、に!?」
癒し手「……口々に怨みを吐きながら」
癒し手「魔王へと襲いかかった彼らを、魔王は……いとも容易く撥ね除け」
癒し手「満身創痍の三人へ……『生きたいか』と問うた」
剣士「…… ……」
癒し手「『応』としたのは紫の魔王の側近様だけでした」
癒し手「瀕氏の彼に新たなる生を与え、彼の身は……」
剣士「魔と化した、か」ハァ
側近「後はざっとで良いだろう。紫の魔王の側近はそのまま、赤の魔王に仕え」
側近「赤の魔王と、后の間に、紫の魔王が産まれる」
王子「おいおいおい、ちょっと待て!」
153: 2013/11/15(金) 16:23:49.78 ID:UounOCTPP
王子「どうして、仕える!? 島を……ッ」
癒し手「ああ、そうでした……えっと、島を沈めたのは」
剣士「紫の魔王の祖父、だったか」
癒し手「はい。赤の魔王様は先代……お爺様、を」
癒し手「自らの手で殺めたのです」
剣士「…… ……」
癒し手「『もう少し早く、頃していれば。すまなかった』と」
癒し手「……土下座、されたそうですよ」
王子「……『魔王』が? し、しかし、頃す、とは……」
癒し手「それが『世代交代の儀式』なのだそうです」
癒し手「……『血』の繋がった『次代』が『先代』を頃し」
側近「あらたな『魔王』となり、『魔王としての力』と」
側近「『魔王の剣』を手に入れるのだそうだ」
剣士「……『勇者』は『魔王』を倒し」
王子「『新たな魔王』となる…… ……!?」
癒し手「……そこは、受け継がれてしまった、んでしょうね」
王子「紫の魔王の……剣、は……紫の刀身をしていた、と言っていたな」
側近「そうだ。紫の魔王が、赤の魔王を倒し……『新たな魔王』となった時」
側近「手にしたその剣は、瞳の色……」
癒し手「……持つ者の加護の色を、写し取る、のでしょうね」
剣士「…… ……」
癒し手「ああ、そうでした……えっと、島を沈めたのは」
剣士「紫の魔王の祖父、だったか」
癒し手「はい。赤の魔王様は先代……お爺様、を」
癒し手「自らの手で殺めたのです」
剣士「…… ……」
癒し手「『もう少し早く、頃していれば。すまなかった』と」
癒し手「……土下座、されたそうですよ」
王子「……『魔王』が? し、しかし、頃す、とは……」
癒し手「それが『世代交代の儀式』なのだそうです」
癒し手「……『血』の繋がった『次代』が『先代』を頃し」
側近「あらたな『魔王』となり、『魔王としての力』と」
側近「『魔王の剣』を手に入れるのだそうだ」
剣士「……『勇者』は『魔王』を倒し」
王子「『新たな魔王』となる…… ……!?」
癒し手「……そこは、受け継がれてしまった、んでしょうね」
王子「紫の魔王の……剣、は……紫の刀身をしていた、と言っていたな」
側近「そうだ。紫の魔王が、赤の魔王を倒し……『新たな魔王』となった時」
側近「手にしたその剣は、瞳の色……」
癒し手「……持つ者の加護の色を、写し取る、のでしょうね」
剣士「…… ……」
163: 2013/11/16(土) 19:53:48.85 ID:0zkF+TGoP
私もスコーン食いてぇな!
帰ってかけたらちょっとだけー!
帰ってかけたらちょっとだけー!
165: 2013/11/16(土) 22:02:13.59 ID:0zkF+TGoP
癒し手「これも、使用人さん達の仮説に過ぎませんが……」
癒し手「光の剣……あれは、元々……」
癒し手「『勇者』……否。『人間達の知の結晶』だったのではないか、と」
王子「……?」
側近「魔は、力にどうしても頼りがちになってしまう、と言う事だ」
剣士「……成る程。溢れる程の力、魔力を持っていれば」
剣士「『知』は疎かになる、と言いたい……のか」
癒し手「……黒い髪のゆ……魔王様の、お母様が言ってらした」
癒し手「『魔法なんて使い様』と言う言葉は、確かに……納得出来るのです」
癒し手「何かを攻撃するだけが『魔法』じゃ無いんです」
剣士「転移や……魔導国でお前達が消えた時の、あれもあるな」
王子「あれ?」
剣士「どうやって居場所を知るんだ? 直接見る訳には行かないだろう」
剣士「恐らくは気配を追って……」
癒し手「でしょうね。確かに、私でも真似事は出来ます」
王子「お前は、エルフだからだろう? そんな真似は、人間には……!」
癒し手「否定はしません。ですが、やり方が解らなければ……どうしようもありません」
癒し手「裏を返せば、やり方さえ知っていれば、人間にも出来るかもしれないんです」
癒し手「……勿論、魔力の絶対量とか、素質とかは……必要になってきますけど」
側近「『絶対無理だ』とは言い切れん、な」
癒し手「……もし、無理だったとするのならば。では、どうします?」
王子「え?」
癒し手「……『知』です。足りない物を補う知恵、技術……」
王子「…… ……」
剣士「確かに、溢れる程の魔力があれば……」
側近「さっき剣士が言った様に、疎かになる」
王子「し、しかし……!」
癒し手「『仮説』です。どこまで行っても」
癒し手「私達に……過去を『見る』術はありませんから」
癒し手「でも、しっくりきませんか。『魔王』を倒しに言った『勇者』が」
癒し手「敗北し、魔王に『勇者の剣』を奪われたのだとしたら」
剣士「……それが、持ち手により加護を移す魔法剣だとするならば」
癒し手「それは、その瞬間に、『魔王の剣』となるのです」
癒し手「光の剣……あれは、元々……」
癒し手「『勇者』……否。『人間達の知の結晶』だったのではないか、と」
王子「……?」
側近「魔は、力にどうしても頼りがちになってしまう、と言う事だ」
剣士「……成る程。溢れる程の力、魔力を持っていれば」
剣士「『知』は疎かになる、と言いたい……のか」
癒し手「……黒い髪のゆ……魔王様の、お母様が言ってらした」
癒し手「『魔法なんて使い様』と言う言葉は、確かに……納得出来るのです」
癒し手「何かを攻撃するだけが『魔法』じゃ無いんです」
剣士「転移や……魔導国でお前達が消えた時の、あれもあるな」
王子「あれ?」
剣士「どうやって居場所を知るんだ? 直接見る訳には行かないだろう」
剣士「恐らくは気配を追って……」
癒し手「でしょうね。確かに、私でも真似事は出来ます」
王子「お前は、エルフだからだろう? そんな真似は、人間には……!」
癒し手「否定はしません。ですが、やり方が解らなければ……どうしようもありません」
癒し手「裏を返せば、やり方さえ知っていれば、人間にも出来るかもしれないんです」
癒し手「……勿論、魔力の絶対量とか、素質とかは……必要になってきますけど」
側近「『絶対無理だ』とは言い切れん、な」
癒し手「……もし、無理だったとするのならば。では、どうします?」
王子「え?」
癒し手「……『知』です。足りない物を補う知恵、技術……」
王子「…… ……」
剣士「確かに、溢れる程の魔力があれば……」
側近「さっき剣士が言った様に、疎かになる」
王子「し、しかし……!」
癒し手「『仮説』です。どこまで行っても」
癒し手「私達に……過去を『見る』術はありませんから」
癒し手「でも、しっくりきませんか。『魔王』を倒しに言った『勇者』が」
癒し手「敗北し、魔王に『勇者の剣』を奪われたのだとしたら」
剣士「……それが、持ち手により加護を移す魔法剣だとするならば」
癒し手「それは、その瞬間に、『魔王の剣』となるのです」
166: 2013/11/16(土) 22:12:36.69 ID:0zkF+TGoP
剣士「…… ……」
癒し手「……話、戻しますね」
側近「どこまで話したか」
癒し手「ええと……ああ、紫の魔王様がお生まれになった、あたりですね」
癒し手「……ごめんなさい、また脱線しちゃいます、けど」
剣士「何だ?」
癒し手「少し、エルフの……母の話を、しておきます」
剣士「? 関係はあるのか?」
癒し手「無いとは言えません……『強大な力を生む者の末路』ですから」
側近「…… ……」
王子「末路?」
癒し手「私の母……姫、は『長』であり『次代の長を産む者』でした」
王子「普通のエルフと、何が違うんだ」
癒し手「少しばかり強い力を持っている、のだそうです」
癒し手「……エルフは、生涯一人しか子を産むことが出来ないそうです」
癒し手「そして、『長』は『世襲制』……必ず、『長』を産むのです」
側近「…… ……」
癒し手「母のお父様が、当時の長であったと聞いています」
王子「……今は、姫、が長だと言うのか? しかし……」
癒し手「……母は、私を産んで氏んでいます」
剣士「……北の塔、で、か」
癒し手「出てから、ですね……紫の魔王様に眠らされて……」
王子「お、おい! その辺はさっぱりなんだ!」
王子「やはり、順序立てて……」
癒し手「あ……その方が、良いですか?」
側近「話しやすい方で言い、だろう」ハァ
王子「戦士……?」
剣士「……全て聞くと言った、からにはな。側近の意見に同意、だが」
剣士「混乱して話半分になっては意味が無い」
癒し手「……わかりました。では……順序立てて、お話ししましょう」
癒し手「……話、戻しますね」
側近「どこまで話したか」
癒し手「ええと……ああ、紫の魔王様がお生まれになった、あたりですね」
癒し手「……ごめんなさい、また脱線しちゃいます、けど」
剣士「何だ?」
癒し手「少し、エルフの……母の話を、しておきます」
剣士「? 関係はあるのか?」
癒し手「無いとは言えません……『強大な力を生む者の末路』ですから」
側近「…… ……」
王子「末路?」
癒し手「私の母……姫、は『長』であり『次代の長を産む者』でした」
王子「普通のエルフと、何が違うんだ」
癒し手「少しばかり強い力を持っている、のだそうです」
癒し手「……エルフは、生涯一人しか子を産むことが出来ないそうです」
癒し手「そして、『長』は『世襲制』……必ず、『長』を産むのです」
側近「…… ……」
癒し手「母のお父様が、当時の長であったと聞いています」
王子「……今は、姫、が長だと言うのか? しかし……」
癒し手「……母は、私を産んで氏んでいます」
剣士「……北の塔、で、か」
癒し手「出てから、ですね……紫の魔王様に眠らされて……」
王子「お、おい! その辺はさっぱりなんだ!」
王子「やはり、順序立てて……」
癒し手「あ……その方が、良いですか?」
側近「話しやすい方で言い、だろう」ハァ
王子「戦士……?」
剣士「……全て聞くと言った、からにはな。側近の意見に同意、だが」
剣士「混乱して話半分になっては意味が無い」
癒し手「……わかりました。では……順序立てて、お話ししましょう」
167: 2013/11/16(土) 22:20:52.89 ID:0zkF+TGoP
癒し手「紫の魔王様のお母様は、紫の魔王様をお産みになった後」
癒し手「……身体が、砂の様に音も無く崩れていく、奇病にかかられたのだそうです」
剣士「…… ……」
癒し手「毎日、少しずつ……崩れていって」
癒し手「最後には、何もなくなってしまった。全て……風に攫われてしまった、のだと」
王子「な……ッ」
癒し手「詳細は後にしますが、『共通点』は」
剣士「『強大な力を持つ者を生み出す』…… ……」
癒し手「言うなれば『代償』でしょうね」
側近「…… ……」
癒し手「その後、紫の瞳の魔王様はお父様を頃し、魔王になります」
癒し手「……この頃はまだ、血生臭い時代であった、とも聞いています」
側近「詳細は誰も解らない。紫の魔王の側近は体験しているんだろうが」
側近「……使用人も、詳しくは知らない様だったな」
癒し手「はい。赤の魔王様は……人との共存を望んでいられた」
王子「え!?」
側近「だが、そう簡単には行かなかった様だ。時代背景も勿論だが……」
側近「赤の魔王の先代は、先にも言った様に……酷く好戦的な輩だった」
剣士「……島を沈めてしまう程の力も持っていた、だろう」
癒し手「赤の魔王様が魔王として地位と力を継承された時に」
癒し手「先代に賛同する者達は……その」
癒し手「……粗方、排除されたそう、なのですが」
王子「…… ……ッ」ゾッ
癒し手「ですが、赤の魔王様も、歴代の魔族達も見た事が無い」
癒し手「加護を……紫の瞳を持って生まれた、紫の魔王様の事もあって」
側近「紫の魔王を、余り外へ……人目に出すことを良しとはしなかったらしい」
癒し手「……身体が、砂の様に音も無く崩れていく、奇病にかかられたのだそうです」
剣士「…… ……」
癒し手「毎日、少しずつ……崩れていって」
癒し手「最後には、何もなくなってしまった。全て……風に攫われてしまった、のだと」
王子「な……ッ」
癒し手「詳細は後にしますが、『共通点』は」
剣士「『強大な力を持つ者を生み出す』…… ……」
癒し手「言うなれば『代償』でしょうね」
側近「…… ……」
癒し手「その後、紫の瞳の魔王様はお父様を頃し、魔王になります」
癒し手「……この頃はまだ、血生臭い時代であった、とも聞いています」
側近「詳細は誰も解らない。紫の魔王の側近は体験しているんだろうが」
側近「……使用人も、詳しくは知らない様だったな」
癒し手「はい。赤の魔王様は……人との共存を望んでいられた」
王子「え!?」
側近「だが、そう簡単には行かなかった様だ。時代背景も勿論だが……」
側近「赤の魔王の先代は、先にも言った様に……酷く好戦的な輩だった」
剣士「……島を沈めてしまう程の力も持っていた、だろう」
癒し手「赤の魔王様が魔王として地位と力を継承された時に」
癒し手「先代に賛同する者達は……その」
癒し手「……粗方、排除されたそう、なのですが」
王子「…… ……ッ」ゾッ
癒し手「ですが、赤の魔王様も、歴代の魔族達も見た事が無い」
癒し手「加護を……紫の瞳を持って生まれた、紫の魔王様の事もあって」
側近「紫の魔王を、余り外へ……人目に出すことを良しとはしなかったらしい」
168: 2013/11/16(土) 22:28:16.35 ID:0zkF+TGoP
癒し手「故に、紫の魔王様は……即位後には『無能』呼ばわりされていたそうです」
癒し手「……それが、あの……魔導将軍と、魔導の街の確執に繋がったようです」
王子「……反旗を翻そうとした、のか!?」
癒し手「はい。魔導の街からの劣等種達の解放は」
癒し手「……偶然、あの街であった紫の魔王様と、母と……盗賊様が……」
剣士「ちょっと待て」
側近「何だ」
剣士「……それは『偶然』なのか?」
側近「……紫の瞳の側近にその状況をどうにかしろと焚きつけられて」
側近「転移で着いた先が、エルフの森のすぐ近く」
側近「そうして妊娠中の姫様を伴い、お祖母様と知り合い……」
癒し手「……『偶然』です。そうとしか……判断材料がありません」
剣士「…… ……」
王子「……そうだ! 姫、様のお腹の中の子は……!」
癒し手「私です。人と、エルフのハーフ」
王子「な、何故……!?」
癒し手「……森に迷い込んだ人の子を介抱する内に恋に落ちたのだそうです」
癒し手「さっきの話の続きになりますけど……」
癒し手「身籠もった事を知るや否や、長……お爺様、ですね」
癒し手「……に、堕胎を強要されたのだと」
王子「……ッ」
癒し手「ですが、エルフは生涯一人の子しか産むことは出来ない」
癒し手「否……母は、愛した男の子を堕胎するなんて、考えられなかった……」
癒し手「の、かもしれません」
癒し手「……それに、頃してしまったら」
剣士「次は、無い……のか」
側近「…… ……」
癒し手「それに……『末路』」
王子「え?」
癒し手「紫の魔王様のお母様と同じです」
側近「……『強大な力を持つ者を生み出す代償』」
癒し手「……それが、あの……魔導将軍と、魔導の街の確執に繋がったようです」
王子「……反旗を翻そうとした、のか!?」
癒し手「はい。魔導の街からの劣等種達の解放は」
癒し手「……偶然、あの街であった紫の魔王様と、母と……盗賊様が……」
剣士「ちょっと待て」
側近「何だ」
剣士「……それは『偶然』なのか?」
側近「……紫の瞳の側近にその状況をどうにかしろと焚きつけられて」
側近「転移で着いた先が、エルフの森のすぐ近く」
