1: 2014/01/22(水) 13:12:07.32 ID:ofgIcMWeP
2: 2014/01/22(水) 13:21:45.54 ID:ofgIcMWeP
王子「……転移、だったか」
后「え?」
王子「以前、剣士の姿が目の前で消えた……あの方法で」
王子「来た、んだよな?」
后「……はい」
王子「戦士は……青年、と。癒し手は?」
后「側近は魔王の城に残っています……癒し手と、青年は旅立ちました」
后「……この子が産まれてしまった以上、魔王は……」
后「癒し手は、その魔力の増幅に耐えられないと思います」
王子「……此処に、一緒に来れば良かった……とは、言えないか」
王子「お前も、もう……戦士と同じで……」
后「!」ハッ
后「王子様……あれは、何なんですか!?」
王子「あれ?」
后「……空が真っ暗でした。それに……!」
王子「『黒い物』 ……否、黒い靄、か?」
后「見えているのですか……他の人にも!?」
王子「ああ……違う。えっと……少し前、剣士が来たんだ」
后「え……」
王子「……とにかく、そっちのベッドに勇者を寝かせたら良い」
王子「何時までも抱いているのもしんどいだろう」
王子「……後で、もしくは、明日。城へ案内する」
后「え……で、でも」
王子「『何人も通すな』とは言うが、勇者とその母であるのなら」
王子「話は別の筈、だ」
后「……城で、何がおこっている、んでしょうか」
王子「……解らん。確かに俺はもう引退した身……」
王子「…… ……駄目だな」ハァ
后「王子様?」
后「え?」
王子「以前、剣士の姿が目の前で消えた……あの方法で」
王子「来た、んだよな?」
后「……はい」
王子「戦士は……青年、と。癒し手は?」
后「側近は魔王の城に残っています……癒し手と、青年は旅立ちました」
后「……この子が産まれてしまった以上、魔王は……」
后「癒し手は、その魔力の増幅に耐えられないと思います」
王子「……此処に、一緒に来れば良かった……とは、言えないか」
王子「お前も、もう……戦士と同じで……」
后「!」ハッ
后「王子様……あれは、何なんですか!?」
王子「あれ?」
后「……空が真っ暗でした。それに……!」
王子「『黒い物』 ……否、黒い靄、か?」
后「見えているのですか……他の人にも!?」
王子「ああ……違う。えっと……少し前、剣士が来たんだ」
后「え……」
王子「……とにかく、そっちのベッドに勇者を寝かせたら良い」
王子「何時までも抱いているのもしんどいだろう」
王子「……後で、もしくは、明日。城へ案内する」
后「え……で、でも」
王子「『何人も通すな』とは言うが、勇者とその母であるのなら」
王子「話は別の筈、だ」
后「……城で、何がおこっている、んでしょうか」
王子「……解らん。確かに俺はもう引退した身……」
王子「…… ……駄目だな」ハァ
后「王子様?」
3: 2014/01/22(水) 13:42:13.54 ID:ofgIcMWeP
王子「……王に任せるつもりで、未来を託したつもりで居たのに」
王子「つい、首を突っ込もうとしてしまう」ハァ
后「……親、として心配するのは当然の事でしょう」
王子「しかし……結果として、王の……」
王子「…… ……」
后「王子様?」
王子「……王は病気なんだ」
后「先ほど、お大事に、と……仰ってましたものね」
后「……そう言えば、国王様もお体がそれほど強く無かったと聞いてます」
王子「…… ……違う。身体じゃ無い。その」
后「え?」
王子「…… ……ここ、かな」トン
后「……胸?」
王子「『心』だ」ハァ
后「!」
王子「…… ……戦士達から、聞いていないか?」
后「不安定、だとは確かに。でも……」
王子「急に『王』を押しつけたからな」
王子「……今まで、弟王子と二人して政から遠ざけていた癖にと」
王子「確かに……随分と反発された。それもあって」
王子「……俺は引退してから、関わらない様にしようとは……したんだが」
王子「…… ……否。俺が悪かったのかな」
后「王子様……」
王子「口ではそう良いながら……関わろうと、してしまっていたのかもしれない」
后「でもそれと……反発と、心の病……と言っていいのか解らないけど」
后「今の王の状態、は違う……でしょう?」
后「責任や原因の一端はあるかもしれません。だけど。結局は」
后「ご自身の弱さ……です。王子様」
王子「……なら、良いんだけどな」
后「お言葉に甘えます。勇者……寝かせて貰います」
王子「あ、ああ……お茶を入れる」
王子「……ゆっくり、聞かせてくれ」
王子「つい、首を突っ込もうとしてしまう」ハァ
后「……親、として心配するのは当然の事でしょう」
王子「しかし……結果として、王の……」
王子「…… ……」
后「王子様?」
王子「……王は病気なんだ」
后「先ほど、お大事に、と……仰ってましたものね」
后「……そう言えば、国王様もお体がそれほど強く無かったと聞いてます」
王子「…… ……違う。身体じゃ無い。その」
后「え?」
王子「…… ……ここ、かな」トン
后「……胸?」
王子「『心』だ」ハァ
后「!」
王子「…… ……戦士達から、聞いていないか?」
后「不安定、だとは確かに。でも……」
王子「急に『王』を押しつけたからな」
王子「……今まで、弟王子と二人して政から遠ざけていた癖にと」
王子「確かに……随分と反発された。それもあって」
王子「……俺は引退してから、関わらない様にしようとは……したんだが」
王子「…… ……否。俺が悪かったのかな」
后「王子様……」
王子「口ではそう良いながら……関わろうと、してしまっていたのかもしれない」
后「でもそれと……反発と、心の病……と言っていいのか解らないけど」
后「今の王の状態、は違う……でしょう?」
后「責任や原因の一端はあるかもしれません。だけど。結局は」
后「ご自身の弱さ……です。王子様」
王子「……なら、良いんだけどな」
后「お言葉に甘えます。勇者……寝かせて貰います」
王子「あ、ああ……お茶を入れる」
王子「……ゆっくり、聞かせてくれ」
10: 2014/01/22(水) 17:57:35.11 ID:ofgIcMWeP
……
………
…………
青年「お母さん……お母さん?」
キィ、パタン
癒し手「…… ……」
青年「……お母さん?」ソッ
癒し手(すぅすぅ)
青年(寝てる……)ナデ
癒し手「ん……」
青年(あ……)パッ
癒し手「……ああ、お帰りなさい、青年……あった?」
青年「うん……これと、こっち……二種類で良いんだよね?」
癒し手「……うん、あってる。ありがとう……貴方は優秀ですね」
癒し手「私と違って」クス
青年「良く間違えて、怒られたんだっけ、神父様に」クスクス
癒し手「うん……ああ、そこに置いておいて下さい」
癒し手「後は……私がやりますから」
青年「顔色が悪いよ、大丈夫。僕がやるよ」
青年「ご飯出来たら起こすから……寝てて良いよ?」
癒し手「うん……でも、もう目は覚めましたから」
青年「じゃあ、横になってな。それだけでも疲れは違うでしょ」
癒し手「……雨、振ってます?」
青年「え? ……ううん。振ってないけど」
癒し手「そう……ですか」ハァ
青年「振りそうな気配も無いけど……」
癒し手「なら、良いんです」
青年「? ……もう少し掛かりそうだし。起き上がれるのなら」
青年「お茶でも入れようか? ……庭のハーブが良く育ってた」
癒し手「ああ……良いですね。嬉しい」
青年「ん、じゃあちょっと待ってて」
スタスタ、パタン
………
…………
青年「お母さん……お母さん?」
キィ、パタン
癒し手「…… ……」
青年「……お母さん?」ソッ
癒し手(すぅすぅ)
青年(寝てる……)ナデ
癒し手「ん……」
青年(あ……)パッ
癒し手「……ああ、お帰りなさい、青年……あった?」
青年「うん……これと、こっち……二種類で良いんだよね?」
癒し手「……うん、あってる。ありがとう……貴方は優秀ですね」
癒し手「私と違って」クス
青年「良く間違えて、怒られたんだっけ、神父様に」クスクス
癒し手「うん……ああ、そこに置いておいて下さい」
癒し手「後は……私がやりますから」
青年「顔色が悪いよ、大丈夫。僕がやるよ」
青年「ご飯出来たら起こすから……寝てて良いよ?」
癒し手「うん……でも、もう目は覚めましたから」
青年「じゃあ、横になってな。それだけでも疲れは違うでしょ」
癒し手「……雨、振ってます?」
青年「え? ……ううん。振ってないけど」
癒し手「そう……ですか」ハァ
青年「振りそうな気配も無いけど……」
癒し手「なら、良いんです」
青年「? ……もう少し掛かりそうだし。起き上がれるのなら」
青年「お茶でも入れようか? ……庭のハーブが良く育ってた」
癒し手「ああ……良いですね。嬉しい」
青年「ん、じゃあちょっと待ってて」
スタスタ、パタン
11: 2014/01/22(水) 18:09:32.48 ID:ofgIcMWeP
癒し手「……よ、いしょ」フゥ
癒し手(……魔王様の城を出て、どれぐらい経ったんだろう)
癒し手(青年と二人の暮らしは、随分と……のんびり、ゆっくりで)
癒し手(時間の流れが解らない……否)
癒し手(一日の殆どを、寝て過ごしてしまっている。だからかな……)
癒し手(……青年が、良くやってくれているから)
癒し手(これが……幼子であったなら。側近さんや、使用人さんや……)
癒し手(……もしくは。后さん……誰かの、手を煩わせていたんだろうな)
癒し手(否。どころか……私の命が……もし、もう終わっていたなら)
癒し手(……青年。この短い間で、随分大きくなった)
癒し手(生き急がせてしまっているのは、私自身……)ハァ
癒し手(……ごめんなさい。青年)
カチャ
青年「お母さん?」
癒し手「……はい?何でしょう」
青年「ううん、何でも」ホッ
青年「すぐにお茶入れるよ」
癒し手「急いで、怪我とかしないでね」クス
癒し手(外から戻る度。私を呼んで……返事があるとほっとする)
癒し手(……癖になってしまっている、んだろうな)
青年「……昨日、何処まで聞いたっけ」
癒し手「目当てはそれですか」クス
青年「お母さんの話は、飽きる事が無いよ」
青年「……僕も、随分大きくなった。難しい話も理解出来る」
青年「だから、もっと教えてよ……お母さんとお父さんを」
青年「魔王様や……『世界』を」
癒し手「……やっぱり、貴方は勇者様について行きたいのですね?」
青年「違うよ……ついて行く、んだ」
癒し手「…… ……」
青年「魔王様の城で、産まれたばかりの勇者様を見たのは」
青年「……何年も前の様な気がする」
青年「僕は、エルフの血を引いてるから、成長の度合いが『人間』とは違うから」
癒し手「…… ……」
癒し手(……魔王様の城を出て、どれぐらい経ったんだろう)
癒し手(青年と二人の暮らしは、随分と……のんびり、ゆっくりで)
癒し手(時間の流れが解らない……否)
癒し手(一日の殆どを、寝て過ごしてしまっている。だからかな……)
癒し手(……青年が、良くやってくれているから)
癒し手(これが……幼子であったなら。側近さんや、使用人さんや……)
癒し手(……もしくは。后さん……誰かの、手を煩わせていたんだろうな)
癒し手(否。どころか……私の命が……もし、もう終わっていたなら)
癒し手(……青年。この短い間で、随分大きくなった)
癒し手(生き急がせてしまっているのは、私自身……)ハァ
癒し手(……ごめんなさい。青年)
カチャ
青年「お母さん?」
癒し手「……はい?何でしょう」
青年「ううん、何でも」ホッ
青年「すぐにお茶入れるよ」
癒し手「急いで、怪我とかしないでね」クス
癒し手(外から戻る度。私を呼んで……返事があるとほっとする)
癒し手(……癖になってしまっている、んだろうな)
青年「……昨日、何処まで聞いたっけ」
癒し手「目当てはそれですか」クス
青年「お母さんの話は、飽きる事が無いよ」
青年「……僕も、随分大きくなった。難しい話も理解出来る」
青年「だから、もっと教えてよ……お母さんとお父さんを」
青年「魔王様や……『世界』を」
癒し手「……やっぱり、貴方は勇者様について行きたいのですね?」
青年「違うよ……ついて行く、んだ」
癒し手「…… ……」
青年「魔王様の城で、産まれたばかりの勇者様を見たのは」
青年「……何年も前の様な気がする」
青年「僕は、エルフの血を引いてるから、成長の度合いが『人間』とは違うから」
癒し手「…… ……」
12: 2014/01/22(水) 18:22:33.99 ID:ofgIcMWeP
青年「……ついこの間の事なのに。でも」
青年「それで良いんだと思う。勇者様の成長は」
青年「人間と同じなんだろう?」
癒し手「……ええ。勇者様は『人間』ですから」
青年「……おかしな話だよね。『魔王』の子なのに」
癒し手「もう……発ったのかもしれませんね」
青年「始まりの国へ?」
癒し手「ええ。魔王様のお力が強くなれば……」
青年「……僕も一度、見に行きたいな」
癒し手「…… ……」
青年「あ……ッ じょ、冗談だよ!? お母さんを置いてなんて……!」
癒し手「良いんですよ、青年。貴方は、ずっと此処にお母さんと」
癒し手「一緒に居なくても良いんです」
癒し手「好きな時に、好きなところに行ってください」
青年「……いや、だってば」ギュ
癒し手「せ、いねん……」ポンポン
癒し手「どうしたんです、小さい子みたいに」クス
青年「……行かないよ、何処にも」
癒し手「勇者様について行きたいんでしょう……いえ、行くんでしょう?」
青年「まだまだ先の話だ。それに……その頃には」
青年「お母さんの具合だって、良くなってるかも……否、きっとなってるよ!」
癒し手「……エルフは、嘘は吐けないんですよ」
青年「願えば叶うんだろう!? 絶対大丈夫だよ!」
青年「元気になれるよ!」
青年「……だから。大丈夫。そうすれば、后様にお母さんをお願いして」
青年「僕は……安心して、勇者様と旅に出る」
癒し手「……そろそろ、良いかもしれませんね」
青年「え?」
癒し手「青年、私の荷物を」
青年「……?」
癒し手「エルフの弓が入っています……貴方が、旅に出る事を望むなら」
癒し手「私が、手解き致しましょう」
青年「お母さん、が……?」
癒し手「……人の子で言うと、10歳ぐらいでしょうか。今の貴方は」
癒し手「もう……大丈夫でしょう」
青年「それで良いんだと思う。勇者様の成長は」
青年「人間と同じなんだろう?」
癒し手「……ええ。勇者様は『人間』ですから」
青年「……おかしな話だよね。『魔王』の子なのに」
癒し手「もう……発ったのかもしれませんね」
青年「始まりの国へ?」
癒し手「ええ。魔王様のお力が強くなれば……」
青年「……僕も一度、見に行きたいな」
癒し手「…… ……」
青年「あ……ッ じょ、冗談だよ!? お母さんを置いてなんて……!」
癒し手「良いんですよ、青年。貴方は、ずっと此処にお母さんと」
癒し手「一緒に居なくても良いんです」
癒し手「好きな時に、好きなところに行ってください」
青年「……いや、だってば」ギュ
癒し手「せ、いねん……」ポンポン
癒し手「どうしたんです、小さい子みたいに」クス
青年「……行かないよ、何処にも」
癒し手「勇者様について行きたいんでしょう……いえ、行くんでしょう?」
青年「まだまだ先の話だ。それに……その頃には」
青年「お母さんの具合だって、良くなってるかも……否、きっとなってるよ!」
癒し手「……エルフは、嘘は吐けないんですよ」
青年「願えば叶うんだろう!? 絶対大丈夫だよ!」
青年「元気になれるよ!」
青年「……だから。大丈夫。そうすれば、后様にお母さんをお願いして」
青年「僕は……安心して、勇者様と旅に出る」
癒し手「……そろそろ、良いかもしれませんね」
青年「え?」
癒し手「青年、私の荷物を」
青年「……?」
癒し手「エルフの弓が入っています……貴方が、旅に出る事を望むなら」
癒し手「私が、手解き致しましょう」
青年「お母さん、が……?」
癒し手「……人の子で言うと、10歳ぐらいでしょうか。今の貴方は」
癒し手「もう……大丈夫でしょう」
13: 2014/01/22(水) 18:34:28.83 ID:ofgIcMWeP
癒し手「私よりもエルフの血は薄い……でも」
癒し手「……貴方には確実に、強靱なお父さんの血も流れていますから」
青年「……お父さんは、人間の頃から、強かったんだよね」
癒し手「はい。魔法に関しては……何も、でしたけれど」
癒し手「……貴方の瞳が、産まれてから少しの間」
癒し手「緑にも蒼にも見えたのは……」
青年「……僕が、回復魔法も風の魔法も使える事と、関係ある、の?」
癒し手「関係があるとすれば……貴方が私のお腹に宿った時」
癒し手「……お父さんは、既に魔に変じていたから、かもしれません」
青年「…… ……」
癒し手「前后様……黒い髪の魔王様のお母様は、出産を機に」
癒し手「回復魔法が使えなくなった、と言っていました」
癒し手「『勇者』が前后様の『人間』の部分を奪って産まれてきたのだとすれば」
癒し手「……言葉は、悪いですけど」
青年「表現なんかどうでも良い……続けて、お母さん」
癒し手「だとすれば、回復魔法が使える……部分。『人間』が」
癒し手「前后様が失ってしまったと言うのも、解らなくは無いかなと思います」
青年「でも、お母さんは……まだ、回復魔法使えるでしょう?」
癒し手「使おうと思えば、多分……でも」
青年(……そんな体力が無い、のか。でも、だったら……!)
青年(弓を僕に教える事なんて……!)
癒し手「エルフ、が特別なのかどうかは解りません」
癒し手「だけど……考えように寄っては、青年」
青年「え?」
癒し手「貴方には『エルフ』『魔』『人間』の、三つの血が流れている事になります」
青年「…… ……」
癒し手「普通、人……『命』は。二つの加護を持つことは出来ません」
青年「でも、紫の魔王様は……『剣士』って男は」
癒し手「……そうですね」
青年「……御免。続き……聞かせて。考えよう、って?」
癒し手「側近さん……お父さんは元は人間ですから」
癒し手「……黒い髪の魔王様のお力で、魔に変じたとは言え」
青年「魔に変じた後で……僕が、出来た、からか」
癒し手「それを『血が流れている』と表現して良いのか否か……解りかねます」
青年「……言葉なんて、どうでも良いんだ、お母さん」
癒し手「……貴方には確実に、強靱なお父さんの血も流れていますから」
青年「……お父さんは、人間の頃から、強かったんだよね」
癒し手「はい。魔法に関しては……何も、でしたけれど」
癒し手「……貴方の瞳が、産まれてから少しの間」
癒し手「緑にも蒼にも見えたのは……」
青年「……僕が、回復魔法も風の魔法も使える事と、関係ある、の?」
癒し手「関係があるとすれば……貴方が私のお腹に宿った時」
癒し手「……お父さんは、既に魔に変じていたから、かもしれません」
青年「…… ……」
癒し手「前后様……黒い髪の魔王様のお母様は、出産を機に」
癒し手「回復魔法が使えなくなった、と言っていました」
癒し手「『勇者』が前后様の『人間』の部分を奪って産まれてきたのだとすれば」
癒し手「……言葉は、悪いですけど」
青年「表現なんかどうでも良い……続けて、お母さん」
癒し手「だとすれば、回復魔法が使える……部分。『人間』が」
癒し手「前后様が失ってしまったと言うのも、解らなくは無いかなと思います」
青年「でも、お母さんは……まだ、回復魔法使えるでしょう?」
癒し手「使おうと思えば、多分……でも」
青年(……そんな体力が無い、のか。でも、だったら……!)
青年(弓を僕に教える事なんて……!)
癒し手「エルフ、が特別なのかどうかは解りません」
癒し手「だけど……考えように寄っては、青年」
青年「え?」
癒し手「貴方には『エルフ』『魔』『人間』の、三つの血が流れている事になります」
青年「…… ……」
癒し手「普通、人……『命』は。二つの加護を持つことは出来ません」
青年「でも、紫の魔王様は……『剣士』って男は」
癒し手「……そうですね」
青年「……御免。続き……聞かせて。考えよう、って?」
癒し手「側近さん……お父さんは元は人間ですから」
癒し手「……黒い髪の魔王様のお力で、魔に変じたとは言え」
青年「魔に変じた後で……僕が、出来た、からか」
癒し手「それを『血が流れている』と表現して良いのか否か……解りかねます」
青年「……言葉なんて、どうでも良いんだ、お母さん」
14: 2014/01/22(水) 18:43:40.55 ID:ofgIcMWeP
癒し手「でも貴方は確かに、水の加護を受けている」
癒し手「今は、真っ蒼な瞳をし、私と同じ……優れた水の加護を受けている」
青年「……ああ。確かに風の魔法は使えるけど、優れた加護がある訳じゃ無い」
癒し手「『素質』はあるのでしょうね」
青年「素質?」
癒し手「ええ。前に話した……紫の魔王の側近様。彼は……」
青年「ああ……回復魔法しか使えなかったのに、攻撃魔法も使える様になったんだよね」
癒し手「ええ。それに……金の髪の勇者様を送り出してから、始まりの国から」
癒し手「最果ての地……魔王様の城まで。転移していると聞いています」
癒し手「……あの方の場合は、紫の魔王様の瞳を与えられて居た、と言うのも」
癒し手「あるんでしょうけど」
青年「……『魔法なんて使い様』だったっけね」
癒し手「そうです……使用人さんも『素質』を持つ一人でしょうね」
青年「……防護壁、だっけ。それに、この……お母さんの石を包んでる、布も」
癒し手「ええ……随分助けられました」
青年「……『素質』って言うより」
癒し手「え?」
青年「お父さんの『人間』の部分を、僕が奪って産まれた、んじゃないのかな」
青年「その方がしっくりくるよ……だから、お父さんの緑の加護……」
青年「……風の魔法は、そのおかげ」
癒し手「……ふふ」
青年「な、何?」
癒し手「いえ……だとすれば、『親の愛』かな、と」
青年「え……」
癒し手「私……お母さんも、勿論お父さんも」
癒し手「貴方を、愛していますから。青年」ニコ
青年「……ッ な、何だよ、恥ずかしいな……!」
癒し手「…… ……」クスクス
青年「あ……! お茶! い、入れてくるから!」
青年「……ご飯も、作るからさ。その間も話続けてよ」
青年「お母さんが、しんどくなければ、だけど……」
癒し手「大丈夫ですよ……ええと、何処まで話ましたっけ?」
青年「…… ……」コポコポ
癒し手「青年、まだ頬が紅い……」クス
癒し手「ああ、そうそう……『人間』の部分を、でしたね」
青年「……お父さんは、変わりなかったの?」
癒し手「使い様、と言ってしまえばそれまでかな、とは思いますが」
癒し手「剣士さんにビジョンを送ったり、転移石を防護壁の外側から」
癒し手「発動させたり……やはり、彼も」
癒し手「『魔』に……『完全な魔』になった、のかもしれませんね」
癒し手「今は、真っ蒼な瞳をし、私と同じ……優れた水の加護を受けている」
青年「……ああ。確かに風の魔法は使えるけど、優れた加護がある訳じゃ無い」
癒し手「『素質』はあるのでしょうね」
青年「素質?」
癒し手「ええ。前に話した……紫の魔王の側近様。彼は……」
青年「ああ……回復魔法しか使えなかったのに、攻撃魔法も使える様になったんだよね」
癒し手「ええ。それに……金の髪の勇者様を送り出してから、始まりの国から」
癒し手「最果ての地……魔王様の城まで。転移していると聞いています」
癒し手「……あの方の場合は、紫の魔王様の瞳を与えられて居た、と言うのも」
癒し手「あるんでしょうけど」
青年「……『魔法なんて使い様』だったっけね」
癒し手「そうです……使用人さんも『素質』を持つ一人でしょうね」
青年「……防護壁、だっけ。それに、この……お母さんの石を包んでる、布も」
癒し手「ええ……随分助けられました」
青年「……『素質』って言うより」
癒し手「え?」
青年「お父さんの『人間』の部分を、僕が奪って産まれた、んじゃないのかな」
青年「その方がしっくりくるよ……だから、お父さんの緑の加護……」
青年「……風の魔法は、そのおかげ」
癒し手「……ふふ」
青年「な、何?」
癒し手「いえ……だとすれば、『親の愛』かな、と」
青年「え……」
癒し手「私……お母さんも、勿論お父さんも」
癒し手「貴方を、愛していますから。青年」ニコ
青年「……ッ な、何だよ、恥ずかしいな……!」
癒し手「…… ……」クスクス
青年「あ……! お茶! い、入れてくるから!」
青年「……ご飯も、作るからさ。その間も話続けてよ」
青年「お母さんが、しんどくなければ、だけど……」
癒し手「大丈夫ですよ……ええと、何処まで話ましたっけ?」
青年「…… ……」コポコポ
癒し手「青年、まだ頬が紅い……」クス
癒し手「ああ、そうそう……『人間』の部分を、でしたね」
青年「……お父さんは、変わりなかったの?」
癒し手「使い様、と言ってしまえばそれまでかな、とは思いますが」
癒し手「剣士さんにビジョンを送ったり、転移石を防護壁の外側から」
癒し手「発動させたり……やはり、彼も」
癒し手「『魔』に……『完全な魔』になった、のかもしれませんね」
20: 2014/01/23(木) 10:06:25.51 ID:7JBXnqHQP
青年「お母さんのエルフの血……否、ハーフエルフの血が」
青年「僕に……水の優れた加護と、回復魔法の術をくれた」
癒し手「……お父さんの人間の血が、貴方に風の魔法を使わせる、ですか」
青年「そう考えると、後付の『魔』の部分は……」
癒し手「……貴方に二つの加護の魔法を使わせてしまう、それが」
癒し手「『魔』の血の所為なのかもしれませんね」
癒し手「……血の一滴、細胞の一つ一つ全てが、変化するのだと言っていました」
癒し手「そうして、その全てが『歓喜する』」
青年「……暴走、だっけ」
癒し手「お父さんは……元々魔法に長けていた訳では無いですから」
癒し手「大丈夫でした、けどね」
青年「……后様は」
癒し手「身の内に押しとどめた……と、仰って居ました」
癒し手「女性の魔導将軍は、力を放出し、真っ赤な翼と成したんです」
癒し手「后さんは……同じは厭だ、と」クス
青年「后様も、『素質』を?」
癒し手「どうなんでしょう……遠見されたり、気配を追われたり……多分」
癒し手「転移術もお使いになれるでしょうね。でもそれは」
青年「……『勇者』を産んで完全な『魔』になった、から」
青年「でもそれだけじゃ無いよね、多分……」
癒し手「『母』は強いのでしょうね……さっきの話では無いですけど」
癒し手「『子を思う親の愛』……何にも勝ります。きっと」
青年「『使い様』か」
癒し手「『素質』と言う物が、どう言う物なのか、表現としてあっているのかも」
癒し手「わかりません。でも……本当に、様は『使い様』」
癒し手「使用人さんも、后さんも……魔導国……今は、書の街ですが」
癒し手「そこで育ち、基礎はしっかりとされています。だがら」
青年「んん……複雑だな。誰かが正解をこうだよ、これだよと」
青年「教えてくれる訳でも無いし」
癒し手「……そうですね」コホッ
青年「お母さん!?」
癒し手「……大丈夫、です。さあ、青年。食事を済ませたら」
癒し手「弓の練習をしましょう」
青年「僕に……水の優れた加護と、回復魔法の術をくれた」
癒し手「……お父さんの人間の血が、貴方に風の魔法を使わせる、ですか」
青年「そう考えると、後付の『魔』の部分は……」
癒し手「……貴方に二つの加護の魔法を使わせてしまう、それが」
癒し手「『魔』の血の所為なのかもしれませんね」
癒し手「……血の一滴、細胞の一つ一つ全てが、変化するのだと言っていました」
癒し手「そうして、その全てが『歓喜する』」
青年「……暴走、だっけ」
癒し手「お父さんは……元々魔法に長けていた訳では無いですから」
癒し手「大丈夫でした、けどね」
青年「……后様は」
癒し手「身の内に押しとどめた……と、仰って居ました」
癒し手「女性の魔導将軍は、力を放出し、真っ赤な翼と成したんです」
癒し手「后さんは……同じは厭だ、と」クス
青年「后様も、『素質』を?」
癒し手「どうなんでしょう……遠見されたり、気配を追われたり……多分」
癒し手「転移術もお使いになれるでしょうね。でもそれは」
青年「……『勇者』を産んで完全な『魔』になった、から」
青年「でもそれだけじゃ無いよね、多分……」
癒し手「『母』は強いのでしょうね……さっきの話では無いですけど」
癒し手「『子を思う親の愛』……何にも勝ります。きっと」
青年「『使い様』か」
癒し手「『素質』と言う物が、どう言う物なのか、表現としてあっているのかも」
癒し手「わかりません。でも……本当に、様は『使い様』」
癒し手「使用人さんも、后さんも……魔導国……今は、書の街ですが」
癒し手「そこで育ち、基礎はしっかりとされています。だがら」
青年「んん……複雑だな。誰かが正解をこうだよ、これだよと」
青年「教えてくれる訳でも無いし」
癒し手「……そうですね」コホッ
青年「お母さん!?」
癒し手「……大丈夫、です。さあ、青年。食事を済ませたら」
癒し手「弓の練習をしましょう」
21: 2014/01/23(木) 10:30:54.38 ID:7JBXnqHQP
青年「……無理しないで」
癒し手「大丈夫です。口頭で伝える位しかできませんが」
青年「顔色、悪いよ……」
癒し手「……ねえ、青年」
青年「え?」
癒し手「私の命が終わるまで、何処まで伝えられるかは解りません」
癒し手「この小屋に来てから、ずっと……貴方には全てを伝えるつもりで」
癒し手「色々と話してきました。けど」
青年「お母さん!」
癒し手「……後は、ちゃんと自分の目で見て、感じて……知って」
癒し手「終わらせて、下さい」
青年「……お母さん!」
癒し手「腐った世界の腐った不条理を、断ち切って下さいね」
青年「…… ……」
癒し手「でも、まだまだ大丈夫です。ね?」
癒し手「……お腹、すきました。起き上がるの、手伝って貰えます?」
青年「此処まで運ぶ、から……待ってて」
癒し手「……ありがとうございます」
青年「さっき……雨が降ってるかって言ってたよね」
癒し手「ああ……なんか、そんな気がしたんですけど」スッ
癒し手「窓の外……良いお天気ですね」
青年「……雨は、嫌いだ」
癒し手「そうですか?」
青年「何となく……凄く、厭なんだ」
癒し手「何でしょうね」
青年「凄く……悲しい気分になる。何でだかは……わかんないけど」
癒し手「雨が降れば大地は潤って、綺麗な花が咲くんです」
癒し手「……雨上がりの空の美しさも、良い物ですよ」
青年「……お母さんがそういうなら、そうかもしれないね」
青年「待ってて、すぐに運ぶ」
癒し手「ええ。青年の料理は美味しいから、お母さん、毎日幸せです」ニコ
癒し手「大丈夫です。口頭で伝える位しかできませんが」
青年「顔色、悪いよ……」
癒し手「……ねえ、青年」
青年「え?」
癒し手「私の命が終わるまで、何処まで伝えられるかは解りません」
癒し手「この小屋に来てから、ずっと……貴方には全てを伝えるつもりで」
癒し手「色々と話してきました。けど」
青年「お母さん!」
癒し手「……後は、ちゃんと自分の目で見て、感じて……知って」
癒し手「終わらせて、下さい」
青年「……お母さん!」
癒し手「腐った世界の腐った不条理を、断ち切って下さいね」
青年「…… ……」
癒し手「でも、まだまだ大丈夫です。ね?」
癒し手「……お腹、すきました。起き上がるの、手伝って貰えます?」
青年「此処まで運ぶ、から……待ってて」
癒し手「……ありがとうございます」
青年「さっき……雨が降ってるかって言ってたよね」
癒し手「ああ……なんか、そんな気がしたんですけど」スッ
癒し手「窓の外……良いお天気ですね」
青年「……雨は、嫌いだ」
癒し手「そうですか?」
青年「何となく……凄く、厭なんだ」
癒し手「何でしょうね」
青年「凄く……悲しい気分になる。何でだかは……わかんないけど」
癒し手「雨が降れば大地は潤って、綺麗な花が咲くんです」
癒し手「……雨上がりの空の美しさも、良い物ですよ」
青年「……お母さんがそういうなら、そうかもしれないね」
青年「待ってて、すぐに運ぶ」
癒し手「ええ。青年の料理は美味しいから、お母さん、毎日幸せです」ニコ
22: 2014/01/23(木) 10:45:09.19 ID:7JBXnqHQP
……
………
…………
剣士「魔導師」
魔導師「わッ ……ああ、吃驚した……剣士さんですか」
剣士「……子供達が寝たから、飯にするだとか」
魔導師「ああ、シスターさんですか」
剣士「呼んで来い、とな」
魔導師「……すみません。忙しいでしょうに」
剣士「別に構わん」
魔導師「北の街はどうでしたか」
剣士「……此処と変わらんな」
剣士「以前は造船もしていたと聞いていた……が」
魔導師「え?船?」
剣士「ああ……今は材料も、人出も足りんらしい」
魔導師「……へぇ」
剣士「で、お前は此処で何をしてるんだ」
魔導師「あ……えっと。一応、片付け……を」
剣士「……本を広げて、片付けか」
魔導師「……ご免なさい」
剣士「別に俺に謝る事じゃ無いだろう」
魔導師「魔石……」
剣士「…… ……」
魔導師「……魔石を、作る人はもう、居ません」
剣士「……まあ、そうだろうな」
魔導師「どころか、鍛冶をする人も」
剣士「だから『片付け』なのだろう?」
魔導師「はい。此処は……潰して」
魔導師「子供達の遊び場にするそうです。だから」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「?」
………
…………
剣士「魔導師」
魔導師「わッ ……ああ、吃驚した……剣士さんですか」
剣士「……子供達が寝たから、飯にするだとか」
魔導師「ああ、シスターさんですか」
剣士「呼んで来い、とな」
魔導師「……すみません。忙しいでしょうに」
剣士「別に構わん」
魔導師「北の街はどうでしたか」
剣士「……此処と変わらんな」
剣士「以前は造船もしていたと聞いていた……が」
魔導師「え?船?」
剣士「ああ……今は材料も、人出も足りんらしい」
魔導師「……へぇ」
剣士「で、お前は此処で何をしてるんだ」
魔導師「あ……えっと。一応、片付け……を」
剣士「……本を広げて、片付けか」
魔導師「……ご免なさい」
剣士「別に俺に謝る事じゃ無いだろう」
魔導師「魔石……」
剣士「…… ……」
魔導師「……魔石を、作る人はもう、居ません」
剣士「……まあ、そうだろうな」
魔導師「どころか、鍛冶をする人も」
剣士「だから『片付け』なのだろう?」
魔導師「はい。此処は……潰して」
魔導師「子供達の遊び場にするそうです。だから」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「?」
23: 2014/01/23(木) 10:54:47.76 ID:7JBXnqHQP
魔導師「……こんな事、剣士さんに話して良いのか解らないけど」
魔導師「僕、鍛冶を学びたいんです」
剣士「…… ……」
魔導師「教えて貰える大人は皆氏んでしまったし」
魔導師「……魔石ですら、もう……皆、忘れようとしてる」
剣士「…… ……」
魔導師「どうにか、此処……残せないかなって思ってるんですけど」
剣士「誰も耳を貸さん、か」
魔導師「……仕方無いとは思うんですけど」
魔導師「解ってるんですけど……」
剣士「息子……村長や、誰かに話してみたのか」
魔導師「いえ。まだ何も……子供が何を、って言われるの、目に見えてますし」
魔導師「……確かに、僕はまだ……子供ですし」
剣士「…… ……」
魔導師「剣士さんは、書の街に行ったことがありますか」
剣士「『魔導国』の頃になら……否」
剣士「ここへ来る前に寄った。図書館が新しくなったと聞いたからな」
魔導師「そうですか……」
剣士「それがどうした」
魔導師「……いえ。僕もいつか、行きたいなと思って」
剣士「……魔法を志す者には、憧れの街『だった』んだそうだな」
魔導師「らしいですね……僕には、あんまりピンと来ません」
魔導師「……この村の人達は『書の街』の名前ですら……嫌がります」
剣士「解らんでも無い」
魔導師「……あの、剣士さ……」
タタタ……!
シスター「剣士さん! 呼んで来てって言ったのに」
シスター「……何話し込んでるのよ、もう」ハァ
剣士「あ、ああ……悪い」
シスター「魔導師も! ……ああもう、片付けてって頼んだのに……」
魔導師「……御免、でも!」
シスター「ああ! 本まで持ち出して……!」
魔導師「ちゃ、ちゃんと片づけるよ!戻すから……」
シスター「当然です! ……でも、先に食事にするわよ」ハァ
魔導師「僕、鍛冶を学びたいんです」
剣士「…… ……」
魔導師「教えて貰える大人は皆氏んでしまったし」
魔導師「……魔石ですら、もう……皆、忘れようとしてる」
剣士「…… ……」
魔導師「どうにか、此処……残せないかなって思ってるんですけど」
剣士「誰も耳を貸さん、か」
魔導師「……仕方無いとは思うんですけど」
魔導師「解ってるんですけど……」
剣士「息子……村長や、誰かに話してみたのか」
魔導師「いえ。まだ何も……子供が何を、って言われるの、目に見えてますし」
魔導師「……確かに、僕はまだ……子供ですし」
剣士「…… ……」
魔導師「剣士さんは、書の街に行ったことがありますか」
剣士「『魔導国』の頃になら……否」
剣士「ここへ来る前に寄った。図書館が新しくなったと聞いたからな」
魔導師「そうですか……」
剣士「それがどうした」
魔導師「……いえ。僕もいつか、行きたいなと思って」
剣士「……魔法を志す者には、憧れの街『だった』んだそうだな」
魔導師「らしいですね……僕には、あんまりピンと来ません」
魔導師「……この村の人達は『書の街』の名前ですら……嫌がります」
剣士「解らんでも無い」
魔導師「……あの、剣士さ……」
タタタ……!
シスター「剣士さん! 呼んで来てって言ったのに」
シスター「……何話し込んでるのよ、もう」ハァ
剣士「あ、ああ……悪い」
シスター「魔導師も! ……ああもう、片付けてって頼んだのに……」
魔導師「……御免、でも!」
シスター「ああ! 本まで持ち出して……!」
魔導師「ちゃ、ちゃんと片づけるよ!戻すから……」
シスター「当然です! ……でも、先に食事にするわよ」ハァ
24: 2014/01/23(木) 11:01:04.19 ID:7JBXnqHQP
剣士「……行くぞ、魔導師」
魔導師「あ……はい。剣士さんも一緒に?」
シスター「アンタを待ってたのよ!」
魔導師「ご、ご免なさい」
シスター「……ねえ、魔導師」
魔導師「え?」
シスター「本を読むなとは言わないけど、鍛冶場はね、もう……」
魔導師「わ……解ってる、てば!」
タタタ……
シスター「あ……」
剣士「……彼は此処を残したいんだろう」
シスター「……興味を持ってる事は知ってるわ」
シスター「幼い頃から、魔石の生成に成功したり」
シスター「……鍛冶を生業にする大人達を見て育ってきたんですもの。でもね」
シスター「もう……必要無いの。いえ……無理なのよ」
剣士「教える者が居ないから、か」
シスター「それもあるわ。でも…… ……忘れたいの。皆」
剣士「…… ……」
シスター「魔法剣に拘っていた村長さんも氏んでしまった。技術だって」
シスター「どんどん、廃れていくの。もう……」
剣士「…… ……」
シスター「……此処は、子供達の為に遊具を置くのよ」
剣士「魔導師に聞いた」
シスター「兄や、魔導師もそうだけど……『子供』は」
シスター「この村を守る為に力をつけようとしてる」
シスター「……それで良いのよ。今は、それしか出来ないの」
剣士「……縛られるのが厭だと言う者も居るだろう」
シスター「そりゃね。魔導師は……反抗期、だろうし」
シスター「……でも、この村を、未来を守っていくのは子供達自身よ」
シスター「自分の身を。大切な存在を……この、村を」
シスター「足場を固めないと、他の何も出来ないわよ」
魔導師「あ……はい。剣士さんも一緒に?」
シスター「アンタを待ってたのよ!」
魔導師「ご、ご免なさい」
シスター「……ねえ、魔導師」
魔導師「え?」
シスター「本を読むなとは言わないけど、鍛冶場はね、もう……」
魔導師「わ……解ってる、てば!」
タタタ……
シスター「あ……」
剣士「……彼は此処を残したいんだろう」
シスター「……興味を持ってる事は知ってるわ」
シスター「幼い頃から、魔石の生成に成功したり」
シスター「……鍛冶を生業にする大人達を見て育ってきたんですもの。でもね」
シスター「もう……必要無いの。いえ……無理なのよ」
剣士「教える者が居ないから、か」
シスター「それもあるわ。でも…… ……忘れたいの。皆」
剣士「…… ……」
シスター「魔法剣に拘っていた村長さんも氏んでしまった。技術だって」
シスター「どんどん、廃れていくの。もう……」
剣士「…… ……」
シスター「……此処は、子供達の為に遊具を置くのよ」
剣士「魔導師に聞いた」
シスター「兄や、魔導師もそうだけど……『子供』は」
シスター「この村を守る為に力をつけようとしてる」
シスター「……それで良いのよ。今は、それしか出来ないの」
剣士「……縛られるのが厭だと言う者も居るだろう」
シスター「そりゃね。魔導師は……反抗期、だろうし」
シスター「……でも、この村を、未来を守っていくのは子供達自身よ」
シスター「自分の身を。大切な存在を……この、村を」
シスター「足場を固めないと、他の何も出来ないわよ」
25: 2014/01/23(木) 11:08:37.02 ID:7JBXnqHQP
剣士「……言っている事は解る、がな」
シスター「今はもう、殆ど旅人なんて来ない」
剣士「? ……ああ、そう言えば……船を見ないな」
剣士「定期便は復活したんだろう?」
シスター「乗客が居なければ、船を出しても仕方無いでしょう?」
シスター「……そう言う事よ」
剣士「……お前、は」
シスター「夢を壊したくなんて無い。やりたい事をやらせてあげたいわ。でも」
シスター「……望んでも、願っても……無駄な物は無駄」
シスター「それを……教えてあげるのだって大人の……『親』の役目でしょう」
剣士「…… ……」
シスター「さあ、行きましょ」
剣士「……ああ」
シスター「あ……」
剣士「え?」
シスター「流れ星? ……まだ明るいのに」
剣士「……西の空」
シスター「……真っ暗よね、向こう。最近ずっとそうだわ」
剣士「……あの、光……は……」
シスター「な、何よ」
剣士(始まりの国? ……勇者か!?)
剣士「…… ……」
剣士(産まれたのか……否。后か!)
剣士(……勇者を連れて、転移した……のか)
シスター「ちょ、ちょっと。剣士さん?」
剣士「! ……否、何でもない」
剣士(……とうとう、か)ハァ
シスター「どうしたのよ……蒼い顔して」
剣士「……そうか?」
シスター「え?」
剣士「……喜んでいるんだ」
シスター「は!?」
剣士「喜ばなくてはいけないんだ……俺達は」
シスター「今はもう、殆ど旅人なんて来ない」
剣士「? ……ああ、そう言えば……船を見ないな」
剣士「定期便は復活したんだろう?」
シスター「乗客が居なければ、船を出しても仕方無いでしょう?」
シスター「……そう言う事よ」
剣士「……お前、は」
シスター「夢を壊したくなんて無い。やりたい事をやらせてあげたいわ。でも」
シスター「……望んでも、願っても……無駄な物は無駄」
シスター「それを……教えてあげるのだって大人の……『親』の役目でしょう」
剣士「…… ……」
シスター「さあ、行きましょ」
剣士「……ああ」
シスター「あ……」
剣士「え?」
シスター「流れ星? ……まだ明るいのに」
剣士「……西の空」
シスター「……真っ暗よね、向こう。最近ずっとそうだわ」
剣士「……あの、光……は……」
シスター「な、何よ」
剣士(始まりの国? ……勇者か!?)
剣士「…… ……」
剣士(産まれたのか……否。后か!)
剣士(……勇者を連れて、転移した……のか)
シスター「ちょ、ちょっと。剣士さん?」
剣士「! ……否、何でもない」
剣士(……とうとう、か)ハァ
シスター「どうしたのよ……蒼い顔して」
剣士「……そうか?」
シスター「え?」
剣士「……喜んでいるんだ」
シスター「は!?」
剣士「喜ばなくてはいけないんだ……俺達は」
26: 2014/01/23(木) 11:18:40.09 ID:7JBXnqHQP
……
………
…………
近衛兵「止まって下さい。お嬢さん、申し訳ありませんが、今城には……」
后「立入禁止、と言うのは伺っております」
王子「……王に謁見を求めて、来られたんだ」
近衛兵「王子様! ……聞いております。知人が訪ねて来られたと」ハァ
近衛兵「しかし……」
后「……この手のひらの文様をご覧下さい」スッ
近衛兵「え? ……!」
后「今は起きております……どうぞ、瞳の色を」スルッ
近衛兵「!!」
后「……勇者をお連れしました。どうか、王にお目通りを」
后「私は……『魔法使い』と申します」
王子「彼女も……戦士と僧侶……それに、『勇者』と旅をした」
王子「『帰還者』の一人だ」
近衛兵「…… ……ッ」
后「この子は、間違い無く『勇者』です」
后「……『魔王』は復活します」
近衛兵「ま、待ちなさい……待って下さい! おい、誰か!」
后「…… ……」
王子「この女性の身元は俺が保証する。王に謁見の許可を」
近衛兵「……す、すぐに、王に伝えて参ります!」
バタン!
后「……宜しかったんですか、王子様」
王子「ん? ……まあ、俺まで通して貰えるとは思ってないけど」
后「…… ……」
王子「そっちこそ……良かったのか。魔法使いだ、と」
王子「……『帰還者』だと、明かしてしまって」
………
…………
近衛兵「止まって下さい。お嬢さん、申し訳ありませんが、今城には……」
后「立入禁止、と言うのは伺っております」
王子「……王に謁見を求めて、来られたんだ」
近衛兵「王子様! ……聞いております。知人が訪ねて来られたと」ハァ
近衛兵「しかし……」
后「……この手のひらの文様をご覧下さい」スッ
近衛兵「え? ……!」
后「今は起きております……どうぞ、瞳の色を」スルッ
近衛兵「!!」
后「……勇者をお連れしました。どうか、王にお目通りを」
后「私は……『魔法使い』と申します」
王子「彼女も……戦士と僧侶……それに、『勇者』と旅をした」
王子「『帰還者』の一人だ」
近衛兵「…… ……ッ」
后「この子は、間違い無く『勇者』です」
后「……『魔王』は復活します」
近衛兵「ま、待ちなさい……待って下さい! おい、誰か!」
后「…… ……」
王子「この女性の身元は俺が保証する。王に謁見の許可を」
近衛兵「……す、すぐに、王に伝えて参ります!」
バタン!
