1: 2014/09/07(日) 17:58:46.05 ID:bc9qlhTx0
以前まとめてくださった物を改めてまとめました。
何度も落としてしまってごめんなさい
【第一部】
勇者「拒否権はないんだな」
魔王「ああ……世界は美しい」
勇者「俺は……魔王を倒す!」
【第二部】
魔王「私が勇者になる……だと?」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
【第三部】
勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」
魔王「真に美しい世界を望む為だ」
何度も落としてしまってごめんなさい
【第一部】
勇者「拒否権はないんだな」
魔王「ああ……世界は美しい」
勇者「俺は……魔王を倒す!」
【第二部】
魔王「私が勇者になる……だと?」
勇者「俺に魔王になれ……と言うのか!」
【第三部】
勇者「拒否権の無い選択などあるものか!」
魔王「真に美しい世界を望む為だ」
2: 2014/09/07(日) 17:59:36.03 ID:bc9qlhTx0
前スレ一番最後
女「そうなの?」
男「……蒼い瞳。水の加護か」
青年「詳しいね」
男「冒険者として当然の知識だろう……」
青年「…… ……」
女「剣も使えて魔法も使える、か……何でもありね」
青年「別に……特別強い訳じゃ無い。どっちかって言うと」
青年「器用貧乏の類だよ」
男「騎士団があった頃の物だ、と言ったな」
青年「ん? ああ」
男「確かに、これは……始まりの国の騎士団の紋章に間違い無い、が」
男「……騎士団を解散し、近衛兵制度が出来た時に」
男「騎士団の主立った団員……家族。様するに」
男「中心にいた人達は、全て除団させられている」
青年「…… ……」
女「ちょっと……!」
男「お前は黙って居ろ……下っ端、と迄は言わないが……」
青年「『王子様派』の、って言葉が抜けてるんじゃない」
男「!」
青年「……直接誰かに聞いた事がある訳じゃ無いから、推測だけど」
青年「新王様派……否、衛生師派、かな?」
女「…… ……」
青年「『彼らの秘密』を知って、さらにそれを口にしない人。もしくは出来ない人」
青年「……そう言う人達で構成されたんじゃ無いの、近衛兵って」
男「お前……」
青年「あくまで推測だよ」
女「……もう良いじゃ無いの、男。彼が始まりの国の騎士団関係者の末裔って」
女「疑いようないじゃないの」ハァ
男「…… ……」スッ
青年「もう良いのか」チャキン
男「…… ……」
女「そうなの?」
男「……蒼い瞳。水の加護か」
青年「詳しいね」
男「冒険者として当然の知識だろう……」
青年「…… ……」
女「剣も使えて魔法も使える、か……何でもありね」
青年「別に……特別強い訳じゃ無い。どっちかって言うと」
青年「器用貧乏の類だよ」
男「騎士団があった頃の物だ、と言ったな」
青年「ん? ああ」
男「確かに、これは……始まりの国の騎士団の紋章に間違い無い、が」
男「……騎士団を解散し、近衛兵制度が出来た時に」
男「騎士団の主立った団員……家族。様するに」
男「中心にいた人達は、全て除団させられている」
青年「…… ……」
女「ちょっと……!」
男「お前は黙って居ろ……下っ端、と迄は言わないが……」
青年「『王子様派』の、って言葉が抜けてるんじゃない」
男「!」
青年「……直接誰かに聞いた事がある訳じゃ無いから、推測だけど」
青年「新王様派……否、衛生師派、かな?」
女「…… ……」
青年「『彼らの秘密』を知って、さらにそれを口にしない人。もしくは出来ない人」
青年「……そう言う人達で構成されたんじゃ無いの、近衛兵って」
男「お前……」
青年「あくまで推測だよ」
女「……もう良いじゃ無いの、男。彼が始まりの国の騎士団関係者の末裔って」
女「疑いようないじゃないの」ハァ
男「…… ……」スッ
青年「もう良いのか」チャキン
男「…… ……」
3: 2014/09/07(日) 18:14:28.67 ID:bc9qlhTx0
女「ちょっと。返事ぐらいしなさいよ」フゥ
男「話を戻す……下っ端、とまでは言わないが、俺の親父は」
男「近衛兵の中の一人、だった」
青年「…… ……」
男「城の警備を任された……否、城に残された者は大まかに分けて」
男「氏んでも誰にも何も言われないだろう、身寄りの無い者」
女「…… ……」
男「衛生師様に忠誠を誓う者……大半は弱みを握られて、逃げ場を無くした者、かな」
青年「君の父親はどっちだったんだい」
男「……後者だ」
青年(あの男のやりそうな事だ)ハァ
男「詳細は……良いだろう。とにかく、親父はあの日……あの火事の日まで」
男「城で働いていた」
青年「……どうしてそれを僕に話してくれるの、ってのは愚問かな」
女「先を急いでも良い事は無いわよ。とりあえず聞いてみたら?」
女「……貴方の為になるかどうかは、わからないけど」
青年「…… ……」
男「未だに詳細は知らん。だが、あの国の港まで俺は逃げた。あの丘の麓の小さな村までは」
男「火が来ないだろうと思っては居たが、皆こぞって港まで急いだ」
男「そこで俺は……待った。だが、親父は来なかった。おふくろも」
男「…… ……」
青年「……?」
女「だからどう、じゃ無いのよ」
青年「え?」
女「私はね、魔導国が書の街に名を変えたときに、捨てられたの」
青年「…… ……」
女「『出来損ない』だったから……貴方にはこれで通じるわよね?」
男「話を戻す……下っ端、とまでは言わないが、俺の親父は」
男「近衛兵の中の一人、だった」
青年「…… ……」
男「城の警備を任された……否、城に残された者は大まかに分けて」
男「氏んでも誰にも何も言われないだろう、身寄りの無い者」
女「…… ……」
男「衛生師様に忠誠を誓う者……大半は弱みを握られて、逃げ場を無くした者、かな」
青年「君の父親はどっちだったんだい」
男「……後者だ」
青年(あの男のやりそうな事だ)ハァ
男「詳細は……良いだろう。とにかく、親父はあの日……あの火事の日まで」
男「城で働いていた」
青年「……どうしてそれを僕に話してくれるの、ってのは愚問かな」
女「先を急いでも良い事は無いわよ。とりあえず聞いてみたら?」
女「……貴方の為になるかどうかは、わからないけど」
青年「…… ……」
男「未だに詳細は知らん。だが、あの国の港まで俺は逃げた。あの丘の麓の小さな村までは」
男「火が来ないだろうと思っては居たが、皆こぞって港まで急いだ」
男「そこで俺は……待った。だが、親父は来なかった。おふくろも」
男「…… ……」
青年「……?」
女「だからどう、じゃ無いのよ」
青年「え?」
女「私はね、魔導国が書の街に名を変えたときに、捨てられたの」
青年「…… ……」
女「『出来損ない』だったから……貴方にはこれで通じるわよね?」
4: 2014/09/07(日) 18:37:14.59 ID:bc9qlhTx0
青年「…… ……」
女「うん、とは言いにくいかしらね……まあ、良いわ」
女「彼らは逃げたわ。私みたいな人は……他にも居た。勿論、連れて行かれた人もね」
青年「連れて行かれた?」
女「お世話係が必要なの。それも名ばかり、だけど」
青年「……奴隷だろ、要するに」
女「慰み者、とかね……」
男「…… ……」
女「今から思えば私はラッキーだったのかもしれないわ。最終的には」
女「この街に来て、あの娼館で働けたもの」
青年「……娼館で働く事が、ラッキー?」
女「そうよ。確かにね……やる事、仕事と言えば」
女「にこにことして、男に媚びを売り、股を開く事」
男「おい」
女「……それだけ、と言ってしまえばそうだし、大変なのよ、辛いのよ、って」
女「それも嘘じゃ無い。でも」
女「……館長さん達は、私を『モノ』としては扱わなかった」
青年「『大事な商品』じゃ無いのか」
男「お前……ッ」ガタンッ
女「落ち着いて……そうよ。大事な商品。だから」
女「『モノ』じゃ無いの。意思もあれば感情もあるのよ。勿論、中には」
女「ていよく乗せられて、逃げられなくなっちゃった子も居たかもしれないわ。でも」
女「最終的な決定は……絶対に『自分』なのよ」
青年「……そう言ってる、知り合いが居たよ」
男「…… ……」
女「……氏んでも構わない、なんて言われなかった。それだけで十分だったわ」
女「勿論、化粧やらドレスやら、必要よ。でも」
女「居る物は自分で選べたし、体調を崩せば休めもした。ねぎらってももらえた」
女「それがね、早く店に出て働いて欲しいから、でも良いのよ」
青年「……理解は出来る。だが、それが何の……」
女「最後まで聞きなさいって……それで。男と知り合ったの」
男「……俺は始まりの国を出てから傭兵の仕事をしていたんだ」
青年「……この辺で、か?」
男「否。鍛冶師の村、北の街……あのあたりだ」
男「顧客の要望でこの街まで来たときに……まあ」
女「私を買いに来たわけ」フフ
青年「……あのさ。僕はのろけを聞くためにここに居る訳」
女「もう。最後まで聞きなさいってば」
女「うん、とは言いにくいかしらね……まあ、良いわ」
女「彼らは逃げたわ。私みたいな人は……他にも居た。勿論、連れて行かれた人もね」
青年「連れて行かれた?」
女「お世話係が必要なの。それも名ばかり、だけど」
青年「……奴隷だろ、要するに」
女「慰み者、とかね……」
男「…… ……」
女「今から思えば私はラッキーだったのかもしれないわ。最終的には」
女「この街に来て、あの娼館で働けたもの」
青年「……娼館で働く事が、ラッキー?」
女「そうよ。確かにね……やる事、仕事と言えば」
女「にこにことして、男に媚びを売り、股を開く事」
男「おい」
女「……それだけ、と言ってしまえばそうだし、大変なのよ、辛いのよ、って」
女「それも嘘じゃ無い。でも」
女「……館長さん達は、私を『モノ』としては扱わなかった」
青年「『大事な商品』じゃ無いのか」
男「お前……ッ」ガタンッ
女「落ち着いて……そうよ。大事な商品。だから」
女「『モノ』じゃ無いの。意思もあれば感情もあるのよ。勿論、中には」
女「ていよく乗せられて、逃げられなくなっちゃった子も居たかもしれないわ。でも」
女「最終的な決定は……絶対に『自分』なのよ」
青年「……そう言ってる、知り合いが居たよ」
男「…… ……」
女「……氏んでも構わない、なんて言われなかった。それだけで十分だったわ」
女「勿論、化粧やらドレスやら、必要よ。でも」
女「居る物は自分で選べたし、体調を崩せば休めもした。ねぎらってももらえた」
女「それがね、早く店に出て働いて欲しいから、でも良いのよ」
青年「……理解は出来る。だが、それが何の……」
女「最後まで聞きなさいって……それで。男と知り合ったの」
男「……俺は始まりの国を出てから傭兵の仕事をしていたんだ」
青年「……この辺で、か?」
男「否。鍛冶師の村、北の街……あのあたりだ」
男「顧客の要望でこの街まで来たときに……まあ」
女「私を買いに来たわけ」フフ
青年「……あのさ。僕はのろけを聞くためにここに居る訳」
女「もう。最後まで聞きなさいってば」
6: 2014/09/07(日) 20:41:22.71 ID:bc9qlhTx0
青年「…… ……」
女「愛情だと思う?」
青年「は?」
女「最初っからよ……答えはノー」
青年「……そりゃそうだろ。言い方悪いの承知で、だけど」
青年「金で買ったんだろ、アンタを」
男「でも初対面で惹かれたんだ」
青年「……だから、さ」ハァ
女「似てるからよ」
青年「…… ……」
男「共通点だ……『何かを失った』」
女「国だったり、家族だったり、生活だったり……『愛』だったり、ね」
青年「あのさ…… ……」ハァ
女「不思議でしょ。洗いざらい話したのよ。二人ともね」
青年「…… ……?」
男「身の上、さ……俺の素性、こいつの素性」
女「金での関係って気安さもあったわね、きっと。でも」
女「……同情を愛情に変えるのに、とても有効な手段なのよ」
男「同じ事が言える……だろう。男女、では無いかもしれないが」
青年「……? …… ……ッ」ハッ
女「わかるでしょ。あの小姓の双子。と……水使い。それから」
青年「雷使いか……」
男「……魔導国の、自称貴族の生き残り、だ」
女「雷使いの方、だけね」
青年「……水使いは?」
女「よく知ってるわ。あの子は、私と『同じ』だったもの」
青年「!」
女「多少の年の差はあるけれど。人の欲……とりわけ性欲、なんて物に」
女「分別は必要無いの。対象が『出来損ない』であるのなら尚更」
青年「…… ……」
女「雷使いは幼い頃から目立つ子だったわ。魔導国の人間に取って『雷』は特別だもの」
女「優れた加護を持つのなら、尚更ね」
青年「…… ……」
男「お前が、あの双子達に縁もゆかりも無いだろう事はわかっている」
男「……と、推測して良いだろう、だがな。魔導国云々も、直接的に関係無いのかもしれないが」
男「その素性を思えば、興味を持っても仕方ない事だとも思う」
青年「……僕が、始まりの国の出身者の末裔だから、か」
男「違わないのだろう?」
青年「……ああ。嘘じゃ無い」
女「愛情だと思う?」
青年「は?」
女「最初っからよ……答えはノー」
青年「……そりゃそうだろ。言い方悪いの承知で、だけど」
青年「金で買ったんだろ、アンタを」
男「でも初対面で惹かれたんだ」
青年「……だから、さ」ハァ
女「似てるからよ」
青年「…… ……」
男「共通点だ……『何かを失った』」
女「国だったり、家族だったり、生活だったり……『愛』だったり、ね」
青年「あのさ…… ……」ハァ
女「不思議でしょ。洗いざらい話したのよ。二人ともね」
青年「…… ……?」
男「身の上、さ……俺の素性、こいつの素性」
女「金での関係って気安さもあったわね、きっと。でも」
女「……同情を愛情に変えるのに、とても有効な手段なのよ」
男「同じ事が言える……だろう。男女、では無いかもしれないが」
青年「……? …… ……ッ」ハッ
女「わかるでしょ。あの小姓の双子。と……水使い。それから」
青年「雷使いか……」
男「……魔導国の、自称貴族の生き残り、だ」
女「雷使いの方、だけね」
青年「……水使いは?」
女「よく知ってるわ。あの子は、私と『同じ』だったもの」
青年「!」
女「多少の年の差はあるけれど。人の欲……とりわけ性欲、なんて物に」
女「分別は必要無いの。対象が『出来損ない』であるのなら尚更」
青年「…… ……」
女「雷使いは幼い頃から目立つ子だったわ。魔導国の人間に取って『雷』は特別だもの」
女「優れた加護を持つのなら、尚更ね」
青年「…… ……」
男「お前が、あの双子達に縁もゆかりも無いだろう事はわかっている」
男「……と、推測して良いだろう、だがな。魔導国云々も、直接的に関係無いのかもしれないが」
男「その素性を思えば、興味を持っても仕方ない事だとも思う」
青年「……僕が、始まりの国の出身者の末裔だから、か」
男「違わないのだろう?」
青年「……ああ。嘘じゃ無い」
7: 2014/09/07(日) 21:00:38.56 ID:bc9qlhTx0
14日の試験まで、なかなかこれません……
が、すぐに落ちちゃう様なので、できる限り保守しにきます
ほんまにごめんね……本日は寝ますー
では!
が、すぐに落ちちゃう様なので、できる限り保守しにきます
ほんまにごめんね……本日は寝ますー
では!
30: 2014/09/12(金) 09:51:28.29 ID:StMvfW/U0
女「確かに推測の域を出ない、けれど。水使いがあの娼館で働いていた事は」
女「意味があったかもしれない、のよ」
青年「……双子を連れ出すために?だが…… ……」
青年(どこまで知っているんだ? ……あの双子が、少女の子供だと……)
男「どこまで信じていい話かわからないがな」
青年「え?」
男「……女」
女「ええ…… ……魔導国が書の街へと変わったときに、当時の代表者がね」
女「始まりの国の新王様の元へ召し出されたのよ」
青年「……ああ」
男「流石にそれぐらいは知っているか。だが……彼女のその後はわからないらしい」
青年「あの火事……」
女「それ以前から、よ。書の街の人達……あの街に残った多くの人達は」
女「所謂『魔導国の貴族達』……ま、以前の権力階級の者達……から」
女「捨てられたも同然よ。でも、それで良かったはず」
青年「…… ……」
女「大げさかもしれないけれど、やっと……人並みのささやかな幸せを手に入れたのよ」
男「……誰も、その代表者の事も、急に居なくなった貴族達の事も気にしなかった」
青年「……それは、本当なのか?」
男「え?」
青年「『誰も気にしなかった』…… ……だ」
女「どれも推測の域は出ない。でもね……そうだろう、と思う方がしっくり来るのよ」
青年「街の様子、か」
女「……私が居たのは子供の頃だけ。それでも、随分変わったわ」
青年「…… ……」
女「意味があったかもしれない、のよ」
青年「……双子を連れ出すために?だが…… ……」
青年(どこまで知っているんだ? ……あの双子が、少女の子供だと……)
男「どこまで信じていい話かわからないがな」
青年「え?」
男「……女」
女「ええ…… ……魔導国が書の街へと変わったときに、当時の代表者がね」
女「始まりの国の新王様の元へ召し出されたのよ」
青年「……ああ」
男「流石にそれぐらいは知っているか。だが……彼女のその後はわからないらしい」
青年「あの火事……」
女「それ以前から、よ。書の街の人達……あの街に残った多くの人達は」
女「所謂『魔導国の貴族達』……ま、以前の権力階級の者達……から」
女「捨てられたも同然よ。でも、それで良かったはず」
青年「…… ……」
女「大げさかもしれないけれど、やっと……人並みのささやかな幸せを手に入れたのよ」
男「……誰も、その代表者の事も、急に居なくなった貴族達の事も気にしなかった」
青年「……それは、本当なのか?」
男「え?」
青年「『誰も気にしなかった』…… ……だ」
女「どれも推測の域は出ない。でもね……そうだろう、と思う方がしっくり来るのよ」
青年「街の様子、か」
女「……私が居たのは子供の頃だけ。それでも、随分変わったわ」
青年「…… ……」
31: 2014/09/12(金) 10:12:42.93 ID:StMvfW/U0
男「あの火事のどさくさで……生きていたら、の前提だがな」
青年「!」
男「……逃げ出したのでは無いか、との話が持ち上がってもおかしく無い」
女「女一人の足では遠くへは行けない。ましてや……蝶よ花よと育てられて来ただろう」
女「魔導国の旧貴族の娘。生きる術だって……」
青年「……目をつける、にしても、だ。ちょっと安易じゃ無いか」
女「まあ、ね。でも可能性がゼロとは言えないわ。だから……の」
女「水使い、だったんじゃないかしら?」
青年「…… ……」
女「空振りに終わったって、彼らの元には金が入ってくるのよ」
青年「彼ら?」
女「……雷使いを筆頭にした、魔導国の生き残り達」
青年「!?」
女「書の街から逃げ出した旧貴族達の生き残りよ」
青年「……なるほど。理屈は通る……だが」
男「彼らは自分の腕には自信がある筈だ。そもそもが優れた加護とやらを」
男「持っていて当然、の奴らなんだろう……それに金があれば傭兵を雇う事も出来る」
女「実情はどうであれ、彼らは……潜んで、力を蓄えようとしてるんだと思う」
青年「……で、運良く……あたりだった、と言いたいのか?」
男「……双子ってのに意味があるんだろう?」
女「少し違うわ。彼らがあくまでもこだわるのは『血』」
青年「……『始まりの姉弟』か」
女「!」
男「始まりの姉弟?」
女「……貴方、よく知ってるわね、青年?」
青年「伊達に旅をしてきたわけじゃ無い」
女「要するに近親婚の為よ」
男「……ッ」
青年「……お前、知らなかったのか?」
男「…… ……はっきり、とは」
女「そこまで詳しくは話してない……必要なら、後で教えてあげるわよ、男」
男「…… ……」
青年「魔導国の血、近親婚…… ……なるほど、な」ハァ
女「合点がいった?」
青年「そして、雷の加護、か」
男「……俺にはこだわる理由、ってのがいまいち理解できん、が」
女「あの人達に取れば、重要なポイントなのよ」
青年「!」
男「……逃げ出したのでは無いか、との話が持ち上がってもおかしく無い」
女「女一人の足では遠くへは行けない。ましてや……蝶よ花よと育てられて来ただろう」
女「魔導国の旧貴族の娘。生きる術だって……」
青年「……目をつける、にしても、だ。ちょっと安易じゃ無いか」
女「まあ、ね。でも可能性がゼロとは言えないわ。だから……の」
女「水使い、だったんじゃないかしら?」
青年「…… ……」
女「空振りに終わったって、彼らの元には金が入ってくるのよ」
青年「彼ら?」
女「……雷使いを筆頭にした、魔導国の生き残り達」
青年「!?」
女「書の街から逃げ出した旧貴族達の生き残りよ」
青年「……なるほど。理屈は通る……だが」
男「彼らは自分の腕には自信がある筈だ。そもそもが優れた加護とやらを」
男「持っていて当然、の奴らなんだろう……それに金があれば傭兵を雇う事も出来る」
女「実情はどうであれ、彼らは……潜んで、力を蓄えようとしてるんだと思う」
青年「……で、運良く……あたりだった、と言いたいのか?」
男「……双子ってのに意味があるんだろう?」
女「少し違うわ。彼らがあくまでもこだわるのは『血』」
青年「……『始まりの姉弟』か」
女「!」
男「始まりの姉弟?」
女「……貴方、よく知ってるわね、青年?」
青年「伊達に旅をしてきたわけじゃ無い」
女「要するに近親婚の為よ」
男「……ッ」
青年「……お前、知らなかったのか?」
男「…… ……はっきり、とは」
女「そこまで詳しくは話してない……必要なら、後で教えてあげるわよ、男」
男「…… ……」
青年「魔導国の血、近親婚…… ……なるほど、な」ハァ
女「合点がいった?」
青年「そして、雷の加護、か」
男「……俺にはこだわる理由、ってのがいまいち理解できん、が」
女「あの人達に取れば、重要なポイントなのよ」
32: 2014/09/12(金) 10:24:32.02 ID:StMvfW/U0
青年「……あの小姓の双子が、魔導国の貴族の生き残りであって」
青年「雷の……優れた加護を持つ者だとして」
青年「……それを理解した上で、雷使いが連れ出した、とするのなら」
青年(もし、じゃ無い……! この二人に話す訳にはいかない、が)
青年(……ッ 雷使い達……旧貴族達は、確実に……!)
女「……どこまで、どんな規模で考えてるんだかわからないけどね」
女「でも……彼ら旧貴族達の考えは多分……」
青年「『魔導国の再建』だな」
女「頭が良い人で助かるわ」
男「……そんな簡単に国など、再建出来る訳が無いだろうに」ハァ
女「そりゃね。でも……さっき青年の言った『始まりの姉弟』をなぞろうとしてるんだろうなって」
女「推測は出来る……わよね?」
青年「……ああ」
青年(秘書の『呪い』…… ……か)ハァ
青年(否。 ……それにばかり囚われる訳にもいかない、が)
青年(……注意するに超した事は無い。だが……)
女「ただ、ね……」ハァ
男「ただ?」
女「……もくろみが外れた時、がかわいそうだなと思うわ」
青年「……優れた加護か」
女「ええ。あの双子は、きっと魔法の知識も何も無い。勿論」
女「雷使いの事だから、教えようとはするんだろうけど」
男「才能……があれば、魔法は使える様になるんだろう?」
女「問題は『加護』よ。もしあの二人に……否、どちらか片方だけにでも」
女「……優れた加護がなかったら」
青年「『始まりの姉弟』をなぞるって言う計画は頓挫するが」
青年「……心配なのは双子の扱い、だろう」
女「まさか妥協するとも思えないしね」
青年「……双子の件については、わかった。それより……」
青年「その、貴族達が潜んでいるだろうって言う……場所は?」
女「そこまでは流石に……でも」
女「……青年、話を知っているのなら思い当たる所はあるんじゃない?」
青年(……紫の魔王の側近達が難破した場所……北の街の側? ……しかし)
女「まあ、貴方がどこまで知っているのかはわからないけど」
女「……私もね。これ以上詳しくは知らないの」
男「そうなのか?」
女「貴族達でも一部しか知らない話……だもの」
女「私も、耳に挟んだ事を自分でかろうじて納得いくようにつなぎ合わせただけよ」
青年「……何故、話してくれた」
青年「雷の……優れた加護を持つ者だとして」
青年「……それを理解した上で、雷使いが連れ出した、とするのなら」
青年(もし、じゃ無い……! この二人に話す訳にはいかない、が)
青年(……ッ 雷使い達……旧貴族達は、確実に……!)
女「……どこまで、どんな規模で考えてるんだかわからないけどね」
女「でも……彼ら旧貴族達の考えは多分……」
青年「『魔導国の再建』だな」
女「頭が良い人で助かるわ」
男「……そんな簡単に国など、再建出来る訳が無いだろうに」ハァ
女「そりゃね。でも……さっき青年の言った『始まりの姉弟』をなぞろうとしてるんだろうなって」
女「推測は出来る……わよね?」
青年「……ああ」
青年(秘書の『呪い』…… ……か)ハァ
青年(否。 ……それにばかり囚われる訳にもいかない、が)
青年(……注意するに超した事は無い。だが……)
女「ただ、ね……」ハァ
男「ただ?」
女「……もくろみが外れた時、がかわいそうだなと思うわ」
青年「……優れた加護か」
女「ええ。あの双子は、きっと魔法の知識も何も無い。勿論」
女「雷使いの事だから、教えようとはするんだろうけど」
男「才能……があれば、魔法は使える様になるんだろう?」
女「問題は『加護』よ。もしあの二人に……否、どちらか片方だけにでも」
女「……優れた加護がなかったら」
青年「『始まりの姉弟』をなぞるって言う計画は頓挫するが」
青年「……心配なのは双子の扱い、だろう」
女「まさか妥協するとも思えないしね」
青年「……双子の件については、わかった。それより……」
青年「その、貴族達が潜んでいるだろうって言う……場所は?」
女「そこまでは流石に……でも」
女「……青年、話を知っているのなら思い当たる所はあるんじゃない?」
青年(……紫の魔王の側近達が難破した場所……北の街の側? ……しかし)
女「まあ、貴方がどこまで知っているのかはわからないけど」
女「……私もね。これ以上詳しくは知らないの」
男「そうなのか?」
女「貴族達でも一部しか知らない話……だもの」
女「私も、耳に挟んだ事を自分でかろうじて納得いくようにつなぎ合わせただけよ」
青年「……何故、話してくれた」
33: 2014/09/12(金) 10:35:40.61 ID:StMvfW/U0
女「館長さんに頼まれた、のもあるけれど」
女「……知りたいんでしょう。世界がどう変わって、変わらないか」
青年「……ああ」
男「俺たちやお前一人にどうにか出来る事では無いと思うんだがな」
男「勇者が魔王を倒そうとしても……そうやって、人同士で下らない争いを繰り返していては……」
青年「不思議に思っていた事がある」
女「え?」
青年「……過去、何度も勇者……が旅立ち、魔王を倒してきた筈だ」
青年「そうして、魔王の復活と共に勇者が復活する」
男「……今の勇者様は確か、女……の子、だったな」
女「以前港街に立ち寄ってたって聞いてるわよね」
青年「……ああ。確かに、魔王の居城は遙か……遠い最果ての地にある、と言う」
青年「勇者が力をつけて、あの地へ向かって……そんな話が、隅々まで」
青年「全世界に逐一轟いて行くわけじゃ無いってのは、わかるんだ」
女「……魔王が復活する、って言うのに、皆……のんきそう?」
男「女!?」
青年「…… ……否定はしない」
女「そうね。だって……どこに居るのか。どんな姿をしているのかわからない」
女「『強大で恐ろしい存在』よりも、身近な病なんかの方が怖いもの」
青年「…… ……」
女「生きていくだけで精一杯の人だって居る。そりゃ、北の街とか鍛冶師の村の方へ行けば」
女「ここら辺に比べたら、魔物の数も多いし、力も強いでしょうよ」
女「……でも、この街らへんはそうじゃない。それに」
青年「『勇者がなんとかしてくれる』…… ……か」
男「……始まりの国が無くなった事も大きいだろうな」
男「勇者の旅立ちの地点、と言うのが無くなり、国としてのバックアップも無い」
男「情報をまとめ、発信しようとする『王』の存在も無い」
女「……物語の様な世界のお話、って思っても、仕方ないのかもしれないわよ」
青年「……わかってる」
女「私達は、もう……明確に『勇者が魔王を倒した』事すら知る術が無いのかもしれないわね」フゥ
女「……知りたいんでしょう。世界がどう変わって、変わらないか」
青年「……ああ」
男「俺たちやお前一人にどうにか出来る事では無いと思うんだがな」
男「勇者が魔王を倒そうとしても……そうやって、人同士で下らない争いを繰り返していては……」
青年「不思議に思っていた事がある」
女「え?」
青年「……過去、何度も勇者……が旅立ち、魔王を倒してきた筈だ」
青年「そうして、魔王の復活と共に勇者が復活する」
男「……今の勇者様は確か、女……の子、だったな」
女「以前港街に立ち寄ってたって聞いてるわよね」
青年「……ああ。確かに、魔王の居城は遙か……遠い最果ての地にある、と言う」
青年「勇者が力をつけて、あの地へ向かって……そんな話が、隅々まで」
青年「全世界に逐一轟いて行くわけじゃ無いってのは、わかるんだ」
女「……魔王が復活する、って言うのに、皆……のんきそう?」
男「女!?」
青年「…… ……否定はしない」
女「そうね。だって……どこに居るのか。どんな姿をしているのかわからない」
女「『強大で恐ろしい存在』よりも、身近な病なんかの方が怖いもの」
青年「…… ……」
女「生きていくだけで精一杯の人だって居る。そりゃ、北の街とか鍛冶師の村の方へ行けば」
女「ここら辺に比べたら、魔物の数も多いし、力も強いでしょうよ」
女「……でも、この街らへんはそうじゃない。それに」
青年「『勇者がなんとかしてくれる』…… ……か」
男「……始まりの国が無くなった事も大きいだろうな」
男「勇者の旅立ちの地点、と言うのが無くなり、国としてのバックアップも無い」
男「情報をまとめ、発信しようとする『王』の存在も無い」
女「……物語の様な世界のお話、って思っても、仕方ないのかもしれないわよ」
青年「……わかってる」
女「私達は、もう……明確に『勇者が魔王を倒した』事すら知る術が無いのかもしれないわね」フゥ
34: 2014/09/12(金) 11:12:27.58 ID:StMvfW/U0
青年「魔物が弱くなった……数が減った。もしかしたら」
青年「勇者様が、魔王を倒したんじゃ無いか……」
男「……少なくとも、次の魔王が復活するまでは、安心だと。判断する事は出来る、がな」
女「でもね。国……指導者、が居ない以上」
青年「……『勇者の復活』は、諸手の上げての歓迎でも無い、な」
男「え?」
青年「そうだろう。今まで……始まりの国があった時は、乗せられた部分だって大きい筈さ」
青年「勇者が居るから大丈夫。勇者が何とかしてくれる」
青年「雰囲気に飲まれた部分だって大きい。今回の……女勇者の様に」
青年「……目立たないのが悪い、とは言わないけどな」
女「インパクトを与える演出をしてくれる後ろ盾がない分」
女「……なあなあになって言ってしまうのも、仕方ない事よね」
男「…… ……それは、わかる。だが、歓迎されない、と言うのは……」
青年「そうだろう? ……勇者の復活は、魔王の復活を意味するんだ」
男「あ……」
青年「そのどちらも……遠い世界の御伽噺、になっていくならば」
青年「ある意味、平和かもしれないけどね」
女「……本当にそう思うの?」
青年「…… ……」
女「嘘つきね。そんな事を思うなら、私達に話を聞きたいなんて言わないでしょ」
青年「……僕は嘘はつかない」
男「…… ……」
青年「表面上だけの平和なんて意味が無い」
青年「……勇者は、魔王を倒さなければならないんだ」
女「…… ……」
男「…… ……」
青年「……ありがとう。色々……興味深い話を聞かせてくれた」
女「いいえ……お役に立てたなら良かった、わ」
男「お前はこれからどうするんだ?」
青年「え?」
青年「勇者様が、魔王を倒したんじゃ無いか……」
男「……少なくとも、次の魔王が復活するまでは、安心だと。判断する事は出来る、がな」
女「でもね。国……指導者、が居ない以上」
青年「……『勇者の復活』は、諸手の上げての歓迎でも無い、な」
男「え?」
青年「そうだろう。今まで……始まりの国があった時は、乗せられた部分だって大きい筈さ」
青年「勇者が居るから大丈夫。勇者が何とかしてくれる」
青年「雰囲気に飲まれた部分だって大きい。今回の……女勇者の様に」
青年「……目立たないのが悪い、とは言わないけどな」
女「インパクトを与える演出をしてくれる後ろ盾がない分」
女「……なあなあになって言ってしまうのも、仕方ない事よね」
男「…… ……それは、わかる。だが、歓迎されない、と言うのは……」
青年「そうだろう? ……勇者の復活は、魔王の復活を意味するんだ」
男「あ……」
青年「そのどちらも……遠い世界の御伽噺、になっていくならば」
青年「ある意味、平和かもしれないけどね」
女「……本当にそう思うの?」
青年「…… ……」
女「嘘つきね。そんな事を思うなら、私達に話を聞きたいなんて言わないでしょ」
青年「……僕は嘘はつかない」
男「…… ……」
青年「表面上だけの平和なんて意味が無い」
青年「……勇者は、魔王を倒さなければならないんだ」
女「…… ……」
男「…… ……」
青年「……ありがとう。色々……興味深い話を聞かせてくれた」
女「いいえ……お役に立てたなら良かった、わ」
男「お前はこれからどうするんだ?」
青年「え?」
35: 2014/09/12(金) 11:29:55.23 ID:StMvfW/U0
青年「……そう、だな」ハァ
青年(この街からあの双子が居なくなった、と言うのも)
青年(手放しに喜んで入られそうに無い、が……かと言って、追っていく訳にもな)
青年(勇者……魔王様の話も、世界がこんな様子じゃ……外側から仕入れられる話も)
青年(ほぼ無いと言っていい……)
女「勇者様が旅立たれて……どれぐらいかも、正確にはわからないけれど」
女「もし、魔王を倒した……のなら、少しずつでも、平和にはなっていくでしょうね」
男「……ああ。傭兵としては当分、目立った働きは出来ないかもしれん」
青年「さっきの話じゃ無いが……当分、平和な状態が続くだろうな」
男「魔王が復活するまで、か」
女「……雷使い達にしたって、はいそうですかって、さっさと何かを出来る訳じゃないものね」
女「何十年、何百年……そんな時間をかける気なのかもね」
男「現実味の無い話だな」ハァ
女「頓挫してしまえばそれこそめでたしめでたし、だわ」
女「『始まりの姉弟』の話だって……あれこそ、御伽噺みたいなものだもの」
女「旧貴族達……雷使い達だけが、至極まじめなつもりってだけで、ね」
青年「…… ……」
青年(そっちを追ってみるか……否。しかし……)
青年(……駄目だな。余計な事に首は突っ込まない方が良い、が)
青年(いずれにせよ、魔王様と魔導師には知らせておかないとな……)ハァ
男「何だよ、ため息ついて」
青年「……いや、何でも無い。だが……旅をする中でわかるものもあるかもしれないしな」
青年「特にこれといって行く当ても無い。のんびり……世界を回るさ」
女「そうね。うってつけ……かもね。仮初めであっても……平和になって行く最中、なら」
男「……俺たちもどうしようか」
女「そうねぇ……」
青年「僕は宿に戻る……君たちの旅の安全を祈るよ」
男「……ああ。また、何処かであったら……」
青年「……ああ。よろしく。そのときは酒でもおごるよ」
女「貴方も気をつけて、青年」
スタスタ
カラン……パタン
青年(……行く当てが無い。否……することが無い?)
青年(困ったな……一所にはとどまれないし)
青年(…… ……あの小屋、帰ってみよう、かな)
青年「……平和、か」ハァ
……
………
…………
青年(この街からあの双子が居なくなった、と言うのも)
青年(手放しに喜んで入られそうに無い、が……かと言って、追っていく訳にもな)
青年(勇者……魔王様の話も、世界がこんな様子じゃ……外側から仕入れられる話も)
青年(ほぼ無いと言っていい……)
女「勇者様が旅立たれて……どれぐらいかも、正確にはわからないけれど」
女「もし、魔王を倒した……のなら、少しずつでも、平和にはなっていくでしょうね」
男「……ああ。傭兵としては当分、目立った働きは出来ないかもしれん」
青年「さっきの話じゃ無いが……当分、平和な状態が続くだろうな」
男「魔王が復活するまで、か」
女「……雷使い達にしたって、はいそうですかって、さっさと何かを出来る訳じゃないものね」
女「何十年、何百年……そんな時間をかける気なのかもね」
男「現実味の無い話だな」ハァ
女「頓挫してしまえばそれこそめでたしめでたし、だわ」
女「『始まりの姉弟』の話だって……あれこそ、御伽噺みたいなものだもの」
女「旧貴族達……雷使い達だけが、至極まじめなつもりってだけで、ね」
青年「…… ……」
青年(そっちを追ってみるか……否。しかし……)
青年(……駄目だな。余計な事に首は突っ込まない方が良い、が)
青年(いずれにせよ、魔王様と魔導師には知らせておかないとな……)ハァ
男「何だよ、ため息ついて」
青年「……いや、何でも無い。だが……旅をする中でわかるものもあるかもしれないしな」
青年「特にこれといって行く当ても無い。のんびり……世界を回るさ」
女「そうね。うってつけ……かもね。仮初めであっても……平和になって行く最中、なら」
男「……俺たちもどうしようか」
女「そうねぇ……」
青年「僕は宿に戻る……君たちの旅の安全を祈るよ」
男「……ああ。また、何処かであったら……」
青年「……ああ。よろしく。そのときは酒でもおごるよ」
女「貴方も気をつけて、青年」
スタスタ
カラン……パタン
青年(……行く当てが無い。否……することが無い?)
青年(困ったな……一所にはとどまれないし)
青年(…… ……あの小屋、帰ってみよう、かな)
青年「……平和、か」ハァ
……
………
…………
62: 2014/09/17(水) 12:26:46.08 ID:v+xEZS9h0
使用人「魔王様、いらっしゃいます?」コンコン
魔王「はいよー」
使用人「失礼します」
カチャ
使用人「……また、随分とがんばりましたね」
魔王「闇の手が失敗続きだからね」
使用人「まあ、それは仕方ないと思います……紫の魔王様と一緒にしては……」
魔王「私はそんなつもりは無いんだけどなぁ」
使用人「些か意地になっていらっしゃる気はしますけど」クス
魔王「……しまったな。『紫の魔王と同じようには行かないね』なーんて」
魔王「言うんじゃなかった……」ハァ
使用人「楽しそうですし、気にしなくて良いと思いますよ?」
魔王「なら良いけど……で、どうしたの? おやつの時間?」
使用人「それもありますけど。青年さんから……お手紙が届いています」
魔王「青年から? ……あ」
チチチ……
魔王「金色のひよこ!」
使用人「……ひよこは飛びませんけどね」
魔王「はいよー」
使用人「失礼します」
カチャ
使用人「……また、随分とがんばりましたね」
魔王「闇の手が失敗続きだからね」
使用人「まあ、それは仕方ないと思います……紫の魔王様と一緒にしては……」
魔王「私はそんなつもりは無いんだけどなぁ」
使用人「些か意地になっていらっしゃる気はしますけど」クス
魔王「……しまったな。『紫の魔王と同じようには行かないね』なーんて」
魔王「言うんじゃなかった……」ハァ
使用人「楽しそうですし、気にしなくて良いと思いますよ?」
魔王「なら良いけど……で、どうしたの? おやつの時間?」
使用人「それもありますけど。青年さんから……お手紙が届いています」
魔王「青年から? ……あ」
チチチ……
魔王「金色のひよこ!」
使用人「……ひよこは飛びませんけどね」
63: 2014/09/17(水) 14:51:11.21 ID:v+xEZS9h0
魔王「よしよし、おいで……あれ、手紙は?」
使用人「ああ、すみません、ここにあります」
魔王「ん……じゃあ、行こっか。お前も一緒におやつ食べるか?」
チチ!
使用人「闇の手様にお声をおかけしたらすぐに行きます」スッ
魔王「あれ、使用人はもう読んだの?」
使用人「魔王様より先に読むべきでは無いでしょう? ……では」
スタスタ、パタン
魔王「律儀、と言うか何というか……」
スタスタ……チィ、ピピピ……
魔王「ええ、っと……」カサ
魔王(え……ッ !?)
ピィ! グイ!
魔王「え!? 何、引っ張らないで……あ」
魔王(危ない危ない……壁にぶつかる所だった)
魔王「読みながら歩いたら危ないね……よし、早く行こう」
スタスタ
カチャ
魔王「…… ……」
魔王(青年からの手紙。嘘な訳無い)
魔王「…… ……」
ピィ!
魔王「あ……ごめんごめん。でも使用人達来るまで……」
カチャ
使用人「お待たせしました」
闇の手「……あっちが駄目なら、こっちを……」ブツブツ
魔王「……良くその状態の闇の手、引っ張ってこれたね」
使用人「ああ、すみません、ここにあります」
魔王「ん……じゃあ、行こっか。お前も一緒におやつ食べるか?」
チチ!
使用人「闇の手様にお声をおかけしたらすぐに行きます」スッ
魔王「あれ、使用人はもう読んだの?」
使用人「魔王様より先に読むべきでは無いでしょう? ……では」
スタスタ、パタン
魔王「律儀、と言うか何というか……」
スタスタ……チィ、ピピピ……
魔王「ええ、っと……」カサ
魔王(え……ッ !?)
ピィ! グイ!
魔王「え!? 何、引っ張らないで……あ」
魔王(危ない危ない……壁にぶつかる所だった)
魔王「読みながら歩いたら危ないね……よし、早く行こう」
スタスタ
カチャ
魔王「…… ……」
魔王(青年からの手紙。嘘な訳無い)
魔王「…… ……」
ピィ!
魔王「あ……ごめんごめん。でも使用人達来るまで……」
カチャ
使用人「お待たせしました」
闇の手「……あっちが駄目なら、こっちを……」ブツブツ
魔王「……良くその状態の闇の手、引っ張ってこれたね」
64: 2014/09/17(水) 15:03:09.56 ID:v+xEZS9h0
使用人「青年様からの手紙で釣りましたから」
魔王「釣った……ああ、ごめん、使用人。先にこの子に……」
ピィ!ピィ!
使用人「ああ……はい。わかりました……おいで?」
スタスタ
闇の手「……よし。あの方法でもう一度…… ……あ、魔王様。おはようございます」
魔王「もう昼だけどね……ねえ、闇の手。とりあえず実験忘れて、これ見て」バサッ
闇の手「青年さんからの手紙ですね……今どこに居るんでしょうね」カサ
魔王「…… ……」
闇の手「……ッ ……!?」バサバサッ
魔王「少年と少女、って……あの、双子だよね」ハァ
闇の手「…… ……ッ」
スタスタ
使用人「魔王様、紅茶とコーヒー…… ……どうしました?」
魔王「紅茶……で、使用人もその手紙読んでみてね」
使用人「? ……はい。闇の手様は?」
闇の手「僕も同じでお願いします」
使用人「かしこまりました……少々お待ちください」
魔王「どれぐらい前に出された物かわからないけど」
魔王「……青年、もう鍛冶師の村に着いたかな」
闇の手「どうでしょう、ね……否、村と言うよりあの小屋に、って事なんでしょうけれど」
魔王「……気になる」
闇の手「青年さんですか?」
魔王「いや、青年もそうだけど…… ……双子の方だよ」
闇の手「…… ……です、ね」
使用人「お待たせしました……青年さんは、なんと?」
闇の手「例の双子が、魔導国の旧貴族の生き残りらしい人物と港街を出た、のだそうです」
使用人「え!?」
闇の手「……深追いはしないとは書いてありますが」
魔王「私でも……思い当たるのは、あれしかないんだ。青年の危惧はもっともだろうね」
使用人「…… ……ッ まさか『始まりの姉弟』をなぞる、気だと!?」
闇の手「考えられる事ですよ。ですけど……あ、とにかく先に呼んでください」スッ
使用人「失礼します…… ……」ガサ
魔王「でも、さ。否……他に何人かいるとしても、だよ」
魔王「……まさか、双子ちゃんにポンポン子供産ませる訳にもいかないだろうし」
魔王「あの二人、まだまだ子供でしょ?」
使用人「……青年様は、追われた訳では無い……んですね?」
闇の手「……と、思いますけどね。でも」
闇の手「旧貴族達が、考えそうな事……ただひたすらになぞっていく事、を目標とするなら」
使用人「北の街……ですか」
魔王「あの辺だったっけ?」
使用人「その筈です。紫の魔王の側近様から聞いたお話では」
魔王「……すぐには無理だ。双子の年齢の事もあるし」
魔王「聞いた話……その、昔をなぞる、にしたって」
魔王「凄く、時間のかかる話だよ。それこそ……魔王と勇者の復活の期間、以上に」
魔王「釣った……ああ、ごめん、使用人。先にこの子に……」
ピィ!ピィ!
