618: 2014/01/13(月) 10:24:02.57 ID:gjEhcpBoP
619: 2014/01/13(月) 10:33:03.99 ID:gjEhcpBoP
癒し手「あ……この道、ですよね」
側近「ああ……大丈夫か?」
癒し手「お散歩ですよ。平気です」
王子「……結婚式以来、か」フゥ
側近「親父も大丈夫か?息が上がってるぞ」
王子「俺はまだまだ元気だ……と、言いたいが」
王子「……休み無く往復するのは流石に堪える、な」
癒し手「ご無理なさらない方が……」
王子「癒し手もいるし、ゆっくり行ってくれるなら大丈夫さ」
王子「……今生の別れ……とは、思いたく無いが」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
側近「泣き止んだな。癒し手、青年をこっちへ」
癒し手「あ、は、はい……」
青年「…… ……」
側近「ん、どうした?」
王子「……急にご機嫌になったな」
癒し手「嬉しい、んでしょう。いえ、心地良い……のかな」
王子「エルフの加護……か?」
癒し手「……薄れてしまったとは言え……私も、気持ちいいです」
癒し手「この空気」
王子「そうか。青年も……解るんだな。俺にはさっぱりだが」
側近「草花しか無くて、気持ちいい風が吹いてて」
王子「?」
側近「海が望めて、美しい……何も解らない人間でも、俺達でも」
側近「それだけで、気持ちいいと思うモンだろう?」
王子「……そう、だな」
側近「俺は……魔に変じても。魔法だなんだ、良く解らないからな」
王子「……あえて突っ込まなかったのに、お前は」
癒し手「……この『世界』は、何なんでしょうね」
側近「ん?」
癒し手「何の為にあるんでしょう。人間、魔族、エルフ……」
癒し手「どこで、どうやって……別れてしまったのでしょう」
王子「…… ……」
癒し手「加護、とか。それが優れてるとか、優れてないとか……」
癒し手「……『個』は以上でも以下でも無い筈ですのに」
側近「…… ……」
癒し手「何かと比べ、それに優劣をつけるだなんて……下らない事です」
王子「だが、そうで無ければ生きていけないのも『命』だ」
側近「親父?」
側近「ああ……大丈夫か?」
癒し手「お散歩ですよ。平気です」
王子「……結婚式以来、か」フゥ
側近「親父も大丈夫か?息が上がってるぞ」
王子「俺はまだまだ元気だ……と、言いたいが」
王子「……休み無く往復するのは流石に堪える、な」
癒し手「ご無理なさらない方が……」
王子「癒し手もいるし、ゆっくり行ってくれるなら大丈夫さ」
王子「……今生の別れ……とは、思いたく無いが」
側近「…… ……」
癒し手「…… ……」
側近「泣き止んだな。癒し手、青年をこっちへ」
癒し手「あ、は、はい……」
青年「…… ……」
側近「ん、どうした?」
王子「……急にご機嫌になったな」
癒し手「嬉しい、んでしょう。いえ、心地良い……のかな」
王子「エルフの加護……か?」
癒し手「……薄れてしまったとは言え……私も、気持ちいいです」
癒し手「この空気」
王子「そうか。青年も……解るんだな。俺にはさっぱりだが」
側近「草花しか無くて、気持ちいい風が吹いてて」
王子「?」
側近「海が望めて、美しい……何も解らない人間でも、俺達でも」
側近「それだけで、気持ちいいと思うモンだろう?」
王子「……そう、だな」
側近「俺は……魔に変じても。魔法だなんだ、良く解らないからな」
王子「……あえて突っ込まなかったのに、お前は」
癒し手「……この『世界』は、何なんでしょうね」
側近「ん?」
癒し手「何の為にあるんでしょう。人間、魔族、エルフ……」
癒し手「どこで、どうやって……別れてしまったのでしょう」
王子「…… ……」
癒し手「加護、とか。それが優れてるとか、優れてないとか……」
癒し手「……『個』は以上でも以下でも無い筈ですのに」
側近「…… ……」
癒し手「何かと比べ、それに優劣をつけるだなんて……下らない事です」
王子「だが、そうで無ければ生きていけないのも『命』だ」
側近「親父?」
620: 2014/01/13(月) 10:39:59.92 ID:gjEhcpBoP
王子「……弱肉強食、だ。食物連鎖と言うべきか」
癒し手「…… ……」
王子「全てが等しく、どれも同じ……だなんて事は」
王子「あり得ない、決して」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
王子「行こうか」
癒し手「あ……すみません」
王子「否、時間は良いんだ。船だって……待ってくれる。だが」
王子「……青年、寝ちゃったみたいだ。今のうちに船に乗せた方が良いだろう」
側近「ああ……そうだな」
癒し手「……後、少しだけ」
王子「?」
癒し手「もう……見れるとは限りません。だから」
癒し手「……だから」
王子「…… ……」
癒し手「皮肉ですね。確かに景色も良くて、本当に美しい場所なのに」
癒し手「……この丘自体が、強大な墓、何ですね」
側近「…… ……」
癒し手「私達は、犠牲の上に立っている。そうして、未来を紡いでいく」
側近「癒し手……」
癒し手「『過去』……氏者は土へ……否、空へ還り、世界へ孵っていく……んです」
癒し手「……何れ、私達も『過去』になる。それが……『世界の理』なんですね」
王子「…… ……」
側近「…… ……」
……
………
…………
キィ、パタン
少女「おかえりなさ…… ……衛生師?」
衛生師「王様を待っていた、のかい」
少女「……そういう訳では無い。此処は彼の部屋だからな」
少女「主が何時帰って来ようが……どうした?」
衛生師「…… ……ん?」
少女「珍しく、元気が無い様に見える」
癒し手「…… ……」
王子「全てが等しく、どれも同じ……だなんて事は」
王子「あり得ない、決して」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
王子「行こうか」
癒し手「あ……すみません」
王子「否、時間は良いんだ。船だって……待ってくれる。だが」
王子「……青年、寝ちゃったみたいだ。今のうちに船に乗せた方が良いだろう」
側近「ああ……そうだな」
癒し手「……後、少しだけ」
王子「?」
癒し手「もう……見れるとは限りません。だから」
癒し手「……だから」
王子「…… ……」
癒し手「皮肉ですね。確かに景色も良くて、本当に美しい場所なのに」
癒し手「……この丘自体が、強大な墓、何ですね」
側近「…… ……」
癒し手「私達は、犠牲の上に立っている。そうして、未来を紡いでいく」
側近「癒し手……」
癒し手「『過去』……氏者は土へ……否、空へ還り、世界へ孵っていく……んです」
癒し手「……何れ、私達も『過去』になる。それが……『世界の理』なんですね」
王子「…… ……」
側近「…… ……」
……
………
…………
キィ、パタン
少女「おかえりなさ…… ……衛生師?」
衛生師「王様を待っていた、のかい」
少女「……そういう訳では無い。此処は彼の部屋だからな」
少女「主が何時帰って来ようが……どうした?」
衛生師「…… ……ん?」
少女「珍しく、元気が無い様に見える」
621: 2014/01/13(月) 10:47:06.83 ID:gjEhcpBoP
衛生師「僕はそんなに、何時も何時も元気いっぱい!ってタイプじゃ無いと思うけど」
少女「……何かあったのか」
衛生師「……王様から伝言だ」
少女「…… ……氏んだ、のか」
衛生師「…… ……」
少女「言い淀む何て珍しい」
衛生師「……悲しくないのか、てのは愚問だね」
少女「覚悟はしていた……否」
少女「寧ろ、今まで生かされていたのだと思う方が不思議……だと」
少女「良く、考えて見ると……思う、のかもしれない」
衛生師「歯切れが良くないね。その方が珍しい」
少女「……良く解らないんだ。忘れてしまえる事では、無いだろうに」
衛生師「いよいよ本当に毒を抜かれたのか」
少女「…… ……」
衛生師「王様は、地下牢に行った、けど」
少女「…… ……」
衛生師「……弔いが済めば、壁を塗り込めてしまうらしい」
少女「え?」
衛生師「もう牢など必要無いだろう、とね」
少女「……早計じゃ無いか?」
衛生師「さてね……君は、必要だと思う?」
少女「…… ……」
衛生師「それが済めば……君の部屋を用意すると言っていたよ」
少女「え!?」
衛生師「城の中に限る、けれど。自由に出歩いて良い、てさ」
少女「……王は、どうしたんだ?」
衛生師「喜ぶ所じゃないのか」
少女「…… ……」
衛生師「……まあ、良い。食事にしようか」
少女「最近、貴方とばかりだな」
衛生師「……王様に一緒に食事が取りたいって言えば」
衛生師「飛び跳ねて喜ぶと思うけど」
少女「……寝て、と言うか横になってばかりだろう」
衛生師「僕も回復魔法は使える。まあ、王ご自身も、だけど」
少女「……心のケアは魔法では出来ない」
少女「……何かあったのか」
衛生師「……王様から伝言だ」
少女「…… ……氏んだ、のか」
衛生師「…… ……」
少女「言い淀む何て珍しい」
衛生師「……悲しくないのか、てのは愚問だね」
少女「覚悟はしていた……否」
少女「寧ろ、今まで生かされていたのだと思う方が不思議……だと」
少女「良く、考えて見ると……思う、のかもしれない」
衛生師「歯切れが良くないね。その方が珍しい」
少女「……良く解らないんだ。忘れてしまえる事では、無いだろうに」
衛生師「いよいよ本当に毒を抜かれたのか」
少女「…… ……」
衛生師「王様は、地下牢に行った、けど」
少女「…… ……」
衛生師「……弔いが済めば、壁を塗り込めてしまうらしい」
少女「え?」
衛生師「もう牢など必要無いだろう、とね」
少女「……早計じゃ無いか?」
衛生師「さてね……君は、必要だと思う?」
少女「…… ……」
衛生師「それが済めば……君の部屋を用意すると言っていたよ」
少女「え!?」
衛生師「城の中に限る、けれど。自由に出歩いて良い、てさ」
少女「……王は、どうしたんだ?」
衛生師「喜ぶ所じゃないのか」
少女「…… ……」
衛生師「……まあ、良い。食事にしようか」
少女「最近、貴方とばかりだな」
衛生師「……王様に一緒に食事が取りたいって言えば」
衛生師「飛び跳ねて喜ぶと思うけど」
少女「……寝て、と言うか横になってばかりだろう」
衛生師「僕も回復魔法は使える。まあ、王ご自身も、だけど」
少女「……心のケアは魔法では出来ない」
622: 2014/01/13(月) 10:55:33.60 ID:gjEhcpBoP
衛生師「とうとう狂った、とでも?」
少女「そうじゃ無い!」
衛生師「…… ……」
少女「……共に眠ると魘されている。否……それすら、最近は減った」
衛生師「…… ……」
少女「私を抱く事もだ」
衛生師「部屋には、戻ってるんだろう?」
少女「……私が寝入った頃に戻って来てはいる様だ」
少女「気配で一瞬目を覚ます。だが……まあ、すぐに寝てしまうから、私も」
衛生師「……随分慣れたな」
少女「…… ……」
衛生師「別に嫌味じゃ無いよ」
少女「今更だな……適応してしまえば平穏に暮らせるんだ」
少女「……気がかりも、消えた」
衛生師「……秘書?」
少女「青年を見に行く前に、書の街の新しい代表者、の話を聞いたことが大きい」
衛生師「……ああ、成る程」
少女「……複雑だった、が。勿論……姉の事もある。だけど」
少女「私が氏ねば、終わるのだなと言う安堵の方が大きい」
衛生師「!」
少女「そんな顔をするな……自ら命を絶つ気等無い……王を、放っては置けない」
衛生師「そう言って貰えるのはありがたいけど。何、情にでもほだされたの」
少女「……そう、じゃない。私は…… ……本当に、何なのだろう」
少女「心配には、なる……彼は酷く不安定だ」
衛生師「……まあ、そう、だろうな」
少女「貴方が言っていた事だ。彼を歪んでいないと思うのか、と」
衛生師「…… ……」
少女「……私がこの国に、王子様に連れてきて貰って」
衛生師「?」
少女「正式に『新王』と対面したときだ」
少女「……秘書を牢にぶち込んだとき、と言えばいいか」
衛生師「……報告は聞いてるけど」
少女「そうじゃ無い!」
衛生師「…… ……」
少女「……共に眠ると魘されている。否……それすら、最近は減った」
衛生師「…… ……」
少女「私を抱く事もだ」
衛生師「部屋には、戻ってるんだろう?」
少女「……私が寝入った頃に戻って来てはいる様だ」
少女「気配で一瞬目を覚ます。だが……まあ、すぐに寝てしまうから、私も」
衛生師「……随分慣れたな」
少女「…… ……」
衛生師「別に嫌味じゃ無いよ」
少女「今更だな……適応してしまえば平穏に暮らせるんだ」
少女「……気がかりも、消えた」
衛生師「……秘書?」
少女「青年を見に行く前に、書の街の新しい代表者、の話を聞いたことが大きい」
衛生師「……ああ、成る程」
少女「……複雑だった、が。勿論……姉の事もある。だけど」
少女「私が氏ねば、終わるのだなと言う安堵の方が大きい」
衛生師「!」
少女「そんな顔をするな……自ら命を絶つ気等無い……王を、放っては置けない」
衛生師「そう言って貰えるのはありがたいけど。何、情にでもほだされたの」
少女「……そう、じゃない。私は…… ……本当に、何なのだろう」
少女「心配には、なる……彼は酷く不安定だ」
衛生師「……まあ、そう、だろうな」
少女「貴方が言っていた事だ。彼を歪んでいないと思うのか、と」
衛生師「…… ……」
少女「……私がこの国に、王子様に連れてきて貰って」
衛生師「?」
少女「正式に『新王』と対面したときだ」
少女「……秘書を牢にぶち込んだとき、と言えばいいか」
衛生師「……報告は聞いてるけど」
623: 2014/01/13(月) 11:04:44.48 ID:gjEhcpBoP
少女「王子様の気遣い……と言っていいのかは解らないが」
少女「地下の、あの牢屋へ案内してくれた騎士が」
少女「……魔導国との船団同士の争いで、弟が氏んだのだと言っていた」
衛生師「誰、かは解らないけど」
少女「名は聞いていない。若い騎士だった。彼は……」
少女「……否。彼に、私は、どうして王に従うのだと聞いた」
衛生師「…… ……」
少女「彼はそれが『仕事』だからだと」
少女「『王を守りたい』かどうかは解らないが、『仕事だから』従うのだと言っていた」
衛生師「……何が言いたい?」
少女「貴方もなのか?」
衛生師「…… ……」
少女「言い方は悪いかも知れないが、私は……此処で自分の心に波風が立たないよう」
少女「……楽に、安らかに過ごしていく方法は、慣れてしまうことだと思った」
少女「それが情かどうかは解らない。愛では無いと思う、が」
少女「……良く、解らない不思議な感情だ。放って置けない」
衛生師「…… ……」
少女「貴方は、自分が仕える主を『歪んでいる』と言う。だけど……」
衛生師「僕、は」
少女「…… ……」
衛生師「……君と同じなのかもしれないな。その、若い騎士とも」
衛生師「『仕事』だ。守る家族も、大事な人……恋人も別に居ないけれど」
衛生師「……ま。放って置けないね、彼は」
少女「…… ……」
衛生師「…… ……」ジッ
少女「…… ……」ドキ
衛生師「……戦士君達が旅立ったというのは、聞いている?」
少女「え……あ、ああ。今朝だろう」
少女「王が、見送りに行くと言っていた」
衛生師「……王様を良く見ておいた方が良いと、僧侶さんが言ってたそうだ」
少女「え?」
衛生師「随分顔色が悪かった、とね」
少女「……あれだけ魘されていれば、まともな睡眠も取れないだろうな」
衛生師「……具体的な内容は?」
少女「…… ……」
衛生師「言えない?」
少女「そう言う訳じゃ無いが……何と言うか」
少女「殆どが悲鳴だ」
衛生師「……悲鳴」
少女「地下の、あの牢屋へ案内してくれた騎士が」
少女「……魔導国との船団同士の争いで、弟が氏んだのだと言っていた」
衛生師「誰、かは解らないけど」
少女「名は聞いていない。若い騎士だった。彼は……」
少女「……否。彼に、私は、どうして王に従うのだと聞いた」
衛生師「…… ……」
少女「彼はそれが『仕事』だからだと」
少女「『王を守りたい』かどうかは解らないが、『仕事だから』従うのだと言っていた」
衛生師「……何が言いたい?」
少女「貴方もなのか?」
衛生師「…… ……」
少女「言い方は悪いかも知れないが、私は……此処で自分の心に波風が立たないよう」
少女「……楽に、安らかに過ごしていく方法は、慣れてしまうことだと思った」
少女「それが情かどうかは解らない。愛では無いと思う、が」
少女「……良く、解らない不思議な感情だ。放って置けない」
衛生師「…… ……」
少女「貴方は、自分が仕える主を『歪んでいる』と言う。だけど……」
衛生師「僕、は」
少女「…… ……」
衛生師「……君と同じなのかもしれないな。その、若い騎士とも」
衛生師「『仕事』だ。守る家族も、大事な人……恋人も別に居ないけれど」
衛生師「……ま。放って置けないね、彼は」
少女「…… ……」
衛生師「…… ……」ジッ
少女「…… ……」ドキ
衛生師「……戦士君達が旅立ったというのは、聞いている?」
少女「え……あ、ああ。今朝だろう」
少女「王が、見送りに行くと言っていた」
衛生師「……王様を良く見ておいた方が良いと、僧侶さんが言ってたそうだ」
少女「え?」
衛生師「随分顔色が悪かった、とね」
少女「……あれだけ魘されていれば、まともな睡眠も取れないだろうな」
衛生師「……具体的な内容は?」
少女「…… ……」
衛生師「言えない?」
少女「そう言う訳じゃ無いが……何と言うか」
少女「殆どが悲鳴だ」
衛生師「……悲鳴」
624: 2014/01/13(月) 11:10:21.24 ID:gjEhcpBoP
少女「最初は悪い夢を見ているんだろうと思っていたが」
衛生師「…… ……」
少女「……心当たりがあるのか」
衛生師「……否? 別に」
少女「…… ……」
衛生師「ああ、御免。食事にしよう」クルッ
スタスタ、パタン
少女(…… ……)フゥ
少女(そう、か。氏んだか)
少女(……実感が無い。否……良く解らない)
少女(私は悲しいのか?)
少女(……悲しむ、べきなのだろうか)
少女(これで……私が、氏ねば)
少女(『劣等種』だの『出来損ない』だの)
少女(……『優れた血』だの)
少女(全て、闇に葬り去られてしまう……のだろうか)
少女(……それを喜ばしいと思うのは)
少女(駄目な事ではない筈だ……お姉様)
少女(我らの罪は重い……心安らかに逝けなかったではあろうが)
少女(……因果応報だ)
少女(甘い汁……か)フッ
少女(……怨んでいる、怨んでいた……のだろうな)
……
………
…………
衛生師「…… ……」
少女「……心当たりがあるのか」
衛生師「……否? 別に」
少女「…… ……」
衛生師「ああ、御免。食事にしよう」クルッ
スタスタ、パタン
少女(…… ……)フゥ
少女(そう、か。氏んだか)
少女(……実感が無い。否……良く解らない)
少女(私は悲しいのか?)
少女(……悲しむ、べきなのだろうか)
少女(これで……私が、氏ねば)
少女(『劣等種』だの『出来損ない』だの)
少女(……『優れた血』だの)
少女(全て、闇に葬り去られてしまう……のだろうか)
少女(……それを喜ばしいと思うのは)
少女(駄目な事ではない筈だ……お姉様)
少女(我らの罪は重い……心安らかに逝けなかったではあろうが)
少女(……因果応報だ)
少女(甘い汁……か)フッ
少女(……怨んでいる、怨んでいた……のだろうな)
……
………
…………
625: 2014/01/13(月) 11:27:05.44 ID:gjEhcpBoP
后「…… ……」ブツブツ
コンコン
后「……んー……」
コンコン!
后「は、はい!?」
カチャ
剣士「……物音がするから起きているとは思っていたが」
后「ああ、剣士……」
剣士「あんまり根を詰めると身体に触るぞ」
后「平気よ、本を読んでるだけなんだもの」
剣士「まあ、それは……そうだが」
后「……検証を始める!なんて魔王が言ってたけど」
后「これを読まなきゃ始まらないんでしょ」
剣士「だが、そこに全ての答えが乗って居る訳でもあるまい」
后「まあ、そうだけどね……」
剣士「使用人が心配していた。ちゃんと寝ているのかと」
后「私より魔王の心配した方が良いと思うけど?」
剣士「……頃してもしなんだろう、今は」
后「…… ……」
剣士「…… ……」
后「時間が無いのよね、彼には」ハァ
剣士「……まだ腹が目立ってる様には見えん、が」
后「そりゃね……だって、この子は……『人間』だもの」
剣士「…… ……」
后「あと数日あれば読み終わるわよ」
剣士「……時間が無いとは言え……産まれてからも」
剣士「すぐに、と言う訳では無いんだろう?」
后「……一ヶ月ぐらい、って言ってたかしらね」
剣士「『光を集めて瓶に詰めるような物』か」
后「……足りないわ。否、永遠の時間があったって」
后「全ての絡繰りを、私達が知れる訳では決して無い」
剣士「…… ……」
コンコン
后「……んー……」
コンコン!
后「は、はい!?」
カチャ
剣士「……物音がするから起きているとは思っていたが」
后「ああ、剣士……」
剣士「あんまり根を詰めると身体に触るぞ」
后「平気よ、本を読んでるだけなんだもの」
剣士「まあ、それは……そうだが」
后「……検証を始める!なんて魔王が言ってたけど」
后「これを読まなきゃ始まらないんでしょ」
剣士「だが、そこに全ての答えが乗って居る訳でもあるまい」
后「まあ、そうだけどね……」
剣士「使用人が心配していた。ちゃんと寝ているのかと」
后「私より魔王の心配した方が良いと思うけど?」
剣士「……頃してもしなんだろう、今は」
后「…… ……」
剣士「…… ……」
后「時間が無いのよね、彼には」ハァ
剣士「……まだ腹が目立ってる様には見えん、が」
后「そりゃね……だって、この子は……『人間』だもの」
剣士「…… ……」
后「あと数日あれば読み終わるわよ」
剣士「……時間が無いとは言え……産まれてからも」
剣士「すぐに、と言う訳では無いんだろう?」
后「……一ヶ月ぐらい、って言ってたかしらね」
剣士「『光を集めて瓶に詰めるような物』か」
后「……足りないわ。否、永遠の時間があったって」
后「全ての絡繰りを、私達が知れる訳では決して無い」
剣士「…… ……」
626: 2014/01/13(月) 11:37:25.26 ID:gjEhcpBoP
后「……癒し手達、今どの辺なのかしら」
剣士「文が何時出され、どれぐらいの時間をかけて届いたのか」
剣士「解らんからな」
后「……南、か。貴方は行ったことあるの?」
剣士「船長の船に乗って居る時には……その方角に、ならばあるだろうな」
后「ああ、そうか……船長、さんって」
后「……私を、始まりの国まで連れて行ってくれた人、なのよね」
剣士「大会の時か」
后「そう…… ……ご大層よね。小娘一人に」
剣士「…… ……」
后「娘を大事にしてた訳じゃ無いって位じゃ、もう傷付かないわよ」
剣士「……不思議な縁だ」
后「そうね。世界はこんなにも広くて、こんなにも謎だらけなのに」
后「……どこかで、誰かが繋がっている」
剣士「俺とお前もだな……初めて見たとき……お前はまだほんの子供だったのに」
后「貴方は今と変わらないものね……ねえ」
剣士「?」
后「あの時……どうして助けてくれたの」
剣士「……忘れた」
后「…… ……」
剣士「…… ……気まぐれ、だろうな」
后「……そう、か」フフ
剣士「何故笑う」
后「不思議ね。私は貴方に生かされた……で、今、ここに居る」
剣士「…… ……殺されはしなかっただろう」
后「そうね。有効に利用する為にね……氏んだ方が、マシだったでしょうけど」
剣士「…… ……」
后「その私が……今は魔王の妻で、次期勇者を産むのよ」
后「……お母様とお父様が……お爺様が生きてたら」
后「どんな顔をしたのかしらね?」
剣士「……后」
后「……生きてるのかしら」
剣士「魔王も言っていたのだろう。王の事だ。手荒なまねは……」
后「私は、今の『王様』を知らないもの」
剣士「文が何時出され、どれぐらいの時間をかけて届いたのか」
剣士「解らんからな」
后「……南、か。貴方は行ったことあるの?」
剣士「船長の船に乗って居る時には……その方角に、ならばあるだろうな」
后「ああ、そうか……船長、さんって」
后「……私を、始まりの国まで連れて行ってくれた人、なのよね」
剣士「大会の時か」
后「そう…… ……ご大層よね。小娘一人に」
剣士「…… ……」
后「娘を大事にしてた訳じゃ無いって位じゃ、もう傷付かないわよ」
剣士「……不思議な縁だ」
后「そうね。世界はこんなにも広くて、こんなにも謎だらけなのに」
后「……どこかで、誰かが繋がっている」
剣士「俺とお前もだな……初めて見たとき……お前はまだほんの子供だったのに」
后「貴方は今と変わらないものね……ねえ」
剣士「?」
后「あの時……どうして助けてくれたの」
剣士「……忘れた」
后「…… ……」
剣士「…… ……気まぐれ、だろうな」
后「……そう、か」フフ
剣士「何故笑う」
后「不思議ね。私は貴方に生かされた……で、今、ここに居る」
剣士「…… ……殺されはしなかっただろう」
后「そうね。有効に利用する為にね……氏んだ方が、マシだったでしょうけど」
剣士「…… ……」
后「その私が……今は魔王の妻で、次期勇者を産むのよ」
后「……お母様とお父様が……お爺様が生きてたら」
后「どんな顔をしたのかしらね?」
剣士「……后」
后「……生きてるのかしら」
剣士「魔王も言っていたのだろう。王の事だ。手荒なまねは……」
后「私は、今の『王様』を知らないもの」
627: 2014/01/13(月) 11:50:02.73 ID:gjEhcpBoP
剣士「だが……あの国王の息子なのだろう?」
后「……私もあの人達の子供よ」
剣士「…… ……」
后「疑う訳じゃ無いけど。わからないわよ。何も」
后「『過去』も『未来』も……全てを確実に、知れる者なんていないのよ」
剣士「……だが、可能な限り、知らねばならん」
后「……そうね。私達にはその義務がある」
剣士「今日はもう休め……無理だけはするな」
后「書庫に居る魔王にも伝えて置いて頂戴。行くんでしょ、貴方も」
剣士「……使用人にも、だな」
后「使用人も居るの?」
剣士「魔王がそこら中に本を散らかすからな」
后「……殴って良いわよ、って言っておいて」
剣士「必要無いだろう」
后「……御免って言っておいて」
剣士「承知した」
スタスタ、パタン
后「全く、あの馬鹿は……」ハァ
后(…… ……)ペラ
后(『可能な限り紐解く』か…… ……限界はあるわよ、魔王)
后(それに、その事実が……この子)ナデ
后(勇者に……伝わるのは……)ハッ
后「……次で終わるのなら、どうやって伝えるのよ!?」
后(『勇者』が『魔王』を倒してしまえば、魔王は愚か)
后(私達も……『魔』その物が居なくなる……!?)
后(……否、それすら確証の無い話……でも……)
后(『魔の王』に命を与えられた者……使用人も……!)
后「……私もあの人達の子供よ」
剣士「…… ……」
后「疑う訳じゃ無いけど。わからないわよ。何も」
后「『過去』も『未来』も……全てを確実に、知れる者なんていないのよ」
剣士「……だが、可能な限り、知らねばならん」
后「……そうね。私達にはその義務がある」
剣士「今日はもう休め……無理だけはするな」
后「書庫に居る魔王にも伝えて置いて頂戴。行くんでしょ、貴方も」
剣士「……使用人にも、だな」
后「使用人も居るの?」
剣士「魔王がそこら中に本を散らかすからな」
后「……殴って良いわよ、って言っておいて」
剣士「必要無いだろう」
后「……御免って言っておいて」
剣士「承知した」
スタスタ、パタン
后「全く、あの馬鹿は……」ハァ
后(…… ……)ペラ
后(『可能な限り紐解く』か…… ……限界はあるわよ、魔王)
后(それに、その事実が……この子)ナデ
后(勇者に……伝わるのは……)ハッ
后「……次で終わるのなら、どうやって伝えるのよ!?」
后(『勇者』が『魔王』を倒してしまえば、魔王は愚か)
后(私達も……『魔』その物が居なくなる……!?)
后(……否、それすら確証の無い話……でも……)
后(『魔の王』に命を与えられた者……使用人も……!)
628: 2014/01/13(月) 11:56:05.24 ID:gjEhcpBoP
后「……あ」
后(そうだ。前にも話し合ったじゃないの)
后(……『紫の魔王』はもう居ない。『紫の魔王の側近』も)
后「違う!」
后(『紫の魔王の側近』に魔としての命を与えたのは、『赤の魔王』)
后「……でも、役割が……そうよ。やる事が残ってた、から」
后(『金の髪の勇者』を育てる? それ以上に……『紫の魔王の瞳』を吸収したから)
后(役割……使用人は『血を受け継ぐ者』)
后「…… ……誰に?」
后「検証だけならば、全てを私達が受け取れば、彼女の役目は終わる!」ガタッ
后「…… ……私達が、今からやろうとしている事」
后「『知ろう』としている『知』は」
后「……誰に、繋げるの……ッ !?」
后(……ま、さか……ッ)
バサバサッ ガタンッ
タタタタ……ッ
バタン!
……
………
…………
后(そうだ。前にも話し合ったじゃないの)
后(……『紫の魔王』はもう居ない。『紫の魔王の側近』も)
后「違う!」
后(『紫の魔王の側近』に魔としての命を与えたのは、『赤の魔王』)
后「……でも、役割が……そうよ。やる事が残ってた、から」
后(『金の髪の勇者』を育てる? それ以上に……『紫の魔王の瞳』を吸収したから)
后(役割……使用人は『血を受け継ぐ者』)
后「…… ……誰に?」
后「検証だけならば、全てを私達が受け取れば、彼女の役目は終わる!」ガタッ
后「…… ……私達が、今からやろうとしている事」
后「『知ろう』としている『知』は」
后「……誰に、繋げるの……ッ !?」
后(……ま、さか……ッ)
バサバサッ ガタンッ
タタタタ……ッ
バタン!
……
………
…………
629: 2014/01/13(月) 12:08:23.63 ID:gjEhcpBoP
ピィ……ッ
チチチ…… パタパタ……
カチャ
側近「癒し手?」
癒し手「ああ、おはようございます側近さ……ッ」
ビュゥ……ッ
側近「……ッ 窓が、空いてるのか」
癒し手「きゃ……ッ す、すみません!」
パタン
側近「否、良いんだが……どうした?」
癒し手「魔王様と王子様に、小鳥を飛ばしたんです」
側近「……もう?」
癒し手「……確かに、始まりの国を出て一週間、ですけど」
側近「…… ……」
青年「あー。あー」
側近「……まあ、な」
癒し手「御免ね、お待たせ、青年」ギュ
青年「まー ……ァ」
側近「……生後半年、位に見える……か?」
癒し手「比較対象が居ないので、何とも……」
青年「あー!」ヨチ、ヨチ
側近「!?」
青年「あー♪」ギュ
側近「…… ……」ギュ
癒し手「……産まれて、三ヶ月ほどで、あの国を出る決断をしたのは」
癒し手「ギリギリ、だったのかもしれません」
側近「おはよう、青年」ダッコ
青年「キャッキャ」
癒し手「……流石に、半年じゃ歩きません……よね」
側近「お前は、どうだったんだ」
癒し手「人の子に比べると、随分成長が早かった、としか……多分」
側近「……まだ、抱いて出れるな」
癒し手「殆ど、港街の中……見れませんでした」ハァ
側近「……毎日毎日、俺達が驚いている位だ」
側近「行ってくるか? ……遊んでいるが」
癒し手「いえ……ある程度側近さんが教えて下さいましたし」
癒し手「……此処は、私達の顔も随分、知っている人が多いです、から」
側近「そうだな……」
癒し手「でも、船で着いた夜に、三人でご飯食べに行けましたし」
癒し手「……充分ですよ」
チチチ…… パタパタ……
カチャ
側近「癒し手?」
癒し手「ああ、おはようございます側近さ……ッ」
ビュゥ……ッ
側近「……ッ 窓が、空いてるのか」
癒し手「きゃ……ッ す、すみません!」
パタン
側近「否、良いんだが……どうした?」
癒し手「魔王様と王子様に、小鳥を飛ばしたんです」
側近「……もう?」
癒し手「……確かに、始まりの国を出て一週間、ですけど」
側近「…… ……」
青年「あー。あー」
側近「……まあ、な」
癒し手「御免ね、お待たせ、青年」ギュ
青年「まー ……ァ」
側近「……生後半年、位に見える……か?」
癒し手「比較対象が居ないので、何とも……」
青年「あー!」ヨチ、ヨチ
側近「!?」
青年「あー♪」ギュ
側近「…… ……」ギュ
癒し手「……産まれて、三ヶ月ほどで、あの国を出る決断をしたのは」
癒し手「ギリギリ、だったのかもしれません」
側近「おはよう、青年」ダッコ
青年「キャッキャ」
癒し手「……流石に、半年じゃ歩きません……よね」
側近「お前は、どうだったんだ」
癒し手「人の子に比べると、随分成長が早かった、としか……多分」
側近「……まだ、抱いて出れるな」
癒し手「殆ど、港街の中……見れませんでした」ハァ
側近「……毎日毎日、俺達が驚いている位だ」
側近「行ってくるか? ……遊んでいるが」
癒し手「いえ……ある程度側近さんが教えて下さいましたし」
癒し手「……此処は、私達の顔も随分、知っている人が多いです、から」
側近「そうだな……」
癒し手「でも、船で着いた夜に、三人でご飯食べに行けましたし」
癒し手「……充分ですよ」
630: 2014/01/13(月) 12:16:18.59 ID:gjEhcpBoP
側近「教会は……残念だった」
癒し手「……仕方ありません。思い出は詰まっていますけど」
癒し手「女様の像も、お墓を移して貰うときに……一緒に埋めて頂きましたし」
側近「……立ち入り禁止、とはな」ハァ
癒し手「……それより、私は……まだ、未だに」
癒し手「魔除けの石が販売されている事に驚きました」
側近「観光みやげの様な物だろう。魔導の……否、書の街では」
側近「流石に、生産も禁じられて長いと聞いたしな」
癒し手「定期便も復活したんですよね?」
側近「ああ。図書館も建て直ったそうだしな」
癒し手「では……早い内に行きましょうか。長居はできそうにありません」
癒し手「できる限り、知識は仕入れたかったのですけど……」
側近「……大丈夫だ。剣士が居る」
癒し手「…… ……」
側近「あ、否……自分の目で見てみたい、と言うのは、勿論……解る、んだが」
癒し手「いえ……良いんです」
側近「…… ……すまん」
癒し手「あ……こ、こっちこそご免なさい!」
側近「ぐずり出す前に出よう。船の時間ももうすぐだ」
側近「……朝一の便なら、人も少ないだろうし」
側近「一泊したら……否。出来るのならもう少し……」
癒し手「昨日ヨチヨチ歩いてたと思ったら、明日には喋ってる、なんて」
癒し手「洒落にもなりません……大丈夫です」
青年「あーあー」ムニ
側近「いてっ ……抓るな、青年」
青年「キャッ」
側近「…… ……?」
癒し手「側近さん?」
側近「否…… ……」
側近(……気のせいか。随分と……瞳が、蒼く見える……?)
癒し手「……仕方ありません。思い出は詰まっていますけど」
癒し手「女様の像も、お墓を移して貰うときに……一緒に埋めて頂きましたし」
側近「……立ち入り禁止、とはな」ハァ
癒し手「……それより、私は……まだ、未だに」
癒し手「魔除けの石が販売されている事に驚きました」
側近「観光みやげの様な物だろう。魔導の……否、書の街では」
側近「流石に、生産も禁じられて長いと聞いたしな」
癒し手「定期便も復活したんですよね?」
側近「ああ。図書館も建て直ったそうだしな」
癒し手「では……早い内に行きましょうか。長居はできそうにありません」
癒し手「できる限り、知識は仕入れたかったのですけど……」
側近「……大丈夫だ。剣士が居る」
癒し手「…… ……」
側近「あ、否……自分の目で見てみたい、と言うのは、勿論……解る、んだが」
癒し手「いえ……良いんです」
側近「…… ……すまん」
癒し手「あ……こ、こっちこそご免なさい!」
側近「ぐずり出す前に出よう。船の時間ももうすぐだ」
側近「……朝一の便なら、人も少ないだろうし」
側近「一泊したら……否。出来るのならもう少し……」
癒し手「昨日ヨチヨチ歩いてたと思ったら、明日には喋ってる、なんて」
癒し手「洒落にもなりません……大丈夫です」
青年「あーあー」ムニ
側近「いてっ ……抓るな、青年」
青年「キャッ」
側近「…… ……?」
癒し手「側近さん?」
側近「否…… ……」
側近(……気のせいか。随分と……瞳が、蒼く見える……?)
634: 2014/01/13(月) 14:14:59.02 ID:gjEhcpBoP
側近「……せいれんろひろひが」ムニー
側近「…… ……」
青年「あー♪」
癒し手「青年、ほら……お父さんのほっぺた離して」プッ
側近「こいつの瞳、こんなに蒼かったか?」
癒し手「え? ……ああ、船でも思いましたけど……光の加減じゃ無いですか」
癒し手「加護は、何れ解りますよ……気になりますか?」
側近「……いや、気にしても仕方無いことは解ってる、んだが」
側近(何だ……? この、違和感…… ……?)
癒し手「緑なら……貴方。蒼なら私……」
癒し手「……優しい子に、なってくれれば、それで良いです」
癒し手「加護なんて……どちらでも」
側近「……ああ」
……
………
…………
王「……ん、ぅん……ッ」
王(真っ暗だ……随分と、息苦しい……)
王(……これは、何だ。此処は……何処だ?)
ボコボコボコ……ッ
王「!」
王(地面から、何かが……ッ)
ズル……ッ ザァッ
王「ひ、ィ……ッ !?」
王(手……、朽ちた、腕……ッ!?)
ガシッ
王「うわああああああああああああああああああッ」
王「は、離せ!離せぇえええええええええええええええええええ!!」
側近「…… ……」
青年「あー♪」
癒し手「青年、ほら……お父さんのほっぺた離して」プッ
側近「こいつの瞳、こんなに蒼かったか?」
癒し手「え? ……ああ、船でも思いましたけど……光の加減じゃ無いですか」
癒し手「加護は、何れ解りますよ……気になりますか?」
側近「……いや、気にしても仕方無いことは解ってる、んだが」
側近(何だ……? この、違和感…… ……?)
癒し手「緑なら……貴方。蒼なら私……」
癒し手「……優しい子に、なってくれれば、それで良いです」
癒し手「加護なんて……どちらでも」
側近「……ああ」
……
………
…………
王「……ん、ぅん……ッ」
王(真っ暗だ……随分と、息苦しい……)
王(……これは、何だ。此処は……何処だ?)
ボコボコボコ……ッ
王「!」
王(地面から、何かが……ッ)
ズル……ッ ザァッ
王「ひ、ィ……ッ !?」
王(手……、朽ちた、腕……ッ!?)
ガシッ
王「うわああああああああああああああああああッ」
王「は、離せ!離せぇえええええええええええええええええええ!!」
635: 2014/01/13(月) 14:21:11.76 ID:gjEhcpBoP
秘書「おぉ、ううぅ……王……ッ」
王「ヒ……ッ」
秘書「……う、して。どうして母親様を頃した!」
秘書「旧貴族達を、私を……ッ」
秘書「どうして頃したんだ!!」
秘書「……どうして。どうしてえぇぇええぇ……」
ズルズル……
王「ち、違う! 母親は勝手に氏んだ!」
王「あの狂人は、僕が頃したんじゃ無いッ は、はなせ……ッ」
秘書「なぁんでぇ……頃した……ッ」
王「僕じゃ無いって言ってるだろう! そ、それに、旧貴族、達は……ッ」
王「あれは、僕じゃ無い! 手を下したのは、僕じゃ……ッ」
ボコボコ……ッ ズルズルズル……ッ
見張り「じゃあ…… だれ、なん……で、す……?」
王「うわああああああああああああああ!」
見張り「……見て、ください。手……」
見張り「びくとも、しない……堅い扉……」
見張り「叩いて、叩いて……ッ もう、骨が見えて……ッ」
王「…… ……ッ や、やめろッ やめてくれ……ッ」
見張り「……飢えて、渇いて、喉が、ほら!」
ガバッ
王「! や、やめろ、離せッ 抱きつくな……ッ」
見張り「見てくださいよぉおおお…… 喉、かいてかいて……爪が、もう……」
秘書「人頃し! ひぃとぉごろしぃいいいい!」
王「違う!違う! 僕じゃ無いんだ!僕じゃ……ッ」
王「……ッ 助けてくれ、衛生師……ッ」
王「ヒ……ッ」
秘書「……う、して。どうして母親様を頃した!」
秘書「旧貴族達を、私を……ッ」
秘書「どうして頃したんだ!!」
秘書「……どうして。どうしてえぇぇええぇ……」
ズルズル……
王「ち、違う! 母親は勝手に氏んだ!」
王「あの狂人は、僕が頃したんじゃ無いッ は、はなせ……ッ」
秘書「なぁんでぇ……頃した……ッ」
王「僕じゃ無いって言ってるだろう! そ、それに、旧貴族、達は……ッ」
王「あれは、僕じゃ無い! 手を下したのは、僕じゃ……ッ」
ボコボコ……ッ ズルズルズル……ッ
見張り「じゃあ…… だれ、なん……で、す……?」
王「うわああああああああああああああ!」
見張り「……見て、ください。手……」
見張り「びくとも、しない……堅い扉……」
見張り「叩いて、叩いて……ッ もう、骨が見えて……ッ」
王「…… ……ッ や、やめろッ やめてくれ……ッ」
見張り「……飢えて、渇いて、喉が、ほら!」
ガバッ
王「! や、やめろ、離せッ 抱きつくな……ッ」
見張り「見てくださいよぉおおお…… 喉、かいてかいて……爪が、もう……」
秘書「人頃し! ひぃとぉごろしぃいいいい!」
王「違う!違う! 僕じゃ無いんだ!僕じゃ……ッ」
王「……ッ 助けてくれ、衛生師……ッ」
636: 2014/01/13(月) 14:34:19.50 ID:gjEhcpBoP
チカチカチカ……ッ
シュゥ……
衛生師「……命令、ですから」
王「衛生師……ッ」ホッ
衛生師「『不必要な力に訴える事はしない』って少女に約束したから」
衛生師「僕に、貴族達を煽るように命令したんでしょ?」
王「え、衛生師…… ……?」
衛生師「結局、捕らえて牢に入れる時には、みんな」
衛生師「……貴方の命令で、氏体だったんだ。王様」
衛生師「ずっとあの中に居た狂人と、秘書は気がつかなかったかもしれないけど」
衛生師「……凄い匂いがしてたんですよ。地下牢」
王「や、やめろ……ッ」
衛生師「確かに、貴方はご自分の手は汚されていない」
衛生師「身寄りの無い見張りを近衛兵団の一員に迎えたのも」
衛生師「怨みを吐く貴族達の息の根を止めたのも、僕だ」
衛生師「……『君にしか任せられない』って、当然だよね」ハァ
衛生師「僕と貴方しか、知らないんだ」
見張り「ひとごろし……ひとごろしぃ……ッ」
秘書「そうして最後は、場所毎隠蔽し満足かッ」
秘書「人頃し!」
王「や……ッ やめろぉぉおおおおおおおおおおおおお!」
秘書「呪ってやる!怨んでやる!」
秘書「健やかに歩んでいけると思うな、『最後の王』よ!」
王「な……ッ に……ッ!?」
秘書「少女とお前に、幸せなど訪れやしない」
秘書「末代までも、祟ってやる! 呪ってやる!」
秘書「忘れるな!王ッ!」
……
………
…………
王「うわあああああああああああああああああああああああ!!」
シュゥ……
衛生師「……命令、ですから」
王「衛生師……ッ」ホッ
衛生師「『不必要な力に訴える事はしない』って少女に約束したから」
衛生師「僕に、貴族達を煽るように命令したんでしょ?」
王「え、衛生師…… ……?」
衛生師「結局、捕らえて牢に入れる時には、みんな」
衛生師「……貴方の命令で、氏体だったんだ。王様」
衛生師「ずっとあの中に居た狂人と、秘書は気がつかなかったかもしれないけど」
衛生師「……凄い匂いがしてたんですよ。地下牢」
王「や、やめろ……ッ」
衛生師「確かに、貴方はご自分の手は汚されていない」
衛生師「身寄りの無い見張りを近衛兵団の一員に迎えたのも」
衛生師「怨みを吐く貴族達の息の根を止めたのも、僕だ」
衛生師「……『君にしか任せられない』って、当然だよね」ハァ
衛生師「僕と貴方しか、知らないんだ」
見張り「ひとごろし……ひとごろしぃ……ッ」
秘書「そうして最後は、場所毎隠蔽し満足かッ」
秘書「人頃し!」
王「や……ッ やめろぉぉおおおおおおおおおおおおお!」
秘書「呪ってやる!怨んでやる!」
秘書「健やかに歩んでいけると思うな、『最後の王』よ!」
王「な……ッ に……ッ!?」
秘書「少女とお前に、幸せなど訪れやしない」
秘書「末代までも、祟ってやる! 呪ってやる!」
秘書「忘れるな!王ッ!」
……
………
…………
王「うわあああああああああああああああああああああああ!!」
637: 2014/01/13(月) 14:41:15.70 ID:gjEhcpBoP
少女「王様!」
王「……ッ」ハッ
少女「……大丈夫、ですか」
王「…… ッ ひ……ッ …… ……あ、ァ……ッ」
王「……少女、か」ハァ
少女「また、酷い夢を?」
王「……いや……あ、ううん。大丈夫……です」フゥ
少女「……水をお持ちしま……ッ」
王「…… ……」ギュッ
少女「痛……ッ」
王「…… ……」
王(毎晩……同じ、夢を……見る)
王(……『最後の王』って、何だ)
王(僕は……ッ)
少女「……王様?」
王「……もう少し、こうしてて」
王(暗い中で見ると……少女の顔が……瞳の色が、一瞬)
王(……茶色く、見えるときがある)
王(表情も、何もかも似ても似つかないと言ったのは、僕なのに……ッ)
少女「……それは構いません、けど。何時戻られたんです」
王「……黙ってて」
少女「…… ……」
王(呪い等……ッ 祟り等、あるものか! 信じる物か!)
王(……秘書は、もう氏んだんだ。氏んだはずだ)
王(衛生師だって……僕に、あんな感情を、言葉を向けたりはしない)
王(……王、だ。僕は、王なんだッ)ギュッ
少女「…… ……ッ」
王(『最後の王』だと!? ふざけるな……ッ)
王(僕は、少女と……子供を……ッ 次の、王を……ッ)グイッ
少女「きゃ……ッ」ドサッ
王「……ッ」ハッ
少女「……大丈夫、ですか」
王「…… ッ ひ……ッ …… ……あ、ァ……ッ」
王「……少女、か」ハァ
少女「また、酷い夢を?」
王「……いや……あ、ううん。大丈夫……です」フゥ
少女「……水をお持ちしま……ッ」
王「…… ……」ギュッ
少女「痛……ッ」
王「…… ……」
王(毎晩……同じ、夢を……見る)
王(……『最後の王』って、何だ)
王(僕は……ッ)
少女「……王様?」
王「……もう少し、こうしてて」
王(暗い中で見ると……少女の顔が……瞳の色が、一瞬)
王(……茶色く、見えるときがある)
王(表情も、何もかも似ても似つかないと言ったのは、僕なのに……ッ)
少女「……それは構いません、けど。何時戻られたんです」
王「……黙ってて」
少女「…… ……」
王(呪い等……ッ 祟り等、あるものか! 信じる物か!)
王(……秘書は、もう氏んだんだ。氏んだはずだ)
王(衛生師だって……僕に、あんな感情を、言葉を向けたりはしない)
王(……王、だ。僕は、王なんだッ)ギュッ
少女「…… ……ッ」
王(『最後の王』だと!? ふざけるな……ッ)
王(僕は、少女と……子供を……ッ 次の、王を……ッ)グイッ
少女「きゃ……ッ」ドサッ
638: 2014/01/13(月) 14:45:37.02 ID:gjEhcpBoP
少女「お、うさ……ッ ……んッ!」
王「少女、少女……ッ」チュ、チュ……ッ
少女「ん……ゥ」
王「……ッ 少じょ…… ……!?」
秘書『呪ってやるぞ、最後の王よ……!』
王「うわああああああああああああああああああ!」
ドンッ
少女「きゃッ !?」
王「……あ、ァ……ッ」
バタバタ……ッ バタン!
