207: 2014/02/03(月) 09:19:39.14 ID:JR1uxqdkP
209: 2014/02/03(月) 09:54:22.67 ID:JR1uxqdkP
魔導師「……結果的には正解、でした。まあ、その……僕の見た『夢』が」
魔導師「『過去』の出来事で」
魔導師「『現在』がそれに倣い、『未来』を紡いでいくと決定しているのなら」
魔導師「……ですけど」
剣士「船の中で、俺と青年は……魔導師に全て話した」
后「…… ……」
魔導師「僕も、話しました。夢で見た全て……と」
魔導師「受け継いだ『知』の全て」
青年「…… ……」ハァ
剣士「……大丈夫か」
后「顔色が……悪いわ、青年」
青年「……剣士と后様にとって……あれは、気分の良い物なのか」
后「え?」
剣士「俺は否定したはずだが」
青年「ああ、そうだった……后様はどう?」
后「あれって……『黒い靄』?」
后「良い筈無いでしょう! あんな……悪意の塊みたいな……!」
魔導師「……僕はまだ、人間なので、正直何も見えないし」
魔導師「何も……感じません。でも」
剣士「……随分とイライラする、だったか?」
魔導師「今、后様に『悪意の塊の様な物』と聞いて納得しました」
青年「……魔族にも、良い感じはしない、んだな」
魔導師「剣士さんだって魔族みたいなモンです」
后「! そうよ、剣士、さっき貴方……!」
后「『紫の魔王に出来て、俺に出来ない筈は無い』って……!」
剣士「……説明はする。お前の意見も聞きたい」
青年「僕は…… ……ああ、御免。やっぱり平気とは強がれないな」ハァ
魔導師「……あっちこっち説明しても埒があきません。后様」
后「え、な、何……」
魔導師「先に……その『黒い靄』とやらをどうにかしましょう」
后「どうにか、って……」
魔導師「『過去』の出来事で」
魔導師「『現在』がそれに倣い、『未来』を紡いでいくと決定しているのなら」
魔導師「……ですけど」
剣士「船の中で、俺と青年は……魔導師に全て話した」
后「…… ……」
魔導師「僕も、話しました。夢で見た全て……と」
魔導師「受け継いだ『知』の全て」
青年「…… ……」ハァ
剣士「……大丈夫か」
后「顔色が……悪いわ、青年」
青年「……剣士と后様にとって……あれは、気分の良い物なのか」
后「え?」
剣士「俺は否定したはずだが」
青年「ああ、そうだった……后様はどう?」
后「あれって……『黒い靄』?」
后「良い筈無いでしょう! あんな……悪意の塊みたいな……!」
魔導師「……僕はまだ、人間なので、正直何も見えないし」
魔導師「何も……感じません。でも」
剣士「……随分とイライラする、だったか?」
魔導師「今、后様に『悪意の塊の様な物』と聞いて納得しました」
青年「……魔族にも、良い感じはしない、んだな」
魔導師「剣士さんだって魔族みたいなモンです」
后「! そうよ、剣士、さっき貴方……!」
后「『紫の魔王に出来て、俺に出来ない筈は無い』って……!」
剣士「……説明はする。お前の意見も聞きたい」
青年「僕は…… ……ああ、御免。やっぱり平気とは強がれないな」ハァ
魔導師「……あっちこっち説明しても埒があきません。后様」
后「え、な、何……」
魔導師「先に……その『黒い靄』とやらをどうにかしましょう」
后「どうにか、って……」
210: 2014/02/03(月) 10:18:35.45 ID:JR1uxqdkP
魔導師「さっきも言った通り、僕は『まだ』人間なので」
后「…… ……」
魔導師「何も解りません……が、イライラ、するんです」
魔導師「勇者様に……影響が無いとも言い切れませんよ」
后「!」
魔導師「光の加護を持つ……と、言っても、人間です」
魔導師「それに……まだ、赤ん坊だ」
后「で、でも……!」
剣士「勇者が大きくなり、この国から旅立つとき」
剣士「魔導師の言う『イライラ』を抱えて過ごしてきたこの国の者達が」
剣士「……勇者に与える影響は小さいと思うか?」
后「!」
魔導師「……青年さんの体調、もそうですけど」
魔導師「どうにも出来ないのであれば……離れた方が賢明だと思うんです」
魔導師「でも、それも出来ないというのであれば」
后「……どうにか、するしか無い、のね」
剣士「后。この地下に何があるか……知っているか」
后「いえ……」
剣士「……牢、だ」
后「牢……?」
剣士「あのままであるとするのなら……母親が捕らわれている」
后「!? …… ……お母様!?」
剣士「…… ……」
后「…… ……」
后「…… ……」
魔導師「何も解りません……が、イライラ、するんです」
魔導師「勇者様に……影響が無いとも言い切れませんよ」
后「!」
魔導師「光の加護を持つ……と、言っても、人間です」
魔導師「それに……まだ、赤ん坊だ」
后「で、でも……!」
剣士「勇者が大きくなり、この国から旅立つとき」
剣士「魔導師の言う『イライラ』を抱えて過ごしてきたこの国の者達が」
剣士「……勇者に与える影響は小さいと思うか?」
后「!」
魔導師「……青年さんの体調、もそうですけど」
魔導師「どうにも出来ないのであれば……離れた方が賢明だと思うんです」
魔導師「でも、それも出来ないというのであれば」
后「……どうにか、するしか無い、のね」
剣士「后。この地下に何があるか……知っているか」
后「いえ……」
剣士「……牢、だ」
后「牢……?」
剣士「あのままであるとするのなら……母親が捕らわれている」
后「!? …… ……お母様!?」
剣士「…… ……」
后「…… ……」
211: 2014/02/03(月) 10:27:46.47 ID:JR1uxqdkP
剣士「どうにかできるとすれば……お前しか居ない、后」
青年「……僕は后様のお母さん……母親、の事は」
青年「話でしか聞いてないし、ハッキリどうとか、知らないから」
青年「……何とも、言えないけど」
魔導師「……インキュバスの魔石の、傍にずっといらっしゃった、のでしょう」
后「あ……!」
后「お爺様は、あれで……あの石の所為で……魔、物になったんだった、わね」
后「……では、この黒い靄は……!!」
剣士「……何か、感じないのか?」
后「いくら……勇者を産んだからって、私にそんな力は無いわよ」
青年「……推測でしか無い。だけど、これは……后様の言うとおり」
青年「『凄まじい悪意』だ……『怨み』だよ」
后「…… ……」
青年「話は、後にしよう、后様……否、して欲しい」
青年「……マシになったとは言え、辛い」
后「……場所は解るのね、剣士」
剣士「大体は……後は気配を辿れば良いだろう」
剣士「心配するな。俺も行く」
魔導師「勇者様は、僕と青年さんで見ていますから」
后「…… ……解ったわ」
剣士「掴まれ……俺が転移しよう」
后「…… ……」ギュ
シュゥン!
魔導師「…… ……大丈夫、ですか?」
青年「まあ……后様の魔法と、母さんの石があるから」
青年「……少なくとも氏にそうじゃ無い」
魔導師「あのお二人ですから、心配は要らないと思いますけど」
青年「……僕は后様のお母さん……母親、の事は」
青年「話でしか聞いてないし、ハッキリどうとか、知らないから」
青年「……何とも、言えないけど」
魔導師「……インキュバスの魔石の、傍にずっといらっしゃった、のでしょう」
后「あ……!」
后「お爺様は、あれで……あの石の所為で……魔、物になったんだった、わね」
后「……では、この黒い靄は……!!」
剣士「……何か、感じないのか?」
后「いくら……勇者を産んだからって、私にそんな力は無いわよ」
青年「……推測でしか無い。だけど、これは……后様の言うとおり」
青年「『凄まじい悪意』だ……『怨み』だよ」
后「…… ……」
青年「話は、後にしよう、后様……否、して欲しい」
青年「……マシになったとは言え、辛い」
后「……場所は解るのね、剣士」
剣士「大体は……後は気配を辿れば良いだろう」
剣士「心配するな。俺も行く」
魔導師「勇者様は、僕と青年さんで見ていますから」
后「…… ……解ったわ」
剣士「掴まれ……俺が転移しよう」
后「…… ……」ギュ
シュゥン!
魔導師「…… ……大丈夫、ですか?」
青年「まあ……后様の魔法と、母さんの石があるから」
青年「……少なくとも氏にそうじゃ無い」
魔導師「あのお二人ですから、心配は要らないと思いますけど」
212: 2014/02/03(月) 10:36:51.15 ID:JR1uxqdkP
青年「……『心配』はその後だろう」
青年「どうせ……城には入れないのだろうしな」
魔導師「それは……大丈夫でしょう?」
青年「え?」
魔導師「剣士さんなら城に忍び込めます」
青年「……お前」ハァ
魔導師「手段を問わず、ってのは青年さんに習ったんです」
魔導師「あんな物、って言っても、僕には見えないけど」
魔導師「……否、まあ……王様とかにも見えないんでしょうけど」
魔導師「『地下』に母親って人を連れて行ったのは、王様なんでしょうし」
青年「……『国王』様だよ。弟王子様」
魔導師「あ、そうか……でも」
青年「……まあ、この事態にさせたのは新しい王様の方だろうけどね」
青年「病気だって聞いた、んだろう?」
魔導師「剣士さんがそう言ってました……まあ、噂、何でしょう、けど」
魔導師「……従兄弟、でしょ?」
青年「父さんのな」
魔導師「……ああ、そうか。何て言うんでしょう」
青年「……呼び方なんてどうだって良いさ」
青年「血が繋がっている事に変わりは無い」
魔導師「まあ……そうですけど…… あ」
青年「何?」
魔導師「いえ……」
魔導師(もし、の話なんてしたって仕方無いけど)
魔導師(『血』の繋がりで行くのなら……)
魔導師(……青年さんにも、この国の『王』になる資格がある、のか)
魔導師(全力で拒否りそう、だけど)ハァ
青年「……で、本当に剣士に忍び込ますつもりなのか」
魔導師「え? ……ああ」
魔導師「素直に頼んで、くれると思いますか?」
魔導師「……僕は、王様がどんな人かも知りませんけど」
青年「どうせ……城には入れないのだろうしな」
魔導師「それは……大丈夫でしょう?」
青年「え?」
魔導師「剣士さんなら城に忍び込めます」
青年「……お前」ハァ
魔導師「手段を問わず、ってのは青年さんに習ったんです」
魔導師「あんな物、って言っても、僕には見えないけど」
魔導師「……否、まあ……王様とかにも見えないんでしょうけど」
魔導師「『地下』に母親って人を連れて行ったのは、王様なんでしょうし」
青年「……『国王』様だよ。弟王子様」
魔導師「あ、そうか……でも」
青年「……まあ、この事態にさせたのは新しい王様の方だろうけどね」
青年「病気だって聞いた、んだろう?」
魔導師「剣士さんがそう言ってました……まあ、噂、何でしょう、けど」
魔導師「……従兄弟、でしょ?」
青年「父さんのな」
魔導師「……ああ、そうか。何て言うんでしょう」
青年「……呼び方なんてどうだって良いさ」
青年「血が繋がっている事に変わりは無い」
魔導師「まあ……そうですけど…… あ」
青年「何?」
魔導師「いえ……」
魔導師(もし、の話なんてしたって仕方無いけど)
魔導師(『血』の繋がりで行くのなら……)
魔導師(……青年さんにも、この国の『王』になる資格がある、のか)
魔導師(全力で拒否りそう、だけど)ハァ
青年「……で、本当に剣士に忍び込ますつもりなのか」
魔導師「え? ……ああ」
魔導師「素直に頼んで、くれると思いますか?」
魔導師「……僕は、王様がどんな人かも知りませんけど」
213: 2014/02/03(月) 10:43:54.98 ID:JR1uxqdkP
青年「僕だって知らない……勇者様の為、って言えば」
青年「貸して、ぐらいはくれるんじゃないの」
魔導師「……問題は誰がどうやって説明するか、ですけど」
青年「…… ……まあ」
魔導師「だったら、こっそり持って来る方が早いですよ」
青年「で……后様に炎を打ち出して貰うのか。お前の見た『夢』に倣って」
魔導師「…… ……」
青年「そして、剣士は…… ……」
魔導師「……でも、あれは。『黒い髪の魔王』を倒した後の話です」
青年「……ま、断らないだろうさ。剣士は」
魔導師「…… ……」
青年「自分が居なくなると分かってても」
青年「……『魔王を倒す』為ならな」
魔導師「…… ……」
青年「倒した後でも、倒す前でも……一緒だろ?」
青年「あいつは……剣士は『代々の魔王の残留思念』」
青年「……『欠片』だ」
魔導師「やっぱり……反対なんですね」
青年「何度も言っただろう……当然だ! ……ッ」
魔導師「青年さん!?」
青年「……大きな声、だすと眩暈がする」ハァ
魔導師「……すみません」
青年「何もかも、『過去』に倣う必要なんか無い」
青年「……そもそも、随分違う、じゃないか」
魔導師「……はい」
青年「だったら、他の方法だってあるかもしれない」
魔導師「……剣士さんも、そう言ってました」
青年「……最終手段だよ」
魔導師「…… ……」
青年「まあ、その最終手段の為に?」
青年「……手に入れておく必要は、確かにある、んだろうけどね」ハァ
魔導師「……鍛冶師の村の鍛冶場が、取り壊されてしまった以上」
青年「貸して、ぐらいはくれるんじゃないの」
魔導師「……問題は誰がどうやって説明するか、ですけど」
青年「…… ……まあ」
魔導師「だったら、こっそり持って来る方が早いですよ」
青年「で……后様に炎を打ち出して貰うのか。お前の見た『夢』に倣って」
魔導師「…… ……」
青年「そして、剣士は…… ……」
魔導師「……でも、あれは。『黒い髪の魔王』を倒した後の話です」
青年「……ま、断らないだろうさ。剣士は」
魔導師「…… ……」
青年「自分が居なくなると分かってても」
青年「……『魔王を倒す』為ならな」
魔導師「…… ……」
青年「倒した後でも、倒す前でも……一緒だろ?」
青年「あいつは……剣士は『代々の魔王の残留思念』」
青年「……『欠片』だ」
魔導師「やっぱり……反対なんですね」
青年「何度も言っただろう……当然だ! ……ッ」
魔導師「青年さん!?」
青年「……大きな声、だすと眩暈がする」ハァ
魔導師「……すみません」
青年「何もかも、『過去』に倣う必要なんか無い」
青年「……そもそも、随分違う、じゃないか」
魔導師「……はい」
青年「だったら、他の方法だってあるかもしれない」
魔導師「……剣士さんも、そう言ってました」
青年「……最終手段だよ」
魔導師「…… ……」
青年「まあ、その最終手段の為に?」
青年「……手に入れておく必要は、確かにある、んだろうけどね」ハァ
魔導師「……鍛冶師の村の鍛冶場が、取り壊されてしまった以上」
215: 2014/02/03(月) 13:00:24.92 ID:JR1uxqdkP
魔導師「……剣を、魔法剣を鍛えられるだろう道具は」
魔導師「鍛冶師様が、昔あの村から持ち出されただろう物、しか……」
青年「……まあ、確かに始まりの城にはあるだろうな」
青年「まだ残って居れば、の話だけど」
魔導師「……処分されていない、と信じるしかありませんが」
青年「それよりも、だ」
魔導師「……はい」
青年「母親……后様の母、か」フゥ
青年「…… ……」
魔導師「青年さん?」
青年「……『凄まじい悪意』だ。……『怨み』」
青年「…… ……」
魔導師「あ、の……」
青年「あ? ……ああ、いや」
青年「生きているのかな、ってさ……」
魔導師「……どう、感じますか」
青年「……どっちもどっちだ、正直」
魔導師「え?」
青年「生きながらにして……これだけの、って考えると」
青年「『人間』の執念ってのは……凄いな、って感心する」
魔導師「……氏んでいる、と仮定すればオカルトですね」
魔導師「呪い、祟り……」
青年「……氏んでも尚、って思えば」ハァ
青年「それはそれで……感服するさ」
青年「……どれほどの感情なんだ。それって……、さ」
魔導師「……優れた加護を持っているとは言え」
魔導師「たかだか、人間に。そんな事出来るんでしょうか」
青年「さてね」
魔導師(氏して尚……か)
魔導師(……僕から見れば、夢の中の『僕』は……過去)
魔導師(氏して、尚……願えば、叶う)
魔導師「……『思い』って……凄いんですね」
青年「…… ……」
……
………
…………
魔導師「鍛冶師様が、昔あの村から持ち出されただろう物、しか……」
青年「……まあ、確かに始まりの城にはあるだろうな」
青年「まだ残って居れば、の話だけど」
魔導師「……処分されていない、と信じるしかありませんが」
青年「それよりも、だ」
魔導師「……はい」
青年「母親……后様の母、か」フゥ
青年「…… ……」
魔導師「青年さん?」
青年「……『凄まじい悪意』だ。……『怨み』」
青年「…… ……」
魔導師「あ、の……」
青年「あ? ……ああ、いや」
青年「生きているのかな、ってさ……」
魔導師「……どう、感じますか」
青年「……どっちもどっちだ、正直」
魔導師「え?」
青年「生きながらにして……これだけの、って考えると」
青年「『人間』の執念ってのは……凄いな、って感心する」
魔導師「……氏んでいる、と仮定すればオカルトですね」
魔導師「呪い、祟り……」
青年「……氏んでも尚、って思えば」ハァ
青年「それはそれで……感服するさ」
青年「……どれほどの感情なんだ。それって……、さ」
魔導師「……優れた加護を持っているとは言え」
魔導師「たかだか、人間に。そんな事出来るんでしょうか」
青年「さてね」
魔導師(氏して尚……か)
魔導師(……僕から見れば、夢の中の『僕』は……過去)
魔導師(氏して、尚……願えば、叶う)
魔導師「……『思い』って……凄いんですね」
青年「…… ……」
……
………
…………
216: 2014/02/03(月) 13:08:37.38 ID:JR1uxqdkP
シュウン……
スタ……スタッ
后「……こ、こが……地下牢?」
剣士「……否。確か、廊下の先に……扉と階段が」キョロ
后「……見える?」
剣士「明かり……が必要だな。真っ暗だ……しかし、酷い匂いだ」
后「鼻が曲がりそうね……ちょっと待って。炎よ……」ポゥ
剣士「便利な物だ…… ……ッ 止まれ!」グイッ
后「キャッ!? な、何…… ……ヒッ ィ……ッ」
剣士「…… ……氏体?」
后「! ……ッ」
剣士「……厭なら、見るな。手だけ……明かりだけ、此方へ」
后「…… ……ッ」スッ
剣士「…… ……」
后「な、何なの、よ……」
剣士「掴んでおいてやるから……動くな。目も開けるな、よ」
后「…… ……ッ」ギュッ
剣士「…… ……」
剣士(……男? ……制服、のような物)
剣士(騎士団のか……否)
剣士(近衛兵、だったか…… ……と、言う事は……)
后「な、何か喋ってよ!どうなってるの……!」
剣士「あまり大きな声を出すな……厭なんじゃ無いのか」
后「……で、でも……」
剣士「……男、だな。多分……城の兵士、の服……だろう、これ」
后「…… ……」ソロ……
后「!」
剣士「……厭なら見るな言っただろう」
后「で、でも……」
剣士「……腐臭か」
后「ふ、古い……し、たい……なの」
スタ……スタッ
后「……こ、こが……地下牢?」
剣士「……否。確か、廊下の先に……扉と階段が」キョロ
后「……見える?」
剣士「明かり……が必要だな。真っ暗だ……しかし、酷い匂いだ」
后「鼻が曲がりそうね……ちょっと待って。炎よ……」ポゥ
剣士「便利な物だ…… ……ッ 止まれ!」グイッ
后「キャッ!? な、何…… ……ヒッ ィ……ッ」
剣士「…… ……氏体?」
后「! ……ッ」
剣士「……厭なら、見るな。手だけ……明かりだけ、此方へ」
后「…… ……ッ」スッ
剣士「…… ……」
后「な、何なの、よ……」
剣士「掴んでおいてやるから……動くな。目も開けるな、よ」
后「…… ……ッ」ギュッ
剣士「…… ……」
剣士(……男? ……制服、のような物)
剣士(騎士団のか……否)
剣士(近衛兵、だったか…… ……と、言う事は……)
后「な、何か喋ってよ!どうなってるの……!」
剣士「あまり大きな声を出すな……厭なんじゃ無いのか」
后「……で、でも……」
剣士「……男、だな。多分……城の兵士、の服……だろう、これ」
后「…… ……」ソロ……
后「!」
剣士「……厭なら見るな言っただろう」
后「で、でも……」
剣士「……腐臭か」
后「ふ、古い……し、たい……なの」
217: 2014/02/03(月) 13:14:39.95 ID:JR1uxqdkP
剣士「……近衛兵の服だとすれば、そうでも無い筈だ」
后「……! 剣士!」
剣士「大きな声を出すなと……なんだ」
后「……! と、扉……ッ」
剣士「扉?」クル
剣士「! …… ……」スタスタ
后「ちょ、ちょっと待ってよ!」タタ
剣士「后、明かりを」
后「……ハッキリ見えちゃうじゃないの」ス……
剣士「確かめにきた、んだろう」
剣士(……手の形の、血の……跡。壁を叩いた跡、か……)
ガチャガチャ!
剣士「……固定されてる、な。外側からか」
后「……地下牢に続く扉?」
剣士「違う……方向的に、城の中へ、の方だ」
后「え?」
剣士「…… ……」クル
剣士「……地下牢への扉は、アレだ」スッ
后「…… ……」クルッ
后「! ……鎖、に鍵!?」
剣士「…… 封鎖したんだな」
后「で、でも……この、人……!」
剣士「……閉じ込められた、んだろうな」
后「そ、んな……! ……事故……!?」
剣士「……本当にそう思うか?」
后「…… ……」
剣士「行くぞ」スタスタ
后「……ッ」スタスタ
后「……! 剣士!」
剣士「大きな声を出すなと……なんだ」
后「……! と、扉……ッ」
剣士「扉?」クル
剣士「! …… ……」スタスタ
后「ちょ、ちょっと待ってよ!」タタ
剣士「后、明かりを」
后「……ハッキリ見えちゃうじゃないの」ス……
剣士「確かめにきた、んだろう」
剣士(……手の形の、血の……跡。壁を叩いた跡、か……)
ガチャガチャ!
剣士「……固定されてる、な。外側からか」
后「……地下牢に続く扉?」
剣士「違う……方向的に、城の中へ、の方だ」
后「え?」
剣士「…… ……」クル
剣士「……地下牢への扉は、アレだ」スッ
后「…… ……」クルッ
后「! ……鎖、に鍵!?」
剣士「…… 封鎖したんだな」
后「で、でも……この、人……!」
剣士「……閉じ込められた、んだろうな」
后「そ、んな……! ……事故……!?」
剣士「……本当にそう思うか?」
后「…… ……」
剣士「行くぞ」スタスタ
后「……ッ」スタスタ
219: 2014/02/03(月) 13:40:36.36 ID:JR1uxqdkP
剣士「……随分頑丈な……」
后「…… ……」チラ
剣士「だから……厭なんじゃ無いのか」ハァ
后「……ッ 厭でも気になっちゃう、のよ!」
剣士「……取り残された見張りの兵士、と考えれば」
后「え?」
剣士「…… ……この下。牢の中の母親は……」
后「…… ……ッ」
剣士「…… ……」
后「……ッ 行きましょう」
剣士「……良いんだな」
后「……もし、インキュバスの魔石に当てられて」
后「お爺様の様に、なってしまった……のだとしたら」
后「あの……兵士さんには、勿論、お気の毒、だけど……!」
剣士「…… ……」
后「……仕方が無かった、のかもしれないわ」
后「何も……知らなかった。教えなかったのでしょう、新王様には」
剣士「……ああ」
后「国を守る為の……措置だったのかも、しれないわ」
剣士「……否。それにしては……おかしい」
后「え?」
剣士「自分が言ったんだろう……『悪意』だと」
后「え、ええ……でも、別に……」
剣士「……魔王という凄まじい力を持つ者しか成し得ないかもしれない」
剣士「『魔へ変じさせる行為』だ」
剣士「……それをたかだか、インキュバスの……魔族の作った魔石で、だぞ?」
后「?」
剣士「……言い方を変えるか」ハァ
剣士「お前達が前后の魔法で消えた後、魔物に変じた領主を倒したのは俺だ」
剣士「……あれに、自我がある様には見えなかった。理性もな」
后「あ……!」
剣士「『同じ』と考えて……これだけの『悪意』を」
剣士「……『怨み』を、放出できると思うのか?」
后「…… ……」チラ
剣士「だから……厭なんじゃ無いのか」ハァ
后「……ッ 厭でも気になっちゃう、のよ!」
剣士「……取り残された見張りの兵士、と考えれば」
后「え?」
剣士「…… ……この下。牢の中の母親は……」
后「…… ……ッ」
剣士「…… ……」
后「……ッ 行きましょう」
剣士「……良いんだな」
后「……もし、インキュバスの魔石に当てられて」
后「お爺様の様に、なってしまった……のだとしたら」
后「あの……兵士さんには、勿論、お気の毒、だけど……!」
剣士「…… ……」
后「……仕方が無かった、のかもしれないわ」
后「何も……知らなかった。教えなかったのでしょう、新王様には」
剣士「……ああ」
后「国を守る為の……措置だったのかも、しれないわ」
剣士「……否。それにしては……おかしい」
后「え?」
剣士「自分が言ったんだろう……『悪意』だと」
后「え、ええ……でも、別に……」
剣士「……魔王という凄まじい力を持つ者しか成し得ないかもしれない」
剣士「『魔へ変じさせる行為』だ」
剣士「……それをたかだか、インキュバスの……魔族の作った魔石で、だぞ?」
后「?」
剣士「……言い方を変えるか」ハァ
剣士「お前達が前后の魔法で消えた後、魔物に変じた領主を倒したのは俺だ」
剣士「……あれに、自我がある様には見えなかった。理性もな」
后「あ……!」
剣士「『同じ』と考えて……これだけの『悪意』を」
剣士「……『怨み』を、放出できると思うのか?」
220: 2014/02/03(月) 13:45:43.03 ID:JR1uxqdkP
后「…… ……」
剣士「青年の言葉を思い出せ」
剣士「『凄まじい悪意』『怨み』だ……あいつは、エルフの長の血を引く」
剣士「『感じる力』を持つ……エルフは嘘が吐けない」
剣士「……だとすれば?」
后「……そんな! まさか……ッ 生きている侭に、見捨てたと!?」
后「……ッ」
后(でも……だと、すれば……)
后(お母様は……何を。私を?勇者を……? ……『世界』を)
后(怨みながら……氏んで行った!?)
剣士「……王に、問いただす事は……出来るだろう」
后「…… ……」
剣士「お前が望むなら、だがな……」
后「……とにかく、行きましょう」
后「真実が何であれ……あんな、あんな母親……で、あれ……!」
后「……このままに、して置く訳には、いかない……出来ないわ」
剣士「……少し下がっていろ」
后「え?」
剣士「……お前の炎で溶かすより、早い」シュッ ……チャキ
剣士「……風よ!」
后「!」
シュウン……ザクザクザク……ッ
ガシャン……ガシャン!
后「…… ……開くの」
剣士「駄目なら扉ごと切り裂けば良い」グッ
ガチャ……ギィ
剣士「青年の言葉を思い出せ」
剣士「『凄まじい悪意』『怨み』だ……あいつは、エルフの長の血を引く」
剣士「『感じる力』を持つ……エルフは嘘が吐けない」
剣士「……だとすれば?」
后「……そんな! まさか……ッ 生きている侭に、見捨てたと!?」
后「……ッ」
后(でも……だと、すれば……)
后(お母様は……何を。私を?勇者を……? ……『世界』を)
后(怨みながら……氏んで行った!?)
剣士「……王に、問いただす事は……出来るだろう」
后「…… ……」
剣士「お前が望むなら、だがな……」
后「……とにかく、行きましょう」
后「真実が何であれ……あんな、あんな母親……で、あれ……!」
后「……このままに、して置く訳には、いかない……出来ないわ」
剣士「……少し下がっていろ」
后「え?」
剣士「……お前の炎で溶かすより、早い」シュッ ……チャキ
剣士「……風よ!」
后「!」
シュウン……ザクザクザク……ッ
ガシャン……ガシャン!
后「…… ……開くの」
剣士「駄目なら扉ごと切り裂けば良い」グッ
ガチャ……ギィ
221: 2014/02/03(月) 13:49:57.65 ID:JR1uxqdkP
剣士「……階段か」
后「照らすわ……」スッ
剣士「気をつけろよ、足下」
后「……ええ」
コツン、コツン……
后「! ……ッ」
后(比べものにならないほどの……腐臭……ッ)
剣士「……待て、これは……ッ」
后「な、何…… ……う、ゥ……ッ」
剣士「…… ……ッ」
后「ヒ、ぃっ ……ッ」
剣士「…… ……地獄、だな」
后「あ…… ……ッ ぁ……ッ」ガクガク
剣士「……もう見るな。明かりも良い……そこに、いろ」
后「…… ……」ペタン
剣士「…… ……」ハァ
剣士(動けん、か……どちらにしても)スッ シャキン
剣士「炎よ……」ポゥ
剣士(……最初からこうしておく方が早かった、か)
スタスタ
后「け、剣士……ッ」
剣士「……目、閉じておけ。先に戻っても構わん」
スタスタ
剣士(……一つ、二つ…… ……数えきれん、な)
剣士(氏体の山…… ……正に、地獄だな)ハァ
后「照らすわ……」スッ
剣士「気をつけろよ、足下」
后「……ええ」
コツン、コツン……
后「! ……ッ」
后(比べものにならないほどの……腐臭……ッ)
剣士「……待て、これは……ッ」
后「な、何…… ……う、ゥ……ッ」
剣士「…… ……ッ」
后「ヒ、ぃっ ……ッ」
剣士「…… ……地獄、だな」
后「あ…… ……ッ ぁ……ッ」ガクガク
剣士「……もう見るな。明かりも良い……そこに、いろ」
后「…… ……」ペタン
剣士「…… ……」ハァ
剣士(動けん、か……どちらにしても)スッ シャキン
剣士「炎よ……」ポゥ
剣士(……最初からこうしておく方が早かった、か)
スタスタ
后「け、剣士……ッ」
剣士「……目、閉じておけ。先に戻っても構わん」
スタスタ
剣士(……一つ、二つ…… ……数えきれん、な)
剣士(氏体の山…… ……正に、地獄だな)ハァ
234: 2014/02/05(水) 15:03:36.46 ID:UifMzoGNP
后「……ど、う……なってる、の」
后(ちらっと見えた……地面の膨らみのような物は……多分……人)
后(否、人だった……もの……!)
