1: 2012/04/29(日) 23:33:22.31 ID:BidBiufe0
恒一「でも何から手をつけたらいいんだろう?」

見崎「とりあえず榊原くんは顔がいいから、バイオリンとか似合いそう」

勅使河原「何だ、サカキが始めるなら俺もチャレンジしてみようかなー!」

望月「勅使河原くんじゃ長続きしなさそうだね」

風見「楽器代のムダだな」

勅使河原「お前らひでー!!」

恒一「ハハ、でもやるからには長く続けたいようね」

恒一「何かいいの無いかな?」

多々良「……」ソワソワ

多々良(吹奏学部の私、恒一くんと話す大チャンス!!)ソワソワ
Another(4) (角川コミックス・エース)
4: 2012/04/29(日) 23:37:18.38 ID:BidBiufe0
勅使河原「手っ取り早くギターとかベースなんていいんじゃね!?」

見崎「安直すぎ」

望月「でも確かに定番ではあるよね」

風見「テルミンとかちょっと変わってて面白そうじゃないか?」

勅使河原「ドラムもありかもな!!」

恒一「うーん、考えるねー」

多々良(でも私、恒一くんと話したことあまりないし……)ソワソワ

多々良(急に話しかけて気味悪がられないかな)ソワソワ

多々良(この女盗み聞きしてた! なんて思われないかな)ソワソワ

多々良(気持ち悪がられないかな……はぅ)ソワソワ

5: 2012/04/29(日) 23:41:01.76 ID:BidBiufe0
望月「勅使河原くんはカスタネットとか似合いそうだよね」

恒一「リコーダーも捨てがたいよ」

風見「トライアングルもよさそうだよな」

勅使河原「」

見崎「……鍵盤ハーモニカ」

望月「なつかしい!!」

風見「そんなのもあったっけ!!」

見崎「」プッ

恒一「ははは!!」

多々良(どうしよう、やっぱり私には話かける資格なんて……)

7: 2012/04/29(日) 23:44:21.21 ID:BidBiufe0
赤沢「ちょっと何、バカ笑いしてんの」

勅使河原「」

赤沢「?」

恒一「ああ、僕が楽器を始めたいって言い出して、その話から盛り上がってたんだ」

赤沢「へえ、恒一くん音楽始めるの?」

恒一「うん、料理や家事以外にも何か特技が欲しいななんて思ってね」

赤沢「じゃあ家に来ない?」

恒一「!」

見崎「!」

多々良(!)

8: 2012/04/29(日) 23:47:39.54 ID:BidBiufe0
恒一「?? どうして?」

赤沢「家に大きなグランドピアノがあるんだけど、……おにぃが氏んでから誰も弾いてないのよ」

赤沢「弾かれないピアノなんてかわいそうでしょ?」

恒一「ああ、確かにピアノにとってはかわいそうだね」

赤沢「ついでに私も始めてみようかな、なんてね」クス

見崎「……」

見崎「私も」

見崎「私も音楽を始めます」

恒一「!?」

赤沢「……!」

多々良「」

10: 2012/04/29(日) 23:52:04.49 ID:BidBiufe0
勅使河原「」

勅使河原「何だ何だ! 赤沢や見崎も始めるなら俺も始めるしかないだろ!」

望月「あ、復活した」

風見「でもまあ僕らも始めてみるにはいい機会かもね」

風見(ゆかりもこれで……)

赤沢「べ、別に無理に始めようなんて思わなくてもいいのよ!?」

望月「いや、これを機に夜見北に音楽ブームをはやらせよう!」

望月(三神先生もこれで……)

赤沢「くっ……」

見崎「」フフン

恒一「楽しみだなぁ」

多々良「」

多々良(完全に乗り遅れてしまった……)