少女「…… ……? ……ッ」ズキッ
少女(打った、か…… ……ッ)
コンコン
衛生師「僕だ、少女」
少女「……衛生師、様?」
衛生師「王様は居ない……入るよ?」
少女「あ、ああ……」
カチャ
衛生師「……酷い顔色で、王が自室に駆け込んでいったから」
少女「……ああ、そうか」
少女(此処は……私の、部屋……だ)
王「少女、少女……ッ」チュ、チュ……ッ
少女「ん……ゥ」
王「……ッ 少じょ…… ……!?」
秘書『呪ってやるぞ、最後の王よ……!』
王「うわああああああああああああああああああ!」
ドンッ
少女「きゃッ !?」
王「……あ、ァ……ッ」
バタバタ……ッ バタン!
少女「…… ……? ……ッ」ズキッ
少女(打った、か…… ……ッ)
コンコン
衛生師「僕だ、少女」
少女「……衛生師、様?」
衛生師「王様は居ない……入るよ?」
少女「あ、ああ……」
カチャ
衛生師「……酷い顔色で、王が自室に駆け込んでいったから」
少女「……ああ、そうか」
少女(此処は……私の、部屋……だ)
639: 2014/01/13(月) 14:56:26.95 ID:gjEhcpBoP
衛生師「……適応は得意だと思ってたけど?」
少女「……王の悲鳴で目が覚めた、からな」
衛生師「今日は珍しく君の部屋を訪ねると言って玉座を立たれたからね」
少女「……見に行かなくて良いのか」
衛生師「屈強な近衛兵二人がかりで暴れる王様を押さえ込んだんだ」
衛生師「……医師に鎮痛剤を打たれて、今頃眠ってる……と」
衛生師「思いたい、けどね」
少女「……酷くなっている、な」
衛生師「…… ……」
少女「しかるべき治療を受けさせる必要があるんじゃないのか」
衛生師「……本人が嫌がるんじゃ、仕方が無いだろう」
少女「『命令』が無いと……動けないか」
衛生師「珍しいな。嫌味か?」
少女「……ご免なさい」
衛生師「…… ……否。僕こそ済まない。君の言う通りだ」
少女「もう、随分になる」
衛生師「何が?」
少女「……何もかも」
衛生師「…… ……」
少女「城を許可無く立ち入れなくしたのも。私が部屋を与えられたのも」
少女「……広すぎる鳥籠の中の、自由をてにしたのも」
衛生師「……今日の君はやっぱり、少し皮肉めいているな」
少女「一つも言いたくなる……さっき、酷い顔色をしていたと言ったが」
少女「……鏡を見たか? 貴方も、王の事等言えない程だ」
衛生師「心配してくれているの」クス
少女「…… ……」
衛生師「……明日、王子様が城に来る」
少女「?」
衛生師「『広すぎる鳥籠の中は自由』何だろう?」
少女「…… ……私に、王子様に会えと?」
少女「……王の悲鳴で目が覚めた、からな」
衛生師「今日は珍しく君の部屋を訪ねると言って玉座を立たれたからね」
少女「……見に行かなくて良いのか」
衛生師「屈強な近衛兵二人がかりで暴れる王様を押さえ込んだんだ」
衛生師「……医師に鎮痛剤を打たれて、今頃眠ってる……と」
衛生師「思いたい、けどね」
少女「……酷くなっている、な」
衛生師「…… ……」
少女「しかるべき治療を受けさせる必要があるんじゃないのか」
衛生師「……本人が嫌がるんじゃ、仕方が無いだろう」
少女「『命令』が無いと……動けないか」
衛生師「珍しいな。嫌味か?」
少女「……ご免なさい」
衛生師「…… ……否。僕こそ済まない。君の言う通りだ」
少女「もう、随分になる」
衛生師「何が?」
少女「……何もかも」
衛生師「…… ……」
少女「城を許可無く立ち入れなくしたのも。私が部屋を与えられたのも」
少女「……広すぎる鳥籠の中の、自由をてにしたのも」
衛生師「……今日の君はやっぱり、少し皮肉めいているな」
少女「一つも言いたくなる……さっき、酷い顔色をしていたと言ったが」
少女「……鏡を見たか? 貴方も、王の事等言えない程だ」
衛生師「心配してくれているの」クス
少女「…… ……」
衛生師「……明日、王子様が城に来る」
少女「?」
衛生師「『広すぎる鳥籠の中は自由』何だろう?」
少女「…… ……私に、王子様に会えと?」
640: 2014/01/13(月) 15:10:11.27 ID:gjEhcpBoP
衛生師「……黒い物が見えた、んだそうだ」
少女「黒…… ……?」
衛生師「僧侶さん曰く、ね」
少女「……彼女は、何者だったんだ」
衛生師「え?」
少女「……人間離れした美しさだった」
衛生師「まあ、それは認めるけど……何、急に」
少女「青年の瞳が『蒼』に見えると言ったとき、王はほっとした顔をしていた」
衛生師「……?」
少女「金の髪に緑の瞳だと聞いていたんだ」
衛生師「……僕も、そう聞いているけど」
少女「……戦士の瞳は、緑だったな」
衛生師「青年は僧侶さんにそっくりだったよ?」
少女「それは私もそう思う……否、何が言いたいのか解らなくなった」
少女「……王は。戦士と仲が良くなかった、のか?」
衛生師「さあ……そもそも殆ど接点が無い、だろう」
少女「…… ……」
衛生師「どうした。君らしくないな……要点を得ない」
少女「……上手く説明出来ん。が……」
衛生師「ばったり会う可能性が無いとは言えないかもね、って」
衛生師「……それだけ、言っておこうと思っただけだ」
少女「…… ……」
衛生師「戦士君達が旅立って、城の改修も終わって」
衛生師「…… ……魔物も、強くなってきた」
少女「?」
衛生師「また、醜い戦争が起こるとは思わない。思いたく無い。だけど」
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「……戻るよ。施錠はしっかりね」
カチャ、パタン
少女「黒…… ……?」
衛生師「僧侶さん曰く、ね」
少女「……彼女は、何者だったんだ」
衛生師「え?」
少女「……人間離れした美しさだった」
衛生師「まあ、それは認めるけど……何、急に」
少女「青年の瞳が『蒼』に見えると言ったとき、王はほっとした顔をしていた」
衛生師「……?」
少女「金の髪に緑の瞳だと聞いていたんだ」
衛生師「……僕も、そう聞いているけど」
少女「……戦士の瞳は、緑だったな」
衛生師「青年は僧侶さんにそっくりだったよ?」
少女「それは私もそう思う……否、何が言いたいのか解らなくなった」
少女「……王は。戦士と仲が良くなかった、のか?」
衛生師「さあ……そもそも殆ど接点が無い、だろう」
少女「…… ……」
衛生師「どうした。君らしくないな……要点を得ない」
少女「……上手く説明出来ん。が……」
衛生師「ばったり会う可能性が無いとは言えないかもね、って」
衛生師「……それだけ、言っておこうと思っただけだ」
少女「…… ……」
衛生師「戦士君達が旅立って、城の改修も終わって」
衛生師「…… ……魔物も、強くなってきた」
少女「?」
衛生師「また、醜い戦争が起こるとは思わない。思いたく無い。だけど」
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「……戻るよ。施錠はしっかりね」
カチャ、パタン
641: 2014/01/13(月) 15:24:18.39 ID:gjEhcpBoP
少女「……施錠、ね」フゥ
カチャ
少女(この部屋に用事があるのは、王と衛生師しかいないだろうに)
少女(……始まりの国の国民が、自由に城に入れない以上)
少女(王の傍仕えは、少数精鋭の近衛兵のみ)
少女(……私に、誰が用を覚えると言うんだか)
少女「王子様、か……」
少女(……私に、何をさせようとしているんだ、衛生師は)
……
………
…………
カチャ、バタン
剣士「すまん、待たせたな」
使用人「いえ……あら、魔王様は?」
剣士「…… ……」
后「? どうしたのよ」
剣士「……これを」カサ
使用人「手紙……ああ、癒し手様からですか?」
后「小鳥は? また魔王突っついてるの」クス
剣士「……否。氏んだ様だ」
使用人「え!?」
カチャ
后「魔王!? ……癒し手の小鳥は……!」
魔王「……霧散したよ。何時もみたいに水をやったら……急に、苦しそうにして」
魔王「…… ……そのまま」
剣士「魔王の魔力の及ぶ範囲にある水を、ハーフエルフの力の具現でしかない小鳥に与えたから、か?」
后「待ってよ、今までも何度もこうして」
后「癒し手の蒼い小鳥で文のやりとり、したじゃないの!」
使用人「勇者様が……宿られた、から」
后「……そ、んな……」
剣士「……あれは、癒し手に戻るのだろう。魔力として」
カチャ
少女(この部屋に用事があるのは、王と衛生師しかいないだろうに)
少女(……始まりの国の国民が、自由に城に入れない以上)
少女(王の傍仕えは、少数精鋭の近衛兵のみ)
少女(……私に、誰が用を覚えると言うんだか)
少女「王子様、か……」
少女(……私に、何をさせようとしているんだ、衛生師は)
……
………
…………
カチャ、バタン
剣士「すまん、待たせたな」
使用人「いえ……あら、魔王様は?」
剣士「…… ……」
后「? どうしたのよ」
剣士「……これを」カサ
使用人「手紙……ああ、癒し手様からですか?」
后「小鳥は? また魔王突っついてるの」クス
剣士「……否。氏んだ様だ」
使用人「え!?」
カチャ
后「魔王!? ……癒し手の小鳥は……!」
魔王「……霧散したよ。何時もみたいに水をやったら……急に、苦しそうにして」
魔王「…… ……そのまま」
剣士「魔王の魔力の及ぶ範囲にある水を、ハーフエルフの力の具現でしかない小鳥に与えたから、か?」
后「待ってよ、今までも何度もこうして」
后「癒し手の蒼い小鳥で文のやりとり、したじゃないの!」
使用人「勇者様が……宿られた、から」
后「……そ、んな……」
剣士「……あれは、癒し手に戻るのだろう。魔力として」
642: 2014/01/13(月) 15:55:27.54 ID:gjEhcpBoP
后「け、けど……ッ ついこの間、は何とも無かったじゃ無いの!」
后「子供が……青年が産まれた、って……金の髪に、緑の瞳の……ッ」
使用人「……状況は、毎日変化していくんでしょう、后様」
使用人「貴方のお腹の子……『次期勇者』様の……成長も」
使用人「……止まりは、しません」
后「…… ……」
使用人「………恐らく」
使用人「后様の中で新しいお命……勇者様が育ち行くに連れ」
使用人「……魔王様の身、そして力に変化が現れたのでしょう」
魔王「…… ……」
使用人「『もしくは』……癒し手様の身に、何か」
魔王「……あんまり不吉なこと言わないでくれ、使用人」
后「側近が付いてる限り……何も無いと思うんだけど」
后「二人には……子供も居るのだし、無茶はしないはずよ」
魔王「……そうだな」
魔王「何にしても……もうすぐ、だ」
后「そうね……もう、すぐ」ナデ
魔王「喜ばなくちゃいけない……んだ、后」
后「ええ……新たな、命の誕生」
魔王「勇者の、誕生。光に導かれし……運命の子」
剣士「『勇者は、必ず魔王の子』」
魔王「……おかしな話だよな……本当に、腐った話だ」
后「ええ……腐った世界」
魔王「腐った世界の、腐った不条理、か」
魔王「誰が……言ったか知らんが……よく言ったモンだよ」
使用人「……時間が無い、です」
使用人「さっそく本題です……后様、先ほどお話しされていた話を」
后「あ……ええ。そうね」ドサッ
剣士「……読んだのか、もう!?」
后「寝てる場合じゃ無い、って思ったの。大丈夫よ」
后「……続きが気になって一気に、ってのもあるけれど……」
使用人「……『誰に何を受け継ぐのか』」
使用人「私の役目は……まだ、終わらない、ですね?」
魔王「え?」
后「子供が……青年が産まれた、って……金の髪に、緑の瞳の……ッ」
使用人「……状況は、毎日変化していくんでしょう、后様」
使用人「貴方のお腹の子……『次期勇者』様の……成長も」
使用人「……止まりは、しません」
后「…… ……」
使用人「………恐らく」
使用人「后様の中で新しいお命……勇者様が育ち行くに連れ」
使用人「……魔王様の身、そして力に変化が現れたのでしょう」
魔王「…… ……」
使用人「『もしくは』……癒し手様の身に、何か」
魔王「……あんまり不吉なこと言わないでくれ、使用人」
后「側近が付いてる限り……何も無いと思うんだけど」
后「二人には……子供も居るのだし、無茶はしないはずよ」
魔王「……そうだな」
魔王「何にしても……もうすぐ、だ」
后「そうね……もう、すぐ」ナデ
魔王「喜ばなくちゃいけない……んだ、后」
后「ええ……新たな、命の誕生」
魔王「勇者の、誕生。光に導かれし……運命の子」
剣士「『勇者は、必ず魔王の子』」
魔王「……おかしな話だよな……本当に、腐った話だ」
后「ええ……腐った世界」
魔王「腐った世界の、腐った不条理、か」
魔王「誰が……言ったか知らんが……よく言ったモンだよ」
使用人「……時間が無い、です」
使用人「さっそく本題です……后様、先ほどお話しされていた話を」
后「あ……ええ。そうね」ドサッ
剣士「……読んだのか、もう!?」
后「寝てる場合じゃ無い、って思ったの。大丈夫よ」
后「……続きが気になって一気に、ってのもあるけれど……」
使用人「……『誰に何を受け継ぐのか』」
使用人「私の役目は……まだ、終わらない、ですね?」
魔王「え?」
643: 2014/01/13(月) 16:04:56.61 ID:gjEhcpBoP
剣士「待て……手紙に目は通したのか」
后「……あ」
使用人「あ、ああ……そうでした」
魔王「この間の手紙は、青年が産まれた、と言う事だった」
剣士「……港街を経て、魔導国……じゃない。書の街を駆け足で巡ると書いてあった」
后「…… ……!?」カサ
使用人「后様?」
魔王「……書の街には、始まりの国に保護された少女の代わりに」
魔王「新しい代表者が立ち、図書館を新しく建て替えた」
剣士「……で、今から見に行くが『時間が無い』」
使用人「……時間が、無い……や、やはり、癒し手様の身に何か!?」
后「……違うわ。青年の方よ」カサ
剣士「図書館は……必要があれば、俺が行けば良いだろう、ともあったな」
使用人「青年様……に?」
魔王「……親である二人が驚くほどのスピードで成長している、んだそうだ」
后「エルフの血を引いてるんだもの。それほど……驚く事じゃ無い様な気はするけど」
后「……まあ、確かに何処にも、長く滞在は出来ないでしょうけど」
后「私は……こっちの方が気になるわ。はい……使用人」
使用人「え……し、失礼します」カサ
使用人「…… ……!?」
魔王「王……国王の息子だな。の顔色が悪い」
魔王「……何か、黒い物が見えた、とな」
剣士「国王自身も、それほど身体が強い方では無かったんだろう」
使用人「……しかし、これだけではどうとも判断が……できませんね」
使用人「癒し手様が何かを感じられた……と言う事は、気のせいでは無いのでしょうが」
后「……うん、そうよね」
魔王「書の街の問題は解決したのか?」
后「それこそ、手紙だけじゃわかんないわよ」
剣士「……あいつらが戻れば、俺が様子を見てくる」
剣士「俺ならば、何かあってもすぐに戻れる……だろう」
后「……そうね。どうしようも無い事を思い悩んでも仕方無い……じゃあ」
后「改めて。本題……これ」トントン
使用人「……本当にもう読んでしまったんですね」
后「……あ」
使用人「あ、ああ……そうでした」
魔王「この間の手紙は、青年が産まれた、と言う事だった」
剣士「……港街を経て、魔導国……じゃない。書の街を駆け足で巡ると書いてあった」
后「…… ……!?」カサ
使用人「后様?」
魔王「……書の街には、始まりの国に保護された少女の代わりに」
魔王「新しい代表者が立ち、図書館を新しく建て替えた」
剣士「……で、今から見に行くが『時間が無い』」
使用人「……時間が、無い……や、やはり、癒し手様の身に何か!?」
后「……違うわ。青年の方よ」カサ
剣士「図書館は……必要があれば、俺が行けば良いだろう、ともあったな」
使用人「青年様……に?」
魔王「……親である二人が驚くほどのスピードで成長している、んだそうだ」
后「エルフの血を引いてるんだもの。それほど……驚く事じゃ無い様な気はするけど」
后「……まあ、確かに何処にも、長く滞在は出来ないでしょうけど」
后「私は……こっちの方が気になるわ。はい……使用人」
使用人「え……し、失礼します」カサ
使用人「…… ……!?」
魔王「王……国王の息子だな。の顔色が悪い」
魔王「……何か、黒い物が見えた、とな」
剣士「国王自身も、それほど身体が強い方では無かったんだろう」
使用人「……しかし、これだけではどうとも判断が……できませんね」
使用人「癒し手様が何かを感じられた……と言う事は、気のせいでは無いのでしょうが」
后「……うん、そうよね」
魔王「書の街の問題は解決したのか?」
后「それこそ、手紙だけじゃわかんないわよ」
剣士「……あいつらが戻れば、俺が様子を見てくる」
剣士「俺ならば、何かあってもすぐに戻れる……だろう」
后「……そうね。どうしようも無い事を思い悩んでも仕方無い……じゃあ」
后「改めて。本題……これ」トントン
使用人「……本当にもう読んでしまったんですね」
644: 2014/01/13(月) 16:14:42.67 ID:gjEhcpBoP
后「確かに、何処にでもある『善と悪』……『勇者と魔王』の物語」
后「……類似点が多くある様な気がするのは、事実に基づいているから?」
魔王「まあ、『発想』てのはそんなモンかもしれんけども」
使用人「『物語』を真似たのが『私達の生きる世界』だと言うよりかは納得出来ますが」
使用人「それが『真実』だった保証はありませんよ」
剣士「繰り返されている、と言う事実とイコールでも無い」
后「繰り返されている?」
剣士「物語が先であるのならば、そうだろう? ……随分古そうな本だ」
魔王「まあ、どっちが先でも後でも良いけど」
魔王「……矛盾だらけなんだよな。似すぎてる」
后「あれ、持ってきた? 魔王」
魔王「ああ……なんちゃらっつー古詩な」
后「見せて…… ……」ペラ
使用人「……剣士は、人魚には会っていないのよね?」
剣士「? ……ああ、船長の父親を喰らった、て言うあれか」
后「側近……は期待できないな。癒し手が戻ったら、見てもらいましょう」
魔王「ん?」
后「魔王……覚えてる?」
魔王「最果てに着くまでに襲われた奴だろう? ……ああ、そう言えば妙な夢を見たな」
魔王「話した事の無い会話。覚えの無い状況……だけど、知ってる気がした」
使用人「魔導将軍と……北の塔で対峙した、と言う奴ですか」
后「……そう。泣いてる癒し手……僧侶を、私が慰めた」
后「『貴女、戦士が好きなのね』だったかしらね……」
魔王「そうそう。俺が側近を説得してた」
剣士「……似ている、な。前にも思ったが」
使用人「キーワードが同じですよね。『北の塔』」
魔王「え?」
使用人「此方は現実ですけど……剣士さんが鍛冶師の村に居る時に」
魔王「ああ……北の塔を訪ねてた側近と癒し手の様子を覗き見してたって奴な」
剣士「……不可抗力だ」ムッ
后「喧嘩しないの……そう、それでね」
魔王「それが何だ? 『北の塔』と『人魚』。『人魚』と『夢』が繋がってるてのは」
魔王「……ちょっと強引だぜ?」
后「……類似点が多くある様な気がするのは、事実に基づいているから?」
魔王「まあ、『発想』てのはそんなモンかもしれんけども」
使用人「『物語』を真似たのが『私達の生きる世界』だと言うよりかは納得出来ますが」
使用人「それが『真実』だった保証はありませんよ」
剣士「繰り返されている、と言う事実とイコールでも無い」
后「繰り返されている?」
剣士「物語が先であるのならば、そうだろう? ……随分古そうな本だ」
魔王「まあ、どっちが先でも後でも良いけど」
魔王「……矛盾だらけなんだよな。似すぎてる」
后「あれ、持ってきた? 魔王」
魔王「ああ……なんちゃらっつー古詩な」
后「見せて…… ……」ペラ
使用人「……剣士は、人魚には会っていないのよね?」
剣士「? ……ああ、船長の父親を喰らった、て言うあれか」
后「側近……は期待できないな。癒し手が戻ったら、見てもらいましょう」
魔王「ん?」
后「魔王……覚えてる?」
魔王「最果てに着くまでに襲われた奴だろう? ……ああ、そう言えば妙な夢を見たな」
魔王「話した事の無い会話。覚えの無い状況……だけど、知ってる気がした」
使用人「魔導将軍と……北の塔で対峙した、と言う奴ですか」
后「……そう。泣いてる癒し手……僧侶を、私が慰めた」
后「『貴女、戦士が好きなのね』だったかしらね……」
魔王「そうそう。俺が側近を説得してた」
剣士「……似ている、な。前にも思ったが」
使用人「キーワードが同じですよね。『北の塔』」
魔王「え?」
使用人「此方は現実ですけど……剣士さんが鍛冶師の村に居る時に」
魔王「ああ……北の塔を訪ねてた側近と癒し手の様子を覗き見してたって奴な」
剣士「……不可抗力だ」ムッ
后「喧嘩しないの……そう、それでね」
魔王「それが何だ? 『北の塔』と『人魚』。『人魚』と『夢』が繋がってるてのは」
魔王「……ちょっと強引だぜ?」
645: 2014/01/13(月) 16:28:01.65 ID:gjEhcpBoP
魔王「しかも、この古詩……」
后「最後まで聞きなさいよ! ……『詩』よ」
使用人「詩…… ! 人魚の『魔詩』!?」
后「……流石ね使用人。そう。彼女たちの魔詩の『詩』よ」
后「この古詩を読んだとき、覚えがあると思ったの」
后「……旋律はともかく。内容は、これよ」
剣士「……偶然……では、無いな」
魔王「お、覚えてるのか? 確かなのか!? 俺にはほにゃほにゃとしか……」
后「だから癒し手に確かめるの!」
后「……魔王も、側近と同じぐらいアテにならないでしょ、その辺は」
魔王「お前、酷いな……」
后「反論できる?」
魔王「……」ショボン
剣士「最後まで読んだんだな?」
后「ええ。だから持ってきて貰ったのよ。これも」ポン
后「……ねえ、使用人は随分前だって言ってたわよね? 読んだの」
使用人「え、ええ……うろ覚えなので、もう一度后様が読まれたら、とは思って他のですが」
后「取りあえず、一番最後。見て」
使用人「……?」ペラ
后「……逆さまになってるだけなのよ。この古詩」
使用人「あ……!」
魔王「それは、俺も剣士も気がついた」
剣士「まずがこの『名も無い古詩』で、『顔色の悪い蒼空』と名付けられたこの神話……童話?だ」
使用人「…… ……どう、して……気がつかなかった、のでしょう……」
后「……『表裏一体』よ」
魔王「実は『この世界は、小説でしたー』なんて落ちだったらなぁ……」
后「あのね……」ハァ
使用人「……『繰り返される運命の輪』」
剣士「?」
使用人「そこから、はじき出された者は……存在するんでしょうか」
后「え?」
使用人「あ、いえ……『世界』がこうして、『勇者と魔王』を繰り返して……」
使用人「……いえ。紫の魔王様が出発点である以上、まさか、あり得ませんね」
使用人「終わりはともかく、始まりは確実にあるんです」
后「最後まで聞きなさいよ! ……『詩』よ」
使用人「詩…… ! 人魚の『魔詩』!?」
后「……流石ね使用人。そう。彼女たちの魔詩の『詩』よ」
后「この古詩を読んだとき、覚えがあると思ったの」
后「……旋律はともかく。内容は、これよ」
剣士「……偶然……では、無いな」
魔王「お、覚えてるのか? 確かなのか!? 俺にはほにゃほにゃとしか……」
后「だから癒し手に確かめるの!」
后「……魔王も、側近と同じぐらいアテにならないでしょ、その辺は」
魔王「お前、酷いな……」
后「反論できる?」
魔王「……」ショボン
剣士「最後まで読んだんだな?」
后「ええ。だから持ってきて貰ったのよ。これも」ポン
后「……ねえ、使用人は随分前だって言ってたわよね? 読んだの」
使用人「え、ええ……うろ覚えなので、もう一度后様が読まれたら、とは思って他のですが」
后「取りあえず、一番最後。見て」
使用人「……?」ペラ
后「……逆さまになってるだけなのよ。この古詩」
使用人「あ……!」
魔王「それは、俺も剣士も気がついた」
剣士「まずがこの『名も無い古詩』で、『顔色の悪い蒼空』と名付けられたこの神話……童話?だ」
使用人「…… ……どう、して……気がつかなかった、のでしょう……」
后「……『表裏一体』よ」
魔王「実は『この世界は、小説でしたー』なんて落ちだったらなぁ……」
后「あのね……」ハァ
使用人「……『繰り返される運命の輪』」
剣士「?」
使用人「そこから、はじき出された者は……存在するんでしょうか」
后「え?」
使用人「あ、いえ……『世界』がこうして、『勇者と魔王』を繰り返して……」
使用人「……いえ。紫の魔王様が出発点である以上、まさか、あり得ませんね」
使用人「終わりはともかく、始まりは確実にあるんです」
646: 2014/01/13(月) 16:39:18.50 ID:gjEhcpBoP
剣士「何でも良い……思いついたことは、言ってみろ」
使用人「……運命の輪が回り続けている、と仮定して」
使用人「『世界』その物が、何度も何度も……と……いえ」
使用人「……いくら何でも、荒唐無稽、です」
魔王「良いから!」
使用人「……ッ そ、その、『運命の輪』からはじき出された者が」
使用人「もし、何らかの方法で居た、としてです」
使用人「……著者が、そう言う者であったなら、と」
后「……まあ、論理も糞も無い」
使用人「すみません……」
魔王「后……」
后「あ、ご、ごめんなさい! 馬鹿にしてる訳じゃ無いのよ!」
后「……余りにも使用人らしくないな、と思ったから……」
剣士「……何故、そう思うんだ?」
使用人「……『夢』です」
魔王「夢?」
使用人「ええ……魔王様と、后様、側近様……癒し手様が見た、夢」
使用人「……それが『以前の運命』の一部分だったら、と……」
使用人「…… ……」
使用人「……すみません」
魔王「謝る事じゃ無い……確かに、矛盾が解消された訳じゃ無いけど」
魔王「……成る程。『前』の俺達……か」
后「……まあ、嘘だ! ……とは言えない、かな」
剣士「だが『始まり』は確かにあったんだろう?」
使用人「それが『紫の魔王様』と仮定して良いのなら、です」
使用人「……あれも、その一部であったのなら?」
剣士「ん……」
后「……まあ『勇者と魔王』だけが繰り返す、とは」
后「名言されて無いもんね……」
剣士「……さっきの、使用人の役目が終わらない、と言うのは?」
后「ああ……そうそう。前にも話したかもしれないけど」
使用人「……運命の輪が回り続けている、と仮定して」
使用人「『世界』その物が、何度も何度も……と……いえ」
使用人「……いくら何でも、荒唐無稽、です」
魔王「良いから!」
使用人「……ッ そ、その、『運命の輪』からはじき出された者が」
使用人「もし、何らかの方法で居た、としてです」
使用人「……著者が、そう言う者であったなら、と」
后「……まあ、論理も糞も無い」
使用人「すみません……」
魔王「后……」
后「あ、ご、ごめんなさい! 馬鹿にしてる訳じゃ無いのよ!」
后「……余りにも使用人らしくないな、と思ったから……」
剣士「……何故、そう思うんだ?」
使用人「……『夢』です」
魔王「夢?」
使用人「ええ……魔王様と、后様、側近様……癒し手様が見た、夢」
使用人「……それが『以前の運命』の一部分だったら、と……」
使用人「…… ……」
使用人「……すみません」
魔王「謝る事じゃ無い……確かに、矛盾が解消された訳じゃ無いけど」
魔王「……成る程。『前』の俺達……か」
后「……まあ、嘘だ! ……とは言えない、かな」
剣士「だが『始まり』は確かにあったんだろう?」
使用人「それが『紫の魔王様』と仮定して良いのなら、です」
使用人「……あれも、その一部であったのなら?」
剣士「ん……」
后「……まあ『勇者と魔王』だけが繰り返す、とは」
后「名言されて無いもんね……」
剣士「……さっきの、使用人の役目が終わらない、と言うのは?」
后「ああ……そうそう。前にも話したかもしれないけど」
647: 2014/01/13(月) 16:48:35.62 ID:gjEhcpBoP
后「紫の魔王の側近が、赤の魔王のが氏んでも、居なくならなかったのは何故?」
后「……紫の魔王の瞳を与えられたのは、随分後、よね?」
使用人「私も、ですね。紫の魔王様はもう、いらっしゃらないのに」
魔王「……役目があったから、って言ってなかったか」
后「そう。そこよ!」
剣士「……『知を受け継ぐ者』……そうか『誰に』だ」
后「もしかしたら……この子、が」ナデ
后「魔王を倒したときに、使用人は…… ……」
使用人「はい。消えてしまう可能性は高いでしょうね」
后「それなら、私達が『受け継ぐ』のかもしれないわ」
后「……でも。こうやって、推測するだけ……よ。もう」
魔王「……まさか、何か隠してる……なんて事は無いわな」
使用人「当然です!」
剣士「責めている訳じゃないだろう」
使用人「…… ……」
后「まだ、受け継ぐ者が……そうしないといけない必要があるのかもしれない」
后「……だ、とすればよ?」
魔王「! ……終わらない可能性が高い、のか!?」
剣士「倒した後に、勇者に伝えなくてはいけない、と言うのは」
魔王「可能不可能はともかくとして、だ」
魔王「……勇者の物心がついたときに、告げたって一緒だぜ、それだと」
后「……言い方、悪いけど。生き残っているのは使用人だけなのよ」
后「……貴女、も。『特異点』の一つなのでは無いの……かしら?」
使用人「私が!?」
剣士「そもそも、特異点って言う物の意味が曖昧すぎる」
剣士「以前の『勇者一行と違う』と言うだけであれば」
剣士「確かに……『エルフの娘』はそうだろうが」
魔王「……三人、魔に変じてるからな。今回は二人……」
剣士「それに……『大海の大渦の島』の三人」
剣士「あれも『勇者一行』と取る事もできる」
使用人「え?」
后「……紫の魔王の瞳を与えられたのは、随分後、よね?」
使用人「私も、ですね。紫の魔王様はもう、いらっしゃらないのに」
魔王「……役目があったから、って言ってなかったか」
后「そう。そこよ!」
剣士「……『知を受け継ぐ者』……そうか『誰に』だ」
后「もしかしたら……この子、が」ナデ
后「魔王を倒したときに、使用人は…… ……」
使用人「はい。消えてしまう可能性は高いでしょうね」
后「それなら、私達が『受け継ぐ』のかもしれないわ」
后「……でも。こうやって、推測するだけ……よ。もう」
魔王「……まさか、何か隠してる……なんて事は無いわな」
使用人「当然です!」
剣士「責めている訳じゃないだろう」
使用人「…… ……」
后「まだ、受け継ぐ者が……そうしないといけない必要があるのかもしれない」
后「……だ、とすればよ?」
魔王「! ……終わらない可能性が高い、のか!?」
剣士「倒した後に、勇者に伝えなくてはいけない、と言うのは」
魔王「可能不可能はともかくとして、だ」
魔王「……勇者の物心がついたときに、告げたって一緒だぜ、それだと」
后「……言い方、悪いけど。生き残っているのは使用人だけなのよ」
后「……貴女、も。『特異点』の一つなのでは無いの……かしら?」
使用人「私が!?」
剣士「そもそも、特異点って言う物の意味が曖昧すぎる」
剣士「以前の『勇者一行と違う』と言うだけであれば」
剣士「確かに……『エルフの娘』はそうだろうが」
魔王「……三人、魔に変じてるからな。今回は二人……」
剣士「それに……『大海の大渦の島』の三人」
剣士「あれも『勇者一行』と取る事もできる」
使用人「え?」
648: 2014/01/13(月) 16:57:43.96 ID:gjEhcpBoP
后「……まあ、確かに魔王を倒しに旅立ってる、わよね」
魔王「光の加護を持つ『勇者』は居なかったが」
魔王「……成し得ていたら『勇者になっていた』んだもんな」
使用人「そんな事言ってしまえば、言葉遊びの域になりますよ」
使用人「そもそも、勇気のある者、英雄……でしょう、『勇者』って」
后「まあ、そう言う『種族』じゃないもんね」
剣士「……この、神話……童話、の勇者一行も……三人だ」
魔王「こじつけすぎ……ってのは、早計なんだろうな」ハァ
剣士「しかも、一人ずつ……氏んで行く」
后「……最後、読んで吃驚したわよ」
魔王「俺もだ」
使用人「……繋がりますよね。古詩と」
剣士「…… ……検証、か」ハァ
魔王「ん?」
剣士「否……今更、だが。意味はあるのか、と」
后「アンタ、そんな事いったら……」
使用人「……本当の真実なんて、わかりません。確かに」
使用人「過去に戻る事なんか、誰にも出来ないんですから……」
后「使用人まで!」
魔王「……まあ、な」
后「魔王!?」
魔王「……いや、そりゃさ。出来るだけ紐解いてやりたいよ」
魔王「次、の為に。『勇者』の為にさ……でも」
魔王「まさか、俺達が今知り得る事全てを」
魔王「……最初っから最後まで、伝えてやる事は……出来ない、だろう?」
后「……そ、りゃ…… ……そう、だけど」
剣士「何もしないよりは良い……こういう、話し合いに」
剣士「……もしかしたら意味は無いのかも知れないと言う事には」
剣士「少なくとも、気付けた」
魔王「……なんか、すまん。俺から言い出しておいて」
剣士「……だが、知りたいと思う事は事実だろう」
后「そうね」
使用人「…… ……あ、の」
魔王「光の加護を持つ『勇者』は居なかったが」
魔王「……成し得ていたら『勇者になっていた』んだもんな」
使用人「そんな事言ってしまえば、言葉遊びの域になりますよ」
使用人「そもそも、勇気のある者、英雄……でしょう、『勇者』って」
后「まあ、そう言う『種族』じゃないもんね」
剣士「……この、神話……童話、の勇者一行も……三人だ」
魔王「こじつけすぎ……ってのは、早計なんだろうな」ハァ
剣士「しかも、一人ずつ……氏んで行く」
后「……最後、読んで吃驚したわよ」
魔王「俺もだ」
使用人「……繋がりますよね。古詩と」
剣士「…… ……検証、か」ハァ
魔王「ん?」
剣士「否……今更、だが。意味はあるのか、と」
后「アンタ、そんな事いったら……」
使用人「……本当の真実なんて、わかりません。確かに」
使用人「過去に戻る事なんか、誰にも出来ないんですから……」
后「使用人まで!」
魔王「……まあ、な」
后「魔王!?」
魔王「……いや、そりゃさ。出来るだけ紐解いてやりたいよ」
魔王「次、の為に。『勇者』の為にさ……でも」
魔王「まさか、俺達が今知り得る事全てを」
魔王「……最初っから最後まで、伝えてやる事は……出来ない、だろう?」
后「……そ、りゃ…… ……そう、だけど」
剣士「何もしないよりは良い……こういう、話し合いに」
剣士「……もしかしたら意味は無いのかも知れないと言う事には」
剣士「少なくとも、気付けた」
魔王「……なんか、すまん。俺から言い出しておいて」
剣士「……だが、知りたいと思う事は事実だろう」
后「そうね」
使用人「…… ……あ、の」
649: 2014/01/13(月) 17:08:12.69 ID:gjEhcpBoP
魔王「ん?」
使用人「……三代分の物語、でしたよね」
后「え?」
使用人「矛盾とか、ちょっと置いといて」
魔王「あ、ああ……そうか。それで俺、勝手に次で終わりだとか思ってたんだ」
后「あ……この本ね」
使用人「はい。魔王様は確か『金の髪の勇者』『黒い髪の勇者』……現魔王様ですね」
剣士「で、産まれて来る子……で『三』か」
使用人「もし、全てが『繋がっている』……全てが『三』だとするのなら」
使用人「……『名も無き古詩』『顔色の悪い蒼空』 ……もう一つ、ある筈です」
后「それこそこじつけも……まあ、良いわ。でも三冊あるじゃない?」
剣士「……これは『三』に数えて良いのか?」
魔王「まあ……前後編、だもんな」
使用人「……エルフの話、出て来ましたよね」
后「え? ……ああ『地上であり地上でない、この世の物とも思えない楽園』……ッ」ハッ
使用人「……癒し手様は、この本から引用された、のですか?」
剣士「! ……ッ 違う!」
魔王「え?」
剣士「……遙か南の小さな島だ。船長と訪ねた事がある」
剣士「癒し手にそっくりの……エルフの娘の像だという、ものを見た」
剣士「……何かが引っかかると思っていたが、俺が紫の魔王の欠片ならば」
剣士「俺が…… 何かを『知っている』と思ったエルフは『姫』だ」
后「…… ……」
剣士「その時にその言葉を、聞いた」
使用人「……ならば、これが『三冊目』かもしれません」スッ
后「エルフのお姫様のお話……でも、これ……紫の瞳の魔王が書いたんでしょう?」
使用人「……紫の魔王様も、この運命の輪の一部であるのなら?」
魔王「……それすら、必然だと?」
剣士「……この腐った『世界』を作った『神』とやらは」
剣士「随分と酔狂な…… ……『奴』だな」
使用人「……今、思い出しました」
后「え?」
使用人「ご本人から聞いたのか……姫様か誰かに言われて」
使用人「それを、人様の口から耳に入れたのか、忘れてしまいましたが」
使用人「……紫の魔王様が、口にされたのは、確かです」
魔王「……何を?」
使用人「……『顔色の悪い蒼空』だと」
使用人「……三代分の物語、でしたよね」
后「え?」
使用人「矛盾とか、ちょっと置いといて」
魔王「あ、ああ……そうか。それで俺、勝手に次で終わりだとか思ってたんだ」
后「あ……この本ね」
使用人「はい。魔王様は確か『金の髪の勇者』『黒い髪の勇者』……現魔王様ですね」
剣士「で、産まれて来る子……で『三』か」
使用人「もし、全てが『繋がっている』……全てが『三』だとするのなら」
使用人「……『名も無き古詩』『顔色の悪い蒼空』 ……もう一つ、ある筈です」
后「それこそこじつけも……まあ、良いわ。でも三冊あるじゃない?」
剣士「……これは『三』に数えて良いのか?」
魔王「まあ……前後編、だもんな」
使用人「……エルフの話、出て来ましたよね」
后「え? ……ああ『地上であり地上でない、この世の物とも思えない楽園』……ッ」ハッ
使用人「……癒し手様は、この本から引用された、のですか?」
剣士「! ……ッ 違う!」
魔王「え?」
剣士「……遙か南の小さな島だ。船長と訪ねた事がある」
剣士「癒し手にそっくりの……エルフの娘の像だという、ものを見た」
剣士「……何かが引っかかると思っていたが、俺が紫の魔王の欠片ならば」
剣士「俺が…… 何かを『知っている』と思ったエルフは『姫』だ」
后「…… ……」
剣士「その時にその言葉を、聞いた」
使用人「……ならば、これが『三冊目』かもしれません」スッ
后「エルフのお姫様のお話……でも、これ……紫の瞳の魔王が書いたんでしょう?」
使用人「……紫の魔王様も、この運命の輪の一部であるのなら?」
魔王「……それすら、必然だと?」
剣士「……この腐った『世界』を作った『神』とやらは」
剣士「随分と酔狂な…… ……『奴』だな」
使用人「……今、思い出しました」
后「え?」
使用人「ご本人から聞いたのか……姫様か誰かに言われて」
使用人「それを、人様の口から耳に入れたのか、忘れてしまいましたが」
使用人「……紫の魔王様が、口にされたのは、確かです」
魔王「……何を?」
使用人「……『顔色の悪い蒼空』だと」
650: 2014/01/13(月) 17:19:44.04 ID:gjEhcpBoP
后「…… ……」
魔王「…… ……」
剣士「…… ……」
使用人「……それに」
后「?」
使用人「『三代』の初めが、『金の髪の勇者様』とは限りません」
魔王「え!? でも……」
使用人「……彼も確かに『始まり』とも取れます……でも」
剣士「……人の命の理において……産まれた者では無い、な」
后「!」
使用人「『勇者が魔王になり、それを倒した者』は……」
魔王「……俺が『始まり』か。それで行くと」
后「それは流石に考え過ぎよ!」
使用人「でも確実な『繰り返し』は貴方からですよ、魔王様」
使用人「……次代があり、その次もあるとするのなら」
使用人「確かに私は、まだ氏ねません」
剣士「……否定はできん、な」
后「そ……んな……ッ」
使用人「…… ……」
剣士「……書の街へ行く」
魔王「あいつらが帰るまで待つんじゃ無いのか」
剣士「此処にある本もあらかた読んだ……これ以上、話しても」
剣士「答えなど出ないだろう」
后「……何時でも戻れるわ。剣士なら」
使用人「……新たなキーワードも手に入れたんです」
使用人「私は、賛成です……違う目で、外を見られるのも良いんではないでしょうか」
魔王「使用人……」
使用人「……それに、正直……癒し手様に接触しない方が良いと思います」
后「……そうね。勇者を宿したことで、私の力も強くなっていくんでしょうし」
魔王「……母さんがそうだったから、か?」
后「そう……それに、魔王もね」
剣士「……勇者が産まれてしまえば、お前こそが俺の『脅威』になるかもしれん」
魔王「…… ……」
魔王「…… ……」
剣士「…… ……」
使用人「……それに」
后「?」
使用人「『三代』の初めが、『金の髪の勇者様』とは限りません」
魔王「え!? でも……」
使用人「……彼も確かに『始まり』とも取れます……でも」
剣士「……人の命の理において……産まれた者では無い、な」
后「!」
使用人「『勇者が魔王になり、それを倒した者』は……」
魔王「……俺が『始まり』か。それで行くと」
后「それは流石に考え過ぎよ!」
使用人「でも確実な『繰り返し』は貴方からですよ、魔王様」
使用人「……次代があり、その次もあるとするのなら」
使用人「確かに私は、まだ氏ねません」
剣士「……否定はできん、な」
后「そ……んな……ッ」
使用人「…… ……」
剣士「……書の街へ行く」
魔王「あいつらが帰るまで待つんじゃ無いのか」
剣士「此処にある本もあらかた読んだ……これ以上、話しても」
剣士「答えなど出ないだろう」
后「……何時でも戻れるわ。剣士なら」
使用人「……新たなキーワードも手に入れたんです」
使用人「私は、賛成です……違う目で、外を見られるのも良いんではないでしょうか」
魔王「使用人……」
使用人「……それに、正直……癒し手様に接触しない方が良いと思います」
后「……そうね。勇者を宿したことで、私の力も強くなっていくんでしょうし」
魔王「……母さんがそうだったから、か?」
后「そう……それに、魔王もね」
剣士「……勇者が産まれてしまえば、お前こそが俺の『脅威』になるかもしれん」
魔王「…… ……」
651: 2014/01/13(月) 17:31:12.20 ID:gjEhcpBoP
剣士「文の……小鳥のタイムラグを考えれば」
剣士「……今発っても、あいつらとぶつかることは無いだろう」
后「戻って……来る、わよね?」
剣士「…… ……」
シュゥン……ッ
魔王「…… ……」
使用人「……魔王様?」
魔王「いや……『三人』か、と……思ってな」
后「……捕らわれ過ぎよ」
魔王「なら良い……否、そうだよな」
使用人「……そこに私を含めるのが、そもそも間違えて居ます、魔王様」
魔王「……『傍観者』」
后「え?」
魔王「いや、さっき使用人が言ってただろう」
魔王「……もし、弾かれた奴が居るのなら」
后「…… ……」
魔王「案外、使用人だったりしてなーって……」
使用人「……だったら、どうして私が此処に居るんですか」
后「ね」
魔王「……そ、っか」ハァ
后「そんなに落ち込まないの。意味はあったわ」
魔王「……だと、良いけどな」
使用人(皆、何かを『産みだしている』)
使用人(……確かに、私には役割はある……だけど)
后「……使用人?」
使用人「!」ハッ
使用人「疲れたでしょう……お茶にしましょうか」
后「そうね。なんか食べないと気持ち悪くなってきた」
魔王「……食えるのか?」
后「『食べづわり』って奴よ……食べてるとマシになるの」
使用人「すぐに何かご用意しますね」
スタスタ、パタン
剣士「……今発っても、あいつらとぶつかることは無いだろう」
后「戻って……来る、わよね?」
剣士「…… ……」
シュゥン……ッ
魔王「…… ……」
使用人「……魔王様?」
魔王「いや……『三人』か、と……思ってな」
后「……捕らわれ過ぎよ」
魔王「なら良い……否、そうだよな」
使用人「……そこに私を含めるのが、そもそも間違えて居ます、魔王様」
魔王「……『傍観者』」
后「え?」
魔王「いや、さっき使用人が言ってただろう」
魔王「……もし、弾かれた奴が居るのなら」
后「…… ……」
魔王「案外、使用人だったりしてなーって……」
使用人「……だったら、どうして私が此処に居るんですか」
后「ね」
魔王「……そ、っか」ハァ
后「そんなに落ち込まないの。意味はあったわ」
魔王「……だと、良いけどな」
使用人(皆、何かを『産みだしている』)
使用人(……確かに、私には役割はある……だけど)
后「……使用人?」
使用人「!」ハッ
使用人「疲れたでしょう……お茶にしましょうか」
后「そうね。なんか食べないと気持ち悪くなってきた」
魔王「……食えるのか?」
后「『食べづわり』って奴よ……食べてるとマシになるの」
使用人「すぐに何かご用意しますね」
スタスタ、パタン
652: 2014/01/13(月) 17:41:31.07 ID:gjEhcpBoP
使用人(……私、だけ?)
使用人(違う……何か、忘れてる)
使用人(……なんだろう。違う……筈、なのに)
使用人(…… ……)ハァ
使用人(私は、何時まで生きれば良いのですか、紫の魔王様)
使用人(……もう、悠久の空へ。世界へ……還られた、のですか)
使用人(否。それで良い……それが、彼の幸せならば)
使用人(……永年に近い『生』終わる迄貴方の傍にと)
使用人(『全てが終わる迄見届ける事』……それが、貴方の望みであるのならば)
使用人(喜んで従います。ですが……)
使用人(……私だけ、繰り返さない?)
使用人(私が、特異点…… ……まさか)
使用人(……特異点。どう言う、意味なのだろうか)ハァ
……
………
…………
王子「成る程」ハァ
少女「…… ……」
王子「許可の無い者の城への立入禁止……なんて言うから、病気かと思ったら」
少女「……病気です。ある意味……と、言うか。立派な」
王子「偶に、ね」
少女「?」
王子「ふらっと衛生師が来るんだよ、家に」
少女「え?」
王子「まあ、街の視察なんか兼ねて、何だけど」
少女「……彼は、何を」
王子「俺には良く解らない、取り留めの無い愚痴をこぼしてくだけだ」
少女「……あ、の」
王子「ん?」
少女「王子様、は城では……生活されないのですか」
王子「……まあ、王のそんな様子を聞いたら、ね。気にはなるけど」
王子「でも、俺が傍に居ると……余計こじれる気がするよ」
少女「…… ……」
王子「……今になって、やっと女剣士様の気持ちが少し、解った気がする……なぁ」
少女「え?」
使用人(違う……何か、忘れてる)
使用人(……なんだろう。違う……筈、なのに)
使用人(…… ……)ハァ
使用人(私は、何時まで生きれば良いのですか、紫の魔王様)
使用人(……もう、悠久の空へ。世界へ……還られた、のですか)
使用人(否。それで良い……それが、彼の幸せならば)
使用人(……永年に近い『生』終わる迄貴方の傍にと)
使用人(『全てが終わる迄見届ける事』……それが、貴方の望みであるのならば)
使用人(喜んで従います。ですが……)
使用人(……私だけ、繰り返さない?)