側近「そうして妊娠中の姫様を伴い、お祖母様と知り合い……」
癒し手「……『偶然』です。そうとしか……判断材料がありません」
剣士「…… ……」
王子「……そうだ! 姫、様のお腹の中の子は……!」
癒し手「私です。人と、エルフのハーフ」
王子「な、何故……!?」
癒し手「……森に迷い込んだ人の子を介抱する内に恋に落ちたのだそうです」
癒し手「さっきの話の続きになりますけど……」
癒し手「身籠もった事を知るや否や、長……お爺様、ですね」
癒し手「……に、堕胎を強要されたのだと」
王子「……ッ」
癒し手「ですが、エルフは生涯一人の子しか産むことは出来ない」
癒し手「否……母は、愛した男の子を堕胎するなんて、考えられなかった……」
癒し手「の、かもしれません」
癒し手「……それに、頃してしまったら」
剣士「次は、無い……のか」
側近「…… ……」
癒し手「それに……『末路』」
王子「え?」
癒し手「紫の魔王様のお母様と同じです」
側近「……『強大な力を持つ者を生み出す代償』」
169: 2013/11/16(土) 22:36:33.37 ID:0zkF+TGoP
王子「!」
癒し手「エルフの妊娠期間は、とても長いのだそうです。ざっと50年……」
剣士「!?」
癒し手「……ですが、母は、紫の魔王様の魔力で北の塔で眠りに着いていますから」
癒し手「あ……以前に、父、は……人間なので」
癒し手「当てはまるとも限りません、けど」
癒し手「……とにかく、エルフの森を逃げ出した母は……紫の魔王様と『偶然』」
癒し手「合流した、んです……そして、その時『森は閉じられた』」
剣士「……?」
側近「長を失ったんだ、永遠に」
王子「!?」
癒し手「……倣うのならば、私が『長』なのでしょう。ですが」
癒し手「私は、ハーフエルフです」
剣士「…… ……」
癒し手「『森の意思だ』とも言っていたそうです」
癒し手「永遠に……美しい鳥籠の中で、彼らは終わるその時まで」
癒し手「……ひっそりと、生きていくのであろう、と」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
王子「…… ……続き、を」
癒し手「……はい」
側近「後は、大体知っているだろう。港街が出来、始まりの国が復活し……」
剣士「復活?」
王子「……此処も太古の昔、魔王に滅ぼされた場所だった、と言う奴だな」
癒し手「そうです。紫の魔王様が残された『不思議な言葉』に」
癒し手「『王』が出て来ました。故に」
王子「……ッ それすらも、偶然だと言うのか!?」
王子「それでは、まるで……ッ」
側近「『できの悪い三文芝居』か?」
王子「…… ……ッ」
癒し手「エルフの妊娠期間は、とても長いのだそうです。ざっと50年……」
剣士「!?」
癒し手「……ですが、母は、紫の魔王様の魔力で北の塔で眠りに着いていますから」
癒し手「あ……以前に、父、は……人間なので」
癒し手「当てはまるとも限りません、けど」
癒し手「……とにかく、エルフの森を逃げ出した母は……紫の魔王様と『偶然』」
癒し手「合流した、んです……そして、その時『森は閉じられた』」
剣士「……?」
側近「長を失ったんだ、永遠に」
王子「!?」
癒し手「……倣うのならば、私が『長』なのでしょう。ですが」
癒し手「私は、ハーフエルフです」
剣士「…… ……」
癒し手「『森の意思だ』とも言っていたそうです」
癒し手「永遠に……美しい鳥籠の中で、彼らは終わるその時まで」
癒し手「……ひっそりと、生きていくのであろう、と」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
王子「…… ……続き、を」
癒し手「……はい」
側近「後は、大体知っているだろう。港街が出来、始まりの国が復活し……」
剣士「復活?」
王子「……此処も太古の昔、魔王に滅ぼされた場所だった、と言う奴だな」
癒し手「そうです。紫の魔王様が残された『不思議な言葉』に」
癒し手「『王』が出て来ました。故に」
王子「……ッ それすらも、偶然だと言うのか!?」
王子「それでは、まるで……ッ」
側近「『できの悪い三文芝居』か?」
王子「…… ……ッ」
170: 2013/11/16(土) 22:41:26.48 ID:0zkF+TGoP
癒し手「騎士団長様」
王子「え……あ、何……だ」
癒し手「……この国で、子供を産むことを許して下さいますか」
王子「え!? ……そ、それは、勿論……構わない、が」
剣士「何だ、急に」
癒し手「……私は、この子の成長を見る事ができないかも知れません」
側近「…… ……ッ」
剣士「……『長を産む者』だからか」
癒し手「はい」
王子「そ、それは……」
癒し手「祖父が長だったと言いました。祖母は……祖母が『長を産む者』です」
癒し手「祖母は母を産み、氏んだのだと聞いています」
癒し手「……母、も……です」
側近「……癒し手」
癒し手「半分人の血が入っているとは、言え」
癒し手「『倣わない』保証もありません」
剣士「……何が産まれる?」
側近「剣士!?」
剣士「当然の疑問だ。その腹の子は、お前が魔に変じてからの」
剣士「……種、だろう?」
王子「!」
癒し手「…… ……はい」
側近「…… ……」
剣士「癒し手の『エルフ』と『人』の血」
剣士「側近、お前の……『人』と『魔』の血」
王子「え……あ、何……だ」
癒し手「……この国で、子供を産むことを許して下さいますか」
王子「え!? ……そ、それは、勿論……構わない、が」
剣士「何だ、急に」
癒し手「……私は、この子の成長を見る事ができないかも知れません」
側近「…… ……ッ」
剣士「……『長を産む者』だからか」
癒し手「はい」
王子「そ、それは……」
癒し手「祖父が長だったと言いました。祖母は……祖母が『長を産む者』です」
癒し手「祖母は母を産み、氏んだのだと聞いています」
癒し手「……母、も……です」
側近「……癒し手」
癒し手「半分人の血が入っているとは、言え」
癒し手「『倣わない』保証もありません」
剣士「……何が産まれる?」
側近「剣士!?」
剣士「当然の疑問だ。その腹の子は、お前が魔に変じてからの」
剣士「……種、だろう?」
王子「!」
癒し手「…… ……はい」
側近「…… ……」
剣士「癒し手の『エルフ』と『人』の血」
剣士「側近、お前の……『人』と『魔』の血」
171: 2013/11/16(土) 22:49:03.93 ID:0zkF+TGoP
癒し手「……未知数、です」
剣士「しかも生きる時代は確実に……『次代の勇者』の時代だ」
側近「……何であろうとも、俺達の子供だ」
側近「『子の幸せを願わない親は居ない』!」
王子「…… ……」
側近「……だろう、親父」
王子「当然、だ」
癒し手「…… ……」
王子「…… ……荒唐無稽な話、だと言うのは、解った」ハァ
側近「親父?」
王子「……もう、頭が着いていかん」
王子「話を聞いても、理解出来る気がしないんだ」
癒し手「……すみません。もっと上手く説明できたら良いんですけど」
王子「あ……否。そうじゃ無い。信じない訳では…… ……」
王子「…… ……否。信じようとすれば、余計に信じられなくなりそうだ」
側近「…… ……」
王子「……僻んだり、否定する訳じゃ無い。だが」
王子「俺は……『過去』だ」
剣士「騎士団長?」
王子「卑怯な言い方かも知れん。これから先は……お前達に任せる方が」
王子「良いだろうと思う、だけだ」
癒し手「騎士団長様……」
王子「逃げている、と言われればそうだろう。だが……」
王子「……新王の事にしてもそうだな。俺は…… ……」
側近「…… ……」
王子「これからを作るのはお前達と、『次代』だ」
王子「……だから …… ……」
癒し手「……『拒否する権利』はあります」
側近「癒し手?」
癒し手「『知らずに居る権利』ですね」
癒し手「……でも、ありがとうございます」
癒し手「信じて……否。信じようとする、努力をして下さって」
剣士「しかも生きる時代は確実に……『次代の勇者』の時代だ」
側近「……何であろうとも、俺達の子供だ」
側近「『子の幸せを願わない親は居ない』!」
王子「…… ……」
側近「……だろう、親父」
王子「当然、だ」
癒し手「…… ……」
王子「…… ……荒唐無稽な話、だと言うのは、解った」ハァ
側近「親父?」
王子「……もう、頭が着いていかん」
王子「話を聞いても、理解出来る気がしないんだ」
癒し手「……すみません。もっと上手く説明できたら良いんですけど」
王子「あ……否。そうじゃ無い。信じない訳では…… ……」
王子「…… ……否。信じようとすれば、余計に信じられなくなりそうだ」
側近「…… ……」
王子「……僻んだり、否定する訳じゃ無い。だが」
王子「俺は……『過去』だ」
剣士「騎士団長?」
王子「卑怯な言い方かも知れん。これから先は……お前達に任せる方が」
王子「良いだろうと思う、だけだ」
癒し手「騎士団長様……」
王子「逃げている、と言われればそうだろう。だが……」
王子「……新王の事にしてもそうだな。俺は…… ……」
側近「…… ……」
王子「これからを作るのはお前達と、『次代』だ」
王子「……だから …… ……」
癒し手「……『拒否する権利』はあります」
側近「癒し手?」
癒し手「『知らずに居る権利』ですね」
癒し手「……でも、ありがとうございます」
癒し手「信じて……否。信じようとする、努力をして下さって」
172: 2013/11/16(土) 22:54:45.95 ID:0zkF+TGoP
王子「…… ……受け入れ、られる気はしないよ、正直」
癒し手「充分です」
剣士「…… ……」
側近「親父……」
王子「……王を、放ってはおけん。俺は先に戻る」
王子「家に戻るなら……」
癒し手「あ、あの!」
王子「ん? ……ああ、後で様子を、と言ってくれてたな」
王子「それだったら、城に寄ってくれれば……」
癒し手「あ、違うんです、あの……」
癒し手「私達、此処に済ませて頂くことは……出来ませんか?」
側近「え!?」
癒し手「……長居を、するつもりはありません。出来ません」
癒し手「ですが……」
王子「遠慮なら、しなくて良い……と、言ってやりたい、が」
王子「……良いのか、戦士?」
側近「……まあ、癒し手が望むなら」
王子「……なら、別に構わないだろう。ああ、でも……」
王子「今日は一端……否。落ち着いてから、改めて」
王子「……でも、良いだろうか。準備もあるし……」
癒し手「あ、勿論です! ……色々、お忙しいでしょうし」
王子「うん。じゃあ……それもついでに、報告しておくよ」
王子「……こっちから逃げる分、あっちは……向き合う」
剣士「王、か」
王子「…… ……」
癒し手「充分です」
剣士「…… ……」
側近「親父……」
王子「……王を、放ってはおけん。俺は先に戻る」
王子「家に戻るなら……」
癒し手「あ、あの!」
王子「ん? ……ああ、後で様子を、と言ってくれてたな」
王子「それだったら、城に寄ってくれれば……」
癒し手「あ、違うんです、あの……」
癒し手「私達、此処に済ませて頂くことは……出来ませんか?」
側近「え!?」
癒し手「……長居を、するつもりはありません。出来ません」
癒し手「ですが……」
王子「遠慮なら、しなくて良い……と、言ってやりたい、が」
王子「……良いのか、戦士?」
側近「……まあ、癒し手が望むなら」
王子「……なら、別に構わないだろう。ああ、でも……」
王子「今日は一端……否。落ち着いてから、改めて」
王子「……でも、良いだろうか。準備もあるし……」
癒し手「あ、勿論です! ……色々、お忙しいでしょうし」
王子「うん。じゃあ……それもついでに、報告しておくよ」
王子「……こっちから逃げる分、あっちは……向き合う」
剣士「王、か」
王子「…… ……」
173: 2013/11/16(土) 22:59:44.85 ID:0zkF+TGoP
王子「……俺で、この様だ。そりゃ、若くは無いが」
癒し手「そんな……!」
王子「王には、何も話さない」
癒し手「……はい」
剣士「…… ……」
側近「…… ……」
王子「……剣士、お前はどうする? あの部屋で良いか」
剣士「…… ……否。俺は…… ……魔王の所へ行く」
癒し手「え!?」
側近「何……?」
剣士「真偽の程はともかく……『欠片』だとするのなら……否」
剣士「…… ……『魔法なんて使い様』なのだろう」
王子「……転移、するつもりか」
剣士「ああ。最果ての場所は解る筈だ」
癒し手「……ビジョンを、送ります」
王子「え?」
癒し手「城の内部の映像を、そのまま……剣士さんの頭の中に」
癒し手「……『願えば、叶う』んです」
側近「……まあ、お前ならば出来るだろうが」
癒し手「側近さんがやるんですよ?」
側近「え!?」
癒し手「……その方が、良いと思うんですけど」
癒し手「駄目でしょうか?」
側近「……そ、ま、そりゃ……え!?」
剣士「……頼んで良いのか、悪いのか」
側近「今!?」
王子「…… ……」
癒し手「……で、良いんですか、剣士さん?」
剣士「向こうへ行っても、同じ話は聞けるのだろう?」
癒し手「そう……ですね。使用人さんの方が、寧ろ詳しいかと」
側近「……解った」ハァ
癒し手「そんな……!」
王子「王には、何も話さない」
癒し手「……はい」
剣士「…… ……」
側近「…… ……」
王子「……剣士、お前はどうする? あの部屋で良いか」
剣士「…… ……否。俺は…… ……魔王の所へ行く」
癒し手「え!?」
側近「何……?」
剣士「真偽の程はともかく……『欠片』だとするのなら……否」
剣士「…… ……『魔法なんて使い様』なのだろう」
王子「……転移、するつもりか」
剣士「ああ。最果ての場所は解る筈だ」
癒し手「……ビジョンを、送ります」
王子「え?」
癒し手「城の内部の映像を、そのまま……剣士さんの頭の中に」
癒し手「……『願えば、叶う』んです」
側近「……まあ、お前ならば出来るだろうが」
癒し手「側近さんがやるんですよ?」
側近「え!?」
癒し手「……その方が、良いと思うんですけど」
癒し手「駄目でしょうか?」
側近「……そ、ま、そりゃ……え!?」
剣士「……頼んで良いのか、悪いのか」
側近「今!?」
王子「…… ……」
癒し手「……で、良いんですか、剣士さん?」
剣士「向こうへ行っても、同じ話は聞けるのだろう?」
癒し手「そう……ですね。使用人さんの方が、寧ろ詳しいかと」
側近「……解った」ハァ
174: 2013/11/16(土) 23:04:31.52 ID:0zkF+TGoP
側近「……無茶言うな、お前」ボソ
剣士「…… ……大丈夫なんだろうな」
側近「願えば叶う、んだろう」スッ
側近(頭、頭の中……な。触れて……これで……ッ)グッ
剣士「…… ……ッ」
剣士(こ、れは……階段、カーテン……? それ、に……ッ)
癒し手「その場所に行きたいと、願って下さい……!」
剣士「……ッ 確かに、無茶……だ……ッ」
シュゥゥン……ッ
癒し手「……ッ ぅ、ウ……ッ」
側近「癒し手!?」
王子「消えた!?」
癒し手「……だ、い丈夫…… ……です……」
癒し手「…… ……成功、した……ん、ですかね」フゥ
側近「……横になれ。すまん。外でやるべきだった」
王子「…… ……」
癒し手「平気、です……」
側近「……阿呆。顔が真っ青だ」
癒し手「……一緒に、連れて帰って貰うのは無理そうですね」
王子「…… ……」
側近「親父?」
王子「……あ、ああ……否…… ……」
王子「……お、俺は……戻る。休んだら、帰れよ、戦士」
スタスタ、パタン
癒し手「……刺激が、強かった……んでしょう、ね」
側近「配慮が足りなかったな」
癒し手「私は……良いんです。でも……」
側近「親父なら…… ……大丈夫だ」
剣士「…… ……大丈夫なんだろうな」
側近「願えば叶う、んだろう」スッ
側近(頭、頭の中……な。触れて……これで……ッ)グッ
剣士「…… ……ッ」
剣士(こ、れは……階段、カーテン……? それ、に……ッ)
