1:◆UeZ8dRl.OE 2015/08/09(日) 17:19:50.87 ID:BJiYhGxQ0
・先のスレ同様、リクエストを受け付けながら勝手気ままに書いていきます
・スレの設定から著しく逸脱する場合パラレルとして書きます
前回はこちら
前スレは以下の5つです
【艦これ】大鳳「一度入ったら抜け出せない鎮守府?」
【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」
【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」
【艦これ】大鳳「浦風が可愛い鎮守府」提督「多分一応は鎮守府」
【艦これ】浦風「姉さんが拗ねとる鎮守府」大鳳「最近私の影が薄い鎮守府」
・スレの設定から著しく逸脱する場合パラレルとして書きます
前回はこちら
前スレは以下の5つです
【艦これ】大鳳「一度入ったら抜け出せない鎮守府?」
【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」
【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」
【艦これ】大鳳「浦風が可愛い鎮守府」提督「多分一応は鎮守府」
【艦これ】浦風「姉さんが拗ねとる鎮守府」大鳳「最近私の影が薄い鎮守府」
24: 2015/08/09(日) 21:18:01.82 ID:BJiYhGxQ0
・秋月『節電です!』
・葛城&瑞鶴『アウトレンジ』
・大和『夏の夜に』
・川内『笑わなくてもいいじゃん!』
・クー『言ッタコトニハ責任持テ』
・早霜『少し、楽しくなってきました』
以上六本でお送りします
・葛城&瑞鶴『アウトレンジ』
・大和『夏の夜に』
・川内『笑わなくてもいいじゃん!』
・クー『言ッタコトニハ責任持テ』
・早霜『少し、楽しくなってきました』
以上六本でお送りします
27: 2015/08/13(木) 02:44:56.39 ID:hmojY4JE0
・秋月『節電です!』 、投下します
駅前のスーパーで猫と熊と卯印の野菜が販売中
駅前のスーパーで猫と熊と卯印の野菜が販売中
28: 2015/08/13(木) 02:45:23.32 ID:hmojY4JE0
「こりゃまた凄いな……」
「ゴーヤさんに頼んでやっていただきました」
「頑張ったでち」
各寮でグリーンカーテンを作る、という計画を秋月が言い出したのはつい先日のことで、それが実現するまでの時間の短さに提督は素直に感心する。
明石には各艦娘用の冷却マット作成、各部屋の室長にはエアコンの掃除、冷蔵庫の綺麗な収納術講義を間宮と鳳翔へ依頼、他にも様々な節電・節約の為に秋月は行動を起こしていた。
「最初は協力して頂けるか不安でしたが、皆さん快く協力して下さいました」
「今までは正直余裕があったからあまり気にしていなかっただけで、面倒だから嫌だとは誰も言わんさ」
「多少、そういう声もあるにはあったのですが……」
「あー……大体どうなったかは予想がつく」
苦笑いする彼女を見て、恐らく姉妹艦辺りに全員一喝されたのだろうと提督も苦笑いで返す。
「それにしても、塵も積もればなんとやらで、霧島がざっと計算したらこのぐらい浮くらしい」
「す、凄いですね……」
向けられた電卓に表示された数字を見て、秋月は目を丸くする。
鎮守府の規模が大きい分、全体で節電・節約を心掛ければそれだけ成果は大きくなる。
「――さて、この功績を踏まえて秋月、何か望むものがあれば言っていいぞ。常識の範囲内なら叶えてやる」
「いえ、私はただ自分のわがままに皆さんを付き合わせただけですので」
「なら、付き合った俺のわがままも聞いてもらう」
「提督、その返しはズルいと思います……では、こういうのはどうでしょうか?」
「ゴーヤさんに頼んでやっていただきました」
「頑張ったでち」
各寮でグリーンカーテンを作る、という計画を秋月が言い出したのはつい先日のことで、それが実現するまでの時間の短さに提督は素直に感心する。
明石には各艦娘用の冷却マット作成、各部屋の室長にはエアコンの掃除、冷蔵庫の綺麗な収納術講義を間宮と鳳翔へ依頼、他にも様々な節電・節約の為に秋月は行動を起こしていた。
「最初は協力して頂けるか不安でしたが、皆さん快く協力して下さいました」
「今までは正直余裕があったからあまり気にしていなかっただけで、面倒だから嫌だとは誰も言わんさ」
「多少、そういう声もあるにはあったのですが……」
「あー……大体どうなったかは予想がつく」
苦笑いする彼女を見て、恐らく姉妹艦辺りに全員一喝されたのだろうと提督も苦笑いで返す。
「それにしても、塵も積もればなんとやらで、霧島がざっと計算したらこのぐらい浮くらしい」
「す、凄いですね……」
向けられた電卓に表示された数字を見て、秋月は目を丸くする。
鎮守府の規模が大きい分、全体で節電・節約を心掛ければそれだけ成果は大きくなる。
「――さて、この功績を踏まえて秋月、何か望むものがあれば言っていいぞ。常識の範囲内なら叶えてやる」
「いえ、私はただ自分のわがままに皆さんを付き合わせただけですので」
「なら、付き合った俺のわがままも聞いてもらう」
「提督、その返しはズルいと思います……では、こういうのはどうでしょうか?」
29: 2015/08/13(木) 02:45:49.69 ID:hmojY4JE0
「――提督、その料理の山は……」
「各屋台から差し入れが届いたんだよ。秋月、どれか食うか? アイツ等コスト無視して作ってるからどれも美味いぞ」
「じゃあ、たこ焼きとチョコバナナをいただきます」
「一舟百円、一本五十円、原価は大体五百円ってとこか」
(逆にどうしたらそこまで高く出来るんだろ……)
「それにしても大きな祭がしたいってのは面白いお願いだな」
「去年のクリスマスが楽しかったので、出来ればまたやって欲しいと思っていたんです」
「元々前から計画はあったんだが、各自やりたいことを出し合ったらバカみたいに必要な予算が膨らんでな……」
「私の質素倹約の精神は、必要な時の為に備えるというのが目的ですから」
「何かで読んだな、“本物のドケチは金の使い方を知っている”、だったか」
「提督も、無駄遣いはなるべくしないで下さいね?」
「……善処はする」
――――秋月、コンビニじゃダメか?
――――ダメです。駅前のスーパーの方が十八円も安いです。
「各屋台から差し入れが届いたんだよ。秋月、どれか食うか? アイツ等コスト無視して作ってるからどれも美味いぞ」
「じゃあ、たこ焼きとチョコバナナをいただきます」
「一舟百円、一本五十円、原価は大体五百円ってとこか」
(逆にどうしたらそこまで高く出来るんだろ……)
「それにしても大きな祭がしたいってのは面白いお願いだな」
「去年のクリスマスが楽しかったので、出来ればまたやって欲しいと思っていたんです」
「元々前から計画はあったんだが、各自やりたいことを出し合ったらバカみたいに必要な予算が膨らんでな……」
「私の質素倹約の精神は、必要な時の為に備えるというのが目的ですから」
「何かで読んだな、“本物のドケチは金の使い方を知っている”、だったか」
「提督も、無駄遣いはなるべくしないで下さいね?」
「……善処はする」
――――秋月、コンビニじゃダメか?
