20: 2014/06/10(火) 09:22:04.29 ID:T6RCdzRQ0
おはようございます!
前スレもう落ちちゃったんだね……
なんか本当にごめん、そんでありがとう
家のごたごたと幼女の風邪でPCすらつけれずに
ご迷惑おかけしました
前スレもう落ちちゃったんだね……
なんか本当にごめん、そんでありがとう
家のごたごたと幼女の風邪でPCすらつけれずに
ご迷惑おかけしました
22: 2014/06/10(火) 09:39:47.21 ID:T6RCdzRQ0
魔王「…… ……」
姫「私の居場所は……ここなのかしら?」
魔王「…… ……」
姫「……貴方に聞いたってわかんないわよね」
魔王「す、すみません」
姫「謝らなくて良いわ……どうせ誰にもわからない事ですもの、ね」ハァ
魔王「ここ、は」
姫「え?」
魔王「……どこなんでしょうね」
姫「……私に聞かれたってわかるわけないでしょ」
魔王「いや、それはそうなんでしょうけど……そもそも」
魔王(さっきまで……青年と、姫様に会うまで居たあの場所だって何処かもわからん)
魔王(『氏んだ筈』の父さんや、癒し手……あ、俺はまだ氏んでないのか)
姫「……魔王?」
魔王(否、そんな事いっちまえば金髪紫瞳の男はどうなる?)
姫「魔王」
魔王(あいつは本来なら、まだ……生まれてすら居ない筈だ)
姫「…… ……」
魔王(あ、そうか……俺だってまだ確実に氏んでる訳じゃ無い)
姫「魔王、ってば!」バシッ
魔王「うわあ、はいすみません!」
姫「もう、何回も呼んでるのに!」
姫「考え事するのは結構だけど……私もここに居るのよ?」
魔王「……ハイ」
姫「で、何?」
魔王「はい?」
姫「話し相手にすらならないの、私は?」
魔王「あ……いえ。でも……」
姫「私の居場所は……ここなのかしら?」
魔王「…… ……」
姫「……貴方に聞いたってわかんないわよね」
魔王「す、すみません」
姫「謝らなくて良いわ……どうせ誰にもわからない事ですもの、ね」ハァ
魔王「ここ、は」
姫「え?」
魔王「……どこなんでしょうね」
姫「……私に聞かれたってわかるわけないでしょ」
魔王「いや、それはそうなんでしょうけど……そもそも」
魔王(さっきまで……青年と、姫様に会うまで居たあの場所だって何処かもわからん)
魔王(『氏んだ筈』の父さんや、癒し手……あ、俺はまだ氏んでないのか)
姫「……魔王?」
魔王(否、そんな事いっちまえば金髪紫瞳の男はどうなる?)
姫「魔王」
魔王(あいつは本来なら、まだ……生まれてすら居ない筈だ)
姫「…… ……」
魔王(あ、そうか……俺だってまだ確実に氏んでる訳じゃ無い)
姫「魔王、ってば!」バシッ
魔王「うわあ、はいすみません!」
姫「もう、何回も呼んでるのに!」
姫「考え事するのは結構だけど……私もここに居るのよ?」
魔王「……ハイ」
姫「で、何?」
魔王「はい?」
姫「話し相手にすらならないの、私は?」
魔王「あ……いえ。でも……」
23: 2014/06/10(火) 09:47:43.07 ID:T6RCdzRQ0
姫「……帰りたくても帰れないのよ?」
魔王「で、すよね……」
姫「役目、だとか……それが何なのか、本当にそんな物が私にあるのか」
姫「それすらわからないわ。何もわからない。だけどね」
魔王「…… ……」
姫「ここで貴方と顔つき会わせて黙ってたって、何にもならないわ」
魔王「……はい」
姫「勿論、話し合ったって……どうにもならないだろうけど、ね」
魔王「まあ、眉間に皺寄せ合うなら……黙ってるよりしゃべってた方が良いですよね」
姫「……そういう事ね」ニコッ
魔王(癒し手にそっくりなのに。表情や言葉一つで、こんなにも印象が違うモンなんだな)
魔王(……青年は姫様似、だったんだな)フッ
姫「何笑ってるのよ」
魔王「似てるなぁ、と……あ、いや。似てないなと思って」
姫「は?」
魔王「いえ、何でも無いです……姫様」
姫「何よ」
魔王「さっき……どうして迷いも無くあっちへ」スッ
魔王「歩いて行ったんです?」
姫「え? ……ああ。なんと無く、よ」
姫「……歩いていたら、誰かが……迎えに来てくれるんじゃないかしら……なんて」
魔王「誰か?」
姫「…… ……寂しいわよね」
魔王「はい?」
姫「私は、氏んだわ。紫の魔王も」
魔王「…… ……」
姫「氏は誰にだって平等な筈でしょう?」
魔王「え……ま、まあ……そう、かな」
姫「そうよ。どれだけ力の強い魔族でも、不老不氏、な人は居ないのよ」
姫「限りなくそれに近かったとしても、絶対じゃ無い」
魔王「…… ……」
魔王「で、すよね……」
姫「役目、だとか……それが何なのか、本当にそんな物が私にあるのか」
姫「それすらわからないわ。何もわからない。だけどね」
魔王「…… ……」
姫「ここで貴方と顔つき会わせて黙ってたって、何にもならないわ」
魔王「……はい」
姫「勿論、話し合ったって……どうにもならないだろうけど、ね」
魔王「まあ、眉間に皺寄せ合うなら……黙ってるよりしゃべってた方が良いですよね」
姫「……そういう事ね」ニコッ
魔王(癒し手にそっくりなのに。表情や言葉一つで、こんなにも印象が違うモンなんだな)
魔王(……青年は姫様似、だったんだな)フッ
姫「何笑ってるのよ」
魔王「似てるなぁ、と……あ、いや。似てないなと思って」
姫「は?」
魔王「いえ、何でも無いです……姫様」
姫「何よ」
魔王「さっき……どうして迷いも無くあっちへ」スッ
魔王「歩いて行ったんです?」
姫「え? ……ああ。なんと無く、よ」
姫「……歩いていたら、誰かが……迎えに来てくれるんじゃないかしら……なんて」
魔王「誰か?」
姫「…… ……寂しいわよね」
魔王「はい?」
姫「私は、氏んだわ。紫の魔王も」
魔王「…… ……」
姫「氏は誰にだって平等な筈でしょう?」
魔王「え……ま、まあ……そう、かな」
姫「そうよ。どれだけ力の強い魔族でも、不老不氏、な人は居ないのよ」
姫「限りなくそれに近かったとしても、絶対じゃ無い」
魔王「…… ……」
24: 2014/06/10(火) 09:57:10.79 ID:T6RCdzRQ0
姫「まあ……確かに、紫の魔王は規格外だったけど」
姫「自分を『器』と『中身』に分けてしまって、本当に……」
姫「……本当に、『魔王は勇者に倒される』事実を作ってしまった」
魔王「使用人だったか、后だったか……えっと、俺の母さん、だったか。忘れたけど」
姫「?」
魔王「……いや、先に行っておきます。責める訳じゃ無いんですよ?」
姫「……何よ」
魔王「姫様が、塔で眠らされる前に……紫の魔王に言った事、覚えてます?」
姫「私が、紫の魔王に?」
魔王「はい……誰が言ったかってのは、本当に忘れちゃったんだけど」
魔王「『貴方は勇者よ』……みたいな、事を」
姫「!」
魔王「……エルフの嘘は、本当になってしまう、って」
姫「……それも、私の所為、だと……」
魔王「あ! だから、責める訳じゃないですって!」
姫「…… ……」
魔王「それに……魔王は勇者に倒される為にいるのかもしれないって」
魔王「そう言い出したのは、紫の魔王なんでしょ?」
姫「…… ……」
魔王(……き、機嫌損ねちゃった、か?)
姫「…… ……」
魔王「あ、あの……姫様?」
姫「…… ……」
魔王「…… ……」ハァ
姫「……いいえ。違う」
魔王「え?」
姫「やっぱり違うわ」
魔王「は?」
姫「いえ、でも…… ……」ブツブツ
魔王(さっきは話し相手にぐらいなるって言ったくせに、この人は……)ハァ
姫「ねえ、魔王」
魔王「はいはい」
姫「…… ……」ムッ
魔王「はい!」
姫「『紫の魔王』と『紫の魔王の側近』は…… ……完全に失われた、のよね?」
魔王「え? ……ああ。そうであろう、って推測だと思いますけど」
姫「でも、貴方のお父さん……金の髪の魔王は、まだ……えっと」
姫「貴方や、癒し手の居た場所にいる、のよね」
魔王「……え、はい」
姫「…… ……同じ、よね」
魔王「?」
姫「自分を『器』と『中身』に分けてしまって、本当に……」
姫「……本当に、『魔王は勇者に倒される』事実を作ってしまった」
魔王「使用人だったか、后だったか……えっと、俺の母さん、だったか。忘れたけど」
姫「?」
魔王「……いや、先に行っておきます。責める訳じゃ無いんですよ?」
姫「……何よ」
魔王「姫様が、塔で眠らされる前に……紫の魔王に言った事、覚えてます?」
姫「私が、紫の魔王に?」
魔王「はい……誰が言ったかってのは、本当に忘れちゃったんだけど」
魔王「『貴方は勇者よ』……みたいな、事を」
姫「!」
魔王「……エルフの嘘は、本当になってしまう、って」
姫「……それも、私の所為、だと……」
魔王「あ! だから、責める訳じゃないですって!」
姫「…… ……」
魔王「それに……魔王は勇者に倒される為にいるのかもしれないって」
魔王「そう言い出したのは、紫の魔王なんでしょ?」
姫「…… ……」
魔王(……き、機嫌損ねちゃった、か?)
姫「…… ……」
魔王「あ、あの……姫様?」
姫「…… ……」
魔王「…… ……」ハァ
姫「……いいえ。違う」
魔王「え?」
姫「やっぱり違うわ」
魔王「は?」
姫「いえ、でも…… ……」ブツブツ
魔王(さっきは話し相手にぐらいなるって言ったくせに、この人は……)ハァ
姫「ねえ、魔王」
魔王「はいはい」
姫「…… ……」ムッ
魔王「はい!」
姫「『紫の魔王』と『紫の魔王の側近』は…… ……完全に失われた、のよね?」
魔王「え? ……ああ。そうであろう、って推測だと思いますけど」
姫「でも、貴方のお父さん……金の髪の魔王は、まだ……えっと」
姫「貴方や、癒し手の居た場所にいる、のよね」
魔王「……え、はい」
姫「…… ……同じ、よね」
魔王「?」
25: 2014/06/10(火) 10:03:18.26 ID:T6RCdzRQ0
姫「私と同じ。役目は終わっているであろう筈なのに」
姫「まだ、完全に失われていない」
魔王「…… ……」
姫「本来ならば『器』と『中身』…… ……紫の魔王が失われたのならば」
姫「彼だって……金の髪の魔王だって、失われてしかるべきよ」
魔王「危惧してるところでもあるんです、よ」
魔王「何故、父さんがまだあそこにいるのか? ……俺たちは」
魔王「この『腐った世界の腐った不条理』は、まだ……断ち切れないのか、って」
姫「……じゃあ、私はまだ、紫の魔王に会える可能性があるのかもしれないわね」
魔王「……え?」
姫「女剣士は紫の魔王の側近に会えた。最後の最後に、願いを叶えた」
姫「……きっと、彼女も……失われたんでしょう」
魔王「……ええ、と」
姫「彼女だけがずるい、って言いたいわけじゃ無いわ。やっぱり、誰にも」
姫「役目があるとすれば…… ……」
魔王「…… ……」
姫「なんと無く、わかった気がするわ」
魔王(俺にはさっぱりわかりませんが)
姫「でも、まだここに居るって事は、『時間がある』って事よ」
魔王「は?」
姫「……ま、のんびり話でもしていましょ」フゥ
魔王(……俺、まだつきあわされんの?)
姫「ねえ、もう一度最初から話してちょうだい」
魔王「な、何をですか」
姫「私が眠ってから……えっと。とにかく最初から。さっきの話よ」
魔王「え!?」
姫「貴方が知ってるすべて」
魔王「……もう一回?」
姫「もう一回よ。そう言ったでしょ」
魔王(……癒し手。やっぱり俺を助けてくれ)
……
………
…………
姫「まだ、完全に失われていない」
魔王「…… ……」
姫「本来ならば『器』と『中身』…… ……紫の魔王が失われたのならば」
姫「彼だって……金の髪の魔王だって、失われてしかるべきよ」
魔王「危惧してるところでもあるんです、よ」
魔王「何故、父さんがまだあそこにいるのか? ……俺たちは」
魔王「この『腐った世界の腐った不条理』は、まだ……断ち切れないのか、って」
姫「……じゃあ、私はまだ、紫の魔王に会える可能性があるのかもしれないわね」
魔王「……え?」
姫「女剣士は紫の魔王の側近に会えた。最後の最後に、願いを叶えた」
姫「……きっと、彼女も……失われたんでしょう」
魔王「……ええ、と」
姫「彼女だけがずるい、って言いたいわけじゃ無いわ。やっぱり、誰にも」
姫「役目があるとすれば…… ……」
魔王「…… ……」
姫「なんと無く、わかった気がするわ」
魔王(俺にはさっぱりわかりませんが)
姫「でも、まだここに居るって事は、『時間がある』って事よ」
魔王「は?」
姫「……ま、のんびり話でもしていましょ」フゥ
魔王(……俺、まだつきあわされんの?)
姫「ねえ、もう一度最初から話してちょうだい」
魔王「な、何をですか」
姫「私が眠ってから……えっと。とにかく最初から。さっきの話よ」
魔王「え!?」
姫「貴方が知ってるすべて」
魔王「……もう一回?」
姫「もう一回よ。そう言ったでしょ」
魔王(……癒し手。やっぱり俺を助けてくれ)
……
………
…………
26: 2014/06/10(火) 10:14:28.46 ID:T6RCdzRQ0
青年「!」ハッ
勇者「…… ……」
青年(……空、暗い…… 夜、か? ……僕は……)キョロ
青年「……勇者、様?」
勇者「!! 青年! どこも痛くない!? 気分は!」ガバッ
青年「!? ……ちょ、重……ッ …… ……」
勇者「よ、よかった……よかったぁ……! 心配したんだよ!?」ボロボロ
勇者「ま、まどう、しも……けんし、も……ッ」ウワアアアアン
青年「……あ、ああ……」
勇者「あれから、ずっと……目、さ……ッ 覚まさない、し……ッ」ギュウ
青年「…… ……うん。ごめん……大丈夫だよ」ギュ。ポンポン
青年「ごめんね、勇者様……魔導師と剣士は?」
勇者「あ……魔導師はさっきまでここに居たんだけど」
勇者「魔物の気配もないし、ってお城跡の方に行ったよ」
青年「城の方へ?」
勇者「うん……剣士は、あそこ」スッ
青年「……?」
青年(丘の……端。空見あげて何をしているんだ?)
勇者「……お母さんに心話が届かないか、ずっと試してるみたい」
青年「ああ……よいしょ」ムクッ
勇者「お、起きて大丈夫?」
青年「ああ……勇者様、悪いけど剣士呼んできて」
勇者「あ、うん!」
青年「……魔導師のところへ行こう。あいつ、何してるんだか知らないけど」
青年「調べ物でもしてんなら、なかなか戻らないだろうし」
青年「……どうせ一本道だ。どこかであうだろう」
勇者「で、でも動いて大丈夫?」
青年「……勇者様がキスしてくれたらさらに気分よくなるかな」クス
勇者「な、何いってんの!?」カァッ
青年「エルフは嘘はつけないよ、勇者様?」
勇者「……ッ だ、大丈夫そうだね! そんな調子じゃ!」
スタスタ
青年「…… ……」クスクス
勇者「…… ……」
青年(……空、暗い…… 夜、か? ……僕は……)キョロ
青年「……勇者、様?」
勇者「!! 青年! どこも痛くない!? 気分は!」ガバッ
青年「!? ……ちょ、重……ッ …… ……」
勇者「よ、よかった……よかったぁ……! 心配したんだよ!?」ボロボロ
勇者「ま、まどう、しも……けんし、も……ッ」ウワアアアアン
青年「……あ、ああ……」
勇者「あれから、ずっと……目、さ……ッ 覚まさない、し……ッ」ギュウ
青年「…… ……うん。ごめん……大丈夫だよ」ギュ。ポンポン
青年「ごめんね、勇者様……魔導師と剣士は?」
勇者「あ……魔導師はさっきまでここに居たんだけど」
勇者「魔物の気配もないし、ってお城跡の方に行ったよ」
青年「城の方へ?」
勇者「うん……剣士は、あそこ」スッ
青年「……?」
青年(丘の……端。空見あげて何をしているんだ?)
勇者「……お母さんに心話が届かないか、ずっと試してるみたい」
青年「ああ……よいしょ」ムクッ
勇者「お、起きて大丈夫?」
青年「ああ……勇者様、悪いけど剣士呼んできて」
勇者「あ、うん!」
青年「……魔導師のところへ行こう。あいつ、何してるんだか知らないけど」
青年「調べ物でもしてんなら、なかなか戻らないだろうし」
青年「……どうせ一本道だ。どこかであうだろう」
勇者「で、でも動いて大丈夫?」
青年「……勇者様がキスしてくれたらさらに気分よくなるかな」クス
勇者「な、何いってんの!?」カァッ
青年「エルフは嘘はつけないよ、勇者様?」
勇者「……ッ だ、大丈夫そうだね! そんな調子じゃ!」
スタスタ
青年「…… ……」クスクス
27: 2014/06/10(火) 10:27:41.71 ID:T6RCdzRQ0
青年(……ただの夢、では無い……よな)
青年(僕は……言葉、知識として知ってはいるが)
青年(……姫様の事なんかしらない。魔王様の事だって……)
青年(…… ……)
青年(母さん……母さんは、確かに氏んだんだ)
青年(……だけど。魔王様の言葉を借りるなら)
青年(『完全に失われては居ない』!)
青年(……間に合うのかもしれない。『向こう側』の様に……だけど)
青年(ならば。僕たちが、こうして……『否定して行く』事に)
青年(意味は……あるのか?)
スタスタ
剣士「青年」
青年「……おはよう。悪かったね、心配かけて」
剣士「否……無事ならば何より、だ」
勇者「本当に大丈夫なの?」
青年「平気だって。さっきの役得で、元気出たよ」
勇者「役得?」
青年「……勇者様の柔らかい胸の感触?」
勇者「! ……ッ ば、ばか!」カァッ
剣士「いい加減にしろ、お前は……」ハァ
青年「嘘じゃ無いよ」クスクス
勇者「青年!」
青年「……思ってくれる気持ちってのは嬉しい物だよ」
青年「僕の身を案じて、抱きしめてくれる暖かさが身にしみたって事さ」
勇者「青年……」
剣士「…… ……」
青年「ありがとう、勇者様。回復魔法もずっとかけててくれたんだろ?」
勇者「……あ、うん……でも……」
青年「そういう気持ちがね、嬉しいんだよ」
勇者「……うん!」ニコッ
青年「でも、本当に知らない間に育ったよねぇ……揉みごたえがありそ…… ……」
バッチン!
勇者「やっぱり最低だ!青年の馬鹿!」
スタスタ
青年「…… ……」クスクスクス
剣士「……本当に、いい加減にしておけよ、お前は」ハァ
青年「痛いなあ……力も強くなったね」クス
剣士「もうちょっと素直になれば良い物を……」ボソ
青年「え?」
剣士「……行くぞ。一人には出来んだろう」
スタスタ
青年「ああ……魔導師は城跡に行ったんだろう。そっちへ」
剣士「わかっている。さっさと歩け」
青年「……なんだよ。もう少し優しくしろよな!」
スタスタ
青年(僕は……言葉、知識として知ってはいるが)
青年(……姫様の事なんかしらない。魔王様の事だって……)
青年(…… ……)
青年(母さん……母さんは、確かに氏んだんだ)
青年(……だけど。魔王様の言葉を借りるなら)
青年(『完全に失われては居ない』!)
青年(……間に合うのかもしれない。『向こう側』の様に……だけど)
青年(ならば。僕たちが、こうして……『否定して行く』事に)
青年(意味は……あるのか?)
スタスタ
剣士「青年」
青年「……おはよう。悪かったね、心配かけて」
剣士「否……無事ならば何より、だ」
勇者「本当に大丈夫なの?」
青年「平気だって。さっきの役得で、元気出たよ」
勇者「役得?」
青年「……勇者様の柔らかい胸の感触?」
勇者「! ……ッ ば、ばか!」カァッ
剣士「いい加減にしろ、お前は……」ハァ
青年「嘘じゃ無いよ」クスクス
勇者「青年!」
青年「……思ってくれる気持ちってのは嬉しい物だよ」
青年「僕の身を案じて、抱きしめてくれる暖かさが身にしみたって事さ」
勇者「青年……」
剣士「…… ……」
青年「ありがとう、勇者様。回復魔法もずっとかけててくれたんだろ?」
勇者「……あ、うん……でも……」
青年「そういう気持ちがね、嬉しいんだよ」
勇者「……うん!」ニコッ
青年「でも、本当に知らない間に育ったよねぇ……揉みごたえがありそ…… ……」
バッチン!
勇者「やっぱり最低だ!青年の馬鹿!」
スタスタ
青年「…… ……」クスクスクス
剣士「……本当に、いい加減にしておけよ、お前は」ハァ
青年「痛いなあ……力も強くなったね」クス
剣士「もうちょっと素直になれば良い物を……」ボソ
青年「え?」
剣士「……行くぞ。一人には出来んだろう」
スタスタ
青年「ああ……魔導師は城跡に行ったんだろう。そっちへ」
剣士「わかっている。さっさと歩け」
青年「……なんだよ。もう少し優しくしろよな!」
スタスタ
28: 2014/06/10(火) 10:40:48.03 ID:T6RCdzRQ0
……
………
…………
魔導師(……まあ、わかっていました、けど)ハァ
魔導師(僕にはやっぱり何も聞こえない……何も感じない)
魔導師(瓦礫の山……)パキ
魔導師(……ッ と。何か踏んだか……)
魔導師(…… ……)ハァ
魔導師(しかし、ここにも魔物の気配が無い……后様の炎は)
魔導師(凄いんだ、と……言うことの証明なのか)
魔導師(……だけど、青年さんの言う様に、念には念を……)ブツブツ
ガサガサ……
魔導師「!」
魔導師(……魔物か…… ……ッ)バッ
勇者「魔導師!」
魔導師「! 勇者様!?」
剣士「俺たちも居る」
魔導師「剣士さん、青年さんは…… ……!」
青年「まさか放置されるとは思ってないでしょ、魔導師」
魔導師「……ああ、気がつかれたんですね、よかった……!」ホッ
青年「お前だから心配はしないけど……何か調べるにしたって、夜の闇の下じゃ」
青年「見つかる物も見つからないぜ?」
魔導師「……捜し物をしていた訳では無いんですけれどね。それより」
魔導師「急に歩いて大丈夫なんですか? ……結構長い時間」
魔導師「意識を失っておられたんですよ?」
青年「……びっくりしたよ。目を覚ましたら夜だったからね」
………
…………
魔導師(……まあ、わかっていました、けど)ハァ
魔導師(僕にはやっぱり何も聞こえない……何も感じない)
魔導師(瓦礫の山……)パキ
魔導師(……ッ と。何か踏んだか……)
魔導師(…… ……)ハァ
魔導師(しかし、ここにも魔物の気配が無い……后様の炎は)
魔導師(凄いんだ、と……言うことの証明なのか)
魔導師(……だけど、青年さんの言う様に、念には念を……)ブツブツ
ガサガサ……
魔導師「!」
魔導師(……魔物か…… ……ッ)バッ
勇者「魔導師!」
魔導師「! 勇者様!?」
剣士「俺たちも居る」
魔導師「剣士さん、青年さんは…… ……!」
青年「まさか放置されるとは思ってないでしょ、魔導師」
魔導師「……ああ、気がつかれたんですね、よかった……!」ホッ
青年「お前だから心配はしないけど……何か調べるにしたって、夜の闇の下じゃ」
青年「見つかる物も見つからないぜ?」
魔導師「……捜し物をしていた訳では無いんですけれどね。それより」
魔導師「急に歩いて大丈夫なんですか? ……結構長い時間」
魔導師「意識を失っておられたんですよ?」
青年「……びっくりしたよ。目を覚ましたら夜だったからね」
29: 2014/06/10(火) 11:10:07.29 ID:T6RCdzRQ0
魔導師「まあ……無事ならばよかったです。ご気分は?」
青年「ああ……」
魔導師「青年さん? まだ気分が優れないなら……」
青年「いや、そうじゃない……話したい事がある」
勇者「? ……やっぱり、あの呪いの……感じるの?」
青年「え? ……ああ、そうじゃないんだ、勇者様」
青年「剣士」
剣士「何だ」
青年「……后様には、心話は通じたのか?」
剣士「否…… ……駄目だな。見てはいる、のだろうと思いたいが」
青年「そうか」
魔導師「! ……まさか、何か夢を見たのですか!?」
勇者「夢?」
青年「当たらずとも遠からず、かな……とにかく、野宿をするつもりでないなら」
青年「船に戻ろう……ここには、もう何も無い」
剣士「何も……ない?」
青年「……呪いが、とか言う意味じゃ無いんだ」
青年「なんと言っていいか……確実に言えるのは」
青年「大地に……『世界』に」
魔導師「!?」
青年「染みこんでしまった物は、そう簡単に消えないだろうって事だ」
剣士「…… ……」
青年「后様の炎でも完全に消し去れなかったあの呪いを、今の勇者様の炎で」
青年「消してしまえるとは思えない。力の差、もあるが」
青年「……時間が経ちすぎている。魔導師が言っていたように」
青年「醜聞、や……『運命に選ばれし光の子』が炎の魔法を使えると知る人は少ない」
青年「それを考えれば、ここは……放置すべきだって思っただけだ」
勇者「……私の力が、お母さんに遠く及ばない、ってのはわかるよ。でも」
勇者「青年は……それで良いの?」
青年「ちょっと時間がかかるけれど、勿論全部話す」
青年「……だけど、結論を出してから、ここに炎を放って」
青年「さあ、出発しよう……は、意味が無いと思う」
魔導師「意味が無い……?」
青年「ああ」
剣士「……炎に関しては、俺が手を貸す、と言う方法もあるぞ?」
青年「それも考えた。だが……それでも、だ」
青年「ああ……」
魔導師「青年さん? まだ気分が優れないなら……」
青年「いや、そうじゃない……話したい事がある」
勇者「? ……やっぱり、あの呪いの……感じるの?」
青年「え? ……ああ、そうじゃないんだ、勇者様」
青年「剣士」
剣士「何だ」
青年「……后様には、心話は通じたのか?」
剣士「否…… ……駄目だな。見てはいる、のだろうと思いたいが」
青年「そうか」
魔導師「! ……まさか、何か夢を見たのですか!?」
勇者「夢?」
青年「当たらずとも遠からず、かな……とにかく、野宿をするつもりでないなら」
青年「船に戻ろう……ここには、もう何も無い」
剣士「何も……ない?」
青年「……呪いが、とか言う意味じゃ無いんだ」
青年「なんと言っていいか……確実に言えるのは」
青年「大地に……『世界』に」
魔導師「!?」
青年「染みこんでしまった物は、そう簡単に消えないだろうって事だ」
剣士「…… ……」
青年「后様の炎でも完全に消し去れなかったあの呪いを、今の勇者様の炎で」
青年「消してしまえるとは思えない。力の差、もあるが」
青年「……時間が経ちすぎている。魔導師が言っていたように」
青年「醜聞、や……『運命に選ばれし光の子』が炎の魔法を使えると知る人は少ない」
青年「それを考えれば、ここは……放置すべきだって思っただけだ」
勇者「……私の力が、お母さんに遠く及ばない、ってのはわかるよ。でも」
勇者「青年は……それで良いの?」
青年「ちょっと時間がかかるけれど、勿論全部話す」
青年「……だけど、結論を出してから、ここに炎を放って」
青年「さあ、出発しよう……は、意味が無いと思う」
魔導師「意味が無い……?」
青年「ああ」
剣士「……炎に関しては、俺が手を貸す、と言う方法もあるぞ?」
青年「それも考えた。だが……それでも、だ」
30: 2014/06/10(火) 11:21:20.83 ID:T6RCdzRQ0
魔導師「…… ……」
青年「勇者様もそもそも、火を放つのに乗り気ではなかっただろう?」
勇者「そ、そりゃあそうだけど……」
剣士「意味が無い、と言うのは根拠があるんだろうな」
青年「当然だ……だが、まあ、最終的な判断は勇者様に任せるよ」
勇者「え!?」
青年「『仲間』からの意見、だね。決定するのは君だ、勇者様」
勇者「え、ええと……」
剣士「……お前の話を聞かん事には、どうにも判断できん、が」ハァ
魔導師「そうですよ、青年さん。何も話されずそれでは……」
青年「僕が倒れて、長く目を覚まさない間」
青年「『夢』を見ているのでは無いか、って。思ってたんだろう?」
魔導師「……まあ、推測ですけど」
青年「あれを夢と言っていいのかどうかわからないが……僕は『夢』の中で」
青年「魔王様と姫様にあった」
勇者「! お父さんに!?」
剣士「……姫、だと?」
青年「そうだ……あれが何処かはわからないけど、眼下に広がる幻の様な景色は」
青年「……あそこ。あの丘の上だ」
魔導師「!」
青年「僕が倒れてて、勇者様が、必氏で回復魔法をかけてくれてた」
剣士「…… ……」
青年「君は似たような経験があるだろう、剣士?」
剣士「……魔導師もだろうが」
青年「あ、そうか」
勇者「お父さん…… ……」
青年「まあ、そこでいろいろ話した上で……意味が無い、と判断したんだ」
魔導師「…… ……」
青年「勇者様もそもそも、火を放つのに乗り気ではなかっただろう?」
勇者「そ、そりゃあそうだけど……」
剣士「意味が無い、と言うのは根拠があるんだろうな」
青年「当然だ……だが、まあ、最終的な判断は勇者様に任せるよ」
勇者「え!?」
青年「『仲間』からの意見、だね。決定するのは君だ、勇者様」
勇者「え、ええと……」
剣士「……お前の話を聞かん事には、どうにも判断できん、が」ハァ
魔導師「そうですよ、青年さん。何も話されずそれでは……」
青年「僕が倒れて、長く目を覚まさない間」
青年「『夢』を見ているのでは無いか、って。思ってたんだろう?」
魔導師「……まあ、推測ですけど」
青年「あれを夢と言っていいのかどうかわからないが……僕は『夢』の中で」
青年「魔王様と姫様にあった」
勇者「! お父さんに!?」
剣士「……姫、だと?」
青年「そうだ……あれが何処かはわからないけど、眼下に広がる幻の様な景色は」
青年「……あそこ。あの丘の上だ」
魔導師「!」
青年「僕が倒れてて、勇者様が、必氏で回復魔法をかけてくれてた」
剣士「…… ……」
青年「君は似たような経験があるだろう、剣士?」
剣士「……魔導師もだろうが」
青年「あ、そうか」
勇者「お父さん…… ……」
青年「まあ、そこでいろいろ話した上で……意味が無い、と判断したんだ」
魔導師「…… ……」
31: 2014/06/10(火) 11:30:14.28 ID:T6RCdzRQ0
勇者「……わかった。船に戻ろう」
剣士「良いのか?」
勇者「確かに、私の炎じゃ力不足……剣士の力を借りても」
勇者「『意味が無い』って判断した……『仲間』の意見を尊重するよ」
青年「…… ……」
勇者「『エルフは嘘がつけない』……青年は嘘なんか……『つかない』」
青年「!」
魔導師「……まあ、向かう場所にもよりますけど」
魔導師「それでもここに火を放つべきだと思えば、何時だって戻ってこれます」
剣士「……間に合えば、な」
魔導師「『16歳』を区切りとするなら、まだ時間はあります」
勇者「……剣士、補給の必要は?」
剣士「港街か書の街だな。どこに行くにせよ……必要だ」
勇者「わかった。じゃあ、まずはどちらかに向かおう」
青年「……ありがとう、勇者様」
勇者「ちゃんと話してくれるまで寝かさないからね」
青年「大胆だな」クス
勇者「青年!茶化さない!」
青年「はいはい」
剣士「良いのか?」
勇者「確かに、私の炎じゃ力不足……剣士の力を借りても」
勇者「『意味が無い』って判断した……『仲間』の意見を尊重するよ」
青年「…… ……」
勇者「『エルフは嘘がつけない』……青年は嘘なんか……『つかない』」
青年「!」
魔導師「……まあ、向かう場所にもよりますけど」
魔導師「それでもここに火を放つべきだと思えば、何時だって戻ってこれます」
剣士「……間に合えば、な」
魔導師「『16歳』を区切りとするなら、まだ時間はあります」
勇者「……剣士、補給の必要は?」
剣士「港街か書の街だな。どこに行くにせよ……必要だ」
勇者「わかった。じゃあ、まずはどちらかに向かおう」
青年「……ありがとう、勇者様」
勇者「ちゃんと話してくれるまで寝かさないからね」
青年「大胆だな」クス
勇者「青年!茶化さない!」
青年「はいはい」
32: 2014/06/10(火) 11:35:28.66 ID:T6RCdzRQ0
剣士「この辺は海の魔物もそれほどの力を持たない……とはいえ」
剣士「飛ばして向かっても、夜ではどうしようも無い」
魔導師「そうですね……近いのは、港街ですが」
剣士「どちらにせよ船で朝を待つ事になる」
勇者「戻りながら考えよう……火を放つ必要が無いにしても」
勇者「……気分はよくないでしょ、青年?」
青年「まあ……ね。丘の上ほど、空気は良く無い。雰囲気もね」
魔導師「早く聞きたい、と言うのはありますが……僕たちも少し眠るべきです」
魔導師「勇者様は魔力も随分消費したでしょうし」
青年「……だな」
剣士「長居は無用だ……行くぞ」
スタスタ
魔導師「はい……行きましょう、勇者様」
勇者「うん……ねえ、青年?」
青年「うん?」
勇者「……お父さん、何か言ってた?」
青年「子供を気にかけない親なんか居ないよ」
勇者「…… ……うん」
スタスタ
魔導師(『夢』……魔王様に会った、のはともかく)
魔導師(姫様…… ……今頃、どうして?)