使用人「ああ……はい。わかりました……おいで?」
スタスタ
闇の手「……よし。あの方法でもう一度…… ……あ、魔王様。おはようございます」
魔王「もう昼だけどね……ねえ、闇の手。とりあえず実験忘れて、これ見て」バサッ
闇の手「青年さんからの手紙ですね……今どこに居るんでしょうね」カサ
魔王「…… ……」
闇の手「……ッ ……!?」バサバサッ
魔王「少年と少女、って……あの、双子だよね」ハァ
闇の手「…… ……ッ」
スタスタ
使用人「魔王様、紅茶とコーヒー…… ……どうしました?」
魔王「紅茶……で、使用人もその手紙読んでみてね」
使用人「? ……はい。闇の手様は?」
闇の手「僕も同じでお願いします」
使用人「かしこまりました……少々お待ちください」
魔王「どれぐらい前に出された物かわからないけど」
魔王「……青年、もう鍛冶師の村に着いたかな」
闇の手「どうでしょう、ね……否、村と言うよりあの小屋に、って事なんでしょうけれど」
魔王「……気になる」
闇の手「青年さんですか?」
魔王「いや、青年もそうだけど…… ……双子の方だよ」
闇の手「…… ……です、ね」
使用人「お待たせしました……青年さんは、なんと?」
闇の手「例の双子が、魔導国の旧貴族の生き残りらしい人物と港街を出た、のだそうです」
使用人「え!?」
闇の手「……深追いはしないとは書いてありますが」
魔王「私でも……思い当たるのは、あれしかないんだ。青年の危惧はもっともだろうね」
使用人「…… ……ッ まさか『始まりの姉弟』をなぞる、気だと!?」
闇の手「考えられる事ですよ。ですけど……あ、とにかく先に呼んでください」スッ
使用人「失礼します…… ……」ガサ
魔王「でも、さ。否……他に何人かいるとしても、だよ」
魔王「……まさか、双子ちゃんにポンポン子供産ませる訳にもいかないだろうし」
魔王「あの二人、まだまだ子供でしょ?」
使用人「……青年様は、追われた訳では無い……んですね?」
闇の手「……と、思いますけどね。でも」
闇の手「旧貴族達が、考えそうな事……ただひたすらになぞっていく事、を目標とするなら」
使用人「北の街……ですか」
魔王「あの辺だったっけ?」
使用人「その筈です。紫の魔王の側近様から聞いたお話では」
魔王「……すぐには無理だ。双子の年齢の事もあるし」
魔王「聞いた話……その、昔をなぞる、にしたって」
魔王「凄く、時間のかかる話だよ。それこそ……魔王と勇者の復活の期間、以上に」
72: 2014/09/19(金) 12:03:12.40 ID:M1cmiv1x0
使用人「……かといって」
闇の手「見過ごして言い……と、言えます?魔王様」
魔王「うーん……でも、さ。青年が深追いしない、ってのも」
魔王「その、時間のさ……事もあるんじゃ無いかな?」
闇の手「……まあ、そうかもしれません。いえ。大きいでしょうね」
使用人「青年様一人でどうこう出来ない問題でもありますよ」
使用人「双子と、雷使い、水使い……その四人で全員とは限りません」バサッ
使用人「確認のしようはありませんけど」フゥ
闇の手「……まあ、青年があの双子と接触する事自体、色々とまずいですけどね」
魔王「単純に……」
闇の手「はい?」
魔王「私が勇者を産んで、倒される迄……世界が平和になるまで、を20年としよう」
使用人「…… ……」
魔王「少年と少女が……無事に、ってのもおかしいけど」
魔王「二人の子供を産んで育てて、まあ……二十歳ぐらい」
使用人「……この際道徳の問題は横に置いておきます」ハァ
闇の手「子供だとは言え……否、そそのかされたのであろう、と仮定しても」
闇の手「港街を出たのは、彼らの意思でもあるでしょう。まさか連れ去られた訳でも」
魔王「まあ、青年の手紙の内容もそうだよね……貴族達の企みは知らないとしても」
魔王「ああ、そんで……だ。まあ、双子は人間でしょ?」
魔王「……ぽんぽん、と何人か産んだとしても、だよ」
使用人「『魔導国を復活させるほどの人員』は揃いませんね」
闇の手「見過ごして言い……と、言えます?魔王様」
魔王「うーん……でも、さ。青年が深追いしない、ってのも」
魔王「その、時間のさ……事もあるんじゃ無いかな?」
闇の手「……まあ、そうかもしれません。いえ。大きいでしょうね」
使用人「青年様一人でどうこう出来ない問題でもありますよ」
使用人「双子と、雷使い、水使い……その四人で全員とは限りません」バサッ
使用人「確認のしようはありませんけど」フゥ
闇の手「……まあ、青年があの双子と接触する事自体、色々とまずいですけどね」
魔王「単純に……」
闇の手「はい?」
魔王「私が勇者を産んで、倒される迄……世界が平和になるまで、を20年としよう」
使用人「…… ……」
魔王「少年と少女が……無事に、ってのもおかしいけど」
魔王「二人の子供を産んで育てて、まあ……二十歳ぐらい」
使用人「……この際道徳の問題は横に置いておきます」ハァ
闇の手「子供だとは言え……否、そそのかされたのであろう、と仮定しても」
闇の手「港街を出たのは、彼らの意思でもあるでしょう。まさか連れ去られた訳でも」
魔王「まあ、青年の手紙の内容もそうだよね……貴族達の企みは知らないとしても」
魔王「ああ、そんで……だ。まあ、双子は人間でしょ?」
魔王「……ぽんぽん、と何人か産んだとしても、だよ」
使用人「『魔導国を復活させるほどの人員』は揃いませんね」
73: 2014/09/19(金) 12:45:51.71 ID:M1cmiv1x0
魔王「次代の勇者が……終わらせた、後だ。問題は」
使用人「…… ……」
魔王「前にも話した通り、私はあの……不思議な場所で、お父さんと一緒に」
魔王「繰り返される『世界』を見た」
闇の手「赤ん坊……『世界』が双子から産まれて…… ……ッ」ハッ
使用人「!」
魔王「あの双子……少年少女が子をなしたとして、それが『世界』……私が、見た」
魔王「『世界』と同一だとは思わない。でもね」
魔王「……旧貴族達から見れば、その子供は」
闇の手「……彼らの『新しい世界を担う手』」
魔王「…… ……」
使用人「『平和になった世界』には、魔王の恐怖はありません」
魔王「……そう、なんだよね」フゥ
魔王「青年はまだこの話を知らないから……」
闇の手「で、でも……かといって……」
魔王「……勿論、青年に追ってくれとは言わないよ」
魔王「ただ……これじゃ」
魔王「また、なぞっていくようだ、と思ってさ。違いは勿論あるんだけど」
使用人「『向こう側』は……」
闇の手「『青年』と名を変えた『勇者様』がの子供達、だと言ってましたね」
魔王「うん。瞳の色を変えてしまった子供達、だ」
魔王「……彼らが混じり合って、新しい『世界』が……産まれた」
魔王「…… ……どうしたら良いのかは解らない。でも」
使用人「…… ……」
魔王「前にも話した通り、私はあの……不思議な場所で、お父さんと一緒に」
魔王「繰り返される『世界』を見た」
闇の手「赤ん坊……『世界』が双子から産まれて…… ……ッ」ハッ
使用人「!」
魔王「あの双子……少年少女が子をなしたとして、それが『世界』……私が、見た」
魔王「『世界』と同一だとは思わない。でもね」
魔王「……旧貴族達から見れば、その子供は」
闇の手「……彼らの『新しい世界を担う手』」
魔王「…… ……」
使用人「『平和になった世界』には、魔王の恐怖はありません」
魔王「……そう、なんだよね」フゥ
魔王「青年はまだこの話を知らないから……」
闇の手「で、でも……かといって……」
魔王「……勿論、青年に追ってくれとは言わないよ」
魔王「ただ……これじゃ」
魔王「また、なぞっていくようだ、と思ってさ。違いは勿論あるんだけど」
使用人「『向こう側』は……」
闇の手「『青年』と名を変えた『勇者様』がの子供達、だと言ってましたね」
魔王「うん。瞳の色を変えてしまった子供達、だ」
魔王「……彼らが混じり合って、新しい『世界』が……産まれた」
魔王「…… ……どうしたら良いのかは解らない。でも」
74: 2014/09/19(金) 13:23:30.98 ID:M1cmiv1x0
使用人「……ひとまず、青年様の判断は正しかった、と言う事で良いのではないですか」
魔王「え?」
使用人「今、彼一人を飛び込ませる訳には参りませんでしょう」
闇の手「おいおい考えましょう、って言うのも、おかしいですけどね」ハァ
闇の手「情報が少なすぎる、ってのもあります。魔王様の『夢』の話を」
闇の手「勿論、信じない訳じゃありません。でも」
魔王「……そうだよね。此処まで、こんなにも変わってしまった……し」
魔王「これからも、変わっていくはずだ。私が産むだろう勇者には」
魔王「始まりの国も、魔導の国も無い」
使用人「…… ……」
魔王「『夢』で見たように、勇者が私を倒して、世界を救うだろう……と、仮定して」
魔王「その後に……『向こう側』の様な、魔導国の反乱も起こりようが無い」
闇の手「…… ……」
魔王「まあ、とにかく……お父さんにも聞いてみるよ」ハァ
魔王「えっと……青年に手紙って返せるのかな」
闇の手「あ……どうでしょうね。途中で小鳥さんが力尽きないっていう」
闇の手「保証もありませんしね」
使用人「私で良ければ小鳥の具現化は可能ですが」
魔王「あ、そうか。船長さんとかに手紙届けてたもんね」
闇の手「どれぐらい前に出された物か解りませんけど……取り急ぎ知らせないと」
闇の手「行けない物でもないのなら、別に良いのでは?」
魔王「まあ、ね」
闇の手「青年さんに限っては、無茶もされないと思いますけど」
使用人「そうですね」
魔王「……まあ、今は出来る事をしないと仕方無いな……っていうか」
魔王「それしか出来ないしね」
闇の手「ご馳走様でした……僕は書庫に戻りますね」
魔王「え?」
使用人「今、彼一人を飛び込ませる訳には参りませんでしょう」
闇の手「おいおい考えましょう、って言うのも、おかしいですけどね」ハァ
闇の手「情報が少なすぎる、ってのもあります。魔王様の『夢』の話を」
闇の手「勿論、信じない訳じゃありません。でも」
魔王「……そうだよね。此処まで、こんなにも変わってしまった……し」
魔王「これからも、変わっていくはずだ。私が産むだろう勇者には」
魔王「始まりの国も、魔導の国も無い」
使用人「…… ……」
魔王「『夢』で見たように、勇者が私を倒して、世界を救うだろう……と、仮定して」
魔王「その後に……『向こう側』の様な、魔導国の反乱も起こりようが無い」
闇の手「…… ……」
魔王「まあ、とにかく……お父さんにも聞いてみるよ」ハァ
魔王「えっと……青年に手紙って返せるのかな」
闇の手「あ……どうでしょうね。途中で小鳥さんが力尽きないっていう」
闇の手「保証もありませんしね」
使用人「私で良ければ小鳥の具現化は可能ですが」
魔王「あ、そうか。船長さんとかに手紙届けてたもんね」
闇の手「どれぐらい前に出された物か解りませんけど……取り急ぎ知らせないと」
闇の手「行けない物でもないのなら、別に良いのでは?」
魔王「まあ、ね」
闇の手「青年さんに限っては、無茶もされないと思いますけど」
使用人「そうですね」
魔王「……まあ、今は出来る事をしないと仕方無いな……っていうか」
魔王「それしか出来ないしね」
闇の手「ご馳走様でした……僕は書庫に戻りますね」
89: 2014/09/23(火) 11:51:13.56 ID:I1hB2Djd0
魔王「もう良いの?」
闇の手「無茶な実験出来るのも、青年さんが帰ってくるまでですからね」
スタスタ、パタン
使用人「…… ……」
魔王「どうしたの、使用人」
使用人「いえ…… ……いいえ」
魔王「?」
使用人「……本来なら、と言う言い方はおかしい、のでしょうが」
魔王「え?」
使用人「『向こう側』では私はもう……ここには、この時点では居なかったんです」
魔王「え……うん」
使用人「城を去った私がどうなったか、どこに行ったのか……それは知る由はありませんけど」
使用人「……向こうの私も……否、私以上に『1000年を生きた私』は」
使用人「こうして……何もする事の無い時間を過ごしていたんだな、と思うと」
魔王「……何もする事が無いわけじゃ無いよ。出来る事をするしか無い、だけだよ」
使用人「…… ……すみません。そうですね」
魔王「言いたい事はわかる、し理解できるよ」
使用人「…… ……」
魔王「貴女は、ただでさえ私達以上に、ここで、こうして……」
魔王「お父さん、おじいちゃん……紫の魔王達、とさ」
魔王「そんな時間を過ごしてきたんでしょう。今よりも血生臭い事ばっかで、さ」
使用人「血生臭い……ですか?」
魔王「あれ、違うかな?」
使用人「……比べる事自体がおかしいんです、かね。確かに、紫の魔王様の御爺様の次代、や」
使用人「紫の魔王の側近様が歩まれた時は、波瀾万丈と言えるでしょうけれど」
魔王「うん」
使用人「魔王様だって、そうでは無いとは言えないでしょう。赤ちゃんでしたから」
使用人「はっきり覚えてはいらっしゃらないかもしれませんが」
使用人「……貴女も、始まりの国の崩壊の時に、その場にいらっしゃったんですから」
魔王「……ああ、そうか」
使用人「『人間』側から見るのと『私達』からの視点。それも確実に違いますから」
魔王「そう、か」フゥ
使用人「……女さん、覚えていらっしゃいます?」
魔王「え? ……ああ、うん。勿論」
闇の手「無茶な実験出来るのも、青年さんが帰ってくるまでですからね」
スタスタ、パタン
使用人「…… ……」
魔王「どうしたの、使用人」
使用人「いえ…… ……いいえ」
魔王「?」
使用人「……本来なら、と言う言い方はおかしい、のでしょうが」
魔王「え?」
使用人「『向こう側』では私はもう……ここには、この時点では居なかったんです」
魔王「え……うん」
使用人「城を去った私がどうなったか、どこに行ったのか……それは知る由はありませんけど」
使用人「……向こうの私も……否、私以上に『1000年を生きた私』は」
使用人「こうして……何もする事の無い時間を過ごしていたんだな、と思うと」
魔王「……何もする事が無いわけじゃ無いよ。出来る事をするしか無い、だけだよ」
使用人「…… ……すみません。そうですね」
魔王「言いたい事はわかる、し理解できるよ」
使用人「…… ……」
魔王「貴女は、ただでさえ私達以上に、ここで、こうして……」
魔王「お父さん、おじいちゃん……紫の魔王達、とさ」
魔王「そんな時間を過ごしてきたんでしょう。今よりも血生臭い事ばっかで、さ」
使用人「血生臭い……ですか?」
魔王「あれ、違うかな?」
使用人「……比べる事自体がおかしいんです、かね。確かに、紫の魔王様の御爺様の次代、や」
使用人「紫の魔王の側近様が歩まれた時は、波瀾万丈と言えるでしょうけれど」
魔王「うん」
使用人「魔王様だって、そうでは無いとは言えないでしょう。赤ちゃんでしたから」
使用人「はっきり覚えてはいらっしゃらないかもしれませんが」
使用人「……貴女も、始まりの国の崩壊の時に、その場にいらっしゃったんですから」
魔王「……ああ、そうか」
使用人「『人間』側から見るのと『私達』からの視点。それも確実に違いますから」
魔王「そう、か」フゥ
使用人「……女さん、覚えていらっしゃいます?」
魔王「え? ……ああ、うん。勿論」
90: 2014/09/23(火) 12:04:13.85 ID:I1hB2Djd0
使用人「何分古い話なので……私も多少曖昧、ですけど」
魔王「うん」
使用人「『人から見た平和』と魔……要するに『私達の望む平和』ですね」
使用人「それは、確実に違うのだと、そんなお話をされていましたよ」
魔王「うん?」
使用人「紫の魔王様も、紫の魔王の側近様も、望むのは『徹底した不干渉』でした」
使用人「でも……人から見れば『魔』なんて物が存在するだけで恐怖なんですよ」
魔王「…… ……うん。そうだろうね」
使用人「いつ復活するのか、本当に滅びたのか。青年様の手紙にもありましたが」
魔王「仮初めの平和。か」
使用人「……ええ。魔王が復活したって」
魔王「『勇者がどうにかしてくれる』」
使用人「……御伽噺の中の世界と、変わらないのかもしれません」
魔王「いやだ、怖いって口には出しても、実質的な被害は無いから、か」
使用人「待つしか無い。出来る事は無いにも無い……確かに、麻痺はするのかもしれませんね」
魔王「御伽噺ならば、勇者……強い人が悪い奴をぶっ飛ばして、世界は平和になりました」
魔王「めでたしめでたし、ね……」フゥ
使用人「それで良い……否、悪くは無いんでしょうけれどね」
魔王「…… ……」
使用人「魔王様?」
魔王「旧貴族達は自分達が『勇者』になりたいのかな?」
使用人「え?」
魔王「だって、始まりの姉弟が云々……要するに、さ。力が欲しいんでしょう?」
使用人「力、には違い無いでしょうが……行き着くのは『権力』でしょう」
使用人「勿論、武力も含まれるでしょうけれど。彼らは」
使用人「『自分達は特別に違い無い』と思ってますからね」
魔王「…… ……ふむ」カタン
使用人「魔王様?」
魔王「書庫に行ってくるよ。もし闇の手が呼びに来たら、作った分の魔石は」
魔王「私の部屋にあるから、っていっておいて」
使用人「え、ええ……わかりました ……?」
魔王「…… ……」ブツブツ
スタスタ、パタン
使用人(急にどうしたんだろう? ……しかし)ハァ
使用人(本当に、企み通りになると思っているんだろうか。旧貴族……達、は)
使用人(魔導の国、なんて消えてしまったと思っていた……のに)
使用人(業と言うのは、根深い……のか)
使用人(……『呪い』 ……これも、表裏一体だ。良くなれと願うか、悪くなれと願うか)
使用人(本当に…… ……恐ろしい)
使用人(姫様……貴女の遺した『願えば叶う』の効力は、こんなにも……)
……
………
…………
魔王「うん」
使用人「『人から見た平和』と魔……要するに『私達の望む平和』ですね」
使用人「それは、確実に違うのだと、そんなお話をされていましたよ」
魔王「うん?」
使用人「紫の魔王様も、紫の魔王の側近様も、望むのは『徹底した不干渉』でした」
使用人「でも……人から見れば『魔』なんて物が存在するだけで恐怖なんですよ」
魔王「…… ……うん。そうだろうね」
使用人「いつ復活するのか、本当に滅びたのか。青年様の手紙にもありましたが」
魔王「仮初めの平和。か」
使用人「……ええ。魔王が復活したって」
魔王「『勇者がどうにかしてくれる』」
使用人「……御伽噺の中の世界と、変わらないのかもしれません」
魔王「いやだ、怖いって口には出しても、実質的な被害は無いから、か」
使用人「待つしか無い。出来る事は無いにも無い……確かに、麻痺はするのかもしれませんね」
魔王「御伽噺ならば、勇者……強い人が悪い奴をぶっ飛ばして、世界は平和になりました」
魔王「めでたしめでたし、ね……」フゥ
使用人「それで良い……否、悪くは無いんでしょうけれどね」
魔王「…… ……」
使用人「魔王様?」
魔王「旧貴族達は自分達が『勇者』になりたいのかな?」
使用人「え?」
魔王「だって、始まりの姉弟が云々……要するに、さ。力が欲しいんでしょう?」
使用人「力、には違い無いでしょうが……行き着くのは『権力』でしょう」
使用人「勿論、武力も含まれるでしょうけれど。彼らは」
使用人「『自分達は特別に違い無い』と思ってますからね」
魔王「…… ……ふむ」カタン
使用人「魔王様?」
魔王「書庫に行ってくるよ。もし闇の手が呼びに来たら、作った分の魔石は」
魔王「私の部屋にあるから、っていっておいて」
使用人「え、ええ……わかりました ……?」
魔王「…… ……」ブツブツ
スタスタ、パタン
使用人(急にどうしたんだろう? ……しかし)ハァ
使用人(本当に、企み通りになると思っているんだろうか。旧貴族……達、は)
使用人(魔導の国、なんて消えてしまったと思っていた……のに)
使用人(業と言うのは、根深い……のか)
使用人(……『呪い』 ……これも、表裏一体だ。良くなれと願うか、悪くなれと願うか)
使用人(本当に…… ……恐ろしい)
使用人(姫様……貴女の遺した『願えば叶う』の効力は、こんなにも……)
……
………
…………
91: 2014/09/23(火) 14:54:33.50 ID:I1hB2Djd0
雷使い「ちょっと! どうなっているのよ!」
バン!
船長「おい……操舵室には入るなって行っただろう。それに……」
雷使い「揺れるってのはわかってるけど、これじゃ、あんまり……ッ」
グラグラ……グラグラ……
船長「……ッ なるべく波を読んでるが、それでも流されるんだって!」
雷使い「…… ……」チッ
船長「気分悪くなるのはかわいそうだとは思うさ。子供には辛いだろうしな」
雷使い「……もう少し、なんとかならないの」
船長「何もやってない訳じゃネェって……大回りするにも、ドンドン渦の方に引き戻されてるんだ」
雷使い「まさか……遭難とかしないでしょうね!?」
船長「俺だって氏にたかネェよ! ……とにかく、船室にいろ!」
船長「間違っても甲板になんか……」
雷使い「出るわけ無いでしょ!」
船長「…… ……」ハァ
船長「後で安眠茶を届けてやる。少年と少女は、寝てる方が良いだろう」
雷使い「……どれぐらいで北の街の方に着くのよ」
船長「こればっかりは何とも、な……北側の方へ航路を変更するにももう遅い」
雷使い「……そっちの航路を最初から……!」
船長「定期便の航路なんだよ!」
雷使い「!」
船長「接触は避けろってお達しだったよな、雷使いさんよ」
雷使い「……ッ と、とにかく! さっさと持って来て頂戴よね!」
スタスタ、バンッ
海賊「……おっかねぇ」ハァ
船長「全くだ……おい、燃料は持つだろうな」
海賊「それは問題無いとは思います、けどね…… ……最悪、この進路だったら……」
船長「……南の島、か。まあ、それは良い……しかし」
海賊「おかしい、っすね」
船長「天気が悪いんだろう。仕方ネェ……今までにこんな事無かった、なんて」
船長「言ったってな。何とか無事に抜けるしかネェ」
海賊「そうっすね」
船長「ギャアギャアうるせぇの、黙らせてこい」
海賊「え?」
船長「茶、届けてやれ。四人分な」
海賊「……俺が、っすか」
船長「俺は離れられネェだろうが!」
海賊「…… ……」ハァ
スタスタ
船長「返事!」
海賊「……アイアイサ」ボソ
バタン
船長「……たく」フゥ
バン!
船長「おい……操舵室には入るなって行っただろう。それに……」
雷使い「揺れるってのはわかってるけど、これじゃ、あんまり……ッ」
グラグラ……グラグラ……
船長「……ッ なるべく波を読んでるが、それでも流されるんだって!」
雷使い「…… ……」チッ
船長「気分悪くなるのはかわいそうだとは思うさ。子供には辛いだろうしな」
雷使い「……もう少し、なんとかならないの」
船長「何もやってない訳じゃネェって……大回りするにも、ドンドン渦の方に引き戻されてるんだ」
雷使い「まさか……遭難とかしないでしょうね!?」
船長「俺だって氏にたかネェよ! ……とにかく、船室にいろ!」
船長「間違っても甲板になんか……」
雷使い「出るわけ無いでしょ!」
船長「…… ……」ハァ
船長「後で安眠茶を届けてやる。少年と少女は、寝てる方が良いだろう」
雷使い「……どれぐらいで北の街の方に着くのよ」
船長「こればっかりは何とも、な……北側の方へ航路を変更するにももう遅い」
雷使い「……そっちの航路を最初から……!」
船長「定期便の航路なんだよ!」
雷使い「!」
船長「接触は避けろってお達しだったよな、雷使いさんよ」
雷使い「……ッ と、とにかく! さっさと持って来て頂戴よね!」
スタスタ、バンッ
海賊「……おっかねぇ」ハァ
船長「全くだ……おい、燃料は持つだろうな」
海賊「それは問題無いとは思います、けどね…… ……最悪、この進路だったら……」
船長「……南の島、か。まあ、それは良い……しかし」
海賊「おかしい、っすね」
船長「天気が悪いんだろう。仕方ネェ……今までにこんな事無かった、なんて」
船長「言ったってな。何とか無事に抜けるしかネェ」
海賊「そうっすね」
船長「ギャアギャアうるせぇの、黙らせてこい」
海賊「え?」
船長「茶、届けてやれ。四人分な」
海賊「……俺が、っすか」
船長「俺は離れられネェだろうが!」
海賊「…… ……」ハァ
スタスタ
船長「返事!」
海賊「……アイアイサ」ボソ
バタン
船長「……たく」フゥ
95: 2014/09/24(水) 10:01:37.61 ID:EPxtuR6j0
船長(魔物が出ないのは良いが……これじゃ、体力がもたねぇな)ハァ
船長(否……体力だけで済めば良いが、このままじゃ……)
ミシ……ミシ……
船長(丈夫な船ではある、が……)
船長「…… ……」
船長(しかし……なんだ?これは……今までこんなにこの大渦が荒れたことなんて)
船長(無かった筈だ……確かに、天気も悪い、が……)チラ
船長(空真っ黒だな……一雨来るか。まずいな)
船長(……何なんだ。勇者は、魔王を倒したのか? それとも……)
船長(否。だとしたら、魔物が弱ってる事の説明が…… ……ッ糞)
船長「俺の頭で考えても仕方ネェ…… ……ッ !?」
グラグラグラ……ッ
船長「…… ……ッ」
バタバタ、バタン!
海賊「船長!」
船長「どうした」
海賊「ぐいぐい渦の方に引っ張られてますぜ!」
船長「!」
船長(否……体力だけで済めば良いが、このままじゃ……)
ミシ……ミシ……
船長(丈夫な船ではある、が……)
船長「…… ……」
船長(しかし……なんだ?これは……今までこんなにこの大渦が荒れたことなんて)
船長(無かった筈だ……確かに、天気も悪い、が……)チラ
船長(空真っ黒だな……一雨来るか。まずいな)
船長(……何なんだ。勇者は、魔王を倒したのか? それとも……)
船長(否。だとしたら、魔物が弱ってる事の説明が…… ……ッ糞)
船長「俺の頭で考えても仕方ネェ…… ……ッ !?」
グラグラグラ……ッ
船長「…… ……ッ」
バタバタ、バタン!
海賊「船長!」
船長「どうした」
海賊「ぐいぐい渦の方に引っ張られてますぜ!」
船長「!」
96: 2014/09/24(水) 10:11:35.66 ID:EPxtuR6j0
船長「あいつ等に部屋から出るなと……!」
海賊「伝えましたよ!」
船長「……ッ」
カチャ、バタン
船長「! ……おい、甲板から…… ……!?」
少年「…… ……」
海賊「お前!?」
船長「おい、何してる! さっさと部屋に……」
少年「……に、行けば良い」
船長「は!?」
少年「始まり……の、国…… ……」ボソボソ
船長(? ……なんだ、様子がおかしい?)
少年「始まりの国へ。行けば良い。あそこへ…… ……」ブツブツ
船長「おい、少年」スタスタ
少年「……待ってる。待ってるんだ……呼んでる……」フラッ
船長「! お、おい!?」ガシッ
海賊「船長!」
船長「……大丈夫だ」
船長(?…… ……気を失ってる……?)
海賊「どうしたんだ、こいつ……」
船長「……様子が変だったな」
海賊「あ、いや……ああ、そうっすね」
船長「? 何だよ」
海賊「いや、茶を運んだときに、皆飲むのを確認したんっすけど」
船長「……酔っ払った、のか? ……まあ、子供にはきつかったか」
船長(しかし……な)
船長「おい、こいつ運んでやれ」スッ
海賊「あ、はい……」ガシ
船長「…… ……」
スタスタ
海賊「船長?」
船長「始まりの大陸に行く」
海賊「!? 子供の寝言に従うつもりっすか!?」
海賊「伝えましたよ!」
船長「……ッ」
カチャ、バタン
船長「! ……おい、甲板から…… ……!?」
少年「…… ……」
海賊「お前!?」
船長「おい、何してる! さっさと部屋に……」
少年「……に、行けば良い」
船長「は!?」
少年「始まり……の、国…… ……」ボソボソ
船長(? ……なんだ、様子がおかしい?)
少年「始まりの国へ。行けば良い。あそこへ…… ……」ブツブツ
船長「おい、少年」スタスタ
少年「……待ってる。待ってるんだ……呼んでる……」フラッ
船長「! お、おい!?」ガシッ
海賊「船長!」
船長「……大丈夫だ」
船長(?…… ……気を失ってる……?)
海賊「どうしたんだ、こいつ……」
船長「……様子が変だったな」
海賊「あ、いや……ああ、そうっすね」
船長「? 何だよ」
海賊「いや、茶を運んだときに、皆飲むのを確認したんっすけど」
船長「……酔っ払った、のか? ……まあ、子供にはきつかったか」
船長(しかし……な)
船長「おい、こいつ運んでやれ」スッ
海賊「あ、はい……」ガシ
船長「…… ……」
スタスタ
海賊「船長?」
船長「始まりの大陸に行く」
海賊「!? 子供の寝言に従うつもりっすか!?」
97: 2014/09/24(水) 10:22:52.08 ID:EPxtuR6j0
船長「……そうじゃない。だが……名案だ」
海賊「…… ……」
船長「戻ったら正確な位置を確かめてくれ。とにかく……南下する」
海賊「た、確かに……渦に巻き込まれない為には」
船長「…… ……」
海賊「良い方法、かもしれません、が」チラ
少年(スゥスゥ)
船長「とにかくそいつ部屋に放りこんで来い。念のため見張り立たせとけ」
海賊「あ、アイアイサー」
パタン
船長(多少離れて居ても……南下する方が)
船長「……おぼれ氏ぬよりゃマシだ!」グイッ
グラグラ……ミシミシ……ッ
……
………
…………
少女「……ん、ん?」パチ
水使い「…… ……」スゥ
雷使い「…… ……」スゥスゥ
少女(水使いも……雷使いさんも、寝てる……?)ガバッ……クラッ
少女「……ッ」
少女(何、これ……頭上げると気持ち悪い……)パタ
少年「…… ……」
少女「少年……? 起きてるの?」
少年「少女。窓の外、見てご覧」グイッ
少女「!? ……ッ」ウェ……ッ
少女「ま、待って、少年……引っ張らない、で……」ゲホッ
少年「呼んでるんだ」
少女「え……?」
少年「ほら。見て」グイッ
少女「痛……ッ やめ、て……しょうね……ッ」
少女(陸地……! ……どこかに、ついた……の?)
少女(……波の音が、静か。大渦、とか言う場所は……抜けた、のね)ホッ
コンコン
少年「はい」
船長「俺だ。良いか?」
少女「船長さん……? ど、どうそ」
カチャ
少女「……少年、横にならせて……気持ち悪い」
少年「…… ……」パッ
少女「…… ……」コロン
海賊「…… ……」
船長「戻ったら正確な位置を確かめてくれ。とにかく……南下する」
海賊「た、確かに……渦に巻き込まれない為には」
船長「…… ……」
海賊「良い方法、かもしれません、が」チラ
少年(スゥスゥ)
船長「とにかくそいつ部屋に放りこんで来い。念のため見張り立たせとけ」
海賊「あ、アイアイサー」
パタン
船長(多少離れて居ても……南下する方が)
船長「……おぼれ氏ぬよりゃマシだ!」グイッ
グラグラ……ミシミシ……ッ
……
………
…………
少女「……ん、ん?」パチ
水使い「…… ……」スゥ
雷使い「…… ……」スゥスゥ
少女(水使いも……雷使いさんも、寝てる……?)ガバッ……クラッ
少女「……ッ」
少女(何、これ……頭上げると気持ち悪い……)パタ
少年「…… ……」
少女「少年……? 起きてるの?」
少年「少女。窓の外、見てご覧」グイッ
少女「!? ……ッ」ウェ……ッ
少女「ま、待って、少年……引っ張らない、で……」ゲホッ
少年「呼んでるんだ」
少女「え……?」
少年「ほら。見て」グイッ
少女「痛……ッ やめ、て……しょうね……ッ」
少女(陸地……! ……どこかに、ついた……の?)
少女(……波の音が、静か。大渦、とか言う場所は……抜けた、のね)ホッ
コンコン
少年「はい」
船長「俺だ。良いか?」
少女「船長さん……? ど、どうそ」
カチャ
少女「……少年、横にならせて……気持ち悪い」
少年「…… ……」パッ
少女「…… ……」コロン
98: 2014/09/24(水) 10:29:07.26 ID:EPxtuR6j0
船長「……やっと目、さましたか」ホッ
少女「え?」
船長「おい、少年」チラ
少年「…… ……」
少女「少年……?」
船長「……雷使いと水使いは、まだ寝てんのか」
少女「少年?ねぇ?」
少年「……俺が見てる。少女は船長さんと一緒に、外を見てくると良い」
少女「え?」
少年「見てくるべきだ。その目で」
少女「……?」
船長「……お前達は出るなよ。来い、少女」
少女「え、ええ……」
スタスタ、パタン
少女「…… ……」フゥ
船長「顔色が悪い……大丈夫か?」
少女「あ……はい。大丈夫です」
船長「…… ……」
少女「……あの? ここは、何処ですか。雷使いさんの言ってた……」
船長「いや……」
少女「え……?」
船長(どこからどう説明すりゃ良いもんか……)ハァ
船長「腹減ってないか?」
少女「え? ……いえ、大丈夫です」
船長「…… ……」
少女「あ、あの……?」
船長「少年の言う通り……甲板に出てみるか?」
少女「……え、良いんですか…… ……あ、いえ…… ……その」
船長「…… ……」
少女「ここは……どこ、ですか」
船長「……始まりの国」
少女「え!?」
少女「え?」
船長「おい、少年」チラ
少年「…… ……」
少女「少年……?」
船長「……雷使いと水使いは、まだ寝てんのか」
少女「少年?ねぇ?」
少年「……俺が見てる。少女は船長さんと一緒に、外を見てくると良い」
少女「え?」
少年「見てくるべきだ。その目で」
少女「……?」
船長「……お前達は出るなよ。来い、少女」
少女「え、ええ……」
スタスタ、パタン
少女「…… ……」フゥ
船長「顔色が悪い……大丈夫か?」
少女「あ……はい。大丈夫です」
船長「…… ……」
少女「……あの? ここは、何処ですか。雷使いさんの言ってた……」
船長「いや……」
少女「え……?」
船長(どこからどう説明すりゃ良いもんか……)ハァ
船長「腹減ってないか?」
少女「え? ……いえ、大丈夫です」
船長「…… ……」
少女「あ、あの……?」
船長「少年の言う通り……甲板に出てみるか?」
少女「……え、良いんですか…… ……あ、いえ…… ……その」
船長「…… ……」
少女「ここは……どこ、ですか」
船長「……始まりの国」
少女「え!?」
99: 2014/09/24(水) 10:39:20.65 ID:EPxtuR6j0
船長「……大渦が荒れ放題で、海賊が安眠茶を持って行っただろう」
少女「あ……あの、お酒みたいな奴……」
船長「まあ、間違いじゃ無いな」
少女「飲んだら喉が熱くなって、頭がぼおっとして……」
少女(あ……だから、起きたとき気分が悪かった、のかしら)
船長「一晩寝てりゃ、多少は楽かと思ってな。子供にはちょっときつかったかもしれないが」
少女「……一晩……え、でも!? ……ここ、始まりの!?」
少女(あんなに長く、ずっと揺れていたのに……もう着いちゃった、の?)
船長「……誤魔化しても仕方ネェからな。言っちまうけど」
少女「え?」
船長「ずっと……あれから、今まで目を覚まさなかったんだ、オマエら…… ……いや」
少女「!?」
船長「少年を除いて、だな……」
少女「ど……どういう事ですか!?」
船長「…… ……」
少女「ちゃんと、教えて下さい!」
船長「……時間にしたら、10日程、か」
少女「と……ッ !?」
船長「だから、腹減って無いのかって聞いただろ」
少女「あ……あの、お酒みたいな奴……」
船長「まあ、間違いじゃ無いな」
少女「飲んだら喉が熱くなって、頭がぼおっとして……」
少女(あ……だから、起きたとき気分が悪かった、のかしら)
船長「一晩寝てりゃ、多少は楽かと思ってな。子供にはちょっときつかったかもしれないが」
少女「……一晩……え、でも!? ……ここ、始まりの!?」
少女(あんなに長く、ずっと揺れていたのに……もう着いちゃった、の?)
船長「……誤魔化しても仕方ネェからな。言っちまうけど」
少女「え?」
船長「ずっと……あれから、今まで目を覚まさなかったんだ、オマエら…… ……いや」
少女「!?」
船長「少年を除いて、だな……」
少女「ど……どういう事ですか!?」
船長「…… ……」
少女「ちゃんと、教えて下さい!」
船長「……時間にしたら、10日程、か」
少女「と……ッ !?」
船長「だから、腹減って無いのかって聞いただろ」
100: 2014/09/24(水) 10:49:16.08 ID:EPxtuR6j0
少女「…… ……」
船長「海賊が戻った後、急に少年が操舵室に来たんだ。その時からもう、様子がおかしかった」
少女「え……」
船長「まあ、お前さん起きたばっかじゃわからんかもしれんが」
少女「…… ……」
少女(少年……)
船長「『始まりの国に行け』とかな。『待ってる』……いや、『呼んでる』だったか?」
少女「!」
少女(呼んでる……さっき、少年が言ってた!)
船長「……どうした?」
少女「あ……いえ……」
船長「で、だ……まあ、渦に飲み込まれりゃ終わりだ。確かに……言い案かも知れない」
船長「まあ、わらにも縋る気持ちで、だ……南に向けて舵切ってみりゃ」
船長「……するすると船が進む訳だ。怖い位順調にな」
少女「…… ……」
船長「はっきりした場所も解らなかったが、とにかく渦から逃げるのが先だ」
船長「……結果としちゃ大成功だ。で……」
少女「始まりの大陸……ここ、に……」
船長「そう言う事だ……10日で此処まで戻ってこれるなんざ」
船長「すげぇ快挙だよ」
少女「……じゃ、じゃあ……私達は、その間、ずっと!? ……!」
少女「少年は、少年だけはずっと起きてたんですか!?」
船長「最初にそれを俺達に言ってばったり倒れたんだよ。寝ちまってた」
船長「部屋には戻して……まあ、見張りもつけたが、ちょこちょこ起きてきてな」
少女「…… ……」
船長「お前達は始まりの国に着くまで起きないが、心配はするな、と」
少女「……な、に、それ……」
船長「……戦闘にも参加したんだぜ」
少女「!? 少年が!?」
船長「渦を離れりゃ魔物もちらほらな……雷使い顔負けの魔法で」
船長「一網打尽、さ」
少女「そんな! ……あの揺れで、私達本を読む所じゃ……!」
船長「…… ……」
船長「海賊が戻った後、急に少年が操舵室に来たんだ。その時からもう、様子がおかしかった」
少女「え……」
船長「まあ、お前さん起きたばっかじゃわからんかもしれんが」
少女「…… ……」
少女(少年……)
船長「『始まりの国に行け』とかな。『待ってる』……いや、『呼んでる』だったか?」
少女「!」
少女(呼んでる……さっき、少年が言ってた!)
船長「……どうした?」
少女「あ……いえ……」
船長「で、だ……まあ、渦に飲み込まれりゃ終わりだ。確かに……言い案かも知れない」
船長「まあ、わらにも縋る気持ちで、だ……南に向けて舵切ってみりゃ」
船長「……するすると船が進む訳だ。怖い位順調にな」
少女「…… ……」
船長「はっきりした場所も解らなかったが、とにかく渦から逃げるのが先だ」
船長「……結果としちゃ大成功だ。で……」
少女「始まりの大陸……ここ、に……」
船長「そう言う事だ……10日で此処まで戻ってこれるなんざ」
船長「すげぇ快挙だよ」
少女「……じゃ、じゃあ……私達は、その間、ずっと!? ……!」
少女「少年は、少年だけはずっと起きてたんですか!?」
船長「最初にそれを俺達に言ってばったり倒れたんだよ。寝ちまってた」
船長「部屋には戻して……まあ、見張りもつけたが、ちょこちょこ起きてきてな」
少女「…… ……」
船長「お前達は始まりの国に着くまで起きないが、心配はするな、と」
少女「……な、に、それ……」
船長「……戦闘にも参加したんだぜ」
少女「!? 少年が!?」
船長「渦を離れりゃ魔物もちらほらな……雷使い顔負けの魔法で」
船長「一網打尽、さ」
少女「そんな! ……あの揺れで、私達本を読む所じゃ……!」
船長「…… ……」
108: 2014/09/25(木) 17:24:47.02 ID:tOGLPhSV0
少女(どうしちゃったの、少年……何が……あったの……!?)
船長「……何か、思い当たる節はあるか?」
少女「……わ……かり、ません」
船長「だ、よな」フゥ
少女「あの……少年は、急にそんな風になったんですか?」
船長「最初は酔っ払ってんのかと思ったんだよ。さっきも言ったとおり……」
船長「……ありゃ、別に酒じゃネェが、まあ、似たような成分は入ってる」
船長「夢遊病みたいな、な……そういうモンかと思ったが」
少女「……少年にそんな癖、っていうか…… ……無い、わ」
船長「……そうか」ハァ
少女「…… ……」
船長「大丈夫か、って聞くのもおかしいが」
少女「甲板に……連れて言ってください」
船長「……良いのか?」
少女「…… ……多分、見てこないと、少年に連れ出される」
船長「少女?」
少女「…… ……」
少女(『自分の目で確かめてこい』……少年は確かにそういった)
少女(もし、本当に少年が何か、おかしくなっちゃったんだったら……!)
船長「……こい。魔物に襲われる事は無いと思うが、離れるなよ」
少女「…… ……ッ はい!」
スタスタ
船長「……何か、思い当たる節はあるか?」
少女「……わ……かり、ません」
船長「だ、よな」フゥ
少女「あの……少年は、急にそんな風になったんですか?」
船長「最初は酔っ払ってんのかと思ったんだよ。さっきも言ったとおり……」
船長「……ありゃ、別に酒じゃネェが、まあ、似たような成分は入ってる」
船長「夢遊病みたいな、な……そういうモンかと思ったが」
少女「……少年にそんな癖、っていうか…… ……無い、わ」
船長「……そうか」ハァ
少女「…… ……」
船長「大丈夫か、って聞くのもおかしいが」
少女「甲板に……連れて言ってください」
船長「……良いのか?」
少女「…… ……多分、見てこないと、少年に連れ出される」
船長「少女?」
少女「…… ……」
少女(『自分の目で確かめてこい』……少年は確かにそういった)
少女(もし、本当に少年が何か、おかしくなっちゃったんだったら……!)
船長「……こい。魔物に襲われる事は無いと思うが、離れるなよ」
少女「…… ……ッ はい!」
スタスタ
109: 2014/09/25(木) 17:38:39.38 ID:tOGLPhSV0
船長「…… ……」
少女「…… ……」
キィ……
ザァアアア……ッ
少女「! …… ……ッ わ、あ……ッ」
船長「風が強いな……端まで行くなよ」
少女「は、はい……」
少女(ここが……始まりの、国?)
船長「この小さな港から、まっすぐ歩いて行くと小さな丘がある」
少女「…… ……」
船長「その麓に小さな村。で……川沿いを進んで行くと、始まりの街……と、城」
少女「が……あった、ですね」
船長「……そうだな」
少女「今は……どうなっているんですか?」
船長「…… ……瓦礫の山だ。夜中に見ると軽くホラーだろうな」
船長「あの火事の後……手つかずの筈だからな」
少女「……ッ」ゾッ
少女(……そうか。氏んだ人も、その侭……)
ヒュゥ……ッ
少女「……ッ」ブルッ
少女(生ぬるい風……気持ち悪い。肌に、まとわりつくみたい……)
船長「……湿気が気持ち悪いだろう。戻るか」
少女「あ……」
船長「降ろしてはやれねぇぞ。少年に言われた、と、お前が言っても」
船長「……雷使いの指示を待つしかねぇんだ。俺たちはな」
少女「…… ……わかってます」
少女(少年は……私に、何を見てこい、と言ったのだろう)
少女(……本当に、何も無い。この小道に続く……景色は)
少女(地獄絵図、だろうに……!)
船長「……戻ろう。腹は減ってないと思ってるかもしれないが」
船長「10日間も眠っていて、飲まず食わずなのは事実なんだ」
船長「少しだけでも腹に入れた方が良い」
少女「……はい。あ。あの!」
船長「ん?」
少女「これから、どうするんですか」
船長「…… ……」
少女「…… ……」
キィ……
ザァアアア……ッ
少女「! …… ……ッ わ、あ……ッ」
船長「風が強いな……端まで行くなよ」
少女「は、はい……」
少女(ここが……始まりの、国?)
船長「この小さな港から、まっすぐ歩いて行くと小さな丘がある」
少女「…… ……」
船長「その麓に小さな村。で……川沿いを進んで行くと、始まりの街……と、城」
少女「が……あった、ですね」
船長「……そうだな」
少女「今は……どうなっているんですか?」
船長「…… ……瓦礫の山だ。夜中に見ると軽くホラーだろうな」
船長「あの火事の後……手つかずの筈だからな」
少女「……ッ」ゾッ
少女(……そうか。氏んだ人も、その侭……)
ヒュゥ……ッ
少女「……ッ」ブルッ
少女(生ぬるい風……気持ち悪い。肌に、まとわりつくみたい……)
船長「……湿気が気持ち悪いだろう。戻るか」
少女「あ……」
船長「降ろしてはやれねぇぞ。少年に言われた、と、お前が言っても」
船長「……雷使いの指示を待つしかねぇんだ。俺たちはな」
少女「…… ……わかってます」
少女(少年は……私に、何を見てこい、と言ったのだろう)
少女(……本当に、何も無い。この小道に続く……景色は)
少女(地獄絵図、だろうに……!)
船長「……戻ろう。腹は減ってないと思ってるかもしれないが」
船長「10日間も眠っていて、飲まず食わずなのは事実なんだ」
船長「少しだけでも腹に入れた方が良い」
少女「……はい。あ。あの!」
船長「ん?」
少女「これから、どうするんですか」
船長「…… ……」
110: 2014/09/25(木) 17:46:37.35 ID:tOGLPhSV0
少女「まさか……この国に……」
船長「……雷使い次第、だろうな」
船長(魔法の練習がどうとか言ってた……うってつけ、かもしれないが)
船長(……俺が、反対する理由も権利もネェけどな)ハァ
少女「で、すよ……ね」
船長「とにかく一度戻るぞ。雷使い達がまだ目を覚ましてないなら、お前と少年だけでも……」
少女「……食事、ですよね……! ……少年も何も食べてないんですか!?」
船長「起きたなら食えって言ったんだけどな」ハァ
少女「…… ……」
カチャ
船長「!」
水使い「…… ……」
少女「! ……ッ ……水使い」ホッ
水使い「雷使いも目を覚ましました。戻りましょう」
少女「え……ええ……あの、少年は……」
水使い「……少年様もお待ちです」
船長(少年……様?)
少女「……そ、そう」
船長「おい。飯の用意をしておくから、後で食道に来いよ」
水使い「……ありがとうございます。さあ……」
少女「え、ええ」
スタスタ、カチャ
少女「あ! ……船長さん、ありがとうございました!」
パタン
船長「…… ……」
船長(なぁんか……やな予感がする、んだが、な……気のせいなら良いが)
ヒュゥ…… ……
船長「やな風だな……」チッ
……
………
…………
船長「……雷使い次第、だろうな」
船長(魔法の練習がどうとか言ってた……うってつけ、かもしれないが)
船長(……俺が、反対する理由も権利もネェけどな)ハァ
少女「で、すよ……ね」
船長「とにかく一度戻るぞ。雷使い達がまだ目を覚ましてないなら、お前と少年だけでも……」
少女「……食事、ですよね……! ……少年も何も食べてないんですか!?」
船長「起きたなら食えって言ったんだけどな」ハァ
少女「…… ……」
カチャ
船長「!」
水使い「…… ……」
少女「! ……ッ ……水使い」ホッ
水使い「雷使いも目を覚ましました。戻りましょう」
少女「え……ええ……あの、少年は……」
水使い「……少年様もお待ちです」
船長(少年……様?)
少女「……そ、そう」
船長「おい。飯の用意をしておくから、後で食道に来いよ」
水使い「……ありがとうございます。さあ……」
少女「え、ええ」
スタスタ、カチャ
少女「あ! ……船長さん、ありがとうございました!」
パタン
船長「…… ……」
船長(なぁんか……やな予感がする、んだが、な……気のせいなら良いが)
ヒュゥ…… ……
船長「やな風だな……」チッ
……
………
…………
111: 2014/09/25(木) 17:59:08.92 ID:tOGLPhSV0
少年「…… ……」
カチャ
水使い「戻りました」
少女「雷使いさん……ッ 大丈夫!?」
雷使い「……ええ。ぐっすり眠ったから。とっても気分が良いわ」ニコ
少女「…… ……?」
雷使い「さて……」
少年「俺が話す……少女。『見た』か?」
少女「え?」
少年「見てこい、と言っただろう……見た、か?」
少女「え……な、何を、よ……」
少年「…… ……」
雷使い「…… ……」
水使い「…… ……」
少女「な、何よ! 皆、黙って……!」
少年「まあ、良い……」
少女「少年……?」
雷使い「……確かめさせてくれるのでしょう、少年様」
少女「!」
少女(少年『様』!? ……そういえば、水使いもさっき……)
少年「……そうだな。少女の事もあわせて、そうした方が良いみたいだ」
少女「な、何の話をしてるのよ……さっきから……!」
水使い「…… ……」
雷使い「大きな声を出さないで、少女」
少年「雷使い」
雷使い「……貴方はともかく。少女……は。この目で見るまでは、と申したはずです」
少女「え……?」
少年「船に乗っている理由ももう無い。目的地には着いた」
少年「……雷使い。船長にそう伝えてきてくれ」
雷使い「……はい」チラ
少女「!」ビクッ
少年「……早くいけ」
雷使い「期待は、しているんですよ。勿論」
スタスタ、パタン
少女(……何の、話をしているのよ。どうなってるの!?)