使用人(私が、特異点…… ……まさか)
使用人(……特異点。どう言う、意味なのだろうか)ハァ
……
………
…………
王子「成る程」ハァ
少女「…… ……」
王子「許可の無い者の城への立入禁止……なんて言うから、病気かと思ったら」
少女「……病気です。ある意味……と、言うか。立派な」
王子「偶に、ね」
少女「?」
王子「ふらっと衛生師が来るんだよ、家に」
少女「え?」
王子「まあ、街の視察なんか兼ねて、何だけど」
少女「……彼は、何を」
王子「俺には良く解らない、取り留めの無い愚痴をこぼしてくだけだ」
少女「……あ、の」
王子「ん?」
少女「王子様、は城では……生活されないのですか」
王子「……まあ、王のそんな様子を聞いたら、ね。気にはなるけど」
王子「でも、俺が傍に居ると……余計こじれる気がするよ」
少女「…… ……」
王子「……今になって、やっと女剣士様の気持ちが少し、解った気がする……なぁ」
少女「え?」
653: 2014/01/13(月) 17:46:38.38 ID:gjEhcpBoP
王子「……血が繋がってる。俺の大事な……弟の、息子。甥っ子だ」
王子「助けてはやりたいよ。でもな」
王子「……近くにいると、やっぱり過保護になるんだよな」
少女「…… ……」
王子「駄目だ、と思いつつ……だから」
王子「少し、離れて居る方が良い、とも思う。けど」
王子「…… ……」
少女「あまり……その」
王子「ん?」
少女「……仲が良い風には、見えませんでした」
王子「……うん、そう、だな。そうかな」
王子「せめて……あいつからは逃げないようにしようと思ったんだけどな」
少女「え……」
王子「……否。それより」
少女「? ……はい」
王子「……最近、あんまり良くない噂が、ね」
少女「王、の事ですか」
王子「まあ、急に立入禁止、になんてなっちゃったから……病気じゃ無いのかってのも」
王子「勿論あるんだけどね……」
少女「……? 何です」
王子「……まあ、その。知人から聞いたんだ」
少女「?」
王子「書の街での噂、なんだけどさ」
少女「……ッ 私、の事ですか」
王子「……一向に、少女と王の結婚話が聞こえないのは」
王子「君が氏んだからじゃ無いか、とね」
少女「…… ……そ、れは」
王子「……御免」
王子「助けてはやりたいよ。でもな」
王子「……近くにいると、やっぱり過保護になるんだよな」
少女「…… ……」
王子「駄目だ、と思いつつ……だから」
王子「少し、離れて居る方が良い、とも思う。けど」
王子「…… ……」
少女「あまり……その」
王子「ん?」
少女「……仲が良い風には、見えませんでした」
王子「……うん、そう、だな。そうかな」
王子「せめて……あいつからは逃げないようにしようと思ったんだけどな」
少女「え……」
王子「……否。それより」
少女「? ……はい」
王子「……最近、あんまり良くない噂が、ね」
少女「王、の事ですか」
王子「まあ、急に立入禁止、になんてなっちゃったから……病気じゃ無いのかってのも」
王子「勿論あるんだけどね……」
少女「……? 何です」
王子「……まあ、その。知人から聞いたんだ」
少女「?」
王子「書の街での噂、なんだけどさ」
少女「……ッ 私、の事ですか」
王子「……一向に、少女と王の結婚話が聞こえないのは」
王子「君が氏んだからじゃ無いか、とね」
少女「…… ……そ、れは」
王子「……御免」
654: 2014/01/13(月) 17:52:40.60 ID:gjEhcpBoP
少女「仕方ありません」
王子「え?」
少女「……戴冠式へと言い出て行った途端」
少女「私と姉……秘書と揃って帰って来ず」
少女「しかも、旧貴族達は捕らえられた」
少女「……言い方は悪いかもしれませんが、処刑されたのではないか、と言う」
少女「噂で無い事に……驚きました」
王子「……半々、かな」
少女「でも、正直……誰も悲しんでいないでしょう?」
王子「少女……」
少女「私も秘書も含め、『旧魔導国の貴族達』です」
少女「……平和に安堵こそすれ」
王子「…… ……」
少女「ありがとうございます」
王子「え?」
少女「……もう、未練は無かったけれど……ほっとしました」
少女「街の様子も、ご存じですか?」
王子「聞いただけ、だけど」
少女「差し支えなければ、聞きたいです」
王子「……一日だけの滞在だったらしいけれど」
王子「定期便も復活したそうだし……図書館を訪れる人も多いのだそうだよ」
少女「そう……ですか」
王子「残念ながら、鍛冶師の村との直通便は無くなったままだけどね」
少女「ですが、港街を経由していけるのでしょう?」
王子「みたいだよ」
少女「……広く、誰もが気楽に利用できる図書館ならば」
少女「本も喜びます」
王子「……領主の館にあった古書なんかも、あるらしい」
少女「え……」
王子「……流石に、持ち出しは禁止みたいだが。まあ、価値のある物だろうしね」
少女「……無事、だったのですか?」
王子「無事だったものを避けて置いたんだそうだ。衛生師がそう言ってた」
少女「彼、が」
王子「え?」
少女「……戴冠式へと言い出て行った途端」
少女「私と姉……秘書と揃って帰って来ず」
少女「しかも、旧貴族達は捕らえられた」
少女「……言い方は悪いかもしれませんが、処刑されたのではないか、と言う」
少女「噂で無い事に……驚きました」
王子「……半々、かな」
少女「でも、正直……誰も悲しんでいないでしょう?」
王子「少女……」
少女「私も秘書も含め、『旧魔導国の貴族達』です」
少女「……平和に安堵こそすれ」
王子「…… ……」
少女「ありがとうございます」
王子「え?」
少女「……もう、未練は無かったけれど……ほっとしました」
少女「街の様子も、ご存じですか?」
王子「聞いただけ、だけど」
少女「差し支えなければ、聞きたいです」
王子「……一日だけの滞在だったらしいけれど」
王子「定期便も復活したそうだし……図書館を訪れる人も多いのだそうだよ」
少女「そう……ですか」
王子「残念ながら、鍛冶師の村との直通便は無くなったままだけどね」
少女「ですが、港街を経由していけるのでしょう?」
王子「みたいだよ」
少女「……広く、誰もが気楽に利用できる図書館ならば」
少女「本も喜びます」
王子「……領主の館にあった古書なんかも、あるらしい」
少女「え……」
王子「……流石に、持ち出しは禁止みたいだが。まあ、価値のある物だろうしね」
少女「……無事、だったのですか?」
王子「無事だったものを避けて置いたんだそうだ。衛生師がそう言ってた」
少女「彼、が」
655: 2014/01/13(月) 17:59:48.07 ID:gjEhcpBoP
王子「……後、あ、いや……」
少女「……?」
王子「さっきの話に戻るけど」
少女「? はい」
王子「……噂の話を衛生師に伝えたら」
少女「ああ……母親様と……秘書が氏んだと言う話、ですか」
王子「…… ……」
少女「王は、地下牢に続く廊下の扉を、塗り込めてしまいました」
王子「え!?」
少女「……もう、牢など必要無いだろうと」
王子「…… ……そう、か」
少女「王子様。私も聞きたい事があります」
王子「何だろう」
少女「……王に子供が出来なければ、この国は……青年が継ぐのでしょうか」
王子「……何、急に」
少女「何時からか……ああ、戦士さん達が旅立たれた位から」
少女「……王は、私を抱かなくなった」
王子「……ッ」
少女「露骨な話で申し訳ありません。ですが」
少女「……何と言うのか。その。途中で……駄目になったり」
少女「どこか……怯えた顔で、私を見るように……その、避ける様に」
王子「……まあ、うん。さっきの……病気の話、だな」
少女「……はい」
少女「あれでは、相手が私で無くても、多分…… ……」
王子「…… ……」
少女「青年の瞳が蒼に見えると」
王子「え?」
少女「……私がそう言うと、随分とほっとしておられた」
少女「戦士さんには全く似ていない。僧侶さんにうり二つだ、とも」
少女「……嬉しそうに」
王子「固執……していた、のか」ハァ
少女「何か……あったのですか」
王子「うん……まあ、否」
王子「……大丈夫だ、間違い無く……彼が『王』だよ」
少女「え……?」
少女「……?」
王子「さっきの話に戻るけど」
少女「? はい」
王子「……噂の話を衛生師に伝えたら」
少女「ああ……母親様と……秘書が氏んだと言う話、ですか」
王子「…… ……」
少女「王は、地下牢に続く廊下の扉を、塗り込めてしまいました」
王子「え!?」
少女「……もう、牢など必要無いだろうと」
王子「…… ……そう、か」
少女「王子様。私も聞きたい事があります」
王子「何だろう」
少女「……王に子供が出来なければ、この国は……青年が継ぐのでしょうか」
王子「……何、急に」
少女「何時からか……ああ、戦士さん達が旅立たれた位から」
少女「……王は、私を抱かなくなった」
王子「……ッ」
少女「露骨な話で申し訳ありません。ですが」
少女「……何と言うのか。その。途中で……駄目になったり」
少女「どこか……怯えた顔で、私を見るように……その、避ける様に」
王子「……まあ、うん。さっきの……病気の話、だな」
少女「……はい」
少女「あれでは、相手が私で無くても、多分…… ……」
王子「…… ……」
少女「青年の瞳が蒼に見えると」
王子「え?」
少女「……私がそう言うと、随分とほっとしておられた」
少女「戦士さんには全く似ていない。僧侶さんにうり二つだ、とも」
少女「……嬉しそうに」
王子「固執……していた、のか」ハァ
少女「何か……あったのですか」
王子「うん……まあ、否」
王子「……大丈夫だ、間違い無く……彼が『王』だよ」
少女「え……?」
656: 2014/01/13(月) 18:10:12.34 ID:gjEhcpBoP
王子「しかし……そうか」
王子「……『国』を考えると、世継ぎ問題どころか」
王子「まあ……その、婚姻そのもの、もな」
王子「問題にはなってくる、んだろうけれど……」
少女「……『血』に拘るの……ですか? やはり」
王子「…… ……君達に言われると、重いね」
少女「すみません」
王子「謝る事じゃ無い……だが、『王』を絶やす訳には行かない、んだ」
少女「え?」
王子「……否、何でも無い」ハァ
少女「私の問題か、彼の問題か……」
少女「……今の彼は、解らない。だけど」
王子「?」
少女「以前の……『今と比べてまだまともだった』彼と私に」
王子「…… ……」
少女「子を授からなくて、良かったのでは無いかと……私は思います」
王子「それは……何故?」
少女「解りませんか……?」フッ
少女「……きっと、私を独り占めできなくなると……」
王子「!」
少女「同じように狂っていただろうと……思います」
王子「…… ……」
少女「あの人は、無条件で妄信的に……狂おしいほどに」
少女「自分だけを愛して欲しいのだと、言っていました」
少女「……彼は、子供だ。確かに頭は良いのだろう。優しいだけでは……と」
少女「王にはなれない。衛生師もそう……言っていました」
少女「彼の純粋さは残酷だ。子供や……魔物のそれとは……また、違う意味で」
王子「…… ……」
少女「……『知』を持つ者の残酷さは、恐ろしいです」
少女「確かに彼は『王』だろう。だけど……」
王子「……もう、良いよ」
少女「! ……す、すみません!」
王子「……『国』を考えると、世継ぎ問題どころか」
王子「まあ……その、婚姻そのもの、もな」
王子「問題にはなってくる、んだろうけれど……」
少女「……『血』に拘るの……ですか? やはり」
王子「…… ……君達に言われると、重いね」
少女「すみません」
王子「謝る事じゃ無い……だが、『王』を絶やす訳には行かない、んだ」
少女「え?」
王子「……否、何でも無い」ハァ
少女「私の問題か、彼の問題か……」
少女「……今の彼は、解らない。だけど」
王子「?」
少女「以前の……『今と比べてまだまともだった』彼と私に」
王子「…… ……」
少女「子を授からなくて、良かったのでは無いかと……私は思います」
王子「それは……何故?」
少女「解りませんか……?」フッ
少女「……きっと、私を独り占めできなくなると……」
王子「!」
少女「同じように狂っていただろうと……思います」
王子「…… ……」
少女「あの人は、無条件で妄信的に……狂おしいほどに」
少女「自分だけを愛して欲しいのだと、言っていました」
少女「……彼は、子供だ。確かに頭は良いのだろう。優しいだけでは……と」
少女「王にはなれない。衛生師もそう……言っていました」
少女「彼の純粋さは残酷だ。子供や……魔物のそれとは……また、違う意味で」
王子「…… ……」
少女「……『知』を持つ者の残酷さは、恐ろしいです」
少女「確かに彼は『王』だろう。だけど……」
王子「……もう、良いよ」
少女「! ……す、すみません!」
657: 2014/01/13(月) 18:16:38.89 ID:gjEhcpBoP
王子「否、違う……君を責めたい訳でも……反論とか、したい訳でも無いんだ」
王子「……酷く不安定なところがあるとは思っていた」
王子「だけど……どうして、ああまでなってしまった、のか」
少女「会った、のですか」
王子「……ああ。ちらっとだけ、ね」
少女「……わかりません」
王子「君の所為では無い……これは、国王とか、俺とか……」
少女「…… ……」
王子「『大人』の所為だ」
少女「……しかし」
王子「勿論、彼自身にそう言う因子があってこそであろう事は……ね」
王子「だけど……俺達は、意図して彼を……『王』から遠ざけていた」
王子「……なのに、結局は『血』だと、強引に押しつけた」
少女「…… ……」
王子「君達を……下らないと、蔑んだのも、俺達だ」
王子「……身勝手な、大人だ」
少女「……選ぶのは、彼自身です」
少女「彼は何かに……負けてしまった。多分……」
少女「……自分の弱さに」
王子「…… ……」
少女「だけど、それは責められない」
王子「……ああ。選ばしてしまった一端は……」
少女「…… ……」
王子「ああ、そうだ」
少女「え?」
王子「……旅立つ前の僧侶に言われたんだ」
少女「黒い物?」
王子「聞いてたのか」
少女「……はい。衛生師から」
王子「イメージだ、とは言っていたが……」
少女「勘の鋭い方、何でしょうね、僧侶さんは」
王子「……なの、かな」
王子「……酷く不安定なところがあるとは思っていた」
王子「だけど……どうして、ああまでなってしまった、のか」
少女「会った、のですか」
王子「……ああ。ちらっとだけ、ね」
少女「……わかりません」
王子「君の所為では無い……これは、国王とか、俺とか……」
少女「…… ……」
王子「『大人』の所為だ」
少女「……しかし」
王子「勿論、彼自身にそう言う因子があってこそであろう事は……ね」
王子「だけど……俺達は、意図して彼を……『王』から遠ざけていた」
王子「……なのに、結局は『血』だと、強引に押しつけた」
少女「…… ……」
王子「君達を……下らないと、蔑んだのも、俺達だ」
王子「……身勝手な、大人だ」
少女「……選ぶのは、彼自身です」
少女「彼は何かに……負けてしまった。多分……」
少女「……自分の弱さに」
王子「…… ……」
少女「だけど、それは責められない」
王子「……ああ。選ばしてしまった一端は……」
少女「…… ……」
王子「ああ、そうだ」
少女「え?」
王子「……旅立つ前の僧侶に言われたんだ」
少女「黒い物?」
王子「聞いてたのか」
少女「……はい。衛生師から」
王子「イメージだ、とは言っていたが……」
少女「勘の鋭い方、何でしょうね、僧侶さんは」
王子「……なの、かな」
664: 2014/01/14(火) 09:01:20.46 ID:BZnBQ4oPP
少女「余り長い時間ではありませんでしたが、お話しさせて貰った時に」
少女「思いました。感じる力、と言うか」
王子「…… ……」
少女「そういう、方なのかと」
王子「何か黒い物が見える……見えたような気がした、だったかな」
王子「ただのイメージだと言っていた。だけど、気をつけてあげて欲しい、とね」
少女「……王の、ああいう気質を見抜いていらっしゃったのかもしれませんね」
王子「ただ……こればかりはな。気をつけろと言われても」
少女「……医術、と言うか。そう言う関係に詳しくはありませんが」
少女「回復の見込みは……無いんでしょうか」
衛生師「……君はどう思う?」
王子「うわ!」
少女「衛生師!」
衛生師「……そんなに驚かなくても良いと思うんだけど」
王子「お前、何時から……」
少女「……良い匂い」
衛生師「話し込んでたんですか……王子様まで気がつかないなんて」フゥ
衛生師「……まあ、誰も時間に縛られないでしょうから」
衛生師「お茶、お持ちしましたよ」
少女「……三人分?」
衛生師「僕がいたらまずい?」
王子「俺は構わないけど……お前、仕事は良いのか」
衛生師「……なんか、何時もそれ聞かれてる気がしますね」
少女「王の傍に居たんじゃ無いのか」
衛生師「『発作』起こしたから、ね」
王子「発作?」
衛生師「……彼にたったいま必要なのは、僕じゃ無くて鎮静剤」
王子「…… ……」
少女「思う、んだが」
衛生師「ん?」
少女「多用は……あまり」
衛生師「……だからって、放って置けない」
王子「悪循環だな……そんなに酷い、のか?」
少女「思いました。感じる力、と言うか」
王子「…… ……」
少女「そういう、方なのかと」
王子「何か黒い物が見える……見えたような気がした、だったかな」
王子「ただのイメージだと言っていた。だけど、気をつけてあげて欲しい、とね」
少女「……王の、ああいう気質を見抜いていらっしゃったのかもしれませんね」
王子「ただ……こればかりはな。気をつけろと言われても」
少女「……医術、と言うか。そう言う関係に詳しくはありませんが」
少女「回復の見込みは……無いんでしょうか」
衛生師「……君はどう思う?」
王子「うわ!」
少女「衛生師!」
衛生師「……そんなに驚かなくても良いと思うんだけど」
王子「お前、何時から……」
少女「……良い匂い」
衛生師「話し込んでたんですか……王子様まで気がつかないなんて」フゥ
衛生師「……まあ、誰も時間に縛られないでしょうから」
衛生師「お茶、お持ちしましたよ」
少女「……三人分?」
衛生師「僕がいたらまずい?」
王子「俺は構わないけど……お前、仕事は良いのか」
衛生師「……なんか、何時もそれ聞かれてる気がしますね」
少女「王の傍に居たんじゃ無いのか」
衛生師「『発作』起こしたから、ね」
王子「発作?」
衛生師「……彼にたったいま必要なのは、僕じゃ無くて鎮静剤」
王子「…… ……」
少女「思う、んだが」
衛生師「ん?」
少女「多用は……あまり」
衛生師「……だからって、放って置けない」
王子「悪循環だな……そんなに酷い、のか?」
665: 2014/01/14(火) 09:09:48.55 ID:BZnBQ4oPP
衛生師「さっき会ったでしょう、王子様?」
王子「……まあ」
衛生師「とにかく、夢を見ない程深く眠らないと、どうしようも無いらしい」
衛生師「はい、どうぞ……それより」カチャ
少女「いただきます」
王子「ありがとう……ん?」
衛生師「……もう少し詳しく、書の街の方の『噂』を」
少女「さっき……聞いた」
王子「ああ、そうだ……忘れてた」
少女「え?」
王子「……否、途中だった」
王子「君達が……氏んだのでは無いか、殺されたのでは無いかって」
王子「噂があるようだってのは話した、よね」
少女「はい」
衛生師「どうでも良い、とは言わないけど」
衛生師「そこは正直、想定の範囲内、だろう?」
衛生師「気になるのは……否、これも気にしても仕方無いのかもしれないけど」
王子「……『呪われている』と言うんだ」
少女「え? ……書の街が!?」
王子「違う……始まりの国が。と言うか……」
衛生師「昔もそう言う噂があったんでしょう」
王子「……立て続けに人が氏んだからな」
少女(! ……祈り女、に鍛冶師……だったか)
少女(王子様の細君に……父親だ)
衛生師「加えて、国王様には中々世継ぎが出来なかった」
王子「あの時は……戦争状態でぎすぎすしてた、ってのもあったんだけどね」
少女「……それも、仕方の無い事、では」
衛生師「多分、だけど発端は……まあ、我が国、だ」
衛生師「……街を見て回ってるとね、偶に耳にするんだよ」
衛生師「『城の庭の方で、黒い影を見た』だとか」
少女「!?」
衛生師「……悲鳴が聞こえる、とかね」
王子「……王の、声……が、漏れてる可能性は否定できないんだろうけど」
王子「城も、新しいとは言えないし。お母様達も、それほど立派に」
王子「きっちりと建てた訳じゃないって聞いている」
衛生師「……それだけじゃないでしょ、王子様」
王子「…… ……」
少女「まだ何か?」
王子「……まあ」
衛生師「とにかく、夢を見ない程深く眠らないと、どうしようも無いらしい」
衛生師「はい、どうぞ……それより」カチャ
少女「いただきます」
王子「ありがとう……ん?」
衛生師「……もう少し詳しく、書の街の方の『噂』を」
少女「さっき……聞いた」
王子「ああ、そうだ……忘れてた」
少女「え?」
王子「……否、途中だった」
王子「君達が……氏んだのでは無いか、殺されたのでは無いかって」
王子「噂があるようだってのは話した、よね」
少女「はい」
衛生師「どうでも良い、とは言わないけど」
衛生師「そこは正直、想定の範囲内、だろう?」
衛生師「気になるのは……否、これも気にしても仕方無いのかもしれないけど」
王子「……『呪われている』と言うんだ」
少女「え? ……書の街が!?」
王子「違う……始まりの国が。と言うか……」
衛生師「昔もそう言う噂があったんでしょう」
王子「……立て続けに人が氏んだからな」
少女(! ……祈り女、に鍛冶師……だったか)
少女(王子様の細君に……父親だ)
衛生師「加えて、国王様には中々世継ぎが出来なかった」
王子「あの時は……戦争状態でぎすぎすしてた、ってのもあったんだけどね」
少女「……それも、仕方の無い事、では」
衛生師「多分、だけど発端は……まあ、我が国、だ」
衛生師「……街を見て回ってるとね、偶に耳にするんだよ」
衛生師「『城の庭の方で、黒い影を見た』だとか」
少女「!?」
衛生師「……悲鳴が聞こえる、とかね」
王子「……王の、声……が、漏れてる可能性は否定できないんだろうけど」
王子「城も、新しいとは言えないし。お母様達も、それほど立派に」
王子「きっちりと建てた訳じゃないって聞いている」
衛生師「……それだけじゃないでしょ、王子様」
王子「…… ……」
少女「まだ何か?」
666: 2014/01/14(火) 09:40:01.50 ID:BZnBQ4oPP
王子「……その噂を、書の街でも耳にした、って聞いたんだ」
少女「は、あ……」
衛生師「伝わってしまってる、て事だよ、少女」
衛生師「始まりの国と書の街の行き来だけじゃないだろ?」
衛生師「口から口を伝って……世界中に広がってしまったら」
衛生師「根も葉もない噂……と、仮定しても、だ」
少女「!」
王子「……折角、これから『世界』を平和に導いて行こうとしているのに」
王子「歓迎される事態、では決してない」
少女「……そうか。王の発言力が低下する」
王子「『王』を絶やす訳には行かないんだ」
王子「……ましてや、魔王の復活も……近いだろうに」
衛生師「被害の報告が増えているからね……『武』を放棄した以上」
衛生師「否が応でも、『勇者』に縋らざるを得なくなる。こんな時に……」
王子「……『勇者』が戻るのはこの国だ」
王子「それが……『呪われた国』では……」
少女「……王子様は、さっきも言って居られた」
王子「え?」
少女「『王』を絶やす訳には、と」
王子「…… ……」
王子「……遺言、なんだ。お母様の」
衛生師「初耳ですね」
王子「俺はもう引退した身だからな」
王子「……国だろうが街だろうが、形なんてどうでも良い」
王子「『血』もどうでも良いのかも、しれない」
少女「…… ……」
王子「だが……『世界』に『王』は必要なんだ……絶対に……!」
衛生師「……遺言、だから、ですか?」
王子「それも、ある……だけど」
少女「は、あ……」
衛生師「伝わってしまってる、て事だよ、少女」
衛生師「始まりの国と書の街の行き来だけじゃないだろ?」
衛生師「口から口を伝って……世界中に広がってしまったら」
衛生師「根も葉もない噂……と、仮定しても、だ」
少女「!」
王子「……折角、これから『世界』を平和に導いて行こうとしているのに」
王子「歓迎される事態、では決してない」
少女「……そうか。王の発言力が低下する」
王子「『王』を絶やす訳には行かないんだ」
王子「……ましてや、魔王の復活も……近いだろうに」
衛生師「被害の報告が増えているからね……『武』を放棄した以上」
衛生師「否が応でも、『勇者』に縋らざるを得なくなる。こんな時に……」
王子「……『勇者』が戻るのはこの国だ」
王子「それが……『呪われた国』では……」
少女「……王子様は、さっきも言って居られた」
王子「え?」
少女「『王』を絶やす訳には、と」
王子「…… ……」
王子「……遺言、なんだ。お母様の」
衛生師「初耳ですね」
王子「俺はもう引退した身だからな」
王子「……国だろうが街だろうが、形なんてどうでも良い」
王子「『血』もどうでも良いのかも、しれない」
少女「…… ……」
王子「だが……『世界』に『王』は必要なんだ……絶対に……!」
衛生師「……遺言、だから、ですか?」
王子「それも、ある……だけど」
667: 2014/01/14(火) 09:51:29.12 ID:BZnBQ4oPP
王子「…… ……」
衛生師「王子様?」
王子「……否。それすらも、俺が決める事じゃ無いな」
王子「駄目だなぁ……つい、口出しちまう」フゥ
衛生師「……そこは、ね。心配しなくても大丈夫ですよ」
王子「え?」
少女「私もそう思う……思います」
少女「誰よりも……『王』であることに固執しているのは」
少女「王、自身でしょうから」
衛生師「……て、事です」
王子「…… ……」
衛生師「世継ぎだの、何だの。それこそ『血』に拘らないのであれば」
衛生師「……否。青年がいるじゃないか」
王子「……それは、さっき少女にも言われた。と言うか、聞かれた」
少女「はい」
衛生師「彼は王子様の孫……戦士君の息子です」
衛生師「もし、王と…… ……王に、子が出来なくても」
衛生師「彼は、正当な後継者だ」
王子「…… ……まあ、そうなる、ね」
王子「だけど……」
王子(エルフの血が入っている、事は問題じゃ無い……否、問題か)
王子(……僧侶は、生きている年齢だけで言えば、あの四人の中で一番長い)
王子(出産だの長のどうとか……だの、無ければ)
王子(これからも……まだ……)
王子(……青年も。ある程度の年齢の侭、成長が止まるのだろう)
王子(…… ……大問題だ)
少女「王子様?」
王子「あ……いや……王、に。俺達が身勝手に押しつけておきながら」
王子「……青年には押しつけられない、なんて言うのは、勝手だけれど」
衛生師「まあ、ね……戦士君も僧侶さんも、旅立ってしまった」
衛生師「……ふらりと立ち寄る事はあるだろうけど」
衛生師「この国に住む保証すら、ありませんから」
衛生師「王子様?」
王子「……否。それすらも、俺が決める事じゃ無いな」
王子「駄目だなぁ……つい、口出しちまう」フゥ
衛生師「……そこは、ね。心配しなくても大丈夫ですよ」
王子「え?」
少女「私もそう思う……思います」
少女「誰よりも……『王』であることに固執しているのは」
少女「王、自身でしょうから」
衛生師「……て、事です」
王子「…… ……」
衛生師「世継ぎだの、何だの。それこそ『血』に拘らないのであれば」
衛生師「……否。青年がいるじゃないか」
王子「……それは、さっき少女にも言われた。と言うか、聞かれた」
少女「はい」
衛生師「彼は王子様の孫……戦士君の息子です」
衛生師「もし、王と…… ……王に、子が出来なくても」
衛生師「彼は、正当な後継者だ」
王子「…… ……まあ、そうなる、ね」
王子「だけど……」
王子(エルフの血が入っている、事は問題じゃ無い……否、問題か)
王子(……僧侶は、生きている年齢だけで言えば、あの四人の中で一番長い)
王子(出産だの長のどうとか……だの、無ければ)
王子(これからも……まだ……)
王子(……青年も。ある程度の年齢の侭、成長が止まるのだろう)
王子(…… ……大問題だ)
少女「王子様?」
王子「あ……いや……王、に。俺達が身勝手に押しつけておきながら」
王子「……青年には押しつけられない、なんて言うのは、勝手だけれど」
衛生師「まあ、ね……戦士君も僧侶さんも、旅立ってしまった」
衛生師「……ふらりと立ち寄る事はあるだろうけど」
衛生師「この国に住む保証すら、ありませんから」
668: 2014/01/14(火) 09:56:51.42 ID:BZnBQ4oPP
王子「……さて、ご馳走様。俺はそろそろ行くよ」
衛生師「泊まって行かれないのです?」
王子「家はすぐそこだぞ?」
衛生師「そうですけど」
王子「……さっき、王にあった時も思ったけれど」
王子「俺はあまり……傍に居ない方が良いだろう」
王子「……俺は、もう『過去』だ」
少女「…… ……」
王子「『傍観者』で居なくてはいけないんだろうにな。つい……首を突っ込んでしまう」
衛生師「……助かるんですよ。僕たちだって」
王子「お前は放って置いたって、ふらっと家に来るだろ」
衛生師「……次はお酒持って行きます」
王子「ちゃんと帰れよ……ありがとう。美味かった」
少女「王子様!」
王子「ん?」
少女「……良ければ、またお話し下さい」
王子「……爺で良ければ、ね」
スタスタ
衛生師「ああ、送ります……ちょっと待ってて、少女」
パタン
少女(……『大人』。『過去』)
少女(知らない事が……まだまだあるのだろうな)
少女(……否、決して、知り得ない『過去』か)
少女(時は戻せない……私は、知りたいのか)
少女(……人形、にそんな感情は必要無いのだろうか)
パタン
少女「……早かったな」
衛生師「まあ、顔パスみたいなモンだしね……僕がちょっと話したかっただけだ」
少女「?」
衛生師「……流石に、老けたなぁと思って」
少女「孫がいらっしゃるんだから」
衛生師「それでも年齢的にはまだ若いよ」
衛生師「泊まって行かれないのです?」
王子「家はすぐそこだぞ?」
衛生師「そうですけど」
王子「……さっき、王にあった時も思ったけれど」
王子「俺はあまり……傍に居ない方が良いだろう」
王子「……俺は、もう『過去』だ」
少女「…… ……」
王子「『傍観者』で居なくてはいけないんだろうにな。つい……首を突っ込んでしまう」
衛生師「……助かるんですよ。僕たちだって」
王子「お前は放って置いたって、ふらっと家に来るだろ」
衛生師「……次はお酒持って行きます」
王子「ちゃんと帰れよ……ありがとう。美味かった」
少女「王子様!」
王子「ん?」
少女「……良ければ、またお話し下さい」
王子「……爺で良ければ、ね」
スタスタ
衛生師「ああ、送ります……ちょっと待ってて、少女」
パタン
少女(……『大人』。『過去』)
少女(知らない事が……まだまだあるのだろうな)
少女(……否、決して、知り得ない『過去』か)
少女(時は戻せない……私は、知りたいのか)
少女(……人形、にそんな感情は必要無いのだろうか)
パタン
少女「……早かったな」
衛生師「まあ、顔パスみたいなモンだしね……僕がちょっと話したかっただけだ」
少女「?」
衛生師「……流石に、老けたなぁと思って」
少女「孫がいらっしゃるんだから」
衛生師「それでも年齢的にはまだ若いよ」
669: 2014/01/14(火) 10:02:18.63 ID:BZnBQ4oPP
衛生師「……楽しかった?」
少女「え? ……まあ、それは」
衛生師「ここに居たって、まともに会話する相手は僕ぐらいだろうからね」
少女「……気を遣ってくれた、んだな」フゥ
衛生師「それもある、けど……僕が、時々王子様を訪ねる理由は」
衛生師「……ま、大体が愚痴なんだけど」
少女「ああ……聞いた」
衛生師「どうしてもアドバイスが欲しい時がある」
衛生師「……王は、もう……駄目だよ、少女」
少女「そんなに、悪いのか」
衛生師「悪く無いように見えるのか?」
少女「…… ……」
衛生師「普段は良い。平時は」
少女「……もう、戦争なんて」
衛生師「……さっき王子様も言ってただろう」
衛生師「『勇者』は何れこの国に戻る」
少女「確かなのか?」
衛生師「…… ……」
少女「前例があるのは勿論知っている。金の髪の勇者、黒い髪の勇者」
少女「……僧侶さんも言っていた。必ず、戻って来ると」
衛生師「王子様が盲目的に戦士君と僧侶さんを信じるのは……」
少女「勿論、自分の子供だから……と言う以上に」
少女「彼らは『帰還者』だからだろう」
衛生師「……まあ」
少女「……僧侶さんから直接、聞いている」
衛生師「え?」
少女「何れ、勇者はこの街に戻り、この国から旅立ち、魔王を倒すのだと」
衛生師「…… ……」
少女「だから、お願いしますね、と……」
衛生師「……あの笑顔で言われたら、ハイ、としか答えられないな」
少女「……嘘は吐かないんだと言っていた」
衛生師「……『願えば叶う』だとか言ってなかった?」
少女「え? ……まあ、それは」
衛生師「ここに居たって、まともに会話する相手は僕ぐらいだろうからね」
少女「……気を遣ってくれた、んだな」フゥ
衛生師「それもある、けど……僕が、時々王子様を訪ねる理由は」
衛生師「……ま、大体が愚痴なんだけど」
少女「ああ……聞いた」
衛生師「どうしてもアドバイスが欲しい時がある」
衛生師「……王は、もう……駄目だよ、少女」
少女「そんなに、悪いのか」
衛生師「悪く無いように見えるのか?」
少女「…… ……」
衛生師「普段は良い。平時は」
少女「……もう、戦争なんて」
衛生師「……さっき王子様も言ってただろう」
衛生師「『勇者』は何れこの国に戻る」
少女「確かなのか?」
衛生師「…… ……」
少女「前例があるのは勿論知っている。金の髪の勇者、黒い髪の勇者」
少女「……僧侶さんも言っていた。必ず、戻って来ると」
衛生師「王子様が盲目的に戦士君と僧侶さんを信じるのは……」
少女「勿論、自分の子供だから……と言う以上に」
少女「彼らは『帰還者』だからだろう」
衛生師「……まあ」
少女「……僧侶さんから直接、聞いている」
衛生師「え?」
少女「何れ、勇者はこの街に戻り、この国から旅立ち、魔王を倒すのだと」
衛生師「…… ……」
少女「だから、お願いしますね、と……」
衛生師「……あの笑顔で言われたら、ハイ、としか答えられないな」
少女「……嘘は吐かないんだと言っていた」
衛生師「……『願えば叶う』だとか言ってなかった?」
670: 2014/01/14(火) 10:14:32.12 ID:BZnBQ4oPP
少女「……ああ」
衛生師「僧侶さんは……元神官の様な物だと聞いているから」
衛生師「解らなくも無いが……王子様や戦士君まで、同じような事をいうからね」
少女「盗賊様の口癖だったのだろう?」
衛生師「らしい、けどね」
少女「……信じる事は悪い事じゃ無いんだろう」
衛生師「……君は、変わったなぁ」
少女「え?」
衛生師「子供然とした姿から大人の女っぽくなって」
少女「…… ……」
衛生師「人形だなんて言ってたけれど……随分、表情が柔らかくなった」
少女「……人形に代わりは無い。言っただろう。此処はたかが鳥籠だ」
少女「その中で少しばかりの自由を手にしただけだ。だから……」
衛生師「それでも、だよ」
少女「…… ……」
衛生師「……人形だとか、言うのやめなさい」
少女「王子様にそんな口は聞いていない」
衛生師「……なら、良いけどね。寧ろ……」
少女「?」
衛生師「狂ったお人形さん、どうにかしないとな」
少女「! 衛生師、それは……ッ」
衛生師「さっき、平時は良いと言っただろう?」
衛生師「……さしたる問題は無いんだ。僕が……代行しても」
少女「!?」
衛生師「……まともに政に関われる筈が無いだろう」
少女「…… ……」
衛生師「僧侶さんや、王子様を疑う訳じゃ無い。だけど」
衛生師「本当に……勇者が戻ってくる、ここから旅立つのだとすれば」
衛生師「頭が痛いよ。呪いってのも、信じたくなる」
少女「貴方らしくも無い」
衛生師「……ね」ハァ
少女(……呪い、か。馬鹿らしい。だが……)
少女(根拠の無い口伝ほど、恐ろしい物は無い)
少女(それは……衛生師も、良く解っている……んだろうな)
衛生師「僧侶さんは……元神官の様な物だと聞いているから」
衛生師「解らなくも無いが……王子様や戦士君まで、同じような事をいうからね」
少女「盗賊様の口癖だったのだろう?」
衛生師「らしい、けどね」
少女「……信じる事は悪い事じゃ無いんだろう」
衛生師「……君は、変わったなぁ」
少女「え?」
衛生師「子供然とした姿から大人の女っぽくなって」
少女「…… ……」
衛生師「人形だなんて言ってたけれど……随分、表情が柔らかくなった」
少女「……人形に代わりは無い。言っただろう。此処はたかが鳥籠だ」
少女「その中で少しばかりの自由を手にしただけだ。だから……」
衛生師「それでも、だよ」
少女「…… ……」
衛生師「……人形だとか、言うのやめなさい」
少女「王子様にそんな口は聞いていない」
衛生師「……なら、良いけどね。寧ろ……」
少女「?」
衛生師「狂ったお人形さん、どうにかしないとな」
少女「! 衛生師、それは……ッ」
衛生師「さっき、平時は良いと言っただろう?」
衛生師「……さしたる問題は無いんだ。僕が……代行しても」
少女「!?」
衛生師「……まともに政に関われる筈が無いだろう」
少女「…… ……」
衛生師「僧侶さんや、王子様を疑う訳じゃ無い。だけど」
衛生師「本当に……勇者が戻ってくる、ここから旅立つのだとすれば」
衛生師「頭が痛いよ。呪いってのも、信じたくなる」
少女「貴方らしくも無い」
衛生師「……ね」ハァ
少女(……呪い、か。馬鹿らしい。だが……)
少女(根拠の無い口伝ほど、恐ろしい物は無い)
少女(それは……衛生師も、良く解っている……んだろうな)
671: 2014/01/14(火) 10:21:28.47 ID:BZnBQ4oPP
少女「……私、で出来る事ならば」
衛生師「え?」
少女「否……助けになるかは、解らないが」
衛生師「……本当に、君は変わったねぇ」
少女「何だ」ムッ
衛生師「王の為?」
少女「……え」
衛生師「僕は『仕事』だ」
少女「…… ……私、は」
衛生師「本当ならば、自由にしてあげたいんだけどね」
少女「どうせ『そんな命令は受けてない』と言うのだろう」
衛生師「……それもあるけど」
少女「?」
衛生師「僕も君と居ると楽しいよ」
少女「衛生師……」
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「……会議だ。戻らなくちゃ」
少女「あ……」
衛生師「御免ね?」
スタスタ、パタン
少女(……自由に、なんて。今更)
少女(私には、帰る所も無い。もう)
少女(……飼い慣らされた鳥が、鳥籠を奪われても)
少女(否。野垂れ氏ぬだなんて……御免だ!)カタン
少女(私も部屋へ戻ろう……もう少し、本でもあれば良いんだけどな)
少女(…… ……力になる、か。誰の。何の?)
少女(衛生師…… ……)
スタスタ、カチャ、パタン
衛生師「え?」
少女「否……助けになるかは、解らないが」
衛生師「……本当に、君は変わったねぇ」
少女「何だ」ムッ
衛生師「王の為?」
少女「……え」
衛生師「僕は『仕事』だ」
少女「…… ……私、は」
衛生師「本当ならば、自由にしてあげたいんだけどね」
少女「どうせ『そんな命令は受けてない』と言うのだろう」
衛生師「……それもあるけど」
少女「?」
衛生師「僕も君と居ると楽しいよ」
少女「衛生師……」
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「……会議だ。戻らなくちゃ」
少女「あ……」
衛生師「御免ね?」
スタスタ、パタン
少女(……自由に、なんて。今更)
少女(私には、帰る所も無い。もう)
少女(……飼い慣らされた鳥が、鳥籠を奪われても)
少女(否。野垂れ氏ぬだなんて……御免だ!)カタン
少女(私も部屋へ戻ろう……もう少し、本でもあれば良いんだけどな)
少女(…… ……力になる、か。誰の。何の?)
少女(衛生師…… ……)
スタスタ、カチャ、パタン
672: 2014/01/14(火) 10:39:45.58 ID:BZnBQ4oPP
……
………
…………
剣士「……ありがとう。世話になった」
司書「またお越し下さい」
バタン
剣士(領主の館で見た本も何冊があったが……既に読んだ物だったな)
剣士(『違う目で』と言われてもな……実質)
剣士(……収穫は無し、か)フゥ
剣士(始まりの国へ……行くか?)
剣士(……城への立入が禁止されている、と言うのは……な)
剣士(忍び込もうとすればどうにでもなる、が)
剣士(……街の噂も、気にはなる……が……『呪い』か)
剣士(癒し手の言っていた『黒い物』)
剣士(……それが、噂の正体か。もしくは……故の、噂か)
剣士(王に会うのは無理……だろうな。顔も知らん……国王や)
剣士(騎士団長に似ているのかもしれないが…… ……ッ)
剣士(……そうか。騎士団長)
スタスタ
剣士「始まりの国行きの船は、ここから出るのか?」
船員「あの国へ行こうと思えば、港街を経由しないと行けないよ?」
剣士「……ああ、そうだったな」
船員「この船で港街へは行けるけど……今日はもう」
船員「始まりの国行きは終わっちゃったんじゃないかな」
船員「それでも良いかい?」
剣士「…… ……」
船員「お客さん?」
剣士(面倒だな……急ぐ訳じゃ無いが)
剣士「否、良い……明日の朝にする」
船員「そうか。悪いね」
スタスタ
………
…………
剣士「……ありがとう。世話になった」
司書「またお越し下さい」
バタン
剣士(領主の館で見た本も何冊があったが……既に読んだ物だったな)
剣士(『違う目で』と言われてもな……実質)
剣士(……収穫は無し、か)フゥ
剣士(始まりの国へ……行くか?)
剣士(……城への立入が禁止されている、と言うのは……な)
剣士(忍び込もうとすればどうにでもなる、が)
剣士(……街の噂も、気にはなる……が……『呪い』か)
剣士(癒し手の言っていた『黒い物』)
剣士(……それが、噂の正体か。もしくは……故の、噂か)
剣士(王に会うのは無理……だろうな。顔も知らん……国王や)
剣士(騎士団長に似ているのかもしれないが…… ……ッ)
剣士(……そうか。騎士団長)
スタスタ
剣士「始まりの国行きの船は、ここから出るのか?」
船員「あの国へ行こうと思えば、港街を経由しないと行けないよ?」
剣士「……ああ、そうだったな」
船員「この船で港街へは行けるけど……今日はもう」
船員「始まりの国行きは終わっちゃったんじゃないかな」
船員「それでも良いかい?」
剣士「…… ……」
船員「お客さん?」
剣士(面倒だな……急ぐ訳じゃ無いが)
剣士「否、良い……明日の朝にする」
船員「そうか。悪いね」
スタスタ
673: 2014/01/14(火) 10:49:28.00 ID:BZnBQ4oPP
剣士(ローブを被っているとは言え……)
剣士(……書の街、となったとは言え。長居は……危険だろうな)
剣士(俺の顔、俺の瞳……誰もが、忘れてしまったとは思えん)
剣士(…… ……仕方無い)
スタスタ……キョロキョロ
剣士(この辺で、良いか)
シュゥウン……ッ
…… ……
スタッ
剣士(…… ……)フゥ
剣士(見様見真似……とは言え。不思議だな)キョロ
剣士(川沿い……ああ、あの辺りか……街は……あっち…… ……!?)
剣士「な、んだ……あれ、は!?」
剣士(……『黒い物』!?)
剣士「…… ……」クルッ
タタタ……ッ
剣士(確か。丘の上……あの墓の上からだと、城が見下ろせた筈だ)
剣士「…… ……ッ」ハァ
タタタ……スタ、スタ……
ザアアァアアアア……ッ
剣士「…… ……」
剣士(……書の街、となったとは言え。長居は……危険だろうな)
剣士(俺の顔、俺の瞳……誰もが、忘れてしまったとは思えん)
剣士(…… ……仕方無い)
スタスタ……キョロキョロ
剣士(この辺で、良いか)
シュゥウン……ッ
…… ……
スタッ
剣士(…… ……)フゥ
剣士(見様見真似……とは言え。不思議だな)キョロ
剣士(川沿い……ああ、あの辺りか……街は……あっち…… ……!?)
剣士「な、んだ……あれ、は!?」
剣士(……『黒い物』!?)
剣士「…… ……」クルッ
タタタ……ッ
剣士(確か。丘の上……あの墓の上からだと、城が見下ろせた筈だ)
剣士「…… ……ッ」ハァ
タタタ……スタ、スタ……
ザアアァアアアア……ッ
剣士「…… ……」
674: 2014/01/14(火) 11:02:43.11 ID:BZnBQ4oPP
剣士「な、んだ……あれは」
剣士(城の一角……否、城全体、か?)
剣士(……黒い、靄が掛かっているみたいだ)
剣士(『黒い物』……王、か? ……違う)
剣士(……否。ここからではそれ以上は……解らんな)
剣士「…… ……」
剣士(……相変わらず。居心地の悪い場所だ)
剣士(そう思うのは俺が魔……否。『人では無い』からか)
剣士(エルフの加護だったな。使用人が姫のペンダントに移した、と言う)
剣士(……しかし、あんな物が……蔓延っていれば……)
剣士(……麓に小さな街が会った筈だ)
スタスタ
剣士(屋根……あそこだな)
剣士「……すまん、が」
娘「はい?」
剣士「……始まりの国は、あっちで良かっただろうか」
娘「ああ、はい。この森を抜けるとすぐですよ」
娘「あ、でも……少し遠回りになりますけど……」
剣士(川沿いの道、か……)
娘「丘の方から、川沿いの道を行った方が、安全かもしれません」
剣士「ほう」
娘「最近、急に魔物が強くなったんです。あ、でも!」
娘「あんまり川に近づき過ぎても……水の魔物に引きずり込まれちゃいますけど」
剣士「……そうか、ありがとう」
娘「あんまり、良い噂無いですから……お気をつけて」
剣士「え?」
娘「王様、病気らしくて」
剣士「…… ……」」
娘「お世継ぎどころか……婚姻が中止になったのも」
娘「王様の病気の所為だとか……」
剣士「…… ……」
娘「書の街の貴族達を皆頃しにしたから……」
剣士「……何?」
娘「……う、噂ですよ。でも」
剣士(城の一角……否、城全体、か?)