后「……宜しかったんですか、王子様」
王子「ん? ……まあ、俺まで通して貰えるとは思ってないけど」
后「…… ……」
王子「そっちこそ……良かったのか。魔法使いだ、と」
王子「……『帰還者』だと、明かしてしまって」
27: 2014/01/23(木) 11:26:58.20 ID:7JBXnqHQP
后「……希望になるでしょう。その方が」
后「この、黒い靄……」スッ
王子「……俺には、解らないけどな」
后「何かは解りません。でも……剣士が言っていた様に」
后「……確かに、地下から感じます」
王子「…… ……」
后「癒し手が居なくて、本当に良かった」
后「……ま ……『黒い髪の元勇者』の、傍にも居られないだろうけど」
后「此処も……彼女には……」
王子「……癒し手が言っていた『黒い物』は、それなのか?」
后「……わかりません。でも良くない物、に違いは無いわ」
王子「……俺に、出来る事は。これぐらいしか無い」
后「え?」
王子「否、俺が居なくても……この子は間違い無く勇者だ。だから」
王子「通れただろうと思う。だけど」
后「……王子様とお話ししなければ、自分を『帰還者』だと名乗るって」
后「事は思いつきませんでした。それに……」
王子「……そうだな。俺の決心もつかなかった」
后「……はい」
王子「話すべきだったんだ。最初に。俺が……何も知らせない侭で」
王子「……『未来』を担う王達に、彼ら自身に選ばせようとしたのが」
王子「間違いだったんだ」
后「…… ……」
王子「今から話して、信じて貰えるかは解らない」
王子「……王の、その。病の……状態にも寄る。だが」
后「…… ……」
王子「王が望むのなら、全て話そう。選択肢すら与えなかったのは……」
王子「……俺が、間違えてた」
后「……実際、どれぐらい悪いんですか」
王子「解らない……だが、落ち着いて居るときは大丈夫だと」
王子「衛生師に聞いているから」
后「この、黒い靄……」スッ
王子「……俺には、解らないけどな」
后「何かは解りません。でも……剣士が言っていた様に」
后「……確かに、地下から感じます」
王子「…… ……」
后「癒し手が居なくて、本当に良かった」
后「……ま ……『黒い髪の元勇者』の、傍にも居られないだろうけど」
后「此処も……彼女には……」
王子「……癒し手が言っていた『黒い物』は、それなのか?」
后「……わかりません。でも良くない物、に違いは無いわ」
王子「……俺に、出来る事は。これぐらいしか無い」
后「え?」
王子「否、俺が居なくても……この子は間違い無く勇者だ。だから」
王子「通れただろうと思う。だけど」
后「……王子様とお話ししなければ、自分を『帰還者』だと名乗るって」
后「事は思いつきませんでした。それに……」
王子「……そうだな。俺の決心もつかなかった」
后「……はい」
王子「話すべきだったんだ。最初に。俺が……何も知らせない侭で」
王子「……『未来』を担う王達に、彼ら自身に選ばせようとしたのが」
王子「間違いだったんだ」
后「…… ……」
王子「今から話して、信じて貰えるかは解らない」
王子「……王の、その。病の……状態にも寄る。だが」
后「…… ……」
王子「王が望むのなら、全て話そう。選択肢すら与えなかったのは……」
王子「……俺が、間違えてた」
后「……実際、どれぐらい悪いんですか」
王子「解らない……だが、落ち着いて居るときは大丈夫だと」
王子「衛生師に聞いているから」
28: 2014/01/23(木) 11:40:31.04 ID:7JBXnqHQP
后「……近衛兵長様、ね」
王子「ああ。最近はめっきり来なくなった、けど」
王子「……なんだかんだと、報告と言うか、愚痴というか」
后「あ……」
ギィ……
近衛兵「王が、お会いになるそうです」
后「ありがとうございます!」
近衛兵「王子様も、ご一緒にどうぞ」
王子「……良いのか」ホッ
近衛兵「ただし、勇者様のお顔の拝見が済んでから個別に、です」
王子「あ、ああ……解った」
后「…… ……」
近衛兵「では、魔法使いさんはこちらへ……王子様は」
近衛兵「あちらの部屋でお待ち下さい」
王子「ああ……では、後でな、魔法使い」
后「はい。ありがとうございました」
スタスタ
近衛兵「此方で、少しお待ちを」
后「……はい」
勇者「あー」
后「うん。ごめんね、ちょっとだけ待ってね」
カチャ
近衛兵「……どうぞ。王に失礼の無いように」
后「……初めて、お目に掛かります、王様」
衛生師「貴方が、魔法使いさんですか。それから……勇者様」
衛生師「ご苦労様でした。貴方は下がって下さい」
近衛兵「はッ」
スタスタ、パタン
后「…… ……?」
衛生師「……本当に、金の瞳をしている、のですね」
后「あの……王様?」
衛生師「……何か」
王子「ああ。最近はめっきり来なくなった、けど」
王子「……なんだかんだと、報告と言うか、愚痴というか」
后「あ……」
ギィ……
近衛兵「王が、お会いになるそうです」
后「ありがとうございます!」
近衛兵「王子様も、ご一緒にどうぞ」
王子「……良いのか」ホッ
近衛兵「ただし、勇者様のお顔の拝見が済んでから個別に、です」
王子「あ、ああ……解った」
后「…… ……」
近衛兵「では、魔法使いさんはこちらへ……王子様は」
近衛兵「あちらの部屋でお待ち下さい」
王子「ああ……では、後でな、魔法使い」
后「はい。ありがとうございました」
スタスタ
近衛兵「此方で、少しお待ちを」
后「……はい」
勇者「あー」
后「うん。ごめんね、ちょっとだけ待ってね」
カチャ
近衛兵「……どうぞ。王に失礼の無いように」
后「……初めて、お目に掛かります、王様」
衛生師「貴方が、魔法使いさんですか。それから……勇者様」
衛生師「ご苦労様でした。貴方は下がって下さい」
近衛兵「はッ」
スタスタ、パタン
后「…… ……?」
衛生師「……本当に、金の瞳をしている、のですね」
后「あの……王様?」
衛生師「……何か」
29: 2014/01/23(木) 12:04:51.91 ID:7JBXnqHQP
后「……失礼を承知で申し上げますが、あの……」
衛生師「ああ。貴女は伯父上と一緒にいらっしゃったのですよね」
衛生師「……僕の病気の事でしょう」
后「え、ええ……否。お元気になられたのであれば、何よりです」
衛生師「ありがとうございます」
衛生師「……勇者が此処に居る、と言う事は、魔王は……復活した、んですね」
后「……はい」
衛生師「貴女は……『帰還者』ですね、魔法使いさん」
后「はい」
衛生師「……『黒い髪の勇者』は?」
后「『黒い髪の勇者』は……氏にました」
衛生師「え!?」
后(間違いじゃ無い。嘘でも無い……『前勇者』は氏んだ)
后(……『魔王』として、復活しただけで)
后(この話は……王子様にお任せした方が良いんだろうな)
后「この子の父は……『黒い髪の勇者』その人です」
后「……形見として、これも持参しました」シャキン
衛生師「そ……れは」
后「……光の剣という、魔法剣だと聞いています」
衛生師「…… ……形見」
后「はい」
衛生師「そうですか……亡くなった、のですか……」
后「……国王様、も」
衛生師「?」
后「王子様から、弟王子様もお亡くなりになったと聞いています」
后「……戦士と、僧侶がこの国で祝言を上げ、青年と言う男の子を産んだのだと」
后「言う事も」
衛生師「……ええ。戦士……兄様、も僧侶さんも。もう……この国を発ちました、が」
后「……はい。私も、『黒い髪の勇者』を亡くし、行く当てもありません」
后「それに、この子は……『勇者』です」
后「……『金の髪の勇者』様も『黒い髪の勇者』も」
后「この街から、旅立っている……だから。縋るところも此処しか無いと」
后「王様に謁見を願い出たのです」
衛生師「ああ。貴女は伯父上と一緒にいらっしゃったのですよね」
衛生師「……僕の病気の事でしょう」
后「え、ええ……否。お元気になられたのであれば、何よりです」
衛生師「ありがとうございます」
衛生師「……勇者が此処に居る、と言う事は、魔王は……復活した、んですね」
后「……はい」
衛生師「貴女は……『帰還者』ですね、魔法使いさん」
后「はい」
衛生師「……『黒い髪の勇者』は?」
后「『黒い髪の勇者』は……氏にました」
衛生師「え!?」
后(間違いじゃ無い。嘘でも無い……『前勇者』は氏んだ)
后(……『魔王』として、復活しただけで)
后(この話は……王子様にお任せした方が良いんだろうな)
后「この子の父は……『黒い髪の勇者』その人です」
后「……形見として、これも持参しました」シャキン
衛生師「そ……れは」
后「……光の剣という、魔法剣だと聞いています」
衛生師「…… ……形見」
后「はい」
衛生師「そうですか……亡くなった、のですか……」
后「……国王様、も」
衛生師「?」
后「王子様から、弟王子様もお亡くなりになったと聞いています」
后「……戦士と、僧侶がこの国で祝言を上げ、青年と言う男の子を産んだのだと」
后「言う事も」
衛生師「……ええ。戦士……兄様、も僧侶さんも。もう……この国を発ちました、が」
后「……はい。私も、『黒い髪の勇者』を亡くし、行く当てもありません」
后「それに、この子は……『勇者』です」
后「……『金の髪の勇者』様も『黒い髪の勇者』も」
后「この街から、旅立っている……だから。縋るところも此処しか無いと」
后「王様に謁見を願い出たのです」
30: 2014/01/23(木) 12:13:03.00 ID:7JBXnqHQP
衛生師「……ええ、事情は理解致します」
衛生師「勇者がまた、この国に戻るであろう事は……聞いていました」
衛生師「拒む理由はありません。勇者と貴女の生活の全ては」
衛生師「我が国で面倒を見させて頂きます」
后「ありがとうございます!」
衛生師「すぐに、城の中に部屋を用意させましょう」
后「あ……いえ……あの」
衛生師「?」
后「……お城の裏手に、小屋があると思います」
衛生師「……小屋」
后「?」
衛生師「あ、いえ……それが、何か」
后「そこに住まわせて頂くことを許可頂けませんか」
后「光の子は未来の、この『世界』の希望にはなるでしょう」
后「……ですが故に。幼い内は、余り……人目にはさらしたくありません」
衛生師「……解りました。母である貴女がそう望むのであれば」ホッ
后「…… ……?」
后(何だろう……違和感? ……それに、彼は)
后(王子様や……国王様に、似ていない様な気がする、んだけど)
后(お母様似、なのかしら)
衛生師「……お疲れでしょう。今日はひとまず、城の部屋でお休み下さい」
衛生師「すぐに小屋の方の、準備をさせて頂きます」
后「……ありがとうございます」
衛生師「魔法使いさん」
后「? はい」
衛生師「勇者の誕生と……貴女の、帰還」
衛生師「それを……世界に宣言する事は、認めて下さいますね?」
后「…… ……そうですね。必要な事、でしょう」
衛生師「所在は明らかにはしません……貴女達の事は、我が国を上げて」
衛生師「きっちりとお守りします」
后「ありがとうございます」
衛生師「……今度こそ、魔王を倒す事ができるのでしょうか」
后「……私は、そう信じています」
后「『願えば叶う』と……信じています」
衛生師「そう、ですね」
衛生師「……近衛兵!」
衛生師「勇者がまた、この国に戻るであろう事は……聞いていました」
衛生師「拒む理由はありません。勇者と貴女の生活の全ては」
衛生師「我が国で面倒を見させて頂きます」
后「ありがとうございます!」
衛生師「すぐに、城の中に部屋を用意させましょう」
后「あ……いえ……あの」
衛生師「?」
后「……お城の裏手に、小屋があると思います」
衛生師「……小屋」
后「?」
衛生師「あ、いえ……それが、何か」
后「そこに住まわせて頂くことを許可頂けませんか」
后「光の子は未来の、この『世界』の希望にはなるでしょう」
后「……ですが故に。幼い内は、余り……人目にはさらしたくありません」
衛生師「……解りました。母である貴女がそう望むのであれば」ホッ
后「…… ……?」
后(何だろう……違和感? ……それに、彼は)
后(王子様や……国王様に、似ていない様な気がする、んだけど)
后(お母様似、なのかしら)
衛生師「……お疲れでしょう。今日はひとまず、城の部屋でお休み下さい」
衛生師「すぐに小屋の方の、準備をさせて頂きます」
后「……ありがとうございます」
衛生師「魔法使いさん」
后「? はい」
衛生師「勇者の誕生と……貴女の、帰還」
衛生師「それを……世界に宣言する事は、認めて下さいますね?」
后「…… ……そうですね。必要な事、でしょう」
衛生師「所在は明らかにはしません……貴女達の事は、我が国を上げて」
衛生師「きっちりとお守りします」
后「ありがとうございます」
衛生師「……今度こそ、魔王を倒す事ができるのでしょうか」
后「……私は、そう信じています」
后「『願えば叶う』と……信じています」
衛生師「そう、ですね」
衛生師「……近衛兵!」
31: 2014/01/23(木) 12:20:08.34 ID:7JBXnqHQP
パタン
近衛兵「はッ」
衛生師「魔法使いさんと勇者を、お部屋にご案内して下さい」
近衛兵「畏まりました」
后「あ、あの……王子様には……」
衛生師「大丈夫です。ちゃんと伝えておきます」
衛生師「……お疲れでしょう。今までの事……お聞かせ願いたいのは山々ですが」
衛生師「今日は、お休み下さい」
后「…… ……」
衛生師「……どうなさいました」
后「いえ……失礼致します」
后(しまったな……前后様みたいに『一切を聞いてくれるな』って)
后(先に言っておくべき……だったか)
近衛兵「では、どうぞ……こちらへ」
スタスタ、パタン
衛生師「…… ……やれやれ」ハァ
衛生師(覚悟はしていたけれど……疲れるな)
衛生師(しかし……母親が『帰還者』だって!?)
衛生師(予想していなかった。以前もそうだったのか?)
衛生師(王様から聞き出す訳には……いかないな)
衛生師(……聞いておくべきだったか。あの、地下牢で……)ハァ
コンコン
衛生師「……はい?」
近衛兵「お部屋にご案内しました」
衛生師「ご苦労様……『王』は?」
近衛兵「……本当に、良いのですか」
衛生師「王子様自らの願いだろう……仕方無い」
衛生師「……此処まで来たら引けないだろう?」
近衛兵「…… ……」
衛生師「お連れして……最悪、どうにでもなる」
近衛兵「はッ」
衛生師「……否、良い。僕が行くよ」
近衛兵「……え?」
衛生師「見届ける必要があるだろう……暴れ出して騒がれても困るし」
衛生師「医師に言って、鎮痛剤を貰ってきて」
近衛兵「は、はい……」
近衛兵「はッ」
衛生師「魔法使いさんと勇者を、お部屋にご案内して下さい」
近衛兵「畏まりました」
后「あ、あの……王子様には……」
衛生師「大丈夫です。ちゃんと伝えておきます」
衛生師「……お疲れでしょう。今までの事……お聞かせ願いたいのは山々ですが」
衛生師「今日は、お休み下さい」
后「…… ……」
衛生師「……どうなさいました」
后「いえ……失礼致します」
后(しまったな……前后様みたいに『一切を聞いてくれるな』って)
后(先に言っておくべき……だったか)
近衛兵「では、どうぞ……こちらへ」
スタスタ、パタン
衛生師「…… ……やれやれ」ハァ
衛生師(覚悟はしていたけれど……疲れるな)
衛生師(しかし……母親が『帰還者』だって!?)
衛生師(予想していなかった。以前もそうだったのか?)
衛生師(王様から聞き出す訳には……いかないな)
衛生師(……聞いておくべきだったか。あの、地下牢で……)ハァ
コンコン
衛生師「……はい?」
近衛兵「お部屋にご案内しました」
衛生師「ご苦労様……『王』は?」
近衛兵「……本当に、良いのですか」
衛生師「王子様自らの願いだろう……仕方無い」
衛生師「……此処まで来たら引けないだろう?」
近衛兵「…… ……」
衛生師「お連れして……最悪、どうにでもなる」
近衛兵「はッ」
衛生師「……否、良い。僕が行くよ」
近衛兵「……え?」
衛生師「見届ける必要があるだろう……暴れ出して騒がれても困るし」
衛生師「医師に言って、鎮痛剤を貰ってきて」
近衛兵「は、はい……」
32: 2014/01/23(木) 12:49:28.91 ID:7JBXnqHQP
衛生師「見張りは二人。扉の前で待機」スッ
スタスタ
近衛兵「ハッ」
パタン
……
………
…………
王子「…… ……」
王子(何となく緊張するな……一刻。そろそろ、かな?)
コンコン
王子「はい」
衛生師「王子様」
王子「衛生師か……」
カチャ
衛生師「ご無沙汰しております」
王子「……いや」
衛生師「……お連れしましたよ」
王子「あ、ああ……魔法使いと、勇者は?」
衛生師「……済んだら、って聞いてません? 王様、どうぞ」
王「…… ……」
王子「王…… ……!?」
衛生師「…… ……」
パタン
スタスタ
近衛兵「ハッ」
パタン
……
………
…………
王子「…… ……」
王子(何となく緊張するな……一刻。そろそろ、かな?)
コンコン
王子「はい」
衛生師「王子様」
王子「衛生師か……」
カチャ
衛生師「ご無沙汰しております」
王子「……いや」
衛生師「……お連れしましたよ」
王子「あ、ああ……魔法使いと、勇者は?」
衛生師「……済んだら、って聞いてません? 王様、どうぞ」
王「…… ……」
王子「王…… ……!?」
衛生師「…… ……」
パタン
33: 2014/01/23(木) 12:57:55.09 ID:7JBXnqHQP
王「…… ……」
王子「……ず、いぶん……そ、の……」
王子(痩せた……否、やつれた……それに……)
王子「髪……ッ 真っ白、じゃ無いか……!?」
衛生師「……随分前からね。夢見が悪いのだと仰って」
王子「夢……?」
王「…… ……」ブツブツ
衛生師「……『僕は悪く無い』とか『呪い』とか」
王子「え……」
衛生師「……『最後の王』だとか」
王子「最後の王…… ……?」
王「う、うぅ……わあああああああああああああああ!!」
王子「!」
衛生師「…… ……」
王「違う! 僕じゃ無い!僕が頃したんじゃない!」
王子「お、おい……王!?」
王「何でだよ! 何で僕だけを愛してくれないんだ、少女!!」
王「僕は王だ! お父様にも、兄様にも ……誰にも、負けないんだ!」
王子「王!」
衛生師「……大丈夫です、王。貴方が悪いんじゃありませんよ」プツン
王「…… ……ッ」ハァ、ハァ
衛生師「大丈夫です。もう……誰も居ません。すぐに、効きますから」
王子「お、い……今の、は……」
衛生師「……鎮静剤です。これが無いと、ね」
王「…… ……」フラッ
王子「!」ガシッ
王子(……服の上からでも解る。枯れ木の様な腕……!)
衛生師「……魔法使いさんと勇者には、僕が会いました」
王子「え……?」
衛生師「幸い、王様と面識はありませんから」
王子「!」
衛生師「大丈夫です。小屋へ案内して、勇者が無事旅立てる様に」
衛生師「……全面的にバックアップします。お約束します」
王子「……ず、いぶん……そ、の……」
王子(痩せた……否、やつれた……それに……)
王子「髪……ッ 真っ白、じゃ無いか……!?」
衛生師「……随分前からね。夢見が悪いのだと仰って」
王子「夢……?」
王「…… ……」ブツブツ
衛生師「……『僕は悪く無い』とか『呪い』とか」
王子「え……」
衛生師「……『最後の王』だとか」
王子「最後の王…… ……?」
王「う、うぅ……わあああああああああああああああ!!」
王子「!」
衛生師「…… ……」
王「違う! 僕じゃ無い!僕が頃したんじゃない!」
王子「お、おい……王!?」
王「何でだよ! 何で僕だけを愛してくれないんだ、少女!!」
王「僕は王だ! お父様にも、兄様にも ……誰にも、負けないんだ!」
王子「王!」
衛生師「……大丈夫です、王。貴方が悪いんじゃありませんよ」プツン
王「…… ……ッ」ハァ、ハァ
衛生師「大丈夫です。もう……誰も居ません。すぐに、効きますから」
王子「お、い……今の、は……」
衛生師「……鎮静剤です。これが無いと、ね」
王「…… ……」フラッ
王子「!」ガシッ
王子(……服の上からでも解る。枯れ木の様な腕……!)
衛生師「……魔法使いさんと勇者には、僕が会いました」
王子「え……?」
衛生師「幸い、王様と面識はありませんから」
王子「!」
衛生師「大丈夫です。小屋へ案内して、勇者が無事旅立てる様に」
衛生師「……全面的にバックアップします。お約束します」
34: 2014/01/23(木) 13:03:46.36 ID:7JBXnqHQP
王子「……お、前……」
衛生師「こうする他無いでしょう……ただでさえ」
衛生師「丘の麓の街や、港街……書の街でさえも」
衛生師「この国は呪われているだの、何だの……噂されているんです」
王子「……王?」
王「…… ……」
王子(うつろな目……ッ)バッ
衛生師「…… ……」
王子「! こ、れは……!」
衛生師「……暴れ出すと手が着けられないんです」
衛生師「きつい薬ですが……もう、これしか効かないんですよ」
王子「注射の跡だらけじゃ無いか……! 衛生師!これでは……!」
衛生師「……ちゃんと医師の元での処方です」
衛生師「僕も、ある程度の知識はありますしね」
王子「……中毒症状、じゃ無いのか!?」
王子「お、俺は……解らんが、でも、これでは……!」
王子「根本的な治療になんか、ならないだろう!?」
衛生師「……そんな事、不可能ですよ」
王子「衛生師……!」
衛生師「勇者が戻ったんです。しかも、母は『帰還者』だと言う」
衛生師「……王子様」
王子「な、何だ」
衛生師「貴方、何を知っているんですか」
王子「え……」
衛生師「国王様……弟王子様と、二人で……王を遠ざけていた理由、ですよ」
衛生師「……戦士君も知っているんですか?」
王子「……何の話だ」
衛生師「何も無いなら良いんですけどね」ハァ
衛生師「……とにかく、城の立入禁止の理由は解って頂けましたか」
王子「…… ……」
王子(確かに、これでは……否、しかし……!)
衛生師「納得いかない、って顔してるな」
衛生師「こうする他無いでしょう……ただでさえ」
衛生師「丘の麓の街や、港街……書の街でさえも」
衛生師「この国は呪われているだの、何だの……噂されているんです」
王子「……王?」
王「…… ……」
王子(うつろな目……ッ)バッ
衛生師「…… ……」
王子「! こ、れは……!」
衛生師「……暴れ出すと手が着けられないんです」
衛生師「きつい薬ですが……もう、これしか効かないんですよ」
王子「注射の跡だらけじゃ無いか……! 衛生師!これでは……!」
衛生師「……ちゃんと医師の元での処方です」
衛生師「僕も、ある程度の知識はありますしね」
王子「……中毒症状、じゃ無いのか!?」
王子「お、俺は……解らんが、でも、これでは……!」
王子「根本的な治療になんか、ならないだろう!?」
衛生師「……そんな事、不可能ですよ」
王子「衛生師……!」
衛生師「勇者が戻ったんです。しかも、母は『帰還者』だと言う」
衛生師「……王子様」
王子「な、何だ」
衛生師「貴方、何を知っているんですか」
王子「え……」
衛生師「国王様……弟王子様と、二人で……王を遠ざけていた理由、ですよ」
衛生師「……戦士君も知っているんですか?」
王子「……何の話だ」
衛生師「何も無いなら良いんですけどね」ハァ
衛生師「……とにかく、城の立入禁止の理由は解って頂けましたか」
王子「…… ……」
王子(確かに、これでは……否、しかし……!)
衛生師「納得いかない、って顔してるな」
35: 2014/01/23(木) 13:10:21.82 ID:7JBXnqHQP
王子「……少女は、どうした」
衛生師「本当に、貴方の悪い癖です」ハァ
王子「え……」
衛生師「『俺は引退した身だから』と……言う癖に」
王子「!」
衛生師「……何か、言えない『真実』でも隠してらっしゃるのかと」
衛生師「思ってたんですけど」
王子「……だ、だったとしても、だ!」
王子「王が、この状態では…… ……」
衛生師「まあ、そうですね。何を語ろうと、何を問おうと」
衛生師「王は何も語らない」
王子「…… ……」
衛生師「ああ……少女、ですね。彼女は今も、この国に居ます」
衛生師「……年が明ける頃には、子供が産まれるでしょう」
王子「! 王、の子…… ……か?」
衛生師「……彼女は、『王の婚約者』ですからね」
王子「否、待て……年が明ける頃……?」
衛生師「……皆まで言う必要は無いと思います。『元騎士団長様』」
王子「…… ……」
衛生師「ご内密にして頂ける、と……約束して下さいますね?」
王子「なに、を……だ」
衛生師「全てを、です」
王子「ど、どう言う意味だ……!」
衛生師「……そう言う意味です」ハァ
衛生師「そして、もう関わらない、と」
衛生師「貴方が言ったことです、王子様。もう引退された身なんだ」
衛生師「……未来は、『王』が紡ぐ物です」
王子「この状態で、どうやって……!!」
衛生師「僕が影武者になると言うのは、もう決まったこと何です」
衛生師「……ああ、別に権力とかどうでも良いんですよ? 本当に」
衛生師「『王の婚約者』が『次期王』を産めば……その子に譲る」
衛生師「それまでの、代わりに過ぎませんから」
王子「……本当に、王の子、なのか」
衛生師「本当に、貴方の悪い癖です」ハァ
王子「え……」
衛生師「『俺は引退した身だから』と……言う癖に」
王子「!」
衛生師「……何か、言えない『真実』でも隠してらっしゃるのかと」
衛生師「思ってたんですけど」
王子「……だ、だったとしても、だ!」
王子「王が、この状態では…… ……」
衛生師「まあ、そうですね。何を語ろうと、何を問おうと」
衛生師「王は何も語らない」
王子「…… ……」
衛生師「ああ……少女、ですね。彼女は今も、この国に居ます」
衛生師「……年が明ける頃には、子供が産まれるでしょう」
王子「! 王、の子…… ……か?」
衛生師「……彼女は、『王の婚約者』ですからね」
王子「否、待て……年が明ける頃……?」
衛生師「……皆まで言う必要は無いと思います。『元騎士団長様』」
王子「…… ……」
衛生師「ご内密にして頂ける、と……約束して下さいますね?」
王子「なに、を……だ」
衛生師「全てを、です」
王子「ど、どう言う意味だ……!」
衛生師「……そう言う意味です」ハァ
衛生師「そして、もう関わらない、と」
衛生師「貴方が言ったことです、王子様。もう引退された身なんだ」
衛生師「……未来は、『王』が紡ぐ物です」
王子「この状態で、どうやって……!!」
衛生師「僕が影武者になると言うのは、もう決まったこと何です」
衛生師「……ああ、別に権力とかどうでも良いんですよ? 本当に」
衛生師「『王の婚約者』が『次期王』を産めば……その子に譲る」
衛生師「それまでの、代わりに過ぎませんから」
王子「……本当に、王の子、なのか」
36: 2014/01/23(木) 13:17:25.67 ID:7JBXnqHQP
衛生師「『血』に拘るんですか」
王子「……否、だが……『王』は……」
衛生師「解ってます。盗賊様の遺言でしょ」
衛生師「……『王』を絶やすな。意味は解りませんけど」
王子「…… ……」
衛生師「貴方は、知っているんですか?」
王子「……お前、さっきから何度も聞くけど、それ」
王子「俺が何か知ってる……何か隠してる、って」
王子「……確信して、訪ねているんだろう」
衛生師「まあ、否定はしません。さっきも言ったでしょう?」
衛生師「……僕は元々、衛生部隊に居たんです。薬の知識はある程度持ってます」
衛生師「無理矢理聞き出す事だって可能です」
王子「!」
衛生師「……が、まあ。先ほどのお約束を守ってくれるのであれば」
衛生師「そんな、手荒なことはしたくありません」
王子「…… ……」
衛生師「…… ……如何です、王子様」
王「…… ……」
王子「解った……一つだけ、聞かせて欲しい」
衛生師「助かります……なんでしょうか」
衛生師「……あ、答えられる事、に限らせて貰いますけど」
王子「……地下に何がある?」
衛生師「…… ……」
王子「地下牢が封鎖された話は聞いている。だが……」
衛生師「……だが?」
王子「……良くない気が、立ちこめている気がする、んだ」
衛生師「誰に何を吹き込まれたのやら」ハァ
衛生師「……何もありませんよ。それに、解るんですか、そんな事」
王子「い、いや……何となく、な」
衛生師「……魔法も使えない貴方が、ですか」
王子「…… ……」
衛生師「ま、良いでしょう。何もありません。本当に」
衛生師「もう、使う必要が無くなったから、です」
王子「……否、だが……『王』は……」
衛生師「解ってます。盗賊様の遺言でしょ」
衛生師「……『王』を絶やすな。意味は解りませんけど」
王子「…… ……」
衛生師「貴方は、知っているんですか?」
王子「……お前、さっきから何度も聞くけど、それ」
王子「俺が何か知ってる……何か隠してる、って」
王子「……確信して、訪ねているんだろう」
衛生師「まあ、否定はしません。さっきも言ったでしょう?」
衛生師「……僕は元々、衛生部隊に居たんです。薬の知識はある程度持ってます」
衛生師「無理矢理聞き出す事だって可能です」
王子「!」
衛生師「……が、まあ。先ほどのお約束を守ってくれるのであれば」
衛生師「そんな、手荒なことはしたくありません」
王子「…… ……」
衛生師「…… ……如何です、王子様」
王「…… ……」
王子「解った……一つだけ、聞かせて欲しい」
衛生師「助かります……なんでしょうか」
衛生師「……あ、答えられる事、に限らせて貰いますけど」
王子「……地下に何がある?」
衛生師「…… ……」
王子「地下牢が封鎖された話は聞いている。だが……」
衛生師「……だが?」
王子「……良くない気が、立ちこめている気がする、んだ」
衛生師「誰に何を吹き込まれたのやら」ハァ
衛生師「……何もありませんよ。それに、解るんですか、そんな事」
王子「い、いや……何となく、な」
衛生師「……魔法も使えない貴方が、ですか」
王子「…… ……」
衛生師「ま、良いでしょう。何もありません。本当に」
衛生師「もう、使う必要が無くなったから、です」
37: 2014/01/23(木) 13:24:56.85 ID:7JBXnqHQP
衛生師「……こんな状態の王様が、フラフラ迷い込んでも困るでしょう?」
王子「…… ……」
王「……地下、牢……」
王子「王?」
衛生師「…… ……」
王「違う!僕じゃ無い! あいつらを頃したのは僕じゃ無いんだ!」
王子「!?」
衛生師「王!」
王「やめてくれ! こないでくれ……ッ 僕は!」ブンブンッ
王子「! 王、落ち着け……王 …… ……ッ」ドン!
王子「…… ……え」
ボトボト……ボト
王子「……ッ !?」ズキンッ
王子(腹が、暖かい…… ……血……!?)
衛生師「ナイフ!? 何時の間に……ッ」
王「うわあああああああああああああ! くるなあああああああああああ!」
ザクザクザク……ッ
王子「う、あ…… ……アァ ……!!」
衛生師「! 王、待て …… ッ …… ……」
衛生師「…… ……」
王「氏ね!氏ね……ッ 僕が、僕が王だ!何が最後の王だ!」
王「この国は僕の物だ! 少女は、僕だけの……ッ」
王子「…… ……」
衛生師「……王様。もう、氏んでます」
王「…… ……ッ」ハァ、ハア……
衛生師「…… ……王は、貴方ですよ」
王「……し、んだ。そう、か……そうだ。皆、氏んだんだ」アハハ……
王「地下の皆は、もう! 皆! 氏んだんだ!」
王「アハハハハハハハ! そうか!そうだった!」
衛生師「……ほら、もう。ナイフ……要らないでしょ?」スッ
王「ああ、そうだ! ……あ、あ……少女。少女……どこ?」パシンッ
衛生師「痛……ッ」
王子「…… ……」
王「……地下、牢……」
王子「王?」
衛生師「…… ……」
王「違う!僕じゃ無い! あいつらを頃したのは僕じゃ無いんだ!」
王子「!?」
衛生師「王!」
王「やめてくれ! こないでくれ……ッ 僕は!」ブンブンッ
王子「! 王、落ち着け……王 …… ……ッ」ドン!
王子「…… ……え」
ボトボト……ボト
王子「……ッ !?」ズキンッ
王子(腹が、暖かい…… ……血……!?)
衛生師「ナイフ!? 何時の間に……ッ」
王「うわあああああああああああああ! くるなあああああああああああ!」
ザクザクザク……ッ
王子「う、あ…… ……アァ ……!!」
衛生師「! 王、待て …… ッ …… ……」
衛生師「…… ……」
王「氏ね!氏ね……ッ 僕が、僕が王だ!何が最後の王だ!」
王「この国は僕の物だ! 少女は、僕だけの……ッ」
王子「…… ……」
衛生師「……王様。もう、氏んでます」
王「…… ……ッ」ハァ、ハア……
衛生師「…… ……王は、貴方ですよ」
王「……し、んだ。そう、か……そうだ。皆、氏んだんだ」アハハ……
王「地下の皆は、もう! 皆! 氏んだんだ!」
王「アハハハハハハハ! そうか!そうだった!」
衛生師「……ほら、もう。ナイフ……要らないでしょ?」スッ
王「ああ、そうだ! ……あ、あ……少女。少女……どこ?」パシンッ
衛生師「痛……ッ」
38: 2014/01/23(木) 13:32:16.99 ID:7JBXnqHQP
王「少女……少女……」
衛生師「……王、少女が待ってますよ」
王「え……?」
衛生師「ほら、少女の所に行きましょう。でもね?」
衛生師「……ナイフ、怖がりますから。預かります。ね?」
王「ナイフ……あ、ナイフ……誰の、だろう……」ブツブツ
衛生師「…… ……」スッ ……ホッ
王「……えいせいし。居た、の……少女は……」
衛生師「はい。大丈夫です……こっちへ」
王「…… ……」フラ
衛生師「…… ……」ブンッ ……ザク!
王「…… ……え」
ヒュ……ゥ……ボタボタボタ……ッ
衛生師「…… ……」
王「…… ……ッ」パクパク
衛生師「……頸動脈、切ったから。血は止まりませんよ。押さえても」
王「…… ……」
バタンッ
衛生師「…… ……」ハァ
衛生師「……まさか、王子様を頃してしまう、とはね……」
衛生師「まあ……仕方無い、か」
カチャ
衛生師「……悪いけどね」
近衛兵「はい…… ……!?」
衛生師「シッ……とにかく、どうにかしよう、これ」
近衛兵「王子様……王様!?」
衛生師「……『王様が暴れ出して、もみ合ってる内に』ね」
衛生師「……王、少女が待ってますよ」
王「え……?」
衛生師「ほら、少女の所に行きましょう。でもね?」
衛生師「……ナイフ、怖がりますから。預かります。ね?」
王「ナイフ……あ、ナイフ……誰の、だろう……」ブツブツ
衛生師「…… ……」スッ ……ホッ
王「……えいせいし。居た、の……少女は……」
衛生師「はい。大丈夫です……こっちへ」
王「…… ……」フラ
衛生師「…… ……」ブンッ ……ザク!
王「…… ……え」
ヒュ……ゥ……ボタボタボタ……ッ
衛生師「…… ……」
王「…… ……ッ」パクパク
衛生師「……頸動脈、切ったから。血は止まりませんよ。押さえても」
王「…… ……」
バタンッ
衛生師「…… ……」ハァ
衛生師「……まさか、王子様を頃してしまう、とはね……」
衛生師「まあ……仕方無い、か」
カチャ
衛生師「……悪いけどね」
近衛兵「はい…… ……!?」
衛生師「シッ……とにかく、どうにかしよう、これ」
近衛兵「王子様……王様!?」
衛生師「……『王様が暴れ出して、もみ合ってる内に』ね」
39: 2014/01/23(木) 13:38:37.42 ID:7JBXnqHQP
近衛兵「…… ……ッ」
衛生師「……公にする必要は無いよ」
衛生師「ああ……王子様はまずいか、いくら何でも」
近衛兵「あ、の……」
衛生師「……取りあえず、王子様は城に滞在してる事にして」
衛生師「明日の朝一で、魔法使いと勇者は小屋へ」
近衛兵「…… ……」
衛生師「……聞いてる?」
近衛兵「あ……は、はい!」
衛生師「後……医師は…… ……まあ、呼んでくれる?」
近衛兵「……始末、するんですか」
衛生師「物騒だな……」
近衛兵「…… ……」
衛生師「後で良い。取りあえず……これ、片付けて」
近衛兵「……畏まりました。あの、その……何処に……」
衛生師「裏の庭の隅にでも埋めておけば良い……ああ、夜中にこっそり、ね」
近衛兵「……は」
スタスタ
衛生師「…… ……」
衛生師(あちこち血だらけだな……もうこの服は着れないか)
衛生師(……何か、知っていたんだろうな)
衛生師(母親や……貴族達から聞き出したアレ以外……?)
衛生師(……もう、確かめる術も無いか)ハァ
衛生師「……公にする必要は無いよ」
衛生師「ああ……王子様はまずいか、いくら何でも」
近衛兵「あ、の……」
衛生師「……取りあえず、王子様は城に滞在してる事にして」
衛生師「明日の朝一で、魔法使いと勇者は小屋へ」
近衛兵「…… ……」
衛生師「……聞いてる?」
近衛兵「あ……は、はい!」
衛生師「後……医師は…… ……まあ、呼んでくれる?」
近衛兵「……始末、するんですか」
衛生師「物騒だな……」
近衛兵「…… ……」
衛生師「後で良い。取りあえず……これ、片付けて」
近衛兵「……畏まりました。あの、その……何処に……」
衛生師「裏の庭の隅にでも埋めておけば良い……ああ、夜中にこっそり、ね」
近衛兵「……は」
スタスタ
衛生師「…… ……」
衛生師(あちこち血だらけだな……もうこの服は着れないか)
衛生師(……何か、知っていたんだろうな)
衛生師(母親や……貴族達から聞き出したアレ以外……?)
衛生師(……もう、確かめる術も無いか)ハァ
40: 2014/01/23(木) 13:47:21.23 ID:7JBXnqHQP
……
………
…………
衛生師『…… ……』
母親『! ちょっと、そこの貴方!私をこんな所に閉じ込めてどうするつもりなの!』
衛生師『…… ……』
母親『私はね! 魔導国の領主の……!!』
衛生師『この国の牢に捕らわれて、まだそんな文句が通用すると思っているんですか?』
母親『……ッ 剣士を呼んで頂戴!』
衛生師『彼は此処にはいません』
母親『……ッ なら、国王を呼びなさい!』
衛生師『だから……貴女の言い分が、通る訳無いでしょ?』ハァ
魔王(…… ……何だ、これ)
衛生師『色々聞きたいのはこっちです、全く……』
母親『冗談じゃないわよ! ……お父様は、どうしてあんな……ッ』
母親『勇者達は何処に行ったの!? 魔法使いは……!』
母親『…… ……ッ 出しなさい! 出しなさいよ!』ガシャン、ガシャンッ
衛生師『暴れないの……痛いだけですよ、手』ハァ
母親『……そこにいたって無駄よ!私は何も話さないわ!』
衛生師『散々喚いて置いて良く言う……』
母親『剣士に会わせなさい!』
衛生師『だから、居ませんって』
母親『……連れてくれば良いでしょう! 彼が居なきゃ何も話さないわ!』
衛生師『……へぇ、剣士さんが居れば、お話ししてくれるんですか』
母親『とにかく連れてきなさい! 剣士なら、私をここから出してくれるわ!』
衛生師『……剣士さんって話した事無いから、どんな人かは知りませんけど』ハァ
衛生師『そんな都合の良い話、あると思ってるんですか……』
スタスタ
衛生師『…… ……』ジッ……ガシッ
母親『……な、何よ…… ……ッ!? ……は、離して!』ブンブンッ
衛生師『……会いたいんでしょ』プツン
母親『!? 痛ッ ……な、何の薬よ、それ!?』
衛生師『願いの叶う薬……ああ、大丈夫。気持ち良いらしいですから』
母親『!?』
衛生師『僕の本業は薬師なので……』
母親『……ッ あ、ァ…… ……ッ』クラッ
衛生師『本来はくすり……ま、毒草の類ですね。幻覚作用のあるね』
………
…………
衛生師『…… ……』
母親『! ちょっと、そこの貴方!私をこんな所に閉じ込めてどうするつもりなの!』
衛生師『…… ……』
母親『私はね! 魔導国の領主の……!!』
衛生師『この国の牢に捕らわれて、まだそんな文句が通用すると思っているんですか?』
母親『……ッ 剣士を呼んで頂戴!』
衛生師『彼は此処にはいません』
母親『……ッ なら、国王を呼びなさい!』
衛生師『だから……貴女の言い分が、通る訳無いでしょ?』ハァ
魔王(…… ……何だ、これ)
衛生師『色々聞きたいのはこっちです、全く……』
母親『冗談じゃないわよ! ……お父様は、どうしてあんな……ッ』
母親『勇者達は何処に行ったの!? 魔法使いは……!』
母親『…… ……ッ 出しなさい! 出しなさいよ!』ガシャン、ガシャンッ
衛生師『暴れないの……痛いだけですよ、手』ハァ
母親『……そこにいたって無駄よ!私は何も話さないわ!』
衛生師『散々喚いて置いて良く言う……』
母親『剣士に会わせなさい!』
衛生師『だから、居ませんって』
母親『……連れてくれば良いでしょう! 彼が居なきゃ何も話さないわ!』
衛生師『……へぇ、剣士さんが居れば、お話ししてくれるんですか』
母親『とにかく連れてきなさい! 剣士なら、私をここから出してくれるわ!』
衛生師『……剣士さんって話した事無いから、どんな人かは知りませんけど』ハァ
衛生師『そんな都合の良い話、あると思ってるんですか……』
スタスタ
衛生師『…… ……』ジッ……ガシッ
母親『……な、何よ…… ……ッ!? ……は、離して!』ブンブンッ
衛生師『……会いたいんでしょ』プツン
母親『!? 痛ッ ……な、何の薬よ、それ!?』
衛生師『願いの叶う薬……ああ、大丈夫。気持ち良いらしいですから』
母親『!?』
衛生師『僕の本業は薬師なので……』
母親『……ッ あ、ァ…… ……ッ』クラッ
衛生師『本来はくすり……ま、毒草の類ですね。幻覚作用のあるね』
44: 2014/01/23(木) 17:35:53.90 ID:7JBXnqHQP
魔王(……暗いな。何処だ?)
魔王(否……会話から察するに……始まりの国だ)
魔王(こんな場所、あったんだな……)
魔王「…… ……」
魔王(声、出ない……『夢』か?)
魔王(しかし……)
母親『ァ…… ……ッ あ ……ッ』ガクンッ
衛生師『不用心ですよねぇ……貴女、捕虜なんですよ?』
母親『あ……剣士!? 剣士……!!』ガシャンッ
衛生師『…… ……』
母親『ああ……剣士……!!』ガシャン!
衛生師『成る程。一番会いたいのは、娘の魔法使いでは無く……』
衛生師『……剣士、何ですね。まあ、そうだろうと思ってたけど』
母親『会いたかったわ、剣士……ねぇ、ここから出して!』
母親『此処は……寒いの!お願い……!』
衛生師『良いですよ。僕の質問に答えてくれたら』
母親『答えるわ!何でも……何でも、答えるから……!』
衛生師『……勇者達は何処に行ったんです?』
衛生師『騎士団が到着した時には、騎士団長様から』
衛生師『貴女を捕らえる様に、とそれしか聞かなかった』
母親『知らないわ! 急に光が……』
衛生師『光?』
母親『貴方もみていたじゃ無いの!剣士!』
衛生師『答えて……約束、でしょ』
母親『……ッ 急に光で……包まれて。気がついたら勇者達は居なかったのよ!』
母親『私は言った筈よ! 光の剣を寄越せと……ッ』
衛生師『……光の剣。何故?』
母親『私達はね、最果ての地に唯一住む事を許された選ばれた人間なの!』
母親『……魔の血を引く、優れた民なのよ!』
衛生師『……そんな話は聞いたことが無い』
母親『始まりの姉弟は、優れた加護を……ッ 雷の、優れた……ッ』ブンブン
衛生師『……効き目が短いのが玉に瑕、だなぁ……』プツンッ
母親『あ……ッ ァ』
魔王(否……会話から察するに……始まりの国だ)
魔王(こんな場所、あったんだな……)
魔王「…… ……」
魔王(声、出ない……『夢』か?)
魔王(しかし……)
母親『ァ…… ……ッ あ ……ッ』ガクンッ
衛生師『不用心ですよねぇ……貴女、捕虜なんですよ?』
母親『あ……剣士!? 剣士……!!』ガシャンッ
衛生師『…… ……』
母親『ああ……剣士……!!』ガシャン!
衛生師『成る程。一番会いたいのは、娘の魔法使いでは無く……』
衛生師『……剣士、何ですね。まあ、そうだろうと思ってたけど』
母親『会いたかったわ、剣士……ねぇ、ここから出して!』
母親『此処は……寒いの!お願い……!』
衛生師『良いですよ。僕の質問に答えてくれたら』
母親『答えるわ!何でも……何でも、答えるから……!』
衛生師『……勇者達は何処に行ったんです?』
衛生師『騎士団が到着した時には、騎士団長様から』
衛生師『貴女を捕らえる様に、とそれしか聞かなかった』
母親『知らないわ! 急に光が……』
衛生師『光?』
母親『貴方もみていたじゃ無いの!剣士!』
衛生師『答えて……約束、でしょ』
母親『……ッ 急に光で……包まれて。気がついたら勇者達は居なかったのよ!』
母親『私は言った筈よ! 光の剣を寄越せと……ッ』
衛生師『……光の剣。何故?』
母親『私達はね、最果ての地に唯一住む事を許された選ばれた人間なの!』
母親『……魔の血を引く、優れた民なのよ!』
衛生師『……そんな話は聞いたことが無い』
母親『始まりの姉弟は、優れた加護を……ッ 雷の、優れた……ッ』ブンブン
衛生師『……効き目が短いのが玉に瑕、だなぁ……』プツンッ
母親『あ……ッ ァ』
45: 2014/01/23(木) 17:43:50.47 ID:7JBXnqHQP
衛生師『で……その選ばれた民が何だって言うんです』
母親『……ゥ、う……ッ 光の、剣を……ッ』
衛生師『ああ、そっちでしたね……光の剣を勇者から奪って』
衛生師『どうするつもり、だったんです?』
母親『……魔王、に……ッ』
衛生師『…… ……』
母親『魔王に、貴方がなるのよ、剣士……!』
衛生師『!?』
母親『剣士は少年なんでしょう!?』
衛生師『……少年?』
母親『そうよ!紫の瞳を持ち、加護に捕らわれず様々な魔法を使うじゃないの!』
衛生師『!?』
母親『少年にそっくりじゃないの!剣士! ……記憶を無くして居るのは残念だけど』
母親『貴方は、何年経っても見た目も変わらない!』
母親『人で無いのは明らかよ!否……貴方が、少年なのよ!』
母親『……そして、貴方が魔王なのよ!』
衛生師『……さっぱり解らないな。だが……興味深い話だ』
衛生師『続けて、母親』
母親『優れた加護も持たない、劣等種なんて気にする事無いわ!』
母親『私達、選ばれた者だけで、『世界』を作り替えましょう!?』
母親『『私達が支配する為の世界』を!『私達に支配される為の世界』を!』
母親『魔法使いなんて放っておけば良いのよ! 勇者だと言ったって』
母親『所詮、優れた加護も持たないの! 少し特別なだけの、ただの人間よ!』
母親『ねえ、剣士!貴方と私なら……いえ、魔王!』
母親『どんどん、優れた子を産めば良いの! 雷の加護を持つ、優れた姉弟を!』
母親『『始まりの姉弟』の生まれ変わりを、作れば良いのよ!!』
アハハハハハハハハ、アッハハハハハハアハハッハ!!
衛生師『……うーん』
衛生師『もうダメ、かな……他には?』
母親『話したわ!話したじゃ無いの!』
母親『……ねえ、早く抱きしめてよ。此処は寒いの……ッ』
衛生師『…… ……終わり、か』ハァ
母親『……ゥ、う……ッ 光の、剣を……ッ』
衛生師『ああ、そっちでしたね……光の剣を勇者から奪って』
衛生師『どうするつもり、だったんです?』
母親『……魔王、に……ッ』
衛生師『…… ……』
母親『魔王に、貴方がなるのよ、剣士……!』
衛生師『!?』
母親『剣士は少年なんでしょう!?』
衛生師『……少年?』
母親『そうよ!紫の瞳を持ち、加護に捕らわれず様々な魔法を使うじゃないの!』
衛生師『!?』
母親『少年にそっくりじゃないの!剣士! ……記憶を無くして居るのは残念だけど』
母親『貴方は、何年経っても見た目も変わらない!』
母親『人で無いのは明らかよ!否……貴方が、少年なのよ!』
母親『……そして、貴方が魔王なのよ!』
衛生師『……さっぱり解らないな。だが……興味深い話だ』
衛生師『続けて、母親』
母親『優れた加護も持たない、劣等種なんて気にする事無いわ!』
母親『私達、選ばれた者だけで、『世界』を作り替えましょう!?』
母親『『私達が支配する為の世界』を!『私達に支配される為の世界』を!』
母親『魔法使いなんて放っておけば良いのよ! 勇者だと言ったって』
母親『所詮、優れた加護も持たないの! 少し特別なだけの、ただの人間よ!』
母親『ねえ、剣士!貴方と私なら……いえ、魔王!』
母親『どんどん、優れた子を産めば良いの! 雷の加護を持つ、優れた姉弟を!』
母親『『始まりの姉弟』の生まれ変わりを、作れば良いのよ!!』
アハハハハハハハハ、アッハハハハハハアハハッハ!!