后(……一つじゃ、無かった。この中に……お母様も……ッ)
后(腐臭……氏、の匂い…… ……悪意、は。怨みは……この人達、の……!?)
剣士「……後だ」
スタスタ
剣士(……誰が誰だか……解らんな。母親がどこに居たのかも……)
剣士(どれぐらい前に、氏んだ……のかも)
剣士(ん…… ……?)
スタ……ピタ
后「……剣士……?」
剣士「…… ……」
剣士(この氏体だけ……食い荒らされている……? ……しかし……)
剣士(どれが……誰だか…… ……判別のしようもない、な)ハァ
剣士「…… ……后」
后「な、何」
剣士「…… ……否。生きている者は居ない様だ」
后「…… ……」
剣士「動くなよ」
スタスタ
后「お……か、あさま、は……」
剣士「……立てるか?手を」
后「…… ……」ギュッ
剣士「……判別が着かん。誰が誰だか……」
后「……ああ……ッ」
后(ちらっと見えた……地面の膨らみのような物は……多分……人)
后(否、人だった……もの……!)
后(……一つじゃ、無かった。この中に……お母様も……ッ)
后(腐臭……氏、の匂い…… ……悪意、は。怨みは……この人達、の……!?)
剣士「……後だ」
スタスタ
剣士(……誰が誰だか……解らんな。母親がどこに居たのかも……)
剣士(どれぐらい前に、氏んだ……のかも)
剣士(ん…… ……?)
スタ……ピタ
后「……剣士……?」
剣士「…… ……」
剣士(この氏体だけ……食い荒らされている……? ……しかし……)
剣士(どれが……誰だか…… ……判別のしようもない、な)ハァ
剣士「…… ……后」
后「な、何」
剣士「…… ……否。生きている者は居ない様だ」
后「…… ……」
剣士「動くなよ」
スタスタ
后「お……か、あさま、は……」
剣士「……立てるか?手を」
后「…… ……」ギュッ
剣士「……判別が着かん。誰が誰だか……」
后「……ああ……ッ」
235: 2014/02/05(水) 15:17:11.51 ID:UifMzoGNP
剣士「……しかし『黒い靄』の正体は……ハッキリした、だろう」
剣士「食事も与えられず、永遠にこんな……暗い、場所に捨て置かれたのだと」
剣士「……知れば」
后「……狂ってしまえれば、楽だったのかも知れないわね」
后「正気を保ち続けて居たのだとすれば……誰かを」
后「何かを……怨みたくなって……とう、当然だわ……ッ」
剣士「……ああ」
后「あの、『怨み』……」
剣士「?」
后「……お母様の物では、無いのかも知れないと、思って」
后「わ、私……ッ どこか、ほっとしてる……!」
后「……最低、だわ…… ……ッ」
剣士「…… ……責めはせん。流石に、これでは……」
后「…… ……」
剣士「……炎で、清めてやるのが一番、良いのだろう、が」
后「城の地下、なのでしょう……こんな場所に、火をつけたら……」
剣士「…… ……」
后「……ねえ」
剣士「? 何だ」
后「青年は、この街に……城に近づいて、気分を悪くしたの?」
剣士「……否。この国に近付くにつれ、徐々にだ」
剣士「随分遠くから、この国の空は……黒く、見えた」
后「……炎よ」ボウッ
剣士「! 后……ッ!?」
后「『手遅れ』になる前に、よ」
剣士(炎の廻りが、早い……ッ)
后「……『黒い靄』は空だけじゃ無い……!」
后「『知人のエルフの加護』と同じよ……徐々に、染み出していくのだとすれば」
后「……この城だけ……この国だけじゃ無く……」
后「大陸そのもの……『世界』が……ッ」
剣士「……ッ 戻るぞ!」グイッ
シュゥウン……ッ!
剣士「食事も与えられず、永遠にこんな……暗い、場所に捨て置かれたのだと」
剣士「……知れば」
后「……狂ってしまえれば、楽だったのかも知れないわね」
后「正気を保ち続けて居たのだとすれば……誰かを」
后「何かを……怨みたくなって……とう、当然だわ……ッ」
剣士「……ああ」
后「あの、『怨み』……」
剣士「?」
后「……お母様の物では、無いのかも知れないと、思って」
后「わ、私……ッ どこか、ほっとしてる……!」
后「……最低、だわ…… ……ッ」
剣士「…… ……責めはせん。流石に、これでは……」
后「…… ……」
剣士「……炎で、清めてやるのが一番、良いのだろう、が」
后「城の地下、なのでしょう……こんな場所に、火をつけたら……」
剣士「…… ……」
后「……ねえ」
剣士「? 何だ」
后「青年は、この街に……城に近づいて、気分を悪くしたの?」
剣士「……否。この国に近付くにつれ、徐々にだ」
剣士「随分遠くから、この国の空は……黒く、見えた」
后「……炎よ」ボウッ
剣士「! 后……ッ!?」
后「『手遅れ』になる前に、よ」
剣士(炎の廻りが、早い……ッ)
后「……『黒い靄』は空だけじゃ無い……!」
后「『知人のエルフの加護』と同じよ……徐々に、染み出していくのだとすれば」
后「……この城だけ……この国だけじゃ無く……」
后「大陸そのもの……『世界』が……ッ」
剣士「……ッ 戻るぞ!」グイッ
シュゥウン……ッ!
236: 2014/02/05(水) 16:05:09.29 ID:UifMzoGNP
……
………
…………
バタバタバタ……バタン!
衛生師「……何事ですか」
近衛兵「か、火事です!王様!」
衛生師「……火事!? どこから……ッ」
近衛兵「……し、城の、地下の方から……ッ」
衛生師「な……!?」ガタンッ
衛生師「詳しい火元の特定と、消火を急げ!」
近衛兵「……そ、それが……その、あの……何処からも、入れなくて……」
衛生師「!」
近衛兵「少女様の元にも、兵士が向かいました」
近衛兵「勇者様の元には、近衛兵長様が……!」
衛生師(地下……まさか、あそこ!?)
衛生師(し、しかし、発火する様な物なんて……何も……!)
衛生師(誰かが……否!ありえない……ッ)
近衛兵「……王様!」
衛生師「……ッ」ハッ
衛生師「私は最後で良い。城の中の人達を、早く……」
近衛兵「既に皆、避難を始めています!」
近衛兵「……ですから、早く……!」
衛生師「…… ……ッ」
シュゥウン……!
近衛兵「う、わああああああああ!?」
衛生師「な……ッ」
剣士「…… ……」ブンッ
近衛兵「……ッ!」バタンッ
衛生師「あ……ッ」
剣士「……頃しては居ない」
衛生師「け、んし……!? き、君……今、どこから……ッ」
………
…………
バタバタバタ……バタン!
衛生師「……何事ですか」
近衛兵「か、火事です!王様!」
衛生師「……火事!? どこから……ッ」
近衛兵「……し、城の、地下の方から……ッ」
衛生師「な……!?」ガタンッ
衛生師「詳しい火元の特定と、消火を急げ!」
近衛兵「……そ、それが……その、あの……何処からも、入れなくて……」
衛生師「!」
近衛兵「少女様の元にも、兵士が向かいました」
近衛兵「勇者様の元には、近衛兵長様が……!」
衛生師(地下……まさか、あそこ!?)
衛生師(し、しかし、発火する様な物なんて……何も……!)
衛生師(誰かが……否!ありえない……ッ)
近衛兵「……王様!」
衛生師「……ッ」ハッ
衛生師「私は最後で良い。城の中の人達を、早く……」
近衛兵「既に皆、避難を始めています!」
近衛兵「……ですから、早く……!」
衛生師「…… ……ッ」
シュゥウン……!
近衛兵「う、わああああああああ!?」
衛生師「な……ッ」
剣士「…… ……」ブンッ
近衛兵「……ッ!」バタンッ
衛生師「あ……ッ」
剣士「……頃しては居ない」
衛生師「け、んし……!? き、君……今、どこから……ッ」
237: 2014/02/05(水) 16:32:32.07 ID:UifMzoGNP
剣士「何故、お前がそこに座っている」
衛生師「…… ……」
剣士「……王は何処だ」
衛生師「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ……ス、チャキ
衛生師「何の……真似だ」
剣士「……地下に何がある。否……何をした?」
衛生師「……何の話だ」
剣士「…… ……」チラ
剣士「この男と同じ制服を着た男の氏体」
衛生師「!?」
剣士「……牢には、氏体の山」
衛生師「…… ……」
剣士「あの中には、母親も含まれているのか」
衛生師「…… ……」
剣士「もう一度聞く……王は、どこだ」
近衛兵「う……ぅッ」
衛生師「! ……おい! この男を捕らえ……ッ」
剣士「!」グイッ
衛生師「ア……ッ !?」ギュッ
剣士「……動くな」スッ
衛生師(首元に……剣……糞ッ)
剣士「動くと切れるぞ」
近衛兵「う、あ!? お……王様……ッ」
剣士「……王? 何を言って……」
近衛兵「お、お前……ッ 王様に、何を……!」
衛生師「…… ……」
剣士「……『王』 ……お前が?」
衛生師「…… ……」
剣士「……王は何処だ」
衛生師「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ……ス、チャキ
衛生師「何の……真似だ」
剣士「……地下に何がある。否……何をした?」
衛生師「……何の話だ」
剣士「…… ……」チラ
剣士「この男と同じ制服を着た男の氏体」
衛生師「!?」
剣士「……牢には、氏体の山」
衛生師「…… ……」
剣士「あの中には、母親も含まれているのか」
衛生師「…… ……」
剣士「もう一度聞く……王は、どこだ」
近衛兵「う……ぅッ」
衛生師「! ……おい! この男を捕らえ……ッ」
剣士「!」グイッ
衛生師「ア……ッ !?」ギュッ
剣士「……動くな」スッ
衛生師(首元に……剣……糞ッ)
剣士「動くと切れるぞ」
近衛兵「う、あ!? お……王様……ッ」
剣士「……王? 何を言って……」
近衛兵「お、お前……ッ 王様に、何を……!」
衛生師「…… ……」
剣士「……『王』 ……お前が?」
238: 2014/02/05(水) 16:57:37.97 ID:UifMzoGNP
近衛兵「王様! こいつは……!」
バタン!
少女「……ッ おい、火事ってどういう……!?」
衛生師「! ……ッ 逃げなさい、少女!」
少女「…… ……ッ !?」
剣士「……動くな、と言っただろう、衛生師」
少女「!」
剣士「……おい、そこのお前」
近衛兵「な、な……ッ」
剣士「その女を連れて、早く逃げろ……この建物は古い」
剣士「……すぐに火が回るぞ」
少女(紫の髪、紫の、瞳……! ま、さか……!?)
少女「……剣士、か……!?」
剣士「…… ……」
衛生師「……少女! 早く……ッ」
少女「……『魔導の街の勇者』……」
近衛兵「な……!?」
剣士「…… ……」ハァ
衛生師「近衛兵!命令です!」
近衛兵「!」ビクッ
衛生師「……少女を早く、安全な場所へ。僕は大丈夫ですから」
少女「お、おい……、待て!」
衛生師「……僕は大丈夫です。だから、早く」
剣士「……『王妃』はお前か」ジッ
少女「!」
剣士「…… ……」
衛生師「……早く!」
近衛兵「は、はい! ……少女様、こちらへ!」
少女「で、でも……ッ」
衛生師「行きなさい! ……君一人の身体では無いんだから」
衛生師「……剣士も。剣を下ろしてくれませんか。逃げません、から」
剣士「質問に答えたらな」
衛生師「…… ……早く……行きなさい」
近衛兵「……は、はい!」
少女「…… ……」
パタパタ……パタン
バタン!
少女「……ッ おい、火事ってどういう……!?」
衛生師「! ……ッ 逃げなさい、少女!」
少女「…… ……ッ !?」
剣士「……動くな、と言っただろう、衛生師」
少女「!」
剣士「……おい、そこのお前」
近衛兵「な、な……ッ」
剣士「その女を連れて、早く逃げろ……この建物は古い」
剣士「……すぐに火が回るぞ」
少女(紫の髪、紫の、瞳……! ま、さか……!?)
少女「……剣士、か……!?」
剣士「…… ……」
衛生師「……少女! 早く……ッ」
少女「……『魔導の街の勇者』……」
近衛兵「な……!?」
剣士「…… ……」ハァ
衛生師「近衛兵!命令です!」
近衛兵「!」ビクッ
衛生師「……少女を早く、安全な場所へ。僕は大丈夫ですから」
少女「お、おい……、待て!」
衛生師「……僕は大丈夫です。だから、早く」
剣士「……『王妃』はお前か」ジッ
少女「!」
剣士「…… ……」
衛生師「……早く!」
近衛兵「は、はい! ……少女様、こちらへ!」
少女「で、でも……ッ」
衛生師「行きなさい! ……君一人の身体では無いんだから」
衛生師「……剣士も。剣を下ろしてくれませんか。逃げません、から」
剣士「質問に答えたらな」
衛生師「…… ……早く……行きなさい」
近衛兵「……は、はい!」
少女「…… ……」
パタパタ……パタン
239: 2014/02/05(水) 17:09:28.70 ID:UifMzoGNP
剣士「……王は、どこだ」
衛生師「僕が……王、です」
剣士「何……?」
衛生師「……約束は違えちゃ居ない。『王』を絶やすな」
衛生師「盗賊様の……遺言は違えちゃ居ない!」ドンッ
剣士「!」グラッ
バッ……タタタ……ッバタン!
ガチャ!
衛生師「馬鹿め……ッ 甘い男だ……ッ」ハハッ
衛生師「……煙に巻かれて、氏ねば……良い……ッ」
シュゥン、スタ!
衛生師「!?」
剣士「……馬鹿はどっちだか」
衛生師「な、な……!?」
剣士「もう忘れたのか。俺は……こうして」
剣士「さっきも、お前の目の前に、姿を現したはずだ」
衛生師「…… ……ッ」
剣士「頃しはしない…… ……」キョロ
剣士(……熱い。もう持たない……か)グイッ
衛生師「!」
剣士「付き合って貰う……鍛冶師の部屋は何処だ?」
衛生師「な、何……?」
剣士「鍛冶師の部屋は何処だ、と聞いたんだ」
衛生師「…… ……」
剣士「……共に煙に巻かれたいのか」
衛生師「か……鍛冶師様の部屋に、何の用事が……!」
剣士「……奴の道具は、残って居ないのか」
衛生師「何……?」
パチパチパチ……
衛生師「! は、離せ……! 此処で、僕が氏んだら……!」
剣士「……『王』が途絶える? ……王妃なのだろう」
剣士「さっきの、少女と呼ばれた……女は」
衛生師「……ッ」
剣士「……妊娠している、と書簡を届けたのはお前だろう」
衛生師「僕が……王、です」
剣士「何……?」
衛生師「……約束は違えちゃ居ない。『王』を絶やすな」
衛生師「盗賊様の……遺言は違えちゃ居ない!」ドンッ
剣士「!」グラッ
バッ……タタタ……ッバタン!
ガチャ!
衛生師「馬鹿め……ッ 甘い男だ……ッ」ハハッ
衛生師「……煙に巻かれて、氏ねば……良い……ッ」
シュゥン、スタ!
衛生師「!?」
剣士「……馬鹿はどっちだか」
衛生師「な、な……!?」
剣士「もう忘れたのか。俺は……こうして」
剣士「さっきも、お前の目の前に、姿を現したはずだ」
衛生師「…… ……ッ」
剣士「頃しはしない…… ……」キョロ
剣士(……熱い。もう持たない……か)グイッ
衛生師「!」
剣士「付き合って貰う……鍛冶師の部屋は何処だ?」
衛生師「な、何……?」
剣士「鍛冶師の部屋は何処だ、と聞いたんだ」
衛生師「…… ……」
剣士「……共に煙に巻かれたいのか」
衛生師「か……鍛冶師様の部屋に、何の用事が……!」
剣士「……奴の道具は、残って居ないのか」
衛生師「何……?」
パチパチパチ……
衛生師「! は、離せ……! 此処で、僕が氏んだら……!」
剣士「……『王』が途絶える? ……王妃なのだろう」
剣士「さっきの、少女と呼ばれた……女は」
衛生師「……ッ」
剣士「……妊娠している、と書簡を届けたのはお前だろう」
240: 2014/02/05(水) 17:29:04.51 ID:UifMzoGNP
剣士「……王が病気だと言う噂は耳にしていた」
剣士「身罷られたのを、隠したのか? ……勇者が戻る」
剣士「その為に……お前が『王』になったのか」グッ
衛生師「……おい、離せ……ッ 火が……ッ」
剣士「お前の言う通り。『王』を絶やさない為に」
衛生師「……離せ、剣士! 僕は、まだ氏にたく無い……ッ」ブンブンッ
剣士「……まあ、良い。お前を問い詰めるのは後だ」
剣士「鍛冶師の部屋は何処だ?」
衛生師「し、知らない!そんな物……!」
衛生師「……離せ! 僕が、氏んだら……『王』は……!」
剣士「…… ……」ハァ。スッ
衛生師「!?」
衛生師(腕が……ッ)
剣士「……一人で、逃げ出せると思うのか」
衛生師「……!」
ダダダ……ッ バタン!
ゴオォオオ!
衛生師「! ……ッ うわあッ ひ、火が……ッ」
バタン!
剣士「……俺なら連れ出してやれるが?」
衛生師「! ……か、鍛冶師様の、道具を……どうする、気だ!」
剣士「お前に話す必要は無い……もう、時間も無い」
剣士「……勝手に探させて貰う」スタスタ
衛生師「ま、待て……!」
剣士「…… ……」
衛生師「……本当に、連れ出してくれる、んだろうな」
剣士「残って居るんだな?」
衛生師「……多分」
剣士「多分?」
衛生師「……僕は、鍛冶の道具になんて興味は無い!」
衛生師「誰かが処分していないなら……そのまま、ある筈だ」
衛生師「早く! ……火が回る。上だ」
コツン、コツン、コツン……
剣士「……嘘だったら放って行く」
衛生師「僕は……まだ、氏ねない……!」
剣士「身罷られたのを、隠したのか? ……勇者が戻る」
剣士「その為に……お前が『王』になったのか」グッ
衛生師「……おい、離せ……ッ 火が……ッ」
剣士「お前の言う通り。『王』を絶やさない為に」
衛生師「……離せ、剣士! 僕は、まだ氏にたく無い……ッ」ブンブンッ
剣士「……まあ、良い。お前を問い詰めるのは後だ」
剣士「鍛冶師の部屋は何処だ?」
衛生師「し、知らない!そんな物……!」
衛生師「……離せ! 僕が、氏んだら……『王』は……!」
剣士「…… ……」ハァ。スッ
衛生師「!?」
衛生師(腕が……ッ)
剣士「……一人で、逃げ出せると思うのか」
衛生師「……!」
ダダダ……ッ バタン!
ゴオォオオ!
衛生師「! ……ッ うわあッ ひ、火が……ッ」
バタン!
剣士「……俺なら連れ出してやれるが?」
衛生師「! ……か、鍛冶師様の、道具を……どうする、気だ!」
剣士「お前に話す必要は無い……もう、時間も無い」
剣士「……勝手に探させて貰う」スタスタ
衛生師「ま、待て……!」
剣士「…… ……」
衛生師「……本当に、連れ出してくれる、んだろうな」
剣士「残って居るんだな?」
衛生師「……多分」
剣士「多分?」
衛生師「……僕は、鍛冶の道具になんて興味は無い!」
衛生師「誰かが処分していないなら……そのまま、ある筈だ」
衛生師「早く! ……火が回る。上だ」
コツン、コツン、コツン……
剣士「……嘘だったら放って行く」
衛生師「僕は……まだ、氏ねない……!」
241: 2014/02/05(水) 17:35:50.31 ID:UifMzoGNP
衛生師「……此処だ。部屋は……そのままの筈だ」
剣士「…… ……」
カチャ
衛生師「は、早くしてくれ!」
剣士(……ッ 埃、黴……)ケホッ
剣士(あった! ……これ、か)ホッ
衛生師「……どうやって運ぶんだよ!」
剣士「少し、黙ってろ」
剣士『后。見つけた』
后『! あったのね!?』
剣士『……青年はどうだ』
后『清められた……のか、場所の所為か解らないけど』
后『随分マシな様よ……長居は、出来ないでしょうけど』
剣士『そうか……こっちへ来れるか』
后『え!?』
剣士『……人と、道具。どちらも運べない』
后『……人!?』
衛生師「おい、剣士! ……何やってるんだ!早く……!」
剣士「……黙って居ろ」
剣士『説明は後……頼む。場所は解るか?』
后『……城の中、よね? ……良いわ。貴方の気配を手繰る』
シュゥン!
衛生師「! ……ま、魔法使い……!?」
后「王様!?」
剣士「…… ……こっちの、道具を頼めるか」
剣士「彼は俺が連れて行く」
后「え……え!?」
剣士「……話は後。先に行くぞ」
シュゥン……ッ
衛生師「! ……道具、毎……消えた……!?」
后「……王様?」
衛生師「ッ」ビク!
后「…… ……とにかく、逃げましょう。掴まって下さい」
衛生師「え、ええ……」ギュッ
衛生師(これは……なんだ!? 何故、勇者の母親が……!?)
シュゥン……!
剣士「…… ……」
カチャ
衛生師「は、早くしてくれ!」
剣士(……ッ 埃、黴……)ケホッ
剣士(あった! ……これ、か)ホッ
衛生師「……どうやって運ぶんだよ!」
剣士「少し、黙ってろ」
剣士『后。見つけた』
后『! あったのね!?』
剣士『……青年はどうだ』
后『清められた……のか、場所の所為か解らないけど』
后『随分マシな様よ……長居は、出来ないでしょうけど』
剣士『そうか……こっちへ来れるか』
后『え!?』
剣士『……人と、道具。どちらも運べない』
后『……人!?』
衛生師「おい、剣士! ……何やってるんだ!早く……!」
剣士「……黙って居ろ」
剣士『説明は後……頼む。場所は解るか?』
后『……城の中、よね? ……良いわ。貴方の気配を手繰る』
シュゥン!
衛生師「! ……ま、魔法使い……!?」
后「王様!?」
剣士「…… ……こっちの、道具を頼めるか」
剣士「彼は俺が連れて行く」
后「え……え!?」
剣士「……話は後。先に行くぞ」
シュゥン……ッ
衛生師「! ……道具、毎……消えた……!?」
后「……王様?」
衛生師「ッ」ビク!
后「…… ……とにかく、逃げましょう。掴まって下さい」
衛生師「え、ええ……」ギュッ
衛生師(これは……なんだ!? 何故、勇者の母親が……!?)
シュゥン……!
242: 2014/02/05(水) 17:53:05.14 ID:UifMzoGNP
……
………
…………
魔王「…… ……」
魔王(……何度も、何度も……繰り返される『世界』)
金魔「……説明するより、見た方が早かった、だろう?」
魔王「信じられん! ……これが、『繰り返される運命の輪』……!?」
金魔「……『過去』だ。だが……お前は。『黒い髪の勇者』は」
魔王「え?」
金魔「『違う道を歩み始めた』……俺は『間違えては居なかった』」
魔王「……俺が、父さんを……頃した、時に言ってた、な」
金魔「お前、さっき……『現在』を見ただろう?」
魔王「え?」
金魔「……衛生師、だったか。あいつが……始まりの国の地下で」
金魔「及んだ愚行」
魔王「あ、ああ……でも、アレも『過去』じゃ無いか」
金魔「……俺にとっては『未来』だ」
魔王「……え?」
金魔「初めて見る、んだよ」
金魔「こうして……お前に。自分の息子に、『勇者』に」
金魔「……倒される度に、何度も何度も……同じ光景を見せられた」
魔王「…… ……」
金魔「俺達は『過去』しか見られない……筈なんだ」
魔王「だから……アレは、過去……」
金魔「お前にしてみれば、な。俺は……見た事が無い。ああ、もう」
金魔「どう言えばいいか……」ハァ
シュゥン……
魔王「…… ……?」
金髪紫瞳の男「『分岐』したんだ……それで良いんじゃないか」
魔王「……青年、か」
金魔「分岐……ああ、そう、か。それで良いのかな」
魔王「……?」
金魔「……自分の息子だけど、お前……頭悪い、よな」ハァ
魔王「な! と、父さんの説明が悪い!」
………
…………
魔王「…… ……」
魔王(……何度も、何度も……繰り返される『世界』)
金魔「……説明するより、見た方が早かった、だろう?」
魔王「信じられん! ……これが、『繰り返される運命の輪』……!?」
金魔「……『過去』だ。だが……お前は。『黒い髪の勇者』は」
魔王「え?」
金魔「『違う道を歩み始めた』……俺は『間違えては居なかった』」
魔王「……俺が、父さんを……頃した、時に言ってた、な」
金魔「お前、さっき……『現在』を見ただろう?」
魔王「え?」
金魔「……衛生師、だったか。あいつが……始まりの国の地下で」
金魔「及んだ愚行」
魔王「あ、ああ……でも、アレも『過去』じゃ無いか」
金魔「……俺にとっては『未来』だ」
魔王「……え?」
金魔「初めて見る、んだよ」
金魔「こうして……お前に。自分の息子に、『勇者』に」
金魔「……倒される度に、何度も何度も……同じ光景を見せられた」
魔王「…… ……」
金魔「俺達は『過去』しか見られない……筈なんだ」
魔王「だから……アレは、過去……」
金魔「お前にしてみれば、な。俺は……見た事が無い。ああ、もう」
金魔「どう言えばいいか……」ハァ
シュゥン……
魔王「…… ……?」
金髪紫瞳の男「『分岐』したんだ……それで良いんじゃないか」
魔王「……青年、か」
金魔「分岐……ああ、そう、か。それで良いのかな」
魔王「……?」
金魔「……自分の息子だけど、お前……頭悪い、よな」ハァ
魔王「な! と、父さんの説明が悪い!」
243: 2014/02/05(水) 18:07:23.91 ID:UifMzoGNP
金髪紫瞳の男「……紫の魔王は『終わった』」
魔王「え?」
金髪紫瞳の男「文字通り……『終わった』んだ……彼は、もう」
金髪紫瞳の男「この『世界』の何処にも存在しない」
魔王「……そ、そりゃ……父さんが倒した、からじゃないのか」
金魔「『俺はあいつ』『あいつは俺』だ」
金魔「……あいつが『終わった』なら、何故俺は……ここに居る?」
魔王「あ……」
金髪紫瞳の男「紫の魔王の側近も……もう居ない」
金魔「ああ、俺だけじゃ無いな……『剣士』もまだ『終わっていない』」
魔王「……ん、ん?」
金髪紫瞳の男「『特異点』」
魔王「…… ……」
金魔「考えるの放棄すんな」
魔王「し、してねぇよ!」
金魔「……今までは。ここで、こうして……何度も何度も繰り返される」
金魔「繰り返されてきた、過去しか見る事はできなかった」
金魔「勿論、干渉する事も、何かを変えることも」
金髪紫瞳の男「何も知らないまま、同じ過ちを繰り返し」
金髪紫瞳の男「今度こそはと願っても……何も、変わらなかった」
金魔「……だが、お前は違った」
魔王「え……」
金髪紫瞳の男「……ほら、始まる」
魔王「え、え!?」
金魔「……『自分が生きた時代の夢』自体」
金魔「見れなかった筈、何だよな」
金髪紫瞳の男「……ああ」
魔王「な、何の話してるんだよ!?」
金髪紫瞳の男「良いから……見ろ。魔王」
魔王「……ッ」
パアアアアァァ……ッ
魔王「え?」
金髪紫瞳の男「文字通り……『終わった』んだ……彼は、もう」
金髪紫瞳の男「この『世界』の何処にも存在しない」
魔王「……そ、そりゃ……父さんが倒した、からじゃないのか」
金魔「『俺はあいつ』『あいつは俺』だ」
金魔「……あいつが『終わった』なら、何故俺は……ここに居る?」
魔王「あ……」
金髪紫瞳の男「紫の魔王の側近も……もう居ない」
金魔「ああ、俺だけじゃ無いな……『剣士』もまだ『終わっていない』」
魔王「……ん、ん?」
金髪紫瞳の男「『特異点』」
魔王「…… ……」
金魔「考えるの放棄すんな」
魔王「し、してねぇよ!」
金魔「……今までは。ここで、こうして……何度も何度も繰り返される」
金魔「繰り返されてきた、過去しか見る事はできなかった」
金魔「勿論、干渉する事も、何かを変えることも」
金髪紫瞳の男「何も知らないまま、同じ過ちを繰り返し」
金髪紫瞳の男「今度こそはと願っても……何も、変わらなかった」
金魔「……だが、お前は違った」
魔王「え……」
金髪紫瞳の男「……ほら、始まる」
魔王「え、え!?」
金魔「……『自分が生きた時代の夢』自体」
金魔「見れなかった筈、何だよな」
金髪紫瞳の男「……ああ」
魔王「な、何の話してるんだよ!?」
金髪紫瞳の男「良いから……見ろ。魔王」
魔王「……ッ」
パアアアアァァ……ッ
244: 2014/02/05(水) 18:15:05.24 ID:UifMzoGNP
僧侶『……勇者様』
勇者『ん?』
僧侶『私……ずっと、貴方の事を考えて居ました』
勇者『え!?』
僧侶『光だから惹かれるのか。貴方だから……なのか』ジッ
魔王(……ん ……あ!)
勇者『……ッ』ドキッ
僧侶『……世界の謎を知りたい。エルフと言う物を。母を、私を……知りたい』
勇者『…… ……』
魔王(アレは……俺と、癒し手……!)
魔王(……どこ、だったっけ……ええと……)
僧侶『不純な動機……です。だから、とそれが全てでは無いけれど』
僧侶『貴方と共に行かなければ、と思いました』
勇者『僧侶…… ……』
僧侶『この気持ちが……何なのか、良く解らないのです』
勇者『…… ……』ドキドキ
魔王(あ、そうだ……鍛冶師の村に向かう途中の、船……)
魔王(……そうだ。俺……最初は、癒し手に……僧侶に……惹かれて)
僧侶『だけど…… ……』
勇者『そ、うりょ……』スッ
僧侶『!』ドキッ
勇者『…… ……目、閉じて』
魔王(でも、駄目なんだ……そうじゃない……!)