少女「しょうね……ッ」
少年「少女」
少女「な、何よ……」
少年「大丈夫だ。俺にはわかってるから」
少女「な……何が!? 何なのよ、さっきから! ……ッおかしいわよ!」
少女「どうしちゃったの、少年……!!」
カチャ
水使い「戻りました」
少女「雷使いさん……ッ 大丈夫!?」
雷使い「……ええ。ぐっすり眠ったから。とっても気分が良いわ」ニコ
少女「…… ……?」
雷使い「さて……」
少年「俺が話す……少女。『見た』か?」
少女「え?」
少年「見てこい、と言っただろう……見た、か?」
少女「え……な、何を、よ……」
少年「…… ……」
雷使い「…… ……」
水使い「…… ……」
少女「な、何よ! 皆、黙って……!」
少年「まあ、良い……」
少女「少年……?」
雷使い「……確かめさせてくれるのでしょう、少年様」
少女「!」
少女(少年『様』!? ……そういえば、水使いもさっき……)
少年「……そうだな。少女の事もあわせて、そうした方が良いみたいだ」
少女「な、何の話をしてるのよ……さっきから……!」
水使い「…… ……」
雷使い「大きな声を出さないで、少女」
少年「雷使い」
雷使い「……貴方はともかく。少女……は。この目で見るまでは、と申したはずです」
少女「え……?」
少年「船に乗っている理由ももう無い。目的地には着いた」
少年「……雷使い。船長にそう伝えてきてくれ」
雷使い「……はい」チラ
少女「!」ビクッ
少年「……早くいけ」
雷使い「期待は、しているんですよ。勿論」
スタスタ、パタン
少女(……何の、話をしているのよ。どうなってるの!?)
少女「しょうね……ッ」
少年「少女」
少女「な、何よ……」
少年「大丈夫だ。俺にはわかってるから」
少女「な……何が!? 何なのよ、さっきから! ……ッおかしいわよ!」
少女「どうしちゃったの、少年……!!」
112: 2014/09/25(木) 18:08:54.90 ID:tOGLPhSV0
少年「すぐにわかる……大丈夫。心配しなくて良いよ」ニコ
少女「少年……」
カチャ
雷使い「……お待たせ。行きましょうか」
水使い「…… ……」スッ
少年「…… ……」
スタスタ
少女「え……あ、ちょ、ちょっと!?」
少女(……食堂、に行く……のよね?)
水使い「どこへ行くんです……こっちです」
少女「え!? ……ど、どうして船を下りるの!?」
雷使い「船長には挨拶を済ませたわ。心配しなくて大丈夫」
少女「!」クルッ
少女(……甲板に!)
少女「せんちょ…… ……ッ」
少年「来るんだ、少女」グイッ
少女「きゃ……ッ」
タタタ……
雷使い「……すぐに離れる様に言ってあるわ」
少女「ど、どこに行くの!? この国には、もう誰も……!」
雷使い「大丈夫よ。食料は分けてもらったし。どうにでもなる」
少年「そうだ。狩りでも何でもすれば良い……否。しなければならない」
少女「……ちょ……ッ と、待ってよ! 話して!」バッ
少年「…… ……」
少女「どうしちゃったの、少年! 貴方おかしいわよ!」
少女「一体何の話をしているの!? ……港街を出て、こんな……ッ !?」
少年「後でちゃんと説明してあげるつもりだったのに」ハァ……グイッ
少女「い……ッ」
少女(頬に……指が、食い込んで……ッ)
少年「……向こうに行ってから、と思ったけど。ここで良いか、雷使い」
雷使い「私は早いほうが良いですわ……少年様」
少女「そ、それよ! ……どうして、様、なんて……!」
水使い「…… ……」スッ
少女「水使い……?」
少年「少女も、少し離れて」トンッ
少女「きゃっ」
雷使い「……よろしいですか」
少年「ああ」
雷使い「…… ……」スッ
少女「!? 何を……ッ」
水使い「こちらへ」グイッ
少女「……ッ」
雷使い「雷よ!」
パリパリ……
少女「!? 何をするの、やめて……ッ 少年!!」
ピシャアアアアアアアアアン!
少女「きゃああああああああああああああ!」
少女「少年……」
カチャ
雷使い「……お待たせ。行きましょうか」
水使い「…… ……」スッ
少年「…… ……」
スタスタ
少女「え……あ、ちょ、ちょっと!?」
少女(……食堂、に行く……のよね?)
水使い「どこへ行くんです……こっちです」
少女「え!? ……ど、どうして船を下りるの!?」
雷使い「船長には挨拶を済ませたわ。心配しなくて大丈夫」
少女「!」クルッ
少女(……甲板に!)
少女「せんちょ…… ……ッ」
少年「来るんだ、少女」グイッ
少女「きゃ……ッ」
タタタ……
雷使い「……すぐに離れる様に言ってあるわ」
少女「ど、どこに行くの!? この国には、もう誰も……!」
雷使い「大丈夫よ。食料は分けてもらったし。どうにでもなる」
少年「そうだ。狩りでも何でもすれば良い……否。しなければならない」
少女「……ちょ……ッ と、待ってよ! 話して!」バッ
少年「…… ……」
少女「どうしちゃったの、少年! 貴方おかしいわよ!」
少女「一体何の話をしているの!? ……港街を出て、こんな……ッ !?」
少年「後でちゃんと説明してあげるつもりだったのに」ハァ……グイッ
少女「い……ッ」
少女(頬に……指が、食い込んで……ッ)
少年「……向こうに行ってから、と思ったけど。ここで良いか、雷使い」
雷使い「私は早いほうが良いですわ……少年様」
少女「そ、それよ! ……どうして、様、なんて……!」
水使い「…… ……」スッ
少女「水使い……?」
少年「少女も、少し離れて」トンッ
少女「きゃっ」
雷使い「……よろしいですか」
少年「ああ」
雷使い「…… ……」スッ
少女「!? 何を……ッ」
水使い「こちらへ」グイッ
少女「……ッ」
雷使い「雷よ!」
パリパリ……
少女「!? 何をするの、やめて……ッ 少年!!」
ピシャアアアアアアアアアン!
少女「きゃああああああああああああああ!」
113: 2014/09/25(木) 18:22:32.11 ID:tOGLPhSV0
少年「…… ……」
水使い「!」
少女「あ、ああ……あ …… ……!?」
少年「……だから、言っただろ」
雷使い「お、おお……!」
少女「!?」
水使い「…… ……」
少女(少年……何とも、無い、の……!?)
雷使い「……ご無礼、お許しください」スッ
少年「…… ……」
少女「少年!! 何とも……無いの!?」
タタタ……ッ
少年「当然だ。信じてる、と言いながら信じないからな」ハァ
雷使い「……疑う必要は無いと思いました。ですが……否! やはり……ッ」
少女「雷使いさん……?」
少年「次は君の番だ、少女」
少女「…… ……え?」
雷使い「では……」スッ
少年「……俺がやる」
少女「!? ……しょうね……ッ」
少年「雷よ!」
バチバチバチ……ッ
少女「!! ……いや、やめて……やめて、しょうね……!!」
ピシャアアアアアアアアアアアン……!
少女「き、ぃ………ヤァアアアアアアアアアア!! …… ……?」
少女(…… ……痛く……無い…… ……え!?)
雷使い「あ……あ…… ……ああ……!」
水使い「…… ……」
少年「……うん」ニコ
少女「どう……いう、こ……と…… ……」ガクガクッ
雷使い「……大丈夫です。流石です……ああ、やはり、私の目に狂いはなかった……!」
少年「……改めろよ、雷使い」
雷使い「勿論ですとも……ッ 水使い!」
水使い「……はい」
スッ
少女「!?」
少女(な、なんで……何で二人とも、ひざまずいたりするの……!)
雷使い「……この日を心よりお待ちしておりました、少年様……少女様」
少女「!」
雷使い「どうぞ我ら……『選ばれし者』の悲願を……『魔導国』の再建を……いつの日か!」
少女「……魔導国!?」
水使い「…… ……」
雷使い「そうです。貴方達は……新たな『始まりの姉弟』となるのです」
雷使い「『優れた加護』を持つ我らは、選ばれし者。特別な存在なのです」
少女「!」
少女(優れた加護……! そうか、少年も、私も……!)
雷使い「わからない事だらけでしょう。きちんと説明させていただきます、少女様」ニコ
雷使い「私と水使いの事は、貴方達の手となり足となります……秘書様と母親様の」
雷使い「眠るこの地で……」フフ
少女「……え……?」
少年「見てこい、と言っただろう、少女」グイッ
水使い「!」
少女「あ、ああ……あ …… ……!?」
少年「……だから、言っただろ」
雷使い「お、おお……!」
少女「!?」
水使い「…… ……」
少女(少年……何とも、無い、の……!?)
雷使い「……ご無礼、お許しください」スッ
少年「…… ……」
少女「少年!! 何とも……無いの!?」
タタタ……ッ
少年「当然だ。信じてる、と言いながら信じないからな」ハァ
雷使い「……疑う必要は無いと思いました。ですが……否! やはり……ッ」
少女「雷使いさん……?」
少年「次は君の番だ、少女」
少女「…… ……え?」
雷使い「では……」スッ
少年「……俺がやる」
少女「!? ……しょうね……ッ」
少年「雷よ!」
バチバチバチ……ッ
少女「!! ……いや、やめて……やめて、しょうね……!!」
ピシャアアアアアアアアアアアン……!
少女「き、ぃ………ヤァアアアアアアアアアア!! …… ……?」
少女(…… ……痛く……無い…… ……え!?)
雷使い「あ……あ…… ……ああ……!」
水使い「…… ……」
少年「……うん」ニコ
少女「どう……いう、こ……と…… ……」ガクガクッ
雷使い「……大丈夫です。流石です……ああ、やはり、私の目に狂いはなかった……!」
少年「……改めろよ、雷使い」
雷使い「勿論ですとも……ッ 水使い!」
水使い「……はい」
スッ
少女「!?」
少女(な、なんで……何で二人とも、ひざまずいたりするの……!)
雷使い「……この日を心よりお待ちしておりました、少年様……少女様」
少女「!」
雷使い「どうぞ我ら……『選ばれし者』の悲願を……『魔導国』の再建を……いつの日か!」
少女「……魔導国!?」
水使い「…… ……」
雷使い「そうです。貴方達は……新たな『始まりの姉弟』となるのです」
雷使い「『優れた加護』を持つ我らは、選ばれし者。特別な存在なのです」
少女「!」
少女(優れた加護……! そうか、少年も、私も……!)
雷使い「わからない事だらけでしょう。きちんと説明させていただきます、少女様」ニコ
雷使い「私と水使いの事は、貴方達の手となり足となります……秘書様と母親様の」
雷使い「眠るこの地で……」フフ
少女「……え……?」
少年「見てこい、と言っただろう、少女」グイッ
119: 2014/09/26(金) 16:39:00.01 ID:hzP+kejk0
少女「きゃ……ッ!?」
少年「…… ……」ギュウ
少女「! は、離して……少年……ッ」
少年「何もしないよ。まだ幼い」
少女「え……」
少年「雷使い、俺と一緒に城跡へ……水使い、少女を頼む」
水使い「はい」
少女「な……にを、するの」
少年「…… ……」クルッ
スタスタ
少女「少年! ……雷使いさん!!」
雷使い「どうぞ、お呼び捨てください、少女様……水使い、頼んだわよ」
水使い「はい」
スタスタ
少女「あ……ッ」
水使い「……私達も、丘の麓の村まで行きましょう」
少女「……どうなってるの!? 少年は……どうしちゃったの!?」
少女「あれじゃ……まるで……ッ」
水使い「…… ……」
少女「まるで、別人だわ! あんなの、あんなの少年じゃ……!」
水使い「…… ……」ギュ
少女「!」
水使い「行きましょう、少女様」グイッ
スタスタ
少女「ちょ……ッ 手を引っ張らないで……!?」
タタタ……
少年「…… ……」ギュウ
少女「! は、離して……少年……ッ」
少年「何もしないよ。まだ幼い」
少女「え……」
少年「雷使い、俺と一緒に城跡へ……水使い、少女を頼む」
水使い「はい」
少女「な……にを、するの」
少年「…… ……」クルッ
スタスタ
少女「少年! ……雷使いさん!!」
雷使い「どうぞ、お呼び捨てください、少女様……水使い、頼んだわよ」
水使い「はい」
スタスタ
少女「あ……ッ」
水使い「……私達も、丘の麓の村まで行きましょう」
少女「……どうなってるの!? 少年は……どうしちゃったの!?」
少女「あれじゃ……まるで……ッ」
水使い「…… ……」
少女「まるで、別人だわ! あんなの、あんなの少年じゃ……!」
水使い「…… ……」ギュ
少女「!」
水使い「行きましょう、少女様」グイッ
スタスタ
少女「ちょ……ッ 手を引っ張らないで……!?」
タタタ……
120: 2014/09/26(金) 17:12:21.42 ID:hzP+kejk0
水使い「…… ……」
少女「ねえ……待って!」
タタ……スタスタ……
少女「待って……待ってってば、水使い!」
水使い「目を覚ましたら、貴女は居ませんでした。そして少年様は……もう、今のような様子だったんです」
少女「え……」
水使い「私達が眠っている間に、船長さんに始まりの国の方へと向かうよう注進した事」
水使い「戦闘に参加した事……自分には確かに、優れた加護があるのだと言う事等を……説明してくださいました」
……
………
…………
雷使い「優れた加護……いえ、勿論、そう信じているわ。でも……!」
少年「……俺と少女は『魔導国の生き残り』なのだろう?」
雷使い「! ……」バッ
水使い「…… ……」フルフル
少年「水使いは何も言っていない……俺が聞いたのは」
少年「『秘書』と言う……奴からだ」
雷使い「な……んですって? 今……なんと?」
少年「奴は確かにそう名乗った。俺たちの母である女の双子の姉、だろう?」
雷使い「!」
少年「……母親様、と言う人の、血肉を食らい、あの女……母を呪ったのだと」
水使い「!?」
雷使い「呪った……?」
少年「そうだ。そして願ったのだと」
水使い「何を……です」
少年「魔導国の再建……我らは魔導国の生き残りで、雷の優れた加護を持つ特別な存在だから、と」
雷使い「…… ……!」
少年「秘書と母親は、始まりの国の地に眠っている」
少年「奴らの願いは、始まりの地に宿り、俺と少女を待っている」
水使い「…… ……」
少年「あの地に宿る奴らの思いを吸い、俺と少女は交わり、命を……」
少年「……新しい『世界』を作らなければならない」
雷使い「な……なる、ほど……ッ」
水使い「……雷使い?」
雷使い「……確かに。確かに、貴方と少女は秘書様の双子の妹の……子」
雷使い「私も……否。魔導国の生き残り達は皆、少年の言う……その……」
少年「……良いよ。わかってるから」
雷使い「!」
少年「俺に優れた加護があるのは当然だろう?」
少女「ねえ……待って!」
タタ……スタスタ……
少女「待って……待ってってば、水使い!」
水使い「目を覚ましたら、貴女は居ませんでした。そして少年様は……もう、今のような様子だったんです」
少女「え……」
水使い「私達が眠っている間に、船長さんに始まりの国の方へと向かうよう注進した事」
水使い「戦闘に参加した事……自分には確かに、優れた加護があるのだと言う事等を……説明してくださいました」
……
………
…………
雷使い「優れた加護……いえ、勿論、そう信じているわ。でも……!」
少年「……俺と少女は『魔導国の生き残り』なのだろう?」
雷使い「! ……」バッ
水使い「…… ……」フルフル
少年「水使いは何も言っていない……俺が聞いたのは」
少年「『秘書』と言う……奴からだ」
雷使い「な……んですって? 今……なんと?」
少年「奴は確かにそう名乗った。俺たちの母である女の双子の姉、だろう?」
雷使い「!」
少年「……母親様、と言う人の、血肉を食らい、あの女……母を呪ったのだと」
水使い「!?」
雷使い「呪った……?」
少年「そうだ。そして願ったのだと」
水使い「何を……です」
少年「魔導国の再建……我らは魔導国の生き残りで、雷の優れた加護を持つ特別な存在だから、と」
雷使い「…… ……!」
少年「秘書と母親は、始まりの国の地に眠っている」
少年「奴らの願いは、始まりの地に宿り、俺と少女を待っている」
水使い「…… ……」
少年「あの地に宿る奴らの思いを吸い、俺と少女は交わり、命を……」
少年「……新しい『世界』を作らなければならない」
雷使い「な……なる、ほど……ッ」
水使い「……雷使い?」
雷使い「……確かに。確かに、貴方と少女は秘書様の双子の妹の……子」
雷使い「私も……否。魔導国の生き残り達は皆、少年の言う……その……」
少年「……良いよ。わかってるから」
雷使い「!」
少年「俺に優れた加護があるのは当然だろう?」
130: 2014/09/28(日) 09:36:43.96 ID:+UB9QxRw0
雷使い(何だ、これは……本当に少年なのか?)
少年「……少女が戻れば、船を下りる。確かめなければな」
水使い「確かめる?」
少年「疑うべくも無い……俺もそう思いたいけど」
雷使い(誰も……この双子の母の事は話して居ない。それに、呪いだと……!?)
水使い「! 少女、ですか」
雷使い(しかし……!)
少年「そうだ。少女には俺の子供を産んでもらわなければならない」
少年「俺は大丈夫だと言ったんだがな。確かめる事は必要だと」
雷使い「……なら、貴方の事も確かめさせてもらう必要があるわ」
水使い「雷使い?」
少年「…… ……」
雷使い「信じて連れてきたわ。理想は……そう。否……信じているわ。だけど……」
少年「……まあ、良いだろう。少女に関しては俺もそうせざるを得ない」
雷使い「ええ……そうよ。そうよね」ホッ
雷使い「戦闘に参加したのは嘘では無いでしょうし、疑っている訳じゃ無いのよ?」
雷使い「貴方の……少年の言うとおりなら、どれほど良いか……!」
少年「…… ……」ジロ
雷使い「!?」
少年「……『秘書』と『母親様』の意思だ」
雷使い「え、ええ……だから、少女と一緒にしょうね…… ……ッ」
少年「…… ……」ジィ
雷使い「……少年、様、のも。確かめさせて頂き……ますよ」
少年「ああ」
……
………
…………
少女「…… ……」
水使い「あの雷使いが圧倒されていました……確かに」
水使い「……あれは、少年……様、では無い様にも思います」
少女「な、んなの、よ……それ……!?」
水使い「…… ……」
少年「……少女が戻れば、船を下りる。確かめなければな」
水使い「確かめる?」
少年「疑うべくも無い……俺もそう思いたいけど」
雷使い(誰も……この双子の母の事は話して居ない。それに、呪いだと……!?)
水使い「! 少女、ですか」
雷使い(しかし……!)
少年「そうだ。少女には俺の子供を産んでもらわなければならない」
少年「俺は大丈夫だと言ったんだがな。確かめる事は必要だと」
雷使い「……なら、貴方の事も確かめさせてもらう必要があるわ」
水使い「雷使い?」
少年「…… ……」
雷使い「信じて連れてきたわ。理想は……そう。否……信じているわ。だけど……」
少年「……まあ、良いだろう。少女に関しては俺もそうせざるを得ない」
雷使い「ええ……そうよ。そうよね」ホッ
雷使い「戦闘に参加したのは嘘では無いでしょうし、疑っている訳じゃ無いのよ?」
雷使い「貴方の……少年の言うとおりなら、どれほど良いか……!」
少年「…… ……」ジロ
雷使い「!?」
少年「……『秘書』と『母親様』の意思だ」
雷使い「え、ええ……だから、少女と一緒にしょうね…… ……ッ」
少年「…… ……」ジィ
雷使い「……少年、様、のも。確かめさせて頂き……ますよ」
少年「ああ」
……
………
…………
少女「…… ……」
水使い「あの雷使いが圧倒されていました……確かに」
水使い「……あれは、少年……様、では無い様にも思います」
少女「な、んなの、よ……それ……!?」
水使い「…… ……」
131: 2014/09/28(日) 09:46:01.33 ID:+UB9QxRw0
少女(私が……魔導国の生き残り? 秘書?母親様……? 何なの……?)
水使い「……混乱するのも無理はありません。正直なところ」
水使い「私も……多分水使いも、良くはわかっていないんです」
少女「え?」
水使い「……『呪い』と言いました。少年様は」
少女「! そうよ! ……少年の話なら、その、秘書って人は……!」
水使い「……貴女の伯母様、です」
少女「……何故、その伯母が母を、呪うなんて、そんな……!」
水使い「…… ……」
少女「しかも……し、しかも、私と、少年がその……ッ」カァッ
少女「嫌よ! 姉弟で、そんな……!!」
水使い「…… ……」
スタスタ
雷使い「まだこんな所にいたの」
少女「!」
雷使い「少年様がお待ちですよ、少女様」
少女「い、いや……!」
雷使い「混乱するのも、すぐに受け入れられないのも当然です」
少女「……え?」
雷使い「大丈夫……これからゆっくりと、少年様から色々な話を聞いて」
雷使い「成長した暁には……」スッ
少女「!」ビク
雷使い「……魔導国の未来がかかっているんですよ、少女様」ギュ
少女「は……離して……!」
雷使い「母親様の……我らの悲願を……!」
少女「い……やああああああああああああああああああ!」
……
………
…………
青年「……こんなもん、かな」フゥ
水使い「……混乱するのも無理はありません。正直なところ」
水使い「私も……多分水使いも、良くはわかっていないんです」
少女「え?」
水使い「……『呪い』と言いました。少年様は」
少女「! そうよ! ……少年の話なら、その、秘書って人は……!」
水使い「……貴女の伯母様、です」
少女「……何故、その伯母が母を、呪うなんて、そんな……!」
水使い「…… ……」
少女「しかも……し、しかも、私と、少年がその……ッ」カァッ
少女「嫌よ! 姉弟で、そんな……!!」
水使い「…… ……」
スタスタ
雷使い「まだこんな所にいたの」
少女「!」
雷使い「少年様がお待ちですよ、少女様」
少女「い、いや……!」
雷使い「混乱するのも、すぐに受け入れられないのも当然です」
少女「……え?」
雷使い「大丈夫……これからゆっくりと、少年様から色々な話を聞いて」
雷使い「成長した暁には……」スッ
少女「!」ビク
雷使い「……魔導国の未来がかかっているんですよ、少女様」ギュ
少女「は……離して……!」
雷使い「母親様の……我らの悲願を……!」
少女「い……やああああああああああああああああああ!」
……
………
…………
青年「……こんなもん、かな」フゥ
132: 2014/09/28(日) 09:54:13.22 ID:+UB9QxRw0
青年(何も……無いんだけどな。もう)
青年「……アンタもまさか。こんな事になるとは思わなかっただろうな」
青年(神父の墓……形だけは綺麗にしておいた、けど)ハァ
青年(本来なら……人、であるなら)
青年(どれぐらいの時間をかけて、土に還るんだろう?)
青年(……血肉はすぐに朽ちる、んだろうが)
スタスタ、カチャ
青年(家の中も……一応片付けたし)
青年(まさか……本当に、もう一度ここに戻ってくるとは思わなかった、けどな)
青年「綺麗……には、ほど遠いけど」
青年(この建物も……何れは朽ちるんだろうけど……っと)
青年(……山を越えて、北の街まで行けば……どうにか、塔にはいけるか)
青年(もう少し、のんびりしても良かった……けど……)
青年(目立った収穫も、やる事も無い…… ……本当に、この世界が平和になったんだと)
青年(……錯覚しそうだ)ハァ
青年「しかし……どうするかな。鍛冶師の村に寄るわけには行かないしな……あ」
青年(……忘れる所だった。ナイフは……っと)
ザクザク……ッ パラパラ……
青年(髪を切ったぐらいで、印象が変わるかのか? ……よくわからんが)
青年(……村には寄るつもりは無いが……ま、誰かに見られても面倒だしな)
青年「……アンタもまさか。こんな事になるとは思わなかっただろうな」
青年(神父の墓……形だけは綺麗にしておいた、けど)ハァ
青年(本来なら……人、であるなら)
青年(どれぐらいの時間をかけて、土に還るんだろう?)
青年(……血肉はすぐに朽ちる、んだろうが)
スタスタ、カチャ
青年(家の中も……一応片付けたし)
青年(まさか……本当に、もう一度ここに戻ってくるとは思わなかった、けどな)
青年「綺麗……には、ほど遠いけど」
青年(この建物も……何れは朽ちるんだろうけど……っと)
青年(……山を越えて、北の街まで行けば……どうにか、塔にはいけるか)
青年(もう少し、のんびりしても良かった……けど……)
青年(目立った収穫も、やる事も無い…… ……本当に、この世界が平和になったんだと)
青年(……錯覚しそうだ)ハァ
青年「しかし……どうするかな。鍛冶師の村に寄るわけには行かないしな……あ」
青年(……忘れる所だった。ナイフは……っと)
ザクザク……ッ パラパラ……
青年(髪を切ったぐらいで、印象が変わるかのか? ……よくわからんが)
青年(……村には寄るつもりは無いが……ま、誰かに見られても面倒だしな)
133: 2014/09/28(日) 11:11:24.57 ID:+UB9QxRw0
青年「……良し」ギュッ
青年(双子達が無事に北の街の近くに着いた、と仮定しても)
青年(……陸伝いにいけば、逢う事も無いだろう)
青年(次に……ここに来る事は……ある、のかな)ハァ
青年「…… ……」
スタスタ……
……
………
…………
黒魔「……魔王」トントン
魔王「んん……」パチ
黒魔「おはよう……おやすみ、かな」クス
魔王「あっちで寝たらこっちで起きて……」ファ
魔王「休んでる気がしないなぁ」
黒魔「まあ、な」
魔王「…… ……相変わらず、だなぁ」チラ
黒魔「ん? ……ああ。ただの映像だ、って思っても」
魔王「うん……赤ちゃんが海に落ちたりするのは、見たくないよね」
黒魔「…… ……」
魔王「ねえ、お父さん」
黒魔「ん?」
魔王「……闇の手が、やっと成功させたんだよ」
黒魔「転移石か?」
魔王「うん……あと、何か色々やってくれてる」
黒魔「そうか……双子の方は?」
魔王「……青年に追ってもらうわけにも行かないしね」
黒魔「北の街の近く、とか言ってたんだろう」
魔王「使用人が、そこじゃ無いかな?って……言っただけだよ」
魔王「あの子達は人間だもん……本当に、その雷使いって」
魔王「人や、旧貴族達? が……何か企んでるとしたって、さ」
黒魔「…… ……」
魔王「闇の手は……何か考えてるみたい、だけどね」
黒魔「平和だな。見た目だけなら」
魔王「……うん…… ……」
黒魔「魔王?」
魔王「……ねえ、お父さん」
黒魔「ん」
魔王「お父さんは、何でまだここに居るんだろう」
黒魔「……わからん」
魔王「…… ……」
黒魔「まだ、何か……すべきことが残ってる……の、か?」
黒魔「しかしなぁ……」
魔王「……ごめん」
黒魔「何で謝るんだよ」ナデ
青年(双子達が無事に北の街の近くに着いた、と仮定しても)
青年(……陸伝いにいけば、逢う事も無いだろう)
青年(次に……ここに来る事は……ある、のかな)ハァ
青年「…… ……」
スタスタ……
……
………
…………
黒魔「……魔王」トントン
魔王「んん……」パチ
黒魔「おはよう……おやすみ、かな」クス
魔王「あっちで寝たらこっちで起きて……」ファ
魔王「休んでる気がしないなぁ」
黒魔「まあ、な」
魔王「…… ……相変わらず、だなぁ」チラ
黒魔「ん? ……ああ。ただの映像だ、って思っても」
魔王「うん……赤ちゃんが海に落ちたりするのは、見たくないよね」
黒魔「…… ……」
魔王「ねえ、お父さん」
黒魔「ん?」
魔王「……闇の手が、やっと成功させたんだよ」
黒魔「転移石か?」
魔王「うん……あと、何か色々やってくれてる」
黒魔「そうか……双子の方は?」
魔王「……青年に追ってもらうわけにも行かないしね」
黒魔「北の街の近く、とか言ってたんだろう」
魔王「使用人が、そこじゃ無いかな?って……言っただけだよ」
魔王「あの子達は人間だもん……本当に、その雷使いって」
魔王「人や、旧貴族達? が……何か企んでるとしたって、さ」
黒魔「…… ……」
魔王「闇の手は……何か考えてるみたい、だけどね」
黒魔「平和だな。見た目だけなら」
魔王「……うん…… ……」
黒魔「魔王?」
魔王「……ねえ、お父さん」
黒魔「ん」
魔王「お父さんは、何でまだここに居るんだろう」
黒魔「……わからん」
魔王「…… ……」
黒魔「まだ、何か……すべきことが残ってる……の、か?」
黒魔「しかしなぁ……」
魔王「……ごめん」
黒魔「何で謝るんだよ」ナデ
158: 2014/10/05(日) 09:40:48.05 ID:hCyIWS1B0
魔王「……なんと無く」
黒魔「青年はまだ戻らないのか」
魔王「数日前に手紙が届いたよ」
黒魔「……空飛ぶひよこか」クス
魔王「もう……」プゥ
黒魔「で、なんて?」クスクス
魔王「癒し手様の小屋を出るって……北の街から塔に行って……だから」
魔王「どれぐらい時間がかかって届いてるのかがわかんないけど。でも」
黒魔「……まあ、もうすぐ、かな?って?」
魔王「…… ……うん」
黒魔「何だ。あれだけ早く帰ってこないかなって言ってたくせに」
魔王「嬉しくない訳じゃ無いんだよ。闇の手も間に合ったって言ってたし」
黒魔「うん」
魔王「……子作りなぁ、と思って」
黒魔「…… ……わかっちゃ居るけど、複雑です。お父さんは」
魔王「え? ……あ」カァ
黒魔「『親子の会話』じゃ無いよな」ハァ
魔王「……で、でも! ……私が、勇者を産まないと……」
黒魔「わかってるよ……確実では無いだろうが、紫の魔王の様に……だろ」
魔王「……うん」
黒魔「青年はまだ戻らないのか」
魔王「数日前に手紙が届いたよ」
黒魔「……空飛ぶひよこか」クス
魔王「もう……」プゥ
黒魔「で、なんて?」クスクス
魔王「癒し手様の小屋を出るって……北の街から塔に行って……だから」
魔王「どれぐらい時間がかかって届いてるのかがわかんないけど。でも」
黒魔「……まあ、もうすぐ、かな?って?」
魔王「…… ……うん」
黒魔「何だ。あれだけ早く帰ってこないかなって言ってたくせに」
魔王「嬉しくない訳じゃ無いんだよ。闇の手も間に合ったって言ってたし」
黒魔「うん」
魔王「……子作りなぁ、と思って」
黒魔「…… ……わかっちゃ居るけど、複雑です。お父さんは」
魔王「え? ……あ」カァ
黒魔「『親子の会話』じゃ無いよな」ハァ
魔王「……で、でも! ……私が、勇者を産まないと……」
黒魔「わかってるよ……確実では無いだろうが、紫の魔王の様に……だろ」
魔王「……うん」
159: 2014/10/05(日) 10:35:29.11 ID:hCyIWS1B0
黒魔「……前例が無い、とは……言い切れないからな」ハァ
魔王「そうなんだよね…… ……ん?」キョロ
黒魔「どうした?」
魔王「今、何か…… ……」
『……王……ま ……魔 ……様…… ……』
黒魔「??」
魔王「…… ……」キョロキョロ
黒魔「どうした、魔王」
黒魔(お父さんには聞こえないの?)
『魔王様…… ……魔王様、起きてください!』
魔王「使用人の声だ」
黒魔「え!?」
魔王「……呼んでる。行かなきゃ」
黒魔「お、おい……」
シュゥン……
黒魔「!」
黒魔「…… ……」
黒魔(消えた…… ……使用人の声、だって!?)
黒魔(こちら側に…… ……干渉した、のか。あいつが!?)
黒魔「…… ……」
黒魔(何も…… ……聞こえない、が)
……
………
…………
青年「……ごちそう様、美味しかったよ」
アリガトウゴザイマシター
青年「腹も膨れたし……どうするかな」
青年(『すんなりと北の街につけたのはラッキーだったな』)
青年(『この街に用事があるわけじゃないし……これ以上ここに居る理由も無い』)
青年(『腹ごしらえも澄んだし』……戻るかな、僕も)
青年(『問題は……どうやって塔まで行くか、だ。まさか泳いでいくわけにも行かないしな』)
青年(『ここは最果ての地に近い……魔物も弱っているとは言え、戦闘なんかも他の地域に比べると』)
青年(『元々、多い筈だ。こんな時に特にこれと言った』情報も無いしな)
青年「……『一応、誰かに聞いてみるか』」
スタスタ
魔王「そうなんだよね…… ……ん?」キョロ
黒魔「どうした?」
魔王「今、何か…… ……」
『……王……ま ……魔 ……様…… ……』
黒魔「??」
魔王「…… ……」キョロキョロ
黒魔「どうした、魔王」
黒魔(お父さんには聞こえないの?)
『魔王様…… ……魔王様、起きてください!』
魔王「使用人の声だ」
黒魔「え!?」
魔王「……呼んでる。行かなきゃ」
黒魔「お、おい……」
シュゥン……
黒魔「!」
黒魔「…… ……」
黒魔(消えた…… ……使用人の声、だって!?)
黒魔(こちら側に…… ……干渉した、のか。あいつが!?)
黒魔「…… ……」
黒魔(何も…… ……聞こえない、が)
……
………
…………
青年「……ごちそう様、美味しかったよ」
アリガトウゴザイマシター
青年「腹も膨れたし……どうするかな」
青年(『すんなりと北の街につけたのはラッキーだったな』)
青年(『この街に用事があるわけじゃないし……これ以上ここに居る理由も無い』)
青年(『腹ごしらえも澄んだし』……戻るかな、僕も)
青年(『問題は……どうやって塔まで行くか、だ。まさか泳いでいくわけにも行かないしな』)
青年(『ここは最果ての地に近い……魔物も弱っているとは言え、戦闘なんかも他の地域に比べると』)
青年(『元々、多い筈だ。こんな時に特にこれと言った』情報も無いしな)
青年「……『一応、誰かに聞いてみるか』」
スタスタ
160: 2014/10/05(日) 11:03:37.17 ID:hCyIWS1B0
青年「すみません、北の『塔に行きたいんだけど……』」
街の人「……アンタ、あんな場所になんの用事があるんだい?」ジロジロ
青年「……まあ、好奇心、かな」
街の人「旅の剣士……か?やめときな、あそこは……『近づいて良い場所じゃ無い』」
青年「……『まあ、そう言われるとは思ってたけど。敢えて聞いてるんだよ』」
街の人「『この街の人間は、誰もあの塔の話はしたがらない』」
青年「『…… ……』」
街の人「大方、腕試しのつもりなんだろ?悪い事は言わん……やめとけ」
青年「金ならあるんだけど……駄目かい?」
街の人「こっちだって、命は惜しいんだよ……『忠告してやっただけありがたいと思え』」
青年(『まあ、そうなる……よな。蝙蝠の魔物だったか? ……確か』)
街の人「『他の奴にと……う、の名前なんか出さない方が良いぞ。旅人だからって……甘くは見てくれない』」
青年「…… ……」
青年(あまり強くは言えないな……『禁忌だってのはわかってるし。最悪……また、小舟でも……』)
街の人「『あんな場所に行こうとするのは』海賊ぐらいのモンだよ」
青年「……海賊?」
街の人「そうさ……あいつらは金の亡者だからね」
青年「『まさか……』」
街の人「『まさか?』」
青年「『あ、いや……』」
街の人「……酒場に、それらしいのが居た『。気になるなら覗いてみたらどうだ』」
青年「『!? この街に!?』」
街の人「『俺は忠告したからな! ……後は、知らねぇよ』」
スタスタ
青年(海賊……まさか、船長が!?)
街の人「……アンタ、あんな場所になんの用事があるんだい?」ジロジロ
青年「……まあ、好奇心、かな」
街の人「旅の剣士……か?やめときな、あそこは……『近づいて良い場所じゃ無い』」
青年「……『まあ、そう言われるとは思ってたけど。敢えて聞いてるんだよ』」
街の人「『この街の人間は、誰もあの塔の話はしたがらない』」
青年「『…… ……』」
街の人「大方、腕試しのつもりなんだろ?悪い事は言わん……やめとけ」
青年「金ならあるんだけど……駄目かい?」
街の人「こっちだって、命は惜しいんだよ……『忠告してやっただけありがたいと思え』」
青年(『まあ、そうなる……よな。蝙蝠の魔物だったか? ……確か』)
街の人「『他の奴にと……う、の名前なんか出さない方が良いぞ。旅人だからって……甘くは見てくれない』」
青年「…… ……」
青年(あまり強くは言えないな……『禁忌だってのはわかってるし。最悪……また、小舟でも……』)
街の人「『あんな場所に行こうとするのは』海賊ぐらいのモンだよ」
青年「……海賊?」
街の人「そうさ……あいつらは金の亡者だからね」
青年「『まさか……』」
街の人「『まさか?』」
青年「『あ、いや……』」
街の人「……酒場に、それらしいのが居た『。気になるなら覗いてみたらどうだ』」
青年「『!? この街に!?』」
街の人「『俺は忠告したからな! ……後は、知らねぇよ』」
スタスタ
青年(海賊……まさか、船長が!?)
161: 2014/10/05(日) 11:14:17.33 ID:hCyIWS1B0
青年(酒場……ここか。騒いでる声が聞こえる……)
キィ
青年(昼間から酒をあおって大騒ぎ……『船長はどこだ?』)
青年(……『あの背中……あれか? ……多分、だが』)
スタスタ
青年「失礼……ちょっと聞きたいんだけど」
船長「ん……なんだ『…… ……!?』」
青年「『……忘れた、とは言わないと信じてるけど』」
シィン……
船長「『…… ……』」ポカーン
青年「『口閉じろよ……』」
船長「『青年……青年か!?』」ガタン!
青年「……久しぶり。大きくなったな、船長」
船長「おいおい……おいおい!」ガシ!
青年「痛い痛い……なんだ、本当に……随分逞しくなったな」
船長「……生きてる、よな?」ジィ
青年「……勝手に殺さないでくれる。ちゃんと足があるだろ」
船長「は、は……ハハハ! そうか!青年か! ……お前は……変わらないな……!」ギュウ!
青年「ちょ、おい……抱きつくな!」
船長「そうか……生きてたか……!」
青年「何なんだよ」ハァ
船長「うるせぇ! 喜んでんだから、お前も喜べ!」
青年「……意味がわかんない。しかし、お前達がここに居るって事は」
船長「あン?」
青年「双子は……」
船長「!」
青年「…… ……降ろしたんだな」
船長「ちょっと待て。お前が何で……その話を……」
青年「……伊達に『勇者様のお供』はやってないさ」
青年(今はもう……魔王様だけどね)
キィ
青年(昼間から酒をあおって大騒ぎ……『船長はどこだ?』)
青年(……『あの背中……あれか? ……多分、だが』)
スタスタ
青年「失礼……ちょっと聞きたいんだけど」
船長「ん……なんだ『…… ……!?』」
青年「『……忘れた、とは言わないと信じてるけど』」
シィン……
船長「『…… ……』」ポカーン
青年「『口閉じろよ……』」
船長「『青年……青年か!?』」ガタン!
青年「……久しぶり。大きくなったな、船長」
船長「おいおい……おいおい!」ガシ!
青年「痛い痛い……なんだ、本当に……随分逞しくなったな」
船長「……生きてる、よな?」ジィ
青年「……勝手に殺さないでくれる。ちゃんと足があるだろ」
船長「は、は……ハハハ! そうか!青年か! ……お前は……変わらないな……!」ギュウ!
青年「ちょ、おい……抱きつくな!」
船長「そうか……生きてたか……!」
青年「何なんだよ」ハァ
船長「うるせぇ! 喜んでんだから、お前も喜べ!」
青年「……意味がわかんない。しかし、お前達がここに居るって事は」
船長「あン?」
青年「双子は……」
船長「!」
青年「…… ……降ろしたんだな」
船長「ちょっと待て。お前が何で……その話を……」
青年「……伊達に『勇者様のお供』はやってないさ」
青年(今はもう……魔王様だけどね)
162: 2014/10/05(日) 11:28:59.59 ID:hCyIWS1B0
船長「! そうだよ、お前…… ……」
青年「? ……なんだよ」
船長「船に戻る。青年、お前も来い」
青年「え?」
船長「お前がここに居るのが、偶然なのか何なのかわかんねぇ。だが」
船長「ここで話して良い話、じゃないのはわかる、ってんだよ」
青年「…… ……」
船長「野郎共! 船に戻れ!」
アイアイサー!
青年「僕も行っていいのか」
船長「わざわざそれを聞くのか?」ニッ
青年「……ありがたく。お邪魔するよ」ニッ
……
………
…………
使用人「……魔王様!」
魔王「!」ハッ
闇の手「お休みの所、申し訳ありません」
魔王「……闇の手まで」ハァ
闇の手「え?」
魔王「ううん…… んッ」ズキッ
魔王(何だ? お腹痛い)
使用人「どこか……お変わりありませんか?」
魔王「え? ……どういうこと」ムクッ ……ズキッ
魔王「う……ッ」
闇の手「……何処か、痛みますか」
使用人「…… ……」
魔王「いや、何かちょっとお腹が…… ……?」
魔王(何か……腰の下が暖かい……何……)ヌルッ
魔王「!?」
青年「? ……なんだよ」
船長「船に戻る。青年、お前も来い」
青年「え?」
船長「お前がここに居るのが、偶然なのか何なのかわかんねぇ。だが」
船長「ここで話して良い話、じゃないのはわかる、ってんだよ」
青年「…… ……」
船長「野郎共! 船に戻れ!」
アイアイサー!
青年「僕も行っていいのか」
船長「わざわざそれを聞くのか?」ニッ
青年「……ありがたく。お邪魔するよ」ニッ
……
………
…………
使用人「……魔王様!」
魔王「!」ハッ
闇の手「お休みの所、申し訳ありません」
魔王「……闇の手まで」ハァ
闇の手「え?」
魔王「ううん…… んッ」ズキッ
魔王(何だ? お腹痛い)
使用人「どこか……お変わりありませんか?」
魔王「え? ……どういうこと」ムクッ ……ズキッ
魔王「う……ッ」
闇の手「……何処か、痛みますか」
使用人「…… ……」
魔王「いや、何かちょっとお腹が…… ……?」
魔王(何か……腰の下が暖かい……何……)ヌルッ
魔王「!?」
163: 2014/10/05(日) 11:34:37.27 ID:hCyIWS1B0
魔王「え……!?」バサッ
使用人「魔王様、ストップ!」グイ!
魔王「わッ ……ちょ、ちょっと、使用人、押さえないでよ起きれな……」
使用人「お布団めくるの、待ってください! ……闇の手様、外!」
闇の手「え?外?」
使用人「外に出てください!」
闇の手「え、え!? はい!」
スタスタ、バタン!
魔王「え……な、何」
使用人「……失礼します」バサッ
魔王「!? え!? 何これ!?」
魔王(血……!?)
使用人「……お腹、痛いんじゃありませんか?」
魔王「え、ええええええ。え、あ、うん!?」
使用人「落ち着いてください……別に病気じゃありませんから」
魔王「で、でも、何、何これ……!?」
使用人「……所謂月の物、って奴、です」
魔王「ツキノモノ?」
使用人「湯の準備をいたします。先に……綺麗にしていらしてください」
使用人「気持ち悪いでしょう?」
魔王「え……あ、うん……で、でも」
使用人「その間にお片付けしておきますから。説明は後、です」
魔王「…… ……」
使用人「……大丈夫です。本当に病気とかではありません。女性ならば」
使用人「あって当然、ですから」
魔王「え……」
……
………
…………
魔王「…… ……」ハァ
魔王「…… ……」チラ
使用人「魔王様、ストップ!」グイ!
魔王「わッ ……ちょ、ちょっと、使用人、押さえないでよ起きれな……」
使用人「お布団めくるの、待ってください! ……闇の手様、外!」
闇の手「え?外?」
使用人「外に出てください!」
闇の手「え、え!? はい!」
スタスタ、バタン!
魔王「え……な、何」
使用人「……失礼します」バサッ
魔王「!? え!? 何これ!?」
魔王(血……!?)
使用人「……お腹、痛いんじゃありませんか?」
魔王「え、ええええええ。え、あ、うん!?」
使用人「落ち着いてください……別に病気じゃありませんから」
魔王「で、でも、何、何これ……!?」
使用人「……所謂月の物、って奴、です」
魔王「ツキノモノ?」
使用人「湯の準備をいたします。先に……綺麗にしていらしてください」
使用人「気持ち悪いでしょう?」
魔王「え……あ、うん……で、でも」
使用人「その間にお片付けしておきますから。説明は後、です」
魔王「…… ……」
使用人「……大丈夫です。本当に病気とかではありません。女性ならば」
使用人「あって当然、ですから」
魔王「え……」
……
………
…………
魔王「…… ……」ハァ
魔王「…… ……」チラ
164: 2014/10/05(日) 11:40:07.51 ID:hCyIWS1B0
魔王(お湯につかってると、何とも無い…… ……あれ)
魔王(何か……おっOい、おっきくなってない?)ムニ
魔王(……気のせい? ……ん、でも)ザバッ
魔王(何か……視界が、違う気がする)
スタスタ
魔王(さっきは動転して……何も思わなかったけど)フキフキ
魔王「……痛てて」ズキッ
魔王(何でこんなにお腹……あ、血……そうだ、どこから……)チラ
魔王「!?」タタ……ガバッ
魔王「…… ……!?」
魔王(これ、私!? 何で……何で……!?)
魔王(鏡が……おかしいわけじゃ無いよね)プゥ
魔王(…… ……)ムニ
魔王「ほっぺ痛い……夢じゃ無い?」
魔王「…… ……」ニコッ
魔王「…… ……」アッカンベー
魔王「……え!?」
使用人「……何百面相なさってるんです、鏡相手に」
魔王「うわあああああああ!?」
使用人「…… ……」キィン
魔王「し、し、使用人……!!」
使用人「……いつまでも上がってこられないので、心配で見に来ただけです」
魔王「あ……ああ、ごめん……あの、でも!?」
魔王(何か……おっOい、おっきくなってない?)ムニ
魔王(……気のせい? ……ん、でも)ザバッ
魔王(何か……視界が、違う気がする)
スタスタ
魔王(さっきは動転して……何も思わなかったけど)フキフキ
魔王「……痛てて」ズキッ
魔王(何でこんなにお腹……あ、血……そうだ、どこから……)チラ
魔王「!?」タタ……ガバッ
魔王「…… ……!?」
魔王(これ、私!? 何で……何で……!?)
魔王(鏡が……おかしいわけじゃ無いよね)プゥ
魔王(…… ……)ムニ
魔王「ほっぺ痛い……夢じゃ無い?」
魔王「…… ……」ニコッ
魔王「…… ……」アッカンベー
魔王「……え!?」
使用人「……何百面相なさってるんです、鏡相手に」
魔王「うわあああああああ!?」
使用人「…… ……」キィン
魔王「し、し、使用人……!!」
使用人「……いつまでも上がってこられないので、心配で見に来ただけです」
魔王「あ……ああ、ごめん……あの、でも!?」
165: 2014/10/05(日) 11:48:32.91 ID:hCyIWS1B0
使用人「……起こした理由は、それです、魔王様」ハァ
魔王「…… ……」
使用人「今朝、お部屋から唸るような声が聞こえたので、見に行ったんです」
使用人「丁度、闇の手様も起きていらしたし」
魔王「ああ……」
魔王(それで……使用人の声が聞こえたのか。あれ? でも……)
使用人「魔王様はそのとき、すでにもう……そのお姿でした」
魔王「…… ……」
使用人「眠っていらっしゃる時は、黒の魔王様とお話していらっしゃるのだろうと」
使用人「わかっては居ましたので……」
魔王「何かしたの?」
使用人「え? ……いえ。二人で、ひたすら呼びかけただけです。ですが」
使用人「まあ、朝でしたし……じきに目を覚まされるか、と…… ……」
使用人「……何か、あったのですか?」
魔王「……とりあえず、服着させて? ……んで、闇の手も呼んで……」
使用人「先に、ツキノモノのお話をさせて頂きます。お着替えしながらで良いので」
魔王「え? ……ああ、うん」シュル
使用人「男性にはあまり、ね」
魔王「??」
……
………
…………
魔王「…… ……」
使用人「今朝、お部屋から唸るような声が聞こえたので、見に行ったんです」
使用人「丁度、闇の手様も起きていらしたし」
魔王「ああ……」
魔王(それで……使用人の声が聞こえたのか。あれ? でも……)
使用人「魔王様はそのとき、すでにもう……そのお姿でした」
魔王「…… ……」
使用人「眠っていらっしゃる時は、黒の魔王様とお話していらっしゃるのだろうと」
使用人「わかっては居ましたので……」
魔王「何かしたの?」
使用人「え? ……いえ。二人で、ひたすら呼びかけただけです。ですが」
使用人「まあ、朝でしたし……じきに目を覚まされるか、と…… ……」
使用人「……何か、あったのですか?」
魔王「……とりあえず、服着させて? ……んで、闇の手も呼んで……」
使用人「先に、ツキノモノのお話をさせて頂きます。お着替えしながらで良いので」
魔王「え? ……ああ、うん」シュル
使用人「男性にはあまり、ね」
魔王「??」
……
………
…………
186: 2014/10/12(日) 09:11:03.52 ID:5rwJCSfX0
青年「……だいたい、わかった」ハァ
船長「まじで!?」
青年「…… ……」
青年(この目で見たわけじゃ無い。断定は危険だ……だが)
青年(少年の様子が変わってしまった絡繰りはともかく……始まりの国へ行ったと言うのは)
青年(……考えすぎだろう、と仮定しても。見過ごすわけには行かない……だろうな)ハァ
青年「船長」スッ……カキカキ
船長「な、なんだよ」
船長(何書いてるんだ……手紙?)
