496: 2015/03/27(金) 21:13:07.28 ID:CkM37cvV0
・望月『んあ?』
・金剛『目を離さないでって言ったのにー!』
・時津風『んー? なになにー?』
・摩耶&鳥海『改二祝い』
・神通『あの……いえ、何でもないです』
・球磨『難しいk……ムズカシイ』
以上6本でお送りします
・金剛『目を離さないでって言ったのにー!』
・時津風『んー? なになにー?』
・摩耶&鳥海『改二祝い』
・神通『あの……いえ、何でもないです』
・球磨『難しいk……ムズカシイ』
以上6本でお送りします
前回はこちら
501: 2015/03/30(月) 00:42:29.35 ID:Cf26c1s70
・望月『んあ?』、投下します
もっちーの髪もいいと思います
もっちーの髪もいいと思います
502: 2015/03/30(月) 00:42:58.58 ID:Cf26c1s70
珍しく望月から誘われ、提督は一年振りに彼女と二人で外へと出掛けることとなった。
どこに行くかは先に決めてあったらしく、言われるがままに彼は歩を進めていく。
「なぁ、どこへ行くんだ?」
「んー? 行きゃ分かるって」
「そうか。後な、望月」
「んあ?」
「歩け」
「めんどいからパス」
まだ小柄で軽いのを理由に背中におぶさり、肩に頭を乗せて脱力状態の望月。
端からだと仲良しな兄妹にしか見えないので余計な手間は省けるものの、デートとして考えるとどうなのだと提督は頭を悩ませる。
「司令官、そこ右」
「了解」
「そういやさぁ」
「何だ?」
「あー……やっぱいい、後で聞く」
「何だかよく分からんが、分かった」
その会話以降ナビ以外特に何かを口にする訳でもなく、望月は黙り込む。
少し不思議には思いつつも、普段から無言で一緒にダラダラするのが好きなのは知っていたので、提督も特に無理に話しかけたりもせず、ひたすら歩くのだった。
どこに行くかは先に決めてあったらしく、言われるがままに彼は歩を進めていく。
「なぁ、どこへ行くんだ?」
「んー? 行きゃ分かるって」
「そうか。後な、望月」
「んあ?」
「歩け」
「めんどいからパス」
まだ小柄で軽いのを理由に背中におぶさり、肩に頭を乗せて脱力状態の望月。
端からだと仲良しな兄妹にしか見えないので余計な手間は省けるものの、デートとして考えるとどうなのだと提督は頭を悩ませる。
「司令官、そこ右」
「了解」
「そういやさぁ」
「何だ?」
「あー……やっぱいい、後で聞く」
「何だかよく分からんが、分かった」
その会話以降ナビ以外特に何かを口にする訳でもなく、望月は黙り込む。
少し不思議には思いつつも、普段から無言で一緒にダラダラするのが好きなのは知っていたので、提督も特に無理に話しかけたりもせず、ひたすら歩くのだった。
503: 2015/03/30(月) 00:43:28.01 ID:Cf26c1s70
「――あい、着いたよ」
「らしいといえば、らしい場所か?」
「それ、どういう意味?」
「寝転がったり、昼寝には良さそうだ」
案内され着いた場所は、近くの河川敷だった。
提督の予想通り、たまにフラッと出かけてはここで寝転がってのんびりするのが望月は好きなのだ。
「そういや二人で来たことは無かったと思ってさ」
「人は通るがそこまでうるさいって訳でもないし、ゆっくりするにはちょうどいいな」
「うん、まぁ……ね」
どこか歯切れの悪い望月の様子が珍しく、体調でも悪いのかと提督は顔色を窺う。
その顔はほんのりと赤くなっており、更に珍しいものを目撃することとなる。
「何だ? どうかしたのか?」
「あの、さ……コレ」
道中は提督の手にぶら下がっていた望月の荷物の中から、巾着袋に入った何かが彼へと突き出される。
その中に入っているのはどう見ても弁当箱であり、コレが今日外に連れ出された理由なのだと提督は即座に察した。
「手作りの弁当も初めてだな」
「味はまぁ、睦月姉とかに食べてもらったから保証する」
「じゃあ早速食べさせてもらうとするか」
「あい、食べ――させる!?」
少し慌てる望月がとても可愛らしく、冗談ではなくそうさせるのもいいかもしれないと提督は考えるのだった。
――――司令官、何やってんの?
――――ポニテにしてる。
――――……ま、いいけど。
――――三つ編みもいいかもな。
――――ってか何でヘアゴム持ち歩いてんのさ。
「らしいといえば、らしい場所か?」
「それ、どういう意味?」
「寝転がったり、昼寝には良さそうだ」
案内され着いた場所は、近くの河川敷だった。
提督の予想通り、たまにフラッと出かけてはここで寝転がってのんびりするのが望月は好きなのだ。
「そういや二人で来たことは無かったと思ってさ」
「人は通るがそこまでうるさいって訳でもないし、ゆっくりするにはちょうどいいな」
「うん、まぁ……ね」
どこか歯切れの悪い望月の様子が珍しく、体調でも悪いのかと提督は顔色を窺う。
その顔はほんのりと赤くなっており、更に珍しいものを目撃することとなる。
「何だ? どうかしたのか?」
「あの、さ……コレ」
道中は提督の手にぶら下がっていた望月の荷物の中から、巾着袋に入った何かが彼へと突き出される。
その中に入っているのはどう見ても弁当箱であり、コレが今日外に連れ出された理由なのだと提督は即座に察した。
「手作りの弁当も初めてだな」
「味はまぁ、睦月姉とかに食べてもらったから保証する」
「じゃあ早速食べさせてもらうとするか」
「あい、食べ――させる!?」
少し慌てる望月がとても可愛らしく、冗談ではなくそうさせるのもいいかもしれないと提督は考えるのだった。
――――司令官、何やってんの?
――――ポニテにしてる。
――――……ま、いいけど。
――――三つ編みもいいかもな。
――――ってか何でヘアゴム持ち歩いてんのさ。
507: 2015/03/31(火) 01:38:08.35 ID:Ajgm62Pf0
・金剛『目を離さないでって言ったのにー!』 、投下します
508: 2015/03/31(火) 01:38:34.96 ID:Ajgm62Pf0
「起きたら居ないなんて酷いデース……」
「今の時間を確認して、乱れた浴衣を整えて、顔洗ってさっさと起きろ」
「Heyテートク―、今なら時間も場所もOKネ」
「からかうなら時間と場所を弁えろ」
「むぅ……仕方無いから我慢しマース」
布団に引き込もうとする金剛の頭を抑え、手を振って洗面所へと促す。
旅館で一夜を過ごし、少し二人でゆっくりしてから帰ろうかと提督は考えていたのだが、予想以上に彼女が起きるのが遅かったのもあり、あまりのんびりとしている時間は無かった。
「金剛、土産は適当に買ってきといたからな」
「ありがとうございマース」
「今から帰ったら夕方までには帰れるだろ」
「――やっぱり、鎮守府が一番落ち着く?」
「落ち着くんじゃなくて、不安にならないってだけだ」
「私も帰って妹達の顔を早く見たいわ」
「なら、さっさと支度しろ」
「えぇ、これで支度は終わりよ」
座って待っていた提督を、後ろから金剛は抱き締める。
いつもの激しいものではない優しく包み込むような抱擁に、彼もそれを振り払って急かしたりはしなかった。
「やっぱりお前が普通に話すと違和感あるな」
「こっちの方がいいデスか?」
「普段はな、二人の時は好きにしろ」
「――提督」
「何だ?」
「鎮守府で旅館にあるみたいな浴衣、着て欲しい?」
「……」
「沈黙はイエスと受け取りマース」
「真面目な話かと身構えて反応が遅れただけだ、別にどっちでもいい」
「嘘は良くないネー。着て欲しいと思ったはずデース」
「何を根拠に言ってるんだよお前は」
「湯上がりの私を見たテートクの顔を見れば、そのぐらいすぐに分かりマース」
「エスパーじゃあるまいし、何考えてるかなんか分からんだろ」
「……分かるに決まってるじゃない、私はずっと貴方を見てきたんだもの。だから――」
――――貴方も私から目を離したらノー、なんだからね?