魔王(……そうじゃ無いんだ! 違う……!)
僧侶『は、い…… ……』ソッ
勇者『…… ……』
僧侶『…… ……』
魔王『違う!』
??『違う!』
勇者『!』
僧侶『!?』
魔王(あ! ……声、が……出た!? ……否 ……ッ)
魔王(……今、の……こえ、は……!?)
パアアアァ……ッ
魔王(! ん、この……光、は…… ……!?)
勇者『ん?』
僧侶『私……ずっと、貴方の事を考えて居ました』
勇者『え!?』
僧侶『光だから惹かれるのか。貴方だから……なのか』ジッ
魔王(……ん ……あ!)
勇者『……ッ』ドキッ
僧侶『……世界の謎を知りたい。エルフと言う物を。母を、私を……知りたい』
勇者『…… ……』
魔王(アレは……俺と、癒し手……!)
魔王(……どこ、だったっけ……ええと……)
僧侶『不純な動機……です。だから、とそれが全てでは無いけれど』
僧侶『貴方と共に行かなければ、と思いました』
勇者『僧侶…… ……』
僧侶『この気持ちが……何なのか、良く解らないのです』
勇者『…… ……』ドキドキ
魔王(あ、そうだ……鍛冶師の村に向かう途中の、船……)
魔王(……そうだ。俺……最初は、癒し手に……僧侶に……惹かれて)
僧侶『だけど…… ……』
勇者『そ、うりょ……』スッ
僧侶『!』ドキッ
勇者『…… ……目、閉じて』
魔王(でも、駄目なんだ……そうじゃない……!)
魔王(……そうじゃ無いんだ! 違う……!)
僧侶『は、い…… ……』ソッ
勇者『…… ……』
僧侶『…… ……』
魔王『違う!』
??『違う!』
勇者『!』
僧侶『!?』
魔王(あ! ……声、が……出た!? ……否 ……ッ)
魔王(……今、の……こえ、は……!?)
パアアアァ……ッ
魔王(! ん、この……光、は…… ……!?)
245: 2014/02/05(水) 18:38:11.88 ID:UifMzoGNP
魔王「…… ……あ、あれ?」
金魔「どうした……自分のラブシーンは恥ずかしいか」クス
魔王「うわあッ ……い、居た、のかよ……」
魔王「……否、それより、今……」
金魔「……ん?」
魔王「俺……声が、出た……」
金魔「…… ……」
魔王「あの声は……あの時の、『違う』って、声は……」
魔王(俺自身……だった、のか?)
金髪紫瞳の男「……俺達は『過去しか見れない』筈だった」
金魔「さっき言っただろう。これは『俺にとっては未来』だと」
魔王「……ええ、と。それは……『繰り返し』から」
魔王「外れているから……って、事で良いのか」
金魔「……確定、では無いだろうけどな。でも確かに」
金魔「こんな物は見たことが無い」
魔王「……でも」
金魔「ん?」
魔王「もし、あの時……俺が、止めて無くて」
魔王「……もし、俺と癒し手が…… ……あれ?」
金魔「どうした?」
魔王「……もう一つ。声が……聞こえた」
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「『違う』と、確かに……それに……」
魔王(あの……蒼い、光。どこかで……)
魔王(俺……知ってる?)
金魔「…… ……『特異点』だよ。魔王」
魔王「え?」
金魔「特異点って、何の事だ?」
魔王「え……剣士、か…… ……癒し、手……」
シュゥン……!
癒し手「……あの時、あの『違う』と言う声は」
魔王「!?」
癒し手「間違い無く……私の声、でした」
魔王「な……ッ なん、で……!?」
金魔「どうした……自分のラブシーンは恥ずかしいか」クス
魔王「うわあッ ……い、居た、のかよ……」
魔王「……否、それより、今……」
金魔「……ん?」
魔王「俺……声が、出た……」
金魔「…… ……」
魔王「あの声は……あの時の、『違う』って、声は……」
魔王(俺自身……だった、のか?)
金髪紫瞳の男「……俺達は『過去しか見れない』筈だった」
金魔「さっき言っただろう。これは『俺にとっては未来』だと」
魔王「……ええ、と。それは……『繰り返し』から」
魔王「外れているから……って、事で良いのか」
金魔「……確定、では無いだろうけどな。でも確かに」
金魔「こんな物は見たことが無い」
魔王「……でも」
金魔「ん?」
魔王「もし、あの時……俺が、止めて無くて」
魔王「……もし、俺と癒し手が…… ……あれ?」
金魔「どうした?」
魔王「……もう一つ。声が……聞こえた」
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「『違う』と、確かに……それに……」
魔王(あの……蒼い、光。どこかで……)
魔王(俺……知ってる?)
金魔「…… ……『特異点』だよ。魔王」
魔王「え?」
金魔「特異点って、何の事だ?」
魔王「え……剣士、か…… ……癒し、手……」
シュゥン……!
癒し手「……あの時、あの『違う』と言う声は」
魔王「!?」
癒し手「間違い無く……私の声、でした」
魔王「な……ッ なん、で……!?」
249: 2014/02/06(木) 16:45:12.48 ID:20l19zaUP
癒し手「…… ……」
金髪紫瞳の男「言っただろう。俺達は……」
魔王「『過去』しか見るしか出来ない……」
金髪紫瞳の男「……そうだ。勿論……『干渉する事』もできない」
癒し手「でも『違い』ました」
魔王「癒し手……」
金魔「……此処に居られるのは『勇者か魔王』だけだった筈、なんだがな」
金髪紫瞳の男「紫の瞳の側近も居ただろう」
金魔「あいつは……『紫の魔王の瞳』を持っていたからだろう?」
金髪紫瞳の男「自分で言っていただろう……あいつは」
癒し手「『特異点』」
魔王「!? 紫の魔王の側近……も!? 特異点!?」
金魔「『特異点』とは何だ、魔王」
魔王「え?」
金魔「……紫の魔王の側近は、俺に、そう問うた」
魔王「え……えっと……」
癒し手「『特異点』とは……何かしらの『基準』があって、それに当てはまらない事象」
癒し手「それを指す、言葉……だった筈、です」
金魔「そうだ……彼は結局、最後までは教えてくれなかったけど、な」
魔王「…… ……」
金魔「お前も見ただろう……『世界』は何だった」
魔王「『世界』……赤ん坊……? あの、双子の……」
金髪紫瞳の男「……『光と闇』は『表裏一体』である筈……否」
癒し手「そう、あるべきである……もの」
魔王「癒し手……?」
癒し手「『光』無くしては『闇』は存在出来ないのです、魔王様」
癒し手「……私も、見ました」
魔王「え!?」
癒し手「此処では……無かったような。此処だったような」
癒し手「場所は解りません。だけど……心地よく揺蕩う中で」
癒し手「……『双子』は『全き光』と『全き闇』に引き裂かれ」
癒し手「そうして……『世界』は産まれた」
金髪紫瞳の男「言っただろう。俺達は……」
魔王「『過去』しか見るしか出来ない……」
金髪紫瞳の男「……そうだ。勿論……『干渉する事』もできない」
癒し手「でも『違い』ました」
魔王「癒し手……」
金魔「……此処に居られるのは『勇者か魔王』だけだった筈、なんだがな」
金髪紫瞳の男「紫の瞳の側近も居ただろう」
金魔「あいつは……『紫の魔王の瞳』を持っていたからだろう?」
金髪紫瞳の男「自分で言っていただろう……あいつは」
癒し手「『特異点』」
魔王「!? 紫の魔王の側近……も!? 特異点!?」
金魔「『特異点』とは何だ、魔王」
魔王「え?」
金魔「……紫の魔王の側近は、俺に、そう問うた」
魔王「え……えっと……」
癒し手「『特異点』とは……何かしらの『基準』があって、それに当てはまらない事象」
癒し手「それを指す、言葉……だった筈、です」
金魔「そうだ……彼は結局、最後までは教えてくれなかったけど、な」
魔王「…… ……」
金魔「お前も見ただろう……『世界』は何だった」
魔王「『世界』……赤ん坊……? あの、双子の……」
金髪紫瞳の男「……『光と闇』は『表裏一体』である筈……否」
癒し手「そう、あるべきである……もの」
魔王「癒し手……?」
癒し手「『光』無くしては『闇』は存在出来ないのです、魔王様」
癒し手「……私も、見ました」
魔王「え!?」
癒し手「此処では……無かったような。此処だったような」
癒し手「場所は解りません。だけど……心地よく揺蕩う中で」
癒し手「……『双子』は『全き光』と『全き闇』に引き裂かれ」
癒し手「そうして……『世界』は産まれた」
250: 2014/02/06(木) 16:55:05.34 ID:20l19zaUP
魔王「……願わされた、って奴か」
癒し手「『支配する為の世界』と『支配する為の世界』……」
癒し手「……一緒、です。『光』と『闇』」
魔王「え……?」
癒し手「揶揄ですけどね……でも、一緒なんです」
金魔「さっき、紫の魔王の側近に『特異点』とは何だと問われた、と言っただろう?」
金魔「俺は、最初『紫の魔王』だと答えた」
金魔「奴は、何だ?」
魔王「え、え!?」
癒し手「『紫の魔王』は『器』」
金髪紫瞳の男「……『金の髪の勇者』は?」
魔王「え、ええええ、えっと!?」
金魔「……俺は『中身』だ」
魔王「あ、ああ……う、うん」
金魔「……我が息子ながら」ハァ
魔王「ため息着くなよ……」
金魔「『特異点』は『紫の魔王』と『金の髪の勇者』だ」
金髪紫瞳の男「『闇』と『光』」
癒し手「生の理を介さず……産まれてしまった『特異点』」
魔王「!」
癒し手「『全く光』と『全き闇』です……魔王様」
魔王「双子と……一緒!? で、でも!」
魔王「双子は……お、お前、の!」ジィ
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「…… ……あれ?お前は…… ……何、だ?」
金髪紫瞳の男「俺も『特異点』だ」
金髪紫瞳の男「……『魔王』を倒し、『魔王にならなかった元勇者』」
魔王「!」
癒し手「……だけどあの双子は…… ……」
金髪紫瞳の男「そうだ。あいつらも『瞳の色を変えてしまった者』」
魔王「あ……!」
金髪紫瞳の男「光を世界に放った俺は、『勇者』では無くなった」
金髪紫瞳の男「だが、『魔王にもなれなかった』者」
癒し手「『支配する為の世界』と『支配する為の世界』……」
癒し手「……一緒、です。『光』と『闇』」
魔王「え……?」
癒し手「揶揄ですけどね……でも、一緒なんです」
金魔「さっき、紫の魔王の側近に『特異点』とは何だと問われた、と言っただろう?」
金魔「俺は、最初『紫の魔王』だと答えた」
金魔「奴は、何だ?」
魔王「え、え!?」
癒し手「『紫の魔王』は『器』」
金髪紫瞳の男「……『金の髪の勇者』は?」
魔王「え、ええええ、えっと!?」
金魔「……俺は『中身』だ」
魔王「あ、ああ……う、うん」
金魔「……我が息子ながら」ハァ
魔王「ため息着くなよ……」
金魔「『特異点』は『紫の魔王』と『金の髪の勇者』だ」
金髪紫瞳の男「『闇』と『光』」
癒し手「生の理を介さず……産まれてしまった『特異点』」
魔王「!」
癒し手「『全く光』と『全き闇』です……魔王様」
魔王「双子と……一緒!? で、でも!」
魔王「双子は……お、お前、の!」ジィ
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「…… ……あれ?お前は…… ……何、だ?」
金髪紫瞳の男「俺も『特異点』だ」
金髪紫瞳の男「……『魔王』を倒し、『魔王にならなかった元勇者』」
魔王「!」
癒し手「……だけどあの双子は…… ……」
金髪紫瞳の男「そうだ。あいつらも『瞳の色を変えてしまった者』」
魔王「あ……!」
金髪紫瞳の男「光を世界に放った俺は、『勇者』では無くなった」
金髪紫瞳の男「だが、『魔王にもなれなかった』者」
251: 2014/02/06(木) 17:03:16.25 ID:20l19zaUP
金髪紫瞳の男「瞳は金の侭……手の勇者の印は闇に染まり」
魔王(! 『光』と『闇』……ッ)
癒し手「そうして、『子』……『次代』を産んだ」
金魔「『光』と『闇』は……どちらを欠いても存在出来ない」
魔王「……だから、双子……だった、のか?」
癒し手「……そうなのかもしれません。交われる様に」
魔王「!」
金魔「……何度も見る中で、気がついたか否か解らんが」
癒し手「男の子が『闇』だったら、女の子は……『光』」
金髪紫瞳の男「……娘が『闇』の時は息子が必ず『光』だった」
魔王「……!」
癒し手「『揃って』いれば……『世界』は産まれるのです」
金魔「そうして、二人は混じりあい、『光』を『世界』に託して」
金髪紫瞳の男「二人は……必ず『闇』になる」
魔王「……ッ そ、そんな! ……でも、それじゃ……!」
金魔「『何時までたっても終わらない』だろ?」
魔王「あ…… ……ああ」
金魔「……俺もそう思ったよ」
魔王「え……?」
金髪紫瞳の男「だが、お前は……確実に『違う道を歩み出した』」
魔王「!?」
金髪紫瞳の男「『干渉』してしまった」
魔王「あ!」
魔王(さっきの……か……! あ、でも!)
魔王「お、俺だけじゃないじゃないか! 癒し手も……ッ !?」
魔王「……そうだ。何で……何で癒し手が、此処にいるんだ……?」
魔王「い、いくら『特異点』だからって……!」
癒し手「……そうですね。此処には、生ある身では……」
魔王「え!?」
癒し手「『来られません』から。私は…… ……」
癒し手「もう、氏んだんです。魔王様」
魔王「!?」
癒し手「『終わった』んです……魔王様」
魔王「…… ……ッ」
金魔「それは、まだだ。癒し手」
癒し手「……でも、『変わった』」
癒し手「『違う』んです……貴方は『間違えて居なかった』……金の髪の魔王様」
魔王(! 『光』と『闇』……ッ)
癒し手「そうして、『子』……『次代』を産んだ」
金魔「『光』と『闇』は……どちらを欠いても存在出来ない」
魔王「……だから、双子……だった、のか?」
癒し手「……そうなのかもしれません。交われる様に」
魔王「!」
金魔「……何度も見る中で、気がついたか否か解らんが」
癒し手「男の子が『闇』だったら、女の子は……『光』」
金髪紫瞳の男「……娘が『闇』の時は息子が必ず『光』だった」
魔王「……!」
癒し手「『揃って』いれば……『世界』は産まれるのです」
金魔「そうして、二人は混じりあい、『光』を『世界』に託して」
金髪紫瞳の男「二人は……必ず『闇』になる」
魔王「……ッ そ、そんな! ……でも、それじゃ……!」
金魔「『何時までたっても終わらない』だろ?」
魔王「あ…… ……ああ」
金魔「……俺もそう思ったよ」
魔王「え……?」
金髪紫瞳の男「だが、お前は……確実に『違う道を歩み出した』」
魔王「!?」
金髪紫瞳の男「『干渉』してしまった」
魔王「あ!」
魔王(さっきの……か……! あ、でも!)
魔王「お、俺だけじゃないじゃないか! 癒し手も……ッ !?」
魔王「……そうだ。何で……何で癒し手が、此処にいるんだ……?」
魔王「い、いくら『特異点』だからって……!」
癒し手「……そうですね。此処には、生ある身では……」
魔王「え!?」
癒し手「『来られません』から。私は…… ……」
癒し手「もう、氏んだんです。魔王様」
魔王「!?」
癒し手「『終わった』んです……魔王様」
魔王「…… ……ッ」
金魔「それは、まだだ。癒し手」
癒し手「……でも、『変わった』」
癒し手「『違う』んです……貴方は『間違えて居なかった』……金の髪の魔王様」
252: 2014/02/06(木) 17:17:09.50 ID:20l19zaUP
金魔「……そう言って貰えると嬉しいね」クス
金魔「でも、まだだよ……俺が、先だ」
癒し手「……はい」
魔王「ちょ、待て待て待て! なんか、何だよ!? おい!」
金髪紫瞳の男「……落ち着けよ」ハァ
魔王「何でそんな、あの、何!?」
癒し手「ま、魔王様……」
魔王「……解らん! もう!」
金魔「拗ねるなよ」ハァ
魔王「拗ねてないわ!」
癒し手「……あの。すみません」
金魔「癒し手が謝る事じゃ無いよ」
魔王「…… ……もし、さ」
金魔「ん?」
魔王「あの時……俺と、癒し手が……その。くっついてたら、さ」
魔王「また……『違う未来』があった、のかな」
金髪紫瞳の男「……見たいか?」
金魔「見れるのか?」
金髪紫瞳の男「さあ、どうだろう……もし、そうであったなら、だ」
魔王「……いや、良いよ。人生に『もし』なんてネェよ」
癒し手「でも……あそこで、もし」
癒し手「私や、魔王様の『干渉』が無ければ……この『繰り返される運命の輪』は」
癒し手「……断ち切れていた、のかもしれません。もっと……早くに」
魔王「え……?」
金髪紫瞳の男「…… ……」
金魔「…… ……」
魔王「な、なんで?」
金髪紫瞳の男「……さっき言っただろう。此処は」
金髪紫瞳の男「『特異点』しか来られない」
金魔「でも、まだだよ……俺が、先だ」
癒し手「……はい」
魔王「ちょ、待て待て待て! なんか、何だよ!? おい!」
金髪紫瞳の男「……落ち着けよ」ハァ
魔王「何でそんな、あの、何!?」
癒し手「ま、魔王様……」
魔王「……解らん! もう!」
金魔「拗ねるなよ」ハァ
魔王「拗ねてないわ!」
癒し手「……あの。すみません」
金魔「癒し手が謝る事じゃ無いよ」
魔王「…… ……もし、さ」
金魔「ん?」
魔王「あの時……俺と、癒し手が……その。くっついてたら、さ」
魔王「また……『違う未来』があった、のかな」
金髪紫瞳の男「……見たいか?」
金魔「見れるのか?」
金髪紫瞳の男「さあ、どうだろう……もし、そうであったなら、だ」
魔王「……いや、良いよ。人生に『もし』なんてネェよ」
癒し手「でも……あそこで、もし」
癒し手「私や、魔王様の『干渉』が無ければ……この『繰り返される運命の輪』は」
癒し手「……断ち切れていた、のかもしれません。もっと……早くに」
魔王「え……?」
金髪紫瞳の男「…… ……」
金魔「…… ……」
魔王「な、なんで?」
金髪紫瞳の男「……さっき言っただろう。此処は」
金髪紫瞳の男「『特異点』しか来られない」
253: 2014/02/06(木) 17:26:26.41 ID:20l19zaUP
金魔「『紫の魔王』『俺』『紫の魔王の側近』」
金髪紫瞳の男「『魔王』……お前、だな」
魔王「…… ……」
金髪紫瞳の男「それから……『女魔王』」
魔王「え!?」
金髪紫瞳の男「唯一の女勇者。唯一の女魔王」
金髪紫瞳の男「……お前の娘で、俺の母だ」
魔王「……!」
癒し手「『その腹で勇者を育む魔王』様です」
魔王「な……ッ 終わらないのか!? どうして……!」
癒し手「……『彼』が失われて居ないのが、何よりの証拠では無いでしょうか」スッ
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「そうだ……お前、『青年』って……」
金髪紫瞳の男「……俺は、『最強の魔王』を倒し、父の名を貰ったからな」
魔王「! ……そ、ん……ッ」
癒し手「彼が此処に要る……と、言う事は……まだ、終わらないと言う事、でしょう」
金髪紫瞳の男「……だろうな」ハァ
金髪紫瞳の男「『女魔王』も特異点……説明する必要もないよな?」
魔王「……では、お前は?」
金髪紫瞳の男「さっき言った通りだ」
金髪紫瞳の男「『唯一、魔王にならなかった勇者』」
魔王「…… ……」
金魔「あれ? ……でも」
金髪紫瞳の男「ん?」
金魔「女剣士様は……何で……」
金髪紫瞳の男「……あれは……『夢』だ」
癒し手「夢?」
金髪紫瞳の男「推測でしかないが……『もう一度紫の魔王の側近に会いたい』と」
金髪紫瞳の男「……願った、彼女の。『強くて弱い人間』が」
金髪紫瞳の男「昼夜問わず。願った『夢』」
癒し手「……ロマンチックですね」クス
金髪紫瞳の男「『魔王』……お前、だな」
魔王「…… ……」
金髪紫瞳の男「それから……『女魔王』」
魔王「え!?」
金髪紫瞳の男「唯一の女勇者。唯一の女魔王」
金髪紫瞳の男「……お前の娘で、俺の母だ」
魔王「……!」
癒し手「『その腹で勇者を育む魔王』様です」
魔王「な……ッ 終わらないのか!? どうして……!」
癒し手「……『彼』が失われて居ないのが、何よりの証拠では無いでしょうか」スッ
金髪紫瞳の男「…… ……」
魔王「そうだ……お前、『青年』って……」
金髪紫瞳の男「……俺は、『最強の魔王』を倒し、父の名を貰ったからな」
魔王「! ……そ、ん……ッ」
癒し手「彼が此処に要る……と、言う事は……まだ、終わらないと言う事、でしょう」
金髪紫瞳の男「……だろうな」ハァ
金髪紫瞳の男「『女魔王』も特異点……説明する必要もないよな?」
魔王「……では、お前は?」
金髪紫瞳の男「さっき言った通りだ」
金髪紫瞳の男「『唯一、魔王にならなかった勇者』」
魔王「…… ……」
金魔「あれ? ……でも」
金髪紫瞳の男「ん?」
金魔「女剣士様は……何で……」
金髪紫瞳の男「……あれは……『夢』だ」
癒し手「夢?」
金髪紫瞳の男「推測でしかないが……『もう一度紫の魔王の側近に会いたい』と」
金髪紫瞳の男「……願った、彼女の。『強くて弱い人間』が」
金髪紫瞳の男「昼夜問わず。願った『夢』」
癒し手「……ロマンチックですね」クス
254: 2014/02/06(木) 17:40:19.12 ID:20l19zaUP
魔王「……なら、俺は……俺も、願えば」
魔王「氏んだ後……娘に倒された後、后に会えるのか?」
金魔「…… ……」
金髪紫瞳の男「…… ……」
癒し手「……あ、の?」
金魔「癒し手を前にして、言うのも……あれだが」
癒し手「え……?」
金髪紫瞳の男「『姫』には会えなかったな。紫の魔王は」
癒し手「!」
金魔「俺も。前后……お前の母さんにも、会えてない」
魔王「!」
金魔「魔導将軍にも、前側近にもな」
金髪紫瞳の男「……あの二人は」
金魔「……ああ、そうか」
魔王「な、なんだよ?」
金髪紫瞳の男「……俺もだ。双子の母には……会えてないよ」
癒し手「え……」
魔王「じゃあ、なんで……女剣士様だけ……!」
金魔「……まだまだ、謎だらけ……なのかもな」
金魔「何せ、お前は『違った道を歩み出した』」
金魔「俺は『間違えては居なかった』」
金魔「……言っただろう? 俺達は『過去』しか見られない……筈、だった」
金魔「だが、これは……お前と、癒し手にとっては『現在』で」
癒し手「…… ……」
金髪紫瞳の男「金の魔王と、俺に取ったら……『未来』だ。今は、まだ」
魔王「『今は』?」
金髪紫瞳の男「……何れ、解る」
癒し手「……あ!」
魔王「な、何だ!?」
癒し手「…… ……ッ 始まりの、国が…… 城が!?」
魔王「え……ッ!?」
魔王「氏んだ後……娘に倒された後、后に会えるのか?」
金魔「…… ……」
金髪紫瞳の男「…… ……」
癒し手「……あ、の?」
金魔「癒し手を前にして、言うのも……あれだが」
癒し手「え……?」
金髪紫瞳の男「『姫』には会えなかったな。紫の魔王は」
癒し手「!」
金魔「俺も。前后……お前の母さんにも、会えてない」
魔王「!」
金魔「魔導将軍にも、前側近にもな」
金髪紫瞳の男「……あの二人は」
金魔「……ああ、そうか」
魔王「な、なんだよ?」
金髪紫瞳の男「……俺もだ。双子の母には……会えてないよ」
癒し手「え……」
魔王「じゃあ、なんで……女剣士様だけ……!」
金魔「……まだまだ、謎だらけ……なのかもな」
金魔「何せ、お前は『違った道を歩み出した』」
金魔「俺は『間違えては居なかった』」
金魔「……言っただろう? 俺達は『過去』しか見られない……筈、だった」
金魔「だが、これは……お前と、癒し手にとっては『現在』で」
癒し手「…… ……」
金髪紫瞳の男「金の魔王と、俺に取ったら……『未来』だ。今は、まだ」
魔王「『今は』?」
金髪紫瞳の男「……何れ、解る」
癒し手「……あ!」
魔王「な、何だ!?」
癒し手「…… ……ッ 始まりの、国が…… 城が!?」
魔王「え……ッ!?」
256: 2014/02/06(木) 17:53:07.35 ID:20l19zaUP
……
………
…………
パチパチ……パチパチ……ッ
少女(城、が……燃えて、る……ッ)
ドォオオンッ
少女「!」
近衛兵「少女様、早くあちらへ……此処は、危険です……ッ」
少女「……これだけ離れて居れば、音しか聞こえない」
少女「それより、衛生師は……!?」
近衛兵「……王、は……ッ」
少女(彼は、出て来ていない……! まさか……!?)
少女(剣士と一緒だった……まさか、殺されて……!)
少女「…… ……ッ」
少女(……崩れて、行く……ッ)
ガラガラ……ッ
少女「……城、が…… ……ッ」
ポンポン
少女「!」ビクッ
魔導師「……少女、さんですよね?」
少女(こ、ども……?)
魔導師「あの……?」
少女「……君、は?」
魔導師「……魔法使いさんと、剣士さんに頼まれました」
少女「え……?」
魔導師「『少女さんを連れて来い』って」
少女「!」
………
…………
パチパチ……パチパチ……ッ
少女(城、が……燃えて、る……ッ)
ドォオオンッ
少女「!」
近衛兵「少女様、早くあちらへ……此処は、危険です……ッ」
少女「……これだけ離れて居れば、音しか聞こえない」
少女「それより、衛生師は……!?」
近衛兵「……王、は……ッ」
少女(彼は、出て来ていない……! まさか……!?)
少女(剣士と一緒だった……まさか、殺されて……!)
少女「…… ……ッ」
少女(……崩れて、行く……ッ)
ガラガラ……ッ
少女「……城、が…… ……ッ」
ポンポン
少女「!」ビクッ
魔導師「……少女、さんですよね?」
少女(こ、ども……?)
魔導師「あの……?」
少女「……君、は?」
魔導師「……魔法使いさんと、剣士さんに頼まれました」
少女「え……?」
魔導師「『少女さんを連れて来い』って」
少女「!」
257: 2014/02/06(木) 17:59:06.96 ID:20l19zaUP
少女「し、しかし……」
魔導師「……衛生師さんも、一緒です」
少女「……ッ」
近衛兵「こら、何処の子供だ、このお方は……!」
少女「……い、良いんだ」
近衛兵「え?」
少女「ま……街の人の避難を手伝わなくて良いのか」
近衛兵「あ……それは、でも、王が……」
少女「……ッ 王の命令を待たねば、自国の民の命も救えないのか!」
近衛兵「……ッ」ビクッ
少女「此処に彼が居ない以上、『王妃』として命令する! 行け!」
近衛兵「で、でも……ッ」
少女「早く行け!」
魔導師「…… ……」
タタタ……
少女「…… ……」ハァ
魔導師「ご免なさい」
少女「え?」
魔導師「……この炎は、消してしまう訳に行かないんです」
少女「は?」
魔導師「いえ、何でも無いです……行きましょう」
少女「……何処、に」
魔導師「港へ向かう方に、小さい丘があるのはご存じでしょうか」
少女「……あ、ああ」
魔導師「その上に、居ます」
少女(子供の足で……此処まで、一人で来た、と言うのか!?)
魔導師「……身体、冷えてしまいますよ」
魔導師「赤ちゃん、居るんでしょう。お腹の中に」
少女「!」
魔導師「……マントか何か借りてきたら良かったかな……すみません」
少女「……衛生師の、命令か? こんな、小さな子に……」
魔導師「……衛生師さんも、一緒です」
少女「……ッ」
近衛兵「こら、何処の子供だ、このお方は……!」
少女「……い、良いんだ」
近衛兵「え?」
少女「ま……街の人の避難を手伝わなくて良いのか」
近衛兵「あ……それは、でも、王が……」
少女「……ッ 王の命令を待たねば、自国の民の命も救えないのか!」
近衛兵「……ッ」ビクッ
少女「此処に彼が居ない以上、『王妃』として命令する! 行け!」
近衛兵「で、でも……ッ」
少女「早く行け!」
魔導師「…… ……」
タタタ……
少女「…… ……」ハァ
魔導師「ご免なさい」
少女「え?」
魔導師「……この炎は、消してしまう訳に行かないんです」
少女「は?」
魔導師「いえ、何でも無いです……行きましょう」
少女「……何処、に」
魔導師「港へ向かう方に、小さい丘があるのはご存じでしょうか」
少女「……あ、ああ」
魔導師「その上に、居ます」
少女(子供の足で……此処まで、一人で来た、と言うのか!?)
魔導師「……身体、冷えてしまいますよ」
魔導師「赤ちゃん、居るんでしょう。お腹の中に」
少女「!」
魔導師「……マントか何か借りてきたら良かったかな……すみません」
少女「……衛生師の、命令か? こんな、小さな子に……」
258: 2014/02/06(木) 18:14:50.74 ID:20l19zaUP
魔導師「……大丈夫です。ちゃんと守ります」
少女「…… ……君、が?」
魔導師「不安……でしょうけど。大丈夫です」
魔導師「『魔除けの石』の様な物も持ってますから」
少女「え……!?」
魔導師「こっちです」グイ
少女「あ、ちょ、ちょっと……!?」
……
………
…………
青年「…… ……」
青年(空が、真っ赤だ……もう、夜なのに)
青年(……后様の炎。凄いな……そりゃそうか。彼女は……『魔族』)
青年(みるみる、『黒い靄』が飲み込まれていく)
青年(……急に、気分が楽になったのは間違い無く、あれの所為……否、おかげ、か)ハァ
シュゥン!