青年「……約束、覚えてるか?」プチッ
船長「え…… ……あ! お、覚えてるさ! アレだろ、あれ! ……つか、髪抜いて何す……!」
ピィ……ピピピ……
船長「!?」
青年「……忘れてるんだろ」クス
船長「い、いや、覚えてるって……!? それより、お前……!?」
青年「落とすなよ……頼むよ」
ピィ……チチチ……パタパタ……
船長「……で、伝書鳩……否、ありゃなんだ……ひよこ……」
青年「……ッ」プックスクス
船長「何笑っていやがる」ムッ
青年「ひよこは飛ばないでしょ」
青年(魔王様と同じ事言う奴が居るとはね……)
船長「…… ……」ポカーン
青年「口閉じな……で、忘れてるみたいだけどさ」
船長「……覚えてるって行ってるだろ。いつか、お前が……青年が勇者を連れてきたら」
船長「この船に乗せてくれ、だろ?」
船長「まじで!?」
青年「…… ……」
青年(この目で見たわけじゃ無い。断定は危険だ……だが)
青年(少年の様子が変わってしまった絡繰りはともかく……始まりの国へ行ったと言うのは)
青年(……考えすぎだろう、と仮定しても。見過ごすわけには行かない……だろうな)ハァ
青年「船長」スッ……カキカキ
船長「な、なんだよ」
船長(何書いてるんだ……手紙?)
青年「……約束、覚えてるか?」プチッ
船長「え…… ……あ! お、覚えてるさ! アレだろ、あれ! ……つか、髪抜いて何す……!」
ピィ……ピピピ……
船長「!?」
青年「……忘れてるんだろ」クス
船長「い、いや、覚えてるって……!? それより、お前……!?」
青年「落とすなよ……頼むよ」
ピィ……チチチ……パタパタ……
船長「……で、伝書鳩……否、ありゃなんだ……ひよこ……」
青年「……ッ」プックスクス
船長「何笑っていやがる」ムッ
青年「ひよこは飛ばないでしょ」
青年(魔王様と同じ事言う奴が居るとはね……)
船長「…… ……」ポカーン
青年「口閉じな……で、忘れてるみたいだけどさ」
船長「……覚えてるって行ってるだろ。いつか、お前が……青年が勇者を連れてきたら」
船長「この船に乗せてくれ、だろ?」
187: 2014/10/12(日) 09:49:01.33 ID:5rwJCSfX0
青年「何だ、覚えてるんじゃ無いか」
船長「だからそう言っただろ…… ……どこ行くんだ」
青年「え?」
船長「あの黄色い小鳥だよ」
青年「ああ……仲間の所、さ」
船長「仲間…… ……そうだ! それより!だ」
青年「…… ……」
船長「……次はお前の番だぜ、青年。俺の質問には、後で答えるって行ったよな!?」
青年「そんな大声出さなくても、ちゃんと答えるさ。僕は……」
船長「嘘はつけない、んだよな。お前は……僧侶さんの息子で……」
青年「……ああ。僕はエルフの血が流れているから。エルフは……嘘はつけないからな」
船長「前ははぐらかした癖に」ニッ
青年「何で笑うんだよ」
船長「嬉しいんだよ。わかるだろ」
青年「…… ……?」
船長「ん、んな真剣な顔すんな!恥ずかしいだろうが! それより!」
青年「…… ……」クス
青年「勇者は魔王を倒したのか、か」
船長「……ああ」
青年「君も言っていただろう。海しかわからないけれど。魔物は……弱ってきているって」
船長「ああ。もしかしたら、と思ったさ。だが……魔物は、居なくなっては居ないからな」
青年「結論から言うと、イエス、だ」
船長「!」
青年「勇者は、魔王を倒した。だが……今現在、この世の中に『勇者』は居ない」
船長「!? ……な……ッ ま、さか、氏んじまったのか!?」
青年「…… ……」
船長「で、でもお前、さっき……仲間に手紙を……」
青年「さっき聞いただろう。あの約束を覚えているかって」
船長「え……? あ、ああ」
船長「だからそう言っただろ…… ……どこ行くんだ」
青年「え?」
船長「あの黄色い小鳥だよ」
青年「ああ……仲間の所、さ」
船長「仲間…… ……そうだ! それより!だ」
青年「…… ……」
船長「……次はお前の番だぜ、青年。俺の質問には、後で答えるって行ったよな!?」
青年「そんな大声出さなくても、ちゃんと答えるさ。僕は……」
船長「嘘はつけない、んだよな。お前は……僧侶さんの息子で……」
青年「……ああ。僕はエルフの血が流れているから。エルフは……嘘はつけないからな」
船長「前ははぐらかした癖に」ニッ
青年「何で笑うんだよ」
船長「嬉しいんだよ。わかるだろ」
青年「…… ……?」
船長「ん、んな真剣な顔すんな!恥ずかしいだろうが! それより!」
青年「…… ……」クス
青年「勇者は魔王を倒したのか、か」
船長「……ああ」
青年「君も言っていただろう。海しかわからないけれど。魔物は……弱ってきているって」
船長「ああ。もしかしたら、と思ったさ。だが……魔物は、居なくなっては居ないからな」
青年「結論から言うと、イエス、だ」
船長「!」
青年「勇者は、魔王を倒した。だが……今現在、この世の中に『勇者』は居ない」
船長「!? ……な……ッ ま、さか、氏んじまったのか!?」
青年「…… ……」
船長「で、でもお前、さっき……仲間に手紙を……」
青年「さっき聞いただろう。あの約束を覚えているかって」
船長「え……? あ、ああ」
188: 2014/10/12(日) 10:06:50.34 ID:5rwJCSfX0
青年「……何れ、頼む事になる」
船長「へ?」
青年「僕も……仲間も、待っているのさ。新たな勇者の誕生」
船長「!?」
青年「暫くの間……魔王の力は、眠ってる」
船長「勇者は……魔王を倒した、んじゃないのか!?」
青年「……悪いとは思う、が……詳しくは話せない。だが……勇者は、確かに魔王を倒した」
青年「それは、嘘じゃ無い」
船長「……阿呆。信じてない訳じゃネェよ」
青年「だが……魔王は復活する。必ず」
青年「……『最強の魔王』として」
船長「!?」
青年「そうやって繰り返されてきた、んだ。何度も……何度も」
船長「ああ……そうか。そうだったな」
青年「え?」
船長「世界中の海を渡ってるんだ。時にはよくわからない依頼や、危険な事だってやるんだぜ」
船長「……剣士に頼まれて、南の方の岩礁地帯の洞窟にも行ったんだ」
青年「ああ……聞いた、よ」
船長「色んな場所で、色んな話を耳にするさ……得体の知れない連中を乗せる事もあるんだしな」ジッ
青年「……何で睨むんだよ」
船長「睨んじゃネェよ! ……お前だって、その一人だろ」
青年「!? 僕が!?」
船長「……まあ、雷使い達より、よっぽど信用できるけど、さ。今は」ハァ
青年「…… ……」
船長「始まりの国で会ったとき、自分で胡散臭いって認めてたろ」
青年「良く覚えてるな……」
船長「俺は物覚えは悪くネェよ! ……だから、さ」
青年「ん?」
船長「ちゃんと覚えてるし……ちゃんと、約束は守ってやる。だから…… ……」
青年「だから?」
船長「……お前こそ、忘れるなよ」
青年「……忘れないよ」クス
船長「剣士も、元気にしてるんだな?」
青年「……え?」
船長「え? だって、お前さっき、仲間に手紙……」
青年「…… ……ああ、そうか。否……剣士は……」
船長「!? まさか! あの、化け物みたいに強い奴が!?」
青年「……氏んだ、と言っていいのか、な」
船長「え……?」
船長「へ?」
青年「僕も……仲間も、待っているのさ。新たな勇者の誕生」
船長「!?」
青年「暫くの間……魔王の力は、眠ってる」
船長「勇者は……魔王を倒した、んじゃないのか!?」
青年「……悪いとは思う、が……詳しくは話せない。だが……勇者は、確かに魔王を倒した」
青年「それは、嘘じゃ無い」
船長「……阿呆。信じてない訳じゃネェよ」
青年「だが……魔王は復活する。必ず」
青年「……『最強の魔王』として」
船長「!?」
青年「そうやって繰り返されてきた、んだ。何度も……何度も」
船長「ああ……そうか。そうだったな」
青年「え?」
船長「世界中の海を渡ってるんだ。時にはよくわからない依頼や、危険な事だってやるんだぜ」
船長「……剣士に頼まれて、南の方の岩礁地帯の洞窟にも行ったんだ」
青年「ああ……聞いた、よ」
船長「色んな場所で、色んな話を耳にするさ……得体の知れない連中を乗せる事もあるんだしな」ジッ
青年「……何で睨むんだよ」
船長「睨んじゃネェよ! ……お前だって、その一人だろ」
青年「!? 僕が!?」
船長「……まあ、雷使い達より、よっぽど信用できるけど、さ。今は」ハァ
青年「…… ……」
船長「始まりの国で会ったとき、自分で胡散臭いって認めてたろ」
青年「良く覚えてるな……」
船長「俺は物覚えは悪くネェよ! ……だから、さ」
青年「ん?」
船長「ちゃんと覚えてるし……ちゃんと、約束は守ってやる。だから…… ……」
青年「だから?」
船長「……お前こそ、忘れるなよ」
青年「……忘れないよ」クス
船長「剣士も、元気にしてるんだな?」
青年「……え?」
船長「え? だって、お前さっき、仲間に手紙……」
青年「…… ……ああ、そうか。否……剣士は……」
船長「!? まさか! あの、化け物みたいに強い奴が!?」
青年「……氏んだ、と言っていいのか、な」
船長「え……?」
189: 2014/10/12(日) 10:21:04.97 ID:5rwJCSfX0
青年「役目を果たして……行くべき所に行った、と言えば良いのか」
船長「青年……?」
青年「……否。だが、剣士は確かに……もう、この世界のどこにも……存在しない、んだと思う」
船長「ど、どういう……」
青年「…… ……」
船長「……オーライ」ハァ
青年「船長?」
船長「言いたくない事を無理矢理言わす気は……ネェよ。悲しいとか……俺でさえ、ちょっと、思うんだ」
船長「……お前達にしてみりゃ、比にもならんよな、そりゃ」ハァ
青年「…… ……」
船長「勇者とか……剣士とか、さ。すっげぇ強い奴らが……そうやって」
船長「……命をかけても、魔王ってのは復活するんだな」
青年「…… ……」
船長「…… ……」
青年「だけど……否、だからこそ、かな。次こそは……」
船長「……なあ、青年」
青年「ん?」
船長「次の勇者ってのは……いつ、生まれる、んだ?」
青年「……そればっかりは、わからない、さ」
青年(金髪紫瞳の男……魔王様が、本当に、僕と……だが)
青年(もし、その通り……『向こう側』と同じであれば、あいつは……)
船長「そっか……そうだよな……良し!」ガタン!
青年「……ッ な、なんだよ」
船長「ここでいつまでもこうしてても仕方ないだろう。お前、北の塔に行くんだろ」
青年「あ、ああ……」
船長「青年……?」
青年「……否。だが、剣士は確かに……もう、この世界のどこにも……存在しない、んだと思う」
船長「ど、どういう……」
青年「…… ……」
船長「……オーライ」ハァ
青年「船長?」
船長「言いたくない事を無理矢理言わす気は……ネェよ。悲しいとか……俺でさえ、ちょっと、思うんだ」
船長「……お前達にしてみりゃ、比にもならんよな、そりゃ」ハァ
青年「…… ……」
船長「勇者とか……剣士とか、さ。すっげぇ強い奴らが……そうやって」
船長「……命をかけても、魔王ってのは復活するんだな」
青年「…… ……」
船長「…… ……」
青年「だけど……否、だからこそ、かな。次こそは……」
船長「……なあ、青年」
青年「ん?」
船長「次の勇者ってのは……いつ、生まれる、んだ?」
青年「……そればっかりは、わからない、さ」
青年(金髪紫瞳の男……魔王様が、本当に、僕と……だが)
青年(もし、その通り……『向こう側』と同じであれば、あいつは……)
船長「そっか……そうだよな……良し!」ガタン!
青年「……ッ な、なんだよ」
船長「ここでいつまでもこうしてても仕方ないだろう。お前、北の塔に行くんだろ」
青年「あ、ああ……」
191: 2014/10/12(日) 11:06:00.75 ID:5rwJCSfX0
船長「『良し……じゃあ』行くぞ。『あまり長くこの街に停泊してる訳にも行かネェ。そろそろ』帆を上げる」
青年「……ああ『、そうだ、船長』」
船長「あん?」
青年「君に声をかける前だ。街で、海賊の噂を……」
船長「……ああ。金の亡者だ、とか……何とか。そんなのだろ?」
青年「…… ……」
船長「あいつらを始まりの国で降ろしてから、な……やる事も無くてな」
船長「依頼の内容を考えれば、さ。港街やら書の街にも、当分は近づけネェ」
青年「勿論……始まりの大陸にも、だな」
船長「ああ。別に、行く当ても無く海をうろつくのは構わネェんだがな」
船長「……補給ついでにこの街に来たのは良いが、北の塔の話を聞いただけで」
船長「腫れ物に触る様な扱いさ。酒場に居れば金さえ払ってりゃ、文句は言われネェが」
青年「……もう良い。わかったよ」ハァ
船長「何だよ」
青年「船長に……限って、って思ったから、さ」
船長「??」
青年「気にするな。ほっとした……だけだ」
船長「は?」
青年「それより……何を聞いたんだ?」
船長「ん? 塔の噂か? ……まあ、有り体に、な」
船長「トンでも無い宝が眠ってんじゃ無いか、って……そんな感じの話だよ」
青年「街の人からか!?」
船長「違う違う……街の奴らはあれだろ?」
船長「……やな思いでもしたんだろ。まあ……不気味、だしな。わからなくもネェよ」
青年「じゃあ、誰から……」
船長「さっきも行ったとおり、さ。色々な話は聞くモンだ」
船長「どっかの姫様が幽閉されている、だの。伝説の剣が封印されているだの……」
青年「…… ……」
青年「……ああ『、そうだ、船長』」
船長「あん?」
青年「君に声をかける前だ。街で、海賊の噂を……」
船長「……ああ。金の亡者だ、とか……何とか。そんなのだろ?」
青年「…… ……」
船長「あいつらを始まりの国で降ろしてから、な……やる事も無くてな」
船長「依頼の内容を考えれば、さ。港街やら書の街にも、当分は近づけネェ」
青年「勿論……始まりの大陸にも、だな」
船長「ああ。別に、行く当ても無く海をうろつくのは構わネェんだがな」
船長「……補給ついでにこの街に来たのは良いが、北の塔の話を聞いただけで」
船長「腫れ物に触る様な扱いさ。酒場に居れば金さえ払ってりゃ、文句は言われネェが」
青年「……もう良い。わかったよ」ハァ
船長「何だよ」
青年「船長に……限って、って思ったから、さ」
船長「??」
青年「気にするな。ほっとした……だけだ」
船長「は?」
青年「それより……何を聞いたんだ?」
船長「ん? 塔の噂か? ……まあ、有り体に、な」
船長「トンでも無い宝が眠ってんじゃ無いか、って……そんな感じの話だよ」
青年「街の人からか!?」
船長「違う違う……街の奴らはあれだろ?」
船長「……やな思いでもしたんだろ。まあ……不気味、だしな。わからなくもネェよ」
青年「じゃあ、誰から……」
船長「さっきも行ったとおり、さ。色々な話は聞くモンだ」
船長「どっかの姫様が幽閉されている、だの。伝説の剣が封印されているだの……」
青年「…… ……」
192: 2014/10/12(日) 11:29:12.51 ID:5rwJCSfX0
船長「で、街の人に確かめようと思っても……あれだろ?」
船長「興味がネェとは言わない、が……」
青年「……連れて行け、と言っておいて、聞くな、と言うのは」
青年「酷だろう、とは思う……が」
船長「お前が……『勇者の仲間』が興味を持つぐらいだ」
船長「何か、は確実にあるんだろうな」
青年「……何も無いよ」
船長「は!? お前、そんな……」
青年「『物』はな」
船長「……ん?」
青年「あれは……なんて言うんだろうな。呪い……じゃ無いな」
船長「え!?」
青年「想い……否……まあ、とにかく魔法がかかってる、んだ」
船長「魔法……?」
青年「ああ。詳細は……話さなきゃ、駄目……か?」
船長「……否、良いさ」
青年「…… ……そうか」ホッ
船長「…… ……」カタン、スタスタ
青年「……船長?」
スタスタ
船長「おーい、出航するぞ!」
アイアイサー!
青年「おい、どこに……」
船長「どこに、って……塔に行くんだろう?」
青年「あ、ああ…… ……しかし」
船長「何、10分もあれば着く……船室に居るほどでも無いだろ?」
青年「……それは、まあ」
船長「まだ……『お前達が魔王を倒してから』それほど経たなんいだろうに」
船長「見ろよ……北の空は、真っ黒だ」
青年「……『あそこは……最果ての地は、遙か昔から、魔物達の地だと言われているから、な』」
船長「『また、いつか……』勇者が現れるんだろ?」
青年「ああ……魔王を倒し、世界を救う為に」
船長「興味がネェとは言わない、が……」
青年「……連れて行け、と言っておいて、聞くな、と言うのは」
青年「酷だろう、とは思う……が」
船長「お前が……『勇者の仲間』が興味を持つぐらいだ」
船長「何か、は確実にあるんだろうな」
青年「……何も無いよ」
船長「は!? お前、そんな……」
青年「『物』はな」
船長「……ん?」
青年「あれは……なんて言うんだろうな。呪い……じゃ無いな」
船長「え!?」
青年「想い……否……まあ、とにかく魔法がかかってる、んだ」
船長「魔法……?」
青年「ああ。詳細は……話さなきゃ、駄目……か?」
船長「……否、良いさ」
青年「…… ……そうか」ホッ
船長「…… ……」カタン、スタスタ
青年「……船長?」
スタスタ
船長「おーい、出航するぞ!」
アイアイサー!
青年「おい、どこに……」
船長「どこに、って……塔に行くんだろう?」
青年「あ、ああ…… ……しかし」
船長「何、10分もあれば着く……船室に居るほどでも無いだろ?」
青年「……それは、まあ」
船長「まだ……『お前達が魔王を倒してから』それほど経たなんいだろうに」
船長「見ろよ……北の空は、真っ黒だ」
青年「……『あそこは……最果ての地は、遙か昔から、魔物達の地だと言われているから、な』」
船長「『また、いつか……』勇者が現れるんだろ?」
青年「ああ……魔王を倒し、世界を救う為に」
193: 2014/10/12(日) 11:42:03.15 ID:5rwJCSfX0
船長「……で、その勇者を俺のこの船に乗せる、か」
青年「…… ……」
船長「箔がつくな。勇者を乗せた海賊船! ……か」ハァ
青年「……もう少し、嬉しそうに言えよ……どうした」
船長「いや…… ……まあ、な」
青年「……なんだよ?」
船長「目の前でそれを見りゃ……違う、んだろうが」
青年「…… ……?」
船長「お前と……一緒だった勇者の事を……思うと、な」
青年「…… ……」
船長「…… ……」
青年「優しいね、君は」ポン
船長「あ、頭撫でるなよ! ……ほ、ほら!着いたぜ!」
タタタ……
青年(……ほっとした、か。間違いじゃ無かったな)クス
青年(僕は……女船長の事はあまりわからない、けれど)
青年(海賊……か。疎ましがられるんだろう、が)
青年(……何処かで、仲間、として……信じてる、んだろうな)
青年(剣士からの話を聞いてるだけ、じゃ無くて……なんだろうな)
青年(変な感じだ…… ……仲間、か。どこか、懐かしい)
船長「青年!早く来いよ! ……降りるぞ!」
青年「ああ……今行く」
スタスタ
青年「…… ……」
船長「箔がつくな。勇者を乗せた海賊船! ……か」ハァ
青年「……もう少し、嬉しそうに言えよ……どうした」
船長「いや…… ……まあ、な」
青年「……なんだよ?」
船長「目の前でそれを見りゃ……違う、んだろうが」
青年「…… ……?」
船長「お前と……一緒だった勇者の事を……思うと、な」
青年「…… ……」
船長「…… ……」
青年「優しいね、君は」ポン
船長「あ、頭撫でるなよ! ……ほ、ほら!着いたぜ!」
タタタ……
青年(……ほっとした、か。間違いじゃ無かったな)クス
青年(僕は……女船長の事はあまりわからない、けれど)
青年(海賊……か。疎ましがられるんだろう、が)
青年(……何処かで、仲間、として……信じてる、んだろうな)
青年(剣士からの話を聞いてるだけ、じゃ無くて……なんだろうな)
青年(変な感じだ…… ……仲間、か。どこか、懐かしい)
船長「青年!早く来いよ! ……降りるぞ!」
青年「ああ……今行く」
スタスタ
194: 2014/10/12(日) 11:56:21.72 ID:5rwJCSfX0
青年「ありがとう……助かったよ」
船長「ああ……気にすんな。で……これからどうするんだ?」
青年「当てはあるんだ。ここからはね」
船長「『当て?……塔に上るんだろう?』」
青年「…… ……」
船長「まあ、良いさ……詮索は、時に身を滅ぼすからな」フゥ
青年「……すまない」
船長「謝る事じゃネェ『……とりあえず、行くか』」
青年「ああ……君たちはどうするんだい?」
船長「『え? ……だから、行くぞって』」
青年「……は?」
船長「港街の方に『もどこにも、行けないしな』」
青年「……『つ、着いてくるつもりか!? 君、さっき余計な詮索はしないって……!』」
船長「……詮索しなくても、ついて行けばわかるだろう?」
青年「聞けよ! ……『魔法がかかってる、って言っただろう!?』」
船長「『ああ。だが青年は、それを知っても行くんだろう。否……知ってるから、か?』」
青年「『…… ……』」
青年(『妙に物わかりが良いと思ったら……!』)
船長「危険は無い……に等しい、んだろ。それに、当てがあるっつったって、お前」
船長「流石にここで放置して、帰れネェだろう。北の街からここまでの足にも困ってた奴を、さ」
青年「…… ……ッ
船長「……俺たちは海賊だっつったって、まさか村々略奪して回る訳じゃネェ」
船長「お宝が無いからって、あっさりお前とここでさよならって訳にも、だ」
青年「船長……」
船長「……約束もあるんだぜ、青年。そりゃ、お前は俺ら何かよりよっぽど強いだろうし」
船長「放っておいたって、簡単にくたばる事ァ無いだろうよ。でもな」
船長「いつか、勇者を乗せてくれ」
船長「そう聞くと………黙ってられネェなぁ」
青年「『…… ……』」
船長「そんな怖い顔すんなよ……『さっきも言ったが、危険は無いんだろう?』」
青年「……ああ『。多分……だが』」
船長「上等だ」ニッ
青年(まじで言ってるのか、こいつ……!? しかし……)
船長「おーい、野郎共! ちょっと青年と一緒に行ってくるからさー!」
船長「ここに、船を止めて待ってろよ-!」
青年「……おい、船長!」
船長「何だよ!? まだ駄目とか言うのか!?」
船長「ああ……気にすんな。で……これからどうするんだ?」
青年「当てはあるんだ。ここからはね」
船長「『当て?……塔に上るんだろう?』」
青年「…… ……」
船長「まあ、良いさ……詮索は、時に身を滅ぼすからな」フゥ
青年「……すまない」
船長「謝る事じゃネェ『……とりあえず、行くか』」
青年「ああ……君たちはどうするんだい?」
船長「『え? ……だから、行くぞって』」
青年「……は?」
船長「港街の方に『もどこにも、行けないしな』」
青年「……『つ、着いてくるつもりか!? 君、さっき余計な詮索はしないって……!』」
船長「……詮索しなくても、ついて行けばわかるだろう?」
青年「聞けよ! ……『魔法がかかってる、って言っただろう!?』」
船長「『ああ。だが青年は、それを知っても行くんだろう。否……知ってるから、か?』」
青年「『…… ……』」
青年(『妙に物わかりが良いと思ったら……!』)
船長「危険は無い……に等しい、んだろ。それに、当てがあるっつったって、お前」
船長「流石にここで放置して、帰れネェだろう。北の街からここまでの足にも困ってた奴を、さ」
青年「…… ……ッ
船長「……俺たちは海賊だっつったって、まさか村々略奪して回る訳じゃネェ」
船長「お宝が無いからって、あっさりお前とここでさよならって訳にも、だ」
青年「船長……」
船長「……約束もあるんだぜ、青年。そりゃ、お前は俺ら何かよりよっぽど強いだろうし」
船長「放っておいたって、簡単にくたばる事ァ無いだろうよ。でもな」
船長「いつか、勇者を乗せてくれ」
船長「そう聞くと………黙ってられネェなぁ」
青年「『…… ……』」
船長「そんな怖い顔すんなよ……『さっきも言ったが、危険は無いんだろう?』」
青年「……ああ『。多分……だが』」
船長「上等だ」ニッ
青年(まじで言ってるのか、こいつ……!? しかし……)
船長「おーい、野郎共! ちょっと青年と一緒に行ってくるからさー!」
船長「ここに、船を止めて待ってろよ-!」
青年「……おい、船長!」
船長「何だよ!? まだ駄目とか言うのか!?」
195: 2014/10/12(日) 12:00:36.95 ID:5rwJCSfX0
青年「……駄目、と言う隙も与えてくれなかった口が良く言うよ」ハァ
青年「良く聞いて、船長」
船長「な、何だよ」
青年「……この塔には、魔法がかかってる。見上げてみろ……てっぺんが見えないだろう」
船長「ん? ……ああ。 ……え!? まさかてっぺんまで行くつもりか!?」
青年「…… ……」ハァ
青年「説明するよ。それを聞いて……もう一度、決めれば良い」
船長「ん?」
青年「……先に一つ、聞くよ。船を失う気は無いんだろうな?」
船長「は!? ……な、何だよ。やばいのか!? お前、危険は無いって……!」
青年「僕が嘘をつけないのはよく知っているだろう。危険、では無い。だけど」
青年「……何があっても、船に戻りたい。君は、そう思うか? ……聞き直すよ」
船長「あったりまえだろ!」
青年「なら、まあ……大丈夫だろう」ハァ
船長「何の話だよ!」
青年「今から説明するよ…… ……この塔にかかっている魔法は、ね……」
……
………
…………
青年「良く聞いて、船長」
船長「な、何だよ」
青年「……この塔には、魔法がかかってる。見上げてみろ……てっぺんが見えないだろう」
船長「ん? ……ああ。 ……え!? まさかてっぺんまで行くつもりか!?」
青年「…… ……」ハァ
青年「説明するよ。それを聞いて……もう一度、決めれば良い」
船長「ん?」
青年「……先に一つ、聞くよ。船を失う気は無いんだろうな?」
船長「は!? ……な、何だよ。やばいのか!? お前、危険は無いって……!」
青年「僕が嘘をつけないのはよく知っているだろう。危険、では無い。だけど」
青年「……何があっても、船に戻りたい。君は、そう思うか? ……聞き直すよ」
船長「あったりまえだろ!」
青年「なら、まあ……大丈夫だろう」ハァ
船長「何の話だよ!」
青年「今から説明するよ…… ……この塔にかかっている魔法は、ね……」
……
………
…………
200: 2014/10/13(月) 09:51:20.87 ID:YsUGSqzY0
魔王「……要するに、赤ちゃんが出来る身体になったって事、ね」
使用人「まあ……そうです。魔王様の見た目が急激に……その」
魔王「…… ……うん」
使用人「成長された、事と関係があるかどうかは……わかりかねますが」
魔王「でも、さ。人だった頃の年齢を考えても、始まってもおかしくは無い、んでしょう?」
使用人「それは……はい。個人差のある事ではありますが」
使用人「早すぎる事も、遅すぎる事も無い年齢だったとは思います」
魔王「……そっか」ハァ
使用人「青年様……お戻りになれば、驚かれるでしょうね」
魔王「まあ……そりゃ、ね。喜ぶんじゃないの」
使用人「……その先は言わないでくださいよ。下品です」
魔王「……言い切ったね。使用人のえOち」
使用人「な!? ……ま、魔王様!」
魔王「あはは……」
魔王(しかし……まあ、急に……どうなってんだろ、私の身体)
魔王(……今の私は。青年と同じぐらい……あ、闇の手、ともかな……)
魔王(彼らと……同じぐらいに、見える)
使用人「……闇の手様、待たせてしまっていますね。行きましょうか」
魔王「あ……うん。ねえ、闇の手、驚いてなかった?」
スタスタ
使用人「まあ、それは……仕方ないでしょう」
魔王「だよね」
カチャ
闇の手「あ……魔王様! お加減は如何です!?」ガタンッ
魔王「ああ、大丈夫大丈夫……ごめんね。心配をおかけしました……座って、闇の手」
闇の手「良かった……」ホッ ストン
使用人「遅くなりましたが、お食事にいたしましょう……あ、魔王様」
魔王「お腹……うん、え、何?」
闇の手「お腹すきましたよね」クス
魔王(お腹が痛くてあんまり食欲が無い……ん、だけど、まあ……良いか)
使用人「何か、お話があったのでは?」
魔王「あ、ああ……そうだそうだ。さっきね、二人が私を起こしに来てくれたとき、さ」
魔王「……うん。二人出来てくれた、んだよね?」
闇の手「え? ……ええ、そうですよ」
魔王「二人で、私を呼んでくれてた、んだよね……」
使用人「そうです……それが、どうかなさいましたか」
使用人「まあ……そうです。魔王様の見た目が急激に……その」
魔王「…… ……うん」
使用人「成長された、事と関係があるかどうかは……わかりかねますが」
魔王「でも、さ。人だった頃の年齢を考えても、始まってもおかしくは無い、んでしょう?」
使用人「それは……はい。個人差のある事ではありますが」
使用人「早すぎる事も、遅すぎる事も無い年齢だったとは思います」
魔王「……そっか」ハァ
使用人「青年様……お戻りになれば、驚かれるでしょうね」
魔王「まあ……そりゃ、ね。喜ぶんじゃないの」
使用人「……その先は言わないでくださいよ。下品です」
魔王「……言い切ったね。使用人のえOち」
使用人「な!? ……ま、魔王様!」
魔王「あはは……」
魔王(しかし……まあ、急に……どうなってんだろ、私の身体)
魔王(……今の私は。青年と同じぐらい……あ、闇の手、ともかな……)
魔王(彼らと……同じぐらいに、見える)
使用人「……闇の手様、待たせてしまっていますね。行きましょうか」
魔王「あ……うん。ねえ、闇の手、驚いてなかった?」
スタスタ
使用人「まあ、それは……仕方ないでしょう」
魔王「だよね」
カチャ
闇の手「あ……魔王様! お加減は如何です!?」ガタンッ
魔王「ああ、大丈夫大丈夫……ごめんね。心配をおかけしました……座って、闇の手」
闇の手「良かった……」ホッ ストン
使用人「遅くなりましたが、お食事にいたしましょう……あ、魔王様」
魔王「お腹……うん、え、何?」
闇の手「お腹すきましたよね」クス
魔王(お腹が痛くてあんまり食欲が無い……ん、だけど、まあ……良いか)
使用人「何か、お話があったのでは?」
魔王「あ、ああ……そうだそうだ。さっきね、二人が私を起こしに来てくれたとき、さ」
魔王「……うん。二人出来てくれた、んだよね?」
闇の手「え? ……ええ、そうですよ」
魔王「二人で、私を呼んでくれてた、んだよね……」
使用人「そうです……それが、どうかなさいましたか」
201: 2014/10/13(月) 10:05:30.01 ID:YsUGSqzY0
魔王「お父さんと話している時に、使用人の声が聞こえたんだ」
使用人「え?」
魔王「『魔王様、魔王様!』……って、ね」
闇の手「……僕の声は、聞こえなかった、と言う事ですか?」
魔王「うん……まさか、私がこんな事になってる、とかわかんないし」
魔王「誰かの声が聞こえた事も勿論、今まで無かったから、さ」
使用人「……逆は、ありました、よね」
魔王「お父さんと癒し手様ね」
闇の手「まだ、勇者として旅をしている時……ですよね」
使用人「違う、と叫んだ時、でしたか」
魔王「それと、私が生まれてから、二人で……ええと、お母さん達に話しかけようと」
魔王「したんだっけ?」
使用人「側近様から、黒の魔王様がなにやら唸っている様だと言うお話は聞きましたが」
使用人「あれ……の事だったんだと思います、が」
闇の手「后様が黒の魔王様の魔力を借りていらっしゃったのが、邪魔に……と言うか」
魔王「うん。うまくいかなかったのはそれが原因だろうって使用人言ってたね」
使用人「考えられるとすればそれぐらい……だと言うだけ、ですけれど」
使用人「……ですが、私の声が届いた、と言うのは……関係があるんでしょうか?」
魔王「うーん……」
使用人「『夢の様な物』と仮定するのなら、所詮夢……信じないわけでは無いんですが」
闇の手「ですが、僕の声が届かなかった、と言うのは……ええと」
闇の手「『使用人さんの声』だから、届いたって事なんじゃ無いでしょうか」
魔王「ん? どういうこと?」
闇の手「『届くべき人の声』だった。そういうことじゃ無いですか?って意味です」
使用人「……お待ちください、闇の手様。そうであれば、私では……」
闇の手「以前に僕が立てた仮説。あれは、あながち間違いでは無いと」
闇の手「僕は、信じていますよ」
魔王「仮説?」
闇の手「……『素質』のお話です」
使用人「し、しかし……」
魔王「あー。えーっと…… ……なんだった、かな」
使用人「え?」
魔王「『魔王様、魔王様!』……って、ね」
闇の手「……僕の声は、聞こえなかった、と言う事ですか?」
魔王「うん……まさか、私がこんな事になってる、とかわかんないし」
魔王「誰かの声が聞こえた事も勿論、今まで無かったから、さ」
使用人「……逆は、ありました、よね」
魔王「お父さんと癒し手様ね」
闇の手「まだ、勇者として旅をしている時……ですよね」
使用人「違う、と叫んだ時、でしたか」
魔王「それと、私が生まれてから、二人で……ええと、お母さん達に話しかけようと」
魔王「したんだっけ?」
使用人「側近様から、黒の魔王様がなにやら唸っている様だと言うお話は聞きましたが」
使用人「あれ……の事だったんだと思います、が」
闇の手「后様が黒の魔王様の魔力を借りていらっしゃったのが、邪魔に……と言うか」
魔王「うん。うまくいかなかったのはそれが原因だろうって使用人言ってたね」
使用人「考えられるとすればそれぐらい……だと言うだけ、ですけれど」
使用人「……ですが、私の声が届いた、と言うのは……関係があるんでしょうか?」
魔王「うーん……」
使用人「『夢の様な物』と仮定するのなら、所詮夢……信じないわけでは無いんですが」
闇の手「ですが、僕の声が届かなかった、と言うのは……ええと」
闇の手「『使用人さんの声』だから、届いたって事なんじゃ無いでしょうか」
魔王「ん? どういうこと?」
闇の手「『届くべき人の声』だった。そういうことじゃ無いですか?って意味です」
使用人「……お待ちください、闇の手様。そうであれば、私では……」
闇の手「以前に僕が立てた仮説。あれは、あながち間違いでは無いと」
闇の手「僕は、信じていますよ」
魔王「仮説?」
闇の手「……『素質』のお話です」
使用人「し、しかし……」
魔王「あー。えーっと…… ……なんだった、かな」
202: 2014/10/13(月) 10:18:50.59 ID:YsUGSqzY0
闇の手「『魔法なんて使い様』……ええと。金の魔王の后様が言い出した、んですっけ」
使用人「……はい」
闇の手「人……命は、必ず一つ『加護』を持って生まれてくる」
闇の手「水や緑の加護を持つ人は癒しの力を持つ事が多い、とかそういう事も含めて」
闇の手「加護には、向き不向きがある。でも、中にはその」
闇の手「『使い様』を深く理解する事が出来る……それが『素質を持っている』と言う事では無いか」
闇の手「……まあ、ざっくり言うとそんな感じですね」
魔王「……うん」
使用人「紫の魔王の側近様……ですね」
闇の手「あの人は一番例えやすいですね。ええと……確か緑の加護を受けていらして」
闇の手「回復魔法を得意とされた筈、ですが、風の攻撃魔法を使えたり……」
魔王「でも、紫の魔王の側近って、紫の魔王から瞳を……」
使用人「その前、です。赤の魔王様の特訓、とやらで……あ、いえ」
使用人「……もっと前にも。まだ人間であった頃にも、船を風で加速させた、と」
魔王「へぇ?」
使用人「あれは偶然だとも仰っていましたが……ですが」
使用人「いくら瞳の力があったとは言え、最後には……転移までされています、からね」
闇の手「それに、紫の魔王の側近様は……剣士さんに、視力を……」
使用人「……長く身の内に紫の魔王様の瞳を留めていらっしゃいましたから」
使用人「多少の力の残存はあってもおかしくは無い、とは思いますけどね」
闇の手「それにしても、ですよ……あの方は、きっと。僕の言葉で言うところの、ですが」
闇の手「……『素質』の持ち主であって、間違い無いと思うんです」
魔王「……なるほど」
闇の手「もしかしたら、そういう力って皆、持っているのかもしれません。ですが」
闇の手「引き出せないと意味が無い……引き出すやり方を知って無いとどうしようもありませんから」
闇の手「『素質』を持つ人は、力の使い方を……」
魔王「深く理解し、使用できる人、って事ね」
闇の手「はい。僕は、使用人さんもその一人だと思いますよ」
使用人「……私が、ですか?」
使用人「……はい」
闇の手「人……命は、必ず一つ『加護』を持って生まれてくる」
闇の手「水や緑の加護を持つ人は癒しの力を持つ事が多い、とかそういう事も含めて」
闇の手「加護には、向き不向きがある。でも、中にはその」
闇の手「『使い様』を深く理解する事が出来る……それが『素質を持っている』と言う事では無いか」
闇の手「……まあ、ざっくり言うとそんな感じですね」
魔王「……うん」
使用人「紫の魔王の側近様……ですね」
闇の手「あの人は一番例えやすいですね。ええと……確か緑の加護を受けていらして」
闇の手「回復魔法を得意とされた筈、ですが、風の攻撃魔法を使えたり……」
魔王「でも、紫の魔王の側近って、紫の魔王から瞳を……」
使用人「その前、です。赤の魔王様の特訓、とやらで……あ、いえ」
使用人「……もっと前にも。まだ人間であった頃にも、船を風で加速させた、と」
魔王「へぇ?」
使用人「あれは偶然だとも仰っていましたが……ですが」
使用人「いくら瞳の力があったとは言え、最後には……転移までされています、からね」
闇の手「それに、紫の魔王の側近様は……剣士さんに、視力を……」
使用人「……長く身の内に紫の魔王様の瞳を留めていらっしゃいましたから」
使用人「多少の力の残存はあってもおかしくは無い、とは思いますけどね」
闇の手「それにしても、ですよ……あの方は、きっと。僕の言葉で言うところの、ですが」
闇の手「……『素質』の持ち主であって、間違い無いと思うんです」
魔王「……なるほど」
闇の手「もしかしたら、そういう力って皆、持っているのかもしれません。ですが」
闇の手「引き出せないと意味が無い……引き出すやり方を知って無いとどうしようもありませんから」
闇の手「『素質』を持つ人は、力の使い方を……」
魔王「深く理解し、使用できる人、って事ね」
闇の手「はい。僕は、使用人さんもその一人だと思いますよ」
使用人「……私が、ですか?」
203: 2014/10/13(月) 10:32:27.36 ID:YsUGSqzY0
闇の手「始まりの国のあの丘の上の……エルフの加護を、小さなあのペンダントに」
闇の手「移す、なんて……とても、人間の出来る所行じゃありませんよ」
使用人「……ですが、あれは……必氏で……それに!」
使用人「紫の魔王様の魔力で、魔に……」
闇の手「使用人さんが、成し得た後、でしょう?」
魔王「……そう考えると、使用人、凄い人だね」
使用人「ま、魔王様!」
闇の手「……『向こう側』の貴女にしてもそうです」
闇の手「今から……もそうですけど。『知を授ける』事だって……普通じゃ、出来ませんよ?」
使用人「…… ……」
魔王「そうだよね。カーテンに防護の魔法掛けたりさ。防護壁?の結界?はったり、さ」
使用人「そ、そんな事言えば、闇の手様だって……!」
闇の手「僕のは単純に研究の結果、ですよ。魔石だって何だって、魔王様のお力あっての物ですし」
闇の手「言うなれば『お勉強』の成果です」
使用人「……私からの『知』を受け取る方ですのに?」
闇の手「受け入れる『器の強さ』は必要でしょうけど、それも……うーん、あ」
闇の手「紫の魔王様が、紫の魔王の側近様に瞳を与えた様な物では無いでしょうか」
魔王「あ、でもさ! 剣士か青年か忘れたけど、聞いたよ?」
魔王「鍛冶師の村から逃げる時に……」
闇の手「逃げる、って人聞き悪いですね……まあ、間違えて無いですけど」
魔王「氷の壁?か何か作ったんでしょう?」
闇の手「あれは、ぎりぎりまで威力を押さえた、に過ぎません」
闇の手「別に、自分を卑下するつもりは無いんですよ? でも、僕は……」
闇の手「残念ながら、違うんだと思います。お二人ほど、はっきりとこれ!」
闇の手「……って、言う。決め手にも欠けます、から」
使用人「……まあ、良いでしょう。そういう事にしておきます」ハァ
使用人「嬉しくない訳では無いんですけど、ね」
魔王「……使用人、十分規格外だと思うんだけどなぁ」
使用人「……魔王様にだけは言われたくありませんね、それ」
魔王「どういう意味!?」
闇の手「まあ、まあ……ついでなので、色々検証しましょうよ」
魔王「……闇の手、こういう話好きだよね。楽しんでしょ、凄く」
闇の手「はい」ニコ
魔王「…… ……」ハァ
闇の手「移す、なんて……とても、人間の出来る所行じゃありませんよ」
使用人「……ですが、あれは……必氏で……それに!」
使用人「紫の魔王様の魔力で、魔に……」
闇の手「使用人さんが、成し得た後、でしょう?」
魔王「……そう考えると、使用人、凄い人だね」
使用人「ま、魔王様!」
闇の手「……『向こう側』の貴女にしてもそうです」
闇の手「今から……もそうですけど。『知を授ける』事だって……普通じゃ、出来ませんよ?」
使用人「…… ……」
魔王「そうだよね。カーテンに防護の魔法掛けたりさ。防護壁?の結界?はったり、さ」
使用人「そ、そんな事言えば、闇の手様だって……!」
闇の手「僕のは単純に研究の結果、ですよ。魔石だって何だって、魔王様のお力あっての物ですし」
闇の手「言うなれば『お勉強』の成果です」
使用人「……私からの『知』を受け取る方ですのに?」
闇の手「受け入れる『器の強さ』は必要でしょうけど、それも……うーん、あ」
闇の手「紫の魔王様が、紫の魔王の側近様に瞳を与えた様な物では無いでしょうか」
魔王「あ、でもさ! 剣士か青年か忘れたけど、聞いたよ?」
魔王「鍛冶師の村から逃げる時に……」
闇の手「逃げる、って人聞き悪いですね……まあ、間違えて無いですけど」
魔王「氷の壁?か何か作ったんでしょう?」
闇の手「あれは、ぎりぎりまで威力を押さえた、に過ぎません」
闇の手「別に、自分を卑下するつもりは無いんですよ? でも、僕は……」
闇の手「残念ながら、違うんだと思います。お二人ほど、はっきりとこれ!」
闇の手「……って、言う。決め手にも欠けます、から」
使用人「……まあ、良いでしょう。そういう事にしておきます」ハァ
使用人「嬉しくない訳では無いんですけど、ね」
魔王「……使用人、十分規格外だと思うんだけどなぁ」
使用人「……魔王様にだけは言われたくありませんね、それ」
魔王「どういう意味!?」
闇の手「まあ、まあ……ついでなので、色々検証しましょうよ」
魔王「……闇の手、こういう話好きだよね。楽しんでしょ、凄く」
闇の手「はい」ニコ
魔王「…… ……」ハァ
204: 2014/10/13(月) 11:05:37.81 ID:YsUGSqzY0
闇の手「後は……青年さんもかな、と思った……んですが」
魔王「え? 違うの? ……青年も色々……」
闇の手「僕が魔に変じるまでは……そうかな、って思ってたんです。でも」
闇の手「金の魔王の后様……黒の魔王の后様と同様で」
魔王「え……お母さん?」
闇の手「はい。あ……ああ、そうだ。魔王様も、ですね」
魔王「?? ……私?」
闇の手「はい。同じ理由で……あ、僕の中では、ですけど」
闇の手「除外、なんですよ」
使用人「魔王だからですか? ……あ、魔王を産む……違う。勇者を産むから?」
闇の手「近いです……ですが『魔王』だから、と言う理由で却下する、にしては」
闇の手「こんな言い方は……まあ、正直失礼かもしれません、が」
闇の手「紫の魔王様以前はちょっとおいておいて、ですが」
闇の手「……金の魔王様と、黒の魔王様は、これといって特筆すべき事が無いんです」
使用人「ふむ……」
魔王「え、え……どういう事?」
闇の手「金の魔王様、黒の魔王様、魔王様……この三名は、元勇者ですよね?」
魔王「うん」
闇の手「勇者は光の魔法を使える……でも、それだけです。ていうか」
闇の手「金の魔王様以外のお二方は、光の魔法なんて……正直使ってませんよね」
使用人「……確かに」
闇の手「金の魔王様は、鉱石の洞窟で一度、三つ頭の化け物を倒すときに……ですけど」
闇の手「あれも、ほぼ無意識に近かった、と聞いてます」
魔王「私も……戦闘の時って、炎の魔法しか使ってないや。そういえば」
闇の手「そうなんです。それって……『魔法なんて使い様』からほど遠いですよね?」
魔王「……確かに」
闇の手「金の魔王の后様は、魔に変じられてからは確かに」
闇の手「遠見されたり、気配を追ったり……されてたんでしょうが」
闇の手「やっぱり『魔に変じた故に』出来る様になった事、だと思うんです」
闇の手「身ごもられてからは尚更。その力は強くなられた、でしょうし」
使用人「『母は強し』……の範疇内である、と言う事ですか」
闇の手「はい。紫の魔王の側近さんと、使用人さんは『魔に変じる前』から」
闇の手「その兆候がありました」
使用人「…… ……」
闇の手「様は『外的要因での力の引き上げ』……底上げ、でしかない」
魔王「なるほど。でも……だったら、癒し手様は?」
魔王「エルフだから却下、って訳じゃないよね? 癒し手様だって……」
闇の手「癒し手様も理由は……ま。同じですね」
闇の手「癒しの魔石、と言うすばらしい物を残してくださいました。ですが」
闇の手「……それも、魔石の作り方をならったから……に、過ぎないと思うんです」
使用人「そう……ですか。そうですね。ですが、あの方は……『特異点』……では?」
闇の手「ちょっとその話はおいておきましょう、ややこしくなる」
魔王「え? 違うの? ……青年も色々……」
闇の手「僕が魔に変じるまでは……そうかな、って思ってたんです。でも」
闇の手「金の魔王の后様……黒の魔王の后様と同様で」
魔王「え……お母さん?」
闇の手「はい。あ……ああ、そうだ。魔王様も、ですね」
魔王「?? ……私?」
闇の手「はい。同じ理由で……あ、僕の中では、ですけど」
闇の手「除外、なんですよ」
使用人「魔王だからですか? ……あ、魔王を産む……違う。勇者を産むから?」
闇の手「近いです……ですが『魔王』だから、と言う理由で却下する、にしては」