剣士(……黒い、靄が掛かっているみたいだ)
剣士(『黒い物』……王、か? ……違う)
剣士(……否。ここからではそれ以上は……解らんな)
剣士「…… ……」
剣士(……相変わらず。居心地の悪い場所だ)
剣士(そう思うのは俺が魔……否。『人では無い』からか)
剣士(エルフの加護だったな。使用人が姫のペンダントに移した、と言う)
剣士(……しかし、あんな物が……蔓延っていれば……)
剣士(……麓に小さな街が会った筈だ)
スタスタ
剣士(屋根……あそこだな)
剣士「……すまん、が」
娘「はい?」
剣士「……始まりの国は、あっちで良かっただろうか」
娘「ああ、はい。この森を抜けるとすぐですよ」
娘「あ、でも……少し遠回りになりますけど……」
剣士(川沿いの道、か……)
娘「丘の方から、川沿いの道を行った方が、安全かもしれません」
剣士「ほう」
娘「最近、急に魔物が強くなったんです。あ、でも!」
娘「あんまり川に近づき過ぎても……水の魔物に引きずり込まれちゃいますけど」
剣士「……そうか、ありがとう」
娘「あんまり、良い噂無いですから……お気をつけて」
剣士「え?」
娘「王様、病気らしくて」
剣士「…… ……」」
娘「お世継ぎどころか……婚姻が中止になったのも」
娘「王様の病気の所為だとか……」
剣士「…… ……」
娘「書の街の貴族達を皆頃しにしたから……」
剣士「……何?」
娘「……う、噂ですよ。でも」
675: 2014/01/14(火) 11:07:19.13 ID:BZnBQ4oPP
娘「それで……呪われてるんじゃないか、って」
剣士「……婚姻の予定はあったのか?」
娘「政略結婚でしょうけどね。書の街の貴族の一人を、とか」
娘「無理矢理……その。あの……」
剣士「……王が、か?」
娘「国王様は……立派な方でした。お優しくて」
娘「……でも、急逝されてから立たれた王様は……」
剣士「息子……だろう?」
娘「だと思います……でもね。戴冠式、言ったんですけど」
娘「何て言うか…… ……」
剣士(話半分、と聞いても……随分だな)
剣士「…… ……」
娘「あ、ご免なさい! ……でもねぇ」
娘「……火の無いところに、でしょ?」
剣士「……ありがとう」
スタスタ
娘「あ……しゃべり過ぎちゃった、かな?」
娘「おきをつけてー!」
スタスタ
剣士(城には……入れない)
剣士(……騎士団長に会うことは……出来るだろうか)
剣士(ああ……そうか。引退したんだと……文にあった)
剣士(……闇雲に街を歩き回っても……な)
剣士「……婚姻の予定はあったのか?」
娘「政略結婚でしょうけどね。書の街の貴族の一人を、とか」
娘「無理矢理……その。あの……」
剣士「……王が、か?」
娘「国王様は……立派な方でした。お優しくて」
娘「……でも、急逝されてから立たれた王様は……」
剣士「息子……だろう?」
娘「だと思います……でもね。戴冠式、言ったんですけど」
娘「何て言うか…… ……」
剣士(話半分、と聞いても……随分だな)
剣士「…… ……」
娘「あ、ご免なさい! ……でもねぇ」
娘「……火の無いところに、でしょ?」
剣士「……ありがとう」
スタスタ
娘「あ……しゃべり過ぎちゃった、かな?」
娘「おきをつけてー!」
スタスタ
剣士(城には……入れない)
剣士(……騎士団長に会うことは……出来るだろうか)
剣士(ああ……そうか。引退したんだと……文にあった)
剣士(……闇雲に街を歩き回っても……な)
676: 2014/01/14(火) 11:15:58.01 ID:BZnBQ4oPP
剣士(…… ……)キョロ
剣士(久しぶり、だ…… ……街の雰囲気は変わらない……が)
剣士「…… ……」
剣士(……あれか。城……地下、か?)ジッ
剣士(鋭い者ならば……近付かなくなる……だろうな)
剣士(……早々にこの国を発ったのは正解か、癒し手)
剣士(あのエルフの血を引く娘ならば……耐えられなかっただろう、これは……)
衛生師「旅人かい? ……残念だけど、今城には入れないよ」
剣士「!」
衛生師「騎士団は解散してしまったからね……まあ、防犯上」
剣士「…… ……」
衛生師「……僕の顔に、何か?」
剣士(見た事がある……元騎士団の人間、か?)
剣士「騎士団長……王子、に会いに来たんだが」
剣士「城に、は……通しては貰えないだろうか」
衛生師「……王子様の知り合い?」
剣士「……ああ」
衛生師「…… ……君」
剣士「…… ……」
衛生師「名は?」
剣士「……剣士」
衛生師「! 鍛冶師の村の討伐に参加した……あの剣士か!?」
剣士「…… ……お前は、元騎士団員か」
衛生師「……紫の瞳の」
剣士「…… ……」
衛生師「……こっちだ」クルッ
剣士「? あ、ああ……」
スタスタ
衛生師「王子様は引退されてから、ご自分の家にいらっしゃる」
衛生師「……ああ、フードは取るなよ」
剣士「…… ……」
剣士(久しぶり、だ…… ……街の雰囲気は変わらない……が)
剣士「…… ……」
剣士(……あれか。城……地下、か?)ジッ
剣士(鋭い者ならば……近付かなくなる……だろうな)
剣士(……早々にこの国を発ったのは正解か、癒し手)
剣士(あのエルフの血を引く娘ならば……耐えられなかっただろう、これは……)
衛生師「旅人かい? ……残念だけど、今城には入れないよ」
剣士「!」
衛生師「騎士団は解散してしまったからね……まあ、防犯上」
剣士「…… ……」
衛生師「……僕の顔に、何か?」
剣士(見た事がある……元騎士団の人間、か?)
剣士「騎士団長……王子、に会いに来たんだが」
剣士「城に、は……通しては貰えないだろうか」
衛生師「……王子様の知り合い?」
剣士「……ああ」
衛生師「…… ……君」
剣士「…… ……」
衛生師「名は?」
剣士「……剣士」
衛生師「! 鍛冶師の村の討伐に参加した……あの剣士か!?」
剣士「…… ……お前は、元騎士団員か」
衛生師「……紫の瞳の」
剣士「…… ……」
衛生師「……こっちだ」クルッ
剣士「? あ、ああ……」
スタスタ
衛生師「王子様は引退されてから、ご自分の家にいらっしゃる」
衛生師「……ああ、フードは取るなよ」
剣士「…… ……」
677: 2014/01/14(火) 11:23:42.40 ID:BZnBQ4oPP
衛生師「……旅に出た、んじゃなかったのか?」
剣士「別に、住み着く気等無い……俺は……」
衛生師「……王に、会ったことは?」
剣士「ある」
衛生師「ああ……そうか。国王様が亡くなった時……居たよね」
剣士「……王子は、元気なのか」
衛生師「ああ。孫が産まれたんだよ……って、知ってるよね」
衛生師「戦士君と僧侶さんとも、既知だった筈だ」
剣士「……あの二人はどうした?」
衛生師「この間発ったよ……王子様もね、あまり……城には近づかれない」
剣士「……そうか」
衛生師「元気な男の子だったよ」
剣士「子供、か……どっちに似てた」
衛生師「僧侶さんかな……綺麗な子になるだろう」
剣士「…… ……」
衛生師「今頃、何の用だい?」
剣士「……顔を見に寄っただけだ」
衛生師「……そう」
コンコン
衛生師「王子様。いらっしゃいます?」
王子「……衛生師!? お前、昨日来たばっかりだろ?」
カチャ
王子「毎日毎日、仕事は良いの……か……」
衛生師「随分ですねぇ……お客様をお連れしたんですよ」
剣士「……久しぶり、だな」
王子「け……ッ 剣士!?」
剣士「別に、住み着く気等無い……俺は……」
衛生師「……王に、会ったことは?」
剣士「ある」
衛生師「ああ……そうか。国王様が亡くなった時……居たよね」
剣士「……王子は、元気なのか」
衛生師「ああ。孫が産まれたんだよ……って、知ってるよね」
衛生師「戦士君と僧侶さんとも、既知だった筈だ」
剣士「……あの二人はどうした?」
衛生師「この間発ったよ……王子様もね、あまり……城には近づかれない」
剣士「……そうか」
衛生師「元気な男の子だったよ」
剣士「子供、か……どっちに似てた」
衛生師「僧侶さんかな……綺麗な子になるだろう」
剣士「…… ……」
衛生師「今頃、何の用だい?」
剣士「……顔を見に寄っただけだ」
衛生師「……そう」
コンコン
衛生師「王子様。いらっしゃいます?」
王子「……衛生師!? お前、昨日来たばっかりだろ?」
カチャ
王子「毎日毎日、仕事は良いの……か……」
衛生師「随分ですねぇ……お客様をお連れしたんですよ」
剣士「……久しぶり、だな」
王子「け……ッ 剣士!?」
678: 2014/01/14(火) 11:32:24.59 ID:BZnBQ4oPP
衛生師「……じーっと、城を見ていらっしゃったので声をかけたらね」
王子「……お前達、面識あったか?」
剣士「どこかで会ってはいるだろうが……話したのは初めてだな」
衛生師「……では、僕はこれで」
王子「あ、ああ……悪かったな、ありがとう」
衛生師「いえ……」
パタン
剣士「良かったんだか、悪かったんだか」ハァ
王子「衛生師か?」
剣士「……おめでとう、おじいちゃん」
王子「お前に言われると変な感じだな……ありがとう」
王子「戦士達は……もう、着いたのか?」
剣士「否。 ……俺は、何処にでも行ける」
王子「ああ……そうだった」
剣士「癒し手からの文を見て、書の街に行ってきたんだ」
剣士「……あと、『黒い物』」
王子「! ……王にあったのか!?」
剣士「不可能だろう……城には入れない」
王子「……あ、ああ……しかし……」
剣士「……地下、だ」
王子「え?」
剣士「城の地下……何がある?」
王子「…… ……」
剣士「否……何が居る」
王子「……え」
剣士「黒い靄が広がっている様に見える」
剣士「……王は、病気なんだそうだな」
王子「…… ……ああ。何と言うか……どう、説明して良いものか」
剣士「お前、こんな所に居て良いのか?」
王子「……行こうと思えば何時でも行ける」
剣士「…… ……」
王子「俺は……もう、引退したんだ」
剣士「『未来』は『王達が作る物』と言いたいんだろが……」
王子「……お前達、面識あったか?」
剣士「どこかで会ってはいるだろうが……話したのは初めてだな」
衛生師「……では、僕はこれで」
王子「あ、ああ……悪かったな、ありがとう」
衛生師「いえ……」
パタン
剣士「良かったんだか、悪かったんだか」ハァ
王子「衛生師か?」
剣士「……おめでとう、おじいちゃん」
王子「お前に言われると変な感じだな……ありがとう」
王子「戦士達は……もう、着いたのか?」
剣士「否。 ……俺は、何処にでも行ける」
王子「ああ……そうだった」
剣士「癒し手からの文を見て、書の街に行ってきたんだ」
剣士「……あと、『黒い物』」
王子「! ……王にあったのか!?」
剣士「不可能だろう……城には入れない」
王子「……あ、ああ……しかし……」
剣士「……地下、だ」
王子「え?」
剣士「城の地下……何がある?」
王子「…… ……」
剣士「否……何が居る」
王子「……え」
剣士「黒い靄が広がっている様に見える」
剣士「……王は、病気なんだそうだな」
王子「…… ……ああ。何と言うか……どう、説明して良いものか」
剣士「お前、こんな所に居て良いのか?」
王子「……行こうと思えば何時でも行ける」
剣士「…… ……」
王子「俺は……もう、引退したんだ」
剣士「『未来』は『王達が作る物』と言いたいんだろが……」
679: 2014/01/14(火) 11:48:48.41 ID:BZnBQ4oPP
王子「…… ……」
剣士「…… ……」
王子「すぐに……向こうに戻るのか?」
剣士「否……俺は、もう戻らない」
王子「え!?」
剣士「……癒し手も戻って来る。青年も」
剣士「青年は大丈夫……だろうが」
王子「……そ、うか。ま……『元黒い髪の勇者』も居る、からな」
王子「暫く、ここに居るのか」
剣士「否。それも……出来ない」
王子「……別に、家に居ても良いぞ?」
剣士「『黒い物』だ」
王子「え?」
剣士「……俺に引きずり出されないと言い切れるか?」
剣士「俺は……『欠片』だ」
王子「!」
剣士「ただでさえ、魔物は強くなっているんだろう」
王子「しかし……お前、次の勇者に……ついていくんじゃ無いのか」
剣士「尚更だ。この国にも……魔王の城にも居られないだろう」
王子「…… ……」
剣士「たかだか、16年程だ」
剣士「……また、転々としていれば良い」
王子「剣士……」
剣士「……お前は、あの時『知る事を拒否した』」
王子「…… ……」
剣士「本当に、顔を見に寄っただけだ」
王子「……うん。嬉しいよ」
剣士「元気そうで……何よりだ。ただ……」
王子「……『黒い物』?」
剣士「ああ……王が可笑しくなった、元凶かもな」
王子「地下……しかし……」
剣士「俺にはさっぱりわからんが」
王子「……気をつけろ、か?」
剣士「それ以上、言いようが無い」
剣士「…… ……」
王子「すぐに……向こうに戻るのか?」
剣士「否……俺は、もう戻らない」
王子「え!?」
剣士「……癒し手も戻って来る。青年も」
剣士「青年は大丈夫……だろうが」
王子「……そ、うか。ま……『元黒い髪の勇者』も居る、からな」
王子「暫く、ここに居るのか」
剣士「否。それも……出来ない」
王子「……別に、家に居ても良いぞ?」
剣士「『黒い物』だ」
王子「え?」
剣士「……俺に引きずり出されないと言い切れるか?」
剣士「俺は……『欠片』だ」
王子「!」
剣士「ただでさえ、魔物は強くなっているんだろう」
王子「しかし……お前、次の勇者に……ついていくんじゃ無いのか」
剣士「尚更だ。この国にも……魔王の城にも居られないだろう」
王子「…… ……」
剣士「たかだか、16年程だ」
剣士「……また、転々としていれば良い」
王子「剣士……」
剣士「……お前は、あの時『知る事を拒否した』」
王子「…… ……」
剣士「本当に、顔を見に寄っただけだ」
王子「……うん。嬉しいよ」
剣士「元気そうで……何よりだ。ただ……」
王子「……『黒い物』?」
剣士「ああ……王が可笑しくなった、元凶かもな」
王子「地下……しかし……」
剣士「俺にはさっぱりわからんが」
王子「……気をつけろ、か?」
剣士「それ以上、言いようが無い」
682: 2014/01/14(火) 11:59:55.79 ID:BZnBQ4oPP
王子「……次は何処へ行くつもりなんだ」
剣士「鍛冶師の村へ」
王子「え……」
剣士「あそこは、魔物の数も多い……もう、インキュバスの魔石の」
剣士「影響も無いとは思うが……」
王子「……そうか。仕事か」
剣士「ああ。傭兵の仕事は、あの辺が一番多いはずだ」
王子「…… ……」
剣士「王子」
王子「ん?」
剣士「……否。元気で」
王子「え、おい……もう……ッ」
シュゥウン……ッ
王子「!」
王子「…… ……」
王子「地下……か」
王子(……地下牢は封鎖したと聞いてる……まあ、環境の良い場所じゃ無いのは)
王子(解ってるが……衛生師に聞いてみる、かな……今度)ハッ
王子(いかんいかん……俺は、もう……引退したんだ)
王子(……何も、知らせないと判断したのは、俺だ)
王子(弟王子……お父様、お母様……祈り女)
王子(……俺、間違えたのかな?)
王子(今……何より大変なのは……衛生師だよな)
王子(……あいつの愚痴、聞いてやるぐらいで……丁度良いんだよな)
……
………
…………
剣士「鍛冶師の村へ」
王子「え……」
剣士「あそこは、魔物の数も多い……もう、インキュバスの魔石の」
剣士「影響も無いとは思うが……」
王子「……そうか。仕事か」
剣士「ああ。傭兵の仕事は、あの辺が一番多いはずだ」
王子「…… ……」
剣士「王子」
王子「ん?」
剣士「……否。元気で」
王子「え、おい……もう……ッ」
シュゥウン……ッ
王子「!」
王子「…… ……」
王子「地下……か」
王子(……地下牢は封鎖したと聞いてる……まあ、環境の良い場所じゃ無いのは)
王子(解ってるが……衛生師に聞いてみる、かな……今度)ハッ
王子(いかんいかん……俺は、もう……引退したんだ)
王子(……何も、知らせないと判断したのは、俺だ)
王子(弟王子……お父様、お母様……祈り女)
王子(……俺、間違えたのかな?)
王子(今……何より大変なのは……衛生師だよな)
王子(……あいつの愚痴、聞いてやるぐらいで……丁度良いんだよな)
……
………
…………
683: 2014/01/14(火) 12:08:20.26 ID:BZnBQ4oPP
側近「……暑い、な」
癒し手「暑い……ですね」
青年(スヤスヤ)
側近「……よく寝れるもんだ」
癒し手「子供ですから……」
側近「しかし、参ったな……」
癒し手「……結果オーライ、じゃ無いですか?」
側近「……『南』には違い無いが」
タタタ……
側近「ん?」
チビ「お兄ちゃん達!さっきの船に乗って来た人!?」
癒し手「え? ……ああ、はい。そうです」
チビ「良かった! ……あのさ、あの船邪魔なんだよ!」
側近「邪魔?」
チビ「うちの船が出せネェの! 動かすように行ってくれよ!」
癒し手「え……あ、ちょっと待って下さい、あれは、別に……」
チビ「はーやーく!」
男「こら、チビ! ……悪いな、あれ、定期船だろ?」
側近「あ、ああ……」
チビ「え!? この島に定期船なんて……」
癒し手「鍛冶師の村に向かう筈だったんですが、海が凄く荒れてて……」
癒し手「それで、大幅に遅れてしまったので、此処で給油を済ます、と」
男「ああ……だよな」
側近「?」
チビ「……なんだ、お兄ちゃん達の船じゃないのか……」
側近「あんな大きな船、個人では持てないだろう」
男「……ま、普通じゃ要らない大きさだわな」
男「ほら、チビ! 謝っとけ……んでさっさと手伝いに戻れ!」
チビ「ん、ん……ごめんなさい」
癒し手「いいえ……大丈夫ですよ」クス
タタタ……
癒し手「暑い……ですね」
青年(スヤスヤ)
側近「……よく寝れるもんだ」
癒し手「子供ですから……」
側近「しかし、参ったな……」
癒し手「……結果オーライ、じゃ無いですか?」
側近「……『南』には違い無いが」
タタタ……
側近「ん?」
チビ「お兄ちゃん達!さっきの船に乗って来た人!?」
癒し手「え? ……ああ、はい。そうです」
チビ「良かった! ……あのさ、あの船邪魔なんだよ!」
側近「邪魔?」
チビ「うちの船が出せネェの! 動かすように行ってくれよ!」
癒し手「え……あ、ちょっと待って下さい、あれは、別に……」
チビ「はーやーく!」
男「こら、チビ! ……悪いな、あれ、定期船だろ?」
側近「あ、ああ……」
チビ「え!? この島に定期船なんて……」
癒し手「鍛冶師の村に向かう筈だったんですが、海が凄く荒れてて……」
癒し手「それで、大幅に遅れてしまったので、此処で給油を済ます、と」
男「ああ……だよな」
側近「?」
チビ「……なんだ、お兄ちゃん達の船じゃないのか……」
側近「あんな大きな船、個人では持てないだろう」
男「……ま、普通じゃ要らない大きさだわな」
男「ほら、チビ! 謝っとけ……んでさっさと手伝いに戻れ!」
チビ「ん、ん……ごめんなさい」
癒し手「いいえ……大丈夫ですよ」クス
タタタ……
684: 2014/01/14(火) 12:14:04.28 ID:BZnBQ4oPP
男「……ん?」ジロ
癒し手「え?」
男「……ねえちゃん、どこかで……」
癒し手「え、え?」
爺「こーらー! お前はこの間連れ合いを亡くしたと思ったら」
爺「もうナンパか!」
男「ッ ひ、人聞きの悪い事言うな、ジジィ!」
側近「……あの」
爺「すみませんな、お嬢さ…… ……」ジィ
癒し手「え、え……え?」
爺「おおおおおおおおおおお!」
男「な、何だよ!」
爺「エルフじゃ!」
側近「!」
癒し手「!?」
爺「あの、エルフの像じゃ! ……あれにそっくりなんだ、この娘さん!」
男「あ……!」
側近「エルフの、像……?」
男「ああ……どこかで会ったことあると思えば……!」
癒し手「……あ、あの……」
男「あ、ああ悪い悪い……いや、この糞爺は骨董品って名のガラクタ集めが趣味でな」
爺「お宝と言え!」
男「……あっち。村の中心にある、花畑のど真ん中に」
男「エルフの姫様だとか言う像と」
癒し手「! み、見せて貰ってもいいですか!?」
爺「あ、ああ……勿論、だ……いや、しかしそっくりだなぁ……」
側近「……妻に、か?」
男「ああ。しかしまぁ、お前さん羨ましいねぇ。こんな別嬪さん嫁にして」
爺「……お前」
男「あ、いや! そりゃ船長も綺麗だったぜ!?」
側近「!」
癒し手「!」
癒し手「え?」
男「……ねえちゃん、どこかで……」
癒し手「え、え?」
爺「こーらー! お前はこの間連れ合いを亡くしたと思ったら」
爺「もうナンパか!」
男「ッ ひ、人聞きの悪い事言うな、ジジィ!」
側近「……あの」
爺「すみませんな、お嬢さ…… ……」ジィ
癒し手「え、え……え?」
爺「おおおおおおおおおおお!」
男「な、何だよ!」
爺「エルフじゃ!」
側近「!」
癒し手「!?」
爺「あの、エルフの像じゃ! ……あれにそっくりなんだ、この娘さん!」
男「あ……!」
側近「エルフの、像……?」
男「ああ……どこかで会ったことあると思えば……!」
癒し手「……あ、あの……」
男「あ、ああ悪い悪い……いや、この糞爺は骨董品って名のガラクタ集めが趣味でな」
爺「お宝と言え!」
男「……あっち。村の中心にある、花畑のど真ん中に」
男「エルフの姫様だとか言う像と」
癒し手「! み、見せて貰ってもいいですか!?」
爺「あ、ああ……勿論、だ……いや、しかしそっくりだなぁ……」
側近「……妻に、か?」
男「ああ。しかしまぁ、お前さん羨ましいねぇ。こんな別嬪さん嫁にして」
爺「……お前」
男「あ、いや! そりゃ船長も綺麗だったぜ!?」
側近「!」
癒し手「!」
685: 2014/01/14(火) 12:24:43.37 ID:BZnBQ4oPP
爺「……つか、お前早く戻ってやれ。チビ一人にすんな」
男「おっと……ああ、兄ちゃん達、悪かったな」
癒し手「あ……いえ……」
爺「儂で良ければ案内するが……」
側近「あ……ああ……」
青年「……ん、ん」
癒し手「あ……起きましたね」
爺「おお……これまた、お嬢さんそっくりな子だな」
爺「……綺麗な蒼い瞳をしている」
青年「あれ……いつのまに、ふねおりたの」
側近「お前が寝る間にだよ」
青年「……んん」
癒し手「青年、歩ける? ……お父さん、重たいですよ」
青年「うん……」
爺「五歳ぐらい、ですかな」
癒し手「……ええ、そうですね」
爺「僕、お名前は?」
青年「せいねん……」
爺「はは、まだ寝ぼけているな……何、それほど遠くはありません」
爺「こっちです」
側近「ああ……ほら、行くぞ」
青年「……んー」ゴシゴシ
爺「……あの像は」
癒し手「え?」
爺「何だったかの、何かの……市でな」
爺「偶然、手に入れたんですわ……まあ、古い物なんですが」
スタスタ
男「おっと……ああ、兄ちゃん達、悪かったな」
癒し手「あ……いえ……」
爺「儂で良ければ案内するが……」
側近「あ……ああ……」
青年「……ん、ん」
癒し手「あ……起きましたね」
爺「おお……これまた、お嬢さんそっくりな子だな」
爺「……綺麗な蒼い瞳をしている」
青年「あれ……いつのまに、ふねおりたの」
側近「お前が寝る間にだよ」
青年「……んん」
癒し手「青年、歩ける? ……お父さん、重たいですよ」
青年「うん……」
爺「五歳ぐらい、ですかな」
癒し手「……ええ、そうですね」
爺「僕、お名前は?」
青年「せいねん……」
爺「はは、まだ寝ぼけているな……何、それほど遠くはありません」
爺「こっちです」
側近「ああ……ほら、行くぞ」
青年「……んー」ゴシゴシ
爺「……あの像は」
癒し手「え?」
爺「何だったかの、何かの……市でな」
爺「偶然、手に入れたんですわ……まあ、古い物なんですが」
スタスタ
687: 2014/01/14(火) 12:30:40.19 ID:BZnBQ4oPP
爺「何でも、どこかの国の王様だか王子様だかが、エルフのお姫様に恋をして……」
チビ「じいちゃん!」
側近「うわ!?」
チビ「もう、またそんな下らない話を……」
癒し手「あ、さっきの……」
チビ「……父さんに聞いたから急いで戻って来たんだ」
チビ「じいちゃん、悪い人じゃ無いんだけど話長いんだよ」
爺「……なんじゃい。小さい時は、目きらきらさせながら聞いてくれたのにのぅ」
チビ「俺も一緒に行って良い?」
癒し手「え、ええ……でも、お手伝いは良いんですか?」
チビ「定期船が出ないとどうしようも無いんだよ」
側近「……あれは、お前の船、か?」
チビ「……正確には母さんの、だね。でも……」
爺「…… ……」
癒し手(! そうだ、さっき……『連れ合いを亡くして』と……!)
チビ「母さん、人魚に食われて氏んじゃったんだって」
側近「海賊船……か」
チビ「あ、で、でも……!悪い事はしなかったんだぜ!?」
爺「……さっきのは儂の息子でしてな。もう……船長が居ないんじゃ……」
爺「廃業するのかと思ったら……」ハァ
チビ「……俺が、居るだろ。廃業しちまったら、海賊達どうすんだよ」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
青年「おとうさん、はいぎょうってなに?」
側近「ん? ……お仕事を辞めること、かな」
青年「ふぅん……?」
チビ「うわ! ……綺麗な子だな」
チビ「お姉ちゃんそっくりだね」
癒し手「そう、ですか?」
チビ「じいちゃん!」
側近「うわ!?」
チビ「もう、またそんな下らない話を……」
癒し手「あ、さっきの……」
チビ「……父さんに聞いたから急いで戻って来たんだ」
チビ「じいちゃん、悪い人じゃ無いんだけど話長いんだよ」
爺「……なんじゃい。小さい時は、目きらきらさせながら聞いてくれたのにのぅ」
チビ「俺も一緒に行って良い?」
癒し手「え、ええ……でも、お手伝いは良いんですか?」
チビ「定期船が出ないとどうしようも無いんだよ」
側近「……あれは、お前の船、か?」
チビ「……正確には母さんの、だね。でも……」
爺「…… ……」
癒し手(! そうだ、さっき……『連れ合いを亡くして』と……!)
チビ「母さん、人魚に食われて氏んじゃったんだって」
側近「海賊船……か」
チビ「あ、で、でも……!悪い事はしなかったんだぜ!?」
爺「……さっきのは儂の息子でしてな。もう……船長が居ないんじゃ……」
爺「廃業するのかと思ったら……」ハァ
チビ「……俺が、居るだろ。廃業しちまったら、海賊達どうすんだよ」
癒し手「…… ……」
側近「…… ……」
青年「おとうさん、はいぎょうってなに?」
側近「ん? ……お仕事を辞めること、かな」
青年「ふぅん……?」
チビ「うわ! ……綺麗な子だな」
チビ「お姉ちゃんそっくりだね」
癒し手「そう、ですか?」
689: 2014/01/14(火) 12:38:39.65 ID:BZnBQ4oPP
チビ「……んー。確かに似てるけど」
癒し手「え?」
チビ「……でも、ちょっと違うね」
爺「そりゃ、このお嬢さんや……お嬢さんのお母さんがモデルって訳もないだろうが」
癒し手「…… ……」
側近「その像にはモデルが居るのか」
爺「どうだろうかの。まあさっきの話も……聞いただけ」
爺「売る為に誰かがでっち上げた、御伽噺なんだろうけどな」
チビ「ほら、あれだよ!」
癒し手「……!」
側近「確かに……似てる」
青年「おかあさんだー」
癒し手「……お母さんじゃ無い、ですよ。青年」
チビ「君、青年って言うの?」
青年「うん!」
爺「まあ、所詮彫刻だが……確かに、人間離れした美しさだからなぁ」
爺「モデルは居たのかもしれないが……憧れ、が詰め込まれているんだろうな」
側近「…… ……姫様、か」
チビ「うん、お姫様みたいだよね。童話のお姫様ってこんなんなのかな」
側近「あ、ああ……そうかもな」
癒し手「『エルフの姫』……です、か」ポロポロ
チビ「お、おねえちゃん!?」
爺「……人はな。本当に美しい物をみれば、感動して涙の一つも出るもんだ」
チビ「何どや顔してんだよ……じいちゃんが作ったんじゃないだろ」
側近「……作者は、不明……なのか」
癒し手「え?」
チビ「……でも、ちょっと違うね」
爺「そりゃ、このお嬢さんや……お嬢さんのお母さんがモデルって訳もないだろうが」
癒し手「…… ……」
側近「その像にはモデルが居るのか」
爺「どうだろうかの。まあさっきの話も……聞いただけ」
爺「売る為に誰かがでっち上げた、御伽噺なんだろうけどな」
チビ「ほら、あれだよ!」
癒し手「……!」
側近「確かに……似てる」
青年「おかあさんだー」
癒し手「……お母さんじゃ無い、ですよ。青年」
チビ「君、青年って言うの?」
青年「うん!」
爺「まあ、所詮彫刻だが……確かに、人間離れした美しさだからなぁ」
爺「モデルは居たのかもしれないが……憧れ、が詰め込まれているんだろうな」
側近「…… ……姫様、か」
チビ「うん、お姫様みたいだよね。童話のお姫様ってこんなんなのかな」
側近「あ、ああ……そうかもな」
癒し手「『エルフの姫』……です、か」ポロポロ
チビ「お、おねえちゃん!?」
爺「……人はな。本当に美しい物をみれば、感動して涙の一つも出るもんだ」
チビ「何どや顔してんだよ……じいちゃんが作ったんじゃないだろ」
側近「……作者は、不明……なのか」
692: 2014/01/14(火) 13:45:55.11 ID:BZnBQ4oPP
爺「そうだな……有名な人なのかどうかも」
側近「……そうか」
癒し手「彫刻の彫刻たるや、なんて……素人には解りません。けど」ポロ……グイ
青年「おかあさん……?」
癒し手「ああ……ごめんね、大丈夫ですよ」
癒し手「……でも。何でしょう。嬉しいです……ッ」
爺「うんうん」
チビ「じいちゃん……だから」
青年「おひめさま?」
側近「ん? ……ああ。姫様……だな」
ポーゥ…… ……
チビ「あ……船!」
スタスタ
男「おい、チビ!」
チビ「あ、父さん……」
側近「もう出れるのか?」
男「ああ、あんた達あれに乗って来たんだったな……いや、給油はまだだ」
男「取りあえず場所ずらしてくれるってよ」
チビ「あ……そっか! じゃあ、お姉ちゃん、お兄ちゃん……さようなら」
青年「おにいちゃん、どこかいくの?」
チビ「ああ! 俺は、あの船の『船長』になるんだ!」
癒し手「え!?」
男「……こいつもずっと、あの船には乗ってたんだ」
男「まあ……暫くはここでこの爺と暮らしてたんだけどな」
爺「本当に行くのか、チビ」
チビ「……うん。海賊達放って置けないだろ」
男「なぁにを偉そうに……お前が居なくてもどないにでもならァ」
癒し手「貴方は、行かれない……のですか」
男「……俺は」
側近「…… ……」
側近「……そうか」
癒し手「彫刻の彫刻たるや、なんて……素人には解りません。けど」ポロ……グイ
青年「おかあさん……?」
癒し手「ああ……ごめんね、大丈夫ですよ」
癒し手「……でも。何でしょう。嬉しいです……ッ」
爺「うんうん」
チビ「じいちゃん……だから」
青年「おひめさま?」
側近「ん? ……ああ。姫様……だな」
ポーゥ…… ……
チビ「あ……船!」
スタスタ
男「おい、チビ!」
チビ「あ、父さん……」
側近「もう出れるのか?」
男「ああ、あんた達あれに乗って来たんだったな……いや、給油はまだだ」
男「取りあえず場所ずらしてくれるってよ」
チビ「あ……そっか! じゃあ、お姉ちゃん、お兄ちゃん……さようなら」
青年「おにいちゃん、どこかいくの?」
チビ「ああ! 俺は、あの船の『船長』になるんだ!」
癒し手「え!?」
男「……こいつもずっと、あの船には乗ってたんだ」
男「まあ……暫くはここでこの爺と暮らしてたんだけどな」
爺「本当に行くのか、チビ」
チビ「……うん。海賊達放って置けないだろ」
男「なぁにを偉そうに……お前が居なくてもどないにでもならァ」
癒し手「貴方は、行かれない……のですか」
男「……俺は」
側近「…… ……」
693: 2014/01/14(火) 14:14:56.63 ID:BZnBQ4oPP
青年「せんちょー! かっこういいね!」
チビ「お? ……ありがとな」ナデ
爺「本当に良いのか、男……」
男「……こいつが自分で決めた事だ」
青年「おとうさん、おかあさん! ぼくもふねにのりたい!」
癒し手「……ええ。乗って来た船の準備が出来たら……」
青年「せんちょーのふねにのりたいの!」
側近「青年、そんな無茶は……」
青年「ねえ、せんちょー! いいでしょ!?」
チビ「え!? えっと……?」チラ
男「……アンタら、何処まで行くんだ?」
男「ああ……鍛冶師の村って言ってたか」
側近「いや、しかし……」
青年「ぼくとおかあさんとおとうさんは、さいはてのちにいくんだよ!」
癒し手「青年!」
爺「最果て……?」
側近「……世界中を旅して回ろうか、と話していたんだ」
側近「だから……」
チビ「……良いぜ、乗りなよ」
男「チビ!?」
チビ「母さんだって、最初は見様見真似だったって言ってた」
チビ「おじいちゃんは何も教えてくれなかったって」
チビ「でも……もう、俺は船長になったんだ!」
癒し手「あ、あの……」
チビ「た、ただし、金は貰うぜ!?」
爺「…… ……」ハァ
爺「血は争えんなぁ」
チビ「お? ……ありがとな」ナデ
爺「本当に良いのか、男……」
男「……こいつが自分で決めた事だ」
青年「おとうさん、おかあさん! ぼくもふねにのりたい!」
癒し手「……ええ。乗って来た船の準備が出来たら……」
青年「せんちょーのふねにのりたいの!」
側近「青年、そんな無茶は……」
青年「ねえ、せんちょー! いいでしょ!?」
チビ「え!? えっと……?」チラ
男「……アンタら、何処まで行くんだ?」
男「ああ……鍛冶師の村って言ってたか」
側近「いや、しかし……」
青年「ぼくとおかあさんとおとうさんは、さいはてのちにいくんだよ!」
癒し手「青年!」
爺「最果て……?」
側近「……世界中を旅して回ろうか、と話していたんだ」
側近「だから……」
チビ「……良いぜ、乗りなよ」
男「チビ!?」
チビ「母さんだって、最初は見様見真似だったって言ってた」
チビ「おじいちゃんは何も教えてくれなかったって」
チビ「でも……もう、俺は船長になったんだ!」
癒し手「あ、あの……」
チビ「た、ただし、金は貰うぜ!?」
爺「…… ……」ハァ
爺「血は争えんなぁ」
694: 2014/01/14(火) 14:21:09.60 ID:BZnBQ4oPP
チビ「おいで、青年! 船の中、見せてやるよ!」
青年「うん!」
タタタ……
癒し手「あ、ちょ、ちょっと!待って下さい!?」
タタタ……
側近「……なんか……その。すまない」
側近「すぐに連れ戻すから」ハァ
男「……アンタらが悪い訳じゃネェよ」ハァ
男「良いんじゃネェか? ……チビが。『船長』が良いって言うんだし」
爺「しかし、お前……」
男「……今は……海の魔物も強くなってる」
男「最果てまで乗せてってやるって船なんか、どうせ無いさ」
男「……俺達の時代だって、船長の……嫁の船ぐらいのもんだったさ」
側近「…… ……」
男「金を払って貰えるんだったらな。あいつも文句はネェだろう」
男「……初航海から客がいるなんて、あいつも幸せなこった」
クルッ ……スタスタスタ
側近「あ、おい……」
爺「……すまんの」
側近「じいさん、アンタこそ謝る事じゃ……」
爺「さっきも言った通り、な。嫁は……あいつの嫁、船長は」
爺「人魚に食われてしまってな……」
側近「!」
側近(人魚……あれか。魔詩で……人を迷わす……!)
側近(……皮肉だな。船長の親父も、たしか……)
青年「うん!」
タタタ……
癒し手「あ、ちょ、ちょっと!待って下さい!?」
タタタ……
側近「……なんか……その。すまない」
側近「すぐに連れ戻すから」ハァ
男「……アンタらが悪い訳じゃネェよ」ハァ
男「良いんじゃネェか? ……チビが。『船長』が良いって言うんだし」
爺「しかし、お前……」
男「……今は……海の魔物も強くなってる」
男「最果てまで乗せてってやるって船なんか、どうせ無いさ」
男「……俺達の時代だって、船長の……嫁の船ぐらいのもんだったさ」
側近「…… ……」
男「金を払って貰えるんだったらな。あいつも文句はネェだろう」
男「……初航海から客がいるなんて、あいつも幸せなこった」
クルッ ……スタスタスタ
側近「あ、おい……」
爺「……すまんの」
側近「じいさん、アンタこそ謝る事じゃ……」
爺「さっきも言った通り、な。嫁は……あいつの嫁、船長は」
爺「人魚に食われてしまってな……」
側近「!」
側近(人魚……あれか。魔詩で……人を迷わす……!)
側近(……皮肉だな。船長の親父も、たしか……)
695: 2014/01/14(火) 14:27:52.97 ID:BZnBQ4oPP
側近「……孫、だろう。あの……チビ、と言うのは」
爺「止めてもきかんだろうさ……それに、あいつは」
爺「『世界』を知りたいとも言っていた」
側近「…… ……」
爺「船に乗ってるだけでは知り得ない世界を教えてくれ」
爺「……陸、を教えて欲しいと」
爺「だがな……陸だけがまた、世界でも無い」
爺「……海をかけ、この目で見る物。それが……『世界』だろう?」
側近「…… ……」
爺「アンタ、傭兵か何かか」
側近「……否」
爺「しかし、腕に覚えはあるんだろう?」
爺「……海での敵は手強い。孫を……頼む。航海の間だけでも」
側近「それは……勿論だ」
爺「あとな、奥さんにありがとうと伝えて置いてくれ」
側近「え?」
爺「……あのお嬢ちゃんも、人間離れした美しさだな」
爺「青年だったか? ……あの、蒼い目の子供も」
側近「…… ……」
爺「氏ぬ前に……本物のエルフに会えるとは思わなかった」
側近「!」
爺「ああ、いや。エルフの様に美しい生き物に、かな」
爺「夢でも構わん……嬉しかったよ」
側近「……解った」
青年「おとーさーん! はーやーくー!」
チビ「おいてくぞー!」
側近「……す、すぐ行く!」
爺「じゃあな、旅人さん……アンタの旅が良い物であることを願っておこう」
スタスタ
爺「止めてもきかんだろうさ……それに、あいつは」
爺「『世界』を知りたいとも言っていた」
側近「…… ……」
爺「船に乗ってるだけでは知り得ない世界を教えてくれ」
爺「……陸、を教えて欲しいと」
爺「だがな……陸だけがまた、世界でも無い」
爺「……海をかけ、この目で見る物。それが……『世界』だろう?」
側近「…… ……」
爺「アンタ、傭兵か何かか」
側近「……否」
爺「しかし、腕に覚えはあるんだろう?」
爺「……海での敵は手強い。孫を……頼む。航海の間だけでも」
側近「それは……勿論だ」
爺「あとな、奥さんにありがとうと伝えて置いてくれ」
側近「え?」
爺「……あのお嬢ちゃんも、人間離れした美しさだな」
爺「青年だったか? ……あの、蒼い目の子供も」
側近「…… ……」
爺「氏ぬ前に……本物のエルフに会えるとは思わなかった」
側近「!」
爺「ああ、いや。エルフの様に美しい生き物に、かな」
爺「夢でも構わん……嬉しかったよ」
側近「……解った」
青年「おとーさーん! はーやーくー!」
チビ「おいてくぞー!」
側近「……す、すぐ行く!」
爺「じゃあな、旅人さん……アンタの旅が良い物であることを願っておこう」
スタスタ
696: 2014/01/14(火) 14:34:18.93 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「青年! こら! いい加減にしなさい!」
青年「わーい! せんちょーのふねだー!」
側近「……青年」ヒョイッ
青年「……わッ」ギュウ
側近「全く、お前は……」
癒し手「本当に、良いんですか……チビ君」
チビ「……俺が船長だ、って言ったろ?」
チビ「最果て、だな……真っ直ぐで良いのか」
側近「……どうする?」
癒し手「それ……しかないでしょうね」
側近「だな……どれぐらいかかる?」
チビ「えっと…… ……どれぐらい、かかる?」
海賊「そっすねぇ……まあ、一、二週間……ですかね」
海賊「北の街の海域は、全速力でぶっとましますよ、チビさん」
チビ「……人魚か」
側近「……魔物が出たらすぐに言え。俺達が何とかしよう」
癒し手「はい」
チビ「え……お兄ちゃんはともかく、お姉ちゃん……!?」
癒し手「……私は、優れた水の加護を持っていますから」
癒し手「人魚の魔詩は平気です……が、青年が居ますから」
癒し手「……まあ、回復はお任せ下さい」
青年「ぼくもたたかうー」
癒し手「青年は駄目……何かあったら、お母さん泣いちゃいます」
青年「……それは、いや」
癒し手「うん……ありがとう」ナデ
チビ「…… ……良いな」
癒し手「え?」
チビ「母さん……」
側近「…… ……」
癒し手「あ……ッ」
チビ「……だ、大丈夫だよ! ……俺、男だし!」
青年「わーい! せんちょーのふねだー!」
側近「……青年」ヒョイッ
青年「……わッ」ギュウ
側近「全く、お前は……」
癒し手「本当に、良いんですか……チビ君」
チビ「……俺が船長だ、って言ったろ?」
チビ「最果て、だな……真っ直ぐで良いのか」
側近「……どうする?」
癒し手「それ……しかないでしょうね」
側近「だな……どれぐらいかかる?」
チビ「えっと…… ……どれぐらい、かかる?」
海賊「そっすねぇ……まあ、一、二週間……ですかね」
海賊「北の街の海域は、全速力でぶっとましますよ、チビさん」
チビ「……人魚か」
側近「……魔物が出たらすぐに言え。俺達が何とかしよう」
癒し手「はい」
チビ「え……お兄ちゃんはともかく、お姉ちゃん……!?」
癒し手「……私は、優れた水の加護を持っていますから」
癒し手「人魚の魔詩は平気です……が、青年が居ますから」
癒し手「……まあ、回復はお任せ下さい」
青年「ぼくもたたかうー」
癒し手「青年は駄目……何かあったら、お母さん泣いちゃいます」
青年「……それは、いや」
癒し手「うん……ありがとう」ナデ
チビ「…… ……良いな」
癒し手「え?」
チビ「母さん……」
側近「…… ……」
癒し手「あ……ッ」
チビ「……だ、大丈夫だよ! ……俺、男だし!」
697: 2014/01/14(火) 14:42:08.49 ID:BZnBQ4oPP
チビ「俺……母さん、氏んだって聞いて、涙……出なかったんだ。最初」
側近「…… ……」
チビ「どうやって食われたのか、父さんに聞いた。途中まで、だけど」
チビ「……母さん、耳栓してたけど意味が無かったって」
チビ「剣を離したと思ったら、自分から人魚に抱きついていったんだって」
癒し手「……人魚は、その人が心から望む幻影を見せるんです」
チビ「…… ……」
癒し手「本当に会いたい人の姿……とか」
チビ「……うん。父さんは、ここから先は聞くか聞かないか自分で選べっていった」
チビ「今すぐじゃ無くても良いって」
側近「…… ……」
チビ「俺は、何日かして……父さんに聞いたんだ」
チビ「……教えてくれって。母さんは……」ポロ
癒し手「チビ君……」
チビ「『チビ!会いたかった!』 ……って」ポロポロポロ
癒し手「……ッ」ギュッ
チビ「……ッ」ゴシゴシ
チビ「だから、俺……船長になるって決めたんだ!」
チビ「母さんは、冷たくなんかない!ずっと、何時も……」
チビ「俺や、海賊達の事を考えて、最善の策を取ってたんだ」
側近「…… ……」ギュ
青年「おと、うさん、いたいよ」
側近「……すまん」
チビ「最後……喧嘩して、船降りて……その侭だった。会えなかった」
チビ「だから……母さんの代わりに、ちゃんとこの船守って行くんだ!」
癒し手「……うん。頑張って。君ならきっと、立派な船長になれます」
青年「おにーちゃん、よかったね。おかあさんはね、うそはつかないんだよ!」
青年「おかあさんはね、えるふだからね!」ナデナデ
チビ「……え?」
癒し手「……青年」
側近「…… ……」
チビ「ああ、そうだな。さっきのエルフのお姫様にそっくりだもんな」
チビ「青年の、お母さん」
側近「…… ……」
チビ「どうやって食われたのか、父さんに聞いた。途中まで、だけど」
チビ「……母さん、耳栓してたけど意味が無かったって」
チビ「剣を離したと思ったら、自分から人魚に抱きついていったんだって」
癒し手「……人魚は、その人が心から望む幻影を見せるんです」
チビ「…… ……」
癒し手「本当に会いたい人の姿……とか」
チビ「……うん。父さんは、ここから先は聞くか聞かないか自分で選べっていった」
チビ「今すぐじゃ無くても良いって」
側近「…… ……」
チビ「俺は、何日かして……父さんに聞いたんだ」
チビ「……教えてくれって。母さんは……」ポロ
癒し手「チビ君……」
チビ「『チビ!会いたかった!』 ……って」ポロポロポロ
癒し手「……ッ」ギュッ
チビ「……ッ」ゴシゴシ
チビ「だから、俺……船長になるって決めたんだ!」
チビ「母さんは、冷たくなんかない!ずっと、何時も……」
チビ「俺や、海賊達の事を考えて、最善の策を取ってたんだ」
側近「…… ……」ギュ
青年「おと、うさん、いたいよ」
側近「……すまん」
チビ「最後……喧嘩して、船降りて……その侭だった。会えなかった」
チビ「だから……母さんの代わりに、ちゃんとこの船守って行くんだ!」
癒し手「……うん。頑張って。君ならきっと、立派な船長になれます」
青年「おにーちゃん、よかったね。おかあさんはね、うそはつかないんだよ!」
青年「おかあさんはね、えるふだからね!」ナデナデ
チビ「……え?」
癒し手「……青年」
側近「…… ……」
チビ「ああ、そうだな。さっきのエルフのお姫様にそっくりだもんな」
チビ「青年の、お母さん」
698: 2014/01/14(火) 14:47:15.14 ID:BZnBQ4oPP
チビ「ありがとう、お姉ちゃん」グイ、ゴシゴシ
チビ「……良し、じゃあ……出発だ!」
チビ「あ……ちゃんと、料金は貰うぜ?」
癒し手「勿論です」クス
海賊「はい、じゃあ……まず最初に何やるんでしたっけね、チビさん」
チビ「え、えっと……」
青年「がんばれ、おにいちゃん!」
チビ「そ、そうだ! 俺はもう、船長だ!」
船長「わ……解ったら、返事は!?」
海賊「あいあいさぁ」クスクス
海賊「……んじゃ、行きますか。どうぞ、お客さんはお好きに……あ、船室使います?」
癒し手「良いんですか?」
海賊「金払ってくれるんでしょ? ……勿論っすよ」
船長「んじゃ、案内……」
海賊「船長はこっち!」グイッ
ズルズルズル
船長「ちょ、自分で歩けるって!」
海賊「野郎共! 出港だー!」
アイアイサー!
ソレ、オレノセリフ!
ハイハイ、ツギカライツデモイエマスヨー
癒し手「…… ……」クスクス
側近「人魚……か、厄介だな」
癒し手「……耳栓をしても届いてしまう、のは」
癒し手「貴方はともかく……否、側近さんが可笑しくなったら」
癒し手「それこそ一大事、所じゃないですね」
チビ「……良し、じゃあ……出発だ!」
チビ「あ……ちゃんと、料金は貰うぜ?」
癒し手「勿論です」クス
海賊「はい、じゃあ……まず最初に何やるんでしたっけね、チビさん」
チビ「え、えっと……」
青年「がんばれ、おにいちゃん!」
チビ「そ、そうだ! 俺はもう、船長だ!」
船長「わ……解ったら、返事は!?」
海賊「あいあいさぁ」クスクス
海賊「……んじゃ、行きますか。どうぞ、お客さんはお好きに……あ、船室使います?」
癒し手「良いんですか?」
海賊「金払ってくれるんでしょ? ……勿論っすよ」
船長「んじゃ、案内……」
海賊「船長はこっち!」グイッ
ズルズルズル
船長「ちょ、自分で歩けるって!」
海賊「野郎共! 出港だー!」
アイアイサー!
ソレ、オレノセリフ!
ハイハイ、ツギカライツデモイエマスヨー
癒し手「…… ……」クスクス
側近「人魚……か、厄介だな」
癒し手「……耳栓をしても届いてしまう、のは」
癒し手「貴方はともかく……否、側近さんが可笑しくなったら」
癒し手「それこそ一大事、所じゃないですね」
699: 2014/01/14(火) 14:56:42.47 ID:BZnBQ4oPP
側近「……人よりか、ましであると思いたい……が」
癒し手「私達は船室に篭もっている方が安全かもしれません」
癒し手「……青年も、居るし」
青年「ふねだー! ふねだー!」
側近「落ち着け……船室はあっち、だったか」
癒し手「まさか……また船長の船に乗る事になる、とは」
側近「……何の因果……だかな」
癒し手「……剣士さん、には、伝えるべきでしょう……か」
側近「…… ……」
青年「ねえ、おとうさん」
側近「ん?」
青年「さいはてにいけば、ゆうしゃがいるんでしょう?」
癒し手「……まだ、お母さんのお腹の中ですよ」
青年「ゆうしゃのおかあさんの?」
癒し手「そう……産まれてきたら、ちゃんと可愛がってあげてね」
青年「うん! もちろん!」
側近「……少しずつ、スピードが遅くなってて助かった、な」
癒し手「二週間程度では……ばれないと思いますが」
青年「たのしみだなぁ、ゆうしゃー」
側近「……何事も無く……着けば良いが」
癒し手「……大丈夫、です。願えば、叶います……」
側近「……ああ」ギュ
……
………
…………
ボーゥ…… ……
男「…… ……」
爺「本当に行かせて良かったのか」
男「……あん時、聞きたくないって言えば、な」
癒し手「私達は船室に篭もっている方が安全かもしれません」
癒し手「……青年も、居るし」
青年「ふねだー! ふねだー!」
側近「落ち着け……船室はあっち、だったか」
癒し手「まさか……また船長の船に乗る事になる、とは」
側近「……何の因果……だかな」
癒し手「……剣士さん、には、伝えるべきでしょう……か」
側近「…… ……」
青年「ねえ、おとうさん」
側近「ん?」
青年「さいはてにいけば、ゆうしゃがいるんでしょう?」
癒し手「……まだ、お母さんのお腹の中ですよ」
青年「ゆうしゃのおかあさんの?」
癒し手「そう……産まれてきたら、ちゃんと可愛がってあげてね」
青年「うん! もちろん!」
側近「……少しずつ、スピードが遅くなってて助かった、な」
癒し手「二週間程度では……ばれないと思いますが」
青年「たのしみだなぁ、ゆうしゃー」
側近「……何事も無く……着けば良いが」
癒し手「……大丈夫、です。願えば、叶います……」
側近「……ああ」ギュ
……
………
…………
ボーゥ…… ……
男「…… ……」
爺「本当に行かせて良かったのか」
男「……あん時、聞きたくないって言えば、な」
700: 2014/01/14(火) 15:06:45.94 ID:BZnBQ4oPP
男「ぶん殴ってでも……止めてたさ」
爺「……なら、何故真実を告げなかった」
男「言えるか!? ……自ら、人魚を抱きしめていって」
男「…… ……ッ」
爺「…… ……」
男「……『剣士、会いたかった』だ、なんて……ッ」
爺「まあ……な」ハァ
男「あいつの心に、誰かが居る事ぐらいは知ってたさ」
男「……それでも良かったんだ。俺は!! だが……ッ」
爺「…… ……」ハァ
男「あれで良いんだ。チビには……あれで」
爺「……未練はないのか」
男「海にか? ……ねぇよ」
男「言っただろう……水面見てたら、吐きそうになるんだよ」
男「……あの時の、あの……見た事もネェような、船長の笑顔……ッ」
男「思い出しちまうんだよ……ッ」
爺「…… ……」ポンポン
男「……ぅ、ウゥ……ッ」
爺「暫くは……ゆっくりしろ、男」
爺「……な?」
男「ほっと……してんだよ、俺は……」
爺「ん?」
男「……チビは可愛いんだ。だが……あいつ見てると……ッ」
男「辛い、だなんて…… ……父親、失格だぜ……なぁ?」
爺「……そんなに自分を……責めるな。な?」
男「…… ……」
男(無事で、いろよ…… ……チビ。御免な……)
……
………
…………
爺「……なら、何故真実を告げなかった」
男「言えるか!? ……自ら、人魚を抱きしめていって」
男「…… ……ッ」
爺「…… ……」
男「……『剣士、会いたかった』だ、なんて……ッ」
爺「まあ……な」ハァ
男「あいつの心に、誰かが居る事ぐらいは知ってたさ」
男「……それでも良かったんだ。俺は!! だが……ッ」
爺「…… ……」ハァ
男「あれで良いんだ。チビには……あれで」
爺「……未練はないのか」
男「海にか? ……ねぇよ」
男「言っただろう……水面見てたら、吐きそうになるんだよ」
男「……あの時の、あの……見た事もネェような、船長の笑顔……ッ」
男「思い出しちまうんだよ……ッ」
爺「…… ……」ポンポン
男「……ぅ、ウゥ……ッ」
爺「暫くは……ゆっくりしろ、男」
爺「……な?」
男「ほっと……してんだよ、俺は……」
爺「ん?」
男「……チビは可愛いんだ。だが……あいつ見てると……ッ」
男「辛い、だなんて…… ……父親、失格だぜ……なぁ?」
爺「……そんなに自分を……責めるな。な?」
男「…… ……」
男(無事で、いろよ…… ……チビ。御免な……)
……
………
…………
701: 2014/01/14(火) 15:17:21.59 ID:BZnBQ4oPP
息子「ぐ、ぅ……ッ」
グルルルルル……ッ
兄「息子さん!」
タタタ……ッ
息子「兄君!? ……来るな!君は魔導師と家の中に……!」
兄「で、でも……ッ 息子さん、血が……ッ」
息子「大丈夫だから……ッ」
剣士「頭を下げろ……雷よ!」
ピシャアアアアアアアアン!
ギャアアアアアアアアアアアア!
息子「!?」
兄「あ……ッ ……剣士、さん!?」
スタスタ
剣士「下がれ……兄、息子を連れて行け」
兄「は、はい!」
息子「どう、して……」
剣士「……話は後だ。一掃する」
タッ
兄「立てますか、息子さん」
息子「あ、ああ……ッ」ズキッ
兄「……取りあえず、腕縛ります……」
息子「ぅ、う……ッ」
兄「すぐに、回復魔法を使える人の所に! ……掴まってください」
息子「……す、まない」
グルルルルル……ッ
兄「息子さん!」
タタタ……ッ
息子「兄君!? ……来るな!君は魔導師と家の中に……!」
兄「で、でも……ッ 息子さん、血が……ッ」
息子「大丈夫だから……ッ」
剣士「頭を下げろ……雷よ!」
ピシャアアアアアアアアン!
ギャアアアアアアアアアアアア!
息子「!?」
兄「あ……ッ ……剣士、さん!?」
スタスタ
剣士「下がれ……兄、息子を連れて行け」
兄「は、はい!」
息子「どう、して……」
剣士「……話は後だ。一掃する」
タッ
兄「立てますか、息子さん」
息子「あ、ああ……ッ」ズキッ
兄「……取りあえず、腕縛ります……」
息子「ぅ、う……ッ」
兄「すぐに、回復魔法を使える人の所に! ……掴まってください」
息子「……す、まない」
702: 2014/01/14(火) 15:26:42.47 ID:BZnBQ4oPP
息子「しかし……何故、彼が……!?」
兄「…… ……俺も、吃驚しました」
タタタ……
魔導師「お兄ちゃん!息子さん!」
兄「! 魔導師、回復を使える人……ああ、シスターさん!早く……ッ」
シスター「酷い怪我……ッ早く、入って!」
バタン!
シスター「すぐに……ッ」パァッ
息子「…… ……ッ」ハァ
シスター「……やっつけた、の?」
兄「……それが……あの……」
息子「……剣士さんが、な」
魔導師「剣士、さん?」
兄「魔導師は覚えて無いかな」
魔導師「……覚えてるよ。何となく、だけど……」
魔導師「僧侶のお姉ちゃんとか、戦士のお兄ちゃんとかと……」
魔導師「一緒に居た、人だよね? ……一年、二年前ぐらい?」
シスター「二年……にはならないかしらね」
シスター「……始まりの国の騎士達と一緒に居た人よ」
シスター「でも、何故彼が……!?」
息子「……船も復活しているんだ。居ても可笑しくは……ない、が」
コンコン
魔導師「!」ビクッ
シスター「……どなた」
剣士「俺だ」
息子「……兄君、開けてあげて」
カチャ
兄「…… ……俺も、吃驚しました」
タタタ……
魔導師「お兄ちゃん!息子さん!」
兄「! 魔導師、回復を使える人……ああ、シスターさん!早く……ッ」
シスター「酷い怪我……ッ早く、入って!」
バタン!
シスター「すぐに……ッ」パァッ
息子「…… ……ッ」ハァ
シスター「……やっつけた、の?」
兄「……それが……あの……」
息子「……剣士さんが、な」
魔導師「剣士、さん?」
兄「魔導師は覚えて無いかな」
魔導師「……覚えてるよ。何となく、だけど……」
魔導師「僧侶のお姉ちゃんとか、戦士のお兄ちゃんとかと……」
魔導師「一緒に居た、人だよね? ……一年、二年前ぐらい?」
シスター「二年……にはならないかしらね」
シスター「……始まりの国の騎士達と一緒に居た人よ」
シスター「でも、何故彼が……!?」
息子「……船も復活しているんだ。居ても可笑しくは……ない、が」
コンコン
魔導師「!」ビクッ
シスター「……どなた」
剣士「俺だ」
息子「……兄君、開けてあげて」
カチャ
703: 2014/01/14(火) 15:34:56.45 ID:BZnBQ4oPP
シスター「…… ……剣士、さん」
剣士「扉を早く閉めろ……施錠も」
兄「は、はい!」
剣士「……取りあえず、粗方片付けてきた」
息子「…… ……助かります」
剣士「火を……絶やさなければある程度は大丈夫だろう」
兄「……急に、魔物が強くなって……」
剣士「あの時、あの一帯は……炎で浄化したんだろう」
息子「はい……もう大丈夫だろうと思っていたんですが……」
剣士「……もうすぐ、魔王が復活する」
魔導師「え!? ……魔王は、僧侶のお姉ちゃんと戦士のお兄ちゃんが倒したんじゃ!?」
剣士「魔導師……か?」
魔導師「は、はい」
剣士「……大きくなったな」
シスター「剣士さん、思い出話なんて後にして」
剣士「……魔物の数が増え、力を増してきているのはその所為だ」
息子「貴方は……どうして……」
剣士「……旅の途中で立ち寄った、に過ぎん」
息子「偶然……ですか……?」
剣士「それ以外に何がある」
魔導師「……魔王が、復活……」
剣士「……村長は?」
シスター「……去年の今頃ね。ご病気で亡くなられたわ」
剣士「…… ……そうか」
息子「今は……俺が村長です。あの……」
剣士「何だ? ……ああ、倒れていた松明は元に戻して置いたが」
息子「あ、ああ……! では、見張りを立てなくては……!」ガバッ
シスター「息子さん! 急に動いたら……!」
息子「そうも言っていられない。大丈夫だ……ありがとう、シスター」
バタン!
シスター「…… ……」
剣士「扉を早く閉めろ……施錠も」
兄「は、はい!」
剣士「……取りあえず、粗方片付けてきた」
息子「…… ……助かります」
剣士「火を……絶やさなければある程度は大丈夫だろう」
兄「……急に、魔物が強くなって……」
剣士「あの時、あの一帯は……炎で浄化したんだろう」
息子「はい……もう大丈夫だろうと思っていたんですが……」
剣士「……もうすぐ、魔王が復活する」
魔導師「え!? ……魔王は、僧侶のお姉ちゃんと戦士のお兄ちゃんが倒したんじゃ!?」
剣士「魔導師……か?」
魔導師「は、はい」
剣士「……大きくなったな」
シスター「剣士さん、思い出話なんて後にして」
剣士「……魔物の数が増え、力を増してきているのはその所為だ」
息子「貴方は……どうして……」
剣士「……旅の途中で立ち寄った、に過ぎん」
息子「偶然……ですか……?」
剣士「それ以外に何がある」
魔導師「……魔王が、復活……」
剣士「……村長は?」
シスター「……去年の今頃ね。ご病気で亡くなられたわ」
剣士「…… ……そうか」
息子「今は……俺が村長です。あの……」
剣士「何だ? ……ああ、倒れていた松明は元に戻して置いたが」
息子「あ、ああ……! では、見張りを立てなくては……!」ガバッ
シスター「息子さん! 急に動いたら……!」
息子「そうも言っていられない。大丈夫だ……ありがとう、シスター」
バタン!
シスター「…… ……」
704: 2014/01/14(火) 15:41:46.52 ID:BZnBQ4oPP
剣士「……随分、荒廃したな」
シスター「質の悪い風邪が流行ったの……幼い子供や老人が」
シスター「……何人も亡くなったわ」
兄「此処よりも……北の街の方が酷いそうですよ」
剣士「北の街……ああ」
兄「此処も、元々小さい村ですから……随分、寂れました」
剣士「……鍛冶場は?」
兄「騎士様達が引き上げた後……知識や技術を持った老人達が」
兄「その風邪で随分……亡くなって」
兄「……今は、もう……殆ど機能していません」
魔導師「……どうして、騎士様達は……国へ帰ってしまったんですか?」
剣士「……俺は」
魔導師「いくら炎で清めたと言っても……!」
兄「やめなさい、魔導師……騎士様達は随分良くやってくれたんだよ」
兄「……それに、剣士さんは騎士様じゃない……ですよね?」
剣士「ああ」
魔導師「……ご免なさい。でも……」
シスター「騎士様が居ても一緒よ、魔導師」
シスター「……病を完全に防ぐ術は無い。あの……魔寄せの石も関係無いのよ」
魔導師「……でも、あれがあれば、こんな事には……!」
兄「魔導師!」
魔導師「…… ……ッ 僕、もう寝るよ」
スタスタ、バタン!
剣士「……此処は、兄と魔導師の家か」
兄「ええ……両親もその風邪で亡くなってしまいました」
剣士「…… ……」
シスター「貴方が来てくれて……助かったわ、剣士さん」
シスター「……又、助けて貰っちゃったわね」
シスター「質の悪い風邪が流行ったの……幼い子供や老人が」
シスター「……何人も亡くなったわ」
兄「此処よりも……北の街の方が酷いそうですよ」
剣士「北の街……ああ」
兄「此処も、元々小さい村ですから……随分、寂れました」
剣士「……鍛冶場は?」
兄「騎士様達が引き上げた後……知識や技術を持った老人達が」
兄「その風邪で随分……亡くなって」
兄「……今は、もう……殆ど機能していません」
魔導師「……どうして、騎士様達は……国へ帰ってしまったんですか?」
剣士「……俺は」
魔導師「いくら炎で清めたと言っても……!」
兄「やめなさい、魔導師……騎士様達は随分良くやってくれたんだよ」
兄「……それに、剣士さんは騎士様じゃない……ですよね?」
剣士「ああ」
魔導師「……ご免なさい。でも……」
シスター「騎士様が居ても一緒よ、魔導師」
シスター「……病を完全に防ぐ術は無い。あの……魔寄せの石も関係無いのよ」
魔導師「……でも、あれがあれば、こんな事には……!」
兄「魔導師!」
魔導師「…… ……ッ 僕、もう寝るよ」
スタスタ、バタン!
剣士「……此処は、兄と魔導師の家か」
兄「ええ……両親もその風邪で亡くなってしまいました」
剣士「…… ……」
シスター「貴方が来てくれて……助かったわ、剣士さん」
シスター「……又、助けて貰っちゃったわね」
706: 2014/01/14(火) 15:49:05.17 ID:BZnBQ4oPP
剣士「……宿は、機能しているのか」
兄「え?」
剣士「特に目的も無い旅だ。迷惑で無いのなら……少しの間滞在しても良いだろうか」
兄「あ、ああ……それは、歓迎致します、でも……」
シスター「宿屋の女将さんも、ね」
剣士「……そうか」
シスター「息子さんの家に泊めて貰うと良いわ……一緒に行ってあげる」
剣士「助かる」
兄「……すみません。家に泊まって頂いても良いんですけど……」
シスター「反抗期なのよ。魔導師君は」
剣士「……幾つになった?」
兄「……もうすぐ、8歳です」
剣士「そう、か……随分しっかりしてる……な?」
シスター「……ならざるを得ない、のよ」
剣士「…… ……」
シスター「うちの孤児達も良く……面倒を見てくれているわ」
シスター「さあ、行きましょ……兄、ちゃんと施錠するのよ」
兄「あ、はい!」
スタスタ、パタン
剣士「……もう、二年……か」
シスター「そんなもん、ね。さっき魔導師達ともそんな話をしてたわ」
シスター「……魔王が復活するって、本当なの」
剣士「…… ……ああ」
シスター「そう……」
剣士「北の街は……そんなに酷いのか?」
シスター「噂だけよ。船も無かった物……あれ以来」
シスター「陸路であの街まで行こうとする人なんか、居ないわ」
兄「え?」
剣士「特に目的も無い旅だ。迷惑で無いのなら……少しの間滞在しても良いだろうか」
兄「あ、ああ……それは、歓迎致します、でも……」
シスター「宿屋の女将さんも、ね」
剣士「……そうか」
シスター「息子さんの家に泊めて貰うと良いわ……一緒に行ってあげる」
剣士「助かる」
兄「……すみません。家に泊まって頂いても良いんですけど……」
シスター「反抗期なのよ。魔導師君は」
剣士「……幾つになった?」
兄「……もうすぐ、8歳です」
剣士「そう、か……随分しっかりしてる……な?」
シスター「……ならざるを得ない、のよ」
剣士「…… ……」
シスター「うちの孤児達も良く……面倒を見てくれているわ」
シスター「さあ、行きましょ……兄、ちゃんと施錠するのよ」
兄「あ、はい!」
スタスタ、パタン
剣士「……もう、二年……か」
シスター「そんなもん、ね。さっき魔導師達ともそんな話をしてたわ」
シスター「……魔王が復活するって、本当なの」
剣士「…… ……ああ」
シスター「そう……」
剣士「北の街は……そんなに酷いのか?」
シスター「噂だけよ。船も無かった物……あれ以来」
シスター「陸路であの街まで行こうとする人なんか、居ないわ」
707: 2014/01/14(火) 15:56:24.06 ID:BZnBQ4oPP
シスター「あ……息子さん、あそこにいるわ」
スタスタ
息子「シスター!? 危険ですよ」
シスター「剣士さんがね、暫くこの村に滞在したいんですって」
息子「え!? でも、宿は……」
シスター「貴方の家は駄目なの?」
息子「ああ……家で良ければ、良いですけど」
剣士「……できる限りの手助けはしよう」
息子「はあ、それは願っても無い……ですが……」
息子「……良いのですか? 貴方は……」
剣士「……急ぐ旅では無い、と行っただろう」
息子「はい……では、どうぞ……あ、でもちょっと待って貰えますか」
息子「松明をもう少し……」
剣士「……ならばあの山道の方に……」
息子「ああ……そうですね」
剣士「……俺が行こう。他には?」
息子「ええっと……」
シスター「…… ……」フゥ
シスター「じゃあ、お願いね息子さん」
息子「あ、あ……すみません、シスター」
スタスタ
シスター「…… ……あ!」クルッ
シスター「剣士さん!」
剣士「?」
シスター「僧侶の、子供は……!」
息子「思い出話は明日、ゆっくりしましょう」
息子「……ご免なさい、今はちょっと急ぎます」
シスター「あ、あ……そうね、ご免なさい」
スタスタ
息子「シスター!? 危険ですよ」
シスター「剣士さんがね、暫くこの村に滞在したいんですって」
息子「え!? でも、宿は……」
シスター「貴方の家は駄目なの?」
息子「ああ……家で良ければ、良いですけど」
剣士「……できる限りの手助けはしよう」
息子「はあ、それは願っても無い……ですが……」
息子「……良いのですか? 貴方は……」
剣士「……急ぐ旅では無い、と行っただろう」
息子「はい……では、どうぞ……あ、でもちょっと待って貰えますか」
息子「松明をもう少し……」
剣士「……ならばあの山道の方に……」
息子「ああ……そうですね」
剣士「……俺が行こう。他には?」
息子「ええっと……」
シスター「…… ……」フゥ
シスター「じゃあ、お願いね息子さん」
息子「あ、あ……すみません、シスター」
スタスタ
シスター「…… ……あ!」クルッ
シスター「剣士さん!」
剣士「?」
シスター「僧侶の、子供は……!」
息子「思い出話は明日、ゆっくりしましょう」
息子「……ご免なさい、今はちょっと急ぎます」
シスター「あ、あ……そうね、ご免なさい」
708: 2014/01/14(火) 16:01:39.70 ID:BZnBQ4oPP
息子「おやすみなさい、シスターさん」
シスター「ええ、おやすみなさい」
スタスタ
シスター(魔王の復活……か)
シスター(人同士の戦争と……どちらが、マシなのかしら)
シスター(…… ……)ハァ
シスター「…… ……?」
シスター「やだ、随分……西の空、暗いわね」
シスター(……雨、振らなきゃ良いけど)
……
………
…………
コンコン、カチャ
癒し手「おはよう御座います、側近さん」
側近「起きてたか……もうすぐ、最果ての街だの港に着く」
癒し手「ええ……気配で」ギュ。ナデナデ
青年「…… ……」ギュ
側近「そうか…… 青年は……どうした?」
癒し手「……さっきから『離れないんです』」ナデナデ
側近「どうした、青年……」ナデ
青年「……なんか、いやだ」ギュ
癒し手「何か……感じているんでしょう、ね」
側近「お前の子だから……な。エルフの血が受け継がれているから」
癒し手「……ハイ」
側近「そんな不安そうな顔をするな」
癒し手「ですが……」
コンコン
青年「!」ビク!
シスター「ええ、おやすみなさい」
スタスタ
シスター(魔王の復活……か)
シスター(人同士の戦争と……どちらが、マシなのかしら)
シスター(…… ……)ハァ
シスター「…… ……?」
シスター「やだ、随分……西の空、暗いわね」
シスター(……雨、振らなきゃ良いけど)
……
………
…………
コンコン、カチャ
癒し手「おはよう御座います、側近さん」
側近「起きてたか……もうすぐ、最果ての街だの港に着く」
癒し手「ええ……気配で」ギュ。ナデナデ
青年「…… ……」ギュ
側近「そうか…… 青年は……どうした?」
癒し手「……さっきから『離れないんです』」ナデナデ
側近「どうした、青年……」ナデ
青年「……なんか、いやだ」ギュ
癒し手「何か……感じているんでしょう、ね」
側近「お前の子だから……な。エルフの血が受け継がれているから」
癒し手「……ハイ」
側近「そんな不安そうな顔をするな」
癒し手「ですが……」
コンコン
青年「!」ビク!
709: 2014/01/14(火) 16:07:23.03 ID:BZnBQ4oPP
カチャ
船長「おはよう……起きてるか?」
青年「……おにいちゃん」ホッ
船長「ど、どうしたんだ、青年?」
癒し手「もうそろそろ、ですか?」
船長「あ、ああ……大丈夫か? 酔った?」
青年「……ううん。だいじょうぶ……」ギュウ
側近「……下船の準備をするか」
癒し手「はい……さ、青年。歩けます?」
青年「……うん」
船長「甘えたさんだな、青年は」ハハ
側近「……世話になったな、船長」
船長「こっちこそ、だ……お兄ちゃん、強いんだな」
癒し手「……人魚に会わずにすんで、良かったです」
癒し手「この海域を抜けるまでは……お気をつけて、船長さん」
船長「ありがとう……俺も、楽しかったよ」
青年「お、おにいちゃん!」
船長「ん?」
青年「あのさ……こんど、ゆうしゃつれてくるから」
船長「勇者ぁ?」
側近「…… ……」
青年「そしたら、またせんちょーのふねに、のせてくれる!?」
船長「……良し! 男と男の約束な!」
青年「うん! やくそく!」
癒し手「……さあ、行きましょう……青年。側近さん」
側近「ああ」
スタスタ
船長「気をつけて行けよ……っても、何にもないだろうに」
側近「……まあ、な」
船長「本当に待っていなくて良いのか?」
癒し手「大丈夫です……お気になさらず」
船長「おはよう……起きてるか?」
青年「……おにいちゃん」ホッ
船長「ど、どうしたんだ、青年?」
癒し手「もうそろそろ、ですか?」
船長「あ、ああ……大丈夫か? 酔った?」
青年「……ううん。だいじょうぶ……」ギュウ
側近「……下船の準備をするか」
癒し手「はい……さ、青年。歩けます?」
青年「……うん」
船長「甘えたさんだな、青年は」ハハ
側近「……世話になったな、船長」
船長「こっちこそ、だ……お兄ちゃん、強いんだな」
癒し手「……人魚に会わずにすんで、良かったです」
癒し手「この海域を抜けるまでは……お気をつけて、船長さん」
船長「ありがとう……俺も、楽しかったよ」
青年「お、おにいちゃん!」
船長「ん?」
青年「あのさ……こんど、ゆうしゃつれてくるから」
船長「勇者ぁ?」
側近「…… ……」
青年「そしたら、またせんちょーのふねに、のせてくれる!?」
船長「……良し! 男と男の約束な!」
青年「うん! やくそく!」
癒し手「……さあ、行きましょう……青年。側近さん」
側近「ああ」
スタスタ
船長「気をつけて行けよ……っても、何にもないだろうに」
側近「……まあ、な」
船長「本当に待っていなくて良いのか?」
癒し手「大丈夫です……お気になさらず」
710: 2014/01/14(火) 16:14:13.47 ID:BZnBQ4oPP
船長「でも…… ……」
ガラガラガラガラガラ……
船長「!? 馬車!?」
側近「あれは…… ……」
キィ……ガタン!
海賊「……船長。海賊の掟その1」
船長「詮索は時に命取り、だろ……解ってるよ」
海賊「良し、野郎ど……」
船長「野郎共! 船を出すぞー!」
海賊「……ああ、忘れてたわ」
船長「俺の台詞だっつったろ!」
ボォ…… ……ゥ…… ……
スタスタ
使用人「お待ちしておりました。側近様、癒し手様……それから」
使用人「『青年様』……どうぞ、馬車にお乗り下さい」
癒し手「まぁ……良く解りましたね」
使用人「ええ、后様の遠見術で……お二人とも、自分が行くと言い張って」
使用人「お止めするのに苦労しました」
癒し手「ふふ……変わりませんね、あの人達は」
側近「ああ……全くだ」
青年「……おねえちゃん、だあれ?」
使用人「私は、使用人と申します……初めまして、青年様……あら?」
青年「え?」
使用人「……いえ。文には確か、緑の瞳、と……」
側近「ああ……大きくなるにつれ、蒼くなっていったな」
癒し手「どちらにも見える色だったのですよ。光の加減で」
使用人「ああ……成る程」
ガラガラガラガラガラ……
船長「!? 馬車!?」
側近「あれは…… ……」
キィ……ガタン!
海賊「……船長。海賊の掟その1」
船長「詮索は時に命取り、だろ……解ってるよ」
海賊「良し、野郎ど……」
船長「野郎共! 船を出すぞー!」
海賊「……ああ、忘れてたわ」
船長「俺の台詞だっつったろ!」
ボォ…… ……ゥ…… ……
スタスタ
使用人「お待ちしておりました。側近様、癒し手様……それから」
使用人「『青年様』……どうぞ、馬車にお乗り下さい」
癒し手「まぁ……良く解りましたね」
使用人「ええ、后様の遠見術で……お二人とも、自分が行くと言い張って」
使用人「お止めするのに苦労しました」
癒し手「ふふ……変わりませんね、あの人達は」
側近「ああ……全くだ」
青年「……おねえちゃん、だあれ?」
使用人「私は、使用人と申します……初めまして、青年様……あら?」
青年「え?」
使用人「……いえ。文には確か、緑の瞳、と……」
側近「ああ……大きくなるにつれ、蒼くなっていったな」
癒し手「どちらにも見える色だったのですよ。光の加減で」
使用人「ああ……成る程」
711: 2014/01/14(火) 16:21:44.00 ID:BZnBQ4oPP
青年「ここが……さいはての、ち?」
使用人「ええ……さあ、どうぞ。急ぎましょう」
バタン……ガラガラガラ……
……
………
…………
バタバタバタ……!
魔王「側近!癒し手!」
側近「魔王自ら出迎えとはな」
癒し手「所謂王様、の所行ではありませんね」クスクス
側近「后は?」
魔王「部屋に閉じ込めてきた!」
側近「……おい」
魔王「いや、だって、なぁ?大事な時期だぞ!?」
魔王「夜風は身体に悪いだろう!?」
側近「……ああ、うん、まぁ」
癒し手「後で燃やされちゃいますよ、魔王様」クスクス
魔王「俺が燃やされない為にも、早く中に入ってくれ」
魔王「疲れただろう?それに……子供も寝かしてやんない……と……」
青年(すぅすぅ)
癒し手「ええ……そうですね。『馬車の中で寝てしまって』」
魔王「『え……青年だよな?』」
側近「『ああ』」
魔王「『産まれたの……何時だっけ』」
側近「『……これでも、ゆっくりになってきたんだ』」
魔王「……すぐに食事を準備させるよ」
魔王「こっちだ……后も、すぐに呼んで……」
バタバタバタ……
魔王「!?」
使用人「ええ……さあ、どうぞ。急ぎましょう」
バタン……ガラガラガラ……
……
………
…………
バタバタバタ……!
魔王「側近!癒し手!」
側近「魔王自ら出迎えとはな」
癒し手「所謂王様、の所行ではありませんね」クスクス
側近「后は?」
魔王「部屋に閉じ込めてきた!」
側近「……おい」
魔王「いや、だって、なぁ?大事な時期だぞ!?」
魔王「夜風は身体に悪いだろう!?」
側近「……ああ、うん、まぁ」
癒し手「後で燃やされちゃいますよ、魔王様」クスクス
魔王「俺が燃やされない為にも、早く中に入ってくれ」
魔王「疲れただろう?それに……子供も寝かしてやんない……と……」
青年(すぅすぅ)
癒し手「ええ……そうですね。『馬車の中で寝てしまって』」
魔王「『え……青年だよな?』」
側近「『ああ』」
魔王「『産まれたの……何時だっけ』」
側近「『……これでも、ゆっくりになってきたんだ』」
魔王「……すぐに食事を準備させるよ」
魔王「こっちだ……后も、すぐに呼んで……」
バタバタバタ……
魔王「!?」
712: 2014/01/14(火) 16:26:41.60 ID:BZnBQ4oPP
后「ああ、側近、癒し手………!」
魔王「わああああ、ストップ、ストップ!后!」
癒し手「き、后さん! 走っちゃ駄目です!?」
后「良かったわ、無事について……」
后「魔王! 後で覚えておきなさいよ……抜け駆けして……ッ」
魔王「だ、だって……!!」
側近「俺がついてて何かあるわけ無いだろう……久しぶりだな。体調は如何だ?」
側近「……まあ、見る限り元気そうだが」
癒し手「まだお腹目立ちませんね」
后「ふふ、そうね……お腹がすくとちょっと気持ち悪くなる位」
后「……魔族になっても、こういうのは一緒なのかしらね」
后「それより……『青年君』抱っこしてる側近って……笑える」
側近「……一応父親なんだぞ」ムス
后「分かってるけど、さ……」クスクス
后「『……でも、想像してたより随分大きいわね』」
癒し手「ええ……『五歳、ぐらいになるのでしょうか』」
后「『でも、手を握って……赤ちゃんみたい……あら?』」
后「何か……握ってる?」
癒し手「……あ、ええ。私の……その。浄化の石、を」
后「浄化の石……?」
魔王「おい、后」
后「あ……そうね。とにかく食堂に行きましょ」
后「話は、食べながら……ね?」
魔王「わああああ、ストップ、ストップ!后!」
癒し手「き、后さん! 走っちゃ駄目です!?」
后「良かったわ、無事について……」
后「魔王! 後で覚えておきなさいよ……抜け駆けして……ッ」
魔王「だ、だって……!!」
側近「俺がついてて何かあるわけ無いだろう……久しぶりだな。体調は如何だ?」
側近「……まあ、見る限り元気そうだが」
癒し手「まだお腹目立ちませんね」
后「ふふ、そうね……お腹がすくとちょっと気持ち悪くなる位」
后「……魔族になっても、こういうのは一緒なのかしらね」
后「それより……『青年君』抱っこしてる側近って……笑える」
側近「……一応父親なんだぞ」ムス
后「分かってるけど、さ……」クスクス
后「『……でも、想像してたより随分大きいわね』」
癒し手「ええ……『五歳、ぐらいになるのでしょうか』」
后「『でも、手を握って……赤ちゃんみたい……あら?』」
后「何か……握ってる?」
癒し手「……あ、ええ。私の……その。浄化の石、を」
后「浄化の石……?」
魔王「おい、后」
后「あ……そうね。とにかく食堂に行きましょ」
后「話は、食べながら……ね?」
713: 2014/01/14(火) 16:35:39.11 ID:BZnBQ4oPP
側近「……剣士は?」
后「少し前ね……貴方達に会わない方が良いだろうって」
癒し手「…… ……」
魔王「癒し手、どうした?」
癒し手「あ、いいえ……お腹、すいたなぁ、って」
后「もう」クスクス
スタスタ、カチャ
使用人「……改めて、おかえりなさいませ。食事の用意は済んでいます」
魔王「ああ、毎日見ても美味そうだなぁ……」
使用人「さあ、どうぞお座り下さい……あ、青年様はそちらに……」
側近「ああ……起きるかな」ソッ
青年(すやすや)
癒し手「……緊張して疲れたんでしょうね」
側近「何だったんだ、あれは」
后「え?」
癒し手「……先に、乾杯しましょう?」
側近(……?)
魔王「良し、じゃあ……改めて。久しぶりの再会に!乾杯!」
使用人「では、私はこれで……」
后「何言ってんの……貴方も同席して頂戴」
使用人「でも」
癒し手「……おいやですか?」
使用人「まさか! ……宜しいのですか。久しぶりでしょうに」
側近「当然だろう」
魔王「そうだよ、使用人」
使用人「……では、失礼致します」
后「まずは……報告、よね」
癒し手「文では限界もありますし……ね」
后「少し前ね……貴方達に会わない方が良いだろうって」
癒し手「…… ……」
魔王「癒し手、どうした?」
癒し手「あ、いいえ……お腹、すいたなぁ、って」
后「もう」クスクス
スタスタ、カチャ
使用人「……改めて、おかえりなさいませ。食事の用意は済んでいます」
魔王「ああ、毎日見ても美味そうだなぁ……」
使用人「さあ、どうぞお座り下さい……あ、青年様はそちらに……」
側近「ああ……起きるかな」ソッ
青年(すやすや)
癒し手「……緊張して疲れたんでしょうね」
側近「何だったんだ、あれは」
后「え?」
癒し手「……先に、乾杯しましょう?」
側近(……?)