――――ダメです。駅前のスーパーの方が十八円も安いです。
34: 2015/08/15(土) 22:54:29.21 ID:qlQKlpw40
・葛城&瑞鶴『アウトレンジ』、投下します
自分もされて初めて知る苦労
自分もされて初めて知る苦労
35: 2015/08/15(土) 22:54:56.44 ID:qlQKlpw40
「瑞鶴先輩!」
「葛城か、私に何か用?」
「私に空母としての戦い方を教えて下さい!」
「教わるなら私じゃなくて、もっと他に適任がここにはいっぱい居るんじゃない?」
「私は瑞鶴先輩に教わりたいんです!」
「そ、そこまで言うならいいけど……私も人に教えるのはあんまり慣れてないから、分かりづらくても文句言わないでね」
「はい! よろしくお願いします!」
(慕ってくれるのは嬉しいんだけど、何か調子狂うなー……)
落ち着きを持ってしまった瑞鶴からすると、今の葛城は昔の自分を見ているような気分になり、少し気恥ずかしくもあった。
しかし、一度引き受けた以上、自分を鍛えてくれた未だに越えられない壁に笑われない様にしなければと、すぐに気を引き締めるのだった。
「とりあえず発艦と着艦、百回ぐらいやってみて」
「百回!?」
「うん、どうかした?」
「い、いえ、やります!」
飛ばす、戻す、飛ばす、戻す、ただそれだけとはいえ、百回となるとそれなりに時間がかかる。
更に言えば、艦載機を飛ばす際には集中力も必要な為、地味に疲れる訓練でもあった。
(五十八、五十九……)
「――はい、そこまで」
「へ? きゃっ!? せ、先輩!?」
「集中し過ぎて周りが見えてないとそうなっちゃうから、次は私の動きにも注意しながら飛ばしてみて」
「は、はい!」
背中へ訪れた冷たい感触に振り返った葛城の目には、水鉄砲を構えた瑞鶴の姿。
使っているものは水鉄砲と遊びにも見えるが、空母が戦う上で重要なことを彼女は教えていた。
(コレ、かなり文句を加賀さんに言いながらやったっけ……私の時は水鉄砲じゃなくてハリセンだったけど)
懐かしき日々に思いを馳せながら、瑞鶴は再び背後に回り込んでカウントをゼロに戻す。
葛城がようやく百を数えられるようになったのは、この翌日のことだった。
「葛城か、私に何か用?」
「私に空母としての戦い方を教えて下さい!」
「教わるなら私じゃなくて、もっと他に適任がここにはいっぱい居るんじゃない?」
「私は瑞鶴先輩に教わりたいんです!」
「そ、そこまで言うならいいけど……私も人に教えるのはあんまり慣れてないから、分かりづらくても文句言わないでね」
「はい! よろしくお願いします!」
(慕ってくれるのは嬉しいんだけど、何か調子狂うなー……)
落ち着きを持ってしまった瑞鶴からすると、今の葛城は昔の自分を見ているような気分になり、少し気恥ずかしくもあった。
しかし、一度引き受けた以上、自分を鍛えてくれた未だに越えられない壁に笑われない様にしなければと、すぐに気を引き締めるのだった。
「とりあえず発艦と着艦、百回ぐらいやってみて」
「百回!?」
「うん、どうかした?」
「い、いえ、やります!」
飛ばす、戻す、飛ばす、戻す、ただそれだけとはいえ、百回となるとそれなりに時間がかかる。
更に言えば、艦載機を飛ばす際には集中力も必要な為、地味に疲れる訓練でもあった。
(五十八、五十九……)
「――はい、そこまで」
「へ? きゃっ!? せ、先輩!?」
「集中し過ぎて周りが見えてないとそうなっちゃうから、次は私の動きにも注意しながら飛ばしてみて」
「は、はい!」
背中へ訪れた冷たい感触に振り返った葛城の目には、水鉄砲を構えた瑞鶴の姿。
使っているものは水鉄砲と遊びにも見えるが、空母が戦う上で重要なことを彼女は教えていた。
(コレ、かなり文句を加賀さんに言いながらやったっけ……私の時は水鉄砲じゃなくてハリセンだったけど)
懐かしき日々に思いを馳せながら、瑞鶴は再び背後に回り込んでカウントをゼロに戻す。
葛城がようやく百を数えられるようになったのは、この翌日のことだった。
36: 2015/08/15(土) 22:55:22.37 ID:qlQKlpw40
「よし、じゃあ次は簡単よ」
「あの、艤装はいらないんですか?」
「あってもいいけど、多分邪魔にしかならないんじゃない?」
(艤装無しで何をするんだろ……早く先輩に艦載機を使った戦い方を教えて欲しいな)
若干艦載機に執着や拘りの強い雲龍型らしく、葛城も艦載機を飛ばすことに喜びを感じていた。
それを知った上で、瑞鶴は次の特訓に協力してくれる艦娘の名を呼んだ。
「じゃあ頼んだわよ、島風」
「一日追いかけっこに付き合ってくれるってホント!?」
「えっ? いや、えーっと、瑞鶴先輩……?」
「今日一日、島風をずっと追いかけること。とっても簡単でしょ? じゃあ頑張ってね」
「私には誰も追い付けないよ! じゃあよーい、ドン!」
(先輩が言うことに間違いは無いはず……よね? よ、よーし頑張るぞー)
翌日、筋肉痛と極度の疲労により葛城ダウン。
なお、島風がキラキラしたことにより天津風がスタミナ料理を差し入れに向かった模様。
「あの、艤装はいらないんですか?」
「あってもいいけど、多分邪魔にしかならないんじゃない?」
(艤装無しで何をするんだろ……早く先輩に艦載機を使った戦い方を教えて欲しいな)
若干艦載機に執着や拘りの強い雲龍型らしく、葛城も艦載機を飛ばすことに喜びを感じていた。
それを知った上で、瑞鶴は次の特訓に協力してくれる艦娘の名を呼んだ。
「じゃあ頼んだわよ、島風」
「一日追いかけっこに付き合ってくれるってホント!?」
「えっ? いや、えーっと、瑞鶴先輩……?」
「今日一日、島風をずっと追いかけること。とっても簡単でしょ? じゃあ頑張ってね」
「私には誰も追い付けないよ! じゃあよーい、ドン!」
(先輩が言うことに間違いは無いはず……よね? よ、よーし頑張るぞー)
翌日、筋肉痛と極度の疲労により葛城ダウン。
なお、島風がキラキラしたことにより天津風がスタミナ料理を差し入れに向かった模様。
37: 2015/08/15(土) 22:55:49.58 ID:qlQKlpw40
その後も特訓は続き、大和・武蔵の道場で稽古、祥鳳の弓道教室に参加、ほっぽのお守り、那珂の艦娘アイドルレッスンを経て、ようやく瑞鶴は艤装を葛城に着けるよう指示した。
当然、瑞鶴も艤装を着けている。
「瑞鶴先輩、今日こそは艦載機を使って訓練ですよね?」
「ねぇ、葛城。貴女は艦載機を上手に操れるようになって、空母として強くなって、どうしたいの?」
「瑞鶴先輩みたいになりたいです!」
「ふーん、私みたいに、か。じゃあ葛城は――私には一生勝てないわね」
「っ!?」
知っていた。知っていたはずだった。
しかし、その迫力に葛城の背筋に悪寒が走る。
(まるで、別人みたい……)
「後は自分で必要なことを覚えて、学んで、私を倒せば晴れて一人前よ。遠慮なんていらないから、全力でかかってきなさい」
「はい!」
――――瑞鶴、葛城はどうだ?
――――いざ自分がされるとこんなに神経がすり減っていくとは思わなかったわ……。
――――(射程外から延々観察……ストーカーとは違うが確かに神経はすり減りそうだな)
――――(いいなぁ、瑞鶴先輩とお茶……違う! ちゃんと観察しないと!)