闇の手「こんな言い方は……まあ、正直失礼かもしれません、が」
闇の手「紫の魔王様以前はちょっとおいておいて、ですが」
闇の手「……金の魔王様と、黒の魔王様は、これといって特筆すべき事が無いんです」
使用人「ふむ……」
魔王「え、え……どういう事?」
闇の手「金の魔王様、黒の魔王様、魔王様……この三名は、元勇者ですよね?」
魔王「うん」
闇の手「勇者は光の魔法を使える……でも、それだけです。ていうか」
闇の手「金の魔王様以外のお二方は、光の魔法なんて……正直使ってませんよね」
使用人「……確かに」
闇の手「金の魔王様は、鉱石の洞窟で一度、三つ頭の化け物を倒すときに……ですけど」
闇の手「あれも、ほぼ無意識に近かった、と聞いてます」
魔王「私も……戦闘の時って、炎の魔法しか使ってないや。そういえば」
闇の手「そうなんです。それって……『魔法なんて使い様』からほど遠いですよね?」
魔王「……確かに」
闇の手「金の魔王の后様は、魔に変じられてからは確かに」
闇の手「遠見されたり、気配を追ったり……されてたんでしょうが」
闇の手「やっぱり『魔に変じた故に』出来る様になった事、だと思うんです」
闇の手「身ごもられてからは尚更。その力は強くなられた、でしょうし」
使用人「『母は強し』……の範疇内である、と言う事ですか」
闇の手「はい。紫の魔王の側近さんと、使用人さんは『魔に変じる前』から」
闇の手「その兆候がありました」
使用人「…… ……」
闇の手「様は『外的要因での力の引き上げ』……底上げ、でしかない」
魔王「なるほど。でも……だったら、癒し手様は?」
魔王「エルフだから却下、って訳じゃないよね? 癒し手様だって……」
闇の手「癒し手様も理由は……ま。同じですね」
闇の手「癒しの魔石、と言うすばらしい物を残してくださいました。ですが」
闇の手「……それも、魔石の作り方をならったから……に、過ぎないと思うんです」
使用人「そう……ですか。そうですね。ですが、あの方は……『特異点』……では?」
闇の手「ちょっとその話はおいておきましょう、ややこしくなる」
205: 2014/10/13(月) 12:02:03.54 ID:YsUGSqzY0
闇の手「で……青年さん、ですが。こちらは、魔王様とは共通点が一つ、あるんですが」
魔王「……加護以外の魔法を使う事が出来る、か」
使用人「しかし……それだけでも凄い事だと思いますよ?」
使用人「紫の魔王様……まあ、あの方は規格外、ですけど」
使用人「あの方は加護に縛られず……」
闇の手「だからこそ、なんですよ……絡繰りはお三方ともわかりませんけども」
闇の手「それも……底上げ、だと思うんです」
魔王「……癒しの魔法は?」
闇の手「え?」
魔王「何か、自分も認めてよ! ……とか、そういう事じゃないんだよ」
魔王「先に言っておくけど。でもさ。ほら……勇者……光の加護、持ってる。持ってた」
魔王「私達は、癒しの魔法が使えたよ」
闇の手「……人間だけの特権、ですね」
闇の手「人である証……人の血が混じっている癒し手様、青年さんも確かに、使えます」
闇の手「『勇者は人間だから』……ああ、なるほど」
使用人「え?」
闇の手「『光の加護』は、水や緑の加護と同じように」
闇の手「回復……癒しを得意とする、のかもしれませんね」
使用人「……その仮説が成立するならば、金の魔王様は……『素質』を持っていらっしゃる」
使用人「そういう事になりませんか」
闇の手「…… ……確かに」
魔王「おじいちゃんは……そうか。光の魔法で……」
闇の手「三つ頭の魔物をすさまじい光で焼いた……んでしたっけ」
闇の手「……見てない、し遙か昔の事なので、何とも言えないんですが」
闇の手「えっと、ちょっとだけ戻します。二つの加護を持つ事が底上げ、の理由なんですが」
魔王「うん?」
闇の手「魔王様は明白ですよね。后様が……魔に変じるときに」
使用人「……身の内に押しとどめた、后様ご自身の炎の魔力、ですね」
闇の手「はい。それを、人として生まれてきた勇者、様が……奪って、です」
魔王「青年は?」
闇の手「……同じだと、思います。ご自分でも仰っていました」
闇の手「青年さんのお父様は『戦士さん』では無く『側近さん』だから、と」
使用人「魔に変じてから、だから……ですか」
闇の手「……まあ、正直。無理矢理説明つけようと思ったらそれしかない、んですけどね」
闇の手「ただまあ、青年さんは『勇者』ではないので……何とも言えないんですが」
魔王「だったらさ、やっぱり……青年も『素質』を……」
闇の手「……最大の共通点、と考えるのが、ですね」
闇の手「『親』……に、なる人、なんです」
使用人「……かなり強引ですね。『向こう側』を知っているから、とは言え」
闇の手「さっきも申し上げた通り、青年さんを除外したのは」
魔王「……私が彼を父親に指名したから、か」
闇の手「きっちり筋道が通っていない、のはわかってます。でも」
闇の手「……紫の魔王の側近様も……失礼ですが、使用人さんも」
使用人「…… ……」
闇の手「『親』では……無いんです。いや! 勿論、使用人さんは、これから、その……!」モゴモゴ
使用人「誰と子をなせというのですか……」ハァ
闇の手「…… ……すみません」
使用人「ですが…… ……否定は、しきれません」
魔王「え!? だ、誰と!?」
使用人「ち、違います! そっちじゃありません!」
使用人「……こんなお話、するのはアレですが」コホン
魔王「……加護以外の魔法を使う事が出来る、か」
使用人「しかし……それだけでも凄い事だと思いますよ?」
使用人「紫の魔王様……まあ、あの方は規格外、ですけど」
使用人「あの方は加護に縛られず……」
闇の手「だからこそ、なんですよ……絡繰りはお三方ともわかりませんけども」
闇の手「それも……底上げ、だと思うんです」
魔王「……癒しの魔法は?」
闇の手「え?」
魔王「何か、自分も認めてよ! ……とか、そういう事じゃないんだよ」
魔王「先に言っておくけど。でもさ。ほら……勇者……光の加護、持ってる。持ってた」
魔王「私達は、癒しの魔法が使えたよ」
闇の手「……人間だけの特権、ですね」
闇の手「人である証……人の血が混じっている癒し手様、青年さんも確かに、使えます」
闇の手「『勇者は人間だから』……ああ、なるほど」
使用人「え?」
闇の手「『光の加護』は、水や緑の加護と同じように」
闇の手「回復……癒しを得意とする、のかもしれませんね」
使用人「……その仮説が成立するならば、金の魔王様は……『素質』を持っていらっしゃる」
使用人「そういう事になりませんか」
闇の手「…… ……確かに」
魔王「おじいちゃんは……そうか。光の魔法で……」
闇の手「三つ頭の魔物をすさまじい光で焼いた……んでしたっけ」
闇の手「……見てない、し遙か昔の事なので、何とも言えないんですが」
闇の手「えっと、ちょっとだけ戻します。二つの加護を持つ事が底上げ、の理由なんですが」
魔王「うん?」
闇の手「魔王様は明白ですよね。后様が……魔に変じるときに」
使用人「……身の内に押しとどめた、后様ご自身の炎の魔力、ですね」
闇の手「はい。それを、人として生まれてきた勇者、様が……奪って、です」
魔王「青年は?」
闇の手「……同じだと、思います。ご自分でも仰っていました」
闇の手「青年さんのお父様は『戦士さん』では無く『側近さん』だから、と」
使用人「魔に変じてから、だから……ですか」
闇の手「……まあ、正直。無理矢理説明つけようと思ったらそれしかない、んですけどね」
闇の手「ただまあ、青年さんは『勇者』ではないので……何とも言えないんですが」
魔王「だったらさ、やっぱり……青年も『素質』を……」
闇の手「……最大の共通点、と考えるのが、ですね」
闇の手「『親』……に、なる人、なんです」
使用人「……かなり強引ですね。『向こう側』を知っているから、とは言え」
闇の手「さっきも申し上げた通り、青年さんを除外したのは」
魔王「……私が彼を父親に指名したから、か」
闇の手「きっちり筋道が通っていない、のはわかってます。でも」
闇の手「……紫の魔王の側近様も……失礼ですが、使用人さんも」
使用人「…… ……」
闇の手「『親』では……無いんです。いや! 勿論、使用人さんは、これから、その……!」モゴモゴ
使用人「誰と子をなせというのですか……」ハァ
闇の手「…… ……すみません」
使用人「ですが…… ……否定は、しきれません」
魔王「え!? だ、誰と!?」
使用人「ち、違います! そっちじゃありません!」
使用人「……こんなお話、するのはアレですが」コホン
206: 2014/10/13(月) 12:13:20.31 ID:YsUGSqzY0
使用人「…… ……私は、気がついたらツキノモノ等……ありませんでした」
闇の手「!」ゲホン、ゴホン
魔王「さっきは……男性に聞かせる話じゃないとか言ってたくせに……」
使用人「魔王様にご理解頂くためのお話をわざわざ闇の手様に聞かせる必要は無い、と」
使用人「そういう意味です!」
闇の手「……じょ、女性の身体の事なので、あの、その、なんですけど」
闇の手「ち、知識は……その、一応、ありますので、だい、大丈夫です……」
魔王「……落ち着いてよ、闇の手」ハァ
使用人「……と、とにかく……金の魔王の后様も、黒の魔王の后様も、その」
使用人「まあ……その。女性としての機能、として。まあ……その。ありましたので」
使用人「……魔に変じたから、無くなってしまった、と言うのは、違うと思うのです」
闇の手「いつから……とか、覚えています?」
使用人「いいえ……そういえば、と気がついたのは、黒の魔王の后様がご懐妊された……」
使用人「……前後、でしょうか。まあ、別に……子をなす気などないので一向に構わない、のですが」
闇の手「……ふむ」
使用人「『向こう側』と『こちら側』……否応なしに繋がってしまっているのだ」
使用人「……そう仮定すれば、闇の手様の仮説も、一応の説明はつくかもしれませんね」
魔王「やっぱ強引だなぁ……まあ、その『素質』とやらをはっきりさせたからって」
魔王「何かあるわけじゃ無いんでしょ?」
闇の手「まあ……そうなんですけどね。『親で無い人』は他にも居る訳ですし」
使用人「……魔王将軍、金の魔王の側近様、もそうですね」
闇の手「もっと広げてしまうと、女さんだとか……女剣士様」
闇の手「港街の神父様、癒し手様の神父様、とか、関わった人全てになると、そりゃもう……」
使用人「……貴女もですよ、闇の手様」
闇の手「え、僕!?」
魔王「……否」
闇の手「…… ……え!?」
魔王「あ、いや……違うよ。もう一個共通点があるな、と思って」
魔王「やっぱり、使用人、紫の魔王の側近……えっと、魔導将軍と、金の魔王の側近」
魔王「それから、闇の手……その五人だよ」
使用人「……『親でない人』ですか?」
魔王「『魔に変じた元人間』だ」
闇の手「……あ」
魔王「それをプラスしたら、確かに癒し手様と青年は省かれる」
使用人「…… ……」
魔王「紫の魔王もだよね。彼は……生まれながらに魔、でしょう」
闇の手「……やはり、こうしてお話していると、色々出てきますね」
使用人「まあ……答えが出た、と言ったって、確かに、意味は無いのかもしれませんが」ハァ
闇の手「僕は楽しいので良いですけど」
闇の手「!」ゲホン、ゴホン
魔王「さっきは……男性に聞かせる話じゃないとか言ってたくせに……」
使用人「魔王様にご理解頂くためのお話をわざわざ闇の手様に聞かせる必要は無い、と」
使用人「そういう意味です!」
闇の手「……じょ、女性の身体の事なので、あの、その、なんですけど」
闇の手「ち、知識は……その、一応、ありますので、だい、大丈夫です……」
魔王「……落ち着いてよ、闇の手」ハァ
使用人「……と、とにかく……金の魔王の后様も、黒の魔王の后様も、その」
使用人「まあ……その。女性としての機能、として。まあ……その。ありましたので」
使用人「……魔に変じたから、無くなってしまった、と言うのは、違うと思うのです」
闇の手「いつから……とか、覚えています?」
使用人「いいえ……そういえば、と気がついたのは、黒の魔王の后様がご懐妊された……」
使用人「……前後、でしょうか。まあ、別に……子をなす気などないので一向に構わない、のですが」
闇の手「……ふむ」
使用人「『向こう側』と『こちら側』……否応なしに繋がってしまっているのだ」
使用人「……そう仮定すれば、闇の手様の仮説も、一応の説明はつくかもしれませんね」
魔王「やっぱ強引だなぁ……まあ、その『素質』とやらをはっきりさせたからって」
魔王「何かあるわけじゃ無いんでしょ?」
闇の手「まあ……そうなんですけどね。『親で無い人』は他にも居る訳ですし」
使用人「……魔王将軍、金の魔王の側近様、もそうですね」
闇の手「もっと広げてしまうと、女さんだとか……女剣士様」
闇の手「港街の神父様、癒し手様の神父様、とか、関わった人全てになると、そりゃもう……」
使用人「……貴女もですよ、闇の手様」
闇の手「え、僕!?」
魔王「……否」
闇の手「…… ……え!?」
魔王「あ、いや……違うよ。もう一個共通点があるな、と思って」
魔王「やっぱり、使用人、紫の魔王の側近……えっと、魔導将軍と、金の魔王の側近」
魔王「それから、闇の手……その五人だよ」
使用人「……『親でない人』ですか?」
魔王「『魔に変じた元人間』だ」
闇の手「……あ」
魔王「それをプラスしたら、確かに癒し手様と青年は省かれる」
使用人「…… ……」
魔王「紫の魔王もだよね。彼は……生まれながらに魔、でしょう」
闇の手「……やはり、こうしてお話していると、色々出てきますね」
使用人「まあ……答えが出た、と言ったって、確かに、意味は無いのかもしれませんが」ハァ
闇の手「僕は楽しいので良いですけど」
207: 2014/10/13(月) 12:19:39.05 ID:YsUGSqzY0
魔王「……こんがらがってきた」ハァ
闇の手「まあ、まあ……こうして、話す事で何か」
闇の手「見えてくる物が、もっと先……に、でも」
闇の手「あるかもしれませんよ?」
魔王「まあ、ね……しかしまぁ、謎だらけ」
使用人「100パーセントを理解する事は不可能ですよ……でも」
使用人「暇つぶしにはなります……健全な」
闇の手「……不健全な暇つぶしって何です」クス
使用人「チェスとかオセロですかね」
魔王「……別に良いじゃない」
使用人「状況によります。まあ……良いんですけど」
魔王「どういうこと?」
使用人「……紫の魔王様と紫の魔王の側近様が、二人で、閉じこもってる間に」
使用人「良く……勝負していらっしゃるのを、思い出しまして」
闇の手「……状況に詳しくないので、あれですが」
闇の手「緊張感は……ない、ですよね」
使用人「……あのお二方の間に緊張感などあった事があるんでしょうか」
魔王「さらっと酷い事言うね、使用人……」
使用人「……今だから、言える事です」カタン
闇の手「もう戻られます?」
使用人「まだ話したり無い様ですので。ケーキの準備をして参ります」
スタスタ、パタン
魔王「……なんだかんだ、使用人も楽しそうだよね」
闇の手「まあ、まあ……こうして、話す事で何か」
闇の手「見えてくる物が、もっと先……に、でも」
闇の手「あるかもしれませんよ?」
魔王「まあ、ね……しかしまぁ、謎だらけ」
使用人「100パーセントを理解する事は不可能ですよ……でも」
使用人「暇つぶしにはなります……健全な」
闇の手「……不健全な暇つぶしって何です」クス
使用人「チェスとかオセロですかね」
魔王「……別に良いじゃない」
使用人「状況によります。まあ……良いんですけど」
魔王「どういうこと?」
使用人「……紫の魔王様と紫の魔王の側近様が、二人で、閉じこもってる間に」
使用人「良く……勝負していらっしゃるのを、思い出しまして」
闇の手「……状況に詳しくないので、あれですが」
闇の手「緊張感は……ない、ですよね」
使用人「……あのお二方の間に緊張感などあった事があるんでしょうか」
魔王「さらっと酷い事言うね、使用人……」
使用人「……今だから、言える事です」カタン
闇の手「もう戻られます?」
使用人「まだ話したり無い様ですので。ケーキの準備をして参ります」
スタスタ、パタン
魔王「……なんだかんだ、使用人も楽しそうだよね」
225: 2014/10/18(土) 09:07:32.65 ID:oUwjZpLG0
闇の手「『向こう側』では、使用人さんはいらっしゃらなかった、ですからね」
魔王「……ああ、そうか。向こうで、この時点では……三人、だったのか」
闇の手「青年さんが同じように、旅に出ていらした、のなら」
闇の手「僕と魔王様、二人ですね」
魔王「そうだね」
魔王「……ん、なんだっけ」
闇の手「はい?」
魔王「お父さんが、何か……こだわってたの。『三』じゃなかった?」
闇の手「ああ……でも、あれは……」
コンコン、カチャ
使用人「お待たせいたしました」
闇の手「使用人さん」
使用人「はい?」
闇の手「使用人さんも、ある程度まとめてくださった、んですよね」
使用人「? ……ああ。年表、ですか」
闇の手「はい。どうせ時間もありますし。見比べてみます?」
魔王「『三』……ねぇ」
使用人「ああ……黒の魔王様の、ですね」
闇の手「書庫から取ってきます。ちょっとだけ待っててください」
使用人「ではその間に紅茶の準備をしておきますね」
スタスタ、カチャ、パタン
カチャカチャ……
魔王「…… ……」
魔王(『三』……たかが、数字、でしょ?)
魔王(お父さんは、何をそんなにこだわっていたんだろう)
魔王(……今日の夜、聞いてみようかな)
……
………
…………
魔王「……ああ、そうか。向こうで、この時点では……三人、だったのか」
闇の手「青年さんが同じように、旅に出ていらした、のなら」
闇の手「僕と魔王様、二人ですね」
魔王「そうだね」
魔王「……ん、なんだっけ」
闇の手「はい?」
魔王「お父さんが、何か……こだわってたの。『三』じゃなかった?」
闇の手「ああ……でも、あれは……」
コンコン、カチャ
使用人「お待たせいたしました」
闇の手「使用人さん」
使用人「はい?」
闇の手「使用人さんも、ある程度まとめてくださった、んですよね」
使用人「? ……ああ。年表、ですか」
闇の手「はい。どうせ時間もありますし。見比べてみます?」
魔王「『三』……ねぇ」
使用人「ああ……黒の魔王様の、ですね」
闇の手「書庫から取ってきます。ちょっとだけ待っててください」
使用人「ではその間に紅茶の準備をしておきますね」
スタスタ、カチャ、パタン
カチャカチャ……
魔王「…… ……」
魔王(『三』……たかが、数字、でしょ?)
魔王(お父さんは、何をそんなにこだわっていたんだろう)
魔王(……今日の夜、聞いてみようかな)
……
………
…………
226: 2014/10/18(土) 09:26:53.72 ID:oUwjZpLG0
少女「…… ……ッ」ウゥ……ウエ……ッ
少女「…… ……」ハァ、ハア……
ガサ……
少女「!」ビクッ
水使い「……お水をお持ちしました」
少女「水使い……」
水使い「あんな話を聞いた後では……受け入れない気持ちは、理解は出来ます」
少女「……そ、そうよ……だから……」ホッ
水使い「ですが……いい加減、おあきらめください」
少女「!」
少女(……一緒、なんだわ。この人も)ポロポロ
水使い「…… ……」
少女(少年や、雷使いほどじゃ無いにしても、この人も……!)
少女(……『魔導国』の再建を願う、生き残り……に、違いは無いんだわ)
水使い「……命、なんですよ?」
少女「え……?」
水使い「確かに、この土地で……沢山の血が流れ、大勢の命が失われました」
水使い「少年様の言う様に、秘書様の思い。母親様の悲願が……」
少女「…… ……呪い、でしょ」
水使い「……大地に染みこんでいる。その血を、肉を吸い、育ったこの土地で」
水使い「さらに、育まれた命を、食べる」
少女「……ッ」グッ ……オエェ
水使い「貴女はそうやって、身に『母親様』を宿さなくてはならない……そんな風に」
水使い「言われれば……身体が受け付けないのもわかります。ですが」
水使い「……狩られたウサギの命。肉となったそれに、直接の罪はありません」
少女「…… ……」
水使い「食べるために屠った命。その重さには差異は無い」
水使い「……だから、食べて差し上げるのが、礼儀です」
少女「きれい事を言わないで! ……劣等種だ、出来損ないだと……」
少女「そんな言葉に囚われて、罪も無い人達を蔑んできた貴女達が……!」
水使い「……私はその『出来損ない』ですよ」
少女「…… ……え?」
水使い「私は、優れた加護なんて持っていません。ここにこうして居られるのは」
水使い「雷使いが……少し、情けをかけてくれたから。それだけの事です」
少女「…… ……」
水使い「ましてや、私は雷の加護を受けている訳でも無い」
水使い「……今だって、そうでしょう? ただの召使いに過ぎません」
少女「……どうして、逃げなかったの」
少女「魔導国、なんて、もう無いのに……!」
水使い「…… ……」
少女「……雷使いに従う、理由なんて……!」
少女「…… ……」ハァ、ハア……
ガサ……
少女「!」ビクッ
水使い「……お水をお持ちしました」
少女「水使い……」
水使い「あんな話を聞いた後では……受け入れない気持ちは、理解は出来ます」
少女「……そ、そうよ……だから……」ホッ
水使い「ですが……いい加減、おあきらめください」
少女「!」
少女(……一緒、なんだわ。この人も)ポロポロ
水使い「…… ……」
少女(少年や、雷使いほどじゃ無いにしても、この人も……!)
少女(……『魔導国』の再建を願う、生き残り……に、違いは無いんだわ)
水使い「……命、なんですよ?」
少女「え……?」
水使い「確かに、この土地で……沢山の血が流れ、大勢の命が失われました」
水使い「少年様の言う様に、秘書様の思い。母親様の悲願が……」
少女「…… ……呪い、でしょ」
水使い「……大地に染みこんでいる。その血を、肉を吸い、育ったこの土地で」
水使い「さらに、育まれた命を、食べる」
少女「……ッ」グッ ……オエェ
水使い「貴女はそうやって、身に『母親様』を宿さなくてはならない……そんな風に」
水使い「言われれば……身体が受け付けないのもわかります。ですが」
水使い「……狩られたウサギの命。肉となったそれに、直接の罪はありません」
少女「…… ……」
水使い「食べるために屠った命。その重さには差異は無い」
水使い「……だから、食べて差し上げるのが、礼儀です」
少女「きれい事を言わないで! ……劣等種だ、出来損ないだと……」
少女「そんな言葉に囚われて、罪も無い人達を蔑んできた貴女達が……!」
水使い「……私はその『出来損ない』ですよ」
少女「…… ……え?」
水使い「私は、優れた加護なんて持っていません。ここにこうして居られるのは」
水使い「雷使いが……少し、情けをかけてくれたから。それだけの事です」
少女「…… ……」
水使い「ましてや、私は雷の加護を受けている訳でも無い」
水使い「……今だって、そうでしょう? ただの召使いに過ぎません」
少女「……どうして、逃げなかったの」
少女「魔導国、なんて、もう無いのに……!」
水使い「…… ……」
少女「……雷使いに従う、理由なんて……!」
274: 2014/11/01(土) 11:14:44.13 ID:XcpNkGtS0
水使い「……どうしてでしょうね。自分でも……わかりません。ですが」
水使い「嫌、では無かったんでしょうね」
少女「……え?」
水使い「物心ついてから、これ……あの生活、が」
水使い「当たり前になってしまっていましたから。雷使いは、確かに。我が儘だし」
水使い「傲慢だし……でも。優しいところもあるんですよ」
少女「……し、信じられないわ! そんなの、だまされているだけじゃないの!」
水使い「……そうかもしれません。でも」
水使い「彼女の側に居る事を選んだのは、私です。紛れも無く」
少女「…… ……」
水使い「必氏なんです。彼女たち……『魔導国の生き残り』にとって」
水使い「『力』は全て……なんです」
少女「だからって……!」
水使い「……確かに。何も知らない……いえ。知らなかった貴女に、少年様に」
水使い「押しつけるのは間違えているのかもしれません」
少女「そ……そうよ!だから……ッ」
水使い「……だから、受け入れてください」
少女「!」
水使い「嫌、では無かったんでしょうね」
少女「……え?」
水使い「物心ついてから、これ……あの生活、が」
水使い「当たり前になってしまっていましたから。雷使いは、確かに。我が儘だし」
水使い「傲慢だし……でも。優しいところもあるんですよ」
少女「……し、信じられないわ! そんなの、だまされているだけじゃないの!」
水使い「……そうかもしれません。でも」
水使い「彼女の側に居る事を選んだのは、私です。紛れも無く」
少女「…… ……」
水使い「必氏なんです。彼女たち……『魔導国の生き残り』にとって」
水使い「『力』は全て……なんです」
少女「だからって……!」
水使い「……確かに。何も知らない……いえ。知らなかった貴女に、少年様に」
水使い「押しつけるのは間違えているのかもしれません」
少女「そ……そうよ!だから……ッ」
水使い「……だから、受け入れてください」
少女「!」
275: 2014/11/01(土) 11:51:44.23 ID:XcpNkGtS0
水使い「……私を、懐柔するのは諦めてください」
少女「…… ……」
水使い「…… ……」
少女「…… ……ッ」ポロポロ
水使い「貴女も……『魔導国の生き残り』なのですよ?」
少女「……貴女も、でしょ!」
水使い「……私は『出来損ない』ですから」
少女「!」
水使い「私は雷使いのおかげで生きてこられた。私は『彼女の物』です」
水使い「文字通り、所有物……そう思ってくださって結構です。だから」
少女(……味方は、一人も居ない)
少女(こんな……こんな事になるなら、港街に……ッ)
水使い「……『魔法使い』と同じ道を歩んだ方が良かったとお考えですか?」
少女「! ……お母様は『少女』と言う名前だったのでしょう」
水使い「……そのようですね」
少女「……魔法使い、と言う名は、どこから?」
水使い「さあ、そこまでは」
少女「…… ……」
水使い「……気分も良くなったようです。少年様の所に戻りましょう」
少女「い、嫌よ!」
水使い「…… ……名も知らない、素性もわからない」
水使い「清潔感も無い、親父に股を開く方が、少年様と交わるよりも」
少女「や……やめて!」
水使い「……ましだと。言うのですか?」
少女「……ッ 酷いわ! 私は……ッ どうして、私だけ……!!」
ガサ……
少女「!」
雷使い「何やってるのよ、水使い」
水使い「…… ……」
少女「…… ……」
水使い「…… ……」
少女「…… ……ッ」ポロポロ
水使い「貴女も……『魔導国の生き残り』なのですよ?」
少女「……貴女も、でしょ!」
水使い「……私は『出来損ない』ですから」
少女「!」
水使い「私は雷使いのおかげで生きてこられた。私は『彼女の物』です」
水使い「文字通り、所有物……そう思ってくださって結構です。だから」
少女(……味方は、一人も居ない)
少女(こんな……こんな事になるなら、港街に……ッ)
水使い「……『魔法使い』と同じ道を歩んだ方が良かったとお考えですか?」
少女「! ……お母様は『少女』と言う名前だったのでしょう」
水使い「……そのようですね」
少女「……魔法使い、と言う名は、どこから?」
水使い「さあ、そこまでは」
少女「…… ……」
水使い「……気分も良くなったようです。少年様の所に戻りましょう」
少女「い、嫌よ!」
水使い「…… ……名も知らない、素性もわからない」
水使い「清潔感も無い、親父に股を開く方が、少年様と交わるよりも」
少女「や……やめて!」
水使い「……ましだと。言うのですか?」
少女「……ッ 酷いわ! 私は……ッ どうして、私だけ……!!」
ガサ……
少女「!」
雷使い「何やってるのよ、水使い」
水使い「…… ……」
283: 2014/11/03(月) 10:39:06.79 ID:UcMH20bp0
雷使い「少年様が心配されておりましたよ、少女様」
少女「……私は、戻らないわ! もう嫌よ!」
雷使い「我が儘を仰らないでくださいな」フゥ
少女「おかしいわよ! 貴女達の……少年の言っている事は無茶苦茶だわ!」
雷使い「…… ……」
少女「こんな……こんな事をして、母親……が、何よ! 何が……何が呪いよ!復活よ!」
少女「わ、私が……私が、少年と……ッ こ、子供を作ったって、そんな事……!」
雷使い「お黙りなさい!」グイッ
少女「きゃ、あ……ッ!?」
水使い「雷使い!」
雷使い「……例え貴女でも、母親様を愚弄する事は許しません。許されません」
少女(腕……ッ 痛い! なんて力……!!)
雷使い「この地に流れ込んだ母親様、秘書様の全て……」
雷使い「無念を。思いを……貴女は全て吸収するんです」
少女「……だから……ッ」
雷使い「そうする義務があるんです! ……ッ 『少女』の娘なのですから」
少女「……ッ」
雷使い「炎の加護を持つあの女が、雷の優れた加護を持つ双子を産んだ」
雷使い「そして、貴女に……『少女』と言う、己の名を与えた」
雷使い「その意味を考えなさい」
少女「……私は、戻らないわ! もう嫌よ!」
雷使い「我が儘を仰らないでくださいな」フゥ
少女「おかしいわよ! 貴女達の……少年の言っている事は無茶苦茶だわ!」
雷使い「…… ……」
少女「こんな……こんな事をして、母親……が、何よ! 何が……何が呪いよ!復活よ!」
少女「わ、私が……私が、少年と……ッ こ、子供を作ったって、そんな事……!」
雷使い「お黙りなさい!」グイッ
少女「きゃ、あ……ッ!?」
水使い「雷使い!」
雷使い「……例え貴女でも、母親様を愚弄する事は許しません。許されません」
少女(腕……ッ 痛い! なんて力……!!)
雷使い「この地に流れ込んだ母親様、秘書様の全て……」
雷使い「無念を。思いを……貴女は全て吸収するんです」
少女「……だから……ッ」
雷使い「そうする義務があるんです! ……ッ 『少女』の娘なのですから」
少女「……ッ」
雷使い「炎の加護を持つあの女が、雷の優れた加護を持つ双子を産んだ」
雷使い「そして、貴女に……『少女』と言う、己の名を与えた」
雷使い「その意味を考えなさい」
284: 2014/11/03(月) 11:20:06.67 ID:UcMH20bp0
少女「……離して」
雷使い「…… ……」パッ
少女「…… ……お母様は」
雷使い「何です」
少女「お母様は、そんな事を望んで、私に自分の名前をつけたんじゃないわ!」
雷使い「…… ……」
少女「……違うわよ。違うに……決まってる……!」ポロポロポロ
少女(はっきりとは覚えていない。でも)
少女(何処か寂しそうな……でも、優しい笑顔の人だった)
少女(私に……そんな、呪いの成就を……!)ハッ
雷使い「……どうしたんです」ハァ
少女「そうよ。その、秘書って人……伯母様は、お母様を呪ったんだって言ってたじゃないの!」
少女「だったら、やっぱりお母様は……!!」
少年「もう良いよ、少女」
雷使い「! 少年様」
水使い「…… ……」
少女「少年……」
少年「少女、水使い、雷使い……皆帰ってこないから、心配するだろ」スッ
少女「! 寄らないで……ッ」
少年「少女。過去なんてどうでも良い」
雷使い「少年様!?」
少年「勿論、納得してくれて、喜んで運命を受け入れてくれるに超した事は無いけどね」
少年「……でも、君が俺との子供を産む事に変わりは無いんだ」
少女「!」
少年「俺は何度も言ったはずだ。あんな街に居ちゃ行けない」
少年「母さんと同じような道を歩んじゃいけない」
少女「少年……!」
少年「何度も同じ話をする気は無い。さあ……戻ろう」ギュ
少女「い、いや! 離して……!」
少女(なんて……力……ッ)
少年「吐いても良いよ。全部が全部、出て行くわけじゃ無いんだ。もったいないけどね」
雷使い「少年様」
少年「ん?」
雷使い「……いえ。安心いたしました」
少年「少女は俺がちゃんと見張る。眼は離さないから」
少年「雑用は頼んだよ、雷使い、水使い」
水使い「……はい」
雷使い「勿論です」
少女「いやよ! ……ッ いや!!」
少年「……行こう。食べて力をつけて」
少年「早く成長して、少女。母さんや秘書に似て」
少年「君は、きっと綺麗になる。元気な子供を産める様に」
少女「いやあああああああああああああ!!」
雷使い「…… ……」パッ
少女「…… ……お母様は」
雷使い「何です」
少女「お母様は、そんな事を望んで、私に自分の名前をつけたんじゃないわ!」
雷使い「…… ……」
少女「……違うわよ。違うに……決まってる……!」ポロポロポロ
少女(はっきりとは覚えていない。でも)
少女(何処か寂しそうな……でも、優しい笑顔の人だった)
少女(私に……そんな、呪いの成就を……!)ハッ
雷使い「……どうしたんです」ハァ
少女「そうよ。その、秘書って人……伯母様は、お母様を呪ったんだって言ってたじゃないの!」
少女「だったら、やっぱりお母様は……!!」
少年「もう良いよ、少女」
雷使い「! 少年様」
水使い「…… ……」
少女「少年……」
少年「少女、水使い、雷使い……皆帰ってこないから、心配するだろ」スッ
少女「! 寄らないで……ッ」
少年「少女。過去なんてどうでも良い」
雷使い「少年様!?」
少年「勿論、納得してくれて、喜んで運命を受け入れてくれるに超した事は無いけどね」
少年「……でも、君が俺との子供を産む事に変わりは無いんだ」
少女「!」
少年「俺は何度も言ったはずだ。あんな街に居ちゃ行けない」
少年「母さんと同じような道を歩んじゃいけない」
少女「少年……!」
少年「何度も同じ話をする気は無い。さあ……戻ろう」ギュ
少女「い、いや! 離して……!」
少女(なんて……力……ッ)
少年「吐いても良いよ。全部が全部、出て行くわけじゃ無いんだ。もったいないけどね」
雷使い「少年様」
少年「ん?」
雷使い「……いえ。安心いたしました」
少年「少女は俺がちゃんと見張る。眼は離さないから」
少年「雑用は頼んだよ、雷使い、水使い」
水使い「……はい」
雷使い「勿論です」
少女「いやよ! ……ッ いや!!」
少年「……行こう。食べて力をつけて」
少年「早く成長して、少女。母さんや秘書に似て」
少年「君は、きっと綺麗になる。元気な子供を産める様に」
少女「いやあああああああああああああ!!」
285: 2014/11/03(月) 11:29:23.19 ID:UcMH20bp0
……
………
…………
船長「…… ……」
青年「開けるよ。良い?」
船長「お、おう……いや、チョット……」
青年「……あのね」ハァ
青年「このやりとり何回目だよ! いい加減にしろよ!」
船長「だ、だってさぁ!」
青年「だから、船に戻れって! 怖いなら!」
船長「……俺は、船に戻る。氏んでも……あ、いや。生きたまま戻る……」ブツブツ
青年「…… ……」ハァ
青年「だから、大丈夫だって。君が船を捨てるつもりが無いのなら」
青年「……扉の向こうは、甲板の上なり、なんなり……の、筈さ」
船長「…… ……おう」
青年「で、怖いならそもそもやめれば良いだろう?」
船長「い、いや! 一回行くって決めたんだ!」
青年「……だったら、もう。行くよ?」ハァ
青年「子供じゃないんだから。嫌々だって、もいい加減にしてくれ」
船長「……なんだかんだ、つきあってくれてるじゃネェか」
青年「流石にもう次に同じ事口にしたら、おいていく」
船長「…… ……ッ しゃあ! 行こうじゃネェか!」
スタスタ
ギィ……
青年「やれやれ……」ハァ
船長「!? 明かりが……」
青年「話したとおり。絡繰りについては聞いてくれるなよ。僕もわからないんだから」
ギギギ…… ……パタン、スゥ……
船長「うお!?」
青年「……これで、でれなくなった」
船長「……上るしかネェ、って事だな」フゥ
青年「やっと覚悟が決まったか? ……足、震えてるけど」
船長「う、うううう、うるせぇ!」
………
…………
船長「…… ……」
青年「開けるよ。良い?」
船長「お、おう……いや、チョット……」
青年「……あのね」ハァ
青年「このやりとり何回目だよ! いい加減にしろよ!」
船長「だ、だってさぁ!」
青年「だから、船に戻れって! 怖いなら!」
船長「……俺は、船に戻る。氏んでも……あ、いや。生きたまま戻る……」ブツブツ
青年「…… ……」ハァ
青年「だから、大丈夫だって。君が船を捨てるつもりが無いのなら」
青年「……扉の向こうは、甲板の上なり、なんなり……の、筈さ」
船長「…… ……おう」
青年「で、怖いならそもそもやめれば良いだろう?」
船長「い、いや! 一回行くって決めたんだ!」
青年「……だったら、もう。行くよ?」ハァ
青年「子供じゃないんだから。嫌々だって、もいい加減にしてくれ」
船長「……なんだかんだ、つきあってくれてるじゃネェか」
青年「流石にもう次に同じ事口にしたら、おいていく」
船長「…… ……ッ しゃあ! 行こうじゃネェか!」
スタスタ
ギィ……
青年「やれやれ……」ハァ
船長「!? 明かりが……」
青年「話したとおり。絡繰りについては聞いてくれるなよ。僕もわからないんだから」
ギギギ…… ……パタン、スゥ……
船長「うお!?」
青年「……これで、でれなくなった」
船長「……上るしかネェ、って事だな」フゥ
青年「やっと覚悟が決まったか? ……足、震えてるけど」
船長「う、うううう、うるせぇ!」
286: 2014/11/03(月) 11:35:46.02 ID:UcMH20bp0
コツン、コツン……
青年「雲の先まで……あの姿はまやかしだ」
青年「階段はそれほど長くない。扉が見えたら、その先には……」
船長「小さな部屋がある、だけなんだな。それで、部屋の中から、でようとすると」
船長「……自分が行きたい場所へ行ける、か」
青年「行かなければならない場所、なのか。都合が良い場所、なのか……」
青年「……だが、君なら多分、船に戻れるはずだ」
船長「で……お前は、仲間の所へ、か」
青年「多分、ね……僕が行く場所は……行くべき場所は」
青年「今は、そこしか無い」
船長「……また」
青年「ん?」
船長「またいつか、旅に出るのか?」
青年「……そうだな。勇者が生まれれば……」
船長「勇者と一緒にまた、旅をするのか。復活した魔王を倒すため……に」
青年「……どうかな。はっきりとはわからないよ。どうなるかもわかんないしね」
青年「『世界』だって…… ……どうなっていくのか」
船長「……気になるのか?」
青年「え?」
船長「いや、まあ……気にしても仕方ねぇのかもしれないけど」
青年「ああ……少年と少女、か」
船長「…… ……」
青年「…… ……」
船長「ん? あれか?」
青年「……ああ。もうついた、か」
コツン、コツン…… ……
青年「開けるぞ」
キィ
青年「雲の先まで……あの姿はまやかしだ」
青年「階段はそれほど長くない。扉が見えたら、その先には……」
船長「小さな部屋がある、だけなんだな。それで、部屋の中から、でようとすると」
船長「……自分が行きたい場所へ行ける、か」
青年「行かなければならない場所、なのか。都合が良い場所、なのか……」
青年「……だが、君なら多分、船に戻れるはずだ」
船長「で……お前は、仲間の所へ、か」
青年「多分、ね……僕が行く場所は……行くべき場所は」
青年「今は、そこしか無い」
船長「……また」
青年「ん?」
船長「またいつか、旅に出るのか?」
青年「……そうだな。勇者が生まれれば……」
船長「勇者と一緒にまた、旅をするのか。復活した魔王を倒すため……に」
青年「……どうかな。はっきりとはわからないよ。どうなるかもわかんないしね」
青年「『世界』だって…… ……どうなっていくのか」
船長「……気になるのか?」
青年「え?」
船長「いや、まあ……気にしても仕方ねぇのかもしれないけど」
青年「ああ……少年と少女、か」
船長「…… ……」
青年「…… ……」
船長「ん? あれか?」
青年「……ああ。もうついた、か」
コツン、コツン…… ……
青年「開けるぞ」
キィ
287: 2014/11/03(月) 12:02:07.94 ID:UcMH20bp0
船長「うわ、埃臭ェ……ッ」ゲホッ
青年「早く中に入れ……閉めるぞ」
バタン!
青年「これで、もう一回外に…… ……」
船長「うおおおおおおおおおお!?」
青年「!? どうした……ッ」
船長「なんだこれは! ……すっげぇええええええええ!!」
船長「おい!青年!どういうこったこれは!?」
青年「な、何だ!?」
船長「た……ッ 宝の山じゃネェかあああああああああああああああ!!」
青年「は!? な、何がだよ、こんながらくたの…… ……あ」
青年(ああ、そうか……こいつ……)
船長「すっげええええ! なんだこれ! うわ、この古い燭台……」
船長「うああああ、こっちも!!」
バタバタ、ガサゴソ……
青年「…… ……そういえば、こういうの趣味だった、な」ハァ
船長「な、なあ! 青年! これ……!」
青年「……別に、持って行っても誰も何も言わないと思うけどね……」
船長「こっちの飾り……うわあ、うああああ、すげぇ!」
青年「…… ……」
船長「こ、これ持ったらこっち、持てないか……しかし、これも捨てがたい……」ブツブツ
青年「……誰だよ。魔族の魔法なんかおっかない、とか言って震えてた奴……」
船長「トンでも無ェお宝がわんさかじゃネェか!青年!お前、すげぇよ!!」
船長「何で気がつかないかなぁ!!」
青年(……何も言うまい。聞いてないだろうしな)ハァ
船長「あ、おい、待てよ!おいていくなよ!お前も手伝ってくれよ!」
青年「あのね……多分、着地点は別だよ?」
船長「……一緒に戻って、もう一回来ないか?」
青年「却下!」
船長「…… ……」
青年「……睨むな。ほら……行くよ。先に言っていいのか?」
船長「ま、待て……よっと」フラ
青年「欲張りめ……」ハァ
カチャ、ギィ……
船長「わ、待てって……!!」
パァァ……ッ
船長(何だ、眩し……ッ)
……
………
…………
青年「…… ……」パチッ
青年(……紫色の、空)
青年「……帰ってきた、か。船長?」キョロ
青年(一人……か。船に戻ってる、とは思う……が)
スタスタ
青年「早く中に入れ……閉めるぞ」
バタン!
青年「これで、もう一回外に…… ……」
船長「うおおおおおおおおおお!?」
青年「!? どうした……ッ」
船長「なんだこれは! ……すっげぇええええええええ!!」
船長「おい!青年!どういうこったこれは!?」
青年「な、何だ!?」
船長「た……ッ 宝の山じゃネェかあああああああああああああああ!!」
青年「は!? な、何がだよ、こんながらくたの…… ……あ」
青年(ああ、そうか……こいつ……)
船長「すっげええええ! なんだこれ! うわ、この古い燭台……」
船長「うああああ、こっちも!!」
バタバタ、ガサゴソ……
青年「…… ……そういえば、こういうの趣味だった、な」ハァ
船長「な、なあ! 青年! これ……!」
青年「……別に、持って行っても誰も何も言わないと思うけどね……」
船長「こっちの飾り……うわあ、うああああ、すげぇ!」
青年「…… ……」
船長「こ、これ持ったらこっち、持てないか……しかし、これも捨てがたい……」ブツブツ
青年「……誰だよ。魔族の魔法なんかおっかない、とか言って震えてた奴……」
船長「トンでも無ェお宝がわんさかじゃネェか!青年!お前、すげぇよ!!」
船長「何で気がつかないかなぁ!!」
青年(……何も言うまい。聞いてないだろうしな)ハァ
船長「あ、おい、待てよ!おいていくなよ!お前も手伝ってくれよ!」
青年「あのね……多分、着地点は別だよ?」
船長「……一緒に戻って、もう一回来ないか?」
青年「却下!」
船長「…… ……」
青年「……睨むな。ほら……行くよ。先に言っていいのか?」
船長「ま、待て……よっと」フラ
青年「欲張りめ……」ハァ
カチャ、ギィ……
船長「わ、待てって……!!」
パァァ……ッ
船長(何だ、眩し……ッ)
……
………
…………
青年「…… ……」パチッ
青年(……紫色の、空)
青年「……帰ってきた、か。船長?」キョロ
青年(一人……か。船に戻ってる、とは思う……が)
スタスタ
307: 2014/11/09(日) 10:41:36.68 ID:P0fD9r170
青年(……うろうろする気、にはなれないが)
スタスタ
青年(地面に刺さった折れた十字架……剣士が覚えてるって言ってたあれ、か)
青年(魔族が住んでいただろう街……なのに、十字架?)
青年(教会、だろうが……似つかわしくない、よな)
青年(壊した、のか朽ちたのかはわからないけど……)
青年(……何故、こんな物がこんな……街、だっただろう場所に?)
青年「…… ……」
青年(……考えてもわからないものは、わからない、な)ハァ
キィ……ギギギ……
青年「?」
使用人「……おかえりなさいませ」
青年「使用人……何故わかった?」
使用人「窓から見えました……髪、切られたのですね」
青年「ああ……」ホッ
使用人「……ご安心ください。魔王様が気配を察して、とかではありませんよ」
青年「うん…… ……それにしても、よくわかったな」
使用人「目立ちますから。貴方は……まあ、城に向かって歩いてくる様な方も」
使用人「貴方以外おりますまい」
青年「……目立つ目立たない関係無いよね。髪だって染めてるんだし」
使用人「立ち居振る舞い、雰囲気……そういった物はありますよ?」
青年「出迎えてもらって、嬉しくない訳じゃ無いよ」
青年「闇の手と……魔王様は元気かい?」
使用人「……ええ。何もお変わりなく、と言いたいところ、ですが」
青年「……?」
使用人「とにかく、お入りください……そろそろ、冷えますから」
青年「ああ…… ……ただいま」
使用人「……はい。お帰りなさいませ、青年様」
ギィ……バタン
……
………
…………
スタスタ
青年(地面に刺さった折れた十字架……剣士が覚えてるって言ってたあれ、か)
青年(魔族が住んでいただろう街……なのに、十字架?)
青年(教会、だろうが……似つかわしくない、よな)
青年(壊した、のか朽ちたのかはわからないけど……)
青年(……何故、こんな物がこんな……街、だっただろう場所に?)