青年「……后様、もど……ッ」
ドサドサ! スタ!
剣士「…… ……」ハァ
青年「剣士か。后様は?」
剣士「……衛生師を連れてすぐに戻るだろう」
魔導師「……『衛生師』、さん? ……王様は……」
剣士「すぐに解る……魔導師」
魔導師「は、はい?」
剣士「……『少女』と言う女を連れて来てくれないか」
魔導師「少女、さん?」
剣士「『王妃』だ」
魔導師「え……」
剣士「城からは避難している筈だ……紅い髪に、紅い瞳の少女」
剣士「……妊娠している筈だから、ゆっくりで良い」
魔導師「え、で……でも」
剣士「……魔法使いと俺に頼まれた、と言えばいい」
剣士「後……『衛生師』も居る、とな」
魔導師「は……はい、でも、あの……」
剣士「大丈夫だ……癒し手の魔石は、魔除けの効果もあるはずだ」
剣士「……炎に怯え、寄っては来ないだろうがな」
青年「……何がどうなってんのか、説明してくれるんだろう」
剣士「…… ……来たな」
青年「え?」
シュゥン……!
少女「…… ……君、が?」
魔導師「不安……でしょうけど。大丈夫です」
魔導師「『魔除けの石』の様な物も持ってますから」
少女「え……!?」
魔導師「こっちです」グイ
少女「あ、ちょ、ちょっと……!?」
……
………
…………
青年「…… ……」
青年(空が、真っ赤だ……もう、夜なのに)
青年(……后様の炎。凄いな……そりゃそうか。彼女は……『魔族』)
青年(みるみる、『黒い靄』が飲み込まれていく)
青年(……急に、気分が楽になったのは間違い無く、あれの所為……否、おかげ、か)ハァ
シュゥン!
青年「……后様、もど……ッ」
ドサドサ! スタ!
剣士「…… ……」ハァ
青年「剣士か。后様は?」
剣士「……衛生師を連れてすぐに戻るだろう」
魔導師「……『衛生師』、さん? ……王様は……」
剣士「すぐに解る……魔導師」
魔導師「は、はい?」
剣士「……『少女』と言う女を連れて来てくれないか」
魔導師「少女、さん?」
剣士「『王妃』だ」
魔導師「え……」
剣士「城からは避難している筈だ……紅い髪に、紅い瞳の少女」
剣士「……妊娠している筈だから、ゆっくりで良い」
魔導師「え、で……でも」
剣士「……魔法使いと俺に頼まれた、と言えばいい」
剣士「後……『衛生師』も居る、とな」
魔導師「は……はい、でも、あの……」
剣士「大丈夫だ……癒し手の魔石は、魔除けの効果もあるはずだ」
剣士「……炎に怯え、寄っては来ないだろうがな」
青年「……何がどうなってんのか、説明してくれるんだろう」
剣士「…… ……来たな」
青年「え?」
シュゥン……!
259: 2014/02/06(木) 18:23:22.12 ID:20l19zaUP
后「剣士!」
衛生師「う、うわああああああああああああああ!?」
魔導師「……この、方が、王様? ……いえ」
魔導師「え、えっと……」
青年「……衛生師……か」
衛生師「な、な……ッ 何、が……おこっ ……ッ」ウェッ
后「剣士……衛生師、ってどういう事? この方は……」
青年「……違うよ、后様」
后「え?」
青年「…… ……父さん、や……お爺様の、血の気配がしない」
后「!」
衛生師「……ッ」ゲホゲホッ
剣士「……そう言う事だ」
剣士「魔導師、頼めるか?」
魔導師「あ、は……はい!」
タタタ……
后「……どう言う事? 王様……じゃ、無いの?貴方……」
衛生師「そ、そっちこそどう言う事だ!」
衛生師「……貴女は……勇者の母では無いのか!?」
后「あ! 勇者は……!?」
青年「ちゃんと此処に居るよ……はい」スッ
后「ああ……良かった、勇者……」ギュ
勇者(すぅすぅ)
青年「……こんな事態の中で良く寝てるよね」ハァ
衛生師「! 近衛兵長はどうした!?」
青年「近衛兵長?」
衛生師「勇者を助け出せと、言った筈……!」
青年「……ああ、そうか。小屋までは一本道だからね」
青年「僕達は地下牢から戻った后様の転移魔法で此処まで来たから」
青年「会ってないな……知らないよ」
衛生師「て……転移魔法!?」
衛生師「う、うわああああああああああああああ!?」
魔導師「……この、方が、王様? ……いえ」
魔導師「え、えっと……」
青年「……衛生師……か」
衛生師「な、な……ッ 何、が……おこっ ……ッ」ウェッ
后「剣士……衛生師、ってどういう事? この方は……」
青年「……違うよ、后様」
后「え?」
青年「…… ……父さん、や……お爺様の、血の気配がしない」
后「!」
衛生師「……ッ」ゲホゲホッ
剣士「……そう言う事だ」
剣士「魔導師、頼めるか?」
魔導師「あ、は……はい!」
タタタ……
后「……どう言う事? 王様……じゃ、無いの?貴方……」
衛生師「そ、そっちこそどう言う事だ!」
衛生師「……貴女は……勇者の母では無いのか!?」
后「あ! 勇者は……!?」
青年「ちゃんと此処に居るよ……はい」スッ
后「ああ……良かった、勇者……」ギュ
勇者(すぅすぅ)
青年「……こんな事態の中で良く寝てるよね」ハァ
衛生師「! 近衛兵長はどうした!?」
青年「近衛兵長?」
衛生師「勇者を助け出せと、言った筈……!」
青年「……ああ、そうか。小屋までは一本道だからね」
青年「僕達は地下牢から戻った后様の転移魔法で此処まで来たから」
青年「会ってないな……知らないよ」
衛生師「て……転移魔法!?」
260: 2014/02/06(木) 18:31:32.39 ID:20l19zaUP
剣士「……お前に話す必要は無い話だ」
剣士「それより……此方の質問に答えて貰おう」
剣士「『王』は何処だ?」
后「あ……ッ そうよ、貴方が王じゃ無いのなら……!」
衛生師「何度も言っただろう! 王は……僕だ!」
衛生師「嘘など吐いちゃいない! ……僕は……!」
タタタ……
魔導師「剣士さん! 后様!」
少女「! 衛生師……!」
衛生師「違う! ……僕は……ッ」
青年「……一体、何がどうなっているんだか」ハァ
后「私が聞きたいわよ……」
少女「……貴女が、魔法使い……さん」
后「え? ……ええ」
少女(紅い髪……紅い瞳。私と同じ色彩を持つ……)
少女(……魔導国の領主様の、孫娘)
少女(優れた加護を持たない、『出来損ない』と呼ばれるはずだった人)
少女(……腕に抱いているのは、勇者か)ハァ
少女「……もう、観念すればどうだ、衛生師」
衛生師「少女……」
青年「……君」
少女「え?」
青年「……君が、王妃?」
少女「…… ……」
魔導師「青年さん?」
衛生師「!? 青年、だと……!?」
剣士「それより……此方の質問に答えて貰おう」
剣士「『王』は何処だ?」
后「あ……ッ そうよ、貴方が王じゃ無いのなら……!」
衛生師「何度も言っただろう! 王は……僕だ!」
衛生師「嘘など吐いちゃいない! ……僕は……!」
タタタ……
魔導師「剣士さん! 后様!」
少女「! 衛生師……!」
衛生師「違う! ……僕は……ッ」
青年「……一体、何がどうなっているんだか」ハァ
后「私が聞きたいわよ……」
少女「……貴女が、魔法使い……さん」
后「え? ……ええ」
少女(紅い髪……紅い瞳。私と同じ色彩を持つ……)
少女(……魔導国の領主様の、孫娘)
少女(優れた加護を持たない、『出来損ない』と呼ばれるはずだった人)
少女(……腕に抱いているのは、勇者か)ハァ
少女「……もう、観念すればどうだ、衛生師」
衛生師「少女……」
青年「……君」
少女「え?」
青年「……君が、王妃?」
少女「…… ……」
魔導師「青年さん?」
衛生師「!? 青年、だと……!?」
261: 2014/02/06(木) 18:40:24.67 ID:20l19zaUP
衛生師(お父様、お爺様……戦士君と王子の事……否! 馬鹿な!)
衛生師(戦士君の子供ならば、まだ、この……)
衛生師(……この、蒼い瞳の子供よりも小さい筈だ!)
衛生師「は、離れなさい、少女!」
少女「え!?」
衛生師「に、偽物だ、何もかも! ……得体の知れない、女に」ジッ
后「…… ……」
衛生師「魔導国の、勇者だと……ッ」
剣士「…… ……」
衛生師「青年だ等と、名乗って……!」
青年「…… ……」
衛生師「残念だな! 戦士君の子供は、まだそこの子供より小さい!」
衛生師「お前が……お前が、黒幕か!剣士!」
衛生師「やはり、お前は……人では無いのだな……ッ 『少年』!」
剣士「……何故お前が、その名を知ってる?」チラ
少女「…… ……」
剣士「お前は俺を知っていたな……少女、だったか」
少女「……私は魔導国……で育っている。貴方の名を知らない者はあの国には……居ない」
少女「……だが、私は衛生師に貴方の話をした事は無い」
衛生師「少女!?」
少女「……王、はもう居ない」
青年「……どういう意味だ」
少女「『正気を失った王と王子はもみ合いの末、事故で命を失った』」
后「!?」
剣士「な……ッ!?」
少女「『王子を頃してしまった王は、自ら命を絶った』」
魔導師「そ、んな……!」
衛生師「少女!!」
少女「……と、言う『建前』の元」
衛生師「黙れ、だまれだまれええええええええええ!」
少女「衛生師が、『穏便に勇者をこの国に迎える為に王になった』」
衛生師(戦士君の子供ならば、まだ、この……)
衛生師(……この、蒼い瞳の子供よりも小さい筈だ!)
衛生師「は、離れなさい、少女!」
少女「え!?」
衛生師「に、偽物だ、何もかも! ……得体の知れない、女に」ジッ
后「…… ……」
衛生師「魔導国の、勇者だと……ッ」
剣士「…… ……」
衛生師「青年だ等と、名乗って……!」
青年「…… ……」
衛生師「残念だな! 戦士君の子供は、まだそこの子供より小さい!」
衛生師「お前が……お前が、黒幕か!剣士!」
衛生師「やはり、お前は……人では無いのだな……ッ 『少年』!」
剣士「……何故お前が、その名を知ってる?」チラ
少女「…… ……」
剣士「お前は俺を知っていたな……少女、だったか」
少女「……私は魔導国……で育っている。貴方の名を知らない者はあの国には……居ない」
少女「……だが、私は衛生師に貴方の話をした事は無い」
衛生師「少女!?」
少女「……王、はもう居ない」
青年「……どういう意味だ」
少女「『正気を失った王と王子はもみ合いの末、事故で命を失った』」
后「!?」
剣士「な……ッ!?」
少女「『王子を頃してしまった王は、自ら命を絶った』」
魔導師「そ、んな……!」
衛生師「少女!!」
少女「……と、言う『建前』の元」
衛生師「黙れ、だまれだまれええええええええええ!」
少女「衛生師が、『穏便に勇者をこの国に迎える為に王になった』」
262: 2014/02/06(木) 18:42:34.86 ID:20l19zaUP
青年「……お爺様、を……王、を……頃した、のか」
剣士「…… ……ッ」
衛生師「違う! 王子は、王に……ッ」
少女「焚きつけたのはお前だろう、衛生師!」
少女「……そして、止めずに見ていたのも」
衛生師「…… ……ッ」
少女「……その後、王を頃したのは確かにこの男だ」
后「!」
少女「お前は、ことある毎に『権力に興味など無い』と言っていたな」
少女「……『王』を絶やす訳には行かない。盗賊様の遺言だから、と」
剣士「…… ……ッ」
衛生師「違う! 王子は、王に……ッ」
少女「焚きつけたのはお前だろう、衛生師!」
少女「……そして、止めずに見ていたのも」
衛生師「…… ……ッ」
少女「……その後、王を頃したのは確かにこの男だ」
后「!」
少女「お前は、ことある毎に『権力に興味など無い』と言っていたな」
少女「……『王』を絶やす訳には行かない。盗賊様の遺言だから、と」
279: 2014/02/10(月) 09:38:03.05 ID:RX8zmVBqP
衛生師「だま……ッ」
少女「黙るのは貴方だ! こんな事で、ごまかせる訳など無いと言っただろう!」
剣士「…… ……」チャキ
魔導師「剣士さん!?」
剣士「……直接的で無いにしろ、こいつは王子を……王を頃した」
剣士「俺には……許すことは出来ない」
青年「……ッ」
青年(……霧散していく黒い靄が、集まってる? ……ッ息、が苦しい……ッ)
后「……青年?」
青年「……ッ」ハ、ァ
青年(! 剣士の『怒り』に触発されているのか!?)
剣士「…… ……」
青年「待て、剣士……ッ」
魔導師「! 青年さん!?」
后「剣士、待って! ……青年が……ッ」
少女「……?」
衛生師「く、糞……ッ」タタ……ッ
魔導師「あ……ッ」
剣士「風よ!」
シュゥンッ
ザクザク……ッ
衛生師「うわああああッ!?」バタッ
青年「…… ……あ、あッ!」ガクッ
魔導師「青年さん!?」ガシッ
后「落ち着きなさい!剣士! ……青年! 大丈夫!?」
青年「だ、めだ、剣士! ……お前は、『欠片』なんだ!」
剣士「!」ビクッ
青年「……紫の魔王は、怒りでその力を統べる理性を無くしかけたんだぞ!」
后「……え?」
少女「!? 紫の、魔……魔王!?」
少女「黙るのは貴方だ! こんな事で、ごまかせる訳など無いと言っただろう!」
剣士「…… ……」チャキ
魔導師「剣士さん!?」
剣士「……直接的で無いにしろ、こいつは王子を……王を頃した」
剣士「俺には……許すことは出来ない」
青年「……ッ」
青年(……霧散していく黒い靄が、集まってる? ……ッ息、が苦しい……ッ)
后「……青年?」
青年「……ッ」ハ、ァ
青年(! 剣士の『怒り』に触発されているのか!?)
剣士「…… ……」
青年「待て、剣士……ッ」
魔導師「! 青年さん!?」
后「剣士、待って! ……青年が……ッ」
少女「……?」
衛生師「く、糞……ッ」タタ……ッ
魔導師「あ……ッ」
剣士「風よ!」
シュゥンッ
ザクザク……ッ
衛生師「うわああああッ!?」バタッ
青年「…… ……あ、あッ!」ガクッ
魔導師「青年さん!?」ガシッ
后「落ち着きなさい!剣士! ……青年! 大丈夫!?」
青年「だ、めだ、剣士! ……お前は、『欠片』なんだ!」
剣士「!」ビクッ
青年「……紫の魔王は、怒りでその力を統べる理性を無くしかけたんだぞ!」
后「……え?」
少女「!? 紫の、魔……魔王!?」
280: 2014/02/10(月) 09:58:37.45 ID:RX8zmVBqP
衛生師「う、うぅ……ッ 血、血が……ッ」
青年「全く、世話の焼ける……」フラフラ、ガシッ
衛生師「わああああああああ! やめてくれ……ッ」
青年「回復するだけだ……魔導師、君のローブ貸して」
剣士「青年!?」
魔導師「え!?」
青年「また逃げられると困る。適当に手、縛って」
魔導師「あ、は、ハイ!?」
青年「……君と后様には見えるだろう? ……黒い靄は消えてないんだ」
青年「僕にはハッキリ見える。剣士の……怒り、に。この男の血に」
青年「……あの触手は歓喜してる」
后「!」
少女(な……何なんだ、こいつら、は……!?)
少女(黒い靄?触手? ……何の、話)キョロ
青年「……失血氏されたら困るからね」パァ
衛生師「……ッ」
剣士「…… ……」
魔導師「今、どうなっているんです?」
后「……黒い靄が完全に無くなっていない、のは私にも解るわ」
青年「城を焼いただけじゃ……遅かったのかもしれない」
少女「……さっきから、貴女達は何の話をしているんだ?」
少女「黒い靄だの、何だの……」
青年「……先に聞くけれど。街の人達は放って置いていいのか」
少女「え? ……あ……」
魔導師「先ほど、少女さんが『王妃』として命令されていましたよ」
魔導師「『助けろ』ってね」
青年「……ああ。近衛兵、とやらがいるんだっけね」
衛生師「……君は、そんな……ッ」
少女「『建前』であっても、お前は王で私は王妃だ」
青年「…… ……君のそのお腹の子。王の子では無いだろう」
少女「! …… ……ああ。この子の父親は、この男だ」
剣士「何……?」
后「落ち着いて、剣士…… ……『血』を感じないのね」
青年「……ああ」
青年「全く、世話の焼ける……」フラフラ、ガシッ
衛生師「わああああああああ! やめてくれ……ッ」
青年「回復するだけだ……魔導師、君のローブ貸して」
剣士「青年!?」
魔導師「え!?」
青年「また逃げられると困る。適当に手、縛って」
魔導師「あ、は、ハイ!?」
青年「……君と后様には見えるだろう? ……黒い靄は消えてないんだ」
青年「僕にはハッキリ見える。剣士の……怒り、に。この男の血に」
青年「……あの触手は歓喜してる」
后「!」
少女(な……何なんだ、こいつら、は……!?)
少女(黒い靄?触手? ……何の、話)キョロ
青年「……失血氏されたら困るからね」パァ
衛生師「……ッ」
剣士「…… ……」
魔導師「今、どうなっているんです?」
后「……黒い靄が完全に無くなっていない、のは私にも解るわ」
青年「城を焼いただけじゃ……遅かったのかもしれない」
少女「……さっきから、貴女達は何の話をしているんだ?」
少女「黒い靄だの、何だの……」
青年「……先に聞くけれど。街の人達は放って置いていいのか」
少女「え? ……あ……」
魔導師「先ほど、少女さんが『王妃』として命令されていましたよ」
魔導師「『助けろ』ってね」
青年「……ああ。近衛兵、とやらがいるんだっけね」
衛生師「……君は、そんな……ッ」
少女「『建前』であっても、お前は王で私は王妃だ」
青年「…… ……君のそのお腹の子。王の子では無いだろう」
少女「! …… ……ああ。この子の父親は、この男だ」
剣士「何……?」
后「落ち着いて、剣士…… ……『血』を感じないのね」
青年「……ああ」
281: 2014/02/10(月) 10:06:25.27 ID:RX8zmVBqP
后「……とにかく、場所を移しましょう」
魔導師「そうですね。少女さんにも、勇者様にも……」
魔導師「……夜風は良くありませんよ」
少女「…… ……」
青年「……悪いけど、僕は此処に居る」
后「青年?」
青年「此処は……微かでもエルフの守りがある。この国の何処に居ても」
青年「あの黒い靄は……もう……」
后「…… ……」
后(炎と、黒い靄が……空を渦巻いている)
后(……城を焼いただけでは、もう……間に合わなかった?)
后(それほど……お母様の。あの、人達の……『怨み』は……)
剣士「……后。ペンダントは?」
后「え?」
剣士「あれに移したんだろう。姫は……このエルフの加護を」
魔導師「で、でもあれは姫様が北の塔に……」
后「……無いよりマシでしょう。青年、これを」チャリン
青年「…… ……ッ」
青年(……確かに。微かにだけど…… ……気分がマシになる)
青年「…… ……どこに行く、って言うんだよ」
后「ひとまず小屋に戻りましょう。あそこなら私の防護壁もあるわ」
少女「…… ……」
剣士「青年、衛生師を捕まえていろ」グッ
青年「……オーケィ」
シュウン……ッ
少女「!? き、消えた!?」
后「……鍛冶師様の道具は後で取りに来ると良いわ」
魔導師「そうですね……」
后「……二人とも、私に掴まって」
少女「あ……貴女も、あんな真似が出来るというのか!?」
少女「……それに、私……も?」
魔導師「放って置けないでしょう?」
后「……勇者、御免ね」
勇者(すぅ)
魔導師「……大物になりますね、勇者様」ハァ
魔導師「そうですね。少女さんにも、勇者様にも……」
魔導師「……夜風は良くありませんよ」
少女「…… ……」
青年「……悪いけど、僕は此処に居る」
后「青年?」
青年「此処は……微かでもエルフの守りがある。この国の何処に居ても」
青年「あの黒い靄は……もう……」
后「…… ……」
后(炎と、黒い靄が……空を渦巻いている)
后(……城を焼いただけでは、もう……間に合わなかった?)
后(それほど……お母様の。あの、人達の……『怨み』は……)
剣士「……后。ペンダントは?」
后「え?」
剣士「あれに移したんだろう。姫は……このエルフの加護を」
魔導師「で、でもあれは姫様が北の塔に……」
后「……無いよりマシでしょう。青年、これを」チャリン
青年「…… ……ッ」
青年(……確かに。微かにだけど…… ……気分がマシになる)
青年「…… ……どこに行く、って言うんだよ」
后「ひとまず小屋に戻りましょう。あそこなら私の防護壁もあるわ」
少女「…… ……」
剣士「青年、衛生師を捕まえていろ」グッ
青年「……オーケィ」
シュウン……ッ
少女「!? き、消えた!?」
后「……鍛冶師様の道具は後で取りに来ると良いわ」
魔導師「そうですね……」
后「……二人とも、私に掴まって」
少女「あ……貴女も、あんな真似が出来るというのか!?」
少女「……それに、私……も?」
魔導師「放って置けないでしょう?」
后「……勇者、御免ね」
勇者(すぅ)
魔導師「……大物になりますね、勇者様」ハァ
282: 2014/02/10(月) 10:13:12.22 ID:RX8zmVBqP
少女「…… ……」スッ
シュゥン……!
……
………
…………
衛生師「…… ……」
青年「……生きてるの、こいつ」
剣士「回復したのはお前だろう」
青年「転移のショックで気を失ったのか……」ハァ
剣士「…… ……」
青年「落ち着けよ」
剣士「……解ってる。悪かった」
青年「やっぱり……お前も『魔王』なんだな」
剣士「『欠片』だ……俺は」
青年「一部には違い無いだろう」
剣士「…… ……」
青年「あの魔導師の話……『夢』が、『過去』で」
青年「……『現在』が倣う、なら」
剣士「それについて、異論は無いと言ったはずだ……ああ」
剣士「……后にも説明せねばならんな」
青年「…… ……」
剣士「『他に何か方法があるかも知れない』と言いたいんだろう?」
青年「『未だ先だ』……どちらにしても」
青年「……お前が、光の剣を…… ……」
剣士「…… ……」
青年「……『黒い髪の魔王』を倒してからだ」
青年「どれだけ早くても、まだ15年以上もあるんだ」
青年「……勇者様との旅立ちまでには、まだ」
剣士「…… ……」
青年「それまでに、何か方法が……見つからないとは、限らない!」
剣士「……后も、同じ事を言うかもな」
青年「……取りあえず、目の前にあるこいつ」コツン
剣士「蹴るな」
青年「起きないだろ……どうにかしないとな」
シュゥン……!