衛生師『……うーん』
衛生師『もうダメ、かな……他には?』
母親『話したわ!話したじゃ無いの!』
母親『……ねえ、早く抱きしめてよ。此処は寒いの……ッ』
衛生師『…… ……終わり、か』ハァ
46: 2014/01/23(木) 17:56:23.71 ID:7JBXnqHQP
衛生師『……薬が切れたら、どっちにしろ禁断症状で』
衛生師『大丈夫、だとは思うけど』プツン
母親『ァ、あ……アァァアああああアア!?』
ゴロンゴロンゴロンッ
衛生師『念には念を入れて……ね』
母親『あ、あ……剣士、け……ん、し…… ……ッ』
魔王(……ひっどい事しやがるな、こいつ……)
魔王(しかし……なんだ?これは……)
魔王(俺は……確か、城で…… ……ああ、そうだ)
魔王(……后と、勇者は……旅立った、んだよな)
魔王(意識はハッキリしてるのに……身体は動かないし、声も出ない)
魔王(……なんだよ。悪い夢見てるみたいじゃ無いか)ハァ
??「過去しか見れない、んだそうだ」
魔王(!? ……誰だ!?)
??「……お前から見たら『過去』だもんな」
魔王(……そこに、誰か居るのは分かる。でも、姿が見えない……!)
魔王(声も、出ない)
??「『願え』……そうすれば、叶う」
魔王(え? 何だって?)
??「今度こそ、終わらせるんだろう……『黒い髪の魔王』」
魔王「!」
??「…… ……」
魔王(喋れるんだったら喋ってるっつーの!)
??「俺からみれば、これは『未来』だ」
??「……『俺の知る過去』も、ちゃんと教えてやるから」
魔王(何言ってやがる! ……ああ、もう!糞!)
魔王(どうすれば……ッ)
??「……次、だ。まあ……ゆっくり見ろ。魔王」
魔王(ゆっくり?次? ……ッ な、に……!!)
パアアアアアアアアアアアァッ
魔王(眩し……ッ)
……
………
…………
衛生師『大丈夫、だとは思うけど』プツン
母親『ァ、あ……アァァアああああアア!?』
ゴロンゴロンゴロンッ
衛生師『念には念を入れて……ね』
母親『あ、あ……剣士、け……ん、し…… ……ッ』
魔王(……ひっどい事しやがるな、こいつ……)
魔王(しかし……なんだ?これは……)
魔王(俺は……確か、城で…… ……ああ、そうだ)
魔王(……后と、勇者は……旅立った、んだよな)
魔王(意識はハッキリしてるのに……身体は動かないし、声も出ない)
魔王(……なんだよ。悪い夢見てるみたいじゃ無いか)ハァ
??「過去しか見れない、んだそうだ」
魔王(!? ……誰だ!?)
??「……お前から見たら『過去』だもんな」
魔王(……そこに、誰か居るのは分かる。でも、姿が見えない……!)
魔王(声も、出ない)
??「『願え』……そうすれば、叶う」
魔王(え? 何だって?)
??「今度こそ、終わらせるんだろう……『黒い髪の魔王』」
魔王「!」
??「…… ……」
魔王(喋れるんだったら喋ってるっつーの!)
??「俺からみれば、これは『未来』だ」
??「……『俺の知る過去』も、ちゃんと教えてやるから」
魔王(何言ってやがる! ……ああ、もう!糞!)
魔王(どうすれば……ッ)
??「……次、だ。まあ……ゆっくり見ろ。魔王」
魔王(ゆっくり?次? ……ッ な、に……!!)
パアアアアアアアアアアアァッ
魔王(眩し……ッ)
……
………
…………
48: 2014/01/23(木) 18:14:21.38 ID:7JBXnqHQP
衛生師『……なんですって?』
王『捕らえた貴族は皆頃しにしてください、と言ったんです』
衛生師『……手荒なことはしない、って少女に約束したんじゃないんですか』
王『しませんよ『僕』は』
衛生師『!』
王『……命令です、衛生師』
衛生師『王!』
王『大丈夫です。誰にも言いません。誰にも知られません』
王『……仕事熱心な貴方の事です。断らないでしょう?』
衛生師『…… ……』
王『ああ、秘書には気付かれない様にね?』
衛生師『……解りました』
王『従順な人は好きです……少女も、そうであれば良いのにな』ハァ
衛生師『……抵抗はしなくなったんじゃ?』
王『人形を抱いても面白くありません。早く子供は欲しいですが』
衛生師『……正式に、祝言を上げてしまえば良いでしょう』
衛生師『王子様にも言われたんですよ……って、前に言いましたよね』
王『……あの人の言葉の何一つ、従いたくありません』
王『それが、『白』でも、あの人の言葉だと言うだけで』
王『僕には……『黒』何だ』
衛生師『…… ……そうですか』
王『子供が出来れば、すぐにでもそうします。それは揺るぎない真実でしょう?』
衛生師『真実?』
王『はい。僕の子供……僕の血を継ぐ、僕の次の『王』』
王『お祖母様は『王』を絶やすなと言っていらっしゃった』
王『僕が『最後の王』になる訳には行きません』
衛生師『…… ……』
王『戦士兄様の子供にも、彼にも、譲る訳にも行かないんです』ジロッ
衛生師『……何も言ってませんよ』
王『……お父様の、前国王の甥で、帰還者だ等と……ッ』
王『しかも、騎士団長の息子で……ッ』
衛生師『……落ち着いて下さい、王』
衛生師『戦士君はそう言うのに向きませんよ……『王』は貴方です』
衛生師『……それに、彼の子供の性別だってまだ解らないんだし』
王『捕らえた貴族は皆頃しにしてください、と言ったんです』
衛生師『……手荒なことはしない、って少女に約束したんじゃないんですか』
王『しませんよ『僕』は』
衛生師『!』
王『……命令です、衛生師』
衛生師『王!』
王『大丈夫です。誰にも言いません。誰にも知られません』
王『……仕事熱心な貴方の事です。断らないでしょう?』
衛生師『…… ……』
王『ああ、秘書には気付かれない様にね?』
衛生師『……解りました』
王『従順な人は好きです……少女も、そうであれば良いのにな』ハァ
衛生師『……抵抗はしなくなったんじゃ?』
王『人形を抱いても面白くありません。早く子供は欲しいですが』
衛生師『……正式に、祝言を上げてしまえば良いでしょう』
衛生師『王子様にも言われたんですよ……って、前に言いましたよね』
王『……あの人の言葉の何一つ、従いたくありません』
王『それが、『白』でも、あの人の言葉だと言うだけで』
王『僕には……『黒』何だ』
衛生師『…… ……そうですか』
王『子供が出来れば、すぐにでもそうします。それは揺るぎない真実でしょう?』
衛生師『真実?』
王『はい。僕の子供……僕の血を継ぐ、僕の次の『王』』
王『お祖母様は『王』を絶やすなと言っていらっしゃった』
王『僕が『最後の王』になる訳には行きません』
衛生師『…… ……』
王『戦士兄様の子供にも、彼にも、譲る訳にも行かないんです』ジロッ
衛生師『……何も言ってませんよ』
王『……お父様の、前国王の甥で、帰還者だ等と……ッ』
王『しかも、騎士団長の息子で……ッ』
衛生師『……落ち着いて下さい、王』
衛生師『戦士君はそう言うのに向きませんよ……『王』は貴方です』
衛生師『……それに、彼の子供の性別だってまだ解らないんだし』
49: 2014/01/23(木) 18:18:26.36 ID:7JBXnqHQP
王『……男で無いと『王』になれない決まりなんて無いでしょう』
王『初代国王……お祖母様は、盗賊様は女性です』
衛生師『……そうでした』
王『でも、女の子であれば良い。できるなら、僧侶さんそっくりの』
衛生師『…… ……』
王『さっさと産んで……さっさと出て行けば良いんだ……ッ』
衛生師『……大丈夫です。王様。『王』は貴方しか居ません』
王『……ああ。そうですね』フゥ
王『すみません。取り乱しました』
衛生師『いえ……大丈夫ですか?』
王『……少女の所へ行きます。毎日毎日、抱いているのに』
王『どうして……彼女には、子供が出来ないんだ……ッ』ブツブツ
スタスタ、バタン!
衛生師『…… ……』ハァ
魔王(……王、って事は、国王様の……弟王子様の、子供、だよな?)
魔王(側近の従兄弟……確かに、よく似てる。だけど)
王『初代国王……お祖母様は、盗賊様は女性です』
衛生師『……そうでした』
王『でも、女の子であれば良い。できるなら、僧侶さんそっくりの』
衛生師『…… ……』
王『さっさと産んで……さっさと出て行けば良いんだ……ッ』
衛生師『……大丈夫です。王様。『王』は貴方しか居ません』
王『……ああ。そうですね』フゥ
王『すみません。取り乱しました』
衛生師『いえ……大丈夫ですか?』
王『……少女の所へ行きます。毎日毎日、抱いているのに』
王『どうして……彼女には、子供が出来ないんだ……ッ』ブツブツ
スタスタ、バタン!
衛生師『…… ……』ハァ
魔王(……王、って事は、国王様の……弟王子様の、子供、だよな?)
魔王(側近の従兄弟……確かに、よく似てる。だけど)
54: 2014/01/24(金) 10:17:27.70 ID:kOga+gXoP
魔王(……随分、神経質そう、と言うか。何と言うか……)
魔王(しかし……これが、『過去』?)
魔王(否……二人の会話からすると間違い無い、んだろうな)
魔王(まだ青年が産まれてない、みたいだし……でも、何だよ、これ)
魔王(夢……? 違う、『過去』)
魔王(…… ……さっぱりわからねぇ)ハァ
衛生師『手荒なことはしない……『自分は』が抜けていた、と言いたい訳ね』ハァ
衛生師『……直接手を下さないだけで、僕にやらせるのなら一緒じゃ無いか』
衛生師『……まあ良い。母親の話以上に、何かが聞けるなら』
スタスタ、キィ……バタン
見張り『あ……近衛兵長様!』
衛生師『君が新しい牢番だね……えっと。名前で呼んで貰えると嬉しいかな』
見張り『はい!い、以後気をつけます!』
衛生師『見張りさん、だったよね』
見張り『はい! ……衛生師様が、私をこの役目に推薦して下さったと聞いています』
衛生師『……王様に?』
見張り『はい。わざわざ声をかけて下さいました』
衛生師『…… ……』
見張り『身よりも無い老骨で御座います……そんな私に役目を下さるとは』
見張り『……感謝してもしきれません』
衛生師『まあ、囚人達は牢の中だしね。体力を使う仕事でも無い』
衛生師『……聞いていると思うけど』
見張り『解って居ます。此処で見聞きした事、口外相成らず、と』
衛生師『うん……なら良い』
見張り『……そう考えると、これほど私にぴったりな役目もありますまい』
見張り『実際は、牢に降りる事もありませんし、中の音は聞こえませんから』
衛生師『良いんだよ。君がその約束を守ってくれるのならね』
見張り『はい!』
衛生師『……貴族達はもう、中に居るんだよね?』
見張り『あ、はい。先ほど近衛兵様達が』
見張り『もうすぐ、食事の時間だと……』
衛生師『成る程、了解……ありがとう』
スタスタ
見張り『ご苦労様です!』
魔王(しかし……これが、『過去』?)
魔王(否……二人の会話からすると間違い無い、んだろうな)
魔王(まだ青年が産まれてない、みたいだし……でも、何だよ、これ)
魔王(夢……? 違う、『過去』)
魔王(…… ……さっぱりわからねぇ)ハァ
衛生師『手荒なことはしない……『自分は』が抜けていた、と言いたい訳ね』ハァ
衛生師『……直接手を下さないだけで、僕にやらせるのなら一緒じゃ無いか』
衛生師『……まあ良い。母親の話以上に、何かが聞けるなら』
スタスタ、キィ……バタン
見張り『あ……近衛兵長様!』
衛生師『君が新しい牢番だね……えっと。名前で呼んで貰えると嬉しいかな』
見張り『はい!い、以後気をつけます!』
衛生師『見張りさん、だったよね』
見張り『はい! ……衛生師様が、私をこの役目に推薦して下さったと聞いています』
衛生師『……王様に?』
見張り『はい。わざわざ声をかけて下さいました』
衛生師『…… ……』
見張り『身よりも無い老骨で御座います……そんな私に役目を下さるとは』
見張り『……感謝してもしきれません』
衛生師『まあ、囚人達は牢の中だしね。体力を使う仕事でも無い』
衛生師『……聞いていると思うけど』
見張り『解って居ます。此処で見聞きした事、口外相成らず、と』
衛生師『うん……なら良い』
見張り『……そう考えると、これほど私にぴったりな役目もありますまい』
見張り『実際は、牢に降りる事もありませんし、中の音は聞こえませんから』
衛生師『良いんだよ。君がその約束を守ってくれるのならね』
見張り『はい!』
衛生師『……貴族達はもう、中に居るんだよね?』
見張り『あ、はい。先ほど近衛兵様達が』
見張り『もうすぐ、食事の時間だと……』
衛生師『成る程、了解……ありがとう』
スタスタ
見張り『ご苦労様です!』
55: 2014/01/24(金) 10:25:36.79 ID:kOga+gXoP
衛生師(丁度食事の時間か……秘書の分にはたっぷりと眠り草でも入れとくか)
衛生師(……母親はあの調子だしな。その間に……)
衛生師『ああ、ちょっと待って、君』
近衛兵『衛生師様? ……どうされました』
衛生師『それ、牢に持って行く食事だろう?』
近衛兵『あ、はい』
衛生師『一人分、僕に』
近衛兵『は? ……はぁ』
衛生師『……秘書があんまりにも煩いから、ちょっと強制的に眠って貰う事にする』
衛生師『狂われて、母親の様になっちゃっても困るからね』
近衛兵『ああ……わかりました』
衛生師『うん、預かるよ……で、他の貴族達の分だけど』
近衛兵『はい』
衛生師『後で、僕が運ぶよ。先に大人しくしておいて貰いたいし』
衛生師『少し時間ずらすから、適当に置いておいてくれる?』
近衛兵『は、はあ……でも、昨夜から何も……』
衛生師『人間、一食抜いた位じゃ氏なないよ』
近衛兵『畏まりました』
衛生師『うん、大丈夫。僕が責任取るし……王様にも『許可』貰ってるから』
近衛兵『はい。では……失礼致します。お願い致します』
衛生師『ん……』
衛生師(さて……)ゴソゴソ
スタスタ、パタン
見張り『あれ……近衛兵長様?』
衛生師『衛生師だってば』
見張り『し、失礼致しました!』
衛生師『……ちょっと下に降りるから、僕が出て来るまで』
衛生師『誰も近づけないで……王様の許可はあるから』
見張り『了解いたしました!』
カチャ
衛生師(……母親はあの調子だしな。その間に……)
衛生師『ああ、ちょっと待って、君』
近衛兵『衛生師様? ……どうされました』
衛生師『それ、牢に持って行く食事だろう?』
近衛兵『あ、はい』
衛生師『一人分、僕に』
近衛兵『は? ……はぁ』
衛生師『……秘書があんまりにも煩いから、ちょっと強制的に眠って貰う事にする』
衛生師『狂われて、母親の様になっちゃっても困るからね』
近衛兵『ああ……わかりました』
衛生師『うん、預かるよ……で、他の貴族達の分だけど』
近衛兵『はい』
衛生師『後で、僕が運ぶよ。先に大人しくしておいて貰いたいし』
衛生師『少し時間ずらすから、適当に置いておいてくれる?』
近衛兵『は、はあ……でも、昨夜から何も……』
衛生師『人間、一食抜いた位じゃ氏なないよ』
近衛兵『畏まりました』
衛生師『うん、大丈夫。僕が責任取るし……王様にも『許可』貰ってるから』
近衛兵『はい。では……失礼致します。お願い致します』
衛生師『ん……』
衛生師(さて……)ゴソゴソ
スタスタ、パタン
見張り『あれ……近衛兵長様?』
衛生師『衛生師だってば』
見張り『し、失礼致しました!』
衛生師『……ちょっと下に降りるから、僕が出て来るまで』
衛生師『誰も近づけないで……王様の許可はあるから』
見張り『了解いたしました!』
カチャ
56: 2014/01/24(金) 10:36:15.57 ID:kOga+gXoP
ギィィイイ、パタン
衛生師『秘書、起きてる?』
秘書『…… ……』
衛生師『……ま、騒がれるより良いけど。はい、食事』
秘書『…… ……』スッ ガブッ
衛生師『本当に素直だよね』クス
秘書『私は生きてここらか出るんだ! 母親様をお救いし……ッ』
衛生師『魔導国を再建する、って? ……夢見ちゃって』
秘書『黙れ!』
衛生師『いやいや、良い心がけです……元気で居て貰わないとね』
衛生師『……君に、位は』
秘書『何……?』
衛生師『いいえ、こっちの話……』
アハハハハ……アハハハハ!
秘書『母親様!』
衛生師『……狂ってるアレ、救い出せたとして、どうする気なんだか』
秘書『誰の所為だと思っているんだ!』
秘書『……生きてさえ、生きてさえ居られれば……ッ』
衛生師『……凄いよね。自分が……自分さえよければ良いんだね、本当に』
衛生師『少女も可哀想に』ハァ
秘書『何が可哀想だ! 雷の加護も持たない、あいつが……!!』
衛生師『はいはい。話が通じないのはもう、良く解ってるよ』
秘書『覚えて居ろよ、衛生師……! お前、と……お、う……の』クラッ
秘書『か、お……だ…… ……け…… ……は』バタン!
衛生師『忘れない、って? ……光栄な事で』
衛生師(寝た、な……さて)
スタスタ
魔王(…… ……)
魔王(注射……! 母親に使ったのと同じ奴か!?)
衛生師『……ふむ。他は?』
貴族『……剣士、は……魔王……』
『少年は、紫の瞳で……剣士にそっくりな男』
『魔導将軍は魔王に反旗を翻し……』
『……雷の加護こそ至上』
『始まりの姉弟は優れた雷の加護を持ち……』
『近親婚を繰り返した結果……』
『領主様の血筋は……』
魔王(おいおいおい……そこら中で皆、泡拭いてるぞ……!!)
魔王(やめてやれよ! ……つか、お前人間か!?それでも!!)
魔王(俺の身体、動けよ! やめろ……やめろって!!)
衛生師『……似た様な話ばっかりだな』ハァ
衛生師『秘書、起きてる?』
秘書『…… ……』
衛生師『……ま、騒がれるより良いけど。はい、食事』
秘書『…… ……』スッ ガブッ
衛生師『本当に素直だよね』クス
秘書『私は生きてここらか出るんだ! 母親様をお救いし……ッ』
衛生師『魔導国を再建する、って? ……夢見ちゃって』
秘書『黙れ!』
衛生師『いやいや、良い心がけです……元気で居て貰わないとね』
衛生師『……君に、位は』
秘書『何……?』
衛生師『いいえ、こっちの話……』
アハハハハ……アハハハハ!
秘書『母親様!』
衛生師『……狂ってるアレ、救い出せたとして、どうする気なんだか』
秘書『誰の所為だと思っているんだ!』
秘書『……生きてさえ、生きてさえ居られれば……ッ』
衛生師『……凄いよね。自分が……自分さえよければ良いんだね、本当に』
衛生師『少女も可哀想に』ハァ
秘書『何が可哀想だ! 雷の加護も持たない、あいつが……!!』
衛生師『はいはい。話が通じないのはもう、良く解ってるよ』
秘書『覚えて居ろよ、衛生師……! お前、と……お、う……の』クラッ
秘書『か、お……だ…… ……け…… ……は』バタン!
衛生師『忘れない、って? ……光栄な事で』
衛生師(寝た、な……さて)
スタスタ
魔王(…… ……)
魔王(注射……! 母親に使ったのと同じ奴か!?)
衛生師『……ふむ。他は?』
貴族『……剣士、は……魔王……』
『少年は、紫の瞳で……剣士にそっくりな男』
『魔導将軍は魔王に反旗を翻し……』
『……雷の加護こそ至上』
『始まりの姉弟は優れた雷の加護を持ち……』
『近親婚を繰り返した結果……』
『領主様の血筋は……』
魔王(おいおいおい……そこら中で皆、泡拭いてるぞ……!!)
魔王(やめてやれよ! ……つか、お前人間か!?それでも!!)
魔王(俺の身体、動けよ! やめろ……やめろって!!)
衛生師『……似た様な話ばっかりだな』ハァ
57: 2014/01/24(金) 10:41:49.10 ID:kOga+gXoP
衛生師『……あんまり、何の役にも立たないね』
衛生師『まあ……王様には『皆頃しにしろ』としか言われてないしな……』スッ
魔王(ナイフ!? おい!やめろ、お前……!!)
ザク、ザク……ブシュウ……ッ
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!
魔王(…… ……ッ)
衛生師『……王様も人が悪い。どうせ見張りの事も見捨てる気なんだろうけど』
衛生師『これが……『僕』の仕事だからね』ハァ
スタスタ……バタン!
魔王(ひ、どい……ッ)
魔王(どうして……どうして、こんな……!!)
??「最悪だな、あいつ」ハァ
魔王「!」
魔王(また、お前か……!)
??「……『黒い髪の勇者』は違う道を歩み始める筈だったのにな」
魔王(え?)
??「否……それは確かだ。だけど……これじゃ……」
魔王(お前!……糞、声……ッ)
魔王(誰なんだよ、お前は!)
??「『願えば叶う』……しっかりしろよ、魔王」
魔王「…… ……だから…… ……ッ あ!?」
パアアアアアアアッ
魔王「ま、た……かよ!」
魔王(光……ッ)
衛生師『まあ……王様には『皆頃しにしろ』としか言われてないしな……』スッ
魔王(ナイフ!? おい!やめろ、お前……!!)
ザク、ザク……ブシュウ……ッ
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!
魔王(…… ……ッ)
衛生師『……王様も人が悪い。どうせ見張りの事も見捨てる気なんだろうけど』
衛生師『これが……『僕』の仕事だからね』ハァ
スタスタ……バタン!
魔王(ひ、どい……ッ)
魔王(どうして……どうして、こんな……!!)
??「最悪だな、あいつ」ハァ
魔王「!」
魔王(また、お前か……!)
??「……『黒い髪の勇者』は違う道を歩み始める筈だったのにな」
魔王(え?)
??「否……それは確かだ。だけど……これじゃ……」
魔王(お前!……糞、声……ッ)
魔王(誰なんだよ、お前は!)
??「『願えば叶う』……しっかりしろよ、魔王」
魔王「…… ……だから…… ……ッ あ!?」
パアアアアアアアッ
魔王「ま、た……かよ!」
魔王(光……ッ)
58: 2014/01/24(金) 10:46:06.54 ID:kOga+gXoP
……
………
…………
魔王「!?」
王『僕とのおしゃべりに付き合ってくれるのだったら』
秘書『え……』
王『……その後で良ければ、母親を牢から出しましょう』
衛生師『王!』
王『どうです?秘書さん』
秘書『……ッ い、良いだろう……ッ』
衛生師『おい!』
王『『始まりの姉弟』の話です』
秘書『!』
王『母親は、魔の血が混じってると信じていたようですが』
王『強ち、間違いでも無いかも知れませんよ』
秘書『!?』
王『近親婚を繰り返した所為で、随分と人口は減った様ですが』
王『それでも、ああして……一つの街を支配する迄になった』
衛生師『…… ……』
王『永い年月は必要だったんでしょうけど』
衛生師『……僕は、失礼しますよ。王様』
王『……興味、ありませんか?』
金の髪の魔王「……弟王子、無念だろうな」
魔王「お前……! ……あ、声、出る……動く!」パタパタ
金魔「久しぶりだなぁ、息子よ」
魔王「父さん!?」
魔王「な、何なんだよ、これ……!?」
金魔「……ほら、見逃すぞ」
………
…………
魔王「!?」
王『僕とのおしゃべりに付き合ってくれるのだったら』
秘書『え……』
王『……その後で良ければ、母親を牢から出しましょう』
衛生師『王!』
王『どうです?秘書さん』
秘書『……ッ い、良いだろう……ッ』
衛生師『おい!』
王『『始まりの姉弟』の話です』
秘書『!』
王『母親は、魔の血が混じってると信じていたようですが』
王『強ち、間違いでも無いかも知れませんよ』
秘書『!?』
王『近親婚を繰り返した所為で、随分と人口は減った様ですが』
王『それでも、ああして……一つの街を支配する迄になった』
衛生師『…… ……』
王『永い年月は必要だったんでしょうけど』
衛生師『……僕は、失礼しますよ。王様』
王『……興味、ありませんか?』
金の髪の魔王「……弟王子、無念だろうな」
魔王「お前……! ……あ、声、出る……動く!」パタパタ
金魔「久しぶりだなぁ、息子よ」
魔王「父さん!?」
魔王「な、何なんだよ、これ……!?」
金魔「……ほら、見逃すぞ」
59: 2014/01/24(金) 11:10:06.14 ID:kOga+gXoP
衛生師『『知らない権利』もあるって所で』
魔王「こいつ……!」
金魔「……知る事はできる。だけど俺達にはどうすることも出来ないんだ」
魔王「……これは、何なんだ?」
金魔「さぁ……俺にも良く解らん」
魔王「……父さん」
金魔「ん?」
魔王「……生きて、る……訳、じゃ無い、よな」
金魔「…… ……」
魔王「俺が……確かに……」
金魔「まあ、そうだな。お前が魔王になった、って事は」
魔王「…… ……」
金魔「正直な、俺も良くわかんないんだよ」
魔王「え?」
金魔「同じだったよ。気がついたら……ずっと」
金魔「……繰り返し、繰り返し……『過去』を見てた」
魔王「『過去』……」
金魔「厳密に言えば……俺から見たらこれは『未来』だ」
金魔「『金の髪の勇者』は居なくなった後、だからな」
魔王「……過去しか見れない、って言ってなかった、か?」
金魔「……『表裏一体』なんだ、魔王」
魔王「!」
金魔「『繰り返される運命の輪』」
??「……おい、目を反らすなよ」
魔王「増えた!?」
金魔「……酷いな」
魔王「え……?」
魔王「こいつ……!」
金魔「……知る事はできる。だけど俺達にはどうすることも出来ないんだ」
魔王「……これは、何なんだ?」
金魔「さぁ……俺にも良く解らん」
魔王「……父さん」
金魔「ん?」
魔王「……生きて、る……訳、じゃ無い、よな」
金魔「…… ……」
魔王「俺が……確かに……」
金魔「まあ、そうだな。お前が魔王になった、って事は」
魔王「…… ……」
金魔「正直な、俺も良くわかんないんだよ」
魔王「え?」
金魔「同じだったよ。気がついたら……ずっと」
金魔「……繰り返し、繰り返し……『過去』を見てた」
魔王「『過去』……」
金魔「厳密に言えば……俺から見たらこれは『未来』だ」
金魔「『金の髪の勇者』は居なくなった後、だからな」
魔王「……過去しか見れない、って言ってなかった、か?」
金魔「……『表裏一体』なんだ、魔王」
魔王「!」
金魔「『繰り返される運命の輪』」
??「……おい、目を反らすなよ」
魔王「増えた!?」
金魔「……酷いな」
魔王「え……?」
60: 2014/01/24(金) 11:22:16.14 ID:kOga+gXoP
ドンドン!ガンガン!
王『……身寄りの無い、年老いた貴方が居て下さって助かりました』
王『ありがとうございます。礼を言います』
見張り『王様! おうさ……ッ』
ガン!
王『…… ……』
スタスタ
見張り『王様ああああああああああああああああああ!!』
魔王「……!」
金魔「……何処で間違えた、んだろうな」ハァ
魔王「……どうにも、出来ないのか?」
金魔「過去に干渉なんか出来ないだろう……それこそ」
金魔「……『変わってしまう』」
魔王「!」
シュゥン……
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「げ」
金魔「……青年、か」
魔王「え、青年!? ……違う!父さん、違うだろう、だって青年は……!」
金髪紫瞳の男「……確かに俺は『青年』と言う名だ」
魔王「せ、青年は側近と癒し手の息子だろう!?」
魔王「お前……同じ顔してるじゃ無いか!」
魔王「……それに、紫の、瞳……!」
金髪紫瞳の男「そう言われてもな……名を貰ったからな」
魔王「こ、こいつも……魔王!?」
金髪紫瞳の男「違う……俺は『魔王にはなれなかった』」
魔王「え?」
金魔「よく見ろ。魔王……これが、始まりの国が滅んだ『原因』」
魔王「え、え!?」
秘書(……何処だ。何処で間違えた)
秘書(どうして、こんな事になってしまったんだ!?)
秘書(……ああ、母親様。領主様。遠い、始まりの姉弟よ!)
秘書(狂い違った選択肢を、どこかで選び直す事ができるのならば……ッ)
秘書『……ふ、フ……ふふふ……ッ』
秘書『血は、滅びん……ッ 必ず、必ず……ッ』
秘書『お前を不幸にしてやる、少女!』
秘書『『世界』を呪ってやる! 絶望に嘆く世界を……ッ』
秘書『虚空の『真に美しい世界』を望むが良い……ッ』
秘書『……ああ、紅い。暖かい……母親様……ッ』ピチャ、コリコリコリ……
秘書『ああ……世界は、美しい……ッ』
王『……身寄りの無い、年老いた貴方が居て下さって助かりました』
王『ありがとうございます。礼を言います』
見張り『王様! おうさ……ッ』
ガン!
王『…… ……』
スタスタ
見張り『王様ああああああああああああああああああ!!』
魔王「……!」
金魔「……何処で間違えた、んだろうな」ハァ
魔王「……どうにも、出来ないのか?」
金魔「過去に干渉なんか出来ないだろう……それこそ」
金魔「……『変わってしまう』」
魔王「!」
シュゥン……
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「げ」
金魔「……青年、か」
魔王「え、青年!? ……違う!父さん、違うだろう、だって青年は……!」
金髪紫瞳の男「……確かに俺は『青年』と言う名だ」
魔王「せ、青年は側近と癒し手の息子だろう!?」
魔王「お前……同じ顔してるじゃ無いか!」
魔王「……それに、紫の、瞳……!」
金髪紫瞳の男「そう言われてもな……名を貰ったからな」
魔王「こ、こいつも……魔王!?」
金髪紫瞳の男「違う……俺は『魔王にはなれなかった』」
魔王「え?」
金魔「よく見ろ。魔王……これが、始まりの国が滅んだ『原因』」
魔王「え、え!?」
秘書(……何処だ。何処で間違えた)
秘書(どうして、こんな事になってしまったんだ!?)
秘書(……ああ、母親様。領主様。遠い、始まりの姉弟よ!)
秘書(狂い違った選択肢を、どこかで選び直す事ができるのならば……ッ)
秘書『……ふ、フ……ふふふ……ッ』
秘書『血は、滅びん……ッ 必ず、必ず……ッ』
秘書『お前を不幸にしてやる、少女!』
秘書『『世界』を呪ってやる! 絶望に嘆く世界を……ッ』
秘書『虚空の『真に美しい世界』を望むが良い……ッ』
秘書『……ああ、紅い。暖かい……母親様……ッ』ピチャ、コリコリコリ……
秘書『ああ……世界は、美しい……ッ』
61: 2014/01/24(金) 11:30:50.64 ID:kOga+gXoP
魔王「……く、食ってる!? ……母親、を……!?」
金魔「…… ……」
魔王「…… ……狂ってる……!」
金髪紫瞳の男「そうだ。そもそも……『世界』が狂ってる」
魔王「え……?」
金髪紫瞳の男「まだ見てないんだな」
金魔「……ああ、教えてやるって約束したな」
魔王「え、え?」
金髪紫瞳の男「……確かに『世界』は狂っている。だけど」
金魔「……『黒い髪の勇者』は違う道を歩み出した。確かに」
魔王「……はい?」
金髪紫瞳の男「もう暫く……ゆっくり見てると良いよ」
金髪紫瞳の男「『過去』は『現在』で『現在』は『未来』だから」
金魔「……そして『未来』は『過去』だ」
魔王(側近じゃ無いけど……甘い物が食べたい気分だ)ハァ
金魔「……紫の魔王は消えたぞ?」
金髪紫瞳の男「……違う道を歩んでいるのは確か、何だろう?」
魔王「…… ……」
金魔「だと良いけど。あいつ……『器』だけが消えても」
金魔「『中身』……俺が此処に居るって事は」
金魔「……あんまり、楽観視できねぇよな」ハァ
魔王「おーい」
金魔「ん?」
魔王「……置いてけぼりにしないでください」
金魔「ああ、悪い悪い」ハハッ
魔王「……思ってないだろ、父さん……」
金髪紫瞳の男「……ほら、始まった」スッ
魔王「え…… ……!?」
金魔「……よく見ておけよ、魔王。『何度も繰り返す』」
魔王「…… ……」
金髪紫瞳の男「『繰り返し回り続ける運命の輪』……まだ、断ち切れて無い」
……
………
…………
金魔「…… ……」
魔王「…… ……狂ってる……!」
金髪紫瞳の男「そうだ。そもそも……『世界』が狂ってる」
魔王「え……?」
金髪紫瞳の男「まだ見てないんだな」
金魔「……ああ、教えてやるって約束したな」
魔王「え、え?」
金髪紫瞳の男「……確かに『世界』は狂っている。だけど」
金魔「……『黒い髪の勇者』は違う道を歩み出した。確かに」
魔王「……はい?」
金髪紫瞳の男「もう暫く……ゆっくり見てると良いよ」
金髪紫瞳の男「『過去』は『現在』で『現在』は『未来』だから」
金魔「……そして『未来』は『過去』だ」
魔王(側近じゃ無いけど……甘い物が食べたい気分だ)ハァ
金魔「……紫の魔王は消えたぞ?」
金髪紫瞳の男「……違う道を歩んでいるのは確か、何だろう?」
魔王「…… ……」
金魔「だと良いけど。あいつ……『器』だけが消えても」
金魔「『中身』……俺が此処に居るって事は」
金魔「……あんまり、楽観視できねぇよな」ハァ
魔王「おーい」
金魔「ん?」
魔王「……置いてけぼりにしないでください」
金魔「ああ、悪い悪い」ハハッ
魔王「……思ってないだろ、父さん……」
金髪紫瞳の男「……ほら、始まった」スッ
魔王「え…… ……!?」
金魔「……よく見ておけよ、魔王。『何度も繰り返す』」
魔王「…… ……」
金髪紫瞳の男「『繰り返し回り続ける運命の輪』……まだ、断ち切れて無い」
……
………
…………
62: 2014/01/24(金) 11:40:41.76 ID:kOga+gXoP
ボーゥ…… ……
剣士「……? 汽笛?」
タタタ……
兄「剣士さん!」
剣士「兄か……どうした?」
兄「息子さん……知りませんか!?」
剣士「……家にいるんじゃないのか」
兄「……船が、近づいて来ているんです」
剣士「ああ……汽笛が聞こえた」
兄「ぼ、僕……知らせて来ます!」
バタバタ……
剣士「あ…… ……」ハァ
剣士(……まだ少し遠い、な……確かに、久しい)
剣士(しかし、あれほど怯える事では……否)
剣士(……この現状で、村に人を入れるのを憚る理由は解らんでも無い)
剣士「ん……あれは」
剣士(……始まりの国の……剣の文様!?)
剣士(定期便……では無いのか!?)
スタスタ
魔導師「…… ……」
剣士「魔導師」
魔導師「わあッ ……け、剣士さん」
剣士「何ぼさっと突っ立ってる」
魔導師「……あ、だ、だって……船、が……」
剣士「兄が息子を呼びに行った」
魔導師「……定期便、でしょうか」
剣士「否……始まりの国の剣の文様が描かれた旗が見えた」
魔導師「え!?」
剣士「…… ……」
魔導師(見えた……って、この距離で!?)
剣士「……見に行くか?」
魔導師「……え」
剣士「気になるのだろう」
魔導師「い、良いんですか!?」
剣士「…… ……」
スタスタ
魔導師「あ、け、剣士さん! 待って下さい!」
剣士「……? 汽笛?」
タタタ……
兄「剣士さん!」
剣士「兄か……どうした?」
兄「息子さん……知りませんか!?」
剣士「……家にいるんじゃないのか」
兄「……船が、近づいて来ているんです」
剣士「ああ……汽笛が聞こえた」
兄「ぼ、僕……知らせて来ます!」
バタバタ……
剣士「あ…… ……」ハァ
剣士(……まだ少し遠い、な……確かに、久しい)
剣士(しかし、あれほど怯える事では……否)
剣士(……この現状で、村に人を入れるのを憚る理由は解らんでも無い)
剣士「ん……あれは」
剣士(……始まりの国の……剣の文様!?)
剣士(定期便……では無いのか!?)
スタスタ
魔導師「…… ……」
剣士「魔導師」
魔導師「わあッ ……け、剣士さん」
剣士「何ぼさっと突っ立ってる」
魔導師「……あ、だ、だって……船、が……」
剣士「兄が息子を呼びに行った」
魔導師「……定期便、でしょうか」
剣士「否……始まりの国の剣の文様が描かれた旗が見えた」
魔導師「え!?」
剣士「…… ……」
魔導師(見えた……って、この距離で!?)
剣士「……見に行くか?」
魔導師「……え」
剣士「気になるのだろう」
魔導師「い、良いんですか!?」
剣士「…… ……」
スタスタ
魔導師「あ、け、剣士さん! 待って下さい!」
63: 2014/01/24(金) 11:50:07.78 ID:kOga+gXoP
パタパタ……
……
………
…………
青年「……?」
癒し手「……せい、ねん? ……どう、したの」
青年「あ、母さん……ううん、ちょっと……船の音が聞こえた気がして」
癒し手「……船。ああ……鍛冶師の村に、定期船……来た、んですかね」フラッ
青年「……起き上がっちゃ駄目だ」
癒し手「……大丈夫」
青年「…… ……」
癒し手「私には……聞こえません、でした、けど……そう……」
青年「母さん……」
癒し手「……鍛冶師の村、までの……道、は……解り、ますね?」
青年「!?」
癒し手「……行きたい、んで……しょう……行って、良い……ん、です……よ」
青年「馬鹿な事言うな! 僕は、母さんを置いてなんて……ッ」
癒し手「…… ……」
青年「母さん……?」
癒し手「……弓、上手になりました」
青年「……母さんの教え方が良いから」
癒し手「薬草の扱いも、お母さんより上手ですし」
青年「母さん、喋らなくて……良いから……ッ」
癒し手「……伝えなくてはいけない、事……は、もう、全部……」
青年「行かないよ! 僕は……母さんを置いて何処にも行かない!」
青年「だから……!」
癒し手「…… ……雨、振ります。だから、早く……」
青年「行かないってば!」
青年「……振らないよ!まだまだ、雨なんか降らない!」
青年「良い天気だよ……! 此処に居るから。一緒にいるから」
青年「……だから、ほら、横になって!」
癒し手「……可笑しい、な…… 雨の日、だった筈……なんです」
青年「母さん……?」
癒し手「……雨の、中で……私…… …… ……ああ、違う、の、かな?」
青年「母さん…… ……かあ、さ……ッ !?」
癒し手「……かわ、った…… ……の、か……な……」サラ……
青年「!?」
青年(母さんの身体が、霞んで……違う! 崩れて……!?)
……
………
…………
青年「……?」
癒し手「……せい、ねん? ……どう、したの」
青年「あ、母さん……ううん、ちょっと……船の音が聞こえた気がして」
癒し手「……船。ああ……鍛冶師の村に、定期船……来た、んですかね」フラッ
青年「……起き上がっちゃ駄目だ」
癒し手「……大丈夫」
青年「…… ……」
癒し手「私には……聞こえません、でした、けど……そう……」
青年「母さん……」
癒し手「……鍛冶師の村、までの……道、は……解り、ますね?」
青年「!?」
癒し手「……行きたい、んで……しょう……行って、良い……ん、です……よ」
青年「馬鹿な事言うな! 僕は、母さんを置いてなんて……ッ」
癒し手「…… ……」
青年「母さん……?」
癒し手「……弓、上手になりました」
青年「……母さんの教え方が良いから」
癒し手「薬草の扱いも、お母さんより上手ですし」
青年「母さん、喋らなくて……良いから……ッ」
癒し手「……伝えなくてはいけない、事……は、もう、全部……」
青年「行かないよ! 僕は……母さんを置いて何処にも行かない!」
青年「だから……!」
癒し手「…… ……雨、振ります。だから、早く……」
青年「行かないってば!」
青年「……振らないよ!まだまだ、雨なんか降らない!」
青年「良い天気だよ……! 此処に居るから。一緒にいるから」
青年「……だから、ほら、横になって!」
癒し手「……可笑しい、な…… 雨の日、だった筈……なんです」
青年「母さん……?」
癒し手「……雨の、中で……私…… …… ……ああ、違う、の、かな?」
青年「母さん…… ……かあ、さ……ッ !?」
癒し手「……かわ、った…… ……の、か……な……」サラ……
青年「!?」
青年(母さんの身体が、霞んで……違う! 崩れて……!?)
64: 2014/01/24(金) 11:58:49.72 ID:kOga+gXoP
癒し手「……あ、ぁ。側近…… ……さ……」サラサラサラ……
青年「母さん! ……いやだ!母さん!」ギュッ ボロ……ッ
青年「!!」
癒し手「……せい、ね…… ……あい、して……ます」サラ……サラ……
青年「か……ッ」
癒し手「…… ……」
ザアアアアアアアアア……ッ …… ……ッ
青年「か……あ、さ……ッ 母さん……ッ」ポロポロポロ
青年「……う、そ……だ……ろ……」
青年「何で……何で、母さんだけ……ッ 母さんの、身体だけ……!?」
青年(『強大な命』を産む代償!? 何故だ!)
青年(……姫様……お祖母様は、どうだったのか解らない、だけど!)
青年「何でだよ! 僕は、ただの……ッ」
青年「……エルフの血、何て……母さんより薄いんだぞ!?」
青年「何で……何でこんな風に……消えちゃうんだよ! 母さん!」
青年「…… ……」ヒック
青年(……何が、どうなっている、んだよ……!)
青年(魔王も、勇者も、どうでも良い……ッ 僕には、母さんが居れば)
青年(それで良かったのに……母さん……ッ)グッ
青年(…… ……)ゴソゴソ、コロン
青年(……勇者、様も、持ってる……母さんの、浄化の石)
青年(『エルフの森を探したい』……母さんの、夢)
青年(何時か、平和な世界を……父さんと、一緒に……)
青年「…… ……ッ 母さん……ッ」
青年「母さんの、望みなら……なんだって叶えてあげるよ……ッ」
青年「……勇者様を守って、世界を……平和にして……」
青年「貴女が一緒に旅をして、惹かれた光……ッ」
青年「黒い髪の魔王を倒す……ッ」
青年「……母さん」
青年(もう……一緒に、眠る事も……出来ない……)
青年「…… ……」ギュッ
スタスタ
青年「……弓、と、マント……と」ゴソゴソ
青年「母さん! ……いやだ!母さん!」ギュッ ボロ……ッ
青年「!!」
癒し手「……せい、ね…… ……あい、して……ます」サラ……サラ……
青年「か……ッ」
癒し手「…… ……」
ザアアアアアアアアア……ッ …… ……ッ
青年「か……あ、さ……ッ 母さん……ッ」ポロポロポロ
青年「……う、そ……だ……ろ……」
青年「何で……何で、母さんだけ……ッ 母さんの、身体だけ……!?」
青年(『強大な命』を産む代償!? 何故だ!)
青年(……姫様……お祖母様は、どうだったのか解らない、だけど!)
青年「何でだよ! 僕は、ただの……ッ」
青年「……エルフの血、何て……母さんより薄いんだぞ!?」
青年「何で……何でこんな風に……消えちゃうんだよ! 母さん!」
青年「…… ……」ヒック
青年(……何が、どうなっている、んだよ……!)
青年(魔王も、勇者も、どうでも良い……ッ 僕には、母さんが居れば)
青年(それで良かったのに……母さん……ッ)グッ
青年(…… ……)ゴソゴソ、コロン
青年(……勇者、様も、持ってる……母さんの、浄化の石)
青年(『エルフの森を探したい』……母さんの、夢)
青年(何時か、平和な世界を……父さんと、一緒に……)
青年「…… ……ッ 母さん……ッ」
青年「母さんの、望みなら……なんだって叶えてあげるよ……ッ」
青年「……勇者様を守って、世界を……平和にして……」
青年「貴女が一緒に旅をして、惹かれた光……ッ」
青年「黒い髪の魔王を倒す……ッ」
青年「……母さん」
青年(もう……一緒に、眠る事も……出来ない……)
青年「…… ……」ギュッ
スタスタ
青年「……弓、と、マント……と」ゴソゴソ
65: 2014/01/24(金) 12:04:41.08 ID:kOga+gXoP
青年「…… ……ッ」
スタスタ、パタン
青年「……神父様」
青年「母さんを育ててくれて……ありがとう」
青年「自分が氏んだら……隣に埋めてくれ、何て言ってたよ」
青年「……綺麗な棺桶、用意しなくちゃ、なんてね」
青年「寂しい? ……そんな事無いよね。僕の方が余程寂しい」グスッ
青年「……こんな世界、僕が終わらせてやる」
青年「こんな、こんな……腐った世界……ッ 僕から、母さんを奪った世界……ッ」
青年「『回り続ける運命の輪』だなんて物、絶対に断ち切ってやる!」
青年「…… ……ん?」
ポツ、ポツ……
ザアアアアアアアアア……
青年「! ……雨……ッ」
青年「…… ……嫌いだ。雨なんて……ッ」
クルッ
青年「濡れると……母さんが心配する」
青年「……もう、行くよ」
タタタ……
青年(鍛冶師の村は……あっちだな)
青年(……船、間に合うか……)
……
………
…………
剣士「……雨、か」
魔導師「つ、冷たい……ッ」
剣士「戻るか?」
魔導師「い、いいえ……!」
スタスタ、パタン
青年「……神父様」
青年「母さんを育ててくれて……ありがとう」
青年「自分が氏んだら……隣に埋めてくれ、何て言ってたよ」
青年「……綺麗な棺桶、用意しなくちゃ、なんてね」
青年「寂しい? ……そんな事無いよね。僕の方が余程寂しい」グスッ
青年「……こんな世界、僕が終わらせてやる」
青年「こんな、こんな……腐った世界……ッ 僕から、母さんを奪った世界……ッ」
青年「『回り続ける運命の輪』だなんて物、絶対に断ち切ってやる!」
青年「…… ……ん?」
ポツ、ポツ……
ザアアアアアアアアア……
青年「! ……雨……ッ」
青年「…… ……嫌いだ。雨なんて……ッ」
クルッ
青年「濡れると……母さんが心配する」
青年「……もう、行くよ」
タタタ……
青年(鍛冶師の村は……あっちだな)
青年(……船、間に合うか……)
……
………
…………
剣士「……雨、か」
魔導師「つ、冷たい……ッ」
剣士「戻るか?」
魔導師「い、いいえ……!」
66: 2014/01/24(金) 12:15:16.80 ID:kOga+gXoP
剣士「……風邪引くなよ」
魔導師「だ、大丈夫です! ……間近で見ると、大きいです、ね」
剣士「あの国の船、だからな……」
剣士(しかし……態々……なんだ?)
剣士(数ヶ月前に、見たあの流れ星の様な光……あれは)
剣士(……后と勇者、だろう。そう考えれば)
剣士(その知らせ……か? ……だが、こんな大がかりにする必要は……)
剣士(……何か、あった……のか)
魔導師「あ……誰か降りてきます!」
剣士「…… ……」
スタスタ
近衛兵「すみません、この村の方ですか」
剣士(……ローブを被ってきて正解、か)グイッ
魔導師(あ……瞳、見られたくないのかな)
魔導師「はい……鍛冶師の村の……えっと」
近衛兵「この書簡を、村長様にお渡し下さい。後」
近衛兵「補給の許可を頂けますか」
パタパタパタ……
息子「……魔導師!?」
剣士「……俺が連れて来た」
息子「あ……ああ、そうですか……」
息子「すみません……えっと、貴方達は……」
近衛兵「ああ……申し訳ありません。始まりの国の近衛兵で御座います」
息子「……こ、近衛兵?騎士様……では、無いのですか?」
剣士「……騎士団は解散したんだ」ボソッ
息子「え!?」
剣士「…… ……」
魔導師「だ、大丈夫です! ……間近で見ると、大きいです、ね」
剣士「あの国の船、だからな……」
剣士(しかし……態々……なんだ?)