青年「…… ……」
青年(……考えてもわからないものは、わからない、な)ハァ
キィ……ギギギ……
青年「?」
使用人「……おかえりなさいませ」
青年「使用人……何故わかった?」
使用人「窓から見えました……髪、切られたのですね」
青年「ああ……」ホッ
使用人「……ご安心ください。魔王様が気配を察して、とかではありませんよ」
青年「うん…… ……それにしても、よくわかったな」
使用人「目立ちますから。貴方は……まあ、城に向かって歩いてくる様な方も」
使用人「貴方以外おりますまい」
青年「……目立つ目立たない関係無いよね。髪だって染めてるんだし」
使用人「立ち居振る舞い、雰囲気……そういった物はありますよ?」
青年「出迎えてもらって、嬉しくない訳じゃ無いよ」
青年「闇の手と……魔王様は元気かい?」
使用人「……ええ。何もお変わりなく、と言いたいところ、ですが」
青年「……?」
使用人「とにかく、お入りください……そろそろ、冷えますから」
青年「ああ…… ……ただいま」
使用人「……はい。お帰りなさいませ、青年様」
ギィ……バタン
……
………
…………
309: 2014/11/09(日) 11:06:56.92 ID:P0fD9r170
闇の手「あれ? 使用人さんはどこに……」
魔王「ん? ……またケーキでも焼いてくれてるんじゃないの?」
闇の手「さっきキッチンを覗いた時にはいらっしゃらなかったんです」
魔王「んん? 庭かな……でも、雨降りそうだしねぇ……」
キィ、パタン
闇の手「あ、使用人さん? ……やっと…… ……!!」
魔王「どこ行って…… ……えええええええええええええ!?」
青年「!? ……ま、魔王様!?」
魔王「な、なんで!? 髪!髪!」
青年「……な、なんで成長…… ……え、え!?」
闇の手「……もったいない。綺麗な髪でしたのに」
使用人「…… ……煩いです、皆様」
青年「髪なんか伸びるだろ……君たちがこぞって、目立つだのなんだの言うからだ」
青年「それより!! ……どう、なってるんだよ……」
魔王「……子供抱くより良いんでしょ」
青年「…… ……は!?」
使用人「魔王様、お下品です、ってば」
青年「いや、だから、って…… ……」
闇の手「とにかく、お茶にでもしましょうよ、立って話すのも疲れますし」
青年「……お前も動じないな、魔導師」
闇の手「闇の手、です」
青年「ああ……そうか、魔に……!」バッ
使用人「……睨まないでください。まだ、です」
青年「……睨んじゃないだろ」
使用人「私がここに居ると言う事は……でしょう?」
青年「…… ……」
魔王「ん? ……またケーキでも焼いてくれてるんじゃないの?」
闇の手「さっきキッチンを覗いた時にはいらっしゃらなかったんです」
魔王「んん? 庭かな……でも、雨降りそうだしねぇ……」
キィ、パタン
闇の手「あ、使用人さん? ……やっと…… ……!!」
魔王「どこ行って…… ……えええええええええええええ!?」
青年「!? ……ま、魔王様!?」
魔王「な、なんで!? 髪!髪!」
青年「……な、なんで成長…… ……え、え!?」
闇の手「……もったいない。綺麗な髪でしたのに」
使用人「…… ……煩いです、皆様」
青年「髪なんか伸びるだろ……君たちがこぞって、目立つだのなんだの言うからだ」
青年「それより!! ……どう、なってるんだよ……」
魔王「……子供抱くより良いんでしょ」
青年「…… ……は!?」
使用人「魔王様、お下品です、ってば」
青年「いや、だから、って…… ……」
闇の手「とにかく、お茶にでもしましょうよ、立って話すのも疲れますし」
青年「……お前も動じないな、魔導師」
闇の手「闇の手、です」
青年「ああ……そうか、魔に……!」バッ
使用人「……睨まないでください。まだ、です」
青年「……睨んじゃないだろ」
使用人「私がここに居ると言う事は……でしょう?」
青年「…… ……」
310: 2014/11/09(日) 11:18:12.87 ID:P0fD9r170
使用人「どうぞ、すぐに準備して参りますので……お座りください」
使用人「つもる話も……おありでしょう」
スタスタ、パタン
青年「…… ……」
魔王「……何。じっと見て」
青年「魔族は……成長しない、んじゃ無かったのか?」
魔王「私もそう聞いてたけどね」
闇の手「魔王様のお話から、で良いんじゃ無いです? 使用人さんも知ってる話ですし」
魔王「闇の手も何か話があったんじゃないの?」
闇の手「それで使用人さんを探していましたのでね。知恵をお借りしよう、と」
闇の手「青年さんのお話も、使用人さんにも聞いて頂いた方が良いでしょうし」
魔王「……起きたらこの姿になってた、ってなくらいしか無いんだけどな」
青年「寝てる間に……一晩で、成長した、と?」
魔王「まあ、ね。それで…… ……あー、ええっと」
青年「?」
魔王「……今、私どれぐらいに見える?」
青年「え?」
魔王「人で言うのなら、だ」
青年「……僕やま……闇の手と変わらないくらいに見える、かな」
魔王「……うん」
青年「で、何だよ。何を言いかけ……」
カチャ
使用人「お待たせしました」
魔王「……後で、私の部屋に来て、青年」
青年「え」ドキッ
魔王「二人はもう知ってる話だ……ゆっくり、話そう」
魔王「……とりあえず、闇の手」
闇の手「あ……はい。ええとですね……あ。青年さん、少し離れてください」
青年「え?」
闇の手「……完成したんです。転移石」
青年「!」
使用人「つもる話も……おありでしょう」
スタスタ、パタン
青年「…… ……」
魔王「……何。じっと見て」
青年「魔族は……成長しない、んじゃ無かったのか?」
魔王「私もそう聞いてたけどね」
闇の手「魔王様のお話から、で良いんじゃ無いです? 使用人さんも知ってる話ですし」
魔王「闇の手も何か話があったんじゃないの?」
闇の手「それで使用人さんを探していましたのでね。知恵をお借りしよう、と」
闇の手「青年さんのお話も、使用人さんにも聞いて頂いた方が良いでしょうし」
魔王「……起きたらこの姿になってた、ってなくらいしか無いんだけどな」
青年「寝てる間に……一晩で、成長した、と?」
魔王「まあ、ね。それで…… ……あー、ええっと」
青年「?」
魔王「……今、私どれぐらいに見える?」
青年「え?」
魔王「人で言うのなら、だ」
青年「……僕やま……闇の手と変わらないくらいに見える、かな」
魔王「……うん」
青年「で、何だよ。何を言いかけ……」
カチャ
使用人「お待たせしました」
魔王「……後で、私の部屋に来て、青年」
青年「え」ドキッ
魔王「二人はもう知ってる話だ……ゆっくり、話そう」
魔王「……とりあえず、闇の手」
闇の手「あ……はい。ええとですね……あ。青年さん、少し離れてください」
青年「え?」
闇の手「……完成したんです。転移石」
青年「!」
311: 2014/11/09(日) 11:35:45.88 ID:P0fD9r170
魔王「ああ、それで使用人探してたのか」
闇の手「ええ……これです」コロン
青年「…… ……」
闇の手「……苦しいですか?」
青年「否……大丈夫だ。さっき使用人が、緑の防護壁の魔法、とやらをかけてくれたから」
魔王「やっぱり規格外だよねー使用人」
使用人「……魔王様に言われたくありません……失礼します」スッ
青年「…… ……」
使用人「…… ……ふむ」
闇の手「如何ですか?」
使用人「使ってみない事には何とも……ですが、何故私に?」
闇の手「紫の魔王様が作られた物とは違いますが……とは言え」
闇の手「実物を使用された事があるのは、使用人さんだけですしね」
使用人「……まあ、そうですが」
闇の手「まだ改良の余地があるとは思うんですけどね。まあ……お聞きしたい、のは」
闇の手「これを……青年さんが使用して、彼の身に害が及ばないかどうか、です」
青年「気にしないで良いよ」
闇の手「駄目です」
青年「……言い切ったね」
闇の手「今は……その、防護壁があるから大丈夫、でしょうが」
闇の手「それも、永続性のある物じゃ無いでしょ?」
使用人「……私が居る限り、効果を切らさないようには出来ると思います、が」
使用人「魔王様がご懐妊された後、勇者様がお生まれになった……」
青年「ちょ、ちょっと待った! 僕は、まだ……!」
魔王「……その話は、後。そう仮定して、だよ。青年」
青年「魔王様……!」
闇の手「……で、まあ……後で使用人さんにちょっと試してもらおうかな、と」
使用人「……はい?」
闇の手「握って願えば、行った事のある場所になら行けるはずです」
使用人「それは……わかってます、けど」
闇の手「『まだ』一個だけ『ですので』……帰りは自力でお願いします」
使用人「…… ……あの?」
闇の手「『やっと一個完成したところで、』試験段階なんです」
闇の手「行った場所のあるところなら行ける、んですよね?」
闇の手「この城の庭、とか……どこでも大丈夫、ですよね?」
使用人「……『私』、実験台『ですか』?」
闇の手「はい」ニコ
青年「……良い性格してるよね、ほんと」
闇の手「成功したら多分、力に耐えれなくて割れちゃうと思うので」
闇の手「身体の負担にはならない……『ですよね? 多分』」
使用人「青年さんが使われるとしたら……ですね」ハァ
青年「……『多分』、って」
闇の手「試験段階ですので『……はっきりとした事は言えないですしね』」
闇の手「ええ……これです」コロン
青年「…… ……」
闇の手「……苦しいですか?」
青年「否……大丈夫だ。さっき使用人が、緑の防護壁の魔法、とやらをかけてくれたから」
魔王「やっぱり規格外だよねー使用人」
使用人「……魔王様に言われたくありません……失礼します」スッ
青年「…… ……」
使用人「…… ……ふむ」
闇の手「如何ですか?」
使用人「使ってみない事には何とも……ですが、何故私に?」
闇の手「紫の魔王様が作られた物とは違いますが……とは言え」
闇の手「実物を使用された事があるのは、使用人さんだけですしね」
使用人「……まあ、そうですが」
闇の手「まだ改良の余地があるとは思うんですけどね。まあ……お聞きしたい、のは」
闇の手「これを……青年さんが使用して、彼の身に害が及ばないかどうか、です」
青年「気にしないで良いよ」
闇の手「駄目です」
青年「……言い切ったね」
闇の手「今は……その、防護壁があるから大丈夫、でしょうが」
闇の手「それも、永続性のある物じゃ無いでしょ?」
使用人「……私が居る限り、効果を切らさないようには出来ると思います、が」
使用人「魔王様がご懐妊された後、勇者様がお生まれになった……」
青年「ちょ、ちょっと待った! 僕は、まだ……!」
魔王「……その話は、後。そう仮定して、だよ。青年」
青年「魔王様……!」
闇の手「……で、まあ……後で使用人さんにちょっと試してもらおうかな、と」
使用人「……はい?」
闇の手「握って願えば、行った事のある場所になら行けるはずです」
使用人「それは……わかってます、けど」
闇の手「『まだ』一個だけ『ですので』……帰りは自力でお願いします」
使用人「…… ……あの?」
闇の手「『やっと一個完成したところで、』試験段階なんです」
闇の手「行った場所のあるところなら行ける、んですよね?」
闇の手「この城の庭、とか……どこでも大丈夫、ですよね?」
使用人「……『私』、実験台『ですか』?」
闇の手「はい」ニコ
青年「……良い性格してるよね、ほんと」
闇の手「成功したら多分、力に耐えれなくて割れちゃうと思うので」
闇の手「身体の負担にはならない……『ですよね? 多分』」
使用人「青年さんが使われるとしたら……ですね」ハァ
青年「……『多分』、って」
闇の手「試験段階ですので『……はっきりとした事は言えないですしね』」
312: 2014/11/09(日) 12:02:40.57 ID:P0fD9r170
使用人「まあ……良いでしょう」ハァ
使用人「ご協力しますよ。実際に使って頂くのは、青年様でしょうから」
青年「だから……」
闇の手「……気にします。勿論」
闇の手「生かします、と言ったでしょう? ……できる限りの延命はしてもらいます、と」
闇の手「今、ここにはありませんが……覚えていますか?」
青年「え?」
闇の手「……お預かりした、癒し手様の魔石、です」
青年「忘れる訳無いだろう」
闇の手「……あれも、ちゃんとありますから」
青年「研究するとか……言ってた、な」ハァ
闇の手「はい……使用人さん、転移石、一度預かりますね」
使用人「はい」スッ
魔王「さて……じゃあ、青年の話、聞かせてもらおっか」
青年「……小鳥はまだ来てないよな?」
使用人「小鳥?」
青年「否、良い……一応報告を、と思ったんだが」
青年「海賊は思った以上に、せっかちだった、のさ」クス
魔王「! 船長に会ったの!?」
青年「ああ……だからこんなに早く北の塔に行けて……ここに、戻ってこれた」
青年「……やっぱり、僕の帰る場所は……ここだった、んだ」
闇の手「青年さん……」
青年「……で、だ。手紙にも書いた事、だが……船長から、双子の話を聞いた」
使用人「……『少女』さんの、子供ですね」
青年「ああ……ここからは僕の推測……だが、間違っては無いと思う」
青年「……雷使いは、間違い無く魔導国の再建を企んでいる」
魔王「あの二人……双子を『始まりの姉弟』に見立ててって奴でしょう?」
魔王「それにしたって時間がかかる。それに」
魔王「誰が自分の姉弟で、好きこのんで……」
青年「……覚えているだろう?闇の手」
闇の手「はい?」
青年「……『呪い』だ」
使用人「衛生師……秘書の? でも……」
青年「時間もかかるし、そう簡単に……って僕も思ってた。でも」
青年「そうは……行かないようだって事。人の想い……『願えば叶う』は」
青年「……厄介、って事だよ」
魔王「…… ……うん。話して。その上で……考えよう」
使用人「ご協力しますよ。実際に使って頂くのは、青年様でしょうから」
青年「だから……」
闇の手「……気にします。勿論」
闇の手「生かします、と言ったでしょう? ……できる限りの延命はしてもらいます、と」
闇の手「今、ここにはありませんが……覚えていますか?」
青年「え?」
闇の手「……お預かりした、癒し手様の魔石、です」
青年「忘れる訳無いだろう」
闇の手「……あれも、ちゃんとありますから」
青年「研究するとか……言ってた、な」ハァ
闇の手「はい……使用人さん、転移石、一度預かりますね」
使用人「はい」スッ
魔王「さて……じゃあ、青年の話、聞かせてもらおっか」
青年「……小鳥はまだ来てないよな?」
使用人「小鳥?」
青年「否、良い……一応報告を、と思ったんだが」
青年「海賊は思った以上に、せっかちだった、のさ」クス
魔王「! 船長に会ったの!?」
青年「ああ……だからこんなに早く北の塔に行けて……ここに、戻ってこれた」
青年「……やっぱり、僕の帰る場所は……ここだった、んだ」
闇の手「青年さん……」
青年「……で、だ。手紙にも書いた事、だが……船長から、双子の話を聞いた」
使用人「……『少女』さんの、子供ですね」
青年「ああ……ここからは僕の推測……だが、間違っては無いと思う」
青年「……雷使いは、間違い無く魔導国の再建を企んでいる」
魔王「あの二人……双子を『始まりの姉弟』に見立ててって奴でしょう?」
魔王「それにしたって時間がかかる。それに」
魔王「誰が自分の姉弟で、好きこのんで……」
青年「……覚えているだろう?闇の手」
闇の手「はい?」
青年「……『呪い』だ」
使用人「衛生師……秘書の? でも……」
青年「時間もかかるし、そう簡単に……って僕も思ってた。でも」
青年「そうは……行かないようだって事。人の想い……『願えば叶う』は」
青年「……厄介、って事だよ」
魔王「…… ……うん。話して。その上で……考えよう」
313: 2014/11/09(日) 12:09:50.60 ID:P0fD9r170
……
………
…………
船長「…… ……お?」
海賊「うわあああああああああああ!? 船長どっから!? ……っつか」
海賊「…… ……なんですか、そのがらくたは」
船長「て、ッテメェ! 俺の船に乗ってて、んで、これ見て、がらくたとか言うか!?」
海賊「え、だって……ッ ぅ、わ……埃……ッ」ゲホッ
船長「お宝に向かってなんつーことを……」
海賊「おたからぁ!? ……てか、マジでどっから沸いたんです」
船長「……俺はボウフラか何かか、阿呆!…… ……おい。青年は?」キョロ
船長「……居ない、か」
海賊「は? ……はぁ…… ……いや、だから……」
船長(仲間の所に……戻った、戻れた……のか?)
船長「……まあ、良い。あっさりくたばったりしねぇだろ」
海賊「船長! 聞いてます!?」
船長「あ? ああ……聞いてネェ」
海賊「……アンタね」ハァ
海賊「まあ……無事に戻ってきたのなら、良いっすよ、もう……」
海賊「さっさと離れましょうや。こんな不気味な塔の側……」
船長「おう! それだ! ……手、開いてる奴らで、これ磨いておいてくれ!」
海賊「……は?」
船長「お宝だよお宝! 俺はもう一回行ってくる!」
スタスタ
海賊「ハァ!?」
船長「手荒に扱うなよ! すげぇ貴重なモンなんだからな!」
海賊「ちょ、船長!? ……ああ、行っちまった」
海賊「……お宝…… ……このがらくたが? マジで?」
………
…………
船長「…… ……お?」
海賊「うわあああああああああああ!? 船長どっから!? ……っつか」
海賊「…… ……なんですか、そのがらくたは」
船長「て、ッテメェ! 俺の船に乗ってて、んで、これ見て、がらくたとか言うか!?」
海賊「え、だって……ッ ぅ、わ……埃……ッ」ゲホッ
船長「お宝に向かってなんつーことを……」
海賊「おたからぁ!? ……てか、マジでどっから沸いたんです」
船長「……俺はボウフラか何かか、阿呆!…… ……おい。青年は?」キョロ
船長「……居ない、か」
海賊「は? ……はぁ…… ……いや、だから……」
船長(仲間の所に……戻った、戻れた……のか?)
船長「……まあ、良い。あっさりくたばったりしねぇだろ」
海賊「船長! 聞いてます!?」
船長「あ? ああ……聞いてネェ」
海賊「……アンタね」ハァ
海賊「まあ……無事に戻ってきたのなら、良いっすよ、もう……」
海賊「さっさと離れましょうや。こんな不気味な塔の側……」
船長「おう! それだ! ……手、開いてる奴らで、これ磨いておいてくれ!」
海賊「……は?」
船長「お宝だよお宝! 俺はもう一回行ってくる!」
スタスタ
海賊「ハァ!?」
船長「手荒に扱うなよ! すげぇ貴重なモンなんだからな!」
海賊「ちょ、船長!? ……ああ、行っちまった」
海賊「……お宝…… ……このがらくたが? マジで?」
316: 2014/11/09(日) 14:36:28.30 ID:P0fD9r170
船長「船長の命令はー!?」
スタスタ……
海賊「……ッ 絶対でしょ!? わかってますよ! ああ、糞ッ」
海賊「おぉい! 手、開いてる奴ら! 手伝え!!」
アイアイサー?
……
………
…………
魔王「何で突っ立ってんの、青年」
青年「……何で平気なのか聞いても良いかい、逆に」
魔王「言ったでしょ。青年には、勇者の…… ……」
青年「よく考えろと言っただろう!?」
魔王「……考えた、ってば」
青年「君は……魔導師、じゃ無い。闇の手が……!」
魔王「…… ……」
青年「……拒否しないだろう。闇の手は」
魔王「…… ……」
青年「こだわる必要は無いんだ。『向こう側』に倣う必要は……」
青年「『金髪紫眼の男』を産む必要は無いんだ!」
魔王「……わかってるよ」
青年「だったら……!」
魔王「確かに、倣う必要は無い……それにね、青年」ハァ
魔王「闇の手が駄目だから、貴方、なんて……そんな事は思ってないよ」
魔王「青年の言うとおり……闇の手は、拒否しないだろうしね」
青年「……じゃあ、何故だ。何故僕なんだ!」
魔王「そんなに嫌なの?」
青年「……ッ そういう訳じゃ…… ……」
魔王「…… ……」
青年「光栄だ、とでも言えば良いのか?」
魔王「……そんな訳、無いでしょ」ハァ
青年「そりゃ…… ……どうしても、と言うのならば」ハァ
青年「僕だって……拒否したりは、しない。そういう意味では、闇の手と一緒だ」
青年「だが、よく考えるんだ。僕と君の子……エルフの血が、流れる以上」
青年「『金髪紫瞳の男』は勇者にはなりえない!」
魔王「……だから、だよ」
青年「…… ……何?」
魔王「『向こう側』の事はわからない。知りようが無い……そりゃ」
魔王「お父さんに聞く事は出来る。出来た……実際、彼は」
魔王「勇者だった…… ……と、言ってたよ。まあ、そりゃ」
魔王「彼曰く……だろうけど、さ」
青年「否定する、んだろう。『向こう側』を」
魔王「確かめたい、ってのもある。でもね」
魔王「……今回は。確実にわかるじゃないか」
スタスタ……
海賊「……ッ 絶対でしょ!? わかってますよ! ああ、糞ッ」
海賊「おぉい! 手、開いてる奴ら! 手伝え!!」
アイアイサー?
……
………
…………
魔王「何で突っ立ってんの、青年」
青年「……何で平気なのか聞いても良いかい、逆に」
魔王「言ったでしょ。青年には、勇者の…… ……」
青年「よく考えろと言っただろう!?」
魔王「……考えた、ってば」
青年「君は……魔導師、じゃ無い。闇の手が……!」
魔王「…… ……」
青年「……拒否しないだろう。闇の手は」
魔王「…… ……」
青年「こだわる必要は無いんだ。『向こう側』に倣う必要は……」
青年「『金髪紫眼の男』を産む必要は無いんだ!」
魔王「……わかってるよ」
青年「だったら……!」
魔王「確かに、倣う必要は無い……それにね、青年」ハァ
魔王「闇の手が駄目だから、貴方、なんて……そんな事は思ってないよ」
魔王「青年の言うとおり……闇の手は、拒否しないだろうしね」
青年「……じゃあ、何故だ。何故僕なんだ!」
魔王「そんなに嫌なの?」
青年「……ッ そういう訳じゃ…… ……」
魔王「…… ……」
青年「光栄だ、とでも言えば良いのか?」
魔王「……そんな訳、無いでしょ」ハァ
青年「そりゃ…… ……どうしても、と言うのならば」ハァ
青年「僕だって……拒否したりは、しない。そういう意味では、闇の手と一緒だ」
青年「だが、よく考えるんだ。僕と君の子……エルフの血が、流れる以上」
青年「『金髪紫瞳の男』は勇者にはなりえない!」
魔王「……だから、だよ」
青年「…… ……何?」
魔王「『向こう側』の事はわからない。知りようが無い……そりゃ」
魔王「お父さんに聞く事は出来る。出来た……実際、彼は」
魔王「勇者だった…… ……と、言ってたよ。まあ、そりゃ」
魔王「彼曰く……だろうけど、さ」
青年「否定する、んだろう。『向こう側』を」
魔王「確かめたい、ってのもある。でもね」
魔王「……今回は。確実にわかるじゃないか」
317: 2014/11/09(日) 14:52:13.30 ID:P0fD9r170
青年「何……が」
魔王「『私達の知らない世界』だ」
青年「……君は、その……特異点しか来られない場所、だったか」
魔王「…… ……」
青年「そこへ、行けるから……だろう」
魔王「それもある。だけど」
青年「だけど?」
魔王「……もし『金髪紫眼の男』が『勇者』では無かったら」
青年「無理だってば……ッ 僕は、人間じゃ無いんだぞ!?」
魔王「だから、だよ! ……終わるんだ」
青年「え?」
魔王「彼は勇者にはなれない。だから……魔王にもならない。なれない」
青年「……あ」
魔王「お父さんが言ってた」
魔王「何度も何度も、繰り返し見た、と」
魔王「気がついて居なかったんだ……私も、青年も」
魔王「『金髪紫瞳の男』は『勇者』だと信じて疑わなかった」
青年「……それを、今回ならば確実に確かめられる、と言いたいんだな……それは、わかる。わかった」
青年「けど……」
魔王「どちらにしても……『金髪紫瞳の男』は『魔王にはならない』」
青年「…… ……」
魔王「お父さんと癒し手様は失敗してるんだ」
青年「何?」
魔王「『違う』と叫んで干渉してしまった」
魔王「……あの時、あの二人が結ばれていればそもそも」
魔王「私も、青年も居ない」
青年「そん……そ、う、だが」
魔王「それをどうこう言いたいんじゃ無い。もしかしたら」
魔王「……それは、偶然では無くて、必然かもしれないでしょ?」
青年「……必然?」
魔王「そう。そこまでの変化は……認めてくれないのかも、しれない」
青年「『世界』が……か」ハァ
魔王「……でも、変わってる部分は一杯あるんだよ」
魔王「『私達の知らない世界』だ」
青年「……君は、その……特異点しか来られない場所、だったか」
魔王「…… ……」
青年「そこへ、行けるから……だろう」
魔王「それもある。だけど」
青年「だけど?」
魔王「……もし『金髪紫眼の男』が『勇者』では無かったら」
青年「無理だってば……ッ 僕は、人間じゃ無いんだぞ!?」
魔王「だから、だよ! ……終わるんだ」
青年「え?」
魔王「彼は勇者にはなれない。だから……魔王にもならない。なれない」
青年「……あ」
魔王「お父さんが言ってた」
魔王「何度も何度も、繰り返し見た、と」
魔王「気がついて居なかったんだ……私も、青年も」
魔王「『金髪紫瞳の男』は『勇者』だと信じて疑わなかった」
青年「……それを、今回ならば確実に確かめられる、と言いたいんだな……それは、わかる。わかった」
青年「けど……」
魔王「どちらにしても……『金髪紫瞳の男』は『魔王にはならない』」
青年「…… ……」
魔王「お父さんと癒し手様は失敗してるんだ」
青年「何?」
魔王「『違う』と叫んで干渉してしまった」
魔王「……あの時、あの二人が結ばれていればそもそも」
魔王「私も、青年も居ない」
青年「そん……そ、う、だが」
魔王「それをどうこう言いたいんじゃ無い。もしかしたら」
魔王「……それは、偶然では無くて、必然かもしれないでしょ?」
青年「……必然?」
魔王「そう。そこまでの変化は……認めてくれないのかも、しれない」
青年「『世界』が……か」ハァ
魔王「……でも、変わってる部分は一杯あるんだよ」
318: 2014/11/09(日) 15:05:15.65 ID:P0fD9r170
青年「そりゃ……だって、始まりの国だって……」
魔王「『向こう側』では、私、剣士が好きだったみたい」
青年「…… ……同じ顔してる奴に惚れてたのか」ハァ
魔王「娘ってのは、無条件でお父さんが好き、なんじゃ無いの?」
青年「……誰に聞いたの……ああ、良い。言わなくて良い」
青年(黒の魔王様だな……)ハァ
魔王「で……準備万端だよ?」
青年「は?」
魔王「青年好み……かどうかはわかんないけど、大人になったし」
魔王「ツキノモノも…… ……」
青年「わかった、わかった! ……もうわかったから!」
魔王「え?」
青年「……言わなくて良いから、そういう事は」ハァ
魔王「だって……」
青年「もう、良いって」グイッ チュッ
魔王「! え、ちょ……ッ な、なんで脱いでるの!?」
青年「その為に魔王様の部屋に二人きり、なんでしょ」ハァ
魔王「な、え。 ……そ、そうだけど……ッ」
青年「それにまだ、マントしか脱いでない……ムード無いのが二人じゃ、しゃれにならない」
魔王「…… ……私?」
青年「他に誰が。 …… ……しかし、まあ」ギュ
魔王「わ……ッ」
魔王(……腕、堅い。暖かい……青年、細そうに見える、のに)ドキドキ
青年「……不憫だな、僕」ボソッ
魔王「え……?」
青年「何でも無いよ」チュ…… チュ
魔王「ァ。 ……ん」
青年(向こう側も、こっちも…… ……心は僕に無いって)
青年(言ってるようなモンだ。気がついて無いんだろうな、この人は)
魔王「…… ……ッ」プハッ
青年「呼吸しろよ」
魔王「だ、だって……ッ !?」
青年「言っとくけど、僕だって慣れてる訳じゃないんだからね」
魔王「え!?」
青年「…… ……」ハァ
魔王「『向こう側』では、私、剣士が好きだったみたい」
青年「…… ……同じ顔してる奴に惚れてたのか」ハァ
魔王「娘ってのは、無条件でお父さんが好き、なんじゃ無いの?」
青年「……誰に聞いたの……ああ、良い。言わなくて良い」
青年(黒の魔王様だな……)ハァ
魔王「で……準備万端だよ?」
青年「は?」
魔王「青年好み……かどうかはわかんないけど、大人になったし」
魔王「ツキノモノも…… ……」
青年「わかった、わかった! ……もうわかったから!」
魔王「え?」
青年「……言わなくて良いから、そういう事は」ハァ
魔王「だって……」
青年「もう、良いって」グイッ チュッ
魔王「! え、ちょ……ッ な、なんで脱いでるの!?」
青年「その為に魔王様の部屋に二人きり、なんでしょ」ハァ
魔王「な、え。 ……そ、そうだけど……ッ」
青年「それにまだ、マントしか脱いでない……ムード無いのが二人じゃ、しゃれにならない」
魔王「…… ……私?」
青年「他に誰が。 …… ……しかし、まあ」ギュ
魔王「わ……ッ」
魔王(……腕、堅い。暖かい……青年、細そうに見える、のに)ドキドキ
青年「……不憫だな、僕」ボソッ
魔王「え……?」
青年「何でも無いよ」チュ…… チュ
魔王「ァ。 ……ん」
青年(向こう側も、こっちも…… ……心は僕に無いって)
青年(言ってるようなモンだ。気がついて無いんだろうな、この人は)
魔王「…… ……ッ」プハッ
青年「呼吸しろよ」
魔王「だ、だって……ッ !?」
青年「言っとくけど、僕だって慣れてる訳じゃないんだからね」
魔王「え!?」
青年「…… ……」ハァ
319: 2014/11/09(日) 15:27:35.50 ID:P0fD9r170
魔王「……いや、うん。そっか」カァ
青年(見た目が変わっても、中身は一緒、か)クス ……スッ
魔王「わ、あ……!?」
青年「落とされたく無かったら暴れないでよ」
魔王(こ、これって、お姫様だっこ、て奴!?)
青年「…… ……」
スタスタ
魔王(……お、重くないのかな)
青年「よ、いしょ」ドサッ
魔王「……ッ」
青年「…… ……」ギシッ
魔王「……!」
青年「顔、真っ赤」クス
魔王「だ、だって……!」
青年「……痛かったら、言って」チュッ
魔王「え、痛いって……え ……んっ」
魔王(重……く、無い。支えてくれてるのか)
魔王(暖かい……青年の身体)
青年「魔王様だからね……従うよ」
魔王「……え?」
青年「…… ……いや、ごめん。僕もムード無いな」
青年「……好きだよ、魔王様」
魔王「こんな時に、なんで、嘘…… ……」
青年「……は、つけないって知ってるだろう。認めるよ」
魔王「……?」
青年「僕は君が好きだよ。別に大人の姿になったからじゃ無い」
青年「…… ……気がついたら、ね。いつからだ、なんて聞かれても困るけど」
魔王「青年……」
青年「…… ……」チュ、チュ……
魔王「……ッ ァッ」
……
………
…………
シュゥン、スタッ
使用人「……大丈夫そう、ですね」
闇の手「ふむ……良かったです」
使用人「誰ですか。一つしか無い、なんて言ったの」
闇の手「完成品……試作品、ですけど。満足が行く効果が出そうなのが」
闇の手「一個だけ、って意味ですよ」
青年(見た目が変わっても、中身は一緒、か)クス ……スッ
魔王「わ、あ……!?」
青年「落とされたく無かったら暴れないでよ」
魔王(こ、これって、お姫様だっこ、て奴!?)
青年「…… ……」
スタスタ
魔王(……お、重くないのかな)
青年「よ、いしょ」ドサッ
魔王「……ッ」
青年「…… ……」ギシッ
魔王「……!」
青年「顔、真っ赤」クス
魔王「だ、だって……!」
青年「……痛かったら、言って」チュッ
魔王「え、痛いって……え ……んっ」
魔王(重……く、無い。支えてくれてるのか)
魔王(暖かい……青年の身体)
青年「魔王様だからね……従うよ」
魔王「……え?」
青年「…… ……いや、ごめん。僕もムード無いな」
青年「……好きだよ、魔王様」
魔王「こんな時に、なんで、嘘…… ……」
青年「……は、つけないって知ってるだろう。認めるよ」
魔王「……?」
青年「僕は君が好きだよ。別に大人の姿になったからじゃ無い」
青年「…… ……気がついたら、ね。いつからだ、なんて聞かれても困るけど」
魔王「青年……」
青年「…… ……」チュ、チュ……
魔王「……ッ ァッ」
……
………
…………
シュゥン、スタッ
使用人「……大丈夫そう、ですね」
闇の手「ふむ……良かったです」
使用人「誰ですか。一つしか無い、なんて言ったの」
闇の手「完成品……試作品、ですけど。満足が行く効果が出そうなのが」
闇の手「一個だけ、って意味ですよ」
320: 2014/11/09(日) 15:43:22.28 ID:P0fD9r170
使用人「……確かに。青年様に使って頂くのには少し不安が残りますが」
闇の手「こっちの……隠してた奴の方ですね?」
使用人「割れた後ににじみ出す魔王様の気が多い気はしますね」
使用人「私や、闇の手様は平気でしょうが」
闇の手「やはりもう少し……力を押さえてもらう必要がある、かなぁ」
使用人「……まあ、成功って言っていいんじゃ無いですか」
使用人「戻ってこられました、しね」
闇の手「……青年さん、魔王様と二人きりで大丈夫でしょうかね」
使用人「防護の魔法をかけさせて頂いたので大丈夫だとは思いますけど」
闇の手「魔王様の側に居られる以上……癒し手様の石をお渡しする訳には」
闇の手「行きませんから、ね」ハァ
使用人「後で、青年様の部屋にも…… ……?」
闇の手「使用人さん?」
使用人「…… ……ッ」ドクンッ
闇の手「! ……どうしました!?」
使用人(息が……苦しい……!?)フラ……
闇の手「使用人さん!?」ギュッ
使用人「……ッ 闇、 ……様…… ……ッ」グ……
闇の手「使用人さん! ……使用人さ……ッ」ギュッ
使用人「…… ……ッ …… ……」カクン
闇の手「!」ズシッ
闇の手(気を……失ってる……?)
闇の手「使用人さん……?」
使用人「…… ……」
闇の手(息は、ある)ホッ
闇の手(それにしても、どうしたんだ?急に……)
闇の手(……まさか。寿命? ……いや、でも……!)
闇の手「使用人さん……」
闇の手(……とりあえず、ベッドに運ぶ、か)スッ
闇の手(魔王様の気に触れたから? ……否。使用人さんほどの方に限って……)
スタスタ
……
………
…………
闇の手「こっちの……隠してた奴の方ですね?」
使用人「割れた後ににじみ出す魔王様の気が多い気はしますね」
使用人「私や、闇の手様は平気でしょうが」
闇の手「やはりもう少し……力を押さえてもらう必要がある、かなぁ」
使用人「……まあ、成功って言っていいんじゃ無いですか」
使用人「戻ってこられました、しね」
闇の手「……青年さん、魔王様と二人きりで大丈夫でしょうかね」
使用人「防護の魔法をかけさせて頂いたので大丈夫だとは思いますけど」
闇の手「魔王様の側に居られる以上……癒し手様の石をお渡しする訳には」
闇の手「行きませんから、ね」ハァ
使用人「後で、青年様の部屋にも…… ……?」
闇の手「使用人さん?」
使用人「…… ……ッ」ドクンッ
闇の手「! ……どうしました!?」
使用人(息が……苦しい……!?)フラ……
闇の手「使用人さん!?」ギュッ
使用人「……ッ 闇、 ……様…… ……ッ」グ……
闇の手「使用人さん! ……使用人さ……ッ」ギュッ
使用人「…… ……ッ …… ……」カクン
闇の手「!」ズシッ
闇の手(気を……失ってる……?)
闇の手「使用人さん……?」
使用人「…… ……」
闇の手(息は、ある)ホッ
闇の手(それにしても、どうしたんだ?急に……)
闇の手(……まさか。寿命? ……いや、でも……!)
闇の手「使用人さん……」
闇の手(……とりあえず、ベッドに運ぶ、か)スッ
闇の手(魔王様の気に触れたから? ……否。使用人さんほどの方に限って……)
スタスタ
……
………
…………
321: 2014/11/09(日) 16:26:14.84 ID:P0fD9r170
黒魔「……で、使用人の様子はどうなんだ?」
魔王「何も変わらないよ……って、毎日聞くね、お父さん」
黒魔「ああ……そうか。そうだよな。お前が消えて出てきて……一日か」
魔王「……時間の流れなんか、わかんないよね。ここに居ると」
黒魔「で、お前は……」
魔王「…… ……」プッ
黒魔「……それも、だな」ハァ
魔王「不思議だよね。こっちに居ると、普段あんなに重たいお腹が」
魔王「ぺったんこで、何とも無いんだもん」
黒魔「もうすぐ、生まれるんだったか」
魔王「……って、闇の手は言ってたよ。こんな時に使用人が居てくれたらー!って」
魔王「毎度、叫んでるけど」
黒魔「……まあ、男にはわからんからな」
魔王「大丈夫なのかな……使用人」
黒魔「比較して良いのかどうか、は、わからん……が」
黒魔「……このタイミングでは、使用人は……」
魔王「『向こう側』では……居なかった」
黒魔「…… ……」
魔王「ここは……『過去しか見られない』んだよね?」
黒魔「見れなかった、だろうな」
魔王「…… ……」
黒魔「俺の代の時には……すでにそうじゃなかった」
魔王「おじいちゃん……金の魔王は、そう言ってたんだよね」
黒魔「ああ。違う道を歩き出したんだ、ってな」
黒魔「俺は、向こう側のお前には会ってないが」
黒魔「……お前は……まだ意識があるのに、ここにいるし」
魔王「これからは……『勇者』が生まれたらわかんないよ」
魔王「……否、『勇者』かどうかわかんないけど、さ」
黒魔「そうだな。俺もお前が生まれて一月も過ぎた頃には……」
魔王「…… ……うん。言ってた、ね」
黒魔「闇の手が、寝かさないって息巻いてんだろ」クス
魔王「……眠る二人を僕一人でどうしろって言うんですか!! ……ってね」
黒魔「…… ……もうすぐ、か」
魔王「見えないよね」
黒魔「え?」
魔王「始まりの大陸の様子」
黒魔「……双子、か」
魔王「少年の様子、とやらも気になる……けど」
黒魔「まあ……だから、ってな。お前の判断は間違えて無いだろう」
黒魔「青年に一人で行かせる訳には……」
魔王「……うん。それは……勿論そうなんだけどね」
黒魔「…… ……どうした?」ナデ
魔王「お父さん」
黒魔「ん?」
魔王「何も変わらないよ……って、毎日聞くね、お父さん」
黒魔「ああ……そうか。そうだよな。お前が消えて出てきて……一日か」
魔王「……時間の流れなんか、わかんないよね。ここに居ると」
黒魔「で、お前は……」
魔王「…… ……」プッ
黒魔「……それも、だな」ハァ
魔王「不思議だよね。こっちに居ると、普段あんなに重たいお腹が」
魔王「ぺったんこで、何とも無いんだもん」
黒魔「もうすぐ、生まれるんだったか」
魔王「……って、闇の手は言ってたよ。こんな時に使用人が居てくれたらー!って」
魔王「毎度、叫んでるけど」
黒魔「……まあ、男にはわからんからな」
魔王「大丈夫なのかな……使用人」
黒魔「比較して良いのかどうか、は、わからん……が」
黒魔「……このタイミングでは、使用人は……」
魔王「『向こう側』では……居なかった」
黒魔「…… ……」
魔王「ここは……『過去しか見られない』んだよね?」
黒魔「見れなかった、だろうな」
魔王「…… ……」
黒魔「俺の代の時には……すでにそうじゃなかった」
魔王「おじいちゃん……金の魔王は、そう言ってたんだよね」
黒魔「ああ。違う道を歩き出したんだ、ってな」
黒魔「俺は、向こう側のお前には会ってないが」
黒魔「……お前は……まだ意識があるのに、ここにいるし」
魔王「これからは……『勇者』が生まれたらわかんないよ」
魔王「……否、『勇者』かどうかわかんないけど、さ」
黒魔「そうだな。俺もお前が生まれて一月も過ぎた頃には……」
魔王「…… ……うん。言ってた、ね」
黒魔「闇の手が、寝かさないって息巻いてんだろ」クス
魔王「……眠る二人を僕一人でどうしろって言うんですか!! ……ってね」
黒魔「…… ……もうすぐ、か」
魔王「見えないよね」
黒魔「え?」
魔王「始まりの大陸の様子」
黒魔「……双子、か」
魔王「少年の様子、とやらも気になる……けど」
黒魔「まあ……だから、ってな。お前の判断は間違えて無いだろう」
黒魔「青年に一人で行かせる訳には……」
魔王「……うん。それは……勿論そうなんだけどね」
黒魔「…… ……どうした?」ナデ
魔王「お父さん」
黒魔「ん?」
322: 2014/11/09(日) 16:35:32.11 ID:P0fD9r170
魔王「……次で、終わらすんだ」
黒魔「魔王……?」
魔王「青年との子が……この、お腹の中の子が生まれれば」
魔王「私は……最強の魔王になる」
黒魔「……ああ」
魔王「だから…… ……」
黒魔「…… ……」ポンポン
魔王「…… ……」
黒魔「自分を信じろ、魔王」
魔王「お父さん……」
黒魔「何か、考えてるんだろう? ……お前が、魔王が決めた事なら」
黒魔「闇の手も、青年も……何も言わないさ。だけどな」
魔王「…… ……」
黒魔「悩むのなら、ちゃんと相談しなさい。仲間だろ?」
魔王「…… ……うん」
黒魔「駄目だと思ったら止めてくれる。そうでなかったら、最後までつきあってくれる」
黒魔「……自分と同じように、仲間も信じたら良いよ」
黒魔「お父さんはそう思う、し」
黒魔「……お父さんも、お前を信じてるよ。人に……『人間』にとって」
黒魔「『魔』や『魔王』ってのは、忌み嫌われる物だ。でも」
黒魔「……『魔王』には義務がある」
魔王「義務……」
黒魔「紫の魔王や、彼の側近が望んだように」
黒魔「『徹底した不干渉』が貫けるのなら、良かったのかもしれない」
黒魔「赤の魔王……だっけ? が、望んだみたいに」
魔王「……共存」
黒魔「うん。それも……叶うのならば、それはそれで良かったのかもしれない」
黒魔「でも……以前、お前や青年が言っていた様に」
魔王「……うん。人は……『魔王の恐怖』なんて、御伽噺の中のそれと同じぐらいにしか」
魔王「思っていないんだ。いつか、何処かの誰か…… ……『勇者』が」
魔王「どうにかしてくれる…… ……そう、思ってる」
黒魔「…… ……」
黒魔「魔王……?」
魔王「青年との子が……この、お腹の中の子が生まれれば」
魔王「私は……最強の魔王になる」
黒魔「……ああ」
魔王「だから…… ……」
黒魔「…… ……」ポンポン
魔王「…… ……」
黒魔「自分を信じろ、魔王」
魔王「お父さん……」
黒魔「何か、考えてるんだろう? ……お前が、魔王が決めた事なら」
黒魔「闇の手も、青年も……何も言わないさ。だけどな」
魔王「…… ……」
黒魔「悩むのなら、ちゃんと相談しなさい。仲間だろ?」
魔王「…… ……うん」
黒魔「駄目だと思ったら止めてくれる。そうでなかったら、最後までつきあってくれる」
黒魔「……自分と同じように、仲間も信じたら良いよ」
黒魔「お父さんはそう思う、し」
黒魔「……お父さんも、お前を信じてるよ。人に……『人間』にとって」
黒魔「『魔』や『魔王』ってのは、忌み嫌われる物だ。でも」
黒魔「……『魔王』には義務がある」
魔王「義務……」
黒魔「紫の魔王や、彼の側近が望んだように」
黒魔「『徹底した不干渉』が貫けるのなら、良かったのかもしれない」
黒魔「赤の魔王……だっけ? が、望んだみたいに」
魔王「……共存」
黒魔「うん。それも……叶うのならば、それはそれで良かったのかもしれない」
黒魔「でも……以前、お前や青年が言っていた様に」
魔王「……うん。人は……『魔王の恐怖』なんて、御伽噺の中のそれと同じぐらいにしか」
魔王「思っていないんだ。いつか、何処かの誰か…… ……『勇者』が」
魔王「どうにかしてくれる…… ……そう、思ってる」
黒魔「…… ……」
323: 2014/11/09(日) 16:43:52.75 ID:P0fD9r170
魔王「……始まりの国ももう無い」
魔王「後ろ盾してくれる何かは……もう、無いんだ」
黒魔「…… ……」
魔王「だから…… ……」
黒魔「うん。思った通り、すれば良いと思うぜ」
魔王「…… ……うん。闇の手に話してみるよ」
黒魔「青年にもな」
魔王「勿論。彼らは……『魔王の仲間』だか…… ……ッ」ズキッ
黒魔「どうした?」
魔王「……お腹が、痛い…… ……ッ」
黒魔「!? ……生まれるのかッ!?」
魔王「もう!? …… ……ッ ぅ、う……ッ」
魔王(痛い…… い、た……ッ)クラッ
黒魔「ま……ッ ……い。 ……ぶ…… ……ッ !?」
魔王(ううぅ……目の前が、暗く……ッ)
……
………
…………
闇の手「魔王様! まだ我慢してくださいよ!?」
魔王「……ぅう……ッ」
魔王「後ろ盾してくれる何かは……もう、無いんだ」
黒魔「…… ……」
魔王「だから…… ……」
黒魔「うん。思った通り、すれば良いと思うぜ」
魔王「…… ……うん。闇の手に話してみるよ」
黒魔「青年にもな」
魔王「勿論。彼らは……『魔王の仲間』だか…… ……ッ」ズキッ
黒魔「どうした?」
魔王「……お腹が、痛い…… ……ッ」
黒魔「!? ……生まれるのかッ!?」
魔王「もう!? …… ……ッ ぅ、う……ッ」
魔王(痛い…… い、た……ッ)クラッ
黒魔「ま……ッ ……い。 ……ぶ…… ……ッ !?」
魔王(ううぅ……目の前が、暗く……ッ)
……
………
…………
闇の手「魔王様! まだ我慢してくださいよ!?」
魔王「……ぅう……ッ」
324: 2014/11/09(日) 16:49:15.98 ID:P0fD9r170
青年「魔王様……ッ ……う、ぅッ」クラッ
魔王「………青年、出て……部屋 ……ッ」
青年「……嫌、だ……大丈夫、だから……!」
闇の手「お湯、沸かして、えっと……」
バタバタ
魔王「……顔色、わる……ぅ ……ッ」
青年「大丈夫だから、傍に……居させてくれ」
魔王「駄目…… 青年、ここで……寿命消費しないで……」
青年「……でも……ッ」
魔王「ここで……こんな、と、こで……青年を、失う訳に……はッ」
闇の手「青年さん、そこ、退いてください!」
バタバタ
魔王「イタイ痛い、闇の手、もう無理……ッ」
闇の手「まだです、魔王様!我慢して!」
青年「…… ……」
魔王「お願い、青年……ッ 産まれたら、抱いて、 ……ね?」
青年「……君を?それとも…… 痛ッ」ドンッ
闇の手「すみません、でも邪魔です!」
バタバタ
青年「………」クル
スタスタ……パタン
青年(……まあ、そりゃそうだよな)
青年「……とうとう、か」ハァ
青年(とうとう……産まれる)
青年(僕と、魔王様の子……勇者『かもしれない子供』が。産まれる)
青年(『子供』が産まれれば、魔王様は……復活準備に入る)
青年(……すぐに離れる方が賢明『か? しかし……』)
青年(魔王様は心配無い。母は……強い)
青年(……問題は、『使用人だ』)
青年(『あれから、ずっと……眼を覚まさない。一年近く……ずっと』)
魔王「………青年、出て……部屋 ……ッ」
青年「……嫌、だ……大丈夫、だから……!」
闇の手「お湯、沸かして、えっと……」
バタバタ
魔王「……顔色、わる……ぅ ……ッ」
青年「大丈夫だから、傍に……居させてくれ」
魔王「駄目…… 青年、ここで……寿命消費しないで……」
青年「……でも……ッ」
魔王「ここで……こんな、と、こで……青年を、失う訳に……はッ」
闇の手「青年さん、そこ、退いてください!」
バタバタ
魔王「イタイ痛い、闇の手、もう無理……ッ」
闇の手「まだです、魔王様!我慢して!」
青年「…… ……」
魔王「お願い、青年……ッ 産まれたら、抱いて、 ……ね?」
青年「……君を?それとも…… 痛ッ」ドンッ
闇の手「すみません、でも邪魔です!」
バタバタ
青年「………」クル
スタスタ……パタン
青年(……まあ、そりゃそうだよな)
青年「……とうとう、か」ハァ
青年(とうとう……産まれる)
青年(僕と、魔王様の子……勇者『かもしれない子供』が。産まれる)
青年(『子供』が産まれれば、魔王様は……復活準備に入る)
青年(……すぐに離れる方が賢明『か? しかし……』)
青年(魔王様は心配無い。母は……強い)
青年(……問題は、『使用人だ』)
青年(『あれから、ずっと……眼を覚まさない。一年近く……ずっと』)
325: 2014/11/09(日) 16:58:53.42 ID:P0fD9r170
マオウサマ! マダデスッテバ!