当然、瑞鶴も艤装を着けている。
「瑞鶴先輩、今日こそは艦載機を使って訓練ですよね?」
「ねぇ、葛城。貴女は艦載機を上手に操れるようになって、空母として強くなって、どうしたいの?」
「瑞鶴先輩みたいになりたいです!」
「ふーん、私みたいに、か。じゃあ葛城は――私には一生勝てないわね」
「っ!?」
知っていた。知っていたはずだった。
しかし、その迫力に葛城の背筋に悪寒が走る。
(まるで、別人みたい……)
「後は自分で必要なことを覚えて、学んで、私を倒せば晴れて一人前よ。遠慮なんていらないから、全力でかかってきなさい」
「はい!」
――――瑞鶴、葛城はどうだ?
――――いざ自分がされるとこんなに神経がすり減っていくとは思わなかったわ……。
――――(射程外から延々観察……ストーカーとは違うが確かに神経はすり減りそうだな)
――――(いいなぁ、瑞鶴先輩とお茶……違う! ちゃんと観察しないと!)
41: 2015/08/16(日) 23:00:47.54 ID:6mkcUUvn0
ちょっと海に出てくるよ、そう言った彼女を誰も止めなかった。
少し沖まで出た後、穏やかで静かな夜の海に一人佇み、目を閉じる。
雪風と並び幸運艦と称されるだけの経歴を持つ彼女が、雪風の持つ願いを共に願っていたとして何らおかしいことはなく、暗い海の底まで届くように祈りを捧げる。
(僕はここだよ、皆もおいでよ。きっと、楽しいから)
手を前へ出し、ただ祈りながら待つ。
握り返す感触が本当に来るとは、彼女も思っていない。
しかし、そうなれば嬉しいとは心の底から思っていた。
(……今日は、もう帰ろうかな)
目を開き、手を下げて踵を返そうとした。
だが、彼女にはそれが出来なかった。
何故なら――。
「ン。久しぶり、時雨の姉貴」
「っ……うん、久しぶり、だね」
確かにその手は、妹の手を掴んでいたのだから。
――――江風を時雨が連れて帰ってきました。
少し沖まで出た後、穏やかで静かな夜の海に一人佇み、目を閉じる。
雪風と並び幸運艦と称されるだけの経歴を持つ彼女が、雪風の持つ願いを共に願っていたとして何らおかしいことはなく、暗い海の底まで届くように祈りを捧げる。
(僕はここだよ、皆もおいでよ。きっと、楽しいから)
手を前へ出し、ただ祈りながら待つ。
握り返す感触が本当に来るとは、彼女も思っていない。
しかし、そうなれば嬉しいとは心の底から思っていた。
(……今日は、もう帰ろうかな)
目を開き、手を下げて踵を返そうとした。
だが、彼女にはそれが出来なかった。
何故なら――。
「ン。久しぶり、時雨の姉貴」
「っ……うん、久しぶり、だね」
確かにその手は、妹の手を掴んでいたのだから。
――――江風を時雨が連れて帰ってきました。
45: 2015/08/18(火) 09:13:29.11 ID:3PYHlzHB0
・大和『夏の夜に』、投下します
夏は姉妹共々実は苦手
夏は姉妹共々実は苦手
46: 2015/08/18(火) 09:14:00.13 ID:3PYHlzHB0
――私はお札を部屋中に貼りました。それこそ扉が開かないぐらいに。
(後が大変そうだな)
(大和は幽霊なんて主砲で追い払ってみせます)
――また夜が来て、あの音がし始めました。でも、その日は前日までとは違う点が一つだけありました。
(なんとなくオチは読めた)
(ち、違う点……?)
――……その音、部屋の外じゃなくて中から聞こえてきたんです。私、見えない何かと一緒に部屋に閉じ籠ってしまっちゃってたんですよ。……結局その部屋、翌日に引き払いました。
「素人が札なんかベタベタ貼ったって意味なんて無いだろうに、なぁ大和……大和?」
「や、大和は幽霊なんて怖くありません。へっちゃらです。大和の主砲ならきっと幽霊だってたちまち逃げ出してしまいます。だから提督、ちょっと工廠へ行ってきますね?」
「待て、お前の主砲は俺も逃げるぞ。ちょっと落ち着け大和」
「大和は至って冷静です」
「冷静な奴が部屋で、しかも真夜中に主砲ぶっぱなそうとするわけがあるか!」
「……提督が悪いんです」
「おい、何でそうなる」
「どうして恐怖番組なんて見たんですか!」
「夏だし他にろくな番組が無かったんだよ」
「恐怖番組を見るぐらいならニュースの方がまだ楽しめます!」
「わざわざ二人でニュースなんか見たくないわ!」
「もういいです。大和、本日は部屋に戻らせていただきます」
「あぁ、勝手にしろ」
「失礼しま……? っ!?」
「ん? 戻るんじゃなかうおっ!?」
「て、提督、音、ガリガリ、扉……」
「お、おちづけやまど、ぐるじ……」
――ガリガリ……ガリガリ……。
「ひっ!?」
(や、やばい、背骨が……胸で息も……い、意識が、遠、退いて――)
「て、提督は大和がお、おお守りします……提督? 提督、しっかりして下さい、提督、提督ー!」
――――どうやら逃げ出した雪風のペットが、あの音の正体らしい。
――――申し訳ありません提督、大和、一生の不覚です……。
――――まぁちょっと氏にかけはしたが、大和の貴重な怯える姿も見れたし、次はホラーDVDでも見るか?
――――ず、ずっと提督に抱き着いていてもいいなら、構いませんよ?
――――(ある意味その氏と隣り合わせな状況はかなりホラーだな)
(後が大変そうだな)
(大和は幽霊なんて主砲で追い払ってみせます)
――また夜が来て、あの音がし始めました。でも、その日は前日までとは違う点が一つだけありました。
(なんとなくオチは読めた)
(ち、違う点……?)
――……その音、部屋の外じゃなくて中から聞こえてきたんです。私、見えない何かと一緒に部屋に閉じ籠ってしまっちゃってたんですよ。……結局その部屋、翌日に引き払いました。
「素人が札なんかベタベタ貼ったって意味なんて無いだろうに、なぁ大和……大和?」
「や、大和は幽霊なんて怖くありません。へっちゃらです。大和の主砲ならきっと幽霊だってたちまち逃げ出してしまいます。だから提督、ちょっと工廠へ行ってきますね?」
「待て、お前の主砲は俺も逃げるぞ。ちょっと落ち着け大和」
「大和は至って冷静です」
「冷静な奴が部屋で、しかも真夜中に主砲ぶっぱなそうとするわけがあるか!」
「……提督が悪いんです」
「おい、何でそうなる」
「どうして恐怖番組なんて見たんですか!」
「夏だし他にろくな番組が無かったんだよ」
「恐怖番組を見るぐらいならニュースの方がまだ楽しめます!」
「わざわざ二人でニュースなんか見たくないわ!」
「もういいです。大和、本日は部屋に戻らせていただきます」
「あぁ、勝手にしろ」
「失礼しま……? っ!?」
「ん? 戻るんじゃなかうおっ!?」
「て、提督、音、ガリガリ、扉……」
「お、おちづけやまど、ぐるじ……」
――ガリガリ……ガリガリ……。
「ひっ!?」
(や、やばい、背骨が……胸で息も……い、意識が、遠、退いて――)
「て、提督は大和がお、おお守りします……提督? 提督、しっかりして下さい、提督、提督ー!」
――――どうやら逃げ出した雪風のペットが、あの音の正体らしい。
――――申し訳ありません提督、大和、一生の不覚です……。
――――まぁちょっと氏にかけはしたが、大和の貴重な怯える姿も見れたし、次はホラーDVDでも見るか?