青年「……魔導師」
魔導師「あ、すみません」
スタスタ
剣士「飛ばして向かっても、夜ではどうしようも無い」
魔導師「そうですね……近いのは、港街ですが」
剣士「どちらにせよ船で朝を待つ事になる」
勇者「戻りながら考えよう……火を放つ必要が無いにしても」
勇者「……気分はよくないでしょ、青年?」
青年「まあ……ね。丘の上ほど、空気は良く無い。雰囲気もね」
魔導師「早く聞きたい、と言うのはありますが……僕たちも少し眠るべきです」
魔導師「勇者様は魔力も随分消費したでしょうし」
青年「……だな」
剣士「長居は無用だ……行くぞ」
スタスタ
魔導師「はい……行きましょう、勇者様」
勇者「うん……ねえ、青年?」
青年「うん?」
勇者「……お父さん、何か言ってた?」
青年「子供を気にかけない親なんか居ないよ」
勇者「…… ……うん」
スタスタ
魔導師(『夢』……魔王様に会った、のはともかく)
魔導師(姫様…… ……今頃、どうして?)
青年「……魔導師」
魔導師「あ、すみません」
スタスタ
33: 2014/06/10(火) 11:43:50.21 ID:T6RCdzRQ0
青年「……何も隠さないよ」
魔導師「そんな事疑っていませんよ。仲間なんですから」
青年「……ああ」クス
魔導師「必氏だったんですよ、勇者様」
青年「見てたよ」
魔導師「…… ……」
青年「何だよ?」
魔導師「いえ……」
青年「言いたい事があるならはっきり言えよ」
魔導師「……姫様、は。亡くなられてから、随分時間が経っているのに」
魔導師「今頃、何故……と思っただけです」
青年「……『役目』だそうだ」
魔導師「え?」
青年「……戻れば話す。勇者様を休ませないとな」
魔導師「寝かさないって言われてましたけど」
青年「ベッドの中なら歓迎だけどね」
魔導師「……それ、本人に言っちゃ駄目ですよ」
青年「言わないよ……前にも言っただろう?そんな目で見ちゃ居ない」
魔導師「……僕も、前にも言いましたよ?」
青年「『終わらせる』んだよ、魔導師」
青年(……金髪紫瞳の男……『向こう側』の僕と……勇者様の息子、には悪いけれど)
青年(もう……ごめんだ)
青年(『この世のどこからも失われる』事が、真の安らぎならば)
青年(……まだ、母さんが存在するのならば。終わらせなければ……!)
魔導師「……青年さん?」
青年「……行こう。遅れたらまたどやされる」
……
………
…………
魔導師「そんな事疑っていませんよ。仲間なんですから」
青年「……ああ」クス
魔導師「必氏だったんですよ、勇者様」
青年「見てたよ」
魔導師「…… ……」
青年「何だよ?」
魔導師「いえ……」
青年「言いたい事があるならはっきり言えよ」
魔導師「……姫様、は。亡くなられてから、随分時間が経っているのに」
魔導師「今頃、何故……と思っただけです」
青年「……『役目』だそうだ」
魔導師「え?」
青年「……戻れば話す。勇者様を休ませないとな」
魔導師「寝かさないって言われてましたけど」
青年「ベッドの中なら歓迎だけどね」
魔導師「……それ、本人に言っちゃ駄目ですよ」
青年「言わないよ……前にも言っただろう?そんな目で見ちゃ居ない」
魔導師「……僕も、前にも言いましたよ?」
青年「『終わらせる』んだよ、魔導師」
青年(……金髪紫瞳の男……『向こう側』の僕と……勇者様の息子、には悪いけれど)
青年(もう……ごめんだ)
青年(『この世のどこからも失われる』事が、真の安らぎならば)
青年(……まだ、母さんが存在するのならば。終わらせなければ……!)
魔導師「……青年さん?」
青年「……行こう。遅れたらまたどやされる」
……
………
…………
35: 2014/06/10(火) 12:43:34.66 ID:T6RCdzRQ0
コンコン
少年「少女、いるか?」
少女「少年? ……うん。どうしたの」
カチャ
少女「また、お客さん?」
少年「いや、見た事の無い船が止まってるらしいんだ……それで」
少女「見た事の無い船? でも、この街の港には……」
少年「……まあ、定期便以外にも行き来するってのは聞いたよ。でも」
少年「見た事は無かっただろう?」
少女「……まあ、そうだけど。あ、でも!」
少女「私、お使いの途中で一度……大きな船を見たわ」
少年「ああ……沖の方に停泊してたやつな。俺も見たよ。でもそれじゃ無くて」
少女「……違うの?」
少年「と、思う。 ……小さな船だ、って言ってた」
少女「誰に聞いたの」
少年「裏の洗濯屋のおばさんさ」
少女「……あのおばさん、噂好きだからね」
少年「お姉さん達も何人か、見に行ったんだよ」
少女「……それで、私たちも行こう、って?」
少年「少女は、いや?」
少女「ううん……別にかまわないけど」
少年「大丈夫だよ。後ろからこっそり行けば、俺たちが娼館の小姓だなんて」
少年「気付かれないさ」
少女「…… ……」
少年「もし、お前に目をつける様なやつがいたら、俺がぶっとばしてやる!」
少女「……馬鹿ね。本末転倒でしょ」
少年「俺は……お前が客を取るなんて許さないって言ってるだろう」
少女「まだ何年も先の話よ」
少年「……もう何年か、しかないんだ」
少女「…… ……」
少年「……少女がどうしてもいやなら、行かないけど」
少女「少年は行きたいんでしょう?」
少年「少女、いるか?」
少女「少年? ……うん。どうしたの」
カチャ
少女「また、お客さん?」
少年「いや、見た事の無い船が止まってるらしいんだ……それで」
少女「見た事の無い船? でも、この街の港には……」
少年「……まあ、定期便以外にも行き来するってのは聞いたよ。でも」
少年「見た事は無かっただろう?」
少女「……まあ、そうだけど。あ、でも!」
少女「私、お使いの途中で一度……大きな船を見たわ」
少年「ああ……沖の方に停泊してたやつな。俺も見たよ。でもそれじゃ無くて」
少女「……違うの?」
少年「と、思う。 ……小さな船だ、って言ってた」
少女「誰に聞いたの」
少年「裏の洗濯屋のおばさんさ」
少女「……あのおばさん、噂好きだからね」
少年「お姉さん達も何人か、見に行ったんだよ」
少女「……それで、私たちも行こう、って?」
少年「少女は、いや?」
少女「ううん……別にかまわないけど」
少年「大丈夫だよ。後ろからこっそり行けば、俺たちが娼館の小姓だなんて」
少年「気付かれないさ」
少女「…… ……」
少年「もし、お前に目をつける様なやつがいたら、俺がぶっとばしてやる!」
少女「……馬鹿ね。本末転倒でしょ」
少年「俺は……お前が客を取るなんて許さないって言ってるだろう」
少女「まだ何年も先の話よ」
少年「……もう何年か、しかないんだ」
少女「…… ……」
少年「……少女がどうしてもいやなら、行かないけど」
少女「少年は行きたいんでしょう?」
36: 2014/06/10(火) 12:44:28.18 ID:T6RCdzRQ0
ほんまにいってきます!
38: 2014/06/10(火) 15:44:59.87 ID:T6RCdzRQ0
少年「…… ……」
少女「少年?」
少年(別に……詳しく言わなくて良いか。少女には、まだ……)
少年(多分……賛成はしてくれない。反対はしなくても……)
少女「……?」
少年「うん、行きたい、けど……少女が嫌なら、無理には誘わないよ」
少女「それは、私が嫌だって言えば、自分一人で行く、って事でしょ……良いわ」フゥ
少女「仕事が無いときに何してたって怒られる訳じゃないし……行きましょ」
少年「……うん!」ホッ
少女「男の子は、好きよね。船……とか」
少年「とか、って?」
少女「冒険……とか?」
少年「ああ……まあ、そうかもね。でも、少女だって」
少年「そういう本、読んでるじゃないか……ほら、手」スッ
少女「手、つないで行くの? ……良いけど……本って、これ?」
少年「うん……そう言うの」ギュ
少女「確かに、冒険とかのお話もあるけど……でもね」ギュ
少女「童話の中の王子様は……とても素敵なのよ」
少年「…… ……王子様?」
少女「そう。お姫様が悪いやつに攫われても必ず助けに来てくれる」
少年「…… ……」ムッ ……ギュウ
少女「少年? ……そんなに強く握ったら、痛い」
少年「攫われてからじゃ遅いだろ。俺なら……少女を誰にも渡さない」
少年「絶対に、守るよ」
少女「少年?」
少年(別に……詳しく言わなくて良いか。少女には、まだ……)
少年(多分……賛成はしてくれない。反対はしなくても……)
少女「……?」
少年「うん、行きたい、けど……少女が嫌なら、無理には誘わないよ」
少女「それは、私が嫌だって言えば、自分一人で行く、って事でしょ……良いわ」フゥ
少女「仕事が無いときに何してたって怒られる訳じゃないし……行きましょ」
少年「……うん!」ホッ
少女「男の子は、好きよね。船……とか」
少年「とか、って?」
少女「冒険……とか?」
少年「ああ……まあ、そうかもね。でも、少女だって」
少年「そういう本、読んでるじゃないか……ほら、手」スッ
少女「手、つないで行くの? ……良いけど……本って、これ?」
少年「うん……そう言うの」ギュ
少女「確かに、冒険とかのお話もあるけど……でもね」ギュ
少女「童話の中の王子様は……とても素敵なのよ」
少年「…… ……王子様?」
少女「そう。お姫様が悪いやつに攫われても必ず助けに来てくれる」
少年「…… ……」ムッ ……ギュウ
少女「少年? ……そんなに強く握ったら、痛い」
少年「攫われてからじゃ遅いだろ。俺なら……少女を誰にも渡さない」
少年「絶対に、守るよ」
39: 2014/06/10(火) 16:06:25.86 ID:T6RCdzRQ0
少女「少年……?」
少年「……行こう。昼過ぎたらまた混み出すよ、店」
少女「……ええ …… ……?」
スタスタ、キィ、パタン
少年「ほら、あっち」
スタスタ
少女「そんなに引っ張らないで……」
娼館の女「何だい、アンタ達も来たの?」
少年「ああ、姉さん……うん、誰か降りてきた?」
娼館の女「いや……昨晩、朝方、かな。あそこに止まったきりだって」
娼館の女「まだ誰も……」
少女「……難破した、とかじゃ無い……よね?」
少年「それは……どうなの?」
娼館の女「さあ……アタシは船の事なんかわかんないけど……あ!」
勇者「……魔導師、なんか、あの」
勇者「すっごい人が集まってる、んだけど……」
魔導師「……剣士さんは降りない方が良さそうですね」
少年「男の人と……女の人、だよね?」
娼館の女「女の子の方は若そうだね」
少女「……! あの子……!」
少年「え?」
少女(金色の、瞳……!? ……ううん、見間違い……?)
魔導師「青年さんは、どうします」
青年「……剣士が降りれないんなら、僕が行くしか無いか? ……否」
青年「魔導師が行くのなら、問題ないか。補給の方法とかはわかるか?」
魔導師「剣士さんに一応、一通り教えてもらいましたけど……」
娼館の女「……? あの金髪の男……見た事あるような……?」
少年「え?」
娼館の女「……否、でも……」
少女「お姉さん、知ってる人?」
娼館の女(『魔法使い』の客だった男に似てる……けど)
娼館の女(……あいつだったら、若すぎる……でも)
少年「お姉さん?」
娼館の女「……否、見間違いだろう。年齢があわない」
娼館の女(随分綺麗な顔をした男だったのは覚えてる。けど)
娼館の女(……不公平だね、世の中ってのは)ハァ
少年「あ、こっち向いた……!」
青年「……!?」
青年(少女!? ……否…… ……あれは…… ……!)
魔導師「青年さん?」
少年「……行こう。昼過ぎたらまた混み出すよ、店」
少女「……ええ …… ……?」
スタスタ、キィ、パタン
少年「ほら、あっち」
スタスタ
少女「そんなに引っ張らないで……」
娼館の女「何だい、アンタ達も来たの?」
少年「ああ、姉さん……うん、誰か降りてきた?」
娼館の女「いや……昨晩、朝方、かな。あそこに止まったきりだって」
娼館の女「まだ誰も……」
少女「……難破した、とかじゃ無い……よね?」
少年「それは……どうなの?」
娼館の女「さあ……アタシは船の事なんかわかんないけど……あ!」
勇者「……魔導師、なんか、あの」
勇者「すっごい人が集まってる、んだけど……」
魔導師「……剣士さんは降りない方が良さそうですね」
少年「男の人と……女の人、だよね?」
娼館の女「女の子の方は若そうだね」
少女「……! あの子……!」
少年「え?」
少女(金色の、瞳……!? ……ううん、見間違い……?)
魔導師「青年さんは、どうします」
青年「……剣士が降りれないんなら、僕が行くしか無いか? ……否」
青年「魔導師が行くのなら、問題ないか。補給の方法とかはわかるか?」
魔導師「剣士さんに一応、一通り教えてもらいましたけど……」
娼館の女「……? あの金髪の男……見た事あるような……?」
少年「え?」
娼館の女「……否、でも……」
少女「お姉さん、知ってる人?」
娼館の女(『魔法使い』の客だった男に似てる……けど)
娼館の女(……あいつだったら、若すぎる……でも)
少年「お姉さん?」
娼館の女「……否、見間違いだろう。年齢があわない」
娼館の女(随分綺麗な顔をした男だったのは覚えてる。けど)
娼館の女(……不公平だね、世の中ってのは)ハァ
少年「あ、こっち向いた……!」
青年「……!?」
青年(少女!? ……否…… ……あれは…… ……!)
魔導師「青年さん?」
40: 2014/06/10(火) 16:15:52.81 ID:T6RCdzRQ0
青年(距離があるから、はっきりとは見えないが……)
青年「……任せて良いなら任せる。僕も何度か出入りしてるからな」
魔導師「え、ええ……まあ、何十年と経ってる訳では無いですからね」
魔導師「そう仰るのなら、かまいませんけど」
青年「……勇者様から離れるなよ。特に用事が無いなら、補給を済ませて発とう」
魔導師「はい」
勇者「…… ……」キョロキョロ
魔導師「勇者様、行きましょうか……貴女と、僕は堂々としていて良いんですから」
勇者「あ、うん……じゃあ、行ってくるね、青年」
青年「ああ」
スタスタ
青年(……遠目だ。見間違い……は、十分にあり得る)
青年(だけど……同じ顔をした、男と女……あれは、多分……)
青年(少女……『魔法使い』の子供……!)
青年(茶の瞳の双子だと言っていた……)
パタン
剣士「何だ、お前も残ったのか」
青年「……ああ」
剣士「まあ、良い……魔導師が表に立つ事が多くなるのは」
剣士「あいつ自身も納得しているだろうしな」
青年「…… ……」
剣士「どうした。疲れが取れないのなら、眠っていれば良い」
青年「それは……別に良い」
剣士「……勇者は、本当に寝かしてくれなかったからな」クス
青年「魔王様の名前を出しちゃったからね……気になってたんだろ」
青年「それでも、聞き終わったら螺旋の切れた玩具みたいに寝ちゃったろ」
剣士「……色んな意味でショックだったんだろう」
青年「…… ……君は休まなくて良いのか。舵も任せっきりだし」
剣士「そもそも俺に、休息や食事の必要があるのかも怪しいんだ」
剣士「……気にするな」
青年「補給がすんだら、またすぐに発つんだぜ? ……数時間は……」
剣士「構わん」
青年「……いろいろ、ショックだったのは君だろう」
剣士「…… ……」
青年「僕たちは『否定する』事に囚われすぎている」
青年「……結局は……あるべき所へと帰結するに過ぎない、と」
青年「言ったのは、剣士自身だ」
剣士「…… ……」
青年「あれから……口数も少ないし」
剣士「……元々だ」
青年「そうか?」
剣士「……ああ」
青年「…… ……」
青年「……任せて良いなら任せる。僕も何度か出入りしてるからな」
魔導師「え、ええ……まあ、何十年と経ってる訳では無いですからね」
魔導師「そう仰るのなら、かまいませんけど」
青年「……勇者様から離れるなよ。特に用事が無いなら、補給を済ませて発とう」
魔導師「はい」
勇者「…… ……」キョロキョロ
魔導師「勇者様、行きましょうか……貴女と、僕は堂々としていて良いんですから」
勇者「あ、うん……じゃあ、行ってくるね、青年」
青年「ああ」
スタスタ
青年(……遠目だ。見間違い……は、十分にあり得る)
青年(だけど……同じ顔をした、男と女……あれは、多分……)
青年(少女……『魔法使い』の子供……!)
青年(茶の瞳の双子だと言っていた……)
パタン
剣士「何だ、お前も残ったのか」
青年「……ああ」
剣士「まあ、良い……魔導師が表に立つ事が多くなるのは」
剣士「あいつ自身も納得しているだろうしな」
青年「…… ……」
剣士「どうした。疲れが取れないのなら、眠っていれば良い」
青年「それは……別に良い」
剣士「……勇者は、本当に寝かしてくれなかったからな」クス
青年「魔王様の名前を出しちゃったからね……気になってたんだろ」
青年「それでも、聞き終わったら螺旋の切れた玩具みたいに寝ちゃったろ」
剣士「……色んな意味でショックだったんだろう」
青年「…… ……君は休まなくて良いのか。舵も任せっきりだし」
剣士「そもそも俺に、休息や食事の必要があるのかも怪しいんだ」
剣士「……気にするな」
青年「補給がすんだら、またすぐに発つんだぜ? ……数時間は……」
剣士「構わん」
青年「……いろいろ、ショックだったのは君だろう」
剣士「…… ……」
青年「僕たちは『否定する』事に囚われすぎている」
青年「……結局は……あるべき所へと帰結するに過ぎない、と」
青年「言ったのは、剣士自身だ」
剣士「…… ……」
青年「あれから……口数も少ないし」
剣士「……元々だ」
青年「そうか?」
剣士「……ああ」
青年「…… ……」
41: 2014/06/10(火) 16:24:41.42 ID:T6RCdzRQ0
剣士「……お前、話して居ない事があるだろう」
青年「え?」
剣士「エルフの知人……その言葉を、姫がお前に伝えた事も」
剣士「それによって……呪いの完全消去を今の侭では望めない事もわかった」
剣士「……不思議な場所で、お前と魔王と姫が交わした話も聞いた」
剣士「癒し手が……この『世界』から『完全に失われていない』事も」
青年「……何言ってるんだよ。僕は嘘は…… ……」
剣士「嘘をつく事と、黙っている事は違う」
剣士「……寝落ちる寸前の勇者に、他には無いのかと問われ」
剣士「『続きはまた今度』と言ったのが良い証拠では無いのか?」
青年「…… ……」
剣士「はっきり聞こうか。 ……続きが、あるんだろう」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ
青年「勇者様には……まだ言えない。魔導師にも、かな」
剣士「……魔導師に言えないのは何故だ」
青年「え?」
剣士「エルフの知人……その言葉を、姫がお前に伝えた事も」
剣士「それによって……呪いの完全消去を今の侭では望めない事もわかった」
剣士「……不思議な場所で、お前と魔王と姫が交わした話も聞いた」
剣士「癒し手が……この『世界』から『完全に失われていない』事も」
青年「……何言ってるんだよ。僕は嘘は…… ……」
剣士「嘘をつく事と、黙っている事は違う」
剣士「……寝落ちる寸前の勇者に、他には無いのかと問われ」
剣士「『続きはまた今度』と言ったのが良い証拠では無いのか?」
青年「…… ……」
剣士「はっきり聞こうか。 ……続きが、あるんだろう」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」ハァ
青年「勇者様には……まだ言えない。魔導師にも、かな」
剣士「……魔導師に言えないのは何故だ」
42: 2014/06/10(火) 16:43:01.19 ID:T6RCdzRQ0
剣士「勇者に言いにくい事、と言うのは……内容の想像がつくわけでは無いが」
剣士「わからんでも無い。あいつは……『魔王にはなりたくない』と言っていたからな」
青年「…… ……」
剣士「だが、魔導師には何故だ?」
青年「……魔導師達が戻れば、すぐに船を出すつもりか?」
剣士「? ……おい、人の話を…… ……」
青年「聞いている。から、問うてる……時間があるのなら」
青年「ちょっと軽く一杯、ね……付き合う?」
剣士「『まあ……良いだろう』」ハァ
青年「昔……言った事、覚えているか?」
剣士「?」
青年「鍛冶師の村でだ……僕と君が『初対面』の時に」
青年「『又一緒に酒を飲もうって約束、してたみたいだ』……って」
剣士「……ああ」
青年「あれは……向こう側の『僕と君』だったのかもしれないな」
剣士「…… ……」
青年「だとすれば、願いは叶った……のかな」
剣士「そうやって……俺たちは、二人で酒を飲んだ……のか」
青年「どうなんだろうね?でもそんな機会は一回ぐらいはあったんじゃない」
青年「魔導師曰く、『向こう側』の僕たちは……僕と君に限った事じゃないみたいだったけど」
青年「友好的じゃ無かったらしいけどね」クス
剣士「……あいつの話じゃ、俺とお前より、魔導師とお前、だろう?」
青年「それすらも否定してるって考えると……おもしろいよね」
剣士「……俺は別に、お前と仲良しこよし、してる自覚は無いが」ムッ
剣士「わからんでも無い。あいつは……『魔王にはなりたくない』と言っていたからな」
青年「…… ……」
剣士「だが、魔導師には何故だ?」
青年「……魔導師達が戻れば、すぐに船を出すつもりか?」
剣士「? ……おい、人の話を…… ……」
青年「聞いている。から、問うてる……時間があるのなら」
青年「ちょっと軽く一杯、ね……付き合う?」
剣士「『まあ……良いだろう』」ハァ
青年「昔……言った事、覚えているか?」
剣士「?」
青年「鍛冶師の村でだ……僕と君が『初対面』の時に」
青年「『又一緒に酒を飲もうって約束、してたみたいだ』……って」
剣士「……ああ」
青年「あれは……向こう側の『僕と君』だったのかもしれないな」
剣士「…… ……」
青年「だとすれば、願いは叶った……のかな」
剣士「そうやって……俺たちは、二人で酒を飲んだ……のか」
青年「どうなんだろうね?でもそんな機会は一回ぐらいはあったんじゃない」
青年「魔導師曰く、『向こう側』の僕たちは……僕と君に限った事じゃないみたいだったけど」
青年「友好的じゃ無かったらしいけどね」クス
剣士「……あいつの話じゃ、俺とお前より、魔導師とお前、だろう?」
青年「それすらも否定してるって考えると……おもしろいよね」
剣士「……俺は別に、お前と仲良しこよし、してる自覚は無いが」ムッ
43: 2014/06/10(火) 16:51:45.07 ID:T6RCdzRQ0
青年「睨むなよ……つれないな」
剣士「気持ち悪い事を言うな……だが」
青年「?」
剣士「言った事があるか否かは忘れた、が」
剣士「……俺は、お前が嫌いでは無い」
青年「『知ってるよ……僕もだ。否、むしろ……好きかな?』」
剣士「…… ……」
青年「だから眉間に皺寄せるなって……嬉しい癖に」
剣士「『気持ち悪い事を言うな、と言ってるんだ』」ハァ
青年「『素直じゃ無いなぁ』」
剣士「『そっくりその侭返してやる』」ジロ
青年「『僕? ……僕は素直だよ』」ニコ
青年「………意外」
剣士「お前こそ俺を何だと思ってる」
青年「……言っていいの?」
剣士「………」ジロ
青年「………」ニコ
剣士「お前は……何を知っている?」
青年「『たいしたことじゃ無い。腐った世界の腐った不条理を断ち切るために』」
青年「『尽力したいだけ……母さんの為にも。勇者様の為にも……世界の為にも、ね』」
青年「……だけど、少しばかり……ここが」トン
青年「痛む、んだ……『知ってしまった』から、んだろうけど」
剣士「……意味が分からん」
青年「立ち話はここまでだ……『続きは後で』」
剣士「…… ……」
青年「『だけど……話させてくれ……君にしか、言えない、まだ』」
……
………
…………
剣士「気持ち悪い事を言うな……だが」
青年「?」
剣士「言った事があるか否かは忘れた、が」
剣士「……俺は、お前が嫌いでは無い」
青年「『知ってるよ……僕もだ。否、むしろ……好きかな?』」
剣士「…… ……」
青年「だから眉間に皺寄せるなって……嬉しい癖に」
剣士「『気持ち悪い事を言うな、と言ってるんだ』」ハァ
青年「『素直じゃ無いなぁ』」
剣士「『そっくりその侭返してやる』」ジロ
青年「『僕? ……僕は素直だよ』」ニコ
青年「………意外」
剣士「お前こそ俺を何だと思ってる」
青年「……言っていいの?」
剣士「………」ジロ
青年「………」ニコ
剣士「お前は……何を知っている?」
青年「『たいしたことじゃ無い。腐った世界の腐った不条理を断ち切るために』」
青年「『尽力したいだけ……母さんの為にも。勇者様の為にも……世界の為にも、ね』」
青年「……だけど、少しばかり……ここが」トン
青年「痛む、んだ……『知ってしまった』から、んだろうけど」
剣士「……意味が分からん」
青年「立ち話はここまでだ……『続きは後で』」
剣士「…… ……」
青年「『だけど……話させてくれ……君にしか、言えない、まだ』」
……
………
…………
44: 2014/06/10(火) 17:06:37.30 ID:T6RCdzRQ0
后「…… ……」
側近「…… ……」
后「…… ……」
側近「……『手が震えている。大丈夫なのか』」
后「『貴方こそ』喋っていて大丈夫なの、側近……『人の事は言えないわよ』」
側近「体力には自信がある『つもりだった……だが……!』」
后「……そうね。体力の問題じゃ無い……私だって……否!」
后「嬉しいのよ。嬉しくて……震えが、止まらないのよ……でもッ」
后「信じがたい話だわ……『癒し手がまだ、失われていないなんて!』」
側近「……想像『もしなかった……できなかった……ッ』」
后「そう、よね……」
側近「……青年は……『喜んだんだろうか』」
后「どうかしらね……でも『私たちは喜ばなくてはいけない』」
側近「『…… ……』」
后「否定しなくては……いえ、否定して行くんだって、決めて……」
后「青年だって、覚悟はしていた筈よ。あの子は……癒し手が風に攫われて消えてしまうのを」
后「……実際に、見ている。だけど『夢の中』で魔王と、姫様にあって……」
后「その覚悟が、揺らいでいる……筈よ」
側近「……会いたいと思うだろう。願うだろうな。俺ですら……!」
后「……考えた筈よ。間に合ってほしい。変わってほしい……でも」
后「そうじゃ無いのよ。一番に思う事は……」
側近「……『もう一度会いたい』…… ……か」
后「それが……『否定する』事を裏切る『事実』に繋がってもね」
后「だけど……心の中までは読めないから」
側近「…… ……」
后「『どうなるかはわからないわ……変わってしまったの事は、それこそ』」
后「『……動かし様のない、事実なのよ』」
側近「何れ、知るさ……俺たちも、あいつらもな」
后「そうね……」
側近「しかし、お前は大丈夫なのか?」
后「ええ……魔王の傍に居るからかしらね」
側近「皮肉だな」
后「こうして、魔王の魔力を借りることで……多分、抑える事にもなっているのよ」
側近「……成る程な」
后「『でも、それが……魔王の、いえ……魔王と癒し手の干渉を』」
后「『妨げる要因になっているかもしれない……のよね』」
側近「……だが、こればかりはどうしようもない。干渉を受け入れ、魔王が」
側近「……自我を持た無い侭、勇者の到着を待たない侭に……目を覚ましてしまったら」
后「…… ……」
側近「腐った世界の腐った不条理を断ち切る、唯一の亀裂」
后「そう、前代未聞の特異点……『本当に』間に合わなかった時の、為に」
側近「……ああ。会いたい。変えたい……断ち切りたいを、一緒くたには出来ん……」
側近「『魔王を押さえない』選択肢は……選べない」
側近「癒し手の存在で……歪んだ運命の輪……か」
側近「まだ、大丈夫だ……『希望が見えた』」
后「『会えるかもしれない?』」
側近「『……俺には、複雑な事はわからないが』」
后「癒し手……いいえ。『完全に失われて居ないのなら』……ギリギリ……まで……『待つわ』!」
側近「癒し手……無事で、居てくれ……!」
側近「…… ……」
后「…… ……」
側近「……『手が震えている。大丈夫なのか』」
后「『貴方こそ』喋っていて大丈夫なの、側近……『人の事は言えないわよ』」
側近「体力には自信がある『つもりだった……だが……!』」
后「……そうね。体力の問題じゃ無い……私だって……否!」
后「嬉しいのよ。嬉しくて……震えが、止まらないのよ……でもッ」
后「信じがたい話だわ……『癒し手がまだ、失われていないなんて!』」
側近「……想像『もしなかった……できなかった……ッ』」
后「そう、よね……」
側近「……青年は……『喜んだんだろうか』」
后「どうかしらね……でも『私たちは喜ばなくてはいけない』」
側近「『…… ……』」
后「否定しなくては……いえ、否定して行くんだって、決めて……」
后「青年だって、覚悟はしていた筈よ。あの子は……癒し手が風に攫われて消えてしまうのを」
后「……実際に、見ている。だけど『夢の中』で魔王と、姫様にあって……」
后「その覚悟が、揺らいでいる……筈よ」
側近「……会いたいと思うだろう。願うだろうな。俺ですら……!」
后「……考えた筈よ。間に合ってほしい。変わってほしい……でも」
后「そうじゃ無いのよ。一番に思う事は……」
側近「……『もう一度会いたい』…… ……か」
后「それが……『否定する』事を裏切る『事実』に繋がってもね」
后「だけど……心の中までは読めないから」
側近「…… ……」
后「『どうなるかはわからないわ……変わってしまったの事は、それこそ』」
后「『……動かし様のない、事実なのよ』」
側近「何れ、知るさ……俺たちも、あいつらもな」
后「そうね……」
側近「しかし、お前は大丈夫なのか?」
后「ええ……魔王の傍に居るからかしらね」
側近「皮肉だな」
后「こうして、魔王の魔力を借りることで……多分、抑える事にもなっているのよ」
側近「……成る程な」
后「『でも、それが……魔王の、いえ……魔王と癒し手の干渉を』」
后「『妨げる要因になっているかもしれない……のよね』」
側近「……だが、こればかりはどうしようもない。干渉を受け入れ、魔王が」
側近「……自我を持た無い侭、勇者の到着を待たない侭に……目を覚ましてしまったら」
后「…… ……」
側近「腐った世界の腐った不条理を断ち切る、唯一の亀裂」
后「そう、前代未聞の特異点……『本当に』間に合わなかった時の、為に」
側近「……ああ。会いたい。変えたい……断ち切りたいを、一緒くたには出来ん……」
側近「『魔王を押さえない』選択肢は……選べない」
側近「癒し手の存在で……歪んだ運命の輪……か」
側近「まだ、大丈夫だ……『希望が見えた』」
后「『会えるかもしれない?』」
側近「『……俺には、複雑な事はわからないが』」
后「癒し手……いいえ。『完全に失われて居ないのなら』……ギリギリ……まで……『待つわ』!」
側近「癒し手……無事で、居てくれ……!」
45: 2014/06/10(火) 17:17:28.97 ID:T6RCdzRQ0
……
………
…………
少女「……綺麗な、人だったわね」
少年「…… ……」ムッ ……ギュウ
少女「少年、痛いって……あ! 降りてきたわよ」
少年「!」
少年(……さっきの、あの金髪の男は……居ない)ホッ
少女「! 見て、少年……あの人、やっぱり……!」
少年「?」
娼館の女「……金の瞳? ……まさか、勇者様!?」
少年「!? 勇者……様!?」バッ
少年(まさか……ッ)
勇者「……本当に、凄い人なんだけど」
魔導師「そこはにこって笑って、手を振るんですよ」
勇者「…… ……」ニコッ
魔導師「……引きつってますけど」
勇者「無茶言わないでよ……!」
ワアアアアアアアアアアア!
