704: 2015/01/26(月) 16:26:22.08 ID:7dBCE7bS0
・弥生&早霜『……』 、投下します


前回はこちら


睦“月型”だからあのゲームだったり

705: 2015/01/26(月) 16:26:49.50 ID:7dBCE7bS0
――――鎮守府、休憩スペース。

(交友を広げる……私に出来るかしら?)

 口数が多い方ではなく、特定の相手以外とはあまり話さない早霜。しかし、この日は勇気を出して自分から積極的に話しかけようとこの場所を訪れていた。

(なるべく、大人しそうな人を)

 自分のペースで話せそうな相手を探し、ぐるりと見回す。元気系を除外、独特な雰囲気を持つ艦娘を除外、そして残った艦娘は――。

「あの……弥生さん」

「……? 弥生に、何か用?」

「・・・・・・」

(何を、話せばいいのかしら?)

 話しかけることには成功した。しかし、話をする為の話題を用意しておくのを、早霜はすっかり忘れていた。
 何か話さなければ変な人だと思われる、そう思って彼女はとにかく頭に浮かんだことを口にする。

「――那智さんの水偵、どう思う?」

「那智さんの水偵……見たこと無い、かな」

「……そう」




 早霜の交友の輪を広げよう大作戦、初日、戦術的敗北により撤退。
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録
706: 2015/01/26(月) 16:27:16.80 ID:7dBCE7bS0
(今日は話題をたくさん用意してきたし、これで大丈夫のはずよね)

 夜の三時までかけて考えた話題の数々。今の早霜に問題があるとすれば、寝不足という点だ。

「――弥生さん」

「今日は、何?」

「貴女の趣味は何かしら?」

「えっと……最近はゲーム、かな……?」

(ゲーム、あの初雪さん達がよくやっているアレね)

 趣味というのは、コミュニケーションにおいて大事な要素である。この情報だけで、早霜の目標は達成されたも同然だった。

「良ければ、私にも弥生さんがやっているゲームを教えてもらえる?」

「いい、けど……」

(目の下に隈……大丈夫、かな……?)




 早霜の交友の輪を広げよう大作戦、二日目、相手の情報を入手、戦術的勝利。

707: 2015/01/26(月) 16:27:43.87 ID:7dBCE7bS0
「――弥生さん」

(三日連続……何で、弥生に……?)

「何か、用?」

「昨日弥生さんが言っていたゲーム、一緒にやらない?」

 この時の早霜の目が真っ赤に充血していたことから、彼女の努力を察することが出来る。そして、この努力がある意味で最高の結果をもたらすのだった。




――――二十回目で、ようやく勝てたわ……。弥生さん、次は――弥生さん?

 ――――悔しくなんか、ないよ? 全然、悔しくなんか……。

――――(コントローラーがミシミシいっているけれど、大丈夫なのかしら……?)

 ――――(次は、負けない……!)




 翌日から、弥生と早霜が頻繁にゲームをする姿が目撃されるようになりました。なお、誘うのが早霜から弥生に代わった模様。

713: 2015/01/26(月) 20:08:56.14 ID:7dBCE7bS0
※分かる人用のおまけネタなので、分からなければ飛ばして大丈夫です。




「弥生さんは誰が持ちキャラなの?」

「都古と、レンと、白レン……かな」

(見事に小さい子ばかりね……)

「早霜は、誰?」

「私はさつきとシオンとリーズかしら……」

(路地裏、同盟……)

「初雪さんや他の方は?」

「初雪は、猫アルクか先生で……望月は、シキ四人。夕立と足柄さんは、赤主と暴走アルクと吸血鬼シオン……漣が、ひすこはで……夕張さんが、メカ翡翠……秋雲が、ワラキー……大和さんが、アルクと秋葉とシエルで……武蔵さんが、圧壊さん……だった、かな?」

「一番強いのは、誰なの?」

「大和さんと武蔵さん、初雪の三人……だと、思う」

(大和型のお二人がゲームしている姿が想像出来ないのだけど……どんな感じなのかしら)