癒し手「その場所に行きたいと、願って下さい……!」
剣士「……ッ 確かに、無茶……だ……ッ」
シュゥゥン……ッ
癒し手「……ッ ぅ、ウ……ッ」
側近「癒し手!?」
王子「消えた!?」
癒し手「……だ、い丈夫…… ……です……」
癒し手「…… ……成功、した……ん、ですかね」フゥ
側近「……横になれ。すまん。外でやるべきだった」
王子「…… ……」
癒し手「平気、です……」
側近「……阿呆。顔が真っ青だ」
癒し手「……一緒に、連れて帰って貰うのは無理そうですね」
王子「…… ……」
側近「親父?」
王子「……あ、ああ……否…… ……」
王子「……お、俺は……戻る。休んだら、帰れよ、戦士」
スタスタ、パタン
癒し手「……刺激が、強かった……んでしょう、ね」
側近「配慮が足りなかったな」
癒し手「私は……良いんです。でも……」
側近「親父なら…… ……大丈夫だ」
180: 2013/11/17(日) 22:43:40.68 ID:VzNBr81TP
側近「……癒し手。一つだけ」
癒し手「?」
側近「本当に……此処で。この国で……」
癒し手「……勝手を、言いました。ご免なさい」
側近「さっきの言葉に嘘は無い。お前が望むのならば構わない。だが……」
癒し手「『何が産まれるのか』ですか」
側近「違う!」
癒し手「!」ビクッ
側近「……何であろうと。どんな……『命』であろうと」
側近「俺とお前の子供だ。そんな事じゃ無い……」
癒し手「……ご免なさい」
側近「…… ……否。大きな声を出して……済まなかった」
癒し手「……私が、どうなるか、ですね」
側近「…… ……」
癒し手「こればっかりは、解りません……本当に。ですが」
癒し手「私だって……生きたい。氏にたくなんかない!氏ねない……ッ」
側近「癒し手……ッ」ギュッ
癒し手「貴方を残して、この子を残して、中途半端で」
癒し手「終わりたくなんか、ありません! でも……」ギュッ
側近「…… ……」
癒し手「我が儘、なのでしょうか」
側近「そんな訳あるか……ッ」
癒し手「……いえ……あの」
側近「?」
癒し手「……この子は、勇者様と運命を共にするかも知れないし」
癒し手「普通に、のんびりと……過ごすのかも知れない」
癒し手「それは……『未来』は私には解りません」
癒し手「でも」
側近「でも?」
癒し手「せめて、一年……否、半年でも。数ヶ月でも」
癒し手「数日でも、良いんです」
癒し手「貴方が産まれて、育った……この、始まりの街を」
癒し手「?」
側近「本当に……此処で。この国で……」
癒し手「……勝手を、言いました。ご免なさい」
側近「さっきの言葉に嘘は無い。お前が望むのならば構わない。だが……」
癒し手「『何が産まれるのか』ですか」
側近「違う!」
癒し手「!」ビクッ
側近「……何であろうと。どんな……『命』であろうと」
側近「俺とお前の子供だ。そんな事じゃ無い……」
癒し手「……ご免なさい」
側近「…… ……否。大きな声を出して……済まなかった」
癒し手「……私が、どうなるか、ですね」
側近「…… ……」
癒し手「こればっかりは、解りません……本当に。ですが」
癒し手「私だって……生きたい。氏にたくなんかない!氏ねない……ッ」
側近「癒し手……ッ」ギュッ
癒し手「貴方を残して、この子を残して、中途半端で」
癒し手「終わりたくなんか、ありません! でも……」ギュッ
側近「…… ……」
癒し手「我が儘、なのでしょうか」
側近「そんな訳あるか……ッ」
癒し手「……いえ……あの」
側近「?」
癒し手「……この子は、勇者様と運命を共にするかも知れないし」
癒し手「普通に、のんびりと……過ごすのかも知れない」
癒し手「それは……『未来』は私には解りません」
癒し手「でも」
側近「でも?」
癒し手「せめて、一年……否、半年でも。数ヶ月でも」
癒し手「数日でも、良いんです」
癒し手「貴方が産まれて、育った……この、始まりの街を」
181: 2013/11/17(日) 22:49:47.71 ID:VzNBr81TP
癒し手「少しでも良いから、感じさせてあげたいんです」
癒し手「……親のエゴ、かもしれないですけど」
側近「…… ……」ギュ
癒し手「…… ……勿論。もし、私が……居なくなってしまったら」
癒し手「ここに居ても、魔王様の城に戻っても」
癒し手「……誰かが、助けてくれる……と、都合良く、甘える気なんですけど」クス
側近「…… ……この場所は、この家は。本当に心地良いんだな?」
癒し手「はい。黒い髪の魔王様のお母様……前后様の『愛』は」
癒し手「私に、苦痛は……与えません」
癒し手「……この、魔石のおかげ、でもあるとは思います、けど」
側近「ならば、良い……此処で、良い。ここに居よう、癒し手」
側近「……期間は、限られるが」
癒し手「はい……あ」
側近「ん?」
癒し手「あ、あの……もう一つだけ、我が儘……言っても、良いでしょうか」
側近「何だ?」
癒し手「……女様の像、戻して差し上げたい、んです」
側近「ああ……そうか。持ってきていたな」
癒し手「はい」
癒し手「……港街の神父様、寂しがってらっしゃる……と思います、し」
側近「……身体は大丈夫なのか?」
癒し手「何があっても、貴方がいますから」
側近「否、それはそうだが……こればっかりは、俺にもどうしようもないだろう」
癒し手「そうですね」クスクス
側近「ほら、何だ……つわり、とかだな」
癒し手「……確かに、船酔いとかは酷い気がします、けど」
側近「…… ……」
癒し手「そんな険しい顔しないでくださいよぅ……」
側近「心配してるんだ」
癒し手「……親のエゴ、かもしれないですけど」
側近「…… ……」ギュ
癒し手「…… ……勿論。もし、私が……居なくなってしまったら」
癒し手「ここに居ても、魔王様の城に戻っても」
癒し手「……誰かが、助けてくれる……と、都合良く、甘える気なんですけど」クス
側近「…… ……この場所は、この家は。本当に心地良いんだな?」
癒し手「はい。黒い髪の魔王様のお母様……前后様の『愛』は」
癒し手「私に、苦痛は……与えません」
癒し手「……この、魔石のおかげ、でもあるとは思います、けど」
側近「ならば、良い……此処で、良い。ここに居よう、癒し手」
側近「……期間は、限られるが」
癒し手「はい……あ」
側近「ん?」
癒し手「あ、あの……もう一つだけ、我が儘……言っても、良いでしょうか」
側近「何だ?」
癒し手「……女様の像、戻して差し上げたい、んです」
側近「ああ……そうか。持ってきていたな」
癒し手「はい」
癒し手「……港街の神父様、寂しがってらっしゃる……と思います、し」
側近「……身体は大丈夫なのか?」
癒し手「何があっても、貴方がいますから」
側近「否、それはそうだが……こればっかりは、俺にもどうしようもないだろう」
癒し手「そうですね」クスクス
側近「ほら、何だ……つわり、とかだな」
癒し手「……確かに、船酔いとかは酷い気がします、けど」
側近「…… ……」
癒し手「そんな険しい顔しないでくださいよぅ……」
側近「心配してるんだ」
182: 2013/11/17(日) 22:56:19.28 ID:VzNBr81TP
癒し手「……はい」
癒し手「里帰り……みたい」クスクス
側近「……そうか。暫く、あの教会に滞在していたんだったな」
癒し手「はい。報告も兼ねて……行きたいです」
側近「報告?」
癒し手「……鍛冶師の村の、神父様が父ならば」
癒し手「港街の教会の、女神官様は……母です。私に取っては……」
側近「……そう、か」
癒し手「それ程長い期間であった訳でも、幼かった訳でもありません」
癒し手「でも……」
側近「……ああ。体調の良い日を選んで、行こう」
側近「辛くなれば宿で休めば良い」
癒し手「……ありがとうございます」
側近「気分はどうだ?」
癒し手「今、ですか? もう大丈夫です」
側近「このまま此処で……と、言いたいが」
側近「今日は、俺の家に戻ろう」
癒し手「……そうですね。流石に、お掃除ぐらいはしないと住めませんね」
側近「葬儀と……戴冠式が終われば」
癒し手「……ええ」
側近「……抱えて行こうか?」
癒し手「え!? だ、大丈夫ですよ!」
側近「遠慮は…… ……」
癒し手「本当に、大丈夫ですって! 違います!」
側近「……そんな必氏にならないでくれ。本当に、心配しているんだ」ハァ
癒し手「わかってますけど……病気じゃ無いんですから」
側近「…… ……后も、何れ」
癒し手「…… ……」
癒し手「里帰り……みたい」クスクス
側近「……そうか。暫く、あの教会に滞在していたんだったな」
癒し手「はい。報告も兼ねて……行きたいです」
側近「報告?」
癒し手「……鍛冶師の村の、神父様が父ならば」
癒し手「港街の教会の、女神官様は……母です。私に取っては……」
側近「……そう、か」
癒し手「それ程長い期間であった訳でも、幼かった訳でもありません」
癒し手「でも……」
側近「……ああ。体調の良い日を選んで、行こう」
側近「辛くなれば宿で休めば良い」
癒し手「……ありがとうございます」
側近「気分はどうだ?」
癒し手「今、ですか? もう大丈夫です」
側近「このまま此処で……と、言いたいが」
側近「今日は、俺の家に戻ろう」
癒し手「……そうですね。流石に、お掃除ぐらいはしないと住めませんね」
側近「葬儀と……戴冠式が終われば」
癒し手「……ええ」
側近「……抱えて行こうか?」
癒し手「え!? だ、大丈夫ですよ!」
側近「遠慮は…… ……」
癒し手「本当に、大丈夫ですって! 違います!」
側近「……そんな必氏にならないでくれ。本当に、心配しているんだ」ハァ
癒し手「わかってますけど……病気じゃ無いんですから」
側近「…… ……后も、何れ」
癒し手「…… ……」
183: 2013/11/17(日) 23:01:40.43 ID:VzNBr81TP
側近「……俺以上に、心配しそうだな、魔王……」
癒し手「……想像に容易いですね」クス
……
………
…………
魔王「ッ くしゅん!」
后「キャッ ……何よ、急に」
魔王「…… ……風邪引いた、かなぁ」グズッ
后「…… ……魔王って、風邪引くの?」
魔王「…… ……だよな」
后「ほら、もっとちゃんと布団を……てか、服着たら?」
魔王「……裸でくっついてる方があったかい」ギュ
后「……もう」クスクス
魔王「大丈夫なのか?」
后「え?」
魔王「いや……さっき、痛いとか……言ってたから」
后「もう平気よ」
魔王「そっか……なら、良いんだけど」
后「そろそろ……なのかな」
魔王「何が?」
后「…… ……」
魔王「后?」
后「……月のモノ、よ。魔に変じても」
后「こう言うのって……変わらない、のね」
魔王「……ご、ごめん。そういえば……先月も言ってたな」
后「…… ……何時、出来るのかしらね」
魔王「大丈夫だよ。心配しなくても」ナデ
后「……随分楽観的ね?」
癒し手「……想像に容易いですね」クス
……
………
…………
魔王「ッ くしゅん!」
后「キャッ ……何よ、急に」
魔王「…… ……風邪引いた、かなぁ」グズッ
后「…… ……魔王って、風邪引くの?」
魔王「…… ……だよな」
后「ほら、もっとちゃんと布団を……てか、服着たら?」
魔王「……裸でくっついてる方があったかい」ギュ
后「……もう」クスクス
魔王「大丈夫なのか?」
后「え?」
魔王「いや……さっき、痛いとか……言ってたから」
后「もう平気よ」
魔王「そっか……なら、良いんだけど」
后「そろそろ……なのかな」
魔王「何が?」
后「…… ……」
魔王「后?」
后「……月のモノ、よ。魔に変じても」
后「こう言うのって……変わらない、のね」
魔王「……ご、ごめん。そういえば……先月も言ってたな」
后「…… ……何時、出来るのかしらね」
魔王「大丈夫だよ。心配しなくても」ナデ
后「……随分楽観的ね?」
184: 2013/11/17(日) 23:10:34.38 ID:VzNBr81TP
魔王「……出来なきゃ、どうにかなるのか?」
后「え?」
魔王「勇者が産まれて……俺の中に残る、光の残照が俺を苦しめる」
魔王「……使用人は、そう言ってた」
后「え、ええ……」
魔王「それは、俺の中に微かに残る光、が」
魔王「……勇者に、移って……」
后「貴方は、完全な……『魔』になるから、だろうって」
后「……そんな仮説、立てたわね」
魔王「母さんが……俺を産んで、回復魔法を使えなくなったり」
魔王「魔力が増したり……『親』の片方だけがそうであるとは思いにくい」
魔王「……俺も。父さんも……『魔王』を倒して時点で」
魔王「『勇者』から『魔王』になったのに、矛盾してるよな」
后「……うん」
魔王「『全き闇』になれば……俺は……」
后「…… ……」ギュッ
魔王「……でも、さ。俺達の間に『勇者』が出来なければ」
魔王「俺は、まだ……俺で居られる。50年でも。100年でも」
后「…… ……」
魔王「……あれ?」
后「え?」
魔王「……俺が、『全き闇』……『魔王』」
后「?」
魔王「なら、『勇者』は……『全き光』なのか?」
后「? え? ……え、っと……?」
魔王「…… ……『光と闇の獣』…… ……」
后「魔王?」
魔王「……ッ」ガバッ
后「キャッ!?」
魔王「悪い、后、先に寝ててくれ!」
后「あ、ちょっと、魔王!」
ダダダッ バタン!
タタタタ…… ……
后「…… ……」ハァ
后「え?」
魔王「勇者が産まれて……俺の中に残る、光の残照が俺を苦しめる」
魔王「……使用人は、そう言ってた」
后「え、ええ……」
魔王「それは、俺の中に微かに残る光、が」
魔王「……勇者に、移って……」
后「貴方は、完全な……『魔』になるから、だろうって」
后「……そんな仮説、立てたわね」
魔王「母さんが……俺を産んで、回復魔法を使えなくなったり」
魔王「魔力が増したり……『親』の片方だけがそうであるとは思いにくい」
魔王「……俺も。父さんも……『魔王』を倒して時点で」
魔王「『勇者』から『魔王』になったのに、矛盾してるよな」
后「……うん」
魔王「『全き闇』になれば……俺は……」
后「…… ……」ギュッ
魔王「……でも、さ。俺達の間に『勇者』が出来なければ」
魔王「俺は、まだ……俺で居られる。50年でも。100年でも」
后「…… ……」
魔王「……あれ?」
后「え?」
魔王「……俺が、『全き闇』……『魔王』」
后「?」
魔王「なら、『勇者』は……『全き光』なのか?」
后「? え? ……え、っと……?」
魔王「…… ……『光と闇の獣』…… ……」
后「魔王?」
魔王「……ッ」ガバッ
后「キャッ!?」
魔王「悪い、后、先に寝ててくれ!」
后「あ、ちょっと、魔王!」
ダダダッ バタン!
タタタタ…… ……
后「…… ……」ハァ
185: 2013/11/17(日) 23:16:00.32 ID:VzNBr81TP
キャー! マオウサマ!?
ゴメンシヨウニン、イソイデル!
ナンテカッコウデ!
ギャアアアア!ワスレテタ!
后「……下着ぐらい、着けて行けば良いのに……」ファ
后(まあ、良い…… ……か ……)スゥ
……
………
…………
王「……ご苦労様でした、伯父上」
王「お話しは、以上ですか?」
王子「ああ……夜にでも伝えておく」
王子「変わって礼を言う……ありがとう」
王「……戦士兄様の頼みですから」
王子「では……本題だが。これから……」
王「葬儀の後でも宜しいですか。もう時間が余りありません」
王子「……そうだな」
王「戦士兄様と、僧侶さんも列席されるのでしょう」
王子「ああ」
王「……さっき、チラッとだけですが」
王子「?」
王「……歩きながら、話しましょうか」
王子「あ、ああ……」
スタスタ
王「街は妙なムードだと、騎士の一人が言っていました」
王子「……そう、だな」
王「お父様の訃報を悲しむ声と、僕の……就任を喜ぶ声」
王「……お父様は、良い『王』だったのですね」
王子「……ああ」
ゴメンシヨウニン、イソイデル!
ナンテカッコウデ!
ギャアアアア!ワスレテタ!
