302: 2015/03/06(金) 22:59:05.91 ID:VEdyXsVg0
・チビ舞風&野分『(カワイイ)』 、投下します

前回はこちら


303: 2015/03/06(金) 22:59:33.52 ID:VEdyXsVg0
「のわき~」

「まいか……ぜ?」

「のわきのわき、いっしょにおどろ?」

 その時の野分の心境を言い表すとすれば、小さい頃いつも一緒に遊んでいた女の子と十年振りに再会し、当時から密かに胸の内で芽生えていた恋心に気付かされた学園物男主人公の様な衝撃を彼女は受けていた。

(これが舞風なの? 舞風が小さいだけでこんなに可愛く見えるなんて……)

「のーわーきー」

 袖を引っ張りブラブラと腕を揺らす、推定二~三歳前後の舞風。元々寂しがり屋な節がある彼女に無視は禁物であり、硬直している野分を見上げながら頬を膨らませている。
 姉妹というより親友の関係に近い二人であるからこそ、少し思考が幼くなっても野分に舞風は完全に心を許しているし、野分は戸惑いを隠せないでいた。

「――舞風、抱っこしてもいい?」

「いいよ?」

 ノータイムの返答、自分の口から出た言葉、そのどちらにも驚きつつ、恐る恐る野分は舞風を抱き上げる。
 少しずっしりと重みを感じるものの、那珂と舞風のダンス演習を乗り越えた彼女にとっては苦でもない。顔の前まで持ち上げて間近で見た小さい親友の笑顔に、野分の表情も自然と優しいものへと変わる。

「じゃあ、踊りましょうか」

「おどろおどろ、ワンツーワンツー」

 首を左右に振ってリズムを取る舞風を抱いたまま、ダンス練習場へと向かう。
 その時の二人は、いつもの友達のような関係ではなく、仲良しな姉妹の関係に見えた。
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録
304: 2015/03/06(金) 23:00:00.73 ID:VEdyXsVg0
「――のわき、つぎこれ!」

「その曲ね、いいわ」

 ダンス練習用の曲を次々と流しながら、二人は一緒に踊り続けていた。
 普段はぎこちない笑顔や真剣な顔でダンスに付き合っていた野分も、今日は自然に笑みを浮かべている。

「ここでターン!――っと、っとっ、きゃあっ!?」

「舞風!?」

「あたた、しっぱいしっぱい、こけちゃった」

「怪我は……無いみたいね。ずっと踊ってたし、そろそろ休憩しましょうか」

「うん、そだね」

 壁に背中を預けて二人で座り、しばしの休憩を取る。軽く二時間は踊っていたこともあり、火照った身体に床の冷たさが心地好いものとなっていた。

「――ねぇ、のわき」

「何、舞風」

「すこし、もたれていい?」

「うん、いいわよ」

 肩に感じる重み、それはどこか安らぐもので、野分もまた頭をそちらに傾ける。
 舞風から小さな寝息が聞こえてきたのと、野分の意識が深く落ちていくのに、あまり時間の差は無かった。




――――どうした陽炎、ネギと卵なんか持って。

 ――――鳳翔さんにもらったの。汗掻いたまま着替えもせずに寝て、風邪引いた妹二人の世話よ。

314: 2015/03/09(月) 10:45:56.19 ID:yjHDBA5R0
・陽炎&曙『お話したいの?』、投下します

315: 2015/03/09(月) 10:46:40.18 ID:yjHDBA5R0
「――曙? こんなところで会うなんて奇遇ね、一人?」

「一人よ、悪い?」

「別に悪いなんて思ってないわよ、私も一人だし」

「……とりあえず、座れば?」

「それもそうね、じゃあ遠慮なく」

「陽炎のそれ、何?」

「普通のカフェラテだけど」

「ふーん、もっと色々アレンジしたのを飲むと思ってた」

「曙の中の私のイメージってどうなってんのよ……それで、曙は?」

「モカ」

「一口貰ってもいい?」

「別にいいけど……」

「あぁ、代わりに私のも一口飲んでいいわよ」

「……砂糖は?」

「スティック半分」

「やめとく」

「――モカ、結構甘いわね」

「陽炎ってクソ提督と一緒なの?」

「私にはカカオ九十九パーのブラックチョコなんて食べらんないって」

「何それ、聞くだけで口の中苦くなってきた……」

「司令が眠気覚まし代わりに常備してるから、試しに貰ってみれば?」

「ミントタブとかそういうの食べなさいよ、あのクソ提督」

「ミント苦手で間違えて口に含んだら洗面所に駆け込むらしいわね。黒潮がたまにそれでからかって遊んでるらしいわよ」

「ふふっ、やっぱりちょっと情けないのがクソ提督らしいかも」

「司令はいざって時に頼れればそれでいいのよ。……まぁ、ほったらかしにされた時はかなりムカついたけど」

「――陽炎、もう大丈夫だから」

「んー? 何の話?」

「漣か潮にでも頼まれて来たんでしょ?」

「私が来たのは偶然よ、偶然」

「陽炎はス〇バ派って、黒潮に前に聞いた」

「たまには気分で違う店に来たりもすることもあるわよ」

「……あっそ、まぁいいけど」

「それよりこの後どうするの? 一緒に買い物でも行く?」

「ううん、そろそろ戻って謝らないと。喧嘩したまま鎮守府に戻るの嫌だし」

「そ、じゃあ買い物はまた今度ね」

「覚えてたらね」



「――苦っ、砂糖半分じゃやっぱり足りなかったかも……」



――――陽炎と曙が買い物? 珍しい組み合わせだな。

 ――――私が教えた店に行くと言っていた。お互い気が強いという点で気が合ったのだろう。

316: 2015/03/09(月) 12:32:39.95 ID:ZhrEmhDMO
おつです

この二人は抜錨の影響か地味に仲が良いイメージするなぁ…

321: 2015/03/10(火) 10:34:50.70 ID:4Th26owf0
・清霜&翔鶴『艦載機はちょっと……』、投下します

日向がアップを始めました

322: 2015/03/10(火) 10:35:30.11 ID:4Th26owf0
――――工廠。

「夕張、ちょっと艤装を見てもらえないかしら?」

「あっ、今ちょっと取り込んでて後に――」

「翔鶴さん、航空甲板貸して!」

「き、清霜ちゃん?」

「航空戦艦って空母と戦艦の合体した最強の艦種なんでしょ? 私も艦載機飛ばしたい!」

「……夕張、どういうこと?」

「どうもアニメで合体ロボット物見せたらそういう結論に至っちゃったみたいで……」

(駆逐艦娘の子がたまに肩車したりして遊んでるのを見かけるけど、その影響かしら……)

「ごめんなさい、清霜ちゃん。この航空甲板は貸せるようなものじゃないし、私専用だから例え他の空母の皆さんでもこれは扱えないの」

「じゃあじゃあ艦載機の飛ばし方教えて!」

「飛ばす為には航空甲板が無いと……」

「でも、ほっぽちゃんは飛ばしてるよ?」

 ――次ハ三回転捻リ!

 ――蒼龍、合わせてよ?

 ――言われなくても!