――――ず、ずっと提督に抱き着いていてもいいなら、構いませんよ?
――――(ある意味その氏と隣り合わせな状況はかなりホラーだな)
50: 2015/08/21(金) 21:18:14.59 ID:n7QNhSsu0
・川内『笑わなくてもいいじゃん!』、投下します
任務とライブ以外は地味に露出が少なかったり
任務とライブ以外は地味に露出が少なかったり
51: 2015/08/21(金) 21:18:42.62 ID:n7QNhSsu0
執務室に響くノックの音。大抵はノックなどせず入る者がほとんどであり、誰かとは問わずにただ入れと言うのが提督の常である。
書類に目を落としたまま扉の開く音を聞き、キリのいいところまで書いてから、彼は顔を上げた。
そこに居た相手が予想外であったことに驚くと同時に、珍しいものを目の当たりにして思わず提督は笑ってしまう。
「何も笑うことないじゃん!」
「いや、すまん。そんな顔してるお前を見るのは初めてだったんで思わずな」
本当にそれだけの理由かと疑いの眼差しを彼に向けるのは、最近また新しい忍者の漫画を読み始めた川内である。
しかし、今彼女が身に着けているのは、忍者とはかけ離れたものだった。
「それにしてもどうしたんだよ、そのタキシード」
「次の那珂のライブでの衣装」
「他の二人は?」
「那珂は天使、神通はウェディングドレスだよ」
「那珂が恋のキューピッドで、二人を結婚まで導く、みたいな感じか」
「大体それで合ってるよ」
「それで? わざわざここへ来た理由は何だ?」
「うん……別にさ、男装するのが嫌って訳じゃないんだけどね、神通のウェディングドレス見てたら何かこう、モヤモヤしちゃうっていうか……」
「お前も着たいってことか?」
「うーん……提督はさ、私のウェディングドレス姿って……見たいの、かな?」
川内は顔を横に逸らしながら、横目で提督の反応を窺う。
普段ははっきりとした物言いをするものの、こういうところでたまに女の子らしい素振りを見せるのが、彼女の魅力の一つだと提督は思っていた。
「それを口にすると俺はまた暫く小遣いゼロになるからコメントは控えさせて頂く」
「へー、見たいんだ。ふーん、そっかそっか」
「今日はまた随分とコロコロと表情が変わるな、入ってきた時のちょっと恥じらった様な顔が一番珍しかったが」
「私だって女の子だし、変な恰好してるとか思われるの嫌じゃん」
「変どころか似合ってるぞ、タキシード。立派に神通をエスコートしてこい」
「何か釈然としないなぁ……あっそうだ、良いこと思い付いちゃった。提督、ちょっと待ってて」
(何かは分からないが、嫌な予感がする……)
書類に目を落としたまま扉の開く音を聞き、キリのいいところまで書いてから、彼は顔を上げた。
そこに居た相手が予想外であったことに驚くと同時に、珍しいものを目の当たりにして思わず提督は笑ってしまう。
「何も笑うことないじゃん!」
「いや、すまん。そんな顔してるお前を見るのは初めてだったんで思わずな」
本当にそれだけの理由かと疑いの眼差しを彼に向けるのは、最近また新しい忍者の漫画を読み始めた川内である。
しかし、今彼女が身に着けているのは、忍者とはかけ離れたものだった。
「それにしてもどうしたんだよ、そのタキシード」
「次の那珂のライブでの衣装」
「他の二人は?」
「那珂は天使、神通はウェディングドレスだよ」
「那珂が恋のキューピッドで、二人を結婚まで導く、みたいな感じか」
「大体それで合ってるよ」
「それで? わざわざここへ来た理由は何だ?」
「うん……別にさ、男装するのが嫌って訳じゃないんだけどね、神通のウェディングドレス見てたら何かこう、モヤモヤしちゃうっていうか……」
「お前も着たいってことか?」
「うーん……提督はさ、私のウェディングドレス姿って……見たいの、かな?」
川内は顔を横に逸らしながら、横目で提督の反応を窺う。
普段ははっきりとした物言いをするものの、こういうところでたまに女の子らしい素振りを見せるのが、彼女の魅力の一つだと提督は思っていた。
「それを口にすると俺はまた暫く小遣いゼロになるからコメントは控えさせて頂く」
「へー、見たいんだ。ふーん、そっかそっか」
「今日はまた随分とコロコロと表情が変わるな、入ってきた時のちょっと恥じらった様な顔が一番珍しかったが」
「私だって女の子だし、変な恰好してるとか思われるの嫌じゃん」
「変どころか似合ってるぞ、タキシード。立派に神通をエスコートしてこい」
「何か釈然としないなぁ……あっそうだ、良いこと思い付いちゃった。提督、ちょっと待ってて」
(何かは分からないが、嫌な予感がする……)
52: 2015/08/21(金) 21:19:09.50 ID:n7QNhSsu0
「あははははははっ!」
「笑うな! やらせたのはお前だろ!」
「ごめんごめん、想像以上におかしくって」
「全く、こんな恰好するハメになるとは提督になった時は考えもしなかったぞ」
「いいじゃん、貴重な経験が出来たって思えば」
「女装なんぞ一生経験したくなかったんだが?」
「提督もそれでライブ出演してみる?」
「人前になんぞ出れるか!」
「……じゃあさ、逆なら人前に出てくれたり、する?」
「……考えておく」
――――提督、早く早くー!
――――(良く考えたら川内の普段着ってボーイッシュなのが多い気がするな……今度那珂に頼んでみるか)
――――提督ってばー!
――――分かった、分かったからそんな大声で呼ぶな! 急がなくてもドレスは逃げん!
「笑うな! やらせたのはお前だろ!」
「ごめんごめん、想像以上におかしくって」
「全く、こんな恰好するハメになるとは提督になった時は考えもしなかったぞ」
「いいじゃん、貴重な経験が出来たって思えば」
「女装なんぞ一生経験したくなかったんだが?」
「提督もそれでライブ出演してみる?」
「人前になんぞ出れるか!」
「……じゃあさ、逆なら人前に出てくれたり、する?」
「……考えておく」
――――提督、早く早くー!
――――(良く考えたら川内の普段着ってボーイッシュなのが多い気がするな……今度那珂に頼んでみるか)
――――提督ってばー!
――――分かった、分かったからそんな大声で呼ぶな! 急がなくてもドレスは逃げん!
