1: 2024/12/06(金) 19:00:02 ID:???00
姫芽「うう、アタシとしたことが、まさか部室に忘れ物しちゃうなんて~……」テクテク

姫芽「今夜はめぐるりの配信が控えているのに……早く取って、急いで帰らなきゃ~……」テクテク

「……ちゃ……ん……」

姫芽「……あれ、人の声? 部室にまだ、誰かいるのかな~?」チラッ

姫芽「──!?!?」


瑠璃乃「……めぐちゃん、痛くない?」チュッ

慈「大丈夫だって、もう慣れてるんだし」ニコッ

瑠璃乃「ん、ありがと……」カプッ


姫芽「な、な、な…………!!!」

姫芽(部室でるりちゃんせんぱいが、めぐちゃんせんぱいの首筋に噛み付いている!?!?!? アタシの幻覚かな!?!?)

姫芽「ふわぁ……尊すぎて意識が……」バタン

2: 2024/12/06(金) 19:01:02 ID:???00
──────

────

姫芽「……ん」パチッ

姫芽「あれ……ここは、天国……?」

瑠璃乃「──いや、違うからね!? ひめっち、目、覚めた?」

姫芽「!?!? る、るりちゃんせんぱい~!?!? どうしてここに……というか、ここは……」

瑠璃乃「ルリの部屋だね。ひめっちが廊下に倒れてたから、とりあえず連れてきて、ルリのベッドに寝かせてたんだけど……」

姫芽「!!! ということは、これはるりちゃんせんぱい愛用のベッド!? アタシ、やはり天国にいるのでは~……!」

瑠璃乃「いや、だから違うって!?」

3: 2024/12/06(金) 19:02:02 ID:???00
姫芽「いやはや、どうやらアタシ、るりちゃんせんぱいにご迷惑をおかけしてしまった次第で~……でも、どうしてせんぱいのお部屋に……?」

瑠璃乃「あ、えっとね……ルリ、ひめっちに確認しておきたいことがあって」

姫芽「?」

瑠璃乃「……その…………ひめっち、部室でのルリ達のこと、どこまで見たのかな、って……」

4: 2024/12/06(金) 19:03:02 ID:???00
姫芽「!? あ、い、いえ……あ、アタシは何も!!! めぐるりが、そんな進んだ関係だなんて、全く! 全く見ていないですよ~!!!」ワタワタ

瑠璃乃「……流石のルリも、ひめっちのその様子じゃ、嘘だってわかっちゃうよ」ウンウン

姫芽「ご、ごめんなさい、ごめんなさい~! 覗くつもりはなかったんです~! ただ、声がしたから~……」シュン

瑠璃乃「いやぁ、まぁ……ルリも鍵開けたまましちゃってて、不用心だったかな、って思ってるし……」

姫芽「ほんとにほんとに、めぐるりの禁断の恋はどこにも言いませんから! みらぱオタクとしての誇りをかけて~!!」グッ

瑠璃乃「あ、うん、ありがと……って、違う違う! ひめっち、ルリとめぐちゃんのこと誤解してるんだって!」

姫芽「ご、誤解……? もうとっくに親公認の恋愛……とかですか~……?」

瑠璃乃「ひめっち、恋愛から離れて!?」

5: 2024/12/06(金) 19:04:02 ID:???00
姫芽「……えと、それなら~、その誤解って一体~……?」

瑠璃乃「そう……だね。もう見られちゃったんだし、ひめっちには……全部話さなきゃ、だよね」ウンウン

姫芽「? えっと……?」

瑠璃乃「ひめっち。実はね、ルリ……」


瑠璃乃「──吸血鬼、なんだ」

6: 2024/12/06(金) 19:05:02 ID:???00
姫芽「!? き、吸血鬼……? それってあの、ファンタジー的な……?」

瑠璃乃「そうだね。またの名を、ヴァンパイア……人の血を吸って生きる怪物」

姫芽「るりちゃんせんぱいが、その吸血鬼……」

瑠璃乃「……いきなりこんなこと言っても、信じてもらえないよね。ごめんね、ひめっち変なこと言って──」

姫芽「──いえ!!!! むしろそれって、最高じゃないですか~!!!」ガタッ

瑠璃乃「……え?」

7: 2024/12/06(金) 19:06:02 ID:???00
姫芽「だって吸血鬼って……るりちゃんせんぱいが、めぐちゃんせんぱいから血をもらって生きている、ってことですよね~?」