……
………
…………
衛生師「…… ……」
青年「……生きてるの、こいつ」
剣士「回復したのはお前だろう」
青年「転移のショックで気を失ったのか……」ハァ
剣士「…… ……」
青年「落ち着けよ」
剣士「……解ってる。悪かった」
青年「やっぱり……お前も『魔王』なんだな」
剣士「『欠片』だ……俺は」
青年「一部には違い無いだろう」
剣士「…… ……」
青年「あの魔導師の話……『夢』が、『過去』で」
青年「……『現在』が倣う、なら」
剣士「それについて、異論は無いと言ったはずだ……ああ」
剣士「……后にも説明せねばならんな」
青年「…… ……」
剣士「『他に何か方法があるかも知れない』と言いたいんだろう?」
青年「『未だ先だ』……どちらにしても」
青年「……お前が、光の剣を…… ……」
剣士「…… ……」
青年「……『黒い髪の魔王』を倒してからだ」
青年「どれだけ早くても、まだ15年以上もあるんだ」
青年「……勇者様との旅立ちまでには、まだ」
剣士「…… ……」
青年「それまでに、何か方法が……見つからないとは、限らない!」
剣士「……后も、同じ事を言うかもな」
青年「……取りあえず、目の前にあるこいつ」コツン
剣士「蹴るな」
青年「起きないだろ……どうにかしないとな」
283: 2014/02/10(月) 10:23:45.79 ID:RX8zmVBqP
剣士「……少女は全て知っている、んだろうか」
青年「さてね……だけど」
青年「……あの腹の子は、王の子じゃ無い」
青年「『血』に拘る必要なんて無いと思うよ」
青年「……元々、盗賊様も鍛冶師様も、『この国』の人じゃない」
青年「盗賊様の言葉通り『王』を絶やさない事、だけが」
青年「紫の魔王の、あの言葉の通りであるとするなら……」
剣士「……問題は無い、んだろうがな」
青年「…… ……」
シュゥン
剣士「…… ……」
少女「きゃああ……ッ ……ッ !?」
少女「!? ……こ、こは……!? ……ッ 衛生師!?」
后「……気を失っている、の?」
魔導師「后様、勇者様寝かせますよ」
后「あ……え、ええ……」
少女「な……、んなんだ、貴女達は!?」
后「…… ……」
青年「君に教える義務は無いね」
少女「!」
后「……青年」
少女「否……当然、だろう」
剣士「……話を聞かせて貰える、のだろうか」
少女「私が知る限りで良ければ」
后「……貴女、どうして?」
少女「え?」
后「その子、この男の子、なんでしょう」
少女「…… ……どこまで、王子様から聞いているか解らないが」
青年「さてね……だけど」
青年「……あの腹の子は、王の子じゃ無い」
青年「『血』に拘る必要なんて無いと思うよ」
青年「……元々、盗賊様も鍛冶師様も、『この国』の人じゃない」
青年「盗賊様の言葉通り『王』を絶やさない事、だけが」
青年「紫の魔王の、あの言葉の通りであるとするなら……」
剣士「……問題は無い、んだろうがな」
青年「…… ……」
シュゥン
剣士「…… ……」
少女「きゃああ……ッ ……ッ !?」
少女「!? ……こ、こは……!? ……ッ 衛生師!?」
后「……気を失っている、の?」
魔導師「后様、勇者様寝かせますよ」
后「あ……え、ええ……」
少女「な……、んなんだ、貴女達は!?」
后「…… ……」
青年「君に教える義務は無いね」
少女「!」
后「……青年」
少女「否……当然、だろう」
剣士「……話を聞かせて貰える、のだろうか」
少女「私が知る限りで良ければ」
后「……貴女、どうして?」
少女「え?」
后「その子、この男の子、なんでしょう」
少女「…… ……どこまで、王子様から聞いているか解らないが」
284: 2014/02/10(月) 10:37:10.37 ID:RX8zmVBqP
少女「私は……書の街の代表者だった」
剣士「…… ……」
少女「王は、まだ……弟王子様がご存命の時に」
少女「王子様に連れられて、身分を隠した侭……書の街に来たんだ」
少女「そこで、私に一目惚れをしたのだ、と」
后「…… ……」
少女「弟王子様が身罷られ、王が次期国王となるその戴冠式のお誘いを受けた」
少女「……その時、私の双子の姉が」
后「双子?」
少女「秘書、と言う……彼女が、『少女』だと偽り」
少女「この国に来て……結果、あの地下牢へと捕らえられた」
魔導師「え!?」
少女「母親様を救い出すつもりだったのかもしれない。姉は……秘書は」
少女「幻想を捨てきれずに居たんだ。何れ、魔導国を再建するのだと」
青年「……出られるはずも無い、のにか」
少女「旧貴族達と同じだ。自分達は優れた民である。選ばれた者達だと」
后「…… ……」
少女「……それしか、頭に無いんだ。自分達は『支配する者』であり」
少女「他は、『支配される者』である。優れた自分が」
少女「……何より、優遇されて当然なのだ、とな」
后「…… ……何も変わらない、のね」
少女「私は直系では無い。だけど、雷の加護を持たない、と姉や」
少女「……旧貴族達に、虐げられてきた」
魔導師「でも、貴女は……優れた加護は持っているんでしょう?」
少女「……『出来損ない』と同じ扱いはされなかった。だが」
少女「姉は、雷の加護を持っていたんだ。同じ双子でも……違ったんだ」
青年「……馬鹿馬鹿しい」ハァ
后「青年」
少女「構わない……本当にその通りだと思う」
少女「……街の代表者として、祭り上げられたのもその為だ」
少女「王だ何だと言え、『出来損ない』と交わす言葉等無いと、な」
剣士「…… ……」
少女「王は、まだ……弟王子様がご存命の時に」
少女「王子様に連れられて、身分を隠した侭……書の街に来たんだ」
少女「そこで、私に一目惚れをしたのだ、と」
后「…… ……」
少女「弟王子様が身罷られ、王が次期国王となるその戴冠式のお誘いを受けた」
少女「……その時、私の双子の姉が」
后「双子?」
少女「秘書、と言う……彼女が、『少女』だと偽り」
少女「この国に来て……結果、あの地下牢へと捕らえられた」
魔導師「え!?」
少女「母親様を救い出すつもりだったのかもしれない。姉は……秘書は」
少女「幻想を捨てきれずに居たんだ。何れ、魔導国を再建するのだと」
青年「……出られるはずも無い、のにか」
少女「旧貴族達と同じだ。自分達は優れた民である。選ばれた者達だと」
后「…… ……」
少女「……それしか、頭に無いんだ。自分達は『支配する者』であり」
少女「他は、『支配される者』である。優れた自分が」
少女「……何より、優遇されて当然なのだ、とな」
后「…… ……何も変わらない、のね」
少女「私は直系では無い。だけど、雷の加護を持たない、と姉や」
少女「……旧貴族達に、虐げられてきた」
魔導師「でも、貴女は……優れた加護は持っているんでしょう?」
少女「……『出来損ない』と同じ扱いはされなかった。だが」
少女「姉は、雷の加護を持っていたんだ。同じ双子でも……違ったんだ」
青年「……馬鹿馬鹿しい」ハァ
后「青年」
少女「構わない……本当にその通りだと思う」
少女「……街の代表者として、祭り上げられたのもその為だ」
少女「王だ何だと言え、『出来損ない』と交わす言葉等無いと、な」
285: 2014/02/10(月) 10:46:54.55 ID:RX8zmVBqP
后「…… ……」ハァ
少女「王子様にも言われた。はいそうですかと変われないだろう、と」
少女「……旧貴族達は、実質私を窓口に、何時か母親様を奪還し」
少女「魔導国を再建……する。出来るつもりで居た、のだろう」
少女「だが……」
剣士「……あの地下牢の氏体は、その秘書とやらと……旧貴族達か」
魔導師「…… ……ッ」ゾッ
少女「……秘書は、国を騙そうとしたんだ。代表者、を名乗ってな」
少女「それも『旧貴族達が良からぬ事を企んでいる』」
少女「『身の危険を感じるから、保護を求めたい』、と」
青年「……は?」
少女「自分の保身しか考えて等居ない。その場その場を切り抜けようと」
少女「後で発生する矛盾など、お構いなしの愚か者だ」
青年「…… ……」
少女「騙せると思って疑わなかった……のだろう」
少女「取り入ってしまえばこっちのもの、だ…… ……王は」
少女「『少女宛』に書簡を送ってきていた。戴冠式で会えるのを楽しみにしています、と」
少女「……実際には初対面では無かったが、そんな事を知らない秘書は」
少女「私だけが……甘い汁を吸うのは許さない、とな」
青年「……信じられないな。頭は大丈夫なのか?」
魔導師「青年さん」
少女「……良いんだ。その通りだ……私にも信じられない」
少女「結果、秘書は捕らえられた。そうして……彼女の言葉通り」
少女「……旧貴族達も、だ。王は……『むやみに力に訴える事はしない』と」
少女「私に約束してくれた……が」
后「…… ……ッ」ブルッ
少女「……氏体の山、だったのだろう」ハァ
少女「王子様にも言われた。はいそうですかと変われないだろう、と」
少女「……旧貴族達は、実質私を窓口に、何時か母親様を奪還し」
少女「魔導国を再建……する。出来るつもりで居た、のだろう」
少女「だが……」
剣士「……あの地下牢の氏体は、その秘書とやらと……旧貴族達か」
魔導師「…… ……ッ」ゾッ
少女「……秘書は、国を騙そうとしたんだ。代表者、を名乗ってな」
少女「それも『旧貴族達が良からぬ事を企んでいる』」
少女「『身の危険を感じるから、保護を求めたい』、と」
青年「……は?」
少女「自分の保身しか考えて等居ない。その場その場を切り抜けようと」
少女「後で発生する矛盾など、お構いなしの愚か者だ」
青年「…… ……」
少女「騙せると思って疑わなかった……のだろう」
少女「取り入ってしまえばこっちのもの、だ…… ……王は」
少女「『少女宛』に書簡を送ってきていた。戴冠式で会えるのを楽しみにしています、と」
少女「……実際には初対面では無かったが、そんな事を知らない秘書は」
少女「私だけが……甘い汁を吸うのは許さない、とな」
青年「……信じられないな。頭は大丈夫なのか?」
魔導師「青年さん」
少女「……良いんだ。その通りだ……私にも信じられない」
少女「結果、秘書は捕らえられた。そうして……彼女の言葉通り」
少女「……旧貴族達も、だ。王は……『むやみに力に訴える事はしない』と」
少女「私に約束してくれた……が」
后「…… ……ッ」ブルッ
少女「……氏体の山、だったのだろう」ハァ
292: 2014/02/10(月) 11:39:37.31 ID:RX8zmVBqP
少女「……少し戻るけど、私は……秘書がこの国に来てすぐに」
少女「王子様に保護されて、この国に来た」
少女「……秘書を牢に入れる時、私もこっそり後からついていった」
少女「王子様が取りはからってくれた、んだが……」
青年「……だが?」
少女「…… ……」チラ
后「?」
少女「…… ……」ハァ
少女「……牢には、母親様が居た」
后「……そう、ね」
少女「既に……狂って、いらっしゃった」
后「え!? …… ……あ」
少女「え?」
后(……インキュバスの魔石、の影響……なんでしょうね)
后(あの中で、正気で居なかったのは……お母様は、寧ろ)
后(救われたのかも知れない……厭、ね)
后(……私、やっぱりほっとしてる)ハァ
剣士「……続けろ」
少女「あ、ああ…… ……そこで、王は秘書に」
少女「自分も優れた加護を持っている、と」
后「え?」
少女「……羨ましいだろう、と言う様な事、だったか」
少女「とにかく、秘書を挑発したんだ」
少女「……私を蔑んだ、彼女を許せないと」
少女「『幻滅しないで欲しい』と言う様な事を言っていたな。そういえば」
青年「自分の、そう言う……部分、をか?」
少女「解らない。でも……王は、酷く不安定だったんだ」
剣士「いつだったか忘れたが、王が病気の様だと言う噂は」
剣士「……耳にしていた、な」
衛生師「……う、ぅ……ッ」
青年「……やっとお目覚め、か……おい」
衛生師「! う、うわああああああああ、あ…… ……あ!?」
少女「……衛生師」
衛生師「少女!」
衛生師「…… ……こ、こは……」
后「ここはあの小屋よ。私達が住ませて貰って居る、ね」
287: 2014/02/10(月) 11:08:46.83 ID:RX8zmVBqP
剣士「大人しくしていろ。今度こそ殺されたくなかったら、な」チャキ
衛生師「…… ……」
少女「その後……王は、旧貴族達に私を接触させる訳には行かない、と」
少女「……事実上、軟禁されたんだ」
后「軟禁? どうして……」
少女「『僕だけを見て欲しい』『僕の事だけを愛して欲しい』と」
少女「……何度も何度も、犯された」
魔導師「…… ……」
少女「あ…… ……その、ご免なさい。小さな子の前で……」
魔導師「……いえ、あの…… ……はい」
后「…… ……」
少女「旧貴族を捕らえたと聞いたのは、もう少し後だったと思う」
少女「……さっきも、言ったが。王は……」
青年「『むやみに力に訴えない』?」
少女「……ああ。母親様の狂った叫びを聞き続ければ」
少女「遅かれ早かれ、秘書も……ああなるだろうと想像はついた」
少女「だから、王に……秘書が氏んだら教えて欲しいと、伝えて貰ったんだ」
后「え!?」
少女「……私も、狂っているのかもしれないな」ハァ
少女「……そうして、少しして、地下牢への扉……は、封鎖されたと聞いた」
衛生師「…… ……」
少女「全員、氏んだ……否、殺されたのだろうと、すぐに解った」
少女「……もう、その頃王は完全に……おかしくなっていた」
少女「私の部屋へ来ては、夢に魘されていたんだ」
少女「『僕じゃ無い』『来るな』『最後の王なんかじゃ無い』……と、か」
剣士「……『最後の王』?」
少女「……書の街は、私や、旧貴族達が居ない方が」
少女「上手く……発展していくのだろうと聞いていた」
少女「私は……『代表者』は捕らえられ、処刑されただの」
少女「……とにかく。私は『もう居ない者』になっていたのだろう」
少女「だが……あの街は、その方が平和だったのかもしれない」
衛生師「…… ……」
少女「その後……王は、旧貴族達に私を接触させる訳には行かない、と」
少女「……事実上、軟禁されたんだ」
后「軟禁? どうして……」
少女「『僕だけを見て欲しい』『僕の事だけを愛して欲しい』と」
少女「……何度も何度も、犯された」
魔導師「…… ……」
少女「あ…… ……その、ご免なさい。小さな子の前で……」
魔導師「……いえ、あの…… ……はい」
后「…… ……」
少女「旧貴族を捕らえたと聞いたのは、もう少し後だったと思う」
少女「……さっきも、言ったが。王は……」
青年「『むやみに力に訴えない』?」
少女「……ああ。母親様の狂った叫びを聞き続ければ」
少女「遅かれ早かれ、秘書も……ああなるだろうと想像はついた」
少女「だから、王に……秘書が氏んだら教えて欲しいと、伝えて貰ったんだ」
后「え!?」
少女「……私も、狂っているのかもしれないな」ハァ
少女「……そうして、少しして、地下牢への扉……は、封鎖されたと聞いた」
衛生師「…… ……」
少女「全員、氏んだ……否、殺されたのだろうと、すぐに解った」
少女「……もう、その頃王は完全に……おかしくなっていた」
少女「私の部屋へ来ては、夢に魘されていたんだ」
少女「『僕じゃ無い』『来るな』『最後の王なんかじゃ無い』……と、か」
剣士「……『最後の王』?」
少女「……書の街は、私や、旧貴族達が居ない方が」
少女「上手く……発展していくのだろうと聞いていた」
少女「私は……『代表者』は捕らえられ、処刑されただの」
少女「……とにかく。私は『もう居ない者』になっていたのだろう」
少女「だが……あの街は、その方が平和だったのかもしれない」
288: 2014/02/10(月) 11:28:05.96 ID:RX8zmVBqP
后「ちょっと待って……『最後の王』ってどういう意味よ?」
少女「……私と、王との婚姻は」
少女「私に子が出来たら、と言う事になっていたらしい」チラ
衛生師「……ッ ぼ、僕が注進したんじゃないぞ!」
衛生師「それは、確かに王がそう言ったんだ!」
剣士「何故だ」
衛生師「……知るか! ……『最後の王』になる訳には行かないと」
衛生師「王は……確かに言っていた。だから……!」
青年「だから、王様を頃してお前が王になったと?」
衛生師「……ッ あんな状態で『王』なんて務まるものか!」
少女「……それは、私もそう思う。実際、政を取り仕切っていたのは」
少女「この男だ」
后「……だからって……ッ 頃して、自分が王に成り代わるなんて!」
衛生師「違う! ……勇者が戻る時、あれでは、と……」
衛生師「……早い内に、と……!」
少女「会議で正式に決まったのだ、と言っていたな」
剣士「!」
青年「……随分な話だ。近衛兵、とやらまで知っていたのか……!」
少女「城は……許可無く立入禁止だった。勿論、最初は王の病気を隠す……」
少女「否。広めない為、だったんだろう」
少女「……衛生師が玉座に座るようになってからは、許可を出さなければ良いのだと」
后「……それで、王子様まで閉め出した、のね」
衛生師「あの人はもう、引退した人だ……それに!」
衛生師「……王は、嫌っていたからな」
青年「お爺様を?」
衛生師「……何時まで青年君になりきるつもりだい」
青年「残念だけど、僕は本当に戦士と僧侶の息子さ」
青年「……アンタが知ってたかどうか、解らないけど」
青年「母さんはエルフの血が流れてる」
衛生師「!?」
青年「……エルフは人と成長するスピードも、生きる長さも違う」
衛生師「エルフ、だと!?」
后「確かよ。私は……ずっと一緒に旅をしていたんだもの」
少女「……私と、王との婚姻は」
少女「私に子が出来たら、と言う事になっていたらしい」チラ
衛生師「……ッ ぼ、僕が注進したんじゃないぞ!」
衛生師「それは、確かに王がそう言ったんだ!」
剣士「何故だ」
衛生師「……知るか! ……『最後の王』になる訳には行かないと」
衛生師「王は……確かに言っていた。だから……!」
青年「だから、王様を頃してお前が王になったと?」
衛生師「……ッ あんな状態で『王』なんて務まるものか!」
少女「……それは、私もそう思う。実際、政を取り仕切っていたのは」
少女「この男だ」
后「……だからって……ッ 頃して、自分が王に成り代わるなんて!」
衛生師「違う! ……勇者が戻る時、あれでは、と……」
衛生師「……早い内に、と……!」
少女「会議で正式に決まったのだ、と言っていたな」
剣士「!」
青年「……随分な話だ。近衛兵、とやらまで知っていたのか……!」
少女「城は……許可無く立入禁止だった。勿論、最初は王の病気を隠す……」
少女「否。広めない為、だったんだろう」
少女「……衛生師が玉座に座るようになってからは、許可を出さなければ良いのだと」
后「……それで、王子様まで閉め出した、のね」
衛生師「あの人はもう、引退した人だ……それに!」
衛生師「……王は、嫌っていたからな」
青年「お爺様を?」
衛生師「……何時まで青年君になりきるつもりだい」
青年「残念だけど、僕は本当に戦士と僧侶の息子さ」
青年「……アンタが知ってたかどうか、解らないけど」
青年「母さんはエルフの血が流れてる」
衛生師「!?」
青年「……エルフは人と成長するスピードも、生きる長さも違う」
衛生師「エルフ、だと!?」
后「確かよ。私は……ずっと一緒に旅をしていたんだもの」
290: 2014/02/10(月) 11:37:18.80 ID:RX8zmVBqP
衛生師「な……ッ」
青年「僕の事なんかどうでも良いだろ。信じないならそれで良い」
青年「……それより、王がお爺様を嫌ってたってどういうことだ」
衛生師「……ッ 遠ざけたのはあの人達だ!」
青年「…… ……」
衛生師「……政から遠ざけ、唐突に『王』を押しつけ」
衛生師「なのに……帰還した戦士君や僧侶さん」
衛生師「……それから、君だ。剣士」
剣士「…… ……」
衛生師「王は、自分より戦士君の方が良いのかと、言っていた」
衛生師「勇者と旅をし、帰還した血族が、その……子を孕んだ細君と共に戻り」
衛生師「得体の知れない紫の瞳の男まで一緒に、自分を退けて……話し込んでいる」
后「…… ……」
衛生師「王子様も王子様だ! 『未来』はお前達が作る物だと良いながら」
衛生師「……何かある毎に、首を突っ込もうとして!」
青年「…… ……」
衛生師「……自業自得さ!」
少女「だからって、お前が王にすげ変わる必要など……!」
衛生師「何度も言っているだろう!? 『王』を絶やす訳には……!」
魔導師「……居るじゃありませんか」
少女「え?」
魔導師「『血』で行くのならば。青年さんが次の『王』でしょう」
后「あ……」
衛生師「し、しかし……ッ」
衛生師「え、エルフの……否! 本当かどうかも解らない、そんな……!」
剣士「エルフは嘘は吐けない。青年の言葉は『真実』だ」
少女「え……?」
青年「…… ……いや、あのちょっと待ってよ」
魔導師「しかも、青年さんは……『エルフの長』でもある」
魔導師「『王』は確かに、いらっしゃいます。此処に」ニコ
青年「……おい、魔導師!?」
青年「僕の事なんかどうでも良いだろ。信じないならそれで良い」
青年「……それより、王がお爺様を嫌ってたってどういうことだ」
衛生師「……ッ 遠ざけたのはあの人達だ!」
青年「…… ……」
衛生師「……政から遠ざけ、唐突に『王』を押しつけ」
衛生師「なのに……帰還した戦士君や僧侶さん」
衛生師「……それから、君だ。剣士」
剣士「…… ……」
衛生師「王は、自分より戦士君の方が良いのかと、言っていた」
衛生師「勇者と旅をし、帰還した血族が、その……子を孕んだ細君と共に戻り」
衛生師「得体の知れない紫の瞳の男まで一緒に、自分を退けて……話し込んでいる」
后「…… ……」
衛生師「王子様も王子様だ! 『未来』はお前達が作る物だと良いながら」
衛生師「……何かある毎に、首を突っ込もうとして!」
青年「…… ……」
衛生師「……自業自得さ!」
少女「だからって、お前が王にすげ変わる必要など……!」
衛生師「何度も言っているだろう!? 『王』を絶やす訳には……!」
魔導師「……居るじゃありませんか」
少女「え?」
魔導師「『血』で行くのならば。青年さんが次の『王』でしょう」
后「あ……」
衛生師「し、しかし……ッ」
衛生師「え、エルフの……否! 本当かどうかも解らない、そんな……!」
剣士「エルフは嘘は吐けない。青年の言葉は『真実』だ」
少女「え……?」
青年「…… ……いや、あのちょっと待ってよ」
魔導師「しかも、青年さんは……『エルフの長』でもある」
魔導師「『王』は確かに、いらっしゃいます。此処に」ニコ
青年「……おい、魔導師!?」
293: 2014/02/10(月) 11:46:13.12 ID:RX8zmVBqP
衛生師「……ッ 馬鹿な! 認めない、認めないぞ、僕は……!」
后「……貴方に認めて貰う必要なんて無いと思うけど?」
青年「……ちょ、ちょっと!? 后様まで……!」
后「『便宜上』……あの言葉に倣う、だけなら、確かにそうよね」
剣士「それに、その腹の子……王の子では無いんだろう?」
衛生師「! 少女、お前……ッ」
少女「……真実だ。これこそ、な」
衛生師「……ッ」
少女「権力に興味など無いんだろう!? ……否、何よりも」
少女「お前が『王』であれ、なんであれ……!」
少女「……王子様と、王を頃したのは、お前だ」
衛生師「違う! 王子は、王に……本当に……!」
剣士「……だが、お前が王を手にかけた事に変わりは無いんだろう」
少女「……お前まで、狂ってしまったのか、衛生師」ハァ
衛生師「……ッ 僕は、興味があっただけだ!」
衛生師「『最後の王』が…… ……ゥ、ウッ」ドクン!
ガタガタ……ガタガタ……ッ
青年「……う……ッ !?」
魔導師「じ……地震!?」
剣士「……外だ」
后「え…… ……!?」
后(窓の外が……『黒い』! ……これ、は……)
后(夜の闇、じゃ無い……!)
勇者「う、ぅ……ああぁん……ッ」
后「! 勇者!」タタタ……ギュ!
后「……貴方に認めて貰う必要なんて無いと思うけど?」
青年「……ちょ、ちょっと!? 后様まで……!」
后「『便宜上』……あの言葉に倣う、だけなら、確かにそうよね」
剣士「それに、その腹の子……王の子では無いんだろう?」
衛生師「! 少女、お前……ッ」
少女「……真実だ。これこそ、な」
衛生師「……ッ」
少女「権力に興味など無いんだろう!? ……否、何よりも」
少女「お前が『王』であれ、なんであれ……!」
少女「……王子様と、王を頃したのは、お前だ」
衛生師「違う! 王子は、王に……本当に……!」
剣士「……だが、お前が王を手にかけた事に変わりは無いんだろう」
少女「……お前まで、狂ってしまったのか、衛生師」ハァ
衛生師「……ッ 僕は、興味があっただけだ!」
衛生師「『最後の王』が…… ……ゥ、ウッ」ドクン!
ガタガタ……ガタガタ……ッ
青年「……う……ッ !?」
魔導師「じ……地震!?」
剣士「……外だ」
后「え…… ……!?」
后(窓の外が……『黒い』! ……これ、は……)
后(夜の闇、じゃ無い……!)
勇者「う、ぅ……ああぁん……ッ」
后「! 勇者!」タタタ……ギュ!
294: 2014/02/10(月) 11:52:47.51 ID:RX8zmVBqP
少女「な…… 何の、音……!!」
魔導師「青年さん! 大丈夫……!?」
剣士「魔導師、青年から離れるなよ……ッ」
青年「! 君は駄目だ、剣士!」
剣士「し、しかし!?」
衛生師(……な、んの声、だ……ッ これ、は……ッ)
衛生師「……『決して、幸せにな……ど……ッ』」
后「!?」
衛生師「『なれると、思うな……!』」
少女(この声、は……!?)
衛生師「……『貴様が最後の王だ!』」
青年「!」
少女「…… ……お姉さま!?」
衛生師「『この身に宿る、選ばれし民の血と、母親様の血に、誓って!』」
后「!?」
衛生師「『最果ての、魔物の血に願って!』」ブチブチ……ッ
魔導師「え、衛生師さん……!」
魔導師(拘束を力ずくでほどいた……!?)
衛生師「『何時か、必ず我らは蘇るのだ!』」
衛生師「『『世界』を呪ってやる! 絶望に嘆く世界を……ッ』」
衛生師「『虚空の『真に美しい世界』を望むが良い……ッ』」
タタタ……ッ
后「! 何処へ行くの、出ちゃ駄目……!」
勇者「うわああああああああんッ」
青年「勇者様……!? ……ッ」
勇者「わああああん、わああああああんッ」
ボゥッ
后「あ……ッ 熱ゥッ ……!?」
剣士「!? 后……ッ」
魔導師「青年さん! 大丈夫……!?」
剣士「魔導師、青年から離れるなよ……ッ」
青年「! 君は駄目だ、剣士!」
剣士「し、しかし!?」
衛生師(……な、んの声、だ……ッ これ、は……ッ)
衛生師「……『決して、幸せにな……ど……ッ』」
后「!?」
衛生師「『なれると、思うな……!』」
少女(この声、は……!?)
衛生師「……『貴様が最後の王だ!』」
青年「!」
少女「…… ……お姉さま!?」
衛生師「『この身に宿る、選ばれし民の血と、母親様の血に、誓って!』」
后「!?」
衛生師「『最果ての、魔物の血に願って!』」ブチブチ……ッ
魔導師「え、衛生師さん……!」
魔導師(拘束を力ずくでほどいた……!?)
衛生師「『何時か、必ず我らは蘇るのだ!』」
衛生師「『『世界』を呪ってやる! 絶望に嘆く世界を……ッ』」
衛生師「『虚空の『真に美しい世界』を望むが良い……ッ』」
タタタ……ッ
后「! 何処へ行くの、出ちゃ駄目……!」
勇者「うわああああああああんッ」
青年「勇者様……!? ……ッ」
勇者「わああああん、わああああああんッ」
ボゥッ
后「あ……ッ 熱ゥッ ……!?」
剣士「!? 后……ッ」
295: 2014/02/10(月) 11:57:45.65 ID:RX8zmVBqP
勇者「うわああん、ふえ……ふえぇ……」
青年「! 剣士、早く! ……魔導師、こっち!」グイッ
魔導師「うわああああ!?」
剣士「! 后……ッ」
后「あ、あ……ッ 勇者! 勇者!?」
剣士(四人……五人!? ……ッ 糞、少女までは……!)
シュゥウン……!
少女「あ……ッ …… ……」
アハハハハ、アハハハハ……ッ
少女(この声は……やはり、お姉さま……!!)
少女(……熱く、無い。魔法使い……否、后?だった、か)
少女(魔法の炎…… ……しかし)
少女(……『熱い』と、言っていた。勇者様……か?)
少女(……勇者は光の子。炎の魔法等……)
ガラガラ……ッ
少女「!」
タタタ……ッ
少女「…… ……」
少女(二度も、火事に…… ……あ)
少女(……城に居たときも、熱さなど感じなかった)
少女(では、あれは……魔法の炎?)キョロ
少女(……誰も、居ない。一人……か)ハァ
青年「! 剣士、早く! ……魔導師、こっち!」グイッ
魔導師「うわああああ!?」
剣士「! 后……ッ」
后「あ、あ……ッ 勇者! 勇者!?」
剣士(四人……五人!? ……ッ 糞、少女までは……!)
シュゥウン……!
少女「あ……ッ …… ……」
アハハハハ、アハハハハ……ッ
少女(この声は……やはり、お姉さま……!!)
少女(……熱く、無い。魔法使い……否、后?だった、か)
少女(魔法の炎…… ……しかし)
少女(……『熱い』と、言っていた。勇者様……か?)
少女(……勇者は光の子。炎の魔法等……)
ガラガラ……ッ
少女「!」
タタタ……ッ
少女「…… ……」
少女(二度も、火事に…… ……あ)
少女(……城に居たときも、熱さなど感じなかった)
少女(では、あれは……魔法の炎?)キョロ
少女(……誰も、居ない。一人……か)ハァ
296: 2014/02/10(月) 12:03:30.58 ID:RX8zmVBqP
少女(……逃げなきゃ。いくら魔法の炎だと言え……)
少女(否……しかし、城は…… ……あ)
少女(そうか。あれが……魔法の炎であるのなら、私なら)
少女(…… ……)ナデ。キョロ
少女(……もう、聞こえない。衛生師は……狂って?)
少女(解らない…… ……一体、何がどうなっているのか)
少女(……お姉さま。貴女は、一体何を願ったのです)
少女(私を、怨んで…… ……この、国を怨んで?)
少女(……たかだか、『人間』が!?)
少女(…… ……否。考えるのは後だ)
少女(逃げないと……!)
タタタ……ッ
タスケテ……キャアアアア!
アツイ! アツイ!
少女「!」
少女(街にまで、火が……!)
少女(……これが、魔法使いの炎だとするのなら、彼女は……!)
少女(とんでも無い魔力の持ち主だ……!)
少女(……母親様。『出来損ない』だと言う、貴女の……娘は)
少女(…… ……)
タタタ……タタ……
……
………
…………
船長「……ちょ、ちょっと!」
海賊「……見えてますって」
船長「どうなってんだ、あれ……燃えてる!?」
海賊「……まさか助けに行くとか言わないでしょうね!?」
少女(否……しかし、城は…… ……あ)
少女(そうか。あれが……魔法の炎であるのなら、私なら)
少女(…… ……)ナデ。キョロ
少女(……もう、聞こえない。衛生師は……狂って?)
少女(解らない…… ……一体、何がどうなっているのか)
少女(……お姉さま。貴女は、一体何を願ったのです)
少女(私を、怨んで…… ……この、国を怨んで?)
少女(……たかだか、『人間』が!?)
少女(…… ……否。考えるのは後だ)
少女(逃げないと……!)
タタタ……ッ
タスケテ……キャアアアア!
アツイ! アツイ!
少女「!」
少女(街にまで、火が……!)
少女(……これが、魔法使いの炎だとするのなら、彼女は……!)
少女(とんでも無い魔力の持ち主だ……!)
少女(……母親様。『出来損ない』だと言う、貴女の……娘は)
少女(…… ……)
タタタ……タタ……
……
………
…………
船長「……ちょ、ちょっと!」
海賊「……見えてますって」
船長「どうなってんだ、あれ……燃えてる!?」
海賊「……まさか助けに行くとか言わないでしょうね!?」
297: 2014/02/10(月) 12:11:03.95 ID:RX8zmVBqP
船長「……ッ」グッ
海賊「始まりの国、か……」
船長「……始まりの、国?」
海賊「勇者様が戻られた、って聞いてますけど……」
船長「勇者?」
海賊「……あの国、呪われてる、なんて噂もありましてね」
船長「え?」
海賊「王が、病気だとか、何だとか……」
船長「でも、あの国は……魔導国、だっけ」
船長「……戦争に、勝ったんだろ?」
海賊「敗戦国の呪い…… ……相手があの魔導国、じゃね」
海賊「ああ……今は、書の街、ですけど」
船長「…… ……」
海賊「船長、離れますぜ」
船長「え?」
海賊「……だから、助けに行くとか言わないでしょ、って」
船長「…… ……で、でも」
海賊「俺達、海賊なんですぜ? ……そりゃ、意味も無く強奪とかしないっすけど」
海賊「『正義の味方』じゃないんだから」
船長「……わ、解ってるよ」
海賊「解ってりゃ結構……さて、どこ行きますかねぇ……」ブツブツ
船長(……凄い、炎だ)
船長(行ったって……何も出来ない。あれだけ、燃えちゃったら、もう……!)
船長(……誰も、生きてない、かもしれない。どころか)
船長(氏体の、山……)ゾクッ
船長(……『地獄』だ!)
……
………
…………
シュゥン……!
勇者「うわぁ、うあああ…… ……」ヒック、ヒック……
后「勇者……ッ あ、あ…… ……」ハァ
魔導師「こ、ここ……は?」
剣士「……さあな。とにかく遠くへ、としか……」ハァ
青年「…… ……后様、大丈夫? 回復するよ」パァ
后「あ……え、ええ……ありがとう……」ホッ
海賊「始まりの国、か……」
船長「……始まりの、国?」
海賊「勇者様が戻られた、って聞いてますけど……」
船長「勇者?」
海賊「……あの国、呪われてる、なんて噂もありましてね」
船長「え?」
海賊「王が、病気だとか、何だとか……」
船長「でも、あの国は……魔導国、だっけ」
船長「……戦争に、勝ったんだろ?」
海賊「敗戦国の呪い…… ……相手があの魔導国、じゃね」
海賊「ああ……今は、書の街、ですけど」
船長「…… ……」
海賊「船長、離れますぜ」
船長「え?」
海賊「……だから、助けに行くとか言わないでしょ、って」
船長「…… ……で、でも」
海賊「俺達、海賊なんですぜ? ……そりゃ、意味も無く強奪とかしないっすけど」
海賊「『正義の味方』じゃないんだから」
船長「……わ、解ってるよ」
海賊「解ってりゃ結構……さて、どこ行きますかねぇ……」ブツブツ
船長(……凄い、炎だ)
船長(行ったって……何も出来ない。あれだけ、燃えちゃったら、もう……!)
船長(……誰も、生きてない、かもしれない。どころか)
船長(氏体の、山……)ゾクッ
船長(……『地獄』だ!)
……
………
…………
シュゥン……!