「今の時間を確認して、乱れた浴衣を整えて、顔洗ってさっさと起きろ」
「Heyテートク―、今なら時間も場所もOKネ」
「からかうなら時間と場所を弁えろ」
「むぅ……仕方無いから我慢しマース」
布団に引き込もうとする金剛の頭を抑え、手を振って洗面所へと促す。
旅館で一夜を過ごし、少し二人でゆっくりしてから帰ろうかと提督は考えていたのだが、予想以上に彼女が起きるのが遅かったのもあり、あまりのんびりとしている時間は無かった。
「金剛、土産は適当に買ってきといたからな」
「ありがとうございマース」
「今から帰ったら夕方までには帰れるだろ」
「――やっぱり、鎮守府が一番落ち着く?」
「落ち着くんじゃなくて、不安にならないってだけだ」
「私も帰って妹達の顔を早く見たいわ」
「なら、さっさと支度しろ」
「えぇ、これで支度は終わりよ」
座って待っていた提督を、後ろから金剛は抱き締める。
いつもの激しいものではない優しく包み込むような抱擁に、彼もそれを振り払って急かしたりはしなかった。
「やっぱりお前が普通に話すと違和感あるな」
「こっちの方がいいデスか?」
「普段はな、二人の時は好きにしろ」
「――提督」
「何だ?」
「鎮守府で旅館にあるみたいな浴衣、着て欲しい?」
「……」
「沈黙はイエスと受け取りマース」
「真面目な話かと身構えて反応が遅れただけだ、別にどっちでもいい」
「嘘は良くないネー。着て欲しいと思ったはずデース」
「何を根拠に言ってるんだよお前は」
「湯上がりの私を見たテートクの顔を見れば、そのぐらいすぐに分かりマース」
「エスパーじゃあるまいし、何考えてるかなんか分からんだろ」
「……分かるに決まってるじゃない、私はずっと貴方を見てきたんだもの。だから――」
――――貴方も私から目を離したらノー、なんだからね?
509: 2015/03/31(火) 01:39:01.78 ID:Ajgm62Pf0
――――Heyテートクー、鎮守府の中なら触ってもいいしハグもキスも大歓迎ネー!
――――時間と場所を弁えない奴にはどれもせん。
――――じゃあ今から寝室にレッツゴーデース!
――――場所だけじゃなくて時間も弁えろって言ってるだろ!
――――時間と場所を弁えない奴にはどれもせん。
――――じゃあ今から寝室にレッツゴーデース!
――――場所だけじゃなくて時間も弁えろって言ってるだろ!
513: 2015/04/01(水) 11:29:32.59 ID:92VyR8Cl0
・時津風『んー? なになにー?』 、投下します
514: 2015/04/01(水) 11:30:00.64 ID:92VyR8Cl0
「あっ居た居た、時津風ちゃん」
「明石さん? あたしに用事?」
「うん、とっても大事なお話があるの」
「なになにー?」
「時津風ちゃんは提督のこと、好き?」
「しれー? うん、ちゃんと遊んでくれるしご飯美味しいし優しいから好きだよ」
「じゃあ次の質問。雪風ちゃん達とずっと一緒に居たい?」
「そりゃ居たいよ。うん、居たい居たい」
「ここで皆とずっと一緒に居たい?」
「うんうん」
「それなら今日提督のところに行った時、“ケッコンカッコカリして下さい”ってお願いしたらずっと一緒に居られるようになるよ」
「そなの? ひょっとしてそれお願いしなきゃ、皆とお別れしないとダメ?」
「そうなるかもしれないですねー」
「んなバカな。そんなのヤダヤダー!」
「でも、提督にお願いしたら絶対にお別れしなくて済みますから」
「分かった、お願いしてくる! 明石さん教えてくれてありがとー!」
「いえいえ、どういたしましてー……さてと、次は誰に促そっかなー」
「明石さん? あたしに用事?」
「うん、とっても大事なお話があるの」
「なになにー?」
「時津風ちゃんは提督のこと、好き?」
「しれー? うん、ちゃんと遊んでくれるしご飯美味しいし優しいから好きだよ」
「じゃあ次の質問。雪風ちゃん達とずっと一緒に居たい?」
「そりゃ居たいよ。うん、居たい居たい」
「ここで皆とずっと一緒に居たい?」
「うんうん」
「それなら今日提督のところに行った時、“ケッコンカッコカリして下さい”ってお願いしたらずっと一緒に居られるようになるよ」
「そなの? ひょっとしてそれお願いしなきゃ、皆とお別れしないとダメ?」
「そうなるかもしれないですねー」
「んなバカな。そんなのヤダヤダー!」
「でも、提督にお願いしたら絶対にお別れしなくて済みますから」
「分かった、お願いしてくる! 明石さん教えてくれてありがとー!」
「いえいえ、どういたしましてー……さてと、次は誰に促そっかなー」
515: 2015/04/01(水) 11:30:27.07 ID:92VyR8Cl0
――しれーしれーしれーしーれーえー!
「そんなに呼ばんでも聞こえてるし、ドアは誰かに当たらないように静かに開けろ。で、そんなに急いでどうしたんだ?」
「ケッコンカニカンして!」
「……言い間違いはいいとして、何でお前の口からそんな言葉が出てくる」
「明石さんがそれしないと皆とお別れしなきゃいけなくなるかもって、だから時津風もするするー」
(アイツまた勝手に……)
「安心しろ、お前の意思を無視して他鎮守府に行かせるようなことはしない」
「ホント?」
「あぁ、それにそんなことしたら悲しむ奴が居るだろ。せっかく夢の実現が近付いてきてるのに、邪魔するようなことしてどうする」
「そっかぁ、じゃあカニカンしなくていいんだ」
「ケッコンカッコカリな。それに関してはお前がちゃんと内容を正しく理解してからだ」
「しれーはそれ、したいの?」
「必要になったら、な」
「雪風とも必要だからしたの?」
「必要……まぁ、必要だったからだ。今も昔も寂しがりで怖がりだからな、アイツは」
「ふむふむ――えいっ」
「ん? どうした、急に」
「しれーも寂しがりで怖がりだって皆が言ってたよ。だからあたしも傍にずっと居てあげる」
(アイツ等そんなこと言ってやがったのか……)
「ありがとな、時津風。そうしてくれると嬉しい」
「えへへー。あっしれーしれー、お腹空いたからご飯作って」
「あのなぁ、いい加減お前も自分で作るということを覚えろ」
「えー? しれーが作ってくれればあたしが作る必要ないないー」
「はぁ……何がいいんだ?」
「魚食べたい!」
「分かった、じゃあ作り方教えてやるから一緒に来い」
「え、んなバカな」
「いいから来い、雪風だってある程度は自分で出来るんだぞ」
「わわっ、引っ張んないでよしれー、しれーってばー!」
――――炭一歩手前か……。
――――うっ……だって初めてだったんだもん。
――――じゃあお前はそっちの俺が作った煮魚食え、これは俺が食う。
――――んー、じゃあさじゃあさ、半分こしよ?
――――……そうするか。
「そんなに呼ばんでも聞こえてるし、ドアは誰かに当たらないように静かに開けろ。で、そんなに急いでどうしたんだ?」
「ケッコンカニカンして!」
「……言い間違いはいいとして、何でお前の口からそんな言葉が出てくる」
「明石さんがそれしないと皆とお別れしなきゃいけなくなるかもって、だから時津風もするするー」
(アイツまた勝手に……)
「安心しろ、お前の意思を無視して他鎮守府に行かせるようなことはしない」
「ホント?」
「あぁ、それにそんなことしたら悲しむ奴が居るだろ。せっかく夢の実現が近付いてきてるのに、邪魔するようなことしてどうする」
「そっかぁ、じゃあカニカンしなくていいんだ」
「ケッコンカッコカリな。それに関してはお前がちゃんと内容を正しく理解してからだ」
「しれーはそれ、したいの?」
「必要になったら、な」
「雪風とも必要だからしたの?」
「必要……まぁ、必要だったからだ。今も昔も寂しがりで怖がりだからな、アイツは」
「ふむふむ――えいっ」
「ん? どうした、急に」
「しれーも寂しがりで怖がりだって皆が言ってたよ。だからあたしも傍にずっと居てあげる」
(アイツ等そんなこと言ってやがったのか……)
「ありがとな、時津風。そうしてくれると嬉しい」
「えへへー。あっしれーしれー、お腹空いたからご飯作って」
「あのなぁ、いい加減お前も自分で作るということを覚えろ」
「えー? しれーが作ってくれればあたしが作る必要ないないー」
「はぁ……何がいいんだ?」
「魚食べたい!」
「分かった、じゃあ作り方教えてやるから一緒に来い」
「え、んなバカな」
「いいから来い、雪風だってある程度は自分で出来るんだぞ」
「わわっ、引っ張んないでよしれー、しれーってばー!」
――――炭一歩手前か……。
――――うっ……だって初めてだったんだもん。
――――じゃあお前はそっちの俺が作った煮魚食え、これは俺が食う。
――――んー、じゃあさじゃあさ、半分こしよ?