53: 2015/08/21(金) 21:19:52.80 ID:n7QNhSsu0
執務室にその報せが飛び込んだのは、ヒトヨンマルマルを過ぎた頃だった。
「――熱中症で所属不明の艦娘が遊技場で倒れただと?」
『はい、今明石にこちらに来てもらえるよう連絡したところです』
「分かった、俺もすぐに向かう。大鳳、周囲の人払いを頼む」
『了解です』
(はぁ……ここはどうしてこう次から次へと……)
「あっ提督、こっちです!」
「倒れた艦娘の様子はどうだ? 大丈夫なのか?」
「それが、その……説明するより見て貰った方が早いわね」
「?」
「ハヤスィー?」
「あ、いえ、速吸です、はい」
「グラーチェハヤスィー! リベ、まだこっちの暑さに慣れてなくって」
「えっと、あの、こちらの艦娘の方ですよね?」
「ううん、リベはどこにも所属してないよ? 何か楽しそうな場所だったから来てみただけー」
「えっ、えぇっ!?」
(まずい、どちらの話を聞いても面倒なことになりそうな予感しかしない……)
(あのジャージ良いわね、私も一着欲しいわ)
――――職(着任先)探し中のジャージ娘と放浪中の駆逐艦が鎮守府に現れました。
「――熱中症で所属不明の艦娘が遊技場で倒れただと?」
『はい、今明石にこちらに来てもらえるよう連絡したところです』
「分かった、俺もすぐに向かう。大鳳、周囲の人払いを頼む」
『了解です』
(はぁ……ここはどうしてこう次から次へと……)
「あっ提督、こっちです!」
「倒れた艦娘の様子はどうだ? 大丈夫なのか?」
「それが、その……説明するより見て貰った方が早いわね」
「?」
「ハヤスィー?」
「あ、いえ、速吸です、はい」
「グラーチェハヤスィー! リベ、まだこっちの暑さに慣れてなくって」
「えっと、あの、こちらの艦娘の方ですよね?」
「ううん、リベはどこにも所属してないよ? 何か楽しそうな場所だったから来てみただけー」
「えっ、えぇっ!?」
(まずい、どちらの話を聞いても面倒なことになりそうな予感しかしない……)
(あのジャージ良いわね、私も一着欲しいわ)
――――職(着任先)探し中のジャージ娘と放浪中の駆逐艦が鎮守府に現れました。
56: 2015/08/27(木) 16:23:21.29 ID:Py4qINVU0
――秋雲は餓えていた。
当然、食欲的な意味合いではなく、最古参の吹雪から新規着任した艦娘、果ては猫から深海棲艦に至るまで描き尽くしてしまった今、新しいイラストのモデルに餓えているのだ。
彼女は願った、まだ描いていない艦娘がここへ現れることを。
それは、若干不純な動機から願ったことかもしれない。
しかし、雪風達の絵を何度も満足のいく出来になるまで描き直した彼女の心の奥底には、確かに純粋に願う思いが存在した。
そして――。
「いやぁー!?」
「待って、一枚、一枚だけだから!」
「……秋雲のバカ」
「うふふ、来て早々あの子も大変ね」
――――秋雲の新しい餌食(モデル)が着任しました。
当然、食欲的な意味合いではなく、最古参の吹雪から新規着任した艦娘、果ては猫から深海棲艦に至るまで描き尽くしてしまった今、新しいイラストのモデルに餓えているのだ。
彼女は願った、まだ描いていない艦娘がここへ現れることを。
それは、若干不純な動機から願ったことかもしれない。
しかし、雪風達の絵を何度も満足のいく出来になるまで描き直した彼女の心の奥底には、確かに純粋に願う思いが存在した。
そして――。
「いやぁー!?」
「待って、一枚、一枚だけだから!」
「……秋雲のバカ」
「うふふ、来て早々あの子も大変ね」
――――秋雲の新しい餌食(モデル)が着任しました。
57: 2015/08/27(木) 16:23:48.00 ID:Py4qINVU0
「秋月、ちょっといいか」
「提督? こんな時間にどうされましたか?」
「お前の長十センチ砲ちゃん、逃げ出したりしてないよな?」
「長十センチ砲ちゃんならちゃんとここに居ますけど、どうしてそんなことを?」
「そうか……だったらコイツはやっぱり迷子砲ってことになるのか」
「迷子砲って――えっ、なっ、何?」
提督の陰から現れた、秋月の長十センチ砲ちゃんに良く似た迷子砲。
それは秋月を見付けると走り寄り、手を引いて何処かへ連れていこうとする。
「あなた、ひょっとして……」
「とりあえずついて行ってやれ、誰か後から向かわせる」
「はい、お願いします!」
柔らかな風が吹き抜ける海、水面に映った丸い月の中心、そこに彼女は浮かんでいた。
近付けば近付く程、秋月の推測は確信へと変わっていく。
僅かな距離がもどかしく、最初は手を引かれていた長十センチ砲ちゃんを脇に抱え速度を上げる。
(ようやく、ようやく会えた!)
「――照月!」
――――助けた長十センチ砲ちゃんに連れられて月に照らされた艦娘を発見しました。
「提督? こんな時間にどうされましたか?」
「お前の長十センチ砲ちゃん、逃げ出したりしてないよな?」
「長十センチ砲ちゃんならちゃんとここに居ますけど、どうしてそんなことを?」
「そうか……だったらコイツはやっぱり迷子砲ってことになるのか」
「迷子砲って――えっ、なっ、何?」
提督の陰から現れた、秋月の長十センチ砲ちゃんに良く似た迷子砲。
それは秋月を見付けると走り寄り、手を引いて何処かへ連れていこうとする。
「あなた、ひょっとして……」
「とりあえずついて行ってやれ、誰か後から向かわせる」
「はい、お願いします!」
柔らかな風が吹き抜ける海、水面に映った丸い月の中心、そこに彼女は浮かんでいた。
近付けば近付く程、秋月の推測は確信へと変わっていく。
僅かな距離がもどかしく、最初は手を引かれていた長十センチ砲ちゃんを脇に抱え速度を上げる。
(ようやく、ようやく会えた!)
「――照月!」
――――助けた長十センチ砲ちゃんに連れられて月に照らされた艦娘を発見しました。
61: 2015/08/28(金) 13:53:25.38 ID:h+ppfX4k0
・クー『言ッタコトニハ責任持テ』、投下します
てんで性根は優しいキューピッド
何があったかはまたの話
てんで性根は優しいキューピッド
何があったかはまたの話
62: 2015/08/28(金) 13:53:59.90 ID:h+ppfX4k0
「オイ」
「何だクー、珍しいな、一人か?」
「今日ハオ前に話ガアッテキタ」
「お前がわざわざ一人で来たってことは、春雨絡みか?」
「分カッテイルナラ話ガ早イ。春雨トケッコンカッコカリシロ」
「ケッコンカッコカリは言われてはいそうですねってするもんじゃない」
「春雨ノ何ガ不満ナンダ。胸カ、春雨ヲ入レタ料理シカ作ラナイトコロカ、ピンク色ノ髪カ、村雨ノブラヲ着ケタママ村雨ノマネヲシテ恥ズカシサデ暫ク動ケナカッタトコロカ」
「最後さらっと春雨の秘密の暴露になってるからやめてやれ、誰だってそういう時はある」
「サァ、春雨ノ秘密ヲ聞イタカラニハ答エテモラウゾ」
「無茶苦茶だなおい……別に、春雨に不満なんぞ無いさ」
「ソレナラ」
「不満が無いのと、するかどうかは別の話だ。第一、春雨に関してはそこまで好かれるようなことをした覚えが全く無い」