勇者「うわぁ、うあああ…… ……」ヒック、ヒック……
后「勇者……ッ あ、あ…… ……」ハァ
魔導師「こ、ここ……は?」
剣士「……さあな。とにかく遠くへ、としか……」ハァ
青年「…… ……后様、大丈夫? 回復するよ」パァ
后「あ……え、ええ……ありがとう……」ホッ
298: 2014/02/10(月) 12:17:21.59 ID:RX8zmVBqP
后「……勇者……」ホッ
剣士「……あれは。あの炎は……勇者、か?」
青年「僕にも、そう見えた……良し」
魔導師「……あ、泣きながら寝ちゃいました、ね」
后「! 少女、は!?」
剣士「……そこまで、手が回らなかった」
后「あ……!」
青年「……大丈夫だろう。あの子、炎の優れた加護を持っているんだろう」
魔導師「…… ……」
青年「助けてやる義理も……無い。そう……思っておく方が良い」
后「…… ……」
青年「后様、忘れないうちに、これ……返す」チャリン
后「あ……」
青年「……お祖母様のペンダント、だろう?」
后「……ええ」
剣士「……海。島……か?」
魔導師「わ、凄い星空……!」
青年「感動している場合じゃないでしょ、魔導師……ここ、何処なんだい」
剣士「……来たことがある場所、なのだろうとは思う」
剣士「とにかくどこか遠くへ、と……願いはした、が」
后「……明かりが見える」
青年「……目、閉じて何言って…… ……遠見、か」ハァ
后「少し先ね……歩けない距離じゃなさそう。小さい島みたいね」
剣士「……蒸し暑い、な」
魔導師「さっきの……あの、火事の所為、じゃ無くて、ですか?」
青年「……火照ってる? の、はあるかも知れないけど」
青年「でも確かにじめじめするな」
スタスタ
后「あっちよ……あ、家がある!」
青年「……僕には見えないけどね」
魔導師「僕も、です」
剣士「! ……ここ、は」
后「知ってるの?」
剣士「……あれは。あの炎は……勇者、か?」
青年「僕にも、そう見えた……良し」
魔導師「……あ、泣きながら寝ちゃいました、ね」
后「! 少女、は!?」
剣士「……そこまで、手が回らなかった」
后「あ……!」
青年「……大丈夫だろう。あの子、炎の優れた加護を持っているんだろう」
魔導師「…… ……」
青年「助けてやる義理も……無い。そう……思っておく方が良い」
后「…… ……」
青年「后様、忘れないうちに、これ……返す」チャリン
后「あ……」
青年「……お祖母様のペンダント、だろう?」
后「……ええ」
剣士「……海。島……か?」
魔導師「わ、凄い星空……!」
青年「感動している場合じゃないでしょ、魔導師……ここ、何処なんだい」
剣士「……来たことがある場所、なのだろうとは思う」
剣士「とにかくどこか遠くへ、と……願いはした、が」
后「……明かりが見える」
青年「……目、閉じて何言って…… ……遠見、か」ハァ
后「少し先ね……歩けない距離じゃなさそう。小さい島みたいね」
剣士「……蒸し暑い、な」
魔導師「さっきの……あの、火事の所為、じゃ無くて、ですか?」
青年「……火照ってる? の、はあるかも知れないけど」
青年「でも確かにじめじめするな」
スタスタ
后「あっちよ……あ、家がある!」
青年「……僕には見えないけどね」
魔導師「僕も、です」
剣士「! ……ここ、は」
后「知ってるの?」
299: 2014/02/10(月) 12:22:17.22 ID:RX8zmVBqP
剣士「……一度来たことがある」
剣士「南の方の……小さな島だ。宿も会った筈……」
タタタ……
青年「……取りあえず、落ち着ける、か」ハァ
魔導師「青年さん、気分は?」
青年「もう平気だ……遠いんだろう。始まりの国から」
后「…… ……!?」ピタ
魔導師「后様?」
后「こ、……れ……ッ !?」
青年「何……像…… ……!? 母さん!?」
魔導師「え!?」
后(……少し……否、やはり、癒し手にそっくり……!?)
后「な……何で……」
青年「…… ……」
魔導師「た、確かに……似てます、けど……でも……」
スタスタ
剣士「おい、何やってるんだ」
后「……剣士、貴方来たことあるのよね?」
剣士「? ……ああ、エルフの像か」
青年「エルフ……」
剣士「村長だったかの趣味だ……と言っていたな」
剣士「……成る程。どこかで見た事が、と思っていたが」
剣士(癒し手に……青年に、似ていた、のか)
剣士(…… ……『過去』『現在』)
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「剣士さん……?」
剣士「南の方の……小さな島だ。宿も会った筈……」
タタタ……
青年「……取りあえず、落ち着ける、か」ハァ
魔導師「青年さん、気分は?」
青年「もう平気だ……遠いんだろう。始まりの国から」
后「…… ……!?」ピタ
魔導師「后様?」
后「こ、……れ……ッ !?」
青年「何……像…… ……!? 母さん!?」
魔導師「え!?」
后(……少し……否、やはり、癒し手にそっくり……!?)
后「な……何で……」
青年「…… ……」
魔導師「た、確かに……似てます、けど……でも……」
スタスタ
剣士「おい、何やってるんだ」
后「……剣士、貴方来たことあるのよね?」
剣士「? ……ああ、エルフの像か」
青年「エルフ……」
剣士「村長だったかの趣味だ……と言っていたな」
剣士「……成る程。どこかで見た事が、と思っていたが」
剣士(癒し手に……青年に、似ていた、のか)
剣士(…… ……『過去』『現在』)
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「剣士さん……?」
300: 2014/02/10(月) 12:27:29.61 ID:RX8zmVBqP
剣士「……明日、明るくなってからにしろ」
剣士「あれだけ何度も転移を繰り返せば、流石に疲れた」
后「……あ、ああ……そう、ね……」チラ
青年「…… ……良いよ。先に行って」
魔導師「……后様、行きましょう。勇者様……」
后「……ええ」
剣士「こっちだ」
スタスタ
剣士「…… ……」
魔導師「ご免なさい……僕……なんか、どっと疲れが……」
后「……ええ、部屋でゆっくり休んで頂戴」
魔導師「后様達は、まだ起きてらっしゃいます?」
后「…… ……色々ありすぎて、目が冴えてるわ。でも、勇者……」
魔導師「……僕で良ければ、一緒に寝ます」
剣士「俺も……もう少し起きていよう」
后「……話も聞きたいわ」
魔導師「剣士さんは全て知ってます……お願いします」
后「結局、何も聞いていない侭、ですものね」
后「一緒に行くわ、魔導師。勇者が寝入ったら……お願い」
魔導師「はい」
剣士「……すぐ隣に酒場がある。そこで」
スタスタ
カチャ、パタン
魔導師「…… ……」ハァ。ボスッ
后「……ぐっすり、ね」フゥ
魔導師「あ、どうぞこっちに…… ……后様、大丈夫ですか?」
后「大丈夫、とは……言えない、わね」ハァ
魔導師「……ですよね」
剣士「あれだけ何度も転移を繰り返せば、流石に疲れた」
后「……あ、ああ……そう、ね……」チラ
青年「…… ……良いよ。先に行って」
魔導師「……后様、行きましょう。勇者様……」
后「……ええ」
剣士「こっちだ」
スタスタ
剣士「…… ……」
魔導師「ご免なさい……僕……なんか、どっと疲れが……」
后「……ええ、部屋でゆっくり休んで頂戴」
魔導師「后様達は、まだ起きてらっしゃいます?」
后「…… ……色々ありすぎて、目が冴えてるわ。でも、勇者……」
魔導師「……僕で良ければ、一緒に寝ます」
剣士「俺も……もう少し起きていよう」
后「……話も聞きたいわ」
魔導師「剣士さんは全て知ってます……お願いします」
后「結局、何も聞いていない侭、ですものね」
后「一緒に行くわ、魔導師。勇者が寝入ったら……お願い」
魔導師「はい」
剣士「……すぐ隣に酒場がある。そこで」
スタスタ
カチャ、パタン
魔導師「…… ……」ハァ。ボスッ
后「……ぐっすり、ね」フゥ
魔導師「あ、どうぞこっちに…… ……后様、大丈夫ですか?」
后「大丈夫、とは……言えない、わね」ハァ
魔導師「……ですよね」
301: 2014/02/10(月) 12:34:55.07 ID:RX8zmVBqP
后「でも…… ……」
魔導師「……何だったんでしょう、ね」
后「……『怨み』『悪意』……『呪い』って、言ってたわね」
魔導師「……女性の声、でした。少女さんは、『お姉さま』と」
后「…… ……最低ね、私」
魔導師「え?」
后「お母様じゃ無い、と解って……やっぱり、ほっとしてる」
魔導師「后様……」
后「……謎解きは明日にしましょう。勇者、お願いね」
后「起きたら、すぐに解ると思うから。すぐに……戻るから」
魔導師「あ……はい!」
スタスタ。パタン
魔導師(よく寝てる。可愛い)クス。ポンポン
魔導師(僕もこうして、何時も……兄さんに寝かして貰った)
魔導師(……さっきの炎は……間違い無く、勇者様、だった)
魔導師(やっぱり……『同じ』なのか……!)
魔導師(あ……鍛冶師様の道具、置いて来ちゃったな)
魔導師(折角、剣士さんに無理、言ったけど……)ファ
魔導師(…… ……やっぱり『必要無い』って、事……な ……の)
魔導師(…… ……)スゥ
……
………
…………
剣士「……こっちだ」
后「青年はまだ、なのね」
剣士「……放っておいてやれ」
后「…… ……」
剣士「何処まで聞いた?」
后「何も……とにかく、あの黒い靄、だったじゃないの」
剣士「……そうか」
后「私……間違えた、のかしら」
剣士「?」
后「あそこで……火を、着けなければ……!」
魔導師「……何だったんでしょう、ね」
后「……『怨み』『悪意』……『呪い』って、言ってたわね」
魔導師「……女性の声、でした。少女さんは、『お姉さま』と」
后「…… ……最低ね、私」
魔導師「え?」
后「お母様じゃ無い、と解って……やっぱり、ほっとしてる」
魔導師「后様……」
后「……謎解きは明日にしましょう。勇者、お願いね」
后「起きたら、すぐに解ると思うから。すぐに……戻るから」
魔導師「あ……はい!」
スタスタ。パタン
魔導師(よく寝てる。可愛い)クス。ポンポン
魔導師(僕もこうして、何時も……兄さんに寝かして貰った)
魔導師(……さっきの炎は……間違い無く、勇者様、だった)
魔導師(やっぱり……『同じ』なのか……!)
魔導師(あ……鍛冶師様の道具、置いて来ちゃったな)
魔導師(折角、剣士さんに無理、言ったけど……)ファ
魔導師(…… ……やっぱり『必要無い』って、事……な ……の)
魔導師(…… ……)スゥ
……
………
…………
剣士「……こっちだ」
后「青年はまだ、なのね」
剣士「……放っておいてやれ」
后「…… ……」
剣士「何処まで聞いた?」
后「何も……とにかく、あの黒い靄、だったじゃないの」
剣士「……そうか」
后「私……間違えた、のかしら」
剣士「?」
后「あそこで……火を、着けなければ……!」
302: 2014/02/10(月) 12:46:56.81 ID:RX8zmVBqP
剣士「……終わってしまったことだ。それに」
剣士「放っておいても、衛生師は、何れ……同じ道を辿った、のかもしれない」
后「……あの人も『狂っていた』と?」
剣士「解らん……だが、あの時の声は……衛生師の声では無かった」
后「『怨み』……『呪い』」
剣士「……少女が言うところの、姉……『秘書』か」
后「『魔の血に』……とか、言ってたわね」
剣士「母親は、自分達の祖先には魔が居るのだと言っていたからな」
剣士「……どれも、確かめる術の無い話だ」
后「……お母様……ッ」ポロポロ
剣士(あんな母親でも……やはり、悲しい、と感じる……のか)
后「……ッ」グイッ
后「恐ろしい……言葉、よね」
剣士「え?」
后「『願えば叶う』」
剣士「…… ……」
后「秘書……で、あるのなら。あの、声……」
后「彼女は、叶えてしまった……怨みを、悪意を……『呪い』に変えた」
剣士「…… ……」
后「『最後の王』……か」
剣士「……青年が居る」
后「いえ、そうじゃ無くて……コンプレックス、だったのかしら、ね」
剣士「……王、か?」
后「ええ……少女との間に、子供が出来なくて」
后「……私は。自分に優れた加護が無くて」
后「どうして私だけ、って……思ってたけど」
剣士「…… ……」
后「彼は……持っていた、のに。でも、それでも」
后「本当に欲しい物が、手に入らなくて……」
剣士「……少女は、傍に居ただろう」
剣士「放っておいても、衛生師は、何れ……同じ道を辿った、のかもしれない」
后「……あの人も『狂っていた』と?」
剣士「解らん……だが、あの時の声は……衛生師の声では無かった」
后「『怨み』……『呪い』」
剣士「……少女が言うところの、姉……『秘書』か」
后「『魔の血に』……とか、言ってたわね」
剣士「母親は、自分達の祖先には魔が居るのだと言っていたからな」
剣士「……どれも、確かめる術の無い話だ」
后「……お母様……ッ」ポロポロ
剣士(あんな母親でも……やはり、悲しい、と感じる……のか)
后「……ッ」グイッ
后「恐ろしい……言葉、よね」
剣士「え?」
后「『願えば叶う』」
剣士「…… ……」
后「秘書……で、あるのなら。あの、声……」
后「彼女は、叶えてしまった……怨みを、悪意を……『呪い』に変えた」
剣士「…… ……」
后「『最後の王』……か」
剣士「……青年が居る」
后「いえ、そうじゃ無くて……コンプレックス、だったのかしら、ね」
剣士「……王、か?」
后「ええ……少女との間に、子供が出来なくて」
后「……私は。自分に優れた加護が無くて」
后「どうして私だけ、って……思ってたけど」
剣士「…… ……」
后「彼は……持っていた、のに。でも、それでも」
后「本当に欲しい物が、手に入らなくて……」
剣士「……少女は、傍に居ただろう」
303: 2014/02/10(月) 12:56:11.14 ID:RX8zmVBqP
后「心は?」
剣士「?」
后「……彼女は、王を愛していた?」
剣士「…… ……」
后「……大丈夫、だったかしら」
剣士「魔法の炎で焼かれることは無いんだろう」
后「…… ……」
剣士「……精一杯だったんだ」
后「御免。責めたい訳じゃ無いのよ」
后「……鍛冶師様の、も置いて来ちゃったわね」
剣士「あれは……魔導師にどうしてもと頼まれたんだ」
后「……光の剣を、修理する、気なの?」
后「でも、誰も魔法剣なんて……」
剣士「……今のうちに、話しておこう」
后「え?」
剣士「『夢』だ……魔導師が、人魚の魔詩で見た、夢」
后「……『知』を授かった、て奴ね」
剣士「あの『夢』が真実、だとしての前提だ」
剣士「……この『世界』そのものが何度も、繰り返している、と言う前提」
后「……良いわ」
剣士「女勇者が、黒い髪の魔王を父と呼び……倒した、のだと言っていた」
后「ええ……そして、終わらなかった、のよね?」
剣士「……ああ。『夢の中の俺』は、その後」
剣士「全てを思い出し、光の剣を完璧な状態へと戻した」
后「!?」
剣士「……俺は、代々の魔王の『残留思念』」
后「ざ…… ……え!?」
剣士「使用人から聞いているだろう」
剣士「……紫の魔王の側近から飛び出した光」
剣士「どこかへと飛来していった『欠片』」
后「な……!?」
剣士「……紫の魔王は、剣の力を吸い取ってしまっていた筈だ」
剣士「?」
后「……彼女は、王を愛していた?」
剣士「…… ……」
后「……大丈夫、だったかしら」
剣士「魔法の炎で焼かれることは無いんだろう」
后「…… ……」
剣士「……精一杯だったんだ」
后「御免。責めたい訳じゃ無いのよ」
后「……鍛冶師様の、も置いて来ちゃったわね」
剣士「あれは……魔導師にどうしてもと頼まれたんだ」
后「……光の剣を、修理する、気なの?」
后「でも、誰も魔法剣なんて……」
剣士「……今のうちに、話しておこう」
后「え?」
剣士「『夢』だ……魔導師が、人魚の魔詩で見た、夢」
后「……『知』を授かった、て奴ね」
剣士「あの『夢』が真実、だとしての前提だ」
剣士「……この『世界』そのものが何度も、繰り返している、と言う前提」
后「……良いわ」
剣士「女勇者が、黒い髪の魔王を父と呼び……倒した、のだと言っていた」
后「ええ……そして、終わらなかった、のよね?」
剣士「……ああ。『夢の中の俺』は、その後」
剣士「全てを思い出し、光の剣を完璧な状態へと戻した」
后「!?」
剣士「……俺は、代々の魔王の『残留思念』」
后「ざ…… ……え!?」
剣士「使用人から聞いているだろう」
剣士「……紫の魔王の側近から飛び出した光」
剣士「どこかへと飛来していった『欠片』」
后「な……!?」
剣士「……紫の魔王は、剣の力を吸い取ってしまっていた筈だ」
304: 2014/02/10(月) 13:05:05.84 ID:RX8zmVBqP
剣士「『夢』の中で……俺は、思い出したのだ、と」
剣士「……そうして、この『器』と『中身』……『俺の全て』を」
剣士「『解放』する事で……光の剣は、元の姿へと戻った」
后「そ……そんな!?」
剣士「……その話を聞いて、合致したのは『欠片』と言う言葉を」
剣士「知っていたから、だけでは無い」
剣士「俺の……『思い』だ」
后「……『必ず魔王を倒す』」
剣士「…… ……」
后「で、でも!!」
剣士「……あの二人は、必ず他に道があるはずだ、と言って聞かなかった」ハァ
剣士「だが……『こっち』では、あの村ではもう、鍛冶は行われていない」
后「え!?」
剣士「数年前、か何かの流行病で、大人達が……随分、亡くなったそうだ」
剣士「……鍛冶場も、取り壊されてしまった」
后「それで……鍛冶師様の物を……」
剣士「……それも、もう……手に入らないだろう、がな」
后「……で、でも、誰が修理すると言うの!?」
剣士「『知』を授かった、と言っただろう」
剣士「……『向こう』の魔導師は、旅立ちの頃で」
剣士「14.5歳の少年だ……が、鍛冶師の村で鍛冶を学んでいる」
后「!」
剣士「……黒い髪の魔王に対峙する前に」
剣士「お前の炎で、光の剣を打ち直した、とも言っていた」
后「な……」
剣士「……そうして、俺が魔法の力で強化しようと試み……失敗した、んだったかな」
后「…… ……」
剣士「……色々、違ってきているんだそうだ」
后「違い?」
剣士「癒し手の事だってそうだ……お前も夢に見たんだろう」
剣士「……否。『北の塔』での出来事も、そうか」
后「!」
剣士「……そうして、この『器』と『中身』……『俺の全て』を」
剣士「『解放』する事で……光の剣は、元の姿へと戻った」
后「そ……そんな!?」
剣士「……その話を聞いて、合致したのは『欠片』と言う言葉を」
剣士「知っていたから、だけでは無い」
剣士「俺の……『思い』だ」
后「……『必ず魔王を倒す』」
剣士「…… ……」
后「で、でも!!」
剣士「……あの二人は、必ず他に道があるはずだ、と言って聞かなかった」ハァ
剣士「だが……『こっち』では、あの村ではもう、鍛冶は行われていない」
后「え!?」
剣士「数年前、か何かの流行病で、大人達が……随分、亡くなったそうだ」
剣士「……鍛冶場も、取り壊されてしまった」
后「それで……鍛冶師様の物を……」
剣士「……それも、もう……手に入らないだろう、がな」
后「……で、でも、誰が修理すると言うの!?」
剣士「『知』を授かった、と言っただろう」
剣士「……『向こう』の魔導師は、旅立ちの頃で」
剣士「14.5歳の少年だ……が、鍛冶師の村で鍛冶を学んでいる」
后「!」
剣士「……黒い髪の魔王に対峙する前に」
剣士「お前の炎で、光の剣を打ち直した、とも言っていた」
后「な……」
剣士「……そうして、俺が魔法の力で強化しようと試み……失敗した、んだったかな」
后「…… ……」
剣士「……色々、違ってきているんだそうだ」
后「違い?」
剣士「癒し手の事だってそうだ……お前も夢に見たんだろう」
剣士「……否。『北の塔』での出来事も、そうか」
后「!」
305: 2014/02/10(月) 13:13:20.99 ID:RX8zmVBqP
剣士「……『あっち』では癒し手は『器は間に合った』」
后「え!?」
剣士「……青年が、あの鍛冶師の村付近の小屋の庭に、埋めたのだと」
剣士「掘り返しに言ったのは、お前だそうだ。側近は、動けないからな」
后「…… ……」
剣士「どういう絡繰りかは解らん。が……もう一度、会えたと」
剣士「『また後で』と……約束したから、と言っていたそうだ」
后「……癒し手…… ……ッ」ポロポロ
后「で、でも……『こっち』の癒し手は……!」
剣士「……風になって、消えてしまった、と言っていたな」ハァ
后「…… ……ッ」
剣士「そうした……差違もある。ああ、そう言えば」
后「え?」
剣士「……赤茶の髪の勇者は、炎の魔法も使えたそうだ」
后「!」
剣士「……さっき、証明された……な」
后「で、でも……何で……!?」
剣士「『あっち』の使用人曰く」
剣士「……身の内に押しとどめた、のだろう。お前が……魔に変じたとき」
后「!」
剣士「『人の部分』を奪い去り『勇者は人間』として産まれて来るのなら」
剣士「……だ」
后「で、でもどうして……!」
剣士「……絡繰りなんて誰にも解らん。だが」
剣士「これは全部、魔導師から聞いた話だ……その絡繰りすら」
剣士「わからない……『何故』『どうして』を問うて」
剣士「誰も応えて等……くれないのだ、と言う事しか」
后「……わからない、のね……」
キィ
青年「……剣士。后様も!?」
剣士「青年か……」
后「え!?」
剣士「……青年が、あの鍛冶師の村付近の小屋の庭に、埋めたのだと」
剣士「掘り返しに言ったのは、お前だそうだ。側近は、動けないからな」
后「…… ……」
剣士「どういう絡繰りかは解らん。が……もう一度、会えたと」
剣士「『また後で』と……約束したから、と言っていたそうだ」
后「……癒し手…… ……ッ」ポロポロ
后「で、でも……『こっち』の癒し手は……!」
剣士「……風になって、消えてしまった、と言っていたな」ハァ
后「…… ……ッ」
剣士「そうした……差違もある。ああ、そう言えば」
后「え?」
剣士「……赤茶の髪の勇者は、炎の魔法も使えたそうだ」
后「!」
剣士「……さっき、証明された……な」
后「で、でも……何で……!?」
剣士「『あっち』の使用人曰く」
剣士「……身の内に押しとどめた、のだろう。お前が……魔に変じたとき」
后「!」
剣士「『人の部分』を奪い去り『勇者は人間』として産まれて来るのなら」
剣士「……だ」
后「で、でもどうして……!」
剣士「……絡繰りなんて誰にも解らん。だが」
剣士「これは全部、魔導師から聞いた話だ……その絡繰りすら」
剣士「わからない……『何故』『どうして』を問うて」
剣士「誰も応えて等……くれないのだ、と言う事しか」
后「……わからない、のね……」
キィ
青年「……剣士。后様も!?」
剣士「青年か……」
306: 2014/02/10(月) 13:22:02.87 ID:RX8zmVBqP
后「…… ……」
青年「……ああ、話してた、んだな」
青年「顔色が悪いよ、后様」
后「……だって、到底信じられない話よ」
后「否……信じるしか、ない、けれど……!」
青年「……うん」
剣士「大丈夫か? ……お前の方が、顔色が悪い」
青年「休んだ方が良いんだろうけどね。そうも……言ってられない、よ」
青年「……何処まで聞いたの」
后「『夢』の話よ……勇者が、炎の魔法を使えたり」
后「……剣士が、その……ッ」
青年「ああ……『終わらなかった』のは、小屋でちらっと言ったよね」
后「……魔王に、なってしまった、のよね」
青年「そう……『夢の中』で、魔導師は……魔に変じている」
青年「勇者様は……確かに魔王に、なったんだ」
后「…… ……」
青年「……簡単に、だけど」
青年「魔導師が、船の中で年表みたいなもの着くってね」
后「年表……?」
青年「『過去』と『現在』の差違……時間の経過が随分違った」
青年「……使用人は、1000年程生きているのだと言って」
后「……そう言えば、そんな事も言ってたわね」
青年「僕が小鳥に文を結んで、最果てに……飛ばしてある」
后「え!?」
青年「向こうは向こうで、色々と知恵を絞ってくれるんじゃないか、とね」
后「……混乱してるでしょうね」ハァ
剣士「俺達だってそうだ」
剣士「……あの船は、北の街と書の街を経由して」
剣士「始まりの国に戻る筈だったが」
剣士「……青年が、書の街の近く辺りから……気分が悪いと言い出して、な」
青年「…… ……」
后「『呪い』ね……」
青年「……ああ、話してた、んだな」
青年「顔色が悪いよ、后様」
后「……だって、到底信じられない話よ」
后「否……信じるしか、ない、けれど……!」
青年「……うん」
剣士「大丈夫か? ……お前の方が、顔色が悪い」
青年「休んだ方が良いんだろうけどね。そうも……言ってられない、よ」
青年「……何処まで聞いたの」
后「『夢』の話よ……勇者が、炎の魔法を使えたり」
后「……剣士が、その……ッ」
青年「ああ……『終わらなかった』のは、小屋でちらっと言ったよね」
后「……魔王に、なってしまった、のよね」
青年「そう……『夢の中』で、魔導師は……魔に変じている」
青年「勇者様は……確かに魔王に、なったんだ」
后「…… ……」
青年「……簡単に、だけど」
青年「魔導師が、船の中で年表みたいなもの着くってね」
后「年表……?」
青年「『過去』と『現在』の差違……時間の経過が随分違った」
青年「……使用人は、1000年程生きているのだと言って」
后「……そう言えば、そんな事も言ってたわね」
青年「僕が小鳥に文を結んで、最果てに……飛ばしてある」
后「え!?」
青年「向こうは向こうで、色々と知恵を絞ってくれるんじゃないか、とね」
后「……混乱してるでしょうね」ハァ
剣士「俺達だってそうだ」
剣士「……あの船は、北の街と書の街を経由して」
剣士「始まりの国に戻る筈だったが」
剣士「……青年が、書の街の近く辺りから……気分が悪いと言い出して、な」
青年「…… ……」
后「『呪い』ね……」
307: 2014/02/10(月) 13:29:51.59 ID:RX8zmVBqP
剣士「……結局、転移で小屋に行く羽目になったからな」
青年「結果的には……良かっただろう」
后「え……」
青年「……あんなもの、それこそ……勇者様の旅立ちまであそこにあったら」
青年「それこそ、国は滅びていた筈だ」
青年「……あの衛生師って男。元々の性格もあるんだろうけど」
青年「あいつ……あいつからも、黒い気配が漂っていた」
后「…… ……」
青年「何がどうなってそうなったのか、解らない、けど」
青年「……さっさと焼いてしまって、正解だよ后様」
后「……そ、う……かな。そう……よね」
青年「……あの、エルフの加護のあるあの丘」
青年「あそこだって、何れは浸食されていたと思う」
剣士「…… ……」
青年「凄い『怨み』だ。それこそ……『呪い』だ」
青年「……それに、いくら盗賊様の……曾お祖母様の遺言だからと」
青年「『王』があれでは……意味が無い」
后「……失われて居ないでしょう」
青年「……后様まで、僕が『王』だなんて言いたいの」
剣士「……厭なのか?」
青年「そう言う問題じゃ無い!」
青年「……守るべき国はもう、失われた」
青年「勇者も、あそこから旅立ったりはしない……できない」
青年「……別に僕が『王』でも構わないさ」
青年「何か『形』がある訳じゃ無いからな……でも」
后「…… ……」
青年「『血』がどうとか、認めてしまえば」
青年「それこそ、同じになるよ……魔導の街の人達とね」
剣士「…… ……」
后「『最後の王』を認めれば……彼女の『呪い』の成就にもなるわよ」
青年「…… ……」
后「……否。下らない言葉遊びよね」
青年「結果的には……良かっただろう」
后「え……」
青年「……あんなもの、それこそ……勇者様の旅立ちまであそこにあったら」
青年「それこそ、国は滅びていた筈だ」
青年「……あの衛生師って男。元々の性格もあるんだろうけど」
青年「あいつ……あいつからも、黒い気配が漂っていた」
后「…… ……」
青年「何がどうなってそうなったのか、解らない、けど」
青年「……さっさと焼いてしまって、正解だよ后様」
后「……そ、う……かな。そう……よね」
青年「……あの、エルフの加護のあるあの丘」
青年「あそこだって、何れは浸食されていたと思う」
剣士「…… ……」
青年「凄い『怨み』だ。それこそ……『呪い』だ」
青年「……それに、いくら盗賊様の……曾お祖母様の遺言だからと」
青年「『王』があれでは……意味が無い」
后「……失われて居ないでしょう」
青年「……后様まで、僕が『王』だなんて言いたいの」
剣士「……厭なのか?」
青年「そう言う問題じゃ無い!」
青年「……守るべき国はもう、失われた」
青年「勇者も、あそこから旅立ったりはしない……できない」
青年「……別に僕が『王』でも構わないさ」
青年「何か『形』がある訳じゃ無いからな……でも」
后「…… ……」
青年「『血』がどうとか、認めてしまえば」
青年「それこそ、同じになるよ……魔導の街の人達とね」
剣士「…… ……」
后「『最後の王』を認めれば……彼女の『呪い』の成就にもなるわよ」
青年「…… ……」
后「……否。下らない言葉遊びよね」
308: 2014/02/10(月) 13:37:41.85 ID:RX8zmVBqP
后「……詳しい話は、明日聞くわ」
后「魔導師が居るとは言え……勇者の所に戻らなきゃ」
剣士「……当面の事は明日、話し合おう」
青年「そう……だな」
后「じゃあ、お先に……」
カチャ、パタン
青年「……ショック、なんだろうな。后様」
剣士「俺には……解らん」
青年「人魚の話はしたか?」
剣士「……否。出来事が多すぎて、整理してもしきれん」
青年「だ、よな……」
剣士「…… ……」
青年「…… ……」
剣士「休まなくて良いのか」
青年「……眠れないよ」
剣士「…… ……」
青年「……なあ」
剣士「?」
青年「もし、だ……少しずつ、『世界』は変わっている、として」
剣士「…… ……」
青年「黒い髪の魔王様で、終わる可能性って、高いと思うか?」
剣士「……どうにか。勇者様が……黒髪の魔王を倒せれば」
青年「…… ……」
剣士「曰く……俺が、光の剣に戻れば、だろう」
青年「……ッ」
剣士「模索の道を探そうと言う……気持ちは、ありがたいんだ」
青年「…… ……」
剣士「だが……俺は……」
青年「君は、君だ!」
剣士「……『あっち』ではこれほど好かれていなかった筈だがな」クス
青年「…… ……『仲間』に違いは無いだろう!」
剣士「倣う必要など無い、と……思いたい。俺だって」
剣士「……だが。『否定』してしまうと、俺は俺では無くなる、青年」
青年「…… ……」
剣士「俺は……俺達、は。魔王を倒すんだ、青年」
青年「…… ……ッ」
剣士「……先に戻るぞ」
青年「……ああ」
剣士「…… ……」
スタ、スタ……カチャ、パタン
后「魔導師が居るとは言え……勇者の所に戻らなきゃ」
剣士「……当面の事は明日、話し合おう」
青年「そう……だな」
后「じゃあ、お先に……」
カチャ、パタン
青年「……ショック、なんだろうな。后様」
剣士「俺には……解らん」
青年「人魚の話はしたか?」
剣士「……否。出来事が多すぎて、整理してもしきれん」
青年「だ、よな……」
剣士「…… ……」
青年「…… ……」
剣士「休まなくて良いのか」
青年「……眠れないよ」
剣士「…… ……」
青年「……なあ」
剣士「?」
青年「もし、だ……少しずつ、『世界』は変わっている、として」
剣士「…… ……」
青年「黒い髪の魔王様で、終わる可能性って、高いと思うか?」
剣士「……どうにか。勇者様が……黒髪の魔王を倒せれば」
青年「…… ……」
剣士「曰く……俺が、光の剣に戻れば、だろう」
青年「……ッ」
剣士「模索の道を探そうと言う……気持ちは、ありがたいんだ」
青年「…… ……」
剣士「だが……俺は……」
青年「君は、君だ!」
剣士「……『あっち』ではこれほど好かれていなかった筈だがな」クス
青年「…… ……『仲間』に違いは無いだろう!」
剣士「倣う必要など無い、と……思いたい。俺だって」
剣士「……だが。『否定』してしまうと、俺は俺では無くなる、青年」
青年「…… ……」
剣士「俺は……俺達、は。魔王を倒すんだ、青年」
青年「…… ……ッ」
剣士「……先に戻るぞ」
青年「……ああ」
剣士「…… ……」
スタ、スタ……カチャ、パタン
355: 2014/02/20(木) 10:02:45.63 ID:IJzjP1aLP
青年「…… ……」
青年(『あっち』と『こっち』……本当に、何か違う、のか?)