ダッテ、イタインダモン!! モウダメー!!
青年「…… ……」クス
青年(魔王だって言っても……騒がしいのは、変わらないな)
イヤアアアアアアア!!!
イタイ!イタイ! ……ウゥウゥ……ッ
モウスコシ! アタマガミエテマスカラ!!
ガンバッテ……!
……
………
…………
少女「いやあああああああああああ!!!」
少女「イタイ、痛い!! ……ッ い、やぁ……ッ」
雷使い「もう少し……頭が見えてるわ! 頑張って!!」
少女「嫌! イヤ……ッ 産みたくない! 産みた、 ……っく……ッ」
水使い「…… ……」
スタスタ、パタン
少年「生まれたのか?」
水使い「……もう少し、だと思いますが」
水使い「側に居て差し上げなくて、良いのですか」
少年「俺が側に居て、何が出来る……雷使いが居るだろう?」
水使い「…… ……それは、そうですが」
少年「あの様子じゃ、舌をかみ切って氏ぬようなまねも出来ないだろう?」
水使い「……あの時は、驚きました」
少年「フン…… ……生まれてしまえば、後は乳をやるだけだろう」
少年「ここまで来れば、後は生きてさえ居れば」
少年「子は、育つ」
水使い「…… ……」
少年「お前が居るだろう」
水使い「……? はい?」
少年「また、少女が何かやらかしたら、だ」
少年「あれだけ何度も氏のうとした女が、お前の回復魔法で命をつなぎ止められた」
少年「……氏ぬ気力すら失ったのか、最後は大人しく俺に抱かれるだけになってた」
水使い「……退屈だ、と。最初は仰っていましたね」
少年「別に……多くを求めなければ良いだけの話だ」
少年「刺激があれば精は出る」
水使い「…… ……」
ダッテ、イタインダモン!! モウダメー!!
青年「…… ……」クス
青年(魔王だって言っても……騒がしいのは、変わらないな)
イヤアアアアアアア!!!
イタイ!イタイ! ……ウゥウゥ……ッ
モウスコシ! アタマガミエテマスカラ!!
ガンバッテ……!
……
………
…………
少女「いやあああああああああああ!!!」
少女「イタイ、痛い!! ……ッ い、やぁ……ッ」
雷使い「もう少し……頭が見えてるわ! 頑張って!!」
少女「嫌! イヤ……ッ 産みたくない! 産みた、 ……っく……ッ」
水使い「…… ……」
スタスタ、パタン
少年「生まれたのか?」
水使い「……もう少し、だと思いますが」
水使い「側に居て差し上げなくて、良いのですか」
少年「俺が側に居て、何が出来る……雷使いが居るだろう?」
水使い「…… ……それは、そうですが」
少年「あの様子じゃ、舌をかみ切って氏ぬようなまねも出来ないだろう?」
水使い「……あの時は、驚きました」
少年「フン…… ……生まれてしまえば、後は乳をやるだけだろう」
少年「ここまで来れば、後は生きてさえ居れば」
少年「子は、育つ」
水使い「…… ……」
少年「お前が居るだろう」
水使い「……? はい?」
少年「また、少女が何かやらかしたら、だ」
少年「あれだけ何度も氏のうとした女が、お前の回復魔法で命をつなぎ止められた」
少年「……氏ぬ気力すら失ったのか、最後は大人しく俺に抱かれるだけになってた」
水使い「……退屈だ、と。最初は仰っていましたね」
少年「別に……多くを求めなければ良いだけの話だ」
少年「刺激があれば精は出る」
水使い「…… ……」
326: 2014/11/09(日) 17:06:02.65 ID:P0fD9r170
少年「……もう少し成熟してから、のつもりだったんだがな」ハァ
水使い「授かった命、ですから」
少年「わかってる……これで正しかったって事だ」
水使い「え?」
少年「この大地から想いを吸い上げ、望まれて生まれてくる子供」
少年「『世界に望まれた子供』……そうだろう?」
水使い「…… ……」
イヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
水使い「!」
少年「……ッ どうした!?」
バタンッ
雷使い「……生まれ、ま……し、た……ッ」フラッ
水使い「!? 雷使い……!?」
少女「…… ……ッ」ハァ、ハア……
少年「! 少女!」
少女「……しょ、う……ね…… ……」
少年「無事、か」ホッ
少女(……少年…… ……私を、気遣って…… ……)ハァ
水使い「雷使い、どうしたのです」
雷使い「あ…… ……あ……あか、い……赤い、 ……ッ」
少女「!? ……ッ つ、ぅッ ……ッ」ギュッ
少女(まさか……!?)
少年「急に起き上がるな、少女……お前が生きていないと、子供に乳をやれんだろう」
少女「え…… ……」
少年「俺にも見せて…… ……雷使い、何が赤い…… ……!?」
少女「! …… ……ッ」ギュッ
少年「……少女、子供を、こっちに」
少女(…… ……)チラ
少女(冷えた、瞳。少年、貴方は……本当に、変わってしまった)ポロポロ
水使い「授かった命、ですから」
少年「わかってる……これで正しかったって事だ」
水使い「え?」
少年「この大地から想いを吸い上げ、望まれて生まれてくる子供」
少年「『世界に望まれた子供』……そうだろう?」
水使い「…… ……」
イヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
水使い「!」
少年「……ッ どうした!?」
バタンッ
雷使い「……生まれ、ま……し、た……ッ」フラッ
水使い「!? 雷使い……!?」
少女「…… ……ッ」ハァ、ハア……
少年「! 少女!」
少女「……しょ、う……ね…… ……」
少年「無事、か」ホッ
少女(……少年…… ……私を、気遣って…… ……)ハァ
水使い「雷使い、どうしたのです」
雷使い「あ…… ……あ……あか、い……赤い、 ……ッ」
少女「!? ……ッ つ、ぅッ ……ッ」ギュッ
少女(まさか……!?)
少年「急に起き上がるな、少女……お前が生きていないと、子供に乳をやれんだろう」
少女「え…… ……」
少年「俺にも見せて…… ……雷使い、何が赤い…… ……!?」
少女「! …… ……ッ」ギュッ
少年「……少女、子供を、こっちに」
少女(…… ……)チラ
少女(冷えた、瞳。少年、貴方は……本当に、変わってしまった)ポロポロ
327: 2014/11/09(日) 17:14:03.68 ID:P0fD9r170
少女(さっきの言葉も……純粋に私の無事を喜ぶ言葉じゃ無い)
少女(何度も氏のうとした私を生かした事も)
少女(無理矢理に何度も私を抱き、孕ませた事も)
少女(……雷使いを、私では達せない己の欲を、快楽を求めた事も)
少女(何一つ、私の為じゃない……! この、子……否)
少女(『始まりの姉弟』を、模倣し……魔導国の復活の糸口を作るため、だけ……!)ギュッ
少女「…… ……いや、よ。子供には、母親が必要だわ」
少年「それは……それは、俺とお前の子供では無い! そんな……そんな……!」
少年「赤い瞳の子供など!」
少女「お母様の……『少女』の瞳は赤かったわ! …… ……ッ」ベロ……ッ グッ!
水使い「! 少女様」
少女「……近寄らないで。この子を取り上げると言うのなら、私も一緒に氏にます」
少女「私が居ないと、次の子供もできやしない! 復活なんて成就しないのよ!」
少年「……少女」
少女「この子は、私の子供です。ちゃんと育てる……認めないなら」
少女「今、一緒に…… ……ッ」
雷使い「……ッ 勝手な事を!」
少年「…… ……」
水使い「……無理をなさると、お体に触ります。まずは横になって」スッ
少女「さ……ッ さわらないで……ッ」
水使い「大丈夫……こうして、赤ちゃんの口を……胸に」
少女「え……」
水使い「指で押さえて。最初は、きつく吸う力はありませんから」
少女「…… ……」
少女「…… ……あ、飲んでる……」
水使い「母親の方も、吸ってもらう内に良く出る様になりますから」
雷使い「水使い!?」
水使い「…… ……」グイッ
雷使い「! いた……何を!」
水使い「……今は刺激しては駄目です。だから」ボソッ
雷使い「…… ……」
少女(何度も氏のうとした私を生かした事も)
少女(無理矢理に何度も私を抱き、孕ませた事も)
少女(……雷使いを、私では達せない己の欲を、快楽を求めた事も)
少女(何一つ、私の為じゃない……! この、子……否)
少女(『始まりの姉弟』を、模倣し……魔導国の復活の糸口を作るため、だけ……!)ギュッ
少女「…… ……いや、よ。子供には、母親が必要だわ」
少年「それは……それは、俺とお前の子供では無い! そんな……そんな……!」
少年「赤い瞳の子供など!」
少女「お母様の……『少女』の瞳は赤かったわ! …… ……ッ」ベロ……ッ グッ!
水使い「! 少女様」
少女「……近寄らないで。この子を取り上げると言うのなら、私も一緒に氏にます」
少女「私が居ないと、次の子供もできやしない! 復活なんて成就しないのよ!」
少年「……少女」
少女「この子は、私の子供です。ちゃんと育てる……認めないなら」
少女「今、一緒に…… ……ッ」
雷使い「……ッ 勝手な事を!」
少年「…… ……」
水使い「……無理をなさると、お体に触ります。まずは横になって」スッ
少女「さ……ッ さわらないで……ッ」
水使い「大丈夫……こうして、赤ちゃんの口を……胸に」
少女「え……」
水使い「指で押さえて。最初は、きつく吸う力はありませんから」
少女「…… ……」
少女「…… ……あ、飲んでる……」
水使い「母親の方も、吸ってもらう内に良く出る様になりますから」
雷使い「水使い!?」
水使い「…… ……」グイッ
雷使い「! いた……何を!」
水使い「……今は刺激しては駄目です。だから」ボソッ
雷使い「…… ……」
328: 2014/11/09(日) 17:20:52.44 ID:P0fD9r170
少年「……良いだろう」
雷使い「少年様!?」
少年「水使いの言う事ももっともだ、って事だ…… ……少女!」
少女「…… ……」チラ
少年「次は……わかっているだろうな」
少女「この子の名前は、私が決めるわよ」
少年「……好きにしろ。水使い」
水使い「はい」
少年「いつ頃交われる」
水使い「……少なくとも、一月は」
少年「…… ……来い、雷使い」
雷使い「はい」
スタスタ、パタン
水使い「…… ……」ポウ
少女「水使い?」
水使い「効果があるのかどうかは、わかりませんけど」
少女(ああ……回復魔法をかけてくれた、のね)
水使い「…… ……」
少女「お礼は……言わないつもり、だったけど」
水使い「懐柔は無用と……」
少女「……結果として、良かった……ん、だと思うもの」
少女「ありがとう」
水使い「…… ……」
少女「…… ……」
水使い「一月後」
少女「!」ビクッ
水使い「……まだ、時間はありますから」
少女「え……?」
水使い「……いえ。名は?」
少女「名? ……あ、ああ…… ……女の子、よね?」
水使い「ええ」
少女「…… ……魔法使い」
水使い「…… ……」
フェ…… オギャア、オギャア……!!
……
………
…………
フェ…… オギャア、オギャア……!!
雷使い「少年様!?」
少年「水使いの言う事ももっともだ、って事だ…… ……少女!」
少女「…… ……」チラ
少年「次は……わかっているだろうな」
少女「この子の名前は、私が決めるわよ」
少年「……好きにしろ。水使い」
水使い「はい」
少年「いつ頃交われる」
水使い「……少なくとも、一月は」
少年「…… ……来い、雷使い」
雷使い「はい」
スタスタ、パタン
水使い「…… ……」ポウ
少女「水使い?」
水使い「効果があるのかどうかは、わかりませんけど」
少女(ああ……回復魔法をかけてくれた、のね)
水使い「…… ……」
少女「お礼は……言わないつもり、だったけど」
水使い「懐柔は無用と……」
少女「……結果として、良かった……ん、だと思うもの」
少女「ありがとう」
水使い「…… ……」
少女「…… ……」
水使い「一月後」
少女「!」ビクッ
水使い「……まだ、時間はありますから」
少女「え……?」
水使い「……いえ。名は?」
少女「名? ……あ、ああ…… ……女の子、よね?」
水使い「ええ」
少女「…… ……魔法使い」
水使い「…… ……」
フェ…… オギャア、オギャア……!!
……
………
…………
フェ…… オギャア、オギャア……!!
329: 2014/11/09(日) 17:41:51.66 ID:P0fD9r170
青年「!」
バタバタバタ……!バタン!
闇の手「おめでとうございます!男のお子様ですよ!」
青年「産まれた……のか! ……もう、入って良いのか」
闇の手「勿論ですよ……すみません、さっきは邪魔にしてしまって」
青年「そんなのは……構わない。それで……」
闇の手「……ご自分の目で、お確かめください」
青年「…… ……」
スタスタ、パタン
魔王「青年…… ……はい」
青年「……君は、確かめたんだな」
魔王「……勿論。ね、見て……私そっくり」
青年「ああ…… ……!?」
闇の手「……金の髪、は青年さん譲り、ですね」
青年「……金の瞳!? 何で……!」
魔王「よく見て、青年。貴方なら……わかる、でしょ」スッ
青年「え? ……わ……ッ」
青年(小さい……軽い、な…… ……ん?)
青年「…… ……!」
闇の手「感じますか?」
青年「…… ……ああ。この子は、人間じゃない、な」
魔王「…… ……」
青年「金……に、似ているが、違う。薄い……茶色の、瞳だ」
闇の手「…… ……」
青年「微かに、エルフの血を感じる…… ……雷の加護、か」
闇の手「魔の気、はどうです」
青年「…… ……否」
魔王「…… ……」ホッ
闇の手「……『勇者の印』はありませんよ」
青年「当然だ……この子は……『勇者』じゃ無い」
青年「エルフの血を引く……子供だ。ただの」
魔王「……変わった、のか。前は気がつかなかっただけ、なのかわかんないけど」
魔王「はっきりわかった、ね。この子は……『光に選ばれし運命の子』じゃ無い」
青年「…… ……」
魔王「『勇者』じゃない……でも、この子は……『真の勇者』になるんだ」
魔王「『最強の魔王』を倒して……本当の意味の『勇者』に」
闇の手「ちゃんと……お名前をつけてあげてください」
青年「魔王様」
魔王「……うん。この子の名前はね。ちゃんと決めてたんだ」
魔王「『青年』だ」
バタバタバタ……!バタン!
闇の手「おめでとうございます!男のお子様ですよ!」
青年「産まれた……のか! ……もう、入って良いのか」
闇の手「勿論ですよ……すみません、さっきは邪魔にしてしまって」
青年「そんなのは……構わない。それで……」
闇の手「……ご自分の目で、お確かめください」
青年「…… ……」
スタスタ、パタン
魔王「青年…… ……はい」
青年「……君は、確かめたんだな」
魔王「……勿論。ね、見て……私そっくり」
青年「ああ…… ……!?」
闇の手「……金の髪、は青年さん譲り、ですね」
青年「……金の瞳!? 何で……!」
魔王「よく見て、青年。貴方なら……わかる、でしょ」スッ
青年「え? ……わ……ッ」
青年(小さい……軽い、な…… ……ん?)
青年「…… ……!」
闇の手「感じますか?」
青年「…… ……ああ。この子は、人間じゃない、な」
魔王「…… ……」
青年「金……に、似ているが、違う。薄い……茶色の、瞳だ」
闇の手「…… ……」
青年「微かに、エルフの血を感じる…… ……雷の加護、か」
闇の手「魔の気、はどうです」
青年「…… ……否」
魔王「…… ……」ホッ
闇の手「……『勇者の印』はありませんよ」
青年「当然だ……この子は……『勇者』じゃ無い」
青年「エルフの血を引く……子供だ。ただの」
魔王「……変わった、のか。前は気がつかなかっただけ、なのかわかんないけど」
魔王「はっきりわかった、ね。この子は……『光に選ばれし運命の子』じゃ無い」
青年「…… ……」
魔王「『勇者』じゃない……でも、この子は……『真の勇者』になるんだ」
魔王「『最強の魔王』を倒して……本当の意味の『勇者』に」
闇の手「ちゃんと……お名前をつけてあげてください」
青年「魔王様」
魔王「……うん。この子の名前はね。ちゃんと決めてたんだ」
魔王「『青年』だ」
330: 2014/11/09(日) 17:48:51.14 ID:P0fD9r170
闇の手「え!?」
青年「……僕からのプレゼントだ。僕は……何も、あげられないから」
闇の手「青年さん……」
青年「僕にもおくれよ、魔王様…… ……最初で最後のプレゼント」
魔王「……『青年』を頼むよ、『蒼』」
蒼「…… ……ああ」
闇の手「…… ……」
魔王「さて。青年をおいて、二人とも部屋を出て」
魔王「……もう、蒼には私の気は苦しいだけになる。闇の手……後は頼んだよ」
闇の手「は、はい」
スタスタ、パタン
闇の手「青年さん……じゃ無かった。蒼さん……」
魔王「良い名前でしょ? ……彼の瞳は、透き通る様な蒼だから」
闇の手「それは……よろしいのですけど。でも……」
魔王「この子? ……良いんだよ」
魔王「せ……蒼、が。そうして欲しいって言うから」
闇の手「……まあ、お二人で決めた事、でしたら。僕が口を出す事ではありませんけど」
魔王「『向こう側』で……青年本人が、望んだ事でもある、んだ」
闇の手「魔王様を倒された後、『父代わりだった男の名をもらった』……でしたっけ」
魔王「うん。変な感じだけどね。この……子を、青年って呼ぶのも」フフ
魔王「……それに、それも、お父さんから聞いたに過ぎないんだけど」
魔王「でも…… ……蒼が、是非そうしようって言うから、さ」
闇の手「そう、ですか……」
魔王「さて。私は大丈夫だから、闇の手……蒼を手伝ってあげて」
魔王「私は……お母さんみたいに、この子を連れて何処かに行くわけにも行かないし」
魔王「……始まりの国ももう無い。蒼に、この子どうにかしてもらわないと行けないんだ。だから」
闇の手「はい。 ……何かあったら、すぐに呼んでくださいね?」
スタスタ、パタン
魔王「……青年、か」
青年(すぅすぅ)
魔王(ちっちゃいなー……ぷにぷにだし)むに
魔王(……この子も、エルフの血を引いている以上。長くは私の側には)
魔王(おいておけない。蒼はどうにかするって言ってたけど……さて)
魔王(……準備はしてるとか言ってたけど……どうする気なんだろう。青年……じゃない)
魔王(蒼……)
……
………
…………
青年「……僕からのプレゼントだ。僕は……何も、あげられないから」
闇の手「青年さん……」
青年「僕にもおくれよ、魔王様…… ……最初で最後のプレゼント」
魔王「……『青年』を頼むよ、『蒼』」
蒼「…… ……ああ」
闇の手「…… ……」
魔王「さて。青年をおいて、二人とも部屋を出て」
魔王「……もう、蒼には私の気は苦しいだけになる。闇の手……後は頼んだよ」
闇の手「は、はい」
スタスタ、パタン
闇の手「青年さん……じゃ無かった。蒼さん……」
魔王「良い名前でしょ? ……彼の瞳は、透き通る様な蒼だから」
闇の手「それは……よろしいのですけど。でも……」
魔王「この子? ……良いんだよ」
魔王「せ……蒼、が。そうして欲しいって言うから」
闇の手「……まあ、お二人で決めた事、でしたら。僕が口を出す事ではありませんけど」
魔王「『向こう側』で……青年本人が、望んだ事でもある、んだ」
闇の手「魔王様を倒された後、『父代わりだった男の名をもらった』……でしたっけ」
魔王「うん。変な感じだけどね。この……子を、青年って呼ぶのも」フフ
魔王「……それに、それも、お父さんから聞いたに過ぎないんだけど」
魔王「でも…… ……蒼が、是非そうしようって言うから、さ」
闇の手「そう、ですか……」
魔王「さて。私は大丈夫だから、闇の手……蒼を手伝ってあげて」
魔王「私は……お母さんみたいに、この子を連れて何処かに行くわけにも行かないし」
魔王「……始まりの国ももう無い。蒼に、この子どうにかしてもらわないと行けないんだ。だから」
闇の手「はい。 ……何かあったら、すぐに呼んでくださいね?」
スタスタ、パタン
魔王「……青年、か」
青年(すぅすぅ)
魔王(ちっちゃいなー……ぷにぷにだし)むに
魔王(……この子も、エルフの血を引いている以上。長くは私の側には)
魔王(おいておけない。蒼はどうにかするって言ってたけど……さて)
魔王(……準備はしてるとか言ってたけど……どうする気なんだろう。青年……じゃない)
魔王(蒼……)
……
………
…………
375: 2014/11/24(月) 10:47:32.80 ID:c/6sEzM20
コンコン
蒼「はい?」
闇の手「僕です……入りますよ」
カチャ
蒼「闇の手か。丁度良かった、手伝ってくれるかい」
闇の手「はい……そのつもりで来たんですよ。でも……」
蒼「……ああ。魔王様なら、そうしてやれって……言う、だろうね……ん?」
闇の手「いえ……もう、お支度、済まれてるみたいですし」ハァ
蒼「染め粉とか、服とか……準備しておいてくれたの、君だろ」クス
闇の手「……立派な騎士様に見えますよ」
蒼「『元』だろ……始まりの国も、騎士団ももうとっくの昔に」
蒼「滅びてしまったんだから」
闇の手「……髪、また切っちゃったんですね」
蒼「魔王様が長い方が良いって言うから、戻ってから伸ばしてたけど」
蒼「短い方が楽なんだよね」
闇の手「……染め粉の予備もお持ちしましたよ」
闇の手「僕の調合した物なので、なかなか落ちないとは思いますけど、ま……一応」
蒼「……ああ。取れたら取れたで構わないかなって思ったんだけど」
闇の手「一応、です…… ……人の地で暮らさざるを得ない、んですから」
闇の手「始まりの国はもう、とうの昔に滅びてしまった」
闇の手「……さっき、蒼さんがそう言われたんですから、ね」
蒼「……行く当ては、あるさ」
闇の手「魔王様には?」
蒼「伝えてあるよ。それに……もう、母になった彼女に、不可能は無いだろう?」
闇の手「…… ……」
蒼「気配を追う事なんか、たやすいはずだ」
闇の手「……はい」
蒼「彼女の決心も……変わらない、んだろう」
闇の手「…… ……」
蒼「意外だったよ。君が反対するとは思わなかった。正直」
闇の手「……貴方が反対されない方が、驚きましたよ。僕は」
蒼「はい?」
闇の手「僕です……入りますよ」
カチャ
蒼「闇の手か。丁度良かった、手伝ってくれるかい」
闇の手「はい……そのつもりで来たんですよ。でも……」
蒼「……ああ。魔王様なら、そうしてやれって……言う、だろうね……ん?」
闇の手「いえ……もう、お支度、済まれてるみたいですし」ハァ
蒼「染め粉とか、服とか……準備しておいてくれたの、君だろ」クス
闇の手「……立派な騎士様に見えますよ」
蒼「『元』だろ……始まりの国も、騎士団ももうとっくの昔に」
蒼「滅びてしまったんだから」
闇の手「……髪、また切っちゃったんですね」
蒼「魔王様が長い方が良いって言うから、戻ってから伸ばしてたけど」
蒼「短い方が楽なんだよね」
闇の手「……染め粉の予備もお持ちしましたよ」
闇の手「僕の調合した物なので、なかなか落ちないとは思いますけど、ま……一応」
蒼「……ああ。取れたら取れたで構わないかなって思ったんだけど」
闇の手「一応、です…… ……人の地で暮らさざるを得ない、んですから」
闇の手「始まりの国はもう、とうの昔に滅びてしまった」
闇の手「……さっき、蒼さんがそう言われたんですから、ね」
蒼「……行く当ては、あるさ」
闇の手「魔王様には?」
蒼「伝えてあるよ。それに……もう、母になった彼女に、不可能は無いだろう?」
闇の手「…… ……」
蒼「気配を追う事なんか、たやすいはずだ」
闇の手「……はい」
蒼「彼女の決心も……変わらない、んだろう」
闇の手「…… ……」
蒼「意外だったよ。君が反対するとは思わなかった。正直」
闇の手「……貴方が反対されない方が、驚きましたよ。僕は」
376: 2014/11/24(月) 10:57:02.76 ID:c/6sEzM20
蒼「……『勇者』の為『世界』の為に、と」
蒼「彼女が決めた事なのであれば、僕に……反対する理由は無くなる」
闇の手「……そう、ですけど」ハァ
蒼「僕が案じてた事でもある……あの地には……」
闇の手「…… ……『呪い』ですか」
蒼「手遅れ、かもしれないけどね。もう。だけど」
蒼「……少年の身に何が起こったのか、どうなっているのか」
蒼「確かめる術は無い。でも……」
闇の手「『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』に……ですか」
蒼「……ああ」
闇の手「…… ……」
蒼「闇の手」
闇の手「は、はい」
蒼「……僕は、もう……ここには戻らない。戻れない」
闇の手「…… ……はい」
蒼「魔王様を寝かしはしないと、君は張り切ってるけど」
闇の手「……信じて、ないんですか?」
蒼「え? ……ああ、違うよ」クス
蒼「彼女が決めた事なのであれば、僕に……反対する理由は無くなる」
闇の手「……そう、ですけど」ハァ
蒼「僕が案じてた事でもある……あの地には……」
闇の手「…… ……『呪い』ですか」
蒼「手遅れ、かもしれないけどね。もう。だけど」
蒼「……少年の身に何が起こったのか、どうなっているのか」
蒼「確かめる術は無い。でも……」
闇の手「『腐った世界の腐った不条理を断ち切る為』に……ですか」
蒼「……ああ」
闇の手「…… ……」
蒼「闇の手」
闇の手「は、はい」
蒼「……僕は、もう……ここには戻らない。戻れない」
闇の手「…… ……はい」
蒼「魔王様を寝かしはしないと、君は張り切ってるけど」
闇の手「……信じて、ないんですか?」
蒼「え? ……ああ、違うよ」クス
377: 2014/11/24(月) 11:07:31.05 ID:c/6sEzM20
蒼「そんな理由で戻らないと言ったわけじゃ無い」
闇の手「……ごめんなさい。わかってます、けど」
蒼「『勇者』では無いにせよ生まれてしまった……『母』になってしまった以上」
蒼「彼女は……本当に『最強』の魔王になったはずだ。それこそ」
蒼「あの『恐ろしい計画』すら、簡単にこなしてしまうだろう、程に」
闇の手「…… ……」
蒼「この部屋には、使用人の張ってくれた防護の魔法がかかっているからましだが」
蒼「……それでも、ぴりぴりと彼女の魔力を感じるよ。この部屋を出たら」
蒼「冗談抜きで、此の城には……否」
蒼「……この大陸に居るのは、しんどいだろうと思う」
闇の手「……後で、お話しようと思ってたんですけどね」スッ
蒼「え?何…… ……ッ こ、れは……!」
闇の手「お預かりした、癒し手様の魔石を埋め込んだサークレットです」
蒼「…… ……」
闇の手「意地でも、長生きしてもらいます、と言ったでしょう」
蒼「……ああ」スッ
蒼(母さん…… ……ッ)
闇の手「同じ処理……まあ、使用人さんの防護の魔法と同じような物だと」
闇の手「考えてもらって、良いんですけど。それを」スッ
蒼「!」
闇の手「この、エルフの弓にも施してあります」
蒼「……埋め込んだのか、あの石を」
闇の手「はい。弓自体の強化になるかわかりませんが……これには、僕がもらった分を」
闇の手「使いました」
蒼「……良いのか?」
闇の手「僕が持つより、貴方の役に立つ方が癒し手様も喜ばれるでしょう?」
蒼「…… ……」スッ
蒼(軽さも……手になじむ感じも、変わらない、けど)
蒼(……随分と、呼吸が楽だ。それに……どこか、暖かい)
闇の手「……魔王様が、后様から預かった分」
蒼「ん? ……あ、ああ」
闇の手「あれだけは……預からせてもらいました」
蒼「……あれはそもそも、彼女の物だ」
闇の手「眠らないで居て頂くために。魔王様にも、そのサークレットと同じような物を……」
蒼「これ? ……もう渡したのか」
闇の手「……いえ。これからの魔力の増幅を考えると、まだ不安なんです」
蒼「…… ……」
闇の手「同じものは二度と……作れませんからね」
闇の手「……ごめんなさい。わかってます、けど」
蒼「『勇者』では無いにせよ生まれてしまった……『母』になってしまった以上」
蒼「彼女は……本当に『最強』の魔王になったはずだ。それこそ」
蒼「あの『恐ろしい計画』すら、簡単にこなしてしまうだろう、程に」
闇の手「…… ……」
蒼「この部屋には、使用人の張ってくれた防護の魔法がかかっているからましだが」
蒼「……それでも、ぴりぴりと彼女の魔力を感じるよ。この部屋を出たら」
蒼「冗談抜きで、此の城には……否」
蒼「……この大陸に居るのは、しんどいだろうと思う」
闇の手「……後で、お話しようと思ってたんですけどね」スッ
蒼「え?何…… ……ッ こ、れは……!」
闇の手「お預かりした、癒し手様の魔石を埋め込んだサークレットです」
蒼「…… ……」
闇の手「意地でも、長生きしてもらいます、と言ったでしょう」
蒼「……ああ」スッ
蒼(母さん…… ……ッ)
闇の手「同じ処理……まあ、使用人さんの防護の魔法と同じような物だと」
闇の手「考えてもらって、良いんですけど。それを」スッ
蒼「!」
闇の手「この、エルフの弓にも施してあります」
蒼「……埋め込んだのか、あの石を」
闇の手「はい。弓自体の強化になるかわかりませんが……これには、僕がもらった分を」
闇の手「使いました」
蒼「……良いのか?」
闇の手「僕が持つより、貴方の役に立つ方が癒し手様も喜ばれるでしょう?」
蒼「…… ……」スッ
蒼(軽さも……手になじむ感じも、変わらない、けど)
蒼(……随分と、呼吸が楽だ。それに……どこか、暖かい)
闇の手「……魔王様が、后様から預かった分」
蒼「ん? ……あ、ああ」
闇の手「あれだけは……預からせてもらいました」
蒼「……あれはそもそも、彼女の物だ」
闇の手「眠らないで居て頂くために。魔王様にも、そのサークレットと同じような物を……」
蒼「これ? ……もう渡したのか」
闇の手「……いえ。これからの魔力の増幅を考えると、まだ不安なんです」
蒼「…… ……」
闇の手「同じものは二度と……作れませんからね」
378: 2014/11/24(月) 11:20:48.34 ID:c/6sEzM20
蒼「……魔王様を、頼む」
闇の手「……はい。ああ、最後に……一つだけ」
蒼「え?」
闇の手「蒼さん、嘘をついてください」
蒼「!?」
闇の手「魔王様に……また、後で、と」
蒼「…… ……」プックスクス
闇の手「あ、蒼さん?」
蒼「そんな事か……それぐらいなら、おやすいご用だ」
闇の手「…… ……」
蒼「深刻な顔をして言うから、何かと思った……それぐらい」クス
蒼「……その嘘が本当になるのなら、願ったり、だ」
闇の手「……はい」
闇の手(ごめんなさい。蒼さん……僕は……)
闇の手(……否。良い……今は、言わずにおこう)
蒼「闇の手、光の剣は……」
闇の手「わかってます。しばらくはちゃんと保管しておきます」
闇の手「……勇者では無いちいさい青年さんに、持たしておく訳には行かないですからね」
蒼「ああ……だけど」
闇の手「わかってますよ。ちいさい青年さんは……『魔王』を倒して『真の勇者』になるんです」
蒼「……うん」
闇の手「さて、では未来の勇者様を迎えに行ってきます」
蒼「…… ……ああ」スッ
スタスタ
闇の手「え? あ、蒼さん?」
蒼「最後だ。僕も行く……それに、嘘をつかないといけないんだろう?」
闇の手「……そう、ですね。わかりましたですが……大丈夫ですか?」
蒼「……長居はしない」
スタスタ……コンコン
魔王「闇の手? 入って……蒼は……」
カチャ
蒼「…… ……」
魔王「!」
蒼「挨拶も無く出て行くほど、僕は不義理じゃないぞ、魔王様」
スタスタ
闇の手「……はい。ああ、最後に……一つだけ」
蒼「え?」
闇の手「蒼さん、嘘をついてください」
蒼「!?」
闇の手「魔王様に……また、後で、と」
蒼「…… ……」プックスクス
闇の手「あ、蒼さん?」
蒼「そんな事か……それぐらいなら、おやすいご用だ」
闇の手「…… ……」
蒼「深刻な顔をして言うから、何かと思った……それぐらい」クス
蒼「……その嘘が本当になるのなら、願ったり、だ」
闇の手「……はい」
闇の手(ごめんなさい。蒼さん……僕は……)
闇の手(……否。良い……今は、言わずにおこう)
蒼「闇の手、光の剣は……」
闇の手「わかってます。しばらくはちゃんと保管しておきます」
闇の手「……勇者では無いちいさい青年さんに、持たしておく訳には行かないですからね」
蒼「ああ……だけど」
闇の手「わかってますよ。ちいさい青年さんは……『魔王』を倒して『真の勇者』になるんです」
蒼「……うん」
闇の手「さて、では未来の勇者様を迎えに行ってきます」
蒼「…… ……ああ」スッ
スタスタ
闇の手「え? あ、蒼さん?」
蒼「最後だ。僕も行く……それに、嘘をつかないといけないんだろう?」
闇の手「……そう、ですね。わかりましたですが……大丈夫ですか?」
蒼「……長居はしない」
スタスタ……コンコン
魔王「闇の手? 入って……蒼は……」
カチャ
蒼「…… ……」
魔王「!」
蒼「挨拶も無く出て行くほど、僕は不義理じゃないぞ、魔王様」
スタスタ
379: 2014/11/24(月) 11:38:49.64 ID:c/6sEzM20
魔王「『蒼』……!近づいちゃ駄……んッ」
青年「……ッ う……ッ 魔王、様」チュ
魔王「『蒼』……ッ んぅ……ッ」
蒼「……心配するな。『青年』と共にここに戻る。約束する
蒼「……また後で、だ」
闇の手「…… ……」
魔王「……『うん』」
蒼「………ッ グゥ……ッ」ドクンッ
闇の手「『蒼』さん!?」
蒼「……闇の手、頼む」ギュ
蒼(青年、よく寝てる……今の、うちに……)
魔王「『蒼』……出来るだけ、『青年』に私を憎ませて」
魔王「出来るだけ、強い子に育てて……『最強の剣』に……育てて」
蒼「…… ……」
魔王「この腐った世界の、腐った不条理を断ち切る為に」
蒼「……ああ」
闇の手「……行きます、蒼さん」グッ
蒼「ああ……『?』」
闇の手「『僕の手で発動させます。その方が負荷が少ない。願ってください。行き先を』」
蒼「…… ……ッ」
シュゥウウウ……ン!
魔王「…… ……」ポロポロポロ
闇の手「魔王様……」
魔王「大丈夫……さぁ、私達も準備しよう」
魔王「『青年が私を憎んで、大きくなるまでなんてあっという間だ』」
魔王「……手伝って、闇の手。『私を……世界を滅ぼす魔王を』」
闇の手「はい……!」
……
………
…………
シュゥン……! スタッ
蒼「! …… ……」キョロキョロ……ハァ
蒼(もっと気分が悪くなるか、と思ったが……)ゲホッ
蒼「……否。急ぐか」
蒼(やっぱり……きつい、な)
スタスタ
青年「……ッ う……ッ 魔王、様」チュ
魔王「『蒼』……ッ んぅ……ッ」
蒼「……心配するな。『青年』と共にここに戻る。約束する
蒼「……また後で、だ」
闇の手「…… ……」
魔王「……『うん』」
蒼「………ッ グゥ……ッ」ドクンッ
闇の手「『蒼』さん!?」
蒼「……闇の手、頼む」ギュ
蒼(青年、よく寝てる……今の、うちに……)
魔王「『蒼』……出来るだけ、『青年』に私を憎ませて」
魔王「出来るだけ、強い子に育てて……『最強の剣』に……育てて」
蒼「…… ……」
魔王「この腐った世界の、腐った不条理を断ち切る為に」
蒼「……ああ」
闇の手「……行きます、蒼さん」グッ
蒼「ああ……『?』」
闇の手「『僕の手で発動させます。その方が負荷が少ない。願ってください。行き先を』」
蒼「…… ……ッ」
シュゥウウウ……ン!
魔王「…… ……」ポロポロポロ
闇の手「魔王様……」
魔王「大丈夫……さぁ、私達も準備しよう」
魔王「『青年が私を憎んで、大きくなるまでなんてあっという間だ』」
魔王「……手伝って、闇の手。『私を……世界を滅ぼす魔王を』」
闇の手「はい……!」
……
………
…………
シュゥン……! スタッ
蒼「! …… ……」キョロキョロ……ハァ
蒼(もっと気分が悪くなるか、と思ったが……)ゲホッ
蒼「……否。急ぐか」
蒼(やっぱり……きつい、な)
スタスタ
380: 2014/11/24(月) 11:49:48.28 ID:c/6sEzM20
蒼(村の作り自体は変わらないな……あれか)
コンコン
シスター「はい、どちら様? ……少し待ってください」
カチャ
シスター「……ま、あ」
蒼(この声、顔……シスター、か。流石に……年を取ったな)
シスター「あらまあ、可愛い赤ちゃんね…… ……」ジロ
蒼「……孤児院がある、と聞いてね。ここで間違えて無いよね?」
シスター「……確かに。それは間違いじゃ無いけれど」
蒼「……ああ、そんなに睨まないで欲しい。別に、この子を捨てていこうって訳じゃ無い」
シスター「…… ……」
蒼「生まれたばかりなんだ。僕一人では育てられない……ってのは、否定できないんだけど」
蒼「力にはなってもらえないだろうか」
シスター「貴方の子? ……母親はどうしたの」
蒼「…… ……」
シスター「……答えられないの? 貴方……旅人、よね?」チラ
シスター「そんな大きな剣…… ……!?」
蒼「見覚え、ある?」
シスター「……始まりの国の文様……? ……貴方、あの国の生き残りなの?」
蒼「……できれば、何も聞かないで欲しいと思った、んだけど」ハァ
シスター「は? ……貴方、何を……」
蒼(なるほど。髪の色と形、年月……僕は変わっていないと思うけれど)
蒼(……人の年月ってのは、大きい、んだな)
蒼(否……シスターの場合は性格もある、かな)
シスター「ちょっと、黙っていないで…… ……否、良いわ」
シスター「とにかく、そんな不審な人の子供なんて……」
蒼「……魔導師は元気にしているよ、シスター」
シスター「!?」
コンコン
シスター「はい、どちら様? ……少し待ってください」
カチャ
シスター「……ま、あ」
蒼(この声、顔……シスター、か。流石に……年を取ったな)
シスター「あらまあ、可愛い赤ちゃんね…… ……」ジロ
蒼「……孤児院がある、と聞いてね。ここで間違えて無いよね?」
シスター「……確かに。それは間違いじゃ無いけれど」
蒼「……ああ、そんなに睨まないで欲しい。別に、この子を捨てていこうって訳じゃ無い」
シスター「…… ……」
蒼「生まれたばかりなんだ。僕一人では育てられない……ってのは、否定できないんだけど」
蒼「力にはなってもらえないだろうか」
シスター「貴方の子? ……母親はどうしたの」
蒼「…… ……」
シスター「……答えられないの? 貴方……旅人、よね?」チラ
シスター「そんな大きな剣…… ……!?」
蒼「見覚え、ある?」
シスター「……始まりの国の文様……? ……貴方、あの国の生き残りなの?」
蒼「……できれば、何も聞かないで欲しいと思った、んだけど」ハァ
シスター「は? ……貴方、何を……」
蒼(なるほど。髪の色と形、年月……僕は変わっていないと思うけれど)
蒼(……人の年月ってのは、大きい、んだな)
蒼(否……シスターの場合は性格もある、かな)
シスター「ちょっと、黙っていないで…… ……否、良いわ」
シスター「とにかく、そんな不審な人の子供なんて……」
蒼「……魔導師は元気にしているよ、シスター」
シスター「!?」
381: 2014/11/24(月) 11:55:32.64 ID:c/6sEzM20
蒼「確かに……僕たちは君たちにずいぶんな不義理をしたかもしれない」
蒼「……こんな時になって、僕を助けて欲しいってお願いは」
蒼「随分、虫が良すぎるって事も承知してる。でも」
蒼「……頼れるのは君しか……ここしか居ないんだ」
シスター「ちょ、ちょっと……!?」
蒼「始まりの国ももう無い。『戦士』も『僧侶』も『魔法使い』も」
シスター「!!」
蒼「……『剣士』も居ない」
シスター「あ…… ……貴方、まさか……!?」
蒼「だから……この子を育てる為に、力を貸して欲しいんだ。シスター」
蒼「『腐った世界の腐った不条理』を……今度こそ、断ち切る為に」
シスター「…… ……青年、なの!?」
蒼「……ああ」
シスター「で、でも、貴方、その格好……!!」
蒼「……僕は人の様に年を取らない。エルフの血を引く母と……『僧侶』と同じ」
シスター「!」
蒼「それから……エルフは、嘘をつけない」
蒼「……望むのならば、話せる範囲の話はしよう。その代わり……」
シスター「と、とにかく中に入りなさい!」
パタン
蒼「……こんな時になって、僕を助けて欲しいってお願いは」
蒼「随分、虫が良すぎるって事も承知してる。でも」
蒼「……頼れるのは君しか……ここしか居ないんだ」
シスター「ちょ、ちょっと……!?」
蒼「始まりの国ももう無い。『戦士』も『僧侶』も『魔法使い』も」
シスター「!!」
蒼「……『剣士』も居ない」
シスター「あ…… ……貴方、まさか……!?」
蒼「だから……この子を育てる為に、力を貸して欲しいんだ。シスター」
蒼「『腐った世界の腐った不条理』を……今度こそ、断ち切る為に」
シスター「…… ……青年、なの!?」
蒼「……ああ」
シスター「で、でも、貴方、その格好……!!」
蒼「……僕は人の様に年を取らない。エルフの血を引く母と……『僧侶』と同じ」
シスター「!」
蒼「それから……エルフは、嘘をつけない」
蒼「……望むのならば、話せる範囲の話はしよう。その代わり……」
シスター「と、とにかく中に入りなさい!」
パタン
383: 2014/11/24(月) 12:15:58.17 ID:c/6sEzM20
蒼「…… ……」
シスター「貸しなさい」
蒼「え?」
シスター「子供よ! ……寝てるからミルクは後で良いけど」
パタパタ
シスター「おむつ変えて……」
蒼「出てくる前に変えたけど」
シスター「……生まれたてでしょう。まだまだ我慢なんて出来ないのよ……ほら、汚れてる」
蒼「……そ、そうなんだ」
シスター「ぐっすり寝てるから起きないけれど、気持ち悪くなって泣いてからじゃ」
シスター「肌が弱い子は、かぶれてしまうわ……良し」
蒼「あ、ありがとう……」
シスター「……名前は?」
蒼「え?」
シスター「この子の名前よ」
蒼「……青年」
シスター「は!?」
蒼「さっきも言ったけど、僕は…… ……」
シスター「……ちょっと待って頂戴」
蒼「?」
シスター「…… ……いえ。良いわ」フゥ
シスター「驚きすぎて寿命が縮んだら貴方の所為よ、青年」
蒼「……あんまり驚いて居る様に見えないけど」
シスター「この心臓の音を聞かせてやりたいわ」
蒼「遠慮しとくよ……」
シスター「……この子に、同じ名前をつけた、って言うの?」
蒼「僕は…… ……勇者様から、新しい名前をもらった」
シスター「……え?」
蒼「『蒼』だ」
シスター「…… ……この子は、貴方の子、なのね」
蒼「…… ……」
シスター「否定は出来ない……のね。嘘はつけない、んだもの」
蒼「…… ……」
シスター「…… ……」ハァ
シスター「蒼」
蒼「……何」
シスター「話せる範囲の話。してくれるんでしょう」
蒼「……話すだけ話して、僕らを放り出したりしないってんならね」
シスター「……貴方はともかく」フゥ
シスター「この子……放り出せないでしょう。貴方に育てられるとは思わないわ」
蒼「……じゃあ」
シスター「ただし、こちらの条件も聞いてもらうわよ。慈善事業では無いの」
シスター「……申し訳無い、けど」
蒼「それは……構わない。出来る範囲で、になるけど」
シスター「……それは、わかってるわ」
シスター「貸しなさい」
蒼「え?」
シスター「子供よ! ……寝てるからミルクは後で良いけど」
パタパタ
シスター「おむつ変えて……」
蒼「出てくる前に変えたけど」
シスター「……生まれたてでしょう。まだまだ我慢なんて出来ないのよ……ほら、汚れてる」
蒼「……そ、そうなんだ」
シスター「ぐっすり寝てるから起きないけれど、気持ち悪くなって泣いてからじゃ」
シスター「肌が弱い子は、かぶれてしまうわ……良し」
蒼「あ、ありがとう……」
シスター「……名前は?」
蒼「え?」
シスター「この子の名前よ」
蒼「……青年」
シスター「は!?」
蒼「さっきも言ったけど、僕は…… ……」
シスター「……ちょっと待って頂戴」
蒼「?」
シスター「…… ……いえ。良いわ」フゥ
シスター「驚きすぎて寿命が縮んだら貴方の所為よ、青年」
蒼「……あんまり驚いて居る様に見えないけど」
シスター「この心臓の音を聞かせてやりたいわ」
蒼「遠慮しとくよ……」
シスター「……この子に、同じ名前をつけた、って言うの?」
蒼「僕は…… ……勇者様から、新しい名前をもらった」
シスター「……え?」
蒼「『蒼』だ」
シスター「…… ……この子は、貴方の子、なのね」
蒼「…… ……」
シスター「否定は出来ない……のね。嘘はつけない、んだもの」
蒼「…… ……」
シスター「…… ……」ハァ
シスター「蒼」
蒼「……何」
シスター「話せる範囲の話。してくれるんでしょう」
蒼「……話すだけ話して、僕らを放り出したりしないってんならね」
シスター「……貴方はともかく」フゥ
シスター「この子……放り出せないでしょう。貴方に育てられるとは思わないわ」
蒼「……じゃあ」
シスター「ただし、こちらの条件も聞いてもらうわよ。慈善事業では無いの」
シスター「……申し訳無い、けど」
蒼「それは……構わない。出来る範囲で、になるけど」
シスター「……それは、わかってるわ」
384: 2014/11/24(月) 12:16:27.28 ID:c/6sEzM20
ひとまずお昼ご飯!
