1: 2014/08/15(金) 08:52:56.64 ID:tpj3LTqdi
まーた落ちてた
5: 2014/08/15(金) 10:44:28.75 ID:be9d8fNi0
おおおおお、おはようございます!
毎度ご面倒をおかけして申し訳ない……
496までですね。
前スレ最後
少女「わ……ぁ! ……ここも、素敵……!」
少年「……すげぇ」
船長「だろ?」ハハッ
船長「……ほら、そっち座れ」カタン
少女「……あの。この船は……定期便、じゃ無いんですよね?」
船長「ん? ……ああ、まあ。俺個人の船だな」
少年「え!?」
船長「……なんだよ」
少年「……いや、あの」
船長「まあ、そりゃ……俺もまだガキだけどさ」
少女「じゃあ……貴方が、この船の船長、さん……ですか!?」
船長「……まだまだ新米だけどな」
少年「え? でも、今アンタの船だって……」
船長「まあ、代々かい…… ……いや、まあ。譲り受けた、んだよ」
船長(アブねぇアブねぇ……海賊って言っちゃいけねぇんだった)フゥ
船長「お、来たな……ほら、食えよ」
少女「わ、美味しそう……!いただきます」
少年「……譲り受けた、って誰に……? ……いただきます」
船長「代々、の船なのさ。俺の母さん、じいちゃん……ってな」
少女「へえ……」
船長「……ああ、そういや言ってなかったな。俺は船長だ」
少年「……少年です。こっちは少女」
船長「おう」
少女「あの……」
船長「ん?」
少女「これから……どこに行くんですか?雷使いさんは、いつ頃……」
船長「……水使いに聞いてないのか?」
少年「あ、いや……疲れてるみたいで、寝ちゃったから」
船長「ああ……雷使いと合流すんのは昼過ぎだな。書の街までの定期便が……」
少年「書の街……に、向かうのか、じゃあ」
船長「もう少ししたらな」
少女「それまでは、船はここに?」
船長「別に動き回っても良いんだけどよ。まあ、燃料の問題とかな」
船長「……海にも、魔物は出るしよ」
少年「! 砲台……」
船長「何だ、興味あんのか?」
少年「……あ、いや。そういう訳じゃ無い、けど」
船長「……この辺の海域の魔物は特に強くもネェから問題はネェんだが」
船長「まあ、無駄な消耗は控えたいからな。ここなら……余程の物好きじゃ無い限り」
船長「人になんて遭遇しねぇし」
毎度ご面倒をおかけして申し訳ない……
496までですね。
前スレ最後
少女「わ……ぁ! ……ここも、素敵……!」
少年「……すげぇ」
船長「だろ?」ハハッ
船長「……ほら、そっち座れ」カタン
少女「……あの。この船は……定期便、じゃ無いんですよね?」
船長「ん? ……ああ、まあ。俺個人の船だな」
少年「え!?」
船長「……なんだよ」
少年「……いや、あの」
船長「まあ、そりゃ……俺もまだガキだけどさ」
少女「じゃあ……貴方が、この船の船長、さん……ですか!?」
船長「……まだまだ新米だけどな」
少年「え? でも、今アンタの船だって……」
船長「まあ、代々かい…… ……いや、まあ。譲り受けた、んだよ」
船長(アブねぇアブねぇ……海賊って言っちゃいけねぇんだった)フゥ
船長「お、来たな……ほら、食えよ」
少女「わ、美味しそう……!いただきます」
少年「……譲り受けた、って誰に……? ……いただきます」
船長「代々、の船なのさ。俺の母さん、じいちゃん……ってな」
少女「へえ……」
船長「……ああ、そういや言ってなかったな。俺は船長だ」
少年「……少年です。こっちは少女」
船長「おう」
少女「あの……」
船長「ん?」
少女「これから……どこに行くんですか?雷使いさんは、いつ頃……」
船長「……水使いに聞いてないのか?」
少年「あ、いや……疲れてるみたいで、寝ちゃったから」
船長「ああ……雷使いと合流すんのは昼過ぎだな。書の街までの定期便が……」
少年「書の街……に、向かうのか、じゃあ」
船長「もう少ししたらな」
少女「それまでは、船はここに?」
船長「別に動き回っても良いんだけどよ。まあ、燃料の問題とかな」
船長「……海にも、魔物は出るしよ」
少年「! 砲台……」
船長「何だ、興味あんのか?」
少年「……あ、いや。そういう訳じゃ無い、けど」
船長「……この辺の海域の魔物は特に強くもネェから問題はネェんだが」
船長「まあ、無駄な消耗は控えたいからな。ここなら……余程の物好きじゃ無い限り」
船長「人になんて遭遇しねぇし」
6: 2014/08/15(金) 11:09:07.51 ID:be9d8fNi0
少女「本当に……無人なの?」
船長「ん?」
少女「こっそりと……誰か住んでたりしないのかしら」
船長「……まあ、無いだろうな。俺もこの目で間近で見た訳じゃネェから」
船長「アレだけどさ……でも。本当に大規模な火事だったらしいからな」
少年「城が焼けて、街にまで飛びした、んだよな」
船長「……ああ」
少年「確かに……そう聞くと、誰も生存者なんか居ないだろうけどさ」
少女「島が一つ、焼けてしまうほど……ですもの、ね」フゥ
船長「……俺も城や、街に行った事は無いんだ」
少年「そうなのか? 個人の船ならどこにでも……」
船長「依頼や、用事がネェかぎり滅多に陸には上がらネェよ」
船長「……今でこそ平和……って言っていいかわかんねぇけど」
少女「え?」
船長「……いや」
船長(こいつらに魔導の国や、何だって話したって、な)
船長(……俺も、母さんやじいちゃんから聞いただけにすぎないし)
少年「魔王が……いるから?」
船長「それもあるけど、よ……まあ、色々あんのさ」
少女「……後で、島を見ても良い?」
船長「え?」
少女「あ、船は降りないわ! ……その、甲板の上から……まだ出発しないんでしょう?」
船長「…… ……」
少年「俺も、見てみたい」
船長「ん?」
少女「こっそりと……誰か住んでたりしないのかしら」
船長「……まあ、無いだろうな。俺もこの目で間近で見た訳じゃネェから」
船長「アレだけどさ……でも。本当に大規模な火事だったらしいからな」
少年「城が焼けて、街にまで飛びした、んだよな」
船長「……ああ」
少年「確かに……そう聞くと、誰も生存者なんか居ないだろうけどさ」
少女「島が一つ、焼けてしまうほど……ですもの、ね」フゥ
船長「……俺も城や、街に行った事は無いんだ」
少年「そうなのか? 個人の船ならどこにでも……」
船長「依頼や、用事がネェかぎり滅多に陸には上がらネェよ」
船長「……今でこそ平和……って言っていいかわかんねぇけど」
少女「え?」
船長「……いや」
船長(こいつらに魔導の国や、何だって話したって、な)
船長(……俺も、母さんやじいちゃんから聞いただけにすぎないし)
少年「魔王が……いるから?」
船長「それもあるけど、よ……まあ、色々あんのさ」
少女「……後で、島を見ても良い?」
船長「え?」
少女「あ、船は降りないわ! ……その、甲板の上から……まだ出発しないんでしょう?」
船長「…… ……」
少年「俺も、見てみたい」
7: 2014/08/15(金) 11:34:57.32 ID:be9d8fNi0
船長「……せめて、水使いの許可を取ってこい」
少女「…… ……」
少年「大丈夫だろう?、それぐらい……船も止まってるんだし」
船長「大事なお客様だからな。俺の独断で良いも悪いも言えないんだよ」
少女「どこへ行こうって訳じゃ無いのに……」
船長「停泊してるからって、魔物に絶対襲われない、って保証があると思うか?」
少年「…… ……」
船長「人が居なくなったって、魔物はいるかもしれねぇんだぜ、陸地にも」
少女「…… ……」
船長「ガキ二人守ってやれる程、俺も強くない」
少年「…… ……」
船長「……水使いが、良いっていったら。ちょっとだけ、な」ハァ
少女「! 聞いてくるわ!」ガタン!
船長「……こらこら。寝かしておいてやれよ」
少女「あ……」
少年「じゃあ……起きたら、聞いてみる。それで……」
船長「ああ……だが、もう少ししたら書の街に向かう」
船長「動き出したら駄目だ……わかったな?」
少女「……はい」
少年「じゃあ、それまで船の中見せてもらうのは?」
船長「え?」
少年「俺たちだけでうろうろするなってのは聞いてる。でも」
少年「船の中なら、水使いが居なくても、船長が一緒なら良いだろう?」
少女「少年……! そうね!」
船長「お、おい、まだ案内してやるとは……」
少女「離れたりしないわ。我が儘も言わない!」
少年「……頼むよ。動いてないなら、アンタもやる事無いだろ?」
船長「…… ……まあ、退屈なのはわかるが、な」ハァ
少女「やった!」
船長「先に飯食っちまえ……案内ったって、大した場所ねぇぞ?」
少女「でも、この食堂も素敵だもの。他の部屋も見てみたいの!」
船長「……はいはい」ハァ
少年「良かったな、少女」
少女「うん!」
船長(……ま、良いか)ハァ
……
………
…………
少女「…… ……」
少年「大丈夫だろう?、それぐらい……船も止まってるんだし」
船長「大事なお客様だからな。俺の独断で良いも悪いも言えないんだよ」
少女「どこへ行こうって訳じゃ無いのに……」
船長「停泊してるからって、魔物に絶対襲われない、って保証があると思うか?」
少年「…… ……」
船長「人が居なくなったって、魔物はいるかもしれねぇんだぜ、陸地にも」
少女「…… ……」
船長「ガキ二人守ってやれる程、俺も強くない」
少年「…… ……」
船長「……水使いが、良いっていったら。ちょっとだけ、な」ハァ
少女「! 聞いてくるわ!」ガタン!
船長「……こらこら。寝かしておいてやれよ」
少女「あ……」
少年「じゃあ……起きたら、聞いてみる。それで……」
船長「ああ……だが、もう少ししたら書の街に向かう」
船長「動き出したら駄目だ……わかったな?」
少女「……はい」
少年「じゃあ、それまで船の中見せてもらうのは?」
船長「え?」
少年「俺たちだけでうろうろするなってのは聞いてる。でも」
少年「船の中なら、水使いが居なくても、船長が一緒なら良いだろう?」
少女「少年……! そうね!」
船長「お、おい、まだ案内してやるとは……」
少女「離れたりしないわ。我が儘も言わない!」
少年「……頼むよ。動いてないなら、アンタもやる事無いだろ?」
船長「…… ……まあ、退屈なのはわかるが、な」ハァ
少女「やった!」
船長「先に飯食っちまえ……案内ったって、大した場所ねぇぞ?」
少女「でも、この食堂も素敵だもの。他の部屋も見てみたいの!」
船長「……はいはい」ハァ
少年「良かったな、少女」
少女「うん!」
船長(……ま、良いか)ハァ
……
………
…………
8: 2014/08/15(金) 12:19:35.51 ID:be9d8fNi0
シュゥン……スタッ
青年「…… ……ッ」フゥ
青年(わかってた、けど……)キョロキョロ
青年(複雑だな。彼女は、本当に…… ……)
青年「……大きな建物……娼館? ……の裏手か」
スタスタ
青年(夜中で良かった……どこに着くかわからないからな……ん?)
青年(……下り坂……? ……!)
青年(教会のあった場所か……! ……って事は、新しい方の……)
青年(……この時間じゃ人も…… ……ん?)
ガサ……
青年「!」
青年(誰か来る……違う……建物を出て行くのか。こんな時間に……?)
青年(……水色の長い髪。母さんみたいだな)ハァ
青年「…… ……」
青年(行った、か…… ……あっちは、港?)
青年(こんな時間に定期便も無い……なんだ?)
青年(娼館の女……恋人にでも会うのか)
スタスタ
青年(もう、見えないな……まあ、良い港になんて用事も無い)
青年(……しかし、この時間から宿を取るのもな)
青年(飲み屋の一つもあいているだろう。そこで……)
スタスタ
青年(……明かりがついてる。助かった、な)
キィ
青年「…… ……ッ」フゥ
青年(わかってた、けど……)キョロキョロ
青年(複雑だな。彼女は、本当に…… ……)
青年「……大きな建物……娼館? ……の裏手か」
スタスタ
青年(夜中で良かった……どこに着くかわからないからな……ん?)
青年(……下り坂……? ……!)
青年(教会のあった場所か……! ……って事は、新しい方の……)
青年(……この時間じゃ人も…… ……ん?)
ガサ……
青年「!」
青年(誰か来る……違う……建物を出て行くのか。こんな時間に……?)
青年(……水色の長い髪。母さんみたいだな)ハァ
青年「…… ……」
青年(行った、か…… ……あっちは、港?)
青年(こんな時間に定期便も無い……なんだ?)
青年(娼館の女……恋人にでも会うのか)
スタスタ
青年(もう、見えないな……まあ、良い港になんて用事も無い)
青年(……しかし、この時間から宿を取るのもな)
青年(飲み屋の一つもあいているだろう。そこで……)
スタスタ
青年(……明かりがついてる。助かった、な)
キィ
9: 2014/08/15(金) 12:20:25.08 ID:be9d8fNi0
お昼ご飯~
10: 2014/08/15(金) 13:50:24.62 ID:be9d8fNi0
マスター「あ……と、悪いね、もう店じまいなんだ」
青年「……マジで」ハァ
マスター「見ない顔だね……定期便で着いたのか?」
青年「いや……そう言う訳じゃ無い、んだけど」
マスター「ん? ……宿は取らなかったのか?」
青年「明日……否、今日か。朝には……」
マスター「ははぁん……わかった」ニヤ
青年「え?」
マスター「着いたや否や、娼館に入り浸ってたな?」ニヤ
青年「……は?」
マスター「泊まるつもりが路銀がつきたか、放り出されたか?」
青年「…… ……」
マスター「いやいや、否定したくなる気持ちはわかるけどな」ニヤニヤ
マスター「まだ若いんだろうが……ちょっと顔が良いからって」
マスター「調子に乗って無茶言うと、怒られるぜ兄ちゃん」
青年「…… ……」
マスター「違うって言うのかい?」ニヤ
青年「……話するんだったらせめて座らせてくれないかい」ハァ
マスター「ま、失敗は若い内にしておくもんだ……看板しまってくるから」
マスター「適当に座ってな……おっさんがつきあってやるよ」
青年「?」
マスター「特別に飲ましてやるって言ってんだ……朝になったら宿に行くんだろ?」
マスター「最近朝まで飲む客も減ったからな……まあ、たまにゃいいさ」
スタスタ、パタン
青年「……酔っ払ってんのはアンタじゃ無いのか、おっさん」ハァ
青年(まあ、良い。日の出まで……数時間、か)
青年(時間潰しと……少し情報収集でもしておくか。あの酔っ払い相手じゃ)
青年(ろくな事は聞けないかもしれないが)
青年「……マジで」ハァ
マスター「見ない顔だね……定期便で着いたのか?」
青年「いや……そう言う訳じゃ無い、んだけど」
マスター「ん? ……宿は取らなかったのか?」
青年「明日……否、今日か。朝には……」
マスター「ははぁん……わかった」ニヤ
青年「え?」
マスター「着いたや否や、娼館に入り浸ってたな?」ニヤ
青年「……は?」
マスター「泊まるつもりが路銀がつきたか、放り出されたか?」
青年「…… ……」
マスター「いやいや、否定したくなる気持ちはわかるけどな」ニヤニヤ
マスター「まだ若いんだろうが……ちょっと顔が良いからって」
マスター「調子に乗って無茶言うと、怒られるぜ兄ちゃん」
青年「…… ……」
マスター「違うって言うのかい?」ニヤ
青年「……話するんだったらせめて座らせてくれないかい」ハァ
マスター「ま、失敗は若い内にしておくもんだ……看板しまってくるから」
マスター「適当に座ってな……おっさんがつきあってやるよ」
青年「?」
マスター「特別に飲ましてやるって言ってんだ……朝になったら宿に行くんだろ?」
マスター「最近朝まで飲む客も減ったからな……まあ、たまにゃいいさ」
スタスタ、パタン
青年「……酔っ払ってんのはアンタじゃ無いのか、おっさん」ハァ
青年(まあ、良い。日の出まで……数時間、か)
青年(時間潰しと……少し情報収集でもしておくか。あの酔っ払い相手じゃ)
青年(ろくな事は聞けないかもしれないが)
11: 2014/08/15(金) 14:12:08.57 ID:be9d8fNi0
ガタガタ……パタン
マスター「待たせたな。何にする?」
青年「ビール」
マスター「あいよ……で、誰んとこに居たんだ?」
青年「……違うって」
マスター「何だ、相当入れ込んだか? ……まあ、名前を教えたく無い気持ちはわかるが」
青年「…… ……」ハァ
マスター「良いだろう、少しぐらい? 若い奴ってのはけちだなぁ……ほらよ」
青年「ありがとう……アンタはどうなんだ」
マスター「ん?」
青年「……アンタのお気に入り、は?」
マスター「何だ……交換条件ってか? ……まあ、良いだろう」ニッ
マスター「最近人気急上昇中! ……の、水使いちゃんだ!」
青年「……はぁ」
マスター「何だよ、聞いておいて……お気に入り以外興味無いってかぁ?」
青年「そういう訳じゃ無い」
マスター「良いぜぇ? あの綺麗な長い水色の髪に」
青年(……水色の髪? ……まさかな)
マスター「冷たそうな、こう……な?」
青年「な、て言われても」
マスター「何だよ、つれネェなぁ」
青年「…… ……人気なのか、その水使いってのは」ハァ
マスター「あ? ああ……人気が出たのは正直最近なんだけどな」ハァ
青年「?」
マスター「俺は随分前からひいきにしてたんだけどさ」
マスター「何でも、女が買いに来るってんでな」
青年「……女?」
マスター「まあ、世の中にはそういう趣味の奴だって居るんだろうさ。それは、良い」
マスター「良いんだが……女が買いたがる女ってのはどんなモンだってんでな」
マスター「急に会いにくくなっっちまってさ」ハァ
青年「…… ……」
マスター「待たせたな。何にする?」
青年「ビール」
マスター「あいよ……で、誰んとこに居たんだ?」
青年「……違うって」
マスター「何だ、相当入れ込んだか? ……まあ、名前を教えたく無い気持ちはわかるが」
青年「…… ……」ハァ
マスター「良いだろう、少しぐらい? 若い奴ってのはけちだなぁ……ほらよ」
青年「ありがとう……アンタはどうなんだ」
マスター「ん?」
青年「……アンタのお気に入り、は?」
マスター「何だ……交換条件ってか? ……まあ、良いだろう」ニッ
マスター「最近人気急上昇中! ……の、水使いちゃんだ!」
青年「……はぁ」
マスター「何だよ、聞いておいて……お気に入り以外興味無いってかぁ?」
青年「そういう訳じゃ無い」
マスター「良いぜぇ? あの綺麗な長い水色の髪に」
青年(……水色の髪? ……まさかな)
マスター「冷たそうな、こう……な?」
青年「な、て言われても」
マスター「何だよ、つれネェなぁ」
青年「…… ……人気なのか、その水使いってのは」ハァ
マスター「あ? ああ……人気が出たのは正直最近なんだけどな」ハァ
青年「?」
マスター「俺は随分前からひいきにしてたんだけどさ」
マスター「何でも、女が買いに来るってんでな」
青年「……女?」
マスター「まあ、世の中にはそういう趣味の奴だって居るんだろうさ。それは、良い」
マスター「良いんだが……女が買いたがる女ってのはどんなモンだってんでな」
マスター「急に会いにくくなっっちまってさ」ハァ
青年「…… ……」
12: 2014/08/15(金) 14:30:09.41 ID:be9d8fNi0
マスター「しかも、どこの金持ち女か知らネェが」
マスター「結構な頻度で長時間独占しやがるからさ……」
マスター「なかなか会えない、ッてんで余計にな」
青年「……なるほどな。で、それほどいい女なのか」
マスター「ちょっと背が高すぎる気もするが」
マスター「すらっとしててな……いい女だよ。言葉遣いも丁寧でよ」
マスター「ああ、そうだ。小姓が居ただろ?」
青年「……小姓?」
マスター「ああ。あの双子の男女だよ。茶持って来てくれる」
青年「……少年と少女の事か」
マスター「ああ、そうそう。そんな名前だったか」
マスター「あいつらの面倒も結構率先して見てんのか、あの二人もお姉さんお姉さんって」
マスター「懐いてたみたいでな……優しいよなぁ。水使いちゃん……」ハァ
青年(……もし、さっき見かけたあの女が、その水使いだとすれば)
青年(残念だな、この男……まあ、恋人と秘密の……なんて)
青年(決まった訳じゃ無いが)クス
マスター「……何笑ってんだよ。ほら、お前の番だぞ!」
青年「え……ああ。別に僕はそんなんじゃ無いと言っただろう」
マスター「まだ隠す気かよ……」
青年「本当に違うんだってば」
マスター「まあ……アンタが水使いちゃんに会ってきて、入れ込んだってんじゃ無きゃ」
マスター「良いけどな……」
青年「違うよ……水色の髪の女なんて。絶対に抱かないな」
マスター「……なんだよ。本当に可愛いんだぞ!?」ムッ
青年「その娘がどうこう、じゃ無い……母の髪の色と同じ女なんて、ってだけだ」
マスター「何だ、アンタマザコンか? ……いい歳して」クッ
青年「……放っておけ」
マスター「じゃあ、アンタの髪は父親似か…… ……ん?」
青年「何だ」
マスター「……そりゃ、始まりの国の紋章、か?」
青年「……ああ。この剣か」
マスター「あの国の生き残り……否、生き残りの息子、か」
青年「まあ……間違いじゃ無いな」
マスター「何だったか……近衛兵だったのか、アンタの父親」
青年「近衛兵はこんな剣持ってないんじゃないのか?」
マスター「ん? ……いや、良く知らネェが。でも、その剣は……」
青年「……代々伝わってきた物、かな。まだ……騎士団があった頃の」
マスター「騎士団……なんだ、古い家なんだな、アンタんとこ」
青年(嘘じゃ無い……父さんが……おじいちゃん。王子様からもらって)
青年(王子様は……金の髪の勇者から…… ……)
マスター「ご先祖様の形見、って奴か? ……しかし」
青年「まあ……そう、なるかな」
マスター「そんな細腕で剣を振るってのか!?」
青年「護身用に近いな。こんなご時世……」
マスター「結構な頻度で長時間独占しやがるからさ……」
マスター「なかなか会えない、ッてんで余計にな」
青年「……なるほどな。で、それほどいい女なのか」
マスター「ちょっと背が高すぎる気もするが」
マスター「すらっとしててな……いい女だよ。言葉遣いも丁寧でよ」
マスター「ああ、そうだ。小姓が居ただろ?」
青年「……小姓?」
マスター「ああ。あの双子の男女だよ。茶持って来てくれる」
青年「……少年と少女の事か」
マスター「ああ、そうそう。そんな名前だったか」
マスター「あいつらの面倒も結構率先して見てんのか、あの二人もお姉さんお姉さんって」
マスター「懐いてたみたいでな……優しいよなぁ。水使いちゃん……」ハァ
青年(……もし、さっき見かけたあの女が、その水使いだとすれば)
青年(残念だな、この男……まあ、恋人と秘密の……なんて)
青年(決まった訳じゃ無いが)クス
マスター「……何笑ってんだよ。ほら、お前の番だぞ!」
青年「え……ああ。別に僕はそんなんじゃ無いと言っただろう」
マスター「まだ隠す気かよ……」
青年「本当に違うんだってば」
マスター「まあ……アンタが水使いちゃんに会ってきて、入れ込んだってんじゃ無きゃ」
マスター「良いけどな……」
青年「違うよ……水色の髪の女なんて。絶対に抱かないな」
マスター「……なんだよ。本当に可愛いんだぞ!?」ムッ
青年「その娘がどうこう、じゃ無い……母の髪の色と同じ女なんて、ってだけだ」
マスター「何だ、アンタマザコンか? ……いい歳して」クッ
青年「……放っておけ」
マスター「じゃあ、アンタの髪は父親似か…… ……ん?」
青年「何だ」
マスター「……そりゃ、始まりの国の紋章、か?」
青年「……ああ。この剣か」
マスター「あの国の生き残り……否、生き残りの息子、か」
青年「まあ……間違いじゃ無いな」
マスター「何だったか……近衛兵だったのか、アンタの父親」
青年「近衛兵はこんな剣持ってないんじゃないのか?」
マスター「ん? ……いや、良く知らネェが。でも、その剣は……」
青年「……代々伝わってきた物、かな。まだ……騎士団があった頃の」
マスター「騎士団……なんだ、古い家なんだな、アンタんとこ」
青年(嘘じゃ無い……父さんが……おじいちゃん。王子様からもらって)
青年(王子様は……金の髪の勇者から…… ……)
マスター「ご先祖様の形見、って奴か? ……しかし」
青年「まあ……そう、なるかな」
マスター「そんな細腕で剣を振るってのか!?」
青年「護身用に近いな。こんなご時世……」
13: 2014/08/15(金) 14:39:08.88 ID:be9d8fNi0
青年「……ああ、そうだ」
マスター「ん?」
青年「最近……魔物が弱くなった、とか……少なくなった、とか……」
青年「そんな話は聞かないか?」
マスター「ん? ……ああ、勇者様が旅立ったんだったナァ」
マスター「どうだかな……冒険者、ってのも、ここに来るには来るが」
マスター「そんな話はまだ聞いてないな」
青年「……そうか」
マスター「こんな街のど真ん中に魔物なんか出ないしな」
マスター「それに、勇者だ魔王だって言ったって」
マスター「俺たちにゃ正直、何の実感も出来ないしなぁ……まあ、アンタは」
マスター「始まりの国の出身者の子孫、って考えりゃ、そういう話も」
マスター「聞いて育ってきたのかもしれんがな」
青年「……もう、国は無いからな…… ……ん?」
青年(子供の声……外、か?)