11: 2012/04/29(日) 23:55:27.59 ID:BidBiufe0
多々良「」ハア

猿田「何溜め息ついてるぞな、多々良。幸せが逃げていくぞなよ」

多々良「私はダメな女だから。不幸な女なのよ」フフフ

猿田「なんだか多々良が怖いぞな」ヒソヒソ

王子「どうしたんだろう?」ヒソヒソ

多々良「」フッ

~♪

王子「まあ落ち込むのはいいけど、演奏はいつも通りみたいだけどねえ」

猿田「うーむ」ゾナー

12: 2012/04/30(月) 00:00:43.06 ID:obnvGMVo0
恒一「うーん、とりあえずどういったものがいいんだろうか」

恒一「そうだ、父さんに相談してみよう」

PRRRRR

恒一「あ、もしもし」

陽介『なんだ、恒一! インドは暑いぞ』

恒一「うん、そんな事はどうでもいいって」

陽介『そんなことわって、父さんにとっても重大な事なんだぞ』

恒一「はいはい」

恒一「音楽を始めようと思うんだけど、何かいい楽器ないかな?」

陽介『楽器ー?』

18: 2012/04/30(月) 00:14:10.35 ID:obnvGMVo0
陽介『肺が悪い以上管楽器とかは無理だろ?』

恒一「そうだね、ちょっと興味はあったけど無理だよねぇ」

陽介『そういえば私が講師時代、当時生徒だった母さんに手を出した事がきっかけだとは知ってるよな』

恒一「ああ、その話は昔から何度も聞いてるよ」

陽介『その当時、母さんはある楽器にはまっていてな』

恒一「へえ、それは初耳」

陽介『確か物置のほうにしまってあるとか言ってたから探してみるといい』

恒一「分かった。怜子さんに聞いてみるよ」

ピッ

恒一「母さんがはまっていた楽器かあ」

19: 2012/04/30(月) 00:20:39.34 ID:obnvGMVo0
赤沢「それで三味線を背負ってるの?」

恒一「うん」

勅使河原「でも三味線ってなんかジジ臭くねえ?」

恒一「」ムッ

恒一「そんな事はないよ」

恒一「よーし、ちょっと見てて!!」

ーーー♪

勅使河原(こ、こいつ!)

見崎(三味線でロック弾いてる……!)

望月(あの指捌きは初心者のものじゃないよね)

赤沢(流石恒一くん……! 私の将来のお嫁様!)

20: 2012/04/30(月) 00:25:20.02 ID:obnvGMVo0
恒一「どうだった?」フウ

勅使河原「お、おう。何かすまんかったな……」

恒一「分かればいいんだよ」

風見「でも、今を見るかぎり明らかに初めて三味線を弾いたとかそういうものじゃなかったよね」

勅使河原「お前ホントに初心者か?」

恒一「うん、何か三味線に触れているとこう弾いてほしいとか伝わってくるんだ」

恒一「何でだろ?」

見崎「そ、そう」

見崎「」

多々良(恒一くんの、上手かったなぁ)

25: 2012/04/30(月) 00:33:27.61 ID:obnvGMVo0
恒一「赤沢さんはとりあえずピアノ?」

赤沢「ええ、やっぱり家のを放置しておけないし」

勅使河原「俺はこいつ!」ドン

勅使河原「男ならやっぱり」

勅使河原「エレキギターさ!」

風見「僕は無難な所でフルートに挑戦してみるよ」

望月「僕はオカリナをやってみようと思うんだ」

見崎「私はこれ」ドヤ

恒一「……」

風見「……」

勅使河原「お、おう」

望月「……」

赤沢「み、見崎さん、これは……?」

見崎「木魚」

見崎「?」

30: 2012/04/30(月) 00:39:39.17 ID:obnvGMVo0
見崎「別にこれだって立派な楽器」ポクポクポク

見崎「ちゃんと音もなるし」ポクポクポク

見崎「リズムだって緩急も変えられる」ポクポクポク

見崎「木魚は芸術品」ポクポクポク

見崎「何がおかしいのかわからない」ポクポクポク

三神「見崎さん! 今すぐその木魚を止めなさい!」

見崎「なんでですか?」ポクポクポク

三神「授業中よ!」

見崎「さっき赤沢さん達が木魚を笑ったことについて謝ってくれるまで止めません」ポクポクポク

三神「ほら、早く謝って!!」

三神「ああ! うぅ、あ、頭が……」

見崎「?」ポクポクポク

三神「」

見崎「???」チーン

35: 2012/04/30(月) 00:45:23.30 ID:obnvGMVo0
見崎「まさか三神先生が氏者だったなんて」ポクポク

赤沢「まさかお経もなしに木魚だけで強制的に成仏させるなんて……」

望月「以外と木魚ってすごいのかも」

恒一「怜子さん……」

見崎「元気を出して恒一くん。遅かれ早かれ彼女とはお別れをする事になってたんだから」

恒一「うん……」

見崎「でもこれで現象とか関係なしに好きに音楽ができる環境になった」

恒一「とりあえず、楽器に不慣れな人もいるから、放課後にも集まって練習し合おうか」

見崎「それがいい。初心者同士頑張ろう」

赤沢「あなたさっき木魚を完璧に叩けてたじゃない」

見崎「黙れ無能」

多々良(はあ、いいなあ)