青年(……そもそも。この『世界』はどうなってるんだよ……否)
青年(……何なんだ、よ)ハァ
……
………
…………
使用人「…… ……」ハァ
コンコン
使用人「はい」
カチャ
側近「……いくら、片付けるのはお前、だとは言え」
使用人「いてもたってもいられませんよ」
使用人「……書庫の中、本当に……見た侭」
使用人「ひっくり返しました」
側近「……俺も後で手伝おう」ハァ
使用人「すみません……でも」
側近「ん?」
使用人「後にして。こっちと、これだけ、食堂に運んで下さい」
側近「……羊皮紙の束?」
使用人「あの文……青年さんから届いた、あの」
使用人「『年表』と『転移石の作り方』」
側近「…… ……」
使用人「確かに、子供の様な字でした。誰が書いたのか、はともかく」
使用人「……こっちが、城にあった物です」トン
側近「最後が書き足してある、んだったな」
使用人「似てる気はするんです。もう少し、字は……綺麗になってますけど」
側近「…… ……」
使用人「で、これです」バサ
側近「見て良いのか」
使用人「……何言ってるんですか」
側近「掠れてる、が……!? 『鍛冶……』!?」
使用人「……他の物にも、出て来ます」
側近「…… ……ッ」バサ、バサッ
青年(『あっち』と『こっち』……本当に、何か違う、のか?)
青年(……そもそも。この『世界』はどうなってるんだよ……否)
青年(……何なんだ、よ)ハァ
……
………
…………
使用人「…… ……」ハァ
コンコン
使用人「はい」
カチャ
側近「……いくら、片付けるのはお前、だとは言え」
使用人「いてもたってもいられませんよ」
使用人「……書庫の中、本当に……見た侭」
使用人「ひっくり返しました」
側近「……俺も後で手伝おう」ハァ
使用人「すみません……でも」
側近「ん?」
使用人「後にして。こっちと、これだけ、食堂に運んで下さい」
側近「……羊皮紙の束?」
使用人「あの文……青年さんから届いた、あの」
使用人「『年表』と『転移石の作り方』」
側近「…… ……」
使用人「確かに、子供の様な字でした。誰が書いたのか、はともかく」
使用人「……こっちが、城にあった物です」トン
側近「最後が書き足してある、んだったな」
使用人「似てる気はするんです。もう少し、字は……綺麗になってますけど」
側近「…… ……」
使用人「で、これです」バサ
側近「見て良いのか」
使用人「……何言ってるんですか」
側近「掠れてる、が……!? 『鍛冶……』!?」
使用人「……他の物にも、出て来ます」
側近「…… ……ッ」バサ、バサッ
356: 2014/02/20(木) 10:19:48.55 ID:IJzjP1aLP
使用人「『魔力の押さえ方』……これなんて、もしかしたら」
使用人「紫の魔王様も、参考にされたかもしれません」
側近「……魔力をぶつけて、『魔王』を押さえていた、んだよな」
側近「前側近や……魔導将軍、達は」
使用人「はい」
側近「…… ……」
使用人「でもこれには『魔王の力を魔石と成し』と書いてあるんですよ」
側近「!?」
使用人「……それの活用方法も。それを使用して」
使用人「……この、人……これを書いた人は」
使用人「転移石を作っています」
側近「……紫の魔王も、自分の魔力を封じ込めた石を」
使用人「……そうです。それで転移石を作って下さってます」
使用人「これを参考にされたのは、間違い無い……筈です」
側近「……どう、なっているんだ」
使用人「私が聞きたいです」
側近「…… ……」
使用人「……勇者様が、始まりの国から旅立たれるまでまだ」
使用人「まだ……時間があります」
側近「……しかし、時間だけがあっても、だな」
使用人「…… ……」
側近「!?」バッ
使用人「? ……側近様?」
側近(何だ、これは……何か、来る!?)
使用人「側近さ……ッ」
側近「下がれ……ッ」
シュゥン……スタ
后「…… ……」
使用人「き……ッ 后様!?」
使用人「紫の魔王様も、参考にされたかもしれません」
側近「……魔力をぶつけて、『魔王』を押さえていた、んだよな」
側近「前側近や……魔導将軍、達は」
使用人「はい」
側近「…… ……」
使用人「でもこれには『魔王の力を魔石と成し』と書いてあるんですよ」
側近「!?」
使用人「……それの活用方法も。それを使用して」
使用人「……この、人……これを書いた人は」
使用人「転移石を作っています」
側近「……紫の魔王も、自分の魔力を封じ込めた石を」
使用人「……そうです。それで転移石を作って下さってます」
使用人「これを参考にされたのは、間違い無い……筈です」
側近「……どう、なっているんだ」
使用人「私が聞きたいです」
側近「…… ……」
使用人「……勇者様が、始まりの国から旅立たれるまでまだ」
使用人「まだ……時間があります」
側近「……しかし、時間だけがあっても、だな」
使用人「…… ……」
側近「!?」バッ
使用人「? ……側近様?」
側近(何だ、これは……何か、来る!?)
使用人「側近さ……ッ」
側近「下がれ……ッ」
シュゥン……スタ
后「…… ……」
使用人「き……ッ 后様!?」
357: 2014/02/20(木) 10:30:25.79 ID:IJzjP1aLP
側近「后…… ……ッ!?」
勇者(すぅ)
使用人「……ゆ、勇者様、まで……」
后「置いて来れないもの、まだ」
側近「……まだ」
后「でも、長居は出来ないわ…… ……魔王は?」
使用人「……今の所、大人しくされています、よ」
后「そうね……側近が此処にこうしているぐらい、ですもの」ハァ
側近「お、お前、それより……ッ」
側近「始まりの国に居たんじゃないのか!?」
后「……青年から、文は届いて居る、わよね」
使用人「!」
后「ぐちゃぐちゃですものね、書庫」クス
側近「な…… ……何で、お前がそれを知ってる」
后「二人とも落ち着いて聞いて。って言っても……私もまだ」
后「混乱しているけど……」
側近「…… ……」
使用人「后様が、勇者様と此処にいらっしゃる、と言う事は」
使用人「始まりの国に何かがあった、と思って良い、のですね」
后「…… ……あの国は、もう無い」
側近「な、に!?」
后「側近……貴方には、ずい、ぶん……ッ」ポロポロ
側近「……お、おい」
后「つ、らい……話を、沢山……ッ 聞かせなくては……ならないの……!!」
使用人「き、后様……!」
后「……話が終われば、私は……南の島に帰るわ」
使用人「南の島……?」
后「ええ。そこで、旅立ちまで……勇者を育てる」
后「今はばらばらになってしまったけど」
后「……皆、戻って来る。勇者と共に旅立ち、魔王を倒しに来るまで」
側近「……誰、の事だ。それより……!」
勇者(すぅ)
使用人「……ゆ、勇者様、まで……」
后「置いて来れないもの、まだ」
側近「……まだ」
后「でも、長居は出来ないわ…… ……魔王は?」
使用人「……今の所、大人しくされています、よ」
后「そうね……側近が此処にこうしているぐらい、ですもの」ハァ
側近「お、お前、それより……ッ」
側近「始まりの国に居たんじゃないのか!?」
后「……青年から、文は届いて居る、わよね」
使用人「!」
后「ぐちゃぐちゃですものね、書庫」クス
側近「な…… ……何で、お前がそれを知ってる」
后「二人とも落ち着いて聞いて。って言っても……私もまだ」
后「混乱しているけど……」
側近「…… ……」
使用人「后様が、勇者様と此処にいらっしゃる、と言う事は」
使用人「始まりの国に何かがあった、と思って良い、のですね」
后「…… ……あの国は、もう無い」
側近「な、に!?」
后「側近……貴方には、ずい、ぶん……ッ」ポロポロ
側近「……お、おい」
后「つ、らい……話を、沢山……ッ 聞かせなくては……ならないの……!!」
使用人「き、后様……!」
后「……話が終われば、私は……南の島に帰るわ」
使用人「南の島……?」
后「ええ。そこで、旅立ちまで……勇者を育てる」
后「今はばらばらになってしまったけど」
后「……皆、戻って来る。勇者と共に旅立ち、魔王を倒しに来るまで」
側近「……誰、の事だ。それより……!」
358: 2014/02/20(木) 10:37:23.76 ID:IJzjP1aLP
后「解ってる……ちゃんと話す」
后「勇者の『仲間』はね。剣士と青年と……覚えて居るかしら」
后「魔導師って男の子よ」
使用人「魔導師……? あの、鍛冶師の村の、ですか」
側近「…… ……」
后「年表、あるわよね、使用人」
使用人「え!? あ、はい!」
后「あれを書いたのは魔導師よ。彼は……『夢』の中で」
后「『1000年生きた貴女』から」
側近「!」
后「それまでに知り得ただろう『知』を受け継いだ」
使用人「夢!?」
后「……『あっち』の貴女、って言えばいいかしら」
側近「待て、待て、后!」
后「側近……」
側近「…… ……此処は寒い。勇者も居る」
使用人「あ…… ……わかりました」
使用人「側近様は、その『資料』を ……『御伽噺』も要りますね」
側近「……わかった。運ぶ」
后「…… ……」クスクス
側近「后?」
后「本当にいつも、私達こんな事ばかりしてる」
后「笑っちゃ行けない、んだけど」
使用人「食堂の方へ。お茶にしましょう。甘い物も一杯用意します」
側近「……頼む」
后「私は、勇者に『全てを授ける』わ」
使用人「え?」
后「……すでに勇者の仲間達は皆、『知り得る全て』を知っている」
后「だから、この子にも…… ……この子が『最強の魔王』になる前に」
使用人「! 終わらないと言うのですか!?」
后「……選ぶのは『勇者』よ」
側近「…… ……」ハァ
后「勇者の『仲間』はね。剣士と青年と……覚えて居るかしら」
后「魔導師って男の子よ」
使用人「魔導師……? あの、鍛冶師の村の、ですか」
側近「…… ……」
后「年表、あるわよね、使用人」
使用人「え!? あ、はい!」
后「あれを書いたのは魔導師よ。彼は……『夢』の中で」
后「『1000年生きた貴女』から」
側近「!」
后「それまでに知り得ただろう『知』を受け継いだ」
使用人「夢!?」
后「……『あっち』の貴女、って言えばいいかしら」
側近「待て、待て、后!」
后「側近……」
側近「…… ……此処は寒い。勇者も居る」
使用人「あ…… ……わかりました」
使用人「側近様は、その『資料』を ……『御伽噺』も要りますね」
側近「……わかった。運ぶ」
后「…… ……」クスクス
側近「后?」
后「本当にいつも、私達こんな事ばかりしてる」
后「笑っちゃ行けない、んだけど」
使用人「食堂の方へ。お茶にしましょう。甘い物も一杯用意します」
側近「……頼む」
后「私は、勇者に『全てを授ける』わ」
使用人「え?」
后「……すでに勇者の仲間達は皆、『知り得る全て』を知っている」
后「だから、この子にも…… ……この子が『最強の魔王』になる前に」
使用人「! 終わらないと言うのですか!?」
后「……選ぶのは『勇者』よ」
側近「…… ……」ハァ
359: 2014/02/20(木) 10:39:26.85 ID:IJzjP1aLP
ちょっとお買い物いってきまーす
360: 2014/02/20(木) 13:11:17.05 ID:IJzjP1aLP
使用人「……『選ぶ』」
后「そうよ。私達も……『金の髪の勇者達』も、選んだ筈よ」
側近「魔王になるか否か、か。しかし……」
后「後者を取れば『世界が滅びる』わ」
使用人「で、でも……!」
后「貴女がまだ生きている理由……」
使用人「……え?」
后「魔導師は『夢』の中で……貴女から『知』を受け継いだ」
使用人「…… ……」
后「詳しくは後で話すけど……それは、あの時点で」
側近「……おい」
后「知り得た『全て』……『こっち』じゃ無い」
側近「あの『時点』と言うのは……何なんだ」
后「アレは多分……『過去』」
使用人「『過去』……」
后「そう、『繰り返される運命の輪』よ。使用人」
后「……『勇者と魔王』だけじゃない。何度も、何度も……この、世界そのものが」
后「繰り返されている……」
側近「…… ……」
后「驚かないの?」
側近「……それも……後で話そう」
使用人「先に行きます。側近様、本とか、お願いします」
側近「お前も先にいけ、后……勇者、寝かせてやれ」
后「……ええ」
后「そうよ。私達も……『金の髪の勇者達』も、選んだ筈よ」
側近「魔王になるか否か、か。しかし……」
后「後者を取れば『世界が滅びる』わ」
使用人「で、でも……!」
后「貴女がまだ生きている理由……」
使用人「……え?」
后「魔導師は『夢』の中で……貴女から『知』を受け継いだ」
使用人「…… ……」
后「詳しくは後で話すけど……それは、あの時点で」
側近「……おい」
后「知り得た『全て』……『こっち』じゃ無い」
側近「あの『時点』と言うのは……何なんだ」
后「アレは多分……『過去』」
使用人「『過去』……」
后「そう、『繰り返される運命の輪』よ。使用人」
后「……『勇者と魔王』だけじゃない。何度も、何度も……この、世界そのものが」
后「繰り返されている……」
側近「…… ……」
后「驚かないの?」
側近「……それも……後で話そう」
使用人「先に行きます。側近様、本とか、お願いします」
側近「お前も先にいけ、后……勇者、寝かせてやれ」
后「……ええ」
361: 2014/02/20(木) 13:19:12.49 ID:IJzjP1aLP
スタスタ、カチャ、パタン
后「ねえ、使用人」
使用人「はい? ……あ、開けますね」
カチャ
后「……この部屋も久しぶり、だわ」
后「まだ、それほど時間なんて経ってないのに」
使用人「どうぞ、此方のソファに勇者様を。すぐにお茶入れます」
使用人「后様は座ってお待ちを」
后「ええ……あの、ね」
使用人「? はい?」
后「終わらないのか、とさっき聞いた、わよね?」
使用人「……『最強の魔王』」
后「考える事は、一緒……よね」
使用人「……終わらせないと、いけないでしょう」
后「魔導師が言うには、『夢』の中で自分は、魔に変じたのだ、と」
使用人「…… ……」
后「倣うのならば、終わらない」
使用人「で、でも……! そんな事を言ってしまっては……!」
后「……そうよ。終わりなんて来ない。永遠に」
使用人「…… ……ッ」
后「『貴女自身』が……まだ、生きている理由」
使用人「え……?」
后「前に話した事があった、わよね? ……『知を受け継ぐ者』」
使用人「私がずっと、受け継いできたのは……でも……」
使用人「魔導師さんに、受け継いだのならば……!」
后「誰に授けるか、よね……終わるのならば、もう……」
使用人「……見届ければ、終わるのだろうと思っていました」
后「魔導師もそんな事を言っていたわ」
使用人「え?」
后「『使用人』は『魔導師』に全てを受け継がせ、姿を消した……と」
使用人「…… ……」
后「側近が戻ったら、話しましょ。最初から、ね……」
カチャ
側近「待たせたな」
后「ねえ、使用人」
使用人「はい? ……あ、開けますね」
カチャ
后「……この部屋も久しぶり、だわ」
后「まだ、それほど時間なんて経ってないのに」
使用人「どうぞ、此方のソファに勇者様を。すぐにお茶入れます」
使用人「后様は座ってお待ちを」
后「ええ……あの、ね」
使用人「? はい?」
后「終わらないのか、とさっき聞いた、わよね?」
使用人「……『最強の魔王』」
后「考える事は、一緒……よね」
使用人「……終わらせないと、いけないでしょう」
后「魔導師が言うには、『夢』の中で自分は、魔に変じたのだ、と」
使用人「…… ……」
后「倣うのならば、終わらない」
使用人「で、でも……! そんな事を言ってしまっては……!」
后「……そうよ。終わりなんて来ない。永遠に」
使用人「…… ……ッ」
后「『貴女自身』が……まだ、生きている理由」
使用人「え……?」
后「前に話した事があった、わよね? ……『知を受け継ぐ者』」
使用人「私がずっと、受け継いできたのは……でも……」
使用人「魔導師さんに、受け継いだのならば……!」
后「誰に授けるか、よね……終わるのならば、もう……」
使用人「……見届ければ、終わるのだろうと思っていました」
后「魔導師もそんな事を言っていたわ」
使用人「え?」
后「『使用人』は『魔導師』に全てを受け継がせ、姿を消した……と」
使用人「…… ……」
后「側近が戻ったら、話しましょ。最初から、ね……」
カチャ
側近「待たせたな」
362: 2014/02/20(木) 13:40:52.32 ID:IJzjP1aLP
使用人「……お座り下さい。すぐにお茶を入れます」
側近「ああ……で、何だ。何なんだ」
側近「……この、世界は、どうなってる……!!」
后「『年表』を……使用人」
使用人「は、はい」
后「ここから行くわ……『金の髪の魔王』を『黒い髪の勇者』が倒した」
后「……これは、私達よ、側近」
側近「…… ……」
使用人「何度も読みました。私と、側近様で……」
后「そうよね……違う点、は」
使用人「『時間』ですね」
后「……ええ」
側近「『50年~60年』?」
后「でもね。勇者が魔王を倒し、新たな魔王になってから」
后「次の勇者を産むまで、60年、として、よ」
側近「紫の魔王、金の髪の魔王、黒髪の魔王……180年、まあ多く見て200年、か」
側近「『1000年生きた使用人』……」
使用人「私は……『使用人』は置いておきましょう。過去が解らない以上」
使用人「スタート地点を見つけられませんし」
側近「……そうだな」
后「まだあるわよ。『向こう』では……書の街は無かったの」
使用人「え?」
后「正確に言うと『魔導国』も無かったのよ」
側近「……ん?」
后「魔導の街は魔導の街、の侭、存在していたのよ。ずっとね」
后「……勿論、始まりの国だって滅びていない」
側近「! そうだ! ……ッ 王は、どうしたんだ!? 親父は……ッ」
后「…… ……『黒い靄』」
使用人「黒い靄?……癒し手様が仰って居た……新王様に黒い物が見えた」
使用人「……と、言う奴ですか?」
后「…… ……」
側近「后」
后「ちゃんと話すわよ……待って」
后「……始まりの国の、地下から……その黒い靄は漂っていた」
后「私は此処を出て、勇者を連れてあの小屋に行ったの」
后「……その時、王子様にもお会いしたわ。城は立入禁止になっていたし」
側近「ああ……で、何だ。何なんだ」
側近「……この、世界は、どうなってる……!!」
后「『年表』を……使用人」
使用人「は、はい」
后「ここから行くわ……『金の髪の魔王』を『黒い髪の勇者』が倒した」
后「……これは、私達よ、側近」
側近「…… ……」
使用人「何度も読みました。私と、側近様で……」
后「そうよね……違う点、は」
使用人「『時間』ですね」
后「……ええ」
側近「『50年~60年』?」
后「でもね。勇者が魔王を倒し、新たな魔王になってから」
后「次の勇者を産むまで、60年、として、よ」
側近「紫の魔王、金の髪の魔王、黒髪の魔王……180年、まあ多く見て200年、か」
側近「『1000年生きた使用人』……」
使用人「私は……『使用人』は置いておきましょう。過去が解らない以上」
使用人「スタート地点を見つけられませんし」
側近「……そうだな」
后「まだあるわよ。『向こう』では……書の街は無かったの」
使用人「え?」
后「正確に言うと『魔導国』も無かったのよ」
側近「……ん?」
后「魔導の街は魔導の街、の侭、存在していたのよ。ずっとね」
后「……勿論、始まりの国だって滅びていない」
側近「! そうだ! ……ッ 王は、どうしたんだ!? 親父は……ッ」
后「…… ……『黒い靄』」
使用人「黒い靄?……癒し手様が仰って居た……新王様に黒い物が見えた」
使用人「……と、言う奴ですか?」
后「…… ……」
側近「后」
后「ちゃんと話すわよ……待って」
后「……始まりの国の、地下から……その黒い靄は漂っていた」
后「私は此処を出て、勇者を連れてあの小屋に行ったの」
后「……その時、王子様にもお会いしたわ。城は立入禁止になっていたし」
386: 2014/02/25(火) 09:47:14.92 ID:Gqa4WaY3P
側近「立入禁止……? 親父まで、か?」
后「…… ……ええ」
后「王はご病気だと言う事でね……でも、私が会った『王』は」
后「とても健康そうに見えた……心を病んでいらした、と知ったのは」
后「後からだったはずだけど」
側近「……確かに、不安定なところはある奴だった、みたいだが」
使用人「側近様に取っては……従兄弟、ですよね、王様って」
后「…… ……」ハァ
側近「后?」
后「……全て話すわ、と言っておきながら、私がまだ混乱してる」
后「どこから、話して良いのか……」
使用人「その『黒い靄』と言うのは……」
側近「……こういうのは、順序立てて話さなければ混乱を引き起こす」
側近「出口の無い迷路に迷い込むのは、できる限り避けたい」
后「側近……」
側近「俺達は今までも、そうしてきたはずだ、后」
后「……そうね」
側近「……ああ、すまん。話を脱線させたのは俺、か……」
后「いえ……現状確認が先よ。話を続けるわ」
后「間違い探しは後……よね」
使用人「話しやすいところからで結構ですよ?」
后「……避けては通れない話よ」ハァ
后「勇者と私は王子様と一緒に始まりの国の『王』の所に行った」
后「『同じ』……小屋を与えて貰ったけれど、その黒い靄の所為で」
后「私は一歩も小屋を出ることが出来なかったのよ」
使用人「后様が……ですか!?」
后「勇者に何かあったら困るもの。小屋には防護壁を張ったわ」
后「そのおかげで、小屋の中は無事だった。だけど……」
后「……青年から聞いた話では、国だけじゃ無くて。広く……」
后「その、黒い靄は……とても広く、広がっていた、らしいの」
側近「……城の地下、からじゃ無いのか」
使用人「それに、らしい、と言うのは……」
后「ああ……そうね。先に……どうしてあの子達が一緒に居たか、から」
后「話すわ……御免。ぐちゃぐちゃね」
使用人「大丈夫です……あ、ちょっと待って下さい」ゴソゴソ
后「…… ……ええ」
后「王はご病気だと言う事でね……でも、私が会った『王』は」
后「とても健康そうに見えた……心を病んでいらした、と知ったのは」
后「後からだったはずだけど」
側近「……確かに、不安定なところはある奴だった、みたいだが」
使用人「側近様に取っては……従兄弟、ですよね、王様って」
后「…… ……」ハァ
側近「后?」
后「……全て話すわ、と言っておきながら、私がまだ混乱してる」
后「どこから、話して良いのか……」
使用人「その『黒い靄』と言うのは……」
側近「……こういうのは、順序立てて話さなければ混乱を引き起こす」
側近「出口の無い迷路に迷い込むのは、できる限り避けたい」
后「側近……」
側近「俺達は今までも、そうしてきたはずだ、后」
后「……そうね」
側近「……ああ、すまん。話を脱線させたのは俺、か……」
后「いえ……現状確認が先よ。話を続けるわ」
后「間違い探しは後……よね」
使用人「話しやすいところからで結構ですよ?」
后「……避けては通れない話よ」ハァ
后「勇者と私は王子様と一緒に始まりの国の『王』の所に行った」
后「『同じ』……小屋を与えて貰ったけれど、その黒い靄の所為で」
后「私は一歩も小屋を出ることが出来なかったのよ」
使用人「后様が……ですか!?」
后「勇者に何かあったら困るもの。小屋には防護壁を張ったわ」
后「そのおかげで、小屋の中は無事だった。だけど……」
后「……青年から聞いた話では、国だけじゃ無くて。広く……」
后「その、黒い靄は……とても広く、広がっていた、らしいの」
側近「……城の地下、からじゃ無いのか」
使用人「それに、らしい、と言うのは……」
后「ああ……そうね。先に……どうしてあの子達が一緒に居たか、から」
后「話すわ……御免。ぐちゃぐちゃね」
使用人「大丈夫です……あ、ちょっと待って下さい」ゴソゴソ
387: 2014/02/25(火) 10:14:51.89 ID:Gqa4WaY3P
側近「使用人?」
使用人「魔導師さんに倣って、私も……記録を取ります」
使用人「……后様にも、時間が無い。ここに長く勇者様を置いておく訳にも」
使用人「行かないでしょう……」
后「……そうね。お願いするわ」
使用人「被っても結構です……えっと、后様と勇者様がこの城を出られて……」カリカリ
后「始まりの国の『王』に会った」
使用人「…… ……」カリ
側近「…… ……」
后「防護壁を張った小屋に居たときに、剣士から心話が届いたの」
側近「え!?」
后「剣士は……『紫の魔王に出来て、自分に出来ない筈が無い』と言ったわ」
側近「…… ……『欠片』だから、か」
后「ええ。その年表の話……魔導師の『夢』の話ね」
后「剣士と青年は、その話を全て聞いて、あの小屋に三人で転移してきた」
后「鍛冶師の村で合流した三人は、船で始まりの国に向かってた」
后「北の街と書の街、港街……も、だったかな」
后「経由する始まりの国の船だったと言っていたけど」
后「……青年の気分が、始まりの国に近づくにつれて、悪くなっていったそうよ」
使用人「それが……『黒い靄』の所為、ですか」
后「ええ。あの国……あの島だけで無く、結構な広範囲に広がっていたんですって」
后「『人間』には見えない様だとも言っていたわ。魔導師はけろっとしていたし」
側近「青年は……エルフの血を引いている、からか」
后「『感じる力』ね……剣士は、まあ……今の私達と似たような物だから」
后「目に見えても不思議は無いと思う」
后「……その黒い靄は、小屋にだけは触手を伸ばせない様に見えるからって」
后「三人で転移してきた、のよ」
使用人「……青年さんと、魔導師さんを抱えて、ですか」
后「そう……で、先に黒い靄をどうにかしないと、って、魔導師がね」
側近「どうにか、って……出来る、のか?」
后「……剣士と二人で地下に転移して……焼き払ったのよ」
側近「!?」
使用人「……『浄化の炎』です、ね」
后「『黒い靄』の正体は『凄まじい悪意』……『呪い』」
側近「『呪い』?」
使用人「魔導師さんに倣って、私も……記録を取ります」
使用人「……后様にも、時間が無い。ここに長く勇者様を置いておく訳にも」
使用人「行かないでしょう……」
后「……そうね。お願いするわ」
使用人「被っても結構です……えっと、后様と勇者様がこの城を出られて……」カリカリ
后「始まりの国の『王』に会った」
使用人「…… ……」カリ
側近「…… ……」
后「防護壁を張った小屋に居たときに、剣士から心話が届いたの」
側近「え!?」
后「剣士は……『紫の魔王に出来て、自分に出来ない筈が無い』と言ったわ」
側近「…… ……『欠片』だから、か」
后「ええ。その年表の話……魔導師の『夢』の話ね」
后「剣士と青年は、その話を全て聞いて、あの小屋に三人で転移してきた」
后「鍛冶師の村で合流した三人は、船で始まりの国に向かってた」
后「北の街と書の街、港街……も、だったかな」
后「経由する始まりの国の船だったと言っていたけど」
后「……青年の気分が、始まりの国に近づくにつれて、悪くなっていったそうよ」
使用人「それが……『黒い靄』の所為、ですか」
后「ええ。あの国……あの島だけで無く、結構な広範囲に広がっていたんですって」
后「『人間』には見えない様だとも言っていたわ。魔導師はけろっとしていたし」
側近「青年は……エルフの血を引いている、からか」
后「『感じる力』ね……剣士は、まあ……今の私達と似たような物だから」
后「目に見えても不思議は無いと思う」
后「……その黒い靄は、小屋にだけは触手を伸ばせない様に見えるからって」
后「三人で転移してきた、のよ」
使用人「……青年さんと、魔導師さんを抱えて、ですか」
后「そう……で、先に黒い靄をどうにかしないと、って、魔導師がね」
側近「どうにか、って……出来る、のか?」
后「……剣士と二人で地下に転移して……焼き払ったのよ」
側近「!?」
使用人「……『浄化の炎』です、ね」
后「『黒い靄』の正体は『凄まじい悪意』……『呪い』」
側近「『呪い』?」
388: 2014/02/25(火) 10:35:08.20 ID:Gqa4WaY3P
后「……余りにも、根深い。この『世界』その物を呪う、『想い』」
后「少女と言う名の……王妃の、双子の姉……『秘書』の」
側近「!」
后「……凄まじい、想いよ」
……
………
…………
少女「すみません……お世話かけます」
老婆「気にする事無いよ、お嬢さん……それにアンタ、身重だろう?」
少女「…… ……はい」
老婆「しかしまぁ、大変な事になったもんだねぇ」ハァ
少女「でも……おばあさんは、どうしてですか?」
老婆「ん?」
少女「確かに、城は焼けて……始まりの街は随分な状態になっています」
少女「……と、聞いています、けど」
老婆「……らしいね」
少女「でも……あの、丘の麓の小さな村の人達まで、こんな……」
老婆「……港街まで、逃げる必要無かっただろう、って?」
少女「……はい」
老婆「まあね……でも。あの国はね……呪われてるって噂もあったし」
少女「…… ……」
老婆「アンタは、行ったことあるかい?」
少女「え?」
老婆「あの小さな村、さ」
少女「……いえ。私は…… ……始まりの街から、出た事無くて」
老婆「そうか……あの村も始まりの街も、確かに平和だっただろう?」
少女「……と、思います」
老婆「うん……勇者様が代々、旅立たれる国だしね」
少女「…… ……」
后「少女と言う名の……王妃の、双子の姉……『秘書』の」
側近「!」
后「……凄まじい、想いよ」
……
………
…………
少女「すみません……お世話かけます」
老婆「気にする事無いよ、お嬢さん……それにアンタ、身重だろう?」
少女「…… ……はい」
老婆「しかしまぁ、大変な事になったもんだねぇ」ハァ
少女「でも……おばあさんは、どうしてですか?」
老婆「ん?」
少女「確かに、城は焼けて……始まりの街は随分な状態になっています」
少女「……と、聞いています、けど」
老婆「……らしいね」
少女「でも……あの、丘の麓の小さな村の人達まで、こんな……」
老婆「……港街まで、逃げる必要無かっただろう、って?」
少女「……はい」
老婆「まあね……でも。あの国はね……呪われてるって噂もあったし」
少女「…… ……」
老婆「アンタは、行ったことあるかい?」
少女「え?」
老婆「あの小さな村、さ」
少女「……いえ。私は…… ……始まりの街から、出た事無くて」
老婆「そうか……あの村も始まりの街も、確かに平和だっただろう?」
少女「……と、思います」
老婆「うん……勇者様が代々、旅立たれる国だしね」
少女「…… ……」
389: 2014/02/25(火) 10:45:56.73 ID:Gqa4WaY3P
老婆「……また、魔王が復活するって言うじゃ無いか」
少女「勇者様……ですか」
老婆「ああ。居たんだろう?国に」
老婆「……詳しくは知らないけどさ。そりゃ目出度いことだよ」
老婆「でも、魔王は……何年か後に復活するんだろう?」
老婆「……前の時だって、国を挙げてさ……色々やったのに」
老婆「もう、御免だよ。どうせ……本当の平和なんてやってこないんだ」
老婆「……だったら、こんな機会でも無きゃ」
老婆「タダで、船になんか乗せて貰えないしね」
少女「……あれは、港街の船だったんですよね?」
老婆「ん?アタシ達を乗せてくれた船かい? ……そうらしいね」
老婆「そりゃ、あんなけ派手に燃えりゃ……助けぐらい出してくれるさ」
少女(港街は……元は、出来損ない達の隠れ場所)
少女(……盗賊が尽力し救い出し、建設された街)
少女(勿論……尽力は惜しまない……だろうな)
少女「勇者様……ですか」
老婆「ああ。居たんだろう?国に」
老婆「……詳しくは知らないけどさ。そりゃ目出度いことだよ」
老婆「でも、魔王は……何年か後に復活するんだろう?」
老婆「……前の時だって、国を挙げてさ……色々やったのに」
老婆「もう、御免だよ。どうせ……本当の平和なんてやってこないんだ」
老婆「……だったら、こんな機会でも無きゃ」
老婆「タダで、船になんか乗せて貰えないしね」
少女「……あれは、港街の船だったんですよね?」
老婆「ん?アタシ達を乗せてくれた船かい? ……そうらしいね」
老婆「そりゃ、あんなけ派手に燃えりゃ……助けぐらい出してくれるさ」
少女(港街は……元は、出来損ない達の隠れ場所)
少女(……盗賊が尽力し救い出し、建設された街)
少女(勿論……尽力は惜しまない……だろうな)
392: 2014/02/25(火) 11:49:44.07 ID:Gqa4WaY3P
老婆「……何処に居たってね。魔王の恐怖からは逃げられないんだ」
少女「え……」
老婆「そうだろう? 勇者様が現れて、魔王を倒したって」
老婆「何回も何回も。何年か経った後、また……同じ事の繰り返しだ」
少女「…… ……」
老婆「その間に戦争だの、呪われてるだの……」
老婆「……そんな国、そんな島にね。住んでいたくなんか無いって」
老婆「考えたって不思議じゃ無いって事」
少女「……そう、ですね」
老婆「でも吃驚したよ。アンタ、始まりの街の方からフラフラ」
老婆「あんな薄着で……しかも子が居るって言うじゃ無いか」
少女「……本当に、お世話になりました」
老婆「それは良いって……でも、これからどうするんだい?」
少女「え? ……ああ、そうですね……でも」
少女「こうして、港街に来れましたし」
少女「……何か、仕事でも探します」
少女(仕事……仕事、か)ハァ
少女(私に……何か出来る事があるだろうか?)