マスター「今日は随分早いな」
青年「……え?」
マスター「さっき言ってた小姓の二人だ。いつからかネェ……二人揃って」
マスター「早朝に散歩するようになってな」
青年「…… ……」
マスター「まあ、運動にもなるし、良いんじゃネェの。人目にもつかないしな」
青年「……早朝、って言っても、まだ日が出てないのにか」
マスター「いつもはもうちょっと遅いさ。だいたい日の出すぐぐらいだったかな?」
マスター「まあ、治安が悪い訳でもネェし。街の人間は皆、あいつらの顔ぐらいは知ってるからな」
マスター「女の子の方は特に外に出るのを嫌がってたから、良い事なんじゃネェの?」
青年「……ふぅん」
青年(いくら髪を染めたとは言え……今、外に出るとまずいな)
青年(子供二人じゃ、それほど長くも出てないだろうが)
マスター「ん?」
青年「最近……魔物が弱くなった、とか……少なくなった、とか……」
青年「そんな話は聞かないか?」
マスター「ん? ……ああ、勇者様が旅立ったんだったナァ」
マスター「どうだかな……冒険者、ってのも、ここに来るには来るが」
マスター「そんな話はまだ聞いてないな」
青年「……そうか」
マスター「こんな街のど真ん中に魔物なんか出ないしな」
マスター「それに、勇者だ魔王だって言ったって」
マスター「俺たちにゃ正直、何の実感も出来ないしなぁ……まあ、アンタは」
マスター「始まりの国の出身者の子孫、って考えりゃ、そういう話も」
マスター「聞いて育ってきたのかもしれんがな」
青年「……もう、国は無いからな…… ……ん?」
青年(子供の声……外、か?)
マスター「今日は随分早いな」
青年「……え?」
マスター「さっき言ってた小姓の二人だ。いつからかネェ……二人揃って」
マスター「早朝に散歩するようになってな」
青年「…… ……」
マスター「まあ、運動にもなるし、良いんじゃネェの。人目にもつかないしな」
青年「……早朝、って言っても、まだ日が出てないのにか」
マスター「いつもはもうちょっと遅いさ。だいたい日の出すぐぐらいだったかな?」
マスター「まあ、治安が悪い訳でもネェし。街の人間は皆、あいつらの顔ぐらいは知ってるからな」
マスター「女の子の方は特に外に出るのを嫌がってたから、良い事なんじゃネェの?」
青年「……ふぅん」
青年(いくら髪を染めたとは言え……今、外に出るとまずいな)
青年(子供二人じゃ、それほど長くも出てないだろうが)
14: 2014/08/15(金) 16:50:51.62 ID:be9d8fNi0
マスター「……で、アンタは」
青年「あ? ……ああ、何」
マスター「何しにこの街に? まさか、女を買いに来ただけじゃネェだろ?」
青年「……始まりの国にはもういけないからな」
マスター「つったって、今まであそこに居たわけじゃ無いだろう?」
青年「まあ、ね……これといって行く当ては無い……んだけどね」
マスター「流浪の旅か」
青年「そんな所」
マスター「んじゃあ、当分はこの街にいるんだろ?」
青年「……まあ、流石に今日明日に出る事は無いだろうな」
マスター「魔物だとか、魔王だとか、そんな話が聞きたいなら、また改めて」
マスター「夜に来るんだな。何人か顔見知りの……まあ、自称冒険者共なら」
マスター「紹介してやれるよ」
青年「……気が向いたら、ね」
マスター「おいおい、何だよ。つきあってやったってのに」
青年「冗談だよ……飯も食わなきゃならないしね」
マスター「……ああ、日も出たな」フワァ
青年「助かったよ……ありがとう」カタン
マスター「おう……旅の話も聞かせてくれよ」
青年「……護身用、って言っただろう? それほど話せる事も無いさ」
マスター「またそういうこと言って……ああ、お前名前は?」
青年「…… ……青年」
マスター「おう、んじゃ、またな青年。宿取れると良いな」
キィ、パタン
青年「……ああ。おやすみ」
スタスタ
青年(青年、か……しまったな)
青年(母さんみたいに、僕も新しい名前を魔王様にもらうべきだったか)
青年(……面倒なもんだ。嘘がつけない、なんて)ハァ
青年(宿……あれか…… ……ん?)クルッ
青年「!」
青年「あ? ……ああ、何」
マスター「何しにこの街に? まさか、女を買いに来ただけじゃネェだろ?」
青年「……始まりの国にはもういけないからな」
マスター「つったって、今まであそこに居たわけじゃ無いだろう?」
青年「まあ、ね……これといって行く当ては無い……んだけどね」
マスター「流浪の旅か」
青年「そんな所」
マスター「んじゃあ、当分はこの街にいるんだろ?」
青年「……まあ、流石に今日明日に出る事は無いだろうな」
マスター「魔物だとか、魔王だとか、そんな話が聞きたいなら、また改めて」
マスター「夜に来るんだな。何人か顔見知りの……まあ、自称冒険者共なら」
マスター「紹介してやれるよ」
青年「……気が向いたら、ね」
マスター「おいおい、何だよ。つきあってやったってのに」
青年「冗談だよ……飯も食わなきゃならないしね」
マスター「……ああ、日も出たな」フワァ
青年「助かったよ……ありがとう」カタン
マスター「おう……旅の話も聞かせてくれよ」
青年「……護身用、って言っただろう? それほど話せる事も無いさ」
マスター「またそういうこと言って……ああ、お前名前は?」
青年「…… ……青年」
マスター「おう、んじゃ、またな青年。宿取れると良いな」
キィ、パタン
青年「……ああ。おやすみ」
スタスタ
青年(青年、か……しまったな)
青年(母さんみたいに、僕も新しい名前を魔王様にもらうべきだったか)
青年(……面倒なもんだ。嘘がつけない、なんて)ハァ
青年(宿……あれか…… ……ん?)クルッ
青年「!」
15: 2014/08/15(金) 17:04:46.09 ID:be9d8fNi0
青年(……あれは……船!?)
タタタ……ッ
青年(糞……ッ 離れてく……こんな時間に、定期便はありえない……!)
青年(それに……あれは…… ……まさか……船長の船……!)
青年「……否ッ」
青年(決めつけるのは早計か……だが……!)
青年(こんなご時世、定期便以外で……! ……しかし……)
青年「ここで……何を……?」
青年(……待て。誰も……船長以外に、船を持っていない、と)
青年(言う、保証も無い。だが、あれは…… ……)
青年「…… ……」
青年(夜も明けた……あんまりうろうろするのも怪しまれるか)
青年(……とにかく、宿だ。後で……誰かから話を聞く事も出来るだろう)
青年(起き出してくる人……動いている人が居ないとも限らない)クルッ
スタスタスタ
……
………
…………
雷使い「はい、これ」ドサッ
館長「……? 金はもらってるけど?」
雷使い「……ちょっと間が開いちゃったからね。随分……無茶させちゃったのよ」
館長「ああ……だからって。チップなら本人にやってくれりゃ良いよ?」
館長「そこまで、搾取しないよ、うちは」
雷使い「違うわ、夜私が来るまでの……時間のお金よ」
館長「え?」
雷使い「他の客と居て、疲れさすのはいやなの……色はつけてあるわ」
館長「……あんたが戻ってくるまでの水使いの時間を買うってのかい?」
雷使い「ええ。文句は無いでしょう? ……休ませてあげたいのよ」
館長「そりゃ……金さえもらえりゃ別に構わないけどね」
雷使い「今日中に書の街に行かなきゃいけない用事があるの」
雷使い「終わり次第戻るけど……一応、夜までの分よ」
館長「…… ……」ジャラジャラ
雷使い「……足りなければ言って頂戴」
館長「否。十分過ぎるほど、だ……まあ、アンタは良い客だしね」
館長「水使いの身体を考えてくれるってのも……ありがたいこった」
雷使い「……さっき寝かせた所なのよ。そのまま、そっとしておいてあげてくれる?」
館長「ああ……わかった。起きてくるまでそっとしておくよ」
雷使い「ありがとう……今夜が楽しみだわ」クス
館長「大凡の時間はわからないのかい?」
雷使い「仕事で人と会うのよ……相手次第、なのよね」
館長「……大変だね。起きたら、水使いには伝えておくよ」
雷使い「ええ、よろしく……じゃあ、行くわ。船に遅れちゃう」
館長「昼過ぎの便で書の街へ?」
雷使い「ええ。それが一番早いって聞いたから……じゃあね」
スタスタ
館長「毎度」
カチャ、パタン
タタタ……ッ
青年(糞……ッ 離れてく……こんな時間に、定期便はありえない……!)
青年(それに……あれは…… ……まさか……船長の船……!)
青年「……否ッ」
青年(決めつけるのは早計か……だが……!)
青年(こんなご時世、定期便以外で……! ……しかし……)
青年「ここで……何を……?」
青年(……待て。誰も……船長以外に、船を持っていない、と)
青年(言う、保証も無い。だが、あれは…… ……)
青年「…… ……」
青年(夜も明けた……あんまりうろうろするのも怪しまれるか)
青年(……とにかく、宿だ。後で……誰かから話を聞く事も出来るだろう)
青年(起き出してくる人……動いている人が居ないとも限らない)クルッ
スタスタスタ
……
………
…………
雷使い「はい、これ」ドサッ
館長「……? 金はもらってるけど?」
雷使い「……ちょっと間が開いちゃったからね。随分……無茶させちゃったのよ」
館長「ああ……だからって。チップなら本人にやってくれりゃ良いよ?」
館長「そこまで、搾取しないよ、うちは」
雷使い「違うわ、夜私が来るまでの……時間のお金よ」
館長「え?」
雷使い「他の客と居て、疲れさすのはいやなの……色はつけてあるわ」
館長「……あんたが戻ってくるまでの水使いの時間を買うってのかい?」
雷使い「ええ。文句は無いでしょう? ……休ませてあげたいのよ」
館長「そりゃ……金さえもらえりゃ別に構わないけどね」
雷使い「今日中に書の街に行かなきゃいけない用事があるの」
雷使い「終わり次第戻るけど……一応、夜までの分よ」
館長「…… ……」ジャラジャラ
雷使い「……足りなければ言って頂戴」
館長「否。十分過ぎるほど、だ……まあ、アンタは良い客だしね」
館長「水使いの身体を考えてくれるってのも……ありがたいこった」
雷使い「……さっき寝かせた所なのよ。そのまま、そっとしておいてあげてくれる?」
館長「ああ……わかった。起きてくるまでそっとしておくよ」
雷使い「ありがとう……今夜が楽しみだわ」クス
館長「大凡の時間はわからないのかい?」
雷使い「仕事で人と会うのよ……相手次第、なのよね」
館長「……大変だね。起きたら、水使いには伝えておくよ」
雷使い「ええ、よろしく……じゃあ、行くわ。船に遅れちゃう」
館長「昼過ぎの便で書の街へ?」
雷使い「ええ。それが一番早いって聞いたから……じゃあね」
スタスタ
館長「毎度」
カチャ、パタン
16: 2014/08/15(金) 17:23:38.40 ID:be9d8fNi0
老婆「…… ……」
館長「……アンタは随分と人形の振りがうまくなったね」
老婆「嫌味は結構だ……あたしゃ、あの女はどうも……」
館長「苦手なのも結構、だ……だが」
館長「一応、客なんだ。しかも、超のつく上客だ……愛想笑いぐらいしなさいな」
老婆「そういうのを求めるタイプじゃ無いだろう……」ハァ
館長「金払いも良いし、良いじゃ無いか……何が不満だってんだい」
老婆「女が女を、なんて……そんな事を言うつもりは毛頭無いけどね」
老婆「……なんと無く、だよ。腹の底が見えないと言うか」
館長「考えすぎさ……さて、と」
老婆「? どこに行くんだい」
館長「定期便を見に行くのさ……あの女が本当に書の街に行くのか、ね」
老婆「……アンタ、人の事言えないね」ハァ
館長「何、念には念を入れて……ってだけだ。もし嘘だったら」
館長「大急ぎで水使いを起こしにいっとくれ」
老婆「……金はもらってるんだろう!?」
館長「とんずらこくならわかりゃしないさ……言い訳も立つだろ?」
老婆「まったく……腹黒いんだから」ハァ
館長「用心深いと言っとくれ……じゃあ、後はよろしくね」
スタスタ……
老婆「ああ……」
館長「少女と少年が来たら、そこのメモを渡しておくれ」
館長「今日の買い出しと、予約の人数書いてあるから」
パタン
老婆「……やれやれ」ハァ
老婆(あの二人の早朝散歩も良く続くね。毎日毎日……)
老婆(……あの子達の仕事の時間まで、もう少しあるね)
老婆(メモ……これか。先に朝食を済ますか)
スタスタ
……
………
…………
館長「……アンタは随分と人形の振りがうまくなったね」
老婆「嫌味は結構だ……あたしゃ、あの女はどうも……」
館長「苦手なのも結構、だ……だが」
館長「一応、客なんだ。しかも、超のつく上客だ……愛想笑いぐらいしなさいな」
老婆「そういうのを求めるタイプじゃ無いだろう……」ハァ
館長「金払いも良いし、良いじゃ無いか……何が不満だってんだい」
老婆「女が女を、なんて……そんな事を言うつもりは毛頭無いけどね」
老婆「……なんと無く、だよ。腹の底が見えないと言うか」
館長「考えすぎさ……さて、と」
老婆「? どこに行くんだい」
館長「定期便を見に行くのさ……あの女が本当に書の街に行くのか、ね」
老婆「……アンタ、人の事言えないね」ハァ
館長「何、念には念を入れて……ってだけだ。もし嘘だったら」
館長「大急ぎで水使いを起こしにいっとくれ」
老婆「……金はもらってるんだろう!?」
館長「とんずらこくならわかりゃしないさ……言い訳も立つだろ?」
老婆「まったく……腹黒いんだから」ハァ
館長「用心深いと言っとくれ……じゃあ、後はよろしくね」
スタスタ……
老婆「ああ……」
館長「少女と少年が来たら、そこのメモを渡しておくれ」
館長「今日の買い出しと、予約の人数書いてあるから」
パタン
老婆「……やれやれ」ハァ
老婆(あの二人の早朝散歩も良く続くね。毎日毎日……)
老婆(……あの子達の仕事の時間まで、もう少しあるね)
老婆(メモ……これか。先に朝食を済ますか)
スタスタ
……
………
…………
17: 2014/08/15(金) 17:57:50.97 ID:be9d8fNi0
雷使い「んー! ……潮風って、気持ち良いわね」
船員「出航しますよ? お客さん、中に……」
雷使い「ここに居ちゃ駄目かしら?」
船員「良いですけど……揺れますよ?」
雷使い「見ておきたいのよ、この景色をね」チラ
雷使い(あの館長の事だから……見張りをよこして無いとも限らないしね)
船員「気をつけてくださいよ? ……よし、出航!」
ボォオオオオ…… ……!
雷使い(書の街まではすぐだわ……船長の船に乗るまでに買い物を済ませて……)
雷使い(……長かった……でも、これで……!)
雷使い(もう少し……もう少しです、母親様、秘書様)
雷使い(少女の子ではありますが、現存する中で……一番、貴女に近い血の子達)
雷使い(そして、双子。必ず……魔導国を、復興させてみせる……!)
雷使い(……港街が離れていく。書の街に近づいていく)
雷使い(書の街……忌々しいけれど、仕方ない。そんな名で呼びたくは無いが)
雷使い(いいえ……場所なんてどこでも良い。私達が居る場所……そこが)
雷使い(新しい、『魔導国』となるのよ……!!)
青年(やはり……朝見た船は定期便じゃ無い)
青年(今出航したのは……書の街行き、だったか)
青年(……船長、だったのか。否、しかし…… ……ん?)チラ
青年(! ……あれは、娼館の館長……!)サッ
女性「乗ってらっしゃいましたよ。甲板にいました」
館長「そうかい……やれやれ、仕方ない。水使いは夜まで寝かしておいておやり」
青年(……水使い。水色の髪の……あの女か)
女性「はい……ああ、眠たい。アタシも戻って良いですかぁ?」
館長「ああ、悪かったね起こしちまって。今日もよろしく頼むよ」
女性「はぁい……ああ、そうだ。少年と少女に、あのいつものおっさん来たら」
女性「果実酒忘れないでって言っておいてくださいよ」
館長「ん? ……ああ、客の注文はメモに書いて渡す様にしてるだろう?」
女性「あの二人、最近ぼーっとしてんだか……忘れっぽいんですよねぇ」
女性「朝、散歩に行くのが運動になるんだかなんだか知らないけど」
女性「睡眠足りてないんじゃないんですかぁ?」
館長「……おやおや。最近ちらほらあの二人のミスを聞くね。否、ミスって程じゃないが」
館長「まあ、良いだろう。戻ったら注意しておくよ」
女性「頼みますぅ……じゃあ、私ご飯食べに行ってきますねー」
館長「ああお待ち……ほら、これ」チャリン
女性「わ! ……良いんですか?」
館長「無理言ってつきあわせたからね。良いモン食べて、精をつけてきておくれ」
女性「ラッキー……ありがとうございます、館長。それじゃ」
スタスタ、スタ、スタ
青年(……二人とも、行ったか)フゥ
青年(しかし……どうにも何か……引っかかるな)
青年(僕には関係無い……話、だが)
青年(……昼を食べに、か……行ってみるか)
スタスタ
船員「出航しますよ? お客さん、中に……」
雷使い「ここに居ちゃ駄目かしら?」
船員「良いですけど……揺れますよ?」
雷使い「見ておきたいのよ、この景色をね」チラ
雷使い(あの館長の事だから……見張りをよこして無いとも限らないしね)
船員「気をつけてくださいよ? ……よし、出航!」
ボォオオオオ…… ……!
雷使い(書の街まではすぐだわ……船長の船に乗るまでに買い物を済ませて……)
雷使い(……長かった……でも、これで……!)
雷使い(もう少し……もう少しです、母親様、秘書様)
雷使い(少女の子ではありますが、現存する中で……一番、貴女に近い血の子達)
雷使い(そして、双子。必ず……魔導国を、復興させてみせる……!)
雷使い(……港街が離れていく。書の街に近づいていく)
雷使い(書の街……忌々しいけれど、仕方ない。そんな名で呼びたくは無いが)
雷使い(いいえ……場所なんてどこでも良い。私達が居る場所……そこが)
雷使い(新しい、『魔導国』となるのよ……!!)