剣士(数ヶ月前に、見たあの流れ星の様な光……あれは)
剣士(……后と勇者、だろう。そう考えれば)
剣士(その知らせ……か? ……だが、こんな大がかりにする必要は……)
剣士(……何か、あった……のか)
魔導師「あ……誰か降りてきます!」
剣士「…… ……」
スタスタ
近衛兵「すみません、この村の方ですか」
剣士(……ローブを被ってきて正解、か)グイッ
魔導師(あ……瞳、見られたくないのかな)
魔導師「はい……鍛冶師の村の……えっと」
近衛兵「この書簡を、村長様にお渡し下さい。後」
近衛兵「補給の許可を頂けますか」
パタパタパタ……
息子「……魔導師!?」
剣士「……俺が連れて来た」
息子「あ……ああ、そうですか……」
息子「すみません……えっと、貴方達は……」
近衛兵「ああ……申し訳ありません。始まりの国の近衛兵で御座います」
息子「……こ、近衛兵?騎士様……では、無いのですか?」
剣士「……騎士団は解散したんだ」ボソッ
息子「え!?」
剣士「…… ……」
68: 2014/01/24(金) 12:49:37.32 ID:kOga+gXoP
近衛兵「王からの書状をもって参りました」スッ
魔導師「……すみません、息子さん」
息子「ああ、いや……確かに。受け取りました」
近衛兵「貴方が村長さん、ですか」
息子「はい、そうです」
近衛兵「補給の許可を頂きたいのですが……」
息子「……ああ、それは勿論、と言いたいところですが……」
剣士「魔導師、戻るぞ」グイッ
魔導師「え、あ……」
剣士「……雨が酷くなる」
スタスタ
魔導師「ま、待って下さい、剣士さん!」
タタタ……
シスター「魔導師!アンタ、居ないと思ったら……!」
魔導師「!」
剣士「……早く入れ」
魔導師「え、え……でも」
剣士「身体を拭いて、暖める方が良い」
シスター「ほら、早く!」
カチャ、カランカラン……
シスター「ご免なさい、女将さん何か拭くもの貸して頂戴!」
シスター「……後、暖まるスープか何か」
女将「あらあら、雨!? ……ちょっと待っててよ!」
パタパタ……
シスター「剣士さん、貴方ね? 魔導師を船の所まで連れて行ったの……!」
剣士「一緒ならば危険は無いだろう」
魔導師「…… ……」
シスター「だからって、ね! ……もう。そうで無くても」
シスター「魔石だか、鍛冶だかに興味持っちゃって困ってるのに……」
魔導師「……別に良いだろう、それは!」
魔導師「……すみません、息子さん」
息子「ああ、いや……確かに。受け取りました」
近衛兵「貴方が村長さん、ですか」
息子「はい、そうです」
近衛兵「補給の許可を頂きたいのですが……」
息子「……ああ、それは勿論、と言いたいところですが……」
剣士「魔導師、戻るぞ」グイッ
魔導師「え、あ……」
剣士「……雨が酷くなる」
スタスタ
魔導師「ま、待って下さい、剣士さん!」
タタタ……
シスター「魔導師!アンタ、居ないと思ったら……!」
魔導師「!」
剣士「……早く入れ」
魔導師「え、え……でも」
剣士「身体を拭いて、暖める方が良い」
シスター「ほら、早く!」
カチャ、カランカラン……
シスター「ご免なさい、女将さん何か拭くもの貸して頂戴!」
シスター「……後、暖まるスープか何か」
女将「あらあら、雨!? ……ちょっと待っててよ!」
パタパタ……
シスター「剣士さん、貴方ね? 魔導師を船の所まで連れて行ったの……!」
剣士「一緒ならば危険は無いだろう」
魔導師「…… ……」
シスター「だからって、ね! ……もう。そうで無くても」
シスター「魔石だか、鍛冶だかに興味持っちゃって困ってるのに……」
魔導師「……別に良いだろう、それは!」
69: 2014/01/24(金) 12:54:37.94 ID:kOga+gXoP
シスター「……あのね、魔導師。貴方一人がどれだけ望んでも」
シスター「あの鍛冶場はもう取り壊し決定しちゃったの!」
魔導師「…… ……」
シスター「……貴方、充分な魔法の腕があるじゃ無いの」
シスター「もう少し大きくなったら、兄みたいにこの村を守れる様になるわ」
シスター「……もう、魔石だの鍛冶だの、忘れなさい」
魔導師「……ッ」
カチャ、カランカラン……
息子「ああ、参った!」
シスター「息子さん……まあ、そんなに振ってきた!?ずぶ濡れじゃ無いの!」
シスター「女将さーん!」
パタパタ
魔導師「…… ……」ムスッ
剣士「……お前は、兄やシスターには本当に反抗的だな」
剣士「俺にはそうでも無い、のに」
魔導師「……だって。剣士さんは、あの人達みたいに」
魔導師「頭ごなしに僕を否定しないじゃないですか」
剣士「…… ……」
魔導師「あそこが、取り壊しになるのは仕方無いかもしれない。でも」
魔導師「……本とか、そんな物まで燃やしてしまおうと言うのは」
魔導師「間違えてる!」
剣士「本?」
魔導師「……参考書、と言うか。そう言う本があるんです」
魔導師「古い物から、最近の物まで。稀少な物なんです!」
魔導師「この村がこんな風になってしまった以上」
魔導師「価値も計り知れないのに……!」
シスター「あの鍛冶場はもう取り壊し決定しちゃったの!」
魔導師「…… ……」
シスター「……貴方、充分な魔法の腕があるじゃ無いの」
シスター「もう少し大きくなったら、兄みたいにこの村を守れる様になるわ」
シスター「……もう、魔石だの鍛冶だの、忘れなさい」
魔導師「……ッ」
カチャ、カランカラン……
息子「ああ、参った!」
シスター「息子さん……まあ、そんなに振ってきた!?ずぶ濡れじゃ無いの!」
シスター「女将さーん!」
パタパタ
魔導師「…… ……」ムスッ
剣士「……お前は、兄やシスターには本当に反抗的だな」
剣士「俺にはそうでも無い、のに」
魔導師「……だって。剣士さんは、あの人達みたいに」
魔導師「頭ごなしに僕を否定しないじゃないですか」
剣士「…… ……」
魔導師「あそこが、取り壊しになるのは仕方無いかもしれない。でも」
魔導師「……本とか、そんな物まで燃やしてしまおうと言うのは」
魔導師「間違えてる!」
剣士「本?」
魔導師「……参考書、と言うか。そう言う本があるんです」
魔導師「古い物から、最近の物まで。稀少な物なんです!」
魔導師「この村がこんな風になってしまった以上」
魔導師「価値も計り知れないのに……!」
70: 2014/01/24(金) 13:03:31.81 ID:kOga+gXoP
息子「すみません、俺もお邪魔しても良いでしょうか」
剣士「あ、ああ……」
魔導師「…… ……」
息子「魔導師?」
魔導師「…… ……」
シスター「こら、返事ぐらいしなさい!」
息子「まあ、まあ……良いですよ、シスターさん」
シスター「息子さんは魔導師に甘いですって!」
魔導師「……息子さん、鍛冶場の……」
シスター「魔導師!」
剣士「……お前も待て」
シスター「でも……」
剣士「……気持ちは解る。所詮『何かを傷付ける物』だ」
剣士「戦争の道具……『魔導国』の出身のお前には辛いのだろう」
魔導師「……!」
魔導師(あ……そうか、シスターさんは……)
剣士「魔導師も、だ。怒りにまかせていては、本当の望みは伝わらないぞ」
魔導師「…… ……」
息子「……魔導師、何だい?」
魔導師「鍛冶場が……無くなるのは、仕方ありません」
魔導師「……でも、出来れば、残して置いて欲しいとは思います」
息子「うん……俺も、ね。辛くないと言えば嘘になる」
シスター「…… ……」
息子「ずっと鍛冶を生業にしてきたし、今でも、携わりたい気持ちはあるんだ」
息子「……でもさっき、剣士さんが言った様に、『武器』と言うのは……」
息子「他者を傷付ける物だ。勿論、身を守る為の装備でもある」
息子「……だけど。此処で、特殊な物を作り続ける必要の無い世界になっていこうとしてる」
魔導師「…… ……」
息子「すぐには武器なんか無くならない。身を守る為に」
息子「大事な人を守る為に、必要だ。まだまだ……」
剣士「あ、ああ……」
魔導師「…… ……」
息子「魔導師?」
魔導師「…… ……」
シスター「こら、返事ぐらいしなさい!」
息子「まあ、まあ……良いですよ、シスターさん」
シスター「息子さんは魔導師に甘いですって!」
魔導師「……息子さん、鍛冶場の……」
シスター「魔導師!」
剣士「……お前も待て」
シスター「でも……」
剣士「……気持ちは解る。所詮『何かを傷付ける物』だ」
剣士「戦争の道具……『魔導国』の出身のお前には辛いのだろう」
魔導師「……!」
魔導師(あ……そうか、シスターさんは……)
剣士「魔導師も、だ。怒りにまかせていては、本当の望みは伝わらないぞ」
魔導師「…… ……」
息子「……魔導師、何だい?」
魔導師「鍛冶場が……無くなるのは、仕方ありません」
魔導師「……でも、出来れば、残して置いて欲しいとは思います」
息子「うん……俺も、ね。辛くないと言えば嘘になる」
シスター「…… ……」
息子「ずっと鍛冶を生業にしてきたし、今でも、携わりたい気持ちはあるんだ」
息子「……でもさっき、剣士さんが言った様に、『武器』と言うのは……」
息子「他者を傷付ける物だ。勿論、身を守る為の装備でもある」
息子「……だけど。此処で、特殊な物を作り続ける必要の無い世界になっていこうとしてる」
魔導師「…… ……」
息子「すぐには武器なんか無くならない。身を守る為に」
息子「大事な人を守る為に、必要だ。まだまだ……」
71: 2014/01/24(金) 13:10:01.00 ID:kOga+gXoP
息子「……でも、『魔法剣』は……もう……」
魔導師「……だ、だったら、せめて!」
魔導師「本だけは……処分しないで欲しいんです!」
魔導師「……知識を持っておくことは、悪い事では無いはずです!」
シスター「悪用されたらどうするの!」
息子「……シスターの気持ちはご尤も、だけど」
息子「大丈夫。燃やしたりなんかしないよ」
シスター「息子さん……」
息子「……俺にとっても大事な物なんです。シスターさん」
息子「俺の家に、大事に保管しておく。何時でも読みに来たら良い」
魔導師「あ……は、はい!」
シスター「…… ……」ハァ
息子「貴方が……拒否感を示すのは仕方無いと思います」
息子「でも……これは、理解して……否。理解は出来なくてもいい」
息子「……でも、ごめんなさい」
シスター「……強制する権利なんか、ありません!」プイッ
スタスタスタ
息子「あ…… ……」ハァ
剣士「……こればかりは相容れないな」
息子「……ですね」
魔導師「あ、あの……すみません」
息子「君が謝る事じゃ無いよ、魔導師」
剣士「良いのか?放って置いて」
息子「……後で、謝りに行きます」
剣士「お前が謝る事でも無いと思うけどな」
息子「……惚れた弱み、です」
魔導師「え!?」
剣士「…… ……俺にはその方が理解出来ん」
魔導師「……だ、だったら、せめて!」
魔導師「本だけは……処分しないで欲しいんです!」
魔導師「……知識を持っておくことは、悪い事では無いはずです!」
シスター「悪用されたらどうするの!」
息子「……シスターの気持ちはご尤も、だけど」
息子「大丈夫。燃やしたりなんかしないよ」
シスター「息子さん……」
息子「……俺にとっても大事な物なんです。シスターさん」
息子「俺の家に、大事に保管しておく。何時でも読みに来たら良い」
魔導師「あ……は、はい!」
シスター「…… ……」ハァ
息子「貴方が……拒否感を示すのは仕方無いと思います」
息子「でも……これは、理解して……否。理解は出来なくてもいい」
息子「……でも、ごめんなさい」
シスター「……強制する権利なんか、ありません!」プイッ
スタスタスタ
息子「あ…… ……」ハァ
剣士「……こればかりは相容れないな」
息子「……ですね」
魔導師「あ、あの……すみません」
息子「君が謝る事じゃ無いよ、魔導師」
剣士「良いのか?放って置いて」
息子「……後で、謝りに行きます」
剣士「お前が謝る事でも無いと思うけどな」
息子「……惚れた弱み、です」
魔導師「え!?」
剣士「…… ……俺にはその方が理解出来ん」
72: 2014/01/24(金) 13:21:48.31 ID:kOga+gXoP
魔導師「む、息子さんとシスターさんが!?」
息子「お、俺の一方的な片思いだよ!?」
剣士「……船はもう出たのか」
息子「あ……ああ、そうでした。書簡……」ゴソゴソ
魔導師「汽笛、聞こえてませんよ?」
息子「補給させてあげたいのは山々なんですけどね……まあ、出来る範囲で」
息子「……と、しか言えなくて。資源も少ないですし」
魔導師「まだ、出ないんですか」
息子「うん……明日の朝とか行ってたかな」
剣士「……始まりの国に戻る、のか」
息子「北の街と書の街にも行くって言っていましたよ」
剣士「……無駄な航路だな」
息子「……思うところが、あるんじゃないでしょうか」ペラ
息子「おお……ッ」
魔導師「え?」
息子「勇者様が、お生まれになったそうですよ!」
剣士(やはり、その知らせか……)
魔導師「勇者様!?」
息子「……しかも、お母様は『帰還者』だそうです!」
剣士「!」
魔導師「き……かんしゃ?」
息子「前勇者様の……娘さんだそうですよ」
剣士「…… ……娘!?」
息子「え、ええ……」ペラ
魔導師(きかんしゃ、ってなんだろう……)
息子「それに、王様がご結婚されたそうですよ!」
剣士「…… ……」
息子「細君はご懐妊されているともありますね」ペラ
剣士(王……が、結婚。病気だと聞いていたが)
剣士(……否。あれも噂に過ぎん、か)
息子「……あ」
息子「…… ……」
魔導師「息子さん?」
剣士「……どうした?」
息子「お、俺の一方的な片思いだよ!?」
剣士「……船はもう出たのか」
息子「あ……ああ、そうでした。書簡……」ゴソゴソ
魔導師「汽笛、聞こえてませんよ?」
息子「補給させてあげたいのは山々なんですけどね……まあ、出来る範囲で」
息子「……と、しか言えなくて。資源も少ないですし」
魔導師「まだ、出ないんですか」
息子「うん……明日の朝とか行ってたかな」
剣士「……始まりの国に戻る、のか」
息子「北の街と書の街にも行くって言っていましたよ」
剣士「……無駄な航路だな」
息子「……思うところが、あるんじゃないでしょうか」ペラ
息子「おお……ッ」
魔導師「え?」
息子「勇者様が、お生まれになったそうですよ!」
剣士(やはり、その知らせか……)
魔導師「勇者様!?」
息子「……しかも、お母様は『帰還者』だそうです!」
剣士「!」
魔導師「き……かんしゃ?」
息子「前勇者様の……娘さんだそうですよ」
剣士「…… ……娘!?」
息子「え、ええ……」ペラ
魔導師(きかんしゃ、ってなんだろう……)
息子「それに、王様がご結婚されたそうですよ!」
剣士「…… ……」
息子「細君はご懐妊されているともありますね」ペラ
剣士(王……が、結婚。病気だと聞いていたが)
剣士(……否。あれも噂に過ぎん、か)
息子「……あ」
息子「…… ……」
魔導師「息子さん?」
剣士「……どうした?」
73: 2014/01/24(金) 13:27:13.87 ID:kOga+gXoP
息子「……元騎士団長様が、お亡くなりになったそうです」
剣士「!? 王子が!?」
息子「あ……そうか、貴方はお知り合いだった、のですよね」
剣士「あ……ああ……」
息子「……前国王様のお兄様、でしたね。そんな……お歳、だったのでしょうか」
剣士「……あの男が、氏んだ」
剣士(……『黒い靄』 ……まさか、な)
魔導師「剣士さん?」
剣士「あ……否。何でも無い」
剣士(……そうだ。人は平等に歳を取る。不思議では……)
剣士「……息子」
息子「な、何でしょう」
剣士「船は、明日の朝だったな」
息子「え、ええ……」
剣士「……乗せて貰えるか頼んでみる」
魔導師「え!?」
剣士「…… ……」
魔導師「い、行ってしまわれる、んですか!?」
剣士「……元々、それほど長く滞在するつもりは無い」
息子「そ、そうですか……いえ」
息子「……毎日の見回りや、剣の指南のおかげで」
息子「どうにか、俺達だけでも自衛できるだろう、魔導師」
魔導師「で、でも……こんなに早く……!」
息子「何れは、自分達だけでやらないと行けないんだ」
息子「……俺も、一緒に頼みましょう」
剣士「否、それには……」
キィ……カラン、コロン
剣士「…… ……!?」
魔導師(わ、綺麗な人……男の人?女の人? ……あれ)
魔導師(どこかで、あった事あるような……?)
剣士「!? 王子が!?」
息子「あ……そうか、貴方はお知り合いだった、のですよね」
剣士「あ……ああ……」
息子「……前国王様のお兄様、でしたね。そんな……お歳、だったのでしょうか」
剣士「……あの男が、氏んだ」
剣士(……『黒い靄』 ……まさか、な)
魔導師「剣士さん?」
剣士「あ……否。何でも無い」
剣士(……そうだ。人は平等に歳を取る。不思議では……)
剣士「……息子」
息子「な、何でしょう」
剣士「船は、明日の朝だったな」
息子「え、ええ……」
剣士「……乗せて貰えるか頼んでみる」
魔導師「え!?」
剣士「…… ……」
魔導師「い、行ってしまわれる、んですか!?」
剣士「……元々、それほど長く滞在するつもりは無い」
息子「そ、そうですか……いえ」
息子「……毎日の見回りや、剣の指南のおかげで」
息子「どうにか、俺達だけでも自衛できるだろう、魔導師」
魔導師「で、でも……こんなに早く……!」
息子「何れは、自分達だけでやらないと行けないんだ」
息子「……俺も、一緒に頼みましょう」
剣士「否、それには……」
キィ……カラン、コロン
剣士「…… ……!?」
魔導師(わ、綺麗な人……男の人?女の人? ……あれ)
魔導師(どこかで、あった事あるような……?)
74: 2014/01/24(金) 13:32:41.06 ID:kOga+gXoP
女将「ああ、いらっしゃい……あらあら、まあ」
青年「……ああ、御免。濡れた侭で」
女将「そんなの良いよ! お兄ちゃん……で良いんだよね?」
女将「風邪引くよ……ちょっと待ってな、拭く物持ってくるから」
タタタ……
青年「…… ……ッ ……!?」
青年(紫の髪に……紫の瞳!?)
青年「…… ……まさか」
剣士「…… ……」
剣士(癒し手に似てる……が、しかし、これでは……)
剣士(……15.6と言っておかしく無い見た目)
剣士(あいつがいくらエルフの血を引いていると言っても……!)
魔導師「……お、お知り合い、ですか? 剣士さん……」
青年「剣士……!」
剣士「…… ……」
タタタ……
女将「はい、ほら、拭いて拭いて! ……何突っ立ってるんだい?」
女将「座りなよ……すぐに暖まるもの持って来るからね!」
青年「……君が、剣士」
剣士「お前……は……」
剣士(俺を知っている……!? と言う、事は……)
剣士「……青年、か」チラ
魔導師「?」
剣士(戦士、僧侶……と、名を出すと……魔導師が気付くか)ハァ
青年「…… ……」
剣士「側近と、癒し手の……息子、何だな」
青年「!」
息子「あ、あの……お知り合い……なんですよね?」
青年「……ああ、御免。濡れた侭で」
女将「そんなの良いよ! お兄ちゃん……で良いんだよね?」
女将「風邪引くよ……ちょっと待ってな、拭く物持ってくるから」
タタタ……
青年「…… ……ッ ……!?」
青年(紫の髪に……紫の瞳!?)
青年「…… ……まさか」
剣士「…… ……」
剣士(癒し手に似てる……が、しかし、これでは……)
剣士(……15.6と言っておかしく無い見た目)
剣士(あいつがいくらエルフの血を引いていると言っても……!)
魔導師「……お、お知り合い、ですか? 剣士さん……」
青年「剣士……!」
剣士「…… ……」
タタタ……
女将「はい、ほら、拭いて拭いて! ……何突っ立ってるんだい?」
女将「座りなよ……すぐに暖まるもの持って来るからね!」
青年「……君が、剣士」
剣士「お前……は……」
剣士(俺を知っている……!? と言う、事は……)
剣士「……青年、か」チラ
魔導師「?」
剣士(戦士、僧侶……と、名を出すと……魔導師が気付くか)ハァ
青年「…… ……」
剣士「側近と、癒し手の……息子、何だな」
青年「!」
息子「あ、あの……お知り合い……なんですよね?」
75: 2014/01/24(金) 13:39:00.73 ID:kOga+gXoP
息子「……もしかして、船に乗って居らっしゃった、のですか?」
青年「船? ……ああ、違うよ。僕は……」
青年「……僕は、このすぐ近くの小屋に母親と住んでいたんだ」
剣士「!」
剣士(目と鼻の先……に、居たのか……否)
剣士(癒し手は……まさか!?)
息子「え……あ、あんな場所に?」
青年「……僕は嘘はつけない」
魔導師「え?」
剣士「癒し手は……」
青年「……それより、あの船は何処の船なんだい?」
剣士「…… ……始まりの国だ。俺はあれに乗って、始まりの国へ行く」
青年「……君が?」
剣士「…… ……」
魔導師(な……なんか、空気が怖い……ん?)チカッ
青年「ん?」チカッ
剣士「!」
息子「え?今なにか……光った?」
青年「……!」
青年(母さんの魔石!? ……何で、こんな……否)
青年「……君」
魔導師「は、はい!」
青年「……それ、もしかして同じ物持ってんじゃない」コロン。チカチカ
魔導師「あ! ……ちょ、ちょっと待って下さい!」コロン。チカチカ
青年「…… ……それ、どうしたのか聞いても良いかい?」
魔導師「あ、こ、これは……」
息子「……僧侶さんに貰った魔石、か……」
魔導師「そ、そうです。僕の……お守りです」
青年「……『僧侶』 ……ああ、そうか……」
剣士「…… ……」
息子「……悪いが、二人ともしまってくれないか」
青年「船? ……ああ、違うよ。僕は……」
青年「……僕は、このすぐ近くの小屋に母親と住んでいたんだ」
剣士「!」
剣士(目と鼻の先……に、居たのか……否)
剣士(癒し手は……まさか!?)
息子「え……あ、あんな場所に?」
青年「……僕は嘘はつけない」
魔導師「え?」
剣士「癒し手は……」
青年「……それより、あの船は何処の船なんだい?」
剣士「…… ……始まりの国だ。俺はあれに乗って、始まりの国へ行く」
青年「……君が?」
剣士「…… ……」
魔導師(な……なんか、空気が怖い……ん?)チカッ
青年「ん?」チカッ
剣士「!」
息子「え?今なにか……光った?」
青年「……!」
青年(母さんの魔石!? ……何で、こんな……否)
青年「……君」
魔導師「は、はい!」
青年「……それ、もしかして同じ物持ってんじゃない」コロン。チカチカ
魔導師「あ! ……ちょ、ちょっと待って下さい!」コロン。チカチカ
青年「…… ……それ、どうしたのか聞いても良いかい?」
魔導師「あ、こ、これは……」
息子「……僧侶さんに貰った魔石、か……」
魔導師「そ、そうです。僕の……お守りです」
青年「……『僧侶』 ……ああ、そうか……」
剣士「…… ……」
息子「……悪いが、二人ともしまってくれないか」
76: 2014/01/24(金) 13:44:37.22 ID:kOga+gXoP
青年「え?」
息子「勝手を言って申し訳無いが……」
魔導師「あ……す、すみません」ゴソ
魔導師(で、でも……どうして光ってるんだ? こんな事、今まで無かったのに)
青年「……ああ、まあ良いよ」ゴソ
剣士「…… ……」
息子「申し訳無い……村の人達は、その」
息子「……魔石には良いイメージを……その、ね」
青年「インキュバスの魔石の所為か」ハァ
魔導師「!」
息子「ど、どうして……」
青年「……僕は、世界の謎を探してる」
剣士「世界の謎?」
青年「『そう言う事』だろう……君が。僕が成そうとしている事は」
剣士「…… ……」
青年「『腐った世界の腐った不条理』を断ち切る為には」
青年「……『世界』の『謎』を探しだし、紐解くことが必要だ」
剣士「…… ……」
息子「……あ、の。すみません、えっと……」
青年「……青年」
息子「青年さん、ですね……俺は、この村の村長の息子と申します」
青年「村長さんは貴方のお父さんじゃ無かったの」
剣士「……亡くなったそうだ」
青年「……そう。失礼」
息子「で、こっちは……」
魔導師「あ……魔導師と申します!」
青年「ああ……氷の加護を受けてるんだよね」
魔導師「え!?」
青年「……何で驚くの。瞳を見れば解るだろう」
魔導師「あ、ああ……そうですね……」
息子「勝手を言って申し訳無いが……」
魔導師「あ……す、すみません」ゴソ
魔導師(で、でも……どうして光ってるんだ? こんな事、今まで無かったのに)
青年「……ああ、まあ良いよ」ゴソ
剣士「…… ……」
息子「申し訳無い……村の人達は、その」
息子「……魔石には良いイメージを……その、ね」
青年「インキュバスの魔石の所為か」ハァ
魔導師「!」
息子「ど、どうして……」
青年「……僕は、世界の謎を探してる」
剣士「世界の謎?」
青年「『そう言う事』だろう……君が。僕が成そうとしている事は」
剣士「…… ……」
青年「『腐った世界の腐った不条理』を断ち切る為には」
青年「……『世界』の『謎』を探しだし、紐解くことが必要だ」
剣士「…… ……」
息子「……あ、の。すみません、えっと……」
青年「……青年」
息子「青年さん、ですね……俺は、この村の村長の息子と申します」
青年「村長さんは貴方のお父さんじゃ無かったの」
剣士「……亡くなったそうだ」
青年「……そう。失礼」
息子「で、こっちは……」
魔導師「あ……魔導師と申します!」
青年「ああ……氷の加護を受けてるんだよね」
魔導師「え!?」
青年「……何で驚くの。瞳を見れば解るだろう」
魔導師「あ、ああ……そうですね……」
77: 2014/01/24(金) 13:49:57.34 ID:kOga+gXoP
息子「剣士さん」
剣士「?」
息子「……始まりの国の方達には、一応伝えておきます」
剣士「あ、ああ……すまない」
息子「いえ……折角のご再会でしょうし、失礼致します」
息子「魔導師、行こう」
魔導師「あ、え……でも…… ……はい……」
青年「良いよ、魔導師本人は良いなら、だけど……居てくれても」
魔導師「え!?」
青年「……その石の話、知りたくないかい?」
魔導師「あ! ……それは、でも……」チラ
息子「…… ……」
剣士「…… ……」
魔導師「……いえ、あの……失礼します」
青年「……そう」
魔導師(この人……なんか……苦手だ)
スタスタ、カラン……パタン
剣士「…… ……」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
青年「『癒し手は』と聞いたね?」
剣士「……ああ」
青年「……母さんは、氏んだ」
剣士「!?」
青年「さらさらと……風に攫われて消えてしまった」
剣士「な……ッ !?」
青年「……紫の魔王のお母さんと同じだ」
剣士「…… ……」
青年「ねえ」
剣士「な、んだ」
青年「……剣士はお酒飲めるの」
剣士「は? ……まぁ」
青年「じゃあ、乾杯しようか……すみません!」
剣士「……おい」
青年「『折角の再会』だって……」クス
青年「確かに、僕たちはお互いを知っている。初対面なのにね」
剣士「…… ……」
剣士「?」
息子「……始まりの国の方達には、一応伝えておきます」
剣士「あ、ああ……すまない」
息子「いえ……折角のご再会でしょうし、失礼致します」
息子「魔導師、行こう」
魔導師「あ、え……でも…… ……はい……」
青年「良いよ、魔導師本人は良いなら、だけど……居てくれても」
魔導師「え!?」
青年「……その石の話、知りたくないかい?」
魔導師「あ! ……それは、でも……」チラ
息子「…… ……」
剣士「…… ……」
魔導師「……いえ、あの……失礼します」
青年「……そう」
魔導師(この人……なんか……苦手だ)
スタスタ、カラン……パタン
剣士「…… ……」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
青年「『癒し手は』と聞いたね?」
剣士「……ああ」
青年「……母さんは、氏んだ」
剣士「!?」
青年「さらさらと……風に攫われて消えてしまった」
剣士「な……ッ !?」
青年「……紫の魔王のお母さんと同じだ」
剣士「…… ……」
青年「ねえ」
剣士「な、んだ」
青年「……剣士はお酒飲めるの」
剣士「は? ……まぁ」
青年「じゃあ、乾杯しようか……すみません!」
剣士「……おい」
青年「『折角の再会』だって……」クス
青年「確かに、僕たちはお互いを知っている。初対面なのにね」
剣士「…… ……」
82: 2014/01/24(金) 17:24:21.43 ID:kOga+gXoP
剣士「……ビールで良いんだな」
青年「良く解らないから何でも良いよ」
剣士「……何?」
青年「母さんと二人で、そんな機会があると思うかい?」
剣士「お前……」
青年「……なんだろうな。良く解らない。君の顔を見たときに」
青年「飲みたいと思ったんだ……飲んでみたいと、かな」
剣士「……気分が悪くなったら、やめろよ」
青年「ビール、二つね」
女将「あいよ!」
青年「後、オニオングラタンスープ?だよね、さっきの」
青年「それ、お変わり……それから、チキンの香草焼きと、えっと……」
女将「……お兄ちゃん、細いのによく食べるねぇ」
青年「そうかな……剣士は?」
剣士「……チーズと、クラッカーを」
青年「何だよ、格好つけて」
剣士「それだけ食うのを見せられるんだろう……腹も一杯になる」
青年「後、ペペロンチーノと……ああ、シーザーサラダもね」
剣士「…… ……」ハァ
青年「……そんな厭そうな顔をするなよ」
青年「ここから始まりの国まで、遠いんだろう」
剣士「!? ……一緒に行くつもりか!?」
青年「書の街までかな」
青年「……それより。君は船なんて使わなくても……」
剣士「ちょっと待て……お前、何処まで知ってる?」
青年「……君と大差ないと思うよ。母さんから……母さんが知る限りの」
青年「全ては、聞いた」
剣士「…… ……」
青年「君は、勇者様について行くんだろう、剣士」
剣士「俺は」
青年「『魔王を倒さなければならない』」
剣士「……ああ」
青年「良く解らないから何でも良いよ」
剣士「……何?」
青年「母さんと二人で、そんな機会があると思うかい?」
剣士「お前……」
青年「……なんだろうな。良く解らない。君の顔を見たときに」
青年「飲みたいと思ったんだ……飲んでみたいと、かな」
剣士「……気分が悪くなったら、やめろよ」
青年「ビール、二つね」
女将「あいよ!」
青年「後、オニオングラタンスープ?だよね、さっきの」
青年「それ、お変わり……それから、チキンの香草焼きと、えっと……」
女将「……お兄ちゃん、細いのによく食べるねぇ」
青年「そうかな……剣士は?」
剣士「……チーズと、クラッカーを」
青年「何だよ、格好つけて」
剣士「それだけ食うのを見せられるんだろう……腹も一杯になる」
青年「後、ペペロンチーノと……ああ、シーザーサラダもね」
剣士「…… ……」ハァ
青年「……そんな厭そうな顔をするなよ」
青年「ここから始まりの国まで、遠いんだろう」
剣士「!? ……一緒に行くつもりか!?」
青年「書の街までかな」
青年「……それより。君は船なんて使わなくても……」
剣士「ちょっと待て……お前、何処まで知ってる?」
青年「……君と大差ないと思うよ。母さんから……母さんが知る限りの」
青年「全ては、聞いた」
剣士「…… ……」
青年「君は、勇者様について行くんだろう、剣士」
剣士「俺は」
青年「『魔王を倒さなければならない』」
剣士「……ああ」
83: 2014/01/24(金) 17:36:35.81 ID:kOga+gXoP
青年「……選ばれる自信は?」
剣士「……『願えば叶う』」
青年「成る程」クス
剣士「…… ……」
青年「僕もだ。僕も……勇者様と一緒に行く」
青年「……産まれたのは知ってるよね?」
剣士「……ああ。聞いた。さっきの息子が……始まりの国からの書簡を受け取っていた」
青年「……もう、あの国に?」
剣士「ああ。それから……『王』の結婚と、細君の懐妊」
青年「……弟王子様の子供か。婚約者は少女、だったかな」
剣士「王子の……氏」
青年「!?」
剣士「…… ……『黒い物』の話は?」
青年「聞いている」
青年「……勇者様に何かがあるとは思えないけど」
剣士「ああ……だが、俺は近寄らない方が良いかもしれん」
青年「? 何だよ、行くんだろう?」
剣士「……船を選んだ理由はそれだ」
青年「?」
剣士「迂闊に転移で飛び込んで……あっちが俺に引きずられるのは避けたい」
青年「……近づくだけなら平気、って保証も無いんだろう」
剣士「それを確かめに行く……どうせ、まだ時間はある」
青年「……16年間、ね」
女将「はい、おまちどおさま!」ドン!
剣士「……あ、ああ」
青年「じゃあ、乾杯?」スッ
剣士「……ああ」スッ
チィン
剣士「…… ……」
青年「……苦ッ」
剣士「……『願えば叶う』」
青年「成る程」クス
剣士「…… ……」
青年「僕もだ。僕も……勇者様と一緒に行く」
青年「……産まれたのは知ってるよね?」
剣士「……ああ。聞いた。さっきの息子が……始まりの国からの書簡を受け取っていた」
青年「……もう、あの国に?」
剣士「ああ。それから……『王』の結婚と、細君の懐妊」
青年「……弟王子様の子供か。婚約者は少女、だったかな」
剣士「王子の……氏」
青年「!?」
剣士「…… ……『黒い物』の話は?」
青年「聞いている」
青年「……勇者様に何かがあるとは思えないけど」
剣士「ああ……だが、俺は近寄らない方が良いかもしれん」
青年「? 何だよ、行くんだろう?」
剣士「……船を選んだ理由はそれだ」
青年「?」
剣士「迂闊に転移で飛び込んで……あっちが俺に引きずられるのは避けたい」
青年「……近づくだけなら平気、って保証も無いんだろう」
剣士「それを確かめに行く……どうせ、まだ時間はある」
青年「……16年間、ね」
女将「はい、おまちどおさま!」ドン!
剣士「……あ、ああ」
青年「じゃあ、乾杯?」スッ
剣士「……ああ」スッ
チィン
剣士「…… ……」
青年「……苦ッ」
90: 2014/01/26(日) 08:44:30.29 ID:9vuU59vhP
剣士「…… ……」クッ
青年「……笑うな」
剣士「無理はするな」
青年「何だよ……酒ってこんなに苦いのか」ハァ
剣士「……甘いのが好みならばそう言うのもある……此処に」
剣士「あるかは解らんがな……それより」
青年「?」
剣士「さっきの……光は何だ」
青年「……僕が聞きたい。あんなのは初めてだ」
剣士「…… ……」
青年「『三つ』ある筈なんだ」
剣士「……『三』」ボソ
青年「え?」
剣士「否……お前と、魔導師と……もう一つは?」
青年「勇者様だ。母さんが……あの城を去る時に后様に渡したと言っていた」
剣士「…… ……」
青年「まさか、魔導師と此処で会うとは思わなかった。そんな事があったんだ、と」
青年「聞いては居たけど……そんな子供の事なんて忘れてた」
青年「……大事にしてくれてる、てのは嬉しいけどね」
剣士「しかも光った」
青年「……そうだ。居てくれても良いよ、なんて言ったけど」
青年「僕自身が……聞きたかったのかな。母さんの話」
剣士「…… ……」
青年「息子?だっけ……あの人の様子見てると、御法度っぽいけどね」
剣士「……インキュバスの名等出すからだ」
青年「仕方無いだろう……事情なんか知らないんだから」
剣士「……話してくれるのか」
青年「何をだい」
剣士「俺が知らない……お前の知る話」
青年「そっちが、僕の知らない君の知る話を聞かせてくれるのならね」
青年「……書の街までは一緒だ」
剣士「…… ……」ハァ
青年「これ以上この村に滞在したって仕方無いだろう」
青年「……勇者様の所へ行くまで、まだまだ時間はある」
剣士「やっぱり着いてくるんだな……まあ、良いだろう」
青年「……笑うな」
剣士「無理はするな」
青年「何だよ……酒ってこんなに苦いのか」ハァ
剣士「……甘いのが好みならばそう言うのもある……此処に」
剣士「あるかは解らんがな……それより」
青年「?」
剣士「さっきの……光は何だ」
青年「……僕が聞きたい。あんなのは初めてだ」
剣士「…… ……」
青年「『三つ』ある筈なんだ」
剣士「……『三』」ボソ
青年「え?」
剣士「否……お前と、魔導師と……もう一つは?」
青年「勇者様だ。母さんが……あの城を去る時に后様に渡したと言っていた」
剣士「…… ……」
青年「まさか、魔導師と此処で会うとは思わなかった。そんな事があったんだ、と」
青年「聞いては居たけど……そんな子供の事なんて忘れてた」
青年「……大事にしてくれてる、てのは嬉しいけどね」
剣士「しかも光った」
青年「……そうだ。居てくれても良いよ、なんて言ったけど」
青年「僕自身が……聞きたかったのかな。母さんの話」
剣士「…… ……」
青年「息子?だっけ……あの人の様子見てると、御法度っぽいけどね」
剣士「……インキュバスの名等出すからだ」
青年「仕方無いだろう……事情なんか知らないんだから」
剣士「……話してくれるのか」
青年「何をだい」
剣士「俺が知らない……お前の知る話」
青年「そっちが、僕の知らない君の知る話を聞かせてくれるのならね」
青年「……書の街までは一緒だ」
剣士「…… ……」ハァ
青年「これ以上この村に滞在したって仕方無いだろう」
青年「……勇者様の所へ行くまで、まだまだ時間はある」
剣士「やっぱり着いてくるんだな……まあ、良いだろう」
91: 2014/01/26(日) 08:53:40.71 ID:9vuU59vhP
カチャ……コロン、コロン
剣士「……魔導師?」
青年「え?」
魔導師「あ……良かった、まだ居たんですね」ホッ
青年「どうしたの……子供はもう寝る時間じゃ無いの」
魔導師「ま、まだそんな時間じゃありません!」
魔導師「……あの、始まりの国の船……乗せてくれるそうです」
剣士「……そうか」
魔導師「えっと……お兄さんも、行くんですか」
青年「僕? ……ああ、そのつもりだけど」
魔導師「……そうですか」シュン
青年「まだそんな時間じゃ無いんだろう?」
魔導師「え?」
青年「どうぞ、隣……話、聞きたかったんだろう」
剣士「それはお前だろう」
青年「……いちいち言わなくていいだろ」
魔導師「い、良いんですか!?」
青年「さっき言ったと思うけど。僕は青年」
魔導師「あ、ありがとうございます、青年さん!」
魔導師「……あ、でも……」
青年「石を出さなきゃ良いんだろ」
剣士「まだ光ってるのか?」
魔導師「……そうみたいです。ちらっと覗いたら……」
青年「僕のもだ……それに、何だか妙な気分なんだ」
剣士「もう酔ったのか?」
青年「違うよ! ……なんて言うか……悲しい様な、切ない様な」
魔導師「あ……!」
剣士「苦しい様な……嬉しい様な、か」
青年「……何故」
剣士「……癒し手と側近と共に居る時、その石が傍にあると」
剣士「俺も、似た様な気分になった……からだ」
剣士「……魔導師?」
青年「え?」
魔導師「あ……良かった、まだ居たんですね」ホッ
青年「どうしたの……子供はもう寝る時間じゃ無いの」
魔導師「ま、まだそんな時間じゃありません!」
魔導師「……あの、始まりの国の船……乗せてくれるそうです」
剣士「……そうか」
魔導師「えっと……お兄さんも、行くんですか」
青年「僕? ……ああ、そのつもりだけど」
魔導師「……そうですか」シュン
青年「まだそんな時間じゃ無いんだろう?」
魔導師「え?」
青年「どうぞ、隣……話、聞きたかったんだろう」
剣士「それはお前だろう」
青年「……いちいち言わなくていいだろ」
魔導師「い、良いんですか!?」
青年「さっき言ったと思うけど。僕は青年」
魔導師「あ、ありがとうございます、青年さん!」
魔導師「……あ、でも……」
青年「石を出さなきゃ良いんだろ」
剣士「まだ光ってるのか?」
魔導師「……そうみたいです。ちらっと覗いたら……」
青年「僕のもだ……それに、何だか妙な気分なんだ」
剣士「もう酔ったのか?」
青年「違うよ! ……なんて言うか……悲しい様な、切ない様な」
魔導師「あ……!」
剣士「苦しい様な……嬉しい様な、か」
青年「……何故」
剣士「……癒し手と側近と共に居る時、その石が傍にあると」
剣士「俺も、似た様な気分になった……からだ」
92: 2014/01/26(日) 09:12:25.61 ID:9vuU59vhP
青年「……君は持っていないんだろう?」
剣士「俺は『何』だ? ……特性を考えると」
剣士「……苦手だと思ってもおかしく無いか、と言われたな」
青年「ああ……成る程」
魔導師「??」
青年「……まあ、良い。かあさ……癒し…… ……」
青年「ああ、もう。話にくいな」
剣士「『僧侶』の話か」
青年「……確かに、嘘にはならないけどさ」ハァ
魔導師「あ、あの……?」
青年「……自己紹介、しようか」
魔導師「え?」
青年「僕と剣士は……まあ、ほら。お互いをある程度知ってるし」
青年「君と剣士も、だろう? でも、君と僕は正真正銘初対面だ」
青年「……石よりも先に、お互いを知るべきだろう?」
魔導師「わ、解りました……えっと」
青年「言いにくい?僕から話そうか」
魔導師「いえ……あの、えっと。名前は魔導師です」
魔導師「……氷の加護を受けています」
青年「うん」
魔導師「……青年さんは、このすぐ傍に住んでいらっしゃった、んですよね?」
青年「ああ……まあ、そうなんだけど」
青年「ずっと母さんと二人で、殆ど外に出たことが無いんだ」
青年「自己紹介ついでに、この村の事も教えてくれると嬉しいな」
魔導師「え、でも……あの、その、魔石の話……」
青年「……ああ、まあそれはね。何て言うかな」
青年「ここ何年かの話、てのは……知らないから」
剣士「…… ……」
青年「さっき君が聞いてたかは解らないけど」
青年「……僕は『世界の謎』を紐解きたい……否」
青年「僕にはその義務がある、と思ってる」
魔導師「…… ……」
青年「だから、何だって良いから……知りたいのさ」
青年「……母さんからある程度、この村の話も聞いたけど」
青年「鍛冶について、母さんはさっぱりだっただろうからね」
魔導師「……ッ」
剣士「…… ……」
青年「……あれ、どうしたの」
剣士「俺は『何』だ? ……特性を考えると」
剣士「……苦手だと思ってもおかしく無いか、と言われたな」
青年「ああ……成る程」
魔導師「??」
青年「……まあ、良い。かあさ……癒し…… ……」
青年「ああ、もう。話にくいな」
剣士「『僧侶』の話か」
青年「……確かに、嘘にはならないけどさ」ハァ
魔導師「あ、あの……?」
青年「……自己紹介、しようか」
魔導師「え?」
青年「僕と剣士は……まあ、ほら。お互いをある程度知ってるし」
青年「君と剣士も、だろう? でも、君と僕は正真正銘初対面だ」
青年「……石よりも先に、お互いを知るべきだろう?」
魔導師「わ、解りました……えっと」
青年「言いにくい?僕から話そうか」
魔導師「いえ……あの、えっと。名前は魔導師です」
魔導師「……氷の加護を受けています」
青年「うん」
魔導師「……青年さんは、このすぐ傍に住んでいらっしゃった、んですよね?」
青年「ああ……まあ、そうなんだけど」
青年「ずっと母さんと二人で、殆ど外に出たことが無いんだ」
青年「自己紹介ついでに、この村の事も教えてくれると嬉しいな」
魔導師「え、でも……あの、その、魔石の話……」
青年「……ああ、まあそれはね。何て言うかな」
青年「ここ何年かの話、てのは……知らないから」
剣士「…… ……」
青年「さっき君が聞いてたかは解らないけど」
青年「……僕は『世界の謎』を紐解きたい……否」
青年「僕にはその義務がある、と思ってる」
魔導師「…… ……」
青年「だから、何だって良いから……知りたいのさ」
青年「……母さんからある程度、この村の話も聞いたけど」
青年「鍛冶について、母さんはさっぱりだっただろうからね」
魔導師「……ッ」
剣士「…… ……」
青年「……あれ、どうしたの」
101: 2014/01/27(月) 10:05:33.77 ID:EFBzWVUiP
剣士「…… ……」チラ
魔導師「……昨年、この村で流行病が……その」
青年「……御免、なんか悪い事聞いたか」
魔導師「いえ ……その」
剣士「随分、亡くなられたそうだ。その知識や技術を持った」
剣士「……大人達が、な」
青年「……そうか」
魔導師「鍛冶場も……取り壊しが決定しました」
青年「…… ……」
魔導師「世界は平和になっていくから。だから、特殊な鍛冶の技術は」
魔導師「もう、いらないんだって」
青年「……確かに、平和にはなっていくのかもしれない。だけど」
青年「魔王は復活したし、魔物だって強くなっている。なのに?」
魔導師「単なる武器、ならこの村での生成に限らないんでしょう?」
剣士「……こんな物、たかだか鋼。だからな」
青年「魔法剣の知識、技術自体は……とうに廃れてしまった、と言う事か」
剣士「聞いてたんだろう?」
青年「ある程度はね」
魔導師「本だけは、どうにか残して貰えることになりました」
魔導師「……息子さんは、何時でも見に来て良いって」
青年「剣を鍛えられる人、てのは……居ないのか」
剣士「……息子ぐらいの物みたいだな。だが……とうの本人も、な」
青年「魔導師は、興味があるんだね?」
魔導師「え……あ、はい。でも……僕は、まだまだ、その」
魔導師「……です、子供、だしって……」
魔導師「鍛冶場にも、危ないからって近寄らせては貰えませんでしたから」
青年「曾お爺様、嘆くな……」ハァ
魔導師「ひいおじいさま?」
剣士「青年」
青年「……あっと」
魔導師「??」
剣士「……魔石生成の技術だってそうだ。とうに……」
青年「……魔除けの石を残して、だったな。それも」
青年「魔導国の解体で、もう…… ……」
魔導師「……昨年、この村で流行病が……その」
青年「……御免、なんか悪い事聞いたか」
魔導師「いえ ……その」
剣士「随分、亡くなられたそうだ。その知識や技術を持った」
剣士「……大人達が、な」
青年「……そうか」
魔導師「鍛冶場も……取り壊しが決定しました」
青年「…… ……」
魔導師「世界は平和になっていくから。だから、特殊な鍛冶の技術は」
魔導師「もう、いらないんだって」
青年「……確かに、平和にはなっていくのかもしれない。だけど」
青年「魔王は復活したし、魔物だって強くなっている。なのに?」
魔導師「単なる武器、ならこの村での生成に限らないんでしょう?」
剣士「……こんな物、たかだか鋼。だからな」
青年「魔法剣の知識、技術自体は……とうに廃れてしまった、と言う事か」
剣士「聞いてたんだろう?」
青年「ある程度はね」
魔導師「本だけは、どうにか残して貰えることになりました」
魔導師「……息子さんは、何時でも見に来て良いって」
青年「剣を鍛えられる人、てのは……居ないのか」
剣士「……息子ぐらいの物みたいだな。だが……とうの本人も、な」
青年「魔導師は、興味があるんだね?」
魔導師「え……あ、はい。でも……僕は、まだまだ、その」
魔導師「……です、子供、だしって……」
魔導師「鍛冶場にも、危ないからって近寄らせては貰えませんでしたから」
青年「曾お爺様、嘆くな……」ハァ
魔導師「ひいおじいさま?」
剣士「青年」
青年「……あっと」
魔導師「??」
剣士「……魔石生成の技術だってそうだ。とうに……」
青年「……魔除けの石を残して、だったな。それも」
青年「魔導国の解体で、もう…… ……」
102: 2014/01/27(月) 10:20:22.81 ID:EFBzWVUiP
魔導師「……僕が、もっと大人だったら」
魔導師「どうにか、出来たのかな……」
剣士「…… ……」
青年「……『人間』はね、どれだけ生き急いだって」
青年「成長するスピードなんか変えられないんだ」
魔導師「…… ……」
青年「勇者様だってそうだ。倣うならば、16年」
青年「……僕たちは16年、彼女の成長を待たなければならない」
魔導師「そうだ……勇者様、女の子なんですよね」
青年「……だよね?剣士」
剣士「らしいな」
魔導師「あれ? でも……どうして、青年さんが知っているんです?」
魔導師「……僕達はさっき、書簡で知ったけど……」
魔導師「青年さん、ずっと……小屋に住んでらした、んですよね」
魔導師「なんで……」
青年「……困ったな。僕は嘘は吐けない」
魔導師「さっきも……言ってましたね。何なんです?」
青年「…… ……」
剣士「……阿呆」ハァ
魔導師「??」
青年「魔導師」
魔導師「は、はい!」
青年「……剣士」
剣士「何だ」
青年「……僕は、彼じゃないのかな、と思うんだけど」スッ
魔導師「え? 僕? ……が、あの。な、なにか……」
剣士「……癒し……『僧侶の魔石』か」
青年「確かに、単なる偶然なのかもしれない。意味なんか何も無いのかも知れない」
青年「……魔石の作り方を教えてくれたお礼」
青年「それだけだったのかもしれない、けど……」
魔導師「あの……?」
魔導師「どうにか、出来たのかな……」
剣士「…… ……」
青年「……『人間』はね、どれだけ生き急いだって」
青年「成長するスピードなんか変えられないんだ」
魔導師「…… ……」
青年「勇者様だってそうだ。倣うならば、16年」
青年「……僕たちは16年、彼女の成長を待たなければならない」
魔導師「そうだ……勇者様、女の子なんですよね」
青年「……だよね?剣士」
剣士「らしいな」
魔導師「あれ? でも……どうして、青年さんが知っているんです?」
魔導師「……僕達はさっき、書簡で知ったけど……」
魔導師「青年さん、ずっと……小屋に住んでらした、んですよね」
魔導師「なんで……」
青年「……困ったな。僕は嘘は吐けない」
魔導師「さっきも……言ってましたね。何なんです?」
青年「…… ……」
剣士「……阿呆」ハァ
魔導師「??」
青年「魔導師」
魔導師「は、はい!」
青年「……剣士」
剣士「何だ」
青年「……僕は、彼じゃないのかな、と思うんだけど」スッ
魔導師「え? 僕? ……が、あの。な、なにか……」
剣士「……癒し……『僧侶の魔石』か」
青年「確かに、単なる偶然なのかもしれない。意味なんか何も無いのかも知れない」
青年「……魔石の作り方を教えてくれたお礼」
青年「それだけだったのかもしれない、けど……」
魔導師「あの……?」
103: 2014/01/27(月) 10:35:27.20 ID:EFBzWVUiP
青年「……さっきの疑問に答えるよ、魔導師。でもちょっとだけ待って」
青年「僕と剣士は……勇者様について行くつもりなんだ」
魔導師「……え!?」
青年「君は今幾つだい、魔導師」
魔導師「も、もうすぐ……9歳、です」
青年「例外なく彼女が16歳になる時に……と考えると24.5歳だな」
魔導師「……ちょ、ちょっと待って下さい!?」
魔導師「ぼ、僕ですら、そんな歳になるんです! お二人は……!」
青年「……まあ、それは良いから」
魔導師「良くないでしょう!?」
魔導師「そ、それに……勇者様に選ばれるっていう保証も……!」
剣士「……『願えば叶う』」
魔導師「剣士さん……!?」
青年「さっきも言った。僕は嘘は吐かない」
青年「……僕は勇者様について行く。選ばれる保証は確かに無いが」
青年「君と僕が持つ、その石……同じ物を、勇者様も持っているはずだ」
魔導師「え!?」
青年「……やっぱり、偶然じゃ無いのかもな」
剣士「一人で納得するな……それに」
剣士「魔導師、だとして、だ……まだ子供だ」
青年「選ばれなければ選ばせれば良い」
剣士「……無茶苦茶だな」
魔導師「…… ……」
青年「魔導師」
魔導師「は、はい!?」
青年「……勇者様が、光の剣を持って魔王を倒す、って事は知ってる?」
魔導師「あ……はい……あの。兄さんに聞きました」
青年「うん。じゃあ……その光の剣が完璧な状態じゃない、って事は?」
魔導師「え!?」
青年「僕と剣士は……勇者様について行くつもりなんだ」
魔導師「……え!?」
青年「君は今幾つだい、魔導師」
魔導師「も、もうすぐ……9歳、です」
青年「例外なく彼女が16歳になる時に……と考えると24.5歳だな」
魔導師「……ちょ、ちょっと待って下さい!?」
魔導師「ぼ、僕ですら、そんな歳になるんです! お二人は……!」
青年「……まあ、それは良いから」
魔導師「良くないでしょう!?」
魔導師「そ、それに……勇者様に選ばれるっていう保証も……!」
剣士「……『願えば叶う』」
魔導師「剣士さん……!?」
青年「さっきも言った。僕は嘘は吐かない」
青年「……僕は勇者様について行く。選ばれる保証は確かに無いが」
青年「君と僕が持つ、その石……同じ物を、勇者様も持っているはずだ」
魔導師「え!?」
青年「……やっぱり、偶然じゃ無いのかもな」
剣士「一人で納得するな……それに」
剣士「魔導師、だとして、だ……まだ子供だ」
青年「選ばれなければ選ばせれば良い」
剣士「……無茶苦茶だな」
魔導師「…… ……」
青年「魔導師」
魔導師「は、はい!?」
青年「……勇者様が、光の剣を持って魔王を倒す、って事は知ってる?」
魔導師「あ……はい……あの。兄さんに聞きました」
青年「うん。じゃあ……その光の剣が完璧な状態じゃない、って事は?」
魔導師「え!?」
104: 2014/01/27(月) 10:59:18.79 ID:EFBzWVUiP
剣士「……おい」
青年「さっき君が言った事はクリアできるだろう、剣士」
青年「確かに魔導師はまだ子供だ。だが、勇者様が旅立つ頃には」
青年「……見た目だけで言えば、僕や君より余程『大人』さ」
魔導師「え……?」
剣士「おい」
青年「魔導師」
魔導師「……は、はい」ビクッ
青年「話を戻すよ……光の剣は完璧じゃ無い」
青年「……あれも確かに『魔法剣』だ。まあ、随分と特殊だけれど」
剣士「…… ……」
魔導師「そ、そんな事を……あの、言われても……」
青年「まあ、ご尤も、だね」
魔導師「……僕は、確かに……その、鍛冶には興味があります」
魔導師「もう……その、終わった技術だって、大人達は言うけど」
魔導師「魔石にだって……本当は……」
青年「うん」
魔導師「でも!いくら僕が、これから……学んだって……!」
魔導師「まさか、光の剣を治せる様になんて……!!」
青年「確かに、ずっとこの村に居るだけじゃ無理だろうね」
魔導師「え……」
青年「その本、だっけ? ……を読んだ所で」
青年「此処は、鍛冶場も壊されてしまうんだろう」
青年「鍛冶について、は僕も解らないけど」
青年「……狭い『世界』に居たって、何も得られないだろうとは思うよ」
剣士「……おい、待て、青年」
青年「何だよ」
剣士「まさか……連れて行くつもりか!?」
青年「……望むならね」
剣士「!」
青年「……ねえ、魔導師」
魔導師「は、はい!?」
青年「君の魔法の腕は大したモンだって、母さんから聞いてる」
魔導師「!?」
青年「実際、魔石の作り方を母さんに教えたのは君なのだろう」
青年「さっき君が言った事はクリアできるだろう、剣士」
青年「確かに魔導師はまだ子供だ。だが、勇者様が旅立つ頃には」
青年「……見た目だけで言えば、僕や君より余程『大人』さ」
魔導師「え……?」
剣士「おい」
青年「魔導師」
魔導師「……は、はい」ビクッ
青年「話を戻すよ……光の剣は完璧じゃ無い」
青年「……あれも確かに『魔法剣』だ。まあ、随分と特殊だけれど」
剣士「…… ……」
魔導師「そ、そんな事を……あの、言われても……」
青年「まあ、ご尤も、だね」
魔導師「……僕は、確かに……その、鍛冶には興味があります」
魔導師「もう……その、終わった技術だって、大人達は言うけど」
魔導師「魔石にだって……本当は……」
青年「うん」
魔導師「でも!いくら僕が、これから……学んだって……!」
魔導師「まさか、光の剣を治せる様になんて……!!」
青年「確かに、ずっとこの村に居るだけじゃ無理だろうね」
魔導師「え……」
青年「その本、だっけ? ……を読んだ所で」
青年「此処は、鍛冶場も壊されてしまうんだろう」
青年「鍛冶について、は僕も解らないけど」
青年「……狭い『世界』に居たって、何も得られないだろうとは思うよ」
剣士「……おい、待て、青年」
青年「何だよ」
剣士「まさか……連れて行くつもりか!?」
青年「……望むならね」
剣士「!」
青年「……ねえ、魔導師」
魔導師「は、はい!?」
青年「君の魔法の腕は大したモンだって、母さんから聞いてる」
魔導師「!?」
青年「実際、魔石の作り方を母さんに教えたのは君なのだろう」
105: 2014/01/27(月) 11:07:20.56 ID:EFBzWVUiP
魔導師「え……青年さんのお母さん、に……?」
魔導師「いえ、あの……僕は、貴方のお母さんには……」
剣士「…… ……」ハァ
青年「会っているよ、その石をくれたんだろう?お礼にって」
魔導師「…… ……え?」
青年「『僧侶』……今の名は、『癒し手』だ」
青年「エルフの血を引く美しい人で、僕の母さんだ」
青年「……知りたいのなら全て話してあげる。僕と剣士が知ってる事に限られるけど」
青年「『世界の裏側をちょっとだけ』」
魔導師「え…… ……え、え!?」
剣士「待て、青年」
青年「止めないでよ……『三人目』は彼だ」
剣士「……待て、って。思考がついていってない」
魔導師「…… ……」ポカーン
青年「……あらら」
剣士「まだ子供だと言っただろう」ハァ
青年「……しっかりしてるから大丈夫かと思ったけど」
剣士「無茶苦茶だ、と言っただろう……」
青年「魔導師?」
魔導師「は……はい!?」
青年「……まあ、ゆっくり考えておいてよ」
魔導師「な、何をですか!? 今でも、さっぱり……!」
剣士「当然だな」ハァ
剣士「……お前も、もう少し順序立てて話せ」
青年「僕の中ではちゃんと納得してるんだけど」
剣士「予備知識も何も無い子供に通用する様に話せ、と言うんだ」
青年「……反対はしないんだな」
剣士「今更何を言う……断りも無しにペラペラと」
青年「もし着いてくると言うのなら、全て教えてやるつもりだけど?」
剣士「……それについては何も言わん。だが」
剣士「まだ10にも満たない子供だと言うんだ、相手は」
剣士「それに……『三』だ」
青年「さっきも言ってたな……なんだよ、それ」
剣士「魔王達と立てた仮説の一つ」
魔導師「ま……え!? 魔王!?」
魔導師「いえ、あの……僕は、貴方のお母さんには……」
剣士「…… ……」ハァ
青年「会っているよ、その石をくれたんだろう?お礼にって」
魔導師「…… ……え?」
青年「『僧侶』……今の名は、『癒し手』だ」
青年「エルフの血を引く美しい人で、僕の母さんだ」
青年「……知りたいのなら全て話してあげる。僕と剣士が知ってる事に限られるけど」
青年「『世界の裏側をちょっとだけ』」
魔導師「え…… ……え、え!?」
剣士「待て、青年」
青年「止めないでよ……『三人目』は彼だ」
剣士「……待て、って。思考がついていってない」
魔導師「…… ……」ポカーン
青年「……あらら」
剣士「まだ子供だと言っただろう」ハァ
青年「……しっかりしてるから大丈夫かと思ったけど」
剣士「無茶苦茶だ、と言っただろう……」
青年「魔導師?」
魔導師「は……はい!?」
青年「……まあ、ゆっくり考えておいてよ」
魔導師「な、何をですか!? 今でも、さっぱり……!」
剣士「当然だな」ハァ
剣士「……お前も、もう少し順序立てて話せ」
青年「僕の中ではちゃんと納得してるんだけど」
剣士「予備知識も何も無い子供に通用する様に話せ、と言うんだ」
青年「……反対はしないんだな」
剣士「今更何を言う……断りも無しにペラペラと」
青年「もし着いてくると言うのなら、全て教えてやるつもりだけど?」
剣士「……それについては何も言わん。だが」
剣士「まだ10にも満たない子供だと言うんだ、相手は」
剣士「それに……『三』だ」
青年「さっきも言ってたな……なんだよ、それ」
剣士「魔王達と立てた仮説の一つ」
魔導師「ま……え!? 魔王!?」
106: 2014/01/27(月) 11:23:06.07 ID:EFBzWVUiP
剣士「…… ……」
青年「……君も人の事言えないじゃないか」
剣士「……すまん」
魔導師「……お、お二人は……一体、何者なんですか!?」
青年「……知りたければ一緒においで?」
魔導師「ぼ……くが!?」
青年「ああ。勇者様についていきたいと思うなら」
青年「……光の剣に興味があるなら。世界の裏側を知りたいなら」
魔導師「…… ……」
青年「無理強いはしないよ……僕は君だと思うけれど」
魔導師「あ、あの……」
青年「僕は、剣士と明日、あの始まりの国の船に乗って」
青年「この村を発つ……その時に一緒に行こうとは言わないよ」
青年「でも、忘れないでくれると嬉しいかな」
魔導師「…… ……僕が、勇者様、と……」
剣士「…… ……」
青年「ま、そんな道もあるって事」
青年「……『知』を求めるには、自分から動くことも必要だよ、魔導師」
魔導師「!」
青年「剣士が居れば、何時だって迎えに来れるしね」
剣士「……お前な」
青年「事実だ」
魔導師「……剣士、さん」
剣士「? ……なんだ」
魔導師「剣士さんは……僕に、教えてくれました、よね」
剣士「……?」
魔導師「『目で見てしまった物を、否定するのは難しい』って」
剣士「……ああ」
魔導師「僕は……まだ、何も、その。見て、無いんですけど」グッ
魔導師(……まだ、光ってるみたいだ。僧侶様の石)
魔導師(こんな事、無かった。魔石が光るなんて、否、これだけじゃ無い)
魔導師(でも、確かに……青年さんのと、僕の……!)