后「……下着ぐらい、着けて行けば良いのに……」ファ
后(まあ、良い…… ……か ……)スゥ
……
………
…………
王「……ご苦労様でした、伯父上」
王「お話しは、以上ですか?」
王子「ああ……夜にでも伝えておく」
王子「変わって礼を言う……ありがとう」
王「……戦士兄様の頼みですから」
王子「では……本題だが。これから……」
王「葬儀の後でも宜しいですか。もう時間が余りありません」
王子「……そうだな」
王「戦士兄様と、僧侶さんも列席されるのでしょう」
王子「ああ」
王「……さっき、チラッとだけですが」
王子「?」
王「……歩きながら、話しましょうか」
王子「あ、ああ……」
スタスタ
王「街は妙なムードだと、騎士の一人が言っていました」
王子「……そう、だな」
王「お父様の訃報を悲しむ声と、僕の……就任を喜ぶ声」
王「……お父様は、良い『王』だったのですね」
王子「……ああ」
186: 2013/11/17(日) 23:22:22.97 ID:VzNBr81TP
王「…… ……」
王子「……お前は、弟王子の息子だ。聡明だと思うし」
王子「……お前も、良い王になれるよ」
王「…… ……」
王子「『未来』はお前の……お前達『次代』の手で紡ぐモノだ」
王子「……昨日、戦士達とも話したが」
王「…… ……」
王子「言った言葉に嘘は無い。本当だ」
王子「どんな形であれ、俺はお前を支え、守る」
王子「……命に代えても、だ」
王「……そうですね。僕は『王』ですから」
王子「それだけじゃない」
王「…… ……」
王子「弟王子の子……俺の甥だ」
王「…… ……」
王子「最初に聞いた話は、今日……伝えるのか」
王「そのつもり……でした」
王子「でした?」
王「……拗ねていた事は、認めます。ですが……」
王「……騎士達の事を考えると、僕の独断では判断出来ません」
王「でも、貴方は……『それが『王』の考えならば従う』と言って下さった」
王子「…… ……」
王「だから…… ……」
王子「……お前は、素直だねぇ」クス
王「なッ!?」
王子「あ、ああ……御免。子供扱いしてる訳じゃ無いぞ」
王子「……さっきは答え無かったが、お前の問いは当たってるんだよ。半分は」
王「……戦士兄様を、次の騎士団長にするのか、と言う奴ですか」
王子「反対する奴は居ないだろうな。俺の息子でもあるし」
王子「……それ以上に、『魔王を倒した勇者の仲間』だ」
王子「しかも『帰還者』だ。だが…… ……」
王子「……お前は、弟王子の息子だ。聡明だと思うし」
王子「……お前も、良い王になれるよ」
王「…… ……」
王子「『未来』はお前の……お前達『次代』の手で紡ぐモノだ」
王子「……昨日、戦士達とも話したが」
王「…… ……」
王子「言った言葉に嘘は無い。本当だ」
王子「どんな形であれ、俺はお前を支え、守る」
王子「……命に代えても、だ」
王「……そうですね。僕は『王』ですから」
王子「それだけじゃない」
王「…… ……」
王子「弟王子の子……俺の甥だ」
王「…… ……」
王子「最初に聞いた話は、今日……伝えるのか」
王「そのつもり……でした」
王子「でした?」
王「……拗ねていた事は、認めます。ですが……」
王「……騎士達の事を考えると、僕の独断では判断出来ません」
王「でも、貴方は……『それが『王』の考えならば従う』と言って下さった」
王子「…… ……」
王「だから…… ……」
王子「……お前は、素直だねぇ」クス
王「なッ!?」
王子「あ、ああ……御免。子供扱いしてる訳じゃ無いぞ」
王子「……さっきは答え無かったが、お前の問いは当たってるんだよ。半分は」
王「……戦士兄様を、次の騎士団長にするのか、と言う奴ですか」
王子「反対する奴は居ないだろうな。俺の息子でもあるし」
王子「……それ以上に、『魔王を倒した勇者の仲間』だ」
王子「しかも『帰還者』だ。だが…… ……」
187: 2013/11/17(日) 23:28:01.18 ID:VzNBr81TP
王子「…… ……」
王子(まさか、あいつは魔に変じたから無理だ、等とは……言えない、が)ハァ
王「……つなぎ止めてはおけない、んですね」
王「戦士兄様は……もう、家庭もあるし」
王子「……そういう問題じゃ無いさ。勿論、あいつの意思もあるけど」
王子「そう、だな……」ハァ
王「伯父上?」
王子「継いで欲しい、ってのは親のエゴだ」
王子「……強制的に『王』を押しつけられたお前に言う言葉じゃないけどな」
王「……否、それは……」
王子「自由に、生きたい道を選んで欲しい、ってのもある」
王子「……あいつが勇者様について行きたいだろうと思って」
王子「旅立つ前に、あいつが望んだ……騎士団への入団を拒み続けた事を」
王子「思い出したよ」
王「……え?」
王子「あいつが入団したって、勇者様について行けない訳じゃない」
王子「だけど……正直、俺は」
王子「金の髪の勇者について行きたかった。共に旅をしたかった」
王子「入団してしまえば…… ……」
王「…… ……」
王子「『俺の血』は、それを諦めざるを得なかった」
王「……でも、それこそ」
王「『願えば叶った』んじゃないんですか?」
王子「…… ……」
王「……違う、んですか?」
王子(まさか、あいつは魔に変じたから無理だ、等とは……言えない、が)ハァ
王「……つなぎ止めてはおけない、んですね」
王「戦士兄様は……もう、家庭もあるし」
王子「……そういう問題じゃ無いさ。勿論、あいつの意思もあるけど」
王子「そう、だな……」ハァ
王「伯父上?」
王子「継いで欲しい、ってのは親のエゴだ」
王子「……強制的に『王』を押しつけられたお前に言う言葉じゃないけどな」
王「……否、それは……」
王子「自由に、生きたい道を選んで欲しい、ってのもある」
王子「……あいつが勇者様について行きたいだろうと思って」
王子「旅立つ前に、あいつが望んだ……騎士団への入団を拒み続けた事を」
王子「思い出したよ」
王「……え?」
王子「あいつが入団したって、勇者様について行けない訳じゃない」
王子「だけど……正直、俺は」
王子「金の髪の勇者について行きたかった。共に旅をしたかった」
王子「入団してしまえば…… ……」
王「…… ……」
王子「『俺の血』は、それを諦めざるを得なかった」
王「……でも、それこそ」
王「『願えば叶った』んじゃないんですか?」
王子「…… ……」
王「……違う、んですか?」
188: 2013/11/17(日) 23:34:17.94 ID:VzNBr81TP
王子「……『勇者』に選ばれなければ、どうすることも出来ない」
王子「あいつは俺を選ばなかった。俺は、選ばれなかった」
王子「結果として、これで良かったんだと思ったが」
王子「……戦士の足枷には、してやりたくなかったんだ」
王「……『勇者』に、『運命』選ばれていれば」
王「戦士兄様の立場は、どうあれ……」
王子「うん。まあな。確かにそうなんだ。でも」
王子「……一緒だよ。これで良かった、と思ってる」
王子「色々……な。こう……でっかい出来事……なんだろうな」
王子「吃驚して、信じられない様な事実、ってのは」
王子「……受け入れるまでに、時間が掛かるんだよ」
王「伯父上……?」
王子(戦士……お前が、魔に変じたことも)
王子(勇者と魔王の絡繰りも……何れ)
王子(……受け入れられる時がくれば……良い、けど)ハァ
王「…… ……」
王子「……即答は出来なかったが」
王「…… ……」
王子「お前の提案の方向で、話を進めていこう」
王子「……取りあえず、俺の引退は限りなく不可能になった、てのは」
王子「受け入れたよ」ハハ
王「……申し訳ありません」
王子「謝る事じゃ無い。『王』の決めた事……思う方向へと」
王子「進んでいこうしているんだ」
王「…… ……」
王子「勿論、問題点の解決と、妥協点の発見は必要だぞ?」
王子「多少の無茶もな」
王「……はい」
王子「魔導国……書の街との確執も、漸く終わりが見えた」
王子「……なら、確かに……いらないかもしれないよな」
王子「『騎士団』なんて、さ」
王「…… ……」
王子「あいつは俺を選ばなかった。俺は、選ばれなかった」
王子「結果として、これで良かったんだと思ったが」
王子「……戦士の足枷には、してやりたくなかったんだ」
王「……『勇者』に、『運命』選ばれていれば」
王「戦士兄様の立場は、どうあれ……」
王子「うん。まあな。確かにそうなんだ。でも」
王子「……一緒だよ。これで良かった、と思ってる」
王子「色々……な。こう……でっかい出来事……なんだろうな」
王子「吃驚して、信じられない様な事実、ってのは」
王子「……受け入れるまでに、時間が掛かるんだよ」
王「伯父上……?」
王子(戦士……お前が、魔に変じたことも)
王子(勇者と魔王の絡繰りも……何れ)
王子(……受け入れられる時がくれば……良い、けど)ハァ
王「…… ……」
王子「……即答は出来なかったが」
王「…… ……」
王子「お前の提案の方向で、話を進めていこう」
王子「……取りあえず、俺の引退は限りなく不可能になった、てのは」
王子「受け入れたよ」ハハ
王「……申し訳ありません」
王子「謝る事じゃ無い。『王』の決めた事……思う方向へと」
王子「進んでいこうしているんだ」
王「…… ……」
王子「勿論、問題点の解決と、妥協点の発見は必要だぞ?」
王子「多少の無茶もな」
王「……はい」
王子「魔導国……書の街との確執も、漸く終わりが見えた」
王子「……なら、確かに……いらないかもしれないよな」
王子「『騎士団』なんて、さ」
王「…… ……」
189: 2013/11/17(日) 23:41:23.63 ID:VzNBr81TP
王子「俺が最後の『騎士団長』だ」
王子「……たった二代、だ。だが」
王子「こんなに早く、騎士団を解体しても良いだろうって意見を出せたこと」
王子「……その事実に……『俺達は喜ばなくちゃいけない』んだ、王」
王「…… ……」
王子「自信を持て。形が変わっても」
王子「……示す言葉が変わっても、俺は……氏ぬまでお前を守る」
王「伯父上……」
王子「……弟王子も喜ぶよ。あいつも……」
王子「本当ならば、争いなんて望んで居なかったはずだ」
王「…… ……」
王子「弟王子の息子として。新たなる『王』として」
王子「……誰もが見たいと望んだ、平和で美しい世界を作って下さい、王様」
王「……ッ はい!」
王「…… ……あ」
王子「ん?」
王「そういえば……剣士さんは?」
王子「……旅に出たよ。夜半にな」
王「え!?」
王子「あいつも……『次代』を担う一人、なのさ」
王「……え?」
王(剣士さんが……? 確かに、戦士兄様と同じ年ぐらいに見える、けど)
王(……まあ、良いか……? 彼が居れば……やりにくいのは確か、だ)
王(……これから、時代は変わる。変えてみせる……!)
王(誰にも文句なんか、言われない様に……美しい世界に!)
王(……伯父上には、まだ話していないけど)
王(反対……されるかな、否……)
王(僕は、『王』だ。僕が、王だ!)
王(……ッ 大丈夫だ。自信を……持て、と伯父上も言った)
王(だから……!)
王子「王?」
王「あ、いえ……行きましょう。もう、始まってしまいますね」
王子「……たった二代、だ。だが」
王子「こんなに早く、騎士団を解体しても良いだろうって意見を出せたこと」
王子「……その事実に……『俺達は喜ばなくちゃいけない』んだ、王」
王「…… ……」
王子「自信を持て。形が変わっても」
王子「……示す言葉が変わっても、俺は……氏ぬまでお前を守る」
王「伯父上……」
王子「……弟王子も喜ぶよ。あいつも……」
王子「本当ならば、争いなんて望んで居なかったはずだ」
王「…… ……」
王子「弟王子の息子として。新たなる『王』として」
王子「……誰もが見たいと望んだ、平和で美しい世界を作って下さい、王様」
王「……ッ はい!」
王「…… ……あ」
王子「ん?」
王「そういえば……剣士さんは?」
王子「……旅に出たよ。夜半にな」
王「え!?」
王子「あいつも……『次代』を担う一人、なのさ」
王「……え?」
王(剣士さんが……? 確かに、戦士兄様と同じ年ぐらいに見える、けど)
王(……まあ、良いか……? 彼が居れば……やりにくいのは確か、だ)
王(……これから、時代は変わる。変えてみせる……!)
王(誰にも文句なんか、言われない様に……美しい世界に!)
王(……伯父上には、まだ話していないけど)
王(反対……されるかな、否……)
王(僕は、『王』だ。僕が、王だ!)
王(……ッ 大丈夫だ。自信を……持て、と伯父上も言った)
王(だから……!)
王子「王?」
王「あ、いえ……行きましょう。もう、始まってしまいますね」
190: 2013/11/17(日) 23:43:41.80 ID:VzNBr81TP
寝ます!
202: 2013/11/19(火) 22:52:12.37 ID:QXpu3lTZP
……
………
…………
船長「……何つった、今?」
チビ「…… ……俺、此処で暮らしたい、って言った」
男「…… ……」
爺「……おい、男」
男「何だよ、親父」
爺「何であんな……険悪なムードなんだ、あいつらは」
男「…… ……ま、色々あってな」
船長「……本気、か?」
チビ「冗談でこんな事口にしないよ!」
爺「補給したいって降りてきた時から船長は険しい顔してるし」
爺「愛しの孫も、同じ様な顔してるし……」
男「だから目に見えて項垂れるなって!気色悪い……」
爺「お前な、親に向かって言う事か!それが!」
男「歳を考えろって何時も言ってんだろうが!」
船長「降りて……どうするんだ」
チビ「……じいちゃんがいるじゃん」
船長「そうじゃネェだろ」
チビ「…… ……」
船長「…… ……」
爺「…… ……」
男「…… ……」
チビ「俺は…… ……」
船長「…… ……何だよ」
………
…………
船長「……何つった、今?」
チビ「…… ……俺、此処で暮らしたい、って言った」
男「…… ……」
爺「……おい、男」
男「何だよ、親父」
爺「何であんな……険悪なムードなんだ、あいつらは」
男「…… ……ま、色々あってな」
船長「……本気、か?」
チビ「冗談でこんな事口にしないよ!」
爺「補給したいって降りてきた時から船長は険しい顔してるし」
爺「愛しの孫も、同じ様な顔してるし……」
男「だから目に見えて項垂れるなって!気色悪い……」
爺「お前な、親に向かって言う事か!それが!」
男「歳を考えろって何時も言ってんだろうが!」
船長「降りて……どうするんだ」
チビ「……じいちゃんがいるじゃん」
船長「そうじゃネェだろ」
チビ「…… ……」
船長「…… ……」
爺「…… ……」
男「…… ……」
チビ「俺は…… ……」
船長「…… ……何だよ」
204: 2013/11/19(火) 23:11:05.56 ID:QXpu3lTZP
チビ「……母さんの事は尊敬してるよ」
チビ「立派な『船長』だと思ってる。でも…… ……」
船長「…… ……」
チビ「…… ……」
船長「……船を下りて、後悔ないんだな」
チビ「……はい」
船長「軽い返事をするな。お前が、次の船長になる保証はネェっつってんだ」
チビ「……ッ わ、わかってるよ!」
船長「もう一回聞く。良いんだな?」
チビ「……ああ!」
爺「ち、チビ……」オロオロ
男「親父がオロオロしてどうすんだよ……」
爺「だ、だってなぁ!?」
スタスタ
船長「……義父さん」
爺「お、おう!」
船長「……悪いが、あいつの面倒見てやってくれネェか」
船長「アタシ達は此処で補給を済ませたら、ウロウロする予定だ」
船長「……現実的に、今安定して補給やら何やら、済ませられるのは」
船長「この村しか無い。だから……」
爺「……こっそりでも良い。様子を見るってのを止めやしない」
船長「…… ……ありがとうございます」ペコ
チビ「…… ……」
男「……」チラ、ハァ
スタスタ
チビ「立派な『船長』だと思ってる。でも…… ……」
船長「…… ……」
チビ「…… ……」
船長「……船を下りて、後悔ないんだな」
チビ「……はい」
船長「軽い返事をするな。お前が、次の船長になる保証はネェっつってんだ」
チビ「……ッ わ、わかってるよ!」
船長「もう一回聞く。良いんだな?」
チビ「……ああ!」
爺「ち、チビ……」オロオロ
男「親父がオロオロしてどうすんだよ……」
爺「だ、だってなぁ!?」
スタスタ
船長「……義父さん」
爺「お、おう!」
船長「……悪いが、あいつの面倒見てやってくれネェか」