ユウシャサマ……ユウシャサマダ!
ワアアア! キャア!キャア!
勇者「……うえぇええ、勘弁してよ」
魔導師「慣れてください、って前にも言ったでしょう」
魔導師「『特別』なんです……『勇者』ですから」
勇者「…… ……」
少女「……勇者、様」
少年(よりによって、勇者様の船だって……!? 糞、これじゃ……)
少年(いや……待て。違う……思った以上に、ラッキーなのかもしれない)
少年(相手は……『世界を救う勇者様』だ)
少年(……俺たちの事も……見捨てる筈は無い……!)
少女「見て、少年……あんなに、綺麗な瞳をしてる」
少年「え? ……あ、ああ……うん」
娼館の女「……はあ、あんな小さな子が、勇者様…… ……」
………
…………
少女「……綺麗な、人だったわね」
少年「…… ……」ムッ ……ギュウ
少女「少年、痛いって……あ! 降りてきたわよ」
少年「!」
少年(……さっきの、あの金髪の男は……居ない)ホッ
少女「! 見て、少年……あの人、やっぱり……!」
少年「?」
娼館の女「……金の瞳? ……まさか、勇者様!?」
少年「!? 勇者……様!?」バッ
少年(まさか……ッ)
勇者「……本当に、凄い人なんだけど」
魔導師「そこはにこって笑って、手を振るんですよ」
勇者「…… ……」ニコッ
魔導師「……引きつってますけど」
勇者「無茶言わないでよ……!」
ワアアアアアアアアアアア!
ユウシャサマ……ユウシャサマダ!
ワアアア! キャア!キャア!
勇者「……うえぇええ、勘弁してよ」
魔導師「慣れてください、って前にも言ったでしょう」
魔導師「『特別』なんです……『勇者』ですから」
勇者「…… ……」
少女「……勇者、様」
少年(よりによって、勇者様の船だって……!? 糞、これじゃ……)
少年(いや……待て。違う……思った以上に、ラッキーなのかもしれない)
少年(相手は……『世界を救う勇者様』だ)
少年(……俺たちの事も……見捨てる筈は無い……!)
少女「見て、少年……あんなに、綺麗な瞳をしてる」
少年「え? ……あ、ああ……うん」
娼館の女「……はあ、あんな小さな子が、勇者様…… ……」
46: 2014/06/10(火) 17:25:18.59 ID:T6RCdzRQ0
娼館の女「しかも……女の子、ねぇ……」ハァ
少年「お姉さん、あの隣の男は?」
娼館の女「え? ……なんだってアタシに聞くの」
少年「え、だって……さっきの、金髪の……」
娼館の女「……ああ、ありゃ見間違いだってば。それに……アンタ、まさか」
娼館の女「勇者様のお供が、アタシらを買いに来ると思うかい?」
少女「…… ……」
娼館の女「そんな顔しないの、少女……職業に貴賎はどうとか、そんな話じゃ無くて」
娼館の女「女の子のお供、が……娼館に行ってきます、とは言わないだろうって事さ」
少女「……うん」
少年「…… ……」
娼館の女「あーぁ、残念だけど今回ばっかりは期待は出来ないね」
娼館の女「見栄ばっかりの客共も、まさか勇者様滞在中に、ほいほいと」
娼館の女「娼館には足は運ばないだろうし……しばらく閑古鳥かもね」フワァ
娼館の女「あァ、帰って寝よう……あんた達も程ほどにして戻りなさいよ」
スタスタ
少女「少年、私たちも…… ……少年?」
少年「あ ……ッ う、うん……そうだね」
少女「……? どうしたの」
少年「何でも無いよ……もう少し、だけ」
少女「? ……あ、勇者様、こっちに……」
少女(……少年、じっと勇者様を見てる…… ……どうしたのかしら)
スタスタ
魔導師「あの、すみません」
少女「は、はい!」
少年「! ……な、なんだよ!」
少女「少年! ……すみません」ペコ
魔導師「ああ、いえいえ……あの。船の補給をしたいんですが」
魔導師「どなたに聞けばよろしいか……わかります?」
少年「お姉さん、あの隣の男は?」
娼館の女「え? ……なんだってアタシに聞くの」
少年「え、だって……さっきの、金髪の……」
娼館の女「……ああ、ありゃ見間違いだってば。それに……アンタ、まさか」
娼館の女「勇者様のお供が、アタシらを買いに来ると思うかい?」
少女「…… ……」
娼館の女「そんな顔しないの、少女……職業に貴賎はどうとか、そんな話じゃ無くて」
娼館の女「女の子のお供、が……娼館に行ってきます、とは言わないだろうって事さ」
少女「……うん」
少年「…… ……」
娼館の女「あーぁ、残念だけど今回ばっかりは期待は出来ないね」
娼館の女「見栄ばっかりの客共も、まさか勇者様滞在中に、ほいほいと」
娼館の女「娼館には足は運ばないだろうし……しばらく閑古鳥かもね」フワァ
娼館の女「あァ、帰って寝よう……あんた達も程ほどにして戻りなさいよ」
スタスタ
少女「少年、私たちも…… ……少年?」
少年「あ ……ッ う、うん……そうだね」
少女「……? どうしたの」
少年「何でも無いよ……もう少し、だけ」
少女「? ……あ、勇者様、こっちに……」
少女(……少年、じっと勇者様を見てる…… ……どうしたのかしら)
スタスタ
魔導師「あの、すみません」
少女「は、はい!」
少年「! ……な、なんだよ!」
少女「少年! ……すみません」ペコ
魔導師「ああ、いえいえ……あの。船の補給をしたいんですが」
魔導師「どなたに聞けばよろしいか……わかります?」
47: 2014/06/10(火) 17:52:10.52 ID:T6RCdzRQ0
少年「ここは港なんだから、それらしい男に声かけたら教えてもらえるよ」
魔導師「そうですか……ありがとうございます」
少女「少年……?」
勇者「……同じ顔してるね。双子?」
少女「あ……はい」
勇者「瞳の色まで一緒なんだね……ええと、茶色って事は……」
魔導師「雷の加護を受ける事が多い…… ……です、ね …… ……!?」
魔導師(雷の加護…… ……双子?)
魔導師「…… ……」ジィ
少年「な、何だよ」
勇者「雷かぁ……ん、魔導師、どうしたの?」
魔導師「い、いいえ……」
魔導師(……勇者様の前で……名前を出すわけには……)
少女「お兄さん、魔導師さん、って言うのね」
魔導師「え? ……ああ、はい」
少女「で……勇者様は……」
勇者「私? ……私は勇者。貴女達は?」
少女「私は少女……こっちは、少年です」
魔導師「!」
魔導師(……やっぱり……!)
少年「補給……の為に寄った、のか」
勇者「え? ああ、うん……済んだらすぐに出るんだっけ?」
魔導師「え……ああ、いえ……勇者様が望まれるなら、一通り街を回りますか?」
勇者「んん……青年達がどういうか……」
魔導師「別に反対はしないと思いますけど」
勇者「まあ、どっちにしても一回戻らないと、だよね」
少年「……案内、してやろうか?」
少女「少年?」
少年「お姉さんも言ってただろ……この分じゃ暇だ、って」
魔導師(接触……を、拒むべきか否か……しかし……)
勇者「お姉さんがいるの?」
少女「あ、いえ……その」
魔導師「……どちらにせよ、貴女達も許可を取らなければいけないでしょう?」
少年「え?」
魔導師「その『お姉さん』のですよ」
少年「あ……うん、それは、まあ」
少女「少年……本気なの?」
魔導師「僕たちも、船に仲間が居ますから。貴女達に案内をお願いするにしても」
魔導師「連絡しておかなければなりません」
勇者「そうだね。もし君たちの保護者の許可がおりたら、お願いしようかな」
魔導師「…… ……」
勇者「駄目?」
魔導師「……いえ。勇者様がそう言うのであれば、僕は構いません」
魔導師(まさか……娼館に連れて行かれる訳では無いだろう)
魔導師(……多分この子達の言うお姉さん、は……あそこで働く人達)
魔導師(『少女』さん、の子であるのなら、確実に……)
魔導師「そうですか……ありがとうございます」
少女「少年……?」
勇者「……同じ顔してるね。双子?」
少女「あ……はい」
勇者「瞳の色まで一緒なんだね……ええと、茶色って事は……」
魔導師「雷の加護を受ける事が多い…… ……です、ね …… ……!?」
魔導師(雷の加護…… ……双子?)
魔導師「…… ……」ジィ
少年「な、何だよ」
勇者「雷かぁ……ん、魔導師、どうしたの?」
魔導師「い、いいえ……」
魔導師(……勇者様の前で……名前を出すわけには……)
少女「お兄さん、魔導師さん、って言うのね」
魔導師「え? ……ああ、はい」
少女「で……勇者様は……」
勇者「私? ……私は勇者。貴女達は?」
少女「私は少女……こっちは、少年です」
魔導師「!」
魔導師(……やっぱり……!)
少年「補給……の為に寄った、のか」
勇者「え? ああ、うん……済んだらすぐに出るんだっけ?」
魔導師「え……ああ、いえ……勇者様が望まれるなら、一通り街を回りますか?」
勇者「んん……青年達がどういうか……」
魔導師「別に反対はしないと思いますけど」
勇者「まあ、どっちにしても一回戻らないと、だよね」
少年「……案内、してやろうか?」
少女「少年?」
少年「お姉さんも言ってただろ……この分じゃ暇だ、って」
魔導師(接触……を、拒むべきか否か……しかし……)
勇者「お姉さんがいるの?」
少女「あ、いえ……その」
魔導師「……どちらにせよ、貴女達も許可を取らなければいけないでしょう?」
少年「え?」
魔導師「その『お姉さん』のですよ」
少年「あ……うん、それは、まあ」
少女「少年……本気なの?」
魔導師「僕たちも、船に仲間が居ますから。貴女達に案内をお願いするにしても」
魔導師「連絡しておかなければなりません」
勇者「そうだね。もし君たちの保護者の許可がおりたら、お願いしようかな」
魔導師「…… ……」
勇者「駄目?」
魔導師「……いえ。勇者様がそう言うのであれば、僕は構いません」
魔導師(まさか……娼館に連れて行かれる訳では無いだろう)
魔導師(……多分この子達の言うお姉さん、は……あそこで働く人達)
魔導師(『少女』さん、の子であるのなら、確実に……)
48: 2014/06/10(火) 18:00:46.68 ID:T6RCdzRQ0
少女「勇者、様……の、仲間って」
少女「さっきの……金髪の男の人のこと?」
勇者「え? ああ。そうだよ……彼は……」
少年「…… ……」
少年(……少女……そんなに、あの金髪の男が気になるのか?)
魔導師「勇者様。先に用事を済ませてしまいましょう」
魔導師「案内をお願いするにしても、それほどゆっくりする訳じゃ無いんですから」
勇者「あ……そうだね」
少年「どれぐらいかかるんだ?」
魔導師「そ……うですね。補給をお願いして、伝えて……戻るのに」
魔導師「小一時間もあれば」
少女「わかったわ……行こう、少年」
少年「あ、ああ」
少女「一時間後に、ここで良いですか?」
魔導師「はい……構いません。駄目だと言われた時は、無理はしないでくださいね」
魔導師「……僕たちも、そうしますから」
少年「わかった」
魔導師「では、行きましょう勇者様」
勇者「あ、うん……じゃあ、後でね!」
スタスタ
魔導師「……嬉しそう、ですよね?」
勇者「え? ……だって、初めてでしょ、港街」
魔導師「小さい頃に来てますよ」
勇者「そうだっけ?」
魔導師「……まあ、覚えて無くても無理は無いですが」
少女「さっきの……金髪の男の人のこと?」
勇者「え? ああ。そうだよ……彼は……」
少年「…… ……」
少年(……少女……そんなに、あの金髪の男が気になるのか?)
魔導師「勇者様。先に用事を済ませてしまいましょう」
魔導師「案内をお願いするにしても、それほどゆっくりする訳じゃ無いんですから」
勇者「あ……そうだね」
少年「どれぐらいかかるんだ?」
魔導師「そ……うですね。補給をお願いして、伝えて……戻るのに」
魔導師「小一時間もあれば」
少女「わかったわ……行こう、少年」
少年「あ、ああ」
少女「一時間後に、ここで良いですか?」
魔導師「はい……構いません。駄目だと言われた時は、無理はしないでくださいね」
魔導師「……僕たちも、そうしますから」
少年「わかった」
魔導師「では、行きましょう勇者様」
勇者「あ、うん……じゃあ、後でね!」
スタスタ
魔導師「……嬉しそう、ですよね?」
勇者「え? ……だって、初めてでしょ、港街」
魔導師「小さい頃に来てますよ」
勇者「そうだっけ?」
魔導師「……まあ、覚えて無くても無理は無いですが」
49: 2014/06/10(火) 18:11:52.40 ID:T6RCdzRQ0
魔導師「船を下りたとき……『お帰りなさい、勇者様』って」
魔導師「誰かの声、聞こえませんでした?」
勇者「あ……そういえば。でも、さ」
魔導師「はい?」
勇者「……始まりの国が焼けてしまったと時、私は行方不明……みたいに」
勇者「なってたんでしょ? だから…… ……かと思って」
魔導師「そうだったら、あんな簡単に着岸許可降りませんよ」
魔導師「目印の為に、甲板にいてもらったんですから」
勇者「……あ、そうか。私の瞳の色を見ればわかる……か」
魔導師「そういうことです」
勇者「……なるほどね」
魔導師「あ、あの人で良いかな……すみませーん」
勇者(双子、かあ……同じ顔してたな、あの子達)
勇者(凄いなぁ……性別違うのに、あれだけ似るんだ……あ、でも)
勇者(そんな事言っちゃえば、私も……父さんも、おじいちゃんも、か)
勇者(…… ……よく考えれば、剣士も、だ)クス
勇者(仲よさそうだったな……少女と、少年…… ……ん?)
勇者(少女、って…… ……何処かで聞いた事ある名前……?)
勇者(まあ……良いか。でも…… ……キョウダイ、って良いな)
勇者(魔導師も、青年も剣士も、お兄さんみたいだけど……でも)
勇者(魔導師以外は、見た目、変わらないからなぁ……)
魔導師「勇者様!」
勇者「ん、はいはい?」
魔導師「補給はしてくださるそうですが、夕刻以降になりそうですね」
魔導師「出航出来るのは」
勇者「まあ、時間できて丁度良いじゃない。買い物もしたいし」
魔導師「……その分、あの二人は船に缶詰になりますけどね」
勇者「青年も降りてこないのかな」
魔導師「…… ……こないでしょうね。まあ、それに、ほら」
魔導師「勇者様が本当に寝かさないから、昨夜」ハァ
勇者「……気になっちゃったんだもん」
魔導師「とりあえず、伝えに行きましょう」
勇者「夕刻かぁ……言うほど時間無いよね」
魔導師「まあ、実際の出発は朝になるでしょうね」
勇者「……船で寝るのは慣れたけど。たまには暖かい布団で寝たいよね」ハァ
魔導師「わがまま言っちゃいけません……降りれるだけ、あの二人よりは」
魔導師「恵まれてるんですからね」
勇者「はぁい……」
……
………
…………
魔導師「誰かの声、聞こえませんでした?」
勇者「あ……そういえば。でも、さ」
魔導師「はい?」
勇者「……始まりの国が焼けてしまったと時、私は行方不明……みたいに」
勇者「なってたんでしょ? だから…… ……かと思って」
魔導師「そうだったら、あんな簡単に着岸許可降りませんよ」
魔導師「目印の為に、甲板にいてもらったんですから」
勇者「……あ、そうか。私の瞳の色を見ればわかる……か」
魔導師「そういうことです」
勇者「……なるほどね」
魔導師「あ、あの人で良いかな……すみませーん」
勇者(双子、かあ……同じ顔してたな、あの子達)
勇者(凄いなぁ……性別違うのに、あれだけ似るんだ……あ、でも)
勇者(そんな事言っちゃえば、私も……父さんも、おじいちゃんも、か)
勇者(…… ……よく考えれば、剣士も、だ)クス
勇者(仲よさそうだったな……少女と、少年…… ……ん?)
勇者(少女、って…… ……何処かで聞いた事ある名前……?)
勇者(まあ……良いか。でも…… ……キョウダイ、って良いな)
勇者(魔導師も、青年も剣士も、お兄さんみたいだけど……でも)
勇者(魔導師以外は、見た目、変わらないからなぁ……)
魔導師「勇者様!」
勇者「ん、はいはい?」
魔導師「補給はしてくださるそうですが、夕刻以降になりそうですね」
魔導師「出航出来るのは」
勇者「まあ、時間できて丁度良いじゃない。買い物もしたいし」
魔導師「……その分、あの二人は船に缶詰になりますけどね」
勇者「青年も降りてこないのかな」
魔導師「…… ……こないでしょうね。まあ、それに、ほら」
魔導師「勇者様が本当に寝かさないから、昨夜」ハァ
勇者「……気になっちゃったんだもん」
魔導師「とりあえず、伝えに行きましょう」
勇者「夕刻かぁ……言うほど時間無いよね」
魔導師「まあ、実際の出発は朝になるでしょうね」
勇者「……船で寝るのは慣れたけど。たまには暖かい布団で寝たいよね」ハァ
魔導師「わがまま言っちゃいけません……降りれるだけ、あの二人よりは」
魔導師「恵まれてるんですからね」
勇者「はぁい……」
……
………
…………
50: 2014/06/10(火) 18:24:28.05 ID:T6RCdzRQ0
館長「まあ……別に構わないけど」
少女「本当に!?」
老婆「……良いのかい?」
少年「…… ……」
館長「どうせあの船が出て行くまで、暇には違い無いよ」ハァ
館長「……男共のくだらないプライドが、世界を救う勇者様の登場にゃ勝てるとは思わないよ」
館長「事実、キャンセルの知らせがすでに数件来てんだ」
老婆「まあ、ねぇ……だけど」
館長「……いいさ。言っておいで。ただし、門限は守る事」
少年「わかってるよ」
少女「ありがとう、館長さん! ……行こう、少年!」
少年「ちょ……ッ 少女、引っ張らないでよ!?」
スタスタ、パタン!
老婆「……良いのかい」
館長「かまやしないさ……それに、考えてみな」
館長「あの二人は、一日休みをやったって、二人で部屋にこもって出て行かないんだ」
老婆「……少女が出たがらないからだろ」
館長「目立ちたくないんだろう、ね……良い機会だよ」
館長「勇者様ご一行がどう思ってるか、は知らないが」
館長「この街に住むやつらは、あの双子がここの小姓だって知ってる人間がほとんどさ」
館長「……あの子達、本当に『魔法使い』にそっくりだからね」
老婆「? ……それが、何か?」
館長「『勇者』って目立つ存在が側にいるんだ……霞むわけで無く」
館長「自分たちにも、視線が集まる事をわかっちゃ居ない」
老婆「ああ……アタシが心配してるのはそれじゃ無くてね」ハァ
館長「何だい?」
老婆「少年だよ……いや、乗り気なのは少女の方に見えたけど」
老婆「……でも、少年は……少女を連れて逃げだそうって企んでんじゃないかってね」
館長「ああ、何だ……そんな事かい。だったら余計に心配いらないさ」
老婆「え?」
館長「確かに『世界を救う勇者様』の船だ。でもね。だからこそ……」
館長「……勇者が必要な時代に、訳ありだろうたかだかガキ二人を」
館長「保護なんてすると思うかい? ……そりゃ、この後どこに向かうかなんて知らないけど」
館長「関わりあってる暇なんて、無いだろうよ?」
老婆「……ああ、なるほど」
館長「本気で、ここから逃げ出したいって洗いざらいぶちまけるなら尚更さ」
館長「……自立なんて出来ないガキを、どこの街で下ろすってんだい?」
老婆「『勇者』である以上……中途半端は出来ない、ね」
館長「そういうこと……少年の思惑通りには行かないさ」
少女「本当に!?」
老婆「……良いのかい?」
少年「…… ……」
館長「どうせあの船が出て行くまで、暇には違い無いよ」ハァ
館長「……男共のくだらないプライドが、世界を救う勇者様の登場にゃ勝てるとは思わないよ」
館長「事実、キャンセルの知らせがすでに数件来てんだ」
老婆「まあ、ねぇ……だけど」
館長「……いいさ。言っておいで。ただし、門限は守る事」
少年「わかってるよ」
少女「ありがとう、館長さん! ……行こう、少年!」
少年「ちょ……ッ 少女、引っ張らないでよ!?」
スタスタ、パタン!
老婆「……良いのかい」
館長「かまやしないさ……それに、考えてみな」
館長「あの二人は、一日休みをやったって、二人で部屋にこもって出て行かないんだ」
老婆「……少女が出たがらないからだろ」
館長「目立ちたくないんだろう、ね……良い機会だよ」
館長「勇者様ご一行がどう思ってるか、は知らないが」
館長「この街に住むやつらは、あの双子がここの小姓だって知ってる人間がほとんどさ」
館長「……あの子達、本当に『魔法使い』にそっくりだからね」
老婆「? ……それが、何か?」
館長「『勇者』って目立つ存在が側にいるんだ……霞むわけで無く」
館長「自分たちにも、視線が集まる事をわかっちゃ居ない」
老婆「ああ……アタシが心配してるのはそれじゃ無くてね」ハァ
館長「何だい?」
老婆「少年だよ……いや、乗り気なのは少女の方に見えたけど」
老婆「……でも、少年は……少女を連れて逃げだそうって企んでんじゃないかってね」
館長「ああ、何だ……そんな事かい。だったら余計に心配いらないさ」
老婆「え?」
館長「確かに『世界を救う勇者様』の船だ。でもね。だからこそ……」
館長「……勇者が必要な時代に、訳ありだろうたかだかガキ二人を」
館長「保護なんてすると思うかい? ……そりゃ、この後どこに向かうかなんて知らないけど」
館長「関わりあってる暇なんて、無いだろうよ?」
老婆「……ああ、なるほど」
館長「本気で、ここから逃げ出したいって洗いざらいぶちまけるなら尚更さ」
館長「……自立なんて出来ないガキを、どこの街で下ろすってんだい?」
老婆「『勇者』である以上……中途半端は出来ない、ね」
館長「そういうこと……少年の思惑通りには行かないさ」
57: 2014/06/11(水) 10:46:10.85 ID:MVM9/cl00
おはよう!
今日はお昼ご飯食べてこれたら!
今日はお昼ご飯食べてこれたら!
59: 2014/06/11(水) 15:14:10.61 ID:MVM9/cl00
館長「まあ……脱走したところで、咎める権利も無いんだけどね、アタシらにゃ」
老婆「ん? ……まあ、ね」
館長「借金で縛り付けてる訳でも無い……部屋を貸してやっているだけだ」
館長「あいつらを食わしてやってるのは『魔法使い』への敬意もある」
館長「……あの子はよく働いてくれたからね」
館長「可愛い娘……『商品』への感謝の意でもある、と……言ったところでね」
館長「あの子達が、理解できるとも思えないよ」
老婆「……どうしたんだい。随分殊勝じゃないか」
館長「悪者になるつもりは無いよ。どう思われてるかは知らないけど」
館長「嘘じゃないだろう? ……気持ちは、ね」
老婆「……まあ、ね」
館長「そりゃ、少女や、少年が……大きくなってこの店で稼いで」
館長「金を納めてくれりゃ、言う事は無い」
館長「今ここで小姓として働かせて、給料もやってる。先行投資と言われりゃ」
館長「否定もしないよ」
老婆「……だが、少年はいつかやらかすよ。そんときゃ」
老婆「少女も同時に失う」
館長「……今回の事で、学んでくれりゃ良いけどね。何、簡単な話だろう?」
老婆「ん? ……まあ、ね」
館長「借金で縛り付けてる訳でも無い……部屋を貸してやっているだけだ」
館長「あいつらを食わしてやってるのは『魔法使い』への敬意もある」
館長「……あの子はよく働いてくれたからね」
館長「可愛い娘……『商品』への感謝の意でもある、と……言ったところでね」
館長「あの子達が、理解できるとも思えないよ」
老婆「……どうしたんだい。随分殊勝じゃないか」
館長「悪者になるつもりは無いよ。どう思われてるかは知らないけど」
館長「嘘じゃないだろう? ……気持ちは、ね」
老婆「……まあ、ね」
館長「そりゃ、少女や、少年が……大きくなってこの店で稼いで」
館長「金を納めてくれりゃ、言う事は無い」
館長「今ここで小姓として働かせて、給料もやってる。先行投資と言われりゃ」
館長「否定もしないよ」
老婆「……だが、少年はいつかやらかすよ。そんときゃ」
老婆「少女も同時に失う」
館長「……今回の事で、学んでくれりゃ良いけどね。何、簡単な話だろう?」
60: 2014/06/11(水) 15:32:54.05 ID:MVM9/cl00
館長「『お世話になりました』って一言いって、頭下げて出てきゃいいのさ」
老婆「まあ……そりゃ」
館長「それすら考えつかない糞ガキの脳みそじゃ、くだらない少年の」
館長「『企み』も……『大人』にゃ通用しない」
老婆「余計意固地にならなきゃ良いがね」ハァ
館長「……そんな考えじゃ、どこに行ったって通用しやしないよ」
館長「ここから『外』に出て、生きていけるはずも無い」
館長「……苦労するなら『外』じゃなく、この腕の中にいる間にすりゃあいんだよ」
館長「そうすりゃ、安心して放り出してやれるってのに、全く……」ハァ
……
………
…………
青年「港街の案内、ねぇ」
勇者「……駄目?」
剣士「勇者がそうしたいと言うのなら反対する理由も無い……だろう?」
青年「まあ、そうだけど……」
勇者「補給が終了するの、夕刻過ぎなんだよね?」
魔導師「え? ……ええ、そうです」
青年「…… ……?」
勇者「夜は出航出来ないだろうし、出来れば、さ……」
勇者「……一泊、してきちゃ駄目かなぁ?」
青年「何、そんなに魔導師と一夜を過ごしたいの」
魔導師「…… ……」
勇者「せ、青年!!」
剣士「…… ……」ハァ
青年(……? 何ぼうっとしてるんだ、魔導師の奴)
青年(普段なら怒号が飛んでくるってのに)
勇者「どうして青年は、いっつもそういう事ばっかり言うわけ!?」
勇者「ねえ、魔導師も何か…… ……魔導師?」
魔導師「あ、はい!?」
勇者「……どうしたの。眉間に皺寄ってる。青年みたいだよ」
青年「……あのね、勇者様?」
魔導師「す、すみません、ちょっと考え事を……」
剣士「……次は書の街に行くんだろう?」
勇者「あ……うん、そのつもりだけど」
剣士「……俺は構わん。のんびりする時間も、残り少ないだろう」
剣士「ただし明日の朝一で出る。それまでには必ず戻れ」
勇者「あ……ありがとう、剣士!」
青年「やれやれ……仕方ないね。魔導師、勇者様を頼んだよ」
青年「まだ子供なんだから、手を出すなら考えてからにしろよ」
勇者「せーいーねー……ッ」
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「はい」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
勇者「……魔導師?」
魔導師「…… ……あ、はい!?」
老婆「まあ……そりゃ」
館長「それすら考えつかない糞ガキの脳みそじゃ、くだらない少年の」
館長「『企み』も……『大人』にゃ通用しない」
老婆「余計意固地にならなきゃ良いがね」ハァ
館長「……そんな考えじゃ、どこに行ったって通用しやしないよ」
館長「ここから『外』に出て、生きていけるはずも無い」
館長「……苦労するなら『外』じゃなく、この腕の中にいる間にすりゃあいんだよ」
館長「そうすりゃ、安心して放り出してやれるってのに、全く……」ハァ
……
………
…………
青年「港街の案内、ねぇ」
勇者「……駄目?」
剣士「勇者がそうしたいと言うのなら反対する理由も無い……だろう?」
青年「まあ、そうだけど……」
勇者「補給が終了するの、夕刻過ぎなんだよね?」
魔導師「え? ……ええ、そうです」
青年「…… ……?」
勇者「夜は出航出来ないだろうし、出来れば、さ……」
勇者「……一泊、してきちゃ駄目かなぁ?」
青年「何、そんなに魔導師と一夜を過ごしたいの」
魔導師「…… ……」
勇者「せ、青年!!」
剣士「…… ……」ハァ
青年(……? 何ぼうっとしてるんだ、魔導師の奴)
青年(普段なら怒号が飛んでくるってのに)
勇者「どうして青年は、いっつもそういう事ばっかり言うわけ!?」
勇者「ねえ、魔導師も何か…… ……魔導師?」
魔導師「あ、はい!?」
勇者「……どうしたの。眉間に皺寄ってる。青年みたいだよ」
青年「……あのね、勇者様?」
魔導師「す、すみません、ちょっと考え事を……」
剣士「……次は書の街に行くんだろう?」
勇者「あ……うん、そのつもりだけど」
剣士「……俺は構わん。のんびりする時間も、残り少ないだろう」
剣士「ただし明日の朝一で出る。それまでには必ず戻れ」
勇者「あ……ありがとう、剣士!」
青年「やれやれ……仕方ないね。魔導師、勇者様を頼んだよ」
青年「まだ子供なんだから、手を出すなら考えてからにしろよ」
勇者「せーいーねー……ッ」
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「はい」
青年「…… ……」
剣士「…… ……」
勇者「……魔導師?」
魔導師「…… ……あ、はい!?」
61: 2014/06/11(水) 15:46:37.97 ID:MVM9/cl00
青年「……ちょっと、こっち来い」ガシ、ズルズル
魔導師「え、ちょ……な、何ですか!?」
ズルズル、スタスタ、パタン
勇者「……ど、どうしちゃったの、魔導師……」
剣士「何かあったのか?」
勇者「え? ……ううん、別に……無いと思う、んだけど……」
剣士「……そうか」
勇者「さっきも言ったとおりだよ。街であった子達が、案内してくれるって」
勇者「言うから、さ」
剣士「それだけ、か?」
勇者「と、思うよ……? 別に、私達の事知ってる……いや、そりゃ」
勇者「私は『勇者』だから……知ってるだろうけど、さ」
勇者「初めて来る街じゃ無いって魔導師は言ってたけど」
勇者「私は……覚えてないからさ」
剣士「……まあ、そうだな」
勇者「でもね、綺麗な顔した双子ちゃんだったよ」
剣士「……双子?」
勇者「何かさ、ほら……剣士も青年も、魔導師も、えっと……お兄ちゃん、みたいだし」
勇者「自分より幼い子、と一緒に居る事って無いから……ちょっと、嬉しくて……」
剣士「…… ……」
勇者「剣士?」
剣士「……名は聞いたのか?」
勇者「え? ああ、うん。少年と少女だって」
剣士「!」
勇者「茶色い瞳って初めて見た。雷の魔法は、剣士の魔法剣で見慣れてるけどさ」
剣士(……あの態度の理由はそれか)ハァ
キィ、パタン
魔導師「……ごめんなさい、お待たせしました」
勇者「あ……うん」
青年「勇者様、何かちょっと魔導師調子悪いみたいだし」
青年「あんまり無理させちゃ駄目だよ」
勇者「え……大丈夫!?」
魔導師「え、ちょ……な、何ですか!?」
ズルズル、スタスタ、パタン
勇者「……ど、どうしちゃったの、魔導師……」
剣士「何かあったのか?」
勇者「え? ……ううん、別に……無いと思う、んだけど……」
剣士「……そうか」
勇者「さっきも言ったとおりだよ。街であった子達が、案内してくれるって」
勇者「言うから、さ」
剣士「それだけ、か?」
勇者「と、思うよ……? 別に、私達の事知ってる……いや、そりゃ」
勇者「私は『勇者』だから……知ってるだろうけど、さ」
勇者「初めて来る街じゃ無いって魔導師は言ってたけど」
勇者「私は……覚えてないからさ」
剣士「……まあ、そうだな」
勇者「でもね、綺麗な顔した双子ちゃんだったよ」
剣士「……双子?」
勇者「何かさ、ほら……剣士も青年も、魔導師も、えっと……お兄ちゃん、みたいだし」
勇者「自分より幼い子、と一緒に居る事って無いから……ちょっと、嬉しくて……」
剣士「…… ……」
勇者「剣士?」
剣士「……名は聞いたのか?」
勇者「え? ああ、うん。少年と少女だって」
剣士「!」
勇者「茶色い瞳って初めて見た。雷の魔法は、剣士の魔法剣で見慣れてるけどさ」
剣士(……あの態度の理由はそれか)ハァ
キィ、パタン
魔導師「……ごめんなさい、お待たせしました」
勇者「あ……うん」
青年「勇者様、何かちょっと魔導師調子悪いみたいだし」
青年「あんまり無理させちゃ駄目だよ」
勇者「え……大丈夫!?」
62: 2014/06/11(水) 16:01:39.31 ID:MVM9/cl00
魔導師「平気です……すみませんでした」
青年「勇者様」
勇者「ん?」
青年「魔導師にも言ったけど……いくつか、約束してほしい事がある」
勇者「え、うん……な、何?」
青年「僕と剣士は船を下りれないから、魔導師に任せる事になるけど」
青年「宿屋では一つの部屋で寝る事」
勇者「え!?」
青年「変な意味じゃ無くて……君を守るためだ」
勇者「……う、うん」
青年「同じベッドにするかどうかは任せるけどね」
勇者「ちょ……ッ」カァ
青年「それから……無闇に頼み事は聞かない事」
勇者「……ん?」
青年「確かに僕たちは『世界を救うために魔王を倒す旅』の途中だ」
青年「だけど、時間があるとは言えない。だから」
青年「……要するに、妙な事に巻き込まれないでくれよ、って事だ」
勇者「だ、大丈夫だよ……」
青年「最後は、僕と剣士の事は口にしない事……船に仲間が居る、ってのは」
青年「良いけど、それ以上の情報開示は厳禁だ……理由はわかるよね?」
勇者「……うん」
魔導師「僕たちはあくまでも、補給の為にこの港街に寄っただけ、何です」
魔導師「それを……わかってくださってれば、大丈夫ですよ」
剣士「……朝には戻れよ」
魔導師「わかっています……すみません、わがまま聞いていただいて」
青年「勇者様だからね……仕方ない」
魔導師「……そろそろ約束の時間ですね。行きましょうか」
勇者「あ、うん! ……ごめんね、ありがとう!」
スタスタ、パタン!
剣士「……嬉しいんだろう。単純に」
青年「ん?」
剣士「さっき言っていた。自分より幼い者に触れる機会など無かったから、とな」
青年「……わからなくも無いが。よりに寄って……」ハァ
剣士「少女と少年…… ……『少女』の子供達か」
青年「…… ……」
剣士「勇者様は何の疑いも持っていない」
青年「そりゃわかってる……覚えてないだろうよ」
剣士「……魔導師にも口止めしたんだろう、お前の事だ」
青年「するまでも無いでしょ……じゃなきゃ、あんなにぼうっとしないって」
青年「あいつもさっさと言えば良い物を」ハァ
剣士「責めるのは間違えてるだろう……俺たちが降りられない以上」
剣士「あいつは常に勇者と行動を共にするんだ」
青年「勇者様」
勇者「ん?」
青年「魔導師にも言ったけど……いくつか、約束してほしい事がある」
勇者「え、うん……な、何?」
青年「僕と剣士は船を下りれないから、魔導師に任せる事になるけど」
青年「宿屋では一つの部屋で寝る事」
勇者「え!?」
青年「変な意味じゃ無くて……君を守るためだ」
勇者「……う、うん」
青年「同じベッドにするかどうかは任せるけどね」
勇者「ちょ……ッ」カァ
青年「それから……無闇に頼み事は聞かない事」
勇者「……ん?」
青年「確かに僕たちは『世界を救うために魔王を倒す旅』の途中だ」
青年「だけど、時間があるとは言えない。だから」
青年「……要するに、妙な事に巻き込まれないでくれよ、って事だ」
勇者「だ、大丈夫だよ……」
青年「最後は、僕と剣士の事は口にしない事……船に仲間が居る、ってのは」
青年「良いけど、それ以上の情報開示は厳禁だ……理由はわかるよね?」
勇者「……うん」
魔導師「僕たちはあくまでも、補給の為にこの港街に寄っただけ、何です」
魔導師「それを……わかってくださってれば、大丈夫ですよ」
剣士「……朝には戻れよ」
魔導師「わかっています……すみません、わがまま聞いていただいて」
青年「勇者様だからね……仕方ない」
魔導師「……そろそろ約束の時間ですね。行きましょうか」
勇者「あ、うん! ……ごめんね、ありがとう!」
スタスタ、パタン!
剣士「……嬉しいんだろう。単純に」
青年「ん?」
剣士「さっき言っていた。自分より幼い者に触れる機会など無かったから、とな」
青年「……わからなくも無いが。よりに寄って……」ハァ
剣士「少女と少年…… ……『少女』の子供達か」
青年「…… ……」
剣士「勇者様は何の疑いも持っていない」
青年「そりゃわかってる……覚えてないだろうよ」
剣士「……魔導師にも口止めしたんだろう、お前の事だ」
青年「するまでも無いでしょ……じゃなきゃ、あんなにぼうっとしないって」
青年「あいつもさっさと言えば良い物を」ハァ
剣士「責めるのは間違えてるだろう……俺たちが降りられない以上」
剣士「あいつは常に勇者と行動を共にするんだ」
63: 2014/06/11(水) 16:19:20.14 ID:MVM9/cl00
青年「……『魔法使い』と言う名前だけはくれぐれも口にするな、とは」
青年「言ったけど……」
剣士「……言われなくとも、だろう。しかし」
剣士「向こう二人はわからんぞ」
青年「彼らが……って、そりゃどんな子になってんだか知らないけど」
青年「それを口にするとすれば余程だろう。だから先手を打ったんだ」
剣士「……『頼み事』な」
青年「僕の杞憂に終われば良いけどね」
剣士「お前も過保護だな」
青年「……無くなってしまった国の事に、何時までも振り回されたく無い」
剣士「お前は……『王』だろう?」
青年「……再建させる気なんか無いよ。曾御祖母様程、人の事まで考えてなんか」
青年「いられないよ。僕は」
剣士「……少し休んでこい、青年。飲みに出るとしても深夜過ぎだろう」
青年「……寂しく無い?」
剣士「ぶん殴られたくなければ早くいけ」ハァ
青年「はいはい……何かあったら呼んでくれよ」
剣士「……ああ」
……
………
…………
少女「あ……勇者様、魔導師……さん」
魔導師「お待たせしました……いかがでしたか?」
少年「ああ、あんた達が良いなら、案内できるよ」
勇者「本当!? 良かった」
少女「……あの、お二人、ですか?」
魔導師「……ええ。船を無人にするわけにはいきませんので」
少女「そう……ですか」フゥ
少年「…… ……」
勇者「えっと、まず……宿に案内してもらえないかな?」
少女「宿……ですか? でも……」
魔導師「ええ。夜に出航は出来ませんから……」
少年「……明日の朝、発つのか」
魔導師「はい。その予定ですよ」
青年「言ったけど……」
剣士「……言われなくとも、だろう。しかし」
剣士「向こう二人はわからんぞ」
青年「彼らが……って、そりゃどんな子になってんだか知らないけど」
青年「それを口にするとすれば余程だろう。だから先手を打ったんだ」
剣士「……『頼み事』な」
青年「僕の杞憂に終われば良いけどね」
剣士「お前も過保護だな」
青年「……無くなってしまった国の事に、何時までも振り回されたく無い」
剣士「お前は……『王』だろう?」
青年「……再建させる気なんか無いよ。曾御祖母様程、人の事まで考えてなんか」
青年「いられないよ。僕は」
剣士「……少し休んでこい、青年。飲みに出るとしても深夜過ぎだろう」
青年「……寂しく無い?」
剣士「ぶん殴られたくなければ早くいけ」ハァ
青年「はいはい……何かあったら呼んでくれよ」
剣士「……ああ」
……
………
…………
少女「あ……勇者様、魔導師……さん」
魔導師「お待たせしました……いかがでしたか?」
少年「ああ、あんた達が良いなら、案内できるよ」
勇者「本当!? 良かった」
少女「……あの、お二人、ですか?」
魔導師「……ええ。船を無人にするわけにはいきませんので」
少女「そう……ですか」フゥ
少年「…… ……」
勇者「えっと、まず……宿に案内してもらえないかな?」
少女「宿……ですか? でも……」
魔導師「ええ。夜に出航は出来ませんから……」
少年「……明日の朝、発つのか」
魔導師「はい。その予定ですよ」
64: 2014/06/11(水) 16:29:22.86 ID:MVM9/cl00
勇者「あ! あっちで何か売ってる!」
タタタ……
魔導師「あ、勇者様!?」
少女「……子供みたい」クス
少女「一緒に行ってきます。あそこのクレープおいしいんです」
タタタ
魔導師「……小さな子に子供みたい、て言われる勇者ってのもどうなんでしょうかね」ハァ
少年「宿も丁度あっちだ……俺たちも行こう」
魔導師「貴方はクレープ、食べないんです?」
少年「……俺は、良いよ」グゥ
少年「…… ……」カァッ
魔導師「僕も甘い物は好きなんですよ。行きましょう」クス
スタスタ
勇者「まろうひ!おいひいお、こえ!」モグモグ
魔導師「……勇者様、お姉さんなんですから」ハァ
少年「少女は何にしたんだ?」
少女「あ……私は……」
魔導師「貴女達も遠慮なさらずにどうぞ。案内のお礼にごちそうしますよ」
魔導師「僕は……チョコとイチゴで」
少年「……俺、ポテトサラダ」
勇者「あ、それもおいひほう」モグ
少女「良いんですか? ……じゃあ、私はブルーべーリーソースの……」
勇者「凄いよねぇ、人一杯」
魔導師「人気なんですね。前に来たときはこんなのあったかな……あ、おいし」モグ
少年「あの角の建物が宿だ」
魔導師「ああ……じゃあ、ちょっと先に予約してきましょうか」
勇者「待ってて良い?」
魔導師「……動かないでくださいよ?」
スタスタ
少年「……なあ、勇者さ」
少女「勇者様!」
勇者「はい?」
少年「!」
タタタ……
魔導師「あ、勇者様!?」
少女「……子供みたい」クス
少女「一緒に行ってきます。あそこのクレープおいしいんです」
タタタ
魔導師「……小さな子に子供みたい、て言われる勇者ってのもどうなんでしょうかね」ハァ
少年「宿も丁度あっちだ……俺たちも行こう」
魔導師「貴方はクレープ、食べないんです?」
少年「……俺は、良いよ」グゥ
少年「…… ……」カァッ
魔導師「僕も甘い物は好きなんですよ。行きましょう」クス
スタスタ
勇者「まろうひ!おいひいお、こえ!」モグモグ
魔導師「……勇者様、お姉さんなんですから」ハァ
少年「少女は何にしたんだ?」
少女「あ……私は……」
魔導師「貴女達も遠慮なさらずにどうぞ。案内のお礼にごちそうしますよ」
魔導師「僕は……チョコとイチゴで」
少年「……俺、ポテトサラダ」
勇者「あ、それもおいひほう」モグ
少女「良いんですか? ……じゃあ、私はブルーべーリーソースの……」
勇者「凄いよねぇ、人一杯」
魔導師「人気なんですね。前に来たときはこんなのあったかな……あ、おいし」モグ
少年「あの角の建物が宿だ」
魔導師「ああ……じゃあ、ちょっと先に予約してきましょうか」
勇者「待ってて良い?」
魔導師「……動かないでくださいよ?」
スタスタ
少年「……なあ、勇者さ」
少女「勇者様!」
勇者「はい?」
少年「!」
65: 2014/06/11(水) 16:50:10.64 ID:MVM9/cl00
少女「……あの、船にいらっしゃった……金髪の、男の方、は」
勇者「?」
少女「お仲間、様なんですよね?」
勇者(青年の事か……そういえばちらっと甲板に出てたな)
勇者「それがどうしたの?」
少女「……いえ。綺麗な人だったな、と思ったので」
少年「…… ……」ムス
勇者「まあ……確かに、綺麗な顔してる、けど」
勇者「……工口いよ?」
少年「は!?」
少女「え……ッ」カァ
勇者「……あ、ごめん。子供に言うことじゃ無かった」
スタスタ
魔導師「お待たせしました」
勇者「部屋、取れた?」
魔導師「ええ……一部屋だけあいてました」
少女「え……どうするんですか」
魔導師「ああ……大丈夫ですよ、ベッドは二つですから」
少年「同じ部屋で寝るのか!?」
勇者「…… ……」ドキ
魔導師「この方は『勇者』様ですから……目を離す訳にはいきません」
魔導師「ですから、問題はありません。ね?」
勇者「う、うん……さ、さあ!次行こう次!」ドキドキ
魔導師「……急に大きな声出さないでください」
少女「あ、えっと……少年、どこから行こう?」
少年「そうだな、市場の方に……」
魔導師「……教会跡、にもう……建物は建ったんでしょうね」
少女「教会?」
魔導師「ええ……あっちの、街の外れの小さな丘の……」
少年「…… ……」ドキ
少女「あ……あそこは、そうです。今は、大きな建物が……」
魔導師「……そうですか」
勇者「魔導師、知ってるの?」
魔導師「僕は来た事ありますからね……いえ、良いんです」
魔導師「市場の方へ案内してもらえますか? 勇者様、無駄遣いは駄目ですからね」
魔導師「……先に言っておきます」
勇者「……わ、わかってますよーだ!」
少年「市場はあっちだよ。行こうか」
少女「私も何か買おうかな……折角だし」
スタスタ
魔導師「お土産にお酒でも買っていきましょうか」
勇者「魔導師も飲むの」
魔導師「……僕はもう、お酒は良いです」
勇者「…… ……」クスクス
勇者「?」
少女「お仲間、様なんですよね?」
勇者(青年の事か……そういえばちらっと甲板に出てたな)
勇者「それがどうしたの?」
少女「……いえ。綺麗な人だったな、と思ったので」
少年「…… ……」ムス
勇者「まあ……確かに、綺麗な顔してる、けど」
勇者「……工口いよ?」
少年「は!?」
少女「え……ッ」カァ
勇者「……あ、ごめん。子供に言うことじゃ無かった」
スタスタ
魔導師「お待たせしました」
勇者「部屋、取れた?」
魔導師「ええ……一部屋だけあいてました」
少女「え……どうするんですか」
魔導師「ああ……大丈夫ですよ、ベッドは二つですから」
少年「同じ部屋で寝るのか!?」
勇者「…… ……」ドキ
魔導師「この方は『勇者』様ですから……目を離す訳にはいきません」
魔導師「ですから、問題はありません。ね?」
勇者「う、うん……さ、さあ!次行こう次!」ドキドキ
魔導師「……急に大きな声出さないでください」
少女「あ、えっと……少年、どこから行こう?」
少年「そうだな、市場の方に……」
魔導師「……教会跡、にもう……建物は建ったんでしょうね」
少女「教会?」
魔導師「ええ……あっちの、街の外れの小さな丘の……」
少年「…… ……」ドキ
少女「あ……あそこは、そうです。今は、大きな建物が……」
魔導師「……そうですか」
勇者「魔導師、知ってるの?」
魔導師「僕は来た事ありますからね……いえ、良いんです」
魔導師「市場の方へ案内してもらえますか? 勇者様、無駄遣いは駄目ですからね」
魔導師「……先に言っておきます」
勇者「……わ、わかってますよーだ!」
少年「市場はあっちだよ。行こうか」
少女「私も何か買おうかな……折角だし」
スタスタ
魔導師「お土産にお酒でも買っていきましょうか」
勇者「魔導師も飲むの」
魔導師「……僕はもう、お酒は良いです」
勇者「…… ……」クスクス
66: 2014/06/11(水) 16:55:14.50 ID:MVM9/cl00
スタスタ
少女「…… ……」
少女(教会、があったんだ……あの、建物のあった場所)
少女(……お母さんは知ってたのかな)チラ
少年「…… ……」
少年(行きたい、って言われなくて良かった。魔導師の方は)
少年(この街の事知ってるみたいだし……)チラ
少女(それにしても……残念。もう一度、会えるかもって思ったけど)
少女(……そんなに甘くないわね。あの……金髪の男の人)
少年(勇者に言うべきか、魔導師に言うべきか……でも)
少年(保護者で、決定権を持ってるのは魔導師の方か)
少女(少年は……嫌そうな顔してた。あの男の人の事、口にすると……)ジィ
少年(少女は……嫌な顔するだろうな。俺の考えてる事、口にすると……)ジィ
少女(まるで、童話に出てくる王子様みたいだった……どうにか)
少年(宿に帰るまでが勝負か……どうにか)
少女(少年に聞かれないように……どうにか、勇者様とどこかで、二人きりに……!)
少年(少女に聞かれないように……どうにか、魔導師とどこかで、二人きりに……!)
少女「…… ……」ニコ
少年「…… ……」ニコ
勇者「あ! 魔導師、ほら! 何か杖みたいなの……」
魔導師「いりませんって……使いませんから」
少女(並んで歩くって手が良いかな。今の私と少年の様に)
少年(並んで歩くって手が良いか……今の俺と少女の様に)
……
………
…………
少女「…… ……」
少女(教会、があったんだ……あの、建物のあった場所)
少女(……お母さんは知ってたのかな)チラ
少年「…… ……」
少年(行きたい、って言われなくて良かった。魔導師の方は)
少年(この街の事知ってるみたいだし……)チラ
少女(それにしても……残念。もう一度、会えるかもって思ったけど)
少女(……そんなに甘くないわね。あの……金髪の男の人)
少年(勇者に言うべきか、魔導師に言うべきか……でも)
少年(保護者で、決定権を持ってるのは魔導師の方か)
少女(少年は……嫌そうな顔してた。あの男の人の事、口にすると……)ジィ
少年(少女は……嫌な顔するだろうな。俺の考えてる事、口にすると……)ジィ
少女(まるで、童話に出てくる王子様みたいだった……どうにか)
少年(宿に帰るまでが勝負か……どうにか)
少女(少年に聞かれないように……どうにか、勇者様とどこかで、二人きりに……!)
少年(少女に聞かれないように……どうにか、魔導師とどこかで、二人きりに……!)