猿田(多々良がまた元気ないぞなな、コンクールは近いのにそんな調子じゃダメぞなよ)

40: 2012/04/30(月) 00:53:46.92 ID:obnvGMVo0
見崎「見てみて榊原くん。木魚の32ビート」ポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポク

恒一「よーし、こっちも三味線の早弾きに挑戦してみよう!」ベベベベベベベベベベベベ

見崎「楽しいね榊原くん!」ポクポクポクポクポク

恒一「ああ! 見崎!!」ベベベベベベベ

望月「何で彼らは初心者なのにこんなに上手いんだろう」ピー

風見「さあ、彼らを気にしたほうが負けだよ」ピョロー

勅使河原「くっそー! 指が痛えええ!!」ビーン

赤沢「うっさいわね! ちょっと集中してるんだから黙っててよ!!」ドレミドレミ・・・

見崎「ウフフフフ」ポクポクポクポクポクポクポ

恒一「ハハハハハ」ベベベベベ

44: 2012/04/30(月) 00:58:20.38 ID:obnvGMVo0
小椋「恒一くんが音楽を始めたらしい」

綾野「早急な対策が必要だね」

小椋「ええ、最近泉美も演劇部に顔を出さないし」

綾野「困ったもんだねえ……」ハア

千曳「次の劇なんだが、何かいい案はないかね?」

小椋「……! これは」

綾野「部活内で堂々とやれるチャンス……」

小椋「これなら恒一くんを助っ人として部活にも招待できるかも……!」

綾野「こういっちゃんの事だから『部活の劇で人がいなくて困ってるんだ』って言えば応援に絶対来てくれる。こういっちゃんはそういう人だもんね」

小椋「これで……勝てる」

47: 2012/04/30(月) 01:03:48.97 ID:obnvGMVo0
恒一「劇の助っ人だって? でも僕演技なんてやったことないしなぁ」

綾野「そこは分かってる! でもどうしても人が足りないの!! お願い!」

恒一「うーん、そこまで困ってるんだったら分かった。やるよ!」

綾野「ありがとー! こういっちゃん!」

恒一「それで何の劇なの?」

綾野「うん、それが音楽を主軸とした劇なんだけど……こういっちゃんが最近音楽を始めたって聞いてさ」

綾野「うちの部活も音楽できる人間がそこまでいなくて……ダメ、かな?」

恒一「まあ、僕にできることならなんでもするけど、吹奏学部に応援は頼めないの?」

多々良「!」

綾野「あー、やっぱり吹奏の方もコンクールが近いみたいだから、頼みにくくて……」ハハ

多々良(……)

恒一「分かった! 引き受けるよ!!」

綾野「ありがとー! こういっちゃん、大好き!」

恒一「おおげさだなぁ」ハハ

多々良「……」

52: 2012/04/30(月) 01:13:17.07 ID:obnvGMVo0
恒一「へえ、僕の役は琵琶法師ならぬ三味線法師か」

見崎「ふうん私は岬和尚なのね。安直、でも嫌いじゃない」

小椋「ねえ、なんでこの二人だけ和風な役なの?」ヒソヒソ

綾野「しょうがないって、恒一くんは三味線専門みたいだし、それに見崎さんや……」ヒソヒソ

望月「僕モチヅキンだって!!」ハハ

風見「ふうん、放浪のフルート吹き男か」

赤沢「私はスイスのピアノの調律師っていう設定なのね」

勅使河原「俺の役はー? なあ、俺の役はー?」

綾野「何か変なのまでついてきちゃったし……」

小椋「すっかり泉美ったら向こうにとけこんで……」

54: 2012/04/30(月) 01:20:53.62 ID:obnvGMVo0
恒一「綾野さんたちはどんな楽器を弾くの?」

綾野「え、私!? 私はその……ちょっと前から始めたアコーディオンを少々……」

小椋「私は兄貴の部屋にあった電子キーボードを拝借して」

恒一「へえ。劇、楽しみだね」

綾野「う、うん!」

小椋「そうだね!!」

見崎「ほら恒一くん、いつものあれやるよ」

恒一「あ、分かった」

綾野「?」

小椋「? 何だろ」

見崎「」ポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポク

恒一「」ベベベベベベベベベベベベ

綾野「」

小椋「」

57: 2012/04/30(月) 01:26:11.68 ID:obnvGMVo0
望月「劇って案外大変なんだね」

風見「見てるだけじゃ分からない事もあるからな」

勅使河原「いいなぁ、俺なんか結局裏方だぞ」

恒一「でも演劇部の後輩から手紙なんか貰ってたろ」

勅使河原「ちょっ、何で知ってんだよ!!」

風見(こいつ喋んなければイケメンだからなぁ)

望月(見かけだけに騙される人も多いからね)

望月(……)

望月(目標を失った以上、僕は一体何のために頑張ってるんだろうか)


59: 2012/04/30(月) 01:33:04.59 ID:obnvGMVo0
望月「あれ、高林くん? その手に持ってるのって」

高林「ああ、拍子木だよ」

望月「火の用心でもやっているのかい?」

高林「いや、演奏するんだ!」

望月「え……それでかい?」

高林「見崎さんの木魚を見ていたら自分も何かできそうな気がしてね」

高林「昔からお祖母ちゃん達とこれを叩きながら『火の用心』と言っていて、もしかしたらできるんじゃないかって思い出したんだ」

高林「なんでかお祖父ちゃんとお祖母ちゃんは火事に縁があるんだよ」

望月「へ、へえ」

高林「君らは僕の目標なんだから、もっと頑張ってくれよ?」

高林「僕はいずれこれで、フェアに出るんだから」

望月「……そうだね」

望月「もうちょっと……だけ頑張ってみるよ」

60: 2012/04/30(月) 01:37:59.25 ID:obnvGMVo0
勅使河原(なんでだろう?)

勅使河原(最近知らない女子からラブレターやプレゼントを貰う事が増えた)

勅使河原(まさか)

勅使河原「これが噂の、モテ期!?」

恒一「モテ期なんてホントにあるんだね」

風見(いや、首からギターぶら下げて歩いてるからだろ)

望月(しゃべらなければ榊原くん並みに顔がいいもんね。その上モテ要素のギターぶら下げてるんだもん)

見崎(バンドやってるだけで寄ってくる女は多い)

見崎(もしかしたらこれが勅使河原くんの天職なのかも)

勅使河原「こんなところで、モテ期を一回使っていいものなのだろうか……?」

68: 2012/04/30(月) 01:47:37.36 ID:obnvGMVo0
ジャーン

赤沢「くっ」

赤沢(また同じ箇所で失敗してしまった)

赤沢(見崎さんや恒一くんは例外としてみても同じに始めた望月くんや風見くん、あまつさえ勅使河原さえもかなり腕をあげているのに私は……)