――――……そうするか。
520: 2015/04/02(木) 21:44:54.94 ID:71GGDmAZ0
・摩耶&鳥海『改二祝い』、投下します
摩耶様の乙女度が上がりました
摩耶様の乙女度が上がりました
521: 2015/04/02(木) 21:45:21.62 ID:71GGDmAZ0
「どうだ提督、この摩耶様の改二姿は」
「防空面でまた一段と性能が上がったみたいだな、何か飛んできた時は頼りにしてるぞ」
「お、おぅ……」
「(司令官さん、姉さんはそういうことを聞いたんじゃ……)」
「(分かってる、まさかここまで目に見えて落ち込むとは思ってなくてな)」
「んだよ、アタシ除け者にして二人で内緒話かよ……」
「摩耶」
「あんだよ、まだ何かあんのか?」
「全体的に前より可愛らしくなったな」
「なっ、かわ!? 何言い出しやがんだ急に!?」
「改造前も良かったが、今の方が俺は好きだぞ」
「そ、そうかよ……可愛いか、ふーん……」
(よし、機嫌治ったか)
「――司令官さん」
「ん? 何だ鳥海」
「私、まだ何も言われてません」
(あっ……)
「可愛いのは姉さんだけですか。私も姉さんと色彩とデザインのよく似た改造になったのに、姉さんだけですか。司令官さんは摩耶姉さんだけ褒めるんですね」
「鳥海、それは誤解だ。先に摩耶を褒めただけで俺はお前の改二姿も可愛いと思ってる」
「……ふふっ、司令官さん凄く焦ってたのが丸分かりです」
「お前……質の悪いからかい方はやめてくれ、全身に嫌な汗掻いたぞ」
「姉さんだけ先に褒めたのは事実です。後、防空が姉さんなら夜戦については私に任せて下さい」
「あぁ、頼りにしてる」
「(――ところで司令官さん、姉さんとは夜戦しないんですか?)」
「(急に何を言い出すんだお前は……アレ見ろ、出来ると思うか?)」
「可愛いか……ふーん……いやいや、アタシは可愛いって柄じゃ……でも、そう言われるのも悪くないかもなぁ……」
「……手、繋ぎましたか?」
「繋いだら五秒後に投げられたが?」
「姉さん……」
「普段着ちょっと新しい感じに挑戦してみっかなー、このミニハットとか今まで被ったことなかったし、鈴谷ならこういうの売ってる店知ってっかな……」
――――司令官さんがもっと積極的にリードしてあげて下さい。
――――骨がイキそうだし積極的に入院することになりそうなんだが……。
――――男は度胸という言葉があります、司令官さん。えいっ。
――――うおっ?……なっ、なっ……何してやがんだクソがー!
――――げふっ!?
――――(……壁ドンは姉さんには刺激が強かったみたいですね)
「防空面でまた一段と性能が上がったみたいだな、何か飛んできた時は頼りにしてるぞ」
「お、おぅ……」
「(司令官さん、姉さんはそういうことを聞いたんじゃ……)」
「(分かってる、まさかここまで目に見えて落ち込むとは思ってなくてな)」
「んだよ、アタシ除け者にして二人で内緒話かよ……」
「摩耶」
「あんだよ、まだ何かあんのか?」
「全体的に前より可愛らしくなったな」
「なっ、かわ!? 何言い出しやがんだ急に!?」
「改造前も良かったが、今の方が俺は好きだぞ」
「そ、そうかよ……可愛いか、ふーん……」
(よし、機嫌治ったか)
「――司令官さん」
「ん? 何だ鳥海」
「私、まだ何も言われてません」
(あっ……)
「可愛いのは姉さんだけですか。私も姉さんと色彩とデザインのよく似た改造になったのに、姉さんだけですか。司令官さんは摩耶姉さんだけ褒めるんですね」
「鳥海、それは誤解だ。先に摩耶を褒めただけで俺はお前の改二姿も可愛いと思ってる」
「……ふふっ、司令官さん凄く焦ってたのが丸分かりです」
「お前……質の悪いからかい方はやめてくれ、全身に嫌な汗掻いたぞ」
「姉さんだけ先に褒めたのは事実です。後、防空が姉さんなら夜戦については私に任せて下さい」
「あぁ、頼りにしてる」
「(――ところで司令官さん、姉さんとは夜戦しないんですか?)」
「(急に何を言い出すんだお前は……アレ見ろ、出来ると思うか?)」
「可愛いか……ふーん……いやいや、アタシは可愛いって柄じゃ……でも、そう言われるのも悪くないかもなぁ……」
「……手、繋ぎましたか?」
「繋いだら五秒後に投げられたが?」
「姉さん……」
「普段着ちょっと新しい感じに挑戦してみっかなー、このミニハットとか今まで被ったことなかったし、鈴谷ならこういうの売ってる店知ってっかな……」
――――司令官さんがもっと積極的にリードしてあげて下さい。
――――骨がイキそうだし積極的に入院することになりそうなんだが……。
――――男は度胸という言葉があります、司令官さん。えいっ。
――――うおっ?……なっ、なっ……何してやがんだクソがー!
――――げふっ!?
――――(……壁ドンは姉さんには刺激が強かったみたいですね)
525: 2015/04/05(日) 04:14:13.71 ID:wX3Q6i2q0
・神通『あの……いえ、何でもないです』 、投下します
次発装填(あーん待機)済みです
次発装填(あーん待機)済みです
526: 2015/04/05(日) 04:14:41.40 ID:wX3Q6i2q0
彼女らしく控え目で春先らしい服装に身を包み、待ち合わせ場所へと神通は現れる。
現在の時刻は待ち合わせ時間の三十分前。周囲を見回して提督が居ないのを確認した後、彼女は手鏡でおかしなところがないかチェックし始めた。
(川内と那珂に強引に外で待ち合わせにさせられたが、やっぱり性格的にかなり早く来るよな、神通は……)
少し離れた位置で気取られないように身を潜めていた提督も、彼女の姿を確認して待ち合わせ場所へと遠回りで向かっていく。
手間ではあるが、普段は人一倍気を遣う神通への配慮としてはこれが妥当というものだ。
「――悪い、待ったか?」
「いえ、私も今来たところですから気になさらないで下さい」
「じゃあ行くか」
「はい」
提督の隣を付かず離れず静かについてくる神通の表情は、普段よりも更に柔らかい。
戦いの際に見せる凛とした表情と、今見せている温和な笑み。そのどちらもが彼女らしく、彼は自然と頭の中で今までに見てきた神通の様々な表情を思い浮かべる。
「――提督? どうかされましたか?」
「ステージ衣装をお前が最初に着た時に見た、恥ずかしくて氏にそうって表情思い出してた」
「……お願いですから忘れて下さい」
「甘いもの食べてる時の幸せそうな表情なんかも思い出してたし、何か甘いもの食いに行くか」
「そう言われてしまうと複雑な気分になりますけど、行きます」
少し困った様な笑みを浮かべながらではあるものの、やはり甘いものには惹かれるものがあるらしく、即答する。
そして、店へ向かう道中また違う表情が見れるのではないかと手を差し出した彼が見たのは、この日一番の朗らかな笑みだった。
――――神通、俺はもう無理だ……。
――――油断しましたね、次発装填済みです。
――――すまん、からかったのは悪かったから延々甘味攻めはやめてくれ……。
現在の時刻は待ち合わせ時間の三十分前。周囲を見回して提督が居ないのを確認した後、彼女は手鏡でおかしなところがないかチェックし始めた。
(川内と那珂に強引に外で待ち合わせにさせられたが、やっぱり性格的にかなり早く来るよな、神通は……)
少し離れた位置で気取られないように身を潜めていた提督も、彼女の姿を確認して待ち合わせ場所へと遠回りで向かっていく。
手間ではあるが、普段は人一倍気を遣う神通への配慮としてはこれが妥当というものだ。
「――悪い、待ったか?」
「いえ、私も今来たところですから気になさらないで下さい」
「じゃあ行くか」
「はい」
提督の隣を付かず離れず静かについてくる神通の表情は、普段よりも更に柔らかい。
戦いの際に見せる凛とした表情と、今見せている温和な笑み。そのどちらもが彼女らしく、彼は自然と頭の中で今までに見てきた神通の様々な表情を思い浮かべる。
「――提督? どうかされましたか?」
「ステージ衣装をお前が最初に着た時に見た、恥ずかしくて氏にそうって表情思い出してた」
「……お願いですから忘れて下さい」
「甘いもの食べてる時の幸せそうな表情なんかも思い出してたし、何か甘いもの食いに行くか」
「そう言われてしまうと複雑な気分になりますけど、行きます」
少し困った様な笑みを浮かべながらではあるものの、やはり甘いものには惹かれるものがあるらしく、即答する。
そして、店へ向かう道中また違う表情が見れるのではないかと手を差し出した彼が見たのは、この日一番の朗らかな笑みだった。
――――神通、俺はもう無理だ……。
――――油断しましたね、次発装填済みです。
――――すまん、からかったのは悪かったから延々甘味攻めはやめてくれ……。
529: 2015/04/05(日) 21:11:33.24 ID:wX3Q6i2q0
・球磨『難しいk……ムズカシイ』 、投下します
頭のアホ毛抜いたら言わなくなる(かもしれない)
頭のアホ毛抜いたら言わなくなる(かもしれない)
530: 2015/04/05(日) 21:12:01.05 ID:wX3Q6i2q0
「球磨」
「何だクマー?」
「今日、自分の名前を言う時以外でクマ禁止な。三回言ったら罰ゲーム」
「クマ!?」
「今の含めて後二回、罰ゲームは妹達に明日一日撫で回される。恨むなら企画した妹達を恨め」
「それを実行しようとする提督も恨むク……そもそも、球磨が付き合うどうかは自由のはずだク……」
「前者は北上にハメられた。後者はお前が尻尾撒いてこの程度のゲームから逃げるなんてカッコ悪いことしないって四人が言ってたぞ」
「確かにそこまで言われたら引き下がれないク……そのゲーム、受けて立つ!」
「そうか、じゃあ日付が変わるまで頑張れ」
「ヴオー! やってやるクマー!」
「後一回な」
「あ」
「何だクマー?」
「今日、自分の名前を言う時以外でクマ禁止な。三回言ったら罰ゲーム」
「クマ!?」
「今の含めて後二回、罰ゲームは妹達に明日一日撫で回される。恨むなら企画した妹達を恨め」
「それを実行しようとする提督も恨むク……そもそも、球磨が付き合うどうかは自由のはずだク……」
「前者は北上にハメられた。後者はお前が尻尾撒いてこの程度のゲームから逃げるなんてカッコ悪いことしないって四人が言ってたぞ」
「確かにそこまで言われたら引き下がれないク……そのゲーム、受けて立つ!」
「そうか、じゃあ日付が変わるまで頑張れ」
「ヴオー! やってやるクマー!」
「後一回な」
「あ」
531: 2015/04/05(日) 21:12:27.42 ID:wX3Q6i2q0
「球磨、そこの書類取ってくれ」
『自分で取るクマー』
「じゃあ茶淹れてくれ」
『火傷するぐらい熱いの淹れてやるクマ』
「……プラカードは卑怯だろ」
『ルールをちゃんと決めておかないのが悪いクマー』
「――ん? 北上からLINE?」
『もしも球磨姉が筆談しようとしたら、そんなセコい姉は球磨型には居ないって言っといてー』
「……読まれてるぞ、お前」
「優秀な妹で困るク……」
「妹に撫でられるぐらい、我慢してやったらどうだ?」
「姉の威厳を守る為にも絶対に言わないクッ!」
(あっ、舌噛んだ……)
「そ、そういえば球磨が勝ったらどうなるか聞いてないガー」
「勝ったら妹達から鮭満喫ツアープレゼントだそうだ」
「それは楽しみだガー」
「……明日から語尾、それにするか?」
「絶対にしないガー」
――――球磨、頭どうだ? 気持ち良いか?