「あの子は、少し特別だから」

「清霜もいつかは飛ばせるようになる?」

「――どう頑張っても、清霜ちゃんに艦載機は飛ばせないの」

「……うん、そうだよね。私、駆逐艦だもん」

「でも、艦載機は飛ばせなくても他の物は飛ばせるようになるかもしれないわ。――ねぇ、夕張?」

「へっ?」

「夕張なら出来るわよね。いつも私達の為に新装備の開発や調整を本当に頑張ってくれていたもの」

「ホント!? 夕張さん、清霜にもいつかは飛ばせるようになる?」

「えっ、いや、出来なくは無いかもしれないけど、そんな開発提督が認めてくれるかどうか……」

「司令官がいいって言ったら作ってくれるの!? じゃあ今から頼んでくる!」

「あっ、ちょっと清霜ちゃん!? 翔鶴さん、私に振るなんて酷いですよぉ……」

「ふふっ、がむしゃらに頑張るあの子を見てたら、加賀さんにずっと挑み続けてる瑞鶴と重なるの。だからつい応援したくなってしまって」

「まぁでも、提督が許可する訳無いですよね。とりあえず翔鶴さん、航空甲板見せて下さい」

「あらやだ、その為に来たのすっかり忘れてたわ。じゃあお願いね」




 自律型艦載機の研究開発が開始されました。

328: 2015/03/11(水) 20:50:04.38 ID:Qsh5gqK30
・南雲機動部隊『大概にして欲しいものね』、投下します

赤城さんをキレさせたら大したもんですよ

二航戦はこんなこと言わない

329: 2015/03/11(水) 20:50:33.55 ID:Qsh5gqK30
「――なかなか綺麗に揃いませんね」

「飛龍、蒼龍、もう少し私達に合わせてちょうだい」

「加賀さん達こそ、もうちょっとこっちに合わせてもらえませんか?」

「一航戦のお二人なら簡単ですよね」

「今までこういう艦載機の飛ばし方はあまりしたことがありませんでしたから、なかなか難しいです」

「赤城さんの言う通りね、実戦でこんな飛ばし方は必要無かったわ」

「それはつまり、お二人より私と蒼龍の方が戦闘以外では艦載機をうまく操れると認めるってことですか?」

「どうしてそうなるのか理解に苦しみます」

「加賀、威嚇しちゃダメですよ。互いの息を合わせようとしているのにこんな風にいがみ合っていたら、まとまるものもまとまらなくなります」

「――そういう赤城さんも、単独行動大好きですよね? 勝手に飛び出して帰って来ない日多かったし……」

「蒼龍、そのことについて不満があるなら今ここで全部聞きますよ?」

「ついでに言わせてもらうなら、加賀さんは赤城さんに甘過ぎます」

「私は甘くしたつもりはありません」

「この前は元帥のところの卯月に負けてたし、平和ボケしてません?」

「頭に来ました。そこまで言うなら試してみますか? 実戦で」

「その怒りっぽいところも直した方がいいんじゃないですか?」

「飛龍、少し言い過ぎよ。加賀も落ち着いて」

「赤城さんにはもっと本音出して欲しいなぁ。誰とも本気でぶつからず、いつも壁がある気がするし」

「私は別に壁を作っているつもりは……」

「蒼龍、言うだけ無駄だって。赤城さんは鎮守府に居るより外で美味しいご飯食べてる方が好きな人なんだから」

「っ……」

「――流石に我慢の限界です。構えなさい、二人とも相手をしてあげるわ」




「――喧嘩、ダメェェェェェ!」

330: 2015/03/11(水) 20:51:00.64 ID:Qsh5gqK30
「ごめんね、ほっぽちゃん……」

「皆、仲良クシナキャ、メッ!」

(可愛い)

「蒼龍、顔がだらしなくなってますよ」

「全く……私達と本気で演習したいからと怒らせるような言動を繰り返すなんて、本当に大概にして欲しいものね」

「何ていうかこう、今のお二人は完全に牙が抜けてる感じがしたからつい……」

「でもでも、艦載機の息を合わせるのがお二人の方が下手なのは事実ですよ?」

「そこは認めます」

「私もそれについては認めます、単独行動も事実ですし……」

「――赤城さんが出ていっていた理由、ちゃんと私達も知ってます」

「ごめんなさい、あんなに悲しそうな顔されるとは思ってなくて……」

「いえ、いいんですよ。理解して貰えていたのなら、いいんです」

「仲直リ?」

「うん、ちゃんと仲直りしたよ」

「まぁ、私も少し大人げなかったわね」

「赤城さん、今度ご飯連れてって下さい」

「いいですね、四人で行きましょうか」

「オ土産、買ッテキテ!」




 菱餅を五人で頬張りながら仲直りしました。

336: 2015/03/12(木) 22:52:56.90 ID:yUSUK4N70
・浦風『えぇ加減にせぇ言うとるんじゃ!』 、投下します

(浦風依存度が危険領域に達しつつあるけど)大丈夫だ、問題ない

337: 2015/03/12(木) 22:53:24.79 ID:yUSUK4N70
「――姉さん?」

「な、なぁに浦風」

「うちと姉さんでした大事な約束、覚えとる?」

「忘れるわけ無いじゃない。ちゃんと覚えてるわ」

「そうじゃ、姉さんが忘れとるわけ無い。じゃけぇこれは念のためじゃけど、全部言うてみ?」

「夏は別々のベッドで寝る」

「夏は暑いし、一緒に寝とるとぶち寝苦しいけぇね」

(その分、冬は天国だわ)

「次、二つ目じゃ」

「写真は許可を取る」

「いくら何でも隠し撮りはえぇ気せんよ?」

「や、約束してからは一度も隠し撮りはしてないわよ?」

「最後、問題の三つ目じゃ」

「尾行しない」

「――姉さん、この前後ろからつけて来とったじゃろ」

「か、勘違いじゃないかしら?」

「目が泳いどるよ。正直に言うたら怒らんけぇ、言うてみ?」

「……しました、ごめんなさい」

「よぅ正直に言うてくれたね姉さん。――じゃけえ、うちの写真を半分処分でこの話は終わりじゃ」

「うっ、浦風!?」

「そこ退き、机の引き出し開けられんけぇ」

(引き出しの中……)

「仕方無いわね、悪いのは私だもの。処分されても文句は言えないわ」

「USBとSDカードは確かここじゃったかなぁ……」

「浦風待って、そっちはダメ。私がこの数年集めた宝物がそこにはたくさんつまってるの」

「――姉さん」

「わ、分かってくれたの?」

「うちが陽炎姉さん達の部屋に戻るんと、写真処分、どっちがえぇかねぇ?」

「写真でお願い」

338: 2015/03/12(木) 22:53:51.95 ID:yUSUK4N70
(浦風のメイド服姿が……チャイナ姿が……)

「これに懲りたら、もううちのこと尾行しちゃいけんよ?」

「えぇ……もう絶対にしないわ……」

「心配せんでも、うちはちゃんと姉さんのとこ帰ってくるけぇ」

「LINEはしてもいいわよね?」

「既読が付いて五分で不安にならんのじゃったらえぇよ」

「努力はしてみるわ」




 十分が限界でした。

362: 2015/03/13(金) 22:04:31.76 ID:HW4s92Tj0
「今回は、この武蔵がダイスを振らせてもらおう」

「全ダイス、一斉射!」

 ――3! 4! 5!

「ふむ、また前回とは少し違った目になったな」

「1と2が少なめなのはいささか不本意なところではあるが、仕方あるまい」

「……時に大和、細くて堅いものはないか? 後、パテも頼む」

363: 2015/03/13(金) 22:12:47.69 ID:HW4s92Tj0
・黒潮『司令はんとまったり』

・天城&那珂『全艦娘アイドル化計画』

・浦風『提督さん、どうじゃ?』

・ちび浦風&大鳳『姉さんのテンションがおかしい』

・山城『提督、少し休んだらどうですか?』

・飛鷹&妙高『静かに酒を』

以上六本でお送りします

364: 2015/03/13(金) 22:14:54.66 ID:HW4s92Tj0
・黒潮『司令はんとまったり』 、投下します

黒潮はイントネーションが京都よりで言ってることは商売系関西弁っぽい?

365: 2015/03/13(金) 22:15:22.00 ID:HW4s92Tj0
「司令はん、今晩何食べたい?」

「任せる」

「納豆キムチドリアン入りお好み焼きデスソースがけでもえぇの?」

「せめて黒潮も食べて美味しいと感じるものにしてくれ」

「ほな、ホットケーキでも焼こか」

「それ、今お前が食いたいだけじゃないのか?」

「嫌やわ~そんなん当たり前やん」

「だったら焼いてきてくれ。ちょうど間食には良い時間だしな」

「えぇよ~。司令はんのはこんがり焼いてくるわ」

「黒焦げはやめろよ?」

「そんな勿体無いことしたら罰当たるからせぇへんよ。絶妙にホットケーキっぽぅない食感にするだけや」

「だからやめろ、美味しく作ってくれ」

「心配せんでも大丈夫や。うちが司令はんにまずいもん作るわけないやんか。うちの愛情たっぷり入れとくから、期待して待っとってな~」

「――あぁいうのを一切躊躇いなく言えるのが、アイツの凄いところだよな……」

366: 2015/03/13(金) 22:15:55.98 ID:HW4s92Tj0
「おまっとぅさん、出来たで~」

「あぁ、ありがとな。その横にあるのはどれがどれだ?」

「右からマーガリンやろ、メープルシロップやろ、イチゴジャムに、デスソースや」

「お前のその熱いデスソース推しは何なんだよ」

「冗談や冗談。ただのタバスコやから安心してえぇよ」

「そうか、タバスコなら安心――な訳あるかっ!」

「司令はん、辛いん大丈夫やんか」

「そういう問題じゃ無いだろ……」

「ほな、うちが使おか」

「あっ、おいっ!?」

「――うん、ちょっと酸っぱいけど美味しいわぁ、このラズベリーソース」

「……俺も二枚目はそれにするか」

「司令はん」

「何だ?」

「何だやのぅて、あーんや」

「……あーん」

「はい、司令はん」

「――ラズベリーもなかなかいけるな」

「うちのあーん代、百万円払(はろ)てな?」

「相当なぼったくりだな」

「なぁ、司令はんもはよしてぇや。それでチャラにしたげるわ」

「急かすなよ、ほら」

「――うん、イチゴジャムも甘くて美味しいわぁ」

「黒潮、結局晩飯はどうするんだ?」

「そやなぁ、またお好み焼きでもしよか」

「お好み焼きか、そりゃ楽しみだ」

「モダン焼きも出来るけど、司令はんはどっちがえぇの?」

「じゃあ今回はモダン焼きで頼む」

「ほな、これ食べたら先にちょっと準備してくるわ」

「分かった」




――――黒潮、熱い、せめて冷ましてからにしてくれ。

 ――――うちの愛情の熱さや、頑張ってそのまま食べてぇな。

――――無茶言うなよ……。

 ――――あっ、うちにはちゃんと冷ましてからあーんてせな怒んで?

――――お前も大概良い性格してるよな。

374: 2015/03/15(日) 00:25:31.46 ID:VverVzgF0
・天城&那珂『全艦娘アイドル化計画』 、投下します

諦めないよ、那珂ちゃんはアイドルだから

375: 2015/03/15(日) 00:26:00.61 ID:VverVzgF0
「天城さん、那珂ちゃんと一緒に歌おっ!」

「えーっと、話が見えないんですけど……」

 勢いよく雲龍型の私室の扉を開けて走り寄り、ぶつかりそうなほど顔を間近に近付け、開口一番歌おうと誘う艦隊のアイドル。
 天城が助けを求めて隣の姉へと視線を送るも、雲龍は開けっ放しの扉を閉めに行った後、また元の位置に座って何事も無かったかのように朝食を食べ始めていた。
 救いの手は無いのだと諦め彼女が前に視線を戻すと、キラキラした目が出迎える。

「天城さんって、お風呂で鼻唄を歌うのが好きなんでしょ?」

「な、何で知ってるんですか!?」

「那珂ちゃんはー情報提供者の名前を明かしたりしないんだよー?」

 着任間もない天城が入浴中に鼻歌を歌っているのを知っている人物など、彼女が知る限り一人しか居ない。
 またもや視線を横に向けると、そっぽを向いておにぎりを黙々と食べる姉の姿が目に入り、言ったのは雲龍だと天城は確信する。
 ただ、それがわかったところで、両手をがっしりと掴みずっと熱い視線を送り続けてくる那珂をどうにか出来るというわけでもない。

「その一緒に歌うというのは、からおけとかいう場所に行って歌うということですか?」

「それもいいけどー那珂ちゃんと一緒にステージで歌うのが楽しいと思うなー」

「む、無理ですよそんなの!」

「雲龍さんはオッケーしてくれたよ?」

「雲龍姉様が? 本当なんですか、雲龍姉様」

「優秀な調理器具をくれると言うから」

「姉様……」

 完全に買収されている姉に嘆きながら、天城はなおも抵抗しようと断る口実を探す。

「人に聞かせられるほど上手くは――」

「那珂ちゃんがレッスンするからノープロブレムだよ!」

「踊れ――」

「野分ちゃんも一週間で完璧に踊れるようになっちゃった、きゃはっ」

「恥ず――」

「那珂ちゃんのステージ衣装はー雲龍さんと天城さんの服よりも露出は少ない方だと思うなー」

「私は着物ですから、そんなに露出は――」

「アイドルスキル! 早着替えカッコ脱がすだけバージョン!」

「きゃあっ!? やっ、やめ――」

「……那珂ちゃんは、絶対お色気路線には変更しないんだからー!」

「あ、アレ……? 一難、去ったのでしょうか?」




 天城のキャストオフ、効果は抜群だ。那珂ちゃんは撤退した。

377: 2015/03/15(日) 01:32:29.03 ID:VverVzgF0
~おまけ~

「そこ、ちゃんと胸が破裂しそうってところを強調しなきゃダメなんだよ?」

「胸が破裂!?」




「愛しいお兄様がいると思って切なさを表現してね?」

「私には姉様しか居ないんですけど……」




「学園の歌姫っぽくだよ!」

「そもそも私は学校に通ったことが……」




「平安の世から転生を繰り返してまた現代で出会い切ないほど惹かれ合う気持ちを表現して!」

「へ、平安? 転生?」




「犬耳の王女様が国の人達を元気付けるのをイメージして!」

「無茶言わないで下さい!」




 那珂ちゃんのレッスンは的確(?)で完璧(?)でした。

381: 2015/03/15(日) 21:47:16.42 ID:VverVzgF0
・浦風『提督さん、どうじゃ?』、投下します

提督と大鳳の気持ちが通じ合った瞬間

382: 2015/03/15(日) 21:47:42.35 ID:VverVzgF0
「提督さん、どうじゃ? うち、綺麗になっとる?」

「少し雰囲気は変わってるが、綺麗よりはまだ可愛いって感じだな」

 チラリと一瞥し、感想を述べる。流石に化粧に気を遣っている陸奥だけあって、浦風の良さが際立つメイクが施されていた。

「可愛くはなっとるん?」

「……なってる」

「んー? 提督さん、目逸らしながらじゃとよぅ分からんじゃろ? こっち見ながら言うてみ?」

 自分に視線を向けぬまま答えた提督に、浦風は子供に問うような口調で重ねて感想を聞く。その表情は、とてもにこやかだ。

「もう十分見た、書類書かせろ」

「全然さっきから進んどらんし、こっちに来て休憩したらどうじゃ?」

「今日はいつになく積極的だな、浦風。何か良いことでもあったのか?」

「話逸らそうとしても無駄じゃて。提督さん、お茶入れたけぇ冷める前にこっち来るんじゃ」

 明らかに駆逐艦娘の化粧による変化を次々に見せられて動揺しているのはバレバレであり、浦風は早く諦めてこっちに来いとソファーをポンポンと叩いて招く。

「――はぁ、分かったよ」

 何とかペンを走らせ書類に集中しようとしていた提督も、結局最後は折れて腰を上げるのだった。

383: 2015/03/15(日) 21:48:18.51 ID:VverVzgF0
「姉さんに言われるんも嬉しいけど、提督さんに言われるのもぶち嬉しいけぇ、ちゃんと言って欲しいんじゃ」

「化粧なんぞしなくても、浦風は可愛いと思うぞ」

「コラ、その答えは女の子の気持ちを無視しとるよ」

「事実を言っただけだろ」

「もっと可愛くなった自分を見せたいって願うんは、いけんこと?」

「……悪いとは言ってない」

「提督さん、今思うとることを正直に言うてみりゃえぇだけじゃけぇ、言うてみ?」

「……大鳳の気持ちが、かなり分かった」

「んー? それだけじゃとうちにはちゃんと伝わらんけぇ、もう一回じゃ」

「……三十路手前で不覚にもドキッとさせられまくって休憩したいんだよ、ちょっと化粧しただけでこれとかメイク恐ろしすぎなんだよ、口リコン扱いされるかも分からんが全員いつもより可愛かったよ、コレでいいか!?」




「――うちだけを見て、次は言うてね?」

389: 2015/03/16(月) 22:16:22.39 ID:oAsNePAM0
・ちび浦風&大鳳『姉さんのテンションがおかしい』、投下します

浦風が望んだことを否定したりはしない

390: 2015/03/16(月) 22:16:51.37 ID:oAsNePAM0
「あぁもう可愛くてたまらないわ! このまま小さくなったままにならないかしら? でも成長していく浦風も見たいし、いっそ二人になってくれたら解決するのだけど、流石にそれは無理よね……」

「ねぇさん」

「あら? なぁに浦風、ジュース?」

「ちぃとおちつくんじゃ。はたからみたら、そうとうあぶないひとになっとるよ?」

「そう? 私は至って普通だし、いつも通りよ?」

「そのたいりょうにかかえたこどもふくは、なんじゃの?」

「勿論、浦風に今から着てもらうわ。この日の為に密かに買っておいたの」

「うち、かげろうねぇさんたちのへやにきょうからいっしゅうかん――」

「最初はこの服を着てみてくれないかしら? きっと今の浦風に似合うと思うわよ」

(……ねぇさんにわるぎはない。わるぎはないけぇ、みっかぐらいはがまんじゃ)

「ふふっ、とっても幸せな一週間になりそうね」

(――いつかぐらいは、つきあおうかねぇ……)

391: 2015/03/16(月) 22:17:19.16 ID:oAsNePAM0
「ねぇさん、はしでたべれるけぇ、スプーンとフォークはいらんよ?」

「持つだけでいいの、撮らせてくれない?」

「……これでえぇの?」

「えぇ、ありがとう浦風」

(かなりはずかしいけぇ、このしゃしんはていとくさんにみせんようにいうとかんといけんねぇ……)

「さぁ、しっかり食べてちょうだい」

「ねぇさんのつくるハンバーグ、ひさしぶりじゃね」

「いつもは浦風に作ってもらうことが多いし、今日から一週間は私が腕によりをかけて作るわね」

「ちいそぅはなっとるけど、うちもつくれるけぇてつだうよ?」

「大丈夫よ、たまには浦風も私に任せてゆっくりしてて」

「ねぇさん……」

「その代わり、提督とどうしてそういう雰囲気になったかは後で聞かせてね?」

「そ、それはちょっとはずかしいけぇかんにんしてつかぁさい……」




――――ねぇさん、なべふいとる!

 ――――あっ!?

394: 2015/03/17(火) 01:35:28.75 ID:dbSVveRoo
おつ
愛でたい



引用: 【艦これ】浦風「姉さんが拗ねとる鎮守府」大鳳「最近私の影が薄い鎮守府」