船長「アタシ達は此処で補給を済ませたら、ウロウロする予定だ」
船長「……現実的に、今安定して補給やら何やら、済ませられるのは」
船長「この村しか無い。だから……」
爺「……こっそりでも良い。様子を見るってのを止めやしない」
船長「…… ……ありがとうございます」ペコ
チビ「…… ……」
男「……」チラ、ハァ
スタスタ
206: 2013/11/19(火) 23:22:35.75 ID:QXpu3lTZP
男「チビ」
チビ「父さん……」
男「……じいちゃんに、あんま我が儘いうなよ」
チビ「そ、そんな子供じゃないよ!」
男「……良いんだな?」
チビ「……うん」
男「……そうか」クシャ
チビ「わ、ちょっと……ッ だから、子供じゃないって……!」
男「……俺は、船長と行くぞ」
チビ「…… ……うん」
男「じいちゃん、頼むぞ」
チビ「…… ……」コクン
男「泣くな。男だろ」
チビ「泣いてない!」
男「そうだな。自分で決めた事だもんな」
チビ「……ッ」ゴシゴシ
チビ「……父さん」
男「ん?」
チビ「……俺、色々知りたいんだ」
男「そうだな。海の上に居るだけが『世界』じゃネェからな」
チビ「……それでも、海に戻りたくなったら」
男「…… ……」
チビ「自分の力で、どうにかする」
男「……頼もしいこった」
チビ「……本気だよ!」
男「信じてるって」ギュッ
チビ「わっ …… ……ッ」
男「……補給も済んだだろう。母さんの事だ。もう、出るって言うぞ」
チビ「……俺、じいちゃんの家に行く」
男「……チビ」
チビ「……身体に、気をつけてね。二人とも」
タタタタ……
チビ「父さん……」
男「……じいちゃんに、あんま我が儘いうなよ」
チビ「そ、そんな子供じゃないよ!」
男「……良いんだな?」
チビ「……うん」
男「……そうか」クシャ
チビ「わ、ちょっと……ッ だから、子供じゃないって……!」
男「……俺は、船長と行くぞ」
チビ「…… ……うん」
男「じいちゃん、頼むぞ」
チビ「…… ……」コクン
男「泣くな。男だろ」
チビ「泣いてない!」
男「そうだな。自分で決めた事だもんな」
チビ「……ッ」ゴシゴシ
チビ「……父さん」
男「ん?」
チビ「……俺、色々知りたいんだ」
男「そうだな。海の上に居るだけが『世界』じゃネェからな」
チビ「……それでも、海に戻りたくなったら」
男「…… ……」
チビ「自分の力で、どうにかする」
男「……頼もしいこった」
チビ「……本気だよ!」
男「信じてるって」ギュッ
チビ「わっ …… ……ッ」
男「……補給も済んだだろう。母さんの事だ。もう、出るって言うぞ」
チビ「……俺、じいちゃんの家に行く」
男「……チビ」
チビ「……身体に、気をつけてね。二人とも」
タタタタ……
208: 2013/11/19(火) 23:26:09.06 ID:QXpu3lTZP
爺「お、おい、チビ!?」
船長「……放っておけ」
爺「良いのか? 本当に……」
男「言い出したら引っ込み着かないのは、母親似だろ」
船長「……チビ、なんか言ってたか?」
男「『身体に気をつけて』だってよ」
爺「優しい子だなぁ……」
船長「……行くぞ」クルッ
爺「おい、船長?」
スタスタ
男「言っただろ。引っ込みつかねぇんだって」
爺「しかし…… ……」
男「親父も、元気で居ろよ。補給ついでに、金は届ける」
爺「……んなもんいらネェよ」
男「妙なガラクタの方が良いって言うなよ」ハハ
爺「阿呆!」
スタスタ
爺「……全く」フゥ
爺「何があったんだかしらんが……難儀な奴らだな」
スタスタ…… ……
爺「……チビ?」
チビ「じいちゃん……ごめんな」
爺「何を。お前と暮らせるなんて、夢みたいだよ」
船長「……放っておけ」
爺「良いのか? 本当に……」
男「言い出したら引っ込み着かないのは、母親似だろ」
船長「……チビ、なんか言ってたか?」
男「『身体に気をつけて』だってよ」
爺「優しい子だなぁ……」
船長「……行くぞ」クルッ
爺「おい、船長?」
スタスタ
男「言っただろ。引っ込みつかねぇんだって」
爺「しかし…… ……」
男「親父も、元気で居ろよ。補給ついでに、金は届ける」
爺「……んなもんいらネェよ」
男「妙なガラクタの方が良いって言うなよ」ハハ
爺「阿呆!」
スタスタ
爺「……全く」フゥ
爺「何があったんだかしらんが……難儀な奴らだな」
スタスタ…… ……
爺「……チビ?」
チビ「じいちゃん……ごめんな」
爺「何を。お前と暮らせるなんて、夢みたいだよ」
209: 2013/11/19(火) 23:34:34.34 ID:QXpu3lTZP
チビ「……俺、母さんが嫌いとかじゃ無いんだよ」
爺「解ってるよ」
チビ「色々教えてよ、じいちゃん」
爺「おう! 骨董品の事なら任せとけ!」
チビ「え、あ……うん、そのほかの事もね?」
チビ「……『世界』の事とか、さ」
爺「『世界』か……難しいな」
チビ「難しい?」
爺「じいちゃんが生きてきた『世界』と今からお前が生きていく『世界』とは」
爺「……違うからな。勿論、『過去』を知る事は悪い事じゃ無いが」
爺「『未来』の方が大事だと、じいちゃんは思ってる」
チビ「…… ……」
爺「……お前は、殆ど海の上しかしらんだろう」
爺「陸の上の『過去』は話でしか得れんが、これからチビが」
爺「生きていく『未来』の陸の上での話は……決して、綺麗な物ばかりじゃ無い」
爺「……ああ、勿論、それは『過去』も同じだがな」
チビ「……うん。母さん達はちゃんと話してはくれなかったけど」
チビ「戦争とかがあったんだろう」
爺「……陸の上、とは言ってもな」
爺「ここは、名も無い様な小さな村の、小さな島に過ぎん」
爺「定期便なんつーもんも、ない」
爺「……じいちゃんはな。此処だけをお前の『陸の上』に」
爺「『世界』にして欲しくないと思うよ」
チビ「…… ……」
爺「大陸に渡ろうと思えば、船が居る」
爺「海を渡る、必要がある……その先には、『未来』がある。チビ」
チビ「…… ……」
爺「ま、良い……取りあえず、暫くはのんびりしよう、な?」
チビ「……うん」
爺「解ってるよ」
チビ「色々教えてよ、じいちゃん」
爺「おう! 骨董品の事なら任せとけ!」
チビ「え、あ……うん、そのほかの事もね?」
チビ「……『世界』の事とか、さ」
爺「『世界』か……難しいな」
チビ「難しい?」
爺「じいちゃんが生きてきた『世界』と今からお前が生きていく『世界』とは」
爺「……違うからな。勿論、『過去』を知る事は悪い事じゃ無いが」
爺「『未来』の方が大事だと、じいちゃんは思ってる」
チビ「…… ……」
爺「……お前は、殆ど海の上しかしらんだろう」
爺「陸の上の『過去』は話でしか得れんが、これからチビが」
爺「生きていく『未来』の陸の上での話は……決して、綺麗な物ばかりじゃ無い」
爺「……ああ、勿論、それは『過去』も同じだがな」
チビ「……うん。母さん達はちゃんと話してはくれなかったけど」
チビ「戦争とかがあったんだろう」
爺「……陸の上、とは言ってもな」
爺「ここは、名も無い様な小さな村の、小さな島に過ぎん」
爺「定期便なんつーもんも、ない」
爺「……じいちゃんはな。此処だけをお前の『陸の上』に」
爺「『世界』にして欲しくないと思うよ」
チビ「…… ……」
爺「大陸に渡ろうと思えば、船が居る」
爺「海を渡る、必要がある……その先には、『未来』がある。チビ」
チビ「…… ……」
爺「ま、良い……取りあえず、暫くはのんびりしよう、な?」
チビ「……うん」
214: 2013/11/20(水) 09:35:20.05 ID:OQGgYuc2P
爺「んじゃま、片付けでも手伝って貰うかな」
チビ「また増えたの!?」
爺「氏ぬまで収集はやめんぞ、じいちゃんは!」
チビ「いや、それは良いんだけど……」
チビ(じいちゃんの審美眼、怪しいからなぁ……)ハァ
爺「そうそう。この間土産で貰った奴、見せてやりたかったんだよ」
チビ「う、うん……行こうか、手伝うよ」
チビ(『世界』か……母さんに、ああいったけど)
チビ(俺も、いつか……!)
……
………
…………
少女「そうですか、始まりの国の国王の葬儀は無事に終わったんですね」
秘書「はい。それで……どうします?」
少女「……書簡の続き、ね」
秘書「『戴冠式へのご招待』か……立場としては、拒否できないけど……」
秘書「これではまるで、恋文だ! 頭がおかしいんじゃ無いか、あの新王……!」
少女「…… ……」
少女(『母の趣味である庭いじりが功を奏して、可憐な花が咲き誇っております』)ペラ
少女(『城の案内を兼ねて、貴女にも見せたい。堅苦しい儀式もありますが』)
少女(『そこで共に、貴女とのんびりと過ごせることを願っております』)ペラ
秘書「全く、どういうつもりなのか!」
少女「……返事を、出して置いて頂戴」
秘書「あ、はい……どうするんです? 少女様」
少女「……領主様達が住んでいた一角は、騎士団達の手に寄って」
少女「綺麗に……なりました。街に残った人達が今の所住むには困らないし」
少女「……店を構える人達も、一般区画に住んでいた人達は」
少女「何も……変わらない生活をしてる」
秘書「少女様?」
チビ「また増えたの!?」
爺「氏ぬまで収集はやめんぞ、じいちゃんは!」
チビ「いや、それは良いんだけど……」
チビ(じいちゃんの審美眼、怪しいからなぁ……)ハァ
爺「そうそう。この間土産で貰った奴、見せてやりたかったんだよ」
チビ「う、うん……行こうか、手伝うよ」
チビ(『世界』か……母さんに、ああいったけど)
チビ(俺も、いつか……!)
……
………
…………
少女「そうですか、始まりの国の国王の葬儀は無事に終わったんですね」
秘書「はい。それで……どうします?」
少女「……書簡の続き、ね」
秘書「『戴冠式へのご招待』か……立場としては、拒否できないけど……」
秘書「これではまるで、恋文だ! 頭がおかしいんじゃ無いか、あの新王……!」
少女「…… ……」
少女(『母の趣味である庭いじりが功を奏して、可憐な花が咲き誇っております』)ペラ
少女(『城の案内を兼ねて、貴女にも見せたい。堅苦しい儀式もありますが』)
少女(『そこで共に、貴女とのんびりと過ごせることを願っております』)ペラ
秘書「全く、どういうつもりなのか!」
少女「……返事を、出して置いて頂戴」
秘書「あ、はい……どうするんです? 少女様」
少女「……領主様達が住んでいた一角は、騎士団達の手に寄って」
少女「綺麗に……なりました。街に残った人達が今の所住むには困らないし」
少女「……店を構える人達も、一般区画に住んでいた人達は」
少女「何も……変わらない生活をしてる」
秘書「少女様?」
215: 2013/11/20(水) 09:45:15.21 ID:OQGgYuc2P
少女「……寧ろ、以前より……のびのびと」
秘書「信じられません!あいつら……ッ」
秘書「私にまで、普通に接するんですよ! こんな、こんな屈辱……ッ」
少女「やめなさいと言った筈よ。もう……此処は魔導国では無いんだから」
秘書「……私、驚いているんですよ」
少女「え?」
秘書「少女様なら、機会をうかがって……何時か、反撃の手立てを」
秘書「整えるんだと思ってました」
少女「…… ……」
秘書「貴女があの時、私達貴族階級の者達に、それの廃止を伝えた時」
秘書「来るべきその時まで、我慢して下さいって、言ってくれると……!!」
少女「……そうして、貴方達は権威を笠に着て」
秘書「!?」
少女「『代表者』に全てを押しつけて、自分達は何もせず、のほほんと」
少女「弱きを見下す事だけを生き甲斐にするつもりだったの?」
秘書「少女様!?」
少女「……受け入れて下さい。私達は……私達の命の差違などもう……」
少女「否。本当は、最初からそんなモノ、存在しなかったのよ」
秘書「…… ……ッ」
少女「奴隷扱いをされている訳では無いでしょう?」
秘書「何が違うんです!? 以前のあの、当たり前の暮らしを阻害され……!」
少女「……それが、異常だったと知りなさい、と言っているの」
秘書「……貴女は、それで納得出来るのですか?」
秘書「貴女は、受け入れたとおっしゃるの? 少女様!」
少女「…… ……」
秘書「嘘です。貴女だって、以前の暮らしを取り戻したいと、どこかでは願っている筈だ!」
秘書「私達は、選ばれた……ッ」
少女「『選ばれた特別な民』など存在しないのよ!もう!」
秘書「…… ……」
少女「……幻想を捨てねば、生きてはいけないの。もう」
秘書「…… ……」
秘書「信じられません!あいつら……ッ」
秘書「私にまで、普通に接するんですよ! こんな、こんな屈辱……ッ」
少女「やめなさいと言った筈よ。もう……此処は魔導国では無いんだから」
秘書「……私、驚いているんですよ」
少女「え?」
秘書「少女様なら、機会をうかがって……何時か、反撃の手立てを」
秘書「整えるんだと思ってました」
少女「…… ……」
秘書「貴女があの時、私達貴族階級の者達に、それの廃止を伝えた時」
秘書「来るべきその時まで、我慢して下さいって、言ってくれると……!!」
少女「……そうして、貴方達は権威を笠に着て」
秘書「!?」
少女「『代表者』に全てを押しつけて、自分達は何もせず、のほほんと」
少女「弱きを見下す事だけを生き甲斐にするつもりだったの?」
秘書「少女様!?」
少女「……受け入れて下さい。私達は……私達の命の差違などもう……」
少女「否。本当は、最初からそんなモノ、存在しなかったのよ」
秘書「…… ……ッ」
少女「奴隷扱いをされている訳では無いでしょう?」
秘書「何が違うんです!? 以前のあの、当たり前の暮らしを阻害され……!」
少女「……それが、異常だったと知りなさい、と言っているの」
秘書「……貴女は、それで納得出来るのですか?」
秘書「貴女は、受け入れたとおっしゃるの? 少女様!」
少女「…… ……」
秘書「嘘です。貴女だって、以前の暮らしを取り戻したいと、どこかでは願っている筈だ!」
秘書「私達は、選ばれた……ッ」
少女「『選ばれた特別な民』など存在しないのよ!もう!」
秘書「…… ……」
少女「……幻想を捨てねば、生きてはいけないの。もう」
秘書「…… ……」
216: 2013/11/20(水) 09:52:05.26 ID:OQGgYuc2P
少女「……返事を書くわ。騎士を呼んで頂戴」
秘書「私が届けますが」
少女「直接渡す、と言う約束よ」
秘書「…… ……」
少女「…… ……」ガサゴソ
秘書「……失礼します!」
スタスタ、バタン!
少女「!」ビクッ
少女「…… ……」ハァ
少女(……手が、震えてる。これじゃ書けないわ)
少女(私だって、私だって……ッ こんな、生活……ッ)
少女(だけど……ッ 嫌々従っている訳じゃない)
少女(居心地が良いとは、氏んでも思えない。だけど)
少女(……これを徹底しないと。『旧貴族』の思いを全て、受け止めてしまったら)
少女(それを許してしまったら……ッ)
少女(……『出来損ない』と言われていた人達の、反乱が起きたら……!)
少女(私に、それを止める術は無い。騎士達が見回りに立ってくれているとは言え)
少女(絶対、は無い……!)
少女(……人を、纏めるなんて、私には無理……!)
少女(返事……書かなきゃ)カリ
少女(美しい庭で、新王と…… ……)カキカキ
少女(……素敵でしょうね。以前の、お父様やお母様達との)
少女(ガーデンパーティの様な…… ……)
少女(……心が、踊ってしまうのは否めない。だけど)
少女(これも、私の心を懐柔する為の、新王とやらの)
少女(策なのかもしれない……油断は、禁物)
コンコン
少女「は、はい!」
秘書「私が届けますが」
少女「直接渡す、と言う約束よ」
秘書「…… ……」
少女「…… ……」ガサゴソ
秘書「……失礼します!」
スタスタ、バタン!
少女「!」ビクッ
少女「…… ……」ハァ
少女(……手が、震えてる。これじゃ書けないわ)
少女(私だって、私だって……ッ こんな、生活……ッ)
少女(だけど……ッ 嫌々従っている訳じゃない)
少女(居心地が良いとは、氏んでも思えない。だけど)
少女(……これを徹底しないと。『旧貴族』の思いを全て、受け止めてしまったら)
少女(それを許してしまったら……ッ)
少女(……『出来損ない』と言われていた人達の、反乱が起きたら……!)
少女(私に、それを止める術は無い。騎士達が見回りに立ってくれているとは言え)
少女(絶対、は無い……!)
少女(……人を、纏めるなんて、私には無理……!)