――――ヴオー……気持ち良いクマー……。
――――今ので三回な。
――――あっ、し、しまったクマー!?……でも、頭洗ってもらえるのは幸せだしもういいクマー……。
『自分で取るクマー』
「じゃあ茶淹れてくれ」
『火傷するぐらい熱いの淹れてやるクマ』
「……プラカードは卑怯だろ」
『ルールをちゃんと決めておかないのが悪いクマー』
「――ん? 北上からLINE?」
『もしも球磨姉が筆談しようとしたら、そんなセコい姉は球磨型には居ないって言っといてー』
「……読まれてるぞ、お前」
「優秀な妹で困るク……」
「妹に撫でられるぐらい、我慢してやったらどうだ?」
「姉の威厳を守る為にも絶対に言わないクッ!」
(あっ、舌噛んだ……)
「そ、そういえば球磨が勝ったらどうなるか聞いてないガー」
「勝ったら妹達から鮭満喫ツアープレゼントだそうだ」
「それは楽しみだガー」
「……明日から語尾、それにするか?」
「絶対にしないガー」
――――球磨、頭どうだ? 気持ち良いか?
――――ヴオー……気持ち良いクマー……。
――――今ので三回な。
――――あっ、し、しまったクマー!?……でも、頭洗ってもらえるのは幸せだしもういいクマー……。
561: 2015/04/06(月) 23:20:34.86 ID:LKfx/or/0
・阿賀野『長女は阿賀野なの!』
・元帥艦隊と演習
・赤城『筍の季節』
・飛鷹『コンビーフって何?』
・皐月と磯風『武勲』
・プリンツ『接客のノウハウ』
以上六本でお送りします
・元帥艦隊と演習
・赤城『筍の季節』
・飛鷹『コンビーフって何?』
・皐月と磯風『武勲』
・プリンツ『接客のノウハウ』
以上六本でお送りします
562: 2015/04/07(火) 08:07:57.27 ID:CCR+L4sz0
・阿賀野『長女は阿賀野なの!』、投下します
スペックは高い残姉ちゃん
スペックは高い残姉ちゃん
563: 2015/04/07(火) 08:08:26.10 ID:CCR+L4sz0
「能代がね、阿賀野も酒匂を見習えって言うんだよ。一番お姉ちゃんは阿賀野なのに……」
「そうか、とりあえず書類が書きにくいから頭の上で寛ぐのをやめろ」
「提督さん、どうしたら阿賀野を見習えって言ってくれるようになると思う?」
「まずは人の話をしっかり聞くことから始めるといいと思うぞ、重い」
「能代のお話長いし、聞いてると眠くなっちゃうの」
「手始めに俺の話をちゃんと聞けお前は」
「提督さん、そろそろお仕事終わった?」
「お前なぁ……」
「あっ、そこ字間違ってる」
「ん?……確かに、間違ってるな」
「珍しいね、提督さんが字間違えるなんて」
「俺だってたまには間違える。というか、よく分かったな」
「これぐらい誰でもすぐに分かるでしょ?」
(そういえばコイツ、スペック自体は高いんだよな。普段が普段だからつい忘れそうになる……)
「提督さん、そろそろお腹空いちゃった」
「そうだな、そうするか」
「今日はハンバーガー食べたい気分かも」
「また服にケチャップ付けて能代に怒られるなよ?」
「提督さん、阿賀野だって付けない日ぐらいあるんだから!」
「そこはいつも付けてないって言えるようになれ」
「そうか、とりあえず書類が書きにくいから頭の上で寛ぐのをやめろ」
「提督さん、どうしたら阿賀野を見習えって言ってくれるようになると思う?」
「まずは人の話をしっかり聞くことから始めるといいと思うぞ、重い」
「能代のお話長いし、聞いてると眠くなっちゃうの」
「手始めに俺の話をちゃんと聞けお前は」
「提督さん、そろそろお仕事終わった?」
「お前なぁ……」
「あっ、そこ字間違ってる」
「ん?……確かに、間違ってるな」
「珍しいね、提督さんが字間違えるなんて」
「俺だってたまには間違える。というか、よく分かったな」
「これぐらい誰でもすぐに分かるでしょ?」
(そういえばコイツ、スペック自体は高いんだよな。普段が普段だからつい忘れそうになる……)
「提督さん、そろそろお腹空いちゃった」
「そうだな、そうするか」
「今日はハンバーガー食べたい気分かも」
「また服にケチャップ付けて能代に怒られるなよ?」
「提督さん、阿賀野だって付けない日ぐらいあるんだから!」
「そこはいつも付けてないって言えるようになれ」
564: 2015/04/07(火) 08:09:08.32 ID:CCR+L4sz0
(――で、昼食べて戻ったら即これか)
「提督さん、今日は少し肌寒いね」
「デカい抱き枕が暖かいお陰で冷える心配は無さそうだがな」
「阿賀野は抱き枕じゃなくて提督さんのお嫁さんでしょ?」
「能代にのし付けて返しとくか」
「ちょ、ちょっと待って! 阿賀野は返品出来ないよ!?」
「冗談だ。ほら、もうちょっとこっち来い」
「は~い。えへへ、提督さん」
「何だ?」
「ずっとこれからも一緒にお昼寝しようね」
「……忙しくなければ、な」
――――提督さん、今日もお昼寝しよ?
――――コレ片づけたらな。
――――じゃあお昼寝の為に阿賀野もお手伝いするね。
――――(毎回こうして手伝ってくれると助かるんだが……)
――――さー阿賀野の本領発揮するからね!
「提督さん、今日は少し肌寒いね」
「デカい抱き枕が暖かいお陰で冷える心配は無さそうだがな」
「阿賀野は抱き枕じゃなくて提督さんのお嫁さんでしょ?」
「能代にのし付けて返しとくか」
「ちょ、ちょっと待って! 阿賀野は返品出来ないよ!?」
「冗談だ。ほら、もうちょっとこっち来い」
「は~い。えへへ、提督さん」
「何だ?」
「ずっとこれからも一緒にお昼寝しようね」
「……忙しくなければ、な」
――――提督さん、今日もお昼寝しよ?
――――コレ片づけたらな。
――――じゃあお昼寝の為に阿賀野もお手伝いするね。
――――(毎回こうして手伝ってくれると助かるんだが……)
――――さー阿賀野の本領発揮するからね!
570: 2015/04/11(土) 22:01:40.26 ID:61rmt4Gs0
・元帥艦隊と演習、途中までですが一度投下します
571: 2015/04/11(土) 22:02:15.34 ID:61rmt4Gs0
一つは、長き戦いに終止符を打った提督の待機艦隊。
一つは、その戦いを裏から支え、純粋な練度のみなら他の追随を許さぬ元帥の娘達艦隊。
両艦隊六名ずつで演習場にて相対し、密かに闘志を膨らませていく。
「前回は不覚を取りましたが、今回は負けません」
「うーちゃんは恐かったから必氏で抵抗しただけぴょん」
「黙れこの腹黒兎め、今日は私が沈めてやる」
「卯月ちゃんは腹黒くないよ、ちょっと優しさがねじ曲がってるだけで」
「潮、それフォローになってない」
「霧島、お手柔らかにお願いします」
「大和さんと武蔵さん相手となると、久しぶりに全力が出せそうですね」
「吾輩もちと本気を出そうかの」
「ふふ、終わったら鳳翔さんのお店で一杯飲んで帰らないと」
「ねぇねぇ木曾、何で笑ってるの?」
「姉貴達とやり合う時の良い練習になりそうだからな、俺としては願ったり叶ったりな演習なんだよ」
「全く、私は反対したのに……」
普通に会話こそしているが、その場に張り詰めたプレッシャーは並の者では耐えられない程に重い。
のんびりと観戦を楽しもうとしている者も、六対六でなければそこに立っていたはずの者ばかりだ。
編成としてはバランスの良い提督の艦隊と、基礎を徹底した上での変則的な戦いを得意とする元帥の艦隊。
個と隊の力は簡単に物差しで計れる次元を越えており、壮絶な戦いが繰り広げられるのは誰の目にも明らかだった。
「全員分かってるとは思うが、演習場全壊とかはやめろよ?」
「細かいことを気にする奴だ。それぐらいすぐに修繕出来るじゃろ」
「修繕費用出してくれますかね元帥殿?」
「うちの可愛い娘達に勝てたら出してやらんこともないぞ」
「その言葉忘れるなよクソ爺」
「ふんっ、ひよっこに年季の違いを教えてやる」
師と弟子、そういう意味合いも兼ねている強者達の宴が今、始まりを迎える。
――――演習、始め!
一つは、その戦いを裏から支え、純粋な練度のみなら他の追随を許さぬ元帥の娘達艦隊。
両艦隊六名ずつで演習場にて相対し、密かに闘志を膨らませていく。
「前回は不覚を取りましたが、今回は負けません」
「うーちゃんは恐かったから必氏で抵抗しただけぴょん」
「黙れこの腹黒兎め、今日は私が沈めてやる」
「卯月ちゃんは腹黒くないよ、ちょっと優しさがねじ曲がってるだけで」
「潮、それフォローになってない」
「霧島、お手柔らかにお願いします」
「大和さんと武蔵さん相手となると、久しぶりに全力が出せそうですね」
「吾輩もちと本気を出そうかの」
「ふふ、終わったら鳳翔さんのお店で一杯飲んで帰らないと」
「ねぇねぇ木曾、何で笑ってるの?」
「姉貴達とやり合う時の良い練習になりそうだからな、俺としては願ったり叶ったりな演習なんだよ」
「全く、私は反対したのに……」
普通に会話こそしているが、その場に張り詰めたプレッシャーは並の者では耐えられない程に重い。
のんびりと観戦を楽しもうとしている者も、六対六でなければそこに立っていたはずの者ばかりだ。
編成としてはバランスの良い提督の艦隊と、基礎を徹底した上での変則的な戦いを得意とする元帥の艦隊。
個と隊の力は簡単に物差しで計れる次元を越えており、壮絶な戦いが繰り広げられるのは誰の目にも明らかだった。
「全員分かってるとは思うが、演習場全壊とかはやめろよ?」
「細かいことを気にする奴だ。それぐらいすぐに修繕出来るじゃろ」
「修繕費用出してくれますかね元帥殿?」
「うちの可愛い娘達に勝てたら出してやらんこともないぞ」
「その言葉忘れるなよクソ爺」
「ふんっ、ひよっこに年季の違いを教えてやる」
師と弟子、そういう意味合いも兼ねている強者達の宴が今、始まりを迎える。
――――演習、始め!
572: 2015/04/11(土) 22:02:51.08 ID:61rmt4Gs0
「空は取ります。木曾、まずは雷撃を」
「了解!」
当てる為ではなく牽制の為の雷撃が六発、木曾より放たれる。
駆逐艦四隻によるコンビネーションが非常に厄介な事は全員が知っており、その足を一瞬でも止めさせるのが目的だ。
「凪ぎ払え!」
「昔馴染みの好(よしみ)だ、一瞬で終わらせてやる!」
動く暇を与えはしまいと、大和型による砲撃が降り注ぐ。盛大に水柱が何本も上がり、一瞬双方の姿が視認できなくなる。
しかし、それだけで攻撃の手を休めたりはしない。
「利根、大和は左へ。武蔵、木曾は右へ。島風は正面から突破、旗艦の首を取ります」
加賀の指揮に従い、五人は相手を囲うように陣形を展開していく。案の定水柱の向こうからは大して――というよりほぼ無傷の艦隊が顔を見せた。
「うーちゃん氏ぬかと思ったぴょん」
「私の背中に一瞬で退避しておいて、よく言えたものです」
「キリぴょんなら防ぐって信じてたぴょん」
「流石に手は痺れましたが、防げないことはないかと」
砲弾を弾き痺れた手をひらひらと振りながら、霧島は今の砲撃を撃った二隻のうちどちらを攻めるかを考える。
自分に戦い方を教えた武蔵か、その武蔵の姉でありまだ手合わせしたことが無い大和。
出た結論は、まだ戦ったことの無い相手との実戦データ収集だった。
「私は大和さんを狙います」
「じゃあお願いぴょん」
背中から飛び降り、卯月は既に行動を開始している三人組の後を追う。
上空では加賀と千歳の艦載機が激しく機銃を撃ち合っており、百を超える線が空に絶え間無く引かれていた。
(牙が抜けているとはいえ、姉弟子相手ではやはり厳しいものがありますか……)
千歳が拮抗状態のまま抑えられる時間を百八十秒と仮定し、奥の手がバレている兎はどう加賀を落とすかを考える。
それと同時に、合流した三人とスピード狂を網で絡めとる作戦を開始するのだった。
「了解!」
当てる為ではなく牽制の為の雷撃が六発、木曾より放たれる。
駆逐艦四隻によるコンビネーションが非常に厄介な事は全員が知っており、その足を一瞬でも止めさせるのが目的だ。
「凪ぎ払え!」
「昔馴染みの好(よしみ)だ、一瞬で終わらせてやる!」
動く暇を与えはしまいと、大和型による砲撃が降り注ぐ。盛大に水柱が何本も上がり、一瞬双方の姿が視認できなくなる。
しかし、それだけで攻撃の手を休めたりはしない。
「利根、大和は左へ。武蔵、木曾は右へ。島風は正面から突破、旗艦の首を取ります」
加賀の指揮に従い、五人は相手を囲うように陣形を展開していく。案の定水柱の向こうからは大して――というよりほぼ無傷の艦隊が顔を見せた。
「うーちゃん氏ぬかと思ったぴょん」
「私の背中に一瞬で退避しておいて、よく言えたものです」
「キリぴょんなら防ぐって信じてたぴょん」
「流石に手は痺れましたが、防げないことはないかと」
砲弾を弾き痺れた手をひらひらと振りながら、霧島は今の砲撃を撃った二隻のうちどちらを攻めるかを考える。
自分に戦い方を教えた武蔵か、その武蔵の姉でありまだ手合わせしたことが無い大和。
出た結論は、まだ戦ったことの無い相手との実戦データ収集だった。
「私は大和さんを狙います」
「じゃあお願いぴょん」
背中から飛び降り、卯月は既に行動を開始している三人組の後を追う。
上空では加賀と千歳の艦載機が激しく機銃を撃ち合っており、百を超える線が空に絶え間無く引かれていた。
(牙が抜けているとはいえ、姉弟子相手ではやはり厳しいものがありますか……)
千歳が拮抗状態のまま抑えられる時間を百八十秒と仮定し、奥の手がバレている兎はどう加賀を落とすかを考える。
それと同時に、合流した三人とスピード狂を網で絡めとる作戦を開始するのだった。
573: 2015/04/11(土) 22:03:26.23 ID:61rmt4Gs0
左右に展開した四隻からの集中砲火を浴びながらも、元帥艦隊の主軸四隻の勢いは止まらない。
それを一人で真っ向から相手することになった島風だが、この程度で臆する様な彼女ではなかった。
「連装砲ちゃん、やっちゃってー!」
「来たね」
先頭を進んでいた朧に向けて砲撃後、少し右に旋回しながら雷撃も放つ。
最初の砲撃こそ回避されたものの、続く雷撃が四隻の足を止めさせ、島風は追撃を仕掛けようとした。
「速いのは航行速度だけじゃないんだよ!」
「――正射必中」
「おうっ!?」
連装砲ちゃんによる砲撃を放とうとした瞬間、額を貫くように飛んでくる砲弾が見え、彼女は身体を仰け反らせて回避行動を取った。
それを撃ったのは潮であり、更に続けて数発を島風へと放つ。
「ちょっ、まっ、お゛うっ!?」
「朧ちゃん、曙ちゃん」
何とか身を捻り回避していたものの、正確に身体の中心線を狙った砲撃が、とうとう島風の胸部を捉える。
そこへ間髪入れずに曙の砲撃が放たれ、完全に足の止まった彼女へと朧が接近し、両手でがっしりと掴む。
「お休み」
この演習において島風が最後に見たモノは、眼前に迫る水面だった。
それを一人で真っ向から相手することになった島風だが、この程度で臆する様な彼女ではなかった。
「連装砲ちゃん、やっちゃってー!」
「来たね」
先頭を進んでいた朧に向けて砲撃後、少し右に旋回しながら雷撃も放つ。
最初の砲撃こそ回避されたものの、続く雷撃が四隻の足を止めさせ、島風は追撃を仕掛けようとした。
「速いのは航行速度だけじゃないんだよ!」
「――正射必中」
「おうっ!?」
連装砲ちゃんによる砲撃を放とうとした瞬間、額を貫くように飛んでくる砲弾が見え、彼女は身体を仰け反らせて回避行動を取った。
それを撃ったのは潮であり、更に続けて数発を島風へと放つ。
「ちょっ、まっ、お゛うっ!?」
「朧ちゃん、曙ちゃん」
何とか身を捻り回避していたものの、正確に身体の中心線を狙った砲撃が、とうとう島風の胸部を捉える。
そこへ間髪入れずに曙の砲撃が放たれ、完全に足の止まった彼女へと朧が接近し、両手でがっしりと掴む。
「お休み」
この演習において島風が最後に見たモノは、眼前に迫る水面だった。
574: 2015/04/11(土) 22:04:03.24 ID:61rmt4Gs0
「むむ、流石に四対一じゃとちと島風でも分が悪すぎたようだのぅ」
「駆逐艦で武蔵と互角に渡り合える数少ない四人だそうですから……」
「じゃが島風のお陰で包囲陣形は整ったぞ。後方の二人が若干気がかりではあるがな」
「――どうやら、そのお一人が大和に用があるみたいですね」
自分に向けられた砲門に気付き、大和は身構えた。
先程の挨拶への返事だと言わんばかりの砲撃が迫り、放った相手と同じ様に彼女はそれを手で弾き飛ばす。
「ふぅ……売られた喧嘩は買う主義ですので、お相手してきます」
「お主も相変わらず見かけによらぬ血の気の多さじゃな」
「大和は、あの武蔵の姉ですから」
にこやかに利根に言葉を返した後、霧島へと向けた表情は“大和型一番艦”の顔だった。
「――戦艦大和、推して参ります!」
「駆逐艦で武蔵と互角に渡り合える数少ない四人だそうですから……」
「じゃが島風のお陰で包囲陣形は整ったぞ。後方の二人が若干気がかりではあるがな」
「――どうやら、そのお一人が大和に用があるみたいですね」
自分に向けられた砲門に気付き、大和は身構えた。
先程の挨拶への返事だと言わんばかりの砲撃が迫り、放った相手と同じ様に彼女はそれを手で弾き飛ばす。
「ふぅ……売られた喧嘩は買う主義ですので、お相手してきます」
「お主も相変わらず見かけによらぬ血の気の多さじゃな」
「大和は、あの武蔵の姉ですから」
にこやかに利根に言葉を返した後、霧島へと向けた表情は“大和型一番艦”の顔だった。
「――戦艦大和、推して参ります!」
575: 2015/04/11(土) 22:04:29.24 ID:61rmt4Gs0
「卯月ちゃん、木曾さんと利根さんどうする?」
「キソーはうっしー、とねねはぼのちゃんお願いぴょん」
「朧は聞くまでもなく武蔵さんよね」
「今日こそあの人投げ飛ばす……!」
空を抑えていられるタイムリミットが刻一刻と迫り、卯月達は四人で固まるのではなく一対一に持ち込む形に変更する。
それぞれに相手を決め散会し、卯月は再び旗艦同士の一騎討ちへと向かう。
ここからは時間との勝負であり、千歳が劣勢に追い込まれるか他の面々が落ちると元帥艦隊にはかなり不利となる。
あくまでこれは艦隊戦であり、旗艦を落とせても被害が甚大ならば勝ちとは言い難くなってしまうのだ。
(別にあの人を喜ばせるつもりはありませんけど――)
「“元帥”という階級を飾りにするわけにはいかないんだぴょん」
「キソーはうっしー、とねねはぼのちゃんお願いぴょん」
「朧は聞くまでもなく武蔵さんよね」
「今日こそあの人投げ飛ばす……!」
空を抑えていられるタイムリミットが刻一刻と迫り、卯月達は四人で固まるのではなく一対一に持ち込む形に変更する。
それぞれに相手を決め散会し、卯月は再び旗艦同士の一騎討ちへと向かう。
ここからは時間との勝負であり、千歳が劣勢に追い込まれるか他の面々が落ちると元帥艦隊にはかなり不利となる。
あくまでこれは艦隊戦であり、旗艦を落とせても被害が甚大ならば勝ちとは言い難くなってしまうのだ。
(別にあの人を喜ばせるつもりはありませんけど――)
「“元帥”という階級を飾りにするわけにはいかないんだぴょん」
576: 2015/04/11(土) 22:04:56.43 ID:61rmt4Gs0
「やりますね、霧島」
「お褒めに預かり光栄です」
大和と霧島は互いに距離を徐々に詰め、回避行動を取れない距離まで近付く。
そして、砲門を静かに構え、普通ならば絶対にやらない至近距離での撃ち合いを始めた。
「大和型の真価、見せて差し上げます」
「データ以上の方であることを楽しみにしています」
「全砲門、一斉射!」
「距離よし、撃てー!」
撃ち、弾き、弾き、撃つ。ひたすらそれを繰り返し、一歩も退かずに撃ち合いを続ける。
次第に正確に弾く余裕は無くなっていき、二人の拳からは血が流れ始めていった。
「くっ……」
「つぅっ……」
数十の攻防の末、二人は全弾を撃ち尽くす。
流石に大和型の装甲は厚く霧島より損傷は軽微だったが、大和も肩で息をする程に疲弊していた。
互いに息を数秒整える時間を取り、その後、笑みを浮かべる。
「ふふっ、これでは武蔵のことをとやかく言えないですね」
「データ以上の強さ、やはり素晴らしいです」
「――続けましょうか」
「――望むところ、です」
――砲撃戦カラ肉弾戦ニ移行ス。
「お褒めに預かり光栄です」
大和と霧島は互いに距離を徐々に詰め、回避行動を取れない距離まで近付く。
そして、砲門を静かに構え、普通ならば絶対にやらない至近距離での撃ち合いを始めた。
「大和型の真価、見せて差し上げます」
「データ以上の方であることを楽しみにしています」
「全砲門、一斉射!」
「距離よし、撃てー!」
撃ち、弾き、弾き、撃つ。ひたすらそれを繰り返し、一歩も退かずに撃ち合いを続ける。
次第に正確に弾く余裕は無くなっていき、二人の拳からは血が流れ始めていった。
「くっ……」
「つぅっ……」
数十の攻防の末、二人は全弾を撃ち尽くす。
流石に大和型の装甲は厚く霧島より損傷は軽微だったが、大和も肩で息をする程に疲弊していた。
互いに息を数秒整える時間を取り、その後、笑みを浮かべる。
「ふふっ、これでは武蔵のことをとやかく言えないですね」
「データ以上の強さ、やはり素晴らしいです」
「――続けましょうか」
「――望むところ、です」
――砲撃戦カラ肉弾戦ニ移行ス。
577: 2015/04/11(土) 22:05:34.07 ID:61rmt4Gs0
残りは書け次第投下します
588: 2015/04/19(日) 11:42:38.99 ID:/s6YKl7r0
「吾輩の相手はお主か、曙」
「そうよ」
「すまぬが負けるわけにはいかん。恨みっこ無しじゃぞ?」
「私も負けたら何だかんだまた卯月に言われそうだし、大人しく負けて」
「それはお主の――頑張り次第じゃな!」
利根は今日も絶好調なカタパルトから試製晴嵐を飛ばし、砲を構えた。
曙もそうなるのは当然最初から分かっており、高角砲で晴嵐を狙いながら一度距離を取る。
何より怖いのは前後左右全てから攻撃されることであり、回避は最優先すべき行動だ。
(武蔵の奴は何と言っておったかのぅ……確か曙は、バランス型じゃったか?)
器用に対空砲火と砲撃と回避行動を繰り返しながら、着実に晴嵐を落としながら相手を狙う曙。
出来れば時間をあまりかけずに落としたいということもあって、利根は温存していた晴嵐も全て飛ばし、動きを完全に封じようと試みる。
(また増えた、ウザいなぁ……)
基本的に対空は曙が任されることが多く、この戦い方は彼女にとっては慣れたものだった。
バランス型というよりは万能サポート型に近く、突出して何かが凄いというものは曙にはない。
しかし、突出しない分どんな場面でも対応出来るのが彼女の強みだ。
「ちょこまかと動くのもそろそろ終わりにしてもらうぞ」
「仕方無いでしょ、駆逐艦なんだから」
「うむ、それもそうじゃな。では動いているのを狙うとしよう」
(晴嵐は今飛んでるので全機よね、後は――っ!?)
気付いた時には手遅れ、それが戦場である。
「そうよ」
「すまぬが負けるわけにはいかん。恨みっこ無しじゃぞ?」
「私も負けたら何だかんだまた卯月に言われそうだし、大人しく負けて」
「それはお主の――頑張り次第じゃな!」
利根は今日も絶好調なカタパルトから試製晴嵐を飛ばし、砲を構えた。
曙もそうなるのは当然最初から分かっており、高角砲で晴嵐を狙いながら一度距離を取る。
何より怖いのは前後左右全てから攻撃されることであり、回避は最優先すべき行動だ。
(武蔵の奴は何と言っておったかのぅ……確か曙は、バランス型じゃったか?)
器用に対空砲火と砲撃と回避行動を繰り返しながら、着実に晴嵐を落としながら相手を狙う曙。
出来れば時間をあまりかけずに落としたいということもあって、利根は温存していた晴嵐も全て飛ばし、動きを完全に封じようと試みる。
(また増えた、ウザいなぁ……)
基本的に対空は曙が任されることが多く、この戦い方は彼女にとっては慣れたものだった。
バランス型というよりは万能サポート型に近く、突出して何かが凄いというものは曙にはない。
しかし、突出しない分どんな場面でも対応出来るのが彼女の強みだ。
「ちょこまかと動くのもそろそろ終わりにしてもらうぞ」
「仕方無いでしょ、駆逐艦なんだから」
「うむ、それもそうじゃな。では動いているのを狙うとしよう」
(晴嵐は今飛んでるので全機よね、後は――っ!?)
気付いた時には手遅れ、それが戦場である。
589: 2015/04/19(日) 11:43:21.66 ID:/s6YKl7r0
真っ直ぐに武蔵へと迫る駆逐艦。その手にあるべきはずの砲は、今は仕舞われていた。
「最初から砲撃戦を捨てるか」
「どうせ貫けないし、撃つよりこっちが早い」
「お前のその誰にも臆さず真正面からぶつかる精神、私は好きだぜ」
「愛の告白は……なんていうか、困る」
「む、振られたか」
「耐性、付いた?」
「負けず劣らず賑やかで馬鹿騒ぎが好きな鎮守府だったんでな、多少からかわれた程度ではもう動じんさ。あの兎だけは未だに皮を剥いでやりたいがな……」
「――そろそろ、いくよ」
「――あぁ、かかって来い!」
大和と霧島が肉弾戦ならば、この二人が今から行うのは海上でやる柔道の試合のようなものだ。
一発殴れば武蔵の勝ち、にも関わらず彼女がそうしないのは、殴ろうとすれば負けるからである。
「相変わらずお前の動きは、肝が冷えるっ」
「その重武装で反応するのも十分異常だと思う」
並行に航行している状態から滑るように懐へと入り込み、足を崩そうとする朧。
それを先読みし武蔵は払いのけるが、その手を掴まれ更に体勢を崩されかけ、彼女へ砲身を向けて退かせた。
「艦娘の戦い方としては下の下なのかもしれんが、それ故に対策が取り難いというのはやはり脅威か」
「しっかり防いでから言わないで欲しい」
「この程度なら防いで当然、だろ?」
「……」
ニヤリと笑う武蔵を見て、朧は昔と変わらず衰えていないと確信した。
そして、卯月が見せたものよりはやや抑え目に加速し、小回りの難しい彼女の背後へと回り込もうとする。
「そう簡単に後ろは取らせん!」
その場での急旋回は難しい為、前へと進みながら武蔵は身体を朧が回り込んだ方へと旋回させる。
しかし、これが悪手だったとすぐに気付くこととなる。
(む、この動きはまずかったか……)
最初からその動きを読んでいたかのように既に間近まで接近していた朧を見て、武蔵は行動の優先順位を切り替えた。
自分の身体を掴もうとする手に体勢を崩されるまでの僅かな時間を使い砲を構え、目視で確認出来た敵目掛けて放つ。
浮遊感がその後すぐに襲い掛かるが、艦隊戦としての役割は果たせた彼女の顔は笑っていた。
「最初から砲撃戦を捨てるか」
「どうせ貫けないし、撃つよりこっちが早い」
「お前のその誰にも臆さず真正面からぶつかる精神、私は好きだぜ」
「愛の告白は……なんていうか、困る」
「む、振られたか」
「耐性、付いた?」
「負けず劣らず賑やかで馬鹿騒ぎが好きな鎮守府だったんでな、多少からかわれた程度ではもう動じんさ。あの兎だけは未だに皮を剥いでやりたいがな……」
「――そろそろ、いくよ」
「――あぁ、かかって来い!」
大和と霧島が肉弾戦ならば、この二人が今から行うのは海上でやる柔道の試合のようなものだ。
一発殴れば武蔵の勝ち、にも関わらず彼女がそうしないのは、殴ろうとすれば負けるからである。
「相変わらずお前の動きは、肝が冷えるっ」
「その重武装で反応するのも十分異常だと思う」
並行に航行している状態から滑るように懐へと入り込み、足を崩そうとする朧。
それを先読みし武蔵は払いのけるが、その手を掴まれ更に体勢を崩されかけ、彼女へ砲身を向けて退かせた。
「艦娘の戦い方としては下の下なのかもしれんが、それ故に対策が取り難いというのはやはり脅威か」
「しっかり防いでから言わないで欲しい」
「この程度なら防いで当然、だろ?」
「……」
ニヤリと笑う武蔵を見て、朧は昔と変わらず衰えていないと確信した。
そして、卯月が見せたものよりはやや抑え目に加速し、小回りの難しい彼女の背後へと回り込もうとする。
「そう簡単に後ろは取らせん!」
その場での急旋回は難しい為、前へと進みながら武蔵は身体を朧が回り込んだ方へと旋回させる。
しかし、これが悪手だったとすぐに気付くこととなる。
(む、この動きはまずかったか……)
最初からその動きを読んでいたかのように既に間近まで接近していた朧を見て、武蔵は行動の優先順位を切り替えた。
自分の身体を掴もうとする手に体勢を崩されるまでの僅かな時間を使い砲を構え、目視で確認出来た敵目掛けて放つ。
浮遊感がその後すぐに襲い掛かるが、艦隊戦としての役割は果たせた彼女の顔は笑っていた。
595: 2015/04/20(月) 22:02:59.01 ID:j/Dxs98P0
「潮は大人しい、ってイメージは捨てた方がいいらしいな」
「戦うのは苦手ですよ?」
「……お前、あの中だと一番ヤバい感じがするぜ?」
「――お喋りしに来た訳じゃないので、そろそろ寝てください」
(張り付けた様な笑みってのはこういうのを言うんだろうな)
身震いしそうな程冷たい笑みを浮かべ、潮は砲を構えた。
先の島風との戦いからも分かる通り、その射撃能力はずば抜けて高い。
「何発撃ったらそれだけの技術が身に付くのか、教えてもらいてぇなぁ!」
「一発でも外せば誰かが沈むかもしれないと思ったら、外さなくなりますよ?」
(そんな緊張感を持続したままずっと戦うなんてのは……出来るから、この強さってことか)
眉間、首、胸、腹、太股、どれも回避せざるを得ない部位への砲弾が木曾へと迫る。
かする程度の最小限の動きを心掛けないと、次弾への対処が出来ない辺り、その異常な速射能力も窺い知れた。
(改造砲か……それならこれでどうだ!)
「?」
一定の距離を保っていたのを急に崩し、木曾は全速で突撃する。
明らかな愚策とも思えるが、そこに何か秘策があると考え潮は足を集中的に狙うことにした。
「そっちが改造砲を使うってんなら、俺はコイツを使わせてもらう!」
(っ!? マントに弾が……)
木曾は羽織っていたマントを片手で掴んで脱ぎ、足元で振る。
綺麗にその中へと潮の弾は吸い込まれ、跡形も無く消えた。
「この距離なら――」
「それは私の台詞ですよ?」
「ぐぅっ……だが、これで!」
至近距離から腹部に被弾し、視界がぐらりと揺れる。
しかし、それに堪えて木曾は潮へと相討ち覚悟の魚雷を放った。
(締まらねぇ戦いだなぁ……だが、これで俺達の勝ちだ)
「詰めが甘いです、木曾さん」
この演習中で最後に木曾が見たのは、最初と変わらぬ身震いするような笑みだった。
「戦うのは苦手ですよ?」
「……お前、あの中だと一番ヤバい感じがするぜ?」
「――お喋りしに来た訳じゃないので、そろそろ寝てください」
(張り付けた様な笑みってのはこういうのを言うんだろうな)
身震いしそうな程冷たい笑みを浮かべ、潮は砲を構えた。
先の島風との戦いからも分かる通り、その射撃能力はずば抜けて高い。
「何発撃ったらそれだけの技術が身に付くのか、教えてもらいてぇなぁ!」
「一発でも外せば誰かが沈むかもしれないと思ったら、外さなくなりますよ?」
(そんな緊張感を持続したままずっと戦うなんてのは……出来るから、この強さってことか)
眉間、首、胸、腹、太股、どれも回避せざるを得ない部位への砲弾が木曾へと迫る。
かする程度の最小限の動きを心掛けないと、次弾への対処が出来ない辺り、その異常な速射能力も窺い知れた。
(改造砲か……それならこれでどうだ!)
「?」
一定の距離を保っていたのを急に崩し、木曾は全速で突撃する。
明らかな愚策とも思えるが、そこに何か秘策があると考え潮は足を集中的に狙うことにした。
「そっちが改造砲を使うってんなら、俺はコイツを使わせてもらう!」
(っ!? マントに弾が……)
木曾は羽織っていたマントを片手で掴んで脱ぎ、足元で振る。
綺麗にその中へと潮の弾は吸い込まれ、跡形も無く消えた。
「この距離なら――」
「それは私の台詞ですよ?」
「ぐぅっ……だが、これで!」
至近距離から腹部に被弾し、視界がぐらりと揺れる。
しかし、それに堪えて木曾は潮へと相討ち覚悟の魚雷を放った。
(締まらねぇ戦いだなぁ……だが、これで俺達の勝ちだ)
「詰めが甘いです、木曾さん」
この演習中で最後に木曾が見たのは、最初と変わらぬ身震いするような笑みだった。
598: 2015/04/22(水) 21:33:03.55 ID:6mtZKx6X0
(私よりも鳳翔さんに近い艦載機の繰り方、何の気兼ねも無く鳳翔さんがこちらへ来られたのも頷けるわね。――けれど、姉弟子として負ける訳にはいきません)
空で激しく繰り広げられていた戦いは時間が経つにつれ加賀が優勢になっていき、現在は完全に空を掌握するのも時間の問題というところまできていた。
対する千歳も最初から時間稼ぎにのみ重点を置いていた為、その役割はもう十分に果たせていると言える。
(加賀さんに赤城さん、鳳翔さん、龍驤さん、他の人達も合わせると、空母の質はやっぱりこの鎮守府が一番ね)
特に悔しそうな表情も見せず、演習後の酒盛りへと彼女は思いは馳せる。
酒の肴になる話には事欠かないのは明白であり、今から誰と飲めるかを考えながら、千歳は卯月に制空権喪失の通信を入れるのだった。
空で激しく繰り広げられていた戦いは時間が経つにつれ加賀が優勢になっていき、現在は完全に空を掌握するのも時間の問題というところまできていた。
対する千歳も最初から時間稼ぎにのみ重点を置いていた為、その役割はもう十分に果たせていると言える。
(加賀さんに赤城さん、鳳翔さん、龍驤さん、他の人達も合わせると、空母の質はやっぱりこの鎮守府が一番ね)
特に悔しそうな表情も見せず、演習後の酒盛りへと彼女は思いは馳せる。
酒の肴になる話には事欠かないのは明白であり、今から誰と飲めるかを考えながら、千歳は卯月に制空権喪失の通信を入れるのだった。
599: 2015/04/22(水) 21:33:36.77 ID:6mtZKx6X0
演習は佳境に突入し、轟沈判定を受けたのは曙、島風、木曾の三名。
大和と霧島は中破状態で戦闘続行中。
朧は武蔵を投げるという目的を達成して満足し、武蔵と談笑中。
利根は小破、潮は中破でそれぞれ旗艦の援護へと向かっていた。
「――艦隊戦、とは一体何なのかしら」
「深海棲艦とは相手の仕方が違う以上、こうなるのは仕方無いぴょん」
「貴女達が深海棲艦でなくて本当に良かったと思います」
「こんな可愛い子が深海棲艦な訳無いでぇーっす」
「あくまで“子”と言い張るのね、いいけれど」
「――だって、“子”ですから」
「……そう」
「じゃあ、そろそろ始めるぴょん」
「えぇ、そしてすぐに終わらせます」
開幕の一撃、それは加賀の艦載機による真上からの奇襲。
既に発艦していた彗星による爆撃が、卯月目掛けて投下される。
「狙いが綺麗過ぎ、的」
「第二次攻撃隊、発艦。作戦そ・ほ・ひ」
真上に掲げた砲で落ちる前に処理を終え、卯月は直ぐ様正面へと構え直す。
当然加賀も攻撃の手を緩めず、次の攻撃隊を飛ばした。
(あの加速は知っていれば避けられる。ただ、それは相手も分かっているはず……)
(潮の援護が見込めるかどうかという程度、期待はせずに隙を突きましょうか)
近接格闘ならば朧、射撃なら潮、総合補助なら曙が一番秀でている。
では、卯月は何故元帥の護衛として優秀なのか――それは、直感の鋭さにある。
(変則的な戦い方だけで務まるようなものでは無いと思っていましたが……)
駆逐艦にとっては少量の被弾が命取りになる。それが、一般的な考え方だ。
だが、この卯月に関しては違っていた。
(右……左、後ろ……左)
至近弾、掠り弾、結果的にそうなる軌道の攻撃には一切反応せず、直撃になる軌道の攻撃を放とうとする艦載機だけを撃たれる前に撃墜していく。
冷静な思考判断と、野性的な直感、その二つを同時に駆使出来るからこそ、彼女は元帥艦隊旗艦兼元帥護衛という役割を全う出来ていたのだ。
生き残り、生かす為に特化した卯月。ある意味で初霜に似た彼女の強さは、どこか優しさを秘めていた。
大和と霧島は中破状態で戦闘続行中。
朧は武蔵を投げるという目的を達成して満足し、武蔵と談笑中。
利根は小破、潮は中破でそれぞれ旗艦の援護へと向かっていた。
「――艦隊戦、とは一体何なのかしら」
「深海棲艦とは相手の仕方が違う以上、こうなるのは仕方無いぴょん」
「貴女達が深海棲艦でなくて本当に良かったと思います」
「こんな可愛い子が深海棲艦な訳無いでぇーっす」
「あくまで“子”と言い張るのね、いいけれど」
「――だって、“子”ですから」
「……そう」
「じゃあ、そろそろ始めるぴょん」
「えぇ、そしてすぐに終わらせます」
開幕の一撃、それは加賀の艦載機による真上からの奇襲。
既に発艦していた彗星による爆撃が、卯月目掛けて投下される。
「狙いが綺麗過ぎ、的」
「第二次攻撃隊、発艦。作戦そ・ほ・ひ」
真上に掲げた砲で落ちる前に処理を終え、卯月は直ぐ様正面へと構え直す。
当然加賀も攻撃の手を緩めず、次の攻撃隊を飛ばした。
(あの加速は知っていれば避けられる。ただ、それは相手も分かっているはず……)
(潮の援護が見込めるかどうかという程度、期待はせずに隙を突きましょうか)
近接格闘ならば朧、射撃なら潮、総合補助なら曙が一番秀でている。
では、卯月は何故元帥の護衛として優秀なのか――それは、直感の鋭さにある。
(変則的な戦い方だけで務まるようなものでは無いと思っていましたが……)
駆逐艦にとっては少量の被弾が命取りになる。それが、一般的な考え方だ。
だが、この卯月に関しては違っていた。
(右……左、後ろ……左)
至近弾、掠り弾、結果的にそうなる軌道の攻撃には一切反応せず、直撃になる軌道の攻撃を放とうとする艦載機だけを撃たれる前に撃墜していく。
冷静な思考判断と、野性的な直感、その二つを同時に駆使出来るからこそ、彼女は元帥艦隊旗艦兼元帥護衛という役割を全う出来ていたのだ。
生き残り、生かす為に特化した卯月。ある意味で初霜に似た彼女の強さは、どこか優しさを秘めていた。
600: 2015/04/22(水) 21:34:04.38 ID:6mtZKx6X0
「悪いがここから先へは行かせられぬ」
「通して下さい」
「むむっ、問答無用というやつか」
「今は戦ってるんです。話そうとするのがおかしいんですよ?」
「ふむ……確かに一理ある。じゃが、吾輩は語らうことが好きでな、すまんが絶対に付き合ってもらうぞ!」
「――邪魔を、しないで」
(これは一対一だと木曾が負けたのも無理ないのぅ。中破まで追い込んだだけでも大金星じゃ)
「考え事なんて余裕あるんですね」
「余裕か、そう見えるならお主の目は節穴じゃぞ?」
「ただの忠告ですから、気にしないで下さい」
「ほほぅ、それは感謝しなくてはならんな」
「……挑発のつもりでしょうか」
「言ったであろう? 語らうのが好きだ、と」
「私は嫌いです」
「――消えぬ傷か、難儀だなお主も」
「っ……」
――どうだ? 語らうのも立派な戦術の一つなのじゃぞ?
「通して下さい」
「むむっ、問答無用というやつか」
「今は戦ってるんです。話そうとするのがおかしいんですよ?」
「ふむ……確かに一理ある。じゃが、吾輩は語らうことが好きでな、すまんが絶対に付き合ってもらうぞ!」
「――邪魔を、しないで」
(これは一対一だと木曾が負けたのも無理ないのぅ。中破まで追い込んだだけでも大金星じゃ)
「考え事なんて余裕あるんですね」
「余裕か、そう見えるならお主の目は節穴じゃぞ?」
「ただの忠告ですから、気にしないで下さい」
「ほほぅ、それは感謝しなくてはならんな」
「……挑発のつもりでしょうか」
「言ったであろう? 語らうのが好きだ、と」
「私は嫌いです」
「――消えぬ傷か、難儀だなお主も」
「っ……」
――どうだ? 語らうのも立派な戦術の一つなのじゃぞ?
601: 2015/04/22(水) 22:31:17.98 ID:8TQj/wkOo
おつ
見た目は子供、子供のフリして内面大人
見た目は子供、子供のフリして内面大人
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