青年(やはり……朝見た船は定期便じゃ無い)
青年(今出航したのは……書の街行き、だったか)
青年(……船長、だったのか。否、しかし…… ……ん?)チラ
青年(! ……あれは、娼館の館長……!)サッ
女性「乗ってらっしゃいましたよ。甲板にいました」
館長「そうかい……やれやれ、仕方ない。水使いは夜まで寝かしておいておやり」
青年(……水使い。水色の髪の……あの女か)
女性「はい……ああ、眠たい。アタシも戻って良いですかぁ?」
館長「ああ、悪かったね起こしちまって。今日もよろしく頼むよ」
女性「はぁい……ああ、そうだ。少年と少女に、あのいつものおっさん来たら」
女性「果実酒忘れないでって言っておいてくださいよ」
館長「ん? ……ああ、客の注文はメモに書いて渡す様にしてるだろう?」
女性「あの二人、最近ぼーっとしてんだか……忘れっぽいんですよねぇ」
女性「朝、散歩に行くのが運動になるんだかなんだか知らないけど」
女性「睡眠足りてないんじゃないんですかぁ?」
館長「……おやおや。最近ちらほらあの二人のミスを聞くね。否、ミスって程じゃないが」
館長「まあ、良いだろう。戻ったら注意しておくよ」
女性「頼みますぅ……じゃあ、私ご飯食べに行ってきますねー」
館長「ああお待ち……ほら、これ」チャリン
女性「わ! ……良いんですか?」
館長「無理言ってつきあわせたからね。良いモン食べて、精をつけてきておくれ」
女性「ラッキー……ありがとうございます、館長。それじゃ」
スタスタ、スタ、スタ
青年(……二人とも、行ったか)フゥ
青年(しかし……どうにも何か……引っかかるな)
青年(僕には関係無い……話、だが)
青年(……昼を食べに、か……行ってみるか)
スタスタ
18: 2014/08/15(金) 18:17:27.56 ID:be9d8fNi0
青年(……あの女性が入ったのはここか)
キィ
イラッシャイマセー!
青年(さっきの……ああ、アレか。顔を見られない様に……後ろの席にするか)ストン
女性「わあ、美味しそう……いっただきまぁす」
店員「何だ、今日は随分昼から豪勢だね……特別な客でも来るの?」
女性「ううん、そう言うんじゃ無いよ。何かさぁ、館長に呼ばれて……」
女性「……っと、内容は秘密だった。まあ、お使いみたいなもんかな~」
女性「おつきあいしたらね。お小遣いもらっちゃってね」
店員「へぇ……ラッキーだね」
女性「まあねぇ……最近水使いちゃんに追い上げられてたからさぁ」
女性「まあ、ガンバレって言いたいってのもあるんじゃないの~?」
店員「俺はあんな辛気くさそうなのより、女性ちゃんのが良いけどなー」
女性「そんな事言ってぇ。アンタなっかなか来てくれないじゃない!」
店員「いや、だってさぁ……高いんだもん……」
女性「そりゃそうよ! ……まだ、ナンバーワンなんだから」
店員「まだ、って……」
女性「……あの女の客がいるからねぇ、水使いちゃんには」ハァ
店員「今だけだって。すぐ飽きるよ……実力じゃ無いならさ」
女性「……ほめたって、プライベートでデートなんかしないわよ」
店員「……ちぇ」
クスクス、クスクス……
青年(聞いてて気分のいい話、じゃ無いが)ハァ
青年(……思い過ごしか? ……昨日見たあの女は、水使いじゃ無い……?)
青年(話を統合すると、水使いは今……娼館で寝ている……否)
青年(戻ったのを見たわけじゃ無い……しかし……)
バタン!
青年「……ッ !?」
店員「老婆さんじゃないですか……どうしてんです、そんな急い……」
老婆「やっぱここだったか……急いで戻りな!」
女性「え、え!?」
老婆「……少女と少年が居ないんだ、どこにもね!」
女性「ええ……? 出かけてるんじゃないんですかぁ?」
老婆「……気にかかる事があるんだよ! 館長は!?」
女性「え……さ、先に戻ったと思いますけど……?」
老婆「とにかく、少年と少女を探しておくれ……館長にも伝えるんだ!」
老婆「アタシの思い過ごしなら良いが……!」
バタン! バタバタバタ……!
女性「な……なんなの……?」
店員「……居ない、ったって……なあ。あの二人は客を取ってないんだろ?」
女性「そうなんだけど……仕事の時間は守ってたからなぁ……どうしたんだろう」
女性「……まあ、逆らっても後で雷落ちるだけだし、戻るわぁ。ごちそう様」
店員「ええ、もう行っちゃうの?」
女性「そんなに私にあいたかったら、店に来てよね……じゃあね、ごちそう様」
スタスタ、パタン
キィ
イラッシャイマセー!
青年(さっきの……ああ、アレか。顔を見られない様に……後ろの席にするか)ストン
女性「わあ、美味しそう……いっただきまぁす」
店員「何だ、今日は随分昼から豪勢だね……特別な客でも来るの?」
女性「ううん、そう言うんじゃ無いよ。何かさぁ、館長に呼ばれて……」
女性「……っと、内容は秘密だった。まあ、お使いみたいなもんかな~」
女性「おつきあいしたらね。お小遣いもらっちゃってね」
店員「へぇ……ラッキーだね」
女性「まあねぇ……最近水使いちゃんに追い上げられてたからさぁ」
女性「まあ、ガンバレって言いたいってのもあるんじゃないの~?」
店員「俺はあんな辛気くさそうなのより、女性ちゃんのが良いけどなー」
女性「そんな事言ってぇ。アンタなっかなか来てくれないじゃない!」
店員「いや、だってさぁ……高いんだもん……」
女性「そりゃそうよ! ……まだ、ナンバーワンなんだから」
店員「まだ、って……」
女性「……あの女の客がいるからねぇ、水使いちゃんには」ハァ
店員「今だけだって。すぐ飽きるよ……実力じゃ無いならさ」
女性「……ほめたって、プライベートでデートなんかしないわよ」
店員「……ちぇ」
クスクス、クスクス……
青年(聞いてて気分のいい話、じゃ無いが)ハァ
青年(……思い過ごしか? ……昨日見たあの女は、水使いじゃ無い……?)
青年(話を統合すると、水使いは今……娼館で寝ている……否)
青年(戻ったのを見たわけじゃ無い……しかし……)
バタン!
青年「……ッ !?」
店員「老婆さんじゃないですか……どうしてんです、そんな急い……」
老婆「やっぱここだったか……急いで戻りな!」
女性「え、え!?」
老婆「……少女と少年が居ないんだ、どこにもね!」
女性「ええ……? 出かけてるんじゃないんですかぁ?」
老婆「……気にかかる事があるんだよ! 館長は!?」
女性「え……さ、先に戻ったと思いますけど……?」
老婆「とにかく、少年と少女を探しておくれ……館長にも伝えるんだ!」
老婆「アタシの思い過ごしなら良いが……!」
バタン! バタバタバタ……!
女性「な……なんなの……?」
店員「……居ない、ったって……なあ。あの二人は客を取ってないんだろ?」
女性「そうなんだけど……仕事の時間は守ってたからなぁ……どうしたんだろう」
女性「……まあ、逆らっても後で雷落ちるだけだし、戻るわぁ。ごちそう様」
店員「ええ、もう行っちゃうの?」
女性「そんなに私にあいたかったら、店に来てよね……じゃあね、ごちそう様」
スタスタ、パタン
19: 2014/08/15(金) 18:18:29.96 ID:be9d8fNi0
青年(…… ……)
店員「ああ、お客さん……煩くてすみません」
青年「いや……僕も行くよ。ごちそう様」
店員「あ、ありがとうございますー」
スタスタ、パタン
青年(……全貌が見えないとどうにも、判断しようが無いが)
青年(嫌な予感がする……な……しかし)
青年(まさか、のこのこと出て行くわけにも……)
店員「ああ、お客さん……煩くてすみません」
青年「いや……僕も行くよ。ごちそう様」
店員「あ、ありがとうございますー」
スタスタ、パタン
青年(……全貌が見えないとどうにも、判断しようが無いが)
青年(嫌な予感がする……な……しかし)
青年(まさか、のこのこと出て行くわけにも……)
20: 2014/08/15(金) 18:20:03.14 ID:be9d8fNi0
中途半端で失礼 orz
お風呂とご飯でございます。
明日明後日は幼女とらんでぶーですので
来られないと思います……
お風呂とご飯でございます。
明日明後日は幼女とらんでぶーですので
来られないと思います……
28: 2014/08/16(土) 11:34:35.33 ID:FopVfWhb0
おはよう!
おでかけるまで少しだけ。
スコーンは焼酎よりバーボンが好きなんだ(`・ω・´)
でもラムの方がもっと好きです
おでかけるまで少しだけ。
スコーンは焼酎よりバーボンが好きなんだ(`・ω・´)
でもラムの方がもっと好きです
29: 2014/08/16(土) 11:43:22.29 ID:FopVfWhb0
青年「…… ……」
青年(動き回って目立つのもな……一度宿に戻るか)
青年(……何かを突き止めたからと行って、僕に何か出来るわけでも無い)
青年(あの双子に関わるのは……避けた方が良い)
スタスタ
女性「探せ、ってったってなぁ……」
女性「子供の行きそうな所なんて、わかんないわよぅ……あ」
女性「館長さぁん!」
タタタ……
館長「おや、どうしたの……飯食いに行ったんじゃ無いのかい」
女性「老婆さんが急いで戻れって言うんですもん」
館長「老婆が?」
女性「少年と少女が居ないって。探して来いって言われたんですけどね」
館長「…… ……」
女性「で、館長さんにも伝えろって」
館長(……あの子達の仕事の時間は……確かに、過ぎてるね)
館長「老婆はどこに?」
女性「思い過ごしがどうのとか言って、走って言っちゃったんですよ」
女性「あ、でも戻れとか言ってたから、娼館かな?」
館長「……アタシは新館の方へ行く。アンタは本館の方に行ってくれるかい」
女性「え? あ、はい……」
館長「もし老婆が居なければ、そのまま仕事の準備にかかりな。もうすぐ客がくるだろう」
館長「居たら、新館の方に……水使いの部屋へ行くようにいっておくれ」
女性「? わかりましたぁ……」
館長「万一、あの二人が戻らなかった事を考えて……ああ、そうだ」
館長「昨日の新入り、居ただろう。あの子に……茶の用意をさせな」
女性「ええ!? 私が教えるのぉ!?」
館長「とりあえず今日の所は、だ……わかったね」
女性「はぁい……」
スタスタ
館長(……老婆の思い過ごしだか、なんだか知らないけど……それが)
館長(当たっていなければ笑い話になるんだがね……)
スタスタ
青年(動き回って目立つのもな……一度宿に戻るか)
青年(……何かを突き止めたからと行って、僕に何か出来るわけでも無い)
青年(あの双子に関わるのは……避けた方が良い)
スタスタ
女性「探せ、ってったってなぁ……」
女性「子供の行きそうな所なんて、わかんないわよぅ……あ」
女性「館長さぁん!」
タタタ……
館長「おや、どうしたの……飯食いに行ったんじゃ無いのかい」
女性「老婆さんが急いで戻れって言うんですもん」
館長「老婆が?」
女性「少年と少女が居ないって。探して来いって言われたんですけどね」
館長「…… ……」
女性「で、館長さんにも伝えろって」
館長(……あの子達の仕事の時間は……確かに、過ぎてるね)
館長「老婆はどこに?」
女性「思い過ごしがどうのとか言って、走って言っちゃったんですよ」
女性「あ、でも戻れとか言ってたから、娼館かな?」
館長「……アタシは新館の方へ行く。アンタは本館の方に行ってくれるかい」
女性「え? あ、はい……」
館長「もし老婆が居なければ、そのまま仕事の準備にかかりな。もうすぐ客がくるだろう」
館長「居たら、新館の方に……水使いの部屋へ行くようにいっておくれ」
女性「? わかりましたぁ……」
館長「万一、あの二人が戻らなかった事を考えて……ああ、そうだ」
館長「昨日の新入り、居ただろう。あの子に……茶の用意をさせな」
女性「ええ!? 私が教えるのぉ!?」
館長「とりあえず今日の所は、だ……わかったね」
女性「はぁい……」
スタスタ
館長(……老婆の思い過ごしだか、なんだか知らないけど……それが)
館長(当たっていなければ笑い話になるんだがね……)
スタスタ
30: 2014/08/16(土) 11:57:29.17 ID:FopVfWhb0
館長(…… ……)
老婆「館長!」
タタタ……
老婆「…… ……」ハァ、ハァ
館長「無茶すんじゃ無いよ。老骨に鞭打つほどの事じゃあるまい」
老婆「本館の少年と少女の部屋はそのままだったよ……」
老婆「何処かで道草食ってるだけ、だったら良いが……」
館長「……水使いの部屋に行くよ」
老婆「あ? ああ……良いのかい。起こすなと」
館長「非常事態だと騒ぎ回ってるのはアンタの方だろうに……ほら、行くよ」
カチャ……スタスタ
娼館の女「あれ、館長さん。老婆さんまで」
館長「ああ……水使いを見たかい?」
娼館の女「水使いお姉さん? ……いいえ。あの、女性のお客さんが出て行かれたのは」
娼館の女「見ましたけど」
館長「……あの女だけだね?」
娼館の女「ええ」
老婆「…… ……」
館長「開けとくれ」
カチャ
老婆「……? 布団の中に誰か……居るね」ホッ
老婆「あのガキ共……何処かで道草を……」
館長「待ちな」
スタスタ……ガバッ
館長「!」
老婆「毛布……!」
館長「…… ……」
老婆「本当に、出てきたのは雷使いだけだったんだね!?」
娼館の女「え、ええ……そうです……」オロ
館長「落ち着きな……すまないね、騒がせた」
館長「ほら、アンタも仕事の準備にかかりな……何でも無いから」
娼館の女「……は、い」
スタスタ
老婆「……口に戸は立てられないよ」
館長「仕方ないさ……部屋の中を見な。何か無くなっている物は無いか」
ガサゴソ、ガサゴソ
館長(……特にこれといって、何かを持ち出した訳でもなさそうだね)
館長(元々物持ちじゃ無い子だった、が……)
老婆「……だ、から言ったんだ! あの雷使いって女は何か怪しいって……!」
館長「大きな声を出すでないよ……ここに居ても仕方ない。戻るよ」
老婆「館長……!」
館長「少年の少女が戻るとしたら本館の方だろう」
館長「……雷使いを追いかけようにも、書の街行きの定期便も」
館長「夕方までは来ない」
老婆「館長!」
タタタ……
老婆「…… ……」ハァ、ハァ
館長「無茶すんじゃ無いよ。老骨に鞭打つほどの事じゃあるまい」
老婆「本館の少年と少女の部屋はそのままだったよ……」
老婆「何処かで道草食ってるだけ、だったら良いが……」
館長「……水使いの部屋に行くよ」
老婆「あ? ああ……良いのかい。起こすなと」
館長「非常事態だと騒ぎ回ってるのはアンタの方だろうに……ほら、行くよ」
カチャ……スタスタ
娼館の女「あれ、館長さん。老婆さんまで」
館長「ああ……水使いを見たかい?」
娼館の女「水使いお姉さん? ……いいえ。あの、女性のお客さんが出て行かれたのは」
娼館の女「見ましたけど」
館長「……あの女だけだね?」
娼館の女「ええ」
老婆「…… ……」
館長「開けとくれ」
カチャ
老婆「……? 布団の中に誰か……居るね」ホッ
老婆「あのガキ共……何処かで道草を……」
館長「待ちな」
スタスタ……ガバッ
館長「!」
老婆「毛布……!」
館長「…… ……」
老婆「本当に、出てきたのは雷使いだけだったんだね!?」
娼館の女「え、ええ……そうです……」オロ
館長「落ち着きな……すまないね、騒がせた」
館長「ほら、アンタも仕事の準備にかかりな……何でも無いから」
娼館の女「……は、い」
スタスタ
老婆「……口に戸は立てられないよ」
館長「仕方ないさ……部屋の中を見な。何か無くなっている物は無いか」
ガサゴソ、ガサゴソ
館長(……特にこれといって、何かを持ち出した訳でもなさそうだね)
館長(元々物持ちじゃ無い子だった、が……)
老婆「……だ、から言ったんだ! あの雷使いって女は何か怪しいって……!」
館長「大きな声を出すでないよ……ここに居ても仕方ない。戻るよ」
老婆「館長……!」
館長「少年の少女が戻るとしたら本館の方だろう」
館長「……雷使いを追いかけようにも、書の街行きの定期便も」
館長「夕方までは来ない」
31: 2014/08/16(土) 12:08:02.95 ID:FopVfWhb0
老婆「……痛いね。あの子達が戻らないとなれば」ハァ
館長「…… ……」
老婆「ああ、もったいない……あの双子は、良い金になっただろうに……」ブツブツ
館長(馬鹿だね……ちゃんと話していけば良い物を)
館長(……雷使いと、水使い……あの二人について……おそらくは、そそのかされて)
館長(行ってしまった、んだろうが……酷い目に遭わされていなけりゃ良いがね)
……
………
…………
雷使い「さて、買い物も済んだし…… ……」チラ
雷使い「…… ……」ニッ
雷使い(定期便の後ろにいるあの船ね……約束した時間より早い、けど)
雷使い(まあ、流石……と行ったところかしらね……あら)
スタスタ
雷使い「貴方直々のお出迎え? ……早く船を出してくれる方がありがたいんだけど」
船長「俺じゃネェと舵を握れない訳じゃネェ……確実に拾う方が重要だろ」
雷使い「皆の様子はどう?」
船長「……子供ってのは好奇心旺盛だな。恐れる気配が無いのは楽だが」
雷使い「私から見れば貴方だってまだまだ子供よ」
船長「今は大人しく部屋にいる」
雷使い「水使いは?」
船長「随分体調が悪そうだったが……今は起きてるみたいだ」
雷使い「……そう。今日はゆっくりさせるしかないわね」
雷使い(どうせ双子も一緒に居る事だしね)
船長「で……ここからはどこに向かうんだ」
雷使い「北の街よ」
船長「……北の街?」
雷使い「ええ。街から少し奥に入ったところ……確か、滝があったはずよ」
船長「待て待て。そんな奥まった所まであの船じゃ入れネェぞ」
雷使い「わかってるわよ……その滝を目印に進んで欲しいの」
雷使い「後は……歩いて行くわ」
船長「……は!?」
雷使い「余計な詮索はしないんでしょ」
船長「…… ……あいよ。とにかk乗れ。すぐに離れるんだろう」
雷使い「ええ。皆の所へ案内して頂戴」
館長「…… ……」
老婆「ああ、もったいない……あの双子は、良い金になっただろうに……」ブツブツ
館長(馬鹿だね……ちゃんと話していけば良い物を)
館長(……雷使いと、水使い……あの二人について……おそらくは、そそのかされて)
館長(行ってしまった、んだろうが……酷い目に遭わされていなけりゃ良いがね)
……
………
…………
雷使い「さて、買い物も済んだし…… ……」チラ
雷使い「…… ……」ニッ
雷使い(定期便の後ろにいるあの船ね……約束した時間より早い、けど)
雷使い(まあ、流石……と行ったところかしらね……あら)
スタスタ
雷使い「貴方直々のお出迎え? ……早く船を出してくれる方がありがたいんだけど」
船長「俺じゃネェと舵を握れない訳じゃネェ……確実に拾う方が重要だろ」
雷使い「皆の様子はどう?」
船長「……子供ってのは好奇心旺盛だな。恐れる気配が無いのは楽だが」
雷使い「私から見れば貴方だってまだまだ子供よ」
船長「今は大人しく部屋にいる」
雷使い「水使いは?」
船長「随分体調が悪そうだったが……今は起きてるみたいだ」
雷使い「……そう。今日はゆっくりさせるしかないわね」
雷使い(どうせ双子も一緒に居る事だしね)
船長「で……ここからはどこに向かうんだ」
雷使い「北の街よ」
船長「……北の街?」
雷使い「ええ。街から少し奥に入ったところ……確か、滝があったはずよ」
船長「待て待て。そんな奥まった所まであの船じゃ入れネェぞ」
雷使い「わかってるわよ……その滝を目印に進んで欲しいの」
雷使い「後は……歩いて行くわ」
船長「……は!?」
雷使い「余計な詮索はしないんでしょ」
船長「…… ……あいよ。とにかk乗れ。すぐに離れるんだろう」
雷使い「ええ。皆の所へ案内して頂戴」
78: 2014/08/24(日) 10:51:46.61 ID:EFzrqmJA0
船長「ああ……しかし、随分重そうだな。荷物持ってやろうか?」
雷使い「優しいわね……でも良いわ、ありがとう」クス
船長「足下気をつけろよ」
雷使い「ええ」
スタスタ
雷使い「北の街までどれぐらいかかるかしら」
船長「すんなり行ったら……まあ、半年って所か」
雷使い「そんなに? ……まあ、急ぐわけじゃ無いから良いけど」
船長「あの海域には厄介な人魚が出るんだ。まあ……今は魔物が弱ってるから」
船長「何とかなるとは思いたいが……それ以外にも、北へ向かうにつれ魔物は強くなる」
雷使い「戦闘は任せてもらって結構よ……でも、弱くなってるってどういうこと?」
船長「さあな。でも今までもこういうことが何度かあったって聞いてるぜ」
船長「……勇者が、魔王を倒したとか?」
雷使い「勇者……ね。まあ、良いわ。子供達も連れているし」
雷使い「でも、人魚なんて初めて聞いたけど」
船長「人魚は……美しい声で魔詩を奏でる。それを聞いた人間は」
船長「…… ……魅了されて、正気を失い……食われるんだよ」
雷使い「ふうん」
船長「随分自信がある様だが、あれは耳を塞いでやり過ごすしか無いんだ」
船長「侮るなよ……俺の母さんも、じいちゃんもあれにやられてる」
雷使い「……肝に銘じるわ」
雷使い(勇者、に魔王ね……確か、少年と少女が一度会ったとか言ってたわね)
雷使い(金の瞳の少女……魔王を倒してくれて、世界が平和に向かっていると言うのなら)
雷使い(それはそれで……双子の訓練にはもってこいだわ)
雷使い(人魚、は覚えておくとして……まあ)
雷使い(私の魔法があれば大丈夫だろうけど……あ)
船長「こっちだ……あの突き当たりの部屋」
雷使い「ええ。覚えてるわ。以前見せてもらったしね」
船長「ここで良いわ。早く船を出して頂戴」
船長「……あいよ」
スタスタ
雷使い(さて……)
コンコン
雷使い「優しいわね……でも良いわ、ありがとう」クス
船長「足下気をつけろよ」
雷使い「ええ」
スタスタ
雷使い「北の街までどれぐらいかかるかしら」
船長「すんなり行ったら……まあ、半年って所か」
雷使い「そんなに? ……まあ、急ぐわけじゃ無いから良いけど」
船長「あの海域には厄介な人魚が出るんだ。まあ……今は魔物が弱ってるから」
船長「何とかなるとは思いたいが……それ以外にも、北へ向かうにつれ魔物は強くなる」
雷使い「戦闘は任せてもらって結構よ……でも、弱くなってるってどういうこと?」
船長「さあな。でも今までもこういうことが何度かあったって聞いてるぜ」
船長「……勇者が、魔王を倒したとか?」
雷使い「勇者……ね。まあ、良いわ。子供達も連れているし」
雷使い「でも、人魚なんて初めて聞いたけど」
船長「人魚は……美しい声で魔詩を奏でる。それを聞いた人間は」
船長「…… ……魅了されて、正気を失い……食われるんだよ」
雷使い「ふうん」
船長「随分自信がある様だが、あれは耳を塞いでやり過ごすしか無いんだ」
船長「侮るなよ……俺の母さんも、じいちゃんもあれにやられてる」
雷使い「……肝に銘じるわ」
雷使い(勇者、に魔王ね……確か、少年と少女が一度会ったとか言ってたわね)
雷使い(金の瞳の少女……魔王を倒してくれて、世界が平和に向かっていると言うのなら)
雷使い(それはそれで……双子の訓練にはもってこいだわ)
雷使い(人魚、は覚えておくとして……まあ)
雷使い(私の魔法があれば大丈夫だろうけど……あ)
船長「こっちだ……あの突き当たりの部屋」
雷使い「ええ。覚えてるわ。以前見せてもらったしね」
船長「ここで良いわ。早く船を出して頂戴」
船長「……あいよ」
スタスタ
雷使い(さて……)
コンコン
79: 2014/08/24(日) 11:10:29.46 ID:EFzrqmJA0
水使い「はい?」
雷使い「私よ」
カチャ
少年「雷使いさん!」
少女「あ……おかえりなさい」
雷使い「……はい、ただいま」ニコ
水使い「問題なく……合流できましたね」
雷使い「そうね……はい、これお土産」ドサ
少女「? ……見ても良いんですか」
雷使い「ええ。勿論」
少年「……本…… ……魔導書?」
少女「! ……す、ごい……!」
水使い「…… ……」
雷使い「目的地までは結構かかるわ。ずっと船の中じゃ退屈でしょう」
少女「……でも、全部……魔法関係の本ばっかり」
雷使い「貴女達、本を読むの好きでしょう?」
少年「そうだけど……」
雷使い「大丈夫よ。貴方達ならすぐに強くなれるわ」
少女「強く……?」
水使い「雷使い」
雷使い「……そう焦らないの。ちゃんと説明するわよ」
水使い「…… ……」
少年「強く……って?」
雷使い「今から行くところはね、北の街方面よ」
少女「北の街……?」
雷使い「そう。港街から……そうね。随分遠い。すぐ側には」
雷使い「最果ての地がある」
少年「……最、果て?」
雷使い「魔物達の住む地。その奥には魔王の城があると言われてる」
少女「!」
少年「……魔王」
雷使い「貴方達、一度会ったんでしょう? 菌の瞳の可愛い勇者様に」
少女(勇者様が向かった場所……! じゃあ、あの金の髪の男の人も……!)