少女「…… ……」ニコ
少年「…… ……」ニコ
勇者「あ! 魔導師、ほら! 何か杖みたいなの……」
魔導師「いりませんって……使いませんから」
少女(並んで歩くって手が良いかな。今の私と少年の様に)
少年(並んで歩くって手が良いか……今の俺と少女の様に)
……
………
…………
67: 2014/06/11(水) 16:56:23.12 ID:MVM9/cl00
訂正
↑の
……
………
…………
は、無しで orz
↑の
……
………
…………
は、無しで orz
68: 2014/06/11(水) 17:32:39.39 ID:MVM9/cl00
少女「……ねえ、勇者様」ピタ、クルッ
少年「……なあ、魔導師」ピタ、クルッ
魔導師「はい?」
勇者「ん?」
少女「あの露天の髪飾り、勇者様に似合いそうですよ」ギュ
少年「この魔導書、俺でも読めるかな?」ギュ
ズルズル、ズルズル
勇者「え、わ……ッ と……あ、本当だ、可愛い」
魔導師「ちょ、ちょっと待ってください……ええと」
少女(道を挟んで反対側。姿が見えれば心配もしないでしょう)
少年(人通りが多い場所だ。小さい声までは聞こえないだろう)
勇者「へぇ、可愛いの一杯あるなぁ」
少女「ね……勇者様の髪の色だったら……これも良いかな」
魔導師「……ふむ。初級魔法の本ですかね。字は読めます……よね?」
少年「馬鹿にすんなよ……魔法の知識はあんまり無いんだけどさ」
少女「これも……ああ、でもこれだったら、金髪とかに似合いそう」
勇者「私こっちの方が好きかな」
少女「……ねえ、勇者様」
少年「魔法自体は使えるんだけど……ここには誰も教えてくれる人なんかいないからさ」
魔導師「そうですね。それほど高価な本でもありませんし……」
少年「……なあ、魔導師サン」
少女「あの金の髪の人……に、会う事は出来ませんか?」
勇者「…… ……は?」
少年「勇者様が寝てからで良い……抜け出してくるから、二人で会えないか?」
魔導師「…… ……は?」
……
………
…………
青年「とりあえず、乾杯!」
剣士「……ああ」
少年「……なあ、魔導師」ピタ、クルッ
魔導師「はい?」
勇者「ん?」
少女「あの露天の髪飾り、勇者様に似合いそうですよ」ギュ
少年「この魔導書、俺でも読めるかな?」ギュ
ズルズル、ズルズル
勇者「え、わ……ッ と……あ、本当だ、可愛い」
魔導師「ちょ、ちょっと待ってください……ええと」
少女(道を挟んで反対側。姿が見えれば心配もしないでしょう)
少年(人通りが多い場所だ。小さい声までは聞こえないだろう)
勇者「へぇ、可愛いの一杯あるなぁ」
少女「ね……勇者様の髪の色だったら……これも良いかな」
魔導師「……ふむ。初級魔法の本ですかね。字は読めます……よね?」
少年「馬鹿にすんなよ……魔法の知識はあんまり無いんだけどさ」
少女「これも……ああ、でもこれだったら、金髪とかに似合いそう」
勇者「私こっちの方が好きかな」
少女「……ねえ、勇者様」
少年「魔法自体は使えるんだけど……ここには誰も教えてくれる人なんかいないからさ」
魔導師「そうですね。それほど高価な本でもありませんし……」
少年「……なあ、魔導師サン」
少女「あの金の髪の人……に、会う事は出来ませんか?」
勇者「…… ……は?」
少年「勇者様が寝てからで良い……抜け出してくるから、二人で会えないか?」
魔導師「…… ……は?」
……
………
…………
青年「とりあえず、乾杯!」
剣士「……ああ」
69: 2014/06/11(水) 17:44:14.50 ID:MVM9/cl00
青年「で……言っていいの?」
剣士「……先に聞きたい事がある」
青年「そう……何?」
剣士「……お前は『本当はどう思ってるんだ?』」
青年「『? ……何をだよ』」
剣士「勇者様の事だ」
青年「…… ……」
剣士「何故……黙る」
青年「僕が……君に話そうと思っていた事に関係があるから……かな」
青年「否……だから、びっくりした、が。黙った事への答え……か」
剣士「……お前、最近執拗に勇者に、魔導師を意識させようとしていただろう」
青年「剣士は見てて何とも思わないのか? 勇者様は……」
剣士「……魔導師に惹かれているだろう事は、わかる。だが」
剣士「アレは、『兄』に対する憧れと大差ない様な気……も、するが」
青年「『も』って事は、少しは認めるって事だろ」
剣士「…… ……」
青年「それに『兄への憧れ』って言うなら、僕にでも剣士にでも……」
剣士「……条件的には当てはまる、が……それだけだろう」
剣士「俺たちは見た目も変わらない……勿論、常に一緒に居るんだ」
剣士「見た目の変化など……あまりわからないのかもしれんが……」
青年「……一番厳しいのも、一番優しいのも……一番、過保護なのも魔導師さ」
青年「『人間同士』……一番身近に向き合える。淡い感情を抱くには」
青年「もってこいの相手だと思うよ」
剣士「……で、お前が話したかった。魔導師にも勇者にも言えない話、てのは」
剣士「そんな、お前の勇者への淡い恋心の相談、とかじゃ無い……だろうな」
青年「……自分から聞いといてそりゃないだろう、お前……」
剣士「お前の下世話な台詞には慣れたが、最近は少し目に余るからだ」
剣士「……勇者と言えど、年頃の娘だぞ」
青年「さっきのは訂正する。君は兄では無く父、みたいだな」ハァ
剣士「……赤ん坊の頃から見ていれば、そんな心境にもなる」
青年「僕だって似たようなモン、だって……自分に父性なんてあるとは思えないけど」
青年「勇者様に対して、そんな風に……淡い恋心、なんて抱きようが無い」
剣士「……だが、その『話せない話』には関係するんだろう」
剣士「……先に聞きたい事がある」
青年「そう……何?」
剣士「……お前は『本当はどう思ってるんだ?』」
青年「『? ……何をだよ』」
剣士「勇者様の事だ」
青年「…… ……」
剣士「何故……黙る」
青年「僕が……君に話そうと思っていた事に関係があるから……かな」
青年「否……だから、びっくりした、が。黙った事への答え……か」
剣士「……お前、最近執拗に勇者に、魔導師を意識させようとしていただろう」
青年「剣士は見てて何とも思わないのか? 勇者様は……」
剣士「……魔導師に惹かれているだろう事は、わかる。だが」
剣士「アレは、『兄』に対する憧れと大差ない様な気……も、するが」
青年「『も』って事は、少しは認めるって事だろ」
剣士「…… ……」
青年「それに『兄への憧れ』って言うなら、僕にでも剣士にでも……」
剣士「……条件的には当てはまる、が……それだけだろう」
剣士「俺たちは見た目も変わらない……勿論、常に一緒に居るんだ」
剣士「見た目の変化など……あまりわからないのかもしれんが……」
青年「……一番厳しいのも、一番優しいのも……一番、過保護なのも魔導師さ」
青年「『人間同士』……一番身近に向き合える。淡い感情を抱くには」
青年「もってこいの相手だと思うよ」
剣士「……で、お前が話したかった。魔導師にも勇者にも言えない話、てのは」
剣士「そんな、お前の勇者への淡い恋心の相談、とかじゃ無い……だろうな」
青年「……自分から聞いといてそりゃないだろう、お前……」
剣士「お前の下世話な台詞には慣れたが、最近は少し目に余るからだ」
剣士「……勇者と言えど、年頃の娘だぞ」
青年「さっきのは訂正する。君は兄では無く父、みたいだな」ハァ
剣士「……赤ん坊の頃から見ていれば、そんな心境にもなる」
青年「僕だって似たようなモン、だって……自分に父性なんてあるとは思えないけど」
青年「勇者様に対して、そんな風に……淡い恋心、なんて抱きようが無い」
剣士「……だが、その『話せない話』には関係するんだろう」
70: 2014/06/11(水) 17:54:23.62 ID:MVM9/cl00
青年「エルフは嘘をつけない……言ったとおりさ」
青年「母がハーフエルフ。父は人間……『否、元人間の魔族で……』僕は、僕」
剣士「『勇者も魔導師も、お前を』疑って『も居ないだろう』」
剣士「知っていて言わないのは嘘を吐く内には入らないだろう『し、気がついているとも思わん』」
青年「……何れ知るさ『、わかってる……何時までも黙っているつもりは無いんだ』」
剣士「何を『聞いたんだ? ……魔王に。姫に』」
青年「『彼ら……否、勇者様は確実に』今聞いたって、混乱するだけだ」
青年「……君は信じない、とは思わない『。だから……先に話そうと思った』」
青年「勇者様と魔導師には言えないな……まだ」
剣士「まだ……?」
青年「ああ、まだ……ね。言ってるだろう。何れ知るんだ」
青年「『腐った世界の腐った不条理が、断ち切れない限り』」
剣士「…… ……」
青年「僕からも質問だ」
剣士「……何だ」
青年「君は、何者だい?」
剣士「『今更なんだ? ……俺は、紫の魔王の欠片だろう』」
青年「…… ……」
剣士「分かっているんじゃ無いのか?」
青年「推測に過ぎない……何時か確かめようとは思ってい『る』」
剣士「『何の話…… ……』」
青年「『姫様は、あの場所で……魔王様の事も『欠片』と呼んでいた』」
剣士「!」
青年「『以前に港街に来た時に話した話を覚えているか?』」
剣士「……? どれ、の事だ」
青年「『だんだんと劣化してるんじゃないか、って話さ』」
青年「君は……『君も、魔王の欠片』だろう?」
剣士「『……何が言いたいんだ』」
青年「母がハーフエルフ。父は人間……『否、元人間の魔族で……』僕は、僕」
剣士「『勇者も魔導師も、お前を』疑って『も居ないだろう』」
剣士「知っていて言わないのは嘘を吐く内には入らないだろう『し、気がついているとも思わん』」
青年「……何れ知るさ『、わかってる……何時までも黙っているつもりは無いんだ』」
剣士「何を『聞いたんだ? ……魔王に。姫に』」
青年「『彼ら……否、勇者様は確実に』今聞いたって、混乱するだけだ」
青年「……君は信じない、とは思わない『。だから……先に話そうと思った』」
青年「勇者様と魔導師には言えないな……まだ」
剣士「まだ……?」
青年「ああ、まだ……ね。言ってるだろう。何れ知るんだ」
青年「『腐った世界の腐った不条理が、断ち切れない限り』」
剣士「…… ……」
青年「僕からも質問だ」
剣士「……何だ」
青年「君は、何者だい?」
剣士「『今更なんだ? ……俺は、紫の魔王の欠片だろう』」
青年「…… ……」
剣士「分かっているんじゃ無いのか?」
青年「推測に過ぎない……何時か確かめようとは思ってい『る』」
剣士「『何の話…… ……』」
青年「『姫様は、あの場所で……魔王様の事も『欠片』と呼んでいた』」
剣士「!」
青年「『以前に港街に来た時に話した話を覚えているか?』」
剣士「……? どれ、の事だ」
青年「『だんだんと劣化してるんじゃないか、って話さ』」
青年「君は……『君も、魔王の欠片』だろう?」
剣士「『……何が言いたいんだ』」
71: 2014/06/11(水) 18:04:38.61 ID:MVM9/cl00
青年「……劣化、の原因だよ」
青年「元は……『紫の魔王』だ。それが、『紫の魔王の側近』に目玉を分け与え」
青年「『残りの紫の魔王』も『器と中身』に別れた……そして『欠片』……君だな」
剣士「…… ……」
青年「紫の魔王が、使用人に残したキーワード……すべてを集めれば」
青年「『劣化した者』は『完全な者』になる」
剣士「……理屈は、理解できる。だが」
剣士「それは、お前の話に……何か関係があるのか?」
青年「……魔王様は、姫様と僕が居た場所とは、また違うところにいたんだと」
青年「話しただろう?」
剣士「ああ……癒し手も居たんだな。金の髪の魔王……も」
青年「ああ……それから、もう一人」
剣士「もう一人……?」
青年「『金髪紫瞳の男』……彼は……ああ、っと。便宜上『向こう側』って言うけど」
青年「……向こう側では、勇者様と……僕、の子供だったらしいんだ」
剣士「! ……い、否、まあ……『終わらなかった』のだとすれば」
剣士「……わからん話では無い。向こう側で俺は…… ……消滅している」
剣士「し……そもそも、生殖能力等……」
青年「……まあ、こんな言い方するのもあれだけど」
青年「勇者様から見れば、僕か魔導師の二択だからね」
剣士「……そ、うか」
青年「ここで終われば、彼は……存在しなかった事になる……否、それ自身は良い」
青年「……と言うか、彼の人権まで話し出したらどうにも収集つかないな」
剣士「…… ……」
青年「……もし、こちら側で同じ轍を踏めば、だ」
剣士「? ……ああ。別に……それは構わないだろう」
剣士「……『終わらない』と言う結末があるだろう事は……あまり考えたくは無いが」
青年「違う! ……『金髪紫瞳の男』は ……絶対に魔王にはならない……なれないんだ」
剣士「……何故だ」
青年「……僕は、何だよ」
剣士「お前は、エルフの…… ……ッ」ハッ
青年「そうだ。エルフは……魔には変じられない」
青年「元は……『紫の魔王』だ。それが、『紫の魔王の側近』に目玉を分け与え」
青年「『残りの紫の魔王』も『器と中身』に別れた……そして『欠片』……君だな」
剣士「…… ……」
青年「紫の魔王が、使用人に残したキーワード……すべてを集めれば」
青年「『劣化した者』は『完全な者』になる」
剣士「……理屈は、理解できる。だが」
剣士「それは、お前の話に……何か関係があるのか?」
青年「……魔王様は、姫様と僕が居た場所とは、また違うところにいたんだと」
青年「話しただろう?」
剣士「ああ……癒し手も居たんだな。金の髪の魔王……も」
青年「ああ……それから、もう一人」
剣士「もう一人……?」
青年「『金髪紫瞳の男』……彼は……ああ、っと。便宜上『向こう側』って言うけど」
青年「……向こう側では、勇者様と……僕、の子供だったらしいんだ」
剣士「! ……い、否、まあ……『終わらなかった』のだとすれば」
剣士「……わからん話では無い。向こう側で俺は…… ……消滅している」
剣士「し……そもそも、生殖能力等……」
青年「……まあ、こんな言い方するのもあれだけど」
青年「勇者様から見れば、僕か魔導師の二択だからね」
剣士「……そ、うか」
青年「ここで終われば、彼は……存在しなかった事になる……否、それ自身は良い」
青年「……と言うか、彼の人権まで話し出したらどうにも収集つかないな」
剣士「…… ……」
青年「……もし、こちら側で同じ轍を踏めば、だ」
剣士「? ……ああ。別に……それは構わないだろう」
剣士「……『終わらない』と言う結末があるだろう事は……あまり考えたくは無いが」
青年「違う! ……『金髪紫瞳の男』は ……絶対に魔王にはならない……なれないんだ」
剣士「……何故だ」
青年「……僕は、何だよ」
剣士「お前は、エルフの…… ……ッ」ハッ
青年「そうだ。エルフは……魔には変じられない」
72: 2014/06/11(水) 18:15:11.09 ID:MVM9/cl00
剣士「……まて。勇者は人間として生まれてくるんだろう。ならば……」
青年「絶対……と言ったが、勿論……わからない、けどな」
青年「だが、彼は魔王にはなっていない」
剣士「……何?」
青年「倒したんだよ……『最強の女魔王』を」
剣士「!」
青年「僕だって詳しく隅々まで話を聞いたわけじゃ無い……だけど」
青年「彼は……最後の最後、光を世界に解放し……魔王を滅ぼした」
青年「……そう、魔王様から聞いた」
剣士「…… ……」
青年「絡繰りなんてわからない。それが、正解なのかどうなのかも。ただ……」
青年「……もし。もし僕たちが終わらなければ。その時は……そのとき、こそ」
青年「僕は……否定しなければならないんだ……!」
剣士「…… ……大筋は、理解した。だが」
剣士「何故……お前が悩む必要がある?」
青年「え……」
剣士「……その『金髪紫瞳の男』の身を案じる気持ち、があるか否かはともかくとして、だ」
剣士「実際……勇者の気持ちが、憧れであれ恋であれ」
剣士「……魔導師に向いているのは、確かだ」
青年「……あ、ああ。わかってる」
剣士「今の侭ぐいぐい押してうまくいくかは知らん。が……」
剣士「……まあ、言い方は悪い、が」ハァ
剣士「勇者が魔導師を子供の父親に『指名』すれば」
青年「…… ……ッ」
剣士「……あいつは、拒む事はしないだろう。事実……『向こう側』とは違う」
剣士「向こう側の魔導師は……16やそこらの子供だっただろうが」
剣士「勇者が16になる頃……には、あいつは20も超えている……とっくに」
青年「…… ……」
剣士「お前が言ったんだろう。終わってしまえば『人間同士』」
剣士「そうで無くとも……『魔族同士』だ」
青年「…… ……」グイッ ゴクゴク…… ゴホッ
剣士「…… ……」
剣士(……本当に恋愛相談だったとか、勘弁してほしい)ハァ
青年「何でため息つくんだよ」
剣士「……酔っ払ったお前を抱えて帰るのはごめんだ、と思っただけだ」
青年「絶対……と言ったが、勿論……わからない、けどな」
青年「だが、彼は魔王にはなっていない」
剣士「……何?」
青年「倒したんだよ……『最強の女魔王』を」
剣士「!」
青年「僕だって詳しく隅々まで話を聞いたわけじゃ無い……だけど」
青年「彼は……最後の最後、光を世界に解放し……魔王を滅ぼした」
青年「……そう、魔王様から聞いた」
剣士「…… ……」
青年「絡繰りなんてわからない。それが、正解なのかどうなのかも。ただ……」
青年「……もし。もし僕たちが終わらなければ。その時は……そのとき、こそ」
青年「僕は……否定しなければならないんだ……!」
剣士「…… ……大筋は、理解した。だが」
剣士「何故……お前が悩む必要がある?」
青年「え……」
剣士「……その『金髪紫瞳の男』の身を案じる気持ち、があるか否かはともかくとして、だ」
剣士「実際……勇者の気持ちが、憧れであれ恋であれ」
剣士「……魔導師に向いているのは、確かだ」
青年「……あ、ああ。わかってる」
剣士「今の侭ぐいぐい押してうまくいくかは知らん。が……」
剣士「……まあ、言い方は悪い、が」ハァ
剣士「勇者が魔導師を子供の父親に『指名』すれば」
青年「…… ……ッ」
剣士「……あいつは、拒む事はしないだろう。事実……『向こう側』とは違う」
剣士「向こう側の魔導師は……16やそこらの子供だっただろうが」
剣士「勇者が16になる頃……には、あいつは20も超えている……とっくに」
青年「…… ……」
剣士「お前が言ったんだろう。終わってしまえば『人間同士』」
剣士「そうで無くとも……『魔族同士』だ」
青年「…… ……」グイッ ゴクゴク…… ゴホッ
剣士「…… ……」
剣士(……本当に恋愛相談だったとか、勘弁してほしい)ハァ
青年「何でため息つくんだよ」
剣士「……酔っ払ったお前を抱えて帰るのはごめんだ、と思っただけだ」
73: 2014/06/11(水) 18:15:43.68 ID:MVM9/cl00
お風呂とご飯!
明日はお出かけします。時間があれば!
明日はお出かけします。時間があれば!
75: 2014/06/11(水) 23:01:40.41 ID:MVM9/cl00
青年「……僕たちは『否定』するんだ。徹底的にね」ヒック……ゴク
剣士「おい、もう……やめておけ」
青年「そう言ったのは君だ、剣士」
剣士「? 何の話……」
青年「『紫の魔王の側近』『使用人』……そして、僕」
青年「魔導師は、素質を持つのはその三人だと行っていたはずだ」
剣士「……劣化がどうの、の話をした時か? ああ……確かに……」
青年「共通点は?」
剣士「?」
青年「だから、お前が言ったんだぞ……『親では無い』」
剣士「あ、ああ……」
青年「だから、僕が、勇者様の、相手…… ……だ、と……」グビ
剣士「……言ったのは覚えてる、と言うか思い出した。だが……」
青年「それを否定すれば……あの『金髪紫瞳の男』が…… ……」
剣士「……青年?」
青年「う、まれ…… ……僕、と……勇…… ……ま、の……子……」スゥ
剣士「…… ……」ハァ
剣士「だから、それをも『否定』するのか?」
青年「…… ……」
剣士(潰れたか……聞こえてないだろうな)
剣士「どっちなんだ、全く」ハァ
剣士(魔導師と……くっついて欲しいのか。それとも……)グイッ
青年(スゥ)
剣士「……お前は、どうしたいんだ、青年?」
剣士(返事等、帰ってこないな……しかし)
剣士(……どこからどこまでを、鵜呑みにして良いやら)ハァ
剣士(否定の否定、は肯定か?それとも未知の何かか?)
剣士(……否。癒し手と魔王の『干渉』も結局は……同じ轍を踏ませているんだ)
剣士(あそこで否定しなければ……青年は居ない。勇者もだ)
剣士(違った形で存在していたかもしれないが……それは、また『別の物語』)
剣士「……尽力を惜しまん、か」ズル……
青年「ん、ん……」
剣士(気持ちはありがたい、んだが)
剣士(……姫が、そうしたように。癒し手が……何処かで『完全に失われる』のを)
剣士(待つ様に…… ……俺は……)
スタスタ、ズルズル……パタン
剣士(……俺の『役目』を、終えるだけだ)
剣士「……糞、重いな……こいつ」
剣士「おい、もう……やめておけ」
青年「そう言ったのは君だ、剣士」
剣士「? 何の話……」
青年「『紫の魔王の側近』『使用人』……そして、僕」
青年「魔導師は、素質を持つのはその三人だと行っていたはずだ」
剣士「……劣化がどうの、の話をした時か? ああ……確かに……」
青年「共通点は?」
剣士「?」
青年「だから、お前が言ったんだぞ……『親では無い』」
剣士「あ、ああ……」
青年「だから、僕が、勇者様の、相手…… ……だ、と……」グビ
剣士「……言ったのは覚えてる、と言うか思い出した。だが……」
青年「それを否定すれば……あの『金髪紫瞳の男』が…… ……」
剣士「……青年?」
青年「う、まれ…… ……僕、と……勇…… ……ま、の……子……」スゥ
剣士「…… ……」ハァ
剣士「だから、それをも『否定』するのか?」
青年「…… ……」
剣士(潰れたか……聞こえてないだろうな)
剣士「どっちなんだ、全く」ハァ
剣士(魔導師と……くっついて欲しいのか。それとも……)グイッ
青年(スゥ)
剣士「……お前は、どうしたいんだ、青年?」
剣士(返事等、帰ってこないな……しかし)
剣士(……どこからどこまでを、鵜呑みにして良いやら)ハァ
剣士(否定の否定、は肯定か?それとも未知の何かか?)
剣士(……否。癒し手と魔王の『干渉』も結局は……同じ轍を踏ませているんだ)
剣士(あそこで否定しなければ……青年は居ない。勇者もだ)
剣士(違った形で存在していたかもしれないが……それは、また『別の物語』)
剣士「……尽力を惜しまん、か」ズル……
青年「ん、ん……」
剣士(気持ちはありがたい、んだが)
剣士(……姫が、そうしたように。癒し手が……何処かで『完全に失われる』のを)
剣士(待つ様に…… ……俺は……)
スタスタ、ズルズル……パタン
剣士(……俺の『役目』を、終えるだけだ)
剣士「……糞、重いな……こいつ」
76: 2014/06/11(水) 23:14:30.52 ID:MVM9/cl00
剣士(恐らく……『紫の魔王の欠片』……『向こう側』で言う)
剣士(『代々の魔王の残留思念』と言う役割が変わらない以上)
剣士(……運命は、変わらない)
青年「……ぅ、う」
剣士「何だ、気持ち悪いのか?」
青年「…… ……さ。ま」
剣士(こいつも……素直じゃ無いな)クッ
……
………
…………
勇者「ん…… ……」
勇者(目、覚めちゃった……『あれ、ここは……』)
勇者「あ……そうか」
勇者(『昨夜、少年の少女と……ご飯食べて、それで……』)
魔導師(スゥスゥ)
勇者「『…… ……ッ』」
勇者(そうだ……魔導師と、同じ部屋で、二人で……!)
勇者(外は……もう明るい、か)
勇者「…… ……」グゥ
勇者(『魔導師、ぐっすりだ』……起こすのも悪い、よね)
勇者(お腹すいたし……)
スタスタ、パタン
女将「おや、おはよう早いね……お嬢ちゃんだけかい?」
勇者「あ、おはようございます……うん『えっと……彼は、まだ』寝てるみたい」
女将「そうかい……何か食べる?」
勇者「うん……お腹すいちゃった」
女将「じゃあ、サンドイッチとスープでも用意しようか」
勇者「あ、嬉し……お願いします」
女将「すぐに準備するから、座って待ってな」
勇者(魔導師に……言いそびれちゃった、な)
勇者(……結局、断ったけれど……少女は、青年の何が知りたかったんだろう?)
勇者(あの後……少年と魔導師も険しい顔してたし)
勇者(まあ、ご飯の時は表面上は……みんな楽しそうにしてた、けど)ハァ
女将「はい、お待たせ……熱いから気をつけな」
勇者「あ、ありがとう! ……いただきます」パク
勇者(ん、このスープ美味しい……)
勇者(今日中に……『書の街に』につける『よね』)
勇者(青年は『面倒事に巻き込まれるなとか』言ってたけど……)
勇者(『断ったし……大丈夫、だよね?』)
勇者(……私がもう少ししっかりしてたら)
勇者(『こういうとき……もっと、上手く対処できたのかな』)
カチャ、パタン
魔導師「『勇者様、ここでしたか』」ホッ
勇者「ん?あ、魔導師……おはよう。『ごめん、ぐっすりだから起こさなかった』」
魔導師「『ああ……すみません、でも……ちょっと心配しました』……一緒のテーブル、良いですか?」
勇者「勿論」ニコ
魔導師「流石に寝過ぎた様で……お腹もすきましたし」
魔導師「すみません、女将さん……彼女と同じ物を」
勇者「『その割には疲れた顔してるけど……大丈夫?』」
魔導師「『……平気です。勇者様こそ』随分、難しそうなお顔、されてましたけど……?」
剣士(『代々の魔王の残留思念』と言う役割が変わらない以上)
剣士(……運命は、変わらない)
青年「……ぅ、う」
剣士「何だ、気持ち悪いのか?」
青年「…… ……さ。ま」
剣士(こいつも……素直じゃ無いな)クッ
……
………
…………
勇者「ん…… ……」
勇者(目、覚めちゃった……『あれ、ここは……』)
勇者「あ……そうか」
勇者(『昨夜、少年の少女と……ご飯食べて、それで……』)
魔導師(スゥスゥ)
勇者「『…… ……ッ』」
勇者(そうだ……魔導師と、同じ部屋で、二人で……!)
勇者(外は……もう明るい、か)
勇者「…… ……」グゥ
勇者(『魔導師、ぐっすりだ』……起こすのも悪い、よね)
勇者(お腹すいたし……)
スタスタ、パタン
女将「おや、おはよう早いね……お嬢ちゃんだけかい?」
勇者「あ、おはようございます……うん『えっと……彼は、まだ』寝てるみたい」
女将「そうかい……何か食べる?」
勇者「うん……お腹すいちゃった」
女将「じゃあ、サンドイッチとスープでも用意しようか」
勇者「あ、嬉し……お願いします」
女将「すぐに準備するから、座って待ってな」
勇者(魔導師に……言いそびれちゃった、な)
勇者(……結局、断ったけれど……少女は、青年の何が知りたかったんだろう?)
勇者(あの後……少年と魔導師も険しい顔してたし)
勇者(まあ、ご飯の時は表面上は……みんな楽しそうにしてた、けど)ハァ
女将「はい、お待たせ……熱いから気をつけな」
勇者「あ、ありがとう! ……いただきます」パク
勇者(ん、このスープ美味しい……)
勇者(今日中に……『書の街に』につける『よね』)
勇者(青年は『面倒事に巻き込まれるなとか』言ってたけど……)
勇者(『断ったし……大丈夫、だよね?』)
勇者(……私がもう少ししっかりしてたら)
勇者(『こういうとき……もっと、上手く対処できたのかな』)
カチャ、パタン
魔導師「『勇者様、ここでしたか』」ホッ
勇者「ん?あ、魔導師……おはよう。『ごめん、ぐっすりだから起こさなかった』」
魔導師「『ああ……すみません、でも……ちょっと心配しました』……一緒のテーブル、良いですか?」
勇者「勿論」ニコ
魔導師「流石に寝過ぎた様で……お腹もすきましたし」
魔導師「すみません、女将さん……彼女と同じ物を」
勇者「『その割には疲れた顔してるけど……大丈夫?』」
魔導師「『……平気です。勇者様こそ』随分、難しそうなお顔、されてましたけど……?」
77: 2014/06/11(水) 23:28:23.73 ID:MVM9/cl00
勇者「ん……今日、さ……『書の街』に向かうじゃない?」
勇者「『……ちょっと、気にかかる事が……あって、さ』」
勇者(魔導師には……言っておくべき、だよね)
魔導師「……何か、ありました、か?」
勇者「大した事じゃ無いんだろうけど……うん。ちゃんと話しておく」
勇者「『自分一人で解決できないのは情けない気はするけど……』」
勇者「私……勇者なのにね」ハァ
魔導師「勇者様……『僕たちは、仲間でしょう?』」
勇者「え……うん」
魔導師「些細な事でも良いんです。言ってください。内緒にされるのは……辛いですよ」
魔導師(人の事、言える様な立場じゃ無いけど……)ハァ
魔導師「『僕も……後で話したい事があります』」
勇者「魔導師も?」
魔導師「……はい。秘密は無し、って今言った手前、ね」
勇者「……うん。実は……昨日ね?」
魔導師「はい」
勇者「ええと……市場で、かな。少女に……青年の事を聞かれたんだ」
魔導師「……青年さんの?」
勇者「うん。もう一度会いたい、って」
魔導師「……もう、一度?」
勇者「私達が船で着いたときに見ていたみたい……なんだろうな」
勇者「……ああいう表情は、うっとり、って言うのかな」
魔導師「ああ……まあ、綺麗な顔していらっしゃいますからね」
勇者「他意は無いのかな、って思ったんだけど……」
魔導師「勇者様は、なんて言ったんです?」
勇者「彼が降りないって選択をした以上、私は無理強いは出来ないって」
勇者「……だから、願いは叶えてあげられないかな、って……」
魔導師「……そうですか。少女さんはなんと?」
勇者「……そう、ですか。って。しょげてたけどね」
魔導師「…… ……」
勇者「皆でご飯食べたときは、普通にしてたけど、ねぇ」
魔導師「……なるほど。双子ってのは……何か、不思議な力でもあるのかもしれませんね」ハァ
勇者「え?」
魔導師「多分、勇者様と少女さんが話してる時だと思います。僕は」
魔導師「少年さんに、言われたんです……後で、二人で話がしたい、と」
勇者「……?」
魔導師「勇者様が寝入った後で良い。自分も抜け出してくるから」
魔導師「……こっそり会えないか、とね」
勇者「え!? ……で。ま、魔導師、会ったの!?」
魔導師「……はい。宿屋の裏手で」
勇者「…… ……」
ガヤガヤ……オカミサン、メシー!