暗黒漣流御奉仕水晶波。

718: 2015/01/27(火) 01:46:45.54 ID:2HU82UVa0
・古鷹&青葉『誤解』 、投下します

壁を掴んで回った方が、コーナーは楽

719: 2015/01/27(火) 01:47:12.76 ID:2HU82UVa0
――――鎮守府廊下。

「大鳳さん、青葉を見ませんでした?」

「青葉? 青葉ならさっきそこを右に――」

「ありがとうございます!」

「……喧嘩でもしたのかしら?」




「フユキじゃなかった吹雪古鷹が通りかかったら誤解だから話し合おうって言っておいてくれますかくれますよねお願いします!」

「えっ、えっ?」

「吹雪ちゃん、今ここへ青葉が来なかった?」

「来ましたけど、ごか――」

「どっちに行ったか教えてくれる!?」

「あっ、あっちに……」

「ありがとう!」

(……何だったんだろう?)




「待ちなさい青葉!」

「だからアレは誤解です! 事故なんです! 話し合えば人類皆分かり合えちゃうはずです!」

「とにかく止まって!」

「曲がり角の壁を破壊しながら追いかける相手に止まれと言われて止まれる訳ありませんよー!」

720: 2015/01/27(火) 01:47:38.26 ID:2HU82UVa0
――――提督執務室。

「また珍しい奴が鎮守府壊してくれたな、なぁ古鷹」

「ご、ごめんなさい……」

「はぁ……原因は何だ。二人とも聞いてやるから言ってみろ」

「青葉に、その……の写真を撮られたと思って」

「写真? 何のだ?」

「風で、スカートが……」

(あー……何となくは把握出来た)

「で、青葉はそれを撮ったのか?」

「青葉はそんな写真撮らないし記事にしないって司令官が一番知ってるじゃないですか! 中庭の風景が凄く絵になってたから撮影してただけですよ!」

「だよなぁ……ってことは、古鷹の通りかかったタイミングが悪かっただけか」

「撮ったかどうかは別にして、悪用はしないと分かってはいたんです。でも、青葉が急に逃げるから……」

「あんな鬼気迫る表情の古鷹見たら誰だって逃げちゃいますよ。青葉、直前にお花を摘んでなかったら今頃部屋に閉じ籠っちゃってたかもしれません」

(興奮すると目が光りっぱなしになるし、昼間とはいえ追いかけられたら逃げたくなる気持ちは分からんでもないな……)

「まぁ何にせよ、お互い誤解だと分かったんだからこの話は終わりだ。後、反省文な」

「「はい……」」

721: 2015/01/27(火) 01:48:06.68 ID:2HU82UVa0
――――青葉は良いと思うな、そのパンツ。

 ――――やめてよ、もう……。

――――勝負下着、青葉も黒にしよっと。

 ――――やめてったら。

747: 2015/01/27(火) 21:14:56.10 ID:2HU82UVa0
・潜水艦娘『安心安全寒中水泳教室』

・暁&叢雲『レディー叢雲』

・58&まるゆ『黒か白か』

・六駆Vs七駆『メイド服に興味はありませんか?』

・づほ『そんなに好きなら』(※R18です)

・瑞鶴Vs大鳳『幸運と不幸』

以上六本でお送りします

757: 2015/01/29(木) 01:10:34.29 ID:0LSdE6yT0
・潜水艦娘『安心安全寒中水泳教室』 、投下します

758: 2015/01/29(木) 01:11:00.35 ID:0LSdE6yT0
――――鎮守府、海辺。

「いっ、いいいちにんまえのれでーはこのぐらいのさむさへっ、へっくちゅんなんだから!」

「この水着、凄く身体にフィットします」

(……妹に負けてると、何か微妙な敗北感があるわね)

「浦風、スク水も可愛いわ」

「姉さんもよく似合っとるよ」

「白いスク水、これはいいな」

「皆集まってる?」

「うん、集まってるよ」

「じゃあ早速始めるのね」

「はっちゃんはここで本を読んで待ってるから、皆で――」

「ほらほら行こうよはっちゃん。海にどぼーんしよ!」

「待ってシオイ~他に人が居なくても裸になっちゃダメだよ~」

「あ、あかつきはじゅんびばんたんなんだからはやくちゅんよね」

「暁には後で身体が温まる飲み物を入れてあげるよ」

「最近は座ってる時間が長かったし、気を引き締める意味でも寒中水泳はいいわね」

(姉さんは部屋で毎日筋トレしとるし、いらん気もするんじゃけどねぇ)

「陽炎姉さん、ストレッチに付き合って下さい」

「いいわよー」




 寒中水泳教室(という名のスク水布教活動)、始まります。

759: 2015/01/29(木) 01:12:40.06 ID:0LSdE6yT0
――――海。

「目標は、あのブイまで行って帰ってくることでち」

「私達が居るから、足がつったり溺れかけてもすぐに助けるわ」

「浦風、あそこまで競争よ!」

「姉さんハンデ! ハンデが無いといくらなんでもちと無理じゃて!」

「では、私達も競争しましょう」

「流石に妹に負けたら一番艦として格好がつかないわ!」

「暁、顔色が悪いけど大丈夫かい?」

「だ、だだだいじょぶにきっ、きまってるじゃない」

「はっちゃんは、ここでプカプカ浮かびながら本を――」

「無しです!」

「なっ、何が何でも抵抗するよ、今日買ったばかりの新刊がはっちゃんを待ってるんだから!」

「シオイもはっちゃんも寒中水泳教室なんだから手伝おうよ~」

「やっぱり、それなりに皆泳げるわね」

「提督指定の水着の効果もおっきいよ」

「大鳳さん、全力出すとかちょっと大人げないのね」

「っ!? たっ、たすごぼごぼごぼ……」

「暁!?」

「ここはイクに任せて先に行くのね!」

「それじゃあ任せるよ、スパシーバ」

「何かヤケに暁だけ寒さに弱くない?」

「暁だけ“一人前のレディーは自分で水着を選ぶわ”って持参してたでち」

(一人前のレディーとして持参したのが、スク水なの……?)




 暁も提督指定(※違います)の水着を借りて参加となりました。

760: 2015/01/29(木) 01:13:05.81 ID:0LSdE6yT0
――――三十分後。

「流石にそろそろ寒くなってきたわ……」

「うちもちょっと身体が冷えてきたねぇ」

「もうこれで終わりでいいんじゃない?」

「まだまだ本番はこれからでち」

「次は鬼ごっこなのね」

「次ははっちゃんも参加するよ」

「浜風、何食べたらそんなに大きくなるの?」

「? 私は身長は低い方だと思いますが」

「シオイが聞きたいのはそういうことじゃないと思うけど……それよりシオイ、いい加減手伝ってくれない?」

「じゃあ皆で運河行く?」

「それは今度付き合うから、今は鬼ごっこね」

「うんうん、いいね鬼ごっこ、ありです!」

「まるゆさんは暁が捕まえるわ」

「頑張って追い掛けて来てね」

(余裕が感じられるな、これは一筋縄ではいかなさそうだ)




 全員ヘロヘロになるまで追いかけた結果、一人も捕まえられなかった模様。
 なお、飛び入りで現れた軽巡洋艦に追いかけられた彼女達は更に早かったそうな。

761: 2015/01/29(木) 08:50:33.13 ID:0LSdE6yT0
――――提督執務室。

「一般人向けにも寒中水泳教室をやりたい?」

「機能美に溢れるこの水着を広めたいでち」

「きっと売れるのね」

「提督も、着てみますか?」

「着たら撮って皆に送ってあげる」

「女性用のスク水なんぞ着れるか!」

「シオイと行く運河巡りツアーとかどうかな?」

「普通の人にあの距離は無理だと思うな……」

「何にせよ却下だ。カメラ持った奴が押し寄せるような事態は避けなきゃならんし、水着販売なんぞしたらそれこそいらんことを考える輩も出てくる」

「てーとく、いらんことって何?」

「……気にするな」




 〇ーヤの着ていた水着、五万八千円。

766: 2015/01/29(木) 21:59:32.62 ID:0LSdE6yT0
・暁&叢雲『レディー叢雲』 、投下します

767: 2015/01/29(木) 21:59:59.82 ID:0LSdE6yT0
(じー)

「……何よ」

「――堂々とした振る舞い」

「はぁ?」

「立てるところは立てて、引くところは引く」

「一体何の話?」

「叢雲って一人前のレディーなの!?」

「いっ、いきなり何なのよ、私は別にレディーなんて柄じゃないし」

「料理は?」

「まぁ、人並み程度には」

「掃除」

「そりゃ自分の部屋ぐらい片付けるわよ」

「洗濯」

「交代制」

「お化粧」

「毎日はしないわよ?」

「ドラム缶」

「何でドラム缶がその流れに入ってんのよ」

「ドラム缶は淑女のたしなみって熊野さんが」

「アンタ一回淑女とかレディーって言葉の意味を辞書で調べてきたら?」

768: 2015/01/29(木) 22:00:38.21 ID:0LSdE6yT0
「そもそも、何でそんなに一人前のレディーに拘ってんのよ」

「子供扱いされたら嫌なの!」

「どう見てもお子様じゃない」

「お子様言うなー!」

「――じゃあアンタはここから出て一ヶ月、一人で生活出来るの?」

「そっ、そのぐらいへっちゃらだし」

「司令官の力も、誰の力も借りずに?」

「うっ……」

「よく聞きなさい。程度はどうあれ、私達はまだ“子供”なの。荒潮や漣みたいに自分で稼ぎ始めてるのもいるけど、基本的には鎮守府内で司令官の庇護があるから可能なだけ、アンタはまずそこを自覚なさいな」

「……それだけしっかり考えてるのに、叢雲もまだ子供なの?」

「少なくとも、アンタよりは大人ね」

「頭をポンポンしないでよっ! もうっ!」

「まっ、精々頑張んなさい。一人前のレディーさん」

「――むっ、叢雲!」

「何よ、まだ何か用なの?」

「……その、ありがとう、なのです」

「ふんっ、別に礼を言われるようなことはしてないわ、じゃあね」

(――よし!)




――――何だかんだ面倒見良いよな、お前も。

 ――――盗み聞きとか趣味悪いわね。

――――お詫びにケーキでどうだ?

 ――――……食べる。

778: 2015/01/31(土) 01:49:44.56 ID:4s7ioD0C0
・58&まるゆ『黒か白か』、投下します

779: 2015/01/31(土) 01:50:10.99 ID:4s7ioD0C0
――――潜水艦娘私室。

「まるゆ、明日一緒に動物園行こ」

「いいけど、何で動物園に?」

「有効期限が明日までの無料入場券、二枚貰ったの」

「イムヤとかシオイの方が喜びそうだけど、まるゆでいいの?」

「他の皆は用事あるみたいでち。皆で行くなら割り勘して行こうかと思ってたけど、たまには二人っきりもいいよね」

「うん、そういうことなら行こっかな」

「じゃあ明日はお弁当作るでち」

「お弁当作るの、まるゆも手伝うね」

「ゴーヤいっぱい入れるでち」

「緑一色はやだよ……?」

780: 2015/01/31(土) 01:50:36.91 ID:4s7ioD0C0
――――動物園。

「うわぁ~動物がいっぱい」

「まるゆは何が見たいの?」

「まるゆはシロクマが見たいな」

「じゃあまずはシロクマ見に行くでち」

「うん!」




「――シロクマ、白いでち」

「だってシロクマだもん」

「でも、シロクマって地肌は黒いってはっちゃんが言ってたよ」

「じゃあまるゆみたいに白い水着を着てるんだね」

(はっちゃんに毛は透明だっていうのも聞いたけど、黙っといた方が良さそうでちね)

「次はゴーヤの見たい動物見に行こ?」

「ゴーヤはペンギンが見たいな」

「えーっと……ペンギンはあっちだね」

「あっ、アレはコウテイペンギンでち!」

「コウテイペンギン好きなの?」

「好きでち! 大好きでち! コウテイペンギンはペンギンの中の潜水艦なんでち!」

「へー、潜るの得意なペンギンなんだね」

「ゴーヤも一度ペンギンと潜ってみたいよぉ……」

(ペンギン、そんなに好きなんだ……)




――――もぐらは見に行かなくていいでちか?

 ――――まるゆ、もぐらじゃないもん!

――――冗談でち。

782: 2015/02/01(日) 19:01:14.78 ID:GaWW+aCV0
・六駆Vs七駆『メイド服に興味はありませんか?』、投下します

試合に負けて、勝負に勝つ

783: 2015/02/01(日) 19:01:42.42 ID:GaWW+aCV0
「お願いしますよ一人前のレディーの暁ちゃん」

「もうその手には乗らないんだから」

「なん……だと……?」

「暁、何かあった?」

「一人前のレディーに本当に少し近付いたみたいだよ。――ハラショー、この寿司は美味しいな」

「蟹の押し寿司、メニューに入れたいけど漣がダメって……」

「雷ちゃん、ヲーちゃんにあげるのにこのクッキー貰っていいかな?」

「どうぞ、たまたま卵が余ったから焼いただけだし、喜んで食べてくれるなら私も嬉しいわ」

「電、先に言っとくわ。御愁傷様」

「? 曙、それはどういう意味なのですか?」




「御主人様が暁にメロメロになっちゃうような服、欲しくありません?」

「ほ、欲しい、かも……」

(フィッシュ!)




 陥落まで三十八秒、暁の真のレディーへの道と朧のメイド喫茶蟹フェアへの道は遠い。

784: 2015/02/01(日) 19:02:09.11 ID:GaWW+aCV0
――――演習場。

「やるからには、絶対負けない」

「暁だって負けないんだから」

「勝ったら選べるのかい?」

「勝てれば選ばせてあげますよー勝てればですがねー」

「漣ちゃんが迷惑かけてごめんね……」

「いいのよ潮、私は全然気にしてないわ」

「電、恨むなら発育の良い自分の身体を恨みなさい」

「絶対に負けられないのです……」




 第六駆逐隊対第七駆逐隊。勝負は四対四の演習方式。

 旗艦を撃沈、または全艦撃沈判定が出た時点で終了。審判は取材待ちの青葉。

 第六駆逐隊が勝利した場合、“可愛い服”が漣より第六駆逐隊へ贈られる。

 第七駆逐隊が勝利した場合、漣製作のメイド服を着て第六駆逐隊は店を手伝わなければならない。




 ――今、試合の前に勝負がついている戦いの火蓋が切って落とされる。

785: 2015/02/01(日) 19:02:36.43 ID:GaWW+aCV0
「ではでは双方準備はいいですね? 取材、じゃなくて演習始め!」

 開始の合図と同時に飛び出したのは朧。その負けず嫌いな性格は、戦い方にもよく表れている。

(勝ったら蟹メニュー追加、朧がやらなきゃ!)

 それを後方から援護するのが、潮と曙だ。
 自信の無さからひたすら訓練したことにより培った、正確で素早い砲撃を放つ潮。そして、その性格ゆえに培った観察力で状況把握に長けた曙。
 この二人が阿吽の呼吸で砲撃するというのも、見る者によっては珍しく映るだろう。

(負けたら犬耳……負けたら犬耳……)

(べ、別にクソ提督と二人っきりで店を使わせてもらえる権利とかどうでもいいけど、負けるのは嫌だし、それだけなんだから!)

 そして、第七駆逐隊のブレインであり今回の旗艦であり元凶である漣は、ただ意識を相手の一艦のみに集中させていた。

(朧達はほっといてもすぐに勝敗が着く様なことは無いでしょうし、とにかく私は落とされないようにしないといけませんねー)




 待機艦隊の裏に隠れた怪物が一人、静かに漣へと狙いを定める。

786: 2015/02/01(日) 19:03:06.77 ID:GaWW+aCV0
「ここから先へは行かせないよ」

「不氏鳥にだって、朧は負けないから」

「信頼の名も忘れてもらっては困るな」

(ここは、無理矢理にでも通る!)

 相対して十五秒、先に動いたのは朧だった。

「その真っ直ぐなところ、嫌いじゃない」

 近距離から放たれた魚雷、それ等をかわし、通り抜けようとする朧へとヴェールヌイは砲を構える。

「これで――っ!?」

 直感に従い、彼女はそのまま撃たずに身体を大きく捻りその場で旋回する。
 次の瞬間、脇腹辺りを狙っていたであろう砲撃が服を掠め、目標を見失った弾が近くの水面に水柱を立てた。

(流石に今のは危なかったな……まぁいいさ、多少なりとも時間は稼げた)

「――メイド服、似合っていたよ」

「うぅ……恥ずかしいから今はやめて……」




 朧、ヴェールヌイを振り切り暁の居る方向へと航行中。
 ヴェールヌイは潮の足止めへと作戦を移行。
 潮、どう足掻いても犬耳。

787: 2015/02/01(日) 19:03:33.61 ID:GaWW+aCV0
「いーい? 司令官の好みはね――」

「ちょっと待って、青葉さん!」

「はいはーい、審判の青葉に何か用?」

「ペンと紙貸して」

「おやおや? 勝負はいいの?」

「それより重要だからパス(料理の好みとか今聞いとかないと後悔しそうだし……)」

(小声でボソボソ言っても、青葉には聞こえちゃいました)

「よし、いいわよ雷」

「よく聞いてね、司令官の好みは――」




 雷、曙の二名は勝負を放棄。曙は某人物の好む味付けや料理の話を聞く方が今後の事を考えると有意義と判断、雷は最初から勝っても負けても着るつもりだったので関係無かった模様。




 なお、青葉のペンも雷の話に合わせて動いていたのは、内緒である。

788: 2015/02/01(日) 19:04:06.52 ID:GaWW+aCV0
「来たわね」

「蟹フェアの為、覚悟!」

「暁だってレディーに相応しい服の為に負けないんだから!」

 互いに砲を構え、一騎討ちの狼煙が挙げられ――ることは無かった。




『第七駆逐隊旗艦、漣の轟沈を青葉確認しました!』




「漣、負けるの早い」

「うぐっ……何も言えねぇ……」

「ハラショー、コイツは力を感じる」

「響ちゃんはそういうの着けるの抵抗無いんだね……」

「でね、後はみりんと――」

「ちょっと待って、みりんはどのぐらい?」

「よくやったわ電、流石暁の妹ね」

(胸元の開いたメイド服なんて、絶対に着ないのです……)




 後日、姉三人を味方に引き込んだ漣の策略により、普通のメイド服ならと妥協した電の姿があったそうな。




「写真撮影は青葉にお任せ、可愛く撮ってあげるね!」

 ※写真の一般公開はされておりません、見たければ当鎮守府までお立ち寄り下さい。

791: 2015/02/01(日) 20:24:10.79 ID:GaWW+aCV0
 ――第一艦隊。

 弾幕を途切れさせてはならない。もし途切れれば、その瞬間に数の暴力が彼女達へと押し迫り、その柔らかな肢体を蹂躙(じゅうりん)することだろう。

 そうならないためにも、現れた鬼級への迅速な対応は必要不可欠だ。砲撃と補給以外に回避という選択を何度も迫られるのは、戦線が崩れる原因になりかねない。

 吹雪もそれは重々承知しており、短い時間で最適解を出そうと思考をフル回転させる。

(長門さんでも一度に九体は無理。分散しても四から五体。ある程度接近して叩かないと他の深海棲艦が庇っちゃうし、あの密集状態だと空からだけでやっつけてもらうのも厳しいかも……)

 鬼級九隻を叩くだけならば、この艦隊の練度ならば容易だ。しかし、損耗を最小限にかつ戦線は維持となると、途端にその難易度は跳ね上がる。

 ――だが、それはあくまでこの艦隊だけで迎撃するならばの話だ。




「――こちらG地点防衛艦隊旗艦、吹雪です。現在接近中の鬼級九隻に対してこちらから打って出ます。協力をお願いします!」




 日独二国連合艦隊。ここに集う艦娘に、この戦いにかける思いの差こそあれ、その強さに嘘偽りは無い。



引用: 【艦これ】大鳳「浦風が可愛い鎮守府」提督「多分一応は鎮守府」