魔王「良し、じゃあ……改めて。久しぶりの再会に!乾杯!」
使用人「では、私はこれで……」
后「何言ってんの……貴方も同席して頂戴」
使用人「でも」
癒し手「……おいやですか?」
使用人「まさか! ……宜しいのですか。久しぶりでしょうに」
側近「当然だろう」
魔王「そうだよ、使用人」
使用人「……では、失礼致します」
后「まずは……報告、よね」
癒し手「文では限界もありますし……ね」
714: 2014/01/14(火) 16:40:18.45 ID:BZnBQ4oPP
后「……変わったんでしょうね、街や……人も」
癒し手「そういえば……遠見術で私達を見たんですよね、后様」
后「……ええ。何だか……妊娠してから、凄く……魔力が強くなったみたいなの」
后「いろんな事ができる様になった……みたいね」
側近「みたい、とは?」
后「試した訳じゃ無いのよ。だけど使用人曰く……願えば」
側近「……叶う、か。便利なもんだな、魔族ってのは」
側近「『未だに』……実感が無い」
魔王「そうだな……俺が一番実感が無いよ」
魔王「勇者から魔王になりました、なんて……」
癒し手「前魔王様達も……こうして、すごして居られたんでしょうね」
魔王「ああ……」
側近「……喜ばねばならん。時間が無い」
側近「意味が良く解らなかった言葉が、今となっては……重い」
后「…… ……」
癒し手「避けては……通れない道です」
癒し手「これからの……未来の為に」
后「……先に、さっきの石の事、聞いても良い?」
癒し手「ああ……はい」
魔王「石?」
后「青年君が、手に何か握ってたのよ。だから……」
癒し手「……文。小鳥の事なんですが……」
魔王「あ……そうだ。最後の便りの時に……」
癒し手「……はい。気がついて居ました。何時もならどこかで霧散してしまっても」
癒し手「風を伝って……魔力は、私に戻って来るんです。でも……」
側近「でも?」
癒し手「……書の街で、王子様と后さん宛てに飛ばした二羽の小鳥は」
癒し手「私の元には戻っていません」
側近「……何?」
魔王「あの小鳥は……俺の魔力が高まっている所為、なのか?」
魔王「でも、だとすれば王子様に向けた物は……」
癒し手「そういえば……遠見術で私達を見たんですよね、后様」
后「……ええ。何だか……妊娠してから、凄く……魔力が強くなったみたいなの」
后「いろんな事ができる様になった……みたいね」
側近「みたい、とは?」
后「試した訳じゃ無いのよ。だけど使用人曰く……願えば」
側近「……叶う、か。便利なもんだな、魔族ってのは」
側近「『未だに』……実感が無い」
魔王「そうだな……俺が一番実感が無いよ」
魔王「勇者から魔王になりました、なんて……」
癒し手「前魔王様達も……こうして、すごして居られたんでしょうね」
魔王「ああ……」
側近「……喜ばねばならん。時間が無い」
側近「意味が良く解らなかった言葉が、今となっては……重い」
后「…… ……」
癒し手「避けては……通れない道です」
癒し手「これからの……未来の為に」
后「……先に、さっきの石の事、聞いても良い?」
癒し手「ああ……はい」
魔王「石?」
后「青年君が、手に何か握ってたのよ。だから……」
癒し手「……文。小鳥の事なんですが……」
魔王「あ……そうだ。最後の便りの時に……」
癒し手「……はい。気がついて居ました。何時もならどこかで霧散してしまっても」
癒し手「風を伝って……魔力は、私に戻って来るんです。でも……」
側近「でも?」
癒し手「……書の街で、王子様と后さん宛てに飛ばした二羽の小鳥は」
癒し手「私の元には戻っていません」
側近「……何?」
魔王「あの小鳥は……俺の魔力が高まっている所為、なのか?」
魔王「でも、だとすれば王子様に向けた物は……」
715: 2014/01/14(火) 16:44:57.41 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「……ここへ、来るまでハッキリしなかったんです」
癒し手「でも……この島に近づくに連れて……ハッキリ感じました」
癒し手「魔王様、貴方のお力は……強くなっておられます」
癒し手「恐らく……勇者様が、宿られたから、でしょうね」
魔王「……やっぱりか」
側近「気付いてたのか?」
魔王「さっきも言っただろう……小鳥の件でな」
癒し手「はい……氏んでしまったんでしょう?」
后「ええ……水を飲んですぐにね」
癒し手「……私の力で具現化した……仮初めの命ですから」
癒し手「本来ならば……たとえば、普通の小鳥の様に弓で射られた等で氏んだ場合」
癒し手「遠く離れて居ても私の元に魔力として戻るのですが……」
后「それで……気がついたんじゃ無いの?」
癒し手「いえ……魔力が失われたのを感じただけです」
癒し手「戻って来ていません……多分、魔王様に吸収されたのではないかと」
側近「……そうなのか?」
癒し手「推測ですが。私の中には……戻って居ない、のは確かです」
魔王「……そうか」
癒し手「次代の勇者様がお生まれになれば、魔王様は……」
魔王「ああ……使用人の話だと、産まれてから一ヶ月ほどしか俺は……俺として居られない」
魔王「話さなくなり、動けなくなり……笑わなくなる」
魔王「そして……勇者がたどり着くまで、お前達に押さえて貰わなければ」
癒し手「……世界を滅ぼしてしまう、ですね」
后「…… ……」
癒し手「『はっきりと感じます』……魔王様と后様のお子様は……」
癒し手「紛う事無き、光の子でいらっしゃいます」
后「……喜ばなくちゃいけないのね、私達は」
側近「これで、『魔王』を倒す事ができる……『世界』を救うことが出来る」
癒し手「…… ……はい」
癒し手「でも……この島に近づくに連れて……ハッキリ感じました」
癒し手「魔王様、貴方のお力は……強くなっておられます」
癒し手「恐らく……勇者様が、宿られたから、でしょうね」
魔王「……やっぱりか」
側近「気付いてたのか?」
魔王「さっきも言っただろう……小鳥の件でな」
癒し手「はい……氏んでしまったんでしょう?」
后「ええ……水を飲んですぐにね」
癒し手「……私の力で具現化した……仮初めの命ですから」
癒し手「本来ならば……たとえば、普通の小鳥の様に弓で射られた等で氏んだ場合」
癒し手「遠く離れて居ても私の元に魔力として戻るのですが……」
后「それで……気がついたんじゃ無いの?」
癒し手「いえ……魔力が失われたのを感じただけです」
癒し手「戻って来ていません……多分、魔王様に吸収されたのではないかと」
側近「……そうなのか?」
癒し手「推測ですが。私の中には……戻って居ない、のは確かです」
魔王「……そうか」
癒し手「次代の勇者様がお生まれになれば、魔王様は……」
魔王「ああ……使用人の話だと、産まれてから一ヶ月ほどしか俺は……俺として居られない」
魔王「話さなくなり、動けなくなり……笑わなくなる」
魔王「そして……勇者がたどり着くまで、お前達に押さえて貰わなければ」
癒し手「……世界を滅ぼしてしまう、ですね」
后「…… ……」
癒し手「『はっきりと感じます』……魔王様と后様のお子様は……」
癒し手「紛う事無き、光の子でいらっしゃいます」
后「……喜ばなくちゃいけないのね、私達は」
側近「これで、『魔王』を倒す事ができる……『世界』を救うことが出来る」
癒し手「…… ……はい」
716: 2014/01/14(火) 16:50:47.97 ID:BZnBQ4oPP
后「『私の魔力……自分でも吃驚するぐらい強くなってるわ』」
使用人「前后様もそうでした。あの方も……」
后「あの人は……私達を一瞬の内に、この城まで呼び寄せた」
側近「転移術……剣士は、いとも容易くやってのけた」
魔王「……あれはびびったぞ。急に何かのでかい気配を感じたからな」
使用人「頭にビジョンを送る……と言うのは、癒し手様の案ですか?」
癒し手「ええ……実際、送られたのは側近さんですけど」
后「…私も、側近も魔王の力で魔族になって、莫大な力と、永遠に近い生を得た」
后「だけど、二人とも……まあ、側近の場合は特に元々魔法が使えた訳じゃ無いから」
后「特にこれと言って、分からなかったかも知れないけど……」
側近「そうだな……魔法が自由自在に使える様になった訳じゃない」
側近「……癒し手に言われた時だって、正直できるとは思わなかった」
后「そう……私だってそうよ」
后「炎以外の属性の魔法が使える様になった訳でも無い」
后「基礎能力が底上げされた、って感じなだけ……だったのよね」
癒し手「なのに……遠見が出来たり、するようになった、ですか」
后「それぐらいなら、身体にも負担かからないだろうし、って」
后「ええ。使用人の言う通りに、試しにやってみたら、ね」
魔王「願えば、叶った……か」
使用人「前后様のお言葉があったから、です」
癒し手「『魔法なんて使い様』」
后「……あの石や、小鳥にしたって、要は使い様、でしょ?」
癒し手「勿論、そうです。使用人さんに教えて貰って、出来る様になっただけです」
后「……魔除けの石、よね? ……あ、浄化の石って言ってたか」
使用人「前后様もそうでした。あの方も……」
后「あの人は……私達を一瞬の内に、この城まで呼び寄せた」
側近「転移術……剣士は、いとも容易くやってのけた」
魔王「……あれはびびったぞ。急に何かのでかい気配を感じたからな」
使用人「頭にビジョンを送る……と言うのは、癒し手様の案ですか?」
癒し手「ええ……実際、送られたのは側近さんですけど」
后「…私も、側近も魔王の力で魔族になって、莫大な力と、永遠に近い生を得た」
后「だけど、二人とも……まあ、側近の場合は特に元々魔法が使えた訳じゃ無いから」
后「特にこれと言って、分からなかったかも知れないけど……」
側近「そうだな……魔法が自由自在に使える様になった訳じゃない」
側近「……癒し手に言われた時だって、正直できるとは思わなかった」
后「そう……私だってそうよ」
后「炎以外の属性の魔法が使える様になった訳でも無い」
后「基礎能力が底上げされた、って感じなだけ……だったのよね」
癒し手「なのに……遠見が出来たり、するようになった、ですか」
后「それぐらいなら、身体にも負担かからないだろうし、って」
后「ええ。使用人の言う通りに、試しにやってみたら、ね」
魔王「願えば、叶った……か」
使用人「前后様のお言葉があったから、です」
癒し手「『魔法なんて使い様』」
后「……あの石や、小鳥にしたって、要は使い様、でしょ?」
癒し手「勿論、そうです。使用人さんに教えて貰って、出来る様になっただけです」
后「……魔除けの石、よね? ……あ、浄化の石って言ってたか」
717: 2014/01/14(火) 17:01:12.94 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「呼び方は何でも良いんですけど……えっと」
側近「……すまんが、難しい話をする前に」
后「はいはい、糖分足りないのね、使用人、パフェとか甘い物、山盛り持ってきて!」
側近「……」ムス
使用人「はい」クス
魔王「照れんな」
后「…… ……」プッ
癒し手「…… ……」クスクス
青年(スヤスヤ)
癒し手「……エルフの寿命は、大凡300年……だそうです」
使用人「ですね。姫様もそう仰って居ました」
癒し手「ハーフエルフの私は、単純に半分として……150年程かな、と思います」
癒し手「旅の途中……魔王様達に会う前にも、様々なエルフの本を読みました。でも」
癒し手「ハーフエルフについては、驚くほど知られていなくて……」
癒し手「……記録も残されていません」
癒し手「ですから、寿命についても……本当に推測でしか無いのですが」
癒し手「ですが……」ヒック
后「癒し手……? ど、どうしたのよ!?」
癒し手「すみません……どうやら、私の寿命は……もう、それほど長くはないと思います」
側近「……な、ん……ッ」ガタッ
魔王「落ち着け、側近。お前が取り乱してどうする」
側近「…… ……ッ」
后「貴女も落ち着きなさい、癒し手……それは、感じた、の?」
癒し手「……前魔王を倒した時に。この城で、后様と側近さんが魔族へと転じられた時」
癒し手「魔王様、部屋に結界を張られたのを覚えていますか?」
魔王「あ、ああ……」
癒し手「あの時……あの結界の……魔王様の、黒い結界の中で」
癒し手「私は、息が出来なくなりました……正確には、息苦しくなった程度、ですが……」
癒し手「使用人さんの緑の防護壁が無ければ……気を失っていたかも知れません」
癒し手「……今、多分……これが無いと、息が詰まりそう、になると思います」コロン
后「綺麗な蒼い石……これは?」
癒し手「私の……水の力を…浄化の水の力を封じ込めた魔石です」
后「……魔導師君に、作り方を教わった、のよね」
癒し手「……そうです。剣士さんや魔王様……やはり、傍に居ると少し……辛いので」
癒し手「これがあれば……気分が楽でした」
魔王「でも……かなり体力を消耗するんじゃ無いのか?」
側近「……すまんが、難しい話をする前に」
后「はいはい、糖分足りないのね、使用人、パフェとか甘い物、山盛り持ってきて!」
側近「……」ムス
使用人「はい」クス
魔王「照れんな」
后「…… ……」プッ
癒し手「…… ……」クスクス
青年(スヤスヤ)
癒し手「……エルフの寿命は、大凡300年……だそうです」
使用人「ですね。姫様もそう仰って居ました」
癒し手「ハーフエルフの私は、単純に半分として……150年程かな、と思います」
癒し手「旅の途中……魔王様達に会う前にも、様々なエルフの本を読みました。でも」
癒し手「ハーフエルフについては、驚くほど知られていなくて……」
癒し手「……記録も残されていません」
癒し手「ですから、寿命についても……本当に推測でしか無いのですが」
癒し手「ですが……」ヒック
后「癒し手……? ど、どうしたのよ!?」
癒し手「すみません……どうやら、私の寿命は……もう、それほど長くはないと思います」
側近「……な、ん……ッ」ガタッ
魔王「落ち着け、側近。お前が取り乱してどうする」
側近「…… ……ッ」
后「貴女も落ち着きなさい、癒し手……それは、感じた、の?」
癒し手「……前魔王を倒した時に。この城で、后様と側近さんが魔族へと転じられた時」
癒し手「魔王様、部屋に結界を張られたのを覚えていますか?」
魔王「あ、ああ……」
癒し手「あの時……あの結界の……魔王様の、黒い結界の中で」
癒し手「私は、息が出来なくなりました……正確には、息苦しくなった程度、ですが……」
癒し手「使用人さんの緑の防護壁が無ければ……気を失っていたかも知れません」
癒し手「……今、多分……これが無いと、息が詰まりそう、になると思います」コロン
后「綺麗な蒼い石……これは?」
癒し手「私の……水の力を…浄化の水の力を封じ込めた魔石です」
后「……魔導師君に、作り方を教わった、のよね」
癒し手「……そうです。剣士さんや魔王様……やはり、傍に居ると少し……辛いので」
癒し手「これがあれば……気分が楽でした」
魔王「でも……かなり体力を消耗するんじゃ無いのか?」
718: 2014/01/14(火) 17:07:08.06 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「……人であれば、そうでしょうね、いえ」
癒し手「確かに、今の私にも……随分辛い。でも」
癒し手「……あると無いとでは、随分違うんです。だから……」
側近「……始まりの国のあの小屋に居る時も、部屋に置いていたな」
癒し手「……はい」
后「ちょっと待って……あの場所でも辛かったの?」
癒し手「……言い方は悪いですが、剣士さんが居られなくなってからは、特に」
魔王「……あいつが会わない方が良いと言っていたのはそれを知ってたから、か」ハァ
側近「……癒し手」
癒し手「今、『青年が持っているのは私の作った魔石です』」
癒し手「……后様と側近さんが魔に変じたあの時」
癒し手「結界が消えた時……息苦しさは感じなくなりました」
癒し手「ですが……魔王様のお力が、強くなった今」
癒し手「私の……寿命が、少なくなった今」
癒し手「これが無いと……私は確実に、ここで……命を削られて行くでしょう」
側近「癒し手!」
癒し手「……この事を告げれば、貴方は……ここに戻りましたか、側近さん」
癒し手「私とこの子の命を、取ってしまう様な方とは思っておりません」
癒し手「ですが……悩まれたでしょう」
癒し手「だから……推測で、告げるのはやめようと思ったのです」
癒し手「……黙って居て、ご免なさい」
側近「……何時、解ったんだ」
癒し手「さっきお話ししたとおりです……はっきりとは解らなかった」
癒し手「……ここへ、来るまでハッキリしなかったんです」
癒し手「決め手に欠けてたのでどう説明して良いか迷って……」
癒し手「いえ。言い訳ですね、ごめんなさい」
側近「…… ……」
癒し手「魔王様と、私……どちらかだけであれば」
癒し手「……もう少し、気分……ましだったのだと、思うのです、けど」
側近「……癒し手!」ギュ
后「…… ……」
魔王「…… ……」
癒し手「なので、魔王様」
魔王「ん……」
癒し手「この石……魔族の方には、不快な物かもしれません」
癒し手「ですが……」
魔王「阿呆」
癒し手「……は?」
魔王「俺は魔王だぞ、そんなもん、何とも思わんわ!バカタレ!」
癒し手「……ッ」
側近「おい、まお……」
后「……側近。待ちなさい」
魔王「生成するのが負担にならないなら、城中においとけ!」
魔王「使用人」
使用人「は、はい?」
魔王「船長に頼んで、山盛り持ってきて貰ってくれ!魔除け石!」
癒し手「確かに、今の私にも……随分辛い。でも」
癒し手「……あると無いとでは、随分違うんです。だから……」
側近「……始まりの国のあの小屋に居る時も、部屋に置いていたな」
癒し手「……はい」
后「ちょっと待って……あの場所でも辛かったの?」
癒し手「……言い方は悪いですが、剣士さんが居られなくなってからは、特に」
魔王「……あいつが会わない方が良いと言っていたのはそれを知ってたから、か」ハァ
側近「……癒し手」
癒し手「今、『青年が持っているのは私の作った魔石です』」
癒し手「……后様と側近さんが魔に変じたあの時」
癒し手「結界が消えた時……息苦しさは感じなくなりました」
癒し手「ですが……魔王様のお力が、強くなった今」
癒し手「私の……寿命が、少なくなった今」
癒し手「これが無いと……私は確実に、ここで……命を削られて行くでしょう」
側近「癒し手!」
癒し手「……この事を告げれば、貴方は……ここに戻りましたか、側近さん」
癒し手「私とこの子の命を、取ってしまう様な方とは思っておりません」
癒し手「ですが……悩まれたでしょう」
癒し手「だから……推測で、告げるのはやめようと思ったのです」
癒し手「……黙って居て、ご免なさい」
側近「……何時、解ったんだ」
癒し手「さっきお話ししたとおりです……はっきりとは解らなかった」
癒し手「……ここへ、来るまでハッキリしなかったんです」
癒し手「決め手に欠けてたのでどう説明して良いか迷って……」
癒し手「いえ。言い訳ですね、ごめんなさい」
側近「…… ……」
癒し手「魔王様と、私……どちらかだけであれば」
癒し手「……もう少し、気分……ましだったのだと、思うのです、けど」
側近「……癒し手!」ギュ
后「…… ……」
魔王「…… ……」
癒し手「なので、魔王様」
魔王「ん……」
癒し手「この石……魔族の方には、不快な物かもしれません」
癒し手「ですが……」
魔王「阿呆」
癒し手「……は?」
魔王「俺は魔王だぞ、そんなもん、何とも思わんわ!バカタレ!」
癒し手「……ッ」
側近「おい、まお……」
后「……側近。待ちなさい」
魔王「生成するのが負担にならないなら、城中においとけ!」
魔王「使用人」
使用人「は、はい?」
魔王「船長に頼んで、山盛り持ってきて貰ってくれ!魔除け石!」
719: 2014/01/14(火) 17:15:03.64 ID:BZnBQ4oPP
使用人「あ、は……はい!では、早速……」
側近「……待て」
使用人「え?」
癒し手「すみません……言うの、忘れていました」
側近「船長は……亡くなったそうだ」
后「え!?」
癒し手「魔王様の復活……それが近いと言う事は、魔物の力も増していると」
癒し手「……言う事、です。それで…… ……ッ」
側近「人魚に……食われてしまった、らしい」
魔王「な……ッ」
使用人「人魚…… ……そん、な……! 側近様達は、船長の船で……!」
后「……え?」
側近「ああ……乗せてきてくれたあの船……今の船長は」
癒し手「女船長さんの、息子さんだそうです」
魔王「…… ……」
魔王「じゃ、じゃあ……その、息子は……」
癒し手「……見てはいらっしゃらないそうです。幸いにも。ですが……」
后「お母さんの……跡を継いだ、ので」
癒し手「……はい。小鳥の話等……ご存じかもしれませんが」
魔王「…… ……そうか。知ってしまった以上……はいそうですかと」
魔王「頼るのは、憚れる……否! 癒し手の為だ」
魔王「そうも言って……」
癒し手「……大丈夫です。勇者様が産まれるぐらいまでは」
癒し手「これがあれば、大丈夫です」
側近「し、しかし……お前の命は……!」
癒し手「青年を産んで、失ってしまうのだけは厭だと思っていました」
癒し手「……寿命、なんです。きっと」
使用人「魔王様は苦しいかも知れませんが」
魔王「ん?」
使用人「まし、だったんでしょう? ……緑の防護壁を張ります」
使用人「……魔王様は我慢して下さい」
魔王「……いや、俺は良いよ、うん。そんぐらい。うん」
后「あのカーテンとやらに使った布、残ってないの?」
使用人「すぐに術を施してご用意します」
后「手伝いましょうか?」
使用人「后様は安静に!」
后「……はい」
側近「……待て」
使用人「え?」
癒し手「すみません……言うの、忘れていました」
側近「船長は……亡くなったそうだ」
后「え!?」
癒し手「魔王様の復活……それが近いと言う事は、魔物の力も増していると」
癒し手「……言う事、です。それで…… ……ッ」
側近「人魚に……食われてしまった、らしい」
魔王「な……ッ」
使用人「人魚…… ……そん、な……! 側近様達は、船長の船で……!」
后「……え?」
側近「ああ……乗せてきてくれたあの船……今の船長は」
癒し手「女船長さんの、息子さんだそうです」
魔王「…… ……」
魔王「じゃ、じゃあ……その、息子は……」
癒し手「……見てはいらっしゃらないそうです。幸いにも。ですが……」
后「お母さんの……跡を継いだ、ので」
癒し手「……はい。小鳥の話等……ご存じかもしれませんが」
魔王「…… ……そうか。知ってしまった以上……はいそうですかと」
魔王「頼るのは、憚れる……否! 癒し手の為だ」
魔王「そうも言って……」
癒し手「……大丈夫です。勇者様が産まれるぐらいまでは」
癒し手「これがあれば、大丈夫です」
側近「し、しかし……お前の命は……!」
癒し手「青年を産んで、失ってしまうのだけは厭だと思っていました」
癒し手「……寿命、なんです。きっと」
使用人「魔王様は苦しいかも知れませんが」
魔王「ん?」
使用人「まし、だったんでしょう? ……緑の防護壁を張ります」
使用人「……魔王様は我慢して下さい」
魔王「……いや、俺は良いよ、うん。そんぐらい。うん」
后「あのカーテンとやらに使った布、残ってないの?」
使用人「すぐに術を施してご用意します」
后「手伝いましょうか?」
使用人「后様は安静に!」
后「……はい」
720: 2014/01/14(火) 17:17:54.88 ID:BZnBQ4oPP
使用人「魔王様の部屋から一番離れた場所に部屋をご用意します」
使用人「魔王様は部屋から出ない様に!」
魔王「えええええ!?」
后「仕方無いでしょ。アンタは我慢しなさい」
魔王「……はい」
使用人「では、失礼します」
パタン
側近「……あいつは段々強くなるな」
魔王「最初っからあんな感じだと思うけどな」
癒し手「お心使い、感謝します……魔王様」ヒック
后「な、なんで泣くのよ……」
癒し手「だって、私……まだ、仲間で居て、いいのか、なって……」
魔王「はぁ!?当たり前だろ!阿呆!」
后「そうよ。貴女が居なきゃ」
癒し手「……ハイ」
側近「しかし……」
后「……側近が心配するのも分かるけどね」
癒し手「あの……大丈夫です。ですが……」
魔王「何だ?まだあるなら、全部聞いてやる」
魔王「側近じゃ無いが……隠し事はなしだ、癒し手」
后「そう……私達は、仲間よ。癒し手」
側近「…… ……」
癒し手「はい……我が儘を、一つ」
癒し手「お子様が……勇者様が、お生まれになったら」
癒し手「青年を連れて、もう一度……旅に出させて下さい」
魔王「……ああ、その方が良いだろうな」
側近「待て!俺も……ッ」
癒し手「貴方は、駄目です、側近さん」
側近「何故だ!俺は……ッ」
癒し手「勇者様がお生まれになれば、后様は……後に、勇者様を連れて」
癒し手「ここを出られます」
癒し手「誰が……魔王様を守るのです!」
側近「……!」
癒し手「……貴方は、何の為に魔族になったか……忘れた訳では無い、でしょう?」
側近「……ッ」ガタンッ
スタスタスタ
バタンッ
癒し手「…… ……ッ」
后「……そっとしておきなさい、癒し手」
癒し手「……ハイ」
魔王「俺が……見てくるから。な?」
スタスタスタ
使用人「魔王様は部屋から出ない様に!」
魔王「えええええ!?」
后「仕方無いでしょ。アンタは我慢しなさい」
魔王「……はい」
使用人「では、失礼します」
パタン
側近「……あいつは段々強くなるな」
魔王「最初っからあんな感じだと思うけどな」
癒し手「お心使い、感謝します……魔王様」ヒック
后「な、なんで泣くのよ……」
癒し手「だって、私……まだ、仲間で居て、いいのか、なって……」
魔王「はぁ!?当たり前だろ!阿呆!」
后「そうよ。貴女が居なきゃ」
癒し手「……ハイ」
側近「しかし……」
后「……側近が心配するのも分かるけどね」
癒し手「あの……大丈夫です。ですが……」
魔王「何だ?まだあるなら、全部聞いてやる」
魔王「側近じゃ無いが……隠し事はなしだ、癒し手」
后「そう……私達は、仲間よ。癒し手」
側近「…… ……」
癒し手「はい……我が儘を、一つ」
癒し手「お子様が……勇者様が、お生まれになったら」
癒し手「青年を連れて、もう一度……旅に出させて下さい」
魔王「……ああ、その方が良いだろうな」
側近「待て!俺も……ッ」
癒し手「貴方は、駄目です、側近さん」
側近「何故だ!俺は……ッ」
癒し手「勇者様がお生まれになれば、后様は……後に、勇者様を連れて」
癒し手「ここを出られます」
癒し手「誰が……魔王様を守るのです!」
側近「……!」
癒し手「……貴方は、何の為に魔族になったか……忘れた訳では無い、でしょう?」
側近「……ッ」ガタンッ
スタスタスタ
バタンッ
癒し手「…… ……ッ」
后「……そっとしておきなさい、癒し手」
癒し手「……ハイ」
魔王「俺が……見てくるから。な?」
スタスタスタ
721: 2014/01/14(火) 17:22:57.85 ID:BZnBQ4oPP
后「ねえ、側近や……私は平気なの、癒し手」
癒し手「……? あ、ああ……ハイ。大丈夫です」
后「そう……魔王だけ、なのね」
后「……あ、剣士も、か……」
癒し手「はい……正直、こうして魔王様が傍に居ないだけでも随分……ましです」
后「泣いちゃうわね、あいつ」クス
癒し手「す……すみません」
后「あ、あああ、違うのよ……責めてる訳じゃ」
后「……仕方ないわ。魔王は……魔王だもの」
癒し手「ハイ……でも、大事な仲間です」
后「うん……それだけで、充分よ」
青年「ん、んん……」
癒し手「あ、起きた……青年?」
青年「おかあさん……ここ、どこ?」
癒し手「船着いて……馬車に乗ったの覚えてる?」
青年「……ああ、うん。じゃあ……まおうじょう? ゆうしゃは?」
后「勇者はね、まだ……ここよ」ポン
青年「おかあさんのおなかのなか……」
后「そ…… ……隠してないのね」
癒し手「……はい。側近さんが、全て話そう、と」
癒し手「勇者様が産まれる迄……此処で過ごすんです」
癒し手「成長のスピードを鑑みなくても……隠しようもありません」
后「……そう、ね」
癒し手「もうすぐですよ、后様も」
后「うん……ふふ。産まれたら遊んであげてね」
青年「うん! ……あ、おいしそう……おかあさん、おなかすいた」
后「遠慮せず食べなさい。さっきの馬車に乗ってたお姉ちゃんが作ったのよ」
青年「しようにん!」
后「そうそう……美味しいわよ?」
癒し手「ちゃんと頂きます、して?」
青年「いただきまーす!」
癒し手「……? あ、ああ……ハイ。大丈夫です」
后「そう……魔王だけ、なのね」
后「……あ、剣士も、か……」
癒し手「はい……正直、こうして魔王様が傍に居ないだけでも随分……ましです」
后「泣いちゃうわね、あいつ」クス
癒し手「す……すみません」
后「あ、あああ、違うのよ……責めてる訳じゃ」
后「……仕方ないわ。魔王は……魔王だもの」
癒し手「ハイ……でも、大事な仲間です」
后「うん……それだけで、充分よ」
青年「ん、んん……」
癒し手「あ、起きた……青年?」
青年「おかあさん……ここ、どこ?」
癒し手「船着いて……馬車に乗ったの覚えてる?」
青年「……ああ、うん。じゃあ……まおうじょう? ゆうしゃは?」
后「勇者はね、まだ……ここよ」ポン
青年「おかあさんのおなかのなか……」
后「そ…… ……隠してないのね」
癒し手「……はい。側近さんが、全て話そう、と」
癒し手「勇者様が産まれる迄……此処で過ごすんです」
癒し手「成長のスピードを鑑みなくても……隠しようもありません」
后「……そう、ね」
癒し手「もうすぐですよ、后様も」
后「うん……ふふ。産まれたら遊んであげてね」
青年「うん! ……あ、おいしそう……おかあさん、おなかすいた」
后「遠慮せず食べなさい。さっきの馬車に乗ってたお姉ちゃんが作ったのよ」
青年「しようにん!」
后「そうそう……美味しいわよ?」
癒し手「ちゃんと頂きます、して?」
青年「いただきまーす!」
722: 2014/01/14(火) 17:25:07.83 ID:BZnBQ4oPP
后「ふふ……悔しがるわね、魔王」
癒し手「?」
后「青年君、抱っこしたがってたもの」
癒し手「……もう、赤ちゃんじゃないですけどね」クス
癒し手「でも……そうですね……この子は、多分……大丈夫ですよ」
癒し手「生命力に満ちあふれて居ますから……私の様に、魔王様の傍に居て」
癒し手「命を吸い取られるなんて事は……無いと思います」
癒し手「私の力が……それだけ弱ってる、と言う……事だと思います」
后「でも……緊張してた、んでしょう?」
癒し手「……初めての気配、しかも強大な魔族の物……」
癒し手「エルフは、いろんな事に敏感なので、魔王様の力を察したんだと思いますが」
癒し手「……すぐに、慣れるでしょう。そしたら……平気です。きっと」
后「……そう。ならいいんだけど」
癒し手「……さっき、お話しましたよね」
癒し手「魔王様の力が、強まっているだけで無く、私の力も弱くなっているのだと」
后「……ええ」
癒し手「感じる事が、できなかったんです、ここに来るまで」
后「……?」
癒し手「后様にお会いして、直接目で見て……やっと、宿る物が光であると」
癒し手「確かに、勇者様が産まれてくるのだと……感じました」
癒し手「あの……氏んだ小鳥を飛ばした時には、感じなかったんです」
后「…… ……」
癒し手「ここまで来て、感じられて……ほっとしました」
癒し手「ですが、やはり……」
后「残酷な事を聞くわ……後、どれぐらい?」
癒し手「?」
后「青年君、抱っこしたがってたもの」
癒し手「……もう、赤ちゃんじゃないですけどね」クス
癒し手「でも……そうですね……この子は、多分……大丈夫ですよ」
癒し手「生命力に満ちあふれて居ますから……私の様に、魔王様の傍に居て」
癒し手「命を吸い取られるなんて事は……無いと思います」
癒し手「私の力が……それだけ弱ってる、と言う……事だと思います」
后「でも……緊張してた、んでしょう?」
癒し手「……初めての気配、しかも強大な魔族の物……」
癒し手「エルフは、いろんな事に敏感なので、魔王様の力を察したんだと思いますが」
癒し手「……すぐに、慣れるでしょう。そしたら……平気です。きっと」
后「……そう。ならいいんだけど」
癒し手「……さっき、お話しましたよね」
癒し手「魔王様の力が、強まっているだけで無く、私の力も弱くなっているのだと」
后「……ええ」
癒し手「感じる事が、できなかったんです、ここに来るまで」
后「……?」
癒し手「后様にお会いして、直接目で見て……やっと、宿る物が光であると」
癒し手「確かに、勇者様が産まれてくるのだと……感じました」
癒し手「あの……氏んだ小鳥を飛ばした時には、感じなかったんです」
后「…… ……」
癒し手「ここまで来て、感じられて……ほっとしました」
癒し手「ですが、やはり……」
后「残酷な事を聞くわ……後、どれぐらい?」
723: 2014/01/14(火) 17:32:46.39 ID:BZnBQ4oPP
癒し手「『こればかりは、解りません』」
癒し手「『自分の氏期を悟れるのか否かも……でも』」
后「ここに居る限り、分からない……わよね」
癒し手「はい。それでも……次の勇者様が、魔王様を倒すのには……ぎりぎり」
癒し手「間に合えば、良い、ですけど……」
后「『願えば、叶うわ。きっと……ッ』」
癒し手「…… ……」
癒し手「ああ、そうだ……後で書庫を見せて頂いても?」
后「勿論よ? ……ああ、そうだわ。私も聞きたい事があったの」
癒し手「? はい……なんでしょう」
后「人魚の事よ」
癒し手「……魔詩ですか。私には……効かなかった、けれど」
后「そう……見てもらいたい物もね」
癒し手「?」
后「長くなるし、明日にしましょ……剣士達と立てた仮説、と言うか」
后「……紐解いた結果、とかね」
癒し手「何か……解ったのですか?」
后「解った……とは、言い切れないかなぁ……」
后「……でも、何もしないよりマシ、よね」
癒し手「……はい」
后「とりあえず、その魔石……生成するのに負担は無いの?」
癒し手「魔力を具現化するので……多少は。ですが……」
癒し手「無いとあるのとでは、全然違いますし……」
癒し手「『緑の防護壁……それから、カーテンで』、少しは楽になる筈です」
后「ええ、すぐに準備『してくれるわ。使用人ですもの』」
癒し手「ありがとうございます」
后「『青年君の食事が済んだら、部屋に案内させるわ』……貴女も、今日は休んだら?」
癒し手「ええ……そうですね」
后「後で……ちゃんと側近、行かすから」
癒し手「ええ……」
后「……大丈夫。大丈夫よ、癒し手」
后「私達は……仲間ですもの」
癒し手「『自分の氏期を悟れるのか否かも……でも』」
后「ここに居る限り、分からない……わよね」
癒し手「はい。それでも……次の勇者様が、魔王様を倒すのには……ぎりぎり」
癒し手「間に合えば、良い、ですけど……」
后「『願えば、叶うわ。きっと……ッ』」
癒し手「…… ……」
癒し手「ああ、そうだ……後で書庫を見せて頂いても?」
后「勿論よ? ……ああ、そうだわ。私も聞きたい事があったの」
癒し手「? はい……なんでしょう」
后「人魚の事よ」
癒し手「……魔詩ですか。私には……効かなかった、けれど」
后「そう……見てもらいたい物もね」
癒し手「?」
后「長くなるし、明日にしましょ……剣士達と立てた仮説、と言うか」
后「……紐解いた結果、とかね」
癒し手「何か……解ったのですか?」
后「解った……とは、言い切れないかなぁ……」
后「……でも、何もしないよりマシ、よね」
癒し手「……はい」
后「とりあえず、その魔石……生成するのに負担は無いの?」
癒し手「魔力を具現化するので……多少は。ですが……」
癒し手「無いとあるのとでは、全然違いますし……」
癒し手「『緑の防護壁……それから、カーテンで』、少しは楽になる筈です」
后「ええ、すぐに準備『してくれるわ。使用人ですもの』」
癒し手「ありがとうございます」
后「『青年君の食事が済んだら、部屋に案内させるわ』……貴女も、今日は休んだら?」
癒し手「ええ……そうですね」
后「後で……ちゃんと側近、行かすから」
癒し手「ええ……」
后「……大丈夫。大丈夫よ、癒し手」
后「私達は……仲間ですもの」
724: 2014/01/14(火) 17:36:26.79 ID:BZnBQ4oPP
……
………
…………
魔王「おい、こら脳筋」
側近「…… ……」
魔王「返事ぐらいしろよ……俺が、憎いか?」
側近「……否。そんな事は無い」
側近「自ら望んで……魔族になった。お前を守ると誓ったのは……そのもっと前だ」
側近「その時その時……自分の選んだ道だ。選び取った結果だ……怨むのはお門違いだ」
魔王「…… ……」
側近「辛くないと言えば……嘘になる」
魔王「ああ」
側近「……『側近』と言う立場に居ながら、殆ど……間を置かず癒し手と旅に出た」
魔王「それは良いだろう、別に。やることも殆ど無いし……俺なんか本しか読んでない」
魔王「まさか魔王自らふらふら出歩く訳にいかんしな……だけど」
魔王「お前と癒し手が……代わりに見て、知って……触って感じて来てくれるからな」
側近「『色々あった……な』」
魔王「ああ……后が出産するまで、一年近くある」
魔王「また、ゆっくり聞かせてくれよ、后も……楽しみにしてる」
側近「……ああ」
魔王「…… ……」
側近「…… ……」
魔王「…… ……」
側近「癒し手の事だが………」
魔王「……心配するな。傍には寄らん」
側近「すまん」
魔王「……ちょっと寂しいけどな」
側近「分かっていたことだ」
魔王「……ん?」
側近「俺と……癒し手の、生きる時間が違う事」
側近「俺が人の身であれば、あいつを残して行くだけだった」
側近「魔族となった今は……逆になった。最期を見てやれる」
側近「だが……」
………
…………
魔王「おい、こら脳筋」
側近「…… ……」
魔王「返事ぐらいしろよ……俺が、憎いか?」
側近「……否。そんな事は無い」
側近「自ら望んで……魔族になった。お前を守ると誓ったのは……そのもっと前だ」
側近「その時その時……自分の選んだ道だ。選び取った結果だ……怨むのはお門違いだ」
魔王「…… ……」
側近「辛くないと言えば……嘘になる」
魔王「ああ」
側近「……『側近』と言う立場に居ながら、殆ど……間を置かず癒し手と旅に出た」
魔王「それは良いだろう、別に。やることも殆ど無いし……俺なんか本しか読んでない」
魔王「まさか魔王自らふらふら出歩く訳にいかんしな……だけど」
魔王「お前と癒し手が……代わりに見て、知って……触って感じて来てくれるからな」
側近「『色々あった……な』」
魔王「ああ……后が出産するまで、一年近くある」
魔王「また、ゆっくり聞かせてくれよ、后も……楽しみにしてる」
側近「……ああ」
魔王「…… ……」
側近「…… ……」
魔王「…… ……」
側近「癒し手の事だが………」
魔王「……心配するな。傍には寄らん」
側近「すまん」
魔王「……ちょっと寂しいけどな」
側近「分かっていたことだ」
魔王「……ん?」
側近「俺と……癒し手の、生きる時間が違う事」
側近「俺が人の身であれば、あいつを残して行くだけだった」
側近「魔族となった今は……逆になった。最期を見てやれる」
側近「だが……」
725: 2014/01/14(火) 17:41:20.03 ID:BZnBQ4oPP
魔王「…… ……」
側近「勇者の誕生を待ち、魔王を倒すのを待つ」
側近「それまで……」
魔王「俺たちの方が、先……『と、思いたい、よな』」
側近「それまで、あいつの命が持てばな」
魔王「…… ……」
側近「旅立ちを、許してやってくれ、魔王」
側近「……ぎりぎりまで、俺が一人で……どうにかしてみせる」
側近「だから……ッ」
魔王「……他力本願ってのも、格好悪い話だよな。でも」
魔王「信じてるから……仲間、だからな」
側近「……ああ」
魔王「明日には、甘い物一杯用意しておいてやるよ」
側近「?」
魔王「……お前達が居ない間、色々話し合ったんだぜ」
側近「……全く理解出来る気がしないな」
魔王「努力してくれ……まあ、俺も半分ぐらい解ってないけど」
側近「おい……」
魔王「……仮説しか存在しないんだ。使用人や癒し手……后ほど」
魔王「頭が良い訳でもないしな」
側近「……お前でそれじゃ、俺はもうお手上げだ」
魔王「ま、氏にゃしねぇって」
側近「わからん……」
魔王「……おいおい」
側近「船長達に会った……小さな島にな」
魔王「ん?」
側近「勇者の誕生を待ち、魔王を倒すのを待つ」
側近「それまで……」
魔王「俺たちの方が、先……『と、思いたい、よな』」
側近「それまで、あいつの命が持てばな」
魔王「…… ……」
側近「旅立ちを、許してやってくれ、魔王」
側近「……ぎりぎりまで、俺が一人で……どうにかしてみせる」
側近「だから……ッ」
魔王「……他力本願ってのも、格好悪い話だよな。でも」
魔王「信じてるから……仲間、だからな」
側近「……ああ」
魔王「明日には、甘い物一杯用意しておいてやるよ」
側近「?」
魔王「……お前達が居ない間、色々話し合ったんだぜ」
側近「……全く理解出来る気がしないな」
魔王「努力してくれ……まあ、俺も半分ぐらい解ってないけど」
側近「おい……」
魔王「……仮説しか存在しないんだ。使用人や癒し手……后ほど」
魔王「頭が良い訳でもないしな」
側近「……お前でそれじゃ、俺はもうお手上げだ」
魔王「ま、氏にゃしねぇって」
側近「わからん……」
魔王「……おいおい」
側近「船長達に会った……小さな島にな」
魔王「ん?」
726: 2014/01/14(火) 17:46:41.88 ID:BZnBQ4oPP
側近「……エルフのお姫様、の像があったんだ」
魔王「え!?」
側近「作ったのが誰かは解らんが……姫様がモデルなのは確かだろう」
魔王「……いや、だったら!お前……」
側近「消去法で行けば、お爺様かもな……だが、真実はわからん」
魔王「…… ……」
側近「エルフの里を……見てみたい、と言う」
側近「……癒し手の願い一つ、俺は……叶えてやれなかった、んだ」
魔王「…… ……御免、な」
側近「何でお前が謝る……お前のせいじゃない。誰の所為でも無い。それに」
魔王「……『森は閉じられた』か」
側近「ああ……空に浮かぶあの月を欲しがる様な物だ」
側近「……『願えば叶う』」
魔王「側近……」
側近「願って、叶うのならば……!」ポロポロ
魔王「側近……ッ」ギュ
側近「…… ……」
魔王「……せめて、せめて……終わらせよう」
側近「ああ……『地上であり地上でない、この世の物とも思えない程の楽園』」
側近「この世界が……どこもそんな物に『美しい世界』になれば……良い」
魔王「……ああ」
……
………
…………
魔王「え!?」
側近「作ったのが誰かは解らんが……姫様がモデルなのは確かだろう」
魔王「……いや、だったら!お前……」
側近「消去法で行けば、お爺様かもな……だが、真実はわからん」
魔王「…… ……」
側近「エルフの里を……見てみたい、と言う」
側近「……癒し手の願い一つ、俺は……叶えてやれなかった、んだ」
魔王「…… ……御免、な」
側近「何でお前が謝る……お前のせいじゃない。誰の所為でも無い。それに」
魔王「……『森は閉じられた』か」
側近「ああ……空に浮かぶあの月を欲しがる様な物だ」
側近「……『願えば叶う』」
魔王「側近……」
側近「願って、叶うのならば……!」ポロポロ
魔王「側近……ッ」ギュ
側近「…… ……」
魔王「……せめて、せめて……終わらせよう」
側近「ああ……『地上であり地上でない、この世の物とも思えない程の楽園』」
側近「この世界が……どこもそんな物に『美しい世界』になれば……良い」
魔王「……ああ」
……
………
…………
727: 2014/01/14(火) 18:05:36.25 ID:BZnBQ4oPP
コンコン
癒し手「はい?」
カチャ
使用人「失礼します……癒し手様、お茶にしませんか」
癒し手「ああ……喜んで」
使用人「あら、青年様は?」
癒し手「庭で、魔王様に遊んで貰ってます」フフ
使用人「まあ……」
癒し手「良い天気ですしね」
使用人「后様も此方に来られるそうですので、そのままお待ち下さい」
癒し手「え……私が行きますよ!?」
使用人「防護壁と、カーテンで保護してるこの部屋が一番居心地が良いでしょう?」
使用人「……大丈夫です。すぐに戻りますから」
パタン
癒し手「……何だか、申し訳ないなぁ」ハァ
コンコン、カチャ
后「御免、お待たせ、癒し手!」
癒し手「わ……な、何ですかその本! 持ちますよ!」
后「だ、いじょうぶ……よ!」ドサ!
癒し手「……これ、は……?」
后「読めば解る……取りあえず、この古詩からお願い」
后「……昨日、人魚の話がしたいって言ってたでしょう?」
癒し手「あ、ああ……はい……えっと?」
コンコン、カチャ
癒し手「はい?」
カチャ
使用人「失礼します……癒し手様、お茶にしませんか」
癒し手「ああ……喜んで」
使用人「あら、青年様は?」
癒し手「庭で、魔王様に遊んで貰ってます」フフ
使用人「まあ……」
癒し手「良い天気ですしね」
使用人「后様も此方に来られるそうですので、そのままお待ち下さい」
癒し手「え……私が行きますよ!?」
使用人「防護壁と、カーテンで保護してるこの部屋が一番居心地が良いでしょう?」
使用人「……大丈夫です。すぐに戻りますから」
パタン
癒し手「……何だか、申し訳ないなぁ」ハァ
コンコン、カチャ
后「御免、お待たせ、癒し手!」
癒し手「わ……な、何ですかその本! 持ちますよ!」
后「だ、いじょうぶ……よ!」ドサ!
癒し手「……これ、は……?」
后「読めば解る……取りあえず、この古詩からお願い」
后「……昨日、人魚の話がしたいって言ってたでしょう?」
癒し手「あ、ああ……はい……えっと?」
コンコン、カチャ
728: 2014/01/14(火) 18:14:10.07 ID:BZnBQ4oPP
使用人「! 后様! 私が運びますって言ったのに!」
后「大丈夫だってば……過保護ねぇ、皆揃って」
使用人「妊婦だって言う自覚を持って下さい! 后様!」
癒し手「…… ……」クスクス
使用人「癒し手様も! 此処が一番安全なんですから!」
癒し手「は、はい!」
后「……使用人も、何か話があるんでしょう?」
使用人「え? ……あ、ああ……はい」
癒し手「取りあえず……これを、読めば良い……んですね?」
癒し手「……えっと、全部?」
使用人「そうですね。読んで頂いてからの方が良いかと……思います」
使用人「后様のお話も、私の……も」
癒し手「……分厚いですね」
后「焦らなくて良いわよ?」
癒し手「……まあ、そうですね。2.3日頂ければ……」
后「……ええ。じゃあ、取りあえず一端置いておいて、お茶にしましょ」
后「男共は……放って置いて良いか」
使用人「庭で何して遊んでいらっしゃるんでしょうか」
癒し手「さあ……そこまでは……」ペラ
癒し手「……あれ? 私、これ……知ってる気がします」
后「え!?」
癒し手「……神父様に聞いた……のかな……」
后「だったら……話は早いわ。人魚の『魔詩』よ」
癒し手「ああ……はい。それが何か?」
后「……あれ、その『古詩』と同じじゃ無かった?」
癒し手「え!? ……ちょ、ちょっと待って下さい!?」ペラペラ
癒し手「……そ、そう言われれば、そう……かも、うう、でも……」
癒し手「あの時は、夢中で……はっきり、とは……」
后「……そりゃ、そうか……私達三人とも、ぐったりだったもんね」ハァ
使用人「癒し手様、此方も……この、後編の最後」ペラ
癒し手「……あ!」
后「大丈夫だってば……過保護ねぇ、皆揃って」
使用人「妊婦だって言う自覚を持って下さい! 后様!」
癒し手「…… ……」クスクス
使用人「癒し手様も! 此処が一番安全なんですから!」
癒し手「は、はい!」
后「……使用人も、何か話があるんでしょう?」
使用人「え? ……あ、ああ……はい」
癒し手「取りあえず……これを、読めば良い……んですね?」
癒し手「……えっと、全部?」
使用人「そうですね。読んで頂いてからの方が良いかと……思います」
使用人「后様のお話も、私の……も」
癒し手「……分厚いですね」
后「焦らなくて良いわよ?」
癒し手「……まあ、そうですね。2.3日頂ければ……」
后「……ええ。じゃあ、取りあえず一端置いておいて、お茶にしましょ」
后「男共は……放って置いて良いか」
使用人「庭で何して遊んでいらっしゃるんでしょうか」
癒し手「さあ……そこまでは……」ペラ
癒し手「……あれ? 私、これ……知ってる気がします」
后「え!?」
癒し手「……神父様に聞いた……のかな……」
后「だったら……話は早いわ。人魚の『魔詩』よ」
癒し手「ああ……はい。それが何か?」
后「……あれ、その『古詩』と同じじゃ無かった?」
癒し手「え!? ……ちょ、ちょっと待って下さい!?」ペラペラ
癒し手「……そ、そう言われれば、そう……かも、うう、でも……」
癒し手「あの時は、夢中で……はっきり、とは……」
后「……そりゃ、そうか……私達三人とも、ぐったりだったもんね」ハァ
使用人「癒し手様、此方も……この、後編の最後」ペラ
癒し手「……あ!」
729: 2014/01/14(火) 18:15:28.88 ID:BZnBQ4oPP
おふろとごはーん!
あしたから又、馬車馬さんの如くはたらいてきまっさ……
あしたから又、馬車馬さんの如くはたらいてきまっさ……
736: 2014/01/17(金) 15:59:45.49 ID:zvBn60dLP
后「ね」
癒し手「……繋がって、いる、のですか」
使用人「作者も何もわからないのです。だけど……」
后「普通に考えれば、同一人物が書いた、んでしょうね」
后「使用人が言ってたじゃ無い。もし、この『回り続ける運命の輪』から」
后「何時か、どこかで離れた者がいるのなら、居たのなら……って」
癒し手「……え?」
使用人「そう言う者が居たのなら。これを書いたのかな……いいえ」
使用人「もし、この本と。この世界が繋がっているのなら……」
使用人「違いますね。そうで無ければ、繋がっている、説明にならない」
癒し手「……全てが推測の域、なんでしょうし」
癒し手「全ての真実は……手には入らないんでしょう、けれど」
后「あの、『魔詩』だけれど」
癒し手「はい?」
后「……貴女は、優れた水の加護を持っているから」
后「効き目が無かった……でも、あの時癒し手以外の……私達が見た、あの『夢』」
癒し手「……ええ。知らない筈なのに、随分懐かしい気がしたと」
癒し手「側近さんも……言っていました」
后「使用人の、その話……一つだけ、納得出来ないのがさ」
癒し手「……ああ。そうか」
使用人「言いたいことは……解ります。この本の作者だと仮定して、ですが」
使用人「……『傍観者』が、途中で作られてしまった場合」
癒し手「はい……それは……ッ」ハッ
后「癒し手?」
癒し手「…… ……」
使用人「后様は、弾かれ者が出た時点で、『繰り返しでは無い』と言いたいのですよね?」
后「……まあ、厳密には、ね。厳密にする必要があるのかどうかはわかんないし」
后「『何か』が繰り返されてるとして、少しずつは違ってくる、って事だって……」
癒し手「……それが、本来の意味の『特異点』ですか?」
后「!」
癒し手「……繋がって、いる、のですか」
使用人「作者も何もわからないのです。だけど……」
后「普通に考えれば、同一人物が書いた、んでしょうね」
后「使用人が言ってたじゃ無い。もし、この『回り続ける運命の輪』から」
后「何時か、どこかで離れた者がいるのなら、居たのなら……って」
癒し手「……え?」
使用人「そう言う者が居たのなら。これを書いたのかな……いいえ」
使用人「もし、この本と。この世界が繋がっているのなら……」
使用人「違いますね。そうで無ければ、繋がっている、説明にならない」
癒し手「……全てが推測の域、なんでしょうし」
癒し手「全ての真実は……手には入らないんでしょう、けれど」
后「あの、『魔詩』だけれど」
癒し手「はい?」
后「……貴女は、優れた水の加護を持っているから」
后「効き目が無かった……でも、あの時癒し手以外の……私達が見た、あの『夢』」
癒し手「……ええ。知らない筈なのに、随分懐かしい気がしたと」
癒し手「側近さんも……言っていました」
后「使用人の、その話……一つだけ、納得出来ないのがさ」
癒し手「……ああ。そうか」
使用人「言いたいことは……解ります。この本の作者だと仮定して、ですが」
使用人「……『傍観者』が、途中で作られてしまった場合」
癒し手「はい……それは……ッ」ハッ
后「癒し手?」
癒し手「…… ……」
使用人「后様は、弾かれ者が出た時点で、『繰り返しでは無い』と言いたいのですよね?」
后「……まあ、厳密には、ね。厳密にする必要があるのかどうかはわかんないし」
后「『何か』が繰り返されてるとして、少しずつは違ってくる、って事だって……」
癒し手「……それが、本来の意味の『特異点』ですか?」
后「!」
737: 2014/01/17(金) 16:19:15.64 ID:zvBn60dLP
癒し手「……そもそも、特異点、って」
癒し手「『基準が適用出来ない』と……そう言う意味ですよね?」
使用人「……基準」
癒し手「まあ、確かに……以前と今回……私達を比べてみれば」
癒し手「私は『特異点』かもしれません」
后「……癒し手はエルフの血を引いているから、魔には変じられない、からね」
使用人「癒し手様も、お読みになれば何か『感じられる』かもしれませんが」
使用人「……この、本も……徐々に仲間が減っていくのです」
后「『三』ね」
癒し手「さん……?」
使用人「魔王様が仰って居た、キーワード、です」
癒し手「ああ……『古詩』『小説』『童話』」
后「それに、『三世代』の物語、ね」
使用人「……金の髪の勇者様を1とするならば、確かに、次で終わるんですけど」
癒し手「今回が最初だとすると……ですね」
使用人「そうです。私が『受け継ぐ者』であるのならば」
使用人「……何故、私は生きているのか。まだ」
后「……魔に変じさせた『魔王』が……消えて、しまえば、って言う疑問もね」
使用人「何を『基準』として何を『特異点』と定めるのか」
使用人「……そんな事言ってしまえば、何だってこじつけられてしまいます」
癒し手「…… ……」ペラ
后「癒し手?」
癒し手「母様も……読まれた、んですか」
使用人「姫様、ですか? ……ああ、そう言えば」
使用人「でも……小説の途中まで、だった気が、します」
癒し手「……綺麗な、旋律でした」
后「え?」
癒し手「人魚の魔詩、です。歌詞……と言うのか。言葉までは覚えていませんが」
癒し手「……ですが、途中から随分禍々しいものに変わった、様な気がします」
使用人「美しい旋律で注意を奪い、魅了し……支配する、んでしょうか」
癒し手「『基準が適用出来ない』と……そう言う意味ですよね?」
使用人「……基準」
癒し手「まあ、確かに……以前と今回……私達を比べてみれば」
癒し手「私は『特異点』かもしれません」
后「……癒し手はエルフの血を引いているから、魔には変じられない、からね」
使用人「癒し手様も、お読みになれば何か『感じられる』かもしれませんが」
使用人「……この、本も……徐々に仲間が減っていくのです」
后「『三』ね」
癒し手「さん……?」
使用人「魔王様が仰って居た、キーワード、です」
癒し手「ああ……『古詩』『小説』『童話』」
后「それに、『三世代』の物語、ね」
使用人「……金の髪の勇者様を1とするならば、確かに、次で終わるんですけど」
癒し手「今回が最初だとすると……ですね」
使用人「そうです。私が『受け継ぐ者』であるのならば」
使用人「……何故、私は生きているのか。まだ」
后「……魔に変じさせた『魔王』が……消えて、しまえば、って言う疑問もね」
使用人「何を『基準』として何を『特異点』と定めるのか」
使用人「……そんな事言ってしまえば、何だってこじつけられてしまいます」
癒し手「…… ……」ペラ
后「癒し手?」
癒し手「母様も……読まれた、んですか」
使用人「姫様、ですか? ……ああ、そう言えば」
使用人「でも……小説の途中まで、だった気が、します」
癒し手「……綺麗な、旋律でした」
后「え?」
癒し手「人魚の魔詩、です。歌詞……と言うのか。言葉までは覚えていませんが」
癒し手「……ですが、途中から随分禍々しいものに変わった、様な気がします」
使用人「美しい旋律で注意を奪い、魅了し……支配する、んでしょうか」
738: 2014/01/17(金) 16:28:16.02 ID:zvBn60dLP
癒し手「当たらずとも遠からず、なんでしょうね」
癒し手「……気がついたときには……否。そもそも、気なんて着けないんでしょうけど」
后「もう、遅い……幻覚を見せて、奪い去るのね。『命』を」
使用人「……あれ?でも、あれって」
使用人「その人が本当に望む者の姿を見せる……のでは無いのですか」
后「……私達の本当に望む姿が、あの……『夢』?」
癒し手「……うーん。話に聞く限り、なんか違います、ね?」
后「そうね……本当に『夢』みたいだったわ。感覚的に」
使用人「寝ている時に見る、あれですか」
后「……ああ。そうか。どっちも『夢』なのね」
癒し手「寝てみる『夢』、現実に描く『夢』……」
使用人「……共に、必ず『願い』が含まれています、ね」
癒し手「……複雑、ですね。何が何だか」
バタバタバタ……バタン!
青年「おかあさん、みてみて! ばった!」
側近「……こら、青年! 持って行くなって!」
癒し手「え? バッ…… ……きゃあああああああああああ!?」
后「……でっかいのよね……この庭の虫、って」
使用人「流石に見慣れましたね……触れませんけど」
青年「かわいいね!」
癒し手「こ、拳ぐらいありますよ!?」
后「魔王は?」
側近「……いや、その……もう、来ると思うが」
青年「まおうさまがくれたー!かあさんにみせてやれって!」
青年「かあさん、はい!」スッ
イヤアアアアアアアアアアアアア!
癒し手「……気がついたときには……否。そもそも、気なんて着けないんでしょうけど」
后「もう、遅い……幻覚を見せて、奪い去るのね。『命』を」
使用人「……あれ?でも、あれって」
使用人「その人が本当に望む者の姿を見せる……のでは無いのですか」
后「……私達の本当に望む姿が、あの……『夢』?」
癒し手「……うーん。話に聞く限り、なんか違います、ね?」
后「そうね……本当に『夢』みたいだったわ。感覚的に」
使用人「寝ている時に見る、あれですか」
后「……ああ。そうか。どっちも『夢』なのね」
癒し手「寝てみる『夢』、現実に描く『夢』……」
使用人「……共に、必ず『願い』が含まれています、ね」
癒し手「……複雑、ですね。何が何だか」
バタバタバタ……バタン!
青年「おかあさん、みてみて! ばった!」
側近「……こら、青年! 持って行くなって!」
癒し手「え? バッ…… ……きゃあああああああああああ!?」
后「……でっかいのよね……この庭の虫、って」
使用人「流石に見慣れましたね……触れませんけど」
青年「かわいいね!」
癒し手「こ、拳ぐらいありますよ!?」
后「魔王は?」
側近「……いや、その……もう、来ると思うが」
青年「まおうさまがくれたー!かあさんにみせてやれって!」
青年「かあさん、はい!」スッ
イヤアアアアアアアアアアアアア!
739: 2014/01/17(金) 16:51:32.09 ID:zvBn60dLP
魔王(後で行くよ、とか言っちゃった物の、よく考えたら)
魔王(俺、入れないじゃん……癒し手の部屋……ん、悲鳴?)
魔王「…… ……まさか、本当に持って言った?」
魔王「…… ……」
魔王「……逃げよう」
スタスタ
……
………
…………
シスター「何だ、じゃあ……僧侶の子供は見てないのね」
剣士「……俺は旅に出た、からな。すぐに」
息子「魔導国……いえ、書の街は、どうでしたから」
剣士「人も多く行き来していたし……そうだな」
剣士「普通の街の様に……見えた、な」
シスター「……変わった?」
剣士「あの頃の……あの街に比べれば」
シスター「……そう」
息子「ほっとしました、か?」
シスター「……複雑だわ」
息子「え?」
シスター「戻れる訳でも無いもの。今更」
剣士「何故だ? 行こうと思えば行けるだろう」
シスター「……戻りたくなんか無い」
シスター「いくら、変わったと言ったって……」フゥ
息子「……そう、ですか」ホッ
剣士「?」
息子「あ、いや……ッ そ、その、剣士さん!」
剣士「あ、ああ……?」
息子「き、北の街には何時行きますか!?」
剣士「……俺が一人で行くのが一番早いだろう?」
魔王(俺、入れないじゃん……癒し手の部屋……ん、悲鳴?)