雷使い「勿論、私達が魔王を倒しに行くわけでも、参戦しに行くわけでも無いけどね」
少年「で、でも、魔王の城の側なら魔物とかも強いんじゃないのか!?」
少年「そんな危険なところに……!」
雷使い「魔王の所に行くわけじゃ無いって言ったでしょ?」
雷使い「でも、私達……貴方達は。港街の側にいるわけには行かないでしょう」
少年「そ……そうだけど……」
雷使い「幸い、海の魔物は雷の魔法に弱いの。貴方達は……」
少女「……茶の瞳、だから、雷の加護を受けてる」
少年「少女!?」
雷使い「そう。前に少しお話ししてあげたでしょ」
少年「お……俺たちが戦うのか!?」
雷使い「勿論、この船は戦闘用の砲台なんかもあるし、私もいるわ」
雷使い「……でも、北の街に着けば私一人じゃ四人を守りきる事は不可能かもしれない」
少年「み、水使いがいるじゃないか!」
水使い「私は回復魔法しか使えないんです」
少女「え?」
水使い「加護によって、得手不得手があるのですよ。私は……戦闘には向きません」
雷使い「でも、回復って言うのは絶対に不可欠な物でしょう?」
少年「……だ、だったら、何で、わざわざそんな……!」
雷使い「さっきも言ったわよ。見つからない様な場所へ行く必要がある」
雷使い「私よ」
カチャ
少年「雷使いさん!」
少女「あ……おかえりなさい」
雷使い「……はい、ただいま」ニコ
水使い「問題なく……合流できましたね」
雷使い「そうね……はい、これお土産」ドサ
少女「? ……見ても良いんですか」
雷使い「ええ。勿論」
少年「……本…… ……魔導書?」
少女「! ……す、ごい……!」
水使い「…… ……」
雷使い「目的地までは結構かかるわ。ずっと船の中じゃ退屈でしょう」
少女「……でも、全部……魔法関係の本ばっかり」
雷使い「貴女達、本を読むの好きでしょう?」
少年「そうだけど……」
雷使い「大丈夫よ。貴方達ならすぐに強くなれるわ」
少女「強く……?」
水使い「雷使い」
雷使い「……そう焦らないの。ちゃんと説明するわよ」
水使い「…… ……」
少年「強く……って?」
雷使い「今から行くところはね、北の街方面よ」
少女「北の街……?」
雷使い「そう。港街から……そうね。随分遠い。すぐ側には」
雷使い「最果ての地がある」
少年「……最、果て?」
雷使い「魔物達の住む地。その奥には魔王の城があると言われてる」
少女「!」
少年「……魔王」
雷使い「貴方達、一度会ったんでしょう? 菌の瞳の可愛い勇者様に」
少女(勇者様が向かった場所……! じゃあ、あの金の髪の男の人も……!)
雷使い「勿論、私達が魔王を倒しに行くわけでも、参戦しに行くわけでも無いけどね」
少年「で、でも、魔王の城の側なら魔物とかも強いんじゃないのか!?」
少年「そんな危険なところに……!」
雷使い「魔王の所に行くわけじゃ無いって言ったでしょ?」
雷使い「でも、私達……貴方達は。港街の側にいるわけには行かないでしょう」
少年「そ……そうだけど……」
雷使い「幸い、海の魔物は雷の魔法に弱いの。貴方達は……」
少女「……茶の瞳、だから、雷の加護を受けてる」
少年「少女!?」
雷使い「そう。前に少しお話ししてあげたでしょ」
少年「お……俺たちが戦うのか!?」
雷使い「勿論、この船は戦闘用の砲台なんかもあるし、私もいるわ」
雷使い「……でも、北の街に着けば私一人じゃ四人を守りきる事は不可能かもしれない」
少年「み、水使いがいるじゃないか!」
水使い「私は回復魔法しか使えないんです」
少女「え?」
水使い「加護によって、得手不得手があるのですよ。私は……戦闘には向きません」
雷使い「でも、回復って言うのは絶対に不可欠な物でしょう?」
少年「……だ、だったら、何で、わざわざそんな……!」
雷使い「さっきも言ったわよ。見つからない様な場所へ行く必要がある」
80: 2014/08/24(日) 11:17:01.90 ID:EFzrqmJA0
雷使い「……それに、ここら辺に比べれば強い魔物がいる、と言うだけで」
雷使い「街、って言うぐらいなんだから。ちゃんと人だって住んでるのよ」
少女「……私、がんばる」
少年「少女!?」
少女「逃げよう、逃げようって煩かったのは貴方じゃない、少年」
少女「もう、戻れないのよ……だったら」
少年「少女……」
雷使い「貴方が守ってあげれば良いのよ、少年君」
少年「!?」
雷使い「ねえ、少女ちゃん?」
少女「……うん。私もがんばるから、少年もがんばろ?」
少年「で、でも……」
少女「魔法には興味があるって、少年だって言ってたじゃ無い」
少年「……そ、うだけど」
雷使い「いきなり実戦に放り込むつもりは無いわ。でも」
雷使い「……海の魔物は雷の魔法に弱い。訓練にはもってこいよ」
少年「…… ……ッ」
雷使い「少女ちゃんを危険な眼に会わせたくないなら、君ががんばりなさい」ボソ
少年「!」
水使い「怪我をするのは痛いです、勿論。ですが……私がいます」
雷使い「そういうこと」
少年(……そりゃ、少女と一緒に居たい……それに、少女を危険な眼には会わせたくない……!)
少年「……わかったよ」
少女「…… ……」ホッ
少女(これで……! あの人に、あの金の髪の人に……本当に会えるかもしれない……!)
グラグラ……グラグラ……
少女「きゃ……ッ」
少年「少女!」ギュ
雷使い「……出航したわね。ああ、やっとほっとしたわ!」
雷使い「街、って言うぐらいなんだから。ちゃんと人だって住んでるのよ」
少女「……私、がんばる」
少年「少女!?」
少女「逃げよう、逃げようって煩かったのは貴方じゃない、少年」
少女「もう、戻れないのよ……だったら」
少年「少女……」
雷使い「貴方が守ってあげれば良いのよ、少年君」
少年「!?」
雷使い「ねえ、少女ちゃん?」
少女「……うん。私もがんばるから、少年もがんばろ?」
少年「で、でも……」
少女「魔法には興味があるって、少年だって言ってたじゃ無い」
少年「……そ、うだけど」
雷使い「いきなり実戦に放り込むつもりは無いわ。でも」
雷使い「……海の魔物は雷の魔法に弱い。訓練にはもってこいよ」
少年「…… ……ッ」
雷使い「少女ちゃんを危険な眼に会わせたくないなら、君ががんばりなさい」ボソ
少年「!」
水使い「怪我をするのは痛いです、勿論。ですが……私がいます」
雷使い「そういうこと」
少年(……そりゃ、少女と一緒に居たい……それに、少女を危険な眼には会わせたくない……!)
少年「……わかったよ」
少女「…… ……」ホッ
少女(これで……! あの人に、あの金の髪の人に……本当に会えるかもしれない……!)
グラグラ……グラグラ……
少女「きゃ……ッ」
少年「少女!」ギュ
雷使い「……出航したわね。ああ、やっとほっとしたわ!」
81: 2014/08/24(日) 11:29:17.57 ID:EFzrqmJA0
雷使い「大丈夫。ちゃんと教えてあげる……貴方達はきっと……」
少女「え?」
雷使い(……きっと、優れた加護を持っている。否、最悪どちらか一人でも……)
水使い「……基礎をしっかり学べば、大丈夫ですよ」
少年「……あ、ああ…… ……?」
少女「何か聞こえない?」
ヤリモッテコーイ!
タイホウノジュンビダー!
少女「!」
少年「大砲……!」
雷使い「……早速だわね」
スタスタ
少女「え!? 行くの!? 駄目よ、危ないわ!」
雷使い「……大丈夫よ。ああ、そうだ」ニッ
少年「?」
雷使い「水使いの側を離れないように……ついていらっしゃい」
少年「え!?」
……
………
…………
船長「糞、数が多いな……おい! 大砲もっと準備しろ!」
海賊「アイアイサー! ……っと!?」
ギャアア!
海賊「こいつ……!」ザクッ
少女「え?」
雷使い(……きっと、優れた加護を持っている。否、最悪どちらか一人でも……)
水使い「……基礎をしっかり学べば、大丈夫ですよ」
少年「……あ、ああ…… ……?」
少女「何か聞こえない?」
ヤリモッテコーイ!
タイホウノジュンビダー!
少女「!」
少年「大砲……!」
雷使い「……早速だわね」
スタスタ
少女「え!? 行くの!? 駄目よ、危ないわ!」
雷使い「……大丈夫よ。ああ、そうだ」ニッ
少年「?」
雷使い「水使いの側を離れないように……ついていらっしゃい」
少年「え!?」
……
………
…………
船長「糞、数が多いな……おい! 大砲もっと準備しろ!」
海賊「アイアイサー! ……っと!?」
ギャアア!
海賊「こいつ……!」ザクッ
82: 2014/08/24(日) 11:34:51.39 ID:EFzrqmJA0
スタスタ
雷使い「……弱ってるんじゃなかったの」
海賊「!? アンタ……!」
船長「こいつらは群れで襲ってくる……個々の強さは大した事ねぇんだが」
船長「弱ってる故、か……いつもより数が多い」
少年「うわ……!?」
少女「……ひ、ィ!?」
船長「! 馬鹿野郎! 中に入ってろ! ……おい、お前何考えてんだ!」
船長「甲板には出すなって……!」
雷使い「大丈夫、見せるだけよ……二人とも、そこ動いちゃ駄目よ」
雷使い「こういう場合はね、個々を狙うんじゃ無くて…… ……雷よ!」バリバリ……
少年「!」
少女「!?」
ピシャアアアアアアアアアアアアン!
ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!
雷使い「……水面に落とせば、一網打尽」
少年「……す、っげ……え……!!」
少女「…… ……!」ギュ!
水使い「…… ……」ギュ
海賊「……うわぁ」
船長「…… ……はったりじゃ無かった、か」ハァ
雷使い「失礼ね」クス
少年(こんな事を……俺が、出来る様になるのか……?)
少年(でも! ……俺に力があれば、少女を守ってやれる……!)
少女(わ、私も……これぐらい、強くなれば……)
少女(あの人のお役に、立てるかも……!)
雷使い「……弱ってるんじゃなかったの」
海賊「!? アンタ……!」
船長「こいつらは群れで襲ってくる……個々の強さは大した事ねぇんだが」
船長「弱ってる故、か……いつもより数が多い」
少年「うわ……!?」
少女「……ひ、ィ!?」
船長「! 馬鹿野郎! 中に入ってろ! ……おい、お前何考えてんだ!」
船長「甲板には出すなって……!」
雷使い「大丈夫、見せるだけよ……二人とも、そこ動いちゃ駄目よ」
雷使い「こういう場合はね、個々を狙うんじゃ無くて…… ……雷よ!」バリバリ……
少年「!」
少女「!?」
ピシャアアアアアアアアアアアアン!
ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!
雷使い「……水面に落とせば、一網打尽」
少年「……す、っげ……え……!!」
少女「…… ……!」ギュ!
水使い「…… ……」ギュ
海賊「……うわぁ」
船長「…… ……はったりじゃ無かった、か」ハァ
雷使い「失礼ね」クス
少年(こんな事を……俺が、出来る様になるのか……?)
少年(でも! ……俺に力があれば、少女を守ってやれる……!)
少女(わ、私も……これぐらい、強くなれば……)
少女(あの人のお役に、立てるかも……!)
83: 2014/08/24(日) 11:55:46.31 ID:EFzrqmJA0
船長「よし、残りはもう良い……振り切れ!」
海賊「あいよ!」
船長「おい、さっさと部屋に戻れ!」
雷使い「…… ……」チラ
水使い「行きましょう、二人とも」
少年「…… ……」
少女「…… ……」
スタスタ
船長「アンタもだよ、雷使い」
雷使い「また出たら困るでしょ……もう少しここに居るわ」
船長「……すぐにこの海域抜ける。少し行けば大海の大渦だ」
船長「あの辺は魔物も出ない。揺れるから…… ……」
雷使い「ねえ」
船長「あン?」
雷使い「……そこを過ぎたら、そうね。魔物が居ない……比較的穏やかな海域で」
雷使い「少し、子供達に魔法の練習をさせても良いかしら」
船長「……は?」
雷使い「さっきの荷物は魔導書なのよ。教えてあげようと思ってね」
船長「弱った、とは言え魔物はだんだん強くなる、と教えたはずだ」
船長「お前が着いてるからって、危険は無いとは言い切れないぞ?」
雷使い「今から基礎はたたき込むわ」
船長「……聞いてるか?」ハァ
雷使い「自信をつけさせたいのよ」
船長「……責任はおわねぇぞ」
雷使い「大丈夫よ……ああ、そうだ。勇者が魔王を倒したとか」
雷使い「魔物が弱くなってるとか、あの二人には言わないで頂戴ね」
船長「……は?」
雷使い「今も言った様に、自信をつけさせたいの」
雷使い「ぬるま湯につけて、使い物にならない侭だと困るでしょう?」
船長「……お客様の仰るとおりに」ハァ
雷使い「甲板に出さなきゃ良いのよね?」
船長「あんまり子供だけでうろうろさすなと水使いには言ったが」
雷使い「そうね……まあ、わかったわ」
船長「……大渦を通過するまで、何ヶ月かかかるぞ」
雷使い「ええ。私は出てきて良いわよね」
船長「え? ……ああ、まあ…… ……正直助かった。ありがとう」
雷使い「どういたしまして……食事の時間になったら呼んで頂戴」
スタスタ
海賊「……なんっつーか」
船長「うわぁ! ビックリした! ……居たのかよ」
海賊「毒蛾みたいな女っすね」
船長「……お前、ああいうのが好みか?」
海賊「願い下げっす……しかし、何考えてんでしょうかね」
船長「詮索は無用……だろ」
海賊「船長も中胚ってくださいよ。掃除しますから」
船長「ああ……」
スタスタ
船長(確かに、あの女……良い腕持ってる)
船長(剣士も凄いと思ったけど……)
船長(……けど。なぁんか、好きになれネェ……いやいや)
船長「これも仕事仕事……」ハァ
海賊「あいよ!」
船長「おい、さっさと部屋に戻れ!」
雷使い「…… ……」チラ
水使い「行きましょう、二人とも」
少年「…… ……」
少女「…… ……」
スタスタ
船長「アンタもだよ、雷使い」
雷使い「また出たら困るでしょ……もう少しここに居るわ」
船長「……すぐにこの海域抜ける。少し行けば大海の大渦だ」
船長「あの辺は魔物も出ない。揺れるから…… ……」
雷使い「ねえ」
船長「あン?」
雷使い「……そこを過ぎたら、そうね。魔物が居ない……比較的穏やかな海域で」
雷使い「少し、子供達に魔法の練習をさせても良いかしら」
船長「……は?」
雷使い「さっきの荷物は魔導書なのよ。教えてあげようと思ってね」
船長「弱った、とは言え魔物はだんだん強くなる、と教えたはずだ」
船長「お前が着いてるからって、危険は無いとは言い切れないぞ?」
雷使い「今から基礎はたたき込むわ」
船長「……聞いてるか?」ハァ
雷使い「自信をつけさせたいのよ」
船長「……責任はおわねぇぞ」
雷使い「大丈夫よ……ああ、そうだ。勇者が魔王を倒したとか」
雷使い「魔物が弱くなってるとか、あの二人には言わないで頂戴ね」
船長「……は?」
雷使い「今も言った様に、自信をつけさせたいの」
雷使い「ぬるま湯につけて、使い物にならない侭だと困るでしょう?」
船長「……お客様の仰るとおりに」ハァ
雷使い「甲板に出さなきゃ良いのよね?」
船長「あんまり子供だけでうろうろさすなと水使いには言ったが」
雷使い「そうね……まあ、わかったわ」
船長「……大渦を通過するまで、何ヶ月かかかるぞ」
雷使い「ええ。私は出てきて良いわよね」
船長「え? ……ああ、まあ…… ……正直助かった。ありがとう」
雷使い「どういたしまして……食事の時間になったら呼んで頂戴」
スタスタ
海賊「……なんっつーか」
船長「うわぁ! ビックリした! ……居たのかよ」
海賊「毒蛾みたいな女っすね」
船長「……お前、ああいうのが好みか?」
海賊「願い下げっす……しかし、何考えてんでしょうかね」
船長「詮索は無用……だろ」
海賊「船長も中胚ってくださいよ。掃除しますから」
船長「ああ……」
スタスタ
船長(確かに、あの女……良い腕持ってる)
船長(剣士も凄いと思ったけど……)
船長(……けど。なぁんか、好きになれネェ……いやいや)
船長「これも仕事仕事……」ハァ
89: 2014/08/25(月) 10:57:30.36 ID:7G2wc8cp0
……
………
…………
魔王(んん……何? …… ……)
トントン
魔王(肩……叩かないでよ、眠いのに……)
トン……ナデ、ナデ
魔王(……あ。頭撫でられてる……気持ち良い……使用人? ……違う)
魔王(大きな手……闇の手……?)スリスリ
??「……しゃ」
魔王(んー? ……)
??「……う、しゃ …… ……勇者?」
魔王(勇者? ……違う、私は、もう……勇者じゃ……)
??「…… ……魔王」
魔王(……闇の手、じゃない。青年……? ……! 違う!)パチ
魔王「私は、魔王だ……!」ガバッ ゴン!
??「……ッ い、ってぇ……!!」
魔王「誰……ッ …… ……あ、れ」
??「…… ……」
魔王「…… ……お、お父さん!?」
黒魔「……お、おう…… ……この、石頭……!」
魔王「な、なんで!? どうしてお父さんがここに…… ……ん?」
魔王(な、にあれ……! 足下に、景色が広がってる……!?)
魔王(海……凄い風……あ、雷が……!)
魔王「……! 赤ちゃんが……!」
黒魔「……これが『世界』だ」
魔王「『世界』!?」
黒魔「ここは……どこなんだか、それは俺には説明してやれないけれど」
黒魔「俺たち……『魔王』は、ここで、延々とアレを繰り返し見せさせられる」
魔王「……え?」
黒魔「ここは『特異点しかこられない』『過去を見るしか出来ない』場所」
魔王「…… ……」
黒魔「ああ、そうだ。お前一回ここに来たじゃ無いか」
魔王「え……」
黒魔「俺を倒す前。まだ勇者の時に一度」
魔王「! 金の髪の魔王……おじいちゃんが……!」
黒魔「そうそう……そこだよ」
魔王「……ええええええ、っと。ちょっと待って……」
黒魔「まあ、落ち着け。混乱するのも無理は無い……でもびびったぜ?」
魔王「? 何が……」
黒魔「急に現れたと思ったら、子供みたいに丸まって寝てるから」
魔王「あ、だって……部屋が何処かわからなくて、城の中うろうろしたら疲れて……」
黒魔「? ……直前まで動けた、のか?」
魔王「え?」
黒魔「……お前がここに居るって事は、もう勇者が生まれて……」
魔王「……え、ええ!?」
………
…………
魔王(んん……何? …… ……)
トントン
魔王(肩……叩かないでよ、眠いのに……)
トン……ナデ、ナデ
魔王(……あ。頭撫でられてる……気持ち良い……使用人? ……違う)
魔王(大きな手……闇の手……?)スリスリ
??「……しゃ」
魔王(んー? ……)
??「……う、しゃ …… ……勇者?」
魔王(勇者? ……違う、私は、もう……勇者じゃ……)
??「…… ……魔王」
魔王(……闇の手、じゃない。青年……? ……! 違う!)パチ
魔王「私は、魔王だ……!」ガバッ ゴン!