赤沢「……」ジワ

小椋「あれ、泉美一人? 他の皆は?」

赤沢「! 今日は自主練よ!」

小椋「ふうん……」

赤沢「何よ」

小椋「その様子じゃ壁にぶつかってるなって」

赤沢「!」

71: 2012/04/30(月) 01:52:20.56 ID:obnvGMVo0
赤沢「文句ある? そうよ! 私は無能だから、簡単に壁にぶつかるのよ!!」

小椋「ちょっと、何急に怒鳴ってんのよ」

赤沢「別に」イライラ

小椋「……」

小椋「私らが一年の時、泉美要領悪くてよく千曳先生に怒られてたわよね」

赤沢「古い話よ。私はそれから大きく成長したんだから」

小椋「そう、あの時の泉美は諦めなかったから前に進めた」

赤沢「諦めたかったわよ」

小椋「でも続けてたじゃない。弱音一つ見せずに」

赤沢「……」

赤沢「ふん、今回も弱音なんかいわないわよ! さっきのは愚痴よ愚痴!」

~♪

小椋「……」

小椋「そうだね」ニコ

72: 2012/04/30(月) 01:57:42.04 ID:obnvGMVo0
見崎「私は木魚を極めたといっても過言ではない。だから別の楽器を探します」

望月「そうだね。過言ではないのがスゴイよね」

風見「まさかあそこまで木魚の扱いに詳しいと逆に怖いよね」

勅使河原「じゃあどうするんだよ見崎? お前もギターやるか?」

恒一「もう見崎の木魚とセッションできないとなるとちょっと寂しいけど、次はどうするの?」

見崎「別にもう木魚を叩かないわけじゃないからそんな顔しないで」

見崎「大丈夫、私が次やるやつも榊原くんと合わせやすいようにするから」

恒一「?」

見崎「じゃん」コト

見崎「次はでんでん太鼓を極めます」

74: 2012/04/30(月) 02:05:52.52 ID:obnvGMVo0
見崎(でんでん太鼓に手を染めて一週間)

見崎「くっ、何で上手くできないの!?」

見崎「木魚の時は上手くできたのに……」

見崎「スナップ、力の加減、タイミング、全てにおいて完璧のはず」

見崎「でもなんで頭の中のイメージを具現化できないの……」

霧果「もう休みなさい。これ以上やると肘を痛めて一生でんでん太鼓ができなくなってしまうわ」

見崎「うるさい! 自分は毛笛に逃げといて今更母親面しないで!」

霧果「鳴……」

霧果「……」ブー

見崎「こんな演奏じゃ、榊原くんに失望されちゃう……! なんとしてでもでんでん太鼓の真理を掴まえるの!」

76: 2012/04/30(月) 02:11:08.81 ID:obnvGMVo0
見崎(ダメ……どうしても上手くいかない)

見崎(もっとでんでん太鼓が上手くなりたい)

見崎(もっと……もっと……)

恒一「大丈夫見崎、少し休憩しようか?」

見崎「大丈夫……大丈夫だから……」

望月「最近見崎さんのお疲れみたいだね……」ヒソヒソ

勅使河原「前はあんなに活き活きしていた演奏も、何か必氏さだけが伝わってきて痛々しいし」ヒソヒソ

風見「やっぱり、見崎さんでも上手くいかない事があるんだね」ヒソヒソ

赤沢「それは違うわ!」

風見「!?」

赤沢「見崎さんは音楽の才能があったんじゃない……、木魚の才能があっただけなのよ!」

78: 2012/04/30(月) 02:17:50.63 ID:obnvGMVo0
見崎「……っ!」

恒一「赤沢さん、その言い方は……」

望月「そうだよ、ちょっとどうかしてるよ」

赤沢「だって本当の事じゃない! 見崎さんは木魚でなきゃダメなのよ!」

見崎「……」

見崎「赤沢さん、それかして」

勅使河原「!? ピアノを」

ーーー♪

恒一(これは世界一複雑といわれるピアノ曲、『イングリッシュ・カントリー・チューンズ』)

勅使河原(まじかよこいつ、あんな複雑なの簡単そうに弾いて……)

風見(しかも今楽譜が無い状態で弾いてるって事は丸暗記しているわけか……)

赤沢「」

81: 2012/04/30(月) 02:22:36.54 ID:obnvGMVo0
見崎「ふう、どう? 無能さん」

赤沢「うわーん!」ダッ

風見「赤沢さんが現実に耐え切れなくて逃げ出した!」

恒一「そういう事だったんだね見崎……」

見崎「ええ、そういう事」

勅使河原「何お前ら二人だけの世界に入ってるんだ! 俺らにも分かりやすく説明しろよ!」

恒一「……つまり見崎は元々音楽をやっていたって事さ」

恒一「さっきのを聞いて確信した。おそらく彼女は僕らと一緒に音楽を始めようとしたけれど、元々の実力に大きな差があったんだ」

見崎「そう。私が本気を出したらあなた達の心を簡単にへし折ってしまう。だから隠していたの」

勅使河原「」

風見「そうか、だから最初木魚だなんて一見ふざけたものを持ってきていたのか!」

見崎「私も木魚で演奏はしたことなかったから、これで公平と思って」テヘ

83: 2012/04/30(月) 02:29:10.54 ID:obnvGMVo0
勅使河原「見崎が経験者だとは分かった。でも、俺にもあれが難しい曲だってわかるぞ、なんでそんなのをあっさり弾けるんだ」