少女(返事……書かなきゃ)カリ
少女(美しい庭で、新王と…… ……)カキカキ
少女(……素敵でしょうね。以前の、お父様やお母様達との)
少女(ガーデンパーティの様な…… ……)
少女(……心が、踊ってしまうのは否めない。だけど)
少女(これも、私の心を懐柔する為の、新王とやらの)
少女(策なのかもしれない……油断は、禁物)
コンコン
少女「は、はい!」
217: 2013/11/20(水) 10:02:55.14 ID:OQGgYuc2P
騎士「少女さん、騎士です。入っても宜しいですか?」
少女「あ……はい。どうぞ」
カチャ
騎士「失礼致します」
少女「……丁度、お返事を書き終えたところです」
騎士「ああ、良かった……では、お預かりします。すぐに船で届けさせますので」
少女「……あの。新王、と言うのはどう言う方なのです?」
騎士「国王様の息子様です……若いけれど、お優しくて」
騎士「そうですね……しっかりようと頑張っている、方ですよ」
少女「……そう、ですか」
騎士「不安はご尤もです」
少女「いえ……あの。お会いできるのを、楽しみにしてると」
少女「伝えて置いて下さい」
騎士「はい。では確かにお預かりします。では」
カチャ、パタン
少女「…… ……」フゥ
ガチャ
少女「!?」
秘書「……行かれるのですか」
少女「……無視は出来ませんよ。一度訪ねて欲しい、とも」
少女「言われていたしね」
秘書「命令に素直に従って……貴女にはプライドは無いのか!?」
少女「……戴冠式を祝いに行くのに、プライドは必要なの?」
秘書「そうじゃ無い!」
少女「じゃあ、何だと言うの」
秘書「……自分の保身ばかり考えて居るのは、貴女の方では無いのか!?」
少女「!」
秘書「見た事も無いだろう新王に、気に入られれば」
秘書「……安泰だろうよ。貴女の身はな!」
少女「どう言う意味です!」
少女「あ……はい。どうぞ」
カチャ
騎士「失礼致します」
少女「……丁度、お返事を書き終えたところです」
騎士「ああ、良かった……では、お預かりします。すぐに船で届けさせますので」
少女「……あの。新王、と言うのはどう言う方なのです?」
騎士「国王様の息子様です……若いけれど、お優しくて」
騎士「そうですね……しっかりようと頑張っている、方ですよ」
少女「……そう、ですか」
騎士「不安はご尤もです」
少女「いえ……あの。お会いできるのを、楽しみにしてると」
少女「伝えて置いて下さい」
騎士「はい。では確かにお預かりします。では」
カチャ、パタン
少女「…… ……」フゥ
ガチャ
少女「!?」
秘書「……行かれるのですか」
少女「……無視は出来ませんよ。一度訪ねて欲しい、とも」
少女「言われていたしね」
秘書「命令に素直に従って……貴女にはプライドは無いのか!?」
少女「……戴冠式を祝いに行くのに、プライドは必要なの?」
秘書「そうじゃ無い!」
少女「じゃあ、何だと言うの」
秘書「……自分の保身ばかり考えて居るのは、貴女の方では無いのか!?」
少女「!」
秘書「見た事も無いだろう新王に、気に入られれば」
秘書「……安泰だろうよ。貴女の身はな!」
少女「どう言う意味です!」
218: 2013/11/20(水) 10:23:37.47 ID:OQGgYuc2P
秘書「その侭だ! あんな恋文紛いの書簡に」
秘書「素直に従う意の返答を返したのだろう……それがどう言う事だか」
秘書「解らない程、子供でもあるまい!」
少女「……な、にを言って……ッ」
秘書「貴女と新王が密通でもすれば、確かに街は安泰だろう。援助も受けれるだろう」
秘書「貴女は言葉上、それを街の為と謀るだろう」
少女「謀るですって!? そんな……!」
秘書「そうしないという保証が何処にある!? 我らには我慢だけを強いて」
秘書「貴女だけ甘い汁を吸う事等許されないぞ!」
少女「……ッ 落ち着きなさい。相手は、会ったことも無い人です」
少女「それなのに、恋文である筈などないで……」
秘書「本気で言っているのか!?」
少女「!?」
秘書「『出来損ない達』が……」
少女「その言葉は使うなと言った筈です!」
秘書「……彼らが、何をされてきたのか、知らない筈は無いだろう!」
秘書「同じ事である可能性を何故、否定出来るんだ!」
少女「…… ……ッ」
秘書「魔導国の国民だと言うプライドを捨てられる程、甘美な誘惑だったのか!」
少女「……ここはもう、書の街です。魔導国でも、魔導の街でも無いんです!」
少女「貴女も見たでしょう、目を通したでしょう、書簡の全てに」
少女「それとも、私がもう一通、隠しているとでも思っているのですか!?」
秘書「……それが正しくないと誰が保証してくれる?」
少女「…… ……わかりました。秘書業務は他の方にしてもらいましょう」
秘書「な……ッ 都合が悪くなれば、首をすげ替えると言うのか!」
少女「街の基盤を整える力になってくれると思ってお願いしたのです」
少女「そんな下らない事ばかり考えるのならば、いりません」
秘書「横暴だ!」
少女「……当然の措置と知りなさい!双子の姉だからと特別扱いをした覚えは無いと」
少女「何度も言ったはずです!」
秘書「……双子の妹であればこそ、不幸から庇ってやろうと思っていたのに」
秘書「何だ、その言いぐさは!」
秘書「……あの時、お前を代表者に立てた事が間違えて居た様だ」クルッ
少女「……騎士団長とは言え、『出来損ないの言葉等聞きたくない』と」
少女「言ったのは貴女です、お姉さま……その役割を最終的に」
少女「無理矢理、私に押しつけたのもね!」
秘書「素直に従う意の返答を返したのだろう……それがどう言う事だか」
秘書「解らない程、子供でもあるまい!」
少女「……な、にを言って……ッ」
秘書「貴女と新王が密通でもすれば、確かに街は安泰だろう。援助も受けれるだろう」
秘書「貴女は言葉上、それを街の為と謀るだろう」
少女「謀るですって!? そんな……!」
秘書「そうしないという保証が何処にある!? 我らには我慢だけを強いて」
秘書「貴女だけ甘い汁を吸う事等許されないぞ!」
少女「……ッ 落ち着きなさい。相手は、会ったことも無い人です」
少女「それなのに、恋文である筈などないで……」
秘書「本気で言っているのか!?」
少女「!?」
秘書「『出来損ない達』が……」
少女「その言葉は使うなと言った筈です!」
秘書「……彼らが、何をされてきたのか、知らない筈は無いだろう!」
秘書「同じ事である可能性を何故、否定出来るんだ!」
少女「…… ……ッ」
秘書「魔導国の国民だと言うプライドを捨てられる程、甘美な誘惑だったのか!」
少女「……ここはもう、書の街です。魔導国でも、魔導の街でも無いんです!」
少女「貴女も見たでしょう、目を通したでしょう、書簡の全てに」
少女「それとも、私がもう一通、隠しているとでも思っているのですか!?」
秘書「……それが正しくないと誰が保証してくれる?」
少女「…… ……わかりました。秘書業務は他の方にしてもらいましょう」
秘書「な……ッ 都合が悪くなれば、首をすげ替えると言うのか!」
少女「街の基盤を整える力になってくれると思ってお願いしたのです」
少女「そんな下らない事ばかり考えるのならば、いりません」
秘書「横暴だ!」
少女「……当然の措置と知りなさい!双子の姉だからと特別扱いをした覚えは無いと」
少女「何度も言ったはずです!」
秘書「……双子の妹であればこそ、不幸から庇ってやろうと思っていたのに」
秘書「何だ、その言いぐさは!」
秘書「……あの時、お前を代表者に立てた事が間違えて居た様だ」クルッ
少女「……騎士団長とは言え、『出来損ないの言葉等聞きたくない』と」
少女「言ったのは貴女です、お姉さま……その役割を最終的に」
少女「無理矢理、私に押しつけたのもね!」
219: 2013/11/20(水) 10:33:34.63 ID:OQGgYuc2P
秘書「……似合いの役割だと推薦してやったんだ」
秘書「双子だと言え、雷の加護を持たなかったお前を」
秘書「これまで庇ってきてやったのは誰だと思ってるんだ!」
少女「……優れた加護を持つことに代わりは無い」
秘書「雷は『至高』なのだ。お前と、私は違う」
少女「……気がついては居ましたよ。貴女が、心の中で私を見下していた事には」
少女「貴女は私を庇い、守り、世話を焼くことで、優越感に浸っていただけです」
少女「……分け隔て無く育てて下さった両親には感謝すべきなのでしょうね」
秘書「……何時までも夢を見ているが良い。その両親も」
秘書「あの騒ぎに紛れて逃げ出したのだ……私を切れば」
秘書「お前を助けてくれる者等居ない……それとも」
秘書「『出来損ない』共に泣きつくか? ……とんだ『代表者』だ!」
スタスタ、バタン!
少女「…… ……ッ」
少女「…… ……」
少女(どうして……私、ばかり。こんな目に……ッ)
少女(……慰み者か。成る程……考えられない事では無いわね)
少女(戴冠式は……一週間後。姉は……何か、企むだろうか)
少女(同じ顔をしていても、瞳の色が違う)
少女(……騎士団長が迎えに来てくれるのであれば、姉がすり替わろうとしても)
少女(彼ならば気付いてくれるだろう……だが)
少女(……そうで、なければ……ッ)
少女「誰……ッ」ハッ
少女(『私を切れば、お前を助けてくれる者等居ない』)
少女(…… ……)
秘書「双子だと言え、雷の加護を持たなかったお前を」
秘書「これまで庇ってきてやったのは誰だと思ってるんだ!」
少女「……優れた加護を持つことに代わりは無い」
秘書「雷は『至高』なのだ。お前と、私は違う」
少女「……気がついては居ましたよ。貴女が、心の中で私を見下していた事には」
少女「貴女は私を庇い、守り、世話を焼くことで、優越感に浸っていただけです」
少女「……分け隔て無く育てて下さった両親には感謝すべきなのでしょうね」
秘書「……何時までも夢を見ているが良い。その両親も」
秘書「あの騒ぎに紛れて逃げ出したのだ……私を切れば」
秘書「お前を助けてくれる者等居ない……それとも」
秘書「『出来損ない』共に泣きつくか? ……とんだ『代表者』だ!」
スタスタ、バタン!
少女「…… ……ッ」
少女「…… ……」
少女(どうして……私、ばかり。こんな目に……ッ)
少女(……慰み者か。成る程……考えられない事では無いわね)
少女(戴冠式は……一週間後。姉は……何か、企むだろうか)
少女(同じ顔をしていても、瞳の色が違う)
少女(……騎士団長が迎えに来てくれるのであれば、姉がすり替わろうとしても)
少女(彼ならば気付いてくれるだろう……だが)
少女(……そうで、なければ……ッ)
少女「誰……ッ」ハッ
少女(『私を切れば、お前を助けてくれる者等居ない』)
少女(…… ……)
220: 2013/11/20(水) 10:41:23.97 ID:OQGgYuc2P
少女(……『旧貴族』達は、私より姉の言葉に従うだろう)
少女(誰も……頼れない……ッ)
カタン、スタスタ……パタン
……
………
…………
騎士「急いで荷を運び込め! 船が出るぞ……ん?」
パタパタパタ
秘書「騎士様!」
騎士「ああ……ええ、と。少女さん、ですか?」
秘書「はい……あの!」ハァハァ
騎士「ああ、落ち着いて……どうしました」
秘書「……早急に、始まりの国の新しい王様に、申し上げたい事があります」
秘書「すでにこのく……街の、秘書には伝えて参りましたので」
秘書「私も、一緒に乗せていって貰えませんか?」
騎士「え?」
秘書「……『旧貴族』達が、良からぬ事を企んでいるみたいなんです」
秘書「その……さっき、私も……誰かに、急に……ッ」ポロポロ
騎士「……ッ」
秘書「お願いします、助けて下さい!」
騎士「し、しかし、秘書さんは貴女のボディーガードも兼ねられているんでしょう?」
秘書「……ッ で、でも、ああ! そうだわ!」
秘書「……ッ 秘書も、仲間なのかも……ッ」
騎士「そ、それは……ッ」
秘書「お願い、助けて……ッ」
シュッコウスルゾー!
騎士「! ……わ、解りました! とにかく、早く!」グイッ
秘書「は、はい……!」
秘書(……上手く行った)ニヤ
秘書(少女にああは言ったが……まさか、慰み者に、等)
秘書(……あの国王の息子であれば、まあ考えないだろう)
少女(誰も……頼れない……ッ)
カタン、スタスタ……パタン
……
………
…………
騎士「急いで荷を運び込め! 船が出るぞ……ん?」
パタパタパタ
秘書「騎士様!」
騎士「ああ……ええ、と。少女さん、ですか?」
秘書「はい……あの!」ハァハァ
騎士「ああ、落ち着いて……どうしました」
秘書「……早急に、始まりの国の新しい王様に、申し上げたい事があります」
秘書「すでにこのく……街の、秘書には伝えて参りましたので」
秘書「私も、一緒に乗せていって貰えませんか?」
騎士「え?」
秘書「……『旧貴族』達が、良からぬ事を企んでいるみたいなんです」
秘書「その……さっき、私も……誰かに、急に……ッ」ポロポロ
騎士「……ッ」
秘書「お願いします、助けて下さい!」
騎士「し、しかし、秘書さんは貴女のボディーガードも兼ねられているんでしょう?」
秘書「……ッ で、でも、ああ! そうだわ!」
秘書「……ッ 秘書も、仲間なのかも……ッ」
騎士「そ、それは……ッ」
秘書「お願い、助けて……ッ」
シュッコウスルゾー!
騎士「! ……わ、解りました! とにかく、早く!」グイッ
秘書「は、はい……!」
秘書(……上手く行った)ニヤ
秘書(少女にああは言ったが……まさか、慰み者に、等)
秘書(……あの国王の息子であれば、まあ考えないだろう)
221: 2013/11/20(水) 10:51:30.32 ID:OQGgYuc2P
秘書(屈辱的ではあるが、それが本心であったとしても……相手は『王』だ)
秘書(……悪いな、妹よ)
秘書(初対面であれば、誰も疑うまい。騎士と少女が面会する時)
秘書(……席を外せと言われていたことも功を奏した)
秘書(隙あらば、母親様も救い出さねばならん)
秘書(……『書の街』等、認めない……ッ 我ら魔導国の民は)
秘書(選ばれた者なのだ……!)
ボーゥ…… …… ……
バタバタバタ……ッ
少女「あ…… ……」
新米騎士「ん? ……え!? あれ、今……!?」
新米騎士「……否、瞳の色が違うな……少女さんの姉妹か何か?」
少女「! ……『少女』と名乗る者が、来た……のですね?」
新米騎士「…… ……」
新米騎士(『旧貴族』『秘書』……しかし)
新米騎士(……怪しいな)
少女「…… ……」キョロ
少女(居ない……まさか、船に……ッ!?)
少女「……騎士団長様に、お会いになりますか」
新米騎士「……騎士団長様に何の用があるんだ?」
少女「問うてみて下さい。『少女の瞳は何色だったか』」
新米騎士「……お前、何を……」
少女「それだけです。失礼します」
タタタ……
少年「こんな所にいたんですね『秘書様』」
少女「! お前……ッ」
少年「……さあ、皆が待ってますよ」ニヤッ
少女「!」
少女(お姉さま……ッ)
新米騎士「おい、ちょっと待て……『秘書』と言ったな」
秘書(……悪いな、妹よ)
秘書(初対面であれば、誰も疑うまい。騎士と少女が面会する時)
秘書(……席を外せと言われていたことも功を奏した)
秘書(隙あらば、母親様も救い出さねばならん)
秘書(……『書の街』等、認めない……ッ 我ら魔導国の民は)
秘書(選ばれた者なのだ……!)
ボーゥ…… …… ……
バタバタバタ……ッ
少女「あ…… ……」
新米騎士「ん? ……え!? あれ、今……!?」
新米騎士「……否、瞳の色が違うな……少女さんの姉妹か何か?」
少女「! ……『少女』と名乗る者が、来た……のですね?」
新米騎士「…… ……」
新米騎士(『旧貴族』『秘書』……しかし)
新米騎士(……怪しいな)
少女「…… ……」キョロ
少女(居ない……まさか、船に……ッ!?)
少女「……騎士団長様に、お会いになりますか」
新米騎士「……騎士団長様に何の用があるんだ?」
少女「問うてみて下さい。『少女の瞳は何色だったか』」
新米騎士「……お前、何を……」
少女「それだけです。失礼します」
タタタ……
少年「こんな所にいたんですね『秘書様』」
少女「! お前……ッ」
少年「……さあ、皆が待ってますよ」ニヤッ
少女「!」
少女(お姉さま……ッ)
新米騎士「おい、ちょっと待て……『秘書』と言ったな」
230: 2013/11/21(木) 09:38:27.51 ID:0rx8iDcjP
少女「わ、私は……」
少年「そうです。何か?」
新米騎士「…… ……君、名は?」
少年「僕は少年と申します」
少女「違います、私は……ッ」
新米騎士「少年君、申し訳無いがこの『秘書』さんはここに残って貰う」
新米騎士「……良いね?」
少女「…… ……ッ」
少女(このまま、少年に連れ去られるよりも……)
少女(……この騎士の傍に居る方が、今は安全か……ッ)
少年「……『秘書』さん?」
少女「解りました」
少年「!? ……なッ」
少女「……?」
新米騎士「……こちらへ」グイッ
少女(痛い……ッ)
新米騎士「少年君。君は戻りなさい」
少年「で、でも……皆が、秘書さんを探して居られて」
新米騎士「……すぐに戻って貰うから、大丈夫だよ」
新米騎士「手荒なことはしないと約束する」
少年「……急ぎの案件があるのですが」
少女「……私は大丈夫です。戻りなさい、少年」
少年「……」キッ
少女「始まりの国との戦争は終わったのです。手荒に扱われる理由はありません」
スタスタ
衛生師「新米騎士? 何を……」
新米騎士「あ、衛生師様!」
衛生師「……何か、もめ事?」
新米騎士「……いえ、あの……ちょっと……」
少年「そうです。何か?」
新米騎士「…… ……君、名は?」
少年「僕は少年と申します」
少女「違います、私は……ッ」
新米騎士「少年君、申し訳無いがこの『秘書』さんはここに残って貰う」
新米騎士「……良いね?」
少女「…… ……ッ」
少女(このまま、少年に連れ去られるよりも……)
少女(……この騎士の傍に居る方が、今は安全か……ッ)
少年「……『秘書』さん?」
少女「解りました」
少年「!? ……なッ」
少女「……?」
新米騎士「……こちらへ」グイッ
少女(痛い……ッ)
新米騎士「少年君。君は戻りなさい」
少年「で、でも……皆が、秘書さんを探して居られて」
新米騎士「……すぐに戻って貰うから、大丈夫だよ」
新米騎士「手荒なことはしないと約束する」
少年「……急ぎの案件があるのですが」
少女「……私は大丈夫です。戻りなさい、少年」
少年「……」キッ
少女「始まりの国との戦争は終わったのです。手荒に扱われる理由はありません」
スタスタ
衛生師「新米騎士? 何を……」
新米騎士「あ、衛生師様!」
衛生師「……何か、もめ事?」
新米騎士「……いえ、あの……ちょっと……」
231: 2013/11/21(木) 09:45:15.54 ID:0rx8iDcjP
新米騎士「……此処で待っていて下さいよ。衛生師殿、此方へ」
衛生師「……?」
スタスタ
少年「無駄な事を。もう……『少女』様は船に乗られた」ボソ
少女「!」
少年「貴女は、大人しく僕たちと戻れば良いんです」
少女「……貴方の命令に従う義務などありません」
少年「……本当に、魔導国の民というプライドをお捨てになられたようで」
少年「所詮、雷の加護を持たない者等、その程度か!」
少年「大人しくしている方が身の為ですよ」
少女「……ええ。ですから大人しく、あの騎士の言葉に従うのですよ」
少年「……我らより、あの『出来損ない』を取ると!?」
少女「黙りなさい!」
少年「!」ビクッ
少女「……私達は、『書の街』の住人なのです」
少女「私を『代表者』に仕立て上げたのは、間違い無く貴方達でしょう!?」
少年「……代表者は『少女』様だ!お前では……ッ」
スタスタ
衛生師「……ええと、『秘書』さん?」
少女「…… ……」
少年「すみません、秘書様を連れて戻っても良いでしょうか?」
少年「ちょっと、急ぎの用事が……」
衛生師「君は新米騎士に送っていって貰ってね、少年君」
少年「え?」
衛生師「秘書さんには聞きたい事がある」
少女「…… ……」
衛生師「……?」
スタスタ
少年「無駄な事を。もう……『少女』様は船に乗られた」ボソ
少女「!」
少年「貴女は、大人しく僕たちと戻れば良いんです」
少女「……貴方の命令に従う義務などありません」
少年「……本当に、魔導国の民というプライドをお捨てになられたようで」
少年「所詮、雷の加護を持たない者等、その程度か!」
少年「大人しくしている方が身の為ですよ」
少女「……ええ。ですから大人しく、あの騎士の言葉に従うのですよ」
少年「……我らより、あの『出来損ない』を取ると!?」
少女「黙りなさい!」
少年「!」ビクッ
少女「……私達は、『書の街』の住人なのです」
少女「私を『代表者』に仕立て上げたのは、間違い無く貴方達でしょう!?」
少年「……代表者は『少女』様だ!お前では……ッ」
スタスタ
衛生師「……ええと、『秘書』さん?」
少女「…… ……」
少年「すみません、秘書様を連れて戻っても良いでしょうか?」
少年「ちょっと、急ぎの用事が……」
衛生師「君は新米騎士に送っていって貰ってね、少年君」
少年「え?」
衛生師「秘書さんには聞きたい事がある」
少女「…… ……」
232: 2013/11/21(木) 09:54:10.49 ID:0rx8iDcjP
少年「あ、貴方達は僕たちに何も命令しないと言った筈だろう?」
衛生師「うん、僕たちの仕事は『書の街』の治安を守る事だからね」
衛生師「……で、さっき『少女』さんってのが、助けて欲しいって」
少女「え!?」
衛生師「あれ? 秘書さんはその話を少女さんに聞いてるんじゃないのかな?」
衛生師「……『旧貴族達』が何か企んでて、自分の身が危ないから」
衛生師「保護して欲しいって言ってたって聞いてるよ」
少年「……なッ!?」
少女(お姉さま、なんて事を……! 否……)
少女(……寧ろ、好都合だ。騎士団長は私を知っている!)