魔王「…… ……まさか、本当に持って言った?」
魔王「…… ……」
魔王「……逃げよう」
スタスタ
……
………
…………
シスター「何だ、じゃあ……僧侶の子供は見てないのね」
剣士「……俺は旅に出た、からな。すぐに」
息子「魔導国……いえ、書の街は、どうでしたから」
剣士「人も多く行き来していたし……そうだな」
剣士「普通の街の様に……見えた、な」
シスター「……変わった?」
剣士「あの頃の……あの街に比べれば」
シスター「……そう」
息子「ほっとしました、か?」
シスター「……複雑だわ」
息子「え?」
シスター「戻れる訳でも無いもの。今更」
剣士「何故だ? 行こうと思えば行けるだろう」
シスター「……戻りたくなんか無い」
シスター「いくら、変わったと言ったって……」フゥ
息子「……そう、ですか」ホッ
剣士「?」
息子「あ、いや……ッ そ、その、剣士さん!」
剣士「あ、ああ……?」
息子「き、北の街には何時行きますか!?」
剣士「……俺が一人で行くのが一番早いだろう?」
740: 2014/01/17(金) 17:10:29.50 ID:zvBn60dLP
剣士「それに、お前はもう村長なんだろう。村を開けない方が良い」
剣士「……魔物だって強くなっているんだ」
シスター「そうよ、息子さん」
シスター「……兄や魔導師だって、決して一人前だなんて言えないんだから」
息子「で、ですが……」
剣士「……そもそも、仕事を探しに来たんだ。無償で宿まで提供して貰ってる」
剣士「遠慮無く使えば良い」
息子「……すみません」
剣士「……兄や魔導師まで、実戦要員、なのか」
シスター「大人が居ないの。最初から、若い人達で一杯の村でも無かったわ」
息子「兄君はともかく……魔導師は」ハァ
剣士「まだ……子供だな」
シスター「……強い魔力を秘めている様だけどね」
剣士「故に……怖い部分はあるな」
シスター「丁度難しい年頃、って言うのもあるのよ」
剣士「…… ……」
息子「……ああ、酒が無くなりましたね。取ってきましょう」
スタスタ、パタン
シスター「……ねえ、ずっとこの村に居るの」
剣士「長くて……2.3年だな」
シスター「誰も……何も言わないわよ」
剣士「……ああ、そうか。お前は……」
シスター「知ってるわ。貴方の見た目が、ずっと変わらない事」
シスター「……命の恩人だって思ってるのは、私だけじゃ無い」
剣士「…… ……」
シスター「あの時も、今も。この村の人達は……」
剣士「……魔物だって強くなっているんだ」
シスター「そうよ、息子さん」
シスター「……兄や魔導師だって、決して一人前だなんて言えないんだから」
息子「で、ですが……」
剣士「……そもそも、仕事を探しに来たんだ。無償で宿まで提供して貰ってる」
剣士「遠慮無く使えば良い」
息子「……すみません」
剣士「……兄や魔導師まで、実戦要員、なのか」
シスター「大人が居ないの。最初から、若い人達で一杯の村でも無かったわ」
息子「兄君はともかく……魔導師は」ハァ
剣士「まだ……子供だな」
シスター「……強い魔力を秘めている様だけどね」
剣士「故に……怖い部分はあるな」
シスター「丁度難しい年頃、って言うのもあるのよ」
剣士「…… ……」
息子「……ああ、酒が無くなりましたね。取ってきましょう」
スタスタ、パタン
シスター「……ねえ、ずっとこの村に居るの」
剣士「長くて……2.3年だな」
シスター「誰も……何も言わないわよ」
剣士「……ああ、そうか。お前は……」
シスター「知ってるわ。貴方の見た目が、ずっと変わらない事」
シスター「……命の恩人だって思ってるのは、私だけじゃ無い」
剣士「…… ……」
シスター「あの時も、今も。この村の人達は……」
741: 2014/01/17(金) 17:17:31.60 ID:zvBn60dLP
剣士「……一所には留まれん」
シスター「……無理矢理引き留めはしないけど」
シスター「暫くは、居てくれるんでしょう」
剣士「…… ……」
シスター「…… ……あ」
剣士「?」
シスター「いやね……雨だわ」
ザアアアアアアアアアアアアアアアア……
剣士「……火が消えるとまずいな」
バタバタ……バタン!
息子「すみません、剣士さん!」
剣士「……ああ」
スタスタ、バタン!
シスター「…… ……」フゥ
シスター(書の街、か……今更)
シスター(子供達を放ってなんて、行けない)
シスター(……帰りたい?)
シスター(帰る場所なんて…… ……)
シスター「……無理矢理引き留めはしないけど」
シスター「暫くは、居てくれるんでしょう」
剣士「…… ……」
シスター「…… ……あ」
剣士「?」
シスター「いやね……雨だわ」
ザアアアアアアアアアアアアアアアア……
剣士「……火が消えるとまずいな」
バタバタ……バタン!
息子「すみません、剣士さん!」
剣士「……ああ」
スタスタ、バタン!
シスター「…… ……」フゥ
シスター(書の街、か……今更)
シスター(子供達を放ってなんて、行けない)
シスター(……帰りたい?)
シスター(帰る場所なんて…… ……)
742: 2014/01/17(金) 17:18:20.01 ID:zvBn60dLP
……
………
…………
ザアアアアアアアアアアアアア……
后(ん……雨……?)
金の髪の男『……か、あ ……さん』ナデ
后(あれ……あの男の子……誰かに似てる)
后(金の髪に……蒼い瞳……誰、だっけ……)
金の髪の男『…… ……』
金の髪の男『ご丁寧に、自分で棺桶まで用意しちゃってさ』
金の髪の男『……氏期まで、悟れるんだったら、さ』
金の髪の男『雨が降りそうな日に、わざわざ……花の手入れなんて……』
后(雨の中に倒れているのは……癒し手!? まさか!)
金の髪の男『全く……間抜けだよ、母さんは……』
后(母さん……じゃあ、あれは……青年!?)
青年?『今日は、久しぶりに……一緒に寝て、良いよね?』
青年?『昔みたいにさ、子守歌、歌ってよ……夢の中で……良い、から』ギュ
青年?『……ふ、小さいな、母さんの身体』
后(!! あの顔は……癒し手! 癒し手……そんな!?)
青年?『明日……雨が上がったらあの丘へ行こう。母さんと、神父様の為に……両手一杯の花を抱えて、さ』
后(青年!せいね……ッ 癒し手!!)
青年?『母さん……おやすみ』
青年?『もう、明日から……朝ご飯を作って、中々起きない僕を起こさなくて良い』
青年?『気にしないで、ゆっくり眠ってくれて良いんだ。母さん………』
青年?『………おやすみ、母さん』ポロポロポロ
后(厭よ、いや……ッ 癒し手……ッ!!)
………
…………
ザアアアアアアアアアアアアア……
后(ん……雨……?)
金の髪の男『……か、あ ……さん』ナデ
后(あれ……あの男の子……誰かに似てる)
后(金の髪に……蒼い瞳……誰、だっけ……)
金の髪の男『…… ……』
金の髪の男『ご丁寧に、自分で棺桶まで用意しちゃってさ』
金の髪の男『……氏期まで、悟れるんだったら、さ』
金の髪の男『雨が降りそうな日に、わざわざ……花の手入れなんて……』
后(雨の中に倒れているのは……癒し手!? まさか!)
金の髪の男『全く……間抜けだよ、母さんは……』
后(母さん……じゃあ、あれは……青年!?)
青年?『今日は、久しぶりに……一緒に寝て、良いよね?』
青年?『昔みたいにさ、子守歌、歌ってよ……夢の中で……良い、から』ギュ
青年?『……ふ、小さいな、母さんの身体』
后(!! あの顔は……癒し手! 癒し手……そんな!?)
青年?『明日……雨が上がったらあの丘へ行こう。母さんと、神父様の為に……両手一杯の花を抱えて、さ』
后(青年!せいね……ッ 癒し手!!)
青年?『母さん……おやすみ』
青年?『もう、明日から……朝ご飯を作って、中々起きない僕を起こさなくて良い』
青年?『気にしないで、ゆっくり眠ってくれて良いんだ。母さん………』
青年?『………おやすみ、母さん』ポロポロポロ
后(厭よ、いや……ッ 癒し手……ッ!!)
743: 2014/01/17(金) 17:24:52.04 ID:zvBn60dLP
……
………
…………
后「いや……ッ」ガバ!
后「…… ……」ハァ……
后(ゆ、め……?)
魔王「んー……?」
魔王(すぅすぅ)
后「…… ……」
后(夢……か…… ……なんて、厭な夢……)ハァ
后(……ああ、でも。夢で良かった……まだ、心臓がどきどきと……)
后「……癒し手…… ……ッ」ズキン
后「ん……? あ、いたた……あら、やだ、これって……」
后(まさか……もしかして、これ……じん、つ……ッ !!)
后「……お、う ……魔王……ッ!」トントン
魔王「なんだよ、后……もうちょっと……」ムニャ
后「あ……ッ い、た……ッ ……ちょ、魔王!起きてよ!」バシッ
魔王「いってぇ!なに……」ムク
后「陣痛よ……癒し手、呼んで…… ……ッ」ウゥ
魔王「あ、え!?うそ、産まれるの!?」ガバ!
后「早く! ……痛いのよ!」バシバシッ
魔王「いてぇ! ……ちょ、使用人ー!」
パタパタパタ……コンコン、バタン!
使用人「魔王様? 如何…… ……!!」
使用人「后様!?」
魔王「癒し手! 産まれる! 早く、早く!」
后「煩い!」バシッ
魔王「ええええええええ」
……
………
…………
………
…………
后「いや……ッ」ガバ!
后「…… ……」ハァ……
后(ゆ、め……?)
魔王「んー……?」
魔王(すぅすぅ)
后「…… ……」
后(夢……か…… ……なんて、厭な夢……)ハァ
后(……ああ、でも。夢で良かった……まだ、心臓がどきどきと……)
后「……癒し手…… ……ッ」ズキン
后「ん……? あ、いたた……あら、やだ、これって……」
后(まさか……もしかして、これ……じん、つ……ッ !!)
后「……お、う ……魔王……ッ!」トントン
魔王「なんだよ、后……もうちょっと……」ムニャ
后「あ……ッ い、た……ッ ……ちょ、魔王!起きてよ!」バシッ
魔王「いってぇ!なに……」ムク
后「陣痛よ……癒し手、呼んで…… ……ッ」ウゥ
魔王「あ、え!?うそ、産まれるの!?」ガバ!
后「早く! ……痛いのよ!」バシバシッ
魔王「いてぇ! ……ちょ、使用人ー!」
パタパタパタ……コンコン、バタン!
使用人「魔王様? 如何…… ……!!」
使用人「后様!?」
魔王「癒し手! 産まれる! 早く、早く!」
后「煩い!」バシッ
魔王「ええええええええ」
……
………
…………
744: 2014/01/17(金) 17:27:35.68 ID:zvBn60dLP
使用人「8分間隔……ですね、もう少し、いきむのは我慢して下さいね、后様」
后「……う、ぅ……ッ ちょっと、痛いのよもっとちゃんと腰さすって!」バシッバシッ
魔王「いてぇ! ……やってるんだってば……」サスサス
后「うぅうう……」
ガチャ
側近「癒し手連れてきたぞ。魔王、出ろ」
魔王「お、おう……癒し手、すまん頼むな」
癒し手「はい!お任せ下さい!」
タタタタ!
側近「……妊婦の怒りは理不尽だぞ。癒し手の時も大変だった」
魔王「おう……大丈夫だ、気にしてない」
癒し手「大丈夫です、魔王様……8分ですか……明け方頃には産まれますよ」
魔王「そんなかかるの!?」
側近「任せておけば大丈夫だ……とにかく、お前は外に出ろ」
魔王「……もうちょっと労って?」
スタスタ、パタン
側近「………」
魔王「………」ウロウロ
側近「………」
魔王「………」ウロウロ
側近「……落ち着け!鬱陶しい」
魔王「落ち着けるかああああ!」
側近「気持ちは分かるがな……実際、男に出来る事は何も無い」
側近「傍に居てやりたいだろうが……」
魔王「いや、それはな。癒し手の事を考えると仕方ないだろう」
魔王「俺より癒し手の方が、今は必要な筈だし」
魔王「……遠慮無しの后のパンチは痛い」
側近「……」プッ
側近「心配するな。俺も……癒し手に相当どつかれた」
魔王「妊婦ってのは……そんなもんか」
側近「そんなもんだ」
魔王「……明け方って言ってたな」ウロウロ
側近「ああ」
魔王「今、何時だ?」
側近「雨だからはっきりは解らんが……もうすぐ日が暮れる位だろう」
后「……う、ぅ……ッ ちょっと、痛いのよもっとちゃんと腰さすって!」バシッバシッ
魔王「いてぇ! ……やってるんだってば……」サスサス
后「うぅうう……」
ガチャ
側近「癒し手連れてきたぞ。魔王、出ろ」
魔王「お、おう……癒し手、すまん頼むな」
癒し手「はい!お任せ下さい!」
タタタタ!
側近「……妊婦の怒りは理不尽だぞ。癒し手の時も大変だった」
魔王「おう……大丈夫だ、気にしてない」
癒し手「大丈夫です、魔王様……8分ですか……明け方頃には産まれますよ」
魔王「そんなかかるの!?」
側近「任せておけば大丈夫だ……とにかく、お前は外に出ろ」
魔王「……もうちょっと労って?」
スタスタ、パタン
側近「………」
魔王「………」ウロウロ
側近「………」
魔王「………」ウロウロ
側近「……落ち着け!鬱陶しい」
魔王「落ち着けるかああああ!」
側近「気持ちは分かるがな……実際、男に出来る事は何も無い」
側近「傍に居てやりたいだろうが……」
魔王「いや、それはな。癒し手の事を考えると仕方ないだろう」
魔王「俺より癒し手の方が、今は必要な筈だし」
魔王「……遠慮無しの后のパンチは痛い」
側近「……」プッ
側近「心配するな。俺も……癒し手に相当どつかれた」
魔王「妊婦ってのは……そんなもんか」
側近「そんなもんだ」
魔王「……明け方って言ってたな」ウロウロ
側近「ああ」
魔王「今、何時だ?」
側近「雨だからはっきりは解らんが……もうすぐ日が暮れる位だろう」
745: 2014/01/17(金) 17:30:13.84 ID:zvBn60dLP
魔王「……さっきから、どれぐらい経った?」
側近「まだ30分も経ってない」
魔王「……」ウロウロ ウロウロ
側近「……お前やっぱり鬱陶しい!」
魔王「お前だって似たようなモンだったんだろ!?」
カチャ
魔王「産まれた!?」
側近「そんな訳無いだろう! ……落ち着け」
使用人「側近様の仰るとおりです、魔王様……落ち着いて下さい」
使用人「順調に陣痛も強くなってますし、このままの調子でいけば」
使用人「日が変わる頃、には」
魔王「……それでもまだまだだな」
使用人「大丈夫です。癒し手様がついていらっしゃいます」
使用人「……僭越ながら、私も」
側近「ああ……青年は?」
使用人「さっきまで興奮していらっしゃった様ですけど」
使用人「今は、后様のベッドの傍で……眠っていらっしゃいます」
側近「……この、大騒ぎの中?」
イヤーオナカイタイーモウヤダー!
キッテー!オナカキッテー!
ダイジョウブデスカラ、キサキサン、オチツイテ!
アアアア、マダイキンジャダメ!
使用人「……はい」
魔王「……大物になるよ、お前の息子は」
側近「まだ30分も経ってない」
魔王「……」ウロウロ ウロウロ
側近「……お前やっぱり鬱陶しい!」
魔王「お前だって似たようなモンだったんだろ!?」
カチャ
魔王「産まれた!?」
側近「そんな訳無いだろう! ……落ち着け」
使用人「側近様の仰るとおりです、魔王様……落ち着いて下さい」
使用人「順調に陣痛も強くなってますし、このままの調子でいけば」
使用人「日が変わる頃、には」
魔王「……それでもまだまだだな」
使用人「大丈夫です。癒し手様がついていらっしゃいます」
使用人「……僭越ながら、私も」
側近「ああ……青年は?」
使用人「さっきまで興奮していらっしゃった様ですけど」
使用人「今は、后様のベッドの傍で……眠っていらっしゃいます」
側近「……この、大騒ぎの中?」
イヤーオナカイタイーモウヤダー!
キッテー!オナカキッテー!
ダイジョウブデスカラ、キサキサン、オチツイテ!
アアアア、マダイキンジャダメ!
使用人「……はい」
魔王「……大物になるよ、お前の息子は」
746: 2014/01/17(金) 17:33:59.85 ID:zvBn60dLP
……
………
…………
魔王「ウロウロするの疲れた」グッタリ
側近「……そんなお前を見るのにも疲れた」グッタリ
魔王「日、落ちたな……完全に」
側近「あれから……3時間程か」
魔王「もうすぐ日が変わるか?」
側近「……お前は時間の計算もできんのか」
魔王「…… ……酷い」
側近「ん……?」
キサキサマ、モウチョットデス!
アタマガミエテマスヨ!
イヤアアア、モウデル、モウデル!
魔王「!」
側近「……随分早いな」
ハイ、イキンデ!
ダイジョウブデス、ダシテイイデス!
魔王「……無茶言うな、癒し手」
側近「使用人もついてるし……大丈夫だろう」
ウゥウウ、アアアァ……ッ
フ…… フエエエエエ……ッ
オギャアアアアッ!
魔王「産まれた!? 産まれたよな!? 側近!!」ガシ!ユサユサ!
側近「……い、痛い痛い……離せ、バカタレ!」
カチャ
使用人「魔王様、側近様、産まれましたよ」ニコ
使用人「可愛い、女の子です」
………
…………
魔王「ウロウロするの疲れた」グッタリ
側近「……そんなお前を見るのにも疲れた」グッタリ
魔王「日、落ちたな……完全に」
側近「あれから……3時間程か」
魔王「もうすぐ日が変わるか?」
側近「……お前は時間の計算もできんのか」
魔王「…… ……酷い」
側近「ん……?」
キサキサマ、モウチョットデス!
アタマガミエテマスヨ!
イヤアアア、モウデル、モウデル!
魔王「!」
側近「……随分早いな」
ハイ、イキンデ!
ダイジョウブデス、ダシテイイデス!
魔王「……無茶言うな、癒し手」
側近「使用人もついてるし……大丈夫だろう」
ウゥウウ、アアアァ……ッ
フ…… フエエエエエ……ッ
オギャアアアアッ!
魔王「産まれた!? 産まれたよな!? 側近!!」ガシ!ユサユサ!
側近「……い、痛い痛い……離せ、バカタレ!」
カチャ
使用人「魔王様、側近様、産まれましたよ」ニコ
使用人「可愛い、女の子です」
747: 2014/01/17(金) 17:43:59.58 ID:zvBn60dLP
魔王「女の子! ……え、女の子!?」
使用人「はい……どうぞ、と言いたいですが」
使用人「先に、癒し手様をお部屋にお連れしますので、魔王様はあちら」スッ
魔王「……ハイ。部屋に戻ります……」
使用人「側近様も、あちら」
側近「……ああ。すまん、青年は?」
使用人「まだ寝てらっしゃいます……一緒にお連れしますから」
側近「……すまん」
パタン
使用人「……もう、良いですよ、癒し手様」
癒し手「ええ……最後まで、寝てましたね、青年……」フゥ
后「……つ、疲れた……ッ」
使用人「お疲れ様でした……后様」
后「うん……でも……可愛い……」
癒し手「……本当に、魔王様にそっくりですね」
使用人「でも……女の子、ですか」
后「え?」
使用人「……いえ。前例、だなんて言う程、見ていません。ですが」
使用人「まさか……男の子以外が産まれると……その」
使用人「思っていませんでした、から」
癒し手「……そう、ですね」
癒し手「私も少し……吃驚しました」
癒し手「でも、おめでたい事に変わりは無いんです」
癒し手「……新たな、命が産まれた、のですから」
后「……そう。そうよね。私達は……喜ばないと……いけないんですもの」
使用人「癒し手様も……もう、お戻り下さい」
使用人「魔王様、きっとまだ部屋の中ウロウロしてますよ」
癒し手「……そうですね」クス
使用人「青年様は私が抱っこしましょう……では、后様」
使用人「すぐに、魔王様を呼んで参りますから」
使用人「はい……どうぞ、と言いたいですが」
使用人「先に、癒し手様をお部屋にお連れしますので、魔王様はあちら」スッ
魔王「……ハイ。部屋に戻ります……」
使用人「側近様も、あちら」
側近「……ああ。すまん、青年は?」
使用人「まだ寝てらっしゃいます……一緒にお連れしますから」
側近「……すまん」
パタン
使用人「……もう、良いですよ、癒し手様」
癒し手「ええ……最後まで、寝てましたね、青年……」フゥ
后「……つ、疲れた……ッ」
使用人「お疲れ様でした……后様」
后「うん……でも……可愛い……」
癒し手「……本当に、魔王様にそっくりですね」
使用人「でも……女の子、ですか」
后「え?」
使用人「……いえ。前例、だなんて言う程、見ていません。ですが」
使用人「まさか……男の子以外が産まれると……その」
使用人「思っていませんでした、から」
癒し手「……そう、ですね」
癒し手「私も少し……吃驚しました」
癒し手「でも、おめでたい事に変わりは無いんです」
癒し手「……新たな、命が産まれた、のですから」
后「……そう。そうよね。私達は……喜ばないと……いけないんですもの」
使用人「癒し手様も……もう、お戻り下さい」
使用人「魔王様、きっとまだ部屋の中ウロウロしてますよ」
癒し手「……そうですね」クス
使用人「青年様は私が抱っこしましょう……では、后様」
使用人「すぐに、魔王様を呼んで参りますから」
748: 2014/01/17(金) 17:48:32.95 ID:zvBn60dLP
スタスタ……パタン
后「……勇者」ツン
勇者(すぅ)
后「…… ……ふふ」
后(勇者……光の、子)
后(……この子は、人間。私は……これで、きっと……)
后(前后様……魔王の、お母様の様に……!)
カチャ、パタン
魔王「后……あの、うん」
后「魔王……」
魔王「お、おぅ……ええと、お疲れさん」
后「女の子、だって……ほら、見て?」
魔王「うん……あぇ、俺そっくりじゃん……」
后「うん、吃驚するぐらい似てる」
魔王「……お前に似たら美人だっただろうになぁ」
后「ふふ……手、見て」
魔王「ああ……あるな、勇者の印」
后「うん……」
魔王「……勇者」
后「……ええ」
魔王「色々、話したい事はあるけど……今日は……ゆっくり休んでくれよ」
后「魔王は?」
魔王「俺も今日は休む……と、横で寝る訳にいかないか、勇者いるしな」
魔王「……明日にでも、ベッドを運ぶ」
后「うん……じゃあ、おやすみなさい」
魔王「ああ……寝ぼけて踏むなよ?」
后「は!?赤ちゃん踏むわけ無いでしょ!?」
魔王「違うわ!俺だ!」
后「……なんで」
魔王「……床で寝るから」
后「……馬鹿?」
魔王「何とでも言え。もう決めた。此処で寝る」ゴロン
后「全く……」フゥ
魔王「……時間が無いんだよ、后。産まれちまった」
后「…… ……」
魔王「氏ぬほど嬉しいんだぜ? ……お前と、俺の子供だ」
后「……ええ」
后「……勇者」ツン
勇者(すぅ)
后「…… ……ふふ」
后(勇者……光の、子)
后(……この子は、人間。私は……これで、きっと……)
后(前后様……魔王の、お母様の様に……!)
カチャ、パタン
魔王「后……あの、うん」
后「魔王……」
魔王「お、おぅ……ええと、お疲れさん」
后「女の子、だって……ほら、見て?」
魔王「うん……あぇ、俺そっくりじゃん……」
后「うん、吃驚するぐらい似てる」
魔王「……お前に似たら美人だっただろうになぁ」
后「ふふ……手、見て」
魔王「ああ……あるな、勇者の印」
后「うん……」
魔王「……勇者」
后「……ええ」
魔王「色々、話したい事はあるけど……今日は……ゆっくり休んでくれよ」
后「魔王は?」
魔王「俺も今日は休む……と、横で寝る訳にいかないか、勇者いるしな」
魔王「……明日にでも、ベッドを運ぶ」
后「うん……じゃあ、おやすみなさい」
魔王「ああ……寝ぼけて踏むなよ?」
后「は!?赤ちゃん踏むわけ無いでしょ!?」
魔王「違うわ!俺だ!」
后「……なんで」
魔王「……床で寝るから」
后「……馬鹿?」
魔王「何とでも言え。もう決めた。此処で寝る」ゴロン
后「全く……」フゥ
魔王「……時間が無いんだよ、后。産まれちまった」
后「…… ……」
魔王「氏ぬほど嬉しいんだぜ? ……お前と、俺の子供だ」
后「……ええ」
749: 2014/01/17(金) 17:53:41.21 ID:zvBn60dLP
魔王「それが『勇者』だったってだけだ」
魔王「……ちょっと、金の瞳で」
魔王「魔王と……魔族の、妻の間に産まれた、ってだけだ」
后「…… ……」
魔王「なのに、人間に産まれて来て……」
魔王「……世界を救う為に」
魔王「魔王を……俺を。父親を……倒す、って。そんな運命に……」
后「魔王……」
魔王「…… ……」
后「…… ……」
魔王「誰なんだろうな。こんな……腐った世界作った奴ってさ」
后「え?」
魔王「良くわかんねぇよ。何で、大人しく……否、仕方無いとは言え、さ」
魔王「……こうやって、大人しく……俺達が、従ってるのか」
魔王「……何で……なんだろう、な」
后「……魔王」
魔王「これすらも決められてる、とか。思いたくネェよな」
魔王「ましてや、ずっとずっと……こんな事繰り返してきてる、とかさ」
后「…… ……決まった訳じゃ無いわ」
后「私達が、勝手に立てた……仮説に過ぎないのよ」
后「真実なんて、誰にも解らないの」
魔王「…… ……」
后「……魔王?」
魔王(すぅ……)
后(寝ちゃった、のか)
勇者(すぅ)
后「……ふふ」チュ
后(ごめんね……勇者)
魔王「……ちょっと、金の瞳で」
魔王「魔王と……魔族の、妻の間に産まれた、ってだけだ」
后「…… ……」
魔王「なのに、人間に産まれて来て……」
魔王「……世界を救う為に」
魔王「魔王を……俺を。父親を……倒す、って。そんな運命に……」
后「魔王……」
魔王「…… ……」
后「…… ……」
魔王「誰なんだろうな。こんな……腐った世界作った奴ってさ」
后「え?」
魔王「良くわかんねぇよ。何で、大人しく……否、仕方無いとは言え、さ」
魔王「……こうやって、大人しく……俺達が、従ってるのか」
魔王「……何で……なんだろう、な」
后「……魔王」
魔王「これすらも決められてる、とか。思いたくネェよな」
魔王「ましてや、ずっとずっと……こんな事繰り返してきてる、とかさ」
后「…… ……決まった訳じゃ無いわ」
后「私達が、勝手に立てた……仮説に過ぎないのよ」
后「真実なんて、誰にも解らないの」
魔王「…… ……」
后「……魔王?」
魔王(すぅ……)
后(寝ちゃった、のか)
勇者(すぅ)
后「……ふふ」チュ
后(ごめんね……勇者)
754: 2014/01/18(土) 13:36:14.88 ID:IQZlSXwDP
……
………
…………
側近「ご苦労だったな、癒し手」
癒し手「いいえ……貴方も、ご苦労様でした」
側近「……可愛かったか?」
癒し手「ああ、まだ見ていなかったんですね……ええ、それはもう」
癒し手「魔王様にそっくりの女の子ですから」
側近「『女の子と聞いて、少し……期待、してた』」
癒し手「『……似ていない事をですか。何か……違うなら、と?』」
側近「『后に似ていれば…… ……』」
癒し手「……でも、大きくなれば似ていらっしゃるかも知れませんよ」
癒し手「髪の色は、后様と同じ赤に近い茶ですし……雰囲気は、ね」
側近「そうか……『解って居たはずだったのにな』」ハァ
癒し手「……勇者の印を戴いて、産まれて来られました」
癒し手「取り上げる前から、溢れんばかりの……光を感じたんです」フゥ
側近「……すまん、疲れただろう。青年は俺が見てるから、休め」
癒し手「……あの」
側近「ん?」
癒し手「……青年も、眠っています。だから」
側近「……まさか、もう行くと言うのか!?」
癒し手「…… ……ごめんなさい、側近さん」
側近「落ち着け、癒し手! ど……どうやって、何処に行く!?」
側近「船も無い! ……それに……!」
癒し手「側近さん」
側近「…… ……」
癒し手「……限界、なんです」
側近「え……?」
癒し手「……もし。もしも、の話です」
癒し手「船長さん……あの、女性の方の、です」
癒し手「……生きていらして。もし、魔除けの石がまだ、出回っていて」
癒し手「ここに……あれば、少し……違ったのかもしれません」
側近「…… ……」
癒し手「もう、小鳥を具現化する事もできません」
側近「!?」
癒し手「それどころか……楽になるからと作った、この」
癒し手「浄化の石をもう一度生成することも」
癒し手「……私の身に、魔力として……戻す事も」
………
…………
側近「ご苦労だったな、癒し手」
癒し手「いいえ……貴方も、ご苦労様でした」
側近「……可愛かったか?」
癒し手「ああ、まだ見ていなかったんですね……ええ、それはもう」
癒し手「魔王様にそっくりの女の子ですから」
側近「『女の子と聞いて、少し……期待、してた』」
癒し手「『……似ていない事をですか。何か……違うなら、と?』」
側近「『后に似ていれば…… ……』」
癒し手「……でも、大きくなれば似ていらっしゃるかも知れませんよ」
癒し手「髪の色は、后様と同じ赤に近い茶ですし……雰囲気は、ね」
側近「そうか……『解って居たはずだったのにな』」ハァ
癒し手「……勇者の印を戴いて、産まれて来られました」
癒し手「取り上げる前から、溢れんばかりの……光を感じたんです」フゥ
側近「……すまん、疲れただろう。青年は俺が見てるから、休め」
癒し手「……あの」
側近「ん?」
癒し手「……青年も、眠っています。だから」
側近「……まさか、もう行くと言うのか!?」
癒し手「…… ……ごめんなさい、側近さん」
側近「落ち着け、癒し手! ど……どうやって、何処に行く!?」
側近「船も無い! ……それに……!」
癒し手「側近さん」
側近「…… ……」
癒し手「……限界、なんです」
側近「え……?」
癒し手「……もし。もしも、の話です」
癒し手「船長さん……あの、女性の方の、です」
癒し手「……生きていらして。もし、魔除けの石がまだ、出回っていて」
癒し手「ここに……あれば、少し……違ったのかもしれません」
側近「…… ……」
癒し手「もう、小鳥を具現化する事もできません」
側近「!?」
癒し手「それどころか……楽になるからと作った、この」
癒し手「浄化の石をもう一度生成することも」
癒し手「……私の身に、魔力として……戻す事も」
755: 2014/01/18(土) 13:53:01.78 ID:IQZlSXwDP
側近「……癒し手」
癒し手「…… ……」フラッ
側近「!」ガシ……ギュウ
癒し手「……離れれば、まだもう少し。生きながらえる事ができるかもしれません」
癒し手「もう少し、青年が……大きく、なるまで」
側近「癒し手……ッ」
癒し手「……すぐに、使用人さんが来て下さいます」
側近「え……」
コンコン
癒し手「……はい」
カチャ
使用人「失礼しま……大丈夫ですか!?」
側近「…… ……」ギュ
癒し手「気にしないで下さい。ありがとうございます、使用人さん」
使用人「……本当に、良いのですか、癒し手様」
側近「どうする……つもりなんだ……」
使用人「……一つだけ、残りがあるんです」
側近「残り?」
使用人「はい…… ……転移石、です」
側近「! 紫の瞳の側近が使った奴か……!」
使用人「ええ……紫の魔王様の魔力の結晶です」
側近「し、しかし、そんな物を使えば、癒し手は……!!」
癒し手「…… ……」フラッ
側近「!」ガシ……ギュウ
癒し手「……離れれば、まだもう少し。生きながらえる事ができるかもしれません」
癒し手「もう少し、青年が……大きく、なるまで」
側近「癒し手……ッ」
癒し手「……すぐに、使用人さんが来て下さいます」
側近「え……」
コンコン
癒し手「……はい」
カチャ
使用人「失礼しま……大丈夫ですか!?」
側近「…… ……」ギュ
癒し手「気にしないで下さい。ありがとうございます、使用人さん」
使用人「……本当に、良いのですか、癒し手様」
側近「どうする……つもりなんだ……」
使用人「……一つだけ、残りがあるんです」
側近「残り?」
使用人「はい…… ……転移石、です」
側近「! 紫の瞳の側近が使った奴か……!」
使用人「ええ……紫の魔王様の魔力の結晶です」
側近「し、しかし、そんな物を使えば、癒し手は……!!」
756: 2014/01/18(土) 17:54:36.50 ID:IQZlSXwDP
癒し手「ここに居ても……同じです」
癒し手「いえ……魔王様の魔力に、晒され続ける事を考えれば……」
側近「…… ……ッ」
使用人「……選択肢が、無いんです。側近様」
使用人「危険では無いとは言えません。ですが……」
癒し手「まだ小さい青年を連れて、一人で旅をするよりも……」
癒し手「直接、目的地に飛べるのなら。そこで……ゆっくり、癒すことも」
癒し手「できるかもしれません。だから……」
側近「目的地……? 始まりの国か?」
癒し手「いいえ……私が育った、教会へ」
側近「し、しかし……!」
癒し手「王子様はともかく。他の人に……どう、貴方が一緒で無い説明をするのです」
側近「…… ……」
癒し手「……神父様が、守って下さいます」
側近「……寄ってくれば良かった。そうすれば……!」
癒し手「もしもの話は……」
使用人「…… ……」
側近「…… ……」
癒し手「……そうだ、使用人さん。これを」コロン
使用人「? ……これは、癒し手様の浄化の石……」
癒し手「勇者様に……何か、力になれれば、良いのですけれど」
使用人「……宜しいのですか、と言うか……大丈夫、なのですか」
癒し手「……私の、自己満足ですけれど。もし良ければ」
使用人「…… ……お預かり、致します。私からも、これを」
側近「布……? 否、袋か」
使用人「防護の魔法をかけてあります。浄化の石……割れてしまわない様に」
癒し手「……ありがとうございます」
側近「…… ……」
癒し手「いえ……魔王様の魔力に、晒され続ける事を考えれば……」
側近「…… ……ッ」
使用人「……選択肢が、無いんです。側近様」
使用人「危険では無いとは言えません。ですが……」
癒し手「まだ小さい青年を連れて、一人で旅をするよりも……」
癒し手「直接、目的地に飛べるのなら。そこで……ゆっくり、癒すことも」
癒し手「できるかもしれません。だから……」
側近「目的地……? 始まりの国か?」
癒し手「いいえ……私が育った、教会へ」
側近「し、しかし……!」
癒し手「王子様はともかく。他の人に……どう、貴方が一緒で無い説明をするのです」
側近「…… ……」
癒し手「……神父様が、守って下さいます」
側近「……寄ってくれば良かった。そうすれば……!」
癒し手「もしもの話は……」
使用人「…… ……」
側近「…… ……」
癒し手「……そうだ、使用人さん。これを」コロン
使用人「? ……これは、癒し手様の浄化の石……」
癒し手「勇者様に……何か、力になれれば、良いのですけれど」
使用人「……宜しいのですか、と言うか……大丈夫、なのですか」
癒し手「……私の、自己満足ですけれど。もし良ければ」
使用人「…… ……お預かり、致します。私からも、これを」
側近「布……? 否、袋か」
使用人「防護の魔法をかけてあります。浄化の石……割れてしまわない様に」
癒し手「……ありがとうございます」
側近「…… ……」
757: 2014/01/18(土) 18:00:17.63 ID:IQZlSXwDP
使用人「では、癒し手様……青年様をお抱きになって下さい」
使用人「……先に、緑の防護壁でお二人を包みます。それから……」
使用人「転移石を握り、願って下さい。行きたい場所を……」
癒し手「……イメージ、するのですね」
使用人「はい」
側近「…… ……」
使用人「……側近様、お離れ下さい」
側近「転移石を、俺に」
使用人「え?」
側近「……魔法をかけるのだろう? 俺も場所は知っている」
側近「防護壁毎……俺が、向こうへと送れば良いのではないか」
使用人「……か、可能ですか、それは」
側近「『願えば叶う』…… ……少しでも負担を減らしてやりたい」
使用人「……解りました。風よ!」
ゴウッ
癒し手「…… ……ッ」
使用人「側近様、これを」コロン
側近「……癒し手!」グッ
癒し手「側近さん……側近さん!」
癒し手「例え、この世が終わっても……貴方を愛しています!」
シュゥウンッ
側近「…… ……癒し手ッ …… ……ッ」
パリンッ
使用人「…… ……」
側近「……ッ」ウ、ゥ……ッ
側近「……癒し手…… ……青年…… ……ッ」
使用人「……先に、緑の防護壁でお二人を包みます。それから……」
使用人「転移石を握り、願って下さい。行きたい場所を……」
癒し手「……イメージ、するのですね」
使用人「はい」
側近「…… ……」
使用人「……側近様、お離れ下さい」
側近「転移石を、俺に」
使用人「え?」
側近「……魔法をかけるのだろう? 俺も場所は知っている」
側近「防護壁毎……俺が、向こうへと送れば良いのではないか」
使用人「……か、可能ですか、それは」
側近「『願えば叶う』…… ……少しでも負担を減らしてやりたい」
使用人「……解りました。風よ!」
ゴウッ
癒し手「…… ……ッ」
使用人「側近様、これを」コロン
側近「……癒し手!」グッ
癒し手「側近さん……側近さん!」
癒し手「例え、この世が終わっても……貴方を愛しています!」
シュゥウンッ
側近「…… ……癒し手ッ …… ……ッ」
パリンッ
使用人「…… ……」
側近「……ッ」ウ、ゥ……ッ
側近「……癒し手…… ……青年…… ……ッ」
773: 2014/01/20(月) 09:54:27.72 ID:niuENoiuP
使用人「……側近、様」
側近「…… ……」
使用人「…… ……」
側近「……すまん。暫く……一人にしてくれ」
使用人「……はい。失礼します」
スタスタ、パタン
使用人「…… ……」
使用人(……すすり泣く、声が聞こえる)
使用人(…… ……)ハァ
スタスタ……コンコン
后「……使用人ね。どうぞ」
使用人「はい」
カチャ
使用人「失礼いたしま……魔王様?」
使用人「……なんで床で寝てるんですか、この人」
后「放っておいてあげて……後でベッドを運ばせるわ」ハァ
使用人「え、ああ……はい……」
后「『……癒し手の気配が消えたわ。青年のも』」
使用人「『!』」
后「『行ってしまった……のね』」
使用人「……私の気配も解った、のですね」
后「ええ……不思議ね」
使用人「え?」
后「確かに、勇者を身籠もってから私の力は強くなってた」
后「……癒し手達が此処に帰って来た時も、気配を探れば」
后「見つけることができた……けど、今は」
使用人「……見つけようとせずとも、解る、のですね」
后「まあ……同じ城の中に居るから、だろうけどね」
使用人「……前后様もそうでした。不思議ではありませんよ」
使用人「ああ……いえ。違いますね。前例があるから、そう思うだけ……」
使用人「……なの、ですね」
后「……私も、完全な『魔』になってしまった、のかしら」
側近「…… ……」
使用人「…… ……」
側近「……すまん。暫く……一人にしてくれ」
使用人「……はい。失礼します」
スタスタ、パタン
使用人「…… ……」
使用人(……すすり泣く、声が聞こえる)
使用人(…… ……)ハァ
スタスタ……コンコン
后「……使用人ね。どうぞ」
使用人「はい」
カチャ
使用人「失礼いたしま……魔王様?」
使用人「……なんで床で寝てるんですか、この人」
后「放っておいてあげて……後でベッドを運ばせるわ」ハァ
使用人「え、ああ……はい……」
后「『……癒し手の気配が消えたわ。青年のも』」
使用人「『!』」
后「『行ってしまった……のね』」
使用人「……私の気配も解った、のですね」
后「ええ……不思議ね」
使用人「え?」
后「確かに、勇者を身籠もってから私の力は強くなってた」
后「……癒し手達が此処に帰って来た時も、気配を探れば」
后「見つけることができた……けど、今は」
使用人「……見つけようとせずとも、解る、のですね」
后「まあ……同じ城の中に居るから、だろうけどね」
使用人「……前后様もそうでした。不思議ではありませんよ」
使用人「ああ……いえ。違いますね。前例があるから、そう思うだけ……」
使用人「……なの、ですね」
后「……私も、完全な『魔』になってしまった、のかしら」
774: 2014/01/20(月) 10:06:08.54 ID:niuENoiuP
使用人「……計る術はありませんね」
后「そうね……私、回復魔法が使えた訳じゃ無いし……まあ、良いわ」
后「……強大な力を感じたわ。癒し手……大丈夫、だった?」
使用人「私の緑の防護壁でお守りして……側近様が、転移石で」
使用人「……教会へ飛ばされました」
后「教会?」
使用人「はい……癒し手様が育たれた……場所と」
后「ああ……鍛冶師の村の近くの小屋、ね」
后「……そこまで、気配をたどれるかしら」ハァ
使用人「……相当、弱っておいでのようでした」
后「!」
使用人「……干渉されない方が、癒し手様の身は安全かもしれません」
后「そう……そうね……いえ、場所さえ解って居れば……」
使用人「…… ……」
后「側近は?」
使用人「……暫く、一人にして置いて欲しい、と」
后「…… ……」
使用人「ああ……それから、癒し手様が、これを」コロン
后「これ……癒し手の浄化の石?」
使用人「はい。勇者様に、と」
后「……嬉しいわ。けど……」
使用人「戻す力が……もう、無いのだそうです」
后「!」
使用人「……后様が仰る様に、場所さえ、解って居れば」
后「……そうね。無事で居てくれるのなら良い……」
后「そう……思わないといけない……のね」ハァ
后「……大丈夫。また後で会える……ッ」
使用人「…… ……」
后「信じてるわよ、癒し手……ッ」ポロポロポロ
后「そうね……私、回復魔法が使えた訳じゃ無いし……まあ、良いわ」
后「……強大な力を感じたわ。癒し手……大丈夫、だった?」
使用人「私の緑の防護壁でお守りして……側近様が、転移石で」
使用人「……教会へ飛ばされました」
后「教会?」
使用人「はい……癒し手様が育たれた……場所と」
后「ああ……鍛冶師の村の近くの小屋、ね」
后「……そこまで、気配をたどれるかしら」ハァ
使用人「……相当、弱っておいでのようでした」
后「!」
使用人「……干渉されない方が、癒し手様の身は安全かもしれません」
后「そう……そうね……いえ、場所さえ解って居れば……」
使用人「…… ……」
后「側近は?」
使用人「……暫く、一人にして置いて欲しい、と」
后「…… ……」
使用人「ああ……それから、癒し手様が、これを」コロン
后「これ……癒し手の浄化の石?」
使用人「はい。勇者様に、と」
后「……嬉しいわ。けど……」
使用人「戻す力が……もう、無いのだそうです」
后「!」
使用人「……后様が仰る様に、場所さえ、解って居れば」
后「……そうね。無事で居てくれるのなら良い……」
后「そう……思わないといけない……のね」ハァ
后「……大丈夫。また後で会える……ッ」
使用人「…… ……」
后「信じてるわよ、癒し手……ッ」ポロポロポロ
775: 2014/01/20(月) 10:15:09.74 ID:niuENoiuP
使用人「…… ……」
后「……魔王!」グイッ
魔王(すぅすぅ)
使用人「良く寝ていらっしゃいますね……お疲れなのでしょうけれど」
使用人「……床、寝にくいと思うんですけど」ハァ
后「ごめん、それ、起こして?」
使用人「分かりました……魔王様?」ユサユサ
魔王「あとごふん……」
使用人「魔王様!」ユサユサユサッ
勇者「ふぇ……おぎゃあああ!」
魔王「はい!?」
魔王「何、どうした! 産まれたの!?」ガバッ
后「起きろ」
魔王「……ああ、そうだ産まれてた」
使用人「…… ……」ハァ
后「しっかりしなさいよ、もう……」
后「……癒し手は、行ったわ」
魔王「え!?」
勇者「うわあああ、あぁああ!」
魔王「お、おう、勇者! どうした」ヨシヨシ
后「お腹すいたのね……はい、どうぞ」
勇者(ちゅっちゅ)
魔王「……そっか」ハァ
使用人「魔王様?」
魔王「俺達……喜ばないと行けないんだよな」
魔王「……癒し手が、此処に居られない、程に」
魔王「こいつは……勇者は、それだけ大きな希望なんだ」
后「…… ……」
魔王「……故に、俺は……俺の力は……」
后「……魔王!」グイッ
魔王(すぅすぅ)
使用人「良く寝ていらっしゃいますね……お疲れなのでしょうけれど」
使用人「……床、寝にくいと思うんですけど」ハァ
后「ごめん、それ、起こして?」
使用人「分かりました……魔王様?」ユサユサ
魔王「あとごふん……」
使用人「魔王様!」ユサユサユサッ
勇者「ふぇ……おぎゃあああ!」
魔王「はい!?」
魔王「何、どうした! 産まれたの!?」ガバッ
后「起きろ」
魔王「……ああ、そうだ産まれてた」
使用人「…… ……」ハァ
后「しっかりしなさいよ、もう……」
后「……癒し手は、行ったわ」
魔王「え!?」
勇者「うわあああ、あぁああ!」
魔王「お、おう、勇者! どうした」ヨシヨシ
后「お腹すいたのね……はい、どうぞ」
勇者(ちゅっちゅ)
魔王「……そっか」ハァ
使用人「魔王様?」
魔王「俺達……喜ばないと行けないんだよな」
魔王「……癒し手が、此処に居られない、程に」
魔王「こいつは……勇者は、それだけ大きな希望なんだ」
后「…… ……」
魔王「……故に、俺は……俺の力は……」
776: 2014/01/20(月) 10:52:55.64 ID:niuENoiuP
使用人「…… ……」
魔王「側近は?」
后「そっとしておいてあげなさい」
魔王「……そっか、そうだよな……悪い」
勇者「ばぶー」
魔王「お?ご機嫌だなぁ……腹一杯になったか?」
后「…… ……」
后(私も何れ……癒し手の様に)
后(……勇者を連れて、此処を離れないと行けない)
使用人「……では、私はそろそろ失礼致します」
后「ありがとう、使用人」
スタスタ、パタン
魔王「…… ……」
后「何へこんでるのよ」
魔王「そりゃ、お前…… ……解ってた、とは言えさ」
魔王「……見送りもしてやれない」
后「……貴方だけじゃないわよ」
魔王「うん……」
后「あ……寝ちゃった、わね」
勇者(すぅ)
魔王「おっOい飲んで、寝て……それが仕事だもんな」ナデ
魔王「抱っこして良い?」
后「え、ええ……勿論」
魔王「……出来るときに、抱っこしとかないとな」
后「…… ……」
魔王「……お前も、何れ……行くんだろ?」
后「…… ……」
魔王「悲しむな。それだって解ってた筈だ」
后「……魔王」ポロポロ
魔王「泣くなよ、后」
魔王「……喜ばなければ行けないんだ。俺達」
后「……ッ」ギュッ
魔王「これで、終わるかもしれないんだ。この子で……否」
魔王「終わらせてくれる。そう……願えば叶うんだよ、后」
……
………
…………
魔王「側近は?」
后「そっとしておいてあげなさい」
魔王「……そっか、そうだよな……悪い」
勇者「ばぶー」
魔王「お?ご機嫌だなぁ……腹一杯になったか?」
后「…… ……」
后(私も何れ……癒し手の様に)
后(……勇者を連れて、此処を離れないと行けない)
使用人「……では、私はそろそろ失礼致します」
后「ありがとう、使用人」
スタスタ、パタン
魔王「…… ……」
后「何へこんでるのよ」
魔王「そりゃ、お前…… ……解ってた、とは言えさ」
魔王「……見送りもしてやれない」
后「……貴方だけじゃないわよ」
魔王「うん……」
后「あ……寝ちゃった、わね」
勇者(すぅ)
魔王「おっOい飲んで、寝て……それが仕事だもんな」ナデ
魔王「抱っこして良い?」
后「え、ええ……勿論」
魔王「……出来るときに、抱っこしとかないとな」
后「…… ……」
魔王「……お前も、何れ……行くんだろ?」
后「…… ……」
魔王「悲しむな。それだって解ってた筈だ」
后「……魔王」ポロポロ
魔王「泣くなよ、后」
魔王「……喜ばなければ行けないんだ。俺達」
后「……ッ」ギュッ
魔王「これで、終わるかもしれないんだ。この子で……否」
魔王「終わらせてくれる。そう……願えば叶うんだよ、后」
……
………
…………
777: 2014/01/20(月) 10:54:47.03 ID:niuENoiuP
バタン!