魔導師「……人が増えてきましたね。続きは船に戻ってからにしましょう」
勇者「え、で、でも……」
魔導師「どちらにしても、青年さんと剣士さんにも隠せない話です」
魔導師「……船にはあの二人がいますから、大丈夫だと思いますけど……」
勇者「??」
魔導師「お約束もありますし、ね……食べたら行きましょう」
勇者「あ、え……うん。でも……」
魔導師「……結論だけ言うと、少年さんの話は、簡単です」
魔導師「『自分たち二人を、船に乗せてくれ』です」
勇者「え!?」
魔導師「……一緒に行きたい、とかでは無いんです。ただ……」
魔導師「逃げ出したいのだ、と。二人でどこか……誰も知らない所へ行きたいんだ……と」
……
………
…………
勇者「『……ちょっと、気にかかる事が……あって、さ』」
勇者(魔導師には……言っておくべき、だよね)
魔導師「……何か、ありました、か?」
勇者「大した事じゃ無いんだろうけど……うん。ちゃんと話しておく」
勇者「『自分一人で解決できないのは情けない気はするけど……』」
勇者「私……勇者なのにね」ハァ
魔導師「勇者様……『僕たちは、仲間でしょう?』」
勇者「え……うん」
魔導師「些細な事でも良いんです。言ってください。内緒にされるのは……辛いですよ」
魔導師(人の事、言える様な立場じゃ無いけど……)ハァ
魔導師「『僕も……後で話したい事があります』」
勇者「魔導師も?」
魔導師「……はい。秘密は無し、って今言った手前、ね」
勇者「……うん。実は……昨日ね?」
魔導師「はい」
勇者「ええと……市場で、かな。少女に……青年の事を聞かれたんだ」
魔導師「……青年さんの?」
勇者「うん。もう一度会いたい、って」
魔導師「……もう、一度?」
勇者「私達が船で着いたときに見ていたみたい……なんだろうな」
勇者「……ああいう表情は、うっとり、って言うのかな」
魔導師「ああ……まあ、綺麗な顔していらっしゃいますからね」
勇者「他意は無いのかな、って思ったんだけど……」
魔導師「勇者様は、なんて言ったんです?」
勇者「彼が降りないって選択をした以上、私は無理強いは出来ないって」
勇者「……だから、願いは叶えてあげられないかな、って……」
魔導師「……そうですか。少女さんはなんと?」
勇者「……そう、ですか。って。しょげてたけどね」
魔導師「…… ……」
勇者「皆でご飯食べたときは、普通にしてたけど、ねぇ」
魔導師「……なるほど。双子ってのは……何か、不思議な力でもあるのかもしれませんね」ハァ
勇者「え?」
魔導師「多分、勇者様と少女さんが話してる時だと思います。僕は」
魔導師「少年さんに、言われたんです……後で、二人で話がしたい、と」
勇者「……?」
魔導師「勇者様が寝入った後で良い。自分も抜け出してくるから」
魔導師「……こっそり会えないか、とね」
勇者「え!? ……で。ま、魔導師、会ったの!?」
魔導師「……はい。宿屋の裏手で」
勇者「…… ……」
ガヤガヤ……オカミサン、メシー!
魔導師「……人が増えてきましたね。続きは船に戻ってからにしましょう」
勇者「え、で、でも……」
魔導師「どちらにしても、青年さんと剣士さんにも隠せない話です」
魔導師「……船にはあの二人がいますから、大丈夫だと思いますけど……」
勇者「??」
魔導師「お約束もありますし、ね……食べたら行きましょう」
勇者「あ、え……うん。でも……」
魔導師「……結論だけ言うと、少年さんの話は、簡単です」
魔導師「『自分たち二人を、船に乗せてくれ』です」
勇者「え!?」
魔導師「……一緒に行きたい、とかでは無いんです。ただ……」
魔導師「逃げ出したいのだ、と。二人でどこか……誰も知らない所へ行きたいんだ……と」
……
………
…………
78: 2014/06/11(水) 23:40:22.13 ID:MVM9/cl00
少年「連れて行ってくれるだけで良いんだ!」
魔導師「…… ……無茶を、言わないでください」ハァ
少年「何でだよ! ……あんたら、『世界を救う勇者様達』だろう!?」
魔導師「だからこそ、です……申し訳ないですが、そんな道行きの中で」
魔導師「……貴方達の私情に、関わっている時間は無いんですよ」
少年「飯の時にも言ってたじゃないか! 書の街に行くんだろう!」
少年「……そこで良いよ! 俺と少女と二人、下ろしてくれりゃいい!」
少年「金もいらないし、文句も言わない! ……何時までも、こんな場所に」
少年「少女を……おいていく訳にいかないんだ!」
魔導師「……それは、貴方達が娼館にお世話になっているから、ですか」
少年「!?」
魔導師「……別に、それに対してどうこうではありません、よ」
魔導師「一緒に街を歩いていれば、人の声も耳に入りますからね……」
魔導師(『少女』……彼らにとれば『魔法使い』か)
魔導師(不用意にその名前を出すわけに行かないのは話しにくいな……)ハァ
少年「……知っているなら、尚更だ」
少年「後数年すれば、少女は客を取れって言われる様になるんだ!」
少年「こんな事、頼めるのはあんた達しか居ないんだよ!」
魔導師「……話に、聞いただけですけど」ハァ
魔導師「この街の娼館は、働き手に無茶をさせないと言う条約が」
魔導師「……まだ、健在だった頃の始まりの国の王様との間で取り決められていた筈です」
魔導師「それを伝えても、逃がさない、とでも言われたのですか?」
少年「そ……ッ そんなの、守ってくれる訳ないだろう!?」
魔導師「……堅実な商売をしているからこそ、あの……丘の上の教会跡に」
魔導師「新たな建物を建てる事が出来る程に、働き手が増えた……のでは無くて、ですか」
少年「…… ……ッ」
魔導師「……それに、そもそも少女さんも……同じ事を願っているんですか」
少年「!」
魔導師「知っているんですか。貴方が、こうして…… ……」
少年「……ッ 少女は、絶対についてくる」
魔導師「双子の感、ですか」
少年「少女は……随分、あんた達の仲間に関心があるみたいなんだ」
魔導師「え……」
少年「降りてくる前に、甲板に出てきただろう。金の髪の……綺麗な顔の、男」
魔導師(青年さんか……)
魔導師(……親子だなぁ、なんて……言ったら、青年さんに殴られるかな)フゥ
少年「……童話だとか、何だとか。そんなのに出てくる王子様みたいだ、なんて」
魔導師「……王子様、ね……なるほど」
魔導師「…… ……無茶を、言わないでください」ハァ
少年「何でだよ! ……あんたら、『世界を救う勇者様達』だろう!?」
魔導師「だからこそ、です……申し訳ないですが、そんな道行きの中で」
魔導師「……貴方達の私情に、関わっている時間は無いんですよ」
少年「飯の時にも言ってたじゃないか! 書の街に行くんだろう!」
少年「……そこで良いよ! 俺と少女と二人、下ろしてくれりゃいい!」
少年「金もいらないし、文句も言わない! ……何時までも、こんな場所に」
少年「少女を……おいていく訳にいかないんだ!」
魔導師「……それは、貴方達が娼館にお世話になっているから、ですか」
少年「!?」
魔導師「……別に、それに対してどうこうではありません、よ」
魔導師「一緒に街を歩いていれば、人の声も耳に入りますからね……」
魔導師(『少女』……彼らにとれば『魔法使い』か)
魔導師(不用意にその名前を出すわけに行かないのは話しにくいな……)ハァ
少年「……知っているなら、尚更だ」
少年「後数年すれば、少女は客を取れって言われる様になるんだ!」
少年「こんな事、頼めるのはあんた達しか居ないんだよ!」
魔導師「……話に、聞いただけですけど」ハァ
魔導師「この街の娼館は、働き手に無茶をさせないと言う条約が」
魔導師「……まだ、健在だった頃の始まりの国の王様との間で取り決められていた筈です」
魔導師「それを伝えても、逃がさない、とでも言われたのですか?」
少年「そ……ッ そんなの、守ってくれる訳ないだろう!?」
魔導師「……堅実な商売をしているからこそ、あの……丘の上の教会跡に」
魔導師「新たな建物を建てる事が出来る程に、働き手が増えた……のでは無くて、ですか」
少年「…… ……ッ」
魔導師「……それに、そもそも少女さんも……同じ事を願っているんですか」
少年「!」
魔導師「知っているんですか。貴方が、こうして…… ……」
少年「……ッ 少女は、絶対についてくる」
魔導師「双子の感、ですか」
少年「少女は……随分、あんた達の仲間に関心があるみたいなんだ」
魔導師「え……」
少年「降りてくる前に、甲板に出てきただろう。金の髪の……綺麗な顔の、男」
魔導師(青年さんか……)
魔導師(……親子だなぁ、なんて……言ったら、青年さんに殴られるかな)フゥ
少年「……童話だとか、何だとか。そんなのに出てくる王子様みたいだ、なんて」
魔導師「……王子様、ね……なるほど」
119: 2014/06/18(水) 09:49:43.83 ID:gpKRr/B90
少年「……い、言ったさ! でも……!」
魔導師「……本当に?」
少年「と……当然、だろ……」
魔導師「なのに少女さんは知らない、んですか?」
少年「し……ッ 知ってるよ! さっき…… ……」
魔導師「さっき貴方は、少女さんは絶対に着いてくる、と言いましたよ」
魔導師「せ…… ……金髪の男に、興味があるみたいだから、と」
少年「あ、あれは……ッ」
魔導師「……絶好のチャンス、ですか?」
少年「…… ……ッ」
魔導師「そう言う話し方はね。ただでさえ、自分に……貴方にとって不利な状況を」
魔導師「悪化させるだけです、少年さん……嘘を吐いても、良いこと等ありません」
少年「…… ……」
魔導師「推測、ですけど」ハァ
魔導師「娼館の方々にも、少女さんにも内緒……この件は貴方の独断でしょう?」
魔導師「さっきも言いましたが、『勇者様』なら」
魔導師「困る人を見捨てる事等しないだろう、って」
魔導師「……本当に?」
少年「と……当然、だろ……」
魔導師「なのに少女さんは知らない、んですか?」
少年「し……ッ 知ってるよ! さっき…… ……」
魔導師「さっき貴方は、少女さんは絶対に着いてくる、と言いましたよ」
魔導師「せ…… ……金髪の男に、興味があるみたいだから、と」
少年「あ、あれは……ッ」
魔導師「……絶好のチャンス、ですか?」
少年「…… ……ッ」
魔導師「そう言う話し方はね。ただでさえ、自分に……貴方にとって不利な状況を」
魔導師「悪化させるだけです、少年さん……嘘を吐いても、良いこと等ありません」
少年「…… ……」
魔導師「推測、ですけど」ハァ
魔導師「娼館の方々にも、少女さんにも内緒……この件は貴方の独断でしょう?」
魔導師「さっきも言いましたが、『勇者様』なら」
魔導師「困る人を見捨てる事等しないだろう、って」
120: 2014/06/18(水) 09:57:51.78 ID:gpKRr/B90
魔導師「……そう言う魂胆なんでしょうが」
魔導師「彼は面倒事を嫌います……でもそれは、彼に限った事じゃ無い」
魔導師「勇者様も、僕もです……『世界を救う旅』の途中に」
魔導師「生活能力もない、子供二人を……どうして、放り出して行けますか?」
少年「放り出して行けないんだったら……ッ」
魔導師「ああ、ご免なさい。言葉が足りなかった」
魔導師「『別の街に』放り出すこと等できません、ですね」
魔導師「……此処にいれば、貴方達には寝る場所もある。ご飯も食べられる」
魔導師「貴方達の……我が儘だけで」
少年「!」
魔導師「……生活の保障のない場所に放り出す事は」
魔導師「『勇者が、困る人を助けた』事に……ならないでしょう」
少年「…… ……」
魔導師「……だから。このお願いはきけませんよ」
魔導師「彼は面倒事を嫌います……でもそれは、彼に限った事じゃ無い」
魔導師「勇者様も、僕もです……『世界を救う旅』の途中に」
魔導師「生活能力もない、子供二人を……どうして、放り出して行けますか?」
少年「放り出して行けないんだったら……ッ」
魔導師「ああ、ご免なさい。言葉が足りなかった」
魔導師「『別の街に』放り出すこと等できません、ですね」
魔導師「……此処にいれば、貴方達には寝る場所もある。ご飯も食べられる」
魔導師「貴方達の……我が儘だけで」
少年「!」
魔導師「……生活の保障のない場所に放り出す事は」
魔導師「『勇者が、困る人を助けた』事に……ならないでしょう」
少年「…… ……」
魔導師「……だから。このお願いはきけませんよ」
121: 2014/06/18(水) 10:18:12.69 ID:gpKRr/B90
少年「……わかったよ。もう良い」
魔導師「ちゃんと話してみる事です。娼館の人にも、少女さんにも……」
少年「…… ……」
魔導師「恩はあるかもしれませんが、でも……」
少年「もう良いって言ってるだろう!?」
魔導師「…… ……」
少年「……時間取らせて、悪かったな」
スタスタ
魔導師「…… ……」ハァ
……
………
…………
青年「……成る程ね」
剣士「事実、どうなんだ」
青年「ん?」
剣士「……関係の無い、話だと言うのは解っている、が」チラ
勇者「…… ……」
青年「ああ……魔導師の想像であってる、と思うよ?」
青年「『少女』に聞いた話もそうだ。無理に働かされる事は無いと言ってたさ」
勇者「え?」
魔導師「まあ……そうで無ければ、働き手が順調に増えて、建物が……」
勇者「あああああああ! 思い出した!」
青年「……勇者様煩い」
勇者「少女、って……! そうだ、新王様の……!」
魔導師「彼女の子、ですよ……あの双子は」
勇者「え!? ……でも、少女さん……って、紅い……瞳……」
青年「遺伝する訳じゃないからね」
勇者「あ……そうか。あれ、でも、って……事は!?」ジィ
青年「……何」
勇者「青年と、血が…… ……」
剣士「違う…… ……あれは、衛生師の子供だ」
勇者「…… ……あれ?」
魔導師「ちゃんと話してみる事です。娼館の人にも、少女さんにも……」
少年「…… ……」
魔導師「恩はあるかもしれませんが、でも……」
少年「もう良いって言ってるだろう!?」
魔導師「…… ……」
少年「……時間取らせて、悪かったな」
スタスタ
魔導師「…… ……」ハァ
……
………
…………
青年「……成る程ね」
剣士「事実、どうなんだ」
青年「ん?」
剣士「……関係の無い、話だと言うのは解っている、が」チラ
勇者「…… ……」
青年「ああ……魔導師の想像であってる、と思うよ?」
青年「『少女』に聞いた話もそうだ。無理に働かされる事は無いと言ってたさ」
勇者「え?」
魔導師「まあ……そうで無ければ、働き手が順調に増えて、建物が……」
勇者「あああああああ! 思い出した!」
青年「……勇者様煩い」
勇者「少女、って……! そうだ、新王様の……!」
魔導師「彼女の子、ですよ……あの双子は」
勇者「え!? ……でも、少女さん……って、紅い……瞳……」
青年「遺伝する訳じゃないからね」
勇者「あ……そうか。あれ、でも、って……事は!?」ジィ
青年「……何」
勇者「青年と、血が…… ……」
剣士「違う…… ……あれは、衛生師の子供だ」
勇者「…… ……あれ?」
122: 2014/06/18(水) 10:35:19.32 ID:gpKRr/B90
魔導師「だいぶん混乱してますね、勇者様」
剣士「……良い機会だ。ちゃんと説明してやれ」
青年「……やれやれ」ハァ
魔導師「隠し事は無し、何でしょ?」
青年「……仕方無い、ね」
勇者「何!? なんか私に隠してたの!?」
青年「そう言う訳じゃ……いや、まあ……うん」
青年「……大した事じゃないんだけどね……でも、先に……」
勇者「先に話して!」
青年「……違うって。出発しよう」
魔導師「そうですね。何時までも此処に船を止めて置いても仕方無いですね」
勇者「…… ……」
剣士「そうだな……じゃあ、書の街へ……」
勇者「待って。補給の必要は暫く無いんだよね?」
剣士「? ……ああ、だが……」
勇者「鉱石の洞窟へ行こう」
青年「え?」
勇者「光の剣を修理するのに……必要なんでしょう?」
剣士「……それも確かな話ではない。勇者が行きたいと言うのならば止めはしないが」
魔導師「前に剣士さんに行って貰った時の話は覚えて居ますか?」
勇者「うん。何れは……と思っていたけど、今でも問題は無いでしょう?」
青年「……そりゃ、ね。目で見て納得するのなら、見てみれば良い」
青年「戦闘は……まあ、どうにかなるだろうし」
勇者「……その後、補給の必要があるなら書の街に向かう。その後」
勇者「北の街に。それで…… ……最果ての地、へ」
剣士「……良い機会だ。ちゃんと説明してやれ」
青年「……やれやれ」ハァ
魔導師「隠し事は無し、何でしょ?」
青年「……仕方無い、ね」
勇者「何!? なんか私に隠してたの!?」
青年「そう言う訳じゃ……いや、まあ……うん」
青年「……大した事じゃないんだけどね……でも、先に……」
勇者「先に話して!」
青年「……違うって。出発しよう」
魔導師「そうですね。何時までも此処に船を止めて置いても仕方無いですね」
勇者「…… ……」
剣士「そうだな……じゃあ、書の街へ……」
勇者「待って。補給の必要は暫く無いんだよね?」
剣士「? ……ああ、だが……」
勇者「鉱石の洞窟へ行こう」
青年「え?」
勇者「光の剣を修理するのに……必要なんでしょう?」
剣士「……それも確かな話ではない。勇者が行きたいと言うのならば止めはしないが」
魔導師「前に剣士さんに行って貰った時の話は覚えて居ますか?」
勇者「うん。何れは……と思っていたけど、今でも問題は無いでしょう?」
青年「……そりゃ、ね。目で見て納得するのなら、見てみれば良い」
青年「戦闘は……まあ、どうにかなるだろうし」
勇者「……その後、補給の必要があるなら書の街に向かう。その後」
勇者「北の街に。それで…… ……最果ての地、へ」
123: 2014/06/18(水) 10:46:16.34 ID:gpKRr/B90
青年「…… ……」
勇者「……私が決めて良いんでしょ?」
青年「勿論、だ……だけど、どうした?」
勇者「え?」
青年「……否、良い。先に出発しよう」
青年「勇者様、魔導師と船の中を見回ってきて。剣士と僕は操舵室に行こう」
青年「……異常が無ければ、操舵室に集合」
勇者「? ……うん」
魔導師「はい」
スタスタ、パタン
剣士「……焦っている、な」
青年「勇者様……な」
剣士「ああ……少年と少女の話を聞いて……」
剣士「『早く世界を救わなきゃ』……か?」
青年「そんな所だろうな……そりゃ、腐るほど時間がある訳じゃ無いから」
青年「決定に文句がある訳じゃないが……ッ ……」
剣士「……大丈夫か」
青年「……軽い二日酔いだ」
剣士「…… ……」ハァ
青年「さっさと離れるに越したことはない……忍び込まれたらそれこそ」
青年「海の上へ捨てる訳にも行かない」
剣士「……流石に気配で気付くだろう」
青年「だと良いけど?」
剣士「それに、そこまで危惧するなら、自分で行けば良かっただろう」
青年「魔導師を行かせただろ。あいつまで情にほだされるとは思わないぜ」
剣士「……勇者を信じていない様な口ぶりだが」
青年「そう言う訳じゃ無い……けど」
青年「……勇者様をもう少し……そうだな」
青年「あいつ等が『勇者』じゃなく『まだ子供とも言える年齢の女の子』と」
青年「……『特別扱い』をしていなかったら、面倒だっただろうな」
剣士「…… ……」
青年「子供ってのは正直なもんだ。保護者だろう『大人』の魔導師に話したんだから」
剣士「……言いたいことは解る、が」
青年「『特別』って奴も、偶には役に立ったか」フン
剣士「お前がイライラしてどうする」
青年「……僕が? まさか」
剣士「子供に話すより、大人……それは正しいんじゃないか?」
青年「どうだかな……面倒事に巻き込まれず助かったのは事実だろ」
剣士「子供の方が情にほだされやすい、と言う邪推も」
剣士「大人の目線だろう?」
青年「……まあ、そうだけど」
勇者「……私が決めて良いんでしょ?」
青年「勿論、だ……だけど、どうした?」
勇者「え?」
青年「……否、良い。先に出発しよう」
青年「勇者様、魔導師と船の中を見回ってきて。剣士と僕は操舵室に行こう」
青年「……異常が無ければ、操舵室に集合」
勇者「? ……うん」
魔導師「はい」
スタスタ、パタン
剣士「……焦っている、な」
青年「勇者様……な」
剣士「ああ……少年と少女の話を聞いて……」
剣士「『早く世界を救わなきゃ』……か?」
青年「そんな所だろうな……そりゃ、腐るほど時間がある訳じゃ無いから」
青年「決定に文句がある訳じゃないが……ッ ……」
剣士「……大丈夫か」
青年「……軽い二日酔いだ」
剣士「…… ……」ハァ
青年「さっさと離れるに越したことはない……忍び込まれたらそれこそ」
青年「海の上へ捨てる訳にも行かない」
剣士「……流石に気配で気付くだろう」
青年「だと良いけど?」
剣士「それに、そこまで危惧するなら、自分で行けば良かっただろう」
青年「魔導師を行かせただろ。あいつまで情にほだされるとは思わないぜ」
剣士「……勇者を信じていない様な口ぶりだが」
青年「そう言う訳じゃ無い……けど」
青年「……勇者様をもう少し……そうだな」
青年「あいつ等が『勇者』じゃなく『まだ子供とも言える年齢の女の子』と」
青年「……『特別扱い』をしていなかったら、面倒だっただろうな」
剣士「…… ……」
青年「子供ってのは正直なもんだ。保護者だろう『大人』の魔導師に話したんだから」
剣士「……言いたいことは解る、が」
青年「『特別』って奴も、偶には役に立ったか」フン
剣士「お前がイライラしてどうする」
青年「……僕が? まさか」
剣士「子供に話すより、大人……それは正しいんじゃないか?」
青年「どうだかな……面倒事に巻き込まれず助かったのは事実だろ」
剣士「子供の方が情にほだされやすい、と言う邪推も」
剣士「大人の目線だろう?」
青年「……まあ、そうだけど」
124: 2014/06/18(水) 10:50:06.73 ID:gpKRr/B90
剣士「……まあ、良い。落ち着け」
青年「だから、僕の何処が……」
剣士「……戻ったな」
青年「…… ……」
カチャ
勇者「あれ、まだ此処に居たの……オッケーだよ」
魔導師「……誰も何も、居ませんでしたよ?」
剣士「ああ……」
スタスタ
勇者「ほら、青年も行くよ」
青年「……ああ」
青年(僕の何処が……イライラしてるって言うんだ)ハァ
魔導師「大丈夫ですか、青年さん。ご気分悪いんです?」
青年「お前まで……」ハァ
魔導師「え?」
青年「……何でもない。少女の話、な」
スタスタ
魔導師「……??」
青年「だから、僕の何処が……」
剣士「……戻ったな」
青年「…… ……」
カチャ
勇者「あれ、まだ此処に居たの……オッケーだよ」
魔導師「……誰も何も、居ませんでしたよ?」
剣士「ああ……」
スタスタ
勇者「ほら、青年も行くよ」
青年「……ああ」
青年(僕の何処が……イライラしてるって言うんだ)ハァ
魔導師「大丈夫ですか、青年さん。ご気分悪いんです?」
青年「お前まで……」ハァ
魔導師「え?」
青年「……何でもない。少女の話、な」
スタスタ
魔導師「……??」
125: 2014/06/18(水) 10:50:32.18 ID:gpKRr/B90
おむかえ!
昼からは……わかりませんorz
これたら……
昼からは……わかりませんorz
これたら……
129: 2014/06/18(水) 16:58:05.16 ID:gpKRr/B90
……
………
…………
少女「……行っちゃった、ね」ハァ
少年「…… ……」
少女「少年? ……どうしたの」
少年「別に」クルッ
スタスタ
少女「あ……少年、どこ行くの?」
少年「買い物頼まれたんだよ。すぐ戻る」
少女「私も一緒に……」
少年「……少女はゆっくりしてな」
タタタ……ッ
少女「あ……」
少年(……何が、世界を救う勇者様、だよ)
少年(少女だって……あの男が居るって言えば、ついてきたはずだ)
少年(このチャンスを逃したら、少女は……この町で……!)
少年(こうやって……あいつらは、俺たちをこき使って……)カサ
少年(何買って来いって……?)ハァ
少年(……本、に……化粧品……に……)
少女「少年……どうしたのかしら」
少女(朝から、なんだか機嫌が悪そうだった)
少女(ため息ばっかり……私だって)ハァ
少女(残念だわ。あの人……もう一回会いたかった)
スタスタ、キィ
館長「おや、一緒に行かなかったのかい」
少女「あ……買い物ですか? ……うん」ハァ
館長「そうかい……まあ、丁度良い。お茶を持って行ってくれるかい」
少女「…… あ、はい」
館長「二人一緒、は構わないけどね。もう部屋で待ってるんだよ」
少女「わかりました……行ってきます」
館長「ああ。二階の右の部屋だ。頼んだよ」
………
…………
少女「……行っちゃった、ね」ハァ
少年「…… ……」
少女「少年? ……どうしたの」
少年「別に」クルッ
スタスタ
少女「あ……少年、どこ行くの?」
少年「買い物頼まれたんだよ。すぐ戻る」
少女「私も一緒に……」
少年「……少女はゆっくりしてな」
タタタ……ッ
少女「あ……」
少年(……何が、世界を救う勇者様、だよ)
少年(少女だって……あの男が居るって言えば、ついてきたはずだ)
少年(このチャンスを逃したら、少女は……この町で……!)
少年(こうやって……あいつらは、俺たちをこき使って……)カサ
少年(何買って来いって……?)ハァ
少年(……本、に……化粧品……に……)
少女「少年……どうしたのかしら」
少女(朝から、なんだか機嫌が悪そうだった)
少女(ため息ばっかり……私だって)ハァ
少女(残念だわ。あの人……もう一回会いたかった)
スタスタ、キィ
館長「おや、一緒に行かなかったのかい」
少女「あ……買い物ですか? ……うん」ハァ
館長「そうかい……まあ、丁度良い。お茶を持って行ってくれるかい」
少女「…… あ、はい」
館長「二人一緒、は構わないけどね。もう部屋で待ってるんだよ」
少女「わかりました……行ってきます」
館長「ああ。二階の右の部屋だ。頼んだよ」
130: 2014/06/18(水) 17:03:37.86 ID:gpKRr/B90
少女「はい」
館長「?」
館長(なんだか……元気が無いね)
館長「少…… ……」
スタスタ、パタン
少女「……?」
少女(館長さん、何か言いかけた? ……まあ、良いか)
少女(戻れば聞けば良いわ……ええっと、お茶の準備は)
カチャカチャ
少女(右の部屋……新規のお客様、ね)
少女(老婆さんや館長さんは、嫌ならやめれば良い、って言うけど)
少女(こうして、慣れていって……街の人にも、顔を知られて)
少女(……他の街に行くにも、お金がいる。だけど、この町で他の仕事なんて……)ハァ
カチャ……スタスタ
少女(勇者様は……会わせてくださらなかった)
少女(恋人? ……ううん。大事な、仲間……誰にも会いたくないって)
少女(船を下りないって……行ったのは、彼自身だって言ってた)
少女(私は、まだ子供だけど…… ……もう一回、会うだけで良かったのにな)ハァ
コンコン
少女「失礼いたします。お茶をお持ちしました」
??「……はい。どうぞ」
少女「…… ……」
カチャ
少女「いらっしゃいま…… ……!?」
館長「?」
館長(なんだか……元気が無いね)
館長「少…… ……」
スタスタ、パタン
少女「……?」
少女(館長さん、何か言いかけた? ……まあ、良いか)
少女(戻れば聞けば良いわ……ええっと、お茶の準備は)
カチャカチャ
少女(右の部屋……新規のお客様、ね)
少女(老婆さんや館長さんは、嫌ならやめれば良い、って言うけど)
少女(こうして、慣れていって……街の人にも、顔を知られて)
少女(……他の街に行くにも、お金がいる。だけど、この町で他の仕事なんて……)ハァ
カチャ……スタスタ
少女(勇者様は……会わせてくださらなかった)
少女(恋人? ……ううん。大事な、仲間……誰にも会いたくないって)
少女(船を下りないって……行ったのは、彼自身だって言ってた)
少女(私は、まだ子供だけど…… ……もう一回、会うだけで良かったのにな)ハァ
コンコン
少女「失礼いたします。お茶をお持ちしました」
??「……はい。どうぞ」
少女「…… ……」
カチャ
少女「いらっしゃいま…… ……!?」
131: 2014/06/18(水) 17:11:43.73 ID:gpKRr/B90
??「? ……私の顔に、何かついていますか」
少女「あ……い、いえ! ごめんなさい!」
少女(ビックリした……)ドキドキ
少女「……お、お茶、ここにおきます」
??「貴女が、お話相手をしてくれる少女ちゃん?」
少女「は、はい……え、っと……あの……」
??「……そんなに、驚かないでよ」クス
??「ビックリする気持ちはわかるけどね……」クスクス
少女「……い、いいえ」
??「良いのよ、別に…… ……子供だけど。ここで働いている以上」
??「ある程度わかっているんでしょ……どういう場所か。何をするのか」
少女「…… ……」
??「どうぞ、お座りなさい……あ、ごめん、私はね、雷使いと言うの」
少女「…… ……」
雷使い「私みたいな客は初めて?」
少女「は、はい…… ……あ、あのッ」
雷使い「ん?」
少女「……その、あ……の、ここに居るのは、その……」
雷使い「知ってるわよ、女性ばかりでしょ?」
少女「……は、はい」
雷使い「……もう一人は少年君、だっけ」
少女「!」
雷使い「何時も、彼と二人で……って。さっき館長さんが言ってたからね」
少女「あ……い、いえ! ごめんなさい!」
少女(ビックリした……)ドキドキ
少女「……お、お茶、ここにおきます」
??「貴女が、お話相手をしてくれる少女ちゃん?」
少女「は、はい……え、っと……あの……」
??「……そんなに、驚かないでよ」クス
??「ビックリする気持ちはわかるけどね……」クスクス
少女「……い、いいえ」
??「良いのよ、別に…… ……子供だけど。ここで働いている以上」
??「ある程度わかっているんでしょ……どういう場所か。何をするのか」
少女「…… ……」
??「どうぞ、お座りなさい……あ、ごめん、私はね、雷使いと言うの」
少女「…… ……」
雷使い「私みたいな客は初めて?」
少女「は、はい…… ……あ、あのッ」
雷使い「ん?」
少女「……その、あ……の、ここに居るのは、その……」
雷使い「知ってるわよ、女性ばかりでしょ?」
少女「……は、はい」
雷使い「……もう一人は少年君、だっけ」
少女「!」
雷使い「何時も、彼と二人で……って。さっき館長さんが言ってたからね」
132: 2014/06/18(水) 17:19:47.64 ID:gpKRr/B90
少女「…… ……」
雷使い「今日は貴女一人なのね」
少女「……少年は、今……買い物に……」
雷使い「そっか……あ、別に良いのよ」
雷使い「……ねえ、少女ちゃん」スッ
少女「!」ドキッ
少女(顔が、近い……ッ)
雷使い「別に貴女を取って食おうなんて思ってないわよ……少年君の事もね」
少女「あ、あの……」
雷使い「……今度は、二人に会えるかしら」
少女「え……あ、あの……はい……多分」
雷使い「そう……楽しみね」
少女「…… ……」フイッ
雷使い「顔、真っ赤。可愛いわね」クス
少女「……ッ」カァッ
コンコン
少年「失礼します。準備が出来ましたので、お部屋の方に案内いたします」
少女(この声……少年!?)
カチャ
少年「!?」
雷使い「あら……次回までお預けかと思ってたけど。ラッキーね」
少年「…… ……え!?」
雷使い「同じような反応するのねぇ……流石双子ね」クス
雷使い「……ありがとう。じゃあ、案内してもらえる?」
少年「…… ……」
雷使い「少年君?」
少年「あ……ッ し、失礼しました!」
少女「…… ……ど、どうぞ」
雷使い「ええ。ありがとう」
カチャ……スタスタ
雷使い「今日は貴女一人なのね」
少女「……少年は、今……買い物に……」
雷使い「そっか……あ、別に良いのよ」
雷使い「……ねえ、少女ちゃん」スッ
少女「!」ドキッ
少女(顔が、近い……ッ)
雷使い「別に貴女を取って食おうなんて思ってないわよ……少年君の事もね」
少女「あ、あの……」
雷使い「……今度は、二人に会えるかしら」
少女「え……あ、あの……はい……多分」
雷使い「そう……楽しみね」
少女「…… ……」フイッ
雷使い「顔、真っ赤。可愛いわね」クス
少女「……ッ」カァッ
コンコン
少年「失礼します。準備が出来ましたので、お部屋の方に案内いたします」
少女(この声……少年!?)
カチャ
少年「!?」
雷使い「あら……次回までお預けかと思ってたけど。ラッキーね」
少年「…… ……え!?」
雷使い「同じような反応するのねぇ……流石双子ね」クス
雷使い「……ありがとう。じゃあ、案内してもらえる?」
少年「…… ……」
雷使い「少年君?」
少年「あ……ッ し、失礼しました!」
少女「…… ……ど、どうぞ」
雷使い「ええ。ありがとう」
カチャ……スタスタ
134: 2014/06/18(水) 17:35:22.49 ID:gpKRr/B90
少年「……ここ、です」
少女「…… ……」
雷使い「ありがとう。今度はお土産持ってくるわね」
少年「…… ……」
コンコン
少女「お姉さん、失礼いたします。お客様をお連れしました」
雷使い「じゃあね……」
パタン
少女「…… ……」
少年「…… ……」
少女「……女性、だよね」
少年「……だと思う、よ」
少女「…… ……」
少年「……少女」
少女「……あ、何?」
少年「館長が呼んでたよ」
少女「……あ」
少女(そういえば、さっき……何か言いかけてた)
少女「わかった……行くわ」
少年「僕も行くよ」
少女「…… ……」ギュッ
少年「!」ドキッ
少女「手、つないで行こう?」
少年「……う、うん」
スタスタ
……
………
…………
雷使い「様になってるじゃないの『お姉さん』?」クスクス
雷使い「でも……偽名ぐらい使っても良かったんじゃないの、水使い」
水使い「知られて困る名前じゃありませんから、良いんです」
雷使い「ふん……相変わらず可愛げの無い子ねぇ、全く」
水使い「そっちこそ……ばれなかったんですか」
雷使い「ばれる要素なんて無いでしょ? ……まあ、女が女を買いに来た、なんて」
雷使い「変Oだと思われてるぐらいよ」
水使い「……事実でしょう」
雷使い「口の減らないのも相変わらずね」グイッ ……チュッ
水使い「!」
雷使い「……変Oはアンタもでしょう、水使い?」
雷使い「男の相手ばかりで、辟易してるんじゃないの」
水使い「……そんな事ありません」
雷使い「そうね……アンタ、どっちもイケるんだもんね」
水使い「…… ……」
雷使い「アンタの『仕事』に支障がなけりゃ、何だって構わないのよ」
雷使い「……お金、居るのだって事実なんだから」
水使い「どうして……急に来たんですか」
雷使い「あら、私よりあの男の方が良かったの……で、どこ?」
水使い「……テーブルの上です」
少女「…… ……」
雷使い「ありがとう。今度はお土産持ってくるわね」
少年「…… ……」
コンコン
少女「お姉さん、失礼いたします。お客様をお連れしました」
雷使い「じゃあね……」
パタン
少女「…… ……」
少年「…… ……」
少女「……女性、だよね」
少年「……だと思う、よ」
少女「…… ……」
少年「……少女」
少女「……あ、何?」
少年「館長が呼んでたよ」
少女「……あ」
少女(そういえば、さっき……何か言いかけてた)
少女「わかった……行くわ」
少年「僕も行くよ」
少女「…… ……」ギュッ
少年「!」ドキッ
少女「手、つないで行こう?」
少年「……う、うん」
スタスタ
……
………
…………
雷使い「様になってるじゃないの『お姉さん』?」クスクス
雷使い「でも……偽名ぐらい使っても良かったんじゃないの、水使い」
水使い「知られて困る名前じゃありませんから、良いんです」
雷使い「ふん……相変わらず可愛げの無い子ねぇ、全く」
水使い「そっちこそ……ばれなかったんですか」
雷使い「ばれる要素なんて無いでしょ? ……まあ、女が女を買いに来た、なんて」
雷使い「変Oだと思われてるぐらいよ」
水使い「……事実でしょう」
雷使い「口の減らないのも相変わらずね」グイッ ……チュッ
水使い「!」
雷使い「……変Oはアンタもでしょう、水使い?」
雷使い「男の相手ばかりで、辟易してるんじゃないの」
水使い「……そんな事ありません」
雷使い「そうね……アンタ、どっちもイケるんだもんね」
水使い「…… ……」
雷使い「アンタの『仕事』に支障がなけりゃ、何だって構わないのよ」
雷使い「……お金、居るのだって事実なんだから」
水使い「どうして……急に来たんですか」
雷使い「あら、私よりあの男の方が良かったの……で、どこ?」
水使い「……テーブルの上です」
135: 2014/06/18(水) 17:42:07.09 ID:gpKRr/B90
スタスタ
雷使い「あの男からも聞いてたけど」ジャラ
雷使い「儲かるのねぇ、『女』って…… ……凄いじゃ無いの」
水使い「…… ……」
雷使い「自分の生活費はちゃんと抜いてるんでしょ」
水使い「……はい」
雷使い「まあ、身なりを整えるのも仕事のうちね。こういう仕事は」
水使い「…… ……」
雷使い「今回から私が来るから……安心しなさい」
水使い「……どっちでも、一緒です」
雷使い「喜びなさいよ。本当に可愛くない」グイッ ドン!
水使い「きゃ……ッ」ドサッ
雷使い「……久しぶりでしょ。ちゃんと気持ちよくしてあげるから」チュッ
水使い「…… ……ッ あ、貴女は、何をしにきたのか、わかって……ッ ん……ッ」
雷使い「……お金と、様子を見に来るのはあの男も私も一緒よ、確かに」
雷使い「でも、こういうことするのだって……一緒でしょ?」チュッ、チュ
水使い「……んっ」
雷使い「話はすっきりした後で、ね……喜びなさいよ」
雷使い「アンタが居なくなって、私も寂しかったのよ?」
水使い「……ッ 好きに出来る相手が、居なくなったから、で……ッ」
雷使い「口は慎みなさい? ……私は貴女が気に入ってるのよ」
雷使い「だから、多少は目をつむってあげる……でもね?」ギュッ
水使い(! ……首、に指が…… ……ッ)ゲホッ
雷使い「『出来損ない』は所詮『出来損ない』よ……雷の加護も受けないくせに」
水使い「…… ……ッ」ゲホッ
雷使い「あの男からも聞いてたけど」ジャラ
雷使い「儲かるのねぇ、『女』って…… ……凄いじゃ無いの」
水使い「…… ……」
雷使い「自分の生活費はちゃんと抜いてるんでしょ」
水使い「……はい」
雷使い「まあ、身なりを整えるのも仕事のうちね。こういう仕事は」
水使い「…… ……」
雷使い「今回から私が来るから……安心しなさい」
水使い「……どっちでも、一緒です」
雷使い「喜びなさいよ。本当に可愛くない」グイッ ドン!
水使い「きゃ……ッ」ドサッ
雷使い「……久しぶりでしょ。ちゃんと気持ちよくしてあげるから」チュッ
水使い「…… ……ッ あ、貴女は、何をしにきたのか、わかって……ッ ん……ッ」
雷使い「……お金と、様子を見に来るのはあの男も私も一緒よ、確かに」
雷使い「でも、こういうことするのだって……一緒でしょ?」チュッ、チュ
水使い「……んっ」
雷使い「話はすっきりした後で、ね……喜びなさいよ」
雷使い「アンタが居なくなって、私も寂しかったのよ?」
水使い「……ッ 好きに出来る相手が、居なくなったから、で……ッ」
雷使い「口は慎みなさい? ……私は貴女が気に入ってるのよ」
雷使い「だから、多少は目をつむってあげる……でもね?」ギュッ
水使い(! ……首、に指が…… ……ッ)ゲホッ
雷使い「『出来損ない』は所詮『出来損ない』よ……雷の加護も受けないくせに」
水使い「…… ……ッ」ゲホッ
136: 2014/06/18(水) 17:53:34.37 ID:gpKRr/B90
雷使い「……必要なの。さんざん説明してあげたでしょ」
水使い「…… ……ッ」
雷使い「『書の街』だなんて……あんな、くだらない」
雷使い「『出来損ない』共に……居場所を奪われ」
雷使い「……街に残っていた子達の行方もわからない」グッ
水使い「ち、から……ッ を…… ……ッ」
水使い(苦しい……ッ)
雷使い「こうなってしまった以上、私達が……『魔導国』が復活するためには」
雷使い「必要なのよ……あの双子が、ね」パッ
水使い「……ッ」ゲホ、ゲホゲホ……ッ
雷使い「……母親様や父親様の直径じゃ無いけど。でも彼らは」
雷使い「少女と違って……雷の加護を持って生まれた」
水使い「……『始まりの姉弟』……は、双子では無かった、んでしょう?」
雷使い「良いのよ、そんな事は……確かめようも無い。でもね?」
雷使い「残念ながら、私やあんたより……あの双子は母親様達の血筋に近いのよ」
雷使い「……秘書様の子だったら、もう少しやりがいもでるけど……」ハァ
水使い「…… ……」
雷使い「仕方ないわ。炎の加護しか受けていなかったけれど」
雷使い「でも、『少女』は秘書様の双子の妹だもの」
水使い「…… ……」
雷使い「大きな役目を……出来損ないのくせに、アンタは委ねられたのよ」
水使い「……監視、だけじゃな……いですか」
雷使い「重要よ……でも、アンタは良くやってる方よ」
水使い「『出来損ないのくせに』?」
雷使い「……否定でもして欲しいの」
水使い「…… ……いいえ」
雷使い「勇者一行の船が居たんですってね」
水使い「…… ……はい」
雷使い「『この街から離れたがっている二人』を、勇者は連れては行かなかった」
雷使い「……風向きは良いのよ。だから、私が来たの」
雷使い「あの男じゃ、駄目よ……あいつは、少女を気に入っていたからね」
水使い「……貴女は手を出さない、と?」
雷使い「あの男じゃ双子を結ばせる事なんて出来ない、と言っているの」
水使い「…… ……ッ」
雷使い「『書の街』だなんて……あんな、くだらない」
雷使い「『出来損ない』共に……居場所を奪われ」
雷使い「……街に残っていた子達の行方もわからない」グッ
水使い「ち、から……ッ を…… ……ッ」
水使い(苦しい……ッ)
雷使い「こうなってしまった以上、私達が……『魔導国』が復活するためには」
雷使い「必要なのよ……あの双子が、ね」パッ
水使い「……ッ」ゲホ、ゲホゲホ……ッ
雷使い「……母親様や父親様の直径じゃ無いけど。でも彼らは」
雷使い「少女と違って……雷の加護を持って生まれた」
水使い「……『始まりの姉弟』……は、双子では無かった、んでしょう?」
雷使い「良いのよ、そんな事は……確かめようも無い。でもね?」
雷使い「残念ながら、私やあんたより……あの双子は母親様達の血筋に近いのよ」
雷使い「……秘書様の子だったら、もう少しやりがいもでるけど……」ハァ
水使い「…… ……」
雷使い「仕方ないわ。炎の加護しか受けていなかったけれど」
雷使い「でも、『少女』は秘書様の双子の妹だもの」
水使い「…… ……」
雷使い「大きな役目を……出来損ないのくせに、アンタは委ねられたのよ」
水使い「……監視、だけじゃな……いですか」
雷使い「重要よ……でも、アンタは良くやってる方よ」
水使い「『出来損ないのくせに』?」
雷使い「……否定でもして欲しいの」
水使い「…… ……いいえ」
雷使い「勇者一行の船が居たんですってね」
水使い「…… ……はい」
雷使い「『この街から離れたがっている二人』を、勇者は連れては行かなかった」
雷使い「……風向きは良いのよ。だから、私が来たの」
雷使い「あの男じゃ、駄目よ……あいつは、少女を気に入っていたからね」
水使い「……貴女は手を出さない、と?」
雷使い「あの男じゃ双子を結ばせる事なんて出来ない、と言っているの」
137: 2014/06/18(水) 17:57:35.30 ID:gpKRr/B90
雷使い「先に自分が手を出しちゃうわ……下半身で物を考える様な」
雷使い「馬鹿な男にはつとまらない……私はしばらくこの街に居るわ」
水使い「…… ……」
雷使い「大丈夫よ。アンタも一緒に連れて行ってあげるから」チュッ
水使い「…… ……」
雷使い「側仕えは必要だからね……ああ、時間がなくなっちゃうわ」
雷使い「……ほら、脱ぎなさいよ」
水使い「…… ……はい」スル……
雷使い「本当に……久しぶりね」チュッ チュッ
水使い「……ッ」ビクッ
雷使い「相変わらず過敏な体ね……あの男に抱かせるには……いえ」
雷使い「『出来損ない』共に開かせるにはもったいない」
雷使い「……ぴったりよ、水使い……淫乱なアンタ、には」
……
………
…………
雷使い「馬鹿な男にはつとまらない……私はしばらくこの街に居るわ」
水使い「…… ……」
雷使い「大丈夫よ。アンタも一緒に連れて行ってあげるから」チュッ
水使い「…… ……」
雷使い「側仕えは必要だからね……ああ、時間がなくなっちゃうわ」
雷使い「……ほら、脱ぎなさいよ」
水使い「…… ……はい」スル……
雷使い「本当に……久しぶりね」チュッ チュッ
水使い「……ッ」ビクッ
雷使い「相変わらず過敏な体ね……あの男に抱かせるには……いえ」
雷使い「『出来損ない』共に開かせるにはもったいない」
雷使い「……ぴったりよ、水使い……淫乱なアンタ、には」
……
………
…………
152: 2014/06/21(土) 11:48:13.56 ID:Czc70MFS0
勇者「……あそこに見えてるのが鉱石の洞窟?」
魔導師「そう……でしょうね。僕も来た事はありませんから」
勇者「船では行けないから、途中から泳いでいった、んだっけ」
魔導師「光の剣、持ちましたね」
勇者「大丈夫……青年にしっかり背中にくくりつけてもらったし…… ……ッ」
ガリガリ……ッ グラグラ……
魔導師「わぁッ!?」
カチャ
青年「勇者様、魔導師大丈夫か?」
魔導師「僕たちは……船は無事ですか?」
青年「……ちょっと底すったかもな……これ以上は無理だ」
カチャ
剣士「青年、碇を……怪我は無いか、勇者。悪かった」
勇者「大丈夫……それより、船、船!」
剣士「大事ない……筈だ。戻ってきたら船が沈んでた」
剣士「……なんて事は無いと思う、が」
魔導師「……珍しく弱気ですね」
剣士「専門家では無いんだ…… ……船体が小さいからと」
剣士「素人判断で無茶する物では無いな」
青年「底に穴なんか開いてたらあっちゅーま、だろ……準備は出来てるね?」
勇者「う、うん」
魔導師「……では、行きましょう」
剣士「青年、勇者と一緒に後ろから来い……魔導師、行くぞ」
魔導師「はい」
ドボン……ッ ドボン!
魔導師「そう……でしょうね。僕も来た事はありませんから」
勇者「船では行けないから、途中から泳いでいった、んだっけ」
魔導師「光の剣、持ちましたね」
勇者「大丈夫……青年にしっかり背中にくくりつけてもらったし…… ……ッ」
ガリガリ……ッ グラグラ……
魔導師「わぁッ!?」
カチャ
青年「勇者様、魔導師大丈夫か?」
魔導師「僕たちは……船は無事ですか?」
青年「……ちょっと底すったかもな……これ以上は無理だ」
カチャ
剣士「青年、碇を……怪我は無いか、勇者。悪かった」
勇者「大丈夫……それより、船、船!」
剣士「大事ない……筈だ。戻ってきたら船が沈んでた」
剣士「……なんて事は無いと思う、が」
魔導師「……珍しく弱気ですね」
剣士「専門家では無いんだ…… ……船体が小さいからと」
剣士「素人判断で無茶する物では無いな」
青年「底に穴なんか開いてたらあっちゅーま、だろ……準備は出来てるね?」
勇者「う、うん」
魔導師「……では、行きましょう」
剣士「青年、勇者と一緒に後ろから来い……魔導師、行くぞ」
魔導師「はい」
ドボン……ッ ドボン!
162: 2014/06/22(日) 16:22:59.06 ID:aX4HW53+0
勇者「…… ……」
青年「大丈夫……深呼吸して、勇者様」
勇者「う、うん」スゥッ
青年「…… ……」スッ
勇者「え?」
青年「手」
勇者「あ……ああ、うん」ギュ
青年「……魔導師と変わった方が良いかい」
勇者「……しつこいよ、青年」
青年「…… ……」ギュ
青年「行くよ」
勇者「…… ……うん」
ドボン、ドボン!
青年「剣士達について行こう……泳げるね?」
勇者「……大丈夫」
ザバ、ザバ……
剣士「……勇者達は……来ているな」
魔導師「青年さんが一緒ですし、大丈夫でしょう」
剣士「さっさと上陸しないとな……襲われたら厄介だ」
魔導師「……以前、剣士さん一人で来られた時」
剣士「? なんだ」
青年「大丈夫……深呼吸して、勇者様」
勇者「う、うん」スゥッ
青年「…… ……」スッ
勇者「え?」
青年「手」
勇者「あ……ああ、うん」ギュ
青年「……魔導師と変わった方が良いかい」
勇者「……しつこいよ、青年」
青年「…… ……」ギュ
青年「行くよ」
勇者「…… ……うん」
ドボン、ドボン!
青年「剣士達について行こう……泳げるね?」
勇者「……大丈夫」
ザバ、ザバ……
剣士「……勇者達は……来ているな」
魔導師「青年さんが一緒ですし、大丈夫でしょう」
剣士「さっさと上陸しないとな……襲われたら厄介だ」
魔導師「……以前、剣士さん一人で来られた時」
剣士「? なんだ」
163: 2014/06/22(日) 16:36:29.03 ID:aX4HW53+0
魔導師「いえ……後にします。洞窟に着いてから」
剣士「……ああ」
魔導師「今余計な話して、おぼれるの嫌ですしね」
剣士「そういえば……お前泳げないとか言って無かったのか」
魔導師「……わかってて一緒に来てくださったんじゃ無いんですか?」
剣士「……何?」
魔導師「ここは幸い足がつきますけど……ずっとそうじゃないですよね?」
剣士「…… ……抱えて泳げ、と?」
魔導師「駄目なら転移できるから……なのかな、と……」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「かろうじて足がつくだろう……多分、な」ハァ
ザバザバ
魔導師「あ……お、おいていかないでください!?」
ザバ、ザバ
青年「……なんだ、足つくんだな。勇者様、手をつないだ侭で良いね」
勇者「う、う……私ぎりぎり……うん……ッ」ケホッ
青年「なるべくくっついてな……よいしょ」
ザバザバ
勇者「…… ……ッ」クシュッ
青年「寒い?」
勇者「ううん、大丈夫…… ……あ、あれか」
剣士「……ああ」
魔導師「今余計な話して、おぼれるの嫌ですしね」
剣士「そういえば……お前泳げないとか言って無かったのか」
魔導師「……わかってて一緒に来てくださったんじゃ無いんですか?」
剣士「……何?」
魔導師「ここは幸い足がつきますけど……ずっとそうじゃないですよね?」
剣士「…… ……抱えて泳げ、と?」
魔導師「駄目なら転移できるから……なのかな、と……」
剣士「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「かろうじて足がつくだろう……多分、な」ハァ
ザバザバ
魔導師「あ……お、おいていかないでください!?」
ザバ、ザバ
青年「……なんだ、足つくんだな。勇者様、手をつないだ侭で良いね」
勇者「う、う……私ぎりぎり……うん……ッ」ケホッ
青年「なるべくくっついてな……よいしょ」
ザバザバ
勇者「…… ……ッ」クシュッ
青年「寒い?」
勇者「ううん、大丈夫…… ……あ、あれか」
164: 2014/06/22(日) 16:50:56.32 ID:aX4HW53+0
ザバザバ
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「……すみません」
青年「何でそんなに疲れてんの、二人とも」
ザバッ
青年「勇者様、ひっぱるよ……っと」
勇者「うん……んっ」トン
魔導師「……あの洞窟ですね」
青年「あれ、お前手ぶらだったか?」
魔導師「剣士さんに持ってもらいましたよ。僕泳げないんで」
剣士「…… ……もう良いだろう、ほら」ポイッ
魔導師「あ、あああ放らないでください!」
勇者(剣士が疲れてるのはそれか……)クス
魔導師「……何笑ってるんです」
勇者「え、いやいや……ごめん」
青年「……魔物の気配が無いな。剣士の話どおりだ」
剣士「…… ……」ハァ
魔導師「……すみません」
青年「何でそんなに疲れてんの、二人とも」
ザバッ
青年「勇者様、ひっぱるよ……っと」
勇者「うん……んっ」トン
魔導師「……あの洞窟ですね」
青年「あれ、お前手ぶらだったか?」
魔導師「剣士さんに持ってもらいましたよ。僕泳げないんで」
剣士「…… ……もう良いだろう、ほら」ポイッ
魔導師「あ、あああ放らないでください!」
勇者(剣士が疲れてるのはそれか……)クス
魔導師「……何笑ってるんです」
勇者「え、いやいや……ごめん」
青年「……魔物の気配が無いな。剣士の話どおりだ」
165: 2014/06/22(日) 17:26:50.54 ID:aX4HW53+0
勇者「私が小さい頃に……剣士が一人で来たんだよね、ここに」
スタスタ
剣士「ああ……鉱石の欠片でも持ち帰れれば良かったんだがな」
青年「あれ、どうしたんだ? ……砂みたいな奴」
勇者「砂?」
魔導師「剣士さんが持ち帰ってくれた鉱石です」
勇者「え?でも今……」
剣士「……欠片とは言えん。砂の様に……もろく崩れてしまうんだ」
魔導師「だから、これ……鍛冶師様の残してくれた……というか、まあ」
魔導師「始まりの国が焼けたときに持ち出した道具、ね」ガサ
勇者「ああ……剣士に持たしてた奴ね」
魔導師「はい。これがあれば……少しぐらいは、持ち帰れるかもしれませんからね」
ガサ……
勇者「ん?」キョロ
青年「勇者様?」
勇者「……なんか、音聞こえなかった?」
魔導師「え?」
剣士「…… ……」スッ
青年「……? どうし…… ……ッ」
ガサ……ガサ……ッ グルル……ッ
勇者「!」
魔導師「魔物の声……ッ どこから……!?」
スタスタ
剣士「ああ……鉱石の欠片でも持ち帰れれば良かったんだがな」
青年「あれ、どうしたんだ? ……砂みたいな奴」
勇者「砂?」
魔導師「剣士さんが持ち帰ってくれた鉱石です」
勇者「え?でも今……」
剣士「……欠片とは言えん。砂の様に……もろく崩れてしまうんだ」
魔導師「だから、これ……鍛冶師様の残してくれた……というか、まあ」
魔導師「始まりの国が焼けたときに持ち出した道具、ね」ガサ
勇者「ああ……剣士に持たしてた奴ね」
魔導師「はい。これがあれば……少しぐらいは、持ち帰れるかもしれませんからね」
ガサ……
勇者「ん?」キョロ
青年「勇者様?」
勇者「……なんか、音聞こえなかった?」
魔導師「え?」
剣士「…… ……」スッ
青年「……? どうし…… ……ッ」
ガサ……ガサ……ッ グルル……ッ
勇者「!」
魔導師「魔物の声……ッ どこから……!?」
167: 2014/06/22(日) 17:47:18.00 ID:aX4HW53+0
剣士(気配は感じなかったぞ!? ……音は…… あっちか……)スゥッ
剣士「炎…… ……」
勇者「待って!」
青年「!?」
グゥ…… グルルル……ッ
魔導師「あ……」
勇者「あれ……まだ、赤ちゃんだよ……?」
剣士「……と言うことは、親が側に居るはずだ」
グルルル……ッ
勇者「……ッ 剣士……ッ」
剣士「……かわいそう、と言いたいのか?」
勇者「…… ……」
青年「ちょっと、無駄話してる暇は無いでしょ」キリキリキリ……
勇者「!」
魔導師「……本当に赤ちゃん、なら。親が側に居ます」
魔導師「群れで襲われたら…… ……わかりますね?」
青年「……そういうこと」シュン!
勇者「!!」
ドス! ……キャァアン!!
勇者(外した……違う! わざと足下を狙ったんだ……!)
青年「……これで逃げてくれれば良かったんだけど」キリ……ッ
魔導師「……氷よ!」
青年「!?」
ピキピキ……ッ ギャ、ア…… ……ァア……ッ
勇者「あ……ッ」
剣士「炎…… ……」
勇者「待って!」
青年「!?」
グゥ…… グルルル……ッ
魔導師「あ……」
勇者「あれ……まだ、赤ちゃんだよ……?」
剣士「……と言うことは、親が側に居るはずだ」
グルルル……ッ
勇者「……ッ 剣士……ッ」
剣士「……かわいそう、と言いたいのか?」
勇者「…… ……」
青年「ちょっと、無駄話してる暇は無いでしょ」キリキリキリ……
勇者「!」
魔導師「……本当に赤ちゃん、なら。親が側に居ます」
魔導師「群れで襲われたら…… ……わかりますね?」
青年「……そういうこと」シュン!
勇者「!!」
ドス! ……キャァアン!!
勇者(外した……違う! わざと足下を狙ったんだ……!)
青年「……これで逃げてくれれば良かったんだけど」キリ……ッ
魔導師「……氷よ!」
青年「!?」
ピキピキ……ッ ギャ、ア…… ……ァア……ッ
勇者「あ……ッ」
168: 2014/06/22(日) 17:58:13.98 ID:aX4HW53+0
魔導師「……勇者様の気持ちを尊重した、とかでは無いんですよ」フゥ
勇者「…… ……」
青年「……おやまぁ」コン
剣士「氷付け、か……」
魔導師「早々溶ける事は無いと思いますけどね……まあ」
魔導師「溶けたところで、生き返るなんて保証は全くありませんし」
魔導師「……腐っていくのが先延ばしされるぐらい、でしょうけど」フゥ
勇者「…… ……」
青年「行くよ、勇者様」グイッ
勇者「あ……ッ」
青年「のんびりしてる暇は無い。多分本当に、側に親だか群れだか居ると考えてしかるべきだ」
剣士「……そうだな。早く洞窟の中に入ろう」
スタスタ
魔導師「…… ……」
勇者「…… ……」
青年「……おやまぁ」コン
剣士「氷付け、か……」
魔導師「早々溶ける事は無いと思いますけどね……まあ」
魔導師「溶けたところで、生き返るなんて保証は全くありませんし」
魔導師「……腐っていくのが先延ばしされるぐらい、でしょうけど」フゥ
勇者「…… ……」
青年「行くよ、勇者様」グイッ
勇者「あ……ッ」
青年「のんびりしてる暇は無い。多分本当に、側に親だか群れだか居ると考えてしかるべきだ」
剣士「……そうだな。早く洞窟の中に入ろう」
スタスタ
魔導師「…… ……」
199: 2014/06/29(日) 10:02:43.52 ID:j5+2mzeP0
青年「魔導師?」
魔導師「……あ、いえ…… ……行きましょう」
スタスタ
勇者「…… ……」
青年「勇者様も、早く……」
勇者「…… ……」ナデ
青年「……氷撫でても冷たいだけでしょ」
勇者「魔導師の氷の魔法……簡単には溶けない……よね」
青年「…… ……」
勇者「……ごめん。行こう」
スタスタ
青年「…… ……」
タタタ……ッ
剣士「ここだ……この中。この奥の壁一面が、あの鉱石で覆われている」
剣士「……炎よ」ボゥッ
魔導師「!? 剣士さん、何を……」
剣士「明かり代わりだ。俺だけなら良いが……勇者も居る」
剣士「中は薄暗いからな」
青年「便利だな、君は」クス
勇者「……器用、って言うんじゃ無いの」
剣士「コントロールを覚えれば出来るだろう……行くぞ」
コツン。コツン……
魔導師「……あ、いえ…… ……行きましょう」
スタスタ
勇者「…… ……」
青年「勇者様も、早く……」
勇者「…… ……」ナデ
青年「……氷撫でても冷たいだけでしょ」
勇者「魔導師の氷の魔法……簡単には溶けない……よね」
青年「…… ……」
勇者「……ごめん。行こう」
スタスタ
青年「…… ……」
タタタ……ッ
剣士「ここだ……この中。この奥の壁一面が、あの鉱石で覆われている」
剣士「……炎よ」ボゥッ
魔導師「!? 剣士さん、何を……」
剣士「明かり代わりだ。俺だけなら良いが……勇者も居る」
剣士「中は薄暗いからな」
青年「便利だな、君は」クス
勇者「……器用、って言うんじゃ無いの」
剣士「コントロールを覚えれば出来るだろう……行くぞ」
コツン。コツン……
200: 2014/06/29(日) 10:40:44.61 ID:j5+2mzeP0
勇者(剣士はコントロールって言うけど……そんな簡単に)ハァ
勇者(さっきの魔導師の魔法もそうだ……小さい時の事なんて覚えてないけど)
勇者(……でも、元々魔導師は、将来を期待されてた、って聞いた)
勇者(赤ちゃん、って言ったって、魔物…… ……かわいそう、なんて)
勇者(思っちゃいけない、んだろうけど……)ハァ
コツン、コツン
青年(素質だ、才能だ……そんな物はどうでも良い)
青年(……やっぱり、僕がとどめを刺しておくべきだったか?)
青年(否。血のにおいに惹かれて集まってこられても困る)
青年(……魔導師の策が最適だった。筈だ……でも)フゥ
青年(勇者様は……『仕方ない』と口にしただろう。でも……もし)
青年(僕がとどめを刺していたら……きっと、悲しんだだろう)
青年(……それが、なんだ。糞……ッ)チラ
魔導師「……剣士さん、もう少し前の方を照らせますか」
剣士「それほど深い洞窟じゃない……ほら、あそこだ」
青年(……人間同士。良いじゃ無いか、それで)
青年(あの……『金髪紫瞳の男』の事なんか……)
コツン、コツ
勇者「?」スッ
勇者「……わぁ!」
青年「……なんだ、もう到着か」
魔導師「こ、れは……凄……い……」
勇者「こ、これ……壁一面!?」
魔導師「…… ……」コンコン
魔導師「ふむ…… ……一見、と言うか。触った感じは……」
剣士「見てろ……こうして、柄で……」コン
パラパラ……
魔導師「!」
勇者(さっきの魔導師の魔法もそうだ……小さい時の事なんて覚えてないけど)
勇者(……でも、元々魔導師は、将来を期待されてた、って聞いた)
勇者(赤ちゃん、って言ったって、魔物…… ……かわいそう、なんて)
勇者(思っちゃいけない、んだろうけど……)ハァ
コツン、コツン
青年(素質だ、才能だ……そんな物はどうでも良い)
青年(……やっぱり、僕がとどめを刺しておくべきだったか?)
青年(否。血のにおいに惹かれて集まってこられても困る)
青年(……魔導師の策が最適だった。筈だ……でも)フゥ
青年(勇者様は……『仕方ない』と口にしただろう。でも……もし)
青年(僕がとどめを刺していたら……きっと、悲しんだだろう)
青年(……それが、なんだ。糞……ッ)チラ
魔導師「……剣士さん、もう少し前の方を照らせますか」
剣士「それほど深い洞窟じゃない……ほら、あそこだ」
青年(……人間同士。良いじゃ無いか、それで)
青年(あの……『金髪紫瞳の男』の事なんか……)
コツン、コツ
勇者「?」スッ
勇者「……わぁ!」
青年「……なんだ、もう到着か」
魔導師「こ、れは……凄……い……」
勇者「こ、これ……壁一面!?」
魔導師「…… ……」コンコン
魔導師「ふむ…… ……一見、と言うか。触った感じは……」
剣士「見てろ……こうして、柄で……」コン
パラパラ……
魔導師「!」
201: 2014/06/29(日) 10:47:30.28 ID:j5+2mzeP0
青年「……曾御爺様は、どうやって持ち帰ったんだかな」ハァ
魔導師「……とにかく、やってみます」
魔導師「青年さんと剣士さんは、見張りをお願いしますね」
魔導師「……あ、やっぱり剣士さん、手伝ってください。明かりがいるし……」
剣士「ああ」
青年「じゃあ、勇者様と僕はこっちで…… ……ん?」
勇者「うん…… ……ん?」
チカチカ
青年「…… ……」ジィ
勇者「え。な、何?」
青年「……光ってる」
勇者「??」
青年「君の背……光の剣だ!」
勇者「え!?」
魔導師「…… ……」コン、コン……ボロ……ッ
魔導師「ああ……ッ すみません、剣士さん、やっぱりちょっと離れてください」
魔導師「炎に負けてる……」
剣士「……消すか」
魔導師「ああ、駄目です!明かりはいります……!」
剣士「無茶言うな!」
青年「……ありゃ今何言っても一緒だな。こっちへ」グイッ
勇者「あ、う、うん……」タタ……
魔導師「……とにかく、やってみます」
魔導師「青年さんと剣士さんは、見張りをお願いしますね」
魔導師「……あ、やっぱり剣士さん、手伝ってください。明かりがいるし……」
剣士「ああ」
青年「じゃあ、勇者様と僕はこっちで…… ……ん?」
勇者「うん…… ……ん?」
チカチカ
青年「…… ……」ジィ
勇者「え。な、何?」
青年「……光ってる」
勇者「??」
青年「君の背……光の剣だ!」
勇者「え!?」
魔導師「…… ……」コン、コン……ボロ……ッ
魔導師「ああ……ッ すみません、剣士さん、やっぱりちょっと離れてください」
魔導師「炎に負けてる……」
剣士「……消すか」
魔導師「ああ、駄目です!明かりはいります……!」
剣士「無茶言うな!」
青年「……ありゃ今何言っても一緒だな。こっちへ」グイッ
勇者「あ、う、うん……」タタ……
202: 2014/06/29(日) 11:00:00.71 ID:j5+2mzeP0
青年「後ろ向いて……」
勇者「…… ……どう?」クルッ
青年「…… ……」ゴソゴソ、シュル……
青年「……光ってるな、間違い無く」
勇者「…… ……」チラ
青年「? ……ああ」
青年(剣士を見てるのか……確かに、あいつは『欠片』)
青年(光の剣に何かがあるとするのなら……あいつの身にも何か……)チラ
剣士「……駄目だな」
魔導師「ですね……仕方ありません、僕一人でやります」ハァ
青年「勇者様、これ持って……ちょっと待っててね」
スタスタ
勇者「あ、うん……」
青年「おい、二人とも」
剣士「? 何だ」
魔導師「青年さん、後で……」
青年「勇者様を見ろ……光の剣が光ってるんだ」
魔導師「……え?」クルッ
剣士「何?」クルッ
勇者「…… ……あ、えっと。うん。ほら」スッ
チカチカ
勇者「…… ……どう?」クルッ
青年「…… ……」ゴソゴソ、シュル……
青年「……光ってるな、間違い無く」
勇者「…… ……」チラ
青年「? ……ああ」
青年(剣士を見てるのか……確かに、あいつは『欠片』)
青年(光の剣に何かがあるとするのなら……あいつの身にも何か……)チラ
剣士「……駄目だな」
魔導師「ですね……仕方ありません、僕一人でやります」ハァ
青年「勇者様、これ持って……ちょっと待っててね」
スタスタ
勇者「あ、うん……」
青年「おい、二人とも」
剣士「? 何だ」
魔導師「青年さん、後で……」
青年「勇者様を見ろ……光の剣が光ってるんだ」
魔導師「……え?」クルッ
剣士「何?」クルッ
勇者「…… ……あ、えっと。うん。ほら」スッ
チカチカ
203: 2014/06/29(日) 11:17:12.79 ID:j5+2mzeP0
魔導師「…… ……え」
勇者「……あ、あの、えっと」
剣士「いつからだ?」
青年「気がついたら……だが、ここに入ってから、じゃ無いか」
魔導師「剣士さんの魔法に反応した……訳では無いですよね」
勇者「それは……うん。今までこんな事なかったでしょ?」
剣士「…… ……」
青年「何とも無いのか」
剣士「俺か? ……ああ、特に……」
魔導師「……と、すれば、こっち」コン
魔導師「ですよね、この鉱石」
青年「……曾御爺様がこの鉱石を使って修理した、から? ……しかし」
剣士「鍛冶師が修理した部分は……紫の魔王と金の髪の勇者が」
剣士「対峙した時に、崩れ落ちたと聞いているが」
魔導師「…… ……しかし、貴方が何も感じない、のなら」
青年「そう考える方が妥当、だと言うのはわかるが……」
剣士「……見せてみろ」スッ
勇者「! 駄目!」バッ
剣士「!」
勇者「……ッ ご、ごめん、でも……ッ」
剣士「……俺の身に何かあれば、か」
剣士「気持ちは……ありがたい、だが」
魔導師「ですが……剣士さんは、あまり触れられない方が良いと思います、僕も」
剣士「……尚更、だ」
勇者「え?」
剣士「……黒髪の魔王。現魔王……と、俺は」
剣士「『触らない方が良い』だろうと、皆の見解も一致していた、が」
剣士「……これが、意味が無い……と、思うか?」スッ
勇者「で、でも……」
剣士「……勇者」ハァ
勇者「え?」
剣士「『俺たち』は何の為に旅をしている?」
勇者「……え」
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「『魔王を倒す』……そして」
青年「……『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』だろう」
勇者「……あ、あの、えっと」
剣士「いつからだ?」
青年「気がついたら……だが、ここに入ってから、じゃ無いか」
魔導師「剣士さんの魔法に反応した……訳では無いですよね」
勇者「それは……うん。今までこんな事なかったでしょ?」
剣士「…… ……」
青年「何とも無いのか」
剣士「俺か? ……ああ、特に……」
魔導師「……と、すれば、こっち」コン
魔導師「ですよね、この鉱石」
青年「……曾御爺様がこの鉱石を使って修理した、から? ……しかし」
剣士「鍛冶師が修理した部分は……紫の魔王と金の髪の勇者が」
剣士「対峙した時に、崩れ落ちたと聞いているが」
魔導師「…… ……しかし、貴方が何も感じない、のなら」
青年「そう考える方が妥当、だと言うのはわかるが……」
剣士「……見せてみろ」スッ
勇者「! 駄目!」バッ
剣士「!」
勇者「……ッ ご、ごめん、でも……ッ」
剣士「……俺の身に何かあれば、か」
剣士「気持ちは……ありがたい、だが」
魔導師「ですが……剣士さんは、あまり触れられない方が良いと思います、僕も」
剣士「……尚更、だ」
勇者「え?」
剣士「……黒髪の魔王。現魔王……と、俺は」
剣士「『触らない方が良い』だろうと、皆の見解も一致していた、が」
剣士「……これが、意味が無い……と、思うか?」スッ
勇者「で、でも……」
剣士「……勇者」ハァ
勇者「え?」
剣士「『俺たち』は何の為に旅をしている?」
勇者「……え」
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
剣士「『魔王を倒す』……そして」
青年「……『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』だろう」
204: 2014/06/29(日) 11:26:24.52 ID:j5+2mzeP0
魔導師「…… ……」
剣士「……お前達が色々と、俺が消滅しないように、と」
勇者「!」
剣士「模索して……くれている、のは知っている。気持ちはありがたいと」
剣士「素直に思う……『向こう側を否定する』事も」
剣士「別に……反対する訳では無い。だが」
剣士「この間の青年の『夢』の話を聞いて、尚更……思った」
魔導師「……避けて通れない、ですか」
勇者「魔導師!?」
青年「剣士」
剣士「……睨むな。あれは自分で話す事だ……お前が」
青年「…… ……」
魔導師「……?」
剣士「……俺たちは、確かに色々と否定して……来た、つもりだ」
勇者「つもり……?」
剣士「そうだ……青年のその夢の話にもあっただろう」
剣士「『あの時黒髪の勇者が、魔法使いでは無く僧侶を選んでいたら?』」
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
勇者「…… ……」
剣士「魔王達の居る場所から、『干渉』出来てしまった。しかしそれは」
剣士「……『違う道』を歩んだように見える。だが、結局は」
剣士「それ自身を……自らの手で『否定』したのと同じだ」
青年「待て! ……そんな事を言えば、今の僕らの行動が意味の無い事になる!」
剣士「そうは言わん……否、言いたくない、と言うのが正解かもしれないが」ハァ
剣士「……変えられない部分もあるのだ、と言う事は……頭に入れておくべきだ」
魔導師「…… ……」
剣士「魔導師、さっき言いかけた話は何だ?」
魔導師「え?」
剣士「……海を渡っている時に。向こうで言うと言っただろう」
剣士「……お前達が色々と、俺が消滅しないように、と」
勇者「!」
剣士「模索して……くれている、のは知っている。気持ちはありがたいと」
剣士「素直に思う……『向こう側を否定する』事も」
剣士「別に……反対する訳では無い。だが」
剣士「この間の青年の『夢』の話を聞いて、尚更……思った」
魔導師「……避けて通れない、ですか」
勇者「魔導師!?」
青年「剣士」
剣士「……睨むな。あれは自分で話す事だ……お前が」
青年「…… ……」
魔導師「……?」
剣士「……俺たちは、確かに色々と否定して……来た、つもりだ」
勇者「つもり……?」
剣士「そうだ……青年のその夢の話にもあっただろう」
剣士「『あの時黒髪の勇者が、魔法使いでは無く僧侶を選んでいたら?』」
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
勇者「…… ……」
剣士「魔王達の居る場所から、『干渉』出来てしまった。しかしそれは」
剣士「……『違う道』を歩んだように見える。だが、結局は」
剣士「それ自身を……自らの手で『否定』したのと同じだ」
青年「待て! ……そんな事を言えば、今の僕らの行動が意味の無い事になる!」
剣士「そうは言わん……否、言いたくない、と言うのが正解かもしれないが」ハァ
剣士「……変えられない部分もあるのだ、と言う事は……頭に入れておくべきだ」
魔導師「…… ……」
剣士「魔導師、さっき言いかけた話は何だ?」
魔導師「え?」
剣士「……海を渡っている時に。向こうで言うと言っただろう」
205: 2014/06/29(日) 11:39:10.78 ID:j5+2mzeP0
魔導師「ああ……一人で来られたときは、魔物に会わなかったのですか、と」
剣士「……船の上で何度か戦闘はしたが」
魔導師「……そうですか」
剣士「それがどうした?」
魔導師「……いえ。魔王の復活に際しては、魔物が強くなり、数も増える筈なのに……」
青年「居たじゃないか、さっき」
魔導師「……まあ、そうですけど。でも赤ちゃんでしたよ」
勇者「…… ……」
魔導師「親なり、群れなりが寄ってこないうちに、とは思いましたけど」
魔導師「……赤ちゃん単独で、って言うのも……おかしいなぁって思いません?」
剣士「……まあ、そうだが」
青年「剣士も魔導師も……そんな話をしてる場合じゃ無いだろ?」
剣士「……すまん。話の腰を折ったな」
剣士「……船の上で何度か戦闘はしたが」
魔導師「……そうですか」
剣士「それがどうした?」
魔導師「……いえ。魔王の復活に際しては、魔物が強くなり、数も増える筈なのに……」
青年「居たじゃないか、さっき」
魔導師「……まあ、そうですけど。でも赤ちゃんでしたよ」
勇者「…… ……」
魔導師「親なり、群れなりが寄ってこないうちに、とは思いましたけど」
魔導師「……赤ちゃん単独で、って言うのも……おかしいなぁって思いません?」
剣士「……まあ、そうだが」
青年「剣士も魔導師も……そんな話をしてる場合じゃ無いだろ?」
剣士「……すまん。話の腰を折ったな」
220: 2014/07/02(水) 09:45:09.80 ID:HIfWSapb0
剣士「魔導師」
魔導師「は、はい」
剣士「『向こう側』では、后の炎で光の剣を鍛え、俺の力を注ごうとした」
魔導師「……はい」
剣士「だが結果……俺の中に光が吸い取られる様に見えた、んだったな」
青年「……おい」
魔導師「そう……です」
剣士「俺が全てを思い出し、実際に光の剣を……完璧に戻したのは」
剣士「……勇者が、魔王になってから」
魔導師「……はい。勇者様が黒髪の魔王様と対峙され、倒された……否」
魔導師「新たな魔王となられる時の衝撃で思い出された……んだと思います」
剣士「…… ……」
勇者「……剣士? 何を……」
剣士「心配するな。俺は……『向こう側の俺』と違って」
剣士「記憶が無い状態、の侭だ」
勇者「え?」
剣士「……知識として知っている、に過ぎない」
青年「……とは言え、だ。急にそんな話をしだしてさ」
青年「物騒なこと、企んでるんじゃないかって、心配するのは……」
剣士「当然とは言わんが……理解は出来る」
魔導師「は、はい」
剣士「『向こう側』では、后の炎で光の剣を鍛え、俺の力を注ごうとした」
魔導師「……はい」
剣士「だが結果……俺の中に光が吸い取られる様に見えた、んだったな」
青年「……おい」
魔導師「そう……です」
剣士「俺が全てを思い出し、実際に光の剣を……完璧に戻したのは」
剣士「……勇者が、魔王になってから」
魔導師「……はい。勇者様が黒髪の魔王様と対峙され、倒された……否」
魔導師「新たな魔王となられる時の衝撃で思い出された……んだと思います」
剣士「…… ……」
勇者「……剣士? 何を……」
剣士「心配するな。俺は……『向こう側の俺』と違って」
剣士「記憶が無い状態、の侭だ」
勇者「え?」
剣士「……知識として知っている、に過ぎない」
青年「……とは言え、だ。急にそんな話をしだしてさ」
青年「物騒なこと、企んでるんじゃないかって、心配するのは……」
剣士「当然とは言わんが……理解は出来る」
221: 2014/07/02(水) 10:16:35.31 ID:HIfWSapb0
幼稚園から呼び出しがorz
ごめん、中断!
ごめん、中断!
226: 2014/07/03(木) 11:18:45.74 ID:zvdR+UZq0
勇者「剣士…… ねえ、やめて、よ?」
剣士「……魔導師、作業を続けてくれ」
魔導師「大体の想像はつきます。でも……無理です、剣士さん」
魔導師「僕には……出来ない」
勇者「…… ……」ホッ
青年「まだ早いんじゃない、勇者様」ボソ
勇者「え?」
魔導師「確かに、鍛冶師様の道具は持ってきました……でも」
魔導師「採掘できたと仮定しても、此処で剣を鍛え直す事はできません」
剣士「…… ……」
魔導師「道具も、火も……足りません。だから……」
剣士「……鍛えた剣に俺が触れ、向こう側を繰り返す、と言いたいのだろうが」
青年「このままでも充分、って言いたいのか」
勇者「!?」
剣士「何故光っているのか。俺が『欠片』で『魔王達の残留思念』そして」
剣士「……『光の剣』自体の欠片でもあるのなら」
勇者「え!?」
剣士「……でなければ、向こう側で俺が消滅し、剣が直った事実を」
剣士「どう説明つける」
魔導師「……今の侭で充分だと言うのなら、どうして僕に作業を続けさせるのですか?」
剣士「念のため、だ。俺の考えが……もし、真実に近いなら」
剣士「剣は……俺は、覚えて居るはずだ」
青年「? 何をだ」
剣士「……この鉱石が一時期、『一緒であった事』」
勇者「だ……ッ だから、って!」
剣士「推測だ。だが、試せる事があるのならばやってみるべきだろう」
剣士「……ずっと思っていた。今も思っている。気持ちはありがたい」
剣士「だが…… ……それに甘んじる事はできん」
剣士「……魔導師、作業を続けてくれ」
魔導師「大体の想像はつきます。でも……無理です、剣士さん」
魔導師「僕には……出来ない」
勇者「…… ……」ホッ
青年「まだ早いんじゃない、勇者様」ボソ
勇者「え?」
魔導師「確かに、鍛冶師様の道具は持ってきました……でも」
魔導師「採掘できたと仮定しても、此処で剣を鍛え直す事はできません」
剣士「…… ……」
魔導師「道具も、火も……足りません。だから……」
剣士「……鍛えた剣に俺が触れ、向こう側を繰り返す、と言いたいのだろうが」
青年「このままでも充分、って言いたいのか」
勇者「!?」
剣士「何故光っているのか。俺が『欠片』で『魔王達の残留思念』そして」
剣士「……『光の剣』自体の欠片でもあるのなら」
勇者「え!?」
剣士「……でなければ、向こう側で俺が消滅し、剣が直った事実を」
剣士「どう説明つける」
魔導師「……今の侭で充分だと言うのなら、どうして僕に作業を続けさせるのですか?」
剣士「念のため、だ。俺の考えが……もし、真実に近いなら」
剣士「剣は……俺は、覚えて居るはずだ」
青年「? 何をだ」
剣士「……この鉱石が一時期、『一緒であった事』」
勇者「だ……ッ だから、って!」
剣士「推測だ。だが、試せる事があるのならばやってみるべきだろう」
剣士「……ずっと思っていた。今も思っている。気持ちはありがたい」
剣士「だが…… ……それに甘んじる事はできん」
227: 2014/07/03(木) 11:28:29.77 ID:zvdR+UZq0
剣士「『魔王を倒す』……記憶の無い俺には、それしかない」
魔導師「…… ……」
スタスタ、コンコン……
勇者「魔導師!?」
魔導師「……僕も一緒です。勇者様もでしょ?」コンコン……サラサラ
魔導師「魔王を倒す者…… ……それが『勇者』です」
青年「魔導師!」
魔導師「……どうして、癒し手様は亡くなったのです」
青年「!?」
魔導師「本当ならばもう少し、生きられた……否、エルフの長であれば」
魔導師「実際のご寿命だったのかもしれません。でも」
魔導師「……何を思って、貴方に託したのです、青年さん」コン……
青年「…… ……ッ」
剣士「……勇者、光の剣を」スッ
勇者「……ッ」ガシッ フルフル
剣士「駄々をこねるな…… ……お前は、世界を救う勇者だ」
剣士「あれほど、何度も言っていただろう」
剣士「『私は魔王に等なりたくない』と」
勇者「…… ……ッ」ポロポロ
青年「…… ……」
魔導師「……駄目ですね。どれだけ削っても一緒だ」フゥ
剣士「形にはならんか……」
魔導師「本当に……凄いお方だったのだ、と想像はつきます。鍛冶師様……」
青年「…… ……」
剣士「……勇者」
勇者「!」ビクッ
剣士「俺達だけじゃ無い。お前の親だけでも無い」
剣士「……紫の魔王に関わった全ての者達……どんな思いで」
剣士「親しみを覚え、傍で共に過ごしてきた者達が」
剣士「……『魔王』を倒し、『世界』を救えと」
勇者「…… ……」
剣士「口にしてきたか……もう一度、考え……否」
剣士「『想って』……見て欲しい」
勇者「…… ……」ポロポロ
魔導師「…… ……」
スタスタ、コンコン……
勇者「魔導師!?」
魔導師「……僕も一緒です。勇者様もでしょ?」コンコン……サラサラ
魔導師「魔王を倒す者…… ……それが『勇者』です」
青年「魔導師!」
魔導師「……どうして、癒し手様は亡くなったのです」
青年「!?」
魔導師「本当ならばもう少し、生きられた……否、エルフの長であれば」
魔導師「実際のご寿命だったのかもしれません。でも」
魔導師「……何を思って、貴方に託したのです、青年さん」コン……
青年「…… ……ッ」
剣士「……勇者、光の剣を」スッ
勇者「……ッ」ガシッ フルフル
剣士「駄々をこねるな…… ……お前は、世界を救う勇者だ」
剣士「あれほど、何度も言っていただろう」
剣士「『私は魔王に等なりたくない』と」
勇者「…… ……ッ」ポロポロ
青年「…… ……」
魔導師「……駄目ですね。どれだけ削っても一緒だ」フゥ
剣士「形にはならんか……」
魔導師「本当に……凄いお方だったのだ、と想像はつきます。鍛冶師様……」
青年「…… ……」
剣士「……勇者」
勇者「!」ビクッ
剣士「俺達だけじゃ無い。お前の親だけでも無い」
剣士「……紫の魔王に関わった全ての者達……どんな思いで」
剣士「親しみを覚え、傍で共に過ごしてきた者達が」
剣士「……『魔王』を倒し、『世界』を救えと」
勇者「…… ……」
剣士「口にしてきたか……もう一度、考え……否」
剣士「『想って』……見て欲しい」
勇者「…… ……」ポロポロ
228: 2014/07/03(木) 11:47:53.35 ID:zvdR+UZq0
魔導師「剣士さん、これを」スッパラパラ……
剣士「…… ……」ギュ
青年「握りしめたからって、何か変わるのか」
魔導師「……考えつく限りをやってみるのは、悪い事じゃ無いでしょ」
勇者「ど……ッ どうやって、帰るの!?」
青年「!?」
勇者「剣士が居ないと船、動かせないよ! そ、それに……ッ」
勇者「わ、わたし、私達は、仲間でしょ……!?」ボロボロボロ
魔導師「……勇者様」
青年「…… ……」
剣士「船の運転ならば、青年でも出来る。それに……」
勇者「て、転移は!? 転移なんて……!」
青年「勇者様、こんな時に……!」
魔導師「シィ…… ……引き留めたい、のは同じでしょう」
青年「…… ……」
魔導師「僕達じゃ、無茶苦茶な……我が儘なんて、口に出来ないでしょ」ボソ
青年「…… ……ッ」
剣士「勇者」
勇者「……ッ」
剣士「願えば叶う」
勇者「……ッ う、ぇ……ッ」ウワアアアアアア
剣士「……光の剣を。勇者」スッ
勇者「……ッ ゥ、う…… ……ッ」スッ
青年「剣士! 待て……ッ」
魔導師「青年さん、お情際悪いですよ」
青年「魔導師、お前……ッ」ハッ
魔導師「…… ……」ポロポロ
剣士「…… ……」
勇者「……剣士」
剣士「……?」
勇者「決心が鈍る前に、早く……ッ」
剣士「……ああ」
青年「勇者様、僕の後ろに……何があるかわからないから」
勇者「う、うん……」
魔導師「……では、剣士さん……柄を握って………願ってください」
剣士「…… ……」ギュ……!
チカチカ……パァ!
剣士「…… ……」ギュ
青年「握りしめたからって、何か変わるのか」
魔導師「……考えつく限りをやってみるのは、悪い事じゃ無いでしょ」
勇者「ど……ッ どうやって、帰るの!?」
青年「!?」
勇者「剣士が居ないと船、動かせないよ! そ、それに……ッ」
勇者「わ、わたし、私達は、仲間でしょ……!?」ボロボロボロ
魔導師「……勇者様」
青年「…… ……」
剣士「船の運転ならば、青年でも出来る。それに……」
勇者「て、転移は!? 転移なんて……!」
青年「勇者様、こんな時に……!」
魔導師「シィ…… ……引き留めたい、のは同じでしょう」
青年「…… ……」
魔導師「僕達じゃ、無茶苦茶な……我が儘なんて、口に出来ないでしょ」ボソ
青年「…… ……ッ」
剣士「勇者」
勇者「……ッ」
剣士「願えば叶う」
勇者「……ッ う、ぇ……ッ」ウワアアアアアア
剣士「……光の剣を。勇者」スッ
勇者「……ッ ゥ、う…… ……ッ」スッ
青年「剣士! 待て……ッ」
魔導師「青年さん、お情際悪いですよ」
青年「魔導師、お前……ッ」ハッ
魔導師「…… ……」ポロポロ
剣士「…… ……」
勇者「……剣士」
剣士「……?」
勇者「決心が鈍る前に、早く……ッ」
剣士「……ああ」
青年「勇者様、僕の後ろに……何があるかわからないから」
勇者「う、うん……」
魔導師「……では、剣士さん……柄を握って………願ってください」
剣士「…… ……」ギュ……!
チカチカ……パァ!
229: 2014/07/03(木) 11:48:56.87 ID:zvdR+UZq0
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