少女(助かる……かも、しれない……!)
少女「私は、貴方と行きます……衛生師、さん?」
衛生師「うん。助かります……で、少年君は」
衛生師「新米騎士『達』と戻ってね」
少年「達……?」
新米騎士「暴動を起こされては、一人では手に余りますからね」
新米騎士「……もう少し、待ってて下さいね」
少年「…… ……ッ」
ダダ……ッ
新米騎士「あ……ッ 待て……ッ」
衛生師「良い良い……放っておきなさい」
衛生師「……秘書さん」
少女「……わ、私は秘書ではありません」
衛生師「あれ? でもさっき、少年君は君の事をそう読んだんでしょう?」
少女「私は……少女です」
衛生師「……『少女』は船に乗って……」
少女「あれが秘書です! あれは……私の双子の姉です!」
衛生師「うん、僕たちの仕事は『書の街』の治安を守る事だからね」
衛生師「……で、さっき『少女』さんってのが、助けて欲しいって」
少女「え!?」
衛生師「あれ? 秘書さんはその話を少女さんに聞いてるんじゃないのかな?」
衛生師「……『旧貴族達』が何か企んでて、自分の身が危ないから」
衛生師「保護して欲しいって言ってたって聞いてるよ」
少年「……なッ!?」
少女(お姉さま、なんて事を……! 否……)
少女(……寧ろ、好都合だ。騎士団長は私を知っている!)
少女(助かる……かも、しれない……!)
少女「私は、貴方と行きます……衛生師、さん?」
衛生師「うん。助かります……で、少年君は」
衛生師「新米騎士『達』と戻ってね」
少年「達……?」
新米騎士「暴動を起こされては、一人では手に余りますからね」
新米騎士「……もう少し、待ってて下さいね」
少年「…… ……ッ」
ダダ……ッ
新米騎士「あ……ッ 待て……ッ」
衛生師「良い良い……放っておきなさい」
衛生師「……秘書さん」
少女「……わ、私は秘書ではありません」
衛生師「あれ? でもさっき、少年君は君の事をそう読んだんでしょう?」
少女「私は……少女です」
衛生師「……『少女』は船に乗って……」
少女「あれが秘書です! あれは……私の双子の姉です!」
233: 2013/11/21(木) 10:03:42.58 ID:0rx8iDcjP
衛生師「……ほう」
新米騎士「……見え透いた嘘を吐くと……」
少女「嘘じゃありません! ……言った筈です、騎士団長様に問うて欲しいと」
衛生師「ん?」
新米騎士「……いえ、何でも、少女の瞳の色は何色だったか、と」
新米騎士「聞け、とか……」
衛生師「……ふむ」
少女「私は、この……『書の街』の代表者です」
少女「今更……貴方達を、始まりの国を謀ってどうなるんです!」
衛生師「……額面通りに鵜呑みにはできないよ?」
少女「!」
衛生師「『少女』も『秘書』も、『旧貴族』達も……街の人も、皆ね」
少女「…… ……」
衛生師「ただ、それは『まず疑う』であって、『信じない』訳じゃ無い」
衛生師「即断はしない、ってだけ……まあ、解ってくれとは言わないけど」
衛生師「僕たちは騎士団長様から、そうやって接しろって言われてるしね」
少女「……いえ。それは……理解、できます」
衛生師「うん。まあ……話を聞かせて貰う事はできる、よね?」
少女「はい……あの」
衛生師「ん?」
少女「……保護を、お願いする事はできますか」
衛生師「自分から監視を願うの?」
少女「はい」
衛生師「……手隙が僕しか居ないから、僕で良ければ」
少女「勿論です」
新米騎士「……衛生師殿、少年の方はどうしますか」
衛生師「……あの子は、『旧貴族』って奴?」
少女「そうです。私を始め…… ……あ」
新米騎士「え?」
少女「……私が少女、で船に乗ったのが秘書だと言う前提で」
少女「お話しさせて貰います」
新米騎士「……見え透いた嘘を吐くと……」
少女「嘘じゃありません! ……言った筈です、騎士団長様に問うて欲しいと」
衛生師「ん?」
新米騎士「……いえ、何でも、少女の瞳の色は何色だったか、と」
新米騎士「聞け、とか……」
衛生師「……ふむ」
少女「私は、この……『書の街』の代表者です」
少女「今更……貴方達を、始まりの国を謀ってどうなるんです!」
衛生師「……額面通りに鵜呑みにはできないよ?」
少女「!」
衛生師「『少女』も『秘書』も、『旧貴族』達も……街の人も、皆ね」
少女「…… ……」
衛生師「ただ、それは『まず疑う』であって、『信じない』訳じゃ無い」
衛生師「即断はしない、ってだけ……まあ、解ってくれとは言わないけど」
衛生師「僕たちは騎士団長様から、そうやって接しろって言われてるしね」
少女「……いえ。それは……理解、できます」
衛生師「うん。まあ……話を聞かせて貰う事はできる、よね?」
少女「はい……あの」
衛生師「ん?」
少女「……保護を、お願いする事はできますか」
衛生師「自分から監視を願うの?」
少女「はい」
衛生師「……手隙が僕しか居ないから、僕で良ければ」
少女「勿論です」
新米騎士「……衛生師殿、少年の方はどうしますか」
衛生師「……あの子は、『旧貴族』って奴?」
少女「そうです。私を始め…… ……あ」
新米騎士「え?」
少女「……私が少女、で船に乗ったのが秘書だと言う前提で」
少女「お話しさせて貰います」
234: 2013/11/21(木) 10:12:30.41 ID:0rx8iDcjP
衛生師「……うん。一応、その前提で聞くよ」
衛生師「その前に。新米騎士君、今日の出来事、騎士団長様に報告ね」
新米騎士「あ、はい……でも、船はさっき出ちゃいました……けど」
衛生師「数刻後に来るって聞いてるよ」
衛生師「……騎士団長様が、少女を迎えにね」
少女「え!?」
衛生師「もう始まりの国を発ってるはずだ」
少女「そ……んな!?」
新米騎士「何か、不都合でもあるのかい?」
少女「……新王と私は、面識がありません!」
少女「新王が、秘書が私だと信じてしまったら……!!」
衛生師「…… ……君の身の潔白、って言ったらおかしいけど」
衛生師「それは、騎士団長様が来れば晴れるんだろ?」
少女「そ、それは勿論です! でも……ッ」
新米騎士「……なんか、言ってること無茶苦茶だな」
少女「姉は……ッ 私に成り代わるつもりなんです!」
少女「私だけ、甘い汁を吸うつもりかと……ッ」
衛生師「……ふむ」
新米騎士「……あ、あの?」
衛生師「とにかく、君は騎士団長様を此処で迎えて。新米騎士君」
衛生師「……貴女は、こっちへ、秘書さん」
少女「私は『少女』です!」
衛生師「…… ……」ハァ
少女(混乱させる名目だと思われても仕方無いけど……ッ)
少女(でも、騎士団長に会えれば……ッ 否!)
少女(新王と、姉が会ってしまったら、手遅れに……!)
少女(お姉さま、本当に……ッ何と言う事を言ってくれたの!)
少女(……あの人は、自分の事しか考えて居ない!)
少女(辻褄が合わず、この街に残された私……否)
少女(住民の事も、『旧貴族』達さえも)
少女(都合良く使えさえすれば、良いと言うのか……!)
衛生師「その前に。新米騎士君、今日の出来事、騎士団長様に報告ね」
新米騎士「あ、はい……でも、船はさっき出ちゃいました……けど」
衛生師「数刻後に来るって聞いてるよ」
衛生師「……騎士団長様が、少女を迎えにね」
少女「え!?」
衛生師「もう始まりの国を発ってるはずだ」
少女「そ……んな!?」
新米騎士「何か、不都合でもあるのかい?」
少女「……新王と私は、面識がありません!」
少女「新王が、秘書が私だと信じてしまったら……!!」
衛生師「…… ……君の身の潔白、って言ったらおかしいけど」
衛生師「それは、騎士団長様が来れば晴れるんだろ?」
少女「そ、それは勿論です! でも……ッ」
新米騎士「……なんか、言ってること無茶苦茶だな」
少女「姉は……ッ 私に成り代わるつもりなんです!」
少女「私だけ、甘い汁を吸うつもりかと……ッ」
衛生師「……ふむ」
新米騎士「……あ、あの?」
衛生師「とにかく、君は騎士団長様を此処で迎えて。新米騎士君」
衛生師「……貴女は、こっちへ、秘書さん」
少女「私は『少女』です!」
衛生師「…… ……」ハァ
少女(混乱させる名目だと思われても仕方無いけど……ッ)
少女(でも、騎士団長に会えれば……ッ 否!)
少女(新王と、姉が会ってしまったら、手遅れに……!)
少女(お姉さま、本当に……ッ何と言う事を言ってくれたの!)
少女(……あの人は、自分の事しか考えて居ない!)
少女(辻褄が合わず、この街に残された私……否)
少女(住民の事も、『旧貴族』達さえも)
少女(都合良く使えさえすれば、良いと言うのか……!)
235: 2013/11/21(木) 10:25:59.76 ID:0rx8iDcjP
衛生師「……で、『旧貴族達』ってのは、何を企んでるの」
少女「……解りません」
新米騎士「……アンタが代表者だとするなら、何でアンタが知らないんだよ」
少女「……旧貴族達の『至高』は雷の加護だからです」
衛生師「…… ……君は、紅い瞳をしてる」
少女「はい。代表者を決める時、誰も……その」
衛生師「進んでやりたがる者は居なかった?」
少女「はい」
衛生師「……何故? 何となく納得いかないんだよね」
衛生師「『トップ』になる訳でしょ。暫定であれ」
少女「……言葉通りに告げさせて貰えば『出来損ない達と話す言葉は持ち合わせていない』」
新米騎士「な……ッ」
衛生師「ああ、成る程……君が……否。『少女』が代表者に立ったのは」
衛生師「年長者だからだと聞いてるけど」
少女「……はい。私と、姉の秘書が年長者でした。私達は双子なので」
衛生師「……で、君に……ああ『少女』になった理由は?」
少女「私が雷の加護を持たないからです」
衛生師「んー。やっぱりおかしく無い? 本来ならば……雷の加護が至高だと言うなら」
衛生師「そっちを『代表者』にするでしょう……ああ、っと」
衛生師「ほら、新米騎士君。君は行った行った」
新米騎士「あ……は、はい」
衛生師「……外は寒いでしょ。取りあえずアッチに、騎士団員の簡易詰め所が」
衛生師「あるから、そっちに行きましょ」
少女「此処では、駄目ですか」
衛生師「え?」
少女「……疑う訳じゃ無いですけど」
衛生師「……否。最初に、ね。そういう話をしたのは僕だからね」
衛生師「君は、僕も『旧貴族達』と通じてないとは判断出来ない、訳だね」
新米騎士「な! 失礼な事を……!」
衛生師「否、結構な事だ。良い判断だと思う」
少女「……詰め所は安全だと思います、けど」
衛生師「話を聞く為に二人きりになるのは避けたい?」
少女「…… ……すみません」
衛生師「良いよ。此処なら船が来るのも見えるし」
衛生師「……その代わり、君も『書の街の目』に晒され続けるよ?」
少女「……解りません」
新米騎士「……アンタが代表者だとするなら、何でアンタが知らないんだよ」
少女「……旧貴族達の『至高』は雷の加護だからです」
衛生師「…… ……君は、紅い瞳をしてる」
少女「はい。代表者を決める時、誰も……その」
衛生師「進んでやりたがる者は居なかった?」
少女「はい」
衛生師「……何故? 何となく納得いかないんだよね」
衛生師「『トップ』になる訳でしょ。暫定であれ」
少女「……言葉通りに告げさせて貰えば『出来損ない達と話す言葉は持ち合わせていない』」
新米騎士「な……ッ」
衛生師「ああ、成る程……君が……否。『少女』が代表者に立ったのは」
衛生師「年長者だからだと聞いてるけど」
少女「……はい。私と、姉の秘書が年長者でした。私達は双子なので」
衛生師「……で、君に……ああ『少女』になった理由は?」
少女「私が雷の加護を持たないからです」
衛生師「んー。やっぱりおかしく無い? 本来ならば……雷の加護が至高だと言うなら」
衛生師「そっちを『代表者』にするでしょう……ああ、っと」
衛生師「ほら、新米騎士君。君は行った行った」
新米騎士「あ……は、はい」
衛生師「……外は寒いでしょ。取りあえずアッチに、騎士団員の簡易詰め所が」
衛生師「あるから、そっちに行きましょ」
少女「此処では、駄目ですか」
衛生師「え?」
少女「……疑う訳じゃ無いですけど」
衛生師「……否。最初に、ね。そういう話をしたのは僕だからね」
衛生師「君は、僕も『旧貴族達』と通じてないとは判断出来ない、訳だね」
新米騎士「な! 失礼な事を……!」
衛生師「否、結構な事だ。良い判断だと思う」
少女「……詰め所は安全だと思います、けど」
衛生師「話を聞く為に二人きりになるのは避けたい?」
少女「…… ……すみません」
衛生師「良いよ。此処なら船が来るのも見えるし」
衛生師「……その代わり、君も『書の街の目』に晒され続けるよ?」
236: 2013/11/21(木) 10:32:26.59 ID:0rx8iDcjP
少女「……構いません」
衛生師「ふむ。じゃあ、新米騎士君にも立ち会って貰いましょ」
衛生師「良い?」
新米騎士「じ、自分で良ければ勿論です!」
少女「……ありがとうございます」
衛生師「まあ、じゃあ……せめて通行人の邪魔にならない隅っこに移動しよう」
スタスタ
衛生師「……で、続きは? 何で炎の加護の『少女』が代表者になった?」
少女「押しつけられたからです。姉は後ろから操るつもりだったのか」
少女「単純に厭だったのか……」
衛生師「ふむ」
少女「……なので、姉を補佐役にしました。……願い出てくれましたから」
新米騎士「……それが、秘書?」
少女「はい」
衛生師「『秘書』は茶の瞳をしてるんだね? 騎士団長様とあった事は?」
少女「ありません。断固拒否されていましたから」
衛生師「……で、さっきの『助けて!』にどう繋がるの」
少女「……新王からの書簡に目を通し、戴冠式のお誘いをお受けしました」
少女「その事に……姉は、自分だけ王の庇護を受けるつもりかと」
新米騎士「は!?」
衛生師「ふむ。じゃあ、新米騎士君にも立ち会って貰いましょ」
衛生師「良い?」
新米騎士「じ、自分で良ければ勿論です!」
少女「……ありがとうございます」
衛生師「まあ、じゃあ……せめて通行人の邪魔にならない隅っこに移動しよう」
スタスタ
衛生師「……で、続きは? 何で炎の加護の『少女』が代表者になった?」
少女「押しつけられたからです。姉は後ろから操るつもりだったのか」
少女「単純に厭だったのか……」
衛生師「ふむ」
少女「……なので、姉を補佐役にしました。……願い出てくれましたから」
新米騎士「……それが、秘書?」
少女「はい」
衛生師「『秘書』は茶の瞳をしてるんだね? 騎士団長様とあった事は?」
少女「ありません。断固拒否されていましたから」
衛生師「……で、さっきの『助けて!』にどう繋がるの」
少女「……新王からの書簡に目を通し、戴冠式のお誘いをお受けしました」
少女「その事に……姉は、自分だけ王の庇護を受けるつもりかと」
新米騎士「は!?」
238: 2013/11/21(木) 13:27:34.57 ID:0rx8iDcjP
少女「……私だけはそうでは無いと言うつもりはありません。でも」
少女「姉……否、あの人達……かもしれませんが」
少女「『王に手込めにされたらどうするのだ』と言う、意味の事を……」
新米騎士「無礼な……!」
衛生師「まあ、待って待って……心配してくれてる、んじゃ無くて?」
少女「どうでしょうね。結局、姉の中では、被支配者への処遇というのは……」
少女「……あえて、使わせて頂きますが、今まで、私達が」