見崎「……」

見崎「霧果はちょっと前までは人形の仕事をしつつオーケストラの一員としても活躍してたの」

見崎「私も小さい頃から霧果に熱心に指導されたわ」

見崎「あの頃の霧果は思い出したくないほど、イヤな人だった……。それで今は事故が元で趣味に毛笛をやるのがせいぜいだけど」

恒一「……」

見崎「それでも音楽をやってる人からよく、才能があるなんて言われて育ってきたの」

見崎「だから、でんでん太鼓も簡単にできると思った……」

見崎「……」

見崎「ごめんなさい。赤沢さんには後で謝るから、今日は帰って一人考えさせてもらえるかな?」

恒一「……わかった」

見崎「うん、バイバイ。また明日……ね」バタ

恒一「……」

87: 2012/04/30(月) 02:35:45.05 ID:obnvGMVo0
赤沢「うわああああああああん!!」

赤沢「見崎さんの、バカー!!」カーン

猿田「痛いぞな!」ガン

王子「猿田!?」

赤沢「ああ、ごめんなさ……、あ、猿田くんに王子くん」

王子「あれ赤沢さん」

猿田「うぅ、酷いぞな……」

赤沢「ほ、本当にごめんなさい!」

王子「? 何か訳ありみたいだし僕らで良かったら聞くけど」

赤沢「……」

赤沢「……はぃ」

88: 2012/04/30(月) 02:39:25.42 ID:obnvGMVo0
猿田「なるほど、見崎が」

王子「へえ、かなりやりそうだね」

赤沢「……でも見崎さんも何かスランプでイライラしてて、それで私はバカにされて」

王子「天才のスランプかあ」

猿田「あいつみたいぞなね」

王子「そうだね」

赤沢「? あいつって」

猿田「うちの部活でも一人化け物がいるぞなね」

王子「ああ、今の見崎さんって彼女みたいだね」

赤沢「彼女って?」

猿田「多々良ぞなよ」

王子「なぜか分からないんだけど見るからにテンションが低いんだよね」

猿田「多々良も大丈夫ぞなかなぁ」

91: 2012/04/30(月) 02:43:56.15 ID:obnvGMVo0
多々良「ハア、今日も恒一くんと話せなかったなあ」

多々良「部活でもまた皆に心配されちゃったし……」

多々良「もういっそ、恒一くんの事を諦めなきゃダメかなぁ」

見崎「……」

多々良「あれは、見崎さん……?」

多々良「一人ででんでん太鼓なんか持って一体?」

見崎「っ……」

多々良「……!」

多々良「ねえ、見崎さん」

見崎「? 多々良……さん?」

多々良「え、と、それじゃダメだと思う」

見崎「?」

多々良「その演奏じゃ、楽器はついてこないよ」

見崎「何を……!?」

92: 2012/04/30(月) 02:51:18.74 ID:obnvGMVo0
多々良「ちょっと貸して?」

見崎「……はい」

多々良「ありがとう。……でんでん太鼓っていうのはね」

ー♪

見崎「!? そんなバカな、私があんなに苦労して練習してもできなかった音を……」

多々良「呼吸を合わせるっていうのかな? 楽器っていうのは、使うだけじゃだめなの」

見崎「??? 呼吸? 楽器は使うもの。使われるなんてただ振り回されるだけ」

多々良「見崎さんって、勘だけど、相当楽器を使いこなせる人だよね」

見崎「……人並み以上には」

多々良「確かにピアノとかギターみたいな一見複雑そうな楽器って自分から振り回せるようにできてる」

多々良「でも、だからこそこういった逆に一見単純な楽器はすごい繊細なんだよね」

多々良「でんでん太鼓は赤ちゃんをあやすために使われるのが大本でできているから」

多々良「赤ちゃんが使われるようにできているんだよ」

見崎「……私は常に楽器を振り回してきた人間だから」

93: 2012/04/30(月) 02:55:36.89 ID:obnvGMVo0
見崎「そうか、私は技術だけで楽器を演奏していたのか」

見崎「寄り添う気持ちが足りなかったのか」

見崎「そっか……、そっか……!」

ー♪

多々良「そーいう事です!」