少女(……こんな……身重で……ッ)
老婆「ふぅむ…… ……まあね。面倒見てやるって言っても、ね」チラチラ
少女「え!? いえ、そんな! ……一緒に船に乗って貰って」
少女「……食事まで、ご馳走になったのに」
老婆「いえね……アタシはこの街に知り合いが居るからさ」
老婆「それでよけりゃ、紹介ぐらいはしてやれるけど」
少女「え……?」
老婆「……アタシもそこで働かせて貰うつもりなのさ。ああ、いや、ね」
老婆「アタシはもう、おばあさんだから、あんた達みたいな」
老婆「娘さんの世話焼きババァ、だけどね」ジロジロ
少女「…… ……?」
少女「え……」
老婆「そうだろう? 勇者様が現れて、魔王を倒したって」
老婆「何回も何回も。何年か経った後、また……同じ事の繰り返しだ」
少女「…… ……」
老婆「その間に戦争だの、呪われてるだの……」
老婆「……そんな国、そんな島にね。住んでいたくなんか無いって」
老婆「考えたって不思議じゃ無いって事」
少女「……そう、ですね」
老婆「でも吃驚したよ。アンタ、始まりの街の方からフラフラ」
老婆「あんな薄着で……しかも子が居るって言うじゃ無いか」
少女「……本当に、お世話になりました」
老婆「それは良いって……でも、これからどうするんだい?」
少女「え? ……ああ、そうですね……でも」
少女「こうして、港街に来れましたし」
少女「……何か、仕事でも探します」
少女(仕事……仕事、か)ハァ
少女(私に……何か出来る事があるだろうか?)
少女(……こんな……身重で……ッ)
老婆「ふぅむ…… ……まあね。面倒見てやるって言っても、ね」チラチラ
少女「え!? いえ、そんな! ……一緒に船に乗って貰って」
少女「……食事まで、ご馳走になったのに」
老婆「いえね……アタシはこの街に知り合いが居るからさ」
老婆「それでよけりゃ、紹介ぐらいはしてやれるけど」
少女「え……?」
老婆「……アタシもそこで働かせて貰うつもりなのさ。ああ、いや、ね」
老婆「アタシはもう、おばあさんだから、あんた達みたいな」
老婆「娘さんの世話焼きババァ、だけどね」ジロジロ
少女「…… ……?」
393: 2014/02/25(火) 11:59:54.12 ID:Gqa4WaY3P
老婆「肌つやも良いし、綺麗な顔してる」
少女「あ、あの……?」
老婆「……ま、身重ってのが難点だけど……」
少女「…… ……」
老婆「産んでしまえば、後は元気に働ける様になるだろうよ」
少女「……あ、あの。お話しは嬉しいのですが……」
少女「何のお仕事、です?」
老婆「……この街に娼館があるのは知ってるだろう」
少女「!?」
老婆「何もいきなり、客を取れとは言わないよ」ハァ
少女「娼……館!?」
老婆「……最初は、客と話し相手したり、お茶出したりしてりゃ良いのさ」
老婆「産んじまえば、後は女達が交代で世話できるんだ」
少女「ちょ、ちょっと待て! 待って……私は……!」
老婆「……今すぐにアンタ、そんな身体で」
老婆「他に仕事があると思うのかい?」
少女「…… ……ッ」
老婆「……アンタ、金だって持ってないんだろう?」
少女「……そ、れは」
老婆「アタシは明日、その連れの所に行くからさ」
老婆「ま。気が向いたら声かけておくれよ」
少女「…… ……」
老婆「今日は、宿は無償で提供されるみたいだし、雨露凌げるし」
老婆「……腹も膨れただろう?さっさと行かないと部屋が埋まっちまうからね」
老婆「アタシは、行くよ」スッ
少女「…… ……ッ」
少女(望まれた子じゃ無い。だけど……ッ)
少女(……この子が居なくても、私は、生きていかなくてはいけない)
少女(否……ッ 見知らぬ男に身体を開くぐらいならば、いっそ……!!)
老婆「……子供を生かして行くこと、第一に考えるんだよ?」
少女「え……」
老婆「アンタ、もう母親なんだから」
少女「…… ……」
少女「あ、あの……?」
老婆「……ま、身重ってのが難点だけど……」
少女「…… ……」
老婆「産んでしまえば、後は元気に働ける様になるだろうよ」
少女「……あ、あの。お話しは嬉しいのですが……」
少女「何のお仕事、です?」
老婆「……この街に娼館があるのは知ってるだろう」
少女「!?」
老婆「何もいきなり、客を取れとは言わないよ」ハァ
少女「娼……館!?」
老婆「……最初は、客と話し相手したり、お茶出したりしてりゃ良いのさ」
老婆「産んじまえば、後は女達が交代で世話できるんだ」
少女「ちょ、ちょっと待て! 待って……私は……!」
老婆「……今すぐにアンタ、そんな身体で」
老婆「他に仕事があると思うのかい?」
少女「…… ……ッ」
老婆「……アンタ、金だって持ってないんだろう?」
少女「……そ、れは」
老婆「アタシは明日、その連れの所に行くからさ」
老婆「ま。気が向いたら声かけておくれよ」
少女「…… ……」
老婆「今日は、宿は無償で提供されるみたいだし、雨露凌げるし」
老婆「……腹も膨れただろう?さっさと行かないと部屋が埋まっちまうからね」
老婆「アタシは、行くよ」スッ
少女「…… ……ッ」
少女(望まれた子じゃ無い。だけど……ッ)
少女(……この子が居なくても、私は、生きていかなくてはいけない)
少女(否……ッ 見知らぬ男に身体を開くぐらいならば、いっそ……!!)
老婆「……子供を生かして行くこと、第一に考えるんだよ?」
少女「え……」
老婆「アンタ、もう母親なんだから」
少女「…… ……」
394: 2014/02/25(火) 12:07:05.33 ID:Gqa4WaY3P
少女(子供を生かす為に、私は……私に)
少女(身体を、売れと!?)
少女「…… ……」
老婆「やれやれ……そんな思い詰めた顔しなさんな」
老婆「でもね、お嬢さん。生きてるだけで儲けモン、なんだ」
老婆「……どうしても厭なら、話し相手や茶の相手、してる間に」
老婆「出来る事を見つければ良い。そうすれば、身体なんて売らなくて済むんだよ」
少女「…… ……」
老婆「『母は強い』って事だけ、覚えておきな」
少女「…… ……」
老婆「…… ……」ハァ
スタスタ
少女(……始まりの国の港で、この港街行きの船に拾われて)
少女(あの老婆と共に……海を渡った)
少女(……衛生師はもう、居ない。始まりの国ももう、無い)
少女(誰も……助けて等、くれない。解ってる)
少女(この子を産む為に。この子を育てる為に)
少女(……私は、身体を売って、金を……稼ぐ?)
少女(そこまでして、産みたいのか!?)
少女(そこまでして、育てたいのか……生きたいのか!?)
少女(……否。私は、生きたいのだろう。魔法使い……勇者の『炎』で)
少女(この身が焼ける事は無いのに。私は……逃げ出した)
少女(この子を思って……走った。瓦礫に埋まっても良かった)
少女(あの船の上から、身を投げても良かったんだ……)ハァ
少女「…… ……宿」スッ
少女(孕んでいるから、なんて言い訳にならない。誰も譲って等くれない)
少女(……早く、行って休まなければ)フラ
スタ、スタスタスタ……
少女(身体を、売れと!?)
少女「…… ……」
老婆「やれやれ……そんな思い詰めた顔しなさんな」
老婆「でもね、お嬢さん。生きてるだけで儲けモン、なんだ」
老婆「……どうしても厭なら、話し相手や茶の相手、してる間に」
老婆「出来る事を見つければ良い。そうすれば、身体なんて売らなくて済むんだよ」
少女「…… ……」
老婆「『母は強い』って事だけ、覚えておきな」
少女「…… ……」
老婆「…… ……」ハァ
スタスタ
少女(……始まりの国の港で、この港街行きの船に拾われて)
少女(あの老婆と共に……海を渡った)
少女(……衛生師はもう、居ない。始まりの国ももう、無い)
少女(誰も……助けて等、くれない。解ってる)
少女(この子を産む為に。この子を育てる為に)
少女(……私は、身体を売って、金を……稼ぐ?)
少女(そこまでして、産みたいのか!?)
少女(そこまでして、育てたいのか……生きたいのか!?)
少女(……否。私は、生きたいのだろう。魔法使い……勇者の『炎』で)
少女(この身が焼ける事は無いのに。私は……逃げ出した)
少女(この子を思って……走った。瓦礫に埋まっても良かった)
少女(あの船の上から、身を投げても良かったんだ……)ハァ
少女「…… ……宿」スッ
少女(孕んでいるから、なんて言い訳にならない。誰も譲って等くれない)
少女(……早く、行って休まなければ)フラ
スタ、スタスタスタ……
395: 2014/02/25(火) 12:16:25.34 ID:Gqa4WaY3P
……
………
…………
魔導師「では、お気をつけて剣士さん」
剣士「……本当に一人で大丈夫なのか?」
魔導師「たっぷりお金も頂きましたし。大丈夫です」
魔導師「僕一人なら、この街に長く滞在しても怪しまれませんしね」
剣士「……しかし、子供一人で」
魔導師「『普通の子供』なら……ですけど」
剣士「…… ……」
魔導師「大丈夫ですって……それより、ちゃんと迎えに来て下さいよ」
剣士「解って居る。様子も見に来る」
魔導師「渡航代もったいないですからね」
剣士「……お前な」
魔導師「冗談です……剣士さんは、何処に?」
剣士「……青年次第だな」
魔導師「そうですね……后様、大丈夫でしょうか」
剣士「あいつは何処にでも行けるだろう」
魔導師「そうですけど……」
剣士「勇者が居る……『母』は強いんだろう」
魔導師「……ですね」
剣士「では……頼むぞ」
魔導師「はい……大丈夫ですって。僕は……僕も」
魔導師「『勇者様の仲間』ですから」
剣士「…… ……」
シュゥン……
魔導師「…… ……さて」フゥ
魔導師(何時までも宿の部屋に居てもしかたない)
魔導師(こんな身体……子供、じゃ、働く訳にも行かないし)
魔導師(誰かに何か聞かれたら、修行の身とでも言えばいいだろう)
魔導師(図書館……の、前に。書の街を歩いてみるかな)
………
…………
魔導師「では、お気をつけて剣士さん」
剣士「……本当に一人で大丈夫なのか?」
魔導師「たっぷりお金も頂きましたし。大丈夫です」
魔導師「僕一人なら、この街に長く滞在しても怪しまれませんしね」
剣士「……しかし、子供一人で」
魔導師「『普通の子供』なら……ですけど」
剣士「…… ……」
魔導師「大丈夫ですって……それより、ちゃんと迎えに来て下さいよ」
剣士「解って居る。様子も見に来る」
魔導師「渡航代もったいないですからね」
剣士「……お前な」
魔導師「冗談です……剣士さんは、何処に?」
剣士「……青年次第だな」
魔導師「そうですね……后様、大丈夫でしょうか」
剣士「あいつは何処にでも行けるだろう」
魔導師「そうですけど……」
剣士「勇者が居る……『母』は強いんだろう」
魔導師「……ですね」
剣士「では……頼むぞ」
魔導師「はい……大丈夫ですって。僕は……僕も」
魔導師「『勇者様の仲間』ですから」
剣士「…… ……」
シュゥン……
魔導師「…… ……さて」フゥ
魔導師(何時までも宿の部屋に居てもしかたない)
魔導師(こんな身体……子供、じゃ、働く訳にも行かないし)
魔導師(誰かに何か聞かれたら、修行の身とでも言えばいいだろう)
魔導師(図書館……の、前に。書の街を歩いてみるかな)
396: 2014/02/25(火) 12:23:33.13 ID:Gqa4WaY3P
スタスタ
魔導師(魔導の街、か……行きたいって『僕』は思ってた)
魔導師(……鍛冶の勉強。魔法の勉強をする為に)
魔導師(どうにか……剣士さんが)
魔導師(あんな、方法で……ッ 失われなくて済む、方法を探さないと……!)
魔導師(『過去』に倣う必要なんて無い。これは『現在』だ)
魔導師(『夢』の中の知を紐解いて……『全て』を知らないと……!)
……
………
…………
青年「…… ……」
青年(見事に、瓦礫の山、だ……)
青年(……城の焼け跡。酷い匂いだ)
青年(随分、人が氏んだんだろうな……気分が悪い)
青年(后様の浄化の炎……勇者様の、炎の魔法)
青年(……なのに、大地までは……完全に、浄化されていない。清められていない)
青年(何故だ!? ……あれほど、強力な……ッ)
シュゥン、スタ!
青年「剣士か。遅かったな」
剣士「……悪い」
青年「良いよ、別に……なあ」
剣士「何だ」
青年「……見えるか?」
剣士「黒い靄、か…… ……ああ。少しだけな」
青年「…… ……」ハァ
剣士「…… ……」
青年「大地に染みついてしまった『穢れ』までは……后様でも払えなかった、のか?」
剣士「……それほどに、あの秘書の『悪意』が凄かった、のか」
青年「……『遅かった』のか」
魔導師(魔導の街、か……行きたいって『僕』は思ってた)
魔導師(……鍛冶の勉強。魔法の勉強をする為に)
魔導師(どうにか……剣士さんが)
魔導師(あんな、方法で……ッ 失われなくて済む、方法を探さないと……!)
魔導師(『過去』に倣う必要なんて無い。これは『現在』だ)
魔導師(『夢』の中の知を紐解いて……『全て』を知らないと……!)
……
………
…………
青年「…… ……」
青年(見事に、瓦礫の山、だ……)
青年(……城の焼け跡。酷い匂いだ)
青年(随分、人が氏んだんだろうな……気分が悪い)
青年(后様の浄化の炎……勇者様の、炎の魔法)
青年(……なのに、大地までは……完全に、浄化されていない。清められていない)
青年(何故だ!? ……あれほど、強力な……ッ)
シュゥン、スタ!
青年「剣士か。遅かったな」
剣士「……悪い」
青年「良いよ、別に……なあ」
剣士「何だ」
青年「……見えるか?」
剣士「黒い靄、か…… ……ああ。少しだけな」
青年「…… ……」ハァ
剣士「…… ……」
青年「大地に染みついてしまった『穢れ』までは……后様でも払えなかった、のか?」
剣士「……それほどに、あの秘書の『悪意』が凄かった、のか」
青年「……『遅かった』のか」
397: 2014/02/25(火) 13:08:26.01 ID:Gqa4WaY3P
剣士「『遅かった』……か」
青年「…… ……」
剣士「……気分は悪くないのか」
青年「良い気分じゃ無いけどね」
剣士「……長居する必要も無いだろう」
青年「そうなんだけど……何かに、呼ばれて居る気がするんだ」
剣士「? ……人の気配等感じないぞ」
青年「違う……そうじゃ無くて……」
剣士「?」
青年「……まあ、良い。それより、魔導師は?」
剣士「書の街に送り届けてきた……当分、図書館に入り浸る、そうだ」
青年「……勇者様が育つまで、時間は随分あるさ」
剣士「お前はどうするんだ」
青年「……僕はこのまま、港街に行ってみようかなと思うんだけど」
剣士「港街?」
青年「人の気配がしない、って行っただろう、君……」
剣士「……ああ」
青年「この街の、国の……人達が逃げ出したとすれば、あそこだろう」
剣士「……丘の麓にも小さな村があっただろう?」
青年「さっき見てきた。人っ子一人いなかったよ」
剣士「……そうか」
青年「もう一度あの丘に戻って……それから港の方に行く」
青年「……悪いが、港街に飛んで貰えるか」
剣士「それは構わん、が」
青年「……君はどうする、剣士」
剣士「一緒に行く訳には行かないだろう……目立ちすぎる」
青年「まあ……そうだな。君のその瞳の色は……」
剣士「……お前、本当に自覚無いのか?」
青年「僕?」
剣士「……癒し手にそっくりな上に、光の様な金の髪だ」
青年「…… ……」
剣士「碧玉の瞳……童話の中の王子様だな、さながら」
青年「やめろよ」ムッ
青年「…… ……」
剣士「……気分は悪くないのか」
青年「良い気分じゃ無いけどね」
剣士「……長居する必要も無いだろう」
青年「そうなんだけど……何かに、呼ばれて居る気がするんだ」
剣士「? ……人の気配等感じないぞ」
青年「違う……そうじゃ無くて……」
剣士「?」
青年「……まあ、良い。それより、魔導師は?」
剣士「書の街に送り届けてきた……当分、図書館に入り浸る、そうだ」
青年「……勇者様が育つまで、時間は随分あるさ」
剣士「お前はどうするんだ」
青年「……僕はこのまま、港街に行ってみようかなと思うんだけど」
剣士「港街?」
青年「人の気配がしない、って行っただろう、君……」
剣士「……ああ」
青年「この街の、国の……人達が逃げ出したとすれば、あそこだろう」
剣士「……丘の麓にも小さな村があっただろう?」
青年「さっき見てきた。人っ子一人いなかったよ」
剣士「……そうか」
青年「もう一度あの丘に戻って……それから港の方に行く」
青年「……悪いが、港街に飛んで貰えるか」
剣士「それは構わん、が」
青年「……君はどうする、剣士」
剣士「一緒に行く訳には行かないだろう……目立ちすぎる」
青年「まあ……そうだな。君のその瞳の色は……」
剣士「……お前、本当に自覚無いのか?」
青年「僕?」
剣士「……癒し手にそっくりな上に、光の様な金の髪だ」
青年「…… ……」
剣士「碧玉の瞳……童話の中の王子様だな、さながら」
青年「やめろよ」ムッ
398: 2014/02/25(火) 13:17:55.31 ID:Gqa4WaY3P
剣士「事実だ……認めろ」
青年「……フン」
剣士「そっちはお前に任せる……俺は……」
青年「……君は?」
剣士「海賊達を探してみる」
青年「船長は……もう……」
剣士「……解って居る。だが、行きたい場所がある」
青年「? 君は何処だって行けるだろう?」
剣士「行ったことのある場所ならな。ビジョンを思い浮かべれば飛べる。だが……」
青年「……何処に行こうとしてるんだよ」
剣士「…… ……南の洞窟だ」
青年「! あの鉱石の、か!?」
剣士「何の助けにもならんかもしれんがな……もう、お前達二人に泣いて」
剣士「縋られるのは御免だ」
青年「な、泣いてたのは魔導師だけだろ!?」
剣士「……そう言う事にしておく」クッ
青年「やな奴だな、君は……!」
剣士「魔導師にも、適当に迎えに行くと伝えてある」
青年「……どうにか南の島に位、たどり着けるさ」ムッ
剣士「后は后で、『人魚』の謎も探ってくれるだろう」
青年「……ああ。あの神話?は……書の街には無いのか?」
剣士「どうだろうな。俺は興味が無い本には手を着けなかったからな……」
青年「……まあ、あったら魔導師が見つけるだろうし」
青年「何れは、読めるんだ」
剣士「……終わらないと思っている、のか。まだ」
青年「さてね……どちらにしたって」
青年「僕達は、『魔王の城』にはたどり着く」
青年「……『勇者は必ず魔王を倒す』のさ」
剣士「…… ……」
青年「……フン」
剣士「そっちはお前に任せる……俺は……」
青年「……君は?」
剣士「海賊達を探してみる」
青年「船長は……もう……」
剣士「……解って居る。だが、行きたい場所がある」
青年「? 君は何処だって行けるだろう?」
剣士「行ったことのある場所ならな。ビジョンを思い浮かべれば飛べる。だが……」
青年「……何処に行こうとしてるんだよ」
剣士「…… ……南の洞窟だ」
青年「! あの鉱石の、か!?」
剣士「何の助けにもならんかもしれんがな……もう、お前達二人に泣いて」
剣士「縋られるのは御免だ」
青年「な、泣いてたのは魔導師だけだろ!?」
剣士「……そう言う事にしておく」クッ
青年「やな奴だな、君は……!」
剣士「魔導師にも、適当に迎えに行くと伝えてある」
青年「……どうにか南の島に位、たどり着けるさ」ムッ
剣士「后は后で、『人魚』の謎も探ってくれるだろう」
青年「……ああ。あの神話?は……書の街には無いのか?」
剣士「どうだろうな。俺は興味が無い本には手を着けなかったからな……」
青年「……まあ、あったら魔導師が見つけるだろうし」
青年「何れは、読めるんだ」
剣士「……終わらないと思っている、のか。まだ」
青年「さてね……どちらにしたって」
青年「僕達は、『魔王の城』にはたどり着く」
青年「……『勇者は必ず魔王を倒す』のさ」
剣士「…… ……」
400: 2014/02/25(火) 13:47:11.47 ID:Gqa4WaY3P
青年「……ほら、もう行くよ」
剣士「? ……ああ。丘の上に行くのか」
青年「ああ……悪いけど、付き合ってくれ」
剣士「…… ……」
スタスタ
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
青年「僕が一人で歩いてる時も思ったけど」
剣士「?」
青年「……魔物の姿が、無いんだ」
剣士「あれだけ派手に燃えればな……小さな島とは言え」
剣士「緑の豊富な場所だ。どこかに隠れているんだろう」
青年「……だろう、けどね。あの、黒い靄……あの、呪い」
剣士「…… ……」
青年「惹かれて、寄ってきても不思議は無いのにさ」
青年「……魔物達まで、怯えてるみたいだ」
剣士「魔物だの、魔族だの……そんな物、よりも」
青年「?」
剣士「……思い、ってのは余程、恐ろしい物なんだろう」
青年「…… ……」
剣士「『願えば叶う』なんて言葉にしたってそうだ」
剣士「……本来ならば、願っただけで何でも、思い通りになるはずが無い」
青年「…… ……」
剣士「そうなる様、少しでも望む形に近づくように」
剣士「動く、からそうなるに過ぎない……筈だ」
青年「……それを、本当に……『現実に形作ってしまう力』?」
剣士「…… ……着いたぞ」
青年「景色だけは変わらないね……相変わらず美しい」
剣士「…… ……」
青年「エルフの加護自体は、お祖母様がペンダントに移してしまった、んだよな」
剣士「それも、北の塔で眠りに着いたときに」
剣士「……力を解放してしまっている筈だ」
青年「ああ、そうだった……やっぱり、此処は……島の中の何処よりも気分が良い」
青年「……まだ、マシ……程度だけどな。もう」
剣士「……此処も、浸食されるかもしれなかっただろう」
剣士「それを、防げただけでも……遅くは」
青年「それは、違う……剣士」
剣士「?」
剣士「? ……ああ。丘の上に行くのか」
青年「ああ……悪いけど、付き合ってくれ」
剣士「…… ……」
スタスタ
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
青年「僕が一人で歩いてる時も思ったけど」
剣士「?」
青年「……魔物の姿が、無いんだ」
剣士「あれだけ派手に燃えればな……小さな島とは言え」
剣士「緑の豊富な場所だ。どこかに隠れているんだろう」
青年「……だろう、けどね。あの、黒い靄……あの、呪い」
剣士「…… ……」
青年「惹かれて、寄ってきても不思議は無いのにさ」
青年「……魔物達まで、怯えてるみたいだ」
剣士「魔物だの、魔族だの……そんな物、よりも」
青年「?」
剣士「……思い、ってのは余程、恐ろしい物なんだろう」
青年「…… ……」
剣士「『願えば叶う』なんて言葉にしたってそうだ」
剣士「……本来ならば、願っただけで何でも、思い通りになるはずが無い」
青年「…… ……」
剣士「そうなる様、少しでも望む形に近づくように」
剣士「動く、からそうなるに過ぎない……筈だ」
青年「……それを、本当に……『現実に形作ってしまう力』?」
剣士「…… ……着いたぞ」
青年「景色だけは変わらないね……相変わらず美しい」
剣士「…… ……」
青年「エルフの加護自体は、お祖母様がペンダントに移してしまった、んだよな」
剣士「それも、北の塔で眠りに着いたときに」
剣士「……力を解放してしまっている筈だ」
青年「ああ、そうだった……やっぱり、此処は……島の中の何処よりも気分が良い」
青年「……まだ、マシ……程度だけどな。もう」
剣士「……此処も、浸食されるかもしれなかっただろう」
剣士「それを、防げただけでも……遅くは」
青年「それは、違う……剣士」
剣士「?」
401: 2014/02/25(火) 13:50:52.35 ID:Gqa4WaY3P
青年「大地が……浄化されていない以上、何れは冒される」
剣士「…… ……」
青年「雨が振れば地に染み入り、吸い上げ咲いた花の蜜を鳥が運ぶ」
青年「……遅かった、んだ。もう。それこそ、島毎」
青年「もう一度、完全に焼き尽くしてしまうでもしない限り……もう……」
剣士「…… ……」
青年「君も后様も、僕が居る……僕が『王』だ等と言うけれど」
青年「……それは、違う。確かに、認めてしまえば」
青年「それは彼女……『秘書』の呪いの成就になるのかもしれない。けれど」
青年「……もう、滅んでしまったんだ。この国は」
青年「『最後の王』は……氏んだのさ」
剣士「……言葉遊び、何じゃなかったのか」
青年「それこそさっきの話と『同じ』さ」
青年「……『願えば叶う』? …… ……さて、ね」
剣士「…… ……」
青年「雨が振れば地に染み入り、吸い上げ咲いた花の蜜を鳥が運ぶ」
青年「……遅かった、んだ。もう。それこそ、島毎」
青年「もう一度、完全に焼き尽くしてしまうでもしない限り……もう……」
剣士「…… ……」
青年「君も后様も、僕が居る……僕が『王』だ等と言うけれど」
青年「……それは、違う。確かに、認めてしまえば」
青年「それは彼女……『秘書』の呪いの成就になるのかもしれない。けれど」
青年「……もう、滅んでしまったんだ。この国は」
青年「『最後の王』は……氏んだのさ」
剣士「……言葉遊び、何じゃなかったのか」
青年「それこそさっきの話と『同じ』さ」
青年「……『願えば叶う』? …… ……さて、ね」
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