少女「……『出来損ない』達にしてきた事に置き換えるしか出来ないのでしょう」
衛生師「…… ……」
少女「だけど、それが私の身に起こりうるかも知れないと言うのは」
少女「『心配』では無く、私だけがいい目を見る、と言う事に置き換わる様です」
少女「形は何であれ、庇護……それを私は、街の為だと姉たちを謀るつもりだろうと」
衛生師「……矛盾してるな。君達が……あー。『出来損ない』だと蔑んできた人達に」
衛生師「押しつけてきた事は『奴隷』って言う状態だろう?」
少女「王は、そんな扱いをする訳じゃ無いとどこかでは解って居るのかも知れません」
少女「私を接触させない為に……私だけに甘い汁を吸わせない為に」
少女「説得、と言うか……言いくるめようとしたのかもしれません、が」
衛生師「うーん……詰めが甘いなぁ。あ、それを信じるなら、だけどね」
少女「…… ……」
衛生師「まあ、取りあえずその話が事実だとして、だけど」
衛生師「成り代わったって、手込めにされるのが自分だったら……うーん」
少女「……自分が良ければ、良いんでしょうね」
衛生師「え?」
少女「助けて、と船に乗り込んだのもそうでしょう」
少女「残された私達の事は、お構いなしです」
少女「……さっきの少年というあの子に、何を話したのかは解りませんが」
少女「あんなに、すぐにバレる様な嘘を……」
衛生師「取りあえず、船に乗せて貰えればOKって事か」
少女「……新王にあって、自分が少女だと……信じて貰えれば」
少女「それで、良いのか…… ……」
少女「姉……否、あの人達……かもしれませんが」
少女「『王に手込めにされたらどうするのだ』と言う、意味の事を……」
新米騎士「無礼な……!」
衛生師「まあ、待って待って……心配してくれてる、んじゃ無くて?」
少女「どうでしょうね。結局、姉の中では、被支配者への処遇というのは……」
少女「……あえて、使わせて頂きますが、今まで、私達が」
少女「……『出来損ない』達にしてきた事に置き換えるしか出来ないのでしょう」
衛生師「…… ……」
少女「だけど、それが私の身に起こりうるかも知れないと言うのは」
少女「『心配』では無く、私だけがいい目を見る、と言う事に置き換わる様です」
少女「形は何であれ、庇護……それを私は、街の為だと姉たちを謀るつもりだろうと」
衛生師「……矛盾してるな。君達が……あー。『出来損ない』だと蔑んできた人達に」
衛生師「押しつけてきた事は『奴隷』って言う状態だろう?」
少女「王は、そんな扱いをする訳じゃ無いとどこかでは解って居るのかも知れません」
少女「私を接触させない為に……私だけに甘い汁を吸わせない為に」
少女「説得、と言うか……言いくるめようとしたのかもしれません、が」
衛生師「うーん……詰めが甘いなぁ。あ、それを信じるなら、だけどね」
少女「…… ……」
衛生師「まあ、取りあえずその話が事実だとして、だけど」
衛生師「成り代わったって、手込めにされるのが自分だったら……うーん」
少女「……自分が良ければ、良いんでしょうね」
衛生師「え?」
少女「助けて、と船に乗り込んだのもそうでしょう」
少女「残された私達の事は、お構いなしです」
少女「……さっきの少年というあの子に、何を話したのかは解りませんが」
少女「あんなに、すぐにバレる様な嘘を……」
衛生師「取りあえず、船に乗せて貰えればOKって事か」
少女「……新王にあって、自分が少女だと……信じて貰えれば」
少女「それで、良いのか…… ……」
239: 2013/11/21(木) 13:35:30.13 ID:0rx8iDcjP
少女「少年にしても、姉から何か聞いたのは間違い無いでしょう」
少女「私を『秘書』と呼びましたからね」
衛生師「……まあ、此処まで君に聞いたこの話も、ひっくるめて」
衛生師「僕たちを騙そうとして……って、僕たちは疑わないと行けない訳だ」
少女「…… ……」
衛生師「それだけの事を君達……『魔導国』はしてきたって事」
衛生師「『書の街』って名前になったからって、はいそうですか、は無理だって」
衛生師「それは解るよね?」
少女「…… ……はい」
衛生師「取りあえず、騎士団長様が来るまで、君の事は監視させて貰う」
衛生師「……ま、保護も兼ねて」ハァ
少女「……ありがとうございます」
新米騎士「なんか納得いきませんねぇ」
衛生師「まあ、無茶苦茶な話だからね。本当にあの船に乗った子が」
衛生師「自分の事しか考えてないとは言え……」
少女「…… ……」
衛生師「……無鉄砲にも程があるなぁ」
少女「すみません」
衛生師「……さっき、君は、さ」
少女「?」
衛生師「自分だけがそうだと言うつもりはないと言ったよね?」
少女「え……ああ、はい」
衛生師「でも、随分協力的に思えるけど。あ、真実なら、ね」
少女「……それすらも、自分の保身の為だけ、と思いますか」
衛生師「はっきり言うなら思わなくも無い」
少女「……そう、ですね」
衛生師「うーん……そうだな」
衛生師「代表者の自覚、とも思えるし」
衛生師「……君が本当に『少女』なら、書の街も何れ、良くなっていくかもなぁ」
衛生師「とも思える、んだけど」
少女「……でも、私には……結局『旧貴族』達を押さえ込む事はできないみたいです」
衛生師「…… ……」
少女「押しつけられたのだと言う事は、自覚していましたが」
少女「私を『秘書』と呼びましたからね」
衛生師「……まあ、此処まで君に聞いたこの話も、ひっくるめて」
衛生師「僕たちを騙そうとして……って、僕たちは疑わないと行けない訳だ」
少女「…… ……」
衛生師「それだけの事を君達……『魔導国』はしてきたって事」
衛生師「『書の街』って名前になったからって、はいそうですか、は無理だって」
衛生師「それは解るよね?」
少女「…… ……はい」
衛生師「取りあえず、騎士団長様が来るまで、君の事は監視させて貰う」
衛生師「……ま、保護も兼ねて」ハァ
少女「……ありがとうございます」
新米騎士「なんか納得いきませんねぇ」
衛生師「まあ、無茶苦茶な話だからね。本当にあの船に乗った子が」
衛生師「自分の事しか考えてないとは言え……」
少女「…… ……」
衛生師「……無鉄砲にも程があるなぁ」
少女「すみません」
衛生師「……さっき、君は、さ」
少女「?」
衛生師「自分だけがそうだと言うつもりはないと言ったよね?」
少女「え……ああ、はい」
衛生師「でも、随分協力的に思えるけど。あ、真実なら、ね」
少女「……それすらも、自分の保身の為だけ、と思いますか」
衛生師「はっきり言うなら思わなくも無い」
少女「……そう、ですね」
衛生師「うーん……そうだな」
衛生師「代表者の自覚、とも思えるし」
衛生師「……君が本当に『少女』なら、書の街も何れ、良くなっていくかもなぁ」
衛生師「とも思える、んだけど」
少女「……でも、私には……結局『旧貴族』達を押さえ込む事はできないみたいです」
衛生師「…… ……」
少女「押しつけられたのだと言う事は、自覚していましたが」
240: 2013/11/21(木) 13:42:02.33 ID:0rx8iDcjP
少女「……姉に、なって貰った方がやはり、良かったのかもしれません」
衛生師「……どうかな」
少女「え?」
衛生師「『旧貴族達』はまとまっただろうね。でも」
衛生師「始まりの国、としてはやりにくいことこの上無い」
衛生師「信じるなら……って前提。だけど?」
少女「……反乱、ですか」
衛生師「物騒な言い方だけど、そうなるね」
衛生師「僕がさっきからしつこい位、『真実なら』と念を押すのは」
衛生師「そういう事だ。僕たちには決定権は無いから」
衛生師「個人的には信じてやりたいけど、って気持ちを、自戒する為」
少女「…… ……」
衛生師「さて、船が着くまで……どうしようかな」
衛生師「やっぱりまだ、詰め所に行く気にはならない?」
少女「……いえ。行きます」
衛生師「うん。ありがとう……大丈夫。他の騎士もいるから。一人とか」
衛生師「僕と二人きりにはならないようにするし、手荒なことも勿論しない」
衛生師「じゃあ、新米騎士君。船が来たら伝令、お願いね」
新米騎士「了解しました!」
衛生師「うん。じゃあ、いこうか」
少女「は、はい」
スタスタ
新米騎士(凄いなぁ、衛生師様……)
新米騎士(……あの噂は、本当なのだろうか。もし、騎士団長様が)
新米騎士(引退されたら、次期団長は……彼に……)
新米騎士(でも、始まりの国には、戦士様が戻られている)
新米騎士(…… ……否! 余計な事は考えずに居よう)
新米騎士(自分には……関係無い事だ)
衛生師「……どうかな」
少女「え?」
衛生師「『旧貴族達』はまとまっただろうね。でも」
衛生師「始まりの国、としてはやりにくいことこの上無い」
衛生師「信じるなら……って前提。だけど?」
少女「……反乱、ですか」
衛生師「物騒な言い方だけど、そうなるね」
衛生師「僕がさっきからしつこい位、『真実なら』と念を押すのは」
衛生師「そういう事だ。僕たちには決定権は無いから」
衛生師「個人的には信じてやりたいけど、って気持ちを、自戒する為」
少女「…… ……」
衛生師「さて、船が着くまで……どうしようかな」
衛生師「やっぱりまだ、詰め所に行く気にはならない?」
少女「……いえ。行きます」
衛生師「うん。ありがとう……大丈夫。他の騎士もいるから。一人とか」
衛生師「僕と二人きりにはならないようにするし、手荒なことも勿論しない」
衛生師「じゃあ、新米騎士君。船が来たら伝令、お願いね」
新米騎士「了解しました!」
衛生師「うん。じゃあ、いこうか」
少女「は、はい」
スタスタ
新米騎士(凄いなぁ、衛生師様……)
新米騎士(……あの噂は、本当なのだろうか。もし、騎士団長様が)
新米騎士(引退されたら、次期団長は……彼に……)
新米騎士(でも、始まりの国には、戦士様が戻られている)
新米騎士(…… ……否! 余計な事は考えずに居よう)
新米騎士(自分には……関係無い事だ)
241: 2013/11/21(木) 13:46:54.51 ID:0rx8iDcjP
……
………
…………
王「……少女さん、が!?」
騎士「はい。自分に助けを求めてきまして……」
王「助け……」
騎士「ええ。何でも『旧貴族達』が何かを企んでいて、身の安全が……とか」
王「…… ……伯父上は?」
騎士「騎士団長様ですか? 入れ違いの便で、書の街に向かわれましたが」
王(……伯父上は、居ない)
王(僕が、一人で判断しなければならない……ッ)
王(否! 王、は僕だ…… ……僕が決めて良いんだ)
王(僕が、決めなくてはいけないんだ……!)
王(……まだ。話さなくて良かった)
騎士「新王様?」
王「あ……わ、解りました。詳しい話を聞くとしましょう」
王「……此処に、通して……良い……」
騎士「……良いんですか?」
王(良い、のか? ……否! ……良いんだ)
王「はい。連れてきて下さい」
騎士「……承知しました」
スタスタ、パタン
王(僕は、父上じゃ無い。何もかも倣う必要も無い……ッ)
コンコン
王「は、はい!」
騎士「失礼します。お連れしました」
王「……どうぞ」
カチャ
騎士「……失礼の無いように」
秘書「は、はい……お初にお目に掛かります、新王様」
王「…… ……!?」
………
…………
王「……少女さん、が!?」
騎士「はい。自分に助けを求めてきまして……」
王「助け……」
騎士「ええ。何でも『旧貴族達』が何かを企んでいて、身の安全が……とか」
王「…… ……伯父上は?」
騎士「騎士団長様ですか? 入れ違いの便で、書の街に向かわれましたが」
王(……伯父上は、居ない)
王(僕が、一人で判断しなければならない……ッ)
王(否! 王、は僕だ…… ……僕が決めて良いんだ)
王(僕が、決めなくてはいけないんだ……!)
王(……まだ。話さなくて良かった)
騎士「新王様?」
王「あ……わ、解りました。詳しい話を聞くとしましょう」
王「……此処に、通して……良い……」
騎士「……良いんですか?」
王(良い、のか? ……否! ……良いんだ)
王「はい。連れてきて下さい」
騎士「……承知しました」
スタスタ、パタン
王(僕は、父上じゃ無い。何もかも倣う必要も無い……ッ)
コンコン
王「は、はい!」
騎士「失礼します。お連れしました」
王「……どうぞ」
カチャ
騎士「……失礼の無いように」
秘書「は、はい……お初にお目に掛かります、新王様」
王「…… ……!?」
242: 2013/11/21(木) 13:53:02.70 ID:0rx8iDcjP
秘書「書の街の代表者の、少女と申します」
秘書「戴冠式のお誘い、ありがとうございました」
王「…… ……」
秘書「……こんな形で、先にお会いする事になってしまったのは……」
王「…… ……」
王(……誰、だ。これは)
秘書「残念……な話なのですが……」
王(確かに、少女さんと同じ顔をしている。だが……)
王(彼女は、燃える様な紅い瞳をしていたはずだ!)
秘書「大変失礼かと存じますが、新王様。できれば、お人払いを……」
王(それに、こんな気の強そうな雰囲気では無かった)
王(しっかりしよう、しなければ……と、必氏な様子で……)
王(……もう少し……どこか、憂いる瞳を…… ……)
騎士「新王様?」
王「!」ハッ
秘書「…… ……」
王「……ああ、失礼。貴女は、助けを求めていらした、のですね」
秘書「お恥ずかしながら」
騎士「……如何致しましょう」
王(どうすれば、良い。しかし……今、この人は少女、と確かに口にした)
王(…… ……お父様……ッ)
王「……申し訳ありませんが、それは出来ません」
秘書「え……」
王「『少女』さんを信用しない訳では無いのです。一国を……まだ正式に」
王「襲名していないとは言え、僕は『王』ですから」
王「……貴女の街の前身を考えれば、念には念を……ね?」
秘書「戴冠式のお誘い、ありがとうございました」
王「…… ……」
秘書「……こんな形で、先にお会いする事になってしまったのは……」
王「…… ……」
王(……誰、だ。これは)
秘書「残念……な話なのですが……」
王(確かに、少女さんと同じ顔をしている。だが……)
王(彼女は、燃える様な紅い瞳をしていたはずだ!)
秘書「大変失礼かと存じますが、新王様。できれば、お人払いを……」
王(それに、こんな気の強そうな雰囲気では無かった)
王(しっかりしよう、しなければ……と、必氏な様子で……)
王(……もう少し……どこか、憂いる瞳を…… ……)
騎士「新王様?」
王「!」ハッ
秘書「…… ……」
王「……ああ、失礼。貴女は、助けを求めていらした、のですね」
秘書「お恥ずかしながら」
騎士「……如何致しましょう」
王(どうすれば、良い。しかし……今、この人は少女、と確かに口にした)
王(…… ……お父様……ッ)
王「……申し訳ありませんが、それは出来ません」
秘書「え……」
王「『少女』さんを信用しない訳では無いのです。一国を……まだ正式に」
王「襲名していないとは言え、僕は『王』ですから」
王「……貴女の街の前身を考えれば、念には念を……ね?」
243: 2013/11/21(木) 13:53:53.89 ID:0rx8iDcjP
おむかえー!
魔王「真に美しい世界を望む為だ」【2】引用: 魔王「真に美しい世界を望む為だ」
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