青年「……君も人の事言えないじゃないか」
剣士「……すまん」
魔導師「……お、お二人は……一体、何者なんですか!?」
青年「……知りたければ一緒においで?」
魔導師「ぼ……くが!?」
青年「ああ。勇者様についていきたいと思うなら」
青年「……光の剣に興味があるなら。世界の裏側を知りたいなら」
魔導師「…… ……」
青年「無理強いはしないよ……僕は君だと思うけれど」
魔導師「あ、あの……」
青年「僕は、剣士と明日、あの始まりの国の船に乗って」
青年「この村を発つ……その時に一緒に行こうとは言わないよ」
青年「でも、忘れないでくれると嬉しいかな」
魔導師「…… ……僕が、勇者様、と……」
剣士「…… ……」
青年「ま、そんな道もあるって事」
青年「……『知』を求めるには、自分から動くことも必要だよ、魔導師」
魔導師「!」
青年「剣士が居れば、何時だって迎えに来れるしね」
剣士「……お前な」
青年「事実だ」
魔導師「……剣士、さん」
剣士「? ……なんだ」
魔導師「剣士さんは……僕に、教えてくれました、よね」
剣士「……?」
魔導師「『目で見てしまった物を、否定するのは難しい』って」
剣士「……ああ」
魔導師「僕は……まだ、何も、その。見て、無いんですけど」グッ
魔導師(……まだ、光ってるみたいだ。僧侶様の石)
魔導師(こんな事、無かった。魔石が光るなんて、否、これだけじゃ無い)
魔導師(でも、確かに……青年さんのと、僕の……!)
107: 2014/01/27(月) 11:28:57.42 ID:EFBzWVUiP
青年「…… ……」
魔導師「……か、帰ります」スッ
剣士「送ろう」
魔導師「大丈夫です……一人で、帰れます……」フラフラ
パタン、カラン、コロン……
青年「…… ……」
剣士「お前、態とだろう」
青年「何の事だい」
剣士「……魔導師の興味のありそうな事ばかり一方的に与えて」
青年「ならどうやってでも止めれば良かっただろう」
剣士「……見てしまったからな」
青年「…… ……」
剣士「今更反対はしない。俺も……彼かもしれないと思う」
青年「ああ、そうだ。『三』って何だよ」
剣士「……船の中で話してやる。着いてくるんだろう」
青年「一緒に行く、って言ってくれる方が嬉しいんだけど」
剣士「やめろ、気色悪い」
青年「……不思議だな」
剣士「?」
青年「ずっと知ってた奴と、一緒に飲んでるみたいだ」
剣士「……酒飲むのすら初めての癖に何を言う」
青年「そうなんだけどさ……なんだろうな」
青年「『又一緒に酒を飲もう』って約束、してたみたいだなって」
剣士「……酔ってるのか」
青年「流石にそれは無いって……」
剣士「『初めてなのに、そうじゃ無い様な感覚』か」
青年「……ずっと知っているのに。何度も経験しているのに」
青年「『初めてじゃ無いのに、そうじゃ無い様な感覚』かな」
剣士「……『回り続ける運命の輪』か」
青年「下らないな」ボソ
剣士「……何?」
青年「振り回されるのは御免、だ」
魔導師「……か、帰ります」スッ
剣士「送ろう」
魔導師「大丈夫です……一人で、帰れます……」フラフラ
パタン、カラン、コロン……
青年「…… ……」
剣士「お前、態とだろう」
青年「何の事だい」
剣士「……魔導師の興味のありそうな事ばかり一方的に与えて」
青年「ならどうやってでも止めれば良かっただろう」
剣士「……見てしまったからな」
青年「…… ……」
剣士「今更反対はしない。俺も……彼かもしれないと思う」
青年「ああ、そうだ。『三』って何だよ」
剣士「……船の中で話してやる。着いてくるんだろう」
青年「一緒に行く、って言ってくれる方が嬉しいんだけど」
剣士「やめろ、気色悪い」
青年「……不思議だな」
剣士「?」
青年「ずっと知ってた奴と、一緒に飲んでるみたいだ」
剣士「……酒飲むのすら初めての癖に何を言う」
青年「そうなんだけどさ……なんだろうな」
青年「『又一緒に酒を飲もう』って約束、してたみたいだなって」
剣士「……酔ってるのか」
青年「流石にそれは無いって……」
剣士「『初めてなのに、そうじゃ無い様な感覚』か」
青年「……ずっと知っているのに。何度も経験しているのに」
青年「『初めてじゃ無いのに、そうじゃ無い様な感覚』かな」
剣士「……『回り続ける運命の輪』か」
青年「下らないな」ボソ
剣士「……何?」
青年「振り回されるのは御免、だ」
108: 2014/01/27(月) 11:37:45.36 ID:EFBzWVUiP
剣士「…… ……飲み過ぎるなよ。明日は早いぞ」
青年「君は何処に?」
剣士「息子の家だ」
青年「……僕は宿だ。明日、船着き場で」
剣士「ああ」
スタスタ、パタン
青年「……母さん」ギュッ
青年(僕は……間違えて無いはずだ)
青年(彼……魔導師だ。鍛冶や魔法の知識に興味を持ち)
青年(彼ならば……必ず、力になる。利用すると言えば言葉は悪いが)
青年(……否。それでも言い。言葉なんて何でも良い。誰に何を思われても良い)
青年(母さんの願いは……必ず、僕が叶える……!)
……
………
…………
魔導師「……兄さん?」
キィ
魔導師「ご免なさい、遅く…… ……あれ?」
魔導師(居ない…… ……ん、メモ?)
魔導師(『息子さんの家に行っています。先に休む様に』)ペラ
魔導師(…… ……)ハァ
魔導師(『明日は朝から見回りに行くので、孤児院に行って』)
魔導師(『読み聞かせのお手伝いをお願いします』)
魔導師「……シスターさん、か」ハァ
魔導師(まだ、ぼんやりしてる。でも、僕……興奮、してる)
魔導師(青年さん……怖い人じゃ無かった。不思議な人だけど)
魔導師(何言ってんのか、さっぱりわかんないや)
魔導師(……勇者様、魔王……ああ、そうか。剣士さんも)
スタスタ
魔導師(あの二人、何者なんだ……?)ボスッゴソゴソ。モソモソ
魔導師(青年さんは、あんな事言ってたけど)
魔導師(僕が、勇者様と一緒に!? あの二人と一緒に!?)
魔導師(……エルフ。勇者。魔王……世界)
魔導師(何だろう。引っかかる気が……知ってる気が、する)
魔導師(……僧侶さん)ゴソ。チカチカ
魔導師(まだ、光ってる……可笑しいな)
青年「君は何処に?」
剣士「息子の家だ」
青年「……僕は宿だ。明日、船着き場で」
剣士「ああ」
スタスタ、パタン
青年「……母さん」ギュッ
青年(僕は……間違えて無いはずだ)
青年(彼……魔導師だ。鍛冶や魔法の知識に興味を持ち)
青年(彼ならば……必ず、力になる。利用すると言えば言葉は悪いが)
青年(……否。それでも言い。言葉なんて何でも良い。誰に何を思われても良い)
青年(母さんの願いは……必ず、僕が叶える……!)
……
………
…………
魔導師「……兄さん?」
キィ
魔導師「ご免なさい、遅く…… ……あれ?」
魔導師(居ない…… ……ん、メモ?)
魔導師(『息子さんの家に行っています。先に休む様に』)ペラ
魔導師(…… ……)ハァ
魔導師(『明日は朝から見回りに行くので、孤児院に行って』)
魔導師(『読み聞かせのお手伝いをお願いします』)
魔導師「……シスターさん、か」ハァ
魔導師(まだ、ぼんやりしてる。でも、僕……興奮、してる)
魔導師(青年さん……怖い人じゃ無かった。不思議な人だけど)
魔導師(何言ってんのか、さっぱりわかんないや)
魔導師(……勇者様、魔王……ああ、そうか。剣士さんも)
スタスタ
魔導師(あの二人、何者なんだ……?)ボスッゴソゴソ。モソモソ
魔導師(青年さんは、あんな事言ってたけど)
魔導師(僕が、勇者様と一緒に!? あの二人と一緒に!?)
魔導師(……エルフ。勇者。魔王……世界)
魔導師(何だろう。引っかかる気が……知ってる気が、する)
魔導師(……僧侶さん)ゴソ。チカチカ
魔導師(まだ、光ってる……可笑しいな)
109: 2014/01/27(月) 11:45:09.34 ID:EFBzWVUiP
魔導師(今まで、こんな気持ちにならなかった)
魔導師(持っていると落ち着いた……でも)
魔導師(苦しくて、悲しくて切なくて……ええと、嬉しい、だっけ?)
魔導師(……なんか、良くわかんない。けど)
魔導師(何だろう。喉が苦しい。胸が……痛い)
魔導師(僕は…… ……)ゴソゴソ。コロコロ
魔導師「…… ……ッ」ガバッ
魔導師(……ベッドに入っても眠れない!)
スタスタ
魔導師「全く!青年さんの所為だ! あの人は……!!」
魔導師(『知りたいのなら一緒においで』)
魔導師(…… ……)
ゴソゴソ
魔導師(鍛冶場で、読んだ本……一冊だけ持って来ちゃった)
魔導師(…… ……)ペラ
魔導師(光の剣…… ……魔法剣)
魔導師(鍛冶師様、だっけ……聖職者様と、ならんで)
魔導師(この国の勇者……否)
魔導師(『勇者だった人』…… ……どんな人だったのかな)
魔導師(兄さんは、聖職者様の話が好きだったから)
魔導師(僕が、鍛冶師様の話を聞きたがると、何となく厭そうな顔してた)
魔導師(……この村を出て行ってしまったから?)
魔導師(違うか……始まりの国と魔導国で、戦争があって……)
魔導師(……聖職者様を、悪者にした、から?)
魔導師(…… ……)ハァ
魔導師(……眠れない)
魔導師(勇者様……女の子、か)
魔導師(どんな……子なのかな)
魔導師(『知りたいのなら……』 …… ……ッ)ブンブンッ
魔導師「ぼ、僕には……関係……ッ …… ……」
魔導師「…… ……」ハァ、チラ……チカチカ
魔導師(目で見て、しまった物を…… ……)
魔導師(持っていると落ち着いた……でも)
魔導師(苦しくて、悲しくて切なくて……ええと、嬉しい、だっけ?)
魔導師(……なんか、良くわかんない。けど)
魔導師(何だろう。喉が苦しい。胸が……痛い)
魔導師(僕は…… ……)ゴソゴソ。コロコロ
魔導師「…… ……ッ」ガバッ
魔導師(……ベッドに入っても眠れない!)
スタスタ
魔導師「全く!青年さんの所為だ! あの人は……!!」
魔導師(『知りたいのなら一緒においで』)
魔導師(…… ……)
ゴソゴソ
魔導師(鍛冶場で、読んだ本……一冊だけ持って来ちゃった)
魔導師(…… ……)ペラ
魔導師(光の剣…… ……魔法剣)
魔導師(鍛冶師様、だっけ……聖職者様と、ならんで)
魔導師(この国の勇者……否)
魔導師(『勇者だった人』…… ……どんな人だったのかな)
魔導師(兄さんは、聖職者様の話が好きだったから)
魔導師(僕が、鍛冶師様の話を聞きたがると、何となく厭そうな顔してた)
魔導師(……この村を出て行ってしまったから?)
魔導師(違うか……始まりの国と魔導国で、戦争があって……)
魔導師(……聖職者様を、悪者にした、から?)
魔導師(…… ……)ハァ
魔導師(……眠れない)
魔導師(勇者様……女の子、か)
魔導師(どんな……子なのかな)
魔導師(『知りたいのなら……』 …… ……ッ)ブンブンッ
魔導師「ぼ、僕には……関係……ッ …… ……」
魔導師「…… ……」ハァ、チラ……チカチカ
魔導師(目で見て、しまった物を…… ……)
110: 2014/01/27(月) 11:54:57.95 ID:EFBzWVUiP
……
………
…………
衛生師「全て滞り無くすんだか。問題は?」
近衛兵「はッ ……特に何もありません」
衛生師「……ご苦労様。では、下がって下さい」
近衛兵「はい。失礼します」
スタスタ、パタン
少女「…… ……」
衛生師「体調はどうだい、少女」
少女「……どうって事は無い」
衛生師「そう。ならもう部屋に戻りな」
少女「衛生師」
衛生師「……王、だよ」
少女「…… ……」
衛生師「君らしくないな。お情際の悪い」
少女「到底受け入れられる事では無いだろう」
衛生師「……もう遅いよ。何もかもね」
衛生師「『嘘も突き通せば誠になる』のさ」
少女「……魔法使いは『帰還者』なのだろう!?」
衛生師「葬儀の知らせは入れたよ。流石にね……だけど」
衛生師「彼女は小屋から出てこない……望み通りに、ね」
少女「お前のか……それとも彼女のか」
衛生師「どちらも、だ」
少女「…… ……」
衛生師「『王』の母親の処分も済んだ」
少女「!」
衛生師「……魔法使いは勇者が旅立った後、どうにでもなる」
少女「……魔法使いは、領主様の血を引くお方だ」
少女「おいそれと……ッ」
衛生師「だが彼女は、優れた加護は持たないんだよ」
少女「…… ……な、に!?」
衛生師「君と同じだ、少女……紅い瞳をして」
衛生師「母親にも……まあ、疎まれていた、程じゃ無いかも知れないけど」
衛生師「それでも……彼女も『特別』じゃ無い」
少女「嘘を吐くな!」
衛生師「嘘吐いたって仕方無いだろう……事実だよ」
少女「……事実だとして、何故お前が知っているんだ!」
………
…………
衛生師「全て滞り無くすんだか。問題は?」
近衛兵「はッ ……特に何もありません」
衛生師「……ご苦労様。では、下がって下さい」
近衛兵「はい。失礼します」
スタスタ、パタン
少女「…… ……」
衛生師「体調はどうだい、少女」
少女「……どうって事は無い」
衛生師「そう。ならもう部屋に戻りな」
少女「衛生師」
衛生師「……王、だよ」
少女「…… ……」
衛生師「君らしくないな。お情際の悪い」
少女「到底受け入れられる事では無いだろう」
衛生師「……もう遅いよ。何もかもね」
衛生師「『嘘も突き通せば誠になる』のさ」
少女「……魔法使いは『帰還者』なのだろう!?」
衛生師「葬儀の知らせは入れたよ。流石にね……だけど」
衛生師「彼女は小屋から出てこない……望み通りに、ね」
少女「お前のか……それとも彼女のか」
衛生師「どちらも、だ」
少女「…… ……」
衛生師「『王』の母親の処分も済んだ」
少女「!」
衛生師「……魔法使いは勇者が旅立った後、どうにでもなる」
少女「……魔法使いは、領主様の血を引くお方だ」
少女「おいそれと……ッ」
衛生師「だが彼女は、優れた加護は持たないんだよ」
少女「…… ……な、に!?」
衛生師「君と同じだ、少女……紅い瞳をして」
衛生師「母親にも……まあ、疎まれていた、程じゃ無いかも知れないけど」
衛生師「それでも……彼女も『特別』じゃ無い」
少女「嘘を吐くな!」
衛生師「嘘吐いたって仕方無いだろう……事実だよ」
少女「……事実だとして、何故お前が知っているんだ!」
111: 2014/01/27(月) 12:04:28.29 ID:EFBzWVUiP
衛生師「…… ……」
少女「……一度、聞いてみたかった」
衛生師「何だい」
少女「お前は、何の為にこんな事をするんだ」
衛生師「…… ……『国』の為さ」
少女「『王』はもう居ない!」
少女「……命令だからと。仕事だからと……お前は『王』に従順だった」
少女「なのに、その王もお前自ら……!」
衛生師「声が大きいよ、少女……自分の首を絞める結果になるって」
衛生師「解らない程の馬鹿じゃ無い筈だけど……説明した筈だ」
衛生師「『王と王子様は、もみ合いの末』……」
少女「……最後は狂った王が、自らの首を掻き切った、と!?」
衛生師「……そう。狂っているのは誰の目にも明らかだっただろう?」
少女「王は……ずっと」
少女「『最後の王』等になど、と……ッ」
衛生師「だからだよ。それが答えだよ、少女」
少女「え……?」
衛生師「僕は王に従順だ……命令には、全てはいと言って従ってきた」
衛生師「……『王』を絶やす訳には行かないのさ」
少女「……盗賊様の遺言だからか」
衛生師「『王』の望みでもある」
少女「だから今、お前がその椅子に座っていると……言いたいのか!?」
少女「詭弁も甚だしい!」
衛生師「……何と思って貰っても良い」
衛生師「だけど、僕は……それが仕事なんだ」
衛生師「『王』の望み通り。『王』を絶やしては居ない」
衛生師「……その子が産まれれば。すぐにでも譲るよ」
少女「……お前と私の子である以上。これは『王』では無い」
衛生師「それこそ詭弁だ」
衛生師「……『血』に拘る必要なんか無いんだ」
少女「…… ……ッ」
衛生師「『国』だけは守らないとね……『王』として」
少女「……一度、聞いてみたかった」
衛生師「何だい」
少女「お前は、何の為にこんな事をするんだ」
衛生師「…… ……『国』の為さ」
少女「『王』はもう居ない!」
少女「……命令だからと。仕事だからと……お前は『王』に従順だった」
少女「なのに、その王もお前自ら……!」
衛生師「声が大きいよ、少女……自分の首を絞める結果になるって」
衛生師「解らない程の馬鹿じゃ無い筈だけど……説明した筈だ」
衛生師「『王と王子様は、もみ合いの末』……」
少女「……最後は狂った王が、自らの首を掻き切った、と!?」
衛生師「……そう。狂っているのは誰の目にも明らかだっただろう?」
少女「王は……ずっと」
少女「『最後の王』等になど、と……ッ」
衛生師「だからだよ。それが答えだよ、少女」
少女「え……?」
衛生師「僕は王に従順だ……命令には、全てはいと言って従ってきた」
衛生師「……『王』を絶やす訳には行かないのさ」
少女「……盗賊様の遺言だからか」
衛生師「『王』の望みでもある」
少女「だから今、お前がその椅子に座っていると……言いたいのか!?」
少女「詭弁も甚だしい!」
衛生師「……何と思って貰っても良い」
衛生師「だけど、僕は……それが仕事なんだ」
衛生師「『王』の望み通り。『王』を絶やしては居ない」
衛生師「……その子が産まれれば。すぐにでも譲るよ」
少女「……お前と私の子である以上。これは『王』では無い」
衛生師「それこそ詭弁だ」
衛生師「……『血』に拘る必要なんか無いんだ」
少女「…… ……ッ」
衛生師「『国』だけは守らないとね……『王』として」
112: 2014/01/27(月) 12:13:35.37 ID:EFBzWVUiP
少女「……お前が解らない」
衛生師「…… ……」
少女「お前の……原動力は何なんだ?」
少女「権力に興味など無いと言いながら。お前のしている事は……!」
衛生師「……『知』かな」
少女「え……?」
衛生師「知りたいだけさ」
少女「…… ……」
衛生師「それに、仕事でもある」
少女「……衛生師」
衛生師「王」
少女「…… ……」
衛生師「仕事、だよ少女……守って行く義務がある」
衛生師「この『国』を守ったときに、何が見えるのか」
衛生師「……もしくは、国が滅んだときに何が見えるのか」
少女「!?」
衛生師「どうしてこの国が作られたか知ってるかい」
少女「……蔑まれて来た出来損ない達が」
少女「……盗賊様と、鍛冶師様が……彼らを解放して、と言うのが始まりだろう」
衛生師「いや、まあ……そうなんだけど。それのもっと前、さ」
少女「前……?」
衛生師「一度滅びた国があったそうだよ。此処にね」
少女「え……」
衛生師「何故か? ……そこまでは僕も知らない。だけど」
衛生師「どうやったら、『国』が滅びるのか……」
少女「!?」
衛生師「……興味はあるけどね」
少女「……お前……ッ」
衛生師「別にこの国を滅ぼす気なんて無いよ」
衛生師「……僕が産まれて、育った国だ」
少女「……『好奇』なんだな」
衛生師「え?」
少女「お前の原動力、だ…… ……それは『知』とは言わない」スッ
スタスタ、パタン
衛生師「…… ……『王』が絶えればどうなるか」
衛生師「成る程。『好奇心』を刺激させられるな」
衛生師「…… ……」
少女「お前の……原動力は何なんだ?」
少女「権力に興味など無いと言いながら。お前のしている事は……!」
衛生師「……『知』かな」
少女「え……?」
衛生師「知りたいだけさ」
少女「…… ……」
衛生師「それに、仕事でもある」
少女「……衛生師」
衛生師「王」
少女「…… ……」
衛生師「仕事、だよ少女……守って行く義務がある」
衛生師「この『国』を守ったときに、何が見えるのか」
衛生師「……もしくは、国が滅んだときに何が見えるのか」
少女「!?」
衛生師「どうしてこの国が作られたか知ってるかい」
少女「……蔑まれて来た出来損ない達が」
少女「……盗賊様と、鍛冶師様が……彼らを解放して、と言うのが始まりだろう」
衛生師「いや、まあ……そうなんだけど。それのもっと前、さ」
少女「前……?」
衛生師「一度滅びた国があったそうだよ。此処にね」
少女「え……」
衛生師「何故か? ……そこまでは僕も知らない。だけど」
衛生師「どうやったら、『国』が滅びるのか……」
少女「!?」
衛生師「……興味はあるけどね」
少女「……お前……ッ」
衛生師「別にこの国を滅ぼす気なんて無いよ」
衛生師「……僕が産まれて、育った国だ」
少女「……『好奇』なんだな」
衛生師「え?」
少女「お前の原動力、だ…… ……それは『知』とは言わない」スッ
スタスタ、パタン
衛生師「…… ……『王』が絶えればどうなるか」
衛生師「成る程。『好奇心』を刺激させられるな」
113: 2014/01/27(月) 12:21:45.06 ID:EFBzWVUiP
……
………
…………
スタスタ
青年「あれ、もう来てたのか」
剣士「お前が遅いんだ」
青年「……まだ船出てないんだから良いじゃ無いか……って」キョロ
剣士「……来るはず無いだろう」ハァ
青年「充分に彼の好奇心を刺激したつもりだったんだけどな」
剣士「お前……」
青年「ていうか、暑くないの、そのローブ」
剣士「……顔を見られるよりマシだ」
タタタ……
近衛兵「失礼、船に乗せて欲しいと言うのは貴方ですか?」
剣士「ああ」グイッ
近衛兵「動力に不安定な部分がありまして、もう少し遅れ……」
近衛兵「……此方の方は?」
剣士「……連れだ」
近衛兵「え? ……ええと、一人、って聞いてたんですが」
青年「僕も乗せて貰えると嬉しいんだけどね」ニコ
近衛兵「は、はあ……それは構いませんけど」
青年「案外緩いな」
近衛兵「お祝いに駆けつけたいと言う方が結構乗ってますから」
青年「そうなの?」
近衛兵「王からも、そう言う方が居たら断らない様に言われています」
近衛兵「……もう、軍隊ではありませんから」
剣士「……成る程」
青年「まあ、こっちに取っちゃ好都合、だけど……で、どれぐらいになりそう?」
近衛兵「早ければ昼過ぎ……には」
剣士「結構時間があるな」
青年「お茶でもしてようか、お腹すいたな」
剣士「朝飯食ってないのか」
青年「食べたよ……減るもんは減るの」
剣士「…… ……」ハァ
近衛兵「準備が整いましたら、汽笛を二回鳴らします」
近衛兵「それを合図に、もう一度お越し下さい」
………
…………
スタスタ
青年「あれ、もう来てたのか」
剣士「お前が遅いんだ」
青年「……まだ船出てないんだから良いじゃ無いか……って」キョロ
剣士「……来るはず無いだろう」ハァ
青年「充分に彼の好奇心を刺激したつもりだったんだけどな」
剣士「お前……」
青年「ていうか、暑くないの、そのローブ」
剣士「……顔を見られるよりマシだ」
タタタ……
近衛兵「失礼、船に乗せて欲しいと言うのは貴方ですか?」
剣士「ああ」グイッ
近衛兵「動力に不安定な部分がありまして、もう少し遅れ……」
近衛兵「……此方の方は?」
剣士「……連れだ」
近衛兵「え? ……ええと、一人、って聞いてたんですが」
青年「僕も乗せて貰えると嬉しいんだけどね」ニコ
近衛兵「は、はあ……それは構いませんけど」
青年「案外緩いな」
近衛兵「お祝いに駆けつけたいと言う方が結構乗ってますから」
青年「そうなの?」
近衛兵「王からも、そう言う方が居たら断らない様に言われています」
近衛兵「……もう、軍隊ではありませんから」
剣士「……成る程」
青年「まあ、こっちに取っちゃ好都合、だけど……で、どれぐらいになりそう?」
近衛兵「早ければ昼過ぎ……には」
剣士「結構時間があるな」
青年「お茶でもしてようか、お腹すいたな」
剣士「朝飯食ってないのか」
青年「食べたよ……減るもんは減るの」
剣士「…… ……」ハァ
近衛兵「準備が整いましたら、汽笛を二回鳴らします」
近衛兵「それを合図に、もう一度お越し下さい」
114: 2014/01/27(月) 12:28:20.89 ID:EFBzWVUiP
剣士「解った」
青年「飛んで行けばすぐなのに」
剣士「……昨日話しただろう」
青年「解ってるよ……まあ、君と抱き合って、てのも御免だけどね」
剣士「……突っ込む気にもならん」
……
………
…………
魔導師「『そうして、エルフのお姫様は』」
魔導師「『どこからも失われてしまったのです……』」
「ねえ、赤ちゃんどうなったの?」
「お姫様、氏んじゃったの?」
シスター「どうなったと思う?」
「氏んじゃったらかわいそう……」
シスター「そうね……さて、今日はここまで!」
シスター「本を読んで下さった魔導師のお兄さんに」
シスター「皆、感謝のご挨拶をして頂戴?」
アリガトウゴザイマシタ!
魔導師「いいえ、どういたしまして……」
シスター「『……心ここにあらず、だったわね』」
魔導師「『……そうですか?』」
シスター「『昨日、随分遅くまで起きてたんでしょう』」
シスター「……目の下、クマができてるわよ」
魔導師「『……それより。』小さな子にこの物語は……難しいのでは無いでしょうか」
魔導師「相当古い本でしょ、これ……描写も少々、残酷ですし」
シスター「……魔導師は、どうなったと思う?」
魔導師「……はい?」
シスター「このエルフのお姫様、よ」
魔導師(……前から思ってた。僧侶さんにそっくりだ)
魔導師(そう思うのは……青年さんに会って、青年さんの話を聞いたから、なのだろうけど)
青年「飛んで行けばすぐなのに」
剣士「……昨日話しただろう」
青年「解ってるよ……まあ、君と抱き合って、てのも御免だけどね」
剣士「……突っ込む気にもならん」
……
………
…………
魔導師「『そうして、エルフのお姫様は』」
魔導師「『どこからも失われてしまったのです……』」
「ねえ、赤ちゃんどうなったの?」
「お姫様、氏んじゃったの?」
シスター「どうなったと思う?」
「氏んじゃったらかわいそう……」
シスター「そうね……さて、今日はここまで!」
シスター「本を読んで下さった魔導師のお兄さんに」
シスター「皆、感謝のご挨拶をして頂戴?」
アリガトウゴザイマシタ!
魔導師「いいえ、どういたしまして……」
シスター「『……心ここにあらず、だったわね』」
魔導師「『……そうですか?』」
シスター「『昨日、随分遅くまで起きてたんでしょう』」
シスター「……目の下、クマができてるわよ」
魔導師「『……それより。』小さな子にこの物語は……難しいのでは無いでしょうか」
魔導師「相当古い本でしょ、これ……描写も少々、残酷ですし」
シスター「……魔導師は、どうなったと思う?」
魔導師「……はい?」
シスター「このエルフのお姫様、よ」
魔導師(……前から思ってた。僧侶さんにそっくりだ)
魔導師(そう思うのは……青年さんに会って、青年さんの話を聞いたから、なのだろうけど)
115: 2014/01/27(月) 12:36:48.78 ID:EFBzWVUiP
魔導師「……僕は」
シスター「本当は、ああして読み聞かせた後に、子供達の考えを聞いて」
シスター「色々、話をするのよ」
魔導師「『何時もやってるじゃないか』」
シスター「『今日は貴方が、本当に上の空だから、よ』」
魔導師「…… ……」
シスター「ここは孤児院だから。親の愛情を、ほとんどの子が知らない」
魔導師「『…… ……』」
シスター「『それだけじゃ無いけどね……』」
魔導師「え?」
シスター「『貴方も覚えてるでしょ? ……この、表紙のエルフ』」
魔導師「……僧侶さん、に似てるよね」
シスター「……昨日、僧侶にそっくりな男が剣士と一緒に居たんでしょう」
魔導師「息子さんに聞いたのか」
シスター「…… ……馬鹿な事、考えないのよ、魔導師」
魔導師「何だよ、馬鹿な事って」ムッ
シスター「あの僧侶にそっくりな男が何かは知らないけど」
シスター「……彼らとは、生きる世界が違うの」
魔導師「…… ……」
シスター「私達は、この狭い村……此処だけが世界なのよ」
魔導師「……この、エルフのお姫様の様に、か」
シスター「…… ……」
魔導師「出て行ったら、碌な事にならないとでも言いたいの?」
シスター「……魔導師」
魔導師「……て、言うか、これ……ページ、抜けてるよね」ハァ
シスター「『え?』」
魔導師「多分、だけど……エルフの森に雨が降った下りから」
魔導師「旅人が矢に打たれるところが唐突すぎて……繋がらない」
シスター「『……司書様の形見ですもの。雑には扱っていないわ』」
魔導師「『……持って来られたときから、抜けてたのかもしれないよ』」
シスター「『……そうね。古い本だって言ってたし』」
シスター「……新しい本を買ってあげる余裕も、正直無いからね」ハァ
シスター「本当は、ああして読み聞かせた後に、子供達の考えを聞いて」
シスター「色々、話をするのよ」
魔導師「『何時もやってるじゃないか』」
シスター「『今日は貴方が、本当に上の空だから、よ』」
魔導師「…… ……」
シスター「ここは孤児院だから。親の愛情を、ほとんどの子が知らない」
魔導師「『…… ……』」
シスター「『それだけじゃ無いけどね……』」
魔導師「え?」
シスター「『貴方も覚えてるでしょ? ……この、表紙のエルフ』」
魔導師「……僧侶さん、に似てるよね」
シスター「……昨日、僧侶にそっくりな男が剣士と一緒に居たんでしょう」
魔導師「息子さんに聞いたのか」
シスター「…… ……馬鹿な事、考えないのよ、魔導師」
魔導師「何だよ、馬鹿な事って」ムッ
シスター「あの僧侶にそっくりな男が何かは知らないけど」
シスター「……彼らとは、生きる世界が違うの」
魔導師「…… ……」
シスター「私達は、この狭い村……此処だけが世界なのよ」
魔導師「……この、エルフのお姫様の様に、か」
シスター「…… ……」
魔導師「出て行ったら、碌な事にならないとでも言いたいの?」
シスター「……魔導師」
魔導師「……て、言うか、これ……ページ、抜けてるよね」ハァ
シスター「『え?』」
魔導師「多分、だけど……エルフの森に雨が降った下りから」
魔導師「旅人が矢に打たれるところが唐突すぎて……繋がらない」
シスター「『……司書様の形見ですもの。雑には扱っていないわ』」
魔導師「『……持って来られたときから、抜けてたのかもしれないよ』」
シスター「『……そうね。古い本だって言ってたし』」
シスター「……新しい本を買ってあげる余裕も、正直無いからね」ハァ
116: 2014/01/27(月) 12:44:22.29 ID:EFBzWVUiP
魔導師「……僕、もう行くよ。昼寝の時間だろう?」
シスター「え、ええ……そうね。ありがとう」
シスター「午後からもまた、遊び相手になってあげて頂戴」
魔導師「え……鍛冶場の片付けだろう?」
シスター「それはもう良いのよ……貴方に任せると」
シスター「片付けにならないもの」
魔導師「……それは、でも」
シスター「本は纏めて息子さんが整理してたわ」
シスター「……諦めなさい、魔導師」
魔導師「…… ……ッ」
シスター「食事は女将さんに伝えておくから」
魔導師「……解ったよ!」
クルッ スタスタ
シスター「兄と一緒に行くのよ! ……ああ、もう」
魔導師(息子さんの家、か……兄さんと食事済ませて)
魔導師(行こうかな。ああ、でも午後から……)チラ
魔導師「!? え、なんで……!?」
魔導師(まだ、船が居る……何故……ッ)
魔導師(…… ……)
魔導師(今なら、まだ……ッ)
タタタタ……ッ
兄「あ、魔導師!」
魔導師「!」ビクッ
兄「孤児院の帰りか?」
魔導師「……兄さん」ドキドキ
魔導師(今なら、まだ……!!)
兄「毎日ご苦労様」
魔導師「うん……でも今日でもう終わりだよ」
シスター「え、ええ……そうね。ありがとう」
シスター「午後からもまた、遊び相手になってあげて頂戴」
魔導師「え……鍛冶場の片付けだろう?」
シスター「それはもう良いのよ……貴方に任せると」
シスター「片付けにならないもの」
魔導師「……それは、でも」
シスター「本は纏めて息子さんが整理してたわ」
シスター「……諦めなさい、魔導師」
魔導師「…… ……ッ」
シスター「食事は女将さんに伝えておくから」
魔導師「……解ったよ!」
クルッ スタスタ
シスター「兄と一緒に行くのよ! ……ああ、もう」
魔導師(息子さんの家、か……兄さんと食事済ませて)
魔導師(行こうかな。ああ、でも午後から……)チラ
魔導師「!? え、なんで……!?」
魔導師(まだ、船が居る……何故……ッ)
魔導師(…… ……)
魔導師(今なら、まだ……ッ)
タタタタ……ッ
兄「あ、魔導師!」
魔導師「!」ビクッ
兄「孤児院の帰りか?」
魔導師「……兄さん」ドキドキ
魔導師(今なら、まだ……!!)