「多分、切ッ掛ケハアレダ」
「アレ?」
「春雨ガ変ニナッタ時、オ前ガ言ッタ台詞ダ」
「当たり前のことをして、当たり前のことを言った記憶しか無いんだが」
「呆レタ奴ダナ……。トリアエズ、言ッタコトニハ責任ヲ持テ」
「責任を果たしてるから俺はこうして毎日毎日働いてるんだろ」
「年ノ半分ハ艦娘達ト仲睦マジク遊ンデイル癖ニ、ソノ中ニ春雨ガ増エルダケノコトヲ何故ソンナニ拒否スル」
「逆に聞くが、お前はどうしてそこまで春雨の為に行動するんだ? 似ているから、だけじゃないんだろ?」
「……半身ノ幸セヲ願ウノハ、普通ノ話ダ」
「……そうか」
「マズハ、“ココニズット居タイ”トイウ願イグライハ叶エテヤレ。ケッコンカッコカリシタカラスグニベッドデ仲良クトイウ訳デモナインダロ?」
「当たり前だ」
「泣カセタラ、承知シナイヨ。モシ泣カセタラ春雨ノ海ニ溺レサセテヤル」
「貴重な体験が出来そうだが、遠慮願おう」
「何だクー、珍しいな、一人か?」
「今日ハオ前に話ガアッテキタ」
「お前がわざわざ一人で来たってことは、春雨絡みか?」
「分カッテイルナラ話ガ早イ。春雨トケッコンカッコカリシロ」
「ケッコンカッコカリは言われてはいそうですねってするもんじゃない」
「春雨ノ何ガ不満ナンダ。胸カ、春雨ヲ入レタ料理シカ作ラナイトコロカ、ピンク色ノ髪カ、村雨ノブラヲ着ケタママ村雨ノマネヲシテ恥ズカシサデ暫ク動ケナカッタトコロカ」
「最後さらっと春雨の秘密の暴露になってるからやめてやれ、誰だってそういう時はある」
「サァ、春雨ノ秘密ヲ聞イタカラニハ答エテモラウゾ」
「無茶苦茶だなおい……別に、春雨に不満なんぞ無いさ」
「ソレナラ」
「不満が無いのと、するかどうかは別の話だ。第一、春雨に関してはそこまで好かれるようなことをした覚えが全く無い」
「多分、切ッ掛ケハアレダ」
「アレ?」
「春雨ガ変ニナッタ時、オ前ガ言ッタ台詞ダ」
「当たり前のことをして、当たり前のことを言った記憶しか無いんだが」
「呆レタ奴ダナ……。トリアエズ、言ッタコトニハ責任ヲ持テ」
「責任を果たしてるから俺はこうして毎日毎日働いてるんだろ」
「年ノ半分ハ艦娘達ト仲睦マジク遊ンデイル癖ニ、ソノ中ニ春雨ガ増エルダケノコトヲ何故ソンナニ拒否スル」
「逆に聞くが、お前はどうしてそこまで春雨の為に行動するんだ? 似ているから、だけじゃないんだろ?」
「……半身ノ幸セヲ願ウノハ、普通ノ話ダ」
「……そうか」
「マズハ、“ココニズット居タイ”トイウ願イグライハ叶エテヤレ。ケッコンカッコカリシタカラスグニベッドデ仲良クトイウ訳デモナインダロ?」
「当たり前だ」
「泣カセタラ、承知シナイヨ。モシ泣カセタラ春雨ノ海ニ溺レサセテヤル」
「貴重な体験が出来そうだが、遠慮願おう」
63: 2015/08/28(金) 13:54:25.28 ID:h+ppfX4k0
「クーちゃん、どこ行ってたの?」
「タダノ散歩ダ」
「春雨スープあるけど、飲む?」
「飲ム」
「クーちゃん、帽子に乗るならスープ飲んでからにしてくれないかな……」
「イイカラ早クシロ、慣レナイ事ヲシテ疲レタ」
「もう、叩かないでよぉ」
――――し、司令官から呼び出し? 何だろう……。
――――村雨ニ貰ッタ下着ヲ着ケル時ガ来タノカモナ。
――――クーちゃん!?
「タダノ散歩ダ」
「春雨スープあるけど、飲む?」
「飲ム」
「クーちゃん、帽子に乗るならスープ飲んでからにしてくれないかな……」
「イイカラ早クシロ、慣レナイ事ヲシテ疲レタ」
「もう、叩かないでよぉ」
――――し、司令官から呼び出し? 何だろう……。
――――村雨ニ貰ッタ下着ヲ着ケル時ガ来タノカモナ。
――――クーちゃん!?
71: 2015/09/01(火) 13:52:29.91 ID:cpbtuf7z0
――第一即席艦隊。
「単装砲の力、見せられるといいな」
「阿賀野はお姉ちゃんらしいところ見せなきゃ」
「ボクと同じ航空巡洋艦もいるのかな?」
「あちらにも空母が一隻居ればいいんですけど……」
現れた鬼級への対処として編成された即席艦隊。由良・阿賀野・最上・祥鳳の四人は、他地点を防衛している艦隊から同様に送り出された四人と合流するべく移動していた。
その場の判断で動かなければならず、他鎮守府の艦娘との連携に一抹の不安が残るものの、協力に即座に応じて貰えただけでも儲けモノである。
「――あっ、あれかな?」
先頭を進んでいた由良の視界に四つの人影が映る。
すぐにその姿は大きくなっていき、誰であるかが四人全員に判別出来るようになるまで、そう時間はかからなかった。
「あたしがこっち側の、旗艦……の……ぐぅ」
「おーい加古、寝たらダメだって」
「んぁ? あー、どこまで話したっけ?」
「まだ、何も言ってない」
「そっか、まぁお互い説明とか無くても大丈夫だよな。ひとまずよろしくぅっ!」
「うぃーヒック! よろしくなぁ~」
どの鎮守府でもそうなのか眠そうな加古、その頭をペシペシ叩く望月に寄りかかる初雪、顔が赤く上半身が揺れている隼鷹。
普通に考えればふざけているとしか思えない光景だが、この場に居合わせてる以上、実力は折り紙つきということだ。
「集中砲火で一体ずつ、中破したら即後退、でいい?」
「オッケー、さっさと済ませて戻んないと古鷹に小言言われそうだし、いっちょやってやりますか!」
シンプルイズベスト。さっさと倒して、とっとと戻るという大雑把な作戦が、今の切迫した状況では最も的確といえた。
敵前衛主力への強襲作戦。今後この地点の防衛にどれだけ余裕を生むことが出来るかは、八人の艦娘の手に委ねられたのだった。
「単装砲の力、見せられるといいな」
「阿賀野はお姉ちゃんらしいところ見せなきゃ」
「ボクと同じ航空巡洋艦もいるのかな?」
「あちらにも空母が一隻居ればいいんですけど……」
現れた鬼級への対処として編成された即席艦隊。由良・阿賀野・最上・祥鳳の四人は、他地点を防衛している艦隊から同様に送り出された四人と合流するべく移動していた。
その場の判断で動かなければならず、他鎮守府の艦娘との連携に一抹の不安が残るものの、協力に即座に応じて貰えただけでも儲けモノである。
「――あっ、あれかな?」
先頭を進んでいた由良の視界に四つの人影が映る。
すぐにその姿は大きくなっていき、誰であるかが四人全員に判別出来るようになるまで、そう時間はかからなかった。
「あたしがこっち側の、旗艦……の……ぐぅ」
「おーい加古、寝たらダメだって」
「んぁ? あー、どこまで話したっけ?」
「まだ、何も言ってない」
「そっか、まぁお互い説明とか無くても大丈夫だよな。ひとまずよろしくぅっ!」
「うぃーヒック! よろしくなぁ~」
どの鎮守府でもそうなのか眠そうな加古、その頭をペシペシ叩く望月に寄りかかる初雪、顔が赤く上半身が揺れている隼鷹。
普通に考えればふざけているとしか思えない光景だが、この場に居合わせてる以上、実力は折り紙つきということだ。
「集中砲火で一体ずつ、中破したら即後退、でいい?」
「オッケー、さっさと済ませて戻んないと古鷹に小言言われそうだし、いっちょやってやりますか!」