少女「!」ビクッ
衛生師「…… ……」
少女「な、なんだ……ノックぐらい、してくれ」
スタスタ
衛生師「…… ……」ジィ
少女「…… ……?」
衛生師「正式に、決まった」
少女「な、何がだ?」
衛生師「…… ……」
少女「お、おい……衛生師?」
衛生師「……『王』に、もう……政を任せる事はできない」
少女「……今までも、代行していたのはお前だろう。今更……何を」
衛生師「それだよ」
少女「え?」
衛生師「…… ……僕が、『王』になる」
少女「!?」
衛生師「否、言葉が悪いな……影武者、と言えばいいのか」
少女「な……ッ !?」
衛生師「……今は、許可無く城に誰も……立ち入る事はできない」
衛生師「許可を出さなければ良いだけだ」
少女「……謀る気か!街の人達を……『世界』を!?」
衛生師「王は回復したんだ」
衛生師「……王子様が言っていただろう。『王』を絶やすことは出来ないんだ」
少女「し、しかし、あれは……!」
衛生師「盗賊様の遺言だ。だから……」
少女「……王であると言うだけで良いのならば」
少女「正式にお前が、就任すれば……!」
衛生師「……確かに」
衛生師「『血』に拘る訳じゃないだろうね。王子様も」
衛生師「……盗賊様、も」
少女「で、あれば……尚更だ!」
少女「!」ビクッ
衛生師「…… ……」
少女「な、なんだ……ノックぐらい、してくれ」
スタスタ
衛生師「…… ……」ジィ
少女「…… ……?」
衛生師「正式に、決まった」
少女「な、何がだ?」
衛生師「…… ……」
少女「お、おい……衛生師?」
衛生師「……『王』に、もう……政を任せる事はできない」
少女「……今までも、代行していたのはお前だろう。今更……何を」
衛生師「それだよ」
少女「え?」
衛生師「…… ……僕が、『王』になる」
少女「!?」
衛生師「否、言葉が悪いな……影武者、と言えばいいのか」
少女「な……ッ !?」
衛生師「……今は、許可無く城に誰も……立ち入る事はできない」
衛生師「許可を出さなければ良いだけだ」
少女「……謀る気か!街の人達を……『世界』を!?」
衛生師「王は回復したんだ」
衛生師「……王子様が言っていただろう。『王』を絶やすことは出来ないんだ」
少女「し、しかし、あれは……!」
衛生師「盗賊様の遺言だ。だから……」
少女「……王であると言うだけで良いのならば」
少女「正式にお前が、就任すれば……!」
衛生師「……確かに」
衛生師「『血』に拘る訳じゃないだろうね。王子様も」
衛生師「……盗賊様、も」
少女「で、あれば……尚更だ!」
778: 2014/01/20(月) 11:07:38.22 ID:niuENoiuP
少女「……王子様も、賛成されているのか?」
衛生師「彼は……何も知らない」
少女「!? な……ッ」
衛生師「そもそも、政から……王を遠ざけたのは」
衛生師「王子様と、前国王様だ」
衛生師「それに彼は……もう、引退した身だ」
少女「だからって……!」
衛生師「決定したことだ、少女」
少女「……何故、態々私にそれを知らせに来たんだ、衛生師」
少女「私こそこの国の政に何の関係も無い人間だ!」
少女「……城の中に軟禁されているだけの……ッ」
衛生師「…… ……」
少女「まともな精神状態じゃ無いと聞かされ、王にも長くあっていない」
少女「偶に訪ねてくる王子様か、お前ぐらいとしか話す事も無い!なのに、何故……!」
衛生師「……君は、王子様と話すのを楽しみにしていた様だからね」
少女「それでもだ! ……来られなくなったのならば、心配もするだろう」
少女「だが……!」
衛生師「まあ、確かに僕を問い詰めたりはしないだろう……君は」
衛生師「柳の様にしなやかに受け流し、何れは認め……否、諦めただろう」
少女「……解って居るのならば、尚更」
衛生師「一つ、聞くけど」
少女「え?」
衛生師「……君の位置づけは何?」
少女「は?」
衛生師「この城において、だ」
少女「…… ……」
衛生師「表向き……とかは置いておいて、だ」
衛生師「君は『王の婚約者』だろう?」
少女「今更何を! どれだけの時間が経っていると思っているんだ!」
少女「私がこの国に来てから……王が、あの状態になってから!」
衛生師「……王が言っていた事、覚えて無いの?」
少女「……さっきから、貴方は何が言いたいのだ!」
衛生師「彼は……何も知らない」
少女「!? な……ッ」
衛生師「そもそも、政から……王を遠ざけたのは」
衛生師「王子様と、前国王様だ」
衛生師「それに彼は……もう、引退した身だ」
少女「だからって……!」
衛生師「決定したことだ、少女」
少女「……何故、態々私にそれを知らせに来たんだ、衛生師」
少女「私こそこの国の政に何の関係も無い人間だ!」
少女「……城の中に軟禁されているだけの……ッ」
衛生師「…… ……」
少女「まともな精神状態じゃ無いと聞かされ、王にも長くあっていない」
少女「偶に訪ねてくる王子様か、お前ぐらいとしか話す事も無い!なのに、何故……!」
衛生師「……君は、王子様と話すのを楽しみにしていた様だからね」
少女「それでもだ! ……来られなくなったのならば、心配もするだろう」
少女「だが……!」
衛生師「まあ、確かに僕を問い詰めたりはしないだろう……君は」
衛生師「柳の様にしなやかに受け流し、何れは認め……否、諦めただろう」
少女「……解って居るのならば、尚更」
衛生師「一つ、聞くけど」
少女「え?」
衛生師「……君の位置づけは何?」
少女「は?」
衛生師「この城において、だ」
少女「…… ……」
衛生師「表向き……とかは置いておいて、だ」
衛生師「君は『王の婚約者』だろう?」
少女「今更何を! どれだけの時間が経っていると思っているんだ!」
少女「私がこの国に来てから……王が、あの状態になってから!」
衛生師「……王が言っていた事、覚えて無いの?」
少女「……さっきから、貴方は何が言いたいのだ!」
779: 2014/01/20(月) 11:14:34.93 ID:niuENoiuP
衛生師「……君は何時も、素直に口にするから」
衛生師「僕も臆せず君に倣うけど……少女、ツキノモノは?」
少女「…… ……!?」
衛生師「どれだけ経つと思っている、って言葉、そっくり返す」
衛生師「……僕と、肌を重ねる関係になって?」
少女「!」
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「それと。僕が『王の影武者』になる事が関係無いと思う?」
少女「で……ッ」
衛生師「でも、じゃ無いんだよ」
衛生師「『王の婚約者』が本当に身籠もっていると言う事になれば」
衛生師「表向き、『王』は健在だと思わせておく必要がある」
衛生師「……それに、もし『世継ぎ』が産まれるのであれば」
衛生師「それは……国に取って」
少女「……ッ 都合が良いと、言うのか」
衛生師「勿論だ」
少女「…… ……」
衛生師「僕が正式に『王』になって君との間に『世継ぎ』を作る」
衛生師「……余程良い。それに、僕が王になるのであれば」
衛生師「どう考えたって、君を『伴侶』に選ぶ必要が無い」
少女「…… ……」
衛生師「そこに例え、『愛』があったとしても、だ」
少女「……許されない、と言いたいんだな」
衛生師「……当然だ」
少女「…… ……」
衛生師「僕に『権力』に対する、私利私欲は無い。だが……この国のことは」
衛生師「大事に思ってる」
少女「…… ……」
衛生師「『血』に拘らないのであれば……」
少女「例え誰を謀っても、一見平和な……この国の存続を喜ぶと!?」
衛生師「……否定のしようが無いね」
衛生師「僕も臆せず君に倣うけど……少女、ツキノモノは?」
少女「…… ……!?」
衛生師「どれだけ経つと思っている、って言葉、そっくり返す」
衛生師「……僕と、肌を重ねる関係になって?」
少女「!」
衛生師「…… ……」
少女「…… ……」
衛生師「それと。僕が『王の影武者』になる事が関係無いと思う?」
少女「で……ッ」
衛生師「でも、じゃ無いんだよ」
衛生師「『王の婚約者』が本当に身籠もっていると言う事になれば」
衛生師「表向き、『王』は健在だと思わせておく必要がある」
衛生師「……それに、もし『世継ぎ』が産まれるのであれば」
衛生師「それは……国に取って」
少女「……ッ 都合が良いと、言うのか」
衛生師「勿論だ」
少女「…… ……」
衛生師「僕が正式に『王』になって君との間に『世継ぎ』を作る」
衛生師「……余程良い。それに、僕が王になるのであれば」
衛生師「どう考えたって、君を『伴侶』に選ぶ必要が無い」
少女「…… ……」
衛生師「そこに例え、『愛』があったとしても、だ」
少女「……許されない、と言いたいんだな」
衛生師「……当然だ」
少女「…… ……」
衛生師「僕に『権力』に対する、私利私欲は無い。だが……この国のことは」
衛生師「大事に思ってる」
少女「…… ……」
衛生師「『血』に拘らないのであれば……」
少女「例え誰を謀っても、一見平和な……この国の存続を喜ぶと!?」
衛生師「……否定のしようが無いね」
781: 2014/01/20(月) 11:23:50.34 ID:niuENoiuP
少女「……私は、魔導国の出身だぞ!?」
少女「『王』本人の希望であるのならば、良い! だが……」
少女「貴方が言うように、本来ならば……この状態であるのならば!」
少女「……否。腹に子が居る保証も無い!」
少女「こんな……ッ こんな茶番を演じる必要が何処にある!?」
衛生師「……盗賊様は、魔導国の出身だよ?」
少女「!」
衛生師「領主の血筋がどうとか。あんまり詳しいこと僕は知らないけど」
衛生師「…… ……議論の必要は無いよね」
少女「覆らない……と。言いたいのか」
衛生師「決定した、と言った筈だ。それに……」
衛生師「『人生は茶番の連続』…… ……盗賊様ご本人の言葉、だそうだ」
少女「…… ……」
衛生師「後で医師を連れてくる」
少女「……ッ い、いやだ!」
衛生師「少女」
少女「こんな……ッ こんな事、許される物か!」
衛生師「……諦めてくれ。『未来』の為だ」
少女「何が未来だ! こんな……ッ 偽りだらけの事実に、意味等……!」
衛生師「『美しい世界を望む為』……何れ、勇者が戻ってくる」
衛生師「国に目出度いことがあれば、それだけ……世界も勇気付けられる」
少女「衛生師!」
衛生師「……僕は君が好きだよ。王の寵姫とわかっていたけど」
衛生師「止められなかった。愛してると言ったのも嘘じゃ無い」
衛生師「……けど、何を捨てても守らなければ行けないのは」
衛生師「『王』の居るこの『国』と」
衛生師「……『王』が望んだ、『美しい世界だ』」
少女「衛生師!」
衛生師「……僕は『影武者』だからね」
少女「……ッ」
衛生師「…… ……」
スタスタ、パタン。ガチャン!
少女「『王』本人の希望であるのならば、良い! だが……」
少女「貴方が言うように、本来ならば……この状態であるのならば!」
少女「……否。腹に子が居る保証も無い!」
少女「こんな……ッ こんな茶番を演じる必要が何処にある!?」
衛生師「……盗賊様は、魔導国の出身だよ?」
少女「!」
衛生師「領主の血筋がどうとか。あんまり詳しいこと僕は知らないけど」
衛生師「…… ……議論の必要は無いよね」
少女「覆らない……と。言いたいのか」
衛生師「決定した、と言った筈だ。それに……」
衛生師「『人生は茶番の連続』…… ……盗賊様ご本人の言葉、だそうだ」
少女「…… ……」
衛生師「後で医師を連れてくる」
少女「……ッ い、いやだ!」
衛生師「少女」
少女「こんな……ッ こんな事、許される物か!」
衛生師「……諦めてくれ。『未来』の為だ」
少女「何が未来だ! こんな……ッ 偽りだらけの事実に、意味等……!」
衛生師「『美しい世界を望む為』……何れ、勇者が戻ってくる」
衛生師「国に目出度いことがあれば、それだけ……世界も勇気付けられる」
少女「衛生師!」
衛生師「……僕は君が好きだよ。王の寵姫とわかっていたけど」
衛生師「止められなかった。愛してると言ったのも嘘じゃ無い」
衛生師「……けど、何を捨てても守らなければ行けないのは」
衛生師「『王』の居るこの『国』と」
衛生師「……『王』が望んだ、『美しい世界だ』」
少女「衛生師!」
衛生師「……僕は『影武者』だからね」
少女「……ッ」
衛生師「…… ……」
スタスタ、パタン。ガチャン!
782: 2014/01/20(月) 11:27:43.38 ID:niuENoiuP
少女(! 鍵をかけられた!?)
ドンドン!
少女「衛生師!」
衛生師「…… ……」
スタスタ…… ……
少女「衛生師! 開けろ!開けてくれ……ッ あけ……ッ」
ドンドン! ……ドン!
少女(…… ……私が、懐妊!? まさか……ッ)
少女(衛生師…… ……ッ)
少女(本当に……居る、として)ナデ
少女(何れ、『王』になるだと!? ……ッ 冗談じゃない!)
ドン!
少女(…… ……これが)
少女「これが、本当に王の望みだと思うのか! 衛生師!」
少女「これが……ッ 本当に美しい世界に繋がる未来だと言うのか!!」
……
………
…………
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「……なんだ」
魔導師「!」ビクッ
剣士「俺に何か用か?」
魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ
ドンドン!
少女「衛生師!」
衛生師「…… ……」
スタスタ…… ……
少女「衛生師! 開けろ!開けてくれ……ッ あけ……ッ」
ドンドン! ……ドン!
少女(…… ……私が、懐妊!? まさか……ッ)
少女(衛生師…… ……ッ)
少女(本当に……居る、として)ナデ
少女(何れ、『王』になるだと!? ……ッ 冗談じゃない!)
ドン!
少女(…… ……これが)
少女「これが、本当に王の望みだと思うのか! 衛生師!」
少女「これが……ッ 本当に美しい世界に繋がる未来だと言うのか!!」
……
………
…………
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「……なんだ」
魔導師「!」ビクッ
剣士「俺に何か用か?」
魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ
783: 2014/01/20(月) 11:40:11.95 ID:niuENoiuP
剣士「……用が無ければ、行くぞ」
魔導師「あ……ッ」
剣士「……出てこい。それで隠れているつもりか?」
魔導師「…… ……」
ガサ。スタスタ
剣士「…… ……」
魔導師「剣士さん」
剣士「……なんだ」
魔導師「……魔石は、悪いものなんですか」
剣士「?」
魔導師「始まりの国の騎士様達が、この村の……聖職者様の魔石を」
魔導師「良くない物だと……」
剣士「……ああ。以前俺がこの国に来たときの事か」
剣士「お前は言っていたな。あれを壊さなければこんな事には、と」
魔導師「…… ……」
剣士「あれがあれば」
魔導師「え?」
剣士「……魔王が復活し、勇者が産まれ……」
魔導師「……勇者、様」
剣士「魔物が増え、力を増してきた……今この時に」
剣士「もっと最悪の事態になっていた可能性もあるだろう」
魔導師「……あんな物がなければ。騎士様達があれを壊さなければ」
魔導師「この風邪も、流行らなかったかもしれない」
剣士「…… ……」
魔導師「魔石なんて存在しなければ!」
魔導師「……両親は、そう言って、氏んだんだ」
剣士「『もし』なんて言葉には……意味が無い」
魔導師「…… ……」
剣士「もし俺がこの世に……産まれ、なければ」
剣士「もし、魔王がいなければ。勇者が居なければ?」
魔導師「…… ……」
剣士「お前が産まれていなければ」
魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「魔石は悪い物か、だったな」
魔導師「え……あ、はい」
魔導師「あ……ッ」
剣士「……出てこい。それで隠れているつもりか?」
魔導師「…… ……」
ガサ。スタスタ
剣士「…… ……」
魔導師「剣士さん」
剣士「……なんだ」
魔導師「……魔石は、悪いものなんですか」
剣士「?」
魔導師「始まりの国の騎士様達が、この村の……聖職者様の魔石を」
魔導師「良くない物だと……」
剣士「……ああ。以前俺がこの国に来たときの事か」
剣士「お前は言っていたな。あれを壊さなければこんな事には、と」
魔導師「…… ……」
剣士「あれがあれば」
魔導師「え?」
剣士「……魔王が復活し、勇者が産まれ……」
魔導師「……勇者、様」
剣士「魔物が増え、力を増してきた……今この時に」
剣士「もっと最悪の事態になっていた可能性もあるだろう」
魔導師「……あんな物がなければ。騎士様達があれを壊さなければ」
魔導師「この風邪も、流行らなかったかもしれない」
剣士「…… ……」
魔導師「魔石なんて存在しなければ!」
魔導師「……両親は、そう言って、氏んだんだ」
剣士「『もし』なんて言葉には……意味が無い」
魔導師「…… ……」
剣士「もし俺がこの世に……産まれ、なければ」
剣士「もし、魔王がいなければ。勇者が居なければ?」
魔導師「…… ……」
剣士「お前が産まれていなければ」
魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「魔石は悪い物か、だったな」
魔導師「え……あ、はい」
784: 2014/01/20(月) 11:48:09.57 ID:niuENoiuP
剣士「……聖職者の魔石。あれ自体は確かに……良くない物だ」
魔導師「!?」
剣士「だが、魔石そのものが悪いかどうか。それは俺には解らん」
魔導師「で、でも徳のある聖職者様……この村の、伝説の……」
剣士「俺は詳しくは知らん。だが」
剣士「……魔物を引き寄せ魅了する石。結果として村が守られていただけだ」
剣士「さっきも言った。魔物が力を増し、石に惹かれるだけに留まらなければ?」
魔導師「…… ……」
剣士「それを『聖職者』が本当に作ったと思うか?」
魔導師「え…… ……」
剣士「……まあ、良い」フゥ
魔導師「……剣士さんも、僕が子供だから……」
剣士「子供に間違いは無いだろう……ああ」
魔導師「?」
剣士「……お前、い…… ……僧侶に、何か貰っただろう」
魔導師「え……あ、は、はい。ああ、そうですね」
魔導師「剣士さんは……僧侶様とお知り合いでしたね」ゴソゴソ
魔導師「……僧侶様は、魔除けの石だと……僕に、くれました」
剣士「……あいつの魔石か」フゥ
魔導師「? ……聞いてたんじゃ無いんですか?」
剣士「ああ……そうだな」
剣士(気配で解る、とは……言えんな。気をつけないと)
魔導師「…… ……落ち着くんです。身につけていると」
魔導師「癒されている気に、なります」
剣士「……それは、良くない物か?」
魔導師「! まさか!」
剣士「ならば、魔石そのものが悪い訳では無いと」
剣士「……お前は身をもって知っている、のだろう」
魔導師「……あ」
剣士「お前はまだ幼い。だが……」
剣士「……視野を広げる事は大切だ。物事を正しく……見る為に」
魔導師「正しく……?」
剣士「真実は一つでは……無いかも知れん」
剣士「……だが、目で見てしまった物を、否定するのは難しいだろう?」
魔導師「!?」
剣士「だが、魔石そのものが悪いかどうか。それは俺には解らん」
魔導師「で、でも徳のある聖職者様……この村の、伝説の……」
剣士「俺は詳しくは知らん。だが」
剣士「……魔物を引き寄せ魅了する石。結果として村が守られていただけだ」
剣士「さっきも言った。魔物が力を増し、石に惹かれるだけに留まらなければ?」
魔導師「…… ……」
剣士「それを『聖職者』が本当に作ったと思うか?」
魔導師「え…… ……」
剣士「……まあ、良い」フゥ
魔導師「……剣士さんも、僕が子供だから……」
剣士「子供に間違いは無いだろう……ああ」
魔導師「?」
剣士「……お前、い…… ……僧侶に、何か貰っただろう」
魔導師「え……あ、は、はい。ああ、そうですね」
魔導師「剣士さんは……僧侶様とお知り合いでしたね」ゴソゴソ
魔導師「……僧侶様は、魔除けの石だと……僕に、くれました」
剣士「……あいつの魔石か」フゥ
魔導師「? ……聞いてたんじゃ無いんですか?」
剣士「ああ……そうだな」
剣士(気配で解る、とは……言えんな。気をつけないと)
魔導師「…… ……落ち着くんです。身につけていると」
魔導師「癒されている気に、なります」
剣士「……それは、良くない物か?」
魔導師「! まさか!」
剣士「ならば、魔石そのものが悪い訳では無いと」
剣士「……お前は身をもって知っている、のだろう」
魔導師「……あ」
剣士「お前はまだ幼い。だが……」
剣士「……視野を広げる事は大切だ。物事を正しく……見る為に」
魔導師「正しく……?」
剣士「真実は一つでは……無いかも知れん」
剣士「……だが、目で見てしまった物を、否定するのは難しいだろう?」
786: 2014/01/20(月) 12:31:19.60 ID:niuENoiuP
魔導師「…… ……良く、わかりません」
剣士「……だろうな」
魔導師「あの!」
剣士「……まだ何かあるのか」
魔導師「魔王が復活するから、魔物が強くなっているのですか」
魔導師「でも……勇者、様も復活される、んですよね?」
剣士「僧侶からそう聞いている」
魔導師「僧侶様が……」
剣士「それが真実かどうか……信じる事はできる。疑うこともな」
魔導師「??」
剣士「……知りたいと思うのならば、己が目で確かめろ」
魔導師「僕、が」
剣士「魔王や勇者の事だけじゃない。何事も……だ」
魔導師「……自分、で? 自分の目で?」
剣士「…… ……」クルッ
魔導師「あ……」
スタスタ
魔導師(自分の目で、僕が……確かめる?)
魔導師(目で見たことは……信じないのが難しい?)
魔導師(……わかるような、わからないような)
魔導師(大人になったら、解る……のかな?)
魔導師(……魔石。僧侶様の)ギュッ
スタスタ
シスター「魔導師?」
魔導師「!」ビクッ
シスター「孤児院に来ないから心配するじゃないの」
魔導師「あ……ご、ごめんなさい」
シスター「ただでさえ物騒なんだから」ハァ
魔導師「……でも、剣士さんが来てから、村の中には魔物は……」
シスター「確かにね。入ってこなくはなったけど」
剣士「……だろうな」
魔導師「あの!」
剣士「……まだ何かあるのか」
魔導師「魔王が復活するから、魔物が強くなっているのですか」
魔導師「でも……勇者、様も復活される、んですよね?」
剣士「僧侶からそう聞いている」
魔導師「僧侶様が……」
剣士「それが真実かどうか……信じる事はできる。疑うこともな」
魔導師「??」
剣士「……知りたいと思うのならば、己が目で確かめろ」
魔導師「僕、が」
剣士「魔王や勇者の事だけじゃない。何事も……だ」
魔導師「……自分、で? 自分の目で?」
剣士「…… ……」クルッ
魔導師「あ……」
スタスタ
魔導師(自分の目で、僕が……確かめる?)
魔導師(目で見たことは……信じないのが難しい?)
魔導師(……わかるような、わからないような)
魔導師(大人になったら、解る……のかな?)
魔導師(……魔石。僧侶様の)ギュッ
スタスタ
シスター「魔導師?」
魔導師「!」ビクッ
シスター「孤児院に来ないから心配するじゃないの」
魔導師「あ……ご、ごめんなさい」
シスター「ただでさえ物騒なんだから」ハァ
魔導師「……でも、剣士さんが来てから、村の中には魔物は……」
シスター「確かにね。入ってこなくはなったけど」
787: 2014/01/20(月) 13:00:22.94 ID:niuENoiuP
シスター「でも……前と同じ。彼だって何時までもここに居る訳じゃ無いのよ」
シスター「……その間に、自衛の術を身につけないと」
魔導師「……うん」
シスター「さ、行きましょう。皆待ってるわよ」
魔導師「兄さんは?」
シスター「息子さんと一緒に見回りに行ったわ」
シスター「……貴方は、もう少し大きくなったらね」
魔導師「…… ……」
シスター「……貴方が、優れた氷の魔法の使い手なのは解ってるけど」
シスター「まだ、子供なんだから」
魔導師「……わかってるよ。皆に本を読んであげれば良いんだろう?」
シスター「相手をしてくれて助かるのよ? ……皆、不安なのは一緒なのよ」
シスター「戦うだけが、誰かを守る事じゃないの」
シスター「不安を取り除いてあげる為に、傍に居てあげるだけでも……」
魔導師「わかってる、ってば!」
スタスタ
シスター「あ ……もう」フゥ
シスター(仕方無いんでしょうけど……)
タタタ……
シスター「午後からは鍛冶場の片付け、手伝ってね!」
魔導師「え?」
シスター「お昼を食べたら子供達を寝かさないと」
魔導師「……解ったよ。やれば良いんだろ」ハァ
……
………
…………
シスター「……その間に、自衛の術を身につけないと」
魔導師「……うん」
シスター「さ、行きましょう。皆待ってるわよ」
魔導師「兄さんは?」
シスター「息子さんと一緒に見回りに行ったわ」
シスター「……貴方は、もう少し大きくなったらね」
魔導師「…… ……」
シスター「……貴方が、優れた氷の魔法の使い手なのは解ってるけど」
シスター「まだ、子供なんだから」
魔導師「……わかってるよ。皆に本を読んであげれば良いんだろう?」
シスター「相手をしてくれて助かるのよ? ……皆、不安なのは一緒なのよ」
シスター「戦うだけが、誰かを守る事じゃないの」
シスター「不安を取り除いてあげる為に、傍に居てあげるだけでも……」
魔導師「わかってる、ってば!」
スタスタ
シスター「あ ……もう」フゥ
シスター(仕方無いんでしょうけど……)
タタタ……
シスター「午後からは鍛冶場の片付け、手伝ってね!」
魔導師「え?」
シスター「お昼を食べたら子供達を寝かさないと」
魔導師「……解ったよ。やれば良いんだろ」ハァ
……
………
…………
788: 2014/01/20(月) 13:10:06.15 ID:niuENoiuP
カチャ、パタン
魔王「……ん、后か?」
后「ええ……」プッ
魔王「な、何だよ」
后「背中に、勇者が乗ってる……」クスクス
魔王「……重いと思ったら、やっぱりか」ハァ
魔王「振り落とさなくて良かった……后、それより」
后「え?」
魔王「明かり着けてくれよ……よく寝てるなら起きないだろ?」
魔王「つか、こんな暗い中でよく見えるなお前」
后「…… ……」
魔王「后? ……ッ」ハッ
魔王「……俺の目が、見えてない、のか」
后「……目、開けて。魔王」
魔王「ん? ……ん」
后「…… ……」
魔王「何だよ」
后「……まだ、金色だな、と思って」
后「勇者、だっこするわ……起き上がれる?」
魔王「あ、ああ…… ……ッ」ズキン!
后「魔王!?」
魔王「……ッ」ゥ……
后「……痛むのね。使用人!使用人!」
魔王「い、い……后、だい…… ……ッ」
パタパタパタ……バタン!
使用人「后様、魔王様!?」
后「…… ……」
魔王「う、ぅ…… ……ッ」
使用人「! ……痛みますか、魔王様」
魔王「…… ……ッ」
魔王「……ん、后か?」
后「ええ……」プッ
魔王「な、何だよ」
后「背中に、勇者が乗ってる……」クスクス
魔王「……重いと思ったら、やっぱりか」ハァ
魔王「振り落とさなくて良かった……后、それより」
后「え?」
魔王「明かり着けてくれよ……よく寝てるなら起きないだろ?」
魔王「つか、こんな暗い中でよく見えるなお前」
后「…… ……」
魔王「后? ……ッ」ハッ
魔王「……俺の目が、見えてない、のか」
后「……目、開けて。魔王」
魔王「ん? ……ん」
后「…… ……」
魔王「何だよ」
后「……まだ、金色だな、と思って」
后「勇者、だっこするわ……起き上がれる?」
魔王「あ、ああ…… ……ッ」ズキン!
后「魔王!?」
魔王「……ッ」ゥ……
后「……痛むのね。使用人!使用人!」
魔王「い、い……后、だい…… ……ッ」
パタパタパタ……バタン!
使用人「后様、魔王様!?」
后「…… ……」
魔王「う、ぅ…… ……ッ」
使用人「! ……痛みますか、魔王様」
魔王「…… ……ッ」
789: 2014/01/20(月) 13:16:01.86 ID:niuENoiuP
使用人「……側近様を呼んで参ります」
后「…… ……」
使用人「魔王様、少しお待ちを……后様」
后「……大丈夫よ。ちゃんと……覚悟はしてたわ」
使用人「……魔王様を別のお部屋へ移しましょう」
后「私達が移動すれば良いんじゃないの?」
使用人「……いえ。何れ、本当に動けなくなった時に」
使用人「ありったけの魔力をぶつけ、魔王様を押さえるには……此処では」
后「…… ……」
カチャ
側近「今のは何だ…… ……ッ 魔王!?」
使用人「側近様!」
側近「……大きな魔力を感じた。俺が感じるぐらいだ」
側近「これが……そう、なんだな」
后「…… ……」
使用人「側近様、魔王様を…… ……玉座の奥のお部屋へ」
側近「……俺達が、金の髪の魔王と対峙した部屋か」
使用人「……はい」
后「…… ……」
使用人「后様はお近づきになられませんよう」
后「え!?」
使用人「すぐに……『魔王』の闇が、『勇者』の光の残照を飲み込みます」
使用人「いくら、勇者様が……溢れんばかりの光を持って居られようと」
使用人「幼子です……ですから」
后「……解った、わ」
后「…… ……」
使用人「魔王様、少しお待ちを……后様」
后「……大丈夫よ。ちゃんと……覚悟はしてたわ」
使用人「……魔王様を別のお部屋へ移しましょう」
后「私達が移動すれば良いんじゃないの?」
使用人「……いえ。何れ、本当に動けなくなった時に」
使用人「ありったけの魔力をぶつけ、魔王様を押さえるには……此処では」
后「…… ……」
カチャ
側近「今のは何だ…… ……ッ 魔王!?」
使用人「側近様!」
側近「……大きな魔力を感じた。俺が感じるぐらいだ」
側近「これが……そう、なんだな」
后「…… ……」
使用人「側近様、魔王様を…… ……玉座の奥のお部屋へ」
側近「……俺達が、金の髪の魔王と対峙した部屋か」
使用人「……はい」
后「…… ……」
使用人「后様はお近づきになられませんよう」
后「え!?」
使用人「すぐに……『魔王』の闇が、『勇者』の光の残照を飲み込みます」
使用人「いくら、勇者様が……溢れんばかりの光を持って居られようと」
使用人「幼子です……ですから」
后「……解った、わ」
790: 2014/01/20(月) 13:22:17.18 ID:niuENoiuP
側近「……良い、俺一人で行ける」
使用人「し、しかし……」
側近「他にやる事があるだろう?」チラ
后「!」
側近「…… ……時間が無い。后」
側近「魔王、ちょっと我慢しろよ」
魔王「……お、ぅ……ッ」
側近「ん、重いなお前……使用人、ドア開けてくれ」
使用人「は、はい! ……すぐ、行きますから」
カチャ
側近「良い。そっちを優先しろ」
スタスタ、ズルズル……
使用人「……后様」
后「……癒し手の石も、持ったわ。行く場所も解ってる」
使用人「……はい」
后「後は…… ……」
使用人「すぐに、光の剣をお持ちします」
后「…… ……」
パタパタ……
后「魔王……ッ」ギュ
勇者「あぅ」
后「あ、ご、御免ね……!?」
勇者「うー」
后(私は……この子を、育てなければ行けない……ッ)
后(この子、を……未来へと、送り出さなければ行けない……ッ)
使用人「し、しかし……」
側近「他にやる事があるだろう?」チラ
后「!」
側近「…… ……時間が無い。后」
側近「魔王、ちょっと我慢しろよ」
魔王「……お、ぅ……ッ」
側近「ん、重いなお前……使用人、ドア開けてくれ」
使用人「は、はい! ……すぐ、行きますから」
カチャ
側近「良い。そっちを優先しろ」
スタスタ、ズルズル……
使用人「……后様」
后「……癒し手の石も、持ったわ。行く場所も解ってる」
使用人「……はい」
后「後は…… ……」
使用人「すぐに、光の剣をお持ちします」
后「…… ……」
パタパタ……
后「魔王……ッ」ギュ
勇者「あぅ」
后「あ、ご、御免ね……!?」
勇者「うー」
后(私は……この子を、育てなければ行けない……ッ)
后(この子、を……未来へと、送り出さなければ行けない……ッ)
791: 2014/01/20(月) 13:26:39.09 ID:niuENoiuP
カチャ
使用人「……お待たせ致しました!」
后「使用人、ちょっとだけ勇者を預かってて頂戴」
使用人「え、あ……はい!?」
后「……忘れ物、したわ」
使用人「え、ええ……」
后「大丈夫よ。すぐに戻る……すぐ、行くわ」
后「……御免ね、勇者。ちょっとだけ待ってて」
パタパタ……
勇者「ぁうー」
使用人「良し、良し……」ナデ
使用人(魔王様……随分、早い気がする。でも)
使用人(……前も、こうだった筈だ)
使用人(何度……繰り返すのだろう。本当に……これで終わる、の?)
……
………
…………
カチャ
后「…… ……」
側近「后!?」
后「大丈夫。勇者は使用人が抱いてくれてる」
側近「……あ、ああ……どうした?」
后「時間が無いって言ったのは貴方よ、側近」
側近「……そう、か。そうだな……すまん」
后「……忘れ物、したの」
魔王「き、さき…… ……? どう、し……た」
后「魔王……行ってくる」
使用人「……お待たせ致しました!」
后「使用人、ちょっとだけ勇者を預かってて頂戴」
使用人「え、あ……はい!?」
后「……忘れ物、したわ」
使用人「え、ええ……」
后「大丈夫よ。すぐに戻る……すぐ、行くわ」
后「……御免ね、勇者。ちょっとだけ待ってて」
パタパタ……
勇者「ぁうー」
使用人「良し、良し……」ナデ
使用人(魔王様……随分、早い気がする。でも)
使用人(……前も、こうだった筈だ)
使用人(何度……繰り返すのだろう。本当に……これで終わる、の?)
……
………
…………
カチャ
后「…… ……」
側近「后!?」
后「大丈夫。勇者は使用人が抱いてくれてる」
側近「……あ、ああ……どうした?」
后「時間が無いって言ったのは貴方よ、側近」
側近「……そう、か。そうだな……すまん」
后「……忘れ物、したの」
魔王「き、さき…… ……? どう、し……た」
后「魔王……行ってくる」
792: 2014/01/20(月) 13:31:18.60 ID:niuENoiuP
魔王「……あ、ぁ ……そう、だな」
后「ねぇ……ペンダント、まだしてる?」
魔王「……わ、すれ ……てた」
魔王「おま……え、に。ゆ…… ……しゃ、に」
后「うん。頂戴……良いわよね?」
魔王「あ…… た、ま……え。だろ……」
魔王「……はず、し…… ……く、れ」
后「うん……」ポロポロ
側近「…… ……先に、戻るぞ」
后「良いのよ。話したい事もあるの。ちょっと待って」
側近「?」
后「……ありがとう、魔王。愛してるわ」チュ。チャリン
后「ちゃんと、勇者に渡すから。ね?」
魔王「……ん」
側近「…… ……」
后「じゃあ、行ってきます。泣いちゃ駄目よ?」
后「すぐ……たった16年よ。すぐに戻るんだから」
魔王「…… ……」
后「……行きましょう、側近」
側近「あ……ああ」
パタン
側近「……話、とは?」
后「……この子を産む前の日。妙な夢を見たわ」
側近「夢……?」
后「青年だろう……と思う。金の髪に蒼い瞳の男が」
后「……雨の中に伏して、息絶えた美しい女性を母さんと呼んでた」
側近「!?」
后「目を開けてくれ、と……泣いてた」
側近「な……ッ」
后「夢よ、側近……でも……ッ」
后「……伝えて、置くわ。どうするかは……貴方に任せる」
側近「…… ……」
后「ねぇ……ペンダント、まだしてる?」
魔王「……わ、すれ ……てた」
魔王「おま……え、に。ゆ…… ……しゃ、に」
后「うん。頂戴……良いわよね?」
魔王「あ…… た、ま……え。だろ……」
魔王「……はず、し…… ……く、れ」
后「うん……」ポロポロ
側近「…… ……先に、戻るぞ」
后「良いのよ。話したい事もあるの。ちょっと待って」
側近「?」
后「……ありがとう、魔王。愛してるわ」チュ。チャリン
后「ちゃんと、勇者に渡すから。ね?」
魔王「……ん」
側近「…… ……」
后「じゃあ、行ってきます。泣いちゃ駄目よ?」
后「すぐ……たった16年よ。すぐに戻るんだから」
魔王「…… ……」
后「……行きましょう、側近」
側近「あ……ああ」
パタン
側近「……話、とは?」
后「……この子を産む前の日。妙な夢を見たわ」
側近「夢……?」
后「青年だろう……と思う。金の髪に蒼い瞳の男が」
后「……雨の中に伏して、息絶えた美しい女性を母さんと呼んでた」
側近「!?」
后「目を開けてくれ、と……泣いてた」
側近「な……ッ」
后「夢よ、側近……でも……ッ」
后「……伝えて、置くわ。どうするかは……貴方に任せる」
側近「…… ……」
793: 2014/01/20(月) 13:37:09.69 ID:niuENoiuP
スタスタ、カチャ
使用人「后様……側近様、も」
后「ご免なさい、使用人……ありがとう」
側近「…… ……」
使用人「側近様……? お顔の色が……」
側近「……后が先だ」
后「……不思議よね。この子を産んでから、本当に力が沸いてくる様だわ」
后「…… ……側近、使用人。魔王を……お願いね」
使用人「……はい」
側近「后」
后「……また後で、よ、側近」
后「大丈夫。癒し手だって、そう願ってる筈!」
使用人「……?」
后「……勇者」ギュ
勇者「だぁ」
后「……行くわ」
シュゥン……ッ
側近「!」
使用人「…… ……」
側近「…… ……」
使用人「……側近様、大丈夫ですか」
側近「后が見た、と言う夢……聞いたか?」
使用人「夢……?」
側近「ああ……大きくなった青年らしき男が、雨の中で……息絶える」
側近「……ッ 癒し手らしき女を見て、泣いている夢、だったか」
使用人「!?」
側近「……たかが、夢。されど…… ……」
使用人「…… ……」
使用人「后様……側近様、も」
后「ご免なさい、使用人……ありがとう」
側近「…… ……」
使用人「側近様……? お顔の色が……」
側近「……后が先だ」
后「……不思議よね。この子を産んでから、本当に力が沸いてくる様だわ」
后「…… ……側近、使用人。魔王を……お願いね」
使用人「……はい」
側近「后」
后「……また後で、よ、側近」
后「大丈夫。癒し手だって、そう願ってる筈!」
使用人「……?」
后「……勇者」ギュ
勇者「だぁ」
后「……行くわ」
シュゥン……ッ
側近「!」
使用人「…… ……」
側近「…… ……」
使用人「……側近様、大丈夫ですか」
側近「后が見た、と言う夢……聞いたか?」
使用人「夢……?」
側近「ああ……大きくなった青年らしき男が、雨の中で……息絶える」
側近「……ッ 癒し手らしき女を見て、泣いている夢、だったか」
使用人「!?」
側近「……たかが、夢。されど…… ……」
使用人「…… ……」
803: 2014/01/22(水) 09:49:19.38 ID:ofgIcMWeP
使用人「……以前、人魚に見せられた夢は」
使用人「知っている筈なのに、初めての事の様だ、と仰ってましたね」
側近「ん? ……ああ」
側近「『繰り返される運命の輪』の中の『欠片』か」
使用人「え!?」
側近「な、なんだ」
使用人「……『欠片』」
側近「……?」
使用人「『欠片を探し出せ』」
側近「…… ……」
使用人「紫の魔王様の……お言葉です!」
側近「あ、ああ……」
使用人「…… ……」
側近「使用人?」
使用人「……『夢』……『欠片』……」ブツブツ
側近「……使用人」
使用人「しかし、剣士さんが……」ブツブツ
側近「……おい」
使用人「! ……あ、す、すみません」
側近「……悪いな、俺が相手では……」
使用人「ち、違います! ……意外と、深く理解しようとしない方が」
使用人「……『真実』が見えてくる物なのかもしれません」
側近「…… ……」
使用人「眉間に皺寄せないで下さい」
側近「……聞くだけしか役に立てんぞ」
使用人「甘い物は大量に用意させて頂きます」
側近「…… ……」ハァ
側近「……先に魔王の様子を見てくる」
使用人「わかりました」
側近「どうせ……暫く、二人きりだ」
使用人「違います。魔王様が居ます」
側近「……ああ、そうだな。すまん」
使用人「では、お茶の準備を致しましょう」
側近「……砂糖たっぷりの紅茶にしてくれ」
使用人「畏まりました」
スタスタ、スタスタ ……パタン
使用人「知っている筈なのに、初めての事の様だ、と仰ってましたね」
側近「ん? ……ああ」
側近「『繰り返される運命の輪』の中の『欠片』か」
使用人「え!?」
側近「な、なんだ」
使用人「……『欠片』」
側近「……?」
使用人「『欠片を探し出せ』」
側近「…… ……」
使用人「紫の魔王様の……お言葉です!」
側近「あ、ああ……」
使用人「…… ……」
側近「使用人?」
使用人「……『夢』……『欠片』……」ブツブツ
側近「……使用人」
使用人「しかし、剣士さんが……」ブツブツ
側近「……おい」
使用人「! ……あ、す、すみません」
側近「……悪いな、俺が相手では……」
使用人「ち、違います! ……意外と、深く理解しようとしない方が」
使用人「……『真実』が見えてくる物なのかもしれません」
側近「…… ……」
使用人「眉間に皺寄せないで下さい」
側近「……聞くだけしか役に立てんぞ」
使用人「甘い物は大量に用意させて頂きます」
側近「…… ……」ハァ
側近「……先に魔王の様子を見てくる」
使用人「わかりました」
側近「どうせ……暫く、二人きりだ」
使用人「違います。魔王様が居ます」
側近「……ああ、そうだな。すまん」
使用人「では、お茶の準備を致しましょう」
側近「……砂糖たっぷりの紅茶にしてくれ」
使用人「畏まりました」
スタスタ、スタスタ ……パタン
804: 2014/01/22(水) 10:08:25.37 ID:ofgIcMWeP
……
………
…………
后(…… ……え、なあに、これ!?)
勇者(すぅすぅ)
后(勇者! ……居た)ホッ……ギュ!
后(光の剣も持ってる……でも……!?)
后(私……空に浮いてる!?)
后(前后様に引き寄せられた時は一瞬だった……何、これ……)
后「……!」
后(……声、出ない…… ……な、んなのよ……)ゾクッ
后(!?)バッ
后(始まりの城!? ……黒い……何、あの靄……!?)
后(癒し手が言っていたのは……これ!?)
后(……酷い……何……!? 憎悪……?)
后(……一体、何があったの……!?)グッ
后(身体が……引っ張られる!! 勇者!)ギュウ!
シュゥン!
后「キャッ……!」
后「……ッ ……あ、あ……」
勇者(すぅ)
后「…… ……」ギュ!
后(ここ、は……)キョロ
后(……街の外れ)スッ
后(空、真っ黒じゃないの……!)
后(これじゃ、まるで……最果ての地……)
后「……『顔色の悪い蒼空』」
后「…… ……」
后(行くしか無い……の!? でも……)
勇者(すー)
后「勇者……」
………
…………
后(…… ……え、なあに、これ!?)
勇者(すぅすぅ)
后(勇者! ……居た)ホッ……ギュ!
后(光の剣も持ってる……でも……!?)
后(私……空に浮いてる!?)
后(前后様に引き寄せられた時は一瞬だった……何、これ……)
后「……!」
后(……声、出ない…… ……な、んなのよ……)ゾクッ
后(!?)バッ
后(始まりの城!? ……黒い……何、あの靄……!?)
后(癒し手が言っていたのは……これ!?)
后(……酷い……何……!? 憎悪……?)
后(……一体、何があったの……!?)グッ
后(身体が……引っ張られる!! 勇者!)ギュウ!
シュゥン!
后「キャッ……!」
后「……ッ ……あ、あ……」
勇者(すぅ)
后「…… ……」ギュ!
后(ここ、は……)キョロ
后(……街の外れ)スッ
后(空、真っ黒じゃないの……!)
后(これじゃ、まるで……最果ての地……)
后「……『顔色の悪い蒼空』」
后「…… ……」
后(行くしか無い……の!? でも……)
勇者(すー)
后「勇者……」
806: 2014/01/22(水) 10:41:50.51 ID:ofgIcMWeP
后「…… ……」
后(寝てる……けど、目を覚ましたら)
后(……この子の、瞳は目立つ。私のローブでくるんで……)
后「良し。苦しくないかな……」
スタスタ
后(……街の中は変わらない。人も……普通に見える、わね)
后(王子様は……お城かしら。否……)
后(……引退された、んだったわね……確か、街に家があるって行ってたっけ)
后(場所、ちゃんと聞いてくれば良かったかな……)キョロキョロ
后(人に聞いてみるか……否)
后(……あんまり目立つ事は……ん? 城の方が騒がしい……?)
后「あ!」
王子「どうしても駄目なのか!? 王は……!」
近衛兵「誰も通すな、とのお達しなのです、王子様……」
近衛兵「……申し訳ありません」
王子「お加減が悪い、のか」
近衛兵「……とにかく、お引き取り下さい」
タタタ……
后「騎士団長様!」
王子「!?」
近衛兵「ん?」
后「……王子様、ですね」
王子「…… ……魔法使い!?」
近衛兵「娘さん、旅の人かな……今、城は……」
王子「! 子供、を産んだ……のか……!?」
后「…… ……」
近衛兵「王子様?」
王子「……否、迷惑をかけて済まなかった」
王子「王に、お大事にと伝えてくれ」
近衛兵「はい……ありがとうございます」
后(寝てる……けど、目を覚ましたら)
后(……この子の、瞳は目立つ。私のローブでくるんで……)
后「良し。苦しくないかな……」
スタスタ
后(……街の中は変わらない。人も……普通に見える、わね)
后(王子様は……お城かしら。否……)
后(……引退された、んだったわね……確か、街に家があるって行ってたっけ)
后(場所、ちゃんと聞いてくれば良かったかな……)キョロキョロ
后(人に聞いてみるか……否)
后(……あんまり目立つ事は……ん? 城の方が騒がしい……?)
后「あ!」
王子「どうしても駄目なのか!? 王は……!」
近衛兵「誰も通すな、とのお達しなのです、王子様……」
近衛兵「……申し訳ありません」
王子「お加減が悪い、のか」
近衛兵「……とにかく、お引き取り下さい」
タタタ……
后「騎士団長様!」
王子「!?」
近衛兵「ん?」
后「……王子様、ですね」
王子「…… ……魔法使い!?」
近衛兵「娘さん、旅の人かな……今、城は……」
王子「! 子供、を産んだ……のか……!?」
后「…… ……」
近衛兵「王子様?」
王子「……否、迷惑をかけて済まなかった」
王子「王に、お大事にと伝えてくれ」
近衛兵「はい……ありがとうございます」
807: 2014/01/22(水) 10:49:17.45 ID:ofgIcMWeP
后「……あ、あの?」
王子「こっちだ。話は後で……寝てる、んだな?」
后「はい……城には、入れないのですか?」
王子「雨が降りそうな空模様だ……行こう」
スタスタ
后「は、はい!」
スタスタ
カチャ、パタン……ガチャン!
王子「……勇者、だな」
后「……はい」スル
勇者(すぅ)
王子「! ……そっくり、だな」
后「これでも、女の子なんです」クス
王子「…… ……え!?」
后「髪の色は私ですね……瞳、は……」
王子「勇者の瞳は金の色……光に選ばれし運命の子……だったか」
后「…… ……」
王子「では……魔王は……もう?」
后「……はい」
王子「…… ……」
后「お城、入れないのですか?」
王子「……少し前から、許可の無い者の入場は禁止されていたんだ」
王子「俺は……一応、大丈夫だったんだが」
王子「数日前からは……誰も通すな、と」
后「……王様、どこか悪くされてるのですか?」
王子「……どこから、話して良い物か」ハァ
后「…… ……」
王子「お前は……勇者の保護を求めに来た、んだよな」
后「はい」
王子「……繰り返し、だな」
后「…… ……」
魔王「真に美しい世界を望む為だ」【4】
王子「こっちだ。話は後で……寝てる、んだな?」
后「はい……城には、入れないのですか?」
王子「雨が降りそうな空模様だ……行こう」
スタスタ
后「は、はい!」
スタスタ
カチャ、パタン……ガチャン!
王子「……勇者、だな」
后「……はい」スル
勇者(すぅ)
王子「! ……そっくり、だな」
后「これでも、女の子なんです」クス
王子「…… ……え!?」
后「髪の色は私ですね……瞳、は……」
王子「勇者の瞳は金の色……光に選ばれし運命の子……だったか」
后「…… ……」
王子「では……魔王は……もう?」
后「……はい」
王子「…… ……」
后「お城、入れないのですか?」
王子「……少し前から、許可の無い者の入場は禁止されていたんだ」
王子「俺は……一応、大丈夫だったんだが」
王子「数日前からは……誰も通すな、と」
后「……王様、どこか悪くされてるのですか?」
王子「……どこから、話して良い物か」ハァ
后「…… ……」
王子「お前は……勇者の保護を求めに来た、んだよな」
后「はい」
王子「……繰り返し、だな」
后「…… ……」
魔王「真に美しい世界を望む為だ」【4】
引用: 魔王「真に美しい世界を望む為だ」
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