兄「毎日ご苦労様」
魔導師「うん……でも今日でもう終わりだよ」
117: 2014/01/27(月) 12:53:18.34 ID:EFBzWVUiP
兄「……『え?』」
魔導師「『僕は……僕の世界は、此処では終わらない!』」
兄「な、何言ってるんだ?」
魔導師「丁度良かったよ。『この村には……僕の見たい世界は無いんだ』」
兄「……ま、魔導師?」
魔導師「『兄さん……エルフなんて……本当にいると思う?』」
兄「な、何だよいきなり……そりゃ、魔物が居るぐらいだからなぁ」
兄「……ああ、あれか。司書様の本を読んだんだな?」
兄「あれは、ただの御伽噺で…… ……」
魔導師「『……目で見た物を、否定するのは難しいんだ』」
兄「……魔導師、どうしたんだ?」
兄「お前、言ってることがさっぱり解らないぞ?」
魔導師「……エルフは、嘘は吐けないんだ」
兄「……は?」
魔導師「……僕は、魔石を作りたい!魔法剣を作りたいんだ!」
魔導師「魔法の腕を磨いて、知り得る事を知りたい!」
兄「お、おい、魔導師!」
ボーゥ……ボーォォオウ……
兄「ッ 汽笛……?」
魔導師「!」
タタタ……
兄「お、おい、魔導師!?」
魔導師「……兄さん!僕は……勇者様についていく!」
魔導師「勇者様と一緒に、『世界』を見に行く!」
兄「え!? ……あ、こら、待て、魔導師……ッ」
魔導師「……ご免なさい、僧侶さん。約束……ッ」
魔導師「でも、傷はつけないから……ッ 氷よ!」
ピキィイン! パリパリパリ……ッ
兄「!」
魔導師「『僕は……僕の世界は、此処では終わらない!』」
兄「な、何言ってるんだ?」
魔導師「丁度良かったよ。『この村には……僕の見たい世界は無いんだ』」
兄「……ま、魔導師?」
魔導師「『兄さん……エルフなんて……本当にいると思う?』」
兄「な、何だよいきなり……そりゃ、魔物が居るぐらいだからなぁ」
兄「……ああ、あれか。司書様の本を読んだんだな?」
兄「あれは、ただの御伽噺で…… ……」
魔導師「『……目で見た物を、否定するのは難しいんだ』」
兄「……魔導師、どうしたんだ?」
兄「お前、言ってることがさっぱり解らないぞ?」
魔導師「……エルフは、嘘は吐けないんだ」
兄「……は?」
魔導師「……僕は、魔石を作りたい!魔法剣を作りたいんだ!」
魔導師「魔法の腕を磨いて、知り得る事を知りたい!」
兄「お、おい、魔導師!」
ボーゥ……ボーォォオウ……
兄「ッ 汽笛……?」
魔導師「!」
タタタ……
兄「お、おい、魔導師!?」
魔導師「……兄さん!僕は……勇者様についていく!」
魔導師「勇者様と一緒に、『世界』を見に行く!」
兄「え!? ……あ、こら、待て、魔導師……ッ」
魔導師「……ご免なさい、僧侶さん。約束……ッ」
魔導師「でも、傷はつけないから……ッ 氷よ!」
ピキィイン! パリパリパリ……ッ
兄「!」
118: 2014/01/27(月) 12:58:23.23 ID:EFBzWVUiP
シスター「何の騒ぎ……ッ !? 氷の魔法!?」
シスター「魔導師……ッ !?」
タタタ……ッ
キィ、パタン
剣士「おい青年、早く…… ……!?」ピタッ
青年「急がなくてもだいじょ…… ……!?」ドン!
青年「おい、何だよ急に…… ……!?」
タタタ……
魔導師「……青年さん、剣士さん!」
青年「あの氷の壁……魔導師が!?」
青年「……大したモンだ」
剣士「感心している場合か……急げ」
青年「え?」
剣士「……連れて行くんだろう?」
青年「……ああ、そうだね。攫うのがお姫様じゃ無くて」
青年「ちびっこ一匹、とはね」クスクス
剣士「……面倒はお前が見ろよ」
青年「えええ……」
魔導師「僕も! 僕も行きます!」ハァハァ
青年「ほら急げ……さっさと船に乗りな」
剣士「……完璧に悪者だな、俺達」
青年「大丈夫だ。魔導師、誰も傷付けてないね?」
魔導師「……そう、りょさん、と……約束、しました、か……ら……ッ」ハァッ
青年「……偉い偉い……じゃ、ちょっとだけ手助けしようか」
青年「……風よ!」
ゴオオオゥ……ッ
魔導師「え!?」
シスター「魔導師……ッ !?」
タタタ……ッ
キィ、パタン
剣士「おい青年、早く…… ……!?」ピタッ
青年「急がなくてもだいじょ…… ……!?」ドン!
青年「おい、何だよ急に…… ……!?」
タタタ……
魔導師「……青年さん、剣士さん!」
青年「あの氷の壁……魔導師が!?」
青年「……大したモンだ」
剣士「感心している場合か……急げ」
青年「え?」
剣士「……連れて行くんだろう?」
青年「……ああ、そうだね。攫うのがお姫様じゃ無くて」
青年「ちびっこ一匹、とはね」クスクス
剣士「……面倒はお前が見ろよ」
青年「えええ……」
魔導師「僕も! 僕も行きます!」ハァハァ
青年「ほら急げ……さっさと船に乗りな」
剣士「……完璧に悪者だな、俺達」
青年「大丈夫だ。魔導師、誰も傷付けてないね?」
魔導師「……そう、りょさん、と……約束、しました、か……ら……ッ」ハァッ
青年「……偉い偉い……じゃ、ちょっとだけ手助けしようか」
青年「……風よ!」
ゴオオオゥ……ッ
魔導師「え!?」
119: 2014/01/27(月) 13:04:35.05 ID:EFBzWVUiP
兄「魔導師、まど……ッ う、ぁ……ッ」
剣士「……おい」
青年「足止めだってば……魔導師と原理は一緒」
青年「風で壁作っただけさ……傷はつけないよ」
剣士「そうじゃない……まあ、良い」ハァ
剣士「……ほら、さっさと乗れ」
近衛兵「あ、あの……!?」
青年「ほらほら、さっさと船出して!」
魔導師「…… ……」ポカーン
シスター「魔導師!!」
息子「…… ……」ポン
シスター「! 息子さん、魔導師が……!」
息子「……剣士さん達が着いているんでしょう。大丈夫ですよ」
シスター「……ッ だから、鍛冶の本なんて……!」
息子「関係ありませんよ……魔導師本人の意思、でしょう」
シスター「…… ……ッ」
息子「それより、兄は?」
兄「あ……大丈夫、です …… ……あいつ、凄いな」ハハッ
シスター「足、見せなさい……信じられないわ!」
シスター「実の兄に魔法をかけて傷付ける、何て…… ……あら?」
兄「……冷たく無いんです。痛くも」
息子「…… ……」
息子「……風も止みましたね」
シスター「…… ……」
兄「…… ……」
息子「……でもね、魔導師」
息子「世界は……広いんだよ」
兄「……すみません。ご迷惑おかけしました」ペコ
剣士「……おい」
青年「足止めだってば……魔導師と原理は一緒」
青年「風で壁作っただけさ……傷はつけないよ」
剣士「そうじゃない……まあ、良い」ハァ
剣士「……ほら、さっさと乗れ」
近衛兵「あ、あの……!?」
青年「ほらほら、さっさと船出して!」
魔導師「…… ……」ポカーン
シスター「魔導師!!」
息子「…… ……」ポン
シスター「! 息子さん、魔導師が……!」
息子「……剣士さん達が着いているんでしょう。大丈夫ですよ」
シスター「……ッ だから、鍛冶の本なんて……!」
息子「関係ありませんよ……魔導師本人の意思、でしょう」
シスター「…… ……ッ」
息子「それより、兄は?」
兄「あ……大丈夫、です …… ……あいつ、凄いな」ハハッ
シスター「足、見せなさい……信じられないわ!」
シスター「実の兄に魔法をかけて傷付ける、何て…… ……あら?」
兄「……冷たく無いんです。痛くも」
息子「…… ……」
息子「……風も止みましたね」
シスター「…… ……」
兄「…… ……」
息子「……でもね、魔導師」
息子「世界は……広いんだよ」
兄「……すみません。ご迷惑おかけしました」ペコ
120: 2014/01/27(月) 13:14:52.10 ID:EFBzWVUiP
シスター「……兄の所為じゃ無いわよ」ハァ
息子「シスターさんはね……もう、誰も傷付けたく無いだけなんだよ」
兄「…… ……」
シスター「いえ……私も、ムキに……なりすぎたわ」ハァ
兄「解ってる、と……思います、よ」
兄(……魔導師。氏ぬなよ?)
……
………
…………
青年「…… ……」フフッ
剣士「何笑ってるんだ」
青年「……いや、嬉しいんだよ」
青年「僕達は喜ばなくてはいけない……だろ?」
魔導師「…… ……」ジィ
青年「ん? ……な、何だよ。大丈夫だって、君と一緒さ」
青年「僕も、誰も傷をつけては……」
魔導師「ち、違います!」
剣士「……だから言っただろうが」ハァ
青年「え?」
魔導師「何で蒼い目をしているのに、風の魔法を使えるんですか……!?」
剣士「見た目通りの加護で無い場合もあるんだ、稀に……だがな」
魔導師「え……そうなんですか?」
剣士「……ああ、だが……」チラ
剣士(こいつの加護は間違い無く水、だ……だが)
剣士(……まあ、良い。どうせ放って置いても説明するんだろう)
青年「ああ、僕の加護は水だよ?」
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「え!?だって、さっき……!」
青年「風の魔法も使えるんだよ。不思議な事にね」
魔導師「…… ……ええええええええ!?」
剣士「煩い」
魔導師「……す、すみません」
息子「シスターさんはね……もう、誰も傷付けたく無いだけなんだよ」
兄「…… ……」
シスター「いえ……私も、ムキに……なりすぎたわ」ハァ
兄「解ってる、と……思います、よ」
兄(……魔導師。氏ぬなよ?)
……
………
…………
青年「…… ……」フフッ
剣士「何笑ってるんだ」
青年「……いや、嬉しいんだよ」
青年「僕達は喜ばなくてはいけない……だろ?」
魔導師「…… ……」ジィ
青年「ん? ……な、何だよ。大丈夫だって、君と一緒さ」
青年「僕も、誰も傷をつけては……」
魔導師「ち、違います!」
剣士「……だから言っただろうが」ハァ
青年「え?」
魔導師「何で蒼い目をしているのに、風の魔法を使えるんですか……!?」
剣士「見た目通りの加護で無い場合もあるんだ、稀に……だがな」
魔導師「え……そうなんですか?」
剣士「……ああ、だが……」チラ
剣士(こいつの加護は間違い無く水、だ……だが)
剣士(……まあ、良い。どうせ放って置いても説明するんだろう)
青年「ああ、僕の加護は水だよ?」
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「え!?だって、さっき……!」
青年「風の魔法も使えるんだよ。不思議な事にね」
魔導師「…… ……ええええええええ!?」
剣士「煩い」
魔導師「……す、すみません」
121: 2014/01/27(月) 13:27:05.45 ID:EFBzWVUiP
青年「心配しなくても、全部説明してあげるよ」
青年「……北の街を経由して、書の街、だったっけ?」
剣士「そう聞いてる」
青年「北の街に用事は?」
剣士「俺は無いな……魔導師は」
魔導師「え? ……いえ、僕は……」
青年「特に無いなら下船の必要は無い……北の塔には行ってみたいけど」
青年「乗ってるのがこの船じゃね」
剣士「……書の街までは随分かかるな」
青年「僕はそこで降りる……けど、はいさようなら、とは」
青年「……行かないね。これじゃ」チラ
魔導師「?」
剣士「言い出しっぺはお前だ」
青年「……まあ、仕方無い」ハァ
魔導師「あ、あの……僕も、書の街には行ってみたいです!」
剣士「まあ……暫くの滞在先はあそこだな」
剣士「……だが、俺は目立つな」
青年「瞳の色だけは変えられないからな」
魔導師「……お二人とも目立つと思いますけど」
青年「え?僕? ……何処が?」
剣士「……自覚無いのか」ハァ
魔導師「…… ……」ハァ
剣士「どのみち、北の街で降りる訳にはいかん」
剣士「……此方の大陸には滅多に船も来ない」
剣士「港街と書の街辺りであれば、まあ……人の出入りも多いしな」
青年「そうだな……魔導師はともかく、僕と剣士は一所には留まれないし」
魔導師「……と、とにかく!教えて頂けるんですよね!?」
青年「あ、忘れてた……それは、勿論だ」
青年「これを理解してくれないと、始まらない」
剣士「…… ……」
青年「剣士も。約束だからね?」
剣士「解ってる」
魔導師「……本当に、お二人は何者なんですか」
青年「『世界の裏側をほんの少し』知っているだけ、さ……」
青年「僕も、剣士も……れっきとした『命』だ」
青年「以上でも以下でも無い」
青年「……北の街を経由して、書の街、だったっけ?」
剣士「そう聞いてる」
青年「北の街に用事は?」
剣士「俺は無いな……魔導師は」
魔導師「え? ……いえ、僕は……」
青年「特に無いなら下船の必要は無い……北の塔には行ってみたいけど」
青年「乗ってるのがこの船じゃね」
剣士「……書の街までは随分かかるな」
青年「僕はそこで降りる……けど、はいさようなら、とは」
青年「……行かないね。これじゃ」チラ
魔導師「?」
剣士「言い出しっぺはお前だ」
青年「……まあ、仕方無い」ハァ
魔導師「あ、あの……僕も、書の街には行ってみたいです!」
剣士「まあ……暫くの滞在先はあそこだな」
剣士「……だが、俺は目立つな」
青年「瞳の色だけは変えられないからな」
魔導師「……お二人とも目立つと思いますけど」
青年「え?僕? ……何処が?」
剣士「……自覚無いのか」ハァ
魔導師「…… ……」ハァ
剣士「どのみち、北の街で降りる訳にはいかん」
剣士「……此方の大陸には滅多に船も来ない」
剣士「港街と書の街辺りであれば、まあ……人の出入りも多いしな」
青年「そうだな……魔導師はともかく、僕と剣士は一所には留まれないし」
魔導師「……と、とにかく!教えて頂けるんですよね!?」
青年「あ、忘れてた……それは、勿論だ」
青年「これを理解してくれないと、始まらない」
剣士「…… ……」
青年「剣士も。約束だからね?」
剣士「解ってる」
魔導師「……本当に、お二人は何者なんですか」
青年「『世界の裏側をほんの少し』知っているだけ、さ……」
青年「僕も、剣士も……れっきとした『命』だ」
青年「以上でも以下でも無い」
122: 2014/01/27(月) 13:31:17.46 ID:EFBzWVUiP
おむかえー
131: 2014/01/28(火) 13:34:16.00 ID:kFiGU1nSP
剣士「『命』か……それすらも危ういな、俺は」
魔導師「え?」
青年「『欠片』だからと言いたいのか」
剣士「…… ……」
青年「酒飲んで飯食って、寝て。 ……何処が『命』じゃ無いと言うんだ」
剣士「……そう、か」
青年「生殖能力の有無まではわかんないけど」
剣士「おい、子供の前で……」
青年「随分長く『居る』んだろう。経験無いとは言わせないよ」
魔導師「……?」
剣士「やめろ……全く。癒し手が嘆くぞ」
スタスタ
近衛兵「そこの三人……君達が鍛冶師の村から乗って来た人達?」
青年「ああ……そうだけど」
近衛兵「王様の命だとは言え、この船はそもそも客船じゃ無い」
近衛兵「船室と呼べる立派な物も無いし、大部屋で……」
青年「……ちょっとちょっと。こっち」グイ
近衛兵「え? ……あの、ちょっと!?」
魔導師「せ、青年さん!?」
剣士「……放っておけ」
魔導師「でも……」
剣士「金でも握らせるんだろう」
魔導師「え!?」
剣士「話を聞かれるのも困るが、俺もあいつも……厭でも目立つ」
剣士「荷物部屋でも何でも良い。個室を得られるなら手段を問うてはいられない」
剣士「……て、所だと思うがな」
魔導師「で、でも……」
スタスタ
青年「船底のきったない狭い部屋で良いなら使って良いってさ」
魔導師「…… ……」
青年「……何で睨むんだよ」
剣士「大部屋に入れられても困るだけだろう、と説明したんだ」
青年「……なんか、僕を悪者にしてないかい」
魔導師「え?」
青年「『欠片』だからと言いたいのか」
剣士「…… ……」
青年「酒飲んで飯食って、寝て。 ……何処が『命』じゃ無いと言うんだ」
剣士「……そう、か」
青年「生殖能力の有無まではわかんないけど」
剣士「おい、子供の前で……」
青年「随分長く『居る』んだろう。経験無いとは言わせないよ」
魔導師「……?」
剣士「やめろ……全く。癒し手が嘆くぞ」
スタスタ
近衛兵「そこの三人……君達が鍛冶師の村から乗って来た人達?」
青年「ああ……そうだけど」
近衛兵「王様の命だとは言え、この船はそもそも客船じゃ無い」
近衛兵「船室と呼べる立派な物も無いし、大部屋で……」
青年「……ちょっとちょっと。こっち」グイ
近衛兵「え? ……あの、ちょっと!?」
魔導師「せ、青年さん!?」
剣士「……放っておけ」
魔導師「でも……」
剣士「金でも握らせるんだろう」
魔導師「え!?」
剣士「話を聞かれるのも困るが、俺もあいつも……厭でも目立つ」
剣士「荷物部屋でも何でも良い。個室を得られるなら手段を問うてはいられない」
剣士「……て、所だと思うがな」
魔導師「で、でも……」
スタスタ
青年「船底のきったない狭い部屋で良いなら使って良いってさ」
魔導師「…… ……」
青年「……何で睨むんだよ」
剣士「大部屋に入れられても困るだけだろう、と説明したんだ」
青年「……なんか、僕を悪者にしてないかい」
132: 2014/01/28(火) 13:42:40.54 ID:kFiGU1nSP
剣士「さっさと行くぞ」
スタスタ
魔導師「…… ……」
青年「文句、ある? ……別に、無理矢理脅した訳じゃないぞ」
魔導師「文句は、無いですけど……」
青年「そんな苦虫噛み潰した様な顔しないの。ちゃんとした取引でしょ」
魔導師「……目的の為には、手段を選ばない、んですか?」
青年「また大袈裟な……そんな事言ったら。傷付けない様にしたとは言え」
青年「……君のさっきの、氷の魔法とどう違う?」
魔導師「!」
青年「……そう言う事だよ。これの方がよっぽど安全な解決策さ」
青年「僕達にも、さっきの彼にも利がある」
魔導師「……他にも、個室が使いたいという方が居ればどうするんですか」
青年「あのね、魔導師。だからって僕が遠慮しなくちゃ行けない理由は?」
魔導師「え……あの、でも」
青年「でももだっても無いの。さっきの彼が、その個室を使いたい人に」
青年「僕の倍の金を貰ったから出ろと言うなら、僕はさらに倍を払うだけさ」
青年「そうしないと、今の僕達のこの旅は継続できない」
魔導師「…… ……」
青年「……悪い事した訳じゃ無いんだから。気にしなくて良い」
魔導師「……でも」
青年「……厭なら降りるかい?」
魔導師「え?」
青年「北の街から鍛冶師の村までならそう遠くは無い。君の魔法の腕があれば」
青年「……まあ、生きては帰れるだろう」
魔導師「そ、そんな!」
青年「……自分で選んだ、んだろう?」
魔導師「…… ……」
青年「僕達と一緒に行く。勇者様についていくって」
魔導師「…… ……」
青年「……子供の扱いって難しいな」ハァ
青年「悪かったよ。次からはちゃんと相談する」
魔導師「あ、いえ、あの……そう言う訳じゃ」
青年「じゃあどう言う訳さ」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」ハァ
青年「まあ、此処で言い争いしたって不毛なだけだ。とにかく行こう?」
魔導師「……はい」
青年「……手、繋いでやろうか?」
魔導師「い、いりませんよ!?」
スタスタ
魔導師「…… ……」
青年「文句、ある? ……別に、無理矢理脅した訳じゃないぞ」
魔導師「文句は、無いですけど……」
青年「そんな苦虫噛み潰した様な顔しないの。ちゃんとした取引でしょ」
魔導師「……目的の為には、手段を選ばない、んですか?」
青年「また大袈裟な……そんな事言ったら。傷付けない様にしたとは言え」
青年「……君のさっきの、氷の魔法とどう違う?」
魔導師「!」
青年「……そう言う事だよ。これの方がよっぽど安全な解決策さ」
青年「僕達にも、さっきの彼にも利がある」
魔導師「……他にも、個室が使いたいという方が居ればどうするんですか」
青年「あのね、魔導師。だからって僕が遠慮しなくちゃ行けない理由は?」
魔導師「え……あの、でも」
青年「でももだっても無いの。さっきの彼が、その個室を使いたい人に」
青年「僕の倍の金を貰ったから出ろと言うなら、僕はさらに倍を払うだけさ」
青年「そうしないと、今の僕達のこの旅は継続できない」
魔導師「…… ……」
青年「……悪い事した訳じゃ無いんだから。気にしなくて良い」
魔導師「……でも」
青年「……厭なら降りるかい?」
魔導師「え?」
青年「北の街から鍛冶師の村までならそう遠くは無い。君の魔法の腕があれば」
青年「……まあ、生きては帰れるだろう」
魔導師「そ、そんな!」
青年「……自分で選んだ、んだろう?」
魔導師「…… ……」
青年「僕達と一緒に行く。勇者様についていくって」
魔導師「…… ……」
青年「……子供の扱いって難しいな」ハァ
青年「悪かったよ。次からはちゃんと相談する」
魔導師「あ、いえ、あの……そう言う訳じゃ」
青年「じゃあどう言う訳さ」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」ハァ
青年「まあ、此処で言い争いしたって不毛なだけだ。とにかく行こう?」
魔導師「……はい」
青年「……手、繋いでやろうか?」
魔導師「い、いりませんよ!?」
139: 2014/01/29(水) 09:41:45.30 ID:Ig20+I6EP
青年「…… ……」クスクス
スタスタ
魔導師(……怖い人じゃ無い、と思う。でも……)
魔導師(良く解らない。剣士さんも、青年さんも……)
魔導師(僕……大丈夫かな。着いてきて……良かったのかな)ハァ
カチャ
剣士「……何やってるんだ、お前達は」
青年「ごめんごめん……で、此処か。確かに……狭いし汚い」ハァ
魔導師「……わ、黴くさ……ッ」ケホッ
剣士「横に……はなれんな」
青年「……これ、樽? ……この上に座って休むしか無いな」
魔導師「せ、せめて掃除する物ぐらい……」
青年「すぐ慣れるさ……二週間ぐらいだろ、書の街まで」
剣士「北の街から……と考えると」
魔導師「え?」
剣士「大海の大渦を大きく迂回して行くんだろう……もう少し掛かる」
青年「詳しいな」
剣士「……船には長く乗って居たからな」
青年「ああ、そうだったっけ……海賊船だったな」
魔導師「海賊船!?」
剣士「……順に話そう」
青年「…… ……剣士」
剣士「何だ」
青年「先に伝えておく……亡くなった、そうだ」
剣士「!? ……船長、が、か…… ……」
青年「…… ……」
剣士「あいつは……『人間』だ。おかしい話では無い、ん……だ」
青年「……聞く?」
剣士「? ……続きがあるのか」
青年「彼女のお父さんと同じ、だそうだよ」
剣士「!」
青年「……魔詩にやられ、自ら人魚に」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
魔導師(珍しい……剣士さん、険しい顔をしてる)
魔導師(……仲の良い、人……だったのかな)
スタスタ
魔導師(……怖い人じゃ無い、と思う。でも……)
魔導師(良く解らない。剣士さんも、青年さんも……)
魔導師(僕……大丈夫かな。着いてきて……良かったのかな)ハァ
カチャ
剣士「……何やってるんだ、お前達は」
青年「ごめんごめん……で、此処か。確かに……狭いし汚い」ハァ
魔導師「……わ、黴くさ……ッ」ケホッ
剣士「横に……はなれんな」
青年「……これ、樽? ……この上に座って休むしか無いな」
魔導師「せ、せめて掃除する物ぐらい……」
青年「すぐ慣れるさ……二週間ぐらいだろ、書の街まで」
剣士「北の街から……と考えると」
魔導師「え?」
剣士「大海の大渦を大きく迂回して行くんだろう……もう少し掛かる」
青年「詳しいな」
剣士「……船には長く乗って居たからな」
青年「ああ、そうだったっけ……海賊船だったな」
魔導師「海賊船!?」
剣士「……順に話そう」
青年「…… ……剣士」
剣士「何だ」
青年「先に伝えておく……亡くなった、そうだ」
剣士「!? ……船長、が、か…… ……」
青年「…… ……」
剣士「あいつは……『人間』だ。おかしい話では無い、ん……だ」
青年「……聞く?」
剣士「? ……続きがあるのか」
青年「彼女のお父さんと同じ、だそうだよ」
剣士「!」
青年「……魔詩にやられ、自ら人魚に」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
魔導師(珍しい……剣士さん、険しい顔をしてる)
魔導師(……仲の良い、人……だったのかな)
140: 2014/01/29(水) 09:52:38.19 ID:Ig20+I6EP
剣士「……そうか。では……あの船は……もう」
青年「子供が居ただろ?」
剣士「……?」
青年「知らないのか?」
剣士「船長に? ……否。俺は……知らん」
青年「……君の子、では無いだろうけど」
剣士「……さっきの話の元はそれか」ハァ
魔導師「??」
青年「……さて、お待たせ魔導師」
魔導師「あ、は、はい!」
青年「…… ……何処から話そうか」
魔導師「全部、話して貰える……というか」
魔導師「聞かないといけない、んでしょう?」
青年「まあね。ついでに理解して貰わないと困る」
剣士「順序立てて話せよ」
青年「……努力はする。なるべく正確に話すつもり、だけど」
青年「僕も……聞いただけでみた訳じゃ無いからね」
青年「君もだ、剣士……魔王様と立てた仮説。それも聞かせてくれよ」
剣士「解ってる」
魔導師「……魔王、様?」
青年「すぐ解る……まあ、とにかく。ええと……」
剣士「紫の瞳の魔王の話、からだろう」
魔導師「紫!?」
青年「……そっくりなんだぜ、剣士と紫の魔王は」
魔導師「……え?」
青年「だけじゃないな。金の髪の勇者も、黒の髪の勇者も、だ」
魔導師「え、え!?」
青年「……否、その前にエルフのお姫様の話からかな」
魔導師「!? あれは御伽噺では!?」
青年「え? ……ああ、そうか」
青年「子供が居ただろ?」
剣士「……?」
青年「知らないのか?」
剣士「船長に? ……否。俺は……知らん」
青年「……君の子、では無いだろうけど」
剣士「……さっきの話の元はそれか」ハァ
魔導師「??」
青年「……さて、お待たせ魔導師」
魔導師「あ、は、はい!」
青年「…… ……何処から話そうか」
魔導師「全部、話して貰える……というか」
魔導師「聞かないといけない、んでしょう?」
青年「まあね。ついでに理解して貰わないと困る」
剣士「順序立てて話せよ」
青年「……努力はする。なるべく正確に話すつもり、だけど」
青年「僕も……聞いただけでみた訳じゃ無いからね」
青年「君もだ、剣士……魔王様と立てた仮説。それも聞かせてくれよ」
剣士「解ってる」
魔導師「……魔王、様?」
青年「すぐ解る……まあ、とにかく。ええと……」
剣士「紫の瞳の魔王の話、からだろう」
魔導師「紫!?」
青年「……そっくりなんだぜ、剣士と紫の魔王は」
魔導師「……え?」
青年「だけじゃないな。金の髪の勇者も、黒の髪の勇者も、だ」
魔導師「え、え!?」
青年「……否、その前にエルフのお姫様の話からかな」
魔導師「!? あれは御伽噺では!?」
青年「え? ……ああ、そうか」
141: 2014/01/29(水) 10:01:39.04 ID:Ig20+I6EP
青年「あの村には司書、だっけ……が、持ってきたあの本があるんだったな」
青年「読んだ事は?」
魔導師「……あ、あります。子供達に……ついさっき、読み聞かせを……」
剣士「子供に読ます内容では無い気がするが、な」
魔導師「……数が少ないんです。ですから……」
魔導師「僕も驚きました。結構……残酷な内容だったので」
青年「なら話は早い。あれは……実話だよ」
魔導師「……は?」
青年「あの話を書いたのは、紫の魔王だ。で、あのお姫様ってのが……」
魔導師「あ、あの、ちょっと!?」
剣士「……混乱するのも無理は無い、が」
青年「何度も言っただろう?僕はエルフの血を引いている」
青年「決して嘘は吐けない」
魔導師「……し、信じない訳じゃありません。でも!」
魔導師「それも、その……そもそも、それは、あの!?」
剣士「……おちつけ」
魔導師「……すみません。えっと。その……嘘を吐けない、と言うこと自体」
魔導師「事実……なのですか!?」
青年「聞いた限りは……ね。そのお姫様、ってのが、言っていたそうだ」
青年「……あの話のモデル。表紙は覚えてる?」
魔導師「あ……は、はい。僧侶さんによく似てました、から……」
魔導師「新緑の髪に、湖の如く澄んだ蒼の、瞳……でした、っけ」
青年「……うん。あれは……僕のお祖母様だ」
魔導師「…… ……え?」
青年「母さんにそっくりな筈だろう。母さんの母さん、何だから」
魔導師「…… ……」
青年「姫……お祖母様が、言っていたそうだ。エルフは嘘を吐く事ができ無い」
青年「皆が必ず一つ、持って生まれてくる……『加護』」
青年「それは解るね?」
魔導師「え、ええ……それぞれの力を持った精霊と、産まれる時に交わす」
魔導師「契約の様な物、ですね」
青年「そう。そして、エルフは優れた……力の強い、と言えばいいのか」
青年「高位な、て言えばいいのかな。まあ、要するに」
青年「そう言う精霊と契約できる確率が高いと言われている」
魔導師「……『優れた加護』って奴ですね」
青年「そう……お祖母様も持っていた。勿論、母さんも」
魔導師「……貴方も、ですか。青年さん」
青年「ああ」
魔導師「…… ……」
青年「読んだ事は?」
魔導師「……あ、あります。子供達に……ついさっき、読み聞かせを……」
剣士「子供に読ます内容では無い気がするが、な」
魔導師「……数が少ないんです。ですから……」
魔導師「僕も驚きました。結構……残酷な内容だったので」
青年「なら話は早い。あれは……実話だよ」
魔導師「……は?」
青年「あの話を書いたのは、紫の魔王だ。で、あのお姫様ってのが……」
魔導師「あ、あの、ちょっと!?」
剣士「……混乱するのも無理は無い、が」
青年「何度も言っただろう?僕はエルフの血を引いている」
青年「決して嘘は吐けない」
魔導師「……し、信じない訳じゃありません。でも!」
魔導師「それも、その……そもそも、それは、あの!?」
剣士「……おちつけ」
魔導師「……すみません。えっと。その……嘘を吐けない、と言うこと自体」
魔導師「事実……なのですか!?」
青年「聞いた限りは……ね。そのお姫様、ってのが、言っていたそうだ」
青年「……あの話のモデル。表紙は覚えてる?」
魔導師「あ……は、はい。僧侶さんによく似てました、から……」
魔導師「新緑の髪に、湖の如く澄んだ蒼の、瞳……でした、っけ」
青年「……うん。あれは……僕のお祖母様だ」
魔導師「…… ……え?」
青年「母さんにそっくりな筈だろう。母さんの母さん、何だから」
魔導師「…… ……」
青年「姫……お祖母様が、言っていたそうだ。エルフは嘘を吐く事ができ無い」
青年「皆が必ず一つ、持って生まれてくる……『加護』」
青年「それは解るね?」
魔導師「え、ええ……それぞれの力を持った精霊と、産まれる時に交わす」
魔導師「契約の様な物、ですね」
青年「そう。そして、エルフは優れた……力の強い、と言えばいいのか」
青年「高位な、て言えばいいのかな。まあ、要するに」
青年「そう言う精霊と契約できる確率が高いと言われている」
魔導師「……『優れた加護』って奴ですね」
青年「そう……お祖母様も持っていた。勿論、母さんも」
魔導師「……貴方も、ですか。青年さん」
青年「ああ」
魔導師「…… ……」
142: 2014/01/29(水) 10:24:22.12 ID:Ig20+I6EP
青年「寿命も人よりも長い……まあ、魔族には及ばないらしいけどね」
魔導師「……実話、と言いましたね、あの話」
青年「まあ、最後の方は捏造らしいけど」
魔導師「え?」
青年「まだ母さんがお祖母様のお腹の中に居る頃に書かれた物なんだ」
青年「……あの話の最後、姫様は娘を産んだだろう?」
魔導師「え? ……いえ、あの」
剣士「……?」
青年「……え?」
魔導師「ええと、確か……」
魔導師「『エルフのお姫様は、どこからも失われてしまった』……か、何かで」
魔導師「終わり……だった気が、するんですが」
青年「……あれ? 母さんに聞いた話と違う……な」
剣士「終わりでは無い筈だ……俺は、魔王の城で読んだ」
魔導師「ま、魔王の城!?」
青年「書いたのが紫の魔王なんだ……魔王の城に残ってても不思議じゃ無いだろ?」
魔導師「……そ、そう言う、もの……? ……あ!」
青年「な、何だよ」
魔導師「……僕が読んだあの本は、多分落丁してたんです」
魔導師「ええと……旅人が矢で打たれる所、かな、確か……」
魔導師「『誰に打たれたか』の説明が無くて」
青年「……そうなの?剣士」
剣士「はっきりと一語一句覚えて居る訳じゃ無いが……エルフの若者が」
剣士「旅人に矢を放った……か何かだった気がする、が」
魔導師「……そこは、読んでないです……!」
青年「……まあ、良い。古い本には違い無いし」
青年「内容を考察したい訳じゃ無い」
魔導師「……あの、続き、て言うのは?」
魔導師「僕が読んだのが、最後では無いんですよね?」
青年「ああ。まあ……紫の魔王が、捏造したってのが」
青年「さっきも言った通り、『娘を産んだ』って部分だ」
剣士「……癒し手が産まれると決まっていた訳では無い、からか」
魔導師「……実話、と言いましたね、あの話」
青年「まあ、最後の方は捏造らしいけど」
魔導師「え?」
青年「まだ母さんがお祖母様のお腹の中に居る頃に書かれた物なんだ」
青年「……あの話の最後、姫様は娘を産んだだろう?」
魔導師「え? ……いえ、あの」
剣士「……?」
青年「……え?」
魔導師「ええと、確か……」
魔導師「『エルフのお姫様は、どこからも失われてしまった』……か、何かで」
魔導師「終わり……だった気が、するんですが」
青年「……あれ? 母さんに聞いた話と違う……な」
剣士「終わりでは無い筈だ……俺は、魔王の城で読んだ」
魔導師「ま、魔王の城!?」
青年「書いたのが紫の魔王なんだ……魔王の城に残ってても不思議じゃ無いだろ?」
魔導師「……そ、そう言う、もの……? ……あ!」
青年「な、何だよ」
魔導師「……僕が読んだあの本は、多分落丁してたんです」
魔導師「ええと……旅人が矢で打たれる所、かな、確か……」
魔導師「『誰に打たれたか』の説明が無くて」
青年「……そうなの?剣士」
剣士「はっきりと一語一句覚えて居る訳じゃ無いが……エルフの若者が」
剣士「旅人に矢を放った……か何かだった気がする、が」
魔導師「……そこは、読んでないです……!」
青年「……まあ、良い。古い本には違い無いし」
青年「内容を考察したい訳じゃ無い」
魔導師「……あの、続き、て言うのは?」
魔導師「僕が読んだのが、最後では無いんですよね?」
青年「ああ。まあ……紫の魔王が、捏造したってのが」
青年「さっきも言った通り、『娘を産んだ』って部分だ」
剣士「……癒し手が産まれると決まっていた訳では無い、からか」
143: 2014/01/29(水) 10:33:01.71 ID:Ig20+I6EP
青年「まあ、ちゃんとした本を読む機会はあるかもしれないし」
青年「それは良い……実話だと言う事を頭に入れて置いてくれれば」
剣士「?……どう言う意味だ」
青年「僕達は必ずあそこにたどり着く、だろう」
青年「……『勇者は必ず、魔王を倒す』んだから」
剣士「それは……そうだ、だが」
剣士「終わってしまえば、もう……」
青年「……君は終わると思うの?」
剣士「!」
魔導師「あ、あの……?」
青年「それは後。取りあえず魔導師に説明するのが先だ」
剣士「…… ……」
青年「エルフのお姫様のお話は、実話。そこまでオーケー?」
魔導師「は、はい……一応」
青年「ん。で……何故紫の魔王が、姫を知っていたか。だけど」
青年「……まあ、出会ったから、何だけど」
剣士「はしょるな……要するに、エルフの森からでた姫の所へ」
剣士「紫の魔王が……『偶然』転移してきた、訳だ」
魔導師「て、転移!?」
青年「……魔法なんてのは使い様」
青年「魔力があれば、それをどんな用途にどのように作用させるか」
青年「……それを理解出来れば、どんな風にも出来るって事」
魔導師「……それは……魔王の特権、ですか?」
青年「でも無い」
魔導師「え!?」
剣士「……俺も出来る」
魔導師「ええ!?」
青年「後で説明するけど、剣士も特殊、だからね」
青年「……他にも出来る人が居る、ってのだけ覚えて置いて」
魔導師「は、はあ……」
青年「紫の魔王は訳あって……此処は省いても良いよね?」
剣士「……まあ、後でも良いだろう」
青年「魔王の城を出た。で、さっき剣士も言ったけど」
青年「『偶然』 ……姫と出会った。まあ、結果的に助ける事になって」
青年「同行することになる。行き先が……『魔導の街』だ」
青年「それは良い……実話だと言う事を頭に入れて置いてくれれば」
剣士「?……どう言う意味だ」
青年「僕達は必ずあそこにたどり着く、だろう」
青年「……『勇者は必ず、魔王を倒す』んだから」
剣士「それは……そうだ、だが」
剣士「終わってしまえば、もう……」
青年「……君は終わると思うの?」
剣士「!」
魔導師「あ、あの……?」
青年「それは後。取りあえず魔導師に説明するのが先だ」
剣士「…… ……」
青年「エルフのお姫様のお話は、実話。そこまでオーケー?」
魔導師「は、はい……一応」
青年「ん。で……何故紫の魔王が、姫を知っていたか。だけど」
青年「……まあ、出会ったから、何だけど」
剣士「はしょるな……要するに、エルフの森からでた姫の所へ」
剣士「紫の魔王が……『偶然』転移してきた、訳だ」
魔導師「て、転移!?」
青年「……魔法なんてのは使い様」
青年「魔力があれば、それをどんな用途にどのように作用させるか」
青年「……それを理解出来れば、どんな風にも出来るって事」
魔導師「……それは……魔王の特権、ですか?」
青年「でも無い」
魔導師「え!?」
剣士「……俺も出来る」
魔導師「ええ!?」
青年「後で説明するけど、剣士も特殊、だからね」
青年「……他にも出来る人が居る、ってのだけ覚えて置いて」
魔導師「は、はあ……」
青年「紫の魔王は訳あって……此処は省いても良いよね?」
剣士「……まあ、後でも良いだろう」
青年「魔王の城を出た。で、さっき剣士も言ったけど」
青年「『偶然』 ……姫と出会った。まあ、結果的に助ける事になって」
青年「同行することになる。行き先が……『魔導の街』だ」
144: 2014/01/29(水) 10:49:32.83 ID:Ig20+I6EP
魔導師「……魔導の街」
青年「そこで紫の魔王と姫は、盗賊……僕の曾お祖母様だね」
魔導師「え!? ……あ、あ……そうか、僧侶さんの子供……んん?」
青年「あってるあってる……盗賊に出会ったんだ」
魔導師「……盗賊様と、鍛冶師様の子供が」
魔導師「騎士団長様と、前国王様で……ええと……」ブツブツ
剣士「騎士団長の息子が、戦士だ」
青年「僕の父さん、だ……それより、続き、良い?」
魔導師「あ、は、はい!?」
青年「盗賊は、二人に『魔導大会に出て優勝して欲しい』と願った」
青年「代わりに『エルフの弓』をあげるから、とね」
魔導師「……え、エルフの弓!?」
青年「これだ」ゴソゴソ
魔導師「! ……こ、これ、が……エルフの、弓……!?」
魔導師「……さ、触っても良いですか」
青年「どうぞ?」
魔導師「し、失礼しま……え、軽い!?」ヒョイッ ……ガシ!
青年「そりゃそうさ。身体的には優れていると言えないエルフでも」
青年「……『僧侶』だった母さんでも易く扱える物」
青年「どころか逆に、力のある奴が使ったら、壊しちゃうかもね」
青年「そこで紫の魔王と姫は、盗賊……僕の曾お祖母様だね」
魔導師「え!? ……あ、あ……そうか、僧侶さんの子供……んん?」
青年「あってるあってる……盗賊に出会ったんだ」
魔導師「……盗賊様と、鍛冶師様の子供が」
魔導師「騎士団長様と、前国王様で……ええと……」ブツブツ
剣士「騎士団長の息子が、戦士だ」
青年「僕の父さん、だ……それより、続き、良い?」
魔導師「あ、は、はい!?」
青年「盗賊は、二人に『魔導大会に出て優勝して欲しい』と願った」
青年「代わりに『エルフの弓』をあげるから、とね」
魔導師「……え、エルフの弓!?」
青年「これだ」ゴソゴソ
魔導師「! ……こ、これ、が……エルフの、弓……!?」
魔導師「……さ、触っても良いですか」
青年「どうぞ?」
魔導師「し、失礼しま……え、軽い!?」ヒョイッ ……ガシ!
青年「そりゃそうさ。身体的には優れていると言えないエルフでも」
青年「……『僧侶』だった母さんでも易く扱える物」
青年「どころか逆に、力のある奴が使ったら、壊しちゃうかもね」
145: 2014/01/29(水) 10:50:26.12 ID:Ig20+I6EP
おむかえー
147: 2014/01/29(水) 17:18:59.62 ID:Ig20+I6EP
魔導師「確かに……細いし、凄く軽い、のに」ク……ッ
魔導師(少し引くだけで……僕の力でも、折れそうだ)
魔導師(……しなやかなんだな。か細く見えて……強靱なんだ)
魔導師(どう言う理屈……ん、んん?)
青年「魔導師、興味があるのは解ったから……先に話聞いて?」
魔導師「あ! ……す、すみません」
青年「で、まあ……これが此処にあるって事は?」
魔導師「ええと、姫さんから、僧侶さんに……で、青年さん、に」
青年「うん。て事は姫と紫の魔王は、優勝したって事」
青年「詳しい話は今は省く……盗賊の目的は『劣等種の解放』だった」
魔導師「……れ、劣等種?」
剣士「『優れた加護』も持たない者の総称だったんだ」
剣士「勿論、魔導の街だけで、の話だが」
青年「魔導の街の人達はそういって、優れた加護を持たない人達を迫害してきたらしい」
青年「語源とか、詳しい話は……これも後回し、な」
青年「取りあえず、出来事をざっと説明する」
魔導師「……は、はい」
剣士「……到底信じられる話では無いだろうが」
剣士「出来るだけ、偏見無くして聞いて欲しい」
魔導師「……実際、僕の知識なんて知れてるんです」
魔導師「なるべく……素直に、聞きます」
青年「嬉しいね……まあ、三人の利害は一致した、んだ」
青年「結果も、残した……まあ、戦ったのが魔王であれば、当然だけど」
魔導師「……怪しまれなかった、んですか。紫の魔王、は」
魔導師「……その。剣士さんにうり二つ、だったんでしょう?」
剣士「試合に出たのは姫の方だ」
魔導師「え!?」
剣士「……まあ、決勝戦に出て来た『魔導将軍』と言うのが」
剣士「魔族だったから、結局は魔王が戦った……」
魔導師「ま、魔族が!? 魔導の街に!?」
青年「……ああ、そうか。それも説明しないといけないのか」ハァ
魔導師(少し引くだけで……僕の力でも、折れそうだ)
魔導師(……しなやかなんだな。か細く見えて……強靱なんだ)
魔導師(どう言う理屈……ん、んん?)
青年「魔導師、興味があるのは解ったから……先に話聞いて?」
魔導師「あ! ……す、すみません」
青年「で、まあ……これが此処にあるって事は?」
魔導師「ええと、姫さんから、僧侶さんに……で、青年さん、に」
青年「うん。て事は姫と紫の魔王は、優勝したって事」
青年「詳しい話は今は省く……盗賊の目的は『劣等種の解放』だった」
魔導師「……れ、劣等種?」
剣士「『優れた加護』も持たない者の総称だったんだ」
剣士「勿論、魔導の街だけで、の話だが」
青年「魔導の街の人達はそういって、優れた加護を持たない人達を迫害してきたらしい」
青年「語源とか、詳しい話は……これも後回し、な」
青年「取りあえず、出来事をざっと説明する」
魔導師「……は、はい」
剣士「……到底信じられる話では無いだろうが」
剣士「出来るだけ、偏見無くして聞いて欲しい」
魔導師「……実際、僕の知識なんて知れてるんです」
魔導師「なるべく……素直に、聞きます」
青年「嬉しいね……まあ、三人の利害は一致した、んだ」
青年「結果も、残した……まあ、戦ったのが魔王であれば、当然だけど」
魔導師「……怪しまれなかった、んですか。紫の魔王、は」
魔導師「……その。剣士さんにうり二つ、だったんでしょう?」
剣士「試合に出たのは姫の方だ」
魔導師「え!?」
剣士「……まあ、決勝戦に出て来た『魔導将軍』と言うのが」
剣士「魔族だったから、結局は魔王が戦った……」
魔導師「ま、魔族が!? 魔導の街に!?」
青年「……ああ、そうか。それも説明しないといけないのか」ハァ
148: 2014/01/29(水) 17:24:59.48 ID:Ig20+I6EP
剣士「一気に全部を詰め込む必要も無いだろう」
剣士「ただでさえ、ややこしい話…… ……ッ」
グラグラグラ……ッ
魔導師「わ、あ……ッ」
青年「……船底でもこんなに揺れるのか?」
青年「大渦ってのは……」
剣士「違う…… ……」
青年「え?」
魔導師(うぅ、酔いそう……渦……?)チラ
魔導師「!」
剣士「まだそんな場所まで行かない筈……」
魔導師「うわああああああああああああ!?」
青年「!? ……な、何だよ!?」
魔導師「ま、まままま、まど!窓の、外!!」
青年「窓? 海しか見えな…… ……!?」
剣士「……何かよぎった」
魔導師「め、目が!目が!!」
青年「……目?」
~♪ ~♪
青年(……これは!)
魔導師「あ、れ…… 目、がまわ……」クラッ
剣士「人魚か!」バッ
青年「待て、剣士!」グイッ
剣士「……ッ 離せ! 加勢を…… ……ッ !?」クラッ
青年「……僕には聞かない。確かめたい事もある」
青年「魔導師はともかく、君が操られると最悪の状況にもなり得る」
青年「……まさか、食い破ってまでは来ないだろ。此処に居ろ」
スタスタ
剣士「ま、て……せいね……ッ」
バタン!
剣士「ただでさえ、ややこしい話…… ……ッ」
グラグラグラ……ッ
魔導師「わ、あ……ッ」
青年「……船底でもこんなに揺れるのか?」
青年「大渦ってのは……」
剣士「違う…… ……」
青年「え?」
魔導師(うぅ、酔いそう……渦……?)チラ
魔導師「!」
剣士「まだそんな場所まで行かない筈……」
魔導師「うわああああああああああああ!?」
青年「!? ……な、何だよ!?」
魔導師「ま、まままま、まど!窓の、外!!」
青年「窓? 海しか見えな…… ……!?」
剣士「……何かよぎった」
魔導師「め、目が!目が!!」
青年「……目?」
~♪ ~♪
青年(……これは!)
魔導師「あ、れ…… 目、がまわ……」クラッ
剣士「人魚か!」バッ
青年「待て、剣士!」グイッ
剣士「……ッ 離せ! 加勢を…… ……ッ !?」クラッ
青年「……僕には聞かない。確かめたい事もある」
青年「魔導師はともかく、君が操られると最悪の状況にもなり得る」
青年「……まさか、食い破ってまでは来ないだろ。此処に居ろ」
スタスタ
剣士「ま、て……せいね……ッ」
バタン!
149: 2014/01/29(水) 17:32:11.00 ID:Ig20+I6EP
剣士「…… ……ッ」
剣士(眩暈……ッ 何だ、これは……ッ)
剣士(……この、感覚…… ……どこか、で…… ……)
魔導師「…… ……」グッタリ
剣士「ま……ど…… …… ……」
……
………
…………
剣士『……俺は、魔法は使えん。さっき言ったとおりだ……が』
青年『が?』
剣士『……剣を媒介にすることで、魔法剣となすことが出来る』
勇者『魔法剣!』
魔導師『嘘!?』
剣士『……見れば分かる。戦闘時に見て確かめろ』
青年『……加護は?』
剣士『何?』
勇者『……ああ、そうだ。紫の瞳って珍しい』
剣士『………』
青年『言いたく無いんだね……魔導師、分かる?』
魔導師『……連想になっちゃいますけど』
青年『だよねぇ』
勇者『青年は?』
魔導師(何、これ……夢……え!?)