シンプルイズベスト。さっさと倒して、とっとと戻るという大雑把な作戦が、今の切迫した状況では最も的確といえた。
敵前衛主力への強襲作戦。今後この地点の防衛にどれだけ余裕を生むことが出来るかは、八人の艦娘の手に委ねられたのだった。
72: 2015/09/01(火) 13:52:56.61 ID:cpbtuf7z0
重巡一隻、航巡一隻、軽巡二隻、駆逐艦二隻、軽空母二隻。
バランスとしては申し分無く、合流地点からすぐに鬼退治へと一行は向かう。
元々そう遠くない距離まで接近していたこともあって、彼女達が臨戦態勢を取るまでそう時間はかからなかった。
「私と隼鷹さんで射線を開きます」
「後はジャンジャン撃っちゃって~」
言うや否や数十機の艦載機が二人から発艦し、先陣を切る。
その様は少し特殊で、祥鳳の艦載機の動きをトレースしたかのように隼鷹の艦載機が動きを合わせていた。
「凄いでしょうちの飲んだくれ、酒が抜けると逆にてんでダメなんだけどね」
「凄いのならボク達の仲間だって負けてないよ、ね?」
「――射線、開いた」
「うおぉっ!? い、今の何さ」
「あー!? 阿賀野が一番に撃ちたかったのにー!」
突然の轟音に慌てる望月。それとは違った意味で慌てる阿賀野は、由良の単装砲の餌食となった相手を確認する。
幸いと言っていいのか近くのヘ級が庇い、南方棲戦鬼は黒煙を上げてはいるが動きを止めていなかった。
「キラリーン、阿賀野が止め刺しちゃうよー」
「緊張感、ゼロ」
間髪入れぬ阿賀野の追撃が決まり、一隻目の鬼級が沈む。
それを後ろから冷静に眺めていた初雪は、全く鬼級が居る方向とは見当違いの方向へと視線を這わせた。
「――そこ」
無造作に放たれた数発の爆雷。しかし、放たれた数だけ大きく水柱が上がり、潜水艦がそこに居たことを示す。
「そっちの初雪はこっちの五十鈴みたいなポジションなんだ。じゃあそろそろボクも、行くよ!」
最上は試製晴嵐を飛ばし、鬼級二隻へと同時に攻撃を仕掛ける。
対空砲火が祥鳳と隼鷹の艦載機へと向いていたこともあり、撃沈とまではいかなかったが一隻を中破、一隻を小破へと追い込んだ。
「望月、あたし達も負けてらんないぜ」
「あいよー」
出遅れた加古と望月も、砲雷撃を開始する。
二人は特別な何かをしている訳ではないが、その一撃一撃が次の行動を妨げ、相手の動きを封じていた。
ものぐさならではの“回避せずに済む戦い方”であり、ものぐさらしからぬ積み重ねた練度がそれを可能にしていた。
「よっしゃ、このまま――」
「敵増援です! 更に後方より二隻接近中!」
「やっぱり、そう簡単には終わらせてくれないみたいだね……」
延長戦の笛が鳴り、八人は再び体勢を整え備える。
このロスタイムがいつまで続くかは、他の艦隊の働き次第である。
バランスとしては申し分無く、合流地点からすぐに鬼退治へと一行は向かう。
元々そう遠くない距離まで接近していたこともあって、彼女達が臨戦態勢を取るまでそう時間はかからなかった。
「私と隼鷹さんで射線を開きます」
「後はジャンジャン撃っちゃって~」
言うや否や数十機の艦載機が二人から発艦し、先陣を切る。
その様は少し特殊で、祥鳳の艦載機の動きをトレースしたかのように隼鷹の艦載機が動きを合わせていた。
「凄いでしょうちの飲んだくれ、酒が抜けると逆にてんでダメなんだけどね」
「凄いのならボク達の仲間だって負けてないよ、ね?」
「――射線、開いた」
「うおぉっ!? い、今の何さ」
「あー!? 阿賀野が一番に撃ちたかったのにー!」
突然の轟音に慌てる望月。それとは違った意味で慌てる阿賀野は、由良の単装砲の餌食となった相手を確認する。
幸いと言っていいのか近くのヘ級が庇い、南方棲戦鬼は黒煙を上げてはいるが動きを止めていなかった。
「キラリーン、阿賀野が止め刺しちゃうよー」
「緊張感、ゼロ」
間髪入れぬ阿賀野の追撃が決まり、一隻目の鬼級が沈む。
それを後ろから冷静に眺めていた初雪は、全く鬼級が居る方向とは見当違いの方向へと視線を這わせた。
「――そこ」
無造作に放たれた数発の爆雷。しかし、放たれた数だけ大きく水柱が上がり、潜水艦がそこに居たことを示す。
「そっちの初雪はこっちの五十鈴みたいなポジションなんだ。じゃあそろそろボクも、行くよ!」
最上は試製晴嵐を飛ばし、鬼級二隻へと同時に攻撃を仕掛ける。
対空砲火が祥鳳と隼鷹の艦載機へと向いていたこともあり、撃沈とまではいかなかったが一隻を中破、一隻を小破へと追い込んだ。
「望月、あたし達も負けてらんないぜ」
「あいよー」
出遅れた加古と望月も、砲雷撃を開始する。
二人は特別な何かをしている訳ではないが、その一撃一撃が次の行動を妨げ、相手の動きを封じていた。
ものぐさならではの“回避せずに済む戦い方”であり、ものぐさらしからぬ積み重ねた練度がそれを可能にしていた。
「よっしゃ、このまま――」
「敵増援です! 更に後方より二隻接近中!」
「やっぱり、そう簡単には終わらせてくれないみたいだね……」
延長戦の笛が鳴り、八人は再び体勢を整え備える。
このロスタイムがいつまで続くかは、他の艦隊の働き次第である。
73: 2015/09/01(火) 13:53:32.56 ID:cpbtuf7z0
――第二艦隊。
「あーもうキリが無いったら!」
「ゴーヤ達ももうそろそろいっぱいいっぱいでち……」
「瑞鶴さん、一度睦月達も補給しないと弾が空っぽになりそうなのね」
(もう少し粘りたかったけど、ここが限界みたいね……)
「第二艦隊各員に通達! 砲火を後方一点に集中、一時補給を兼ねて後退よ!」
『了解!』
数の暴力というのは凄まじく、一撃一墜でも追い付かない程に後から後から無尽蔵に深海棲艦は湧き出てきていた。
下がっている間はその数の暴力が最終防衛ラインまで雪崩れ込むことになるが、轟沈しては元も子もない。
瑞鶴の一時後退という判断は、この状況下では最善と言えた。
『私達は雪風と島風を回収しながら戻る、そちらは先に睦月型と潜水艦達を連れて後退してくれ』
『そういう訳だから、また後で会いましょ』
『瑞鶴、くれぐれも気を付けてね』
「分かりました、伊勢さん達も気を付けて。翔鶴姉ぇ、心配しなくても大丈夫よ。何たって私は幸運の空母なんだから」
二手に分かれて後退を始める第二艦隊。
当然、簡単に逃がしてくれるはずもなく、容赦無く砲火が後方より追いかけてくるのだった。
「あーもうキリが無いったら!」
「ゴーヤ達ももうそろそろいっぱいいっぱいでち……」
「瑞鶴さん、一度睦月達も補給しないと弾が空っぽになりそうなのね」
(もう少し粘りたかったけど、ここが限界みたいね……)
「第二艦隊各員に通達! 砲火を後方一点に集中、一時補給を兼ねて後退よ!」
『了解!』
数の暴力というのは凄まじく、一撃一墜でも追い付かない程に後から後から無尽蔵に深海棲艦は湧き出てきていた。
下がっている間はその数の暴力が最終防衛ラインまで雪崩れ込むことになるが、轟沈しては元も子もない。
瑞鶴の一時後退という判断は、この状況下では最善と言えた。
『私達は雪風と島風を回収しながら戻る、そちらは先に睦月型と潜水艦達を連れて後退してくれ』
『そういう訳だから、また後で会いましょ』