瑠璃乃「え? あ、うん。いちおー、そうだけど……」

姫芽「ふわぁぁ、やっぱりそうなんですね~!!! はぁ~……こんなに最高のシチュエーションが公式から出されるなんて~……めぐるりオタク冥利につきますよ~!!」

瑠璃乃「……えっと、ひめっちはこの状況、むしろ嬉しかったり……?」

姫芽「それはもう! 吸血鬼といえば眷属カプ! 今まで何十回とめぐるりで妄想してきましたが、まさかアタシの推しが吸血鬼、それもるりちゃんせんぱい側が攻めだとは!! 最高~」ニヤニヤ

瑠璃乃「あー……ひめっちが嬉しそうなのはいいけど……まぁ、怖がられるよりは全然いいのかな……?」

8: 2024/12/06(金) 19:07:02 ID:???00
姫芽「そういうことなら、アタシも、めぐるりが安心安全に吸血できるよう、邪魔にならないようにしますので~」

瑠璃乃「……ありがとね、ひめっち。ルリも吸血のこと、隠さなくていいのは助かるし」ウンウン

姫芽「はい! ぜひぜひ部室でも存分に吸血してください~! アタシ、一介のみらぱオタクとして、めぐるりをサポートしますから~!」グッ

9: 2024/12/06(金) 19:08:02 ID:???00
────

──数日後

瑠璃乃「うぅ……充電ピンチ……」シュン

慈「るりちゃん、大丈夫? ダンボール入る?」

瑠璃乃「ううん…………めぐちゃん、あれが欲しいな……」

慈「! オッケー、るりちゃん」

慈「姫芽ちゃん、ちょっと私、るりちゃんを部屋まで……って、あ、そっか。もう教えたんだっけ……“吸血鬼”だって」

姫芽「あ、はい、るりちゃんせんぱいに教えていただきました~。なのでどうぞ、アタシのことは部室の壁だと思って、何卒……」

慈「壁、かぁ……」ハハ

10: 2024/12/06(金) 19:09:02 ID:???00
瑠璃乃「……めぐちゃん」ギュッ

慈「……ん、大丈夫だよ。るりちゃん」ナデナデ

瑠璃乃「ルリの方に、近くに、来てほしい……めぐちゃん……」ギュー

慈「ふふっ、もちろん。ふぅ……首の辺りでいいんだよね? この辺かなぁ」

瑠璃乃「……うん。その辺だと、丁度ルリも血を吸いやすいかも……」

11: 2024/12/06(金) 19:10:02 ID:???00
瑠璃乃「…………ごめんね、いつも。ルリ、めぐちゃんに頼りっきりで……」

慈「いいんだよ、るりちゃん。私はるりちゃんの幼馴染なんだから……絶対に気持ちは、変わらない」ニコッ

瑠璃乃「めぐちゃん……ありがと。それじゃ、吸うね……」カプッ

慈「──んっ」ピクッ

12: 2024/12/06(金) 19:11:02 ID:???00
瑠璃乃「めぐちゃん、めぐちゃん……」チュー

慈「……っ……ん、んん……ぁ」

瑠璃乃「ん……はぁ、はぁ……」チュー

慈「……んぁ、っ……」


姫芽「……//」

姫芽(こ……声がセンシティブすぎる~……!!)