魔導師(僕が居る!?)
魔導師(あれは、青年さん!? ……今より、少し大人っぽい)
魔導師(剣士さんは変わらない……いや、それより……)
魔導師(あの女の子は……誰……?)
パアアアアア……ッ
魔導師(ひ、かり……!? 何、眩しい……!!)
魔導師(…… ……ッ)ハッ
魔導師(さ、さっきの人達は……!)
剣士(眩暈……ッ 何だ、これは……ッ)
剣士(……この、感覚…… ……どこか、で…… ……)
魔導師「…… ……」グッタリ
剣士「ま……ど…… …… ……」
……
………
…………
剣士『……俺は、魔法は使えん。さっき言ったとおりだ……が』
青年『が?』
剣士『……剣を媒介にすることで、魔法剣となすことが出来る』
勇者『魔法剣!』
魔導師『嘘!?』
剣士『……見れば分かる。戦闘時に見て確かめろ』
青年『……加護は?』
剣士『何?』
勇者『……ああ、そうだ。紫の瞳って珍しい』
剣士『………』
青年『言いたく無いんだね……魔導師、分かる?』
魔導師『……連想になっちゃいますけど』
青年『だよねぇ』
勇者『青年は?』
魔導師(何、これ……夢……え!?)
魔導師(僕が居る!?)
魔導師(あれは、青年さん!? ……今より、少し大人っぽい)
魔導師(剣士さんは変わらない……いや、それより……)
魔導師(あの女の子は……誰……?)
パアアアアア……ッ
魔導師(ひ、かり……!? 何、眩しい……!!)
魔導師(…… ……ッ)ハッ
魔導師(さ、さっきの人達は……!)
150: 2014/01/29(水) 17:38:56.59 ID:Ig20+I6EP
青年『母から貰った大事な物。水の魔力の篭もった、浄化の石』コロン。チカチカ
勇者『……私もだよ。お母さんがくれた……魔とか遠ざける浄化の、魔除け石』コロン。チカチカ
魔導師(! 僧侶さんの、魔石……だよね?)
魔導師『綺麗、ですね。魔石の類はいくつか目にした事がありますが……これは、凄い』
魔導師(え…… ……)
勇者『魔石、なんだよね。持ってると落ち着くんだ。癒されてるみたいで……でも』
勇者『何で光ってるんだろう……』
青年『そうだね。僕も……こんな風に光っているのは見たことが無い。君に会うまでは、ね』
魔導師『魔石とは、基本……魔力の高い者が、その魔力を何か……形のあるものに封じ込めた物の事なんです』
魔導師(!?)
青年『そうだね。市場にも出回ってる魔除けの石なんかがそれだ』
魔導師『はい。位の高い聖職者が、清浄な水とその魔力で清め、そこに力を込めた物……ですね』
魔導師(……違う……! 似てるけど)
魔導師(な、んだ……これは!? 夢!?)
青年『ご名答。出回ってる、って言ったって……高価な物だけどね』
勇者『そうなの?』
青年『そうさ……たかだか、聖職者如きの力を封じ込めたタダの石ころの本当の力なんて』
青年『気休めに他ならない。力の弱い、知能の低い魔物には多少効果はあるかも知れないけど』
青年『強い力を持つ魔族なんかには、別に驚異でも何でもない』
勇者『……じゃあ、意味無いじゃ無い』
青年『だから気休めだと言っただろう?』
魔導師『王国の城下町などに住んでいる人の場合、騎士様が守って下さいますし』
魔導師(騎士様……?)
魔導師(……やっぱり、違う。騎士団は解体した筈だ)
魔導師『そういう所では、それほど強い魔物は目撃されていませんしね』
青年『そういうこと。これがあるから大丈夫……さ』
青年『高価な石を買うことが叶わないような、もしくは物流が悪い地域に住んでる様な人達は』
青年『弱い魔物ぐらい、撃退できる術を持ってる。 …そうじゃなきゃ、即、氏に……繋がる』
勇者『……成る程』
魔導師(……僧侶さんの石を、持っている女の子。まさか……勇者様!?)
魔導師(良く見ると……剣士さんにそっくり……ッ)ハッ
魔導師(……間違い無い!勇者様だ……金の、瞳……!)
勇者『……私もだよ。お母さんがくれた……魔とか遠ざける浄化の、魔除け石』コロン。チカチカ
魔導師(! 僧侶さんの、魔石……だよね?)
魔導師『綺麗、ですね。魔石の類はいくつか目にした事がありますが……これは、凄い』
魔導師(え…… ……)
勇者『魔石、なんだよね。持ってると落ち着くんだ。癒されてるみたいで……でも』
勇者『何で光ってるんだろう……』
青年『そうだね。僕も……こんな風に光っているのは見たことが無い。君に会うまでは、ね』
魔導師『魔石とは、基本……魔力の高い者が、その魔力を何か……形のあるものに封じ込めた物の事なんです』
魔導師(!?)
青年『そうだね。市場にも出回ってる魔除けの石なんかがそれだ』
魔導師『はい。位の高い聖職者が、清浄な水とその魔力で清め、そこに力を込めた物……ですね』
魔導師(……違う……! 似てるけど)
魔導師(な、んだ……これは!? 夢!?)
青年『ご名答。出回ってる、って言ったって……高価な物だけどね』
勇者『そうなの?』
青年『そうさ……たかだか、聖職者如きの力を封じ込めたタダの石ころの本当の力なんて』
青年『気休めに他ならない。力の弱い、知能の低い魔物には多少効果はあるかも知れないけど』
青年『強い力を持つ魔族なんかには、別に驚異でも何でもない』
勇者『……じゃあ、意味無いじゃ無い』
青年『だから気休めだと言っただろう?』
魔導師『王国の城下町などに住んでいる人の場合、騎士様が守って下さいますし』
魔導師(騎士様……?)
魔導師(……やっぱり、違う。騎士団は解体した筈だ)
魔導師『そういう所では、それほど強い魔物は目撃されていませんしね』
青年『そういうこと。これがあるから大丈夫……さ』
青年『高価な石を買うことが叶わないような、もしくは物流が悪い地域に住んでる様な人達は』
青年『弱い魔物ぐらい、撃退できる術を持ってる。 …そうじゃなきゃ、即、氏に……繋がる』
勇者『……成る程』
魔導師(……僧侶さんの石を、持っている女の子。まさか……勇者様!?)
魔導師(良く見ると……剣士さんにそっくり……ッ)ハッ
魔導師(……間違い無い!勇者様だ……金の、瞳……!)
151: 2014/01/29(水) 17:49:36.63 ID:Ig20+I6EP
魔導師(でも、おかしい……青年さんの見た目はともかく)
魔導師(……あれは、僕……だろう?)
魔導師(もし、そうであるなら、勇者様と一緒に、居るのなら)
魔導師(僕は……20歳をゆうに超えている筈だ!)
魔導師(……あの、『僕』は……勇者様と同じぐらいにしか、見えない……ッ)
パアアアアアッ
魔導師(また……ッ)
魔導師『……僕は、確かに勇者様に憧れていました』
魔導師『誰も持ち得ない光の加護を持ち、その光に導かれる、運命の子……』
魔導師『世界に二人と存在することを許されない、選ばれた勇者……』
魔導師『勇者様のお力になりたくて、一杯本を読み、知識を得ました』
魔導師『勇者様の剣を鍛えられるならと、鍛冶の勉強だって頑張りました』
魔導師『全部、勇者様の為です!か弱い女性の身で、魔王を倒すという偉業を成し遂げるため……!』
魔導師『そんな、素晴らしい人の傍に居たかったんだ!だから……ッ』
魔導師(……え?)
青年『だから、どんな不思議があっても無条件で許せる、って言いたい訳?』
魔導師『……勇者様ですから。選ばれた、運命の光の子です!』
魔導師『そんな、そんなの……誰も手に入れられないものを持つのは』
魔導師『勇者様しかあり得ちゃ……いけないんだ!』
魔導師(…… ……)
魔導師(……違う。憧れてなんて……僕は、勇者様の事なんて、何も知らない)
魔導師(なのに……なんだ?これ……胸が……締め付けられる……ッ)
パアアアアアッ
魔導師(…… ……ッ)
剣士『闇……では無いのか、青年』
魔導師(闇……?)
魔導師(……あれは、僕……だろう?)
魔導師(もし、そうであるなら、勇者様と一緒に、居るのなら)
魔導師(僕は……20歳をゆうに超えている筈だ!)
魔導師(……あの、『僕』は……勇者様と同じぐらいにしか、見えない……ッ)
パアアアアアッ
魔導師(また……ッ)
魔導師『……僕は、確かに勇者様に憧れていました』
魔導師『誰も持ち得ない光の加護を持ち、その光に導かれる、運命の子……』
魔導師『世界に二人と存在することを許されない、選ばれた勇者……』
魔導師『勇者様のお力になりたくて、一杯本を読み、知識を得ました』
魔導師『勇者様の剣を鍛えられるならと、鍛冶の勉強だって頑張りました』
魔導師『全部、勇者様の為です!か弱い女性の身で、魔王を倒すという偉業を成し遂げるため……!』
魔導師『そんな、素晴らしい人の傍に居たかったんだ!だから……ッ』
魔導師(……え?)
青年『だから、どんな不思議があっても無条件で許せる、って言いたい訳?』
魔導師『……勇者様ですから。選ばれた、運命の光の子です!』
魔導師『そんな、そんなの……誰も手に入れられないものを持つのは』
魔導師『勇者様しかあり得ちゃ……いけないんだ!』
魔導師(…… ……)
魔導師(……違う。憧れてなんて……僕は、勇者様の事なんて、何も知らない)
魔導師(なのに……なんだ?これ……胸が……締め付けられる……ッ)
パアアアアアッ
魔導師(…… ……ッ)
剣士『闇……では無いのか、青年』
魔導師(闇……?)
152: 2014/01/29(水) 17:56:37.66 ID:Ig20+I6EP
魔導師『……闇?雷では無いんですか?』
勇者『闇の属性なんて……聞いた事ないよ?』
青年『僕は色から推測しただけだよ。それに、言っただろ、剣士……君は』
剣士『……加護に縛られない加護か』
魔導師『……どういう、意味です?』
剣士『……光と闇以外であれば、どの属性でも魔法剣となす事ができる』
魔導師『……やっぱり規格外じゃないか』
魔導師(規格外……そりゃそうだ、剣士さんは……『魔王』の……)
魔導師(……ん?)
勇者『闇の加護って……そう言うモンなの?』
青年『いや、違うと思うよ? ……だから、色から想像しただけだってば』
魔導師『………』ウーン
勇者『魔導師?』
魔導師(は、はい!? …… ……あ、違う。僕じゃ無い)
魔導師(僕だけど……『僕』じゃ無い)
『魔導師(もう驚くもんか……これ以上吃驚する事なんか……!)』
魔導師(!? ……今のは、僕!? 違う……『僕』!?)
魔導師(……ち、がう ……違わない…… ……なんだ、これは!?)
青年『魔王が産まれれば、勇者が産まれるってのは知ってるね?』
勇者『魔王を倒すために……って事ね』
青年『そう。そして勇者が産まれれば魔王が産まれる』
『魔導師(……え?)』
剣士『……何故だ?』
青年『勇者に倒される為に、さ』
勇者『……どういうこと?』
青年『さっき、僕は魔王の正体を知っていると言ったね?』
勇者『?………うん』
青年『僕は、魔王に会ったことがある』
『魔導師(え!?)』
剣士『何!?』
勇者『……は?』
勇者『闇の属性なんて……聞いた事ないよ?』
青年『僕は色から推測しただけだよ。それに、言っただろ、剣士……君は』
剣士『……加護に縛られない加護か』
魔導師『……どういう、意味です?』
剣士『……光と闇以外であれば、どの属性でも魔法剣となす事ができる』
魔導師『……やっぱり規格外じゃないか』
魔導師(規格外……そりゃそうだ、剣士さんは……『魔王』の……)
魔導師(……ん?)
勇者『闇の加護って……そう言うモンなの?』
青年『いや、違うと思うよ? ……だから、色から想像しただけだってば』
魔導師『………』ウーン
勇者『魔導師?』
魔導師(は、はい!? …… ……あ、違う。僕じゃ無い)
魔導師(僕だけど……『僕』じゃ無い)
『魔導師(もう驚くもんか……これ以上吃驚する事なんか……!)』
魔導師(!? ……今のは、僕!? 違う……『僕』!?)
魔導師(……ち、がう ……違わない…… ……なんだ、これは!?)
青年『魔王が産まれれば、勇者が産まれるってのは知ってるね?』
勇者『魔王を倒すために……って事ね』
青年『そう。そして勇者が産まれれば魔王が産まれる』
『魔導師(……え?)』
剣士『……何故だ?』
青年『勇者に倒される為に、さ』
勇者『……どういうこと?』
青年『さっき、僕は魔王の正体を知っていると言ったね?』
勇者『?………うん』
青年『僕は、魔王に会ったことがある』
『魔導師(え!?)』
剣士『何!?』
勇者『……は?』
153: 2014/01/29(水) 18:02:57.36 ID:Ig20+I6EP
魔導師(……剣士さんは、知ってる筈だ。何故……)
魔導師(『こっち』の剣士さんは……しらない!?)
青年『抱っこして貰った事もある……らしい。流石にこれは覚えて無いけど』
青年『勇者様の母上にも会ったことがある』
青年『前に言っただろう?この……浄化の石』
青年『僕の母さんが作った物だ。そして……勇者様の持っているのは』
青年『母が、君の母上にあげた物だ』
勇者『ちょ、ちょっと待ってよ……?』
青年『ハーフエルフの母は、優しい僧侶だった。僕の父は、偉大な戦士だった』
青年『君の母上は……とても優秀な魔法使いだった』
青年『そして、君の父上は……誰よりも強い、勇者だった』
青年『黒い髪に、優しい金の瞳をしていた』
青年『……僕は、君が産まれた時に一緒に居た』
青年『僕たちの両親は、以前の勇者一行だ』
青年『そして、君は……魔王の娘だ。勇者様』
魔導師(……勇者様が、魔王の娘!?)
魔導師(魔王が……元、勇者…… ……)
『魔導師(……い、くら、何でも……)』
『魔導師(信じられませんよ、そんな話……ッ!?)』
魔導師(あ……また、だ。僕と『僕』が……)
魔導師(……当然だ。『僕』は僕だ)
魔導師(僕は……『僕』だ……!)
魔導師(……僕、は……!!)
パアアアアアアアアア!
魔導師(さっきから、何回も、何回も……!!)
『魔導師(光ってる……ッ 何で……!?)』
魔導師(『こっち』の剣士さんは……しらない!?)
青年『抱っこして貰った事もある……らしい。流石にこれは覚えて無いけど』
青年『勇者様の母上にも会ったことがある』
青年『前に言っただろう?この……浄化の石』
青年『僕の母さんが作った物だ。そして……勇者様の持っているのは』
青年『母が、君の母上にあげた物だ』
勇者『ちょ、ちょっと待ってよ……?』
青年『ハーフエルフの母は、優しい僧侶だった。僕の父は、偉大な戦士だった』
青年『君の母上は……とても優秀な魔法使いだった』
青年『そして、君の父上は……誰よりも強い、勇者だった』
青年『黒い髪に、優しい金の瞳をしていた』
青年『……僕は、君が産まれた時に一緒に居た』
青年『僕たちの両親は、以前の勇者一行だ』
青年『そして、君は……魔王の娘だ。勇者様』
魔導師(……勇者様が、魔王の娘!?)
魔導師(魔王が……元、勇者…… ……)
『魔導師(……い、くら、何でも……)』
『魔導師(信じられませんよ、そんな話……ッ!?)』
魔導師(あ……また、だ。僕と『僕』が……)
魔導師(……当然だ。『僕』は僕だ)
魔導師(僕は……『僕』だ……!)
魔導師(……僕、は……!!)
パアアアアアアアアア!
魔導師(さっきから、何回も、何回も……!!)
『魔導師(光ってる……ッ 何で……!?)』
154: 2014/01/29(水) 18:11:27.83 ID:Ig20+I6EP
シュウ、シュウ……ッ
勇者『あ、あ……ッ 光が……ッ』グイッ
青年『出るな、勇者様ッ』ガシッ
パアァァァ……ッ
シュウゥ………
剣士『………う、うわああああああああああああ!』ガシャン!
『魔導師(あ、つ……ッ 剣士さん!?)』
剣士『……!!』バタン!
勇者『剣士!……ッ 青年、離して……ッ』
青年『駄目だ、勇者様…! ……危ない!』
パアアアアアアアアアア!!
青年『……ッ 眩しッ』
剣士『……!!』
『魔導師(……うぅッ)』
勇者『待ってて……お父さん!』
魔導師(お、とう……さん…… ……!)
魔導師(黒い髪の、勇者……!?)
魔導師(……あ……ッ)
魔王『………ゥ』
后『来たわね、勇者……』
側近『大きくなったな、青年』
勇者『お母さん……』
青年『……』
『魔導師(こ、れが魔王……なんだ、この魔力は……ッ)』
『魔導師(これが、本当に……元勇者……!?)』
剣士『……感動の再会だな、青年』
青年『茶化すな……父さん』
側近『……癒し手にそっくりだな』
青年『母さん……間に合わなくて、御免』
側近『…… ……』
青年『母さんは……』
側近『器だけでも、間に合った……ありがとう』
魔導師(器……だけ?)
勇者『あ、あ……ッ 光が……ッ』グイッ
青年『出るな、勇者様ッ』ガシッ
パアァァァ……ッ
シュウゥ………
剣士『………う、うわああああああああああああ!』ガシャン!
『魔導師(あ、つ……ッ 剣士さん!?)』
剣士『……!!』バタン!
勇者『剣士!……ッ 青年、離して……ッ』
青年『駄目だ、勇者様…! ……危ない!』
パアアアアアアアアアア!!
青年『……ッ 眩しッ』
剣士『……!!』
『魔導師(……うぅッ)』
勇者『待ってて……お父さん!』
魔導師(お、とう……さん…… ……!)
魔導師(黒い髪の、勇者……!?)
魔導師(……あ……ッ)
魔王『………ゥ』
后『来たわね、勇者……』
側近『大きくなったな、青年』
勇者『お母さん……』
青年『……』
『魔導師(こ、れが魔王……なんだ、この魔力は……ッ)』
『魔導師(これが、本当に……元勇者……!?)』
剣士『……感動の再会だな、青年』
青年『茶化すな……父さん』
側近『……癒し手にそっくりだな』
青年『母さん……間に合わなくて、御免』
側近『…… ……』
青年『母さんは……』
側近『器だけでも、間に合った……ありがとう』
魔導師(器……だけ?)
155: 2014/01/29(水) 18:20:17.02 ID:Ig20+I6EP
魔王『………ぅ、ウ』
勇者『お父、さん……う…ッ!?』チカチカチカッ
青年『う、ぅ……母さ、ん……ッ』チカチカチカッ
『魔導師(……!浄化の石が!?)』
剣士『……ッ う、ァ……ッ』
魔王『……う、ゥ…ッ』
パリン! ……ピカ……
剣士『うわあああああああああああああああッ!!!』
魔導師(!? ……あ、ぁ……!!)
パアアアアアッ……
『魔導師(剣士さああああああああああああああああん!!)』
ガシャン!
魔導師(!)ハッ
魔導師(……今の音は、何だ)
魔導師(……皆、居る……『僕』、『魔王様』、『使用人さん』)
魔導師(…… ……ん!?)
魔導師(使用人、さん……え、なんで……)
魔導師(……ああ、そうか……『僕』が知っている、から……)
魔導師(違う! 僕はしらない! ……それに、魔王じゃない!)
魔導師(あれは、勇者様……!)
勇者『お父、さん……う…ッ!?』チカチカチカッ
青年『う、ぅ……母さ、ん……ッ』チカチカチカッ
『魔導師(……!浄化の石が!?)』
剣士『……ッ う、ァ……ッ』
魔王『……う、ゥ…ッ』
パリン! ……ピカ……
剣士『うわあああああああああああああああッ!!!』
魔導師(!? ……あ、ぁ……!!)
パアアアアアッ……
『魔導師(剣士さああああああああああああああああん!!)』
ガシャン!
魔導師(!)ハッ
魔導師(……今の音は、何だ)
魔導師(……皆、居る……『僕』、『魔王様』、『使用人さん』)
魔導師(…… ……ん!?)
魔導師(使用人、さん……え、なんで……)
魔導師(……ああ、そうか……『僕』が知っている、から……)
魔導師(違う! 僕はしらない! ……それに、魔王じゃない!)
魔導師(あれは、勇者様……!)
156: 2014/01/29(水) 18:36:05.06 ID:Ig20+I6EP
魔導師(……違う。黒い髪の魔王は、倒された……そうだ!)
魔導師(剣士さんは…… ……ッ !?)ブンブンッ
魔導師(な、なんだ……ッ 頭が、割れそうに、痛い……ッ!?)
使用人『…… ……』ジィ
魔導師(……な、んだ……誰……ああ、使用人、さんだ……)
魔導師(じっと……『僕』を …… ……違う)
魔導師(僕、を…… ……見てる!?)
使用人『私の中にある『知』を。お授け致します』
『魔導師(……知?)』
使用人『はい。語り継がれてきた、知。見て、知り、感じ得た……全てを』
『魔導師(ど、どうやって……)』
使用人『大丈夫。願えば……叶います』
使用人『……知りたいのならば、ですが』
『魔導師(知……今知り得るだろう知の、全て……ッ)』ゴクリ
『魔導師(……僕は、知りたい。『全て』を知りたい……!)』
使用人『そう言って戴けると思っていました』ニコ
使用人『耐えてください、魔導師様』
使用人『人の身の貴方では、知を授けるのに器が耐えられませんから』
魔導師(…… ……え?)
魔導師(剣士さんは…… ……ッ !?)ブンブンッ
魔導師(な、なんだ……ッ 頭が、割れそうに、痛い……ッ!?)
使用人『…… ……』ジィ
魔導師(……な、んだ……誰……ああ、使用人、さんだ……)
魔導師(じっと……『僕』を …… ……違う)
魔導師(僕、を…… ……見てる!?)
使用人『私の中にある『知』を。お授け致します』
『魔導師(……知?)』
使用人『はい。語り継がれてきた、知。見て、知り、感じ得た……全てを』
『魔導師(ど、どうやって……)』
使用人『大丈夫。願えば……叶います』
使用人『……知りたいのならば、ですが』
『魔導師(知……今知り得るだろう知の、全て……ッ)』ゴクリ
『魔導師(……僕は、知りたい。『全て』を知りたい……!)』
使用人『そう言って戴けると思っていました』ニコ
使用人『耐えてください、魔導師様』
使用人『人の身の貴方では、知を授けるのに器が耐えられませんから』
魔導師(…… ……え?)
157: 2014/01/29(水) 18:47:11.84 ID:Ig20+I6EP
パアアアアアア!
『魔導師(……ッ なんだ、吸い取られる……ッ う、ぅ。これは……ッ)』
『魔導師(う、ぅ ……あああああああああああッ)』ガクッ
青年『なんだ、蒼い、 ……光ッ!?』
魔王『魔導師!?』
魔導師(何だ!? これは!?)
魔導師(『魔族』になる為には、こんな思いをしないといけないのか!?)
使用人『……ッ 暴走!?』
魔導師(『暴走』!? 冗談じゃない! ……ッ 僕は!)
魔導師(……大丈夫だ! 僕は……『僕』は知っている!)
魔導師(『あの時』『后様』に『聞いた』んだ!)
魔導師(『僕』は……僕、は……ッ 『知』を……!)
シュウゥ……
『魔導師(ハァ、ハァ、は……あぁ)』
『魔導師(し、ぬかと………思った……)』フゥ
使用人『お見事、です……』
『魔導師(……后様に、聞いてた、んだ……)』
魔導師(そうだ。后様に聞いた。確かに)
青年『……! 具現化の方法、か……』
『魔導師(そう……です)』
魔導師(そう……具現化の方法。僕は……『僕』は)
魔導師(勇者様と魔王を倒し、そして…… ……)
魔導師(……『魔』に変じる為に。確かに、『聞いた』!)
使用人『魔導師様。少しお休みください……お疲れでしょう』
『魔導師(いや、良い……大丈夫です)』
使用人『……そうですか』
『魔導師(早く、知りたい)』
使用人『では……目を閉じてください』
『魔導師(ん……)』
使用人『頭の中に、直接……送ります』
『魔導師(……ッ なんだ、吸い取られる……ッ う、ぅ。これは……ッ)』
『魔導師(う、ぅ ……あああああああああああッ)』ガクッ
青年『なんだ、蒼い、 ……光ッ!?』
魔王『魔導師!?』
魔導師(何だ!? これは!?)
魔導師(『魔族』になる為には、こんな思いをしないといけないのか!?)
使用人『……ッ 暴走!?』
魔導師(『暴走』!? 冗談じゃない! ……ッ 僕は!)
魔導師(……大丈夫だ! 僕は……『僕』は知っている!)
魔導師(『あの時』『后様』に『聞いた』んだ!)
魔導師(『僕』は……僕、は……ッ 『知』を……!)
シュウゥ……
『魔導師(ハァ、ハァ、は……あぁ)』
『魔導師(し、ぬかと………思った……)』フゥ
使用人『お見事、です……』
『魔導師(……后様に、聞いてた、んだ……)』
魔導師(そうだ。后様に聞いた。確かに)
青年『……! 具現化の方法、か……』
『魔導師(そう……です)』
魔導師(そう……具現化の方法。僕は……『僕』は)
魔導師(勇者様と魔王を倒し、そして…… ……)
魔導師(……『魔』に変じる為に。確かに、『聞いた』!)
使用人『魔導師様。少しお休みください……お疲れでしょう』
『魔導師(いや、良い……大丈夫です)』
使用人『……そうですか』
『魔導師(早く、知りたい)』
使用人『では……目を閉じてください』
『魔導師(ん……)』
使用人『頭の中に、直接……送ります』
158: 2014/01/29(水) 18:52:49.54 ID:Ig20+I6EP
『魔導師(……ッ)』
魔導師(あ、あ……ああ……!)
魔導師(流れ込んでくる……!)
魔導師(使用人さんが、知る全て……)
魔導師(『過去』だ! ……否、『未来』か!?)
魔導師(違う……『回り続ける、運命の輪』……!)
『魔導師(……『知』『全て』……僕の、中に)』
魔導師(『全て』……そうだ。これが……『全て』だ!)
『魔導師(……なんだろう。喜ばしいのに……少し、悲しい)』
魔導師(悲しくて……切なくて苦しくて……嬉しい)
魔導師(ああ……ッ …… ……?)クラッ
使用人『では、…… …… 様……最 ……に、 ……を……』
魔王『…… ……、と』
魔導師(え、今、なんて……何と、呼びました、か……)
魔導師(まお ……さ…… ……)
……
………
…………
剣士「……師、魔導師!」
剣士「しっかりしろ!」
魔導師「!」パチッ
魔導師(あ、あ……ああ……!)
魔導師(流れ込んでくる……!)
魔導師(使用人さんが、知る全て……)
魔導師(『過去』だ! ……否、『未来』か!?)
魔導師(違う……『回り続ける、運命の輪』……!)
『魔導師(……『知』『全て』……僕の、中に)』
魔導師(『全て』……そうだ。これが……『全て』だ!)
『魔導師(……なんだろう。喜ばしいのに……少し、悲しい)』
魔導師(悲しくて……切なくて苦しくて……嬉しい)
魔導師(ああ……ッ …… ……?)クラッ
使用人『では、…… …… 様……最 ……に、 ……を……』
魔王『…… ……、と』
魔導師(え、今、なんて……何と、呼びました、か……)
魔導師(まお ……さ…… ……)
……
………
…………
剣士「……師、魔導師!」
剣士「しっかりしろ!」
魔導師「!」パチッ
159: 2014/01/29(水) 19:02:37.37 ID:Ig20+I6EP
青年「……大丈夫か?」
魔導師「青年、さん…… ……魔王様は!?」ガバッ
剣士「……お前も、夢を見たのか」
魔導師「お前……も?」
青年「……そんな急に起き上がって、大丈夫かい」
青年「しかも、魔王様って……」
魔導師(……船底。もう、揺れてない)
剣士「気分は?」
魔導師「……平気、です。 ……ああ、そうだ。人魚は……」
青年「どうにか撃退した……僕は優れた水の加護があるから」
青年「平気って解ってたんだ。だから此処は剣士に任せて、外に出たんだ」
青年「確かめたい事もあったからね」
魔導師「……人魚、夢…… ……」
青年「……何時間も目を覚まさないし、急に叫び出すし……吃驚したよ」
青年「大丈夫、かい? 本当に……」
魔導師「……はい。ありがとうございます。それより……」
剣士「何の『夢』を見た?」
魔導師「お前も、と仰いましたね……剣士さんも?」
剣士「否。俺はお前が目を覚まさないから離れる訳に行かないし」
青年「……君が魅了されちゃったらどっちにしろ困るってば」
剣士「どうにか部屋に、防護壁を張って、耐えた」
魔導師「……防護壁。そんな事も……出来るんですね」
青年「驚かないんだな」
魔導師「……加護に縛られず魔法を……魔法剣を操る剣士さんです」
剣士「!?」
魔導師「流石に……驚きません」
魔導師(……否。これも……『僕』のおかげ……)
青年「……まあ、あれだけ一緒に居れば、知ってるか」
剣士「…… ……」
魔導師「青年、さん…… ……魔王様は!?」ガバッ
剣士「……お前も、夢を見たのか」
魔導師「お前……も?」
青年「……そんな急に起き上がって、大丈夫かい」
青年「しかも、魔王様って……」
魔導師(……船底。もう、揺れてない)
剣士「気分は?」
魔導師「……平気、です。 ……ああ、そうだ。人魚は……」
青年「どうにか撃退した……僕は優れた水の加護があるから」
青年「平気って解ってたんだ。だから此処は剣士に任せて、外に出たんだ」
青年「確かめたい事もあったからね」
魔導師「……人魚、夢…… ……」
青年「……何時間も目を覚まさないし、急に叫び出すし……吃驚したよ」
青年「大丈夫、かい? 本当に……」
魔導師「……はい。ありがとうございます。それより……」
剣士「何の『夢』を見た?」
魔導師「お前も、と仰いましたね……剣士さんも?」
剣士「否。俺はお前が目を覚まさないから離れる訳に行かないし」
青年「……君が魅了されちゃったらどっちにしろ困るってば」
剣士「どうにか部屋に、防護壁を張って、耐えた」
魔導師「……防護壁。そんな事も……出来るんですね」
青年「驚かないんだな」
魔導師「……加護に縛られず魔法を……魔法剣を操る剣士さんです」
剣士「!?」
魔導師「流石に……驚きません」
魔導師(……否。これも……『僕』のおかげ……)
青年「……まあ、あれだけ一緒に居れば、知ってるか」
剣士「…… ……」
163: 2014/01/30(木) 19:07:53.54 ID:kXJkT9WwP
魔導師「では……お前『も』と言うのは……?」
青年「以前……黒い髪の勇者と……」
剣士「待て」
青年「……え?」
剣士「……お前、何故……知っている?」
青年「は?」
剣士「『加護に縛られず』『魔法剣を』だ」
剣士「……魔法剣、と言っていいのか解らんが」
青年「知ってるんだろ? インキュバスの魔石を……」
剣士「それは、良い……俺は魔導師の前で魔法を使ったことは無い」
魔導師「…… ……はい」
剣士「しかも……加護に縛られず、とはどう言う意味だ?」
魔導師「剣士さんは……光と闇以外の魔法を、剣を媒介にする事によって」
魔導師「……魔法剣と、なして……」
青年「光と闇以外の魔法……?」
魔導師「……『夢』の中で、使用人さんが教えてくれました」
青年「え!?」
剣士「!?」
魔導師「……否、あれは……多分、青年さんと剣士さんの知る『使用人』さんじゃない」
魔導師「『赤茶の髪の女勇者様』も……違う」
青年「……僕、勇者様の髪の色なんか言ってない、よね」
剣士「…… ……お、前……?」
魔導師「先に……人魚の話と……いえ。さっきの、話の続きを聞かせて下さい」
魔導師「……今の僕なら、もっとすんなりと理解出来ると思います」
青年「別人みたいだな」
魔導師「……いいえ。僕は『僕』です……『僕』……は、僕です」
剣士「…… ……気配は変わらん。何も」
魔導師「お願いします、青年さん、剣士さん」
青年「以前……黒い髪の勇者と……」
剣士「待て」
青年「……え?」
剣士「……お前、何故……知っている?」
青年「は?」
剣士「『加護に縛られず』『魔法剣を』だ」
剣士「……魔法剣、と言っていいのか解らんが」
青年「知ってるんだろ? インキュバスの魔石を……」
剣士「それは、良い……俺は魔導師の前で魔法を使ったことは無い」
魔導師「…… ……はい」
剣士「しかも……加護に縛られず、とはどう言う意味だ?」
魔導師「剣士さんは……光と闇以外の魔法を、剣を媒介にする事によって」
魔導師「……魔法剣と、なして……」
青年「光と闇以外の魔法……?」
魔導師「……『夢』の中で、使用人さんが教えてくれました」
青年「え!?」
剣士「!?」
魔導師「……否、あれは……多分、青年さんと剣士さんの知る『使用人』さんじゃない」
魔導師「『赤茶の髪の女勇者様』も……違う」
青年「……僕、勇者様の髪の色なんか言ってない、よね」
剣士「…… ……お、前……?」
魔導師「先に……人魚の話と……いえ。さっきの、話の続きを聞かせて下さい」
魔導師「……今の僕なら、もっとすんなりと理解出来ると思います」
青年「別人みたいだな」
魔導師「……いいえ。僕は『僕』です……『僕』……は、僕です」
剣士「…… ……気配は変わらん。何も」
魔導師「お願いします、青年さん、剣士さん」
169: 2014/01/31(金) 10:03:05.57 ID:8cmqsm8mP
青年「……『夢』か」
魔導師「青年さんの言った、『確かめたい事』に関係あるのかもしれません」
剣士「…… ……」
青年「まあ、良い……理解が易くなった、と言うのが本当なら」
青年「……で、どこまで話たっけ?」
剣士「『魔導将軍』が……魔族が、魔導の街に居た、所までだ」
魔導師「……紅い翼を持つ、女性ですよね?」
青年「!?」
剣士「……違う。そっちじゃない」
魔導師「え?」
青年「君の言う魔導将軍は……」
魔導師「……金の髪の勇者様の、仲間。魔に変じた際に」
魔導師「溢れる魔力を体外へ放出して……」
剣士「……お前、本当に……」ハァ
青年「謎解きは後だ……紫の魔王に倒された魔導将軍は男だよ」
青年「魔導の街が私設軍隊を作るだとかなんだとかの話を手助けしたのか」
青年「そそのかしたのか……そこまでは解らないが、とにかく」
青年「紫の魔王に反旗を翻した一人、だ」
魔導師「……複数、居るんですか?」
青年「狼将軍と……インキュバスだ」
魔導師「!」
剣士「……お前が何かを『知った』から、と言って」
剣士「順を追わないとややこしくなる。先走るな」
魔導師「……すみません」
青年「魔導の街の領主は力を欲した。魔導将軍も、だな」
青年「まあ、利害が一致した、んだろう……」
剣士「『始まりの姉弟』……あの一族に魔の血が流れている……と」
剣士「そんな噂……言い伝えもある」
剣士「……手を組むのも容易かったんだろう」
青年「魔族側が信じてたか……知ってたか、まではわかんないけどね」
魔導師「『始まりの姉弟』?」
魔導師「青年さんの言った、『確かめたい事』に関係あるのかもしれません」
剣士「…… ……」
青年「まあ、良い……理解が易くなった、と言うのが本当なら」
青年「……で、どこまで話たっけ?」
剣士「『魔導将軍』が……魔族が、魔導の街に居た、所までだ」
魔導師「……紅い翼を持つ、女性ですよね?」
青年「!?」
剣士「……違う。そっちじゃない」
魔導師「え?」
青年「君の言う魔導将軍は……」
魔導師「……金の髪の勇者様の、仲間。魔に変じた際に」
魔導師「溢れる魔力を体外へ放出して……」
剣士「……お前、本当に……」ハァ
青年「謎解きは後だ……紫の魔王に倒された魔導将軍は男だよ」
青年「魔導の街が私設軍隊を作るだとかなんだとかの話を手助けしたのか」
青年「そそのかしたのか……そこまでは解らないが、とにかく」
青年「紫の魔王に反旗を翻した一人、だ」
魔導師「……複数、居るんですか?」
青年「狼将軍と……インキュバスだ」
魔導師「!」
剣士「……お前が何かを『知った』から、と言って」
剣士「順を追わないとややこしくなる。先走るな」
魔導師「……すみません」
青年「魔導の街の領主は力を欲した。魔導将軍も、だな」
青年「まあ、利害が一致した、んだろう……」
剣士「『始まりの姉弟』……あの一族に魔の血が流れている……と」
剣士「そんな噂……言い伝えもある」
剣士「……手を組むのも容易かったんだろう」
青年「魔族側が信じてたか……知ってたか、まではわかんないけどね」
魔導師「『始まりの姉弟』?」
170: 2014/01/31(金) 10:12:36.66 ID:8cmqsm8mP
青年「魔導の国の領主の血筋……彼ら曰く『選ばれた民』だ」
青年「最果ての地に、唯一住む事を許された人間達」
魔導師「え!?」
青年「これに関しては確かな話じゃ無い……し、どうせまだ話に関わってくる」
青年「詳しくはその時に、ね」
剣士「……紫の魔王は魔導将軍が関与してると知って、姫の代わりに奴と対峙した」
剣士「姫では……及ばないと思ったんだろう」
魔導師「え?でも大会……か何かだったのでは?」
青年「『魔王』だぜ? ……姫と姿を入れ替えたんだ」
魔導師「……何でもありですね」
青年「瞳の色までは変えられなかった筈だ。魔導将軍も気がついてたんだろうが」
青年「……『魔族』ってのは、短絡的だって言うからね」ハァ
剣士「使用人に聞いた話では、紫の魔王は『無能』だと思われていたそうだ」
剣士「……また少し遡るが、魔族でも……見た事の無い紫の瞳をしていた故に」
剣士「紫の魔王の父……紅い瞳の魔王は……」
魔導師「!? 魔王の父親が……魔王!?」
青年「…… ……」
魔導師「魔王は、元勇者では無いのですか!?」
剣士「……紫の魔王までは、違ったんだ」
魔導師「…… ……」
青年「『魔族』が『魔王』……自分達の『王』に反旗を翻す、なんてさ」
青年「……今よりも……『勇者』と『魔王』の、この時代よりも」
青年「もっと血生臭い時代だったと聞いている」
青年「紫の魔王の前が赤の魔王。その前……じいさんだな」
剣士「……そいつが、随分と好戦的だったそうだ」
剣士「大海の大渦。あそこには元々小さな島があった」
魔導師「え……」
剣士「……紫の魔王の側近。金の髪の勇者を連れて、始まりの国に来た男」
剣士「そいつが住んでいた場所だと言う……」
青年「その小さな島を、炎の球一つで沈めてしまったらしい」
魔導師「…… ……ッ」ゾッ
青年「最果ての地に、唯一住む事を許された人間達」
魔導師「え!?」
青年「これに関しては確かな話じゃ無い……し、どうせまだ話に関わってくる」
青年「詳しくはその時に、ね」
剣士「……紫の魔王は魔導将軍が関与してると知って、姫の代わりに奴と対峙した」
剣士「姫では……及ばないと思ったんだろう」
魔導師「え?でも大会……か何かだったのでは?」
青年「『魔王』だぜ? ……姫と姿を入れ替えたんだ」
魔導師「……何でもありですね」
青年「瞳の色までは変えられなかった筈だ。魔導将軍も気がついてたんだろうが」
青年「……『魔族』ってのは、短絡的だって言うからね」ハァ
剣士「使用人に聞いた話では、紫の魔王は『無能』だと思われていたそうだ」
剣士「……また少し遡るが、魔族でも……見た事の無い紫の瞳をしていた故に」
剣士「紫の魔王の父……紅い瞳の魔王は……」
魔導師「!? 魔王の父親が……魔王!?」
青年「…… ……」
魔導師「魔王は、元勇者では無いのですか!?」
剣士「……紫の魔王までは、違ったんだ」
魔導師「…… ……」
青年「『魔族』が『魔王』……自分達の『王』に反旗を翻す、なんてさ」
青年「……今よりも……『勇者』と『魔王』の、この時代よりも」
青年「もっと血生臭い時代だったと聞いている」
青年「紫の魔王の前が赤の魔王。その前……じいさんだな」
剣士「……そいつが、随分と好戦的だったそうだ」
剣士「大海の大渦。あそこには元々小さな島があった」
魔導師「え……」
剣士「……紫の魔王の側近。金の髪の勇者を連れて、始まりの国に来た男」
剣士「そいつが住んでいた場所だと言う……」
青年「その小さな島を、炎の球一つで沈めてしまったらしい」
魔導師「…… ……ッ」ゾッ
171: 2014/01/31(金) 10:26:21.33 ID:8cmqsm8mP
青年「もう、そこまで遡るとまたややこしくなるだろう!」
剣士「……すまん」
青年「とにかく! ……ええと」
青年「紫の魔王が、魔導将軍を倒して……ええっと。魔導の街を解放した」
青年「『劣等種』達を解放したんだ。港街は解るね?」
魔導師「……はい」
青年「あそこは、魔導の街を逃げ出した劣等種達の隠れ家だった」
青年「そこに新たな街を作る事になった。だが」
青年「……金が要るだろう。それで、紫の魔王が考案したのが」
剣士「魔石、だ」
魔導師「!」
剣士「『劣等種』等と呼ばれても、『加護』は命を持つ者全てに等しい」
剣士「……しかも、彼らは生まれは魔導の街……基礎はしっかりとした者が」
剣士「多かった筈だ」
青年「盗賊はそれを紫の魔王に教わり、流通させる事にしたんだ」
魔導師「……でも、廃れてしまった、と聞いています、けど」
青年「後々、ね。そんな事をしなくても……人が集まれば物も金も回る」
青年「……鍛冶師の村に今まだ……ああ、いや。もう……」
魔導師「…… ……」
青年「廃れてしまった後も、技術が残って居たのは、鍛冶師のおかげ……だろうな」
魔導師「鍛冶師様……盗賊様と、結婚された、からですか」
青年「魔法剣、なんて特殊な技術を持つ場所だった、てのも大きいだろうけどね」
剣士「『鍛冶師の村の勇者』なのだろう。インキュバスとならんで」
魔導師「…… ……」
青年「魔導の街からの援助と、なんだかんだと人も増えて」
青年「港街だけでは手狭になった……紫の魔王が目をつけたのが」
剣士「始まりの国……『昔、魔王に滅ぼされてしまったのだろう廃墟』だ」
魔導師「え!?」
青年「これも詳しいことは解らない」
魔導師「…… ……」
剣士「……『王』が必要だったんだ」
魔導師「『王』?」
青年「自分でややこしくなるって言っておきながらなんだけど」
剣士「……すまん」
青年「とにかく! ……ええと」
青年「紫の魔王が、魔導将軍を倒して……ええっと。魔導の街を解放した」
青年「『劣等種』達を解放したんだ。港街は解るね?」
魔導師「……はい」
青年「あそこは、魔導の街を逃げ出した劣等種達の隠れ家だった」
青年「そこに新たな街を作る事になった。だが」
青年「……金が要るだろう。それで、紫の魔王が考案したのが」
剣士「魔石、だ」
魔導師「!」
剣士「『劣等種』等と呼ばれても、『加護』は命を持つ者全てに等しい」
剣士「……しかも、彼らは生まれは魔導の街……基礎はしっかりとした者が」
剣士「多かった筈だ」
青年「盗賊はそれを紫の魔王に教わり、流通させる事にしたんだ」
魔導師「……でも、廃れてしまった、と聞いています、けど」
青年「後々、ね。そんな事をしなくても……人が集まれば物も金も回る」
青年「……鍛冶師の村に今まだ……ああ、いや。もう……」
魔導師「…… ……」
青年「廃れてしまった後も、技術が残って居たのは、鍛冶師のおかげ……だろうな」
魔導師「鍛冶師様……盗賊様と、結婚された、からですか」
青年「魔法剣、なんて特殊な技術を持つ場所だった、てのも大きいだろうけどね」
剣士「『鍛冶師の村の勇者』なのだろう。インキュバスとならんで」
魔導師「…… ……」
青年「魔導の街からの援助と、なんだかんだと人も増えて」
青年「港街だけでは手狭になった……紫の魔王が目をつけたのが」
剣士「始まりの国……『昔、魔王に滅ぼされてしまったのだろう廃墟』だ」
魔導師「え!?」
青年「これも詳しいことは解らない」
魔導師「…… ……」
剣士「……『王』が必要だったんだ」
魔導師「『王』?」
青年「自分でややこしくなるって言っておきながらなんだけど」
172: 2014/01/31(金) 10:33:47.60 ID:8cmqsm8mP
青年「……大海の大渦の島。紫の魔王の爺が沈めてしまった奴な」
魔導師「は、はい」
青年「そこには『王』が居たと言う……それに、多分」
青年「『始まりの国』と言う位だ……滅ぼされてしまった、そこにも」
魔導師「……『王』」
剣士「紫の魔王は、子を成せなかった」
魔導師「……はい?」
剣士「エルフの姫は、盗賊だったか、魔導将軍にだったか……そこは失念したが」
剣士「『妻』かと、問われそうだ、と言ってしまった」
剣士「……『エルフは嘘が吐けない』」
魔導師「…… ……」
青年「なぜなら、エルフの吐いた嘘は『本当になってしまう』からだ」
魔導師「え!?」
青年「……何でもかんでも、じゃないよ。そんなに都合が良くは無い」
青年「自分に関する事、だったかな」
剣士「こじつけとも取れるがな……だが、妻である姫の産む『者』は」
魔導師「……僧侶さん。癒し手様……ですね」
青年「そうだ。エルフは生涯、一人しか子を産むことが出来ない」
青年「しかも、姫は『長』だ」
魔導師「『長』?」
青年「……エルフの中でも、少し強い力を持つ者だ」
青年「長は必ず『長になる者』を産む」
青年「……姫の子は?」
魔導師「……僧侶さん、は……エルフの、長」
青年「そう……母さんの『感じる力』はそれなんだろう」
魔導師「……では、青年さんも……」
青年「…… ……」
魔導師「は、はい」
青年「そこには『王』が居たと言う……それに、多分」
青年「『始まりの国』と言う位だ……滅ぼされてしまった、そこにも」
魔導師「……『王』」
剣士「紫の魔王は、子を成せなかった」
魔導師「……はい?」
剣士「エルフの姫は、盗賊だったか、魔導将軍にだったか……そこは失念したが」
剣士「『妻』かと、問われそうだ、と言ってしまった」
剣士「……『エルフは嘘が吐けない』」
魔導師「…… ……」
青年「なぜなら、エルフの吐いた嘘は『本当になってしまう』からだ」
魔導師「え!?」
青年「……何でもかんでも、じゃないよ。そんなに都合が良くは無い」
青年「自分に関する事、だったかな」
剣士「こじつけとも取れるがな……だが、妻である姫の産む『者』は」
魔導師「……僧侶さん。癒し手様……ですね」
青年「そうだ。エルフは生涯、一人しか子を産むことが出来ない」
青年「しかも、姫は『長』だ」
魔導師「『長』?」
青年「……エルフの中でも、少し強い力を持つ者だ」
青年「長は必ず『長になる者』を産む」
青年「……姫の子は?」
魔導師「……僧侶さん、は……エルフの、長」
青年「そう……母さんの『感じる力』はそれなんだろう」
魔導師「……では、青年さんも……」
青年「…… ……」
173: 2014/01/31(金) 10:46:49.79 ID:8cmqsm8mP
剣士「堕胎させようとした、姫の父の気持ちも解らんでも無い……と」
魔導師「!?」
剣士「言えるのかもしれん……人の子とのハーフ」
剣士「『何』が産まれる?」
魔導師「……ハーフ、エルフ」
青年「そんな言葉があるのかどうか知らないけどね」
青年「……随分揉めたんじゃ無い? もし堕胎させてしまったら」
青年「姫には二度と子供が出来ない」
魔導師「あ……」
青年「……しかも、ね」
魔導師「?」
青年「『強大な力を持つ者を産む代償』がある」
魔導師「え……」
青年「……氏んでしまうんだよ。エルフの『長になる者』を産んだ人は」
魔導師「!」
剣士「……また、少し戻るが」
剣士「紫の魔王の母もそうだったらしい」
魔導師「……え?」
剣士「……身体がサラサラと、砂の様に……崩れて」
青年「……ッ」
剣士「風に攫われ…… ……ッ」ハッ
青年「…… ……姫がどうなったのか、僕は知らない」
青年「母さんを産んだ後、そうなってしまったのか、否か」
青年「だが、母さんは……あの小屋で、氏んだ」
剣士「…… ……」
青年「魔王の城で……魔王の魔気に寿命が削れていたとはいえ」
青年「……僕は。僕には半分以上……人の血が流れている」
青年「なのに……ッ 母さんは……ッ」
魔導師「青年さん……」
青年「……剣士には話したな。母さんも……その身を崩して……ッ」
青年「『強大な力を持つ者』なんかじゃ、無いのに……ッ」
魔導師「!?」
剣士「言えるのかもしれん……人の子とのハーフ」
剣士「『何』が産まれる?」
魔導師「……ハーフ、エルフ」
青年「そんな言葉があるのかどうか知らないけどね」
青年「……随分揉めたんじゃ無い? もし堕胎させてしまったら」
青年「姫には二度と子供が出来ない」
魔導師「あ……」
青年「……しかも、ね」
魔導師「?」
青年「『強大な力を持つ者を産む代償』がある」
魔導師「え……」
青年「……氏んでしまうんだよ。エルフの『長になる者』を産んだ人は」
魔導師「!」
剣士「……また、少し戻るが」
剣士「紫の魔王の母もそうだったらしい」
魔導師「……え?」
剣士「……身体がサラサラと、砂の様に……崩れて」
青年「……ッ」
剣士「風に攫われ…… ……ッ」ハッ
青年「…… ……姫がどうなったのか、僕は知らない」
青年「母さんを産んだ後、そうなってしまったのか、否か」
青年「だが、母さんは……あの小屋で、氏んだ」
剣士「…… ……」
青年「魔王の城で……魔王の魔気に寿命が削れていたとはいえ」
青年「……僕は。僕には半分以上……人の血が流れている」
青年「なのに……ッ 母さんは……ッ」
魔導師「青年さん……」
青年「……剣士には話したな。母さんも……その身を崩して……ッ」
青年「『強大な力を持つ者』なんかじゃ、無いのに……ッ」
174: 2014/01/31(金) 11:23:17.57 ID:8cmqsm8mP
魔導師「え……!?」
剣士「……癒し手は当てはまらないだろう。確かに、寿命は……」
魔導師「違う!」
青年「な、何だよ! 何がだよ!」
魔導師「……『夢』の中で、后様と側近様は!」
剣士「!」
青年「…… ……」
魔導師「『器は間に合った』と……!」
青年「…… ……器?」
魔導師「! そうだ、確かに、癒し手様はそこに居た……!」
青年「……からかってる、んだったら承知しない、けど」
剣士「青年」
青年「……解ってるよ。魔導師」
魔導師「あ…… ……」
青年「『間違い探し』は後だ……その話は、是非詳しく聞きたいけどね」
青年「……否。ちょっと休憩しよう。混乱してきた」
剣士「…… ……」
魔導師「……す、すみません」
青年「ちょっと風に当たってくる」クルッ
スタスタ、パタン
魔導師「…… ……」
剣士「放っておけ」
魔導師「……解ってます」
剣士「脱線しまくったな……まあ、無理も無い」
魔導師「……この『世界』は何なんでしょう」
剣士「……?」
魔導師「僕の見た……『夢』は何だったんだろう……」
剣士「……青年が戻る迄に、続きを話そう」
魔導師「え?」
剣士「年表を追うだけだ……大体、知っている、んだろう?」
剣士「……何を『見た』かは知らないが」
魔導師「……はい。多分。あ、でも……」
剣士「?」
魔導師「……いえ。聞かせて下さい」
剣士「……癒し手は当てはまらないだろう。確かに、寿命は……」
魔導師「違う!」
青年「な、何だよ! 何がだよ!」
魔導師「……『夢』の中で、后様と側近様は!」
剣士「!」
青年「…… ……」
魔導師「『器は間に合った』と……!」
青年「…… ……器?」
魔導師「! そうだ、確かに、癒し手様はそこに居た……!」
青年「……からかってる、んだったら承知しない、けど」
剣士「青年」
青年「……解ってるよ。魔導師」
魔導師「あ…… ……」
青年「『間違い探し』は後だ……その話は、是非詳しく聞きたいけどね」
青年「……否。ちょっと休憩しよう。混乱してきた」
剣士「…… ……」
魔導師「……す、すみません」
青年「ちょっと風に当たってくる」クルッ
スタスタ、パタン
魔導師「…… ……」
剣士「放っておけ」
魔導師「……解ってます」
剣士「脱線しまくったな……まあ、無理も無い」
魔導師「……この『世界』は何なんでしょう」
剣士「……?」
魔導師「僕の見た……『夢』は何だったんだろう……」
剣士「……青年が戻る迄に、続きを話そう」
魔導師「え?」
剣士「年表を追うだけだ……大体、知っている、んだろう?」
剣士「……何を『見た』かは知らないが」
魔導師「……はい。多分。あ、でも……」
剣士「?」
魔導師「……いえ。聞かせて下さい」
175: 2014/01/31(金) 11:31:51.03 ID:8cmqsm8mP
剣士「ああ……紫の魔王は……」
魔導師「あ!ちょっと待って!」
剣士「……今度は、何だ」
魔導師「紙と書く物、借りてきます!」
剣士「……は?」
魔導師「口頭だからややこしくなるんです!」
タタタ、バタン!