『瑞鶴、くれぐれも気を付けてね』
「分かりました、伊勢さん達も気を付けて。翔鶴姉ぇ、心配しなくても大丈夫よ。何たって私は幸運の空母なんだから」
二手に分かれて後退を始める第二艦隊。
当然、簡単に逃がしてくれるはずもなく、容赦無く砲火が後方より追いかけてくるのだった。
74: 2015/09/01(火) 13:54:04.73 ID:cpbtuf7z0
「なるべく敵の薄いところを突っ切って! 左右への警戒も忘れないで!」
「うわっ!? あっぶねー……」
「弥生、しっかりするぴょん! 傷は浅いぴょん!」
「ずぶ濡れになっただけ。弥生は大丈夫、だから」
至近弾が何度も身体を揺さぶり、足元を掬おうとする。
それに負けじと文字通り阻むモノを砲と魚雷と艦載機で蹴散らしながら、瑞鶴達は着実に防衛ラインを目指して後退していた。
「ねぇ、アイツ等やっちゃっていい?」
「通り道なら構わないだろう」
「ここは戦場だ、立ちはだかるならば容赦はしない!」
「この長良を仕留めるには遅い、全然遅い!」
ここまで比較的温存していた長良は先頭を進み、他の艦を引っ張っていく。
その後ろから長月、菊月、文月の三人が、鎌鼬の傷薬を止めに変えたコンビネーションで援護していた。
そして、通り道に居たデカイ獲物も勢いに任せて一匹葬り去るのだった。
「うわっ!? あっぶねー……」
「弥生、しっかりするぴょん! 傷は浅いぴょん!」
「ずぶ濡れになっただけ。弥生は大丈夫、だから」
至近弾が何度も身体を揺さぶり、足元を掬おうとする。
それに負けじと文字通り阻むモノを砲と魚雷と艦載機で蹴散らしながら、瑞鶴達は着実に防衛ラインを目指して後退していた。
「ねぇ、アイツ等やっちゃっていい?」
「通り道なら構わないだろう」
「ここは戦場だ、立ちはだかるならば容赦はしない!」
「この長良を仕留めるには遅い、全然遅い!」
ここまで比較的温存していた長良は先頭を進み、他の艦を引っ張っていく。
その後ろから長月、菊月、文月の三人が、鎌鼬の傷薬を止めに変えたコンビネーションで援護していた。
そして、通り道に居たデカイ獲物も勢いに任せて一匹葬り去るのだった。
80: 2015/09/03(木) 22:51:10.14 ID:3MoI/3ML0
・早霜『少し、楽しくなってきました』 、投下します
床下収納に眠っていたりするかも
床下収納に眠っていたりするかも
81: 2015/09/03(木) 22:51:37.67 ID:3MoI/3ML0
夜も少し更け、鎮守府が僅かに静かになった頃、そこはひっそりと営業を開始していた。
カウンターには常連の那智、姉の夕雲、酒を飲み始めたばかりの大鯨、店の前でドアをにらみ付けていた不知火の四人が座っている。
それぞれ既に一杯目は注文しており、全員グラスは空に近くなっていた。
「早霜、ここに梅酒はあるのか?」
「えぇ、ホワイトリカーで漬けたモノで良ければあります」
「じゃあ次はそれをもらおう」
「あのぉ、梅酒って飲みやすい方なんでしょうか」
「口に合うかどうかなどを抜きにすれば、ホワイトリカーで漬けたモノなら一番梅酒の中では飲みやすいかもしれないな」
「そんなんですかあ。だったら私も一杯飲んでみようかな」
「早霜、私にも一杯いれてちょうだい」
「夕雲姉さん、度数が低いという訳ではないけれど、大丈夫なの?」
「大丈夫よ、自分がどの程度なら飲めるかぐらい弁えているもの」
「そう、ならいいんですけど」
「では、不知火もいただきます」
「……四人分、ですね」
一つはストレートで、二つはロック、一つを梅サイダーで早霜は準備する。
幸いなことに不知火からは氏角であり、他の者も彼女が飲めるとは到底思っていないので黙っていた。
「――どうぞ」
出された梅酒はまだ年季が入っているはずもなく、正に作りたてという色をしていた。
口に含んだ各々は、それぞれ違った反応を示す。
「ふむ……深みがこれから増していき、来年にはもっと良い味になっていそうだな」
「う~ん……やっぱりちょっと私にはキツかったかも」
(体が熱くなってきちゃったわね……)
「不知火は気に入りました、梅酒」
「気に入って貰えたなら何よりです。大鯨さんは口に合わなかったご様子ですので、サングリアをお入れしますね」
「ありがとうございまあす」
「梅酒、もう一杯お願いします」
「はい、すぐに」
(私もこっそり梅サイダー頼もうかしら)
「――十五年物、味がまろやかで癖になりそう」
「飲みやすい分、酔いも回りやすいですから飲むときは注意して下さいね」
サングリアに続き鳳翔の十五年物の梅酒が早霜のお気に入りに加わった模様。
カウンターには常連の那智、姉の夕雲、酒を飲み始めたばかりの大鯨、店の前でドアをにらみ付けていた不知火の四人が座っている。
それぞれ既に一杯目は注文しており、全員グラスは空に近くなっていた。
「早霜、ここに梅酒はあるのか?」
「えぇ、ホワイトリカーで漬けたモノで良ければあります」
「じゃあ次はそれをもらおう」
「あのぉ、梅酒って飲みやすい方なんでしょうか」
「口に合うかどうかなどを抜きにすれば、ホワイトリカーで漬けたモノなら一番梅酒の中では飲みやすいかもしれないな」
「そんなんですかあ。だったら私も一杯飲んでみようかな」
「早霜、私にも一杯いれてちょうだい」
「夕雲姉さん、度数が低いという訳ではないけれど、大丈夫なの?」
「大丈夫よ、自分がどの程度なら飲めるかぐらい弁えているもの」
「そう、ならいいんですけど」
「では、不知火もいただきます」
「……四人分、ですね」
一つはストレートで、二つはロック、一つを梅サイダーで早霜は準備する。
幸いなことに不知火からは氏角であり、他の者も彼女が飲めるとは到底思っていないので黙っていた。
「――どうぞ」
出された梅酒はまだ年季が入っているはずもなく、正に作りたてという色をしていた。
口に含んだ各々は、それぞれ違った反応を示す。
「ふむ……深みがこれから増していき、来年にはもっと良い味になっていそうだな」
「う~ん……やっぱりちょっと私にはキツかったかも」
(体が熱くなってきちゃったわね……)
「不知火は気に入りました、梅酒」
「気に入って貰えたなら何よりです。大鯨さんは口に合わなかったご様子ですので、サングリアをお入れしますね」
「ありがとうございまあす」
「梅酒、もう一杯お願いします」
「はい、すぐに」
(私もこっそり梅サイダー頼もうかしら)
「――十五年物、味がまろやかで癖になりそう」
「飲みやすい分、酔いも回りやすいですから飲むときは注意して下さいね」
サングリアに続き鳳翔の十五年物の梅酒が早霜のお気に入りに加わった模様。
82: 2015/09/03(木) 22:55:02.77 ID:3MoI/3ML0
次のリクエスト受付は明日の8時から三つ、20時より三つ受け付けます
朝霜、高波、瑞穂、海風は未着任です
朝霜、高波、瑞穂、海風は未着任です
84: 2015/09/04(金) 01:08:22.01 ID:1Fec3lf20
乙乙
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります