251: 2014/07/09(水) 09:46:29.70 ID:TqMVtY4U0
252: 2014/07/09(水) 10:02:28.84 ID:TqMVtY4U0
剣士(握って……願う……)
剣士(……ッ)
剣士(……こ、れは……ッ く……ッ)
魔導師「ぐ……ッ」
魔導師(『まぶしい……ッ』)
シュウ、シュウ……ッ
勇者「あ、あ……ッ 光が……ッ」
青年「出るな、勇者様ッ」ガシッ
パアァァァ……ッ
剣士「………う、うわああああああああああああ!」ガシャン!
魔導師「あ、つ……ッ 剣士さん!?」
剣士(体が、動かない……ッ)
剣士(光…… ……灼かれそう、だ…… ……)
剣士「…… ……」
バタン!
勇者「剣士!……ッ 青年、離して……ッ」
青年「駄目だ、勇者様…! ……危ない!」
剣士(……声が、遠い。目の前、が…… ……暗、く…… ……)
……
………
…………
紫魔『ああもうまどろっこしい。身体かせ』
紫魔の側近『へ? ……ぅッ!』
剣士(……ッ あれ、は……!)
剣士(……ッ)
剣士(……こ、れは……ッ く……ッ)
魔導師「ぐ……ッ」
魔導師(『まぶしい……ッ』)
シュウ、シュウ……ッ
勇者「あ、あ……ッ 光が……ッ」
青年「出るな、勇者様ッ」ガシッ
パアァァァ……ッ
剣士「………う、うわああああああああああああ!」ガシャン!
魔導師「あ、つ……ッ 剣士さん!?」
剣士(体が、動かない……ッ)
剣士(光…… ……灼かれそう、だ…… ……)
剣士「…… ……」
バタン!
勇者「剣士!……ッ 青年、離して……ッ」
青年「駄目だ、勇者様…! ……危ない!」
剣士(……声が、遠い。目の前、が…… ……暗、く…… ……)
……
………
…………
紫魔『ああもうまどろっこしい。身体かせ』
紫魔の側近『へ? ……ぅッ!』
剣士(……ッ あれ、は……!)
253: 2014/07/09(水) 10:11:28.29 ID:TqMVtY4U0
インキュバス『……う、嘘だろう……何で、あいつが……こんなに ……!?』
紫魔の側近?『……来い、私の剣よ』
キュィイイン……
剣士(! 体が……ッ 引っ張られ……!)グッ
剣士(ぅ、うわ……ッ)
インキュバス『……な、そ、それ……は!? 魔王、さまの……!? な、何故……!?』
紫魔の側近?『確かに、これは私……魔王の剣だ。慣れない身体で魔法を使うと壊してしまいそうだからな』
インキュバス『君、何言って……!?』
剣士(……ぐ、う……ッ これは……紫の魔王の、魔力、か……ッ)
剣士(流れ込んでくる……これほど、強大な力、受け止めきれな……ッ)
紫魔の側近?『……語る言葉は無い。氏ね、インキュバス』
グルン……ザシュ!
剣士(やめろ……ッ 体が……ッ ばらばらに……ッ うわああああああ!!)
インキュバス『な、か、身体が、動かな……ッ あああああアアアアア!?』
ブシュゥウウ……!
インキュバス『……ぐ、ぁ……ッ 、ァ……』
紫魔の側近?『女は……教会か』クル
インキュバス『……し、ね……ッ そ、きっ…… !! 炎……よ!』
ゴォオオ!
紫魔の側近?『!』
剣士(ぐ、ぅ……ッ)
パキィイン!
剣士(うわああああああああああああ!?)
インキュバス『な……剣で、弾い……、た……!?』
紫魔の側近?『……そうか。インキュバスは他者の精気を吸い生きてる……生命力は』
紫魔の側近?『桁外れだったな』ガシ……グイ!
紫魔の側近?『放っておけば……何れくたばるだろうが』
インキュバス『ぅ……ッ お、まえ……誰だ……側近じゃ……ない、な……』
インキュバス『そ、の……剣、どこ、か……!!その、紫……!!』
剣士(紫、の……瞳……俺……否。紫の、魔王……か……?)ガクガク
剣士(……やめて、くれ……もう……ッ 体、が……ッ)
紫魔の側近?『……来い、私の剣よ』
キュィイイン……
剣士(! 体が……ッ 引っ張られ……!)グッ
剣士(ぅ、うわ……ッ)
インキュバス『……な、そ、それ……は!? 魔王、さまの……!? な、何故……!?』
紫魔の側近?『確かに、これは私……魔王の剣だ。慣れない身体で魔法を使うと壊してしまいそうだからな』
インキュバス『君、何言って……!?』
剣士(……ぐ、う……ッ これは……紫の魔王の、魔力、か……ッ)
剣士(流れ込んでくる……これほど、強大な力、受け止めきれな……ッ)
紫魔の側近?『……語る言葉は無い。氏ね、インキュバス』
グルン……ザシュ!
剣士(やめろ……ッ 体が……ッ ばらばらに……ッ うわああああああ!!)
インキュバス『な、か、身体が、動かな……ッ あああああアアアアア!?』
ブシュゥウウ……!
インキュバス『……ぐ、ぁ……ッ 、ァ……』
紫魔の側近?『女は……教会か』クル
インキュバス『……し、ね……ッ そ、きっ…… !! 炎……よ!』
ゴォオオ!
紫魔の側近?『!』
剣士(ぐ、ぅ……ッ)
パキィイン!
剣士(うわああああああああああああ!?)
インキュバス『な……剣で、弾い……、た……!?』
紫魔の側近?『……そうか。インキュバスは他者の精気を吸い生きてる……生命力は』
紫魔の側近?『桁外れだったな』ガシ……グイ!
紫魔の側近?『放っておけば……何れくたばるだろうが』
インキュバス『ぅ……ッ お、まえ……誰だ……側近じゃ……ない、な……』
インキュバス『そ、の……剣、どこ、か……!!その、紫……!!』
剣士(紫、の……瞳……俺……否。紫の、魔王……か……?)ガクガク
剣士(……やめて、くれ……もう……ッ 体、が……ッ)
254: 2014/07/09(水) 10:20:30.35 ID:TqMVtY4U0
??「……落ち着け。大丈夫だから」
剣士「!?」
??「しっかり目を開けて……深呼吸して」
剣士(だ、れだ……これ、は……ッ)
??「落ち着けって……見えないのか?」
??「仕方ないな……ほら、俺の『瞳』を使え……見えるだろ?」
??「これは元々、紫の魔王様の物だからな」
剣士(!? 紫の魔王の、瞳……!? まさか……ッ)
??「『見ろ!』…… ……あ、悪い。俺お前の名前しらねぇや」ハハッ
剣士「紫の魔王の側近!?」パチッ
紫魔の側近「……おう。誰かしらねぇけど。良く出来ましたー」
紫魔の側近「頭ナデナデしてやろうか?」
剣士「……お前が、何故……」
紫魔の側近「俺が聞きてぇよ。何がどうなってんのか、なんて……あれ?」
紫魔の側近「何でお前、俺の事知ってんの?」
剣士「…… ……」
剣士(あれは……紫の魔王……だ。銀の髪のあの男は、インキュバス……)
紫魔の側近「おい、聞いてる?」
剣士「…… ……」
剣士(紫魔の側近の体を借り、紫の魔王自らが……魔王の剣を召還して……)
紫魔の側近「おーい」
剣士「…… ……」
剣士(! ……これは、過去だ……『夢』!?)
紫魔の側近「もしもーし。聞いてるー!?」
剣士「煩い。ちょっと黙れ」
紫魔の側近「酷い!」
剣士「!?」
??「しっかり目を開けて……深呼吸して」
剣士(だ、れだ……これ、は……ッ)
??「落ち着けって……見えないのか?」
??「仕方ないな……ほら、俺の『瞳』を使え……見えるだろ?」
??「これは元々、紫の魔王様の物だからな」
剣士(!? 紫の魔王の、瞳……!? まさか……ッ)
??「『見ろ!』…… ……あ、悪い。俺お前の名前しらねぇや」ハハッ
剣士「紫の魔王の側近!?」パチッ
紫魔の側近「……おう。誰かしらねぇけど。良く出来ましたー」
紫魔の側近「頭ナデナデしてやろうか?」
剣士「……お前が、何故……」
紫魔の側近「俺が聞きてぇよ。何がどうなってんのか、なんて……あれ?」
紫魔の側近「何でお前、俺の事知ってんの?」
剣士「…… ……」
剣士(あれは……紫の魔王……だ。銀の髪のあの男は、インキュバス……)
紫魔の側近「おい、聞いてる?」
剣士「…… ……」
剣士(紫魔の側近の体を借り、紫の魔王自らが……魔王の剣を召還して……)
紫魔の側近「おーい」
剣士「…… ……」
剣士(! ……これは、過去だ……『夢』!?)
紫魔の側近「もしもーし。聞いてるー!?」
剣士「煩い。ちょっと黙れ」
紫魔の側近「酷い!」
255: 2014/07/09(水) 10:27:31.14 ID:TqMVtY4U0
剣士「……ここは……どこ、だ」
紫魔の側近「いや、だから俺が聞きたいって」
剣士「紫の魔王が、お前の体を借りて、剣を……俺を呼んだ、のか」
紫魔の側近「? ……お前を呼んだ?」
剣士「あ、いや……」
紫魔の側近「なぁんか訳ありっぽいナァ。まあ……暇つぶしには良いかな」
紫魔の側近「俺も紫の魔王様に乗っ取られて、どうしようもネェし」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「んで、ほれ……なんか忘れてねぇ?」
剣士「?」
紫魔の側近「助けてもらったんだから、お礼ぐらい言いなさいよ!?」
剣士「助け…… ……あ……」
紫魔の側近「まあ、お前がどこの誰サンかしらねぇけどさ」
紫魔の側近「両目塞いで、のたうちまわってっから」
紫魔の側近「優しい俺としては、ね? ……まあ、助けてやらなきゃ仕方ねぇだろ」
剣士「……俺の声が聞こえた……否、姿が見えた……のか!?」
紫魔の側近「……お前ね、鏡見た事ある?」
剣士「何……?」
紫魔の側近「そっくりなんだよ。紫の魔王様に」
紫魔の側近「絡繰りはこの際あっちの方にぽーいって投げといて良いんだけど、全然」
紫魔の側近「……ただでさえ、面倒ってか、ややこしい事態になってんだし」ハァ
剣士「…… ……」
紫魔の側近「俺が一番ビックリしたね!自信あるね!」
紫魔の側近「……紫の魔王様にそっくりの他人が、目の前でのたうち回ってんだからさ」
紫魔の側近「いや、だから俺が聞きたいって」
剣士「紫の魔王が、お前の体を借りて、剣を……俺を呼んだ、のか」
紫魔の側近「? ……お前を呼んだ?」
剣士「あ、いや……」
紫魔の側近「なぁんか訳ありっぽいナァ。まあ……暇つぶしには良いかな」
紫魔の側近「俺も紫の魔王様に乗っ取られて、どうしようもネェし」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「んで、ほれ……なんか忘れてねぇ?」
剣士「?」
紫魔の側近「助けてもらったんだから、お礼ぐらい言いなさいよ!?」
剣士「助け…… ……あ……」
紫魔の側近「まあ、お前がどこの誰サンかしらねぇけどさ」
紫魔の側近「両目塞いで、のたうちまわってっから」
紫魔の側近「優しい俺としては、ね? ……まあ、助けてやらなきゃ仕方ねぇだろ」
剣士「……俺の声が聞こえた……否、姿が見えた……のか!?」
紫魔の側近「……お前ね、鏡見た事ある?」
剣士「何……?」
紫魔の側近「そっくりなんだよ。紫の魔王様に」
紫魔の側近「絡繰りはこの際あっちの方にぽーいって投げといて良いんだけど、全然」
紫魔の側近「……ただでさえ、面倒ってか、ややこしい事態になってんだし」ハァ
剣士「…… ……」
紫魔の側近「俺が一番ビックリしたね!自信あるね!」
紫魔の側近「……紫の魔王様にそっくりの他人が、目の前でのたうち回ってんだからさ」
256: 2014/07/09(水) 10:35:52.16 ID:TqMVtY4U0
紫魔の側近「助けない理由は無いだろ……放置しておいて後で」
紫魔の側近「紫の魔王様にばれたら、俺が紫の魔王様に殺される」ハァ
剣士「…… ……」
紫魔の側近「お前、さっき『俺を呼んだ』と言ったな」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「……なんか知ってんだろ。教えてもらおうか」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「…… ……」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「……チッ。なぁんか調子狂うナァ」ハァ
紫魔の側近「おい。お前名前は? 無いのか?」
剣士(話して、良いのか……しかし……)
紫魔の側近「無いなら俺がつけてやるぜ? 紫の魔王様二号!」
剣士「……剣士、だ」
紫魔の側近「あら。素直」
剣士「ここは……どこなんだ」
紫魔の側近「お前な……だから、それは俺が聞きたいって」
紫魔の側近「……なんか知ってんだろ?俺の名前、呼んだじゃねぇか」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「同じ顔してる癖に、無口だねぇ……」ハァ
紫魔の側近「紫の魔王様にばれたら、俺が紫の魔王様に殺される」ハァ
剣士「…… ……」
紫魔の側近「お前、さっき『俺を呼んだ』と言ったな」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「……なんか知ってんだろ。教えてもらおうか」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「…… ……」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「……チッ。なぁんか調子狂うナァ」ハァ
紫魔の側近「おい。お前名前は? 無いのか?」
剣士(話して、良いのか……しかし……)
紫魔の側近「無いなら俺がつけてやるぜ? 紫の魔王様二号!」
剣士「……剣士、だ」
紫魔の側近「あら。素直」
剣士「ここは……どこなんだ」
紫魔の側近「お前な……だから、それは俺が聞きたいって」
紫魔の側近「……なんか知ってんだろ?俺の名前、呼んだじゃねぇか」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「同じ顔してる癖に、無口だねぇ……」ハァ
257: 2014/07/09(水) 10:45:56.83 ID:TqMVtY4U0
剣士「多分……知っている。だが……」
紫魔の側近「お?」
剣士「話して良いのか……判断がつかん」
紫魔の側近「…… ……」
剣士「恐らく……これは『夢』だ」
紫魔の側近「夢?」
剣士「しかし……」
剣士(俺が干渉すれば……未来は、変わってしまう……?)
剣士(……しかし。否…… ……)
紫魔の側近「わかったわかった、んな複雑な顔すんな」
紫魔の側近「……実際良くわからねぇからな。今、俺の体がどうなってんのか、も」
剣士「……紫の魔王に体を貸している、んだろう」
紫魔の側近「さっきも言ったけど乗っ取られた、が正解だ」
紫魔の側近「……本当に規格外なんだから、あの人は」ハァ
剣士「俺に……そんなあっさり話して良いのか?」
紫魔の側近「ん? ……んな、紫の魔王様と同じ面してる奴に」
紫魔の側近「そんな事聞かれるとは意外」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「それにお前、俺の『瞳』……ああ、いや。正確には紫の魔王様の、だけど」
紫魔の側近「持ってるだろ、今」
剣士「! ……そうだ、あれは……!」
紫魔の側近「何だろうなぁ。貸してやろうって気になったんだよ」
紫魔の側近「あ! 後でちゃんと返せよ!?」
剣士「……どう、やって」
紫魔の側近「…… ……さぁ?」
剣士「おい……」
紫魔の側近「何とかなるだろ……願えば…… ……」
剣士「願えば叶う、か」ハァ
紫魔の側近「……やっぱ知ってやがるな」クッ
紫魔の側近「まあ、良いよ。お前がどこの誰でも……そうしなきゃならねぇって」
紫魔の側近「思っただけだからな……俺の目も見えてるし?」
剣士「!」
剣士(……ま、さか……)
紫魔の側近「で、まあ……ここが何処か、だが」
紫魔の側近「俺にもわからん。わからんけど……まあ、さっきお前が言ったのが」
紫魔の側近「案外正解に近いのかもな」
剣士「……夢、か」
紫魔の側近「頭が回る様で何よりだ……俺には、紫の魔王様に体乗っ取られたからって」
紫魔の側近「んじゃあ、紫の魔王様の体おかりしまーす、なんてできねぇからな」
紫魔の側近「お?」
剣士「話して良いのか……判断がつかん」
紫魔の側近「…… ……」
剣士「恐らく……これは『夢』だ」
紫魔の側近「夢?」
剣士「しかし……」
剣士(俺が干渉すれば……未来は、変わってしまう……?)
剣士(……しかし。否…… ……)
紫魔の側近「わかったわかった、んな複雑な顔すんな」
紫魔の側近「……実際良くわからねぇからな。今、俺の体がどうなってんのか、も」
剣士「……紫の魔王に体を貸している、んだろう」
紫魔の側近「さっきも言ったけど乗っ取られた、が正解だ」
紫魔の側近「……本当に規格外なんだから、あの人は」ハァ
剣士「俺に……そんなあっさり話して良いのか?」
紫魔の側近「ん? ……んな、紫の魔王様と同じ面してる奴に」
紫魔の側近「そんな事聞かれるとは意外」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「それにお前、俺の『瞳』……ああ、いや。正確には紫の魔王様の、だけど」
紫魔の側近「持ってるだろ、今」
剣士「! ……そうだ、あれは……!」
紫魔の側近「何だろうなぁ。貸してやろうって気になったんだよ」
紫魔の側近「あ! 後でちゃんと返せよ!?」
剣士「……どう、やって」
紫魔の側近「…… ……さぁ?」
剣士「おい……」
紫魔の側近「何とかなるだろ……願えば…… ……」
剣士「願えば叶う、か」ハァ
紫魔の側近「……やっぱ知ってやがるな」クッ
紫魔の側近「まあ、良いよ。お前がどこの誰でも……そうしなきゃならねぇって」
紫魔の側近「思っただけだからな……俺の目も見えてるし?」
剣士「!」
剣士(……ま、さか……)
紫魔の側近「で、まあ……ここが何処か、だが」
紫魔の側近「俺にもわからん。わからんけど……まあ、さっきお前が言ったのが」
紫魔の側近「案外正解に近いのかもな」
剣士「……夢、か」
紫魔の側近「頭が回る様で何よりだ……俺には、紫の魔王様に体乗っ取られたからって」
紫魔の側近「んじゃあ、紫の魔王様の体おかりしまーす、なんてできねぇからな」
258: 2014/07/09(水) 10:51:55.91 ID:TqMVtY4U0
剣士「…… ……」
紫魔の側近「今は何より、女ちゃん助けないとな」
剣士「インキュバス……か……」
紫魔の側近「心配すんな。紫の魔王様が倒した……お前も見てただろ」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「見ようとしてみれば見れるはずだ、お前にも」
剣士「……紫の魔王の瞳……」
紫魔の側近「本当に便利ってか、規格外ってか……」
紫魔の側近「俺の体は玩具じゃねぇっつの」
剣士「魔王の剣」
紫魔の側近「ん?」
剣士「……お前の体を借りるだけで無く、紫の魔王は……」
紫魔の側近「何でもありだ。あいつは」
剣士「…… ……」
剣士(まだ、この時点では……あれは、光の剣じゃない)
剣士(この後だ……紫の魔王が、力をコントロールできなくなって……)
剣士(……剣の魔力を吸い取り、そして……剣は)ハッ
剣士「まさか……」
紫魔の側近「ん?」
剣士「……あ、いや……」
紫魔の側近「? 何だよ…… ……ッ」ウッ
剣士「どうし…… ……ッ」グゥッ
剣士(何だ……ッ 目の奥が、痛い……ッ!?)
紫魔の側近「今は何より、女ちゃん助けないとな」
剣士「インキュバス……か……」
紫魔の側近「心配すんな。紫の魔王様が倒した……お前も見てただろ」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「見ようとしてみれば見れるはずだ、お前にも」
剣士「……紫の魔王の瞳……」
紫魔の側近「本当に便利ってか、規格外ってか……」
紫魔の側近「俺の体は玩具じゃねぇっつの」
剣士「魔王の剣」
紫魔の側近「ん?」
剣士「……お前の体を借りるだけで無く、紫の魔王は……」
紫魔の側近「何でもありだ。あいつは」
剣士「…… ……」
剣士(まだ、この時点では……あれは、光の剣じゃない)
剣士(この後だ……紫の魔王が、力をコントロールできなくなって……)
剣士(……剣の魔力を吸い取り、そして……剣は)ハッ
剣士「まさか……」
紫魔の側近「ん?」
剣士「……あ、いや……」
紫魔の側近「? 何だよ…… ……ッ」ウッ
剣士「どうし…… ……ッ」グゥッ
剣士(何だ……ッ 目の奥が、痛い……ッ!?)
259: 2014/07/09(水) 10:59:50.11 ID:TqMVtY4U0
紫魔の側近?『……許せよ、女』パァ
剣士(これは……紫の魔王の声……)
剣士(うぅ……ッ また、体が……ッ 引き裂かれそう、に……ッ)
紫魔の側近「え、ちょ……お、ぅえエエエ……ッ」
シュゥウン……
フッ
剣士(!? 何も、見えな…… ……ッ)
剣士(紫魔の側近の気配が……消えた……!?)
剣士(糞……ッ 頭が、回る……ッ)
……
………
…………
剣士「……う、ぅ……」
魔導師「剣士さん、剣士さん!」
青年「……どいて、魔導師……勇者様を」
魔導師「は、はい……! 勇者様、こちらへ……」ギュ
勇者「…… ……」ガタガタ
青年「……剣士?」ポウ……
剣士「……う、ぅ…」
青年(気を失ってる……が)
青年(……剣は?)チラ
勇者「せ、青年……剣士は?」
青年「……気を失ってるだけだろう」スッ
青年「…… ……」チャキ
魔導師(剣は……無事、いや、だけど……!)
青年「……『まだ光ってる』」
魔導師「…… ……」
勇者「『向こう側と、違う!……どうして……!』」
青年「『向こう側では』刀身は……完璧に治ってた…よね?魔導師」
魔導師「は、はい!后様の魔法の炎で……」
青年「『向こう側と同じになる事を望んで、剣士にこの剣を渡したわけじゃないだろう、勇者様?』」
勇者「『そ、そりゃそう……だけど……!』貸して……!」チャキン
勇者(前より、軽い……手にしっくりとなじむ……だけど)
勇者(……『光った侭……いや、それより、剣士は……!』)
勇者「……どうして」
剣士「う……ッ」ムク
剣士(これは……紫の魔王の声……)
剣士(うぅ……ッ また、体が……ッ 引き裂かれそう、に……ッ)
紫魔の側近「え、ちょ……お、ぅえエエエ……ッ」
シュゥウン……
フッ
剣士(!? 何も、見えな…… ……ッ)
剣士(紫魔の側近の気配が……消えた……!?)
剣士(糞……ッ 頭が、回る……ッ)
……
………
…………
剣士「……う、ぅ……」
魔導師「剣士さん、剣士さん!」
青年「……どいて、魔導師……勇者様を」
魔導師「は、はい……! 勇者様、こちらへ……」ギュ
勇者「…… ……」ガタガタ
青年「……剣士?」ポウ……
剣士「……う、ぅ…」
青年(気を失ってる……が)
青年(……剣は?)チラ
勇者「せ、青年……剣士は?」
青年「……気を失ってるだけだろう」スッ
青年「…… ……」チャキ
魔導師(剣は……無事、いや、だけど……!)
青年「……『まだ光ってる』」
魔導師「…… ……」
勇者「『向こう側と、違う!……どうして……!』」
青年「『向こう側では』刀身は……完璧に治ってた…よね?魔導師」
魔導師「は、はい!后様の魔法の炎で……」
青年「『向こう側と同じになる事を望んで、剣士にこの剣を渡したわけじゃないだろう、勇者様?』」
勇者「『そ、そりゃそう……だけど……!』貸して……!」チャキン
勇者(前より、軽い……手にしっくりとなじむ……だけど)
勇者(……『光った侭……いや、それより、剣士は……!』)
勇者「……どうして」
剣士「う……ッ」ムク
260: 2014/07/09(水) 11:04:51.73 ID:TqMVtY4U0
勇者「剣士!大丈夫!?」
剣士「あ、あ……」フラ
青年「……無理しない方が良い」
剣士「……どうなった?」
青年「こっちが聞きたい……とにかく、座れ」
剣士「………ぅ」
青年「話せるかい?」
剣士「ああ……大丈夫だ。剣は?」
青年「『まだ光ってるよ』」
剣士「『…… ……』」
魔導師「勇者様……」チラ
勇者「『何も……変わったように見えない、けど』」
勇者「でも……手になじむ様な気が……する」
青年「『剣士が手にした瞬間……眩い光があふれたんだ。それから……』」
青年「……紫色の、光が見えた。一瞬……だが」
魔導師「……あの光の中で良く見えましたね」
青年「わからない。そう感じた……から、見たように思ってるのかも知れないけど」
青年「魔導師は……どうだった?」
魔導師「『僕には……何も。だけど、前の様に……熱さは感じませんでした』」
青年「『前……向こう側、か』」
勇者「『お母さんの炎の魔力が……あるわけじゃ無いから』」
剣士「何かが流れ込んでくるのを感じた」
剣士「身体を……焦がすほどの光……しかし」
剣士「あ、あ……」フラ
青年「……無理しない方が良い」
剣士「……どうなった?」
青年「こっちが聞きたい……とにかく、座れ」
剣士「………ぅ」
青年「話せるかい?」
剣士「ああ……大丈夫だ。剣は?」
青年「『まだ光ってるよ』」
剣士「『…… ……』」
魔導師「勇者様……」チラ
勇者「『何も……変わったように見えない、けど』」
勇者「でも……手になじむ様な気が……する」
青年「『剣士が手にした瞬間……眩い光があふれたんだ。それから……』」
青年「……紫色の、光が見えた。一瞬……だが」
魔導師「……あの光の中で良く見えましたね」
青年「わからない。そう感じた……から、見たように思ってるのかも知れないけど」
青年「魔導師は……どうだった?」
魔導師「『僕には……何も。だけど、前の様に……熱さは感じませんでした』」
青年「『前……向こう側、か』」
勇者「『お母さんの炎の魔力が……あるわけじゃ無いから』」
剣士「何かが流れ込んでくるのを感じた」
剣士「身体を……焦がすほどの光……しかし」
261: 2014/07/09(水) 11:38:48.10 ID:TqMVtY4U0
剣士「青年の言うのは……お前の、見たのは」
青年「?」
剣士「……紫の魔王の魔力だ。俺の体に……急激に流れ込んで……否」
勇者「え!?」
剣士「引き寄せられたんだ」
魔導師「……ど、う言うこと、です?」
剣士「紫の魔王が、インキュバスと対峙した時……の夢を見た」
剣士「……紫魔の側近の身を借りた時だ。紫の魔王が魔王の剣を召還した、あの時……」
青年「!」
剣士「圧倒的な力だ……ッ ものすごい、魔力……!」
魔導師「…… ……」
剣士「体がちぎれて、ばらばらになるかと思った……それを、助けてくれたんだ」
青年「? 紫の魔王が、か?」
剣士「違う。紫魔の側近だ。あいつは……落ち着いて、見ろと言った」
剣士「……『紫の魔王の瞳』を貸してやるから、と」
勇者「え!?」
剣士「あれがどこだったかはわからん……が、俺は……紫魔の側近にあったんだ」
魔導師「…… ……」
剣士「……つじつまがあうんだ」
青年「…… ……」
剣士「干渉してしまったんだ。俺は」
魔導師「あ……!」
青年「……紫の魔王と、金の髪の勇者に別れたとき、か……!」
剣士「あの時点では、紫の魔王はすでに、剣の魔力を吸収していたはずだ」
剣士「……その『欠片』の俺が……召還の衝撃に引き摺られ、なおかつ」
剣士「紫魔の側近と接触した……瞳に、触れてしまっていた」
勇者「…… ……だから、彼は……あの時光を、視力を奪われた?」
剣士「……ああ」
青年「おかしいだろう。だったら、何故紫魔の側近はその話を皆にしなかった!?」
魔導師「……この時点、で確定してしまった、んですよ。それに」
魔導師「夢、であったのなら……覚えていなくても、不思議は無いです」
勇者「で、でも……!」
剣士「何を知っているんだ、と問われたが……」
勇者「え?」
青年「?」
剣士「……紫の魔王の魔力だ。俺の体に……急激に流れ込んで……否」
勇者「え!?」
剣士「引き寄せられたんだ」
魔導師「……ど、う言うこと、です?」
剣士「紫の魔王が、インキュバスと対峙した時……の夢を見た」
剣士「……紫魔の側近の身を借りた時だ。紫の魔王が魔王の剣を召還した、あの時……」
青年「!」
剣士「圧倒的な力だ……ッ ものすごい、魔力……!」
魔導師「…… ……」
剣士「体がちぎれて、ばらばらになるかと思った……それを、助けてくれたんだ」
青年「? 紫の魔王が、か?」
剣士「違う。紫魔の側近だ。あいつは……落ち着いて、見ろと言った」
剣士「……『紫の魔王の瞳』を貸してやるから、と」
勇者「え!?」
剣士「あれがどこだったかはわからん……が、俺は……紫魔の側近にあったんだ」
魔導師「…… ……」
剣士「……つじつまがあうんだ」
青年「…… ……」
剣士「干渉してしまったんだ。俺は」
魔導師「あ……!」
青年「……紫の魔王と、金の髪の勇者に別れたとき、か……!」
剣士「あの時点では、紫の魔王はすでに、剣の魔力を吸収していたはずだ」
剣士「……その『欠片』の俺が……召還の衝撃に引き摺られ、なおかつ」
剣士「紫魔の側近と接触した……瞳に、触れてしまっていた」
勇者「…… ……だから、彼は……あの時光を、視力を奪われた?」
剣士「……ああ」
青年「おかしいだろう。だったら、何故紫魔の側近はその話を皆にしなかった!?」
魔導師「……この時点、で確定してしまった、んですよ。それに」
魔導師「夢、であったのなら……覚えていなくても、不思議は無いです」
勇者「で、でも……!」
剣士「何を知っているんだ、と問われたが……」
勇者「え?」
262: 2014/07/09(水) 11:44:27.85 ID:TqMVtY4U0
剣士「話す事をためらった。話してしまった事で、未来が……否、過去か?」
剣士「……ともかく。何かが変わってしまう事を恐れたんだ。だが……」
青年「ば……ッ か、ばかしい!! ……ッ すべて、予定調和だとでも言いたいのか!?」
青年「だったら、母さんはどうなるんだ! 母さんだけは……絶対に間に合わないんだ!」
魔導師「……落ち着いてください、青年さん……癒し手様はまだ、完全には失われて居ません」
魔導師「それは、貴方が一番ご存じな筈です」
青年「……ッ し、しかし……!」
剣士「勇者」
勇者「は、はい!?」
剣士「……もう一度、光の剣を貸せ」
勇者「え!?」
剣士「もう一度……否、今度こそ、だ」
魔導師「……まさか、思い出した、のですか」
剣士「……否、だ」
青年「剣士」
剣士「……だが、わかった。紫魔の側近に……触れ」
剣士「剣の魔力を含む……俺。『欠片』となった時、あいつの視力を奪い」
剣士「ここに……こうして、存在し『魔王を倒さなければいけない』と思う」
剣士「……『俺のすべきこと』がわかったんだ」
勇者「!」
剣士「……ともかく。何かが変わってしまう事を恐れたんだ。だが……」
青年「ば……ッ か、ばかしい!! ……ッ すべて、予定調和だとでも言いたいのか!?」
青年「だったら、母さんはどうなるんだ! 母さんだけは……絶対に間に合わないんだ!」
魔導師「……落ち着いてください、青年さん……癒し手様はまだ、完全には失われて居ません」
魔導師「それは、貴方が一番ご存じな筈です」
青年「……ッ し、しかし……!」
剣士「勇者」
勇者「は、はい!?」
剣士「……もう一度、光の剣を貸せ」
勇者「え!?」
剣士「もう一度……否、今度こそ、だ」
魔導師「……まさか、思い出した、のですか」
剣士「……否、だ」
青年「剣士」
剣士「……だが、わかった。紫魔の側近に……触れ」
剣士「剣の魔力を含む……俺。『欠片』となった時、あいつの視力を奪い」
剣士「ここに……こうして、存在し『魔王を倒さなければいけない』と思う」
剣士「……『俺のすべきこと』がわかったんだ」
勇者「!」
263: 2014/07/09(水) 11:53:51.45 ID:TqMVtY4U0
剣士「『紫の』魔王の魔力に当てられて……あれは、想像を絶する程苦しかった」
剣士「身体がばらばらになってしまうような感覚だった」
剣士「奥の奥から身を不気味な炎に焼かれ、焦がされていくような」
剣士「……歓喜と、悲しみの混じった言い様の無い、感覚」
魔導師「…… ……」ゾッ
青年「『引き摺られて』存在を失いかけたか」
剣士「……そうかもしれない」
剣士「『紫の魔王が召還した剣……それに引き摺られた瞬間』」
剣士「……『紫の』魔王の魔力が確かに歓喜した『のがわかった……あれは』」
剣士「『女を苦しめるインキュバスを屠る悦……あの侭では』狂ってしまうかと思った」
剣士「『紫魔の側近に、瞳を借りた時』……それが、急に楽にしてくれた」
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
勇者「…… ……」
剣士「あの時『あの侭であれば……俺はここにも戻れず』」
剣士「良くて消滅悪くて……『紫の』魔王に、取り込まれていただろう」
魔導師「『で、でも、そんな事になっていれば……!』」
青年「『歴史が、過去が……未来が、すべてが変わる!』……そして世界は」
勇者「自我を失った魔王の手により、消滅……『してた、かもしれない』」
勇者「そうなったら……私達は、存在しない……否、それどころじゃないね」
勇者「……生まれてすら、居なかった事になっていた、のかもしれない」
剣士「身体がばらばらになってしまうような感覚だった」
剣士「奥の奥から身を不気味な炎に焼かれ、焦がされていくような」
剣士「……歓喜と、悲しみの混じった言い様の無い、感覚」
魔導師「…… ……」ゾッ
青年「『引き摺られて』存在を失いかけたか」
剣士「……そうかもしれない」
剣士「『紫の魔王が召還した剣……それに引き摺られた瞬間』」
剣士「……『紫の』魔王の魔力が確かに歓喜した『のがわかった……あれは』」
剣士「『女を苦しめるインキュバスを屠る悦……あの侭では』狂ってしまうかと思った」
剣士「『紫魔の側近に、瞳を借りた時』……それが、急に楽にしてくれた」
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
勇者「…… ……」
剣士「あの時『あの侭であれば……俺はここにも戻れず』」
剣士「良くて消滅悪くて……『紫の』魔王に、取り込まれていただろう」
魔導師「『で、でも、そんな事になっていれば……!』」
青年「『歴史が、過去が……未来が、すべてが変わる!』……そして世界は」
勇者「自我を失った魔王の手により、消滅……『してた、かもしれない』」
勇者「そうなったら……私達は、存在しない……否、それどころじゃないね」
勇者「……生まれてすら、居なかった事になっていた、のかもしれない」
264: 2014/07/09(水) 12:06:25.71 ID:TqMVtY4U0
魔導師「勇者様……」
剣士「……俺は、『紫の』魔王が、『金の髪の』勇者『と別れた時に』」
剣士「『紫魔の側近の視力を奪い、飛び出した、欠片』だ」
青年「『その時に……魔王の剣は』光の剣に『に変じたのだと』母さんから聞いている」
剣士「そうだ。光の剣は……『魔王の剣』」
剣士「代々の『魔王』の『魔力を恐らく……吸い取り、その加護に変じる』……魂の欠片『を宿した剣』」
勇者「魂の……欠片……?」
剣士「魔王は、勇者。勇者は、魔王……」
青年「…… ……」
剣士「『鍛冶師は確かに、凄い腕を持っていたのだろう。だが』」
剣士「……この鉱石では、やはり……修理など、出来ない」
青年「ああ…… ……ッ」グッ
剣士「光の剣を完璧に戻す方法……一つしか、ない」スッ
勇者「!」ビクッ
剣士「『勇者、剣を』……元は同じ物、だからな」
魔導師「…… ……ッ」
勇者「『剣士…… ……ッ』」
剣士「『否定するには……これしか無い。今度は……しくじらん』」
剣士「……俺は、『紫の』魔王が、『金の髪の』勇者『と別れた時に』」
剣士「『紫魔の側近の視力を奪い、飛び出した、欠片』だ」
青年「『その時に……魔王の剣は』光の剣に『に変じたのだと』母さんから聞いている」
剣士「そうだ。光の剣は……『魔王の剣』」
剣士「代々の『魔王』の『魔力を恐らく……吸い取り、その加護に変じる』……魂の欠片『を宿した剣』」
勇者「魂の……欠片……?」
剣士「魔王は、勇者。勇者は、魔王……」
青年「…… ……」
剣士「『鍛冶師は確かに、凄い腕を持っていたのだろう。だが』」
剣士「……この鉱石では、やはり……修理など、出来ない」
青年「ああ…… ……ッ」グッ
剣士「光の剣を完璧に戻す方法……一つしか、ない」スッ
勇者「!」ビクッ
剣士「『勇者、剣を』……元は同じ物、だからな」
魔導師「…… ……ッ」
勇者「『剣士…… ……ッ』」
剣士「『否定するには……これしか無い。今度は……しくじらん』」
267: 2014/07/09(水) 13:13:20.22 ID:TqMVtY4U0
青年「……勇者様」
勇者「…… ……ッ」
剣士「勇者。光の剣を」
勇者「……駄目だ、って言って、聞く?」
剣士「否」
勇者「だよね……うん。一度……覚悟した事……だよね」ス…
魔導師「剣士さん……やめてください、剣士さん!!」
青年「魔導師……!?」
魔導師「わかってます、こうするしか無いって、理解は出来ます!」
魔導師「でも……ッ」
魔導師(これじゃ、一緒だ……! 否定する、って決めたのに……!)
魔導師(これじゃ、向こう側と……『向こう側の僕』と……でも……!)