??「……ッ い、ってぇ……!!」
魔王「誰……ッ …… ……あ、れ」
??「…… ……」
魔王「…… ……お、お父さん!?」
黒魔「……お、おう…… ……この、石頭……!」
魔王「な、なんで!? どうしてお父さんがここに…… ……ん?」
魔王(な、にあれ……! 足下に、景色が広がってる……!?)
魔王(海……凄い風……あ、雷が……!)
魔王「……! 赤ちゃんが……!」
黒魔「……これが『世界』だ」
魔王「『世界』!?」
黒魔「ここは……どこなんだか、それは俺には説明してやれないけれど」
黒魔「俺たち……『魔王』は、ここで、延々とアレを繰り返し見せさせられる」
魔王「……え?」
黒魔「ここは『特異点しかこられない』『過去を見るしか出来ない』場所」
魔王「…… ……」
黒魔「ああ、そうだ。お前一回ここに来たじゃ無いか」
魔王「え……」
黒魔「俺を倒す前。まだ勇者の時に一度」
魔王「! 金の髪の魔王……おじいちゃんが……!」
黒魔「そうそう……そこだよ」
魔王「……ええええええ、っと。ちょっと待って……」
黒魔「まあ、落ち着け。混乱するのも無理は無い……でもびびったぜ?」
魔王「? 何が……」
黒魔「急に現れたと思ったら、子供みたいに丸まって寝てるから」
魔王「あ、だって……部屋が何処かわからなくて、城の中うろうろしたら疲れて……」
黒魔「? ……直前まで動けた、のか?」
魔王「え?」
黒魔「……お前がここに居るって事は、もう勇者が生まれて……」
魔王「……え、ええ!?」
90: 2014/08/25(月) 11:44:22.79 ID:7G2wc8cp0
黒魔「? 違う……のか?」
魔王「ちょ、ちょっと待って……さっぱりわからない……」
黒魔「……前の時の事は覚えてるか?」
魔王「……うん。お父さんと、おじいちゃん……それから、剣士が居た」
黒魔「ああ……あの二人はもう、本当に……完全に失われた」
魔王「!」
黒魔「お前が俺を倒してから、紫の魔王と、紫の魔王の側近まで出てきたんだ」ハァ
魔王「え!?」
黒魔「……父さん……金の髪の魔王が何度も言っていた」
黒魔「紫の魔王が失われたのなら、どうして俺はまだここにいるんだ、と」
魔王「……ああ、そうか。あの二人は……」
黒魔「そうだ。元は同じ……剣士も、だ」
魔王「……剣士は、紫の魔王が吸収してしまった剣の欠片……」
黒魔「『夢』の中で、紫の魔王の側近から『紫の魔王の瞳』も奪ってるしな」
魔王「……『三』つが揃ったんだね」
黒魔「…… ……」
魔王「そうして、本当に……失われた」
黒魔「そんな顔をするな。喜ばなくてはいけないんだぜ」
魔王「……うん」
黒魔「で……だ」
魔王「?」
黒魔「ここは……」
魔王「……『特異点』しかこられない?」
黒魔「ああ……でもお前は一度、ここに来ているもんな」
魔王「……うん。勇者だった時に」
黒魔「俺が初めて、自分がここに居る、と認識したのは」
黒魔「勇者……お前が生まれて、俺の身体が段々自由にならなくなって……」
黒魔「完全に、動けなくなってしまった後、の筈だ」
魔王「……でも、私は勇者を産んでない。どころか……」
黒魔「ん?」
魔王「……昨日、って言っていいのか……ええと。魔導師を……魔に変えて」
魔王「その後、寝て……で、今、ここにいるんだよ?」
黒魔「!?」
魔王「…… ……」
黒魔「『夢』を見ている状態、って事か?」
魔王「……わかんないけど。でも! ……でも、私は、戻らないと……!」
黒魔「…… ……」
魔王「お父さん……?」
魔王「ちょ、ちょっと待って……さっぱりわからない……」
黒魔「……前の時の事は覚えてるか?」
魔王「……うん。お父さんと、おじいちゃん……それから、剣士が居た」
黒魔「ああ……あの二人はもう、本当に……完全に失われた」
魔王「!」
黒魔「お前が俺を倒してから、紫の魔王と、紫の魔王の側近まで出てきたんだ」ハァ
魔王「え!?」
黒魔「……父さん……金の髪の魔王が何度も言っていた」
黒魔「紫の魔王が失われたのなら、どうして俺はまだここにいるんだ、と」
魔王「……ああ、そうか。あの二人は……」
黒魔「そうだ。元は同じ……剣士も、だ」
魔王「……剣士は、紫の魔王が吸収してしまった剣の欠片……」
黒魔「『夢』の中で、紫の魔王の側近から『紫の魔王の瞳』も奪ってるしな」
魔王「……『三』つが揃ったんだね」
黒魔「…… ……」
魔王「そうして、本当に……失われた」
黒魔「そんな顔をするな。喜ばなくてはいけないんだぜ」
魔王「……うん」
黒魔「で……だ」
魔王「?」
黒魔「ここは……」
魔王「……『特異点』しかこられない?」
黒魔「ああ……でもお前は一度、ここに来ているもんな」
魔王「……うん。勇者だった時に」
黒魔「俺が初めて、自分がここに居る、と認識したのは」
黒魔「勇者……お前が生まれて、俺の身体が段々自由にならなくなって……」
黒魔「完全に、動けなくなってしまった後、の筈だ」
魔王「……でも、私は勇者を産んでない。どころか……」
黒魔「ん?」
魔王「……昨日、って言っていいのか……ええと。魔導師を……魔に変えて」
魔王「その後、寝て……で、今、ここにいるんだよ?」
黒魔「!?」
魔王「…… ……」
黒魔「『夢』を見ている状態、って事か?」
魔王「……わかんないけど。でも! ……でも、私は、戻らないと……!」
黒魔「…… ……」
魔王「お父さん……?」
91: 2014/08/25(月) 12:13:55.38 ID:7G2wc8cp0
黒魔「……寝てみている間の『夢』と同意なら、お前の目が覚めたら」
黒魔「戻れるのかもしれないが……」
魔王「……保証は無い、って? でも……」
黒魔「そもそも何もわかっちゃ居ない、からな……ただ」
黒魔「……まあ、戻れるだろ。勇者も出来てない……んだし……?」
魔王「願えば叶う……んだよね?」
黒魔「……そうであってほしいよ。お前が、戻りたいと思うのならば」
魔王「……どうせ、私は……勇者を産んだらここに来るんでしょう?」
黒魔「と、思うけどな」
魔王「……あ」
黒魔「ん?」
魔王「私、ここに来てる……居た、んだよね」
黒魔「? 覚えてるんだろう?」
魔王「あ、えっと……そうじゃなくてね。ずっと……えっと、前の私?」
黒魔「ああ……そういう意味か。だ、と思うぜ」
黒魔「俺も……何度もあれを見た」スッ
魔王「……さっきの赤ちゃん、居ない!」
黒魔「『世界』だ…… ……あれは『金髪紫瞳の男』の双子の子供」
魔王「双子?」
黒魔「ああ……まあ、お前も嫌でも見る事になると思うけど」
黒魔「『金髪紫瞳の男』が、お前を倒して……光を世界に解放した」
魔王「…… ……」
黒魔「その後生まれたその二人は、金と紫にそれぞれの瞳の色を変え」
魔王「!?」
黒魔「……そして交わり『世界』を産んだ……そして世界は滅び」
黒魔「また、再生するんだ」
魔王「…… ……」
黒魔「戻れるのかもしれないが……」
魔王「……保証は無い、って? でも……」
黒魔「そもそも何もわかっちゃ居ない、からな……ただ」
黒魔「……まあ、戻れるだろ。勇者も出来てない……んだし……?」
魔王「願えば叶う……んだよね?」
黒魔「……そうであってほしいよ。お前が、戻りたいと思うのならば」
魔王「……どうせ、私は……勇者を産んだらここに来るんでしょう?」
黒魔「と、思うけどな」
魔王「……あ」
黒魔「ん?」
魔王「私、ここに来てる……居た、んだよね」
黒魔「? 覚えてるんだろう?」
魔王「あ、えっと……そうじゃなくてね。ずっと……えっと、前の私?」
黒魔「ああ……そういう意味か。だ、と思うぜ」
黒魔「俺も……何度もあれを見た」スッ
魔王「……さっきの赤ちゃん、居ない!」
黒魔「『世界』だ…… ……あれは『金髪紫瞳の男』の双子の子供」
魔王「双子?」
黒魔「ああ……まあ、お前も嫌でも見る事になると思うけど」
黒魔「『金髪紫瞳の男』が、お前を倒して……光を世界に解放した」
魔王「…… ……」
黒魔「その後生まれたその二人は、金と紫にそれぞれの瞳の色を変え」
魔王「!?」
黒魔「……そして交わり『世界』を産んだ……そして世界は滅び」
黒魔「また、再生するんだ」
魔王「…… ……」
92: 2014/08/25(月) 12:45:43.33 ID:7G2wc8cp0
黒魔「魔王」
魔王「……ん?」
黒魔「何度も繰り返されてきた事だ……と、思う」
黒魔「俺も、そう聞いたし、多分……そう言ったんだろうな」
魔王「?」
黒魔「……俺がここで、初めて気がついた時な。居ないのはお前……えっと」
魔王「『過去の私』だね」
黒魔「ああ。女魔王だけだった……多分、お前が『再生』する番だったから、だろうけど」
魔王「再生……ああ、えっと。そうか。だから、今ここに……」
魔王「『金髪紫瞳の男』は居ない、って事ね」
黒魔「そうだな。父さん……金の髪の魔王の時は俺が居なかった」
黒魔「皆……終わってしまったから、もうここには俺しか居ない」
魔王「私が勇者に倒されたら、今度は私一人になるのか……」
黒魔「……どうなんだろうな」
魔王「え?」
黒魔「俺も『前』の俺を知らないから何とも言えないけど」
黒魔「もし、お前で終わらなければ、『世界』が生まれて……」
魔王「……ああ、そうか。この……」スッ
魔王「悪夢が、再現されるだけ、か……」
黒魔「…… ……」
魔王「ねえ、お父さん」
黒魔「ん?」
魔王「……『勇者』は人間なんだよね?」
黒魔「え? ……ああ。って、お前も知ってるだろ」
魔王「いや、そうなんだけどね……そうじゃなくて」
黒魔「?」
魔王「『金髪紫瞳の男』は……『勇者』だったの?」
黒魔「……何?」
魔王「だって……彼は、私と青年の子……なんでしょ?」
黒魔「……俺にも、わからない。だけど……彼は」
黒魔「魔王にはならなかった……なれなかったんだ」
魔王「……それは、私を倒して光を解放したから?」
黒魔「もしくは……まあ、お前も同じ事考えてるんだろうけど」
魔王「うん……『金髪紫瞳の男』は、エルフの血を引いているから」
魔王「そもそも……魔になんて……変じられないから」
黒魔「だが、彼は金の瞳を持って生まれてきた」
黒魔「それは間違いない」
魔王「……うん」
魔王「……ん?」
黒魔「何度も繰り返されてきた事だ……と、思う」
黒魔「俺も、そう聞いたし、多分……そう言ったんだろうな」
魔王「?」
黒魔「……俺がここで、初めて気がついた時な。居ないのはお前……えっと」
魔王「『過去の私』だね」
黒魔「ああ。女魔王だけだった……多分、お前が『再生』する番だったから、だろうけど」
魔王「再生……ああ、えっと。そうか。だから、今ここに……」
魔王「『金髪紫瞳の男』は居ない、って事ね」
黒魔「そうだな。父さん……金の髪の魔王の時は俺が居なかった」
黒魔「皆……終わってしまったから、もうここには俺しか居ない」
魔王「私が勇者に倒されたら、今度は私一人になるのか……」
黒魔「……どうなんだろうな」
魔王「え?」
黒魔「俺も『前』の俺を知らないから何とも言えないけど」
黒魔「もし、お前で終わらなければ、『世界』が生まれて……」
魔王「……ああ、そうか。この……」スッ
魔王「悪夢が、再現されるだけ、か……」
黒魔「…… ……」
魔王「ねえ、お父さん」
黒魔「ん?」
魔王「……『勇者』は人間なんだよね?」
黒魔「え? ……ああ。って、お前も知ってるだろ」
魔王「いや、そうなんだけどね……そうじゃなくて」
黒魔「?」
魔王「『金髪紫瞳の男』は……『勇者』だったの?」
黒魔「……何?」
魔王「だって……彼は、私と青年の子……なんでしょ?」
黒魔「……俺にも、わからない。だけど……彼は」
黒魔「魔王にはならなかった……なれなかったんだ」
魔王「……それは、私を倒して光を解放したから?」
黒魔「もしくは……まあ、お前も同じ事考えてるんだろうけど」
魔王「うん……『金髪紫瞳の男』は、エルフの血を引いているから」
魔王「そもそも……魔になんて……変じられないから」
黒魔「だが、彼は金の瞳を持って生まれてきた」
黒魔「それは間違いない」
魔王「……うん」
93: 2014/08/25(月) 14:54:21.63 ID:7G2wc8cp0
黒魔「さっき、再生って言ったが……」
魔王「?」
黒魔「少なくとも、紫の魔王、金の髪の魔王は、確実に失われた」
魔王「…… ……」
黒魔「もし、お前が金髪紫瞳の男……『次期勇者』勇者に倒されて」
黒魔「……同じ道を通る……いつか、『世界』が生まれても」
魔王「もう、あの二人は居ないから、どっちにしろ……『同じ事の繰り返し』では」
魔王「無い、って言いたいの?」
黒魔「…… ……ああ。紫の魔王の側近も、姫様も……失われた」
黒魔「癒し手や側近……后の事は、わからない」
魔王「……お母さん」
黒魔「金の髪の魔王も、母さん……には、会えてない、と言ってた」
魔王「…… ……」
黒魔「何でお前が今、ここにいるのか、は……俺にもわからないけど」
黒魔「お前にはまだ……時間があるはずだ」
魔王「……うん」
黒魔「だから…… …… …… で…… ……と」
魔王「? お父さん?」
グニャ……
魔王(! 視界が歪む……声が、出ない!)
魔王(お父さん……!)
……
………
…………
魔王「お父さん!?」ハッ
魔王「…… ……ッ ……?」ガバ
魔王(ここは……城……?)キョロキョロ
魔王「…… ……」スッ
魔王(……ッ 眩しい……朝?)
魔王(……って、事は、夢…… ……)スッ
魔王(私の手のひらの文様は真っ黒…… ……これは、夢じゃ無い)
魔王(…… ……)スタスタ
カチャ
使用人「きゃ……ッ!?」
魔王「わ!」
使用人「あ……ああ……申し訳ありません……」
魔王「……い、いや……私こそごめん……あ」
魔王「起こしに来てくれたの?」
使用人「はい……昨夜は申し訳ありませんでした。お部屋の場所を……」
魔王「ん? ……ああ、うん。大丈夫。使い魔さん、に聞いたし……」
使用人「はい。私もさっき知らされまして……」
魔王「……ええっと。で……」
使用人「朝食の準備が出来ています。食堂へお越しください」
魔王「……一緒に行く」
使用人「…… ……はい」クス
魔王「後で城の中案内して……」ハァ
魔王「?」
黒魔「少なくとも、紫の魔王、金の髪の魔王は、確実に失われた」
魔王「…… ……」
黒魔「もし、お前が金髪紫瞳の男……『次期勇者』勇者に倒されて」
黒魔「……同じ道を通る……いつか、『世界』が生まれても」
魔王「もう、あの二人は居ないから、どっちにしろ……『同じ事の繰り返し』では」
魔王「無い、って言いたいの?」
黒魔「…… ……ああ。紫の魔王の側近も、姫様も……失われた」
黒魔「癒し手や側近……后の事は、わからない」
魔王「……お母さん」
黒魔「金の髪の魔王も、母さん……には、会えてない、と言ってた」
魔王「…… ……」
黒魔「何でお前が今、ここにいるのか、は……俺にもわからないけど」
黒魔「お前にはまだ……時間があるはずだ」
魔王「……うん」
黒魔「だから…… …… …… で…… ……と」
魔王「? お父さん?」
グニャ……
魔王(! 視界が歪む……声が、出ない!)
魔王(お父さん……!)
……
………
…………
魔王「お父さん!?」ハッ
魔王「…… ……ッ ……?」ガバ
魔王(ここは……城……?)キョロキョロ
魔王「…… ……」スッ
魔王(……ッ 眩しい……朝?)