見崎「多々良さんも相当できると見た」

多々良「……」

多々良「人並みには」

多々良「でもまだまだだよ。私の所にはミューズはまだ下りてきてないし」

見崎「……」

見崎「私もまだ未体験」

多々良「やっぱり音楽の神様はもっと音楽を楽しんでる人に降りてくるんだろうね」

見崎「かもね」

95: 2012/04/30(月) 02:58:24.35 ID:obnvGMVo0
見崎「赤沢さんにちゃんと謝らなきゃ」

多々良「そうだよ? 音楽は音を楽しむって書くんだから、上級者も初心者も関係ないんだよ? いびっちゃだめです」

見崎「はい……」

見崎「……」

見崎「ねえ」

見崎「多々良さん、今日は本当にありがとう」

多々良「いえいえ、どうしたしまして」

見崎「……」

見崎「ねえ、よかったらなんだけど」

多々良「?」

96: 2012/04/30(月) 03:04:19.00 ID:obnvGMVo0
見崎「今日からまた何人か仲間が増えました」

多々良「よよよよよ、よろしくお願いしますぅ///」

恒一「よろしく、多々良さん」ニコ

多々良「///」

見崎「うんうん」

高林「僕もついにメンバー入りか。フェアな気持ちで頑張るよ」

望月「こっちも目標として、常に一歩高いところにいるとするよ」

綾野「いやー、まさか仲間にいれてもらえるなんて」

小椋「最初からこうしておけばよかったね」

風見「桜木さん、一緒に頑張っていこう」

桜木「しょ、初心者ですがよろしくお願いします!! ドラム、一生懸命頑張ります!!」

風見「///」

恒一「? あれ、勅使河原は?」

見崎「さっきできたてのファンクラブの子に引っ張られて出ていった。クラブの挨拶を頼まれて喋るみたい」

望月「あーあ、できたてのファンクラブがもう潰れるのか」

99: 2012/04/30(月) 03:08:41.33 ID:obnvGMVo0
王子「まあ、お手柔らかに頼むよ」

猿田「コンクールも優秀の美を飾って引退できたし、満足ぞなよ」

見崎「赤沢さん」

赤沢「!……何かしら」

見崎「……」

見崎「無能ならやめちゃえば?」

赤沢「」ウル

赤沢「うわあああああん!!」

多々良「鳴ちゃん! メッ!」

見崎「でででででも、恵ちゃん、こいつの顔みてたらどうしても……」

多々良「メッ!」

見崎「うぅ……アカザーさん、ごめんなさい……」

赤沢「うぅ、いいわよ、無能でも輝ける所見せてあげるんだから……」ヒックヒック

多々良「よし!」

勅使河原「何だよ、皆そろったなら呼んでくれよ!」

100: 2012/04/30(月) 03:14:51.13 ID:obnvGMVo0
恒一「よし! さっそくセッションだ!!」

赤沢「見せてあげるわ! 無能の底力!!!」

高林「フェアな演奏を見せてあげるよ」

望月「え、潰してきた? ホントに潰してきたの?」

勅使河原「……言うな」

王子「お手並み拝見だね」

猿田「ぞなな」

風見「ゆかりぃぃぃぃ! 俺の演奏を聞けえええええ!」ボソッ

桜木「? 風見くん何か言いました?」

綾野「よーし、いっちょ」

小椋「派手にやるか!」

多々良「鳴ちゃん、なんだか今日ミューズが降りてきそうな気がするよ」

見崎「恵ちゃん、私も今、そう思ってた」

恒一「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!!」


見崎「おわり」

103: 2012/04/30(月) 03:17:09.11 ID:obnvGMVo0
やっぱり音楽ものやるのに音楽の知識が皆無だと厳しいな
ただ鳴ちゃんに木魚叩かせたいだけでやるもんじゃないって

104: 2012/04/30(月) 03:17:17.33 ID:UTb7bBqB0

多々良さんに怒られる鳴ちゃん可愛かった

105: 2012/04/30(月) 03:17:28.74 ID:hjAoWwNd0

私の歌を聴けえええええ

引用: 恒一「何か音楽を始めてみたい」