剣士「……これも、運命だ」
剣士「俺の中に、ずっと……魔王を倒さなくてはいけないと言う想いがあった」
剣士「この事だった『んだ』……『これが、俺の』なすべき事『。俺がここに、存在した理由』」
青年「剣士『…… ……ッ』」
剣士「具現化したのは、この為だったとするなら……」
剣士「それは勇者の、魔王の……『世界の』意思だ……この腐った世界の、腐った不条理を断ち切り」
剣士「新しい世界を紡ぐ為の……全ての意思だ」
剣士「『否定も、意味が無いのかもしれない。過去も未来も、変わらないのかもしれない。だが』」
剣士「『これが……俺の『役目』だ』……俺の全てを魔力に変えて、光の剣を復活させる」
青年「『…… ……ッ』」
勇者「……私達は、喜ばなくてはいけない!」ポロポロポロ
魔導師「勇者様!」
勇者「私は、『必ず魔王を倒す!』」
勇者「私は最強の盾になる……!この世界の崩壊を守る為の」
勇者「『私』は、最強の剣になる!この世界を……救い、新しい世界を紡ぐ為の」
魔導師「勇者様……ッ」ポロポロ
青年「…… ……ッ」スッ
魔導師「……青年さん?」
青年「剣士、約束だ」
剣士「?」
勇者「…… ……ッ」
剣士「勇者。光の剣を」
勇者「……駄目だ、って言って、聞く?」
剣士「否」
勇者「だよね……うん。一度……覚悟した事……だよね」ス…
魔導師「剣士さん……やめてください、剣士さん!!」
青年「魔導師……!?」
魔導師「わかってます、こうするしか無いって、理解は出来ます!」
魔導師「でも……ッ」
魔導師(これじゃ、一緒だ……! 否定する、って決めたのに……!)
魔導師(これじゃ、向こう側と……『向こう側の僕』と……でも……!)
剣士「……これも、運命だ」
剣士「俺の中に、ずっと……魔王を倒さなくてはいけないと言う想いがあった」
剣士「この事だった『んだ』……『これが、俺の』なすべき事『。俺がここに、存在した理由』」
青年「剣士『…… ……ッ』」
剣士「具現化したのは、この為だったとするなら……」
剣士「それは勇者の、魔王の……『世界の』意思だ……この腐った世界の、腐った不条理を断ち切り」
剣士「新しい世界を紡ぐ為の……全ての意思だ」
剣士「『否定も、意味が無いのかもしれない。過去も未来も、変わらないのかもしれない。だが』」
剣士「『これが……俺の『役目』だ』……俺の全てを魔力に変えて、光の剣を復活させる」
青年「『…… ……ッ』」
勇者「……私達は、喜ばなくてはいけない!」ポロポロポロ
魔導師「勇者様!」
勇者「私は、『必ず魔王を倒す!』」
勇者「私は最強の盾になる……!この世界の崩壊を守る為の」
勇者「『私』は、最強の剣になる!この世界を……救い、新しい世界を紡ぐ為の」
魔導師「勇者様……ッ」ポロポロ
青年「…… ……ッ」スッ
魔導師「……青年さん?」
青年「剣士、約束だ」
剣士「?」
268: 2014/07/09(水) 13:18:19.58 ID:TqMVtY4U0
青年「……僕はそんな感傷になんか浸ってやらないよ。さようならだって言ってやらない」
青年「『お前と飲んだ酒は美味かった……また、後で』」
剣士「…… ……」
青年「勘違いするな。次こそ終わらせる……だから、待ってろ」
青年「……僕も必ず、後から…… ……『今度こそ、完全に、消えてやる!』」
剣士「……違うなよ?」クス
青年「約束は守るもんだ」ポロポロ
勇者「……剣士」
剣士「……なんだ」
勇者「私は必ず、この……腐った世界を終わらせる」
勇者「だから、力を貸して欲しい」
剣士「……承知した」
魔導師「剣士さん、剣士、さ……ッ」ズルズルッボロボロボロ
剣士「『ここを出たら……北の塔へむかえ』」 グッ
魔導師「剣士さん………ッ」
剣士「『…… ……』」ギュ……ッ スゥ
パア……ッ
勇者「……ッ 眩ッ」
青年(……身を焦がす程の、光……ッ)
魔導師「剣士さああああああああああああああああん!!」
青年「『お前と飲んだ酒は美味かった……また、後で』」
剣士「…… ……」
青年「勘違いするな。次こそ終わらせる……だから、待ってろ」
青年「……僕も必ず、後から…… ……『今度こそ、完全に、消えてやる!』」
剣士「……違うなよ?」クス
青年「約束は守るもんだ」ポロポロ
勇者「……剣士」
剣士「……なんだ」
勇者「私は必ず、この……腐った世界を終わらせる」
勇者「だから、力を貸して欲しい」
剣士「……承知した」
魔導師「剣士さん、剣士、さ……ッ」ズルズルッボロボロボロ
剣士「『ここを出たら……北の塔へむかえ』」 グッ
魔導師「剣士さん………ッ」
剣士「『…… ……』」ギュ……ッ スゥ
パア……ッ
勇者「……ッ 眩ッ」
青年(……身を焦がす程の、光……ッ)
魔導師「剣士さああああああああああああああああん!!」
269: 2014/07/09(水) 13:25:30.31 ID:TqMVtY4U0
剣士(叶う、ならば……ッ これが、最後……ッ)
剣士(……勇者。必ず、魔王を倒せ……ッ)
シュゥウン…… ……シュゥ、シュウ…… ……
グルル…… ……グルルル…… ……
……
………
…………
グルル……ガウ……グルルルル……ッ
魔王(何の声……だ?)パチ
魔王(あれ……また俺一人、かよ……)ハァ
グルル……
魔王「? ……声は、あれか…… ……て、何だありゃ」
魔王(氷付けの……魔物? ……あれは、ええっと……どこだ?)
魔王(奥に見えるのは洞窟……か?)
魔王(……洞窟、洞窟……ええっと……あ!)
魔王(父さんが行ったって言ってた……鉱石の洞窟、かな)
魔王(……まだ子供、じゃ無いか。あの狼……かな?)
魔王「……周りにいるのは親か? でも……何で……」
パアアアアアアアアアアア……ッ
魔王「うわッ!?」
魔王(まぶしい……ッ 何だ、光!? ……洞窟の中から……ッ)
魔王「び…… ……ッ くり、した…… ……なんだよ、もう……」
魔王(あ……あれか? 父さんが一回だけ、使ったって言う……光の魔法……?)
魔王(……んん? でもアレって、三つ頭の化け物って…… ……ん?)
剣士(……勇者。必ず、魔王を倒せ……ッ)
シュゥウン…… ……シュゥ、シュウ…… ……
グルル…… ……グルルル…… ……
……
………
…………
グルル……ガウ……グルルルル……ッ
魔王(何の声……だ?)パチ
魔王(あれ……また俺一人、かよ……)ハァ
グルル……
魔王「? ……声は、あれか…… ……て、何だありゃ」
魔王(氷付けの……魔物? ……あれは、ええっと……どこだ?)
魔王(奥に見えるのは洞窟……か?)
魔王(……洞窟、洞窟……ええっと……あ!)
魔王(父さんが行ったって言ってた……鉱石の洞窟、かな)
魔王(……まだ子供、じゃ無いか。あの狼……かな?)
魔王「……周りにいるのは親か? でも……何で……」
パアアアアアアアアアアア……ッ
魔王「うわッ!?」
魔王(まぶしい……ッ 何だ、光!? ……洞窟の中から……ッ)
魔王「び…… ……ッ くり、した…… ……なんだよ、もう……」
魔王(あ……あれか? 父さんが一回だけ、使ったって言う……光の魔法……?)
魔王(……んん? でもアレって、三つ頭の化け物って…… ……ん?)
270: 2014/07/09(水) 13:35:15.49 ID:TqMVtY4U0
癒し手「ビックリしましたね」
魔王「うわあああああああああ!?」
癒し手「!?」ビクッ
魔王「……い、い。癒し手……ッ」
癒し手「す、すみません……」シュン
魔王「いや……うん、大丈夫……ビックリした、けど……」
癒し手「……金の髪の魔王、様でしょうか。あの光……」
魔王「俺もそう思った、んだけど……でも、多分違う」
癒し手「え……」
魔王「……三つ頭の、だろ?」
癒し手「あ……そう、でしたね」
癒し手「……氷付け、ですもんね…… ……ッ あ!?」
魔王「? ……!!」
魔王(氷の中で何か、蠢いて…… ……生きてたのか!?)
癒し手「……ひ、ぃ……ッ」
魔王「どうし…… ……ッ !?」
魔王(ぶ、分裂してる……!?)
癒し手「……周り、見て……ください……!」
魔王「! ……他の狼たちが……苦しんでる……」
癒し手「…… ……あの、氷の中の、魔物の所為、じゃ無いですか」
魔王「何か……感じるのか?」
癒し手「あ、いえ……流石に、わかりません……これが」
癒し手「『何時の時代の物か』もわかりませんし……」
魔王「あ…… ……そうだよな」
癒し手「ッ……あ、氷が……!」
魔王「割れた…… ……う、わ……ッ」
癒し手「!」フイッ
魔王(……二つに割れた頭が、他の魔物を食ってる……)
魔王(もしかして、これ……これ、が……!)
癒し手「いずれ…… ……あの、三つ頭……に、なるのです……ね……」
魔王「…… ……」
魔王「と、すれば…… ……これは、過去、か」ハァ
魔王(しかし……何で今更、こんな場面…… ……)
癒し手「……消え、ました」ホッ
魔王「うわあああああああああ!?」
癒し手「!?」ビクッ
魔王「……い、い。癒し手……ッ」
癒し手「す、すみません……」シュン
魔王「いや……うん、大丈夫……ビックリした、けど……」
癒し手「……金の髪の魔王、様でしょうか。あの光……」
魔王「俺もそう思った、んだけど……でも、多分違う」
癒し手「え……」
魔王「……三つ頭の、だろ?」
癒し手「あ……そう、でしたね」
癒し手「……氷付け、ですもんね…… ……ッ あ!?」
魔王「? ……!!」
魔王(氷の中で何か、蠢いて…… ……生きてたのか!?)
癒し手「……ひ、ぃ……ッ」
魔王「どうし…… ……ッ !?」
魔王(ぶ、分裂してる……!?)
癒し手「……周り、見て……ください……!」
魔王「! ……他の狼たちが……苦しんでる……」
癒し手「…… ……あの、氷の中の、魔物の所為、じゃ無いですか」
魔王「何か……感じるのか?」
癒し手「あ、いえ……流石に、わかりません……これが」
癒し手「『何時の時代の物か』もわかりませんし……」
魔王「あ…… ……そうだよな」
癒し手「ッ……あ、氷が……!」
魔王「割れた…… ……う、わ……ッ」
癒し手「!」フイッ
魔王(……二つに割れた頭が、他の魔物を食ってる……)
魔王(もしかして、これ……これ、が……!)
癒し手「いずれ…… ……あの、三つ頭……に、なるのです……ね……」
魔王「…… ……」
魔王「と、すれば…… ……これは、過去、か」ハァ
魔王(しかし……何で今更、こんな場面…… ……)
癒し手「……消え、ました」ホッ
271: 2014/07/09(水) 13:44:34.33 ID:TqMVtY4U0
魔王「……ああ …… ……ッ ぐ、ぅ……!?」ガクンッ
癒し手「! 魔王様!?」
魔王(な、んだこれ……ッ な、にか…… ……ッ く、る……!?)
癒し手「魔王様!?」
金の髪の魔王「下がれ、癒し手」
シュゥン……
癒し手「金の髪の魔王様!」
魔王「…… ……ッ」
魔王(父さんの……否、違う……ッ これ、は……!)
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「ぅ、う…… ……ッ うわあああああああああああああああ!?」
癒し手「魔王様!?」
魔王(な、んだ……ッ 急に……ッ うぅ……からだ、が……ッ)
魔王(目が、回る…… ……ッ !?)
癒し手「魔王様、まおうさ…… ……ッ」
……
………
…………
后「…… ……ッ」ポロポロポロ
側近「剣士…… ……ッ」
后「わかってた……わかってた、けど……ッ」
后「…… ……」スッ
側近「后?」
后「……もう、必要無いわ。もう……あの子達を見守る必要は……無い」
后「魔王の……力を借りる必要も無い」
側近「…… ……ああ」
后「でも……私ももう、離れられないわね。魔力を使って、ああやって……見てた事が」
后「魔王を結果的には押さえていた、んでしょうけど」
側近「……最後まで確かめないで良いのか」
后「『北の塔へ』って言ってたでしょ」
后「……多分、剣士は最後の力で、あの子達を転移させたんだわ」
側近「姿が消えたから……そうだろう、とは思う、が」
后「あの子達が立てた仮説の通り。望む場所……行かなくてはいけない場所?だったかしら」
后「……でも、あの子達の目的地は……ここ、だもの」
側近「…… ……ああ」
后「すぐにでは無くても……勇者達は必ず、ここに来る」
側近「……ああ …… ……ッ !?」ビリッ
后「!?」ビリビリビリ……ッ
魔王「ぅ、う…… ……ッ うわあああああああああああああああ!?」
ビリビリビリ……ッ
后「! 魔王!? そんな、押さえているのよ!?」
側近「糞……ッ 魔王、落ち着け……ッ」
タタタ……ッ ドンドン!
使用人「側近様、后様!?」
側近「使用人、入るな!」
癒し手「! 魔王様!?」
魔王(な、んだこれ……ッ な、にか…… ……ッ く、る……!?)
癒し手「魔王様!?」
金の髪の魔王「下がれ、癒し手」
シュゥン……
癒し手「金の髪の魔王様!」
魔王「…… ……ッ」
魔王(父さんの……否、違う……ッ これ、は……!)
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「ぅ、う…… ……ッ うわあああああああああああああああ!?」
癒し手「魔王様!?」
魔王(な、んだ……ッ 急に……ッ うぅ……からだ、が……ッ)
魔王(目が、回る…… ……ッ !?)
癒し手「魔王様、まおうさ…… ……ッ」
……
………
…………
后「…… ……ッ」ポロポロポロ
側近「剣士…… ……ッ」
后「わかってた……わかってた、けど……ッ」
后「…… ……」スッ
側近「后?」
后「……もう、必要無いわ。もう……あの子達を見守る必要は……無い」
后「魔王の……力を借りる必要も無い」
側近「…… ……ああ」
后「でも……私ももう、離れられないわね。魔力を使って、ああやって……見てた事が」
后「魔王を結果的には押さえていた、んでしょうけど」
側近「……最後まで確かめないで良いのか」
后「『北の塔へ』って言ってたでしょ」
后「……多分、剣士は最後の力で、あの子達を転移させたんだわ」
側近「姿が消えたから……そうだろう、とは思う、が」
后「あの子達が立てた仮説の通り。望む場所……行かなくてはいけない場所?だったかしら」
后「……でも、あの子達の目的地は……ここ、だもの」
側近「…… ……ああ」
后「すぐにでは無くても……勇者達は必ず、ここに来る」
側近「……ああ …… ……ッ !?」ビリッ
后「!?」ビリビリビリ……ッ
魔王「ぅ、う…… ……ッ うわあああああああああああああああ!?」
ビリビリビリ……ッ
后「! 魔王!? そんな、押さえているのよ!?」
側近「糞……ッ 魔王、落ち着け……ッ」
タタタ……ッ ドンドン!
使用人「側近様、后様!?」
側近「使用人、入るな!」
272: 2014/07/09(水) 13:58:27.79 ID:TqMVtY4U0
使用人「し、しかし……!」
后「……ッ 駄目よ、使用人……貴女には……ッ」
使用人「后様!」
側近「大丈夫だ。どうにかする……だから、お前は離れろ!」
后「行きなさい、使用人!」
使用人「…… ……ッ」
パタパタパタ……ッ
ビリビリ……ビリビリ……ッ
后「ど……どうして、こんな、急に…… ……ッ」
后(やっぱり……一人、足りない……の!? ……癒し手……!)
側近「ぐ、う……ッ」
側近(俺と后だけじゃ、駄目なのか…… ……ッ 癒し、手…… ……!)
ビリビリ、ビリビリ……ッ
魔王「……ぅ、ウ……ッ」
后「魔王……まだ、駄目……ッ 駄目…… ……ッ」
側近「……く、そ……ッ 勇者……ッ」
……
………
…………
シュゥン……ッ
勇者「うわあああああああ!?」ドサッ
青年「……グッ」ドン!
魔導師「わああああ!」ゴン!
勇者「いったぁ……? ……ここ、は…… ……?」ムニ
勇者「……むに?」
青年「……勇者様、どいて」ハァ
勇者「うわあああ、ごめん!」ピョン!
魔導師「……ッ 北の塔!?」
青年「痛て ……」キョロ
青年「……最上階の、あの部屋か…… ……!?」バッ
魔導師「青年さん?」
??「…… ……」
青年「誰だ!?」
勇者「え!?」
魔導師「!? ……こおり……ッ」
青年「! 待て……ッ」
魔導師「え……?」
青年(僕は…… ……この気配、知っている……!)
青年「……おばあちゃん?」
后「……ッ 駄目よ、使用人……貴女には……ッ」
使用人「后様!」
側近「大丈夫だ。どうにかする……だから、お前は離れろ!」
后「行きなさい、使用人!」
使用人「…… ……ッ」
パタパタパタ……ッ
ビリビリ……ビリビリ……ッ
后「ど……どうして、こんな、急に…… ……ッ」
后(やっぱり……一人、足りない……の!? ……癒し手……!)
側近「ぐ、う……ッ」
側近(俺と后だけじゃ、駄目なのか…… ……ッ 癒し、手…… ……!)
ビリビリ、ビリビリ……ッ
魔王「……ぅ、ウ……ッ」
后「魔王……まだ、駄目……ッ 駄目…… ……ッ」
側近「……く、そ……ッ 勇者……ッ」
……
………
…………
シュゥン……ッ
勇者「うわあああああああ!?」ドサッ
青年「……グッ」ドン!
魔導師「わああああ!」ゴン!
勇者「いったぁ……? ……ここ、は…… ……?」ムニ
勇者「……むに?」
青年「……勇者様、どいて」ハァ
勇者「うわあああ、ごめん!」ピョン!
魔導師「……ッ 北の塔!?」
青年「痛て ……」キョロ
青年「……最上階の、あの部屋か…… ……!?」バッ
魔導師「青年さん?」
??「…… ……」
青年「誰だ!?」
勇者「え!?」
魔導師「!? ……こおり……ッ」
青年「! 待て……ッ」
魔導師「え……?」
青年(僕は…… ……この気配、知っている……!)
青年「……おばあちゃん?」
273: 2014/07/09(水) 14:08:41.53 ID:TqMVtY4U0
姫「おばあちゃんって呼ぶなって言ったでしょ……」
スゥ……
勇者「ぎ……ぎゃあああああああああああああああ!?」
魔導師「うわ……ッ」キィン……
青年「……なんて声出すんだよ」
勇者「お、お、おおおおおおおお、おばけ!? やだ……ッ」
姫「……失礼ね」ムッ
青年「仕方ないでしょ……透けてるし」ハァ
姫「まあ、でも良かったわ。見えるのね」
青年「……ちょっと、勇者様?」
勇者「…… ……ひ、ひ、ひめ、さま!? え!? 癒し手様の、お母さん!?」ガシッ
青年「あのね、しがみつくのは良いけど、痛い」
勇者「……だ、だって…… ……ん?」
チカチカ。チカチカ
勇者「! ……浄化の石が!」
青年「光ってる……」
魔導師「あ……ぼ、僕のも、です!」
青年「! それより! 光の剣は!?」
勇者「あ……!」
姫「そこにあるわよ。貴女の足下」スッ
勇者「あ、ああ……ッ」ガシッ
魔導師「! 治ってる……!」
青年「……当然だろ。剣士が…… ……命を、賭けたんだから」フゥ
姫「…… ……」
魔導師「……何が、なんだか」ハァ……チラ
姫「何よ」
魔導師「……いえ、あの。何か……ご存じないか、と思い……まして」
姫「……さっきまで、魔王と一緒に居たわ」
青年「! 僕が……戻った後、か」
勇者「父さん……」
魔導師「では……どうやって、ここへ?」
姫「さあ……話してた。彼と……でも、急に、魔王の姿が消えたの」
青年「消えた……?」
姫「ええ。忽然と消えてしまった。呼んでもどこにも居なかった」
姫「……一人は嫌だったのに。でも」
姫「ああ! ……そうだわ、光」
青年「…… ……」
姫「眩い……光が見えた。そうしたら……ここに居たのよ。多分」
勇者「多分?」
姫「……青年が私を呼んでくれたから、気がついた」
青年「まさか、とは思ったけど……でも、母さんの気配とは違う」
青年「……だから」ハァ
姫「……それ、魔王の剣ね」
スゥ……
勇者「ぎ……ぎゃあああああああああああああああ!?」
魔導師「うわ……ッ」キィン……
青年「……なんて声出すんだよ」
勇者「お、お、おおおおおおおお、おばけ!? やだ……ッ」
姫「……失礼ね」ムッ
青年「仕方ないでしょ……透けてるし」ハァ
姫「まあ、でも良かったわ。見えるのね」
青年「……ちょっと、勇者様?」
勇者「…… ……ひ、ひ、ひめ、さま!? え!? 癒し手様の、お母さん!?」ガシッ
青年「あのね、しがみつくのは良いけど、痛い」
勇者「……だ、だって…… ……ん?」
チカチカ。チカチカ
勇者「! ……浄化の石が!」
青年「光ってる……」
魔導師「あ……ぼ、僕のも、です!」
青年「! それより! 光の剣は!?」
勇者「あ……!」
姫「そこにあるわよ。貴女の足下」スッ
勇者「あ、ああ……ッ」ガシッ
魔導師「! 治ってる……!」
青年「……当然だろ。剣士が…… ……命を、賭けたんだから」フゥ
姫「…… ……」
魔導師「……何が、なんだか」ハァ……チラ
姫「何よ」
魔導師「……いえ、あの。何か……ご存じないか、と思い……まして」
姫「……さっきまで、魔王と一緒に居たわ」
青年「! 僕が……戻った後、か」
勇者「父さん……」
魔導師「では……どうやって、ここへ?」
姫「さあ……話してた。彼と……でも、急に、魔王の姿が消えたの」
青年「消えた……?」
姫「ええ。忽然と消えてしまった。呼んでもどこにも居なかった」
姫「……一人は嫌だったのに。でも」
姫「ああ! ……そうだわ、光」
青年「…… ……」
姫「眩い……光が見えた。そうしたら……ここに居たのよ。多分」
勇者「多分?」
姫「……青年が私を呼んでくれたから、気がついた」
青年「まさか、とは思ったけど……でも、母さんの気配とは違う」
青年「……だから」ハァ
姫「……それ、魔王の剣ね」
274: 2014/07/09(水) 14:16:48.32 ID:TqMVtY4U0
勇者「え…… ……あ、そうか……はい」ギュッ
勇者(軽い…… 刀身は、完璧に戻ってる)
勇者(なのに、前より軽い…… ……でも、何だろう)
勇者(……握ると。口の中が……苦い様な、気がする)ハァ
姫「……いえ、光の剣、だったわね、今は」
青年「おば……姫様は、何でここに……って、聞いてもわかんないだろうけど」
姫「当たり前でしょ」
青年「……何でここに居ると思う?」
姫「…… ……」
青年「貴女は、僕が……『王』だと。『お帰りなさい』と伝えるのが役目だと言っただろう」
姫「ええ」
青年「……でも、君は他の……紫の魔王様や、紫魔の側近の様に失われなかった」
姫「魔王とも話していたの。私にはまだ、他に役目が……あるんじゃないかって」
魔導師「他の……役目、ですか」
姫「それが何なのかわからない……だけど、一つだけどうしても……諦められない思いがあるの」
勇者「思い……?」
姫「……女剣士は紫魔の側近に会えたんでしょう?」
姫「私も、紫の魔王にもう一度会いたいと思ったわ。でも……それ以上に」
姫「会いたい人が居るの。その人は紫の魔王と違って、まだ失われて居ない」
青年「!? ……まさか……ッ」
姫「……それに、多分。必要な事なんでしょうね。私が今、ここに居る理由……」
姫「それに……感じるわ」
勇者「え?」
姫「……これは、魔王の歓喜」
魔導師「! まさか、魔王様が目を覚ましそう、なのですか!?」
姫「それ、貸して頂戴」
青年「え?」
姫「貴方達の持つその……蒼い石。癒し手の作った物なんでしょう」
勇者(軽い…… 刀身は、完璧に戻ってる)
勇者(なのに、前より軽い…… ……でも、何だろう)
勇者(……握ると。口の中が……苦い様な、気がする)ハァ
姫「……いえ、光の剣、だったわね、今は」
青年「おば……姫様は、何でここに……って、聞いてもわかんないだろうけど」
姫「当たり前でしょ」
青年「……何でここに居ると思う?」
姫「…… ……」
青年「貴女は、僕が……『王』だと。『お帰りなさい』と伝えるのが役目だと言っただろう」
姫「ええ」
青年「……でも、君は他の……紫の魔王様や、紫魔の側近の様に失われなかった」
姫「魔王とも話していたの。私にはまだ、他に役目が……あるんじゃないかって」
魔導師「他の……役目、ですか」
姫「それが何なのかわからない……だけど、一つだけどうしても……諦められない思いがあるの」
勇者「思い……?」
姫「……女剣士は紫魔の側近に会えたんでしょう?」
姫「私も、紫の魔王にもう一度会いたいと思ったわ。でも……それ以上に」
姫「会いたい人が居るの。その人は紫の魔王と違って、まだ失われて居ない」
青年「!? ……まさか……ッ」
姫「……それに、多分。必要な事なんでしょうね。私が今、ここに居る理由……」
姫「それに……感じるわ」
勇者「え?」
姫「……これは、魔王の歓喜」
魔導師「! まさか、魔王様が目を覚ましそう、なのですか!?」
姫「それ、貸して頂戴」
青年「え?」
姫「貴方達の持つその……蒼い石。癒し手の作った物なんでしょう」
275: 2014/07/09(水) 14:22:25.55 ID:TqMVtY4U0
勇者「あ……で、でも!!」
姫「『彼ら』には必要な筈よ……貴方達にも、ね」
青年「…… ……」スッ
魔導師「青年さん!?」
青年「……母さんに会いたいと思っているのは、父さんでも、姫様だけでもない」
青年「僕だって……会いたいさ」
勇者「……あの……返して、くれます、よね?」スッ
姫「失礼な子ね。泥棒なんてしないわよ……それに、触れないしね」スッ
魔導師「え!?」
姫「……私の体は風になったのよ」
魔導師「……姫、さま」
姫「何……ほら、後は貴方だけよ」
魔導師「あ、は……はい」スッ
姫「私の側に置いて……」
青年「……これが、貴女の役目、なのか」
姫「わからない。でも……」
青年「…… ……」
姫「……こう、しなければいけない気がするの」
魔導師「あ、あの……僕たちは、どうすれば良い……んでしょう?」
姫「え? ……私は、知らないわよそんなの」
魔導師「え!?」
青年「……扉を開けて、進むだけだ。僕たちは……」ハァ
勇者「扉……」
青年「僕たちの道に後退、は無いんだ。前を向いてひたすら進んで行くしか無い」
姫「…… ……」
チカチカ、チカチカ
姫「『彼ら』には必要な筈よ……貴方達にも、ね」
青年「…… ……」スッ
魔導師「青年さん!?」
青年「……母さんに会いたいと思っているのは、父さんでも、姫様だけでもない」
青年「僕だって……会いたいさ」
勇者「……あの……返して、くれます、よね?」スッ
姫「失礼な子ね。泥棒なんてしないわよ……それに、触れないしね」スッ
魔導師「え!?」
姫「……私の体は風になったのよ」
魔導師「……姫、さま」
姫「何……ほら、後は貴方だけよ」
魔導師「あ、は……はい」スッ
姫「私の側に置いて……」
青年「……これが、貴女の役目、なのか」
姫「わからない。でも……」
青年「…… ……」
姫「……こう、しなければいけない気がするの」
魔導師「あ、あの……僕たちは、どうすれば良い……んでしょう?」
姫「え? ……私は、知らないわよそんなの」
魔導師「え!?」
青年「……扉を開けて、進むだけだ。僕たちは……」ハァ
勇者「扉……」
青年「僕たちの道に後退、は無いんだ。前を向いてひたすら進んで行くしか無い」
姫「…… ……」
チカチカ、チカチカ
276: 2014/07/09(水) 14:29:38.67 ID:TqMVtY4U0
青年「……あれだ。あの扉。入り口であり、出口……」
魔導師「……行くべき所へ続く扉、ですね」
勇者「…… ……」
姫「暖かいわね」スッ
姫「……触れない、け…… ……ど……」
スゥ……
勇者「姫様!?」
魔導師「消えた!?」
青年「……石もだ」
勇者「ど、どこに……!?」
青年「……行くべき所に行くだけ、だ」ハァ
勇者「……ねえ、私達、どうやってここに来たんだろう」
魔導師「…… ……剣士さん、でしょうね」
青年「…… ……」
勇者「…… ……」
魔導師「もう、戻れません……否、戻る選択肢なんて、ありません」
青年「拒否権すら無いんだ」
勇者「……うん」
青年「勇者様」
勇者「?」
青年「……君が、扉を開くんだ」
魔導師「……行くべき所へ続く扉、ですね」
勇者「…… ……」
姫「暖かいわね」スッ
姫「……触れない、け…… ……ど……」
スゥ……
勇者「姫様!?」
魔導師「消えた!?」
青年「……石もだ」
勇者「ど、どこに……!?」
青年「……行くべき所に行くだけ、だ」ハァ
勇者「……ねえ、私達、どうやってここに来たんだろう」
魔導師「…… ……剣士さん、でしょうね」
青年「…… ……」
勇者「…… ……」
魔導師「もう、戻れません……否、戻る選択肢なんて、ありません」
青年「拒否権すら無いんだ」
勇者「……うん」
青年「勇者様」
勇者「?」
青年「……君が、扉を開くんだ」
277: 2014/07/09(水) 14:36:58.17 ID:TqMVtY4U0
勇者「……うん……ッ」
魔導師「……あっという間、でした」
青年「何だよ、こんな時に」
魔導師「……いえ。続きは、後にします。魔王……様を、倒した後で」
青年「…… ……」
勇者「開くよ……良いね!?」
魔導師「はい」
青年「……ああ」
勇者(……お父さん、待ってて。私は、もう迷わない)グッ
勇者(剣士と約束した。必ず……貴方を、倒す!)
魔導師(本音を言えば、すべての謎を解きたかった。この手で)
魔導師(……だけど、許されない。でも……それで、良いんだ。剣士さん……!)
青年(母さん…… ……会える、と願って良いよね?)
青年(剣士の思いを無駄には出来ない。僕たち三人で……!)
キィ……パァア……!
青年「……ッ 眩し……ッ」
魔導師「……うぅッ」
勇者「待ってて……お父さん!」
……
………
…………
魔導師「……あっという間、でした」
青年「何だよ、こんな時に」
魔導師「……いえ。続きは、後にします。魔王……様を、倒した後で」
青年「…… ……」
勇者「開くよ……良いね!?」
魔導師「はい」
青年「……ああ」
勇者(……お父さん、待ってて。私は、もう迷わない)グッ
勇者(剣士と約束した。必ず……貴方を、倒す!)
魔導師(本音を言えば、すべての謎を解きたかった。この手で)
魔導師(……だけど、許されない。でも……それで、良いんだ。剣士さん……!)
青年(母さん…… ……会える、と願って良いよね?)
青年(剣士の思いを無駄には出来ない。僕たち三人で……!)
キィ……パァア……!
青年「……ッ 眩し……ッ」
魔導師「……うぅッ」
勇者「待ってて……お父さん!」
……
………
…………
278: 2014/07/09(水) 14:42:50.82 ID:TqMVtY4U0
金の髪の魔王「……お別れだな、癒し手」
癒し手「魔王様…… ……ッ ……え!?」
シュゥン……!
癒し手「魔王様!?」
癒し手(消えた……! ……ッ)ハッ
癒し手「……とうとう、勇者様が……いらっしゃった……の、ですね……」
癒し手(私は……どうして、ここに……側近さん……!)ギュッ
金の髪の魔王「……お前は、どうするんだ?」
癒し手「え?」
金の髪の魔王「お前も『拒否』するのか」
癒し手「……どういう、意味です?」
金の髪の魔王「変わるかもしれない。変わらないかもしれない」
癒し手「…… ……?」
金の髪の魔王「結論が同じでも、歩んできた道は確実に違う」
金の髪の魔王「……だろう?」
癒し手「え……あの……? …… ……ッ!?」グイッ
癒し手(何? ……何かに、引っ張られ…… ……!?)
金の髪の魔王「……さようなら、だ。俺…… ……も、やっ ……終われ…… ……」
癒し手(金の髪の魔王様が、歪んで……どこに、行くんです!?)
癒し手(声が、出ない……ああ、目が……回る……ッ)
癒し手(側近、さ…… ……ッ)
グルグルグル……
癒し手(回る……ああ……ッ)
グイッ
癒し手(……誰……誰の、手……側近さん?)
癒し手(あ……抱きしめられてる……暖かい…… ……あれ)
癒し手(ゆらゆら…… ……揺れ、る…… ……)
姫「……悪かったわね、貴女の旦那様じゃなくて」ハァ
癒し手「!?」
癒し手「魔王様…… ……ッ ……え!?」
シュゥン……!
癒し手「魔王様!?」
癒し手(消えた……! ……ッ)ハッ
癒し手「……とうとう、勇者様が……いらっしゃった……の、ですね……」
癒し手(私は……どうして、ここに……側近さん……!)ギュッ
金の髪の魔王「……お前は、どうするんだ?」
癒し手「え?」
金の髪の魔王「お前も『拒否』するのか」
癒し手「……どういう、意味です?」
金の髪の魔王「変わるかもしれない。変わらないかもしれない」
癒し手「…… ……?」
金の髪の魔王「結論が同じでも、歩んできた道は確実に違う」
金の髪の魔王「……だろう?」
癒し手「え……あの……? …… ……ッ!?」グイッ
癒し手(何? ……何かに、引っ張られ…… ……!?)
金の髪の魔王「……さようなら、だ。俺…… ……も、やっ ……終われ…… ……」
癒し手(金の髪の魔王様が、歪んで……どこに、行くんです!?)
癒し手(声が、出ない……ああ、目が……回る……ッ)
癒し手(側近、さ…… ……ッ)
グルグルグル……
癒し手(回る……ああ……ッ)
グイッ
癒し手(……誰……誰の、手……側近さん?)
癒し手(あ……抱きしめられてる……暖かい…… ……あれ)
癒し手(ゆらゆら…… ……揺れ、る…… ……)
姫「……悪かったわね、貴女の旦那様じゃなくて」ハァ
癒し手「!?」
279: 2014/07/09(水) 14:48:33.31 ID:TqMVtY4U0
姫「……冗談よ、そんな顔しないで」クス
癒し手「! ……あ、なた……は!?」
姫「初めまして……て、変な感じね」
癒し手「……まさか、まさか!?」ギュッ
姫「癒し手……いえ、僧侶? ……私の、娘ね」
癒し手「お母様…… ……お母様!? どうして……!?」
癒し手「……ッ いいえ、いいえ……お母様……!」ギュッ
姫「痛いわよ……もう」クス
癒し手「あ、あ…… ぁ、ぁ……!」ポロポロポロ
姫「……泣かないの。貴女にはまだ、やる事が残ってるでしょ」
癒し手「え……」
姫「……間違えて無かったわね。私の役目は……これだったのね」
癒し手「役目……?」
姫「終わらせるための、私の役目……行ってらっしゃい、癒し手」
姫「……時間は無いみたい」
癒し手「!」
姫「一瞬でもあえて嬉しかったわ。普通に生きていれば、絶対に出来なかった事だもの」
癒し手「お母様……」ポロポロポロ
姫「……私は長になるもの。長を生む者……だから」
姫「抱けて、あえて……幸せよ。後は」
姫「……貴女の役目を終えなさい」ドンッ
癒し手「きゃ……ッ」
癒し手(お母様……! 待ってください、お母様!?)
クルクルクル……
癒し手(いや……ッ また、目が……!?)
……
………
…………
癒し手「! ……あ、なた……は!?」
姫「初めまして……て、変な感じね」
癒し手「……まさか、まさか!?」ギュッ
姫「癒し手……いえ、僧侶? ……私の、娘ね」
癒し手「お母様…… ……お母様!? どうして……!?」
癒し手「……ッ いいえ、いいえ……お母様……!」ギュッ
姫「痛いわよ……もう」クス
癒し手「あ、あ…… ぁ、ぁ……!」ポロポロポロ
姫「……泣かないの。貴女にはまだ、やる事が残ってるでしょ」
癒し手「え……」
姫「……間違えて無かったわね。私の役目は……これだったのね」
癒し手「役目……?」
姫「終わらせるための、私の役目……行ってらっしゃい、癒し手」
姫「……時間は無いみたい」
癒し手「!」
姫「一瞬でもあえて嬉しかったわ。普通に生きていれば、絶対に出来なかった事だもの」
癒し手「お母様……」ポロポロポロ
姫「……私は長になるもの。長を生む者……だから」
姫「抱けて、あえて……幸せよ。後は」
姫「……貴女の役目を終えなさい」ドンッ
癒し手「きゃ……ッ」
癒し手(お母様……! 待ってください、お母様!?)
クルクルクル……
癒し手(いや……ッ また、目が……!?)
……
………
…………
280: 2014/07/09(水) 14:55:36.77 ID:TqMVtY4U0
魔王「……ゥ、ウ……ウアアアアアアアアアアッ」
側近「魔王……ッ 糞……ッ」
后「魔王! しっかりして、お願い……!」
魔王「アアアアア! ウアアアアアアア!」
側近「癒し手……もう、すぐだ……『もうすぐ、お前の所に……!』」ハァ
后「まだ早いわ……まだ、やることがある『! 諦めんじゃないわよ、側近!』」ゼェゼェ
側近「ああ……俺たちは」
后「……喜ばなくては、ならない……ッ ああ……ッ」グッ
側近「后!? ……ッ 手から、血が……ッ」
后(魔王の魔力、こんなに……圧力に、耐えられない……でも……!)