魔王(……って、事は、夢…… ……)スッ
魔王(私の手のひらの文様は真っ黒…… ……これは、夢じゃ無い)
魔王(…… ……)スタスタ
カチャ
使用人「きゃ……ッ!?」
魔王「わ!」
使用人「あ……ああ……申し訳ありません……」
魔王「……い、いや……私こそごめん……あ」
魔王「起こしに来てくれたの?」
使用人「はい……昨夜は申し訳ありませんでした。お部屋の場所を……」
魔王「ん? ……ああ、うん。大丈夫。使い魔さん、に聞いたし……」
使用人「はい。私もさっき知らされまして……」
魔王「……ええっと。で……」
使用人「朝食の準備が出来ています。食堂へお越しください」
魔王「……一緒に行く」
使用人「…… ……はい」クス
魔王「後で城の中案内して……」ハァ
94: 2014/08/25(月) 15:04:30.26 ID:7G2wc8cp0
使用人「かしこまりました……では、行きましょうか」
魔王「闇の手は?」
スタスタ
使用人「早朝から書庫に籠もっておられましたよ」
魔王「……働き者だなぁ」
使用人「さっき声はかけたので、もう食堂にいらっしゃると思いますが」
カチャ
闇の手「あ。おはようございます、魔王様」
魔王「うん、おはよう……何その書類の束」
闇の手「まずはお食事にしましょう?」
使用人「どうぞ、お座りください」
魔王「うん……私も話さないといけない事がある……青年の事なんだけど」
闇の手「青年さん?」
魔王「と、言うより……『金髪紫瞳の男』の話かな」
使用人「ああ……そういえば聞かずじまい、でしたね、昨夜」
魔王「とりあえず貴女も座って、使用人」
使用人「……はい」
闇の手「魔王様は……何かご存じなのですか?」
魔王「多分……」
闇の手「多分……?」
魔王「……私が、お父さんと対峙した時だ。まだ勇者だった時」
魔王「皆が……お父さんと戦ってくれてる間……私が気を失ってる間、だね」
魔王「……私は、『正気のお父さん』と一緒に居たんだ」
使用人「正気の……黒髪の魔王様?」
魔王「うん。あそこがどこだかわからない。けど、おじいちゃんもいた。剣士も」
闇の手「!?」
使用人「……金の髪の魔王様、ですか!?」
魔王「闇の手は?」
スタスタ
使用人「早朝から書庫に籠もっておられましたよ」
魔王「……働き者だなぁ」
使用人「さっき声はかけたので、もう食堂にいらっしゃると思いますが」
カチャ
闇の手「あ。おはようございます、魔王様」
魔王「うん、おはよう……何その書類の束」
闇の手「まずはお食事にしましょう?」
使用人「どうぞ、お座りください」
魔王「うん……私も話さないといけない事がある……青年の事なんだけど」
闇の手「青年さん?」
魔王「と、言うより……『金髪紫瞳の男』の話かな」
使用人「ああ……そういえば聞かずじまい、でしたね、昨夜」
魔王「とりあえず貴女も座って、使用人」
使用人「……はい」
闇の手「魔王様は……何かご存じなのですか?」
魔王「多分……」
闇の手「多分……?」
魔王「……私が、お父さんと対峙した時だ。まだ勇者だった時」
魔王「皆が……お父さんと戦ってくれてる間……私が気を失ってる間、だね」
魔王「……私は、『正気のお父さん』と一緒に居たんだ」
使用人「正気の……黒髪の魔王様?」
魔王「うん。あそこがどこだかわからない。けど、おじいちゃんもいた。剣士も」
闇の手「!?」
使用人「……金の髪の魔王様、ですか!?」
95: 2014/08/25(月) 15:33:52.00 ID:7G2wc8cp0
魔王「そう……それに昨日も、お父さんに会ったんだ」
闇の手「え……!?」ガタンッ
魔王「落ち着いて、闇の手……多分、あれは『夢』だと思う」
闇の手「青年さんが前に……始まりの国のあの丘の上で倒れた時に見た、と言うあの……『夢の場所』ですか!?」
魔王「多分」
使用人「……な、んですか、それは……」
闇の手「後で……お話しします。ごめんなさい使用人さん。けど……」
闇の手「先に、聞かせてください。魔王様」
魔王「うん……会った、て言うか……お父さんの夢を見た、と言うべきか」
魔王「わからないけれど、でも夢にしては……鮮明だった。それに父さんが言ってたんだ」
魔王「『お前がここに居ると言う事は、もう次の勇者が生まれたのか』って」
使用人「!?」
魔王「『魔王』は『勇者』が生まれたら力が徐々に強くなり」
魔王「……身体の自由がきかなくなって、眠ったみたいになるんだよね?」
使用人「え、ええ……」
魔王「その後……父さんはその、あの……場所、に居たみたい」
魔王「『特異点しか来られない』場所だって言ってた」
使用人「特異点……」
闇の手「……青年さんは、黒髪の魔王様に、癒し手様がそこに居ると聞いた、と言ってましたね」
使用人「…… ……」
魔王「使用人……大丈夫、口開いてるよ?」
使用人「! ……お、驚いて居るんです!」
闇の手「え……!?」ガタンッ
魔王「落ち着いて、闇の手……多分、あれは『夢』だと思う」
闇の手「青年さんが前に……始まりの国のあの丘の上で倒れた時に見た、と言うあの……『夢の場所』ですか!?」
魔王「多分」
使用人「……な、んですか、それは……」
闇の手「後で……お話しします。ごめんなさい使用人さん。けど……」
闇の手「先に、聞かせてください。魔王様」
魔王「うん……会った、て言うか……お父さんの夢を見た、と言うべきか」
魔王「わからないけれど、でも夢にしては……鮮明だった。それに父さんが言ってたんだ」
魔王「『お前がここに居ると言う事は、もう次の勇者が生まれたのか』って」
使用人「!?」
魔王「『魔王』は『勇者』が生まれたら力が徐々に強くなり」
魔王「……身体の自由がきかなくなって、眠ったみたいになるんだよね?」
使用人「え、ええ……」
魔王「その後……父さんはその、あの……場所、に居たみたい」
魔王「『特異点しか来られない』場所だって言ってた」
使用人「特異点……」
闇の手「……青年さんは、黒髪の魔王様に、癒し手様がそこに居ると聞いた、と言ってましたね」
使用人「…… ……」
魔王「使用人……大丈夫、口開いてるよ?」
使用人「! ……お、驚いて居るんです!」
96: 2014/08/25(月) 15:45:38.00 ID:7G2wc8cp0
闇の手「今更に驚く事も無いでしょう……」
使用人「そうですけど……」
闇の手「魔王様、他には?」
魔王「ええとね……ああ、そうだ」
魔王「目の前、ってか足下……ってか」
魔王「……不思議な景色が広がってた。海が荒れ狂ってて、雷が……風も。凄くって」
魔王「赤ちゃんが一人、泣いてた」
使用人「赤ちゃん?」
魔王「父さんは『世界』だって言ってた」
闇の手「世界……?」
魔王「『向こう側』の私は……青年との間に子供を作ったんだ」
魔王「それが『金髪紫瞳の男』……次期勇者、だね」
使用人「え、でも……!」
闇の手「待ってください、先を聞きましょう使用人さん」
魔王「次期勇者が私を倒した後に、双子を授かった……詳しくは聞いてないし」
魔王「見てないからわからないけど、その双子は……交わり」
闇の手「!」
魔王「……子供を産んだ。それが、あの海に落ちた赤ん坊……『世界』」
使用人「ど……どういう意味です!?」
魔王「ごめん、わからない……でも、父さんは」
魔王「『世界』は滅び……再生したんだ、と言ってた」
使用人「そうですけど……」
闇の手「魔王様、他には?」
魔王「ええとね……ああ、そうだ」
魔王「目の前、ってか足下……ってか」
魔王「……不思議な景色が広がってた。海が荒れ狂ってて、雷が……風も。凄くって」
魔王「赤ちゃんが一人、泣いてた」
使用人「赤ちゃん?」
魔王「父さんは『世界』だって言ってた」
闇の手「世界……?」
魔王「『向こう側』の私は……青年との間に子供を作ったんだ」
魔王「それが『金髪紫瞳の男』……次期勇者、だね」
使用人「え、でも……!」
闇の手「待ってください、先を聞きましょう使用人さん」
魔王「次期勇者が私を倒した後に、双子を授かった……詳しくは聞いてないし」
魔王「見てないからわからないけど、その双子は……交わり」
闇の手「!」
魔王「……子供を産んだ。それが、あの海に落ちた赤ん坊……『世界』」
使用人「ど……どういう意味です!?」
魔王「ごめん、わからない……でも、父さんは」
魔王「『世界』は滅び……再生したんだ、と言ってた」
97: 2014/08/25(月) 15:55:30.78 ID:7G2wc8cp0
闇の手「破壊……と、再生? いや……でも……」
魔王「……何度も繰り返してきたんだって。父さんもそう聞いたって」
使用人「……話を整理する、にしても、さっぱりわかりません」
使用人「信じられるか否、は……まあ、意味がありませんが……」
闇の手「……そうですね。魔王様のただの……『夢』だと判断するにも」
闇の手「妙に……符合があってしまう……でも……」
魔王「皆、居たんだって」
使用人「え?」
魔王「紫の魔王も、金の髪の魔王も……私も」
魔王「父さんは、今『女の魔王』がそこに居なかったのは」
魔王「今度は私が再生する番だからとか言ってたけど」
闇の手「ふぅむ……」
魔王「まあ、どっちにしても使用人には今までの事もまだ話してないし」
魔王「とりあえずこんな夢を見たよ、って……事」
闇の手「……青年さんは『金髪紫瞳の男』に会ったんでしょうか?」
魔王「わからないね。でも……『向こう側の私と青年の息子』だって事は」
魔王「少なくとも知ってた筈だ……剣士にだけは話してたみたい」
闇の手「それで……急に『私と子供を作って欲しい』だったのですね」ハァ
魔王「……まあ。否定する事に意味はあるのか、みたいな事、さ」
魔王「前に、青年がちらっと言ってたじゃ無い?」
闇の手「ああ……あれですか。黒髪の魔王様と癒し手様の……」
使用人「…… ……」
魔王「大丈夫? 使用人」
使用人「……すみません。ちょっと混乱してます」
闇の手「ちょっと、一端ここまでにしましょう、魔王様」
闇の手「使用人さんに何も話さない侭だと……」
魔王「あ……そうだよね、ごめん」
闇の手「使用人さんには後で僕からざっとお話します」
魔王「ん? 今から話せば……」
闇の手「お食事が済んだら、魔王様にお願いしたい事があったんですよ」
魔王「私に?」
闇の手「はい。お話の続きは使用人さんに今までの事を理解いただいてから、ってことにして」
闇の手「一度、僕のお話をお聞きいただけます?」
魔王「……ん、わかった」
魔王「……何度も繰り返してきたんだって。父さんもそう聞いたって」
使用人「……話を整理する、にしても、さっぱりわかりません」
使用人「信じられるか否、は……まあ、意味がありませんが……」
闇の手「……そうですね。魔王様のただの……『夢』だと判断するにも」
闇の手「妙に……符合があってしまう……でも……」
魔王「皆、居たんだって」
使用人「え?」
魔王「紫の魔王も、金の髪の魔王も……私も」
魔王「父さんは、今『女の魔王』がそこに居なかったのは」
魔王「今度は私が再生する番だからとか言ってたけど」
闇の手「ふぅむ……」
魔王「まあ、どっちにしても使用人には今までの事もまだ話してないし」
魔王「とりあえずこんな夢を見たよ、って……事」
闇の手「……青年さんは『金髪紫瞳の男』に会ったんでしょうか?」
魔王「わからないね。でも……『向こう側の私と青年の息子』だって事は」
魔王「少なくとも知ってた筈だ……剣士にだけは話してたみたい」
闇の手「それで……急に『私と子供を作って欲しい』だったのですね」ハァ
魔王「……まあ。否定する事に意味はあるのか、みたいな事、さ」
魔王「前に、青年がちらっと言ってたじゃ無い?」
闇の手「ああ……あれですか。黒髪の魔王様と癒し手様の……」
使用人「…… ……」
魔王「大丈夫? 使用人」
使用人「……すみません。ちょっと混乱してます」
闇の手「ちょっと、一端ここまでにしましょう、魔王様」
闇の手「使用人さんに何も話さない侭だと……」
魔王「あ……そうだよね、ごめん」
闇の手「使用人さんには後で僕からざっとお話します」
魔王「ん? 今から話せば……」
闇の手「お食事が済んだら、魔王様にお願いしたい事があったんですよ」
魔王「私に?」
闇の手「はい。お話の続きは使用人さんに今までの事を理解いただいてから、ってことにして」
闇の手「一度、僕のお話をお聞きいただけます?」
魔王「……ん、わかった」
98: 2014/08/25(月) 16:10:12.92 ID:7G2wc8cp0
闇の手「この書類、何ですが」バサ
魔王「ああ、書庫から持って来たんだね」
闇の手「昨日使用人さんが持って来てくださった『向こう側』の僕が」
闇の手「書いた魔石の作り方、です」
魔王「これを参考に……紫の魔王が転移石とか、作ったって奴ね」
闇の手「昨日も言いましたけど、魔王様に転移石を作ってくださいって言うのは」
闇の手「簡単だと思うんですけど……」
魔王「応用が利かない?」
闇の手「はい……それに、100%魔王様の魔力の転移石、よりも」
闇の手「僕の手である程度加工した方が、青年さんには楽だと思うんです」
魔王「……ふむ」
闇の手「で。魔王様にはひたすら……魔石を生成して欲しいんです」
魔王「転移石の元、にするんだね?」
闇の手「まあ、そうなんですけど……魔力そのものを結晶化して欲しいんです」
魔王「……はい?」
闇の手「魔王様の魔力を考えると、簡単にできてしまうとは思うのですが」
闇の手「紫の魔王様がなさった事って、たとえば『炎の魔石から炎を呼び出す』みたいな事でしょ?」
使用人「……ああ、なるほど」
魔王「え、使用人今のでわかったの」
使用人「なんと無く、ですけど」
魔王「……まじで」
闇の手「回復の力を込めれば癒しの魔石……っていう風に」
闇の手「魔石化させる時に何らかの情報が入っている、と考えられるわけです」
闇の手「僕もそれを想定して、この」ペラ
闇の手「……紙に、書いたわけですし」
魔王「……はぁ」
闇の手「……説明、難しいなぁ」
使用人「インキュバスの魔石に近いのでは無いでしょうか」
魔王「インキュバス?」
闇の手「……ああ、そうかもしれませんね」
使用人「インキュバスは女さんから魔石の作り方を聞いたのだと思います」
使用人「彼女がどこまで……説明したか、まではわかりませんが、彼も力の強い魔族でしたし」
使用人「あの種の特性上、糧であった精を摂取している以上、魔力や生命力は」
使用人「桁外れだった筈……体内にある魔力をただひたすらに結晶化する、と言う」
使用人「行為は、案外簡単にできたのかもしれません」
魔王「ああ、書庫から持って来たんだね」
闇の手「昨日使用人さんが持って来てくださった『向こう側』の僕が」
闇の手「書いた魔石の作り方、です」
魔王「これを参考に……紫の魔王が転移石とか、作ったって奴ね」
闇の手「昨日も言いましたけど、魔王様に転移石を作ってくださいって言うのは」
闇の手「簡単だと思うんですけど……」
魔王「応用が利かない?」
闇の手「はい……それに、100%魔王様の魔力の転移石、よりも」
闇の手「僕の手である程度加工した方が、青年さんには楽だと思うんです」
魔王「……ふむ」
闇の手「で。魔王様にはひたすら……魔石を生成して欲しいんです」
魔王「転移石の元、にするんだね?」
闇の手「まあ、そうなんですけど……魔力そのものを結晶化して欲しいんです」
魔王「……はい?」
闇の手「魔王様の魔力を考えると、簡単にできてしまうとは思うのですが」
闇の手「紫の魔王様がなさった事って、たとえば『炎の魔石から炎を呼び出す』みたいな事でしょ?」
使用人「……ああ、なるほど」
魔王「え、使用人今のでわかったの」
使用人「なんと無く、ですけど」
魔王「……まじで」
闇の手「回復の力を込めれば癒しの魔石……っていう風に」
闇の手「魔石化させる時に何らかの情報が入っている、と考えられるわけです」
闇の手「僕もそれを想定して、この」ペラ
闇の手「……紙に、書いたわけですし」
魔王「……はぁ」
闇の手「……説明、難しいなぁ」
使用人「インキュバスの魔石に近いのでは無いでしょうか」
魔王「インキュバス?」
闇の手「……ああ、そうかもしれませんね」
使用人「インキュバスは女さんから魔石の作り方を聞いたのだと思います」
使用人「彼女がどこまで……説明したか、まではわかりませんが、彼も力の強い魔族でしたし」
使用人「あの種の特性上、糧であった精を摂取している以上、魔力や生命力は」
使用人「桁外れだった筈……体内にある魔力をただひたすらに結晶化する、と言う」
使用人「行為は、案外簡単にできたのかもしれません」
99: 2014/08/25(月) 16:21:04.31 ID:7G2wc8cp0
魔王「……右から左、的な?」
使用人「まあ……そんな感じですかね」
闇の手「インキュバスの場合、憎しみとか……の情報が入っていたのではとは」
闇の手「思うんですけどね……でも、感覚としては近いかもしれません」
闇の手「力の強い魔族の力に触れて、惹かれて……魔物が集まってきてた、訳ですし」
魔王「……要するに、何も考えずに魔力を形にすれば良いって事ね?」
闇の手「まあ……そうですね」
魔王「……出来るかなぁ」
闇の手「青年さんの助けになると思ってください……それに」
闇の手「今はまだ、勇者様を授かっている訳では無いので……良いんですけど」
闇の手「……何れ、貴女の力は強くなっていきます」
魔王「……あのさ、使用人確認するけど」
使用人「はい?」
魔王「もし、私が子供を作らなければ、どちらにしろ紫の魔王の様に」
魔王「……力が増幅して、押さえられなくなる可能性はあるって事だよね?」
使用人「否定は出来ません……前例がある以上、可能性が高いとすら思った方が良いかもしれません」
魔王「……ふむ」
闇の手「魔石ごときでどこまで食い止められるかわかりませんけど」
闇の手「……少しでも、魔力を発散する事が出来るなら、時間稼ぎにも」
闇の手「なるのかな、と思います」
魔王「なるほど……わかった。やってみる」
闇の手「お願いします。疲れない程度で良いですからね」
魔王「魔王って疲れるの?」
闇の手「……魔力つきるほどいきなり作られたら、城埋まっちゃいますし」
魔王「……冗談だと思うけど、それ笑えない」
闇の手「わかりませんよ……『魔王』なんですから。あ、あと」
魔王「ん?」
闇の手「どこか別の部屋でやってくださいね」
魔王「……いじめ?」
闇の手「何でですか! 違いますよ!」
魔王「部屋埋めないよ?」
闇の手「冗談ですって……僕、ちょっと浄化の石を加工したいんです」
使用人「癒し手様の……ですか?」
闇の手「はい。青年さんの為に……もありますけど」
闇の手「……これも、インキュバスの魔石に近いんだと思います」
魔王「……ああ、そうか。ていうか、それも、って言うより」
魔王「そっちこそ、闇の手が私にさせようとしてる事に近いんじゃ無いの」
使用人「まあ……そんな感じですかね」
闇の手「インキュバスの場合、憎しみとか……の情報が入っていたのではとは」
闇の手「思うんですけどね……でも、感覚としては近いかもしれません」
闇の手「力の強い魔族の力に触れて、惹かれて……魔物が集まってきてた、訳ですし」
魔王「……要するに、何も考えずに魔力を形にすれば良いって事ね?」
闇の手「まあ……そうですね」
魔王「……出来るかなぁ」
闇の手「青年さんの助けになると思ってください……それに」
闇の手「今はまだ、勇者様を授かっている訳では無いので……良いんですけど」
闇の手「……何れ、貴女の力は強くなっていきます」
魔王「……あのさ、使用人確認するけど」
使用人「はい?」
魔王「もし、私が子供を作らなければ、どちらにしろ紫の魔王の様に」
魔王「……力が増幅して、押さえられなくなる可能性はあるって事だよね?」
使用人「否定は出来ません……前例がある以上、可能性が高いとすら思った方が良いかもしれません」
魔王「……ふむ」
闇の手「魔石ごときでどこまで食い止められるかわかりませんけど」
闇の手「……少しでも、魔力を発散する事が出来るなら、時間稼ぎにも」
闇の手「なるのかな、と思います」
魔王「なるほど……わかった。やってみる」
闇の手「お願いします。疲れない程度で良いですからね」
魔王「魔王って疲れるの?」
闇の手「……魔力つきるほどいきなり作られたら、城埋まっちゃいますし」
魔王「……冗談だと思うけど、それ笑えない」
闇の手「わかりませんよ……『魔王』なんですから。あ、あと」
魔王「ん?」
闇の手「どこか別の部屋でやってくださいね」
魔王「……いじめ?」
闇の手「何でですか! 違いますよ!」
魔王「部屋埋めないよ?」
闇の手「冗談ですって……僕、ちょっと浄化の石を加工したいんです」
使用人「癒し手様の……ですか?」
闇の手「はい。青年さんの為に……もありますけど」
闇の手「……これも、インキュバスの魔石に近いんだと思います」
魔王「……ああ、そうか。ていうか、それも、って言うより」
魔王「そっちこそ、闇の手が私にさせようとしてる事に近いんじゃ無いの」
100: 2014/08/25(月) 16:28:52.17 ID:7G2wc8cp0
闇の手「確かに、癒し手様の純粋な魔力……と言えばそうですが」
闇の手「こちらには確実に『感情』と言う『情報』が入ってる筈です」
魔王「感情……?」
闇の手「はい。癒し手様の愛……優しさ、ですかね」
魔王「……愛、か」
闇の手「少しでも苦しくないように、とか。ね」
魔王「じゃあ、私もそんな感じで行こうかな?」
闇の手「それもありですけどね……でもまあ、用途が限定されてないし」
闇の手「できる限り『情報』は含めて欲しく無い、んですが……」
魔王「ん-、了解」
闇の手「僕も最初は失敗するでしょうし、まあ……あまり深く考えないでください」
魔王「んじゃまあ……部屋でがんばるよ」
闇の手「使用人さんはおつきあいしてもらえます? 知恵も貸して欲しいし」
闇の手「ついでに、今までの事もお話します」
使用人「わかりました。では、片付けが済んだらお部屋にお伺いします」
魔王(……なーんか、疎外感。嫉妬ってわかってるけど)ハァ
闇の手「……拗ねないでくださいよ、魔王様」
魔王「す、拗ねてないよ!」カァッ
闇の手「…… ……」クスクス
魔王「意地悪だな、闇の手……! ごちそう様!」
スタスタ、バタン!
使用人「……確実に拗ねてますよ」
闇の手「……そうですね」
使用人「良いんですか?」
闇の手「…… ……はい。浄化の石の側に、ずっと居てもらうのは怖いです」
闇の手「別に、本当に仲間はずれにしようなんて思ってる訳じゃ無いのは」
闇の手「わかってくださってる……と思いますよ?」
使用人「そう……でしょうけど」
闇の手「こちらには確実に『感情』と言う『情報』が入ってる筈です」
魔王「感情……?」
闇の手「はい。癒し手様の愛……優しさ、ですかね」
魔王「……愛、か」
闇の手「少しでも苦しくないように、とか。ね」
魔王「じゃあ、私もそんな感じで行こうかな?」
闇の手「それもありですけどね……でもまあ、用途が限定されてないし」
闇の手「できる限り『情報』は含めて欲しく無い、んですが……」
魔王「ん-、了解」
闇の手「僕も最初は失敗するでしょうし、まあ……あまり深く考えないでください」
魔王「んじゃまあ……部屋でがんばるよ」
闇の手「使用人さんはおつきあいしてもらえます? 知恵も貸して欲しいし」
闇の手「ついでに、今までの事もお話します」
使用人「わかりました。では、片付けが済んだらお部屋にお伺いします」
魔王(……なーんか、疎外感。嫉妬ってわかってるけど)ハァ
闇の手「……拗ねないでくださいよ、魔王様」
魔王「す、拗ねてないよ!」カァッ
闇の手「…… ……」クスクス
魔王「意地悪だな、闇の手……! ごちそう様!」
スタスタ、バタン!
使用人「……確実に拗ねてますよ」
闇の手「……そうですね」
使用人「良いんですか?」
闇の手「…… ……はい。浄化の石の側に、ずっと居てもらうのは怖いです」
闇の手「別に、本当に仲間はずれにしようなんて思ってる訳じゃ無いのは」
闇の手「わかってくださってる……と思いますよ?」
使用人「そう……でしょうけど」
101: 2014/08/25(月) 16:41:47.09 ID:7G2wc8cp0
闇の手「今のうちに……できる限り、魔石を作る事になれておいて欲しいし」
闇の手「……本当に子供が出来てからじゃ、とてもじゃないけど」
闇の手「青年さんに、いくら僕が加工した後でも……」
使用人「……確かに、使用させる訳にはいかないでしょうね」
闇の手「はい。 さっき、魔王様本人が言ってました、けど……」
使用人「?」
闇の手「色々……思うところはあるんでしょうが、魔王様の中に」
闇の手「『青年さんの子供を産む』選択肢しか、無いんだと思います」
使用人「…… ……」
闇の手「極端な話……僕が子供の父親に指名されたら、拒みませんよ」
使用人「!」
闇の手「……ですが、しないと思います」
使用人「…… ……魔王様、は……」
闇の手「僕を……僕に、好意を持ってくださっていた、というのは」
闇の手「お恥ずかしながら、やっと……気がつきました」
使用人「だから……遠ざけた?」
闇の手「そんなんじゃありません。別に……今も昔も、変わらず」
闇の手「彼女は彼女です……大好きですよ。大切です」
闇の手「あんなに魔王になる事を嫌がっていたのに、彼女は……」
使用人「…… ……」
闇の手「…… ……」
使用人「別に……向こう側をなぞる必要は無いのでは?」
使用人「ただでさえ……貴方達は、否定して来られた」
闇の手「そうですね……でも、だからこそ、って思う部分があるんです」
闇の手「……先に、部屋に戻りますね。順を追って説明しますよ」
使用人「……わかりました」
スタスタ、パタン
闇の手(もし、魔王様が子供の父親に僕を指名したら)
闇の手(……確かに、僕は拒まない。だけど……)
闇の手(『金髪紫瞳の男』……は、存在を失う)
闇の手(多分魔王様は……否、魔王様も。それを憂いている訳じゃ無いはずだ)
闇の手(……試してみる事は簡単だ。だけど、それは……)
闇の手「…… ……」フルフル
闇の手(一人で考えていてもまとまらない。後で、使用人さんと……)
闇の手(とりあえず……浄化の石を……)ブツブツ
スタスタ、スタスタ
……
………
…………
闇の手「……本当に子供が出来てからじゃ、とてもじゃないけど」
闇の手「青年さんに、いくら僕が加工した後でも……」
使用人「……確かに、使用させる訳にはいかないでしょうね」
闇の手「はい。 さっき、魔王様本人が言ってました、けど……」
使用人「?」
闇の手「色々……思うところはあるんでしょうが、魔王様の中に」
闇の手「『青年さんの子供を産む』選択肢しか、無いんだと思います」
使用人「…… ……」
闇の手「極端な話……僕が子供の父親に指名されたら、拒みませんよ」
使用人「!」
闇の手「……ですが、しないと思います」
使用人「…… ……魔王様、は……」
闇の手「僕を……僕に、好意を持ってくださっていた、というのは」
闇の手「お恥ずかしながら、やっと……気がつきました」
使用人「だから……遠ざけた?」
闇の手「そんなんじゃありません。別に……今も昔も、変わらず」
闇の手「彼女は彼女です……大好きですよ。大切です」
闇の手「あんなに魔王になる事を嫌がっていたのに、彼女は……」
使用人「…… ……」
闇の手「…… ……」
使用人「別に……向こう側をなぞる必要は無いのでは?」
使用人「ただでさえ……貴方達は、否定して来られた」
闇の手「そうですね……でも、だからこそ、って思う部分があるんです」
闇の手「……先に、部屋に戻りますね。順を追って説明しますよ」
使用人「……わかりました」
スタスタ、パタン
闇の手(もし、魔王様が子供の父親に僕を指名したら)
闇の手(……確かに、僕は拒まない。だけど……)
闇の手(『金髪紫瞳の男』……は、存在を失う)
闇の手(多分魔王様は……否、魔王様も。それを憂いている訳じゃ無いはずだ)
闇の手(……試してみる事は簡単だ。だけど、それは……)
闇の手「…… ……」フルフル
闇の手(一人で考えていてもまとまらない。後で、使用人さんと……)
闇の手(とりあえず……浄化の石を……)ブツブツ
スタスタ、スタスタ
……
………
…………
102: 2014/08/25(月) 17:28:46.57 ID:7G2wc8cp0
ザワザワ……
ガヤガヤ……
青年「……随分賑やかだな」
マスター「よう!来たな……おい、聞いてくれよ青ねえええん!」
青年「な、何だよ!?」
マスター「水使いちゃんがいなくなったんだよおおおおおおおおお!」
青年「!?」
常連「あーあ、もう……マスターはまた……」
冒険者「悪いな兄ちゃん、マスター今日はもうずっとこんな調子だぜ」
冒険者「ビールで良いか?」
青年「あ? ……ああ……」
常連「もう勝手に飲んじまえ。俺らもそうしてるし」
青年「? 店の……人、じゃないのか」
冒険者「俺? ……ああ、違う違う。俺もこいつも、この店の馴染みだよ」
常連「俺は常連。こっちは冒険者ってんだ……ま、マスターがこんな調子の時は」
常連「いつもこんな感じだから気にすんな」
青年「あ、ああ……」
冒険者「ほらよ」コトン
青年「……サンキュ」
常連「で、お前さん青年っての?」
青年「……ああ」
冒険者「しかし……こんな騒ぎ立てる程の事かねぇ」ハァ
常連「まあ……こんな事初めてだし、仕方ねぇんじゃ無いの?」
青年(水使いが居なくなった? ……やっぱり、あの港で見たのは……しかし)
青年「……昼間に、老婆……って人が、騒いでたのは関係あるのか?」
冒険者「あれ、何だお前さん、知ってんの?」
青年「いや……見かけただけだ。娼館の人……だろう女性に」
青年「……『少年と少女が居なくなったからさっさと戻れ』って言ってるのをな」
常連「ああ……やっぱあの老婆が騒ぎ大きくしてんのか」ハァ
冒険者「まあ……いっぺんに三人だからなぁ。騒ぎたくなる気持ちもわかるけどよ」
青年「!」
青年(三人……水使いと、少年と少女……!?)