13: 2024/12/06(金) 19:12:02 ID:???00
瑠璃乃「…………っと」ペロッ

瑠璃乃「これでもう大丈夫、かな。ありがと、めぐちゃん」

慈「……ぁ、ええっと……終わった、んだよね? ……っとと」フラッ

瑠璃乃「めぐちゃん!? 吸血の後にいきなり動いちゃダメだって……!」

慈「んー……なんだか、いつも忘れちゃうんだよね。早くるりちゃんの顔が見たくなっちゃって」ニコッ

瑠璃乃「めぐちゃん……! って、嬉しいけど程々にね!? ルリも、めぐちゃんが倒れちゃったら……嫌だからさ」

慈「……うん。私もるりちゃんを悲しませることだけは、絶対にしない」ニッ

14: 2024/12/06(金) 19:13:02 ID:???00
瑠璃乃「……めぐちゃん。またルリが血が欲しくなったときも……お願いしていい、かな?」

慈「ふふっ、そんなの当たり前だよ、るりちゃん。遠慮しないで。幼馴染なんだから」ナデナデ

瑠璃乃「ん……ありがと」ギュー


姫芽「……!!!」

姫芽(あぁぁぁぁ、尊い!! 尊すぎる!!! アタシ、みらぱに入ってよかった~、やはりめぐるりは正義……!!)

慈「……」

15: 2024/12/06(金) 19:14:02 ID:???00
────

姫芽(いやぁ~……尊い……めぐるりが吸血関係にあるって、想像以上にエモすぎる……)ニヤニヤ

姫芽「……あぁ、そんなお二人を一番近くで見れるなんて、アタシ役得すぎるよ~……余計に妄想まで捗って……」ウンウン

慈「──ねぇ、姫芽ちゃん。今、ちょっといい?」

姫芽「!? め、めぐちゃんせんぱい~!?」

16: 2024/12/06(金) 19:15:02 ID:???00
姫芽「どど、どうしましたか~?」アセアセ

姫芽(い、今更ではあるけれど、nmmnで妄想してることを本人に知られるのって、もしかしてマズかったり~……!?)

姫芽「え、あ、あの……何かアタシ、法に触れることでもしてましたか~!?」アワアワ

慈「だ、大丈夫だよ姫芽ちゃん、そんなに慌てなくても」

慈「……私はただ、姫芽ちゃんと話がしたくて来ただけだから」

17: 2024/12/06(金) 19:16:02 ID:???00
姫芽「話……ですか~?」

慈「うん。姫芽ちゃんには、もっとちゃんと伝えておきたくて。るりちゃんの──吸血鬼のこと」

姫芽「……? それは……以前るりちゃんせんぱいに教えてもらったこと以外、ですか?」

慈「……ん」コクリ

慈「……姫芽ちゃんは知っておく必要がある、って私が思ったんだ」

慈「るりちゃんは優しいから……姫芽ちゃんには自分からお願いできないんだよね」ボソッ

18: 2024/12/06(金) 19:17:02 ID:???00
姫芽「……え?」

姫芽(お願いって……何のことだろう~……?)

慈「うーん、それじゃあ、どこから話そうかなぁ……まずはやっぱ、吸血のシステムからかな」ウンウン

慈「……るりちゃんはさ、最低でも一週間に一回は、血を吸わなきゃダメなんだ」

19: 2024/12/06(金) 19:18:02 ID:???00
姫芽「そう、なんですか?」

慈「ん。だから……カリフォルニアでは、るりちゃん、大変だったの」

姫芽「カリフォルニア…………あぁ」

姫芽(そう、るりちゃんせんぱいは、カリフォルニアに留学していた時期があった……確かに、異国の地で血を吸うなんて……)

姫芽「……!?!? ま、待ってください、それって~……」

慈「そう、多分姫芽ちゃんの想像通り。──るりちゃん、私以外の子からも、血を吸ったことがあるんだよね」

20: 2024/12/06(金) 19:19:02 ID:???00
姫芽「る、るりちゃんせんぱいが、めぐちゃんせんぱい以外から……」

姫芽(こ、この感情は……俗に言う脳破壊なのかもしれない……いや、でも生きるためなら血を吸うのは仕方がないし……)

姫芽(第一、めぐちゃんせんぱいがそれを知っているんだから、NTRでもないはず……アタシは厄介オタクではないんだから鎮まれ……!)ブンブン

慈「──でも、長くは続かなかった。るりちゃんは、そこでダメになっちゃったんだ」

姫芽「…………え?」

21: 2024/12/06(金) 19:20:03 ID:???00
姫芽「だ、ダメになった……って、どういう意味ですか?」

慈「……吸血には、副作用があった。血を吸われた側は、その副作用が効いて……るりちゃんはそれで、心が傷付いちゃった」

姫芽「副作用……? それって、一体……?」

慈「……それはね」

慈「──るりちゃんのことが、大好きになっちゃうの」

22: 2024/12/06(金) 19:21:02 ID:???00
姫芽「?? るりちゃんせんぱいのことなんて、すでに世界中、全人類が大好きでは~……?」

慈「あぁ……いや、それはまぁ私もそう思うけど、そういうことじゃなくて」

慈「るりちゃんが吸血をした後……それまで友達として仲良くしてた子の態度が、まるっきり変わっちゃったんだって。対等じゃなくなった、って言うのかな」

慈「るりちゃんの言うことに全部頷いて、るりちゃんのために行動するようになっちゃって……挙げ句の果てには、お金まで渡して」

慈「……それが、るりちゃんのことが大好きになる、っていう吸血の副作用だった」

23: 2024/12/06(金) 19:22:02 ID:???00
姫芽「そんな……」

姫芽(るりちゃんせんぱいは、ものすごく優しい人だから……そんなの絶対耐えられないはず……)

慈「るりちゃんは……友達を自分が壊しちゃった、って悩んで傷付いちゃった。だからもう、それ以降は向こうで吸血をしなくなって」

慈「……でも血を吸わなくちゃ生きていけない。丁度その頃、るりちゃんは日本に帰ってきて、色々あって二人のみらぱができて……」

慈「結局るりちゃんは、私から血を吸うことになったんだ」

慈「……姫芽ちゃん。どうして私には吸血の副作用が出ないのか、わかる?」

姫芽「! それは……」

24: 2024/12/06(金) 19:23:02 ID:???00
姫芽「……もうめぐちゃんせんぱいは、るりちゃんせんぱいのことが大好きだから……ですか?」

慈「ん、正解」ニコッ

慈「大好きになる副作用は、もうすでにるりちゃんのことが大好きな人には効かない……るりちゃんが私からいくら血を吸っても、私は大丈夫だった」

慈「だから、るりちゃんは私だけから血を吸って……今まで蓮ノ空で生活してきた、ってわけなの」

姫芽「な、なるほど…………そう考えると、めぐるりはとっても素敵な関係なんですね~!」

姫芽(めぐちゃんせんぱいだけになら、るりちゃんせんぱいは安心して血を吸える……やはり、めぐるりは尊い……)

慈「でも、このままだとダメなんだよね。来年になったら、どうしようもなくなっちゃうから」

姫芽「? 来年……? 何かありましたっけ~……?」ウーン

慈「あ、姫芽ちゃん、忘れてるの?」クスッ

慈「来年、私はもう──蓮ノ空には居ないんだよ?」

姫芽「……!」ハッ

25: 2024/12/06(金) 19:24:02 ID:???00
慈「……卒業してからじゃ、るりちゃんと頻繁には会えなくなっちゃうし、るりちゃんが吸血できなくなっちゃう」

慈「だから……私が卒業した後のこと、考えなきゃなんだ」

姫芽「ぁ……」

姫芽(卒業……そうだ、あともう少しで、めぐちゃんせんぱいは蓮ノ空を卒業してここからいなくなっちゃう……)

姫芽(めぐるりが離れ離れになっちゃうこと自体、大問題ではあったけど~……血を吸えなくなるという点も加味すると、それどころじゃない)

姫芽(それは、るりちゃんせんぱいの、“命”に関わるわけで……)

26: 2024/12/06(金) 19:25:02 ID:???00
姫芽「……だから、めぐちゃんせんぱいはアタシにこの話をしたんですね」

姫芽(吸血の副作用が出ない条件……つまりるりちゃんせんぱいのことが大好き、なんて、アタシは当然当てはまっている)

姫芽(めぐちゃんせんぱいは、アタシがこれからすべきことを伝えるために……)

慈「まぁ、私が勝手に、姫芽ちゃんにこうやって話してるだけで、実際るりちゃんがどうするかはわからないけどね」

慈「でも私は……姫芽ちゃんがるりちゃんを支えてくれたら、嬉しいな」ニッ

姫芽「! それはもちろん、ぜひそうしたいんですけど~……」

姫芽「……アタシ、できるんでしょうか? だってこれって、アタシがめぐちゃんせんぱいの代わりを務める、ってことですよね~……?」

27: 2024/12/06(金) 19:26:02 ID:???00
慈「……ふふっ、姫芽ちゃんは少し勘違いしてるみたいだね」クスッ

姫芽「え、か、勘違い……ですか?」

慈「そう。姫芽ちゃんは姫芽ちゃんで、藤島慈じゃない」

慈「これは私じゃダメなの。代わりとかじゃなくて、姫芽ちゃんにしかできない、姫芽ちゃんだからできること、なんだよ!」ニコッ

28: 2024/12/06(金) 19:27:02 ID:???00
────

姫芽(……めぐちゃんせんぱいの話を聞いたうえで、やっぱり、アタシは……)

姫芽「あの~……るりちゃんせんぱい、今いいですか~?」

瑠璃乃「ひめっち? うん、別に大丈夫だよ、どうしたの?」

姫芽「えっと~……」

姫芽(るりちゃんせんぱいに、伝えるんだ。これは、アタシがやらなくちゃいけないこと……)

姫芽「……吸血のことで、お話ししたいことがありまして」

瑠璃乃「?」

姫芽「た、単刀直入に申し上げますけど~……」

姫芽「──アタシも、るりちゃんせんぱいに血を吸ってもらいたいんです!」

29: 2024/12/06(金) 19:28:02 ID:???00
瑠璃乃「……え!? ……でも」

姫芽「アタシ、めぐちゃんせんぱいに聞きました。るりちゃんせんぱいの、吸血での副作用のこと……」

瑠璃乃「……!」

姫芽「アタシは、るりちゃんせんぱいのことが大好きです。なので、これはアタシがしなきゃいけないことで、だから──」

瑠璃乃「──待って、ひめっち!」

30: 2024/12/06(金) 19:29:02 ID:???00
姫芽「……え?」ピタ

瑠璃乃「……ごめんね。ルリ、ひめっちのそのお願いだけは聞けないや」

姫芽「!? ど、どうしてですか~……?」

瑠璃乃「だってルリ、ひめっちの負担にだけは、なりたくないからさ」ニコッ

姫芽「……っ、それは」

31: 2024/12/06(金) 19:30:02 ID:???00
姫芽「……全然負担なんかじゃ、ないですよ~……! アタシは……」

瑠璃乃「……とにかく! 血のことだって、今はめぐちゃんが居て、来年もルリさえ我慢すればなんとでもなることだし!」

瑠璃乃「これは、ひめっちが気にすることじゃないよ」

姫芽「……で、でも~…………」

瑠璃乃「ね、この話はこれでおしまい! ひめっち、練習しよ!」

姫芽「あ…………えと、はい……」

姫芽「……」

姫芽(吸血鬼のるりちゃんせんぱいのために、アタシがしなきゃいけないこと、だったはずなのに……)

姫芽(……るりちゃんせんぱいが、またアタシに遠慮してる……)

32: 2024/12/06(金) 19:31:02 ID:???00
────

姫芽「あぁぁぁ~~…………」グデー

姫芽「うにゃ~~……」グダー

吟子「…………何これ? 小鈴、これどういう状況?」

小鈴「か、徒町にもよく……徒町が部室に来たときには、もう姫芽ちゃんはこんな感じだったから……」

吟子「はぁ……姫芽のことだから、またみらぱに対する愛が溢れてー、とかかな」

姫芽「うにゃぁぁ……」

姫芽(どうして、どうしてアタシは……るりちゃんせんぱいに何もできないんだ~……!)

33: 2024/12/06(金) 19:32:02 ID:???00
──

瑠璃乃「だってルリ、ひめっちの負担にだけは、なりたくないからさ」ニコッ

──

姫芽(うぅ……ああ言われちゃうなんて……なんで、るりちゃんせんぱいはアタシを頼ってくれないんだろう……)

姫芽「うぅぅぅ……」シュン

小鈴「おーい、姫芽ちゃん?」

吟子「……姫芽? ねぇ、大丈夫?」

姫芽「小鈴ちゃん、吟子ちゃん……アタシ、どうしたらいいのかなぁ~……!?」

34: 2024/12/06(金) 19:33:02 ID:???00
吟子「いや、どうしたらも何も……そもそも姫芽が今、何に悩んでるのかすら全然わからないんだけど……」

姫芽「うぅ……そうだよね~……」

小鈴「姫芽ちゃん、もし良かったら、徒町達にお話聞かせて! 三人で考えれば、なんとかできるかもしれないし!」

吟子「私も、姫芽が悩んでるのをずっと見てるのは嫌だし……悩み事があるなら解決、手伝うよ」

姫芽「ふ、二人とも~……!!」ジワッ

姫芽(二人の優しさが沁みる……吸血鬼のことは話せないから、ぼんやりとした内容になっちゃうけど……相談、してみようかな)

姫芽「…………実は、ね……」

35: 2024/12/06(金) 19:34:02 ID:???00
姫芽「アタシ、るりちゃんせんぱいに遠慮されてるのかな~、って……」

小鈴「……え、瑠璃乃先輩に? でも姫芽ちゃん、撫子祭のときから、瑠璃乃先輩ともすっごく仲良くなったように見えるけど……」

吟子「うん、姫芽のことあだ名で呼んだりしてるし。瑠璃乃先輩は普通に、というよりずっと親密に姫芽と接してるんじゃないかな」

姫芽「…………でもアタシ、るりちゃんせんぱいに何もできないからなぁ~……遠慮されてる、というか……期待されてない、というか……」ウーン

姫芽(今のアタシじゃ、るりちゃんせんぱいに頼ってもらえない……)

姫芽(……やっぱり、めぐちゃんせんぱいじゃなきゃダメなのかもしれない、って何度も思ってしまう)ハァ

36: 2024/12/06(金) 19:35:02 ID:???00
姫芽「アタシだって、るりちゃんせんぱいのためにしなきゃいけないことがあるはずなのに……それを断られちゃうというか」

姫芽「負担になりたくない、って突き放されちゃって……アタシ、どうすれば良いのか……」ウーン

吟子「! ……ねぇ、姫芽」

吟子「それってもしかして──遠慮されてるんじゃなくて、大事にされてるってことなんじゃないの?」

姫芽「…………え?」

37: 2024/12/06(金) 19:36:02 ID:???00
姫芽「そ、それはどういう意味で…………」

姫芽(るりちゃんせんぱいは……アタシに、遠慮をしていたわけじゃない……?)

吟子「だって、今の姫芽の発言じゃ……瑠璃乃先輩のために、自分が無理をしようとしてる風にも聞こえちゃうし」

小鈴「徒町もそう思う! しなきゃいけない、だと自分のために時間を使わせちゃってるんじゃないか、って感じるかも……?」

姫芽「あ……」

38: 2024/12/06(金) 19:37:02 ID:???00
吟子「そういうこと。何のことか具体的には知らないけど……姫芽は、仲間のためにって自分を蔑ろにしちゃうところがあるし」

吟子「……きっと瑠璃乃先輩は、そんな姫芽に無理してほしくなくて、大事だから断ったんじゃないかな」

姫芽「大事、だから……」

小鈴「徒町もわかるなぁ。徒町、さやか先輩にも、よくそうされてる自覚があるから……先輩方はみんな、優しいんだよね」

吟子「本当にそう。花帆先輩も何かと私のこと気にかけてくるし……瑠璃乃先輩だって、私達のことをいつも心配してくれてる」

姫芽「…………そっかぁ。アタシ達のせんぱいって、アタシ達のことをよく見てくれてるんだね」

吟子「……うん。でも、だからこそ私達は、そんな先輩方に甘えてるだけじゃダメなんだと思う。姫芽の気持ちも、伝えなきゃ」

吟子「三年生が卒業したら、今の二年生……先輩達を一番近くで支えて、隣に立つのは、私達なんだよ?」

姫芽「!」

39: 2024/12/06(金) 19:38:02 ID:???00
姫芽(そうだ。アタシ……なんで今まで気づかなかったんだろう……)

姫芽(るりちゃんせんぱいのことが大好きだから、見えてなかった。アタシが頑張りたい理由……)

姫芽(憐れみとか同情とか、ましてや、やらなくちゃいけない、なんて言う義務感からじゃない。だって……)

姫芽(アタシは、るりちゃんせんぱいの隣に立つスクールアイドルなんだ)

40: 2024/12/06(金) 19:39:02 ID:???00
姫芽(……めぐちゃんせんぱいが言っていた、“アタシだからできること”の意味がようやくわかったような気がする)

姫芽「うん……アタシにも、できそうな気がしてきた~……! 二人とも、相談のってくれてありがと~」ニコッ

姫芽(アタシ、るりちゃんせんぱいに伝えなきゃ。アタシの、気持ち──)

41: 2024/12/06(金) 19:40:02 ID:???00
────

姫芽「るりちゃんせんぱい! お話があります~!」バンッ

瑠璃乃「!? ど、どーしたの、ひめっち?」

姫芽「あの、前回の話の続き……決着をつけにきました!」

瑠璃乃「け、決着……!?」

姫芽「はい! アタシは……るりちゃんせんぱいに、正直な気持ちを全部伝えたいので!!」グッ

42: 2024/12/06(金) 19:41:02 ID:???00
瑠璃乃「気持ち…………でも、吸血のことなら、前に言った通りルリは……」

姫芽「いえ、確かにあの時は、るりちゃんせんぱいの仰る通りだったなぁ~、ってアタシも思います」

姫芽「……アタシ、義務感で吸血のことを申し出たみたいになっちゃってましたもんね~……でも、違うんです」

瑠璃乃「違う、って……?」

姫芽「アタシが……るりちゃんせんぱいに血を吸ってもらいたい理由は、そういうことじゃ、ないんです」

姫芽(しなきゃいけないとか、そんなことはどうだっていいんだ。だって、アタシは……)

姫芽「吟子ちゃんにとってのかほせんぱい、小鈴ちゃんにとってのさやかせんぱいみたいに……」

姫芽「アタシにとって! るりちゃんせんぱいは──大切な人だからなんです!」

瑠璃乃「……!!」

43: 2024/12/06(金) 19:42:02 ID:???00
姫芽「アタシ、無意識に逃げちゃってました~……来年になったら、アタシが立つのはるりちゃんせんぱいの隣なのに」

姫芽「これから、るりちゃんせんぱいを一番近くで支える存在に、アタシはなります。なので……アタシを、もっと頼ってください、るりちゃんせんぱい」

瑠璃乃「ひめっち……」

姫芽「……アタシは、るりちゃんせんぱいと、もっとつながりたいんです。るりちゃんせんぱいを、もっと近くで感じたい……!」

姫芽「だから──」

瑠璃乃「──ひめっち!」ギュッ

姫芽「……! るりちゃんせんぱい……!」

44: 2024/12/06(金) 19:43:02 ID:???00
瑠璃乃「……ごめんね、ひめっち。ルリの方こそ……ひめっちの気持ちを聞かずに断っちゃって」

瑠璃乃「そうだよね……これから先、ルリの隣にはひめっちが居てくれるんだ」

姫芽「はい。アタシ、絶対にるりちゃんせんぱいの隣に居ますよ~!」グッ

瑠璃乃「……! うん、ありがと、ひめっち」ギュー

瑠璃乃「…………吸血、良かったら、今お願いしてもいいかな……? ルリ、緊張して少し充電切れちゃったから……」

姫芽「! はい、もちろん~!」ニコッ

45: 2024/12/06(金) 19:44:02 ID:???00
────

瑠璃乃「……よ、っと」

瑠璃乃「……痛かったら、すぐに言っていいからね。無理だけはしちゃダメだよ?」

姫芽「もちろんです~! でもるりちゃんせんぱいも、遠慮せず、アタシにどんどん頼ってくださいね~」グッ

瑠璃乃「ひめっち……うん。それじゃあ……血、もらうね」

瑠璃乃「……ん」カプッ

姫芽「──ぁ、ん……」ビクッ

46: 2024/12/06(金) 19:45:02 ID:???00
瑠璃乃「……んん」チュー

姫芽「ふぁ、ぁ……ん、ぁ……」ピクッ

姫芽(…………血を吸われるのって、やっぱり痛いのかな~って思ってた。なのに、これ……)

姫芽(実際に、るりちゃんせんぱいの牙がアタシの首元に刺さった瞬間、アタシが感じたのは──とんでもない“気持ちよさ”……!!)

48: 2024/12/06(金) 19:47:02 ID:???00
姫芽(もう気持ち良すぎて、アタシの意思とは無関係に、力なんて入らなくて……)

姫芽「……ぁん……ん、ん、あぁ……」ビクッ

瑠璃乃「…………んん」チュー

瑠璃乃「……っと、これくらいかな」

姫芽「……ふぇ……ぁ、お、終わり……?」ガタッ

瑠璃乃「あ、ひめっち。まだちょっと動かないでね……」

姫芽「……ほぇ……?」

瑠璃乃「少し、くすぐったいかもしれないけど……」ペロッ

姫芽「~~~っ!?!?」ビクッ

49: 2024/12/06(金) 19:48:02 ID:???00
姫芽「る、るりちゃ……るりちゃんせんぱい、い、いったい何を~……?」

瑠璃乃「吸血痕はちゃんと治さなきゃでしょ? ルリの唾液には、そういうの治せる成分が入ってるんだ」

瑠璃乃「だから……ほんのちょっと、じっとしててね……」ペロペロ

姫芽「ぁ……んぁ、んん……」ピクピク

姫芽(るりちゃんせんぱいの舌が、アタシの首元をくすぐって……なんだかアタシ、ヘンになっちゃいそう~……//)

50: 2024/12/06(金) 19:49:02 ID:???00
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瑠璃乃「……ん、これでおしまい!」

姫芽「……ぁ…………」ボー

瑠璃乃「ひ、ひめっち? ぼんやりしてるけど……大丈夫!?」

姫芽「い、いえ……アタシ、思ったんです……」

姫芽「なんだか……るりちゃんせんぱいと、もっとつながれたなぁ~……って~!」ニコッ

瑠璃乃「!」

51: 2024/12/06(金) 19:50:01 ID:???00
瑠璃乃「ルリも……ひめっちとおんなじこと思えたかも。頼っても良いんだって、やっとわかった気もするし」ウンウン

瑠璃乃「…………ひめっち。吸血、これからもお願いしてもいい……かな?」

姫芽「!! もちろんです~! これからもアタシ、るりちゃんせんぱいを支えますから~! 任せてください~!」

瑠璃乃「! うん! よろしくね、ひめっち!」ニコッ


おしまい

引用: 【SS】姫芽「るりちゃんせんぱいが吸血鬼~!?」