剣士「…… ……」ハァ
……
………
…………
コンコン
使用人「側近様?」
側近「……なんだ」
使用人「入っても宜しいでしょうか」
側近「……出る。ちょっと待て」
キィ……
使用人「まだ……大丈夫だと思いますよ」
使用人「魔王様に、張り付いていらっしゃらなくても……」
側近「……ああ。解っては居る、んだが」
使用人「やる事もありませんでしょう」
側近「…… ……」
使用人「話しません。動きません……目も、あけませんから」
側近「皆、どうやって時間を潰していたんだか」ハァ
使用人「以前の側近様は、好き勝手やっていらっしゃいましたよ」
使用人「……まあ、魔導将軍様がいらっしゃいました、けど」
側近「……そう、だな」
使用人「お一人の時は、本を読んだり…… ……庭を走り回ったり」
側近「…… ……犬か何かか」ハァ
使用人「鍛錬、じゃ無いのですか」
側近「……で、どうした」
使用人「ああ、いえ……お茶でも、と思いまして」
側近「……砂糖たっぷり、な」
使用人「だから……それほど眉間に皺を寄せられなくても」
魔導師「あ!ちょっと待って!」
剣士「……今度は、何だ」
魔導師「紙と書く物、借りてきます!」
剣士「……は?」
魔導師「口頭だからややこしくなるんです!」
タタタ、バタン!
剣士「…… ……」ハァ
……
………
…………
コンコン
使用人「側近様?」
側近「……なんだ」
使用人「入っても宜しいでしょうか」
側近「……出る。ちょっと待て」
キィ……
使用人「まだ……大丈夫だと思いますよ」
使用人「魔王様に、張り付いていらっしゃらなくても……」
側近「……ああ。解っては居る、んだが」
使用人「やる事もありませんでしょう」
側近「…… ……」
使用人「話しません。動きません……目も、あけませんから」
側近「皆、どうやって時間を潰していたんだか」ハァ
使用人「以前の側近様は、好き勝手やっていらっしゃいましたよ」
使用人「……まあ、魔導将軍様がいらっしゃいました、けど」
側近「……そう、だな」
使用人「お一人の時は、本を読んだり…… ……庭を走り回ったり」
側近「…… ……犬か何かか」ハァ
使用人「鍛錬、じゃ無いのですか」
側近「……で、どうした」
使用人「ああ、いえ……お茶でも、と思いまして」
側近「……砂糖たっぷり、な」
使用人「だから……それほど眉間に皺を寄せられなくても」
176: 2014/01/31(金) 11:36:38.83 ID:8cmqsm8mP
側近「小難しい話は苦手なんだ」ハァ
使用人「……まあ、無理にお付き合いしろとは言いません」
側近「……良い。どうせやる事も無い」
使用人「……私も、暇なんです」
側近「…… ……知ってる」
ピィ……チチチ……
使用人「……?」
側近「何か聞こえたか?」
使用人「小鳥……でも、今日は外は雨ですよね?」
コツン、コツン……
側近「窓…… ……黄色い小鳥、だな ……!」
側近「……文が着いてる!」
タタ……キィ
ピィ!
使用人「あ……! ……でも、癒し手様、の小鳥じゃ……ッ」ハッ
使用人(……無理だ。癒し手様のお力は、もう……)
側近「おいで…… ……ん。痛い。突くな」カサ
側近「…… ……!」
使用人「側近様?」
側近「…… ……青年だ」
使用人「…… ……え!?」
使用人「……まあ、無理にお付き合いしろとは言いません」
側近「……良い。どうせやる事も無い」
使用人「……私も、暇なんです」
側近「…… ……知ってる」
ピィ……チチチ……
使用人「……?」
側近「何か聞こえたか?」
使用人「小鳥……でも、今日は外は雨ですよね?」
コツン、コツン……
側近「窓…… ……黄色い小鳥、だな ……!」
側近「……文が着いてる!」
タタ……キィ
ピィ!
使用人「あ……! ……でも、癒し手様、の小鳥じゃ……ッ」ハッ
使用人(……無理だ。癒し手様のお力は、もう……)
側近「おいで…… ……ん。痛い。突くな」カサ
側近「…… ……!」
使用人「側近様?」
側近「…… ……青年だ」
使用人「…… ……え!?」
177: 2014/01/31(金) 11:52:20.04 ID:8cmqsm8mP
側近「『まだ終わらない。女勇者様は最強の魔王になる』……何!?」
バサバサバサッ
使用人「な、何ですか、この紙の束……」カサ
側近「あ……ッ」
ピィ……シュゥン……
側近「……消えた ……ん?」ヒョイ
使用人「……ッ」カサ、バサバサッ
側近「それは、何だ……?」
使用人「……年表、です」
側近「は?」
使用人「……子供の字、ですか……これ……」
側近「青年の字……では無いんだろうな。文の物と違う」
使用人「……『使用人、1000歳』……は!?」
側近「……お前、そんなに生きてるのか?」
使用人「冗談じゃありません! ……あれ、同じ物が二つ……!」
使用人「違う!」バサバサッ
側近「……な、何なんだ……見せてくれ」カサ
側近「魔王の復活まで60年……!? 何……!?」
使用人「……『転移石の作り方』!?」
側近「な……ッ !?」
使用人「! ……転移石!」
バタバタバタ……!
側近「お、おい、使用人!?」
バタンッ
側近「……な、何が、どうなってる?」
バサバサバサッ
使用人「な、何ですか、この紙の束……」カサ
側近「あ……ッ」
ピィ……シュゥン……
側近「……消えた ……ん?」ヒョイ
使用人「……ッ」カサ、バサバサッ
側近「それは、何だ……?」
使用人「……年表、です」
側近「は?」
使用人「……子供の字、ですか……これ……」
側近「青年の字……では無いんだろうな。文の物と違う」
使用人「……『使用人、1000歳』……は!?」
側近「……お前、そんなに生きてるのか?」
使用人「冗談じゃありません! ……あれ、同じ物が二つ……!」
使用人「違う!」バサバサッ
側近「……な、何なんだ……見せてくれ」カサ
側近「魔王の復活まで60年……!? 何……!?」
使用人「……『転移石の作り方』!?」
側近「な……ッ !?」
使用人「! ……転移石!」
バタバタバタ……!
側近「お、おい、使用人!?」
バタンッ
側近「……な、何が、どうなってる?」
181: 2014/01/31(金) 12:47:30.58 ID:8cmqsm8mP
側近「…… ……」カサ
側近(…… ……)バサ、バサッ
側近「……こ、れは…… ……!?」
バタバタバタ、バタン!
使用人「側近様、こ……ッ」
バサバサバサッ
側近「……良く歩いて来れたな」ハァ
使用人「……す、すみません」
側近「呼べば良い物を……全部書庫から持ってきたのか」ヒョイ
使用人「どうせ片付けるのは私です」ヒョイ
側近「……『具現』…… ……具現化の方法、か?」
側近(こっちも……表紙は掠れて読めん、な)フッ
側近「……ッ」ケホ
使用人「……余り関係無いと思って、放って置いたんで、埃が」
側近「これは……なんだ?」
使用人「……紫の魔王様が、読んでいらっしゃったんです」
使用人「多分、この辺りから……魔石の作り方とかを考案されたんだと思います」
使用人「……それより、えっと…… ……」バサバサ
側近「……埃立てるな」ゲホッ
使用人「我慢して下さい……あった!」バサ!
側近「……『……石の ……方』? ……解らんな」
使用人「『転移石の作り方』!」
側近「?」
使用人「この、紙です!」バサッ
使用人「……字、見て下さい!」
側近「掠れて、はっきり…… ……!?」ペラ、ペラ
使用人「…… ……『力の強い者の魔力を結晶化させて』!」
使用人「同じ、です! ……字も、文も……!」
側近「ま、待て待て待て!」
側近「……そんな馬鹿な話があるか! この紙は……新しい物だろう!?」
使用人「でも……! ほら、此処!」トン
側近「……インクが滲んでる」
使用人「今日は雨です! ……ほら、この紙の方と、本と……」
側近「……!」
使用人「……『同じ物』です。これ……!」
側近「偶然だろう!いくらなんでも……!」
使用人「……『回り続ける運命の輪』」
側近「…… ……ッ」
側近(…… ……)バサ、バサッ
側近「……こ、れは…… ……!?」
バタバタバタ、バタン!
使用人「側近様、こ……ッ」
バサバサバサッ
側近「……良く歩いて来れたな」ハァ
使用人「……す、すみません」
側近「呼べば良い物を……全部書庫から持ってきたのか」ヒョイ
使用人「どうせ片付けるのは私です」ヒョイ
側近「……『具現』…… ……具現化の方法、か?」
側近(こっちも……表紙は掠れて読めん、な)フッ
側近「……ッ」ケホ
使用人「……余り関係無いと思って、放って置いたんで、埃が」
側近「これは……なんだ?」
使用人「……紫の魔王様が、読んでいらっしゃったんです」
使用人「多分、この辺りから……魔石の作り方とかを考案されたんだと思います」
使用人「……それより、えっと…… ……」バサバサ
側近「……埃立てるな」ゲホッ
使用人「我慢して下さい……あった!」バサ!
側近「……『……石の ……方』? ……解らんな」
使用人「『転移石の作り方』!」
側近「?」
使用人「この、紙です!」バサッ
使用人「……字、見て下さい!」
側近「掠れて、はっきり…… ……!?」ペラ、ペラ
使用人「…… ……『力の強い者の魔力を結晶化させて』!」
使用人「同じ、です! ……字も、文も……!」
側近「ま、待て待て待て!」
側近「……そんな馬鹿な話があるか! この紙は……新しい物だろう!?」
使用人「でも……! ほら、此処!」トン
側近「……インクが滲んでる」
使用人「今日は雨です! ……ほら、この紙の方と、本と……」
側近「……!」
使用人「……『同じ物』です。これ……!」
側近「偶然だろう!いくらなんでも……!」
使用人「……『回り続ける運命の輪』」
側近「…… ……ッ」
183: 2014/01/31(金) 12:55:10.02 ID:8cmqsm8mP
使用人「この世界が何度も……何度も、同じ時を経験しているのなら……!」
使用人「『運命』から外れた者が、いるのなら……その、者が……!」
側近「……落ち着け!」
使用人「!」ビクッ
側近「……お前らしくも無い、使用人」ハァ
使用人「…… ……すみません」
側近「前に言っていたな。后が旅立ってすぐ」
側近「……もしも『運命』から外れ、その者が」
側近「あの本を。神話を。古詩を書いたのならば、と」
使用人「…… ……」
側近「……『世界』の『欠片』」
使用人「でも、これ……!」
側近「…… ……」ペラ。ペラ
使用人「……同じ、です。新旧はともかくとして」
使用人「この、子供の様な字。滲み方……!」
側近「しかし、これだと足りないぞ」
使用人「……書き足して、後ほど束ねたのだとしたら?」ペラ
側近「そんな事、言ってしまえば、お前……」
使用人「……そう、ですけど。でも」
使用人(追記の部分……字が違う。確かに……でも、似てる……!)
側近「……これは青年の字では無い。こっちの年表も」
側近「誰かが書いた物を……持って来た、のか?」
使用人「何処から……否、誰が……」
側近「…… ……それは今考えても仕方が無い」
側近「それより、この年表…… ……みたいな、物」
使用人「……こっちは『この世界の出来事』です」
側近「…… ……」
使用人「紫の魔王の側近様の旅立ちから…… ……女勇者様の誕生まで」
側近「青年には……癒し手が全て話した、のだろう」
側近「……エルフの姫の事も細かく書いてある」
使用人「『運命』から外れた者が、いるのなら……その、者が……!」
側近「……落ち着け!」
使用人「!」ビクッ
側近「……お前らしくも無い、使用人」ハァ
使用人「…… ……すみません」
側近「前に言っていたな。后が旅立ってすぐ」
側近「……もしも『運命』から外れ、その者が」
側近「あの本を。神話を。古詩を書いたのならば、と」
使用人「…… ……」
側近「……『世界』の『欠片』」
使用人「でも、これ……!」
側近「…… ……」ペラ。ペラ
使用人「……同じ、です。新旧はともかくとして」
使用人「この、子供の様な字。滲み方……!」
側近「しかし、これだと足りないぞ」
使用人「……書き足して、後ほど束ねたのだとしたら?」ペラ
側近「そんな事、言ってしまえば、お前……」
使用人「……そう、ですけど。でも」
使用人(追記の部分……字が違う。確かに……でも、似てる……!)
側近「……これは青年の字では無い。こっちの年表も」
側近「誰かが書いた物を……持って来た、のか?」
使用人「何処から……否、誰が……」
側近「…… ……それは今考えても仕方が無い」
側近「それより、この年表…… ……みたいな、物」
使用人「……こっちは『この世界の出来事』です」
側近「…… ……」
使用人「紫の魔王の側近様の旅立ちから…… ……女勇者様の誕生まで」
側近「青年には……癒し手が全て話した、のだろう」
側近「……エルフの姫の事も細かく書いてある」
184: 2014/01/31(金) 13:15:06.50 ID:8cmqsm8mP
使用人「もう一つは……『金の髪の魔王』……からです」
使用人「『魔導将軍』『側近』『后』……」
側近「…… ……」
使用人「『勇者が魔王を倒し、復活するまで50~60年?』!」
使用人「……どう言う事、ですか。これ。しかも……!」
側近「さっきお前が自分で言っただろう」
使用人「え?」
側近「『この世界の出来事』」
使用人「!」
側近「……成る程な。深く考えようとしない方が、か」
使用人「……では、これは……別の世界の出来事、だと?」
側近「それも、さっき言ってただろう……」ハァ
側近「『回り続ける運命の輪』」
使用人「!」
側近「……『勇者と魔王の腐った連鎖』だけの事を指すのでは無いのだとすれば」
側近「この、転移石の作り方。この新旧の『同じ』物」
側近「…… ……『運命』を外れた者の、箱庭で……ッ」
側近「俺達は、操られているだけなのか!?」
使用人「そ、側近様……!」
側近「…… ……ッ」
使用人「……そうと、決まった訳じゃ……」
側近「だが、これでは……ッ」
使用人「落ち着いて下さい!」
側近「…… ……ッ」
使用人「……何故、こっちの……『別の世界』の物が」
使用人「『金の髪の魔王』からしか無いのかも解りません」
使用人「『金の髪の勇者』でない理由も」
側近「…… ……」
使用人「……誰が、何の為に、こんな物を書いた、かも!」
側近「……青年は、知っている……んだな」
使用人「……私達、よりかは」
使用人「『魔導将軍』『側近』『后』……」
側近「…… ……」
使用人「『勇者が魔王を倒し、復活するまで50~60年?』!」
使用人「……どう言う事、ですか。これ。しかも……!」
側近「さっきお前が自分で言っただろう」
使用人「え?」
側近「『この世界の出来事』」
使用人「!」
側近「……成る程な。深く考えようとしない方が、か」
使用人「……では、これは……別の世界の出来事、だと?」
側近「それも、さっき言ってただろう……」ハァ
側近「『回り続ける運命の輪』」
使用人「!」
側近「……『勇者と魔王の腐った連鎖』だけの事を指すのでは無いのだとすれば」
側近「この、転移石の作り方。この新旧の『同じ』物」
側近「…… ……『運命』を外れた者の、箱庭で……ッ」
側近「俺達は、操られているだけなのか!?」
使用人「そ、側近様……!」
側近「…… ……ッ」
使用人「……そうと、決まった訳じゃ……」
側近「だが、これでは……ッ」
使用人「落ち着いて下さい!」
側近「…… ……ッ」
使用人「……何故、こっちの……『別の世界』の物が」
使用人「『金の髪の魔王』からしか無いのかも解りません」
使用人「『金の髪の勇者』でない理由も」
側近「…… ……」
使用人「……誰が、何の為に、こんな物を書いた、かも!」
側近「……青年は、知っている……んだな」
使用人「……私達、よりかは」
185: 2014/01/31(金) 13:25:42.33 ID:8cmqsm8mP
側近「……あの小屋に、行く……事、は」
使用人「私では、魔王様を押さえる事は……」
使用人「…… ……側近様」
側近「?」
使用人「誰が書いた物かは解りませんが……青年様と共に居る方だと」
使用人「仮定して……まあ、間違いは無いでしょう」
側近「あ、ああ……まあ、それは」
使用人「……と、言う事は。青年様は、癒し手様と離れられた、と言う事では?」
側近「! ……な、ならば癒し手はあそこに一人で!? ……否!」
側近「……共に……!」
使用人「……そんな余力が、あると……」
側近「……ッ な、何が言いたい!?」
使用人「…… ……」スス……トン
側近「何…… ……!? 『癒し手の器は間に合った』……!?」
使用人「…… ……ッ」グッ
使用人「考えたくは、ありません……が……ッ」
側近「まさか! これは……ッ 別、の世界だ!」
側近「癒し手は……ッ」
使用人「…… ……」
側近「…… ……ッ」
使用人「……すみません」
側近「…… ……」
使用人「…… ……」
側近「……使用人」
使用人「は、はい」
側近「……ここを、見ろ」
使用人「え……? …… ……!」
側近「『代々の魔王の残留思念、剣士の力を持って』」
側近「……『光の剣を完璧な状態へと戻し』」
使用人「…… ……なッ ……!!」
使用人「『1000年を生きた使用人から、知を授かる』!?」
側近「……『知を受け継ぐ者』」
使用人「な、ん……!? 私、さ、さっきも言いましたけど」
使用人「1000年も生きてません!」
使用人「私では、魔王様を押さえる事は……」
使用人「…… ……側近様」
側近「?」
使用人「誰が書いた物かは解りませんが……青年様と共に居る方だと」
使用人「仮定して……まあ、間違いは無いでしょう」
側近「あ、ああ……まあ、それは」
使用人「……と、言う事は。青年様は、癒し手様と離れられた、と言う事では?」
側近「! ……な、ならば癒し手はあそこに一人で!? ……否!」
側近「……共に……!」
使用人「……そんな余力が、あると……」
側近「……ッ な、何が言いたい!?」
使用人「…… ……」スス……トン
側近「何…… ……!? 『癒し手の器は間に合った』……!?」
使用人「…… ……ッ」グッ
使用人「考えたくは、ありません……が……ッ」
側近「まさか! これは……ッ 別、の世界だ!」
側近「癒し手は……ッ」
使用人「…… ……」
側近「…… ……ッ」
使用人「……すみません」
側近「…… ……」
使用人「…… ……」
側近「……使用人」
使用人「は、はい」
側近「……ここを、見ろ」
使用人「え……? …… ……!」
側近「『代々の魔王の残留思念、剣士の力を持って』」
側近「……『光の剣を完璧な状態へと戻し』」
使用人「…… ……なッ ……!!」
使用人「『1000年を生きた使用人から、知を授かる』!?」
側近「……『知を受け継ぐ者』」
使用人「な、ん……!? 私、さ、さっきも言いましたけど」
使用人「1000年も生きてません!」
186: 2014/01/31(金) 13:32:05.14 ID:8cmqsm8mP
側近「……なんなんだ、これは」
使用人「どう……なっているんです……」
側近「……俺が聞きたい。何が、何だか……」
使用人「青年様は……どう言う目的で、これを……」
側近「……これの、真偽は分からん。だが」
側近「青年は……勿論」
使用人「…… ……」
側近「……『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』に、これを」
側近「寄越した、んだろう…… ……癒し手が、全てを……」
側近「話した、のならば。確実に」
使用人「…… ……悪い、夢を見ている様です」ハァ
側近「……俺もだ」
使用人「……お茶にしましょう」
側近「は?」
使用人「糖分、足りませんでしょう……それに、これ」
使用人「貰ってしまった以上、どうにか紐解かなくてはなりません」
使用人「解るところまで、だけでも」
側近「…… ……」
使用人「后様が戻られるまで、時間はあります」
側近「…… ……」
使用人「……そんなうんざりしたって顔に書かないで下さい」
側近「……書いてない」
使用人「『別の世界』の……この出来事を、もし倣うのだとすれば」
側近「!」
使用人「青年様の文が真実なのだとすれば……『女勇者様』は」
使用人「『最強の魔王様』になられます」
側近「……それは、信じるに値するのか?」
使用人「……『魔王は勇者を産む』」
側近「え……」
使用人「もし、次で終わらなければ。まだ、続くのならば」
使用人「どう……なっているんです……」
側近「……俺が聞きたい。何が、何だか……」
使用人「青年様は……どう言う目的で、これを……」
側近「……これの、真偽は分からん。だが」
側近「青年は……勿論」
使用人「…… ……」
側近「……『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』に、これを」
側近「寄越した、んだろう…… ……癒し手が、全てを……」
側近「話した、のならば。確実に」
使用人「…… ……悪い、夢を見ている様です」ハァ
側近「……俺もだ」
使用人「……お茶にしましょう」
側近「は?」
使用人「糖分、足りませんでしょう……それに、これ」
使用人「貰ってしまった以上、どうにか紐解かなくてはなりません」
使用人「解るところまで、だけでも」
側近「…… ……」
使用人「后様が戻られるまで、時間はあります」
側近「…… ……」
使用人「……そんなうんざりしたって顔に書かないで下さい」
側近「……書いてない」
使用人「『別の世界』の……この出来事を、もし倣うのだとすれば」
側近「!」
使用人「青年様の文が真実なのだとすれば……『女勇者様』は」
使用人「『最強の魔王様』になられます」
側近「……それは、信じるに値するのか?」
使用人「……『魔王は勇者を産む』」
側近「え……」
使用人「もし、次で終わらなければ。まだ、続くのならば」
187: 2014/01/31(金) 13:49:01.50 ID:8cmqsm8mP
使用人「今度、『勇者』を産むのは『魔王』自身です」
側近「!」
使用人「前后様も……后様も……」
側近「……! ……力を、強くして……」
使用人「……『強大な力を持つ者』イコール『勇者』」
使用人「……イコール『後の魔王』です」
使用人「魔に変じた人間が……『人間』の部分を奪い去られ『母』となる」
使用人「残るのは……『魔』です」
側近「……ッ」
使用人「その仮説が、正しいのなら、まさに……!」
側近「『最強の魔王』……!」
側近「……し、しかし! 勇者は必ず、魔王を倒す……のだろう!?」
側近「今まで、そうだった筈だ!」
使用人「…… ……何時、終わるのです……」
側近「!?」
使用人「『終わらさなければいけない』んです!」
使用人「此処で! ……『最強の魔王』を、生み出す前に……!」
側近「…… ……!!」
……
………
…………
后「…… ……」ジッ
后(雨……止まないわね。空、真っ暗)
后「…… ……勇者?」
勇者(ぐぅ)
后「……良く寝てる」クス
后(……日に日に、大きくなっていく)
后(勇者と……赤ちゃんと、同じみたいだわ。あの……『黒い靄』)
后(……小屋には、防御壁を張った。『魔』に『母』になった私の力)
后(大丈夫……だと、思いたい……けど……!)
后「この国は……一体、どうなっているの……ッ」
側近「!」
使用人「前后様も……后様も……」
側近「……! ……力を、強くして……」
使用人「……『強大な力を持つ者』イコール『勇者』」
使用人「……イコール『後の魔王』です」
使用人「魔に変じた人間が……『人間』の部分を奪い去られ『母』となる」
使用人「残るのは……『魔』です」
側近「……ッ」
使用人「その仮説が、正しいのなら、まさに……!」
側近「『最強の魔王』……!」
側近「……し、しかし! 勇者は必ず、魔王を倒す……のだろう!?」
側近「今まで、そうだった筈だ!」
使用人「…… ……何時、終わるのです……」
側近「!?」
使用人「『終わらさなければいけない』んです!」
使用人「此処で! ……『最強の魔王』を、生み出す前に……!」
側近「…… ……!!」
……
………
…………
后「…… ……」ジッ
后(雨……止まないわね。空、真っ暗)
后「…… ……勇者?」
勇者(ぐぅ)
后「……良く寝てる」クス
后(……日に日に、大きくなっていく)
后(勇者と……赤ちゃんと、同じみたいだわ。あの……『黒い靄』)
后(……小屋には、防御壁を張った。『魔』に『母』になった私の力)
后(大丈夫……だと、思いたい……けど……!)
后「この国は……一体、どうなっているの……ッ」
189: 2014/01/31(金) 17:36:23.40 ID:8cmqsm8mP
勇者「……ふぇ」
后「あ……ッ」ギュ
勇者(…… ……)ウトウト
后「…… ……」ホッ
后(……窓から、見ても解る。空が真っ暗)
后(日に日に、厭な……気配が増えていく。どういう事……なの!?)
后(……これが、無ければ。行きたかった……!)
后(王子様が、まさか……あんなに、急に亡くなるなんて……)
后(……私が、勇者が。この国に来て……一ヶ月ほど?)
后(あんなに……まだ、元気でいらしたのに……!)
コンコン
后「!」ビクッ
近衛兵長「魔法使いさん、食料などをお持ちしました」
后「あ……あ、ありがとう。そこに……置いておいて下さい」
近衛兵長「……はい。では、失礼致します」
后(彼らは……平気なの!?)
后(……此処へ、何時も来てくれるのは、近衛兵長だって言ってたわね)
后(彼と、王様しか……此処への道はしらない、のだと)
后(……騎士団は、無くなった。もう、戦争は終わったのだ、と)
后(人、だから? 私が……彼らと違って、魔だから?)
后(……平気、なの。こんなにも……厭な気が漂っているのに……!)
后(不自由は無い。手紙を置いておけば)
后(何だって、用意してくれる……多分、今までの『勇者』と変わらない)
后「でも……ッ」
后(……否。勇者は、人間。だから…… ……)
后(この、靄の中で育っても……解らない……?)
后「…… ……」
后(地下。城の地下に……何が、あるの……)
后(確かめに行きたくても……勇者が居ては……)ハァ
『…… ……き。 后……』
后「…… ……?」
后「あ……ッ」ギュ
勇者(…… ……)ウトウト
后「…… ……」ホッ
后(……窓から、見ても解る。空が真っ暗)
后(日に日に、厭な……気配が増えていく。どういう事……なの!?)
后(……これが、無ければ。行きたかった……!)
后(王子様が、まさか……あんなに、急に亡くなるなんて……)
后(……私が、勇者が。この国に来て……一ヶ月ほど?)
后(あんなに……まだ、元気でいらしたのに……!)
コンコン
后「!」ビクッ
近衛兵長「魔法使いさん、食料などをお持ちしました」
后「あ……あ、ありがとう。そこに……置いておいて下さい」
近衛兵長「……はい。では、失礼致します」
后(彼らは……平気なの!?)
后(……此処へ、何時も来てくれるのは、近衛兵長だって言ってたわね)
后(彼と、王様しか……此処への道はしらない、のだと)
后(……騎士団は、無くなった。もう、戦争は終わったのだ、と)
后(人、だから? 私が……彼らと違って、魔だから?)
后(……平気、なの。こんなにも……厭な気が漂っているのに……!)
后(不自由は無い。手紙を置いておけば)
后(何だって、用意してくれる……多分、今までの『勇者』と変わらない)
后「でも……ッ」
后(……否。勇者は、人間。だから…… ……)
后(この、靄の中で育っても……解らない……?)
后「…… ……」
后(地下。城の地下に……何が、あるの……)
后(確かめに行きたくても……勇者が居ては……)ハァ
『…… ……き。 后……』
后「…… ……?」
191: 2014/01/31(金) 17:42:36.74 ID:8cmqsm8mP
『……き……え、るか……』
后「!? ……だ、れ……ッ」
后(何処から…… ……!?)キョロ
『お…… ……黙れ、お前ら!』
后「!?」
后(……気配、は無い…… ……!)
后(前后様も言っていた……! 確か、心話……!?)
后『……誰?』
『……ああ、聞こえるんだな』
后『…… ……』
剣士『俺だ……剣士だ』
后『! 剣士!? ……貴方、どうして……!?』
剣士『……紫の魔王に出来て、俺に出来ない筈が無い』
后『え?』
剣士『説明は後だ……今、小屋に居るんだな?』
后『え、ええ……貴方、は……』
剣士『……俺は、青年と』
后『!?』
剣士『魔導師、と言う……』
后『魔導師!? ……まさか、鍛冶師の村の!?』
剣士『……そうだ』
后『どうして……』
剣士『説明は後だ、と言っただろう……小屋には、お前と勇者だけだな』
后『え、ええ……』
剣士『……今、俺達は始まりの国に居る』
后『!』
剣士『だが……』
后『……『黒い靄』ね』
剣士『……ああ。小屋に……そこに、何かしたのか』
后『え? 何か、って……』
剣士『……だから、黙れと! ……ああ、すまん』
后『??』
剣士『……その小屋の周りだけ、黒い靄が……無い、と言うか』
后「!? ……だ、れ……ッ」
后(何処から…… ……!?)キョロ
『お…… ……黙れ、お前ら!』
后「!?」
后(……気配、は無い…… ……!)
后(前后様も言っていた……! 確か、心話……!?)
后『……誰?』
『……ああ、聞こえるんだな』
后『…… ……』
剣士『俺だ……剣士だ』
后『! 剣士!? ……貴方、どうして……!?』
剣士『……紫の魔王に出来て、俺に出来ない筈が無い』
后『え?』
剣士『説明は後だ……今、小屋に居るんだな?』
后『え、ええ……貴方、は……』
剣士『……俺は、青年と』
后『!?』
剣士『魔導師、と言う……』
后『魔導師!? ……まさか、鍛冶師の村の!?』
剣士『……そうだ』
后『どうして……』
剣士『説明は後だ、と言っただろう……小屋には、お前と勇者だけだな』
后『え、ええ……』
剣士『……今、俺達は始まりの国に居る』
后『!』
剣士『だが……』
后『……『黒い靄』ね』
剣士『……ああ。小屋に……そこに、何かしたのか』
后『え? 何か、って……』
剣士『……だから、黙れと! ……ああ、すまん』
后『??』
剣士『……その小屋の周りだけ、黒い靄が……無い、と言うか』
192: 2014/01/31(金) 17:51:31.71 ID:8cmqsm8mP
剣士『触手を伸ばせない様に、見える』
后『……魔法で防御壁を張ったわ』
剣士『それか』ホッ
剣士『……青年の身も心配だ。すぐにそちらへ行く』
后『え!? ……ちょっと、剣士……!』
シュゥウン……!
后「!」
青年「……ッ ……あ、ぁ……ッ」ハァ
魔導師「うわあああああ! ……あ、 ……ぁ、あ!?」
青年「氏ぬかと思った……!」ストンッ
后「あ……貴方、青年……!?」
后「……! 魔導師……!?」
青年「……ご、めん……后様……ちょっと、休ませて」ハァ
魔導師「お、お久しぶり、です……魔法使いさん……」
魔導師「……いえ、后様」
后「!」
剣士「……確かに、ここなら……安心、否。安全……か」フゥ
后「い、一体……何事!?」
勇者「……あぁう」チカチカ
后「あ……ッ ……!?」
后「……え、何、これ……癒し手の、魔石……光ってる!?」
魔導師「……ああ、やはり」スッ チカチカ
后「!」
青年「これが無いと、絶対……僕、氏んでたな……」ハァ……チカチカ
后「…… ……どういう……こと、な……の……」
剣士「……后」
后「な、何よ……」
青年「……やっぱり、船なんか使わないでこうした方が早かったじゃないか!」
魔導師「そんな事無いですって! ……船に乗らなきゃ、人魚の魔詩も」
魔導師「『夢』も解らなかったでしょう!?」
剣士「だからお前ら、ちょっと黙れ!」
后「大きな声を出さないで!勇者が起きちゃうわ!」
后『……魔法で防御壁を張ったわ』
剣士『それか』ホッ
剣士『……青年の身も心配だ。すぐにそちらへ行く』
后『え!? ……ちょっと、剣士……!』
シュゥウン……!
后「!」
青年「……ッ ……あ、ぁ……ッ」ハァ
魔導師「うわあああああ! ……あ、 ……ぁ、あ!?」
青年「氏ぬかと思った……!」ストンッ
后「あ……貴方、青年……!?」
后「……! 魔導師……!?」
青年「……ご、めん……后様……ちょっと、休ませて」ハァ
魔導師「お、お久しぶり、です……魔法使いさん……」
魔導師「……いえ、后様」
后「!」
剣士「……確かに、ここなら……安心、否。安全……か」フゥ
后「い、一体……何事!?」
勇者「……あぁう」チカチカ
后「あ……ッ ……!?」
后「……え、何、これ……癒し手の、魔石……光ってる!?」
魔導師「……ああ、やはり」スッ チカチカ
后「!」
青年「これが無いと、絶対……僕、氏んでたな……」ハァ……チカチカ
后「…… ……どういう……こと、な……の……」
剣士「……后」
后「な、何よ……」
青年「……やっぱり、船なんか使わないでこうした方が早かったじゃないか!」
魔導師「そんな事無いですって! ……船に乗らなきゃ、人魚の魔詩も」
魔導師「『夢』も解らなかったでしょう!?」
剣士「だからお前ら、ちょっと黙れ!」
后「大きな声を出さないで!勇者が起きちゃうわ!」
193: 2014/01/31(金) 18:05:07.79 ID:8cmqsm8mP
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」
勇者(すぅ)
后「……説明、して頂戴」
后「何が……どうなっている、のよ……」
剣士「……『回り続ける運命の輪』」
后「! ちょ、ちょっと、剣士……」チラ
魔導師「……全部、聞きました、后様」
魔導師「それから……『欠片』も、僕は知っています」
后「え……?」
剣士「人魚の『夢』だ。お前だろう?癒し手に……人魚達の魔詩が」
剣士「あの『古詩』だと……言ったのは」
后「……え、ええ……だけど、それが、欠片……?」
青年「僕は……母さんと、鍛冶師の村の近くの小屋……母さんが育った」
青年「あの小屋に居たんだ。魔王様の城を出てから」
后「! ……ッ そ、そうよ! 貴方、青年なのよね!?」
后「……城を出たとき、貴方は……!」
青年「今の魔導師よりも、小さかった……だろう」
后「…… ……」
青年「僕はエルフの血を引いている。だから……」
后「……否。良いのよ……元気で、いるのなら……それで……!」
后「あ……ッ 貴方が、此処に居ると言うことは……!」
青年「…… ……」
后「癒し手は、一人で小屋に……!?」
青年「……母さんは、氏んだ」
后「! ……ッ 嘘、よ!」
后(……! 夢……ッ 勇者を産む時に見た、あの夢……!)
后「……雨の、中……で、ま、さか……」
魔導師「!」
后「倒れたの!? あの、小屋の……庭で……!?」
青年「……違う。母さんは…… ……ッ」
青年「……母さんは、風に……攫われて行った」
青年「サラサラと身体が、砂の様に…… ……」
后「…… ……」フラッ
剣士「! 后!」ガシッ
魔導師「…… ……」
剣士「…… ……」
勇者(すぅ)
后「……説明、して頂戴」
后「何が……どうなっている、のよ……」
剣士「……『回り続ける運命の輪』」
后「! ちょ、ちょっと、剣士……」チラ
魔導師「……全部、聞きました、后様」
魔導師「それから……『欠片』も、僕は知っています」
后「え……?」
剣士「人魚の『夢』だ。お前だろう?癒し手に……人魚達の魔詩が」
剣士「あの『古詩』だと……言ったのは」
后「……え、ええ……だけど、それが、欠片……?」
青年「僕は……母さんと、鍛冶師の村の近くの小屋……母さんが育った」
青年「あの小屋に居たんだ。魔王様の城を出てから」
后「! ……ッ そ、そうよ! 貴方、青年なのよね!?」
后「……城を出たとき、貴方は……!」
青年「今の魔導師よりも、小さかった……だろう」
后「…… ……」
青年「僕はエルフの血を引いている。だから……」
后「……否。良いのよ……元気で、いるのなら……それで……!」
后「あ……ッ 貴方が、此処に居ると言うことは……!」
青年「…… ……」
后「癒し手は、一人で小屋に……!?」
青年「……母さんは、氏んだ」
后「! ……ッ 嘘、よ!」
后(……! 夢……ッ 勇者を産む時に見た、あの夢……!)
后「……雨の、中……で、ま、さか……」
魔導師「!」
后「倒れたの!? あの、小屋の……庭で……!?」
青年「……違う。母さんは…… ……ッ」
青年「……母さんは、風に……攫われて行った」
青年「サラサラと身体が、砂の様に…… ……」
后「…… ……」フラッ
剣士「! 后!」ガシッ
194: 2014/01/31(金) 18:17:01.52 ID:8cmqsm8mP
魔導師「……后様、何故『雨の中で倒れた』と?」
后「え……」
青年「……僕の事は気にしなくて良い。教えて欲しい、后様」
后「ちょ、ちょっと待って! ……ええ、と……」
剣士「ゆっくりで良い。后」
魔導師「……雨の中で倒れた癒し手様を、今の姿よりもう少し大人な青年さんが」
后「!?」
魔導師「鍛冶師の村の神父様の眠る、隣に……埋葬した、んですか?」
剣士「…… ……」
后「ちょ、ちょっと待って! ……私がみた『夢』は」
后「……もう少し、大人に見える青年……だろう、男が」
后「氏……んだ、癒し手を抱きしめて泣いている夢、よ……」
青年「…… ……」
后「それに! ……こ、この話は、側近と使用人にはしたけれど……!」
魔導師「……後で、説明しますけど。僕は……『1000年生きた使用人』さんから」
后「は!?」
剣士「ややこしい言い方をするな……」
魔導師「……すみません」
青年「……『同じ』なんだな……多分」
后「……青年!?」
青年「后様」
后「……な、なに……なんなのよ!」
青年「以前、黒髪の勇者と、父さんと后様は」
青年「人魚の魔詩で夢を見た、んだろう」
后「え……ええ……」
青年「僕は、母さんが知るだろう全てを聞いた」
青年「……夢の話も、勿論だ。と言っても、母さん自身は見ていないけど」
青年「『初めてなのにそうじゃ無い』ようで『初めてじゃ無いのにそうじゃ無い』ような」
剣士「……悲しくて切なくて、苦しくて。でも、嬉しい……感覚」
后「…… ……」
魔導師「『繰り返されている』のは、『運命の輪』は」
魔導師「『勇者と魔王』だけじゃ無いんです。多分」
后「え……?」
魔導師「この『世界』そのものが、何度も何度も……繰り返されている」
魔導師「僕は、此処に来るまでの船の中で人魚の魔詩で夢を見ました」
后「え……」
青年「……僕の事は気にしなくて良い。教えて欲しい、后様」
后「ちょ、ちょっと待って! ……ええ、と……」
剣士「ゆっくりで良い。后」
魔導師「……雨の中で倒れた癒し手様を、今の姿よりもう少し大人な青年さんが」
后「!?」
魔導師「鍛冶師の村の神父様の眠る、隣に……埋葬した、んですか?」
剣士「…… ……」
后「ちょ、ちょっと待って! ……私がみた『夢』は」
后「……もう少し、大人に見える青年……だろう、男が」
后「氏……んだ、癒し手を抱きしめて泣いている夢、よ……」
青年「…… ……」
后「それに! ……こ、この話は、側近と使用人にはしたけれど……!」
魔導師「……後で、説明しますけど。僕は……『1000年生きた使用人』さんから」
后「は!?」
剣士「ややこしい言い方をするな……」
魔導師「……すみません」
青年「……『同じ』なんだな……多分」
后「……青年!?」
青年「后様」
后「……な、なに……なんなのよ!」
青年「以前、黒髪の勇者と、父さんと后様は」
青年「人魚の魔詩で夢を見た、んだろう」
后「え……ええ……」
青年「僕は、母さんが知るだろう全てを聞いた」
青年「……夢の話も、勿論だ。と言っても、母さん自身は見ていないけど」
青年「『初めてなのにそうじゃ無い』ようで『初めてじゃ無いのにそうじゃ無い』ような」
剣士「……悲しくて切なくて、苦しくて。でも、嬉しい……感覚」
后「…… ……」
魔導師「『繰り返されている』のは、『運命の輪』は」
魔導師「『勇者と魔王』だけじゃ無いんです。多分」
后「え……?」
魔導師「この『世界』そのものが、何度も何度も……繰り返されている」
魔導師「僕は、此処に来るまでの船の中で人魚の魔詩で夢を見ました」
195: 2014/01/31(金) 18:24:40.48 ID:8cmqsm8mP
魔導師「……赤茶の髪の勇者様と、僕。青年さんと、剣士さん」
魔導師「四人は、黒い髪の魔王様と対峙していた」
魔導師「……勇者様は、魔王を……お父さんと呼んでいた」
后「!?」
魔導師「そして……勇者様は魔王を倒しました。でも……」
剣士「……終わらなかった」
后「な……ッ!?」
魔導師「赤茶の髪の勇者様は、魔王となり」
魔導師「僕は……魔に変じ、使用人さんの『知』を受け継ぐ道を選びました」
后「!」
魔導師「……夢の中で、僕は」
魔導師「その、使用人さん、の……その時までに知り得ただろう全ての『知』を」
魔導師「受け継いだんです……不思議な事に、その『知』は」
魔導師「今、ここに居る……僕、の『中』にも……あるんです」
后「そ……んな……!?」
青年「母さんが氏んでから行った鍛冶師の村で僕は剣士と魔導師にあったんだ」
青年「……母さんの魔石が、今みたいに光った」
后「…… ……」
青年「勇者様が同じ物を持っているのは聞いていたから、僕は……彼」
青年「魔導師が、『三人目』だと思ったんだ」
后「……『三』」
剣士「……その話も、もう伝えてある」
魔導師「僕は魔石や、魔法剣の事を勉強したかった」
魔導師「……その時はまだ、勇者様についていきたい、なんて思わなかったけど」
青年「着いてくるかい、と聞いたら……魔導師は、まあ、結果的には、だけど」
青年「イエス、と言った……だから、全てを教えようと思ったんだ」
青年「勇者様についていくのは……恐らく、剣士。僕……此処までは間違い無いと」
青年「信じて……いたから」
后「…… ……」
魔導師「四人は、黒い髪の魔王様と対峙していた」
魔導師「……勇者様は、魔王を……お父さんと呼んでいた」
后「!?」
魔導師「そして……勇者様は魔王を倒しました。でも……」
剣士「……終わらなかった」
后「な……ッ!?」
魔導師「赤茶の髪の勇者様は、魔王となり」
魔導師「僕は……魔に変じ、使用人さんの『知』を受け継ぐ道を選びました」
后「!」
魔導師「……夢の中で、僕は」
魔導師「その、使用人さん、の……その時までに知り得ただろう全ての『知』を」
魔導師「受け継いだんです……不思議な事に、その『知』は」
魔導師「今、ここに居る……僕、の『中』にも……あるんです」
后「そ……んな……!?」
青年「母さんが氏んでから行った鍛冶師の村で僕は剣士と魔導師にあったんだ」
青年「……母さんの魔石が、今みたいに光った」
后「…… ……」
青年「勇者様が同じ物を持っているのは聞いていたから、僕は……彼」
青年「魔導師が、『三人目』だと思ったんだ」
后「……『三』」
剣士「……その話も、もう伝えてある」
魔導師「僕は魔石や、魔法剣の事を勉強したかった」
魔導師「……その時はまだ、勇者様についていきたい、なんて思わなかったけど」
青年「着いてくるかい、と聞いたら……魔導師は、まあ、結果的には、だけど」
青年「イエス、と言った……だから、全てを教えようと思ったんだ」
青年「勇者様についていくのは……恐らく、剣士。僕……此処までは間違い無いと」
青年「信じて……いたから」
后「…… ……」
196: 2014/01/31(金) 18:25:56.82 ID:8cmqsm8mP
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