502: 2014/11/21(金) 22:37:40.28 ID:adS+8jreo
投下します
※一応 女性提督と欠損要素とヤンデレにつき注意
※一応 女性提督と欠損要素とヤンデレにつき注意
503: 2014/11/21(金) 22:39:05.69 ID:adS+8jreo
朝起きたら、
足が二本とも折られていた。
昨日の終わり、なにがあったかを思い出そうとして、紅茶を飲んだら何故だか眠くなったのだった
などということを、寝心地のいいベットの感触を感じながら掘り起こした。
気がついて後にじわじわ上がって来る痛みに耐えながらつと、周囲を見回す。
殺風景で一面タイル張りの部屋――なんてことはなく、そこそこに趣味のいい家具が揃い、
暮らしていくと考えたら、なかなかに快適そうな部屋である。小窓の鉄格子と重厚そうな扉を除けば。
絶対に蹴破ったりはできないだろうなあ……そんなことを考えながら、じっと見つめていた扉が、
不意に開いて、外の温度差がある空気が流れ込んでくる。一瞬、腕で顔を覆い、それから、
立っていた人物をまじまじと、見る。
黄色いカチューシャ風の髪飾り、艶やかな黒髪、巫女服のような格好……
金剛型戦艦四姉妹の三女、榛名……が、そこには立っていた。
「提督、目を覚まされたのですね……!」
いつもと変わらず、純真可憐な表情を浮かべた榛名がこちらに歩み寄ってくる。
とりあえずは、寝かせてくれたことへの礼を伝えた。
「いえ、そんな、榛名には、もったいないです」
と、同性から見ても可愛らしい素振り返事をしてくれる榛名に癒される。
しかし、癒されてばかりもいられない。鎮守府にはまだそこそこに処理しなければいけない書類が
溜まっていた。執務室でそれらを片付けなくては。
ひどく迷惑だろうが、執務室まで連れて行ってもらえないか、と、打診する。
「……いいえ、駄目です」
「提督には一生、ここで、暮らしてもらいます」
504: 2014/11/21(金) 22:40:15.49 ID:adS+8jreo
元提督がデビュー! らめえ淫欲の波に飲まれちゃうのー!
……うーん、センスがない。
しかし、軍人辞めさせられた女が暮らしていくならこういうことになる。
そもそも軍事以外の技能は、ゴミクズであるのだから、多分レジ打ちもできないだろう。
嫁にもらってくれるような男性は現れないだろうことも確信できるし……。
そんなことを先日海戦で吹っ飛ばされた左腕の袖を揺らしながら考える。
両脚の骨折がすでに処置してあるところから見るに、多分榛名はこちらを匿っているのだろう。
上層部から睨まれるようなことをした覚えはないが、目障りになった可能性は十分ある。
まあ、懲役刑はないと思うが、懲戒免職ぐらいは考えておかなければならない。
そこに至って、考えは後の働き口に移っていた。自殺もいいが、それをすると皆は気を病むだろう。
であるならば、いっそ氏刑にしてはくれないだろうか。もし、それに値するようなことをした提督なら、
みんな、きれいさっぱり忘れられるに違いない。
しかし、もし此方が、罪に問われて憲兵たちに追われていたとして、
そうなると心配になるのは他の艦娘たちの安否だ。此方が見つからなければどうなるかわからない。
一等優しい榛名を裏切ることになるだろうが、次に説得して通じなければ、
隙を見て脱出して、憲兵隊に出頭しなくてはならないだろう。
505: 2014/11/21(金) 22:41:00.29 ID:adS+8jreo
「勝手は! 榛名が! 許しません!」
指ポキー。アイタタタタ……。
506: 2014/11/21(金) 22:42:07.59 ID:adS+8jreo
結局のところ、こちらの予測は何ひとつ当たっていなかったらしい。能無し!
やっぱり氏んでおけばよかったかもしれないなあと目を赤くして、
此方の……私の指に包帯を巻いている榛名を見る。かわいい。
こんなにかわいい榛名の姿を見てると、痛みなんて……うそつきました。
……私的な都合というか、なんというか、とりあえず首になったりなどはしていないらしい。
榛名は、なんでも、私の身を心配してくれたようで、何を言っても前線に赴くのが怖いと、
泣きながら言っていた。
私はこんなにいい娘をかどわしているのだ。
……もし、提督としての才能がなくて、なんの希望もないまま、寒さに震えているところに
彼女と、……彼女たちと会っていたら、私のことを、どう見ただろう?
彼女の信頼も、今の立場も、すべて、すべて私の軍才が作り上げたものだ。
それに比べたら他の部分はカスだ。……彼女たちはそれに目が眩んでいるだけ。
しずしずと扉を閉めて出ていく榛名を見送って考える。
前線からは下がることはできない。後方からだと、何故だか、気色悪いが、
リズムみたいなものがずれて指揮はゴミクズ以下である。
いっそ、すべてを皆に任せて、置物になってしまおうか。
霧島たちの指揮能力ならば滅多なことは起こらないだろう。
……いいや、駄目だ。メッキが剥がれたら、彼女たちはぬくぬくとしている私を軽蔑……、
はしないだろうか。皆、人間なんかに比べたら、何よりも優しい娘たちだ。
しかし、どうだろう、何もしていないのに彼女たちをはべらして。
何も言わずに甲斐甲斐しく世話をしてくれる彼女たち……、
私は彼女たちに何を返してあげられるだろうか、……なにも返せやしない。
そんなことは絶対に許されない。
507: 2014/11/21(金) 22:45:07.92 ID:adS+8jreo
「提督! どうして……? どうしてこんな!」
榛名が血の引いた青白い顔で私を見ている。
彼女はやっぱり優しい娘だ。私がこんなことしている奴を見たら、けっして近づきはしないだろう。
榛名の顔をまじまじと、見る。半分になった視界の中で、
暖かかった彼女の顔が悲痛に歪んでしまっているのが見えた。
「どうして! また! また、そんなに……」
「あなたたちの助けになりたいんだ」
え、といって、榛名がたじろぐ。
「でも、私が捧げられるものなんて、それこそ軍才だけしかない。
だから、……はるな、榛名、私のほとんどは、あなたの、あなたたちの自由にしていい。
目だって片方あればいいし、手も足も好きにしていい。なんなら性奴隷にだって……、
けれど、指揮だけは、指揮能力だけは自由にさせてほしい。私の、衰えるまで、唯一価値のある――」
……榛名は取り返しのつかないことをした子供のような顔をしたあと、
言い終わる前に、私に縋り付いて、声を押し頃して泣いた。
彼女を抱きしめようとして、私は、それまで、戦傷のことを気にしたことはなかったが、
そのとき初めて、左腕が吹っ飛んでしまったことを後悔した。
508: 2014/11/21(金) 22:45:46.99 ID:adS+8jreo
投下終了です
引用: 艦これSS投稿スレ3隻目
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