后「か、まわないわよ……ッ 平気……ッ」ポロポロポロ
側近「…… ……癒し手……ッ」
后「……うッ」キンッ
側近「……なんだ」 ハァ
后「来たわ……街の外れ、ね」
側近「!」
后「もう少し……もう少しだけ……耐えて、魔王!」
后「すぐに……すぐに、勇者が……!」
フワ……パアアアァ……
后「!?」フッ
側近「……な……ッ!?」フワン
后(! ……傷が、癒えた!?)
魔王「……ぅ、ウ……」
側近「こ、の……気配、は……!」
后「気を緩めないで、側近!!」
后(でも…… ……これは……ッ)
癒し手「……大丈夫ですか、側近さん、后様」
側近「…… ……ッ」
后「い……や…… ……ッ」
側近「癒し手!!」
癒し手「…… ……」
癒し手(私の、役目。私の……すべき、事)
魔王「…… ……」
癒し手「間に合い……ました。約束、しましたもん、ね」ニコ
側近「魔王……ッ 糞……ッ」
后「魔王! しっかりして、お願い……!」
魔王「アアアアア! ウアアアアアアア!」
側近「癒し手……もう、すぐだ……『もうすぐ、お前の所に……!』」ハァ
后「まだ早いわ……まだ、やることがある『! 諦めんじゃないわよ、側近!』」ゼェゼェ
側近「ああ……俺たちは」
后「……喜ばなくては、ならない……ッ ああ……ッ」グッ
側近「后!? ……ッ 手から、血が……ッ」
后(魔王の魔力、こんなに……圧力に、耐えられない……でも……!)
后「か、まわないわよ……ッ 平気……ッ」ポロポロポロ
側近「…… ……癒し手……ッ」
后「……うッ」キンッ
側近「……なんだ」 ハァ
后「来たわ……街の外れ、ね」
側近「!」
后「もう少し……もう少しだけ……耐えて、魔王!」
后「すぐに……すぐに、勇者が……!」
フワ……パアアアァ……
后「!?」フッ
側近「……な……ッ!?」フワン
后(! ……傷が、癒えた!?)
魔王「……ぅ、ウ……」
側近「こ、の……気配、は……!」
后「気を緩めないで、側近!!」
后(でも…… ……これは……ッ)
癒し手「……大丈夫ですか、側近さん、后様」
側近「…… ……ッ」
后「い……や…… ……ッ」
側近「癒し手!!」
癒し手「…… ……」
癒し手(私の、役目。私の……すべき、事)
魔王「…… ……」
癒し手「間に合い……ました。約束、しましたもん、ね」ニコ
281: 2014/07/09(水) 15:01:09.45 ID:TqMVtY4U0
……
………
…………
勇者「……こ、こは」
魔導師「……『紫』色、の空」
青年「最果ての街……『だな』」
勇者「……前も、ここに?」
青年「『向こう側か? ……ああ。でも、ペンダントの力……だった筈だ』」
魔導師「『一人、足りない……のも』違いますね……寒ッ」
勇者「城は……あれか。歩けない距離じゃ無いな」
青年「『父さん達の時とも違う。』前后様の転移術で呼びつけられた、らしいからね」
青年「『違って当然、だ』」
魔導師「…… ……」
勇者「『剣士はここで……ここに? ……生まれた、んだよね』」
青年「感傷に浸ってる時間は無いよ『勇者様』」
魔導師「青年さん『……』」
青年「……君たちは感じないのか?」
青年「魔王の、気配……」
勇者「……ピリピリ、肌を刺すような」
魔導師「……寒さの原因は、それですね」
青年「……歓喜と、寂寥」
魔導師「僕たちは、喜ばなくてはいけない……」
青年「……そうだ」
勇者「行こう……時間が無い」
勇者「……姫様の……事も気になる。石の事も……だけど」
スタスタ
………
…………
勇者「……こ、こは」
魔導師「……『紫』色、の空」
青年「最果ての街……『だな』」
勇者「……前も、ここに?」
青年「『向こう側か? ……ああ。でも、ペンダントの力……だった筈だ』」
魔導師「『一人、足りない……のも』違いますね……寒ッ」
勇者「城は……あれか。歩けない距離じゃ無いな」
青年「『父さん達の時とも違う。』前后様の転移術で呼びつけられた、らしいからね」
青年「『違って当然、だ』」
魔導師「…… ……」
勇者「『剣士はここで……ここに? ……生まれた、んだよね』」
青年「感傷に浸ってる時間は無いよ『勇者様』」
魔導師「青年さん『……』」
青年「……君たちは感じないのか?」
青年「魔王の、気配……」
勇者「……ピリピリ、肌を刺すような」
魔導師「……寒さの原因は、それですね」
青年「……歓喜と、寂寥」
魔導師「僕たちは、喜ばなくてはいけない……」
青年「……そうだ」
勇者「行こう……時間が無い」
勇者「……姫様の……事も気になる。石の事も……だけど」
スタスタ
282: 2014/07/09(水) 15:16:21.53 ID:TqMVtY4U0
勇者「……静か、だね」
青年「廃墟だからね」
魔導師「…… ……」
勇者「……城門だ」ピタ
魔導師「誰か……居ます」
青年「……わかってる、だろ」
使用人「お待ちしておりました、勇者様方」
勇者「……『使用人、だね』」
使用人「『はい』」
勇者「お母さんは……?」
使用人「……后様も、側近様も、玉座の間におられます」
使用人「『お話は……可能ならば、後で』」
青年「……可能なら、ね」
使用人「……どうぞ。ご案内致します」
キィ…
魔導師「う、わ……ッ」
青年「これは……見事だね。もっと禍々しいの想像してたけど」
勇者「……『覚えてないの?』」
青年「『流石にね』」
使用人「……剣士さん、は?」
勇者「…… ……」シャキン
使用人「!? ……ッ」
魔導師「説明は、後で……ですよ。可能ならば、ですが」
使用人「……か、し……こまりまし、た……」
青年「…… ……」
スタスタ
使用人「……どうぞ、まっすぐお進みください」
勇者「…… ……うん」
使用人「叶うなら、もう……二度と、相見えません事を祈ります」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」
勇者「…… ……」
使用人「…… ……」ペコ
スタスタ、パタン
勇者「あっさり……だね」
青年「……言葉も出ない、て言うのさ」
魔導師「……勇者様、扉を」
勇者「…… ……うん」
グッ
青年「廃墟だからね」
魔導師「…… ……」
勇者「……城門だ」ピタ
魔導師「誰か……居ます」
青年「……わかってる、だろ」
使用人「お待ちしておりました、勇者様方」
勇者「……『使用人、だね』」
使用人「『はい』」
勇者「お母さんは……?」
使用人「……后様も、側近様も、玉座の間におられます」
使用人「『お話は……可能ならば、後で』」
青年「……可能なら、ね」
使用人「……どうぞ。ご案内致します」
キィ…
魔導師「う、わ……ッ」
青年「これは……見事だね。もっと禍々しいの想像してたけど」
勇者「……『覚えてないの?』」
青年「『流石にね』」
使用人「……剣士さん、は?」
勇者「…… ……」シャキン
使用人「!? ……ッ」
魔導師「説明は、後で……ですよ。可能ならば、ですが」
使用人「……か、し……こまりまし、た……」
青年「…… ……」
スタスタ
使用人「……どうぞ、まっすぐお進みください」
勇者「…… ……うん」
使用人「叶うなら、もう……二度と、相見えません事を祈ります」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」
勇者「…… ……」
使用人「…… ……」ペコ
スタスタ、パタン
勇者「あっさり……だね」
青年「……言葉も出ない、て言うのさ」
魔導師「……勇者様、扉を」
勇者「…… ……うん」
グッ
283: 2014/07/09(水) 15:24:33.27 ID:TqMVtY4U0
勇者「……ッ」
ビリビリビリ……ッ
勇者(扉の向こうから、凄い……凄い魔力が伝わってくる……!)
青年(……ッ これが、魔王様の……本当の、魔力……!)
魔導師(……終わるんだ。終わらせるんだ。必ず……!)
勇者「……行くよ!」
ギィ…… ……
癒し手「……ありがとうございます。勇者様、魔導師君……青年」クルッ
青年「母さん!」
魔導師(姫様……間に合った、のか……!)ホッ
勇者「お母さん……お父さん……ッ」
后「……ああ、勇者……ッ」ポロポロポロ
側近「青年…… ……大きく、なった、な」ポロポロ
癒し手「……何も、説明する必要は、無いはずです」
魔王「……ぅ、ウ」
后「!? ……剣士、は!?」
勇者「……こっちも、説明はしなくて……良いはず、だよ」シャキン
側近「!」
勇者「…… ……」ポロポロポロ
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
后「……勇者、『今度こそ』世界を救いなさい!」
后「勇者は必ず、魔王を倒す……ッ」
側近「……癒し手『だけじゃない……皆の思いを』無駄にしないでくれ」
側近「腐った世界の、腐った不条理を……断ち切るんだ!」
癒し手「……その光の剣で、魔王様を貫くのです、勇者様!」
勇者「……ッ わかってる……ッ 私は、勇者……!」
ビリビリビリ……ッ
勇者(扉の向こうから、凄い……凄い魔力が伝わってくる……!)
青年(……ッ これが、魔王様の……本当の、魔力……!)
魔導師(……終わるんだ。終わらせるんだ。必ず……!)
勇者「……行くよ!」
ギィ…… ……
癒し手「……ありがとうございます。勇者様、魔導師君……青年」クルッ
青年「母さん!」
魔導師(姫様……間に合った、のか……!)ホッ
勇者「お母さん……お父さん……ッ」
后「……ああ、勇者……ッ」ポロポロポロ
側近「青年…… ……大きく、なった、な」ポロポロ
癒し手「……何も、説明する必要は、無いはずです」
魔王「……ぅ、ウ」
后「!? ……剣士、は!?」
勇者「……こっちも、説明はしなくて……良いはず、だよ」シャキン
側近「!」
勇者「…… ……」ポロポロポロ
青年「…… ……」
魔導師「…… ……」
后「……勇者、『今度こそ』世界を救いなさい!」
后「勇者は必ず、魔王を倒す……ッ」
側近「……癒し手『だけじゃない……皆の思いを』無駄にしないでくれ」
側近「腐った世界の、腐った不条理を……断ち切るんだ!」
癒し手「……その光の剣で、魔王様を貫くのです、勇者様!」
勇者「……ッ わかってる……ッ 私は、勇者……!」
284: 2014/07/09(水) 15:34:33.43 ID:TqMVtY4U0
青年「勇者様、早く……!」
魔導師「勇者様!」
魔王「う、ぅ…… ……ッ」
勇者「あ、あ…… ……ッ」グッ
勇者(お父さん……ごめんなさい、私は……ッ)
勇者(魔王になんて、なりたくない……ッ!)
魔王「……ぅ、ウ」
勇者「うわああああああああああああああああああああああ!!!」
ザク……ッ
勇者「あ、あァ…… ……あ!?」ガクガクガク
勇者(わ、私……お、お父さん、を…… ……ッあ、あ …… ……!?)
青年「!」
青年(……胸を……一突き……ッ ……!?)
魔導師「やった……!」
魔導師(倒した……魔王様を、倒した!! ……!?)
后(魔王……ついに……これで……! ……!?)
側近(……やっと……終わる、のか……! ……ッ!?)
癒し手(魔王様……勇者様……! ……ッ !?)
パ、ア……アアアアアアアアッ
勇者「……ッ」
勇者(何……ッ …… ……光!?)
魔導師「勇者様!」
魔王「う、ぅ…… ……ッ」
勇者「あ、あ…… ……ッ」グッ
勇者(お父さん……ごめんなさい、私は……ッ)
勇者(魔王になんて、なりたくない……ッ!)
魔王「……ぅ、ウ」
勇者「うわああああああああああああああああああああああ!!!」
ザク……ッ
勇者「あ、あァ…… ……あ!?」ガクガクガク
勇者(わ、私……お、お父さん、を…… ……ッあ、あ …… ……!?)
青年「!」
青年(……胸を……一突き……ッ ……!?)
魔導師「やった……!」
魔導師(倒した……魔王様を、倒した!! ……!?)
后(魔王……ついに……これで……! ……!?)
側近(……やっと……終わる、のか……! ……ッ!?)
癒し手(魔王様……勇者様……! ……ッ !?)
パ、ア……アアアアアアアアッ
勇者「……ッ」
勇者(何……ッ …… ……光!?)
285: 2014/07/09(水) 15:47:49.69 ID:TqMVtY4U0
……
………
…………
魔王「……ッ」ハッ
金の髪の魔王「……あれ?お前、なんで居るの」
魔王「……え!?」
金の髪の魔王「……癒し手は、もう行ったぞ」
魔王「もう行った……て、え!?」キョロキョロ
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「…… ……」
魔王(居ない……間に合った、って事……か?)
魔王「じゃあ、勇者は……」
金の髪の魔王「……金髪紫瞳の男も消えた。俺は、てっきり……」
魔王「……消えた?」
金の髪の魔王「ああ……正確にはいつの間にか居なかった、だが」
魔王「じゃあ……俺は、氏んだのか? 終わった……のか?」
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「父さん……?」
金の髪の魔王「……お前が、終わったのなら、俺も消える筈……なんだが……」
金の髪の魔王「……ッ !?」
魔王「? 父さ…… ……ッ」グッゴホゴホゴホ……ッ
金の髪の魔王「……魔王」スッ
魔王(な、ん……ッ 痛い……ッ ……ん? 胸……?)フッ
魔王「!?」ドクドクドク……
金の髪の魔王「……黒い、血?」
魔王「…… ……あれ」
金の髪の魔王「……な、何だ」
魔王「違う」
魔王(もう痛く無い……それに、これは血、じゃ無い……)
シュゥウン……ッ
金の髪の魔王「!」
魔王「え……」
剣士「…… ……ッ」スタッ
金の髪の魔王「……お前は」
魔王「剣士!? ……お前、なんで……!?」
剣士「……なんだ、これは」
………
…………
魔王「……ッ」ハッ
金の髪の魔王「……あれ?お前、なんで居るの」
魔王「……え!?」
金の髪の魔王「……癒し手は、もう行ったぞ」
魔王「もう行った……て、え!?」キョロキョロ
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「…… ……」
魔王(居ない……間に合った、って事……か?)
魔王「じゃあ、勇者は……」
金の髪の魔王「……金髪紫瞳の男も消えた。俺は、てっきり……」
魔王「……消えた?」
金の髪の魔王「ああ……正確にはいつの間にか居なかった、だが」
魔王「じゃあ……俺は、氏んだのか? 終わった……のか?」
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「父さん……?」
金の髪の魔王「……お前が、終わったのなら、俺も消える筈……なんだが……」
金の髪の魔王「……ッ !?」
魔王「? 父さ…… ……ッ」グッゴホゴホゴホ……ッ
金の髪の魔王「……魔王」スッ
魔王(な、ん……ッ 痛い……ッ ……ん? 胸……?)フッ
魔王「!?」ドクドクドク……
金の髪の魔王「……黒い、血?」
魔王「…… ……あれ」
金の髪の魔王「……な、何だ」
魔王「違う」
魔王(もう痛く無い……それに、これは血、じゃ無い……)
シュゥウン……ッ
金の髪の魔王「!」
魔王「え……」
剣士「…… ……ッ」スタッ
金の髪の魔王「……お前は」
魔王「剣士!? ……お前、なんで……!?」
剣士「……なんだ、これは」
286: 2014/07/09(水) 15:53:04.79 ID:TqMVtY4U0
魔王「……俺が聞きたいよ」
金の髪の魔王「剣士……欠片、か」
剣士「…… ……何故、だ!? 俺は……ッ」
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「……お前、氏んだ……のか!?」
剣士「……解放したんだ。光の剣を完璧に戻すために」
魔王「!」
剣士「『向こう側』ではお前を……魔王を倒してからだった」
剣士「……終わらせる為には、光の剣を完璧に戻す必要がある。だから」
魔王「……なら、この傷は」
剣士「!」
金の髪の魔王「……勇者のつけた傷、か。だが……なら、何故……」
魔王「……こんな事は、あった……のか? 否、癒し手も、間に合ったんだろう!?」
剣士「何?」
金の髪の魔王「……ここに居た、と言う事は、そう言うことな筈だ」
金の髪の魔王「ここには……『特異点』しか来られない」
剣士「…… ……」
魔王「……でも……否、じゃあ、て言うか!」
魔王「『これ』は! ……この、傷は何だ……!?」トン
剣士「…… ……」
金の髪の魔王「剣士……欠片、か」
剣士「…… ……何故、だ!? 俺は……ッ」
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「……お前、氏んだ……のか!?」
剣士「……解放したんだ。光の剣を完璧に戻すために」
魔王「!」
剣士「『向こう側』ではお前を……魔王を倒してからだった」
剣士「……終わらせる為には、光の剣を完璧に戻す必要がある。だから」
魔王「……なら、この傷は」
剣士「!」
金の髪の魔王「……勇者のつけた傷、か。だが……なら、何故……」
魔王「……こんな事は、あった……のか? 否、癒し手も、間に合ったんだろう!?」
剣士「何?」
金の髪の魔王「……ここに居た、と言う事は、そう言うことな筈だ」
金の髪の魔王「ここには……『特異点』しか来られない」
剣士「…… ……」
魔王「……でも……否、じゃあ、て言うか!」
魔王「『これ』は! ……この、傷は何だ……!?」トン
剣士「…… ……」
287: 2014/07/09(水) 15:58:59.23 ID:TqMVtY4U0
金の髪の魔王「……お前の姿は、癒し手よりも前に消えたんだ」
金の髪の魔王「癒し手も、居るはずだ……なのに、何故……」
剣士「……紫の魔王は、失われたんだろう。紫の魔王の側近も」
剣士「そして、お前……金の髪の魔王と、俺……『揃っている』筈なのに」
剣士「……何故……」
『お……さ、ま…… ……、まおう、さま……!』
金の髪の魔王「!? ……なんだ?」
魔王「! 癒し手の声だ!」
『やめて……ッ 落ち着いてください、魔王様……ああ……ッ』
剣士「……ッ 何も、見えん」
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「糞……ッ 何だよ、どうなってるんだ!? 勇者は、俺を……!」
魔王「魔王を、倒したんじゃ無いのか……ッ!?」
『魔王! やめて……もう……ッ く、ゥ……ッ』
魔王「! 后!」
魔王(糞……何が、起こってる……何が……!?)
魔王(どうすれば……!)
『勇者様! 勇者様……! しっかりしてくれ!勇者様……!』
剣士「青年……!」
シュゥン……
勇者「…… ……うわああああああああああああああああ!?」ドサッ
金の髪の魔王「癒し手も、居るはずだ……なのに、何故……」
剣士「……紫の魔王は、失われたんだろう。紫の魔王の側近も」
剣士「そして、お前……金の髪の魔王と、俺……『揃っている』筈なのに」
剣士「……何故……」
『お……さ、ま…… ……、まおう、さま……!』
金の髪の魔王「!? ……なんだ?」
魔王「! 癒し手の声だ!」
『やめて……ッ 落ち着いてください、魔王様……ああ……ッ』
剣士「……ッ 何も、見えん」
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「糞……ッ 何だよ、どうなってるんだ!? 勇者は、俺を……!」
魔王「魔王を、倒したんじゃ無いのか……ッ!?」
『魔王! やめて……もう……ッ く、ゥ……ッ』
魔王「! 后!」
魔王(糞……何が、起こってる……何が……!?)
魔王(どうすれば……!)
『勇者様! 勇者様……! しっかりしてくれ!勇者様……!』
剣士「青年……!」
シュゥン……
勇者「…… ……うわああああああああああああああああ!?」ドサッ
288: 2014/07/09(水) 16:05:39.71 ID:TqMVtY4U0
剣士「! 勇者!?」
勇者「……へ? ……け、剣士!? 何で…… ……」キョロ
勇者「…… ……」
魔王「ゆう、しゃ……?」
勇者「…… ……」キョロ、キョロ
金の髪の魔王「…… ……勇者? ……何故」
勇者「……ッ きゃあああああああああああああああああああ!?」
魔王「…… ……ッ」クワンクワン
勇者「な、な、な、なにここ、どこ、なに、なんで同じ顔ばっかり……!?」
魔王「……お前もだから……」
勇者「あ! お父さん!? ……あれ、さっき、私、光の剣で……」ガシャン!
勇者「ぎゃああ!?」
剣士「……煩い。落ち着け」ハァ
魔王「……これ、か」トン
勇者「……ッ ひ、い……ッ」
金の髪の魔王「自分でやったんだろうに……」ハァ
勇者「……な、何、これ……どう、なって、んの……どういうこと……?」
魔王「誰も答えは持ってないみたいだぜ」ハァ
勇者「ちょっと待って……私も、氏んじゃったの……?」
魔王「……何?」
勇者「お父さんを、刺、して……動かなく、なって……倒した、と思った……けど」
勇者「……そしたら、急に……ッ あばれ、出して……!!」
魔王「俺が!?」
勇者「……違う。光だ」
剣士「……光?」
勇者「そう、光……剣を突き刺したら、お父さんから、光が……!」
勇者「……へ? ……け、剣士!? 何で…… ……」キョロ
勇者「…… ……」
魔王「ゆう、しゃ……?」
勇者「…… ……」キョロ、キョロ
金の髪の魔王「…… ……勇者? ……何故」
勇者「……ッ きゃあああああああああああああああああああ!?」
魔王「…… ……ッ」クワンクワン
勇者「な、な、な、なにここ、どこ、なに、なんで同じ顔ばっかり……!?」
魔王「……お前もだから……」
勇者「あ! お父さん!? ……あれ、さっき、私、光の剣で……」ガシャン!
勇者「ぎゃああ!?」
剣士「……煩い。落ち着け」ハァ
魔王「……これ、か」トン
勇者「……ッ ひ、い……ッ」
金の髪の魔王「自分でやったんだろうに……」ハァ
勇者「……な、何、これ……どう、なって、んの……どういうこと……?」
魔王「誰も答えは持ってないみたいだぜ」ハァ
勇者「ちょっと待って……私も、氏んじゃったの……?」
魔王「……何?」
勇者「お父さんを、刺、して……動かなく、なって……倒した、と思った……けど」
勇者「……そしたら、急に……ッ あばれ、出して……!!」
魔王「俺が!?」
勇者「……違う。光だ」
剣士「……光?」
勇者「そう、光……剣を突き刺したら、お父さんから、光が……!」
289: 2014/07/09(水) 16:11:12.07 ID:TqMVtY4U0
金の髪の魔王「…… ……」
魔王「……俺は、どう……否、氏んでない、のか?」
魔王「! 他の皆は……!?」
勇者「……私、多分、倒れた……んだと思う、けど」
勇者「皆……お母さんも、側近様も、癒し手様も……お父さんを止めようと……」
剣士「青年と魔導師は?」
勇者「……皆、だよ。皆で、お父さんを…… ……! 戻らなきゃ!」
金の髪の魔王「……待て、勇者」
勇者「え?」
金の髪の魔王「……お前は、生きているのか?」
勇者「……え?」
剣士「……魔王はともかく。俺も、金の髪の魔王も……すでに……」
勇者「!」
金の髪の魔王「もしくは…… ……お前は……」
勇者「な、何……」
金の髪の魔王「……もう、魔王になったか、だ」
魔王「!? な、何でだよ!? 俺、氏んでないんだろ? ……ん?」
魔王「……いや、ともかく! 光の剣だって……!」
剣士「…… ……俺も、金の魔王も消滅していない説明もつかん」
勇者「まさか……何も、断ち切れなかった……の……?」
勇者「……まさか……『向こう側』を……否定したから!?」
魔王「……俺は、どう……否、氏んでない、のか?」
魔王「! 他の皆は……!?」
勇者「……私、多分、倒れた……んだと思う、けど」
勇者「皆……お母さんも、側近様も、癒し手様も……お父さんを止めようと……」
剣士「青年と魔導師は?」
勇者「……皆、だよ。皆で、お父さんを…… ……! 戻らなきゃ!」
金の髪の魔王「……待て、勇者」
勇者「え?」
金の髪の魔王「……お前は、生きているのか?」
勇者「……え?」
剣士「……魔王はともかく。俺も、金の髪の魔王も……すでに……」
勇者「!」
金の髪の魔王「もしくは…… ……お前は……」
勇者「な、何……」
金の髪の魔王「……もう、魔王になったか、だ」
魔王「!? な、何でだよ!? 俺、氏んでないんだろ? ……ん?」
魔王「……いや、ともかく! 光の剣だって……!」
剣士「…… ……俺も、金の魔王も消滅していない説明もつかん」
勇者「まさか……何も、断ち切れなかった……の……?」
勇者「……まさか……『向こう側』を……否定したから!?」
290: 2014/07/09(水) 16:16:32.83 ID:TqMVtY4U0
剣士「……ッ」
魔王「じょ、冗談じゃ無いぞ!? ……このままじゃ……ッ」
魔王(世界は、終わってしまう……!)
勇者「そんな……!」
勇者(何で……剣士を……犠牲に、してまで、がんばったのに……何で……!?)
勇者(どうして……ッ)
金の髪の魔王「……金髪紫瞳の男が消えた事と関係あるのか……」
剣士「消えた……?」
金の髪の魔王「勇者が生まれ、女魔王は姿を消したんだ」
魔王「あ、そういえば……」
勇者「女魔王?」
魔王「あー……えーと」
剣士「……『向こう側』の勇者、か」
魔王「ああ、そう、だな」
勇者「! ……魔王になる、選択をした、私……!?」
魔王「そういうことだ。金髪紫瞳の男は……お前の息子」
勇者「!?」
剣士「……!」
金の髪の魔王「お前と、青年の子だ」
剣士「……あいつ、話して居なかったのか」
勇者「…… ……え!? ……青年、知ってたの!?」
魔王「じょ、冗談じゃ無いぞ!? ……このままじゃ……ッ」
魔王(世界は、終わってしまう……!)
勇者「そんな……!」
勇者(何で……剣士を……犠牲に、してまで、がんばったのに……何で……!?)
勇者(どうして……ッ)
金の髪の魔王「……金髪紫瞳の男が消えた事と関係あるのか……」
剣士「消えた……?」
金の髪の魔王「勇者が生まれ、女魔王は姿を消したんだ」
魔王「あ、そういえば……」
勇者「女魔王?」
魔王「あー……えーと」
剣士「……『向こう側』の勇者、か」
魔王「ああ、そう、だな」
勇者「! ……魔王になる、選択をした、私……!?」
魔王「そういうことだ。金髪紫瞳の男は……お前の息子」
勇者「!?」
剣士「……!」
金の髪の魔王「お前と、青年の子だ」
剣士「……あいつ、話して居なかったのか」
勇者「…… ……え!? ……青年、知ってたの!?」
291: 2014/07/09(水) 16:22:11.65 ID:TqMVtY4U0
勇者「……てか、剣士、知ってたの!?」
剣士「……自分の口から話す、と言うから……すまん」ハァ
勇者「私と……青年の、子……? ……次代の、勇者……」
魔王「…… ……」
金の髪の魔王「…… ……」
剣士「お前が、魔導師に惹かれているのはわかっていたからな」ハァ
勇者「!」カァ
剣士「……以上に、お前は……魔王になんてなりたくない、と言っていただろう」
勇者「あ……!」
魔王「……それは、仕方ないだろう。はいそうですかと受け入れられる訳じゃ無い」
魔王「しかも……勇者は、后や、青年や……剣士に。すべてを聞いて育ってきたんだ」
魔王「……対峙していきなり、今決断しないと世界滅びます、とか言われりゃ」
魔王「諦めもつくけどさぁ……」
金の髪の魔王「……すまん」
魔王「え、いや……謝る事じゃないけど、てか。謝られても」
金の髪の魔王「まあ、そうだな」
魔王「……切り替え早ッ」
勇者「…… ……ッ」グッ
魔王「勇者?」
勇者「……どっちにしても、このままお父さん放っておくと」
勇者「世界は……滅びちゃう」
金の髪の魔王「……俺たちが消えない理由はそれか」
魔王「え?」
金の髪の魔王「紫の魔王は確かに消えた……失われた、が」
金の髪の魔王「……俺と剣士がここに……居る以上」
金の髪の魔王「『腐った世界の腐った不条理』は終わらない……断ち切れない」
剣士「…… ……」
金の髪の魔王「……形を変えて……また…… ……」
剣士「……否定は、できん、な」
魔王「お、おい……剣士まで……」
剣士「……自分の口から話す、と言うから……すまん」ハァ
勇者「私と……青年の、子……? ……次代の、勇者……」
魔王「…… ……」
金の髪の魔王「…… ……」
剣士「お前が、魔導師に惹かれているのはわかっていたからな」ハァ
勇者「!」カァ
剣士「……以上に、お前は……魔王になんてなりたくない、と言っていただろう」
勇者「あ……!」
魔王「……それは、仕方ないだろう。はいそうですかと受け入れられる訳じゃ無い」
魔王「しかも……勇者は、后や、青年や……剣士に。すべてを聞いて育ってきたんだ」
魔王「……対峙していきなり、今決断しないと世界滅びます、とか言われりゃ」
魔王「諦めもつくけどさぁ……」
金の髪の魔王「……すまん」
魔王「え、いや……謝る事じゃないけど、てか。謝られても」
金の髪の魔王「まあ、そうだな」
魔王「……切り替え早ッ」
勇者「…… ……ッ」グッ
魔王「勇者?」
勇者「……どっちにしても、このままお父さん放っておくと」
勇者「世界は……滅びちゃう」
金の髪の魔王「……俺たちが消えない理由はそれか」
魔王「え?」
金の髪の魔王「紫の魔王は確かに消えた……失われた、が」
金の髪の魔王「……俺と剣士がここに……居る以上」
金の髪の魔王「『腐った世界の腐った不条理』は終わらない……断ち切れない」
剣士「…… ……」
金の髪の魔王「……形を変えて……また…… ……」
剣士「……否定は、できん、な」
魔王「お、おい……剣士まで……」
292: 2014/07/09(水) 16:27:21.81 ID:TqMVtY4U0
勇者「…… ……」グイッ
魔王「!? お、おい、勇者?」
勇者「もっかい、突き刺して良い、お父さん」
魔王「へ!?」
金の髪の魔王「……おいおい」
剣士「勇者……!?」
勇者「完全に、お父さんを倒さないと、世界は……私は……ッ」ポロポロポロ
魔王「勇者……」
勇者「……その、前に」
魔王「……な、なんだ」
勇者「ぎゅー、ってして。ぎゅーって」
魔王「…… ……はい?」
勇者「ぎゅう! だっこ!」
魔王「は、はい!」ギュ
勇者「…… ……えへへ」ギュ
剣士「…… ……」ハァ
金の髪の魔王「……覚悟を決めるんだな、魔王」ハァ
魔王「氏にたいわけじゃ無いけど……まあ、仕方ない、よなぁ……」
勇者「……あ、でも。私……すでに魔王になってるかもしれない、のか」
金の髪の魔王「……手のひらを見てみろ。勇者の印を……」
勇者「あ……そうか」スッ
魔王「俺のは真っ黒の侭だ」
金の髪の魔王「当たり前だろ」
魔王「……あ、そう……」
勇者「金色だよ……光ってる。ほら」ポロポロ
魔王「……ん」スッ
魔王「やっぱ、ぴったり合うんだな」ピタ
勇者「……うん」ピタ
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ
勇者「!?」
魔王「ウワアアアアアアアアアア!?」
剣士「な……ッ ん…… ……!!」
金の髪の魔王「!!」
……
………
…………
魔王「!? お、おい、勇者?」
勇者「もっかい、突き刺して良い、お父さん」
魔王「へ!?」
金の髪の魔王「……おいおい」
剣士「勇者……!?」
勇者「完全に、お父さんを倒さないと、世界は……私は……ッ」ポロポロポロ
魔王「勇者……」
勇者「……その、前に」
魔王「……な、なんだ」
勇者「ぎゅー、ってして。ぎゅーって」
魔王「…… ……はい?」
勇者「ぎゅう! だっこ!」
魔王「は、はい!」ギュ
勇者「…… ……えへへ」ギュ
剣士「…… ……」ハァ
金の髪の魔王「……覚悟を決めるんだな、魔王」ハァ
魔王「氏にたいわけじゃ無いけど……まあ、仕方ない、よなぁ……」
勇者「……あ、でも。私……すでに魔王になってるかもしれない、のか」
金の髪の魔王「……手のひらを見てみろ。勇者の印を……」
勇者「あ……そうか」スッ
魔王「俺のは真っ黒の侭だ」
金の髪の魔王「当たり前だろ」
魔王「……あ、そう……」
勇者「金色だよ……光ってる。ほら」ポロポロ
魔王「……ん」スッ
魔王「やっぱ、ぴったり合うんだな」ピタ
勇者「……うん」ピタ
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ
勇者「!?」
魔王「ウワアアアアアアアアアア!?」
剣士「な……ッ ん…… ……!!」
金の髪の魔王「!!」
……
………
…………
293: 2014/07/09(水) 16:38:34.38 ID:TqMVtY4U0
后「……ぐ、ゥ……癒し手!」
癒し手「も、もう……力、が……ッ」
側近「癒し手……!」ギュ……ッ スカッ
側近「!?」
癒し手「……ごめんなさい。私に、実態は…… ……!! 側近さ……ッ」
魔王「アアア!」ゴオオオッ
側近「! ……ッ うわああああああッ」
魔導師「氷、よ……こお、り …… ……ッ」ハァ、ハァ……ッ
魔導師(だ、めだ……もう、魔力、が……ッ)
青年「…… ……ッ」ハァ、ハァ
青年(なんて、魔力だ……ッ これだけ、皆で……かかって、も……ッ)
青年(……勇者様、早く……気がついてくれ……ッ)
后「……魔王……ま、お……ッ」ゴホゴホッ
青年「! 后様……ッ」ポゥ……ッ
青年(駄目だ、僕ももう、魔力が……!)
癒し手「……何故……ッ 光の剣で、貫かれた、のに……ッ ……ッ」サラサラ……ッ
癒し手「!!」
癒し手(体が……維持できない……ッ ああ、私は、もう……今度こそ……!)
側近「……癒し……手 ……ッ」ゴホッ
癒し手(側近さん…… ……ッ)
魔王「『ウワアアアアアアアアアア!?』」
后「!」
后(魔王…… ……もう、駄目……ッ 世界、が……ッ)
側近(滅びて……しまう、のか……!?)
勇者「!」パチッガバッ
魔導師「……ゆ、う……しゃ、さま…… ……?」
勇者「…… ……」キィン……
魔王「…… ……」
青年「……勇者様の、体が……ひか、って…… ……?」
癒し手「……全き、光……?」
勇者「…… ……」スッピタ
魔王「…… ……」スッピタ
后(手のひら……勇者の、印……?)
側近(! ……急に、楽になった……!?)
癒し手「……あ……ッ」サラ…… ……
癒し手(体が……崩れるのが……止まった?)
バチバチバチ……ッ
癒し手「も、もう……力、が……ッ」
側近「癒し手……!」ギュ……ッ スカッ
側近「!?」
癒し手「……ごめんなさい。私に、実態は…… ……!! 側近さ……ッ」
魔王「アアア!」ゴオオオッ
側近「! ……ッ うわああああああッ」
魔導師「氷、よ……こお、り …… ……ッ」ハァ、ハァ……ッ
魔導師(だ、めだ……もう、魔力、が……ッ)
青年「…… ……ッ」ハァ、ハァ
青年(なんて、魔力だ……ッ これだけ、皆で……かかって、も……ッ)
青年(……勇者様、早く……気がついてくれ……ッ)
后「……魔王……ま、お……ッ」ゴホゴホッ
青年「! 后様……ッ」ポゥ……ッ
青年(駄目だ、僕ももう、魔力が……!)
癒し手「……何故……ッ 光の剣で、貫かれた、のに……ッ ……ッ」サラサラ……ッ
癒し手「!!」
癒し手(体が……維持できない……ッ ああ、私は、もう……今度こそ……!)
側近「……癒し……手 ……ッ」ゴホッ
癒し手(側近さん…… ……ッ)
魔王「『ウワアアアアアアアアアア!?』」
后「!」
后(魔王…… ……もう、駄目……ッ 世界、が……ッ)
側近(滅びて……しまう、のか……!?)
勇者「!」パチッガバッ
魔導師「……ゆ、う……しゃ、さま…… ……?」
勇者「…… ……」キィン……
魔王「…… ……」
青年「……勇者様の、体が……ひか、って…… ……?」
癒し手「……全き、光……?」
勇者「…… ……」スッピタ
魔王「…… ……」スッピタ
后(手のひら……勇者の、印……?)
側近(! ……急に、楽になった……!?)
癒し手「……あ……ッ」サラ…… ……
癒し手(体が……崩れるのが……止まった?)
バチバチバチ……ッ
294: 2014/07/09(水) 16:47:31.18 ID:TqMVtY4U0
魔導師「あ……あ、ま……魔王、様が……ッ」
青年「目を、開く……ッ」
魔王「勇者は、魔王を倒す……『お前は確かに、俺の体を貫いた』」
魔王「魔王は勇者の光を奪い去る……そして」
勇者「そして……勇者は、魔王の闇を手に入れる」
青年「……勇者様?」
魔王「弱くもあり、強くもある……汝の名は人間」
勇者「…… ……私に」
勇者「私に、魔王になれ……と言う、んだね?」
パア……ッ
后「!」
側近(また、光った……ッ 違う!?)
癒し手「……いれ、変わる……違う!?」
青年「……吸収、してる。勇者様が、魔王様の……闇、を……!」
魔導師「……光が、消えていく……!?」
勇者「違う……光の行き先は、ここ」グッ……シャキン
魔王「光の剣……皆の魂の宿る、属性を移す魔法剣、だ……勇者」
勇者「…… ……」
魔王「もう一度、貫くのだろう」
后「魔王、貴方……!?」
側近「……正気、なのか……?」
癒し手「魔王様……!」
魔王「……『腐った世界の腐った不条理を断ち切れ』!」
勇者「『拒否権の無い選択などあるものか!』」
魔王「『真に美しい世界を望む為だ』」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒すんだ!』」
勇者「……お父さん。ぎゅ、してくれて……ありがと」ブン……ッ
ザク……ッ
魔王「お前が…… ……望む、なら、いつ……だ……て……」ギュ
勇者「…… ……ッ」ギュ
青年「目を、開く……ッ」
魔王「勇者は、魔王を倒す……『お前は確かに、俺の体を貫いた』」
魔王「魔王は勇者の光を奪い去る……そして」
勇者「そして……勇者は、魔王の闇を手に入れる」
青年「……勇者様?」
魔王「弱くもあり、強くもある……汝の名は人間」
勇者「…… ……私に」
勇者「私に、魔王になれ……と言う、んだね?」
パア……ッ
后「!」
側近(また、光った……ッ 違う!?)
癒し手「……いれ、変わる……違う!?」
青年「……吸収、してる。勇者様が、魔王様の……闇、を……!」
魔導師「……光が、消えていく……!?」
勇者「違う……光の行き先は、ここ」グッ……シャキン
魔王「光の剣……皆の魂の宿る、属性を移す魔法剣、だ……勇者」
勇者「…… ……」
魔王「もう一度、貫くのだろう」
后「魔王、貴方……!?」
側近「……正気、なのか……?」
癒し手「魔王様……!」
魔王「……『腐った世界の腐った不条理を断ち切れ』!」
勇者「『拒否権の無い選択などあるものか!』」
魔王「『真に美しい世界を望む為だ』」
勇者「『勇者は、必ず魔王を倒すんだ!』」
勇者「……お父さん。ぎゅ、してくれて……ありがと」ブン……ッ
ザク……ッ
魔王「お前が…… ……望む、なら、いつ……だ……て……」ギュ
勇者「…… ……ッ」ギュ
295: 2014/07/09(水) 16:56:35.17 ID:TqMVtY4U0
……
………
…………
金の髪の魔王「……ん?」
剣士「? どうした」
金の髪の魔王「何か聞こえないか」
剣士「……? ……否……別に」
シュゥウン…… ……
魔王「……愛してるよ、勇者」ギュ
剣士「…… ……」
魔王「ん? 堅い…… ……うわあああああああああああああああ!?」
剣士「…… ……」バキッ
魔王「いってぇ!?」
剣士「……もう一回氏ぬか」
魔王「……不可抗力だ、不可抗力! ……おえぇ」
金の髪の魔王「……無事に終わった、か」
魔王「あ……后! 后は!?」
金の髪の魔王「勇者の次は后か……」ハァ
剣士「節操なし」
魔王「え!? いや、娘と奥さんだし!? おかしくねぇだろ!?」
金の髪の魔王「……俺も后には……お前の母さんには会えてない、って」
金の髪の魔王「教えてやった筈だけどな」ハァ
魔王「……あ……そうか」
剣士「……また、何か来た」ハァ
魔王「え?」
シュゥン……
紫魔「……む?」
金の髪の魔王「……え?」
剣士「何……?」
魔王「……あぇ?」
紫魔「……なんだ、揃いも揃って」
魔王「え、ええ!? いやいやいや!? アンタ消えたんじゃ無いの!?」
紫魔「そのはず……なのだが」
シュゥン……
紫魔の側近「おぉえええええええええ!」
魔王「うわあああああああ!?」
金の髪の魔王「紫魔の側近!?」
紫魔「遅いぞ、側近」
紫魔の側近「いやいやいやいやいや! お前、それは無いだろ!?」
魔王「…… ……」
剣士「……しっかりしろ」
魔王「いや、無理だろ」
剣士「…… ……そうか」
金の髪の魔王「どういうことだよ……ッ」ハッ
金の髪の魔王「……まさか……ッ」
紫魔の側近「ん? ……ああ、んな深刻な顔しなさんな」
………
…………
金の髪の魔王「……ん?」
剣士「? どうした」
金の髪の魔王「何か聞こえないか」
剣士「……? ……否……別に」
シュゥウン…… ……
魔王「……愛してるよ、勇者」ギュ
剣士「…… ……」
魔王「ん? 堅い…… ……うわあああああああああああああああ!?」
剣士「…… ……」バキッ
魔王「いってぇ!?」
剣士「……もう一回氏ぬか」
魔王「……不可抗力だ、不可抗力! ……おえぇ」
金の髪の魔王「……無事に終わった、か」
魔王「あ……后! 后は!?」
金の髪の魔王「勇者の次は后か……」ハァ
剣士「節操なし」
魔王「え!? いや、娘と奥さんだし!? おかしくねぇだろ!?」
金の髪の魔王「……俺も后には……お前の母さんには会えてない、って」
金の髪の魔王「教えてやった筈だけどな」ハァ
魔王「……あ……そうか」
剣士「……また、何か来た」ハァ
魔王「え?」
シュゥン……
紫魔「……む?」
金の髪の魔王「……え?」
剣士「何……?」
魔王「……あぇ?」
紫魔「……なんだ、揃いも揃って」
魔王「え、ええ!? いやいやいや!? アンタ消えたんじゃ無いの!?」
紫魔「そのはず……なのだが」
シュゥン……
紫魔の側近「おぉえええええええええ!」
魔王「うわあああああああ!?」
金の髪の魔王「紫魔の側近!?」
紫魔「遅いぞ、側近」
紫魔の側近「いやいやいやいやいや! お前、それは無いだろ!?」
魔王「…… ……」
剣士「……しっかりしろ」
魔王「いや、無理だろ」
剣士「…… ……そうか」
金の髪の魔王「どういうことだよ……ッ」ハッ
金の髪の魔王「……まさか……ッ」
紫魔の側近「ん? ……ああ、んな深刻な顔しなさんな」
296: 2014/07/09(水) 17:03:13.47 ID:TqMVtY4U0
紫魔の側近「……ちょっと忘れ物、拾いに来ただけさ」
金の髪の魔王「忘れ物?」
紫魔「……やっと揃った、んだ」
剣士「…… ……」
魔王(なんつーか……すべての元凶が……揃ってる……ん、だよな、これ……)
紫魔の側近「やっと思い出したぜ、剣士」
剣士「……何をだ」
紫魔の側近「忘れたとか言っちゃう!? 俺の視力奪っておいて!?」
剣士「不可抗力、だろう」
魔王「…… ……」ジッ
剣士「……なんだ」
魔王「いや、何でも……」
魔王(あいつも殴られれば良いのに)チッ
紫魔の側近「……別に恨んじゃいネェよ」
紫魔の側近「おい、魔王様。さっさとしろよ!」
魔王「え、俺?」
紫魔の側近「お前じゃネェよ!俺の魔王様は、紫の魔王様だけだっつーの」
紫魔「……断る」
紫魔の側近「愛の告白じゃねぇええええええええ! さっさとしろ!」
紫魔「まあ、待て……一番厄介なのがまだだ」
紫魔の側近「えー……」
紫魔「……女剣士だけずるい! ……って、責められるのはお前だと思うが?」
紫魔の側近「何で俺なんだよ! ……ああ、でも姫様ならやりかねん」ハァ
魔王「……何の漫才?」
金の髪の魔王「お前な……」
シュゥウン……
姫「きゃ……ッ ……!?」
紫魔「……来た、な」
紫魔の側近「よーう、迎えに来たぜ、姫様」
姫「側近…… ……ッ 魔王!?」
タタタ……ッ
金の髪の魔王「忘れ物?」
紫魔「……やっと揃った、んだ」
剣士「…… ……」
魔王(なんつーか……すべての元凶が……揃ってる……ん、だよな、これ……)
紫魔の側近「やっと思い出したぜ、剣士」
剣士「……何をだ」
紫魔の側近「忘れたとか言っちゃう!? 俺の視力奪っておいて!?」
剣士「不可抗力、だろう」
魔王「…… ……」ジッ
剣士「……なんだ」
魔王「いや、何でも……」
魔王(あいつも殴られれば良いのに)チッ
紫魔の側近「……別に恨んじゃいネェよ」
紫魔の側近「おい、魔王様。さっさとしろよ!」
魔王「え、俺?」
紫魔の側近「お前じゃネェよ!俺の魔王様は、紫の魔王様だけだっつーの」
紫魔「……断る」
紫魔の側近「愛の告白じゃねぇええええええええ! さっさとしろ!」
紫魔「まあ、待て……一番厄介なのがまだだ」
紫魔の側近「えー……」
紫魔「……女剣士だけずるい! ……って、責められるのはお前だと思うが?」
紫魔の側近「何で俺なんだよ! ……ああ、でも姫様ならやりかねん」ハァ
魔王「……何の漫才?」
金の髪の魔王「お前な……」
シュゥウン……
姫「きゃ……ッ ……!?」
紫魔「……来た、な」
紫魔の側近「よーう、迎えに来たぜ、姫様」
姫「側近…… ……ッ 魔王!?」
タタタ……ッ
297: 2014/07/09(水) 17:13:39.77 ID:TqMVtY4U0
紫魔「……氏して尚、お前に責められるのはごめんだからな」ハァ
姫「紫の魔王……!」ギュッ
紫魔「……うん」ギュ
姫「……会えると、思ってなかった……ッ」ギュウ……
紫魔「何を言う……私達は、夫婦なのだろう」
姫「……ふふ」
紫魔の側近「……かんっぺきに俺らの事忘れてるよな」
剣士「こんな状況で気にされてもな」
魔王「……あれが、姫様!? 何、ツンデレなの!?」
金の髪の魔王「……なあ、側近」
紫魔の側近「ん?」
金の髪の魔王「后には……俺は、后には会えないのか?」
紫魔の側近「……心配すんな。お前ももうすぐ、完全に失われる」
紫魔の側近「俺も。紫の魔王様も……今度こそ」
剣士「…… ……」
金の髪の魔王「……そう、か。完璧に失われたら……もう、何も……」ハハ……
金の髪の魔王「后…… ……」
魔王「父さん……」
紫魔の側近「何か忘れてるぜ、お馬鹿さん」
金の髪の魔王「え?」
紫魔の側近「……願えば叶う、のさ……楽しみにしてろよ」
金の髪の魔王「……?」
紫魔の側近「ここは……特異点だけがこれる場所。女剣士は……ありゃ、まあ」
紫魔の側近「……要するに、紫の魔王様が、無理矢理……俺のために呼んだだけだ」
金の髪の魔王「呼んだ……?」
紫魔の側近「……あいつは、そもそも完全に失われてる筈だった、んだとよ」
紫魔の側近「それをね。俺を思うあまり、うろうろとさまよってたわけ」
魔王「……それを、ここに呼んだ?」
金の髪の魔王「……本当に、何でもありなんだな」
紫魔の側近「お前の半身なんだぜ、あの化け物は」ハハッ
紫魔「誰が化け物だ、阿呆!」
紫魔の側近「間違えてねぇだろうが! つか、さっさとしろって!」
紫魔の側近「お前待ちなんだからね! 皆!」
紫魔「……ふむ、仕方ない。続きは後にするか」
姫「続き?」
紫魔「……あれほど私に逢いたいと願っておいて」
紫魔「『お前に指一本触れない』と言う約束が、まだ有効だとは言わせんぞ?」
姫「……仕方ないわね」クス
紫魔の側近「だからさっさとしろってえええええええええ!!」
紫魔の側近「いちゃいちゃすんのは後にして!」
姫「うらやましいの?」
紫魔の側近「違うわあああああああああああああああああ!!」
姫「紫の魔王……!」ギュッ
紫魔「……うん」ギュ
姫「……会えると、思ってなかった……ッ」ギュウ……
紫魔「何を言う……私達は、夫婦なのだろう」
姫「……ふふ」
紫魔の側近「……かんっぺきに俺らの事忘れてるよな」
剣士「こんな状況で気にされてもな」
魔王「……あれが、姫様!? 何、ツンデレなの!?」
金の髪の魔王「……なあ、側近」
紫魔の側近「ん?」
金の髪の魔王「后には……俺は、后には会えないのか?」
紫魔の側近「……心配すんな。お前ももうすぐ、完全に失われる」
紫魔の側近「俺も。紫の魔王様も……今度こそ」
剣士「…… ……」
金の髪の魔王「……そう、か。完璧に失われたら……もう、何も……」ハハ……
金の髪の魔王「后…… ……」
魔王「父さん……」
紫魔の側近「何か忘れてるぜ、お馬鹿さん」
金の髪の魔王「え?」
紫魔の側近「……願えば叶う、のさ……楽しみにしてろよ」
金の髪の魔王「……?」
紫魔の側近「ここは……特異点だけがこれる場所。女剣士は……ありゃ、まあ」
紫魔の側近「……要するに、紫の魔王様が、無理矢理……俺のために呼んだだけだ」
金の髪の魔王「呼んだ……?」
紫魔の側近「……あいつは、そもそも完全に失われてる筈だった、んだとよ」
紫魔の側近「それをね。俺を思うあまり、うろうろとさまよってたわけ」
魔王「……それを、ここに呼んだ?」
金の髪の魔王「……本当に、何でもありなんだな」
紫魔の側近「お前の半身なんだぜ、あの化け物は」ハハッ
紫魔「誰が化け物だ、阿呆!」
紫魔の側近「間違えてねぇだろうが! つか、さっさとしろって!」
紫魔の側近「お前待ちなんだからね! 皆!」
紫魔「……ふむ、仕方ない。続きは後にするか」
姫「続き?」
紫魔「……あれほど私に逢いたいと願っておいて」
紫魔「『お前に指一本触れない』と言う約束が、まだ有効だとは言わせんぞ?」
姫「……仕方ないわね」クス
紫魔の側近「だからさっさとしろってえええええええええ!!」
紫魔の側近「いちゃいちゃすんのは後にして!」
姫「うらやましいの?」
紫魔の側近「違うわあああああああああああああああああ!!」
298: 2014/07/09(水) 17:19:33.91 ID:TqMVtY4U0
紫魔の側近「…… ……」ゼェゼェ
姫「相変わらずね、側近」クス
紫魔の側近「……もう良い。突っ込むのも疲れる。もう良い!」
紫魔「拗ねるな……さて。金の髪の魔王……私の、半身よ」
金の髪の魔王「……ああ」
紫魔「剣士、だったか……『欠片』よ」
剣士「…… ……」
紫魔「……我らは、今度こそ、本当に……完全に失われるのだ」
金の髪の魔王「……俺たちは、喜ばなくてはいけないんだな」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「……長居しても仕方ないだろ。ここは、不安定な場所なんだ」
紫魔の側近「囚われる訳にはいかん……おい、黒髪の魔王」
魔王「あ、え? ……何」
紫魔の側近「んな顔すんな……お前も、すぐだ」
紫魔の側近「『また、後で……な』」
シュゥン
魔王「あ……ッ」
紫魔「……案ずるな。お前なら……お前の娘ならば、出来る。必ず」
シュゥン……
姫「……ちょっとの間だけど、楽しかったわ、魔王」サラサラサラ……
魔王「姫様……」
姫「ありがとう……癒し手にあえて、嬉しかった」サラサラ……
サラ…… ……
魔王「…… ……」
姫「相変わらずね、側近」クス
紫魔の側近「……もう良い。突っ込むのも疲れる。もう良い!」
紫魔「拗ねるな……さて。金の髪の魔王……私の、半身よ」
金の髪の魔王「……ああ」
紫魔「剣士、だったか……『欠片』よ」
剣士「…… ……」
紫魔「……我らは、今度こそ、本当に……完全に失われるのだ」
金の髪の魔王「……俺たちは、喜ばなくてはいけないんだな」
剣士「…… ……」
紫魔の側近「……長居しても仕方ないだろ。ここは、不安定な場所なんだ」
紫魔の側近「囚われる訳にはいかん……おい、黒髪の魔王」
魔王「あ、え? ……何」
紫魔の側近「んな顔すんな……お前も、すぐだ」
紫魔の側近「『また、後で……な』」
シュゥン
魔王「あ……ッ」
紫魔「……案ずるな。お前なら……お前の娘ならば、出来る。必ず」
シュゥン……
姫「……ちょっとの間だけど、楽しかったわ、魔王」サラサラサラ……
魔王「姫様……」
姫「ありがとう……癒し手にあえて、嬉しかった」サラサラ……
サラ…… ……
魔王「…… ……」
299: 2014/07/09(水) 17:24:34.97 ID:TqMVtY4U0
金の髪の魔王「……お前の后に会えるように、祈っておくよ、息子」サラサラ……
魔王「父さん……」
金の髪の魔王「あれほど早く、終わってしまいたいと思ったが」サラサラ……
金の髪の魔王「……いざとなると、ちょっと寂しいな」サラ……
魔王「あ……ッ」
サラ……
剣士「……魔王」サラサラ……
魔王「剣士!?」
魔王(……そうか。剣士も……)
剣士「…… ……」サラサラ……
サラ……
魔王(あいつは……最後まで無口だな……)ハァ
魔王(喜ばなくてはいけない、か……わかってる。わかってるけど)
魔王(……寂しい、な)ポロ
魔王(父さん……母さんに、会えると良いね……)
……
………
…………
魔王「父さん……」
金の髪の魔王「あれほど早く、終わってしまいたいと思ったが」サラサラ……
金の髪の魔王「……いざとなると、ちょっと寂しいな」サラ……
魔王「あ……ッ」
サラ……
剣士「……魔王」サラサラ……
魔王「剣士!?」
魔王(……そうか。剣士も……)
剣士「…… ……」サラサラ……
サラ……
魔王(あいつは……最後まで無口だな……)ハァ
魔王(喜ばなくてはいけない、か……わかってる。わかってるけど)
魔王(……寂しい、な)ポロ
魔王(父さん……母さんに、会えると良いね……)
……
………
…………
300: 2014/07/09(水) 17:29:21.29 ID:TqMVtY4U0
側近「奇跡だな」
癒し手「奇跡ですね」
側近「……まさか、一緒に逝けると思わなかった」
癒し手「私もです……ごめんなさい。約束、守れなくて」
側近「……否。こうして、帰ってくれた」
癒し手「……はい」
側近「抱きしめられなかった時は……少し、悲しかったけれど」クス
癒し手「今は、触れられます。こうして」ギュ
側近「……ああ」ギュ
癒し手「お母様に、会いました……会えました」
側近「姫様に……?」
癒し手「はい……向こう側と違って、体毎朽ちてしまった私を」
癒し手「……勇者様と、青年さんと。魔導師君の」
癒し手「……私が遺した、浄化の魔石を使って、具現化してくれたんです」
側近「そう……だったのか……」
癒し手「……抱きしめて、もらえました」
側近「……うん」
癒し手「夢の様です。貴方にも会えました」ギュ
側近「ああ……ッ」ギュ
癒し手「もう……離れません。氏んでも、一緒です」
側近「癒し手……愛してる」
癒し手「私も。氏んでも良いぐらい、愛しています」
シュゥン……シュゥン……
后「…… ……」
后(癒し手、側近…… ……わかる。もう)
后(あの子達は、完全に……失われた)
后(……空、飛んでるみたい。私も、もう……)
后(魔王……どこ? ……きっと、また会える、わよね……?)
后(……私達は、悠久の空へ還り、世界へと孵る……そうで、あるのならば)
后(……勇者。貴女は…… ……もう…… ……)
シュゥン…… ……
……
………
…………
勇者「!」パチ
癒し手「奇跡ですね」
側近「……まさか、一緒に逝けると思わなかった」
癒し手「私もです……ごめんなさい。約束、守れなくて」
側近「……否。こうして、帰ってくれた」
癒し手「……はい」
側近「抱きしめられなかった時は……少し、悲しかったけれど」クス
癒し手「今は、触れられます。こうして」ギュ
側近「……ああ」ギュ
癒し手「お母様に、会いました……会えました」
側近「姫様に……?」
癒し手「はい……向こう側と違って、体毎朽ちてしまった私を」
癒し手「……勇者様と、青年さんと。魔導師君の」
癒し手「……私が遺した、浄化の魔石を使って、具現化してくれたんです」
側近「そう……だったのか……」
癒し手「……抱きしめて、もらえました」
側近「……うん」
癒し手「夢の様です。貴方にも会えました」ギュ
側近「ああ……ッ」ギュ
癒し手「もう……離れません。氏んでも、一緒です」
側近「癒し手……愛してる」
癒し手「私も。氏んでも良いぐらい、愛しています」
シュゥン……シュゥン……
后「…… ……」
后(癒し手、側近…… ……わかる。もう)
后(あの子達は、完全に……失われた)
后(……空、飛んでるみたい。私も、もう……)
后(魔王……どこ? ……きっと、また会える、わよね……?)
后(……私達は、悠久の空へ還り、世界へと孵る……そうで、あるのならば)
后(……勇者。貴女は…… ……もう…… ……)
シュゥン…… ……
……
………
…………
勇者「!」パチ
301: 2014/07/09(水) 17:39:05.00 ID:TqMVtY4U0
魔導師「勇者様!勇者様!」
勇者「……! お父さんは!? お母さん達は……!」ガバッ
青年「……急に動かない方が良い」
勇者「魔導師、青年……ッ大丈夫!?」
青年「……生きてるよ。不思議だけど」
勇者「……どうなった、の?」
青年「……勇者は必ず魔王を倒すんだろう?」
勇者「…… ……」
青年「君は……気を失って、目を覚ました後……」
勇者「あ……待って……そこは覚えてる」
青年「……二度。魔王様を貫いた、んだ」
魔導師「勇者の印は……如何です」
勇者「あ……!」バッ
勇者「……真っ黒、だ」
勇者「お父さんと、手を合わせて……それで。青年の言うとおり……」
勇者「……魔王になっちゃった、んだね」
魔導師「…… ……」
青年「いろいろと聞かせてほしい、ところだけど」ハァ
青年「結構長い事気を失ってたんだ……今はゆっくりと体を休める方が良い」
勇者「……大丈夫だよ。力が……あふれて来るみたいだ」
魔導師「…… ……」
勇者「そんな顔をしないで、魔導師……わかってる。これ見ても、まだ勇者だとは」
勇者「……言えないでしょ」
青年(勇者の印。真っ黒だ……あの時。勇者様の体は……否、勇者の印は)
青年(……確かに、魔王様の闇を……吸い取っていた)
魔導師「……す、みません……貴女は、あんなにも……ッ」
魔導師「魔王に、なりたくないと言っていた、のに……ッ」ポロポロ
勇者「……泣かないでよ。悔やんでも……仕方ない」
勇者「あのままお父さん、放っておく訳にいかなかったし、ね」
勇者「……ねえ、青年」
青年「ん?」
勇者「教えて……私の瞳の色は、何色なの」
青年「……紫だ。闇のように深い、紫の瞳」
勇者「…… ……」クス
魔導師「勇者様?」
勇者「……『最強の魔王』、か」
青年「勇者様……」
勇者「……もう、魔王で良い」
コンコン
使用人「お茶をお持ちしました……失礼します」
カチャ
使用人「ああ……もうお目覚めでしたか、ま…… ……勇者様」
魔王「……私はもう、魔王だ」
使用人「……はい。魔王様」
勇者「……! お父さんは!? お母さん達は……!」ガバッ
青年「……急に動かない方が良い」
勇者「魔導師、青年……ッ大丈夫!?」
青年「……生きてるよ。不思議だけど」
勇者「……どうなった、の?」
青年「……勇者は必ず魔王を倒すんだろう?」
勇者「…… ……」
青年「君は……気を失って、目を覚ました後……」
勇者「あ……待って……そこは覚えてる」
青年「……二度。魔王様を貫いた、んだ」
魔導師「勇者の印は……如何です」
勇者「あ……!」バッ
勇者「……真っ黒、だ」
勇者「お父さんと、手を合わせて……それで。青年の言うとおり……」
勇者「……魔王になっちゃった、んだね」
魔導師「…… ……」
青年「いろいろと聞かせてほしい、ところだけど」ハァ
青年「結構長い事気を失ってたんだ……今はゆっくりと体を休める方が良い」
勇者「……大丈夫だよ。力が……あふれて来るみたいだ」
魔導師「…… ……」
勇者「そんな顔をしないで、魔導師……わかってる。これ見ても、まだ勇者だとは」
勇者「……言えないでしょ」
青年(勇者の印。真っ黒だ……あの時。勇者様の体は……否、勇者の印は)
青年(……確かに、魔王様の闇を……吸い取っていた)
魔導師「……す、みません……貴女は、あんなにも……ッ」
魔導師「魔王に、なりたくないと言っていた、のに……ッ」ポロポロ
勇者「……泣かないでよ。悔やんでも……仕方ない」
勇者「あのままお父さん、放っておく訳にいかなかったし、ね」
勇者「……ねえ、青年」
青年「ん?」
勇者「教えて……私の瞳の色は、何色なの」
青年「……紫だ。闇のように深い、紫の瞳」
勇者「…… ……」クス
魔導師「勇者様?」
勇者「……『最強の魔王』、か」
青年「勇者様……」
勇者「……もう、魔王で良い」
コンコン
使用人「お茶をお持ちしました……失礼します」
カチャ
使用人「ああ……もうお目覚めでしたか、ま…… ……勇者様」
魔王「……私はもう、魔王だ」
使用人「……はい。魔王様」
302: 2014/07/09(水) 17:53:56.66 ID:TqMVtY4U0
魔導師「ゆ……魔王様……」
使用人「どうぞ、皆様……お座りください」
青年「……久しぶり、って言うべきなのかな」
使用人「そうですね……多分、魔導師様とも」
魔導師「!」
使用人「……『向こう側』の私と、でしょうけれど」
魔導師「……年表は、読んでいただけてますよね」
使用人「勿論です……その話は、追々。まずは」
魔導師「……僕は、魔になります」
青年「…… ……」
魔王「…… ……」
魔導師「そして、もう一度貴女の……今の貴女の持つすべての『知』を」
魔導師「僕に、授けていただけませんか」
使用人「……勿論です。私は……『知を受け継ぐ者』」
使用人「私の持つすべての『知』……それから。私の『すべて』を」
使用人「貴方に、譲ります。魔導師様」
青年「!? ……まさか、向こう側と同じ様に、隠居するとでも言いたいのか」
使用人「……向こうの私と違い、1000年も生きていませんから」
使用人「寿命、はわかりませんけど。 ……ですが」
魔王「じゃあ……何故?」
使用人「……一言で言えば、疲れました」
魔導師「使用人さん……」
使用人「途中で放棄すれば、紫の魔王様にお叱りも受けましょうが」
使用人「……本当の意味の『知を受け継ぐ者』……それは、貴方でしょうから。魔導師様」
青年「…… ……」
使用人「ですが……すぐに、とはもうしません」ハァ
使用人「……悪い癖です。ですが……私も」
使用人「今知り得る、すべてを知ってから……終わりたい。そう思います」
魔王「……自分で命を絶つつもり?」
使用人「え? ……いえ。そんなつもりは」
使用人「……軽く失える命ではありません。先の事はまだ考えていませんが」
使用人「まだしばらくは……ここで、貴女に仕えます。魔王様」
魔王「……うん」
魔導師「…… ……」
青年「……君は、どこに居たんだ」
使用人「はい?」
青年「……黒髪の魔王様達と……僕たちが対峙している間、だ」
使用人「……書庫に。魔王様のお役に立つであろう、書物などをまとめて降りました」
魔王「あの騒ぎの中?」
使用人「…… ……」
魔王「……確信してたの。私が……魔王になるだろうって」
使用人「……あの人数でぶつかって、黒髪の魔王様を倒せる自信がありましたか?」
魔導師「…… ……」
使用人「どうぞ、皆様……お座りください」
青年「……久しぶり、って言うべきなのかな」
使用人「そうですね……多分、魔導師様とも」
魔導師「!」
使用人「……『向こう側』の私と、でしょうけれど」
魔導師「……年表は、読んでいただけてますよね」
使用人「勿論です……その話は、追々。まずは」
魔導師「……僕は、魔になります」
青年「…… ……」
魔王「…… ……」
魔導師「そして、もう一度貴女の……今の貴女の持つすべての『知』を」
魔導師「僕に、授けていただけませんか」
使用人「……勿論です。私は……『知を受け継ぐ者』」
使用人「私の持つすべての『知』……それから。私の『すべて』を」
使用人「貴方に、譲ります。魔導師様」
青年「!? ……まさか、向こう側と同じ様に、隠居するとでも言いたいのか」
使用人「……向こうの私と違い、1000年も生きていませんから」
使用人「寿命、はわかりませんけど。 ……ですが」
魔王「じゃあ……何故?」
使用人「……一言で言えば、疲れました」
魔導師「使用人さん……」
使用人「途中で放棄すれば、紫の魔王様にお叱りも受けましょうが」
使用人「……本当の意味の『知を受け継ぐ者』……それは、貴方でしょうから。魔導師様」
青年「…… ……」
使用人「ですが……すぐに、とはもうしません」ハァ
使用人「……悪い癖です。ですが……私も」
使用人「今知り得る、すべてを知ってから……終わりたい。そう思います」
魔王「……自分で命を絶つつもり?」
使用人「え? ……いえ。そんなつもりは」
使用人「……軽く失える命ではありません。先の事はまだ考えていませんが」
使用人「まだしばらくは……ここで、貴女に仕えます。魔王様」
魔王「……うん」
魔導師「…… ……」
青年「……君は、どこに居たんだ」
使用人「はい?」
青年「……黒髪の魔王様達と……僕たちが対峙している間、だ」
使用人「……書庫に。魔王様のお役に立つであろう、書物などをまとめて降りました」
魔王「あの騒ぎの中?」
使用人「…… ……」
魔王「……確信してたの。私が……魔王になるだろうって」
使用人「……あの人数でぶつかって、黒髪の魔王様を倒せる自信がありましたか?」
魔導師「…… ……」
303: 2014/07/09(水) 17:59:59.85 ID:TqMVtY4U0
使用人「手を取るしか無いだろう……そうしなければ、確かに無駄です」
使用人「相見える事の無い様……祈って、おりました。ですが」
魔王「……終わった事を言っても仕方ない」ハァ
魔王「これから……どうするか、だ。考えなくてはいけないのは」
使用人「…… ……」
魔王「青年」
青年「? ……何」
魔王「……私と、子供を作ってくれるね?」
青年「な……!?」
魔導師「……ッ」ブッ
魔王「……魔導師、汚い」
魔導師「す、すみません」フキフキ
青年「な、何を言ってるんだ、君は、魔導師が……!!」
魔導師「…… ……え?」
魔王「……『金髪紫瞳の男』だ。私の……息子」
青年「!? ……剣士に……!」
魔王「違う」
青年「え……?」
魔王「……いやなの?」
青年「え? ……いや、あの……ッ ま、魔王様!?」カァ
使用人(可愛い所あるんだな……)クス
青年「……何で笑うんだよ」
使用人「……いえ、別に」
魔王「魔導師も、反対しないよね?」
魔導師「え!? ……あ、はい、あの。それは、まあ……」カァ
魔王「……今日は、ゆっくり休もう。私も、ごめん」
魔王「多分……混乱してる。魔導師、魔に、て言うのは……」
魔導師「あ……! 魔王様さえ、おつらくないのでしたら、僕は……すぐでも」
魔王「…… ……」
魔導師「……ごめんなさい。時間がたっぷり、あるのだろう事は、わかっているんです、けど」
使用人「相見える事の無い様……祈って、おりました。ですが」
魔王「……終わった事を言っても仕方ない」ハァ
魔王「これから……どうするか、だ。考えなくてはいけないのは」
使用人「…… ……」
魔王「青年」
青年「? ……何」
魔王「……私と、子供を作ってくれるね?」
青年「な……!?」
魔導師「……ッ」ブッ
魔王「……魔導師、汚い」
魔導師「す、すみません」フキフキ
青年「な、何を言ってるんだ、君は、魔導師が……!!」
魔導師「…… ……え?」
魔王「……『金髪紫瞳の男』だ。私の……息子」
青年「!? ……剣士に……!」
魔王「違う」
青年「え……?」
魔王「……いやなの?」
青年「え? ……いや、あの……ッ ま、魔王様!?」カァ
使用人(可愛い所あるんだな……)クス
青年「……何で笑うんだよ」
使用人「……いえ、別に」
魔王「魔導師も、反対しないよね?」
魔導師「え!? ……あ、はい、あの。それは、まあ……」カァ
魔王「……今日は、ゆっくり休もう。私も、ごめん」
魔王「多分……混乱してる。魔導師、魔に、て言うのは……」
魔導師「あ……! 魔王様さえ、おつらくないのでしたら、僕は……すぐでも」
魔王「…… ……」
魔導師「……ごめんなさい。時間がたっぷり、あるのだろう事は、わかっているんです、けど」
304: 2014/07/09(水) 18:07:19.38 ID:TqMVtY4U0
魔王「私は良いんだけど……魔王になったから、かな」
魔王「……力が、あふれてるんだ。でも……二人とも、怪我とか……」
青年「……君が黒髪の魔王の闇を吸い取った時、かな」
青年「……不思議な光があふれた。君の体から出た『全き光』は」
魔王「全き光?」
青年「……母さんがそう言っていた。それが、剣に吸い込まれていったのは、見た」
魔王「! あ、そうだ……光の剣は……!」
魔導師「……大丈夫です。ここにあります」シャキン
魔王「! …… ……そう、か」
青年「気がついたら、皆癒えてたんだよ。僕も、魔導師も……后様や、父さんも」
魔王「……お母さん達は……」
魔導師「『悠久の空へ還り、世界へと……』」
魔王「……孵る、だったか」ハァ
青年「……だから、僕たちの体を気遣う必要は無いよ」ハァ
青年「何にしたって、僕は魔になんて変じられない、けどね」
青年「……君と、子供を作る……にしたって。僕は母さんと同じだ」
青年「この……城の中。魔王様の側じゃ……どうせ、それほど長く、は……」
魔導師「……それについては、あまり心配ありません」
青年「え?」
魔導師「……これを」コロン、コロン
青年「! 母さんの魔石……!」
魔導師「……はい。三つ、ちゃんとあります」
魔導師「研究します……貴方を、ちゃんと生かします」
青年「……僕はモルモットじゃないぞ」
魔導師「魔王様と子供を作るんでしょ」
青年「…… ……ッ」
魔導師「……無駄に氏なせません。僕と貴方と……二人しか居ない、んですから」
魔王「……力が、あふれてるんだ。でも……二人とも、怪我とか……」
青年「……君が黒髪の魔王の闇を吸い取った時、かな」
青年「……不思議な光があふれた。君の体から出た『全き光』は」
魔王「全き光?」
青年「……母さんがそう言っていた。それが、剣に吸い込まれていったのは、見た」
魔王「! あ、そうだ……光の剣は……!」
魔導師「……大丈夫です。ここにあります」シャキン
魔王「! …… ……そう、か」
青年「気がついたら、皆癒えてたんだよ。僕も、魔導師も……后様や、父さんも」
魔王「……お母さん達は……」
魔導師「『悠久の空へ還り、世界へと……』」
魔王「……孵る、だったか」ハァ
青年「……だから、僕たちの体を気遣う必要は無いよ」ハァ
青年「何にしたって、僕は魔になんて変じられない、けどね」
青年「……君と、子供を作る……にしたって。僕は母さんと同じだ」
青年「この……城の中。魔王様の側じゃ……どうせ、それほど長く、は……」
魔導師「……それについては、あまり心配ありません」
青年「え?」
魔導師「……これを」コロン、コロン
青年「! 母さんの魔石……!」
魔導師「……はい。三つ、ちゃんとあります」
魔導師「研究します……貴方を、ちゃんと生かします」
青年「……僕はモルモットじゃないぞ」
魔導師「魔王様と子供を作るんでしょ」
青年「…… ……ッ」
魔導師「……無駄に氏なせません。僕と貴方と……二人しか居ない、んですから」
305: 2014/07/09(水) 18:07:49.30 ID:TqMVtY4U0
お風呂とご飯!
終わらなかったorz
明日は出かけるので、また明後日ー!
終わらなかったorz
明日は出かけるので、また明後日ー!
314: 2014/07/11(金) 10:23:29.97 ID:RrKAbwUR0
青年「……その石は、何処にあったんだ?」
魔導師「気がついたら……傍にあったんです。光の剣と一緒に」
魔導師「推測でしかありませんが……癒し手様は、多分この」
魔導師「石に残るご自分の魔力で……此処に」
魔王「姫様の力添えもあったんだろうね」
使用人「……姫様!?」
青年「ああ……北の塔で、ね。会ったんだよ……実態は無かったようだけど」
使用人「……まさか……ッ !! では、癒し手様は……!?」
青年「……見ていなかったから知らないな、そりゃ」
魔王「間に合ったんだ。『向こう側』と同じ……まあ、全く一緒じゃないけどね」
魔王「勿論。同じだったら否定した意味も無い、けど」
使用人「……ほ、んとう……に……?」
青年「よく知っているだろう。エルフは嘘は吐けない」
使用人「…… ……」
魔導師「姫様は『私の役目』だと仰って居ましたよ」
使用人「『役目』?」
魔導師「はい。北の塔であった時点では、何か……具体的には教えて下さいませんでしたけど」
魔導師「……癒し手様を、間に合わせる事。だったのかな、と」
使用人「…… ……」
青年「『親の愛』だろ」
魔王「え?」
青年「僕を思う母さんの気持ちとか。母さんを思う姫様の気持ち、とかさ」
青年「……否。会いたかったんだよ、どうしても。もう一度」
使用人「…… ……」
魔導師「気がついたら……傍にあったんです。光の剣と一緒に」
魔導師「推測でしかありませんが……癒し手様は、多分この」
魔導師「石に残るご自分の魔力で……此処に」
魔王「姫様の力添えもあったんだろうね」
使用人「……姫様!?」
青年「ああ……北の塔で、ね。会ったんだよ……実態は無かったようだけど」
使用人「……まさか……ッ !! では、癒し手様は……!?」
青年「……見ていなかったから知らないな、そりゃ」
魔王「間に合ったんだ。『向こう側』と同じ……まあ、全く一緒じゃないけどね」
魔王「勿論。同じだったら否定した意味も無い、けど」
使用人「……ほ、んとう……に……?」
青年「よく知っているだろう。エルフは嘘は吐けない」
使用人「…… ……」
魔導師「姫様は『私の役目』だと仰って居ましたよ」
使用人「『役目』?」
魔導師「はい。北の塔であった時点では、何か……具体的には教えて下さいませんでしたけど」
魔導師「……癒し手様を、間に合わせる事。だったのかな、と」
使用人「…… ……」
青年「『親の愛』だろ」
魔王「え?」
青年「僕を思う母さんの気持ちとか。母さんを思う姫様の気持ち、とかさ」
青年「……否。会いたかったんだよ、どうしても。もう一度」
使用人「…… ……」
315: 2014/07/11(金) 10:34:39.36 ID:RrKAbwUR0
魔王「使用人? どうしたの、険しい顔して……」
使用人「……『知を授ける』のが私の役目であるのなら」
使用人「やはり、私は……ここで、お暇すべき……否」
使用人「……舞台から、下ろされるのでしょう」
魔導師「え?」
使用人「時間は、あまりないのかもしれません……少々お待ちを」
スタスタ、パタン
魔王「……?」
青年「時間が無い、か」ハァ
魔導師「……長生きして貰います、ってば」
青年「氏に急ぐつもり何てないよ。でも……」
青年(確かに、浄化の石があれば可能性はあるかもしれないが……)
カチャ、パタン
使用人「……お渡ししようと思っていた物は、これです。一部ですけど」スッ
魔導師「? これは、僕が小鳥に託した……?」パラ
青年「それにしては……随分古い紙だな。あれ、お前こんなに字、綺麗だったか」
魔王「見せて」パラパラ
青年「……後ろの方だけか? 急に読みやすく……」
使用人「…… ……」
魔導師「こ、れ……は……!?」
使用人「此処を、見て下さい」トン
使用人「……魔導師様から届いたあの日、雨が降って居て一部滲んでいたんです」
魔導師「…… ……ッ 違います! この、後半部分……これは、僕じゃ無い!」
魔導師「僕は、こんな事は……書いて無い……!」
青年「……え?」
使用人「……あの日、魔導師様から受け取ったのは、此方です」パサッ
魔王「……紙が新しいね」
青年「どういう……事だ?」
使用人「……『知を授ける』のが私の役目であるのなら」
使用人「やはり、私は……ここで、お暇すべき……否」
使用人「……舞台から、下ろされるのでしょう」
魔導師「え?」
使用人「時間は、あまりないのかもしれません……少々お待ちを」
スタスタ、パタン
魔王「……?」
青年「時間が無い、か」ハァ
魔導師「……長生きして貰います、ってば」
青年「氏に急ぐつもり何てないよ。でも……」
青年(確かに、浄化の石があれば可能性はあるかもしれないが……)
カチャ、パタン
使用人「……お渡ししようと思っていた物は、これです。一部ですけど」スッ
魔導師「? これは、僕が小鳥に託した……?」パラ
青年「それにしては……随分古い紙だな。あれ、お前こんなに字、綺麗だったか」
魔王「見せて」パラパラ
青年「……後ろの方だけか? 急に読みやすく……」
使用人「…… ……」
魔導師「こ、れ……は……!?」
使用人「此処を、見て下さい」トン
使用人「……魔導師様から届いたあの日、雨が降って居て一部滲んでいたんです」
魔導師「…… ……ッ 違います! この、後半部分……これは、僕じゃ無い!」
魔導師「僕は、こんな事は……書いて無い……!」
青年「……え?」
使用人「……あの日、魔導師様から受け取ったのは、此方です」パサッ
魔王「……紙が新しいね」
青年「どういう……事だ?」
316: 2014/07/11(金) 10:42:40.45 ID:RrKAbwUR0
使用人「先にお渡ししたのは、昔から城にあった物です」
使用人「……恐らく、これを参考にして、紫の魔王様は魔石を考案したのだと」
使用人「思われます」
魔王「……ん、ん?」
使用人「一番最後のページを見て下さい」
魔導師「……『闇の手』?」
使用人「恐らく筆者のサインです…… ……誰の事かは、解りますよね?」
魔導師「!」
青年「……! 『向こう側』の魔導師か!?」
魔王「え!?」
使用人「歴代の魔王様に寄って、人から魔へと変じた者は」
使用人「……新たな名を与えられて来た。と言うのはご存じでしょう」
魔導師「……では、これは……『向こう側』の僕が……魔に変じた後」
魔導師「書いた物だ、と仰るのですか!?」
青年「……まて、辻褄が合わない! 『向こう側』は……!」
使用人「全ての絡繰りを、完璧に紐解くことは……恐らく、不可能です」
使用人「ですが、今まで何度も何度も、繰り返し、繰り返し……」
魔王「…… ……」
使用人「……狂った世界が、紡がれ続けて来たと、仮定すれば」
青年「それでもだ! 永遠に廻り続けて居たとしても、おかしいだろう!」
使用人「……一分の狂い無く、同じ道を歩み続けてきたと」
使用人「言う保証も無いんです、青年様」
青年「…… ……」
使用人「『こちら側』……今回だけが」
使用人「特別に違う、と証明は出来ないでしょう?」
青年「そ……れ、はそうだが……」
魔王「……少しずつ、ずれが、歪みが生じて居た、と?」
使用人「勿論……その保証もありませんけど」
使用人「『世の中に絶対は無い』……んです。魔王様」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」
魔王「…… ……」
使用人「……そう考える方が、解り良いでしょう?」
使用人「誰も、真実の答えなど、持っていません、から」
使用人「……恐らく、これを参考にして、紫の魔王様は魔石を考案したのだと」
使用人「思われます」
魔王「……ん、ん?」
使用人「一番最後のページを見て下さい」
魔導師「……『闇の手』?」
使用人「恐らく筆者のサインです…… ……誰の事かは、解りますよね?」
魔導師「!」
青年「……! 『向こう側』の魔導師か!?」
魔王「え!?」
使用人「歴代の魔王様に寄って、人から魔へと変じた者は」
使用人「……新たな名を与えられて来た。と言うのはご存じでしょう」
魔導師「……では、これは……『向こう側』の僕が……魔に変じた後」
魔導師「書いた物だ、と仰るのですか!?」
青年「……まて、辻褄が合わない! 『向こう側』は……!」
使用人「全ての絡繰りを、完璧に紐解くことは……恐らく、不可能です」
使用人「ですが、今まで何度も何度も、繰り返し、繰り返し……」
魔王「…… ……」
使用人「……狂った世界が、紡がれ続けて来たと、仮定すれば」
青年「それでもだ! 永遠に廻り続けて居たとしても、おかしいだろう!」
使用人「……一分の狂い無く、同じ道を歩み続けてきたと」
使用人「言う保証も無いんです、青年様」
青年「…… ……」
使用人「『こちら側』……今回だけが」
使用人「特別に違う、と証明は出来ないでしょう?」
青年「そ……れ、はそうだが……」
魔王「……少しずつ、ずれが、歪みが生じて居た、と?」
使用人「勿論……その保証もありませんけど」
使用人「『世の中に絶対は無い』……んです。魔王様」
魔導師「…… ……」
青年「…… ……」
魔王「…… ……」
使用人「……そう考える方が、解り良いでしょう?」
使用人「誰も、真実の答えなど、持っていません、から」
317: 2014/07/11(金) 10:49:39.74 ID:RrKAbwUR0
魔導師「……やっぱり、時間が必要ですね」ハァ
使用人「…… ……」
魔王「使用人」
使用人「? はい」
魔王「さっき、魔導師に『知』を受け継がせるのが貴女の役目だって言ったよね」
使用人「はい。それが何か……」
魔王「……役目を終えたら、貴女は終わってしまうの?」
青年「魔王様?」
使用人「確証はありません、けど……ですが」
使用人「それが本当に私の役目であるのなら。可能性は高いのでは無いかと思います」
魔王「……だったら、魔導師を魔に変じるのはもう少し後の方が良い」
使用人「? ですが」
魔王「さっき自分で言ったじゃ無い。知り得る全てを知って終わりたい、って」
魔王「……それに、約束したでしょ。可能ならば、だけど……」
魔王「『また、後で』って」
使用人「……まあ、それはそうですが」
魔導師「僕も賛成です。全ては無理でも、可能な限り紐解いて見たい」
魔導師「……それには、貴女の力も必要です、使用人さん」
青年「……別に、魔に変じるのを待つ必要は無いんじゃ無いの?」
魔王「え?」
青年「研究だか実験だかするんだとすればさ。時間の事もあるけど」
青年「……魔力だなんだ、人で無い方が便利なんじゃ?」
魔王「青年が魔力……魔の気に晒される時間が増えるんだよ」
青年「!」
魔王「……はいそうですかって、子供なんか出来る訳でないでしょ」
使用人「……単純にその選択が、私の時間を増やすことに繋がるかどうかは」
使用人「わかりかねますが……」
使用人「…… ……」
魔王「使用人」
使用人「? はい」
魔王「さっき、魔導師に『知』を受け継がせるのが貴女の役目だって言ったよね」
使用人「はい。それが何か……」
魔王「……役目を終えたら、貴女は終わってしまうの?」
青年「魔王様?」
使用人「確証はありません、けど……ですが」
使用人「それが本当に私の役目であるのなら。可能性は高いのでは無いかと思います」
魔王「……だったら、魔導師を魔に変じるのはもう少し後の方が良い」
使用人「? ですが」
魔王「さっき自分で言ったじゃ無い。知り得る全てを知って終わりたい、って」
魔王「……それに、約束したでしょ。可能ならば、だけど……」
魔王「『また、後で』って」
使用人「……まあ、それはそうですが」
魔導師「僕も賛成です。全ては無理でも、可能な限り紐解いて見たい」
魔導師「……それには、貴女の力も必要です、使用人さん」
青年「……別に、魔に変じるのを待つ必要は無いんじゃ無いの?」
魔王「え?」
青年「研究だか実験だかするんだとすればさ。時間の事もあるけど」
青年「……魔力だなんだ、人で無い方が便利なんじゃ?」
魔王「青年が魔力……魔の気に晒される時間が増えるんだよ」
青年「!」
魔王「……はいそうですかって、子供なんか出来る訳でないでしょ」
使用人「……単純にその選択が、私の時間を増やすことに繋がるかどうかは」
使用人「わかりかねますが……」
318: 2014/07/11(金) 10:55:05.34 ID:RrKAbwUR0
魔王「青年は、魔導師を魔へと変じさせといて」
魔王「使用人から知を受け継ぐのを待て、って言いたいんだろうけど」
青年「……言葉で説明するより、その方が確実で早いと思うよ」
青年「人だから、魔気に晒され続けても平気だって保証も無いんだ」
魔導師「……女剣士さんは、暫く此処に滞在されていた、んでしょう?」
魔導師「だったら……」
使用人「……此処にいた『人間』は女剣士様だけではありませんが」
使用人「確かに、青年さんの言う事も尤もです。暫く、の期間が」
使用人「何処までが良くて、何処までが駄目なのか……やはり」
使用人「保証の出来る問題ではありませんから」
青年「……それに、君は確実に『老いる』んだ、魔導師」
魔導師「…… ……」
青年「君は『向こう側』と『こちら側』の今……同時点、って考えても」
青年「既に年齢が違うんだよ……まあ、それは魔王様もだけど」
魔王「……だね。本来なら、もう数年後だった筈、だ」
魔王「でもね、青年。青年の身体が……!」
青年「……許可を貰えるなら、僕はこの城を離れる」
魔王「え!?」
魔王「使用人から知を受け継ぐのを待て、って言いたいんだろうけど」
青年「……言葉で説明するより、その方が確実で早いと思うよ」
青年「人だから、魔気に晒され続けても平気だって保証も無いんだ」
魔導師「……女剣士さんは、暫く此処に滞在されていた、んでしょう?」
魔導師「だったら……」
使用人「……此処にいた『人間』は女剣士様だけではありませんが」
使用人「確かに、青年さんの言う事も尤もです。暫く、の期間が」
使用人「何処までが良くて、何処までが駄目なのか……やはり」
使用人「保証の出来る問題ではありませんから」
青年「……それに、君は確実に『老いる』んだ、魔導師」
魔導師「…… ……」
青年「君は『向こう側』と『こちら側』の今……同時点、って考えても」
青年「既に年齢が違うんだよ……まあ、それは魔王様もだけど」
魔王「……だね。本来なら、もう数年後だった筈、だ」
魔王「でもね、青年。青年の身体が……!」
青年「……許可を貰えるなら、僕はこの城を離れる」
魔王「え!?」
319: 2014/07/11(金) 11:01:53.53 ID:RrKAbwUR0
青年「戻るよ、必ず……それは約束する」
青年「……君がどうして『金髪紫目の男』の事を知っているかはおいておいて、今は」ハァ
青年「それでも……もう少しよく考えて欲しい。本当に僕で良いのか」
魔王「…… ……」
青年「本人が気付いてるか知らないけど」チラ
魔導師「?」
青年「……僕は君の気持ちを知ってる。魔王様」
魔王「…… ……ッ」カァッ
青年「魔王になっちまったからか知らないけど、しっかりしようと」
青年「……凄く背伸びしてるようにも見える」
使用人「…… ……」
青年「みんな揃って此処に居ても、昔と違って」
青年「世界情勢を知らせてくれる『船長』も居ないんだ」
青年「……僕なら、小鳥を飛ばせる。足があれば、戻って来る事もできる」
使用人「どうやって、です。転移石ももうありませんよ?」
青年「北の塔だ」
使用人「……北の塔? さっきも、そう仰って居ましたが……」
魔導師「最上階の部屋まで行き、扉……入口であり、出口ですね」
魔導師「それを開くと、望む場所……と言うか、行くべき場所、かな」
魔導師「そこに、出る事ができるんです」
使用人「!? ……確か、ですか!?」
青年「……今までは、ね。次はそりゃ、保証は無いけど」
青年「どうにでもなる話だ。金さえあれば、此処まで出してくれる船だって」
青年「……ああ、そうだ。船長で思い出した。あいつが居るじゃないか」
使用人「……女船長さんの息子、ですか」
青年「ああ」
魔導師「しかし……!」
青年「ベストな方法が無いなら、ベターで妥協する必要があるだろ」
魔王「…… ……」
青年「勿論、決めるのは魔王様だ。だけど……」
青年「……君がどうして『金髪紫目の男』の事を知っているかはおいておいて、今は」ハァ
青年「それでも……もう少しよく考えて欲しい。本当に僕で良いのか」
魔王「…… ……」
青年「本人が気付いてるか知らないけど」チラ
魔導師「?」
青年「……僕は君の気持ちを知ってる。魔王様」
魔王「…… ……ッ」カァッ
青年「魔王になっちまったからか知らないけど、しっかりしようと」
青年「……凄く背伸びしてるようにも見える」
使用人「…… ……」
青年「みんな揃って此処に居ても、昔と違って」
青年「世界情勢を知らせてくれる『船長』も居ないんだ」
青年「……僕なら、小鳥を飛ばせる。足があれば、戻って来る事もできる」
使用人「どうやって、です。転移石ももうありませんよ?」
青年「北の塔だ」
使用人「……北の塔? さっきも、そう仰って居ましたが……」
魔導師「最上階の部屋まで行き、扉……入口であり、出口ですね」
魔導師「それを開くと、望む場所……と言うか、行くべき場所、かな」
魔導師「そこに、出る事ができるんです」
使用人「!? ……確か、ですか!?」
青年「……今までは、ね。次はそりゃ、保証は無いけど」
青年「どうにでもなる話だ。金さえあれば、此処まで出してくれる船だって」
青年「……ああ、そうだ。船長で思い出した。あいつが居るじゃないか」
使用人「……女船長さんの息子、ですか」
青年「ああ」
魔導師「しかし……!」
青年「ベストな方法が無いなら、ベターで妥協する必要があるだろ」
魔王「…… ……」
青年「勿論、決めるのは魔王様だ。だけど……」
320: 2014/07/11(金) 11:13:54.87 ID:RrKAbwUR0
青年「……身を案じてくれるなら、ね?」クス
魔王「……意地悪だな。反対する理由を全部消してくれたね」ハァ
青年「すぐじゃ無い。準備もいるし」
青年「……もう少し、話も聞きたいし。約束事を詰める必要もあるだろう」
魔王「…… ……」
魔導師「魔王様……」
使用人「…… ……」
魔王「……解った。だけど、此処からどうやって行くの?」
青年「…… ……」
使用人「『忘れてた』って顔に書いてありますね」
魔導師「……案外抜けてますね、青年さん」
青年「う、うるさい!」
魔王「ねえ、使用人。私が青年を吹っ飛ばす事って可能?」
青年「……吹っ飛ばす?」
魔王「あ、転移させる、かな」
青年「……物騒だな」ハァ
使用人「勿論、可能だとは思いますけど……そうすると」
使用人「先ほどの魔気に云々、の話が破綻しませんか」
魔王「剣士と何度か一緒に転移してるでしょ?」
青年「……ま、あ」
魔王「私も『なりたて』だし、そもそも魔王の力が大きくなるのって」
魔王「勇者を産んだ後、何だよね?」
魔導師「……まあ、そう、ですよね」
使用人「今のうち、ですか」
魔王「……意地悪だな。反対する理由を全部消してくれたね」ハァ
青年「すぐじゃ無い。準備もいるし」
青年「……もう少し、話も聞きたいし。約束事を詰める必要もあるだろう」
魔王「…… ……」
魔導師「魔王様……」
使用人「…… ……」
魔王「……解った。だけど、此処からどうやって行くの?」
青年「…… ……」
使用人「『忘れてた』って顔に書いてありますね」
魔導師「……案外抜けてますね、青年さん」
青年「う、うるさい!」
魔王「ねえ、使用人。私が青年を吹っ飛ばす事って可能?」
青年「……吹っ飛ばす?」
魔王「あ、転移させる、かな」
青年「……物騒だな」ハァ
使用人「勿論、可能だとは思いますけど……そうすると」
使用人「先ほどの魔気に云々、の話が破綻しませんか」
魔王「剣士と何度か一緒に転移してるでしょ?」
青年「……ま、あ」
魔王「私も『なりたて』だし、そもそも魔王の力が大きくなるのって」
魔王「勇者を産んだ後、何だよね?」
魔導師「……まあ、そう、ですよね」
使用人「今のうち、ですか」
321: 2014/07/11(金) 11:30:36.81 ID:RrKAbwUR0
青年「……自分が言い出したことだから、文句は無いけど」ハァ
魔王「どうせなら、早いほうが良い。お父さんが……氏んで」
魔王「私が、魔王になって……何がどう変わって、何が変わらないのか」
魔王「青年に見てきて欲しい」
青年「……勿論だ」
魔王「私も……魔導師も、魔になってしまったら」
魔王「歳を取らない……で、良いんだよね、使用人?」
使用人「え? はい」
魔王「……だったら、特に期間は決めないけど。なるべく早めに帰って来てね」
魔王「『勇者』の事もあるし」
青年「……よく考えろ、って言っただろ」ハァ
青年「ああ、そうか」
魔導師「え?」
青年「……何年か城離れても、歳取らないんだよな……」ハァ
魔王「? 今使用人がそう言ったじゃん」
青年「…… ……」ジィ
魔王「な、何」
青年「……子供抱く趣味は無いんだけ…… ……ッ」
ブン……ゴン!
使用人「……魔王様、ティーカップは武器じゃありませんよ」
魔導師「割れてないですよ、大丈夫です」
青年「し……ッ 心配すべきは僕の頭だろ!?」
魔導師「……ぶつけられて当然です。相変わらず下品なんだから」ハァ
魔王「どうせなら、早いほうが良い。お父さんが……氏んで」
魔王「私が、魔王になって……何がどう変わって、何が変わらないのか」
魔王「青年に見てきて欲しい」
青年「……勿論だ」
魔王「私も……魔導師も、魔になってしまったら」
魔王「歳を取らない……で、良いんだよね、使用人?」
使用人「え? はい」
魔王「……だったら、特に期間は決めないけど。なるべく早めに帰って来てね」
魔王「『勇者』の事もあるし」
青年「……よく考えろ、って言っただろ」ハァ
青年「ああ、そうか」
魔導師「え?」
青年「……何年か城離れても、歳取らないんだよな……」ハァ
魔王「? 今使用人がそう言ったじゃん」
青年「…… ……」ジィ
魔王「な、何」
青年「……子供抱く趣味は無いんだけ…… ……ッ」
ブン……ゴン!
使用人「……魔王様、ティーカップは武器じゃありませんよ」
魔導師「割れてないですよ、大丈夫です」
青年「し……ッ 心配すべきは僕の頭だろ!?」
魔導師「……ぶつけられて当然です。相変わらず下品なんだから」ハァ
322: 2014/07/11(金) 11:38:57.56 ID:RrKAbwUR0
青年「堂々と『子供作ろう』って宣言した魔王様と何が違うんだ!?」
使用人「……違いすぎます、下品です。青年様は」
青年「…… ……」
魔王「とにかく! ……青年の出発は明日!」
青年「え!?」
魔王「……だらだらしてても仕方無いでしょ」
青年「……まあ、そうだけど」
魔王「今日は……皆ゆっくりと休むべきだ。幸い」
魔王「皆、時間はそれほど、だけど。気にしなくて良い体なんだ」
魔王「……身体、になるんだ」チラ
魔導師「…… ……」
魔王「使用人、悪いけど、青年に色々準備してやって」
使用人「はい」
青年「……いや、別にこれといって無いけど」
魔王「お金とか必要でしょ。それに……その侭の格好で行かない方が良いと思うけど」
青年「僕? ……え、なんで」
魔王「目立つよ。貴方は」
青年「……かといってね」
魔導師「……少女さん達の事もありますし」
青年「少女?」
魔導師「船での移動が主になるなら、港街には必ず寄るでしょう?」
魔導師「……幼い子だとは言え、随分青年さんにご執心でしたしね」
青年「……覚えてるもんか」
魔導師「警戒は怠らない方が良いです。し、貴方、本当に」
魔導師「ご自分で思われてる以上に、目立つんです!」
青年「……でかい声だすな。解ったよ……」
使用人「……違いすぎます、下品です。青年様は」
青年「…… ……」
魔王「とにかく! ……青年の出発は明日!」
青年「え!?」
魔王「……だらだらしてても仕方無いでしょ」
青年「……まあ、そうだけど」
魔王「今日は……皆ゆっくりと休むべきだ。幸い」
魔王「皆、時間はそれほど、だけど。気にしなくて良い体なんだ」
魔王「……身体、になるんだ」チラ
魔導師「…… ……」
魔王「使用人、悪いけど、青年に色々準備してやって」
使用人「はい」
青年「……いや、別にこれといって無いけど」
魔王「お金とか必要でしょ。それに……その侭の格好で行かない方が良いと思うけど」
青年「僕? ……え、なんで」
魔王「目立つよ。貴方は」
青年「……かといってね」
魔導師「……少女さん達の事もありますし」
青年「少女?」
魔導師「船での移動が主になるなら、港街には必ず寄るでしょう?」
魔導師「……幼い子だとは言え、随分青年さんにご執心でしたしね」
青年「……覚えてるもんか」
魔導師「警戒は怠らない方が良いです。し、貴方、本当に」
魔導師「ご自分で思われてる以上に、目立つんです!」
青年「……でかい声だすな。解ったよ……」
323: 2014/07/11(金) 11:45:45.61 ID:RrKAbwUR0
魔導師「それから……」
青年「まだあるのか?」ハァ
魔導師「エルフの弓、置いていって下さい」
青年「……は!?」
魔導師「世代交代した直後なんです。魔物は消えないだろうけど」
魔導師「……力も弱まるし、数も減る筈です。貴方は魔法にも長けてるし」
青年「おいおい、だからって」
魔導師「それ含めて目立つんですって……」
青年「……し、かし。これは……」
魔導師「……姫様の。癒し手様の……もっと言えば、盗賊様とかの」
魔導師「形見の、大事な物だってのは重々承知してます」
魔導師「……でも、少し研究と……できそうなら、強化させて下さい」
青年「……できるのか?」
魔導師「無茶はしないと約束します。し、無理そうなら諦めます。でも」
魔導師「……魔王様は、確実に……最強の魔王になられます。だから」
魔王「…… ……」
魔導師「次の、勇者様の為にも」
青年「……わかったよ」ハァ…… カタン
魔導師「……ありがとうございます」
使用人「では、青年様。こちらへ」スッ
青年「? 金なら明日で良いだろう?」
使用人「……目立ちますから。私に……良い考えがあります」
青年「……どことなく嬉しそうに見えるのは気のせいか」
使用人「はい」
青年「……厭な予感がするのも気のせいか」
使用人「はい」
青年「…… ……」
魔王「諦めなよ、青年」クスクス
青年「…… ……」ハァ、スッ
スタスタ、スタスタ
使用人「では、魔王様、魔導師様、失礼致します」
使用人「戻りましたら、お部屋にご案内致しますので」
パタン
青年「まだあるのか?」ハァ
魔導師「エルフの弓、置いていって下さい」
青年「……は!?」
魔導師「世代交代した直後なんです。魔物は消えないだろうけど」
魔導師「……力も弱まるし、数も減る筈です。貴方は魔法にも長けてるし」
青年「おいおい、だからって」
魔導師「それ含めて目立つんですって……」
青年「……し、かし。これは……」
魔導師「……姫様の。癒し手様の……もっと言えば、盗賊様とかの」
魔導師「形見の、大事な物だってのは重々承知してます」
魔導師「……でも、少し研究と……できそうなら、強化させて下さい」
青年「……できるのか?」
魔導師「無茶はしないと約束します。し、無理そうなら諦めます。でも」
魔導師「……魔王様は、確実に……最強の魔王になられます。だから」
魔王「…… ……」
魔導師「次の、勇者様の為にも」
青年「……わかったよ」ハァ…… カタン
魔導師「……ありがとうございます」
使用人「では、青年様。こちらへ」スッ
青年「? 金なら明日で良いだろう?」
使用人「……目立ちますから。私に……良い考えがあります」
青年「……どことなく嬉しそうに見えるのは気のせいか」
使用人「はい」
青年「……厭な予感がするのも気のせいか」
使用人「はい」
青年「…… ……」
魔王「諦めなよ、青年」クスクス
青年「…… ……」ハァ、スッ
スタスタ、スタスタ
使用人「では、魔王様、魔導師様、失礼致します」
使用人「戻りましたら、お部屋にご案内致しますので」
パタン
324: 2014/07/11(金) 11:49:16.71 ID:RrKAbwUR0
魔導師「……間違い無く何か企んでますね」
魔王「まあ、良いんじゃない」クス
魔導師「……あ、お茶お変わり入れましょうか?」
魔王「うん…… ……ねぇ、魔導師」
魔導師「はい?」
魔王「……本当に、良いの?」
魔導師「……はい」
魔王「…… ……」
魔導師「終わらなかったのは残念です。小さな頃から」
魔導師「……后様、お母様と離してしまって」
魔導師「あれほど、魔王になんかなりたくないって、言ってた貴女……が」
魔導師「こんな風な結果に……その。なってしまったのは……」
魔王「…… ……」
魔導師「申し訳無い、気持ちはあります、でも……」
魔王「……魔導師の所為じゃない。誰の所為でも無いよ」
魔王「剣士の思いとか、色々……そりゃ、悩んだし」
魔王「…… ……」
魔導師「…… ……」
魔王「まあ、良いんじゃない」クス
魔導師「……あ、お茶お変わり入れましょうか?」
魔王「うん…… ……ねぇ、魔導師」
魔導師「はい?」
魔王「……本当に、良いの?」
魔導師「……はい」
魔王「…… ……」
魔導師「終わらなかったのは残念です。小さな頃から」
魔導師「……后様、お母様と離してしまって」
魔導師「あれほど、魔王になんかなりたくないって、言ってた貴女……が」
魔導師「こんな風な結果に……その。なってしまったのは……」
魔王「…… ……」
魔導師「申し訳無い、気持ちはあります、でも……」
魔王「……魔導師の所為じゃない。誰の所為でも無いよ」
魔王「剣士の思いとか、色々……そりゃ、悩んだし」
魔王「…… ……」
魔導師「…… ……」
325: 2014/07/11(金) 11:58:23.74 ID:RrKAbwUR0
魔王「……私の、この手で。お父さんを、頃す……なんて」
魔導師「…… ……」
魔王「そうしなきゃいけない。そうしなきゃ、世界が……」
魔王「……わかっててもさ。はいそうですかって」
魔王「受け入れられるもんじゃない」
魔導師「……はい」
魔王「しかも、断ち切れなかったら……今度は、自分の子供に」
魔王「また、同じ事をさせてしまうんだ」
魔王「……お母さんも、こんな気持ちだったんだろうな」
魔導師「魔王様……」
魔王「でも…… ……私は、受け入れてしまった」
魔王「……そりゃ、そうせざるを得なかった。けど」
魔導師「…… ……」
魔王「こうなってしまった以上、今度こそ……」
魔導師「……はい」
魔王「……うん」
魔導師「…… ……」
魔王「…… ……」
魔王「明日、青年を見送ったら」
魔導師「? はい」
魔王「……貴方を、魔に変えよう」
魔導師「! ……はい」
魔王「私の……魔王の側近として。知り得る全てを知る頭脳として」
魔王「右腕として……傍に、居て欲しい」
魔導師「……勿論です」ニコ
魔王「…… ……」ドキッ
魔王(……ずっと、傍に、か)
魔王(…… ……)ハァ
コンコン
使用人「失礼します」
カチャ
魔王「! ……あ、ああ。お疲れ様」
魔導師「…… ……」
魔王「そうしなきゃいけない。そうしなきゃ、世界が……」
魔王「……わかっててもさ。はいそうですかって」
魔王「受け入れられるもんじゃない」
魔導師「……はい」
魔王「しかも、断ち切れなかったら……今度は、自分の子供に」
魔王「また、同じ事をさせてしまうんだ」
魔王「……お母さんも、こんな気持ちだったんだろうな」
魔導師「魔王様……」
魔王「でも…… ……私は、受け入れてしまった」
魔王「……そりゃ、そうせざるを得なかった。けど」
魔導師「…… ……」
魔王「こうなってしまった以上、今度こそ……」
魔導師「……はい」
魔王「……うん」
魔導師「…… ……」
魔王「…… ……」
魔王「明日、青年を見送ったら」
魔導師「? はい」
魔王「……貴方を、魔に変えよう」
魔導師「! ……はい」
魔王「私の……魔王の側近として。知り得る全てを知る頭脳として」
魔王「右腕として……傍に、居て欲しい」
魔導師「……勿論です」ニコ
魔王「…… ……」ドキッ
魔王(……ずっと、傍に、か)
魔王(…… ……)ハァ
コンコン
使用人「失礼します」
カチャ
魔王「! ……あ、ああ。お疲れ様」
350: 2014/07/16(水) 09:42:51.63 ID:MTEhZn0E0
魔導師「……わぁ」
青年「……あんまりじろじろ見るな」ハァ
魔王「確かに……青年らしくは無くなったけど」
魔導師「正直、それでも目立つ……でしょうね」
青年「僕にどうしろって言うんだよ!」
使用人「仕方ありません。側近様の服じゃサイズがあいませんし」
使用人「……姫様の服はお嫌だと言うし」
魔王「え!?」
魔導師「……え?」
青年「僕は男だ!」
使用人「似合うと思ったんですけど」
青年「……あのね。一日限定とか言うなら我慢もするけど」
青年「どうして女装なんかしないといけないんだよ!」
魔王「……似合いそうなのに」プゥ
青年「膨れながら言わないの」
魔導師「まあ……現実的ではありませんね。姫様の服なら、動きにくいでしょうし」
青年「魔導師、突っ込むところはそこじゃないだろ!?」
使用人「なので、まあ……妥協策です」
青年「妥協って言うな」ハァ
魔王「……これは、誰の服なの?」
使用人「さあ、そこまでは……ですが」
使用人「そのマントは、側近様の物です……これも」シャキン
魔導師「剣……あ」
魔王「剣に、剣の文様?」
青年「……始まりの国の、あれか」
使用人「はい……役に立つ事もあるかもしれません」スッ
青年「……父さんの形見、か」シャキン
魔導師「ですが……青年さん、剣なんて扱えるんですか」
青年「……あんまりじろじろ見るな」ハァ
魔王「確かに……青年らしくは無くなったけど」
魔導師「正直、それでも目立つ……でしょうね」
青年「僕にどうしろって言うんだよ!」
使用人「仕方ありません。側近様の服じゃサイズがあいませんし」
使用人「……姫様の服はお嫌だと言うし」
魔王「え!?」
魔導師「……え?」
青年「僕は男だ!」
使用人「似合うと思ったんですけど」
青年「……あのね。一日限定とか言うなら我慢もするけど」
青年「どうして女装なんかしないといけないんだよ!」
魔王「……似合いそうなのに」プゥ
青年「膨れながら言わないの」
魔導師「まあ……現実的ではありませんね。姫様の服なら、動きにくいでしょうし」
青年「魔導師、突っ込むところはそこじゃないだろ!?」
使用人「なので、まあ……妥協策です」
青年「妥協って言うな」ハァ
魔王「……これは、誰の服なの?」
使用人「さあ、そこまでは……ですが」
使用人「そのマントは、側近様の物です……これも」シャキン
魔導師「剣……あ」
魔王「剣に、剣の文様?」
青年「……始まりの国の、あれか」
使用人「はい……役に立つ事もあるかもしれません」スッ
青年「……父さんの形見、か」シャキン
魔導師「ですが……青年さん、剣なんて扱えるんですか」
351: 2014/07/16(水) 10:01:31.57 ID:MTEhZn0E0
青年「……見様見真似レベル、ならどうにか、だな」
青年「剣士も、魔王様のも……間近で見てた。さっき魔王様が言ってた様に」
青年「世代交代で魔物が弱っているのなら……通用はする、かもしれない」
青年「魔導師も言ってただろう。僕には……魔法もある」
魔導師「……まあ、確かに」
魔王「弓を置いて行く以上、まあ……あった方が良いだろうしね」
魔王「その格好で行くなら、尚更」
青年「……でも」チラ
使用人「? ……何か」
青年「これ、持たすつもりでこんな格好させたんだろう、使用人」
青年「……確かに、騎士……の生き残り、否……関係者ぐらいには充分見えるだろう」
魔導師「近衛兵、じゃありませんでしたっけ」
青年「……ああ、そうだったか」
使用人「その効果を狙って、と言うのは否定はしません」
使用人「もう随分と時間は経っていますが……忘れ去られた歴史とは思えませんから」
魔王「まあ、弓を使うよりかは説得力あるかもしれないけど」
魔王「……腕に覚えが無いってのは、ちょっと問題じゃ?」
使用人「実際に生き残りの子、であっても……大差ないと思いますよ」
使用人「忘れ去られては居ない、と言っても……随分時間が経ってしまった事に」
使用人「間違いは無いんですから」
魔導師「……髪を茶に染めた理由、もそれですか?」
使用人「金髪じゃ目立ちますからね。特殊な色でもありませんし」
青年「……染め粉じゃすぐに落ちるだろうに」
青年「剣士も、魔王様のも……間近で見てた。さっき魔王様が言ってた様に」
青年「世代交代で魔物が弱っているのなら……通用はする、かもしれない」
青年「魔導師も言ってただろう。僕には……魔法もある」
魔導師「……まあ、確かに」
魔王「弓を置いて行く以上、まあ……あった方が良いだろうしね」
魔王「その格好で行くなら、尚更」
青年「……でも」チラ
使用人「? ……何か」
青年「これ、持たすつもりでこんな格好させたんだろう、使用人」
青年「……確かに、騎士……の生き残り、否……関係者ぐらいには充分見えるだろう」
魔導師「近衛兵、じゃありませんでしたっけ」
青年「……ああ、そうだったか」
使用人「その効果を狙って、と言うのは否定はしません」
使用人「もう随分と時間は経っていますが……忘れ去られた歴史とは思えませんから」
魔王「まあ、弓を使うよりかは説得力あるかもしれないけど」
魔王「……腕に覚えが無いってのは、ちょっと問題じゃ?」
使用人「実際に生き残りの子、であっても……大差ないと思いますよ」
使用人「忘れ去られては居ない、と言っても……随分時間が経ってしまった事に」
使用人「間違いは無いんですから」
魔導師「……髪を茶に染めた理由、もそれですか?」
使用人「金髪じゃ目立ちますからね。特殊な色でもありませんし」
青年「……染め粉じゃすぐに落ちるだろうに」
352: 2014/07/16(水) 10:10:06.34 ID:MTEhZn0E0
使用人「此処がどこかお忘れですか、青年様」
青年「え?」
使用人「……随分古い物、であることは否定しません。けど」
使用人「魔の作った物であるならば、です」
青年「……まあ、特殊な色じゃ無いから」ハァ
青年「どこかで手に入れる事もできるだろう、染め粉ぐらい」
使用人「後は説得力の問題です。目立つ金髪の得体の知れない人物より」
青年「おい……」
使用人「背後に何か説明しやすい物があった方が良い。それに」
使用人「……始まりの国の関係者、と言うのは、嘘にもなりません」
魔王「! ……ああ、そうか。青年は……嘘、つけないもんね」
青年「……考え無しじゃないってのは解った」ハァ
魔導師「ああ、そうか。そもそも女装じゃ無理がありますね」
魔王「偽ったら、青年……女の子になっちゃうのかな」
魔導師「…… ……」
青年「そんな訳あるか! いくらなんでも……!」
魔導師(……嘘、か。偽る…… ……)ブツブツ
使用人「……? 魔導師様?」
魔導師「あ……すみません」ハッ
青年「……解った。これで良いよ」ハァ
魔導師「青年さん、この浄化の石は……預かっていても良いですよね?」
青年「え? ……ああ。本当ならば持って行きたい、が」
青年「何か……考えがあるんだろう」
魔導師「……すみません」
魔王「青年、これを」チャリ
青年「? ……! 魔王様、これは」
青年「え?」
使用人「……随分古い物、であることは否定しません。けど」
使用人「魔の作った物であるならば、です」
青年「……まあ、特殊な色じゃ無いから」ハァ
青年「どこかで手に入れる事もできるだろう、染め粉ぐらい」
使用人「後は説得力の問題です。目立つ金髪の得体の知れない人物より」
青年「おい……」
使用人「背後に何か説明しやすい物があった方が良い。それに」
使用人「……始まりの国の関係者、と言うのは、嘘にもなりません」
魔王「! ……ああ、そうか。青年は……嘘、つけないもんね」
青年「……考え無しじゃないってのは解った」ハァ
魔導師「ああ、そうか。そもそも女装じゃ無理がありますね」
魔王「偽ったら、青年……女の子になっちゃうのかな」
魔導師「…… ……」
青年「そんな訳あるか! いくらなんでも……!」
魔導師(……嘘、か。偽る…… ……)ブツブツ
使用人「……? 魔導師様?」
魔導師「あ……すみません」ハッ
青年「……解った。これで良いよ」ハァ
魔導師「青年さん、この浄化の石は……預かっていても良いですよね?」
青年「え? ……ああ。本当ならば持って行きたい、が」
青年「何か……考えがあるんだろう」
魔導師「……すみません」
魔王「青年、これを」チャリ
青年「? ……! 魔王様、これは」
353: 2014/07/16(水) 10:18:55.85 ID:MTEhZn0E0
魔王「……元は姫様の物でしょ、このペンダント」
青年「でも……」
魔王「お守り代わり、だよ。気分的な物にしかならないかもしれないけどね」
青年「……預かるよ。遠慮無く」チャリ
魔王「うん」
使用人「……一段落ついたところで、お部屋へ……」
青年「……否。僕はもう、行くよ」
魔王「え!?」
青年「明日も今日も同じさ……君達にとっての一日が瞬きほどの間でも」
青年「……僕には、そうじゃないかもしれない」
魔導師「で、でも……!」
青年「帰ってくるって言っただろう……僕は嘘は吐かない」
青年「……頼むよ、魔王様。あの光で癒えた今なら」
青年「まだ、マシな気もするんだ」
魔王「……駄目、って言っても聞かないね。解った」
魔導師「魔王様……!」
魔王「帰って来たら寝かさないけど」
青年「……えOち、て言ったらまた怒られるんだろうね」
魔王「話は纏めて置くから大丈夫。優秀な右腕も居るし」
魔導師「…… ……」ハァ
使用人「どこへ……行かれる予定です」
青年「港街……妥当だろ」
魔王「解った……えっと、使用人どうすれば良い?」
使用人「……願えば、叶います」
魔王「……じゃあ、青年。手を」スッ
青年「…… ……」スッ……ギュ
魔王(港街、港街……ね。ええっと……)
パァアア……ッ シュゥン……ッ
魔導師「!」
魔王「……わぁお」
使用人「成功、ですかね」フゥ
青年「でも……」
魔王「お守り代わり、だよ。気分的な物にしかならないかもしれないけどね」
青年「……預かるよ。遠慮無く」チャリ
魔王「うん」
使用人「……一段落ついたところで、お部屋へ……」
青年「……否。僕はもう、行くよ」
魔王「え!?」
青年「明日も今日も同じさ……君達にとっての一日が瞬きほどの間でも」
青年「……僕には、そうじゃないかもしれない」
魔導師「で、でも……!」
青年「帰ってくるって言っただろう……僕は嘘は吐かない」
青年「……頼むよ、魔王様。あの光で癒えた今なら」
青年「まだ、マシな気もするんだ」
魔王「……駄目、って言っても聞かないね。解った」
魔導師「魔王様……!」
魔王「帰って来たら寝かさないけど」
青年「……えOち、て言ったらまた怒られるんだろうね」
魔王「話は纏めて置くから大丈夫。優秀な右腕も居るし」
魔導師「…… ……」ハァ
使用人「どこへ……行かれる予定です」
青年「港街……妥当だろ」
魔王「解った……えっと、使用人どうすれば良い?」
使用人「……願えば、叶います」
魔王「……じゃあ、青年。手を」スッ
青年「…… ……」スッ……ギュ
魔王(港街、港街……ね。ええっと……)
パァアア……ッ シュゥン……ッ
魔導師「!」
魔王「……わぁお」
使用人「成功、ですかね」フゥ
354: 2014/07/16(水) 10:32:10.50 ID:MTEhZn0E0
魔王「…… ……」
魔導師「…… ……」
使用人「? どうされました、お二人とも」
魔王「あ……いや……」
魔導師「……凄いな、と」
使用人(圧倒される……のも、無理は無い)フゥ
魔王「ねえ、使用人」
使用人「はい?」
魔王「……身体が熱い」
使用人「え?」
魔王「…… ……なんて言うんだろう。こう……力が、滾る?」
使用人「……貴女は、魔王になられましたから。その魔力量は」
使用人「人の身とは比べものになりません……すぐに、慣れます」
魔導師「あ、の」
使用人「はい?」
魔導師「……魔王様は、光の加護を受けていらっしゃいましたが」
魔導師「炎の魔法も使う事ができました」
使用人「后様の……炎、ですね」
魔王「……お母さん、魔に変じる時に身体の中に……」
使用人「はい。多分……その所為、だとは思うのですが……ちょっと失礼します」ペタ
魔王「?」
使用人「……姫様や癒し手様。青年様の様に、私には感じる力はありませんが」
使用人(触れた所から……なら、わかる、か……)ジッ
魔王(……手とかで良いだろうに、なんで……胸……)
魔王(ちょっとドキドキするなぁ)
魔導師「…… ……」
使用人「? どうされました、お二人とも」
魔王「あ……いや……」
魔導師「……凄いな、と」
使用人(圧倒される……のも、無理は無い)フゥ
魔王「ねえ、使用人」
使用人「はい?」
魔王「……身体が熱い」
使用人「え?」
魔王「…… ……なんて言うんだろう。こう……力が、滾る?」
使用人「……貴女は、魔王になられましたから。その魔力量は」
使用人「人の身とは比べものになりません……すぐに、慣れます」
魔導師「あ、の」
使用人「はい?」
魔導師「……魔王様は、光の加護を受けていらっしゃいましたが」
魔導師「炎の魔法も使う事ができました」
使用人「后様の……炎、ですね」
魔王「……お母さん、魔に変じる時に身体の中に……」
使用人「はい。多分……その所為、だとは思うのですが……ちょっと失礼します」ペタ
魔王「?」
使用人「……姫様や癒し手様。青年様の様に、私には感じる力はありませんが」
使用人(触れた所から……なら、わかる、か……)ジッ
魔王(……手とかで良いだろうに、なんで……胸……)
魔王(ちょっとドキドキするなぁ)
430: 2014/08/07(木) 15:30:57.49 ID:zJPvVxdr0
使用人「魔王様の中にある、后様の……炎の力」
使用人「多少、弱くなっておられます……『失敗しました』」
魔王「え!?」
使用人「先ほども言いましたとおり……私には、エルフの持つ様な感じる力はありません」
魔導師「『青年さんを旅立たせる前に聞くべきでした、か……しかし、』光から闇へと変じただけで、何故……」
魔王「……ああ、そういう意味、ね」ハァ
使用人「すみません、言葉が悪かったですね……でも」スッ
使用人「『光から闇に転じた』と言うのも……語弊があるかもしれません」
魔導師「え?」
使用人「『魔王は勇者の光を奪い去り、勇者は魔王の闇を手に入れる』」
魔導師「……!」
使用人「言葉通りに受け取れば、転じる、と言うより入れ替えですよね」
魔王「……一緒じゃ無いの」
魔導師「言葉遊び、微妙なニュアンスの違い、と言ってしまえば、それまでですけどね」ハァ
使用人「……話がそれました。魔王様の炎の力、ですが……」
魔王「え? あ、うん」
使用人「『小さくなっている、とは言え』魔王様は、強い力をお持ちですから」
使用人「闇の炎として、使役することが出来るでしょう」
魔王「願えば叶う? ……何でもありだなぁ」
魔導師「わかっていた事ですが……厄介ですね」
魔王「え?」
使用人「剣を交える相手からすると、ですね」
魔王「んん? ……私、が?」
魔導師「貴女と、です……まあ、言ってしまえば……次期勇者、ですよ」
魔王「……ああ」
使用人「多少、弱くなっておられます……『失敗しました』」
魔王「え!?」
使用人「先ほども言いましたとおり……私には、エルフの持つ様な感じる力はありません」
魔導師「『青年さんを旅立たせる前に聞くべきでした、か……しかし、』光から闇へと変じただけで、何故……」
魔王「……ああ、そういう意味、ね」ハァ
使用人「すみません、言葉が悪かったですね……でも」スッ
使用人「『光から闇に転じた』と言うのも……語弊があるかもしれません」
魔導師「え?」
使用人「『魔王は勇者の光を奪い去り、勇者は魔王の闇を手に入れる』」
魔導師「……!」
使用人「言葉通りに受け取れば、転じる、と言うより入れ替えですよね」
魔王「……一緒じゃ無いの」
魔導師「言葉遊び、微妙なニュアンスの違い、と言ってしまえば、それまでですけどね」ハァ
使用人「……話がそれました。魔王様の炎の力、ですが……」
魔王「え? あ、うん」
使用人「『小さくなっている、とは言え』魔王様は、強い力をお持ちですから」
使用人「闇の炎として、使役することが出来るでしょう」
魔王「願えば叶う? ……何でもありだなぁ」
魔導師「わかっていた事ですが……厄介ですね」
魔王「え?」
使用人「剣を交える相手からすると、ですね」
魔王「んん? ……私、が?」
魔導師「貴女と、です……まあ、言ってしまえば……次期勇者、ですよ」
魔王「……ああ」
431: 2014/08/07(木) 15:43:50.67 ID:zJPvVxdr0
魔導師「もし、次の勇者が産まれて……今回と同じ事を繰り返すなら……いえ」
魔導師「『それでも、相手の……勇者の』力が、足りなければ」
魔王「……腐った世界の、腐った不条理、か」ハァ
使用人「色々な意味で……貴女は『最強の魔王』になるでしょう」
使用人「后様も……側近様も危惧していた事です」
魔王「…… ……」
使用人「女と言う生き物は、体内で育み、生み出す者」
魔導師「……后様も、身籠もって力が強くなったと仰っていましたね」
使用人「はい。転移、遠見……最後には、黒髪の魔王様のお力まで引き出しておられました」
魔導師「え?」
使用人「……黒髪の魔王様のお力を媒体に、自らの魔力を増強させていらっしゃったようです」
魔王「そんな事まで!?」
使用人「勇者様……貴女が、もうすぐ来るであろうと言う予測の元、無理をなさった、と」
使用人「言う部分はあるのかもしれませんが……まあ」
使用人「結果的に、黒髪の魔王様の暴走を押さえる効果もあった、様ですが」
魔導師(ふむ……)
使用人「……魔導師様?」
魔導師「え、あ……いえ。 ……ええっと?」
魔王「要するに、私は……魔王の身でありながら、子供を身ごもって育てて」
魔王「産む……事もできる、から。本当に……」
使用人「……はい。歴代の『魔王』の中に女性がいた、と言うのは聞いた事がありません」
使用人「文献にも残っていない。絶対、とは言い切れません、が」
使用人「……確かに。青年様の言われたとおり、『次期勇者』を作る事は……」
魔王「ま、待って待って。でもさ。産まないと……結局……」
魔王「……紫の魔王の最後、の様になる可能性だってあるんでしょう」
使用人「……それも否定はできません。『魔王は世襲制である』と言う事実が存在する以上」
魔導師「……青年さんの言われた『よく考えろ』と言うのは」
魔導師「『勇者の父親』の事でしょう?」
魔王「!」カァッ
使用人「…… ……まあ、そうでしょうけれど」チラ
使用人(……なるほど。わかりやすいと言えばその通り、だが)チラ
魔導師「? え、違います?」
使用人「……いえ」
使用人(こちらの鈍さも相当、か)ハァ
魔導師「『それでも、相手の……勇者の』力が、足りなければ」
魔王「……腐った世界の、腐った不条理、か」ハァ
使用人「色々な意味で……貴女は『最強の魔王』になるでしょう」
使用人「后様も……側近様も危惧していた事です」
魔王「…… ……」
使用人「女と言う生き物は、体内で育み、生み出す者」
魔導師「……后様も、身籠もって力が強くなったと仰っていましたね」
使用人「はい。転移、遠見……最後には、黒髪の魔王様のお力まで引き出しておられました」
魔導師「え?」
使用人「……黒髪の魔王様のお力を媒体に、自らの魔力を増強させていらっしゃったようです」
魔王「そんな事まで!?」
使用人「勇者様……貴女が、もうすぐ来るであろうと言う予測の元、無理をなさった、と」
使用人「言う部分はあるのかもしれませんが……まあ」
使用人「結果的に、黒髪の魔王様の暴走を押さえる効果もあった、様ですが」
魔導師(ふむ……)
使用人「……魔導師様?」
魔導師「え、あ……いえ。 ……ええっと?」
魔王「要するに、私は……魔王の身でありながら、子供を身ごもって育てて」
魔王「産む……事もできる、から。本当に……」
使用人「……はい。歴代の『魔王』の中に女性がいた、と言うのは聞いた事がありません」
使用人「文献にも残っていない。絶対、とは言い切れません、が」
使用人「……確かに。青年様の言われたとおり、『次期勇者』を作る事は……」
魔王「ま、待って待って。でもさ。産まないと……結局……」
魔王「……紫の魔王の最後、の様になる可能性だってあるんでしょう」
使用人「……それも否定はできません。『魔王は世襲制である』と言う事実が存在する以上」
魔導師「……青年さんの言われた『よく考えろ』と言うのは」
魔導師「『勇者の父親』の事でしょう?」
魔王「!」カァッ
使用人「…… ……まあ、そうでしょうけれど」チラ
使用人(……なるほど。わかりやすいと言えばその通り、だが)チラ
魔導師「? え、違います?」
使用人「……いえ」
使用人(こちらの鈍さも相当、か)ハァ
432: 2014/08/07(木) 15:50:46.32 ID:zJPvVxdr0
魔導師「……光の剣は、元の姿に戻った、と見て良い……んですよね?」
使用人「え? ……あ、ああ……これに関しては」
使用人「私も、詳しくは無いので何とも……ですが」
魔王「……私、もう触れない、よね?」
魔導師「……で、しょうね」
使用人「完璧……もしくは、それに近い姿になった……で良いと思います」
使用人「……『欠片』は、もう。消えてしまいましたから」
魔導師「…… ……」
魔王「剣士……」
使用人「犠牲、と言うのはおかしいのかもしれません。ですが……」
魔王「……うん」
使用人「…… ……」
使用人(だが……だったら、何故?)
使用人(何故……私は、消えない?)
使用人(役目……知を授ける事。それを終えれば、本当に)
使用人(……私は、終われるの?)
魔王「……人。使用人!」
使用人「!」ハッ
使用人「……申し訳ありません。何でしょう」
魔導師「青年さんも言ってしまった事ですし……僕を」
魔導師「魔に、変えて欲しいと魔王様にお願いしたんです」
使用人「今すぐ……ですか?」
使用人「え? ……あ、ああ……これに関しては」
使用人「私も、詳しくは無いので何とも……ですが」
魔王「……私、もう触れない、よね?」
魔導師「……で、しょうね」
使用人「完璧……もしくは、それに近い姿になった……で良いと思います」
使用人「……『欠片』は、もう。消えてしまいましたから」
魔導師「…… ……」
魔王「剣士……」
使用人「犠牲、と言うのはおかしいのかもしれません。ですが……」
魔王「……うん」
使用人「…… ……」
使用人(だが……だったら、何故?)
使用人(何故……私は、消えない?)
使用人(役目……知を授ける事。それを終えれば、本当に)
使用人(……私は、終われるの?)
魔王「……人。使用人!」
使用人「!」ハッ
使用人「……申し訳ありません。何でしょう」
魔導師「青年さんも言ってしまった事ですし……僕を」
魔導師「魔に、変えて欲しいと魔王様にお願いしたんです」
使用人「今すぐ……ですか?」
433: 2014/08/07(木) 16:31:47.68 ID:zJPvVxdr0
魔導師「……魔王様が良ければ。時間が欲しいんです」
使用人「時間……まあ、確かに魔に変じれば、寿命は……」
魔王「魔導師の、もだけど……青年の、もだよ」ハァ
使用人「え?」
魔王「本当にぼうっとしてたんだね、まあ、良いけど」
使用人「……す、すみません」
魔王「……私が『勇者』を産む事を少しでも引き延ばそうと思えば」
魔王「青年の時間も必要になるでしょう?」
使用人「え……」
魔王「……よく考えろ、と言われたけれど、やっぱり、父親にするのなら」
魔王「青年以外には考えられないんだ」
魔導師「……金髪紫瞳の男、ですか」
魔王「それもあるよ。えっと、それは後で詳しく話すけど」
魔王「……彼は、水と風の魔法を使える」
使用人「……?」
魔王「勇者は光の加護を持ってるけど、私は炎の魔法も使える」
魔王「それに……私は『母』になる……お母さんと同じように」
使用人「『父』に最適なのは青年様だと?」
魔王「…… ……」
使用人「……本当に、それで良いのですか?」
使用人「青年様も、よく考えろと……」
魔王「……その時間も含めて、『時間が欲しい』んだよ」
魔王「魔導師がさっき言ってたでしょ。できる限り延命するって」
魔導師「青年さんがいつ頃ここに戻られるかわからない以上」
魔導師「こちらからの接触の手立ても持っておきたいですし」
使用人「! まさか……ッ」
魔導師「……だってそもそも、これを参考にされたんでしょう、紫の魔王様も」ペラ
魔導師「で、あれば……僕には出来るはずだ」
使用人「転移石を……作るおつもりですか?」
使用人「時間……まあ、確かに魔に変じれば、寿命は……」
魔王「魔導師の、もだけど……青年の、もだよ」ハァ
使用人「え?」
魔王「本当にぼうっとしてたんだね、まあ、良いけど」
使用人「……す、すみません」
魔王「……私が『勇者』を産む事を少しでも引き延ばそうと思えば」
魔王「青年の時間も必要になるでしょう?」
使用人「え……」
魔王「……よく考えろ、と言われたけれど、やっぱり、父親にするのなら」
魔王「青年以外には考えられないんだ」
魔導師「……金髪紫瞳の男、ですか」
魔王「それもあるよ。えっと、それは後で詳しく話すけど」
魔王「……彼は、水と風の魔法を使える」
使用人「……?」
魔王「勇者は光の加護を持ってるけど、私は炎の魔法も使える」
魔王「それに……私は『母』になる……お母さんと同じように」
使用人「『父』に最適なのは青年様だと?」
魔王「…… ……」
使用人「……本当に、それで良いのですか?」
使用人「青年様も、よく考えろと……」
魔王「……その時間も含めて、『時間が欲しい』んだよ」
魔王「魔導師がさっき言ってたでしょ。できる限り延命するって」
魔導師「青年さんがいつ頃ここに戻られるかわからない以上」
魔導師「こちらからの接触の手立ても持っておきたいですし」
使用人「! まさか……ッ」
魔導師「……だってそもそも、これを参考にされたんでしょう、紫の魔王様も」ペラ
魔導師「で、あれば……僕には出来るはずだ」
使用人「転移石を……作るおつもりですか?」
434: 2014/08/07(木) 16:56:46.13 ID:zJPvVxdr0
使用人「参考にされた、とは言っても、あれは紫の魔王様の魔力で……!」
魔導師「……さっきの、后様のお話です」
使用人「え?」
魔導師「『黒髪の魔王様』のお力を借りていた、んでしょう?」
魔王「待った待った、魔導師! ……だから、それは、お母さんだから……」
魔王「『母』だから出来た事で……!」ガタンッ
魔導師「確かに、僕が……いくら、魔に変じられた後だと言っても、直接は無理でしょうけど」
魔導師「……でも。魔法石は……誰にだって作れます」
魔王「え……?」
魔導師「転移石だけじゃ無いんですよ。魔王様の魔力そのものを結晶化してもらっておけば」
魔導師「後から、それに手を加える事によって……何にでも出来る可能性があります」
使用人「……あ」
魔導師「魔王様に、転移の力を込めて、石を作ってくださいとお願いするのは簡単です」
魔導師「でも、それだと応用が利かない……だから」
魔王「…… ……はぁ」カタン
魔導師「そもそも、僕が書いたこれ」ペラ
魔導師「……これも、魔力を封じ込めた石……魔石、に、手を加える事によって」
魔導師「転移の魔法を発動させる方法、なんです。実行したのが」
魔導師「紫の魔王様だから、あっさりと自分の魔力で作れちゃっただけです」
魔導師「……だって、僕は剣士さんの転移の魔法を見て、思いついた、んですから」
魔王「……卵が先か、鶏が先かって言うんだっけ、こういうのって」
使用人「まあ……ええ、間違えては無いです、けど」
魔導師「……さっきの、后様のお話です」
使用人「え?」
魔導師「『黒髪の魔王様』のお力を借りていた、んでしょう?」
魔王「待った待った、魔導師! ……だから、それは、お母さんだから……」
魔王「『母』だから出来た事で……!」ガタンッ
魔導師「確かに、僕が……いくら、魔に変じられた後だと言っても、直接は無理でしょうけど」
魔導師「……でも。魔法石は……誰にだって作れます」
魔王「え……?」
魔導師「転移石だけじゃ無いんですよ。魔王様の魔力そのものを結晶化してもらっておけば」
魔導師「後から、それに手を加える事によって……何にでも出来る可能性があります」
使用人「……あ」
魔導師「魔王様に、転移の力を込めて、石を作ってくださいとお願いするのは簡単です」
魔導師「でも、それだと応用が利かない……だから」
魔王「…… ……はぁ」カタン
魔導師「そもそも、僕が書いたこれ」ペラ
魔導師「……これも、魔力を封じ込めた石……魔石、に、手を加える事によって」
魔導師「転移の魔法を発動させる方法、なんです。実行したのが」
魔導師「紫の魔王様だから、あっさりと自分の魔力で作れちゃっただけです」
魔導師「……だって、僕は剣士さんの転移の魔法を見て、思いついた、んですから」
魔王「……卵が先か、鶏が先かって言うんだっけ、こういうのって」
使用人「まあ……ええ、間違えては無いです、けど」
439: 2014/08/08(金) 10:27:43.66 ID:ZiePtWmf0
魔導師「この際、何がスタートか、は置いておくしかありませんよ、魔王様」
魔導師「……多分、それを見つけるのは不可能、です」
魔王「まあ……そうだよね」ハァ
魔王「て、訳でね。さっきも言ったけど、私も……疲れとかはないし」
魔導師「これからの事を考えて、先延ばしにする理由が無いんです」
使用人「青年様も行ってしまったし、ですね」ハァ
魔王「そういうこと……で、どうすれば良い?」
使用人「……魔導師様の身に触れ、願えば良いのです」
使用人「願えば、叶います……が、その前に、一つだけ……よろしいですか」
魔王「うん……何?」
使用人「魔王が、貴女で終わるなら」
使用人「……魔と呼ばれる類の物は、この世界から姿を消すでしょう」
魔王「……!」
魔導師「…… ……」
使用人「私は勿論、魔王様も……魔へと変じられた、魔導師様も、です」
魔導師「承知の上です。そんなもの」
魔王「魔導師……」
使用人「誤解無き様に……お引き留め、したい訳でも反対したい訳でもございません」
使用人「貴女様は魔の王……魔の全てを統べる者」
使用人「貴女の決定に、誰も異を唱える者はおりますまい……それが、例え」
使用人「滅びへの道行きであろうとも」
魔王「……わかってる」
魔導師「…… ……」
魔王「皆の悲願……でしょ? お母さんやお父さん……もっと、昔から」
魔王「金の髪の魔王……おじいちゃんも、おばあちゃんも」
魔王「……紫の、魔王も」
使用人「……はい」
魔導師「……多分、それを見つけるのは不可能、です」
魔王「まあ……そうだよね」ハァ
魔王「て、訳でね。さっきも言ったけど、私も……疲れとかはないし」
魔導師「これからの事を考えて、先延ばしにする理由が無いんです」
使用人「青年様も行ってしまったし、ですね」ハァ
魔王「そういうこと……で、どうすれば良い?」
使用人「……魔導師様の身に触れ、願えば良いのです」
使用人「願えば、叶います……が、その前に、一つだけ……よろしいですか」
魔王「うん……何?」
使用人「魔王が、貴女で終わるなら」
使用人「……魔と呼ばれる類の物は、この世界から姿を消すでしょう」
魔王「……!」
魔導師「…… ……」
使用人「私は勿論、魔王様も……魔へと変じられた、魔導師様も、です」
魔導師「承知の上です。そんなもの」
魔王「魔導師……」
使用人「誤解無き様に……お引き留め、したい訳でも反対したい訳でもございません」
使用人「貴女様は魔の王……魔の全てを統べる者」
使用人「貴女の決定に、誰も異を唱える者はおりますまい……それが、例え」
使用人「滅びへの道行きであろうとも」
魔王「……わかってる」
魔導師「…… ……」
魔王「皆の悲願……でしょ? お母さんやお父さん……もっと、昔から」
魔王「金の髪の魔王……おじいちゃんも、おばあちゃんも」
魔王「……紫の、魔王も」
使用人「……はい」
440: 2014/08/08(金) 10:35:45.52 ID:ZiePtWmf0
魔王「『魔王は勇者に倒される者』なのかもしれないって」
魔王「紫の魔王が言ってたんだよね」
使用人「……はい」
魔王「私も……そう思うよ。そうやって、人が……ううん」
魔王「『世界』が平和を取り戻すなら」
魔導師「…… ……」
魔王「私からも一つだけ。さっきの話通り」
魔王「魔導師に『知』を授けるのはもう少し待って欲しい」
魔王「私達にはまだ、貴女が必要だ、使用人」
使用人「……承知いたしました。どれだけお力になれるかはわかりませんが」
使用人「……私は、その様を『魔王様のお側で』そっと、見守りたいと思います」
魔王「……解った。『魔導師も良いね?』」
魔導師「『聞くまでも無いと思いますけど……勿論です』」
使用人「では、早速ですが……魔王様」
魔王「『うん』……魔導師を魔へと変じさせる『魔導師、こっちへ』」
魔導師「……はい」
スタスタ
魔王「願えば叶う?」
使用人「はい『……ただ、ご存じだとは思いますが』」
使用人「魔力の暴走の可能性『が高いです』……器が持たなければ」
使用人「最悪、氏に至ります」
魔導師「『絶対に耐えます……!』」
魔王
魔王「紫の魔王が言ってたんだよね」
使用人「……はい」
魔王「私も……そう思うよ。そうやって、人が……ううん」
魔王「『世界』が平和を取り戻すなら」
魔導師「…… ……」
魔王「私からも一つだけ。さっきの話通り」
魔王「魔導師に『知』を授けるのはもう少し待って欲しい」
魔王「私達にはまだ、貴女が必要だ、使用人」
使用人「……承知いたしました。どれだけお力になれるかはわかりませんが」
使用人「……私は、その様を『魔王様のお側で』そっと、見守りたいと思います」
魔王「……解った。『魔導師も良いね?』」
魔導師「『聞くまでも無いと思いますけど……勿論です』」
使用人「では、早速ですが……魔王様」
魔王「『うん』……魔導師を魔へと変じさせる『魔導師、こっちへ』」
魔導師「……はい」
スタスタ
魔王「願えば叶う?」
使用人「はい『……ただ、ご存じだとは思いますが』」
使用人「魔力の暴走の可能性『が高いです』……器が持たなければ」
使用人「最悪、氏に至ります」
魔導師「『絶対に耐えます……!』」
魔王
445: 2014/08/09(土) 11:00:27.02 ID:r9HiCmUv0
魔王「……じゃあ、行くよ……良い?」
使用人「耐えてください、魔導師様『……そもそも』」
使用人「人の身の『まま』では、知を授けるのに器が耐えられません」
魔導師「解って『ます』! ……ッ氏んでたまるか!」ギュッ
魔王「……『そのまま、眼を瞑ってて』」 スッ……チュッ
魔導師「……ん!?」
使用人「…… ……」
魔王(魔導師……『ごめん。でも』……願う……叶え……!)チュ、チュ
魔導師(……ッ なんだ、吸い取られる……ッ う、ぅ。『て、言うか、魔王様……!?』)クラッ
魔王(……冷たい…これは、魔導師の氷の息吹……ああっ ……魔力、が……ッ)プハッ
魔王「耐えて、魔導師!」
魔導師「う、ぅ ……あああああああああああッ」ガクッ
使用人「……ッ 『魔王様、離れて……暴走します!』」
魔王「魔導師……!?」
魔導師「くッ… ……う、ああ、ああああああ!」バタバタバタッ
魔王「……ッ 魔導師!」
魔導師「だ、い……じょ…… ……ッ 『!?』」バタバタ……ッカハッ
使用人「!? ……血!?」
魔導師「ハァ、ハァ………あ、ァ…… ッ !!」ゴホゴホゴホッ
魔王「!? 使用人! 何で……!?」
魔導師「…… ……ッ」ウェ……ッ ゲホゲホゲホッ
使用人(何故!? 今まで、こんな事は……! まさか、耐えられない!?)
魔王「魔導師! 魔導師……!?」
使用人「耐えてください、魔導師様『……そもそも』」
使用人「人の身の『まま』では、知を授けるのに器が耐えられません」
魔導師「解って『ます』! ……ッ氏んでたまるか!」ギュッ
魔王「……『そのまま、眼を瞑ってて』」 スッ……チュッ
魔導師「……ん!?」
使用人「…… ……」
魔王(魔導師……『ごめん。でも』……願う……叶え……!)チュ、チュ
魔導師(……ッ なんだ、吸い取られる……ッ う、ぅ。『て、言うか、魔王様……!?』)クラッ
魔王(……冷たい…これは、魔導師の氷の息吹……ああっ ……魔力、が……ッ)プハッ
魔王「耐えて、魔導師!」
魔導師「う、ぅ ……あああああああああああッ」ガクッ
使用人「……ッ 『魔王様、離れて……暴走します!』」
魔王「魔導師……!?」
魔導師「くッ… ……う、ああ、ああああああ!」バタバタバタッ
魔王「……ッ 魔導師!」
魔導師「だ、い……じょ…… ……ッ 『!?』」バタバタ……ッカハッ
使用人「!? ……血!?」
魔導師「ハァ、ハァ………あ、ァ…… ッ !!」ゴホゴホゴホッ
魔王「!? 使用人! 何で……!?」
魔導師「…… ……ッ」ウェ……ッ ゲホゲホゲホッ
使用人(何故!? 今まで、こんな事は……! まさか、耐えられない!?)
魔王「魔導師! 魔導師……!?」
446: 2014/08/09(土) 11:07:41.18 ID:r9HiCmUv0
魔導師(く、るしい……ッ 何で……!? 向こう側の僕は……!!)
魔導師(……成功した、筈だ……知ってる。この感覚……!)
魔導師(覚えてる……ッ あの時、夢の中で『知』を授かった時の、あの……!)
魔王「魔導師!!」タタ……ッ
使用人「魔王様!! 駄目です、危険……ッ !?」
魔王「魔ど……ッ ……!?」
パアアアアアア!
魔王「魔導師!? 『何、光……ッ あお、い……ッ!?』」
使用人(こ、れは……!? 眼が、開けられない……!)
シュウゥ…… ガラン!
魔導師「ハァ、ハァ、は……あぁ」ペタ……
魔導師「し、ぬかと……思った……」フゥ
使用人「お見事、です……」 ハァ……
魔導師「……『夢の中で』后様に、聞いてた、んです……」
使用人「……! 具現化の方法、ですか……」
魔導師「…… ……」 ハァ、ハア……ゴロン
魔導師「身の内に押しとどめても……僕は、仕方ないので」 フゥ
魔王「……? それ、は?」
魔導師「僕の魔力を、封じて……みました」
使用人「氷の、剣……ですか」
魔導師(……成功した、筈だ……知ってる。この感覚……!)
魔導師(覚えてる……ッ あの時、夢の中で『知』を授かった時の、あの……!)
魔王「魔導師!!」タタ……ッ
使用人「魔王様!! 駄目です、危険……ッ !?」
魔王「魔ど……ッ ……!?」
パアアアアアア!
魔王「魔導師!? 『何、光……ッ あお、い……ッ!?』」
使用人(こ、れは……!? 眼が、開けられない……!)
シュウゥ…… ガラン!
魔導師「ハァ、ハァ、は……あぁ」ペタ……
魔導師「し、ぬかと……思った……」フゥ
使用人「お見事、です……」 ハァ……
魔導師「……『夢の中で』后様に、聞いてた、んです……」
使用人「……! 具現化の方法、ですか……」
魔導師「…… ……」 ハァ、ハア……ゴロン
魔導師「身の内に押しとどめても……僕は、仕方ないので」 フゥ
魔王「……? それ、は?」
魔導師「僕の魔力を、封じて……みました」
使用人「氷の、剣……ですか」
447: 2014/08/09(土) 11:12:15.19 ID:r9HiCmUv0
魔王「! そんな事より! 大丈夫なの、魔導師、血が……!!」
魔導師「……すぐに、治る……んじゃ無いですかね」ハァ
魔導師「僕……もう、魔族になったんでしょう」
魔王「あ……えっと……?」チラ
使用人「……はい。ご無事で何より……です、が」スッ
使用人「…… ……」
使用人(魔導師様の魔力の籠もった魔法剣……氷の剣)ギュ
使用人(人が手で鍛え上げた物では無い……正真正銘の、魔法剣……!)
魔導師「……剣士さんに、聞いたんです」
魔王「え?」
魔導師「鍛冶師の村に残る伝説……勿論、僕も知っていましたけど」
使用人「……遙か昔、一降りの氷の魔法剣で、魔王を倒した、と言う奴ですか」
魔導師「使用人さんはご存じ……ですよね」
使用人「……ええ、まあ」
使用人(話には勿論聞いている……し)
使用人(この二人が知っているか否か……はともかく……しかし……)
使用人(これでは、まるで……!)
魔王「使用人? ……顔、蒼いよ?大丈夫?」
使用人「あ…… ……ええ。いえ、あの……」
使用人「……」ハァ
魔導師「使用人さん?」
魔導師「……すぐに、治る……んじゃ無いですかね」ハァ
魔導師「僕……もう、魔族になったんでしょう」
魔王「あ……えっと……?」チラ
使用人「……はい。ご無事で何より……です、が」スッ
使用人「…… ……」
使用人(魔導師様の魔力の籠もった魔法剣……氷の剣)ギュ
使用人(人が手で鍛え上げた物では無い……正真正銘の、魔法剣……!)
魔導師「……剣士さんに、聞いたんです」
魔王「え?」
魔導師「鍛冶師の村に残る伝説……勿論、僕も知っていましたけど」
使用人「……遙か昔、一降りの氷の魔法剣で、魔王を倒した、と言う奴ですか」
魔導師「使用人さんはご存じ……ですよね」
使用人「……ええ、まあ」
使用人(話には勿論聞いている……し)
使用人(この二人が知っているか否か……はともかく……しかし……)
使用人(これでは、まるで……!)
魔王「使用人? ……顔、蒼いよ?大丈夫?」
使用人「あ…… ……ええ。いえ、あの……」
使用人「……」ハァ
魔導師「使用人さん?」
448: 2014/08/09(土) 11:18:44.39 ID:r9HiCmUv0
使用人「何れ知る事です……この城に残る御伽噺の本の一節に」
使用人「同じような記述が出てくる、のです。聞いているかとは思いますが」
使用人「……黒髪の魔王様がこだわっていらっしゃった『三』です」
魔導師「!」
魔王「…… ……」
魔導師「……剣士さん、は」
使用人「え?」
魔導師「あの伝説に出てくる、氷の剣を作ったのは僕では無いのか、と」
魔王「え?」
魔導師「……僕だって、まさか、とは思ったんですが」
魔導師「いえ、それに……『向こう側』の僕が、同じ事を……同じ物を作り出したって言う」
魔導師「保証は無いので、何とも言えない、んですけど……でも」
魔導師「魔王様の力が僕に注がれた時……思い出した、んです」
魔導師「こうすれば……否。こうしないと、僕はきっと耐えられない、って」
使用人「…… ……」
魔王「魔導師……」
魔導師「……一瞬の戸惑いが、内蔵を焼いたんでしょうね」
魔王「え!?」
魔導師「身体の底から……内側から、灼熱の炎に焼かれている様な気がしました」
魔王「!」
魔導師「早急に……冷やさないと、僕は…… ……」
使用人「同じような記述が出てくる、のです。聞いているかとは思いますが」
使用人「……黒髪の魔王様がこだわっていらっしゃった『三』です」
魔導師「!」
魔王「…… ……」
魔導師「……剣士さん、は」
使用人「え?」
魔導師「あの伝説に出てくる、氷の剣を作ったのは僕では無いのか、と」
魔王「え?」
魔導師「……僕だって、まさか、とは思ったんですが」
魔導師「いえ、それに……『向こう側』の僕が、同じ事を……同じ物を作り出したって言う」
魔導師「保証は無いので、何とも言えない、んですけど……でも」
魔導師「魔王様の力が僕に注がれた時……思い出した、んです」
魔導師「こうすれば……否。こうしないと、僕はきっと耐えられない、って」
使用人「…… ……」
魔王「魔導師……」
魔導師「……一瞬の戸惑いが、内蔵を焼いたんでしょうね」
魔王「え!?」
魔導師「身体の底から……内側から、灼熱の炎に焼かれている様な気がしました」
魔王「!」
魔導師「早急に……冷やさないと、僕は…… ……」
449: 2014/08/09(土) 11:25:42.96 ID:r9HiCmUv0
使用人「…… ……」
魔導師「……ありったけの魔力を込めましたよ『……いえ、そうせざるを得なかった』」
魔王「……綺麗だ。青く光ってる」
使用人「『とにかく……』魔導師様。少しお休みください……お疲れでしょう」
魔導師「……そうですね。大丈夫、とは言えないです」フゥ
魔導師「この侭、床で寝るのは……しんどそうです」
魔王「起き上がれ……る?」
魔導師「はい、と言いたいところですが……手を貸してくださいますか、魔王様」スッ
魔王「う、うん」ギュ
使用人「あ……私が……」
魔導師「…… ……」フルフル
使用人「……失礼いたしました」
使用人(まあ良いか……話したい事でもある、のか)
使用人「魔王様」
魔王「え? うん?」
使用人「扉を出てすぐの正面の部屋へ……掃除は済んでおります」
使用人「が、手狭ですので、明日改めて魔導師様のお部屋へご案内することにして」
使用人「今日はひとまず、そこへ」
魔王「……ん、わかった。魔導師、歩ける?」
魔導師「はい……何とか」
魔導師(……なんだろう。喜ばしいのに………少し、悲しい)
魔導師(これが……剣士さんの言っていた……あの感覚?)
魔導師「……嬉しくて、切なくて……苦しくて、悲しい」ボソ
魔王「え?」
魔導師「……いえ、あ、そうだ。魔王様」
魔王「ん? ……何」
使用人「魔王様……最後に、名をお授けください」
魔王「名前……あ、そうか……でも」
魔導師「……ちゃんと、与えてください。貴女から」
魔王「……闇の手、と」
闇の手「……はい」
魔導師「……ありったけの魔力を込めましたよ『……いえ、そうせざるを得なかった』」
魔王「……綺麗だ。青く光ってる」
使用人「『とにかく……』魔導師様。少しお休みください……お疲れでしょう」
魔導師「……そうですね。大丈夫、とは言えないです」フゥ
魔導師「この侭、床で寝るのは……しんどそうです」
魔王「起き上がれ……る?」
魔導師「はい、と言いたいところですが……手を貸してくださいますか、魔王様」スッ
魔王「う、うん」ギュ
使用人「あ……私が……」
魔導師「…… ……」フルフル
使用人「……失礼いたしました」
使用人(まあ良いか……話したい事でもある、のか)
使用人「魔王様」
魔王「え? うん?」
使用人「扉を出てすぐの正面の部屋へ……掃除は済んでおります」
使用人「が、手狭ですので、明日改めて魔導師様のお部屋へご案内することにして」
使用人「今日はひとまず、そこへ」
魔王「……ん、わかった。魔導師、歩ける?」
魔導師「はい……何とか」
魔導師(……なんだろう。喜ばしいのに………少し、悲しい)
魔導師(これが……剣士さんの言っていた……あの感覚?)
魔導師「……嬉しくて、切なくて……苦しくて、悲しい」ボソ
魔王「え?」
魔導師「……いえ、あ、そうだ。魔王様」
魔王「ん? ……何」
使用人「魔王様……最後に、名をお授けください」
魔王「名前……あ、そうか……でも」
魔導師「……ちゃんと、与えてください。貴女から」
魔王「……闇の手、と」
闇の手「……はい」
450: 2014/08/09(土) 11:45:26.85 ID:r9HiCmUv0
魔王「使用人は?」
使用人「え? ……私が、何か」
魔王「いや、えっと……時間がわからないから何とも言えないんだけど」
使用人「……ああ。私は……お呼びくだされば、いつでも……」
魔王「ああ……ううん。もう、今日は皆休もう」
魔王「……魔導師、じゃ無かった。闇の手を休ませたら私も部屋に戻る」
使用人「……承知いたしました。では、私も下がります」
使用人「どうぞ、先に休ませて差し上げてください」
魔王「うん……行こうか」
闇の手「……はい」
スタスタ、パタン
使用人「…… ……」
使用人(紫の魔王様。これで良かったのでしょうか)
使用人(……何か、嫌な予感がするのは、私だけですか?)
使用人(妙な符合……否、言い切れない、けれど……)
使用人(口に出して言ってはいけないと、わかってはいます。ですが)
使用人(私は……いつ、終われるのですか、紫の魔王様……!)
使用人(……本当に、知を闇の手様に授け、終われるのですか?)
使用人(『向こう側』と同じように……私は)
使用人(……ひっそりと、一人…… ……ッ)
……
………
…………
闇の手「……ふぅ。すみません、魔王様」コロン
魔王「ううん……」
闇の手「…… ……」
魔王「…… ……」
闇の手「僕はもう大丈夫ですから。魔王様も部屋に戻って……」
魔王「ごめん。ね……」
闇の手「え?」
使用人「え? ……私が、何か」
魔王「いや、えっと……時間がわからないから何とも言えないんだけど」
使用人「……ああ。私は……お呼びくだされば、いつでも……」
魔王「ああ……ううん。もう、今日は皆休もう」
魔王「……魔導師、じゃ無かった。闇の手を休ませたら私も部屋に戻る」
使用人「……承知いたしました。では、私も下がります」
使用人「どうぞ、先に休ませて差し上げてください」
魔王「うん……行こうか」
闇の手「……はい」
スタスタ、パタン
使用人「…… ……」
使用人(紫の魔王様。これで良かったのでしょうか)
使用人(……何か、嫌な予感がするのは、私だけですか?)
使用人(妙な符合……否、言い切れない、けれど……)
使用人(口に出して言ってはいけないと、わかってはいます。ですが)
使用人(私は……いつ、終われるのですか、紫の魔王様……!)
使用人(……本当に、知を闇の手様に授け、終われるのですか?)
使用人(『向こう側』と同じように……私は)
使用人(……ひっそりと、一人…… ……ッ)
……
………
…………
闇の手「……ふぅ。すみません、魔王様」コロン
魔王「ううん……」
闇の手「…… ……」
魔王「…… ……」
闇の手「僕はもう大丈夫ですから。魔王様も部屋に戻って……」
魔王「ごめん。ね……」
闇の手「え?」
451: 2014/08/09(土) 11:48:50.51 ID:r9HiCmUv0
魔王「……苦しめちゃって」ポロポロ
闇の手「!? ……な、泣かないでください、魔王様」
魔王「…… ……」ポロポロ
闇の手「成功したんです。だから……それに、もう苦しくないですから」
魔王「……ん。あ! 氷の剣!」
闇の手「使用人さんがちゃんと、保管しててくださいます……大丈夫です」
闇の手「もう……焦る事もありません」スッナデ
魔王「!」ドキッ
魔王(わ、わ……闇の手の、指が、頬に……ッ)
闇の手「……まだまだ幼く見えるのに。貴女は年を取らず」
闇の手「どころか、誰もが足下に及ばない魔力を持つ……魔を統べる王です」
魔王「…… ……」
闇の手「あんなに……嫌がっていた、のに」
闇の手「……謝らなくてはいけないのは……」
魔王「違う、誰も悪くない」
魔王「……寂しく無い訳じゃ無いけど……剣士だって」
闇の手「模索……したつもりだったんですけどね」
魔王「あれは……あれが、彼の意思で、彼の役目だ」
魔王「……私は、私の役目を……果たす。そうしないと」
魔王「本当に、誰も、何も報われない。世界も救えない」
闇の手「……はい。明日から、遠慮無くこき使います」
魔王「……魔王なのに?」
闇の手「……魔王様だから、です」
魔王「……」クス
闇の手「……」フフ…… スッ
魔王「……?」
闇の手「ビックリしました。キスされたんで」
魔王「!? あ、いや、その……ッ ごめん!?」
闇の手「何で謝るんです」クスクス
闇の手「!? ……な、泣かないでください、魔王様」
魔王「…… ……」ポロポロ
闇の手「成功したんです。だから……それに、もう苦しくないですから」
魔王「……ん。あ! 氷の剣!」
闇の手「使用人さんがちゃんと、保管しててくださいます……大丈夫です」
闇の手「もう……焦る事もありません」スッナデ
魔王「!」ドキッ
魔王(わ、わ……闇の手の、指が、頬に……ッ)
闇の手「……まだまだ幼く見えるのに。貴女は年を取らず」
闇の手「どころか、誰もが足下に及ばない魔力を持つ……魔を統べる王です」
魔王「…… ……」
闇の手「あんなに……嫌がっていた、のに」
闇の手「……謝らなくてはいけないのは……」
魔王「違う、誰も悪くない」
魔王「……寂しく無い訳じゃ無いけど……剣士だって」
闇の手「模索……したつもりだったんですけどね」
魔王「あれは……あれが、彼の意思で、彼の役目だ」
魔王「……私は、私の役目を……果たす。そうしないと」
魔王「本当に、誰も、何も報われない。世界も救えない」
闇の手「……はい。明日から、遠慮無くこき使います」
魔王「……魔王なのに?」
闇の手「……魔王様だから、です」
魔王「……」クス
闇の手「……」フフ…… スッ
魔王「……?」
闇の手「ビックリしました。キスされたんで」
魔王「!? あ、いや、その……ッ ごめん!?」
闇の手「何で謝るんです」クスクス
452: 2014/08/09(土) 11:58:35.48 ID:r9HiCmUv0
魔王「……」カァ
闇の手「……ごめんなさい」
魔王「え……」
闇の手「兄のように……慕ってくださっている、とばかり……」
魔王「……あ、いや、あのね!?」
闇の手「…… ……」
魔王「良く……本当は良くわかんないんだ。私も……」
闇の手「…… ……」
魔王「でもね。好きな事に変わりは無いんだよ!?」
闇の手「……はい」
魔王「お兄ちゃん、なのか……あの、その、男の人、として、す。す、す……ッ」
闇の手「はい……」クス
魔王「……でも、闇の手は闇の手だから、好……きだ、よ」カァ
闇の手「僕も。魔王様の事は大好きですよ」
魔王「……うん」ポロ
闇の手「泣かないでください……」
魔王「無茶言わないで……」ポロポロ
闇の手「……す、すみません」
闇の手「ごめんなさい……その、僕もこういうのは、その……」
魔王「大丈夫……もう、決めたんだ」
闇の手「え?」
魔王「……金髪紫瞳の男」
闇の手「あ……ええと、詳しい事は、僕は……」
魔王「わかってる。私も……ちゃんと、彼はこういう人ってわかってる訳じゃ無い」
魔王「……ううん。明日にしよう。使用人にも話さないと」
闇の手「そう、ですね……」
魔王「ごめん。ゆっくり休んで。私も……部屋に戻って寝るよ」
闇の手「あ……ごめんなさい。魔王様もお疲れでしょう」
魔王「よくわかんないよね、本当に……」ハァ
魔王「……うん。でもきりが無いから、戻るね」
闇の手「はい……ゆっくり、休んでください」
魔王「うん。闇の手も……おやすみなさい」
闇の手「……おやすみなさい。魔王様」
スタスタ、パタン
闇の手「…… ……」ハァ
闇の手(何だろうな、これは……なんか、もやもやする)
闇の手(……魔王様にどうこう、じゃ無くて)ハァ
闇の手(身体の中が……熱くて、冷たい。魔になったから、か?)
闇の手(……『闇の手』か)
闇の手(…… ……)スゥ
……
………
…………
闇の手「……ごめんなさい」
魔王「え……」
闇の手「兄のように……慕ってくださっている、とばかり……」
魔王「……あ、いや、あのね!?」
闇の手「…… ……」
魔王「良く……本当は良くわかんないんだ。私も……」
闇の手「…… ……」
魔王「でもね。好きな事に変わりは無いんだよ!?」
闇の手「……はい」
魔王「お兄ちゃん、なのか……あの、その、男の人、として、す。す、す……ッ」
闇の手「はい……」クス
魔王「……でも、闇の手は闇の手だから、好……きだ、よ」カァ
闇の手「僕も。魔王様の事は大好きですよ」
魔王「……うん」ポロ
闇の手「泣かないでください……」
魔王「無茶言わないで……」ポロポロ
闇の手「……す、すみません」
闇の手「ごめんなさい……その、僕もこういうのは、その……」
魔王「大丈夫……もう、決めたんだ」
闇の手「え?」
魔王「……金髪紫瞳の男」
闇の手「あ……ええと、詳しい事は、僕は……」
魔王「わかってる。私も……ちゃんと、彼はこういう人ってわかってる訳じゃ無い」
魔王「……ううん。明日にしよう。使用人にも話さないと」
闇の手「そう、ですね……」
魔王「ごめん。ゆっくり休んで。私も……部屋に戻って寝るよ」
闇の手「あ……ごめんなさい。魔王様もお疲れでしょう」
魔王「よくわかんないよね、本当に……」ハァ
魔王「……うん。でもきりが無いから、戻るね」
闇の手「はい……ゆっくり、休んでください」
魔王「うん。闇の手も……おやすみなさい」
闇の手「……おやすみなさい。魔王様」
スタスタ、パタン
闇の手「…… ……」ハァ
闇の手(何だろうな、これは……なんか、もやもやする)
闇の手(……魔王様にどうこう、じゃ無くて)ハァ
闇の手(身体の中が……熱くて、冷たい。魔になったから、か?)
闇の手(……『闇の手』か)
闇の手(…… ……)スゥ
……
………
…………
453: 2014/08/09(土) 12:07:18.07 ID:r9HiCmUv0
魔王(…… ……)ポロポロポロ
魔王(これって……失恋、って言うのかなぁ)ポロポロ
魔王(金髪紫眼の男……私と、青年の息子)
魔王(次代の勇者…… ……これで、良いんだよね……!?)ポロポロ
魔王「……ハァ。部屋戻って、寝よう……」
スタ……ピタ
魔王「…… ……部屋、どこよ」
……
………
…………
少年「本当に良いのか……?」
少女「……言い出したのは少年の方でしょ、そもそも」
雷使い「シッ……お二人とも、大きな声は出さないで」
雷使い「誰が聞いているかわからないわ……それに、もうすぐ水使いが来る」
少年「…… ……」
少女「…… ……」
雷使い「何度も話したとおり。もう覚えているわね?」
少女「はい」
少年「…… ……」
雷使い「じゃあ、決行は……明日早朝。船の手配も済んでいるから」
雷使い「二人は散歩と言って、手ぶらで出てくるのよ」
少女「……本当に荷物は持って行っちゃ駄目なの?」
雷使い「それも説明したはずよ? 少女ちゃん」
雷使い「……早朝散歩、の習慣を守ってもらったのも、手ぶらで出てくるのも」
雷使い「怪しまれないため、でしょ?」
少女「…… ……」
少年「本はまた、買ってくれるって言ってたじゃ無いか」
少女「わかってる、けど……」
雷使い「身の回りの物は何も心配しなくて良いわ。欲しい物があれば」
雷使い「道中、私と水使いがちゃんと買いに行ってあげるから」
少年「……本当にうまく行くんだろうな?」
雷使い「それも何度も説明したはずよ」
雷使い「……定期便よりも、安全な船が手配できた。決して追ってはこれない」
魔王(これって……失恋、って言うのかなぁ)ポロポロ
魔王(金髪紫眼の男……私と、青年の息子)
魔王(次代の勇者…… ……これで、良いんだよね……!?)ポロポロ
魔王「……ハァ。部屋戻って、寝よう……」
スタ……ピタ
魔王「…… ……部屋、どこよ」
……
………
…………
少年「本当に良いのか……?」
少女「……言い出したのは少年の方でしょ、そもそも」
雷使い「シッ……お二人とも、大きな声は出さないで」
雷使い「誰が聞いているかわからないわ……それに、もうすぐ水使いが来る」
少年「…… ……」
少女「…… ……」
雷使い「何度も話したとおり。もう覚えているわね?」
少女「はい」
少年「…… ……」
雷使い「じゃあ、決行は……明日早朝。船の手配も済んでいるから」
雷使い「二人は散歩と言って、手ぶらで出てくるのよ」
少女「……本当に荷物は持って行っちゃ駄目なの?」
雷使い「それも説明したはずよ? 少女ちゃん」
雷使い「……早朝散歩、の習慣を守ってもらったのも、手ぶらで出てくるのも」
雷使い「怪しまれないため、でしょ?」
少女「…… ……」
少年「本はまた、買ってくれるって言ってたじゃ無いか」
少女「わかってる、けど……」
雷使い「身の回りの物は何も心配しなくて良いわ。欲しい物があれば」
雷使い「道中、私と水使いがちゃんと買いに行ってあげるから」
少年「……本当にうまく行くんだろうな?」
雷使い「それも何度も説明したはずよ」
雷使い「……定期便よりも、安全な船が手配できた。決して追ってはこれない」
454: 2014/08/09(土) 12:13:44.25 ID:r9HiCmUv0
雷使い「大丈夫。全部うまくいくわ」
コンコン
雷使い「……来たわ。今日一日、怪しまれないようにね」
少女「わかってるわ……普通に、していれば良いんでしょう」
少女「行くわよ、少年」
少年「あ。ああ……」
少女「今開けます……」
カチャ
水使い「……ご苦労様でした、少女、少年」
雷使い「じゃあ、お話相手ありがとうね、二人とも」
パタン
少女「…… ……」
スタスタ
少年「…… ……」
スタスタ
少女「私、部屋に戻るけど」
少年「……俺も行くよ」
パタン
少女「…… ……」
少年「……本当に、良いのか」
少女「おかしな少年……ねえ、どうしたの」
少女「『この街を出よう』って言い出したのは……」
少年「わかってる! わかってるけど……!」
少女「大きな声を出さないで……部屋に二人とは言え」
少女「……どこで、誰がって……言われたでしょ、雷使いさんに」
少年「…… ……」
コンコン
雷使い「……来たわ。今日一日、怪しまれないようにね」
少女「わかってるわ……普通に、していれば良いんでしょう」
少女「行くわよ、少年」
少年「あ。ああ……」
少女「今開けます……」
カチャ
水使い「……ご苦労様でした、少女、少年」
雷使い「じゃあ、お話相手ありがとうね、二人とも」
パタン
少女「…… ……」
スタスタ
少年「…… ……」
スタスタ
少女「私、部屋に戻るけど」
少年「……俺も行くよ」
パタン
少女「…… ……」
少年「……本当に、良いのか」
少女「おかしな少年……ねえ、どうしたの」
少女「『この街を出よう』って言い出したのは……」
少年「わかってる! わかってるけど……!」
少女「大きな声を出さないで……部屋に二人とは言え」
少女「……どこで、誰がって……言われたでしょ、雷使いさんに」
少年「…… ……」
457: 2014/08/09(土) 15:11:36.27 ID:r9HiCmUv0
少女「…… ……」
少年「…… ……」
少女「どうしたの、少年」
少年「……本、諦めるの残念なんだろ」
少女「そうだけど……仕方ないわ」
少年「母さんの…… ……」
少女「少年!」
少年「……大きな声を出すなって言ったのは少女だろう」
少女「……ねえ、どうしちゃったの。何で急にそんな事言い出すの」
少年「…… ……怪しい、って思わない、のか?」
少女「最初は……ッ」
少年「俺が言い出した、てのは聞いたよ!何度も!」
少女「!」ビクッ
少年「……ごめん。確かに、最初にあいつらから、連れ出してやるって聞いたときは」
少年「俺も……食いついた、けど…… ……」
少女「…… ……」
少年「…… ……」
少女「どうしたの、少年」
少年「……本、諦めるの残念なんだろ」
少女「そうだけど……仕方ないわ」
少年「母さんの…… ……」
少女「少年!」
少年「……大きな声を出すなって言ったのは少女だろう」
少女「……ねえ、どうしちゃったの。何で急にそんな事言い出すの」
少年「…… ……怪しい、って思わない、のか?」
少女「最初は……ッ」
少年「俺が言い出した、てのは聞いたよ!何度も!」
少女「!」ビクッ
少年「……ごめん。確かに、最初にあいつらから、連れ出してやるって聞いたときは」
少年「俺も……食いついた、けど…… ……」
少女「…… ……」
460: 2014/08/09(土) 17:07:32.34 ID:r9HiCmUv0
少年「……良いよ」ハァ
少女「え?」
少年「そんな顔するな……別に、今更行かないなんて言う気は無いから」
少年「良いよ。ごめん……ごめんな、少女」ギュ
少女「少年……」
少年「……確かに、この街を出ようって……言ったのは俺だし」
少年「いつまでも、こんな所に少女をおいておくのは嫌だ。だけど、さ」
少女「…… ……」
少年「あんまりにも、あっさり……大丈夫なのかなって」
少女「勇者様、について行くよりは、良かったんじゃ無いかなって」
少女「私は……思うよ」ギュ
少年「え……?」
少女「……そりゃ、身元の確かさで言えば、勇者様の方が……はっきりしてると思う」
少女「金の瞳、なんて……他にいないもん。でも」
少年「…… ……」
少女「魔王を倒そうとしてる人達に、私達……私達、一般人、なんて」
少女「邪魔なだけだよね……それに……」
少年「それに?」
少女「…… ……ううん」ギュウ……ッ
少年「……ッ 少女?」ドキ
少女(少年には言えない……雷使いさんとも約束したし……ッ)
少女「……私は、少年が側にいてくれたら……一緒だったら、安心だよ」
少年「…… ……うん」ギュッ
少女「寝ようか……雷使いさん、今日は泊まりみたいだし」
少年「だから遅かった、って言ってたな。でも……明日、なのに」
少女「だから、でしょ」
少年「え?」
少女「……安心させるための作戦」
少年「…… ……本当にうまく行くのかな」
少女「大丈夫。願えば叶う」
少年「……うん。母さんの口癖だったって……言ってたな」
少女「さ。寝よう……明日も早いよ」
少年「ああ……お休み、少女…… ……あ」
少女「何?」
少女「え?」
少年「そんな顔するな……別に、今更行かないなんて言う気は無いから」
少年「良いよ。ごめん……ごめんな、少女」ギュ
少女「少年……」
少年「……確かに、この街を出ようって……言ったのは俺だし」
少年「いつまでも、こんな所に少女をおいておくのは嫌だ。だけど、さ」
少女「…… ……」
少年「あんまりにも、あっさり……大丈夫なのかなって」
少女「勇者様、について行くよりは、良かったんじゃ無いかなって」
少女「私は……思うよ」ギュ
少年「え……?」
少女「……そりゃ、身元の確かさで言えば、勇者様の方が……はっきりしてると思う」
少女「金の瞳、なんて……他にいないもん。でも」
少年「…… ……」
少女「魔王を倒そうとしてる人達に、私達……私達、一般人、なんて」
少女「邪魔なだけだよね……それに……」
少年「それに?」
少女「…… ……ううん」ギュウ……ッ
少年「……ッ 少女?」ドキ
少女(少年には言えない……雷使いさんとも約束したし……ッ)
少女「……私は、少年が側にいてくれたら……一緒だったら、安心だよ」
少年「…… ……うん」ギュッ
少女「寝ようか……雷使いさん、今日は泊まりみたいだし」
少年「だから遅かった、って言ってたな。でも……明日、なのに」
少女「だから、でしょ」
少年「え?」
少女「……安心させるための作戦」
少年「…… ……本当にうまく行くのかな」
少女「大丈夫。願えば叶う」
少年「……うん。母さんの口癖だったって……言ってたな」
少女「さ。寝よう……明日も早いよ」
少年「ああ……お休み、少女…… ……あ」
少女「何?」
461: 2014/08/09(土) 17:12:23.26 ID:r9HiCmUv0
少年「一緒に寝て良い?」
少女「……今日だけ、ね。良いよ」
少年「うん……」ゴソ
少女「…… ……」ゴソゴソ
少年「…… ……」
少女「…… ……」
少年(明日……この街を出る。雷使いは、安心しろと言ったけど)
少女(……約束は出来ないけれど、不自由はさせないからと)
少年(それに……必ず、願いを叶えてやるって……! 否! 本当に……信じて良いのか)
少女(彼女は、私達を知っていると言った。勿論、水使いお姉さんをお客さんとして)
少年(訪ねてくるぐらいだから、知り合いなんだろうけれど……)
少女(私達の事は、水使いお姉さんから、聞いていた、と言ってたし)
少年(……街で、見かけた事があるとも、言っていた。でも)
少女(それだけじゃ無い、って……後で、必ず教えてあげる、とも)
少年(だからって……それだけで、俺たちは信じて良いのか? でも)
少女(いつまでもここにいるのは……)チラ
少年(……嫌だ!)チラ
少女「…… ……」
少年「何、考えてた?」
少女「……多分、同じような事」
少年「…… ……」
少女「…… ……」
少女「……今日だけ、ね。良いよ」
少年「うん……」ゴソ
少女「…… ……」ゴソゴソ
少年「…… ……」
少女「…… ……」
少年(明日……この街を出る。雷使いは、安心しろと言ったけど)
少女(……約束は出来ないけれど、不自由はさせないからと)
少年(それに……必ず、願いを叶えてやるって……! 否! 本当に……信じて良いのか)
少女(彼女は、私達を知っていると言った。勿論、水使いお姉さんをお客さんとして)
少年(訪ねてくるぐらいだから、知り合いなんだろうけれど……)
少女(私達の事は、水使いお姉さんから、聞いていた、と言ってたし)
少年(……街で、見かけた事があるとも、言っていた。でも)
少女(それだけじゃ無い、って……後で、必ず教えてあげる、とも)
少年(だからって……それだけで、俺たちは信じて良いのか? でも)
少女(いつまでもここにいるのは……)チラ
少年(……嫌だ!)チラ
少女「…… ……」
少年「何、考えてた?」
少女「……多分、同じような事」
少年「…… ……」
少女「…… ……」
462: 2014/08/09(土) 17:37:35.52 ID:r9HiCmUv0
少年(雷使いは、ずっと少女といられる様にするからと!)
少女(雷使いは、必ずあの……金の髪の青年を探してくれるからと!)
少年(ここにいれば、叶わない事を)
少女(叶えてくれると言っていた……!)
少年(それに……『願えば)
少女(叶う』のだと……!)
少年「……一冊だけ、持って行きなよ」
少女「え?」
少年「母さんが残してくれた本だ。一冊ぐらい、鞄に入るよ」
少女「……うん。そうだね」
少年「信じよう」
少女「……うん」
……
………
…………
水使い「……泊まりにしない方が良かったんじゃ無いんですか」
雷使い「大丈夫よ……のんびりしたいじゃない」コロン
水使い「私は……どうすれば良いのです」
雷使い「貴女は双子より早く港へ行くのよ」
水使い「? ……私が、ですか?」
雷使い「そうよ。大丈夫……伝えてあるから」
水使い「伝えて……? 定期便では無いと伺ってはいましたが……」
雷使い「……海賊船よ」
水使い「か……ッ !? ……ッ」モゴッ
雷使い「……大きな声出さない」グッ
水使い「…… ……!!」
雷使い「大丈夫。奴らは金さえ渡せば何だってするわ」
雷使い「……余計な詮索も、しない。何より安全なのよ」
水使い「……ッ」プハッ
水使い「貴女は、どうするのです。雷使い」
雷使い「後から行くわよ……のんびりとね」
水使い「…… ……」
雷使い「私まで一緒に消えたら、それこそばれちゃうわ」
雷使い「……大丈夫。手はずは船長に伝えてあるわ」
水使い「船長?」
雷使い「海賊船の船長だそうよ……まだ、子供って言ってもおかしく無い年齢だけどね」
水使い「……私は、その子に接触すれば良いんですね」
雷使い「そう……双子達が出る少し前に出て頂戴」
雷使い「後は私が『水使いは疲れて寝てる』ってあの老婆に追加金を渡せば」
雷使い「……万事うまくいく、わ」
水使い「……怪しまれませんか」
雷使い「何の為にアンタの元に通ったの?」グイッ ……チュ、チュ
水使い「……ッ」
雷使い「こんな事するだけの為に、じゃ無い事はわかるでしょ」
水使い「…… ……早朝の散歩が、怪しまれないためと言うのはわかります、けど」
少女(雷使いは、必ずあの……金の髪の青年を探してくれるからと!)
少年(ここにいれば、叶わない事を)
少女(叶えてくれると言っていた……!)
少年(それに……『願えば)
少女(叶う』のだと……!)
少年「……一冊だけ、持って行きなよ」
少女「え?」
少年「母さんが残してくれた本だ。一冊ぐらい、鞄に入るよ」
少女「……うん。そうだね」
少年「信じよう」
少女「……うん」
……
………
…………
水使い「……泊まりにしない方が良かったんじゃ無いんですか」
雷使い「大丈夫よ……のんびりしたいじゃない」コロン
水使い「私は……どうすれば良いのです」
雷使い「貴女は双子より早く港へ行くのよ」
水使い「? ……私が、ですか?」
雷使い「そうよ。大丈夫……伝えてあるから」
水使い「伝えて……? 定期便では無いと伺ってはいましたが……」
雷使い「……海賊船よ」
水使い「か……ッ !? ……ッ」モゴッ
雷使い「……大きな声出さない」グッ
水使い「…… ……!!」
雷使い「大丈夫。奴らは金さえ渡せば何だってするわ」
雷使い「……余計な詮索も、しない。何より安全なのよ」
水使い「……ッ」プハッ
水使い「貴女は、どうするのです。雷使い」
雷使い「後から行くわよ……のんびりとね」
水使い「…… ……」
雷使い「私まで一緒に消えたら、それこそばれちゃうわ」
雷使い「……大丈夫。手はずは船長に伝えてあるわ」
水使い「船長?」
雷使い「海賊船の船長だそうよ……まだ、子供って言ってもおかしく無い年齢だけどね」
水使い「……私は、その子に接触すれば良いんですね」
雷使い「そう……双子達が出る少し前に出て頂戴」
雷使い「後は私が『水使いは疲れて寝てる』ってあの老婆に追加金を渡せば」
雷使い「……万事うまくいく、わ」
水使い「……怪しまれませんか」
雷使い「何の為にアンタの元に通ったの?」グイッ ……チュ、チュ
水使い「……ッ」
雷使い「こんな事するだけの為に、じゃ無い事はわかるでしょ」
水使い「…… ……早朝の散歩が、怪しまれないためと言うのはわかります、けど」
463: 2014/08/09(土) 17:43:41.54 ID:r9HiCmUv0
雷使い「習慣つけてしまえば、疑われなくなるわ。だから」
雷使い「双子には眠くても、何でも、必ず続けろと伝えたのよ」
水使い「……それは、良い。でも、私を……大人しく寝かしては……」
雷使い「私、上客のつもりよ? ……どれだけアンタに金を使ったと思ってるの」
雷使い「アンタだって、稼ぎ頭とまでは行かなくても」
雷使い「随分良い扱いされる様になってきたっていってたじゃないの」
水使い「……まあ、それは」
雷使い「『用事を済ませたらまた来るから、それまで十分に休ませておいて』と」
雷使い「……言って、多めに金を渡すつもりよ。それぐらい」
雷使い「許される程の金は落としたでしょう。女が通い詰める女って言って」
雷使い「……他の客だって増えたんでしょう?」
水使い「……はい」
雷使い「服とかはもったいない気もするけど……ま、仕方ないわね」
水使い「別に、こんな物に興味は……」
雷使い「……綺麗に着飾ったアンタを抱くのは、気分良かったんだけどね」スス……
水使い「……ッ」ビクッ
雷使い「今日はやめておこうかと思った、けど」ドンッ
水使い「あ……ッ」
雷使い「双子と一緒に行動する様になれば、早々出来ないものね……ほら、足開いて」
水使い「……雷使い……ッ」
雷使い「ほら、早く……足を開くのよ」グイッ
水使い「あ…… ……ッ」
雷使い「……正直よね、アンタの身体は……」クス
……
………
…………
雷使い「双子には眠くても、何でも、必ず続けろと伝えたのよ」
水使い「……それは、良い。でも、私を……大人しく寝かしては……」
雷使い「私、上客のつもりよ? ……どれだけアンタに金を使ったと思ってるの」
雷使い「アンタだって、稼ぎ頭とまでは行かなくても」
雷使い「随分良い扱いされる様になってきたっていってたじゃないの」
水使い「……まあ、それは」
雷使い「『用事を済ませたらまた来るから、それまで十分に休ませておいて』と」
雷使い「……言って、多めに金を渡すつもりよ。それぐらい」
雷使い「許される程の金は落としたでしょう。女が通い詰める女って言って」
雷使い「……他の客だって増えたんでしょう?」
水使い「……はい」
雷使い「服とかはもったいない気もするけど……ま、仕方ないわね」
水使い「別に、こんな物に興味は……」
雷使い「……綺麗に着飾ったアンタを抱くのは、気分良かったんだけどね」スス……
水使い「……ッ」ビクッ
雷使い「今日はやめておこうかと思った、けど」ドンッ
水使い「あ……ッ」
雷使い「双子と一緒に行動する様になれば、早々出来ないものね……ほら、足開いて」
水使い「……雷使い……ッ」
雷使い「ほら、早く……足を開くのよ」グイッ
水使い「あ…… ……ッ」
雷使い「……正直よね、アンタの身体は……」クス
……
………
…………
464: 2014/08/09(土) 18:07:00.37 ID:r9HiCmUv0
船長「…… ……」
海賊「あれ、船長? ……随分早いじゃないっすか」
船長「あ、ああ……」
海賊「? どうしたんです? 客が来るのって……」
船長「夜明け前、に一人来るんだとさ」
海賊「ああ……あの……雷使いって女ですか」
船長「いや、本人じゃ無いってよ」
海賊「へ?」
船長「あの女は後で、書の街で拾う」
海賊「……あれ、えっと……ああ、そうか。四人か」
船長「ああ。世話役だとか言う、水使いって女だそうだ」
海賊「で、子供が二人? ……何なんだかねぇ、全く」
船長「余計な詮索は身を滅ぼす、んだろ」
海賊「……ま、ね」フゥ
船長「随分金積んでくれたからな。戦闘も自分に任せろとか随分な自信だったし」
船長「……さっさと拾ってさっさと離れちまえば、問題ネェだろ」ハァ
海賊「……の、割には。気にくわないって顔してますけど?」
船長「いくら海賊だとは言え、な。犯罪じみた事にゃ手を貸したくはネェ、が」
船長「……始まりの国も魔導国もなくなったんだ。大きな力……圧力、なんて奴は」
船長「どこにも存在しネェ。するとすりゃ……」
海賊「魔王、ですか」
船長「……お前達が言ってたんだろう。急に海の魔物が弱くなったって」
海賊「……勇者サマご一行、が。無事魔王を倒した、って所……なんですかね」
船長「サァね……俺たちにゃ関係ない。だけど…… ……」
海賊「……船長?」
船長(青年……剣士。無事なのか?お前達……無事に、本当に魔王を倒したのか?)
船長(だが……だったらなんで……魔物が、消えないんだ?)
船長「いや…… よし、もう少し岸に近づけてくれ。そろそろ、降りてみる」
海賊「アイアイサー!」
船長(……勇者を連れてきたら乗せてやるって……約束、覚えてんだぜ?)
船長「ああ……それで良い。総員待機」
スタッ ……キョロ
船長(目立たないように茂みの中にいろ、って言ってたな)
船長(しかし……無茶苦茶だぜ。港にこんな船、こんなご時世に……)ブツブツ
船長(……海のじいちゃんの趣味が良かったから良い物の)
船長(商船にしか見えネェとは思うが…… ……ん?)
水使い「…… ……」
船長(あいつか? ……瞳の色までは見えない、が……)
船長(背の高い、水色の長い髪…… ……間違い無いな。随分ふらついてる、が)
ガサ……
水使い「!」
海賊「あれ、船長? ……随分早いじゃないっすか」
船長「あ、ああ……」
海賊「? どうしたんです? 客が来るのって……」
船長「夜明け前、に一人来るんだとさ」
海賊「ああ……あの……雷使いって女ですか」
船長「いや、本人じゃ無いってよ」
海賊「へ?」
船長「あの女は後で、書の街で拾う」
海賊「……あれ、えっと……ああ、そうか。四人か」
船長「ああ。世話役だとか言う、水使いって女だそうだ」
海賊「で、子供が二人? ……何なんだかねぇ、全く」
船長「余計な詮索は身を滅ぼす、んだろ」
海賊「……ま、ね」フゥ
船長「随分金積んでくれたからな。戦闘も自分に任せろとか随分な自信だったし」
船長「……さっさと拾ってさっさと離れちまえば、問題ネェだろ」ハァ
海賊「……の、割には。気にくわないって顔してますけど?」
船長「いくら海賊だとは言え、な。犯罪じみた事にゃ手を貸したくはネェ、が」
船長「……始まりの国も魔導国もなくなったんだ。大きな力……圧力、なんて奴は」
船長「どこにも存在しネェ。するとすりゃ……」
海賊「魔王、ですか」
船長「……お前達が言ってたんだろう。急に海の魔物が弱くなったって」
海賊「……勇者サマご一行、が。無事魔王を倒した、って所……なんですかね」
船長「サァね……俺たちにゃ関係ない。だけど…… ……」
海賊「……船長?」
船長(青年……剣士。無事なのか?お前達……無事に、本当に魔王を倒したのか?)
船長(だが……だったらなんで……魔物が、消えないんだ?)
船長「いや…… よし、もう少し岸に近づけてくれ。そろそろ、降りてみる」
海賊「アイアイサー!」
船長(……勇者を連れてきたら乗せてやるって……約束、覚えてんだぜ?)
船長「ああ……それで良い。総員待機」
スタッ ……キョロ
船長(目立たないように茂みの中にいろ、って言ってたな)
船長(しかし……無茶苦茶だぜ。港にこんな船、こんなご時世に……)ブツブツ
船長(……海のじいちゃんの趣味が良かったから良い物の)
船長(商船にしか見えネェとは思うが…… ……ん?)
水使い「…… ……」
船長(あいつか? ……瞳の色までは見えない、が……)
船長(背の高い、水色の長い髪…… ……間違い無いな。随分ふらついてる、が)
ガサ……
水使い「!」
467: 2014/08/10(日) 11:34:53.97 ID:YXzaH2fr0
船長「…… ……」
水使い「…… ……」
スタスタ
船長(近づいてくる……俺の事は見えてる、よな)
水使い「……貴方が、船長さんですか」
船長「ああ……」
水使い「お世話になります。水使いです……あの」
船長「……雷使いから聞いてる」
水使い「……はい」
船長「船に乗る前に確認だ」
水使い「?」
船長「乗せるのはお前と、子供が二人、で間違い無いな?」
水使い「え? あの……雷使いは」
船長「? ……後で書の街であいつを拾うんだろう?」
水使い「!?」
船長「……? なんだ、違うのか?」
水使い(『のんびりと』は……そういうことか)ハァ
水使い「雷使いがそう言ったんですね? ……なら間違いありません」
船長「…… ……」
水使い「……ふた…… ……子供達が来るまで、もう少し時間があると思いますが」
船長「あ? ああ」
水使い「では……その頃に再度、こちらで待ち合わせでよろしいですか」
水使い「…… ……」
スタスタ
船長(近づいてくる……俺の事は見えてる、よな)
水使い「……貴方が、船長さんですか」
船長「ああ……」
水使い「お世話になります。水使いです……あの」
船長「……雷使いから聞いてる」
水使い「……はい」
船長「船に乗る前に確認だ」
水使い「?」
船長「乗せるのはお前と、子供が二人、で間違い無いな?」
水使い「え? あの……雷使いは」
船長「? ……後で書の街であいつを拾うんだろう?」
水使い「!?」
船長「……? なんだ、違うのか?」
水使い(『のんびりと』は……そういうことか)ハァ
水使い「雷使いがそう言ったんですね? ……なら間違いありません」
船長「…… ……」
水使い「……ふた…… ……子供達が来るまで、もう少し時間があると思いますが」
船長「あ? ああ」
水使い「では……その頃に再度、こちらで待ち合わせでよろしいですか」
468: 2014/08/10(日) 11:55:01.65 ID:YXzaH2fr0
船長「え? ……いや、別に俺は構わネェけど」
船長「……船で休んでちゃ駄目なのか?」
水使い「え……」
船長「いくら街ん中……つか、港とは言えさ。まだ暗いし、お前女だし」
水使い「……いえ、でも子供達が来たら……」
船長「ここの場所は知ってんだろ? ……甲板に居りゃ見えるぜ」
水使い「……よろしいのですか」
船長「まあ……別に。金ももらってんだ。遠慮する所じゃネェだろ」
船長「……詮索する気はネェけど。目立って困る、ってんだから、こんな時間なんだろ?」
水使い「…… ……」
船長「こんな場所でお前がうろうろしてる方が目立つと思う、し」
船長「……夜明けまで、まだどう少なく見積もったって一刻以上あるんだぜ」
水使い「……甘えさせていただいて、よろしいのでしたら」フラッ
船長「!」ガシッ
水使い「す、すみません……ッ」
船長「……さっきからずっとフラフラしてたろ。寝てないのか?」
水使い「お気遣い無く……」フラッ
船長「……とにかく、甲板に上がれ……おい!」
海賊「あいよー?」
船長「椅子と……毛布出してやれ。甲板の上じゃ寒いだろうしな」
海賊「アイアイサー!」
水使い「……ありがとうございます」
船長「良いから掴まってろ」
水使い「……はい」
スタスタ
船長「……船で休んでちゃ駄目なのか?」
水使い「え……」
船長「いくら街ん中……つか、港とは言えさ。まだ暗いし、お前女だし」
水使い「……いえ、でも子供達が来たら……」
船長「ここの場所は知ってんだろ? ……甲板に居りゃ見えるぜ」
水使い「……よろしいのですか」
船長「まあ……別に。金ももらってんだ。遠慮する所じゃネェだろ」
船長「……詮索する気はネェけど。目立って困る、ってんだから、こんな時間なんだろ?」
水使い「…… ……」
船長「こんな場所でお前がうろうろしてる方が目立つと思う、し」
船長「……夜明けまで、まだどう少なく見積もったって一刻以上あるんだぜ」
水使い「……甘えさせていただいて、よろしいのでしたら」フラッ
船長「!」ガシッ
水使い「す、すみません……ッ」
船長「……さっきからずっとフラフラしてたろ。寝てないのか?」
水使い「お気遣い無く……」フラッ
船長「……とにかく、甲板に上がれ……おい!」
海賊「あいよー?」
船長「椅子と……毛布出してやれ。甲板の上じゃ寒いだろうしな」
海賊「アイアイサー!」
水使い「……ありがとうございます」
船長「良いから掴まってろ」
水使い「……はい」
スタスタ
469: 2014/08/10(日) 12:08:55.89 ID:YXzaH2fr0
船長「ほら、座ってろ……見えるだろ?」
水使い「……はい」
海賊「船長、毛布持って来ましたぜ」
船長「おう、渡してやってくれ……ちょっと操舵室に戻る」
水使い「あ……あの、ありがとうございます」
船長「おう。悪い、後でな」
スタスタ
船長「……目は離すなよ」ボソ
海賊「あいよ」ボソ
スタスタ
海賊「ほらよ……アンタ、そんな薄布一枚で寒くネェの?」パサ
水使い「……大丈夫です。ありがとうございます」
海賊「まだまだ暗い内は冷えるからな……しっかりかぶってろよ」
海賊(目立った荷物もネェ……着の身着のまま……夜逃げか?)
海賊(……ま、何でも良いけどな。困った事に巻き込まれなきゃ)ハァ
水使い「……すみません」
海賊「な、なんだよ」ドキ
水使い「いえ……ご迷惑おかけします」
海賊「……仕事だよ。それに」
水使い「?」
海賊「船長はまだ……まあ、ガキっちゃガキだし」
海賊「ご面相も残念な感じだが、良い奴だ。心配すんな」
水使い「…… ……」
海賊「……仕事はきっちりこなす、って意味も含めて、な」
水使い「そこは、心配はしておりません」
水使い(所詮は海賊……だが、金を積めば何でもやる奴ら)
水使い(……否、だからこそ、か。雷使いが気に入るのもわかる)
水使い(利があるが故に……裏切りはしない。似たもの同士だな)ハァ
スタスタ
船長「水使い」
水使い「はい?」クルッ
水使い「……!」
船長「? 何だよ、んな顔して……ほら、飲んどけ。暖まるぞ」
海賊「あ、良いな。俺ももらってこよう」
船長「残しとけよ! あんまネェんだから」
海賊「アイアイサー!」
スタスタ
水使い「……はい」
海賊「船長、毛布持って来ましたぜ」
船長「おう、渡してやってくれ……ちょっと操舵室に戻る」
水使い「あ……あの、ありがとうございます」
船長「おう。悪い、後でな」
スタスタ
船長「……目は離すなよ」ボソ
海賊「あいよ」ボソ
スタスタ
海賊「ほらよ……アンタ、そんな薄布一枚で寒くネェの?」パサ
水使い「……大丈夫です。ありがとうございます」
海賊「まだまだ暗い内は冷えるからな……しっかりかぶってろよ」
海賊(目立った荷物もネェ……着の身着のまま……夜逃げか?)
海賊(……ま、何でも良いけどな。困った事に巻き込まれなきゃ)ハァ
水使い「……すみません」
海賊「な、なんだよ」ドキ
水使い「いえ……ご迷惑おかけします」
海賊「……仕事だよ。それに」
水使い「?」
海賊「船長はまだ……まあ、ガキっちゃガキだし」
海賊「ご面相も残念な感じだが、良い奴だ。心配すんな」
水使い「…… ……」
海賊「……仕事はきっちりこなす、って意味も含めて、な」
水使い「そこは、心配はしておりません」
水使い(所詮は海賊……だが、金を積めば何でもやる奴ら)
水使い(……否、だからこそ、か。雷使いが気に入るのもわかる)
水使い(利があるが故に……裏切りはしない。似たもの同士だな)ハァ
スタスタ
船長「水使い」
水使い「はい?」クルッ
水使い「……!」
船長「? 何だよ、んな顔して……ほら、飲んどけ。暖まるぞ」
海賊「あ、良いな。俺ももらってこよう」
船長「残しとけよ! あんまネェんだから」
海賊「アイアイサー!」
スタスタ
470: 2014/08/10(日) 12:15:19.66 ID:YXzaH2fr0
水使い「スープ……」ジィ
水使い(良いにおい……)
船長「……変なモン入ってネェって」
水使い「え!? あ、いえ……そういうわけじゃ……いただきます」ズッ
水使い(……美味しい)
船長「暖まるだろ」ニッ
水使い「……ありがとうございます」
水使い(海賊。金で何でも……雷使いと……)
水使い(……否。似ても似つかないな)クス
船長「……あれか?」
水使い「え?」スッ
水使い(もう?……まだ空も暗い、のに)
船長「まあ、もう空も白んでくるだろうけど……早ェな」
水使い「……はい。あの子供達です」スッ
船長「おう……待ってるぜ」
水使い「…… ……はい」
スタスタ
少女「あ……! おねえさ……ッ」
少年「シッ…… 少女、静かに」
水使い「……随分早いですね」
少年「ごめんなさい……寝付けなくて」
少女「……私が早く起きちゃったから」
水使い(……気がはやるのもわからなくはないが)
水使い「出てきてしまったものは仕方ありません」
水使い「……誰にも見られて居ませんね?」
少年「うん……大丈夫、だと思う」
水使い「…… ……」
水使い(良いにおい……)
船長「……変なモン入ってネェって」
水使い「え!? あ、いえ……そういうわけじゃ……いただきます」ズッ
水使い(……美味しい)
船長「暖まるだろ」ニッ
水使い「……ありがとうございます」
水使い(海賊。金で何でも……雷使いと……)
水使い(……否。似ても似つかないな)クス
船長「……あれか?」
水使い「え?」スッ
水使い(もう?……まだ空も暗い、のに)
船長「まあ、もう空も白んでくるだろうけど……早ェな」
水使い「……はい。あの子供達です」スッ
船長「おう……待ってるぜ」
水使い「…… ……はい」
スタスタ
少女「あ……! おねえさ……ッ」
少年「シッ…… 少女、静かに」
水使い「……随分早いですね」
少年「ごめんなさい……寝付けなくて」
少女「……私が早く起きちゃったから」
水使い(……気がはやるのもわからなくはないが)
水使い「出てきてしまったものは仕方ありません」
水使い「……誰にも見られて居ませんね?」
少年「うん……大丈夫、だと思う」
水使い「…… ……」
471: 2014/08/10(日) 12:19:05.11 ID:YXzaH2fr0
水使い(雷使いを待つ必要は無い。すぐに……船を出してもらえば良い)クルッ
少女「お、お姉さん……?」
水使い「大丈夫です。すぐに船を出してもらいましょう」
少年「雷使い…… ……さん、は?」
水使い「話は後です……彼女を待つ必要はありません。とにかく、早く」
スタスタ
少女「…… ……」
少年「行こう、少女」ギュッ
少女「……う、うん」ギュッ
スタスタ
船長「……本当にまだ子供じゃネェか」
水使い「……早急に船を出してください。空が白みきる前に離れないと」
船長「あいよ。野郎共! 出航だ!」
アイアイサー!
水使い(大きな声を出さないで……!)イラッ
少女「…… ……」ビクビク
少年「…… ……」ギュッ
船長「先に船室に案内する。着いてこい」
水使い「さあ……行きましょう」
少年「ああ」
少女「……う、うん」
少女「お、お姉さん……?」
水使い「大丈夫です。すぐに船を出してもらいましょう」
少年「雷使い…… ……さん、は?」
水使い「話は後です……彼女を待つ必要はありません。とにかく、早く」
スタスタ
少女「…… ……」
少年「行こう、少女」ギュッ
少女「……う、うん」ギュッ
スタスタ
船長「……本当にまだ子供じゃネェか」
水使い「……早急に船を出してください。空が白みきる前に離れないと」
船長「あいよ。野郎共! 出航だ!」
アイアイサー!
水使い(大きな声を出さないで……!)イラッ
少女「…… ……」ビクビク
少年「…… ……」ギュッ
船長「先に船室に案内する。着いてこい」
水使い「さあ……行きましょう」
少年「ああ」
少女「……う、うん」
472: 2014/08/10(日) 12:26:53.45 ID:YXzaH2fr0
スタスタ
船長「この部屋を使え……とりあえず一室、って聞いてる」コン
少女(凄い……豪華な船……! あの飾り……あんなの見た事無い……!)キョロ
少年(……船、だよな? ……本で見た城の……廊下みたいだ)
水使い「……ありがとうございます」
船長「……んで、お前……ちょっと」
水使い「? ……二人とも、先に中へ」
少年「う、うん」
カチャ
少年「うわ……ッ」
少女「! す、ごい……!」
水使い「……? あまり騒がないでくださいよ」
パタン
水使い「何でしょう、船長さん……あの、それより…… ……ッ」
グラグラ……グラグラ……ッ
少年「わ……ッ」
少女「きゃ……!?」
船長「子供の声は良く聞こえるな」ハァ
水使い「……すみません、騒がない様に……」
船長「あァ? ……ああ、そんなのはどうでも良いさ。お前は」
船長「さっさと出航してくれって言いたかったんだろ」
水使い「……離岸、したのですね」ホッ
船長「ああ……それより、だ」
水使い「? ……はい」
船長「この部屋を使え……とりあえず一室、って聞いてる」コン
少女(凄い……豪華な船……! あの飾り……あんなの見た事無い……!)キョロ
少年(……船、だよな? ……本で見た城の……廊下みたいだ)
水使い「……ありがとうございます」
船長「……んで、お前……ちょっと」
水使い「? ……二人とも、先に中へ」
少年「う、うん」
カチャ
少年「うわ……ッ」
少女「! す、ごい……!」
水使い「……? あまり騒がないでくださいよ」
パタン
水使い「何でしょう、船長さん……あの、それより…… ……ッ」
グラグラ……グラグラ……ッ
少年「わ……ッ」
少女「きゃ……!?」
船長「子供の声は良く聞こえるな」ハァ
水使い「……すみません、騒がない様に……」
船長「あァ? ……ああ、そんなのはどうでも良いさ。お前は」
船長「さっさと出航してくれって言いたかったんだろ」
水使い「……離岸、したのですね」ホッ
船長「ああ……それより、だ」
水使い「? ……はい」
473: 2014/08/10(日) 12:34:25.85 ID:YXzaH2fr0
船長「どこへ行けば良い?」
水使い「……はい?」
船長「いや……書の街で雷使いを拾うのはわかってる」
船長「港街から書の街へ出る今日の定期便の一番早い奴、ってのも聞いてるが」
船長「……時刻にすれば昼過ぎだ。それまでどうするんだ、って事」
水使い「…… ……」
船長「任せる、ってなら……適当にここから離れるが」
水使い「すみません、お任せします。船の事……とかは、わからないので」
船長「オーライ。それならそれで良い」
船長「あいつを拾ったらこの部屋に案内させる。別に出歩くな、とは言わないが」
船長「……思った以上に小さい子供だったからな。勝手にあちこち歩き回られるのは正直迷惑だ」
船長「武器や、弾薬の類いもおいてあるし……まあ、お前の目の届く範囲で」
船長「自由にしてくれてりゃ良いけどよ」
水使い「そういう事はしない子達だと思います、が……言い聞かせておきます」
船長「ああ、腹が減ったり、何か用事があるときは適当にその辺の奴捕まえて」
船長「言ってくれ……海賊だってのは、内緒で良いんだろ?」
水使い「だと、思います」
船長「……お前も何も知らないのか」ハァ
水使い「…… ……すみません」
船長「良いさ。適当に……怪しまれないように適当に船走らせるから……あ」
水使い「? はい」
船長「弱くなったとは言え、まだ魔物は出るからな。甲板にだけは出るなよ」
水使い「……はい」
水使い(弱くなった……? 魔物が……?)
水使い「……はい?」
船長「いや……書の街で雷使いを拾うのはわかってる」
船長「港街から書の街へ出る今日の定期便の一番早い奴、ってのも聞いてるが」
船長「……時刻にすれば昼過ぎだ。それまでどうするんだ、って事」
水使い「…… ……」
船長「任せる、ってなら……適当にここから離れるが」
水使い「すみません、お任せします。船の事……とかは、わからないので」
船長「オーライ。それならそれで良い」
船長「あいつを拾ったらこの部屋に案内させる。別に出歩くな、とは言わないが」
船長「……思った以上に小さい子供だったからな。勝手にあちこち歩き回られるのは正直迷惑だ」
船長「武器や、弾薬の類いもおいてあるし……まあ、お前の目の届く範囲で」
船長「自由にしてくれてりゃ良いけどよ」
水使い「そういう事はしない子達だと思います、が……言い聞かせておきます」
船長「ああ、腹が減ったり、何か用事があるときは適当にその辺の奴捕まえて」
船長「言ってくれ……海賊だってのは、内緒で良いんだろ?」
水使い「だと、思います」
船長「……お前も何も知らないのか」ハァ
水使い「…… ……すみません」
船長「良いさ。適当に……怪しまれないように適当に船走らせるから……あ」
水使い「? はい」
船長「弱くなったとは言え、まだ魔物は出るからな。甲板にだけは出るなよ」
水使い「……はい」
水使い(弱くなった……? 魔物が……?)
474: 2014/08/10(日) 12:35:52.55 ID:YXzaH2fr0
お昼ご飯~
475: 2014/08/10(日) 13:23:11.85 ID:YXzaH2fr0
船長「じゃあまあ……くつろいでくれ。呼び止めて悪かったな」
スタスタ
水使い「……はい」
水使い(魔物が……そんな話は、雷使いから聞いてない)
水使い(彼女も知らないのか……? ……ッ)ズキッ
水使い(……お腹が、痛い。双子を見ろと言っておいて)
水使い(相変わらず、乱暴なんだから……)
カチャ
少女「あ……お姉さん」
少年「すげぇよ、ここ……本当に船なのか!?」
水使い「…… ……なるほど」
水使い(さっきの嬌声はこれか。無理も無いかな)
水使い(廊下もさる事ながら……確かに、これは見事だわ)
水使い(……領主様のお屋敷の様。否……それより立派かも)
少女「お姉さん、あの……ごめんなさい」
水使い「え?」
少年「……俺たち、その。本当にあんまり眠れなくて」
水使い「あ、ああ…… ……過ぎた事を言っても仕方ありません、し」
水使い「……無事に出航出来たんです。もう……良いでしょう」
少女「それにしても……本当に、素敵ね……ッ」ホウッ
少女「……絵本に出てくるお城だわ、まるで……!」
水使い(珍しい。夢見がちな子だとは思ってたけど)
水使い(……頬を紅潮させて……まあ、無理も無い、か)
水使い(あの船長の趣味……では無い、か。彼もまだ子供、と言っていい年齢だ)
少年「? ……お姉さん、顔色が……大丈夫か?」
水使い「ん……ああ。ごめんなさい。私もあまり寝てないから」
少女「え!? ……あ、そうか……」カァッ
水使い(……雷使いと一晩過ごせば、この子達には隠せないな)
少年「……横になって、俺たちの事は気にしなくて良いから」
水使い「大丈夫です…… ……が、座らせてもらいますね」
少女「う、うん! このソファも柔らかくて気持ち良いわ!」ポンポン
水使い(かと言って……全ても話せまい)ストン
水使い(……否。何をどこまで……どう、話せば良いのか)
水使い(私が……考える事じゃ無いか)ハァ
少女「大丈夫ですか? ……水か何か、もらってきましょうか」
水使い「あ……いえ、大丈夫です。それに……」
少年「あいつ、俺たちにあんまりうろうろするな、って?」
スタスタ
水使い「……はい」
水使い(魔物が……そんな話は、雷使いから聞いてない)
水使い(彼女も知らないのか……? ……ッ)ズキッ
水使い(……お腹が、痛い。双子を見ろと言っておいて)
水使い(相変わらず、乱暴なんだから……)
カチャ
少女「あ……お姉さん」
少年「すげぇよ、ここ……本当に船なのか!?」
水使い「…… ……なるほど」
水使い(さっきの嬌声はこれか。無理も無いかな)
水使い(廊下もさる事ながら……確かに、これは見事だわ)
水使い(……領主様のお屋敷の様。否……それより立派かも)
少女「お姉さん、あの……ごめんなさい」
水使い「え?」
少年「……俺たち、その。本当にあんまり眠れなくて」
水使い「あ、ああ…… ……過ぎた事を言っても仕方ありません、し」
水使い「……無事に出航出来たんです。もう……良いでしょう」
少女「それにしても……本当に、素敵ね……ッ」ホウッ
少女「……絵本に出てくるお城だわ、まるで……!」
水使い(珍しい。夢見がちな子だとは思ってたけど)
水使い(……頬を紅潮させて……まあ、無理も無い、か)
水使い(あの船長の趣味……では無い、か。彼もまだ子供、と言っていい年齢だ)
少年「? ……お姉さん、顔色が……大丈夫か?」
水使い「ん……ああ。ごめんなさい。私もあまり寝てないから」
少女「え!? ……あ、そうか……」カァッ
水使い(……雷使いと一晩過ごせば、この子達には隠せないな)
少年「……横になって、俺たちの事は気にしなくて良いから」
水使い「大丈夫です…… ……が、座らせてもらいますね」
少女「う、うん! このソファも柔らかくて気持ち良いわ!」ポンポン
水使い(かと言って……全ても話せまい)ストン
水使い(……否。何をどこまで……どう、話せば良いのか)
水使い(私が……考える事じゃ無いか)ハァ
少女「大丈夫ですか? ……水か何か、もらってきましょうか」
水使い「あ……いえ、大丈夫です。それに……」
少年「あいつ、俺たちにあんまりうろうろするな、って?」
476: 2014/08/10(日) 13:37:16.18 ID:YXzaH2fr0
少女「え……」
水使い「……まあ、注意事項を聞いた、事に違いはありません」
水使い「爆薬や武器の類いもあるから、と」
少年「……爆薬!?」
水使い「甲板には砲台もありましたからね……海にも、魔物は出ますから」
少女「そ、そうなの……?」
水使い「はい。ですから、甲板には出ない様に、と。ですが、別に」
水使い「この部屋に監禁されている訳では無いですよ。私と一緒ならば」
水使い「大丈夫でしょう」
少年「そうなのか……」
水使い「……貴方達子供だけでは危険だから、と。彼から伝えられたのは」
水使い「それだけです」
少女「……あ、の」
水使い「はい?」
少女「雷使い、さんは……」
水使い「ああ……そうでした」
水使い「……雷使いは、後からちゃんと来ますよ」
少年「そうなのか?」
水使い「心配しないで大丈夫です……彼女は、残って」
水使い「私の……アリバイ工作をしてくれてるだけですから」
少女「あ……そうか。私と少年だけじゃ無くて、お姉さんも……」
水使い「……水使い、と呼んでください」
少年「え?」
水使い「もう……『娼館のお姉さん』じゃありませんから」
少年「……うん」
少女「水使いさん……も、逃げ出したかった、の?」
水使い「……どこまで話して良い物か」ハァ
水使い「ですが『さん』はいりませんよ」
少年「で、でも」
水使い「良いんです……もう、女と小姓じゃ無いんです」
少女「……そう、よね。思い出したく無いわよ、ね」
少年「あ……」
水使い(……誤解、と言い切れる訳でも無いが)
水使い(わざわざ訂正するのも、面倒だわ)
水使い「……雷使いが来るまで、退屈でしょうけど」
水使い「少しの間、我慢してください」
水使い「……まあ、注意事項を聞いた、事に違いはありません」
水使い「爆薬や武器の類いもあるから、と」
少年「……爆薬!?」
水使い「甲板には砲台もありましたからね……海にも、魔物は出ますから」
少女「そ、そうなの……?」
水使い「はい。ですから、甲板には出ない様に、と。ですが、別に」
水使い「この部屋に監禁されている訳では無いですよ。私と一緒ならば」
水使い「大丈夫でしょう」
少年「そうなのか……」
水使い「……貴方達子供だけでは危険だから、と。彼から伝えられたのは」
水使い「それだけです」
少女「……あ、の」
水使い「はい?」
少女「雷使い、さんは……」
水使い「ああ……そうでした」
水使い「……雷使いは、後からちゃんと来ますよ」
少年「そうなのか?」
水使い「心配しないで大丈夫です……彼女は、残って」
水使い「私の……アリバイ工作をしてくれてるだけですから」
少女「あ……そうか。私と少年だけじゃ無くて、お姉さんも……」
水使い「……水使い、と呼んでください」
少年「え?」
水使い「もう……『娼館のお姉さん』じゃありませんから」
少年「……うん」
少女「水使いさん……も、逃げ出したかった、の?」
水使い「……どこまで話して良い物か」ハァ
水使い「ですが『さん』はいりませんよ」
少年「で、でも」
水使い「良いんです……もう、女と小姓じゃ無いんです」
少女「……そう、よね。思い出したく無いわよ、ね」
少年「あ……」
水使い(……誤解、と言い切れる訳でも無いが)
水使い(わざわざ訂正するのも、面倒だわ)
水使い「……雷使いが来るまで、退屈でしょうけど」
水使い「少しの間、我慢してください」
477: 2014/08/10(日) 13:56:44.20 ID:YXzaH2fr0
少女「うん……もう少し、船内……見たかったな」ハァ
少年「仕方ないよ、少女……怒られるのもやだし」
少女「そうだけど……」
水使い「…… ……」スッ
少年「おね……水使い?」
水使い「……陸地が遠くに」
少女「え? ……あ、窓の外ね」スッ
水使い(ここは……もう、港街じゃない。娼館じゃ無い)
水使い(……この子達には、正直残酷な話だろうに)
水使い(魔導国の再建。領主様の血筋の…… ……)
水使い(私達が、王になる? ……喜ばないといけないはず、なのに)
水使い「…… ……」
少年「すげぇ……あれ、港街だよな?」
少女「私達……あそこに、居たんだよね……」
水使い(……この子達ですら、駒でしか無い)
水使い(近親姦を繰り返させられるだけの。崇め奉られ、踊らされるだけの)
水使い(……あの街にいた方が、幸せだったのかもしれないな)
少年「……水使い、あれは?」
少女「え……書の街に着くには早い……わよね?」
水使い「え? …… ……ああ、あれは……始まりの大陸です」
少女「始まりの大陸……って、あの……滅ぼされた、っていう?」
少年「仕方ないよ、少女……怒られるのもやだし」
少女「そうだけど……」
水使い「…… ……」スッ
少年「おね……水使い?」
水使い「……陸地が遠くに」
少女「え? ……あ、窓の外ね」スッ
水使い(ここは……もう、港街じゃない。娼館じゃ無い)
水使い(……この子達には、正直残酷な話だろうに)
水使い(魔導国の再建。領主様の血筋の…… ……)
水使い(私達が、王になる? ……喜ばないといけないはず、なのに)
水使い「…… ……」
少年「すげぇ……あれ、港街だよな?」
少女「私達……あそこに、居たんだよね……」
水使い(……この子達ですら、駒でしか無い)
水使い(近親姦を繰り返させられるだけの。崇め奉られ、踊らされるだけの)
水使い(……あの街にいた方が、幸せだったのかもしれないな)
少年「……水使い、あれは?」
少女「え……書の街に着くには早い……わよね?」
水使い「え? …… ……ああ、あれは……始まりの大陸です」
少女「始まりの大陸……って、あの……滅ぼされた、っていう?」
478: 2014/08/10(日) 14:02:54.58 ID:YXzaH2fr0
水使い「……呪い、だとか言う噂はありました、が」
水使い「実際は……大規模な火事です。始まりの国の城が焼け落ち」
水使い「城下町にまで被害が……」
少女「…… ……ッ」
水使い「城下町、とは言え、小さな島ですから」
少年「……それで、無人になったのか」
水使い「で、しょうね。当時は……港街にも人があふれて大変だったらしいです」
少女「……かわいそうね」
少年「でも、随分近くまで行くんだな」
水使い「……迂闊に港街や、書の街へ近づくわけには行きませんから」
水使い「船長さんに任せておけば、大丈夫でしょう……うまくやってくれる筈です」
水使い(なるほど。確かにここなら……隠す、までは行かなくても)
水使い(……誰にも、見つかる心配は無い。定期便もここには近付かない)
水使い(少し……ほっとした)フゥ
少年「大丈夫か? ……本当に、横になれば?」
水使い「大丈夫です、と言いたいところ……ですが」
水使い(まだ……微かに腹が痛い。全く、本当に……何度も何度も……)ズキッ
少女「私達、ちゃんとここに居るから。ベッドも二つあるし」
少女「横になって?」
水使い「……すみません。何かあったら、近くに居るだろう、か…… ……」
水使い(……海賊、とは言えないのか)フゥ
水使い「……船員さんに、声をかければ良いと言われてますから」
少年「わかった」
水使い「……お願いします。なるべく、この部屋にいてくださいね」コロン
水使い「実際は……大規模な火事です。始まりの国の城が焼け落ち」
水使い「城下町にまで被害が……」
少女「…… ……ッ」
水使い「城下町、とは言え、小さな島ですから」
少年「……それで、無人になったのか」
水使い「で、しょうね。当時は……港街にも人があふれて大変だったらしいです」
少女「……かわいそうね」
少年「でも、随分近くまで行くんだな」
水使い「……迂闊に港街や、書の街へ近づくわけには行きませんから」
水使い「船長さんに任せておけば、大丈夫でしょう……うまくやってくれる筈です」
水使い(なるほど。確かにここなら……隠す、までは行かなくても)
水使い(……誰にも、見つかる心配は無い。定期便もここには近付かない)
水使い(少し……ほっとした)フゥ
少年「大丈夫か? ……本当に、横になれば?」
水使い「大丈夫です、と言いたいところ……ですが」
水使い(まだ……微かに腹が痛い。全く、本当に……何度も何度も……)ズキッ
少女「私達、ちゃんとここに居るから。ベッドも二つあるし」
少女「横になって?」
水使い「……すみません。何かあったら、近くに居るだろう、か…… ……」
水使い(……海賊、とは言えないのか)フゥ
水使い「……船員さんに、声をかければ良いと言われてますから」
少年「わかった」
水使い「……お願いします。なるべく、この部屋にいてくださいね」コロン
479: 2014/08/10(日) 14:23:07.64 ID:YXzaH2fr0
少女「うん……おやすみなさい」
水使い「…… ……」スゥ
少年「……もう、寝ちゃってる」
少女「疲れてたのね……気も遣わせた、んだろうし」
少年「……そう、だな」
少女「……止まってるね、船」
少年「え? ……ああ」
コンコン
少女「!」
少年「! ……は、はい」
船長「水使い? 入っても良いか」
少年「み……水使いさん、は……寝てます」
船長「寝た? ……そっか。開けるぞ?」
少女「……」チラ
少年「……」コクン
船長「…… ……」
カチャ
少女「…… ……」
少年「…… ……」
船長「……んな睨まなくても良いだろうよ」ハァ
少女「あ、の……」
船長「お前ら、腹減ってネェの?」
少年「え?」
船長「雷使い拾いに行くのは、昼過ぎるからな。水使いは……まあ、しゃあねぇ」
船長「食堂に来いよ。飯食わしてやるから」
少女「あ、あの……」
船長「ん?」
少女「……良いんですか」
船長「駄目な理由があるのか?」
少年「さっき……うろうろするなって水使いに言ったんだろ?」
船長「聞いてないのか? 武器とかな。危険なモンもあるから」
船長「ガキだけでうろちょろされて、怪我でもされちゃたまらねぇって」
船長「……そんだけだ」
水使い「…… ……」スゥ
少年「……もう、寝ちゃってる」
少女「疲れてたのね……気も遣わせた、んだろうし」
少年「……そう、だな」
少女「……止まってるね、船」
少年「え? ……ああ」
コンコン
少女「!」
少年「! ……は、はい」
船長「水使い? 入っても良いか」
少年「み……水使いさん、は……寝てます」
船長「寝た? ……そっか。開けるぞ?」
少女「……」チラ
少年「……」コクン
船長「…… ……」
カチャ
少女「…… ……」
少年「…… ……」
船長「……んな睨まなくても良いだろうよ」ハァ
少女「あ、の……」
船長「お前ら、腹減ってネェの?」
少年「え?」
船長「雷使い拾いに行くのは、昼過ぎるからな。水使いは……まあ、しゃあねぇ」
船長「食堂に来いよ。飯食わしてやるから」
少女「あ、あの……」
船長「ん?」
少女「……良いんですか」
船長「駄目な理由があるのか?」
少年「さっき……うろうろするなって水使いに言ったんだろ?」
船長「聞いてないのか? 武器とかな。危険なモンもあるから」
船長「ガキだけでうろちょろされて、怪我でもされちゃたまらねぇって」
船長「……そんだけだ」
480: 2014/08/10(日) 14:31:22.15 ID:YXzaH2fr0
少女「…… ……」
少年「…… ……」
船長「まあ……警戒するのもわからんでないけどな」ハァ
船長(どんな事情があるのかしらネェが……水使い自身も良く知らないのか)
船長(聞いてないのか……みたいだった、しな)
船長「わかったわかった、んじゃ、ここに三人分運んでやるから……」
少女「い、いえ、行きます」
少年「少女!?」
少女「……だって。他の場所も見てみたいんだもの」
少年「だからって……」
少女「少年が一緒だもの。大丈夫でしょう?」
船長「……あのな。俺らが誘拐した訳じゃネェんだから」ハァ
船長「雷使いからちゃんと金ももらってる。お前らは立派な客だっつーの」
少女「……お腹も、すいた、し」
少年「それは……まあ、そうだけど」
船長「ほら、さっさと来いよ……俺も一緒に食うから」
船長「同じモン、目の前で食えば安心だろ……行くぞ」
スタスタ
少女「……悪い人、じゃ無いみたい」
少年「まあ……それは、うん」
パタン、スタスタ
船長「おーい、ガキと俺の分の飯頼むー!」
バタン!
少年「…… ……」
船長「まあ……警戒するのもわからんでないけどな」ハァ
船長(どんな事情があるのかしらネェが……水使い自身も良く知らないのか)
船長(聞いてないのか……みたいだった、しな)
船長「わかったわかった、んじゃ、ここに三人分運んでやるから……」
少女「い、いえ、行きます」
少年「少女!?」
少女「……だって。他の場所も見てみたいんだもの」
少年「だからって……」
少女「少年が一緒だもの。大丈夫でしょう?」
船長「……あのな。俺らが誘拐した訳じゃネェんだから」ハァ
船長「雷使いからちゃんと金ももらってる。お前らは立派な客だっつーの」
少女「……お腹も、すいた、し」
少年「それは……まあ、そうだけど」
船長「ほら、さっさと来いよ……俺も一緒に食うから」
船長「同じモン、目の前で食えば安心だろ……行くぞ」
スタスタ
少女「……悪い人、じゃ無いみたい」
少年「まあ……それは、うん」
パタン、スタスタ
船長「おーい、ガキと俺の分の飯頼むー!」
バタン!
482: 2014/08/10(日) 15:00:50.38 ID:YXzaH2fr0
少女「わ……ぁ! ……ここも、素敵……!」
少年「……すげぇ」
船長「だろ?」ハハッ
船長「……ほら、そっち座れ」カタン
少女「……あの。この船は……定期便、じゃ無いんですよね?」
船長「ん? ……ああ、まあ。俺個人の船だな」
少年「え!?」
船長「……なんだよ」
少年「……いや、あの」
船長「まあ、そりゃ……俺もまだガキだけどさ」
少女「じゃあ……貴方が、この船の船長、さん……ですか!?」
船長「……まだまだ新米だけどな」
少年「え? でも、今アンタの船だって……」
船長「まあ、代々かい…… ……いや、まあ。譲り受けた、んだよ」
船長(アブねぇアブねぇ……海賊って言っちゃいけねぇんだった)フゥ
船長「お、来たな……ほら、食えよ」
少女「わ、美味しそう……!いただきます」
少年「……譲り受けた、って誰に……? ……いただきます」
船長「代々、の船なのさ。俺の母さん、じいちゃん……ってな」
少女「へえ……」
船長「……ああ、そういや言ってなかったな。俺は船長だ」
少年「……少年です。こっちは少女」
船長「おう」
少女「あの……」
船長「ん?」
少女「これから……どこに行くんですか?雷使いさんは、いつ頃……」
船長「……水使いに聞いてないのか?」
少年「あ、いや……疲れてるみたいで、寝ちゃったから」
船長「ああ……雷使いと合流すんのは昼過ぎだな。書の街までの定期便が……」
少年「書の街……に、向かうのか、じゃあ」
船長「もう少ししたらな」
少女「それまでは、船はここに?」
船長「別に動き回っても良いんだけどよ。まあ、燃料の問題とかな」
船長「……海にも、魔物は出るしよ」
少年「! 砲台……」
船長「何だ、興味あんのか?」
少年「……あ、いや。そういう訳じゃ無い、けど」
船長「……この辺の海域の魔物は特に強くもネェから問題はネェんだが」
船長「まあ、無駄な消耗は控えたいからな。ここなら……余程の物好きじゃ無い限り」
船長「人になんて遭遇しねぇし」
少年「……すげぇ」
船長「だろ?」ハハッ
船長「……ほら、そっち座れ」カタン
少女「……あの。この船は……定期便、じゃ無いんですよね?」
船長「ん? ……ああ、まあ。俺個人の船だな」
少年「え!?」
船長「……なんだよ」
少年「……いや、あの」
船長「まあ、そりゃ……俺もまだガキだけどさ」
少女「じゃあ……貴方が、この船の船長、さん……ですか!?」
船長「……まだまだ新米だけどな」
少年「え? でも、今アンタの船だって……」
船長「まあ、代々かい…… ……いや、まあ。譲り受けた、んだよ」
船長(アブねぇアブねぇ……海賊って言っちゃいけねぇんだった)フゥ
船長「お、来たな……ほら、食えよ」
少女「わ、美味しそう……!いただきます」
少年「……譲り受けた、って誰に……? ……いただきます」
船長「代々、の船なのさ。俺の母さん、じいちゃん……ってな」
少女「へえ……」
船長「……ああ、そういや言ってなかったな。俺は船長だ」
少年「……少年です。こっちは少女」
船長「おう」
少女「あの……」
船長「ん?」
少女「これから……どこに行くんですか?雷使いさんは、いつ頃……」
船長「……水使いに聞いてないのか?」
少年「あ、いや……疲れてるみたいで、寝ちゃったから」
船長「ああ……雷使いと合流すんのは昼過ぎだな。書の街までの定期便が……」
少年「書の街……に、向かうのか、じゃあ」
船長「もう少ししたらな」
少女「それまでは、船はここに?」
船長「別に動き回っても良いんだけどよ。まあ、燃料の問題とかな」
船長「……海にも、魔物は出るしよ」
少年「! 砲台……」
船長「何だ、興味あんのか?」
少年「……あ、いや。そういう訳じゃ無い、けど」
船長「……この辺の海域の魔物は特に強くもネェから問題はネェんだが」
船長「まあ、無駄な消耗は控えたいからな。ここなら……余程の物好きじゃ無い限り」
船長「人になんて遭遇しねぇし」
484: 2014/08/10(日) 17:22:34.67 ID:YXzaH2fr0
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