青年(……マスターは、水使いが率先して、二人の面倒を見てる、とか言ってたな)
青年(双子も懐いてる……とも。確かに、あの二人は娼館を出たがっていた)
青年(……魔王様と魔導師に、連れて行ってくれ、とも言ってた……しかし)
常連「しかし、さぁ……水使いがあの二人連れて、どこに逃げれるってのか」
冒険者「まあ、あの金持ちの女が手引きしたんだろうなぁ」
青年(……水使いを買いに来ていた、と言う奴か)
常連「何でも、朝早くに船が一隻出てったんだろ?」
マスター「そーだ! せいねんよぉ!」
青年「な……ッ なんだよ」
マスター「おまえ、ふね……見てねぇのか!? 水使いちゃん、とめてくれたって……ッ」ヒック
常連「こらこらこら、絡むなよマスター!」
冒険者「悪いな兄ちゃん」
青年「い、いや……」
マスター「だって、こいつ、さくや……おそく…… ……に……」ヒック
常連「ああもう、良いから寝ろ、その侭…… ……ったく」
ガヤガヤ……
青年「……随分賑やかだな」
マスター「よう!来たな……おい、聞いてくれよ青ねえええん!」
青年「な、何だよ!?」
マスター「水使いちゃんがいなくなったんだよおおおおおおおおお!」
青年「!?」
常連「あーあ、もう……マスターはまた……」
冒険者「悪いな兄ちゃん、マスター今日はもうずっとこんな調子だぜ」
冒険者「ビールで良いか?」
青年「あ? ……ああ……」
常連「もう勝手に飲んじまえ。俺らもそうしてるし」
青年「? 店の……人、じゃないのか」
冒険者「俺? ……ああ、違う違う。俺もこいつも、この店の馴染みだよ」
常連「俺は常連。こっちは冒険者ってんだ……ま、マスターがこんな調子の時は」
常連「いつもこんな感じだから気にすんな」
青年「あ、ああ……」
冒険者「ほらよ」コトン
青年「……サンキュ」
常連「で、お前さん青年っての?」
青年「……ああ」
冒険者「しかし……こんな騒ぎ立てる程の事かねぇ」ハァ
常連「まあ……こんな事初めてだし、仕方ねぇんじゃ無いの?」
青年(水使いが居なくなった? ……やっぱり、あの港で見たのは……しかし)
青年「……昼間に、老婆……って人が、騒いでたのは関係あるのか?」
冒険者「あれ、何だお前さん、知ってんの?」
青年「いや……見かけただけだ。娼館の人……だろう女性に」
青年「……『少年と少女が居なくなったからさっさと戻れ』って言ってるのをな」
常連「ああ……やっぱあの老婆が騒ぎ大きくしてんのか」ハァ
冒険者「まあ……いっぺんに三人だからなぁ。騒ぎたくなる気持ちもわかるけどよ」
青年「!」
青年(三人……水使いと、少年と少女……!?)
青年(……マスターは、水使いが率先して、二人の面倒を見てる、とか言ってたな)
青年(双子も懐いてる……とも。確かに、あの二人は娼館を出たがっていた)
青年(……魔王様と魔導師に、連れて行ってくれ、とも言ってた……しかし)
常連「しかし、さぁ……水使いがあの二人連れて、どこに逃げれるってのか」
冒険者「まあ、あの金持ちの女が手引きしたんだろうなぁ」
青年(……水使いを買いに来ていた、と言う奴か)
常連「何でも、朝早くに船が一隻出てったんだろ?」
マスター「そーだ! せいねんよぉ!」
青年「な……ッ なんだよ」
マスター「おまえ、ふね……見てねぇのか!? 水使いちゃん、とめてくれたって……ッ」ヒック
常連「こらこらこら、絡むなよマスター!」
冒険者「悪いな兄ちゃん」
青年「い、いや……」
マスター「だって、こいつ、さくや……おそく…… ……に……」ヒック
常連「ああもう、良いから寝ろ、その侭…… ……ったく」
103: 2014/08/25(月) 17:38:15.29 ID:7G2wc8cp0
青年「…… ……」ハァ
常連「悪いなぁ……青年」
青年「いや……ていうか、いまいち話が見えないんだけど」
冒険者「水使いってのには上客が居たんだ、しかも女のな」
青年「……ああ、そこまでは昨日聞いた」
常連「んでな、朝まで水使いを買った後に、その女は仕事があるって書の街行きの船に」
常連「乗ったってんだが、その前に追加の金を払ったんだとよ」
青年「? 何でまた」
冒険者「夜には戻るからそれまで水使いを寝かしておいてくれって」
冒険者「……が、部屋はもぬけの殻。しかもあの小姓二人まで居ない、って言うね」
青年「……なるほど。夜までの時間を買ったのはアリバイ工作か」
常連「だろうな。小姓の方は、早朝散歩から戻らなかったらしい、し」
常連「怪しい船が港出て行くのも何人か見た人間が居るから……な」
青年「だが……ここの娼館は無理矢理働かしたりってのは無かったんだろう?」
冒険者「まあ、だからこそ新館まで建てられたんだろうがなぁ」
冒険者「けど、本当の所はわからネェよ。けど」
青年「……上客の女が三人を逃がした、ってのが濃厚って事か」
常連「状況から判断すりゃ、な。でもさぁ、さっきも言ったが」
常連「女が子供二人も連れて、どこ行ってなにするんだか」
冒険者「金持ち女の慰み者?」
常連「……あんな子供も、かぁ?」
冒険者「そりゃ、わかんねぇぜ?」
青年(…… ……なるほどね。経緯はわかった。しかし……目的は?)
常連「悪いなぁ……青年」
青年「いや……ていうか、いまいち話が見えないんだけど」
冒険者「水使いってのには上客が居たんだ、しかも女のな」
青年「……ああ、そこまでは昨日聞いた」
常連「んでな、朝まで水使いを買った後に、その女は仕事があるって書の街行きの船に」
常連「乗ったってんだが、その前に追加の金を払ったんだとよ」
青年「? 何でまた」
冒険者「夜には戻るからそれまで水使いを寝かしておいてくれって」
冒険者「……が、部屋はもぬけの殻。しかもあの小姓二人まで居ない、って言うね」
青年「……なるほど。夜までの時間を買ったのはアリバイ工作か」
常連「だろうな。小姓の方は、早朝散歩から戻らなかったらしい、し」
常連「怪しい船が港出て行くのも何人か見た人間が居るから……な」
青年「だが……ここの娼館は無理矢理働かしたりってのは無かったんだろう?」
冒険者「まあ、だからこそ新館まで建てられたんだろうがなぁ」
冒険者「けど、本当の所はわからネェよ。けど」
青年「……上客の女が三人を逃がした、ってのが濃厚って事か」
常連「状況から判断すりゃ、な。でもさぁ、さっきも言ったが」
常連「女が子供二人も連れて、どこ行ってなにするんだか」
冒険者「金持ち女の慰み者?」
常連「……あんな子供も、かぁ?」
冒険者「そりゃ、わかんねぇぜ?」
青年(…… ……なるほどね。経緯はわかった。しかし……目的は?)
104: 2014/08/25(月) 18:00:02.82 ID:7G2wc8cp0
青年(上客の女、と水使い……の関係性が見えない以上何とも……)
青年(可愛がっていた、と言うぐらいだから……連れて言った?)
青年(……否。逃げ出したいぐらいなら、わざわざそんな面倒な……)
青年(……わからないな。だが……あの二人は……)
青年(一応……魔王様達に知らせるだけはしておくか)カタン
常連「お、何だ、行くのか?」
青年「ああ……マスターもそんなんだしな」
冒険者「このおっさんは放っておいても良いんだぜ?」
青年「僕はあんた達ほど馴染みな訳でも無いしな……日を改めるよ」
常連「そうかい? ……まあ、明日には忘れてるよ、このおっさんも」バンバン
マスター「……うぅ」ムニャ
冒険者「あーあ……涎垂らしてまぁ」ハァ
青年「ビール代、おいておくよ……また、お邪魔する」
スタスタ、パタン
青年(宿に戻って……手紙を書くか)
青年(しかし……好都合、と言えば好都合か。あの双子が居なくなった、となれば)
青年(この街に居やすくはなった……ここは船の行き来も多いし)
青年(後、何日か……情報を集めて……)
スタスタ
館長「……ちょいと、兄さん」
青年「!」
館長「ああ……やっぱりね。アンタ……『魔法使い』を買いに来てた男だね」
青年「……僕をつけてたのか」
館長「髪を染めたって、アンタみたいな綺麗な顔の男は目立つのさ」
館長「……しかし、フン。もう何年も前だってのに、一向に老けて見えないね」ハンッ
青年「答えになってないぜ」
館長「口さがない女達の目に、アンタがどんな風にうつるのか教えて欲しいのかい?」
青年「……どういう意味だ」
館長「その通りさ……どうせならアンタみたいな綺麗な男に抱かれてみたい」
館長「店に来てくれれば良いのに……そんな話はアタシの耳に嫌でも入る」
青年「…… ……」
館長「そりゃね、見た目が良いだけの男なんていくらでもいるさ。だが」スッ
館長「……変装のつもりかしらないが、その剣は目立つ」
青年「!」
館長「あのマスターはおしゃべりだよ」
青年「…… ……」
青年(あいつ……!)
青年(可愛がっていた、と言うぐらいだから……連れて言った?)
青年(……否。逃げ出したいぐらいなら、わざわざそんな面倒な……)
青年(……わからないな。だが……あの二人は……)
青年(一応……魔王様達に知らせるだけはしておくか)カタン
常連「お、何だ、行くのか?」
青年「ああ……マスターもそんなんだしな」
冒険者「このおっさんは放っておいても良いんだぜ?」
青年「僕はあんた達ほど馴染みな訳でも無いしな……日を改めるよ」
常連「そうかい? ……まあ、明日には忘れてるよ、このおっさんも」バンバン
マスター「……うぅ」ムニャ
冒険者「あーあ……涎垂らしてまぁ」ハァ
青年「ビール代、おいておくよ……また、お邪魔する」
スタスタ、パタン
青年(宿に戻って……手紙を書くか)
青年(しかし……好都合、と言えば好都合か。あの双子が居なくなった、となれば)
青年(この街に居やすくはなった……ここは船の行き来も多いし)
青年(後、何日か……情報を集めて……)
スタスタ
館長「……ちょいと、兄さん」
青年「!」
館長「ああ……やっぱりね。アンタ……『魔法使い』を買いに来てた男だね」
青年「……僕をつけてたのか」
館長「髪を染めたって、アンタみたいな綺麗な顔の男は目立つのさ」
館長「……しかし、フン。もう何年も前だってのに、一向に老けて見えないね」ハンッ
青年「答えになってないぜ」
館長「口さがない女達の目に、アンタがどんな風にうつるのか教えて欲しいのかい?」
青年「……どういう意味だ」
館長「その通りさ……どうせならアンタみたいな綺麗な男に抱かれてみたい」
館長「店に来てくれれば良いのに……そんな話はアタシの耳に嫌でも入る」
青年「…… ……」
館長「そりゃね、見た目が良いだけの男なんていくらでもいるさ。だが」スッ
館長「……変装のつもりかしらないが、その剣は目立つ」
青年「!」
館長「あのマスターはおしゃべりだよ」
青年「…… ……」
青年(あいつ……!)
105: 2014/08/25(月) 18:12:27.69 ID:7G2wc8cp0
館長「……立ち話も何だね。マスターの今日の様子じゃ」
館長「ろくな酒も飲めてないだろう……相手が婆で悪いけどね」
館長「……ちょっとつきあってもらえるね?」
青年「僕を疑ってでもいるのか?」
館長「……そんなんじゃ無いさ」ハァ
青年「だったら……なんだ」
館長「アンタも何か、目的があってこの街にいるんだろう? ……勇者と、旅だった筈なのに」
青年「!」
館長「変装してまで、ここへ戻ってくるぐらいだ」
館長「……女の情報網をなめない方が良い」
青年「…… ……」
館長「ついておいで……あのマスターの店より、アンタの知りたい話が」
館長「集まるだろう場所に連れて行ってやる」
青年「僕の……知りたい話?」
館長「……後は、座ってからね。やれやれ、腰が痛くてかなわないよ」
スタスタ
青年「…… ……」
スタスタ
……
………
…………
館長「ろくな酒も飲めてないだろう……相手が婆で悪いけどね」
館長「……ちょっとつきあってもらえるね?」
青年「僕を疑ってでもいるのか?」
館長「……そんなんじゃ無いさ」ハァ
青年「だったら……なんだ」
館長「アンタも何か、目的があってこの街にいるんだろう? ……勇者と、旅だった筈なのに」
青年「!」
館長「変装してまで、ここへ戻ってくるぐらいだ」
館長「……女の情報網をなめない方が良い」
青年「…… ……」
館長「ついておいで……あのマスターの店より、アンタの知りたい話が」
館長「集まるだろう場所に連れて行ってやる」
青年「僕の……知りたい話?」
館長「……後は、座ってからね。やれやれ、腰が痛くてかなわないよ」
スタスタ
青年「…… ……」
スタスタ
……
………
…………
106: 2014/08/25(月) 18:13:22.62 ID:7G2wc8cp0
おふろとごはーん
108: 2014/08/25(月) 20:44:48.59 ID:7G2wc8cp0
カラン、コロン……
青年「……ここが……店?」
館長「狭い街だ。だが……狭いながらに『隠れ屋』ってのはあるもんさ」
館長「……アタシみたいな者はどこへ行っても顔が刺すからね」
青年(……表から見ればただの民家なのに……中は立派なモンだ)
館長「なかなか良い趣味をしてるだろう? ……買い付けにね。目の利く男を使ってるんだ」
青年「……確かにな。派手すぎず……シンプルすぎず」
館長「どこかで見た事のあるような……かい?」
青年「? ……僕はこういう物の知識や……センスに明るいとは言えないぞ」
館長「そうかい? ……なんだ、あの海賊の坊やは知り合いじゃ無いのかい」
青年「!」
館長「……全く。そのすぐに顔に出る癖をどうにかした方が良いね」クック
青年「…… ……ッ」
館長「言っただろう。女の情報網ってのを甘く見ない方が良い」
青年「……ビール」
館長「アタシも同じだ……ああ、小さなグラスで良い」
青年「……で、話ってのは何だ」
館長「まあ、そう焦るでないよ……あっちの、あの女」スッ
青年「……?」
館長「どうだい?」
青年「どうって……おい、僕は……」
館長「アタシみたいなのは顔が刺す……そういっただろうさっき」
館長「例えそれを知っていても、口にも態度にも出さない……そういう客ばかりなんだ」
青年「…… ……」
館長「あれは魔導の国の生き残りだ」
青年「!」
館長「……書の街に名を変えた時だったか……とにかく」
館長「どさくさに乗じて、逃げ出した貴族の娘、だったかな」
青年「…… ……」
館長「優れた加護、とやらが無く、親に捨てられたんだと言っていた」
青年「おい、だから、何が……」
館長「まあ、お聞きよ……で、あの隣の男。あれは始まりの国の近衛兵の息子」
青年「…… ……」
館長「元々はね、うちの女と客だったんだ」
青年「……娼館の?」
館長「そうだよ……あの娘は、ちゃんとアタシに自分の思いを話して」
館長「うちを卒業していった。今はあの男と婚姻を結んで、世界を旅していると言う」
青年「…… ……」
館長「マスターの言う『自称冒険者』より、いい話が聞けると思うよ?」
館長「アンタがその剣をどこで手に入れたかは知らないが」
館長「……まさか、盗品でも無いだろう。そんな貴重な物」
青年「…… ……」
青年「……ここが……店?」
館長「狭い街だ。だが……狭いながらに『隠れ屋』ってのはあるもんさ」
館長「……アタシみたいな者はどこへ行っても顔が刺すからね」
青年(……表から見ればただの民家なのに……中は立派なモンだ)
館長「なかなか良い趣味をしてるだろう? ……買い付けにね。目の利く男を使ってるんだ」
青年「……確かにな。派手すぎず……シンプルすぎず」
館長「どこかで見た事のあるような……かい?」
青年「? ……僕はこういう物の知識や……センスに明るいとは言えないぞ」
館長「そうかい? ……なんだ、あの海賊の坊やは知り合いじゃ無いのかい」
青年「!」
館長「……全く。そのすぐに顔に出る癖をどうにかした方が良いね」クック
青年「…… ……ッ」
館長「言っただろう。女の情報網ってのを甘く見ない方が良い」
青年「……ビール」
館長「アタシも同じだ……ああ、小さなグラスで良い」
青年「……で、話ってのは何だ」
館長「まあ、そう焦るでないよ……あっちの、あの女」スッ
青年「……?」
館長「どうだい?」
青年「どうって……おい、僕は……」
館長「アタシみたいなのは顔が刺す……そういっただろうさっき」
館長「例えそれを知っていても、口にも態度にも出さない……そういう客ばかりなんだ」
青年「…… ……」
館長「あれは魔導の国の生き残りだ」
青年「!」
館長「……書の街に名を変えた時だったか……とにかく」
館長「どさくさに乗じて、逃げ出した貴族の娘、だったかな」
青年「…… ……」
館長「優れた加護、とやらが無く、親に捨てられたんだと言っていた」
青年「おい、だから、何が……」
館長「まあ、お聞きよ……で、あの隣の男。あれは始まりの国の近衛兵の息子」
青年「…… ……」
館長「元々はね、うちの女と客だったんだ」
青年「……娼館の?」
館長「そうだよ……あの娘は、ちゃんとアタシに自分の思いを話して」
館長「うちを卒業していった。今はあの男と婚姻を結んで、世界を旅していると言う」
青年「…… ……」
館長「マスターの言う『自称冒険者』より、いい話が聞けると思うよ?」
館長「アンタがその剣をどこで手に入れたかは知らないが」
館長「……まさか、盗品でも無いだろう。そんな貴重な物」
青年「…… ……」
109: 2014/08/25(月) 20:53:52.03 ID:7G2wc8cp0
館長「で、何が言いたいか……だったね」
館長「前にも話したとおりだ。うちの娼館は、借金の形だのなんだの」
館長「無理に働かしている訳じゃ無い……まあ、老婆は確かに、アタシより」
館長「娘達を『商品』として見る目が強いかもしれないが、館長はアタシだ」
青年「……ああ。わかってる。しょ……『魔法使い』だって、そうだった」
館長「ああ。あの子は双子を養うために、自らあそこで働く事を選んだだけだ」
館長「……始まりの国の火事で焼け出された時に、思わず老婆が目をつける程……確かに、上物だよ」
青年「『魔法使い』は……」
館長「……病で氏んだよ」
青年「…… ……」
館長「驚かないのかい」
青年「……なんと無く、そんな気がしてただけだ」
青年(最後にあったとき……アレは何年前だ? ……忘れた……だが)
青年(……僕にも、彼女が長くないのだろうと言う事はわかった)ハァ
館長「そうかい」
青年「……少年と少女は、本当に居なくなった、のか」
館長「惚れた女の子供だ。気になるかい?」
青年「そんなんじゃ無い」ムッ
館長「……本当に嘘がつけないんだねぇ、お前さんは」クック
青年「……!」ドキ
館長「そんな下手な変装をするぐらいだ。お忍びの旅なんだろうが」
館長「……もう少し、ポーカーフェイスを覚える事だね」
青年(……ビックリした。そういう意味か)
館長「最初は腹の子の父親はアンタかと思ったが……」
青年「……違う。別に……あいつに惚れてたわけでも無い」
館長「そうかい?」
青年「……僕は嘘はつけない。アンタが今そういったんだ」
館長「はいはい……まあ、疑っちゃ居ない。し……まあ、どうでもいい話だ」
館長「前にも話したとおりだ。うちの娼館は、借金の形だのなんだの」
館長「無理に働かしている訳じゃ無い……まあ、老婆は確かに、アタシより」
館長「娘達を『商品』として見る目が強いかもしれないが、館長はアタシだ」
青年「……ああ。わかってる。しょ……『魔法使い』だって、そうだった」
館長「ああ。あの子は双子を養うために、自らあそこで働く事を選んだだけだ」
館長「……始まりの国の火事で焼け出された時に、思わず老婆が目をつける程……確かに、上物だよ」
青年「『魔法使い』は……」
館長「……病で氏んだよ」
青年「…… ……」
館長「驚かないのかい」
青年「……なんと無く、そんな気がしてただけだ」
青年(最後にあったとき……アレは何年前だ? ……忘れた……だが)
青年(……僕にも、彼女が長くないのだろうと言う事はわかった)ハァ
館長「そうかい」
青年「……少年と少女は、本当に居なくなった、のか」
館長「惚れた女の子供だ。気になるかい?」
青年「そんなんじゃ無い」ムッ
館長「……本当に嘘がつけないんだねぇ、お前さんは」クック
青年「……!」ドキ
館長「そんな下手な変装をするぐらいだ。お忍びの旅なんだろうが」
館長「……もう少し、ポーカーフェイスを覚える事だね」
青年(……ビックリした。そういう意味か)
館長「最初は腹の子の父親はアンタかと思ったが……」
青年「……違う。別に……あいつに惚れてたわけでも無い」
館長「そうかい?」
青年「……僕は嘘はつけない。アンタが今そういったんだ」
館長「はいはい……まあ、疑っちゃ居ない。し……まあ、どうでもいい話だ」
110: 2014/08/25(月) 21:14:06.94 ID:7G2wc8cp0
館長「問いの答えだね……イエス、だ」
館長「ある程度の噂は耳に入っているんだろう……恐らく、水使いが」
館長「連れて言ったんだろうさ」
青年「……でも、何故だ?」
館長「…… ……」
青年「水使いがあの二人の面倒を率先して見てた、と言うのは聞いた」
青年「双子も懐いていた、と。だけど……」
館長「逃げ出したいだけならば邪魔になる、と言うんだろう?」
館長「アンタ達も、だからこそ連れて行かなかった」
青年「…… ……」
館長「違うかい? 違わないはずだ」
青年「…… ……」
館長「まあ、良い……老婆が阿呆の様に騒ぎ立ててた様だからね」
館長「全く。あいつは年を取ってますます疑り深くなった」フゥ
館長「まあ、でもそれも役に立つ時もある……今回みたいにね」
青年「今回?」
館長「上客の女、だ……雷使いと言う」
青年「……顧客情報をバラして良いのか」
館長「今回は特別だ……ギブアンドテイク、だね」
青年「……僕は何も……話す事なんか、無いぞ」
館長「まあ、良いから良いから……最後までお聞き、って」
館長「……後であの夫婦を紹介するよ。詳しい話はあっちに聞けば良い」
館長「まあ……信憑性をどこまで計るかはお前さん次第、だが」
館長「……あの雷使いって女は……女も、か」
青年「?」
館長「魔導国の生き残り、だ……水使いもね」
青年「……何?」
館長「……少年と少女を連れて行った理由……に。なんとなぁく、行き当たるだろう」
青年「…… ……」
青年(雷使いと水使いが、魔導国の生き残り……? ……ッ だとすれば……!)
青年(意図的に……少女と少年を連れて行った、と言う事か……!?)
館長「本当に……表情の豊かな男だね」クス
館長「……アタシは、それが何を意味するのか……はわからない」
青年「え……?」
館長「だが……何か、意味があって……意図があって、あの二人を連れていったんだろう」
館長「否……水使いすらも意図があって、うちに働きに来たのかもしれないね。だが」
館長「……アタシにも、そこまではわからない」
青年「……何故、それを僕に話すんだ」
館長「アンタが勇者サマの仲間……だろうから、だ」
青年「…… ……」
館長「ある程度の噂は耳に入っているんだろう……恐らく、水使いが」
館長「連れて言ったんだろうさ」
青年「……でも、何故だ?」
館長「…… ……」
青年「水使いがあの二人の面倒を率先して見てた、と言うのは聞いた」
青年「双子も懐いていた、と。だけど……」
館長「逃げ出したいだけならば邪魔になる、と言うんだろう?」
館長「アンタ達も、だからこそ連れて行かなかった」
青年「…… ……」
館長「違うかい? 違わないはずだ」
青年「…… ……」
館長「まあ、良い……老婆が阿呆の様に騒ぎ立ててた様だからね」
館長「全く。あいつは年を取ってますます疑り深くなった」フゥ
館長「まあ、でもそれも役に立つ時もある……今回みたいにね」
青年「今回?」
館長「上客の女、だ……雷使いと言う」
青年「……顧客情報をバラして良いのか」
館長「今回は特別だ……ギブアンドテイク、だね」
青年「……僕は何も……話す事なんか、無いぞ」
館長「まあ、良いから良いから……最後までお聞き、って」
館長「……後であの夫婦を紹介するよ。詳しい話はあっちに聞けば良い」
館長「まあ……信憑性をどこまで計るかはお前さん次第、だが」
館長「……あの雷使いって女は……女も、か」
青年「?」
館長「魔導国の生き残り、だ……水使いもね」
青年「……何?」
館長「……少年と少女を連れて行った理由……に。なんとなぁく、行き当たるだろう」
青年「…… ……」
青年(雷使いと水使いが、魔導国の生き残り……? ……ッ だとすれば……!)
青年(意図的に……少女と少年を連れて行った、と言う事か……!?)
館長「本当に……表情の豊かな男だね」クス
館長「……アタシは、それが何を意味するのか……はわからない」
青年「え……?」
館長「だが……何か、意味があって……意図があって、あの二人を連れていったんだろう」
館長「否……水使いすらも意図があって、うちに働きに来たのかもしれないね。だが」
館長「……アタシにも、そこまではわからない」
青年「……何故、それを僕に話すんだ」
館長「アンタが勇者サマの仲間……だろうから、だ」
青年「…… ……」
111: 2014/08/25(月) 21:40:07.23 ID:7G2wc8cp0
館長「アタシが直接見たわけじゃ無い。アンタはあの時……船から下りてこなかったからね」
青年「…… ……」
館長「少女は、夢見がちな子だ。アンタの事をまるで童話か何かの王子様の様だと」
館長「興奮した様子で話して居たと聞いたよ」
青年「…… ……」
館長「少年はそんな少女が心配そうだった」
館長「……元々、少女がお茶出しをしたりすることにすら反対だったからね」
青年「だが……二人に、小姓のまねごとをさせたのはアンタだろう」
館長「働かざる者食うべからず……だ。少女にも少年にもそれは言ったんだよ?」
館長「……出て行きたいなら出て行きたいと言えば良いだけの話なんだ」
館長「怒られるかもしれない、嫌な思いをするかもしれないと……ぶつかる事を恐れてね」
館長「逃げ出す事は簡単だ……だが、ね。逃げた先で後悔しても遅いんだよ」
青年「…… ……」
館長「出来る苦労はここでしておけば良かったんだ……全く」
青年「確かに……アンタの言ってる事は間違えて無い。それが……とても優しい事だろう事も」
青年「……大人になら、わかるだろう」
館長「…… ……」
青年「だから……『魔法使い』は逃げ出す事もせず、娼館で……」
館長「さてね……真実はわからないけど」フゥ
館長「……あの子達は、自分の意思だと言うだろう。雷使いや水使いに」
館長「唆されたのかどうか……の事実を置いておいても。何でも」
青年「……だろう、な」
館長「さて。アタシの話はここまでだ。お前さんに……聞きたい事がある」
青年「……答えられる事なら」
館長「結構……あの海賊の小僧はアンタの仲間かい?」
青年「……勇者の仲間の僕に問うてるのか」
館長「…… ……」
青年「……と、すればノーだ」
館長「…… ……」
青年「友人……と言うのは烏滸がましいかもしれないな。だが、知らない奴じゃない」
館長「そうか……」
青年(なるほど。この店の内装があいつの趣味だと……すれば納得できる)
青年(信頼できる男の買い付け、ってのも……不可能な話じゃない)
青年「…… ……」
館長「少女は、夢見がちな子だ。アンタの事をまるで童話か何かの王子様の様だと」
館長「興奮した様子で話して居たと聞いたよ」
青年「…… ……」
館長「少年はそんな少女が心配そうだった」
館長「……元々、少女がお茶出しをしたりすることにすら反対だったからね」
青年「だが……二人に、小姓のまねごとをさせたのはアンタだろう」
館長「働かざる者食うべからず……だ。少女にも少年にもそれは言ったんだよ?」
館長「……出て行きたいなら出て行きたいと言えば良いだけの話なんだ」
館長「怒られるかもしれない、嫌な思いをするかもしれないと……ぶつかる事を恐れてね」
館長「逃げ出す事は簡単だ……だが、ね。逃げた先で後悔しても遅いんだよ」
青年「…… ……」
館長「出来る苦労はここでしておけば良かったんだ……全く」
青年「確かに……アンタの言ってる事は間違えて無い。それが……とても優しい事だろう事も」
青年「……大人になら、わかるだろう」
館長「…… ……」
青年「だから……『魔法使い』は逃げ出す事もせず、娼館で……」
館長「さてね……真実はわからないけど」フゥ
館長「……あの子達は、自分の意思だと言うだろう。雷使いや水使いに」
館長「唆されたのかどうか……の事実を置いておいても。何でも」
青年「……だろう、な」
館長「さて。アタシの話はここまでだ。お前さんに……聞きたい事がある」
青年「……答えられる事なら」
館長「結構……あの海賊の小僧はアンタの仲間かい?」
青年「……勇者の仲間の僕に問うてるのか」
館長「…… ……」
青年「……と、すればノーだ」
館長「…… ……」
青年「友人……と言うのは烏滸がましいかもしれないな。だが、知らない奴じゃない」
館長「そうか……」
青年(なるほど。この店の内装があいつの趣味だと……すれば納得できる)
青年(信頼できる男の買い付け、ってのも……不可能な話じゃない)
112: 2014/08/25(月) 21:47:44.16 ID:7G2wc8cp0
館長「……あの小僧は確かに海賊だ。先代の時から、アタシも何度か世話になった」
青年(女船長……か)
館長「それは、良い。立場を思えば、言い方は悪いかもしれないが」
館長「金さえもらえるのなら何でもやる、って連中だ。悪事に手を貸す以外は、な」
青年「……悪事、ね」
館長「早朝、港を離れた船は……多分あの小僧の船だろう」
館長「……雷使いが目をつけたのも、不思議じゃ無い。定期便よりも何よりも」
館長「安全な商売相手だ。子供を含む客を何処かへ運ぶだけ」
青年「……まあ、な」
館長「余計な詮索は身を滅ぼす……そんなのがあいつらの信条だったはずだ」
館長「……雷使いと水使いの意図はわからないが、小僧だって……受けて差し障りのない仕事だろう」
青年「やっぱり……僕を疑ってたのか」
館長「……否。そうじゃない。そうじゃないさ……ただ、知りたかったのさ」
青年「…… ……」
館長「お前さんが本当に無関係なら、それはそれで良かった」
館長「……心配、していない訳じゃないからね。少年と少女の事も……水使いの事も」
青年「水使いも? ……雷使いとグルかもしれないとアンタがさっき言ったんだぜ」
館長「それでもだ。それでも……うちの大事な子、だったからね」
青年「…… ……」
館長「雷使いは……あの女は、したたかな奴だ。気をつけるんだね」
青年「…… ……」
館長「ああ、後もう一つだけ」
青年「な、何だよ……まだあるのか」
青年(女船長……か)
館長「それは、良い。立場を思えば、言い方は悪いかもしれないが」
館長「金さえもらえるのなら何でもやる、って連中だ。悪事に手を貸す以外は、な」
青年「……悪事、ね」
館長「早朝、港を離れた船は……多分あの小僧の船だろう」
館長「……雷使いが目をつけたのも、不思議じゃ無い。定期便よりも何よりも」
館長「安全な商売相手だ。子供を含む客を何処かへ運ぶだけ」
青年「……まあ、な」
館長「余計な詮索は身を滅ぼす……そんなのがあいつらの信条だったはずだ」
館長「……雷使いと水使いの意図はわからないが、小僧だって……受けて差し障りのない仕事だろう」
青年「やっぱり……僕を疑ってたのか」
館長「……否。そうじゃない。そうじゃないさ……ただ、知りたかったのさ」
青年「…… ……」
館長「お前さんが本当に無関係なら、それはそれで良かった」
館長「……心配、していない訳じゃないからね。少年と少女の事も……水使いの事も」
青年「水使いも? ……雷使いとグルかもしれないとアンタがさっき言ったんだぜ」
館長「それでもだ。それでも……うちの大事な子、だったからね」
青年「…… ……」
館長「雷使いは……あの女は、したたかな奴だ。気をつけるんだね」
青年「…… ……」
館長「ああ、後もう一つだけ」
青年「な、何だよ……まだあるのか」
113: 2014/08/25(月) 21:53:14.87 ID:7G2wc8cp0
館長「……アンタが何で、そんな……不思議な程に年を取ってないのか」
館長「そこに言及する気はないけどね」
青年「…… ……」
館長「惜しくないなら髪を切るんだね。それだけで印象はがらっと変わる」
青年「髪……」
館長「男の長髪が悪いとは言わないが……さてと」スタスタ
青年「あ、おい……」
青年(髪……髪、ね)スッ
青年(別に……何気なく伸ばしてただけだ。惜しいなんて……)
館長「つきあわせて悪かったね」
青年「あ、ああ……」
男「初めまして」
女「初めまして……こんばんは」
青年「あ……ああ。初めまして…… ……おい?」
館長「勘定は全部、アタシにつけとけば良い……婆は先にお暇するよ」
スタスタ、カラン……コロン
青年「…… ……」
館長「そこに言及する気はないけどね」
青年「…… ……」
館長「惜しくないなら髪を切るんだね。それだけで印象はがらっと変わる」
青年「髪……」
館長「男の長髪が悪いとは言わないが……さてと」スタスタ
青年「あ、おい……」
青年(髪……髪、ね)スッ
青年(別に……何気なく伸ばしてただけだ。惜しいなんて……)
館長「つきあわせて悪かったね」
青年「あ、ああ……」
男「初めまして」
女「初めまして……こんばんは」
青年「あ……ああ。初めまして…… ……おい?」
館長「勘定は全部、アタシにつけとけば良い……婆は先にお暇するよ」
スタスタ、カラン……コロン
青年「…… ……」
120: 2014/08/28(木) 18:40:59.97 ID:SwsabCHM0
女「館長から聞いてるわ……世界の動向を知りたい冒険者って」
青年「!」
男「その格好から見るに始まりの国の関係者……の生き残りなんだろうが」ジロジロ
男「……盗品とかじゃ無いんだろうな?」
青年(どんな説明をしたのかは知らないが)ハァ
青年(……まあ、助かるけどね。あのババァなりの、礼って事か?)
青年(礼を……貰うほどの事を僕はしていない……)
青年(これが何かの罠…… ……否、それは無いな)ハァ
青年(……館長は、悪い人物では無い……と、判断しても良いだろう)
青年(知りたかった……と言うのも、嘘だとは思えない)
青年「僕は青年、と言う……この剣は父の……否、代々の形見だ」
青年「まだ騎士団があった頃からの」
男「…… ……」
青年「近衛兵の息子なら知ってる筈だ。盗品じゃ無いのかってのはさっきも言われたけどね」
女「館長が此処に連れてくるぐらいなんだから、そんなに睨まないの」
男「……待て。俺はまだ信用してない」
青年「まあ……怪しい奴だって言われるのは仕方無い」ハァ
男「自覚はあるんだな」フンッ
青年「別に何かの秘密が知りたい訳じゃないさ。ただ……」
男「ただ?」
青年「勇者が旅立ち、世界がどんな風に変わっていって」
青年「変わらない侭でいるのか。それが知りたい」
男「……そんな事を知ってどうする」
青年「どうもしないよ……僕に世界をどうこうする力なんて無い……いや」
青年「誰にも、かな」
青年「!」
男「その格好から見るに始まりの国の関係者……の生き残りなんだろうが」ジロジロ
男「……盗品とかじゃ無いんだろうな?」
青年(どんな説明をしたのかは知らないが)ハァ
青年(……まあ、助かるけどね。あのババァなりの、礼って事か?)
青年(礼を……貰うほどの事を僕はしていない……)
青年(これが何かの罠…… ……否、それは無いな)ハァ
青年(……館長は、悪い人物では無い……と、判断しても良いだろう)
青年(知りたかった……と言うのも、嘘だとは思えない)
青年「僕は青年、と言う……この剣は父の……否、代々の形見だ」
青年「まだ騎士団があった頃からの」
男「…… ……」
青年「近衛兵の息子なら知ってる筈だ。盗品じゃ無いのかってのはさっきも言われたけどね」
女「館長が此処に連れてくるぐらいなんだから、そんなに睨まないの」
男「……待て。俺はまだ信用してない」
青年「まあ……怪しい奴だって言われるのは仕方無い」ハァ
男「自覚はあるんだな」フンッ
青年「別に何かの秘密が知りたい訳じゃないさ。ただ……」
男「ただ?」
青年「勇者が旅立ち、世界がどんな風に変わっていって」
青年「変わらない侭でいるのか。それが知りたい」
男「……そんな事を知ってどうする」
青年「どうもしないよ……僕に世界をどうこうする力なんて無い……いや」
青年「誰にも、かな」
141: 2014/09/03(水) 10:24:57.44 ID:IvvPlV3n0
男「…… ……」
女「私は女。この人は男って言うのよ」
男「おい!」
女「先に名乗ってくれたのよ。黙った侭じゃ失礼でしょ」
青年「……君達は、冒険者なんだろう?」
女「館長さんに聞いたんでしょ?」
青年「少しだけね」
男「……剣を見せて貰えないか」
青年「え? ……ああ、良いよ」スッ
男「…… ……」ギュ……ジロジロ
女「ご免なさいね。この人……」
男「おい、余計な事言うな」
女「はいはい……全く、疑り深いんだから」フゥ
青年「男の言う事ももっともだと思うけどね」
女「え?」
青年「さっきも言ったろ……怪しい奴に見えない自覚はある」
女「面白い人ね」クス
男「……随分古い物の様だが、丁寧に……大事に手入れされてある」
青年(魔導師……否、使用人か? ……違うな)
青年(多分……父さんだ)
青年「……形見だからな」
男「しかし、その細腕でこの剣を……本当に扱うのか」ジロ
青年「形見、だと言っただろう? ……扱えないことは無い、と思ってるけど」
青年「僕は魔法の方が得意なんだ」
女「私は女。この人は男って言うのよ」
男「おい!」
女「先に名乗ってくれたのよ。黙った侭じゃ失礼でしょ」
青年「……君達は、冒険者なんだろう?」
女「館長さんに聞いたんでしょ?」
青年「少しだけね」
男「……剣を見せて貰えないか」
青年「え? ……ああ、良いよ」スッ
男「…… ……」ギュ……ジロジロ
女「ご免なさいね。この人……」
男「おい、余計な事言うな」
女「はいはい……全く、疑り深いんだから」フゥ
青年「男の言う事ももっともだと思うけどね」
女「え?」
青年「さっきも言ったろ……怪しい奴に見えない自覚はある」
女「面白い人ね」クス
男「……随分古い物の様だが、丁寧に……大事に手入れされてある」
青年(魔導師……否、使用人か? ……違うな)
青年(多分……父さんだ)
青年「……形見だからな」
男「しかし、その細腕でこの剣を……本当に扱うのか」ジロ
青年「形見、だと言っただろう? ……扱えないことは無い、と思ってるけど」
青年「僕は魔法の方が得意なんだ」
142: 2014/09/03(水) 10:38:34.66 ID:IvvPlV3n0
女「そうなの?」
男「……蒼い瞳。水の加護か」
青年「詳しいね」
男「冒険者として当然の知識だろう……」
青年「…… ……」
女「剣も使えて魔法も使える、か……何でもありね」
青年「別に……特別強い訳じゃ無い。どっちかって言うと」
青年「器用貧乏の類だよ」
男「騎士団があった頃の物だ、と言ったな」
青年「ん? ああ」
男「確かに、これは……始まりの国の騎士団の紋章に間違い無い、が」
男「……騎士団を解散し、近衛兵制度が出来た時に」
男「騎士団の主立った団員……家族。様するに」
男「中心にいた人達は、全て除団させられている」
青年「…… ……」
女「ちょっと……!」
男「お前は黙って居ろ……下っ端、と迄は言わないが……」
青年「『王子様派』の、って言葉が抜けてるんじゃない」
男「!」
青年「……直接誰かに聞いた事がある訳じゃ無いから、推測だけど」
青年「新王様派……否、衛生師派、かな?」
女「…… ……」
青年「『彼らの秘密』を知って、さらにそれを口にしない人。もしくは出来ない人」
青年「……そう言う人達で構成されたんじゃ無いの、近衛兵って」
男「お前……」
青年「あくまで推測だよ」
女「……もう良いじゃ無いの、男。彼が始まりの国の騎士団関係者の末裔って」
女「疑いようないじゃないの」ハァ
男「…… ……」スッ
青年「もう良いのか」チャキン
男「…… ……」
男「……蒼い瞳。水の加護か」
青年「詳しいね」
男「冒険者として当然の知識だろう……」
青年「…… ……」
女「剣も使えて魔法も使える、か……何でもありね」
青年「別に……特別強い訳じゃ無い。どっちかって言うと」
青年「器用貧乏の類だよ」
男「騎士団があった頃の物だ、と言ったな」
青年「ん? ああ」
男「確かに、これは……始まりの国の騎士団の紋章に間違い無い、が」
男「……騎士団を解散し、近衛兵制度が出来た時に」
男「騎士団の主立った団員……家族。様するに」
男「中心にいた人達は、全て除団させられている」
青年「…… ……」
女「ちょっと……!」
男「お前は黙って居ろ……下っ端、と迄は言わないが……」
青年「『王子様派』の、って言葉が抜けてるんじゃない」
男「!」
青年「……直接誰かに聞いた事がある訳じゃ無いから、推測だけど」
青年「新王様派……否、衛生師派、かな?」
女「…… ……」
青年「『彼らの秘密』を知って、さらにそれを口にしない人。もしくは出来ない人」
青年「……そう言う人達で構成されたんじゃ無いの、近衛兵って」
男「お前……」
青年「あくまで推測だよ」
女「……もう良いじゃ無いの、男。彼が始まりの国の騎士団関係者の末裔って」
女「疑いようないじゃないの」ハァ
男「…… ……」スッ
青年「もう良いのか」チャキン
男「…… ……」
143: 2014/09/03(水) 10:42:00.62 ID:IvvPlV3n0
良し、息抜き終了!
魔王「真に美しい世界を望む為だ」【完結】
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