385: 2014/11/24(月) 14:07:15.37 ID:c/6sEzM20
シスター「剣士が……あの人に話を聞きに来たのも、もう随分前になるのね」
蒼「……この村に残る伝説、の話か。男……今は村長だったか」
蒼「結婚したんだろう? ……子供も、もう大きくなっただろう」
シスター「そうね…… ……」
蒼「?」
シスター「今、兄と剣の稽古をしているわ。後で紹介する」
蒼「あ、ああ」
シスター「それより……貴方の話を聞かせて頂戴」
蒼(いざとなると……どこまで話して良い物、か)
シスター「……戦士と僧侶は……どうなったの」
蒼「え、あ……」
シスター「魔法使いもよ。貴方はさっき、もう居ないって言ったけど」
蒼「言葉通りだ。僕は……」
シスター「……嘘はつけない?」
蒼「……ああ。皆……もう……」
シスター「……亡くなった、のね」ハァ
蒼「…… ……」
シスター「……魔王に殺されたの?」
蒼「え?」
シスター「あの子……金の瞳の女の子。勇者様……あの子は」
シスター「……黒い髪の勇者の子供、だったんでしょう」
蒼「…… ……」
シスター「……無事、なのよね?」
蒼「……氏んで、は居ない。でも」
シスター「…… ……」ホッ
蒼(……損してるよな、本当に)
蒼(悪い奴で無いのはわかるけど。でも……この人の性格は)
蒼(……育った環境だとか、考えると仕方ないのかもしれないが)ハァ
蒼「だが……身動きが取れないんだ。彼女は」
シスター「え?」
蒼「だから……この子を育てられない」
シスター「!?」
蒼「……この村に残る伝説、の話か。男……今は村長だったか」
蒼「結婚したんだろう? ……子供も、もう大きくなっただろう」
シスター「そうね…… ……」
蒼「?」
シスター「今、兄と剣の稽古をしているわ。後で紹介する」
蒼「あ、ああ」
シスター「それより……貴方の話を聞かせて頂戴」
蒼(いざとなると……どこまで話して良い物、か)
シスター「……戦士と僧侶は……どうなったの」
蒼「え、あ……」
シスター「魔法使いもよ。貴方はさっき、もう居ないって言ったけど」
蒼「言葉通りだ。僕は……」
シスター「……嘘はつけない?」
蒼「……ああ。皆……もう……」
シスター「……亡くなった、のね」ハァ
蒼「…… ……」
シスター「……魔王に殺されたの?」
蒼「え?」
シスター「あの子……金の瞳の女の子。勇者様……あの子は」
シスター「……黒い髪の勇者の子供、だったんでしょう」
蒼「…… ……」
シスター「……無事、なのよね?」
蒼「……氏んで、は居ない。でも」
シスター「…… ……」ホッ
蒼(……損してるよな、本当に)
蒼(悪い奴で無いのはわかるけど。でも……この人の性格は)
蒼(……育った環境だとか、考えると仕方ないのかもしれないが)ハァ
蒼「だが……身動きが取れないんだ。彼女は」
シスター「え?」
蒼「だから……この子を育てられない」
シスター「!?」
386: 2014/11/24(月) 14:14:54.56 ID:c/6sEzM20
蒼「青年は、僕と勇者様の子供だ」
シスター「…… ……」
蒼「……勇者様は魔王を倒した。色んな人の上に成り立った勝利だ」
シスター「!」
蒼「さっき、剣士も……もう居ない、と言っただろう」
シスター「……本当なの? あれほどの人が……?」
蒼「……だが、魔王は滅んでは居ない」
シスター「…… ……え?」
蒼「どころか……次。と言うか……何というか」
シスター「次?」
蒼「否。ともかく……最強の魔王が蘇ろうとしている……蘇る日は、遠くない」
シスター「な……んですって?」
蒼「……だから、僕はこの子を託されてきた。最強の勇者に育ててくれって」
シスター「!? この子は……『勇者』なの!?」
蒼「母親と同じ、と言う意味での問いだとするならば、NOだ」
シスター「……え?」
蒼「『勇者』であれば、金の瞳と、手のひらに輝く『勇者の印』を持つ」
蒼「……だが、この子にはそれは無い」
シスター「…… ……」
蒼「……僕にはエルフの血が流れてる。母さん程の力は持たないけれど」
蒼「それでも……人には無い『感じる力』を持っている。だから……わかるんだけど」
蒼「……青年は、雷の加護を受けている」
シスター「……なッ」
蒼「魔王の復活に際し…… ……そうだな。黒髪の勇者の次は、あの金の髪の勇者様だった」
蒼「……そうして、『勇者』も復活したが」
蒼「今は……もう。この世界のどこにも『勇者』は存在しない」
シスター「そ……んな!! ……ッ ま、待って! 『勇者』は居るんでしょう!?」
シスター「身動きは取れないって……!」
シスター「…… ……」
蒼「……勇者様は魔王を倒した。色んな人の上に成り立った勝利だ」
シスター「!」
蒼「さっき、剣士も……もう居ない、と言っただろう」
シスター「……本当なの? あれほどの人が……?」
蒼「……だが、魔王は滅んでは居ない」
シスター「…… ……え?」
蒼「どころか……次。と言うか……何というか」
シスター「次?」
蒼「否。ともかく……最強の魔王が蘇ろうとしている……蘇る日は、遠くない」
シスター「な……んですって?」
蒼「……だから、僕はこの子を託されてきた。最強の勇者に育ててくれって」
シスター「!? この子は……『勇者』なの!?」
蒼「母親と同じ、と言う意味での問いだとするならば、NOだ」
シスター「……え?」
蒼「『勇者』であれば、金の瞳と、手のひらに輝く『勇者の印』を持つ」
蒼「……だが、この子にはそれは無い」
シスター「…… ……」
蒼「……僕にはエルフの血が流れてる。母さん程の力は持たないけれど」
蒼「それでも……人には無い『感じる力』を持っている。だから……わかるんだけど」
蒼「……青年は、雷の加護を受けている」
シスター「……なッ」
蒼「魔王の復活に際し…… ……そうだな。黒髪の勇者の次は、あの金の髪の勇者様だった」
蒼「……そうして、『勇者』も復活したが」
蒼「今は……もう。この世界のどこにも『勇者』は存在しない」
シスター「そ……んな!! ……ッ ま、待って! 『勇者』は居るんでしょう!?」
シスター「身動きは取れないって……!」
387: 2014/11/24(月) 14:23:02.48 ID:c/6sEzM20
シスター「でも、生きては居るんでしょう!?」
蒼「……絡繰りを話す事は出来ない。勿論、彼女の『命』はある」
蒼「だが、彼女はもう……『勇者』では無いんだ」
シスター「…… ……」
蒼「……勇者様の持っていた光の剣。覚えているかい」
シスター「え、ええ」
蒼「あれは……今、魔王の城にある」
シスター「!!」
蒼「……あれを手に入れるためにも。青年を強く……育てなくてはならないんだ」
蒼「兄が居てくれる、のは助かった。僕も多少、勇者様から手ほどきは受けてきたけど」
シスター「……で、でも。青年は勇者では……」
蒼「……『勇者になる』のさ」
シスター「え?」
蒼「今度こそ、魔王を完全に倒して……『真の勇者』と呼ばれる者に」
蒼「……僕は、責任をもって、この子を育てなければ行けない」
シスター「…… ……」
蒼「この村の側に、かつて……僧侶、僕の母さんが過ごした小屋がある。僕はそこに行こうかと思う」
シスター「……この子はどうするの」
蒼「だから、それを君に頼みに…… ……」
シスター「この子を育てていくのに、協力を要請しに来たんでしょう?」
シスター「……貴方もここに居るべきよ」
蒼「……それは駄目だ。僕は一所には……」
シスター「……兄はともかく。男……村長ももう居ないわ」
蒼「え!?」
シスター「……数年前に、病気で亡くなったわ」
蒼「…… ……」
シスター「貴方を知る……覚えている人はもう居ない……と」
シスター「言い切る事は出来ないけれど。幸い貴方は……今は、蒼と名乗っているんでしょう」
シスター「……知らぬ存ぜぬを押し通す事は可能なはずよ」
蒼「僕は嘘はつけないと……」
シスター「否定しなければ良いんでしょう。僕は蒼です。って」
シスター「言い切れば良いだけじゃ無いの。それは嘘じゃ無いでしょ」
蒼「そ、それはそうだけど……」
シスター「……さっき条件がある、って言ったでしょ」
蒼「……絡繰りを話す事は出来ない。勿論、彼女の『命』はある」
蒼「だが、彼女はもう……『勇者』では無いんだ」
シスター「…… ……」
蒼「……勇者様の持っていた光の剣。覚えているかい」
シスター「え、ええ」
蒼「あれは……今、魔王の城にある」
シスター「!!」
蒼「……あれを手に入れるためにも。青年を強く……育てなくてはならないんだ」
蒼「兄が居てくれる、のは助かった。僕も多少、勇者様から手ほどきは受けてきたけど」
シスター「……で、でも。青年は勇者では……」
蒼「……『勇者になる』のさ」
シスター「え?」
蒼「今度こそ、魔王を完全に倒して……『真の勇者』と呼ばれる者に」
蒼「……僕は、責任をもって、この子を育てなければ行けない」
シスター「…… ……」
蒼「この村の側に、かつて……僧侶、僕の母さんが過ごした小屋がある。僕はそこに行こうかと思う」
シスター「……この子はどうするの」
蒼「だから、それを君に頼みに…… ……」
シスター「この子を育てていくのに、協力を要請しに来たんでしょう?」
シスター「……貴方もここに居るべきよ」
蒼「……それは駄目だ。僕は一所には……」
シスター「……兄はともかく。男……村長ももう居ないわ」
蒼「え!?」
シスター「……数年前に、病気で亡くなったわ」
蒼「…… ……」
シスター「貴方を知る……覚えている人はもう居ない……と」
シスター「言い切る事は出来ないけれど。幸い貴方は……今は、蒼と名乗っているんでしょう」
シスター「……知らぬ存ぜぬを押し通す事は可能なはずよ」
蒼「僕は嘘はつけないと……」
シスター「否定しなければ良いんでしょう。僕は蒼です。って」
シスター「言い切れば良いだけじゃ無いの。それは嘘じゃ無いでしょ」
蒼「そ、それはそうだけど……」
シスター「……さっき条件がある、って言ったでしょ」
388: 2014/11/24(月) 14:36:18.83 ID:c/6sEzM20
蒼「……ああ」
シスター「実質、今……この村に村長は不在なの」
蒼「え?」
シスター「兄に……って声は多いのだけど、彼もまだ若い」
シスター「……彼を村長に決めてしまうと、彼は身動きが取れなくなってしまうの」
蒼「…… ……」
シスター「剣の腕に磨きをかけて、外の世界に出て行きたいって」
シスター「そう願っているのは知ってる」
蒼「……それを、叶えてやりたいって? 魔導師の時はあんなに……嫌がったのにか」
シスター「…… ……」
蒼「……ごめん」
シスター「いえ……その通りよ。兄自身も……それを気にしているの」
蒼「え?」
シスター「なんて言ったら良いのか……魔導師が居ない分、この村を離れられない」
蒼「…… ……」
シスター「そういう思い。でも、自分も外の世界を見たいと思う気持ち……」
蒼「……押したら、兄は確実に、この村に残る事を選ぶ、か」
シスター「そうね。そういう子だわ。だから」
シスター「……誰も、言い出せないでいる」
蒼「…… ……」
シスター「今は兄が中心になって、この村を守ってくれているの。でも」
シスター「……大人が、足りていないの。絶対的に」
蒼「それで、僕にもここに居ろ、と言う訳か」
シスター「……魔物達も村の中まで襲ってくる事はほぼ無い。でも」
シスター「…… ……貴方が連れてきた、その子供の……その、所為で」
蒼「…… ……」ハァ
シスター「で、でも事実だわ!」
蒼「わかってるよ、アンタ、本当に……昔から変わってないな」クス
シスター「え……」
蒼「……不器用なんだよな。後、心配性」
シスター「…… ……」
蒼「だが、僕がここに残ると……多分」
蒼「……結果的に、兄をこの村に縛り付ける事になるかもしれないぞ」
シスター「兄が……選ぶ事よ」
蒼「でも……本心では、そうして欲しいんだろう、シスターは」
シスター「…… ……」
蒼「……僕たちの所為に出来るかもしれない、って思いが無いとは言わせない」
シスター「!」
蒼「君の罪悪感が、少し軽くなるだろう事も……否定はさせない」
シスター「…… ……」
蒼「……男手や、戦闘要員が少ないからここにとどまれ、と言うよりも」
蒼「そっちが本音の様に思えるけどね」
シスター「…… ……」
蒼「良いさ。見え見えのその策に乗るのも悪く無い……どっちにしたって」
蒼「僕一人じゃ青年は育てられない。ただし」
シスター「?」
蒼「……僕が、青年の父親だと言う事。これは他言無用だ」
シスター「え!?」
蒼「勿論、青年本人も含めて、ね」
シスター「……兄、には?」
蒼「兄は流石に状況次第、かな……でも」
蒼「その場合も、しっかり口止めはさせてもらうよ」
シスター「実質、今……この村に村長は不在なの」
蒼「え?」
シスター「兄に……って声は多いのだけど、彼もまだ若い」
シスター「……彼を村長に決めてしまうと、彼は身動きが取れなくなってしまうの」
蒼「…… ……」
シスター「剣の腕に磨きをかけて、外の世界に出て行きたいって」
シスター「そう願っているのは知ってる」
蒼「……それを、叶えてやりたいって? 魔導師の時はあんなに……嫌がったのにか」
シスター「…… ……」
蒼「……ごめん」
シスター「いえ……その通りよ。兄自身も……それを気にしているの」
蒼「え?」
シスター「なんて言ったら良いのか……魔導師が居ない分、この村を離れられない」
蒼「…… ……」
シスター「そういう思い。でも、自分も外の世界を見たいと思う気持ち……」
蒼「……押したら、兄は確実に、この村に残る事を選ぶ、か」
シスター「そうね。そういう子だわ。だから」
シスター「……誰も、言い出せないでいる」
蒼「…… ……」
シスター「今は兄が中心になって、この村を守ってくれているの。でも」
シスター「……大人が、足りていないの。絶対的に」
蒼「それで、僕にもここに居ろ、と言う訳か」
シスター「……魔物達も村の中まで襲ってくる事はほぼ無い。でも」
シスター「…… ……貴方が連れてきた、その子供の……その、所為で」
蒼「…… ……」ハァ
シスター「で、でも事実だわ!」
蒼「わかってるよ、アンタ、本当に……昔から変わってないな」クス
シスター「え……」
蒼「……不器用なんだよな。後、心配性」
シスター「…… ……」
蒼「だが、僕がここに残ると……多分」
蒼「……結果的に、兄をこの村に縛り付ける事になるかもしれないぞ」
シスター「兄が……選ぶ事よ」
蒼「でも……本心では、そうして欲しいんだろう、シスターは」
シスター「…… ……」
蒼「……僕たちの所為に出来るかもしれない、って思いが無いとは言わせない」
シスター「!」
蒼「君の罪悪感が、少し軽くなるだろう事も……否定はさせない」
シスター「…… ……」
蒼「……男手や、戦闘要員が少ないからここにとどまれ、と言うよりも」
蒼「そっちが本音の様に思えるけどね」
シスター「…… ……」
蒼「良いさ。見え見えのその策に乗るのも悪く無い……どっちにしたって」
蒼「僕一人じゃ青年は育てられない。ただし」
シスター「?」
蒼「……僕が、青年の父親だと言う事。これは他言無用だ」
シスター「え!?」
蒼「勿論、青年本人も含めて、ね」
シスター「……兄、には?」
蒼「兄は流石に状況次第、かな……でも」
蒼「その場合も、しっかり口止めはさせてもらうよ」
389: 2014/11/24(月) 14:44:01.49 ID:c/6sEzM20
シスター「…… ……」
蒼「甘やかす訳にいかないんだ。シスター」
シスター「……わかったわ」
蒼「……助かる」ホッ
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ
シスター「!?」
蒼「何だ!?」
青年「うああああああんッ」
蒼「!」
タタ……ギュウ!
青年「ふえええ……」
シスター「な、何……地震!?」
バタン!
兄「シスター! 大丈夫ですか!?」
蒼「!」
蒼(兄、か…… ……逞しくなったな)
シスター「え、ええ……蒼!?」
蒼「……大丈夫だ。ちゃんとだっこしてる」
グラグラ……グラグラ…… ……
兄「……収まった、か」フゥ
青年「うわああああああん、うああああああ!」
蒼「……お、おい。どうした」
シスター「怖かったわよね……赤ん坊は敏感よ。ほら、貸してごらんなさい」
蒼「…… ……頼むよ」
シスター「よしよし……」
青年「…… ……あぅ」
兄「すみません、急に……大丈夫そうで良かったです」
蒼「え? ……あ、ああ……」
兄「シスター、揺れも収まったので、俺、村の中見てきますね」
シスター「息子は?」
兄「宿屋の女将さん見に行ってもらいました。一通り見回ったら一緒に戻ります」
パタン
シスター「……寝入ってしまう前に、ミルクをあげましょうね」
蒼「……大きくなったな。兄…… ……僕を見ても、わからなかったみたいだ」
シスター「……だまし通すならだまし通せば良いわ。私は、何も言わない」
蒼「…… ……」
シスター「この子は、私が見ているわ……少し、村の中を見てきてくれないかしら」
蒼「…… ……」
シスター「これから生活していくのよ。様子だって見ておいた方が良いでしょう?」
蒼「……ああ。じゃあ、頼むよ」
スタスタ、パタン
蒼「甘やかす訳にいかないんだ。シスター」
シスター「……わかったわ」
蒼「……助かる」ホッ
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ
シスター「!?」
蒼「何だ!?」
青年「うああああああんッ」
蒼「!」
タタ……ギュウ!
青年「ふえええ……」
シスター「な、何……地震!?」
バタン!
兄「シスター! 大丈夫ですか!?」
蒼「!」
蒼(兄、か…… ……逞しくなったな)
シスター「え、ええ……蒼!?」
蒼「……大丈夫だ。ちゃんとだっこしてる」
グラグラ……グラグラ…… ……
兄「……収まった、か」フゥ
青年「うわああああああん、うああああああ!」
蒼「……お、おい。どうした」
シスター「怖かったわよね……赤ん坊は敏感よ。ほら、貸してごらんなさい」
蒼「…… ……頼むよ」
シスター「よしよし……」
青年「…… ……あぅ」
兄「すみません、急に……大丈夫そうで良かったです」
蒼「え? ……あ、ああ……」
兄「シスター、揺れも収まったので、俺、村の中見てきますね」
シスター「息子は?」
兄「宿屋の女将さん見に行ってもらいました。一通り見回ったら一緒に戻ります」
パタン
シスター「……寝入ってしまう前に、ミルクをあげましょうね」
蒼「……大きくなったな。兄…… ……僕を見ても、わからなかったみたいだ」
シスター「……だまし通すならだまし通せば良いわ。私は、何も言わない」
蒼「…… ……」
シスター「この子は、私が見ているわ……少し、村の中を見てきてくれないかしら」
蒼「…… ……」
シスター「これから生活していくのよ。様子だって見ておいた方が良いでしょう?」
蒼「……ああ。じゃあ、頼むよ」
スタスタ、パタン
390: 2014/11/24(月) 14:56:31.69 ID:c/6sEzM20
蒼(とは言え……小さな村だ。少しの間だとは言え)
蒼(すぐ近くで生活してた……鍛冶場が無くなって、子供の遊び場に変わったのも)
蒼(……知ってる …… ……ん?)
ガヤガヤ……ザワザワ……
蒼「……どうしたんだ?」
兄「あ、さっきの…… いえ、子供達がね」
蒼「ん?」
子供「すっごかったんだぜ! あっかい、おっきい火の玉みたいなのがさ!」
蒼「!!」
子供「すっげぇスピードで、あっちの方に飛んでいったんだ!!」
子供「それでな……!!」
蒼(大きい火の玉…… まさか、魔王様…… もう……!?)
兄「こらこら、お話は後でね。また揺れたら危ないから、おうちに入りなさい」
兄「お話は後で聞くから」
子供「兄ぃ! いいじゃん!」
兄「だーめ。俺もまだ見回りしないと行けないしね」
兄「後でちゃんと君の家も見に行くから…… ……どうしました?」
蒼「!」ハッ
蒼「……あ、いや。何でも無いよ」
兄「……? そうですか。あれ、子供さんは……?」
蒼「シスターに見てもらってる。何か……手伝える事があるかと思ってね」
兄「あの……失礼ですが」
蒼「…… ……」
兄「……孤児院を頼ってこられた方、ですよね? 今は、その……」
蒼「事情はシスターから聞いた」ホッ
蒼(思い出したわけじゃなさそうだ……この分だと、黙ったままでも行ける、だろうか)
兄「すみません……力には……」
蒼「……いや、僕もこの村に滞在するのを条件に許してもらえたよ」
兄「え!?」
蒼「剣の腕は……まあ、当てにはならないけどね。弓と魔法は得意なんだ」
兄「!」
蒼「回復魔法も使えるし……って、ところで、ね」
兄「そ、そうなんですか! ……すみません、じゃあ一緒に見回りに来てもらっても」
兄「良いですか? もし負傷者が居れば……」
蒼「……ああ」
蒼(魔王様…… ……)チラ
兄「あっちから回ります!」
蒼「わかった」
スタスタ
蒼(『最強の魔王』か…… ……反対はしなかった。だが)
蒼(複雑だ…… ……さっきの地震は…… ……あの島は、もう……)ギュッ
……
………
…………
蒼(すぐ近くで生活してた……鍛冶場が無くなって、子供の遊び場に変わったのも)
蒼(……知ってる …… ……ん?)
ガヤガヤ……ザワザワ……
蒼「……どうしたんだ?」
兄「あ、さっきの…… いえ、子供達がね」
蒼「ん?」
子供「すっごかったんだぜ! あっかい、おっきい火の玉みたいなのがさ!」
蒼「!!」
子供「すっげぇスピードで、あっちの方に飛んでいったんだ!!」
子供「それでな……!!」
蒼(大きい火の玉…… まさか、魔王様…… もう……!?)
兄「こらこら、お話は後でね。また揺れたら危ないから、おうちに入りなさい」
兄「お話は後で聞くから」
子供「兄ぃ! いいじゃん!」
兄「だーめ。俺もまだ見回りしないと行けないしね」
兄「後でちゃんと君の家も見に行くから…… ……どうしました?」
蒼「!」ハッ
蒼「……あ、いや。何でも無いよ」
兄「……? そうですか。あれ、子供さんは……?」
蒼「シスターに見てもらってる。何か……手伝える事があるかと思ってね」
兄「あの……失礼ですが」
蒼「…… ……」
兄「……孤児院を頼ってこられた方、ですよね? 今は、その……」
蒼「事情はシスターから聞いた」ホッ
蒼(思い出したわけじゃなさそうだ……この分だと、黙ったままでも行ける、だろうか)
兄「すみません……力には……」
蒼「……いや、僕もこの村に滞在するのを条件に許してもらえたよ」
兄「え!?」
蒼「剣の腕は……まあ、当てにはならないけどね。弓と魔法は得意なんだ」
兄「!」
蒼「回復魔法も使えるし……って、ところで、ね」
兄「そ、そうなんですか! ……すみません、じゃあ一緒に見回りに来てもらっても」
兄「良いですか? もし負傷者が居れば……」
蒼「……ああ」
蒼(魔王様…… ……)チラ
兄「あっちから回ります!」
蒼「わかった」
スタスタ
蒼(『最強の魔王』か…… ……反対はしなかった。だが)
蒼(複雑だ…… ……さっきの地震は…… ……あの島は、もう……)ギュッ
……
………
…………
391: 2014/11/24(月) 15:06:21.08 ID:c/6sEzM20
少女「お腹いっぱいになった? ……かな」フフ
魔法使い「あぅ」ケフ
少女「……ごめんね。あんまりおっOい、出ないで」
ガサ
少女「!」
水使い「私です」
少女「…… ……」ホッ
少女「少年と雷使いは? ……まだ、小屋から出てこないの」
水使い「…… ……」
少女「……先に雷使いが妊娠するんじゃ無いの」
水使い「…… ……」
少女「…… ……」ハァ
少女(……不思議。この子が生まれるまでは、あんなに……汚らしいと思ったのに)
少女(今、あの二人がどこで何をしていようが)
少女(これっぽっちも、何も……思わなくなった)
少女(同じ事を……私に求めてこないなら、何だって良い)
魔法使い(すぅすぅ)
少女「……寝ちゃった。で、何」
水使い「……いえ。様子を見に来ただけです」
少女「少年の様子はどう?」
水使い「……同じ事を言っていらっしゃいました、から」
少女「…… ……まだ抱けないのか、って?」ハァ
水使い「…… ……」
少女「どうして……貴女は、私の『まだ無理だ』って言葉を疑わず」
少女「素直に、少年に伝えてくれるの」
水使い「……無理をさせて、出来る物も出来なくなっては困ります。それだけです」
少女「…… ……」
水使い「次こそ、雷の加護を持つ子を……」
少女「…… ……」
少女(本心なのか、嘘なのか……わからない。水使いは)
少女(……お姉さん、と呼んでいた頃は、もう少し)
少女(悲しそうだけど……でも、もう少し笑顔で、接してくれた)
少女(理由を知ってしまえば……もう、演技をする必要は無いのかもしれないけれど)
少女(…… ……少しだけ、お母様に似ている様な気が、していた……のにな)ハァ
水使い「……向こうに、火をおこしておきましたから」
水使い「暖かいところに戻りましょう。身体が冷えては…… ……」
少女「……?」
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ
少女「何…… ……!?」
水使い「ひ、ィ…… ……ッ」
少女(何、あれ…… ……ッ 火の玉!?)
少女「あ、あ……」
水使い「! 少女様、立って! ……こっちに……!」
少女(どんどん、大きく……!!)
少女「む、り…… ……よ、あ…… ……あ!?」
少女(空が……一面、赤く…… ……染まる……ッ)
少女「きゃああああああああああああああああああああああああああ!?」
水使い「ああああああああああああああああああああ!!」
ゴゴゴゴゴゴ……ッ
……
………
…………
魔法使い「あぅ」ケフ
少女「……ごめんね。あんまりおっOい、出ないで」
ガサ
少女「!」
水使い「私です」
少女「…… ……」ホッ
少女「少年と雷使いは? ……まだ、小屋から出てこないの」
水使い「…… ……」
少女「……先に雷使いが妊娠するんじゃ無いの」
水使い「…… ……」
少女「…… ……」ハァ
少女(……不思議。この子が生まれるまでは、あんなに……汚らしいと思ったのに)
少女(今、あの二人がどこで何をしていようが)
少女(これっぽっちも、何も……思わなくなった)
少女(同じ事を……私に求めてこないなら、何だって良い)
魔法使い(すぅすぅ)
少女「……寝ちゃった。で、何」
水使い「……いえ。様子を見に来ただけです」
少女「少年の様子はどう?」
水使い「……同じ事を言っていらっしゃいました、から」
少女「…… ……まだ抱けないのか、って?」ハァ
水使い「…… ……」
少女「どうして……貴女は、私の『まだ無理だ』って言葉を疑わず」
少女「素直に、少年に伝えてくれるの」
水使い「……無理をさせて、出来る物も出来なくなっては困ります。それだけです」
少女「…… ……」
水使い「次こそ、雷の加護を持つ子を……」
少女「…… ……」
少女(本心なのか、嘘なのか……わからない。水使いは)
少女(……お姉さん、と呼んでいた頃は、もう少し)
少女(悲しそうだけど……でも、もう少し笑顔で、接してくれた)
少女(理由を知ってしまえば……もう、演技をする必要は無いのかもしれないけれど)
少女(…… ……少しだけ、お母様に似ている様な気が、していた……のにな)ハァ
水使い「……向こうに、火をおこしておきましたから」
水使い「暖かいところに戻りましょう。身体が冷えては…… ……」
少女「……?」
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ
少女「何…… ……!?」
水使い「ひ、ィ…… ……ッ」
少女(何、あれ…… ……ッ 火の玉!?)
少女「あ、あ……」
水使い「! 少女様、立って! ……こっちに……!」
少女(どんどん、大きく……!!)
少女「む、り…… ……よ、あ…… ……あ!?」
少女(空が……一面、赤く…… ……染まる……ッ)
少女「きゃああああああああああああああああああああああああああ!?」
水使い「ああああああああああああああああああああ!!」
ゴゴゴゴゴゴ……ッ
……
………
…………
426: 2014/12/01(月) 10:32:15.58 ID:/KLKGAHy0
使用人「!」パチッ
使用人「…… ……ッ」ガバッ
使用人「私、は……ッ …… ……!?」
使用人(……どうして、私は立っている、の)キョロ
使用人(ここは……どこ!? ……どうして……)
使用人(……何も、ない …… ……壁も、天井も、床も…… ……!?)
使用人(これは……夢?)
使用人「…… ……夢」ハッ
使用人(これが、魔王様の言っていた……? 否!)
使用人(もし、ここが……あの『夢』だとしても、私が……)
使用人(私が、ここに来られる訳が無い!)
使用人(…… ……誰も、居ない)
使用人(ええと……どう、したんだっけ……あ)
使用人(そうだ! 闇の手様と転移石を試して……急に、息が苦しくなって)
使用人(……目の前が、暗くなって…… ……倒れた、のか……?)
使用人「あ、あの……」
シィン…… ……
使用人(……そりゃ、そうか)ハァ
使用人「…… ……」
使用人(真っ白……否、灰色? ……不思議な感じ)
スタスタ
使用人「…… ……ッ」ガバッ
使用人「私、は……ッ …… ……!?」
使用人(……どうして、私は立っている、の)キョロ
使用人(ここは……どこ!? ……どうして……)
使用人(……何も、ない …… ……壁も、天井も、床も…… ……!?)
使用人(これは……夢?)
使用人「…… ……夢」ハッ
使用人(これが、魔王様の言っていた……? 否!)
使用人(もし、ここが……あの『夢』だとしても、私が……)
使用人(私が、ここに来られる訳が無い!)
使用人(…… ……誰も、居ない)
使用人(ええと……どう、したんだっけ……あ)
使用人(そうだ! 闇の手様と転移石を試して……急に、息が苦しくなって)
使用人(……目の前が、暗くなって…… ……倒れた、のか……?)
使用人「あ、あの……」
シィン…… ……
使用人(……そりゃ、そうか)ハァ
使用人「…… ……」
使用人(真っ白……否、灰色? ……不思議な感じ)
スタスタ
427: 2014/12/01(月) 10:56:59.78 ID:/KLKGAHy0
使用人(雲の上を歩いているみたいだ……いや、歩いた事は無いけれど)
使用人(あ…… ……)ピタ
使用人(……もしかして、私は……氏んだ、のか!?)
使用人(氏後の世界……的な物の有無はこの際置いておいて)
使用人(……そう、であるのなら。納得……も、行く……か、な?)
使用人(他の……方々と違う。自然の、氏)
使用人(魔族の寿命と言うのが、どれほどかはわからないけれど)
使用人(…… ……)
スタスタ
使用人(そうか……氏んだ、のか)
使用人(寿命、だったのだろうか。でも)
使用人(『知を授ける者』……と、しての、私の役目は……?)
スタスタ
使用人(どこまで続くんだろう。どこまでも……続く、のか?)
スタスタ
使用人「…… ……ん?」
??「…… ……」
使用人(! 誰か、居る……!)
タタタ……
使用人(あ…… ……)ピタ
使用人(……もしかして、私は……氏んだ、のか!?)
使用人(氏後の世界……的な物の有無はこの際置いておいて)
使用人(……そう、であるのなら。納得……も、行く……か、な?)
使用人(他の……方々と違う。自然の、氏)
使用人(魔族の寿命と言うのが、どれほどかはわからないけれど)
使用人(…… ……)
スタスタ
使用人(そうか……氏んだ、のか)
使用人(寿命、だったのだろうか。でも)
使用人(『知を授ける者』……と、しての、私の役目は……?)
スタスタ
使用人(どこまで続くんだろう。どこまでも……続く、のか?)
スタスタ
使用人「…… ……ん?」
??「…… ……」
使用人(! 誰か、居る……!)
タタタ……
428: 2014/12/01(月) 11:04:12.04 ID:/KLKGAHy0
使用人「…… ……ッ」ハァ、ハア
使用人(おかしい……走っても、走っても近づけない……!)
??「…… ……」スタスタ
使用人(あ……待って! 待って……ッ)
??「…… ……」クルリ
使用人(こっちを振り向いた……!!)
使用人「貴方は…… ……ッ」
使用人(手を、伸ばせば……届……く……!?)
パアアアアアア……ッ
使用人(光……ッ 眩しい……ッ)
??「もうちょっとだけ、頑張ってくれよ、使用人ちゃん」
??「……もう少しで、終わるだろうから。だから」トン
使用人「きゃッ」
使用人(押された!? ……イヤ、落ちる…… ……ッ)
……
………
…………
魔王「…… ……闇の手。テラスに行くよ」
闇の手「え? ……ええ、どうぞ……て、何をしに……ッ」ハッ
闇の手「魔王様!」ガタン!
魔王「善は急げ……って奴、かな」
スタスタ
闇の手「魔王様、待ってください!」
タタタ……
使用人(おかしい……走っても、走っても近づけない……!)
??「…… ……」スタスタ
使用人(あ……待って! 待って……ッ)
??「…… ……」クルリ
使用人(こっちを振り向いた……!!)
使用人「貴方は…… ……ッ」
使用人(手を、伸ばせば……届……く……!?)
パアアアアアア……ッ
使用人(光……ッ 眩しい……ッ)
??「もうちょっとだけ、頑張ってくれよ、使用人ちゃん」
??「……もう少しで、終わるだろうから。だから」トン
使用人「きゃッ」
使用人(押された!? ……イヤ、落ちる…… ……ッ)
……
………
…………
魔王「…… ……闇の手。テラスに行くよ」
闇の手「え? ……ええ、どうぞ……て、何をしに……ッ」ハッ
闇の手「魔王様!」ガタン!
魔王「善は急げ……って奴、かな」
スタスタ
闇の手「魔王様、待ってください!」
タタタ……
429: 2014/12/01(月) 11:12:10.49 ID:/KLKGAHy0
魔王「蒼も旅だった。青年も……鍛冶師の村の孤児院に行くはずだから」
魔王「……今が一番、良いんだよ。闇の手」
闇の手「……確かに、決定権は魔王様にあります。蒼さんも反対はされなかった」
魔王「闇の手が反対したのは予想外だったけど」クス
闇の手「それは蒼さんにも言われましたよ」ハァ
魔王「前にも言ったとおりだよ。私は、最強の魔王になる」
魔王「……青年も含め。人間達には……恐怖してもらわないと困る」
闇の手「今なら、あの島には少年達しか居ないから、被害も……少ない、と」
闇の手「仰られるんでしょう、けれど……」
魔王「絶やしておかなければならないよ、彼らは」
魔王「……私の望む……否、私だけじゃ無いな」
魔王「父さん達……皆が望む『世界』になるためには」
闇の手「…… ……」
魔王「『魔王』以下、『魔』の存在しない平和な世界。それが」
魔王「……現魔王、私の望みだ。闇の手」
闇の手「…… ……」
魔王「『魔王は勇者に倒される為にあるのかもしれない』」
魔王「……紫の魔王も、そう言ってた。って…… ……使用人が言ってたでしょ」
闇の手「し、かし……」
魔王「何も悪戯に彼らの命を奪って愉悦に浸ろうって訳じゃ無い」
闇の手「……それは、勿論わかってます」
魔王「『魔導国の再建』の企みを断ち切り」
魔王「『呪い』を浄化し」
魔王「……『私の魔力を消費』する」
闇の手「!」
魔王「これから、私はどんどん強くなる。今も、力があふれてくるのがわかるよ」
魔王「……眠ってしまわない為にも」
闇の手「魔王様……」
魔王「……今が一番、良いんだよ。闇の手」
闇の手「……確かに、決定権は魔王様にあります。蒼さんも反対はされなかった」
魔王「闇の手が反対したのは予想外だったけど」クス
闇の手「それは蒼さんにも言われましたよ」ハァ
魔王「前にも言ったとおりだよ。私は、最強の魔王になる」
魔王「……青年も含め。人間達には……恐怖してもらわないと困る」
闇の手「今なら、あの島には少年達しか居ないから、被害も……少ない、と」
闇の手「仰られるんでしょう、けれど……」
魔王「絶やしておかなければならないよ、彼らは」
魔王「……私の望む……否、私だけじゃ無いな」
魔王「父さん達……皆が望む『世界』になるためには」
闇の手「…… ……」
魔王「『魔王』以下、『魔』の存在しない平和な世界。それが」
魔王「……現魔王、私の望みだ。闇の手」
闇の手「…… ……」
魔王「『魔王は勇者に倒される為にあるのかもしれない』」
魔王「……紫の魔王も、そう言ってた。って…… ……使用人が言ってたでしょ」
闇の手「し、かし……」
魔王「何も悪戯に彼らの命を奪って愉悦に浸ろうって訳じゃ無い」
闇の手「……それは、勿論わかってます」
魔王「『魔導国の再建』の企みを断ち切り」
魔王「『呪い』を浄化し」
魔王「……『私の魔力を消費』する」
闇の手「!」
魔王「これから、私はどんどん強くなる。今も、力があふれてくるのがわかるよ」
魔王「……眠ってしまわない為にも」
闇の手「魔王様……」
430: 2014/12/01(月) 11:17:06.35 ID:/KLKGAHy0
魔王「闇の手、前に言ってたでしょ」
スタスタ
魔王「暴走を押さえる為に、魔王は自らを無意識のうちに封じ込めようとするんじゃないか」
魔王「それが、あの眠りなんじゃ無いか、って」
闇の手「え。ええ……だから、なるべく力を消費してもらって……」ハッ
魔王「……最大限の力を込めた魔法をぶつける」
魔王「そして……あの島を……海に還す」
スッ……カチャ
闇の手「魔王様!」
魔王「そこに居て、闇の手。テラスに出ちゃ駄目だよ」
魔王「…… ……炎よ」スッ ゴォ……
闇の手「!」
魔王「…… ……ッ」
ゴオオオオオオオオ……
闇の手(炎……の、玉が、みるみる……膨らんでいく……ッ)
魔王(まだ……まだ。まだ制御できる)
魔王(……もっと。ぎりぎりまで)
ゴオオオオオオオ……ッ
闇の手(そ、らが…… ……赤く、染まっていく……!)
闇の手(これが……最強の魔王、の……力……!?)
魔王「……ぐ、ゥ……ッ」
魔王(そろそろ……限界か……ッ)スッ
スタスタ
魔王「暴走を押さえる為に、魔王は自らを無意識のうちに封じ込めようとするんじゃないか」
魔王「それが、あの眠りなんじゃ無いか、って」
闇の手「え。ええ……だから、なるべく力を消費してもらって……」ハッ
魔王「……最大限の力を込めた魔法をぶつける」
魔王「そして……あの島を……海に還す」
スッ……カチャ
闇の手「魔王様!」
魔王「そこに居て、闇の手。テラスに出ちゃ駄目だよ」
魔王「…… ……炎よ」スッ ゴォ……
闇の手「!」
魔王「…… ……ッ」
ゴオオオオオオオオ……
闇の手(炎……の、玉が、みるみる……膨らんでいく……ッ)
魔王(まだ……まだ。まだ制御できる)
魔王(……もっと。ぎりぎりまで)
ゴオオオオオオオ……ッ
闇の手(そ、らが…… ……赤く、染まっていく……!)
闇の手(これが……最強の魔王、の……力……!?)
魔王「……ぐ、ゥ……ッ」
魔王(そろそろ……限界か……ッ)スッ
431: 2014/12/01(月) 11:28:08.72 ID:/KLKGAHy0
魔王「…… ……いけ。彼の地を焼き尽くせ!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
……
………
…………
ゴォオオオオオ……ッ
使用人「!」ガバッ
使用人(…… ……な、何の音!?)
使用人「魔王様、闇の手様!? ……ッ」
タタタ……
使用人(私は……ううん、考えるのは後だ……ッ)
使用人(とてつもなく、強大な魔力……! 魔王様以外、あり得ない)
使用人(一体、何が!? ……私は…… ……)
使用人(……何か。とても懐かしい夢を見ていたような気が、する……けど)
使用人(……否! 後……ッ)
……
………
…………
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
……
………
…………
ゴォオオオオオ……ッ
使用人「!」ガバッ
使用人(…… ……な、何の音!?)
使用人「魔王様、闇の手様!? ……ッ」
タタタ……
使用人(私は……ううん、考えるのは後だ……ッ)
使用人(とてつもなく、強大な魔力……! 魔王様以外、あり得ない)
使用人(一体、何が!? ……私は…… ……)
使用人(……何か。とても懐かしい夢を見ていたような気が、する……けど)
使用人(……否! 後……ッ)
……
………
…………
432: 2014/12/01(月) 11:35:42.16 ID:/KLKGAHy0
闇の手「う、わぁ……ッ」ゴロンッ
魔王「…… ……」ハァ、ハァ
闇の手(衝撃が……ッ 凄い……ッ いたた……)
闇の手「ま、魔王様!」ガバッ
タタタ……
魔王「……大丈夫。見てるだけだ」
闇の手(遠見……か)
魔王(…… ……)
『きゃああああああああああああああああああああああああああ!?』
『ああああああああああああああああああああ!!』
『ゴゴゴゴゴゴ……ッ』
魔王(……誰かの、悲鳴)
魔王(焼けていく、森……街の跡。廃墟……)
魔王「…… ……」
闇の手「…… ……ま」
闇の手(……否。今は……やめておこう)ハァ
魔王(……盗賊様が作った国。エルフの加護のあった丘)
魔王(呪い…… ……全て)
魔王「……行こう、闇の手」
闇の手「は、はい、あの、どこに」
魔王「宣戦布告だよ……人間達に、ね」
闇の手「え!?」
バタン!
使用人「魔王様!」
魔王「! 使用人!? 目が覚めたの!?」
闇の手「使用人さん!」
使用人「こ……これは、一体どういう……!?」
使用人「青年様は……!!」
魔王「……良かったぁ……!」ギュウ!
使用人「! ま、魔王様!?」
闇の手「随分……長い間、お眠りになられていたんです」
使用人「……え」
魔王「もう、あのまま……眼を覚まさないかと思ったよ……!」
使用人「あ…… あの、えっと ……それは、申し訳ありません……で、ですが!」
使用人「これは、一体!?」
魔王「丁度良かった……使用人も、一緒に方法を考えて欲しい」
使用人「え?」
魔王「私は……最強の魔王になるんだ。だから」
使用人「……?」
闇の手「…… ……」
魔王「とりあえず、貴女が眠っていた間の話をしよう」
闇の手「……だいたいは書き留めてあります。準備しますね」
使用人「……え、あ……は、はい……」
魔王「その後で……人間達を、恐怖のどん底にたたき落とす」
使用人「!?」
闇の手「…… ……」
魔王「……憎んでもらうんだよ。徹底的に私を……『魔』をね」
魔王「…… ……」ハァ、ハァ
闇の手(衝撃が……ッ 凄い……ッ いたた……)
闇の手「ま、魔王様!」ガバッ
タタタ……
魔王「……大丈夫。見てるだけだ」
闇の手(遠見……か)
魔王(…… ……)
『きゃああああああああああああああああああああああああああ!?』
『ああああああああああああああああああああ!!』
『ゴゴゴゴゴゴ……ッ』
魔王(……誰かの、悲鳴)
魔王(焼けていく、森……街の跡。廃墟……)
魔王「…… ……」
闇の手「…… ……ま」
闇の手(……否。今は……やめておこう)ハァ
魔王(……盗賊様が作った国。エルフの加護のあった丘)
魔王(呪い…… ……全て)
魔王「……行こう、闇の手」
闇の手「は、はい、あの、どこに」
魔王「宣戦布告だよ……人間達に、ね」
闇の手「え!?」
バタン!
使用人「魔王様!」
魔王「! 使用人!? 目が覚めたの!?」
闇の手「使用人さん!」
使用人「こ……これは、一体どういう……!?」
使用人「青年様は……!!」
魔王「……良かったぁ……!」ギュウ!
使用人「! ま、魔王様!?」
闇の手「随分……長い間、お眠りになられていたんです」
使用人「……え」
魔王「もう、あのまま……眼を覚まさないかと思ったよ……!」
使用人「あ…… あの、えっと ……それは、申し訳ありません……で、ですが!」
使用人「これは、一体!?」
魔王「丁度良かった……使用人も、一緒に方法を考えて欲しい」
使用人「え?」
魔王「私は……最強の魔王になるんだ。だから」
使用人「……?」
闇の手「…… ……」
魔王「とりあえず、貴女が眠っていた間の話をしよう」
闇の手「……だいたいは書き留めてあります。準備しますね」
使用人「……え、あ……は、はい……」
魔王「その後で……人間達を、恐怖のどん底にたたき落とす」
使用人「!?」
闇の手「…… ……」
魔王「……憎んでもらうんだよ。徹底的に私を……『魔』をね」
433: 2014/12/01(月) 11:57:10.65 ID:/KLKGAHy0
……
………
…………
「あれ……急に、空が……灰色に……」
「え、何、なにこれ……雲?やだ、雨降るのかしら……」
「……何か、聞こえないか?」
ブゥウウウン……
「やだ、何の音、これ……」
「おい、あれ……!!」
「きゃあ、空に……!?」
魔王「…… ん、よ。… 人間、よ」
魔王「我が声が聞こえるか?」
魔王「……我が名は、魔王」
兄「『あ、蒼さん、蒼さん!』」
バタン!
蒼「どうした、騒々しいな……」
兄「空に……北の空に……!!」
蒼「……『北の空』?」
スタスタ……バタン!
蒼「!」
ビョオオゥ…
蒼「……『妙な風だな』……ッ!? あ……れは!?」
蒼(魔王様!?)
魔王「繰り返す……我が名は、魔王」
魔王「私は、魔王……この腐った世界を支配し、滅ぼす存在」
………
…………
「あれ……急に、空が……灰色に……」
「え、何、なにこれ……雲?やだ、雨降るのかしら……」
「……何か、聞こえないか?」
ブゥウウウン……
「やだ、何の音、これ……」
「おい、あれ……!!」
「きゃあ、空に……!?」
魔王「…… ん、よ。… 人間、よ」
魔王「我が声が聞こえるか?」
魔王「……我が名は、魔王」
兄「『あ、蒼さん、蒼さん!』」
バタン!
蒼「どうした、騒々しいな……」
兄「空に……北の空に……!!」
蒼「……『北の空』?」
スタスタ……バタン!
蒼「!」
ビョオオゥ…
蒼「……『妙な風だな』……ッ!? あ……れは!?」
蒼(魔王様!?)
魔王「繰り返す……我が名は、魔王」
魔王「私は、魔王……この腐った世界を支配し、滅ぼす存在」
434: 2014/12/01(月) 11:57:36.63 ID:/KLKGAHy0
蒼「魔王……『青年!来い!』」
青年「え、何…… ……!?」
魔王「私は、最強の盾となる。この、世界を滅ぼす為に」
魔王「この世界は、私の物だ!我ら、魔族の物だ!」
魔王「弱き人間共よ、我が足下に跪け!」
魔王「灰に染まった、絶望の空の下で」
魔王「己が不運を憂うが良い!」
魔王「私は、これを持って、宣戦布告とする」
魔王「この空が灰から闇へと変じる時」
魔王「全ては私の物となる!」
魔王「泣き叫べ、人間共よ!己が不運を呪え!」
蒼「…… ……」
兄「『あ、蒼さん』……」
青年「あ……あれが、魔王……!? 蒼!」
蒼「『心配するな……』大丈夫だ」
蒼「世界が魔王に滅ぼされんとする時……必ず、勇者が現れる」
兄「勇者……様……」
蒼「そうだ。光に導かれし、運命の子……『真の勇者となって』必ず、魔王を倒す」
青年「光に導かれし、運命の子……」
蒼「……わかっているだろう。お前だよ、青年」
青年「……うん」
蒼「良く、目に焼き付けておくと良い。あれが……魔王だ」
青年「魔王……」
蒼「ああ……お前は、あの魔王を倒して……」
青年「……わかってる。俺は、魔王を倒す」
青年「そして……勇者に、なる!」
青年「え、何…… ……!?」
魔王「私は、最強の盾となる。この、世界を滅ぼす為に」
魔王「この世界は、私の物だ!我ら、魔族の物だ!」
魔王「弱き人間共よ、我が足下に跪け!」
魔王「灰に染まった、絶望の空の下で」
魔王「己が不運を憂うが良い!」
魔王「私は、これを持って、宣戦布告とする」
魔王「この空が灰から闇へと変じる時」
魔王「全ては私の物となる!」
魔王「泣き叫べ、人間共よ!己が不運を呪え!」
蒼「…… ……」
兄「『あ、蒼さん』……」
青年「あ……あれが、魔王……!? 蒼!」
蒼「『心配するな……』大丈夫だ」
蒼「世界が魔王に滅ぼされんとする時……必ず、勇者が現れる」
兄「勇者……様……」
蒼「そうだ。光に導かれし、運命の子……『真の勇者となって』必ず、魔王を倒す」
青年「光に導かれし、運命の子……」
蒼「……わかっているだろう。お前だよ、青年」
青年「……うん」
蒼「良く、目に焼き付けておくと良い。あれが……魔王だ」
青年「魔王……」
蒼「ああ……お前は、あの魔王を倒して……」
青年「……わかってる。俺は、魔王を倒す」
青年「そして……勇者に、なる!」
435: 2014/12/01(月) 12:00:49.16 ID:/KLKGAHy0
魔王「真に美しい世界を望む為だ」
おしまい
勇者「勇者は、必ず魔王を倒すんだ!」
に続きます。
おしまい
勇者「勇者は、必ず魔王を倒すんだ!」
に続きます。
437: 2014/12/01(月) 12:34:01.42 ID:/N0C5SeW0
乙スコーン
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります