308: 2014/10/19(日) 00:08:16.32 ID:aI6tPkdVo
 ───アタシの名前はキタカミ。心に傷を負った艦娘。モテカワスリムで恋愛体質の愛されガール♪
アタシがつるんでる友達は甲標的をやってるキソ、鎮守府にナイショで
コタツでまるくなってるタマ。訳あって肉食獣グループの一員になってるクマ。
 友達がいてもやっぱり鎮守府はタイクツ。今日も提督とちょっとしたことで口喧嘩になった。
男女の友達だとこんなこともあるからストレスが溜まるよね☆そんな時アタシは一人で鎮守府海域を歩くことにしている。
がんばった自分へのご褒美ってやつ?自分らしさの演出とも言うかな!
 「あームカツク」・・。そんなことをつぶやきながらしつこいヲ級を軽くあしらう。
「カノジョヲー、ちょっと話来てくれない?」どいつもこいつも同じようなセリフしか言わない。
お供の雷巡はカッコイイけどなんか薄っぺらくてキライだ。もっと等身大のアタシを見て欲しい。
 「すいません・・。」・・・またか、とハイパーなアタシは思った。シカトするつもりだったけど、
チラっとドロップの艦娘の顔を見た。
「・・!!」
 ・・・チガウ・・・今までの艦娘とはなにかが決定的に違う。サイコな感覚がアタシのカラダを
駆け巡った・・。「・・(カッコイイ・・!!・・これって運命・・?)」
艦娘はレOだった。連れていかれた。「キャーやめて!」魚雷を決め……


 「キエエエエエエエエ!」

   どんどん顔を夜叉のように変えていった大井は裂錦の気合ともに俺の自信作を引き裂いた。
  バラバラになった原稿の破片が辺りに舞い上がる。

 「ああ! なにしやがる!」

 「北上さんはこんなふしだらな女じゃないわよ! というか内容がひどすぎるのよ!」

劇場版 艦これ
309: 2014/10/19(日) 00:09:09.35 ID:aI6tPkdVo



  深海棲艦と呼ばれる化け物により世界の海が支配される寸前、人類は艦娘に出会った。
 彼女たちを一目見た瞬間電撃が走った俺は、今まで積んできた物を捨て、一心に提督を目指した!
 血の滲むような努力により一つの鎮守府を任された今は、一つの理想に向け邁進している。
 純粋で、可憐な姿を持つ彼女たち。彼女たちを率いて、理想の百合艦隊を築くのだ!

  最初に目を付けた艦娘は大井である。彼女の普段の挙動、百合の香りを感じ取るには容易い。
 まずは彼女を立派な百合に仕立て上げ、その経験により、他の娘を啓蒙する。
 この小説はその栄光の第一歩である。これを見た大井はすぐに目覚め、北上に告白するはずだったのに……

  予想外の完全なる酷評。このことは俺の今後の展望がどれだけ甘いものであるかを思い知らされた。
 しかし、それもそうである、そんなに簡単に目覚めさせられたら、今頃世界は百合の花畑だ。
 そう、これは試練だ、神から与えられた試練なのだ。きっと、きっと乗り越えて見せるぞ!


 「こんどはどうだ! 大井! これでお前も納得……」

 「ゴミ」

  全身全霊を込めた作品を大井は一瞥すらせず没にする。
 あれだけみなぎっていた気力ももはや枯れる寸前だ。しかし、何をどうすればいいのか全く糸口が掴めない。

 「まず、出会って数秒で合体っていうのがおかしいわ。普通はだんだん段階を踏んでいくものよ」

  ……そうだったのか。確かに言われてみればすぐに気がついた。俺の夢見たものも初めは清純な百合だったのだ。
 しかし、段階、段階といっても全く思い浮かばない。自分の人生経験にはそういったものは一切なかった。
 俺が何も思い浮かばず、思考の迷路に陥った姿を見た大井は、言いづらそうにしながら口を開く。

 「……だ、だから、これからの休日、私と一緒に出掛けなさい! それを元にして書けばいいのよ!」

  顔を赤くして、そう話す大井から彼女の覚悟を強く感じ取る。
 彼女のためにも必ず書き上げ、百合の艦隊を作り上げて見せる――
 固く心に誓うのだった。

310: 2014/10/19(日) 00:09:51.59 ID:aI6tPkdVo

  二か月後、休日を大井と過ごしてだいぶ経過した。
 だが、彼女を納得させられるだけのものはまだ作り出せていない。
 こんなに付き合わせてしまっている自分をひどく情けなく感じる。

  しかし、気がかりなことはそれだけではない。最近北上の様子がおかしくなっているという報告が来ている。
 百合の栽培において、必要なのは健全な環境と関係である。少しは風が吹くのもいいかもしれないが、
 致命的なものは起こさせてはならない。だから、以前から艦娘達がなるべく快適に過ごせるよう、環境を整え続けてきた。
 だから、すぐに北上を呼び、何か悩み事がないかをそれとなく聞いてみたのだが―――

 「あのさ、提督ってさ、最近、大井っちとよく出かけてるけど……」

  聞いた瞬間、えずきそうになる。
 あれだけ、あれだけ苦労して、計画し、実現に努力してきた百合の花畑。その第一歩が芽吹いていたというのに……!
 遠くを見つめすぎて、俺は足元の小さなそれを踏みつけそうになっていたのだ。
 
 すぐに、大井とは特別な関係ではなく、俺の創作活動の助手になってもらっているだけだと伝える。
 
 「えー。……本当?」
 
  案の定、北上は疑わしげな目でこちらを見る。よくよく考えると当たり前だ。
 傍目からこんなことを聞いたら、普通は何か隠していると思うだろう。
 一瞬の逡巡の後、一筋の光が頭の中を駆け抜ける。
 
 「それなら、北上、お前が代わるか?」

 「……え……」

 「いや、お前の方がキャラクターが合ってるからな、うん、そもそもお前に頼めばよかったな」

  実際、名案ではないだろうか? これ以上大井に迷惑をかけるわけにもいかない。
 それに本人を参考にした方がより整ったものが書けるだろう。
 大井に知れると後が怖いが、ばれるまでには書き上げて見せる。
 聞いた北上はしばらく悩む様子を見せた後、やがて小さく頷いた。
 
  そのあと俺は呼んだ大井に、なんとか書き上げる目途がついたとつげると、
 今までの出来を見ていたからだろうか、ひどく食い下がってきた。

  それでも、これ以上、迷惑をかけるわけにはいかないので、一度、集大成を見てみてから、
 それからまた続けるか考えてくれないかと話すと、納得したのだろうか、大井は渋々承諾する。

  さあて、ここが正念場だ。傑作を書いてみせる。あいつらの恩に報いて、
 百合の楽園を築き上げてみせよう。よっしゃ! 気合、入れて、行くぞ!

311: 2014/10/19(日) 00:10:45.91 ID:aI6tPkdVo



  ……結局、一月も経過してしまった。あいつらには詫びのしようがない……。
 しかし、できたものは結構な自信作だ。見た人は皆、百合に目覚めるんじゃないかな!
 
  それに、今朝、喜ばしい報告があった。
 なんでもあいつらの部屋から、昨日の夜、なにやら物音が聞かれたらしい。
 結構激しい音だったようである。多分それほどまでに燃え上がったのだろう。
 ハッピーバースデイ! 新しい百合の誕生だ!

  早速二人を、協力の礼と関係成立への祝い、それから、作品を見せるべく呼び出す。
 しかし、呼び出した二人の姿は――!

  「……北上、大井、どうしたんだ、その顔の痣と引っ掻き傷は」
 
  あんまり健全じゃないプレイはしてほしくないぞ。と言うと、
 なぜだか晴れ晴れとした顔の二人は、交互に口を開き始めた。

  「……提督、昨日、北上さんと気持ちをぶつけ合ったんです」
 
  「そうそう、結果、こんな傷はできちゃったけどさ~」

   思わず目頭が熱くなる。やった。俺の努力は今、ようやく、ようやく、一つの花をつけたのだ。
  けれども、これで満足してはいけない。次なる目標に向けて、努力していかなくては……。

  「大井っちたら、提督のこと、好きになっちゃってたみたいで」

  「北上さんが好きになったんだから、責任取らせないといけませんよね……♪」

  「「だから」」

   二人で、提督のこと、共有することにしたから

   ……あれ?

  「さあて、まずは、大井っち~」
   
  「はい♪、北上さん。こんなことになった、オシオキをしないといけませんね♪」

  「提督、覚悟してよね」

  「ちゃあんと責任は、取ってもらいますからね……!」

   ……あれ?

  

312: 2014/10/19(日) 00:11:28.29 ID:aI6tPkdVo
投下終了です

引用: 艦これSS投稿スレ3隻目